252以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/22(日) 02:21:46.20snwx+kQHO (6/7)

あさひ「……すべて終了、っす」

P「なんだかんだ買った花火を全部使っちゃったんだな……」

あさひ「線香花火……またできるっすかね」

P「できるさ。また買って、今日みたいにやればいいんだ」

あさひ「プロデューサーさんがいてくれたから、今日はいろんな発見ができた気がするっす!」

P「それは良かった。俺も、あさひに気づかされたこととか、あると思うよ」

あさひ「いやーっ、今日は楽しかったっす! ありがとうございますっす! プロデューサーさん!」

P「俺のほうこそ、あさひと一緒に花火ができて、たくさん話もできて、楽しかったよ。ありがとうな」

あさひ「はいっす!」

あさひ「今日のことは……きっと、一生忘れられないっす!」

P「ははっ、でも、そのうち、彼氏とかと一緒に花火やって、今日の楽しさが上書きされるかもしれないぞ? ……なんてな」

あさひ「……」

P「あさひ?」

あさひ「……なんでもないっすよ~。さ、帰るっす」タタタタタ

P「ああ、車停めたところに向かおう……って足速っ!? ま、待ってくれよ」

あさひ「プロデューサーさん! 今日の記憶は、上書きなんてしてやらないっすよー!」

あさひ「それでも上書きしたいって思ったら、そのときは、また、プロデューサさんと花火をやるっす!!」


253以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/22(日) 02:22:19.92snwx+kQHO (7/7)

とりあえずここまで。


254以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/22(日) 06:55:40.89rVgl7amuo (1/1)

おつー


255以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/24(火) 01:24:49.06Ys/YOZGbO (1/7)

~事務所~

P「買い物?」

愛依「そうなんだよね~……。お兄とお姉は出かけてて夜まで帰ってこないとか言い出すし、かと言ってさすがに下の子たちを振り回すわけにも……ね」

愛依「男手があると助かるなーって思うんだけど、どう?」

愛依「ほら、明日って日曜じゃん? だから……プロデューサーも空いてるかなーって」

P「まあ、空いてはいるぞ」

愛依「あ、別に疲れてるとかなら無理にとは言わないし……!! プロデューサーさえよければ……」

P「いや、別に構わないぞ」

P「行こうか」

愛依「ほんとっ! やった! マジ助かるわ~」

愛依「サンキューね」



翌日。

~某大型ショッピングモール~

愛依「……」

P「どうかしたのか?」

愛依「なんか……こんなでっかいところに来たの久しぶりでさ」

愛依「めっっっっちゃテンション上がってる……!」

P「ははっ、まあ、今日は愛依の好きなようにしたらいいさ

P「俺は車出して荷物持ちするために来たつもりだし」

愛依「ほんと感謝しかないって! 車もあれば量とか気にせず一気に買えるしさ」

愛依「それに、普通にちょっとでかめのスーパーとかだと思ってたら、まさかこんなところに連れてきてくれるとは思わなかったっていうか!」

P「楽しそうでなによりだよ」

P「ほら、買い物に来たんだろ? まずは何を買うんだ?」

愛依「そんじゃねー――……」


256以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/24(火) 01:26:44.70Ys/YOZGbO (2/7)

愛依「食べ物とかは最後に買いたいし、最初はこの辺からかな~」

P「なるほど、服屋か」

愛依「ちょっ、確かにそうだけど、その呼び方はやばいっしょ」ケラケラ

P「じゃあ……ブティック?」

愛依「まあ、それでいい……のかも? てか、メーカーとかブランドで呼ぶもんじゃね?」

愛依「プロデューサー、ひょっとしてファッションとか興味ないカンジ?」

P「うーん、正直よくわからん……」

愛依「あ、じゃあうちがプロデューサーの私服選んだげるわ!」

P「え、でも愛依の買い物に来てるのに……いいのかよ」

愛依「いいのいいの! いいから行こ!」グググ

P「あ、ちょ、わかったから、押すなって……」


P「これは……」

P「名前とかは聞いたことのある店ばかりだな」

愛依「プロデューサーってさ、アイドルのプロデュースしてるんだよね?」

P「そりゃそうだが」

愛依「それならさ、衣装とかの話でファッションとか考えるんじゃない? って思ったんだけど」

P「いや、デザインとファッションは俺の中では別というか……」

P「ましてや、アイドルのことじゃなく自分のこととなるとな……」

愛依「……そっかそっか! じゃあ、うちも教えがいあるわ!」

愛依「まずはここ入ろ。ほらほら」


愛依「うーん……」

P(食い入るように服やマネキンの着飾ったやつを見てるな……)

P「愛依は、こういうファッションとか、結構好きなのか?」

愛依「まあ、嫌いじゃないかな。アイドルやるようになって、衣装さんといろいろ話すうちに知ったってカンジ?」

P「なるほどなぁ――まあ、そうだよな」

P「アイドルって仕事は――歌って踊って魅了してというのが基本っちゃ基本だけど、俺としては、それ以外にもいろんなことを学んでもらえたら……なんて思うかな」

愛依「へー……」クスッ

P「ど、どうかしたか?」

愛依「なんでもなーい。ほら、ちょっと上下選んでみたから試着してよ!」

P「お、おう……ありがとう」


257以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/24(火) 01:30:59.20Ys/YOZGbO (3/7)

愛依「どーおー?」

P「……」

愛依「プロデューサー?」

P「き、着てみた……」シャーッ

愛依「おお! 結構決まってるくない?」

P「そうかな……はは、ありがとう」

愛依「あ、プロデューサー照れてるっしょ~。貴重なとこ見ちゃったな~」

愛依「……うん、うん。見れば見るほどいいわ。うちすごくね?」

愛依「色の組み合わせと……ここに入ってるラインとか、可愛いわ~」

P「か、可愛い……?」

P「それなんだけどさ」

P「よく女の子ってメンズとかレディース問わず「可愛い」って言うのは、どういう感想なんだ?」

愛依「え? うーん……、あはっ、うちもわかんない!」

愛依「とにかく可愛いもんは可愛いってカンジ? 細かい理屈とかはいいんじゃね?」

P「愛依はファッション関係のコラボもできるかもな」

愛依「マジ!? それ楽しそうじゃん!」

愛依「……あ、でも、うちってクールキャラでアイドルやってるし……テンションのメリハリとか頑張んないとだな~」

P「それだけ自分の仕事のこと考えてくれてるなら、俺としては安心だよ」

P「まあ、仕事のことはともかく――」

P「――服、選んでくれてありがとうな。買うよ、この組み合わせで」

愛依「いいの? うちの趣味で選んじゃっただけだけど」

P「まあ、俺はもともと自分のファッションには興味なかったしさ」

P「愛依が俺の服選んでくれるなら、もうそれが俺のファッションでもいいかな……なんて」

P「だから……うん、そうだな。愛依がいればいいよ。俺が服を選ばなくてもさ」

愛依「!」

愛依「……そっか」

P「愛依?」

愛依「もー、……しょーがないから、そうしてあげる!」ニカッ

愛依「ほら! そしたら、次行こ次! プロデューサーに似合いそうな組み合わせ、まだあるんだ~」グイッ

P「えっ、ちょっ、愛依の買い物は……」

愛依「これもうちの買い物だし!」

愛依「うちとプロデューサーの! 買い物でしょ」

P「……ははっ、おう!」


258以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/24(火) 01:53:27.07Ys/YOZGbO (4/7)

愛依「……」

P「うぐぐぐぐ……」

愛依「あの……さ、うちもなんか悪かったっていうかー……」

愛依「うちも持つよ? いまさらだけど、プロデューサー、うちの着せ替え人形してくれただけだし……服だけなのにそんなに持たせちゃって……」

P「だ、大丈夫だ……それに、一旦車に積みに戻るためにいま移動してるわけだし……」

P「俺は荷物持ちだ……気にするな」

愛依「……」

愛依「じゃ、じゃあ、さ」

愛依「こうしよ? ね?」

P「?」

愛依「一回止まって荷物下ろして」

P「……あ、ああ」ドサッ

愛依「このでっかい袋に、小さいのをまとめて……っと」

愛依「これとこれと……それからこれ、プロデューサー持ってくれる? うちはこれとこれ持つからさ」

P「わかった」

P「この一番大きいのはどうするんだ?」

愛依「こうする……」

愛依「ほ、ほら! 片方はうちが持ってるから、もう片方持ってよ」

愛依「そうすれば、一緒に持てるっしょ」

P「そ、そうだな……」

愛依「……」

P「っと……お、これは楽だな」

愛依「あ」

P「?」

イッセーノセー
キャッキャッ

P(ふと、小さい子ども1人を連れた親子連れ3人が目にとまる)

P(父親と、母親と、それから子ども――)

P(――両親の間にはさまって、それぞれ片腕ずつを持ってもらった子どもは、タイミングよく両親にひっぱられてブランコ遊びをしている)

P(よくある、日常の中の微笑ましい光景だ)

P「なんか、さ」

P「俺たちは荷物だけど、持ち方はなんとなく似てるよな」

愛依「っ! ちょ、ちょっとなに言ってんの……もう」

P「愛依?」

愛依「別に何でも……ほら、早く駐車場行こうよ……」


259以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/24(火) 01:57:58.49Ys/YOZGbO (5/7)

P(それからも、愛依といろいろな店をまわった)

P(レストランで昼食をとり、生活雑貨やインテリアなど、いろいろ――)

P(――買い物という漠然とした目的で来たが、それゆえに何をしても楽しかった)

P(それに、愛依が楽しそうで、なんだか嬉しいという気持ちとともに、安心感を覚えていた)

P(芸能界という世界に踏み込んでいる以上、アイドルである彼女――彼女らはストレスを抱えているんじゃないかと思っていたからだ)

P(今日は……来てよかったな)

P(俺のためにも)


愛依「よーっし、これで最後!」

P「スーパーか」

愛依「じゃ、がんばってこ! プロデューサー!」

P「ああ、そうだな」


愛依「あとは――……って、あ」

P「何かあったのか?」

愛依「あはは……いや、あそこにさ、おもちゃ付きのお菓子のコーナーあるなって」

P「ああ……食玩か」

愛依「弟が欲しがることもあったからさー、なんかそれ思い出しちゃった」

愛依「プロデューサー、言っとくけどおもちゃ付いてるお菓子は買わないからね……なんて。……ん? って、あれ?」

愛依「いない……あっ!」

愛依「……」

愛依「……あははっ、もう」

P「これ……近所だと売り切れになってるやつ……」

P「うーむ……」

P「ほ、欲しい……!」

トントン

P「はい? ……あ」

愛依「……」ニコニコ

P「いや、違うんですよ」

愛依「はぁ……まあ、別に買ってもいいけどさ」

愛依「意外とコドモっぽいとこあんだね」

愛依「冬優子ちゃんあたりに話したら……」

P「やめてください」

愛依「うそうそ、別に言ったりしないって!」ケラケラ


260以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/24(火) 02:01:35.53Ys/YOZGbO (6/7)

~駐車場~

P「ふぅ……やっと詰め込めたぞ……」

ピトッ

P「ぅぉ冷たぁっ!?」

愛依「あはははっ、いいリアクションじゃん!」

P「はぁっ、はぁっ……め、愛依か……」

愛依「はい、お疲れさま。プロデューサーはコーヒー好きかなって思って、そこの自販機でアイスの缶コーヒー買ってきた!」

P「愛依……」

P「ありがとう……」グスッ

愛依「ちょっ!? 泣いてんの!?」アセアセ

P「……ふっ、嘘泣きだ」

愛依「え?」

愛依「も、もう……! マジでおかしくなっちゃったのかと思ったんですけど!」

P「ははっ、すまんな」

愛依「……」

愛依「……なんていうか、さ」

愛依「こう、その……」

愛依「うち、プロデューサーにどうお礼したらいいのかな……」

P「そんなこと気にするなって。俺がしたくてしたんだからさ」

愛依「だ、だけど……!」

P「ほら、愛依に缶コーヒーももらえたし。気にするなら、これが報酬ってことでいいよ」

愛依「うちが言いたいのはそういうことじゃなくて……」

P「?」

愛依「……」

愛依「……ま、いまは――いいっか」ニコッ

愛依「これからもうちがプロデューサーの服選んだげるから!」

愛依「……だから、さ――」

愛依「――一緒に買い物! ……また行こーね」


261以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/24(火) 02:32:48.72Ys/YOZGbO (7/7)

とりあえずここまで。共通ルートでは、一部、ほとんど同じ話になっているところもありますが、長い目で見ていただければと思います。


262以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/24(火) 07:26:56.99kSmNtRU30 (1/1)

おつ 楽しんで見てます


263以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/24(火) 07:44:46.41P33DYGKDO (1/1)



まだ誰ルートってわけじゃないのね


264以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/24(火) 09:51:04.91b6z+nu1ZO (1/1)

おつおつ


265以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/25(水) 01:25:46.328rx8EiIvO (1/6)

~事務所~

あさひ「うーん……」

冬優子 ポチポチ

愛依「zzzZZZ」

P カタカタ

あさひ「むむむ……」

冬優子「あ、そうだ。ここは……」ポチポチ

愛依「zzzZZ……フガッ」

P カタカタ

あさひ「あーっ! わかんないっす!!」

冬優子「もう! うっさいわねー……さっきから何うなってるのよ」

愛依「っ!? な、なに!?」ガバッ

P「ははっ、にぎやかだな」

あさひ「わかんないっす……」

冬優子「はいはい、何がわかんないっての?」

あさひ「いま、星はどこにあるのかが……わかんないんすよ」

あさひ「夜には見えるのに……太陽が昇ってるときには見えないじゃないっすか!」

冬優子「はあ? あんた何言ってんのよ」

冬優子「見えてないだけでいまもあるわよ――あの青空の上に」

あさひ「見えて……ない……?」

冬優子「そうよー。わかったら大人しくしてなさい」

愛依「ふわぁぁぁ……ねみ……。んーっ。寝ちゃった……zzzZZZ」バタリ

あさひ「でもでも、冬優子ちゃん。もし星が夜にだけ現れて……太陽が出てくると消える……それなら――」

あさひ「――不思議で、面白いことじゃないっすか?」

冬優子「あんたね……話聞いてたの?」

冬優子「いつ出てきていつ消えるとかじゃないのよ。いつもあるの。見えるかどうかが時間によって違うだけ」

あさひ「冬優子ちゃんは、それ、自分で確かめたことあるんすか?」

冬優子「それは……ないけど」

あさひ「これは……調べる必要がありそうっすね!」

冬優子「ふゆは付き合わないわよ。やるにしても、あんた一人でやってなさい」

あさひ「えー。あ、愛依ちゃーん……」ユサユサ

愛依「んー……? あと3分……」ムニャムニャ

あさひ「もー、つまらないっすー!」

あさひ テテテ

あさひ「プロデューサーさん!」

P「お、あさひか。どうした?」

あさひ「昼の間……星はどうなってるっすか?」

P「そうだな……今度、調べてみようか、一緒に」

あさひ「わーい! やったー!!」

冬優子「あんた正気なの? その中学生を相手にするわけ?」

P「まあ、プロデューサーである前に……大人だしな。子どもの疑問に答えてやりたい気持ちはあるよ」

冬優子「ふーん……あっそ! ふふっ、ま、頑張んなさい」


266以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/25(水) 01:48:58.088rx8EiIvO (2/6)

~某高原地帯~

P(今日は早朝から地方でストレイライトとして出すアルバムのジャケット用の撮影――のはずだった)

P(というのも、現地に到着したとたんに天候が悪化し、延期になってしまった)

P(事務所の持つ素材を撮るためのロケでもあるから、割りに重要な撮影でもあったんだが……)

P(もしかしたら、外での撮影は取りやめて、すべてCGを使った演出に変更になるかもしれない――なんて話も浮上している)

P(ストレイライトのイメージとも合っているという考えによるものだ)

P(……それにしても)

P(天気がよければあさひを……3人を天文台に連れて行って、『昼の星 観察会』に参加させてやりたかったな)


P「3人とも、わざわざ早起きして出向いてくれたのに……すまない」

愛依「あ、プロデューサー……プロデューサーが悪いわけじゃないんだし、謝る必要なんかないって!」

冬優子「愛依と同意見。天気は悪いけど、この場に悪者なんて1人もいないわよ」

あさひ「……」

P「そう言ってもらえると助かる……ん? どうしたんだ、あさひ」

あさひ「いや、これ……」

冬優子「!!!」

愛依「あちゃー……」

あさひ「超でかい芋虫っぽいクリーチャーっす。どしゃ降りになる前に地面を調べてたらいたんすよ」

冬優子「はぁ……前言撤回。悪者ならここにいるじゃない」

愛依「ほら、あーさーひーちゃんっ」

愛依「虫さんもさ、自分の住んでるとこにいさせてあげないとかわいそうっしょ?」

愛依「だから、ね?」

あさひ「うー……そういうもんすかね……」

あさひ「愛依ちゃんに怒られちゃったっす……」

冬優子「愛依、ナイス」グッ

愛依「怒ってないってー。一緒に行ったげるからさ、帰してあげよーよ」

あさひ「はいっす……」

P「はは……」

P「思ったよりも早く帰ることになっちまったな……」

冬優子「なに浮かない顔してんのよ」

P「いや、その……サプライズ的に、天気が良かったら撮影後に天文台に連れて行ってやろうと思っていたんだが……」

冬優子「もしかして、この前あさひが言ってたやつのこと?」

P「あ、ああ……」

冬優子「……はぁ」

冬優子「呆れた」

P「時に素朴な疑問というものは……とことんまで追究すべきなんだよ」

冬優子「はいはい。ご高説どうも」

P「……」

冬優子「ま、まあ? 覚えていてあげてるってのは、優しいんじゃない?」ボソッ

P「えっ?」

冬優子「あーもー! 何度も言わせないで」

冬優子「……」

冬優子「……あんたの、優しい気持ち。何も間違ってなんていないわよ」ボソッ



267以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/25(水) 02:19:53.908rx8EiIvO (3/6)

~事務所~

P「ただいま戻りました……」

愛依「たっだいまー!」

冬優子「あんた車の中で爆睡したからってテンション高すぎじゃない……?」ハァ

あさひ「……」

P「こっちに戻ってきたら普通に良い天気だし、なんだかなぁ……」

はづき「あ、プロデューサーさん、ストレイライトの皆さんも……おかえりなさい」

はづき「聞きましたよー。今日は災難でしたね」

P「はい……また練り直しかもしれません」

はづき「そ、そうですかー……」

P「……」

はづき「とりあえず上がってください。仕事も一旦はいいですから、休んだほうがいいですよ」

P「すみません。そうします」

あさひ「……」

冬優子「ソファーソファー……」

はづき「プロデューサーさん以外もまいっちゃってますかね~?」

愛依「あはは……冬優子ちゃんは寝足りなくて機嫌悪いだけだと思うけど」

愛依「あさひちゃんは捕まえた虫逃がすように言ってからあんな調子だし……」

愛依「プロデューサーは……なんていうか……」

はづき「? 何かあったんですか~?」

愛依「冬優子ちゃんから聞いた話だと、プロデューサーが撮影の後にうちらを天文台に連れて行こうとしてたみたいでさー」

愛依「あさひちゃんが星に興味持ってたから、そのためのサプライズ……ってカンジ?」

愛依「だから、プロデューサーは2重にしんどいんだと思う……」

はづき「そんなことが……」

愛依「なんかみんな暗いし、うちとしては元気出して欲しいんだけどなー」

はづき「……! そうだ」

愛依「?」

はづき「あ、愛依さんも上がって休んでてください」

はづき「私はちょっと野暮用が~」


268以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/25(水) 02:44:11.578rx8EiIvO (4/6)

夜。

P「ふぅ」

P(あれから少し休んで仕事に取り組んだけど……あんまり進められなかったな……)

P(3人はどうせ暇だからと自主練に行って、それもさっき終わって戻ってきて、また事務所でくつろいでるという感じだ)

P(時計は……)

P「……って! もうこんな時間か!」

P「3人とも、そろそろ帰らないと……もういい時間だぞ」

冬優子「もう少し休ませてよ。練習終わってすぐだし」

P「そ、そうは言ってもな……」

冬優子「ふゆたちが心配なら、仕事帰りのついでであんたが送ってよ。今日は車あるじゃない」

P「でも、俺の仕事なんて何時に終わるかわからないぞ?」

冬優子「……あーもーやめやめ。ふゆ、まだやることあるから。じゃ」ポチポチ

P(やることって、スマホをいじってるだけじゃないか……)

愛依「はいそこまで! 2人ともカリカリしないー」

愛依「気持ちはわかるけどさー、お互い疲れてるからイライラしちゃってるだけっしょ?」

冬優子「ふん……」ポチポチ

P「……」

あさひ「ふわぁ……愛依ちゃん……?」

愛依「あ、ごめん、起こしちゃった?」

あさひ「うーん……」ヌボー

愛依「寝起きのあさひちゃん、かっわいー」ナデナデ

あさひ「あー……う-……目が回るっすー……」

愛依 ウインク

P「ははっ……すまないな、愛依」

P「はぁ」

P「流石に、俺も休憩するか……」

トントン

P「? ……あ、はづきさん」

はづき「プロデューサーさん、ちょっといいですか~?」クイクイ

P「はい……? まあ、ちょうど休もうとしてたところなんで大丈夫ですけど」

はづき「見てもらいたいものがありまして~」

P(仕事関係の話か?)

P「わかりました。いま行きます」

はづき スタスタ

P スタスタ


269以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/25(水) 03:08:19.198rx8EiIvO (5/6)

~事務所、倉庫~

はづき「はい、これ、どうぞー」

P「え、これって……」

はづき「天体望遠鏡です~。結構良いモデルなんですよ?」

P「はぁ……でも、なんでこれを?」

はづき「愛依さんから聞いたんです。今日のこと」

P「今日の……あ、ああ……ははっ、そうでしたか」

P「なんとも情けないというか、格好つかないというか、そんなところですよ」

P「もしかしたら、今日のことは、仕事を踏み台にして遊びに興じようとした罰なのかもしれませんね……なんて」

P「……」

はづき「プロデューサーさんは、優しい方です」

はづき「あさひさんのため……だったんですよね~?」

P「俺はあさひのために何ができるのか……時々、そんなことを考えます」

はづき「プロデューサーさん……」

P「ユニットをプロデュースしてる人間がこんなことを言ってはいけないのはわかってる……それでも」

P「あさひの才能は――」

P『!』

あさひ『――っと……うん、決まった!』

P『君、ちょっといいかな?』

あさひ『? わたしっすか?』

P『ああ、さっきのダンスって――』

P「――っ。いえ、やっぱり、なんでもありません」

P「……俺なんかがあさひを理解してやろうなんて、そもそもおかしい話なのかもしれない」

P「それなら……そうだったとしても……、あいつを受け入れてやって、寄り添ってやるべきだと思うから」

P「アイドルの仕事に関することであっても、そうでないことであっても……」

P「ははっ、まあ、今回は大失敗でした」

P「……」

P「驕ってましたかね。結局、1人で盛り上がって、1人で落ち込んでるだけですし」

はづき「あさひさんにしてあげられることはまだありますよ」

はづき「もう~、何のために私がこれを用意したと思ってるんですか~?」

P「……ま、まさか」

はづき「事務所があるここならー……天気は抜群に良いですよ」

はづき「屋上で天体観測、しましょう~」


270以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/25(水) 03:09:10.518rx8EiIvO (6/6)

眠すぎるので一旦ここまで。


271以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/25(水) 08:21:03.86K7lU5vbso (1/1)

おつー


272以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/27(金) 02:09:34.46tGhwdT7hO (1/5)

~屋上~

P「……」

P(空気も澄んでいるし、天体観測には申し分ない天候だ……)

あさひ「はづきさん、これが望遠鏡なんすか?」

はづき「そうですよ~。それも、結構いいやつ、です」

あさひ「……」

はづき「分解したり壊したりはしないでくださいね~。高いんですからこれ」

あさひ「なんでわかったんすか!?」

はづき「~♪」

冬優子「あさひ……あんた、ほんと元気ね」ハァ

愛依「まぁまぁ、いいんじゃん?」

愛依「プロデューサーがやろうとしてたコト、できそうなんだしさー」ヒソヒソ

冬優子「はぁ……」

冬優子「……まあ、それもそうね」

あさひ「とぉーう!」バッ

P「……」

あさひ「?」

P「……」

あさひ「プロデューサーさん、どうしたんすか? ぼーっとして」

P「え? あ、いや……なんでもないよ」

P「あさひこそ、どうしたんだ? なんだか楽しそうじゃないか」

あさひ「もちろん楽しいっす!」

あさひ「だって、プロデューサーさん、覚えててくれたから!」

P「あさひ……」

P『そうだな……今度、調べてみようか、一緒に』

あさひ『わーい! やったー!!』

P「……ははっ。そうか、……うん。そうだよな」

あさひ「約束守ってくれてうれしいっす!」

P「そう言ってもらえてなによりだ」

P「さ、まだまだこれからだぞ?」

P「望遠鏡のセッティング、一緒にやらないか?」

あさひ「やるっす!」

P「よし! そうこなくっちゃな」

P「はづきさん、あとは俺がやりますよ」

はづき「あ、そうですかー?」

P「はい」

P「あさひ、壊すのは禁止だけど、ちゃんとした使い方で触る分には観察し放題だからな」

あさひ「ほんとっすか!? やったー!」

はづき「……やりましたね、プロデューサーさん」ヒソヒソ

P「ええ、まあ……そうですね」ヒソヒソ

P(とりあえず今は、あさひの笑顔が見れれば、それで……)


273以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/27(金) 02:36:04.07tGhwdT7hO (2/5)

あさひ「……」

冬優子「あいつ、すごい集中力で覗いてるわね」

P「まあ、あさひだからな」

P(やはり……というか、集中力がすごいのは相変わらずだな)

P(セッティングが終わって望遠鏡を覗かせたら、そこでずっとはり付いてるんだもんなぁ)

愛依「ああなったあさひちゃんはすごいよねー。レッスンでも時々あんなカンジになってるし」

あさひ「……」

あさひ「あ――」

あさひ「――見えた」

P「どうだ? 何か見えたか?」

あさひ「アメンボっす!」

P「アメンボ……?」

あさひ「プロデューサーさんも見るっすよ! ほら、真ん中らへんにある……」

P「どれどれ……」

あさひ「見えたっすか?」

P「ああ」

P「これは、オリオン座だな」

あさひ「オリオン座?」

P「ああ。よいしょ……っと」

P「星座だよ。1等星や2等星が多いからここでもよく見えるんだ」

P「ギリシア神話のオリオンの姿に見立ててオリオン座って呼ぶんだよ」

あさひ「よくわかんないっすけど……アメンボじゃないんすね」

P「ははっ、何に見えるかっていう意味での正解はないと思うぞ」

P「日本では鼓に見えるからってことで鼓星なんて言うしな」

P「あさひにとってアメンボなら、アメンボでもいいんじゃないか?」

あさひ「そうっすか。じゃあ、あれはアメンボっすね!」

あさひ「星座……面白そうっす……」

あさひ「他にも知ってるんすか? プロデューサーさん」

P「ああ、そうだな……どれ……」

P「オリオン座の周りにいろいろあってな。あれがぎょしゃざで、反時計回りにふたご座、こいぬ座……」

あさひ「プロデューサーさんが覗き込んでるからわたしが見れないっす~」

あさひ「あれとか言われてもわからないっすよ」

P「す、すまん。いまどくかr――」

あさひ「どこなんすか? 星座」ズイッ

P「――っ!?」

P(望遠鏡から顔を離したその瞬間――)

あさひ「あ……」

P(――2つの青い目と、目が合った)

P(日本人離れした綺麗な顔立ちに目が離せなくなる)

あさひ「じ、じーっと見られると……その、照れるっす……」

P「あ、いや! そういうつもりじゃ……」

P(……どういうつもりも何もないだろう。ただ、あさひに釘付けになっていただけじゃないのか)

あさひ「……っ」モジモジ


274以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/27(金) 02:55:44.07tGhwdT7hO (3/5)

P(あんなに顔が近づいたことなんて、今までなかったが……)

P(文字通り目と鼻の先で見たあさひの顔が脳裏に焼きついてまったく消えようとしない)

あさひ「えっと、プロデューサーさん。星座……」

P「あ、ああ……オリオン座の周りにな……」

P(それから、星座のことを教えてやった)

P(無我夢中になって話していたが、それはまるで自分が自動案内の音声を発しているかのようなもので……)

P(おそらく星座のことなんか1ミリも頭の中にはなくて、あるのは芹沢あさひという女の子のことだった)

P(あさひを解ろうとした)

P(あさひに寄り添ってやろうとした)

P(あさひの内在的な部分に注目していろいろなことを考えてきた……それが、今――)

P(――それまで無意識下であまり意識していなかったあさひの見た目に、自分の全神経が集中しているような、そんな感覚に陥っている)

P(ああ、俺は……本当に……)

P(まだまだ、芹沢あさひという女の子のことを、知らないんだ……)


冬優子「ふぅん。あれが冬の大三角……」

愛依「冬優子ちゃんー、そろそろ代わんない?」

冬優子「もうちょっと待って。……んもう! あいついろいろと紹介しすぎなのよ」

冬優子「ここまで来たら全部見てやるわよ……」

愛依「寒いから早くー……」

冬優子 ムムム

P「すまないな、あさひ」

あさひ「? なんで謝るんすか?」

P「昼に星を見せてやりたかったんだ」

P「あさひ言ってたろ?」

あさひ『もし星が夜にだけ現れて……太陽が出てくると消える……それなら――』

あさひ『――不思議で、面白いことじゃないっすか?』

P「ってさ」

P「結局、その疑問を解決してやることができなかったから……」

あさひ「確かに、そうかもしれないっす」

P「ああ、ごめん……」

あさひ「でも、たぶん星は昼にもあるっすよ」

あさひ「どの星も、周るように動いてたっす!」

P「それはそうだが……気づいたっていうのか……?」

あさひ「?」キョトン

P(すごい集中力で望遠鏡を覗いてはいたが……)

あさひ「だから、たぶんそうかなっていうのはわかったんで、いいんすよ」

あさひ「それも、プロデューサーさんと、こうして天体観測できたから……」

あさひ「プロデューサーさんが悪いことなんて何もないっす」

あさひ「むしろ、いいことだらけっす!」

P「あさひ……」


275以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/27(金) 03:03:35.19tGhwdT7hO (4/5)

あさひ「星が昼間に見えないのも……何か意味があるのかもしれないっす」

あさひ「うーん、なんでなんすかね?」

P「ははっ、なかなかロマンチックな問いだ」

P「……」

P「確かに、見えるものがすべてじゃないってことは……あるのかもな」

P「見えてないものにも意味がある……見えていないのには理由がある……」

P「見えてないけど大切なものってのが、いつだってあるのかもしれない」

あさひ「見えてないもの……見えてるもの……」

あさひ「大切な……」

P「アイドルってさ、五感では語れないものがたくさんあるはずなんだ」

P「俺は、あさひがそれを想像する中で何を見つけてくれるのかを心から楽しみにしてるよ」

あさひ「……えへへ、そうっすか」

P「ああ」

あさひ「そうだ!」

P「どうしたんだ?」

あさひ「わたし、いま、面白いこと見つけたっす!」

P「お、それは気になるな」

P「よかったら、聞かせてくれ」

あさひ「プロデューサーさんっす!」

P「……え?」

P「お、俺?」

あさひ「そうっす! プロデューサーさんは面白いっす!」

あさひ「いろんな話をしてくれて、わたしのお願いも聞いてくれて……」

あさひ「アイドルを――教えてくれて」

あさひ「こんなに……、こんなにわたしのこと考えてくれる人、はじめてで……」

あさひ「わたしを、ひとりぼっちにしない……」

あさひ「……」

あさひ「わたし、アイドル頑張るっす! いままで以上に」

あさひ「面白いこと探し、続けていきたいから……」

あさひ「そこには、プロデューサーさんが一緒に……いてほしいっす」ボソッ


276以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/27(金) 03:04:24.91tGhwdT7hO (5/5)

とりあえずここまで。


277以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/27(金) 09:04:30.83wXI2fbqcO (1/1)

おつおつ
どことない不安…


278以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/27(金) 20:32:04.70H/8OLw280 (1/1)


はづきさんいるのに冬優子がふゆじゃないのおかしくない?


279以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 01:21:43.892BR33GPKO (1/1)

>>278

>>1です。ご指摘ありがとうございます。少なくともストレイライト以外の“アイドル”に関しては「ふゆ」として振舞っていると思うのですが、はづきさんに対してどうであったかが思い出せませんでした(そういうわけで、冬優子とはづきさんの間でのやり取りを書いていません)。とはいえ、はづきさんの前で「ふゆ」として振舞うことが確実な場合、何箇所か冬優子の態度として不自然なところがあるかもしれません。すみません。

ひとまず、以下のいずれかの場合だと一時的に思っていただければと思います。
・はづきさんがいるところでは冬優子のセリフはすべて小声、あるいは応答する相手がいない場合には脳内での呟き(そのとき、「」→())になっている(にしても事務所で気を抜きすぎ?)。
・実はあるタイミングではづきさんに猫かぶりがバレているor隠そうとしなくなったという世界線でのお話。
・はづきさんが奇跡的に冬優子の本来の態度を観測していない(一応、セリフがない間にその場にいないだとか別の方向を向いていてかつ周りの音を意に介していないだとかのこじつけは思いつきますが、だいぶ無理やり)。
お手数おかけします。

自分でももう少し調べてみます。はづきさんに対する冬優子の態度を決定付けるものを見つけた方は教えてくれると助かります。



280以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 01:50:46.25L+yU04myO (1/1)

冬優子朝コミュ⑥に、冬優子がPと社長を間違えるというのがあって
そのうちのGOOD選択肢が「社長とはづきさんには猫かぶりのままでいいのか?」
応答が「あったりまえでしょ!社長ってことは、この事務所で一番偉いんだから!」
「ふゆのことを気に入ってくれたら、きっといい仕事をいっぱい持ってきてくれるわよね!」

なんで、(本編に関しては)GRAD辺りを含めても、ストレイ外にはボロは出さないんじゃないかと思います
あんまりバレすぎると、あの信念は何だったんだ…何のために二つの仮面を受け入れたんだ…ってなりそうですし

ただ前提として、二次創作はそんなガチガチにしなくても良いと思います


281以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 02:29:48.44jI/iU3Ir0 (1/6)

>>280

>>1です。ご指摘ありがとうございます。言われて、自分でも手元のスマホ版で確かに確認しました。はづきさんには猫かぶりってことで良さそうですかね……。


282以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 02:37:56.76jI/iU3Ir0 (2/6)

>>267 訂正:


P「ただいま戻りました……」

愛依「たっだいまー!」

冬優子「あんた車の中で爆睡したからってテンション高すぎじゃない……?」ハァ



P「ただいま戻りました……」

愛依「たっだいまー!」

冬優子「あんた車の中で爆睡したからってテンション高すg……って、やばっ」

冬優子「……愛依ちゃん元気だね~♪」

愛依「冬優子ちゃん、顔、ひきつってるって」


冬優子「ソファーソファー……」

はづき「プロデューサーさん以外もまいっちゃってますかね~?」

愛依「あはは……冬優子ちゃんは寝足りなくて機嫌悪いだけだと思うけど」



冬優子「はづきさんお疲れ様ですっ。ふゆ、ちょっと疲れちゃったので上でおやすみさせてもらいますね♪」

冬優子「……」フラフラ

はづき「プロデューサーさん以外もまいっちゃってますかね~?」

愛依「あはは……冬優子ちゃんは寝足りなくて疲れてるだけだと思うけど」


283以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 02:42:12.97jI/iU3Ir0 (3/6)

>>268 訂正:


P「流石に、俺も休憩するか……」

トントン

P「? ……あ、はづきさん」



P「流石に、俺も休憩するか……」

冬優子 ポチポチ

冬優子「……!」

冬優子 ガサゴソ

P(なんだ? 冬優子のやつ急に行儀良くして……)

トントン

P「? ……あ、はづきさん」

P(ああ……はづきさんが来たからか)


284以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 02:44:36.10jI/iU3Ir0 (4/6)

>>272 訂正:


冬優子「あさひ……あんた、ほんと元気ね」ハァ

愛依「まぁまぁ、いいんじゃん?」

愛依「プロデューサーがやろうとしてたコト、できそうなんだしさー」ヒソヒソ

冬優子「はぁ……」

冬優子「……まあ、それもそうね」



冬優子「あさひのやつ……なんであんな元気なんだか」ヒソヒソ

愛依「まぁまぁ、いいんじゃん?」

愛依「プロデューサーがやろうとしてたコト、できそうなんだしさー」ヒソヒソ

冬優子「はぁ……」

冬優子「……まあ、それもそうね」ボソッ


285以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 02:48:19.57jI/iU3Ir0 (5/6)

>>272 訂正:

P「はづきさん、あとは俺がやりますよ」

はづき「あ、そうですかー?」

P「はい」

P「あさひ、壊すのは禁止だけど、ちゃんとした使い方で触る分には観察し放題だからな」

あさひ「ほんとっすか!? やったー!」

はづき「……やりましたね、プロデューサーさん」ヒソヒソ

P「ええ、まあ……そうですね」ヒソヒソ



P「はづきさん、あとは俺がやりますよ」

はづき「あ、そうですかー?」

はづき「じゃあ、私はやることがあるので、事務所に戻ってますね~」

P「わかりました」

P「あ、そうだ……あさひ、壊すのは禁止だけど、ちゃんとした使い方で触る分には観察し放題だからな」

あさひ「ほんとっすか!? やったー!」

はづき「……やりましたね、プロデューサーさん」ヒソヒソ

P「ええ、まあ……はい」ヒソヒソ

はづき「では、失礼しますね~」


286以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 02:53:19.57jI/iU3Ir0 (6/6)

一旦ここまで。訂正で終わってしまいました。何卒ご容赦のほどを……。

次は話の続きを書いていこうと思います(お話はできています)。


287以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 08:36:34.60PZscIPiFo (1/1)

おつおつ


288以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 17:20:18.437fRd4zsk0 (1/2)

俺君が希望になってたらエンディングも変わってたの?
六章の自由行動はどう動くのが正解だったの?


