1 ◆yOpAIxq5hk2021/09/03(金) 23:14:14.82LvH5H9hi0 (1/8)

【ようこそ実力主義の教室へ の世界観をもとに、オリジナルのキャラが卒業を目指します。】

注意:原作のキャラは出てきませんが、オリジナルキャラを決める段階で原作キャラのおおよそのステータス表を作成しています。微妙にネタバレがあるかもしれません。

ステータスは以下の6つの要素になります。
・学力
・身体能力
・直感・洞察力
・協調性
・成長性
・メンタル
筆記試験や特別試験、学友・ライバルとのコミュニケーションをこなし、それぞれのステータスを上げていくことが可能です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1630678454



2 ◆yOpAIxq5hk2021/09/03(金) 23:18:54.88LvH5H9hi0 (2/8)

【正確なタイトルは「ようこそ実力至上主義の教室へ」でした。早速ミスしましたが、このまま続けます。】

ステータスは以下の6つの要素になります。
・学力
・身体能力
・直感・洞察力
・協調性
・成長性
・メンタル
筆記試験や特別試験、学友・ライバルとのコミュニケーションをこなし、それぞれのステータスを上げていくことが可能です。

早速ですが、学力、身体能力、直感・洞察力、協調性、成長性、メンタルについて決めていきます。それぞれ安価のコンマ以下を反転させた数値で決定します。
例)
コンマ以下:68 → 86

成長性以外の安価においてゾロ目の場合はボーナスとして再安価をし、最低でも60~確定になります。59以下の場合は再安価をし、60以上のときステータス目安の1段階上のものになります。
例)
1回目;66(ゾロ目) → 再安価
2回目;54 → 再安価
3回目:81 → ゾロ目ボーナス → 90~確定


3 ◆yOpAIxq5hk2021/09/03(金) 23:20:56.33LvH5H9hi0 (3/8)

(勉強)基礎学力 【直感・洞察力】【成長性】補正あり
95~:綾小路 【直洞・成】プラス10
90~:坂柳 【直洞・成】プラス10
80~:堀北・幸村・王 【直洞・成】プラス5
70~:櫛田 【直洞・成】プラス3
50~:長谷部・三宅
40~:1年後半須藤
30~:佐藤
20~:池 【直洞・成】マイナス3
10~:1年初期須藤 【直洞・成】マイナス5
~9:学力低 【直洞・成】マイナス7

安価下のコンマ以下反転で決めます。
例:68→86


4以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/03(金) 23:21:20.79XMCHldnW0 (1/4)

a


5 ◆yOpAIxq5hk2021/09/03(金) 23:23:43.85LvH5H9hi0 (4/8)

【>>4
 79 → 学力97(綾小路と同レベル)】

(運動) 【メンタル(精神)】補正あり
95~:綾小路 【精】プラス10
85~:須藤 【精】プラス7
75~:平田・三宅・堀北・伊吹
60~:石崎
40~:池
20~:幸村 【精】マイナス3
6~:佐倉 【精】マイナス5
~5:強制ハンデ(坂柳) 【精】プラマイ無し
※強制ハンデは身体のどこかに障害を持ち、運動ができなくなります。

安価下のコンマ以下反転で決めます。
例:68→86


6以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/03(金) 23:28:53.99XMCHldnW0 (2/4)

a


7 ◆yOpAIxq5hk2021/09/03(金) 23:32:09.56LvH5H9hi0 (5/8)

【>>6
 99 → ゾロ目ボーナス
 60以上は確定とし、再安価を行います。
 59以下の場合は再安価、60以上の場合は上記ステータス目安の1段階上になります
 安価下のコンマ以下反転で決めます。 】


8以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/03(金) 23:33:07.54XMCHldnW0 (3/4)

a


9 ◆yOpAIxq5hk2021/09/03(金) 23:37:53.24LvH5H9hi0 (6/8)

【>>7
 54 → 45 再安価
 安価下のコンマ以下反転で決めます。

 ゾロ目の場合、再安価になる可能性が高いため代替案があれば教えていただければ幸いです。】


10 ◆yOpAIxq5hk2021/09/03(金) 23:38:30.98LvH5H9hi0 (7/8)

【>>8でした。
 安価はこの下にします。】


11以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/03(金) 23:44:03.83XMCHldnW0 (4/4)

更にその下のレスを採用するとか?


12 ◆yOpAIxq5hk2021/09/03(金) 23:50:04.32LvH5H9hi0 (8/8)

【>>11
 83 → 38 再安価

 その下の安価採用は良いですね。
 今後はその下を採用にします。
 ひとまず身体能力について再安価します。下。】


13以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/03(金) 23:52:03.72TNsmiFG10 (1/1)

はい


14以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 00:00:42.92WjK6T6ii0 (1/3)

27引いた身で言うのもあれだけど、今回ならゾロ目の場合、そのコンマで60保証、無条件ワンランクすればいいんないかな
99なら「95~」
88ならワンランク上の「95~」
77ならワンランク上の「85~」
55なら「60」


15以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 00:03:28.40WjK6T6ii0 (2/3)

失礼しました、>>13は途中で書き込んでしまいました、

今回ならゾロ目の場合、そのコンマで60保証、60以上ならワンランク上にすればいいんないかな
99なら最高ランクなので「95~」そのまま(もしくはおまけで何か付ける)
88ならワンランク上の「95~」
77ならワンランク上の「85~」
55なら「60~」みたいな感じで

安価下


16 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 00:07:24.72H7FJ2cZ10 (1/7)

【>>15
 ありがとうございます。
 再安価にするよりは良さそうですね。次以降はそうします。
 安価は下でお願いします。】


17以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 00:22:08.80670wfBee0 (1/1)




18以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 03:27:55.55oOMazhQKO (1/1)

安価下待ちなのかしらこれ?


19以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 08:17:15.332KaH/r/Z0 (1/1)

99と00だけゾロ目の恩恵受けてなくて草



20 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 08:51:56.71H7FJ2cZ10 (2/7)

【ちょっと決まらなすぎなので、この再安価は以下のようにします。
 通常、コンマ以下を反転させたものを採用していますが、コンマそのままと反転させたもので高い方を採用という形式にします。
 例:87 → 87 (反転78 < そのまま87)
 どちらも60未満の場合は再安価を行います。
 安化下でお願いします。】


21以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 08:56:11.99c9RVYPxjO (1/3)

てい


22 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 09:28:03.93H7FJ2cZ10 (3/7)

【>>21
 99 :綾小路と同レベル(それ以上?) 【精】プラス10
 ゾロ目を引いた場合は、いつでも1回安価を引き直しでも良いのかなと思いました。
 ひとまず次に進みます。

(直感・洞察力)
95~:綾小路
90~;坂柳
80~:龍園
70~:堀北・葛城
60~:一ノ瀬
50~:幸村
30~:成績普通の生徒
~29:須藤・池

学力で補正プラス10を獲得しているため、
安価下のコンマ以下を反転後、プラス10します。】


23以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 10:00:02.18WjK6T6ii0 (3/3)




24 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 10:06:20.62H7FJ2cZ10 (4/7)

【>>23
 18 → 81+10 = 91
 90~;坂柳と同等

(協調性)
90~:一ノ瀬
80~:櫛田・平田
65~:軽井沢
50~:1年後半堀北
20~:思い当たりません
~19:1年前半堀北

安価下のコンマ以下反転で決めます。 ?例:68→86】


25以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 10:34:08.35Ui2dmgGG0 (1/1)




26 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 10:49:00.77H7FJ2cZ10 (5/7)

【>>25
 35 → 53
 1年後半堀北と同等

(成長性)
ゾロ目判定はありません。
筆記試験や特別試験、月初のタイミングでステータス上昇の値を入手する割合になります。
01~29:成長性低
30~55:成長性中
56~89:成長性高
90~99:成長性超

安価下のコンマ以下反転で決めます。 ?例:68→86】


27以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 11:03:37.47O5spcVWB0 (1/2)




28 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 11:10:44.41H7FJ2cZ10 (6/7)

【>>27
 47 → 74 成長性高

(メンタル)
95~:綾小路
85~:龍園
70~:1年後半軽井沢
60~:平田・堀北
40~:1年前半軽井沢・一ノ瀬
30~:思い当たりません
10~:佐倉
~09:佐倉未満

身体能力で補正プラス10を獲得しているため、
安価下のコンマ反転後、プラス10します。】


29以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 11:47:44.66c9RVYPxjO (2/3)

えい


30 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 12:24:00.72H7FJ2cZ10 (7/7)

【>>29
 >>15の案をもとに、
 66 → ワンランク上の76 → 補正プラス10で86

 学力:97(綾小路)
 身体能力:99(綾小路)
 直感・洞察力:91(坂柳)
 協調生:53(1年後半堀北)
 成長性:74(高)
 メンタル:86(龍園)

 とんでもないスペックになりましたね。
 この後、主人公の名前、性別、性格、容姿を決めていきます。下3まで募り、その後に多数決で決めたいと思います。
 (名前)
 (性別)
 (性格)
 (容姿)
 私に任せる、という場合はその旨の記載をお願いします。】


31以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 12:43:04.61c9RVYPxjO (3/3)

(名前)春宮 天音(はるみや あまね)
(性別)女性
(性格)明るく朗らかで前向き。頑張り屋で好奇心旺盛、色々と習得しようとする。
周りから頼られることが多く、それに応えようとする反面、周りの人に頼ることがやや苦手
(容姿)平均より少しだけ低めの身長、やや童顔気味だがスタイルは良い。
髪は亜麻色のセミロング。


32以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 14:19:32.82R2vfZ0ix0 (1/2)

 (名前)坂上 隼人(さかがみ はやと)
 (性別)男
 (性格)物静かで理知的。常に優雅であろうと心がけており、そのための努力は欠かせない。異性に興味はあるが、免疫が皆無
 (容姿)長身で引き締まった体格。黒髪短髪


33以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 14:59:24.11O5spcVWB0 (2/2)

名前:炎 竜也(ほのお たつや)
性別:男
性格:粗暴でぶっきらぼうな言い分が目立つが内心は情や義に厚い熱血漢。自身の悪い部分を自覚しているが故に一匹狼で通していた
容姿:ボサボサの紅髪で目付きが悪いが顔つきは悪くない。喧嘩三昧を過ごしてきたので体つきは凄い


34以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 15:25:37.35g6WU5eR/O (1/1)

この中だと3が好みかな


35 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 16:58:03.48aDnh4+ZCO (1/9)

【>>31 >>32 >>33 ありがとうございました。
それでは多数決を行います。
>>31の場合は1、>>32の場合は2、>>33の場合は3と書いてください。先に2票獲得したキャラで進めていきます。
この下から多数決開始です。]


36以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 17:00:51.60R2vfZ0ix0 (2/2)

1


37以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 17:01:22.80j4TxrWwpO (1/1)

1


38 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 17:09:52.71aDnh4+ZCO (2/9)

【>>37、>>38
 1.>>31のキャラに確定です。
(名前)春宮 天音(はるみや あまね)
(性別)女性
(性格)明るく朗らかで前向き。頑張り屋で好奇心旺盛、色々と習得しようとする。
周りから頼られることが多く、それに応えようとする反面、周りの人に頼ることがやや苦手
(容姿)平均より少しだけ低めの身長、やや童顔気味だがスタイルは良い。
髪は亜麻色のセミロング。

>>32と>>33のキャラも同じクラスか別のクラスで登場させようと思います。ありがとうございました。
それではこの後、導入部分から書いていきます。
今晩22時ごろに開始できると思います。
よろしくお願いします。】


39以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 17:19:54.99xnYkT9JMO (1/1)

乙です

他のキャラも募集制?
それとも>>1さんの方で既に作成してます?


40 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 17:43:07.99aDnh4+ZCO (3/9)

【>>39
 何人か考えてはいますが、40人1クラスの4クラスためキャラは常に募集中です。よろしくお願いします。】


41 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 22:27:23.54aDnh4+ZCO (4/9)

【遅れましたが、初めていきます。
 かなり大切なことを決め忘れていたので、本当に最初の部分だけになります。】


42 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 22:27:58.91aDnh4+ZCO (5/9)

 窓を一枚隔てたその先に、わたしは見惚れていた。
 それほど速くもないバスは、ゆっくりと並木道を走る。道路の両脇には幾つもの桜の木。そして舞い散る無数の花びらはとても幻想的なものだと感じられた。

 ────次は、高度育成高等学校、高度育成高等学校…。

 そのアナウンスが車内に響くと、僅かな緊張感が漂うのが分かる。見渡す限り、赤いブレザーを羽織った若者ばかり。そう、わたしも含めて、車内の生徒はみんなこの春を以って高度育成高等学校の生徒になる新入生だ。
 今日のスケジュールは入学式と、教室でのオリエンテーション。お昼前には解散となり、そのまま学校から徒歩五分程度の距離にある学生寮に入寮することになる。特別緊張するようなことではない────とは、どうしても考えられない。これから初対面となるクラスメイトに対して好印象を植え付ける必要があるからだ。


43 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 22:28:30.28aDnh4+ZCO (6/9)

 地元の小学校や中学校と異なり、わたしが入学するのは東京都内に建てられた超特権的な国立高校。卒業時の『特典』を目当てに、全国から多数の入学志願者がこの高校の門を叩くようだがその合格ラインは厳しい。

 一学年あたり、わずか百六十名。

 そんな学校にわたしの地元の知り合いは一人も居ない。いや、正確に言うと同級生は居なかった。もしかしたら今年二年に進級した先輩や、三年の先輩に地元が同じ人が居るかもしれない。少なくとも、推薦の話を貰ったときはそんな話は聞いていませんでしたが。
 ともかく、完全初対面の相手に好印象を持ってもらえるように今日は乗り切りたい────と、そんなことを考えながら、高校前の停留所でわたしは降りる。

「ふぅ……!」

 わたしは暖かくなってきた風を吸い込むように息を吸い、そしてゆっくりと吐く。緊張は無くならないけど、それでも十分に落ち着くことができた。
 あまり停留所で立ち止まっても仕方がない。わたしは正門を跨ぐ。見上げれば巨大な校舎が視界に入る。
 今日からここで三年間、わたしは様々なことを経験して勉強して、失敗もするだろう。でも、卒業の頃には、たくさんの友人に囲まれ、そしてたくさんの後輩に見送られるような人になればいいな、と。
 期待と不安。その二つが胸の奥に感じながら、『新入生はこちらです』と書かれた案内板に従って講堂へと向かう。


44 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 22:33:53.39aDnh4+ZCO (7/9)

【春宮 天音のクラス決めを行います。
 この学校では優秀な生徒はAクラス、不出来な生徒はDクラスと振り分けされます。勉強ができる一方、運動もできず協調生も低い場合はDクラスにもなります。また、成績優秀、品行方正でも中学時代に長期欠席などがあればBクラスになる可能性もあります。
 天音はステータスだけ見れば十分すぎるほどにAクラスですが、安価で決めたいと思います。

安価下のコンマ1桁
1・7:Aクラス
2・9・0:Bクラス
3・5:Cクラス
4・6・8:Dクラス
また、今後ゾロ目が出た場合は、どこかで安価の引き直しができる権利をストックできるようにしていきたいと思います。】


45以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 22:46:56.28Ug24kWJo0 (1/1)




46以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 23:15:25.69r4BL1/1RO (1/2)

この能力と性格でDクラス
これは十中八九、学園の思惑が関わってそう


47 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 23:25:00.03aDnh4+ZCO (8/9)

【>>45 8:Dクラス】

 講堂前に置かれた巨大なディスプレイには、クラス分けの名簿が映し出されていた。ぱっと見る限り、やはりわたしの地元の同級生の名前はない。
 ここで立ち止まって顔も知らないクラスメイトの名前を必死に覚えたところで仕方がないので、わたしはDクラスの案内板が置かれた辺りの座席に着く。特に指定はなかったため、両脇が空いている席にした。
 しばらく待つと、続々と席が埋まっていく。当然、わたしの両隣も埋まる。
 周りを見渡すと、講堂の隅の方では教師と思しき大人がやや慌ただしそうにしており、また壇上のマイク確認を行う上級生の姿も見え始める。
 講堂の上部に設置された時計は、九時五分前を指していた。あと五分後には入学式が開始して、色々な挨拶を終えた後、クラスへ移動となる。
 三年間、この辺りに居る人たちと切磋琢磨していくのかと想像に期待を膨らませ、わたしは待ち続けた。


48 ◆yOpAIxq5hk2021/09/04(土) 23:25:44.91aDnh4+ZCO (9/9)


 何の変哲もない入学式が終了すると、新入生であるわたしたちはそれぞれ教室へと向かう。
 十時三十分からオリエンテーション開始と予告されており、それまでに着けば講堂で人混みがすくのを座って待つのも可能なようだ。
 しかしわたしは立ち上がり、人混みに流されるように校舎へと入り、そして一年Dクラスの教室の扉を開く。既に何人か席に着いていて、どこか落ち着きがないのは仕方がないことだと思う。
 席はあらかじめ決められており、なんとわたしの席は窓側の一番後ろだった。春宮の「は」は、単純に五十音順としたとき、どうしても廊下側になることが多かかった。しかしどうやらこの学校ではそんな常識にはとらわれない席決めが行われたらしい。
 この席はクラス全体が見渡せて、また窓の外も眺められる絶好のポイントだ。早くて一ヶ月後の五月頃には席替えの恐れもあるが、まぁそれはそれで楽しみだと思うようにしておこう。
 わたしが教室に到着してから十分も経つと、ほとんどのクラスメイトが席に着いていた。早速仲良くなったと思しき女子グループを視界に入れ、わたしも勇気を出して混ざりに行こうと考えていると、


【イベント安価です。
 コンマ1桁で判定します。
 奇数:「みんな、少しいいかな」
 偶数:「なぁ、あんた名前は?」
 0:担任の先生登場
 下の安価を採用します。】


49以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/04(土) 23:28:32.95r4BL1/1RO (2/2)

えい


50 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 00:02:52.85ZnAtS4a30 (1/6)

【>>49 5:奇数:「みんな、少しいいかな」】

「みんな、少しいいかな」

 ちょうど真ん中辺りの席に座っていた男の子が立ち上がり、クラス中の注目を集める。彼はそのままゆっくりと教壇の方へ行き、電子黒板の前で振り向いた。
 爽やかな男の子だった。何か運動をしていたのか、程よく筋肉が付いているのが制服越しに分かる。

「先生が来るまであと十五分くらいあるよね。それまで、簡単に自己紹介でもどうかな」

 みんなが言い出せなかった、あるいはこの後のオリエンテーションの中で行われるであろう自己紹介を先に行おうと言い出した。
 クラスの一人が「いいね。やろうよ」と言う。
 その後、次々とその案に賛同する者が現れる。

「ありがとう、みんな。じゃあ早速だけど────」

 直後、パン、と机を叩く音がクラス中に響く。
 その音の発生源はわたしと同じく教室の一番後ろ、そしてわたしの対照的な位置にある廊下側の席だった。


51 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 00:03:24.57ZnAtS4a30 (2/6)


「……」

 派手目な髪色をした男の子が教室を出て行く。何も言わず、教壇に立つ男の子の言葉を遮って教室を出て行ったことから、とても悪い印象を持つ。
 クラス内からもそんな声がぽつぽつと上がる中、教壇に立つ男の子はこう続ける。

「ごめん、もちろん強制じゃないよ。僕たちは初対面だし、こういうのが緊張するのは分かる。僕だって膝がガクガクだしね。良い高校デビューを目指して、正直今は無理してる。でも、それはほとんどのみんなが同じじゃないかな」

 電子黒板と教卓の間に立つ彼の足元は、全然震えていなかった。こういうことに慣れた生徒なのだろう。しかしクラス中の全員が彼のような慣れている生徒であるはずがない。一部の緊張しがちな生徒に目線を合わせているようだ。

「自己紹介をする上で噛んじゃうとか言葉が詰まっちゃうとか、そういうのには目を瞑ってさ、温かく自己紹介が出来れば良いなって思う」

 さらに一押しする発言に、続々と賛同の意見が上がる。しかしその一方で、付き合ってられないと言わんばかりに何名かの生徒が立ち上がり教室を出て行く。
 そしてわたしの前の女の子も立ち上がり、振り向いて教室後方の扉から出て行く。

「────」

 わたしは、選択を迫られる。
 一瞬すれ違ったときに見えた前の席の女の子の表情がやけに苦しそうだった。ただ自己紹介をするのが嫌なようには見えない。後を追って自己紹介タイムを抜け出すか、ただの体調不良であると判断してこのまま自己紹介を済ませるか。


【イベント安価です。
 1.後を追う
 2.このまま自己紹介に参加する
 下1が1か2の選択をお願いします。】


52以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/05(日) 00:09:51.352CxcblIG0 (1/1)

1


53 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 00:47:42.10ZnAtS4a30 (3/6)

【>>52 1.後を追う】

 放っておくことはできなかった。
 そもそもこの自己紹介の場は、あくまでも生徒の提案によって作られた機会に過ぎない。この後のオリエンテーション、あるいは明日からの授業のどこかで先生が場を設けてくれるかもしれない。そんな期待を抱きながら、わたしは席を立つ。
 また一人、自己紹介に参加しないことに対して教壇に立つ男の子は悲しそうな顔をした。教室の前方に固まっている女子グループからは「ノリわる~い」という声も聞こえてきたが、今はそれどころではない。
 教室後方の扉を開き、左右を見渡す。自己紹介がくだらなくて抜け出した者がDクラスの教室のすぐ側で壁に寄りかかり、時間が過ぎるのを待っている。その他にも他クラスの生徒が廊下で話し込んでいるのが見えた。
 前の席の子の姿は見当たらなかった。
 いや、見えない場所に移動したと解釈するのが正しいか。彼女がこの扉から廊下に出てからほんの数秒。考えられるのは、Dクラス教室からかなり近い位置にある女子トイレ一択。わたしは至極当然の権利として、女子トイレの戸を引く。


54 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 00:48:13.84ZnAtS4a30 (4/6)


 彼女には申し訳ないが、さすが国公の高校というのが第一の感想だった。教室や廊下、講堂も確かに綺麗で最新の設備が整っていたが、やはりトイレもかなり清潔感があった────と、そんな場合ではなく、洗面台近くで壁に寄りかかる彼女を見る。
 苦しそうな表情は見間違いではなかったようだ。今も苦しそうに、深呼吸を何度かしている。顔は真っ青で、やや髪が顔に張り付くほど汗を滲ませている。

「あの、大丈夫ですか?」

 わたしは話しかけることにした。彼女が一瞬すれ違ったばかりのわたしのことを認識しているかは怪しいが、気にかけておくべきだと思ったからだ。

「ぇ……あ、は、はい。だいじょうぶ、です」

 そう答える彼女は手櫛で髪を整え、わたしの方を向く。ただ、その視線はわたしの視線と交わることはない。
 なるほど、と心の中で呟く。
 声色、視線、表情から察するに、これは極度の緊張による体調不良のようだ。しかしそれは並大抵のものでなく結構重度のようで、その心労は計り知れない。


55 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 00:48:47.93ZnAtS4a30 (5/6)


「わたしはDクラスの春宮天音です」

「あ、えと、はぁ。わたしは、D、クラスの…早見有紗、です。あ、その、もしかしてわたしの後を追ってきたかんじ、ですか……?」

「あ、いえっ。わたしはただ手を洗いに来ただけです!」

「……でも、ちょうど今は自己紹介の時間では?」

「自己紹介に参加するよりも、手を洗うことが重要だっただけですっ!」

 ほんの少し会話をして分かった。こういった子は自分のせいで他人に迷惑をかけることに対して非常に尾を引きずるタイプだ。具合の悪そうな彼女の後を追って自己紹介を抜け出してきたと知られたときには、早見さんがかなり負担を感じることは想像に固くない。
 わたしは適当に手を洗い、最後にもう一度確認を取る。

「ほんとうに大丈夫ですか?」

「あぁ、はい。わたし、昔からこんなんで…。もう少ししたら戻りますから、春宮さんは先に戻っていてください」

 そう言われては、これ以上の心配は無用だと判断した。余計な存在として認識されるのも避けたい。
 その後、軽く別れの挨拶をしてから教室に戻る。
 案の定、窓側の先頭から始まった自己紹介は廊下側の方へと進んでいた。十時三十分を目前に控えたところで戻ってきたわたしに向けられる視線は『クラスメイトとは馴れ合わない、時間は守る優等生』と語りかけてくるようだった。

【担任教師についてです。
 奇数:生徒に対して思いやりのある先生
 偶数:何事に対しても無気力な先生
 0:天音の血縁者
 下1のコンマ以下1桁で決めます。

 早見有紗:極度の緊張症を持つ少女。
      天音の前の席。
      信頼度:35(クラスメイト、少し好印象)
      有紗「優しそうな人だったな…」
 他のクラスメイトの初期信頼度が25に低下しました。】


56以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/05(日) 00:50:38.324GmmlNyf0 (1/2)




57 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 00:58:34.97ZnAtS4a30 (6/6)

【>>56 2:何事に対しても無気力な先生
 あまり進められませんでしたが、今回はここまでにします。
 安価にご協力いただいた方、読んでいただいた方、ありがとうございました。】


58 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 22:22:22.34ufA6Tnbd0 (1/9)

【再開します。】


59 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 22:22:56.40ufA6Tnbd0 (2/9)

【>>57 2:何事に対しても無気力な先生】

 それから数分後、教室前方の扉が開く。
 出席簿を片手にした男性は、どこか覇気が欠けていた。清潔とは言い難いボサボサの髪、曲がった背中、新年度早々だというのにスーツに皺が寄っているなど、マイナス要素が散見される。
 どう見ても変質者。その共通認識を一年Dクラスの生徒は持つ。

「はぁ…」

 教卓に出席簿を置くなりそう発せられる言葉というか溜め息。わたしはその瞬間、この先の三年間がとても不安になった。言い方は悪いが、こんな先生で大丈夫なのか、と。
 それから項垂れるように先生はもう一度大きく溜め息を吐くと、ようやく顔を上げる。
 ある程度想定はできていたが無精髭が生えている。
 しかし顔は悪くないと思った。きちんと髪を切り、髭を剃って眉を整えれば十分に格好良い青年になりそうだ。見た目から察するに、年齢は三十代手前といったところか。背中が曲がっているせいで年老いて見えるが、肌に年齢が出ている。


60 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 22:23:35.91ufA6Tnbd0 (3/9)

 そんな風に観察をしていると、わたしは先生と目が合う。

「────」

 声が出そうになるのを抑える。
 睨まれた。ただ何か怨念を持って睨まれたのとは異なり、見定めるような視線。たった一瞥されただけで、わたしの全てを見透かすような目だった。
 気味が悪い。その一言に尽きる存在に、わたしは先生に対する認識を要注意人物として確定させる。

「えー、はい。それでは、まず皆さん。ご入学おめでとうございます。私は一年Dクラスの担任になりました伊藤弦と申します。えー、そうですね、この学校にはクラス替えがありません。つまり三年間、私がこのクラスの担任となります。えー、はい。よろしくお願いします」

 見た目通りの、覇気の無い挨拶。終いには「よろしくお願いします」と頭を下げたところで勢い余って教卓に頭をぶつける始末。ゴツン、と音を教室中に響かせると、クラスの反応は二つに分かれる。


61 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 22:24:10.93ufA6Tnbd0 (4/9)


「なに、この人…」

 静かに囁く者。

「せんせー、それってボケですか? ちょっと微妙じゃないっすか?」

 苦笑いを浮かべながら正直に声を上げる者。
 いずれにしても、一連の流れから担任の先生イコール『変な人』というイメージが早速定着したようだ。

「失礼しました。続けます。机の上に資料を置いておきました。皆さん、ありますでしょうか」

 机の上に置かれた大きめの封筒。その中には薄いパンフレットが二部入っていた。先生の合図のもと、パンフレットを取り出す。
 一部目は学校に関する資料、そしてもう一部はケヤキモールという商業施設に関するパンフレットだった。

「えー、ケヤキモールに関するパンフレットは、この後各自でご覧ください。この場では学校に関することをお話します」

 そのまま先生は続ける。


62 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 22:24:37.10ufA6Tnbd0 (5/9)


「まず、この学校には独自のルールがございます。皆さんもご存知の通り、全寮制で、在学中の三年間はこの敷地内から出ることができません。また、外部との連絡を一切取ることができません」

 あまり聞き馴染みが無いが、全国の高校を探せばどこか全寮制の学校もあるだろう。しかし学校の敷地から出られない、外部との連絡を取れないというのはハッキリ言って異常だ。
 勉強の進捗や友人のことを家族に会って話す、電話で話すことを禁じるルール。まるでこの学校で起こるあらゆる事象を口外しないようにするためのルール。
 事前にその話は聞いていたが、いざ改めて説明を受けると違和感しか感じない。

「ですが、ご安心ください。学校から徒歩数分の距離にあるケヤキモールには、あらゆる施設が揃っています。スーパー、服屋、カフェ、レストラン、映画館、カラオケ……あー、クリーニング屋などもです。基本的に手に入らないものはないでしょう。どうしても手に入らないものは学校に申請の上、およそ一週間ほどで通販を利用することもできます。……無いと思いますが」

 そこで「おおっ」と声が上がる。一部の生徒は早速、もう一つのケヤキモールの関するパンフレットを開き、近い席同士で勝手に盛り上がり始める。

「えー、買い物には学生証端末を使用します。皆さん、始業式の前に受け取ったと思います。電源を入れてください」

 始業式の講堂に着く前、出席確認を終えた生徒に対して渡された小型端末。指示があるまでは電源を入れないようにと念押しされていたが、今ようやく電源を入れる。


63 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 22:25:11.30ufA6Tnbd0 (6/9)

 数秒ほどで電源がつき、顔写真と学籍番号、氏名、生年月日、そして『100000PPt』の文字が浮かび上がる。

「この学校ではあらゆる物をポイントで買うことができます。ポイントは毎月1日に振り込まれることになっていて、1ポイント1円の価値になります。えー、入学を果たした皆さんには十万円分のポイントが振り込まれているというわけですね」

 さっきまでは黙って話を聞いていた生徒も、流石にこの説明を受けて初めて動揺を見せる。

「せんせー、これ、まじですか?」

「はい、まじです。皆さんは才能のある若者。入学を果たした時点で、それだけの価値があるということです……と、学校のえらーい人が言っていました」

「……まじっすか」

 ケヤキモールのパンフレットには、有名ブランドの服屋が多数出店されている。一般的な高校生では手が出せないようなブランド品も、この学校に入学を果たした生徒であれば手にする権利はあるということか。
 なんとも胡散臭い。
 一学年あたり百六十人、三学年で四百八十人。毎月各自に十万円分も支払っているとすれば、いくら政府の息がかかった高校とはいえ出費が底知れない。
 本当に毎月一日に十万ポイントが支払われるのか。
 そんな疑問を抱きながら、寮の部屋割り振りや明日以降のスケジュールについて説明を受ける。
 そして十二時前に、解散となる。残念ながら、自己紹介の時間はなかった。しかしそれを幸いとばかりに、早速ケヤキモールへと向かう生徒が多数見受けられる。
 さて、わたしはどうするか。


