516 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/11(木) 00:59:42.5996vUrKbso (4/6)


では遅くなりましたが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


517以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/11(木) 03:04:30.95GZdQDJw6O (1/1)


風ちゃん感極まっちゃう


518以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/11(木) 06:12:01.26r+O91vOkO (1/1)


風先輩もずっと苦労してたからなぁ


519 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/11(木) 22:15:12.3296vUrKbso (5/6)


では少しだけ


520以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/11(木) 22:30:52.93Y0+hWVL/O (1/1)

きてたー


521 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/11(木) 23:40:44.7296vUrKbso (6/6)


天乃の言葉には、元会長が同意する

それが全てだ

本当はもっといろいろあるのは分かり切っていることだけれど

だからどうしたと、切り捨てる

失敗をなかったことにしてしまうのは、悪いことではある

しかし、過剰にそれを意識してしまっては意味がなくなってしまう

風「今を喜べなくなったら意味も無いか」

「犬吠埼さん」

風「ううん、ありがと……そうね。そうだった。こういう時に、ごめんなさいは無しって話だったわ」

風は天乃を一瞥して、懐かしむように笑う

風「会長も、みんなも。本当にありがとう。心から、諦めなくてよかったと思えた」

そして、諦めなければ幸せは手に出来るのだと

そう、自信がついた

もちろん、慢心は出来ないけれど。

風「だから、謝罪は受け取れない。せっかくの幸せな気持ちが台無しになるからね」


522 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/12(金) 00:43:51.432yy0TBVvo (1/3)


「そうですか……」

言葉だけは悔し気だが、表情は極めて明るい

風が諦めかけたことを悔いたことは取り消すことは出来ていないが

悔いに悔いが重ならないのであれば、十分だろう

「ところで、乃木園子さん。東郷美森さん」

園子「わたし……たち?」

東郷「何でしょう?」

下級生全員ならばともかく、二人だけに声がかけられたことに疑問符が浮かぶ

東郷の問いに元会長は「苦労しました」と、微笑む

答えにならないのは承知の上だろう、続けて口を開いた

「生徒会長として、他校とのパイプは持っておくものですね」

東郷「失礼ですが、なんの――」

それには元会長は答えなかった

いや、答える前に別の女子生徒が踏み出したのだ

讃州中学の制服ではない……他校の生徒

「乃木さんと、鷲尾さん……だよね?」

東郷「!」

かつて同じ小学校、同じクラス

そこで学んでいた級友

お役目が命にかかわることであると、知っていた一握りの子供達だ


523 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/12(金) 01:07:31.502yy0TBVvo (2/3)


東郷を得芦尾さんと呼んだ少女の隣

もう一人の女の子は、友達の方に触れて首を振る

「駄目だよ……東郷美森ちゃんでしょ?」

「だって……」

彼女は鷲尾さんだった

少なくとも自分が知っている級友は、鷲尾須美と言う名前だったのだ

いなくなってしまったはずの勇者様

勇者部としての活動を知って、目にした彼女は違う名前で、成長もしていて

他人の空似だと言い聞かせてきた園子達の元級友達は、

讃州中学の元生徒会長の申し出を受けて、会いに来た

「そう、なんだよね?」

東郷だと訂正された少女は、二人を伺うように見る

園子は園子らしいままだ

東郷も……面影はある。

だからきっと間違いはない

頭ではそれが分かっている。けれどどうしても聞きたかった

園子はその意思を酌んでか口を閉じ、東郷に委ねる

東郷「……そう。そうです」

頷いて、答える

誤魔化す理由はない

東郷「みんなと一緒に神樹館に通っていた……鷲尾須美です」


524 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/12(金) 01:08:15.512yy0TBVvo (3/3)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


525以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/12(金) 06:06:24.67yFABtujBO (1/1)


まさか神樹館での知り合いも出てくるとは…


526以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/12(金) 08:00:55.972foTzSkSO (1/1)




527以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/12(金) 19:09:27.87xrJnKz9zO (1/1)

元生徒会長が久遠さんに劣らないくらいに大人びて感じられるなもうちょっとくらい子供っぽくて良いんじゃないかな


528 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/13(土) 00:31:29.61UnSKi0mbo (1/8)


遅くなってしまいましたが、少しだけ


529 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/13(土) 00:37:30.75UnSKi0mbo (2/8)


東郷の尻すぼみしていくような声に元級友の少女は薄く口を開いて、閉じる

市内にまで手を伸ばした勇者部の活動を覗き見て、

足こそ不自由ではあっても、元気な姿を見せてくれていた東郷に何度話しかけようとしたか

偶然にも出会ってしまったとき、なんて声をかけようか

どれだけそれを考えてきたことか

それなのに――

「信じてたよ。みんな」

何も言えない少女の傍らで、友人の少女は笑みを浮かべていた

「鷲尾さんも乃木さんもきっと無事だって……3人が良く話してた。良く会ってた久遠さんって人のことも」

天乃「……」

天乃は自分へと向けられた視線に、頷く

少女の語った3人は、乃木園子、鷲尾須美

そして……三ノ輪銀のことだろう

忘れていない、覚えている

惜しくも失われてしまった一人

けれど、3人であることには変わりがないとその強い瞳は物語る


530 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/13(土) 00:47:14.34UnSKi0mbo (3/8)


少女は隣の友人を一瞥すると、小さく息を吐く

もう一度東郷達に向けられた瞳は喜びが感じられる輝きが見て取れた

「本当に良かった、助けてくれてありがとう」

東郷「……っ」

園子「わっしー……」

東郷は風の気持ちが分かってしまう気がして言葉が出なかった

諦めてしまった過去の罪悪感に、純粋な感謝はあまりにも重くて

そんなことないと、見捨ててしまおうと考えたこともあるのだと

自分の中に残り続ける罪を、告白してしまいたい

そうしなければ、ありがとうと言う言葉は受け取る資格がないと思えてくるからだ

でも、それは相応しくないと天乃が首を振った

しかし……東郷は下唇を噛んだ

その胸中を知る由もなく、黙ってしまった少女が駆け出す

周りの生徒が避ける道をただひたすら真っ直ぐに

「乃木さんっ鷲尾さんっ!」

東郷「っ!」

園子「わぁっ!?」

そうして、東郷と園子の体を不器用に抱きしめた

「ありがと……ありがとう……生きててくれてっ!」


531 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/13(土) 01:00:05.55UnSKi0mbo (4/8)


銀のようにお葬式はなかった

ただ、二人には二度と会うことが出来ないという話があって

彼女たちが勇者であるということには厳しい箝口令が敷かれて

鷲尾さんが生きているかもしれない。そんな噂を耳にしても、直接確認することは出来なかった

でもこれでようやく確信できる

守ってくれていた、頑張ってくれていた二人はちゃんと……銀の分も生きてくれていると

「良かった、本当に良かったよ……っ」

東郷「……」

ぽつりぽつりと、滴り落ちる少女の正直な感情を東郷の胸はしっかりと受け止める

ここまで言われて、口を閉ざすのか

何も言えないほどの罪悪感に押しつぶされてしまうのか

いや、ここまで想われていたからこそ自分の中にある罪は

友奈「東郷さん」

すぐ隣にいる友奈の優しい声が今の名前を呼ぶ

優しい表情、温もりの感じられる瞳

友奈は「でも、諦めなかったんだよ」と、笑う

東郷「友奈ちゃん……」

諦めかけた

そうして見捨てようとも考えてしまった

けれど、樹のおかげで結果的には諦めないで戦い抜いた

だからいいのだと笑みを見せてくれる友奈に頷いて、抱きしめる元級友の背中を擦る

東郷「ありがとう心配してくれて。応援してくれて……覚えていてくれて、ありがとう」


532 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/13(土) 01:26:51.73UnSKi0mbo (5/8)


自分は殆ど覚えていないまま戦ってきた

満開の代償とはいえ忘却し、この世界事葬っても良いかもしれないとさえ考えた

その間、ずっと覚えていてくれたのだ

鷲尾と名乗っていた東郷のことも

園子のことも

喪ってしまった銀のことも、ずっと

園子「ミノさんのこともちゃんと覚えていてくれて、嬉しいな~……」

「当たり前だよ、忘れたりしない」

何があろうと、何年経とうと、何十年後だろうと

ずっとずっと、覚えている

あの頃の神樹館の勇者は三人だった

今は、讃州中学所属となってもっと増えているけれど

「久遠さん……久遠先輩も、ずっとずっと、守ってくれてありがとうございました」

天乃「私こそ、守られてばっかりだったわ」

見知らぬ後輩の、誉め言葉に天乃は笑顔で答える

天乃「これからも仲良くしてあげてね。もう、大赦の箝口令なんて無視して良いんだから」

天乃の大赦への嫌味なお願いに、元級友たちは元気よく、嬉しそうに二つ返事で答えてくれた


533 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/13(土) 01:33:00.93UnSKi0mbo (6/8)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


534以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/13(土) 06:57:21.64xjgl6+/jO (1/1)


神樹館のみんなも会えなくなって辛かっただろうな…


535 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/13(土) 22:51:51.80UnSKi0mbo (7/8)


遅くなりましたが、少しだけ


536以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/13(土) 22:56:23.098QrLrn7SO (1/1)

よっしゃ


537 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/13(土) 23:52:37.16UnSKi0mbo (8/8)


東郷と園子が一度は断たれた仲を深めるのを見送った天乃は

それを見守っていた元生徒会長へと声をかけた

天乃「ありがとね」

「久遠さん……いえ、こちらこそ」

天乃「他校のパイプだけではどうにもならなかったでしょうに」

「そこは、みなさんの人徳ですね」

園子や東郷……そのほかのみんなも

想い、考えてくれる人がいて

その人たちが嘘めいた話に頷いて協力をしてくれたからこそ、実現させられたことだ

「私個人では、乃木さんが転入でも編入でもないなど気付くことは出来ませんでしたから」

それを知ってこその過去の話

園子が通っていた小学校から、クラス、その友人

繋がりを手繰り寄せられたのは、生徒会長だったからではないと少女は思う

天乃「それでも、主導してくれたのは貴女なんでしょう?」

「はい」

天乃「ありがとうね」

「……慣れたもののはずなのにこそばゆいものですね」


538 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/14(日) 01:02:48.71NaDSaHYAo (1/10)


天乃の再三の感謝に照れ笑いを浮かべた元生徒会長は

東郷達から目を離し、天乃へと移す

「喜んでいただけたなら幸いです」

天乃「嬉しいわ。凄く、言葉では表しつくせないほどよ」

以前は禁忌とさえ言えた勇者に関わり続け

それを支えようとさえしてくれて……今ここにまで来てくれている

普通は出来ないことだし

やろうと思ってもやらないことだ

それを彼女たちはやり遂げてくれた

天乃「お礼をされたくてやったわけじゃない。でも、やり遂げられてよかったと心から思える」

「私達もです。お礼をされたくてこの集まりが出来たわけではありません。でも、これが出来てよかったと心から思います」

お礼がしたくて集まった

その結果、お礼を言われることになったけれど、それはやっぱり結果論

でも嬉しいし、出来てよかったと思える

喜びの重なりは、どこまで続いても幸せを産み続ける

沙織「生きててよかった。だね」


539 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/14(日) 01:36:10.76NaDSaHYAo (2/10)


天乃と元生徒会長

二人の会話の中に入り込んだ沙織は、天乃の両肩に手を置いて、少しだけ引く

天乃「ちょっ」

「お噂はかねがね」

沙織を見た元会長は嬉しそうに言って、首を振る

沙織は何か言いたげにじっと見たが口は開かなかった

「久遠さん、伊集院さんどうかこれからもお元気で」

天乃「ええ、貴女も」

もちろん、みんなもだ

讃州中学を卒業したことで、みんなはこの世界でバラバラに分かれていく

今はまだ狭い世界だからそこまで散らばることもないだろうけれど

天乃も沙織もそして風も

高校に進まなかった者達は今しばらく同じ学校に通うことはない

「もし必要なら、お勉強も――」

沙織「それは大丈夫です」

「そう、ですか?」

沙織「大丈夫」

沙織のちょっとつんとした物言いにも、元生徒会長は笑顔で頷く

沙織がなぜそんな態度なのかも分かっているからだろう

「本当に、伊集院さんは久遠さんのことが好きなんですね」

沙織「当たり前だよっ、あたしの心120%の愛があるんだもん」


540 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/14(日) 01:38:11.41NaDSaHYAo (3/10)


では遅くなりましたがここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから


541以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/14(日) 04:49:57.251tL0L3kzO (1/1)


さおりんかわいいなあ


542以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/14(日) 07:19:19.06LTi87NwLO (1/1)


さすが元祖久遠さんガチ勢のさおりん


543 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/14(日) 18:08:08.49NaDSaHYAo (4/10)


遅くなりましたが、少しずつ


544 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/14(日) 19:24:22.23NaDSaHYAo (5/10)


「それは、羨ましい限りですね」

天乃「ええ」

「さて……そろそろお約束した時間ですね」

連れてきてからもう、十数分は経過している

みんなはこのまま一夜明かすことも厭わないかもしれないけれど

勇者部、特に天乃はそうもいっていられない立場の人だ

「久遠さん、ご卒業おめでとうございます…正直に言えば、ご一緒叶わないとも思っていました」

天乃「特例中の特例だもの。貴女の想像が正しいわ」

「はい。想像通りでした」

元生徒会長は笑顔で想像通りだと語った

叶わないとは思ったが、叶う事だけを考えていたからだ

もし叶わなければ……卒業式は中止になっていたかもしれない

天乃「……そっか。大事にならなくてよかった」

風「ほんとにありがとね……らしくもなく、泣かされるわ」

「それは喜ばしい限りですね。犬吠埼さんも、三年間、お疲れ様でした」


545 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/14(日) 20:09:57.11NaDSaHYAo (6/10)


風「でも楽しかった」

勇者を集めるために始まった勇者部

後ろめたい気持ちを抱えながらの期間もあったけれど、

辛くとも苦しくとも楽しい時間だったと、風は笑い零す

夏凜「在校生としては、ここまでされると逆に恥ずかしくなるけど」

友奈「でも、嬉しいよ」

東郷「称賛は恥じずに胸を張りましょう、夏凜ちゃん」

まだ残る、今年から三年生になる夏凜達

同じく一年あがって二年生になり、部長を任されている樹はそうですね。と答えた

樹「守り抜けたこと、誇りに思わなきゃです」

「樹さん。これからの勇者部の皆さんのご健勝お祈りしています」

樹「はい……任せてください」

元生徒会長の差出た手を、受け取る

勇者部の新しい部長として、樹は風達が積み上げたものを壊すわけにはいかない

それに勝れなくとも、並び立つものではありたいと思う

樹「これからも、勇者部は勇者部として、人に寄り添う部活であり続けます」


546以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/14(日) 20:40:47.89uSLD42teO (1/2)

樹ちゃん格好いい…


547 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/14(日) 21:08:49.19NaDSaHYAo (7/10)


園子「いっつん部長の仰せのままに」

樹「部長はつけなくてもいいですよ」

いつも通りで良いですよと樹は笑う

部長はまだ、荷が勝ちすぎる

もう少し頑張ってからだ

「勇者部ー……ふぁいとーっ!」

「樹ちゃーんっ頑張れ~っ」

卒業してしまう三年生、次の卒業を控える二年生、共に進む一年生

その応援を耳にして、樹は照れ笑いを浮かべる

姉がみんなと共に作り上げたものは、それほどのものなのだ

樹「ありがとうございます」

一礼する樹への声援は続く

卒業式で歌った校歌よりも盛大にそれは響いて

代表として立つ元生徒会長は、手を振る

「また会えることを楽しみにしています」

何十人もの見送り

やっぱり卒業式とは違うそれは、ちょっぴり気恥ずかしいものだった


548 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/14(日) 22:18:45.32NaDSaHYAo (8/10)


樹「部室、行きませんか?」

天乃「初めからそのつもりよ。友奈は大丈夫?」

友奈「全然大丈夫です」

友奈の外出許可は一応、日暮れまでは可能となっている

流石に丸一日や、翌朝までという許可は貰えなかった

夏凜「二人は?」

天乃「瞳に頼んでる。千景も一緒だから大丈夫よ」

星乃と月乃は今、千景と一緒に瞳の車の中だという連絡があった

起きてはいるが、空腹は訴えていないとのことで

もうしばらくは時間がある

どうせなら部室を紹介しても良いかもしれない

覚えてくれるかは分からないけれど。

風「しっかし……あんなこと企んでるなんて」

園子「予想外だったんよ~……また、会えるなんて」

沙織「ずっと、久遠さん……勇者部のこと考えてくれてたんだよね」


549 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/14(日) 22:58:37.47NaDSaHYAo (9/10)


学校中の生徒達が、勇者部のことを考えてくれたからこその喜び

それは天乃の人としての人気があってこそかもしれないが

そもそも、勇者部というものがあったからこそ天乃は人との繋がりをより多く持つことになった

やはり、勇者部の存在はとても大きい

背負うものの大きさを、樹は再度自覚する

天乃「神樹館時代のお友達とは、連絡先交換したの?」

東郷「はい。また……今度はクラスみんなで集まろうって話になったので」

園子「ミノさんに会いに行こうってなんたんよ~」

天乃「銀のところね……英霊碑のところも?」

夏凜「流石にそっちは難しいんじゃないの?」

大赦の力が弱まったとはいえ

まだ色々と縛りは残っていることだろう

特に、そういうところに触れさせて貰えるかどうか

園子「なんとかできるようにして欲しいなぁ~」

夏凜「なんで私に上目遣いすんのよ」

シッシッと手で払う夏凜にもっと詰め寄って歩く園子は

もう一度「お願いなんよ~」と悪戯っぽくすり寄る

天乃「こういう時、夏凜は私のよって手を引くべきなのかしら?」

風「それはそれで面白そうだからやってみても良いんじゃない?」

風の唆す一言には、夏凜が「やらなくていい」と声を張り上げた


550 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/14(日) 23:01:03.00NaDSaHYAo (10/10)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


551以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/14(日) 23:03:35.53uSLD42teO (2/2)


むしろそのっちは夏凜ちゃんの手を引く方を期待してそう


552以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/15(月) 04:50:32.56dCVIh65cO (1/1)


勇者部はこれで1年入らなきゃ来年いきなり廃部の危機に


553 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/15(月) 23:04:26.399GqYhoino (1/3)


では少しだけ


554以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/15(月) 23:05:12.957ziu/bsRO (1/1)

かもん


555 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/15(月) 23:14:15.649GqYhoino (2/3)


沙織「あたしはやって欲しいなぁ」

夏凜「それは沙織だからでしょ」

東郷「そのっちだからあれだけど、男性に言い寄られていたら助けて欲しいとは思いますね」

園子に相も変わらずする寄られている夏凜は否定的だが、

沙織と東郷はそうして欲しいようで、以外と話は続く

友奈「私は……う~ん……」

悩ましそうな友奈の心中を察してか

東郷が「友奈ちゃんもあり得ると思う」と誘う

友奈は天乃と似て自分が……と思うけれど

天乃だって自分はあり得ないと枠外に考えておきながら人気は根強い

本人に悟らせないように秘めているだけで人気はあると東郷は力説する

友奈「そうかなぁ」

風「そうなんじゃない? 特に親しみやすさで言えば、天乃よりも上だと思うわよ?」

友奈「そ、それほどはっ」

天乃「大丈夫、自信を持って」

友奈は可愛らしさもあるし、馴染み易さもある

異性を勘違いさせてしまいそうな距離感もある

人気はあるはずだと天乃は自信を持つよう言ったのだが、沙織は「え~」っと不満げに声を漏らす

沙織「そこは何でもいいけど私を一番に想ってね。とか言わなきゃ」

天乃「そういうものなの?」

夏凜「そこで私を見て解決できるって本気で思ってる?」


556 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/15(月) 23:58:35.999GqYhoino (3/3)


天乃「読者家の夏凜ちゃんなら知ってると思って」

夏凜「馬鹿にした読書家止めてくれない?」

天乃「馬鹿にはしてないわよ。信じてるもの」

夏凜は事実読書家だ

最近は少々偏りのある小説……新書等に手を出していて

瞳と暮らすようになってから始まっているその趣味は継続している

情動的なものに対しての答えはまだ、見いだせていないのかもしれないけれど

欲しい答えをくれそうな気がする。だから、頼る

夏凜「……それ、応えられなくても恨んだりすんじゃないわよ?」

天乃「それならそれで、一緒に答えを探すだけだわ」

夏凜が信頼に応えられないのなら

共に答えを探せば良い。恨むもわけもない

天乃は「ね?」と、夏凜の手を取る

意図はない、ただ、呼吸をするかのように自然と

不意に繋がった手、引かれる体に夏凜は目を見開く

くっついていた園子のささやかな温もりが剥がれる

夏凜「ん……努力は、する……」

全身に注がれる視線に居心地が悪くて、

夏凜の声は弱く目は背けられたが、

動きの止まった夏凜の朱に染まった頬はだんだんと色を取り戻していく

夏凜「するわよ、必要ならね」


557 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/16(火) 00:50:48.18E2KDgAGao (1/3)


樹「久遠先輩の為なら必要だと思いますけど」

樹は夏凜のことを見上げて笑みを浮かべる

夏凜の心の動きはこの約一年で色々と分かるようになった

いや、元々わかりやすかったのかもしれない

夏凜の目が向けられたのを感じて、やっぱり笑うのだ

樹「わたしも、久遠先輩にはそうして貰いたいなって思います」

東郷「私の受け入れ態勢は万全ですよ!」

風「あんたはわいせつ物だからダメ」

東郷「風先輩!?」

どうせ性的なことをするんだろう。と

いわれもない……とは言えないかもしれない決めつけを受けた東郷の悲鳴が廊下に響く

最近は全くそんなことがない東郷としては否定も大きくなる

もっとも、無いかと言えばあるのだけれど。

天乃「優柔不断で悪いわね」

樹「あっ……」

手を取られ、はっとした樹に天乃は微笑む

夏凜と樹、二人の手を引く天乃はみんなの一歩先を歩く

もう自分よりも小さくなった大きい背中に、樹は首を振る

樹「そんなことはないですよ」

樹は以前も夏凜に発破をかけようとしたことがあって

今もまたそれに似たようなことをしようとしてしまったのだと察したからだ

夏凜には夏凜のペースがある

東郷の横やりも、それをからかうような風の発言もそれが分かってのものだろう

天乃「はーい、さっさと部室に行きましょ。新部長と新副部長には抱負を語って貰うから考えておいてね?」

樹「えぇっ!?」

夏凜「聞いてないんだけど!?」

天乃「さっきの体育館の話で、聞きたくなっちゃった」

お願いね? と、子供染みた表情で言われては拒否もできない

そんな急に……とぼやく夏凜の声を聞きながら、

樹は体育館での勢いをまた持ち出せるだろうかと、少し、迷った


558 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/16(火) 00:51:16.27E2KDgAGao (2/3)


では遅くなりましたがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


559以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/16(火) 06:06:13.82nHBgB4iGO (1/1)


素直な夏凜ちゃんかわいい


560以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/16(火) 17:11:28.776L+GQQ2d0 (1/1)

ここに来て公式の方で女子同士で子供作れるっぽい話来て笑った
やったね久遠さん!そういう問題もクリアされたよ!