289以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/28(土) 17:20:46.937fRd4zsk0 (2/2)

誤爆しました
申し訳ありません


290以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/29(日) 02:02:08.28fyTN298t0 (1/1)

~テレビ局~

P(今日はバラエティ番組の収録だ)

P(最近はこうしたタレント的な露出も増えてきたな――うまくいくように俺もがんばろう)

P「……っ?」フラッ

P(あれ、疲れてるのかな……。実際、最近ちゃんと休めていなかったかもしれない)

P(あいつらの収録が終わって車で送ってやれば今日の仕事は終わりだ――それまでもってくれ)


数時間後。

P(……終わったみたいだな)

P「お疲れ様。3人とも、今日もよかったぞ」

冬優子「ふぅ……これくらい普通よ」

冬優子「普通じゃなきゃ、いけないの」ボソッ

愛依「おっつかれー! いやー、あの司会者の人マジで面白かった!!」

あさひ「あっ、プロデューサーさん! お疲れっすー」

P「はは……俺が心配する必要はないよな。もう」

冬優子「……あんた、大丈夫? 顔色悪いわよ」

P「え? そ、そうか?」

愛依「ほんとだ……。プロデューサー、体調悪かったりしない?」

P「だ、大丈夫だよ」

P「ちょっと自販機でコーヒーでも買ってくる」

P「お前らはしばらく休んでてくれ。一番頑張ったのは、そっちなんだからさ……」

冬優子「ちょ、ちょっと……!」

愛依「行っちゃった……ね」

冬優子「はぁ……」

あさひ「……」


~テレビ局、ロビー~

P「……と。コーヒーは……、130円……」

P「財布財布……」

P グラッ

P「あ、あれ――……?」

P(ああは言ったけど――体調、やばいかもな)

P「早く買おう」

パラパラ...

チャリィンッ

ドサッ

P「……?」

P(ゆ……か? なんで――こんな低い視線……)

P(これじゃまるで……倒れてるみたいじゃないか……)

P(……いや、本当に倒れてるんだな)

P「……っ」

P(体が動かないだけじゃない。頭痛と吐き気のようなものもある)

P(……すまない、3人とも)

P(見栄なんて張るもんじゃないな……)


291以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/29(日) 02:05:41.59ZsOW8Y/qO (1/5)

~病院 病室(個室)~

P「……」

P「……っ、んん」ガサッ

P ムクッ

P「ここは……」

P(そうか――俺は、倒れたのか)

P「はぁ……」

P(やっぱ、過労だよな……)

P(ったく、自分だって身体が資本みたいなもんなのにな)

P(こんなんじゃ……冬優子に怒られちまう)

P(このままじゃ……愛依に心配させちまう)

P(あさひには悲しい顔……させちまうかもな)

P「次あいつらにあったら――なんて言えばいいんだろうな」


292以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/29(日) 02:14:53.30ZsOW8Y/qO (2/5)

翌日。

~病院 病室(個室)~

コンコン

アレ? サンカイダッケ?

コンコンコン

P「はは……」

P「はい、どうぞ」

ガララ

愛依「あっ、プロデューサー……」

冬優子「……」

P「……ありがとう。見舞いに、来てくれて」

P「俺がいない間も、仕事は大丈夫だったか? レッスンは問題なく受けられたか?」

P「そうだ……明日の予定……」

愛依「ちょっ、プロデューs……」

冬優子「ふざけないで」

P「……冬優子?」

冬優子「こんなになって、さんざん心配させておいて……それでも仕事が大事なわけ?」

P「それはっ……。お前たちがちゃんとアイドルやっていくために……」

冬優子「ばかにしないでくれる?」

冬優子「ふゆたちはね、あんたにおんぶにだっこじゃないとどこにも行けないアイドルなんかじゃないのよ」

冬優子「あんたがプロデュースしてるアイドルは……そんなに頼りないの?」

冬優子「そんなに……情けない?」

冬優子「あんたの思うストレイライトって、そんなもんなわけ?」

愛依「冬優子ちゃん……」

冬優子「まったく、自分の面倒も見れないような人間がふゆたちをプロデュースするなんて笑えるわね」

P「それを言われると……返す言葉もない……」

冬優子「自分の頭の中だけで完結させんじゃないわよ。あんた、プロデューサーなんでしょ?」

冬優子「目の前にいるアイドルを……ちゃんと見なさいよ」

冬優子「そんなこともわからないプロデューサーなんていらないんだから」

愛依「って、まあまあ、冬優子ちゃんもそこまでにしとかない?」

愛依「……ま、うちも似たようなこと思ってたけどね」アハハ・・・

愛依「冬優子ちゃんが全部言ってくれたカンジするし、もういいやー!」

愛依「とにかく、プロデューサー? ちゃんと休まなきゃ駄目だかんね?」

P「わ、わかりました……」

冬優子「ちゃんと反省すること。いいわね」

冬優子「そうしたら、その……ふゆたちの好きなプロデューサーになって事務所に来なさいよ」

愛依「そーそー。うちも、うちらが好きなプロデューサーを待ってたいかな」

P「本当にすまなかった……」

P「見失ってたものをちゃんと見つけてから、またプロデューサーとして会いに行く。だから――」

P「――それまで、待っていてくれ」


293以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/29(日) 02:29:35.09ZsOW8Y/qO (3/5)

冬優子「あ、でも、待たせすぎんじゃないわよ」

冬優子「あんたがいない間にはづきさんがプロデューサーとしての仕事してくれてたけど、結構手際良かったんだから」

愛依「あ! それある! あんまりもたもたしてっと……取られちゃうかもね~。プロデューサーの座、ってやつ?」

P「あはは……それは……うん、死守してみせるよ」

P「そういえば、あさひは来てないのか?」

愛依「あー……」

冬優子「……」

P「用事があって来れなかったとかそんなところか?」

愛依「い、いや、そうじゃないんだけどね」

冬優子「……はぁ。あいつ、来てたのよ。病院までは、ね」

P「?」

冬優子「プロデューサーに会いに行くついでに面白いこと探すっすー……とかわけわかんないこと言ってお見舞いにはノリノリで」

冬優子「出発する前にはしゃいじゃって、バスで爆睡するほどだったのに――」


~病院 廊下~

冬優子「……遠いわね。あいつの病室」

愛依「えーっと、この廊下を最後まで行って隣の建物……だっけ?」

あさひ「うーん、なんかないっすかね~」キョロキョロ

冬優子「あんたね、場所を考えなさいよ」

冬優子「……静かね、ここ」

愛依「確かにね~」

あさひ スンッ

冬優子「ちょっと、急に止まって何やってんのよ。ほら、行くわよ」

あさひ ボーッ

愛依「……あさひちゃん?」

ガララ スーッ

冬優子「あ、看護師さんと患者さん……車椅子なのね」

冬優子「ほら、2人も道空けて」サッ

愛依「はーい」サッ

あさひ サッ

あさひ ジーッ

冬優子「さ、行くわよ」

あさひ「……っす」

冬優子「なんですって?」

あさひ「い、いやっす! いや……いやいや嫌イヤァッ!!」

冬優子「ちょ、いきなりどうしたってのよ」

愛依「あ、あさひちゃん大丈夫?」

あさひ「ひぐっ……ううっ……」ポロポロ

あさひ「あああぁぁぁっ!!!!」ダッ

愛依「あさひちゃん!?」

冬優子「……追いかけるわよ、愛依」

愛依「う、うん……」


冬優子「――ってことがあって……追いつけなくて、見失った。LINEで『わたしに構わずお見舞い行ってほしいっす』って来たから、とりあえずあんたに会いに来たけどね。こっちから送って待っても返信来ないし」


294以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/29(日) 02:42:50.08ZsOW8Y/qO (4/5)

P「そうだったのか……そんなことが」

冬優子「あさひのことは、はづきさんにも相談してこっちでなんとかしてみるわ」

冬優子「あんたも、あいつに連絡するくらいならいいけど、その身体で探しに行こうだなんて思わないでよね」

P「あ、ああ……さっきの言葉は刺さったし、ちゃんと養生するよ」

冬優子「そ。ま、安静にね」

愛依「……あっ、やばっ!」

愛依「冬優子ちゃん、バスの時間……!」

冬優子「そうだった! そうそう、ここ、バスがあんまり来ないのよね」

P「ははっ……じゃあ、急がないとな」

P「その、なんだ。……気をつけて帰るんだぞ」

冬優子「いまのあんたに言われるのは……ふふっ」

冬優子「まあ、それくらい聞いておいてあげる――」

冬優子「――……また、ね」

愛依「まったねー、プロデューサー!」

P「おう」

P「またな」

ガララ

P「……」

P「一体、あさひに何があったっていうんだ」

P(ふと、その時……あさひが時々する悲しい表情を思い出した)

P(俺は、あさひの何を知っているんだろう)

P(何を理解しているというのだろう)

P(前にも、似たようなことを思った)

P「病院で嫌なことでもあったのかな……」

P(俺は、ここまで大きい病院にお世話になったことは今までなかった)

P(まあ、近所の開業医にかかっていたくらいだ。小さい頃は注射が怖かったな。痛いし)

P(あさひも、そういうことで病院が怖いとか……?)

P(今度聞いてみて……もいいことなんだろうか、これって)

P(だめかもしれない)

P「はぁ」

P「あさひ……」


あさひ『花火……花火に心があったら、どう思ってるんすかね』

P『花火に、心が?』

あさひ『火がついてはじけていくときとか、自分がどんなに綺麗な花火だって知ってても、それが始まったら最後……じゃないっすか』

P『あさひ……』

あさひ『花火は綺麗っす。でも、わたしは花火にはなりたくないっす』


あさひ『今日のことは……きっと、一生忘れられないっす!』


あさひ『こんなに……、こんなにわたしのこと考えてくれる人、はじめてで……』

あさひ『わたしを、ひとりぼっちにしない……』


P「……早く、元気になって、あいつにも顔を見せてやらないとな」


295以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/29(日) 02:44:15.61ZsOW8Y/qO (5/5)

とりあえずここまで。


296以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/29(日) 02:55:09.77PdgAaoqXo (1/1)

おつおつる
いったいなにをみたあさひ……


297以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/29(日) 03:19:54.19uxOCFJND0 (1/1)

あさひもループしてんじゃ?


298以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/11/29(日) 06:03:13.04+PTtwATDO (1/1)

入院患者が神の土地を買って動かなくなったのを見て、プロデューサーがダブったのかな


299以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/03(木) 00:51:07.99s4oAjQDsO (1/9)

数日後。

~病院 病室(個室)~

P「短い間だったけど、この部屋ともおさらばだな」

P(この数日間、社長やはづきさんからも、しっかり休むようにということで、仕事に関する連絡は一切来なかった)

P(俺がいない時に何か問題が起こらないかと心配にもなったが、愛依も言ってたように、はづきさんがうまくやってくれているようだ)

P(そもそも、そんな心配をすること自体が傲慢だ)

P(俺がいなくてもある程度機能してるってことなのだから)

P(では、俺がいる意味とは一体何だろう)

P(あいつらにとって、俺はどんな存在でいられるんだろう)

P(俺じゃなきゃいけない――そう言うための根拠が欲しかった)

P「……って、悲観してどうする」

P(あいつらをここまでプロデュースしてきたのは他でもない俺なんだ)

P(俺が胸張ってプロデュースしてやらないと、これまで俺についてきてアイドルをやってきたあの3人に失礼だろう)

P「俺がやってきたこと、俺がやろうとしていること……」

P「……俺が認めてやらないでどうするんだ――ってな!」パシン

P「よし」


~病院 廊下~

P(やっぱ正門まで遠いんだよな……)

P「……」

P(静か、だよな。ここ)

P「……?」

P(通り過ぎようとした個室の扉が、なぜか気になった)

P(正確には、扉の横――うっすらと、文字列のようなものが見えた気がした)

P「落書き……なのか? でも、読めないな……外国語だろうけど、英語じゃないよな」

P(英語でなくても、メジャーな外国語なら何語かぐらいわかるのに、それでもさっぱりだった)

P「アイ……ド……?」

P(そんなふうに俺が落書きを凝視していると――)

「あの、どうかなさいましたか?」

P(――看護師に声をかけられてしまった)

P「あ、いえ……ここに文字が書いてあるなって」

「ああ、これですか」

「これは、前に、ここに落書きした人がいたみたいで」

「お掃除もかねて、そろそろ消さないとな……って」

P「そうだったんですか」

P「それで、洗剤と雑巾を」

「はい。……なんて書いてあるんでしょうね?」

P「さあ……私の知らない言語なのでなんとも。ただ――」

「――アイドル」

P「ははっ……はい」

P「綴りはほとんどそれだなって」


300以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/03(木) 01:03:27.58s4oAjQDsO (2/9)

P「アイドルが好きな子が書いたんですかね」

「どうなんでしょう。私、つい最近ここに来たばかりでして。よいしょっと……」

「この扉の向こうは2人部屋でして、ベッドは1つ空いてて、今いらっしゃるのはもう1つのベッドの寡黙なご老人なので」フキフキ

「アイドル好きって感じじゃ……ないかと」フキフキ

P「そうなんですね」

「あ、ごめんなさい。つい話しすぎました。普段は忙しくて話し相手がいないものですから」

P「は、はあ……」

「ここだけの話、ってことでお願いします」

P「わかりました」

「今日は面会で来られたんですか?」

P「いえ、実は今日が退院日なんです」

「そうだったんですね」

「お大事に」

P「はい。ありがとうございます。それでは……」

P(看護師に見送られ、その場を後にした)


~事務所~

P(病院帰りに顔を出そうと思って来てみたけど、はづきさんしかいなかった)

P(社長はテレビ関係のお偉いさんとの話し合いでいないらしく、ストレイライトの3人はラジオの収録があるのだという)

P「スケジュール表は……、と。あった。……3人はもう帰ってくる頃か」

P「待ってみようかな」


ガチャ

冬優子「お疲れ様でーす」

P「おっ、冬優子じゃないか」

冬優子「……って、あんただけか。来てたのね」

P「まあな。退院したから、家に帰るついでに顔出してみようと思ってさ」

P「愛依とあさひは一緒じゃないのか?」

冬優子「愛依なら夕飯の当番とかで急いで帰ったわよ」

冬優子「あさひは武装商店見つけるやいなや飛び込んで行ったわね。夢中になってこっちの言葉に耳貸さないから置いてきたわ」

P「置いてきたってな……」

冬優子「……悪かったわね」

P「なにが?」

冬優子「愛依でもあさひでもなくて、ここに来たのがふゆで」

冬優子「別にあんたがいるかもと思って会いに来たわけじゃ……ない……んだから」ボソッ

P「ははっ、そんなことないぞ。会えて嬉しいよ」

冬優子「なっ、何言ってんだか!」

P「あと、ありがとうな。お見舞いに来てくれて」

P「改めてお礼を言わせてくれ」

冬優子「お礼はいいから、……これからもちゃんと気を抜かずにプロデュースしなさいよね」

P「ああ! これからもよろしくな」

P「……そうだ。あれから、あさひはどんな感じだ?」

冬優子「あの中学生ならいつも通りよ。ほんと、あれはなんだったんだって思うわ」

P「そうか……」


301以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/03(木) 01:12:45.51s4oAjQDsO (3/9)

冬優子「って、もうこんな時間……」

冬優子「そろそろ帰るわ」

P「じゃあ送っていくよ――って、あ……」

P「今日は出勤しに来たわけじゃないの忘れてた……」

P(いつもの仕事モードで、つい車がある前提で話しちまった)

冬優子「ぷっ、あははっ。あんたって、ほんと、仕事人間ね」

冬優子「でも……ありがと」

冬優子「じゃあ、さ。駅まで送って」

P「わ、わかった」


数分後。~外~

P「いや、しかし……」

P「今日は暑いな……」

冬優子「しばらくまともに日に当たってなかったからそう感じるのかもね」

P「あ、さっき自販機あったな……。あの時に何か買っておけばよかったんだろうなぁ……」

P「そうすれば、いまこうして乾きに苦しむこともなかったのに……なんてな」

冬優子「……」

P「冬優子……? どうしたんだ?」

冬優子「あの時、ああしていたら――こんなことにはならないで、もっと良い結果になってたかもしれないのに」

冬優子「そう思うことって、あるわよね」

P「俺の飲み物のことなら心配しなくてもいいんだぞ? まあ、駅ももうすぐだしな」

冬優子「あんたはさ、そういうの、ないの?」

冬優子「今だって十分良い……でも、あのとき、もっとこうしていたら、こういう決断ができていれば……」

冬優子「今はもっと良くなってたかもしれないのに、って……そう思った経験」

P「……」

冬優子「変なこと言ってごめん。なんか、今のあんた見て、ふと思っちゃって」

P「いいさ。構わないよ」

P「そうだな……そりゃ、あの時もっと頑張ってたら――とか、あの時諦めなかったら――とか、そういう経験はたくさんあるよ」

P「「今だって十分いいけど、あの時こうしてたら、今はもっと良くなってたかもしれないのに」……か」

P「今が十分いいなら大丈夫だよ。明日を、来週を、来年を、数年後を、そしてもっと先の未来をも良くするために――今この瞬間から、これからを大切に歩んでいけば、きっと後悔なんてしないし、どうどうと胸を張っていける」

P「俺はそう思うよ」

P「自分で自分を肯定してやれるだけで、いろいろと楽になるんじゃないか?」

冬優子「そっか……そうよね」

P「そうだとも」

P「あの時ああしていれば、こうだったのに――なんてのは中学で勉強する英語の仮定法の例文で十分だよ」

P「過去は大切だし忘れちゃいけないようなものだってある。でも、常に向き合っているのは過去ではなく、今から続いている未来なんだからさ」

冬優子「……うん」

冬優子「なんか、話したら安心したわ」

冬優子「はぁ……ふゆの弱さ、見せすぎてるわね、ほんと」ボソッ

P「え?」

冬優子「なんでもないわよ。ふふっ」クルッ

冬優子「……明日からも、お仕事頑張りましょうねっ。プロデューサーさん!」


302以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/03(木) 01:13:29.26s4oAjQDsO (4/9)

冬優子「って、もうこんな時間……」

冬優子「そろそろ帰るわ」

P「じゃあ送っていくよ――って、あ……」

P「今日は出勤しに来たわけじゃないの忘れてた……」

P(いつもの仕事モードで、つい車がある前提で話しちまった)

冬優子「ぷっ、あははっ。あんたって、ほんと、仕事人間ね」

冬優子「でも……ありがと」

冬優子「じゃあ、さ。駅まで送って」

P「わ、わかった」


数分後。~外~

P「いや、しかし……」

P「今日は暑いな……」

冬優子「しばらくまともに日に当たってなかったからそう感じるのかもね」

P「あ、さっき自販機あったな……。あの時に何か買っておけばよかったんだろうなぁ……」

P「そうすれば、いまこうして乾きに苦しむこともなかったのに……なんてな」

冬優子「……」

P「冬優子……? どうしたんだ?」

冬優子「あの時、ああしていたら――こんなことにはならないで、もっと良い結果になってたかもしれないのに」

冬優子「そう思うことって、あるわよね」

P「俺の飲み物のことなら心配しなくてもいいんだぞ? まあ、駅ももうすぐだしな」

冬優子「あんたはさ、そういうの、ないの?」

冬優子「今だって十分良い……でも、あのとき、もっとこうしていたら、こういう決断ができていれば……」

冬優子「今はもっと良くなってたかもしれないのに、って……そう思った経験」

P「……」

冬優子「変なこと言ってごめん。なんか、今のあんた見て、ふと思っちゃって」

P「いいさ。構わないよ」

P「そうだな……そりゃ、あの時もっと頑張ってたら――とか、あの時諦めなかったら――とか、そういう経験はたくさんあるよ」

P「「今だって十分いいけど、あの時こうしてたら、今はもっと良くなってたかもしれないのに」……か」

P「今が十分いいなら大丈夫だよ。明日を、来週を、来年を、数年後を、そしてもっと先の未来をも良くするために――今この瞬間から、これからを大切に歩んでいけば、きっと後悔なんてしないし、どうどうと胸を張っていける」

P「俺はそう思うよ」

P「自分で自分を肯定してやれるだけで、いろいろと楽になるんじゃないか?」

冬優子「そっか……そうよね」

P「そうだとも」

P「あの時ああしていれば、こうだったのに――なんてのは中学で勉強する英語の仮定法の例文で十分だよ」

P「過去は大切だし忘れちゃいけないようなものだってある。でも、常に向き合っているのは過去ではなく、今から続いている未来なんだからさ」

冬優子「……うん」

冬優子「なんか、話したら安心したわ」

冬優子「はぁ……ふゆの弱さ、見せすぎてるわね、ほんと」ボソッ

P「え?」

冬優子「なんでもないわよ。ふふっ」クルッ

冬優子「……明日からも、お仕事頑張りましょうねっ。プロデューサーさん!」


303以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/03(木) 01:19:06.10s4oAjQDsO (5/9)

~事務所~

P「こんにちはー……」

P(今日は営業だったけど……懇意にしてもらっているとはいえ苦手なんだよなぁあの人……)

P(とても疲れた……)

P(まだ仕事残ってるけど、少し休んでからでもいい――よな?)

P「はづきさん――は、いない……か」

P(そういえば今日ははづきさんのオフだったっけ)

シーン

P「あれ?」

シーン

P「誰も……いないのか?」

P(それなら、ソファーで横になるかな……)

P(少し、少しだけだから……)

P「あ」

P「これ……アイマスクか」

P(はづきさんが使ってたやつだよな)

P(うーん、勝手に使ったら怒られるかなぁ)

P「……」

P(まあ、バレなきゃいいか?)

P「っしょっと……」

P「おやすみなさい……」

P(アイマスクをつけてからソファーで横になり、しばしの間、仮眠をとることにした)


304以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/03(木) 01:21:50.12s4oAjQDsO (6/9)

「あ……え、えっと……」

――普段とは違う視点。

「きょ……今日は……えと……」

――他の人たちは下からこっちを見ている。

「あ、ありが……と」

――うちは……何を見てんの?

「……」

――見渡す限りの眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼。


P「うわあぁぁっ!?!?」ガバッ

「わっ!? びくった……」

P「っ!? く、暗い! 目の前が真っ暗だ!!」

「ちょ、落ち着きなって」

P「だ、だって目が覚めたはずなのに何も見えないんだ!」

「アイマスクしてるからっしょ。ほれ――」パッ

P「――あ」

P「っ、まぶしい……」

「……もう」

愛依「プロデューサーって、案外、天然……ってヤツ?」

P「そ、そうなのかな……」

愛依「それか、疲れてんじゃない? ちょうど今まで寝てたわけだし」

P「まあ、確かに疲れたから仮眠を取ってたけど」

P「愛依はどうして事務所に?」

愛依「レッスン終わってから暇でさ。今日はうち1人でだったし、友だちは都合悪いしで――」

愛依「――なんとなくここ来てみたってコト」

P「そうか」

P「……というか、なんか変じゃないか?」

愛依「変って、何が?」

P「俺は愛依がいないときからソファーで寝てたけど」

P「愛依はいまソファーにいるよな」

愛依「そだね」

P「俺がソファーを独占してる形だったのにそれはおかしくないか?」

愛依「だって、事務所来てからプロデューサーが起きるまで膝枕してあげてたかんね」

P「膝枕か……なるほど」

P「って、膝枕と言ったか!?」

愛依「言ったけど……」

P「ものすごいスキンシップをとってしまった……プロデューサーとアイドルなのに……」

愛依「まあ、他の人に見られてないし、大丈夫じゃん?」

愛依「プロデューサー、ソファーで寝苦しそうにしてたからさ」

愛依「うち、寝かしつけるのちょー得意だから」

愛依「他に誰もいなかったし、膝枕でもしてあげようかなーって」

愛依「もしかして……嫌――だった?」

P「あ、いや、そんなことはないぞ。ありがとう」


305以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/03(木) 01:33:28.31s4oAjQDsO (7/9)

P(よく眠れた――と言って良いのだろうか)

P(けれども、妙な夢を見た。自分の経験ではない、誰かの見た光景の夢……)

愛依「プロデューサー?」

P(……まさか、な)

P「愛依の膝のおかげで残りの仕事も頑張れそうだよ」

P「ありがとう」

愛依「ばっ!? ひ、膝のお陰とか、わけわかんないし!」

愛依「……まあ、疲れが取れたならいっかな」

愛依「うちさ、スーツのままソファで寝苦しそうにして横になってるプロデューサー見て思ったんだよね」

愛依「うちがいつもすっごく楽しいのは、プロデューサーのお陰で」

愛依「プロデューサーが連れてきてくれたアイドルの世界で、あさひちゃんと冬優子ちゃんに会って」

愛依「うちのアレなところ、プロデューサーはアイドルとしてのキャラってことで形にしてくれて」

愛依「ほんと、感謝してもしきれないんじゃねって……」

愛依「プロデューサーはうちにいろいろしてくれる――」

愛依「――けど、うちがプロデューサーにしてあげられてることなんて、ない……」

愛依「だからさ、まあ、なんての? 恩返しってやつ?」

愛依「はは……何言ってんだろうね、うち」

愛依「でも、何かしてあげたかったからさ」

P「愛依……」

P(いつもは明るくおおらかな愛依が――表情を暗くしていく)

P「別に気にすることなんてないぞ。ギブアンドテイクなだけでプロデュースやってるんじゃないんだ」

P「それに、愛依が俺のプロデュースするアイドルでいてくれればさ……うん、それでいいよ」

愛依「……プロデューサーは優しいよね」

愛依「でも、駄目なんだよね。それじゃうちが納得いかないから」

愛依「だって、……だってさ!」

愛依「うちが楽しく過ごせば過ごすほど、プロデューサーが……」グスッ

愛依「どんどん……疲れて、苦労しちゃうみたいで……」ポロポロ

愛依「そんなの、うちはやだよ……!」

P「あの、愛依……」

愛依「うちにはそう見えてんの! それが……うちは……」

P「……愛依は、俺にどうして欲しいんだ?」

P「プロデューサーとして、アイドルのためなら苦労だって疲労だって耐えてみせるくらいの気持ちではあるさ」

P「それでも、愛依がそんな俺を見るのが辛いっていうなら」

P「愛依がどうして欲しいか、聞かせてくれ」

愛依「……」

愛依「うちがプロデューサーにどうして欲しいか……」

P「今すぐに聞かせてもらえなくてもいい。愛依なりに言葉にできるようになったらでいい」

愛依「……うん」

愛依「わかった。そうする……」

愛依「あー! 暗いのやめやめ!」

愛依「らしくないよね、こういうのはさ」

P「ああ。愛依は普段通りなのがいいよ」

P「そのほうが、俺は安心できるかな」


306以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/03(木) 01:40:22.07s4oAjQDsO (8/9)

愛依「でさー、なんか思ったんだよね」

愛依「楽しい――よりもすごい、それ以上のことってなんなんだろーなって」

愛依「で、まあ、頭良くないけどうちなりに考えて……それって、しあわせっていうんじゃないかなって」

愛依「前にさ、一緒に買い物行ったじゃん?」

P「ああ。ショッピングモールに行ったよな。愛依に服を選んでもらったときだろ?」

愛依「そそ。そんときね」

愛依「親子3人で仲良しの人たちを見て……あの人たちはきっとしあわせなんだろうなって思った」

愛依「それを思い出したときに、しあわせって楽しいだけじゃないのかなって」

愛依「もっと、楽しい以外の何かが必要なのかなって……そんな気がしたんだよね~」

P「楽しい以外の何か、か……。愛依の考えたことは、きっとそう簡単に解決する話ではないのかもしれないんじゃないかって思うよ」

P「幸せが何なのか――それは、たぶん俺にもよくわからないから」

P「でも……そうだな。幸せっていうのは、どんなに頑張っても1人では掴めないんじゃないか?」

愛依「2人いればいい……とか?」

P「2人以上、かな。3人でもいい。俺と愛依が見た家族は3人だっただろ」

愛依「あ、確かに」

P「2人でも幸せになれると思うけどな。大雑把に言えば、重要なのは、まずは1人じゃないってことだと思うんだ」

P「そして……自分が1人と思わないこと。特に、自分が……独りだと思わないことだ」

P「絆のないところに、幸せは生まれないと思う――って、わかってないくせに何語ってるんだろうな、俺は」

愛依「ううん。プロデューサーの言ってること、なんとなくだけどわかるかも」

愛依「いまでもさ、ステージであがっちゃうの、克服できてないけど」

愛依「原因は昔のことだとしても、いま治せてないのは、うちがステージで1人だと思ってたからなのかもなーって」

愛依「だってさ、何も敵に囲まれたとかじゃないじゃん? やばい場所に置いてけぼりにされたとかでもないし」

愛依「うちには……ファンも、あさひちゃんと冬優子ちゃんも、なによりプロデューサーがいるのにさ」

愛依「……よし、決めたっ! 楽しい以上の何か――目指してみるわ」

愛依「あと、しあわせにも、なってみたいかな……いつかね」ボソッ

愛依「今日はありがとね。プロデューサーのおかげで元気出た!」

愛依「うちがプロデューサーを癒してあげたかったんだけど~……やっぱプロデューサーには敵わないな~」

P「愛依が元気になったなら良かったよ。俺はプロデューサーなんだからさ、アイドルのために頑張るのは当然のことだ」

P「……って、何か忘れてるような気がするな」

愛依「そういえばプロデューサーさ、ずっと寝てたけど、仕事は大丈夫なん?」

P「あ!! くっそ……タイマー設定しないで寝たからだ……! い、今何時――ってもうこんな時間か!?」

P「……はぁ。とりあえず徹夜しないと駄目みたいだ」

愛依「そっか~~……じゃあ、うちも事務所泊まる!」

P「いやいや、そういうわけにはいかないだろう」

愛依「今日は大丈夫! うち以外は全員家いるから」

愛依「友だちの家泊まったことにしておくから、ね?」

愛依「夜食も作ってあげるし、うちでも手伝えることがあればお仕事も助けるし、疲れたらまた膝枕してあげるしさー」

愛依「ねね、悪くないっしょ? うちさ~、今日は帰ったってたぶん楽しくないし、明日1日オフなんだよね~」

P「はぁ……。駄目って行っても帰らないんだろうなぁ……」

愛依 ジーッ

P「……他の人には絶対に内緒だからな」

愛依「やったね。テンションあがる~」アハハ

愛依「そんじゃ、ま、頑張ってこ~」


307以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/03(木) 01:40:57.61s4oAjQDsO (9/9)

とりあえずここまで。


308以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/03(木) 02:10:05.45sU+0ECO+o (1/1)

おつおつ


309以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/04(金) 01:12:38.74keDxaytnO (1/4)

数日後。

~事務所~

P カタカタ

冬優子 ポチポチ

あさひ ポチポチ

冬優子 ポチポチ

あさひ「!」

あさひ「冬優子ちゃん!」

冬優子「うわっ、びっくりした……」

冬優子「あんたね……いきなり驚かさないでくれる?」

あさひ「ちょうどわたしもスマホ持ってるんすよ!」

冬優子「だから?」

あさひ「最近始めた対戦ゲームがあって、それを一緒にやって欲しいっす!」

冬優子「駄目」

あさひ「え……」

冬優子「ふゆはふゆでスマホ使ってやんなきゃいけないことがあんの」

冬優子「だから付き合えない。悪いわね」

あさひ「そうっすか……」

愛依「ん~? どしたん?」

あさひ「冬優子ちゃんとやろうと思ったゲームがあったんすけど、断られたっす」

愛依「あー……」

冬優子 ポチポチ

愛依「そうだ! じゃあさ、あさひちゃん、そのゲーム、うちとやらない?」

あさひ「! いいんすか!?」

愛依「ちょうど暇だったし、いいよー」

あさひ「やったっすー!」

P(今日は午前中にレッスンで午後は休みだというのに、どこかに遊びに行く様子もなく事務所でリラックス、か)

P(まあ、あいつらにとってここが居心地の良い場所になってるなら、いいのかな)

はづき「あ、プロデューサーさん」

P「はづきさん――どうしました?」

はづき「ちょっと今いいですかー?」

P「あ、はい。大丈夫です」

P(なんだろう……)


310以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/04(金) 01:16:03.24keDxaytnO (2/4)

はづき「こういうプロジェクトがありまして……」ガサゴソ

はづき「はい、これが資料ですー」

P「ありがとうございます……」

はづき「……」

P「……」ペラッ

P(はづきさんから渡された書類に目を通していく)


P「……これは」

P「アイドルユニットのメンバーが1人でどれだけ輝けるのか――ですか」

はづき「そうなんです」

はづき「この大会は、言うなればW.I.N.G.のソロバージョンって感じでしょうか」

はづき「ただし、出場の条件として、普段は主にユニットで活動しているアイドルが1人で出ること――があります」

P「あえてそうすることで、ユニットとしての活動は個々のウィークポイントを隠すための手段ではないことを示せ――と言われているような気分ですね」

P「直接そう書かれているわけでも言われたわけでもないですが」

はづき「はい……」

はづき「この283プロダクションにも声がかかってまして、それでプロデューサーさんにお伝えした次第です」

P「……」

P「その、こういう質問は良くないのかもしれませんが」

P「出ない……という選択肢はあるんでしょうか」

はづき「その選択肢は存在しているけども与えられていない、と言えば良いのか……」

はづき「最終的な判断はプロデューサーさんが下すことになります」

はづき「私から何か言うつもりはありません」

はづき「それでも……」

はづき「……プロデューサーさんの決めたことを、全力でサポートしますよ~」

P「……」

P「ふぅ……」

P「……」

P「わかりました」

P「あいつらと話してきます」


311以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/04(金) 01:57:43.17keDxaytnO (3/4)

P「3人とも、少し、いいか?」

冬優子・あさひ・愛依「?」

P「実は――」


P「――というわけなんだ」

P「だから……」

P「……」

愛依「?」

冬優子「何よ、らしくない」

冬優子「要するに、その大会にふゆたち3人の中の誰か1人が出るってことなんでしょ」

冬優子「……」

愛依「あの、さ……2人ともなんでそんな深刻そうなん?」

愛依「W.I.N.G.の1人ヴァージョンってこと――だよね?」

冬優子「それだけじゃないわよ」

冬優子「この大会に出れば、1人でユニットの何もかもを背負うんだから」

冬優子「プロデューサーも言ってたでしょ、普段ユニットで活動してるアイドルが1人で出るんだ、って」

冬優子「勝てば天国負ければ地獄とはこのことよ」

愛依「そ、そっか……そだよねー……」

愛依「なんか……ごめん」

愛依「でも、それならあさひちゃんが出れば――」

冬優子「――わかってんのよ」

愛依「っ」ゾッ

冬優子「そうよ。愛依の言うとおり」

冬優子「そうだけど……そんなの、悔しいと思わないの?」

冬優子「これはふゆにとってチャンスでもあるんだから」ボソッ

愛依「うち、そこまで考えられてなかったわ……ごめん」

P「ま、まずは落ち着いてくれ」

P「俺は、誰が出ても構わないと思っている」

P「誰が出ようと、俺が勝たせてやるまでだ……」

P(愛依は冬優子に事の深刻さを知らされて若干ビビッちまってるな)

P(でも、愛依だって勝てる可能性は十分にあるんだ)

P(才能という意味では、確かにあさひは最強だろう)

P(それでも、あさひは完璧じゃない――完璧であろうとしていたのだとしても)

P(冬優子は――これを自分がのし上がるチャンスだと思っている)

P(だが、それは同時に、高いリスクを孕んでいる。それを冬優子はよくわかっているんだ)

P(だから、冬優子は「出たい」とは口に出せていない……)

P(あさひは特に意見なし、か……)

P「あさひ。お前はどう思う? 出たいか?」

あさひ「どっちでもいいっすかね。面白ければ出たいかもしれないっす」

冬優子「……」

愛依 アワアワ


312以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/04(金) 01:59:26.79keDxaytnO (4/4)

P(3人の話し合いで決めさせるのは無理かもしれないな……)


P『誰が出ようと、俺が勝たせてやるまでだ……』


P(ははっ、随分と強く出たもんだな、俺)

P(でも、その気持ちがあるのは本当だ)

P(俺は、ストレイライトのプロデューサーとして、あいつらを必ず輝かせなければならない……!)