【イベント安価です。
 1.ケヤキモールへ
 2.寮へ
 3.先生に話しかける
 下1の方、1~3のいずれかを選択してください。】


64以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/05(日) 22:33:23.45eVrP9/570 (1/2)

1


65 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 23:11:47.53ufA6Tnbd0 (7/9)

【>>64
 1.ケヤキモールへ】

 わたしもケヤキモールへ向かうことにした。ポイントについて気になることはあるが、まずはこの目でポイントを使用した購入を経験したいと考えたからだ。
 それに、この敷地内の唯一の娯楽施設にして、娯楽施設の究極系とも言える商業施設に興味を持ったのが大きい。寮に一般的な寝具や調理器具が揃っていると説明を受けたものの、おそらく快適な睡眠や凝った料理を作ろうとすればケヤキモール内の家具屋や家電量販店を利用することになるだろう。
 帰りの支度────は、不要だった。教科書はすべてタブレット端末にインストールされたモノを利用する。原則持ち帰り禁止とされていて、寮の部屋に設置されたパソコンもしくは学生証端末にて予習と復習を推奨されている。明日以降は、ノートのみ持ち帰りすれば良いらしい。
 ひとまず今日のところは、ほぼ手ぶらでケヤキモールへと向かうことができそうだ。
 気が付けばクラスの半数以上が教室を出ていて、数人が未だに信じられないという表情をして学生証端末とにらめっこをしていた。


66 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 23:12:13.30ufA6Tnbd0 (8/9)


 学校から徒歩数分。そんなつもりもなく桜の花を踏み、わたしはケヤキモールの入り口に到着した。入り口付近には案内板が設置されていて、各施設が何階のどのエリアにあるかを示している。
 色々と興味の惹かれるお店はあったが、まずは必要最低限の必需品の購入へと行動を移そう。
 まずは部屋着と外出用の服。着回しが可能なものを選択していく。今は暖かくなり始めた季節だが、今後夏や冬には相応の服を買う必要が出てくる。参考までにコートは二万ポイント近くした。買えなくはないが、そもそも冬ではないというのと、今はまだポイントを使いすぎることは無いと判断する。
 服、日用品、そして入学前にパンフレットだけで見た限りは殺風景な部屋を彩るための雑貨。総じて一万ポイントと少し。学生証端末を利用した決済はイメージ通りタッチで決済のようなものだった。
 一通りの買い物を終え、ケヤキモール内を歩いていると大型家具屋を見つける。
 店頭に置かれたベッドは気品を感じさせ、また快適な睡眠につけそうな魅力を放っている。参考までに値段を確認すると、およそ半年分のポイントが記載されている。とてもじゃないが買えるような金額ではない。一年間節約を続けて、ようやく購入できるかどうか。
 少し羨ましいと思いながら家具屋をスルーして、今度は食品売り場へと向かう。


【ステータス安価です。
 下1のコンマ反転させ、自炊能力に関するステータスを決めます。
00(下手)~99(プロ並)
ゾロ目が出た場合は安価引き直しの権利をストックします。
00は下手でありながら引き直し可能なため、ここで引き直すことも可能です。
99は上手のため引き直す必要がなく、今後のコンマ判定で引き直す権利を使用することが可能です。

また、自炊能力が50以上で基本的に自炊することになり、49以下で惣菜購入や外食が続いて出費が多くなります。
食費については毎月月初に以下のようにポイントが減っていきます。
自炊する:マイナス15000
自炊しない:マイナス20000
成長性高のため、特訓を続ければ途中から自炊が可能にもなります。
現在の所持ポイント:87560ポイント

下1のコンマ反転でお願いします。】


67以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/05(日) 23:24:55.724GmmlNyf0 (2/2)

高く


68 ◆yOpAIxq5hk2021/09/05(日) 23:49:02.97ufA6Tnbd0 (9/9)

【>>67
 72 → 27 (低め)】

 自慢でも自虐でもないが、現状のわたしの料理の腕はお世辞にも高い方とは言えないだろう。なにせほとんど経験が無いからだ。親に甘えきった結果、こうして一人暮らしを始めると困る。
 料理は今後前向きに腕を上げていくとして、まずはお昼ご飯をどうしようかと迷う。食品売り場を歩いていると、お惣菜の良い香りでお腹が空く。お惣菜を購入して寮に戻って食べるか、入学と共に大金を手にしたことに少しばかり羽目を外してレストランで食事をするのも良いだろう。ぱっと見た限り、高級そうなお店は少なく、ファミレスが幾つか入っているようだった。ファミレスであれば少しの出費で済むだろう。
 少し迷った結果、ファミレスへ行くことにした。
 というのも、自炊から逃げた訳でも寮へ戻るのが面倒だと思ったからでもない。他の生徒の動向を伺いたかったのだ。今日は一年から三年までが午前中で授業が終わると聞いている。つまり、他の同級生や上級生のお金の使い方が見れるかもしれないかと考えたからだ。
 そうと決まれば早速食品売り場を出て、エスカレーターでレストラン街のある階へと進む。
 ケヤキモールは四階層になっていて、先ほどまでわたしが買い物をしていたのは一階と二階。三階には飲食街、四階には娯楽施設が入っているらしい。
 エスカレーターで登ること二階層。三階には多数の生徒が往来していた。それこそ本当に一年生から三年生までの生徒が何十人と。
 比較的、一人〇〇に抵抗がないわたしだが、こんな閉鎖された学校で一人ご飯をしているところを見られればすぐに噂が広まる。できれば隅の方の席が空いているファミレスに入りたいなと考えていると、

【イベント安価です。
 下1のコンマ一桁で決めます。
 奇数:「あ。君、一年Dクラスの子だよね」
 偶数:「あれ、もしかして一年生ちゃん?」
 0:怒鳴り声】


69以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/05(日) 23:54:11.85eVrP9/570 (2/2)




70 ◆yOpAIxq5hk2021/09/06(月) 07:09:06.53lLSm5UNm0 (1/1)

【>>69
 5:奇数:「あ。君、一年Dクラスの子だよね」】

 真正面から数人のグループが目についた。
 そのうちの一人は、今朝Dクラスで自己紹介を提案していた男の子だった。早くも打ち解けたクラスメイトとランチのようだ。
 明日以降、本格的な友達づくりを始めるとして、今はまだお互い顔と名前が一致していないはずだ。ここは目的を優先させるためスルーが定石かな。
 心のどこかで少し気にしながらも通り過ぎようとしたとき────。

「あ。君、一年Dクラスの子だよね」

 そう話しかけられて、わたしはドキッとする。

「……あ、気のせい、だったかな?」

 頬を指でかく仕草を見せる彼。

「えっと、そうです。Dクラスの春宮です」

「あぁ、よかった。僕は一色颯。これからDクラスの人たちとご飯食べていくんだけど、もしよかったら春宮さんもどうかな」

 周囲への気配り上手な一色くんの周りには、男の子が二人人、女の子が二人いた。男女比率的にはわたしが入ることで三対三となる。
 ……特に、断る理由もないかな。
 顔と名前が一致しないって理由だけで話しかけるのは否定的だったけど、お互いに名乗った今はその必要もない。
 それに集団の方がお店に入りやすいし、各自の金銭感覚も少しだけ把握できる。また、当初の目的であった上級生の懐事情に関する情報集めも出来そうだ。


【イベント安価です。
 下1の安価で決めます。
 1.グループに混ざってランチ
 2.一人でランチ

 一晩明けてしまいましたが、ここまでにします。
 また今晩、続きをやりたいと思います。】


71以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/06(月) 08:01:14.79lZnO8yRZ0 (1/1)

1


72 ◆yOpAIxq5hk2021/09/06(月) 22:13:40.54bkAqMd9nO (1/4)

【再開します。】


73 ◆yOpAIxq5hk2021/09/06(月) 22:14:20.00bkAqMd9nO (2/4)

【>>71
 1.グループに混ざってランチ】

 わたしは二つ返事で了承した。
 幸い、日用品などはケヤキモールの入り口近くのロッカーに預けていることもあって、一人だけ荷物いっぱいで浮くなんて事態を避けることができた。
 お店探しついでに、簡単に名乗り合う。
 男の子は一色くん、立花くん、篠崎くん。そして女の子は清水さんと木下さん。全員の顔と名前はすぐに覚えることができた。

「あ、ここいいんじゃない?」

 挨拶もそこそこに、清水さんが立ち止まる。視線の先には全国展開しているファミレスの看板があった。比較的田舎と言われるわたしの地元にも二店舗ほどあり、何度か利用したことがある。

「ここでいいかな、みんな」

「さんせー」

 反対意見が無いことを確認すると、率先して一色くんが席を取るため入店し、店員さんと話す。
 間もなくして案内された席は、入り口から近いところだった。少し騒がしいが、この場所ならお店の出入り口とレジが確認できる。わたしの目的を果たすのには適している席だ。


74 ◆yOpAIxq5hk2021/09/06(月) 22:14:48.71bkAqMd9nO (3/4)


「失礼ですが、お客様は新入生の方でしょうか」

 席へ案内してくれた店員さんが、わたし達に問う。

「えぇ、そうです」

 一色くんが答えると、店員さんは「少々お待ちください」とい言い残して席を離れ、そして僅か五秒後にパンフレットを持って戻る。

「当店では、学生証端末にてご注文いただき、向こうのレジで学生証端末をかざしていただくことでお会計が可能です。ただ、この施設の中、すべてがこのような仕組みを導入しているわけではありませんのでご注意ください」

 テーブルに開かれたパンフレットには可愛らしいイラストと文字で、いま店員さんが言った一連の流れが記載されている。さらに、パンフレット裏側にはこの仕組みが導入されている店舗と、口頭でのオーダーの店舗情報が載っていた。
 店員さんにお礼を言い、学生証端末からケヤキモール専用アプリ、さらに店舗詳細情報からこのファミレスを選択する。するとメニュー表が現れる。

「ほんとハイテクってかんじだよねー」

「メニューを見せ合うのがないのはちょっと寂しい気もするけど、これはこれで便利だな。あぁ、そうだ。難癖をつけるとしたら、誰が何を頼んだのかが分からないってところか」

 たしかに、その難癖には一理あった。


75 ◆yOpAIxq5hk2021/09/06(月) 22:15:15.63bkAqMd9nO (4/4)

 しかし冷静に考えると、各自の学生証端末から注文されているため何年何組の誰が注文したのかを店側が一元管理しているのではないだろうか。
 もしかすると「トマトパスタをご注文の春宮様」なんて、名指しで注文品が運ばれてくるかもしれない。
 それからしばらくの間、端末を片目にアレコレ言いながら各自が注文を終える。
 ここで話題はみんなの中学時代の話へ。

「一色くんと篠崎くんってスポーツとかやってたかんじ? なんか体格とかしっかりしてるよね」

「そうだね、一応バスケ部だったよ」

「一色もバスケやってたのか? 俺もやってたぜ」

 木下さんの問いに、一色くんが答えると、篠崎くんも同調する。残り一人の男子、立花くんはどこか居心地が悪そうにしている。
 こういった共通の話題が一部で生まれると、どうしても置いてきぼりにされやすい。少し話の方向性を変える必要がありそうだ。

「そういえばこの学校って部活動とかあるのかな?」

 わたしの発言に、周りは「おいおい」とつっこむ。

「春宮さん、先生の話聞いてなかったかんじ? 明日の放課後、体育館で先輩達が部活動の紹介するって言ってたじゃんよー」

「あれ、そうだっけ。ごめん、ポイントの話とかに夢中になって聞いてなかったかも」

 実際のところわたしがきちんと話を聞いていたかどうかはともかく、少し話題をずらすことに成功した。しかしこのままではバスケ部の話に進展してしまう可能性がある。もう少しずらす必要がありそうだ。


【イベント安価です。
 1.「みんなはどうしてこの学校に入学したの?」
 2.「みんなの趣味とか教えてよ」
 3.その他、聞けること
 下1の方お願いします。】


76以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/06(月) 23:04:13.74EuxfF9+D0 (1/1)




77 ◆yOpAIxq5hk2021/09/07(火) 20:26:23.06oo6gk2NrO (1/4)

【昨晩は続きが出来ず申し訳ありませんでした。
 再開します。】


78 ◆yOpAIxq5hk2021/09/07(火) 20:26:56.92oo6gk2NrO (2/4)

【>>76
 1. 「みんなはどうしてこの学校に入学したの?」】

「ところでさ、みんなはどうしてこの学校に入学したの?」

 ふと、そんなことを聞いてみた。
 すると皆が皆、一瞬考え込むようにして、一つの結論を出す。

「まぁ、やっぱり『特典』目当て……だよねぇ」

 清水さんの発言に、篠崎くんと木下さんが頷く。
 一色くんと立花くんは「それもあるけど…」と考えていることが、表情から読み取れた。

「そっか、そうだよね。どこでも進学・就職できるっていうのは、この学校の特権だよね」

 そう、この学校への進学の話を聞いたとき、わたしはとても驚いた。


79 ◆yOpAIxq5hk2021/09/07(火) 20:27:26.98oo6gk2NrO (3/4)

 それは『どんな学校でも企業でも、フリーパスで入学ないし入社ができる』というもの。例え学力が低くても有名私大に入ることは容易いと聞く。

「まぁ正直、半信半疑だったけどさ、なんか本気にしてもいいっつーか、もう疑う余地がないみたいな?」

 授業料としてお金を払うどころか、お金を貰えるというのは一般的な学校とは大きくかけ離れている。
 そんな常軌を逸した制度があるからこそ、裏口入学や裏口入社といった話も現実味を帯びてくる。
 そんな美味い話の裏には当然、

「────」

 あぁ、ダメだ。また考えすぎている。
 わたしは思考を止める。
 今はただ、この場を楽しんで友達を作らないと。
 あらゆる状況を想定した脳内シミュレートは数ヶ月前に卒業したはずだ。考えすぎると、またああなる。
 冷水で喉を潤すと同時に、熱くなった頭を冷やす。
 さらに胸の内で深呼吸をすると、だいぶ視界がクリアになったのが分かる。

「てかさ、春宮さんって────」

 清水さんが何かを話そうとしたタイミングで、注文した料理が運ばれてきた。案の定、名前を呼ばれて。
 一通りテーブルの上に料理が置かれると、清水さんは話を戻すことなく、幸せそうに食事を始めた。それほど重要な話ではなかったのだろう。


80 ◆yOpAIxq5hk2021/09/07(火) 20:28:04.44oo6gk2NrO (4/4)

 それからしばらく、改めて中学生の頃の話に花を咲かせ、夕方前には解散となった。お会計方法は学生証端末をタッチするだけ。支払金額や残高は学生証端末の画面と、おそらく店員さん側の画面でしか分からないだろう。公の目に留まるような場所に所持ポイントなどが出るはずもなかった。
 もし上級生の所持ポイントが分かるようなことがあれば、そのときはわたしの『仮説』はほぼ正しいと確証を得られただろう。
 確認ができなかった以上、その仮説は仮説に過ぎない。
 しかしわたしは五人と連絡先を交換した。早くもクラスチャットおよびグループチャットに参加させてもらえたことは大きな収穫だろう。素直に嬉しかった。


【所持ポイントマイナス1200
 87560ppt → 86560ppt

 イベント安価です。
 1.本屋
  ポイントを消費して料理の本などが購入できます。ただ買うだけでは意味がなく、今後の自由時間で読むと料理の腕が上がったりします。
 2.寮へ
 3.学校へ
 下1でお願いします。

 それと、文章は読みにくいでしょうか。
 読みにくかった場合は書き方を変えます。】


81以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/07(火) 21:43:32.27vePKuw3rO (1/2)

1


82 ◆yOpAIxq5hk2021/09/07(火) 22:29:48.07MB3dUsC60 (1/3)

【>>81
 1.本屋】

 目的も無しにケヤキモールを徘徊していると、本屋を見つける。店先の案内版を見る限り、一般的な書店と大差ないラインナップが揃えられている。国内と海外向けの旅行誌が用意されているのは、敷地から出られない学生に対してのせめてもの情けなのか、皮肉なのか。
 ともあれ進学に伴い電子書籍へ完全シフトしなくて済むというのは助かる話だった。モノによるが、やはり紙媒体の方が本を読んでいる感がある。
 お気に入りの作家さんの新作が出ていないことは承知の上だが、自然と背表紙に書かれた作家名を目で追ってしまう。

「やっぱりないかぁ」

 つい独り言を吐いてしまう。
 かれこれ三年ほど新作が出ていない。何の告知も無しに出版することも考えられないが、どうしても心のどこかで期待し続けてしまっている。
 わたしはその後しばらく他の作家さんの小説を吟味した後、学術書や趣味に使えそうなコーナーを転々と見て回る。

【コンマ安価です。
 奇数:料理本を購入して寮へ
 偶数:イベント
 安価下のコンマ1桁でお願いします。】


83以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/07(火) 22:47:27.49vePKuw3rO (2/2)

連取りありならこのコンマで
無しなら下で


84以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/07(火) 23:04:35.92sR6jp3oYO (1/1)

ほい


85 ◆yOpAIxq5hk2021/09/07(火) 23:44:10.63MB3dUsC60 (2/3)

【>>83
 9:料理本を購入して寮へ】

 一通り本を見漁って、わたしは料理の基本を学ぶためのノウハウ本を購入した。本当に基礎的な包丁の持ち方や野菜の切り方、それに簡単なレシピが幾つか載った薄い本だ。
 紙袋を片手に、ケヤキモールの入り口へと戻る。
 専用ロッカーに学生証端末をかざし、預けていた荷物を受け取って外に出る。寮までは五分程度。少し重たいが、ちょっとした運動程度にはなるだろう。
 桜の並木路を歩き、一年生用の寮へと着く。
 フロントに立っていた職員の方の指示に従い手続きを済ませる。ルームキーと寮での生活におけるルールブックを戴く。

「ありがとうございます。今日からよろしくお願いします」

 わたしはお礼を言い、日用品や本が入った袋を両手に持ち直し、エレベーターへ。Dクラスの女子の半分は11階らしい。
 偶然誰かと居合わせることもなく、すんなりと目的階に到着する。私の部屋は『1101号室』。エレベーターを出て廊下を一番右まで行ったところにある角部屋だ。また、近くには非常階段がある。
 ルームキーを部屋の扉に通すと、胸の高鳴りを感じる。今日から一人暮らしという高揚感。部屋にどんな物を置こうか想像が膨らむ。


86 ◆yOpAIxq5hk2021/09/07(火) 23:44:46.53MB3dUsC60 (3/3)

 扉を開け、玄関からじっくりと内装を観察した後、鍵を閉めて部屋へ。荷物を置いて早速部屋の中を見て回る。
 勉強机、パソコン、ベッド、冷蔵庫、ケトル、クローゼット、洗濯機、バスルーム。
 一通り見て周り、不足している物を思い浮かべる。

「一通りの調理器具と、電子レンジ……は、いらないかなぁ」

 寝て起きるだけならこのままでも問題なさそうだが、せっかくなら料理も出来るようになりたい。確かケヤキモールの一階にホームセンターがあったはず。明日にでも赴いて、購入を検討する必要がある。
 それからわたしは買ってきたものを袋から出し、とりあえず買い立ての部屋着に着替えることにした。本来なら一度洗濯をした方が良いかもしれないが、一番最初は仕方がない。

「と、よしっ」

 数分ほどでやることを終え、わたしはベッドの上で一息つく。
 今日はまずまずの一日だったのではないだろうか。
 色々と気になることが多く、つい考え込んでしまうところもあったが、何よりクラスメイトと連絡先を交換できたのは大きい。今もこうしているうちに、わたしの携帯は小刻みに震えている。クラスチャットがそこそこ盛り上がっているようだ。
 わたしは携帯をベッドの上に置き、窓際へと移動する。真っ白なカーテンを開けると、夕焼けに染まる学校が目についた。

『高度育成高等学校』

 その学校は、果たして入学できた時点で人生勝ち組を約束されるのか。

「……」

 それとも、と考えたところで思考を止める。
 結局、高校生となった今日も昔のわたしと似たような考えをずっとしていた。打算的な思考。それは捨てたはずなのに、無意識のうちに絡みついてきている。

「……ダメダメ、そんなの」

 損得勘定なしで、わたしはわたしの人生を歩む。
 欲を言えば、誰からも好かれる。
 そんな生徒を目指して。
 一歩一歩、確実にわたしの力をクラスへ貢献できるように頑張ろう。


【イベント安価です。
 7・0:外出
 その他:翌日学校
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


87以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/08(水) 00:14:07.30BHo4RfVYO (1/1)




88 ◆yOpAIxq5hk2021/09/08(水) 07:08:23.58CEGUFkD4O (1/2)

【>>87
 0:外出】

 改めて学校とケヤキモールのパンフレット、そして寮生活におけるルールを確認していると時刻は二十時を回っていた。
 ルール上、深夜帯に男子が女子の部屋のフロアに居ることは原則禁止されているものの、コンビニなどの外出は制限されていない。
 各階のエレベータードア付近、一階のフロント、寮出入り口、徒歩三分程度のコンビニ付近には監視カメラがある。学校の敷地内であることも考慮すると、まず滅多なことは起こらないだろう。深夜帯に高校生が一人で外出しても然程危険はないと思われる。

「よしっ」

 わたしはコンビニへ行くことにした。
 ケヤキモールは一部を除いて二十時閉館。スーパーもその内の一つだ。コンビニの方が高くつくのは想像に難くないが、今後もし部活動に所属する場合は放課後の練習などでスーパーの営業時間に間に合わない可能性がある。
 そういったやむを得ない場合にコンビニを利用する機会も少なくないだろう。事前にある程度の物価を知っておけば、週末に食品を買い込むこともできる。
 軽装に着替えて部屋を出る。エレベーターまで若干距離はあるものの、角部屋だったのはなんとなく得した気分だ。


89 ◆yOpAIxq5hk2021/09/08(水) 07:09:16.94CEGUFkD4O (2/2)

 程なくしてエレベーターに乗り込み、一階へ。
 フロントのお姉さんはいなかった。しかしその分、至るところに設置された監視カメラが目についた。
 特に気にせず外へ出るとひんやりとした風に包まれる。日中は暖かかったとはいえ、夜は冷える。コンビニついでの散歩も程々に、わたしは歩き始める。
 道中、数人の同級生と思しき人とすれ違う。
 特に話しかけることも話しかけられることもなく、目的地であるコンビニへと辿り着く。コンビニの前には部活動終わりの上級生が数人屯していた。
 コンビニの中は内装も販売品も地元のものとほぼ変わりなかった。強いて言えば、少し日用品の幅が広いことか。ケヤキモールの営業時間に間に合わなかった生徒のため準備されているものだろう。
 売られている物、値段を見て回る。
 想定通りの値段に近しい。割高になることも学割が効いていることもないようだった」

「────」

 しかし一点、気になるものを見つける。
 コンビニの奥の方に置かれた、商品が入ったカゴ。
 そこには貼り紙でこう書いてある。

『このワゴンの商品 無料 一ヶ月 3つまで』

 賞味期限が近そうな食品の他、洗剤や消臭スプレーなどが置かれている。食品はともかく、洗剤や消臭スプレーはコンビニの中に普通に売られている。
 わざわざ同じ商品を同じコンビニの中で有料と無料に区分けしているのは何か理由があるのか。
 このことは気に留めておく程度とし、特に欲しいものも無かったためコンビニを出る。収穫品はゼロだったが、二つ知ることができた。
 一つ目は、コンビニはやはりスーパーよりも高い。
 二つ目は、無料配布の商品。
 今後のコンビニ生活には十分に役立つ情報だろう。

【イベント安価です。
 4・6:「一年Dクラスの春宮だな」
 その他:翌日
 安価下のコンマ一桁でお願いします。
 
 続きは今晩にします。ありがとうございました。
 文章が見づらいなどありましたら書き方を変えます。】


90以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/08(水) 07:37:12.26yoLBrh0C0 (1/1)




91以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/08(水) 22:47:37.09gI0bR3+/o (1/1)

今日はあるのかな


92 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 00:45:43.08gvlgOaLx0 (1/10)

【かなり遅くなりましたが、再開します。
 続きは今晩にしたいと考えています。】


93 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 00:46:18.15gvlgOaLx0 (2/10)

【>>90
 6:「一年Dクラスの春宮だな」 】

 思いがけない収穫を頭の引き出しに詰め込んでコンビニを出ようとしたところで、わたしは立ち止まる。
 先ほどまでコンビニの前で屯していた上級生の数人が店内へ視線を向けていたからだ。
 それに、その内の一人は携帯で通話しているようだった。
 しばらくドア越しに様子を伺っていると、コンビニのドアが開く。上級生の一人がわたしの目の前へ。

「一年Dクラスの春宮だな? 春宮だよな」

「は、はい。そうですけど…」

 身長は百八十センチに届くかという男子生徒に見下ろされ、言葉が詰まる。やや上擦った声色で応答すると、彼は外で通話をしている生徒へアイコンタクトを送った。

「少しいいか? 時間は取らせない。いいよな」

 独特の言い回しをする先輩に連れられて店の外へ。
 店外にも監視カメラが設置されているため、大ごとにはならないだろう。ならないといいな。


94 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 00:46:43.35gvlgOaLx0 (3/10)

 少し不安な気持ちを抱えながら、聞いてみる。

「あの、なにかご用でしょうか」

「お前に会いたがってる人がいる。ここで待ってな」

 状況から察するに、件の人物は上級生で間違いない。さすがにたった一日で上級生を顎でつかうような一年生は現れないだろう。
 それから何度か小まめに連絡を取る先輩方を横目に、わたしは携帯を弄る。と言ってもクラスチャットに目を通すだけ。為人は文章に如実に現れる。まだ顔と名前が一致しているわけではないが、一部生徒の名前に対して、どういう人物かのイメージを持つことができた。
 そんなことをして店先で待つこと十分。
 学校の方から男女一組の生徒が姿を見せる。
 どちらも制服で、手には茶封筒を抱えている。
 わたしはその内の一人、男子生徒の方を知っていた。

「おう、待たせたな。……あ? ただ待たせてたのか?」

「は、はい。待ってろと、言われていたので…」

「馬鹿野郎。可愛い後輩ちゃんにコーヒーの一本くらい奢ってやるのが先輩ってもんだろ。なぁ?」

 男性の方────半日前、入学式で生徒会長の挨拶を務めていた人物────確か名前は、錦山暁人。やや粗暴な言動のまま、わたしに声をかけてきた先輩を小突く。


95 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 00:47:10.23gvlgOaLx0 (4/10)

 一方でわたしは反応に困った。「なぁ?」と言われても、同意はしにくい。

「お前らはもう行っていいぞ。乙葉、ちょっと離れたところで待ってろ。あー、そうだ。この前、遣いに行かせたときのポイントが余ってたよな? それでコーヒー買ってきてくれ。なぁ、アイスとホットどっちが好みだ?」

「……ホットでお願いします」

「だそうだ。俺はアイスな」

 マイペースに話す生徒会長の発言に、乙葉と呼ばれた女子生徒は深妙な面持ちで会長へ近付く。

「もう残ってないけど」

「……は? いや、あの時のポイントが残ってるとかどうでも良くてさ、とりあえず立て替えてくれよ。後で倍にして返すからさ」

「いや、だからもうポイント無いんだって」

 その発言に、会長は額に手を当てて空を仰ぐ。
 しばらく訪れる静寂の間。
 それを破ったのは、呆れたような表情をする会長だった。

「お前、三年生になったらちゃんと節約するって言ったじゃん。まだ四月の一週目だぜ? 一週間も経たずに今月のポイント全部使ったのか?」

「うん、そうだけど」

「……もういいや。ほら、端末出せ」

 手慣れた手つきでお互いが学生証端末を操作する。
 なるほど、ああやってポイントを他人に与えることもできるのか。目の前のケースは特殊のようだが、今後何かの役に立つかもしれない。覚えておこう。


96 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 00:47:41.92gvlgOaLx0 (5/10)

 乙葉先輩は満面の笑みでコンビニへと消える。
 そして数分後、ホットコーヒーとコーヒー味のアイスを買ってきた。わたしは理解が追いつかず、ホットコーヒーを受け取るのを躊躇う。

「どうしたんだよ天音。あぁこれか? アイスコーヒーつっても、俺はこのコーヒー味のアイスが好きなんだよ。あいつが間違ってるわけでも、嫌がらせをしようとしたわけでもねぇ。むしろ飲み物の方を買ってきたら叱っていたところだ」

 その言葉を聞いて、安心する。
 仲の良い二人だからこそ成り立つお遣いのようだ。
 わたしはホットコーヒーを受け取って会長と乙葉先輩の両方にお礼を言う。乙葉先輩が「いいのいいの、コイツ、結構貯め込んでるから」と言うと、お菓子とジュースが入った袋を持ってわたし達から距離を取る。
 アイスの袋を開けて早速齧り付いた会長はわたしと目を合わせることなく話し始める。

「平塚邦彦。知ってるよな?」

 ドクン、とわたしの心臓が大きく跳ねるのが分かった。決して表情には出ていないと思うが、そんなことよりもどうして会長の口からその名前が出たのかが気になる。

「中三の頃、あいつが俺の中学に転校してきた。たまたま部活動で知り合って、二ヶ月程度だったがよく話をしてくれた。好きなこと、嫌いなこと、家族のこと、それから幼馴染の春宮天音という少女のことを」

「……」


97 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 00:48:12.12gvlgOaLx0 (6/10)


 わたしは俯いて話を聞く。

「神童って呼ばれていたみたいだな」

「……そんなんじゃ、ありません」

「小学生とはいえテストでは常に満点、誰よりも早くチャリンコに乗れて、逆上がりも、縄跳びも出来たそうじゃねぇか。文武両道、完全無欠の優等生って聞いたぜ」

 俯いたところで会長の話が途切れることはない。
 わたしの過去を穿り出すように淡々と告げる。

「ただ頭が良い奴だけならいくらでも居る。ただ身体を動かす事が得意なやつならいくらでもいる。ただお前は、随分と頭がキレるらしいな。大人が考えた謎解きを数秒で解いて学校の行事を潰したとか────」

「……」

「いや、悪りぃ。悪気はないんだ。俺は面白いと思ったぜ。難しい問題を考えられない大人が悪いってな。まぁ難しくしすぎても他の子供が解けないわけだが」

 そんなこともあった。
 いつしか記憶から抹消しようとしていた記憶。

「まぁ何はともあれ、お前はスゴイ奴らしいな。そんなお前がこの学校に入学するって聞いて、俺はつい一晩かけて笑っちまった。運命なんてこれっぽっちも信じていなかったが、噂の天才と会うことが出来たんだからな」

「……話はそれだけでしょうか」

「いいや、ここからが本題だ。邦彦から言伝を預かっている」

 その言葉にわたしは顔を上げる。


98 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 00:48:43.51gvlgOaLx0 (7/10)

 喧嘩別れしてしまった彼からの伝言。
 それはやはり、わたしを責めることだろうか。
 決して逃れることのできない嫌な記憶が蘇る。

「あー、いいか? こんな風に代弁するってのは、なかなか気恥ずかしいが、仕方ねぇ。男の約束だ」

 会長は頬を指で掻くようにした後、こう続ける。

「あの時はごめん。僕が間違っていた。天音ちゃんはクラスの赤点ラインを下げるためにわざとミスしてくれていたんだね。僕は実力を出さない君に対して、色々と暴言を吐いてしまった。本当にごめん────ってな。多分、一言一句間違ってねぇ」

