1 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/18(金) 22:46:15.49IXkdx2t5o (1/3)

このスレは安価で

乃木若葉の章
鷲尾須美の章
結城友奈の章
  楠芽吹の章
―勇者の章―

を遊ぶゲーム形式なスレです

目標

生き抜くこと。


安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります

日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2
期間は【2018/07/30~2019/08/14】※増減有

戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%
※ストーリーによってはHP0で死にます

wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに


前スレ

【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【1頁目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1601649576/


2以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/18(金) 22:50:32.11jLQA3ZlhO (1/1)

立て乙
そして祝スレ復活


3 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/18(金) 22:53:01.81IXkdx2t5o (2/3)

前スレ段階のまとめ


1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流有(長野、単独断念)
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流有(電話、若葉に変更)
・ 土居球子 : 交流有(不許可の場合、信じてもいい)
・ 伊予島杏 : 交流有(味方の証明、不許可の場合、信じてもいい)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(長野にいけるか、伊予島家の守護、襲撃の予兆、偽の神託)

√ 2018/08/03 まとめ

 乃木若葉との絆 58→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 51→52(普通)
 土居球子との絆 40→43(普通)
 伊予島杏との絆 46→50(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 61→63(普通)


4 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/18(金) 23:20:17.40IXkdx2t5o (3/3)


陽乃「九尾の力を解析させてあげれば、どうにかできるかしら?」

杏「難しいのでは?」

球子「力がありすぎる……と、思う」

未知の力は脅威ではあるけれど

既知の力になったとしても、

九尾の力は若葉達と比べて別格過ぎるのだ

現実に大きく影響を及ぼすレベルの力は、脅威であることに変わりはないだろう

球子「それに、協力なんてしてくれるのか?」

陽乃「私は――」

球子「久遠さんじゃなくて……九尾の方」

自分に向けられたのかと、

否定しようとした陽乃に球子は首を振る

球子「なんか、してくれなさそうな気がするんだが……」

杏「どうでしょう?」


5 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/19(土) 00:14:52.34u5VjQhcHo (1/5)


陽乃「……どう?」

『断る』

陽乃「私のためでも?」

『不要じゃろう』

分かっていたことではあるけれど、

九尾は大社に関しては協力する気がないらしい

自分の力を解析させるなんて言語道断だろう

『妾の力を解析など、出来ぬ』

陽乃「本当に?」

『神樹と同様の力と思うておるならば、不可能じゃ』

杏「久遠さん、どうですか?」

陽乃「ダメそう……」

球子「久遠さんが従えてるやつじゃないのか?」

陽乃「従えているというより、協力してる関係だから」


6 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/19(土) 01:07:53.41u5VjQhcHo (2/5)


従えているのではなく、

協力している関係だから強制することはできない。

それでも多少のことは願えばやってくれる

願い通りではないけれど。

陽乃「仮に、九尾の力が解析できたとしても……警戒はされちゃうのよね……」

『偽ることもできるがのう』

陽乃「それって、あれのように?」

神託のように偽れるのかと訊ねた陽乃に、

九尾は笑い声で答える。

神託よりも、偽ることは容易だと

杏「久遠さん……?」

九尾の声は二人には聞かせていない為、

陽乃は独り言を言っているような状況だからか

杏と球子は訝し気な目で、陽乃を見つめる


7 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/19(土) 01:08:29.75u5VjQhcHo (3/5)


ではすみませんがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から


8以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/19(土) 02:04:13.37vtsbNDLzo (1/1)


偽ったら偽ったで面倒なことになりそうだな…

それはそれとして新スレ立ってよかった


9以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/19(土) 05:51:53.028q1uihKkO (1/1)


この際だから二人には九尾とのあれこれの情報共有もありかもね
あとほぼ毎回追ってるからスレが復活してて嬉しい


10 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/19(土) 23:48:43.95u5VjQhcHo (4/5)


遅くなりましたが、少しだけ


11以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/19(土) 23:50:15.85oemZjDGXO (1/1)

あいよー


12 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/19(土) 23:56:40.02u5VjQhcHo (5/5)


陽乃「あぁ、ごめんなさい……九尾と話してるの」

球子「なるほど……」

球子は気を悪くしないで欲しいんだけどさ。と

前置きをしてから、陽乃を見つめる

球子「タマ達には独り言言ってるようにしか見えない……というか、変な奴?」

杏「タマっち先輩っ」

球子「いや、ほんと……純粋にさ」

悪いんだけど……そう言う球子は、

本当に純粋に感じたことを口にしただけなのだろう

陽乃は軽く笑うと、

確かにそう見えるでしょうねと頷く

これに関しては、球子が正しい

陽乃「でも、九尾と話してるのは本当よ?」

球子「今更疑わないよ」

杏「みんなの前で……あんなことがありましたからね」


13 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/20(日) 00:07:45.33OgeQcfG/o (1/4)


神社で、友奈の姿を模して出てきた九尾

あんなことがあったら、

陽乃が独り言言ってるだなんて、思わない。

けれどそれは理由を知っている人だけであって、

理由を知らない人達にとっては……それこそ。

杏「忌憚のないことを言えば、九尾さんには姿を見せていて貰った方が良いかと」

陽乃「でも……」

『断る』

陽乃「………」

陽乃が独りで逃げているときは姿を見せることは多かったけれど

あれは、必要だったからそうしていただけだ

今はもう必要がない

だから、九尾はそれを拒む


14 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/20(日) 00:23:34.26OgeQcfG/o (2/4)


陽乃「……ねぇ、二人にはこの影どう見えてる?」

杏「影……ですか?」

陽乃の指さした影を、二人が見つめる

陽乃には狐の頭の形をしているように見えるが、

二人は揃って顔を見合わせたかと思えば、首をかしげる

杏「普通の影です……けど」

球子「普通に人の影だぞ? 何かあるのか?」

陽乃「ここに九尾がいるのよ」

陽乃はそう答えると、

自分には影が人の形ではなく、

九尾の狐の頭の形をしていると話す。

二人はもう一度影を見るが……首を振る

陽乃「もう……」



1、九尾、姿を見せて頂戴
2、九尾は見せたくないって
3、この調子じゃ、どうにもならないわね


↓1


15以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/20(日) 00:25:28.57HQ+Vu4QAO (1/2)

2


16 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/20(日) 00:27:05.63OgeQcfG/o (3/4)

では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば早い時間から


17以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/20(日) 00:27:34.04dGXrl9GxO (1/1)

1


18以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/20(日) 00:30:03.39HQ+Vu4QAO (2/2)


なんとか杏たち連れて長野行きたいけどなあ



19以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/20(日) 00:35:29.11NqZcnVb6O (1/1)


九尾も頑なに姿を現さないな…
杏たちもひなたみたいに信頼できるような関係にならないと厳しいか


20 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/20(日) 23:54:13.64OgeQcfG/o (4/4)


遅くなりましたが少しだけ
時間も時間なので、安価はない予定です


21以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/20(日) 23:55:11.21YFJbRNZCO (1/1)

りょーかい


22 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/21(月) 01:21:05.25KjmzBbipo (1/7)


陽乃「九尾は姿を見せたくないって」

球子「そっか……まぁ、見せられても困るけど」

杏「も~またそんなこと言って……」

球子「いや、だってさぁ……素直だと逆に怖くないか?」

陽乃「……その気持ちは、分かる」

陽乃に同意されて驚いたように目を見開いた球子だが

小さく笑うと「そりゃよかった」と目を背ける

陽乃自身、九尾が素直に承諾してくれたらくれたで、

何か裏があるのではと、ちょっぴり怖い

陽乃「見せてくれなくても声を聴かせて貰えればいいんだけどね」

杏「そうですね……それだけで……」

球子「タマ達は良いけどさ、声だけ聞こえたら怖くないか?」

杏「確かに……」


23 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/21(月) 02:09:48.86KjmzBbipo (2/7)


やっぱり、九尾に姿を見せて貰うのが一番だ

しかし、九尾はそれを拒んでいる

陽乃が孤独なら出てきてくれるのに

陽乃が誰かと一緒にいるのなら、出てきてくれない

優しいのか優しくないのか

杏「九尾さんは久遠さん以外には心を許していないんですね」

陽乃「私にも許しているかどうか……」

ただ、陽乃と同様にひなたのことも気に入っているようなので

ひなたの前になら姿を見せてくれるかもしれない

結局

九尾が気に入っているかいないかだろうか。

杏はともかく

球子に関しては殺してしまえとまで言われているし

しばらくは難しい


24 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/21(月) 02:16:15.43KjmzBbipo (3/7)


杏「大社からの心象を良くするのは、九尾さんの力を解析させても難しいですし、姿を見せても……」

きっと、恐れられるだけだと杏は思う。

民衆に蔓延している噂があろうがなかろうが

九尾の力は万能で、凶悪だからだ

だったら

むしろ謎のままにしておいた方が良いのかもしれない

その方が……擁護のしようがあると。

けれど、杏たちは知らないだけで

もうすでに

九尾の力の一端は千景によって伝わってしまっている

球子「……長野、行けた方が久遠さんは幸せだったかもしれないな」

陽乃「一人でなら、ね」

杏「それは駄目ですよ」

球子「久遠さんが一人が良いって言ってるんだから放っておきゃいいのに」


25 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/21(月) 02:25:12.38KjmzBbipo (4/7)


そう言った球子は、

しかし……ふと、顔をしかめて首を振る

陽乃「土居さん?」

球子「……いや、久遠さんは一人になりたいのか?」

陽乃「その方が楽だもの」

球子「そりゃ、守らなくていいからな」

陽乃「ええ。裏切られることもないし」

苦笑いを浮かべながら、

自虐気味に零す陽乃を、球子はバツが悪そうに見つめる

ここに友奈がいたなら、もっと違う言葉をかけていたはずだ。

陽乃の友人だという少女に、頼まれたから。

彼女は孤独だと言われたから

球子「……久遠さんにとってはタマ達なんて雑魚だろ?」

陽乃「そんなこと思ってないわよ。まだ、正確な力量さえはかれてもいないのに」

杏「バーテックスとの戦闘経験ならタマっち先輩にもあるよね?」

球子「でも、誇れるほどじゃない」

陽乃「私だって同じよ」

球子「別に誇ってもいいだろ……救われたって言ってる人が、少なくとも3人はいるんだから」

杏「それはタマっち先輩もでしょ」

そう言われた球子は、

杏を一瞥するだけに留めて、顔を背けた



26 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/21(月) 02:25:41.39KjmzBbipo (5/7)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から


27以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/21(月) 06:09:05.35UBGodPdpO (1/1)


こうなってくるとやはり偽神託を出してもらった方が良さげかな?


28以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/21(月) 12:20:32.33tXTa4NWKO (1/1)


陽乃さんもどうにか自信を取り戻して欲しいなぁ


29 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/21(月) 23:08:18.56KjmzBbipo (6/7)


遅くなりましたが少しだけ


30 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/21(月) 23:10:57.55KjmzBbipo (7/7)


√ 2018年 8月4日目 昼:伊予島家

03~12 杏
37~46 球子
51~60 友奈
72~81 若葉
89~97 大社

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※若葉、友奈の場合、一桁奇数で訪問

※ぞろ目で付近の住民 奇数悪


31以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/21(月) 23:33:57.014017Ob9f0 (1/1)




32 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/22(火) 00:36:10.58Biq8j/Puo (1/7)


√ 2018年 8月4日目 昼:伊予島家


昼になって、杏の母親が作ってくれた昼食を4人で食べる。

杏は元からそうだったが、

球子も、初日ほどの警戒心はなさそうに感じる

もしかしたら、

ここに来てからは勇者として丸亀城のところに連れ出されてからの数年以上に

関わりを持ったかもしれないから、当然かもしれないけれど。

陽乃「……ずっと家にいるというのも窮屈ね」

球子「仕方がないだろー……自由なわけじゃないんだから」

陽乃「土居さんは平気なの?」

球子「平気じゃないけど、仕方がないじゃんか」

球子は杏と違って非常にアクティブだ

自由に外に出られない鬱憤も溜まっていることだろう

それでも、

杏を護るか否かの件を除いて八つ当たりもしてこないのだから

相当我慢しているに違いない


33 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/22(火) 01:27:16.62Biq8j/Puo (2/7)


球子「無理矢理付き合わされてるならともかく、自分で選んだからな」

それなら我慢するよ。と、球子は眉を顰める

杏のためではあったけれど、それを選んだのは球子だ

陽乃…・・ましてや

杏がついてきて欲しいと頼んだわけではない

杏「タマっち先輩……なんだか、先輩っぽくなった?」

球子「前から先輩っぽかっただろっ?」

杏「え~?」

球子「あ~ん~ず~っ!」

からかうように笑う杏と

それにちょっぴり怒った様子の球子

相も変わらず仲の良い二人を、陽乃は外側の人間として見つめる


34 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/22(火) 01:40:21.28Biq8j/Puo (3/7)


こうしている間にも

長野の勇者……白鳥歌野は戦っているかもしれない

陽乃は可能であれば救援に行きたいと今も思っている

けれど、それは大社から却下されてしまった

なのに

寄宿舎に戻ることも許されていない

そのためにはひなたを大社預かりにしておかなければならない

陽乃「はぁ……」

杏「久遠さん?」

陽乃「あぁ、気にしないで」

ここ数日、同じことばかり考えている陽乃は

いい加減どうにかしなければと……思ってはいるが。

ひなたを取るか

自分を取るか

普通なら迷う必要もないのだけれど、迷う

球子「疲れてるんなら寝ててもいいんじゃないか? どうせ、出来ることなんてないんだし」

杏「それもそうだよね……」


35 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/22(火) 01:41:16.29Biq8j/Puo (4/7)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


36以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/22(火) 03:05:08.170TyH7It40 (1/1)


はるのんのヤキモキしてる気持ちが痛いほどわかる


37以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/22(火) 06:35:50.71ue7XFP9nO (1/1)


陽乃さんじわじわと精神的に疲弊してきてるな…なんとかしなければ

あと今日でくあゆシリーズ6周年おめ


38 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/22(火) 22:28:05.23Biq8j/Puo (5/7)


遅くなりましたが、少しだけ


39以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/22(火) 22:30:26.275x+HDVr8O (1/2)

よしきた


40 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/22(火) 23:21:42.37Biq8j/Puo (6/7)


陽乃「大丈夫……別に疲れているわけじゃないの……」

球子「ほんとか?」

陽乃「ええ、ほんとう……」

伊予島家に来る前

あの野宿の苦しさも取り払われたし、疲れも無くなった。

朝昼晩の、美味しい食事

お風呂だって毎日入ることが出来ていて

ちゃんとした布団で眠ることが出来て……虫が入ってくるような心配もしなくていい

十分だ

疲れなんて、感じていない

『ふむ……主様、少し小娘共とでも鍛練をしたらどうじゃ』

陽乃「鍛練?」

『勇者としての実力を見ておいた方が良かろう?』

そう言った九尾は、

少しなら力を使っても、二人が死ぬことはないだろうと囁く


41 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/22(火) 23:42:53.61Biq8j/Puo (7/7)


九尾の力を使っても本当に死なないかどうかは

陽乃の手加減にかかっているだろう

そのくらいのことは陽乃にもできる

けれど……二人がそれを受けてくれるかどうか。

陽乃との鍛練なんて

特に球子からしてみれば、

お前をぶん殴ってやる。なんて果たし状を叩きつけられるようなもののような気がする

杏「九尾さんが何か?」

陽乃「えっと……特には」

球子も、もしかしたら体を動かすという点には賛成してくれるかもしれない

けれど、今は

そんなことよりも、気にしておくべきことがある

しかし

若葉からの連絡は……まだ来ていない


1、電話を借りる
2、ねぇ、鍛練しない?
3、九尾と話す
4、杏と話す
5、球子と話す
6、二人と話す
7、イベント判定


↓1


42以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/22(火) 23:44:26.55SjvJk2Pr0 (1/1)

6


43以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/22(火) 23:45:23.765x+HDVr8O (2/2)

2


44 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/23(水) 00:22:47.13qwU1qTr6o (1/3)


陽乃「ねぇ、正直に答えて欲しいのだけど」

陽乃はわざわざそう前置きをする

しなくても単刀直入に答えてくれた気はしなくもないけれど

陽乃「私と上里さん、どっちと暮らしたい?」

球子「ひなただな」

杏「えっと……そう、ですね」

球子は忖度なしにはっきりと即答してくれたものの

杏は悩ましそうにして……考えて。

杏「家事スキルはお二人ともあるので……戦力面で考えて久遠さんかもしれません」

陽乃「あら、優しいのね」

杏「今の世界を前提として、情報を基に客観的に考えただけですよ」

陽乃「私の力が危険だっていう情報はどこ行ったの?」


45 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/23(水) 00:30:12.78qwU1qTr6o (2/3)


杏「力は解析できていないので、不安要素はあります」

けれどそれを加味してなお

戦力になるという点を捨てることはできなかったと杏は言う

バーテックスは凶悪だ

杏は、ほんの少しそれを見ただけに過ぎないけれど

あれが及ぼした影響の大きさは知っている

それに対抗できる貴重な戦力と共にいられるのは……これ以上ないほど安全だとも言える

だから、陽乃を選んだ

球子「そこまで深く考えてなかったけど……護れるって自信がないなら答えは変わらないな」

陽乃「そうでしょうね」

球子「……実際に戦えば、そっちの方が強いくせに」

球子は顔をしかめて

ため息をつくように、陽乃から目を背けた

球子「守ってやるから付いてこい……くらい、言えるだろ」

陽乃「………」


46 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/23(水) 00:30:39.54qwU1qTr6o (3/3)

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


47以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/23(水) 00:40:50.00PYAu55f3O (1/1)


修行開始!
みんなで鍛えてるうちに仲良くなりたいな


48以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/23(水) 00:43:59.63a49zjCYJO (1/1)


杏は最初から優しいけどタマもきちんと物申す辺り良い子だな
あと交渉が長引いてるのか若葉の動向も気になる


49以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/24(木) 23:55:59.16yaJBgBWQO (1/1)

連休かな


50 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/25(金) 22:43:37.44LocRaVTPo (1/4)


連日できませんでしたが、本日は進めていきます


51以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/25(金) 22:47:03.82llcaeggQO (1/2)

やったぜ


52 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/25(金) 23:10:23.20LocRaVTPo (2/4)


陽乃「その守ってあげられる自信がないって言ってるのよ……」

球子「……」

球子はムッとして

その間に割って入るかのように杏が口を開く

杏「まぁまぁ……慢心するよりはいいんじゃないかな」

球子「タマが慢心してるっていうのか~?」

杏「そ、そんなこと言ってないよっ」

球子「分からなくもないけどさぁ……」

慢心してしまうよりは

多少なりと警戒心を残しておくべきだという考えは球子も理解がある。

しかし、まったく自信を持たないというのは問題だ

球子だって、絶対に守ると豪語しているけれど

絶対に守り切れるだなんて慢心をしているわけではない

常に、そう言う心持で挑んでいるという話だ。

球子「でもやっぱり、久遠さんは自信を持たなすぎるって思うだろ?」


53 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/25(金) 23:28:01.85LocRaVTPo (3/4)


杏「それは……」

杏は考え込むようにしながら、表情を曇らせていく

球子が杏のことを言っているとは思っていないものの

杏も、自分自身に力があるだなんて自信を持ててはいないのだ。

だから、自信を持たないことを責めるその言葉が、

勇者でありながら、それを信じ切れていないような自分のことを責められているようで……

杏「私も、自信ないから」

球子「あんず……」

顔を背ける杏を一瞥した球子は、

困り果てて……もどかしさを誤魔化すように頭を掻く

球子「あぁぁぁぁぁぁぁぁ……っも~っ!」

唸って、いきり立って

球子「久遠さん……いいやっ、陽乃っ!」

陽乃「なに?」

球子「タマと勝負だ!」

杏「タマっち先輩!?」



1、嫌よ
2、……良いけれど、勇者の力使えるの?
3、そういうの、あんまり好きじゃないのだけど


↓1


54以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/25(金) 23:32:05.94qt+f6vRx0 (1/1)

2


55以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/25(金) 23:33:31.75llcaeggQO (2/2)

3


56 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/25(金) 23:57:46.89LocRaVTPo (4/4)


陽乃「……良いけれど、勇者の力は使えるの?」

球子「無論だ!」

そうでなければ、陽乃の捜索なんて任されないし

こうして陽乃を見張る役割なんて担えるわけがない

しかし……。

杏は不安そうに首を振る

杏「ただ、私達は試作の物を貸し与えられているだけなんです」

陽乃「戦装束が万全じゃないって言ってたわよね? どの程度なの?」

杏「勇者同士で試験運用した結果的には……持続時間が短いみたいです」

球子「攻撃に対しての耐性もほとんどないな……生身で攻撃を受けるのと大差ないって」

陽乃「それで良くも私なんかと……」

陽乃は、自分がみんなを護れるなんて自負はしていないものの

それが危険な力であることくらいは認識している。

もちろん、

勇者であれ、生身で受けて良い力ではないと断言できる。


57 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/26(土) 00:09:03.12ofFBWIgko (1/2)


けれど、陽乃が断りそうだとみてか

球子は顔をしかめて「でもさ」と切り込んでいく

球子「自信持てるような力じゃないんだろ?」

杏「なんで挑発してるの!?」

球子「陽乃が自分で自信ないって言ってるんじゃないか」

杏「そうだとしても……」

それはバーテックス相手の話で、

勇者相手で考えれば

千景と友奈を戦闘不能に叩き込んだ挙句、若葉の全力でどうにかというレベルなのだ

球子がいくら頑丈な楯の持ち主だとは言っても、

押し込まれる可能性が高い

球子「それとも、力に自信があるのか~?」

陽乃「……そんなに、認めさせたいの?」

球子「さぁ?」

ニヤリと笑う球子だけれど、その魂胆は透けて見えている

どうしても、球子は認めさせたいらしい

球子の力ではなく、陽乃自身の力をだ


58 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/26(土) 00:09:38.66ofFBWIgko (2/2)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から


59以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/26(土) 00:13:10.33E0ITuxuuO (1/1)


陽乃さんのために体を張るタマっち先輩イケメンや…


60以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/26(土) 00:28:34.39QQDloN4e0 (1/1)


タマっちいいやつだな


61以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/27(日) 22:52:36.38y6Oms8HSO (1/1)

ここ最近連休が増えたなぁ…大丈夫だろうか


62以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/28(月) 15:41:38.08BweajsbYO (1/1)

師走だし


63 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/28(月) 22:16:53.81EC3BPActo (1/6)


遅くなりましたが、本日は少しだけ


64以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/28(月) 22:19:18.92dmGaYCHEO (1/2)

待ってたぞー


65 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/28(月) 22:27:38.07EC3BPActo (2/6)


陽乃「貴女に、得があるの?」

球子「タマが……いいや、私が納得したい。それじゃダメか?」

陽乃が弱いなら、弱いで良い

もちろん、強いなら強いでも構わない

けれど、それがあやふやなままなのが許せなかった。

杏達から聞いた話では、陽乃はとても強い勇者だと思われるけれど

球子は、それを自分の目で確かめたわけではない

それでも杏が言うなら信じたいのに……

陽乃自身がそれを否定するから、もどかしい

陽乃「なるほどね」

杏「危ないよ……タマっち先輩」

球子「陽乃が本当に弱いなら平気だ」

杏「久遠さんも止めてくださいっ」

陽乃「そう言われてもねぇ……」


1、戦う
2、戦わない


↓1


66以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/28(月) 22:28:54.06bkMTBs+y0 (1/1)

2


67 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/28(月) 22:52:22.58EC3BPActo (3/6)


陽乃「悪いけれど、戦えないわ」

球子「殺すのが怖いのか?」

陽乃「万全な状態で戦う方が実力が図れるでしょう?」

球子「屁理屈だな~」

そう、これは屁理屈でしかない

けれど球子はそれでも別に良いと考えているようで

呆れたというような表情を浮かべながらも、

猛反発するようなことはなくて。

球子「杏も若葉達も久遠さんの実力を認めてる」

陽乃「だから、なに?」

球子「今は久遠さんが強いって思っておいてやる……反対したいならタマを倒すんだな」

杏「もーっ、タマっち先輩?」

球子「あっはっはっはっはーっ!」

陽乃「……」

球子「認めろ。強いって」


68 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/28(月) 23:18:32.33EC3BPActo (4/6)


陽乃「まったく……」

球子ではなく

陽乃と杏が呆れて、ため息をつく

暴論……ではないかもしれないが

戦って勝っても、戦わずに終わっても球子は陽乃を強いと決めつけるらしい

陽乃「認めさせたいなら、私に負けることね」

球子「なんだとーっ!」

やるかこんにゃろ~! なんて

わざとらしく言う球子は笑みを浮かべている

杏「も~……」

冗談だと分かっているから、杏も怒ったりはしない

むしろ、

犬猿の仲にも見えた二人が仲良くしているように見えるのは、嬉しくて。

杏も笑っていた

陽乃「茶番だわ」


69 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/28(月) 23:31:12.75EC3BPActo (5/6)


仲の良い二人

そして、それと関係はあるが仲がいいわけではない自分

だったはずなのに。

ここでの生活は、かつてのようで

だから……緩んでしまいそうになる

陽乃「……強いと思いたいなら思ってもいいけれど」

けれど、陽乃は守るなんて約束はできない

守りたくても守れなかったものがたくさんあって

守った結果、裏切られるような形になって

だから……もう、約束なんてしたくない

陽乃「私は認めないから」

杏「久遠さん……」

球子「装束が出来たら、真っ先に決闘して白黒つけてやるからなっ」

突き放すような陽乃の言葉に、しかし、球子はそう返した

強引に行けばどうにかなると、言っていた少女を思い出して。


70 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/28(月) 23:31:47.70EC3BPActo (6/6)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


71以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/28(月) 23:51:32.93dmGaYCHEO (2/2)


戦わなかったけどタマとは少しでも打ち解けてるといいな
あと実力試すならいっそいずれ行くだろう長野の道中でもいいかも


72以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/29(火) 01:36:04.27MOVjBFjCO (1/1)


長野遠征楽しみだな


73 ◆QhFDI08WfRWv2020/12/29(火) 23:30:45.50z4d2LnGUo (1/1)


すみませんが本日は休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から


74以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/29(火) 23:32:14.30SBw2L4hYO (1/1)

了解、乙ですー


75以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/12/31(木) 23:52:13.90+NhM4vmvO (1/1)

今日も休載っぽそうだけど、良いお年を


76以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/01(金) 00:26:22.85iLXx6dfso (1/1)

明けましておめでとう
あんまり無理すんなよ


77以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/01(金) 23:04:37.88wsqDnskzO (1/1)

体調でも崩したのかな…?
こんな断続的な連休って今までなかったと思うから凄い心配なんだけど…


78以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/01(金) 23:37:03.13423CoCaIO (1/1)

実家でも帰ってんでしょ
正月だし


79以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/02(土) 00:29:45.07paeCWFVeO (1/1)

年数的に結婚しててもおかしく無いからな…


80 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/02(土) 21:47:34.94DtQ4+tPPo (1/7)

連日お休みになってしまいましたが、本日は少しだけ


81以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/02(土) 21:51:15.38yRROLT99O (1/4)

新年一発目待ってたぞー


82 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/02(土) 22:07:38.02DtQ4+tPPo (2/7)


√ 2018年 8月4日目 夕:伊予島家

03~12 若葉
37~46 友奈
51~60 杏
89~97 九尾

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※若葉、友奈の場合、一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪


83以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/02(土) 22:10:02.92yRROLT99O (2/4)




84 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/02(土) 22:44:26.85DtQ4+tPPo (3/7)


√ 2018年 8月4日目 夕:伊予島家


『面倒じゃのう……先延ばさずに殺めてしまえばよかろう』

陽乃「殺す前提なのやめて」

『じゃが、煩わしかろう』

陽乃「そんなこと……」

あの勢いは、かつて陽乃を包んでいたもので

そして奪われ、失ったもの。

正直、今の陽乃には心の負担になるばかりで

あんなもの無くなってしまえと思わないこともないけれど

でも、

失われていいものだとは思っていない

陽乃「それは置いておいてね。乃木さんから連絡がないのが気になるんだけど……」

『そうやって、内に秘めるだけで――』

陽乃「良いでしょ、別に」

『良いことでは無かろうに』

不満げな九尾は、

けれど、それ以上何も言わない

陽乃「貴女だって、上里さんの安否が気になるでしょう?」


85 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/02(土) 23:08:32.03DtQ4+tPPo (4/7)


『ふむ……あの娘に何かがあれば妾ならば分かる』

陽乃「分かるってどんなふうに?」

『あの娘の精神状態を察知することも可能じゃぞ』

九尾はそう言うと、陽乃の影に混ぜ込んでいる自分の姿を映し出すと

尻尾を立たせて、揺らめかせる

『妾の尾が一つ欠けて見えるじゃろう? それがあの娘に憑いた加護じゃ』

陽乃「それで?」

『あの娘の死を悟ることもできる。無論、妾のそれを媒体としてあの娘のもとに往くことも可能じゃが』

陽乃「……怖い力ね。貴女」

『くふふっ、妖狐としては当然じゃ。もっとも、それを主様が扱うことはできぬぞ』

陽乃「出来ちゃったら大変な事になるでしょ?」

出来たら便利だとは思うけれど

より凶悪さが増すばかりか

危険度が跳ね上がる為、使えない方が良いと思ってしまう

とはいえ……使えたら戦闘面では非常に心強いのだが


86 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/02(土) 23:25:20.84DtQ4+tPPo (5/7)


『あの娘には現状、問題は起こっておらぬ』

陽乃「……覚悟してたってことね」

陽乃を寄宿舎に戻すなら

自分がその場に残らなければいけないこと

二度ととは言わずとも、

しばらくは若葉に会えなくなること

様々なデメリットがあることを承知の上で……問題が無いと考えているのだ

『うむ、あの娘は良い』

陽乃「私より?」

『うむ』

陽乃「なら、上里さんを勇者にしたらいいじゃない」

『いいや、あの娘にはその適正……じゃったか。それがない。特に妾らは不可能じゃ』

陽乃「力を与えることはできるんでしょう?」

『即死するぞ』

陽乃「あぁ……」

九尾や、まだその力を秘めている伊邪那美様

その力の影響を、ほかの人は耐えられない

陽乃は吐血することもあるが、それでもまだ軽い方なのだ


87 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/02(土) 23:35:37.45DtQ4+tPPo (6/7)


『して、どうする主様』

陽乃「………」

『このままなら、主様は寄宿舎に戻ることになるぞ』

しかしそれは陽乃の望んだ形ではない

ひなたを犠牲……というのは過言かもしれないが、

ひなたを寄宿舎に戻さないという条件があって成立する

その場合でも、若葉達は理解してくれるだろうが

きっと、千景はそれを許さない

千景は特別ひなたを思ってはいないだろうけれど

あいつのせいだと、睨んでくるだろう

陽乃「はぁ……」

『やるかや?』

陽乃「やらない」

『傷害は排除してこそであろう?』

陽乃「殺すのは短絡的過ぎるってば」

血の気が多いというか

来るものを蹴飛ばす九尾のやり口は恐ろしい


1、遠征、行っちゃおうかな……
2、私の力、誤魔化してくれない?
3、ひとまず、上里さんは諦めるしかなさそうね
4、残念だけど……大社に戻るわ


↓1


88以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/02(土) 23:37:28.3900onjZlB0 (1/1)

1


89以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/02(土) 23:38:09.10yRROLT99O (3/4)

1


90 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/02(土) 23:41:46.63DtQ4+tPPo (7/7)


では、本日はここまでとさせていただきます
明日は可能な限りお昼ごろから


遅くなりましたが今年もよろしくお願いします


91以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/02(土) 23:58:53.86yRROLT99O (4/4)


改めて今年も楽しみにしてます

そしていざ長野へ…!