P(……)

P(一応、聞いてみるか)

P「どうだ? 誰が出るとか、決まりそうか?」

冬優子「……」

あさひ スンッ

愛依「……」

P「俺が、決めてもいいのか?」

冬優子「ふゆはあんたの決定に背かないわよ」

愛依「うちも……選ばれたら……その、ちょー頑張る」

愛依「あはは……なんかうまく言えなかったけど、でも――そのときは絶対勝つから」

P「そうか」

P「あさひはどうだ?」

あさひ「プロデューサーさんにまかせるっすよ」

P「……わかった」

P(決めないと、だな)

P「俺は……」


1.愛依を選ぶ。
2.冬優子を選ぶ。
3.――この選択肢はロックされています―― 

選択肢↓2

(とりあえずここまで)


313以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/04(金) 02:02:14.74geU4b5Cs0 (1/1)

おつ
ノクチルの時も思ったけど、同じ子ばっか選んだらどうなるんだろ
安価は下


314以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/04(金) 02:07:06.46WGk6Gy1Uo (1/1)

まあ1
おつ


315以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/04(金) 06:50:17.19TP541CDDO (1/1)

和泉さんと


316以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/05(土) 11:48:21.974/Arhol7o (1/1)




317以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/09(水) 00:55:31.64g/2P+SkJO (1/1)

P「……愛依」

愛依「え!? あ、うち……?」

P「どうだ、出てみないか」

愛依「うちが、ストレイライトを……」

P「強制はしないよ」

愛依「……」

P(愛依には大きすぎるプレッシャーだろうか)

P(愛依は……ただ弱いというわけではないが、脆い部分を抱えている。それでも……)

P(たとえそうだったとしても、俺は愛依と挑戦してみたい)

愛依「プロデューサーは……」

愛依「うちなら、勝てるって思う?」

P「ああ。そのつもりだよ」

愛依「あはは……プロデューサー、即答じゃん」

P「もちろん。俺は、愛依がストレイライトを背負えるって信じてるからさ」

愛依「!」

愛依「……そっか」

愛依「……」

愛依「っしゃ!」パシ

愛依「うん、やってみるわ!」

愛依「あんまし不安に思ったって、うちらしくないもんね」

愛依「それに、プロデューサーに「信じてる」なんて言われちゃったらさー……」

愛依「やらないわけにはいかないっしょ!」

P「愛依……」

P「ありがとう。一緒に頑張っていこう」

冬優子「ん゛っ、んんっ」

冬優子「2人で空気作ってるところ悪いけど、ふゆたちがいることを忘れんじゃないわよ」

P「あ、冬優子」

愛依「ふ、2人の空気って……もー! 冬優子ちゃん何言ってんのー!」

冬優子「愛依」

愛依「?」

冬優子「頑張んなさい。応援、してるから」

冬優子「大会に出るのは1人でも、ストレイライトは3人……ううん」

冬優子「プロデューサーと4人で1つだってこと、覚えておきなさい」

愛依「……うん」

愛依「サンキュー、冬優子ちゃん」

あさひ「……」

P(あさひは無言か……まあ、あさひのことだから、本当に気に留めていないのかもしれない)

P「そうそう、いままで通りにユニットとしての活動も普通にあるからな」

P「愛依は大会に向けてユニットとは別のスケジュールも組むことになるが……」

P「……ストレイライトは何も変わらないさ」

P「いつだって、お前らが一番だよ」

愛依「おっ、プロデューサーイイコト言うじゃん」

冬優子「かっこつけちゃって……」


318以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/09(水) 01:29:16.31vCwokJiKO (1/3)

数十分後。

P(あれから、自然に3人は、今日は解散、という流れになった)

P(愛依だけが事務所に残った――まあ、残ってくれたほうがこちらとしては都合が良いけども)

P(しかし、大丈夫かな)

P(愛依が残ったのは偶然というか、なんというか……)

P(……遅いな)

ジャーッ

ガチャ

P「!」

愛依「……あ」

P「愛依――」

愛依「いやー難産だったわー! バスンとしてスッキリってカンジ?」

P「――そ、そうか」

P(? その目元は……)

愛依「どしたん? プロデューサー」

愛依「うちの顔になんかついてる?」

愛依「あ、さすがに引いちゃったとか?」

P「愛依」

P「お前、泣いただろ」

愛依「!?」

愛依「な、何言って……」

P「その……化粧が崩れてたから」

愛依「……あ」

P「視界が霞んで直しきれてない」

愛依「そ、そっかー! ま、ばれちゃしょうがない……か」

愛依「ごめん、プロデューサー」

愛依「こんなところ見せちゃって」

P「別に、トイレで泣いてたことをどうこう言うつもりはないんだ」

P「むしろ、謝るのは俺のほうかもしれない」

P「俺が愛依に大会出場を促したから……」

愛依「ち、違う……!」

愛依「プロデューサーはなんも悪くないから!」

愛依「……どうしちゃったんだろうね、うち」

愛依「いままでこんなことなかったからさ。人前に出るのが怖いことはあっても」

愛依「狭い個室で1人になって、プロデューサーがうちを選んでくれたことがめっちゃやばいことだって思って」

愛依「でさ、気づいたら涙止まんなくなってて……」

愛依「こんなうちでホントに良かったのかな……」

P「……確かに、ここからは決して易しい道じゃない――いや、はっきりいって厳しい道だよ」

P「それは、お前があさひや冬優子じゃないからではない」

P「あさひだって、冬優子だって、簡単にクリアできるものではないんだ、今回のは」

P「それでも、俺は愛依と勝ちたいって思ったから」

P「勝って……ストレイライトは単なるアイドルユニットを超える価値があるってことを、愛依と証明したいんだ」

P「俺のわがままだって怒ってくれてもいい。愛依が拒否したら、そのときは何も言わずに受け入れるつもりだよ」


319以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/09(水) 02:03:29.77vCwokJiKO (2/3)

愛依「うちがプロデューサーに怒るなんてナイナイ」

愛依「むしろ、ありがとって思ってる。プロデューサーのためにも、うち、頑張りたい」

愛依「ううん、絶対頑張る。頑張って、勝って、たっくさんの人にストレイライト最高って言わせる……!」

愛依「……だからさ、はい」

P(手を差し出して……握手か?)

P「ああ――」スッ

ニギッ・・・グイッ

P「――え」

P(立ち上がって手を差し出してきた愛依と握手をしようとした瞬間――愛依に引っ張られ……)

P(前方に軽くバランスを崩した俺を愛依が受け止めるような形で……)

ギュッ

P(強く、けれども弱く、抱きしめられた)

P「め、愛依……?」

愛依 ギュッ

P「そ、その、いきなりで、なんていうか……」

愛依「いま事務所にいるのはうちとプロデューサーだけっしょ」

P「それはそうだが……」

愛依「ごめん、プロデューサー。お願いだから、いまだけは何も言わないで」

P「……」

愛依「っ」ギュウゥッ

P(抱きしめる力が強くなる。一方で、愛依の手が震えているような気もする)

P(弱さを感じる――これから挑むモノからのプレッシャーやユニットを背負うことへの不安がある)

P(強さも感じる――勝ってやるのだという決意と揺るぎない想いが確かに存在している)

愛依 スッ

愛依「プロデューサー……」

P「お、おう……」

愛依「……すぅー、はぁー……っし。もう大丈夫」

愛依「うちもプロデューサーと勝ちたい気持ちでいっぱいだってわかった」

愛依「一緒にトップアイドル目指すって、こういうコト……でもあるんだよね」

P「今まで俺たちが歩んできた道を思い出せばいいさ」

P「たくさん勝って、時には失敗も経験して……どれも意味のあることだっただろ?」

P「これからだってそうだよ。きっと、さ」

愛依「だね。また頑張るだけじゃん?」

P「ははっ、その意気だ」

愛依「うん!」

愛依「……あ、時間やばっ! そろそろ帰んないと」

愛依「じゃ、プロデューサー、またね!」ダッ

P「ああ、またな」

愛依「っとと、言い忘れてたわ」

愛依「その……抱きついたこと、ナイショ、だかんね。ひみつっていうか、……忘れちゃってもいいから」ゴニョゴニョ

愛依「ば、ばいばい!」タタタッ

P(そんなことを言われた余計に思い出すじゃないか……!)

P「……柔らかかったな」


320以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/09(水) 02:04:34.52vCwokJiKO (3/3)

とりあえずここまで。


321以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/09(水) 02:15:39.01qKyfb7Vx0 (1/1)

おつんつん


322以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/09(水) 08:54:14.52PGs82vdDO (1/1)

90……っ!


323以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/09(水) 11:30:55.27dNQCHsvq0 (1/1)

愛衣かわいいよ愛衣
どうも冬優子とは違うベクトルで割りを食うことが多いけどそれでもめげないで


324以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/09(水) 19:59:30.87VWil6+IjO (1/1)

>>1です。

>>301と>>302ですが、連投になってることに気づきました。

>>319では、細かいことですがわかりにくいと感じたので
P(立ち上がって手を差し出してきた愛依と握手をしようとした瞬間――愛依に引っ張られ……)
→P(立ち上がって、手を差し出してきた愛依と握手をしようとした瞬間――愛依に引っ張られ……)
とします。

取り急ぎ訂正をば。


325以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/17(木) 04:12:12.00kjqzZC7f0 (1/1)

2週間後。

~事務所~

P(第1回予選まで2週間とちょっとという時期になった)

P(1人でユニットを背負うことになった愛依の負担は……きっと、俺が想像する以上に大きいだろう)

P(楽天的で大雑把が愛依のアイデンティティみたいなところはあるが、一方で思慮深いというか、周りをよく見ている側面もあると思う)

P(この機会にあまり思いつめないといいんだが……)

はづき「ぷ、プロデューサーさ~ん」

P「……あ、はづきさん」

はづき「お疲れ様です~」

P「ええ、お疲れ様です」

P「あの……何かありましたか?」

はづき「それが~……」


P「えっ、1週間子どもを預かってくれ……ですか?」

P「はづきさんいつの間に……」

はづき「わ、私じゃないですよ~」

はづき「社長に近い人からどうしてもと頼まれたんです」

はづき「283プロで信頼できる人間に任せたいとかなんとかって」

P「その、はづきさんが預かるというのはダメなんですか?」

はづき「私はだめですよ~」

はづき「大家族のために生活費を稼ぐのでアルバイトばかりですし、面倒を見るほどの余裕はちょっと……」

はづき「せっかく信頼されてるんですから、ちゃんと見ていてくれる人じゃないといけないんです」

P「それで俺ですか」

P「確かに仕事の掛け持ちとかはないからこの事務所で働く以外のことと言えばアイドルの仕事やレッスンについていくくらいですが……」

P「仕事の間はさすがに面倒見れないと思いますよ」

はづき「あ、それは大丈夫です~」

P「?」

はづき「プロデューサーさんはまだ有給休暇を取ってないので、ちょうどいいかと」

P「俺の有給は子どものお守りで消化されるのか……」

はづき「すごく大人しくて全く手のかからない子って聞きましたよ~」

P「それ、他人に預けなくても自分でどうにかなっちゃうタイプの子なんじゃないですか……?」

はづき「それでも独りにしておけないっていう親心なんじゃないですかね~」

P「は、はぁ……」

はづき「ここだけの話、引き受ければ色をつけてもらえるそうですよ」ボソッ

P「……」

はづき ニコニコ

P「わ、わかりましたよ。別にそこまで嫌というわけでもないですし、お金ももらえて信頼も得られるならやりますって」

はづき「助かります~! じゃあ、そういう話で進めますね」

P「は、はい」

P(引き受けてしまった……)


326以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/17(木) 04:37:59.11n91JNfeYO (1/3)

翌日。

~事務所~

P「おはようございます」

はづき「あ、プロデューサーさん。おはようございます」

はづき「今日はお休みの日なのに、スーツで着たんですね~」

P「はい……なんだか、いつもの癖で」

P「電車に乗って窓に映った自分を見て気づきました」

はづき「そんなお疲れなプロデューサーさんも、あそこにいる天使さんなら癒してくれますよ~」

P「天使……?」

P(はづきさんに言われて視線をやった先には――)

「……」

P(――確かに、天使と形容されてもおかしくないと思えるような少女がいた)

P(肩までの長さの黒髪に色白の肌、顔立ちは整っていて――そこにある2つ赤い瞳はまだこちらに気づいていないように思えた)

P(白のワンピースに身を包んだおしとやかな女の子だ)

P(はづきさんは天使と言ったけど、その見た目はどちらかといえば和風かもしれない)

P(つい、その少女をまじまじと見てしまった)

はづき「どうかしましたか? もしかして、スカウトしたくなったとか」

P「あ、はは……」

はづき「大人びていますけど、小学校高学年にならないくらいなので、アイドルのプロデューサー目線では将来に期待してあげてください」

はづき「とりあえず、今はお仕事の話はナシです。そろそろ紹介しますね~」

P「は、はい」

はづき スタスタ

P スタスタ

「……」

はづき「ふふっ、ちょっといいですか~?」

「……?」

はづき「こちらが、今日から一週間面倒を見てくれるPさんです。普段はこの事務所でアイドルのプロデュースをしている人なんですよ~」

「……」

P「初対面でいきなりだとは思うけど、よろしく……ね」

「……」

はづき「あはは……それで、この子は――」

プルルルル

はづき「――って、お仕事の電話ですね……行ってきます~」

P「俺が出ましょうか?」

はづき「それじゃあ意味がないですよ~。とりあえずプロデューサーさんはこの子と一緒にいてあげてください」

はづき「今はそれがお仕事だと思えば、お仕事人間のプロデューサーさんもわかってくれますかね~」

P「わ、わかりました……」

はづき タタタ

P「……」

「……」

P「……」

「……」

P(どうすればいいんだ……!)


327以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/17(木) 04:58:39.10n91JNfeYO (2/3)

数十分後。

P(あれから沈黙が続いている……)

「……」

P(参ったな……)

ガチャ

P(誰か帰ってきたのか?)

愛依「プロデューサーたっだいまー!」

P「お、愛依か……」

P(そういえば、今日は個人レッスンだったか)

P(……大会の予選も近いしな)

愛依「ど、どしたん? なんか疲れてる系?」

P「いや、なんていうか、な……」

愛依「?」

愛依「ね、プロデューサー」ボソッ

P「なんだ?」

愛依「前にいる子って、プロデューサーがスカウトしてきたん?」ヒソヒソ

P「あ、そういうことか……愛依にはまだ話してなかったよな」ヒソヒソ

P(一旦その場から離れて、愛依に事の経緯を説明した)


愛依「そっかー、プロデューサー、あの子のお守り任されてんだね」

P「そうなんだ。ただ、な……」

愛依「まだあの子と仲良くなれてない的なやつっしょ?」

P「情けない話だが、そうなんだ」

P「どう接していいかもわからなくてな」

P「はづきさんから事前に聞いてたのは、“すごく大人しくて全く手のかからない子”ってことだったんだけど」

P「無邪気に接してくれる子どもとは全然違うし、どうしたものかわからなくてお手上げでさ……」

愛依「なるほどねー。ちょっとムズいカンジかぁー……」

愛依「……」

愛依「プロデューサーは1週間あの子につきっきりで面倒見るんだよね?」

P「あ、ああ」

愛依「じゃ……その」

愛依「それさ、……うちとやんない?」

P「愛依と?」

愛依「う、うちならさ、下の子の面倒見ることあるし、世話するの好きだし……」

愛依「丁度イイ的な? って思ったんだけど……」

愛依「ど、どう?」

P「その提案はありがたいし、できれば愛依と一緒にあの子と向き合ってあげられればと思うんだけど」

P「レッスンとか、仕事――は今週はないのか――まあ、そういった予定もあるだろう」

愛依「レッスンの日なら、あの子と事務所に来ればいいんじゃね?」

愛依「オフの日はさー、それこそ3人で出かけたりして……良くねって思うんだけど。プロデューサーさえ迷惑じゃなきゃね」

P(愛依は大会を目前に控えてストレスを抱えているかもしれない。それなら、そういった形であれ発散させてやりたいと思う)

P「……そうだな。それじゃあ、お願いするよ。一緒にあの子の面倒を見てあげよう」

愛依「! う、うん!!」


328以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/17(木) 04:59:28.59n91JNfeYO (3/3)

とりあえずここまで。


329以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/17(木) 07:30:56.99RInkiaLxo (1/1)

おつー


330以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/17(木) 23:37:39.21ybYTVEfUO (1/1)

愛依「やば……っ、なんか、キンチョーしてきたんですけど……!」

P「いやいや、ライブの前じゃないんだから……」

P「愛依が頼りなんだ。さ、ほら」

愛依「それ余計にプレッシャーだから!」

愛依「プロデューサー……もしかしてわざとやってる?」

P「……そんなことないぞ」

愛依「え~? ホントかなー」

愛依「って、あははっ。なんか、キンチョーしなくなってきたかも」

愛依「……」

P「どうかしたか?」

愛依「ううん。プロデューサーやっぱすごいわって思っただけ」

P「別に何もしてないんだが……」

愛依「っし、じゃ、行こっか」


「……」

愛依「……どもども~!」

P「待て待て、待て。芸人のノリだろ、それは」

P「まだ緊張してるんじゃないのか?」

愛依「ち、違うし! そういうんじゃないから!」

「……っ」

P「あ……」

愛依「ごめんね、驚かせちゃったカンジ?」

P「いや、この子……」

愛依「?」

「……」

愛依「笑って……る?」

「……」

愛依「まだ口がニコってしてるじゃん!」

愛依「~~っ、……かわいすぎか!」

P「ははっ、愛依が緊張したおかげだな」

愛依「も~、またそんなこと言って~」

愛依「あ、そだ。自己紹介? しないとね」

愛依「うちは和泉愛依ね。こっちはうちのプロデューサー」

P「さ、さっきぶりだけど、よろしく」

愛依「名前はなんていうん~?」

「……」

P「……」

愛依「あ~……、ま、いっか!」

愛依「しばらくプロデューサーに預けられるって聞いたけど」

愛依「うちも一緒に面倒見てあげたいな~って思ってて」

愛依「ダメ……かな?」

「……」フルフル

愛依「よかった~~。なんかあったらさ、エンリョなく聞いてくれちゃっていいから! お姉さんのこと、頼ってね~」


331以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/18(金) 00:02:43.64GhO3OuwaO (1/3)

P「……そういえば、愛依」

愛依「ん~? どしたん?」

P「どうだ、練習の調子は」

愛依「!」

愛依「……」

愛依「順調、だけど」

P「……そうか」

愛依「……」

愛依「プロデューサー」

愛依「やっぱ、もうちょっと練習したい」

愛依「自主トレしてくるわ」

P「わかった。……無理はしないでくれ」

愛依「ダイジョーブだって! うち、こんなんだから? プロデューサーに心配されなくてもなんとかなるっしょ~って思ってるし」

P「なら、いいんだが……」

愛依「うん、平気だから。いまんとこ、ね」

愛依「ヤバくなったらちゃんと言うから、いまは――」

愛依「――うちを信じて」

P「……!」

P「ああ、そうだよな。プロデューサーの俺がアイドルを信じてやれなくてどうするって話だよな」

P「よし、行ってこい!」

愛依「うん! もうちっと頑張ってくるわ!」

愛依「そだ。この子にばいばいって言おっと」

「……?」

愛依「うちさ、いま大会の練習中なんだよね」

愛依「お姉さんちょっとお外で頑張ってくるから」

愛依「明日、また会おーね」ナデナデ

「……ん」

愛依「……」ニコ



P「……」


P『勝って……ストレイライトは単なるアイドルユニットを超える価値があるってことを、愛依と証明したいんだ』


愛依『うちもプロデューサーと勝ちたい気持ちでいっぱいだってわかった』


P(愛依と勝ちたいって――愛依を選んだのは俺だ)

P(それなのに、愛依のことを心配してばかりの自分がいる)

P(もしかしたら、俺は……)

P(愛依を心配するふりをして、愛依を選んだ自分を心配してしまっているんじゃないのか?)

P(それは……駄目だ。愛依に失礼だし、不誠実だ)

P「はぁ……」

「……っ」クイクイ

P「お、どうしたんだ。時計なんか指差して……って、もういい時間じゃないか!」

P「そうだな。……帰ろうか」


332以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/18(金) 01:47:20.73GhO3OuwaO (2/3)

数日後。

愛依「あのさ、プロデューサー」

P「どうした?」

愛依「明日と明後日って、うち、オフだよね?」

P「えっと……そうだったと思うが、一応確認させてくれ」

P ポチポチ

P「……ああ。そうだな。明日明後日はオフだよ」

P「久しぶりの休みだし好きなようにしていい……と言いたいところだが」

P「2日間のうちどちらか一方は必ず休息に当ててくれ」

P「頑張ることと無理をすることは違うからさ」

愛依「うん、わかってる」

愛依「明日はちゃんとウチで休むつもり~」

P「そうか……うん、それなら、明後日は愛依の好きなことをする日にしよう」

愛依「その……さ、明後日なんだけど」

P「?」

P「……あ、3人で出かけるって話か」

P「この前言ってたよな」

愛依「そう! それ」

愛依「友だちとどっか行っても楽しいと思うんだけどさ~」

愛依「なんていうか……うちはプロデューサーと……」

「……」

愛依「……それと、この子」

愛依「なんかさ、いまは3人一緒がいいんだよね」

P「愛依がそうしたいなら、そうしよう」

愛依「ほんと!? ありがと、プロデューサー」

P「良い息抜きになるといいな」

愛依「うん!」

P「どこに行こうか」

愛依「どこにしよ~」ナデナデ

「……ん」

「……」

「……」クイクイ

愛依「ん? どっか行きたいとこある?」

「……」

愛依「テレビ? あ、そっか……」

愛依「……海」

P「海に行きたいって言ってるのか?」

P「テレビを指差して……ああ、海が映ってるな」

P「海に行くってことで、いいか?」

「……」コクコク

P「ははっ、そうか」

P「じゃあ、3人で海に行こう」


333以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/18(金) 01:54:30.47GhO3OuwaO (3/3)

とりあえずここまで。


334以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/18(金) 04:25:23.857DGrgOdDO (1/1)

海行かば~


335以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/19(土) 17:30:37.17EIeQu2e90 (1/1)

意味深な少女が出てきたな


336以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/20(日) 02:00:33.304hhxkMEgO (1/8)

2日後。

~某海岸付近~

P「忘れ物はないか? 動き始めたらすぐには駐車場に戻れないから、ちゃんと確認してくれよ」

愛依「う、うちは大丈夫……」

P「?」

愛依「……あ、どう? 忘れ物、ない?」

「……」フルフル

愛依「っし。オッケーって感じ~」

P「わかった。じゃあ、行くか」ピッ

ガチャリ

愛依「……」

P「どうしたんだ?」

P「着いてからずっとソワソワしてるが」

愛依「え? いや、なんつーかさ」

愛依「こんなイイ天気で海に来れてもうココロん中でテンションMAX的な?」

P「ははっ、そうか」

P(嬉しそうだな、愛依)

P(今は厳しい時期だけど、ここに来て正解だったのかもな)

「……」

P(この子には感謝だな)

P「叫んできたらどうだ? あんまり人いないし」

P「海辺のほうに行って、思い切りやってくればいいんじゃないか」

愛依「……うん!」

愛依「ほら、行こ!」

「あ……」

P「なかなか強引なお姉さんだな」ハハッ

愛依「もー、何言ってんの」

愛依「プロデューサーも一緒に行くに決まってんじゃん!」グイッ

P「うぉっ!?」

愛依「あっはは……」タタタ

P(愛依……)

愛依「……っとと」キュッ

「……ん」

P「急ブレーキだ」

愛依「~~~~~~~っ」

愛依「海だーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

愛依「……はぁっ、ん~~サイコー!」

「……」ニコ

P「楽しそうな愛依を見て、この子も嬉しそうだぞ」

愛依「お! ホントじゃん! カワイイな~もう」ムギュ

「……」ムムム

愛依「プロデューサーたちもどう? 一緒に叫んでみない?」

P「えぇ、この子はともかく、俺はいい歳だしさ……」


337以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/20(日) 02:13:42.134hhxkMEgO (2/8)

愛依「え~? 疲れとかふっとんじゃうと思うんだけど」

P「……」

P(疲れ、ね……)

P「……やるか」

愛依「いいね~、ノリ気じゃん、プロデューサー」

愛依「じゃ、3人一緒にいっちゃう系?」

P「いいんじゃないか?」

P「どうだ?」

「……」

P「あ、はは……」

愛依「まあ、とりあえずやってみるってことで」

愛依「すぅ……」

愛依「せーの……」

P ゴクリ・・・

「……」

愛依「海だーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
P「ぅ、海だぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
「うみだー」

愛依「あっははは! プロデューサー、タイミングミスってんじゃん」

P「い、いいだろ別に……」

愛依「……」

愛依「……ねえ、今の、聞こえたカンジ?」ヒソヒソ

P「大声ではなかったが……確かに、うみだー、と」ヒソヒソ

愛依「鬼かわいくね?」ヒソヒソ

P「天使」ヒソヒソ

愛依 ナデナデ

P ナデナデ

「ん……」

愛依「よしよし」

P「ははっ」

愛依「……なんか、いいね。こういうの」

P「ああ、そうだな。愛依の言う通り、疲れが吹き飛んだようだよ」

愛依「うちが言いたいのは、その……」

P「?」

愛依「ううん。なんでもない!」

愛依「早速歩いてこ~」


338以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/20(日) 02:25:42.814hhxkMEgO (3/8)

P「水着とか持ってきてないけど、本当によかったのか?」

愛依「あー、うん。大丈夫」

愛依「まあ、友だちと来たら海入ってはしゃぐってのもアリなんだけど」

愛依「今日は、別にそういうんじゃないしね」

P「愛依がそういうならいいんだが……」

P「……あ、海入りたいとかあるか?」

P「たぶん、水着買おうと思えば買えるんだよな」

P「どうだ?」

「……」フルフル

P「そういう気分じゃない、って感じかな」

P「風邪を引かせてもいけないし、まあ海には入らずのんびり過ごすのがちょうどいいって気もするのは確かだな」

愛依「そーそー。とりあえず、さ」

愛依「あそこ入ってみない?」

P「あれは……雑貨屋か? 個人経営の、こじんまりとしたところだな」

P(愛依らしくないって言ったら怒られそうだから言わないけど)

P(というか、愛依らしくないかどうかなんて、わからないんだよな)

P(俺が愛依のすべてを知ってるわけじゃないんだから)

P(例えば、そう……極度のあがり症になった原因とか)

P(黒ギャルらしくない、っていう言い方のほうが正しいかもしれない)

P「落ち着いた雰囲気だし、今日のテーマにあってるんじゃないか」

P「よし、行こうか」

愛依「それでいいカンジ~?」

「……」コクッ

愛依「そんじゃ、決定ってことで」


339以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/20(日) 02:42:12.864hhxkMEgO (4/8)

~雑貨屋店内~

イラッシャイマセー

愛依「……」

P「……」

「……」

愛依「……」

P「……」

「……」

愛依「~~っ」

「……」

P「大丈夫か?」

愛依「だ、大丈夫だって!」

P(落ち着いた雰囲気が逆に愛依を落ち着かなくさせてるみたいだな……)

P「とりあえず、せっかく入ったんだし、いろいろ見ていくとしよう」

愛依「そだね……」

「……」

P キョロキョロ

P(見渡してわかったけど、割とおしゃれでもあるな)

P(アンティークっぽいものもある……特に、どう考えても無くて困らないのに買いたくなるようなものがたくさん……)

「……」

P「何か気になるものとかあるか?」

「……」

P「はは……まあ、ゆっくり見ていこうな」

「……」

P(このガラス細工……綺麗だな)

P(部屋に置いとくだけでも違うかな?)

P(……買いたくなるな、これは)

P「うーん……」

P(そういえば、愛依は何を見ているんだろう)

P「愛依――」

愛依「うわぁぁっ!?」ビクッ

P「――っと、すまん。急に後ろから声かけちまって」

愛依「え、あ、いや……別に大丈夫」


340以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/20(日) 03:01:22.034hhxkMEgO (5/8)

P「愛依は何見てるのかなって思ってさ」

愛依「うちが何を見てるか……」

愛依「……」

P「?」

愛依「……これ」

P「これは……リングか」

P「結構たくさんあるな。それに、可愛らしいものから綺麗なものまで多種多様だ」

愛依「ね。みんないい感じっしょ」

愛依「これとか……」

P「お、……綺麗だな」

愛依「いや~、まあ、うちには似合わないかもしんないけどさ」

愛依「うち、こういうカンジだし」

P「そんなことないと思うぞ」

愛依「えぇ~……そうかなぁ~~」

P「とりあえず、着けてみてくれ」

愛依「……ま、マジ?」

P「え? ああ」

P「そりゃあ、似合わないかどうかなんてつけてみないとわかんないだろ」ハハッ

愛依「わ、笑いゴトじゃないんですけど!」

愛依「じゃあ……はい。ほら、つけたよ」

愛依「ど、どうかな……?」

P「おお……」

P(愛依が選んだのは、シンプルながらも輝いて見えるシルバーのリングだった)

P(褐色の肌にひっそりとたたずむそれは、夜が明けたときの太陽の光のように優しく輝いていて……)

P「うん。似合ってる」

愛依「ほ、ホント?」

P「嘘ついてどうするんだよ。本心だって」

P「綺麗だよ」

愛依「そ、そっか」

愛依 キュポッ

愛依「……うん、いまはこんなとこ、みたいな?」スッ

P「戻しちゃっていいのか? 気に入ったのなら買ってあげようとも思ったんだが……」

愛依「まあ、プロデューサーに褒めてもらえたし、それでいいかな~みたいな?」

P「そ、そうか……?」

P「まあ、愛依がそれでいいならいいんだ」

「……」

P「あ」

愛依「ご、ごめん! ほったらかしちゃって」

「……」フルフル

愛依「なんか欲しいもんとかあった?」

「……」

P「このくらいの歳の子だと、まだこういう店に欲しいものってないのかなぁ」


341以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/20(日) 03:16:09.804hhxkMEgO (6/8)

チリン

P「何の音だ?」

P「……というか、風?」

愛依「店員さんが空気入れ替えるので開けたみたい」

P「て、ことは……」

チリリン

P「そうか、風鈴……」

「……」

P「風情があっていいよな」

P「ちょっと見てみないか?」

「……」コクリ

愛依「いいんじゃん?」

P(夏の風物詩ではあるが……まあいつあっても不快じゃないよな)

P「風鈴もまたいろいろあるな」

チリン

「……」

P「……綺麗だなぁ」

「……」ジーッ

P(じっと見てるやつがあるみたいだな)

P「どれが好きなんだ?」

「……」ユビサシ

P「ん? あの……青いのか……?」

「……」コクッ

P「花の柄だな。……なんて花なんだろう」

P「調べてみるか……」ポチポチ

「……」

P「……お、これだな」

P「桔梗、か」

P「うん。いい色だ」

P「よし、これを買おう」

「……!」

P「気に入ってるみたいだしな。いらなくても、事務所に飾るし、いい買い物だろ?」

「……」

「……」ニコ

愛依「その風鈴買うん?」

P「ああ、この子が選んでくれたんだ」

愛依「そっか……。綺麗だね」

愛依「この子も嬉しそうだし、決まりっしょ」ナデナデ

「……ん」

P「だな。レジに持っていくか」


342以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/20(日) 03:33:08.294hhxkMEgO (7/8)

P「他に買うものあるか?」

愛依「ん~……ない!」

愛依「あ、飲み物適当に3つかな。レジの横にあるやつね」

P「お前も他に欲しいものとかないか?」

「……」コクリ

P「じゃあ……すみません、この風鈴と、あとここにある飲み物で……お茶3つください」チャリン

「はい、ありがとうございます」

「ん……」ノビー

愛依「あれ、レジの上が気になるカンジ?」

愛依「結構高いもんね~。ちょっと待ってて……っしょっと!」

「わ……」

P「おお……だっことは、結構力あるんだな。レッスンの成果か」

愛依「それもあるかもだけど~、まあ、うち下の子の面倒もみるしね」

「……」ニコ

愛依「ほら、嬉しそうじゃん?」

P「ははっ、確かにな」

「こう若くて仲の良いご夫婦がいらっしゃると、この店の雰囲気も明るくなるというものですよ」

愛依「ふ、夫婦!?」

「違うんですか? 随分若いとは思いましたが、まあいろいろ苦労もあったのかと邪推してしまいました」

「でも……そうですね、なにより幸せそうに見えたもんですから」

愛依「も、も~~! マジなに言っちゃってるの~~」

愛依「プロデューサーも何か言って――」

P「よっ」ムギュ

「……んぶ」

P「ははっ、こういうおもちゃあるよな」

「ん……」

愛依「――何してるん?」

P「え? あ、いや、この子が頬を膨らませてたから、むぎゅっとして空気を抜いてやる遊びをだな……」

愛依「……はぁ」

愛依「あははっ、なにそれウケる!」

愛依「うちもやりた~い」

「む……」

愛依「えいっ」ムギュ

「……んぶ」

愛依「かわいすぎか!」

「……」テレテレ

P「激しく同意」

「あの……やはり夫婦では……」

愛依「店員さんそれ以上はうちが死んじゃうから早く風鈴とお茶ちょうだい!」

「あ、はい。まいど……」

P「よし、じゃあ次行くか」

愛依「次どうしよっか~」

「……ふふ、お元気で」


343以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/20(日) 03:34:05.994hhxkMEgO (8/8)

とりあえずここまで。


344以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/20(日) 03:36:20.09J3EKZ33So (1/1)

おつ

桔梗:花言葉
「永遠の愛」、「変わらぬ愛」、「気品」、「誠実」

永遠ね……


345以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/21(月) 12:04:46.94s/L9AUWDO (1/1)

桔梗……しゃっほーを思い出した



あと、それ千雪さん?


