1以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2026/01/15(木) 13:00:49.11shWLmZnC0 (1/3)

「お前、うちのチームに入んない?」

母校のサッカー部のOB戦で二つ上の先輩だった樫村さんにそう声をかけられた。

「俺ですか? え、何で?」

あまりに唐突な誘いに、思わず苦笑いしてしまった。学生当時にこんな返事をしようものなら、先輩たちから反感を買ってしまうんじゃないかと怯えていたのに、少しフランクに返してしまったのは自分が大人になったからなのだろうか。

「いや、お前全然動けてんじゃんと思って。どっかでサッカーまだやってんの?」

「近所の市リーグのチームで、ちょっとだけ」

動けてる、と言われることについての嬉しさもありつつ、それは樫村さんだってそうだった。学生時代も運動量が豊富なタイプではあったけれど、今でも体型は維持されているし、OB戦でも明らかに周りより動けていた。

「市リーグかよ、勿体ねぇな。それだけ動けるのに」

「樫村さんは、どこかで?」

「インター、覚えてるか? 学生時代に何回かTMしてたけど」

そのチーム名には確かに聞き覚えがあった。確か、県リーグに登録されていたはずだ。それなら確かに、彼の言うことにも納得がいった。

市リーグは基本的には県リーグからは離れた独立した存在で、優勝したからといって県リーグへの昇格があるわけではない。一方で、県リーグは勝てば勝つだけ昇格していくことができる。変な話、プロにだってつながっている。

「へぇ。あそこ、うまい人多かったですよね」

おだてるように言ってみた。

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2以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2026/01/15(木) 20:52:49.18shWLmZnC0 (2/3)

「まあ、この辺でうまいやつらは大体うちのチームに入るわな」

照れた様子もなく、不遜な態度で樫村さんはそう答えた。

「今、一部ですか?」


3以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2026/01/15(木) 20:58:08.77shWLmZnC0 (3/3)

「一部の5位」

「へぇ、そりゃ強豪じゃないですか」

どの自治体かにもよるけれど、うちの県には確か四部まで県リーグが開かれていたはずだ。その中で一部の五位ともなれば、社会人サッカーのなかではかなりの上澄みだ。そもそも、大人になってまでチームに入ってサッカーをしようとしている時点で、学生時代は足に自信があるやつしか残ってないわけだし。

「そんな話は置いといて、どうよ。とりあえず練習参加だけしてみようや」

「うーん。仕事がね、忙しくて」

「でも市リーグではやれるくらいではあるんだろ。一回来てみて違うと思えばやめればいいから」

「人、足りてないんですか?」

「練習試合だと助っ人頼むこともあるくらい」

「あるあるっすね」

実際、俺が今所属しているチームだと市のリーグ戦でも人が集まらなくても不戦敗になることはある。こういうのはどのチームでもある程度はある話なんだろう。

樫村さんには学生時代お世話になっていたし、優男というよりは「俺についてこい!」な兄貴肌の先輩だったということもあり、結局うまく断ることはできなかった。

連絡先だけ好感して、練習日程をメッセージで送るから適当な時に遊びに来いということだけ伝えられてその日は解散した。