92以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/03(日) 00:35:17.42cH8cI+yaO (1/4)


いろいろ行くまでやること多いけどさあどうなるのか


93 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/03(日) 18:47:27.34sO+2PzI9o (1/9)


遅くなりましたが、少しだけ


94以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/03(日) 18:57:53.45QTrQvTvnO (1/1)

来てたか


95 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/03(日) 19:20:33.56sO+2PzI9o (2/9)


陽乃「遠征、行っちゃおうかな……」

『ほう?』

陽乃「それしかないような気がするのよ」

杏達のことを思えば

それが円満な解決策とは言えないかもしれないけれど

でも、それが一番だと陽乃は思う

この世界において、陽乃は厄介者だ

未知数な力を持っていて

見せている片鱗でさえ……世界を崩壊させかねないものだから

陽乃がいなければ、ひなたは若葉達のもとに戻ることができる

それが当たり前で

それが普通のことだった

その普通を奪ったのは、間違いなく陽乃の存在

だから、いない方が良いと

そして、だからこそ。

ただ幽閉されるよりも有意義な時間の使い方をするべきだと陽乃は思う


96 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/03(日) 19:59:19.39sO+2PzI9o (3/9)


陽乃の影として見えている九尾は

それを人の形へと転化させて……ひなたに変わる

ひなた「良いと思いますよ。ここにいたって何があるわけでもありませんし」

陽乃「なにもないなんてことはないと思うけど」

ひなた「悪いことの方が多いかと」

陽乃「でしょうね」

ひなた「良いですよ? 私は協力を惜しみません」

陽乃「積極的ね……」

九尾が積極的だと少し怖い

でも、陽乃に危害を加えることはないから

ただただ、この世界が気にいらないというだけだろう。

ひなた「それで、どうしますか?」

陽乃「伊予島さん達?」

ひなた「行くと言えば、彼女たちはついてきますよ?」


97 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/03(日) 20:06:28.34sO+2PzI9o (4/9)


だったら言わないという手もある

杏達には何も言わずに

こっそりと抜け出して……長野へと遠征に行く

問題はいくつかあるかもしれないけれど

でも、それなら荷物を抱えることはなくなる

陽乃「乃木さんにだけとか」

ひなた「若葉ちゃんだと、止められますよ」

陽乃「……郡さんは?」

ひなた「冗談にもなりませんね」

陽乃「そうよねぇ……」

なら高嶋さん。

なんて……それもまたいうだけ無駄なことで。

ひなた「何も言わずに出ていけばいいじゃないですか。仲良くする気は、無いのでしょう?」

陽乃「………」


1、こっそり、出ていきましょう
2、ねぇ、装束のデータ収集、私達が協力したら早く終わらないかしら
3、……イレギュラーなのは私だけでしょう? 彼女たちは無謀なことしない方が良いわ


↓2


98以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/03(日) 20:11:34.68bAX+cCkf0 (1/1)

3


99以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/03(日) 20:11:47.38cH8cI+yaO (2/4)

2


100 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/03(日) 21:15:17.57sO+2PzI9o (5/9)


陽乃「ねぇ、装束のデータ収集、私達が協力したら早く終わらないかしら」

ひなた「終わると思いますよ」

陽乃の力は、若葉達とはまるで異質なものではあるが

しかしその身に纏う加護と、

その力そのものは若葉達のデータ収集のは大いに役立つことだろう

九尾が扮しているひなたは、やや不機嫌そうに溜息をつく

ひなた「だから、私は模擬戦でもどうかってすすめたんですよ?」

陽乃「だからって……そんなの、言われなきゃ気付かないわ」

ひなた「そうでしょうか……」

陽乃「当たり前でしょう」

球子達に対して殺意ばかりの九尾の言葉

そんなものから、

言われてもないことを察してくれと言うのは

無茶も過ぎていると陽乃は顔をしかめる

陽乃「なら、模擬戦するべきよね」

ひなた「力の証明、することになりますよ?」

陽乃「貴女が勧めてきたことでしょ?」


101 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/03(日) 21:42:00.67sO+2PzI9o (6/9)


ひなた「ただ、今の彼女たちの装束では久遠さんの全力は防ぎきれませんよ」

陽乃「全力出したら、どうなっちゃうの?」

ひなた「最悪死にますね」

そもそも、以前から言っているように

陽乃が扱う力には少なからず蝕む穢れが含まれている

陽乃と戦うだけでそれによる影響はあるし

それが長時間なら、より影響は大きくなっていく

陽乃「……化け物じゃない。私」

ひなた「そう言われてますよね。ずっと」

陽乃「まぁ……そうよね」

力を扱う適性のある陽乃自身でさえ蝕み

いずれは死に至らしめることのある力

それを、適性のない相手が耐えられるわけもなくて。

ひなた「模擬戦するなら、適度に力を抜いたうえで……短期決着ですよ」

陽乃「なにそれ……でも失敗したら殺しちゃうんでしょ?」

ひなた「最悪ですよ最悪。場合によっては重症程度ですから」

陽乃「笑い事じゃないってば」


102 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/03(日) 21:58:06.94sO+2PzI9o (7/9)


ひなた「連れていくんですか?」

陽乃「戦えるようになっていれば、いても問題ないでしょう?」

ひなた「なるほど、それで郡さんを置き去りにするんですね」

陽乃「しないわよ」

九尾に細工して貰わない限り

全員を連れていくなんていうのは不可能だ

その場合

まず間違いなく千景を連れていくわけにはいかない

当然、そうなれば友奈もつれていけないので

最大でも

若葉、杏、球子の三人になってくる。

陽乃「郡さんは悪くないわ。だれだって……あんな風に思うもの」

ひなた「そうは思いませんけど」

陽乃「でも、私はそう思ってる」

それでいいでしょう? と、陽乃は笑った


103 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/03(日) 21:59:57.09sO+2PzI9o (8/9)


√ 2018年 8月4日目 夜:伊予島家

03~12 杏
37~46 若葉
51~60 友奈
89~97 大社

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※大社の場合、一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪


104以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/03(日) 22:00:30.32cH8cI+yaO (3/4)




105 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/03(日) 22:07:55.50sO+2PzI9o (9/9)

では、少し早いですが本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


106以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/03(日) 22:19:06.45cH8cI+yaO (4/4)


道筋はできてきたのかな?


107以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/03(日) 22:31:28.81T5tZJ8ODO (1/1)


偽神託ってまだ使わないのだろうか
なんやかんや九尾が細かく手配してくれそうだけど


108以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/05(火) 23:12:27.86yleqLdHMO (1/1)

早く長野に行きたいなぁ…


109以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/07(木) 08:15:10.46tu1TUWOsO (1/1)

昨日もお休みだったか…
数日とはいえ休載が長く感じるな


110 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/07(木) 20:25:33.98OIILG4JVo (1/9)


連日お休みを頂いてしまいましたが
少しだけ


111以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/07(木) 20:28:20.30ZVscdyYTO (1/4)

よっしゃー!


112 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/07(木) 20:36:23.95OIILG4JVo (2/9)

√ 2018年 8月4日目 夜:伊予島家


陽乃はこの四国から出て

長野の勇者達のもとへと遠征することを決めた

しかし、単独での走破は不可能ではないが可能とも言い難い

そのうえ、杏達は付いて来ると言っているし、大社からの許可は無い

この際、大社からの許可は無くても問題はないが

確実に長野にたどり着き、極力死人を出さないようにしなければならない。

特に、勇者のうちの誰かが死ぬというのは致命的だろう

一番は、戦力になる勇者を連れていくことだけれど

今の勇者達は生身に近く

とてもではないが遠征に耐えられるとは思えない

出ていくか

装束が完成するように協力して……連れていくか。

陽乃の力ならば、

それを促進させられるという話ではあるけれど

最悪殺すというのが、怖い


113 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/07(木) 21:15:10.14OIILG4JVo (3/9)


陽乃単独でも体の負荷という部分に目を瞑ってさえしまえば、

どうにかして……長野にたどり着くことはできる

そうするなら杏たちには知られないように出ていく必要があるし

連れていくなら、

協力してあげなければならない

その場合は杏たちに声をかけた方が良いだろう

陽乃「………」

話をするなら、今日だろう

出ていくのなら、今

あるいは明日の早朝

大社がまだ答えを渋り

若葉からの動きがない今のうちが適切だ



1、出ていく
2、杏たちに話す


↓2


114以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/07(木) 21:21:52.41iavYUUaZ0 (1/2)

1


115以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/07(木) 21:24:29.22ZVscdyYTO (2/4)

2


116 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/07(木) 22:07:16.24OIILG4JVo (4/9)


陽乃「……というわけ」

球子「なぁにがと言うわけ。だ!」

杏「た、タマっち先輩! しーっ!」

もう夜だから大声出さないでと諫めようとする杏

球子は悩まし気に頭を抱えて

枕へと頭を打ち付ける

球子「正気か!?」

陽乃「正気で言ってるのよ」

これ以上こんな場所にいたところで

改善されていくとは思えない

もちろん、杏の家は居心地がいいけれど

でも、それに甘んじているだけではいけないと思う


117 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/07(木) 22:45:48.96OIILG4JVo (5/9)


陽乃「私、向こうに戻りたくないし」

かといって

ひなたを大社預かりのままにしておきたくはない

それになにより、長野のことが気になる

九尾は長野にいる勇者は、

ここにいる勇者の誰よりもバーテックスとの闘いに慣れているから

役に立つだなんて言っているけれど。

杏「なら、私たちを連れていってください」

球子「そうは言ったってなぁ……装束が機能しないだろ?」

杏「でもっ!」

球子「でももすもももあんずも無しだ!」

杏を止めた球子は、

しかし、杏の気持ちを酌んでか少し考えて陽乃へと目を向ける

球子「杏を守れるか?」

陽乃「約束は出来ないわ」

球子「だろうと思ったよ……」


118 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/07(木) 22:53:01.41OIILG4JVo (6/9)


もはや分かり切っていたことのように零す球子

呆れる素振りもなく

ただ確認のために聞いただけのような笑いを零して……

球子「だったら、杏は行かせられないな」

杏「ううん、私も行く」

球子「駄目だ……駄目に決まってるだろ」

私、死にに行ってきます

なんて笑顔で言っているようなものだという球子は

杏が行くのを絶対に止めるつもりのようだが、

逆に、杏は絶対に行くつもりのようで。

陽乃「そこで一つ、提案があるのだけど」

球子「ろくでもなさそうだなぁ……」

陽乃「否定はしないわ」

でも、聞いておいて損はないと思う。と

陽乃は自信なさげに、苦笑する

球子「それで?」


119 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/07(木) 23:04:38.84OIILG4JVo (7/9)


陽乃「貴女達の装束を完成させる手助けが出来るかもしれないの」

杏「それって……模擬戦をするっていうことですか?」

陽乃「端的に言ってしまえばそうなるわね」

球子「ふぅん……それで?」

ただそれだけじゃないと見抜いている球子は

それがどれだけユニークな話なのかと

むしろ楽しんでやろうとでもいうかのように笑っていて。

陽乃「別に面白い話じゃないのだけど……」

杏「何かデメリットがあるんですよね?」

陽乃「ええ。まぁ、もうみんな知ってることだけど」

陽乃は小さく答えて一息

隠す必要もなく、はっきりと告げる

陽乃「私と戦うと最悪死ぬわ……手を抜いても長く戦うと体を蝕まれて死に至る」

杏「そんな……」

球子「脅しじゃなくて、本当にか?」

陽乃「こんな脅しが必要だと思う?」

球子「そりゃそうか……」

千景なら殺しに来そうな挑発文句

けれど、今の球子と杏には意味がない


120 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/07(木) 23:17:26.50OIILG4JVo (8/9)


球子「なるほど……で?」

陽乃「で? って」

球子「久遠さんと戦えば死ぬ可能性があるなんて、タマはずっと考えてたことだぞ」

杏の言葉を信じているならば

陽乃の力が絶大なのはまず間違いがない

だから、死ぬことなんて前提だった

少なくとも球子はそれもあり得ると考えながら話していたのだ

死ぬ可能性があるなど、今更だ

球子「データを取るのは一人で十分だろ?」

杏「タマっち先輩まさか……」

球子「杏はどうしてもついて行きたい。タマは久遠さんの実力が知りたい」

それって利害の一致ってやつだろ? なんて球子は笑みを浮かべる

少し違う気もするけれど

陽乃は何も言わずに、小さく首を振る

本気かどうかなんて聞くだけ無駄そうだ

球子「やろうじゃんか……いいだろ?」


1、相手は郡さんが良いかな……
2、ええ。良いわよ

↓2


121以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/07(木) 23:19:57.79ZVscdyYTO (3/4)

2


122以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/07(木) 23:21:20.06iavYUUaZ0 (2/2)

2


123 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/07(木) 23:38:09.83OIILG4JVo (9/9)


ではここまでとさせていただきます
明日も可能な限り通常時間から


124以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/07(木) 23:57:01.88ZVscdyYTO (4/4)


杏が優しさ故に結構前のめりな分タマが良い感じなストッパーになってくれてるな
そしてようやくタマの希望してた決闘回来たか


125以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/08(金) 00:25:33.71ArtNBEA00 (1/1)


ここにきてちょっと心配になってきたぞ


126以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/09(土) 11:30:15.09QLL9S4yU0 (1/1)

長野まで何日かかるんだろ
ライフラインとか残ってんの?


127以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/09(土) 21:18:18.33H7u4cG/hO (1/1)

じっくり描写すると片道だけでも相当時間かかりそうだし判定でもいいかもね

今日は更新あるといいなぁ


128 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/09(土) 22:54:45.06anLKq5RWo (1/3)


遅くなりましたが、少しだけ


129以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/09(土) 22:58:47.26TKfcg570O (1/1)

よしきた


130 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/09(土) 23:21:26.33anLKq5RWo (2/3)


陽乃「……ええ。良いわよ」

球子か杏か

どちらが最も安全かと考えたら、必然的に答えはそれになる

そう思いつつも

陽乃は球子の戦い方次第では、

球子と自分の相性は最悪だと思っているのだが。

陽乃「大丈夫、殺さないように気を付けるわ」

球子「それ、タマじゃなかったらキレてるからな~?」

陽乃「なら……手加減はさせて貰うわ。の方が良い?」

球子「郡さんが聞いたら大鎌振りかぶって迫ってくるやつだな」

陽乃「そう……」

困り顔の球子は杏を一瞥して眉を顰め、

また陽乃へと向き直る

球子「それで? どこでやるんだ?」

子供の小競り合いならともかく

勇者としての力を振るうのであれば、

家の前の私道だの、ちょっと広い公道だの

人通りが比較的多いような公園等ではさすがに無理だ

陽乃「私の神社で良いじゃない」


131 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/09(土) 23:47:22.09anLKq5RWo (3/3)


杏「良いんですか?」

陽乃「良いも何も、もう壊れちゃってるし……」

まだ現存している。と言って良いのかは微妙なところではあるが

今ある廃墟を丸ごと吹き飛ばすほどの戦いをするつもりはないし

それなりに更地となっている上に

悪い噂ばかりで中々に人が来ることがなさそうだから、うってつけの場所だ

最悪、吹き飛んでしまってもいいし

なんて、陽乃は苦笑する

陽乃「あそこなら、気兼ねなく戦えるでしょう?」

球子「久遠さんが良いなら良いけどな」

杏「タマっち先輩の武器的にも屋外が良いし、それでいいなら良いと思う」

陽乃「言っておくけど私の力を真正面から受けるだけなら……死ぬからね?」

球子「やってみなきゃわからないだろ」

陽乃「あっそう」

やって欲しくない

やれば死ぬ可能性があるから

などとは言わずに

陽乃は握り拳を作っては開いてを繰り返して、ため息をついた

陽乃「なら、早速明日の朝に行きましょ。予定、どうせないでしょ?」


132 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/10(日) 00:17:45.21fa7u1rV7o (1/3)


球子「……久遠さん、小学生の時からそうなのか?」

陽乃「そうって、なに?」

球子「いや、なんていうか」

今この状況下で個別に用事などあるわけもなく

それは当然ではあるのだが

杏と球子がここにいなければならず、予定がないのはある意味陽乃のせいである

その点を責めるつもりはないけれど

それなのに「どうせないでしょ?」と言うのは聊か引っ掛かりがある。

球子「……友達いた?」

陽乃「それなりにはいたし、今ほど嫌われてなかった」

球子「そっか」

もちろん、以前の陽乃はそんなことはなかった。

あれから今まで色んなことがあったせいで

突き放すことを大前提としたひねくれた考え方になったため、

少しばかり、キツい。

それが余計に敵を作ることになるが、味方を作りたくないのだからそれは必然だと言ってもいい


133 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/10(日) 00:39:18.56fa7u1rV7o (2/3)


球子「もう少しさ……柔らかい感じになれないのか?」

陽乃「私に何を求めてるのよ」

杏「でも、もう少し……その、優しくしたら印象変わると思います」

陽乃は球子たちに対して当たりがきついのに対して

杏の両親に対してはとても礼儀正しい

何かあれば率先して手伝いに行くし、

それがまた、丁寧で……二人からの評価は良く、信頼も厚い

初めからその態度だったなら

千景ともここまでこじれることはなかったのではないかと杏は思う

陽乃「……無理ね」

杏「でも」

陽乃「優しくしてあげてた結果が、コレなのよ。残念だけど」

そう言った陽乃は笑っていたけれど

杏と球子は笑えずに目を合わせて……首を振る

陽乃「明日は模擬戦とはいえ、戦うんだからもう寝なさい」

球子「………」

スレてない陽乃が気になるけれど

それを知る由もなく、球子はため息をつくだけだった


134 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/10(日) 00:41:32.20fa7u1rV7o (3/3)


では短いですがここまでとさせていただきます。
明日もできれば少し早い時間から


135以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/10(日) 00:51:36.59YL7htGFHO (1/1)


陽乃さん、間違いなく優しさは残されてるけど心は既にボロボロだな…
二人がどれだけ陽乃さんの心を癒せるかが重要になりそう


136以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/10(日) 01:15:33.94VkF3ActwO (1/1)


ドキドキするなあ


137 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/11(月) 22:19:21.284jWb+DGro (1/5)


遅くなりましたが少しだけ


138以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/11(月) 22:28:14.04MhzhfUajO (1/1)

きてたか


139 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/11(月) 22:28:55.114jWb+DGro (2/5)


1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(戦わない、脱出相談、良いわよ)
・ 伊予島杏 : 交流有(戦わない、脱出相談)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(遠征、勇者との協力)

√ 2018/08/04 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
 土居球子との絆 43→46(普通)
 伊予島杏との絆 50→53(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 63→63(普通)


140 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/11(月) 22:31:12.364jWb+DGro (3/5)


√ 2018年 8月5日目 朝:伊予島家

03~12 若葉
37~46 大社
51~60 友奈

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪


141以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/11(月) 22:42:12.72/OAD9NIo0 (1/1)




142 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/11(月) 23:05:08.394jWb+DGro (4/5)


√ 2018年 8月5日目 朝:神社


約束の朝

誰かに邪魔されることもなくすんなりと神社に辿り着いた陽乃達

やっぱり、人気のない神社

呪われるだとか祟られるだとかで周囲の家屋にもまばらで

これなら、多少暴れても問題はないだろう

陽乃「一撃先に入れたほうが勝ちで良いかしら?」

球子「そしたらタマが有利過ぎじゃないか?」

楯のある球子と、ない陽乃

どちらが有利かで言えば

当たり判定を隠せる球子の方が有利と考えられる

陽乃「なら、相手が気絶するまでやる?」

杏「三回攻撃を当てる……でも、タマっち先輩が有利になっちゃうかな?」

球子「攻撃の当たり判定って言うのがそもそもたまに有利だな」

陽乃「じゃぁ、ハンデで良いんじゃない?」

球子「へぇ?」


143 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/11(月) 23:39:30.734jWb+DGro (5/5)


球子「余裕じゃないか……負けても知らないぞ?」

陽乃「負けても良いわよ別に」

陽乃は勝たなければならないわけじゃない

負けたっていい

球子達勇者の装束のデータ収集の手伝いになればそれでいいからだ

球子「張り合いがないなぁ」

陽乃「負けても良いけど、負けるつもりはないわ」

球子「どっちなのかはっきりしろよな~」

そう言いつつも嬉しそうな球子

杏はそれを一瞥して

崩壊してしまっている神社へと目を向ける

かつては人の願いを祈られた場所が

今では、人の憎悪によって変わり果てている

ここで奉られていた神々が人類を滅ぼそうとしても止められる気がしない

陽乃「伊予島さんは審判をお願いね?」

杏「あ、はい……役者不足かもしれないですけど」

球子「心配するな。タマが勝つ」


144 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/12(火) 00:06:58.097pquXyOWo (1/2)


『主様、手を抜いても良いが……』

陽乃「大丈夫、分かってるわ」

手を抜きすぎてもダメだし

本気を出し過ぎてもダメ

それは球子の実力に関わらず、装束が耐え切れないからである

長引かせないためにも、

一撃あるいは、三回攻撃を与えたら終了が望ましい

陽乃「一回が良い? 三回が良い?」

球子「どっちの方がデータがとれるのかだろ?」

陽乃「一番データがとれるのは、土居さんが死ぬまで殴ることだけど……」

杏「久遠さん……」

さすがにそれはあり得ない

かといって

超短期決戦になりかねない一撃決着は控えるべきかもしれない

しかし、それが一番安全だ

陽乃「そうねぇ」

安全性を取るか、データを取るか

相手が折れるまでというのは危険ゆえに、一撃決着か三撃決着


1、一撃決着
2、三撃決着


↓1


145以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/12(火) 00:10:46.26REAxeky+O (1/2)

1


146 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/12(火) 00:34:12.887pquXyOWo (2/2)

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


147以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/12(火) 00:42:52.49REAxeky+O (2/2)


千景の時も一撃当たるのに意外と時間かかってたし一回で十分だと思う
なにより長引いて万が一のことがあると困るからな




148以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/12(火) 02:20:12.626mrF0VrIO (1/1)


緊張してきた……


149以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/13(水) 23:31:44.17X/cQNO5mO (1/1)

平日は厳しい感じ?


150以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/13(水) 23:34:55.02QklJrBRo0 (1/1)

もしかして戦闘が長引くと暴走する?


151 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/14(木) 21:08:20.52E21gN6KWo (1/5)


遅くなりましたが、少しだけ


152以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/14(木) 21:11:01.72VFx1hKfnO (1/1)

やったぜ


153 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/14(木) 22:33:21.99E21gN6KWo (2/5)


陽乃「じゃぁ、一撃決着で決めましょうか」

球子「おう、やってやる」

意気込む球子は陽乃から距離を取って、

ポケットから取り出した端末を操作する

陽乃「……あら」

端末からあふれ出していく神々の力

それが球子の体を包み込んでいき、

身に纏っていた衣服をどこかへと消滅させて……戦装束へと変えていく

陽乃「なるほど」

球子「どうだ、凄いだろ」

杏「作ったのはタマっち先輩じゃないのに」

大社の中でも

そう言った力を研究する部署が作り上げた技術

それは確かに神々の力に満ちている

満ちてはいるが。

陽乃「力の纏まりがないわね……分散してるように見える」

まとまりがないから

その真価を発揮できていない

これでは、大して力を防げない


154 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/14(木) 23:21:31.74E21gN6KWo (3/5)


杏「久遠さん、力が見えているんですか?」

陽乃「見えるというか、感じるというか……でも、見えてると思って貰って良いわ」

神の力

小さい頃からそれに触れてきた陽乃は

九尾の力を借りずにそれが察知できるようにまでなってきている

九尾の力を借りれば

それがさらに……鮮明になっていく

陽乃「九尾、できるかしら」

『無論』

端末の操作をすることなく

ただ力を貸してくれる九尾に声をかけただけで

陽乃の装いを戦用の装束へと一変させる

黒を基調とした、暗晦な雰囲気を感じるそれは

陽乃が巫女として勤めていた頃の装束をモチーフとしたものでできていて

一見すると、酷く動きにくいように見えるが

陽乃「懐かしいわね……もう二度と着ることなんてないと思ってたんだけど」

球子「黒いな……」

杏「赤と白じゃなくて、黒と白……独特だね」


155 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/14(木) 23:42:09.68E21gN6KWo (4/5)


球子「本当にそれで戦えるのか?」

陽乃「ええ、何の問題もない」

巫女装束は、演舞の際にも身に纏っていたものだ

戦闘と比べると動きに派手さはないかもしれないけれど

それなりの運動量を、通常の巫女服で行っていた陽乃としては

それように調整されたものであれば、何も問題にはならなかった

陽乃「準備は良いかしら?」

球子「あぁ、どんとこいだ!」

陽乃「ふぅ……」

普通の模擬戦なら

戦力的に優位な陽乃が後攻で、球子が先攻となるべきだ

しかし、

陽乃の攻撃を受けてこそだから――今回ばかりは譲ることが出来ない

陽乃「手加減するからちゃんと避けてね」

球子「避けたら意味ないだろ」

陽乃「まぁ、それもそうなのだけど……」

楯を、狙うべきだ


156 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/14(木) 23:47:13.42E21gN6KWo (5/5)


陽乃⇒球子
↓1コンマ判定 一桁

0、5 00  最悪
1、4、6、7、8 防ぐ
3     回避
9、2 楯以外命中


157以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/15(金) 00:00:07.183g6k813aO (1/1)

ふむ


158 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/15(金) 00:00:51.74WZQiFFk/o (1/1)

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


159以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/15(金) 00:26:07.53pYae/x1PO (1/1)


とりあえず成功なんかね?