346以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/24(木) 23:42:40.06CO4IFs/NO (1/1)

愛依「ん~~っ!」ノビー

P「ははっ。疲れたか? 愛依」

愛依「ううん、ぜんっぜん!」

愛依「レッスンで鍛えられてるかんね」

P「それは頼もしいな」

愛依「ま、こうやって誰かと出かけんのって久々だから、レッスンとかお仕事とは違う疲れ方? だけど」

愛依「なんていうか……こう、思い切り楽しんだーって、そんなカンジだから」

愛依「全然イイんだよね」

愛依「最初に買い物して、それから水族館行って、ちょっと歩いてご飯食べてさー」

P「3人でいろいろ見て回ったよな」

愛依「そーそー。その……さ」

P「?」

愛依「……っ、ほ、ほら」

愛依「うちらって、周りから見たら家族――に見えんのかなって」ゴニョゴニョ

愛依「うちがこの子のママで、プロデューサーがパパで……」ゴニョゴニョ

「……」

P「家族、か」

愛依「ちょっ……! 聞こえてたん!?」

P「え? あ、ああ……最初のほうだけ」

愛依「~~~~~っ! まずった……」

P「何かまずいことでもあるのか?」

愛依「う、うちは別に嫌じゃないよ!?」

愛依「……うん。全然いやじゃない。むしろ、嬉しい、かも」

愛依「っ……」カァァッ

P「……そうだな。家族に見えるかもな」

愛依「!」

「……」

P「お前もそう思うか?」

「……」コクッ

P「ははっ。じゃあ、俺たちは家族……ってことでもいいのかも――なんてな」

愛依「ぷ、プロデューサー……もう」

「……」

愛依「……う、海!」

P「え?」

愛依「海の方いこ! 夕焼けキレイだし……さ。ね?」

P「本当だ……もうそんな時間帯なんだな」

P「まあ、せっかく海に来たんだし、海辺ならこの格好でもどうにかなるよな」

愛依「ほらほら、夕日すぐ沈んじゃうかもだし! 早く行こ!!」アセアセ

P「おいおい、そんな急かすなよ」ハハッ

「……」ニコ


347以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/25(金) 00:25:02.61ab5SzmrzO (1/2)

P「ここから先は履いてるものを脱いだほうがいいぞ」

P「せっかくの砂浜だからな」

愛依「ん……っしょっと」

愛依「どう? 脱ぎ終わった?」

「ん……」コクリ

愛依「じゃ、足入れてみよーっと……」

「わ……」

愛依「砂あったか……!」

P「うん。太陽の熱なんだろうな」

P「……あ、待ってくれ2人とも」

P「何か落ちてる……足元、気をつけてな」

愛依「うん……。プロデューサー、これなんなん?」

P「……ああ」ヒョイ

P「ゴミ……じゃないな」

P「割れた瓶なら本当に危なかったけど、これは割れてないぞ」

P「コルクで栓がされてるし、中身があるみたいだ……」フキフキ

P「あ、これ……ボトルメールだ」

愛依「ぼとる……めーる?」

P「瓶の中に手紙を入れて海とか川に流すやつだよ」

P「いつか、どこかの誰かが拾って自分のメッセージを受け取ってくれるんじゃないかと、そうやって思いを馳せるんだ」

愛依「ふーん……なんか、いいね、そういうの」

P「ははっ、愛依もそう思うか?」

愛依「うん、うちにはムズカシイことはわかんないけど」

愛依「ステキ……ってやつ? って思った」

P「そうだな。ステキだ」

「……」

愛依「手紙にはなんて書いてあるんだろーね」

P「せっかく拾ったわけだし……開けても、いいんだよな」

P「素手でいけるか?」

P「っと、ふんっ……!!」

キュポ

P「……あ、開いた!」

愛依「おおっ! やるじゃん~」

P「中の手紙は……」フリフリ

ハラリ・・・

P「……お、出てきたな。どれどれ――」ソッ

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OS Version 2.8.3.2018424
[FILE : EMERGENCY]

>__________

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P「――っ!?!?!?!?!?」バチィッ

愛依「ぷ、プロデューサー!?」

P「っ……てぇっ、ああぁっ……」フラフラ


348以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/25(金) 00:41:20.29ab5SzmrzO (2/2)

愛依「大丈夫!? なんか急に痛がってたけど……」

P「あ、頭が……くっ……」ズキズキ

愛依「立てないカンジ?」

P「少し、横になれれば……」

愛依「じゃ、じゃあ……うちの膝かしたげるからさ」

愛依「これ枕にして、横になっといて」

P「すまない……」

P「誰が見てるかもわからないから、もうちょっと変装しておいてくれ……」

愛依「わ、わかった。たしかカバンにグラサンとでっかい帽子が……」ガサゴソ

「……」

P「うう……」

P「……」


30分後。

P「……ん」パチッ

愛依「あ、プロデューサー……」

愛依「目、覚めた?」

P「あ、ああ……心配させてすまなかった」

愛依「いいっていいって。そりゃ、いきなり頭痛がるからびっくりはしたけどさ~」

P「ここって……さっきいたところよりちょっと離れてるよな」

愛依「ほら、念には念をってヤツ? ここまでくれば、意外と周りから見えなそうだったし」

P「俺、重くなかったか?」

愛依「まあ、引きずったし!」

P「……」

P「あの子は?」

愛依「遊んでるよ。砂浜んとこでね」

愛依「もう大丈夫そうなら一緒に行く?」

P「ああ、そうしよう」


「……」ガサガサ

P「ははっ、どうした、砂の中の探し物か?」

「……」フルフル

P「砂浜にはいろんなもんがあるからな」

P「流木とかあれば落書きして遊べそうなもんだけど……ないな」

P「タコノマクラとか、ビーチグラスとか、……うーん、どうだろう。ないかな」

P「……って、そうだ! さっきのボトルメールだけど」

愛依「ああ、これ?」つボトル

P「そ、そうだ」

愛依「なんかさ~、プロデューサーがあんなカンジになっちゃうくらいだからどんな手紙なんだろって見てみたんだけど……」

愛依「なんも書いてないんだよね~」ペラッ

P「本当だ……」

P「なんだったんだろうな。それ」

愛依「うーん、うちにもわかんない」

愛依「ま、せっかく拾ったワケだし、これも何かの縁? ってことで。とりあえずうちが持っとくよ」


349以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/25(金) 02:00:58.640TvwkGhIO (1/3)

「……」スック

P「もういいのか?」

「……」コクッ

P「そうか」

愛依「そだ。3人で浜辺歩いてかない?」

P「ははっ、それはいいな」

愛依「その……手、つないでさ」

愛依「プロデューサー……覚えてる?」

愛依「前にうちとショッピングモールで買い物したとき」

愛依「パパとママと、それから子どもの3人で……」

P「ああ――」


イッセーノセー
キャッキャッ

P『なんか、さ』

P『俺たちは荷物だけど、持ち方はなんとなく似てるよな』

愛依『っ! ちょ、ちょっとなに言ってんの……もう』


P(子どもが両親の間にいて、片手を父親、もう片方の手を母親に握られて、タイミングよく両親にひっぱられてブランコ遊びをしている)

P(そんな、よくある日常の中の微笑ましい光景を、俺と愛依はあの時に見たんだ)

P「――覚えてる」

P「ほら、手出してくれ」

「……?」

P「こっちを俺が持つから、反対は愛依に持ってもらうんだ」

「……」

愛依「あんとき見たのと、おんなじ……だね」

P「そう……だな」

愛依「……」

P「と、とりあえず歩かないか?」

愛依「そっ、そだね……」

P「よし、じゃああれやるか!」

愛依「あはは、うん!」

「……?」キョトン

P「いくぞ……」

P/愛依「いっせーの……」

P/愛依「……せーっ!」グイッ

「わー……」

「……」ポスッ

P「いい感じにブランコできたと思うんだけど、どうだ?」

「……ん」ニコ

P「喜んでくれたみたいだな」

愛依「ほんとカワイイんだから~もうヤバすぎ!」ナデナデ

「……」



350以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/25(金) 02:31:23.500TvwkGhIO (2/3)

P「……あ。おおっ」

愛依「どしたん?」

P「いや、ほら」

P「夕日、やっぱり綺麗だな……って」

愛依「うん。すっごく……ね」

「……」

愛依「……プロデューサー」

P「ん? どうしたんだ、愛依」

愛依「うち、……いま、しあわせ、なのかも」

愛依「きょうだいとか友だちと遊びに行ったり、アイドルでレッスンとかお仕事したり……そういうのとは違って」

愛依「あ~~、なんかさ、うまくは言えないんだけど」

愛依「いまみたいな時間がもっと続いたらいいのにな~って」

愛依「マジでそう思う」

P「愛依……」

愛依「夕日がさ、もう……沈んじゃうじゃん?」

愛依「そしたらさ~、このしあわせなのも終わっちゃうみたいに思えて……」

愛依「グスッ……あれ、ヤバ。ちょっと、これ、あはは……」

「……?」サスサス

愛依「ご、ごめんね! お姉さん別に大丈夫だからさ! 心配しないで」

「……」サスサス

愛依「なんだろね、これ……」

愛依「……うちにとって、今日がめっちゃ特別でさ。それが終わっちゃうのは、いやっていうか」

P「終わりじゃないよ」

愛依「え?」

P「終わりじゃないさ。また、こうして3人で海に来よう」

愛依「ほ、ホント?」

P「ああ。……な?」

「……」コクリ

P「俺とこの子は、また来る気だけど、愛依はそうじゃなかったか?」

愛依「……あはは」

愛依「そんなわけないし! うちだって、また来たいに決まってんじゃん」

愛依「夕日が沈んだら終わっちゃうとか、んなわけないのにね~」

愛依「うちってばちょいイタイ系かもだわ」

「……」ニコ

P「せっかくの“家族”なんだ。思い出を作っていこう」

P「3人だけの思い出だ」

愛依「そだね。いいかも、それ」

愛依「……あ、日沈みそーだし、写真撮ろ! 自撮りはうちがやるからさ」

P「よし、それじゃあ3人寄って……」

「……」

カシャ

愛依「……――さ、帰ろ!」

愛依「次どこいくか、いまから楽しみだわ!」


351以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/25(金) 02:31:59.080TvwkGhIO (3/3)

とりあえずここまで。


352以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/25(金) 06:49:17.54WctsQjlDO (1/1)

もしかしてこの子、noctchillの四人のうちの誰か?


353以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/25(金) 12:14:37.23+9U0CovKO (1/1)

おつおつ
ファイル日付、?なんだ……


354以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/27(日) 17:14:16.099wZBJhlNO (1/5)

約1週間後。

P(それから、時間の許す限り、3人で過ごすようになった)

P(厳しいレッスンで1日のほとんどを終えるような日であっても、愛依は3人で会うことを望んだ)

P(愛依がオフの日は、3人で出かけて……遊んだり飯を食ったり、いろんなことをした)

P(期間限定の“家族”は、愛依にとって、大会の予選を迎えるまでの心の拠り所になっているようだった)

P(うまく言葉で形容できないが、3人一緒のときの愛依は本当に幸せそうだったから)

P(きっと、これで良かったんだ――と思う)

P(ストレイライトの他の2人――冬優子とあさひにも事情は話し、理解を求めた)

P(あさひは愛依と過ごせないことに対して不満げで、一方の冬優子はそれを宥める――最初はそんな感じだったが)

P(2人とも、愛依のことを思って、愛依の意思を尊重してくれた)

P(…………)

P(……今日は、大会の第1回予選の前日だ)

P(そんな日が、この子との別れの日になるなんてな……)


~事務所~

愛依 チラチラッ

P(愛依……さっきからテレビに映る時計をしきりに確認しているな……)

「……」

愛依「……あはは」

愛依「なんか、さ……ほんと、マジ、……あっという間すぎでしょ」

愛依「っ……」グッ

「……」

P「……」

愛依「あー、もう! うちってば涙腺弱すぎなんですけど……!」

愛依「あははっ、まいったなー……」

「……」

愛依「ね、2人とも」

P「!」

「……ん」

P「どう、したんだ」

愛依「ソファー……うちが座ってるほうに来てよ」

愛依「3人並んで座ろ、ね?」

P「……ああ」

P「ほら、愛依のところに行こう」

「……」テテテッ

「……」ボフッ

P「よいしょ……っと」ギシッ

P(俺と愛依が両端に座り、3人で身体を寄せ合うようにして座る)

愛依 ナデナデ

「……?」ポカン

愛依「っ……グスッ」ナデナデ

P「……」ナデナデ

「……ん」


355以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/27(日) 17:43:14.899wZBJhlNO (2/5)

P「……今日で今生の別れになるわけじゃないんだ」

P「また、こうして……この1週間くらいを一緒に過ごしたみたいに、3人で……」

愛依「うん……そう、だね。うちってば、レッスンのしすぎでおかしくなっちゃったのかも」

「……」

愛依「一週間、か~。なんか、うまく言えないんだけど、もっと長くて、もっと短かった――」

愛依「――そんな感じだったわ」

P「ああ、そうだな」

愛依「……プロデューサー」

P「なんだ?」

愛依「明日から、……大会じゃん?」

P「……うん」

愛依「正直さー、いまでもプロデューサーがうちを選んでくれたのが夢なんじゃねって、そう思うときあんだよね」

愛依「大会に出るのがいやとかじゃないよ? それでも、あさひちゃんみたいな才能も、冬優子ちゃんみたいなストイックさ? ……も」

愛依「そうじゃないうちを、なんでプロデューサーは選んでくれたのかなーって」

愛依「ま、いまでもわかんないんだけどさ! あはは」

P「愛依、それは……」

愛依「いーのいーの! 言わないで」

愛依「自分でもなにカッコつけちゃってんのーって思うけど、この答えはうちが自分で見つけたいから」

愛依「うちが自分で出した答えとして、ちゃんと納得できるようなのを……」

愛依「で、その間にうちができることは何なのかなって思ってね」

愛依「レッスンとか自主練は当たり前だけど、それ以外の何か」

愛依「……」ナデナデ

「……?」

愛依「プロデューサー、冬優子ちゃんにあさひちゃん、ファンのみんな……」

愛依「それだけじゃなくて、うちはこの子のためにも頑張りたいって思ったんだよね」

愛依「あと、その……言っててハズいけど、この“家族”のために、さ……」

愛依「ほら、この子ってあんまり表情に出ないじゃん? ときどき、リアクションはあるけど」

愛依「うちが大会に出て活躍できれば……この子に感動ってやつを教えてあげられるかもしれない」

愛依「他にも、いろんな感情? ……を教えてあげられるかもしれない」

愛依「そんでさ、次に3人で会うときにはもっと笑顔の絶えない3人になれるんじゃないかって」

愛依「だから、あんましうまく言えなかったけど……よーするに、だから大会がんばるしかないっしょ! ってこと」

P「ああ、この子もきっと、愛依が活躍するところを見てくれるさ」

P「このお姉さんな、明日からアイドルの大会に出て頑張るんだ。応援してやってくれないか」

P「……いや、違うな。一緒に応援しよう。たとえその場に一緒にいなくても、心は一つってやつだ」

「……」コクリ

愛依「……サンキュー、2人とも」

愛依「うん。よくわかんないけど頑張れる気してきた!」

ガチャ

P「お、はづきさんかな?」

愛依「!」

P「そっか、思ったよりも早かったな」

愛依「そう……だね」

「……」


356以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/27(日) 18:33:04.669wZBJhlNO (3/5)

はづき「プロデューサーさn……っと、3人一緒だったんですね~」

P「ええ、まあ……」

愛依「……」

「……」

はづき「……ふふっ、なんだか私、悪者ですね~」

はづき「あるいは~……、お邪魔虫?」

はづき「その子のお迎えに来ました。あとは私が責任を持って送りますよ~」

愛依「……っ」

P「愛依……」

はづき「そ、そんな顔しないでください……。私も仲睦まじい3人を引き離すようで辛いんですから~」

「……」ツンツン

愛依「……ん? どしたん? 耳? ……ああ、耳打ちね」

愛依「っしょっと。はい、どーぞ」

「―――」ヒソヒソ

愛依「……そっか。うん」

愛依「ありがとね」

愛依「グスッ……また、ね」

愛依「それさ、プロデューサーにも教えてあげて」

P「お、俺がどうかしたのか?」

愛依「いいからいいから」

P「あ、ああ……」

P「ほら、しゃがんだぞ」

「―――」ヒソヒソ

P「……」

P「そうか」

P「ははっ……ありがとな」ナデナデ

「……ん」

P(その時、俺は初めてこの子の名前を知った)

P(もっと言えば、初めてこの子から言葉というものを受け取ったのかもしれない)

P(自分の名前と、……それから自分の思い)

P(耳打ちでそれを伝えてくれた)

愛依「っしゃ。悲しい顔してんのもアレだし、笑ってよーよ」

愛依「ね? プロデューサー」

P「ああ。そうだな」

はづき「もう……大丈夫そうですかね~」

はづき「では、行きましょうか」

「……」

愛依「うち、頑張るから! 1人でも独りじゃないから!!」

愛依「次会うときはめっっっっっちゃすごいアイドルになってっから! 待ってて!!」

「……っ」クルッ

愛依 ニコ

P「またな――」

――■■■。


357以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/27(日) 18:54:59.339wZBJhlNO (4/5)

翌日。

~大会 予選会場~

P(最初の予選の日がやってきた)

P(参加登録しているアイドルは実におよそ1500名だという)

P(この大会は3回の予選と1回の決勝で構成されている)

P(まず、1回目の予選で参加登録したアイドルたちがランダムに4つのグループに振り分けられる)

P(各グループにおける上位20%が2回目の予選に進むことができる)

P(2回目の予選では、残ったアイドルたちが再びランダムに4つのグループに振る分けられ、やはり各グループの上位20%が次に進むことになる)

P(3回目も同様だ)

P(最後の決勝では、それまでの審査員に加えて大御所をゲストに迎えたメンバーによって優勝と準優勝が決定される)

P「……」

P(そろそろ、だな)

P「……お」

P(1回目の予選のグループ分けの番号が発表になった)

P「グループ3だってさ、愛依」

愛依「へー……。っていっても、知ってる人とかいんのかな~」

P「さ、さぁ……」

愛依「ま、イメトレとか、練習以外することないし、もう控え室いこっかな」

P「まだ、スタンバイまでは時間あるぞ?」

愛依「……うん。でもいい」

愛依「うちは大丈夫。独りじゃないからね」

P「ははっ、そうだな」

愛依「……」

愛依「プロデューサー、行ってくる……」

P(モードが切り替わったな、愛依)

P「ああ、行ってこい」

愛依「……見てて」

愛依「精いっぱい、やってくるから」

愛依「守りたいものを守れるように……――」

愛依「――絶対、後悔しないように」




358以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/27(日) 18:57:22.179wZBJhlNO (5/5)

一旦ここまで。


359以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/27(日) 19:07:54.12wzhfx1Mb0 (1/1)

たんおつっ!

和泉愛依のこと調べてみたら……
いかにも気性の強そうな顔してた(^^)


360以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/27(日) 19:15:16.03lm85JvFDo (1/1)

おつお


361以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/28(月) 00:18:01.05Qq3bwMUBO (1/6)

~グループ3 控え室(大部屋2)~

愛依「……」

愛依(ミステリアスでクール……ってことになってっから、黙ってればいいってのは楽だけど)

愛依(空気感ちょーヤバい。なんていうか、重い)

愛依(うち……すごいとこに来ちゃったんだね~)

愛依(改めて実感したわ)

愛依「?」

ヒグッ、グスッ、ウウッ

愛依「……!」

愛依(そうだよね……。泣く子もいるよね~……)

愛依(たぶん、泣きたい子は他にもたくさんいる……)

愛依(うちは――どうなんだろ)

愛依(泣きたい……のかな?)


P『……そうだな。家族に見えるかもな』

愛依『!』

『……』

P『お前もそう思うか?』

『……』コクッ

P『ははっ。じゃあ、俺たちは家族……ってことでもいいのかも――なんてな』

愛依『ぷ、プロデューサー……もう』


愛依『うち、頑張るから! 1人でも独りじゃないから!!』

愛依『次会うときはめっっっっっちゃすごいアイドルになってっから! 待ってて!!』

『……っ』クルッ

愛依 ニコ


愛依(ううん。うちは大丈夫)

愛依(泣かなくても――大丈夫)

愛依(たぶん、笑えるから)

愛依(うちには、笑っていたい理由があるから)

愛依(だから、泣かない)


362以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/28(月) 00:35:55.25Qq3bwMUBO (2/6)

数十分後。

愛依(しばらく楽にしてたけど、時間が経つと逆に落ち着かなくなってくるわ、うち)

愛依(何気なく控え室を出てうろうろしてるけど……)

愛依(ま、特に目的があるわけじゃないんだよね~)

オ、オイ。ソロソロヒカエシツイッタホウガイインジャナイカ?

イイジャン。

ナニガイインダヨ。

ダイジョウブ。ワタシナラ。

愛依(……あれ、この声って)

愛依 ススス

愛依「……」サッ

愛依(なんか、陰から見てるやべーやつみたいになっちゃった……)

愛依(でも、やっぱり聞こえたのって――)

P「まあ、久しぶりに会えたっていうのはあるけどさ……別の事務所だし、透には他にやることだってあるだろ?」

透「えー……。大丈夫って、言ってるのに」

P「そうは言ってもな……」

愛依(――プロデューサーの声)

愛依(それと、一緒にいるのは……誰?)

愛依(おんなじ大会でてるコなのかな)

愛依(……めっちゃキレイな顔)

P「しょうがないな。あと5分な」

透「10分」

P「5分」

透「……わたs――僕と話したくない?」

P「そうは言ってない。ただ、透は他所のアイドルだし、俺が話すことで邪魔になっちゃまずいだろ」

P「余計なことしたってそっちの事務所から思われたくないしさ」

透「あー……うん。わかった」

透「……」

P「……10分な」

透「やった」

P「そういえば……今でも自分のこと僕って言ってるのか?」

透「ううん。そうでもない」

P「そうでもない……?」

透「うん。普段は、私。アイドルのときも、私。でも、今は、そのどっちでもないから」

P「? そ、そうか……」

愛依(なんか……めっちゃ仲良さそうだね)

愛依「……」

愛依(なんだろ、これ)

愛依(変な気分だわ~……)

愛依「……部屋戻ろ」

愛依 スタスタ


363以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/28(月) 01:03:08.47Qq3bwMUBO (3/6)

~グループ3 控え室(大部屋2)~

愛依(イメトレもしたし、軽く通しで動いてみたし……)

愛依(いよいよやることがね~~。ま、あとは本番、ってカンジなのかな)

「……あのー」

愛依「……は」

愛依「!」

「隣、座ってもいい?」

愛依「う、うん……」

「ありがと」

愛依(話しかけてきたの――隣座ってきたの、さっきの子じゃん……)

透「よいっしょっと」

透「……」

愛依「……」

透「……」

愛依「……」

透「283プロの、和泉愛依さん」

愛依(って向こうから話しかけてきたー!)

愛依「そう……だけど」

愛依「あたしに何か用?」

愛依(キャラ的には正解な反応かもだけど、う~ん)

愛依(フツーに無愛想だよね)

透「いや、なんていうか」

透「“あのプロデューサー”のアイドル……なんだなーって」

愛依「プロデューサー……?」

愛依(さっき覗いてたから、知り合いなのは知ってるけど……)

透「幼馴染なんだ」

透「あなたのプロデューサーと、ね」

愛依「そう、なんだ」

愛依(幼馴染か~……そーゆーね)

愛依(……)

透「あー……なんていうかさ」

透「あなたから見たプロデューサーって、どんな人?」

愛依「え……」

愛依「……かっこいい人」

透「……」

愛依「顔とか、そういうんじゃなくて」

愛依「大事に守ってくれて、困ったときには助けてくれる」

愛依「そんな人……かな」

透「……そっか」

愛依「うん」


364以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/28(月) 01:16:07.75Qq3bwMUBO (4/6)

愛依「幼馴染って……」

透「あ、うん」

愛依「……よく一緒に遊んでた?」

透「まあ……そう、かな。もう、だいぶ前になっちゃったけど」

透「あの人は、まだ中高生だった」

透「公園で一緒に……ジャングルジムで遊んでた」

愛依(中高生男子が小学生以下の女子とジャングルジムで遊ぶのって……)

愛依(う~ん、この子が……昔は活発な女の子だった系?)

透「それから、しばらく疎遠になって、いろいろあって私はアイドルになって……」

透「……それで、偶然、仕事の現場にあの人がいるのを見つけた」

透「他のところで、プロデューサーやってた」

愛依「……」

透「なんかね、評判良いみたい」

透「私のいるプロダクションにも噂が届くくらいに」

愛依「……そう」

透「それで、私のとこの偉い人が引き抜きたいって言ってたから」

透「もしそうなったら、私のプロデューサーになって欲しいなって」

透「そう思った」

愛依「……え??」

愛依(引き抜くって……プロデューサーいなくなっちゃうん?)

愛依(そ、そんなの、うちは……)

愛依 ドッドッドッ

愛依(ヤバ……本番前なのに、こんなとこでストレスとかシャレにならないっしょ……!)

愛依「スゥ……ハァッ……」

愛依(とりま深呼吸……っと)

透「別に、Pを取っちゃおうってわけじゃなくて」

透「Pから来てくれたら、嬉しいなって」

透「だから、気にしないで、いいと思う……」

愛依「……は?」

愛依(すぐにダメな態度だってわかった)

愛依(でも……言わずにはいられなくて)

愛依「プロデューサーは、出て行かないから」

透「そう?」

愛依「絶対」

愛依「うch……あたしとプロデューサーで守ってるものがあるから」

愛依「引き抜きなんてさせない」

透「ふーん……」

愛依「あたしの信じるプロデューサーは、自分から守るものを投げ出したりしない」

愛依「プロデューサーから行くなんて、あり得ない」

愛依「残念だけど、……諦めて」

透「そこまで言うんだ」

愛依「……言う」

透「……」


365以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/28(月) 01:34:21.93Qq3bwMUBO (5/6)

透「っと」スック

透「そろそろ本番だし、準備準備……」

愛依「……」

透「……あー」クルッ

透「なんていうか、さ」

透「ガラじゃないから……こういうの、言わないんだけど」

透「ふふっ……でも、言うわ」

愛依「?」

透「Pは――」

――私を選ぶと思う。

愛依「……!」

透 タッタッタッ

愛依(プロデューサーがうちを選ばないなんてこと……)

愛依「っ!」ダッ

愛依(ずっと、あんまし考えないでいた)

愛依(プロデューサーのコト――どう思ってるか、って)

愛依(なんとなく~でもいいと思ってた。けど……)

透『Pは――私を選ぶと思う』

愛依(あんなこと言われて、もうじっとしてらんなくて)

愛依(プロデューサーに、会いたくて)

愛依「はぁっ……はぁっ……」タッタッタッタッ

愛依(まだ、あそこにいるかな……)

P ポチポチ

愛依(……いた!)

愛依「プロデューサー!」ドンッ

P「うおあぁっ!?!? め、愛依!?」

P「どうしたんだ? あと少しで本番だろ?」

P「……何か、あったのか?」

愛依「いや、ってゆーか」

愛依「ひとこと、言いたくて……」

P「?」

愛依「耳貸して。耳打ち、することあるから」

P「お、おう……?」

P「……よし、こい」

愛依「すぅ――」

――だいすき。愛してる。だから、ずっと一緒にいて。

P「って、え!?」

愛依「あははっ。な~んだ、カンタンに言えたじゃん!」

P「???????」

愛依「ま、そーゆーことだからさ! うち……頑張ってくる!!」


――――第1回予選 グループ3 通過者一覧――――

………………… 283プロ和泉愛依 …………………
___プロ トオル 


366以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/28(月) 01:35:53.19Qq3bwMUBO (6/6)

>>365 訂正:

――――第1回予選 グループ3 通過者一覧――――

………………… 283プロ和泉愛依 …………………
___プロ トオル 


↓訂正

――――第1回予選 グループ3 通過者一覧――――

………………… 283プロ和泉愛依 …………………
___プロ 浅倉透



とりあえずここまで。 


367以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/28(月) 02:52:03.06+iKsASOUo (1/1)

おつおつ
こっちでくるか!


368以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2020/12/28(月) 16:24:21.45z6zsV6kDO (1/1)

それより少女の名前が気になる


369以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/06(水) 01:41:05.83N4Njl6QdO (1/1)

>>1です。

なかなか時間が取れないため、更新はもうしばらくお待ちください。

気づけば年が明け、Straylight編もはじまって4ヶ月が経ちました。noctchill編よりも分量が多いのは“仕様”です(つまり、予定通りです)。

読み続けてくれる方はこれからもよろしくです。


370以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/06(水) 08:19:06.83nzKy51O8o (1/1)

あけおめです
今年もよろしくお願いします


371以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/19(火) 21:24:38.52097O9LmFO (1/3)

2週間後。

~事務所~

ガチャ

愛依「ただいま~」

P「おかえり、愛依」

愛依「ハァ~~……っしょっと」ボフッ

P「……」

P(無理……してるのかもな)

P(1回目の予選を通過してから、愛依からは焦りや空回りといったものを感じる)

P(余裕が無いんだ。たぶん)

P「今日は社長も、はづきさんも、他のアイドルもいないから――」

P「――そのままソファーで好きなだけくつろいでていいぞ」

愛依「マジ~? うーん……」

愛依「そんじゃ、ま、お言葉に甘えて~」ゴロ

P「はは……」

P(頑張ろうと、頑張らなければいけないと、そう思ってる相手に「休め」とか「頑張るな」って言うのは酷だよな)

P(言いたい気持ちのある俺がいる)

P(愛依は……もっと明るくて、言葉数も多くて、周りに人がいるのが当たり前みたいな子だったんだ)

P(今は、そのどれもがあてはまらない)

P(俺にできることは……)

愛依「……ん? どしたん?」

P「えっ?」

愛依「いや、なんかうちのことずっと見てるからさ」

愛依「なんかついてる?」

P「そ、そんなことないぞ」

愛依「???」

愛依「……ま、いーわ。ちょっと寝るね」

P「あ、ああ……」

P(よし、そろそろ……)


愛依「zzzZZZ」

ツンツン

愛依「……ぅーん」

ユサユサ

愛依「ん~~? もう、なあに、プロデューs……」

「……ん」

愛依「……」

「……」

愛依 パチクリ

「……」

愛依「え、……えええええ!?!?」

「……」ニコ


372以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/19(火) 21:54:07.25097O9LmFO (2/3)

愛依「ちょ、え? え?? な、なんでっ!?」

愛依「いや、会えてちょー嬉しいけど!」

P「ははっ、よかった」

P「喜んでもらえたかな?」ナデナデ

「……ん」

愛依「プロデューサー……?」

P「この子に大会での様子を見てもらったんだよ」

P「それで、今の愛依がどんな感じかって話したら……」

「……」フンス

P「応援したいみたいでさ」

愛依「そ、そっか……」

P「その、な……」

P「あくまで俺からみた感じ……ではあるんだが」

P「愛依に余裕が無いように見えてさ」

愛依「……!」

P「最初の予選を突破してからというものの……愛依のことが心配だったんだ」

P「もちろん、次の予選も通過できるように頑張ってるのはわかる」

P「レッスンや自主練に費やす時間だってもっと長くなってるし」

P「なにより、前より言葉数が少ない気がしてさ」

愛依「あはは……なんだ、全部わかってんだね、プロデューサーは」

愛依「って、いまさらか!」

愛依「うん、そうだね……」

愛依「ヨユー、なかったわ」

P「愛依……」

愛依「あ、ずっと立ってないでうちの膝おいで?」

P「そうか、じゃあ遠慮なく……」

愛依「いやそっちじゃないから!」

愛依「も~~、この子に言ったんだってば」

P「冗談だよ」

「……」チョコン

愛依 ナデナデ

「……ん」

愛依「あ~~~……」ナデナデ

愛依「なんか、落ち着く……」ギュッ

P「……」

愛依「……って、これじゃうちがいままで落ち着いてなかったみたいだよね」

愛依「ま、そうなんだけどさ」


373以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/19(火) 22:53:14.57097O9LmFO (3/3)

P「言いたくなかったら言わなくてもいいんだが」

P「大会で……何かあったのか?」

愛依「!」

P「愛依が余裕なさそうにしてるのはあの予選の後からだし、次の予選までは今のところレッスンと自主練だけだからさ」

P「もちろん、プライベートなこととか、俺が無関係のことだったら、無理にとは言わないんだ」

P「俺が関係してることなら……本音を言えば教えて欲しい気持ちもあるが、でも強制はしない」

P「俺はただ、愛依の力になりたいだけだ」

愛依「あはは……もう、プロデューサーってば、いつのまにそんなイケメンになったん?」

P「ちゃ、茶化すなよ」

愛依「……」

愛依「……幼馴染」

P「? 幼馴染?」

愛依「大会んときにさ、プロデューサーと2人で話してるのが見えて」

P「あ……」

P(透のことか)

P(あの場に愛依もいたのだろうか? 全く気づかなかったが)

愛依「その後に控え室の大部屋で向こうから話しかけられて、少し話したんだよね」

P「その幼馴染っていうのは、浅倉透ってやつだったか?」

愛依「あさくら……? あ、でも、プロデューサーが透って呼んでるのは聞こえた」

P「そっか……。うん、そいつは俺の幼馴染で間違いないよ」

愛依「めっちゃ綺麗な人だよね」

P「あ、ああ……。まあ顔は良いな。綺麗だと思うよ」

愛依「……」ジーッ

P「どうした……?」

愛依「……別になんでもないけど」

愛依「あれ、何の話だっけ」

P「透に話しかけられたっていう……」

愛依「そそ、それそれ」

愛依「もう、いきなり話しかけられてほんとびっくりっていうか~」

愛依「うちのこと知ってるんだ~~って」

愛依「けどね~、なんか聞いてるとさ、うちに話しかけたかったっていうより、プロデューサーのことを聞きたかったっぽいんだよね」

P「俺のことを……か?」

愛依「プロデューサーと幼馴染~~ってところから始まって」

愛依「どんな人とか聞かれたり……」

愛依「それに……」

P「それに?」

愛依「……っ」

愛依「透ちゃんの事務所、プロデューサーのこと欲しがってるんだって」

P「え……!?」

愛依「引き抜くとかなんとか、そんなこと言ってたし」

P「まてまて、初耳だぞ、俺は」

愛依「そ、そうなんだ」

愛依「とにかくさ~、それ聞いてなんか変な気分になっちゃって……。いつかプロデューサー辞めちゃうん? って思って」


374以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/20(水) 00:25:36.45VAksbVvnO (1/2)

P「そんな話があったのか……」

P「その、愛依はなんて言ったんだ?」

愛依「うちは……」


愛依『プロデューサーは、出て行かないから』

透『そう?』

愛依『絶対』

愛依『うch……あたしとプロデューサーで守ってるものがあるから』

愛依『引き抜きなんてさせない』

透『ふーん……』

愛依『あたしの信じるプロデューサーは、自分から守るものを投げ出したりしない』

愛依『プロデューサーから行くなんて、あり得ない』

愛依『残念だけど、……諦めて』


愛依「……諦めて~って、そう言ったよ」

愛依「うちとプロデューサーで守ってるものがあるからって」

P「そうか……」

愛依「初対面でいきなりプロデューサーの引き抜きの話してくるとか、ちょっとヤバすぎでしょ」

愛依「プロデューサーから行くなんてあり得ないから諦めてって言っちゃった」ケラケラ

P「ははっ、アイドルのときのキャラの愛依にそれ言われたら、あいつもびびってるかもな」

愛依「え~? そうかな~~」


透『ふふっ……でも、言うわ』

愛依『?』

透『Pは――』

――私を選ぶと思う。


愛依「――……」

P「愛依?」

愛依「あ、ううん! なんでもない!」

P「今日はもうレッスンないよな?」

愛依「まあね~。大会も近いし自主r……」

愛依「……は、うん、今日はいいや!」

愛依「もういい時間だしさ、3人でゴハンいこーよ、プロデューサー」

P「ああ。俺もそれを提案しようと思ってたんだ」

P「お前もそれでいいか?」

「……」コクッ

愛依「やったね。じゃあ決まりってことで」

愛依「そういや、いつまでこっちにいるん?」

P「今回はいきなりだから1泊2日なんだ」

愛依「そっか~~……じゃあ、またしばらく、だね~……」

P「今度は愛依の家に泊まるように向こうの親御さんにも話してみるよ」

愛依「! それめっちゃいい!」

愛依「いまからちょー楽しみだわ!」

P(笑顔も言葉数も戻ってきたな、愛依)


375以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/20(水) 00:26:26.45VAksbVvnO (2/2)

とりあえずここまで。


376以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/20(水) 00:30:55.40Ax3KN1/do (1/1)

おつですー



377以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/20(水) 05:46:01.4765RTrGBDO (1/1)

最後まで話さなかったのは、吉と出るか凶と出るか


378以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/24(日) 01:06:13.51HVH/ZSMFO (1/5)

1週間後。

~事務所~

P カタカタ

P カタッ

P「……ふぅ」

P(もう1週間経つのか。早いな)

P(あの子を愛依に会わせたのはやっぱり正解だったよな)

P(あれから、余裕のなさとか空回りしてる感じはだいぶなくなったし)

P「それにしても……」

P(まさか、透が、な……)

P(なんで、俺のヘッドハンティングの話を愛依にしたんだろう)

P(愛依を動揺させるため? でも、そうだったとして、それは何のために……)

P「……」

P(まあ、今それを考えても仕方ないか)

P(俺は愛依のプロデューサーであり続ければいいんだ)

P(俺がしっかりしていればいい……よな)

ピンポーン

P「あ、はーい……」

P(この時間に来客……? 誰だろう)

ピッ

P「はい。何かご用でしょうか」

「……用、か。どうだろう」

P「?」

「特にないかも」

P「あのー……どちら様でしょうか?」

「あ、そうだ。言ってなかった」

透「私……透だよ」

P「透か。いきなりどうしたんだ?」

透「なんていうか、まあ……会いに来た」

P「会いに来たってお前……ここうちのプロダクションの事務所なんだけど」

透「だめなら帰るよ。どうかな」

P「……まあ、せっかく来たんだ。今は俺一人だし、他の事務所からの客人ってことにしておくよ」

透「やった」

透「雛菜、いいってさ」

「やは~。やった~」

P「友だちも連れてきてるなんて聞いてないぞ……」

透「他の事務所からのお客さんってことなら、むしろ普通なんじゃない? こういうのも」

P「わかったよ……今開けてやるから」


379以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/24(日) 01:21:23.91HVH/ZSMFO (2/5)

P「はい、どうぞ……」コト

雛菜「やは~! ケーキだ~~」

雛菜「紅茶もある~」

P「来客、だからな」

透「あ、お構いなくー……」

雛菜「あー……むっ。……ん~~!」

雛菜「おいひ~」

P「連れは早速食ってるみたいだけど……」

透「ね。ウケる」

P「まあ、いいんだけどな。そのために出してるし」

P「透もいいんだぞ」

透「ふふっ、ありがと」

透「じゃあ、遠慮なく……」パク

透「……」

透「このお菓子、おいしいね。めっちゃ美味い味する」

P「ははっ、なんだそりゃ」

雛菜「あの~」グイッ

P「おっと……、どうしたんだ?」

雛菜 ジーッ

P「……?」

雛菜「……ううん。なんでもないです~」

P「そ、そうか?」

雛菜「あ、やっぱなんでもある~」

雛菜「雛菜、あのソファーでごろ~んってしたいな~~って思うんですけど……」

P「あ、ああ……軽く横になるくらいならいいよ」

雛菜「やは~、ありがとうございます~~」

雛菜「ごろ~ん♡」

雛菜「~~~~~!」

雛菜「雛菜このソファーすき~~」

P「透、今更だけどあの子は……」

透「雛菜」

透「市川の雛菜ちゃん」

透「ほら、自己紹介」

雛菜「やは~……、は~い」ゴロ・・・

雛菜「よいしょっと」

雛菜「市川雛菜、高校1年生です~~~」

雛菜「透先輩とおんなじ事務所なんだ~」

透「でもユニットは別」

雛菜「雛菜それやだ~~……。透先輩と一緒のユニットがいいのに~」

透「仲が良すぎるからって言われたね」

雛菜「それが理由~?」

透「たぶんね」


380以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/24(日) 01:57:30.93HVH/ZSMFO (3/5)

P「そうだ、透」

透「なに?」

P「今日はいきなりどうしたんだ?」

透「?」

透「どう、・・・・・・って?」

P「いや、何の用なのかってことだよ」

透「えー……」

透「用がないと来ちゃだめかな」

P「そんなことはない――って言いたいのは山々だけど、こっちも仕事中だしな。そもそも、ここは言うなれば仕事場だし」

透「冷たいね」

P「そう言うなって」

透「泣いちゃうかも」

P「嘘だろ?」

透「ふふっ、嘘だけどさ」

P「ったく……」

透「割と大事な話、……ある」

P「……というと?」

透「P」

P「?」

透「うちの事務所と契約して、私のプロデューサーになってよ」

P「QBか何かなのか、お前は……」

透「あれ、驚かないんだ」

P「愛依からその話されたって相談を受けたからな」

P「あんまりうちのアイドルにストレスを与えないでくれよ」

透「ごめんごめん」

透「その、さ。うちのプロダクションの……えっと、あのおじさん……いや、とにかく偉い人がね」

透「あのプロデューサーは是非うちに欲しい……とか言ってて」

透「だから、そういうこと」

P「そうか……」

透「突然言い出してごめん」

透「でも、私は――」

透「――この話を受けてくれたら嬉しい、かな」

P「……」

P「俺は――」

透「いまじゃなくていいんだ」

P「――……」

透「また、聞くから」

透「そのときに答えてくれればいいかなって」

透「むしろ、いまはPの答え……聞きたくない」

P「……そうか」


381以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/24(日) 02:40:08.91HVH/ZSMFO (4/5)

P「ちなみに、そちらは……」

透「あ、雛菜?」

雛菜「雛菜は付き添いだよ~~」

雛菜「でも、雛菜ここに来て良かったかも~! 透先輩の会いたい人がこんなステキなお兄さんだなんてね~~」

P「て、照れるな……」

透 ムスッ

雛菜「やは~……雛菜、お兄さんのこと結構好きかも~~」

P「よしてくれ……」


数十分後。

ガチャ

P「ん? 誰か帰ってきたか?」

タッダイマ-!

