112020/06/23(火) 01:32:14uXw/wEBo (1/5)

~集団面接中~


面接官(俺くらいの面接官だと、第一印象だけでソイツの良し悪し分かっちゃうんだよね~)

面接官(第一印象で、普通感しか出せないヤツは無価値。存在意義なし!)

面接官(ま、もう不採用決定だけど、形だけでも面接しなくちゃ。めんどくさ~)


面接官「じゃぁ君の趣味を教えてください」


212020/06/23(火) 01:34:48uXw/wEBo (2/5)


男「はい。僕の趣味は文芸部で行っている読書と、執筆活動です」

面接官(あーあ、読書と執筆とか、趣味までくだらないーなぁ。何もおもしろくない…)

面接官(そんな地味じゃ何処でも通用しないっての!もっと変わったこと言えや!)

面接官(よーし、ここは人生の先輩として、社会の厳しさを教えてやろう!)


面接官「へー。そうなんだwww」

男「はい」


312020/06/23(火) 01:44:13uXw/wEBo (3/5)

面接官「ちなみに、どんなジャンルのお話を書くの?長編?」

男「いえ、ショートショートですね。星新一さんみたいな、まとまった短編をいくつも」

男「ジャンルとしては、冒険活劇にギャグ、ラブコメにミステリーなど、とにかく色んなものを書いています」

男「文芸部の仲間からは、『その発想は有ったけど無かった』とか、よく誉められます」


面接官「あー、ショートショート! 星新一か、良いよね~!」

面接官(つーか何だソレw 誰だよ星新一www)


面接官「んー、でもな~」

男「はい?」


412020/06/23(火) 01:45:21uXw/wEBo (4/5)


面接官「短編で、色んなジャンルのものを書くとかは良くないよね~」

男「そ、そうですか?!」

面接官「趣味はともかく、仕事ではアレコレ手を出すのは間違いだから」

男「は、はぁ……」


面接官「やっぱり専門性が大事なんだよ、社会ではさ!」


面接官「いわゆる集中と選択だね。これと決めた物をトコトンやり抜く、そういう姿勢でないと絶対にダメ!」

男「は、はぁ……」


512020/06/23(火) 01:47:07uXw/wEBo (5/5)

面接官「そうだよ。趣味が小説って言うんなら、どうして小説を仕事にしないのさ?」

男「えっと、それは、あくまで趣味ですし、出版業界は狭き門ですし、本業にするのは……」


面接官「そういう事なんだよね!」

面接官「中途半端に手を出しても、意味がないんだよ」

男「は、はい……」


面接官「最近の若い子はさ~、どうしてこうもブレちゃうのかなぁ~」

男「……」(涙目)


612020/06/24(水) 07:01:35hmTTPwaA (1/10)

面接官「じゃ、お隣のイケノメン太郎くん、君の趣味は何ですか?」

イケメン「ボクですか?! ボクの趣味は、ずばり組織運営です!」

面接官「組織運営!?」

男「組織運営?!」

面接官(アタリきたーっ!)

男(な、なんかスゴい……)


面接官「えっと、もうちょっと詳しい話いいかな?」

イケメン「ええ、どうぞどうぞ!」


712020/06/24(水) 07:04:24hmTTPwaA (2/10)


面接官「その、組織運営とかは具体的にどんな事をしてるの?」

イケメン「ええ、具体的には幾つもの大学サークルの運営に関わっています!幽霊部員とじゃじゃなく!」

面接官「おおっ、いいね!」


イケメン「テニスサークルは勿論、ゴルフにバスケ、水球にキャンプ。囲碁サッカーなど、17個ものサークル運営に関与しているんです!」

イケメン「あ~、文芸部にも少しだけ関わってますね~。いいですよね、読書とか!」

男「は、はい……」


面接官「うんうん、優秀だね~」


812020/06/24(水) 07:06:27hmTTPwaA (3/10)