160以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/15(金) 05:28:40.79kRkartdWO (1/1)


何気に陽乃さんの戦装束的なものが出たのは初めてか
憑依と性能に違いがあるのか気になる


161以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/16(土) 23:46:43.31c56LLfC+O (1/1)

休みか…年末辺りから更新が激減してて寂しい


162以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/16(土) 23:57:24.44lnuodNX7O (1/1)

SSスレって何日に一回の更新がデフォみたいなもんだしまあ気長に待とうよ


163 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 17:58:40.19TlnyH0rzo (1/13)


遅くなりましたが、少しずつ


164 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 18:45:01.52TlnyH0rzo (2/13)


陽乃「土居さん、動かないでね」

球子「避けてやるからな!」

陽乃「もう……」

さっきと言ってることが違うわよ。と、

小さく笑いながら、力強く地面を踏み込む

陽乃の戦闘スタイルは友奈と同じく超近接戦闘

零距離にまで近づいて拳を打ち込むその戦い方は曰く、防御の突破においては若葉達を大きく上回る

踏み潰され、砕かれる小石がギャリギャリと音を立て

少しずつ滑るようにかかとが浮き上がって、体重が前へ前へと推移する

陽乃「すー……はぁ……」

強く、強く

陽乃「ふっ!」

静かに呼吸を整えて、一気に飛び込んでいく

球子「!」

球子との距離は百数メートル程度

地面を蹴り飛ばし、駆け抜け……距離を詰める

それは、球子から見ればほんの一瞬で――

陽乃「せぇぁぁぁああッ!」

球子「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

――勢いづいた蹴りが、球子の構えた楯を撃ち貫く


165 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 18:55:33.17TlnyH0rzo (3/13)


球子「おわぁっ!」

蹴り抜かれ、球子の小さな体が吹き飛ぶ

球子は数回地面を跳ねるように転がって、

最奥の木にぶつかる前にどうにか立て直し――ふらりと膝をつく

球子「おっ……おぁ……痛ったぁぁぁぁぁぁ!?」

陽乃「……大丈夫?」

球子「あんず! 腕、腕くっついてるか!?」

杏「ちゃ、ちゃんとついてるから大丈夫だよ!」

球子「楯が砕けるかと思った……」

球子の腕につけられている楯は、まだヒビも入っていない

けれど、蹴り飛ばされた球子の体はあちこちに擦り傷が出来ていて、汚れていて

激戦の真っただ中にいるかのようにボロボロだった

球子「くっそー……タマじゃなかったら死んでたぞ」

陽乃「土居さんなら大丈夫だと思ったのだけど」

球子「ば、馬鹿にしやがってぇ!」

やってやるからな! と叫ぶように唸った球子は、

擦りむいた膝から流れる血を叩いて、大きく息を吐く

球子「やられたら――やりかえぇぇぇぇす!」


166以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/17(日) 19:07:01.15PKoDgcvYO (1/4)

タマ頑張れー


167 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 19:11:22.85TlnyH0rzo (4/13)


球子⇒陽乃
↓1コンマ判定 一桁

1、4、6 防ぐ
3、2、5 回避
8、9  撃ち落とし
7、0  命中


168以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/17(日) 19:12:07.87PKoDgcvYO (2/4)




169 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 19:22:59.30TlnyH0rzo (5/13)


球子「くっ……」

骨が軋む

噛みしめた歯の隙間から血がにじむような気がする

歯が抜けたかもしれない

足が痛い

腕が吹き飛びそうな感じがする

でも、だけど、それでも

球子「くらぇぇぇぇ!」

陽乃「っと……」

勢いよく踏み込む多摩湖から、飛びのいて距離を取る

球子の戦い方は、話で聞いた程度しかない

だが、それでも何をしてくるかは察しが付く

球子「ぬおぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

陽乃「!」

振り抜く腕は、陽乃が想像したよりもずっと早い

足先から、腕

そうして楯へと神々の力が多く流れ込み――それは急激に巨大化して

球子「ぁぁぁぁぁああああああッ!?」

球子の腕をもぎ取るような力強さで投げ飛ばされ、陽乃へと直撃する


170 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 19:35:05.96TlnyH0rzo (6/13)


陽乃「っ!」

別に馬鹿にしているわけではなかった

けれど、それでも球子の攻撃が当たることはないだろうと思っていた

いや――その油断がなかったとしても

陽乃は球子の攻撃を躱しきることはできなかったかもしれない

陽乃「くっ……っ!」

巨大な楯は陽乃の腹部に直撃し、抉るような回転に弾き飛ばされ、

受身を取って転がった陽乃はすぐに体を起こして――戻ってくる巨大な楯を躱す

球子「おわぁ!?」

陽乃「………」

球子の腕に戻った楯は通常サイズに戻っている

球子が容易に受け止められる辺り、暴発と言うわけではなく

完全に、球子自身の力がそうさせたということだろう

陽乃「ん……私の負けね」

杏「あっ、そ、そうですね」

一撃入ったら終わりの模擬戦闘

陽乃の一撃は楯に当たり、球子の一撃は陽乃を直撃した

杏「タマっち先輩の勝利!」

球子「な、納得いかない……」


171 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 19:47:27.00TlnyH0rzo (7/13)


球子「納得できるかぁーっ!」

陽乃「えぇ?」

球子「おかしいだろっ! 無傷じゃないか!」

陽乃「当たり前でしょう? あのくらいで怪我するようにはなっていないもの」

球子「ぐぬぬぬ……」

球子の予想外の力を喰らっても、

受身を取った土汚れこそついているものの、陽乃の装束は傷一つついていない

一方で、球子はボロボロだ

擦り傷、汚れ、打撲のような痕

装束だって所々破けてしまっている

陽乃「力の収束が甘いのよ……あの小さいのはともかく、集合体相手には通らないかもしれないわ」

杏「集合体……」

球子「つまり、久遠さんは集合体と同レベルってことか……?」

陽乃「それ以上かもしれないわよ?」

球子「くそっ……もっと集中しないとダメか」

杏「私たちの装束も、久遠さんくらいの頑丈さがないと簡単に食い破られちゃうってことですよね?」

陽乃「でしょうね。正直、土居さんの装束は私から見たら体操服の上からジャージを着てる程度だもの」

球子「マジか……」

陽乃「ええ」


172 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 20:49:29.31TlnyH0rzo (8/13)


陽乃「ちゃんとしていれば、私のさっきの攻撃でそんな風にはならないはずよ」

球子「でも本気だったら?」

陽乃「最悪、楯が砕け散るとおもうけど」

球子「だろうな……腕がまだ痺れてるし」

球子の体を守っていた神々の力が霧散して、装束はまた私服へと戻る

怪我はそのままではあるけれど

多少の擦り傷程度なら普通に手当てすれば問題はないだろう

陽乃「打撲の方は平気? 骨折れてない?」

球子「折れてない……っていうか、なんか。こう、あれだな……」

陽乃「なに?」

球子「優しくて怖い」

陽乃「……もう一戦、してあげても良いのよ?」

球子「わー! 無理無理!」

一度楯を蹴られた程度でボロボロなのだ

もう一度撃ち込まれたら今度こそ骨折まで行くかもしれない

杏「ふふっ、でも。私たちの装束や武器にはまだまだ理解が足りていないって分かりましたね」

陽乃「もう少し解析できれば大丈夫でしょうけど、時間がかかりそうね」

陽乃とのデータが活用されればその進捗も良くなるはずだが


1、伊予島さんも、やっておく?
2、土居さん。もう一回くらい頑張れない?
3、ねぇ九尾。私の力の余波だけを与えた場合って、どうなるのかしら
4、でも、危ないし止めておきましょうか。お疲れ様


↓2


173以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/17(日) 20:50:49.26PKoDgcvYO (3/4)

1


174以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/17(日) 20:52:08.839/AUbuf90 (1/1)

3


175 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 21:39:59.11TlnyH0rzo (9/13)


陽乃「ねぇ九尾、私の力の余波だけを与えた場合ってどうなるのかしら」

『ふむ……模擬戦を行わずに試したいのかや?』

陽乃「下手に怪我を負わせなくて済むなら、伊予島さんにも協力して貰えるでしょう?」

『そうじゃのう……』

九尾はしばらく考えるように黙り込むと、

影を揺らめかせて、小さく口を開くようなそぶりを見せた

『小娘共の今の状態では病に侵されるやもしれぬ』

陽乃「そんなに?」

『身体の内側を蝕むゆえ、大した加護なき衣服など障害にすらならぬぞ』

もちろん、

その状態だからこそ、侵蝕していく力をその身に受ける。という経験は有益かもしれない

九尾はあえてそう口にしたが、

しかし、それは当然ながら危険なことで……

最悪殺してしまうなんて生易しいものではない

戦いで命を落とすよりも苦しむことになる


176 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 21:50:39.17TlnyH0rzo (10/13)


杏「どうですか?」

陽乃「病気になっちゃうかもしれないって」

杏「っ……」

球子「でも、勇者なら治るんじゃないのか?」

普通の人間なら、そんな病気に侵されれば大変な事になる

だが、勇者ならそこまで重くならないのではないか

少し休む必要はあるかもしれないが

一生ダメになってしまうことはないのではないか

そう考える球子の問いに、

聞こえもしない声で、九尾は笑う

『穢れに蝕まれれば、早死にするが』

陽乃「え……」

『重くなければ良いが、重ければ死ぬ。それは主様にも話しておろう?』

蝕む陽乃の力は、耐性がない人間なら即死もあり得る。

それはただの余波であっても、同じ

球子「ん?」

陽乃「場合によっては、早死にするって言ってるわ」

球子「えぇ……」

杏「でも、加減して貰えれば……有益なデータが取れるんですよね?」


177 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 21:59:44.51TlnyH0rzo (11/13)


陽乃「ええ……まぁそうなのだけど」

球子「無理はさせたくないって顔してるなー……」

杏「………」

陽乃「別に殺したいわけじゃないもの」

球子の視線から逃れるように顔を背けた陽乃は、

小さく首を横に振って、息を吐くと

地面に広がる狐の形をした自分の影を見つめる

九尾は、陽乃がやると言えば手を貸してくれるだろう

杏たちも、

陽乃がやってみましょう。と言えば、やるかもしれない

けれど、これはさすがにハイリスクが過ぎる

杏「信じて貰えませんか?」

球子「あんず、無理したら死ぬぞ」

杏「でも、タマっち先輩よりは無茶じゃない」

球子「いいや、無茶だ。ただの攻撃ってわけじゃないんだろ?」

陽乃「ええ。言葉にするのが難しいのだけど……ただの物理攻撃ではないわ」

杏「……でも。それがあれば、私達がちゃんと戦えるようになるかもしれません」

陽乃「………」


1、やらない
2、やる


↓2


178以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/17(日) 22:02:27.89PKoDgcvYO (4/4)

1


179以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/17(日) 22:06:49.99g3B8NQ8zO (1/1)

1


180 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 22:44:35.78TlnyH0rzo (12/13)


陽乃「ダメよ。やらない」

杏「久遠さん!」

陽乃「無理しなければならないほどの状況ではないでしょう?」

有益な情報が得られるのだとしても、

無理する必要があるのなら、それは最終手段だと考えるべきだ

今すぐにデータをかき集めて、

装束を完成させて戦いに出なければならないならいざ知らず

まだまだ時間があるであろう状況下では必要ないだろう

陽乃「今はまだ、土居さんをタコ殴りにするだけで良いでしょう?」

球子「タコ殴りはやめてくれ」

陽乃「それでも平気なようになりなさいって言ってるのよ」

球子「あんなの何発も受けられるわけ――」

陽乃「受けられるようになるのよ。貴女が本当に人を護る楯なら……私の全力であっても受けられるだけの力をつけて欲しいの」

そうでなければならない

バーテックスは尋常ではない化け物だ

今の集合体が全てではなく、さらに上位になるのであれば、

陽乃の本気の一撃でさえ上回る力を持っている何かがいるかもしれない

陽乃「そうなれるように……毎日殴ってあげる」

球子「こっわ! 殺意しか感じないぞ!」

陽乃「貴女、さっき後ろに伊予島さんがいたらどうなっていたのかを考えた方が良いわ」

球子「それは……」

陽乃「絶対に護る。その言葉の重さ、分かってくれたかしら?」


181 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/17(日) 22:46:06.05TlnyH0rzo (13/13)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


182以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/17(日) 22:58:53.75dTsn1kXVO (1/1)


短い戦闘だったけどそこそこ収穫あったみたいでやって良かったな
そういえば陽乃さん、タマだけでなく千景にも先手で一本取られてるけど今作の西暦勇者って中々強いのでは?


183以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/17(日) 23:46:20.23TclUbvRgO (1/1)


2人が本当に強く思う気持ちが力に乗った感じかね
そして陽乃さんの優しさがもう隠しきれてない


184以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/18(月) 00:24:37.78CJUcZc5yO (1/1)


前向きに話進んできてホッとしてる


185 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/18(月) 21:37:24.81SJx99iW9o (1/7)

では少しだけ


186以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/18(月) 21:43:40.83sl4ADOXCO (1/3)

よっしゃ


187 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/18(月) 21:53:02.38SJx99iW9o (2/7)


球子「……そうか」

球子だって、軽はずみに守るだなんて言っていたわけではない

杏と出会ったあの日

自分の力が守るためにあるものだと悟ったあの瞬間から、

球子はそうあれるようにと、ずっと思い続けている

それは、球子の経験した戦いが決して簡単なものではなかったからこその自負でもある

けれど――自分は手を抜いた一振りで蹴り抜かれた

後ろに杏がいたら、その守るべき身体ごと吹き飛ばされて

自分の身体で圧殺していた可能性だってある

球子「タマは……弱いか?」

陽乃「弱いわ」

球子「見込みはあるか?」

陽乃「さぁ? 私の知ったことじゃない」

球子「……杏を、守れると思うか?」

陽乃「知らないわよそんなこと」

陽乃は素っ気なく返して、

普段と打って変わって俯いてしまっている球子を一瞥する

陽乃「貴女が守りたいなら、守れるようになるしかない。そうなれる保証なんて、私はしてあげられないわ」


188 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/18(月) 22:05:22.63SJx99iW9o (3/7)


球子「でも、手伝ってくれるんだろ?」

陽乃「私が手伝うのはデータ収集であって貴女の特訓じゃないわ。勘違いしないで」

球子「くっ……ふ、あはははははっ」

陽乃「笑えるようなこと言った?」

傷の痛みに呻きながらも笑う球子に、陽乃は顔を顰める

球子の笑い二嘲笑じみたものが含まれているようには感じられないけれど

それでも、笑えるような場面で笑われると、少々気にもなるもので

首をかしげながら球子を指さす陽乃に問いかけられた杏は、小さく首を振る

笑えるようなことは言っていない

それは間違いない

けれど、球子が笑いたくなる気持ちもわかる

杏「久遠さん、さっきタマっち先輩のことをタコ殴りにするって言ってたじゃないですか」

陽乃「それが?」

杏「いえ、それだけです」

それを受けられるようになれと、陽乃は言った。

そのあとに全力でさえも受け止められるようになれと言った

最後まで付き合ってくれるかはともかくとして、

多少は、付き合ってくれると言っているようなものなのに。

陽乃「言っておくけれど、本当に付き合う気はないからね? 装束のデータさえ万全になってくれたらあとはどうでもいいんだから」



189 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/18(月) 22:44:13.94SJx99iW9o (4/7)


球子「あぁ、分かった」

それでもいいよ。と、

球子はまた笑みを浮かべて、陽乃を見上げる

先日まであった敵意も

話し合いを重ねれば落ち着いていくもので、柔らかい

球子「好きなだけ殴ってくれ」

陽乃「嫌よ。名実ともに人殺しになる気はないわ」

球子「そうならないようにしてくれるって話だったはずだぞ」

陽乃は強い

間違いなく、球子よりもはるかに力を持っている勇者だ

今でもその考えに変わりはない

しかし、それでも守れると言いきらないだけの理由があるのだと納得した

自分が守れると言い切ってはいけない強さであると自覚させられた

球子はもう、躊躇いなく陽乃へと手を差し出す

陽乃「……なにしてるの?」

球子「タマも、仲間になってやる……いや、そんなこと言える立場じゃないな」

そうじゃないだろう。

そうである必要はないだろう。

球子「今は友達だ! それで我慢してくれ」

陽乃「は?」

球子「なっ? 宜しく頼むぞ!」

戸惑って動かない陽乃の手を球子は掴みに行く

今はその距離感

でもそれでいい、今はまだその程度の力しかないのだから

いつか言えればいい

お前も守ってやるからと。そう、いつか言って……引っ張ってやれればいい


190 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/18(月) 22:47:12.18SJx99iW9o (5/7)


√ 2018年 8月5日目 昼:伊予島家

03~12 若葉
37~46 大社
51~60 友奈

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪


191以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/18(月) 22:47:56.14sl4ADOXCO (2/3)




192 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/18(月) 23:01:03.80SJx99iW9o (6/7)

√ 2018年 8月5日目 昼:伊予島家


陽乃「友達……? 友達って……」

球子は友達だと言った。

その言葉の意味が分からないほど馬鹿ではないが

だからこそ理解が出来ない

呆然と多摩湖に握られた手を見つめる陽乃の視界の奥、

ベッドの影と混じり合う陽乃の影が動き、

人もいないのに、人影が出来上がる

『主様が、友人などと言ってあやつらに関わったゆえのことであろう』

陽乃「でも、だからってこうなる?」

『押しに弱いから……だったかのう?』

くつくつと喉を鳴らして笑う九尾

陽乃は人影を踏むが、

実体のないその影は踏まれたことなどまるで気に止めてはいない

陽乃「バカなことをしたわ……友達なんて、私」

『守りたいなら、守れるようになるしかなかろう』

陽乃「それも、私が言ったわよ……分かってるってば……」

自分の発言には責任を持てと。

そう言いたいのだろうと悪態をつく陽乃は、ベッドに腰かけながら、頭を抱えた


193 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/18(月) 23:03:32.76SJx99iW9o (7/7)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


194以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/18(月) 23:10:58.04sl4ADOXCO (3/3)


殴りあいの末にタマと和解できて良かった良かった
あと陽乃さんのツンデレっぷりや思い悩む姿がシリーズの原点回帰感があるな


195以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/19(火) 00:49:16.64PB8vztjmO (1/1)


殴り合って友情深まるとかベタやん?
素敵やん?


196以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/19(火) 23:50:37.88KnmDDQFr0 (1/1)

「納得できるかぁーっ!」は「こんな勝利いるかァッ!」を彷彿させるから好き


197 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/21(木) 20:35:26.64JG4oPmLUo (1/6)


では少しだけ


198以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/21(木) 20:49:22.94xXa/LR6iO (1/3)

やったぜ


199 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/21(木) 20:56:39.88JG4oPmLUo (2/6)


陽乃「仲良くなるつもりなんてなかった」

『じゃろうな』

陽乃「友達だなんて……私、責任とれない……」

『しかし、主様が招いたことであろう?』

陽乃「ええそうよ……そう。そうよね……」

あの人は押しに弱い

そんな余計な一言のせいだろうか

それとも、その一言がなかったとしても

杏のせいで、球子は結局こうなっていただろうか

――今は友達

陽乃「取り消せないかしら」

『往生際が悪いぞ』

陽乃「だって……」

もう、失いたくない

目の前で奪われるのなんて……我慢できない

そう思っていたのに

それが一番あり得る勇者の友人なんて

陽乃には一番、辛いものだ


200 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/21(木) 21:28:44.59JG4oPmLUo (3/6)


『諦めて友人になってしまえばよかろう』

陽乃「嫌よ」

『もうなってるつもりじゃろう。あの娘は』

陽乃「そうだけど……」

けれど、九尾は加えてそれを認めろという

無理な話だ

難しい話だ

それを認めてしまったら、

球子や杏を友人にしてしまったら

陽乃は、それを守らなければいけなくなる

そうできなかった時の苦しみを、

また、味わう恐怖に怯えなければならなくなる

陽乃「私はそんなに……強くないの」

自分の力が強いと、自負できない

強いのならば、誰一人失うことはなかったはずだから

自分の心が強いと、自負できない

強いのならば、今もなおこんなにも苦しんでいるはずがないから


1、あとは、貴女に神託を出して貰う必要があるわ
2、無理。友達にはなれないわ
3、杏と交流
4、球子と交流
5、イベント判定

↓2


201以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/21(木) 21:29:45.02xXa/LR6iO (2/3)

1


202以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/21(木) 21:31:15.9217WGecZO0 (1/1)

1


203 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/21(木) 22:18:26.87JG4oPmLUo (4/6)


陽乃「それは、とりあえず置いておいて……」

『置いておける話しかや?』

陽乃「考えたってしょうがないのっ!」

陽乃が何といおうと、

球子はもう今更、あの発言は撤回しないだろう

陽乃が悪いことをしでかそうと、

それがなぜなのかを……しっかりと考えてくれてしまうだろうから。

陽乃「もう……最悪だわ」

そうぼやいた陽乃は、もうそれはいいから。と、首を振る

陽乃「あとは、貴女に神託を出して貰う必要があるわ」

『ふむ……よかろう』

陽乃「今すぐには、ダメよ?」

『あの小娘共の装束じゃろう?』

陽乃「ええ……あれが完成してからじゃないとダメ」


204 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/21(木) 22:54:07.45JG4oPmLUo (5/6)


少なくとも、杏と球子はついてくることになるから

あの二人の分だけでも完成してくれなければ、大変な事になる

『主様が護ればよいではないか』

陽乃「貴女、それだと私が死ぬって話だったでしょ……」

死んでほしいならそう言いなさいよ。と

悪態をつく陽乃を見上げる影は揺らいで、

喉を鳴らすような笑い声が部屋に零れる

陽乃「それに守ってあげられる自信がない」

『自信をつければよい』

陽乃「無茶言わないで……死にたくないわ」

言葉通り死ぬ気でやればどうにかなる

けれど、そんなことをしてあげるつもりは毛頭ない

陽乃「二人、貴女から見て伸びしろは?」

『一人は知らぬが、もう一人は主様も分かっておろう』

陽乃「……やっぱり」

『うむ。今のあの楯では、いずれ砕けるぞ』


205 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/21(木) 22:55:09.67JG4oPmLUo (6/6)

では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


206以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/21(木) 23:10:21.59xXa/LR6iO (3/3)


仲間と打ち解けると陽乃さんの心が抉られてくとは…
このトラウマをどう克服すればいいものかなぁ


207以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/22(金) 00:09:30.652s2s5i4yO (1/1)


仲良く修行してるうちにはるのんも柔和にならないかな


208 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 19:24:57.92sLBlnzOMo (1/11)


では少しだけ


209以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/23(土) 19:28:48.83mVcox4qJO (1/4)

かもーん


210 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 20:01:00.76sLBlnzOMo (2/11)


陽乃「なら……どうにかする必要があるわね」

球子自身を強くして、

神々の恩恵をより強く受け止められるようにするか

楯を扱う戦闘における技術力を磨いてもらうか

そうしなければ、ただ装束が完成したところですぐに限界が来てしまう

『何じゃ主様。あの娘どもに手を貸すのかや?』

陽乃「諏訪に行くとき、足手纏いになられても困るってだけよ」

『くふふっ、そうかや』

陽乃「そうよ……そう」

諏訪にたどり着ける可能性を少しでも高めたい

諏訪から勇者達を連れて来られる可能性を少しでも高めたい

そして何より、生き残ることができる可能性を高めたい

球子と杏は貴重な戦力だ

『主様、死ぬぞ』

陽乃「死なないために、あの子達を使うのよ」

それがなければ協力なんてしないと陽乃は言うが

それがなかったとしても陽乃は手伝うだろうと九尾は目を細める

陽乃は、決して見限ることのできない愚か者だからだ


211 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 20:21:13.10sLBlnzOMo (3/11)


『して、主様や』

陽乃「そうね……神託の内容でしょう?」

九尾による惑わしの力は、神託でさえ成り済ますことが可能だ

九尾が語っていたことのため、本当にそうなのかは分からないが、

それがないと陽乃は大社に無断で出ていかなければいけない

大社に義理を通さなくても良いとは思うが、

後々へと余計な禍根を退かさないためには

あくまでも、大社からの指示と言う大義名分があった方が良い

特に、郡千景との溝は……これ以上広げるのは得策ではない

陽乃「貴女ならどう出す?」

『諏訪に兆し有り……とでも告げればよかろう。ことの良悪は語る必要もあるまいて』

陽乃「どちらともとれる神託を出すと、迷って判断が遅くなるんじゃないかしら」

『明晰では勇者を残さぬ可能性もあるが……良いか?』

陽乃「それは危険ね……」

しかし、全員が最も確実ではある


1、九尾に任せる
2、諏訪の危機を明確に神託する
3、久遠陽乃を諏訪に行かせるように神託する

↓2


212以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/23(土) 20:26:32.14mVcox4qJO (2/4)

2


213以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/23(土) 20:30:12.88byrQhzFz0 (1/2)

2


214 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 21:06:29.95sLBlnzOMo (4/11)


陽乃「良いわ。九尾、明確にしましょう」

『良いのかや?』

陽乃「じゃないと、私は連れていかれないと思うし……」

曖昧な状態の場合、

調査をかねての派遣になることだろう

そんな大事な役目を陽乃に与えてくれるとは限らない

むしろ、ほぼ確実にここに残していかれるとみて良い

その一方で、明確に危険であると知らせれば、勇者達みんなを派遣してくれる可能性は高い

そうなれば、必然的に陽乃も連れ出されることになる

……はず。

どれもこれも希望的観測ばかりだ

陽乃「上手く行くかしら?」

『さて……妾にはいえぬことじゃ』

陽乃「そうなの?」

『うむ……諏訪が捨て駒であるのならば、大社は勇者を出さぬ可能性もある』


215 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 21:42:12.34sLBlnzOMo (5/11)


陽乃「……本気?」

『じゃろうな』

大社が諏訪を捨て駒として考え、

救う気が無いのだとしたら

勇者の派遣は行わずに、勇者たちの力を温存しようとする

その可能性は確かにある

だが、神託はいずれにしても出しておくべきだ

その結果、

大社が【諏訪は必要な犠牲】とでもいうのであれば、

その時は、誰が何と言おうと壁をぶち壊してでも出ていけばいい

陽乃「それ、どうにかならないの?」

『することは可能じゃが……面倒なことになるぞ』

陽乃「たとえばどんなふうに?」

『あ奴らの元々の計画から強引に切り返すからのう……違和感はあるじゃろう』

その違和感から看破されてしまうと、

千景からの情報で陽乃の仕業であることも気づかれてしまうこともあり得るし

そうなると……面倒なことになってしまう


216 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 22:03:58.51sLBlnzOMo (6/11)


『得策ではないだろう』

陽乃「……そう」

『その時は、行くがよい』

大社なんて気にせずに

自分がしたいことをするために、行動してしまえと。

九尾の言っていることは非常に危険なことだ

しかし、そうしなければならないのなら、するしかない

陽乃「貴女としては、その方が良いのかしら?」

『わざわざ死ねとは言わぬ』

陽乃「ならいいけれど」

陽乃の力でなら、諏訪まで突破は可能だ

それを成し遂げるための犠牲は払う必要があるが。

それを最小限に抑え込むためにも、勇者の助力が欲しい

そのための神託だ

陽乃「神託……頼むわよ」

『承ろう』

九尾はそういうと、影を揺らして陽乃の影を元に戻す

陽乃「……捨て駒。ね」

そんな決断をする大社なんて――。


217 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 22:15:48.87sLBlnzOMo (7/11)


√ 2018年 8月6日目 夕:伊予島家

05~14 若葉
27~36 大社
52~61 球子
81~90 友奈

↓1のコンマ

※それ以外は通常 判定追加
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪


218以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/23(土) 22:25:38.15byrQhzFz0 (2/2)




219 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 22:30:20.40sLBlnzOMo (8/11)


追加判定

一桁奇数 陽乃連れ戻し

↓1


220以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/23(土) 22:31:51.62mVcox4qJO (3/4)

そおい


221以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/23(土) 22:48:26.94HjzWbx1kO (1/1)

セーフ!


222 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 23:08:41.02sLBlnzOMo (9/11)

√ 2018年 8月6日目 夕:伊予島家


杏たちの戦装束は、

陽乃から得られるデータが膨大とはいえ、

今日一日でデータ十分になってくれればいいがそう甘くはない

まだまだデータ収集する必要があると思っておく方が良いだろう

データ収集の必要がないとしても

あと数回……あるいは

せめて一度楯を砕くほどの力で殴っておくべきだ

球子の力は、楯にしては脆い

九尾が述べたならそれは事実だ

友達になどなりたくないと思うけれど

陽乃は死んでも良いとは思っていない

いいや……もう

彼女に死なれた場合、陽乃は傷つくことになる

陽乃「あぁもう……もうっ!」

横に振り抜いた拳は、壁に当たる寸前で止まる

陽乃「ここに……来なければ良かった」


223 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 23:49:51.94sLBlnzOMo (10/11)


杏の両親は、優しい

杏も球子も、陽乃を放っておいてはくれない

最初は敵対していたはずなのに、友達になるとまで言われてしまった

それが悪いわけではないが

守れないことを恐れ、

失うことに怯えている今の陽乃には相性が悪かった

陽乃「土居さん……」

土居球子

他者を守る楯の力を授けられた戦いにおいて最も死に近い少女

よりによって、彼女に友人だと言われてしまった

言わせてしまった

あのうどん屋での失言があろうとなかろうと

この場に来てしまったことで、こうなっていた可能性はある

が……いずれにしても自分の言動の結果だ

突き放すように言葉を紡ごうが、無駄になった

陽乃「っ……何、してるのよ……私」


1、球子
2、杏
3、電話を借りる
4、イベント判定

↓1


224以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/23(土) 23:50:29.20mVcox4qJO (4/4)

2


225 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/23(土) 23:53:30.52sLBlnzOMo (11/11)


では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼頃から


226以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 00:07:28.40P2uHr1ouO (1/1)


かといって陽乃さん、孤独なままはむしろ苦手まであるから難しいよなぁ
あと時間経過する度に連れ戻される判定があるのも地味に怖い…


227以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 00:41:08.01YLcM+8jYO (1/1)


もうこうなったら死なないように鍛えるしかねえよ!