「……っ」

 胸が張り裂けそう、とはよく言ったものだ。
 まさにそれを体感している。
 どんな意図があるにしても実力を出さず、まずまずな点数を取り続けるのは一部からしてみれば嫌味と認識されても無理はない。
 ただそれだけならまだ良かったかもしれない。
 しかしわたしはその後、言い返してしまった。
 そもそもこんな簡単なテストで満点を取れない方がおかしい、と。
 その言葉の痛さ、重さを理解したときには、すべてが手遅れだった。程なくして邦彦くんは地元を離れた。それから何人もの友人がわたしと接することを辞め、わたしは一人ぼっちになる。


99 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 00:49:10.52gvlgOaLx0 (8/10)

 その後は、単純だった。
 わたしのことを知っている人が少ない場所で、とにかく他人に好かれるよう努力をした。幸い、物事を分析することが得意だったわたしが他人を気遣い、そして好かれるようになるのは簡単なことだった。
 いつしか形成された春宮天音という少女の偶像。

 明るく朗らかで前向き、頑張り屋で好奇心旺盛、様々なことに興味を示して習得しようとする。周りから頼られる事が好きな少女。

 それがわたしが思い描くわたしという人だった。
 演じる。演じ続ける。そして。
 いつしか昔の自分を思い出せなくなる。
 本来のわたしとは、なんだったのか。
 そんな喪失感から逃れるため、中学卒業を機に新たな自分形成のため、わたしはその考えを改めることにした。周囲を分析せず、思うように行動する。打算的じゃない、感情的な自分を作り出すために。
 ところが高校生活初日にして分析を繰り返し、この学校の仕組みを汲み取ろうとし、何気ない日常の中でクラスメイトの性格を把握しようとしている。

「────」

 もう変われない。
 わたしが知るわたしは、打算的な思考をする人間であること。何事にも損益をもとに行動する狡いヤツ。
 胸の奥で溜め息を吐く。
 ともあれ、今は会長の前だ。これ以上なにも喋らず黙っているのは迷惑になる。

「ありがとうございました。邦彦くんの言伝はしっかりと聞きました」

「そうかい。ならいいんだけどよ」

 話が終わりそうな気配を感じ取った乙葉先輩が近付いてくる。手に持つジュースは早くも空になりそうだった。


100 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 00:49:55.33gvlgOaLx0 (9/10)


「おわった感じ?」

「ま、そんなとこだ。じゃあな天音。何かあったら相談に乗ってやるよ。年下ながら、邦彦には世話になったからな。その恩をお前に返してやる」

 頼もしい言葉を残して立ち去る背中へ頭を下げる。深々と、五秒、十秒、三十秒、一分と続く。
 ぐちゃぐちゃだった頭の中がなんとなく整理される頃にわたしが顔を上げると、そこには乙葉先輩が居た。
 会長は少し遠くでこちらを伺っている。
 それにしても近い。もう少しで顔と顔が触れる距離だ。

「あの、乙葉先輩?」

「んー、肌綺麗だね。化粧水なに使ってるの? いや、やっぱり年齢の問題かな。まだ十六歳だもんね。あれ、十五歳と数ヶ月だっけ? まぁいいや」

 マイペースに話す乙葉先輩。

「なんであれ、天音ちゃんはまだまだ若いよ。あっくんは君のことを随分と認めているようだけど、わたしからしてみれば君なんてウチの近所に居た子供よりもずっと子供だよ。自分が分かってない。生まれたての赤ちゃんでも君よりは────ん、それは違うか」

 意外と核心を突いてくる先輩にわたしは動揺する。

「新しい環境で、新しい友達と本来の自分を探してみる、あるいは形成してみるっていうのも高校生活の醍醐味なんじゃないかな。幸い、この学校は全寮制で一人暮らしだから、自分を見つめる機会は多いと思う。例えば、料理が出来ない自分をどうにかしていくとかね」

「────はい。ありがとうございます、先輩」

「お、いい顔になったね。うんうん、お姉さん的には、そっちの顔の方がずっと好きだなー」

「先輩のおかげで自分を見つけられそうです。大真面目に自分を見失っていたので助かりました」

「何かあればわたしとあっくんを頼ってねっ! わたしは相談係、あっくんはポイント係だから」



101 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 00:50:28.30gvlgOaLx0 (10/10)


 わたしは乙葉先輩と連絡先を交換する。
 ついでに、乙葉先輩経由で錦山会長の連絡先も勝手に教えてもらった。
 何かあれば、頼れるかもしれない。

「おやすみ、天音ちゃん」

「おやすみなさい、乙葉先輩」

 こうしてわたしと錦山会長、乙葉先輩は別れる。
 コンビニの前に残ったわたしは、深呼吸をする。

「……よしっ!」

 わたしは寮への道を辿る。
 その足に迷いはなく、春宮天音という女子生徒のイチから始まる人格形成の第一歩のように真っ直ぐだったと思う。


【長くなりましたがこれで高校生活一日が終了です。
 最初から>>31で戴いた性格にしたかったのですが、ステータスが高すぎる都合上、分析しすぎる描写が増えてしまいました。
 今後、様々な試験や友人と交流して>>31で戴いた性格に回帰できるよう人格形成していきたいと考えています。
 この後は小刻みに行動をしていきます。
 続きは今晩にします。
 遅くなりすみませんでした。お疲れ様でした。

 所持ポイント:86560ppt
 早見有紗:信頼度35(クラスメイト、少し好印象)
 一色颯 :信頼度40(クラスメイト、話しやすい)
 立花  :信頼度38 (クラスメイト、話しやすい)
 篠崎  :信頼度38 (クラスメイト、話しやすい)
 清水  :信頼度38 (クラスメイト、話しやすい)
 木下  :信頼度38 (クラスメイト、話しやすい)
 錦山暁人:信頼度50(生徒会長、かなり信頼できる)
 奄美乙葉:信頼度50(先輩、かなり信頼できる)】


102 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 22:29:29.74Sjq7SYBPO (1/5)

【再開します。】


103 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 22:29:56.23Sjq7SYBPO (2/5)

 高度育成高等学校に入学して二日目。
 朝のホームルームでは、今日の放課後に体育館で部活動説明会が行われる旨の連絡を受ける。
 説明会そのものの参加は任意、さらに入部も任意。
 つまり興味本位で立ち寄っても強制的に加入という運びにはならないようだ。
 先生曰く、部活動に所属している生徒はおよそ半数。さらにその中から籍を置いているだけで練習に参加しない幽霊部員を除くと、四割程度になるらしい。

「どうする? 行ってみる?」

「まぁ行くだけならいいんじゃない?」

「でもさー、昨日行けなかったカフェ、席埋まっちゃいそうじゃない?」

「だねー。んー、じゃあ参加しない方向で」

 一人の女子生徒がカフェ優先宣言をすると、次々に同意の声が上がる。
 その一方で教室の隅の方、特に男子生徒が固まっているエリアでは前向きな意見が上がる。高校でもサッカー、せっかくなら弓道をやってみたい、男は黙ってバスケだろ、など。

「えー、それではホームルームを終わります。それでは皆さん、この後から授業になりますので、えー、先生の言うことを聞くようにー、お願いしますー」

 やはり覇気の無い伊藤先生がホームルームの終わりを宣言すると同時に、わたしの携帯が震える。
 昨日一色くんに招待を受けたグループチャットだった。内容は部活動説明会に参加するかどうか。
 少し迷った後、わたしは午前中には決めるとメッセージを入れて、授業に備えて携帯の電源を切る。


【イベント安価です。
 奇数:「春宮さん、食堂行かない?」
 偶数:「早見さん、よかったら食堂行かない?」
 0:「春宮天音はいるか?」
 下1のコンマ1桁でお願いします】


104以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/09(木) 22:36:50.25WhoOBbsW0 (1/1)




105 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 23:40:40.48Sjq7SYBPO (3/5)

【>>104
 5:「春宮さん、食堂行かない?」】

 午前中の授業が終わった。
 そのすべての授業でタブレットを利用した授業の取り進め方、また先生個人の授業方針についての説明が大半を占めていて、実際の講義は明日からになりそうだった。
 一部、そんな説明だけの授業が退屈だと言わんばかりに眠そうにする生徒も見受けられた。
 そんなこんなで訪れたお昼休み。
 わたしはお弁当を持ってきていない。
 今朝コンビニに寄ってくることもできたが、せっかくなら学校の売店か学食を利用してみたいと考えていたため、あえてそうしなかった。
 昨日少しだけ話をした前の席の女の子、早見さんを誘おうと思ったが机の上に手作りのお弁当を広げていた。わざわざ学食で一緒に食べようとは言い出しづらく、素早く売店で買って戻ってこようと考えた。
 席を立ち、教室の扉へと向かう途中、

「あ、春宮さんも学食いくかんじ? 一緒に行こうよ」

 昨日ランチをした清水さんがそう誘ってくれた。
 一瞬だけ早見さんとのランチのため断ろうとも考えたが、その誘いを無下にすることは出来なかった。
 付け加えると、早見さんの席を覗くともうお弁当箱を片付け始めていた。もともと量が少なかったのか、食べるスピードが早いのか。それは明日以降、一緒にお昼ご飯を食べれば分かることだろう。

「うん、行こっか」

 わたしは頷き、清水さんと教室を出る。すると昨日のメンバーが一色くん以外は揃っていた。

「一色くんは他の人とランチだってさ」

「あ、そうなんだ」

 どうやら一色くんが所属しているグループは幾つかあるらしく、満遍なくクラスメイトと仲良くなりたいと考えているようだ。
 わたしもそうなりたいと考えながら、清水さんたちと肩を並べて食堂への道を歩む。


106 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 23:41:15.68Sjq7SYBPO (4/5)


◇◇◇

 食堂はおよそ三百人程度が余裕を持って座ることのできる席が用意されていた。
 お昼休みが始まって十分ほど。意外にも席は半分以上は空いているようだった。
 食堂前の食券機周辺で昼食を吟味する。

「ねぇ、あのスーパーデラックスウルトラ定食ってやつ、すごくない?」

 木下さんの視線を追うと、確かにそういった名称のメニューがあった。
 写真を見る限り、とんかつ、唐揚げ、牛肉コロッケ、カニクリームコロッケ、ハムカツ、海老とかぼちゃの天ぷら、それに三人前ほどはありそうな炒飯。
 とんでもない物が売られていた。
 こんなものを注文する人がいるのか? と様子を伺っていると、いわゆるノリで注文する生徒が極稀にいるらしい。現に目の前で何人かが友達同士のノリで購入している姿が確認できた。

「……あれはないなぁ」

 わたしが呟くと、他のみんなも同意したように頷く。


107 ◆yOpAIxq5hk2021/09/09(木) 23:41:45.29Sjq7SYBPO (5/5)

 それからは頭を切り替え、自分が何を食べたいのかを探る。日替わりランチの中も数種類あり、なかなか決め手に欠ける。ここはいっそのこと前に並んだ人が注文したものと同じものを注文する手を考える。
 スーパーデラックスウルトラ定食を直前で注文されたときは和食の日替わりランチBにしよう。
 そう考えながら食券機に並ぶ。
 食券機は全部で三台。ほんの数十秒で自分の前の番がやってくる。さて、わたしの本日の昼食は、っと。

「……」

 食券機の一番右下のボタン。それは『山菜定食』。
 並んでいる人を遠目に眺めていたときから薄々その存在には気付いていたが、何か裏があるんじゃないかと疑ってかかっていた。
 山菜定食は無償で食べることのできる定食。
 写真が無いため量の想像はつかないが、ひとつだけ確かなことがある。それは注文した人の雰囲気。
 どこか悲壮なオーラを漂わせた彼らは、溜め息を吐くようにして山菜定食のボタンを押していた。
 昨晩のコンビニで見つけた無償の品々、そして目の前にある無償の定食。これらから考えられることはかなり限定的となる。
 ともあれわたしの昼食は決定した。

「え、春宮さん、本当にそれ?」

「うん。なんとなくこれにしようかなって」

「……まさか春宮さんが初日でポイントを使い果たすなんて思ってなかったよ」

「違うからっ。ほんの興味本位だからね?」

 わたしが選んだのはスーパーデラックスウルトラ定食────もちろんそれではなく、山菜定食。
 それから数分後、わたしは受付で定食を受け取り、席に着く。改めて定食を眺めるが、特に不可思議なところはない。良く炒められた山菜に、決して少なくない白米とお味噌汁、そして少量の漬物。これだけあれば十分だと思わせるほど良く出来ていた。
 周りの視線はやや冷たいものだったが、わたしはポイントを消費することなくお昼を終える。
 味の感想は、リピートしたいと思えるほどだった。


【イベント安価です。
 奇数:部活動説明会
 偶数:「春宮、少しいいか」
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


108以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/09(木) 23:48:21.129OLtblpD0 (1/1)




109 ◆yOpAIxq5hk2021/09/10(金) 07:45:08.98DUud2CeQ0 (1/3)

【>>108
 2:「春宮、少しいいか」】

 午後の授業も授業方針に関する説明で終わった。
 やや退屈だと感じながらも、タブレットを用いた授業には興味がある。明日以降の授業を楽しみにしながら迎えた帰りのホームルーム。
 先生からはほんの数言だけ、簡潔に締め括られる。

「それではこの後、あそこでアレをするみたいなので、ご興味がある方は行かれてみてはいかがでしょうか。それじゃあ今日は終わります。おつかれさまでしたー。さようならー」

 朝のホームルームを聞き逃していれば、今の発言の内容を一切理解することができなかっただろう。
 適当な先生だなぁ。そんなことを思いながら帰り支度────ほぼ使用しなかったノートを詰めるだけの作業────をして、席を立ち上がろうとしたとき、

「春宮、少しいいか」

 隣の席の男の子からそう話しかけられる。
 確か名前は一之宮重孝。
 黒髪の短髪に眼鏡、知的な印象の男子生徒だ。
 生活態度そのものはかなり真面目で、昨日のポイント配布時や今朝のホームルームでは静観を貫き、今朝わたしが登校すると彼は一人で自習をしていた。


110 ◆yOpAIxq5hk2021/09/10(金) 07:45:34.73DUud2CeQ0 (2/3)

 そんな彼が何か用があるらしく、わたしは頷く。

「うん、大丈夫だよ」

「悪いな。手短に済ます」

 眼鏡の位置を直す動きを見せた後、彼は話す。

「人違いだったら申し訳ないんだが、去年の夏に全国模試を受けなかったか?」

「ん、あぁ、うん。受けたよ」

 中学校の担任の先生に勧められて受験したのを覚えている。半ば強制的な空気もあり、わたしは受験した。

「……やはりそうか。あの時は見事だった。俺は数学の最後の問題だけ解けなかった」

「相似の問題、だっけ」

「そうだ。ちょうど授業で習っている最中の模試で出題された、というのは言い訳にしかならないか。現に春宮は全教科で満点を取ったんだからな」

「わたしの学校では習い終わった後だったからだよ」

 一年間を通して学習する範囲こそ定められているものの、授業の進行度は学校によって、担当する教師によって異なる。中には生徒が真面目に授業を受けず、なかなか進められないというクラスもあるだろう。


111 ◆yOpAIxq5hk2021/09/10(金) 07:46:45.95DUud2CeQ0 (3/3)

 そんな中であの模試の最後に出た問題は、ちょうどわたしのクラスで学習が終わった直後だった。

 『もともと知っていた』というのは抜きにしても、単純に習い終わっているかどうかは試験の明暗を大きく分ける。

 そして彼の存在を改めて認識する。
 一之宮重孝。そうだ。
 全国模試で二位が同率数名いた中の一人。
 奇しくもあの試験で僅差に名前を連ねていた生徒。

「もしよければ今度一緒に勉強をしないか?」

「わたしと?」

「あぁ。他人の勉強方法を取り入れてみるのも自分のためと判断した。もちろん嫌なら構わないし、そうだな、茶を飲みながらでも良い。費用は俺が出そう」

 思いがけない申し出に、わたしは一秒という短い時間の中で決断する。迷うまでもない。

「もちろんいいよ。わたしも一之宮くんの勉強方法を知りたいし。ただ、対等な関係で互いにポイントの損得を考えない上でなら、という条件だけど」

 カフェでの勉強などの時、奢ることは無し。
 それがわたしの提示する条件だった。
 あくまでも対等な関係を持ち、互いに高め合う。その先に生まれるのは信頼関係そのものだろう。

「なるほど、了解した。それで構わない」

 ふっと笑みを見せると、彼は右手を差し出す。
 わたしはその手を取り、協力関係を結んだ。


【イベント安価です。
 1.部活動説明会へ
 2.早見有紗を誘ってケヤキモールへ
 3.一之宮重孝とケヤキモール(カフェ)へ
 4.寮へ
 下1でお願いします。

 一晩明けてしまいましたが、一旦ここまでにします。
 今晩は21時頃に開始します。】


112以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/10(金) 11:31:15.40xe2yVbsy0 (1/1)

2


113 ◆yOpAIxq5hk2021/09/10(金) 21:06:54.86i4SyU8OG0 (1/5)

【再開します。】


114 ◆yOpAIxq5hk2021/09/10(金) 21:07:21.15i4SyU8OG0 (2/5)

【>>112
 2.早見有紗を誘ってケヤキモールへ】

 思いがけない巡り合わせを果たしたわたしは、一之宮くんの後ろ姿を目で追った後、前方の席の子の様子を伺う。

 思いがけない巡り合わせを果たしたわたしたちは、今日のところは件の勉強会開催を見送る方針に定めた。その理由は、今すぐやる必要がないから。単純に入学早々、お互い身の回りを整えるため忙しいだろうと判断した。
 教室を出て行く一之宮くんを見送った後、わたしは前の席に座って帰りの支度をする早見さんに話しかける。

「早見さんは部活動説明会に行くの?」

 背後から声をかけても驚かせるだけだと思い、前の方へ回り込んだが結果は変わらなかった。ビクッと肩を震わせてわたしの方を恐る恐る見る。
 昨日ほんの少し話しただけの関係。


115 ◆yOpAIxq5hk2021/09/10(金) 21:07:53.50i4SyU8OG0 (3/5)

undefined


116 ◆yOpAIxq5hk2021/09/10(金) 21:08:42.83i4SyU8OG0 (4/5)

【おそらく文字数超過です。】

 とはいえ同じクラスで席も近く、一応同じ性別だ。そこまで警戒されていないと踏んでいたが、この様子では極度の人見知りらしい。自分以外の三十九人の前で自己紹介するのはともかく、こうやって喋ることにも抵抗感を示されると悪いことをした気持ちになる。

「ぁ……えっと、わたしは、行かない、です」

 俯き気味に、かなり小さい声で話す。

「そうなんだ。わたしも行かないつもりでね、もしよかったらなんだけど────」

 ここでようやく早見さんの目とわたしの目が交錯する。彼女は怯えているようだった。何に怯えているのかは分からないが、環境が大きく変わったのもその一因だろう。親元を離れての一人寮暮らし。そこまで大袈裟ではないものの、物寂しさを感じることはある。
 だからこそ、ここで「なんでもない。またね」と言ってしまえば、しばらく彼女は救われない。可能であれば「一緒に帰ろう」とか「寄り道して行こう」と言ってくれると嬉しいが、今の段階でそれを求めるのは酷だろう。

「もしよかったらさ、ケヤキモールに一緒に行かない? 昨日買い忘れた物があって……あぁ、もちろん、早見さんの買い物にも付き合うから」

「……わたしと、ですか?」

「うん。ダメ、かな?」

「いえ……はい、わたしは特に買う物もないので、春宮さんのお買い物に付き添います」

 多少の難色を見せるかと思ったが、思いのほか真っ直ぐに良い方向へ話が進んだ。これが大人数での買い物となればまた話は変わってくるかもしれないが、今日のところは二人で出掛けることで様子を見よう。


117 ◆yOpAIxq5hk2021/09/10(金) 21:09:12.80i4SyU8OG0 (5/5)


「うん、ありがとう。じゃあ早速、これからでも大丈夫かな? 一回、寮に戻った方がいい?」

「できればこのまま、でもよろしいですか?」

「もちろんだよ。そっちの方が楽だからね」

 わたしは軽い鞄を持ち、早見さんと歩き出す。
 早くも周囲ではグループが出来始めている。
 高校生活最初の一週間が卒業までの三年間を左右すると言っても過言ではない。出来るだけ正攻法で彼女の心の壁を取り除く、あるいは心に刺さった針を抜かなければ手遅れになることは容易に想像がつく。

 それにしても、本当にすんなりと快諾してくれた。
 極度の人見知りというのは、わたしの思い込みだったのだろうか。それとも、他人すべてに怯えているわけではないのか。
 それは、そう遠くない未来に分かることだろう。

【イベント安価です。
 1.映画館
 2.カフェ
 3.ファミレス

 また、コンマ一桁でも判定を行います。
 4・8・0:追加イベント
 下1でお願いします。】


118以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/10(金) 21:32:30.58bsz9PU1M0 (1/1)

2


119 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:10:44.01OCYa+xYb0 (1/11)

【>>118
 2.カフェ
 コンマ1桁が8のためイベント発生です。】

 買い忘れたものと言っても、学校で使用する文房具を少々。ポイントとしては七百ポイント、時間にして十五分程度で済んだ。
 本屋と一体化された文房具屋を出て、人通りの少ないところで改めてお礼を言う。

「今日はありがとう。助かったよ」

「わたしは特に、何もしていませんから……」

 文房具屋では常に絶妙な距離を保っていて、傍から見ればそれぞれが別の目的を持っての来店そのものだっただろう。わたしと早見さんの間には絶対的な見えない壁が存在する。それがやや厚いと言ったところか。

「もし良かったらお礼をさせて貰えないかな。何もしていくても、わたしとしてはすごく助かった訳だし、これくらいはさせて貰えると嬉しいな。あんまり高いものはアレだけど、お茶くらいなら是非」

 二度目の接触としてはまずまず話せた方だと思うが、このまま手放してしまうのは少し勿体ない。


120 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:11:12.87OCYa+xYb0 (2/11)

 もし明日、早見さんとの時間を作れなかったら当初のスケジュールが崩れる。ここは彼女と二人きりの時間を作るべきだろうと判断した。

「そんな、お礼なんて…」

 わたしと目が合うと、すぐに逸らされる。
 とはいえ言葉で強く否定されたわけでもない。ここはもう少しだけ引っ張れば引き込めそうだった。

「いいからいいから。ね、どこのカフェにする?」

 やや強引に手を取り、歩き始める。
 一回フロアには幾つかのカフェが入っており、座席数も巨大ショッピングモールのフードコート以上にある。座って話せそうなのは大前提だとして、早見さんの好みを知るきっかけにもなる。

 「……じゃ、じゃあ、あそこでも、いいですか?」

 少し引き攣った表情で一つのお店を指さす。
 ラインナップとしては他のカフェとも大差ないものの、独自にフルーツスムージーを売りにしているようで数人の列ができていた。


121 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:11:51.97OCYa+xYb0 (3/11)

 二人でその列に並び、学生証端末でメニューを確認する。今回は店頭注文の運びになるが、先に席を取って学生証端末で注文後に受け取りだけを行う手段もよく利用されているようだ。

「わたしは決めたけど、早見さんは?」

「ぁ……えと、これを…」

 わたしに見せてきた端末の画面には苺のスムージーが表示されていた。苺を選んだ理由の一つとして他の果物よりも十ポイントから九十ポイントほど安かったからという理由はおそらく含まれているだろう。
 その後七分程度でスムージーを受け取り、ちょうど窓際の四人席が空いたためそこに向き合う形で座る。他にもかなり四人席は空いているため、非常識とはならないと判断する。

「ありがとうございます…」

 席に着くなり、彼女は頭を下げる。
 わたしは「これはお礼だから、遠慮しないで」と言って、さっそく『桃のスムージー』にありつく。
 口に含んだ瞬間からみずみずしい桃の果肉を味わうことができ、程良い甘さが頭をクリアにさせる。


122 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:12:17.74OCYa+xYb0 (4/11)

 わたしが飲んだのを確認した後、早見さんも一口。
 かなり美味しかったのか、表情に出ている。

「本格的な授業は明日からだね」

「そう、ですね…。今日は説明だけでしたから、実際には明日からになるんだと思います」

「タブレットを使った授業なんて、わたしの通っていた中学校では露ほども話に上がらなかったからさ。新鮮な気持ちだよ」

「……そうですか」

 一転、やや暗い空気を漂わせる。
 わたしの言葉に反応してのものか。だとすれば『中学校』というワードが高確率で引っかかる。
 彼女が機械に疎ければ『タブレット』そのものに対して嫌悪感を抱いている可能性もあるが、携帯と学生証端末の操作に困っているようには見えなかったため、それは除外しても良いだろう。
 今は距離を縮めることが大事だ。
 別の話題で話し込むことにしよう。

「そういえば早見さんはさ────」

 話を切り替えようとしたとき、向こうの方からやってくる生徒に視線を取られる。
 身長は百七十五センチ程度、銀色の髪色が特徴的で制服を着崩した男子生徒。公共の場を我が物顔で歩くその姿は、傲慢な態度そのものだ。事実、彼の周辺からは人が避けるように消えていく。


123 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:12:44.68OCYa+xYb0 (5/11)

 そんな彼が向かってくるのは、こちら側。
 とてつもなく嫌な予感がした直後のことだった。

「お前が春宮か?」

「……何かご用でしょうか?」

 突如として割り込んできた柄の悪い男子生徒に、早見さんは視線を逸らすため俯く。
 まずい、本当に悪いことをした。
 彼女との距離を縮める目的はさておき、誰だってこんな状況に巻き込まれれば嫌な思いはするだろう。
 後で精いっぱい無関係である弁解をするのは当然として、明日以降の予定の見直しが必要になりそうだ。

「なに、大した用じゃねぇよ」

 彼はわたしを押すように、わたし側のシート席へ入り込んできた。必然と窓側へと移動となり、彼が座ることで退路が絶たれる。
 何の話をするか想像もつかないが、わたしに用があるなら、これ以上早見さんを同席させても良いことは無いだろう。

「彼女は関係ないですよね?」

「あぁ。好きにしろ」

 ここで彼を無視して帰るよう促すことが悪い方向に進まないとも限らない。何がなんでも早見さんに害が及ぶことは避けたかった。

「ごめん、絶対に埋め合わせするから」

 わたしがそう言うと、早見さんは心配そうな顔をしながらもコクリと頷き、スムージーが入ったカップだけを持って席を立つ。


124 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:13:12.37OCYa+xYb0 (6/11)

 それからすぐに彼は話を切り出す。

「俺のクラスへ来い、春宮」

「────?」

 言っている意味が理解できず、わたしは返答に困る。
 休み時間の度にクラスへ遊びに行く、という意味ではもちろんないだろう。

「なんだ、知らないのか? ポイントを使えばクラスの移動が出来るそうだぜ。その額は、二千万。それだけ払えばAクラスにもDクラスにも移動ができるらしい」

「二千万って、本気で言ってるんですか?」

 色々とツッコミどころはあったが、特にポイントの部分には興味を惹かれる。二千万ポイントを貯めることはまず不可能。
 そして貯めた先のクラス替えという制度は、何を示すのか。
 なんであれこの男子生徒は、わたしよりもずっと学校のポイント制について足を踏み入れているようだ。

「あぁ、本気だとも。一人当たりに毎月振り込まれるポイントは────と、念のため確認だが、気付いているよな? この仕組みくらいは」

 わたしは頷くことも首を振ることもしなかった。
 コンビニに用意された無料の品、学食の無料定食。
 この二つが用意されている時点で、昨日立てた『仮定』はほぼ確証へと切り替わっていた。


125 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:13:39.02OCYa+xYb0 (7/11)

 まず間違いなく毎月一日に全生徒へ『十万ポイント』が支給されていれば、それらを利用する生徒はほぼ皆無と言ってもいいだろう。しかし今の話を聞いて、もし二千万ポイントを貯めるための節約の一環として無料配布のモノが用意されているとすれば────いや、あるいはその両方のためか。
 どちらにせよ興味深い話のため続きを聞くことに。

「続けてください」

「ふ。まぁいい。一人あたり、およそ十万ポイント支給だとしよう。一クラス四十人で四百万。二千万を目指せば最低でも半年は必要なわけだが、それは現実的じゃない。なら二クラスで協力した場合はどうだ。半年で各クラスが二千四百万。それから一千万ずつを出し合う。そうすれば二千万だ」

 その理論でいけば僅か三ヶ月で二千万に届く。
 あえて半年と言ったのは、裏があるのだろう。
 ここでわたしは根本的な問題を提示する。

「そのクラス替えが本当に出来るのか知りませんけど、自分以外の生徒が他のクラスへ移るためにポイントを譲渡するとは思えません」

「譲渡する、じゃねぇ。搾取するんだよ。弱みを握って脅すでも、徹底的な管理体制でも方法は任せる。毎月一定以上のポイントを自分に振り込ませろ。そうすれば一千万なんてすぐだ」

 頭が痛くなってくる。


126 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:14:08.03OCYa+xYb0 (8/11)

 そんなことできるはずがない。

「だいたい、わたしが協力するとでも?」

「するさ。お前は俺に協力する。そして一千万を貯めるために尽力する。晴れて半年後には、俺と同じクラスになれるってわけだ」

「話になりませんね。わたしに協力する意思はありません。わたしを揺すりたいなら、それ相応の対価があるべきでは? 例えば、四千万ポイントとか」

 一クラス一千万ずつ貯めてわたしが彼のクラスへ移動、そして四千万ポイントを受け取れるのなら一考の余地はある。もちろんすんなりとはいかないだろうが、それだけのポイントがあればわたしは元のクラスへ戻れるからだ。
 だが実際、四千万ポイントを貯めるなんてほぼ不可能な話。こんなふざけた提案に対して、雲を掴むような話を持ち出せば彼も引っ込むと考えた。
 しかし彼は口元を釣り上げ、笑みを浮かべる。

「逆に聞くが、四千万でいいのか? お前には最初の一千万を含めて五千万を払っても価値があると思っている。いや、七千万か八千万か。それくらい払ってもいいだろう」

「じゃあ一億です。それ以外は自分を売れません」

「なるほどな。こうしよう。こうなるとお互いが譲らず青天井だ。一ヶ月後、改めて聞きにくる。そのときにお前が提示した額を払うことにしよう。もちろん三ヶ月やそこらじゃ不可能な話だが、きっとお前にとって悪い話じゃない」

 一ヶ月後、またこの人と話すと考えると憂鬱だが、ここは大人しく従っておくべきだろう。
 わたしが頷くのを確認すると、彼は身を引く。
 塞がれていた席が通れるようになり、わたしは鞄と緩くなったスムージーのカップを手に取り立ち上がる。

「最後に一つ聞かせてください。どうしてわたしに声をかけたんですか?」

「価値があるって言っただろ。それ以上でもそれ以下でもねぇよ」

 そう言って彼は立ち去る。
 周りの視線を痛いほど浴びながら、わたしは早見さんの鞄を持って後を追う。


127 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:14:37.92OCYa+xYb0 (9/11)