561以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/16(火) 19:49:04.66iicW2TE/O (1/1)

公式でやっていいのか…でもこれで久遠さんも許される!やった!


562 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/16(火) 23:41:19.40E2KDgAGao (3/3)


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から


563以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/16(火) 23:46:17.08f/0JYizNO (1/1)

乙です


564以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/17(水) 00:06:38.159NJVH57YO (1/1)


これで久遠さんたちの子作りも捗るな


565 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/17(水) 22:49:15.42ziWguJEco (1/1)


遅くなりましたが、少しだけ


566以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/17(水) 22:51:18.66XAlY5Z/+O (1/1)

やったぜ


567以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/17(水) 23:37:44.56SfvAFQWZ0 (1/1)

成し遂げたぜ


568 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/18(木) 00:46:07.97ZP2V2qteo (1/6)


勇者部の部室となっている家庭科準備室

その扉の鍵を、風はゆっくり差し込んで開く

風「これも、今日が最後か」

讃州中学の制服を着るのも、部室の鍵を開けるのも

三年間何度もしてきたことが終わるというのは

ほんの些細な事であっても、少し寂しくなる

風「これからは……別に樹を選任ってわけでもないのよね」

天乃「部長はもっとたくさんの仕事があるものね」

部員が増えてからは、一番先に行けそうな人が鍵を借りるようにしていた

こっそり……複製もあるが。

部室に入った天乃は、変わりのない部室の様子を懐かしむ

天乃「……なんだか、懐かしいわ」

沙織「実際に久しぶりだからね。昨日のリハーサルのあとは帰っちゃったから」


569 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/18(木) 01:07:28.12ZP2V2qteo (2/6)


東郷「勇者部自体もほとんど活動休止状態だったので、何も変わってないんです」

夏凜「友奈は重傷だったし、私達も活動できるほどの余裕はなかったんだから仕方がないでしょ」

友奈ほどではない。

けれど、夏凜達だって入院が必要だったし、

学校に戻ってからでも勇者部の活動よりも……という状態だった

天乃が退院してからは少しずつ活動を始めようかと言うところではあったが、

入院していたことや、

広がった世界のこともあってか、依頼はほぼ出てきていない

ここ最近では、ボランティア支援を行ったくらいだろうか

風「天乃に会いたいって相談もあったわよ」

おもむろに切り出した風がパソコンを弄って「メールじゃなかったっけ」と呟く

答えたのは、樹だった

樹「直接、だったかな。メールもあったと思うけど、勇者部じゃなくて」

園子「あれは相談と言うより、お願いだったんよ~」

樹がみせた端末に届いた友達からのメールには、

久遠先輩に会えないか。というお願いが来ている

天乃「断ったのね」

樹「まだ久遠先輩が本調子じゃない時期だったので」


570 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/18(木) 01:32:28.59ZP2V2qteo (3/6)


天乃に一声かければ二つ返事で許可が下りる

しかしまだリハビリも必要で

慣れない育児にも向きわなければならなかった天乃には余裕があるとは言えなかった

だから、今はまだ難しいと直接でも連絡でも答えてきた

黙っていたことを申し訳ないと思ったのか、

渋い顔をする樹達を見て、天乃は「そういえば」と考える

天乃「昨日の騒ぎはそのせいだったのかしら」

天乃が登校してきたという話が瞬く間に出回って

一目見よう、一声かけようと結構な騒ぎになった

夏凜達が困らせることになると一言牽制しただけで8割ほど落ち着きを取り戻したものの

朝は靴だけだった下駄箱が、帰りには気持ちが溢れ出るほどになっていたのは卒業式に劣らない思い出だ

沙織「それもあったと思うよ。うん、間違いなく」

友奈「そんなことがあったんですね」

東郷「久遠先輩、その……恋文は読まれたんですか?」

天乃「無事でよかったですとかお元気そうで~とか。子供のことが一番多かったわね」

恋愛感情をしたためたというよりは

親愛の情ゆえに募った安堵によるものだった

天乃「東郷が思っているようなものはなかったわよ」

ラブレターではない。

そう否定した天乃を見た夏凜の口からは、「天乃……」と若干の怒りを含んだ声が漏れる

夏凜「卒業式なんだから早く寝ろって言わなかったっけ?」

天乃「ちょ、ちょっとだけよ! ちょっとだけ! そう、一時間くらい……それだけっ」

夏凜「それがダメだって言ってんのよ!」

伺うような天乃の視線を、夏凜は一蹴した


571 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/18(木) 01:33:30.48ZP2V2qteo (4/6)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


572以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/18(木) 02:05:26.89NPeuEmTUO (1/1)


本当に恋文なかったのかな~


573以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/18(木) 05:13:20.61LjUz4VxCO (1/1)


事あるごとに入退院繰り返してたからなぁ


574 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/18(木) 22:16:28.58ZP2V2qteo (5/6)


遅くなりましたが、少しだけ


575以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/18(木) 22:29:41.73he2IoL/FO (1/1)

きてたー


576 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/18(木) 23:12:07.82ZP2V2qteo (6/6)


天乃「もしも今日の放課後のお時間下さいとかあったら大変じゃない」

風「子持ちの女に持ち掛けるとか、あっちゃダメでしょ」

天乃が普通に病弱なだけの女子中学生であったなら、

ラブレターが送られていたとしても別に悪いことではないだろう

天乃が妊娠を公にしていなかったなら、

それもまた、許されていたことかもしれない

しかし、天乃はすでに公言している

天乃を思う人ならば、誰にでも伝わってしまうようなその話は

知らなかった。とは中々に言えることではないだろう

沙織「女……女の子じゃなくて、女か……」

意味ありげにしみじみと沙織は独り言ちる

学生と言う肩書があってこそ子供か

己の子を持つまでは子供か

伴侶と共に寄り添うまでは子供か

明確には年齢かもしれないが、沙織はそんな判別はどうでもいいかと投げ捨てた

沙織「なんか、女の子じゃなくて女って言うの、ちょっと感じ変わるね」


577 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/19(金) 00:01:08.06KwAEdvXAo (1/6)


園子「俺の女だ! とか~?」

東郷「俺の女の子よりは、語感は良いですね」

風「いやそういう意味で言ったんじゃないんだけど……」

思わぬところから延びていく道筋を断つように風は呟く

無意識にも女の子ではなく女と呼んだことに思うところはあるのだが

自分の心がどう考えているのかそれとなく感じられて、緩い笑みを浮かべる

夏凜「最後の部室でのやりとりが天乃が女の子か女かなんてのは……花が枯れそうね」

天乃「もちろん、部長副部長の引継ぎと抱負は語って貰うわよ?」

夏凜「本気で言ってんの?」

友奈「せっかくだもんね。卒業式みたいで良いと思う」

送辞と答辞、在校生と卒業生

それを考えれば、新部長副部長だけと言うのはどうだろうか

樹「久遠先輩とお姉ちゃんも、何かお話してくれませんか?」

天乃「私達……?」

風「話すことねぇ」


578 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/19(金) 00:42:27.59KwAEdvXAo (2/6)


沙織「三年間のお気持ちとか、部長を担う上での先人の知恵とか」

天乃「部長はともかく私は特に何もやってなかったからね」

車いす生活の長かった天乃は、

副部長と言う役職を与えられてはいたものの、

これと言って特別なことは何もしてこなかった

副部長はそれこそ、肩書でしかなかった

それはきっと、風が部長の責務を強く持ち続けてくれていたからだろう

天乃「風のおかげよねぇ……私すっごく楽だったわ」

風「部長は嫌だとか言って逃げるから……」

夏凜「つまり、私も楽ってことで良い?」

副部長にされるのが不服なのか、夏凜はそうつぶやいて

その隣にいた樹は「何言ってるんですか」と、苦笑する

樹「お姉ちゃんに久遠先輩が抜けちゃうんですよ? 大変にはなりますが、楽になるなんてありえません」

東郷「樹ちゃんが今までにないほど優しい笑顔を浮かべてるわ……」

友奈「単純に人手が減っちゃうもんね」

園子「人手と言えば~……そう、募集。部員募集も考えなきゃだね~」


579 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/19(金) 00:50:11.33KwAEdvXAo (3/6)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


580以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/19(金) 04:05:02.17Reu1u7YBO (1/1)


勇者部に入って久遠さんと握手!


581以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/19(金) 06:48:19.98VNjLWdWdO (1/2)


久遠さんこの一年間の内に凄い速度で大人の女になっていったよね


582 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/19(金) 22:13:16.22KwAEdvXAo (4/6)


では少しだけ


583以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/19(金) 22:21:13.92VNjLWdWdO (2/2)

よしきた


584 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/19(金) 23:09:26.21KwAEdvXAo (5/6)


樹「そうですね、それも考えないといけません」

天乃「今年、新入部員が入らないと来年は樹一人になっちゃうわよね」

樹「受験に差し支えがない程度になら、友達も手伝ってくれるとは思いますけど……」

樹は来年になれば三年生になる

必然的に友達も三年生である以上、風や天乃のように全日協力なんて言うのは簡単ではないだろう

部活動の助っ人だって、

友奈や夏凜といった運動部に向いている部員が一人ではなかったからこそ、

上手く回していくことが出来た

以前のように依頼が重なった場合には、いずれかを断る必要も出てくるかもしれない

樹は少し魔を置いて口を開いた

樹「最悪の場合、今年いっぱいで終わりにする。ということも一つの手だと考えてます」

友奈「勇者部を廃部にしちゃうの?」

樹「勇者部の活動はボランティアです。言ってしまえば、誰にでもできることなんじゃないかって私は思ってます」

樹はそこで言葉を切る

以前は弱弱しかった自分でさえ乗り越えられた道筋だ

勇者の戦いを除けば、勇者部としての活動はごく普通の女子中学生にも簡単だと言える

要は、みんなの為になることを勇んで行う心があるかどうかだからだ

樹「誰かに言われたからとかじゃなくて、自分でやりたいと思った人がやるべきことだと思うから……」

今年の入部希望者がいなくて、来年には自分一人となってしまったら、

そこで、幕を下ろしてしまうべきかもしれないと樹は考える

もちろん、勇者部の存続を断念するだけで活動自体は卒業まで続けるつもりではあるが。


585 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/19(金) 23:39:59.83KwAEdvXAo (6/6)


風「まぁねぇ……強引に勧誘するような部活じゃないのは確かだわ」

東郷「自主性を重んじるものですから、賛同してくれる人がいなければ続けられないのは当然ですが……」

園子「だからと言って無くなっちゃうのは寂しいんよ」

無くなってしまうのは寂しいし悲しくもある

しかし、東郷や樹が言っていることは事実だ

自主性に委ねた結果消滅するのだとしたら、それはなんとも……

天乃はふと息を吐いたが、そこから言葉へとつなぐ前に夏凜の声が聞こえた

夏凜「元生徒会長にあんなこと言ってたのに、そこはいいわけ?」

樹「……あれは」

夏凜「勇者部は勇者部として人に寄り添う部活であり続ける」

夏凜は樹が言っていたことを繰り返す

あの手前、夏凜は手厚い言葉の数々を受けて恥ずかしいと照れくさそうにしていた

だから新部長として一足先に想いを語る樹を阻めなかった。

なんて、そんなわけがないだろう

夏凜「私は、良いと思ったわ」

自分にはらしくないけど。そんな内心の透ける困り眉が見えた


586 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/20(土) 00:38:11.25IWs/NOyEo (1/4)


夏凜「だからってわけじゃないけど、今年一杯でやめる可能性なんて無意味なこと話す必要はないんじゃない?」

樹「夏凜さんは、新入生の中で入部してくれる人がいるって思いますか?」

樹の問いはもっともだ

これから讃州中学に通うことになる一年生

部員を募集するのは基本的にそこからだからだ

だが、夏凜は顔を顰めるとため息をつく

瞬きの後に見えたその瞳は、鋭いものだった

夏凜「新入生がこない。だから終わり……だったら、私は副部長なんて御免だわ」

沙織「三好さ――」

天乃が任命したからだろう

何を言うのかと夏凜に言おうとした沙織を、天乃は掴んで制する

これは部長と副部長の話合い

これからの勇者部の在り方を決めるものだ

風を横目に見ると、とても穏やかに見守っているが分かる

友奈は対立するような空気を感じてか、「あのね!」と声を上げた

友奈「えっと、まだ入部希望者がいないとは限らないよっ! 勇者部は色んな部活のお手伝いできるからすっごく楽しいし……」

東郷「でも、それを知ってるのは入部してるから。実際にやらないと分からないことを語られたって難しいと思うの」

特にいろんなことに手を出しているような部活は、

忙しくてプライベートが無くなってしまうのではないかと思われてしまうこともある

そうなったら、中々に手は出せないものだ


587 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/20(土) 00:38:37.37IWs/NOyEo (2/4)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から


588以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/20(土) 00:48:12.68WRAs0SFkO (1/1)


廃部になったら寂しいし新入生来て欲しいな


589 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/20(土) 21:53:58.08IWs/NOyEo (3/4)


では少しだけ


590以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/20(土) 21:55:54.61GfMvp2040 (1/1)

やったー


591以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/20(土) 22:11:29.70xs0xhb3kO (1/1)

おk


592 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/20(土) 23:40:49.93IWs/NOyEo (4/4)


友奈「それはそうだけど……」

園子「にぼっしーは新入生だけじゃなくて、在校生にも入部したいと思わせられるような部活にしたいって思ってるんじゃないかな」

東郷「在校生にも?」

言っていることに訂正する部分があるのか、

夏凜は園子の口出しに頷いて、東郷に目を向けた

夏凜「今でも、募集したら絶対に人は集まってくれるわよ」

今年から三年生、二年生の在校生の中からだ

勇者部に助力したいという申し出はきっとある

だが、それは勇者の栄光があり、

風や天乃といった先んじた存在があったからこそで

憧れた人がいた部活

だから自分もそこに協力をしたい。だろう

夏凜「それを、私達の力で続けていきたい」

風がいたから、天乃がいたから

勇者という存在がいたからではなく、勇者部の活動に共感したから。と言う理由でだ

正直に言えば理想論でしかないけれど

勇者部の活動と言うのは、そういうものだ

夏凜「新入生が入ってくれなかった。だからもう終わり。そんな気持ちで続けるもんじゃないでしょ」


593 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 00:45:14.93A4JoE/Z5o (1/14)


樹「それは当然です」

樹だって存続出来ないからと言って、

もう終わりだなんて惰性で続けるつもりは毛頭ない

ちゃんと最後までやり抜くつもりではある

終わるために活動は先細りしていくことだろう

でも、それは致し方ないことだ

樹「ちゃんとやっていくつもりです……でも、新入生が入らなかったら、結局三年生だけになっちゃうんです」

夏凜達が卒業した後、

樹の同級生が入ってくれたとしても、その代限りになってしまう

樹達が三年生の時の二年生は、入ってくれなかった新入生だ

そうなってしまったら、望みは非常に薄い

樹「勇者部はいつまでも人に寄り添う部活でありたい、でも、誰かに強制するような部活であってはいけないと思います」

運動系の部活動のように

強く勧誘するような部活ではなく、あくまで自主的に

その結果、新入生に入部してくれる子がいなかったのなら

それはそれで、仕方がないと思うしかない

樹「出来る限りのことを尽くして、それでも勇者部が存続できないなら仕方がないと思います」


594 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 03:00:58.05A4JoE/Z5o (2/14)


勇者部は賞を貰うような部活ではない

目に見える成果が得られるわけでもない

普通の部活とは違う

樹「残念、だけど」

残念そうに零す樹を見ていた友奈は、

あのね。と、手を挙げる

友奈「勧誘しなくても入部希望して貰えるような活動をしようってこと、かな?」

園子「そういうことになると思う」

友奈「それって今まで通りで良いのかな……」

他の部活動の応援を行ったり

町の清掃活動を行ったり、ボランティアを行ったり

幼稚園などで演劇会や朗読会を行ったり

そんな、今までの活動で良いのだろうかと、友奈は首をかしげる

東郷「こうしなきゃって、焦る必要はないんじゃない?」

今まで通りで在校生、新入生に訴えかけるような活動と言えるのか

それははっきりとは言えないけれど。

少なくともこうしなければならないという強迫観念に囚われた活動ではだめだというのははっきりしている

夏凜「私はそもそも、今までとは違う活動をしようだなんて一言も言ってないけど」

天乃「……回りくどいのよ」

ぼそっと呟いた天乃の声は、

夏凜の耳にしっかりと届いていた


595 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 03:01:42.85A4JoE/Z5o (3/14)


遅くなってしまいましたが、ここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから


596以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/21(日) 07:44:20.82tdvcELNXO (1/1)




597以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/21(日) 15:30:50.29UbBl0vvHO (1/1)

マダカナー


598 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 16:56:23.56A4JoE/Z5o (4/14)


遅くなりましたが、少しずつ


599以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/21(日) 18:09:15.07W0cy0R2vO (1/1)

お、来てた


600 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 18:28:40.26A4JoE/Z5o (5/14)


天乃「もっと、自分たちに自信を持つべきだわ」

夏凜「天乃がそれを言うか」

天乃「でも、みんなが言ってくれたことじゃない」

勇者部の活動は、一つ一つは地味な手助けかもしれない

勇者としてのお役目に比べたら、ちっぽけと言える

でも、そうして広がっていった繋がりは裏切らない

その結果を、ついさっきも見たはずだ

天乃「今まで通り、勇者部は勇者部らしく活動したらいいの」

風「新入部員がいなくても、変わらずにね」

樹「でも、もしもこのままお姉ちゃん達がいなくなっただけだったらどうするの?」

風「そこに自信を持ったらいいのよ。今までしてきたことに」

それは風を筆頭に

先代……と呼ぶにはまだ早いかもしれないが、

最初の勇者部が作り上げたものの結果だ

それを礎に、また新しい勇者部として積み上げていけばいいと、風は言う

風「今まではああたし達のおかげだって樹は考えてるけど、その達には樹。貴女も含まれてるんだから」


601 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 18:51:26.80A4JoE/Z5o (6/14)


風「樹は、後輩に何が残してあげられるかを考えていけばいいのよ」

勇者部を残せた方が良いのは、それはそうかもしれない

けれどあくまで【みんなのためになることを勇んで行う部活】であり続けて欲しいのだ

勇者部の存続を最優先にしては、その根本が崩れてしまう

風「樹は、天乃の背中を追いたいってあたしに言ったでしょ?」

樹「うん……」

風「今度は、樹が追って貰えるような立派な部長になるのよ」

天乃のようになるのは状況も考えて不可能だとは思う

しかし、憧れの先輩にはきっとなれると風は信じている

一年前はまだ弱弱しく見えた樹は、一人で歩んでいけるほどに強くなった

それは大人と言うものに憧れる子供たちにとっては理想だ

背は低くて、一見したら子供である天乃がそうであったように

誰よりも優しく、けれど厳しく

弱くもあるけれど、とても強い

後輩を導くことが出来る先輩を目指してみればいい

風「背中で語りなさい、樹」


602 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 19:11:21.64A4JoE/Z5o (7/14)


樹の肩を軽く叩いて、抱き寄せる

小さな体は弱く感じられるが、内側に抱いている志はとても強い

その強さを認めているからこそ

風は樹を部長に任命し、東郷達はそれを支持した

夏凜「天乃の卑屈……じゃなかった、謙虚なところまで真似なくていいのよ」

天乃「卑屈って」

友奈「樹ちゃんなら大丈夫、きっと、ついてきてくれる人がいるよっ」

東郷「最初は風先輩と久遠先輩に憧れた入部だとしても、そこから樹部長についてきてよかったって言って貰えるように」

まずは自分に自信を持つこと。と、東郷は微笑む

樹は自信さえあれば、成し遂げられる強い子だ

身を持ってそれを知っている東郷は、そこにこそ厚い信頼を置いている

自分の姉と憧れの先輩

二人の抜けた穴を自分に埋められるかどうか不安になる気持ちは理解できる

けれど、そこでやってみよう。と、踏み出すことさえできれば大丈夫なはずだ

園子「今年一年は、にぼっしーがいる。私達も微力ながら助ける。それで、いっつんらしい勇者部を作り上げよう」


603 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 20:33:02.89A4JoE/Z5o (8/14)


樹「私らしい勇者部……」

天乃「そのために、副部長をこき使いなさい」

夏凜「こき使われてはやらないわよ」

ふんっと素っ気なくして見せた夏凜だが、

ちゃんと助けてくれるのはみんな分かっている

夏凜「でも、助けてあげるわ」

夏凜はそう言うと、何を思ってか軽く鼻で笑う

夏凜「私は、そうね……部長を初代の部長より立派にしてみせる」

今でも、劣る部分もあるかもしれないけれど、立派だ

けれどそれ以上に

一年後、三年生になった樹が

誰からも慕われるような、勇者部部長になれるようにすると、夏凜は語る

夏凜「それが私の抱負。そのための支えになってあげる」

背中を叩かれて、

風の抱擁から離れた樹は驚いた様子もなく、前を向く

樹「それなら、私はお姉ちゃんよりも凄くて、久遠先輩よりもかっこいい部長になってみせます」


604 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 21:15:38.37A4JoE/Z5o (9/14)