面接官「やっぱり、若いうちはチャレンジだよね!」

イケメン「そうです、人生は一度きり。沢山挑戦してみないと!」

面接官「そうそう。自分の向き不向きも分からないしねぇ~。やってる内に、思わぬ発見があるやも」

男「……」


面接官「世間じゃさ、多様性が大事って言われてるじゃん!」

イケメン「その通りですよ!」

面接官「持てるカードが少ないとさ、簡単に行き詰まっちゃうんだよね~」

イケメン「わかります。多様性こそ本当に大事ですよねぇ。ボクも多様性に苦労してますよ」


912020/06/24(水) 07:07:31hmTTPwaA (4/10)


面接官「そうそう。柔軟性が大事なんだよね。いわゆる1つのアウフヘーベンかな!」

イケメン「えぇ。ガバナンスのリスクヘッジを瞬時にアラートしてフィックスする、そんな相反するアライアンスは常にメンバーへのハラスメントと表裏一体ですし」

面接官「だよね~。私も社会人としていつも悩んでるよ~。ソーシャルディスタンスだね」

イケメン「社会的距離ですよね~」

男(どうしよう、何言ってるのか全然分からないorz)


面接官「ちなみに、他社の内定貰ってたりする?」

イケメン「はい。どこかは明かせませんが、10社から頂いております!」

面接官「うーん! 天才! 君なら何処ででもやっていけるよ!」

イケメン「ありがとうございます! ありがとうございます!!」


男(無い内定の僕とは、全然違う人だぁ~)


1012020/06/24(水) 07:32:19hmTTPwaA (5/10)

面接官「じゃぁ二人とも、その趣味を行う上での苦労や工夫、拘りなんかを教えてください」

面接官「あと、それらが仕事をしていく上で役に立ちそうなら、アピールしてください」


面接官「じゃ、まずは君から」



男「は、はい」


1112020/06/24(水) 22:23:05hmTTPwaA (6/10)


男「えっと、僕の趣味である執筆において」

面接官「その『えっと』とか止めた方がいいよ」

男「……すみません」


男「執筆においての苦労は、出てきたアイデアを上手く起承転結の形に落とし込む所です」

男「良さそうなアイデアが1つ2つ有ったとして、それが登場人物の個性や背景と矛盾すると、物語全体がおかしな事になる」

男「だから、一度あらすじを書いた後、そのあらすじと登場人物の個性が合致するか、チェックシートを作り、確認します」

男「そこで全体と局所的なバランスを一つ一つ見て、よりストーリーに整合性出せつつ、読者から人物の個性が見えるように、諸々の配置をし直します」

男「全体を見つつ各自の個性も両立出来るようにする。こういった創作での経験は、きっと会社での仕事にも大切になると思います。それを忘れず、頑張りたいです」


面接官「なるほどね~」

面接官(地味な奴は何言わせても地味だな、つまらん)


1212020/06/24(水) 22:29:04hmTTPwaA (7/10)


面接官「自己アピールありがとう、でもね、いくつか忠告いいかな?」

男「は、はい」

面接官「まずね、全体と個性のバランス取るとかだけど、そんなのどこの会社もやってるんだよね~」

男「は、はぁ……」

面接官「そんな社会人として当たり前な事をアピールするとか、むしろ社会人として基本的な考えが出来てない証拠だよね~」

男「あ、あの……」

面接官「えっと、それからなんだっけ」

面接官「落とし込むとか、チェックシートとか? そういう意識高い系な単語でアピールも無意味だから。むしろどんな面接官にも嫌われるよ?」

男「……」(涙目)

面接官「こんなんじゃ、君はどこの会社でもやってけないな~」


1312020/06/24(水) 22:30:50hmTTPwaA (8/10)


面接官「じゃ、次はイケノくん。どうぞ。期待してるよ」

イケメン「はい。組織運営において苦労する事として、活動資金の確保など、様々な問題に直面しますが……」

面接官「うんうん。そうだね」

イケメン「やはり、内部からの不満の声に対処することですね。人には意志がありますから、日々、組織に対するフラストレーションは溜まっていく」

面接官「うんうん。その通り」

イケメン「その不満の声に対処する工夫としては、【先だってスローガンを掲げる】ことです」

面接官「んん?どういう事かな?」


イケメン「先にスローガン、映えるヤツを掲げるんですよ。出来るか出来ないか関わらず、とにかく格好いいものですね」


イケメン「映えるスローガンがあれば、どんな不満にも対応できます!」


1412020/06/24(水) 22:35:13hmTTPwaA (9/10)