◇◇◇

 寮のフロントで早見さんの部屋番号を尋ねると、割とすぐに教えてくれた。クラスメイトであることを最初に伝えたのが大きかったんだと思う。
 この寮ではインターホンが二種類ある。
 一つ目は、玄関である一階のインターホン。
 二つ目は、部屋前のインターホン。
 例えば他学年の生徒が訪れるときなどは、まず玄関のインターホンを鳴らした後、玄関に入るためのロックを解除して貰う必要がある。その後、エレベーターを使って目的の部屋の前でインターホンを再度鳴らすといった二段構えだ。
 部屋番号を聞いた以上、直接部屋の前まで行ってインターホンを鳴らすことはできた。しかしそれでは驚かせてしまうだろうと考え、わたしは玄関から彼女の部屋を呼び出す。
 間もなくして応答があった。

『────春宮、さん?』

「うん、さっきはごめんね」

 呼び出し機に併設されたカメラからわたしのことを視認した早見さんは、安堵したような声を漏らす。

『いえ、あの、待ってていただけますか? すぐに降ります』

 わたしは頷く。
 それから三分ほどで、まだ制服姿の早見さんはエレベーターを使って降りてくる。


128 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:15:08.69OCYa+xYb0 (10/11)

 ロビーで待っていたわたしと合流すると、手に持っていた鞄に目をやる。

「あ、すみません…。鞄を持たせてしまって…」

「ううん、いいのいいの。こっちこそごめんね。ちょっと絡まれちゃって」

「大丈夫……でしたか?」

「一方的に話をされただけだから大丈夫だよ。本当にくだらない話を長々とね」

 心配させないため、わたしは大して取り合わなかったと言っておく。
 実際のところ、あの人には興味ないものの、クラス替えという制度やクラスメイトのポイント管理という話には興味があった。
 わたしはもちろんそんなことはしない。ただ、一年Dクラスの中からそういうことをしようとする生徒が出てきても不思議じゃない。そしてそれを実行に移すとなれば、かなり早い段階で行動に移すのが定石だろう。
 そう、例えば明日にでも『今後のことを考えて僕が、私がみんなのポイントの一部を管理する』などと言い出す人が現れてもおかしくない。

「あの、ごめんなさい。先生を呼ぶべきでしたよね」

「ううん、あの場所には監視カメラもあったし、あの人もそういったことはしなかったと思う。先生を読んだところで話をしているだけっていうのがオチだよ」

 この学校の敷地には至るところに監視カメラが設置されている。ケヤキモールは大型ショッピングモールそのもののため、監視カメラがあるのは普通だと言える。
 しかし学校はどうか。
 教室や廊下など、至るところに設置されている。


129 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 11:15:48.60OCYa+xYb0 (11/11)

 もし校内で暴力沙汰を起こせば監視カメラの映像を頼りに停学、あるいは退学も免れない。
 そういったことを抑止するための監視カメラだと考えれば理解できるが、一つ不可解なことはそのカメラが絶妙に隠されていること。じっくりと視認しなければ気が付かないほど微小なカメラが幾つかあった。
 気になる点は無尽蔵だが、それは追々考えるとして今は早見さんのことに集中しよう。

「ほんっとうに今日はごめん。もしよかったら明日とか明後日とか、時間を作って貰うことは出来ないかな」

「……わたしでいいんですか?」

「もちろんだよ。早見さんさえ良ければ、だけどね」

 逸らされていた視線が元に戻ると、早見さんは頷いた。

「明日はちょっと……。でも明後日なら、はい」

「わかった。じゃあ明後日ね」

 明後日、改めてケヤキモールに出掛ける約束をして、わたしと早見さんは一緒のエレベーターで戻る。
 早見さんが十階、わたしが十一階だ。
 途中の階で止まることなく十階に着き、早見さんと別れる。その後すぐでわたしもエレベーターを降りて、自室へと向かった。


【イベント安価です。
 3・6・8・0:錦山会長・乙葉先輩
 それ以外:翌日
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


130以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/11(土) 11:33:51.87J/7I1YX+0 (1/1)




131 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 21:00:11.11h1bofGth0 (1/7)

【>>130
 7:翌日】

 高校生活三日目。
 今日の午前中は数学、国語、化学、英語、そして昼食を挟んで体育、社会と続く。この二日間がほぼ講義らしいものがなかったからこそ、クラス内からは多少の不満が飛び交う。
 わたしはつい朝の五時に起きてしまうほど楽しみだった。特に体育は、初回の授業にして早速水泳らしい。室内の温水プールを使用した授業は日本を探しても数少ないだろう。昼食後というのが少し難点だが、それは我慢をすれば済む話だろう。
 今朝のホームルームでは特別連絡事項がある訳でもなく、ほんの二十秒程度で終わる。
 その後は授業の準備────は不要だった。
 教科ごとのノートを一冊用意して、その他教科書はタブレット端末にすべてインストールされている。そのため机の上は文房具とノート、そしてタブレット端末の三点だ。なお、タブレット端末にインストールされたメモ帳やノート機能を利用すれば紙のノートを用意する必要もない。その機能を利用しようとする生徒はちらほらと見受けられた。
 程なくして担当の先生がやってくる。
 ホームルーム後に席を立っていた生徒も席に着き、一時間目開始のチャイムを各々が待つ。中にはギリギリまで携帯を弄る者、予習をする者。


132 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 21:00:43.37h1bofGth0 (2/7)

 わたしは数学1で習うことを思い出していた。
 たしか最初は単項式と多項式。随分と前に学習した内容だが、おそらく問題はないだろう。

「……」

 ふと、天井を仰ぐ。
 教室上部に取り付けられたプロジェクター。
 電子黒板の方へ向けられており、基本的にはこのプロジェクターを映し出すことで授業を進めていく。
 わたしが気になるのはプロジェクターの下に空いた小さな穴にハマるレンズ。やはり廊下同様、この教室も監視されていると見て間違いない。その真意は今の段階では分かりかねるが、居眠りや携帯を弄るなんてことをすればすぐにバレるだろう。
 なんだか嫌な予感を胸の奥に感じながら、わたしは後ろの席からクラス全体のことを監視する決意をする。
 優等生を演じるつもりはないが、それでも『手遅れ』にるようなことは避けたい。みんなのためにも。


【イベント安価です。
 奇数:乙葉
 偶数:午後の授業へ(プール)
 下のコンマ1桁でお願いします。】


133以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/11(土) 21:24:42.50hxzW8YBg0 (1/1)




134 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 22:26:52.58h1bofGth0 (3/7)

【>>133
 0:午後の授業へ(プール)】

 午後一の授業は体育。プールだった。
 昼休み後半に移動を開始して、更衣室で学校指定の水着に着替える。
 男子はほぼ全員が参加、女子はおよそ半分が見学という選択をした。先生はそれについて全く触れず、ただただ名簿に見学のチェックを付けるだけだった。特に水泳では顕著に現れそうな教員としての配慮か、あるいは放任主義か。
 授業開始のチャイムが鳴る少し前のプールサイドへ到着すると、そこには五十メートルプールがあった。

「わ~! すごいね~!」

 一年Dクラスが発足されてから早三日目。人を率いていく人物として頭角を表し始めた生徒が何人か居る。
 その内の一人、宮野真依が感心したように言う。
 彼女は幼い頃から水泳を習っていると、先ほど聞こえてきた。それは女性ながらにしても筋肉の付き方を見れば、なんとなく真実であることは分かる。
 やけに男子の視線を感じながらも、先生の号令に従い改めて出欠を取る。

「────と、まぁ見学者が多いようだが、構わないだろう。さて早速だが、準備体操をしたら泳いでもらう。泳げない生徒もだ」

 「えー!」と至るところから声があがる。

「安心しろ。俺が担当になったからには、絶対に泳げるようになる。この道二十年、俺が担当したクラスの生徒で誰一人泳げないまま卒業していった生徒はいない」

 とてつもなく頼もしい発言だった。


135 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 22:27:29.41h1bofGth0 (4/7)

 この先生の指導方針が未知数である以上、単純に教え方が上手であることを期待しよう。
 わたしは周りに合わせて準備体操に移る。
 そして先生の指示のもと、全員が軽く泳ぐように指示が下る。泳げない生徒は足をついても良いらしい。
 レーンごとに分けられたプールの中、右の二レーンが泳げない人用、それから左側のレーンに行くに連れて得意な生徒が入水していく。
 わたしは左から三番目にした。なんとなく見ている限り、ゆったりと泳げそうだったからだ。そして経験者である宮野真依の一つ右側のレーンでもある。

「春宮さん、だっけ。ごめんね、まだ覚えられてなくて」

「ううん、いいの。宮野さん、だよね」

「そうそう。春宮さんは水泳やってたの?」

「授業で習ったくらいかな。それでも一年ぶりとかだから、手とか上がるか心配だよ」

 自由形ことクロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライと様々な泳ぎ方がある中、やはり自由と名のつくだけあってクロールが授業の中では一般的だろう。運動に自信の無い人は平泳ぎを選択する傾向があり、また背泳ぎとバタフライはほとんど授業の中で扱われることがない。


136 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 22:28:49.00h1bofGth0 (5/7)

 前の人が泳ぎ始めたのを確認し、わたしも入水する。
 水の冷たさはあまり感じない。さすが国立の高校。温水プールの準備にも怠りがなかった。
 それから軽く五十メートルを泳ぎきる。前の生徒に追いつかないよう、そして後ろを追う生徒にも追いつかれぬよう、自然なペースで。
 泳ぎきると、宮野さんが待っていた。

「春宮さん、センスあるんじゃない? すごくフォームが綺麗だったし、まだまだ余裕あるかんじでしょ? 本気で競泳とかやったら絶対伸びるって」

「えー、そうかなー?」

 そんなやりとりをしていると、改めて先生からの号令がかかる。

「それでは早速だが、競走を行う。男女別の五十メートルだ」

 右側のレーンに居た生徒からは悲鳴に似た声が、左側に居た生徒からは歓喜の声が屋内プールに響く。

「普通にやっても面白くないだろう。一位になった生徒には俺からの特別ボーナスとして、五千ポイントをやろう。男女それぞれ、一位になった生徒だけだ」

 その太っ腹な発言に、左側の生徒はさらにやる気を見せる。


137 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 22:29:20.73h1bofGth0 (6/7)

 五千ポイント。今の所持ポイントとしては、喉から手が出るほど欲しいというほどでもない。
 ただ、やるには本気でやるべきか?

「先に女子からだ。十一人だから、六人と五人に分けよう。そして一位だった生徒にボーナスだ」

 八レーンと限られた中、六人と五人で分けて競走を行うのは自然な流れだった。
 泳げない生徒は足をついてでもゴールを目指すことを指示した後、先生はグループ分けの名前を呼んでいく。
 わたしと宮野さんは後半のグリープだった。

「五千ポイントかぁ。まぁ貰えるものは貰いたいけどねー」

 宮野さんの視線は、前半グループの一人、秋山春香に向けられる。彼女も水泳の経験があるらしく、先ほどの準備運動では一番左のレーンで泳いでいた。
 他の女子生徒の動きも確認していたが、おそらく先ほどまでの状況を踏まえると宮野さんか秋山さん、そしてわたしが優勝候補とされている可能性が高い。
 プールサイドに移動したわたしたちは前半グループの競走を見守る。

「いちについて、よーい、」

 直後、ピーと鳴る電子ホイッスル音。


138 ◆yOpAIxq5hk2021/09/11(土) 22:29:52.55h1bofGth0 (7/7)

 やはり秋山さんが群を抜いて速い。
 初速から他を大きく引き離す。
 それからわずか二十六秒後にゴールした。

「おー、速いな秋山。水泳部か?」

「まぁ、はい。中学生の時は」

「高校の部活は? 水泳部はどうだ? 大会で表彰台を狙えるぞ」

「今は弓道のブームなので。また考えておきます」

 ブームで部活を決めるのか、と先生は首を傾げたようだったが、すぐに切り替えて後半に移る。
 どうしても経験の差というものは生まれてしまうものだが、それでも極力抑えるため飛び込みは無しとしている。入水した状態でのスタートだ。

「それじゃあ行くぞ。準備はいいか?」

 この瞬間まで、わたしは考える。
 今後のことも考慮して、やるか、やらないか。

【安価です。
 身体能力99のため、確定で一位を取ることができます。コンマ判定をする必要もないため、今後を踏まえて選択式にしたいと思います。
 1.大差をつけて一位
 2.ギリギリを見極めて一位
 2.2位を取る
 どれもそこまで大差があるわけではありませんが、大差をつけて一位になると信望が高くなります。
 また、他クラスから要注意人物として見られることになります。
 下1でお願いします。】


139以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/12(日) 00:54:13.85lKGroAFvo (1/1)

2


140 ◆yOpAIxq5hk2021/09/12(日) 02:14:08.26/n5N8f0V0 (1/5)

【>>139
 2.ギリギリを見極めて1位】

 わたしは一度深呼吸をする間に、決意する。
 一位を取る。ほぼ全力を出して。
 先ほどの秋山さんが二十六秒と二三。宮野さんもそれくらいだと仮定して、二十五秒前半辺りが確実か。
 自分の本気は自分でも理解が及ばず未知数であるが、『それくらいなら』優にタイムを出せそうだ。

「それじゃあ行くぞ。いちについて、よーい」

 電子ホイッスルの音が鳴った直後から、わたしは頭の中でタイムを計測しながら泳ぎに没頭する。
 三十五メートルを超えたところで隣のレーンを視認すると、ほぼ同じくらいだった。わずかにわたしがリードしているか。でも、このままだと二十五秒前半は厳しいかもしれない。
 悪いけど、先に行かせて貰うね。
 水を掻き分け、ゴールへと一直線に泳ぐ。

 あぁ、気持ちが良い。これからもっと─────。

 そんなことを思い始めるとほぼ同時に、わたしは五十メートルを泳ぎきる。


141 ◆yOpAIxq5hk2021/09/12(日) 02:14:34.63/n5N8f0V0 (2/5)

 顔を水面から上げるとプールサイドから歓声が聞こえてくる。その直後、隣の宮野さんもゴールする。

「ふぅっ……はぁ。はぁ~、速いねー、春宮さん」

「実はちょっとだけ運動得意なんだ」

「ちょっとって、そんなもんじゃなくない? 全然疲れてそうなかんじもないし」

「そんなことないよ。久しぶりに泳いだからね」

「久しぶり、ねぇ。なんかショックかも」

 そうは言いつつ笑みを浮かべてみせる。
 わたしは先に上がり、宮野さんに手を差し出す。

「ありがと」

 宮野さんをプールサイドに上げると、それから数秒して女子の後半グループ全員がゴールに到着する。
 先生は前に出て結果を発表する。

「一位は春宮、二十五秒一四。二位は秋山、二十六秒と二三。三位は宮野、二十六秒四五。ということで一位は春宮だ。いずれも水泳部に欲しいくらいだ。もしよければ見学からでも来てくれると助かる」

 結果発表が終わると、わたしは宮野さんと女子が固まるプールサイド脇へと移動する。


142 ◆yOpAIxq5hk2021/09/12(日) 02:15:00.33/n5N8f0V0 (3/5)

 もともと水泳をやっていたのか、大会に出たことはあるのか、陸上競技などは得意なのか、様々なことを質問攻めされても、嫌な気分はしなかった。
 と、競争が終わった女子グループが一息ついて盛り上がる一方で男子グループの競争が始まる。
 男子グループは三グループに分けて予選を行い、上位五人で改めて決勝を行うようだった。
 わたしは女子グループの会話に耳を傾け、応対しながらも男子グループの泳ぎを観察する。
 優勝候補は四人。
 一人目は初日から色々とお世話になっている一色くん。バスケ経験者で、昨日の部活動説明会を経て正式にバスケ部に所属した彼の実力やいかに。やはり脚の筋肉の付き方がそれっぽい。
 二人目は松本くん。野球、サッカー、バスケと多数の競技を本格的に経験してきたと噂だ。全体的に筋肉が付いているようで、これもまた期待ができる。
 三人目は荒垣くん。この人は少し特殊だ。まず体格が規格外だ。身長は百八十センチを超過していて、それに見合った筋肉が充分すぎるほどに付いている。毎日過酷なトレーニングをしているんだろうと見て取れる。スポーツ経験などの情報は一切ない。
 そして四人目は望月くん。背も百七十センチほどと高すぎる方ではなく、ぱっと見の筋肉はあまり付いていないように見える。しかし実のところ、必要最低限な筋肉が異常と言えるほどに付いている。間違いなく今回の競走ではダークホースとなりえる。そのことに気が付いているのは、この場にそれほど居ないと思うけど。
 なお、この中で一番女子人気が高いのは一色くんで、やはり優勝も期待されている。
 だがこの勝負、本気を出せば望月くんの優勝が目に見えている。もし本気を出さなければ荒垣くんの勝利で終わるだろう。
 さて結果はいかに─────。



143 ◆yOpAIxq5hk2021/09/12(日) 02:15:39.02/n5N8f0V0 (4/5)


◇◇◇

「一位は荒垣、二十四秒六九。二位は松本、二十五秒八三。三位は一色、二十六秒五三だ。春宮と荒垣は後でボーナスポイントを配布する」

 ほぼ予想通りの結果となった。
 望月くんが本気を出さず男子で九位だったことも含めて、想定通りだ。やはり彼は本気を出さなかった。

「残りの時間は自由にしていい。ただし後十分だ。授業が終わるまではまだ二十分あるが、この後の授業に遅れるといけないからな。十分したら上がって各自教室に戻れ」

 その指示が出されると、生徒は自由にプールで遊び始める。
 そんな姿を横目に、わたしは名指しで指示を受けた通り更衣室へ学生証端末を取りに戻る。
 その間、少しの間だけ荒垣くんと二人きりになる。
 男子更衣室と女子更衣室は途中まで同じ道だから仕方がない。


144 ◆yOpAIxq5hk2021/09/12(日) 02:16:20.90/n5N8f0V0 (5/5)

 前を歩く荒垣くんの大きな背中を見てしばらく歩き、あとは右に行けば男子更衣室、左に行けば女子更衣室という分岐点前で荒垣くんが歩みを止める。

「本気でやったか?」

「もちろんだよ」

 わたしは即答した。
 事実、ほぼ本気だったのだからそれは間違いがない。しかし彼はわたしのことを疑っている様子だ。

「俺にはそうは見えなかった。特に残り十五メートル。あそこから段々と加速していくように見えた。なぜ最初から加速させなかった。それが不思議でならない」

「それは、久しぶりだったからだよ。水泳自体が久しぶりで、準備運動もそんなに出来なかった。だから、って言ったら信じてくれる?」

「……なるほど。わかった、今はそれで納得しておくことにしよう」

 決してこのやり取りの中で彼は振り向くことなかったが、ここでようやく右を向いた。男子更衣室の方へ向かうようだ。

「それともう一つ聞きたい」

 わたしも女子更衣室へ、と思ったところで再度声をかけられる。

「もし百メートルだったらどっちが勝ってた」

「……飛び込みありかなしかで、変わってくるかも」

「ありだ。実際の競泳百メートルをやったら、どっちが勝つ」

 五十メートルのタイム差はコンマ五秒に満たない。
 わたしは彼の言う通り三十五メートルから本気を出したし、これからというところでゴールしてしまった。もし最初から本気を出して、トップスピードで泳ぐことができたら。
 それはおそらく…。

【安価です。
 1.「もちろんわたしだよ」
 2.「たぶん、わたしが勝つと思う」
 3.「荒垣くんじゃないかな。さすがに」
 4.「かなり良い勝負はすると思うよ。僅差で勝負は着くと思う。どちらが勝つかは分からない。

 下1でお願いします。
 今日はここまでにします。お昼頃か、夜頃に再開します。】


145以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/12(日) 03:18:28.17yj59OMDxO (1/1)

2


146 ◆yOpAIxq5hk2021/09/12(日) 21:21:14.39w7jRohRZO (1/5)

【再開します。】


147 ◆yOpAIxq5hk2021/09/12(日) 21:21:48.83w7jRohRZO (2/5)

【>>145
 2.「たぶん、わたしが勝つと思う」】

 自惚れるな。
 そういった反応をされることを承知の上、わたしは実直に答えた。

「たぶん、わたしが勝つと思う」

「随分な自信家だな」

 背を向け合った状態だが、彼の声色から笑みを浮かべていることは容易に想像がつく。

「だがその真っ直ぐな姿勢は嫌いじゃない。本当に自信があるからこそ、そう答えたんだろう。俺の負けだ。おそらくな」

 教室の廊下側一番後ろに座れる荒垣くんは、一見その体格も相まって話しかけることすら躊躇われていた。
 しかしこうして話してみると、意外と話しやすい。
 わたしのことを『たった一回、そこそこな記録を出しただけの女に過ぎない。自惚れすぎだ』と烙印を押さなかったのも、彼自身に人を見る目が備わっていたからだろう。
 その裏付けは、すぐに出来る。

「でも、クラスの中だとわたしが一番じゃないかも」

 悪い言い方をすれば、わたしは吹っかける。
 彼の見る目は本物か。
 競泳で男女一位になったこの二人以外に実力者が潜んでいるという話は、本当に見る目がなければ一蹴するような話だろう。


148 ◆yOpAIxq5hk2021/09/12(日) 21:22:16.34w7jRohRZO (3/5)

 荒垣くんは少しの間を置いてから話し出す。

「驚いた。そこまで分かっていたのか?」

「荒垣くんも気が付いていたんだね」

「まぁな。望月、だったか。細身だが鍛え込んでいる。奴を警戒していたが、今回の競走では九位だった。何か実力を隠す理由があったんだろう」

「今後わかるんじゃないかな。嫌でも実力を発揮する機会は貰えそうだし。今回のように授業の一環としてスポーツで競走すること、勉強の点数で競争すること。そんな中できっと望月くんの実力が分かると思うよ」

 荒垣くんは少し黙り込んだ後、

「そうだな。そうかもしれない。今は様子見といこう。まだ三日目だしな」

 そう言って男子更衣室の方へと向かう。
 わたしは振り返り、その後ろ姿を目で追う。
 運動神経が抜群に良く、望月くんの実力も正確に見抜いた彼はきっと大きな戦力になるだろう。
 ここで少し関係性を持てたのは、お互いにとって非常に有意義だったかもしれない。何かあれば、彼に相談することも視野に入れよう。


149 ◆yOpAIxq5hk2021/09/12(日) 21:22:47.71w7jRohRZO (4/5)

◇◇◇

 先生のもとに学生証端末を持っていくと、わたしは一年Dクラスの競泳で一位になった特別ボーナスとして五千ポイントを頂戴した。
 入学早々に十万ポイントを支給されているだけあって、そのありがたみが若干薄れているのは嫌だなと思った。本来、高校生にとって五千円はかなりの大金のはずだからだ。
 そしてちょうど受け取ったタイミングをもって、授業終了まで残り十分になった。プールで遊ぶ時間は残されておらず、遊び終わった生徒に混ざって更衣室へ戻る。
 更衣室に設置されたシャワーを浴びて塩素を流す。この後の授業もあるため、しっかり流しておかないと色々と問題だろう。
 シャワーを浴び終わり、タオルで身体全体の水気を取った後、制服に着替えて髪をドライヤーで乾かす。
 隣では宮野さんが同じく髪を乾かしていた。
 奇しくも同じくらいの髪の長さのため、ほぼ同時に髪を乾かし終わり、席を立つ。
 そして荷物を置いていたロッカーが近かったこともあって話し込む。

「で、実際のところ水泳部だったかんじでしょ?」

「色々な部活をやってたんだ。結構緩い中学校だったからそういうのも容認されててね」

「へぇー。いいね、そういう学校。でさ、水泳部に一緒に入らない? 担当はさっきの先生が顧問で少し胡散臭い部分もあるけど、教える力は確かみたいだからさ」

「うーん、それなんだけどね……」

 泳ぐのは楽しいと、改めて感じた。


150 ◆yOpAIxq5hk2021/09/12(日) 21:23:29.36w7jRohRZO (5/5)

 五十メートルを泳ぎ切った直後はもっと泳ぎたいと考えたのは事実だし、おそらく水泳部に入れば二百メートルや四百メートルといった種目もあるのだろう。
 かなり揺らいでいる部分はある。
 このまま無所属でも評価のペナルティのようなものは無いと認識している。ただ、部活動を通して学校への貢献といったところでは無所属である限り加点されることはないだろう。
 ケヤキモールで買い物をするのは楽しい。
 けれど、それが三年も続くとなると流石に飽きる。
 なら先輩後輩とも関係性を持てるような部活動に所属するべきか、かなり前向きに考える必要がある。

「今週いっぱいは考えてみようかなって」

 とりあえず今は保留と返答しておき、放課後にでも色々な部活に顔を出して見学するのが一番だろう。自分が一番興味あって、どうせなら活躍できるような競技に没頭したい。
 宮野さんは「そっかそっか、興味あったら水泳部に来てみてよ。わたしは入部するからさ」と言って、一緒に教室に戻ろうと誘ってくれた。
 わたしは頷いて、一緒に戻る。
 その道中、ヘアオイルを分けて貰った。
 シトラスの良い香りがする。これで六時間目の授業も楽しく過ごせそうだ。



 宮野真依:信頼度45(友人)
「いやー、すごいね、春宮さんっ。ぜひ水泳部に!」

 荒垣佳正:信頼度40(相談できそうな相手)
「実力は本物だ。素直な性格は嫌いじゃない」

 望月慎也:信頼度XX(警戒すべき相手)
「……」

放課後、自由行動です。
 1.人と会う
  1.一色颯 (クラスをまとめる男子)
  2. 一之宮重孝 (全国模試二位の男子)
  3.宮野真依  (水泳で競い合った女子)
  4.錦山暁人・乙葉  (上級生で信頼できる男女)
 2.校内を散策(特別棟・部活動を見学など)
 3.ケヤキモールで買い物
 4.寮へそのまま帰る
 1の場合は「1-3」などで人の指定までお願いします。下1でお願いします。】


151以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/12(日) 23:58:25.45l63TGBWdO (1/1)

1 4


152 ◆yOpAIxq5hk2021/09/13(月) 22:01:59.64t1CcS+Yh0 (1/10)

【>>151
 1.人と会う
 4.錦山暁人・乙葉】

 プールの後の六時間目、眠そうにする生徒が見受けられる中、わたしは宮野さんに分けて貰ったヘアオイルの香りもあって随分と機嫌良く授業を受けることができた。
 そうして迎えた放課後。
 早見さんとの約束は明日のため、今日は何も予定がない。必要な日用品も買い揃えてしまったためケヤキモールにも用はない。となれば、誰かを誘うか。
 少し考えて、わたしはとある人物へチャットを送る。返信はすぐに返ってきた。

『生徒会室に来てくれればいつでもいいよー』

 そう書かれたメッセージを目に、わたしは鞄を持って席を立つ。
 たしか生徒会室は一階の職員室あたりだったはず。ひとまず職員室まで行ってしまえば『生徒会室』の札を見つけることは容易だろうと踏む。


153 ◆yOpAIxq5hk2021/09/13(月) 22:02:36.60t1CcS+Yh0 (2/10)

 教室を出て職員室へ向かう途中、伊藤先生の背中が見える。相変わらず皺の寄ったスーツにボサボサの髪、そしてずっとお辞儀をしているかのような猫背だ。
 追い抜くこともできず、一定の距離を保ち続けたままゆっくりと歩いていると、伊藤先生は足を止めて振り向く。

「あぁ、春宮さん、でしたか。刺客かと思いました」

「……先生に刺客なんて居るんですね」

「もう至るところに刺客だらけですよ」

 どうやらわたしの見えない敵と戦っているらしい先生は、改めて歩き始める。どうせならと思い、わたしは並んで歩くようにする。
 若干、生徒からの視線が痛いが仕方がない。

「体育では大活躍だったそうですね。大島先生が褒めていました。水泳部に誘うよう協力してくれ、とも。部活動はやられないんですか?」

「まぐれです。次やったらあのタイムは出せません。部活動は考えているところです。三年間、ずっと帰宅部というのも退屈かなと思っているので、前向きに検討しています」

「春宮さんなら色々な種目で活躍できると思います。で、そんな春宮さんはどちらに? この先は職員室くらいしかありませんよ」

「あれ、生徒会室ってこっちの方ではありませんでしたか?」

「そうですね、そうでした。生徒会室もこの先にあります。生徒会に興味があるんですか?」

「いえ、先輩と会おうって話をしたら生徒会にくるように言われました」

「先輩…?」

「乙葉先輩っていう、三年生の」

 伊藤先生は「あぁ、あの人ですか」と頷く。
 その表情は俯いているせいで伺えないが、どこか笑みを浮かべているように見えた。

「彼女は春宮さんに似ているタイプです。きっとたくさんのことを彼女から学べるでしょう」

 多くは語らず、ただそれだけを言い残して伊藤先生は職員室へと消えて行く。
 乙葉先輩がわたしに似ている、ね。
 偶然、興味深い話を聞けた。
 その言葉の真意を探る意味も込めて、職員室の先にある生徒会室へ歩みを進める。


154 ◆yOpAIxq5hk2021/09/13(月) 22:03:04.89t1CcS+Yh0 (3/10)


◇◇◇

 重厚な扉の前、わたしはノックした後に名乗る。

「一年Dクラスの春宮です」

 すると中から「どうぞー」と軽い声が聞こえてきた。おそらく乙葉先輩だろう。

「失礼します」

 そう言って扉を開くと、まず第一にソファに寝転がって携帯を弄る乙葉先輩が見えた。かなりスカートが危ないが、そんなヘマをするような先輩ではない。計算され尽くしたギリギリの格好をしているのだろう。
 そして奥の生徒会長席に座る錦山暁人先輩。その席に相応しい会長らしい威厳を─────出していなかった。どうやら乙葉先輩と、もう一つのソファに座る少し派手目な上級生とアプリゲームで遊んでいるようだ。

「おう、天音。ちょっと座って待っててくれ」

「は、はい」

 入って右側のソファは乙葉先輩が寝転んでいる。
 必然と、派手目な格好をした上級生の隣にかけることになる。

「こちらよろしいでしょうか?」

「ん、あぁ、構わないよ。乙葉の上でも良かったんだけどね?」

「ひっどーい。まぁ天音ちゃんなら良いかなー」

 どうやら隣に座る男性は乙葉先輩と同じ三年生の先輩のようだった。結構酷いことを言っても、冗談として受け流している。


155 ◆yOpAIxq5hk2021/09/13(月) 22:03:32.71t1CcS+Yh0 (4/10)

 それから一分ほど経つと、三人がほぼ同時に悲鳴に近い唸り声をあげる。どうやら負けたようだった。

「やっぱ四人じゃないとキツイな」

「ユキちゃん入れてもう一回やる?」

 と、放課後の生徒会室は随分とゲームで盛り上がっているようだった。
 上級生の輪に入れず肩身を狭くしていると、隣の男子生徒が近寄ってくる。ついさっきまで携帯に目をやっていたが、今はわたしの顔をジッと見つめている。