それを目指して、一年間を生きていく

勇者部としての活動を続けて、少しずつ近づいていきたい

近づいても近づいても離れていく理想に

天乃「私はもう、追い抜かれてると思うけど」

樹「久遠先輩はずっと先です」

天乃はもう大人になってしまったから

まだまだ先になってしまったと樹は思っている

天乃が自分をどう見ているかは分からないが

憧れは尽きることはない

それは風にも言えることだ

樹「お姉ちゃん、それでいい?」

風「任せる」

沙織「樹ちゃんなら大丈夫だろうけど、間違えそうになったら正すのが副部長だよ」

夏凜「解ってるわよ」


605 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 22:17:26.35A4JoE/Z5o (10/14)


友奈「なんだか、これで終わりって言うのは少し寂しいですね」

部室には八人もいる

しかし明日になれば五人になってしまう

夏凜がまだいない時期にまで戻ることになるだけだ

寂しいのは人数が減ったからではなく

賑やかな二人がいなくなってしまうからだ

風は友奈に劣らず明るい人で活気があった

天乃は夏凜をからかうし、それに乗っかるものだから

中々に賑やかだった

それが、無くなる

東郷「活動を始める風先輩の一声が、しばらく耳に残りそうです」

風「録音する?」

夏凜「要らない」

風の茶化しを一蹴する

別に声が聴けなくなるわけじゃない

それどころか、学校にいない時は常に一緒に居る状態なのだ

あえない寂しさなんてものは全くない

友奈が【少し】と言ったのだってだからこそだ


606 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 22:45:36.19A4JoE/Z5o (11/14)


声が途切れて、間を置く

一歩引いた樹は風と天乃をその視界に納める

樹「久遠先輩、お姉ちゃん。お疲れ様でした」

友奈「短い間でしたけど、勇者部でご一緒出来てとてもうれしかったです」

東郷「これからのことは任せてください」

天乃「……ええ」

風「なになに急に」

家に帰ればまた一緒

だとしても、これで勇者部としてはお別れになってしまうから

だから、ちゃんと部員としての感謝をする

風の明るい声にはちょっぴり、空気が揺らぐ

園子「わたしも……今までできなかった分、頑張るんよ」

夏凜「風、天乃」

名前を呼んで差し出した夏凜の手には、勇者部という刺繍が入ったお守りが二つある

少し不格好に傾いているように見えるのは、それが手作りだからだろう

夏凜「引退で祝うのも変な話だけど、まぁ……これから大変だと思うから」


607 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 22:59:39.53A4JoE/Z5o (12/14)


天乃「作ったの? 夏凜が?」

友奈「みんなで頑張ったんです」

東郷「素人にしては、上手くできていると思うので、大目に見てくださいね」

照れくさそうに頬を染める東郷は夏凜の手から二人に渡ったお守りを見ると、

見ていられないとばかりに目を背ける

隣の友奈も「上手くできてると思うよ」と東郷に声をかけているのを見る限りでは

最終的な縫い付けは東郷が担ったように思える

素人にしては……と自信なさげだけれど

十分しっかりできていると天乃は思う

天乃「ありがと……」

風は大事に手のひらに置く天乃を一瞥すると

自分の分を優しく手に取って嬉しそうに笑みを浮かべる

風「ほんと、いつ作ってたのよ」

友奈「学校でこっそり作ってました」

園子「ふーみん先輩、受験勉強するって真っ先に帰ってくれたから~」


608 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 23:16:24.91A4JoE/Z5o (13/14)


風「でも、友奈は?」

友奈「私はデザインを考えたんです……それと、中に入れるもの」

友奈は学校に行くことが出来なかったため、

そのくらいしかすることが出来なかった

東郷「中には友奈ちゃんが作ってくれた押し花が入ってます」

本当はもう少し手伝いがしたかったという友奈は

でも手伝わなかったから上手くできたのかもしれないと、苦笑して

そんなことないと東郷は友奈を否定する

そんな二人をしり目に夏凜は天乃へと近づく

夏凜「頑張りなさいよ、天乃」

天乃「どうしよう……私、お礼とか……」

夏凜「元気でいてくれれば、それでいい」

天乃の小さな体を抱きしめる

抱きしめることさえ怖かったあの頃に比べればずいぶんと戻ってきてくれた華奢な体を、少しだけ強く

夏凜「ありがと」

そこで言葉を切った夏凜は、少し躊躇ったように口を閉じる

あんたと呼んでいたし、天乃と呼んでいた

だから、でも、今日くらいはと……意を決する

夏凜「今日までありがと、先輩」


609 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/21(日) 23:41:32.32A4JoE/Z5o (14/14)


天乃「貴女に先輩って呼ばれるなんて」

夏凜「これが最後」

もう呼ばないからねと天乃を離した夏凜が下がると、

東郷は部室に置かれていたカメラを持ち出して、部員名簿にもなっている黒板の方を向く

東郷「写真、撮りませんか?」

風「良いわねぇ」

樹「それなら黒板にちょっとだけっ」

一足先に小さな黒板に向かった樹は、

もう枠に収まらなくなってしまった部員名の左側に、

天乃先輩、風先輩、沙織先輩……あえて下の名前で書いて、

卒業おめでとうございます。と、付け加える

沙織「あたしも?」

東郷「伊集院先輩も、です」

正式に入部届を出してはいないけれど、れっきとした部員だと東郷は頷いて

卒業おめでとうございます。の下に樹と夏凜の部長副部長就任を祝うメッセージを書く

園子「わたしも~」

のりに乗った園子のおかげで斜め下にはサンチョの可愛らしい絵が追加され、

ならこれもと風の「勇者部は永久に不滅」という言葉が大きく書かれた

風「勇者部はこれからも続いていく。たとえ、樹が卒業してもね」

樹「そうできるように、頑張る」


610 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/22(月) 00:00:38.93HkLya9B/o (1/7)


東郷「……久遠先輩」

セットしたカメラを確認していた東郷は天乃を呼ぶ

もう一度ファインダーを覗いて、今度は友奈を見る

東郷「友奈ちゃんのこと抱っこしちゃってください」

友奈「ぇっ!?」

東郷「人数が多いから、納めたいの」

友奈「でもっ、えっ……」

天乃「少しだけよ。負担はかけないから」

足首に負担をかけないために、お姫様抱っこで友奈を迎え入れる

ちゃんと支えているからと天乃は言うが、

そういう問題じゃないと友奈は顔を真っ赤にする

リハビリ程度の運動しかできていない身だ

天乃の体にとって重荷名のではと不安だが、天乃は大丈夫よ。と微笑む

夏凜「ほんとに平気? 落とされたら困るんだけど」

天乃「女の子を抱くくらいはできるわよ。歩くわけじゃないから大丈夫」

東郷「それでは、押しますっ」

風「もっとそっち寄って、そっち」

東郷が撮影ボタンを押すと、電子音が流れ始める

東郷が駆け寄って、風が樹を抱きよせ沙織へと身を寄せる

その分、夏凜と天乃も密着して

園子「わっしーこっちこっち~」

天乃の隣に東郷を挟んで、園子がぎゅっと抱きしめる

天乃「ちょっ」

風「勇者部はーっ!」

風の声が上がると「ふめつーっ!」と、全員の明るい声が部室に重なって

小さなシャッター音はその中に消えていく

天乃の「みんなが押すから」という文句は笑い声に呑まれる

やや強引におさまった一枚は、記念すべき一枚となった


611 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/22(月) 00:03:33.46HkLya9B/o (2/7)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


612以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/22(月) 00:12:18.37CHF3MxK4O (1/1)


久遠さんたちついに卒業か…本当に終わりが近づいて来てて寂しくなるな

まだフライング気味かも知れないけど作者さんが大丈夫ならくあゆシリーズはこれからも続いて欲しい


613以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/22(月) 01:28:36.03DZWVKsM1O (1/1)


友奈ちゃん役得だな


614 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/22(月) 20:45:33.58HkLya9B/o (3/7)


では少しだけ


615以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/22(月) 21:33:03.31MuUvWvwRO (1/1)

きてたか


616 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/22(月) 22:14:32.75HkLya9B/o (4/7)


√ 3月14日目 昼 (自宅)


友奈が退院できていたなら、かめやに向かうところなのだが

仮退院ともいえる外出許可な状況ではだめだという友奈に従って家での昼食となった

天乃「私は中華が良いんだけど」

風「辛さを三割減するなら許可する」

夏凜「三割でもダメでしょ……特に麻婆系は絶対に食べさせられない」

キッチンの方から聞こえてくる声に、

リビングで待機する夏凜の呆れた声が零れる

同じく待機している友奈は「そんなに?」と、不思議そうに首を傾げた

夏凜「普通のを作ろうとすれば作れるんだけど……」

友奈「それも辛いの?」

東郷「料理本通りに作ると、刺激が足りないって」

友奈「刺激……そうだよね」

味覚がなかった時期

その間に唯一味覚に近い刺激を得られたとすれば、辛味だ

普通煮えられるものでは不足するのだろうと、友奈は察する

友奈「夏凜ちゃんは、それでも食べてるんだよね?」


617 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/22(月) 22:35:43.91HkLya9B/o (5/7)


夏凜「は? なんで?」

友奈「えっ違うの?」

きょとんとした表情を見せる友奈から、

背中しか見えないキッチンの方に目を向けた夏凜は、目を伏せる

見透かされた。

そんな恥じらいの感じられる頬には、裏は感じない

察したのは、夏凜が「三割でもダメ」と断言出来ていたからだ

沙織「夏凜ちゃんはちゃんと食べてるんだよね」

園子「食べ過ぎなければ云々って、力説してたんよ~」

夏凜「……別に嘘は言ってないし」

天乃は優しい人だ

周りが嫌だと言えば、天乃は絶対にその料理を作らない

だから、無理のない範囲でその好みに付き合っている

夏凜はそれを認めないけれど。

夏凜「なんにしても友奈には食べさせられない。無理」

樹「お医者さんにバレちゃったら怒られますからね」


618 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/22(月) 23:21:49.98HkLya9B/o (6/7)


友奈「それで……」

以前天乃の手料理のお見舞いがないのを聞いたときに、

渋面で無理だった。と言っていた理由がようやく分かって、友奈は思わず笑う

辛すぎる料理なんてお見舞いに持ってきたら

次の日には出禁になってしまうかもしれない

絶対安静の体に悶えるほどの辛味を与えるなど、酷い話だ

友奈「退院したら、作って貰えるかな?」

千景「一緒に作ったら良いんじゃない?」

精霊らしくなく普通にリビングの扉を開けて入ってきた

千景は、前後に背負った赤ん坊を軽く揺らす

一見したら千景が母親に思えるような姿だ

さっきまで天乃に抱かれていたのとまったく変わらずに大人しいのは

それだけ好かれている証拠だろう

千景「彼女も喜ぶと思うわ」

沙織「星乃ちゃん達寝てるねぇ」

千景「ええ、さっき母乳をあげていたから」


619 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/22(月) 23:56:40.19HkLya9B/o (7/7)


千景「もうすぐ全員そろうのね」

友奈「その代わりに、若葉さん達が出かけちゃうんですよね?」

千景「一年も経たない内に帰ってくるはずよ」

勇者に劣ることのない力を持っている若葉達は

歌野と水都の目的地である諏訪には徒歩でも一週間かからないで辿り着くことが出来る

そのあと、

西暦時代に反応があったと言われる北方と南西の島に向かう予定らしい

北方から南西に向かうために一度戻ることになっている。

今も人が生きているとは思えないが、念のためだ

天乃「みんなー、運んで頂戴」

樹「はーいっ!」

千景「……」

キッチンへとみんなが駆けていく

それはまるで母親に呼ばれた子供のようで

走ったら危ないと困ったように言う天乃と目が合う

千景「母親ね。久遠さんは」

友奈「そうですね……早く、帰ってきたいです」

車椅子のひじ掛けを撫でる

天乃が使っていた車椅子

これを使わなくなるのは寂しいけれど、でも、また隣で歩きたいと、友奈は思った


620 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/23(火) 00:05:01.67hTPCIEY/o (1/7)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


621以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/23(火) 00:15:51.69IWIEzZ20O (1/1)


若葉は1年の単身赴任か…


622以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/23(火) 00:16:14.680Z6NQVx0O (1/1)


友奈ちゃんもケガが早く治るといいなぁ


623 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/23(火) 20:57:34.47hTPCIEY/o (2/7)


では少しだけ


624 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/23(火) 21:12:46.09hTPCIEY/o (3/7)


友奈の外出許可の申請が通った時間を考えると、

夕食を一緒に取るにはかなり早い時間にしなければいけないことと

夏凜のツッコミと、風の手伝いもあって

お医者様から怒られるような料理が一品も出なかった昼食は、ちょっぴり豪華だった

食べ終えた後には、一応だがケーキもあった

東郷「手作りも考えたけど、同棲しているから諦めたわ」

天乃「言ってくれれば知らない振りしたのに」

沙織「サプライズでやりたかったって意味じゃないかな」

夏凜「分かってて言ってるから気にしなくていいわよ、多分」

沙織の補足に補足を加えた夏凜に、天乃は笑顔で頷く

ケーキはあくまで卒業祝いで用意されたものだ

東郷が洋菓子を手作りしてくれるという点でも特別感が強いものだけれど

残念ながら、それは果たされなかった

もうしばらくしたら訪れるもう一個のお祝いサプライズは進行中だ


625 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/23(火) 21:42:37.95hTPCIEY/o (4/7)


天乃「友奈、帰っちゃうんでしょう?」

友奈「外泊許可は貰えなかったので……」

風「治ってる途中の今下手したら一生左足がダメになる可能性もあるって話だからね」

勇者だったおかげで、また歩けるようになれる程度で済んだ

ただの女の子になってしまった今は、

ちょっとの無理でもダメになってしまうことがある

園子「ゆーゆもあともう少しの辛抱なんよ~」

樹「そうですね。友奈さん、待ってます」

友奈「えへへっ……ありがと~」

友奈はちょっぴり恥ずかしそうに笑うと

でもね。と、小さく口を開いた

友奈「みんなが毎日お見舞いに来てくれるから、全然大丈夫だよ」

風「ほんと、部屋は空けてるから。焦らないでゆっくりね?」

友奈「はいっ」


626 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/23(火) 22:02:12.77hTPCIEY/o (5/7)


東郷「退院したら久遠先輩がまたお姫様抱っこしてくれるって」

友奈「う、嬉しいけど……恥ずかしいよ」

写真を撮るときにもされたけれどあの密着感は、とても心に悪い

友奈の熱くなってしまう体温に対して

元から少しひんやりしている天乃の体はとても明確に感じられる

ドキドキと高鳴る音が聞こえてしま和無いかと気が気じゃなかった

夜を共にした関係であっても、

それを悟られてしまったら向けられた笑みを見ることが出来なくなってしまいそうで。

天乃「どうしてお姫様抱っこ限定なのよ」

夏凜「筋トレになるから?」

園子「にぼっしーのそういうところ、ちょっとないかな~」

夏凜「ちょ……冗談よ」

ふんっと園子の視線から顔を背けさせて、照れ笑いから余裕のなくなった友奈を見る

友奈はどちらかと言えば、抱っこされるよりもする側とみられることが多い

男勝りではないのに、快活さに引き立たされる女の子っぽくもどこか異性めいた感覚

そんな友奈だからこそ、天乃ととは女の子であって欲しい。

男女で分けられるのなら男子側に振られる感覚を知ってる夏凜としては、そう思っている。

簡単に言えば――そうされている友奈が可愛いのだ


627 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/23(火) 22:33:02.29hTPCIEY/o (6/7)


天乃「お姫様抱っこじゃなくても、なんだってしてあげるから」

友奈の後ろからそっと抱きしめた天乃は耳元でそうっと囁いて、頬にキスをする

友奈「っ」

天乃「だからちゃんと完璧に治すこと」

友奈「は……ひゃいっ」

赤くなった友奈は唇の触れたところに手を添える

ほんのちょっぴり天乃の潤いが感じられるのは、さっきまで飲み物を口にしていたからだろう

抱きしめられるなんて思ってなかった

キスされるなんて思ってなかった

準備不足な心はもう一杯一杯で

ぼうっとしてしまった友奈を、東郷達は優しく見守る

東郷が撮影の時にお姫様抱っこを要求したのは、

友奈が普段はお見舞いの時しか触れ合えない分の寂しさを感じているのではと思ったからだ

あまり口にはしないし、友奈自身だってそこまで大きく思ってはいないであろう部分

けれど、天乃は知ってか知らずか友奈への対応はとても柔らかくて

そんな気持ちなど簡単に満たしてくれるだろうと、感じた

そしてやっぱり。

東郷「久遠先輩、後ろから抱きしめての頬への接吻は私もされたいです」

そうなってくるとちょっぴり妬けてくる


628 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/23(火) 22:38:49.84hTPCIEY/o (7/7)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


629以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/23(火) 22:47:04.15ZWriiTZgO (1/1)


久遠さんもお姫様抱っこされてばかりなくらい弱ってた頃より大分体力が戻ってきたんだなぁ


630以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/24(水) 01:26:20.36QNXVyn3l0 (1/1)




631 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/24(水) 23:57:19.45ZRoS8JHWo (1/1)


すみませんが本日はお休みとさせていただきます。
明日はできれば通常時間から


632以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/24(水) 23:58:54.77pyCg01bYO (1/1)

乙ですー


633 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/25(木) 23:26:57.26bys6yqMso (1/1)


遅くなりましたが、少しだけ


634以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/25(木) 23:27:15.45/7OIXSfTO (1/1)

やったぜ


635 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/26(金) 00:36:22.26IJP2PJgCo (1/4)


天乃「東郷がそれだけで満足してくれるとは思えないのだけど」

東郷「時と場合によりますね」

風「時と場合ねぇ?」

風は訝しげに言う

東郷は確かに、場合によってはそもそも過度な接触を避ける節度のそれなりにある子だ

けれど、それと同じくらいに場合によっては触れてくる

風の考えを察しているであろう東郷は「時と場合です」と繰り返す

東郷「特に、夜は駄目です……それは、みんな同じだと思いますが」

樹「それは確かにそうですよね。夜、ベッドの上でそうされたら、良いのかなって思っちゃいます」

園子「押し倒すんよ~」

きっと天さんは受け入れてくれるからね~と、

にこやかに言ってくれる園子にはみんなが同意していて

そんなことないとは、言わせて貰えないだろう

天乃「押し倒されると困るから抵抗するけど、良いの?」

夏凜「どうせ貧弱じゃない、あんた」


636 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/26(金) 01:09:32.88IJP2PJgCo (2/4)


天乃「酷い言い草ね」

でも事実だ

多少なりに力を取り戻した天乃だけれど、

やっぱりまだまだみんなには勝てない

せいぜい、怪我を庇う必要のある友奈くらいだ

今はまだ樹にすら負ける

と言うより、勇者になる必要が無くなっても鍛えることを止めない樹がいけないのだ

戦うのを目的としていないその努力は天乃を抱くためだけの積み重ね

暫くはずっと、天乃はみんなに力負けするだろう

だから、と天乃は夏凜を見上げる

天乃「だったら、優しくしてよね」

園子がやるように、夏凜に身を寄せる

天乃の方が背が低い分夏凜の体が傾いて、驚いた声がくすぐったく感じる

園子の感極まった声が聞こえた

風や樹のちょっぴり弾む楽しんでいる声がする

けれど、天乃はその瞳に夏凜だけを映して

天乃「優しくしてくれなきゃ……嫌よ」

夏凜の腕を抱いた


637 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/26(金) 01:41:46.30IJP2PJgCo (3/4)


夏凜「や、優しくする……けど……」

天乃の体温、体の柔らかさ

抱き着く天乃の見上げる瞳には夏凜も強くは出られなくなってしまった

止める気のない園子達の一方で

星乃達を抱いている千景だけが、眉を顰めた

千景「せめて、子供が見ていないところでやってくれないかしら」

夏凜「他に言うことない?」

千景「お邪魔しました。とでも言えば良い?」

夏凜に対して素っ気なく答えた千景はその声とは裏腹に苦笑を零した

子供を連れて避難するのは別に構わないけれど

今はまだ昼だし、場所はリビング

そもそも、天乃にはそんな気はないはずだ

夏凜が酷いことを言うから、ムッとして攻めてみているだけで。

千景「引きはがせばいいんじゃないかしら」

夏凜「それはそうだけど……」

夏凜の視線が天乃に落ちる

天乃の視線はそれとぶつかって――ふっと微笑む

天乃「引きはがさないだけ嬉しいけれど、抱きしめてくれたらもっと嬉しかったわ」

なんて、天乃は日々培う駆け引きの一端を、垣間見せてみた


638 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/26(金) 01:43:27.71IJP2PJgCo (4/4)


では遅くなりましたが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


639以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/26(金) 06:05:33.08+JJ29YrSO (1/1)


久遠さんの夜は色々な意味で忙しくなりそうだな


640以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/26(金) 11:42:44.52PJ/6fcaBO (1/1)


久遠さんがその気になれば毎日だってあり得るぞ


641 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/27(土) 21:27:33.69nxyfOrueo (1/3)


昨日は出来ませんでしたが、少しだけ


642以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/27(土) 21:37:58.63AzIYyJgFO (1/1)

よっしゃ


643 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/27(土) 22:30:54.01nxyfOrueo (2/3)


天乃の追撃に困り果てた夏凜だったが、

千景の視線があったからか、はっとして首を振ると

天乃の体をちょっとだけ離した。

夏凜「それはこの状況じゃ無理……悪いけど」

天乃「ばーか」

夏凜「状況考えてよ、お願いだから」

これがもし、

天乃がどこかに旅立つ見送りであるのだとしたら

夏凜も抱きしめることは出来る

もしかしたら、その一歩踏み込んだ先のことだってできるかもしれない

でも、そうじゃない今は難しい。

なにより、それをした後の天乃が大変になる


644 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/27(土) 23:19:41.54nxyfOrueo (3/3)