P「! ……愛依」

タタタタタ・・・

愛依「プロデューサー! ただいm……」

透「あ」

雛菜「?」

愛依「……っ」

透「こんにちは」

愛依「ど、どうも……」

透「……雛菜」

雛菜「ん~~?」

透「そろそろ帰ろう」

雛菜「うんっ」

愛依「……」

P(愛依……)

透「ケーキ、ごちそうさま。ありがと」

雛菜「ごちそうさまでした~」

P「ど、どういたしまして」

透「じゃ、また今度」

P「ああ。気をつけてな」

P「君も」

雛菜「は~い! お兄さん、またね~!」フリフリ

P「またな」

P(2人はそのまま荷物を持って帰っていく)

P(雛菜という名前の子が、愛依とすれ違う瞬間に何かを囁いたように見えたが――)

愛依「!?」ビクッ

P(――気のせい、だろうか?)


愛依(あん時の子……とその友だち。もう帰るみたいだけど)

愛依(あれ、一緒にいる子……うちのコト見てる?)

雛菜「あは~……――」

雛菜「――家族ごっこって楽しいですか~?」ボソッ


382以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/24(日) 02:40:43.24HVH/ZSMFO (5/5)

とりあえずここまで。


383以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/24(日) 02:49:09.35073F/7JMo (1/1)

おつ
ひなな~てめぇ~…!


384以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/24(日) 04:56:34.3867er8jYDO (1/1)

noctchillのダブル核地雷さんか……


385以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/25(月) 01:33:26.59ulRd3VHqO (1/7)

愛依『うちらって、周りから見たら家族――に見えんのかなって』

愛依『うちがこの子のママで、プロデューサーがパパで……』

『……』

P『家族、か』

P『……そうだな。家族に見えるかもな』

愛依『!』

『……』

P『お前もそう思うか?』

『……』コクッ

P『ははっ。じゃあ、俺たちは家族……ってことでもいいのかも――なんてな』


愛依「プロデューサー……」


「ふふっ、なにそれ」

愛依「!?」クルッ

「自分の都合……だよね」

愛依「な、なんなん……!?」

「私のほうが――僕のほうが、あの人を知ってる」

「あの人を……わかってるから」

愛依「何言って……」

「ショッピングモールで――」

愛依「?」

「――『親子3人で仲良しの人たちを見て……あの人たちはきっとしあわせなんだろうなって思った』、だっけ」

愛依「!」

「自分もそうなりたかったんだ? Pと」

愛依「だ、だから何だって言うわけ?」

「よそはよそ、うちはうち……でしょ」

「他人事じゃん」

「そもそもあなたは、Pの奥さんじゃない」

「前提からおかしいよね」

愛依「や、やめて……!」

愛依「いまはそんなん考えなくってもいいんだし!」

「その程度の想いってこと?」

愛依「違う!!」

「ふーん」

愛依「……っ」

愛依「なんでそんなこと言われなきゃいけないわけ!? うちは、……うちはっ」

「やは~。でも~、変じゃないですか~~?」

愛依「……なにが」

「お兄さんって、あなたの恋人じゃないし~」

「あ、もしかして~」

愛依「……」

「お兄さんに好き~って言われたことないんだ~~!」

愛依「!!!」


386以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/25(月) 01:47:01.52ulRd3VHqO (2/7)

愛依「っっっ」ガバァッ

愛依「はぁっ、はぁっ……」

愛依 キョロキョロ

愛依「ゆ、夢……」

愛依「……」


『その程度の想いってこと?』


愛依「っ……」


『あ、もしかして~』

『お兄さんに好き~って言われたことないんだ~~!』


愛依「……やだ」

愛依 フルフル

愛依「……」

愛依(確かに、うちは――)


愛依『すぅ――』

――だいすき。愛してる。だから、ずっと一緒にいて。


愛依(――プロデューサーに告って……)

愛依「……」

愛依(返事はもらってないけど)

愛依(プロデューサーがアイドルに手出せないのなんて当たり前だし)

愛依(うちも返事聞くの怖くて……話題にできてないし……)

愛依「ほんと、どうしたらいいわけ……?」


雛菜『――家族ごっこって楽しいですか~?』


愛依「っ……グスッ」

愛依(そんなこと言わなくてもよくね? ……って思う、けど)

愛依(一番悔しいのは、何も言い返せないコト)

愛依(何も、間違ってないから……)

愛依「プロデューサー……」

愛依(ここにプロデューサーがいたら、うちがこうして泣いてるの見たら――)

愛依(――プロデューサーは、慰めてくれるのかな)

愛依(抱きしめて欲しい。ずっと、うちだけを見て欲しい)

愛依(うちのこと、家族だって思って欲しい)

愛依「あはは……アイドルやってて、大会にも出てんのに、うちってばアイドル失格かな……?」

愛依「うっ……ううっ……」ポロポロ

愛依(独りも1人もやだよ、プロデューサー……)


387以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/25(月) 02:19:44.21ulRd3VHqO (3/7)

1週間後。

~大会 予選会場~

P(2回目の予選の日がやってきた)

P(技術的な面に関して心配な点はなかった。レッスンも自主練も、無理のない範囲で着実にやっていた)

P(鍵となるのはメンタル面だろうが……)

P「……」

P(正直に言えば、不安が残る。あの子を会わせてからはだいぶ良くなっているのだが、大会1週間前は時々心ここにあらずという様子が目についた)

P(俺が話しかけてもどこかそっけないような感じがした。大会の直前に良くない刺激を与えてもいけないと思って、こちらからはあまり追及しなかったけど……)

P(事務所でも仮眠を取ることが増えていたし。まるで、寝ていれば人とかかわらなくて済むと言うかのように)

P(考えすぎだろうか……)

P(深く掘り下げないという俺の判断は正しかったのだろうか)

P「……」

P(って、俺が悩んでどうする)

P(愛依のほうがしんどいに決まってる。俺は、今できることをやるしかないだろう)

P(愛依が安心してステージに立てるように、見送ってやらないとな)

P「そういえば……」

P(……減った)

P(上位20%しか残らないというのは形式的な手続きとして知っていたが、ここまで人が減るものなのか)

P(第1回予選のときとは違い、会場は静けさすら感じ取れるほどだった)

P(第3回はもっと人が減るんだろうな)

P「……お」

P(2回目のグループ分けの番号が発表になった)

P「グループ1だって」

愛依「……」

P「愛依?」

愛依「わあっ!?」

P「っと、悪い。驚かせるつもりはなかったんだが」

愛依「あ、ううん! うちこそごめんね。ぼーっとしてたわ」

P(愛依……)

P「今日のグループの番号は1だそうだ」

愛依「1か。おっけー、まかせて!」

P「そうだ、まだ本番まで時間あるし、その、なんだ。ほら、最近あんまり話せてなかっただろ? だから、愛依と話でm……」

愛依「あ! うち自主練しないとだわ!」

P「……え」

愛依「早く場の空気? ってやつに慣れないとだしさー」

愛依「うちもなんだかかんだ言ってもうプロのアイドルだし、気合入れないとね~」

P「そ、そうか……」

愛依「ステージ終わったらいっぱい話そ?」

P「……わかった」

愛依「っ」

P(愛依、その表情は……)

P「俺はいつだって愛依の味方だし、プロデューサーだよ。愛依が俺のことを想う以上に、俺は愛依のことを想っていると……そう思っていてくれ」

愛依「……そっか。ありがとね。……行ってくる!!」ダッ


388以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/25(月) 02:39:01.00ulRd3VHqO (4/7)

~グループ1 控え室~

愛依(前は1つのグループでいっぱい大部屋使ってたのに……)

愛依「……」

愛依(……2回目で大部屋1つになっちゃうんだ)

愛依(あ、そういえば……)

愛依 キョロキョロ

愛依「……ふぅ」

愛依(透ちゃんはいない、か)

愛依(なに安心してんだろ、うち)

ヒグッ、グスッ、ウウッ

愛依「……!」

愛依(あれ、この前泣いてた子じゃん)

愛依(勝ち残れたんだ)

ネエ、アレミテヨ

ナンカナイテナーイ?

ナキタイコナンテイッパイイルノニ、カッテダヨネー

ピャウッ!?

愛依(うーわ、感じ悪……)

「ねぇ、あんたさぁ」

「ぴゃ!? ななな、なんですか……?」

「泣きたい子なら他にもいるのよ。なのに、そうやって目立つように泣いちゃって……」

「ご、ごご、ごめんなさい……っ」

「申し訳ないと思うなら一人で目立たないところで泣いてろよ、ほら、出てけって」

「そ、そんな……」

愛依「ちょっと」

「あ?」

愛依「あたしの友だちなんだけど、なにしてんの?」ギロォッ

「っ!?」ビクッ

愛依「いじめようとしてんなら、絶対に許さないから」キッ

「……ちっ。行くよ」

「え、ええ……」

愛依「……」

愛依「……はぁ」

愛依「大丈夫?」

「ぴゃっ!? ゆ、ゆゆ、許してください……!」ビクビク

愛依「え、いや、あたしはそういうんじゃないから」

愛依「とりあえず、もうちょっとここ離れよ? ね?」

愛依「1人でいるより、うちといたほうが安全っしょ」ヒソヒソ

「……はい」

愛依 ニコッ


389以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/25(月) 02:57:16.42ulRd3VHqO (5/7)

「さ、さっきは助けてくれてありがとうございます……!」

愛依「いいっていいって。あいつらマジちょー感じ悪かったし」

愛依「弱いものいじめとかくだらないことやってるヒマなくね? って思うわ、ホント」

「よ、弱いもの……」

愛依「あ、ごめん! そういうつもりじゃ……って、あはは。それはうそか」

「いいんです。実際弱いですし」

愛依「えー、なにそれ」

愛依「そういえば、名前なんて言うん?」

「あ、はい。わたしは――」

小糸「――福丸小糸、です」

愛依「小糸ちゃんね。うちは和泉愛依、よろしく~」

小糸 ボーッ

愛依「ど、どしたん?」

小糸「い、いえ……知ってるキャラと全然違うから……」

愛依「あ、そだね。あははっ」

愛依「アイドルのときは、こう……」

愛依「よろしく……」

愛依「ってカンジ?」

小糸「は、はいっ。そんな感じです」

愛依「小糸ちゃんのコト、なーんか放っておけなくてさー」

愛依「うちのこと怖がってたみたいだから、安心させようと思ったんだけど……つい素のキャラが出ちゃったわ!」

愛依「いや~、まいったまいった。うちってば疲れてんのかな?」

小糸「だ、誰にも言いませんよ……!」

愛依「あはは、サンキュね」

小糸「えへへ」

愛依「!」

愛依「いま気づいた……小糸ちゃんめっちゃカワイイんですけど!?」

小糸「か、可愛いだなんて……そんな……えへへ」

小糸「お世辞でも……う、嬉しいです。ありがとうございます」

愛依「お世辞じゃないってば~。本当に可愛いって!」

愛依(やっぱ、大会勝ち残ってるだけあるってことなのかな~)

愛依「……小糸ちゃんはどう? 大会は順調なカンジ?」

小糸「え、ええ……まあまあです、たぶん……」

冬優子「そっか」

小糸「わたし、だめだめなんです」

小糸「こんな一人ぼっちで放り出されても、泣いてることしか、できませんから……」

コイト「いっぱい練習して、なんとかここまで来れたけど……わたし一人にできることなんて……」

愛依「はいっ、暗いのやめ! もっと楽しくやろ?」

小糸「楽しく……」

愛依「良いコト考えようよ。嬉しかったこととかさ」

小糸「……」

小糸「そういえば、今回はわたしの幼馴染が応援してるって言ってくれました!」

小糸「雛菜ちゃん、わたしのこと見ててくれてるかなぁ……」


390以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/25(月) 03:01:18.90ulRd3VHqO (6/7)

とりあえずここまで。


391以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/25(月) 05:38:41.87L7rpX/ODO (1/1)

一瞬、コイト表記だったけど何かあるのかな?

わくわくする


392以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/25(月) 10:56:03.37ulRd3VHqO (7/7)

>>391

>>1です。ご指摘ありがとうございます。カタカナになっているのはミスです。訂正します。すみません。


>>389 訂正:

コイト「いっぱい練習して、なんとかここまで来れたけど……わたし一人にできることなんて……」
→小糸「いっぱい練習して、なんとかここまで来れたけど……わたし一人にできることなんて……」


393以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/26(火) 00:46:39.65pHJp8MS8O (1/5)

愛依(ヒナナ……? どっかで聞いた気がするんだけど、うちの気のせい?)

小糸「中学は別々だったから……本当に久しぶりで」

小糸「ず、ずっと疎遠だったんですけど、わたしが昔プレゼントしたアクセサリーは大事に持っててくれたんです!」

小糸「それが話のきっかけで……わたしとまた仲良くしてくれるって……」

小糸「わ、わたしのこと、応援するって……」

愛依「ふーん、いい友達? ……じゃん!」

小糸「え、えへへ……」

小糸「昔からつかみどころがなくて不思議な子なんですけど、と、友だちでよかったなぁって、そう思っちゃいました」

小糸「小糸ちゃんは決勝まで進んで、できれば優勝して、しあわせ~になってって、そう言ってくれたんです」

愛依「うんうん。応援してくれる友だちがいるって大事なことだな~って思うわ」

愛依「うちはさ、プロデューサーとユニットのみんなのためにも、頑張りたい」

愛依「応援してくれてると思うし、うちにできることって言ったら、もう勝つことしかないじゃん? 的な」

小糸「ユニットの友だち……」

愛依「?」

小糸「あ、いえ! なんでもないです」

小糸「……」

愛依「……」

愛依「うちら、一緒に次に進めたらいいね」

小糸「! ……は、はいっ」

愛依「この大会始まってからさ、他のアイドルの子たちとの接点ってあんましなくて」

愛依「なんかー、うちに足りてなかったのって、そういうのもあんのかな……って」

小糸「わ、わたしも……あんまり誰かと話すとかは……ないです」

小糸「その……ちょ、ちょっと怖くて……」

愛依「あっはは、うちのことも怖がってたもんね」

小糸「ぴゃ……ごめんなさい」

愛依「別に謝んなくていーから! 実際、うち、こんなだしさー」

小糸「で、でも、格好いいって、……そう思います」

愛依「ありがと。そう言ってもらえると、なんていうか、やってきた! ってカンジするし」

愛依「うちもいつか、本当の自分でアイドルやりたいな……」

小糸「え?」

愛依「あー、いーの! 気にしないで!」

愛依「まあ、ともかくさ」

愛依「お互いがんばってこ? 小糸ちゃん」

小糸「は、はいっ! わたしも頑張ります!」

小糸「だから、その……頑張ってくださいね……!」

愛依「うんっ!」


394以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/26(火) 01:03:43.20pHJp8MS8O (2/5)

~予選会場 ロビー~

P(透のやつ……いきなり呼び出してどうしたんだ)

P(断ってもしつこく連絡来るからとうとう来てしまったが……)

P「……」

タッタッタッ

P(……来たか)

透「はぁっ、はぁっ……ごめん。急に呼び出して」

P「ああ。お前は自分のことに集中しなきゃだめだろ」

P「俺なんかと話してる時間なんてないんじゃないのか?」

透「……」

透「冷たいね、P」

P「冷たくもするさ。他所の事務所のアイドルの邪魔なんてできないだろ。大会の真っ最中なんだし」

P「いくら幼馴染とは言っても、俺はもう大人だし、お互い仕事をしてるんだ」

透「でも、来てくれた」

P「……」

P「……はぁ」

P「何度も連絡をよこすからだよ」

透「そうすれば来てくれるかなって」

P「お前な……」

透「……」

P「話は聞いてやる。何の用なんだ?」

透「移籍の話だけど……」

P「それか……」

透「どう? 考えてくれた?」

P「ああ」

透「ふふっ、そっか」

P「移籍はしない」

透「っ……」

P「俺は、今プロデュースしてるアイドルをてっぺんまで連れて行ってやりたいんだ」

透「! てっぺん……」

透 ギリッ

P「?」

P(露骨に不愉快そうな顔をするなんて……透らしくないな)

P(何か気に障ることでも言ったか?)

透「それが、プロデューサーの考えなんだ」

P「そうだ。何度も言わないからな」

P「透。俺はお前のこと、幼馴染としてこれからも仲良くしたいと思ってるよ」

P「けどな、仕事の……アイドルのこととなれば話は別だ」

P「こういう言い方はしたくないんだが……その……」

透「邪魔しないで、って?」

P「……」

透「優しいね、Pは」

透「うん。いいんだ。そう思われても」


395以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/26(火) 01:18:48.86pHJp8MS8O (3/5)

透「ぼk……私からも、言っていいかな」

P「……なんだ?」

透「今日言いたいのは、お願いじゃないってこと」

P「?」

透「選択、してもらうから」


~舞台裏付近~

雛菜「~~♪」

「えと、ここからの順番の確認なんだが……」

「あ、はい。次が和泉愛依さん。その次が福丸小糸さんです」

「ありがとう、あと2人でとりあえず一区切りだからな」

「やっと休憩ですね。まあ、頑張りましょう」

「ああ」

雛菜 タッタッタッ

「?」

「どうした?」

「今……女の子がいませんでしたか?」

「え、冗談だろ? 今のシフトに女子はいないけど」

「見間違えですかね」

「お前今日あれじゃん。3時間睡眠」

「あー、確かに。ロングスリーパーなんですよね、自分」

「ちゃんと寝とけって。幻覚なんか見ちまってよー」

「はいすみません」


~予選会場 ロビー~

P「選択? 何のことだよ」

透「そのまんまの意味」

P「いや、だからそれをだな……」

透「Pは、あの人……和泉愛依って人と、決勝に行きたい?」

P「何言ってるんだよ。そんなの、当たり前じゃないか」

透「そっか……」

P「な、なんだよ」

透「もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?」

P「は?」

透「それでも、Pの答えは変わらない?」

P「おいおい、俺がお前の事務所に移ることと愛依が決勝に進むことの間にどんな関係があるっていうんだよ」

透「質問しないで」

P「え……」

透「私が聞いてるでしょ」

P「透」

透「Pは選ぶだけ」

透「それだけだから」


396以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/26(火) 01:31:42.05pHJp8MS8O (4/5)

~舞台裏付近~

雛菜「~~♪」

「なあ、審査員の評価はぶっちゃけどうなんだ?」

「お、審査員に親友がいる俺にそれ聞いちゃう?」

「気になるからなー。教えてくれないか?」

「まあ、お前とも付き合い長いしな……」

「頼むよー」

「まず、グループ1はレベルが高い」

「……それは思った」

「性格悪そうなやつも多いけどな……!」

「……まあ」

「んで、もう先に進めるやつはだいたい決まってて、残るのは1枠だとか」

「へぇー」

「ちょうど、この次に続いてる……そうそう、愛依ちゃんって子と、小糸ちゃんって子」

「この2人が?」

「その1枠の候補だって話だぜ」

「どっちかなのか……」

「ああ、このグループに振り分けられたのは運がなかったな」

「進めそうなのは?」

「今の審査員の予想だと、恐らく同点って」

「こわいな。もうそういうの考えて決めてるのか」

「じゃねーの、知らんけど。まあ、実際に見て決まらなきゃ審議だろ、この2人に関しては」

雛菜 テテテテテ

「……あれ?」

「どうしたんだよ」

「今、女の子がいたような……」

「お前、それはあれだよ」

「?」

「球場に魔物、ステージに妖精ってことだろ」

「えー」

「ほら、そろそろ仕事に戻ろうぜ」

「へーへー」


~予選会場 ロビー~

P「選ぶだけって……」

透「個人的なおすすめは、私の事務所に来ること、かな」

P「……」

ヴーッ

透「あ、ごめん。LINE来たわ」

透「もうちょっと待ってて……っと」

透「送信」


397以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/26(火) 01:50:38.61pHJp8MS8O (5/5)

~ステージ(予選) 舞台装置周辺~

雛菜「っしょ、……っと!」タンッ

雛菜「とうちゃ~く」

雛菜「透先輩にLINEしよ~っと。……まだ~ってね~~」

ポチッ

雛菜「……」

ピロンッ

雛菜「! もう返信来た~」

雛菜「もうちょっと待ってて……かぁ~」

雛菜「お兄さん、まだ選んでないんだね~」

雛菜「雛菜的には……ま、どっちでもいいか~」

雛菜「小糸ちゃんが進んだら幼馴染としてしあわせ~になれるし~~」

雛菜「お兄さんのアイドルの人が進めば、透先輩がしあわせ~になって――」

雛菜「――透先輩だいすきな雛菜もしあわせ~ってなるもん!」

雛菜「早く返信来ないかな~」

シーン

雛菜「……準備して待と~っと」


~予選会場 ロビー~

透「タイムリミットだよ」

P「透、お前、何をしようとしてるんだ」

透「っ」ガシッ

P「ちょ、おま……」

P(いきなり胸倉を掴まれた!?)

ダッダダダ・・・

ダンッ

P「がっ……」

P(くそ、力任せに押されて暗がりに追いやられた……)

P(高校生の女の子に不意打ちとはいえ力で押し負けたことに情けないなと思いつつ)

P(この腕力は日々のレッスンの賜物か、だなんて。そんなことを思ってしまう自分に呆れる)

P「透、何するんだ、やめ――」

透 チュ

P「ん~~!!」

P「ぷはぁっ。……お前」

透「私も、二度は言わないつもりなんだ」ジイッ

P(目が据わってる……)

透「もう一度聞くから」

透「Pは、私のところに来てくれる?」

透「それとも、来てくれない?」

透「どっち……かな」

1. 透の誘いを断る。
2. 透の誘いに乗る。

選択肢↓2

(とりあえずここまで)


398以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/26(火) 02:23:45.25QKFfDjSDO (1/2)

1 断る


399以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/26(火) 03:10:39.51sz+jsWFLo (1/1)

断る


400以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/26(火) 09:43:34.27PErzPpyzO (1/1)

ひななの黒幕適正が高過ぎて困る


401以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/26(火) 13:11:35.83QKFfDjSDO (2/2)

ヤンデレモードフルドライブのまゆや琴葉でも負けそう……

闇落ちこずえなら勝つだろうけど、闇落ち由愛がいるからなぁ


402以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/26(火) 19:36:57.98Tt2gx2JZO (1/1)

アイドル曇らせすこすこ部はここですか


403以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/31(日) 00:45:02.21+d6Xp6ptO (1/9)

~予選会場 ロビー~

P「……断る」

P「俺は愛依と、……ストレイライトと、283プロでトップを目指すんだ」

P「だから、透のところには行けない」

透「……」

P「俺も、二度は言わないからな」

透「……そっか」

P「ああ」

透 クルッ

透 スタスタ

P「お、おい……どこに……」

透「……どこって、ステージだけど」

透「本番、これからだからさ」

P(透は、再びこちらを向くことなく、俺を背にしながら言った)

P「そ、そうか」

透「じゃあね」

P「……」

P(これで、良かったんだ……よな)

P(なぜ、胸のざわめきがなくならないんだ?)

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P(あれは――)

透『それでも、Pの答えは変わらない?』

P(――どういう意味だったんだろう)


~ステージ(予選) 舞台装置周辺~

ピロンッ

雛菜「あっ、透先輩からだ~」

雛菜「ふむ~~……」

雛菜「……」

雛菜「そっか~、透先輩……」

雛菜「フラれちゃったんだ~、かわいそ~~」

雛菜「てことは~……お兄さんのアイドルが……」

雛菜「……ま、仕方ないよね~」

雛菜「うんうん! こればかりはしょうがない~」

雛菜「雛菜が気にすることでもないよね~?」

ワァァァ

雛菜「あ、そろそろだ~」タタタ

雛菜 カチャカチャ

雛菜 ギイッ

雛菜「……やは」

雛菜「よかったね、小糸ちゃん」


404以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/31(日) 01:01:21.90+d6Xp6ptO (2/9)

~ステージ(予選)~

ワァァァ

愛依「はぁ……はぁ……」

愛依(や、やり切った……!)

愛依(2回目も、うち、ちゃんとできた!)

愛依(会場の盛り上がりも、うちが見たことないくらいすっごい……)

愛依(うち、勝てたかな……)

愛依(プロデューサー、■■■、見てる?)

愛依(うち、輝いてるかな?)

ダァンッ

愛依「?」

愛依(あれ、なんだろ、いまの音)

ザワザワ

愛依(え? さ、さっきまであんなに盛り上がってたのに、なんで……)

愛依(なんで、うちのほうを見て、みんなそんな顔……)

愛依(何か言ってる? ちょっと遠くて聞こえない系なんですけど)

愛依(なんかあったのかな。みんなちょっとヤバそうなカンジだし)

愛依(とりあえず出番終わったしステージから降りなくちゃ……)スタスタ・・・

シュルルル

愛依「え――」

ガンッ

ドサッ

ゴロロロ・・・

愛依「――……」


~予選会場 ロビー~

P(もうとっくに愛依のステージは終わってるよな)

P(ちょっと遅いが……気にしすぎか?)

P(透とのやり取りが終わってから、どうにも不安に駆られている自分がいる)

P(様子を見に行ってみるか……)スタスタ・・・


~ステージ前席付近入り口~

P(くそ……外に出ようとする人に押されてなかなか入れない……)

P(なんだってこいつらは出ようとしてるんだよ。まだ予選のステージは終わってないだろ?)

P(終わったのは愛依の出番だけのはずだ)

P「す、すみません! 通してください……!」グイグイ

P(観客たちを押しのけて先へ進み、ようやく中に入ることができた)

P「はぁっ……はぁっ……」

P(あれ? 次の子の出番じゃないのか……)

P(いや、一般人が外に出ようとしてるんだから、何かあったと考えるべきだよな……)ダッ

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P「……あ。そんな――」ピタ

P(ステージの上がよく見える位置まで移動すると、視線の先には、自分のアイドルが血の海に伏せている光景があって……)

P「――愛依ッッッ!!!!!」


405以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/31(日) 01:17:32.78+d6Xp6ptO (3/9)

~???~

愛依「……ん」パチッ

P「あ、愛依……」

P「目、覚めたか?」

愛依「あ……うん」

愛依「ここって……海?」

P「まあそうだが……今更どうしたんだ」

P「また3人でここに来ようって話だったじゃないか」

P「忘れたのか?」

愛依「……ううん。忘れてない」

愛依「そっか。ここ、あのときの海か……」

愛依(あれ、うち、確か大会の予選でステージの上にいて、それから……)

愛依(……それから?)

愛依(すぐ海に行くなんて話、あったっけ)

愛依「あ、そだ。あの子は?」

P「ほら、あそこ」

P「浜辺の砂で遊んでるよ」

愛依「ホントだ。かっわいー」

P「一緒にやってあげたらどうだ」

愛依「そだね。じゃあ――」

愛依「――プロデューサーも一緒にやってよ」


P「ふぅ……」

「……」ニコ

愛依「いや~、ずいぶん立派なお城になったってカンジ?」

P「だな……。一度波に流されたことは涙なしには語れまい……」

愛依「あっはは、なにそれ~」

愛依「ま、ここなら波も来なそーだし、大丈夫っしょ!」

「……」コクッ

P「っと、気づけばもう日が沈む寸前か」

P「……帰ろうか」

P「ほら、手繋ごう。愛依、■■■」

「……ん」

P スタスタ

「……」テテテ

愛依「……え。ちょっ……! そっち海じゃん!! 帰り道はあっちっしょ!!!」

P「ほら、愛依も早く来いよ」

「……」フリフリ

愛依「……」ザッ

P「早く早く……」

愛依 ザッ・・・ザッ・・・

――愛依ッッッ!!!!!

愛依「!」


406以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/31(日) 01:24:22.05+d6Xp6ptO (4/9)

――戻って来てくれ、愛依!!!

愛依「……プロデューサー」

P「どうした? 早く行こうぜ」

「……」

愛依「違う」

P「?」

愛依「うちが行きたいのは……行かなきゃいけないのは、そっちじゃない」

――くっ、くぅぅっ……愛依……。

愛依「もう……プロデューサー……」

P「こっちには、来てくれないのか」

愛依「うん。うちにはさ、待ってくれてる人、いるから」

P「そうか……」

愛依「じゃね! お城作り、チョー楽しかった!」

愛依 クルッ

愛依 タッタッタッ

愛依(帰らなきゃ……)

愛依 タタタタタ

愛依(戻らなきゃ……!)

愛依「プロデューサー!!」

愛依(あそこにある駅で電車乗って行けば……)

愛依「はぁっ、はぁっ……」

愛依「あと、少し……」グラッ

愛依(あ、あれ……?)

愛依(なんか、カラダが思うように動かないっぽいんだけど……)

愛依(やば、もう……)フラッ

ドサッ


407以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/31(日) 01:34:37.09+d6Xp6ptO (5/9)

~???~

チリン

愛依「……ん」パチッ

愛依「っと、……うち寝てたんだ」

P「起きたか、愛依」

愛依「プロデューサー……」

チリン

愛依「あ、風鈴」

P「あの時に3人で買ったやつだよ。あの子が事務所に持ってきてくれたんだ」

愛依「ここは……事務所なんだ」

P「ははっ。どうしたんだよ」

P「愛依が今いるのは283プロの事務所のソファーじゃないか」

P「まだ寝起きみたいだ。コーヒーでも飲むか?」

愛依「いや、大丈夫……もう目覚めたし」

P「そうか」

愛依「んーっ!」ノビー

愛依「っはぁ……」

愛依(うちは……帰ってこれたカンジ?)

愛依「あれ、あの子は?」

P「……」

愛依「プロデューサー?」

P「ははっ。さあ、どこだろうな」

愛依「?」

サッ

愛依「わっ!?」

愛依(急に目の前が真っ暗になったんですけど!)

「……」

愛依「く、暗い……何がおこってるん?」

「……だれだー」

愛依「……」

「……」

愛依「……ぷっ」

愛依「あっははは。そーゆーコトね」

愛依「いいの? うち当てちゃうよ?」

「……ん」

愛依「■■■でしょ」

「……」パッ

愛依「わ、まぶし……」クルッ

愛依「……あったり~。うち、せいか~い」

愛依「も~、いつからそんないたずらする子になったん?」

「……」

愛依「そんな悪い子にはくすぐりの刑~~!」コチョコチョ

「……!」ケラケラ


408以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/31(日) 01:49:11.28+d6Xp6ptO (6/9)

愛依「って、もうこんな時間じゃん!」

愛依「プロデューサー……そろそろこの子帰らせないとまずくね?」

P「ん? なんでだ?」

愛依「……え?」

P「だって、俺たちは3人でここに住んでるじゃないか」

P「帰るも何もないだろう」

愛依「……」

P「俺たち“家族”3人、事務所のビルの中で仲良く暮らしてるんだ」

P「愛依も、それで問題ないだろ?」

愛依「……」

P「“家族”は……嫌か?」

愛依「ううん。そんなわけない」

P「じゃあ、帰らなくてもいいだろ」

P「愛依が望んでるんじゃないのか?」

P「家庭を持って仲良く暮らすということを」

愛依「それは……」

――起きてくれ、頼む……!