面接官「あー、何となくわかる。ちなみに具体的に説明を頼むよ」


イケメン「もし運営に誰かから文句が出ても、その個人がスローガンに到達していないなら」

『まず文句より先にすることあるよね』

イケメン「と、その一言で黙らせれます」

面接官「そう、ほんとそれ!」


イケメン「それでも食い下がって来るなら、」

『他の人はスローガン守ってるよ、君はおかしいよ』

『まず守るべきものを守ろうよ』

イケメン「そう言って、周囲の空気や同調圧力で締め上げれるんです」

面接官「組織運営の基本だね~」


1512020/06/24(水) 23:39:41hmTTPwaA (10/10)


イケメン「一方で、スローガンに従順な構成員は、肯定感が満たされ、文句は言わず更に組織に愛着が沸き出す」

面接官「人身掌握の基本だね、実力重視じゃなく、忠誠心高い人ほど優遇することで結束が高まる」

イケメン「その通り! やっぱり人生の先輩は流石だなぁ~」

面接官「あっはっは。ありがとう~」


イケメン「えっと、まぁそういうことです」

イケメン「できるかできないかじゃない、夢を見れるスローガン! これを兎に角出す!」

イケメン「そして人間を束ねる! 組織運営力あるボクなら、絶対にできます!」

イケメン「この会社に入ったら、御社を業界ナンバーワンの企業に引き上げてやりますよ!」


1612020/06/25(木) 09:18:14HHJMiMec (1/16)

面接官「いやー! すごい! 本当にカリスマの塊だね!!!」

面接官「君ならきっとできる。そんな気がしてくるよ!」

イケメン「ありがとうございます!ありがとうございます!」

イケメン「人生で大事なのは、インパクト!」


面接官「よーし、人柄も分かったことで、次はウチの業務について説明するね、いい? イケメンくん?」

イケメン「はい、是非お願いします!」

面接官「一通り説明したあと、何がしたいか答えて貰いますので」


面接官「あっと、一応君も聞いとくかい?」

男「は、はい……」


面接官「んん、じゃぁいくね~」

面接官「まず弊社の創業は~」

男「……」


1712020/06/25(木) 09:21:48HHJMiMec (2/16)

2日後。男のもとには不採用通知が届いた


1812020/06/25(木) 09:25:18HHJMiMec (3/16)


【男のアパート】


男「はぁ……僕はもう駄目だ」

男「すごい人はトコトン凄くてアチコチ引っ張りダコなのに、普通とか地味な僕じゃぁ、どこの企業からも見向きもされない」


男「中小企業も探そうとしても、この不況だとそもそも求人出してないし……」

男「あったとしても、一人求人に100人以上応募だから、書類選考すらも通らない」


男「こんな時代に生まれたのが間違いなんだろうなぁ……」


男「きっと僕は、この社会から要らない人間なんだ……」

男「これから先、生きていっていい自信がない……」


男「……」(涙目)


1912020/06/25(木) 09:37:10HHJMiMec (4/16)

ピンポーン♪

男「ん、誰だろ?」


男「はい、どーぞー!」

ガチャッ♪

文芸部の女の子「どうも、元気してる?」

男「あぁ、わざわざ来てくれたんだ」


2012020/06/25(木) 09:38:58HHJMiMec (5/16)


女「久しぶり、大学に来てないから、心配になって来てみちゃった」

男「あー、そうだね。確かにぜんぜん顔出してないや」

男「なかなか、何かしようとする気力が出なくってね……」

女「そう。就職活動、上手くいってないの?」

男「…………うん」


女「お互い、大変よね」

女「私も友達も、みんな苦労してるわ」

男「…………」


2112020/06/25(木) 09:40:41HHJMiMec (6/16)