「君、可愛いね。一年だっけ。連絡先交換する?」

「あ、はぁ……」

「ほらー、困ってんじゃん。ごめんね天音ちゃん。コイツのことは基本無視でいいから」

 ここでようやく携帯を閉じ、乙葉先輩はソファに座り直す。そしてぐっと身体を伸ばして一息ついてから切り出す。

「で、わたしに何かご用?」

「先日のお礼に、お茶でもどうかなって。もちろん錦山先輩もご一緒に。……迷惑でしたか?」

「ぜんっぜん迷惑じゃないよ! 行こう! 今すぐ行こう! 新作の苺のヤツ飲みに行こう! うっちー以外で! あー、二日ぶりの糖分だ! 山菜定食はどうにも食べた気がしなくてねー」

 そう言って立ち上がる乙葉先輩。


156 ◆yOpAIxq5hk2021/09/13(月) 22:04:09.91t1CcS+Yh0 (5/10)

 そうか、浪費癖のある先輩は月初でも金欠で、必然と毎日無料で食べられる山菜定食を食べているのか。

「先輩もご一緒でも大丈夫ですよ」

「まじ? 天使じゃん、この子」

 今日は臨時収入が入ったことだし、うっちーと呼ばれた先輩も込みで奢ることには全然抵抗感がない。
 四人でもせいぜい三千ポイントといったところだろう。それでも余るほど大島先生からはボーナスを貰えた。

「あー、そういえば聞いたぜ。競泳で女子一位を取ったんだってな。大島先生だろ? 体育の担当。あの人はお喋りだからなー。明日には全校中に広まってるんじゃねーの?」

 錦山先輩は立ち上がりながら、そう言った。
 なんだか恥ずかしいな、と思いながらも、目の前の光景に少し疑問を覚える。
 錦山先輩、乙葉先輩、うっちーと呼ばれた先輩。
 その三人が、同時に生徒会室を出て行こうとする。

「生徒会室に誰も居ないってアリなんですか?」

「……まぁいいんじゃねーの?」

「わたし興味ないし」

「もうすぐユキが来るだろ」

 誘った手前、取り止めるのは憚られるが、本当に良いのだろうか。


157 ◆yOpAIxq5hk2021/09/13(月) 22:04:35.75t1CcS+Yh0 (6/10)

 そんなことを考えている内に、先輩方は生徒会室を出て行く。わたしもそれを追うと、職員室の前で三人が一人の先生に止められていた。
 わたしが合流した頃には先生はこめかみに手を当て、溜め息を吐いて道を譲っていた。どうやら生徒会室が不在の機会はそこそこあるようだった。

「大丈夫でしたか?」

「十五分くらいで戻ってくるって言ったら納得してくれたよ。さ、行こう行こう。今日は天音ちゃんの奢りだー」

 二日ぶりの糖分を摂取しに行く軽い足取りの乙葉先輩を筆頭に、わたしは先輩方と雑談をしながらケヤキモールへの道を歩む。
 ここでうっちー先輩の名前は内山和樹であることが判明した。内山先輩は学年、クラス問わずかなり交友関係が広いらしい。そして運動神経も抜群だとか。そして生徒会では庶務を担当しているらしい。
 ちなみに乙葉先輩は副会長をやっているようだ。本人は「名前を置いてるだけで内心が上がるんだもん。これ以上楽なことないよねー」と言っていた。
 そんな生徒会の役員の方々と楽しげに談笑するわたしの姿は、他の生徒からはどういう風に見えただろうか。


158 ◆yOpAIxq5hk2021/09/13(月) 22:05:03.05t1CcS+Yh0 (7/10)

◇◇◇

 ケヤキモールに向かった四人分と、ユキと呼ばれる先輩の分も含めて五人分の飲み物を持って生徒会室へ戻る。
 すると長身の女子生徒が生徒会長用の机の上に座って足を組んでいた。手には文房具屋で購入したと思しきカッターナイフ。
 率直に言って、怒ってそうだなぁと思った。

「おう、ユキ。とりあえず甘い物飲むか? 今話題の苺のやつだ。それに今日は後輩が居る。あんまり怖いイメージを持たれてもアレだろ? ……なぁ?」

 カッターナイフはユキ先輩の手を離れる。
 そのまま机の上に落とされただけだった。

「……飲む」

 そう小さく答えると、錦山先輩と乙葉先輩は内山先輩の背中を強く押す。内山先輩は猛獣に餌をあげるように恐る恐る近付いて、右手に持った苺の飲み物をゆっくりと手渡す。

「ありがと」

 短くお礼を言い、早速一口。

「去年より甘くなった? でも美味しい」

 機嫌が良くなったのか、生徒会長の机から降りる。
 そしてそのまま生徒会長の椅子に背中を預けた。


159 ◆yOpAIxq5hk2021/09/13(月) 22:05:36.32t1CcS+Yh0 (8/10)

 どうやら日常的な出来事らしく、わたしを含めて買い出し組はソファに座って一息つく。

「で、その子は? 一年?」

 生徒会長席からジッと見る視線を感じる。
 身内しか居ないこの場での異分子。それは間違いなくわたしのことだった。

「はい、一年Dクラスの春宮天音といいます。よろしくお願いします」

 立ち上がり、一礼をすると「ふーん、そっか」と聞こえてきた。興味なさそうな声色だった。
 ゆっくり座るわたしに乙葉先輩が顔を近付けて囁く。

「ユキちゃんはずっとあんなだから。決して嫌ってるとかじゃないからね」

 それを聞いて少しホッとする。
 その後、わたしの向かいに座る錦山先輩が思い出したように言う。

「ユキ、水泳の50メートル何秒だっけ」

「25秒75だったかな」

「天音は25秒14……だったか?」

「はい。確かそのくらいです」

「は、まじ? 一位ってのは聞いてたけど、ユキより早いとか超逸材じゃん」

 驚いたような表情を見せる内山先輩とユキ先輩。


160 ◆yOpAIxq5hk2021/09/13(月) 22:06:08.83t1CcS+Yh0 (9/10)

 ユキ先輩はそこで初めてわたしに興味を持ったのか、質問をぶつけてくる。

「部活動は?」

「先生から水泳部には誘われました。あと友達からも。ですが、今週いっぱいは色々と見学してみて、それから決めようかな、と」

「じゃあウチ来なよ。生徒会に」

「え……」

 生徒会長の席に座り、机に肘をついて話す先輩に、わたしは真面目に受け取るか冗談として受け取るか迷う。

「ちなみに俺は反対しないぜ?」

「わたしもー。こんな可愛い子を他の部活にあげるのは勿体無いからねー。ちょーぜつ優秀だし」

「俺もモチ賛成だ。この子には飲み物の礼もある」

 錦山先輩が、乙葉先輩が、そして内山先輩までもわたしの生徒会入りを歓迎してくれるようだった。
 これは流石に冗談じゃないのか、と考え始めたとき、内山先輩の言葉にユキ先輩が反応する。

「ん? 飲み物の礼? 暁人と和樹の奢りじゃないの?」

「……やべ。じゃあな、用事思い出した」

 そう言って荷物をまとめて生徒会を出て行く内山先輩の後を、ユキ先輩が追う。おそらくすぐに捕まるだろう。


161 ◆yOpAIxq5hk2021/09/13(月) 22:06:47.66t1CcS+Yh0 (10/10)

 静かになった生徒会室で、錦山先輩は切り出す。

「悪いな、いつもこんな感じで騒がしいんだ」

「いえ、とても楽しくて良いところだと思います」

「そう言って貰えると助かる。で、さっきの話なんだが、アレは割と本気だ。生徒会と部活動の所属は両立できない。もし部活をやりたいなら、生徒会はナシだ。そこは曲げれない。まぁ暇なときに練習付き合うくらいなら構わないけどな」

 錦山先輩の目は本気だった。
 生徒会か…。
 中学生の頃はあまり興味なかったけれど、こうして直に誘われると断りづらいという思いと同時に、興味も湧いてくる。

「仕事内容としてはそこらの学校と大差ない。ただ、この学校独自のアレに触れる機会があるくらいか。一年はまだアレをやってないから、それについては言えない。だが、きっと楽しいものではあると思う」

 職務の一環として、学校独自のアレに携われる。
 そう言われてもアレの実態が分からない以上、興味が惹かれるかと聞かれれば微妙なところだ。

「あと一応言っておくと、空いているのは書記と会計の二つ。さらに言うと、Aクラスの神宮くんとCクラスの立石くんは昨日ここに来たよ。生徒会に入りたいって」

「だが、二人には回答を待ってもらっている。俺たちの意思としては、天音を引き入れたいからな。ここだけの話、遅かれ早かれ誘うつもりだった。それに類稀な運動神経は全校に広まった。これでお膳立ては充分だろう?」

 生徒会か。
 おそらく生徒会の一員になることで、クラスメイトや他クラスの生徒がわたしを見る目が大きく変わることはよ予想される。それが羨望の眼差しか、警戒の眼差しか。どちらにせよ目立つことは避けられないだろう。


【多数決安価です。
 1.生徒会に入る
 2.生徒会に入らない
 3.週末まで保留(土曜日まであと3日)
 今後のことが大きく変わってくるため多数家とします。先に2票入ったものを採用します。】


162以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/14(火) 04:47:48.508Zjtkes6O (1/1)

1


163以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/14(火) 05:59:15.15NaaSk+toO (1/1)

2


164以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/14(火) 06:59:13.42U7QiMOza0 (1/1)

1


165 ◆yOpAIxq5hk2021/09/14(火) 22:10:29.07uJ9TLURy0 (1/9)

【>>162 >>163 >>164
 1.生徒会に入る 2票
 2.生徒会に入らない 1票】

 決心はついた。
 わたしはこの学校で、生徒会として─────。

「ん、決まった?」

 決意を口にしようとしたとき、ユキ先輩は戻ってくる。内山先輩は意識を失ったまま引き摺られている。脳震盪でも起こしたのだろうか。
 そのままズルズルと引き摺った後、その辺りで手放す。元の位置に収まるように、ユキ先輩は生徒会長席に着く。
 やや気圧されてしまったところはあるが、それでもわたしの決意は変わらない。

「先輩方が歓迎してくださるのなら、ぜひわたしを生徒会に入れていただけると嬉しいです」

 そう言って頭を下げると、

「っし、決まりだな」

「生徒会に入ったら共通のアプリゲーム入れる決まりだからさー、早くインストールしようよ」

「待て乙葉、先に連絡先を交換だろ?」

「……」

 床に寝る内山先輩以外は歓迎の意を見せてくれた。
 なんだか恥ずかしくもあるが、胸の奥から嬉しいという気持ちが無尽蔵に湧き上がってくる。


166 ◆yOpAIxq5hk2021/09/14(火) 22:11:06.77uJ9TLURy0 (2/9)

 早速、アプリゲームをインストールしている時間を利用してユキ先輩とも連絡先を交換する。そして『生徒会(仮)』のチャットへと招待される。

「さっき話した『アレ』の関係でな。悪いが、現段階では『生徒会』のチャットには入れられない。今は仮のチャットだが、あと一ヶ月か二ヶ月もすれば天音も入れてやることができる。決して省いている訳じゃないからな?」

「あ、はい。もちろんです。ありがとうございます」

 わたしは改めて『生徒会(仮)』のチャット欄を眺める。
 クラスのチャット、クラスの一部で作成されたチャットを含めて四つ目のグループチャットとなる。仮の生徒会には、この場に居る人物を除いてあと三名が入っていた。

「生徒会は生徒会長1人、副会長が3人、庶務と書記と会計がそれぞれ2人の合計10人で構成される。多分、他の学校より多い。まぁ後輩を育成って意味で枠を広く設けているらしい。で、空いているのは書記と会計の2つだ」

「書記の先輩枠はユキちゃんで、会計の先輩枠はサキちゃんだねー。名前の語感だけは似てるけど、性格的な意味では正反対かなー」

「どういう意味だ?」

「なんでもなーい」

 ユキ先輩─────改め、如月深雪先輩は、ソファでぐだーっと姿勢を崩す乙葉先輩に鋭い視線を向ける。しかし乙葉先輩は個性であるマイペースをもってそれを回避したようだった。


167 ◆yOpAIxq5hk2021/09/14(火) 22:11:59.36uJ9TLURy0 (3/9)


「まぁ俺はどっちでもいいんだが、天音はユキと組ませた方が面白そうだしな。空いてる書記の枠に入ってくれ」

「はい、わかりました」

「で、あと一つの会計はAクラスの神宮に任せようと考えている。Cクラスの立石には悪いが、断らないとな」

 Aクラスの神宮くんが同じく一年生として生徒会に入るようだ。まだ会ったことのない人だけど、同じ生徒会に所属するからには仲良くしていきたい。近々、一目見るくらいでも出来るといいな。

「はやる気持ちは分かるが、生徒会に入ったことは今週いっぱいは黙っててくれ。来週の全校集会で発表する」

「わかりました。内緒にしておきます」

「担任には俺から伝えておく。担任は誰だ?」

「伊藤先生です」

 そう言った直後、床に寝る内山先輩以外の視線が交錯する。かなり真剣な表情で、しばらく静寂の時が流れる。

「……あぁ、そうか。伊藤先生な。オーケーだ。あとで伝えておくとしよう。伊藤先生だな」

「あれでしょ? スポーツ系の先生っ」

「いや、文系の先生じゃなかったか?」

「化学の先生だと記憶していたんだが」

 正解は日本史の先生と、錦山先輩がやや掠っていたところか。わたしは苦笑いを浮かべながら、今後のことを再確認する。
 今週いっぱいは生徒会に籍を置くことは他言してはいけない。それは、宮野さんに水泳部に誘われている身としては辛いものがある。あと数日の間に誘われれば一時的にでも嘘をついて断らなければならないからだ。
 ひとまずはその事だけ注意していれば良いらしい。具体的な業務については来週以降に改めて説明の場を設けると話がつき、わたしは寮へ戻ることになった。
 まだ明るい寮への帰り道、ひっきりなしに携帯が振動する。どうやら早速『生徒会(仮)』のチャットが動き始めたようだった。
 あの場に居なかった先輩方も含めて、わたしを歓迎してくれているようで嬉しかった。


【イベント安価です。
 奇数:Aクラスの神宮
 偶数:翌日
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


168以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/14(火) 22:20:09.859UuLd8sG0 (1/1)




169 ◆yOpAIxq5hk2021/09/14(火) 23:26:28.42uJ9TLURy0 (4/9)

【>>168
 5:Aクラスの神宮】

 わたしが生徒会入りを決断した夜。
 勧められたゲームが意外にも面白く、『生徒会(仮)』とのチャットを行き来していると、一件の個別チャットが届く。
 相手は『神宮紫苑』。
 わたしと同じく、生徒会に加入することになった一年Aクラスの男子生徒だ。
 ゲームを中断してチャットアプリを起動する。
 彼から確かに一件の通知が来ていた。

『急なご連絡ですみません。もしよろしければお話できませんか?』

 挨拶もそこそこに、会えないかと送られてきた。
 時刻は二十時を回ったところ。高校生にしてみればこの時間帯に会うことも不思議ではない。それに寮の中でとなれば、会える場所はいくらでもある。
 わたしはすぐに返信をする。

『わかりました。ひとまず寮のロビーで待ち合わせでもよろしいですか? 時間はお任せします』

『もちろんです。それでは三十分後に』

 短くそうやり取りをして、わたしたちは三十分後に落ち合う約束を取り決めた。
 エレベーターが毎階止まることを想定しても二十分程度は余裕がある。とはいえ、相手を待たせるのは気が進まないため身嗜みを整え次第、すぐ移動しよう。



170 ◆yOpAIxq5hk2021/09/14(火) 23:27:02.81uJ9TLURy0 (5/9)

◇◇◇

 わたしがロビーに着くと、ソファに腰をかけて携帯を弄る生徒が数名いた。その中で男子生徒に絞り込みをすると0人。
 約束の時間まであと十分近くある。彼がもう到着している可能性も僅かながらあったが、さすがに早すぎたようだ。
 わたしはエレベーターから近いソファに腰をかけ、人を待つ。その間、何人もの一年生がわたしの隣を通り過ぎて行った。
 つい先ほどまでケヤキモールで遊んでいたと見られる制服姿の生徒、コンビニに買い出しに行くのか軽装の生徒。そのどれもがわたしに一度視線を向けてくる。どうやら水泳の授業での顛末は早速知れ渡っているみたいだった。
 わたしが到着してから五分ほど経って、明確にわたしに近づいて来る者の気配があった。携帯をしまい、立ち上がって彼の姿を視認する。
 一言で表すと、普通の生徒だった。
 身長は百六十五センチほどで、高すぎるほどでも低すぎるほどでもない。顔は童顔、色白、そして体格は痩せ身と、服装以外では女の子と見間違えるほどだ。

「初めまして、一年Aクラスの神宮です」

「こちらこそ初めまして、一年Dクラスの春宮です」

 寮の一階、ロビーで握手を交わす。
 しかしここでは通行人に目立つこともあり、裏口から出た先で話し合うことになった。


171 ◆yOpAIxq5hk2021/09/14(火) 23:27:35.85uJ9TLURy0 (6/9)

 人気の無い落ち着いたベンチに腰をかけ、ゆっくりと話を始める。

「錦山会長から聞いたよ。今日、春宮さんが生徒会に入ることになったって。そして同時に、僕も入ることになったって。Cクラスの立石くんには謝るとも」

「……そのようですね」

 遅かれ早かれ、わたしに声をかけるつもりだったとは聞いていたが、どうにも立石くんの枠を奪ってしまった気がしてならない。ただ、そのことを訊いても明確な回答は貰えないだろう。
 わたしは首を振り、そのことを忘れようとする。

「春宮さんのことは聞いているよ。去年の全国模試で一位を取ったことも、今日の体育のことも。僕なんかとは違って、才能に恵まれているようで羨ましいよ」

 やや皮肉げに言う彼に、何かを言ってあげたかったがそれは叶わない。わたしは彼のことを一切知らず、彼はわたしの成績を知っている。
 「わたしなんかより」という話は出来ない。
 神宮くんとはどんな生徒なのか、今のところわたしに一切情報がない。錦山先輩が彼を選んだ。ただそれだけの情報しか持ち合わせていない。

「ごめん。わたし、神宮くんのことを何も知らない」

「あはは、そうだよね。まだ学力テストとかもやってないし、僕のクラスは体育もまだだから。強いて言うなら、そうだね。自己評価になってしまうけど、僕は普通だよ。勉強が得意な訳でも、運動が得意な訳でもない。かと言って苦手でもない」

 普通であること。
 それは、難しいらしい。
 人は普通に憧れる、と本で読んだことがある。


172 ◆yOpAIxq5hk2021/09/14(火) 23:28:07.88uJ9TLURy0 (7/9)


「理解できないよね、春宮さんには。言い方は悪いけど、君は普通じゃない。良い方向に才能が上振れし過ぎている人間の代表例だ。もし君が普通であることを渇望するとき、それはその他大勢の人が望む普通とは真逆なんだろうね」

 言っていることの理解はできる。
 実際にわたしは普通であることを何度か望んだことがある。それは、テストで良い点数を取りすぎないこと。限りなく普通を示す平均点を取ろうと努力した経験が昨日のように思い起こされる。
 その一方、点数の悪い学生は一回は考える。せめて普通くらいの点数を取れたら、と。
 わたしは100点を50点に、他の人は10点を50点に。
 そういう意味で、真逆の普通なんだろう。

「あぁ、気を悪くしたらごめんね? 決して悪気は無い、つもりなんだ。僕は君が憎いほど羨ましいから」

「……そう、ですか」

 ここで「わたしなんて碌な人間じゃないです」と答えるのも何か違う気がする。
 今はまだ神宮紫苑という男子生徒のことを理解できていない以上、肯定も否定もするべきでない。
 ただただ彼の言葉に耳を傾け続けるべきだ。

「と、ごめん。こんな話をしにきたんじゃなかった。改めて来週から、僕たちは生徒会の一員となる。その挨拶をしようと思ったんだ。まずは同学年の春宮さんにね」

「こちらこそよろしくお願いします。わたしも近々、お会いする機会を探そうと思っていました」

「そう? なら良かった。あと、出来ればタメ口にしてもらえないかな? 一応、同学年なわけだしね」

「ぁ……うん、わかった」

 わたしが頷くと、彼は携帯を取り出す。

「先輩たちに勧められたゲーム、やってる?」

「うん、まだ全然だけど─────」

 春とはいえ、今夜は冷える。
 しかしそれが気にならないほど、わたしと神宮くんは話し込む。主にゲーム、いや、ゲームの話だけで。
 彼はゲームが得意なようだった。
 わたしが行き詰まっているところもすぐに解決し、その先へ進むことができた。
 およそ一時間。二人でゲームをして、解散となる。


173 ◆yOpAIxq5hk2021/09/14(火) 23:28:54.07uJ9TLURy0 (8/9)





 結論として。
 神宮紫苑は、今のところ最も警戒すべき一年生としてわたしの中で順位付ける。
 彼の目に宿る憎しみ。
 それは、一朝一夕で賄えるものではないだろう。







174 ◆yOpAIxq5hk2021/09/14(火) 23:29:26.82uJ9TLURy0 (9/9)

【少し早いですが、今回はここまでにします。
 遅筆なこともあってなかなか進まないですが、明日以降はペースアップしていきます。
 ほぼダイジェストのような形で早見有紗との放課後、生徒会に入ることが全校生徒に広まる、を行ないます。
 その後は中間テストをやります。
 中間テストを無事乗り越えた後は特別試験となります。
 引き続きお願いします。お疲れ様でした。】


175以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/15(水) 17:10:25.53RRLcAk0CO (1/1)

主人公がとても優秀だあ


176 ◆yOpAIxq5hk2021/09/15(水) 22:17:41.7892epslBg0 (1/3)

【再開します。】


177 ◆yOpAIxq5hk2021/09/15(水) 22:18:10.1892epslBg0 (2/3)

 わたしが生徒会に入ることを決めた翌日。
 生徒会のお仕事は週明けからということになっているため、今日は元々の予定を遂行できる。
 そう、放課後に早見さんとお出掛けすることだ。
 この前は白髪の男子生徒に水を差されて打ち切りとなってしまったが、今日は無事にゆっくりとお茶ができるだろう。
 午前と午後の授業を乗り越え、各々が部活やケヤキモール、寮へと向かい始めたとき、わたしは早見さんに声をかける。

「早見さん、今日の予定は大丈夫かな」

「は、はい…。大丈夫、です」

 未だにやや警戒されているところだが、こればかりは少しずつ距離を縮めていくしかない。
 わたしは早見さんと横並びになり、教室を出る。
 教室の扉を閉めるまでわたし達の背中に向けられていた視線について、今追及することは避けよう。

「今日もケヤキモールでいいかな」

「はい」

 短くそう返ってくる。
 とはいえ、娯楽施設がケヤキモールという一つのショッピングモールに集中しているため、寄り道をするにはケヤキモールかコンビニかの二択になる。
 放課後に友達と向かう先といえば、ケヤキモール一択になるだろう。
 今日は暖かく、学校を出ると暖かい空気がわたし達を包み込む。窓側の席だけあって授業中に眠気を感じなかったかと聞かれれば怪しいところだが、こうして外に出るととても気持ちが良い。


178 ◆yOpAIxq5hk2021/09/15(水) 22:19:04.1292epslBg0 (3/3)

 学校から徒歩数分でケヤキモールの入り口に着く。
 お互いに買い物をするつもりはなかったため、そのまま幾つかのカフェが集中している場所へと向かう。
 この前は無理矢理誘って、無理矢理カフェを決めさせていたため、わたしは入念に下調べをしてきた。

「ここでも良いかな?」

「はい、そちらで大丈夫です」

 確認を取った後、各々が注文をする。
 この前のお礼も兼ねて奢ると言ったのだが、それは拒否されてしまった。理由があるとはいえ2回連続で奢られることにはわたしも抵抗があるため、そこは受け入れることにした。
 わたしはアイスティー、早見さんはアイスレモンティーが入ったカップを持って席に着く。放課後間もないこともあり、埋まっている席は疎らだ。

「あの、前から気になっていたのですが」

 席に着いてすぐ、早見さんからそう切り出してきた。
 わたしは頷き、質問に答える姿勢を見せる。

「変な意味ではないのですが、どうしてわたしとお茶してくれるんですか?」

 お茶をしてくれる。
 そう聞いて、自己評価の低い女の子だと再認識する。
 対等な関係であれば「お茶をするんですか」と少し突き付けるような言葉でも良かったはずだ。彼女なりに気を遣った線も考えられるが、おそらく自己評価の低さからのものだろう。
 わたしは至極当然のように、その質問に答える。


【安価です。
 1.「たまたま席が近くて、入学式の日にわたしが話した初めてのクラスメイトだったから」
 2.「余計なお世話かもしれないけど、わたしはクラスの全員が仲良くしてほしいと思ってる。もちろん早見さんもその内の一人」
 下1でお願いします。】


179以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/16(木) 00:42:57.216qQCrznfO (1/1)

1


180 ◆yOpAIxq5hk2021/09/16(木) 08:38:51.46DpbNaL2rO (1/3)

undefined


181 ◆yOpAIxq5hk2021/09/16(木) 08:39:19.97DpbNaL2rO (2/3)

【>>179
 1. 「たまたま席が近くて、入学式の日にわたしが話した初めてのクラスメイトだったから」 】

 彼女が極度の人見知りでクラスに馴染みにくそうだったため、わたしが橋渡し的な役割を担おうという本質的な部分が第一に思い浮かぶ。
 ただ、それは彼女からしてみれば余計なお世話かもしれないし、言葉を間違えばわたしが偽善者として映ってしまうのは避けられない。
 そのため第二に思いつく運命的な出会いの旨を話すことにする。

「たまたま席が近くて、入学式の日にわたしが話した初めてのクラスメイトだったから、かな」

 クラス内が自己紹介をしようと話している中、彼女が気分を悪そうにして教室を出て行く姿は記憶に新しい。席が近くなければ彼女の顔色は伺えなかったし、結果として彼女が駆け込んだトイレで数言交わすこともなかった。

「ぁ……そう、なんですね。すみません変なこと聞いてしまって。他意は無いんです。春宮さんが良い人ってことは分かっていますから」

「良い人って言われると少し照れるけど、ありがとう。そう言って貰えると嬉しいよ」

 疑惑が晴れたためか、その後は純真な目をして色々なことを話すことが出来た。
 好きなこと、好きな食べ物飲み物、春夏秋冬でどれが好きか、誕生日について。
 他愛のない話。ほんの雑談程度の話。
 それでも彼女は、わたしに心を開いてくれた。
 この調子で席の周りの子と話せるように調整できれば、今月中には人見知りも多少緩和されるだろう。
 彼女が半歩ずつでも前進できることを隣で、あるいは後ろの席からサポートしていきたいと思う。


182 ◆yOpAIxq5hk2021/09/16(木) 08:40:11.62DpbNaL2rO (3/3)

【週末イベント安価です。
 1.ケヤキモールへ
 2.人と会う
  1.早見有紗 (前の席の女子)
  2.一色颯 (クラスをまとめる男子) ?  3.一之宮重孝 (全国模試二位の男子) ?  4.宮野真依  (水泳で競い合った女子)
  5.錦山暁人 (信頼できる生徒会長)
  6.花菱乙葉 (信頼できる生徒副会長)
 3.寮で過ごす
  勉強と運動の必要性がまったく無いため、先日購入した料理の本を読んで料理スキルアップです。
 2の場合は「2-1」などでお願いします。
 下1でお願いします。

 春宮天音
 学力:97(綾小路) ? 身体能力:99(綾小路) ? 直感・洞察力:91(坂柳) ? 協調生:53(1年後半堀北) ? 成長性:74(高) ? メンタル:86(龍園) ? 料理:27(苦手)】


183以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/16(木) 10:26:30.40MPje5HRm0 (1/1)




184 ◆yOpAIxq5hk2021/09/16(木) 22:32:00.95eLEr/yxwO (1/2)

【>>183
 1.ケヤキモールへ】

 高校生活6日目。
 初めての週末、いつも通りの時間にわたしは目を覚ます。平日でも休日でも、こういう習慣的なところは高校生になっても変わらない。
 窓を開ければ春の風が部屋中を満たし、爽やかな気持ちにさせてくれる。身体を伸ばし、深呼吸をすると頭がクリアになっていくのが分かる。
 ちなみにわたしの部屋は11階であり、近い距離に高い建物は無いためカーテンを開けても部屋の中を覗かれる心配は無い。ただ、目の前に見える学校から望遠鏡を使えばその限りではないかもしれない。
 下らない思考は捨て、まずケトルでお湯を沸かす。
 湧き上がるまでの時間を使って顔を洗い、寝間着から部屋着に着替え、洗濯機を回すとちょうどケトルは電子音を鳴り響かせる。
 お気に入りのマグカップとアソートティーバッグの中から気分で紅茶を選択してケトルをカップへ傾ける。
 ベッドに腰をかけ、マグカップを軽く口元へ傾けることでようやく一日の始まりを実感する。
 さて、今日はどうしたものか。
 特別、連絡先を交換した人からの誘いはない。
 こちらから誘うにしても、この週末を利用して平日には出来なかった買い物をする人も多くいるだろう。
 ベッドの上で軽く身体を解しながら考えていると、ひとまず今日の予定が決まる。

「よし、決まった」

 そう声に出して、わたしはケヤキモールが開店する10時前まではインターネットサーフィンをすることにした。
 部屋に備え付けられたデスクトップパソコンは、動画を見たり調べ物をするのには最適だ。おそらく銃を使ったりするゲームは出来ないだろう。
 日本国内外を問わずトレンドになっている記事を眺め、ただただ時間を潰す。


185 ◆yOpAIxq5hk2021/09/16(木) 22:32:28.19eLEr/yxwO (2/2)


◇◇◇

 9時50分に外行きの服に着替えて寮を出る。
 ロビーには多数の一年生が居た。待ち合わせをしている者、ケヤキモールの開店時間までもう少し待機する者など、ざっと二十人程度。同じクラスの男子も居たが、特に話す込むようなこともなかった。
 桜が散りつつある並木路を通ってケヤキモールへ。
 入り口の前には学年を問わずチラホラと学生が開店待ちをしていた。わたしは少し離れた日陰でジッと待つ。
 誰かと話すこともなく、邪魔にならない場所でアプリゲームを少しだけ進めて待っていると10時になる。
 わいわいとモールへ入り込む学生。
 あっという間に入り口付近は人が疎らとなり、その頃を見計らってわたしも入店する。
 今日の目的は、特にない。
 この学校に通う限りはこの敷地内でしか生活ができないため、暇つぶしといえばモールを訪れてショッピングくらいしかないのだ。
 本屋で時間を潰すも良し、おそらく買う機会の無い高級家具や家電製品に触れるも良し。娯楽施設の整った4階で遊ぶのも良いだろう。ゲームセンター、カラオケ、ボウリングまで揃っている。いずれも小規模だが、順番待ちなどは携帯から確認ができる。少なくとも今は待ち時間なく遊べるはずだ。
 そんなことを考えながら、わたしは徘徊する。


【安価です。
 1.カラオケ(イベントなし。この後音楽センスについて安価実実施)
 2.ボウリング(コンマ1桁が3・7で生徒会のメンバー)
 3.本屋(コンマ1桁が1・5・8・0で荒垣)
 4.食品売り場(コンマ1桁が1・4・7・0で神宮)
 5.カフェ(コンマ1桁が2・5・9で宮野)
 選択と同時にコンマ判定でイベントの有無も行います。
 下1でお願いします。】


