1Mii2020/12/13(日) 04:46:599GX1QhWw (1/1)

このスレは

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」 【前々スレ】

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですね、是非!」【前スレ】

に引き続く続編となります。前々スレ、前スレをご覧になられていない方はそちらを先にどうぞ。
過去作を読まれていないと把握困難な設定、独自解釈が多々あります。

遅い進行のうえに寄り道万歳のスレですが、引き続き頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。

ラナ「たったーん♪たかたかた~ん♪
  そのほか、いくつか注意点をお知らせするよー。

     ・スレ主の、基礎体力面での戦闘能力解釈は、ざっくり言うと…
      キャラとしての登場時期の早さと、登場回数の多さで大方決まるからね!

      マリオ、クッパ、リンクを『3強』と表現してるけど、たとえばクッパVSガノンドロフだと、
      クッパが欠伸しながらパンチを繰り出すだけでガノンドロフを一撃粉砕できるくらいの力量差があるよ!
      パーティゲームに参加しないから仕方ないってことで、うん。敵があっさりやられても嘆かないで…。
      リンクとの差が付いた理由は、前々スレを読めばわかる、のかなあ…?

     ・前々スレ・前スレ同様、いろんなパロディ、メタ発言が散りばめられてるよ!
      キャラが自分たちの背景情報を活用する…みたいなご都合主義が白けるなら
      急がず慌てず別のスレに移って、このスレのことは忘れよう!
      
     ・ようやくスマブラ編が完結して…マリオカート編にちょっとずつ戻っていくんだって!よかったよかった!」

シア(…………ちょっとずつ?)


2Mii2021/01/31(日) 13:37:412O82Dg8o (1/24)

~第34区~

リンク「…………まずいぞ。敵、深追いし過ぎた」

区をいくつか移動してまで、連戦、激戦、大激戦。
ありったけのレベルの暴力で押して、伸して、斬りまくって。
余りにも血生臭いときは、ファイアロッドで消毒した気になったり。
…うーむ、効果あるんだろうか。

ともかく、俺が頑張れば頑張るだけ他がきっと楽になる…そんな思いで。
機動力命で、四方八方、どこへでも。



…その結果。

敵は敵で、最大脅威のひとつとみなし、俺にこぞって集まってきた。
速度を落とすまいと突っ込めば、ますます敵の密度は高くなる。

飛んでくる矢が、6本。
1本目を俊足で避け、2本目を屈んでやり過ごし、
3本目と4本目は剣で払って、5本目と6本目は…咄嗟に盾を構えて。



――――やりにくいっ!

正直、威力のない矢だ。素手でぱしっと掴めるくらいの。刺さっても痛くないくらいの。
絶え間なく、休む間もなく迫り来るが、自分の強さはよーく分かってる。


3Mii2021/01/31(日) 13:41:372O82Dg8o (2/24)

問題は、庇うべきみんなの耐久。

俺が背負うは、石化したままのルキナ、ルフレ。
傍には石化したパルテナに、彼女を背負った状態でますます疲労の度合いを強めるピット。

ピットには悪いが、敵の掃討の9割9分は俺の役目になっている。
飛翔の奇跡があることによる俺の機動力の向上と、ピットを庇う労力との天秤は…
正直言って、トントンか、あるいは…。

万が一、ピットや石化した奴に当たったら、無傷で済む保証がない。
まさか試すわけにもいかない。おかげで大げさに、かつ慎重に動かざるを得ない。

まさに先ほど…魔力開放で調子こいてたら、ピットのカバーをし損ねた。
ピットが躱せず…もとい、パルテナに当たろうとするビームを身を挺して食らって、
悶絶すること、10秒あまり。

…俺には、てんで威力のないようにみえたビーム。
常日頃のピットなら、易々と受け流せるビーム。それなのに…だ。

また、攻撃が、飛んできた。
今度は炎に、電気に、よくわからない空気の渦みたいなものに…いろいろと。

リンク「やべっ!!…困った時の大回転斬りぃ――――!!」ズバアアアァァァ!!



冗談ではなく、疲労が祟ってきた。


4Mii2021/01/31(日) 13:44:352O82Dg8o (3/24)

毎回というわけではないが――――
逃げ遅れ、石化したまま動きを止めた住人が、たまに脇道にいたりする。
顔をちらっと伺えば、住んで長いおかげで…知ってる顔が大半。唇をきつく噛む。

敵の攻撃ライン上に1人でもいたならば、俺にとって「回避」の選択肢はない。
最善は、攻撃発動前に敵をぶっ叩いて終わらせる。
最低でも、間に入って留まって、攻撃を消し去るべく活動する。



…だいたいは最善行動を繰り返せているが――――

リンク「1回ミスると俺にとっての敗北扱い、なんだよ、なあっ…!」



俺がいる。敵がぞろぞろと現れる。
俺、なぎ倒す。範囲攻撃に乏しくて、ときたま撃ち漏らす。
倒し損ねた敵が…大声で叫んで、咆哮して味方を集める。敵がぞろぞろと現れる。
…そんなことを繰り返すうち、移動する敵が一般人と出くわす。仕留める動作に入る。
俺、ブースト掛けてなんとか瞬殺。流石にオーバーワークで体力を削られる。
敵がぞろぞろと現れる…………。

――背負ったルキナたちを繋ぎとめている紐が緩んで、冷や汗かいて結び直す。

――すこし離れたところに飛竜が旋回しているのを見て、まさかあちらにも危険が…!と、
――分不相応に救いの手、殲滅のエリアを伸ばす。

…………いくらなんでも、分かる。こりゃ、ジリ貧だ。


5Mii2021/01/31(日) 13:48:582O82Dg8o (4/24)

もちろん、ペース配分考えて…なんてやってたら、それこそ見殺しにする可能性は高い。
俺の行動指針は多分間違っちゃいないし、司令部も期待している通りの行動だろう。
…だが。いくらなんでも、1人で背負い込みすぎた、ということにようやく気づいた。

リンク「…………こんなヤツら相手に、なっさけねえ…!」



突然、冷気が顔面に襲い来る。

リンク「冷たっ!?油断するなよ、俺っ!
   幾らダメージを受けないからって――――ゴホッ!ゴホッ!

   ………………マジ、かよ」



攻撃が当たったことはこの際どうでもいいが。
割と激しくせき込むほど、口内や肺に入った冷気によってダメージを受けた…!?
おいおい、俺の耐久…いや、ステータス全般…案外下がってきてるのか!?



リンクの 全ステータスが 少し 下がった!▼

リンク「ぐっ――――だあぁ、一杯食わされたっ!」



地団駄踏んでる暇じゃない!精神動揺は敵の思うツボだっつーに!


6Mii2021/01/31(日) 13:52:432O82Dg8o (5/24)

…そもそも、ぶっ通しで戦い続けて、一体何時間過ぎたのか。
スタミナが知らず知らずのうちに結構減ったのは当たり前だ。

とりあえず、とりあえず…何をする?
休むか?その間に誰かが被害を受けたらどうする?

リンク「――――っとお!!」バシッ!

ハッと気付いて横っ飛び。
好奇心か弑逆心かは知らないが、石化した人に向けて、もろに斧を振り上げている屍兵。
汗をドバッと噴き出させて、なんとかガキィンと打ち負かす。

リンク「クソッ…やっぱり休むなんてできないじゃねーか!」

さきほど、トゥーンゼルダが少し持ち直した感がある。
せっかく、司令部が再スタートを切ろうとしているのに――



リンク「今更援軍を要請して水を差すなんて野暮だしなあ――――」



…と、そこへ。



リュカ「どの口がそんなこと言ってるのさっ!」バッ!

ピット「うわっ!突然だなあ、敵かと思ったっ!心臓に、悪いよー!…はぁ、はぁ…」ビクッ


7Mii2021/01/31(日) 13:56:372O82Dg8o (6/24)

リンク「うおっ!?リュカじゃないか!わざわざこのあたりで戦ってたのかよ。
   巻き添え食うからやめとけって!ピットを気に掛けるので精一杯だぞ、俺!」


…ピットが小声で、「あ、はい。気に掛けられているピットです」と呟いて
情けなさそうな面持ちをしていたが、あえて聞こえなかったことにする。



リュカ「そんなわけないじゃないか!聞こえてくる戦闘音から察するに、
   リンクの調子があまりにもあんまりだったもんで、わざわざ『寄り道して駆けつけた』の!もー!」

リンク「…へ?戦闘音?…いや、いやいや!
   傲慢に聞こえたらすまないが、お前には俺の救援は荷が重いと思うぞ!
   リュカクラスだと、相当に戦闘能力が下がってるだろ!
   ピットがマシに見えるほどの低下が起きてるはずだ!」

レベルが低いほど、OFF波動の影響を受けやすく…
元々低かったステータスが、更にとんでもなく下がる。ホント厄介な魔法だよ。





だが、知ったことかとリュカは息まく。
…いや、すぐに落ち着いた感じになって、ため息ひとつ。


8Mii2021/01/31(日) 14:02:142O82Dg8o (7/24)

リュカ「…ねえ、ピーチのご高説はあんまり頭に残ってないけどさ。
   OFF波動って、絶望や諦めの感情をひたすら押し付けてくる…魔法、なんだよね?」

リンク「そうらしいな?…おっと!くっちゃべってる暇も与えてくれなさそうだっ!アイスロッド!」ダッ!!

リュカとの会話をぶった切り、新たに出現した敵をカチコチに。
…ぬ、後続もぞろぞろと…!ええい、このまま冷気を放出、放出っ!!
まとめて氷の塊になっちまえ!…魔力切れには注意しないとな…!

放つ冷気とは裏腹に、体は汗だく。心拍数も上がり調子。とりあえず、リュカを安全な所に連れて行く策を…!

リュカ「……………………そっかー、通りで」ペタペタ

ピット「……通りで…なに?」

リュカが、達観した様子で――自分の心臓やお腹のあたりを軽くさすっている。



リュカ「前回大会だと若干のトラウマ再発で割と慌てちゃってたけどさ。
   冷静になって、深呼吸して。目に入るもの、耳にするもの、噛みしめてみると。

   こんな絶望なら、前から何度か、見てきたから――――」



リュカの 全ステータスは ほとんど 下がっていない!▼

リュカ「――――僕に関しては、戦闘力の低下は。選手カード持ちじゃない事考慮しても、
   それほど気にしないでいいんじゃないかな。まあ、元々の戦闘力が当然ひっくいけどね」フッ


9Mii2021/01/31(日) 14:06:082O82Dg8o (8/24)

リンク「――」

ピット「――え」

リュカ「――――あ、ごめん!変に気を遣わせるつもりはなかったんだけど!」

リンク「遣うわ!」

リュカ「…こほん。僕が言いたかったのはね、ともかくね――――」

――――リュカが口をモゴモゴさせていたら、またしてもっ!
――――足音に気付けたのは僥倖、ガバッと踵を返して、迫り来る後ろの狂戦士へ!
――――狂ったところで、所詮俺の敵なんかじゃないぞっ!



ぐらり。

咄嗟の動き方をしたのが災いして、紐がまたもや緩んでいたのも手伝って、

背負っていた石像2人が、バランスを崩して背から離れた。

ハイスピードの俺から多大な速度を受け取って、慣性に従い宙に舞う。



――――はあああああっ!?

最優先事項、地面への衝突の回避と衝撃吸収――――っ!!
自らの体をクッションに挟む感じで、地面に必死の思いで滑り込む――――!


10Mii2021/01/31(日) 14:10:042O82Dg8o (9/24)

間に合う。
ああ、間に合ったとも。
敵を「そっちのけ」にして一目散に駆けた甲斐があったものだ。





それで。

俺を目標にして飛翔させたと思われる、
石化ルフレの眼前に迫る、ボムのような爆発物は如何とするか。



やばい。

やばいやばい!

やばいぞ、これはっ!!?



そりゃ、それほどの威力は持ち合わせていないかもしれないが――――
そんな淡い期待で放置して、最悪なことになったらどうする!?
目を見開いたまま、世界がスローモーションに過ぎていく。


11Mii2021/01/31(日) 14:14:172O82Dg8o (10/24)




リュカ「敵の真似っこっ!!『ディフェアップΩ』に『シールドΩ』―――!!」パアアアアァァァ!!



味方の 防御力が 上がった!
敵の 物理攻撃を 軽減!▼



九死に一生。
ぽすっという小爆発の余韻を残し、俺たちは守られた。



リンク「さ…サンキューな、リュカっ!」

ピット「そっか…!超能力作用だから空間魔法制限に引っ掛からないのか!
   思いっきり空間にクッションを作ってるように見えるけど!」





リュカ「…この、大馬鹿者がー!!」

リンク「!?」


12Mii2021/01/31(日) 14:17:082O82Dg8o (11/24)

リュカ「酷いよ!見てられないよっ!
   結局『僕なんかに』助けてもらってるじゃん!3強のくせに!
   何勝手に調子を崩してるのさ!

   僕が言いたかったこと、戦闘において大事なことは――――
   そう、リズムを崩さないこと!」

リンク「…リズ、ム?」

リュカ「苦境でも逆境でも、自分のペースを、行動スタイルを維持する!
   焦らない、心を揺らされない、惑わされない!
   
   ――――よーく見ててよ!それっ!」

リュカが、颯爽と新たな敵に向かっていく。
その速度は、決して速くない。なんとも、ノロい。



リュカ「ほりゃっ!こっちだよー!」

だが。ステップを踏んで、最小限の動きで敵を避けて。

リュカ「えい!やー!とー!それ!」

――1HIT! ――2HIT!  ――3HIT!  ――4HIT!



小刻みに、確実に、攻撃を重ねていく。


13Mii2021/01/31(日) 14:19:452O82Dg8o (12/24)

リュカ「腕が伸びてきたら引く!引かれたら突っ込む!
   飛び道具は最小限の動きで避ける!身を翻して裏をかく!
   そんでもって、確実に攻撃を当ててリズムをつかむ!」

――5HIT!  ――6HIT!  ――7HIT!  ――8HIT!

声を張り上げながら、リュカの怒涛の攻撃は止まらない。

リュカ「力の差は、しっかりとあるんだから!
   のらりくらりとかわせないはずが、いなせないはずが、ないんだよ!
   リズムにさえ乗れば、勢いも付くし余裕だってできるんだ!」

――9HIT!  ――10HIT!  ――11HIT!  ――12HIT!

リュカ「そりゃ、リンクほどになれば『とっさの判断』で対処できないこともないけどさ!
   とっさの判断そのものが要らない身のこなしを心がけた方がいいに決まってる!
   僕なんか、日ごろから『どうやったらコンボが繋がってくれるか』ばっかり考えてるよ!

   有利をちょこっとずつ確実に拡大、これが弱っちい僕の戦う知恵!」

――13HIT!  ――14HIT!  ――15HIT!  ――16HIT!

――FULL COMBO!

リンク「――――!!」


14Mii2021/01/31(日) 14:22:212O82Dg8o (13/24)

リュカ「リズムにノると、テンションもモチベーションも保ちやすいよ!
   さあさあ、リンクもやってみて!リズムにノって攻撃と防御だ!」

リンク「うえっ!?か、簡単に言ってくれるな…!
    え、リズム?リズムねえ…?」

リュカ「面倒だなあ、なんなら僕がビートを刻んであげようか?
    ハイ、ハイ、ハイ、ハイッ!」タンッ タンッ タンッ タンッ

リンク「子供か!そんな勝手に作られたふざけたリズムで動けるわけ――――」

リュカ「タッ、ター、ンッ、タラタラ、ター、ンッ!」

リンク「だからいきなりすぎる…え、ちょ、ほいっ!てりゃあ!こうか!?」



翼竜「GYAAAA!?」バサッ

屍兵「のわあぁぁ――!?」ザクッ

ボコブリン「ハァッ!?グァ――」グフッ



ヒット&アウェイ!
突進してくる敵たちを 引き寄せて
回転切りで 一網打尽にした!▼

リンク「……素っ頓狂すぎるだろぉ……あり?」ザッ! ザッ!


15Mii2021/01/31(日) 14:24:072O82Dg8o (14/24)

リュカ「次、来るよっ!
    ターッ、タタタ、タッ、タラー、タタタ、タッ、タラー!」

リンク「…引いて、割り込んで、盾、ほいさ!」



EXCELLENT!
ベストタイミングで盾カウンター!
魔力弾を完全反射して返り討ち!▼



リンク「――――――――」トン トン トン トン

リンク(斬る、引く、寄る、斬る、盾、引く、引く、盾、斬る、
   寄る、斬る、撃つ、寄る、斬る、盾、盾、引く、斬る――――)



ナイス!
――グッド!!
――――グレート!!!
――――――ワンダフル!!!!
――――――――エクセレント!!!!!



リンク「……なんか知らないが、本当に戦い方が改善されてるぞ!?
   マジで!?リズムってすげえ!」


16Mii2021/01/31(日) 14:27:302O82Dg8o (15/24)

リュカ「その感覚忘れないで!
    どうしても慣れないっていうんなら、ビートモードを解除してもいいけど…」

リンク「…ビートモードって何さ…コホン。
   もうちょっと騙されたと思ってやってみるよ。

   ――――なるほど、こんな感じか!
   なんとなくコツがつかめてきたぞ!恩に着る、リュカ!」

リュカ「へへ、どういたしまして。
    ――さってと、じゃあ僕も急ぎの用事があるんで…任せたよっ!」ダッ

リンク「ああ!忙しいとこ、悪かったな!ピット、もうちょい頑張るぞ!」

ピット「押忍!」





リュカ「全くもう、世話が焼けるんだから」タタタ


17Mii2021/01/31(日) 14:31:172O82Dg8o (16/24)

リュカ「おーーーーーい!!! 寄り道しててはぐれてごめ……」タタタタ





クマトラ「このアホが――!!」ボカッ

リュカ「」バタッ





クマトラ「大事な使命抱えてるときに急にいなくなるな!
     このアホ!救えないアホ!ダスターよりアホだぞお前!」

ダスター「なんか飛び火してきたぞ、おい」

リュカ「…痛いじゃないかっ!だからっていきなり殴る、普通!?
   誰かさんの口癖が移ってる移ってる!
   それに離脱するってちゃんと伝えたよ!」ムクッ

クマトラ「『ちょっとあっち行ってくる。すぐ追いかけるから…』
     これのどこが ちゃんと伝えた だよ!ふざけるな!」

リュカ「…………あー、うん。言われてみれば、それはそうかも」テヘ


18Mii2021/01/31(日) 14:33:492O82Dg8o (17/24)

クマトラ「いいか皆!オレたちの『役割』を、もう一回この場で言ってみろ!」ダッ!
    
テディ「……迫り来る雑魚敵を、俺がビシバシ伸せばいいんだろ?」ダダダ
   
ダスター「しつこい敵は、カベホチで張り付けて戦闘時間を節約してだな」タタタ

ジェフ「僕たちにはっ、荷がっ、重すぎる強敵はっ、
   弾数制限がある最新式『ペンシルロケット200』で対処してですねっ」タタタ

リュカ「そして、僕とクマトラのPSIで色々と攻守カバーしつつ…
   ポーラをしっかり護衛して目的地まで送り届けるのが『役割』、でしょ?
   プーがネスを見つけ出すのが遅くならないといいんだけど…」ダッ!

ポーラ「…お手数をお掛けします。さあ、急ぎましょう」ペコリ



クマトラ「…………」

クマトラ「……………………」

クマトラ「――――ちっがああああぁぁう!!」ウガー!

リュカ「いや合ってるよね!?完全解答だよね!?
   それがピーチ姫に前々から託されてた計画でしょ!?」


19Mii2021/01/31(日) 14:37:352O82Dg8o (18/24)

クマトラ「オレはっ!オレはっ!

    ――――役割に囚われるとか、

    ――――運命に縛られるとか、

    ――――エンディング投げっぱなしとか、

    そういう生き方は大ッ嫌いだあああああああぁぁぁ――――!!」

テディ「」

ジェフ「」

ポーラ「」

リュカ「さっきの質問した意味は!?」

ダスター「あと、その批判はこの場ではやめとこう。1~3、全部名作。
     エンディング完璧ならもっと名作だったのにとか言わない」

クマトラ「ともかくっ!固定概念に囚われず行動しようぜ!
    オレは鳥かごの中の鳥ではない、自由奔放な生き方を猛烈に欲している!

    あの、憧れの、デイジー姫のように!」

ポーラ「えぇと、それはちょっと…止めた方が、いいんじゃないでしょうか…
    ピーチ姫曰く、劇薬っぽいから…」

リュカ「どこをどう間違えてここまで吹っ切れちゃったんだろうね、クマトラ…」


20Mii2021/01/31(日) 14:40:262O82Dg8o (19/24)

ジェフ「あのですね、クマトラさん。
    集団にとって最大限の益や幸福を得るために、
    行動に無駄のない役割分担や分業を行うのは
    効率を考えても決して悪いことではないと思うので――」

クマトラ「つべこべ言わない!」

ジェフ「あ、はい。御免なさい」ビクッ

ポーラ「簡単に引き下がらないでよ!」



――――ウオオオオオオオオオオォォォ!!!!



リュカ「…駄弁ってる間に、そら来た!敵さんのお出ましだ!
   役割分担、大事だよ!ただでさえ僕たち弱いんだから!
   陣形ど真ん中のポーラをしっかり守りながら、テキパキきっちり処理!

   リーダー気取ってたんだから、PSIの準備はいいよね、クマトラっ!」パアアア

クマトラ「…………まぁな!任せとけ!」パアアア


21Mii2021/01/31(日) 14:43:542O82Dg8o (20/24)

~第29区~

喜び、涙を流し、抱き合う…住民、観光客たち。
再び石化の時限が迫り始めてはいる。悲しいことですが、まさに時間稼ぎには、なる。

石化が瞬く間に解かれた彼らを一瞥して。デイジー姫が、しっかり握り拳を作ります。

デイジー「よっしゃ!上手くいくみたいだね!
     じゃあ私は、この子たちを両脇に引っ提げて…
     各避難場所を巡回してくるよっ!それが私の役目だよね!」

ニンテン「わかってるじゃん。あとで『いちごとうふ』をあげよう」

デイジー「ナニソレまずそう…いらない…
     そういや、2人で担当箇所分担したほうが効率よくないの?」

アナ「それをして、PPが尽きた側自身が石化し始めると大変なので…
  そもそもPPがデイジー姫ありきの量ですから、あんまり意味がないです」

デイジー「なるほど。よし、さっそく行動開始だぁー!!」ダダダッ!!

ロイド「よろしく、頼みましたー!」



たちまちデイジー姫が、土煙と共に去っていきました。


22Mii2021/01/31(日) 14:45:472O82Dg8o (21/24)

ロゼッタ「――――」



今の私に、できる、こと。



ルカリオ「…はぁ。多少は肩の荷が下りたというところか」



今の私に、できる、こと。



とりあえず、早く中央に戻る。

デイジー姫のFP枯渇を見越して、FP回復アイテムを調達しておく。



――空間魔法が使えないからといって、無計画でいるのはよろしくありません!



頼もしすぎるファイター達によって、じきに、空間魔法が使えるようになる、はず。
そのときに何ができるか。ほんの少し落ち着いた頭で、考えておく。
それが、せめてもの償いと、いうものではないでしょうか。


23Mii2021/01/31(日) 14:47:202O82Dg8o (22/24)

ルカリオ「おい、ロゼッタ。そろそろ――――」

ロゼッタ「――――はい。では、参りましょうか。ご迷惑を、お掛けしました」



涙の跡をサッと拭って。
空元気でもなんでもいいので、再び駆け出します。



住民「ロゼッタさん、本当にありがとうございました!」

観光客「ありがとう!おかげで助かりました」



手を振る、みなさん。

その感謝は、拍手は、どうぞデイジー姫たちに。

私は何もできていない。







…まだ、何も。


24Mii2021/01/31(日) 14:51:372O82Dg8o (23/24)

~第51区~

ネス「…………」ムスッ

プー「……いつまでヘソを曲げてるんだ。敵に気を付けつつ急ぐぞ」タタタ

ネス「いや、曲げたくもなるよ。ここで曲げずにいつ曲げるんだよ。

   何なのさ?僕が知らない間に、僕だけ仲間外れにして、
   数年間も、キノコ王国で極秘ミッション与えられてたの?
   僕たち友達でしょ?教えてくれたっていいじゃないか」タタタ

プー「それを言われると返す言葉がないが…
  間違いなく大会参加することになる、ネスの気を散らせたくなかったんだ。
  必ずしも事件が発生すると決まっていた訳じゃないからな。裏方が引き受けただけだ。

  それに猛特訓といっても、ピーチ姫の指示のもと、ただひたすらに作戦会議と…
  ニンテンとアナのヒーリングγの性能向上を試行錯誤で目指しただけで、
  戦闘力急上昇とかとは無縁だぞ?ネスが戦闘力トップなのは変わらないからさ」

ネス「別にそんなやっかみとかはないよ…でも疎外感だよ…。
  余計な気配り、お節介だよ…。結局今更教えられても、時間を損してるし…。
  慌ただしいからもう水に流すけど、次からはちゃんと教えてよ?」

プー「あ、ああ、すまない」


25Mii2021/01/31(日) 14:54:052O82Dg8o (24/24)

ネス「それで?2人によって石化のタイムリミット問題はある程度解決したとして。
   次の段階はなんなのさ?石化対策のヒーリングγの強化だけがノルマなら、
   プーたちまで駆り出される意味はあんまりないよね?…いやあるのか?あれ?

   今から僕を、どこに、何のために連れて行くの?」

プー「…………なあ、ネス。
  とりあえずネスの戦闘能力があれば、向かう先で仕事は果たせるはずだが。
  プラスアルファとして、一つ確認していいか?」

ネス「んー?」



プー「ネスって、歌うことは相変わらず好きか?」

ネス「…唐突な質問にびっくりだけど、もちろん好きだよー?上手いかどうかは別にして。
  いつぞやの冒険のときも、しょっちゅうメロディを口ずさんでたなぁ。
  なんだろう、元気のない時でも、不思議と力が湧いてくるんだよね」

プー「ならばよし」

ネス「…………」



プー「…………次はここを左に曲がって――――」

ネス「ちょっと待って。中途半端に質問投げて終わりにしないでよ。
  意図を!意図を教えてください!」


26Mii2021/05/04(火) 09:13:05nruCllbs (1/45)

ロゼッタ「…………石化した人たちが、いなくなってます」タタタ

ルカリオ「ああ。既にデイジーらが助けたか、キノピオたちに運ばれたか、
     したんだろうな。――そうに決まっている」タタタタ



どこに、どんな人がいたのか、脳裏に深く刻まれていたがゆえに。
居た人がいなくなっていることを、さも当然のように気付くことができる。
居なくなっているからといって…何か砕けた跡、みたいな――最悪の顛末には、
いまのところ、遭遇していないのが救い。



ロゼッタ「…そう、ですね。     ――――あっ!ゼルダ姫!」

ゼルダ「――フッ! ――ハッ!
    あら、ロゼッタではないですか。そちらは如何…

    …ハッ、都合よく見せかけて――差し向けられた偽者っ!
    顎の骨を砕いてさしあげましょうっ!御免あそばせっ!」

ロゼッタ「ひゃっ!?本物です本物です!一緒に三途の川を渡り続けた本人です!」

咄嗟に頭を庇いつつしゃがんで、ストレートパンチを間一髪躱しますっ!

ゼルダ「…………冗談ですよ。あと、その言い方はおやめなさい」ピタッ

ロゼッタ「じょ、冗談にしては殺気が篭っていたのですが!?」


27Mii2021/05/04(火) 09:16:34nruCllbs (2/45)

ゼルダ「本物なら躱せる程度にはセーブしてありますから」

ロゼッタ「『殴られるようなら偽者だ』的発想はやめてください…
     合理的ではありますけど――むっ!」

不要だったかもしれませんが、ちょっと助太刀。
彼女の後方から姑息にも迫り来ようとしていたデビルっぽい異形にパパッと接近し――
その尻尾の先端をとっ捕まえて、ぶん、ぶん、ぶんっと!



ロゼッタ「いち、にの……さん!」バッ!

綿毛のように、すごーく軽い!



スピン加速しつつジャイアントスイングし切って、明後日の方向へ…もとい石壁の方向へぶん投げます。
砲丸投げのごとく、狙い通りにヒュゴゥと飛んで行った敵が…
断末魔を上げる間もなく叩きつけられ、メキョっとひしゃげて動かなくなるのを見て、ほっと一息。





テーレッテレー!
ロゼッタの 基礎体力レベルが Lv.44に 上がった!▼


28Mii2021/05/04(火) 09:21:04nruCllbs (3/45)

ルカリオ「おっ、今の動きは中々冴えていたぞ。いい判断だ」

ロゼッタ「ありがとうございます!まだまだ未熟ではありますが…
     って、なんだか手がチクチクします!尻尾に、ど、毒!?あわわわ、浄化浄化っ!」パアア

ゼルダ「…いまひとつ締まりませんね」

ロゼッタ「放っておいてください!
     それで、ゼルダ姫。このあたりを拠点として暴れていらっしゃるので?
     お一人で大丈夫でしょうか、万が一のことがあったりしたら――」

ゼルダ「まあ、ハイラルの姫君を侮るな、とだけ言っておきましょうか。
    あの死に物狂いの特訓のおかげで、多少は魔法の腕が上がったことにも
    結構救われていますよ。敵にこの体、触れさせもしません。
    もっとも、暴れる、という言われ方は優雅さの欠片も無くて承服しかねますが…コホン。

    投入戦力がどうにも足りていない所を転々と埋め合わせしている、
    といったところですよ。とくに決まった場所があるわけではありません。
    …会場に向かっていたのですか、ロゼッタ達は?」

そう軽く返事しつつ、すぐさま周囲に気を配り臨戦態勢。
返り血ひとつ浴びていないというのは、流石といったところでしょう。
とても凛々しく頼もしい、その横顔。


29Mii2021/05/04(火) 09:24:30nruCllbs (4/45)

ロゼッタ「はい!…拡散術式の尻拭いも、やらなければならないので。
     移動距離がどんどん増えて辛いですが…ではまたっ!」

ゼルダ姫はこのままでもなんとかなるはず。お言葉を信じましょう。
そう言っている間にも、輝きを纏った光の弓矢が、みるみるうちに充填されていくのですから。

下手な鉄砲ですら数撃ちゃ当たる。
ましてやゼルダ姫の最強の弓矢が連発されれば、場を制圧できないはずがありません。

ゼルダ「ロゼッタっ!貴方の心境はある程度察しますが…とにかく焦るのはやめなさい!
    ――それと…これを!」

駆け出そうとしたところでゼルダ姫の声に慌てて振り返ると、何かを放り投げられました。
咄嗟に手を出して、辛うじてキャッチに成功。ふう。…金銭袋?
紐をほどいてちらっと中を覗き見ると――この形…たしか、ハイラル通貨でしたよね?
ルピー、とかいう。でも、私が知っているのは緑色だけだったような…。
何故か、色とりどりのルピーがざくざくと詰まっています。

ゼルダ「はした金ですが…好きに使いなさい、遠慮はいりません!
    さあ、ここは私に任せて、ルカリオと共にお行きなさい!
    どうせロゼッタのことですから、これがないと何もできないのでしょう!」

ロゼッタ「は、はい!わかり…ました?」

生返事になってしまう程度には、ゼルダ姫の意図を掴みかねているのですが…
何か大きな意味があるのでしょうか?つい流れで、そのまま懐にしまう羽目に。
…あ、重くはないですが割と嵩張る。空間魔法が使えたら別空間に収納できたのに。

まだまだ喧騒と爆撃醒め止まぬ中、ゼルダ姫と別れ、再び私たちは走り出します――


30Mii2021/05/04(火) 09:28:17nruCllbs (5/45)

~キノコ城北 第2区~

ポーラ「もうちょっと!あとちょっと!みんな、お願い!頑張って!
    あたりの石化ペースの膠着状況からして――
    ニンテンとアナもフルパワーで頑張ってくれてる!だから急いでください!」タタタ

リュカ「――ディフェアップΩ!――ライフアップΩ!――サイコカウンターΩ!!

    頑張ってるよお、なけなしの勇気と根性と空元気でっ!…わっとと!
    さっすが戦況ど真ん中、敵の密度が濃いのなんの!
    ぜつぼーてきにPPが足りないっ!サイマグネットフル稼働だよ!
    カバーした傍から、僕自身含めてダメージをボカスカ蓄積するから仕方ないね!

    そして僕は一体全体、どういった経緯で、
    いつの間にかPKサンダーやサイマグネットを使えるようになったのか!
    改めて考えるとそこがよくわからない!」

クマトラ「教えただろ!」

リュカ「記憶に御座いません」

ダスター「アホなこと言ってないで動け!」

リュカ「はぁい!」


31Mii2021/05/04(火) 09:32:32nruCllbs (6/45)

嫌になるくらい、血だらけ荷だらけ泥だらけ。
戦闘力のあまりない、あるいは温存中の人たちの護衛をしつつ、
実力不相応に強行突破しつづけようと突っ込んでるからさもありなん。

強者にのみ許されるチート能力でも貰えないかな、矢除けの加護とか。
超能力だけじゃキビシイんだよねー!
…いやむしろ、なまじ超能力で色々できるばっかりに
能力補強に駆り出されまくりで首を絞めている気がする!

ジェフ「はい、次の交差点を右、その次を斜め左です!」

テディ「おうよ!地図を見間違えるんじゃねぇぞ!」

ジェフ「馬鹿にしないでください!
   そもそも、予行演習でさんざん行った場所でしょうが!」

やや高台っぽい「目的地」に向かうなだらかな坂道を、駆ける、駆ける、駆け上がる。

死角から飛び出る悪いヤツらを出会い頭にぶっ倒し、

僕たちにとって第一の護衛対象であるポーラにレーザーでも迫れば慌てて身を挺して受け流し、

味方の誰かが傷つき、倒れ、蹲れば…どうにかこうにかPPをやりくりして治療する。





…あ、なんだかちょっと、立ち眩み。


32Mii2021/05/04(火) 09:35:24nruCllbs (7/45)

リュカ「げっ……!」フラッ



間の悪いことに、視界の端から、石っころ…いや岩っころが猛スピードで飛んできた。
なんだよその攻撃、手抜きか。誰の仕業だ、おかげさまでピンチだよ。

僕が避けるとみんながやばい。まあ避けられないんだけど。…ええい!
せめてもと顔を両腕で遮って、上げた防御力でやせ我慢!かなりの痛みを覚悟して……!



ザンッ――――――ズバアアアアァァッ!

リュカ「…ふえっ?」



…閃光一貫。突然、岩の塊が――紙きれのように、木っ端みじんに千切れ飛んだ。
それも、都合よく破片がこちらに飛ばないような吹っ飛び方で。
どうやったのか知らないけれど、クマトラ、グッジョブ!

クマトラ「うおっ!やるじゃないかリュカ!今の、どうやったんだ!?
     いっきなり、でっかい礫が爆散しやがったぞ!?
     火事場の馬鹿力ってやつか!チクショー、オレも真似してみたいっ!」

リュカ「…………は?今の、クマトラがやってくれたんでしょ?えっ?」

クマトラ「んな訳あるか。ボケたか?」


33Mii2021/05/04(火) 09:38:32nruCllbs (8/45)

吹っ飛んだ岩の残骸と、クマトラの驚愕の顔を交互に見やる。
破片の散らばり具合、やっぱり凄い。当たっていたらとゾッとする。
…いやいや、僕なんにもやってないよ!



「大丈夫ですか?御怪我はありませんか?」

リュカ「……………うわああっ!?…あの?ええっ…と?
    き、きみが助けてくれたの?ありがとう!強いんだね!」



突然、「目の前」に、やってくる顔。…う、浮いてる?
ビックリ仰天したけれど、よく見れば穏やかで怖がりようのない顔だ。
表情が豊かというわけではないけれど、微かに笑みを浮かべている。

「いえ、お気になさらず。幸い、私の体の方が丈夫だっただけですから。
ここに急行して窮地を救うように……誰かに懇願された、気がするのです。
不思議な感覚だったのですが…いえ、気の迷いですね、忘れてください」

リュカ「…………?」

 「…大変申し訳ございません、私も急いでおりますので――――これにて失礼いたします」

リュカ「あ、うん、その感じだと、大事な用が待ってるんだよね!
   それじゃあバイバイ!きっとまた会えるよ!お互い、この戦いを生き抜こう!」ダダッ


34Mii2021/05/04(火) 09:40:50nruCllbs (9/45)














ファイ「…………はい、そうなることを願っています。
    さあ、急ぎマスターの元へ馳せ参じなければ――――!!」フワッ

――――――――ファイ、参戦!!







戦況が再び、動き始める――――


35Mii2021/05/04(火) 09:41:54nruCllbs (10/45)

リュカ「さあ、体の具合は、なんとも、ない、かな?」ウーン



――――さあ、早く向かいなさい。
――――大事な役目が、あるのでしょう?



リュカ「…クマトラ、今、何か言った?」

クマトラ「いや、何も?…どうかしてるぞ?」

リュカ「あ、いや、えと。ううん、なんでもないなんでもない。
    ――――じゃあ、急ごうか!」ダダッ!









――――――――――頑張って。


36Mii2021/05/04(火) 09:44:39nruCllbs (11/45)

~司令スペース~

ラナ『いいよいいよ、ちょっとずつ戦線が拮抗してきた!
   最初からこうしておけばよかったのね…!

  ――うっふふ!もっとやっちゃえ! やっちゃえ!』パアアアアア

シア『ラナ、それ本物ちゃう。偽者の台詞や。
   …まあ目が逝ってる現状、まさしくそんな雰囲気を醸し出してはいるけど』

ラナ『……生命力を墓地に垂れ流しにしてるからねぇ。ごほっ…。

   えーと、次のご神託は…っと。

   

   《第3勢力およびネス、第2区に向かって急接近中!》…だって。

   だい…3、勢力か、また。これって…』ウツロ

トゥーンゼルダ「いい加減、第3勢力とやらが何者か知りたいな――」



ネス『ごっめん!ホントごめん!今の今まで頭の中で状況整理できてませんでしたっ!
  聞く感じ、おそらく第3勢力って僕の仲間たち…MOTHERチームのことだと思う!
  いやあ、通信環境が復活してくれて助かったよ!』

トゥーンゼルダ「…!ネスか!それは真か!」ガバッ


37Mii2021/05/04(火) 09:48:00nruCllbs (12/45)

ネス『でっ!伝わったついでに、もうひとつ!現状の僕たち、とある施設に向かってるんだけどさっ!
   この情報、僕自身もつい先ほど知ったばっかで戸惑ったんだけどさっ!

   司令部の方から、その『とある施設』の担当者に事前連絡して
   受入態勢を整えておいてもらえないでしょーか!
   不審者と思われて突っぱねられるのも時間の無駄っぽいし!』

トゥーンゼルダ「よ、よし。どの施設だ!?」

ネス『それは………察して!ピーチが重要視しそうな施設、以上っ!』

トゥーンゼルダ(…そうか、情報の取捨選択こそできるようになったとはいえ、
         まだ敵側に傍受はされ続けている…!迂闊に施設を名指ししない方がよいのか…!)