228 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 14:38:06.70EnrKGhruo (1/19)


では少しずつ


229以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 14:43:03.72lvuiuSmCO (1/1)

よっしゃ


230 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 14:57:01.72EnrKGhruo (2/19)


陽乃「伊予島さん?」

杏「久遠さん、どうかしたんですか?」

陽乃「土居さんは?」

杏「タマっち先輩なら、庭に出てますよ」

ほら。と、

差し向けられた先に目を向けてみると、球子がシャドーボクシングに興じているのが見える

勇者としての装束に切り替えているので、

力の制御についての鍛錬……のつもりだろうか。

陽乃「あの子……私の監視役だったはずでしょう?」

杏「久遠さんなら大丈夫だって思ってくれたんですよ」

杏は嬉しそうに笑っているけれど、

陽乃は苛立たし気に顔をしかめて、首を振る

陽乃「あの子、打撲してるのに」

杏「言ったんですけど……諏訪に行く途中で打撲したからって休めるのかって」

陽乃「無茶をするのは今じゃないでしょうに」

杏「……心配。してくれているんですか?」

陽乃「戦力が減ると困るのよ」

杏「ふふふっそうですねっ」


231 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 15:18:45.82EnrKGhruo (3/19)


陽乃「なによ」

杏「いえ、別に」

陽乃「嘘や照れ隠しで言ってるわけじゃないわよ?」

杏「それは、はい……分かっています」

陽乃が本気でそう言っているのは分かっている

けれど、

それが本気であるからこそ、杏は嬉しかった

陽乃は、人を拒絶し……懐に入れまいとしている

多くの人々から疎まれ、畏れられている

なのに、その心の内にある優しさだけは変わらずそこにあると分かるからだ

だからこそ、杏は傍にいたいと思う。

陽乃がどれだけ拒絶しようと

その振り払う手の内側に居ようと思う

少なくとも自分だけは味方でありたいと思う

陽乃「それで、データは送ったの?」

杏「送るというか……戦闘データは随時送られているんです」

陽乃「大社から連絡は?」

杏「何が起こったのか。と言う確認がありました」


232 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 15:46:55.63EnrKGhruo (4/19)


陽乃に襲撃の疑いがかけられたものの

データ収集に協力して貰っただけだと説明をして、どうにか事なきを得た

ただ、向こうは疑わしく思っていることだろうけれど。

それでも、陽乃を連れ戻すなんて言うことにはならなかったのは奇跡だろう

いや、球子から得られた情報量を見て……それは出来ないと断念したという方が現実味がある

杏「久遠さん、体は問題ありませんか?」

陽乃「土居さんに比べればあの程度かすり傷にも――」

杏「タマっち先輩の攻撃じゃありません……久遠さん自身の力の影響です」

陽乃「それなら何の問題もないわ」

あの一瞬とも言える模擬戦程度でどうにかなるほどではない

杏「久遠さんの力は異質です……あまりにも」

陽乃「だから?」

杏「……私達を、頼っては貰えませんか?」

陽乃「はぁ?」

杏「弱いですけど……力はないですけど……」

でも……だけど

杏は自分の弱さを認めて、言う

杏「それでも久遠さんの力になりたいです」


1、お断りするわ
2、弱い人に命を預けるなんて出来るわけないじゃない
3、頼られたいなら強くなったらいいじゃない
4、馬鹿なこと言わないで


↓2


233以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 15:50:30.84Vfxhzuz3O (1/1)

3


234以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 15:54:54.904AM1KpDmO (1/1)

4


235 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 16:49:30.30EnrKGhruo (5/19)


陽乃「馬鹿なこと言わないで」

杏「っ……」

陽乃「土居さんも貴女も……笑えない冗談だわ」

一人は友達だと言い出して一人は頼ってくれと言う

自分が弱いと分かっているのに

それでも友達だとか、頼ってとか

陽乃にとってはふざけているにもほどがある戯言だ

陽乃「私はね。友達なんて作るつもりはないし、ましてやこの命を赤の他人に委ねるなんて絶対にしたくない」

杏「私達が弱いからですか?」

陽乃「貴女達が強かろうと……他人なんかに任せたくない」

自分の命は、自分で守る

信用ならない他人なんかに委ねるなんて、死にたくないならやらないべきだ

陽乃「頼ることなんて何もないわ」

杏「久遠さん一人では守り切れないものだって――」

陽乃「私は私の命以外守る気はないわ……ううん、私とお母さんの命以外はどうだっていい」

杏「久遠さん一人で倒せない敵が現れたらどうするんですか?」

陽乃「その時は、潔く心中するわ。もちろん、その敵とだけど」


236 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 17:08:37.02EnrKGhruo (6/19)


杏「久遠さん!」

陽乃「冗談で言ってるわけじゃない」

杏「だからこそです!」

陽乃「目ざわりなのよ。貴女達みたいなのが一緒に戦うなんて」

一般人のように一方的に嬲られることはないはずだ

しかし、かといって生き残れるとは限らない

死ぬことはあるのだ

殺されてしまう可能性はあるのだ

それこそ……あの日のように、目の前で。

陽乃「っ」

杏「久遠さん……」

陽乃「私に傷一つつけられないような力で、頼れだなんてふざけたこと言われたって」

悲鳴が聞こえた

自分に向かって延ばされる手が見えた

貪りつくされ、砕かれていく音を聞いた

腕や頭、足が千切れ落ちるのを見せられた

一つや二つではなく……何度も何度も……

陽乃「っ……足手纏いだって言ってるのよ!」


237 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 17:39:49.55EnrKGhruo (7/19)


陽乃「どうして私に嫌がらせするのよ」

杏「嫌がらせなんて……」

陽乃「友達とか、一緒にいるとか迷惑なのよ」

杏「でもっ、一人でいたら久遠さんは」

陽乃「私が、何? 辛いって? 馬鹿じゃないの?」

独りでいるのにはもう慣れた

頑張って守り抜いた地区の人々に生贄として捧げられた挙句

家を焼かれ、神社を壊され

勇者として丸亀に来てからも、

陽乃が特異と言うだけで隔離しているような状態のまま三年間

その間に千景にまで目をつけられて

久しぶりの再会を果たした友人からは拒絶されて……

もう十分だ

もう嫌だ

独りで良い……独りが良い

陽乃「今は行き場所がないからここにきているだけで、あなた達と仲良くする気なんてないんだから――勘違いしないで」


238 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 17:54:24.02EnrKGhruo (8/19)


√ 2018年 8月6日目 夜:伊予島家

05~14 若葉
27~36 大社
41~50 杏母
52~61 球子
81~90 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常 判定追加
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪


239以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 18:00:57.39ckgqHe3DO (1/1)

はい


240 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 18:05:38.31EnrKGhruo (9/19)


↓1コンマ判定

データ収集率

※70以上またはぞろ目で完


241以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 18:09:42.21L+n5bmVoO (1/5)




242 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 18:27:44.88EnrKGhruo (10/19)

√ 2018年 8月6日目 夜:伊予島家


陽乃に強く拒絶された杏は

しかし、両親の前では態度を変えたりはしなかった

変わらず陽乃に声をかけ、答え

極めて近い距離に居座った

陽乃「………」

拒絶したはずだ

友達は嫌だと

頼るのは嫌だと

なのに、杏は笑顔でそこにいる

陽乃「冗談……だとでも?」

杏は陽乃の発言を笑って受け流すこともあった

だが、今回ばかりは本気だと思うのが普通なのに

カーテンを閉め切った暗い寝室の中、

腰かけるベッドの薄い掛布団を握りしめる

甘んじてしまった結果、得られた利便性

けれどこうなるくらいなら

あの時点でいなくなるべきだったと……思う


243 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 18:46:27.47EnrKGhruo (11/19)


陽乃「どうしろっていうのよ……」

殴ったら友達になって

拒絶したら余計に距離が近づいた

陽乃「……諏訪遠征」

あの二人は確実について来る

神託を出して

勇者達にはここに留まって貰った上で

単独で行くのも視野に入れるべきだろうか

あの二人は、陽乃の最も近くにいるつもりだ

それは戦いだろうと、そうでなかろうと

そんなことをされたら、陽乃は二人を守らなければならない

そうしなければ、逆に陽乃を守って死ぬ可能性があるからだ

厄介だ

目ざわりだ

足手纏いだ

陽乃「最悪……っ」

四国に残るか出るかを決めたあの日

そこで出ていっていればと……悔やんでしまう

1、球子
2、杏
3、九尾
4、伊予島両親
5、電話を借りる
6、イベント判定

↓2


244以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 18:48:18.31VhcmnwG90 (1/3)

4


245以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 18:49:08.51L+n5bmVoO (2/5)

4


246 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 18:50:43.99EnrKGhruo (12/19)


では少し中断いたします
再会は20時頃から


247以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 18:56:31.08L+n5bmVoO (3/5)

一旦乙
陽乃さんの闇が深い…


248 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 20:12:42.68EnrKGhruo (13/19)


ではもう少しだけ


249 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 20:46:03.40EnrKGhruo (14/19)


陽乃「夜分遅くに申し訳ありません」

「いいえ。大丈夫よ」

「なにかな?」

杏の両親は、陽乃の呼びかけに答えて

夜にも拘らず、時間を作ってくれた

父親の方は声色こそ厳しく感じられるが、とても温厚な人だ

母親も、とても穏やかな人で

流石杏の両親と言ったところだろうか

「杏は何も言ってきていないから、家を出ると言う話でもないだろう?」

陽乃「そう……ですね」

「やっぱり、他人の家では息苦しいかしら?」

陽乃「そんなことは……」

「ふふっ、無理はしなくても良いのよ。そういう気持ちも理解はあるもの」

陽乃「………」


250 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 21:12:58.48EnrKGhruo (15/19)


「……久遠さんのおうちと神社については、先日改めて拝見させて頂いたわ」

陽乃「見ても面白いものではなかったと思いますが」

「ええ、本当に。酷いものだったわ」

「あれが人の手によるものであるなら、神様がお怒りになられるのも無理はないと思ったよ」

陽乃「いえ……私がお役目を投げ出した結果です」

「けれど、そうしなければ貴女が亡くなっていたのでしょう?」

二人は憐みの目を向けてくる

仕方がないと、許そうとしてくる

陽乃の血縁者ではないけれど

大人として、子供である陽乃を守ってあげたいという優しさを感じるその声は、

陽乃にとっては、やはり……イヤなものだった。

この両親から口添えをして貰えば、杏と球子は陽乃について来ようとしなくなるだろうか

この両親を害する意思を見せれば、流石の二人も離れていってくれるだろうか

陽乃「っ……」



1、娘さんを説得してはいただけませんか?
2、手を出す
3、一芝居……ご協力いただいてもよろしいですか?
4、お二人がいなくなれば、娘さんは戦う理由を無くしてくれるでしょうか?
5、周辺の方々からは何も言われていませんか?


↓2


251以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 21:26:56.46L+n5bmVoO (4/5)

5


252以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 21:28:46.23VhcmnwG90 (2/3)

5


253 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 21:36:03.31EnrKGhruo (16/19)


↓1コンマ判定 一桁

偶数 なし
奇数 あり

※0~9 (少~多)


254以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 21:47:22.94VhcmnwG90 (3/3)




255 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 22:21:06.44EnrKGhruo (17/19)


陽乃「失礼な話になってしまうのですが」

「なぁに?」

陽乃「周辺の方々からは何も言われていませんか?」

「何も言われてないかって……そうねぇ」

「私は何も言われていないが?」

「ええ。私も何も言われてない……わね」

陽乃「……そうですか」

嘘を見抜ける洞察力

それが自分にあるかどうか確証はないが、

陽乃は嘘をついてはいないだろうと判断する

周囲の人が陽乃の存在に気付いていないのか

気付いていても、見て見ぬふりをしているのか

出かけたのが今朝の一度だけと言うのを考えると、前者だろうか

「それが心配だったの?」

陽乃「私、家を焼かれるくらいには恨みを買っているので」

「あぁ……だが。大丈夫だよ。キミは気にしなくても良い」

陽乃「自分の娘が殺されてもそう言えますか?」

「キミがそうするわけではないだろう?」


256 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 22:35:20.57EnrKGhruo (18/19)


陽乃「私を起因として杏さんが亡くならないとは限りません」

「そんな可能性を考える必要はないわ」

陽乃「いえ、考えていただかなければいけません」

「杏と……土居さんがキミを守ると付き従おうとしているからかな?」

「あなた……それは」

「悪いね。聞くつもりはなくても聞こえてしまうこともあってね」

陽乃「いえ……」

この家で話をしている以上、

会話が筒抜けになってしまうことも致し方ないし

陽乃はそれを悪いことだとも思っていない

大社に言うなら言ってくれてもかまわないとさえ思っている

言われたところで、

陽乃の評価は最底辺から大差ないからだ

陽乃「そういうことです」

「あの子は、危険だと分かっていてそうすると言っているんだろう?」

陽乃「まさか、止められないと?」

「そうだな……もう止めてはいるよ」

「あの子ね。それでも貴女の力になりたいって言って聞かないのよ」


257 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/24(日) 22:39:08.25EnrKGhruo (19/19)

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


258以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/24(日) 22:56:03.76L+n5bmVoO (5/5)


杏のご両親は前作までの春信さんと瞳さんみたいな立ち位置か
こんなに良くしてくれてるのにその後娘を死なせたら本当に会わせる顔がないな


259以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/25(月) 00:40:45.48FtP20GHgO (1/1)


駄目だなこれは陽乃さんが余計に苦しむ流れだ


260 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/25(月) 21:02:22.49w8ZnKiRoo (1/7)


では少しだけ


261 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/25(月) 21:03:14.86w8ZnKiRoo (2/7)


陽乃「……どうにかなりませんか?」

「ごめんなさい。手は尽くしたわ」

「三年間だ。三年間、私達はあの子に無理はしないようにと言い続けた」

陽乃「………」

それでも……と、杏はやめなかった

陽乃の傍にいたいのだと

力になりたいのだと

そう言って聞かず、ずっと言い続けた親の想いを振り払っていた

両親には止められなかったのだ

杏は、命の危険があるからこそ陽乃の助けになりたいと。

「キミは、キミを起因としてあの子が亡くなるかもしれないと言ったが、あの子はいつものその逆を言っていたよ」

陽乃「私が死ぬ? 伊予島さん達の為に?」

「ええ。貴女はそういう人だからって、あの子はずっと言っていたの」

陽乃「そんなわけ……」

「けれど、ここ数日見ていて確信したわ。貴女……間違いなく心根の優しい子だって」


262以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/25(月) 21:18:00.95tGS4X3CvO (1/3)

来てたか


263 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/25(月) 21:47:21.41w8ZnKiRoo (3/7)


「久遠さん。貴女、他人を見捨てられる子には思えないわ」

どれだけ関係が悪かろうと

足手纏いで、目障りであろうと

見捨てられず、救いの手を差し伸べて

いずれそれらを庇って命を落とす

杏は、自分の力がその助けになるとは思えていないが

その終わりを一日でも先延ばしに出来たら。

それでいいと考えている

「守ってあげてとは言わないわ」

陽乃「その結果、救えなくても?」

「あの子は……あの子とはもうたくさんお話をしたから」

だから?

それでもう十分だと思えているような表情ではない

当たり前の話だ

杏はまだ中学生の少女で、先の長い人生がある

「お前……それはこの子が気負うからしないという約束だったはずだが」

「……ごめんなさい」


264 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/25(月) 22:16:25.27w8ZnKiRoo (4/7)


陽乃「っ……」

父親は母親を抱き寄せて、顔が見えないように自分の方へと押し付ける

けれど遅い

見えてしまった

今にも涙を零しそうな悲しげな顔が

辛さと苦しさを感じてしまった

陽乃「気負う……なんて」

「否定しなくていい。言われただろう? キミが心の根優しい娘だと分かっていると」

陽乃「私はっ!」

椅子を蹴飛ばすように立ち上がるとテーブルが揺れて、

注がれたままだったカップからお茶が迸ってテーブルクロスを汚す

陽乃「私は……」

「私の見る目はないかもしれないが、妻の見る目は確かだ」

陽乃「………」

「君は間違いなく、人のために生きてしまうのだろう」


265 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/25(月) 23:03:04.40w8ZnKiRoo (5/7)


「否定はしなくていい。否定しても、そうではないことは明白だからね」

陽乃「やめてください」

杏の父の声は温かく、

まるで、陽乃を本当の娘のように思っているようだ

布巾で零れたお茶を拭い、もう一度椅子に座りなおす

陽乃「私はそんな立派な子供ではありません」

「そうか……だが、ここ数日の君の様子を鑑みればそういう結論になると分かって貰えるだろうか?」

勇者様として、丁重に扱う必要がある

陽乃達が何もしなかろうと、

問題なく世話をして貰うことは可能だったのだ

にもかかわらず、

陽乃は家事を率先的に手伝って

この家の人々はともかく、民衆から酷く疎まれているのに、礼儀正しさを忘れていない

「先ほど、周囲からの反応を聞いたのも、君が原因で私達に何かないかと心配してのことだろう?」

陽乃「ご自由に解釈なさってください」

「そうか。ならそうしよう」

父親は困ったように笑う

相変わらず、素直ではない

「そして申し訳ないが、杏を君の傍から離してあげることは出来ない」

陽乃「そうですか……」

杏はどうしようもないし

両親にも認められてしまっている

脱走でもしないと……どうにもならなそうだ


266 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/25(月) 23:04:25.89w8ZnKiRoo (6/7)


√ 2018年 8月5日目


0 00 最悪
1~3  良い
4~6  普通
7~9   悪い
ぞろ目 最良

↓1

※模擬戦による、大社影響


267以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/25(月) 23:04:42.88oDZam8OGO (1/2)




268以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/25(月) 23:07:22.81tGS4X3CvO (2/3)

ここでまさかのゾロ目


269 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/25(月) 23:08:38.62w8ZnKiRoo (7/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


270以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/25(月) 23:09:50.12oDZam8OGO (2/2)


装束完成&遠征許可かな?


271以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/25(月) 23:26:41.97tGS4X3CvO (3/3)


ご両親もすっかり貴重な理解者になってくれてるな
あとはこの良さげなゾロ目がどう転ぶか気になる…


272以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/26(火) 09:31:53.41XMXo4/lPO (1/1)


やったじゃん
いい方向に話が転がってきて嬉しい


273 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/28(木) 00:24:15.925Tbua185o (1/8)

すみませんが本日もお休みとさせていただきます。
明日は可能な限り、通常時間から


本日は1日のまとめのみ。


1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(模擬戦、勝利)
・ 伊予島杏 : 交流有(模擬戦、やらない、馬鹿なこと言わないで)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(神託、明確)

√ 2018/08/05 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
 土居球子との絆 46→49(普通)
 伊予島杏との絆 53→55(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 63→63(普通)

模擬戦:大社影響+α


274以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/28(木) 06:08:26.98hYuKDg7cO (1/1)


杏とタマの絆値がガンガン上がっていくな


275 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/28(木) 21:07:11.005Tbua185o (2/8)


では少しだけ


276以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/28(木) 21:26:25.63vcQsOeigO (1/4)

かもん


277 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/28(木) 21:42:05.655Tbua185o (3/8)


√ 2018年 8月6日目 朝:伊予島家

05~14 若葉
27~36 大社
41~50 九尾
52~61 球子
81~90 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常 判定追加
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪


278以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/28(木) 21:46:01.97vcQsOeigO (2/4)




279 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/28(木) 21:54:16.475Tbua185o (4/8)


↓コンマ判定

1,3,9 大社


280以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/28(木) 21:57:38.96j6qDkfyq0 (1/2)




281 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/28(木) 22:44:39.615Tbua185o (5/8)

√ 2018年 8月6日目 朝:伊予島家


陽乃「……どういうこと?」

杏「久遠さんの協力の結果ですね」

陽乃「それは分かってるのだけど」

球子「良かったじゃないか。見方が変わった? ってやつだろ?」

陽乃「そこまでじゃないと思うけど……というより、困るのよ」

球子との模擬戦から1日

杏と球子のもとには、その解析による連絡が来ていて、

久遠陽乃の協力に感謝を……と言う旨の記載もあった

今までの大社ならば、

間違いなくこんな反応ではなかった

陽乃「急に、感謝されても……」

杏「良かったと思います……だって、久遠さんは実際に私たちを助けてくれたんですから」

陽乃「助けたつもりはないわ」

球子「久遠さんがそうだろうと、それを受けた側はそう思わなかったんだろ」

タマは実際にそうだしな……と、

照れくさそうに笑う


282 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/28(木) 23:05:16.725Tbua185o (6/8)


球子「あの模擬戦が、タマ達の力の解析を早くしてくれたんだ」

杏「いつ、戦う日が来るか分からない今、力の解析が進む協力は感謝されると思いますよ」

陽乃「勇者を殺そうとした挙句、看護師にトラウマ植え付けて病院から抜け出した重罪人でも?」

球子「それは……まぁ、どうなんだろうな」

杏「……それはありますが、それを踏まえた上でも……」

本当にそうだろうか。と、疑ってしまう

陽乃自身が殺したかったわけではないけれど、

九尾の介入によって友奈や千景たちを殺しかけたことは事実

一般人である看護師に対して、九尾が手を出したことでトラウマを植え付けてしまったし、

あまりにもな待遇に嫌気がさして、病院から抜け出したことも事実

そんな中で、陽乃と球子の模擬戦

心中は穏やかではなかったはずだ

なのに、感謝

裏があるのではと思ってしまうのも無理はないことだろう


283 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/28(木) 23:25:48.175Tbua185o (7/8)


陽乃「でも、悪いけれどそれですり寄られても困るからね」

杏「すり寄るなんて……」

球子「久遠さんって、性格悪くはないけど悪いよな~」

陽乃「ええ、悪いわよ」

杏の両親には、まるでそう思われていないけれど

それは無関係な一般人相手に厳しく当たる必要はないと思ってのことだ

もちろん、一宿一飯……どころではないが

その恩義と言うものもある

だが、勇者は違う

特に……死にたがり相手は。

球子「またまた~タマだけに~」

陽乃「はぁ……」

球子「そんなため息つかなくたっていいじゃないか」

杏「今のは私でもため息つくかも……」

球子「なっ……」

この騒がしさに、加わらないはずだった

はずだったのに……。


1、部屋に戻る
2、電話を借りる
3、で、どうするの? 今日も殴られたいの?
4、それで? 装束は完成したのかしら
5、イベント判定


↓2


284以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/28(木) 23:29:45.52vcQsOeigO (3/4)

4


285以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/28(木) 23:31:31.57j6qDkfyq0 (2/2)

4


286 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/28(木) 23:42:38.445Tbua185o (8/8)

では途中ですが本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


287以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/28(木) 23:59:21.57vcQsOeigO (4/4)


杏たちのためになるとはいえ大社の手のひら返し感が凄くていまいち信用がなぁ…


288以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/29(金) 00:35:32.31w2Pg1vPwO (1/1)


装束かあ
ワクワクしてきたわあ


289 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/30(土) 22:08:35.709sU1CK2Io (1/2)


遅くなりましたが少しだけ


290以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/30(土) 22:21:02.089nc//YioO (1/1)

おk


291 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/30(土) 23:51:45.119sU1CK2Io (2/2)


陽乃「それで、装束はかんせいしたのかしら?」

杏「いえ、まだ完成はしていないみたいです」

球子「昨日の今日で完成は難しいだろ」

陽乃「世界の命運がかかっているってときに、暢気なものね」

球子「だからなぁ……」

いちいちきついんだって……と。

苦笑いを浮かべる球子を見向きもせずに、陽乃は息を吐く

きついとは思えない

化け物だと、敵だと

常に腫れもの扱いしてきている相手には、むしろ優しいくらいだろう

装束が完成しなければ、

勇者を連れ出すなんて出来るわけがない

それが遅れれば遅れるほど

諏訪にたどり着くのが難しくなる可能性だってあるのだ

たった一日、されど一日だ


292 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 01:22:52.98uLsgft2zo (1/11)


杏「大社の言葉に偽りがなければ、明日か明後日にはバージョンアップしたものを戴けるそうです」

陽乃「そう……」

偽りないとは思えないけれど、

少なくともバージョンアップしたものは勇者達に展開されるだろう

最悪完成品ではないかもしれない

でも、今のものよりも良くなるのならそれで十分……だろうか?

ジャージの上からウインドブレーカー着込んだだけだったら

それこそ、球子をタコ殴りにでもするしかない

陽乃「なら、バージョンアップが終わったら、再調整してあげるわ」

球子「殴るのか? 蹴るのか?」

陽乃「殴るわ」

球子「手は抜いてくれるんだよな……?」

陽乃「殺すつもりはないもの」

前回と同じだ

手を抜いて……力を抜いて殺さないようにする

装束がちゃんとしていれば、一回や二回問題なくなるはずだ








293 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 01:37:20.42uLsgft2zo (2/11)


杏「装束が完成していたら……諏訪遠征、行きますか?」

陽乃「そうねぇ……」

装束が完成したら即日諏訪遠征に出るのは可能だが性急すぎる気がすると陽乃は眉を顰める

もちろん、神託によって今すぐにでもなんて内容を付け加えれば

大社とて、大急ぎで割り当ててくれることだろう

けれど、

装束が完成したからと言って完ぺきとは限らない

さっきも話したように

一度くらいは模擬戦をしておくのが良いかもしれない

陽乃「ただ、土居さんを殴っておきたいわ」

球子「怖い! 怖すぎる!」

陽乃「貴女が殴られたいって言ったんじゃない」

球子「言ったがそうじゃない!」

杏「でも、タマっち先輩が殴られてくれるお陰で装束の性能が試せるわけだし……」

球子「杏まで!」

そうじゃないだろ!

もっと言い方があるだろ。と、叫ぶように球子は言って

優しさがない。なんて……嘆いた


294 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 01:39:43.80uLsgft2zo (3/11)

では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから



295以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/31(日) 02:51:18.075+ksSFQ0O (1/1)


殴られ予定のタマで笑った


296以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/31(日) 05:18:53.31rE+b18qsO (1/1)


タマっち先輩サンドバッグ扱いで草
それでもずっとシリアス続きだったから少し明るい展開になりそうで良かった


297 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 17:49:22.68uLsgft2zo (4/11)


遅くなりましたが少しだけ


298以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/31(日) 18:00:59.10u3MOhdtuO (1/4)

きてたか


299 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 18:31:02.22uLsgft2zo (5/11)


陽乃「私が優しいわけないじゃない」

杏「久遠さん……」

球子「いいや、杏。久遠さんは意地が悪いぞ!」

心根は優しいが、それの表れ方が歪んでしまっている

殴るっていう話も

言い換えれば模擬戦の相手をしてくれるというだけのことだ

なのに、それを殴るだのタコ殴りにするだの

人によっては反発しそうな言い方と態度ばかり

陽乃「私、貴女のこと嫌いだし」

球子「……つまり好きってことか?」

陽乃「やめて」

球子「裏を返せば、そういうことだろ?」

杏「そう……かな?」

陽乃「悩まないで」

球子「でもまぁ……嫌いか。嫌いなのか」

陽乃「ええ」

球子「そっか。嫌いなのに模擬戦には付き合ってくれるんだな」

陽乃「違うわ。嫌いだから、殴るのよ」

杏「やっぱり、言い方ひとつで凄く印象変わるよね……」

球子の言葉に納得したのだろう

杏は困ったように、呟いた


300 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 18:47:35.22uLsgft2zo (6/11)


√ 2018年 8月6日目 昼:伊予島家

05~14 若葉
27~36 大社
41~50 九尾
52~61 球子

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪


301以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/31(日) 18:58:41.43u3MOhdtuO (2/4)




302 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 20:10:40.72uLsgft2zo (7/11)

√ 2018年 8月6日目 昼:伊予島家


『くははっ主様、弄ばれておるぞ』

陽乃「冗談じゃないわ」

『じゃが、まんざらでも――』

陽乃「冗談じゃないって……言ったでしょう」

本当に、冗談ではない

あんな思い込みをされてしまったら

本当に何を言っても無駄になる

突き放すつもりで何かをしても

あの二人は、そうとは思ってくれないのだから

『ならば……消してしまえばよい』

陽乃「消すって」

『うむ。そのままじゃ』

陽乃「ダメよ。勇者が減るのは困る」

『それを言い訳にしておるのかや?』

陽乃「言い訳じゃない」

『ふむ……躾けてやればよい』

陽乃「……また、面倒なことになりそうだし」

『主様はほんとうに、愚物じゃのう』


1、装束完成すると思う?
2、なによ。愚物って
3、殺す以外に方法はないの?
4、他人事だと思って……
5、イベント判定

↓2


303以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/31(日) 20:31:45.411B6s6Mwa0 (1/2)

1


304以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/31(日) 20:34:32.80u3MOhdtuO (3/4)

5


305 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 21:12:11.59uLsgft2zo (8/11)


01~10 杏
11~20 球子
21~30 両親
31~40 近所
41~50 若葉
51~60 友奈
61~70 ひなた
71~80 大社
81~90 九尾(状況:悪)
91~00 荷物


↓1のコンマ


306以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/31(日) 21:13:12.22u3MOhdtuO (4/4)




307 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 22:46:14.68uLsgft2zo (9/11)

√ 2018年 8月6日目 昼:伊予島家


「久遠さん、少し良いかな?」

部屋のドアが軽く叩かれて、外から声が飛んでくる

扉越しの声ではあるけれど

無遠慮な球子はそもそもノックをしないし

杏の声とは違う……親の声

陽乃「はい。どうぞ?」

返事をすると、

杏の両親が部屋へと入ってきて

陽乃「何か? もしかして、ご近所から――」

「いや。それは問題はないよ」

「あのね? 貴女さえよければ、明日のお昼に少しお手伝いを頼めないかと思って」

陽乃「お手伝いですか? それは全然……」

「快く引き受けてくれるのはありがたいのだが、少し問題があってな」

「実はね。地域で行ってるボランティアの活動なの」

陽乃「……なるほど」

3年前の襲撃による影響は少なくなってきてはいるものの

それでも、完全に癒えたわけではない

そのため、地域で協力して何かをしていくことで

少しでも前向きになれるようにしよう……という目的での活動が行われている

「だから、必然的に近所の人達と関わることになるの」


308 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 23:17:23.54uLsgft2zo (10/11)


陽乃「ならどうして、私を?」

よほど人手が足りていないのなら、

杏や球子を連れていけばいい

それで手が足りなくても、陽乃を誘うのは無理がある

最悪の場合、ボランティア活動どころではなくなるからだ

陽乃「汚名を返上させたい……みたいなところですか?」

「端的に言ってしまえばそうなる」

「私たちから見て、久遠さんには何にも問題ないように見えるわ。だから……」

最初の内は厳しい目で見られてしまうことになると分かってはいるが

それは何をしようとそうなるのは必然だろう

だからせめて、

少なからず味方がいるうちにその一歩を踏み出しておくべきではないかと考えているようだ

陽乃が針のむしろに座らされる思いをするかもしれない

だから、簡単には言えないし

だからこそ、味方がいるべきだとも思っていると、母親は言う

陽乃「………」

「もちろん、強制ではないし断ったからと言って久遠さんがどうだなんて思うつもりもないわ」


1、……良いですよ。請け負わせて頂きます。
2、すみません。お断りします
3、考えさせてください
4、そこまでの価値が私にありますか?