男「普通に生きていればさ、普通の人生が歩めると思ったのに」

男「どうやら、普通に生きてるんじゃ甘くて、駄目だったみたいだ」


男「もっともっと、頑張ってなきゃ、何の意味もない……」

文ちゃん「そんなこと、ないわよ」


男「この前もさ、僕なんかと全然違う、カリスマ溢れる就活生と、集団面接で比べられてさ」

女「へぇ?」


男「ぼくは、その人の隣で何もできなかった」


2212020/06/25(木) 09:41:31HHJMiMec (7/16)

男「これまで頑張ってきた事とか、会社に入ってやりたい事とか、伝えようって頑張ったのに」

男「隣にいる人が、あまりにも凄すぎて、面接官の人は僕からみるみる興味を無くしていった」

女「……」

男「何か言おうとして、伝えようとしても、上手く言葉にできなくて」

男「それなのに隣の人とは弾むように会話が進んでいって、僕のことは忘れ去られていく……」


女「……」

男「僕はなにもできない。無力だ……」


2312020/06/25(木) 09:44:11HHJMiMec (8/16)


女「……ねぇ、その面接ってどんなだったの?」

女「面接官の人が興味なくしたとしても、それは貴方のせいとは限らないし、隣の人が偉いと言えないわ」

男「……えっと」


女「お願い、教えてよ」

男「う、うん。その時の様子なんだけど……」





~回送中~


2412020/06/25(木) 09:46:23HHJMiMec (9/16)


男「って、いう感じだった」

女「お、おおおお……」

男「凄いよね、隣の人。僕なんかとは大違いだ」

女「確かにすごい、凄いけど……」


男「僕も、ああいう高いレベルで生きていかなきゃいけなかったんだなぁ……」



女「や、そうじゃなくて」
女「ウソでしょ絶対、その人が言ってること」

男「え?」


2512020/06/25(木) 09:47:16HHJMiMec (10/16)


女「だって、サークルを17個も掛け持ちしてるだなんて、普通に考えられないもの」

女「だいたい、趣味が組織運営ってどういうことよ」


男「で、でも。その普通じゃない事をするから、優秀って言われるんじゃないの?」

女「よく考えてみてよ、冷静になって」


女「サークル17個掛け持ちなら、1週間に一度参加するとしても、1日に2個以上のペース顔出することになるでしょう」

男「……あー、そうだね」


女「物理的に無理があるわよ。幽霊部員とかでもないんでしょ」


2612020/06/25(木) 09:50:04HHJMiMec (11/16)


女「数ヶ月でサークルに入って辞めるを繰り返すとかなら、17個もやるとか可能だろうけど」

女「そんな人がサークルの運営に携われたり、組織内の揉め事を諌めるなんて、土台無理だわ」

女「ほぼほぼウソよ」

男「う、うん……」

女「もし本当だったとするなら、その人は相当な人たらし、天才的なサギ師の類いよ」

女「本性を見抜けず言葉に飲まれる、面接官の見る目が無いだけね」

男「あ、あー……」


女「だから、話を盛る人間に注目奪われたとしても、」

女「あなたに良いところが無いわけじゃ絶対ないの、オーケー!?」


2712020/06/25(木) 09:51:32HHJMiMec (12/16)


男「わ、わかった」

女「ん。よろしい!」


女「さてと、これからだけど、今日ヒマ?」

男「次の会社の履歴書とESは書かなきゃだけど、まぁ一応」

女「おっけー、じゃぁちょっと、どっか遊びに行こうよ」

男「へ? これから??」


女「そっ、塞ぎ混んでちゃ、ダメだから!」

男「……」


2812020/06/25(木) 09:52:57HHJMiMec (13/16)


男「……そう、だね」


男「うん。なんか美味しいもの食べに行こっか」

女「わっ、やったー。えへへ」

男「ふふふ」


男「……心がちょっと、軽くなった」

男「声かけてくれて、ありがとう」

女「どういたしまして~」


2912020/06/25(木) 09:54:38HHJMiMec (14/16)