トゥーンゼルダ「おいキノピオ、第2区の主要な施設には何が有る?」ヒソヒソ

キノピオ「…え、だ、第2区、ですか?うぅんと、えっと、あのぉ…!
     …あ!そういえばっ!」ヒソヒソ

トゥーンゼルダ「片っ端から言ってみろ!」ヒソヒソ

キノピオ「行列のできる美味しいクレープ屋と食べ放題のカレーショップと
     マニアが集うガラクタパーツ取り扱い店と、ついでに王国自然博物館と…」

ヒルダ「」

トゥーンゼルダ「王国の博物館が つ い で だと?」

ヒルダ「ツッコむところ、そっちですか!?」


38Mii2021/05/04(火) 09:49:29nruCllbs (13/45)

キノピオ「じょじょじょ冗談ですアハハハハ」ダラダラ





キノピオ「……………………あ。

そういえば、あの区画には――――――――」





意図的かどうか知らないが、フザケた回答を述べてくれたキノピオを一睨みしてみれば。
竦み上がったあと、真顔に戻って。

ある施設の名前と、その隠れた役割を口にする。



ハッと、した。

私は、MOTHERチームの能力や技能、持ち得る作戦について無知もいいところだが。
おおよそ、やりたいこと…やろうとしていることが分かった気がした。
あとは、その背中を少しでも――押してやることと、しよう。


39Mii2021/05/04(火) 09:55:32nruCllbs (14/45)

~第2区、「ある施設」~

ポーラ「…………着いたぁー!!」

ポーラが、多少はしたなくも、片腕を天に向かって勇ましく突き上げる。
目の前には、間違っても異形を侵入させまいと、鉄壁ガードを張り巡らせたエントランス。
レーザーカッターにボムキャノンに突風装置に抗エネルギープレートに…。

何も知らない人が、ダミーのしょぼいバリケードに油断して突っ込むと、
一瞬であの世行きになりかねないトラップ群たち。もちろん関係者以外立ち入り禁止。
…相変わらず、すごい警備だよね。不審者、襲撃者対策がてんこ盛り。

まあ、敵がファイタークラスにもなると、流石に一切合財、吹き飛んじゃうんだけどさ。
無限お代わりでいつまでも持つような設備でもない。弾切れすれば置物だ。
あくまで雑魚敵対策としての一般人の抵抗、止まりだもんね。
敵側に重要視されていなくて、よかったよかった。

そして、僕たちが無事に辿り着いたとみるや、
扉のロックは示し合わせたように解放される――――

担当者「お待ちしておりました、さあ、急ぎ放送室へ!一同スタンバイしております!」

リュカ「お邪魔しまーす!…みんな!まだ敵の攻撃は続くだろうから気を抜かないで!
   ここの人たちを守り切ることもお忘れなく!クマトラ!しんがりは任せたよ!」

エレベーターなんて使うのはかったるいと、
階段を踏み砕く勢いで、皆で一斉に駆け上がる――――!

担当者「既に何度か来訪されていることは百も承知ですが…あらためまして、ようこそ!
    我が王国が誇る最先端施設のひとつ、『王国第一ラジオ塔』へ!」


40Mii2021/05/04(火) 10:00:50nruCllbs (15/45)

ネス「…王国第一ラジオ塔?何、それ?聞いたことないよ」タタタタタッ

プー「心配するな、もともと世間には公表されていない施設だからな。
   知らなくて普通だ、ネスが勉強不足という訳じゃない」

ネス「ふぅん?」

プー「いいか、ネス。キノコ王国には、城下に備わる放送機器を通じて…
  緊急音声放送を城下全体にくまなく流せる施設がいくつか存在する。
  身に染みて分かっている真っ最中だろ?緊急時の情報処理は最重要だ。
   
  代表的なのが、キノコ城が所有する内部施設。まあ、当たり前だな。
  いざとなったら、ピーチ姫が直々かつ速やかに、ああしろこうしろと指示を出せる訳だ。

   だが、こいつはキノコ城そのものが占拠や争乱に巻き込まれたときには
   中々役に立ってくれないし、察知されてからの襲撃までの時間を稼げない。
   下手をすれば敵に好き勝手悪用までされてしまう」タタタタタッ

ネス「…となると、別の位置から発信できる施設もあった方がいいってことだね」

プー「その通り。ある程度キノコ城から離れたところに、それも目立たないように、
   同程度以上の発信機能を持つ…隠し施設を保険でいくつか用意しているというわけだ。
   備えあれば憂いなし、だな。今はそのうちの一つに向かっている」


41Mii2021/05/04(火) 10:11:07nruCllbs (16/45)

ネス「なるほど、施設の役割は理解したよ。
   …でも、なんで僕たちが?演説でもするの?何のために?
   いや、さっきの質問的に歌うことになるのかな?
   恥ずかしいとかは別に言うつもりはないけれど、やっぱり意図が見えない」

プー「なあに、簡単なことだ。
   キノコ王国の、一種の様式美という奴らしくてな」

ネス「様式美…?」

プー「…ああ。要するに――――



  王国じゅうの住民…いや今回は城下の住民に限るけれども。
  みんなの願い、ガバッと集めて――――――

  ――――――――ヒーローに託してズバッと解決、っていうお約束だ」

ネス「――――ああ!なんとなくわかった気がする!
   そういうことなら、確かに!僕たちが適任かもしれない!

   …それで、どっち?」

プー「ニンテンたちから教わった方だ」

ネス「オッケーわかった!任せといてよ!」


42Mii2021/05/04(火) 10:13:06nruCllbs (17/45)

ポーラ「――――――――よし」

ポーラ「じゃあ、始めます」

ダスター「おう、やっちまえ。放送に集中しろよー」

ポーラ「もちろん」フフッ



肩の力を抜いて。
堅苦しい言葉じゃなくて、子供っぽく、いたいけな女の子っぽく。
さあ――頑張れ、私。



ポーラ「――――――――ぴんぽんぱんぽーん。
    これより、緊急放送を始めます。

    きこえたかい?…じゃなかった。みなさん、聞こえていますか?」

テディ「オイオイ」



――――全域に、少女の朗らかな音声が、響き渡る――――


43Mii2021/05/04(火) 10:15:58nruCllbs (18/45)

『――――――――ぴんぽんぱんぽーん。
 これより、緊急放送を始めます。

 きこえたかい?…じゃなかった。みなさん、聞こえていますか?』





一人の、避難民がいた。

既に一度、石になっている。今は、石には、なっていない。
そして、また時間差で、石になろうとしている。

声の鳴る方向を慌てて見れば、10メートルほど頭上に設置された城内放送器。

…いや、自分の頭上、だけではない。
避難所のあちらこちらから。

…いや、自分の避難所、だけではない。
音が若干反響しているので正確なことはなんとも分からないが、
それこそ、避難所周囲の遥か先から、あちこちの方向から――
至る所から、大なり小なりの同じ声が響いてくる。

何事かと思うのは自分だけではないらしく、不安そうにあたりを見渡す人々。


44Mii2021/05/04(火) 10:17:47nruCllbs (19/45)

『私、ポーラっていいます。よろしくお願いします。
実はピーチ姫の生まれ変わりとか影武者とかだったりするの…なんてね。
そんなことを言っている暇じゃないですね。

あんまり畏まったしゃべり方ができなくてごめんなさい。
怒りたくなるかもだけど、私も緊張してるので、大目に見てくれると嬉しいです。
リラックスしてくれるなら、なおの事嬉しいな』

少女は簡単に言ってくれるが、それは無茶な願いだ。
こんな放送ひとつでリラックスできる図太さがあるなら、
最初から不安に駆られてなどいない。

無責任だ、そんな暇があるなら助けてくれ、そう言い返したくなる。
それでも、放送は続く。

『みんなも知っての通り、マリオにクッパにリンクに…
とにかく、たっくさんのファイターたちが、結構強大な敵と戦っています。

戦ってる敵は、みんなが想像する通り、やばい奴。
そいつの能力で、城下じゅうの人たちが石にされようとしています。
ふざけるなって感じですよね、本当に…信じられない!

…辛いことを言わせてもらうと、既に石になちゃった人もいると思う。
その時の絶望、悲しさは計り知れなかったんじゃないかな。
私なんかじゃ、その1%も『分かってあげられる』なんて傲慢なことは言えない。
でも、とにかく辛かったんだよね、今もなお苦しんでいるんだよね』

子供っぽくプンプンと怒り、それでいて自分たちと一緒に苦しみ――――
自分たちに誠心誠意謝っている表情が目に浮かぶようだ。
こんなときに何を間の抜けたことを、なんて発想は蠢いたりはしなかった。


45Mii2021/05/04(火) 10:20:07nruCllbs (20/45)

『とりあえず、みんなに伝えたいこと、簡単に言わせてもらいます。
敵の方は、彼らが…我らがヒーローたちが、絶対何とかしてくれる。
我ながら他人任せというのは歯痒いけれど。

そのことを踏まえて、お願いしたいことがあります。
別に、ヒーローたちに助太刀して戦ってやろうとか、
せめてアイテム運搬でもやってみようかとか、
無茶振りをするつもりはないの。ただ――――

ヒーローたちが勝つことを、願ってほしいんだ』



避難民「願う…………?」

願って、何が変わるのか。



『言いたいことはわかります。願うことが何に繋がるんだーって気持ち。
そんな精神論どうでもいいだろ、他にやることがあるだろーっていう気持ち。

でも、願うことって、中々馬鹿にできないの。
ただ悲嘆に暮れて闇雲に恨み辛みをこぼすんじゃなくて、
ファイター達を明確に思い浮かべて、勝ってほしいって前向きに…願って。

願った方は活躍の先を期待することで、頑張り、やる気がちょっとずつ湧いてくる。
願われた方はもうひと頑張りしてみるかって気力が満ちてくる。
これって、すごいことだと思いませんか?』


46Mii2021/05/04(火) 10:22:25nruCllbs (21/45)

避難民「……………………」



言葉でいうのは、さぞや簡単な事だろう。
涙が出てくる。本当に簡単なことだ。しかし――――





『…と、まあ。無責任に頼み込むのも、無茶振りってものですよね。
 だから、ささやかなお手伝いではあるけれど――――

 その下地を、私で、私たちで、用意させてもらうことにしました』





避難民「…………下地?」グズッ



10秒、あるいは20秒ほどか。少女が途端に黙り込む。
代わりに微かにマイクが拾ってきたのは、ガタゴトガタゴト、引き摺り、ぶつかり、歩き回る音。
機材の配置か、ゲストの移動か。ともかく、なにか準備をしているようだ。


47Mii2021/05/04(火) 10:23:48nruCllbs (22/45)

『うう…今回はホントに音量ONなんだよな…記録に残るかも、なんだよな…
リハーサルの時とは緊張感とプレッシャーがハンパないぜ…!』

『今更ビビるとか口パクとか、そいつは無しですからねクマトラさん』

『う…うん』

『うっふん?』

『殴るぞリュカ!』ボカッ

『ちょっと静かにしてください!思いっきり声を拾われてますよ!
恥じらいという物を少しは持ってください!』

『俺みたいにドーンと構えとけよ、落ち着きがねぇな』

『さすが年長者!あとはもうちょっと歌に相応しい服装だったら良かったのにな―』

『殴られたいのかお前!』ドゴッ!

『痛っ!?暴力反対っ!』

『はあ…やれやれ…お、入口にプーとネスが見えた!合流も間もなくだな!』

『まあでも、2人を待たず、さっさと始めてしまいますからね!』

『いやいや、せっかくだから待ってあげようよ』

『そ、それは悠長なんじゃ…まったく。しょうがないですね』


48Mii2021/05/04(火) 10:26:14nruCllbs (23/45)

――――そして。

『よし、到着!…あれ?ニンテンとアナとロイドはいないの?…ああ、別件か。
本来ぜひとも居るべき人物がこぞって居ないのか…』

『つべこべ言わない、託されたからには僕たちでやるしかないだろ!』

『わかってるって、再確認しただけ!…さあてと!準備完了したよ!
 始めちゃおうよ、善は急げ!』

『それじゃあ、行きます――――』





やってきた、静穏。
しばし漂う、無音。





脈略もなく。しかし、確かに。
荘厳な音楽が、熱唱とともに猛烈に、強烈に流れて来て――――



『エンディングまで、泣くんじゃない!』


49Mii2021/05/04(火) 10:32:44nruCllbs (24/45)

~キノコ城城下南 第40区~

ギムレー「ちっ、折角の興が削がれてしまったな。
     もう少しで、こんな王国など壊滅同然にまで追い込めたものを」タタタッ

ロゼッタ(偽)「まあ、よいではないですか。まだまだ我らが優位、
       いくらでもやりようはあるというもの。
       次は如何致しますか?なんなりとお申し付けください。
       攪乱、援護、索敵、ばっちりこなして見せましょう」タタタッ

ギムレー「様」の怒りを少しでも和らげようと、私も気遣いを尽くします。
ちらりとこちらを見やって、にやりと笑って。たちまち近づいて来られました。
息遣いがはっきりとわかります。

ギムレー「…………ふっ、面白い女だ。ますます気に入った。
     どうだ、この争乱のカタが付いたら、共に故郷に向かい、
     我が妃の立場に収まる積もりはあるか?ああそうさ、我にこそ相応しい。

     我の本質は変わらない、『本体』も気に入ることだろう。
     その類まれなるチカラ、あちらでもさぞや重宝する」

ロゼッタ(偽)「あらまあ、口説かれていますか?それも中々魅力的な案ですね…!
       貴方ほどの殿方の右腕となれるのは光栄な限りです…!

       ですが、困ってしまいました。これでも私、キノコ王国民なので…
       なかなか無断では他の国には渡れないのですよ。

       そうですね…貴方がキノコ王国を明確に捻じ伏せ、乗っ取るのならば
       そういった未来も吝かではないのですが…ね?」ウットリ


50Mii2021/05/04(火) 10:35:17nruCllbs (25/45)

ギムレー「くくく……よかろう」ピタッ



ギムレー「我、ギムレーが、『ギムレー本人』の立場として無慈悲の鉄槌を下そう。

     愚昧なるキノコ王国に対して、我がペレジア王国は――――
     傘下のイーリス、フェリア、ヴァルムとともに――ここに宣戦布告する!
     全てを破壊し尽くし、滅ぼしつくし、奪い尽くして見せよう!」



指を高らかに掲げ、広場のど真ん中で派手な宣言。
その横顔は、怖い物など一つもないと言わんばかりの自信に溢れた顔。
格好の良さに、思わず顔が火照ります。



ロゼッタ(偽)「素晴らしい宣言です…!今後とも、是非よろしくお願い致します!」

タブー様のお許しさえ出れば、すぐにでも付いていきたいくらいの貫禄です。

     

ギムレー「…おっと。見染めるのは好きにすればいいが、今現在の目的を……
     よもや忘れてはいまいな?あとどのくらいでたどり着く?」

ロゼッタ(偽)「お任せください…ふむ。南西へ750メートル程度といったところです。
       いよいよ、ギムレー様の目的の一つが、ここに完遂されるのですね…!」


51Mii2021/05/04(火) 10:37:20nruCllbs (26/45)

――――と、その時。





『――――――――ぴんぽんぱんぽーん。
 これより、緊急放送を始めます。

 きこえたかい?…じゃなかった。みなさん、聞こえていますか?』





ギムレー「…はあ?何だ、この放送は。どこから放たれている?」

一瞬スピードを落とし、忌々しそうに周囲を観察し、
手早く発信源のスピーカーを破壊したギムレー様。
しかし、発信源は無尽蔵にあるらしく、一向に止む気配がありません。
知らぬ少女の語りが、無駄に長ったらしく続きます。

ギムレー「耳障りだな、何のあがきのつもりだ…」



脈略もなく。しかし、確かに。
ただただ癪に障る音楽が、下らない声色とともに流れて来て――――


52Mii2021/05/04(火) 10:39:50nruCllbs (27/45)




――――La La La La La…La La La La La…

――――La La La La La…La La La La…

――――La La La La… La La La La La La La La…

――――La La La La La…La La…La La……



ギムレー「……なんだ?」

ロゼッタ(偽)「さあ…………?」



訳の分からない、歌い声。
妙に不安と胸騒ぎがするのですが、どうしたことでしょうか。


53Mii2021/05/04(火) 10:42:39nruCllbs (28/45)

――――Take a melody

――――Simple as can be

――――Give it some words and

――――Sweet harmony


――――Raise your voices

――――All day long now

――――Love grows strong now

――――Sing a melody of love, oh love…



ロゼッタ(偽)「…………………………?」

その歌と音楽は、繰り返し、繰り返し、ただひたすらに流れ続ける。
争乱による爆裂音を塗り潰す勢いで。

ギムレー「……………………ハハハッ!この期に及んで、歌!歌だと!
    歌や音楽ごときで戦意喪失が、戦況的不利が改善されるとでも?
    なんという幼稚でバカバカしい発想だ!」


54Mii2021/05/04(火) 10:45:51nruCllbs (29/45)

ロゼッタ(偽)「…まさか、ただの歌ではなく、何かしら魔術的要素が……」

もしもそうだったら、流石に見過ごしてはおけません。



ギムレー「だったらロゼッタ、すこし魔法感知で調べてみるとよい。
     そもそもお前のチカラのおかげで、あやつらは空間魔法を使えないのだろう?」

ロゼッタ(偽)「はい、只今。

       …………正真正銘、何の変哲もない…ただの歌ですね。
       まったくつまらない。心配して損をしました」

ギムレー「能天気なヤツらだ。能天気過ぎて反吐が出る。
     さあ、とっとと目的を―――――――

     ルキナをこの世から消し去ってしまうとしよう」

ロゼッタ(偽)「二度あることは三度ある…
       あらためて絶望を感じさせながら、ですね?」

ギムレー「素晴らしいぞ、ロゼッタ。さすが我が認めた女だ」



こんな雑音を気にしてなどいられません。
やるべきことをやってしまいましょう。


55Mii2021/05/04(火) 10:49:11nruCllbs (30/45)

デイジー「……………………」ダダダダダダッ!

ニンテン「おらぁー!『Eight Meodies』、キノコ王国中に響け!

     広場だろうと避難所だろうと地下室だろうと問わずっ!

     老若男女問わずっ!

     頑張っている人だろうとそうでない人だろうと、
     喜んでる人だろうと悲しんでる人だろうと、
     とにかく全員に届け、届け、届けぇ――――!!」ガオー!

アナ「そして私たちの体はデイジーさんによって
   あちらこちらに届けられ…っと。ま、しょうがないわね。
   …デイジーさん、目が潤んでるけど、大丈夫?」

デイジー「な、なんで、なんだろーね。さっきからおかしいの。
    でも別に、悲しく、ないんだ。いや、むしろ――――

    何が何でも悪いこと全部ひっくるめて終わりにしてやるっていう気概が、根性が…
    満ち溢れてくるというか、心に火がともったというか…なんなの、これ…?」

ニンテン「言ってみりゃ、敵の『OFF波動』のウラガエシだよ。
     実の所、この歌声自体には魔法効果なんて全くない。
     逆に言うと、敵に絡繰りもばれにくい!

     ただ、俺たちがずっと心を動かされてきた名曲で、
     聴いている人の心を動かしてしまうのも当然の予定調和で――――
     ポーラが本格的に頑張り出したら、もっとすごいぞ!」


56Mii2021/05/04(火) 10:51:21nruCllbs (31/45)

~第2区 王国第一ラジオ塔~



ポーラは こころをこめて いのった!▼

ポーラ(…わたしたちに ちからを
    ちからを かしてください。)



『お願い、勝ってください!』

『頑張って!負けるな!』

『信じてるから!』

『くたばってたら承知しないぞ!』

『誰一人死なさないでね!』

『これ、あれでしょ。星の精とかコバルトスター経由で
 ちょっとずつパワーを集める儀式だよね!知ってる知ってる!』



城下の人たちは 未だかつてない 気持ちの高ぶりを 感じて
ファイターたちの 無事を 強く祈った!▼


57Mii2021/05/04(火) 10:52:45nruCllbs (32/45)

ポーラ(来た、来た、来ましたっ!

    感じる!みんなの願いが!みんなの祈りが!…一部変なのがいるけど!
    絶望し切っている人なんて、そうそういないんだから!
    僅かな希望を、大きな希望に!大きな勇気に変えていけ!

    あとは――――私のお仕事ですね!)

ポーラ「1回目、そろそろ行きます!」

私の体は、眩いばかりの光に包まれる。バチバチバチバチ、音がする。
集中して、掲げた腕の手のひらの先に集めて、集めて、集め切って――――!

テディ「歌いながら祈るとかメチャ大変そうだが…任せたぜ!」





ポーラ「みんなの想い――――ファイター達に、届けぇーーーー!!」パアアアアア





ラジオ塔が、強烈な光を全方位に降り注がせた。


58Mii2021/05/04(火) 10:54:30nruCllbs (33/45)

デイジー「…!?」ゾワッ

デイジー「……おお、おおお!?
     なんかすごい!なんかやばい!なにこれ!体がシャキッとした!
     ポーラったらやるじゃない!会ったことないけど!」グーン!

デイジーの 全ステータスが すこし上がった!
さらに やる気が すこし上がった!▼

ニンテン「振り回すのやめて!吐くっ!吐くからっ!!」

デイジー「…でも、OFF波動の影響を完全に打ち消すほどじゃないか。
    まあ、贅沢はいってられないね」



アナ「ふふん、贅沢言ってもよかったりするんですよ」

デイジー「と、言いますと?」

アナ「ポーラの『祈り』の回数は、1回こっきりじゃないですから!
  人々の願いが、祈りが続く限り、続けてどんどん重ね掛け!」

デイジー「まじでか!」


59Mii2021/05/04(火) 11:02:36nruCllbs (34/45)

ポーラ(どうぞ わたしたちに ちからを かしてください!)

ポーラ「…………2回目、行きます!」パアアアアアアアアア



クッパ「うおおおお!!無性に力が湧いてくるのだぁ!
    皆の者!こんなヤツら、とっとと倒して次に向かうぞ!ワガハイに恥をかかすなよ!

    ボコスカ、突撃ぃーーーーーー!!」

クッパ軍団「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」



クッパ「逃げ延びた敵は、称賛の意を込めて――
    ワガハイが直々にブレスで完全燃焼させてくれるのだ!」

異形「「「「「「「「」」」」」」」」ガクガクブルブル

クッパ「なにぃ?この期に及んで燃やされるのは嫌だと?」

異形「「「「「「「「」」」」」」」」コクコクコクコク

クッパ「ならば仕方がない。
    かわりにワンワンにでも潰されろ。それ、行くぞ」ポイッ

ワンワン(直径10m)「バウッ!」グシャッ

異形「「「「「「「「」」」」」」」」チーン


60Mii2021/05/04(火) 11:05:03nruCllbs (35/45)

――――ドッゴオオオオオオオン!!!

ネス「La La La La La… うわあっ!?やばい!敵に場所がばれたっぽい!
  敵の探知も中々早いぞ、案外優秀だな!20分くらいしか稼げなかった!
  敵が集まり出したぞ!…リュカ、クマトラ!ノッてる所悪いけど歌うの中断!
  僕たちだけでも防衛に回るよ!」

リュカ「う、うん!…うげ、奥からも続々とやってきてるような…!
   これ、あと10分もしないうちに羽ばたく魑魅魍魎でお腹いっぱいになるよ!
   …蛍光灯に集まる蛾かな?」

クマトラ「割とオレのPPも尽きかけてはいるんだが…
    モロにこの建物に照準合わせてるな、どうする?ヤバくないか?」

ネス「とにかく急いで準備!ポーラたちを歌に集中させてあげるんだ!
   僕が北と西、ついでに真下に見える入口の防衛を受け持つから、
   リュカは南を、クマトラは東をお願い!

   近づく敵からどんどん撃ち落とすか排除しちゃって!もちろん飛び道具なんて通さないでよ!」

リュカ「や、やってみる!なんなら3方角受け持ってもらってもいいよ?」パアアア

ネス「そこまで甘えないでほしいんだけど!」パアアア!!

クマトラ「キツイこと言ってくれるぜ…!」パアアア

ネス(ポーラのHPやPPも無尽蔵じゃないんだ、極力節約させないと――――!)


61Mii2021/05/04(火) 11:09:33nruCllbs (36/45)

ポーラ(このいのりを どうぞ せかいじゅうに とどけてください!)

ポーラ「はあっ、はあっ…………4回目、行き、ます!」パアアアアアアアアア



マリオ「YAHOOOOOOOO!!懐かしいというか毎度おなじみのこの感じ!
    ラストスパートにもってこいって感じだな!

    ハンマー…………ナゲェ――――ル!!」ゴウッ!



ハンマーが、マッハの速度で飛んでいく。



異形「「「「「「「「「「GYAAAAAAAAAAA!?」」」」」」」」」」チュドーン!!

異形「「「「「「「「「「」」」」」」」」」」チーン

ルイージ「…うっわあ。一石二鳥ならぬ一槌十鳥になってる。原型留めてないよ。
     兄さんのパワーが上がり過ぎて、僕要らない子だなあ。
     …まあ、僕なりに頑張ってはみるけどね!
     
     でも、兄さんほどパワーが上がっていないのはなんでだろう?」

マリオ「ルイージはヒーロー慣れしてないからなあ…」

ルイージ「わけがわからないよ!」


62Mii2021/05/04(火) 11:13:42nruCllbs (37/45)

バキバキバキバキッ!!ゴオオオオォォォォォォ!!

ネス「落とせ!落とせ!落―とーせー!!
   こ、攻撃がどんどんキツくなってきてるな…!同時に来る飛び道具とかも
   対処の限界があるし…うわあっ!?壁もヒビが入って崩れ出した!本当にやばい!

   …リュカ、クマトラ!そっちは大丈夫!?厳しそうだったら素直に言ってね!」



ネス「…リュカ?クマトラ?」クルッ

リュカ「…あ、御免。しくじった、みた、い。
   限界、の所に…不意打ち、食らっ、た…」ドクドク

クマトラ「もう…むり…」バタンキュー

ネス「へんじがない。だいたいしかばねのようだ…って、
   うおおおおぉぉい!!?声掛けが遅かった!」

リュカ「ネス…僕はもう…疲れたよ…」バタリ

ネス「リュカ!……うう、気絶しちゃった。命に別状は…ない、みたいだけど…
   …って、クマトラまで倒れちゃってるし。PP の欠乏症状か。
   …ちょっと負担を駆け過ぎたかなあ、仕方なかったけど…」

あちらこちらで、崩れる壁、物、機材。最低限の放送機材は身を挺して守り切る。

もともと管理していた人たちは地下の防空壕的なところで待機してもらっているけれど、
僕たちも身をどうにかしないと命に関わり出すかもしれない。


63Mii2021/05/04(火) 11:15:48nruCllbs (38/45)

ネス「とりあえず、みんな!みんなも地下に避難して!よくやってくれたよ!
   これだけの大合唱で、相当な祈りパワーを届けられたはずさ!
   だからもう休んでいいよ!このままだと危険だ!さあ!」

ポーラ(だれか わたしたちに ちからを かして!)

ネス「ポーラ!もう祈りはしなくていいから!自分の命を優先して!」



ガツンッ!



ネス「……ポーラ!」

割れた窓から、刺さる一撃。目を閉じて集中していた彼女に、避けられるわけがない。
目の前のポーラが、飛来するのを確認することすらできないまま…
額に火炎弾を受けて、室内をもんどりうって転げていく。

ポーラ「……………………い、たい」ドクドク

夥しい量の出血。慌てて駆け寄ったはいいけれど、僕はあわあわと混乱するばかり。

ポーラ「私が、もっと、がんばら、ないと……!
    自慢じゃ、ない、けど。私が、いない、と。
    この歌、まとまりも、歌唱力も、なくなっちゃう、し――――」

ネス「そ、そうかもしれないけど。一人だけ段違いの歌唱力だしね、うん!
  でも大丈夫!あとは僕たちに任せてくれたらそれでいいから!」


64Mii2021/05/04(火) 11:19:48nruCllbs (39/45)

満身創痍すぎる彼女に、これ以上負担をかけさせるわけにはいかない!本当に死んじゃうよ!



「そうだ。そこまでにしておきなさい」

ポーラ「――――え」



突如として、一人の「男性」が声を掛けてきた。
すわ敵の侵入を許したか、と今更ながら交戦の構えを一瞬とって、
手に取る武器や足元をみて、むしろ蹴散らしてきてくれたのか、と判断して。
よく見れば、知っている顔で。

ポーラを優しくなでる彼。安心したのか、緊張の糸が切れて、たちまち寝息を立て始める。

そうか、つまり――――



シーク「別に、曲を変えてしまってもいいのだろう?音響の停止は任せた。
    祈りを力に変換する…か。少しは齧ったことがある。やってみよう」

ネス「ダレダ姫!来てくれたんだ!」

シーク「シークだ!!」

助かったんだなあ、と思った。


65Mii2021/05/04(火) 11:22:30nruCllbs (40/45)

~キノコ城城下南、第41区~

リンク「…な、なあ!ピット!テンションが上がってきた俺の勘違いかもしれないが!
    ルフレとルキナ、ほんのちょっとだけ表情が動いているように見えないか!?」

さすがにこれは心弾まずにはいられないぜ!

ルフレの 全ステータス降下が 解消し切ろうとしている!
ルキナの 全ステータス降下が 解消し切ろうとしている!▼

ピット「ほ、ほんとだ…!MOTHERチームが上手いことやってくれたのか…ああっ!
    み、見てよリンクっ!パルテナ様も、パルテナ様もっ!」

パルテナの 全ステータス降下が 解消し切ろうとしている!▼

リンク「おおおお!あと一押しってところだな!!こりゃあいいや!
    頑張ってきた甲斐があったってもんよ!どんどん集まれ、勇気パワー!
    …………ん?誰か、こっちに近づいてくるぞ」

ピット「え、新しい敵?勢い削ぐ、なあ…!そんなにあからさまにわかる?」

リンク「なんというか、やたら邪悪な感じがするというか…まさか」

ピット「そ、それって――――い、いや、今の僕たちなら――――」


66Mii2021/05/04(火) 11:30:41nruCllbs (41/45)

突然 流れていた熱唱が 止まった!▼



ピット「あっ…人数減らしながらも歌い続けてたEight melodiesが…」

リンク「…あり?ネスたちに何かあったのか?ちくしょー、大丈夫かな…」

何が起こっているのか定かじゃないが、きっと悪いことなんだろうな。
なかなかいい事ばっかりは続かないぜ。
だが、彼らの身を案じている余裕は流石にない。
なんとか己の力だけで対処してくれ!きっとできる!