↓2


309以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/31(日) 23:20:15.518F2YkdYPO (1/1)

1


310以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/31(日) 23:22:56.551B6s6Mwa0 (2/2)

4


311 ◆QhFDI08WfRWv2021/01/31(日) 23:37:15.62uLsgft2zo (11/11)

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


312以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/01/31(日) 23:45:00.23XNyg5f+PO (1/1)


ボランティア活動で信頼を得るか伊予島家ごと地獄を見るかの二択か…
ここは賭けに出るべきか悩みどころだな


313以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/01(月) 08:18:26.13tDC6948XO (1/1)


杏の両親めっちゃ気にかけてくれてるな


314以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/01(月) 08:20:49.13ig5OzGAHO (1/1)


陽乃さんは意図して「殴る」を使ってんだろうけど「模擬戦に付き合う」と「殴る(戦う)」で同じなんだけど全然違うな
千景だったら間違いなくキレる


315 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/01(月) 21:17:51.27zYto4Ydmo (1/6)


では少しだけ


316以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/01(月) 21:18:55.56n0DIlkxcO (1/3)

よしきた


317 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/01(月) 21:31:45.43zYto4Ydmo (2/6)


陽乃「……そこまでの価値が私にありますか?」

「価値?」

陽乃「伊予島さんの……極論、今後の全てを賭ける価値が私にはありますか?」

言葉通り極論ではあるが、

しかしそれ程のことを引き起こしかねないのが、陽乃なのだ

地域住民と協力してのボランティア活動

とても立派だと思うし、

煩わしいと思う人もいるかもしれないが、決して間違った行いではないだろう

そこに陽乃を連れ出して

そんな立派なことを率先して参加してくれる子なんて広報活動はプラスに働く可能性はある

けれど――

なぜあの子を。なんて、白い目を向けられるなんてこともある

例のあの子を匿ってるだなんて話になるかもしれない

協力者だなんて話になるかもしれない

その汚名は、二度と拭い去ることも返上することもできない

少なくとも、杏の両親には。

陽乃「何かがあった場合、私は一切の責任を負えません。この家が放火されようと、どちらかが後ろから刺されても」

「……君は、それを心配してくれているのか」

陽乃「違っ……」

首を振って、目を背ける

陽乃「私はただ……あとから難癖をつけられても困るから、予めそのリスクはあるんだと自覚して貰いたいだけで……」


318 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/01(月) 22:00:07.99zYto4Ydmo (3/6)


陽乃「とにかく、そのリスクを背負うだけの価値が私にはあるのかを答えてください」

将来を諦めるだけの価値

今まで積み上げてきた過去を水の泡にするだけの価値

人は普通、そんなことを問われたら否と返す

相当仲が良くても、

答えを濁したりして誤魔化したり、考えさせてとでもいうだろう

「君はやはり、優しい子だな」

陽乃「やめてください」

「それらしい理屈を並べてはいるが、結局のところ迷惑をかけたくないと見える」

陽乃「そういうわけでは……」

「ふむ……やは――」

「もう。話が進まないからあなたは黙ってて」

夫をせき止めるように言い放った杏の母は、

面倒な人でごめんなさいね。と、

困ったように笑みを浮かべる

「それで、久遠さんのことだけど……はっきり言わせて貰うわね?」

陽乃「ええ、ぜひ」

「私達は、久遠さんにはそれだけの価値があると思っています」


319 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/01(月) 22:33:27.73zYto4Ydmo (4/6)


陽乃「えっ……?」

「価値だけに着目するのなら、久遠さん。貴女は杏と同じように勇者をやっているでしょう?」

陽乃「利用価値があると?」

「そうね。勇者という世界の命運を左右するほどの価値があると思っているわ」

淡々と

まるで説明をするかのように話す杏の母

父は咎められたからか口を挟まずに腕を組んでいる

「だけど、それだけじゃないの」

そう言った母の視線はとても優しい

他人の子だとも思っていない

それはまるで……

「貴女は、あの子が連れてきたお友達ですもの」

陽乃「友達って……そんな、その程度で、そんなことで赤の他人の私に人生を賭けるんですか?」

「君たちがいなければすでになかった人生だ。と、言えばいいのだろうか?」

陽乃「それは……」

「どうしても理由が欲しいのなら、恩返しとでも思って欲しいの」


320 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/01(月) 22:55:15.23zYto4Ydmo (5/6)


「貴女は、私達を救ってくれた」

陽乃「私一人じゃありませんし」

「そうかもしれない。でも、その数人の中にいるのは間違いないでしょ?」

陽乃「………」

だから、どうしても理由が欲しいのなら恩返し

陽乃には価値がある

人生を賭けてでもその身を守ってあげる価値が。

それがあろうとなかろうと

守ってあげるべき子なのだと、両親は言う

「君は子供なんだ。頼っていい。わがままを言っていい」

「他人だなんて、思わなくていいのよ? あの子が初めて連れてきた大切な子だもの」

陽乃「………」

それは無理だ

なんて理由をつけようと、

二人は杏の親であって、陽乃には関わりがないのだから。

限度と言うものがある

けれど……それでもいいと言っているのだ


1、ありがとうございます。でも、今回は遠慮させてください
2、分かりました……ただ、本当にどうなっても責任はとれません
3、すみません。やっぱり、考えさせてください


↓2


321以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/01(月) 22:55:59.23gL2e7//d0 (1/1)

2


322以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/01(月) 22:57:06.80pVE6atNiO (1/1)

2


323以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/01(月) 22:57:18.90n0DIlkxcO (2/3)

2


324 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/01(月) 23:19:47.75zYto4Ydmo (6/6)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


325以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/01(月) 23:36:52.13n0DIlkxcO (3/3)


世間の反応が怖いけどここまで言われたら断れないよな
陽乃さんにとっても何か良いきっかけになってほしい


326以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/02(火) 00:07:48.17TgXXBI4X0 (1/1)

デビルマン√を辿らないように


327以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/02(火) 00:54:20.69kgp3ui/pO (1/1)


ちょっと怖いな


328 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/03(水) 20:30:38.72ay58p5UUo (1/5)

では少しだけ


329以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/03(水) 20:44:13.09VuVivKanO (1/3)

やったぜ


330 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/03(水) 20:54:01.57ay58p5UUo (2/5)


陽乃「分かりました……ただ、本当にどうなっても責任はとれませんよ?」

伊予島家が迫害されるようになっても

家を焼かれても

誰かが生贄とされても

誰かが、悪魔に魅入られたとでも言われて殺されても

陽乃は何も出来ないと言う

陽乃「私は、それをどうにかできるほど特別なんかじゃありませんから」

特別だとしたら

家は焼かれなかった

父親を失わなかった

味方になってくれただろう親類を殺されずに済んだ

陽乃「私に出来るのは、そこから逃げることだけです」

「そんなことないわ。ありがとう、無理を言ってごめんなさいね」

陽乃「いえ……すみません」

この二人にそれを言うだけ無駄なのだ

二人が何もできないからではなく

二人は、陽乃の件に関わりがないから

だから、言う必要はない


331 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/03(水) 21:44:42.89ay58p5UUo (3/5)


「明日のお昼、宜しくね」

「手持ちは特に必要ないが……動きやすい洋服はあるかい?」

陽乃「えぇっと……ない、ですね」

陽乃は着の身着のままで病院に監禁され

そのまま逃亡して、ここにいる

当然ながら、服など持っていない

「そうか……杏、では難しいか」

「あの子と久遠さんじゃ、少し足りないわ」

身長的に陽乃の方が高い

家の中で着る寝間着などであればどうにかなるけれど

外に着ていくとなると、やや不格好だ

「ふむ……なら、用意しようか?」

陽乃「用意って、あの、まさかですよね?」

「あぁ、気にしなくていいんだ。私たちからのお願いみたいなものだからね」

杏の父は、そのお礼とでも思ってくれればいい。と言うけれど

それはさすがに世話になりすぎだと陽乃は思う

そのお願いだって、結局は陽乃のためのもの。

こちらkらお礼をするならいざ知らず

一方的に与えられては困ってしまう


1、それはさすがに困りますっ
2、……ありがとうございます
3、私は娘ではないのに


↓2


332以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/03(水) 21:51:28.05VuVivKanO (2/3)

2


333以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/03(水) 21:52:39.14iUGzw+J30 (1/1)

3


334 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/03(水) 22:39:45.20ay58p5UUo (4/5)


陽乃「私は娘ではないんですよ?」

「それは分かっているとも」

「気を悪くしたらごめんなさいね? でも、放っておきたくないの」

陽乃「赤の他人、ですよ?」

「ええ」

陽乃「………」

今までも地域ぐるみのボランティア活動に精を出していたとは限らないが、

でもきっと、出していたのだろうと陽乃は眉を顰める

何か利益があるわけではない

だけど、放っておけないからと誰かを助け続けてきたように見える

少なくとも、今の両親はそういう人間だ

3年前の悲劇

あれによって、子を失った親は多い

それと同じように親を失った子供だって少なくはなかった

そう言った身寄りのない子供達を、二人は支援しているのだろうか。

「せめて、この家にいる間だけでも満足な生活を送って欲しいの」

送らせてあげたいの。と、母親は言う

裏はない

恐らく、純粋な善意だろう

陽乃「それは……」

それは、ありがたくない

陽乃「私は、今でも十分です。ほんとう、十分ですから」

「せめて、ジャージのようなものでも用意しよう」

陽乃「自分でどうにかできるので、問題はありません」

「そう……?」

陽乃「はい。ですので、お気持ちだけで十分です。ありがとうございます」

これ以上、恩で塗り固められるわけにはいかない

どうせ仇で返すことになるのだから。

傷つけることが分かっているのなら、以下にそれを最小限に抑えるか

考えるべきことはそれだけだ。


335 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/03(水) 23:23:38.60ay58p5UUo (5/5)


√ 2018年 8月6日目 夕:伊予島家

05~14 若葉
27~36 大社
41~50 九尾
52~61 球子

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※一桁奇数で訪問
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪


336以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/03(水) 23:24:41.00VuVivKanO (3/3)




337 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/04(木) 00:05:29.46HqLtBC+Wo (1/6)


ではここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


338以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/04(木) 00:12:24.78ElZZMa8MO (1/1)


陽乃さんが心を開くのはまだまだ時間かかりそうだな
そしてまた妙なタイミングでゾロ目か…偶数だから何事もなければいいけど


339以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/04(木) 01:37:42.95aK89klWmO (1/1)


偶数だからまあ大丈夫じゃない?
ちょうどボランティアしようとしてたところだしベストタイミングちゃベストタイミング


340 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/04(木) 21:56:19.66HqLtBC+Wo (2/6)

では少しだけ


341以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/04(木) 21:57:37.55kHOU0LieO (1/3)

かもーん


342 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/04(木) 22:45:04.43HqLtBC+Wo (3/6)

√ 2018年 8月6日目 夕:伊予島家



夕方、だんだんと日が傾きつつある伊予島家の庭に、陽乃は出てきていた

完全な外出は許されないが、庭に出る程度なら問題はない。

なにより、その庭ではバットを一生懸命に振るう球子がいる。

球子「明日の参加するんだな」

陽乃「貴女も誘われているの?」

球子「そりゃ、誘われるに決まってるだろ?」

球子は、

何言ってんだと言いたげに笑いながら、バットを振るう

杏の両親に頼んで用意して貰った金属バット

これから野球をやるわけではなく

楯を投げるからと、腕力をつけたいらしい。

陽乃「参加するの?」

球子「お……気になるか?」

陽乃「別に興味はないわ」

球子「じゃあ聞くなよな~」

球子の返答は至って穏やかだ

それどころか、とてもフランクなものになってきている。

本当に、友人と思っているということだろうか

球子「もちろん、参加するぞ」

陽乃「……でしょうね」

球子「杏もな」

陽乃「監視対象だものね」

球子「監視かどうかは関係ないぞ。大社に聞かれちゃ、困るけどな」


343 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/04(木) 23:00:14.76HqLtBC+Wo (4/6)


陽乃「問題だわ」

特に、陽乃に影響が大きいだろう。

場合によっては陽乃が惑わせただの操ってるだの

何か難癖をつけられて、責められて、面倒なことになる。

球子と杏は、大丈夫かもしれないが。

球子「……心配か?」

陽乃「心配? 何が?」

球子「自分が嫌われてるかもって」

陽乃「そんな分かり切ってること、今更不安になると思う?」

球子「そりゃそうか」

否定しない。

それがあたりまえだと、陽乃も鼻で笑う

球子「じゃぁ、なんで明日のこと聞いてきたんだ?」

陽乃「心の準備が必要だから」

球子「なんだ、かわいいところあるじゃんか」

陽乃「貴女に絡まれるのが嫌なの。不意に声かけられたら反射で顔を殴っちゃうだろうし」

球子「怖いなぁ」

陽乃「………」

口でそんなこと言いながら、

顔は普通に面白がって笑っている

陽乃がそんなことをしないと信頼しているからだろう。

そういう反応が、陽乃は嫌なのだ。

陽乃「土居さ――」

「あら、今日は一人じゃないのね」

球子「こんばんは!」

庭先が見えてしまう隣家からかけられる女性の声

球子はバットを振り止めて、元気良く挨拶を返す

初対面ではなさそうだ


344 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/04(木) 23:25:19.66HqLtBC+Wo (5/6)


「そちらは……」

陽乃「………」

顔を伏せる

今の成長した陽乃の養子を知らない人は多いだろうけれど

分かる人は分かる

特別な髪の色、瞳の色

親は遺伝だと言った桜色の髪は、あからさまに久遠陽乃と言う少女だ

「えぇっと……もしかして、陽乃ちゃん。かしら?」

陽乃「………」

その呼び方が出てきた時点で

この隣人は陽乃のことを知っている

大方、3年前までに神社に参拝に来たことがあるとかだろう。

陽乃「……っ」

「やっぱり、そうよね? 陽乃ちゃんでしょう?」

球子「どうした?」

陽乃「人、違いです」

「そんなこと、無いはずよ……」

嘯いてみるものの、

隣人の女性は食い下がってくる



1、違います
2、だったらどうですか?
3、そっちに余計なことはしないので、放っておいてください
4、すみませんが、部屋に戻ります
5、明日のボランティア。私も参加します


↓2


345以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/04(木) 23:27:12.06kHOU0LieO (2/3)

2


346以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/04(木) 23:31:21.63FUTbRUMQ0 (1/1)

2


347 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/04(木) 23:48:20.78HqLtBC+Wo (6/6)

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


348以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/04(木) 23:57:09.45kHOU0LieO (3/3)


どうやら陽乃さんを悪く思ってる人ではなさそうだけどヒヤヒヤするなぁ


349以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/05(金) 01:14:49.95p9bD6cWaO (1/1)


緊張感たっぷりだな


350以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします2021/02/05(金) 03:03:58.742vv8dtEa0 (1/1)

VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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351 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/06(土) 18:36:03.08E2SpQbCAo (1/6)


では少しだけ


352 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/06(土) 19:00:53.11E2SpQbCAo (2/6)


陽乃「だったらどうですか?」

「どうって……」

球子からの「お前……」というような視線を感じながら、

陽乃は隣人を見つめる

二回りほど歳を上回っているであろう女性

場合によっては子供がいるだろうし

もしかしたら3年前に、失ってしまっているかもしれない

そうでなくても、世論から見て陽乃を良くは思わないはずだ

逃げ出した生贄

厄災の権化

人ならざる者

そんな陽乃がここにいると彼女は知った

警察に通報する?

周りの人たちを集めて、匿う伊予島家を叱責する?

それとも、陽乃に石でも投げるのか

陽乃「私が、あの久遠陽乃だったとして。どうなるんですか?」

「陽乃ちゃん……」


353 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/06(土) 19:17:41.48E2SpQbCAo (3/6)


「どうにもならない……でしょうね」

陽乃「他人事ではないと思いますが」

「………」

隣人の女性は悲痛な表情を浮かべる

陽乃から顔を背けようとしたのか、僅かに動いたけれど

視線だけは陽乃に向けられたままで。

「ずっと、ずっと……どうなってしまったのかと、思っていたの」

陽乃「私が?」

「みんなよ。陽乃ちゃんと。陽乃ちゃんのご両親たち……みんな」

陽乃達を生贄としたあの人々は、

もちろん、この世界の全人類と言うわけではない

その暴挙に加担しなかった人だっている。

彼女もその一人とみて間違いない

「祭事の時、いつも頑張ってた貴女を見守ってたご両親とは、それなりに交流があって」

陽乃「父ならいません。母なら……まだ大社の方にいますが」

「……陽乃ちゃんは? 貴女は、今までここにお世話になっていたの?」

陽乃「3年間、一度も見かけなかったなら、違うと思いますが?」

球子「性格悪いな……」

陽乃「貴女は黙ってて」


354以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/06(土) 19:21:19.63zdmeqybyO (1/2)

いい人だったか


355 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/06(土) 20:37:14.71E2SpQbCAo (4/6)


「それもそう……ね」

3年間、部屋に引きこもっていたとも考えられる

陽乃が3年前に経験したことなんて

人だけでなく世界を恐れて部屋から出られなくなってもおかしくはないからだ

隣人の女性も、そうではないかと目を細めたが

違うというのなら違うと、首を振る

「……ごめんなさい」

陽乃「なん……です?」

「みんながみんな、久遠家を悪く思っているわけではなかったの」

けれど、過激化して暴徒と化した集団に目を付けられるのを恐れて、

誰一人として、彼らの行為を咎めることはしなかった

その結果、

陽乃の家や神社が燃やされたり、叩き壊されたり、荒らされたり……どうにもならなくなった

「止めてあげるべきだった」

陽乃「あんな、誰からも狙われるようなところに戻れるとは思っていませんでしたし」

「そうだとしても、大切な場所だったはずよ」

陽乃「別に、どうでもいいことです」


356 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/06(土) 21:30:00.87E2SpQbCAo (5/6)


「……そう」

昔の陽乃を知っているから、言葉に詰まる

陽乃は明るい子だった

とても優しい子だった

冷めた目で見てくることはないし、突き放すような言葉遣いでもなかった

なのに、

それが今では酷い目をしている

どこか荒っぽく、素っ気ないことを言う

可哀想……とは、言えない

陽乃の3年間を知らないが、3年前の時点で凄惨な目に遭わされたのは知っている

それだけでも荒むのも仕方がないと言えるが

だとしても、言えない

「あの……ね。周りに知らせたりはしないから」

陽乃「そうして貰えると助かります」

そうしなかった場合、

九尾がこの家を守るために何かする可能性もあるので

命の保証は出来ない

球子「もうちょっと、こう。言い方とか……」


357 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/06(土) 21:53:42.21E2SpQbCAo (6/6)


陽乃との会話を黙って聞いていたかと思えば、

また口を挟む……つもりはなかったのか

囁く程度の小声を漏らした球子

陽乃が目を向けると、肩をすくめてため息をつく

陽乃「………」

言い方と言われても困る

下手にすり寄られたくはないし

下手に敵対されても困る

なにより

過去のことで止めるべきだったと言われても困る

止められなかったのが現実だし

あれを止められないのは経験した陽乃が一番分かっている

特異な力を持っている陽乃でそうなのだから

ただの一般人である隣人には不可能だと断言できる


1、知らされたら、大変なことになる
2、今更謝罪されても、意味はない
3、信用できないもの
4、でも、噂の私らしいじゃない
5、なんだっていいでしょう。貴女には関係ないんだから


↓2


358以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/06(土) 21:55:51.41foJNr9iD0 (1/1)

2


359以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/06(土) 21:57:07.98zdmeqybyO (2/2)

1


360 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 00:02:00.05t3OcwK7qo (1/15)


陽乃「知らされたら、大変なことになるわ」

球子「それはそうかもしれない……っていうか、だったらなおさらだろっ」

もう少し丁寧に話して、

穏やかに話しを進めるべきだと球子は思っているのだろう

まったくもってそうするべきなのだが、

それでまた杏の両親のようになられては困るのだ

だから、冷たい言い方で突き放す

――とは、球子には言わない

陽乃「聞いたことがあると思うけど、余計な手出しをすると痛い目を見るわ」

「噂は本当なの?」

陽乃「噂? 私が化け物だって噂ですか?」

「陽乃ちゃんに関わると死ぬ……ううん。殺されるって。陽乃ちゃんに歩けなくされたとか、どうとか」

陽乃「……私、そういう時は目撃者を残さないと思うけど」

陽乃と言うよりは、九尾だが。

間違いなく、殺すときは全員だ

陽乃が止めない限りと言う条件付きではあるけれど。

球子「何言ってんだ……」

陽乃「事実でしょ。誰かが止めないと、皆殺しにするわ」


361 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 00:16:38.36t3OcwK7qo (2/15)

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから


362以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 00:26:15.66GdkJYn/mO (1/1)


少なくともこの町の人なら陽乃さんの故郷よりは味方してくれる人は多いかも知れない…?
ボランティアの日がとにかく大事だな


363以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 07:38:03.51XRP1H9+pO (1/1)


この人もボランティアに出るのかな?


364 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 16:19:54.23t3OcwK7qo (3/15)


では少しだけ


365以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 16:35:02.84mbvI2PfUO (1/3)

きてたか


366 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 16:37:44.63t3OcwK7qo (4/15)


球子「はぁ……」

陽乃「どうにもならないのよ」

「えぇっと……陽乃ちゃんの意思には関係ないってこと?」

陽乃「いえ、そういうわけではないですけど……」

「でも、どうにもならないのでしょう?」

陽乃「……そういう部分もあります」

意思には関係ないことをすることもあるが、

陽乃が介入する余地もある

予め制止しておけば……ある程度被害は抑えられる

陽乃「怖いですか? 恐ろしいですか? 化け物だって――」

球子「陽乃」

陽乃「あら、珍しい」

球子「そこまでにしといた方が良いと思うぞ」

「大丈夫。大丈夫よ……化け物だなんて、思ったりしないわ」

隣人の女性はそういうものの、

僅かに強張ってしまっているのは誤魔化せない

「本当のことを言えば恐ろしいわ。でも、陽乃ちゃんには、それをする権利があると思うの」

陽乃「権利……?」

「ええ。私達を……殺す権利」

言ってはいけないことだとでも思っているのだろう

苦渋を感じる表情を浮かべながら、女性は切り出した


367 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 17:32:32.76t3OcwK7qo (5/15)


「酷い話だけど……そう思ってるわ」

球子「それは、言いすぎなんじゃないか?」

「いいえ、陽乃ちゃんを含めて多くの人を死なせてしまったんだもの」

化け物であるバーテックスの襲来による死者とはまるで違う

人の意思によって、意図的に奪われることになった命

その一つになりかねなかった陽乃は、それを目論んだ人々を憎む権利がある

殺された親類縁者の分、

その恨みを晴らして、命を奪う権利がある。

それは間違っていることではあるが、

しかし、隣人の女性には否定できることではないし、

それが誤りだなどと、ご高説たれることなどできない

球子「だ、だとしてもっ!」

陽乃「黙ってて」

球子「いいや、黙れるか! 間違ってるだろ!」

陽乃「………」

陽乃の邪魔になると判断したのだろう

影が揺れるのが視界の端に見える


1、いいから。余計な被害を出させないで
2、殺されたいの?
3、私が人を殺すような子だと思っているってことでいい?
4、そうね。そうかもしれないわね


↓2


368以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 17:34:43.915Rp1iiX30 (1/3)

4


369以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 17:35:09.16mbvI2PfUO (2/3)

1


370 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 18:02:35.51t3OcwK7qo (6/15)


陽乃「良いから。余計な被害を出せないで」

球子「余計な被害って……」

陽乃「いいから」

球子「………」

陽乃を見る球子の目は、訝し気だ

とはいえ、実際に陽乃が何かをすると疑っているよりは、

何言ってるんだ。という疑いの方だろう

九尾がいるのは分かっているはずだが。

陽乃「……貴女、いえ。お隣さんもです。余計なことは控えてください」

「そう……ね。そうよね。ごめんなさい」

陽乃「謝らなくていいです」

「……ええ。それじゃ……また、お話してくれる?」

陽乃「その頃にはここにいないと思いますけど」

「そう……そうね。無事で、良かった」

隣人の女性はそれでも申し訳なさそうな表情を浮かべていて

思わず謝罪を零してしまいそうに、唇をかんだ


371 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 18:20:16.51t3OcwK7qo (7/15)


球子「まだ、暫くはここにいるだろ」

陽乃「さぁ? どうなるかしらね」

大社からの印象は少し良くなったのかもしれない

けれど、それを鵜呑みにするわけにはいかないし

大社がどうであれ、

民衆に広まってしまった陽乃の悪評が解消されたりはしない

陽乃がここにいることが知られ、

焼き討ちに遭う可能性もあるのだ

無いと思いたいけれど、あるかもしれない。と言う時点で安心は無理だ

陽乃「明日にでもここを発つかもしれない」

「そう……明日、ボランティアで集まりがあるんだけど……」

陽乃ちゃんは参加させられない。

そう思った女性とは正反対に、球子ははっとして頷く

球子「それなら参加するぞ」

「えっ?」

陽乃「黙っててって言ってるでしょう」

「そう、なの?」

陽乃「……不本意ではありますけど」

「そう……そうなのね。ありがとう」

陽乃「別に、感謝されるためではないので」

そう言ってそっぽを向く陽乃を、

隣人の女性はしばらく見つめて……申し訳なさそうに家の中に入っていった


372 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 18:37:39.13t3OcwK7qo (8/15)


√ 2018年 8月6日目 夜:伊予島家

01~10 大社
21~30 球子
41~50 杏
81~90 九尾

↓1のコンマ

※それ以外は通常


373以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 18:49:57.14mbvI2PfUO (3/3)




374 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 19:26:41.93t3OcwK7qo (9/15)

√ 2018年 8月6日目 夜:伊予島家


陽乃「はぁ……」

庭先に出るくらいなら問題ないだろうと思ったのが間違いだった

その結果、隣人に見られてしまったし、

余計な話を聞かされてしまった。

陽乃「……ダメよ」

影を踏んで、首を振る

あの人は自分たちを殺す権利があると言っていたけれど

陽乃がそれを認めた瞬間に、この影は喜んで殺すだろう

そうしてしまうべきだと考えている九尾に対して

当人が殺す権利がある。などと口走るのはあまりにも危険だ

陽乃「もう……最悪」

元々、全人類が自分のことを嫌っているとまでは思っていない

しかし、その極少数の自分の味方であろう人が、

もしも、隣人のように【殺す権利】を押し付けてくるのだとしたら

陽乃は認めるわけにはいかない


375 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 19:48:57.72t3OcwK7qo (10/15)