186以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/16(木) 23:50:23.30rk80RbES0 (1/1)

1


187 ◆yOpAIxq5hk2021/09/17(金) 00:41:24.73aQQAOj52O (1/1)

【>>186
 1.カラオケ】

 わたしはケヤキモール内の4階にあるカラオケへやって来た。開店から間もないこともあり、4階というフロア自体にも人の姿は少ない。そんな中でもカラオケの受付はガラッと空いていた。
 受付のお兄さんと数言交わして3時間コースを取り、学生証端末を専用の装置にかざして手続きが完了する。
 この後誰かと待ち合わせの予定は無かったがマイク2本を受け取り、指定された部屋へと赴く。
 室内はとても綺麗で十人弱は優に入れそうだった。
 そんな広い部屋に荷物を置いた後、フリードリンクを取りに行く。ジュース各種、お茶各種、コーヒー、水、さらにはコーンスープまで。
 少し迷った末、わたしはボタンを押して緑茶を注ぐ。なんとなくジュースの気分でもコーヒーの気分でもなかった。
 ドリンクの入ったグラスを手にして部屋へ戻る。
 そこに誰かが居るわけでもなく、改めてこの広い部屋で喉を潤す。

「あ、ここにはないんだ」

 ふと天井を見上げ、監視カメラが無いことを確認する。
 学校では教室や廊下、ケヤキモールでは基本的に全ての店舗、通路、またカラオケの受付にも監視カメラが設置されていることを何となく把握していた。
 しかしこの個室はプライバシーのためかカメラが設置されていない。大人数での密会にはうってつけの場所なんだろう。
 と、そんな分析はそのくらいにして。
 カラオケに来た理由はただひとつ。
 そう、─────。

【天音の音楽センスについて。
 歌唱センスもそうですが、楽器センスも込みです。
 下1のコンマ2桁を反転でお願いします。
 例: 27 → 72
 ゾロ目は再安価の権利になります。
 この場で再安価でも良いですし、この先のコンマ安価です再安価の権利を使用することもできます。】


188以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/17(金) 01:37:36.41H5MRl3BF0 (1/1)




189 ◆yOpAIxq5hk2021/09/17(金) 05:22:28.23xdm9w7UYO (1/1)

【>>188
 41 → 14(下手)】

 そう、わたしには音楽的なセンスが欠けらもない。
 中学生の頃まではなんとかなっていたが、もうそれも限界だろう。何より学校の敷地内にこのカラオケ施設がある時点で今後の付き合いは免れない。
 わたしは前向きに短所を克服するため、初めてのカラオケに一人で来たのだった。

「よし」

 歌を歌うだけで音楽センスが光り輝くとは考えにくいが、何事も挑戦を繰り返し成功と失敗を積み重ねて学習するだけだ。
 帰りに本屋で楽器や歌に関する本の購入を視野に入れて、わたしは3時間歌い続ける。
 およそ人様に聴かせられるような歌声では無かったと思うが、幸い今日のわたしは一人。防音性もかなり優れたこの部屋からわたしの声がすることはなかっただろう。
 3時間後、わたしは1500ポイントと高くも安くもないポイントを支払って誰にも見られることなく退出することに成功する。
 実感として、ほんの少しだけ音楽というものに理解を示せた……というのは気のせいだろうか。


【安価です。
 次に行く場所について(昼)
 1.本屋(料理もしくは音楽に関する本の購入可能)
 2.食品売り場(この後寮で料理をしてスキルアップ)
 3.寮へ戻る(先日購入した料理の本を読み切る)
 下1でお願いします。

 また、今回カラオケを行ったことで春宮天音の音楽センスがレベルアップします。
 上の安価平行してコンマ安価を行います。
 コンマ2桁反転(例17 → 71)で、下記の通り音楽センスが上昇します。
 01~29:2
 30~49:3
 50~79:4
 80~89:5
 90~98:7
 ゾロ目:10
 ※成長率74(高)ボーナス込みです。】


190以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/17(金) 07:58:25.23LlEwAkmH0 (1/1)

2


191以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/17(金) 08:09:43.93Vlvkm0P+o (1/1)

趣味的技能の能力がかなり低い…真面目系かな


192 ◆yOpAIxq5hk2021/09/17(金) 08:38:14.21HxUFjgJ7O (1/1)

【>>190
 音楽センス 23 → 32 :3上昇
 14 → 17

 今のところのステータスです。
 学力:97(綾小路)
 身体能力:99(綾小路)
 直感・洞察力:91(坂柳)
 協調生:53(2年堀北)
 成長性:74(高)
 メンタル:86(龍園)
 料理:27(苦手)
 音学:17(苦手)

 続きは今晩にします。
 お疲れ様でした。引き続きお願いします。】


193 ◆yOpAIxq5hk2021/09/17(金) 21:59:52.10wAYHW6+C0 (1/7)

【再開します。】


194 ◆yOpAIxq5hk2021/09/17(金) 22:00:17.56wAYHW6+C0 (2/7)

【>>190
 2.食品売り場】

 10時きっかりに入店してカラオケで3時間を費やす。
 すると時刻は13時を回っていて、歌い続けていたことも手伝ってお腹が空いてきた。
 カラオケのある階から1つ下の階まで移動すれば様々な飲食店が立ち並んでいたが、わたしはエスカレーターを降りながらそれをスルーして1階の食品売り場へと向かう。
 そこは地元のスーパー顔負けな品揃え。
 スーパー内で調理されたお弁当やお惣菜、パンから始まり、生鮮食品、調味料、冷凍食品、インスタントラーメン、お菓子、飲み物など。本当に全てが揃っていると言っても過言ではない。
 わたしはカゴを持ち、調理済みのコーナーをスルーする。今日ばかりは自炊に挑戦しようという気構えだからだ。
 生鮮食品コーナーに着くと、無意識のうちに手を顎に当てて考えこんでしまう。
 さて、どうしたものかと。

「……」

 周囲の人は疎らであるため長時間立ち尽くしていてもそれほど迷惑にはならない。
 時間をたっぷりと使って、高確率で失敗を回避できそうなレシピを思い浮かべる。


195 ◆yOpAIxq5hk2021/09/17(金) 22:00:50.02wAYHW6+C0 (3/7)

 ここでふと、先日購入した料理の本の序盤に書いてあったことを思い出す。それは初心者がまず挑戦するべき料理の系統について。

「煮込み……」

 それは決まった食材を切って、鍋に入れて決まった時間加熱するだけの調理法。炒め物などとは異なり、スピード感が求められない料理は初心者向けらしい。
 もちろん世間一般の初心者よりもわたしの手際が劣っている可能性もあるが、誰かに食べさせるわけでもない。第一歩として挑戦してみる価値はある。
 そうと決まればわたしは本屋で立ち読みしたレシピを思い出す。
 チキンのトマト煮込み、煮込みハンバーグ、ビーフシチュー、極論クラムチャウダーとかも煮込み料理なのかな。いや、ということはお味噌汁も煮込み?
 煮込みという言葉がゲシュタルト崩壊を起こす中、せっかくなら挑戦してみたいという気持ちが強くなるのを実感する。
 立ち尽くしていた時間は20秒ほど。
 わたしは最初に思いついたチキンのトマト煮込みを作るため、レシピ本に書かれていた食材と調味料をカゴの中へと入れていった。
 お会計は5020ポイント。
 かなり行ったなぁ、と思ったが、今回使用する調味料以外にも普段使い用の調味料を揃えたのが大きかったと思う。あと5キロのお米も買っておいたため、それらの合計と考えれば納得だ。
 寮まで持って帰るのが億劫だなと考えていると、お会計金額が5000ポイント以上を超えた場合は寮まで運んでくれるサービスもあるらしい。狙ったかのようにサービスを受けれる金額のため、わたしはお願いすることにした。
 さぁて、料理、頑張るぞー!
 心の中で自らを鼓舞して、軽い足取りで寮への帰路に着く。

【コンマ安価です。
 現在の料理スキル:27(苦手)
 ゾロ目:大大成功(8ポイントアップ)
 7:大成功(5ポイントアップ)
 1・5・:成功(3ポイントアップ)
 2・4・8:微妙(1ポイントアップ)
 3・6・0:失敗(2ポイントダウン)
 下1でお願いします。】


196以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/17(金) 22:03:44.40LtXuTJN+0 (1/1)

スパイクタンパク単体で心臓やその他臓器に悪影響を及ぼすことがわかっています

何故一旦停止しないのですか

何故CDCが接種による若い人の心筋炎を認めているのに情報発信がないのですか
20代はたった1ヶ月で接種後死亡がコロナ死と同等になってます
因果関係の調査は?


197 ◆yOpAIxq5hk2021/09/17(金) 22:56:36.37wAYHW6+C0 (4/7)

【>>196
 0:失敗】

 結果だけ簡潔に述べると、わたしは失敗したらしい。
 やや酸味と塩味が強く、鶏肉の食感も合格点には程遠い。あらゆる面で劣っているソレは、失敗と称するに相応しい出来だっただろう。
 自分のポテンシャルの低さを想定して少なく作っていたことが幸いして食べきることは出来た。確かに空腹は満たせたが、それは有意義な食事ではなかった。
 レシピを立ち読みで覚え切った罰か。
 しっかりレシピ本を購入することを視野に入れ、また料理が得意な人に教わることを前向きに検討して片付けを始める。

「わたし、料理の才能ないのかな…」

 わたしはそう呟いた。
 食器についた泡を水で流す音で相殺されてしまいそうなほど小さな声は、わたしが胸の内でショックを受けていることを明確に示していた。
 なんだか料理の腕が落ちた気がする。


【料理スキル 27→25】



198 ◆yOpAIxq5hk2021/09/17(金) 22:57:09.15wAYHW6+C0 (5/7)

◇◇◇

 週明け、高校生活も2週目に突入した。
 今日は朝から全校集会が予定されている。
 わたしは講堂へと向かう途中で伊藤先生に呼び止められ、本来生徒が集まる場所とは異なる場所で待機することとなる。

「天音ちゃん、おはよー。元気元気?」

「乙葉先輩、おはようございますっ。週末にちょっと嫌なことがありましたけど、元気です!」

「ん、嫌なこと? 相談してね、ユキちゃんに!」

 乙葉先輩の隣に居る如月深雪先輩─────通称、ユキ先輩は生徒会におけるわたしの直属の上司というか指導役になる。
 今後生徒会の仕事だけでなく、もしかしたらプライベートの相談にも乗ってくれるかもしれない。

「おい、……まぁ、私で良ければ相談には乗るが」

「もう一回挑戦してみて、挫折しそうになったら相談させてください!」

「何のことかは知らないが、自分の中で一区切りつくまで挑戦するのは良い心掛けだな。そして壁に当たったときは早めに相談するのも良いだろう」

 早速ありがたいお言葉を頂戴し、わたしはユキ先輩と他愛も無い雑談を幾つか交わす。
 気が付けば全校集会は始まっていて、どうしてわたし達がこんなにも私語に花を咲かせることができるのか。それは舞台袖に待機しているからだ。


199 ◆yOpAIxq5hk2021/09/17(金) 22:57:37.79wAYHW6+C0 (6/7)

 周りには生徒は居らず、先生も居ない。
 ただ、ほんの少し前へ踏み出せば全校生徒の注目の的となるポジションだ。当然、緊張はしている。
 後ろに居る神宮くんは膝を震わせているほどだ。

「天音ちゃんは結構大丈夫そうだね。こういう場所って慣れてるの?」

「いえ、まったく。ただ緊張しすぎても意味がないって自分の中で折り合いをつけているだけです」

「お、いいねぇ。そーいうの大事だと思うよ」

「おい、そろそろだぞ」

 ユキ先輩の言葉に、わたし達は口を閉じる。
 向こう側の舞台袖から錦山先輩─────錦山暁人生徒会長が全校生徒の前に立つ。
 息を呑む音が聞こえて来そうな緊張感だった。
 淡々と進行を進めていき、今年度の生徒会メンバーを発表する場へと移る。
 役職順に呼ばれていき、三年生の書記であるユキ先輩が呼ばれた。その次は─────わたし。

「書記。一年Dクラス、春宮天音」

「はい」

 なるべく生徒のことは視界に入れず、ユキ先輩の隣に立つ。前を向くと、嫌でも無数の生徒が視界に入る。決してわたしを見ている訳ではないと理解していても、見られていると錯覚してしまう。
 舞台上からは全校生徒の顔がハッキリと見えた。
 同じクラスの生徒はとても驚いた表情をしている。
 ここまで内緒だと箝口令が敷かれていたとはいえ、かなり申し訳ない気持ちになる。
 副会長以下九名が錦山生徒会長の後ろに立つと、そのまま錦山生徒会長は締め括りの言葉を口にする。


200 ◆yOpAIxq5hk2021/09/17(金) 22:58:14.56wAYHW6+C0 (7/7)

 これでお披露目の式は完遂された。
 舞台袖に戻ると、わたしはふぅっと息を吐く。

「緊張したか?」

「そう、ですね。やっぱり緊張しました」

「まぁ、程良い緊張は、人を成長させるための良い刺激になるだろうよ」

 ありふれた言葉かもしれないが、良いことを言う先輩だなと改めて実感していると、全校集会そのものが締め括られる。
 ここで一旦わたしたちも解散となり、また放課後に生徒会室で集まるようにと指示を受ける。
 各々が教室へ戻っていく中、わたしは同じ一年で戻る方向も同じな神宮くんに声をかける。

「一緒に戻ってもいい?」

「うん、もちろんだよ」

 中性的な顔立ちをする彼がそう頷くのを確認後、わたしは彼と肩を並べて教室までの廊下を歩く。

「緊張したねー。ただ立っているだけなのに、もう膝から崩れ落ちちゃいそうだったよ」

「僕は舞台袖に居た頃からずっとそんなかんじだったよ。錦山先輩はすごいなぁ、あんなに堂々と話しているんだもん」

「そうだね。経験の差があるとはいえ、自分が全校生徒の前で話す想像はつかないよね」

 そんなことを話していると、あっという間に教室前へと到着した。講堂の方からだとAクラスが近く、また放課後に合流する約束を神宮くんとして別れる。


【イベント安価です。
 奇数:白髪の男子生徒
 偶数:1年Dクラス
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


201以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/18(土) 00:05:03.98R5d3OilN0 (1/1)

へい


202 ◆yOpAIxq5hk2021/09/18(土) 21:00:44.61OvX+OJOdO (1/4)

【>>201
 8:1年Dクラス】

 Aクラス前の教室で神宮くんと別れ、Bクラス、Cクラスの前を通っていく。もう間も無くホームルームであるためか廊下で人とすれ違うことなく、Dクラスの教室、その後方の扉の前に立つ。
 わたしの席が窓側の一番後ろであるため、登下校のときは良くこちら側の扉を利用している。全校集会後も例外でなく、自然と足が伸びてしまった。
 扉の前で小さく深呼吸をする。

「……ふぅっ」

 生徒会の役員になることが決定してから約五日。
 クラスの人には黙ってきた。
 そして先ほど集会の場で全員に知れ渡った。
 この扉の先には、どんな感情が渦巻いているのか。

「よし」

 扉を開けると、全員の視線を一斉に浴びる。
 わたしは特に何もなかったかのように自分の席に着こうとするが、やはりそうは問屋が下さない。
 まず水泳の授業を通して仲良くなった宮野さんが駆け寄ってくる。それから彼女と仲の良い女子も数名。

「春宮さんっ! すごい! 生徒会なんて!」

「そ、そうかな? たまたま声をかけて貰ってね?」

「良いと思うよ! 本当は水泳部に入って欲しかったけど、生徒会なら納得ってかんじ!」

 この中に生徒会入りを希望していた人が居たとすれば、わたしは憎まれる対象になるかもしれない。
 ただ、そんな人はいなかった。
 おおよそ想定通りの祝福ムードといえる。


203 ◆yOpAIxq5hk2021/09/18(土) 21:01:15.20OvX+OJOdO (2/4)

 それから数言交わしていると、伊藤先生がホームルームのため教室前方の扉から入ってくる。宮野さん達が席に戻るのを見送って、わたしも席に着く。

「全校集会お疲れ様でした。ご存知の通りかと思いますが、このクラスから春宮さんが生徒会の書記となりました。色々と頼りにするのは結構ですが、頼りすぎないよう注意してください」

 どうしてか今日の伊藤先生の背筋は伸びているように見える。クラスから生徒会役員が出た為か。
 わたしの観察を知る由もなく、先生は続ける。

「なお、学校の歴史を見ても1年Dクラスから生徒会役員が出たことはありません」

 そこでわたしは首を傾げる。
 なんだか奇妙な言い回しに聞こえたからだ。
 1年Dクラスから生徒会役員が出たことがない?
 偶然そういうこともあり得るの……かな?

「連絡事項は以上です。1時間目の準備をするように」

 そう言い残して出席簿を片手に教室を出て行く先生。それと入れ替わるように数学担当の先生が教室に入ってきた。
 後を追って話を聞こうかと思ったが、それを阻まれた形となる。友達同士の雑談も出来ないまま、わたしは数学のノートを机に出し、タブレット端末から数学の教科書を起動する。


204 ◆yOpAIxq5hk2021/09/18(土) 21:01:50.95OvX+OJOdO (3/4)

◇◇◇

 放課後、わたしはAクラスの教室前まで来ていた。
 お昼休みに神宮くんとチャットをして、今日の放課後は一緒に生徒会室へ行くことを約束していたからだ。
 1分ほど外を眺めて待っていると、彼はやって来る。

「ごめん、お待たせ」

「ううん。大丈夫だった? お友達とか」

「先生と少し話していただけだから。さ、行こっか」

 神宮くんと並ぶように生徒会室へと向かう。
 わたしとしては道を引き返す形となり、Bクラス、Cクラス、そしてDクラスの教室の前の階段を使って降りる。
 道中、かなり多くの人に注目されていて緊張する。
 生徒会役員になったからには、あまり恥ずかしい真似はできない。1人カラオケとかしていると後ろ指を指される、なんてことも。
 そんなことを考えていると生徒会室前へ到着する。
 前に訪れた時と異なり、ノック等は不要らしい。ただ『生徒会(仮)』のチャットに入室する旨を書くように言われている。
 内山先輩曰く、

「生徒会のメンツでノックなんて他人行儀だろ? だからと言って何の前触れも無しに扉を開けるのはノーだ。俺たちは一応ゲームしているのを後ろめたく思ってるからな。先生かと勘違いする。つまりチャットで連絡しろってコトだ」

 とのこと。


205 ◆yOpAIxq5hk2021/09/18(土) 21:02:27.24OvX+OJOdO (4/4)

 今回は神宮くんがチャットを送ってくれた。
 特に返事がある訳ではないため、そのまま扉を開く。

「おっつー」

 この前と同じくソファで寝転がる乙葉先輩。
 生徒会長である錦山先輩はユキ先輩に生徒会長席を奪われて内山先輩の隣に座っている。今日も今日とてゲームで盛り上がっているみたいだった。

「暇なのかな」

「乙葉ちゃーん、声に出てるー」

「まぁ間違ってはいない」

 ハッと口元を抑えるが手遅れだった。
 しかしそんなわたしを嗜めることなく、ユキ先輩が同調してくれた。この人はかなり真面目系だと思っていたが、例に漏れず混ざってゲームをしていた。

「ま、適当なところ掛けてよ。この部屋、無駄に広いし、役員分以上に椅子もあるんだしさ」

 そう促されてわたしと神宮くんは端の方に座る。
 さて今日は何をするんだ?と考えていると、


【イベント安価。
 奇数:「水泳部が新生徒会に宣戦布告だって!」
 偶数:「あと10分もしたら他の連中も来るだろ」
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


206以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/18(土) 23:13:00.67XFclaIk5O (1/1)




207 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 14:00:10.89wv2ppvvR0 (1/13)

【>>206
 7:「水泳部が新生徒会に宣戦布告だって!」】
 
「おっと。今年は早いなぁ」

 ゲームを嗜む乙葉先輩が小さく呟いて数秒後、鞄の中に入れていた携帯が通知を知らせてくる。
 わたしは鞄から、神宮くんはブレザーのポケットに入れていた携帯を取り出そうとしたとき、乙葉先輩がソファの背もたれに掴まって起き上がる。同時に錦山先輩と内山先輩、生徒会長席で寛ぐユキ先輩までもが立ち上がった。

「よし、行くぞ」

 錦山先輩が先導して生徒会室の扉から廊下へ出る。
 ひとまずわたし達も立ち上がり、並行して携帯に届いた通知を確認する。想定通り『生徒会(仮)』のグループチャットに向けて一通の連絡事項が届いていた。
 その内容は─────。

「なーにしてるの? 行くよ?」

 その連絡事項の意味が分からず立ち尽くすわたし達に上機嫌な乙葉先輩が声をかけてくれる。
 わたしは改めて連絡事項の一文を読み返すが、やはり理解が追いつかない。無理に考えるのは諦めて、携帯の画面を先輩に見せながら訊いてみる。

「水泳部と対決するからプール集合ってどういう意味ですか?」

「そのままの意味だよ? 宣戦布告されたから、ちょっと懲らしめに行ってやろうってね」

「懲らしめる……」

「そうそう。新生徒会の力を見せてやろうじゃないかってハナシ。売られた喧嘩は買うのが生徒会だからねー」

 言っている意味は理解できたが、行動に移す意味が分からない。ただそれでも先輩方が決めたのなら、下級生であるわたしが否定する権利もない。
 わたしと神宮くんは顔を見合わせてお互いの動向を伺うが、それもほんの少しの間だけ。
 二人揃って乙葉先輩の後を追うように生徒会室を出る。

 新生徒会が発足して初日。
 早速、この生徒会室は無人の部屋となった。


208 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 14:00:41.73wv2ppvvR0 (2/13)

◇◇◇

 プール前に新生徒会の全員が揃っていた。
 今朝の全校集会前に軽く挨拶をしただけの先輩が四人もいる。いずれも一学年上の二年生だ。
 急にプール集合となったことについて何の疑問も抱いていないようで、「またか」とか「勝てば済む話だろ」など和気藹々としている。
 ここで錦山先輩が手を2回叩き、わたしを含めた新生徒会メンバー全員の注目を集める。

「さて」

 そう一間置いて、話し出す。

「乙葉の連絡通り、まぁ例年通りのアレだ。水泳部に喧嘩を売られた。部費を増やせとか、生徒会が偉そうにしているのが気に入らないとか、役員に対しての私怨とか、乙葉がポイントを返さないとか、そういうのじゃねぇ」

 最後のは喧嘩を売られるどころか、教師を巻き込んだ苦情になりかねない案件だと思うが、ここで口出しは出来ない。先輩の言葉は続く。


209 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 14:01:16.98wv2ppvvR0 (3/13)


「売られた喧嘩は買う。そしてタダでは済まさない。俺たちが勝てば向こうの奢りで飯だ。神宮、十九時からケヤキモールの焼肉屋を予約しておけ」

「は、はい」

「名義は三年Bクラスの麻倉だ。人数は……」

「今朝の時点で水泳部は27名、生徒会を併せて37名です。顧問の大島先生を入れると38名になります」

「とりあえず40人分の席を取ってくれ。残りは適当なヤツを呼んでおく」

 途中、副会長の1人である二年生の佐倉新汰先輩の一言もあり、予約人数が決定する。隣の神宮くんは早速携帯で予約を取り始める。
 それにしても、なるほど。
 水泳部との競泳対決。勝てば向こうお奢りで焼肉。
 非常に魅力的だと思う反面、言及していなかったが負ければこっちの奢りになる可能性は充分にある。それを考えるとやや頭が痛いが、先輩たちの余裕そうな振る舞いからして勝機はあるんだろう。
 競泳対決の時点で向こうにかなりの分がある。タイムか距離か、メンバーの選出でハンデが設けられてようやく互角といったところか。

「やるからには勝つ。いや、勝たないとヤバい。この10人で教師を除く37人分を奢りは笑えない」

「ちなみにわたしの残ポイントは0だからね!」

 引きつった笑みを浮かべる乙葉先輩以外の面々に対して、本人は満面の笑みだった。よほど焼肉が楽しみと見える。それは勝つことを確信しているから…かな。
 何も考えずにノーリスク・ハイリターンを望んでいるのなら、一刻も早くその認識を改めて欲しい。

「どちらにせよこの後は親睦会の予定だった。向こうの奢りになれば、この上なく最高だろ?」

 その一言に、新生徒会は盛り上がる。
 一方、わたしは頭の中で1人あたりの出費を算出してしまい、どうにも盛り上がれないでいた。
 この対決は、今後わたしが人並みな生活を送れるかどうかが決まる重大な分岐点になる。もしわたしが選出されるようなことがあれば、その時は勝利を取りに行くしかないだろう。


210 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 14:01:52.22wv2ppvvR0 (4/13)

◇◇◇

 競泳100メートルを最大3回行い、2回勝った方が勝者として奢りの恩恵を受けられるというルールになった。
 勝敗を決するには良いルールだと思う反面、水泳部との直接対決となれば飛び込みや50メートル地点でのターンなどの技術力も勝敗に大きく関わってくる。つまりハンデがそれなりに大きくなければ勝ち目は薄いだろう。

「で、ハンデについてだが─────」

 水泳部の部長である麻倉舞香先輩が錦山先輩に提案しようとしたところで、

「ハンデは要らない。ウチには超絶優秀な新人が入ってきたからな。ユキとアイツで2回の勝ちは取れる」

「あのDクラスのヤツか。なかなか傾奇者だな、貴様も」

 ジッと頭から爪先まで舐められるような視線で見られると、わたしは一歩後退りをしてしまう。

「噂には聞いていたが、とてもそうは見えないな」

「まぁやってみろって。お前がアイツとぶつかっても良い。なんであれ勝つのは俺たちだ」

「大した自信だな。で、選出は?」

「新汰、ユキ、天音だ」

「承知した。こちらからも男子生徒1人、女子生徒2人で対決と行こう」

 以上で、生徒会長と水泳部部長の会合は終わる。
 わたしが泳ぐのは確定のようだった。
 数時間前の授業に続いて、まさか1日に2回も水着を着ることになるとは思わなかった。
 まぁ、やるからには勝とう。数時間後にはなんの憂いもなく焼肉を食べられることを願って。


【安価で試合結果を決めます。
 天音の身体能力もあるため高確率で勝利です。
 4・8:水泳部勝ち
 それ以外:生徒会勝ち
 ※ゾロ目の場合も生徒会勝ちとなります
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


211以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/19(日) 14:55:46.564ORJfrtnO (1/1)




212 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 15:42:55.96wv2ppvvR0 (5/13)

【>>211
 6:生徒会の勝利]

 新汰先輩は水泳部の次期部長候補である新山先輩のタイムに僅かに届かず、ユキ先輩は去年の雪辱戦だと名乗りを挙げた倉島先輩に勝利を収める。
 そして迎えた勝っても負けても最後の対決。
 結果として、わたしは水泳部部長の麻倉舞香先輩に勝利した。つまり生徒会側の勝利が確定する。

「よーしっ! よくやった、天音!」

 先輩方が非常に喜んでいるのを確認した後、プールに入ったまま隣のレーンの麻倉先輩を労う。

「お疲れ様でした、麻倉先輩」

「なんだか嫌味っぽいが、まぁ素直に受け取っておくことにしよう。それにしても噂の一年がここまでだとは思ってもいなかった。学年差も水泳に対しても私の方がずっと先輩だと思っていたのだがな」

「少しだけ運動には自信があるんです」

「それ、同じクラスの宮野にも言ったみたいだな」

 視線を横にずらすと、宮野さんがこの対決の様子を伺っていた。もう彼女からわたしという存在については聞き取り調査済みらしい。


213 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 15:43:32.77wv2ppvvR0 (6/13)


「負けたのは事実だ。完敗だった」

「もしよろしければ、再戦させてください」

「それは負けたヤツの台詞だ。またわたしに負けろって言いたいのか?」

「そ、そうじゃないですっ」

「はは、冗談だ。まぁとりあえず上がるか」

 たった100メートルくらいで疲労感は無く、わたしはプールサイドに上がる。そこには神宮くんがタオルを持って待っていてくれた。

「お疲れ様。間近でオリンピックを見ているような気分だったよ」

「それは言い過ぎじゃない? でも、確かに勝ったよ」

「うん、ずっと見てた。瞬きを忘れるくらいに」

 この対決が始まる前、わたしは神宮くんに一つ約束をしていた。
 『わたしは必ず勝つ』と。
 実力の測れない麻倉先輩相手では勝てるか不安な部分もあったが、自分を信じて競技に臨んだ結果、無事に約束を果たすことができた。
 その後に上がってきた麻倉先輩には水泳部の女子生徒がタオルを手渡し、軽く水滴を拭き取った後で錦山先輩のもとへと寄る。

「この勝負、私たち水泳部の負けだ」

「ウチの新人は有望だろ?」

「あぁ。本気で水泳部に欲しくなった。春宮、これからの放課後、休日、暇なときはここへ来い。部員でなくともお前ならいつでも大歓迎だ」

 生徒会役員である以上、水泳部に入部することはできない。しかし部長直々にお許しを戴いたとなれば、今後自由に練習に参加することは出来るのだろう。
 暇なとき、ここに寄るのもありなのかもしれない。
 そんな予期せぬ収穫もありながら、第一の目標であった焼肉を奢って貰える権利を獲得した。
 乙葉先輩がとても喜んでいるようで何よりだ。


【休日に水泳部を訪れることが可能になりました。
 ここで1年Dクラスの雰囲気を安価で決めたいと思います。
 7・0:生活態度が真面目なクラス
 その他:授業中の私語・遅刻欠席が頻発するクラス
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


214以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/19(日) 16:23:28.07eg9sxgS10 (1/1)

へい


215 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 18:14:50.15wv2ppvvR0 (7/13)

【>>214
 7:生活態度が真面目なクラス
 少し時間が飛びます。

 四月下旬の週末。
 ゴールデンウィークを目前に控えた頃。
 昨日と今日の各授業で小テストが行われた。
 その内容は中学三年生程度の簡単なものから昨日の授業で習ったことをそのまま出すといった、比較的難易度の低いテストだったと言える。
 少し気になったのは成績には反映されないと前置きがあったこと。あくまで現時点の学力を測るため、と先生は言っていたが、その真意は汲み取れない。
 各々が本気でやるにしても手を抜いてやるにしても、やや緊張感のある二日間を超えたからこそ、金曜日の放課後には緩みが生じる。

「でさ、今日の帰りはどうする?」

「来週にはさ、またポイントが振り込まれるわけだし、ちょっと良いもの食べたいよね」

 食べ物、服、家具と。
 週明けの1日に振り込まれるポイントをあてに、各々が財布の紐を緩めようとする。
 わたしは教室を出て行く彼女らの背中を見送りながら、ひとり教室の端の席で現状を整理する。


216 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 18:15:18.31wv2ppvvR0 (8/13)


 まず、この1年Dクラスにおけるリーダー的存在について。
 男子生徒では間違いなく、初日に自己紹介を提案するなど様々な場面でクラスを引っ張っていった一色颯くん。生活態度も真面目そのもので、このクラスだけでなく他のクラスの人、さらには部活動を通して上級生にも伝手が生まれているらしい。
 女子生徒は幾つかの派閥に分かれていることもあり、一人に絞り込むことは難しいが、ある程度の勢力図は目に見えている。
 宮野真依。水泳を通して仲良くなった彼女は気立が良く、クラスの女子のおよそ半数を率いるほどになった。聞いた話では一色くんと良い雰囲気だとか。
 倉敷春香。コミュニケーション能力と分析力に優れていて、まるで相手が望む言葉・行動が分かっているように事を進めることで信頼を構築している人物だ。クラス内からの信頼度は宮野さんには一歩劣るが、クラス外の伝手はかなり有力だと見える。

 その他、人を率いる力は無いものの学力や身体能力が秀でている生徒は何人も居る。実際に授業を通してその能力の片鱗が垣間見えている。
 他クラスの雰囲気はあまり把握できていないが、なかなか優秀なクラスだと素直に思った。無断欠席や遅刻、もちろん暴力事件は起こっていない。
 授業中に少し話したり、眠くなる程度はご愛嬌だろう。


217 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 18:15:53.07wv2ppvvR0 (9/13)

 わたしが入学間もない頃に危惧した事態は回避されたと見ても良い。これで一安心して月初を迎えることができる。
 そう、思っていたとき─────。

「Bクラスのヤツが退学になったってよ!」

 つい先ほどクラスを出ていったばかりの、クラスメイトの一人が慌てた様子でそう言い放った。
 退学? 聞き間違い?