ピット「ま、待って!代わりに…何か、聴こえてくるよっ!」

リンク「なんだと…………?」

どうやら、放送の役目がすべて終了というわけじゃないらしい。

耳をそばだててみれば。
今度は歌詞は無しらしいが、澄んだ音色が――――



~~~♪♪♪

美しいハープの音色とともに 「ゼルダの子守唄」が 響き渡る!▼


67Mii2021/05/04(火) 11:33:12nruCllbs (42/45)

リンク「――――――――」

リンク「――――――――――――――――」シュウウウウゥゥゥ――――

リンク「――――――――――――――――うおおおおおおおおおお!?
   気が高まる、溢れるぞおおおぉぉ!!なあ、ピット!!
   あ、一人はっちゃけてスマン、お前には分からない話だったか――――」

リンクの 全ステータスが 上がった!▼



ピット「こんなの、Eight melodiesとの相乗効果で音楽パワー限界突破じゃないですかー!
   ひゃっほー!!これは勝ち申した!!」

ピットの 全ステータスが ぐーんと 上がった!▼



パルテナ「勝利BGMキタコレ―――――!!」パリイイィイン!!

パルテナの 石化が 解けた!
パルテナの 全ステータスが ぐーんと 上がった!▼

リンク「」


68Mii2021/05/04(火) 11:36:03nruCllbs (43/45)

パルテナ「…………はっ!ピット、降ろしてください降ろしてください。

     あ、り、リンクサン!
     ルフレとルキナも石化が解けようとしていますよ!
     よ、ヨカッタデスネエ」

リンク「」



ルフレの 石化が 解けた!
ルキナの 石化が 解けた!

別に 全ステータスは ほとんど 上がっていない…▼



ルフレ「――――ごほっ!ごほっ!…こ、ここ、は…
    あ、あれ!?背負われてる!また迷惑を掛けてしまったみたいで!」

ルキナ「――――――――!?!?どどどどうしてルフレさんに…
    いえリンクさんにおんぶされているのですか私っ!?おおお降ろしてください!!」カアアアァ

リンク「…あ、はい。普通そうだよな。おかしいのはそこの変人どもだけだ」

ピット「その言い方はあんまりだ!」


69Mii2021/05/04(火) 11:42:17nruCllbs (44/45)

――――と、そこに!



待ちかねていた剣の妖精が、ようやく姿を現した。



リンク「満を持して来てくれたな――――ファイ!」

ファイ「只今参上しました、マスター!!」



やっぱりファイが居ないと始まらないね!
とうとう本領発揮の舞台が整ったってところだな!

リンク「今の今までどこに行ってたんだと問い詰めたいが…
   まあ、現状のキノコ王国の混乱を治めるのが先だ。後にしよう」

ファイ「申し訳ございません。必ずや――」



ファイの 全ステータスが 上がった!
「ゼルダの子守唄」と サウンドシンクロ中!▼



リンク「…………来るぞ」


70Mii2021/05/04(火) 11:46:22nruCllbs (45/45)

ギムレー「これはこれは、みなさんお揃いでお出迎えとは。
      ご苦労様、我のためにわざわざありがとうと言っておこうか」

リンク「いよいよ中ボスのお出ましってか――――
   そして何故かいる偽ロゼッタ。先に倒しておこっかな…」

ロゼッタ(偽)「ふふふ……」



ザッ、ザッ、ザッ。

逃げるでもなく、慌てるでもなく。

偽者のロゼッタと共に、現れた首謀者その2…いやその3、かな。
ガノンドロフやられちまったし。

本当に、ルキナとルフレにとってはトラウマものらしく…
ふたたび、体をガクガク震わせている。
…そこまで恐れ戦くことはないと思うんだけどなあ。

まあ、不意打ちというのも、なんだ。
向こうに会話する気があるというのなら、グッとこらえて…
情報集めでもやってみるか。


71Mii2021/05/05(水) 10:39:51BW/v7Sfs (1/18)

リンク「さてさて、ギムレー氏。
   しょっぱなに『興味本位で争乱に加担した』とか言ってたけど、
   あれはどこまでが建前でどこまでが本音なんだ?
   物わかりの悪い俺に教えてくれると助かるんだけど」

ギムレー「言葉を慎め。お前に教える義理などあるか?」



小馬鹿にする態度。今のうちに精々俺のことを馬鹿にしておくがいい。



リンク「そこをなんとか!頼むよギムレー様!ハンデだと思ってさ!」

パチッと両手を合わせて懇切丁寧に懇願する。
いやあギムレー様、ちょちょいと口を滑らせてくれませんかねえ。
よっ、大将!大統領!地獄の龍王様!

ルキナ「り、リンクさん…や、やはりリンクさんでも真っ向勝負は難しいということですか…」ボソッ

ルフレ「それはそうだろうルキナ、なんといっても極悪非道の権化、
    僕たちも知っての通り…途轍もない実力があるのは確かなのだから…!」

リンク(…………なんだかFE組の視線がすっごく不本意だ)

もしかして、タブーに与えられた戦闘力上昇効果で増長してる?こやつめ。
その、ビミョーに体を覆うオーラっぽい奴、そうだろう?
それ含めても倒すのは割と簡単なんだけどね!本人はさっぱり分かってないみたいだけど!
ルフレルキナの安全を確保しつつ、できるだけ暴露させたいわけよ!


72Mii2021/05/05(水) 10:43:26BW/v7Sfs (2/18)

ギムレー「……強いて他の理由を挙げるなら、分かりきっていることじゃないか?
     ほら、そこにいる」



ルキナ「ひっ…………!?」ビクッ



ルキナがますます蒼白になる。
両脚が小鹿のように震え、剣まで手から取り落とす終い。慌てて拾いに行くも、緩慢だ。
おいおい、鍛錬が足りないぞルキナ。こりゃあ特訓し直しだな。
そしてギムレーよ、執拗にルキナ狙いか、別の王国まで来てストーカーか。気持ちわるー。

リンク「分からないなあ、そこまでしてルキナを亡き者にしてなんになるんだ?
    頭に来るが、もうお前はすっかり地盤を盤石にしてふんぞり返ってるんだろ?
    ルキナなんて敵じゃないっていうんなら放っておいてくれよ。

    『調子に乗っちゃった、ごめんなさい』って謝って回れ右する気とか、ない?」

パルテナ「全くですね、このありさま…御覧なさいな。
     施政者として、この惨状は酷すぎますよ。私だったら泣きます。大泣きですよ。
     ピーチ姫ならぐっと耐え忍べることでしょうが」

ギムレーはフン、と嘲り笑って、おしまい。良心の欠片くらい、あっても損はないぜ?
腹が立つ、ああ腹が立つ、腹が立つ。


73Mii2021/05/05(水) 10:48:37BW/v7Sfs (3/18)

ギムレー「その女は、大した力も知恵もない弱者の癖に…周囲をいたずらに扇動し、
     希望だとか正義だとか下らない物を謳って、最後の最後まで我に歯向かい、
     小さくない被害を我が陣営に与えた。
     その結果、我に余計な手間と出費を押し付け、その態度が我の不興を買った。

     その大罪は死をもって償ってもらわなければならない。
     理由としては十分すぎると思うが、どうか?」

リンク「それ自体にも異議をぶっつけたいところなのはさておき…。
   つーかさ。万が一、仮にルキナが征伐されるべき極悪人だったとしてもだ。
   ギムレー、アンタのやったことはやりすぎ、周りを巻き込み過ぎにも程がある。
   
   パルテナも言ったけど、キノコ王国のこの惨状、どうしてくれんの?
   アンタ負かしたら責任取ってくれるの?
   まさか、そっくりそのままFE勢に責任丸投げするつもりなのか?
   無責任すぎやしませんかね、ガノンドロフの分はゼルダ姫が責任とるとしても」









シーク「クシュン!!」


74Mii2021/05/05(水) 10:51:39BW/v7Sfs (4/18)

ギムレー「…お前も希望だとか正義だとかを信じる口か。
     だが、腐っても一角の剣士のようだな。勇者などという肩書は下らないが。
     ルキナを引き渡すというのなら、配下に加えてやってもよいぞ。
     中々活躍してくれそうでな、我も強者不足には頭を悩ませているところだ」

リンク「そういうスカウトは100億ルピー積まれようとお断りですねー。
   …ほんとのほんとに、『好奇心』と『ルキナ抹殺』だけが動機?
   裏で密約が交わされてるとか、何かこの土地で奪いたい物があるとか、
   まさか誰かに脅されてるとか、そういうことはないか?」

ロゼッタ(偽)「くどいですよ、忌々しい。
       ギムレー様の手を煩わせないでくださいな」

忌々しいのはそっちだよ。
というより、ロゼッタ本人の名誉のためにも、マジでとっとと倒した方がいいな。
思いっきり警戒されているから今すぐには難しそうだけれど。テレポートずるい。
…あ、ギムレーと一緒に居た個体なら、情報沢山持ってるかも。気絶させて捕えとくか。
ギムレーを倒したときとかの隙を見計らって力加減して…3秒ありゃ十分かな?



…ん?そういや偽者ロゼッタなら、まだギムレーよりは…
俺の強さ分かってるんじゃないの?ギムレーにそれとなく伝えてないんだろうか。
警戒レベルを引き上げられたと思うんだが。

――――そうか。これがマリオの言っていた「うっかり体質」か。
――――そのままの君でいてほしい。


75Mii2021/05/05(水) 10:54:54BW/v7Sfs (5/18)

リンク「へいへい。それじゃあ、始めますか」

そろそろ得られる情報もなくなってきたので。いざ、戦うか。
そういうつもりで、とりあえず…ギムレーに初めて、剣を向けた。






ピット「…………どしたの、リンク?」

パルテナ「…………どこか痛めたのですか?」



…………あれ、おかしいな。妙に剣がぐらつくぞ?



ファイ「…マスター?どうされましたか?」

リンク「あ、あれ?おっかしいな?そんなに怯えるような敵じゃ――」ブルブル

ギムレー「ああ、そういうことか。…ロゼッタ、やれ!」

ロゼッタ(偽)「仰せのままに――――!」パアアアアア

偽ロゼッタの魔法で、ギムレーが空間転移。一瞬にして俺の背後に忍び寄るっ!
もちろん、そのくらいの対処なら、決して難しくは――――!


76Mii2021/05/05(水) 10:57:23BW/v7Sfs (6/18)




ギムレー「リンクさんっ!!」



リンク「ういっ!?――――がっ!」ビクッ!

跳ね除けようとしたところで、意表を突いた「ルフレの物真似」!
硬直してしまったところで、鋭い刃を首筋に押し当てられた――――!
いい加減、キレて反撃すればいいものを。味方を庇いつつ一歩引くのに甘んじる俺。
…せめて、ゼロ距離にいたギムレーに拳の一つでも当てとけよ!

リンク「…………うげ、血が出てるし」

ギムレー「ほう、今のでその程度の擦り傷で済んだとは。
     凄まじく身を引いた方向運が良かったな、呆れる。
     しかし――くはは、我の想像していた通りだな」

苛つく笑いを止めもせず――――ギムレーは、俺の弱点を見破った。



ギムレー「情が仇になったな、リンクとやら。
     …ルフレと被って、我を斬ろうとすることもできないか」

ルフレ「…え、ええ?」

――――剣士としては、致命傷。


77Mii2021/05/05(水) 11:01:18BW/v7Sfs (7/18)

ルフレが、俺の優柔不断さに驚いている。

確かに俺はピットに言った。人を殺すときに割り切りありきって。
その理屈なら、姿だけ一緒の悪人を切り伏せることなんて、楽勝のはずなんだが。

いざ相対してみると…本気の殺気をぶつけるのに、酷く躊躇してしまう。



え、何?さっきの情報集めってのも、
無意識に戦うのを躊躇したがゆえの逃げの思考回路だったっていうのか!?



なんだかんだ言って、3か月近く、一緒に特訓してきた…師として教えてきた仲だ。
そう簡単に割り切れるものじゃない…幾ら俺が強くなってもな。
偽ロゼッタに斬りかかることは容易だったのに。付き合いがまだ浅いからか。

リンク「…………うるさいな。そんな訳ないだろ?つかの間の温情ってやつ――」

ギムレー「酷い!所詮、僕との友情だなんてその程度の物だったんですね!」

リンク「…………!!」ギリッ!

ピット「趣味の悪い作戦を…!」



脆い、脆いぞ俺の意志。
尻込みする方向に、意識が動く。自分が自分じゃないみたいだ…!


78Mii2021/05/05(水) 11:08:32BW/v7Sfs (8/18)

ギムレー「プッ、本当に情けない男だな、女々しいことだ。
    我はそう堕落してはいないぞ、殺すべき時は問答無用で殺しに掛かるものだ。
    それがこのギムレーたる所以であり矜持であるからな。それ、それ!」

弄ぶかのように繰り出される魔法。
ぴしゃりぴしゃりと、硬直するままの俺の頬を撃ち、鮮血を滴らせる。
ただ、俺が体を張っているおかげでルフレやルキナに攻撃など届かせない。

若干、ギムレーが首をかしげている。どうにも魔法の効きが悪いらしい。
…そりゃ、お前の魔法の威力に対して俺のHPが馬鹿高いだけだ。
よし、ひとまず盾役になれているから無意味じゃないぞ、たぶん。…んなわけあるか。
激昂しろよ俺。どうして怖気づくんだ、気持ちが萎えるんだ。

しっかりしろよ、俺の体。今更こんなことで悩んでどうする。
コイツの相手は、今の弱ったピットやパルテナには…
ましてやルフレやルキナに任せる訳には絶対に行かないんだぞ!
そう言い聞かせても、中々応えてくれないのがもどかしい。

…くそ。考えがまとまらない。
こういうときに変な判断で突っ込むと、問題なしなようにみえて…
悪いことが起きるってのは、残念ながら身に染みてよくわかってるんだ。

ルフレやルキナの裏切りになりかねないが、ここだけは…他の奴に代行願おう。
どうしても、倒す気に…なれない。戦意喪失を罵倒してくれていい。


79Mii2021/05/05(水) 11:15:27BW/v7Sfs (9/18)

ファイ「…マスター。深い事情は存じ上げませんが――
    心苦しい理由があるようでしたら、一旦退散して立て直す、
    あるいは他のファイター達に委ねてしまうのも一つの手かと」

見かねたファイが、救いの手を差し伸べてくれる。
頼りのないマスターで本当にすまない。

ルフレ「リンク、さん…!僕のこと、そこまで――――」ウルッ

ルフレが感極まっているが、そんなに立派な選択じゃないんだ。
むしろ敗残兵の気分だぞ、今は。

リンク「ファイ…気遣いありがと、な。

   ――――ルフレ、すまない。俺、甘かったみたいだ。
   ここは本当に申し訳ないんだが、雪辱を晴らしたいと思っているだろうが…
   こいつを倒すのは一旦保留にして一時撤退――――」

ギムレー「おお、そうか。その悪趣味能面女に諭されてようやく自覚したのかい。
     そこのルキナを置いていくというのなら、別に逃げようとも追わないでやろう。
     涙を流し我に感謝するがよい」

ファイ「え……」





リンク「…………」


80Mii2021/05/05(水) 11:18:06BW/v7Sfs (10/18)

リンク「……………………」



リンク「…………………………………………」



リンク「……………………………………………………………………………………」



リンク「――――ルフレ、すまない。俺、甘かったみたいだ。
    ここは本当に申し訳ないんだが、雪辱を晴らしたいと思っているだろうが…
    
    

    こいつ、尊厳を破壊し尽くして完膚なきまでに粉々に吹っ飛ばしていいか?」

ルキナ「」

ピット「」

パルテナ「」

ルフレ「さっき言おうとしたことと真逆になってませんか!?」


81Mii2021/05/05(水) 11:20:47BW/v7Sfs (11/18)

リンク「あーあ、なんだか冷めたわー。
   せっかく見逃してやろうって気持ちも微かに有ったのに、かんっぜんに冷めたわー。
   でも開き直れたから、けちょんけちょんにしてやりたいわー」ハー

ギムレー「お前に、この我を、そんなふうにできるとでも?」

リンク「うっわ、余裕っすねー。さっすが邪竜様、すんばらしい。
    だが一言、出会った時からずっとずっと思っていたことを言わせてくれ。








      ――――――――お前、バカだろう?」



ギムレー「――――は?」



ルキナ達含め、ファイ以外の皆が呆気にとられる。
むしろその様子に、俺が呆気にとられるんですが。


82Mii2021/05/05(水) 11:23:09BW/v7Sfs (12/18)

リンク「素体があの、名高い軍師のルフレだぞ?
   それでいてこの体たらく、こりゃ精神部分のお前は大バカだろう。
   俺も賢い方じゃないが、はっきり言える。お前は歴史に名を残す大バカだ。
   何年か後のキノコ王国の歴史書に倒されっぷりが載るかもだぞ」

ギムレー「――――理由を聞こうか、ありもしない理由を」イライラ

リンク「しょうがないから…よしよし、分からず屋のお前に教えて進ぜよう。

    せっかく安全を確保されたポジションにいたのに、
    わざわざ地の利を捨てて、呑気に戦場に現れたこととか…

    ルキナを苦しめよう、虐げよう、殺そうという一心で
    碌に準備も対策もせず盾役も用意せず接敵したこととか…

    細かいことを指摘すると、まあ色々あるけどさあ。
    一番の大失態は、これだ。





    よりにもよって、どーしてお前は…
    一番の天敵がいるグループに、のこのこ足を踏み込んで喧嘩を売ったのさ」


83Mii2021/05/05(水) 11:25:36BW/v7Sfs (13/18)

そう呆れて投げ掛けると、虚を突かれたような顔をしたあと、
不敵な笑いを浮かべるギムレー。あれ、まだ伝わってない?

ギムレー「大した自信だな、そこまで実力を自負しているか」

ルフレ「おい、ギムレー!お前…!
    リンクさんの戦闘力を馬鹿にしていると、たちまちその命潰えるぞ!」

ルキナ「そ、そうです!リンクさんにかかれば、あなただってきっと
   そう簡単には勝てはしません!」





リンク「みんなして、何言ってるんすか?」

ギムレー「…ん?」

ルフレ「…?」

ルキナ「え、だって…」

リンク「どうせ倒されるんだし、言っておくけれど――――
   今の状況で、お前に対して最大打点があるのは、こっち(俺)じゃなくて――――」


84Mii2021/05/05(水) 11:27:39BW/v7Sfs (14/18)






リンク「まさしくお前がたった今馬鹿にした、あっち」

ファイ「…………………」フヨフヨ





ギムレー「…いきなり何をいって―――」

リンク「お前が防御に徹したと仮定して。
    俺がやると、お前を滅するのに5秒はかかる。

    でも、ファイなら1秒かからない」



ピット「…………ほんまや!」

パルテナ「…………確かに!」ポンッ!

ピットとパルテナはようやく合点がいったらしい。
ルフレとルキナはまだわかっていないみたいだけど、まあいいや。
とっとと倒す準備をしよう。


85Mii2021/05/05(水) 11:31:43BW/v7Sfs (15/18)

リンク「よしファイ、あいつの攻撃を受けたら即座に反撃で終わらせろ。
   声を出す準備をしておけよ。

   おーい邪竜ギムレー、せめてもの情けだ。1発、先に攻撃を仕掛けさせてやるぞ」

ブチブチブチ、と血管が切れまくっているような錯覚。
ギムレーさんは大層お怒りのようだ。おお怖い。…あ、やっぱり怖くない。

ギムレー「ふざけてくれる……!そこまで言うのなら、我が力に平伏すがよい…!」

ロゼッタ(偽)「ぎ、ギムレー様!どうにも怪しいです!
       何か裏工作を働きかけているのではっ!それを見極めてからでも…!」

ギムレー「構うものか!」

そこは構えよ。折角のナイスアシストなのに。
あ、心配しなくても裏工作は特にやってないぞ。

ピット「ま、待った方がいいんじゃないですかね、邪竜ギムレー!」

パルテナ「そうですよ!考え直しましょう、邪竜ギムレー!」

リンク「お前らどっちの味方だ――――」



俺が呟き切るよりも先に、怒涛の勢いでギムレーが迫るっ!
直進上にはファイが。どてっぱらに一発かまそうという算段だ!
どす黒いオーラと、紫電の揺らめきを身に纏い、怒涛の速度で突っ込んでくる!


86Mii2021/05/05(水) 11:34:39BW/v7Sfs (16/18)

ギムレー「全てを統べる邪竜のチカラ、とくと味わえ――――っ!」クワッ

ファイ「――――っ!!」スッ!



ゴオオオオオオオオォォォォ―――ッ!!

ギムレーの 邪竜のブレス!▼
















ファイ(鋼フェアリー)「――――」キンッ!

ファイには 効果が ないみたいだ…▼

ギムレー「ちょ」


87Mii2021/05/05(水) 11:37:18BW/v7Sfs (17/18)

リンク「 女 神 の 詩ィ(フェアリー版いにしえの唄)――――!!!!」ビシィッ

ファイ(魔法レベル Lv.70)「~~~~♪」パアアアアア


タイプ一致! 威力1.5倍!▼

相性抜群! 悪、竜に対してそれぞれ2倍、計4倍!▼

聖剣特効! 魔に対して威力3倍!▼

サウンドシンクロ!「ゼルダの子守唄」が流れているので「女神の詩」の威力2倍!▼

ステータス補正! 威力2倍!▼

ネオ・マスターソード合成補正! 威力5倍!▼

ギムレー(基礎体力レベル Lv.40)「gy」パァン

ギムレーは 光に なりました。
邪竜ギムレーを 倒した!▼


リンク「ドンッ!…と。偽ロゼッタを気絶させて…よし次に行こう」ダンッ! タタタタ

ファイ「私が運ばせて頂きます」フワッ

ルフレ「」

ルキナ「」


88Mii2021/05/05(水) 11:50:16BW/v7Sfs (18/18)

リンク「おーい、どうしたルフレにルキナ、置いてくぞー」

ファイ「如何なさいましたか?」セオイ

ロゼッタ(偽)「」セオワレ



ルフレ「…さ、さぁてと。続けて第二形態ですね、気を引き締めないと!
    それともどこかに潜伏して隙を伺っているのかな?かな?」チラッ チラッ

ルキナ「そそそ、そうですよね!まさかあんなにあっさりギムレーが倒されるわけ――」

リンク「…いや?普通に倒したけど?灰すら残らないほど完膚なきまでに。復活もしないと思うぞ」

ルフレ「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ!?リンクさん!?
    一応…僕たちの王国を荒らしに荒らしまくったラスボスなんですけど!?
    なんで2レス…いや実質1レスでやられるんですか!?おかしいでしょう!?」

リンク「…………弱いからじゃないか?」

ピット「メタ返しすると、相性の利もあって、このSS内だと僕1人でも全快状態からなら勝てるから…」

ルフレ「」

ルキナ「あは、あはは…」ヘタリ

リンク「あれ?ルキナの様子が変だ!くっ、まさか魔術師の仕業か!」ユサユサ

《ファイ、ギムレーを撃破!FEの異形や敵兵、大幅にやる気低下!》


89Mii2021/05/16(日) 09:52:15fQZRWATo (1/12)

トゥーンゼルダ『皆、喜べ!
        リンクのお供のファイが――参戦ついでに、
        邪竜ギムレーをあっさりと打倒してくれたぞ!

        敵方の戦意喪失計り知れず!
        今だ!一気呵成で攻めて攻めて攻め立てろ!

        マリオ、クッパ、大きいリンクのところのグループは、
        一気に転回して中央に戻ってこい!大元をぶっ叩く!
        その他の者は、引き続き犠牲者を出さないよう――――
        無理しない範囲で無理をしろ!』

トゥーンリンク『ははは、なにそれ~!』



ロゼッタ「――――やった!」タタタ

ルカリオ「敵の司令塔がまた1つ消え去ったのはでかいな!
     あとの主力はタブーただ1人だ!このまま突っ走るぞ!」タタタ

ロゼッタ「はいっ!」

中央会場に向かいながら、通りすがりに悪者蹴散らしながら。
浄化にFPを無駄遣いするのも惜しくなってきたせいで、
せっかくのドレスの方は青色をすっかり失い、赤や緑に染まり出したけれど。



ふわりと、気持ちが軽くなる。


90Mii2021/05/16(日) 09:57:10fQZRWATo (2/12)

ほんのちょっとずつ、ちょっとずつ、戦線が…好転。

今の所、亡くなった人の情報は、放送でも視界の中でも…飛び込んでは、来ていません。
これは奇跡と言っていいかもしれません。



色々な人たちの、味方たちの尻拭いのおかげで、私は…まだ「私」でいられます。



ロゼッタ「とは言っても、流石に少し休みたく、なって、きましたねっ…」

ルカリオ「まあ、その気持ちは分からないでも、ない」

そんな折に、奇しくも。
見えてきた建物がありました。…あの看板はっ!

ロゼッタ「あ、ちょっとストップしてください!僥倖です、アイテムショップがありました!
    何か役に立つものがあるかもしれません!」

私の声につられて、キキィッとブレーキを掛けるルカリオ。
この血濡れの格好はビックリされてしまうかもしれませんが、背に腹は代えられません!


91Mii2021/05/16(日) 09:58:55fQZRWATo (3/12)

ロゼッタ「ごめんくださ――――」





扉「CLOSED」ガチャリ



ロゼッタ「あ」

ルカリオ「…そりゃそうだろうな、基本的に全員避難しているはずだし」

ロゼッタ「そんな…!うう、せっかくのチャンスだと思ったのに――――
     仕方がありません、先を急ぎましょう」

せっかくのナイスな判断だと思ったのに、ガッカリ。
…店主さんに罪はまったくないので、どうしようもありませんが。



愛想よく近寄ってきて、おすすめ商品をアピールしてくる店主の姿が
脳裏をかすめて消えて行き――――


92Mii2021/05/16(日) 10:01:35fQZRWATo (4/12)

ルカリオ「――――待て、ロゼッタ!
     さっきゼルダから貰ったものを思い出せ!」



一瞬きょとんとして――――――――



ロゼッタ「―――――そういう、事ですかっ!」

反転しかけた己の体を、また反転。
ルカリオがギョッとするのを気にも留めず、勢いそのまま――――



ロゼッタ「――――はああぁっ!!」



叫びながら、促成栽培で仕上がってきた拳をしかと振り抜いて。
すでに私にとって、障害とならない木製の扉を、錠前もろとも盛大に大破させます!
粉々になった扉は意味をなさなくなり、遮るものがなくなって。
がらんとした店内が露わになりました!手首の痛みなど、軽微、軽微!

ルカリオ「……助言しておいてなんだが、躊躇わなかったな…」

ロゼッタ「褒め言葉と受け取っておきます!」


93Mii2021/05/16(日) 10:06:04fQZRWATo (5/12)

――――器物破損。不法侵入。窃盗。
――――心苦しいことこのうえないですが、この際、罪も犯しましょう!



ロゼッタ「いらっしゃらないこと承知で、ごめんなさい!
     ここにある物、勝手ながら貰っていきます!
     売買契約うんぬんは、その…これで勘弁してください!」ドサッ

使い古されたカウンターに、どっさりと…
ゼルダ姫から頂いたお金、全額積み上げておきました。
多分これで…店の修理費用含めても足りる、はず!

…本来なら、緊急事態ということで無一文でもやるべき行動だったのかも。
私の物怖じを予見してくれていたゼルダ姫に感謝です。



しつこいほど起きていた爆撃や地響きの余波で物が散乱している…
それを考慮しても、少々アイテムの陳列数が少なすぎます。
…毒を食らわば皿まで。心苦しいですが、奥の貯蔵庫までテクテクと歩いていき、
泥棒になった気分で入口を叩き壊します。開き直るしかありませんね。

…やっぱり、大量にありました。所狭しと木箱に詰められた、アイテムたち。
向きが統一せず、乱雑に置かれていることからして、慌てて押し込めた感が満載。
ある程度は避難所に持ち出し、残りは悪用されにくいように片付けておいたのですね。

まあ、今から私たちが使おうとしているのですが。悪用ではないので許してください。


94Mii2021/05/16(日) 10:11:23fQZRWATo (6/12)

あとは、どれをどのくらい持って行くか、ですが――――
アイテム知識に乏しく使い方にも疎い以上、闇雲に持って行っても意味がない。
今は空間魔法で収納、なんてこともできません。
変に欲張って色々持って行こうとしたら、かえって邪魔になってしまいます。

ルカリオにいくつか尋ねてみましたが、首を振り肩をすくめることのほうが
遥かに多くて、あまり参考にはなりませんでした。
まあ、頻繁にキノコ王国に訪れる私の方が知っておくべきでしたよね、失礼いたしました。

ロゼッタ「とりあえず、体力を回復するのが先決ですね―――」パクッ

ルカリオ「それは尤もだな――――」パクッ



スーパーキノコを 使った!
ロゼッタの HPが 回復した!
ルカリオの HPが 回復した!▼



体が楽になるのを確認できたら、全快になるまでありったけ食べて行きます。
…そういえばお腹もすいていたんでした。最後に食事してから半日以上。

決めました。全て片付いたら、お腹いっぱいピーチ姫の料理を味わって舌鼓を打ちましょう。


95Mii2021/05/16(日) 10:14:53fQZRWATo (7/12)

ロゼッタ「……あと、こっちも」ゴクゴク

メイプルシロップを 使った!
ロゼッタの FPが 回復した!▼

ロゼッタ「…甘ったるい…のど越しは形容しがたいものがあります…
     よくデイジー姫は平然と一気飲みできますね…うぷっ」

ルカリオ「ちなみにFP≒魔力≒PP(MOTHER)≠PP(ポケモン)扱いだから
    私がそれを飲んでも効果はないぞ。この王国内での回復手段は基本、就寝のみだ」

ロゼッタ「いきなり変なことを言い出さないでください…」

苦いとか不味いとかよりはよほどいいですが、
シロップ単品をただひたすらに大量に飲み切るのは…かなり、きつい。
背に腹は代えられないので、気分が悪くなろうと飲むんですが。
シロップの入った瓶を、無理やり空にしていきます。これで回復できている、はず!
ちょっと気が急いていて、口の端からポタポタとこぼれるのは見逃してください。



ルカリオ「価格札を見るに、多分こっちの方が回復効率よくないか?ほら、ローヤルゼリー」

ロゼッタ「先に言ってくださいよ!?FP回復量なんてまるで分かっていないんです!」

ひったくるようにそちらも頂いて、さっそく頂きます。
…いえ、待ってください。高級なだけに在庫数が少ないじゃないですか。
だったら持ち出し用に温存しておいたほうが、いい?
ああもう、結局、今の所の回復はメイプルシロップ頼りにすべきってことですね。
…ああ、カロリーが。


96Mii2021/05/16(日) 10:18:25fQZRWATo (8/12)

ロゼッタ「…きもち、わるい……口直しがほしいです…」

ルカリオ「知らないな、またスーパーキノコでも食べて我慢しておくことだ。
     …さて、では何を持ち出していく?お互い、数は限られそうだが。
     いっそのこと、使い道を熟知しているキノコとシロップだけ持って行くか?」



言われて、周りの木箱をガサゴソ、ガサゴソ。

1UPキノコ…どこにもない。そうか、マリオ達が先んじて集めちゃったのかも。
あ、でも似たような色のキノコがありますね。掲示名は…ウルトラキノコ?
なんとなく、最上位に近い回復キノコと感じます。持って行きましょう。



補助用アイテムは…
ねむれよいこよ…敵を眠らせる、のでしょうか。
あっちいけシッシ…敵を強制離脱させる?
グルグルめまわし…敵を混乱させる、とか。

使いこなせれば、どれもなにかと強そうですが。敵の耐性にもよりますね。
なんでもマリオ曰く「補助効果はボスクラスには効かないお約束だぞ」らしいので、
タブーに使っても効果が見込めないかもしれません。うーむ。


97Mii2021/05/16(日) 10:22:27fQZRWATo (9/12)

ちょっと保留して、攻撃用アイテムは…
ユキやこんこん…氷属性の攻撃、ですか。
かみなりドッカン…これは知っています。雷属性の全体攻撃ですよね。
ぼろぼろハンマー…え、壊れかけっぽいですけれど…一応、攻撃アイテム?

キラキラおとし…あ、これもわかります!
基本威力は一番高そうですね、持って行くとしたらこれにしましょう!



ルカリオ「どうだ、決まったか?」

ロゼッタ「…………そう、ですね。決めました!
    『ウルトラキノコ』と『ローヤルゼリー』と『キラキラおとし』…
    
    あ!あと『緊急キノコ』を、背負えるような適当な袋を頂戴して…在庫の限り、持てるだけ!
    あとは『あっちいけシッシ』を1個だけ忍ばせておきましょう」

ルカリオ「よしきた。お前の判断通りに運ぶとしよう。
     ロゼッタ、大袋1つと最後の1個のアイテムだけ運搬を担当しろ。
     残りの大袋3つは私が運ぶくらいでちょうどいいバランスだろう」

ロゼッタ「かたじけないです!…それと!保険として、お互い1個ずつ『緊急キノコ』を最初から懐に!」

ルカリオ「わかった!」

最後に、目に飛び込んできてくれて助かりました。
緊急キノコがあるとないとではかなり余裕に差ができそうです。これ、経験則。
ルカリオが凄まじい勢いでアイテムを袋に詰めていくのを尻目に、
私は『緊急キノコ』の大袋を準備し、続けて『あっちいけシッシ』をポケットに――


98Mii2021/05/16(日) 10:25:04fQZRWATo (10/12)

ロゼッタ「あ」







ファイアフラワー「敵全体対象 威力3です」チョコン







ロゼッタ「なんだかいつもと外見が違いますが…!
     これでパイロキネシスなしでもファイアボールが撃てます!」

ファイアフラワー「撃てないよ」

ロゼッタ「さっそく今から使用して…いえ、ダメージを受けて解除されるのは
   ちょっともったいないですね。忍ばせておいてここぞというときで使わないと」

ルカリオ「今使ったうえで改めて1個忍ばせておけばいいんじゃないか?」

ロゼッタ「その手がありました!」

ファイアフラワー「撃てないってば」


99Mii2021/05/16(日) 10:28:28fQZRWATo (11/12)

ロゼッタ「それっ!!」ガシッ

ファイアフラワー「だから火の玉を一度広範囲に発生させるだけで――――」







なんだか、いつものファイアフラワーと感触が違う。
体中を炎の躍動が駆け巡る、という感覚が湧いてきません。



…………いえ、それは私の怠慢、責任のなすり付け。多少のアイテムの仕様差で躓いて、どうしますか。



炎のチカラ自体は明確にこのアイテムから感じ取れるのですから。
不慮の事故で魔法レベルが下がっていようと、この程度でくじけていては――――

魔法使いとしての名が廃る。





燃えるような赤い花を胸に抱いて、そのチカラを包み込み、
自分の体に浸透、循環させてみれば――――――――


100Mii2021/05/16(日) 10:30:27fQZRWATo (12/12)

――――ポンッ!!

ルカリオ「おお――――――――」



途端に姿が変わってみれば、ルカリオが感嘆、驚愕。
でも、これで、いわゆる――――フルパワーといったところ!
















ファイアロゼッタ「――――さあ、参りましょう!」POWER UP!

ファイアフラワー「」


101Mii2021/05/17(月) 23:00:01eUg3dBcA (1/14)

~司令スペース~

リンク『ファイ、偽ロゼッタ運搬&露払い&ナビゲーションで先導!
   俺、しんがり受け持って不意打ち排除!

   さっそくタブーを征伐しに出かける!ファイの後に、続け―!!』ダダダダダダダダ

パルテナ『ひぃぃぃぃ……!脚が、脚がぁ…石化解除したての体には堪えますぅ…!!』ガクガク

ピット『…ハァッ!…ハァッ!…ハァッ!!ぐぅっ!リンクさん、ファイさん!?手加減たのみます!
   この移動速度は、維持して付いてくのチョーきつい!!』

リンク『なっさけないぞピット!ルキナですらなんとか追い縋ってるぞ?』

ルキナ『…………この、てい、どぉっ!!』ダダダダ

ピット『…あり?』

ルフレ『はぁ、はぁ……あったりまえでしょう!
   さっきは呆気にとられましたが、あのギムレーを瞬殺できたんです!
   僕ですら、今更ながらようやく実感してテンションが爆上がりしてきたのに、
   散々辛酸舐めてきた…あのルキナが奮い立たない訳、ないでしょうが!
   
   見てください、ルキナの顔! 息は荒くとも――――今までで一番、輝いているでしょう!
   僕もうれしくなってきますよっ!はあああぁぁぁっ!!』

トゥーンゼルダ「その意気だ、ルフレ!大きいリンクも、皆をしっかり支えて安全確実に連れてこい!」

リンク『りょーかい!』


102Mii2021/05/17(月) 23:04:30eUg3dBcA (2/14)

トゥーンゼルダ「マリオにルイージ、今の状況は!報告を頼む!」

マリオ『体力がヤバそうな人たちを見かけてはちょこちょこアイテムで回復させつつ
   会場には近づいているぞ!あと、30分くらいで多分辿り着く!』

ルイージ『1UPキノコが尽きそうなのが気懸りだよぉ、
    嫌というほど確保したつもりだったけど足りなかったらどうしよう…』

ピーチ『万が一の時は私に任せて!
   みんなげんきになあれ と おねがいカムバック で回復してみせるから!』

マリオ『…そうかピーチ、助かる!ちなみに今どこにいる!?』

ピーチ『そうね、担当箇所の分担はしておくべきよね。
    今ちょうど第58区に…………』



トゥーンゼルダ「緊急連絡、緊急連絡。
         第58区に偽ピーチ出現、誰でもいいからさっさと潰せ。
         以上、連絡おわり」

クッパ『ワガハイが居る所から目と鼻の先ではないか。
   通りすがりにプチッと潰しておいてやるのだ!』

ピーチ(偽)『どうして!?』

トゥーンゼルダ「わからいでか」


103Mii2021/05/17(月) 23:09:06eUg3dBcA (3/14)

ルカリオ『おい、私と本物のロゼッタも…あと10分程度でたどり着くぞ!
    ロゼッタがしきりに会場の様子を気にしているみたいだが、
    何か安心させてやれる情報はないのか!』

トゥーンゼルダ「安心させてやれる情報、か。
         こちらは相変わらずの膠着状況。ただまあ、それだけでも大進歩だ。

         不定期にタブーの奴がOFF波動を重ね掛けしてくるのに対して、
         MOTHERチーム…今は大きい方のゼル…こほん、シーク、か。
         願いの力を皆に分け与えていることで、なんとか拮抗している感じだよ。

         ただ、どうもシークの疲労がたまってきている。魔法効果が薄れ出した。 
         向こうも分身体ロゼッタを食いつぶしつつ威力を維持しているし、
         これは体力勝負だな。いつまた均衡が破れるかはわからない…」

シーク『失礼なことを言うな。ここが正念場だろう!
   慣れていない魔法行使ではあるが……まだまだ持たせて見せる!

   …ただ、ラジオ塔そのものはなんだかんだと遠隔攻撃を受け続けているな。
   ある程度は選別して排除しているが、流石に機材がやられたらそこで終了だ。
   その時は潔く会場へ向かおう』

トゥーンゼルダ「いろいろと無理を通しているってことだろう、
        ぎりぎりになって途端にやめられても困ってしまうから
        早めに連絡してほしい。頼んだ…いえ、お願いします」

シーク『任せておけ』フッ


――――「ゼルダ」同士だから、通じるものも、きっとある。


104Mii2021/05/17(月) 23:11:50eUg3dBcA (4/14)

ファイアロゼッタ『やっぱり、展開されているスカイガーデンを私がどうにかしないと
         根本的解決が果たされませんね…!
         次に張り直すタイミングで、なんとか張り返さないと…!
         分身体たちの動向をもっと詳しく教えてくださいっ!』

トゥーンゼルダ「うわっ!…ああ、本物のロゼッタか、びっくりした。

        あ、ちょっと待て。ラナからのご神託で本人確認ができるまで、
        今の質問に対しては回答を保留する。
        というより今の連絡を聞かなかったことにする。
        ただの雑音が紛れ込んだ、そういうことにしておこう」

ファイアロゼッタ『薄々予想はしていましたが扱いが酷いっ!?』

マリオ『この、扱われ方に思わずツッコむ反応は本人っぽいけど』

ルイージ『わかるわかる、おっちょこちょいな感じも声だけで伝わってくる』

ファイアロゼッタ『マリオにルイージ、私のこと嫌いですか!?拗ねますよ!』

マリオ『んなわけあるかい。ロゼッタは立派に愛されキャラでいじられキャラだぞ』

ファイアロゼッタ『あ、あのー。納得しがたい返答なのですが…まったくもう。

         今現在、主に回復アイテムを入手して、ルカリオと共に運んでいます。
         入用の方々はおっしゃってくださいね!』

トゥーンゼルダ「おお、助かる!…おっと空耳空耳」

ファイアロゼッタ『一言余計です!』


105Mii2021/05/17(月) 23:17:04eUg3dBcA (5/14)

トゥーンゼルダ「さあ、これで…」ギッ

トゥーンリンク「もうひと踏ん張りだ!」

ヒルダ「ええ!」



会場のど真ん中、
フィールドに不気味に佇む要塞。

幾つもの、数えるのも馬鹿らしい大量の隔壁に囲まれた…
おどろおどろしい魔人。




戦況の変化に、一体何を思っていることやら。
ただ…そう簡単には負けを認めてくれは、しないだろう。
再び口をへの字にして、頬を自分でひっぱたいて…気合いをドンと入れ直した。


106Mii2021/05/17(月) 23:22:48eUg3dBcA (6/14)

~中央会場~

着きましたよ、会場に。やっぱり回復したのは大きかったです。
足取りはだいぶ楽になってきました。

フィールドをいち早く確認。うん、穴ぼこだらけ。修復大変そう…。
観客、大興奮はしていても怯えらしきもの、それほどなし。
…いや、ほんとうに凄い胆力ですね。…順バイアスってやつでしょうか?

集まり合流するファイター達を観察し、弱っていたり疲れていたりするならば、
手早くアイテムを渡していきます。返ってくる笑顔、1つ1つに救われる。

いい加減、偽者たちを一網打尽にしたいです。
そして、タブーを倒し切る手がかりを!

トゥーンゼルダ「おお、戻ってきたかロゼッタ――――
        そして何故かドレスが紅い!いつの間にかポニーテール!
        よく分からないが、偽者と明確に区別できていいな!」

ファイアロゼッタ「それは私もすこし思いました」

そう言って余裕ぶっていると、分身体までファイア状態になるフラグが立ちそうです。
気を、気を引き締めて掛かりましょう。