味方だろうと敵だろうと、

陽乃は……いや、九尾は殺してしまう。

そうして良いと言っているから。と、容赦なく殺めることだろう。

それは駄目だ

たとえ、敵であろうとも許すわけにはいかない

九尾は愚か者だというけれど、

それを許してしまったら、

本当に駄目になってしまいそうな気がするからだ

陽乃「………」

球子が、ボランティアについて漏らしてしまったし、

あの人はそれがなくても、参加する予定だったはず。

何か起きないとは言い難い

今からでも、キャンセルすることはできるだろうか。


1、球子を殴る
2、キャンセルを申し出る
3、杏と交流
4、九尾と交流
5、イベント判定

↓2


376以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 19:54:13.425Rp1iiX30 (2/3)

1


377以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 19:55:02.96zqdYjcLuO (1/2)

3


378 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 20:46:37.61t3OcwK7qo (11/15)


陽乃「ねぇ、土居さんを黙らせることできないかしら」

杏「えっ!?」

陽乃「あの人、余計な事しか言わないから」

杏「あの人……ですか」

陽乃「貴女から言えばどうにかなるでしょう?」

杏「久遠さんに関してはどうともならないと思いますけど……」

陽乃「はぁ……」

深いため息

本当にどうにかしたいと思っていると感じる

球子はいったい何をやらかしたのかと、杏は眉を顰めて

杏「タマっち先輩、嫌いですか?」

陽乃「好きなわけないじゃない」

杏「そ、そうですよね」

陽乃「あの人のせいで、隣人にボランティア参加がバレたの」

杏「え……そ、それで、何か?」

陽乃「その人は私について肯定的だったから特には」

杏「そう、ですか」

ほっと安堵の息を吐いた杏

陽乃は一瞥に留めて、目を背けた


379 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 21:26:22.80t3OcwK7qo (12/15)


杏「久遠さんを肯定的な人、ほかにもいてよかったですね」

陽乃「ぜんぜん、良くないわ」

杏「ダメ、なんですか?」

陽乃「味方が一人二人いたところで、何かが変わるわけでもないでしょう?」

杏「それは……」

そうかもしれない。

けれど、いないよりはましだと杏は思う

だが、陽乃はそう思っていないし

思うつもりもないように見える

杏「でも、少なくとも一人はいたんですよ?」

杏の両親のように、

陽乃とは別の勇者を子や知り合いに持っているわけでもなく、

他人でありながら、味方でいてくれていたのだ

それは、悪いことではない

杏「もしかしたら、ボランティアの人たちみんなが良く思ってくれているかもしれません」



1、私がそう、暢気に考えられると思う?
2、やめて。あり得ないわ
3、それはどうだっていいから、土居さんを何とかして
4、そんな恐ろしいこと、考えたくもない


↓2


380以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 21:32:42.32zqdYjcLuO (2/2)

1


381以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 21:37:03.005Rp1iiX30 (3/3)

3


382 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 22:03:35.49t3OcwK7qo (13/15)


陽乃「それはどうだっていいから、土居さんを何とかして」

杏「どうでも良くないと思います」

陽乃「やめて」

杏「………」

陽乃「貴女まで、頭痛くさせないで」

杏「そんなですか?」

陽乃「そんなよ」

今の自分が話そうとしていることを、球子が事前に話したとは考えにくいけれど

詳細ではなく、大まかに似通ったことを話した可能性はある

それを繰り返すのは、得策ではないと判断した杏は、小さく息を吐く

杏「タマっち先輩も、久遠さんのことを思ってのことなんだと思います」

陽乃「有難迷惑って、知らないの?」

杏「知ってますけど……でも」

陽乃「知ってるなら、無駄に話す必要もないと思うけど」

杏「………」

取り付く島もない

これでは、困る


383 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 22:04:38.27t3OcwK7qo (14/15)


コンマ判定↓1

1,3,9 杏「そういうの、やめた方が良いと思います」

それ以外 通常


384以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 22:15:14.86NuyVDyaVO (1/1)




385 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/07(日) 22:19:17.20t3OcwK7qo (15/15)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


386以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/07(日) 22:37:22.86lQb+8G6JO (1/1)


選択肢までもが徹底的にネガティブな陽乃さん…
今作はさおりんみたいな相方ポジションの子が不在で心を癒せないのが辛いな


387以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/08(月) 08:02:05.66BBSdOf0hO (1/1)


このメンタルだともし隣人が悪い人だったら本当にやらかしてたな…


388 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/08(月) 22:17:55.563KRMEiDFo (1/4)


では少しだけ


389以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/08(月) 22:20:09.313nSAsTDLO (1/1)

おk


390 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/08(月) 22:39:02.123KRMEiDFo (2/4)


杏「……そう、ですけど」

やめるべきだ。

無理に突き離そうとするのも、そうあるべきだと自分を律するのも

けれど、今の陽乃にはそれを言うだけ無駄なのだ

球子だって、それが間違ってると思っているから突っかかっているのだと杏は分かっている

それを陽乃は嫌がっている

球子を拒んで、杏を拒む

そうなれば孤立しかねないけれど……陽乃はむしろそれを望んでいる

それではダメだ

孤立させたくないのに、孤立させる流れは不味い

杏「でも、遠征に行くなら少しは仲良くなる必要があると思います」

陽乃「仲良くなって、どうするの?」

杏「連携して戦ったり……その、外の世界の状態を見て、気が滅入ることがあるかもしれませんし……」

陽乃「目の前で人が食べられたりしたのに、気が滅入る光景なんてそうそうないと思うけど」

杏「そう、ですよね……」

陽乃「連携だって、出来ると思う?」

杏「今の状態では難しいと思います……でも、もう少し仲良くなれたら。出来るかもしれません」


391 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/08(月) 23:21:26.353KRMEiDFo (3/4)


陽乃「無駄な期待はしない方が良いと思うわ」

杏「したくないですか?」

陽乃「守る気はないもの」

守る気はない

守れる保証がない

だから、背中を預けられても困る

杏と球子は陽乃が何と言おうと一方的に守ってくれるだろう

けれど、それに対して何もできない

いや、出来る限りのことを陽乃は尽くそうとするはずだ

しかし、その結果失うことになる可能性がある以上

陽乃は背中を預けたくないし

預けられたくもない

陽乃「貴女には土居さんがいるんだから、欲張らない方が良いわ」

杏「タマっち先輩だけじゃなく、若葉さん達もいます。でも、必ず一緒にいられるとは限りません」

陽乃「ん……確かに私と二人きりになっちゃう可能性もあるわね」


392 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/08(月) 23:55:38.533KRMEiDFo (4/4)


杏「そうですっ」

押し切ろうとでもいうのか、

前のめり気味に言う杏を見ることもなく、陽乃は首を振る

陽乃「そうなったら死を覚悟しておいて頂戴」

杏「もちろん、その可能性もあります」

遠征の道中がどうなっているかは分からない

しかし、その最中に二人きりになるなんて故意になるとは考えにくい

何かが起きてそうなったと考えるのが自然だ

その場合、安全を保障できないのは当然で、

死を覚悟しておく必要があるというのも真っ当な話だ

杏「でも、その状況から生還する確率を上げるためにも、協力できるようにしておくべきだと思います」

陽乃「なるほどね」

陽乃は素っ気なく言うけれど、一理あると、ため息をつく

陽乃「よく言うわね。間違ってない」

杏「なら……その、仲良くして貰えませんか?」



1、仲良くなる気はないわ。共闘ならしてもいいけれど
2、連携できる程度なら
3、嫌よ
4、なら取引よ。土居さんをどうにかして


↓2


393以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/08(月) 23:57:00.86C3QV0l730 (1/1)

2


394以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/08(月) 23:58:42.2195SAunfzO (1/1)

2


395 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/09(火) 00:12:01.08CF0RLH+Ao (1/9)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


396以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/09(火) 00:23:32.34tY0eYVnhO (1/1)


どんなに突っぱねられても諦めない杏
連携から徐々に仲良くなっていけるといいなぁ


397以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/09(火) 00:47:52.18xr3tw/N0O (1/1)


杏のこのガッツはありがたい
陽乃はそろそろデレて


398 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/09(火) 22:33:01.54CF0RLH+Ao (2/9)


では少しだけ


399 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/09(火) 22:39:16.01CF0RLH+Ao (3/9)


陽乃「……そうねぇ」

陽乃は少し考える素振りを見せる

見せはしただけで、その内では特に何も考えていなかった

考える必要がない

陽乃「連携できる程度なら」

杏「本当ですかっ!?」

陽乃「気が変わらないうちに、大人して貰えないかしら」

杏「す、すみません」

必要最低限の協力体制

それが必要なのは陽乃でも分かっていることだ

だが、護ってあげられる保証がない以上

易々と引き受けたくはない

けれど……遠征云々と口にされれば、妥協すべきではある

生き残れる可能性を高めるために勇者を連れ出すのに

その勇者が役に立たないというのは、結果的にリスクを高めるだけになってしまう


400以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/09(火) 22:51:20.66cMu9i+/YO (1/1)

せやな


401 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/09(火) 23:08:52.13CF0RLH+Ao (4/9)


杏「でも、それだけでも十分です」

ありがとうございます。

笑顔でそう言う杏を一瞥して、陽乃は顔をしかめる

これは間違いなく一歩踏み込んだ

球子はともかく

杏との関係は近づく結果になっただろう

必要最低限の関係

その枠を出られるのは困る

それを出ていなくても……ではあるけれど。

杏「明日はお昼からボランティアの活動ですけど……もしかしたら、その時にアップデートが届くかもしれません」

陽乃「そうね」

杏「明日届いた場合、明後日タマっち先輩と模擬戦を行って……」

陽乃「少なくとも今日を含めないで3日は遠征にいかないと思うわよ。保証はしないけど」

杏「分かりました。でも、最低限の用意はしておきます」

陽乃「用意?」

杏「遠征用の荷物とか、用意した方が良いと思うので」

食料や寝袋など

外がどうなっているか分からない以上、それなりの準備をするべきだ

杏「ところで、鯖缶って好きですか?」

陽乃「嫌いじゃないわ。好きでもないけど」


402 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/09(火) 23:16:35.25CF0RLH+Ao (5/9)


1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(装束、認める、大変な事になる、被害を出したくない)
・ 伊予島杏 : 交流有(装束、球子不満、連携程度)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流無()

√ 2018/08/06 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
 土居球子との絆 49→51(普通)
 伊予島杏との絆 55→58(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 63→63(普通)


403 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/09(火) 23:29:26.03CF0RLH+Ao (6/9)


↓1コンマ判定

奇数なら装束完成日

※偶数なら、翌日


404以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/09(火) 23:32:02.87i01xjQP30 (1/1)




405 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/09(火) 23:40:45.94CF0RLH+Ao (7/9)


√ 2018年 8月7日目 朝:伊予島家

01~10 大社
21~30 球子
41~50 杏
57~66 若葉
81~90 九尾

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※一桁奇数で訪問
※装束完成日


406以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/09(火) 23:41:16.80je3h87lK0 (1/1)




407 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/09(火) 23:53:30.67CF0RLH+Ao (8/9)

√ 2018年 8月7日目 朝:伊予島家


杏「久遠さん、今日装束のアップデート版が展開されるそうです」

陽乃「そう……」

杏「興味、ありませんか?」

陽乃「お昼が憂鬱なのよ」

ボランティアの集まりはお昼からになっている

それまであと数時間あるものの、朝から気が重い

杏曰く、味方はいた

だとしても、それ以外の人達が陽乃を受け入れるとは限らない

陽乃を認めた杏の両親、その隣人

今度は彼らが害される可能性がある

陽乃「……なんて」

頼んだわけじゃない

だから、得があったのかは知らないが自業自得というものだ

杏「なにか?」

陽乃「何でもない」

そう割り切れるような性格ならば

九尾が悪態を付くようなことはないだろう


408 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/09(火) 23:55:44.29CF0RLH+Ao (9/9)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


409以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/10(水) 00:06:46.51cAlQw2BSO (1/1)


なんやかんやで装束完成してよかったなぁ
それにしてもあの深刻な8月開始からやっと一週間か…これでまだまだ序盤というね


410以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/10(水) 00:44:36.17PeJF1qSrO (1/1)


ボランティアやって連携して遠征して
道筋見えてきたな


411 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 20:22:13.227yGlth3Bo (1/12)


では少しだけ


412以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/11(木) 20:28:30.107Bvke3DRO (1/6)

やったぜ


413 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 20:31:22.087yGlth3Bo (2/12)


陽乃「土居さんは?」

杏「外に出てます。お昼からいっぱい動くからその準備運動だって」

陽乃「元気ね……」

杏「タマっち先輩ですし」

小馬鹿にしているような笑い声

けれど、本当に馬鹿にしているわけではない表情は

そんな球子を快く思っているからこそのものだろう

球子も、馬鹿にしてるだろ。なんて突っ込みを入れるかもしれないけれど

仲が良いことを前提としたものになる

杏「神託の件はどうしますか?」

陽乃「どうもこうも無いわ。装束の性能チェックした後ね」

性能が良いなら、問題なく連れ出せるが

悪いなら必要最低限にとどめておくべきだ

最悪の場合、外の世界で全滅する可能性だってある

死ぬ覚悟をしている球子と杏は何が何でも付いて来るだろうから

陽乃、杏、球子

それだけで行かせるような神託を出さなければならない


1、貴女達二人より、乃木さんの方が良いのだけど
2、貴女、本当に戦えるのよね?
3、もしかしたら、両親を喪う可能性もあるって、覚悟しておきなさい
4、イベント判定


↓2


414以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/11(木) 20:34:14.367B/QW9Hq0 (1/3)

2


415以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/11(木) 20:37:09.787Bvke3DRO (2/6)

3


416 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 20:48:02.327yGlth3Bo (3/12)


陽乃「伊予島さん、あなた本気で付いて来るの?」

杏「はい」

覚悟を決めている表情

けれど、恐れが残る瞳の揺れがあるのを陽乃は見逃さない

覚悟が出来ていれば怖くないなんてことはない

以前の世界なら、一度は出たことがあるかもしれない世界も

今では人類の未踏領域と化している

陽乃「そう……なら、もしかしたら両親を喪う可能性もあるって覚悟しておきなさい」

杏「お母さんたちを……?」

陽乃「今日の件、私がバッシングを受ける状態なら連れ込んだ貴女の両親の立場が危うくなる」

杏「そうですね……」

陽乃「言っておくけれど、だとしても放置していくわ」

陽乃を保護していること

陽乃に肩入れしていること

それらを攻め立てられて、陽乃と同様に敵視され

放火され、生贄として捧げられるのだとしても

陽乃は目もくれずに去っていくと、宣言する

陽乃「貴女はそれでも付いて来るのね?」


417 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 20:59:17.047yGlth3Bo (4/12)


付いて来ると言えば両親を見捨てると言う事にもなる

自分の発言ながら酷いことを聞くものだと陽乃は眉を顰めて、

口を閉ざした杏をまっすぐ見つめる

願わくば「考えさせて欲しい」と口にしてと思いながら。

杏が控えれば、球子も控えるかもしれない

戦力として申し分ないならば快くとまでは行かなくても

連れていくことに問題はないけれど

そうではない二人……特に、まだ勇者としての経験のなさそうな杏は連れていきたくはない

球子が50%の確率で死ぬのなら、

今の杏は80%の確率で死んでもおかしくないからだ

陽乃「一宿一飯の恩はある。でも、私のすべきことを取り止めるほどの恩はないし」

なにより、

リスクがあることはすでに話している

その責任を負うことは出来ないという話もしている

今日のボランティアに参加した結果、周辺住民からどれだけの誹謗中傷を浴びせられようと

自分には自業自得だとしか考える気はない

その結果、杏の両親が死のうと「だから言ったのに」としか思う気はない


418 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 21:02:44.467yGlth3Bo (5/12)


↓1コンマ判定 一桁


ぞろ目 特殊

149 杏「覚悟は、出来てます」

それ以外 杏「……」


419以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/11(木) 21:03:37.157Bvke3DRO (3/6)

どうだ


420 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 21:21:03.347yGlth3Bo (6/12)


杏「………」

杏は難しい顔をして、黙り込んでいる

ただ普通に両親をこの場に残していくのなら

悲しませることになるかもしれないと思う程度で済むかもしれない

だが、両親を喪う可能性があると言われたらそれではすまない

陽乃「今すぐじゃなくて良かったわね」

杏「私……」

陽乃「よく考えた方が良いと思うわ」

本当に両親を置いて行っていいのか。

もちろん、今日のボランティア活動で問題が無ければ何も問題はない

しかし、間違いなく何かがある

全員が否定的ではなかったとしても

比率としては否定派が大多数を占めると考えておくべきだ


421 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 21:45:42.177yGlth3Bo (7/12)


陽乃「………」

『くふふふっ……何事もなければよいがのう?』

陽乃「何が言いたいの」

『さてのう?』

にやにやと笑っているのが分かるような声色

足元の影は揺らめいて、

杏に巻き付くようなそぶりを見せるが、見せるだけで手は出さない

陽乃が不機嫌になると分かっててやっているのだろう

ただの意地悪だ

陽乃「はぁ……」

九尾のことだ

万が一のことがあった場合、

杏の両親を見捨てて四国を出ていくことは出来ないと勘繰っているに違いない

なのにもかかわらず、

杏にそんなことを言うものだから「何言ってるんだ」とでも噴飯ものだっただろうか。

陽乃「……分かってるわよ」

言われなくたって、分かっている


422 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 22:05:31.407yGlth3Bo (8/12)


√ 2018年 8月6日目 夜:伊予島家

05~14 若葉
27~36 友奈
71~80 友人

↓1のコンマ


423以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/11(木) 22:06:48.967B/QW9Hq0 (2/3)




424 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 22:21:16.947yGlth3Bo (9/12)

√ 2018年 8月7日目 昼:???


↓1コンマ判定(肯定派) + ゾロ目補正+20

↓2コンマ判定(否定派)


※ぞろ目なら2倍


425以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/11(木) 22:23:26.127Bvke3DRO (4/6)

それ


426以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/11(木) 22:26:49.937B/QW9Hq0 (3/3)




427 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 22:31:50.097yGlth3Bo (10/12)

√ 2018年 8月7日目 昼:???

(肯定:否定=32:93)


428以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/11(木) 22:33:33.957Bvke3DRO (5/6)

世の中そんなに甘くなかったか…畜生


429 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 23:06:02.757yGlth3Bo (11/12)

√ 2018年 8月7日目 昼:???


髪の色は脱色も染色もできずに変えられなかったために変化はないが、

三年経って陽乃は背も伸びたし、多少なりと顔つきも変わった

伊予島家、隣家の人のように一目見て気付く人もいれば

気付かない人もいる

分かりやすい容姿でありながら、気付かないのは【そこにいて欲しくない】という思いがあるからだろう。

しかし、

誰か一人でも気づき 「あそこにいるのは久遠陽乃ではないか」 と口にしてしまえば、

その存在を認めざるを得ない

陽乃「……だから言ったのに」

ボランティアに集まった、この地区にしては大人数な集団

総勢、50人ほどだろうか

その半分以上の人達がざわつき、陽乃を指さし、

化け物を見るような顔をしたり、仇敵を見つけたかのような表情の人もいる

なぜ、どうして……と、困惑と苛立ちと憎悪が入り混じって

「伊予島さん、これは……どういう。ことかな?」

比較的、優しそうではあるけれど

陽乃を畏れて避ける班長のような男性が、杏の両親へと疑問を投げかけた


430 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/11(木) 23:08:02.927yGlth3Bo (12/12)

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



431以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/11(木) 23:19:28.817Bvke3DRO (6/6)


陽乃さんとことんツイてないなぁ
せめてご両親や味方してくれる人には悪影響がなければいいけど…



432以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/12(金) 01:15:38.60cUG1KKteO (1/1)

補整+20でもこの差よ…単純に61差で61%が否定的なのかね
補整無しで81%だったと思うと…


433 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/12(金) 21:16:57.96zQ5add/mo (1/3)


では少しだけ


434以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/12(金) 21:34:57.78Fmf8YJuAO (1/1)

きてたか


435 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/12(金) 22:56:05.60zQ5add/mo (2/3)


「娘の杏が勇者として大社のもとに出向しているのは存じていることかと思います」

「それは、まぁ……」

「娘が休暇を戴いてお友達を連れてきたのですが――」

「ま、まさかその化け物が勇者様の友人などとは言わないですよね!?」

野次のつもりなのか、

杏の父親の言葉を遮って叫ぶように言った女性

近くにいる男性に隠れるようにしながら

陽乃を睨む姿勢はまさに、虎の威を借る狐のようだ

だが、本当の狐は陽乃の足元で鼻をヒクヒクと鳴らしている

その狐は、虎などよりもはるかに恐ろしいが。

「あの時、その娘が死体の山の傍で佇んでいるのを見た人だっているんだ!」

「自分の家の役目を放棄して逃げたって話があるわ!」

「実際に殺されかけた人だっているんだぞ!」

「人の頭を鷲掴みにしてたって聞いたわ!」

あちこちから聞こえてくる、陽乃への敵意

そんなことをした覚えがないという噂ももちろんあって、

どこの誰から出てきた話なのかと……問い詰めたくなってくる


436 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/12(金) 23:08:39.30zQ5add/mo (3/3)


陽乃の一挙手一投足にビクビクしている多数派

けれども陽乃を認めてくれるのは少数派で、それは言いすぎなのでは。と、小さく話すばかり。

陽乃「はぁ……」

「ひっ」

陽乃「ため息一つで人を殺せるとでも思ってるの?」

ため息をつけば、息を引く間抜けな声を漏らす男性

陽乃が睨むと、男性の後ろにいた女性は別の人の影に隠れる

陽乃「隠れるくらいなら、黙っておけばいいのに」

何が "化け物" なのか。

殺される覚悟も無いのなら、縮こまっていればいいのに。

陽乃のため息一つで、曲解して狐が噛みつかないとも限らないのだから

「彼女……久遠さんは、勇者様の教官をしているそうですよ」

陽乃「えっ?」

「きょ、教官……? あの子が……?」

危険だ、嘘だ、殺そうとしているのかもしれない

そんな言葉が飛び交ったり、

脅されているのではないかと、杏の両親を心配する声がちらほら聞こえる


437 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 00:10:01.951LDkWQUvo (1/13)


「知っている人も……いるのでは?」

陽乃「ん……」

昨日話しかけてきた隣人の女性

数少ない肯定してくれる一人である女性は、

恐る恐ると……口を開く

「確かに、噂にあるような姿を目撃した方がいるかもしれません。でも、そうではない姿も多くの人が見たはずです」

血塗れの少女

山ではなくとも、死体の近くに佇んでいる少女

その姿を見た人も少なくはないだろうが、

その死体を食い漁っていた本当の化け物と戦う少女を見た人もいるはずだ

襲われそうになっている赤の他人を助け、恐れられ、

逃げるを追わず追わせず歯を食いしばっているのを、見た人だっているはずだ

「だけど、それは役目を放棄したせいだって話じゃないか」

「しっかり役目を果たしてれば、今頃元の生活に戻れていたかもしれないだろ」

「自分の命惜しさにその何百倍もの犠牲者出したって事なんでしょ?」

球子「っ」

陽乃「………」

陽乃の影が揺らめいて

それよりも強く、すぐそばの小柄な勇者がこぶしを握り締める


1、それの何が悪いの? もしかして、貴女だったら喜んで死ぬの?
2、ええ、そうよ。それで?
3、言わせておきなさい
4、余計なことしないで
5、九尾、脅かすだけよ?


↓1


438以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 00:16:49.98TPS7cAChO (1/1)

4


439以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 00:17:22.05pXk6mbYC0 (1/1)

1


440 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 00:37:33.861LDkWQUvo (2/13)

ではここまでとさせていただきます
明日もできればお昼ごろから


441以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 00:44:27.4967JAPitLO (1/1)


陽乃さんが大勢に罵倒される姿を杏とタマは目の当たりにして辛いだろうな…


442以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 01:10:29.73HROQPm1TO (1/5)


誰か助けて


443以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 16:16:11.67ov0JqW660 (1/1)

言わせておいて、ボランティア活動だけして帰ろう


444 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 17:11:28.611LDkWQUvo (3/13)


では少しずつ


445以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 17:27:26.30V9yHNhxxO (1/4)

よっしゃ


446 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 17:56:18.381LDkWQUvo (4/13)


陽乃「余計なことしないで」

球子「でも――」

陽乃「良いから、二度とやらないで」

昨日許されたのは、相手が陽乃を認めてくれていたからでしかない

そうではない相手に突っかかられたら、

廻りめぐって……陽乃が被害を受けることになる

勇者まで洗脳してるとか

どうとか

きっと、陽乃が悪者扱いされるだろう

そう、ならなかったとしても。

球子の立場が悪くなるだけだ

「なんでそんなやつ連れてきたんだ!」

「落ち着いて――」

「その子のせいでこんな……こんな最悪な世界になったんでしょ!?」

陽乃「ん……」

目の前で人が死んだのは、自分が護れなかったからだ

だけど、そんな人が死ぬ世界にしたのは自分ではない

しかし、それを言ったところで何も変わらない

「この……化け物!」

一人の子供が、近くにあった石を拾って――投げる

小さな子供の弱い投擲だが、当たれば痛い石は害意を纏っている

だから……動く影を踏み潰す

陽乃「ダメ!」

周りに人がいようと関係なく、

人の老若男女など気にすることもなく

それは、容赦なく命を奪うからだ


447 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 18:33:57.141LDkWQUvo (5/13)


陽乃「貴女も、余計なことしないで……」

足元の影にそう言い聞かせて顔を上げると、

陽乃から距離を取っていた人々はさらに距離を取ろうとしていて

目が合って悲鳴を上げる人もいれば

その場にへたり込む人や、身を隠そうとする人もいる

陽乃「……はぁ」

口を出さなければ、人が一人死んでいたかもしれない

それよりは悪くない空気だと陽乃は割り切る

「や……やっぱり、人殺しだ!」

「こっち睨んでるわ!」

「なんでこんな奴が生きてるんだ」

「どっかいってよ!」

「お前が死ねばよかったのに!」

杏「そんな――」

陽乃「良いから、黙ってて」

杏の両親も宥めようとしているけれど、

陽乃への恐れと怒りが入り混じった阿鼻叫喚な場は治まらない

陽乃「良いから……もう、誰も余計なことしないで」


448 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 19:09:03.371LDkWQUvo (6/13)


一つの地域の、小さな集まり

それも、ボランティアなんていう比較的穏やかな目的の集団

そんな人々でさえ、多くが陽乃を否定する

陽乃の存在を憎み、恨み、恐れる

それが、現実だ

杏「久遠さん……」

球子「余計な事かよ……」

球子達は、千景から陽乃がどれだけ憎まれているかを聞かされたことがある

ネットの掲示板を見せられて。

これだけ誹謗中傷を受けているのだと

こんなうわさがあるのだと

これだけ憎まれているのだと聞かされた。

けれど、それはあくまで "匿名" だった

でも、これは違う。

今まさに目の前で行われている。

中には陽乃がいたからこそ、今ここに居られている人だっているはずなのに。


1、私は帰るわ
2、九尾、威嚇
3、これに懲りたら、友達の自称なんてやめることね
4、活動、しないの?