天乃「ふふっ、ごめんなさい」

冗談よ。と、天乃は言う。

夏凜は二人きりの時は、それなりに相手をしてくれる。

今だって、ちゃんと

だからこれだけでも十分だと、天乃は夏凜の体を抱きしめてから、離れる。

友奈「退院したら、私が真っ先に抱きしめますね」

東郷「友奈ちゃん、私は?」

友奈「えへへっ、東郷さんもっ」

友奈は車椅子のまま、東郷の腰に腕を回す

今までの友奈のスキンシップに比べてとても頼りない距離感に

東郷は寂しそうに笑みを浮かべて「ありがとう」と、友奈の頭を撫でる

東郷「私と久遠先輩を一緒に抱きしめてもいいわ」

風「あんた……ブレないわね……」


645 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/28(日) 00:14:15.77Kl6LqDIno (1/5)


友奈を病院へと送るために、瞳の車に乗せたあと

一緒に行くと言った天乃だけれど、友奈との

子供達と一緒に居てあげるべきだという友奈の言葉に折れて、

代わりに東郷が一緒に病院へと向かった

園子「天さんは、わっしーに夜這いされる準備もしておいた方が良いんよ~」

天乃「そこは友奈が犠牲になってくれるわ。きっと」

少しくらいは、東郷の気持ちを発散させてくれるだろう

友奈の体を思えば、完全にとはいかないのが惜しいけれど。

天乃「今日は、夏凜が付き合ってくれる日なのよ」

樹「特別な日ですから、仕方がないですね」

特別な日だからこそ、

全員で天乃を囲いたいところだけれど

そんなことをしたら天乃が干からびるので、それは出来ない

風「夏凜、ちゃんとしなさいよ?」

夏凜「言われなくても分かってるわよ」


646 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/28(日) 00:33:36.47Kl6LqDIno (2/5)


天乃「ねぇ、ところでほかのみんなはどうしたの?」

千景「乃木さん達のことなら、出かけているわ」

風「あれ、どこ行くって?」

千景「橋の向こうまで」

もうすぐ帰ってくる予定だと千景は前置きして、

感度を確かめに行ったのだと言う

天乃の精霊として生きている若葉達は、天乃との精霊的な繋がりを持っている。

それが、どれほどまで維持できるのか。

千景「県外でも問題なかったわ」

樹「それって、つまり今も千景さんは話が出来てるってことですか?」

千景「ええ。一応」

沙織「あたしは半霊だから無理なのかな」

半分人間で半分が精霊

そんな状態の沙織は、流石に宿している力が他と比べて弱いのだろう。

残念そうに、首を振った。


647 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/28(日) 00:35:04.69Kl6LqDIno (3/5)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


648以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/28(日) 01:21:23.27UI+QQWCTO (1/1)


千景が残ってくれているおかげである程度安心だな


649以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/28(日) 07:06:05.51rod1SkNRO (1/1)


さおりんはまだ猿猴と一体化したままなのね


650 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/28(日) 23:18:54.02Kl6LqDIno (4/5)


遅くなりましたが少しだけ


651以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/28(日) 23:24:11.42WhTgu2ZzO (1/1)

かもん


652 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/28(日) 23:57:33.30Kl6LqDIno (5/5)


樹「久遠先輩とのつながりがあるだけうらやましいです……」

沙織「それを言われると困っちゃうな」

精霊の繋がりは、千景たち完全な精霊であれば少なくとも県外まで通じる

半霊である沙織でさえ、隣の市まで離れても全く問題ないほど通じていて、

知ろうと思えば、天乃の居場所を知ることも出来る。

もちろん、天乃は逆に精霊の居場所を感じ取れるけれど。

プライベートを考えて、めったにしないが。

天乃「樹達とも、繋ごうと思えば繋がれるかもしれないわ」

樹「本当ですか?」

天乃「私に力は残ってるし、それをうつせば……少しだけね」

沙織達のように定着は出来ない

数秒か数分か、そのくらいだろう

千景「当然、ハイリスクよ。やらないべきだわ」


653 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/29(月) 00:19:38.65qOJYjyeHo (1/9)


風「当たり前でしょ。出来てもやらない」

天乃の体が落ち着いているのは、

子供に母乳を通して力の供給を行う以上のことをしていないからだ。

せっかく苦難を乗り越えて安定しているのに、

ちょっとつなげてみたいからと余計なことをして

体内に宿り続ける力のバランスが崩れたらどうなるか分かったものではない。

子供が成長しきったら、

天乃の体に宿る力は非常に微弱なものとなって、

もう、何があったって調子が崩れることはないとみているけれど。

東郷「でも、時々……その、そういうことをしてますけど、大丈夫ですか?」

夏凜「その程度じゃ問題ないくらいにまでは来てんのよ。だから、それ以上のこと」

例えばそう、純粋に血を分けるとか――だろうか。

それなら確実に久遠に染まるだろうから


654 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/29(月) 00:45:12.13qOJYjyeHo (2/9)


園子「……子供が大きくなったら、私達のこと、説明しないとだね~」

天乃「そうね……それ、結構重要な問題だわ」

今から少しずつ考えておいた方が良いかもしれない

どうして、天乃の周りには女の子しかいないのか

同棲していて、逆に父親がいない理由。

風「いっそ、包み隠さずぶっちゃけてもいいと思うけど」

天乃「私の子供だからって、暴れないとは限らないから」

もう、すでに千景や夏凜のことを気に入っているし、

親類縁者として認識して、特に波乱もなく終わってくれる可能性も……ある。

天乃「子供を育てるって、大変ね」

夏凜「そりゃそうでしょ」

簡単なはずがないと言った夏凜は、

でも、ちゃんと助けるから。と、天乃に笑みを見せる

素直な気持ちを打ち明けたせいか、ちょっぴり頬が染まっているのが愛らしい

それを見てか、園子はとてもうれしそうで。

園子「夕飯はにぼっしーの秘密サプリ飯でけって~いっ」

夏凜「はぁ!?」

東郷「精力増強を図るのねそのっち……流石だわ」

樹「それ、私達にも影響出ませんか……?」


655 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/29(月) 00:46:20.35qOJYjyeHo (3/9)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から


656以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/29(月) 06:11:58.92OX+BKYbkO (1/1)


五郎くんのことについても話しとかないとだな


657 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/29(月) 21:22:03.75qOJYjyeHo (4/9)


では少しだけ


658以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/29(月) 21:26:06.32ihyx1VMUO (1/2)

よしきた


659 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/29(月) 21:50:03.22qOJYjyeHo (5/9)


天乃「普通のお夕飯が良いわ」

風「まぁ、食べるなら……の、話しだけどね」

風は困ったように言うと、お腹を撫でる。

食べられる余裕はあるけれど、夕飯のことを考えるほどではない。

甘い物もあって、今は十分満たされていた。

天乃「時間も考えるべきかしら……」

夏凜「私達はともかく、天乃は極力抜くのは考えない方が良いんじゃない?」

樹「そうですね……軽食でも口にしてください」

産後間もないというほどではないにしても、

まだ母乳を上げる期間である天乃は、しっかりと食事はしたほうが良いと、樹は言う。

天乃の場合、

太るだのなんだの気にしなくていいというのは、

こういう時にアドバンテージかもしれない。

もっとも、理由が理由の為に天乃はそれをよく思っていないけれど。


660 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/29(月) 22:07:05.31qOJYjyeHo (6/9)


天乃「それは良いのだけど、あまり遅いとなんだかちょっとね」

天乃が良いと言っても、みんなは同じ時間に夕食を取ってくれる

それはそれでみんなに迷惑が掛かってしまうので、あまりにも遅い時間はさけたい

なら――と、天乃は閃いたように笑みを浮かべる

天乃「いつもより1時間だけ遅くしましょ。それでいいかしら」

園子「軽食くらいは全然問題ないんよ~」

夏凜「ならその辺りで軽く作る……ってことで」

夕食の予定も決めたところで、天乃が一息つくと

東郷がすぐに「久遠先輩」と、心配そうに声をかけた

東郷「お休みになったほうが良いと思います」

風「そうそう、卒業式、送迎会出てお昼だって作らせちゃったし」

天乃「お昼は良いのよ。まだ余力はあったから」


661 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/29(月) 22:22:13.42qOJYjyeHo (7/9)


樹「本当、ありがとうございました」

天乃「どういたしまして」

もう何度か言われたけれど、

改めてお礼をしてくれる樹に微笑んで、すぐ傍にいる夏凜の腕に体を寄せる

今度は冗談でも悪戯でもない

それをちゃんと分ってか、夏凜は天乃の背中に手を回した

天乃「さっきは抱いてくれなかったのに」

夏凜「疲れたんでしょ……だったら恥ずかしいとかどうとか、どうでもいいわよ」

頬が赤くなることさえない夏凜は真剣な目をしていて、

風達も茶化したりはしない。

千景「私はこの子達を連れて行くから――」

風「じゃぁあたしがベッドやりに行くわ」

樹「園子さん達は大丈夫だとは思いますけど、夏凜さん達をお願いします」

あっという間に指示が通っていくのを聞きながら、

天乃は困ったように、目を閉じる

天乃「そんな大げさにしなくていいのに」


662 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/29(月) 22:34:12.38qOJYjyeHo (8/9)


そうは言いつつ、天乃は少しずつ夏凜に頼る力を大きくしていく

以前のようにふっと意識が途絶えることはなくなったし、

強い眠気に襲われているなんて言うこともないけれど、

だんだんと、立っていられる力が無くなっていくのだ

夏凜「ゆっくり腰を下ろして」

天乃「……?」

言われるがままに、縋りついたまま腰を下げていくと、

夏凜の身体も一緒に下がって行って、膝裏の細く力強い感触を感じる

それが、所謂お姫様抱っこの兆候だと察した天乃は、

夏凜の腕から、胸の方に頭をスライドさせる

天乃「落としたら、承知しないんだから」

夏凜「信じなさいよ」

天乃「ん……」

ぐっつと力が加わって体が持ちあがると

一瞬の浮遊感の後には、優しく強く体が支えられる

天乃「いっつも、これだけしてくれたら……良いのに」

夏凜「たまにやるから特別――って、思っておいてくれると助かる」

夏凜はそう言って苦笑いを浮かべると、

園子達に控えて貰いながら、天乃を部屋へと運び込んだ


663 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/29(月) 22:38:49.02qOJYjyeHo (9/9)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


早ければ明日には3月14日目終了予定


664以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/29(月) 23:12:44.37ihyx1VMUO (2/2)


安定の夏凜ちゃんの旦那さん感よ
あまにぼのイチャイチャシーンがあるなら是非見届けたいなぁ


665以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/30(火) 01:44:49.05oxoFho72O (1/1)


久遠さんにご飯を一杯あげようキャンペーン開幕


666 ◆QhFDI08WfRWv2020/06/30(火) 23:41:14.61sHt87klKo (1/1)


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から


667以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/06/30(火) 23:45:12.40y35xKQu7O (1/1)

乙ですー


668 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/01(水) 23:01:12.692LiqMr/1o (1/1)


遅くなりましたが、少しだけ


669以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/01(水) 23:02:12.59peZJyfxQO (1/1)

やったぜ


670 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/02(木) 00:44:47.12EbfTYSpoo (1/10)

√ 3月14日目 夕 (自宅)


夏凜によってベッドへと運ばれた天乃は、そのまま数時間眠ることになった。

今日は卒業式があったこと、送迎会に参加したこと

そして、普段通りに母乳を子供たちに与えたこと

最も大きな理由は力の源ともいる母乳を与えていることだが、

それを除いても、体力の落ちた天乃としては頑張りすぎたのだ

天乃「……悪いわね」

夏凜「気にしなくていい」

天乃「みんなは?」

夏凜「さぁ? 家の中には居ると思うわよ」

天乃が眠った後、

起こしてはいけないからと、みんなは部屋を出て行った。

出かけるような音はなかったし、そういう声かけもなかった。と、夏凜は言う


671 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/02(木) 01:14:34.49EbfTYSpoo (2/10)


天乃「なんでそういう……」

部屋を一歩出ればすぐにでも分かりそうなことを曖昧に答える夏凜を見上げる

二人……子供の天乃達なら三人は横になれそうな広いベッドの端に腰かけている夏凜は、

目を瞑ってはいるものの、起きている。

きっと、天乃が眠る前から――起きるまで。

天乃「ずっといてくれたのね」

夏凜「すぐに起きるって分かってたからよ」

天乃「そうじゃなかったら、一緒に寝ててくれた?」

夏凜「……少しは考えたけど」

はっきりとは言わない夏凜は、

きっとそのつもりだったのだろうと、天乃は勝手に考える。

ベッドの上の手に触れてみたけれど、驚いた様子はなく、困ったような吐息が聞こえた


672 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/02(木) 01:41:43.22EbfTYSpoo (3/10)


夏凜「なに? 言っておくけど……今日はさすがにしないからね?」

天乃「私、そんなに欲求不満な生活してると思う?」

夏凜「言葉の綾だから」

天乃は暇があれば―もちろん、日中は控えている―そういう付き合いがある。

と言うより、していかなければみんなが欲求不満になってしまう。

夏凜もそれが分かっているからか、

やっぱり、休ませることを優先してくれる。

その気持ちは嬉しいけれど、たまには――そんなこと関係ない。とか。

なんて、天乃は最近……ちょっとだけ思うこともある。

もちろん、それをされたら体調を崩す可能性が高いので

夏凜がそれをすることは今しばらく、絶対にないけれど。

天乃「御夕飯は?」

夏凜「誰も呼びに来てないし、まだだと思うけど――軽食で良いなら用意するけど」

天乃「インスタントだったら泣くわよ」

夏凜「簡単なものだけど、ちゃんと作るから」

そう言った夏凜に、頷く。

リビングに行くと天乃は言ったけれど、

部屋に持ってくるから大人しくしてて。と、夏凜に拒否されてしまった


673 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/02(木) 01:42:45.95EbfTYSpoo (4/10)


では短いですがここまでとさせていただきます。
明日はできれば少し早い時間から


674以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/02(木) 03:22:24.30YatafSqUO (1/1)


みんなで同棲したら料理も当番制かな?


675以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/02(木) 06:06:42.11e8+lGz65O (1/1)


元気になったとはいえまだまだデリケートな体の久遠さん


676 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/02(木) 22:01:57.57EbfTYSpoo (5/10)

遅くなりましたが、少しだけ


677 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/02(木) 22:13:58.04EbfTYSpoo (6/10)


少ししてから戻ってきた夏凜はお盆を持っていて、

そこはかとなく海のにおいが感じられるそれには多分、

夏凜の代名詞が関わっているのだろうと、天乃は一人納得する。

天乃「煮干しのにおいがするわ」

夏凜「少し使ったから……身は除いたわよ。細かくしようとも思ったけど」

噛むのも億劫でしょ。と、

気遣う夏凜が作ってきたのは、どうやらおかゆらしい。

水分たっぷりのつやつやとしたご飯がお椀の中で湯気を揺らしている。

天乃「みんなは?」

夏凜「まだいいって。あんたは食べておいた方が良いでしょ?」

天乃「それはそうなんだけど……」

夏凜「みんなと食べたかった?」

天乃「そんな我儘は言わないわ」


678以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/02(木) 22:15:07.48JRvVYsKJO (1/2)

来てたか


679 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/02(木) 22:29:47.94EbfTYSpoo (7/10)


思っていないとは言わないけれど、

流石に、みんなが食欲のない時間帯に一緒に食べたいだなんて言えない。

本当は眠る予定はなかったし、

もう少しあとを予定していたが、力を消費した分を補うためには早い方が良くて。

ちょっぴり寂しいという気配でも漏れていたのか、

夏凜は仕方がない。とでも言いたげに眉を顰めて見せた。

夏凜「私は付き合うから、それで我慢しなさいよ」

天乃「ちょっとドキドキするからそう言うの、今は禁止」

弱った女の子はなんとやら……と言うか、

少しぼんやりとも仕掛けない今の状態には、

はっきりと感じられるものはより強調して感じられるものなのだろう

気絶するようなそぶりを見せた天乃だが、

夏凜はスプーンひとすくい分を手であおいで冷ましてから天乃の方に向ける。

夏凜「馬鹿なこと言ってないで少しでも食べなさい」


680 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/02(木) 22:47:34.49EbfTYSpoo (8/10)


夏凜が差し出したスプーンへと目を向けた天乃は、

それにゆっくりと口を近づけて、熱が多少なりと冷めているのを確認してから少しずつ口に含む。

じんわりと広がるぬくもり、

潮気と言うべきか、塩分の感じる汁とふやけたご飯が喉を通って芯に沁みる

意志に関係なく、夏凜の手でスプーンが引き抜かれていくのを見送って、冗談っぽく呟く。

天乃「サプリが溶けきってない」

夏凜「入ってないから」

次。と、遠慮なく差し向けられたそれを同じように口に含み、

飲み込んでから、ほぅ……と、息を吐いた。

天乃「ありがとう、美味しい」

夏凜「ん」

特に言葉はなかったものの、

夏凜の閉じた唇の奥で震えたそれは「気にしないで良いから」と言うものなのだろうと、天乃は察する。

ちょっぴり照れてくれたのも、なんだか可愛らしく思えた。


681 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/02(木) 23:04:40.08EbfTYSpoo (9/10)


夏凜「頑張らせすぎて……悪かったわね」

天乃「良いのよ。好きでやったことだもの」

卒業式で、入退場など可能な限り普通に行動させて貰ったのも、

そのあとの送迎会に参加していたのも、

友奈の為に料理をしていたのも。

誰かが悪いという話ではなく、天乃がやりたくてやったことなのだ

申し訳ない。と、そう項垂れられても、天乃は許すとは言えない。

天乃「今までは母乳をあげる程度だったから……今はこのくらいが限界なんだって知れてよかったわ」

リハビリをちょっぴり頑張っていたころにも似たようなことがあった。

だから、リハビリは慎重に慎重を重ねる必要があったし、全盛期がとても遠のいた状態にある。

夏凜「子供が成長してる証だって九尾が言ってたわ」

天乃「そう、なの?」

夏凜「無意識ではあるらしいんだけど、自分に適した力をよりしっかりと取り入れようとするから余分に持っていかれてるって話だった」

九尾を信じるなら――の話ではあるけれど、これに関しては別に疑う必要もない

夏凜「この後、あげられそう?」

天乃「頑張ってみるから……もっと食べさせて」


682 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/02(木) 23:07:32.41EbfTYSpoo (10/10)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


683以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/02(木) 23:17:44.76JRvVYsKJO (2/2)


夫婦で力を合わせて双子ちゃんたちを育ててる感があるな


684以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/03(金) 14:07:07.93jD6CWEkJO (1/1)


子供の次は夏凜にもあげようか


685 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/04(土) 00:00:29.0003jiA34Go (1/4)


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば早めの時間から。


686以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/04(土) 00:15:06.83nMRcfaMuO (1/1)




687 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/04(土) 21:25:37.6003jiA34Go (2/4)


遅くなりましたが、少しだけ


688 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/04(土) 22:13:22.4003jiA34Go (3/4)


天乃「病弱な奥さんって、どう?」

夏凜「何急に、自分の状況が嫌にでもなった?」

天乃「そういうわけじゃ、無いけど」

いままでがそうだったし、

病弱だからみんなに見捨てられるだなんて思ってはいないけれど、

夏凜があまりにも甲斐甲斐しく世話をしてくれるから、聞きたくなってしまう。

天乃「貴女が、優しいんだもの」

夏凜「……馬鹿なこと言うようなら、怒るけど」

天乃はまだ話していない。

けれど、夏凜はその口が何を言おうとしているのか、察したらしい。

天乃の口にスプーンを運ぶ手を止め、器に放る

まだ、ぺちゃりと音がする。

夏凜「私は別に、病弱なあんたが好きなわけじゃない。だから大事にするわけじゃない。だから、優しくしてるわけでもない」


689以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/04(土) 22:13:33.66hCe6tKMW0 (1/1)

きてたー


690 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/04(土) 22:40:13.2603jiA34Go (4/4)


あえて並べ立ててから、ゆっくりと口を開く。

天乃が本当にそう思っているかなんて聞くつもりはない

思っていようがいまいが、

天乃が病弱である自分はどうかと聞いてきた。それだけだから。

夏凜「そりゃ、弱ってると……いつも以上に優しくしちゃうわよ」

突っ撥ねるような冗談が出来るのも

天乃が元気であるからこそのもの。

そうでなければ、少しでも距離を近づけたくなってしまう。

夏凜「でも、だからってそう思われるのは困る」

天乃「だって」

夏凜「もう少し優しくするから……たぶん」

そう努力するから。と、夏凜は照れくさそうに言う

夏凜がツンとすることがあるのは、

頼り慣れていなかったころがそのまま残り続けているからだろうか。

けれど、だからこそ人のそういったところには敏感でもある。


691 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/05(日) 00:07:35.70FKg4XMyTo (1/9)


天乃「でも私……夏凜の照れ屋なところも好きよ」

夏凜「はっ!?」

天乃「ふふっ」

ツンとしたところを、天乃は照れ屋と言う

それがあってこその夏凜だと思うから

別に、自分が病弱の方が良いとは思っていない。

優しい夏凜は好きだけれど、

ちょっぴり行けずな夏凜も好きではある。

でも、優しくされたいとも思ってしまう

自分ってちょっぴり面倒な女の子だよね。と、思うくらいには面倒だ

天乃「夏凜は今のままが良い」

夏凜「そう?」

天乃「ちょっと意地悪だったりするけど、でも、して欲しい時にして欲しいことをしてくれるもの」

夏凜「抱きしめて欲しい時に抱きしめないのに?」

天乃「恥ずかしがってる貴女を見られる方が良いって思ってるってことよ」


692 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/05(日) 00:38:18.72FKg4XMyTo (2/9)