私の偽者たちは、会場にいる分には、ざっと残り20人そこら。
よし、だいぶ減りました。これで――――


107Mii2021/05/17(月) 23:27:01eUg3dBcA (7/14)






――――戻って、来たか。





タブーの姿を目に入れ、さあ何かやってみよう、と意気込んだばかりというのに。
何か、危険な起動スイッチを踏み抜いてしまったのか――――



ドッゴオオオオオォォォォン!!



ファイアロゼッタ「……え?」

後ろを、振り向く。



ファイアロゼッタ「…な!?」

あちらこちらで、新たに上がる爆炎…!?
な、なんですかこれは!?もうもうと、空高く…白煙が昇っていきます――――!


108Mii2021/05/17(月) 23:31:46eUg3dBcA (8/14)

トゥーンゼルダ「…な、なんだこのありさまはっ!?何が起きている!?
        おい、爆発付近にいる者!急ぎ状況確認をっ!」

トゥーンゼルダの切羽詰まった叫び声が、通信機へ吸い込まれて行きます。
まだまだ、安心できるにはほど遠い…!
しばし待てど、ファイターの皆さんからの回答は得られません。

――――少し先には、私を捉えた、ニヤリと口を歪ませたタブーの姿。
――――わたしの、せい?

――――これが、タブーの、奥の手?



ファイアロゼッタ「あ、あのっ!
         なんだか、『私の到着を確認したうえで起動された何か』だと
         直感が働いているのですが…!」

私のそのセリフが突破口になったのか、ようやく回答が返ってきました!

マリオ『空間魔法からみ…そうか、なんとなく察しがついちまったぞ!
   事前に偽ロゼッタ達がばら撒き続けたステルス爆弾を
   このタイミングで次々と爆発させてるんだ!意識からすっぽ抜けていた!』

ファイアロゼッタ『ば、爆弾!?そんなものが!?』



――――まだ。まだだ。
――――形勢は、まだ私の…このタブーの掌の方に、いくらでも傾けられる!


109Mii2021/05/17(月) 23:36:59eUg3dBcA (9/14)

トゥーンゼルダ「…ちっ、空間魔法に秀でたロゼッタが戻ってくるのを見計らって
        魔法陣を起動されたのか…予兆を悟られないために…!

        こらロゼッタ!お前はもう飛び出すな、今から探しに行っても無駄だ!
        あちらのことはその場のファイター達にまかせて、ここのトラブルを全力で解決しろ!」

ファイアロゼッタ「…………っ、はい」



ヒルダ「きゃあ!?」

ポケモントレーナー「…………!!」ギュウウ

唇を噛んでいたところ、ヒルダ姫の叫びに何事かと思って振り向けば、
ポケモントレーナーさんが真顔で…いえ、内心焦っている感じで、
ゼニガメやフシギソウたちと協力して、自分のリュックを押さえつけています。

リュックの様子がおかしい。パンパンに膨れ上がって、まるで爆発寸前のような――――!
隙間からは時折、真っ赤な炎まで飛び出して、みるからに大変危険な状況です。
顔や両手を炙られ、火傷の跡を重ねつつ、必死にこらえていますが、もう持ちません!

ポケモントレーナー「…………!!!!」グググ

ニャース「仕舞って無効化したはずの爆弾たちが暴発しかかっている、どうしてだ!
    …と言ってるニャ!」

――――そのような小細工を。通りで数が足らなかった。
――――だが、起爆者が私であることを忘れるな。
――――少し本気を出せば、圧縮空間との境界を飛び越えて干渉することなど容易な事。


110Mii2021/05/17(月) 23:43:35eUg3dBcA (10/14)

トゥーンゼルダ「ポケトレ!もういい!遠くに投げ飛ばして離れ――――」

ヨッシー「処理しますね!」シュバババ

駆け寄ってきたヨッシーが、大きく口を開け、長い長い舌を伸ばしまして。
承諾もそっちのけでリュックをペロリンと飲み込みました、まる。

ヨッシー「…………ふんっ!」ポコッ

ポケモントレーナー「…………」

ヨッシー「…あち、あちちちち!
    うわ、タマゴの中ですら炎が溢れかえろうとしてますか。
    ……それっ!!」ブンッ!

ヨッシーが、空の彼方までタマゴをビューンと投げ飛ばしました。
遠くで花火の音が聞こえます。

トゥーンゼルダ「でかしたぞヨッシー!」



ポケモントレーナー「…………………………………………りゅっく」ショボン



――――――――ちっ…!

タブーがちょっと悔しそう。こうしてみると、意外と表情豊かだったり。
…なんて、どうでもいいことですね。


111Mii2021/05/17(月) 23:47:06eUg3dBcA (11/14)

――――だが、まだまだ楽しみは、残っている!



ズガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!



ファイアロゼッタ「……ひっ!今度はなんですか!」

耳を劈くような、連鎖的に響く爆裂音。
火の手が、収まるどころかさらに勢力を拡大して、いる?
それほどまで大量に爆弾を仕掛けられたのですか!?

クッパ『おい、生意気な小娘よ!』

トゥーンゼルダ「なんだ!」

クッパ『爆発の様子をいくつかのポイントで確認した!
   どうにかこうにか逃げ遅れた市民どもを誘導したり、建物の残骸処理を行ったり、
   ついでに偽ピーチをボコったりしているが、妙なことがわかったぞ!

   先ほどから、何もない空間から突如として爆風や灼熱のエネルギーが噴き出す、
   百万歩譲って…これはまあいい!

   問題は、爆発が終わったように見えて、繰り返し…
   威力まで増しながら尽きることなく爆発が起こっていることだ!

   忌々しいが、視えない爆弾を回収する芸当はワガハイたちは専門外なのだ!
   ロゼッタかポケトレでもなければ爆発を止めることは難しいぞ!』


112Mii2021/05/17(月) 23:50:57eUg3dBcA (12/14)

トゥーンゼルダ「……………………ま、さか。



        ロゼッタッ!なんとしてでも敵の空間魔法を抑えつけるんだ!
        こいつは、このステルス爆弾とやらは――――

        爆弾と銘打っておいて、おそらく実のところは、
        タブーが無尽蔵に送り込むFPを糧とした砲台のようなもの!

        空間を支配されているかぎり延々と各所で爆撃を食らってしまう!
        処理が一切追いつかず、ゆくゆくは城下が壊滅するぞ!」

ファイアロゼッタ「…何ですって」サァッ



血の気が引く。
何重にもトラップを仕掛けられていて、悔しくなります。
一部を除いて疲労の度合いが強まっているファイターたち、
今さら再度勢いを削がれたら…とてもとても耐えきれません!

タブーを直接倒せればそれが一番手っ取り早いですが、
相変わらず唖然とする量の隔壁の絶対防御!
ちょっとやそっとじゃ近づけない…悠然と居座るだけのことはあります。
この隔壁たちを無効化する意味でも、やはりなんとしてでも……!


113Mii2021/05/17(月) 23:55:10eUg3dBcA (13/14)

ロゼッタ(偽)「…………うっ」フラッ

ロゼッタ(偽)「…………まだまだ、かわりは、いる、もの」シュゥ・・・

ロゼッタ(偽)「終幕も、もうすぐ…」シュゥ・・・



スカイガーデンを管理していた ロゼッタ(偽)たちが
HP限界で 次々と 消滅した!
敵のスカイガーデンは きれいさっぱり 消え去った!▼



ファイアロゼッタ「――――――――今っ!」

空中庭園が解除されました、千載一遇の待ちに待ったチャンスです!
このチャンスを逃してはいられません!!

HPもFPも十分、魔法レベルだけは不十分!
それでもやるしかない!

本来必要な魔法レベルからかけ離れているなんて弱音は吐けない。
激痛は覚悟しつつ、仁王立ちして、魔法陣を浮かばせて――――!!



ロゼッタ「――――――――空中庭園《スカイガーデン》っ!!!」パアアアアアアア

この空間を、いえ。城下全域を、私たちのテリトリーに――――!


114Mii2021/05/17(月) 23:57:50eUg3dBcA (14/14)




――――――――させるか!



タブーの目が光り、激しい殺気の一睨み。



ロゼッタ(偽)「…………そんなこと」

ロゼッタ(偽)「…………私たちが」

ロゼッタ(偽)「…………黙って見過ごすと、お思いで?」

空中を漂う彼女ら。まさか私の行動を予期しなかったわけがなく。
予定調和とばかりに、たちまち歯向かってくる構えです
魔法陣の数、当然ながらぼろ負け。FPの供給力でもぼろ負け。
ああ、ひょっとして、ひょっとすると、ひょっとしなくても…。





ロゼッタ(偽)「「「「「「「「――――空中庭園《スカイガーデン》、リテイク――っ!!」」」」」」」」パアアアアアアアアア

ファイアロゼッタ「ですよねぇぇ――――っ!!」パアアアアア


115Mii2021/05/18(火) 00:01:21WrsMubP. (1/13)

魔法陣から放出される光と光のぶつかり合い、第2試合!?
ルールはいっしょ、相手の光を霧散させ、魔法陣ごと打ち砕いた方の勝利。



びり、びり、びりり。

開始して2秒、対抗されて1秒で、あっという間に術式が押し込められる!
だから、何度も言っていますが!数の暴力、反対っ!これ無理!無理難題ですっ!!



みし、みし、みしり。

ま、まずい。なんだかさっきから、不吉な痛みと音が。



私の錯覚でなければ、右目がオーバーワークを激しく主張している模様。
すでに、デイジー姫たちとの地獄の特訓中に不穏なヒビが入ってからは
怖くて観察確認すらしたくない状態の右目ですが、
今現在、必死に術式制御を手掛けてくれています。

…でも、大人数頼みで抑え込みに図る偽者たちの術式を、超えること、全く叶わず。
余裕の表情を崩すことすらできかねます。


116Mii2021/05/18(火) 00:06:50WrsMubP. (2/13)

ロゼッタ(偽)「見苦しい哀れな姿ですね、諦めなさい」パアアアアア

ファイアロゼッタ「…………だ…だれ、が、ぁ――――」パアアアア

ロゼッタ(偽)「疲れ果てて無駄なFPを消費するだけですよ」パアアアア

ファイアロゼッタ「う……る、さい、で、すね…!!!」パアアアア



両手を必死に相手方に向け、魔法陣にFPを送り、
おしとやかさなど知ったことかと歯茎を露わにして歯を食いしばって堪えますが、
無理なものは、やっぱり、無理ですっ!今ですら弄ばれている感っ!



マリオ「到着したぞ、はい把握!…ロゼッタの援護だ、偽者の人数を削れ!」サッ!

ルイージ「む、無理だよ兄さん!その前にロゼッタが魔法の打ち合いで負けちゃうよ!…あ、リンクたちも来たみたい!」

リンク「それでもやるしかないだろ!3強の名が廃るし、俺はやるぜ!
    よし皆、ファイ以外は一旦休んどけ。回復したらすぐ戦線復帰しろよ!」

ピット「ゲホッ…ゲホッ…ガハッ…ぐおおおぉぅ、天使遣いが荒いな勇者様!」

パルテナ「…………もう、駄目…」バタリ

リンク「パルテナァ!5分経ったら起きてしゃかりき働けよぉ!!」

ピット「加えて女神遣いも荒いぞ勇者様!」


117Mii2021/05/18(火) 00:12:48WrsMubP. (3/13)

ヒルダ「ロゼッタ、しっかりっ!私たちも付いています!
    いますぐ、Double Slot《相互演算》)を私と!」

お言葉に甘えます、ヒルダ姫!
片手を下げ、彼女の手をしかと握り締めて!



ファイアロゼッタ「――――Double Slot《相互演算》!!」パアアア

相互演算の 効果で 魔法回路が 接続されている!
ヒルダは 術式演算の 一部を 肩代わりした!
ファイアロゼッタの 術式ランクの 限界が すこし高まった!▼



…それでもっ!ヒルダ姫には、大変申し訳、ない、のです、がっ!!

ヒルダ「ぐ、ぐ、ぎっ…………わかって、は、いました、が…私、だとっ、
    助太刀となるには、よわ、すぎ、ますっ!!」プルプル

ヒルダ姫に限界いっぱいの負荷を押し付けても…
まだまだ、ぜんぜん、これっぽっちも足りません!

デイジー「ならば私ならどうかなっ!
     一通りの役目を終えて、デイジー様、華麗に見参!」ズサァッ!

ファイアロゼッタ「接続は自分含めて2人までなのでっ!デイジー姫の魔法回路だとますます駄目です!」

デイジー「切羽詰まるあまり軽やかに慈悲のない門前払いを食らったぁ!?」ガーン


118Mii2021/05/18(火) 00:19:42WrsMubP. (4/13)

トゥーンリンク「頑張れ、ロゼッタ!」

ファイアロゼッタ「がんばって…ます、よぉ…!!!」

ヒルダ姫と手を握り、握り返され。颯爽と登場したデイジー姫に、2人まとめて背中から支えられ。
ふらつく体と頭を、堪えて堪えて、堪えて――――耐えて耐えて、耐えて――――



―――――――――プツッ。



たらり。何かが、頬に、垂れて、来ました。
まあ、半泣き状態ですからこのくらいは想定内…………

デイジー「ちょ、ちょっとお、ロゼッタ、大丈夫!?」

ヒルダ「ひぃ…!」

ファイアロゼッタ(……これ涙じゃない!?一層の激痛と共に右目から出血し出しましたぁ!?
          危険信号がバリバリ出ているじゃないですか、ホントのホントにもう無理、無理ぃ――――!?
          このまま続けると、そう遠くない未来に制御停止+完全失明が待ってますっ!
          誰か助けてぇ!お願いします!何でもしますからぁ!!)

ヒルダ「こんな、しょう、ぶ!いつものロゼッタなら、十分に対抗できるはず、なのに!」

デイジー「目の神秘性を失ったあの事件、ほんま、恨むでぇ……!
     私にも原因があるし、ああもう…!ロゼッタ、ここは諦めて別の策を――――」


119Mii2021/05/18(火) 00:24:16WrsMubP. (5/13)











ピット「……………………おい。今、なんつった?」

ヒルダ「です、からっ!いつものロゼッタなら、このくらいの相手の数なら、
    十分に対抗できるだけの能力が――――」

ピット「いや、その後。お転婆お姫様の台詞の方」

デイジー「ふざけてないで行動してよ…!
     ロゼッタは、魔法制御の要である右目の神秘性を不慮の事故で大幅に失ってだね、
     あらゆるところで弊害が出てるんじゃないかあ…!!」

ピット「…………そうなの!?」

デイジー「そうだよ!!」

ピット「……………………」プルプルプルプル

ピット「早くそれを言って欲しかった!!」ダッ!!

デイジー「……!?なにさ急に怒りだして――――」ビクゥッ


120Mii2021/05/18(火) 00:30:24WrsMubP. (6/13)

パルテナ「――――」

パルテナ「――――」

パルテナ「…………んあ?」ピクッ



ピット「――――――――パルテナ様ぁ!起きて、起きてください!」ガシッ!

パルテナ「――――きゃ、きゃあ、ピット!?
     どどどどうしたのですかいきなり顔を覗き込んで!?ビックリしました!
     たたた立ちますよ立ちますよ、離れてくださいっ!!!」スクッ

ピット「初志貫徹、原点回帰。適材適所、一発逆転。
   僕たちの大事な役割を、ここにきてひとつ、思い出しました!」

パルテナ「や、やくわり?一体なにを…?」

ピット「パルテナ様!…いえ、パルテナさん!このスマブラ編、最後のお願いです!」

パルテナ「な、なんですか一体…!」ドキドキ







ファイアロゼッタ「も……も……もうダメです…………」フラッ


121Mii2021/05/18(火) 00:34:56WrsMubP. (7/13)

ピット「パルテナさん!!

   い いま 試合会場で魔人タブーと戦っている、
   ロゼッタって人の右目の神秘性を――――――――――――――――



   もとにもどしてあげることって できる!?」
   









パルテナ「その者の右目の神秘性を 通常に もどすだけなら 可能だ」

ピット「よかった す すぐに お願いします!!」

パルテナ「神秘性だなんて、私にとって十八番案件じゃないですか!
     安直ですが、さんはい!



     ――――――――――神秘の奇跡ぃぃぃぃ――――っ!!」キラッ!

デイジー「」


122Mii2021/05/18(火) 00:41:02WrsMubP. (8/13)

――――奇跡が、私に、舞い降りた。

ファイアロゼッタ「!?」ピロリーン



ピット「ロゼッタさんっ!!
   パルテナ様の奇跡で ロゼッタさんの魔法レベルが もとにもどったでしょ!?」

ファイアロゼッタ「…………」



ファイアロゼッタの 右目の状態が   完 全 回 復   した!

ファイアロゼッタの魔法レベルが Lv.50から――――



      Lv.  1  3  0   に 戻った!▼



無言で、右目にかかる髪を、ひと掬い。

ファイアロゼッタ「……………………」ペタ ペタ



新たな産声を上げ、活躍したいと奮い立つ目が、確かにそこに…ありました。


123Mii2021/05/18(火) 00:53:44WrsMubP. (9/13)

ファイアロゼッタ「……………………………………………は、はは」

笑っている。この私が、今日初めて、震える心と共に――――笑って、いる。



ロゼッタ(偽)「とうとう気が触れましたか。いい加減に――――」パアアアア

ロゼッタ(偽)「ただの時間の浪費は――――」パアアアア

ロゼッタ(偽)「おやめなさ――――」パアアアア





ファイアロゼッタ「最大出力、全力全開ぃぃぃ――――っ!!」ボンッ!



――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ!
――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ!

ファイアロゼッタの 背後に
魔法陣(特大)が 10個 ログインしました。
1個で ロゼッタ(偽)の魔法陣10個を 蹴散らす 術式動力があります。▼

ヒルダ「」ブフッ

ロゼッタ(偽)「「「「「「「「」」」」」」」」


124Mii2021/05/18(火) 00:57:38WrsMubP. (10/13)

ファイアロゼッタ「これが…本気の――――正真正銘本物の――――
         空中庭園《スカイガーデン》、でーーーす!!」カッ!!

ロゼッタ(偽)「「「「「「「「」」」」」」」」ブチィ



ファイアロゼッタの スカイガーデンが 競り勝った!▼

キノコ王国に 味方のスカイガーデンが 展開されている!
敵の 空間魔法は 全て無効化され 再展開もできない!▼

キノコ城城下に散らばる ステルス爆弾は きれいさっぱり なくなった!
キノコ城城下に設置された 転生の扉は きれいさっぱり なくなった!
ロゼッタ(偽)たちと タブーが まとう隔壁は 存在を許されなくなった!▼

ロゼッタ(偽)たちが 作り出していた異空間が 崩壊した!
中にいたピーチと ロゼッタ(偽)たちが 急に出現して 放りだされた!▼



ピーチ「ぶっ!?…いったぁ…あれ、元の世界に戻って来られた?」サスリ

ロゼッタ(偽)「「「「「「」」」」」」ドサドサドサッ

ファイアロゼッタ「……わぁい!!」バンザーイ



―――――――――――――――・・・。


125Mii2021/05/18(火) 01:00:42WrsMubP. (11/13)

ファイアロゼッタ「タブーも余りの驚愕でカチコチ固まったところで…
          いざっ!反撃開始ですっ!!

          ようやく使える…………   実 分 身っ!!」シュバッ!



――ボカン! ――ボカン! ――ボカン!



ファイアロゼッタ「……全員、にっくき偽者たちに…突撃っ!
         オリジナルの私にトドメを刺させてくださいね!経験値はしっかり分捕りましょう!
         1人あたり敵2,3人…簡単カンタンッ!」

ファイアロゼッタ(分身)×11「「「「「「「「「「「おーーー!!」」」」」」」」」」」
(基礎体力レベル:Lv.44)

ロゼッタ(偽)×30「「「「「「「「」」」」」」」」
(基礎体力レベル:Lv.20  空間魔法使用不可)

ピーチ「え、あ、どうなってるの、これ?」キョロキョロ



マリオ「あ、これ終わったわ」シロメ

ルイージ「終わったね」シロメ

デイジー「そだねー」シロメ


126Mii2021/05/18(火) 01:07:19WrsMubP. (12/13)

ファイアロゼッタ(分身)「唸る拳、食らいなさいっ!…二撃目は――要りません!!」ゴウッ

ロゼッタ(偽)「に゙ゃっ」ガフッ



ファイアロゼッタ(分身)「お願いチコ、チカラを貸して!――『キラキラ落とし』っ!」パアアア

チコ「ママのこと裏切った、恨み―!フィールドの下の下まで叩きつけちゃうよー!!」ゴォォォォッ!

ロゼッタ(偽)「」ゴチィン



ファイアロゼッタ(分身)「威力増し増しの――――ジャイロ、ファイアァ――――っ!!」

ゴオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォ!!

ロゼッタ(偽)「あ゙」ボタッ

ファイアロゼッタ(分身)「…時速364kmってところですか、いい感じですね!
              …風穴空いたのは…よくあることです、気にしない気にしない」グッ

ピーチ「ロゼッタったら、一体だれの影響であんなサバサバとした性格に…」

デイジー「まったく、誰の影響なんだろうね、あっはっは」

ピーチ「…………」グリグリグリグリ

デイジー「イダイイダイイダイ!!」


127Mii2021/05/18(火) 01:11:41WrsMubP. (13/13)

ファイアロゼッタ「オリジナルの私は、せっせと経験値を回収しまーす。

         …?? なんだか変ですね、やっぱり経験値があんまり…まあ、いいか」タタタ



マリオ「がんばれー」ヒラヒラ

ルイージ「わーすごーい」パチパチ

デイジー「ながくくるしいたたかいだった」フッ

ピーチ「というより、ちょっとは手伝ってあげなさいよ!私は行くわよ!」

リンク「…いや、これでいいんじゃね?
   ロゼッタ自身でけりをつけたほうが溜飲も下がるし、
   俺たちは俺たちで…こうしてタブーの破れかぶれ行動を警戒できるわけだし。
   なにより全員が全員必死こいてるより、観客を安心させやすいじゃん。

   そもそも、あと1分くらいでカタが着きそうだし」チャキッ

ピーチ「ええぇ…」ピタッ

ルキナ「うわぁ…ロゼッタさんが、たくさん…」

ルフレ「『赤』対『青』、あまりにも一方的なチーム戦ですねぇ。『青』も割と赤く染まってますが…」


128Mii2021/05/29(土) 16:20:12rMXtY5n2 (1/15)

紆余曲折あって、ようやく――――



私たちの勝利という形での、最高ではないけれども最低限の終幕が――――
近付いてきました。

そっと、ほっと、息を吐く。



ラナ『転生の扉が消滅したことにより、各地区のタブー軍…急速に鎮圧され、収束を開始!!
  いいよいいよ、みんなサイコー!!勝利は近いよ、あと一息!!』

トゥーンゼルダ「わかっているとも!
     
       皆、本当に…本当にっ!よくやってくれた!
       ここまで来たら、最後までしっかり勝ち切るぞ!!」



ファイター達『『『『『『『『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉ――――――――!!』』』』』』』』


129Mii2021/05/29(土) 16:23:17rMXtY5n2 (2/15)

――――これで、すべて、終わりました。

偽者の分身体たちを消し去った後、諸悪の根源を睨みつける私。

一方で「私」の分身体たちはというと………
少し思う所があって、集合を呼び掛けて、消滅してもらいます。
私に軽く触れられて、ぽすん、ぽすんと1人ずつ消えていく。

デイジー「あれ?もう用済みにしちゃうの?もったいないよ?」

ファイアロゼッタ(分身)「…………あとはよろしく頼みました!」シュゥ・・・

ファイアロゼッタ(分身)「それにしても、これだけ分身の数も増えましたか。
              成長の証ですね、凄いことです!では!」シュゥ・・・

ファイアロゼッタ(分身)「ここから逆転負けとか止めてくださいよっ!」シュゥ・・・

ファイアロゼッタ「…………」



――――本当に、変ですね。







――――――――経験値が、入っていない。


130Mii2021/05/29(土) 16:24:53rMXtY5n2 (3/15)

もしかしたら、分身体を経由して…「偽者たちの」得てきた経験値を吸い取れるかも、
と駄目元でやってみたのですが。やっぱり駄目でしたか。

今日は、自らの手で倒したり、分身体にたった今倒させたりと
何十人かの偽者の私を倒しました。本来ならば、それなりに経験値が蓄積されるはず。

ところが、どういうことでしょう。
体の中に、戦いの記録が、戦いの記憶が…そういった経験値が…
偽者の私を倒しても倒しても…どうにも、注ぎ込まれた感覚や形跡がありません。
たぶん、序盤は錯覚していただけで…今日の戦いについては最初から、そう。
異形を倒し続けた分の経験値しか入っていません。

この「実分身《リアルアバター》」の術式仕様の都合上、有り得ないはずなのですが…。



一体全体、彼女たちの経験値、どこに消えて行ったのでしょう?行方不明状態です。
これまでの何十人分の経験値……全部をごそっと集めれば、
基礎体力レベルが1つか2つくらい上がるかもしれないのに。

案外、扱い切れていない、欠陥や綻びのある魔法なのかもしれません。
事態が落ち着いたら、ちゃんと修正を掛けないと。恥ずかしいことこの上ありませんし。


131Mii2021/05/29(土) 16:27:31rMXtY5n2 (4/15)

さてと、タブー。私の身の上話は一旦、棚にでも置いといて。
さんざん、ありとあらゆることをやってくれましたね。
私、控えめに言って…カンカンです。即刻マリオたちに成敗してもらいましょう。

散りばめられた策も、奥の手も、これで完全に潰えたはず。
頼みの綱の防御も掻き消えて、もはやタブーは風前の灯です。
今の今まで調子に乗っていた彼も…さすがに、どうしようもないでしょう。

その事実を肯定するがごとく、タブーの呼吸は荒く、激しい物に。

その巨体は、触手のような何か――もう触手ってことにしましょう―――闇の色の触手を彷徨わせ、
身をブルブルと震わせられることでますます大きく映ります。

たいそう不機嫌にぐるぐるとぶん回された触手が、私たちのすぐそばまで届こうとしては
制御ミスをして霧散し、不気味な音と焦げ臭い臭いだけを空間に残します。

冷静沈着なファイター達に逆上のさまを冷えた目で眺められて、
ますます我慢ならなくなったのか、愚痴に激怒に八つ当たり。



―――――――有り得ない!このようなこと、起こり得ていいはずがない!
―――――――長年、練りに練った非の打ちどころのない計画を立てた!



浮いたまま地団駄を踏み…当然むなしく空を蹴る。
ここに来てみっともなく現実逃避を始めました。
これが演技だったら凄いかも。


132Mii2021/05/29(土) 16:32:36rMXtY5n2 (5/15)

―――――――お前たちに仕返し、復讐し、絶望に浸らせる算段があった!
―――――――ただの一日たりとも、無念と怒りを忘れることはなく一筋だった!
―――――――このチンケな王国など、一瞬にして潰し、叩き壊すことを夢見ていた!
―――――――ありとあらゆる事態に対処し、裏の裏をかくシナリオは完璧だった!
―――――――このようなことが許されるはずが、ない!全て間違っている!

マリオ「一言言おう。  知 ら ん が な。
    そもそも、開始早々、ロゼッタの力に思いっきり浮気して頼り出したじゃないか。
    なーにが練りに練った計画だって?聞いて呆れるな。お前のそれはただの行き当たりばったりだ」



――――――――っ!!



射落とすような鋭い怨念をマリオにぶつけてみたはいいものの、
さすがマリオ、格が違うとはこのことです。タブーに全く怯む様子はありません。

むらびと「…………ロゼッタお姉ちゃん、タブーの浮気相手?」

ファイアロゼッタ「身の毛もよだつようなおぞましいこと言わないでください!」



――――お前、たち!
――――だいいち、大勢で寄ってたかって、卑怯ではないか!
――――やれ、正義だ? やれ、勧善懲悪だ?
――――1対1で正々堂々戦わずして、なにが英雄だ!
――――結局は、烏合の衆!集まらなければ何もできない腰抜けだ!


133Mii2021/05/29(土) 16:34:39rMXtY5n2 (6/15)

唾…のような何か不気味な液体を卑しくまき散らしつつ、
開き直りというか責任転嫁というか、都合のよい話というか。
自分がしでかしてきたことは棚に上げ、こちらを責める風な態度に変貌。
喚き立て、がなり立て、捲し立てる。

…あ。病気や呪いにでもかかったら大変なので。
その汚らわしい唾吐きは隔壁でシャットアウトしておきますね…っと。
ああ、空間魔法が使えるって、やっぱり気持ちがいいですね!



デイジー「うわー、うっざ」イラッ

ピーチ「同感だけど…もうちょっとおしとやかな言葉選びなさいよ」ヒソヒソ

ルイージ「どう考えても、数の暴力を仕掛けて高笑いしてたの、そっちじゃん…」

デイジー姫のような直情表現は私には合いませんが。
デイジー姫の苛つきもごもっとも。今更何を言っているのやら。
赤子の…いえ、赤子未満の幼稚な議論の仕方です。



そんなことを、のほほんと、考えてしまっていたら。



マリオが、そして、リンクが。
真顔で、ヌッと踏み出しました。


134Mii2021/05/29(土) 16:37:41rMXtY5n2 (7/15)

リンク「おい」

マリオ「なあ」





2人「「誰が     卑 怯     だって?」」





ピーチ「一体、どうしたのよ2人とも。
   突っ込むとこ、そんなとこじゃないでしょ…………

   ……あの?あれ?2人とも?本当に、どうしたの?」

味方陣営にまで、金縛りにあったかのような緊張が走ります。
な、なんですか、この重苦しさは…。



マリオ「聞いたか、リンク。よりにもよって俺たちを卑怯呼ばわりだと」

リンク「聞きましたよマリオさん。よりにもよって俺たちが卑怯呼ばわりかあ」

――――――――――――――――…………。


135Mii2021/05/29(土) 16:45:20rMXtY5n2 (8/15)

マリオ「もともと義務でもないのに冒険に身を乗り出して、
   味方の誰かを盾にして進むでもなく潤沢な軍資金があるわけでもなく、
   死に物狂いどころか死に続けて強敵たちから人々を助け出し、
   大した給料も地位も貰わずに、自由気ままに生きられれば良しとし、
   実力や権力を振り翳して世を牛耳るような馬鹿もしない。

   悪さをするまでは『疑わしきは罰せず』で見逃してやり、
   悪人悪役が人質をとって脅しに来れば素直に従い、
   それでいて多少の反省でも見せてくれるなら悪役にトドメは刺さず、
   なんなら親睦を深めようとエンターテインメントに誘い込み、なるたけできるだけ和平の道を探る。
   色んな仕事に駆り出されつつ、日々精進しつつ、あれこれ考えてるんだけど。
   そんな生き方が、卑怯だと。ほーん?」

リンク「理解者もロクにいない一人ぼっちの状態で伝説の勇者として投げ出されて、
   お姫様に促されるまま半強制的に冒険に繰り出す羽目になって、
   自分だけ執拗に追い回す殺戮ニワトリに怯える毎日を送り、
   もっと最初からゴロン族と仲良くしとけよといつの時代でもため息ばかりつき、
   重要な装備は、まともに渡す気ないだろうという辺境まで取りに行かされる。

   明かりの位置が左右対称になるようにたいまつで火を灯せとか、規則性を見破って見えない床を進めとか、
    『理屈じゃない、感じるんだ』的なアクションを言いなりのままやらされて、
   あえておぼろげに目標を定めようとしたら 『ここに注目しようZ!』って謎の悪魔の囁きが飛んできて、
   それを無視して自由度の高い動きをマスターするまでに時間を食わされて。

   別に国ひとつ救うのは吝かじゃないけど、救ったそばから次の冒険に駆り出され、
   平和な世界を享受できず、それでも割り切って縁の下の力持ちとして暗躍し、
   アフターケアとしてパトロール活動に勤しみ、各伝説の守護神のごとく振る舞う。
   そんな生き方が、卑怯だと。へえぇ?」

ピーチ「変なスイッチ入っちゃってる!?」


136Mii2021/05/29(土) 16:53:27rMXtY5n2 (9/15)

マリオ「俺たちはなあ!理不尽なこと、納得いかないことも飲みこんで
   一方で自分たちは姑息な手で迫ろうとはせずに敵を倒し続けてるんだぞ!
   俺たちの境遇も知らずに卑怯とはよく言えたもんだな!」   

リンク「そうだそうだ!寝言は寝ていえコンチクショーめ!
   ふざけんなよタブー!その物言い、キレたわ!マジギレだわ!
   今でこそ楽しみながらっていう余裕ができてきたとはいえ、
   昔も今も貧乏くじを引き続けているのは変わらないの、分かってるか!ええ?何とか言ってみろや!」

――――――――――――――――…!?

ファイアロゼッタ「」

ピーチ「なんだか私にも流れ弾で言葉の刃が突き刺さるっ!?」

リンク「おいクッパ!お前も3強の立場として何かガツンと言ってやれ!」

クッパ「…え、あの。いやー。ワガハイがその場に立つのは…なんだ。
   昔のことを思い出すと、ちょーっと肩身が狭いというか、もれなくブーメランが刺さるというか…」

マリオ「今が変われてるなら別にいいじゃん」

クッパ「む、むう。そうか?ならば……おいタブー!
   先ほどの妄言、聞き捨てならん!観念するがよい、この虚け者め!」

マリオ「よし、とっとと潰すぞ2人とも!」ダダダダッ!

リンク「おうよ!」ダダダダッ!

クッパ「同感だ!これ以上死に逃れさせてもろくなことにならんからな!」ドドドドッ!!


137Mii2021/05/29(土) 16:56:42rMXtY5n2 (10/15)

……3強の皆さんが、一斉に、駆けたっ!



デイジー「いっけー!最終決戦の始まりだああぁ――――!!」





――――――――何を、小癪なァ――――!!



リンク「ここでぇ!本日2度目の……『お前、バカだろう?』」ダダダダッ!



マリオ「認めてやる。確かに、お前さんの不意打ちスタート、搦め手や嵌め手…
    色々な作戦が決まりまくって、中々に手強かった。
    それこそ、危うく負けかけるくらいにはっ!」ダダダダッ!



クッパ「だが、肝心な基礎の基礎の事実について、おつむが弱かったようだな!」ドドドドッ!!



彼らは、超速で移動しながらも、言葉をつらつらと並べ立てて行き…!


138Mii2021/05/29(土) 16:59:47rMXtY5n2 (11/15)

マリオ「俺たちはっ!断じてっ!!」

グワッシャアアアアアアアアア!!

―――――――――――――――――――「」  \204.8%/


リンク「お前の戦闘力自体を、脅威に思ったことなんてないぞぉ――――!!」

シャキイイイイイイイイイイン!!

―――――――――――――――――――「」  \398.1%/


クッパ「そのまま燃え尽きて地獄へ落ちろぉ―――――――!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!

―――――――――――――――――――「」  \TOTAL 999.9%/



防御壁も何もなくなったのが運のツキ。
タブー、下へ下へ参りまーす。

3人「「「いえーい」」」ハイタッチ

ファイアロゼッタ「…ええええええええええええ――――!?」ズルッ

デイジー「奈落の底へぶっ飛ばして5秒で最終決戦終わったあ――――!?」


139Mii2021/05/29(土) 17:05:05rMXtY5n2 (12/15)

むらびと「わーいわーい、勝った勝ったあ!!
    あとは街中を制圧すれば万事解決だね!」ピョン

ファルコ「そ、そうだな。遅めの昼飯でも食ってていいかもしれないぜ!」

フォックス「そうと決まれば、皆でソーメンでも食べるか!
     ファルコの分だけ大盛りにするように頼んでおくぞ!」

ファルコ「無理にネタを拾おうとするんじゃねぇよフォックス!?」

ルイージ「…終わったんだね、よかったあ。さっすが兄さんたちだね!」

マリオ「ここで油断するから駄目なんだぞ、ルイージ。
   まだ犠牲者0ってのは未確定なんだからな!全部片付いてから一休み、だ!」

ルイージ「もちろんだよ、頑張ろうね!」

ピーチ「やっと、騒動が終わるのね…ふう、しんどかった…」

ルフレ「…………はは、今更ながら、体が震えてきたよ。
    何かを成し遂げたって気持ち、久方ぶりだな。ルキナはどう?」

ルキナ「…ルフレ、さん。
    こんな達成感、初めてかも、しれません。ただただ、嬉しいっ……!
    私も、いつか、こんなことを主体的に成し遂げられる立派な剣士になりたい…!」


140Mii2021/05/29(土) 17:06:53rMXtY5n2 (13/15)

やった。やりました!
誰もが胸をなで下ろし、黒幕の完全消滅を喜び叫ぶ。



ピット「やりましたよパルテナ様!」

パルテナ「おめでとう!そしてありがとう。つらい思いをさせてしまいましたね」

ピット「これで平和がもどりましたね。ああ、太陽の光があったかいなぁ」

パルテナ「まぁ、ピットったら」

ピット「これにて!スマブラ編、無事にしゅーりょー!めでたしめでたし!」バッ

パルテナ「覚えている方は絶滅危惧種でしょうが…
     2年以上前、2つ前のスレから切り処を失ったまま長々と続いていた…
     第3章、完!ですね!」

2人「「あははははは」」

ブラックピット「速攻でフラグ立てるなぁ――――っ!!」





物語を紡ぎ終え、スタッフロールの余韻に浸っているような面持ちで、
ピットさんとパルテナさんが曇りない表情で朗らかに笑い出して…。


141Mii2021/05/29(土) 17:09:41rMXtY5n2 (14/15)


ファイアロゼッタ「…?気のせいでしょうか」

妙な胸騒ぎが…………。



ふと、夕日が沈まんとするフィールドで、
おそるおそる頭上を見上げて――――





マリオ「…なんだと!?」

リンク「…なにぃ!?」

クッパ「そんな、馬鹿な…っ!」





ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・!

――――――――奥の手の、その先の奥の手、ここに成れり――――


142Mii2021/05/29(土) 17:11:18rMXtY5n2 (15/15)

確かに、倒したはずのタブー。

瞬殺され、なすすべなく奈落の底に落とされて行ったはずの、タブー。





その、タブーが。





――――――――グオオオオオオオオ・・・・・・!!

――――――――もう、手加減、無用。
――――――――全てのファイター達よ。全ての愚物どもよ。
――――――――私を怒らせたことを、思う存分、後悔するがよい――――!







上空が、一瞬キラッと光ったかと思うと。

殺意むき出しにして、フィールドに舞い降りてきたのです――――!


143以下、名無しが深夜にお送りします2021/05/31(月) 23:27:09kp475iEo (1/7)

ピーチ「……………………」

ピーチ「……………………ありえない」アゼン

ピーチ「そんな、そんなこと、あるわけ…!」プルプル

ピーチ「…はっ!まさか、ディメーンの時みたいに――――
   複製体のストックがどうのこうのって話なのかしら!?

   ロゼッタッ!急ぎ、このあたりの空間をよーく調査してもらえる!?
   どんな小さな痕跡も、絶対に見逃さないで!」

ファイアロゼッタ「は、はいっ!さっそく!」パアアアアアアア!!



全て片付いたと安心しておいての、この仕打ち。
汗がまたぶり返して、それでも自信を落ち着かせつつ魔法を行使。
魔法陣を大量に出現させ、ありったけのFPを注ぎ込んで調査、調査!
出し惜しみなどできようはずがありません!







…なにも、見当たらない。

――――――――そんな、馬鹿な。


144Mii2021/05/31(月) 23:31:26kp475iEo (2/7)

マリオ「考え込むのは後回しだ、後手を引くと何をされるかわからん!
   とりあえず、もう一回倒すぜ!行くぞ!」

リンク「おう!任せとけ!」



素早く頭を切り替えて、マリオとリンクが再び――――タブーに向かって飛び掛かります。
その速さ、とんでもない。



――――――――――――――――ぐがっ…!



幸い、再出現したからといって強さが変わっているわけではない模様。
2人の敵では、さらさらありません。

触手とプラズマ攻撃をいともあっさり掻い潜り…
マリオが盛大に蹴とばして、吹っ飛んだ先に待ち構えていたリンクによって…!



リンク「でやあああああああああ!!」ブンッ!



スパァッと。豆腐でも切っているかのようにあっさりと斬って捨てられる。


145Mii2021/05/31(月) 23:35:47kp475iEo (3/7)

リンク「まだまだっ!ここから、連撃だぜっ!!――――ファイ!俺に力を貸してくれ!」

ファイ「仰せのままに――――!!」

ふわりと浮き上がり――吸い込まれるように、剣に宿る女性。
リンクの構える聖剣が、一層際立った輝きを煌々と放ちます!

まるで空中舞踊。地に降り立つまでに、
何振りも、何十振りも繰り出された聖剣の軌跡が、タブーを襲う。
切り裂かれて、切り裂かれて、たちまち細切れになる怒涛の攻め。
私などでは、その光のような速さを目で追うことすらできません。



――――――――――――――――「」



リンク「これで、終いだああぁっ!」

斬れるだけ思う存分斬りまくって。どこからともなく取り出された――――
リンクの繰り出す巨大なハンマーによって、それらの細切れは…
全部まとめて、フィールドにぐしゃりと叩きつけられます。
もう、これで生きていると思う方が無理でしょう。

ハンマーの隙間から零れ出す不気味な色の液体が、ジュウ…と不気味な音を立てて煙と化し、
ある程度の所まで立ち上って…ほどなく、消えて行きました。

リンク「ったく、絡繰りはさっぱりだが…やれやれ、しつこかったな…」


146Mii2021/05/31(月) 23:39:21kp475iEo (4/7)

クッパ「……!? おいリンク!まただぞ!」

リンク「ぎえっ!?」



――――――――お、のれ……………!
――――――――むだ、だ、と、言ったはずだ…!!



マリオ「また!?またなのか!?どうなってる!?」

ピーチ「ちょっとロゼッタ!今の瞬間、勿論調べてたわよね!?
    発動の瞬間くらい、さすがにネタに気付いたでしょ!
    空間にどんな作用を働きかけてるの!はやく教えてちょうだい!