↓2


449以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 19:10:53.40V9yHNhxxO (2/4)

4


450以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 19:11:00.42HROQPm1TO (2/5)

4


451 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 20:18:00.851LDkWQUvo (7/13)


陽乃「それで……活動、しないの?」

「は?」

「あ、あんたみたいなのがいたら出来るわけないじゃない!」

「後ろから襲う気なんだろ!」

「さっさと消えてくれよ!」

陽乃「だって」

杏「……すみません」

陽乃「別に責めてるわけじゃないわ」

振り返った陽乃の困った笑顔に、杏は言わずにはいられずに謝罪を口にしてしまう

ボランティアに誘ったのは杏ではなく杏の両親だ

だから、杏が謝る必要もないけれど。

「早く出ていけよ!」

陽乃「っ」

ごつんっと……背中に当たる少し大きめな石の感触

目を向けただけで怯むのに、怯むだけ。

多勢に無勢だなんて考えているからだろうか。

いくつも石がぶつかって、

せっかく用意して貰ったジャージが無意味に汚れる


452 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 20:42:30.391LDkWQUvo (8/13)


陽乃「……ん」

土汚れを手で払って、

地面に落ちていく石ころを拾い上げる

陽乃の手には小さな石

力一杯に投げれば、それなりに痛いだろう。

九尾の力で投げつければ、

人間の柔らかい肉なんて、貫けるだろうか。

陽乃「簡単そうね」

九尾の力で人の体を貫くのも

そんな力を使わずに、誰かに石を命中させるのも

陽乃「……」

杏の両親に目を向けると、

陽乃に対しての言動を押さえようとしていて

けれど、抑えきれていない

流石にここまでとは想像していなかったのかもしれないけれど、

だから言ったのに。と、陽乃は首を振る

無駄なのだ

こんな活動への参加なんて。


453 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 20:51:28.441LDkWQUvo (9/13)


コンマ判定↓1


2,4,9 悪い方

それ以外、通常


454以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 20:52:23.64V9yHNhxxO (3/4)

たのむ


455以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 20:53:59.97V9yHNhxxO (4/4)

終わった…


456以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 21:12:40.41HROQPm1TO (3/5)

ある意味引きが強い
杏の両親かな……


457 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 21:54:45.181LDkWQUvo (10/13)


「あんたたちが匿ったんだな!?」

その声は唐突に上がった。

矛先が杏の両親に向かうことは元々考えていたけれど

本当に向かってしまったことに、陽乃は思わず眉を吊り上げた

「あなた達が匿ったせいで、大勢の犠牲が出たんじゃないですか!?」

「あんな化け物の味方をするなんて、どうかしてる!」

「人殺しなのよ!」

「今すぐにでも外に放り出すべきだ!」

陽乃「はぁ……」

三年前と違って、壁に覆われている四国

一般人がその向こう側に行けるわけもないのに

どうするつもりかと呆れる陽乃がため息をつくと、

一斉に刺々しい視線が向けられて――

バチン……と、目の前で石が粉々に砕け散った

陽乃「……九尾」

『小石ならばともかく、主様の手ほどのものは許さぬ』

陽乃「別に、自分で対処できるのに……」

石を投げたであろう若い男性は、

前触れなく石が砕けたことに恐れおののいて、目を見開いている

彼らにとっては……噂に違わない化け物に見えただろう


458 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 23:13:33.521LDkWQUvo (11/13)


「そうだ……もう一度連れていけばいいんだ」

「おちつ――」

「黙れ!」

「そうよ……もう一度捧げれば良いのよ!」

「今度こそ逃がすな!」

杏「お母さんっ! お父さんっ!」

彼らの一番近くにいた杏の両親が真っ先に取り押さえられる

相手が怪我をする事なんてまるで考えていないかのように

無理矢理引き倒して、のしかかって

球子「ま、待て待て待てって!」

それほど、希望がないのか

それほど、恐ろしいのか

それほど、憎まれているのか

それとも……全てか

暴走する否定派と、自分まで巻き込まれることを恐れる傍観者達

陽乃達を取り囲むようにして、大人たちが近づいて来る

正直、本気で相手をすれば所詮一般人な大人の力など陽乃には赤子のようなものでしかない

けれど、まだ本調子ではなく

対人に不向きな球子と杏は抵抗しきれないだろう

杏「久遠さん……」

陽乃「責任は取れないって、ちゃんと言ったわよ」



1、無視して離脱する
2、九尾を呼び出す
3、大人を殴り飛ばす
4、大人しく捕まる


↓2


※1~3は判定次第で死人が出ます


459以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 23:14:33.79HROQPm1TO (4/5)

4


460以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 23:20:04.10o1x2bc+R0 (1/1)

3


461 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 23:26:58.271LDkWQUvo (12/13)


↓1コンマ判定 一桁

  0   死者2
1、4    死者1
3、6、2、7 重傷
5、9、8   重傷者複数 


00 死者複数


462以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 23:28:01.81Wmmwd4YRO (1/1)




463 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/13(土) 23:36:13.681LDkWQUvo (13/13)


ではここまでとさせていただきます
明日もできればお昼ごろから


464以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 23:40:10.16HROQPm1TO (5/5)


とうとう死人が……


465以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/13(土) 23:41:46.77l/3MWn07O (1/1)


まさかボランティアに参加したばっかりにこんな鬱展開になるとは…
杏がトラウマになりそう



466以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 00:10:32.73erZ2fHJRO (1/3)

杏のお父さんお母さんどっちが死ぬかとか地獄みたいなコンマ判定来るのかな?


467 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 17:04:51.04lLbFIcFmo (1/18)


では少しずつ


468以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 17:07:19.129V06vbX+O (1/2)

あいよ


469 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 17:08:45.70lLbFIcFmo (2/18)


球子「あ、あんずっ!」

杏「っ……お母さんっ、お父さんっ……」

球子「くそっ」

陽乃だけでなく、球子や杏の方にも男性が近づいて

両親を助けに行こうとする杏を阻み、置いていけない球子を足踏みさせる

球子「た……わ、私達は勇者だぞ! こんな、こんなことっ!」

「本当に勇者様ならあんなやつと一緒にいるなんてありえない」

「本当に勇者様ならあの化け物退治してくださいよ!」

「そうしなかったのが嘘をついている証拠だ!」

球子「ちょ、ま、はぁ!? 杏ッ!」

躊躇わずに迫ってくる大人たちの言葉

その目も危ういものだと感じた球子は、とっさに杏へと手を伸ばして突き飛ばす

杏「っ……」

球子「ダメだっ逃げ――」

杏「タマっち先輩……」

球子よりも一回りも二回りも大きい男性によって、

球子の体が地面に押さえつけられていく

突き飛ばされて尻もちをついた杏にも、その手は近づいてくる

逃げ場はない

勇者と比べれば力もない一般人を、どうにかしない限り


470 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 17:38:32.97lLbFIcFmo (3/18)


陽乃「………」

リスクがあることは、事前に話していた通りだ

それによってどんな被害があろうと

自分にはその責任を負うことはできないことも忠告した

杏の両親が取り押さえられ、

ボランティア活動で使う予定だっただろうビニールで縛られていても

土居球子が男性に馬乗りになられていても

伊予島杏が呆然自失としてしまっていても。

自分には関係ないと、陽乃は首を振る

陽乃「だから言ったのに」

本当に。

自分には関わるべきではないことも、

何が起こるか分からないことも

あんなにも……忠告をしてあげたのに

「あとはお前だ!」

陽乃は、勇者の中ではそれなりに背が高い部類に当たる

それでも、大人の男から見ればまだ小さい子供にしか見えない

だからなのか、大した武装もなく近づいて来る男性を……陽乃は一瞥して。

「このばけ――」

躊躇なく、殴り飛ばした


471 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 17:56:04.18lLbFIcFmo (4/18)


「あ……ぁ゛……うぶ……」

殴り飛ばされ、地面を転がっていった男性はうめき声を漏らして完全に沈黙する

陽乃を取り囲んでいた大人たち

杏や球子を取り押さえる大人たち

杏の両親を縛り上げる大人たち

ただの傍観者な大人たち

みんなが、その異常な光景に息を飲む。

化け物だとしていても、それが事実化け物めいた力を持っていることを知る人間はそう多くはない

なぜなら、知っている人間は救われた人間だからだ。

だからこそ、

ただの少女にしか見えない "化け物" が体格も良いはずの男性を殴り飛ばし、気絶させたのは異常だった。

陽乃「私は、これでも自分のことを人間だと思ってる」

球子「っ……」

何をしてるんだ。と、苦悶の表情を浮かべる球子を無視して、

陽乃は殴った左手で握り拳を作る

陽乃「でも、あなた達にとっては化け物なんでしょ?」

「あ……ぅ……そ、そうだ!」

「今まさに化け物みたいな力で人を殴ったじゃないか!」

「ひ、人殺し!」

「化け物! 取り押さえて殺せ!」

耳障りな怒鳴り声を、さも聞こえないかのような表情で陽乃は笑う

杏「久遠さん……」

陽乃「そうよね。ありがとう」

「何がっ」

陽乃「これで心置きなく "自分を人間だって思いこむ化け物" を殺せるわ」

球子「やめろっ!」

陽乃「もう遅い……もう、遅いのよ」


472 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 18:17:11.27lLbFIcFmo (5/18)


陽乃はそもそも、勇者とは違った異質な力を身に纏っている

それによって、常人離れした身体能力を得ているため

勇者と相対しているのでもなければ、

大人が数十人いたところで、御しきれるような少女ではない

陽乃「はぁ……」

どうにか取り押さえようとした十数人の大人が気を失うまで殴り、蹴り

草刈り用の鎌を持ち出した男性の命を陽乃が奪ったことで、争いは収束した。

武器を持ったら手を抜けないと、忠告はした。

死にたくないならやめて。と、宥めようとした。

けれど、その男性はそれでも陽乃に向かってきたのだ

陽乃を恐れ、逃げ出した人もいれば

その場から動けなくなってしまった人もいる

ごめんなさいごめんなさいと謝罪を口にする人もいる

この場にいた人々にとって、

正真正銘、化け物になったと……陽乃は眉を顰める

杏「……」

球子「ばかやろう! なんで……なんでっ!」

陽乃に害されるのを恐れて男性が逃げたことで自由になった球子は、

真っ直ぐ、陽乃へとぶつかっていく

球子「なんで……そうなんだッ!」

陽乃「さぁ? 化け物だからじゃないかしら?」


473 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 18:20:58.85lLbFIcFmo (6/18)


↓1コンマ判定 一桁

1 子供
3 妻
9 兄弟

※それ以外 なし


474以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 18:23:28.169V06vbX+O (2/2)




475 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 18:45:47.57lLbFIcFmo (7/18)


陽乃「邪魔だから離れて」

球子「離れられるか!」

陽乃「腰でも抜けたわけ?」

球子「そう言う話じゃ……」

陽乃「いいから――やめて」

球子の腕を払い除け、体を突き飛ばす。

倒れて動かない男性は、もう息をしていない

不幸中の幸いとも言えないが、

血反吐を吐くようなこともなく、長く苦しまなくて済んだのは良かったのかもしれない

陽乃「………」

ボランティアの集まりがあってから、常に一人でいた男性だ

家族がいないか、失ったか。

でなければ、死ぬと言われても武器を持ってくることはないはずだ

恐らく、あの日にすべてを失ったのだろう

だから、久遠陽乃は元凶であると憎み、恨み、殺意を持っていた

陽乃「誰もそんなこと、望んでなんていなかったと思――」

「近づくな!」

陽乃「………」

「人殺しめ……どっか行けよ!」

陽乃「じゃぁ、後処理しておいて」

陽乃はそう言い残して、男性の傍を離れた


476 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 18:54:50.70lLbFIcFmo (8/18)


杏「久遠さん!」

陽乃「………」

杏「待って、待ってくださいっ!」

杏や球子

杏の両親の誰にも目もくれずに立ち去ろうとした陽乃の腕を、今度は杏が掴む

今ここで逃してしまったら

もう、会えなくなる気がして。

杏「どこに……行くんですか?」

陽乃「教えられないわ」

杏「どうして……」

陽乃「他人に知られたくないことだから……なんて」

聞きたいのはそうじゃないんでしょ? と、

陽乃は困ったような笑みを浮かべて、杏の腕を振り払う

杏の問いの真意を分かっていても、答えてあげる義理はない

どうしていなくなろうとしているのか。

そんなの、言うまでもないだろう。



1、諦めなさい
2、あの人のように死にたくないなら、もう近づかないで
3、向こうには一人で行くわ
4、私の行き先なんて、貴女が一番分かっていることだと思うけど
5、謝るつもりはないから


↓2


477以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 19:01:52.94Md1vWggq0 (1/4)

3


478以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 19:05:13.27xf3Tmo84O (1/1)

4


479 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 19:51:51.42lLbFIcFmo (9/18)


陽乃「私の行き先なんて、貴女が一番分かっていることだと思うけど」

杏「それは……でもっ」

突き放したのに、杏は縋る

腕では振り払われるからと、裾を力一杯に掴む

意味もなく土汚れたジャージに皺が走る

杏「でも……まだ、まだ先の話じゃないですか」

陽乃「だから?」

杏「だから……」

少なくとも、三日間は先の話

なのに、今からこの場を離れて……どこに行くつもりなのか。

どこでその短くも長いであろう時間を過ごすつもりなのか。

けれど、匿えるだろうか。

今での両親は受け入れてくれるだろうか

周りから被害を受けたりはしないだろうか

杏「っ……」

陽乃「もう、放して貰えるかしら」


480 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 20:09:15.68lLbFIcFmo (10/18)


陽乃の神社も、家も燃え尽きて、崩れ落ちた

偶然でも、事故でもなく

人が悪意を持って故意に行った火事だった

今になって、そうだと確信が持ててしまう。

そんな恐ろしいことが、自分の家に行われないとは限らない

家が燃え、親が殺されるかもしれない

多くの人が、陽乃を化け物だと言った

殺すべきだと、死ぬべきだと

口々に罵って、憎悪と殺意を向けていた

それは人でありながら、化け物のようで。

陽乃「……ね?」

杏「っ」

肩が叩かれる

とても優しい力だ

人を拒絶するどころか、傷つけられそうもない力

杏「………」

裾を掴む力を強くして

少しだけ緩めて……また強くする


481 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 20:10:39.75lLbFIcFmo (11/18)

↓1コンマ判定

58以下 杏「……勇者が責任を持って身柄を拘束します!」

※ぞろ目 特殊


482以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 20:15:16.62Md1vWggq0 (2/4)




483 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 20:41:57.34lLbFIcFmo (12/18)


杏「ごめん……なさい……」

止められない。

止めるための言葉が思い当たらない。

人々にとって、もはや陽乃は人を殺した化け物だ

たとえそれが正当防衛から超えてしまった過剰防衛だったとしても。

本当の化け物がどちらなのかと……分からなくなってしまっていても。

杏「ごめんなさい……」

自分には失いたくない人がいる

失ってはならない場所がある

それは、陽乃の味方をすることで奪われるかもしれないほどに脆い

陽乃「何のことか、分からないのだけど」

陽乃は吐き捨てるように言って、杏の手を弾く

「勇者なんだろ! なんとかしろよ!」

「人殺しなのよ!? なんとかしなさいよ!」

陽乃「それもそうね……」

一緒に拘束しようとしていたのに

自分達では無理だからと勇者に頼る

陽乃「今ここで、殺しておいた方が良さそうだわ」

杏「!」

球子「っぁぁぁああああああああっ!」

杏を引き倒して、球子が割り込む

球子「この――」

陽乃「ばか……っ」

球子の腹部には陽乃の回し蹴りが叩き込まれて、地面を転がっていく

中途半端に入った蹴りは、間違いなく球子の防御の隙間を縫って

臓器の一部に突き刺さっただろう

暫く、起き上がれないはずだ


484 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 20:57:56.45lLbFIcFmo (13/18)


杏「タマっち先輩!」

陽乃「あなた一人で、私を止めてみる?」

杏「っ……」

球子を一瞥し、陽乃を見上げて……球子へと駆け寄っていく杏を見送る

それでいい

そうでなければ、さらに面倒なことになるかもしれない

陽乃「死にたければ……いつでもどうぞ」

球子や杏、両親

立ち向かってきた大人たちにそう告げて

陽乃は一人で歩いていく

杏の家に衣服を置いてきてしまったけれど、

代わりにジャージを貰ったと思えば、悪くない

陽乃「はぁ……」

最低三日後の予定だった遠征

今すぐにでも行ってしまおうかと……少しだけ考える


485 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 21:06:42.32lLbFIcFmo (14/18)


√ 2018年 8月7日目 夕:

1、神社
2、丸亀城
3、壁の近く
4、廃屋


↓2

※陽乃の居場所


486以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 21:09:58.60Md1vWggq0 (3/4)

3


487以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 21:11:51.397SKJbhnkO (1/4)

2


488 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 21:20:03.84lLbFIcFmo (15/18)


05~14 若葉
28~37 友奈
52~61 千景

↓1のコンマ

※それ以外なら見つからない


489以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 21:20:39.237SKJbhnkO (2/4)




490 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 22:07:47.31lLbFIcFmo (16/18)

√ 2018年 8月7日目 夕: 丸亀城


こっそりと、丸亀城の宿舎に忍び込む

運よく誰にも会わずに自分の使っていた部屋にたどり着き、

ベッドの方へと近づいて……膝から崩れ落ちる

陽乃「っ……」

殺したくはなかった

そんなつもりなんてなかった

でも、一般人とはいえ

明確な殺意を持って向かってくる相手に手を抜くことはできなかった

球子と模擬戦するのとはまるで違う

死が、そこには確実に存在していたからだ

陽乃「私……っ」

人殺しだ

元々、護ることができなかった自戒を込めて、

自分のことを人殺しと思ってはいたが

本当に人殺しになってしまったのだ

陽乃「お母さん……っ……」

なんて言えばいいのだろう

何が出来るのだろう

この手はもう――握らせるわけにはいかない

綺麗に見えるだけの、人殺しの手だから。


491 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 22:28:55.61lLbFIcFmo (17/18)


陽乃「なんで……なんでっ……なんでっ!」

そんなことしても無駄だって言ったのに。

責任なんて取れないって言ったのに。

それ以上は駄目だって言ったのに。

手加減は出来ないって言ったのに。

殺すことになるって言ったのに

なのに……

結果的に、陽乃は人一人を自分の手で殺すことになった

武器を持っていた。

簡単に人を殺せるものだ。

陽乃だったら死なないかもしれない。

けれど、

杏や球子、杏の両親は確実に死ぬ。

武器が有効だと思わせるわけにはいかなかった。

大人しく捕まるわけにもいかなかった

けれど、だけど、それでも――

陽乃「まだ……ダメなの……っ?」

突き放して、突き放して、突き放して

それでも、良くも悪くも周りに人が集まってくる

頑張って独りになろうとしているのに、それを嘲り笑うように集い暴走して崩壊していく

陽乃「やだ……もうやだよ……っ……」

冷徹さをどれだけ装うと……陽乃はまだ、子供だ。


1、一人で遠征に行く
2、死にたい
3、助けて
4、何もしない


↓2


492以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 22:30:03.647SKJbhnkO (3/4)

3


493以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 22:31:49.01erZ2fHJRO (2/3)

3


494以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 22:32:35.31Md1vWggq0 (4/4)

2


495 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/14(日) 22:35:55.53lLbFIcFmo (18/18)


では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


496以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 22:41:04.687SKJbhnkO (4/4)


これは流石にほぼBADENDでは…?
今回ばかりはあまりに悲惨過ぎて前日からやり直したいなぁ


497以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/14(日) 22:56:12.63erZ2fHJRO (3/3)


コンマが死にきってるからな
だがやり直しなどない
前に進むしかない


498以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/15(月) 08:01:11.651JeA25D8O (1/1)


何もかも失ってここから巻き返せるビジョンが見えない…
前作の久遠さんがいかに環境的に恵まれてたかがわかるな


499 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/15(月) 21:01:56.16K2SsYy4jo (1/10)


では少しだけ


500 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/15(月) 21:02:27.81K2SsYy4jo (2/10)


陽乃「助けて……誰か……」

人と関わらない様にしようとしてきた。

関わってくる人を突き放したし、拒絶した

可能な限り、自分の目の前では被害に遭わないようにしてきた。

その結果、人一人を殺す羽目になった。

関われば、多くの人が縋ってくる

関わらなければ、多くの人が付け狙う

陽乃「助けてよ……」

どうしたら良いのか。

どうすれば、この地獄のような状況から抜け出せるのか

陽乃が人を殺したことは、間違いなく大社に伝わるだろう

拘束と監視

そればかりだった今までが自由だと錯覚するほどに酷いことになるか

正式に、勇者による討伐が行われるか。

前者ならばともかく、後者は非常にまずい

千景は殺意マシマシで殺しに来るけれど、

球子や杏、友奈と若葉はそれを出来るような強さがない。

大社はそれを許すだろうか

いいや、許すはずがない

陽乃に味方するような言動は、罰せられてしまうに違いない。


501以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/15(月) 21:03:32.698hbJOjJHO (1/4)

よしきた


502 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/15(月) 21:15:02.90K2SsYy4jo (3/10)


陽乃「私……ただ、死にたくないだけだったのに……」

目の前で奪われていく命

その一つでも救うためにと、力を得た

それをもってしても、護れた親類は母親のみ

その死に物狂いの生還が、人々の憎悪の対象になっている

ならば、死ねばよかったと?

あぁ、死ねばよかったのだ。

みんながみんな、それを声高に叫んでいた

陽乃「死にたく、無いのに……」

『なにゆえ、主様が行った』

陽乃「貴女だったら、皆殺しにしていたでしょう?」

『奇妙なこと言うものじゃのう。アレらに、生かす意味があったのかや?』

陽乃「……だって、あんな人たちにだって、大切な人が」

『いるから……なぁに?』

陽乃「え……」

九尾の声が、急激に女性めいた高いものに変質する

狐の形をしていた影が歪んで、どろどろとした汚泥のように立体感を持ち始めて

それはやがて、一人の女性の姿へと変わる


503 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/15(月) 21:31:10.03K2SsYy4jo (4/10)


「そんなもの……殺してしまえば良いと思いますよ」

陽乃「九……尾……?」

九尾は、様々な姿を模すことのできる幻術を得意とする妖狐だ。

もちろん、女性の姿にだって切り替わることができる

だが、纏う雰囲気が異常だ

九尾とはまるで違う、憎悪に塗れている力

「もし仮に、貴女が言うようにそれらに大切な人がいたとしましょう」

陽乃「……っ」

「それらも含めて、殺してしまえばいいんです」

女性は、容姿に見合わず高い声で言う

子供のように甲高い、頭に響く声

けれど言葉は……純粋に殺意に満ちている

「みんな、殺してしまいましょう」

陽乃「やめて……」

「私を辱めた男の子供達が、私の子供をまた辱めたのだから」

陽乃「やめ――……ぁっ……」

立ち上がろうと床に手を突いた瞬間、視界が揺れる

下を向くと、血が滴る

九尾の力なんて比較にならないほどの、体への負担

陽乃「ぁ……ぅ……ごぷっ……」

身体の中身が捻り潰されるような痛み

それだけでなく、血が溢れ出ていく

「貴女 "私達の子" なのね」

陽乃「私……たち?」

「私とあの人の子だからそんなに苦しいのでしょうね。でも、大丈夫。貴女が死ぬ前に、この国の人間を皆殺しにするくらいは容易いですから」


504 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/15(月) 21:46:11.63K2SsYy4jo (5/10)


酷く冷たい手が、陽乃の頬を撫でる

九尾が先日話してくれた、九尾ではない力

彼女をもってして、最も厄介だと言わざるを得ない存在

――伊邪那美命

陽乃「わた……し……」

九尾は言った

貴女が滑稽にも人を殺めることを良しとしないからなりを潜めている。と

だが陽乃は今日、人を殺してしまった

九尾の力によるものでもなく、自分の力で。

多くの人に裏切られ、石を投げられ、憎悪の対象とされていた

彼女が表に出てくる理由としては十分すぎると言っても良い

「貴女は私の子。可愛い子。お願いを聞いてあげても良い」

だから。と、人の形をした憎悪は笑う

「人間なんて、殺してしまいましょう。貴女を傷つける人間も、それらの世界も。全部殺してしまいましょう」

それが、救い

それが、施し

「貴女はゆっくり、眠りなさい。私の可愛い子」


1、だめ……
2、殺してほしくない人もいるの
3、だったら……力を貸して……遠くに行く、ための力
4、私、死にたくないの

↓2


505以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/15(月) 21:47:58.998hbJOjJHO (2/4)

2


506以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/15(月) 21:48:32.169NAOKT0K0 (1/1)

1


507以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/15(月) 22:09:29.547eeVrDswO (1/1)

マジで誰か助けて


508 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/15(月) 22:09:36.57K2SsYy4jo (6/10)


陽乃「だめ……」

「どうして? 生かしておく必要があるの?」

心まで凍り付きそうな、冷めきった手

瞳には感情が感じられず、声も冷たい

「貴女を傷つける人間を守ってあげる意味があるの?」

陽乃「それは……」

杏の両親みたいな人もいる

けれど、ほとんどの人がそうではない

この神は、そんな違いなど考慮せずに皆殺しにするはずだ

陽乃「だめ」

「貴女を辱める人間なんて、生きていても仕方がないでしょう?」

陽乃「でも……私は殺したくない……」

「理解が出来ない」

かの神は、呟くように繰り返す

憎悪が影のように揺れて……陽乃の身体へと負荷が重くのしかかる

眩暈がする

口の中も気持ちが悪い

鼻血も出ているのか、血のにおいしかしない


509 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/15(月) 22:34:24.58K2SsYy4jo (7/10)


人を一人殺した

九尾に操られたわけでもない

自分の意思で、正当防衛の一つとして過剰に打撃を加えたことで死に至らしめた

それは、かれらが陽乃を敵視して向かって来たからだ

杏の両親の提案を受けてボランティアに参加しようとした

けれど

化け物だと言われ、石を投げられ、殺意を持ってぶつかられた。

だから

殺すことになった。

「貴女をずっと見てきたけれど……人間なんて生きているだけ無駄だとしか思えない」

陽乃「………」

「この先の未来で貴女を傷つける人間を生かしておく理由なんてある?」

陽乃「でも……ぅ……げほっ……」

「殺してしまいましょう?」

陽乃「だめ……」

瞼が重い

全身が気怠くて、動かなくなっていく

口元から血が滴り、床に倒れこんでしまう


510 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/15(月) 23:01:22.14K2SsYy4jo (8/10)


止めるものがいなければ、伊邪那美命は殺しに行ってしまう

けれど、その制御をするだけの余力が陽乃にはなかった

人を殺してしまったこと

初めての神の顕現

その心身の負荷は耐えきれるようなものではなくて

陽乃「ぁ……ぅ……」

陽乃の体中から流れ出ていく血が溜まりとなって

凄惨な事件現場が出来上がっていく

陽乃「ぁぇ……」

「貴女の半分があの人だから、そんなにも愛してしまうの?」

もうあがりさえしない手を伸ばす陽乃を見下ろす神様は、

陽乃の震えるだけの手を優しく包んで、頬を撫でる

「不要な人間なんて愛したって傷つくだけなのに」

とても

とても悲しそうな声だった

やがて、陽乃の意識は薄れ――消えていく

霞んだ視界に見える女性は、

その瞼が閉じる瞬間までは、そこにいてくれた


511 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/15(月) 23:09:48.98K2SsYy4jo (9/10)


√ 2018年 8月7日目 夜:

08~17 若葉
34~43 友奈
67~76 九尾

↓1のコンマ

※ぞろ目 悪(場所移動)


512以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/15(月) 23:10:45.588hbJOjJHO (3/4)




513 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/15(月) 23:16:07.79K2SsYy4jo (10/10)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


514以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/15(月) 23:21:11.908hbJOjJHO (4/4)


流れ的にゲームオーバーかと思ったらまだ続くみたいだけどこの状況どうするんだろう…
あと九尾が最早悪霊と化してて辛い


515以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/15(月) 23:31:12.43jR2Qo/2IO (1/1)


陽乃さんが死ぬまでBADENDにはならないでしょ
あと殺そうとしてるのは九尾じゃなくてイザナミ様では?


516以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/16(火) 00:06:27.67LSRW9k5fO (1/1)


まだまだ踏ん張れるぞ
陽乃の底力を信じろ
まあとりあえず杏か球子メンタルケアしにきて(他力本願)


517 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 20:28:38.28hcbXZnOQo (1/11)

では少しだけ


518 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 20:29:07.27hcbXZnOQo (2/11)


√ 2018年 8月7日目 夜: 丸亀城(寄宿舎)


陽乃「ぅ……」

ゆっくりと目を覚ますと、

鈍い頭の痛みがじわじわと広がっていき、思わず呻いてしまう

口の中にはまだ血の味とにおいが残っていて

喉の渇きを潤そうとする唾液に交じって流れ込んでくる

陽乃「ぁ」

体を起こすだけの力が入らない

頭以外の全てが自分のものではないかのように微動だにしてくれない

声も出ず、かろうじて出来る呼吸と瞬きだけが今の陽乃の力だった

頭も動かせないので、見えるのは天井くらい

空気にも血のにおいが混じってしまっているけれど、居場所くらいはぼんやりとした頭でも分かる

失神する直前にいた、丸亀城の寄宿舎

それも、自分に与えられた部屋だ

陽乃「………」

不可解なのは、姿勢ただしくベッドの上で横になっていること

気を失ったのはベッド脇の床

自分が吐き、滴らせた血だまりの中に倒れこんだはず

なのに、気が付けばベッドの上

誰かが助け起こしてくれたと見て間違いない

問題は、誰が。という点だろう


519 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 20:50:29.16hcbXZnOQo (3/11)


杏や球子である可能性は万に一つもない

二人には行先を告げていないし、まさかこんな場所に戻ってくるだなんて予想はしないだろうから。

せいぜい、久遠家の家だった場所や神社が候補に挙がるくらいだ

自分からこんな危険な場所に乗り込むなんて考えない……だろうか?