女「こんな時代なんだもの、」

女「困ったときはお互い様、助け合わなきゃ、生きていけないから!」


男「…………」

男「そう、だね」


男「もしキミがピンチになったら、今度は僕が助けにいくよ」

女「わ、ありがとー」



女「あー、でもね~」

男「?」


3012020/06/25(木) 09:57:18HHJMiMec (15/16)


女「私はそれよりもさ、君の次回作が読みたいな~」

男「うっ、次回作……!」

女「そっ、最近ぜんぜん、お話書いてないでしょ~」


男「い、いやぁ~。就活が忙しくて……」

男「……」


男「でもまた、きっと書くよ」

女「おー、また読むの、楽しみにしてるね!」


女「とりあえず、今は腹ごしらえ!」

男「あぁ、行こう」


3112020/06/25(木) 10:04:08HHJMiMec (16/16)

この後、僕も彼女も苦労して内定貰うことが出来た


大学を卒業した後、社会人になり働き始めてからも、
お互いに連絡とって、書いた物語を交換してく


忙しい労働生活。仕事で落ち込むこともあるけれど

僅かな時間を見つけて、二人で物語を紡いでく




気付けば一緒に住むようになって、それからまた数年後……


3212020/06/27(土) 07:43:25Y6t2oLgI (1/15)


女「ただいま~」

男「あぁ、お帰り」


女「いやー、残業キツかった~」

男「お疲れさま。ご飯出来てるよ~」


女「ごめんね。最近ずっと晩ご飯用意して貰っちゃってる」

男「いいよいいよ仕事だし。僕の方が帰り早いだけだしさ」


3312020/06/27(土) 07:47:06Y6t2oLgI (2/15)


女「ごちそうさま~」


女「うーん、美味しかった!」

女「作るの大変だったんじゃない?」


男「いや、それほど……」

男「まぁ、美味しいって思ってもらえれば何よりだよ」

女「えへへ」


男「……」

男「あ!」

女「どしたの?」


3412020/06/27(土) 07:58:49Y6t2oLgI (3/15)


男「SSのネタ、思い付いた!」

女「お! どんなどんな!?」


男「まずさ、ある町に……」

女「うんうん!」


男「いや、今は止めとこう!」

女「えー!」


男「これは、構成練って、完成してから読んだ方が面白いから!」


3512020/06/27(土) 08:00:53Y6t2oLgI (4/15)


女「いいじゃない、いま触りだけでも教えてよ~!」

男「だめでーす!」

女「おねがーい!」

男「だーめ!」

女「ケチーッ!」


女「ふーんだ。もう、テレビ見てやろっ!」

ピッ♪





アナウンサー『それでは、次のニュースです』


3612020/06/27(土) 08:03:04Y6t2oLgI (5/15)


アナウンサー『経済界で新進気鋭のベンチャー企業家と称される、』

アナウンサー『イケノメン太郎氏が、昨日午前2時頃、警視庁に逮捕されました』


女「あら」

男「ん? どっかで聞いたことある名前……」


アナウンサー『現在警察の発表に依りますと、詐欺罪と横領罪で取り調べ中との事です』


女「まぁ。悪い人もいるものね~」


3712020/06/27(土) 08:05:29Y6t2oLgI (6/15)


男(どっかで聞いたと思うけど、思い出せない名前……)



アナウンサー『気鋭のベンチャー起業家として、時代の寵児と持て囃されたイケノ氏』


アナウンサー『企業や政府機関の運営コストを半分にするとの触れ込みで、各種コンサルタント事業を手掛けていたものの』

アナウンサー『事業計画は非現実的で実行不可能なものばかり。支援者や第三セクターから多額の資金を騙し取った疑いで、捜査中です』


3812020/06/27(土) 08:09:36Y6t2oLgI (7/15)


アナウンサー『警察の取り調べに対し、イケノ氏は』


「みんな、私の話がウソまみれだと気付いていた筈なんです」

「それでも、一縷の望みに掛けた支援者が、私の話に夢を見続け、私を持ち上げ続けた」

「ウソでも破綻するまで続けるしかなかった。私の方こそ被害者だ」

アナウンサー『と、供述しているそうです』


解説者『いやー、これは正しく弾圧ですね。警察の暴走だ!』

アナウンサー『そ、そうですか?』

解説者『こんな閉塞感ばかりの時代です。民衆に夢を見させる企業家は、国の宝ですよ!』


解説者『ウソの経済プランが有って、何が悪い! 夢がなくちゃ、人間は生きていけないんだ!』


3912020/06/27(土) 08:11:56Y6t2oLgI (8/15)