    このままだと何をしでかされるか――――」

またまた、頭上に現れたタブーを呆然と見上げながら――――私は――――



ファイアロゼッタ「………………………………………………


          
          …………………………わか、りません」

マリオ「嘘だろ!?」


147Mii2021/05/31(月) 23:43:18kp475iEo (5/7)

ファイアロゼッタ「ほんとのほんとに、正体が掴めません。
         タブーが使ったと思わしき空間魔法の形跡なんてどこにもないですし、
         なによりスカイガーデンは今も問題なく城下に展開・発動中です。
         破られた様子なんて一切ないんです。

         ――すなわち。空間魔法なんて、そもそも、使われていない」

ピーチ「空間魔法が、使われて、いない…………?
    なんなのよ、もう。なんなのよ…いい加減にしてよ…」

解決したと思っていたところに、足止め食らって。
ピーチ姫が、これまでの疲労が祟ったのか、蹲ってしまいます。
顔色、最悪。頭の中、ぐちゃぐちゃになってしまっているのかもしれません。



デイジー「…………?」

デイジー「…………うーん」

デイジー「――――――――でもアイツ、なんだか苦しそうでもあるよ?
    この表情、どこかで見覚えがあるような――――――――それも、つい最近…」

ピーチ「…苦しそう?」



ファイアロゼッタ「…苦しそう?」


148Mii2021/05/31(月) 23:47:54kp475iEo (6/7)

見覚えのある、苦しそうな表情。
そうデイジー姫が言うのを聞いて。

ファイアロゼッタ「…あ」

ヒルダ「…………あああっ!!」

ひときわ大きな声を出し、合点がいったらしいヒルダ姫と、思わず顔を見合わせます。
ここまでのヒントが有ったら、さすがにすぐに気付きました。
きっと、ゼルダ姫も、たやすく気付けるのだと、思います。



これは、まるで――――――――



ヒルダ姫と頷き合って、それからそれから…!
急ぎ、タブーに悟られないようにピーチ姫に近づき、耳打ち!

ピーチ「…ど、どうしたのロゼッタぁ…」

ファイアロゼッタ「精神が摩耗しているところ、申し訳ありません…!あ、あの、ピーチ姫…!
          あのタブーの再出現の様子…不死身になったとか、新しい個体がお出まししたとかではなく…



          単純に『残機復活した』感じに近くないでしょうか!?」ヒソヒソ

ピーチ「……!?」ハッ!?


149Mii2021/05/31(月) 23:54:29kp475iEo (7/7)

ヒルダ「あの苦悶の表情、倒されたときの経験を引き継いでいるとしか思えません!
   決まって同じ場所から再出現するというのも、まさしく…!」ヒソヒソ

ファイアロゼッタ「もしかしたら、長年フィールドに潜伏されているうちに…
         データベースにハッキングして、まんまと寄生して……
         勝手に残機制度を利用されてしまっているのかも…!」

もちろん、これだって仮説にすぎません。
根拠も何もありません。

でも、タブーならやりかねない、そのくらいのことは考えるだろう、とも思えます。
過去に、マリオ達の実力を少しは味わったはずなのですから。
ファイターたちの戦いを、盗み見てきたはずなのですから。



そう言うや否や、ピーチ姫はたちまち思考モード。



ピーチ「ハッキング…………!?そうか、それなら…
   アイツが、出現時から今の今まで部下や異形に指示を出すのみで、
   フィールドから一切離れようとしなかったことにも説明がつく…!

   こちらが残機システムを作動させた段階で、塩を送ってしまっていたのね…!
   アイツは自分の強さを自覚して最後の保険を掛けていたってこと…!

   気付かないままだったら、延々と時間稼ぎおよび無駄な疲弊をさせられていたわ!
   ありがとう、ロゼッタ!ヒルダ!」


150Mii2021/06/01(火) 00:01:27ykdUu4jg (1/26)

ここの、タブーとの直接対決に関して言うならば劣勢から優勢に転じたとは思えますが。
会場の外の、城下に関しては、実はまだまだ油断ならない局面が続きます。

空間魔法を禁ずる、スカイガーデン。
ただし、既に相手方に仕掛けられた「拡散術式」は例外で、
タブーが倒れない限り効力を失ってくれません。

そして、タブーの繰り出すOFF波動は空間魔法ではなく…
今でも、城下の皆さんを苦しめ続けている。
これらのことを総合的に考えると、スリップダメージは一向に止まない以上…
時間を掛けてしまう訳にはいかないのです。

ファイアロゼッタ「それで、対策はあるのですか?」

ピーチ「ハッキングされたのなら、その内容を捉えて処断するのがベストだけど。
   今はそこまでする余裕は全然ない。データベースのコード書換だなんて、
   私でも何時間かかることやら。だから、確実な方法をとる。
   
   ――――制御室から…残機システムを。
   せっかくONにしておいてなんだけど、大元から再び…OFFにしてしまうわ!」

ああ、それができるのならば、それが一番分かりやすい!
残機がなくなれば復活しない。単純明快な方法です!

フラフラとしながらも、ピーチ姫がフィールド外へ。
リンクによって、もう面倒だとばかりにただの肘鉄で頭蓋を砕かれ、
3回目に倒されたタブーが、目を逸らした隙を衝きました。

控えていたキノピオに、ささっと耳打ち。ハッとした表情のキノピオ。
そのままキノピオを引き連れ、一目散に制御室に向かっていきます。


151Mii2021/06/01(火) 00:05:02ykdUu4jg (2/26)

ファイアロゼッタ「よし、あとは…!」



相変わらずまたもや復活してきますが、最後のカウントダウンが始まろうとしています。

ピーチ姫がシステムを操作するのを待って…
残機が切れたことも気付かないタブーを倒す局面を作りだせば終わりですね!
奥の手の、そのまた奥の手とやらも、これにて封じてしまいましょう!



4回目。今度はクッパが重戦車のごとくタックルを仕掛けて、
細胞もろとも砕く感じで水平方向へブロー。



5回目。マリオがジャンプパンチで高く高く打ち上げて、そのまま行き先、空の果て。



すがすがしいほどテンポよく、休ませることも一切せず、
3強の面子がいとも簡単に、復活した傍からタブーを蹂躙していきます。

タブーが口から何かを吐いていますが…うん。
酸を吐き出す特殊攻撃、というよりは単純に嘔吐しているだけでしょう。
飛び散った地面を黒く変色させ、触るとどうにかなりそうなので、
警戒するに越したことはありませんが。ブクブクと変な発泡音と臭いまで発しています。
…気色悪くて嫌ですね。近くを通ることすら拒否したいくらい。


152Mii2021/06/01(火) 00:10:11ykdUu4jg (3/26)

タブーも、威勢よく反撃宣言をしておきながらただ死に続けてなるものかと、
数多くの触手をコントロールして、ファイター達に向けて走らせて来ます。
数だけは確かに多い…それでも。



マルス「フンッ!…そんな貧弱なもの、1本たりとも通さないよ。
    この程度の処理なら、僕たちに任せてくれ、リンクたち!」ザンッ!

デデデ「ほっ!よっ!なんの!
   全部モグラたたきみたいに潰してやるぞい!」ドゴォッ! ドゴォッ!

ワリオ「みんな纏めて轢いちまうぜぇ!ガハハハハ!」ブロロロロロ



皆さん、華麗に掻い潜って、反撃、猛撃、総攻撃。
今となっては、タブーを中央においてほぼ360度、
ぐるりと強者たちが取り囲むくらいの層の厚さになっています。

…行ける!攻撃面も防御面も盤石です!


153Mii2021/06/01(火) 00:14:41ykdUu4jg (4/26)

~制御室~

ピーチ「…………くっ、はぁ、はぁ。
   着いたっと、早速私の手で残機システムをOFFに――――――――」カタカタッ

キノピオ「…はやく、早くやってしまいましょう、姫様!勝利は目の前です!」

ピーチ「……分かってるわよ。これがこうなって、こう操作して…ええと?
    …………うぅ、こんな単純な立ち下げ処理にも結構まごつくなんて、
    やっぱり私、相当に精神参ってるわね…あ、こっちか。よし――」カタカタカタカタッ

若干眩暈もするけれど、こんなとこで、誤作動なんてさせてられないわ。
皆の期待、一身に背負っているのだから。



キノピオ「だ、大丈夫でしょうか?」

ピーチ「…うん、OK。抜かりはない、なんとかなったわ、私が幻覚を見ているのでもなければ」

スクリーン画面中央にでかでかと。
危機感を感じさせる真っ赤なアラートと共に、パッと現れる選択肢。





「残機システムを強制的に無効化してもよろしいですか?  OK / CANCEL 」


154Mii2021/06/01(火) 00:17:38ykdUu4jg (5/26)

あとは、クリックひとつで…5秒程度のタイムラグをもって、
全フィールドの残機制度が働かなくなる。

システムON/OFF切り替えは誤作動でも起きたら一大事だから、
通常時は一度ONになったら、OFFにしようと働きかけても…
警告を出しながら徐々にOFFになるように。

一度OFFになったら、ONにしようとあれこれいじくっても…
警告を出しながら徐々にONになるように。

非常電源交えた何重もの並列サーキットで保全しているスグレモノ。
緊急動作で即時切替ができるのはこの王国中で私だけの特権よ。



ピーチ「…でもその前に、一個だけ準備がいるわ」ピタッ・・・



一瞬、先走って指を最後の1cm走らせようとしたけれど。
このままだと、「万が一」ということもありえる。
危険な芽は、今のうちに摘み取っておかなくちゃ。

キノピオ「準備…?それは一体?」

ピーチ「焦っちゃダメよ私。深呼吸、深呼吸…ふう。
    大会参加者の名簿をしっかり全部指差し確認して…っと」

前々から備え付けてあった、全員の顔写真と名前表記、紹介文を今一度確認して。
怖いので、3巡ぐらい見返して。…よし、万全!


155Mii2021/06/01(火) 00:20:51ykdUu4jg (6/26)

ピーチ「……………………全体放送、ONにして…!!





   『ゲッコウガ!ルフレ!ルキナ!パルテナ!シュルク!
   今呼ばれた者たちは、直ちにフィールドから離脱しなさい!

   繰り返す!
   ゲッコウガ!ルフレ!ルキナ!パルテナ!シュルク!
   今呼ばれた者たちは、直ちにフィールドから離脱しなさい!』」

キノピオ「…!?」



もはや脅威はタブーだけ…その想いから、
ファイターの多くがフィールドに集まってきている。
それを、裏目にするわけには…いかない!



ええ。私はまだまだ…冴えている!


156Mii2021/06/01(火) 00:25:17ykdUu4jg (7/26)

~フィールド~

シュルク「…うわ、名指しされました?どういうことだろう…?
    と、とにかく言われた通り動こうっと!」バッ

ゲッコウガ「…………」散ッ!

ルフレ「え、突拍子もない指示が…一体これは?」

ルキナ「何か、私たちでは考えも及ばない策があるのでしょう、
    これまで十分に、ピーチ姫の才覚は目の当たりにしてきました。
    従っておきましょうルフレさん!」ダダッ

ルフレ「そ、そうだね!」ダダッ

パルテナ「…………ははーん、そういうことですか」

ピット「パルテナ様?お心あたりが?」

パルテナ「お恥ずかしい話ですが。
    このSS的に、基礎体力レベルがとりわけ低いグループが警告を受けた、
    といったところですね。…とどのつまりですね、今から何か、
    私たちがフィールドに残っているとリスクがある作戦を採るのでしょう」ヒソヒソ

ピット「Forの新たなる挑戦者枠で、登場作品も経過年月も決して多くない…
   なるほど、そういうことか。でも、パルテナ様は経過年月なら決して…」ヒソヒソ

パルテナ「作品数がねえ」

ピット「まあ作品数が、ですねえ」ガクッ


157Mii2021/06/01(火) 00:29:02ykdUu4jg (8/26)

~制御室~

ピーチ「…よし!不意打ちで万が一にも死にかねないファイターは…
   会場から遠ざけられたわね!あとは…!これで、おしまい!!」

キノピオ「そういうことだったんですね!さすがは姫様!
    残機システムを切る影響は味方にも及んでしまいますからね!
    御見それいたしました!」

限界ぎりぎり、もうタブーにネタバレしていいところで、ファイター皆に、種明かし!
今さら慌てても、もう遅いわよ、タブー!







~タブー、そしてファイター達が集うフィールド~

ピーチ『皆、よく聞いてっ!この放送を終えて、5秒後…
   残機復活が停止するわ!みんなも…そして、にっくきタブーもっ!
   安全には十二分にマージンをとりつつ、畳みかけてちょうだい!

   残機復活システム停止、5秒前っ!!』



どよめくファイター達。
…語り掛けながらも、ピーチ姫の策が成ったようです!!


158Mii2021/06/01(火) 00:32:58ykdUu4jg (9/26)




…………そして。









――――――――――――オオオオオオオオアアアアアアア!?









唖然とし、理解不能な雄叫びを上げるタブー。
一瞬冗談かと思ったのかもしれないですが、謎の力か何かを使って、
残機システムとのアクセス異変でも感じ取ったのでしょうか。

とにもかくにも、最後の拠り所を…失った!
残すところは、あと、たったの5秒です!


159Mii2021/06/01(火) 00:36:10ykdUu4jg (10/26)


――――――4秒前!

理解が追いつかず、動き出せないタブーが、1秒無駄にしてくれました。
儲けものといったところでしょう。



――――――3秒前!

今日の、短くて本当に長かった…戦いの中で。
これまでで、最も厳つく憤怒冷めぬ顔立ちとなったところで、次の1秒が過ぎました。



――――――2秒前!

不敵に笑ったデイジー姫。挑発っぽくVサインを見せ付けて、
タブーに対して勝利宣言。





――――――1秒前!

万事休すで、どうしても策が浮かばなかったのか。
今さら、しおらしくすれば許してもらえるとか、甘い考えを抱いたのか。
理由はよくわかりませんし分かりたくもありませんが…
数多の触手を縮め込ませて、タブーがじりっと後ずさり――――


160Mii2021/06/01(火) 00:38:42ykdUu4jg (11/26)










―――― 零 !









キイイイィィィィィィ――――――――――――ン…!



ピーチ『いっけえええええええぇぇ!!』



フィールドに 働いていた 残機システムが 停止した!
ファイターたちは 残機システムの 保護から 放り出された!
タブーは 残機制度の 保護から 放り出された!▼


161Mii2021/06/01(火) 00:41:31ykdUu4jg (12/26)

――――ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!

――――私の、永遠の、命を……………………

――――カエセエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェ!!





カウントダウンが、終わった、とたん。

おぞましい闇の雰囲気が、大波津波となって伝播してくる感覚。
タブーが、全てを投げ打ち、己の肢体の崩壊も厭わず…!断裂の音を響かせながら…!
ありったけの触手を、もはやコントロールすら無視して、一斉に解き放ちました!

ちりぢりばらばらの触手は、留められていた根元の拘束を失い。

あるものは豪速で矢のように鋭く!
あるものは空気抵抗に耐え切れず、塊状、球体状に分裂しながら、それでも前へ!
執念深さにもほどがあります。…………でもっ!

――――マリオが弾き。

――――リンクが斬り落とし。

――――クッパが焼き尽くし。

そうやすやすとは、この包囲網は突破できませんよ!
その触手全て、無力化してしまえばタブーに最早打つ手なし、こちらの勝ちは確定です!


162Mii2021/06/01(火) 00:46:45ykdUu4jg (13/26)

…あ。そう言ったそばから、たった一筋、一条だけ。

あまりにも細く、速すぎて、マリオ達でも咄嗟に捉えきれなかった触手が。



でもでも、そもそも威力がないんですから。

並のファイターなら、せいぜい運が悪くて骨折程度。私ですら、即死するほどではない。

ちょっと出血するくらいで、特段なんてことは――――――――







そう思い、飛来先をなんとなく目で追ったところで――――








からん、と杖を滑り落とす音が聴こえました。


163Mii2021/06/01(火) 00:54:29ykdUu4jg (14/26)

――――きっと、魔人さんに、盾となってもらうべく、
――――杖を振るおうとしていたのだと、思います。



ピーチ『ああああっ!?私の馬鹿!名簿が古いじゃないっ!!!?』



――――とっさのことに、気が動転して、手汗なんかも災いして、
――――杖を握り損ねたのだと、思います。



――――そして、そのまま、拾おうとして、最悪な状況に気付いて、
――――固まって、しまったのだと、思います。






ヒルダ「…………あ、え?」



唯一、食らってはいけない人が……逃げそびれて、いたのです。
狙ってもいないあてずっぽうの攻撃が、よりにもよって――――!


164Mii2021/06/01(火) 01:05:03ykdUu4jg (15/26)




ファイアロゼッタ「間に、合えぇ―――――――――っ!!!」



――――無理な体勢、気にしてられない。捨て身で、横っ飛びっ!!
――――間一髪、我が身を挺して…我が腕を差し出して、触手の方向を逸らしますっ!!



バチイイイイイィィィィッ!!



激しい衝撃、吹き飛ぶ体。…削り落とされる、感覚。
それでも、間に合った。間に合った!

あとは、自分の問題。ゴロゴロと転がりながら、なんとかスピードを殺します!



ファイアロゼッタ「――――――――うっ」

ロゼッタ「――――――――」ティウン ティウン ティウン


大きなダメージを受け、とうとうファイア状態、解除。戻ってきた青いドレス。
それでも、ぐっとこらえて膝を立てて、ゆっくりと起き上がり――――


165Mii2021/06/01(火) 01:10:01ykdUu4jg (16/26)

眺めたところの代償は――――



「青くなった瞬間からまた赤くなった」血濡れの右手に、右手の小指、1本。



ヒルダ「――――ロゼッタ!?あ、ありがとうございます!
    わ、私、唖然として動転して、何もできなくて――――」

デイジー「グゥレイトォー!イケてる!神懸かった判断だよロゼッタ!
     そんなケガ、すぐ治せる、すぐ治せるっ!よぉし、あとはタブーを倒すだけ!」

ロゼッタ「――――――――」







みぎてを まじまじと みました。
こゆびが かけていて おまけに まっかに そまっています。





マリオ「やるじゃないかロゼッタ!あとはゆっくりやす……め?」


166Mii2021/06/01(火) 01:12:15ykdUu4jg (17/26)











わたしを、きづかって。
ちかよってきたマリオに…………………………わたしは。
















おもいっきり、だきつきました。


167Mii2021/06/01(火) 01:14:02ykdUu4jg (18/26)

マリオ「」モガッ

クッパ「」

リンク「」

ルイージ「」

デイジー「」

ヒルダ「」

マルス「……えーっと?」

ルフレ「」

ルキナ「」

ピット「」

パルテナ「いやぁん、ロゼッタったら大胆ですねー!」

マリオ「―――――――」ジタバタジタバタ

ロゼッタ「――――――――」ギュッ



――――会場が、静まり返る。


168Mii2021/06/01(火) 01:18:13ykdUu4jg (19/26)

ピーチ『ぐぉらああああああああああ!

    ロゼッタぁ!?気でも触れたかしらぁ!?
    ふざけてると、痛い目にあわすわよ!?いや、アワス!ギッタンギッタンよ!
    とっとと離れなさい!離レロ!オイ、聞けコラァ! 』

パルテナ「こんな公然の場で、修羅場!修羅場ですねこれ!!キャー!わくわく!」

ピット「パルテナ様すっごく不謹慎!」



マリオ「…ま…まて…!」ブルブル

ピーチ『マリオも、とっとと離れなさいよ!
    こんな切羽詰まった状況で胸の感触を堪能してますってこと!?
    
    ふざけんじゃないわよ!普通に引きはがせるでしょーが!
    ロゼッタと同罪よ同罪っ!!いい加減に――――』

マリオ「そうじゃないっ!いいからちょっと待て!






      ――――――――ロゼッタの、様子がおかしい!」

ピーチ『………………………………え?』


169Mii2021/06/01(火) 01:21:37ykdUu4jg (20/26)

からだが、いうことを、きかない。
ぶるぶる、がたがた、ふるえにふるえて、とまらない。
さっきまで、へいきなように、みえたのに。

ど、うして?
からだが、いたい。
てきが、こわい。
しぬのが、こわい。

マリオに、すがり、つきながら。
そのまま、ずるりと、へたりこむ。



ロゼッタ「しにたくないしにたくないしにたくないしにたくないぃ………!!
    たす、けて、マリオ…!おねがい、でず、がらぁ!!」ガタガタガタガタガタガタ



ただただ、マリオに、すがりついて、なくばかり。

まわりの、ひとたちが。
わたしの なさけない すがたに あぜんと しています。

デイジー「ロ、ロゼッタ!?い、今さら、どうしちゃったの!?
     まるで別人だよ!?何が起こったの!?」

ヒルダ「そ、そんな!あんなにロゼッタったら、心が強かったじゃないですかっ!!
    これじゃ、最初の頃の私…いいえ、それ以上に怯えてしまって――!?」


170Mii2021/06/01(火) 01:28:41ykdUu4jg (21/26)

マリオ「そ、そうだぞロゼッタ!まさか、残機が無くなったことで怖くなったのか?
   大丈夫だ、これ以上の深手は絶対に負わせやしない…………

   ――――――――残機が、無くなった?」

デイジー「何か気付いたのマリオ!?」

マリオ「…………おいデイジー!ロゼッタは、デイジーに鍛えられてる間、どんな精神状態だった!?
   あと、何回くらいロゼッタの残機を奪った!?」

デイジー「…えっと、すっごく精神は安定してたよ!?こんな姿が想像もできないくらい!
    残機を奪った回数は…3000は超えてたと思う、けど」

マリオ「――――3000だって!?多すぎるだろ!?
   基礎体力レベルが50行かない奴が、数か月で消費していい回数じゃないぞ!?
   そんでもって、ロゼッタの主観だとそれほど非常識な状況じゃなかったんだな!?
   ってことは……………………まさか、ロゼッタ、お前…………!

   残機が無い現実空間での命懸けの特訓や修行、碌にやってこなかったんじゃ…?
   残機制度は確かにすごく便利だが、それに依存し過ぎていたとしたら、
   さっきので一気に反動が…!?ってことは―――――――――まずいっ!?」





ロゼッタ「――――――――たす、け、てぇ……!!」ポロポロポロポロ

致死寛容レベル:Lv.51 残機がある限り 致死・致命傷の精神負担に対し + 50%鈍感化!
恐慌耐性レベル:Lv. 3 残機がない状態での 精神負担は 2%しか 軽減できません!


171Mii2021/06/01(火) 01:31:36ykdUu4jg (22/26)

マリオ「おいロゼッタ!思い起こせ!
   そもそも、マリオカートWiiのときだって割と死に掛けつづけただろ!
   今感じている恐怖は唯の錯覚だ!思い込みだ!

   残機による死に慣れからの落差が大きすぎて、
   そんなでもないのに、とんでもない窮地と誤解してるだけだ!
   目を醒ますんだロゼッタ!おいっ!」ユサユサ



わたしの まわりで おおさわぎ。
なんだか よく わからないけれど みんながみんな スキだらけ。
わたしじしんも あたまが どうにかなりそうで なにもかんがえられない。



あ。
タブーが しゃにむに タックルを しかけてきました。
これまでで いちばんつよそうな 「はどう」を なんじゅうにも ともなって。
せなかを むけていたせいで きづくのが おくれすぎました。

タブーは いっしゅん ヒルダひめに ねらいをさだめたように みせかけて
サッとねらいなおして わたしのもとへ。

なんと マリオまでもが フェイントに ひっかかって。
ヒルダひめを まもろうと とっさに うごきだしてしまい。

さいごのさいごで フリーになった わたしに タブーがせまる。
フラリとちゅうとはんぱに ふりかえったわたしの おなかめがけて
ニヤリとわらう タブーの てのひらが あてられて。


172Mii2021/06/01(火) 01:34:08ykdUu4jg (23/26)










――――ゼロきょり、さいだいパワーの、OFFはどう。









ロゼッタ「――――――――」

ロゼッタ「――――――――」



い  いや   た     す        け―――――――――――――



ロゼッタは 一瞬で 石になっ―――――――――――――――――▼


173Mii2021/06/01(火) 01:35:41ykdUu4jg (24/26)

~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~



ロゼッタ「――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――はっ!?」



ロゼッタ「はぁっ!はぁっ!…し、死ぬかと、おもい、ましたぁ!
    と、とんでもない目に遭いました!こ、怖かった…!」


174Mii2021/06/01(火) 01:37:40ykdUu4jg (25/26)

思わず、前にどてっと倒れ込む。

なんとか手を付いて、顔面を打つのは免れます。

冷や汗、ダラダラ。一生分かいたかもしれません。
ありとあらゆるこの世の恐怖を凝縮して、一身に注ぎ込まれたような感じ…!
幸い、こうして動けているということは、克服したようですが…!



ロゼッタ「さて、と」










なんだか見覚えのない色をした地面に付いた、両手を見ます。
うん、「なんともありません」。


175Mii2021/06/01(火) 01:42:10ykdUu4jg (26/26)

ロゼッタ「…………ええ、と」

周りをぐるりと見渡します。一応、冷静になるために、深呼吸して、それから。

もう一回、両手を、見ます。
…おっかしいですねえ、右手の怪我が治っているような。

…更に妙なことに…なんだか地面が透けて見えるのですが。



ロゼッタ「…………んー?」



あまり思考がまとまらずに、ふわふわと周囲を見渡して――――――――
とりあえず、まず最初に、少し叫ぼうと思います。










ロゼッタ「ここ、どこですかぁ――――!?」

周りに、誰も、いませんでした。


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177Mii2021/06/20(日) 16:44:45D5kkqxG. (1/34)

ロゼッタ「いや本当に、どこですか、ここ…」



空間把握、失敗。「存在しないエリアです」とか言われそうな探索結果。

もう、元の空間だとか閉ざされた空間だとか、そういう話では収まりそうにありません。
まだ、夢の世界とか妄想の世界とかの方がしっくり来ます。
空間魔法ですらたどり着けないような場所に来てしまったみたいです。…誰の仕業?



ロゼッタ「まさか、死後の世界だとか…ふふふ」



小さく笑ったら、たちまち身震い。

ロゼッタ「…………笑えないです!」



「でも、割といい線ついていると思いますよー」

ロゼッタ「え、嘘!?そんなの嫌ですよ冗談はやめてください!」



おもわず蒼白になります。思わずブルッと震えて、我が身をギュッと抱き締めて。
やり残したことが多すぎて、後悔しても、し切れない!


178Mii2021/06/20(日) 16:47:10D5kkqxG. (2/34)

「人生、諦めが肝心ではないでしょうか」

ロゼッタ「ふざけないでください!最後まであきらめません!
     …………って、さっきから誰ですか一体!」クルッ



思わぬところに先客が。
そしてその先客は、まったく、これっぽっちも、予想だにしていない人でした。











サヤカ「それでも一応、言わせてください。


   
    ――――ロゼッタさん、ようこそ『幽玄の間』へ!!」ニコッ

ロゼッタ「―――――――――――――サ、サヤカァ!?」

あまりにも懐かしい、でもどこか口調の異なる、娘のような女の子。
普通の流れで、普通とは真逆の出来事が、起きようとしていました。


179Mii2021/06/20(日) 16:50:10D5kkqxG. (3/34)

ロゼッタ「どう、して、サヤカが、こんなところに?」



彼女は、サヤカ。
かつて、星々の降りしきるお祭りの間だけ、絆を育んだ、大事な娘のような…
いえ、娘と断言してもいいくらいの大切な存在の女の子。



素朴で、当然すぎる疑問を投げかけます。
会えたことは嬉しいのですが。時間も距離もまるで噛み合いません。
すると彼女は、のほほんと思案顔。

サヤカ「うーん、ちょっと勘違いされてますね。
   私は『サヤカ』って人の姿はしていても、『サヤカ』本人ではありません。
   …まあ、雰囲気出すために性格を同期するくらいはできますけど。
   ちょっと待っててくださいね。あなたの記憶をもとに再構成しますから。
 
   ――――メモリーを 検索しています…
   ――――データベースに 1件の該当人物あり…
   ――――ダウンロードちゅう、ダウンロードちゅう、ダウンロードちゅう…」

ロゼッタ「!?」



サヤカが眉間に人差し指を当てて神妙に目をつぶったと思ったら…
ぐるんぐるんと、妙な、奇天烈な、電子音が聴こえてきます!
何が起こっているのですか!?


180Mii2021/06/20(日) 16:53:16D5kkqxG. (4/34)

サヤカ「――――ダウンロード、無事に終了しました。再起動します…
    
   これでどうかな、ママ!ママの記憶通りの『サヤカ』になりきれてる?
   えへへー!どう?どう?お久しぶり!私も会えて嬉しい!」

ロゼッタ「」

たちまち、私の知る「サヤカ」になって、ピョンピョンと可愛く跳ねる彼女。
その笑い方、振る舞い方、サヤカそのものですが。訳がまったくわかりません。

ロゼッタ「貴方は『サヤカ』であって『サヤカ』でない!?何が何やらさっぱりです!
    復活そうそう、頭がまた混乱してきました!」

対話も、サヤカに対する、娘に対する砕け調にはなかなかできず。
どうしても、初対面の人に対してのものに引き摺られてしまいます。

サヤカ「しょうがないなあ、私がママに一から説明してあげるよー。
   ホントの私は名も無き存在、■■■■■…あ、言語認識できないか。
   とりあえず、サヤカって呼んでくれていいよ。私も引き続きママって呼ぶから。

   この空間、『幽玄の間』の管理者にして、ママの内面のウツシミ!
   
   『幽玄の間』にやってきた人の記憶を素早く読み取って、
   『一定期間以上会ってなくて、それでいて十分な絆で繋がってる人』を
   探し出して、成りきるの!今、『サヤカ』になってるみたいに!
   きっと『サヤカ』本人も光栄なことだと喜んでくれると思うな!

   そんな親しい人になって、やってきた人と対話して――――
   最期の悔いを、思う存分吐き出させるのが役割なんだよ!
   この塩梅の人選が、いちばん心穏やかになると評判なんだって!」


181Mii2021/06/20(日) 16:56:36D5kkqxG. (5/34)

ロゼッタ「最期の悔い…!?さっきから言っている、『幽玄の間』とは…?」

サヤカ「肉体的に死ぬことが確定した人が、冥土に向かうときに訪れるのが『三途の川』。
   一方でね、精神的に死ぬことが確定した人が、精神崩壊間際に訪れるのが――――



   この精神世界… 『幽玄の間』 なんだー」





ドクン。
動悸が、突如として襲い掛かる。





ロゼッタ「精神的に…死ぬ?――――わた…しが?」

サヤカ「うん」



サヤカは、こちらの気も知らずに、心拍数が上がり続けるのも気に留めずに。
あっけらかんと言ってのける。

――まるで、今日の晩御飯はカレーだよ、程度の気軽さで。


182Mii2021/06/20(日) 16:59:40D5kkqxG. (6/34)

サヤカ「人の心ってさ、風船みたいなものなんだ」

突如として、目の前に可愛らしい風船が現れました。
サヤカが紐の一端を持っているそれは、ふわふわのんびり浮かんでいます。

サヤカ「ストレスが掛かると、中にガスを送られて膨らんでいくわけ。
   限界超えて膨らみ過ぎるとパーンと割れて、二度と元には戻らない。
   だから割れ過ぎないように、定期的にガス抜きをする必要があるよ。
   あるいは、何か丈夫な素材で外周を補強してあげるのもいいかもね。

   ママは今の今まで…いっぱいいっぱいストレスを受けながらも、
   急成長しながらのらりくらりと、風船が割れるのを防いでいたんだけど」



風船が、膨らんで限界に近づいていく。



サヤカ「このたび、精神的にもとから致命傷を受けていたところに――
   最大級のOFF波動を、モロにゼロ距離で一点集中で食らっちゃって」



サヤカ「それはそれはもう、盛大に風船が割れてしまいましたとさ。
   ざんねん!!ロゼッタの ぼうけんは これで おわってしまった!!」



冗談を言われる傍らで――――破裂音が、ひとつ響いて、消えて行きました。


183Mii2021/06/20(日) 17:03:36D5kkqxG. (7/34)

ロゼッタ「……………………」

自分が精神的に死んだだなんて、とても信じられない。信じたくない。

ロゼッタ「私は…っ!本当の私はどうなっているのですか!
    そして、今の私の状況は!もっと詳しく!一体だれの目論見ですか!?」

サヤカ「一度にいっぱい尋ねるなあ…いいよ、答えていくね。
   この空間では、管理者の私はママ至上主義で行動するからねー。
   本当のママ…というか、現実空間の状況は、こんな感じ」

ぽいっという投げやりな動作で、パッと出現、イベント会場にあるような特大スクリーン。
こんな魔法、見たこともない。未知にもほどがあります。

映し出されるは、私の…おぼろげな記憶の、続き。



中心にいるのは私。
どこからどう見ても、怯え切った表情で、完全に石になって佇んでいます。

目を見開いて絶叫したデイジー姫が、手を投げ出して駆けよる態勢。
マリオが、ヒルダ姫を庇った状態で…激しく後悔しているような表情で振り返っている。
リンクが、何かを叫んでいるものの、判別つかず。
クッパが怒りに燃え、距離を取ろうとするタブーを鬼の形相で睨みつけ――――



そんな、静止画。


184Mii2021/06/20(日) 17:07:07D5kkqxG. (8/34)

ロゼッタ「…………静止画?」

サヤカ「現実世界と『幽玄の間』とじゃ、時間の流れ方がざっと10000倍違うんだよ。
   だから正しくは『超スローで動いている映像』だね。

   ここで目覚めるまでにちょっと時間が掛かったけど、
   それでも現実世界…あっちだと、石化してから0.1秒すら経ってないよ」

ロゼッタ「0.1秒!?」

話についていくのがきついです!



サヤカ「で、精神的に死ぬことが確定したママは、その死の10秒前に精神体として
    『幽玄の間』に飛ばされた。今も猶予をちゃくちゃくと消費中。

   ちなみにこれ、任天堂の計らいね。極悪人じゃなけりゃ大体は飛ばされるよ。
   そんでもって、時間が来たら、ママの精神体は元の体に戻っていくの」

ロゼッタ「…前から思っていましたが、任天堂って何者ですか?」

サヤカ「…さあ?

   あ、ちなみに管理者の私は、ママ自身の知識のほかに任天堂の知識を
   あれこれ色々と持ってるよ。えっへん!頼りにしてね!」

ロゼッタ「よくわかりませんし今はどうでもいいです」

サヤカ「ひどい!」ウガー


185Mii2021/06/20(日) 17:10:32D5kkqxG. (9/34)

ロゼッタ「…つまり、ともかく、精神の死の間際に…懺悔でも尽くしておけ。
    そういうことでしょうか」



そう、ですか。
私、死んじゃう、んですか。



サヤカ「繰り返すけど、精神的な死だから、肉体は死なないけどね。
   石化自体は、MOTHERチームによって程なく解除される。
   でも、精神が二度と再起しないんだ。これはパルテナさんの奇跡でも無理ー。

   ずっと、ずぅっと、自我のない、からっぽの精神のまま。
   周りの人、みんな悲しませつつ、いつまでも、いつまでも…

   やっぱり、怖い?」



ロゼッタ「怖いに…………決まって、いる、でしょう…!!!」ポロポロ



座り込んで、やるせなくて。

ただただ、悲しい。いくらでも涙が溢れ出る。

精神体だから涙に際限がないのか、ほんとうにただひたすら泣いているのか…。


186Mii2021/06/20(日) 17:18:43D5kkqxG. (10/34)

サヤカ「不幸中の幸いといえば、とりあえず。
   タブーとの、この勝負自体は、大局的には『こちら』の勝ちだよ。

   タブーはやぶれかぶれながらに悦に浸っているけれど…
   ママの犠牲を除けば、あとは可逆的――――
   手を尽くせば回復、修復できるような被害のみ残して、無事に終結する。

   ママの頑張りもあって、キノコ王国の危機は、とりあえず去ったんだ。
   ちょっと禍根は残すことになったけれど」

ロゼッタ「…………」




サヤカ「…………さて。キノコ王国の無事は伝えたところで。そちらはちょっと置いといて。

   そんなママを、助けてあげられる手段があるって言ったら、どうする?」

ロゼッタ「…え?」



泣き腫らした顔で、サヤカを見上げる。

ロゼッタ「そ、んな手段が、あるのですか!?」ガバッ

サヤカ「いわゆる管理者権限の裏技ってやつでね――――」

こほん、とわざとらしく咳込んで見せたあと。サヤカは、度肝を抜く提案を繰り出しました。


187Mii2021/06/20(日) 17:21:36D5kkqxG. (11/34)

サヤカ「ねえ、ママ。









   わたしと一緒に、ここに…ずっと、いよう?」








ロゼッタ「…え?」

サヤカ「簡単な話でさ。
   元の世界に戻るのは、予定通りの時間でもいいし、少し早めてもいいし…

   いっそのこと、すっぽかして、ここに居座ってもいいんだよ。
   私が自信を持って、うまいこと調整してあげる」



ロゼッタ「…………!?」


188Mii2021/06/20(日) 17:24:54D5kkqxG. (12/34)

サヤカ「一度すっぽかすと、二度と元の世界には戻れない。
   でもそれって、精神が死んででも戻るのに比べて、悪いことかな?

   むしろ、こっちを喜んで受け入れるべきじゃない?」

ロゼッタ「受け入れ、る」

サヤカ「ねえ、知ってる?この空間だと、私って――――なんでもできるんだ。
   さっき、スクリーンや風船をパっと出したでしょ?あんなの序の口。

   そして、ママなら…私以上に、なんでもできるんだよ。神さまになれるんだ」



サヤカが指をパチンと鳴らす。
突然、机一式と原稿用紙が現れました。

サヤカ「中々読ませるのは恥ずかしい物書きを、
   黙々と気の済むまで続けることができる」



サヤカが、腕を振りかぶる。
土煙と共に、何もなかったような地面が立派な舗装道路となり、
視界の先の先まで、無数の建物がにょきにょきと出現しました…!

サヤカ「この空間はママが想像する以上に許容量があるからね。
   街ひとつ、いや国ひとつ、なんなら世界ひとつ作ることだってできる」

……まさに、神の領域。


189Mii2021/06/20(日) 17:27:41D5kkqxG. (13/34)

サヤカは両手を大きく掲げつつ、ここに残ることの素晴らしさを語ります。



サヤカ「絶対安全な環境で、好きな物を食べ、好きな物を飲み、
   好きな趣味に興じることができる」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「ほどよい緊迫した環境を生み出して冒険者として名を馳せたり、
   勧善懲悪が浸透し切った素晴らしい世の中を作ったりすることができる」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「女王として贅を尽くしつつも崇拝されたり、
   数多の男性を侍らせて持て囃されたりすることができる」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「ありとあらゆる空想、妄想が、ママの思惑ひとつで
   あっさりと具現化し実現する、それがここなんだよ。

   なんだったらいっそのこと、マリオ達をそっくりそのまま『構成』して…
   登場させて、交流を深めれば…現実世界に戻る以上の成果でしょ?

   みんなみんな相変わらず頼もしくて――――
   みんなみんな、ママの思う通りに動いてくれるんだ」

ロゼッタ「…………」


190Mii2021/06/20(日) 17:30:21D5kkqxG. (14/34)

サヤカ「そんな世界は、きっと、そう――――
   ストレスとは無縁で、とっても楽しくて、素晴らしいと思わない?」クルッ

















ロゼッタ「――――遺言執行者には、ピーチ姫を指定させて頂きます。

    皆様と一緒に過ごせた日々は、とてもとても幸せでした。
    本当にありがとうございました。星々の加護が有らんことを。

    差し出がましいとは存じ上げていますが、チコたちとほうき星のことを
    どうか守ってあげてください。よろしくお願いいたします――――」カキカキ

サヤカ「スルーして遺言書を書き上げてるぅ!?」

ロゼッタ「ちょうどいい所に紙とペンがあったので…」


191Mii2021/06/20(日) 17:33:52D5kkqxG. (15/34)

サヤカ「なんで!なんで真面目に聴いてくれないの!?」

ロゼッタ「え?あまりにも興味がない提案だったので…
    仮初の理想の世界とか、無味乾燥もいいところでしょうに。
    あ、でもおかげで少し心が落ち着きました」カキカキ

サヤカ「…………信じらんない!普通さあ、せめてもう少し気持ちが揺れ動いて、
   危うく甘い罠に引っ掛かろうとしたところで仲間たちの絆を思い出して