天乃はそう言って笑う。

夏凜の愛らしい姿を見られるのも

自分の体に触れてくれるのも

どちらも、天乃が望んでいることだ

両方してくれたら嬉しいとは思うけれど。

天乃「それに、抱いてって言ったら。抱いてくれるでしょう?」

夏凜「それは……まぁ……」

みんなの前では。なんて恥じらうこともあるけれど、

お願い。と言えば、限度はあるけれど一応聞いてくれないことはない

それでいい、それで十分だ。

天乃は、そう思う。

天乃「ところで、面倒くさい女の子は――好きかしら?」

夏凜「そう言う奇特なやつしか、あんたの傍になんて来ないわよ」

天乃「もうっ……否定してくれると思ったのに」

思ってないくせに。

そう困りつつも笑う夏凜を、天乃は嬉しそうに見つめていた


693 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/05(日) 00:39:52.86FKg4XMyTo (3/9)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから


694以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/05(日) 02:36:49.77oNOIKxScO (1/1)


めんどくさい女の子大好きサークル勇者部


695以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/05(日) 07:05:46.70T+axfsq0O (1/1)


いつでも抱かれる気満々な久遠さん


696 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/05(日) 19:01:34.36FKg4XMyTo (4/9)


遅くなりましたが、少しずつ


697以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/05(日) 19:09:55.56vQtxb0lNO (1/2)

かもーん


698 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/05(日) 21:23:12.01FKg4XMyTo (5/9)


食事を食べ終えた天乃は少し時間を置いてから、

授乳を行おうと、千景を呼んで子供達を連れてきて貰った。

天乃「あんまり、見ないでよね」

夏凜「今更でしょ」

天乃「それはそうだけど」

授乳の手伝いなんて、夏凜だけじゃなくみんなが経験しているし、

そもそも、天乃の裸体も何度も見てきている。

だから、正直に言ってしまうと、

天乃もそこまで恥ずかしさはなくなってきていた。

とはいえ――割り切るわけにもいかなくて。

天乃「夏凜にもいつか授乳させてみたいわ」

夏凜「はいはい。子供が出来たらね」

軽くあしらう夏凜の物言いにちょっぴりむっとした天乃だが、

絶対に子供作らせてあげるんだから――東郷が。と、

他人任せに、笑みを見せる


699 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/05(日) 22:25:55.75FKg4XMyTo (6/9)


夏凜「気を失うまで吸われないように気をつけなさいよ?」

天乃「大丈夫。そのために、夏凜にも一緒に居て貰うんだから」

夏凜「止めるのは天乃がするんだからね?」

天乃「ええ」

星乃と月乃

双子の女の子である二人は、だんだんと成長していっているのを感じる

髪が生えてきているし

言葉だって、少しずつしっかりとし始めている

ママ、パパ

それはもう、ちゃんと言ってると分かるほどで

なぜかパパと呼ばれることに、千景が少し困り顔で笑っていることもある

夏凜「妊娠期間みたいに、育つのも早かったりすると思う?」

天乃「どうかしらね……」

病院では、

妊娠から出産までの早さは異常だという話だったが、

産まれてからの成長に関しては、あまり大差がないという話だった


700 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/05(日) 23:15:15.72FKg4XMyTo (7/9)


天乃「夏凜は……背、伸びた?」

夏凜「量ってないから分からないけど」

天乃「体重増えた?」

夏凜「……筋肉はついた」

ぷいっと顔を背ける夏凜は、

自分のふくらはぎの部分を軽く抓る

御\脱衣所のところに体重計が置いてあるから、

みんながみんな、気になれば量ることが出来る

つい最近量った時に体重が増えていたけれど

日々積み重ねている鍛錬の結果であると、信じている

実際、食べ過ぎたりはしていないから大丈夫なはずだ

夏凜「天乃は……そういう変化もないの?」

天乃「体重、変わってないのよ。脂肪は落ちていると思うのだけど……」

夏凜「筋肉が点いた分体重が落ちてるんじゃないの?」

天乃「ん~……だと、思うんだけどね」


701以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/05(日) 23:31:29.52omGMtsFI0 (1/1)

山科花菜


702 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/05(日) 23:45:42.76FKg4XMyTo (8/9)


天乃は力の関係で今現時点より、容姿は止まってしまう。ということは伝えられている。

なので、身長が148cmなのはもう諦めているけれど、

衰えた筋力のままではいられないので、日々少しずつ運動するようにしている。

その結果、筋肉はつくし脂肪は落ちる

しかし、体重に変動がないことから

固定されているのは天乃の成長が元から止まっていた時期なのかもしれない。と、推測している。

九尾は、理想の形に戻るだけだと言っているけれど。

天乃「理想……あと、10cmくらい背が高くなりたいわ」

夏凜「戻るわけじゃないから」

天乃が元々10cm背が高かったのなら、戻れるだろう

でも残念ながら、違う。

天乃「夏凜達も成長止まってくれたらいいのに」

夏凜「私は、あんたに成長して欲しい」

天乃「おばさんになっちゃうのに?」

夏凜「一緒におばさんになりたいのよ。当たり前のように、普通に……老いていきたい」

若い方が良いと思う気持ちはある

けれど、年老いていくのが普通で、日常で

だから、一緒に老けていきたいって思う。と、夏凜は母乳を飲む子供たちを優しく見つめた


703 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/05(日) 23:52:18.77FKg4XMyTo (9/9)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


704以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/05(日) 23:56:47.20vQtxb0lNO (2/2)


寿命こそあるけど久遠さんだけ老けないままなのもなぁ…
それはそれで後々辛いことになりそう


705以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/06(月) 00:44:43.98iw3EPAhwO (1/1)


一応精霊組とか月星ちゃんがいるにはいるけどな


706 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/06(月) 21:55:22.49uJ5MVyUko (1/6)


では少しだけ


707以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/06(月) 22:12:28.99Duw+NlMjO (1/2)

来てたか


708 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/06(月) 22:26:34.12uJ5MVyUko (2/6)


夏凜「子供も同じ可能性は高いし、精霊は確定してるけど……」

天乃と同じように、ある一定の容姿から変わることがない人たち。

精霊は沙織を除いてすでに亡くなっている存在のため、変わらない。

子供達にも天乃と同様の力が流れることになるため、ある一定の年齢から変わらない可能性はないとも言い切れない。

もちろん、

神樹様の種をとりこんだ天乃とは状態が違うため、

子供達は問題なく成長するとみているけれど。

天乃「置いていっちゃうんじゃないかって?」

夏凜「……それが一番、悩むことかもね」

天乃は永遠の15歳だ

その一方で、夏凜達はしっかりと歳を取っていくことになる

天乃の血を取り込んだことで、多少長生きで多少若々しいかもしれないが、

やっぱり――おいていくことになるだろう

天乃「普通の夫婦だって、どちらかに先立たれるものだわ」


709 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/06(月) 23:07:09.13uJ5MVyUko (3/6)


夏凜「でも、付き合ってく相手だけがドンドン大人になっていくって嫌じゃない?」

天乃「綺麗になっていく貴女達を見られるってことでしょう?」

明確に言葉にするのなら、少女から女性になる。と、言うのだろうか。

それを見られるのは喜ばしいことだと思う。

天乃「そう考えると、貴女達の成長は止まられると困るわね」

夏凜「そう……でも、私の意見は変わらないわよ」

天乃「変えてとは、思ってないもの」

容姿年齢的に歳を重ねていくことが出来ないということは、

逆に考えれば、天乃はそれを見せてはあげられないということになる。

天乃は胸に感じる子供たちの温もりに微笑みながら、夏凜へと目を向けた

けれど、その瞳を悲し気に揺らして開こうとした口を閉じる

視線は子供へと戻って

天乃「長生きしてね」

夏凜「長生きするつもりよ。少なくとも、100歳は目指してる」

天乃「夏凜の健康志向ならあと10年は頑張って欲しいわ。110歳。どう?」

夏凜「これからの技術革新を想定して――120にしとく」


710 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/06(月) 23:24:13.23uJ5MVyUko (4/6)


夏凜は冗談めかしてそう言うと、

いやいやいや……と、首を振った。

夏凜「そこまでよぼよぼなおばさんのまま生きていくのはきついかも」

天乃「若返りの血、飲ませてあげるから」

夏凜「老体に劇薬はちょっと」

今ならまだしも、

年老いた体に、天乃の力は毒にしかならない気がすると、夏凜は断る。

なら若いうちに頂いてしまえばいいのではとなるけれど、

過去の影響を考えれば、するわけにもいかない

天乃もそれが分かっているから「残念ね」と、苦笑する

天乃「ならせめて、全身全霊で若作りしておいてね」

夏凜「出来る限りやっておくわよ」

天乃「夏凜と一緒に居るだけで、娘さんだとか、お孫さんだなんて言われたくないわ」

夏凜「努力はする」

きっと無理だと、夏凜も天乃も思っているけれど、

あえて、それは口にしなかった。


711 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/06(月) 23:44:12.55uJ5MVyUko (5/6)


天乃「せめて、孫の顔は見てよね」

夏凜「それは……子供達が結婚するかどうかによって変わるでしょ」

星乃と月乃に限っては、

天乃の血を色濃く継いでいる子供たちだ

天乃のように、異性に恋をするとは限らないし、

そもそも、恋愛と言う方向に流れるとは限らない。

一生独り身を貫いてしまうかもしれない

夏凜「天乃って、子供の交際許せるの?」

天乃「私以上に許されない恋なんてしないだろうし」

夏凜「それもそうか……」

納得。と、

夏凜の頷きを見た天乃は小さく笑う

ぐっぐっぐっ……と、

ちょっぴり痛みを感じそうな子供達の口の感触

それも大切なものだと、天乃はしっかりと受け止めた。


712 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/06(月) 23:45:16.70uJ5MVyUko (6/6)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


3月14日目 はあと(夜)


713以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/06(月) 23:51:19.53Duw+NlMjO (2/2)


遠い将来のこと語り合った後に二人っきりの夜…
これは期待せざる負えない


714以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/07(火) 02:12:20.57Vf/HMjbfO (1/1)


一周目で5年で逝って友奈置いていったこと考えると年取らないとは言え相手の天寿まっとうするの見送れる久遠さんは幸せだなあと思う


715 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/07(火) 23:13:17.12n+0rJG6ho (1/1)


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から


716以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/07(火) 23:32:33.02aiUqjjKXO (1/1)

乙ですー


717 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/08(水) 23:20:37.05w21mBv6ho (1/1)


遅くなりましたが、少しだけ


718以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/08(水) 23:28:38.25vDS3Kxq0O (1/1)

やったぜ


719 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/09(木) 00:56:20.84QRGyabBoo (1/8)

√ 3月14日目 夜 (自宅)


子供達も寝つき、みんなも寝静まりつつある時間

子供達の眠り小さなベッドの隣、大きなベッドの上で二人は並んで横になっていた。

天乃がいて夏凜がいて

それでもまだまだ余裕があるけれど、二人の距離は近く、両端を余らせる。

天乃「大変な一日だったわね」

夏凜「他人事のように言ってんじゃないわよ」

天乃「私の意識的には、大変な事はしてないもの」

卒業式と送迎会

それと愛情込めたお料理数品と、育児

普通に考えれば、天乃ならば大変な事なんかじゃなかった

けれど、今は大変な事なのだ

夏凜「寝なさいよ」

天乃「変に寝ちゃったから、まだ眠くないの」


720 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/09(木) 01:20:54.11QRGyabBoo (2/8)


天乃「ねぇ……夏凜」

夏凜「ん?」

天乃「私の制服――使ってもいいわよ」

夏凜「身長的に無理」

天乃「胸の分行けそうな気がするけど」

夏凜「……へぇ?」

夏凜は顔を顰めながら、普段は出さない悪さを感じさせる声を漏らす。

天乃を除いた勇者部の中では後ろから二番目の身長ではあるが、

それでも天乃よりは数センチ高い。

しかし、天乃が来ている制服は、

言葉そのままに、身の丈に合っていない胸部の分大きめになっている。

風や沙織は難しいが、夏凜なら着れるかもしれないというのは間違っていないのだけれど、

それはそれであまり認めたくはないのだろう

夏凜は天乃の額を指でつく

夏凜「すぐに着れなくなる予定だから、今のうちに言ってなさい」


721 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/09(木) 01:33:24.45QRGyabBoo (3/8)


天乃「背が伸びるの? それとも――」

夏凜「どっちもって言えたらいいんだけど」

天乃「揉まれたら大きくなるって、園子が言ってたけど」

夏凜「嘘に決まってるでしょ」

そんなこと信じてんじゃないわよ。と、

夏凜は苦笑いを浮かべて、園子の植え付けた冗談を一蹴する。

そもそも、身長じゃなくて胸の大きさを諦めていると取られたこと自体、不服だった。

小学校から今までの成長分と

あと数ヶ月もせずにほんのわずかな期間だけ同い年になることを考えると、億劫ではあるけれど。

夏凜「もしそうなら、天乃はもう少し大きくなるけど、良いの?」

天乃「これ以上は、ちょっと」

母乳をあげなくなったら落ち着くとは言われているが、

そんな気は全くしない状況に天乃は振り払って

天乃「夏凜は胸が大きい女の子の方が好き?」

夏凜「さぁ? 胸の大きさで選んでないから」


722 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/09(木) 01:40:55.36QRGyabBoo (4/8)


笑いながら答えた夏凜を、天乃はじっと見つめて――少しだけ体を寄せる

体の不自由さが解消されて一番うれしかったのは

自分から近づくのが楽になったことかもしれないと、天乃は思う。

夏凜はさらに体が密着することを気にすることなく、

枕の位置を調整して受け入れる

天乃「大きい方が好きなら、一年間バストアップ頑張ろうと思ったのに」

夏凜「そんなこと頑張ってどうすんのよ……意味ある?」

天乃「え~……」

そう言うこと言うの? なんて、

ちょっぴり不満をあらわにした天乃は「分かってないわね」と

そこはかとなく自慢げな表情を見せた

天乃「少しでも相手が好きな女の子になりたいって思うものなのよ」

夏凜「ん……胸よりその自慢げな顔の方が好きだけど」

本心をありのままに伝えて、夏凜は天乃のわずかに赤らんだ頬に触れた。


723 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/09(木) 01:41:31.98QRGyabBoo (5/8)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から



724以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/09(木) 06:13:01.764ME9EO97O (1/1)


そういえば久遠さんはずっと制服着られる身長のままなんだよな
…ゴクリ


725 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/09(木) 22:32:57.86QRGyabBoo (6/8)

遅くなりましたが、少しだけ


726以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/09(木) 22:48:56.22RMtkQyB/O (1/1)

きてたー


727 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/09(木) 22:59:06.73QRGyabBoo (7/8)


夏凜「1年後も10年後も50年後も、現役で着こなせるんだから、残しておきなさいよ」

天乃「25歳で中学校の制服着てる奥さんって、どうなのよ」

夏凜「若くて可愛い自慢の奥さん?」

天乃「止めてよ、照れるわ」

夏凜の容赦ない答えに、天乃は笑いながら手を振り払って天井を仰ぐ

半分冗談で言ったと解っていても

琴線に触れてしまったのだから、恥じらいも仕方がない。

夏凜「高校に通えば、それも着こなせるのよ」

天乃「永遠の女子中学生と永遠の女子高校生?」

夏凜「100年後もね」

天乃「やだ……年齢制限引っかかりそう」

一見ではまず間違いなく、未成年だと思われてしまうだろうと、天乃はため息をつく

同じ地域に住み続けていれば、

行きつけのお店なら、分かってくれるかもしれないけれど。

天乃「常連のお店で、天乃さんの娘さん? とか言われるようになったら泣いちゃうかもしれない」

夏凜「悪乗りするだけでしょ、あんたの場合」


728 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/09(木) 23:44:14.80QRGyabBoo (8/8)


天乃の本来の性格なら――と、夏凜は考えて苦笑いを浮かべる

泣くよりも「そうなんですよ。母に似ちゃって」なんて言う

星乃と月乃の二人が小学生くらいにまで育っていたら

何言ってるのおかーさん。なんて、困った顔で言うのだ。

夏凜「あまり、子供困らせないようにしなさいよ?」

天乃「当たり前でしょ。困らせるなんて」

夏凜「無自覚で困らせるんだけど」

天乃「無自覚は――どうしようもないわね」

夏凜への嫌味のように言って、小さく笑う。

冗談だと訂正して気を付けるからと、取り繕う。

天乃「ねぇ、もう一つ、聞きたいことがあるんだけど」

夏凜「そのあと寝てくれるなら」

天乃「約束はできないかな」

まだ眠くない。

だから眠れるかどうかわからないと答えたけれど、

夏凜はそれでも「それで?」と、促した


729 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/10(金) 00:04:25.85GyFkd812o (1/3)


天乃「夏凜は子供と一緒と、私だけ。どっちとお出かけがしたい?」

夏凜「あー……そういう」

別に重苦しい話ではない。

寝る前の、ほんの僅かな大したことのない話

でもその軽さの割には答えに困らせる質問だ

天乃がどちらを望んでいるのか

寂しがりやなところを考えれば、二人きりの方が良いかもしれない

でも、子供を愛している母親として考えれば、子供も一緒の方が良い。

母親として考えるか、女の子として考えるか。

天乃「難しく考えなくていいのよ? ただ、夏凜がどっちがいいのかなってだけなんだから」

天乃が純粋な母親で、

夏凜以外のそういった交際相手や、千景のように乳母めいたことを好んで行ってくれる人がいないのであれば、

難しく考える必要もあるかもしれないけれど。

天乃「みんな、言えば手伝ってくれるから」

夏凜「その分、みんなも言ってくるけどね」


730 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/10(金) 00:18:29.97GyFkd812o (2/3)


千景は顔に出さないかもしれないが、喜んで引き受けてくれる

そうしたら、夏凜と二人っきりで出かけることも容易だろう

もちろん、夏凜が言うようにみんながそれを求めてくるだろうけれど――でも。

天乃が子供も一緒で良いかと言えば二人きりにはならない。

夏凜「色んな負担を考えなくていい。ってことで良いなら、二人」

夏凜はそう言うと、

天乃がそれに口を開くよりも早く「だけど」と、続けた

夏凜「家族としては、子供も一緒が良い」

子供も一緒だと、デートとしては窮屈になってしまうかもしれない。

特に、まだ一人で出歩くことも出来ないような赤ちゃんならなおのこと。

それでも夏凜は子供一緒が良いと言う

夏凜「だからどちらかと言えば――子供も一緒」

天乃「良いの? 好きなことの一つもできないかもしれないのよ?」

夏凜「良いわよ別に、それでみんなが幸せなら」

夏凜としても、幸せそうな天乃と星乃と月乃

三人の傍に居られるのなら、それで十分だと、思っている。


731 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/10(金) 00:19:03.55GyFkd812o (3/3)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



732以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/10(金) 00:25:50.89VsbkKaT4O (1/1)


久遠さんと子供たちの幸せを第一に考えることは一貫してブレない夏凜ちゃん


733以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/10(金) 08:04:38.55lhMDg7aNO (1/1)




734 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/11(土) 21:46:51.66WCnQIiBZo (1/3)


遅くなりましたが、少しだけ


735以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/11(土) 21:48:31.976geNI4JUO (1/1)

やったぜ


736 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/11(土) 22:51:11.34WCnQIiBZo (2/3)


天乃「夏凜も、それで幸せになれる?」

夏凜「私がなんであんたと付き合うって決めたか忘れたわけ?」

天乃「忘れては、無いけど」

夏凜「なら、それで答えは十分でしょ」

夏凜は照れくささの隠れている笑みを浮かべる

笑顔にしてやりたいと思った

幸せにしてあげたいと思った。

鍛錬ばかりの自分が――なんて、思ったこともあるけれど

でも、だからと諦める気は無く

あれはこれはと知識をつけ、頑張りに頑張って今に至っている

夏凜「正直、あんたがこうして生きてるだけで充分だって思ってる」

天乃「貴女の幸せもうちょっと要求しても良いんじゃない?」

夏凜「これでも充分、高望みだったんだけど……分からないとは言わせないわよ」


737 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/11(土) 23:24:32.12WCnQIiBZo (3/3)


天乃「身に染みてるわ」

いつ死んでもおかしくない状態が長く、

それに最も寄り添おうとしてくれていた夏凜だ

生きててくれること

それを高望みと言うのも無理はない

天乃「卒業できたのも、みんなのおかげだわ……ありがとね」

夏凜「次は合格させてやりたいけど」

天乃「そこは私の頑張り次第ね」

夏凜「子育ての手伝いは出来る限りしてあげる」

そういった夏凜は、

それと……と、切り出す。

夏凜「出来たら、勉強も」

天乃「殆ど学校に行ってなかったけれど、あれでも勉強はしてたのよ?」

夏凜「後半部分は完全に出遅れてるでしょ」

天乃「そうねぇ……」


738 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/12(日) 00:10:14.89s82IXrzHo (1/10)


退院してから、

子供達の相手と家事、みんなとの触れ合い

それらの合間に少しずつ勉強をしているから、

遅れてはいるけれど、十分に問題無い程度には戻れてきている

だから――というのは、ちょっとつまらない

天乃「じゃぁ、三年生になってから夏凜がやるテストを私も家でやって、負けたら教えて貰うわ」

夏凜「現役と勝負しようってわけ?」

天乃「ええ、そうよ。私が勝ったら勉強教えてあげちゃうわ」

ふふんっと誇らしげに言って、先輩だもの。と笑う

そう言われてしまうと、

別にテストで負けても良いんじゃないかなんて、夏凜は悩んでしまう自分に悩む

正直、天乃に勉強を教わるのも幸せを感じられそうだからだ

夏凜「わざと負けたら怒る?」

天乃「教える厳しさが二段階くらい上がるわね」

夏凜「……なるほど」

ならちゃんとやるわ。と、夏凜は目を瞑った


739 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/12(日) 00:40:53.98s82IXrzHo (2/10)