愛依「!!」

――愛依……お前が目を覚まさないと、俺は……。

愛依「……」

P「どうかしたのか?」

「……」

愛依「ごめんね。うち、やっぱ帰んなきゃだわ」

P「え、どうして……」

愛依「うちさ、プロデューサーのことが好き。ううん……大好き」

愛依「3人で過ごした時間は……うちにとって宝物みたいなもんだよ」

P「じゃ、じゃあ……ここにいればいいじゃないか……!」

愛依「ま、それも悪くないかもなんだけどさ」

P「ここでなら、愛依の理想は……望めばいくらでも叶うんだぞ?」

P「それでも、行くって言うのか?」

愛依「うん! 行かないと」

愛依「思い通りに行かないことも全部、乗り越えないといけないから」

愛依「うちを呼んでる人、待ってる人、一緒に戦ってくれる人がいるんだよね」

愛依「うちがいるべきなのは、そこなんだと思う」スタスタ

P「愛依……」

愛依「大丈夫。うちを信じてよ」

愛依「あんたも、プロデューサーなんでしょ?」

愛依「ならさ……応援しててくれるほうが、うちは嬉しいかな」

P「……わかった」

愛依「あれ、割とすんなり受け入れた系?」

P「言ったって聞かないんだろ。なら、俺は“プロデューサーとして”、自分の足で歩む愛依を見送るよ」

愛依「あっはは……サンキュね」ガチャ

愛依「いってきます」ダッ


409以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/31(日) 02:06:22.29+d6Xp6ptO (7/9)

~病院 病室(2人部屋)~

ピッ・・・ピッ・・・

P「愛依……」

ガラララ

冬優子「ほら、売店で水買ってきてやったわよ」

P「……」

冬優子「……あんた、やっぱ一昨日から寝てないでしょ」

冬優子「お仕事ですぐに駆けつけられなかったけど、それくらいわかるわよ」

P「……」

冬優子「ふゆだって、心の中はぐっちゃぐちゃだし泣きたい気持ちもあるけど」

冬優子「それはふゆの問題。愛依にそんなふゆを見せたくないの」

冬優子「だから……あんたもよ」

冬優子「目を覚ました瞬間にやつれたあんたの顔を拝まされる愛依の気持ちも考えなさい」

P「……すまん」

冬優子「ふん、謝罪ではなく感謝を要求してやるわ」

P「……そうだな。ありがとう」

P「あさひはもう帰ったのか?」

冬優子「はづきさんが送ってくれたみたい」

P「そうか……良かった……。もう、遅いからな……」

P「……」

冬優子「隣、座るわね」

P「……ああ」

冬優子「っしょ、っと」

P「……」ボソッ

P「……」ブツブツ

冬優子「……はぁ」

冬優子「もしかしてあんた、自分を責めてるの?」

P「っ!?」ビクッ

冬優子「わっ……急にビクってしないでよね。こっちまで驚いたじゃない……」

冬優子「一体、何があったの……?」

P「……何があったのかは、俺にもわからない」

P「けど、……けど!」

P「俺は選んでしまった……!」

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P「あの時、事務所を移るって言っていれば……あるいは……」

冬優子「……話してみなさい」

P「え?」

冬優子「ふゆがあんたの話聞いてあげるって言ってんの」

P「……言ったって、俺のことを頭のおかしいやつだと思うだけだよ」

冬優子「安心していいわ。もう頭のおかしいやつだって思ってるから」

P「……」

冬優子「じょ、冗談に決まってるでしょ……! ったく……」

冬優子「ふゆはちゃんと聞くわよ。いいから、話してみて」


410以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/31(日) 02:27:09.95+d6Xp6ptO (8/9)

P「……と、いうわけなんだ」

冬優子「……」

P「冬優子?」

冬優子「あ、え? ご、ごめん……」

P「なんで冬優子が謝るんだよ」

冬優子「う、ううん。なんでもない」

冬優子「そう……選択を迫られたのね」

P「俺が透の事務所に行くって言っていれば、こんなことはならずに済んだんだ……!」

P「愛依は、俺のせいで……」

冬優子「……それは違うわ」

P「……え?」

冬優子「あんたは何も悪くない」

冬優子「ふゆが保証するわ」

冬優子「だいたい、事務所を移ればいいってどういうことよ。それこそ、ふざけんなって話じゃない」

冬優子「あんたは自分の選択に自信を持っていい……ううん、持たないといけないの」

冬優子「ずっとふゆたちの……愛依のプロデューサーで在り続けるって決めたんでしょ?」

冬優子「あんたがそれを諦めちゃったら、ふゆたちは……愛依はどんな顔すると思う?」

P「それは……」

冬優子「だいたい、幼馴染だかなんだか知らないけど、その透とかいうやつに踊らされるなっての!」

冬優子「自分のそばにいるのは誰なのか……それをちゃんと考えてよね」

P「……そうだな」

P「ありがとう、冬優子」

冬優子「お礼を言われる筋合いなんてないわよ。当たり前のことをわかってないやつに、当たり前のことを突きつけてやっただけなんだから」

P「ははっ……」

冬優子「もう……」

冬優子「ま、あんたはそういう顔してたほうがいい」

冬優子「聞いた話だけど、愛依がステージから出ようとした瞬間の事故で、うまく急所を避けて致命傷にはなってないみたいだし」

冬優子「ふゆたちは、……あんたは」

冬優子「愛依が目を覚ましたときのことを考えてりゃいいのよ。たぶんね」

P「俺たちが暗いムードじゃ、愛依も気が滅入るってもんだよな」

冬優子「……駄洒落?」

P「……違う」

冬優子「そ……」

P「……」ウトウト

冬優子「いまにも寝そうじゃない」

P「いつ愛依が目を覚ますかわからないんだ……俺は起きていたい……」

冬優子「ばっかじゃないの? 寝ない限りそのやつれた顔は治んないわよ」

冬優子「……もう1人のベッドはいま空いてて部外者はいない、か」

冬優子「ほら、特大サービスでふゆの膝を貸してあげる」

冬優子「いまはそれで妥協して。ま、愛依が目を覚ませば、いくらでもやってもらえるんだろうけど」

P「でも……愛依の前でそれは……」

冬優子「ふゆはここまでの移動中に結構寝てるから、夜明けくらいまでは大丈夫。そのときか愛依が目を覚ますまでは、ふゆが起きて膝貸してあげるから、しっかり寝て回復すること」

冬優子「ちゃんと、愛依が起きる頃には――愛依の大好きなあんたでいてあげなさい」


411以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/31(日) 02:28:09.61+d6Xp6ptO (9/9)

とりあえずここまで。


412以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/01/31(日) 03:07:44.33n1revpZfo (1/1)

おつおつ
うう…冬優子……


413以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/01(月) 01:32:53.44J3Dhi4ZsO (1/4)

~病院 病室(2人部屋)~

P「zzzZZZ……」

愛依「プロデューサー、もういい時間だし起きたほうがよくね?」

P「……ん」

P「ふわぁぁ……いま何時だ?」パチッ

愛依「もう昼の12時だよ」

P「そんなに寝てたのか……」

P「……」

P「……って、め、愛依!?」

愛依「わっ、びっくりした」

P「お前……目が覚めたのか?」

愛依「あっはは、起きてる相手にそれ聞くのってなんか変じゃね?」

P「い、いや、それはそうなんだけど……!」

P「そうか……良かった、良かった……!」

愛依「ごめんねー、プロデューサー。心配かけちゃって」

愛依「……寝てるときにさ、聞こえたんだよね」

愛依「プロデューサーが戻って来てくれって言うのが」

愛依「だからさ、うち、プロデューサーに応えたよ」

P「ああ……、ああ……!」

愛依「もー、そんな顔しないー!」

愛依「どうせなら喜んでよ。ね?」

愛依「嬉しいときは笑うもんっしょ?」

P「ははっ……そうだな。そう、だよな」

愛依「そーそー、そんな感じがいいって」

P「怪我は……」

愛依「あー、それ聞いちゃう?」

P「す、すまん。でも、本人からどんな感じなのかは聞きたくてな」

愛依「怪我はねー……うん、ハッキリ言ってちょーヤバい」

愛依「身体は動かそうとすれば動くんだけど、もう骨とかヤバい折れてるから痛くてムリだし」

愛依「頭は……中身は大丈夫なんだけど外は傷だらけってゆーか」

愛依「ま、生きてるからオッケーって思ってるとこ」

愛依「医者の先生もチメイショー? はいろいろと避けられてるって言ってたし」

愛依「いまはこんなんだけどさ、ちゃんと元気な状態になって帰りたいなって思ってる」

P「愛依……」

愛依「はい、その顔禁止! プロデューサーが悪いわけじゃないんだし、落ち込まれるとうちまで悲しくなっちゃう」

P「っ……」

P(俺は悪くない、か……)

P(結局のところ、それについて自分で納得できていないのは確かだった)

P(冬優子はああやって言ってくれたのにな……)

愛依「せめて腕が動けばな~。プロデューサーのことぎゅーってしてあげられんのに」

P「ははっ、それはなんとも……その、恥ずかしいな」

愛依「あっ、……だ、だって、この部屋いま2人きりだし!」

愛依「うちプロデューサーのこと好きだし、別にいいんじゃん……?」ボソボソ


414以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/01(月) 01:57:11.42J3Dhi4ZsO (2/4)

P「あの……前からそう言ってくれてるけど、その「好き」って……」

愛依「ま、まあ……ブだけど」

P「?」

愛依「だからー! ラブのほうだって!」

愛依「最初の予選のときだって、あ、愛してるってちゃんと言ったし!」

P「いや、疑ってるとかじゃないんだ! ただ、なんというか、ギャルが急にそうやって言い切るっていうのは、どこか“ノリ”のようなものを感じてしまってな……」

愛依「マジか! うちギャルやめようかな……」

P「まあ、俺の偏見もあるんだ。すまない」

P「ギャルはやめなくてもいいぞ」

愛依「ちなみに……さ、プロデューサーは、その……どうなん?」

愛依「一応? うちは告ったわけだし、返事とか」

愛依「あ、アイドルのプロデューサーだから~とかはナシ! うちのこと、ただの女の子だと思ってさ、プロデューサーもプロデューサーじゃないって思って答えてほしいなって」

愛依「~~~っ! なんか言っててちょーハズかしくなってきたんですけど! 怪我で顔隠せないしヤバすぎ……」

P「……」

P「言い訳にしかならないが、これまでは良くも悪くも忙しい日々を過ごしてきたと思う」

P「ストレイライトとして、1人のアイドル「和泉愛依」として愛依は頑張ってきて……」

P「……俺はプロデューサーとして支えてきたつもりだ」

P「プライベートで一緒に過ごしてきた時間はまだ短い。最近まではほとんどなかったと言ってもいい」

P「けど……そうだな。あの子がそれを変えてくれたかもしれない」

P「あの子が……愛依という1人の女の子と過ごすことの意味を教えてくれたような気がする」

P「愛依との家族……それを実感の湧く形で想像できた。それで気づいたんだ。俺は最早仕事という範疇を超えて愛依のことを想っていると」

P「だから……うん」

P「これから約10秒ほど、俺は期間限定でプロデューサーを辞めて喋ろうと思う」

P「……」

P「俺も愛依が好きだ。愛している」

愛依「P……」

P「ずっと一緒にいたいと、そう思っているよ」

P「っと、たった今プロデューサーに戻ったところだ」

愛依「あはは……なんだ、めっちゃ嬉しいんですけど……」グスッ

P「ど、どうして泣くんだよ」

愛依「え~? 嬉しいから?」

P「嬉しい時は笑うんじゃないのか?」

愛依「だから笑ってるじゃん。泣いちゃだめとは言ってないからセーフ」

P「なるほど……」

愛依「……ねえ、プロデューサー」

愛依「もう1回だけプロデューサー辞められない?」

P「そこだけ切り取るとすごい発言だな……。なんでだ?」

愛依「その……さ。……ス、してよ」

P「?」

愛依「もー、……キス! うち怪我してて全然動けないから、して欲しいの!」

P「おまっ……突然何言って……」

愛依「早くしてよ……。もうハズくて辛いんだから」

P「あ、ああ……。じゃあ、いくぞ……」ソーッ


415以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/01(月) 02:24:18.40J3Dhi4ZsO (3/4)

あさひ「プロデューサーさん! 目は覚めたっすか!?」ガラララ

P「……」

愛依「……」

あさひ「あれっ。なんで2人ともそっぽ向き合ってるんすかね」

冬優子「きっとお邪魔だったのよ、ふゆたちがね」

あさひ「???」

冬優子「あんたにはまだ難しいってこと」

あさひ「えー、それじゃあわかんないっす!」

冬優子「新しいタイプのあっちむいてホイよ」

あさひ「ホントっすか!? わたしにも教えて欲しいっす!」

冬優子「はいはい、それはまた今度。ここは病院なんだから」

あさひ「うー、つまんないっす」トボトボ

冬優子「はぁ……」

冬優子「2人とも、そろそろ普通にしたら?」

P「……なんでもないぞ」

冬優子「嘘乙」

愛依「……うちが負けたんだよね」

冬優子「新しいあっちむいてホイの設定続けなくていいから。あんたは首痛めてるんだから変に動かすんじゃないわよ」

あさひ「あれっ」

P「どうした、あさひ。俺の顔なんか覗き込んで」

あさひ「愛依ちゃんはなんとなく元気そうなんすけど……プロデューサーさんはそうじゃないみたいっすね」

P「そうか……? 別にそんなことは……」

冬優子「……あるわよ。まだ寝足りないんでしょ。ったく」

P「ははっ……これは参ったな」

冬優子「他人の心配もいいけど、自分の心配を忘れてるのよ、あんたは」

冬優子「愛依はちゃんと目を覚ましてて、怪我は回復を待つだけなんだから」

あさひ「愛依ちゃんと早く遊びたいっす~」

愛依「ごめんね~あさひちゃん。しばらくムリっぽいわ」

愛依「怪我治ったら絶対あそぼ! ね?」

あさひ「はいっす! 約束っすよ、愛依ちゃん!」

P「……はは、なんだか懐かしいな」

あさひ「?」

P「いや、なんでもないよ。ただ、当たり前がこんなに嬉しいなんて……って、そう思っただけだ」

P「俺はずっと狭い視野で戦っていたのかもな……」

愛依「ま、それは大会のやり方的にしょーがないっしょ」

愛依「大会はもうダメだけどさ、とりあえずまたアイドルやりたいし、それまでは全力で治すから」

愛依「絶対に、3人で――ストレイライトで、プロデューサーとトップ目指したい」

愛依「うちはそう思ってる」

冬優子「当然。ふゆもそのつもり」

冬優子「あんたはどうなの、あさひ」

あさひ「あ、ベッドの下に何か隠してるとかはないんすね」モゾモゾ

冬優子「……」

P「ま、まあ。あさひだってきっと同じ気持ちのはずだ」


416以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/01(月) 02:25:09.17J3Dhi4ZsO (4/4)

眠すぎるので一旦ここまで。


417以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/01(月) 10:49:49.72xy2OhVEgO (1/1)

おつおつ
膝枕してくれて愛依が起きるまでには退散ってふゆいい女すぎひん……?


418以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/03(水) 01:03:10.1679rSCjCkO (1/4)

冬優子「っと、そろそろね。……あさひ!」

冬優子「行くわよ」

あさひ「?」ヒョコ

冬優子「レッスン。今日はトレーナーの都合で遅い時間だから」

あさひ「あ、そうだったっすね」

あさひ「じゃ、愛依ちゃん、プロデューサーさん、また後で!」

冬優子「今度こそふゆたちは帰るから、2人とも好きにしていいわよ」ニッ

愛依「も~! 冬優子ちゃん……」

P「か、からかうなって……」

冬優子「はいはい」

冬優子 ガラララ

冬優子「……あ」

冬優子「プロデューサー」

P「俺か?」

冬優子「連絡。はづきさんからあると思うから。見といて」

P「お、おう。わかった」

フユコチャーン ハヤクイクッスヨー

冬優子「そういうことだから」

P「……冬優子!」

冬優子「……何?」

P「ありがとう」

P「……それが言いたかった」

冬優子「ふふっ、あっそ」

ガラララ

ピシャッ

P「……」

愛依「……」

P「……」

愛依「また、2人きり~みたいな?」

P「そ、そうだな」

愛依「……っ」

P「ははっ……こんな時、どんなことを言えばいいのか……なんだかよくわからなくてな」

愛依「あはは、なにそれ」

愛依「別にいいって、そういうんはさ」

愛依「うちは……プロデューサーには一緒にいてもらえたら満足だし」

P「愛依……」

愛依「……あのね、プロデューs――」

イヤァァァァァッ

愛依「――っ!?」

P「な、なんだ……!? 叫び声が聞こえた気がするが……」

愛依「病院ってこういうことあるん?」

P「さあな……静かなイメージがあったけど」

P(悲鳴の声が聞き覚えのあるものだったような……気のせいか?)


419以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/03(水) 01:29:24.0079rSCjCkO (2/4)

コンコンコン

P(ノック……?)

ガラララ

「失礼しますねー」

P(車椅子に乗った老人が、挨拶をしながら入ってきた看護師に押されて部屋にやってきた)

P(そういえば……ここは2人部屋だったな)

P(愛依が入院することになり、俺は当然個室を希望したのだが、どうしても空きがなく、一時的にこの部屋に入ることになった――というのが経緯だ)

P(もっとも、今来た老人がこの部屋にいることは珍しく、数日くらいなら貸し切り状態だと言われていたんだが……)

P(既に愛依は芸能人だし、部外者がいる状態でのやり取りには気をつけないとな……)

P(まあ、老人の状態を見るに、気にしなくても大丈夫なように思えてしまうが、それでも俺たちはプロだから注意しなければならない)

「あ、個室の件なんですけど」

P「えっ、あ……はい」

「無事退院された方がいまして、明日には個室の方を案内できますので、今日だけ相部屋になってしまいますが、ご容赦いただければ……」

P「わかりました。ただ、準備が整い次第、個室に案内するようにしてください」

「承知いたしました」

P「よろしくお願いします」

愛依「あ、うち部屋移動するん?」

P「愛依も立派なゲーノー人……いや、アイドルだからな」

愛依「そっか……そうだね」

愛依「でも、そっか~……。プロデューサーに立派なアイドルとか改めて言われると照れるわ~!」

P「ちょっ、声がでかい……!」

愛依「ヤバっ、ごめん……」

P「……はぁ。……ははっ、なんだか、愛依は元気だな」

愛依「え~? なんで笑うし」

P「いや、だって今そんな状態じゃん」

愛依「確かにミイラみたいになってるけどさー……あ、いまの自撮りして投稿したらウケるかも!」

P「腕は動かせないから自重しような……」

愛依「う~、つまんないっす~」

P「なんだよそれ。あさひの真似か?」

愛依「そんなとこ。なんとなくやってみたくなった」

P「ストレイライトが恋しいか?」

愛依「そりゃー……ね。最近あんまし揃ってなかったしさ」

P「また、事務所で“いつも通り”ができたらいいな」

愛依「うん」

P「……あ。そうだ。冬優子にはづきさんからの連絡を見るよう言われてたんだ」ポチポチ

P「っと……先週から来週までの冬優子とあさひの仕事のまとめか」

P(愛依の予定の振り替えも書いてあるが、今は読むだけで会話では触れないでおこう)

P「……ここまで、か。……いや、違うか、これは……」

P(メールの末尾を見ると、俺が1週間休職することが確定したと書いてあった。はづきさんなりの配慮なのかもしれない)

「あのー、すみません」

P「えっと……はい。なんでしょうか」

「いまお連れした患者さんなんですが、ああ見えてアイドルの番組を観てるときが一番落ち着くみたいなんです。ベテランの看護師の先輩が教えてくれまして」

「何かおすすめの番組とかあれば……。私はアイドルのことをあまり知らないので」


420以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/03(水) 01:55:30.9979rSCjCkO (3/4)

P「そうですね……。宣伝するようで恐縮ですが、もう少しするとうちの黛の出ているバラエティ番組が始まります」

P(ちょうど今はづきさんからの連絡で見たことだからすぐ出てきたな)

P(放送局を伝えると、看護師はテレビのリモコンを操作して件の番組を観る準備をしてくれた)

P(何かあればナースコールを、と老人に言って、看護師は部屋を出て行った)

P(しかし……、この老人がアイドルの番組を……)

P(人を見た目で判断するのもどうかと思うが、全く想像のつかない趣味を持つものだと思ってしまった)

P(どのような顔の老人だったか……そう思って改めて顔を見る)

P「……!」

P(一瞬、目が合って、睨まれたような気がした)

P(いや、気のせい……だろうか)

P(老人は、俺から視線を外すと、俺と愛依のいる方をじぃっと眺めてから、はじまった番組のあるテレビの方に視線を戻した)

P(俺も、愛依のほうに視線を戻す)

P「愛依――」

愛依 ウトウト

愛依「……っ、プロデューサー。ごめん、うち寝ちゃってたみたい」

P「――いや、いいんだ。むしろ、怪我人なんだからちゃんと休まなきゃだめだぞ」

愛依「わかった……じゃあ、ちょっと寝るわ」

愛依「おやすみ、プロデューサー……」

P「ああ。おやすみ、愛依」

愛依「……プロデューサー」

P「なんだ?」

愛依「うちの手……握ってて。手は、別に怪我とかないし」

P「わかった。……こうか?」ギュッ

愛依「うん。ありがと」キュッ

P(そう言って、愛依は弱く握り返してきた)

愛依「……あったかい」

愛依「あんしん、する……」

愛依「……」

愛依「……zzzZZZ」

P(今まで、どれほどのものを愛依は抱え込んできたんだろう。愛依は、明るい性格だし大雑把で楽天的なところもあるが――)

P(――だとしても、アイドルとしてはキャラを作っているわけで、大会で1人で戦う中でかなり消耗したのではないかと思う)

P(皮肉にも、今回は愛依をきちんと休ませることができてしまっているのかもな……)

P(俺にできることは……少なくとも今は一緒にいて寄り添うことだろうか)

愛依『うちは……プロデューサーには一緒にいてもらえたら満足だし』

P「大丈夫だ。俺はどこにも行かない」

P(そう。あの時だって――)

P『俺は愛依と、……ストレイライトと、283プロでトップを目指すんだ』

P『だから、透のところには行けない』

P(――そう胸を張って言ったんだ)

ヴーッ

P「……通知?」

冬優子<あさひがまた消えて捜索中な件。

冬優子<あ、見つけたわ。というわけで心配しなくて大丈夫だから。


421以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/03(水) 02:00:25.8279rSCjCkO (4/4)

とりあえずここまで。


422以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/03(水) 02:21:49.56mUq4GL2DO (1/1)

悲鳴に老人……まだまだ波乱は続く


423以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/13(土) 00:16:11.19bbZhcn2eO (1/4)

3週間後。

~病院 病室(個室)~

P(あれから、愛依はすぐに個室へと移動することになった)

P(結局、俺の臨時休暇が終わってからは、仕事の都合で一度も見舞いに来てやることができなかった)

P(今日はようやく時間がとれて1週間ぶりくらいに病院に来た形だ――が……)

P「……愛依がいない」

P(いきなり来てしまったというのはあるけど、まさかいないなんてな)

P「……」

ガララ

「あ、和泉さんの」

P「え、あぁ……いつも愛依がお世話になっております」

「プロデューサーさん、でしたよね」

P「はい、そうです」

「和泉さんでしたら、今はリハビリ中ですよ」

「様子を見るとかであれば、こちらに……」

P(看護師に案内され、俺はリハビリをしているという愛依のもとへと向かった)


~リハビリテーション室~

カツッ、カンッ

愛依「……っ、く……」

カンッ

愛依「っし……!」

スルッ

愛依「あ――」

ドタッ

愛依「――っ」

愛依「……」


「あちらです」

P「あ、はい……」

P(愛依、頑張ってるな……)

P(でも、遠くから見てもわかる。わかって、しまう――)

P(――愛依が、辛い思いをしながらあそこにいるということを)

「では、私はこれで」

P「……」


カツッ、カンッ

カンッ

カツッ

愛依「……った」

愛依「はぁっ……はぁっ……」


424以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/13(土) 00:36:39.81bbZhcn2eO (2/4)

愛依「……」ペタリ

「大丈夫ですか? 急に座り込んで……」

「体調が優れないようでしたら、今日はこの辺で止めても……」

愛依「っ、いいから!」

「!」ビクッ

愛依「うちなら、平気だから。まだ、大丈夫」

「そう、ですか……。念のため、私はここにいますからね。無理は禁物ですよ」

愛依「……」

スタスタ

P「……愛依」

愛依「っ!?」

愛依「ぷ、プロデューサー!?」

愛依「え、やだ……。うそ……」

P「あ、ああ……すまない、あれからしばらく来てやれてなくて」

愛依「そ、それは仕事があるだろうし、別に……」

愛依「っつーか、その……うちのこと、見ないで」

P「……」

P(よく見ると、愛依は汗をたくさんかいていて、患者衣が透けて――)

P「――っ!? す、すまん……」

愛依「? あ、ちょっ……、ど、どこ見てるん!?」バッ

愛依「……」

P「……」

愛依「そ、そういう風に見られんのもハズいけど、……そうじゃなくて」

P「?」

愛依「こんなうちの姿、見られたくない……」ギュッ

P「っ!」

愛依「包帯はまだ残ってるし、目立たないけど身体は傷だらけで、まともに歩くことだってまだちゃんとはできてない……!」

愛依「プロデューサーがいままで見てきたのって、そういううちじゃないっしょ?」

愛依「谷間とかも見せるちょいダイタンな服とか着ちゃって、仕事じゃ衣装着て歌ったりダンス踊ったり……」

愛依「……それが、プロデューサーが一緒に過ごしてきたうち、じゃん」

愛依「……」

愛依「意識が戻ってしばらくはさ、プロデューサーが一緒にいてくれたし、あんまし気にすることもなかったよ」

愛依「けど、あれからプロデューサーも来れなくなって、1人になって、リハビリが始まって――」グスッ

愛依「――うちが、もうアイドルの和泉愛依じゃない誰かなんだって! ……そうとしか思えなくってさ」

愛依「そんなんだから、いまのうちのこと、プロデューサーには見られたくなかったっていうか、ね」

P「確かに、今の愛依には、前みたいに力強く歌ったり激しく踊ったりすることはできない」

愛依「だったら!! だったら……、さ」

愛依「こんなうちを見ないで! こんな……こんな……」

愛依「なんもできない、うちなんて……」

P「だからなんだ!」

愛依「!」

P「アイドル和泉愛依じゃない……だからなんだって言うんだ。俺が接してきたのはいつだって、和泉愛依という1人の女の子だよ……」

P「歌えなくても踊れなくてもいい。アイドルだからお前と一緒にいるわけじゃ……一緒にいたいわけじゃないんだよ、もう……」


425以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/13(土) 01:29:20.67bbZhcn2eO (3/4)

愛依「っ……」ポロポロ

P「何もできないなんて言わないでくれ」

P「生きてくれているだけで、一緒にいてくれるだけで、……こうして、面と向かって話してくれるだけで」

P「それでも、いいんだ」

愛依「プロ、デューサー……っ!」ポロポロ

P「ゆっくりでいい。一歩ずつ進んでいこう」

愛依「うん……、うん!」

P「……そうだ、こうしよう」

P「俺は、次からはプロデューサーとしてじゃなく、1人の人間として愛依に会いに来るよ」

P「283プロのアイドル和泉愛依の様子を見に来たプロデューサーではなく、和泉愛依という1人の女の子を好きな1人の男として」

P「そうしないか?」

愛依「あっはは、プロデュー……Pはほんとに……」

愛依「……うん。そーしよ」

愛依「てことは、さ」

愛依「Pはうちの……れしで」ゴニョゴニョ

P「?」

愛依「だーかーらー……Pはうちのカレシってことで、い、いいんでしょ?」

P「あ、ああ。そうだな」

愛依「で、うちはPのカノジョ……」

P「……」

愛依「っ!!」ボッ

愛依「やっぱうちのこと見ないで!! とりあえずいまは!!!」

P「さっきも同じようなことを言ってたが……」

愛依「さ、さっきのとは違うってゆーか……。いまのうち、めっちゃ顔赤くてヤバいから!」

P「そういうことか」

愛依「~~~!」

P「まだしばらくは落ち着かなそうか?」

愛依「……いや、もう大丈夫」

P「そ、そうか……」

愛依「うちがカノジョで、Pがカレシ……っふふ」ニコ

P(とりあえず楽しそうだ――なんてな)

P(愛依には、そういう表情がよく似合うんだ)

P(アイドルではなく、1人の女の子としての……その振る舞いが)

P(そういうことは俺だけなのだと思うと、いい年なのに気分が高揚してしまう)

愛依「なにぼーっとしてんのー?」

P「いや……なんでもない」

ヴーッヴーッ

P ピッ

P「……はい。わかりました。今から向かいます」

P「すまん。仕事で戻らないといけなくなった……」

愛依「いいっていいって! 大事な仕事なんでしょ? しかも今日、平日だし」

愛依「今度は休日にでも来てよ。カレシとして、さ……。待ってるから」

愛依「うち、カノジョだし!」


426以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/13(土) 01:35:51.59bbZhcn2eO (4/4)

とりあえずここまで。


427以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/13(土) 01:56:21.47pk/OQM70o (1/1)

おつおつー
愛依√はアイドルリタイア…?


428以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/16(火) 00:17:18.413FdlP2VvO (1/7)

2週間後。

~病院 リハビリテーション室~

愛依「っ……っしょっと……」カツッ

P「よし、あと少しだ……頑張れ」

愛依「う、うん……」カンッ

愛依「……っ!?」ヨロッ

P「!? 愛依――」

愛依「っとと!」ピタッ

P「――……ふう」

愛依「あはは……ギリギリだったけど、まあ、セーフ?」

P「だな……」

愛依「もうちょっとでPんとこに着くから……待ってて」


P「お疲れ様。ほら、スポーツドリンクだ」

愛依「うん、サンキュー」

愛依 ゴク・・・ゴク・・・

愛依「……っぷはぁ」

P「だいぶ良くなってきたんじゃないか」

愛依「まあねー……まだ前みたいにはいかないけどさー」

愛依「……なんかさ、こんなこと言っていいのかわかんないんだけど、これってレッスンみたいだね」

P「! ……ああ、そうかもな」

P(さすがは俺の自慢のアイドルだ――というセリフは、言わずに飲み込んだ)

P「やっぱり、愛依はすごいよ。担当医の人も驚異的な回復力だって言ってたぞ」

愛依「まあ……それほどでも~~? ……あったりして!」

P「ははっ……」

P「早くちゃんと歩けるようになって、まずはあの子に元気なところを見せてやらないとな」

P「きっと、心配してるはずだから」

愛依「……」

P「……愛依?」

愛依「あのー……さ、前から気になってたんだけど、なんとなく聞きづらくて」

愛依「Pの言う“あの子”って、誰なん???」

P「え……」

愛依「いや、うちの友だちの誰かのことかな~とか、まさか元カノ自慢じゃないよね~~とか、そう思ってたんだけど」

愛依「この際だし聞いちゃおうかなって思ったってゆーかさ」

P「何言ってるんだよ、あの子だよ――」

P(――■■■だよ、わかるだろ? ……と)

P(そう言っても、愛依は思い当たる節はない、という様子だった)

P「あ……」

P(事故後の愛依との会話を思い出す)

P(愛依のことで手一杯で、そもそもあの子が話題になることはほとんどなかったけど……)

P(愛依があの子の話をしたことは、事故の後には一度もなかった)

愛依「ど、どしたん? Pってば、泣きそうな顔してる?」

P(その時、俺はどんな顔をしていたんだろう。あれだけ愛依が大切にしていた3人の関係を、愛依自身が忘れているなんて知らされた時の顔なんて……)


429以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/16(火) 01:14:39.003FdlP2VvO (2/7)

数十分後。

~病院 病室(個室)~

愛依「あ、冬優子ちゃんからなんか来てるわ~」ポチポチ

P「……」

P(あの後、ちょうど愛依の担当医がいたので、知っているはずの人を知らないということが起こった、と説明した)

P(内部に損傷はなかったものの、頭を打っているのは間違いなく、強打による健忘症や記憶喪失などが疑われたが――)

P(――原因は断定されなかった。もっとも、あの子のことを忘れていたというだけで、それ以外は何の問題も浮上していないのだ)

P(俺が騒いでも、極論「だからどうした」になってしまう)

P(……俺の周りであの子のことを知っているのは、愛依以外にははづきさんくらいだ)

P(しかし、はづきさんに「愛依があの子を忘れてしまった」と訴えてどうする?)

P(どうにかなる気もしなかった。それに、何よりあの子に「愛依が君を忘れている」だなんて伝えたくなかった)

P(俺だけが違うことを言っているような気さえしてきて、謎の孤独感に苛まれそうだ)

愛依「……P?」

P「わぁっ!?」ガタッ

愛依「ご、ごめん……びっくりさせちゃったカンジ?」

P「あ、いや、……すまない」

愛依「さっきの“あの子”のこと?」

P「それは……」

愛依「うーん……ごめんね。やっぱ思い出せなくて」

P「愛依が謝ることじゃ……ないぞ」

P(そう、誰が悪いとか、そういう話じゃないんだ)

P(だからこそ、辛いものがある)

愛依「Pの話聞いてると思い出せそうな気もするってか……こう、胸がきゅーってなるっていうか」

愛依「うちにとって大事なソンザイだったんだなってカンジはするんだけど、どうしても思い出せないんだよねー……」

P「そうか……」

P「まあ、そのうち思い出すかもしれないんだ。焦る必要はないだろう」

P(焦る必要はない――そう言い聞かせたい相手は他でもない、自分だった)

P(待っていればいつか愛依の記憶が戻ると、そう信じたいじゃないか)

愛依『そーそー。その……さ』

P『?』

愛依『うちらって、周りから見たら家族――に見えんのかなって』ゴニョゴニョ

愛依『うちがこの子のママで、プロデューサーがパパで……』ゴニョゴニョ

P「っ……」

愛依『う、うちは別に嫌じゃないよ!?』

愛依『……うん。全然いやじゃない。むしろ、嬉しい、かも』

P『……そうだな。家族に見えるかもな』

愛依『!』

『……』

P『お前もそう思うか?』

『……』コクッ

P『ははっ。じゃあ、俺たちは家族……ってことでもいいのかも――なんてな』

P「はっ……、く……、うぅ……っ」ポロポロ

P(思い出すと、涙が止まらなかった)


430以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/16(火) 01:48:38.673FdlP2VvO (3/7)

3週間後。

~病院 病室(個室)~

P「いよいよ明日で退院……だな」

愛依「うんっ。ま、だいぶ時間かかっちゃったかもだけどさー……」

愛依「仕事にもかなり穴開けちゃったし、こりゃ厳しいかな~なんてね」

P「……ユニットとしての活動はしばらくなかったけど、冬優子とあさひは2人ともよくやってくれてるよ」

愛依「だね。うちさ、できるだけ冬優子ちゃんとあさひちゃんが出てる番組は観るようにしてたけど――」

愛依「――なんか、2人とも……うーん、うまく言葉にできないんだけど、ホントすごかったんだよね」

P「この約2ヶ月ほど……俺は、愛依がどちらを選んでも大丈夫なように準備をしてきたつもりだ」

P「アイドルを続けるか、そうでないか……」

P「俺は、愛依が何を選択しようと、意見するつもりはない」

P「どちらでも、……受け入れるつもりだ」

愛依「P……ううん、いまはプロデューサーって呼ばせて」

P「……ああ」

愛依「うちもね、ちゃんと考えたよ。アイドル続けるかどうかって」

愛依「それこそ、プロデューサーに初めて会ったときまで振り返ってさ」

P「……」

愛依「あの時……街でスカウトしてくれて、ホントに感謝してる。あれがなかったら、うち……」

愛依「そんでさ、ストレイライトっていうチョーカッコいい3人組にしてもらって、歌ったり踊ったりして……」

P「愛依がいなかったら、冬優子とあさひがいるユニットは間違いなく成り立っていなかったよ」

愛依「あっはは! そうかもねー、……なんつって」

愛依「でも、ありがと。そう言ってくれて、マジでうれしいわ」

愛依「最近の2人を見てるとさ、「あれ、もううちいなくても大丈夫じゃね?」……なーんて! そう思えるってゆーか」

愛依「ある意味で親目線的な? もうお前らは一人前なんだーってカンジで。いや、うち何様!? ……って話かもしんないけど」

P「そんなことはないぞ。愛依はストレイライトの中で、誰に対してもバランスよく接していたんだから」

P「一番良くメンバーのことが見えていたと言われても疑わないさ」

愛依「そっかな。だと、いいなって思うわ」

愛依「……あれ、何の話だっけ。……あ、アイドルをやるかやらないか、だよね」

P「……」

愛依「うちね、アイドルを――」

P「きょ、今日じゃなくても! ……いいんじゃないか?」

愛依「――プロデューサー……」

P「そ、そうだ。時間はまだある。言い忘れてたけど、どの道、愛依は事務所をあと1週間は休めるようにしてあるんだ」

P(俺は、何を……)

P「ゆ、ゆゆ、ゆっくり考えればいいさ! そうだよ、まだまだ先は長いんだ」

P(この期に及んで、何を口走っているんだ?)

P(愛依の選択を受け入れるなんて、口からでまかせもいいところじゃないか)

P(アイドルを続けるという決断を聞くのが怖いんだ――愛依の身体が以前のように動かせるような状況にはまだなっていなくて、元に戻る保証もなかったから)

P(アイドルを辞めるという決断を聞くのが怖いんだ――アイドルも、“あの子”のいる家族もない、そんな愛依を目の当たりにするのが嫌だから)

愛依「……家族」

P「え……?」

愛依「夢かもしれないし、プロデューサーの言う“うちから消えちゃった記憶”なのかもしれないし、よくわかんないけど……」

愛依「家族ってのが、すっごく懐かしくて、チョー大切で、そういう気持ちが……なんとなくあって」


431以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/16(火) 02:15:18.523FdlP2VvO (4/7)

愛依「プロデューサーの言う“あの子”のことは思い出せないけど、誰かに言われてる気がするんだよね」

愛依「プロデューサー――Pがパパで、うち――愛依がママで、2人の子どもが一緒にいて」

愛依「子どもはパパとママにそれぞれ片手を持ってもらってて、ぶらんこ遊びをするんだって」

愛依「その子はきっとそれだけでも……一緒にいるだけでも幸せで」

愛依「そういう家族の幸せを大切にしてって、そう誰かに言われる“夢”を見る……」

愛依 ツー

愛依「あ、あれ……」

P「愛依……」

愛依「やっぱ、こうなるかー……あっはは……」

P「?」

愛依「その家族ってゆーのがさ、アタマに浮かぶたびに、涙が……止まらなくなる的な……?」ポロポロ

愛依「な、なんだろーね! これ……、変だよね」

愛依「……」

愛依「プロデューサー、もっと近くに来て」

P「お、おう……」

愛依「……こうしてると、ここに、もう1人いる気がする」

P「!! そ、それは――」

愛依「きっと、うちにとって……ううん、うちとプロデューサーにとって、大事な子、なんだよね」

P「――……ああ!」

愛依「うちね、そんな家族が欲しい」

愛依「プロデューサーと……Pと幸せになりたい」

愛依「Pと幸せになってって……大好きな子どもと楽しく笑っていてって……」

愛依「そうやって言ってくれた声が聞こえて……」

愛依「うちもそう思うって、強く感じたから」

愛依「だから、うちは、アイドルを……」

P(もう、俺は愛依の決断を聞くのを怖がらなかった)

P(自分のことばかりで、愛依と共に人生を歩んでいくということを――最も大切なことを、見失っていたけど)

P(きちんと、取り戻すことができたから)

愛依「……これが、うちの決めたコトだよ、プロデューサー」

愛依「うちは……私、和泉愛依は」

愛依「Pと、ずーーっと! 幸せになりたい!!」

愛依「幸せな家庭を持ちたい! 家族でいろんなところに出かけたい! 海とか買い物とかね」

愛依「よくわかんないただ一緒に過ごす時間も、大切だって思いながら生きてたい」

P(まるで、あの子との“家族”の思い出をなぞるかのように)

P(愛依は自分の望む「幸せ」をこれでもかというくらいに伝えてくれた)

愛依「……はぁっ、言い切った! いや、まだまだこれからたくさん出てくるけど!!」

P「ははっ、こっちまで幸せになりそうな話しっぷりだったぞ」

愛依「もー、何言ってんのー? 幸せになりそう、じゃなくて、幸せになるんだってば。一緒にね!」

P「ああ、そうだな」

愛依「もちろん、ずっと一緒に、幸せを探して、何回でも幸せになって――くれるっしょ?」

P「当然だ。愛依と生きていくって決めてるんだから」

愛依「そっか……そっかそっか! うん!」ニコ

愛依「あっはは! もう、うちってば、いまからチョー幸せだわ!!」


432以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/16(火) 02:31:43.313FdlP2VvO (5/7)

約十年後。

~某海辺 砂浜~

P「よし、じゃああれやるか!」

愛依「あはは、うん!」

「……?」キョトン

P「いくぞ……」

P/愛依「いっせーの……」

P/愛依「……せーっ!」グイッ

「わー……」

「……」ポスッ

P「いい感じにブランコできたと思うんだけど、どうだ?」

「……ん」ニコ

P「喜んでくれたみたいだな」

愛依「ほんとカワイイんだから~もうヤバすぎ!」ナデナデ

P「……あ。おおっ」

愛依「どしたん?」

P「いや、ほら」

P「夕日、やっぱり綺麗だな……って」

愛依「うん。すっごく……ね」

愛依「……あれ、なんか前にもおんなじことあったっけ」

P「……」

P「……あれじゃないか? デジャヴュっていう」

愛依「デジャ……なんて?」

P「いや、なんでもないよ」

愛依「あっはは、なにそれ」

P「ははっ……」

愛依「うち、……いま、しあわせだよ」

愛依「きょうだいとか友だちと遊びに行ったり、昔みたいにアイドルでレッスンとかお仕事したり……そういうのとは違って」

愛依「あ~~、なんかさ、うまくは言えないんだけど」

愛依「いまみたいな時間がもっと続いたらいいのにな~って」

愛依「マジでそう思う」

P「そうか」

愛依「夕日がさ、もう……沈んじゃうじゃん?」

P(夕日が沈んだら、幸せも終わってしまうような気がする――そういった君が、どこかにいた)

愛依「でも、沈むから、明日からはまた違う夕日が見れんのかなって、そう思えるんだよね」

愛依「なんて……変かな?」

P「そんなことないと思うぞ。良いんじゃないか? 俺は好きだよ、そういうの」

愛依「そっか! あー……次来たときはもっと良い景色が見れるといいなー」

愛依「っし! もう暗いし、今日は帰ろ!」

P「ああ、そうだな」

P(そして、2人で愛する子どもの名前を呼び、また手を繋いで帰路につく)

P(確かにそこには、俺たちの幸せがあった。いつか望んだ、誰かが願った……その思いが成就された形で)

END of √M.