「なんか派手に喧嘩したみたいでさ。Cクラスのヤツがひでぇ怪我してて、それをやったのは俺だってBクラスのヤツが自白したらしくて……」

 このクラスから加害者と被害者が出なかったのは幸いだが、その話は非常に居た堪れないものだった。
 怪我の具合も気になるし、退学という処罰の重さ。殴って蹴って骨折程度でも停学が落とし所だと思い込んでいた。
 わたしはその話を一番よく聞けそうなBクラスの前へと赴く。するとBクラスの前だけやけに人が集まっているのが遠くから見ても分かった。
 その中に神宮くんが居るのを視認して近付く。

「あぁ、春宮さん。聞いた? あの話」

「うん。でも、信じられなくて─────」

 その時、ガラッとBクラスの扉が開かれる。


218 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 18:16:26.06wv2ppvvR0 (10/13)

 先には一人の男子生徒が居た。

「チッ、もう馬鹿共が寄ってやがる。人の噂ってのはあっという間に広がるもんだな。なぁ、宇垣」

 見覚えのある銀髪の男子生徒に続くように、体格の良い男子生徒が三名出てくる。その内の一人、おそらく宇垣くんは同調するように笑みを浮かべる。

「今日はアイツの退学祝いに─────っと」

 そして偶然、銀髪の男子生徒とわたしの目が合う。
 ゆっくりと人だかりに突っ込むようにわたしの方へと向かってくる。自然と彼とわたしの間には無人の道が出来上がっていた。

「なんだ、お前も来たのか。春宮」

 クク、と彼は笑って見せる。
 薄気味悪い笑い方は、見た者の背筋を凍らせる。

「この一件、興味があるのか?」

「退学になるって相当だと思います。何をしたのか教えて貰えますか?」

「それは生徒会としての言葉か?」

「いいえ、わたし個人のです」

 わたし達から距離を取りつつも、取り囲むように人だかりが出来ていた。全員が退学になった理由を知りたいのだろう。


219 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 18:16:59.00wv2ppvvR0 (11/13)

 そんなギャラリーを全く気に留めることなく、彼はもう一度乾いた笑い声を発する。

「そうか、興味があるか。なら─────」

 彼は右手の人差し指を自らの足元へ向ける。

「膝と手、そして額を床に付けてお願いしてみろ」

 理解が及ばなかった。
 もともと彼の素振りからまともな話を聞けるとは思ってもいなかったが、口から出たのは想像を遥かに上回る一言だった。
 土下座をして頼み込め、と。
 入学して間もない頃に彼がわたしに言ってきた『1億ポイント』でのクラス移動の件に通じる吹っ掛け方だ。
 彼とまともに取り合うことは不可能だと判断する。
 踵を返して立ち去ろうとしたとき、さらに後ろから声が掛かる。

「ひとつ教えておいてやる。コレはまだまだ序盤だ。お前にはもっと面白いもん見せてやる。だから今はせいぜい良い子ぶってるんだな。参考までに、今の二年生は149人らしいぜ?」

 その言葉を聞いてわたしは何か反応することもなく、その場を立ち去る。
 すぐ後ろを神宮くんが付いてくる。

「春宮さん、辻堂くんと知り合いでしたか? かなり雰囲気が悪そうなかんじでしたが……」

「前に少しだけね。ただ、そんな話すような仲ではないよ。一方的に喋られているだけ」

「そう、でしたか……。彼は危ない人ですね」

 素行も悪そうな印象を受けたが、何より。

 『コレはまだまだ序盤だ』

 その言葉が示すものは、平和を想定した学校生活を不穏そのものにさせるものだ。
 十中八九、クラスの生徒の退学騒ぎには彼が関係している。つまりこの先に待つのは、彼による退学者の続出。
 ハッタリである可能性も多いにあるが、その後に言っていた二年生の人数が気になる。
 149人。それは11人もの退学者が出ているということ。
 この学校が暴力に対して厳罰を下しているのか?
 その答えは、生徒会室へ行けば直接的なことを聞かずとも分かるだろう。


220 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 18:17:34.36wv2ppvvR0 (12/13)

◇◇◇

 生徒会室には一年BクラスとCクラスの担任の先生が顔を突き合わせていた。
 錦山先輩は生徒会長の席に腰をかけ、話を聞いている。乙葉先輩や内山先輩も真剣な表情でその様子を見守っていた。

「つきましては本人が望んでいる以上、退学にするしかないというのが学校側の対応です」

「そうですね。妥当…ではないと思いますが、本人の希望であれば仕方がありません」

 話は終盤だったのか、その二言だけ聞き届けて先生が立ち上がる。わたしと神宮くんは生徒会室の扉を開けて見送る。
 扉を閉めた直後、緊迫していた生徒会が弛緩する。

「はぁ……。まーた面倒ごとを持ち込みやがって」

「ほんとだよねー。Bクラスって疫病神みたいな?」

 Bクラスが起こした問題は今回が初めてではないらしい。わたしと神宮くんが知らない間に、何かが起きていたようだ。

「天音と紫苑は気にするな。今回は本人の希望でさっさとケリがつきそうだ」

 そう言われても納得は出来ないが、頷くことしか出来ない。前回の一件すら省かれていたのだから、首を突っ込む余地はないだろう。
 一年Bクラス。辻堂くんという生徒が率いるクラスは、今後わたし達Dクラスの前にも大きく立ち塞がってくるかもしれない。


【週末の自由行動です。
 1.ケヤキモールへ
 2.人と会う
  1.早見有紗(前の席の女子生徒)
  2.宮野真依(クラスをまとめる水泳部の女子生徒)
  3.一之宮重孝(全国模試2位の男子生徒)
  4.一色颯(クラスをまとめる男子生徒)
  5.神宮紫苑(同級生の生徒会役員)
  6..花菱乙葉(信頼のできる生徒会役員)
  7..如月深雪(信頼のできる生徒会役員)
 3.寮で本を読む
 4.学校へ
 下1でお願いします。】


221以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/19(日) 19:58:14.12k24mEo9so (1/2)

7


222以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/19(日) 20:01:41.33k24mEo9so (2/2)

2-7です、すみません


223 ◆yOpAIxq5hk2021/09/19(日) 21:10:19.77wv2ppvvR0 (13/13)

【>>222
 2-7.如月深雪】

 入学して間もない一年生から退学者が出た。
 そんな信じられないような出来事が起きた翌日、わたしは如月深雪先輩こと、ユキ先輩と会う約束をしていた。
 こと始まりは先週に生徒会の会計という役職繋がりで、神宮くんと二年生の和泉紗希さんが遊んだという話から始まる。
 それはそれは盛り上がったようで、同じ書記として前々から親睦を深める意味で休日に会いたいねという話をしていたわたし達の背中を後押しする事となる。
 特別予定も無かったため日程を任せたところ、今日に至るというのが経緯だ。

「……あと30分か」

 時計を見て待ち合わせの時間を確認する。
 この学校の生徒である限り、遊ぶ場所はケヤキモールに限られる。都内の他の学校であれば池袋や渋谷など、遊ぶ場所は多々あっただろう。
 学校の制度として毎月1日に1ポイントイコール1円の価値を持つポイントを多く配布しているため、並の学生のようにお金に困ることは少ない。ただ、それでも遊ぶ場所が限られるというのは残念だと思った。
 とりあえず部屋着から外行きに服に着替えようとしたところで、

【コンマ安価です。
 奇数:ユキ先輩から一通の通知が届く。制服に着替えて、体操着とジャージを持ってこい、と。
 偶数:わたしはそのまま私服へと袖を通す。
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


224以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/19(日) 22:38:16.31QWW5gV0po (1/1)




225 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 12:00:27.47ClJgpcB/0 (1/10)

【>>224
 1:ユキ先輩から一通の通知が届く。制服に着替えて、体操着とジャージを持ってこい、と。】

 外行きの服に着替えようとしたところで、机の上に置いていた携帯がピコンと通知音を鳴らせる。
 少し早いがユキ先輩だろうかと考えながら覗き込むと、制服に着替えて体操服とジャージを持って学校の正門前集合と書かれている一文を目にする。
 確かにケヤキモールでランチとか、そういった取り決めはしていなかった。
 少々予想外だが、特別わたしの方でもこのお店に一緒に行きたいとか希望があったわけではないため、すぐ了承の旨をチャットで送る。

「さて」

 ちょうどウォークインクローゼットから私服を取り出したところだったが、すぐにしまう。
 その代わりに制服と体操着、ジャージを取り出す。
 この学校は休日であっても制服でなければ学校の敷地には入れないというルールがある。職員室でもプールでもグラウンドでも、その限りではない。
 やや面倒だなとか、部活やってる人は大変だなとか考えながら支度を済ませる。

「行きますかっ」

 念のために水着も含めて、忘れ物がないかをチェックしてから部屋の戸締りをして部屋を出る。
 エレベーターに乗ると偶然Aクラスの女子と遭遇する。彼女とは神宮くん待ちでAクラス前で佇むとき、たまに話している仲だ。

「わ、春宮さん、今日も学校に? 生徒会?」

「ううん、ちょっと先輩と約束をね」

「へぇー、暑いのに大変だねぇ」

 二人揃って寮のロビーを出ると、むわっとした熱気が襲ってくる。年中ブレザーの制服を強制されている学生にとって、とても辛い時期に入っていくと改めて実感する。
 寮を出たところでケヤキモールへと向かう彼女を見送り、わたしは学校の方角へ。学校までが徒歩五分圏内であることが唯一の救いだろう。


226 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 12:00:54.40ClJgpcB/0 (2/10)


◇◇◇

 わたしが到着した頃には先輩が正門近くに立っていた。
 結構早めに着いたはずだったが、先に来ていたユキ先輩に驚きを─────いや、そんなことじゃない。ユキ先輩の格好にわたしは驚いた。

「おはようございます。待たせてしまいましたか? というよりその制服は……」

「おう、いきなり質問だらけだな。まず待ってない。さっき着いたところだ、本当に。で、これはこの学校の夏服だな。ポイントを払えば制服と着る権利を購入できる」

「はー、なるほど! 参考にします!」

 暑さにめっぽう弱い方ではないが、これは良いことを聞けた。この制服も可愛くて気に入っていたが、夏服のデザインも良さげだ。
 本格的な夏になったタイミングでアナウンスされるのだろうか。そんなことを考えながらユキ先輩の後を着いていく。


227 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 12:01:30.82ClJgpcB/0 (3/10)


「今日は何するんですか?」

「ちょっとばかし生意気な陸上部をシメにいく」

「……乙葉先輩もですけど、物騒ですよね」

「ん、そうか? アイツが去年も一昨年もこんなかんじで殴り込みしてたからな。移ったのかもしれない」

 稀に部費の相談などで生徒会室を訪れる各部の部長を乙葉先輩は幾度も追い払っている。門前払いとでも言いたそうに、生徒会長である錦山先輩まで辿り着かせようとしない。
 ただその後、副部長の新汰先輩と会計の紗希先輩が生徒会室を追い出された部長らと会合の場を設けているらしい。まともな会話はそこで成立しているため、今のところは苦情が寄せられていない。
 そうこうしているとグラウンドに着く。
 わたしとユキ先輩の姿を見つけた一人の男子生徒が近寄ってくる。

「ユキ、そいつが例の一年か? 水泳、バスケ、サッカー、テニス、卓球、それだけに懲りず今度は陸上の道場破りか?」

「そうだ。そろそろ乙葉がゴネる頃だからな。この部活にも生徒会の糧になって貰う」

「そいつぁ良い度胸だな」

 そう、わたし達をが勝利を収めたのは水泳だけでない。あの後、バスケット部とサッカー部、テニス部、そして卓球部と対決をして全てで白星を勝ち取っている。


228 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 12:02:05.69ClJgpcB/0 (4/10)

 気を良くした乙葉先輩はすべての部活にご飯奢りを掛けた試合を申し込もうとしてたところを、生徒会役員全員で止めた─────はずだったが、これはどういうこと?
 側からは進んで喧嘩を売っているように見える。

「新庄、お前は長距離だったな」

「いや、そうだけど、流石にキツイだろ。1対1で単純なタイム争いは。せめて十人でリレーとかあるだろ?」

「生憎、中途半端な奴を入れる気は無い。こっちは私と天音の二人だ。そっちはお前と一年の女子生徒を出せ。距離は400メートルと600メートルだ」

「なるほど、わかった。それで決まりだ。文句は言うなよ?」

 ひとまず話はまとまったようだ。
 わたしとユキ先輩は体操着に着替えるため更衣室へと向かう。その道中、ルール決めの真意について問う。

「どうして400と600なんですか?」

「単純にグラウンド一周が400だからだ。400と400でも良かったが、どうせなら1キロちょうどにしたいと思ってな」

 この話題はそれほど盛り上がることなく、ただ単にこのグラウンドが400メールであることを知るだけとなった。
 思いがけず休日に道場破り対決となってしまったが、ユキ先輩と乙葉先輩が喜んでくれれば文句はない。それにわたしも奢りでご飯を食べられるというのは胸躍る権利だ。ご飯のためにも頑張ろう。



229 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 12:02:35.20ClJgpcB/0 (5/10)


◇◇◇

 携帯に続々と通知が届く。

『よくやった』

『陸上部は寿司にしません?』

『先日、テニス部とお寿司の約束を取り付けました』

 などなど。『生徒会(仮)』のチャットは休日にも関わらず大盛り上がりを見せた。
 女子更衣室に設置されたベンチに腰掛けるユキ先輩は楽しそうにそのやり取りを見ている。

「大喜びだな」

「ユキ先輩がリードを作ってくれたおかげです」

「そのリードをキープ出来ただけでも上出来だ」

 前半の400メートルをユキ先輩と陸上部の1年生が走り、その後の600メートルはわたしと陸上部部長の一騎討ちとなった。
 ユキ先輩が作った10メートルほどのリードをキープし続けてゴールし、対陸上部も生徒会の勝利で幕を下ろす。

「にしても、やるなぁ天音。これまで3年生を相手に連戦連勝じゃないか。これでは3年生のメンツが丸潰れだ。不得意な競技は無いのか?」

「苦手かどうかは分かりませんが、走り高跳びとかはやったことが無いですね。あと弓道とかも」

「なるほど。走り高跳びはともかく、弓道の経験者は生徒会に三人いる。弓道部との対決はアイツらでやるか」

 早速、次の部活に対して宣戦布告を考えている様子。


230 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 12:03:02.92ClJgpcB/0 (6/10)

 この半月の間、部活動との対決ばかりだ。肝心の生徒会としての仕事はほとんどしていない。わたしの知らないところでBクラスのいざこざを対応していたという話は聞いたが……。

「よし、ちょっと外で動こうか。1時間くらい遊んだらケヤキモールに行こう。勝利祝いだ、多少は奢ってやる。いや、そういえば飲み物の礼がまだだったな」

 ユキ先輩と最初に出会ったとき、わたしは水泳の授業で一位を取ったボーナスとして5000ポイントを貰った。その臨時収入をもとにユキ先輩達には飲み物を奢ったこともあった。

「今日は勝利祝いといこう。飲み物の礼はまた今度させてくれ」

「はい、わかりました。ご相伴に預かります」

 時刻は11時前。
 これから少し動いてシャワーを浴びて移動すればちょうど良い時間になるだろう。
 ご飯のことを楽しみにしながら、わたしはユキ先輩の後ろを着いていくようにして外に出た。


231 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 12:03:36.15ClJgpcB/0 (7/10)


◇◇◇

 陸上部との激闘を終えたわたし達はケヤキモールへと移動する。休日に制服を着ているのは少し浮いているような気もするが、周りからの視線は特に感じなかった。

「天音、なに食べたい?」

「涼しいのが良いです。お蕎麦とか」

「よし、じゃあ蕎麦屋にしよう」

 制服を着て学校からモールへ移動するだけでかなり体温が上がった実感がある。冷たいもので一息つきたいという思いが強かった。
 ケヤキモールの三階にあるお蕎麦屋さんは少し混み合っていた。10分ほど外の待合席で待機して店内へ移動する。この間もわたし達の間に会話が途絶えることなく、またユキ先輩は多数の生徒に話しかけられていた。二年生、三年生からの人望が厚いと見える。

「好きなの頼め。ポイントは気にするな」

「じゃあ、ランチセットAで……いいですか?」

「また安いのを頼んだな。上でも特でも好きなの頼んでも良かったのに」

 ざるそばとミニ天丼もしくはミニカツ丼のセットで700ポイント。おそらく一般的な価格、あるいは少し良心的な価格か。
 ユキ先輩もわたしのと同じものを注文して待つ。


【安価です。
 1.「ユキ先輩は乙葉先輩達とは長いんですか?」
 2.「ユキ先輩って料理とかできますか」
 3.「そういえば図書室って利用したことありますか?」
 下1でお願いします。】


232以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/20(月) 12:56:25.954VQedhm60 (1/1)

2


233 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 15:44:49.81ClJgpcB/0 (8/10)

【>>232
 2. 「ユキ先輩って料理とかできますか」】

 料理が運ばれてくるのを待っている間、ふと思いついたことを聞いてみる。

「つかぬことをお伺いしますが、ユキ先輩って料理とかできますか?」

「急だな。まぁ、苦手ではないと自負しているよ。得意とも言えないがな。もう2年間も寮で1人暮らしをしているんだ。嫌でも覚える」

「そうなんですね!」

 そっか、まだわたしは寮生活を始めて1ヶ月。
 まだまだある寮生活の間に料理の技術を身に付ければいいのか。

「残念だが、この学校に調理部はない。お得意の道場破りは出来ないってわけだ」

「いえ、わたしは料理が出来ないので、もし調理部があっても勝負にもなりませんよ」

「そうなのか? 意外だな。てっきり料理も出来ると思ってた」

「……壊滅的なんですよねぇ。本屋さんに置いてあるレシピ本は暗記したんですけれど、どうにも上手くいかなくて」

「暗記するな。買えよ。というか寮に備え付けのパソコンでも携帯でもレシピが見れるだろ」

「それでやっても上手くいかないんです…」

 先週に煮込み料理に挑戦して以降、平日の夜に何度か台所に立って料理に臨んだ。その結果は壊滅的。もはや才能が無いと確信するほどだった。


234 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 15:45:16.91ClJgpcB/0 (9/10)


「そうか。なら、夏帆を頼るといい。アイツは実家が洋食屋で、何度か作って貰ったがどれも絶品だった。手際も良いし、学べることもあるだろう」

「はい、わかりました。頼ってみます」

 夏帆とは、副会長の1人である四条夏帆さんのことだ。穏やかな佇まいをする方で、放課後の生徒会室ではよく乙葉先輩のお世話をしている。
 かなり話しやすい人で、わたしも何度か話したことがある。頼るのは難しくなさそうだ。

「お前には運動部との対決で活躍して貰っているからな。夏帆も二つ返事で了承してくれるだろう」

 上級生の一部からは道場破りキャラとして警戒されているという悪評を耳にしたが、それでも生徒会のメンバーからは好意的な目で見て貰えている。
 来週か再来週、夏帆先輩に連絡してみるのもアリかもしれない。
 今後の予定が決まったところで料理が運ばれてきて、少し遅めのランチを取る。
 書記ペアの親睦会かつ祝勝会と称したそのランチは会話が途切れることなく盛り上がり、その後はカフェで一息ついて夕方頃に解散となる。
 今日はかなり充実した一日になった。
 そんな感想を抱きながら、一日を終える。



235 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 15:45:47.49ClJgpcB/0 (10/10)

【一旦ここまでにします。今晩、続きをします。
 現在の色々です。
 春宮天音
 学力:97(超優秀)
 身体能力:99(超優秀)
 直感・洞察力:91(優秀)
 協調生:53(普通)
 成長性:74(高)
 メンタル:86(高)
 料理:25(下手)
 音楽:17(下手)
 残ポイント:67850ポイント

 1年Dクラスからの評価:話しやすく、勉強もできて運動もできるため頼り甲斐のある人物。
 1年Dクラス以外からの評価:去年の全国模試で一位を取り、運動神経も抜群らしい。もし敵対するようなことがあれば要注意。
 2年生からの評価:3年生の運動部部長を負かしている1年がいるらしい。
 3年生からの評価:道場破りのつもりか、手当たり次第に勝負を挑んでは勝ちをさらっていく。厄介者であることは否めないが、その身体能力の高さは認めるしかない。
 生徒会からの評価:超絶優秀な1年が入ってきた。
 担任の先生からの評価:素行は非常に良く、クラスメイトに勉強を教えたり、体育の授業では積極的に他の生徒のフォローに回るなど状況が良く見えている生徒です。生徒会に連れられて色々な部活に顔を出しているそうですが、本人が望んで双方が納得のいくように事が収まっているのなら良いのではないでしょうか。今後もDクラスを支える人物として成長していただき、将来的には学校を支えられるようになって欲しいと思います。】


236以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/20(月) 15:57:01.95vN8FU7k30 (1/1)

よう実度外視したなら見れるけど
正直よう実っぽくはないですね


237 ◆yOpAIxq5hk2021/09/20(月) 16:28:08.08n4KgulOUO (1/1)

ID変わっていますが>>1です。

>>236
現在、ちょうど4月が終わった段階になります。
5月1日に学校の制度について改めて説明、中間テストの告知が行われ、中間テスト後は特別試験を考えています。

今のところはただの学校生活ですが、この後からよう実らしさを出せればと思います。引き続き読んで頂ければ幸いです。


238以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/20(月) 19:51:15.782661leSio (1/1)

乙 期待


239 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:00:14.276iS857jM0 (1/19)

【昨日は続きが出来ず申し訳ありませんでした。
 再開します。】


240 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:00:39.706iS857jM0 (2/19)


 5月1日。
 わたしは起きて真っ先に学生証端末を起動した。
 顔写真、氏名、学生番号、クラス、そして保持ポイント。昨日と一箇所だけ変わっている部分に注目する。

『138850ポイント』

 昨晩まで『67850ポイント』であったことを考えると、今日5月1日の振り込まれたポイントが『100000ポイント』でないことは一目瞭然だ。
 覚醒しきっていない頭の中で引き算を行い、増額されたポイントを算出する。『71000ポイント』。
 入学時に配布された額には至らないが、これはなかなか上出来なんじゃないだろうか。わたしの見立てでは最悪『1ヶ月0ポイント生活』もあり得た。
 そんなポイントの増減についても今日話が聞けるだろう。Dクラスだけでなく、他クラスの間でもこの話題は尽きないはずだ。
 身を起こし、身体を伸ばしながらカーテンを開く。
 灰色の灯りが部屋に射し込む。それは真っ黒な雲が太陽の光を遮っているからだった。今日は雨らしい。なんとなく月の始まりと週の始まりが重なる今日がこんな天気だと気分も憂鬱になる。

「ふぅっ」

 ため息をすると幸せが逃げる、という一文を割と信用しているわたしは、小さく深呼吸をした。
 何も悪いことなんてなかった。ポイントについては最悪のケースを避けられたし、こうして雨が降る前に目を覚ましたことも幸運だった。
 さて、雨が降る前に学校に行ってしまおう。少し早すぎる時間だが、本を読むなり自習するなりやることはいくらでもある。


241 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:01:13.956iS857jM0 (3/19)


◇◇◇

 珍しく教室に一番乗りしたわたしは1日のスケジュールを確認した後、なんとなくタブレット端末を手に取って自習を始める。
 とっくに学習し終えている高校一年生の範囲の教科書に真新しいことは書いていないが、それでも過去の偉人らが見つけてきた功績を眺めるのは悪くない。
 特に化学は好きだ。元素とか格好良くてテンションが上がる。これを見つけた人はすごいなぁと思う。
 ただ同時に『料理は化学』と世間的に言われていることを思い出す。

「……空腹か、愛か」

 わたしは誰も居ない教室で独り言を呟く。
 化学のことは理解しているつもりでも、料理は上手く出来ない。そこに足りないのは第二、第三の要素。つまり空腹もしくは愛というスパイスに他ならない。
 空腹が最大のスパイスである訳は理解できる。お腹が空いている時に食べるご飯は美味しい。それは間違いない。
 なら、愛はどうなのか。
 空腹が口に入れるときに美味しく感じる要因だとすれば、愛は作っている最中だろう。わたしも大切な人に手料理を振る舞う機会があれば、自然と愛を込めることが出来るのだろうか。


242 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:01:52.046iS857jM0 (4/19)

 その辺りも含めて、生徒会一料理上手な洋食屋の娘である四条夏帆さんに聞いてみよう。実際のところは愛情なんて不要だと一蹴されるかもしれないが─────。

 と、そのときだった。
 ガラッと教室前方の扉が開かれる。

「あれ、早いね、春宮さん」

「ぁ……望月くん、おはよう」

 爽やかな格好良い男子生徒、望月弘人くんが姿を見せる。
 思い返せば彼は、いつもわたしが登校した頃には席に着いていた。今日のように一番乗りを日常的にしているのかもしれない。
 連日の一番乗り記録を阻んでしまった罪悪感を胸に、一応聞いてみる。

「望月くんはいつも早いの?」

「そうだね、この1ヶ月は毎日一番を目指していたよ。五月早々に阻まれてしまったけどね」

「う……ごめん、じゃあわたしが五月担当ということでどうかな? 四月は望月くん、五月はわたしということで」

「あはは。いいよ、そんなの。それこそ五月病ってヤツになりそうだ」

 そう言いながら彼自身の席に着いてわたしの方を向き、一呼吸を置いた後に続きを話す。


243 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:02:18.356iS857jM0 (5/19)


「自らに何かを強いることは過ちだ。目標を掲げて突き進むのが人間─────って、僕のお世話になった人が日常的に言っていてね。こうして一番乗りを目標にして努力する分にはいいけど、朝5時とかに目覚ましをかけて無理やり来るのは違うんじゃないかって」

「……おぉ。なるほど。良いこと言うね、その方」

 こうして望月くんと話す機会は初めてだったが、非常に興味深いことを聞けた。一理ある、どころか全面的にその意見には肯定したい。
 そこでふと、彼という存在について思い出す。
 望月くんといえば、四月上旬に行われた水泳の授業でどうにも本気を出していないように見えた。このクラスでも随一の運動神経を持っていそうなのに、彼は九位という結果に留まった。そのことが気になって仕方がなかったのに、すっかりと失念していた。
 この機会に、遠回しに聞いてみよう。

「今日も水泳の授業あるね」

「そうだね。温水プールが完備されているとはいえ、四月から水泳の授業なんて珍しいよね。おかげで未だにグラウンドを使った授業をしていない訳だけど」

「珍しいよね。ところで、」

「ところでさ、聞いてもいいかな?」

 ずっとこちらを向いていた望月くんが、ここで立ち上がった。わたしの言葉に被せてきたことも込みで、ややプレッシャーを感じる。
 ところで、何を聞いてくるつもりなんだろうか。
 カツ、カツと足音が近付いてくる。


244 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:02:49.826iS857jM0 (6/19)

 彼は、私の前で窓の外を眺めるように佇む。
 その姿は、なんだか見覚えがあるような気がした。

「いや、今のは春宮さんの言葉を遮っただけだ。特に深い意味はない。ただ本当に、僕のことはあまり詮索しないでくれって話だ。訳ありな人間なんていくらでもいるんだから」

「……うん、そうだね。わかった。望月くんが何でどんな結果を残そうと、わたしは関与しない。ただ、テストで赤点を取らない限りは」

「面倒見が良いんだね。でも大丈夫、高校生程度のレベルの低い学習はとうの昔に終えたから。まぁそれでも春宮さんには劣るのかな?」

「やめてよ、そんなことないって」

 わたしの否定が届かなかったように、彼は続ける。

「そんなことあるよ。君の学力、身体能力は『僕たち』に負けず劣らず─────いや、それ以上かもしれない。一体どうやったらそうなれるのか教えて欲しいところだけど、これ以上はやめておく。君が僕のことを詮索しないと約束してくれた以上、僕も礼儀は尽くす」

「……あー、その、えっと……」

「だから僕たちは敵対し合うことはないと思うんだ」

 彼はそう言った後、「ふぅ」と軽く息を吐いた。
 そして改めてわたしの方を向いて笑顔を見せてくれる。


245 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:03:22.626iS857jM0 (7/19)


「─────ノリが良いんだね、春宮さんって。ノってくれなかったらどうしようかと思った」

「うん、でも途中のセリフ忘れちゃった。ごめんね?」

「気にしないで、僕もなんだか適当なことを口走っちゃってた気がするから。会心の出来だったよ」

 そう、この一連の流れは昨晩放送されたドラマのシーンをなぞったもの。
 わたしたちの入学式前日に第一話が放映された高校を舞台にしたドラマは、毎話で視聴者の期待を遥かに上をいく展開が続いて各地で話題になっている。当然、この学校の中でも話題に挙がることは多い。
 望月くんが今にも雨降り出しそうな外を眺めている姿を見て、昨晩の記憶が鮮明に甦った。役者の経験は無かったが、なかなか上手くできたんじゃないだろうか。最後の方はセリフが飛んでいたけど。

「うん、まぁ、今話したのは事実だからよろしく」

 気軽に言って彼は自席へと戻っていった。
 確かに会話の内容はとてつもない才能を隠す男子生徒が主役のドラマと酷似している。ただ、その全てが演技というわけではない。
 彼は詮索されることを嫌っているようだった。
 ならわたしは詮索しないでおく。これを冗談だとは受け止めずに。彼は真面目に授業を受けてくれている。それだけで十分だ。


246 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:04:00.366iS857jM0 (8/19)


◇◇◇

 朝のホームルームを報せるチャイムが鳴ると同時に、くたびれた背広を着た伊藤先生がやって来る。
 表情、無精髭、ボサボサの髪、足取り、その全てが先週と何ひとつ変わらなかったものの、なんだかいつもと異なる雰囲気を感じた。
 教壇に立ち、出席簿を教卓に置いた直後、教室前方から早速声が上がる。