   考え直す…とかの過程があるでしょ!様式美、お約束ってやつ!」

ロゼッタ「…要するに、貴方も本心では、なびくとは思ってなかったのでしょう?
    『貴方』は『私』らしいので」カキカキ

サヤカ「…それは、まあ」

ばつが悪そうに、頭をポリポリと書いています。やれやれ。

ロゼッタ「そういうわけで、私は遺書でも書いて…気分だけでも僅かながら晴らしておきますよ。
    どうせ、この気持ちを伝えることなど出来はしないのですが」カキカキ



サヤカ「ん?できるよ?ママくらいの魔法レベルなら。だから遺書を書くのは確かに有効だね」



書き上げていたペンが、ぴたりと止まります。

ロゼッタ「…………あれ?どうして?戻った瞬間に正気を失うのですよね?
    魔法を編むことも、感謝の言葉を手短に叫ぶこともできなさそうなのですが」


192Mii2021/06/20(日) 17:38:53D5kkqxG. (16/34)

サヤカ「…あ、言ってなかった、ごめんなさい。10秒後に精神的な死が待つとは言っても、正しくは…

   100メートル先から駆け寄ろうとしているニンテンさんとアナさんによって
   石化が解けるのが現実世界で8秒後、こっちでいう8万秒後。
   そこから精神が死ぬのに、更に現実世界で2秒掛かるんだ。

   だから…8万秒、ほぼ丸一日掛けて精一杯遺言を考えて、
   石化解除のタイミングで現実世界に戻れば…………
   『何らかの形で遺言を編み込んだ魔法陣を発動させるための』2秒が、残ってる」

ロゼッタ「なっ………!?」



サヤカの説明ですと、こうです。

もともと、OFF波動の効果が「恐怖・絶望の誘起」と「石化」であることは周知のとおり。
ただ、実の所、2つの効果はそれぞれ独立に作用していて、必ずしも人体への影響が
完全同期しているわけではないらしいのです。

そして今回。タブーによって、制御は二の次で、出せるだけの出力で放たれたOFF波動。
2つの効果の補正倍率が一致しなかった結果…………
「恐怖・絶望の誘起」で精神が完全に閉ざされる”前”に、石化が完了。
石化が完了した段階で、精神ダメージの進行まで凍結。ただしフラグは立ったまま。

2秒分のロスタイムができました。おわり。

サヤカ「わかった?」

ロゼッタ「…な、なんとか」


193Mii2021/06/20(日) 17:42:19D5kkqxG. (17/34)

たしかに、2秒あれば…………なんとかふんばれば。
光の文字として遺言を浮かび上がらせるような魔法陣、
あるいは地面に遺言を削り書きするような魔法陣、ぎりぎり発動できる、かも。
その文面を構築すること、魔法陣のシミュレーションをしておくことには意味がある、と。



ロゼッタ「精神の回復手段も無いですし、後ろ向きな発想ですが仕方ありませんよね…」

サヤカ「今回の件で更にピーチ姫が対策を強化することになるおかげで、
   10年後くらいのキノコ王国になら回復手段あるんだけどね」

ロゼッタ「10年後にあっても…」



ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「はっ!?ということは!いっそのこと!
    石化を解かないまま10年、精神の崩壊を凍結したままであり続けて!
    満を持して石化を解いてもらえば助かるのでは!?苦肉の策でっ!」

サヤカ「そうだね。
    私とママしか知らないその事実を、現実世界の皆に伝える手段があったらね」

ロゼッタ「……………………」


194Mii2021/06/20(日) 17:45:38D5kkqxG. (18/34)

ロゼッタ「別の案で行きましょう…あ!そうです!

    精神的な死が確定、というのは、あくまで――――
    『その時点の精神の強さを前提とした判断』ですよね!?

    今のうちに精神を鍛えて、さらには基礎体力レベルを上げて!
    石化解除したての2秒でどうにかこうにか絶望に抗えば!
    助かる可能性が出てくるのではないのですか!?」

サヤカ「おっ!いいところに気が付いたね、ママ!
   それは確かに正しいよ!ここにいる間にグンと強くなれば、
   復活する確率をゼロから0.1%くらいにはできるかもしれない!」

ロゼッタ「やった!ならばさっそく精神修業を始めましょう!
    1日弱あれば、なんとかなる…かも、しれません!
    僅かな希望にも縋るのです!」





サヤカ「ただし、時間の流れ方がずれている『幽玄の間』では、
   入る経験値も現実世界の1万分の1だけどね。だから結局……
   『現実世界の8秒間で得られる経験値でどうにかなりますか』って話になるけど。
   …や、やってみる?」

ロゼッタ「詰んでるじゃないですかっ!?」
    
サヤカ「そりゃあ、基本どうにもならない状況に陥ったから飛ばされた訳だし…」


195Mii2021/06/20(日) 17:50:16D5kkqxG. (19/34)

~1時間後 (現実世界0.36秒経過  残り猶予76400秒)~





ロゼッタ「…………推敲、おわり」





泣き腫らしつつ、遺書を何度も何度も読み返して、確認して。
とりあえず、思いの丈はすべて述べられたと思います。あとは覚えるだけ。

ロゼッタ「……次は、魔法陣、ですか」



本番にて超高速展開するために、何度も試す。
…所詮は文字の連なりをパッと表示する程度、10回試して10回成功しました。
速度の方も、私の実力があれば十分。迫り来る恐怖に抗いながらというのが気懸りですが。

サヤカ「まあ、『試行錯誤で経験値を蓄積する』ってことが出来ない現状、
    今失敗しているようじゃ絶対本番でもできなかったんだけどね。
    表現の仕方なんかを色々吟味することなら可能だよ。記憶は持ってけるから」



ロゼッタ「…………」


196Mii2021/06/20(日) 17:53:32D5kkqxG. (20/34)

~2時間後 (現実世界0.72秒経過  残り猶予72800秒)~





ロゼッタ「…動いて、いますね」





――スクリーンに映り続けている、みなさんが。
――私を何とかしようと。石化を解こうと。

――その行動自体が、私の余命を削っていくというのは皮肉なものです。
――もちろん、皆さんが悪いということは絶対有り得ないのですが。



サヤカ「そろそろ、ニンテンさんとアナさんも…
   スクリーンの端っこに映り出すんじゃないかなー」



ロゼッタ「…………」プイッ

先ほどから、体が震え出したり、止まったり、忙しい。
今さらながら、これから起こることを自覚して…精神が不安定になってきたのでしょうか。


197Mii2021/06/20(日) 17:56:05D5kkqxG. (21/34)

~3時間後 (現実世界1.08秒経過  残り猶予69200秒)~

サヤカ「現実世界で1秒経ったってところかー」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

どこが空間の隅にあたるのかも分からず、
三角座りで縮こまって、膝の匂いを嗅いで…ただただ時間が過ぎていく。

サヤカ「……もしもーし?」ブンブン

ロゼッタ「…………」

サヤカ「こうなったら、残りの時間、何か好きな事しようよ。
   それか、私とおしゃべりでもしようよー!時間が勿体ないよ!
   何のために私がここにいると思ってるのー?」

ロゼッタ「…………」

パタパタと近づいてくるサヤカを、無表情でぶっきらぼうに押しのける。

サヤカ「…………もうっ」



……ただただ、時間が、過ぎていく。


198Mii2021/06/20(日) 17:58:08D5kkqxG. (22/34)

~4時間後 (現実世界1.44秒経過  残り猶予65600秒)~

サヤカ「…………」

ロゼッタ「…………」

サヤカも諦めたのか、5メートルくらい離れたところにうつ伏せに寝そべって、
私の方をジト目で見やって過ごしています。無情に時が過ぎて行きます。





ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「…………」ピクッ





ロゼッタ「一つ、質問しても、いいですか?」





サヤカ「……!なになに!何でも答えるよっ!知ってることなら!」


199Mii2021/06/20(日) 18:00:35D5kkqxG. (23/34)

久しぶりのコミュニケーションに、がばっと身を起こし、ぱあっと表情を輝かせる、サヤカ。
その表情に、すこし怖気付きつつも…ひとつ、だけ。



ロゼッタ「経験値、という言葉で思い出したのですが。
    現実世界で私に経験値が入らなかった不可解な状態について、
    何か知っていたりしますか?」

サヤカ「んー、知らなーい」

ロゼッタ「そうですか……………………」



サヤカは、あっさりと言ってのけ…会話が終わってしまいました。





ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「………………………ねえ、サヤカ」

サヤカ「なぁに?」

おかげでひとつ、わかったことがあります。


200Mii2021/06/20(日) 18:02:38D5kkqxG. (24/34)

――先ほどの返答。










――私の内面、にしては。反応が5秒は早い。

――早すぎる。











ロゼッタ「…………何を、隠しているのですか?」

サヤカ「えっ…!?」ビクッ


201Mii2021/06/20(日) 18:05:28D5kkqxG. (25/34)

ロゼッタ「あれだけ会話を期待しておいて、あまりにもたやすく切って捨てる回答。
    『私』の内面にしては、あまりにも不自然…………何か、知っているのですね?」

サヤカ「…ちょ、ちょっと。深読みしすぎだよ、ママ!知らない知らないっ!」





深読み、なんかじゃない。





ロゼッタ「有り余る、今の時間を費やして、何度、開発時の記憶を探っても――
    私の『実分身』…経験値漏れが起きるとは思い難い。
    そこで、こういう解釈に至りました。



    ――――ひょっとしたら。
    私の内面が無意識に、経験値の還元をホールドしているんじゃないかって。
    …………貴方の、せいですか?」

サヤカ「…………っ!!」ブルッ



――――図星、のようです。


202Mii2021/06/20(日) 18:08:08D5kkqxG. (26/34)

何故隠していたか知りませんが――思わぬ光明!
サヤカの両肩をババッと掴み、一気に捲し立てます!

ロゼッタ「いますぐっ!その経験値、私に返してください!
    それなりに蓄積しているはず、無駄にはなりません!
    もしかしたら打開の道筋が立てられるかも!」



サヤカ「――――ダメ」

ロゼッタ「やっぱり知っているのですね!
    どうしてですか!私が助かってほしくないのですか!」



サヤカ「――――ダメ」

ロゼッタ「だから、どうし――――」







サヤカ「絶対に、ダメ」

サヤカの、目の色が。尋常ではないほど、濁り出していました。


203Mii2021/06/20(日) 18:10:36D5kkqxG. (27/34)

サヤカ「…ねえ、ママ。
   今、自分が何を言ったか、分かってる?」

ロゼッタ「…サ、ヤカ?」



子供とは思えない冷え切った眼光に、思わず竦んでしまいます。



サヤカ「…あのさ。つかぬことを聞くけれど。ママって基本、優しいよね?」

ロゼッタ「…はい?」

突拍子なことを言われました。

サヤカ「相当なことを悪者にされても、なんだかんだで許しちゃう。
   
   からかわれても『そんなこと自覚してますよ…』とため息つくだけだし、
   物を盗まれたりしても後で返してくれればプンプン怒りながらも水に流すし、
   わざとじゃなければ怪我させられても『不慮の事故ですから』で済ますよね」

ロゼッタ「そ、そんなにできた人間である自覚はまるで…」



サヤカ「それこそ、催眠術で操られて、術者の言いなりになって服を脱ぎ始めて――」

ロゼッタ「ははは破廉恥なのは絶対ダメ!ゼッタイ!!」カアアア


204Mii2021/06/20(日) 18:13:44D5kkqxG. (28/34)




サヤカ「唐突に魔法少女のコスプレをして、笑顔でダブルピース姿を自撮りして、
   直筆サインまで書いて、『私が書いた最高傑作です!』という一文を添えて、
   プロマイド付きの自作小説全編を全世界の編集部に片っ端から
   メール爆撃で一斉送信させられることになったとしても許しちゃうよね」

ロゼッタ「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」ガンッ ガンッ



ロゼッタ「」チーン

サヤカ「」

サヤカ「……まさか気絶するとは思わなかった。…おーい、起きて―」





ロゼッタ「…………悪魔の所業をいきなり想像させないでくださいよ…」ヨロッ

サヤカ「……コホン。まあ。ともかく。そこまでされても。
   ちょっとは凹むかもだけど。1週間…余裕を持って2週間もあれば、
   平常運転で日常生活を送ることができるようになるはずだよねー」

ロゼッタ「とてもとても、そうは思えないのですが…っ!」ヒキッ


205Mii2021/06/20(日) 18:17:03D5kkqxG. (29/34)

目が濁ったままのサヤカが、淡々と続けます。

私のちょっとした気絶で手間を取らせている間にも、濁りは解消されていない。



サヤカ「どうどう。…そんな、基本的に、なんでも許しがちなママですが。

   自分が貧乏くじ引くことについてなら、まあ立ち直れないこともないママですが。

   唯一つ、耐え難い、許し難い仕打ちを挙げるなら…それは。







   致命的な被害が…自身にではなく、罪なき善人に、一般の人たちに及ぶような。
   そんな行動を、意図せず取らされた場合なんだろうね」

ロゼッタ「…………!!」



――それって、つまり。


206Mii2021/06/20(日) 18:21:52D5kkqxG. (30/34)

サヤカ「いい?ママのいう通り、私の独断で。経験値の還元を、ストップさせてる。でもこれ、必要なことだから。

   ここに積もり積もってきた経験値にはね、ママの偽者、何十人分の…
   見てきたもの、やってきたこと、いろんな知識が紐づけされてる。

   そして。そう。もうわかった、よね。

   タブーと同調することによる悪意、憎しみ、殺意、嘲り。
   一切合財の『ママとは相性が悪すぎる』感情が、地獄の釜のように詰まってる」

   わかる?自分がどれだけ『ワルモノ』になるか。『ヒトデナシ』になるか。

   誰々を消し去りたい、何々を破壊し尽くしたい、こうすれば平和など掻き消せる。
   …そぉんな、小説の中ですら妄想してこなかった、逸脱したどす黒い感情。
   ママの心なんて、一瞬にして染め上げちゃうよ?

   精神負荷から逃れるため、開き直って悪人として生きていけるならまだいい。
   そんなことできっこないママは…そう、『ロゼッタ』っていう人物は。
   これまでママなりに築き上げてきた自分ってものを真っ向から否定されて、

   …………拠り所、なくなっちゃうよ?」

ロゼッタ「…そ、それでも!それらを纏めて獲得できるのなら!
    絶対に無駄にならない!役に立つこと請け合いです!
    尚更引くわけにいかなくなりました!返してくださいよ!

    大丈夫、現実世界の惨状は散々見せつけられて…耐性はできていますから!」

その経験値が、知識が、どれだけ持ち出す価値があることか。
最悪、それだけでも後世に伝えられればキノコ王国の為になるはず!


207Mii2021/06/20(日) 18:25:14D5kkqxG. (31/34)

サヤカ「……分かってない。分かってないよ」ハァ



――――サヤカが、私をまるで相手にしてくれない。



サヤカ「耐性が付いたなんていうけれど、それは所詮、見たこと、聞いたことだよー。

   自分に『完全同期』して降り掛かる感情爆発は、そんなチンケなものじゃない。
   …この精神世界で、精神分裂、精神崩壊するよ?ぐっちゃぐちゃに。
   もはや私でも匙を投げる事態になっちゃうよ。

   そうなったら、人生最期を穏やかに過ごすという目的、まるで無視だね。
   だぁれも救われない。現実世界のみんなも。ママも。…………もちろん、私も」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「はいっ!やめやめ!このお話はオシマイ!」パンッ



ひとしきり話し切って、ようやくサヤカの眼に光が戻ってきました。
もう疲れちゃったあ、と独り言。

サヤカ「んもう、この『サヤカ』のキャラじゃないよ、こんな陰気なお話…
   もっと愉快で楽しくて夢のあるお話をしようよ、ねっ!」

そう微笑んで、もじもじと腕を後ろに組んで…私の顔を伺います。


208Mii2021/06/20(日) 18:28:10D5kkqxG. (32/34)

ロゼッタ「…………………………仕方、ありませんね」スゥ・・・

サヤカ「ううん、わかってくれたなら別にいいの!
   私はただ、ママに悔いを残してほしくないだけだから――――」








ロゼッタ「――――――――――――――――サヤカ。

    命令します。私の経験値、返しなさい」ガッ

サヤカ「…がふっ!?」








最終手段。こんなことはしたくありませんでしたが…

いたいけな少女を、首根っこ掴んで――――そのまま地面に押し倒しました…!


209Mii2021/06/20(日) 18:31:00D5kkqxG. (33/34)

サヤカ「…え?ええ!?ちょ、や、やめてよ!?何の真似!?怖いよママっ!」ジタバタ



絵面的にはなんとも美しくない光景。それでも背に腹は代えられない。



ロゼッタ「先ほど自分で言いましたよね。
    この空間の管理者の貴方は…私至上主義だと。
    それは感情論とかではなく、おそらくはこの空間における…絶対的なルール。

    究極的には…私の本心からの命令には絶対服従、ということですよね?」パアアアアア

サヤカ「し、知らない!は、離して!」ジタバタ



あえて非情になり、押し付ける力を強めて行きます。



ロゼッタ「返しなさい」パアアアア

サヤカ「ぐ……………がが」ブルブル

ロゼッタ「返しなさい!」パアアアア

サヤカ「…や……………………め、て…………」ブルブル


210Mii2021/06/20(日) 18:33:28D5kkqxG. (34/34)

何かを感じる。サヤカの体から、何かが抜け出てくる。
見つめ合う私とサヤカの中ほどに現れた、1cmにも満たない、小さな小さな輝き。
ブゥーンと高周波音を微かに放つそれは、きっと――――思い描いている通りの物。



サヤカ「ぜ…ぜった、い、こうかい、す、るか、ら――――」ポロポロ

ロゼッタ「少しくらい信用してくれても、バチは当たりませんよ」

サヤカ「ママ、が、ママじゃ、なく、なることを、しんじざるを、えない、のぉっ!」ポロオポロ



――――それでも、やらなければならないことは、あると思います。
――――多少のリスクは、背負っても!



サヤカの制止を少しは気に留めつつも。後ろ向きにはならず。
一呼吸おいて、気合い入れ直して。

突如現れたその輝きを、そっと、労わるように、慈しむように。





両手でふわりと、包み込みました。
たちまち、輝きが強くなって――――――――――――


211Mii2021/06/26(土) 19:48:11NzWQi0XQ (1/53)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



――――ごとり。

『…このあたりに仕掛けておきますか』

周りに、後頭部を打たれ失神した、出血甚だしい酔いどれ客たち。

『任務中にノコノコ近付いてきた、貴方がたが悪いなんですよ?』

まるで気にもせず、むしろ足蹴にし、不可視の爆弾を目ぼしい場所に仕掛けていく。

『ふむ…どのみち後で死ぬことになるのですから、むしろ今は…
下手に戒厳令出されないためにも、酔っ払い同士のちょっとした殴り合い、程度に
見せかけておきますか』

慈悲の心なんてなしに、単に作戦上有用だからと、気持ち程度回復させる。
そのあたりに転がっていた拳大のレンガの破片を、
あるいは適当に近くのゴミ捨て場から拝借した金属棒を。
空間魔法でふわりと動かし、転がる大怪我人の拳に滑り込ませる。

指紋なんて一切残さない、完全犯罪の達成。

『じきに、誰かが見つけてくれるでしょう。…運がよければ、ね』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


212Mii2021/06/26(土) 19:50:40NzWQi0XQ (2/53)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



――――ぽた、ぽた、ぽた。



『…………ふふ』

――――タブー様から、潤沢に無尽蔵に与えられるFPを。
――――少し細工して、タブー様の闇の力も練り込んで。

――――城下のあらゆる生活圏に、特に市民の生活の糧となる賑やかな市場の各地に。
――――ニコニコと歩きながらも、僅かに漂う瘴気として、ばら撒いて、ばら撒いて。



――――古来より、都市陥落の第一歩といえば、遅効性の毒を徐々に拡散させること。
――――何気ない仕草に違和感を感じ、やがて動きが鈍り、眩暈、吐き気、痺れを訴える。
――――いよいよ人々が病院に殺到することには……全て、手遅れ。



『まあ、キノコ王国の浄化性能とやら、せいぜいお手並み拝見といったところですかねぇ』


213Mii2021/06/26(土) 19:52:31NzWQi0XQ (3/53)

はしゃいで走り回っていた子供が、周りをよく見ていなかったのかぶつかってくる。

『いったぁ……っ!……あ!ご、ごめんなさいっ!』

『…あらあら、私は大丈夫ですよ。次からは気を付けましょうね』

子供の方も転んでしまっていたので、とりあえず手を差し伸べて引っ張り――――



『…!?い、痛いっ!』

…おや、思わず憎しみで強く握り過ぎましたか。ひとまず手を緩めます。

『あ、ごめんなさい。痛かったですか?』ニコッ

ちょっと涙目の子供が、掴まれて赤みを帯びた自分の腕と、私の顔を交互に見やり…

『…………だ、だい、じょうぶ、です。あ、ありがとう、ございまし、たっ!』

こわばった子供が、焦りつつもぺこりと頭を下げ、去っていく。
…すこし失敗しましたね、思わぬ『攻撃』に――――――――



『ロゼッタ』らしからぬ、睨み方をしてしまったかもしれません。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


214Mii2021/06/26(土) 19:55:14NzWQi0XQ (4/53)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



『ええい!もう情報は回ってきてる!ネタバレは済んでるぞ!
アンタ、本物のロゼッタさんじゃないなっ!失礼過ぎるぞ、この屑ヤロー!』

『ちょっと待ってください!私、ロゼッタ本人ですよ!何処からどう見ても!』

『騙されるか!目つきからして全然違うだろ!
本物はそんな昏い眼差しはぶつけてこないはずだ!根っからのお人よしらしいからな!』



『……ああ、そうですか。それならば、仕方ありませんね。
…………どうしてばれてしまったのでしょうか、嫌ですねえ』



『…………っ!やっぱりそうじゃないか!
じきに正義のファイターたちがアンタなんか懲らしめに――――』

相手は、ごく普通の一般人。
こちらは、最弱クラスのファイター。

…力の差は、歴然。

杖を一振りしてみれば、咄嗟に割り込ませた両腕ごと、胴体の一部が吹き飛ぶ。
ディメーンの真似っこです。空間切断って便利ですね。癖になりそう。


215Mii2021/06/26(土) 19:58:00NzWQi0XQ (5/53)

『――――――――ああああああああ!?』ドクドク

一瞬、状況把握ができず、零れ落ちた部位を呆然と見やって、その後は絶叫。
血だまりの中で悶え苦しむしかできない愚鈍な相手。
傍で震えていた、奥様でしょうか。同じく絶叫して、荷物あらかたひっくり返して、
ボロボロと無様に泣いて、死を待つ夫に縋りつき始める。

『――――つまり、演技をする必要もないということですね。色々と面倒なので――――

――――――――――――――――ここで死んでください』

『この人が何をしたっていうのっ!!誰かっ!誰かぁっ!!』ポロポロ

そんな非難には耳を傾ける余地もなし。ニタリと嘲り笑い、もう一度杖を振りかぶって魔法の構え。
夫婦まとめてあの世行きにしてやりましょう。私って優しいですね。



『やめろおおおおぉぉぉぉ――――!!』

『ロゼッタさんの名誉のためにも、そんなことさせないぞー!
青キノピオ隊、不届きな偽者に決死の突撃ぃー!!』

『『『『おおおおーーーー!!!!』』』』

――――チッ、邪魔が入りましたか。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


216Mii2021/06/26(土) 20:00:18NzWQi0XQ (6/53)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



『――――――――おお』

なんて、壮観。

『――――――――素晴らしい』

あたり一面、石化したままの住人が何百人といる区画。

実質、命を失ったも同然。
タブー様の作戦が、紆余曲折あれど順調に功を奏していく…!
これに感動せずして、何が生き甲斐というのでしょう。

『――――はは、はははははははははは……………♪』

ちょこまかと抵抗はされていますが、この程度。
キノコ王国の転覆は、間もなくです。本当に、あっけない。





『本物の私は、一体、どういう反応をしてくれるでしょうかねぇ』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


217Mii2021/06/26(土) 20:02:28NzWQi0XQ (7/53)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



みんなみんな、邪魔。

ここにあるもの全て、タブー様にとって目障りな物。
タブー様の手によって、完膚なきまでに破壊し尽くされればいい。逆らったことを後悔するといい。



希望は全て、絶望へ。

輝いて見える夢は全て、耐え難い現実へ。

喜びは全て、悲しみへ。

笑い声は全て、慟哭へ。





『みんなみんな、死んでしまえばいいのに』

その先に、求める物があるのだから。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


218Mii2021/06/26(土) 20:05:18NzWQi0XQ (8/53)


サヤカ「ママ譲り、のぉ――――――――――――――――――――――――――――
   
    ――――――――Starlit Wish《星に願いを》――――ッ!!」パアアアァァァァ!!!



ママ譲りの大回復魔法を、惜しげもなくママ1人に使用する。
FPが勿体ない?そんなこと、今は議論する価値もないよっ!





サヤカ「あのさあっ!!どうしてっ!どうしてそこまで安請け合いしておいてっ!!



   かんったんっに!舌を噛み切ろうとするかなあ――――――――っ!!」



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」



ママが――――受け身も取らず、前にドタンと倒れ伏したまま。ピクリとも動かない。
よりにもよって、あらぬ行為に踏み出す余力だけは残っているみたいだけれど…!


219Mii2021/06/26(土) 20:08:16NzWQi0XQ (9/53)

サヤカ「じょーだんじゃないよっ!後悔するって言ったよね!
   『万が一』のことを考えて、すぐさま切り替えて魔法の準備をしておいて、
   本当に…………ほんっっっとうっに、良かったっ!!やめてよね、もう…!」



ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」



ロゼッタ「――――」ゴボッ

サヤカ「――――――――て ん ど ん っ!?」パアアアアアァァァァ!!

……ああもうっ!休む暇なんかない!Starlit Wish《星に願いを》、もう一回っ!



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」



サヤカ「やめてって言ってるでしょ!足掻いてよっ!
   大博打をやったからには勝率ほぼ0%でも頑張ってよ!私も無理だと思うけどっ!
   ママが諦めるっていうんなら私が諦めず頑張るよっ!
   ……あれ?何言ってるのかな、わたしっ!?訳わかんない!」


220Mii2021/06/26(土) 20:11:16NzWQi0XQ (10/53)

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

サヤカ「…落ち着いた、か、なあ………?」





ザンッ・・・・・・・・




サヤカ「…………あれ?」



サヤカ「どうして、お腹から、そんなに、ドクドクと血を流してる、の?」マッサオ



サヤカ「――――――――――――――――――――――――」ゾワッ



ロゼ ッタ「――――」

サヤカ「きゃあああっ!!空間切断で自傷した――――――――っ!?」パアアアアァァァァ!!


221Mii2021/06/26(土) 20:13:18NzWQi0XQ (11/53)

ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドク

サヤカ「…こんのぉ…!!!」パアアアアアアアァァァァ!!!

ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドクドク

サヤカ「…しつこいのぉっ!!!」パアアアアアアアァァァァ!!!



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドクドクドク


222Mii2021/06/26(土) 20:15:20NzWQi0XQ (12/53)

…駄目っ!これじゃあ、いつか頭部にでも致命傷食らって取り返しが付かなくなるっ!!
体ズタズタになってから後手の回復じゃ、話にならないっ!

サヤカ「集中力の差を利用して――術式インターセプト、連発ぅ…!
   持ってよね、私の魔法回路…!!せーのぉっ!!」パアアアアアアアアアァァァ!!!





――――あまりにも空しくて、不毛な駆け引きが始まった。





倒れ込んだまま一切動こうとせず、四肢は沈黙し、痙攣し、顔は地面とごっつんこ。
顔色が全く伺えない、ママ。一言も発しない、人形のような状態になった、ママ。
ただ、ひとついえるのは…………

とにかく、いますぐにでも、命を絶ちたい、らしい。



サヤカ「…………っ!」パアアアアァァァァ!!

言わんこっちゃない。
でも……そんなこと、この私が、許すと思う?


223Mii2021/06/26(土) 20:17:36NzWQi0XQ (13/53)

集中力が乱れに乱れているママに対してだからこそ、なんとか術式妨害が間に合う。
あろうことか、気が触れたのか…気が触れているのか、うん。
自身に向けて放とうとする空間魔法を、発動前に横槍、ことごとく無効化…っ!



…ごめん、嘘。10回に1回は間に合ってない。

そのたびに、空間魔法が発動し、ママの体のどこかを、ゴッソリバッサリ消し飛ばす。
痛ましさに目を背け、そのたびに、急ぎStarlit Wish《星に願いを》で強引に回復処理。



何この、不毛すぎるイタチごっこ。



ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

血が流れていようといまいと、うめき声一つ上げない状態なのが逆に恐ろしい。





サヤカ「…………精神、壊れ、ちゃった…?」

というより、壊れたと、私でも思う。前々から当たり前のように思ってた。


224Mii2021/06/26(土) 20:20:02NzWQi0XQ (14/53)

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」



サヤカ「結局は娘の私に投げっぱなしっ!?
   …むう。いいよ、それで。それが娘としての役割らしいからっ!
   私、諦めないっ!ぜったいに、諦めないからっ!!

   私、こんな姿形だけど…小さな女の子だけど…
   おあいにく様!任天堂の知識のおかげで、CERO:Zまでの耐性あるもんねー!
   流血表現なんて捨てて、掛かってこーい!」パアアアアァァァ!!





傷ついて、回復して、また傷ついて、回復して。

血だまり広げつつ、2人の体力をガリガリと削りつつ、



空しすぎる、無意味な作業が延々と続いていく――――――――――――


225Mii2021/06/26(土) 20:22:12NzWQi0XQ (15/53)

~8時間後 (現実世界2.88秒経過  残り猶予51200秒)~



ロゼッタ「――――」



何時間も経った、けれど。ママは、ピクリとも動かない。
魔法を行使し続けてきた以上、ホントに気絶しているわけじゃないけれど。
まだ気絶していてくれた方がずっとずっとマシだった。



サヤカ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…うぷっ…………
   と、り、あえず、こんど、こそ、おちつい、た、かなあ、はぁっ…はぁっ…」ゼェゼェ

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――――――ぅして」

サヤカ「――――――――!!」ピクッ

ロゼッタ「――――――――――――――――どう、して?」

サヤカ「ママ…!なんとかなったん――――――――」


226Mii2021/06/26(土) 20:24:46NzWQi0XQ (16/53)


ロゼッタ「――――――――どう、して。どうして、こんなことになったの?

     ―――――――――――ねえ、どうして?」



くぐもった涙声。



サヤカ「…………!?」

ロゼッタ「そんなに、いい子じゃ、なかった、かも、しれない。
    陰で、誰かを、迷惑がらせる行動を、していた、かも、しれない」ポロポロ

サヤカ「あ、あのっ!」

ロゼッタ「でも…こんな目に遭うまで、私、碌でもない人間、だった…?」ポロポロ

サヤカ「そんなわけないよ!悪いのはあくまで悪の親玉っ!
   ママはこれっぽっちも罪悪感感じなくていいからさ!」

ロゼッタ「――――あくの、おや、だま」

サヤカ「そうそう!全てはタブーが悪い!満場一致で!」

ロゼッタ「…………タブー」

サヤカ「そう、タブー!あの気味が悪い生命体の!」


227Mii2021/06/26(土) 20:31:09NzWQi0XQ (17/53)





ロゼッタ「――――――――タブー、消さなきゃ」

サヤカ「…ほへ?」



ロゼッタ「タブー、消す。消さなきゃ。消シテヤル」ユラァ

サヤカ「…あの、ちょっと?」

のそっと、ママが、起き上がる。
それ自体は喜ばしいことだけれど、ちょっと…いやとんでもなく、様子がヘン。





ロゼッタ「タブーガ憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。
    殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。
    引キ裂イテ 八ツ裂キニシテ 消シ炭ニシテ 完膚無キマデニ滅シテヤル――――」ブツブツ

サヤカ「」



――――不気味な靄を纏って…………ママが、狂った。


228Mii2021/06/26(土) 20:35:01NzWQi0XQ (18/53)

サヤカ「…………ちょちょちょ、ちょっと!…って、なにごとっ!?」



ママのまわりに、おぞましい赤い、膨大なFP渦が。

いわゆる魔力開放…いやFP解放――!
確かに、ママは大量のFPを獲得した時…一時的にFP解放して、
実体化して溢れだすFPに幾重にも包まれることがある。
…でも、それは――――青色。自称「おたすけウィッチ」状態。
体質が最高に「空間魔法向き」になっている、能動的な状態。

…今目の前に広がる景色は、真っ赤な真っ赤な、凄まじい量のFP。
ごうごうと、激しい音を伴って、ぐるんぐるんと渦を巻く。まるで竜巻、いや台風…!



ロゼッタ「――――グゥ――――ガガ――――――――」



のたうち回りながらも歩き出し、獰猛な獣のような、唸り声。
煽られ舞い上がる、頭髪。それすら鬱陶しそうに、雑に頭を掻き毟る。



焦点が合っていない、その「両目」。
特に「右目」が、昏い赤色に染まってFP暴走を引き起こす動力に…!?
なまじ魔法レベルが高いばっかりに、とんでもない現象を引き起こしてる…っ!


229Mii2021/06/26(土) 20:38:10NzWQi0XQ (19/53)

サヤカ「…………なに、これ。…ええっと。検索、検索。

    任天堂の知識を、ちょっとばかり引っ張ってくるとするなら…
    九尾が暴走した人柱力状態、かなあ、HAHAHA」





サヤカ「…………笑ってる場合じゃないっ!?えらいこっちゃ!」

直感。急いで止めてあげないと、ママが大変なことになるっ!!

声を掛ける。必死に掛ける。
…全く聞こえてない。あるいは取り合ってもらえない。

余りのFPの集積、奔流に…ママの足元の地面まで耐えきれなくなって、
ぴしりぴしりとあちこちに亀裂が走っていく始末…………うわぁっ!?

ある程度の距離にも関わらず、私まで、かなりの圧を受けるけれど、
なんとかしてFP暴走の源を――おそらく憎しみを――絶ってあげないと…!!
ひとまず駄目元で、もう一度Starlit Wish《星に願いを》をドーンと…………!





その魔法行使の予備動作が、どうやら、敵性認識されたみたいで。
殺意とともに、空間魔法、とんできて。え、うそ…!


230Mii2021/06/26(土) 20:40:28NzWQi0XQ (20/53)




サヤカ「び、がががが―――!」ドクンッ



脳天に、あ、たった。

食らっちゃいけない、類の、威力…ぅ。



しょ、せん、わたしは、情報生命体。

でも、ごっそり、とてつもない生命エネルギーを、持ってかれる。

血はながれないけれど、重要な構成情報、いくばくか抜けていく。





サヤカ「――――――――――――――――」





意識が、ぼやける。


231Mii2021/06/26(土) 20:44:27NzWQi0XQ (21/53)

サヤカ「ピ――――――――――――――――――!
   フセイナ ソウサヲ 行ナッタタメ ぷろぐらむヲ サイキドウシマス



   ……しすてむでーたガ 見ツカリマセン
   でぃすくノ B面ヲ せっとシテクダサイ

   でぃすくガ 見ツカリマセン
   どらいぶノ フタガ ヒライテイナイカ
   カクニンシテクダサイ



   あくせすえらー!
   サイテキナ ぷろぐらむヲ サガシテイマス
   めもりーかーどヲ ヌキサシシテ クダサイ

   ぷろぐらむカラ オウトウガ アリマセン
   しすてむガ びじージョウタイカ
   あるてぃめっとでいじーニ ナッテイマス



   あぷりけーしょんえらーガ 発生シマシタ
   しすてむヲ サイキドウシマス

   ふぁいるノ せーぶニ シッパイシマシタ
   でーたガ ウシナワレタ カノウセイガ アリマス」


232Mii2021/06/26(土) 20:46:38NzWQi0XQ (22/53)

サヤカ「…こーでっくヲ ケンサク シテイマス
    
    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ

    …………でふこん1 発動
    ソウイン スミヤカニ タイヒシテクダサイ」



サヤカ「――――」ドサッ

わたしは ちからつきた。



ロゼッタ「――――」

紅い台風を纏って、夢遊病のようにヨタヨタと歩く、ママ。



サヤカ「――――」

サヤカ「――――」



サヤカ「――――――――――――――――アキラメタク、ナイ」ボソッ


233Mii2021/06/26(土) 20:50:17NzWQi0XQ (23/53)

サヤカ「しるばーばれっとヲ ケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「しるばーばれっとヲ サイケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「しるばーばれっとヲ サイサイケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「…………」




サヤカ「ママノ…『ロゼッタ』ノ めもりーヲ 深層スキャン シテイマス」


234Mii2021/06/26(土) 20:52:29NzWQi0XQ (24/53)

サヤカ「しるばーばれっとヲ サイサイサイケンサク シテイマス





















    ケンサクノ ケッカ
    『でいじーめそっど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ

    成功リツ スイテイ 20パーセント
    タダチニ たすくふらぐヲ オンニシテ
    ジッコウニ ウツリマス――」


235Mii2021/06/26(土) 20:56:41NzWQi0XQ (25/53)

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――ううっ」



何時の間にか、気絶していました。
さきほどまで、何を、していたのでしょうか。記憶が混濁しています。



両腕に、温かい、感覚。…そっと、握られている感じ。



「あア、まマ、気ガつイた?」

ロゼッタ「は、はい…………っ!?」




ほっぺたやら、手首やら。胴部やら。
体のあちこち、見るも無残な、抉られた跡。

傷跡から、血は、流れない。かわりに、0と1の、電子情報のカケラ…といったらいいのか。
サラサラと光の粒と共にナニカが散っていく…そんな様相。
ノイズが走り、姿が小刻みにブレて、明らかに――異常事態っ!


236Mii2021/06/26(土) 20:59:29NzWQi0XQ (26/53)

ロゼッタ「な、いったい、なに、がっ!?」

サヤカ「まマは、悪ク、なイよ。
   暴走状態ノまマに、なンとシてモ、助カっテ、欲シくテさ。
   可能性ヲ探ッた挙句、『でいじーめそっど』ニ行キつイて」