433以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/16(火) 02:45:41.353FdlP2VvO (6/7)

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OS Version 2.8.3.2018424
[AUTOMATIC OPERATION]

>ファイルをスキャンしています。
>…………
>…………
>…………
>“Mei_Izumi -Memory-”......partly damaged!
>破損したデータがあります。
>…………
>原因不明。
>…………
>破損したデータは自動的に最新のバックアップデータに置換されます。
>お待ちください……。
>…………
>…………
>…………
>処理が完了しました。
>プログラムにより、関連付けられた分岐点を自動的に開きます。
>Now Loading...
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434以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/16(火) 02:47:22.643FdlP2VvO (7/7)

~ステージ(予選) 舞台装置周辺~

雛菜「っしょ、……っと!」タンッ

雛菜「とうちゃ~く」

雛菜「透先輩にLINEしよ~っと。……まだ~ってね~~」

ポチッ

雛菜「……」

ピロンッ

雛菜「! もう返信来た~」

雛菜「もうちょっと待ってて……かぁ~」

雛菜「お兄さん、まだ選んでないんだね~」

雛菜「雛菜的には……ま、どっちでもいいか~」

雛菜「小糸ちゃんが進んだら幼馴染としてしあわせ~になれるし~~」

雛菜「お兄さんのアイドルの人が進めば、透先輩がしあわせ~になって――」

雛菜「――透先輩だいすきな雛菜もしあわせ~ってなるもん!」

雛菜「早く返信来ないかな~」

シーン

雛菜「……準備して待と~っと」


~予選会場 ロビー~

透「タイムリミットだよ」

P「透、お前、何をしようとしてるんだ」

透「っ」ガシッ

P「ちょ、おま……」

P(いきなり胸倉を掴まれた!?)

ダッダダダ・・・

ダンッ

P「がっ……」

P(くそ、力任せに押されて暗がりに追いやられた……)

P(高校生の女の子に不意打ちとはいえ力で押し負けたことに情けないなと思いつつ)

P(この腕力は日々のレッスンの賜物か、だなんて。そんなことを思ってしまう自分に呆れる)

P「透、何するんだ、やめ――」

透 チュ

P「ん~~!!」

P「ぷはぁっ。……お前」

透「私も、二度は言わないつもりなんだ」ジイッ

P(目が据わってる……)

透「もう一度聞くから」

透「Pは、私のところに来てくれる?」

透「それとも、来てくれない?」

透「どっち……かな」

1. 透の誘いを断る。(既読)
2. 透の誘いに乗る。

※既読のスタンプにより、自動的に2. が選ばれます。

(とりあえずここまで)


435以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/16(火) 07:42:36.692EcUPYJko (1/1)

おつおつ
これはいい機能
愛依ちゃん……これはNORMAL COMMUNICATIONかな…?


436以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/27(土) 03:08:42.54Jgdt0UeWo (1/1)




437以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/02/27(土) 23:12:38.03ycDuHxnvO (1/1)

おつ
前ルートもそうだけど、普通に殺人未遂の二人に何の報いもないからモヤモヤするな
悲鳴がそれなのかもしれんが


438以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/01(月) 01:49:33.40m6an9M5VO (1/4)

~予選会場 ロビー~

P「……わかった」

P(さっきの透が言ったことが、どうしても気になってしまっていた)

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P(まるで、透の誘いを断ったら愛依が決勝に進めない――そんな風に聞こえて)

P(不思議と、断ったら取り返しのつかないことになる気がして、理由のない悪寒に襲われた。だから――)

P(――俺は、透の誘いに乗った)

P「透のところに行けば、愛依は……」

透「……」

P「……透?」

透「あ……うん」

透「ちょっと、ね」

P「?」

透「うん。嬉しい」

透「ありがとう、P」

透「あー……プロデューサー、って呼んだ方がいいかな。ふふっ」

P「は、はあ……」

P(これで……良かった……のか?)

P(冷静になると、俺は愛依を――ストレイライトの3人を裏切ったことになるんじゃないだろうか)

P(いや、これがその場しのぎの嘘じゃなくなれば……正真正銘の裏切りだ。やっぱり嘘でした――とか言えるんだろうか)

透 ポチポチ

透「送信、っと……」

透「それじゃ、行ってくる」

P「行くって、どこに?」

透「本番、これからだからさ」

P「そ、そうか」

透 スタスタ

透「……そうだ」ピタッ

透「たぶん、Pの事務所に連絡が行くと思う。明日とか、明後日とか」

透「そのうち、人も来る。あと……わたs――僕も」

透「またね」フリフリ


~ステージ(予選) 舞台装置周辺~

ピロンッ

雛菜「あっ、透先輩からだ~」

雛菜「……うんうん! そっか~、透先輩、良かったね~~」

雛菜「てことは~……小糸ちゃんが……」

ワァァァ

雛菜「あ、そろそろだ~」タタタ

雛菜 カチャカチャ

雛菜 ギイッ

雛菜「やは……」

雛菜「ごめんね、小糸ちゃん」


439以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/01(月) 02:09:41.65m6an9M5VO (2/4)

~ステージ(予選)~

ワァァァ

愛依「はぁ……はぁ……」

愛依(や、やり切った……!)

愛依(2回目も、うち、ちゃんとできた!)

愛依(会場の盛り上がりも、うちが見たことないくらいすっごい……)

愛依(うち、勝てたかな……)

愛依(プロデューサー、■■■、見てる?)

愛依(うち、輝いてるかな?)

愛依(これが、アイドル……和泉愛依!)

愛依(~~~~~っ!!! 今なら負ける気がしないんですけど!!!!!)

愛依(キャラ的に表に出せないけど……変なテンションになるくらい、サイコーのステージになったかも!)


オツカレサマデシター

愛依「控え室ってどっちだっけな~……」

愛依(あ、そういや、次って小糸ちゃんだっけ)

愛依『うちら、一緒に次に進めたらいいね』

小糸『! ……は、はいっ』

愛依(なんか、こういうのって、イイ……なんてね)

愛依(そうだ、今から戻って見に行ってあげよっかな)

愛依(決勝に進むって意味ではライバルでも、やっぱさ)

愛依(こう……応援してあげたい気持ちはあるってゆーか……)

キャァァァァァッ

愛依「?」クルッ

愛依(歓声……? でも、まだ始まったばっかなんじゃ……)

ザワザワ

愛依「え、え……?」

愛依(な、何が起こってるん???)

愛依(廊下が出てくる人でいっぱいになってきたし……これじゃまるで逃げてるか、それか――)

愛依(――追い出されたみたいな)

愛依「ちょ……あ、あの」

「はぁっ……はぁっ……」

「え、な、なんですか……?」

愛依「中で、何かあったんですか」

愛依(あっぶね。アイドルモードにならないとね)

「いや、それは……うわっ」ヨロッ

「ほら、出て出て! ……君も控え室に戻って!」

愛依「だから、その……何が」

「っ、いいから!」ドンッ

愛依「った……はい」

愛依(もう……なんなん? 舞台でトラブルでもあったのかなー)

愛依(とりあえず戻るしかない系?)

愛依(何が起きてるんだろ……)


440以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/01(月) 02:42:07.25m6an9M5VO (3/4)

~グループ1 控え室~

愛依「……」

ザワザワ

愛依(ヤな空気感……)

愛依(何かとんでもないことが起きちゃってるのに、うちらは何が起きてるのかわからない……ってカンジ)

「――機材のトラブルで事故が……」

「――大怪我した人がいるって……」

愛依(いろんな話が聞こえてくる)

「――ステージの真っ最中だったよね……」

「――ってことは、もしかしてそこにいた子……」

愛依 フルフル

愛依(ここにずっといたら、なんだかおかしくなりそうだわ)

愛依(飲み物でも買いにいこ……)スタスタ


~グループ1 控え室付近廊下~

愛依「……」

愛依(とりあえず水買ってきたけど)

愛依(あの場所――控え室の居心地があんましよくなかったってのもあって)

愛依(飲み物を買うとかは、正直どーでもよかったんだよね)

愛依(あそこを抜け出せれば、それだけでよかった的な?)

愛依(喉もそんなに渇いてないし)

愛依(うーん、戻るしかない系? でも、うち的には気が向かないんだよねー……)

愛依「……そうだ」

愛依(プロデューサーに会いに行けばいいじゃん!)

愛依(そうじゃん、そうしよ!)


~予選会場 関係者専用通路~

愛依(こーゆーの、ヒニク? ……って言うのかもだけど)

愛依(さっきの控え室の噂話で、ここ通るとすぐに外に出れるって聞こえたんだよね……まあ、そのコはタバコ吸うんで外に出てたみたいだけど)

愛依(道の向き的にロビー方面だし、ここからプロデューサーんとこに行けるはず――)

愛依(――うちってば、ひょっとして天才? ……なんちゃって)

愛依「……あ」

愛依(あれ、かな。たぶん。ロビーの近くの地図も見えるし)

カラカラカラカラカラ

愛依「?」

愛依(なんか、来る……?)

ミチアケテクダサーイ

「通ります! どいてください!!」

愛依(そんな声が聞こえて、車輪付担架を運ぶ何人もの大人の人がこっちに向かってきた)

愛依(最初はなんか来るなーくらいだったけど、すぐに嫌な予感がした)

愛依(気づけば、担架はすぐそこまで来てて――)

愛依(――血まみれの小さい身体が目の前を通り過ぎた)

愛依(たぶん気のせいだし、よく見えなかったけど)

愛依(担架は、うちの目の前だけを、やたらとスローモーションで通ったように見えた)


441以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/01(月) 02:50:20.39m6an9M5VO (4/4)

とりあえずここまで。


442以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/01(月) 03:56:06.922pZFVVUQo (1/1)




443以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/01(月) 04:40:54.08WVg33TODO (1/1)

小早川紗枝と同じ身長で、的場梨沙と同じサイズのバストの「ぴゃっ」が口癖の娘が……


444以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/01(月) 07:39:46.41iwKf5P/Ao (1/1)


おいおい
おいおいおい…


445以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/03(水) 21:19:25.54BbdFsMITO (1/6)

~予選会場 ロビー~

ザワザワ

P「なんだか騒がしいな」

P「……何かあったのか?」

P(嫌な予感しかしない)

P(なぜそんな気がするのかもわからなかったけど、理由のない不安が俺を襲うのは、きっと――)

透『今日言いたいのは、お願いじゃないってこと』

P『?』

透『選択、してもらうから』

P「……」

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P(――っ!!)

P(お、俺は間違えていないだろうか?)

P(選択――透はそう言った。その後に、正しい選択をしなければ愛依に何かしらが起こるというようなことも仄めかして)

P(嫌な汗が止まらない……愛依は本当に無事なのだろうか)

P(周囲のざわつきは酷くなってきている。明らかに、“何かがあった”んだ)

P(それだけで愛依の身に何か起こったと考えるのには、判断材料が少ないが、それでも……)

P「愛依……愛依……!」

P(俺はいてもたってもいられなくなって、関係者専用の通路で近道をして愛依に会いに行くことにした)

P(会えるだろうか……いや、会うんだ)

P(会わなければ……!)ダッ

P(焦りすぎて、変な走り方になってしまう)

P(なぜだろう、謎に足がもつれて疾走できない感じだ)

P「はぁっ……はぁっ……」タッタッタッ

P「……よ、よし。これを開ければ――」

P(――関係者専用通路だ)

P ガチャ


~予選会場 関係者専用通路~

愛依(さっきのって……)

愛依「うっ……」

愛依(思い出したらちょっとキモチ悪くなってきちゃった……)

愛依(だって、あんなたくさんの血なんて、うち……)

愛依(担架が速すぎて見えなかったけど、あれ人だったっしょ。どう考えても)

愛依「……」スタスタ

愛依(あ、このドアだ)

愛依(これを開ければプロデューサーに――)ソーッ

ガチャ

愛依「――うわぁぁっ!?!?!?」

P「おわぁあぁっ!?」ビクッ

P「な、なんだ……!?」

愛依「……って、プロデューサーじゃん!」

P「め、愛依……!」


446以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/03(水) 21:36:56.10BbdFsMITO (2/6)

P「よかった……!」ギュッ

愛依「ちょ! ……プロデューサー」

愛依「ここじゃヤバいっしょ。人来ちゃうし」ヒソヒソ

P「あ、すまん……」パッ

愛依「もー……。ま、まあ? そういうんはイヤじゃないけど?」

愛依「時と場所的な?」

P「そ、そうだよな。というか、取り乱して申し訳ない」

愛依「何かあったん?」

愛依「もしかして、いま騒がしいのと何か関係ある系?」

P「いや、その……」

P「愛依に何かあったんじゃないかと思って」

愛依「へ? うち??」

愛依「うちにはなんもないけど……」

愛依「確かになんかザワザワしてるな~って思ったけど、なんでそれでうちに何かあったって思うの~~?」

P「あ……」

P(俺と透の直接のやり取りを知ってるわけじゃないんだもんな)

P「忘れてくれ……それよりも、愛依は何か知ってるのか?」

P「今、何が起きているのか、について」

愛依「いや、うちもよくわかんないんだよね」

愛依「控え室にいるとさー……ホントかどうかもわかんない噂話とかいろいろ聞こえてきちゃってヤバげだったし」

愛依「なんとなく抜けてきちゃって、せっかくステージ終わったし、そうだプロデューサーんとこ行こ! って思って」

P「そ、それでここにいたのか」

P「そうだな、つい色々と気持ちが先走って言い忘れてたよ」

P「ステージお疲れ様」

愛依「うん、ありがと!」

愛依「うち、やれたよ。結果は……まあ、知らないけど!!」

P「ははっ……そうか」

P(そうだ。愛依は戦っていたんだ)

P(俺はそんなことも忘れて何をしていたんだ……我ながら情けなさ過ぎるな、これは)

P(まずは愛依の無事を喜ぼう)

P(特に、無事ステージを終えられたことを)

P(今何が起きているのかは、その後でもいいはず……だ)


~ステージ(予選)~

オイ、チャントカンケイシャイガイオイダシタノカ

トリアエズハ・・・ハイ

「はぁっ……はぁっ……」タッタッタッ

「……!」ピタッ

ナンデコンナコトニ・・・

サイシュウチェックデハナニモナカッタンダゾ!

「そんな……」

「間に合わなかった、なんて……」ペタリ


447以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/03(水) 21:41:50.82RmxyVDljo (1/2)

つーか中止にならんかこれ


448以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/03(水) 21:52:33.64BbdFsMITO (3/6)

「想定外の事態ね……って、あれ。そこのあなた!」

「! ヤバい……」

「なんでここにいるの! 早く外に出なさい! ……って、あなたは――」

「……」

「――グループ2の……、ええと、樋口円香さんだったかしら?」

円香「……そうですけど」

「でも、あなたは……ううん、それはいいわ」

「とにかく、ここにいちゃいけないの。さぁ、早く控え室に戻りなさい」

円香「っ」グッ

円香「……わかりました」

「ほら、行きなさい。……誰よ、追い出すの終わったって言ったのは」

円香 トボトボ


~ステージ(予選)外 通路~

円香 スタスタ

ガチャ

バタン・・・

円香「……」フラフラ

円香 ペタン

円香 ポロポロ

円香「小糸っ……!」グッ

円香「ごめんね、ごめんね……」ポロポロ


~予選会場 ロビー~

P「俺は一応状況を把握してから事務所に戻るつもりだけど……愛依はどうする? 俺といると遅くなるかもだし、先に戻るか?」

愛依「……プロデューサー?」

P「な、なんだよ」

愛依「うちを最後まで送ってく選択肢はないの~?」

愛依「頑張ったアイドルに冷たくしちゃダメっしょ~~」

P「……遅くなるかもしれないんだぞ?」

愛依「いいっていいって! うちは、その……」

愛依「プロデューサーと一緒にいれたほうがいいし、さ……」

P「……わかった」

P「じゃあ、一緒に帰ろう。送ってくよ」

P「とりあえず、俺は少し知り合いとかと話してくる」

愛依「え~……結局放置されるん~?」

P「そ、それは……」

愛依「ジョーダン! さすがにジョーダンだから! プロデューサーの仕事だもんね」

愛依「まあ……うん。うち、待ってるから」

P「ああ、すまないな」

P「できるだけ早く戻れるようにするから」

愛依「ありがと」

P「じゃあ、ちょっと行ってくるな」

愛依「いってらっしゃーい」


449以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/03(水) 22:27:40.61BbdFsMITO (4/6)

~予選会場 関係者専用通路~

P「……」スタスタ

P(事態は想像以上に深刻だった)

P(その場にスタッフの誰もが想定していなかった事故が起きたのだという)

P(これは本当に現実なのか、なんて言う声も聞こえてきたくらいだ)

P(念入りにチェックした舞台装置の故障が原因なのではないか、という話が出ているらしい)

P(しかし、そんなことが起こるとしたら、それは――)

P(――誰もいないはずのところに、誰かがいて、何かをした)

P(少なくともそう考えるほかないとのことだ)

P(そして、何よりの悲劇は、その事故がアイドルのステージの最中に起こったということ)

P(事故の被害にあったアイドルの子は大怪我をして、救急搬送されたという)

P(復活は絶望的なんじゃないかなんて言い出す人までいた)

P(愛依の次にステージに出た子、か……)

透『選択、してもらうから』

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P ブルッ

P(ま、まさかな……?)

P(さすがにそんなこと……あり得ないだろ)

P(それこそ、これが夢や幻じゃない限りは……)

P「そういえば、この大会は……」

P「……中止になるのかな、こんなことがあれば」

P(愛依を厳しい戦いから解放してやれるという気持ちと、愛依の活躍の場が減ってしまうという気持ちが、混在している)

P(愛依自身は、どう思っているんだろうな)


~予選会場 ロビー~

P「おまたせ、愛依」

愛依「お、プロデューサー。思ったより早かったじゃん」

愛依「それでー……やっぱ結構ヤバいカンジのことがあった系?」

P「まあ……そうだな」

P「少なくとも、笑い事じゃないよ」

愛依「そっか……」

P「端的に言うと、ステージの最中で舞台装置が壊れて、事故が起きたんだ」

P「それで、そこにいたアイドルの子が大怪我をした。すぐに搬送されて、今は病院にいるらしい」

愛依「大怪我……」

愛依「……その、怪我したのって、……な、なんて子?」

P「名前は……」

P「そうだ、愛依のすぐ次に出番があった子だぞ」

愛依「……え?」

P「うーん……あ、そうだ。思い出したぞ」

P「少し珍しい感じの名前で……」

愛依「ちょ、ちょっと待っt――」

P「福丸小糸さんって名前だったはずだ」

愛依「――ぁ……」


450以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/03(水) 23:14:57.99BbdFsMITO (5/6)

深夜。

~事務所~

P(愛依を家に送り届けてから、いくつかの書類の確認で事務所に戻ったけど……)

シーン

P(誰もいない事務所……別に珍しいことじゃないんだが……)

P(あんなことがあった後だと、この空気感が全く違うものに感じられるな)

P(既に非日常、ってことなのだろうか)

P「っしょ、っと……」ギィッ

P(時間はあるし、とりあえずPCに来たメールでも整理するか)

P カタカタ

P「……あ」

P(もう来てるな……透の事務所から)

P(今日1日でいろんなことがありすぎたな……)

P「ふぅ……」

P(俺は、事務所を移ると透に言った)

P(まあ、なんとなくわかってはいたが、ただの口約束というわけではないらしい)

P(透のあの言い方と、その直後に起こったあの出来事……)

P「……」

P(今俺が想像していることは、おそらく客観的には荒唐無稽な作り話に感じられるものなはずだ)

P(それでも、俺は、あの透との約束を反故にしてはいけない気がしてならなかった)

P(約束を破ったら取り返しのつかないことになる……そんな根拠のない恐怖がぬぐえない)

P(俺が事務所を移ったら、ストレイライトはどうすれば……)

P(……我ながら呆れるほど即決だったと思う。あり得ない決断をした)

P(しかし、なぜか悪い選択をしたという気分にはならなかった)

P(それも、今日という情報量の多い1日を過ごしたからだろう)

P(……ストレイライトごと移籍することを交渉するか? いや、そんなことをしたら283プロに合わせる顔がなくなる)

P(愛依だけでも……って、それじゃストレイライトが“ストレイライトじゃなくなってしまう”)

P(はづきさんならプロデュースをやることも能力的には不可能じゃないはずだ……けど)

P(そういうことではないだろう。あの3人――あいつらの気持ちを考えなければ)

P「……」

P(去ると言ってしまったやつが、何を今更って話だよな)

P「……ははっ」

P(ここまで乾いた笑いが出たのは初めてかもしれない)

P(笑い声はいつもの自分と同じなのに、まるで別人が俺の口を使って笑ったかのような錯覚に陥った)

P「はぁ……」

P(つくづく自分に呆れてしまう)

P(俺は一体、何をやっているんだろうか)

P「俺は……」


451以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/03(水) 23:16:11.58BbdFsMITO (6/6)

とりあえずここまで。


452以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/03(水) 23:23:53.60RmxyVDljo (2/2)




453以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/03(水) 23:26:17.18eotV4TwXo (1/1)

おつー
ノクチルにいったいなにが……


454以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/04(木) 02:20:57.17iQQVYecDO (1/1)

円香はわかっていた

実行犯は雛菜

被害者は小糸

……と


455以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/14(日) 01:37:40.96e3lLtyMfO (1/5)

数日後。

~事務所~

P「……はい。ええ、はい……」

P「……わかりました」

P ガチャリ

P「……」

P(例の大会は、結局中止になるとのことだった)

P(事故にあった子の容態が思ったよりも悪いらしい。そもそも小柄で、事故からの回復がすぐには望めないのだという)

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P ゾッ

P(俺が透の誘いを断っていたら……)

P(もしも、……仮に、だ)

P(愛依が今回の事故の被害者だったとして、体格は悪くないほうだから……怪我からの回復は……)

P(……いや、考えるのはよそう)

愛依「あ、プロデューサー……」

P「愛依……」

愛依「いまの電話って」

P「あ、ああ。大会についてだよ」

P「中止だそうだ。事故にあった子が、数日たってもまだ回復の兆しが見られないみたいでな」

愛依「え? あ、……そっか」

P「せっかく頑張ってきたのに、と思う気持ちもあるだろうけど、こればかりは仕方ない」

P「現実を受け入れて、また1つ1つ仕事をこなせばいいさ」

P「また、ストレイライトの3人で、な」

P「大丈夫。大会の間に愛依はすごく成長したと思うよ」

P「それこそ、……いや、なんでもない」

P「さ、愛依はあと少しでユニット全体でのレッスンだったよな」

P「冬優子とあさひは別々にレッスン場に直接向かうみたいだから、俺もやることあるし、悪いが1人で行ってくれ。っしょ、と……」ガタッ

P「さて、と。コーヒーでも入れてこようかな……」スタスタ

ギュ

P「ぐ」

P(席を離れようとしたとき、突然後ろから袖を掴まれた)

愛依「……プロデューサー」

P「な、なんだ? 早めに行かないとレッスンに遅れ――」

愛依「うちに黙ってること、あるっしょ?」

P「――……」

愛依「らしくないじゃん。そんなの」

愛依「てか、バレバレっつーか……いくらうちがあんまり頭良くないっていっても、そんくらいわかるよ……」

P「……」

愛依「大会のことは、なんていうかさ……残念だったと思うよ。小糸ちゃんが怪我しちゃったことだってすっごく悲しい」

愛依「けど、さ。いまうちがプロデューサーと話したいのは、そういうことじゃないんだよね」

P「愛依。気持ちはわかるけど、ちゃんと時間のあるときに……」

愛依「っ!」

パンッ・・・


456以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/14(日) 02:03:47.34e3lLtyMfO (2/5)

P「ぶっ……!」グラッ

P(想像以上に重たい一撃が頬に与えられた)

P(いまある怒りを遠慮なくぶつけたような、そんな平手による意思表示に思える)

P「く……」

愛依「なんで……なんで……!」

愛依「何も言わずに違うところ行っちゃうなんて、どうしてなん!?」

愛依「うちと、うちらと……プロデューサーって、その程度ってこと!?」

愛依「もちろん、さ……プロデューサーがいなくなっちゃうこと自体もヤだよ?

愛依「けど、それはプロデューサーが決めたことだし、うちみたいなガキが何言ってもしょうがないって、わかってるつもり」

愛依「理由だって、そりゃ気になるけど……うちからは聞かない。聞きたくないし、たぶん聞いちゃいけないのかなって」

愛依「プロデューサーは大人だし」

愛依「うちは、うちらは子どもだから」

愛依「でも……いままであんなに一緒に頑張ってきて、一緒に過ごしてきて……」

愛依「その終わりがこんな形なんて、うちは納得できないから!!」

P「俺が別の事務所に行ったとしても、つながりが切れるわけじゃ……」

愛依「切れるよ! だって、うちらとプロデューサーのつながりって、“アイドルとプロデューサー”だけじゃん!」

愛依「うちが告っても返事くれないし! ……さ」

愛依「ごめん、最後のは単にうちのわがまま。“プロデューサー”に言うことじゃないよね。忘れて」

P「愛依……」

愛依「あ、……そっか。あはは……」

P「な、なんだよ」

愛依「結局、プロデューサーにとってのうちらって、その程度だったってこと、……っしょ?」

愛依「事務所が変わって担当じゃなくなっても気にならない。283プロで自分が仕事をするための道具……」

P「そ、そんなことは……!」

愛依「なに? ちがうん? 別に違っててもいいよ」

愛依「少なくともうちには、そう見えたってだけだから」

愛依「気にしないで」

P「他所に行くのを黙ってたのは謝るよ。本当にすまなかった」

P「っ……止むに止まれぬ事情……、なんだ」

P「ただ、これだけは信じて欲しいんだ」

P「これまでに283プロでみんなとやってきた仕事に嘘はない。プライベートだってそうだ」

P「道具だなんてとんでもない。俺はちゃんとストレイライトの3人を……愛依を……あの子を思って過ごしてきた」

P「それだけは、間違いないんだ」

愛依「うちさ、プロデューサーに聞きたいことがあんだけど、いい?」

P「……なんだ?」

愛依「さっき、なんで誤魔化そうとしたのかなって」

愛依「うちさ、下の子の世話とかもするし、お兄とお姉見てても思うんだけど……歳とかカンケーなしで、後ろめたいことがあると誤魔化して逃げようとするよね」

愛依「プロデューサーもそうなんじゃないかって、うちには見えるっていうか」

P「そ、そんなこと……」

愛依「じゃあさ、なんで明日からこの事務所に来る予定がないわけ?」

愛依「これはただのお話だけど、さ」

愛依「もしプロデューサーがここでうちを見送れば、プロデューサーが会いに来ない限りは、もううちらと会うことってないよね」

愛依「そういうスケジュールじゃん、これ」


457以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/14(日) 02:36:43.28e3lLtyMfO (3/5)

愛依「……冬優子ちゃんとあさひちゃんにも言ってないんでしょ?」

P「……」

愛依「冬優子ちゃんなんか絶対怒るだろうし。チョーこわそうだもんね。それにさ、あさひちゃんだって……プロデューサーが違うとこ行っちゃうって聞いたらそりゃ悲しむに決まってんじゃん」

P「お、俺は……!」

愛依「会うのが怖いだけっしょ? 自分勝手にやって、責められるのが嫌なんでしょ?」

愛依「だから、うまく切り抜けて、時間にカイケツしてもらおうとか思ってたんしょ?」

愛依「違うならちゃんと説明してよ。うちは何時間でも聞くから」

愛依「そのためなら、レッスンさぼってトレーナーさんとか冬優子ちゃんたちにガチギレされたっていい。怖いだろうけど、嫌じゃない」

愛依「そのぶんの責任ならとれるから」

愛依「いまのプロデューサーはさ、……なんてゆーか、無責任だよ」

愛依「きっとアタマだってうちよりずっといいはずで、いままでうちらのことを支えてきてくれて。うちとあの子に付き合ってくれて……良い人なんだと思う」

愛依「それでもさ、……あ~、こんなこと、下の子たちくらいにしか言わないから言いたくないんだけど――」

愛依「――やっていいことと悪いことってあるんじゃないの?」

P「……」

P(何故か……何も言い返す気にはなれなかった。まくしたてて反論することだって、それっぽく言って自分を正当化することだって、きっとできたはずだ)

P(あるいは図星だったのかもしれない。……少なくとも、俺が悪いことに変わりはないのだから)

愛依「プロデューサー……いい加減――」

ヴーッヴーッ

愛依「――……? 電話?」

P(突然、俺のスマホに電話がかかってきた。デスクの上から聞こえる振動音だ)

愛依「仕事のかもしれないし、……って。切れちゃっt――」

P(たぶん、俺にスマホを渡してくれようとしたんだと思う。しかし、愛依は画面を一瞥すると、何かに気づいたように、スマホを俺に渡さず改めて凝視した)

愛依「……」

透『ふふっ……でも、言うわ。Pは――』

愛依「……!」

P「えっと、仕事の連絡かもしれないんだよな? それ」

愛依「……もういい」ボソッ

P「え?」

P(そう言った愛依の声は、ドスが聞いていてとても重たい一撃を食らったかのような衝撃があった)

愛依「あ゛あっ!!」ブンッ

P(そして、ソファーにスマホを投げつけて――)

愛依 ズカズカ

P(――荒々しく立ち去ろうとした)

P「め、愛依……!!」

愛依 クルッ

P「……」

愛依「……っ!」キッ

愛依 スタスタ

P(俺を思い切り睨みつけた愛依は、今度こそ振り返ることなく出て行った)

P「……」

P(ソファーに転がるスマホを拾う。電話はとっくに切れてしまったみたいだが、それに応じてショートメッセージが何通か送られてきていた)

浅倉透<一緒にてっぺん目指してくれること、すごく嬉しいから。

浅倉透<ありがとね。Pは僕を選んでくれるって、信じてた。


458以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/14(日) 03:06:49.04e3lLtyMfO (4/5)

数時間後。

~事務所前~

P「……」

P(最後の仕事を終えて、これから帰路につくところだが)

P(事務所から出て、歩道に立った今……呆然と立ち尽くしている)

P(きっと、俺は間違っている)

P(間違ってしまったんだ)

愛依『会うのが怖いだけっしょ? 自分勝手にやって、責められるのが嫌なんでしょ?』

愛依『だから、うまく切り抜けて、時間にカイケツしてもらおうとか思ってたんしょ?』

P「……」

愛依『……もういい』ボソッ

愛依『……っ!』キッ

P(正直、どうしていいのかわからなかった)

P(自分のどうしようもなさに呆れるのはもちろんだが、呆れたところで次への一手が打てるわけじゃない)

P(頭が良ければすぐに解決するような話でもないと思う)

P(無力感を抱きすぎて、何もする気が起きない――そんな状態になっていた)

P「……とりあえず帰るか」

P(とはいえ、ずっとここに立ち続けるわけにもいかない)

P(俺に引き返すという選択肢はないのだ。物理的にも、精神的にも)

P トボトボ

「――あの、すみません」

「283プロダクションの方でしょうか?」

P「ええ、そうでs……いえ、違いました」

「急にすみません。私――」

P「……関係ありませんので。では、私はこれで……」

「――ストレイライトのプロデューサーを辞める人に興味があるんです」

P「……!?」クルッ

「よかったらお話を伺えないでしょうか?」

P(まっすぐで、綺麗な瞳だった)

P「……ご用件は」

「近くの喫茶店では……いかがでしょう?」


~喫茶店~

P「えっと……それでは改めて自己紹介を……」

P「そうだ、名刺……あ」ガサガサッ

P(現時点で有効な名刺は持っていないんだった……)

「それは結構です。必要ありませんので」

P「そ、そうでしょうか……?」

P「失礼ですが、ええと、名前は……」

「……樋口円香です。よろしくお願いします」

P「樋口円香さん、ですね。私は、ご存知とのことですが……Pと申します」

円香「浅倉透の新しいプロデューサーは……うん、確かに一致してる」ポチポチ

円香「あなたにお話したいことがあるんです。私に手を貸していただけませんか」


459以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/14(日) 03:09:24.63e3lLtyMfO (5/5)

とりあえずここまで。


460以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/14(日) 05:04:59.998EYyghxDO (1/1)

綺麗な円香クルー!?


461以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/14(日) 08:07:54.16wfotSSr2o (1/1)

小糸ちゃんがぐちゃぐちゃに!



462以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/14(日) 13:22:51.48j3ban7g2o (1/1)

このシリーズは円香の可能性を広げまくっている乙!