夏凜「もう寝ましょ」

天乃「もうちょっと……」

夏凜「ダメ」

もう少し夜更かししたいという要求は断って、

夏凜は天乃の目を手で覆う

天乃がまだ起きていたいとしても、

それで起きていたら、天乃の体がダメになっていってしまう

夏凜「悪いけど――優しいだけじゃないのよ。私は」

天乃「夫って、そういうものなのかしら」

夫というか、伴侶というか。

本来異性であるべきその立場の人は、

妻に甘いのか、優しいのか、厳しいのか。

知識には、亭主関白なんて言葉もあるのだが、

本当にそうなのかなんてわかりっこない


740 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/12(日) 00:50:41.03s82IXrzHo (3/10)


夏凜「さぁ? 実際に夫ってわけでもないから」

天乃が母親だから、父親という役どころになっているだけで

夏凜だって女の子なのだから、妻の方が正しい

夏凜「なんにしても、良い親だって思って貰えるように努力するだけだわ」

天乃「そうね、そうよね」

父親だろうと母親だろうと関係はない

子供達にとっての良き両親になれればそれでいい

それが夫なら夫で良いのだろう。

天乃「……私も、頑張らなきゃ」

夏凜「あんたはもう少し頑張らなくて良いから」

天乃「頑張りすぎてもダメだなんて、親って難しいのね」

夏凜「そこは関係ないから」

天乃はいつも頑張りすぎる

だから頑張らないようにと求めた夏凜は、

ほら、さっさと寝なさい。と――キスをする。

夏凜「おやすみ」

天乃「おやすみ? おやすみって……もぅ……」

目を瞑ってだんまりな夏凜にむっとしながら

せめて責任はとってねと、天乃は夏凜を抱きしめた


741 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/12(日) 00:51:18.54s82IXrzHo (4/10)


ではここまでとさせていただきます
明日はできれば早い時間から


742以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/12(日) 00:59:08.79zKP17ujTO (1/1)


久遠さんと夏凜ちゃんのきわめて健全な夜でした


743以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/12(日) 02:14:43.34f6X6Aj6cO (1/1)


毎晩交代で添い寝する久遠さんファミリー


744 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/12(日) 21:34:47.23s82IXrzHo (5/10)


遅くなりましたが、少しだけ


745以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/12(日) 21:55:55.55RCO5wPD+O (1/1)

きてたー


746 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/12(日) 23:15:04.90s82IXrzHo (6/10)


√ 神世紀309年 6月


戦いが終わってから、早くも8年

子供達が7歳になり、樹が20歳になったのが去年

本当は、その12月中に結婚式を予定していたものの、

千景が西暦の時代にはジューンブライドというものがあった。という言葉がきっかけで、

6月に結婚式を執り行うことが決まったのだ。

神樹様の他の神を取り除かれてきた神世紀には馴染みの薄いものではあったものの、

6月は天乃の誕生日と言うこともあって、満場一致だった。

そうして――天乃は自分に割り当てられた控室で、

落ち着かない胸元に手を添えながら……ため息をつく

天乃「……はぁ」

胸元に触れた手に感じる刺繍を辿って、指を下ろす。

一人部屋に控えている天乃が身に着けているのは、白無垢だ

鶴や熨斗、秋草などの吉祥を感じられる意匠を施された白無垢

表はやや立体的に織りなされた刺繍と、艶やかで高級感のある、白銀めいた輝きもある白

一つ一つの所作に合わせて、裏地に宛がわれた鮮やかな紅色がちらりと顔を覗かせる。

残念ながら、代々の白無垢は身長的に合わないため、初物となってしまっているが、

それはそれで、悪いものでもない。


747 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/12(日) 23:26:41.50s82IXrzHo (7/10)


ならどうして縁起でもなくため息をついたのかと言えば――控室で独りぼっちだからだ。

子供達は千景が連れて別の控室に行ってしまっているし、両親や兄姉は人前式の準備中だ。

そこまで大変な容易なんて必要はなかったはずなのだが、

そこは、流石の兄姉と言ったところか、ほかの一般人より豪勢でなければならないという自分勝手な理由で全力だった。

こんなことなら自分のところでやらなければよかった……なんて思うけれど、

結婚の内容も内容だから、仕方がないと言えるかもしれない。

天乃「だからって――」

一人にしなくてもいいじゃない。と、

文句を言いかけた唇を、扉を叩く音が止めた。

歌野「久遠さん、入って良いかしら」

天乃「ええ、歓迎するわっ」

思わず上ずった感じの声だったけれど、

歌野と水都、若葉に球子

千景を除いた西暦の面々は気にすることなく控室に入ってきた


748 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/12(日) 23:40:49.27s82IXrzHo (8/10)


歌野「わぁぉ……ビューティフォー!」

球子「凄く似合ってるぞ」

水都「うん……綺麗です」

感嘆を漏らしてくれる三人に、

天乃は照れくさそうに「お世辞でも嬉しいわ」と、笑みを浮かべる

着付けをしてくれた人も、最初は居てくれた千景たちも

みんな凄く似合っていると言ってくれたけれど、

鏡を見てみれば――そう、天乃は見た目的には子供だからだ

しかし

若葉「謙遜は要らない。十分似合っている」

若葉はその言葉を払う。

天乃の交際の相手の一人となっていた若葉だが、

結婚にまでは至っていない。

だからだろう。

あえて、笑みを浮かべながら口を開く

若葉「惜しいことをした……今から衣装を借りれば紛れ込めるだろうか?」

天乃「だめよ。もう、だーめ」


749 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/12(日) 23:48:20.65s82IXrzHo (9/10)


にこやかに拒絶された若葉は、

しかし、嬉しそうに「そうか」と答える。

大丈夫と言われたら逆に困ってしまう

あくまで、自分はもうその対象ではないのだから。

天乃「他のみんなには?」

球子「見てきたぞ。みんなも良かった」

水都「凄くお似合いでした。一人一人刺繍も裏の色もその白さも全然違ってて……」

白と言っても色々あって個性的だった。と、水都は絶賛する。

歌野「なにより……そう、やっぱり東郷さんは格別だったわ」

しみじみと言う歌野だが、

その手はなぜか、自分の胸元に丸みを帯びた形を作り出す。

水都「うたのん……」

歌野「じょ、ジョーク! ジョークよ!」

若葉「夏凜も……いや、そこは自分の目で見て貰おうか」

天乃「想像くらいつくわよ……どうせ、私なんかより似合ってるんだから」

ムッとする天乃だが、別に怒っているわけではないのは――みんな分かっていた。


750 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/12(日) 23:50:32.94s82IXrzHo (10/10)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


751以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/12(日) 23:57:52.39g8pBfmk9O (1/1)


一気に月日が流れてついに結婚式か…
そして久遠さんも二十歳以上生きてやっと幸せを掴み取ったんだなぁ


752以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/13(月) 02:30:07.290LBQl+32O (1/1)


若葉は辞退なのか
まあ精霊と結婚ってのも周りの説明がややこしいが


753以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/13(月) 12:25:12.54Q0BUFIPFO (1/1)

一応ハーレムルートだけど久遠さんと最も関わっているはずの夏凜が一番えっちシーン少なめなのは意外だったな


754 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/13(月) 23:32:12.6840NgMVB2o (1/1)


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば少し早めの時間から。


755以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/13(月) 23:32:45.55J7U5rpTCO (1/1)

乙ですー


756 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/14(火) 23:19:13.57heF5hG8ro (1/1)


遅くなりましたが、少しだけ


757以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/14(火) 23:20:35.51EBik1DlpO (1/1)

よしきた


758 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/15(水) 00:38:18.53DjK9D1lFo (1/2)


歌野「久遠さんも十分似合っていると思うけど」

若葉「確かに身長こそ及ばないが、そればかりではないだろう?」

天乃「及ばない部分が?」

若葉「全く……」

そのつもりで言ったわけではないことくらい分かっているだろうと言いたげな若葉の困り顔に、

天乃は嬉しそうに笑って見せて「ごめんなさい」と呟く

慰めではなく、純粋に褒めてくれているのは分かっている

水都「それはそうと、お色直しするんですね」

天乃「みんながしたいっていうから」

白無垢から、洋式の衣装であるウエディングドレスに替えるのは、

天乃も分かっていたことだが

そこからさらに、男性側の衣装にも替えるというのは困ってしまう

みんなはせっかくだからという話で、

列席者にもなる千景は面白そうだと他人事

かつての級友や、兄姉はぜひ見たいと大賛成

披露宴とは少し違うが、似たようなものを取り入れたいという声に応えた結果だ


759 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/15(水) 01:14:01.49DjK9D1lFo (2/2)


球子「天乃に着せたいんだろ?」

天乃「そう言われたけど」

散々、妻だ嫁だと言われてきたのに、

男性側になって欲しいとh、ちょっぴりおかしくは無いかと思う。

夏凜達も着るのよね。と、

断りそうな条件を出したけれど、もちろん着るとの即答だった。

天乃「新郎のタキシードなんて……」

水都「紋付袴も着るんですよね?」

歌野「一目見せて貰ったけど……スペシャルなものだったわ」

天乃「あっちは一応、久遠家の――って言っても、私が着るものじゃないわ」

白無垢だろうと紋付き袴だろうと、300年の中で揃えたものがある。

小物こそ、利用可能ではあるが、

着用するもの自体は、天乃の身長には合わない。

それは男性側女性側どちらの衣装であってもだ。

母親も同じ目に遭ったのだから、これは母が悪いと言えると言われた


760以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/15(水) 05:59:29.29hQqzzRn9O (1/1)

とりあえず乙


761以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/15(水) 23:01:07.367a8We13gO (1/1)

今日は休載?
多忙なのかここ最近遅めだけど


762 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/16(木) 22:20:50.09Tzm1eEaEo (1/3)


遅くなりましたが、少しだけ


763 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/16(木) 22:44:01.10Tzm1eEaEo (2/3)


天乃「もう少し、身長伸びて欲しかった」

歌野「今でも十分素敵だと思うけど」

天乃「ありがと」

みんなも褒めてくれるので、別に嫌なわけではないし、

ちょっとくらいの自信は持っているつもりではある

母親の身長の低さが遺伝していると言われると、それが子供達にまで遺っていないか心配になってしまう。

二人が身長の高い低いを気にする子かどうかはまだわからないが――それ以前に。

天乃「最近ね、姉妹で買い物? お姉ちゃん偉いね。って言われることがあって」

若葉「あぁ……」

察する若葉の漏らした声には、天乃も思わず苦笑する。

星乃と月乃ももう7歳。

一人で好き勝手に駆け回れるほどの年齢である二人と一緒に買い物に行くこともある天乃は、

それはもう、少し歳の離れた長女扱いされてしまう

千景が一緒に居ると、千景の方が大人に思われてしまうほどだ


764 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/16(木) 23:57:18.31Tzm1eEaEo (3/3)


天乃「はい。ママが買ってきてくれって――なんて」

時々嘯いてみると、どこに何がるか分かるのかとか

頑張ってねとか、お菓子を貰えてしまったりとか

色々あるのよ。と、天乃は不満そうに呟く

それを夏凜に言うと「二人が困惑するから止めろ」と、

ややご立腹だったと天乃は苦笑する

若葉「それは……そうだろう。子供にお姉ちゃん。って呼ばれたいのか?」

天乃「ねぇねぇって呼ばれてるけどね」

最初は「ねぇ、ねぇ」と呼びかけられているかとも思ったけれど、

誰かにお姉さんだのお姉ちゃんだの言われているからか

そう誤解されたときだけ「ねぇねぇ」ときゃっきゃと笑うのだ

天乃「ママよ。ママって言っても私がお姉ちゃんだとお菓子が貰えるって思ってるみたいで」

歌野「それは困ったわね。大丈夫なの?」

天乃「普段はママって呼んでくれるんだけどね」


765 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/17(金) 00:09:03.18aBi9wCRUo (1/3)


球子「強く言わないとダメなんじゃなかったか?」

水都「そうですね……」

呟くように言った水都は、

でもきっと、夏凜や千景が注意する分強くは叱っていないのだろうと、感じる。

特に、千景はそういった部分が強く伝わってくるのだ

水都「厳格なパパと温厚なママだね」

天乃「厳格っていうほど厳しくないし、私だって怒ることはあるのよ」

ちゃんと聞いてくれるし、

そのあとには直してくれようと努力は感じられるから

天乃のことをなめているわけでもない

ただ、姉が母を勝ってしまうようならより強く正す必要があるだろう


766 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/17(金) 00:22:15.73aBi9wCRUo (2/3)


歌野「子育ても大変ね」

天乃「みんなだって、頑張ってるじゃない」

球子「精霊は疲れ知らずだからな」

7年前、各地を巡った若葉達は生存者こそ叶わなかったものの、

国の現地調査への協力や、復興支援などに助力している。

その結果、現在では慈善事業としての活動に精を出しており、

次第に広がっていった世界の人々の知る大きな存在にまで至っていた。

特に歌野と水都の農業に対する熱意と知識は、復興に大きく貢献したと称賛さえされたほどだ

若葉「それにしても――」

若葉は感慨深そうに言葉を切る。

歌野達と談笑していた天乃は、その視線に顔を上げて首を傾げた

天乃「若葉?」

若葉「7年……長かったなと、思ったんだ」

ずっと願ってきたこと

ずっと想ってきたこと

だから、若葉は言いたそうに言いにくそうに困った顔で

若葉「――結婚、おめでとう」

そう、祝福するのだった


767 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/17(金) 00:23:45.64aBi9wCRUo (3/3)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


少々忙しいので落ちたりすると思いますが、可能な限り進めていく予定です


768以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/17(金) 00:39:08.10nGZINHRBO (1/1)


そして了解です
今は色々大変な時期だろうしなぁ…


769以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/17(金) 02:37:50.28TcAO+hSyO (1/1)


おねロリ天国と化した久遠家か……


770 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/18(土) 23:57:05.63uiq36sr4o (1/1)


すみませんが本日はお休みとさせていただきます。
明日は可能であればお昼ごろから


771以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/19(日) 00:03:10.34NDjufGDlO (1/1)

いつも乙です
昼に期待


772 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/19(日) 17:00:47.34jvWS7fjLo (1/9)


遅くなりましたが、少しずつ


773以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/19(日) 17:19:05.01YcUam1G/O (1/1)

きてたか


774 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/19(日) 17:53:38.63jvWS7fjLo (2/9)


天乃「ありがとう。でも、何回も言わせちゃったわよね」

若葉「何度言われても、安くなるものでもないだろう」

水都「可愛いも綺麗もかっこいいも、その数だけ積み重なるって思えば全然ですし」

水都は物は考えようなんです。と明るく言って、歌野へと振る

振られた歌野は少し戸惑いがちに笑う

歌野「そうね」

歌野達も、精霊ゆえに歳を重ねることはない

7年間もの間、容姿に一切の変化もないとなれば、

周囲からかけられる言葉も積み重ねが高くなる

だから、そういう風に考えるようにしているのだろう

ネガティブよりは、ポジティブであるべきだ

球子「タマもそろそろ結婚を考えなきゃなぁ……」

天乃「あら、良い人でも居るの?」

歌野「久遠さんのウェディングの話が出てから隙あれば言ってるだけよ。ジョークよ。ジョーク」

天乃「相手がいるなら良いのよ? 私は……ちゃんとしてるなら止めたりしないから」


775 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/19(日) 18:09:30.92jvWS7fjLo (3/9)


若葉「そうは言っても、説明が出来ないだろう」

かつての時代ならともかく、

身分証も何も提示できない精霊では、身元が怪しすぎる

歌野達は慈善事業での活躍も著しいから

良い子達であるのは証明され切っているけれど。

水都「うたのんなんて、農家の人から嫁に来ないかって声かけられてるんですよ」

歌野「それを言ったらみーちゃんだって!」

私だけを言わないでと言わんばかりに頬を染めた歌野は声を上げる

積極的に手伝いをする歌野の一方で、水都はサポートに回ることが多い

歌野にはもちろん、農家の人に水分補給や休憩を促したりなど給仕的な役割にいる。

それがとても優しいものだから、

異性としては、尽くしてくれる水都こそ嫁に来て欲しいと思うものだろう

なによりサポートだけでなく、一応農業の知識もあってその手伝いまでできるのが強い

人気自体は、歌野よりも上ではないかと若葉達が噂をするくらいには。

球子「……どうせ人気ないさ。タマは」

若葉「子供からの人気の方があるからな」


776 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/19(日) 18:19:05.73jvWS7fjLo (4/9)


ふんっと鼻を鳴らして拗ねる球子に、

若葉は苦笑いしながらフォローを入れる。

力仕事に関わっていることもあるが、

どちらかと言えば、わんぱくな子供たちに付き合ってあげることの方が多いので

必然的に人気はそっちに傾く。

歌野「タマねぇちゃん」

若葉「タマ姉」

球子「馬鹿にしてるなっ!?」

水都「してないですよ。私からしたら、球子さんは凄いです」

少なくとも、自分には付き合いきれないと言った水都は、

適材適所ですよ。と、言う。

いつもの他愛もないやり取りなように感じて、天乃は嬉しそうに笑う

いつでもどこでも、4人は仲良くやれているようだ

若葉「ん――来客だ」

天乃「うん?」

若葉の敵を警戒するような瞬時の切り替えに静まった控室に、入っても大丈夫かと言う確認の声が響く

天乃「どうぞ、大丈夫ですよ」


777 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/19(日) 18:37:09.39jvWS7fjLo (5/9)


聞こえた声から察した相手は、やはりみんなの両親だった

夏凜達が一緒に居ないのは、みんなが一斉に来ると控室が大変な事になるからだろう。

これなら、もう少し広い部屋にするべきだったと、今更ながらに思う

結婚を祝う言葉に、天乃は丁寧に応えつつも、

少しだけ照れくさそうにする。

挨拶もしているから、何度か祝われたことだし、委ねられたものではあるけれど

やっぱり相手方の両親からの祝いとなると少し緊張もする。

「やんちゃな子だから、何かあったら相談してね」

天乃「今は大分落ち着いてますよ」

「そうかしら……」

「友奈ちゃんはまだ落ち着いている方だわ。うちの子なんて――」

友奈よりも沙織の方が落ち着きがないという沙織の両親の言葉には、天乃も否定は難しかった。

友奈は快活さがあってこそのものだけれど、沙織は別だ

本当に大丈夫なのかと、少し心配そうな親もしかし嬉しそうにしている。

同性同士という問題こそあれど、それ以外に関しては順風満帆だからだろう。


778 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/19(日) 18:58:01.27jvWS7fjLo (6/9)


子供に関しては、みんなが産むなら在学中は控えようとした結果、

沙織や東郷、夏凜の子供がいるくらいだ。

夏凜と天乃の子が3歳、沙織が2歳、東郷が1歳

約1年につき一人ずつと言うかなり険しいペースではあったけれど、星乃と月乃の経験を思えば、

とても楽なものだったと、天乃は今も思う。

本来なら、東郷のその手の研究が実ってからだったのだけれど、

在学中、すでにそういった技術は確立されているという瞳や春信の情報の結果だ

東郷は進路を奪われたとちょっぴり悩まし気だったが、

結局は樹と共に医療の道へと進むことに決めた

天乃のことそして、友奈のこと

大切な人が傷つき苦しみ、そして自分も不自由さを味わったからこその答えだろう。

天乃「……寝ちゃってる」

「抱っこする?」

天乃「起こしたら可哀想だから――」

東郷の子供を抱く鷲尾家の言葉に、首を振る。

ずっと抱かせておくのも悪いとは思ったのか、若葉が声をかけたが、

二人は大丈夫だと、笑みを浮かべる

子供に恵まれなかったからこそ、抱くことが出来ているのが嬉しいのだと感じた


779 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/19(日) 20:15:40.26jvWS7fjLo (7/9)


新郎新婦―みんな新婦だが―揃うことのある控室だが、

夏凜達の衣装も衣装と言うこともあって、みんなはそれぞれの控室で待機するとのことだった。

天乃の試着に関わったのは千景たちだし、

天乃がどのような姿になっているかも知らない夏凜達は

みんな、式場にまで楽しみはとっておきたいらしい

そうして、各々の親や友人

普通の結婚式に比べるととても限られた人数での式が始まる時間が近づく

天乃「司会、宜しくお願いします」

瞳「どうしてそんな他人みたいな礼儀なんです……?」

人前式のため、神父などはおらず、

司会をだれにするかという話になったときに上がってきたのが、瞳だった。

素人ではあるけれど、瞳ならやってくれるという夏凜の推しの結果だ。

義姉……あるいは義母ともいえるような関係の瞳に感謝の気持ちがあるからだろう

天乃「多少ミスがあっても賑やかしになるだけだから、緊張しないでね」

瞳「それは……してくれって意味ですよね?」

瞳の緊張が感じられる硬い表情に、天乃は笑みを返す

天乃「大丈夫よ。気楽にお願いね」

瞳「……ええ。受けた以上はしっかりとやらせて貰います」

瞳はそう言いつつ、胸を押さえながら大きく息を吐いた


780 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/19(日) 20:20:04.70jvWS7fjLo (8/9)


では少し中断いたします
再開は21時半ごろからを予定しています。


781以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/19(日) 20:44:42.57Cw8lYm8PO (1/1)

一旦乙
しれっと久遠さんが双子ちゃん以外に子作りしてる件


782 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/19(日) 22:56:49.88jvWS7fjLo (9/9)


人前式の入場は、父親が新婦を連れてくる……などという流れが決まっているわけではなく

そこからもすでに個人に委ねられている

とりわけ、天乃の結婚相手は7人と多く

一人ずつ親が連れてきたら時間がかかってしまう

だから、あえて披露宴のように新郎新婦揃っての入場を行うことになっている

それでも人数は多くて、ちょっぴり行列のようにも感じられるけれど。

星乃「ママたちは~?」

千景「もうすぐよ」

月乃「きた~?」

千景「あと少し」

二人の間でしゃがんだ千景は、

もうちょっと、と、人差し指と親指を使って見せる

そんな、お姉さん染みた千景を、若葉は嬉しそうに一瞥する

若葉「手慣れてるじゃないか」

千景「かれこれ、7年の付き合いだから」


783 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/20(月) 00:08:32.89f/20Qn6So (1/2)