女「え、えぇ……」



女「無茶苦茶言うわね、この解説者……」

女「夢がなくちゃ生きていけないとかで、正当化できないでしょ、こんなの」


男「そうかな? 夢が~とか、正論じゃない?」


女「いやー、お金に纏わる事とかで、ウソあったら駄目でしょ」


4012020/06/27(土) 08:14:50Y6t2oLgI (9/15)

女「話盛ったり、背伸びしたところで、後々で辛くなるだけだもの」

女「それっぽい大言壮語でみんなに夢を見せても、現実にならないなら自分も、支えてくれてる人も空しくなるだけ」

女「ウソついたら、ウソにウソを重ねるしかなくなって、いつかは周りも巻き込んで、自分の身を滅ぼしちゃうの」


男「……」


女「だから出来ることを、真面目に地道にやっていくしか無いのよ。1発逆転とか狙わずにね」


4112020/06/27(土) 08:17:33Y6t2oLgI (10/15)

男「まぁ、閉塞感とかも辛いじゃないか」

男「みんなに夢見させれる人も、必要なんじゃないかな?」


女「けど、お仕事とかお役所とかでウソあると、あとで修正するのが大変なだけだよ」

女「今日の残業だって、品質データの統計改竄調査で、てんやわんやだったもの!」

女「もー。現実で誰かに裏切られるのはこりごりよ!」プンスカ


男「お、お疲れさまです……」


4212020/06/27(土) 08:19:09Y6t2oLgI (11/15)

女「まーね。夢見る事が必要ってのは、間違っちゃいないけど……」

女「けどそれはホラ、君の出番じゃない!」


男「ふぇっ? ぼ、僕?」


女「そっ、誰かに夢を見させるのは、君の役目です! 物語の書き手さん!」

男「……!」


女「実際の世界でウソは駄目でも、創作の世界なら、ウソつこうとも何でもあり!」


4312020/06/27(土) 08:25:00Y6t2oLgI (12/15)


女「王様が実は魔王だったとしても、大臣の正体が犯罪者だったとしても、」

女「フィクションの世界なら、現実に生きてる私たちに問題はないでしょ?」


男「まぁ、フィクションなら……」

女「何百億って大金でカジノ豪遊しようが、戦争なんかを始めることになっても、フィクションなら大丈夫!」

男「……うん!」


4412020/06/27(土) 08:27:50Y6t2oLgI (13/15)


女「現実世界は、出来ることを地道に真面目に、汗水流して作り出して生きていく!」

女「夢見れる世界は、理想をごちゃ混ぜ、嘘も本当も全部盛りの、素敵なフィクションで楽しむ!」


女「誰かに迷惑かかるとかは、やっちゃ駄目だし」


女「きっと、そうするのが1番平和だよ」


男「なるほど」

男「確かにそうかも知れないね……」


女「でしょ!」


4512020/06/27(土) 08:29:49Y6t2oLgI (14/15)


女「だから、次のお話もよろしく!」

男「んん」


女「さっき思い付いたお話、出来上がったらすぐ読ませてね~!」

男「ん、おっけー」


男「頑張って、書いてくよ~」


46お目汚し、失礼しました2020/06/27(土) 09:40:52Y6t2oLgI (15/15)

おしまい


人間、大事なのは見てくれより中身の筈


あと、ホラやネタ話は娯楽の舞台でやればいい

現実社会にウソ話を持ち込む風潮は、止めたいというお話

そこら辺に歯止めが掛からないなら、きっと……



本当におしまい


47以下、名無しが深夜にお送りします2020/06/28(日) 19:08:43snLdTwLc (1/1)

無能面接官のその後も見たかったなぁ(チラッチラッ