デイジー、メソッド。サヤカは確かにそう言った。
一体、何のことを指しているので――――



握られていた、両腕。
先ほどまで、そう、とんでもない失意と絶望のどん底にいた、
それがどうしたことか、今は…思わず口を手で押さえて――――
止め処ない悲しみと、激しい頭痛と、猛烈な嘔吐感「だけ」で済んでいる。
そんな私の事情、考えれば――――






サヤカ「暴走スるマまに、ぎューッて 抱キ着イて。
   ソのマま、身ヲ焼カれツつモ 腕掴ンで――――

   まマの 抱エ込ンでタ 真ッ黒ナ もヤもヤ、半分コに しテみタ、だケだカら」

ロゼッタ「――――――――っ!?」


237Mii2021/06/26(土) 21:24:16NzWQi0XQ (27/53)

半分、なんてものでは、ないっ!?
デイジー姫の「FP制御法」を参考にしたみたいなことを言ってくれていますが…



サヤカ「FPゴと、私ノ体ヲ媒体ニしテ、憎シみ、濾シ取ッて……ネ」



あれほど取り乱して生きることを拒絶していた私が。
――――ここまでケロッとしている、その意味。

ほとんど、サヤカが――――自己犠牲で、貰い受けて、引き受けて、くれた…!?



サヤカ「…ごホっ、ごホっ、ごホっ!」

激しい咳とともに、胃液、ではなく…またもや、情報、抜けていく…?
サヤカの、存在が、心なしか、おぼろげになっていく…!?

サヤカ「…………でモ、ごメん、まマ。私、謝ラなキゃ。
   私自身モ気ガ触レたラ駄目ダかラ、汚染サれタ構成要素、
   …………どンどン放棄スる事ニなッてサ。

   ちョっト、捨テ過ギた、かナぁト、思ッてタり」

ロゼッタ「―――――――――」

しゃべるのも億劫なほど、サヤカが、疲弊の色を強めている。


238Mii2021/06/26(土) 21:26:08NzWQi0XQ (28/53)

サヤカ「……………………………管理者トしテの最低限ノ力、足リなクなッちャっタ。

   先ホど公言シてタ、8万秒ハ…ごホっ…持タせテ、見セるケど。
 
   そッかラ先ハ、無理ッぽイ。……………………………御免ナさイ。

   最後ノ『すッぽカしテ此処ニ留マる作戦』ハ…今更頼ミ込マれテも…使エなイや」



みるみるうちに、涙、溢れてくる。
フラフラとしているサヤカを抱きしめて、子供のように――――泣きじゃくりました。





ロゼッタ「サヤカぁ…ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!私の…せいで――――っ!」









――――じきに、この空間は、なくなります。


239Mii2021/06/26(土) 21:28:29NzWQi0XQ (29/53)

一体、どれだけ、泣いていたのでしょうか。
なんて醜い姿を見せてしまったのでしょうか。…消えてしまいたい、くらい。

――だと、いうのに。
サヤカが、突然わたしに対して儚く笑いかけて、なけなしの空元気。



サヤカ「ねエ、まマ」

ロゼッタ「…………………………は、い」

サヤカ「そンな顔、しナいで。心配シてクれテ、本当ニ、嬉シい。
   だカら、最後ノ最後ノ、恩返シ」

ロゼッタ「…………お、んがえし…?」
   
サヤカ「一ツ、閃イた、最終手段。
   取得経験値ハ1万分ノ1デも。凄イ、凄イ、効果覿面ナ近道ルーとガ、
   『万ガ一』…うウん、『億ガ一』ニでモ、見ツかレば…!もシかシたラ…!!
   どウか、私ヲ信ジて――――私ニ命運委ネて――――



   『一発逆転』、狙ッて、みナい?」



実際のサヤカの様子は、居た堪れないほど悲惨な物、なのに。
なんだか、何故だか、不思議なほどの意気込みと希望を、感じることができました。


240Mii2021/06/26(土) 21:31:05NzWQi0XQ (30/53)

ロゼッタ「……………………」スッ・・



サヤカに言われるがまま、正座して、目を瞑る。
なんだか懐かしい、この感じ。
いつぞやも、行き詰った時…こんなことをやってみましたっけ。

まだまだ吐き気は続くけれど。サヤカの苦痛に比べれば…いいえ。
比べることすら烏滸がましい。物理的にも精神的にも飲みこみます。



ロゼッタ「……………………」



サヤカ「はーイ。そレじャ、始メるネー。

   私ノ言葉ニ素直ニ従ッて行動シてネぇ。そウ!まイんドこンとローる!
   …何ダか犯罪臭ガすルけド、あル意味『自己暗示』ッて事デ、気ニしナい!
   
   私ガ手ヲ規則的ニ叩クたビに、心ヲどンどン鎮メて行ッてネ!さンはイ!」



――ぱちん。

サヤカが手をひとつ叩く。決して穏やかとはいえない荒れた心を、ワンステップ、深層へ鎮める。
なぜこんなことを?なんて考える必要なんてない。サヤカが求めるのなら、従う、ただそれだけ。


241Mii2021/06/26(土) 21:34:13NzWQi0XQ (31/53)

――ぱちん。

サヤカが手をひとつ叩く。更にワンステップ、心を深層へ。
イメージするのは、水面に水滴ひとつ垂らして、波紋が拡がっては弱まり消えていく…
そんな情景。格好付けて言えば…明鏡止水。



――ぱちん。

――ぱちん。

――ぱちん。



サヤカの手拍子は止まらない。どんどん、心が鎮まっていく。静まっていく。
気持ちの悪さ、不安、焦りは棚上げにして、ひとまず苦痛から解放されていく。
…でも、所詮は棚上げ。この儀式が終われば、また――――

サヤカの手拍子が、ひたすら、ただひたすらに続き。
もう、回数も分からなくなってきたところで――――――――



サヤカ「――――――――心、底ノ底マで、鎮マり切ッたネ?そレじャあ―――――――――――――」

目を瞑っていても、わかる。サヤカが、すぅっと深呼吸して――――
何かを発しようと準備していることが。


242Mii2021/06/26(土) 21:37:40NzWQi0XQ (32/53)

サヤカ「―――――――――――――――――――――――――――――
   まマの身ニ起キた…全テのッ!あラゆルっ!
   障害ニっ!不条理ニっ!理不尽ニっ!災イにッ!不幸ニっ!悲シみニっ!因縁ニっ!横暴ニっ!

   りミっターなシに、感情、爆発サせチゃッて――――!!!」



ロゼッタ「――――――――がぁっ―――――――――――」

どす黒い物に突き動かされ、染み入るように。体が動く。
サヤカの言葉が浸透するままに、リミッターなんてぶっ壊して、
本能から、本心から、沸々と湧き上がるソレを――――――――――――



――――        大   爆   発 っ !!!!!!!!!!



ロゼッタ「がああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

どうして、私が、こんな目にっ!
運命を、恨むっ!恨んでやるっ!!
もう何も、信じられないっ!!

ゴオオオオオオオオオオオオォォォォォォォッ!!

荒れ狂う、FPの嵐。さっきもあったことの、二の、舞――――――――
再びどす黒い物が、どこからともなく私の心を染め上げて――――


243Mii2021/06/26(土) 21:40:22NzWQi0XQ (33/53)

サヤカ「そコで、すトおオおオおオぉォぉォ――――――っプ!!!」ビシィッ!

ロゼッタ「―――――――――ぎぃいいぃぃっ!!」グググッ・・・

――――私は、なにを、考えていた…!?
サヤカが声掛けしてくれた、おかげ、で。間一髪、踏みとどまったっ!
噛み過ぎた口端が切れて血を滲ませますが、安い物っ!!
サヤカに従い、再び心を落ち着けてFPを収めて――――



サヤカ「違ウ、違ウっ!!落チ着イちャ絶対駄目ッ!!!」

ロゼッタ「――――――――――――――――ぎっ!?」ドクンッ

サヤカ「収メるンじャなクて、『留メる』ノっ!!そシて、そノまマ――――――尖ラせテっ!!」

ロゼッタ「――――――――――――――――っ!?」

い、き、なり、何、を……!!



サヤカ「今ノ、まマに、必要ナ、こト。そレは、言ウまデもナい、ちカら…!
   唯ノ癇癪、地団駄、駄々捏ネ…そンな状態デ暴レ回ル狂気ノえネるギーを…
   絶望ニ打チ勝ツ為ノ、『闘争心』ニ、変換シてシまウ、こト!

   お願イ、まマ! 全力デ―――――  怒(いか)レ!!」

ロゼッタ「――――――――――――!!」


244Mii2021/06/26(土) 21:42:33NzWQi0XQ (34/53)

サヤカ「さッきノ、まマの暴走見テ、わカっタノッ!!
   引ッ込ミ思案ナまマニも…燃エたギる熱イ心ハ、しッかリ根付イてル!
   そレを、たダ、正シい方向ニ切レ味鋭ク尖ラせテ、解キ放ッてアげレば、いイのッ!」



ロゼッタ「――――――――――――――――――――」



サヤカ「『こコまデやッたラ上出来』トまリお達ニ引キ継イで貰ッて満足スるンじャなクて、
   『こイつハ私自ラ、責任もッて、ぶッ潰ス』ト奮起スる、勇気ッ!

   『私ノ仇ヲ、誰カ、どウか取ッて下サい』ト託スよリも先ニ、
   『こンな輩ニ負ケを認メる訳ニ行クもノか馬鹿』ト殴リ掛カれル、度胸ッ!

   悪ヲ挫クのニ、遠慮ハ要ラなイかラっ!全力デ、怒レっ!!!」



ロゼッタ「――――――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――――――」



言うは易し、行い難し。
いきなり、そんなこと、言われ、てもっ……………!!

理屈はっ!理屈はっ!飲みこめて、いるというのにっ!!


245Mii2021/06/26(土) 21:44:22NzWQi0XQ (35/53)

サヤカ「何ヤっテるノ!今マで、何ヲ、見テ来タの!?幸セ者ノ、貴方ニは…………



   打ッてツけノ、参考トなル、人物ガ、いル、でシょウっ!!」



――――あ。



――――脳裏に浮かぶは…………
    
――――いざとなったら、怒髪天になったら、
――――たちまち道理を捻じ伏せる、いつもは気ままな…お嬢様。





――――デイジー姫。その勇姿、少しばかり――――お借りしますっ!





怒(いか)る。あるいは、キレる、という表現の方が得てして分かりやすいでしょうか。
単に、周りに喚き散らすんじゃない。八つ当たりを繰り返すんじゃない。
明確な対象を設定し、敵愾心を育て、溢れる全エネルギーを注ぎ込む――――


246Mii2021/06/26(土) 21:46:26NzWQi0XQ (36/53)

サヤカ「何ヤっテるノ、馬鹿ッ!まタFPガ暴走シかケてル!
   最初ッかラやリ直シっ!!」

サヤカ「違ウっ!そレは何モ考エてイなイだケ!
   心ノ暴走カら逃ゲてルだケ、全然違ウっ!!」

サヤカ「怒ルこトは恥デも下品デもナいヨっ!
   躊躇スる事コそガ、そノ昂リに対スる最大級ノ…侮辱ッ!
   溜メに溜メて、うンざリすル位ニ溜メまクっテ、
   あリっタけノ想イと共ニ、敵ニ…がツんト、ぶツけチゃエっ!!」



何度も、何度も、何度だって。
サヤカにダメ出しを食らって、やり直して、やり直して、やり直して。

ロゼッタ「うぷっ…」ウズクマリ

喉元まで幾度となく襲い来るのは、胃液か、嘔吐物か、はたまた血塊か。
…汚らしい想像はやめましょう。…無心に、なれっ!それでいて、強欲に、なれ!

私の精神は、ただひたすらに急上昇と急降下を繰り返す。
辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。
悶絶躄地。艱難辛苦。窮途末路。七転八倒。

私も、あおりを受けたサヤカも、どんどん傷跡増していく。



――それでも。


247Mii2021/06/26(土) 21:48:16NzWQi0XQ (37/53)

サヤカ「そノ調子ッ!今、ちョっト制御ガ効イた気ガすルっ!」



サヤカ「いイ感ジっ!総量ソのマま、踏ミとドまッて!こコが正念場ッ!!」



サヤカ「自分ノ心ニ飲ミ込マれナいデっ!逆ニばッちリ操ッて、物ニしチゃエ!



   ――――――――そレが、まマの、頼モしスぎル、武器ニなルかラっ!!」



ロゼッタ「――ガ、ガ――――こ、んな、も、の――――――――――
    はああああああああああぁぁぁぁぁ――――――――っ!!!!!」



視界も意識もチカチカするなか、一心不乱に。
私が持っているという、怒りのチカラというものを――――いざ――――!



・・・・
・・・・
・・・・
・・・・


248Mii2021/06/26(土) 21:50:33NzWQi0XQ (38/53)

~20時間後 (現実世界7.20秒経過  残り猶予8000秒)~



ロゼッタ「―――――――っ、がはっ…は、はぁっ――――――――」

肩で息をする、なんてものではない。
這いつくばって、ただ空気求めて荒く荒く息を吸って、吐く。
見栄えなんて、行儀なんて知ったことことではありません。

散漫な視線を、サヤカに向ける。

不思議と、いつの間にか、嘔吐感は立ち消えている。

残った物は、凄まじい量の疲労と、汗と。





ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ・・・・・・・・・・・

サヤカ「――――ごー!!」バッ

ロゼッタ「―――――――――――――」ザッ!

紅い奔流を纏いつつ、精神、穏やか。

これで最後とばかりに歯を食いしばって立ち上がり、
両腕拡げて、向かい入れる態勢、取ってみれば――――


249Mii2021/06/26(土) 21:53:05NzWQi0XQ (39/53)

ロゼッタ「――――お願いっ…!!」



それらを体が拒否するのではなく、「受け入れて」。
どんどん、どんどん、吸い込んでいって!





ロゼッタ「――――――――ハッ!!」





全て、無事に、収めきったっ!!



5秒、10秒、20秒…30秒。
爆発を、暴走を危惧すれど…………取り越し苦労。



負の感情を ついに 制御し切った!
ロゼッタの 精神力が ぐぐーんと 上がった!▼

サヤカ「――――――――――――――――やッた――――ァ!!」


250Mii2021/06/26(土) 21:55:58NzWQi0XQ (40/53)

思わず泣いて、拳を振り上げるサヤカ。
私は、今更ながら、まじまじと、両手の…手の掌を見やる。



――――体が、ちりちり、火照っている。
――――むずむず、うずうず、している。



乱暴な言い方をするなら、喧嘩腰。
言葉をちゃんと選ぶなら――そう。燃え滾る闘志、勝ち気。

なんでも、自分で解決できそう…いえ。解決しなくっちゃ!という、
強い想いが――――体中を駆け回っていますっ!!

ロゼッタ「――――こ、これが…私、ですか?」

俄かには、信じられない。この、逆境に対する、言いようのない高揚感。

サヤカ「新生ロぜッた、誕生、だネ!! 」ニヘラ

ロゼッタ「……っ!サヤカ―――――!!」

胸に飛び込んでくる我が娘が、本当に愛おしく思えました。



これで―――――
これで、現実世界に戻ってから、精神攻撃に――――耐えきれる、かも、しれない。


251Mii2021/06/26(土) 22:01:05NzWQi0XQ (41/53)

ロゼッタ「…………」ソワソワ

ロゼッタ「…………」ソワソワ



サヤカ「…あ、うン。気持チが昂リ過ギてルのハわカるケど。落チ着イて。
    さア、作戦終了…うウん、作戦完遂ニ向ケた、最終準備ヲ!
    もウ、遺言ヲ考エる時間ナんテ、要ラなイね!」

ロゼッタ「…!!はいっ!…とは言いましても。何をすれば、いいのですかね。

    ……あ、あれ!?そういえばっ!?
    ここでの経験効率って現実世界の1万分の1なんですよね!?
    現実世界に送り返された私って、しっかり絶望に抗えるんですか!?」

サヤカ「さア?」

ロゼッタ「『さあ?』…って、駄目じゃないですかっ!?」

サヤカ「冗談、冗談。さッき言ッた通リ、『無茶苦茶習得シにクい』ッて意味ダかラ…
   習得シちャっタ物ヲ、ぽカんと忘レるコとハ、無イよ」

ロゼッタ「良かったあ…!」

サヤカ「やッた成果ガ無駄ニなラなイだケで…
   そモそモ絶望ニ耐エるニは足リてナいッて可能性ハ無茶苦茶有ルんダよ、
   そコんトこロは、分カっテる?」


252Mii2021/06/26(土) 22:04:12NzWQi0XQ (42/53)

ジーンと、感動。そのあと、静寂。

ロゼッタ「…これでも、まだ、分の悪すぎる賭けであることには、変わりないんですよね」

サヤカがコクリと頷きます。
…そう、精々勝率を0.1%にできたくらい。
できれば、もう一声。1%くらいはくれないでしょうか…?

サヤカ「…まアでモ、きッと、大丈夫!!もウ、まマは、負ケなイよ!」

ロゼッタ「――――その、心は?」

サヤカ「唯ノ勘、ダけド」

ロゼッタ「――――最高の信頼要素ですね、ふふ」

疲れ果てながら、2人で小さく笑い合いました。





サヤカ「…………」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「…泣イてモ、笑ッてモ、後、2時間位ダよ。やリ残シた事、何カ無イ?今ノ内ニ…」

ロゼッタ「…………やり残した事――――――――」


253Mii2021/06/26(土) 22:07:15NzWQi0XQ (43/53)




…………そうだ。



ロゼッタ「…あります。最後の機会かもしれませんし――
    自己を奮い立たせるために、やれることはやっておきたい。
    サヤカなら、分かってくれるでしょう?」

まだ汗だくですが、疲れを吹っ飛ばす気持ちで、軽くウインク。



サヤカ「…………………………ま、マさカ!?あレを!?
   い、いイの!?増々自分ヲ追イ込ム事ニ、なルんダよ!?」

ロゼッタ「…………切羽詰まった時に、何をやっているのかと、自分でも思いますが。
    ――――覚悟は、できています。試したいんです」

サヤカ「……そッかァ。…うン、なラ、私ハ――何モ、言ウこトは、なイよ。せメて、手伝ワせテ、くレる?」

嬉しい、申し出。断る道理など、これっぽっちもありません。

ロゼッタ「それでは、短い時間ですが、やっていきましょうか――!!」バッ

サヤカ「おーーー!!」パアアアアア

さっそく、魔法を繰り出すべく、新たな自分の体中に、力を籠めて――――!!


254Mii2021/06/26(土) 22:13:03NzWQi0XQ (44/53)

ロゼッタ「――――――――――――――――」ピタッ



サヤカ「えイ、えイ、そレー!!…まマ、こノ位ノ濃サで、いイかナ!!!」パアアアアア!!

ロゼッタ「…あの。さっきから、私になんの魔法を掛けているのですか?」

サヤカ「何ッて……もザいク?」

ロゼッタ「…………?」



サヤカ「流石ニ『CERO:D』的ナあラれモなイ映像ヲそノまマ流スのハ……ちョっト…怒ラれルし」

ロゼッタ「!?!?!?!?」

サヤカ「にンげン、死ノ間際ニ性欲ガ刺激サれルっテ言ウし!
   折角清ラかナまマの晩節ヲ汚スかモと否定的ニなッたケど、乙女ノ自由ダもンね!

   …あ、私空気読メてナかッたネ。『実分身』ヲ応用シた『逆ハーれムの術』デ
   任天堂選リすグりの美形男性陣ヲかキ集メて――――――――



   ……ぐハっ…痛ァ――――――――っ!!
   今殴ッた!娘ヲ、ふルすイんグで殴ッたネ!?暴力大反対ッ!!」

ロゼッタ「キノピオでも助走してピーチ姫に殴り掛かるレベル!」カアアァァ


255Mii2021/06/26(土) 22:19:07NzWQi0XQ (45/53)

ロゼッタ「はぁっ!はぁっ!…そ、そんなふしだらな娘に育てた覚えはありません!!」

サヤカ「…こンな姿デも、任天堂ノせイで、まマよリ耳年増ナんだヨね…
   もシかシて、私ノ、ちョっトしタ勘違イ?」

ロゼッタ「180度ずれたあとで虚数空間にぶっ飛んで行きましたよ、もうっ!!
    そうではなくてですねぇっ!!」

かわいく「てへっ」っと笑っても、あんまり見逃してあげませんからね!



ぜぇ、はぁ。爆弾発言に顔が真っ赤!こればかりは耐性がないし耐性付きたくもないっ!
こうなったら、無理やりにでも!サヤカなりの緊張ほぐし作戦と解釈しますからっ!
うわあサヤカったらここまで自分を投げ打ってくれるだなんて!嬉しいなぁ!ふふふ!



ロゼッタ「…最後に。考案中の『魔法応用』について!
    洗いざらい、試し撃ち、しておいたいんですよ!ぜひとも!」

サヤカ「…流石ニ今カら新シい応用ヲ閃クのハ無理ジゃナいカな…?」



ロゼッタ「…それでも。
    撃てるかどうか把握しておくことは、大事でしょう?
    心構えが、結構変わってくると思うのですよ」

サヤカ「…………あア!そウいウ事ネ!!」ポンッ!


256Mii2021/06/26(土) 22:23:03NzWQi0XQ (46/53)

~22時間後 (現実世界7.92秒経過  残り猶予800秒)~

サヤカがどうしてもと言うので。
サヤカが最後の生命力を振り絞って、一瞬だけ…見かけ上は、もとの体調を取り戻す。

サヤカ「……ふう。体ガタガタっていうのは辛いね。やっぱり健康が一番!

   …残された時間は、もうちょっとだけ。
   …ほんとのほんとに、やり残したことは、ない?」

ロゼッタ「…………最後に、ぎゅって、抱きしめさせてください」

サヤカ「ふふ、お安い御用かな」



ぎゅーっと。
無理をしているためか、ますます苦しさをやせ我慢中のサヤカを抱きしめる。



ロゼッタ「…………もう、大丈夫」

大事な物、たくさんもらいました。大勝負に勝っても負けても、後悔は、ない。
もちろん、勝って終わりたい所では、あるけれど。

サヤカ「大丈夫?伝えそびれた事、質問しそびれた事もない?」

ロゼッタ「大丈夫ですよ、そんなものはもはや何も残って――――」


257Mii2021/06/26(土) 22:25:34NzWQi0XQ (47/53)




ロゼッタ「…………………」



ロゼッタ「…………あれ?そういえば…………」

ふらりと、自分の体をみやる。

…うん、確かに。精神面で、何回りも強くなった感じ。それは率直に嬉しい。
でも、ひょっとすると…………。この感じは…!





ロゼッタ「…………経験値、結局返ってきてないっ!?い、いやでも…!?」





あれ?あれれ!?
偽者の私たちの記憶は戻った、知り得ないはずの情報が頭に叩き込まれた。

…だとしたら、経験値はやっぱり取得している?どういうこと!?
そのわりに、身体面の変化が――――!


258Mii2021/06/26(土) 22:27:56NzWQi0XQ (48/53)

ロゼッタ「こんなに経験値を還元したのに、なんだか――やっぱり、強くなっていない…!?」

サヤカ「あせっちゃだめだよー」

ロゼッタ「で、でもサヤカ…」

そうは言っても、これでは、苦労した意義の一部が無駄に…っ!
もちろん贅沢を言い過ぎたりはしたくありませんが…!



サヤカ「むむむ?」ビビッ



そのとき。
サヤカが、変な電波(?)を、受信してしまいました。



サヤカ「…………うっげー…ああ、そっかー。そういうこと、ね。
   オールスターのお祭り大会の上に、転生の扉なんてもので空間同士の繋がりが
   しっちゃかめっちゃかになって、へんな化学反応起こしたのかぁ…
   任天堂さん、しっかりしてよ…」ボソッ

ロゼッタ「…………?」



サヤカが呆れたようにため息吐いて、改まって私の方を振り向いて――――


259Mii2021/06/26(土) 22:30:56NzWQi0XQ (49/53)

サヤカ「ママ、まさか――――――――――――――――

   経験値を能力にかえてないんじゃないの?」

ロゼッタ「えっ?」

サヤカ「このゲームでは、練習するだけじゃ能力は上がらないの」

ロゼッタ「…この『ゲーム』?」



…というより、練習って何ですか?



サヤカ「『練習』などのコマンドに並んで『能力を上げる』という名前のコマンドがあるよ。
   それを選んで、経験値を使って能力を上げるの」



…………サヤカは何を言っているのですか?



サヤカ「あ、それとは別の話だけど、Yボタンを押すと、少し前の文章も見られるよ!
   そしてその後十字ボタンの上を押すともっと前の文章も見られるの!」

ロゼッタ「落ち着いて!お願いだから落ち着いてサヤカっ!?何がゲームだと言うのですか!」ユサユサ


260Mii2021/06/26(土) 22:36:25NzWQi0XQ (50/53)

サヤカ「上見て、上」チョイチョイ

ロゼッタ「上、って…」チラッ











    『ロゼッタ 両投右打 オーバースロー
    球速 280km  コントロール A255  スタミナ C 88
    オリジナル変化球 ジャイロファイア 【スピード+30% 炎属性】

    経験点:999(MAX)
    球速      280 ⇒ 281 必要経験点900
    コントロール    取得済
    スタミナ      88 ⇒ 89   必要経験点 10            』





サヤカ「なるほど、むしろ表サクセスというよりは俺ペナ仕様かあ。うわ、経験点頭打ちだ。勿体ない」

ロゼッタ「ななな何ですかこれぇ――――――――!?」ビクゥッ!!


261Mii2021/06/26(土) 22:42:24NzWQi0XQ (51/53)

サヤカ「何かの手違いで、偽ママたちの経験値だけ…別系統の処理になってたみたい。
   よーし、さっさと経験値…いや経験点を能力に変換しよう!時間がないよ急いで!
   このまま選手登録する気!?」

ロゼッタ「ちょっと待って処理が全然追いつかない!」

え?え?ええ?球速?コントロール?スタミナ?
まるで野球ゲームではないですか。



サヤカ「…………ああ、もう!時間切れぇー!!
   これ以上延ばされると、現実世界に上手く戻れなくなるよっ!

   …………と!いうわけでっ!独断と偏見でっ!
   私が勝手に、役に立ちそうなのをっ!選んじゃいますぅっ!
   異論は認めませーん!」バタバタ

ロゼッタ「!?」ピロリーン

ロゼッタは ■■■を 手に入れた!▼



サヤカ「あ、炎属性のボールを投げるんだし…せっかくだから、とっておきのも!
   原作仕様、原作仕様!そぉれ!……よおぉーし、大成功っ!」

ロゼッタ「原作って何!?」ピロリーン

ロゼッタは ■■を 手に入れた!▼


262Mii2021/06/26(土) 22:45:32NzWQi0XQ (52/53)

ロゼッタ「だから、お願いだから説明をしてくれませんか…って。
    ほ、本当に残り時間が…1分切ってる!?考え込み過ぎました!!」



ああもう!この際、経験値うんぬんは諦めましょう!当てにしないっ!



サヤカ「ママ、頑張って。
   …タブーの精神攻撃なんかに、絶対っ!ぜーーーーったい!!
   負けちゃ、駄目なんだからねっ!!」グズッ

ロゼッタ「もはや遺言も忘れてしまいましたからねっ!
    負けるわけには行かなくなりました!残念ながら!
    勝ってきますよ、こうなったら!」

サヤカ「…それ、じゃあ。送り届けるよ――」パアアアアアア!!

ロゼッタ「…………ええ」

サヤカ「――――――――またね!結果はいつか、聴かせて!
   …そう、夢の中ででもっ!!」

――――ええ、「またね」。
――――涙腺緩みながらも、「さよなら」だなんて嫌だから――!



景色がおぼろげになり、涙目で笑うサヤカの顔が、どんどん遠くに――――


263Mii2021/06/26(土) 22:47:28NzWQi0XQ (53/53)

サヤカ「…………ほっ」ヘタリ



ママを送り届けて、私は力尽きた。

体力の限界が来たということもあるし、そもそも管理者の役割が終わったわけだし。



サヤカ「…あー、世界が、くずれて、きた、なあ」



サヤカ「…………まあ、『私』は『貴方』だから、悲しくなんてないよ、うん」





サヤカ「最後のプレゼント、喜んでくれるといいなあ。
   うふふ。…きっと、今のママなら…使いこなしてくれる、だろう、から――」サラサラ・・・



サヤカ「――――――――――――――――」・・・・・・



シュン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


264Mii2021/06/30(水) 05:49:00bzZ4v6Ks (1/45)

~スマブラ試合会場~



ニンテン「そりゃあああ!石化なんてどうってことないぜ!」パアアアアアァァァ!!

アナ「……で、でもなんだか、他の人と様子が違うようなっ!
  気、気のせい!?無駄に頑丈に固まってる!ちょっと慎重に解いた方がいいかも!」パアアアアアァァァ!!

ニンテン「そーゆーことは後で考えるっ!」パアアアアアァァァ!!

アナ「それじゃ意味ないでしょ!」パアアアアァァ!



マリオ「ロゼッタッ!」

ルイージ「ロゼッタッ!」

デイジー「ロゼッタァ!!」

リンク「ロゼッタッ!」



パリイィィィ―――――――ン!



ロゼッタの 石化が 解かれた!▼


265Mii2021/06/30(水) 05:51:27bzZ4v6Ks (2/45)

…………現実世界に舞い戻った途端、闇の衝撃に脳を揺さぶられる。



ロゼッタ「――――――――」



なすすべもなく。



ロゼッタ「――――――うぁ――――」



もとより、魔法陣を繰り出すことすら、無理――――だった。
2秒あれば十分だとか、笑わせてくれる。



恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖
絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望
恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖
絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望
恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖
絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望
恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖
絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望


266Mii2021/06/30(水) 05:52:50bzZ4v6Ks (3/45)

涙こぼれ、口を開けたまま、瞳孔開いたまま、微動だに出来ぬまま。



そのまま前に倒れ込み――――



20cm、

10cm、

 5cm、

 1cm、







ロゼッタ「――――――――――――――――」ガシィッ!!





――――でも。今なら、どうかは、わからない。


267Mii2021/06/30(水) 05:55:28bzZ4v6Ks (4/45)

ロゼッタ「――――――――」

俯いた表情のまま、間一髪手を突いて顔面衝突は免れる。
…なんだか、「幽玄の間」に飛ばされたときと、似ている。
誰にもばれないよう、小さく息を吸って、吐いて。



ロゼッタ「――――――――」



心、真っ黒に塗り潰されてしまったか?
何も考えられなくなってしまったか?
生きることを諦めてしまったか?



全て、終わってしまったか?



――否。まだ、抵抗の想い、胸の奥にハッキリと秘めている。
キリキリ締め付けようとする圧力を、押しのけ跳ね返すだけの、熱い心が。
黒い闇、まとわりつくのを、気合い一発、取っ払って。

ロゼッタ「――――――――」

脚に力を加える。周囲が見つめ見守る中、私は――――
確かに、しゃんと、立ち上がる。


268Mii2021/06/30(水) 05:57:43bzZ4v6Ks (5/45)

目線の先は、騒動に乗じてまんまと距離を取ってほくそ笑んでいたものの――
私の、心が、ぺしゃんこにならなかったことに驚愕している、タブー。



――――――――ば、馬鹿な!耐えられるはずが、ない!



ああ、いま私、顔を上げた。

タブーを見ているうち、どす黒かった――――いえ、今は違う。
真っ赤な、真っ赤な。暴走しているわけでもない、強い、強い――



――――――――怒りの、感情っ!!!



ロゼッタ「――――――はあああああああああああああぁぁぁぁっ!!」カッ!



咆哮して。声滾らせて。
FPとともに、思う存分、解き放て!

リンク「ういっ!?」

デイジー「…ロ、ロゼッタ!?」


269Mii2021/06/30(水) 06:01:52bzZ4v6Ks (6/45)

私の突然の変わりように、驚かれるけれど、気にも留めない。
紅蓮の台風、身に纏い――――嘆き悲しむのではなく、使命感にただただ燃えて!



ロゼッタ「――――この、下郎が――――」グワッ

――――――――――――!?



今の私の眼光、タブーも思わず怯むほど。



実況「ロゼッタ選手っ!!――――相手を、威圧しています!」

特殊能力 「威圧感」が 発動した!
タブーの 攻撃力が 下がった!▼





ロゼッタ「――――――――覚悟しなさい。過ちを地獄で悔いなさい。
    私は、貴方を―――――――――決して、絶対に、許さないっ!!」ゴオオオオォォォッ!



周りの激しい奔流が、タブーを倒すべく、ますます唸りを上げ出した…!!


270Mii2021/06/30(水) 06:04:29bzZ4v6Ks (7/45)

マリオ「なんかよくわからんが、ロゼッタが無事に復活して、よかった!本当によかった!
   よし!あとは俺たちに任せておけ!ゆっくり休んで―――」

ロゼッタ「…いえ。私が、この手で最後まで、けりをつけます。
    …行けるところまでは、せめて、どうか」

デイジー「ちょ、ちょっと!無理はしないで――――」

マリオ「……!そっか。よしわかった。最小限のサポートに留めておく。

    ――――ロゼッタ、やっちまえ」



マリオの言葉に甘え、ただ1人、前に出る。



デイジー「ななな、何言ってるのさマリオ!タブーを甘く見てない!?
    いくらなんでも、ロゼッタには受け流しが精一杯で、倒すのは荷が重いよ!
    おまけに全然本調子じゃないはずなのに!乗せられてないで――――」

マリオ「なぁに――――負けねぇよ、今のロゼッタは」



最早、訳の分からないまま、思い通りにならないことに逆上して、
タブーが最後のあがきを見せる――――

そんなタブーに引導を渡すために、私は空を駆けていく――――


271Mii2021/06/30(水) 06:06:23bzZ4v6Ks (8/45)

カービィ「ぽよ!!」ダッ

ヨッシー「怪し気な不意打ちの処理なら任せてください!」ダダッ

リトル・マック「よーし!目に物見せてやれ、ロゼッタ!」ダダッ

マルス「彼女にここまでの度胸があるとはね…僕の眼もまだまだ節穴だな」スッ

サムス「…ふふ。好敵手出現と言ったところ、だなっ!対戦が楽しみだ!」ダダッ

むらびと「いっけー!タブーをやっつけちゃえ!」タタタッ

ピット「いよいよ終わりの時が近付いてまいりました!…フラグとか言わないでね!」フワッ

ピカチュウ「ピッカァ!」ダダッ







マリオ「…そんじゃ、まあ。俺達も行きますか」ダダダッ

リンク「…おうっ!!」ダダダッ


272Mii2021/06/30(水) 06:10:16bzZ4v6Ks (9/45)

くるくるくるくる…シュタッ!






駆けつけるのも速い。撮るのも速い。天才写真家でーす。
思い出の写真を撮りますからねー。



さあ こっち向いて 撮りますよーっ チーズ サンドイッチ!
…って、流石にこっちは 向いてくれませんよね、皆様がた。



おー いい写真が撮れた。
この写真は きっと 最高の 思い出になりますよ。



ではまた、いつか――――






くるくるくるくる……………………。


273Mii2021/06/30(水) 06:14:04bzZ4v6Ks (10/45)

リンク「闇雲に走っちゃ駄目だ、ロゼッタ!お前の走力じゃ、敵の攻撃を避けきれないぞ!」

私が前面に出ているせいで、私に飛んでくる触手の対処までは、
結果的に…間に合わない。食らえば、大減速に大ダメージ、請け合い。
また心を汚染されないとも限らない。

私の移動能力の低さ。速度の足りなさ。それは、十分分かりきったつもり。
だから、少々小狡い手を…裏技を使います。



ぽんっ!!



ロゼッタ(分身)「行きますよ――――」パアアアアァァァァ

1人だけでいいので、分身体を作って。私の背中に、手を置いてもらって…処置開始。
背中の後は、その手は両脚の踵に向かう。…よし、OK。
終わった後は――――他の方のところに待機してもらって。



ロゼッタ(分身)「さあ、任せました――――」

ロゼッタ「ふっ――――――――」ダンッ!!



踵、そして背中に、小細工。あとは…疾駆するだけ!


274Mii2021/06/30(水) 06:19:01bzZ4v6Ks (11/45)

デイジー「…!?」

敵の触手をひとつ、またひとつと掻い潜り、
どんどん近づいて近付いて――――!!

デイジー「嘘っ!ロゼッタ、はやーい!?」

リンク「うおっ、ロゼッタの奴、なっかなか速いじゃんか!
   あれ、並の奴のLv.60くらいには相当するぞ!?」



絡繰りは、駆動箇所と背面に計3つ、発動させている、魔法陣!
その輝きが――――勝利へと誘う道しるべ!

速度が足らないなら、「隔壁ピストンを利用した加速」が有用。皆さんとの特訓の成果。
でも、戦いの最中、咄嗟にそんな制御をし続けるのは、あまりにも荷が重すぎる。

…………だったら!魔法陣で隔壁生成を自動化して!さらに体の各部に固定化してっ!
いつでもターボを…加速できる体制を整てておけばいい、それだけのことっ!!









ロゼッタ「――――――――加速円環《ダッシュリング》――――っ!!」


275Mii2021/06/30(水) 06:24:21bzZ4v6Ks (12/45)

意のままに――急加速!
意のままに――――大跳躍!!
意のままに――――――――切り返し、方向転換っ!!!

3つのリングが、私の体を自由自在に舞わせる!

それでも目の前に立ちはだかる触手たち。
避けてばかりではいられない、直接触れると闇の力に汚染されそう。

第2の策、「要塞法衣」の――――パンチンググローブ化っ!!
かつての12層には拘らない。部位を限定する代わりに……
百にも届かんとする、隔壁バリアを凝縮に凝縮を重ねた超多層構造!

余りにも重ね掛け過ぎて、硬化し金属質を帯びて、メタリックに輝く――――!
お灸を据えるべく、これでもかと振りかぶり――――



ロゼッタ「――――――――フンッ!」ドゴォッ!!!

襲い掛かってくる触手、数本纏めてやすやすと一撃粉砕っ!



ルカリオ「――――!お、おい!今の…!ロゼッタっ!そのパンチ!
    あと、もう少しだけ、拳の更なる鋼化と速度増、果たせるかっ!?」

後ろから、ルカリオの助言が聴こえる。――――そんなこと、造作もない。
速やかに、術式を追加、編集、再構築!


276Mii2021/06/30(水) 06:29:25bzZ4v6Ks (13/45)

デイジー「ど、どうしたのっ!」

ルカリオ「今の一発で分かった!ロゼッタには――先制技の素質があるぞ!」

デイジー「なんだってー!…そ、そういや、ゲイルアタックとやらも――――!!」



更なる重ね掛けで強化をされた拳。相当な衝撃力を内包して。
ダッシュリングで体全体も弾けるように速度を高め、拳が風を纏い唸るっ!!
どんどん、触手がはじけ飛ぶ威力、増していく!



ルカリオ「予想した通りだ――――あれはまさしく!
   
    弾丸の一撃―――――『バレットパンチ』!
    
    やったな!パンチング特訓の集大成じゃないか!」

デイジー「うおおおぉぉ!マジで!?ルカリオが太鼓判押すなら確実だね!」





――――――――線で駄目なら、面ならばどうだっ!!

投擲網のように、傘状に暗黒物質を次々と放り投げられる。
最初の1回だけは思わず後退、でも、次は――――


277Mii2021/06/30(水) 06:32:53bzZ4v6Ks (14/45)

懐に手を指し込んで――――

ファイアロゼッタ「――――ファイアフラワー、使用っ!!」ポンッ!

そのまま、敵の魔の手を気にせず、真正面から突撃!!

クッパ「ロゼッタ!流石にそれは無茶だっ!引けっ!後戻りできなくなるぞっ!」

心配には、及ばない。

「ダッシュリング」と同じ考え。
ファイアボール装填に時間を食っていた、いままでの私。
だったら、そう。ファイアフラワーそのものの効力に、「パイロキネシス」の発動を乗せて。

燃え盛る火球をどんどん作ることを、パイロキネシスで。
大きな威力を付与して矢継ぎ早に投げることを、ファイアロゼッタとしての能力で。
効率よく、役割分担すればいい――――っ!!



ボンッ! ボンッ! ボンッ!

ファイアロゼッタ「――――――――Fire Satellite《火球衛星》!」

――――――――な、に!?



マリオカートで見かけた――――トリプル緑甲羅にトリプル赤甲羅。
甲羅にできることなら、どうしてファイアボールができない、なんてことがあろうか…!


278Mii2021/06/30(水) 06:37:00bzZ4v6Ks (15/45)

私を包み絡めとろうとする悪意を、己の周囲を巡らせる3つのファイアボールで!
…焼き切って、打ち消してみせる!ガーディアンのように、自動制御で動いてくれるから!
数度の飛弾は気にせず、そのまま体当たりしてタブーに肉薄!

攻撃を受けるたび、残念ながら消えていく火球も。
ありあまるFPを、燃え盛る怒りに載せてっ!即座に再充填!余念はない!

タブーの本体に――ついに、届いた、拳!!

ズンッ・・・・・・っと、鈍い音を立てて、正拳がタブーのどてっ腹にめりこみます!
たまらず、腹を抱えて苦しそうに蹲るタブーを尻目に、一旦距離を取り――――

燃え盛る炎を、力に、力に、集め切って――振りかぶって――
振りかぶる腕に膨大な「怒り」のFPが絡みつき、灼熱の炎となって。
いつもの何倍も大きい、50cmはあろうかという大火球を、一気呵成で――!



ファイアロゼッタ「ジャイロ、ファイアアアアアアアァァァァ――――――――!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!



超特殊能力 「鉄腕」が 発動しています!全球種、球速+3%!
ジャイロファイア補正!球速+30%!

最終球速 ――――372km/h!▼

――――――――ヌ、ガアアアアアアアァァ!!?


279Mii2021/06/30(水) 06:40:52bzZ4v6Ks (16/45)

申し訳程度に漂う触手、全部貫いて。
空中で身動き取れないタブーの、心臓部を。たちまちあっさり貫通して、勝負あり――!

所詮私のレベルでは即絶命とは行かないにしても…みるからに、演技の訳もなく。
最早タブーは、逃げることすらできないで苦しそうにもがいている!