まだ~? もうきた~?と

千景の両足にそれぞれしがみ付く双子を優しく見守る千景は

若葉を見て、困った顔をする

もちろん、二人に困らされているわけではない。

千景「乃木さんも少し遊んであげたほうが良いわ」

若葉「努力はしているさ……分かるだろう?」

二人は千景がいれば当然千景に行くし、球子がいれば球子の方に向かう

歌野と水都にもそうだ

若葉以外がいれば、そっちに行ってしまう

千景は以前、二人に聞いたのだけれど

単純に……なんか怖い。らしい

怒った姿を見せたことはないけれど、

鍛錬の気迫が、そう感じさせたのだろう

若葉「うらやましい限りだ」

千景「乃木さんにそう言われるなんて、冥利に尽きるとはこのことね」

若葉「まったく……勝ち筋が見えないな」

子供達に向けて見せた困り顔に、ぷいっとそっぽを向かれたのと同時に、

司会である瞳が、新婦入場のかけ言葉を会場に響かせた


784 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/20(月) 00:12:48.92f/20Qn6So (2/2)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


785以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/20(月) 00:18:35.32iNZ/XnWaO (1/1)


保母さん千景が子供たちと一緒にいてすごく幸せそうだなぁ


786以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/20(月) 03:02:28.206v0niH9dO (1/1)


まさかもう3人も子供出来てたとは
大所帯で楽しそう


787 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/21(火) 20:56:05.09iqN94J/3o (1/3)


遅くなりましたが少しだけ


788以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/21(火) 21:02:54.246K5npdvuO (1/1)

かもん


789 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/21(火) 22:16:06.34iqN94J/3o (2/3)


式場として利用している神社の重厚な扉が開いて

天乃と夏凜を筆頭に、

友奈と東郷、風と樹、園子と沙織が続いて入っていく

8人もの並びは、いずれも白無垢で

天乃が綿帽子を着用することが決まっていたからか

天乃だけが綿帽子を被り、それ以外のみんなが角隠しを被っている。

一人一人違う装飾の白無垢はどれも美しいけれど、

紋付き袴を纏う新郎がいないのが、少しばかり異質さを感じさせる

けれど

それを分かっていた参列者からはそれに対する言葉はなくて

子供達の、あれがママ、あれがパパあれが――と、いう楽しそうな声が式場の厳かさを揺らがせる

千景「二人とも、しーっ」

星乃「しーちゃん?」

月乃「しーちゃんはあっちだよ?」

千景「おくち、ぎゅーっ」


790 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/21(火) 23:01:57.00iqN94J/3o (3/3)


自分の唇を人差し指と親指で抓む千景の仕草を、

二人も真似して、声が鎮まる。

千景「ママたちのこと、見ててあげてね」

そういう千景も二人の間で、天乃達の方に目を向ける

いつもは可愛らしさが勝るばかりで、

大人びた美しさなどどこかに置いてきてしまったかのような彼女たちは、

大層――美しく感じられた。

天乃達が向かい合うようにしながら座ると、瞳の進行で先に進む。

結婚の誓約

天乃「………」

天乃はみんなに、みんなは天乃に。

本来なら、時間を考えてそうまとめるべきだったのかもしれないが、

天乃は一人一人に声をかける


791 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/22(水) 00:22:38.43X85fjaqAo (1/3)


天乃「手短に言わないとね」

天乃はそう言って立ち上がると、

ゆっくりと、静かな足取りで目の前の夏凜の方に近づく

そうして夏凜の前でもう一度座る

夏凜達にそれぞれ言いたいとしたのは天乃の我儘だ

だから、出来る限り時間をかけないようにとする

天乃「これからも、私は夏凜の大好きな笑顔を見せられる健康な体でいます」

夏凜「これからも、私はその笑顔を曇らせないよう、怪我をしないように気を付けます」

天乃「これからも、ちゃんと自分の想いを口にします」

夏凜「これからも、ちゃんと天乃に優しく厳しくします」

たった二言ずつ

本当はもっと尽くしがたい言葉がある

けれど、そのすべてを語る時間はないからほんの一部分だけで済ませる

夏凜の二言目に天乃はちょっぴり顔を顰めたけれど

幸いにもそれは衆目に晒されることがないまま、天乃は次の相手の前へと向かった


792 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/22(水) 00:23:05.55X85fjaqAo (2/3)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


793以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/22(水) 00:56:31.96o+kANRrLO (1/1)


誓いのキスとかどうすんだろこれ


794以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/22(水) 06:02:28.19B4r4Fj8fO (1/1)




795 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/22(水) 23:11:18.57X85fjaqAo (3/3)

すみませんが、本日はお休みとさせていただきます。
明日は可能であれば少し早い時間から


796以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/22(水) 23:14:46.46NppSen2EO (1/1)

乙ですー


797 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/24(金) 22:32:00.129rPg8K4do (1/1)


昨日もできなかったので、
遅くなりましたが、少しだけ。


798以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/25(土) 00:17:12.04eWpxxjBuO (1/1)

絶不調?


799 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/25(土) 00:45:58.07g0u925Geo (1/2)


天乃「これからも、楽しく笑い合える家庭を築いていきます」

友奈「は、はいっ」

天乃「……ふふっ」

あっ……と、声を漏らした友奈に天乃は優しく微笑む。

ちょっとした失敗くらい、別に悪いことではない。

友奈としては罪悪感も生じるだろうが、

天乃からしてみれば、とても愛らしくて

天乃「大丈夫よ、友奈の気持ちを話してくれればいいの」

友奈「えっと……これからも、楽しく過ごせるように頑張ります」

天乃「これからも、可愛い友奈に負けないように美容に気を付けます」

それは私の台詞じゃないですかと友奈は困った顔だけれど、

今は可愛い友奈も、もう少ししたらもっと大人びて綺麗になっていくだろう

だから、頑張るのは自分だと、天乃は思っていた


800以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/25(土) 07:30:50.99koDHYtVQO (1/1)

乙です


801 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/25(土) 23:52:53.40g0u925Geo (2/2)


すみませんが本日もお休みとさせていただきます。
明日は可能であれば、お昼ごろから


802以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/25(土) 23:56:12.56cFfeJj4uO (1/1)

あらら残念
いつも連絡乙です


803 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/26(日) 16:53:41.64KBBflI34o (1/8)

遅くなりましたが、少しだけ


804 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/26(日) 17:10:19.64KBBflI34o (2/8)


友奈との短い誓約を終えた天乃は

その対面にいる東郷の方へと体の向きを変える

友奈も夏凜も風達もみんな綺麗だけれど

やはり一際目を引くのは東郷だった

なんて言おうかと考えては居たけれど、

つい、それを呑みこんでしまいたくなるような美しさ。

けれど、しっかりと口を開く

天乃「これからも、美森の和に対抗して和洋折衷で邁進します」

東郷「ふふっ……もう」

東郷は想像していたように、驚いて、笑って

そうして口元に手を当てる

東郷「これからも、天乃さんが和に染まってくれるよう、尽くします」

東郷はきっと、あえてそう言ったのだろう

どうですか? と問いかけるような表情を見せた


805以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/26(日) 17:22:17.670wUyBH21O (1/2)

きてたか


806 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/26(日) 18:46:05.89KBBflI34o (3/8)


天乃「これからも、切磋琢磨してみんなが好きな料理をもっと上手にします」

東郷「その料理をみんなで食べられるように、規則正しい生活を続けます」

朝はしっかりと起きて

お昼は難しいことだけれど、休日はなるべく

そして、夕飯は絶対に。

在学中だって当然ながらみんなと過ごしてきた

だから、たとえ仕事についたとしても

規則正しい生活を続けたいと東郷は考えている。

それはもちろんみんなもだろう。

朝に弱い樹と友奈も

最近ではしっかりと起きられているから大丈夫だ

天乃は東郷に目配せをして、また隣へと移った


807 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/26(日) 20:32:17.69KBBflI34o (4/8)


風「今度はあたしか、天乃も大変ね」

天乃「それを選んだのは私だもの」

みんなには少し迷惑かもしれないけれど、

全員で参列者の人に誓う方式もあるが、

天乃はあくまで、みんなに誓うことを決めた

二人きりなら参列者で良かったかもしれない。

でも、これだけの大人数だから

天乃「風、これからも年長者らしく、母親らしくいられるように頑張ります」

風「子供達がまねしないよう、間食でうどんを食べるのは控えます」

天乃「……何それ知らないんだけど」

風「こっそり食べてたのよ。ちょっとだけ」

もちろん、今は以前ほどではない

けれど、学生時代には夕食前の放課後などに食べていた。

それをもう二度としないと、風は誓う


808 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/26(日) 21:42:02.69KBBflI34o (5/8)


天乃「風やみんなが健康でいられるように、体調管理できるいい奥さんを目指します」

風「年長者として、一番の稼ぎ頭を目指します」

風はそういうけれど、

残念ながら、高校の入学時点で東郷達と並んでいる

その分の努力はしてきたつもりだが、

やはり、風の目指している道だと少し年収は落ちる

それでも、頑張り次第だろうか

天乃「無理しないように、私が気を付けないとね」

天乃は小さくそう言って、風を見る。

散々無理するなと言ってきたし、

もう成人もしているのだから、無理は良くない

そう思って――すぐ後ろ、樹の方へと振り向いた


809 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/26(日) 22:40:42.66KBBflI34o (6/8)


風にも劣らない綺麗な白無垢を、樹は着ている

8年も前は子供だった樹は、

もうすでにしっかりとした大人になっていて

徐々に徐々に身長も伸びて天乃よりも大きくなって

白無垢がとても、似合う女性になった

入場前に並んで、一目見て

綺麗になったわね。と、声をかけたのを思い出して。

天乃「いつまでも、樹の理想の人でいられるように日々努力します」

樹「子供達の理想になれるように、まずはもっと料理を頑張ります」

天乃「樹が仕事で疲れて帰って来た時、癒してあげられる癒し系奥さんを目指します」

樹「子育てや家事の負担を少しでも減らせるように、頑張ります」

樹は子育てはもうできるようになっている

料理も十分美味しいものを作れるようになっている

見た目だって、申し分ない

でももっと上を目指したいと、樹は言う

それは、主婦として頑張っている天乃が、やっぱり理想だからだ


810 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/26(日) 22:59:13.79KBBflI34o (7/8)


樹は天乃を見つめて、少しばかり照れくさそうに赤らむ。

短い誓約で、

みんながいないところでは何度も話していることではあるけれど

それでも、照れてしまう。

そんな可愛らしい樹を抱きしめたいと思う天乃だが、

今はそうすることも出来なくて、

ちょっぴり残念そうに、園子の方を向く

抱きしめるのは式のあと、今は誓約をする時間だ

準備は良いかと頷くと、園子も軽く頷くのが見えた。

もう一度樹に目を向けて、

また後でねと、微笑んで園子の方へと向かう


811 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/26(日) 23:15:19.99KBBflI34o (8/8)


では短いですが、ここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から


安価はないので、出来る時間に細々やるか書き溜めてから出すのも検討します


812以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/26(日) 23:23:49.360wUyBH21O (2/2)


ラストの大事な場面だからかいつもより時間かけてる感じか
しっかりと見届けるぞ


813以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/26(日) 23:29:58.60GSAwbiyc0 (1/1)


7年だからなあ
いろんな思い出がありそう


814以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/27(月) 01:26:49.39vXAc43eWO (1/1)


もうみんな苗字は久遠なのかな


815 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/28(火) 22:23:34.11XbDd+7Kjo (1/1)


すみませんが本日もお休みとさせていただきます。
明日は可能であれば少し早い時間から


816以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/28(火) 22:30:15.160G28FcQwO (1/1)

乙ですー


817 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/29(水) 22:49:22.02nYgInAf7o (1/1)


遅くなりましたが、少しだけ


818以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/29(水) 22:50:53.31BPqHmM5xO (1/1)

やったぜ


819 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/30(木) 00:29:54.49NZWk9onoo (1/4)


園子は普段のふんわりとした雰囲気を隠し、

気品あるお嬢様然とした居住まいで、天乃と向かい合う

薄く紅を塗られた唇が小さく動く

けれど、それは声にはならない

天乃「園子の陽気さをこれからも受け入れられる寛容な妻になります」

園子「これからは、可能な限りお淑やかになれるよう頑張りますっ」

語感が弾んで聞こえる辺り、

お淑やかになるのはまだ難しいのではないかと思うけれど、

可能な限り……という条件は満たしているかもしれないと

天乃は心の中で、笑みを浮かべる

天乃「これからも、気まぐれな園子の心を満足させられるように、楽しい家庭を築いていきます」

園子「可愛い子供たちがすくすく元気に育つことが出来るように、高収入を目指しますっ」

お淑やかはどこかへ旅に出たらしく

園子は風と似て、しかしより欲を感じる誓約を口にした


820 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/30(木) 00:39:29.22NZWk9onoo (2/4)


天乃「……もぅ」

園子「ぇへへ」

周りには聞こえない、小さな呟き

天乃のやや呆れた困り顔が見えたからか、

園子の微かな笑い声が聞こえる

癖で顔の方に手が伸びかけたのか、ピクリと、手が動いた

天乃「……ふふっ」

園子がいれば、何にも緊張しなくて済むかもしれない。

そう思って……つい笑ってしまう。

本当に、みんな個性的で、可愛らしくて……愛おしい

天乃はより深まる思いを胸に、園子から沙織へと体の向きを変えた


821 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/30(木) 00:55:42.86NZWk9onoo (3/4)


沙織は天乃が結婚を決めたみんなの中で、最も付き合いの長い子だ

神世紀298年……気付けばもう10年も前になる

そこで一緒に活動することになった園子達だが、

それよりも前に関わりを持っていたのが

巫女の家系として大赦に名を連ねていた伊集院家の息女、伊集院沙織

同じ学校の生徒として長年連れ添って、恋をされて、恋をした

天乃「………」

沙織「………」

背の高い沙織の少し見下ろすような視線を、天乃は見上げる。

目が合う

沙織の口元が綻んで、

天乃も同じように……緩やかに笑みを浮かべる

園子よりも控えめだが、明るい沙織

けれどその控えめさが――大人に感じさせる雰囲気を作っていた


822 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/30(木) 00:58:35.38NZWk9onoo (4/4)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


823以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/30(木) 04:11:19.44RzlZr+/yO (1/1)


さおりんもようやく報われたんだなぁ


824以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/30(木) 08:00:45.212uOa3vedO (1/1)


そういえば何人か子作りしてたけどどちらが孕んだり孕ませたりしてたんだろうか


825以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/30(木) 08:23:03.69ZwKpSOnwO (1/1)


夏凜→産んでほしい
沙織→産んでほしい
東郷→産んでほしい

今子供いる3人がこれだったような気がするから多分3年連続久遠さんじゃないかな
相手に産んでもらうってのはこれからじゃない多分


826 ◆QhFDI08WfRWv2020/07/31(金) 23:32:21.08GP3qIULwo (1/1)

すみませんが本日もお休みとさせていただきます
明日はできれば早い時間から


827以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/07/31(金) 23:35:57.60YIsMtajnO (1/1)

乙ですー
明日に期待


828 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/02(日) 00:50:25.79AT+66eUfo (1/3)


すみませんが、所用で休載となってしまいましたので
明日(日曜日)は可能な限り進める予定になります。


829以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/02(日) 06:58:55.156FwFrhUSO (1/1)

おつ


830 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/02(日) 22:00:31.41AT+66eUfo (2/3)


遅くなりましたが、少しだけ


831以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/02(日) 22:12:30.30kltezrpcO (1/1)

よしきた


832 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/02(日) 23:51:02.11AT+66eUfo (3/3)


沙織は学生時代、とてもよく尽くしてくれた。

それは巫女としてだけでなく、

天乃の友人としてもずっと傍に居てくれて

それは今も変わっていない。

天乃「これからも、沙織が尽くしてくれた分、しっかりと寄り添っていきたいと思います」

沙織「これからも、天乃さんが幸せでいられるように、試行錯誤したいと思います」

天乃「一度くらい、喧嘩して。もっと仲良くなりたいです」

沙織「天乃さんの支えになれるように、いつも思いやりの心を忘れずにいようと思います」

沙織と二人で、誓約を口にする。

沙織とはずっと仲が良い

それは付き合うようになってからもずっと。

だから、一度くらいは……と思っていったのだが、

沙織は少し困ったような顔をして

沙織「喧嘩は……口げんかが良いかな」

それでも、乗り気に考えてくれた


833 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/03(月) 00:27:15.43sd9UXdaio (1/3)


沙織が天乃を思いやっての、ちょっぴり厳しい言葉はあったけれど、

そういうものではない喧嘩はしたことがない。

だから、そこはしっかり考えようね。と、

きっとまた喧嘩にならないことを言って、沙織は微笑む。

天乃「………」

そういうことじゃないんだけど。と、言いたい。

そう思いつつ、また後でねと目配せをすると、

察してくれたのだろう

沙織は軽く頷いて、笑みを浮かべた

沙織の喧嘩計画

監修には誰が当たるのだろうか……なんて、

斜め上なことを考えながら、天乃が下がると、

みんなが、参列者の方へと向き直って、天乃も体を向ける


834 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/03(月) 00:51:37.11sd9UXdaio (2/3)


「本日、私達は皆様に見守られて……結婚式を挙げられることを嬉しく思います」

「未熟な私たちですが 末永く見守っていただけますと幸いです」

天乃達みんなで、自分たちの親族、友人

全員に、誓約の締めの句として選んだ言葉を述べる。

そうして、少しの間をおいて

司会の瞳が、次へと進ませる。

誓約のあとは、指輪の交換だ。

夏凜「……大丈夫?」

天乃「ん……大丈夫よ」

夏凜はまだ、天乃の体を心配し続けているが、

まるで問題はないと、笑顔で頷いて立ち上がる

それに続くように夏凜が立ち上がると、

星乃と月乃……みんなの子供二人が、指輪の置かれた専用のものを持って二人に近づいた

月乃「ママもパパもきれいだね」

星乃「パパじゃないよ。パマだよ」

夏凜「パマって……」

えへへ~っと、

指輪を運ぶ緊張感のまるでない双子の笑顔に

天乃と夏凜は主わず笑みを浮かべる


835 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/03(月) 00:52:26.84sd9UXdaio (3/3)


短いですが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば少しずつ


836以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/03(月) 02:58:06.15FWQojLxjO (1/1)


よかった…テンリングスのマンダリンみたいになる久遠さんはいないんだ


837以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/03(月) 06:58:20.71I/lf8PTrO (1/1)


妖怪の五郎くんとの子供でもある双子ちゃんだけどそれを感じさせない無邪気さがあってかわいいなぁ

あとここにきて公式が三期やるみたいだな
くあゆシリーズはどうなるんだろうか


838 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/04(火) 00:03:35.030pt9pQSXo (1/3)

すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から


839以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/04(火) 08:14:04.31NxghgknJO (1/1)




840 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/04(火) 23:17:00.230pt9pQSXo (2/3)


遅くなりましたが、少しだけ


841以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/04(火) 23:20:32.72babJk0X1O (1/1)

よっしゃ


842 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/04(火) 23:54:18.270pt9pQSXo (3/3)


星乃は天乃が渡す指輪、月乃は夏凜が渡す指輪

それを乗せたリングピローをそれぞれ持っており、

星乃は指輪を落とさないように天乃の方へと、手を伸ばした。

星乃「ママ、一個だけ選んでね」

天乃「ふふっじゃぁ、これにしようかしら」

予め夏凜の為にと選んでいた指輪は

約0.3カラットのダイヤをはめ込んだシンプルな装丁のものだ

本当は、誕生石にしよう。と言う話もあったのだが、

それでは被ったりもしてしまうため、やはり奇をてらわずにダイヤにしよう。となった

立て爪ではなくはめ込みなのは、夏凜がつけたまま動き回るのを想定してのためである

天乃「でも、先はパパと月乃ちゃんだから、もう少し待っててね」

星乃「うん」

夏凜が月乃から受け取ったのか、

じっと横で立っている星乃と月乃に向け、千景が避けるようにと手を動かしてるのが見えて

天乃は顔を逸らして、小さく咳払いをする。

星乃「ぁっ」

星乃が先に気付いて、月乃の手を引く。

そして、二人が少しだけ下がって出来た距離を……夏凜が詰める


843 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/05(水) 00:10:16.58kiC1L/d5o (1/5)


夏凜「なんかグダグダなんだけど……」

天乃「そういうものでしょ、私達は」

夏凜は少し困った反応をしているけれど、

天乃はやっぱり、そういうものだと笑みを浮かべる。

真面目な時もあるけれど、

どうしても少し緩い、賑やかな雰囲気になってしまう。そんな集まり。

そこに、天乃の子供二人が加わったのだから、

生真面目さを保てというのが無理な話で。

夏凜「人前式で良かった」

天乃「でしょ?」

夏凜「まったく……」

距離はとったものの、

天乃が交換する分の指輪もあるため、近くにいる二人を一瞥して苦笑した夏凜は

ふと息を吐いて、きりっとする

夏凜「やるわよ」


844 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/05(水) 00:23:42.66kiC1L/d5o (2/5)


そういった夏凜の差し出した左手に、天乃は自分の左手を乗せる

学生時代、元々大きく見えた夏凜の手は、

成人を過ぎて……もう一回りも大きくなってしまったような錯覚を覚えてしまう。

ずっと変わらない小さな手と、変わってきた大きな手

天乃は良く見ているその優しくも力強い手を、握る

夏凜「ちょっ……」

天乃「あっ……ふふっ、ごめんなさい。立派になっちゃったなって思って」

夏凜「天乃も立派よ。小さくても、しっかり子供を抱いてきたんだから」

夏凜はそういうと

天乃の左手を握り返して……少しだけ引く

手のひらに乗った薬指に、右手で持っていた結婚指輪をはめる。

爪で支えられた0.35カラットのダイヤと、それを囲うようにして連なる7つの小さなダイヤ

ダイヤに向かって緩やかな曲線を描くリングが控えめなアクセントになっている結婚指輪

みんなで一つずつと言う計画もあったが、

やはり頓挫して、一つに収まったそれは、とてもきれいな輝きを放つ

一つ一つが光を受けて、違った輝きを見せるのが、個性のようで。

夏凜「やっぱり……良く似合う」

夏凜は嬉しそうに、笑みを浮かべた


845 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/05(水) 00:27:07.08kiC1L/d5o (3/5)