諏訪遠征よりも危険ではない

それなら、可能性の一つとして考えるのも無理はない

陽乃「っ」

だが、だとしたらこの場にいないのがおかしい

どちらか一方が偶然その可能性を見出して様子を見に来たとして、

残ったもう一方を呼ばないわけがない

事情聴取を受けるということになっていたとしても

杏か球子のどちらかは必ずこの部屋に残るだろうし

どうしてもと言うのなら、友奈か若葉のどちらかに見ていて貰えるようにお願いするはずだ

陽乃「ぁぅぁ……ぁ……」

声を出そうとすると、喉が焼けるように痛む

伊邪那美命……九尾よりもはるかに強力な、本当の神を呼び起こした代償

ほんの数分の会話だけでこれだけ影響が出るのだから

長時間の戦闘など行おうものなら、途中で力尽きるのが関の山だろう

もしくは、九尾のように慣れれば少しは耐えられるようになるのかもしれない

耐えられたとして、その力を使う影響が恐ろしいけれど。


520以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/16(火) 20:56:25.98u4BkQIP6O (1/2)

ダメージは受けたままか…


521 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 21:02:35.95hcbXZnOQo (4/11)


陽乃「ん……」

杏や球子と同じように、若葉や友奈が見つけてくれていたとしたら

誰かがいてくれるだろうし、

もしも千景が見つけていたなら、

首から上が床に転がっているだけで、ベッドの上には置いてくれていないはずだ

床に転がる自分の体を見せるなんて猟奇的発想があるなら別だけれど。

そもそも、そこまで来たら陽乃はさすがに死んでいる

病院ではなく寄宿舎の自室と言うことから、大社でもない。

つまり、元から考えるまでもなく助け起こしてくれた人物は一人しかいないのだ

今は目を覚ましたことも呼び出すことも自力では難しいが。

陽乃「ぅ……ぃ……ぅ……げほっ……げほっぁっ……ぅぶっ……ぉぇえ゛……」

どうにか呼ぼうとして、喉奥を掠めた空気に咳き込む

渇いた喉がそれ傷つけられて、血が滲んで詰まり、吐血して……そのまま嘔吐する

痛めた喉を通っていく胃酸の刺激に胸やけがして、胸の奥の痒みが生まれて不快感に満ちる

陽乃「ぃぅ……」

死ぬ。

このまま死んでしまうのではないかとさえ思うほどの辛さ

それでもいい

見つけた人に、なんて惨めな姿だと嘲笑されるような死に様でも

この苦しみから解放して貰えるのならそれでもいいかもしれないとさえ、少し思う

血と胃液の混じり合った異臭のする布団

こんな状況では普通、眠れるはずもないのに眠れそうなのは神社での野宿のたまものだろうか。

それとも、それほど憔悴しきっているか。


1、無理に動く
2、無理に声を出す
3、眠る


↓2

※1~3 判定有


522以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/16(火) 21:05:40.28pPLYJs5S0 (1/1)

3


523以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/16(火) 21:06:15.27u4BkQIP6O (2/2)

3


524 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 21:19:07.42hcbXZnOQo (5/11)


01~10 杏
11~20 球子
21~30 伊邪那美命
31~40 過去
41~50 九尾
51~60 友奈
61~70 若葉
71~80 大社
81~90 九尾
91~00 千景


↓1のコンマ


525以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/16(火) 21:22:43.87Z3ZK3xwQO (1/1)




526 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 22:02:14.98hcbXZnOQo (6/11)


陽乃「ぅ……っ……」

眠るというよりは、意識の消失に近い眠気

だんだんと瞼が降りていく中に

ふと、どこからともなく人型の何かが映りこむ

九尾「主様、眠るのかや?」

陽乃「ぁ……っ」

九尾「ふむ……」

気を失う前に聞いた女性の声とは違って

良く聞いた声

これは、九尾の声だ

九尾「妾と違って、かの神は容赦がないのう」

頬に、大きな手が触れる

優しい手だ

冷たくない、人肌の温かみを感じる手

九尾「しばし休むとよい」

陽乃「っ……」

九尾の指が口元を拭う

鼻の部分にもその細長い指先が走って

血の味とにおいが消えていく


527 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 22:43:41.41hcbXZnOQo (7/11)


九尾の手は、

顔から首、胸、腹部……と、ゆっくり下へと下がっていく

九尾「……」

九尾の手が触れた部分は、どうしてだか感覚が戻ってくる

鋭い痛みの後に、鈍い痛み

そうして、痛みがそのまま消える

九尾「祟りが深いのう……」

陽乃「ゅ……うび……」

九尾「かの神は可能な限り呼ぶでないぞ」

陽乃「っ……ぅ、ん……」

九尾「もっとも……」

そう、もっとも

かの神、伊邪那美命は陽乃の許可もなく

なにより、九尾が前面に出ていたのもお構いなしに塗りつぶす形で表へと表れた

それだけ力が強いということになる

分かっていたことだが、余りにも凶悪だ

一番の問題は " かの神は陽乃の生死に興味がない " ことだ

そしてもう一つ

九尾程度ではまるで防波堤になっていなかったこと

神と妖

当然なのかもしれないが、力量差は圧倒的だ





528 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 23:25:40.73hcbXZnOQo (8/11)


九尾「こんなものかのう」

陽乃の全身を通して撫でた九尾は、静かに手を引く

苦しそうなうめき声を漏らすばかりだった陽乃は、穏やかに寝息を立てている

身体の外側に問題はない

だが、中身がズタボロだ

無理矢理に何かをねじ込んだかのように歪になってしまっている

痛みを含めた感覚を失うのも無理はない

それを、九尾の力でただ誤魔化し補っているだけ。

九尾の力だけではここまでだろうか。

九尾も容赦なく人間を殺す

だがそれは、陽乃の害になる人間に限定される

そして、陽乃が望まない場合は特例を除いて手を引く

しかし、かの神は違う

陽乃の害になろうとなるまいと、今の限られた世界の人間すべてを滅ぼす

そして、陽乃が望まなくともそれを決行する

しかし、陽乃が力尽きたことで今回ばかりは運よく事なきを得た

かの神が満足に人を殺めるには、陽乃はまだ人間味が濃いのだろう

九尾「主も神の端くれならば、主様の体くらい癒してみよ」

九尾は静かに告げて、目を閉じる

陽乃は神に愛されている

だから、生命力を高める神もいるのだ

生まれる前から、神聖なものに触れてきたからこその寵愛

だがそれは間違いなく、呪いだ


529 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 23:33:59.36hcbXZnOQo (9/11)


1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流有(余計なことしないで、活動、大人を殴る、陽乃の行き先)
・ 伊予島杏 : 交流有(失う覚悟、余計なことしないで、活動、大人を殴る、陽乃の行き先)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(眠る)

√ 2018/08/07 まとめ

 乃木若葉との絆 62→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 52→52(普通)
 土居球子との絆 51→53(普通) ※
 伊予島杏との絆 58→60(普通) ※
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 63→63(普通)

※陽乃の評価・殺人を目撃


530 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 23:37:04.02hcbXZnOQo (10/11)


√ 2018年 8月8日目 朝:丸亀城(寄宿舎)

01~10 九尾
21~30 友奈
41~50 若葉
81~90 大社

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※ぞろ目特殊


531以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/16(火) 23:40:47.51puei3vJoO (1/1)




532 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/16(火) 23:44:00.83hcbXZnOQo (11/11)


では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


533以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/16(火) 23:58:37.19QNMt/gJVO (1/1)


あの九尾すらどうにもならないとはとんでもない神様を覚醒させてしまったか…
それと何気に人間体の九尾久しぶりに出てきたけどこちらの方がやっぱり馴染みがあるな


534以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/17(水) 01:33:58.83tLGsWPbaO (1/2)


ここにきて話がどう転ぶかわからなくなってきたな


535 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/17(水) 20:08:35.768J6MLlino (1/10)

では少しだけ


536 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/17(水) 20:11:58.058J6MLlino (2/10)

√ 2018年 8月8日目 朝:丸亀城(寄宿舎)


陽乃「っ……」

目を覚ますと、伊予島家の戻っているなんてことも

ここ数日がただの夢で、まだ病院に監禁されているわけでもない景色が見える

約三年間過ごしてきた丸亀城に隣接して用意された寄宿舎の自室

陽乃「あれ……」

頭が動かせる

体も起こせるし、手足の感覚もしっかりとしている

吐き捨てた血に塗れているはずの布団も綺麗に真っ白で、

赤黒く汚れているはずの床まで綺麗になっている

陽乃「夢……じゃ、無いわよね?」

気を失うまでの出来事の記憶ははっきりとしている

九尾が悪戯したわけではないのなら、あれは現実に起こったことのはずだ

九尾を押しのけ、陽乃を瞬く間に衰弱させてしまうほどの力を持つ、伊邪那美命

あの感覚は忘れらない

あの感覚が、まやかしであるはずがない

陽乃「はぁ……」

どっちにしろだ。と、陽乃は溜息をつく

人を殺したことも、

その現場と誹謗中傷を杏たちに知られてしまった現実は変わらない


537以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/17(水) 20:11:59.55W4oF1bDPO (1/2)

かもーん


538 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/17(水) 20:27:43.328J6MLlino (3/10)


陽乃が出来ることは限られている

まず、勇者や大社に見つかるわけにはいかない

杏や球子ならどうにかなるかもしれないが

若葉や友奈は危害を加えなくとも、大社に引き渡そうとするはずだ

千景にいたっては殺しに来てもおかしくない

大社に引き渡されたら最後

死ぬまで監禁か、モルモットか、処刑か

少なくとも良い結果は得られない

しかも、そのいずれにせよ、

人間は滅ぶべきだというかの神は陽乃の障害を消し去り、人類を滅亡させる可能性が非常に高い

それだけは避けなければならない

――いいや、避ける必要があるのだろうか?

こんな世界なんて、いっそ滅んでしまったらどうだろうか

陽乃「………」

なんて、考えてしまう

幸いにも、力を使い果たして死に至る結果が目に見えているため、

誰もいなくなった世界に独りぼっちなんてことにはならない

陽乃「幸い……? 幸い、幸い……何を馬鹿な……」


1、諏訪遠征に向かう
2、九尾を呼ぶ
3、伊邪那美命を呼ぶ
4、街に出る

↓2


539以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/17(水) 20:30:11.71W4oF1bDPO (2/2)

1


540以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/17(水) 20:35:17.40Bp7HrvT00 (1/3)

1


541 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/17(水) 20:56:37.438J6MLlino (4/10)


こうなったら、仕方がない

勇者達の装束のアップデートは確認できていないけれど

諏訪の遠征に出てしまうべきだろう

いつまでも寄宿舎には居られない

もちろん、大社の目がある四国にだっていられない

久遠陽乃が本当に人殺しであるという話は、大社に関わらず民衆に広がっていく

今でも酷い噂は出回っているけれど

確たる証拠のあるそれは、信憑性のある噂……つまりは真実として知られることになる

そうなっていく以上

陽乃は寄宿舎の外だって自由にはいられない

だから、遠征に行く

人殺しである陽乃を大社が諏訪遠征のメンバーとして考えるとはとても思えないし

そうでなくとも、

行方不明である危険人物を野放しにしたまま、捨て駒として想定されている諏訪遠征に人員を割くはずがないからだ

杏と球子には悪いが

二人を待っている余裕は陽乃には残されていないのだ


542 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/17(水) 21:28:23.818J6MLlino (5/10)


陽乃「遠征に行くわ」

『主様、よいのか?』

陽乃「神託を出したとして……最短でも1日をこっちで生きていかないといけない」

そのたった一日を無事過ごせるとは限らない

神託があっても、久遠陽乃と言う危険分子を放置するわけがないので

場合によってはだとしても放置するという決定が下されるだろう

そうなれば、本当に救いようがない

そんな判断は聞きたくもない

『単独で、良いのかや?』

陽乃「私が死ぬって?」

『痛みはなくとも、先の祟りの残滓はいまだに抜けきっておらぬ。無理をすれば死ぬぞ』

陽乃「こっちにいたら殺されるわよ」

それも、人間に。

可能性は低いが、無いとは言い切れない。

『神託も無しに、往くのじゃな?』

陽乃「ん……」

神託がなければ勇者は動けない

杏と球子は抜け出すかもしれないが、

二人が今から行く壁のところにいなければ連れてはいけない

そうなれば、一人だ。


1、神託を出す
2、神託を出さない

↓2

※出す場合、遠征実行判定
※出さない場合、合流判定


543以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/17(水) 21:33:34.71Bp7HrvT00 (2/3)

1


544以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/17(水) 21:36:26.84h6umhvitO (1/1)

1


545 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/17(水) 22:05:05.628J6MLlino (6/10)


陽乃「ん……分かったわ。神託を出しましょ」

『よいのか?』

陽乃「もう……そうやって悩ませるの止めて」

『くははっ良いではないかよいではないか』

心から楽しんでいるかのような声

上機嫌な明るさに陽乃は眉を顰めて首を振る

溜息をついて、ベッドに座る

足元の影は狐の形をしたままだ

『神託を出すのは良いが、全員出せとは言わぬほうが良かろう』

陽乃「そうね。全員出せって言うと……私のせいで却下されるかもしれない」

『ならば人数は指定せぬほうが良かろうな……ふむ。神託らしく、あやふやに兆しを示そう』

陽乃「調整、どこまでできるの?」

『夢に干渉する程度じゃ。無だろうと有だろうと自由じゃぞ』

陽乃「なるほど……内容は任せるわ。諏訪の遠征に出られるようにして頂戴」

『うむ』

影が崩れて消える

神託を出した当日に即行動に移ってくれればいいのだが

きっと、そう簡単にはいかないだろうから

陽乃「最大、1日ね」

待てるのは、明日の朝までだ


546 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/17(水) 22:21:33.838J6MLlino (7/10)


陽乃「はぁ……」

『何じゃ主様』

陽乃「っ……まだいたの?」

『妾は常におるぞ』

陽乃「神託は出してくれた?」

『うむ。兆しを与えるくらいこの場からでも容易じゃ』

なにしろ、寵愛を授けた上里ひなたが向こうにいる

ひなたを中継地点として力を拡散させれば、

向こう一帯に神託を感知させるくらい容易いのだという

陽乃「上里さんに影響はないのよね?」

『通常に人間よりは感度が上がる程度じゃ。問題はなかろう』

陽乃「そう……神託が伝わったかどうかもすぐに分かる?」

『無論』

陽乃「なら、どうなったか結果をすぐに教えて貰っていい? 決行でも却下でも保留でも」

『良かろう』

決行なら良し

保留なら、明日の朝以降になる場合は無視

却下だったら……

それはその時だ


547 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/17(水) 22:26:18.438J6MLlino (8/10)


↓1コンマ判定 一桁

0 00 陽乃が見つかる
1、7、4 決行
3、6、2 保留
5、9、8 却下


※保留の場合、二桁目の日数分保留
※結構の場合、二桁目偶数で即日 奇数で2日以上先


548以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/17(水) 22:28:51.56Bp7HrvT00 (3/3)




549 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/17(水) 22:42:23.648J6MLlino (9/10)


√ 2018年 8月8日目 昼:丸亀城(寄宿舎)

01~10 千景
21~30 友奈
41~50 若葉
81~90 大社

↓1のコンマ

※遭遇判定
※それ以外は通常


550以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/17(水) 22:42:38.58tLGsWPbaO (2/2)




551 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/17(水) 22:46:28.388J6MLlino (10/10)

では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


大社は諏訪遠征を保留しています(5日後までに決定)


552以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/17(水) 22:52:20.88H5MkI+e/O (1/1)


現状だと四国にはもう居場所がないし諏訪に関してもあまりモタモタしてる余裕もないしで早めに行きたいけど…
杏たちは今頃どんな反応してるのか気になるな


553以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/18(木) 00:18:10.33XTEi82qoO (1/1)


もう保留の結果待たずに行くかもしれないだけど杏たちついてきてくれるかなあ


554 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 19:57:28.88QoCov0zMo (1/12)


では少しだけ


555 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 19:58:11.22QoCov0zMo (2/12)


√ 2018年 8月8日目 昼:丸亀城(寄宿舎)


お昼にもなれば、流石に神託が下ったことは大社に広がり、

それについての会議も執り行われることになる

幸いにも、巫女の中でも特に秀でているのがひなたと言うこともあって

一般の巫女には伝わらないような内容も、ひなたにだけは伝わってきたりもする

そのせいで力を通して九尾に伝わり、九尾から陽乃へと筒抜けになっていたりもするのだが。

陽乃と九尾を除けば、ひなたを含めても誰も知らないのだからどうしようもないのだろうけれど。

その結果、遠征の有無は5日後まで答えの先延ばしが行われると、陽乃へと伝えられた。

陽乃「……は?」

『5日後までには答えを出すそうじゃ』

陽乃「それは聞いたわ。どうして?」

『ふむ……』

1つ、諏訪は元々時間稼ぎとして考えられていたこと

1つ、諏訪まで行くには、勇者の経験が浅すぎること

1つ、諏訪襲撃後に、四国が襲撃を受けた場合に防衛出来ない可能性があること

1つ、久遠陽乃という危険人物が国内に留まっていること

理由としてはこんなものだと九尾は並び立てて、一息つく

言われれば確かにと納得する話ではある。

即時棄却とならず、保留となったのがむしろ運が良かったとさえ言える状況だ

『主様、言わずとも承知と思うが……人間どもは見捨てるつもりじゃぞ』

陽乃「ええ、分かってるわ……」



556 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 20:09:53.24QoCov0zMo (3/12)


大々的に神託が降りた以上、まったく聞く耳を持たないというのは

巫女はもちろん、神々に対しても非常に無礼なふるまいである

大社という組織が、それを進んで行うとは思えない

熟考したという体裁を整え、やはり状況的に送ることは出来ない。という判断になるだろう

もちろん、その逆に "ご神託なのだから遂行すべき" ということにならないとも限らない。

しかし、それでも今日明日に答えが出るはずがない

最低でも2日3日はかかるだろうし、5日後までと言うのならそれだけの時間を浪費する。

『小娘共を呼ぶのかや?』

陽乃「連絡手段がないし……」

それに、呼んだところで犠牲者を増やすだけになるかもしれない

あの二人は勇者だ

今は脆くても、いずれまともに戦えるようになる

その頃には、久遠陽のなんて化け物も討てるだけの力が備わっているかもしれない

なにより、この諏訪遠征は陽乃の我儘に様なものでしかなく、

本当に必要な行為ではないのだから。

ここで無理して死ぬのは、ただの犬死でしかない

なにより――

陽乃「私、あの二人の目の前で人を殺したのよ? そんな私が、付いてきてなんて言えるわけないじゃない」

『死して然るべき有象無象を殺めたところで、問題などあるまい』

陽乃「あなた達基準では。でしょう……私達は違うの」


557 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 20:21:14.37QoCov0zMo (4/12)


陽乃「それに、あなたの言う有象無象にとって、死ぬべき存在は私よ」

自分を名指しして、胸元に手をあてがう

人を一人殺したのに

多くの人にそれを見られ、より一層責め立てられる側に立たされたというのに

杏と球子

陽乃の友人だと言い張る二人の勇者の目の前でそれを行ってしまったというのに

心臓の音はまるで高鳴ったりしない

緊張も恐怖もなく平穏無事、まるで些末なことを語っているかのよう

でも少しだけ、痛みを感じる

陽乃「そんな私が、あの二人と一緒にいるのを見られるわけにはいかない」

『殺せばよい』

陽乃「馬鹿言わないで」

『不服なのじゃろう?』

陽乃「望んでたことだもの」

『妾に主様の戯言が通じるとでも』

陽乃「だとしてもよ」

俯く視線の先には狐を模した影が見える

そこに、九尾がいるのだ

陽乃「私の望んでた結果であることに違いない」

『抜かしおる』

陽乃「もう、裏切られるのも……手を伸ばされるのも嫌だから」


558 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 20:36:17.05QoCov0zMo (5/12)


あの二人は、本当に善良なのだろう

民衆曰く化け物である陽乃を友人とまでいうのだから。

裏に何かを秘めているのでなければ、馬鹿なだけだと思いたくなるほどに優しいのだ。

だが、その二人は人々の声を聞いた

陽乃に対して何を思い、抱き、行動しようとしたのかを知った

それに対しての陽乃の態度を目の当たりにし、果てには人を殺す瞬間までもをその目に焼き付けた

勇者が守るべき一般の人間を、陽乃は殺したのだ

杏と球子が勇者であることは、あの場の人々の誰もが知っている

その二人と陽乃が、今後行動を共にしていることを知られれば、

杏の家は多大な被害を被ることになるだろうし、もしかしたら球子の家だって被害を受けるかもしれない

今は勇敢に立ち向かい、蹴り飛ばされた勇者だと言われる程度かもしれないが

知られた後はもう、化け物の仲間に成り下がる

そうなったら取り返しはつかない

陽乃「独りが良いって、初めから言ってたことじゃない」

『よいのか?』

陽乃「いいの。これで」

『一人で往くのかや?』

陽乃「そうね……向こうで合流しなかったら。一人になる」


1、遠征に行く
2、明日の朝、出発 ※9日目朝
3、1日待つ     ※9日目昼

↓2


※1 合流判定1回
※2 合流判定3回 + 大社(千景・若葉・友奈)遭遇判定
※3 合流判定4回 + 大社(千景・若葉・友奈)遭遇判定
※大社遭遇の場合、判定により戦闘


559以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/18(木) 20:38:20.15JDCxj5WHO (1/1)

2


560以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/18(木) 20:41:52.64gPjknOjEO (1/1)

2


561 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 21:07:00.31QoCov0zMo (6/12)


陽乃「出発は明日の朝にするわ」

『見つかるやもしれぬが』

陽乃「まさか……こんな場所で待ちぼうけるつもりなんて毛頭ない」

寄宿舎は真っ先に大社が詰めかけてきてもおかしくない場所だ

昨日の今日でまだ人が来ていないこと自体奇跡だと言える

そんな場所に、いつまでもいられない

神社……は、もう無理だ

一度、あの場所が潜伏地だと晒してしまったのだから

捜索となればすぐに人が来る

瀬戸大橋の方、壁のところで待機が妥当だろう

陽乃「また野宿になるかもしれないけど……廃屋くらいはあるはずだし」

廃屋だろうと、あの神社よりはマシだ

『見つかれば厄介なことになるぞ』

陽乃「ええ」

『くふふふっそうか……ならば妾は何も言わぬ』

好きにするがいい。と、

九尾は喉を鳴らしながら笑った


562 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 21:27:19.78QoCov0zMo (7/12)


陽乃「………」

杏と球子は陽乃が遠征に行こうとしているのは知っている

陽乃がたとえ一人であろうと

遠征に向かう意思があるということも

ただ、杏には最低でも三日後と言ってある

そのまま考えているなら、

杏たちが向こうに行くのは明後日

特に約束の場所を決めたわけでもないし、

時間だって決めてもいない

合流する可能性は限りなく低いと言っていいだろう

いや、しない方が良い

したところで、二人が以前のように協力関係にあるとは限らないのだから。

場合によっては、その場で戦いになることもある。

陽乃「っ……」

いずれにしても、ハイリスクだ

最悪の展開でさえなければ……どうにかなるが。

陽乃「来ないで、くれると良いのだけど」


563 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 21:39:03.05QoCov0zMo (8/12)


15~24 大社
58~67 若葉
83~92 友奈

↓1のコンマ

※ぞろ目 千景
※それ以外は通常


564以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/18(木) 21:41:23.59M2X/2sudO (1/3)




565 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 22:00:30.83QoCov0zMo (9/12)


外を駆ける足音が聞こえた。

まだここにいても問題が無かったころに何度も聞いた音

鍛練に努めているそれは、若葉の――

陽乃「あ……」

違う。

足音は間違いなく若葉のものだ

しかし、それはいつも聞いていた走り込みではなく

もっと、慌ただしい

その音は陽乃のいる部屋の前で途絶えると、

ドアノブが音を立てる

ドアの鍵をかけているおかげで、一度で入ってくることはなかったが、

しかし、若葉はなぜか合鍵を使って容易く侵入してきた

若葉「っ……」

陽乃「久しぶりね」

窓から逃げ出すことも考えたが、

そうしたとして、千景たちに見つかる可能性がないとは言えない

だったら、まだ話し合う余地のある若葉と対峙したほうが楽だと考えたのだ


566 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 22:10:25.06QoCov0zMo (10/12)


若葉「ここに、いたのか」

陽乃「いると思ったから来たんでしょう?」

若葉「半信半疑だった」

昨日、なぜだか背筋が凍る思いをした寄宿舎

ドアの前にまで来て一度は開けようかと思ったが、開けられずにいたが

今日は開けるしかなかった

若葉「……指示が来たんだ。久遠陽乃を見つけろ。と」

声を絞り出して、

血が滲みそうなほど強く拳を握る

陽乃「それで?」

若葉「それで、だと……?」

陽乃「ええ。どんな話が来たかってことくらい、分かってるわ」

若葉「くっ……っ……なぜだ! なぜなんだッ!」

陽乃「………」

若葉「なにがあったんだ! どうして……人を殺したんだ」

陽乃「大社? それとも土居さん達?」

若葉「そんなことどうだって――」

陽乃「土居さん達でしょ……じゃないと、疑いから入らないのがおかしいもの」

若葉「茶化さないでくれ!」


567 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 22:54:12.45QoCov0zMo (11/12)


若葉は、勇者としての装束をすでに着込んでいる

青を基調としていて、清楚さを感じさせる装束

左の腰に鞘を構え、まだ納めたままの刀の柄をゆっくり握る

若葉「頼む……怪我をさせたくない」

陽乃「良いの? 人を殺した私に手加減なんて」

若葉「迫害を受けた件は聞いた」

若葉は、大社から陽乃捜索の命令を受けた

しかも、生死を問わないというのだから相当な何かがあったのは明白

すぐに杏と球子に連絡を取って何があったのかを聞いたのだ

若葉「最悪の場合、伊予島の両親まで被害に遭いそうだったのも聞いた。だとしても……殺す必要なんて」

相手が武器になるものを持っているのも聞いている

しかし、それでも聞かずにはいられなかった

若葉「頼む……本気になりたくない」

陽乃「……馬鹿な人」



1、窓から逃げる
2、生かしておく価値がなかった。それだけよ
3、武器が有効だなんて、思われたら面倒だもの
4、だって、私は化け物だもの
5、いいわ。その装束の性能、テストしましょう

↓2


568以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/18(木) 22:55:15.50M2X/2sudO (2/3)

1


569以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/18(木) 22:57:07.579bPO1skl0 (1/1)

3


570 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/18(木) 23:01:10.06QoCov0zMo (12/12)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


571以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/18(木) 23:11:43.25M2X/2sudO (3/3)


若葉の装束の初登場がこんな形になるとは…
立場上見逃す訳にはいかないし辛いだろうなぁ


572以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/19(金) 00:26:43.53RM8QrF/kO (1/1)


マジでどうなってしまうのか……


573 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/19(金) 20:55:16.286J3Qg0q7o (1/10)


では少しだけ


574 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/19(金) 20:55:48.666J3Qg0q7o (2/10)


陽乃「武器が有効だなんて、思われたら面倒だもの」

若葉「武器なんて、久遠さんには何の意味もないじゃないか」

陽乃「そうね」

若葉「私たちの……いや、神々の力を宿したものでなければ、久遠さんには傷一つつけられない。だろう?」

陽乃「そうよ。化け物らしく、私の体は丈夫だわ」

簡単にに血反吐を吐くし

昨日なんて、途中で失神したうえに今朝までまともに話すことさえできない状態だったけれど。

それはあくまで、自滅

自分よりも一回り大きい大人から暴力を振るわれたところで

今の陽乃には、痛くもかゆくもない

陽乃「でも、武器の一つが通用しなければ二つになるし、刀が駄目なら銃にもなるでしょ?」

若葉「だからって……」

陽乃「抵抗する意思がある限り終わらない。だから、その心を折る必要があった」

自分達では不可能なのだと

自分達ではただ殺されるだけなのだと

そう思わせてしまうのが武器が通用しないと思わせるうえで一番、手っ取り早い

陽乃「相手が武器を持って私が怖気づいたら、みんなが武器を手にするからそれは出来ない」

若葉「だろう、な」

陽乃「武器を持った人をただ打倒しても、武器の数や種類が変わるだけ」

若葉「………」

陽乃「だから……私言ったのよ? それを手にしたら手加減は出来ないって、殺すって」

でも、彼は退かなかった

蛮勇にも挑み、そうして陽乃が討った

陽乃「もう、笑うしかなかった」


575以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2021/02/19(金) 21:03:23.81P62HRT/7O (1/3)

陽乃さん…


576 ◆QhFDI08WfRWv2021/02/19(金) 21:03:30.396J3Qg0q7o (3/10)


陽乃「私の武器はこの拳1つ。分かるでしょう? この手で、人を1人殺したのよ」

若葉「っ……でも、殺す気はなかったんだろう? 事故だったんだろう?」

陽乃「殺せるだけの力を自覚しておきながら、手を抜かなかったんだもの。それはもう、故意だわ」

若葉は目を見開き、

嘲笑交じりに自分の右手で拳を作って見せる陽乃から足元へと視線を下げる

怒りか、悲しみか

若葉に握られる刀がその体の震えによって微かな音を立てる

それはそうだろう

他人がどう言おうと、勇者だと思っていた人が人を1人殺したのだから失望もする

陽乃「人質を持ち出されても面倒だもの。あの瞬間は殺すしかなかったのよ」

若葉「人質は、有効だからか?」

陽乃「まさか」

若葉「土居や伊予島だけでなく、あの場には伊予島の両親がいた……それを見過ごせる人じゃないはずだ」

陽乃「関係ない。赤の他人だし」

若葉「久遠さん!」

陽乃が何を思い、そうしたのか

分かっているのは本人とその身に宿している九尾くらいだろう

しかし、それがどんなものであれ、いかなる理由であれ

陽乃が人を殺したという事実に変わりはなく、それを多くの人に目撃されてしまったことも変わらない

そこから派生した久遠陽乃を討てという命令もまた、どうにもならない

若葉「頼む……大人しく私と一緒に来てくれ」