ここにきて、少し…バーニング状態が途切れます。気持ちの昂ぶりがひと段落。
もう、溜飲は下げた。流石に、もう、他の方に任せてもよいのではないのか。
…そう、冷静になって、周りを見渡そうとした、まさにその時――――



リンク「よっしゃあロゼッタッ!フィナーレだ!


   ――――メテオでトドメをさせ!!」



私の身勝手な面子を優先させ、露払いに専念してくれていた、他の方々。
その中から、リンクが鶴の一声を。



ファイアロゼッタ「――――――――!!」ドクン

喉がゴクリと鳴って、緊張の瞬間。
自信までちょっとしぼんでいく。…まだ、OFF波動の悪影響は完全には解けて…いない。


280Mii2021/06/30(水) 06:43:37bzZ4v6Ks (17/45)

ファイアロゼッタ「…わ、私には、そんなこと、や、やったこと、なくて…
         おまけに疲れ切っていて…とても、できません!!」

リンク「頑張れ頑張れできるできる絶対できる!頑張れもっとやれるって!
   やれる!気持ちの問題だ頑張れ頑張れ!そこだ!そこだ諦めんな!
   絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張れ頑張れ!」



ファイアロゼッタ「――――!!」



リンク「諦めんなよ!諦めんなよお前!どうしてそこでやめるんだそこで!
   もう少し頑張ってみろよ!ダメダメダメダメ、諦めたら!
   周りのこと思えよ!応援してる人たちのこと思ってみろって!
   あともうちょっとのところなんだから!

   絶対やってみろ!必ず目標、達成できる!だからこそ――Never Give Up!! 」



ほろり、涙がこぼれる。

ファイアロゼッタ「――――ど、どうして、こんなことをしでかした私を、
         そこまで…信用して、くれるの、です、か…?」

その呟きは、決して大きい物ではなかったのに。
拾い上げてくれた人たちが、いた。


281Mii2021/06/30(水) 06:46:06bzZ4v6Ks (18/45)

ファルコ「…ああ、なんだ。ちょっと時間は遡るが。皮肉なことにな。
    偽者のお前に、マリオやピーチですら騙され続けた。それが理由ってやつかな」

ファイアロゼッタ「――――えっ」



ファルコ「…だから、だな。うまいこと騙されたこと自体は癪に障るが。
    要するに、お前の本質は、偽者たちが演じていた通りの――――
    気苦労絶えない、優しさの塊みたいな奴だってことには、間違いねぇんだろう?
    …ちっ、二度と言わせるんじゃねえぞ、柄じゃねえ」

むらびと「そういうこと、そういうこと。
    ファイター達も、観客たちも…ロゼッタさんの偽者を恨むことは有っても。
    ロゼッタさん本人を恨むことなんて、絶対にできないもん!
    こーんなに、優しいお姉さんなんだから!!
    きっと、本物のロゼッタさんが窃盗騒動のときにいたとして、
    あの時以上に僕のことを庇ってくれたんだろうなぁって心の底から思えるんだ!

    さあ、最後はガツンと大勢の観客の目の前で――――
    本物と偽者の違いをしっかり示して、冤罪なんかとはおさらばだよ!」

ファイアロゼッタ「――――――――あ――――――――う――――――――」



涙が、止まらない。

見捨てられても、おかしくないとばかり、悲観していたというのに。
…………嬉しい。嬉しい。戻って来られて、本当に、よかった。


282Mii2021/06/30(水) 06:49:29bzZ4v6Ks (19/45)

ファイアロゼッタ「――――わかり、ましたっ!」

――――やる気、全開。この命に代えても、最後の最後まで、私の意志で…………!!

思い切って、高く、高く、飛び上がります――――!!



ピーチ「…………はぁっ、はぁっ!や、やっと戻って来られた…!!
   制御室の位置、再考の余地があるわね…!非常時には不便だわ…!
   …って!ロゼッタ1人に任せて、何をやってるの!!」

マリオ「何って、最後のツメをロゼッタ本人にやって貰ってるところだ。
   大丈夫、もう危ない橋は何もない」

クッパ「そうとも!身体的にも精神的にもあれほど成長して…ワガハイは嬉しいぞ!」

リンク「あはははは、なんでクッパが偉そうにするのさー」

ピーチ「あんまり油断しないようにねっ!3強さんたちっ!」


ルイージ「…………それにしてもロゼッタ、妙にたかぁく飛び上がるなあ……
    というより、厳密には浮かび上がってるのか、魔法で。

    …あれ?両手を天に掲げた。何する気だろ」

ヨッシー「言われてみれば…」

デイジー「…………」


283Mii2021/06/30(水) 06:52:56bzZ4v6Ks (20/45)








デイジー「…………あっれぇ?







    ――――そもそも私、『メテオ』って単語の説明、ロゼッタにしたっけ…?

    ヒルダ、覚えてる?」クルッ

ヒルダ「Chiko Meteor《キラキラ落とし》は使っていました、けど。
   今はチコたちもいない、で、す、し――――――――」

デイジー「いや、そもそもメテオって別に流星系の技を意味する訳でもないし… 
    空中にいる状態の敵を奈落に叩き落とす攻撃のことでだね…

    …………ヒルダ?どうかしたの?急に呆然として」

ヒルダ「」

デイジー「ロゼッタがどうかし――――――――」


284Mii2021/06/30(水) 06:56:21bzZ4v6Ks (21/45)

…………本当は、最悪、太陽のヒトカケラでも、よかった。
その場合、投げ飛ばす威力が、ちょっと心もとなかった。
でも、おあつらえ向きなものを、奇跡的に、見つけられた。



一瞬で、FPが枯渇。



事を為したとき、激痛と共に、ナニカが終わった。



ロゼッタ「――――ひ、ふ――――――――」ビリッ



全身がマヒし、魔法回路が沸騰し、思考が止まってしまいそうな感覚。
HPと、FPと、もしかしたら生命力、と。沢山のものを、削り落とされた。

視界は急激に狭く。そして、喪失感。
右目が「あった」ところから、滝のような出血。
ああ、もう、頬を伝って…心地悪い、なあ。



全てを投げ打った代償で――――右目が、完全に、お役目を果たし終えました。
これは、もう。二度と、復活してくれないん、でしょう。
相変わらず激痛には慣れないけれど――――後悔は、ない。


285Mii2021/06/30(水) 07:00:05bzZ4v6Ks (22/45)

デイジー「…………元気玉?」

マリオ「…………デッカクドッカン?」

クッパ「…………大王星?」

リンク「…………月落とし?」



それは、遥か、遥か、遥か先を通りかかった、宇宙からの贈り物。
届け、届けと全てのFPを右目に注ぎ込み、見つけて、選んで、切り取った。



やや低空に浮かぶタブーを、FPの赤い衣をつい先ほどまで纏い、
血涙流しながら斜め上から見下ろす、私。





そして、天に掲げる私の掌、その少し上空に――――現れたるは。





突然の召喚に、外周の有機物や金属の化学反応が引き起こされたか、
地獄の業火のごとく激しく外周から火を噴く、大きな、大きな球体――――名付けて、そう。


286Mii2021/06/30(水) 07:02:54bzZ4v6Ks (23/45)




ファイアロゼッタ「――――――――――――――――――――――――









        ――――Trans-Meteor《 転 移 彗 星 》――――――――!!」パアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!





マリオ「」

クッパ「」

リンク「」

デイジー「モノホンの彗星繰り出しちゃったんですけどぉ――――!?」


287Mii2021/06/30(水) 07:05:38bzZ4v6Ks (24/45)

マリオ「……あれ、ヤバくね?直径30…いや50メートルはあるんじゃね?」

クッパ「ま、まあ彗星にしては小さい方だろ、たぶん」

リンク「」

デイジー「って、ロゼッタったら右目から大量出血してるんだけど!?
    あれ、やばくない!?すっごく無茶苦茶やばくない!!?
    おまけになんか、禁断症状が出たみたいに不気味に笑ってるんだけど!

    リンク、アンタが簡単にそそのかすからこんなことにぃ――――!!?」

リンク「」

ピーチ「ま、まさかあれを、えいって投げ下ろす、つもり…………!?」



ファイアロゼッタ「…………」

ファイアロゼッタ「…………」

ロゼッタ「……………………」ティウン ティウン ティウン

ロゼッタ「」フラァ



「「「「「「「「落ちたぁ――――――――!?」」」」」」」」


288Mii2021/06/30(水) 07:09:04bzZ4v6Ks (25/45)






デイジー「――――――――ロゼッタァ――――――――ッ!」ダダダダッ!





思わず、体が、動いてた。
周りのみんなが、マリオですら、ビックリするあまり咄嗟に動けずに。
リンクも、ショット系のアイテム、とっとと使ってくれたらよかったのに。

ドデカい彗星…いや隕石見て、全員既に、真下から避難済。
逆に言うと、ロゼッタを受け止められる人がいない。
このままじゃロゼッタが…奈落に、落ちる。

残機制度が、働いていない、まま。すなわち、死ぬ。

――――そんなの、絶対、駄目!!



…ただ失敗したのが、私が飛び出したタイミングも、ぶっちゃけ…遅すぎた。
ロゼッタを抱え込むようにして飛びついたまではよかったけれど、
残念、既にフィールドの最下層よりも下にいる。運動方向も下向き。

ぎゅっと抱きしめ、空を仰いだ。上空には、フィールド全体を覆わんとする、天体が、控えてる。


289Mii2021/06/30(水) 07:11:16bzZ4v6Ks (26/45)

…………仕方ない、か。



――――気絶している…ロゼッタだけでも、助けよう。
――――大事な、大事な、親友なんだもの。
――――思いっきり上に向かってぶん投げれば、大丈夫。
――――反動で、私は死んじゃうけど。…まあ、まだマシだよね。



――――さよなら。



デイジー「いっ、せー、のー…………」

もう悟りを開いて、投げようとしているときに。



ゼルダ「せい、やあああああああぁぁ――――――――っ!!」ブンッ!!

ゼルダが、私たちめがけて…何か、下に投げ下ろしてきたっ!?





…………いつぞやの、額縁っ!!


290Mii2021/06/30(水) 07:14:58bzZ4v6Ks (27/45)

勢いよく投げ出されたそれは、たちまち、落下する私たちを追い越して…!



ロゼッタ(分身)「まに、あいまし、たっ!!」ポンッ!!

デイジー「…………うぇっ――――」

ロゼッタ(分身)「デイジー姫。

        本体のこと、頼みましたよっ!!」

デイジー「…え、その腕、『T―ホールド』…ま、まさか――――!」



ロゼッタ(分身)「――――――――――――――――

         フロルの、風ぇ――――――――っ!!!!」パアアアアアアア!!

ブオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!

デイジー「う、わぁ――――――――」ブワッ

覚悟を決めていた私ごと、ロゼッタ本人は、一転してグングン上昇し――――

デイジー「あぁっ――――――――」

分身体のロゼッタが、代わりに、奈落に吸い込まれて行った。


291Mii2021/06/30(水) 07:18:40bzZ4v6Ks (28/45)

悲しむ間もなく飛ばされた先は、フィールドの隅っこ。
受け身を取れなかったけれど、大した痛みじゃあない。
…あ。というより、誰も彼もファイターたちは中央から離脱してる。

中央に存在するのは、未だ満足に動き出せないタブー、
そして上空に浮いたままのでっかい彗星。

…彗星は、ロゼッタが魔法発動を失敗(?)して、それからどうこうするわけでもなく、
依然、同じ場所に留まり続けている。どうなってるんだろう。



ロゼッタ「――――――――で、い、じーひ、め」



顔をむくりと上げることもなく。単に、口を小さく動かすだけだけど。
片目は酷いありさま、もう片目も閉じたままだけど。
ロゼッタが、かすれる声で、生きている証を示してくれた。

デイジー「…ロ、ロゼッタ!大丈夫!?よくやったよ!
    すぐに病院に連れて行って…いや、ピーチに回復して――――」

ロゼッタ「――――――――た、ぶー、の。ま、わり、に。
    だ、れも。ふぁい、たー、いま、せん…………か?」

デイジー「…い、いない、けど?みんな、ロゼッタの最終兵器にビビッて
    離脱しちゃってるよ。そ、それがどうかした?」

ロゼッタ「……………………ありがとう、ござい、ます」フッ


292Mii2021/06/30(水) 07:21:00bzZ4v6Ks (29/45)

デイジー「…………ちょ、そういう穏やかな笑みは不吉だからやめてほしいんだけどっ!切実にっ!
    お願いだからさぁっ――――――――死なないでよロゼッタ――」アセアセ

ロゼッタ「…………」スゥ・・・

























ロゼッタ「―――――――― り す た ー と 」ボソッ


293Mii2021/06/30(水) 07:22:07bzZ4v6Ks (30/45)

マリオ「え――――」

ドンキーコング「うほ――――」

リンク「な――――」

サムス「あ――――」

ヨッシー「へ――――」

カービィ「ぽ――――」

フォックス「は――――」

ピカチュウ「チュ――――」

ルイージ「う――――」

ファルコン「む――――」

ピーチ「や――――」

クッパ「げ――――」

ゼルダ「ひ――――」

マルス「ぐ――――」

メタナイト「ば――――」


294Mii2021/06/30(水) 07:23:10bzZ4v6Ks (31/45)

ピット「うぇ――――」

アイク「ぬ――――」

リザードン「グォ――――」

ディディーコング「キ――――」

デデデ「ぎ――――」

オリマー「ん――――」

ルカリオ「が――――」

トゥーンリンク「ひょ――――」

トゥーンゼルダ「ひゃ――――」

むらびと「にゃ――――」

Wii Fit トレーナー「と――――」

リトル・マック「ぶ――――」

ゲッコウガ「フ――――」

パルテナ「ふぇ――――」

ルフレ「わ――――」


295Mii2021/06/30(水) 07:25:13bzZ4v6Ks (32/45)

ルキナ「く――――」

シュルク「の――――」

ソニック「ぜ――――」

ロックマン「て――――」

パックマン「ざ――――」

ファルコ「ちょ――――」

ワリオ「び――――」

ブラックピット「で――――」

ロボット「W――――」

クッパJr.「り――――」

Mr.ゲーム&ウォッチ「ヲ――――」

ダックハント「ガル――――」

プリン「ぷ――――」




――――――――――――――カッ!!!!!!!!!!!!!!


296Mii2021/06/30(水) 07:27:57bzZ4v6Ks (33/45)


















――――K.O.!!!!!



《ロゼッタ、タブーを撃破! タブー完全消滅! タブー軍、著しくやる気低下!!》





ラナ「」

シア「」


297Mii2021/06/30(水) 07:31:45bzZ4v6Ks (34/45)

~王国第一ラジオ塔~

ネス「イテテテ…ダレダ姫に休んどけとは言われたけど。
  みんな中央に集まってるだろうに、自分たちだけ呑気に休んでるなんて。
  なんだかストレスたまるなあ…。

  …よしっ!やっぱり助太刀しに行こう!リュカたちは休ませておくけどね、とーぜん!
  1人でもファイターは多い方がいいでしょ!
  もう、終戦迎えているかもしれないけど、それはそれでいいことだし!よし行くぞー!!」



ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァ―――――――――ン!!!!



ネス「ひぃっ!ごめんなさいごめんなさい!調子こきました!!じっとしてますっ!
   …って、そうじゃなくて。何事だあ――――――――っ!?」

ネス「…………」キョロ キョロ





ネス「……………………あれ、中央会場の方、だよね」

ネス「…………」

ネス「試合会場らしき箇所にでっかい火柱立ってるぅ!?」


298Mii2021/06/30(水) 07:35:17bzZ4v6Ks (35/45)

ピーチ「…………」

ピーチ「…………うーん」パチッ



なにやら、大きく吹き飛ばされて、観客席にまで叩きつけられていた、みたい。
あら嫌だ、観客のみなさんに囲まれて。こんな気絶姿晒して、恥ずかしい。

…………あれ?
絶対に注目の的になると思ったのに、観客たちが見つめる先が、私じゃない。
フィールドを、こわばった表情で見つめている。
一体どうしたというのかしら。そ、そういえばタブーはどうなって――――
というか、なんだか無性に暑いんだけ、ど――――



ピーチ「」



炎、炎、炎。
一面、炎。太陽の表面を観察してるみたい。



ピーチ「」

――――フィールドが、影も形も無い!?
――――代わりに、灼熱のマグマで埋め尽くされてるっ!?


299Mii2021/06/30(水) 07:38:46bzZ4v6Ks (36/45)

キノピオ「ひひひひひひひひひひひひひひひひひひ姫様ぁっ!!
    タブーの消滅を残機記録よりおおよそ確実視できましたっ!
    でも、今はそんなことよりっ!

    フィールドからの火炎地獄だけで観客席のバリアが壊れ出していますっ!
    避難させようにも、大混乱させそうで二の足を踏んでおりまして…!
    我々だけではどうすることもっ!お願いします姫様、指揮を願いますっ!!」ダダダダッ!

ピーチ「わかった!わかったわよっ!もう!最後のひと踏ん張りねっ!!」



デイジー「ロゼッタッ!ロゼッタッ!目を覚ましてっ!」

ロゼッタ「――――は、い」パチッ

デイジー「ロゼッタァ・・・・・」ボロボロ

ロゼッタ「たぶー、は。たおすことが、でき、ました、か?」

デイジー「もちろん!さすがロゼッタ!凄かったよ!
    あんまり何が起きたか分かってないけどっ!目が覚めたら火の海だったからっ!」

ロゼッタ「ああ、よか―――った――――」ガクッ

デイジー「――――ロゼッタ?」

デイジー「――――ロゼッタ?ね、え。じょうだん、でしょ?」

デイジー「ロゼッタアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!!」


300Mii2021/06/30(水) 07:40:28bzZ4v6Ks (37/45)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

~翌日 AM 5:00~



Dr.マリオ「…………」

デイジー「…………たすかる、よね?もちろん、たすかった、よね?」

Dr.マリオ「…………」

デイジー「なんとか言ってよ、マリオ!」

Dr.マリオ「…………手は、尽くした」

デイジー「な、なら――――」

Dr.マリオ「…だが。医学でも、1UPキノコでも、回復魔法でも。
     限界と言うものは、あるんだ。わかってくれ」

デイジー「……………………っ!!!!」

Dr.マリオ「――――ロゼッタは、もう――――」


301Mii2021/06/30(水) 07:43:06bzZ4v6Ks (38/45)

デイジー「そんな、嘘!でたらめ!何とかしなさいよ!医者でしょ!」

ピーチ「デイジー…無茶を言わないで頂戴。
   マリオは、寝る間も惜しんで――――必死に、全力尽くして頑張ってくれたわ」ポンッ

デイジー「そん、な、あ――――」ボロボロボロボロ

ピーチ「そういうわけで――――残念だけど―――――――――

















   ロゼッタ、貴方は早めに義眼手術受けてね。手配しとくから」

ロゼッタ「はい…………」ションボリ

デイジー「生きとんのかああぁぁぁ―――――――――い!!!!」


302Mii2021/06/30(水) 07:48:11bzZ4v6Ks (39/45)

Dr.マリオ「当たり前だろ。医者なめんな」

ピーチ「ロゼッタほどじゃないけど、回復魔法なめないで」

ロゼッタ「おかげで右目以外はピンピンしてます…」



一応、ベッドの上で安静にはしていますが…。念のため、というやつで。



デイジー「ありがとうね2人とも!なんかムカつくけどっ!!」

パルテナ「まったくもう!酷使にもほどがありますっ!
    せっかく奇跡のチカラを授けてあげたのに、さっそく駄目にするなんて!」クドクド

パルテナさんが大層おかんむり。
それはそうでしょう、彼女の多大なるご厚意をふいにしてしまったのですから。
軽率な行動をとった私は怒られて然るべきです。

ロゼッタ「大変申し訳ございません…
    あ、あの。もう一度、奇跡を掛けてくれるわけには、いきませんか…?」

パルテナ「はぁ!?奇跡を舐めているのですか!奇跡というのはですね!
    2度は起こらないから奇跡と呼ぶのですよ!!

    残念ながら、あなたの右目の復活は、もはや私にも…不可能です!」

ピット(…初耳です)


303Mii2021/06/30(水) 07:52:32bzZ4v6Ks (40/45)

ロゼッタ「ひっ…ごめんなさいごめんなさい…!
    で、でも、このままでは…ほうき星に襲い来る隕石を防ぐことすら…!
    ほうき星の管理主として、どうにか、しないと…………!!
    
    あれ?そういえば、右目を失ったにしては、FP暴走が起きていない、ような」



前の時は、呼吸をするのも辛いというありさまだったのに。



パルテナ「ピーチ姫から、貴方の魔法使いとしての素質、重要性は散々説かれましたから。
    仕方がないので―――――――――







    代わりに別の奇跡で、左目を魔法回路の心臓部にしておきました」

ロゼッタ「わぁい!」



デイジー「ご都合主義バンザイ」

ピット「まるで奇跡のバーゲンセール」


304Mii2021/06/30(水) 07:55:35bzZ4v6Ks (41/45)

パルテナさんから、魔法回路の心臓部が切り替わったことによる弊害――――

適応まである程度の期間を要すること、
日常生活を義眼でこなす気がないのならば左目の負担が大きくなってしまうこと、
義眼と魔眼とのバランスは少々取りにくいことなどを懇切丁寧に説明されました。

…これから大変そうですが、そのくらいの困難、へっちゃらです!



ピーチ「落ち着いたところで、念のため聞いておくけど。
   …ロゼッタ、結局あなたはタブーをどうやって倒したの?
   時間差であの彗星がタブーに飛んで行くように術式を仕込んでいたのかしら?」

デイジー「すっごい魔法だったよね。
    タブーを倒すところ、全く見えなかったもん。
    どれだけ魔法を重ね掛けしてたのさ」







ロゼッタ「…え?」

ピーチ「…え?」

デイジー「…え?」


305Mii2021/06/30(水) 08:01:11bzZ4v6Ks (42/45)

ロゼッタ「…えっと。勘違いされているようですが。
    私、最後の最後で、魔法を発動させたわけじゃありませんよ?

    最後の最後で『魔法を破棄した』んです」



…なるほど。傍から見ると、確かに。
魔法を使って一気に彗星を動かして、どうにかしたように見えた訳ですね。



デイジー「魔法を…破棄した?」

ロゼッタ「はい。まわりに誰もいなくなったタイミングを見計らって。

    別にあれは、彗星を具現化する魔法ではありません。
    もちろん、彗星を勢いよく放出する魔法でもありません。
    単に、離れたところの彗星を持ってくるだけの魔法です。

    すごーく遠くの彗星を持ってくるためだけに、ほぼ全ての、大量のFPが消費されました」

ピーチ「…………じゃ、じゃあ。彗星は、単に魔法の束縛から解かれて自由落下しただけってこと?
   それにしては、方向もまるで違うし、威力がとんでもなかったような――」

ロゼッタ「私からタブーへの向きに、進行方向が被る彗星がちょうど見つかったもので」



ピーチ「…進行方向?」


306Mii2021/06/30(水) 08:05:02bzZ4v6Ks (43/45)

ロゼッタ「はい。そんなわけで、あの彗星――――――――





     地球から見た相対速度で、秒速50~100kmほど出ていたと思います」

Dr.マリオ「」

ピーチ「」

パルテナ「」

ピット「」

ロゼッタ「タブーを叩き潰しつつ、残機を失う『特異面』に衝突した時、大爆発して…
    それはそれは膨大なエネルギーを放出したかと」

デイジー「ソレデ フィールドゴト ブットンダノカー」

ピーチ「…………頭いたい」フラッ

ロゼッタ「え?だ、大丈夫ですか?」

ピーチ「貴方のせいよ!!」

お見舞いの(用意が早い)フルーツ籠をポイッと投げつけられました。
おっとと、我ながらナイスキャッチ。
病人(ということになっている)に対して酷いですよ、まったく。


307Mii2021/06/30(水) 08:10:28bzZ4v6Ks (44/45)

あれから、どうなったのかというと。ピーチ姫談。



タブーを倒し切り、正直な所、消化試合になったそうで。
ファイターたちは取って返して城下の完全制圧に向かいました。
統率が乱れに乱れた敵さんたちは、簡単に撃破され、
ものの2時間程度で1体たりとも生き延びなかったそうです。

そのあたりでようやく、試合会場観客席の情報統制解除。
危険と隣り合わせであったことに愚痴をこぼす声、罵る声が皆無とはいいませんが、
大多数の方は嘘も方便と賛同してくれたとのことで。皆さんおおらかです。



…ただ、とにかく。物的被害は甚大。
城下の8割が、何らかの被害を被ったとまで推測されるとか。
人的被害も凄まじく、各病院はひっきりなしの対応に追われました。
骨折くらいなら軽いほうで、生死を彷徨った方や、石化の後遺症が残り掛けた方。

とにかくピーチ姫が深夜病棟の数々を巡り、孤軍奮闘して、
疲労のあまり失神したほどの状況だったとのこと。
今もなお無理をしている真っ最中だったりします。目にクマができています。

それでも、命を失った者がゼロであったことは不幸中の幸いです。
…私も。不謹慎ながら、肩の荷が下りました。

誰か一人でも亡くなっていたら…と思うと。
やっぱり立ち直れなかった気がします。
…こんなことを考えるなんて心が狭いですね、私…。


308Mii2021/06/30(水) 08:15:11bzZ4v6Ks (45/45)

驚愕したのが、「残り2日のスマブラ大会日程、しっかり行う」との
お触れを出したということ。…え、正気…ですか?

国庫から緊急で予算を吐き出させ、警備面を一層強化。
更に、治療費・滞在費・交易費・観光費…あらゆるお金の流れに湯水のごとく補助を付け、
「一部贅沢品以外は満喫し放題」状態に持って行ってしまいました…!
このくらいでキノコ王国の財政はびくともしないとのことです。

これを、街の修復と同時並行で指示しているというのだから凄まじい。
…もちろん、完全修復には、大会閉幕までではとても間に合いません。
それでも、キノコ王国がタブーに屈していないことを少しでも示すため、あえて修復現場を公開。
なんでも、遅い時間帯にもかかわらず人気が出ているそうです。
キノピオたちが、物量作戦で、可能な限りの勢いで建物をリフォーム中。



ピーチ「なかば、やけっぱちだけどね。
   『スマブラ大会に行って損をした、行くんじゃなかった』だなんて
   感想で締めくくられるのは癪なのよ。タブーに負けたも同然なのよ。

   『なんだかんだ楽しかったな』って思ってもらわないと…
   キノコ王国の名折れ。絶対に皆さんに満足してもらうんだからっ!!」



「120時間働けます!」と書かれた栄養剤片手に、
クマを作ったピーチ姫が叫んでいたのが凄く印象的でした。…はい。
寿命が1年は縮んでいそうです。

…マリオいわく、任天堂があるかぎり寿命は尽きないそうです。私含めて。考えるのはやめましょう。


309Mii2021/07/02(金) 23:39:26/0g3pETI (1/4)

コンコン!



ロゼッタ「…あ、誰かお見舞いに来てくれたみたいですね。
    ――――どうぞ、お入り下さいませ」



ガチャッ!!



リンク(半裸)「ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!」ジャンピング ドゲザ

ロゼッタ「きゃああああああああああああぁぁぁぁ――――!?」



リンク「ホントごめん!マジでごめん!
   俺が迂闊なこと言ったばっかりに、ロゼッタにとんでもないケガをさせて!
   取り返しがつかないことになっちゃって…すいませんでした!

   自分への罰として、次の伝説に飛ばされることがあったら
   俺、半裸縛りで冒険するよ!!」ドゲザ

ロゼッタ「服をっ!服を着て来てくたさいっ!!!」

ピーチ「まさかリンクが大会最中に露出狂としてお縄に付くなんて…」


310Mii2021/07/02(金) 23:42:39/0g3pETI (2/4)

ラナ「まあまあ、ロゼッタさん。リンクも精一杯の反省を示したいんだよ。
  ここはひとつ、真面目に応対してあげるってのはどう?

  …お初にお目に掛かります、魔女のラナでーす!魔女繋がりで仲良くしようよ!」ヒョコッ

シア「…この律義さ、不器用ながらの誠意の見せ方もリンクの長所なの。
  貴方にも、そのあたり分かるでしょう?

  …初めまして、シアよ。覚えたければ好きにするといいわ」ヒョコッ

ロゼッタ「た、確かに、そうですね…………









    ――――と、すんなり頷いていたところですよ。
    シアさんがカメラを構えてさえいなければ…………」

ラナ「ななな、なんのことかなぁ!?」ギックゥ

シア「…………」スッ



ドン引きです。魔女同盟みたいな言葉で括られることにすごく抵抗があります。


311Mii2021/07/02(金) 23:45:08/0g3pETI (3/4)

リンク「とにかくさ!何か、償いか罪滅ぼしか、させてくれ!」バッ!

ロゼッタ「べ、別に気にしてませんよ……大げさな…………」



というより、最終的に早合点&無茶をしたのは私の判断ですし。
…もっとスマブラについて学んでおくべきでした。



Dr.マリオ「はい、はい。露出狂は追い出すぞー」

リンク「からかうなよ、マリオ…!俺は至って真剣で…」

Dr.マリオ「…あー。実はだな。どのみちリンクは追い出さなきゃならん。
    勿論ピットも。最終的には俺もだな。…ロゼッタの名誉のために」

リンク「…そーなの?名誉って?」

Dr.マリオ「女性が弱り切っているところを見るのは失礼だろ?
     まだ峠を越えてないんだよ」

ロゼッタ「…………初耳なんですけど?」

Dr.マリオ「…すまん、ショックを受けると思って伝えてなかった」

…そ、そうは言っても。
とりあえず危機は脱して…特に容体が急変するとも思えないのですが…。
まだ、もがき苦しむことがある、と?……はは、まさか――――


312Mii2021/07/02(金) 23:54:47/0g3pETI (4/4)

…得てして、口に出した途端、考えた途端に、事態が動くことって、割とありますよね。



ドクンッ!



ロゼッタ「…あ、れ?なんだか、急に、力が、抜けて…………」ゾワッ



Dr.マリオ「やばい!もう襲ってきたか…!リンク、ピット!――すぐにここから出ろ!早く!」

デイジー「……始まって、しまった…のね!」

深刻な表情の…マリオに、デイジー姫が。より一層不安を駆り立てます。



リンク「お、おう!わかった!一応聞いとくが…大丈夫なんだよな!」

ピット「じゃ、じゃあ僕もお暇するねー!」

2人に釣られて、ラナさん、シアさん、パルテナさんも退出していきます…が。
そんなことに気を取られている場合ではありません。



ロゼッタ「――――――――――――――から、だ、が――――」バタッ


313Mii2021/07/03(土) 00:02:14jHb9NQS. (1/23)

ヒルダ「急がないと、急がないと…」タッ タッ タッ

大事な親友のために、廊下は走るな…という警告をほんのちょっぴり無視して、
速足で移動、移動、移動。…あ、教えてもらった病室が見えてきました!

思い出はたくさん作りました。でも、そろそろお別れの時のようです。
悔いを残さないよう、しっかり挨拶しておかないと!

…こう、いざ会ってみたら泣いちゃったりするんでしょうか、私。
なけなしの涙腺に期待します。もちろん、ゆる…むように。



一旦停止して、扉の前で深呼吸。
ガチャッと、勢いよく扉を開けます!

ヒルダ「ロゼッタ!最後のご挨拶に参りました――――」ギイィ







ロゼッタ「…………」

ヒルダ「…………え」

ロゼッタ「…やる気でなーい……………………」グデー


314Mii2021/07/03(土) 00:05:28jHb9NQS. (2/23)

ロゼッタ「…………あー、ヒルダ姫じゃあ、ないですかー」グデー

ヒルダ「…………ロ、ロゼッタ?」

ロゼッタ「あ、ちょうどいいですー。
    そこのリンゴ、ちょっと取って頂けますかー?そう、それー」

ヒルダ「…………?は、はい。どうぞ…?」

ロゼッタ「ありがとうございますー」



ロゼッタ「…………」ゴシッ ゴシッ





ぱくっ





ロゼッタ「ん――、美味れす」シャクッ シャクッ

ピーチ「ベッドの上で果汁垂らしつつ丸かじりしないでぇ!!」バシッ

ヒルダ「」


315Mii2021/07/03(土) 00:08:12jHb9NQS. (3/23)

Dr.マリオ「説明しよう。今のロゼッタは、
     『覚醒状態』の反動がやってきて、やる気が激減している。

     特に初回である今回は、それはそれはやる気が空っぽで、
     何をするにもグウタラのものぐさになるのだ」

デイジー「うっわー、なっつかしー…
    あのロゼッタの変貌ぶりから予感がして、スタンバイしといてよかったね…。

    他人から見ると、こんな感じなんだ…………
    人のふり見てなんとやら、だね…」

ピーチ「うわぁ…これは男性陣には見せられないわ…
   正直マリオにも見てもらいたくないわ…」

Dr.マリオ「そう言われるとは思ったが、デイジーの症例を知っていると
    いろいろと解読出来て便利だからな…大目に見てくれるとありがたい」



ロゼッタ「…………喉が渇きましたぁ」

ピーチ「あ、そこのボタンを押せばお水が入ったコップが用意されて――――」

ロゼッタ「…………むー」

Dr.マリオ「『何か美味しい飲み物を買ってきて』だって」

ピーチ「」


316Mii2021/07/03(土) 00:10:50jHb9NQS. (4/23)

デイジー「しょうがないなあ。何が飲みたい?買ってくるよ」

ロゼッタ「…………はぁ」

Dr.マリオ「『そのくらい考えて上手く選んでください。面倒です』だって」

デイジー「お、おっけー。やれるだけやってみる!」

ロゼッタ「なんだったら全種類買ってきてくれてもいいですよー」

デイジー「あ、その方が楽だからそっちにしよう!」ダダダッ!

ヒルダ「」



デイジー「…お待たせぇ!抱えるほどドッサリ買ってきた!お金なら要らないよ!
    はい、好きなだけ飲んじゃって!余ったのはこっちで飲むから!」ズイッ

ロゼッタ「…………これを」

デイジー「ああ、そのオレンジジュースね!いいよー」

ロゼッタ「…………ん」ツキカエシ

デイジー「…………??やっぱり要らないの?別のにする?」

Dr.マリオ「『開けてほしい』だって」

デイジー「お、おう」プシュッ


317Mii2021/07/03(土) 00:15:40jHb9NQS. (5/23)

ロゼッタ「――――」ゴクッ ゴクッ

ロゼッタ「ぷはぁ」

ロゼッタ「…なんだか疲れました、体が重くてー。ずっとこうして寝ていたいですー」

Dr.マリオ「『肩でも揉んでほしいです』だって」

デイジー「まあ、そのくらいなら………」モミモミ

ロゼッタ「中々気持ちいいです――――」

デイジー「そりゃあ、よかった!」

ピーチ「マリオ、流石ね…よく解読できるわね」

ロゼッタ「…………そろそろお手洗いに行きたいです」チラッ

ピーチ「…あ、ごめん。邪魔だったわね、どくわ」

Dr.マリオ「……………………一応、セクハラじゃないぞと前置きしたうえで」



Dr.マリオ「『トイレまで運んでくれないとここで漏らします』だぞ」

デイジー「そういやそうだったああああああぁぁぁぁぁ!!!」ガシィッ ダダダダッ!

ピーチ「ものぐさにも程があるでしょう!!!!
   というよりデイジー、ちょっと後で話があるんだけどっ!!!!!!」


318Mii2021/07/03(土) 00:20:50jHb9NQS. (6/23)

デイジー「…任務、完了いたしましたーっと」

ロゼッタ「どうもです、デイジー姫ー。
    …あ、そういえば。ヒルダ姫、何か御用ですかー?」

ヒルダ「やっと聴いてくれましたね、まったく…コホン。
   呆気に取られて切り出せなかった私も私ですが。
  
   実は。そろそろ、わたくし、ロウラルに帰ろうかと思います。
   あと2日くらい滞在して大会を見届けたい気持ちもあるのですが、
   やはり故郷が気になってきて仕方がなくて…。それで、最後のご挨拶にと」

ロゼッタ「……………そう、ですかー」

ヒルダ「ええ、名残惜しいですが――――」

ロゼッタ「ちゃんと故郷の皆さんにー、お土産は買ってあげてくださいねー」

ヒルダ「」ガクッ

デイジー「ヒルダ、怒らないで怒らないで。
    今のロゼッタはこういう反応しかできないから」

ヒルダ「…わかっています」ハァ・・・



ヒルダ「それでは、また。
   皆さん、本当にお世話になりました」ペコリ


319Mii2021/07/03(土) 00:23:49jHb9NQS. (7/23)

ピーチ「こちらこそ。またいつでも遊びに来て頂戴ね」

ヒルダ「…………はいっ!」



ガチャッ バタン・・・・・・



ロゼッタ「…………ふわぁ…………」

ピーチ「マリオがいるんだから、そんなに無防備に欠伸しないでよ…」

ロゼッタ「…………」ウツラ ウツラ

ピーチ「…正直、ロゼッタに早くいつも通りになってほしいんだけど。
   回復魔法使ってくれたら大助かりだし」

Dr.マリオ「…んなこと言われてもな。デイジーの例だと、
    まる1日はこんな感じだぞ。相当興味を惹かれるイベントでもない限り」

ピーチ「興味、興味、ねえ…………よし!じゃあ、こうしましょう。

   ロゼッタ!手配を早めるから、朝の9時からでも…
   とっとと医療センターに義眼を選びに行ってちょうだい!」



ロゼッタ「…………!」ピクッ!


320Mii2021/07/03(土) 00:30:50jHb9NQS. (8/23)

デイジー「選ぶって?バリエーションがあったりするの?
    一番性能のいいやつを、患者に合う大きさに調整するだけでしょ?」

ピーチ「そんなわけないでしょ?キノコ王国の技術力、あいかわらず凄いんだから。
   最新技術を駆使して、CGシミュレーションも行って、医師と相談しながら……、
   何百万通りものカラーから好きな色を選択できるの。自由度が凄まじいわ。

   もとの色に拘るもよし、気になる色におしゃれ感覚で変えるもよし。
   ロゼッタなら結構時間を潰せると思うけれど」

ロゼッタ「義眼っ!!朝一番に向かえるというのならぜひ!」バンッ!

ピーチ(食いついた!)

ピーチ「選び終えたら、ものの1時間で手術は終了するわ。
   なんなら、ロゼッタほどの回復魔法を使えば、自分でも手術できるかもね。
   こう、グイッとはめ込んで即回復、みたいな」

デイジー「そんなおもちゃの部品みたいな言い方はどうかと思うっす」

ピーチ「まあともかく。デイジー、ロゼッタの付き添いをしてあげてくれる?」

デイジー「ロゼッタ、やる気が底を尽きやすいこと以外はおおよそ健康なんだよね。
    喜んで!まかせといてよ!よーし、7時には出発するぞー!」

ロゼッタ「はい!なんでしたら今から外に向かいましょう!」

デイジー「…せめて病人服は着替えようね。今絶対、横着しようとしたでしょ」

ロゼッタ「…………」ギックゥ


321Mii2021/07/03(土) 00:35:51jHb9NQS. (9/23)

~船場までの街道~

ヒルダ「わざわざ見送りに加えて案内までしていただいて…ありがとうございます」

ゼルダ「ふん。わざわざ、中途半端なタイミングで帰郷しなくてもよろしいでしょうに。
   今度会ったら、どれだけ決勝が盛り上がったかを語って悔しがらせてあげますよ。
   …大会終了後に、祝賀会も開催されるというのに」

ラヴィオ「デイジー姫にちらっと伺ったのですが…大会最終日が明日の12月6日、
    祝賀会は12月7日から12月13日までの丸々1週間でしたか。
    主にファイター達だけで集まって、割と無礼講で…
    食べては飲んでは、1週間思いっきりどんちゃん騒ぎするんでしたっけ」

ゼルダ「…やたらデイジーの趣向に偏った説明のされ方ですね。彼女らしい」

ラヴィオ「それにしても…わかりやすいツンデレ具合」

ゼルダ「何か仰いまして?」

ラヴィオ「い、いえ何も!!」

ヒルダ「…ふふ。私も、ゼルダ姫と…気軽に会えるような環境に、間柄に、
   なれたらいいなと思いますよ。…おっと、間柄についてはもう十分ですよね。
   今まで本当にありがとうございました」

ゼルダ「…………手紙の一つでも出してくださいよ。リンクに運ばせますから」

ヒルダ「あ、だったら私もラヴィオに運ばせましょうか。交流できていいですね」

ラヴィオ「…ははっ!なんだかお二人を見てると、こっちまで嬉しく、楽しくなってきますよ」


322Mii2021/07/03(土) 00:39:51jHb9NQS. (10/23)

ヒルダ「ふふ。…ねえラヴィオ、帰ったら…話したいことがいっぱいあるのです。
   私、守られてばかりだったけれど、この大会の中で…………
   ずっと、ずっと、ずうっと、強くなったんですよ。まだまだ弱いですけれど。

   これからも、一緒にロウラルを良くしていきましょうね!」

ラヴィオ「ええ、私からお願いしたいくらいですよ!改めて…貴方が主で、よかったです!」

ゼルダ「…はあ。そうこう言っているうちに、ほら。
   ハイラル・ロウラルに向かうための船場が見えて来て――――」



「ストーップ!」



ゼルダ「…?」

ナンシー「きちゃ、ダメっ!!!!!!!!
    さっき、ダレかがぶつかってきたときに、コンタクトレンズをおとしちゃったんだよ!
    いま、さがしているところなんだから、動いちゃダメだよ!

    ゼッタイ!動いちゃ!!ダメだからね!!!!!!!!!!!」

ゼルダ「えっ」

ヒルダ「えっ」

ラヴィオ「えっ」