「せんせー、今日のポイントなんですけどー。71000ポイントってバグっすか? いや十分ではあるけど、足りないっていうかー」

 そうそう、とクラスから賛同の声が上がる。
 1人暮らしのため様々な出費が嵩むとはいえ、71000円分のポイントは高校生にとって多すぎる。
 寮の宿泊費や電気水道ガスなどが徴収されない以上、食費を抜いても十分すぎるほどに余る。そのため強い声こそ上がらなかったものの、多少の意見はこうやって飛び出る。

「今から説明します。えー、Cクラスの皆さんはよく聞くように」

「C? いや、せんせ─────」

 先生の後ろにある電子黒板の画面が切り替わる。

Aクラス:979ポイント
Bクラス:719ポイント
Cクラス:710ポイント
Dクラス:435ポイント


247 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:04:42.056iS857jM0 (9/19)


 わたしたちDクラス─────いや、Cクラスの隣には『710ポイント』と記載されていた。
 これは今朝振り込まれた『71000ポイント』と無関係でないことはすぐに分かる。

「えー、この学校では、クラスの成績や評価が毎月一日のポイントに関わってきます。授業中の私語31回、授業中に携帯を触った回数15回と、例年のDクラスと比較するとマシな方でした」

「な、なんだよ、それ…!」

 クラスの一人がそう呟く。
 彼は私語と携帯を弄った者に該当しない方だろう。
 連帯責任という形でポイントの減額をされるのは、決して額の問題ではなく心の負担になる。

「当初、こちらのポイントは全てのクラスで1000ポイントでした。お気づきの通り、100を掛けた数字が振り込まれるわけですが─────先ほど言ったマイナス事項を踏まえて710ポイント、ひいては71000ポイントというわけです」

 クラス中からヒソヒソと声が挙がる。
 その大半は『無いよりはマシだった』というものだが、そもそも告知もせずにそんな監視のような真似をされていたことに腹を立てる声も聞こえて来る。

「Sシステム─────リアルタイムで生徒の成績を査定して、数値として算出するアレですが、まぁその辺りは良いでしょう。率直に言って、上出来でした」



248 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:05:15.926iS857jM0 (10/19)


 先生は一呼吸ついて、電子黒板に表示された数字に改めて注目する。

Aクラス:979ポイント
Bクラス:719ポイント
Cクラス:710ポイント
Dクラス:435ポイント

「四月まではBクラスにあったクラスがこの五月からはDクラスへと降格しました。見ての通り、ポイントの高い順にクラスが変わります。これからの学校生活でCクラスの皆さんが超まじめに授業を受けてテストでも良い点数を取れば、Aクラスにもなれるということですね。一方で、悪さをすればDクラスにもなります」

「……なんの意味があるんですか、AとかDとか」

「卒業後の進路に関わってきます。えー、そう、皆さんはこの学校の特典目当てで入学してきたと思います。この学校を卒業すれば良い会社、良い大学に進学できる、とかそういうアレです。全員がそんな都合の良い話にありつけるとでも? そんなわけないですよね」

「っ……」

「言い方は悪いですが、Aクラスが優秀なクラスであることに対して、Dクラスは不良品とかガラクタとか、そうやって揶揄されることがあります。先ほど言った特典はもちろんAクラスで卒業をした生徒のみです」

 クラス内が静まる。
 入学できた時点で勝ち組だと息巻いていたからだ。
 実際はAクラスで卒業しなければ、意味がないと分かったこの段階で各々が考え込むのも無理はない。

「ただ、先ほども言った通り上出来だったのは間違いありません。多少の反省点はあるものの、もう早速Cクラスに上がっているんですから。それにBクラスとの差も9ポイント。授業中に携帯を一回触る度の減額ポイントについては教えられませんが、ほんの少し控えていればあなた達はBクラスでした」

 次は「おぉ」と声が挙がる。
 それでもAクラスとの差は200ポイント以上と、決して大きくも小さくもない数字の差があるが、十分に巻き返す機会は多くあると見える。


249 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:05:43.946iS857jM0 (11/19)

undefined


250 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:06:10.166iS857jM0 (12/19)

undefined


251 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:06:55.516iS857jM0 (13/19)

 それにBクラスから落ちてDクラスとなったクラスとも300ポイント近くの差が出来ている。これから差が縮まる、広がることを考えてもこの結果は非常に良いと言える。

「こちらの数字はいわゆるクラスポイントと呼ばれているものです。そして皆さんに振り込まれたポイントはプライベートポイント。つまり今月は710クラスポイントに、71000プライベートポイントとなります」

 淡々と説明を続けていく先生に、一色くんが立ち上がって質問をする。

「先生、ポイントがマイナスされることは分かりました。逆に、増えることはあるのでしょうか。今後、ただ減る一方ということは……」

「もちろんあります。全部のクラスがただクラスポイントを減らすだけで順位を付けていくわけではありません。直近で言えば次の中間テスト。最大で100クラスポイントを獲得できます」

 100クラスポイント。それはこの1年Cクラスの生徒に等しく10000円分のプライベートポイントが支給されるということ。
 あくまでも最大という前提付きだが、これはBクラスに勝るため、そしてDクラスを引き離す意味でも重要な試験となる。

「つきましては、こちらをご覧ください」

 先生が手元のリモコンを操作すると、画面が切り替わる。


252 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:07:22.426iS857jM0 (14/19)

 見出しには『小テスト結果』と書かれている。
 中学生レベルの問題も出されたあのテストだ。
 いずれの教科でもわたしの名前が一番上に100点と付いて表れていたのは喜ばしいことだが、先生の意図は他にある。

「次回以降の中間テスト、期末テストで赤点となった生徒は退学となりますので、ご注意ください」

 皆が息を呑む。
 赤点を取ったら補修ではなく、退学。
 それはこの学校から追放されることを意味する。
 無茶だと思う反面、この学校が政府の息がかかっているということ、広大な敷地の中にはケヤキモールという巨大な施設があること、曲がりなりにも入学式当日に10万円分のポイントが支給されていたこと、そして今朝7万円分のポイントが支給されたことを考えると、そういった超特権的なことをしてもおかしくはない。

「以上でホームルームを終わります」

 先生はそう言い残して締め括り、教室を出て行く。
 退学というワードを聞いて呆然とする生徒を残して。


【赤点候補の人数を決めます。
 0:赤点候補なし
 1~3:10人
 4~6:5人
 7~9:3人
 人数によっては勉強会を開いたりなど強制的なイベントが発生します。
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


253以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/21(火) 22:14:49.72Ev35Cg4H0 (1/1)




254 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 22:52:04.096iS857jM0 (15/19)

【>>253
 2:10人】

 ホームルームが終わってすぐ、わたしは電子黒板に映ったままの小テストの結果から赤点の可能性がある生徒の名前をノートに書き連ねていく。
 このままいけば赤点になる生徒、赤点になる可能性のある生徒を合わせて10名。なかなか危うい。
 クラスの中がまだ騒然とする中、一色くんが教壇に立って2回手を叩いて注目を集める。

「みんな、気持ちは分かるけど落ち着いて。今はとりあえず再来週の中間テストに備えよう」

 その言葉は赤点候補者へと発せられた言葉。
 事実を重く受け止める者、退学という単語をチラつかせて脅しているだけだと冗談のように受け止める者、興味なさそうに携帯を弄る者と反応は様々だ。

「放課後組と部活動組で2つのグループを作って勉強会を開こうと思う。この前の小テストで危ないと思った人は是非参加してほしい」

 部活動をしていない生徒は17時から、部活動をしている生徒は20時からの2つに分けて勉強会を提案する。
 赤点候補者のうち半数は部活動に所属している。一度に全員の面倒を見るよりは少人数ごとの勉強会を開催した方がずっと有効だろう。
 ただ問題は、該当者が勉強会に参加するかどうか。
 後ろの席から様子を見ている限りでは、せいぜい半数が真面目に取り組めば良い方。すんなりと全員が勉強会に参加すると手を挙げることはないだろう。


【気付きコンマ判定。
 直感・洞察力:91(優秀) のためほぼ気付きます。
 4:気付かない
 それ以外:クラスから退学者が出た場合について
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


255以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/21(火) 23:04:05.54ZaXLtMCMo (1/2)

はい


256以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/21(火) 23:04:31.50ZaXLtMCMo (2/2)

あっ


257 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 23:54:01.066iS857jM0 (16/19)

【>>255
 4:気付かない】

 放課後、わたしはすぐに生徒会室へ向かうことなく一色くんの席へと近付いていた。
 他でもない赤点候補者への勉強会について進言しておきたいことがあったからだ。

「一色くん、今いいかな?」

「あぁ春宮さん。生徒会はいいのかい?」

「うん、まだ大丈夫。どうせゲーム……じゃなくて、16時過ぎまではのんびりしてると思うから。で、勉強会のことなんだけど、わたしも参加してもいいかな?」

「春宮さんが? それは願ってもないことだけど、色々と忙しいんじゃないの?」

「今のところ運動部に混ざって運動くらいしかしていないからね。全然忙しくないよ」

 一色くんの所属するバスケ部とは2週間ほど前に対決をして勝利を収めている。その場に居た彼なら、わたしが生徒会で何をしているのか想像がつきやすいだろう。
 本当にわたしは生徒会で何をやっているのだろうか、という疑問は置いておいて、今は勉強会の予定について集中する。


258 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 23:54:32.676iS857jM0 (17/19)


「それを言うなら一色くんも練習で忙しいんじゃない? 20時からの勉強会も毎日は大変だよね?」

「そうかもしれないけど、このクラスから退学者なんて出させれないよ。僕にできることならなんだってやるさ」

 彼の目には強い炎が宿っているようだった。
 嘘偽りなく、彼は純粋にこのクラスを大切にしているようだった。

「それでも1人より2人居た方が良いでしょ? お邪魔でなければわたしもいいかな?」

「うん、わかった。じゃあお願いする。夕方17時からの勉強会の先生役はもう他の人にお願いしたから、僕たちは20時からで。もちろん忙しかったりする日は来なくてもいいからね」

 わたしは頷く。
 これで赤点候補者の進行度を近くで確認できる。
 さて、とはいえ問題はここからだ。
 先生役として勉強会に参加すること自体は、こうやって声をかけるだけでなんとかなると想定がついていた。しかしこの先、問題は生徒役である赤点候補者が集まってくれるかどうかが問題だ。

「で、来てくれるのかな? みんなは」

「幸い、部活動をやっている人で危なそうな人は全員了承してくれたよ。毎日は無理かもしれないけど極力参加するって」

「あ、そうなんだ。よかった」


259 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 23:55:13.016iS857jM0 (18/19)


 もちろん今の言葉には裏がある。
 部活動をやっている人は、と前置きをした以上、放課後組に勉強会を拒否した人間が居ることは間違いない。彼なりに気を遣って遠回しに言ってくれたんだろう。
 ここで変な駆け引きをしてその正体を探ることこそが無駄だ。わたしは直接聞くことにした。

「放課後組の方はそうもいかなかったんだね」

「……うん、実はね。ただそっちは僕の方でなんとかしてみるから大丈夫だよ。春宮さんは気にしないで」

「一色くんだけに任せるなんて出来ないよ。わたしもこのクラスの一員なんだから、出来ることは協力させて」

 今朝の望月くんとのやり取りを引きずっているのか、ドラマのような台詞を口にしてしまった。
 ただ、これは本心そのものだ。たった1ヶ月を過ごしただけでもこのクラスの雰囲気は好きな方だ。全員と仲良くなれた訳ではなくても、欠けることは避けたい。
 一色くんは指の先を頬に当て、少し掻くような仕草をして対象者の名前を口にする。

「そうか、わかった。雨宮さんだよ。彼女には僕の方から何回か伝えたんだけどね。うまく取り合ってもらえなかった」

「雨宮さん……」

 廊下側の真ん中の席の女子生徒だ。
 わたしが春宮であるため、少し苗字が似ているなと思っていたくらいの生徒。たったの1回も話したことがないような関係性だ。というより声を聞いたことがないというレベルで人と話している姿を見たことがない。


260 ◆yOpAIxq5hk2021/09/21(火) 23:55:41.316iS857jM0 (19/19)

 それでも一色くんよりは、同性であるわたしの方が話して貰える可能性は僅かに高い。アタックしてみる可能性はあるだろう。

「うん、わたしの方からも声をかけてみるよ」

「うん、そうしてもらえると助かるよ。難航するようだったら声をかけて。僕にも出来ることがあるはずだから」

 協力的な言葉を戴いて、その場は別れる。彼はバスケ、わたしは生徒会の仕事をするため別々の道を歩き始める。
 その移動時間の中、わたしはやるべき事を整理する。

 第一に20時から行われる勉強会に参加すること。
 第二に放課後組の不参加者である雨宮さんを説得すること。

 雨宮さんはギリギリ赤点になる恐れがある程度のため、本番ぶっつけでもなんとかなる可能性が高い。しかしどうしても退学という自体は避けて欲しい。そのためには勉強会への勧誘は必須となる。
 ふぅ、とりあえず今は生徒会だ。今日は道場破りの予定が入っていなかったため、久しぶりに本来の業務につくことが出来るだろう。


【気付き判定。
 先程のとは異なります。
 直感・洞察力:91(優秀) のためほぼ気付きます。
 4:気が付かない
 それ以外:この試験の攻略法に気付く
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


261以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/22(水) 00:02:40.54V2U0yWVho (1/1)

あ0


262以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/22(水) 00:42:50.683JKs1XNy0 (1/1)

2連ピンポで草


263 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 10:28:38.47rlQZRnFe0 (1/13)

【昨日は出来ませんでした。
 再開します。】


264 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 10:29:14.18rlQZRnFe0 (2/13)

【>>261
 4:気が付かない】

 その日の放課後、わたしはいつも通りAクラスの前で神宮くんを待つ。
 半月前は外を眺めたり携帯を触ることが彼を待つことが多かったが、ほぼ毎日こうしてAクラスの前に立てば知り合いも増えてくる。色々な運動部に顔を出していることも手伝って、顔見知りの人は日に日に増して行った。
 今日も先日エレベーターで一緒になった女子生徒と5分ほど話し込み、神宮くんが来たタイミングでお別れをする。

「いつもごめんね。あんまり待つようなら先に行ってくれてもいいのに」

「ううん、気にしないで」

 わたし達はBクラス、Dクラス、Cクラスの教室の前を通って生徒会室へと向かう。
 会話は無い。お互いが廊下を歩き、階段を降りる音だけを響かせる。
 いつもは雑談が絶えないわたしたちでも、今日ばかりはそうもいかない。それは今朝の事が原因だろう。

『Aクラスで卒業しなければ志望した就職先や進学先に進むことは出来ない。ひいてはBクラス、Cクラス、Dクラスで卒業した場合の進路の保証は無い』

 その事実が判明した以上、CクラスのわたしとAクラスの神宮くんは争う立場にある。卒業のとき、どちらかが望む進路を勝ち取り、もう一方は卒業は出来ても入学前に聞かされていた進路の恩恵は受けられない。


265 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 10:29:40.28rlQZRnFe0 (3/13)

 そこでふと思い出す。
 入学2日目に白髪の男子生徒、辻堂くんがわたしに提案してきた2000万ポイントを支払うことでクラス移動が可能だということを。普通に考えれば現実的ではないが、不可能ではない。
 その手段を用いることで神宮くんと同じクラスになることは出来る。ただ、クラス移動をするなら卒業間際の時点でAクラスの教室に潜り込むのが確実だろう。
 どちらにせよ現時点では2000万ポイントは夢のまた夢で、1年生が始まって間もないこのタイミングは他クラスの状況が把握できていない。力量も測れていない現状ではクラス移動のことを考えるだけ無駄だろう。
 気が付けば職員室前まで来ていた。
 神宮くんはジッと前を見て歩いている。
 もう間も無く生徒会室というところで、


【イベント安価です。
 奇数:「春宮さんはさ、どうしてDクラスに振り分けられたか心当たりはある?」
 偶数:生徒会室へ到着
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


266以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/23(木) 10:50:32.66p0U6kiCZ0 (1/3)




267 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 11:46:53.19rlQZRnFe0 (4/13)

【>>266
 6:生徒会室へ到着】

 結局、その後一言も話さずに生徒会室へ到着した。
 今日はわたしが生徒会室へと入る旨をチャットで送信した後、扉を開く。
 既に庶務の二人以外が揃っているようで、今日もみんなでゲームをしていた。かなり良いところみたいで携帯に目を向けながら軽く挨拶を交わした後、わたしと神宮くんはいつもの席に着く。

「おう、紫苑、天音。そういえば聞いたぜ? 先月は上手く立ち回ったみたいじゃないか」

 立ち回る?
 その言葉の意味を汲み取れずにいると、錦山先輩は続ける。

「基本的にこの学校は生徒の自主性に任せているからな。無断欠席、無断遅刻、授業中に喋っても携帯を触っても、それが他の生徒に大きく迷惑ならない限りは注意されることもない。ただ、評価は落ちる。何年か前の1年Dクラスは0クラスポイントまで落ちたって聞いたぜ。それに比べれば天音のクラスは良くやってるよ。紫苑のクラスもな」

 錦山先輩はなんてことなさそうに話す。
 常識で考えれば分かることだが、授業中に携帯を触ったらクラスポイントおよびプライベートポイントに影響を及ぼすことを教えて欲しかったというのが本音だが、教えられなかった事情も理解できる。
 学校側から明言されているのか、暗黙の了解的に下級生へ学校のルールを教えることを禁じられているのだろう。教えれば連帯責任としてクラスポイントが減るなど、ペナルティは想像に難くない。


268 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 11:47:20.02rlQZRnFe0 (5/13)

 それにしても何年か前には本当に『1ヶ月0ポイント生活』を強いられた年があったと聞くと、そうならずに済んで良かったと思う。
 『710クラスポイント』を残して5月を迎えられたことは重畳と言える。

「ま、上出来じゃねーの? 俺たちの代のDクラスは300ポイントくらいしか残ってなかったしな」

「自分のときは250程度でしたね」

 錦山先輩の2年前、そして新汰先輩の1年前のDクラスと比べれば格段に素行が良いようだ。
 現状、後ろの席から傍観しているだけでも特に目立った様子はない。授業態度がポイント評価に直結すると言われれば少なかった携帯を触る行為もほぼ無くなると見ても良い。
 この5月から、クラス間のポイント差が大きく離れることはないだろう。おそらく日々の積み重ねにより追い越した、抜かれたというのが時折発生すると思われる。

「まずは中間テストだな。2人なら退学は無いと思うが、まじで頼むぜ? 生徒会からテストで退学者が出たなんて笑えねぇからな」

 わたしと神宮くんは頷く。
 勉強会の様子次第ではクラスの赤点ラインを下げるため全ての教科で51点を取る選択肢も、頭の片隅で有効な案として思いついている。
 ただ、わたしはわざとテストで手を抜いてすれ違いを起こしてしまった経験があるため、その手段は可能な限り避けたい。
 テストで出そうなところを重点的に教える正攻法こそが最も有効な手段だろうか。ただ、それを3年間続けるというのはお互いに負担になる。自主的に学習して貰えるように矯正して行く必要もあるだろう。


【イベント安価です。
 奇数:四条夏帆(生徒会副会長、料理上手)
 偶数:生徒会の仕事を終えて勉強会へ
 下1でお願いします。】


269以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/23(木) 13:32:22.97CmB9Piz/O (1/2)

はい


270 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 14:46:18.28rlQZRnFe0 (6/13)

【>>269
 7:四条夏帆(生徒会副会長、料理上手) 】

 生徒会の業務を終えたのは18時を回った頃だった。
 20時からクラスメイトと勉強会の約束を控え、かなり時間がある。その間に夕食を済ませてしまうべきか。それとも適当に時間を潰すべきか。
 そんなことを考えながら生徒会室の戸締りをして鍵を職員室へ返す。職員室前で乙葉先輩と夏帆先輩が待っていた。
 じゃんけんをして、乙葉先輩が勝ったら夏帆先輩が手元のクッキーを与えている。これは餌付け?
 その光景を少し観察していると、乙葉先輩がわたしに気が付く。

「お、きたきた。おっそーいよ、天音ちゃん」

「すみません、先生と少し話していまして。えっと、わたし待ちでしたか?」

「そーそー。夏帆ちゃんに用があるってユキちゃんから聞いてさ。このわたしじゃなくて夏帆ちゃんなのは何か理由があるのかな?」

 乙葉先輩は自分が頼られなかったことに少し憤りを感じているようだった。しかしその直後に口へクッキーが放り込まれると、すぐに機嫌を直したようだ。


271 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 14:46:50.25rlQZRnFe0 (7/13)

 夏帆先輩は乙葉先輩の手懐け方を熟知しているように、口を挟む暇を与えず次々にクッキーを与える。

「天音ちゃんにはお世話になってますから、私に出来ることであればなんでもしますよ?」

 先日ユキ先輩に相談した料理上達の件。
 裏から手を回していてくれたようだ。
 ありがたく、この機会に告白してしまおう。

「わたし、全然料理が出来なくってですね、夏帆先輩に教えていただくことは出来ないかなーって」

「そんなことでいいんですか? それくらいならお任せ下さい! 洋食屋の娘として、きっと天音ちゃんを料理上手にしてみせます。天音ちゃんには運動部の対決でお世話になっていますからね」

 夏帆先輩は笑顔でそう快諾してくれた。
 初めて運動部への道場破りを促されるままに行ってきて良かったと思った。

「ええと、いつがよろしいですか? この後、乙葉先輩と私の部屋でご飯を食べる予定でしたが」

「あ、そうですね…。20時から予定があるんですけど、なんとかなったりしますか?」

「簡単なものなら間に合うと思いますよ。あと1時間と少しありますからね」

 左手に付けたレディース用の腕時計を見て、夏帆先輩は答えてくれる。
 何をしようかと考えていたが、ちょうど有効的に自らを高めることのできる機会に遭遇できた。


272 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 14:47:17.47rlQZRnFe0 (8/13)

 ここはありがたく教えて貰うことにしよう。

「わかりました。それではよろしくお願いします!」

「はい、それじゃあ行きましょうか」

 わたし達は2年生の寮へと向かう。
 1年生の寮から近い距離にあるその建物は、この1ヶ月間で近付いたこともなかった。
 中の造りはまったく一緒のようで、ほぼ1年生の寮と変わらない風景を目にエレベーターを上がる。13階で降りたわたしたちは、そのまま夏帆先輩の部屋にお邪魔する。

「わ、かわいいお部屋ですね」

「そうかな? あまり意識してなかったんだけどね」

 カーテンとか掛け布団とか、所々にピンク色が使われている。目に痛くない程度の薄い色は、第一印象で女性らしい可愛らしさを彷彿とさせる。
 未だに白一色なわたしの部屋とは大違いだ。

「乙葉先輩はテレビでも見て待ってて下さいね」

「うん、楽しみにしてるよー。頑張ってね、天音ちゃん」

「はい!」

 手をふらふらと振る乙葉先輩を居間に置き、わたしと夏帆先輩は台所に立つ。
 部屋の作りもまったく一緒のはずだが、調理器具や調味料の整い方はわたしの部屋とは段違いだ。特にスパイスの量が尋常ではない。おそらくスーパーで販売されているものは全て揃えているのだろう。


273 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 14:47:56.69rlQZRnFe0 (9/13)


「参考までに、苦手なものとかありますか?」

「いいえ、特に。アレルギーも無く、なんでも食べられます」

「そうですか。えっと、時間が無いようですので、ハヤシライスでもよろしいですか? お米を炊いている時間にさっと作れる簡単なものです」

「そんな簡単に作れるんですか?」

「はい。少し裏技的なことをしますがね」

 そう言って夏帆先輩はデミグラスソース缶と野菜ジュースを取り出す。それをどう使うか検討もつかなかったが、洋食屋の娘というポジションが絶対的な信頼度を誇っている。
 その後、わたしは夏帆先輩の指示に従って調理を進めていく。
 結果として絶品の一皿が出来上がった。
 もちろん乙葉先輩にも大絶賛で、わたし自身も信じられないほど美味しいと感動する。
 今回のことからわたしが得た教訓は、既製品のものを利用することは悪ではないということ。デミグラスソース缶を利用することで何時間も煮込んだかのようなハヤシライスを作ることが出来た。
 そこには化学も愛もないことを知る。
 早速、明日も1人でハヤシライスを作ってみようと意気込んで、夏帆先輩にお礼を言って2年生の寮を離れる。
 時刻は19時45分。
 勉強会まで残り15分と、ちょうど良い時間だ。


【料理スキル上昇
 現在:料理:25(下手)
 基本的にコンマ1桁で決めます。減少はありません。
 1:プラス1
 2~4:プラス3
 5~8:プラス5
 9・0:プラス7
 2桁がゾロ目:プラス10
 下1でお願いします。】


274以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/23(木) 15:10:05.49p0U6kiCZ0 (2/3)




275 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 15:27:31.11rlQZRnFe0 (10/13)

【>>274
 9:プラス7
 25 → 32(ちょっと下手)


 勉強会に行く前に、人に教える能力を決めます。
 コンマ反転 27 → 72

 01~19:下手
 20~39:ちょっと下手
 40~59:普通
 60~79:ちょっと上手
 80~90:上手
 91~98:かなり上手
 ゾロ目:かなり上手

 学力:学力:97(超優秀) ボーナスで
 反転後の値にプラス15します。
 下1のコンマ2桁反転でお願いします。】


276以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/23(木) 16:12:16.85+xjZVp7I0 (1/1)

ゾロ


277以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/23(木) 17:48:46.34CmB9Piz/O (2/2)

普通ですね…


278 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 20:25:20.03rlQZRnFe0 (11/13)

【>>276
 85 → 58
 学力ボーナス:プラス15
 58+15 = 73
 73:ちょっと上手】

 19時55分、わたしは7階にある一色くんの部屋のインターホンを直接押す。事前に部屋番号を教えて貰っていたため、玄関から呼び出す手間は省けた。
 間もなくして一色くん本人が扉を開けてくれて、わたしは一色くんの部屋に入る。
 思い返せば男の子の部屋に入ったのは初めてだ。
 内心ドキドキとしながらも居間まで通されると、赤点候補者の5名の男子他、宮野さんが居た。水泳部の練習終わりに合流したようだ。彼女は赤点からかなり遠い位置に居たため、わたしと同じく先生役だろう。

「あ、春宮さん。良かった、男子ばっかりで花がないって思っていたところなの」

 彼女はそう出迎えてくれた。
 そうだね、とも言えず、わたしは宮野さんから遠い位置に座る。先生役が一箇所に固まっていても仕方がない。

「で、どんなかんじ?」

「ひとまずテスト範囲を洗い直しているところだよ。時間はまだあるからね。少しずつ積み重ねていけば問題なさそうだ」

 前回の小テストをもとに、解けていなかった箇所から教えているようだ。
 確かに小テストで出題された問題が本番の試験で出されることも多い。それに中学生レベルの問題も出題されているため、個人の苦手な教科も分かりやすい。


279 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 20:25:50.01rlQZRnFe0 (12/13)

 一色くんと宮野さんの教え方も上手く、このままいけば問題なく中間テストを越えることが出来そうだった。

「つーか、退学ってマジなのかな。そこんところ、生徒会役員なら知ってるみたいなところない?」

 20時30分、勉強を始めておよそ45分が経過した頃に候補者の1人である明道くんが気の抜けた声色で呟く。
 ここまで拍子抜けと思わせてくれるほど真面目に勉強に取り組んでいてくれたため、私語として咎めることはない。
 わたしへ向けられた質問に対して、わたしは嘘偽りなく率直に答えることにした。

「たぶん本当だね。今日みたいに多額のポイントを生徒全員に支払ってるなんて普通じゃないでしょ? だったら赤点を取っただけで退学なんてことも有り得る話なんじゃないかな」

「はー、そうだよなぁ、やっぱなぁ」

「それに生徒会長も生徒会から退学者を出したくないって話をしてた。あ、これオフレコでお願いね?」

 おそらく隠すことでもないが、秘密の話っぽくしておけば信憑性も増すだろうと錦山先輩の言葉を口にする。
 効果は絶大だったらしく、改めて候補者は勉強を再開する。
 わたしの受け持ちは2人、一色くんも2人、臨時参加となった宮野さんは1人に対して勉強を教える。
 幸いにも、わたしの教え方は下手ではなかったようだ。少しずつ理解をしてくれているようで嬉しい。
 そうして21時をまわった頃、本日の勉強会がお開きとなる。進捗次第では22時を覚悟していたが、まったくそんなことはなかった。
 今朝を持ってCクラスとなった女子の部屋は4階上の11階に位置する。宮野さんも11階らしく、エレベーターに乗りながら世間話をする。
 ほんの短時間であったが、部活の話、今日から1ヶ月限定のカフェの新作ドリンク情報など大変有意義な話を聞けた。


【天啓
 奇数:クラスから退学者が出た場合について
 偶数:中間テストを乗り越える方法
 下1のコンマ1桁でお願いします。】


280以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/23(木) 20:27:40.55p0U6kiCZ0 (3/3)




281 ◆yOpAIxq5hk2021/09/23(木) 21:07:27.66rlQZRnFe0 (13/13)

【>>280
 5:クラスから退学者が出た場合について 】

 5月2日の午前2時、わたしは目を覚ます。
 この人生で最も目覚め良く、まるでスイッチのオンオフを切り替えたかのように頭が覚醒している。
 直前まで学校生活の夢を朧げに見ていた。
 昼は教室で授業を受けて、夕方は生徒会室で業務をこなし、夜は夏帆先輩に料理を教わる。そして2年生の寮からの帰り道、1年Dクラスとなった辻堂くん姿を目にして目を覚ます。
 こんな時間に目を覚ましたのはあの人のせいだと言っても過言ではないだろう。ついさっきまでご飯を食べて幸せな夢を見れていたのに……。
 だが、その一方でひとつ気が付いたことがある。

 元Bクラスは先日に退学者を1名出した。
 退学者を1名出して435クラスポイント。
 そのクラスが4月のうちにどれだけ不真面目に授業を受けてきたかは分からないが、それでも確実にクラスから退学者を出したペナルティが課せられていると考えるのが自然だ。
 わたしたちCクラスと同じくらい授業中に私語をして携帯を触り、無断欠席などが発生したと仮定して残700クラスポイント。そこから更に退学者を出したペナルティとしてマイナス300クラスポイントされていれば計算が合う。
 もちろん実際はマイナス100ポイントだったとも、マイナス500ポイントだったとも考えることも出来る。
 総じて言えることは、次の中間テストで退学者を出したとき、0クラスポイントになる恐れがあるということ。
 わたしの見立てでは3人退学者を出すだけでマイナスに振り切れる。なんとしてでも退学者を出す訳にはいかない。
 そうと決まれば、今は寝ることにしよう。
 徹夜漬け否定派のわたしは、計画を立てて赤点候補者への教育を行なっていきたい。
 そのためにはまず、勉強会不参加を宣言した雨宮さんを説得しなければならない。昼休み、放課後にはすぐ席を立ってしまう彼女を逃さないように……寝よう。


【コンマ1桁判定
 奇数:呼び止めること出来ず
 偶数:雨宮綾香
 下1でお願いします。】


282以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/09/23(木) 21:48:47.57WjifbbtAO (1/1)

偶数