463以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/15(月) 02:30:11.89fZRYS71uo (1/1)

不憫


464以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/23(火) 23:50:56.20EJYM3XPKO (1/1)

~透の所属する事務所 Pの部屋~

P カタカタ

P「……」

シーン

P「な、慣れないな……」

P(透のいる事務所での待遇は、正直に言えばかなり良いものだった)

P(専用の部屋があり、給料も高い)

P(ただ、アイドルたちがはしゃぐにぎやかさはなく、自分のキーボードを叩く音が部屋に響くのを、不自然に感じている俺がいる)

P「なんか、本当にそれ目当てで移ったって283プロの人たちに思われそうだな……」

P(もっとも、それ以上にクズだと思われていても文句は言えないんだと思う)

P(俺がしたことは、たぶんそういうことだ)

コンコン

P「あ……はい! どうぞ」

ガチャ

透「やっほー」

P「透か……どうしたんだ?」

透「え? 別にどうもしないよ」

P「そ、そうか……」

透「あー……。邪魔、だった?」

P「そういうわけじゃないよ」

P「いつも通りに仕事をしていても、こんなに静かで広い部屋にいるのは、なんだか落ち着かなくてな」

P「知ってる人にいてもらったほうがかえって居心地が良いよ」

P「そこにある椅子、座っていいぞ。適当にくつろいでくれ」

透「ありがと。そうする……っしょっと」

P カタカタ

透 ジーッ

P カタカタ

透 ジーッ

P「……」

透「?」

P「あの……くつろいでいいんだからな?」

透「うん。だから、そうしてるよ」

P「いや、さっきから俺のことをずっと見てるだけだと思うんだが……」

透「Pを見ながらくつろいでる」

P「お、おう」

透「仕事、まだかかりそうなの?」

P「今やってる分はもう少しで終わると思う」

透「そっか」

P カタカタ

透 ジーッ

P「……透」

透 ニコッ

P「はぁ……」


465以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/24(水) 00:36:05.58dgrNlHaQO (1/6)

P カタカタ

P「ふぅ……よし、っと……」

透「終わったの?」

P「ひと通りな」

透「Pの椅子、大きいね」

P「? あ、あぁ……俺にはもったいないくらい良い椅子だよ」

P(実際、頑張れば2人でも座れるくらいに大きく、座り心地も良い椅子を使わせてもらっている)

透「じゃあ、一緒に座ろ」スタスタ

P「え、いや、ちょっと待て何言って……」

透「よっと」ボフッ

P「っとと……」ギギギィッ・・・

P「……」

P(俺の上に――前に?――透が座ってきた)

P「あの……」

透「仕事、ひと通り終わったんでしょ」

P「まあ、そうだが」

透「じゃあ休憩、必要かなって。一緒に休もうよ」

P「いや、透はどうだか知らないけど俺はむしろ落ち着かないというか何というか……」

透「?」

P「誰かが来たらどうするんだ……誤解されるかもしれないぞ」

透「えー、なにそれ。誤解?」

P「そうだよ」

透「大丈夫。誤解じゃないから。僕にとっては」

P「……」

P(良い匂いがするし、なんだか柔らかいし、いろいろと困る。休まる気がしない)

透「Pは、さ……」

透「僕のために、働いてくれてるんだよね」

P「俺は透のプロデューサーだし、そうなるな」

透「僕をてっぺんに連れて行ってくれる……」

透「そうでしょ?」

P「ああ」

透「ふふっ、そっか」モゾモゾ

P「……最早近づきすぎて密着状態になっているんだが、透」

透「いいじゃん、別に」

P「良くないだろ」

透「嫌?」

P「……嫌ってわけじゃないけどさ、プロデューサーとアイドルがこうしてるのはまずいだろ」

P「傍から見ればただイチャついてるだけ――」

ガチャ

円香「何度もノックはしたので入りまs……」

P「――……」

P「樋口さん。これは、誤解だ」

円香「最低」


466以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/24(水) 01:53:58.29dgrNlHaQO (2/6)

透「新しいアイドルの人?」

P「そうだけどそうじゃないというか……なんというか」

P「アイドルは辞めてないけど、今は俺の秘書をしてくれてる……って感じかな」

透「へぇ……」

P「な、なんだよ」

透「別に。なんでもない」

円香「……そろそろイチャつくのをやめたらどうですか」

P「ほら……! だから言っただろ」

透「はいはい、ごめんね」スッ

透「雛菜のとこ行ってるから」

ガチャ

透「またね、P」

バタン

円香「……」

P「お、幼馴染なんだよ、あいつは」

円香「そうですか。私には、それ以上に見えましたけど」

P「だから、誤解なんだって」

円香「まあいいです。“それについては”興味ないので」

P「そ、そうか……」


二週間前。

~喫茶店~

円香「あなたにお話したいことがあるんです。私に手を貸していただけませんか」

P「私が……ですか?」

円香「はい」

円香「この前中止になった大会、覚えていますよね」

P「ええ。……ついさっきまでプロデュースしていたアイドルが出ていましたから」

円香「私は、中止になった原因を知りたいんです」

P「そうですか……。ちなみに、樋口さんはあの大会には出ていたんですか?」

円香「出ていましたよ。あなたのアイドルと一緒のグループになったことはありませんが」

P「それなら、原因については知っているはずだ。少なくとも、樋口さんのプロデューサーやマネージャーなら知っていることですよ」

P「ステージでの事故。そして巻き込まれたアイドルの子の大怪我。原因はそのように伝えられています」

円香「その怪我をした子は……っ、私の幼馴染です」

P「! ……そうだったのか」

円香「それに、あなたが今言ったことは理由であって原因じゃない」

円香「私が知りたいのは、“誰が”あの事故を起こしたのかということだから」

P「ま、待ってくれ! あの事故が人為的なものだって言うのか……!?」

透『今日言いたいのは、お願いじゃないってこと』

透『選択、してもらうから』

透『もし、私のいる事務所に来てくれればあの人は勝ち進める……って言ったら?』

P「……」

P(そんな、ばかげている)

P(それでも、なぜか、あり得ないと言い切れない自分がいた。本当に、なんでだろう)


467以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/24(水) 02:59:18.46dgrNlHaQO (3/6)

円香「大会攻略の一環として自分でいろいろと調べる中で、偶然わかったことがあるんです」

円香「あの大会に来ていたアイドルのリストには、1つだけ、大会に参加していないアイドルのIDがあった」

円香「もちろん、あの日だってそう」

P「でも、それならとっくにその子が容疑者になってるんじゃないのか? 君が調べられることなら、大人にわからないはずがない」

円香「その通り。だから、おかしい」

円香「誰も疑ってない。誰も……理由ばかりを見て、原因が見えてない」

円香「普通なら、そんなはずないのに」

円香「最初は、自分がおかしいんじゃないかと疑うこともありました。正しいのは周りで、間違っているのは私だと」

円香「でも、どんなに考えても……疑うべき点はそれしかなかった……!」

円香「っ、……なのに、小糸があんなことになったいきさつを説明してくれそうな人なんて、誰もいなかったんです」

円香「なんでかはいまでもわかりません」

P「……」

円香「最初にそのアイドルの存在を知ったときは、変だと感じてもそれほど気にしていませんでした」

円香「ただ出入りしているだけならそういうこともあるか、と」

円香「IDも、ゲスト用だったのか、名前がわかるようなものにはなっていなかったので」

円香「そう……誰なのかがわかっていれば……!」

P「というと、名前が重要なのか……?」

円香「名前そのもの、というわけではないですが――」


大会(予選第2回目)当日。

~予選会場 ロビー~

円香『……落し物?』ヒョイ

円香『これ、入講に必要なIDカード……』

円香《何気なく、IDを見てしまう》

円香『って、例のゲスト用ID……!』

円香《なんて偶然》

円香《まあ、だからどうしたって感じ。落し物だし、カウンターに預けるだけ》

円香『落し物です。そこで拾いました』

『ありがとうございます。お預かりしますね』

円香『はい。お願いします』

円香《不思議なこともある……》スタスタ

『すみませ~ん……』

『はい、どうなさいましたか?』

『この辺に~、入るためのカードって落ちてませんか~~?』

『ああ、それならつい先ほど届きましたよ。……こちらでしょうか?』

『やは~! これです~~!」

円香《あれ、この声、この話し方……》

円香《……雛菜?》

『ありがとうございました~』テテテテテ

『よいしょ……っと!』ピッ

ガコン ウィーン・・・

円香『……え』

円香《なんで、私たちでも通れないあのゲートを、あいつはゲスト用のIDで開けられるの……?》


468以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/24(水) 03:14:55.91dgrNlHaQO (4/6)

円香のステージが終わった後。

~グループ2 控え室~

円香『……』

円香《何かが引っかかる……雛菜を見かけてから、嫌な緊張感がなくなってくれない……》

ピロン

円香『メール? 一体誰から……』

『FROM :-----------------------------
 件名 :階段
 本文 :(本文はありません)    』

円香『って、スパム……』

ズキン

円香『う゛っ!?』クラッ

------------------------------------------
マドカ《ここを曲がって……》

マドカ《この階段を下りれば、コイトがいる》

コイト『あっ、マドカちゃん……!』ピョコッ

マドカ『やっぱり……ふふっ』

マドカ『おまたせ……』

コイト『っ!? ま、マドカちゃn……』

マドカ『……?』

ドンッ

ガンッ――ダダダ・・・
------------------------------------------

円香《な、なにこれ……。私の記憶なの?》

------------------------------------------
ヒナナ『もっとお話したかったけど……』

ポンッ

コイト『ぴゃ!?』

ヒナナ『“また今度”ね~、コイトちゃん』
------------------------------------------

円香《これは私の記憶じゃない。雛菜と小糸だけの記憶。でも……》

円香《ま、まさか……!》

円香《いま私が思ったことは、呆れるほどにばかばかしくて――》

円香《――恐ろしいほどに現実味を帯びていた》

円香 ダッ


~ステージ前~

円香『はぁっ……はぁっ……』タッタッタッ

円香『……!』ピタッ

円香『そんな……』

円香『間に合わなかった、なんて……』ペタリ


469以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします2021/03/24(水) 03:19:48.09O20Feq+a0 (1/1)

VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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470以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/24(水) 03:36:38.65dgrNlHaQO (5/6)

円香「こんなこと、人に話したって信じてもらえるわけがない……」

円香「それでも、私は、雛菜がこの件に深くかかわっていると確信しています」

P「……俺に、あ、私に行き着いたのは何故でしょうか?」

円香「敬語なら大丈夫です。あなたに声をかけたのは――」


~ステージ(予選)外 通路~

円香 スタスタ

ガチャ

バタン・・・

円香『……』フラフラ

円香 ペタン

円香 ポロポロ

円香『小糸っ……!』グッ

円香『ごめんね、ごめんね……』ポロポロ

ピロン

円香『今度は何……!?』

『FROM :----------------------------------------
 件名 :283プロを離れる和泉愛依のプロデューサー
 本文 :近づけば、知りたいことがわかるかも    』


円香「同じアドレスから、そんなメールが来たんです」

円香「その後、何度も私からメールを送ったのですが、返信は来ませんでした」

円香「それでも、あのメールは私の味方だと思った。あんなことがあったから……信じてみようと思ったんです」

円香「他に味方なんて、いなかったから」

P「そういうことだったのか……」

円香「ちなみに、あなたは283プロを離れた後、どうするんですか」

P「もう正式に決まってることだし言っても問題ないか……これからは、浅倉透をプロデュースすることになる」

円香「……本当、うんざりするほどドンピシャ」

P「?」

円香「雛菜は、その浅倉透と同じ事務所なので」

円香「メールの通りにあなたに近づいて正解でした」

P「おう……でも、だからって俺にどうしろと言うんだ?」

P「君が――樋口さんが幼馴染の福丸さんのために真実を知りたいというのはわかった。でも、内部の情報をリークするわけにはいかない」

P「協力できるかと言われると、正直厳しいと思う」

円香「はい。それはわかっています」

P「え? そ、そうか?」

円香「だったら、なってしまえばいいでしょ。私も、内部の人間に」

P「どういうことなんだ……?」

円香「私を秘書として雇ってください。それくらいのお願いはしてもいいでしょ。きちんと、あなたの仕事をサポートしますから」

P「待て待て、君を秘書として雇えたとしても、樋口さんが今いるプロダクションとの所属アイドルとしての契約はどうなるんだ?」

円香「事務所なら辞めてきました。格好良く言えば、フリーランスです」

P「……」

円香「それくらい、本気なので」

P「手伝ってくれる人がいるのは助かるし、樋口さんがそれでいいなら……わかった、協力するよ。俺も、そこまで事情を聞いてしまっては、無関心を装えないからな」

円香「ありがとうございます。これから、よろしくお願いしますね」


471以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/24(水) 03:40:18.17dgrNlHaQO (6/6)

とりあえずここまで。


472以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/24(水) 05:45:43.53tQyfb/KDO (1/1)

なんかややこしくなってきた

つか、たしかにカナ表記だったなぁ


473以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/24(水) 07:00:23.57iKv9Uv6jo (1/1)


再びノクチルルートへ


474以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/24(水) 10:27:20.10/qrWip9oO (1/1)

おつおつ
トオルは何を…?


475以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/29(月) 02:45:26.54De3ugYjcO (1/5)

二週間後に戻る。

~透の所属する事務所 Pの部屋~

円香「さっき、あの子……「雛菜のとこ行ってるから」って言っていましたね」

P「ああ。2人とも、仲が良いみたいだ」

P「仲が良すぎて同じユニットにしてもらえなかったとかいう話もあるくらいだからな」

円香「そう……」

P「やっぱり、雛菜ちゃんのこと……」

円香「……証拠は何もありませんが、それでも、不思議な体験と自分の直観が、そう言ってるんです」

円香「自分でも、呆れるほど筋道立ってない」

P「いや、ロジカルじゃないとしても、俺にもわかるんだ」

P(透と雛菜ちゃん……あの2人には間違いなく“何か”がある)

P(看過できない“何か”が)

P(それをきちんと説明できない、あるいはしたくないという思いがあって、なかなか解決できないというのが現状だろう)

P(原因として思い浮かぶものが、常識的な見方をすれば荒唐無稽でしかないんだから)

円香「あの2人に関する資料をいただけますか」

P「……一応、プライバシーだけどな」

円香「はぁ……私が何のためにあなたに近づいたと思ってるんです?」

円香「それに、秘書が資料を整理するなんて、別におかしなことではないでしょ」

P(ここまで来たら、俺も腹をくくるか……)

P「まあ、それもそうだな」

P「まとめて渡せるようにしておくよ。明日まで待ってくれないか」

円香「わかりました。お待ちしています」

P「任せてくれ」

グゥ・・・

P「?」

円香「っ!?」

P「……」

円香「……っ」

円香「……」

P「……あー」

P「そういえば、もう昼だったな」

P「俺は結構腹が減ってるんだが、その、なんだ……」

P「樋口さんも一緒にどうかな。ランチとか」

円香「……私のために格好つけないでください」

P「腹が減ったのは俺も同じだったし、気にしないでくれ」

P「で、どうかな?」

円香「……はぁ」

円香「そうさせてもらいます」




476以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/29(月) 03:09:22.21De3ugYjcO (2/5)

~レストラン(洋食)~

P「好きなだけ食っていいからな」

円香「……」

P「ま、まだ女子高生なんだ。食べ盛りだろう、きっと」

円香「……はぁ」

P「! こういう店じゃないほうがよかったか?」

円香「いえ、そういうわけではないです」

円香「奢ってもらう身で、わがままなんて言うつもりないので」

P「そ、そうか……」

円香「さっきから、ずっと無理してる」

P「む、無理?」

円香「あなたにとって扱いにくい女なんですね、私は」

P「何を言うんだ……。まあ、確かに俺が今まで接してきた子たちは――」

P(冬優子、あさひ、……愛依)

P「――っ」

円香「すみません。変なことを言いました。謝ります」

P「いいんだ……気にしないでくれ」

P「ほら、とりあえず何を頼むか決めよう」

円香「はい」


P「その……福丸小糸さんとは、幼馴染だって言ってたよな」

円香「……はい」

P「雛菜ちゃんとも」

円香「まあ、そうなります」

P「そして、透は俺の幼馴染、か……」

円香「不思議」

P「?」

円香「偶然にしては出来過ぎてるような、そんな感じ」

P「……確かにな」

円香「今更、私たちは引き返せないってわかってる。それでも――」

円香「――自分たちが本当に立ち向かうべきは何なのか、それがわからないんです」

P「……」

円香「雛菜を問い詰めれば解決するのか、あるいは浅倉透を……」

P「樋口さんが言ってたあのメール……あれが何だったのか、誰が送ったものなのか、そういったことがわかれば、解決に近づくかもしれないな」

P「話を聞いてる限り、メールの送り主が本質的な何かを知っているのは明らかだと思うんだ」

円香「あのメールを受け取ったときに見た“自分の知らない記憶”……あれは、一体」

P「そうだ。それもあった」

P「わからないことは山積みだな……」

P「……はぁ。嘆いても仕方ない、か!」

P「1つ1つ、できることからやっていこう」

円香「ふふっ」

P「え?」

円香「いえ、独り言の多い人だと思っただけです」


477以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/29(月) 03:30:03.41De3ugYjcO (3/5)

数日後。

~テレビ局~

透「じゃ、行ってくる」

P「ああ。やらかすんじゃないぞ」

透「えー? ふふっ、何それ」

P「お前を見てると、なんだかそれだけは言わないといけない気がしてな」

透「もしかして、僕のこと信用してない?」

P「信用はしても、心配はするよ」

P「自分のアイドルのことを気にするのは、プロデューサーとして当然のことだからさ」

透「……そっか」

透「わかった。ありがと」

透「今度こそ、行ってくるから」

P「行ってらっしゃい。頑張れ、透」


P「特番の収録で、終わるまで数時間はある、か……」

プシュ

P(その辺の自販機で買った缶コーヒーを開け、飲みながら数日前のことを考える)

P『わからないことは山積みだな……』

P『……はぁ。嘆いても仕方ない、か!』

P『1つ1つ、できることからやっていこう』

円香『ふふっ』

P『え?』

円香『いえ、独り言の多い人だと思っただけです』

P(あの子、ちゃんと笑うんだな……)

P「……」

P(樋口円香の第一印象は、まっすぐで綺麗な瞳を持つ女の子、だった)

P(でも、接していくうちに、彼女の弱さのようなものが時々垣間見える気がして――)

円香『誰も疑ってない。誰も……理由ばかりを見て、原因が見えてない』

円香『普通なら、そんなはずないのに』

円香『最初は、自分がおかしいんじゃないかと疑うこともありました。正しいのは周りで、間違っているのは私だと』

円香『でも、どんなに考えても……疑うべき点はそれしかなかった……!』

円香『っ、……なのに、小糸があんなことになったいきさつを説明してくれそうな人なんて、誰もいなかったんです』

P(――きっと――)

円香『今更、私たちは引き返せないってわかってる。それでも――』

円香『――自分たちが本当に立ち向かうべきは何なのか、それがわからないんです』

P(――独りでは戦えないんだ。だから、俺を頼ってくれている)

円香『あなたにお話したいことがあるんです。私に手を貸していただけませんか』

P(俺が、一緒に戦ってやらないといけないんだ)

P(これも、根拠もロジックもない、荒唐無稽な考えだが――)

P(――彼女の力になれるのは自分しかいない、そう思えた)

P「……っし! 頑張んないとな、俺も」

P(そういえば、近くに共用のテレワーク用スペースがあったな)

P(時間はあるし、外でできる仕事はそこで片付けるか……)


478以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/29(月) 04:02:33.00De3ugYjcO (4/5)

~テレワーク用スペース(共用)~

P カタカタ

P(うん、悪くないな。こういうのも)

P(それに、共用スペースっていうのが、なんだか……もう少し賑やかになれば――)

あさひ『わーい! 冬優子ちゃんの隣ゲットっす!』ダキッ

冬優子『だ、抱きつくことまでは許可してないわよ! ちょっとって言ったじゃない! ……もう』

愛依『いいねいいね~、見てて微笑ましいわ』

P『なんだかんだで仲良いんだよな』

P(――“みんながいるあの場所”みたいに、なるんじゃないかって)

はづき『プロデューサーさんは、優しい方です』

P(そう、思えて……)

P ポロ・・・

P「っ!?」

P(な、何泣いてるんだ、俺は……)

P(俺には、そんな風に涙を流す資格なんて、ないのに)

P「くっ……くそ……」ポロポロ

P(なんで、止まらないんだ……!)

「すみませ~ん。隣のここ、使ってもいいですか~?」

P「え? あ、はい……」グスッ

P「どうぞ」

「ありがとうございます~」

P(……仕事しないとな)


P カタカタ

ピトッ

P「うわっつぁ!?」

P(き、急に熱い何かが顔に!?)

P「……って、コーヒー?」

P(一体誰が――)

「ったく、なんでずっと隣にいんのに気づかないのよ」

P(――お前は)

「久しぶり……よね。うん」

「……」

「あー……、もう! なんで何も言わないのよ! 久々の再会なんだから、もっと喜んだらどうなの?」

P「いや、その……なんだ」

P(ちょうど、色々と思い出していたんだ、なんて……)

「って、あんまりおっきな声出すと注目浴びるわよね。声抑えないと……」

「まあ? 変装はもちろん完璧、だけどね」

P「ははっ、そうだな。それに、その口調ならバレないだろう」

「~~~っ! ほんっと、むかつくわね!」

P(こんなやり取りをしたのは、本当、いつぶりなんだろうか。その“完璧な変装”越しでも俺には相手が誰なのかわかっていたから、それが成立したんだろう)

P「テレワーク用のスペースで会えるなんて思ってなかったよ。久しぶりだな――」

P「――冬優子」


479以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/29(月) 04:05:50.41De3ugYjcO (5/5)

とりあえずここまで。


480以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/29(月) 07:21:07.23qgoqdkSDO (1/1)

わぁ……何が起きる?

期待乙


481以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/03/29(月) 10:28:26.950EEWdSPCo (1/1)


ついにきた


482以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/03(土) 12:51:17.27LCiEfIRm0 (1/1)

勝ったな


483以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/03(土) 21:26:28.24kDydBCHT0 (1/1)


まさか公式のエイプリル企画で似たシステムが来るとは思わなんだ


484以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/05(月) 02:24:44.82NfrDCRHmO (1/4)

冬優子「突然いなくなったからどうしてるんだって思ったけど……無駄な心配だったわね。あーあ、損した!」

P「……心配してくれてありがとう」

冬優子「っ、心配って言ったってちょっとだから……! ほんとに、……ちょっとなんだから」

冬優子「い、忙しくてあんたのことなんて考えてない時間の方が長かったわよ!」

P「ははっ、……はいはい。わかってるよ――」

P(――冬優子が俺のことを本気で心配してくれていたんだってこと)

P「冬優子は……その、怒ってはいるのか?」

P「俺はお前たちを、はづきさんを、社長を、裏切ったんだぞ」

冬優子「ふゆがあんたを怒って、それで何か解決するわけ?」

P「それは……」

冬優子「……いいのよ」

P「!」

冬優子「いいの。あんたが選択したことだしね」

冬優子「いまはこうして、見ててあげるわよ」

P「なんで――」

冬優子「?」

P「――なんで、そんなに優しいんだ?」

冬優子「だーかーらー、……そんなんじゃないわよ、もう」

冬優子「ほんとに、そんなんじゃないの」ボソッ

冬優子「ま、あんたにはわからないだろうけどね」

P「そ、そうか……」

P(そういえば……)

P「冬優子はなんでこんなところにいるんだ? ここはアイドルが来るような場所じゃないと思うんだが」

冬優子「ふゆはまだ学生ってこと、忘れたの?」

P「あ」

冬優子「課題をするのにちょうどいいのよ、ここ。テレビ局と近いし、収録がある時はよく来てるってわけ」

冬優子「それに……まあ、最近はパソコンを使うことが多いから……」

P「?」

冬優子「しゅ、趣味的なやつよ! 聞き流しなせっての」

冬優子「……と、とにかく! そういうわけでここに来る理由ならあるのよ、わかった?」

P「ああ。アイドル以外のこともちゃんとやってるんだな」

冬優子「当然でしょ。ふゆのプロデューサーだったのに、そんなことも知らないの?」

P「いいや、知ってるよ。再確認できて嬉しかっただけだ」

冬優子「そ、そう……?」

冬優子「あんたって、……ふふっ」

P「俺はさ……正直、冬優子に会うのが怖かったんだ」

愛依『……冬優子ちゃんとあさひちゃんにも言ってないんでしょ?』

愛依『冬優子ちゃんなんか絶対怒るだろうし。チョーこわそうだもんね。それにさ、あさひちゃんだって……プロデューサーが違うとこ行っちゃうって聞いたらそりゃ悲しむに決まってんじゃん』

愛依『会うのが怖いだけっしょ? 自分勝手にやって、責められるのが嫌なんでしょ?』

愛依『だから、うまく切り抜けて、時間にカイケツしてもらおうとか思ってたんしょ?』

P「っ」

P「こうしてまた、普通に話せているのがまだ少し信じられないくらいには」


485以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/05(月) 02:56:34.40NfrDCRHmO (2/4)

冬優子「ふーん、あんたにとってのふゆはそういう感じなんだ」

P「い、いや、怖いだけだなんて思ってないからな!?」

冬優子「そうは言ってないじゃない!」

冬優子「……さっきも言ったでしょ。いい、って。あんたの選択だ、って」

冬優子「裏切ったとか思ってるの、たぶん愛依とあんただけよ」

P「そうなのか……? あ、あさひは?」

冬優子「さあね。“あいつはいつでもあいつ”よ」

冬優子「アレが考えてることなんてわからないわ」

P「……」

冬優子「はぁ……過ぎたことを考えたって仕方がないでしょ」

冬優子「いまできることをやればいいんだから」

冬優子「あんた、ふゆより大人なんだから、もっとしっかりしなさいよね」

P「確かにな……ははっ、大人である俺が学生に言われるのは情けない限りだが、その通りだ」

P「少し気持ちが楽になったよ」

冬優子「らしくないのよ、いまのあんたは」

P「そうかもな。自分を見失っていた」

P「それから、前を向くことも忘れていたんだと思う」

P「ありがとう、冬優子」ニコッ

冬優子「!」

冬優子「れ、礼を言われるほどのことは……してない……わよ」

P「そんなことはない。こうして冬優子に会えていなかったら、俺は虚像に怯えながら前を向くことだってできなかったはずだ」

P「だから、礼を言いたくもなるんだよ」

冬優子「……調子狂うわね。話題を変えさせてもらうんだから」

冬優子「あんた、いまは浅倉透のプロデューサーしてるんだってね」

P「ああ、よく知ってたな。まだ移って日も浅いのに、行った先の事務所だけじゃなくて、担当アイドルまで知ってるなんて」

冬優子「まあね。それに、さっき、あんたとその子がテレビ局で一緒にいるの見えたし」

冬優子「ここに来る前は収録だったの。その帰りにたまたま見たってだけよ」

冬優子「話を戻すけど、その……調子は、どうなのよ」

P「どうって言われても……まあ、普通だぞ?」

冬優子「283プロじゃないところに行って何も変化がないってことはないんじゃないの」

P「変化……あ」

P「秘書がいるよ、今は」

冬優子「ひ、秘書!?」

P「お、おう……」

冬優子「あんた秘書なんて雇ってナニさせてんのよ!」

P「何って……そりゃあ、手伝ってもらってるだけだぞ」

冬優子「手伝いって……! あんなことやこんなことさせてるとか、さ、最ッ低……!」

冬優子「どうせ自分用の部屋とかもらって立派な机と椅子も用意されてるんでしょ!?」

P「よ、よくわかったな……」

冬優子「それで机の中に秘書を潜らせてるとか……」

P「待て待て、冬優子はきっと思い違いをしている。たぶん読んでいる本の内容が偏っているせいだ」

P「仕事の手伝いをしてもらってるんだよ。当たり前だろう」

P「自分から俺の秘書になりたいと言ってきてくれたんだ。ちょうど俺が283プロを去った直後に、な」


486以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/05(月) 03:27:39.35NfrDCRHmO (3/4)

冬優子「……! 随分と不思議なタイミングじゃない」

P「それは俺も思ったよ」

P(もっとも、不思議なのはタイミングだけじゃないが……)

P「アイドルの子で、事務所を辞めてきたとか言ってたぞ」

冬優子「そう……」

P「まあ、色々と訳有りではあるかもしれないな」

P「それでも……まあ時々手厳しいことを言われるが……優しい子だよ」

P「よく手伝ってくれていると思う。俺も、その頑張りには応えたいって思うんだ」

P(彼女の弱さを支えて、求める真実を一緒に見つけるために)

冬優子「なんだかんだ、うまくやってんのね」

P「なんとか、な。でも、まだまだこれからだと思う。それこそ、冬優子の言う通りに今できることを確実にやって――」

P「――前を向いていかなきゃいけないんだ」

冬優子「この短時間で随分とイキイキしちゃって……ま、それならいいわ」

冬優子「そのうち、ふゆたち全員に挨拶しに来なさいよ」

冬優子「愛依のことも……できる限りなんとかしてみるから」

冬優子「あさひだって、あんたのことが好きだから一緒にやってこれたの。それを忘れんじゃないわよ」

冬優子「繰り返しだけど、裏切ったとか思わなくていいから」

冬優子「あそこは、あんたの居場所なの。これまでも、これからも、ずっとね」

P「冬優子……」

冬優子「ちょっと話しすぎたわ。じゃ、ふゆはもう行くから」カタカタ

冬優子「シャットダウンして……っと」

冬優子 ガサゴソ

冬優子「……」

冬優子「また、会うんだからね」

P「ああ」

P「283プロが俺の居場所だって言ってくれた冬優子の気持ちも忘れない」

P「また、な」

冬優子 ヒラヒラ

P「……」

P(久々に見届ける後姿がそこにはあった)

P(しかし、同じなのは見た目だけで)

P(その背中から伝わってくるものは、以前とは違っていた)

冬優子『なんでもないわよ。ふふっ』クルッ

冬優子『……明日からも、お仕事頑張りましょうねっ。プロデューサーさん!』

P(あの頃が、なんだかとても昔のことのように感じられる)

P(それでも、決して忘れたわけじゃない。むしろ、鮮明に覚えている)

P(あの時と今は確かに違うが、変わってしまった、のではなく、変わることができた、んだろう)

P(成長を見届ける親というのは、こういう気持ちになるものなのかもな)

ヴーッ

P「っと、メッセージか」

樋口円香<頼まれていた雑務、終わりました。他にも伝えることはありますが次に会ったときにします。直接話したほうが良いと思うので。

P「了解、ご苦労様、っと……送信」ポチッ

P(これが、“俺の今”……なんだな)


487以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/05(月) 03:36:14.53NfrDCRHmO (4/4)

とりあえずここまで。

予想以上に忙しくなってしまい、予定よりも進行が遅れています。すみません。

ここでのお話自体は着実に完結へと向かっているので、読み続けてくださるという方はこれからもよろしくです。


488以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/05(月) 04:48:34.34e2FicstDO (1/1)

乙です

やはり冬優子はいい女だ


489以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/05(月) 06:04:50.03xW93G43zo (1/1)




490以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/06(火) 00:39:45.25ZP2CzGiEO (1/7)

>>1です。まずは訂正から。

>> 訂正:

冬優子「しゅ、趣味的なやつよ! 聞き流しなせっての」
→冬優子「しゅ、趣味的なやつよ! 聞き流せっての」

失礼しました。


491以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/06(火) 01:06:49.21ZP2CzGiEO (2/7)

同日。

~透の所属する事務所 Pの部屋~

円香「領収書は……確か」

円香 ガチャガチャ

円香 ガラララ

円香「そう、ここ……」

円香 ガサゴソ

円香「……これで全部」

コンコン

円香「? はい」

「失礼します~」

円香(この声って……)

「あは~、円香先輩だ~~」

円香「……雛菜」

雛菜「うん~、雛菜だよ~~」

円香「……」

円香(思い出すのは、ステージの上の血の色――)

円香「――っ」

円香(平常心……平常心……)

雛菜「あれ~? 透先輩いないの~~?」

円香「あの子ならいない。今日は仕事でプロデューサーとテレビ局に行ってるから」

雛菜「そうなんだ~。ざんね~~ん……」

円香「日を改めれば?」

雛菜「まあ、そうなんだけど……」

雛菜「……雛菜、円香先輩ともお話したいな~って」

円香「……」

雛菜「だめ~?」

円香「仕事の邪魔……しないなら、別にいいけど」

雛菜「わかった~。気をつけるね~~」

円香(聞き出すには絶好のチャンス……でも)

円香(突然のことで、どうしていいのかわからない)

円香(ここは適当に相手をして、次に備えてからまた話せばいいかも)

円香 カチャカチャ

雛菜「円香先輩は、アイドル続けないの~?」

円香「たぶん、続ける」

円香「でも、いまは他にやりたいこと……ううん、やらないといけないこと、あるから」

雛菜「そっか~」

円香「あんたこそ――雛菜こそ、レッスンとか仕事とかないわけ?」

雛菜「あ~、それ聞く~~?」

円香「?」

雛菜「雛菜、活動休止中だから――」

雛菜「――いまは透先輩の付き人だよ~」

円香「そう……ていうか、付き人ならこんなとこにいないで、テレビ局にいなきゃ駄目でしょ」


492以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/06(火) 01:29:52.72ZP2CzGiEO (3/7)

雛菜「うん! だからいまはサボりだよ」

円香「呆れた」

雛菜「いまはあのお兄さんがいるし、雛菜がいる必要なんてないんだけどな~」

円香「どういうこと?」

雛菜「前のプロデューサーも、マネージャーも、透先輩の面倒なんてちゃんと見てなかったから~」

雛菜「それに比べて、お兄さんなら、ちゃんと、いつでも面倒を見てくれるでしょ~? 幼馴染だしね~~」

円香「……それで、雛菜は働かずにお金をもらう金食い虫をやってるってこと」

雛菜「ひど~い。まあ、そうだけどね~~」

円香(やっぱり、おかしい)

円香(あまりにも出来すぎてる)

円香(あの人がこのプロダクションに来て浅倉透のプロデューサーになれば、雛菜は晴れて本当の意味で自由の身……)

円香(……雛菜に人事を動かせるとは思えないけど、偶然ではない何かがあるような気がしてならない)

円香「なんで活動休止中になったわけ?」

雛菜「言われちゃって~……お前は態度がなってないから、アイドル休んでしばら透先輩の付き人でもやってろ~~だって」

雛菜「しかもアイドルに復帰しても絶対に透先輩と同じユニットにはしてやらない~とか言われて……こんなのしあわせ~じゃない~~」

円香「……」

円香(それも、どこまでが本当なんだか)

円香「自由になれたなら、好きなとこにいけばいいでしょ。ここに居ても楽しくないと思うけど」

雛菜「別にそんなことないよ~?」

雛菜「円香先輩と一緒でも、楽しい~ってなれると思う~~」スタスタ

円香「そう? 私たち、そんなに仲良かったっけ」

雛菜「仲良くなればいいと思う~」スタスタ

円香「え……」

円香(書類の整理をしながらで、雛菜の方をあまり気にしてなかった)

円香(気づけば、雛菜は私の目の前にいて――)

雛菜「円香せんぱ~い♡」ズイッ

円香(――私は肩に手を置かれて、雛菜の顔が耳元へ近づくのをただ感じていることしかできなかった)

雛菜 スゥ・・・

円香(雛菜が、私の耳元で何かを呟こうとしている気がした)

雛菜「……」

円香「……」

雛菜「……やは」

雛菜「やっぱ、いまはいいや~」パッ

円香「?」

雛菜「そのうち、また……」ボソッ

円香「雛菜……?」

雛菜「ううん、なんでもない~」

雛菜「雛菜、そろそろ行くね?」ガチャ

円香「……」

ギィィ

ギィ・・・ピタッ

雛菜「……ごめんね」

ガチャン


493以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/06(火) 01:34:35.23ZP2CzGiEO (4/7)

>>490 訂正:

>> 訂正:
→>>484 訂正:


>>491 訂正:

同日。
→同日。数時間前。


494以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/06(火) 02:04:35.33ZP2CzGiEO (5/7)

翌日。

~透の所属する事務所 Pの部屋~

P「それで、昨日言ってた「他にも伝えること」っていうのは、何なんだ?」

円香「大した情報かどうかはわかりませんが、それでも、話したほうがいいと思ったので」

円香「雛菜に関することです」

P「! ……そうか」

円香「あの子、いまは活動休止中らしいんです」

P「え!? そうなのか?」

P「俺もあの子について少し社内のデータを調べたことがあるんだが……そんなことは書いてなかったと思うぞ」

円香「雛菜が言うには、上司みたいな……誰かから口頭で通達を出されたみたいで」

円香「どこまで本当かは知りませんが」

円香「それで、いまは浅倉透の付き人ということになっているようですよ」

P「でも、雛菜ちゃんは透の仕事についてきたことなんてないぞ? 俺がいつも透といるんだから、これは間違いない」

円香「それはあなたがここに来てからの話でしょ」

P「あ……」

円香「雛菜は付いてきてないんじゃない。付いていく必要がなくなっただけ」

円香「あなたという、浅倉透の……プロデューサーであり幼馴染である面倒見の良い存在があるおかげで」

円香「あの子はいま、正真正銘、自由の身なんです」

P「……」

円香「まあ、仕事って言われても本人的に楽しくなければやらないって自白してましたし、あなたがこの事務所に入る前もサボっていたかもしれませんが」

円香「とにかく、あの子の行動範囲の広さについては、これで説明がつきました」

円香「私たちが認識した段階では既に……市川雛菜は事実上アイドルではなかった」

P「まさに自由奔放……か」

円香「……」

P「あとは、雛菜ちゃんが事故発生時に現場――もとい舞台装置周辺にいたことを説明できれば……」

円香「少なくとも、雛菜が予選会場にいたことははっきりしています――」

『よいしょ……っと!』ピッ

ガコン ウィーン・・・

円香『……え』

円香《なんで、私たちでも通れないあのゲートを、あいつはゲスト用のIDで開けられるの……?》

円香「――私がこの目で見ているので」

円香「裏方の人のルートで入ったことも」

P「あのルートでもアイドルたちがいる方面へはいけるはず……だから、単なる面会だと言われたらそれまでだ」

P「せめて、舞台に向かったということがはっきりすればなぁ」

P「出場していないアイドル――というか雛菜ちゃんが舞台に行くのはあり得ないことだし」

P「舞台付近にいた関係者に聞き込みをするのは……駄目、だな」

円香「もしそういう人たちが雛菜を見ていれば、すぐに気づいてその場から追い出すはずなので」

円香「そうなっていないということは、たぶん聞き込みは徒労に終わるかと」

P「……これは、参ったな」

P「とはいえ、だいぶ状況と情報は整理されてきただろう」

P「今はとりあえず、着実に前へと進んでいることを喜ぼう」

P(今できることを確実にやって前を向く――俺はやるよ、冬優子)


495以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/06(火) 02:34:27.27ZP2CzGiEO (6/7)

同日。夜。

~透の所属する事務所 Pの部屋~

P「……ふぅ」カタカタカタッ

P(今日は残業、か)

P(樋口さんが帰ってから早数時間……この前の透の仕事に関して、仕上げの業務がなかなか終わらないでいた)

P(別に透がやらかしたとかではない。むしろ、普通によくやってくれていた)

P(仕事の量を計れなかった俺のミスだ)

P「まあ、それもあと少しで……」カタカタ


P「……っし、終了!」タンッ

P「ん゛んっ、はぁ」

P(伸びをしてから、一呼吸)

P「あ、そういえば」

P(今日はさっきまでやってた仕事に夢中で、メールの受信ボックスを確認しないで放置してたな)

P「どれどれ……」

P(多くは形式的な連絡や見る必要のないお知らせだが――)

P「……これ」

P(――1つ、しばらく目を離せそうにないものが届いていた)

P「283プロ和泉愛依との共演……見た目とのギャップが視聴者の……」

P「メールの差出人は……はづきさんだ」

P「“283プロの和泉愛依”……か」

P(あれだけ距離の近かったアイドルなのに、その文字列を見ただけで、埋めようのない溝のようなものを感じてしまった)

冬優子『裏切ったとか思ってるの、たぶん愛依とあんただけよ』

冬優子『愛依のことも……できる限りなんとかしてみるから』

冬優子『繰り返しだけど、裏切ったとか思わなくていいから』

P「冬優子……」

P(今できることをやって、前を向く――それはあくまでもスタート地点に立つというだけのことだ)

P(そこから、自らの意志で前に進まなければならない)

P(そうして、はじめて時計の針を自分で進めたことになる……きっと、そういうことなんだろう)

P「……よし、やりますか」

P カタカタ

P(はづきさんへの返信メールの下書きを書く――愛依との仕事を請けるのだ)

P(俺は考えなきゃいけない。冬優子が言ったことの内容を、はづきさんがこの仕事を提案してくれたことの意味を――)

P(――そして、愛依の気持ちを)

P(樋口さんと目指すべき真実がある)

P(でも、忘れちゃいけない)

愛依『それでもさ、……あ~、こんなこと、下の子たちくらいにしか言わないから言いたくないんだけど――』

愛依『――やっていいことと悪いことってあるんじゃないの?』

P(俺は、まだ愛依に答えられていないし――)

P『め、愛依……!!』

愛依 クルッ

愛依『……っ!』キッ

P(――応えられてもいないんだから)


496以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/06(火) 02:37:43.12ZP2CzGiEO (7/7)

とりあえずここまで。


497以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/13(火) 11:58:25.03OmrtrW1uo (1/1)


ノクチル勢は謎が謎を呼ぶな


498以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2021/04/13(火) 12:33:01.68PeQPyGEcO (1/1)

おつおつ
復活よかった……!