では途中ですがここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から


846以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/05(水) 06:53:26.39Nq9jAy0AO (1/1)


大人になった夏凜と中学生の姿の久遠さんの指輪交換か…


847 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/05(水) 22:48:02.10kiC1L/d5o (4/5)


遅くなりましたが、少しだけ


848以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/05(水) 22:52:09.30ndhb2cxIO (1/1)

かもん


849 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/05(水) 23:22:26.08kiC1L/d5o (5/5)


天乃「ありがと……」

天乃は夏凜のささやかな本心に小さく笑みを浮かべると、

指輪のはめられた左手を優しく撫でて――星乃へと目を向ける

手招きすると、明るい笑みを浮かべた星乃が

ほんの数歩分の距離を跳ぶように近づく

星乃「はい、ママっ」

今度こそ自分の番だと、

自慢げに鼻を鳴らしながらピローを差し出してくる星乃に微笑んで

天乃は夏凜の分の指輪を手に取る。

天乃「サイズ、ずれちゃってなければいいけど」

夏凜「大丈夫よ。もう、子供じゃないんだから」

天乃「あら……大学生でも子供は子供だわ」

さっきは手に取ってくれた手を、逆に手に取る。

天乃の手よりも大きくて立派な手

その薬指に向けて指輪を近づけていくと、

少しきつめではあるけれど、しっかりと指輪が納まった


850 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 00:08:58.28yd5AFUUVo (1/12)


夏凜「……ん、ほらぴったり」

夏凜はそう言って、左手を傾けて天井の光を浴びさせる。

はめ込まれたダイヤの輝きは少しばかり鈍いけれど……しっかりと輝いている。

良く動く夏凜のための、少しきつめの指輪

少しでも大きくなってしまったら嵌められなくなってしまうかもしれないその絶妙さは、

夏凜自身が望んだことだった。

天乃が変わらないから、自分も変わらない。

指輪を嵌める、この手だけはずっと……と、夏凜が真面目に言っていたのを思い出す。

天乃「似合ってる」

夏凜「当然でしょ、そのための指なんだから」

夏凜は左手を大事そうに少し下がって

次に行きなさい。と、先に行くことを促す。

天乃がする指輪は1つだけれど、天乃が渡す指輪は7つ

夏凜に渡したからあと6つ

友奈、東郷、風、樹、園子、沙織

星乃の持つピローの上で輝く指輪を一瞥して、

天乃は星乃と並んで友奈の方に歩み寄った


851 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 00:35:03.46yd5AFUUVo (2/12)


天乃「次は友奈ね。簡易で悪いけれど……」

友奈「いえ、仕方がないです」

友奈も、指輪交換をしたいと思っていたけれど、

天乃の小さな指に七つの指輪は無理がある

全ての指にそれぞれ嵌めるというのならまだ余裕もあるのだが、

それでは少し、不格好になってしまう。

だから、一つの指輪に自分たちの分の宝石を添えて、

代表たる夏凜に交換を委ねた。

それでも、天乃はせめて自分の分は渡したいとせがんだのだ

天乃「友奈、手を」

友奈も大学生になって立派になったものの、

中学三年生だったころの沙織にも満たないので、どちらかと言えば小さい方にあたる

けれど、天乃よりも少しばかり大きな手は、

下から支える天乃の手からはみ出てしまう


852 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 00:51:44.75yd5AFUUVo (3/12)


友奈「あはは……ちょっとあれですね」

天乃「いいじゃない、立派な手だわ」

ほんの少し、大きな手

細くて、日焼けを感じる少し色づいている指

夏凜と似てしっかりしている

天乃「これからも、私の手を覆って貰いたいわ」

友奈「っ……は、はいっ」

天乃「ふふっ、緊張しちゃって」

見つめ合うことも、手を握ることも

もうずいぶんと成れたというのに、友奈は可愛らしい反応を見せてくれる。

それは中学、高校でも変わらなくて、

そして、大人になっても変わらないのだろう。

天乃「……うん、可愛い」

友奈の左手薬指に指輪をはめる。

桜を思わせる少し濃いめのピンクダイヤモンドが、鮮やかに輝いていた


853 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 00:52:10.85yd5AFUUVo (4/12)

では短いですがここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から


854以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/06(木) 01:25:42.86sQlapL6qO (1/1)


かわいい(かわいい)


855 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 20:41:38.24yd5AFUUVo (5/12)


では少しだけ


856以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/06(木) 21:03:49.35v79nWNkuO (1/2)

やったぜ


857 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 21:23:59.76yd5AFUUVo (6/12)


友奈「……大事に、します」

自分の左手を見つめながら、少し涙ぐんだ声で呟く友奈

右手の指で覆おうとして

汚れてしまうのを気にしてか……そのまま手を引く

友奈「大事にしますね」

天乃「そうして貰えると嬉しい」

友奈の頬に触れたくて、頭を撫でたいと思ってしまう。

友奈はもう天乃よりも立派に大人だけれど、

やっぱり、愛らしい気持ちが大きくて。

けれど今はちょっぴり我慢。と後退りする

あとで……家に帰ってから

それでいいかなと、天乃は東郷の方に振り返った


858 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 21:46:21.39yd5AFUUVo (7/12)


東郷「……お願いします」

天乃「あら、素直ね」

東郷「ずっと、寂しかったので」

東郷はそう言ったものの

同級生に男子がいる高校時代から、左手薬指には常に指輪をつけていた。

車椅子という、他人から見ればデメリットになるものが無くなった東郷は、

中学時代こそ、天乃との付き合いが広まっていたこともあって無事だったが、

高校生になってからは声をかけられることが増えてしまったからだ。

それは大学生になってからも同様で――むしろ酷くなっていたりもして。

ずっとつけていた婚約指輪は、

少しばかり歪んだり、傷ついたりしてしまっていたから。

外すしかない日が多かった。

東郷「これで、ようやく……相手がいるとはっきり言うことが出来ます」

天乃「貴女、綺麗すぎるのよ」

東郷「ふふっ、もっと言ってください」


859 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 22:12:54.28yd5AFUUVo (8/12)


東郷は、とても嬉しそうな照れ笑いを浮かべて、

白無垢にも劣らない白くきれいな手を口元に近づける。

無意識的にそれを目で追ってしまった天乃は、

見上げるその視界に薄く塗られた紅が見えて……

中学生のときよりも、より一層綺麗になってくれた東郷の顔が、さらに美しく見えた。

東郷「でも、天乃さんも綺麗です。なのに、まだまだ、可愛いですよ」

天乃「可愛いなんて……もう」

星乃「ママは可愛いよ?」

天乃「あら……ふふっ」

隣に並んでいる星乃の思わぬ追撃に、天乃は笑う。

子供にまで言われてしまったら、否定は出来ない。

軽く深呼吸をして、東郷の手を取る

天乃「東郷……ううん、美森。ね」

東郷「はい……」

高校生の時から指輪が嵌まっていた期間の方が長い薬指

少しだけ細いその薬指に、天乃は指輪を嵌めた。


860 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 22:36:51.72yd5AFUUVo (9/12)


スカイブルーの色合いによって

爽やかさを感じさせる輝きを放つブルーダイヤモンド。

東郷の白さには少し派手になってしまうかなと天乃は思ったけれど、

東郷はむしろ、その方が明確で嬉しそうに顔をほころばせる。

綺麗な大人

女の子と言うよりは女性と言うべき微笑み

東郷「綺麗……綺麗ですね。本当に」

天乃「貴女には敵わないわ」

東郷「そんなことありません」

東郷は、傷つけまいと左手を大事そうに抱えるようにして、

ありがとうございます。と、零す。

無色のダイヤモンドよりも主張の強いそのダイヤは、

自分にはもう、愛おしく、愛してくれる相手がいるのだと見せつけるように輝いている。

東郷「けれど、普段からつけておくのはなんだか勿体なく感じてしまいますね」

困ったように言う東郷は下がって、風と樹への道を開く。

天乃「良いのよ。つけて貰うためにあるんだから」

天乃はすぐには進まず、東郷へと一言投げてから、風の方に向かう。

東郷の「……そうですね」と、愛おしさを感じる声が背中に寄り添うのを感じた。


861 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 23:02:44.77yd5AFUUVo (10/12)


風「さっきの今でまた対面って言うのも、なんだか照れくさくなるわね」

天乃「二人きりの結婚式だったら、ずっと隣か対面してたわよ?」

天乃達がしている結婚式は、

人が多いから、特例でこんなにも離れてしまっているだけで

天乃が笑うと、風も笑みを浮かべて、首を振る

ついさっきも見た、風の顔

大人になった風は綺麗だけれど

学生時代のお転婆さが感じられて、少しだけ子供っぽさが混じって感じる

天乃「風の手も、立派よね」

風「そう? ちょっと雑務で荒いけど……」

天乃「ううん、綺麗になってるわ」

風の左手を受け取った天乃は、手の甲を優しく撫でる

中学生の時、家事炊事に邁進していた風の手は、

普通の女の子に比べれば、少し荒れて感じるものだったけれど、

天乃達みんなで分担していて、

大人になるにつれてケアに気を遣うようになったおかげで

普通の女の子よりも、すべすべとして、瑞々しく若さの感じられる手になっていた


862 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 23:19:28.77yd5AFUUVo (11/12)


天乃「自分の肌に自信を持っていいと思うわ」

風「天乃に言われると、嫌味にしか聞こえないんだけど」

天乃「ごめんなさいね。若すぎて」

婚約をした15歳から、7年

年齢的には22歳になっている天乃だが、

他のみんなと違って、天乃の容姿年齢は15歳のままだ

だから、とても若い。

当然ながら成人しているなんて思われない。

お店で、成人したからお酒でも買ってみる? と、冗談で手に取ったときに

店員に注意されてしまうくらいには。

天乃「こんな若奥様じゃ、憎たらしいかしら?」

風「さぁ? おばさんになってから、考えるわよ」

そう言って苦笑する風の手を握る。

天乃「ふふっ、一緒におばさんになっていきましょ」

動かないでね。と、優しく

星乃の持つリングピローから風の分の指輪を受け取って、薬指に嵌めた


863 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/06(木) 23:23:02.55yd5AFUUVo (12/12)


では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みをいただくことになるかと思いますが、可能であれば少し遅い時間から


864以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/06(木) 23:45:29.90v79nWNkuO (2/2)


久遠さん見た目は15歳でも精神年齢は中学の時点で大人みたいだったからなぁ
やっと実年齢だけ相応っぽくなってきた感じか


865以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/07(金) 01:34:18.01Dz8fp2TDO (1/1)


みんなそれぞれどんな進路進んでるのかも気になるな


866以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/07(金) 06:46:47.95EAwIIxSVO (1/1)

現在久遠さん22歳で夏凜との子供が3歳
中学卒業の一年後に高校進学で夏凜たちと同学年…

…あれ?夏凜、高3でうっかりフライングで久遠さんとヤっちゃってる?


867 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/08(土) 22:13:45.07CrzzA1xSo (1/3)


遅くなりましたが、少しだけ


868以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/08(土) 22:25:30.356O7roVgrO (1/1)

おk


869 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/08(土) 22:54:48.10CrzzA1xSo (2/3)


はめ込みではない分、夏凜のものよりも少し大きめに見えるダイヤは

カナリーイエローとも呼ばれた純度の高い鮮やかな色をしていて、

風の指に収まってなお、煌々と美しく輝いている。

自分の結婚指輪がここまで鮮やかなものだと思っていなかった風は、

思わず、それに見とれて――

風「こんな……あたし……」

天乃「大丈夫よ。風はこれからもっと綺麗になっていく。自信を持って」

似合わないと思っただろうと、天乃は笑みを浮かべながらそれを否定する。

今はまだ若い

結婚指輪のダイヤの輝きがまぶしく見えることだってあるだろう

けれど、風はそれにも負けないほどの女性になると、天乃は言う。

天乃「私の選んだ貴女が……宝石なんかに負けるわけないじゃない」

風「そう……ね。そう……つい、綺麗だったから」

風は困ったように言ったものの、

噛みしめるように唇を縛ってから、ふっと笑って

風「ありがとう。大切にする」

左手を覆うようにして、風はそう言った。


870 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/08(土) 23:23:48.26CrzzA1xSo (3/3)


天乃「今の風は、まだ可愛いわね」

風「っ……も、ば、ばか……」

出来るなら、キスの一つでもしてあげたいと思うけれど

今はそれが出来ないからと、笑顔を見せる天乃

からかっているわけではなく、本当にかわいいと思ったのだ

もう成人しているし、どちらかと言えば大人と言ってもいい

けれど、嵌めたばかりの結婚指輪を愛おしそうに守り見つめる姿は、

宝物を手にしたばかりの子供のようで

気恥ずかしさを御しきれていないのも、ちょっぴり相まって

天乃「おばさんになって綺麗になっても、時々は可愛い貴女でいてね」

追い打ちをかけた天乃の傍らで、

緩衝材のような「ねっ!」という子供真っ盛りな愛らしい声が駆け出す。

風はようやく、はっとして

風「天乃もね」

そう言うだけで、引き下がるのだった


871 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/09(日) 00:08:17.32c82YdT6ko (1/7)


樹「お姉ちゃん、可愛かったですね」

天乃「ふふっ、でしょう?」

風の対面に居た、その妹である樹

天乃達の声が聞こえる距離に居たからか、

天乃と向かい合って早々に嬉しそうに笑う。

普段より白さの映える風が、

その頬を、唇に塗られた紅にも届きそうな朱色に染めていくのが僅かに見えたからだ

普段は二年分、大人びて見える姉の可愛らしさ

なら自分は二年分、大人っぽく頑張ろうと樹は奮起する

樹「……お願いします」

左手を差し出す。

小さいけれど、天乃よりは大きい

前は同じくらいで、握り合って丁度良かったはずの手

天乃の少し小さな手が支えるように受けとると、ほんのりと冷たさを感じる


872 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/09(日) 00:37:47.07c82YdT6ko (2/7)


天乃「落ち着いているわね」

樹「お姉ちゃん……姉が可愛らしかったので」

お姉ちゃんと言うのを控えて、

少しばかり背伸びした【姉】という言葉を使うところを、

可愛らしいと天乃は思ってしまうのだけれど。

天乃「立派ね、何度触れられても……私よりも」

樹「でも、私よりもずっと……立派な手をしていると思います」

天乃の手は小さい

不老不死に似た影響のせいかおかげか、

その手は中学生の時とまるで変わりない

けれど、それが行ってきた8年もの母親としての経験

見た目に刻まれていなくても、それは立派な母親の手だ。と、樹は柔らかい笑みを浮かべる

成人したばかり……けれど、大人っぽさを感じさせる笑み。

天乃はそんな樹の成長が嬉しくて

いつか、隣にいる我が子にも追い抜かれていくのだろうと思うと、少し寂しい気持ちにもなってしまうのだが

それ以上に、樹や子供たち

みんながこれからどういう風に成長していくのだろうかと、夢に見る


873 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/09(日) 00:38:29.62c82YdT6ko (3/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


874以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/09(日) 00:52:34.47ok+SBPvVO (1/1)


久遠さんは最初に妊娠した頃から母性が溢れてたよな…


875以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/09(日) 02:43:52.43+5mWuEgu0 (1/1)


姉妹揃って可愛らしいな


876 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/09(日) 20:32:29.77c82YdT6ko (4/7)


遅くなりましたが、少しだけ


877以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/09(日) 20:34:59.43HLEx/qg5O (1/1)

いえす


878 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/09(日) 21:51:09.83c82YdT6ko (5/7)


天乃「樹が立派な子であることには変わりないわ」

婚約していた中で、

たった二年だけれど、一番年下な樹

天乃のことを一番に考えて、その手助けをするための将来を選んで

けれど、天乃の体が治っても夢を目指すべき意味を失わずにいて。

同じように辛い思いをする人がいるかもしれない

そんな人たちの助けになりたいと頑張っている姿は、そんな二年間の差なんて感じさせない

天乃「ありがとう、樹」

好きになってくれて

尽くし続けてくれて

目標として、ずっと追い続けると誓ってくれて

天乃「……貴女が背中を目指し続けてくれていたから、私は立派な妻になれたと思う」

天乃はそう言うと、

樹の左手の薬指に、指輪を嵌めて

天乃「でもそろそろ、私の隣を歩いて……引っ張って行って欲しいわ。樹」

樹の将来を見据えて、優しく微笑んだ


879 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/09(日) 22:41:45.20c82YdT6ko (6/7)


樹にとって、天乃のその一言はプロポーズのようなものだった。

一度プロポーズされているし、してもいるけれど

何度されても――それこそ、こんな場面でされてしまうと

どうしても胸に温かみを覚えてしまうもので

樹は思わず頬を赤くして、けれど、天乃と繋がったままの左手で天乃の手を包む

樹「……その時は、この手で」

天乃「ん……」

デートするときは並んでいる

普段から、別に背中を見ているわけではないから、そういう意味ではないと解っている。

けれど、これが一番分かりやすいと思ったのだろう。

天乃「ええ」

樹「えへへ…・・なんだか、うまくいかないです」

天乃「良いのよ。可愛いままで」

樹「っ」

天乃「背伸びして頑張らなくても、いつかはそうなれるんだから。今は可愛い樹で良いのよ」


880 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/09(日) 23:35:20.36c82YdT6ko (7/7)


樹「うぅ……」

天乃「ふふっ、貴女もやっぱり可愛いわね」

風と同じように、だんだんと赤くなっていく樹はとても愛くるしい

みんなが見ているということもあって、

樹は大げさな反応こそ見せないけれど

その羞恥を感じる控えめな所作は姉妹らしい

樹「もぅ……酷いです」

天乃「ごめんなさいね、ふふっ」

楽しそうに笑う天乃がとても幸せそうに見える

特別怒る気なんてなかった樹も嬉しく感じて――

星乃「えへへっ」

樹「ふふっ」

天乃の隣でニコニコとしている星乃に触発されるように、

樹も笑顔を浮かべて、天乃を見る

樹「大事にします。この指輪も、天乃さんも」

天乃「ええ、お願いします」


881 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 00:02:24.15+COzPGGWo (1/11)


穏やかな声のトーンで答えた天乃が顔を上げると、

ちょっぴり背の高い樹を見上げる形になる。

背が低くても、大人の女性を彷彿とさせる天乃はやはり、母親で

樹はやっぱりまだ敵わないなぁ。と、

幸せを抱きしめるように味わうように……柔和な笑みを見せる

樹「はいっ」

下がる樹を横目に見送る

まだまだ可愛らしい笑みを見せてくれるけれど

だからこそ、時折見せる大人びた笑顔が映える

今はまだその絶妙なバランスを保っていてね。と、

もう一度心の中で思って、園子と沙織の方へと向かう


882 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 00:03:56.87+COzPGGWo (2/11)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日はできればもう少し早い時間から


883以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/10(月) 00:12:18.25UaGOQuY8O (1/1)


樹ちゃん大人になっても可愛いなぁ


884 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 18:18:52.03+COzPGGWo (3/11)


では少しずつ


885 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 19:15:01.70+COzPGGWo (4/11)


園子「大変だねぇ」

天乃「そうでもないわ」

ここまで、5人の女の子に結婚指輪を渡してきた。

本来なら一度で済むそれを五回行って、

自分を含めてあと二回行う天乃は大変だろうと思ったのだけれど、

天乃としては、一つ一つが大事なことだから大変だとは思っていない。

慣れない白無垢で歩き回るのは、大変だけれど。

天乃「……大きくなっちゃって」

園子「えへへ~」

園子と初めて出会ったのは、園子が小学生だったころ

その時から、若干身長で負けていたのだが

中学生になって大きく越されてしまった上に、

今は……さらに超えられてしまっている

そんな園子を見上げる天乃が静かに手を差し出すと

園子は嬉しそうに笑みを浮かべながら、自分の左手をその手のひらに乗せた


886以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/10(月) 19:52:48.09FvVwfyZiO (1/1)

来てたか


887 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 20:38:50.53+COzPGGWo (5/11)


天乃「園子って、手は小さいのよねぇ」

園子「天さんよりは、大きいけどね」

天乃「ふふっ、それは仕方がないわ」

約20センチ近く身長差のある天乃と園子の手の大きさが同じだったとしたら、

園子の手が異様に小さいか、天乃の手が異様に大きいかだ

けれど、身長の近い東郷よりは小さく感じられる。

もう二十歳は過ぎているけれど、

これから大きくなっていくのだろうかと思うと、ちょっぴり寂しくなる。

もちろん、大きい手が嫌いなわけではない。

そもそもの話、自分が異様に小さいため

園子が小学生の頃、出会った時から園子と同じくらいの大きさだったと、天乃は覚えている

天乃「良く、手を握っていたわよね」

園子「うん……そうだった」


888 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 21:28:55.34+COzPGGWo (6/11)


園子は懐かしむように頷いて、天乃の小さな手を握る

最初は同じくらいで握り合うのが精いっぱいだった。

讃州中学に通えるようになってからは、もう、園子の方が大きくて

天乃の握ってくれる力の弱さが少しばかり悲しくなって

けれど、握り支えることが出来るようになったことが嬉しかった。

高校生にもなると天乃の力もしっかりと戻ってきていて、

小さい手のどこかにある力強さに身を委ねて甘えたくなってしまった。

園子「結婚指輪が左手なのが、少し残念」

天乃「どうして?」

園子「指輪を嵌めた手とで握り合えないから」

天乃「ダメよ、傷ついちゃうもの」

結婚指輪にも送った相手の想いが込められている

それを嵌めた手と手を繋いでみたいと、園子はちょっぴり思ったりもした

もちろん、傷ついてしまいかねないというのは分かっているので、

思う程度なのだけれど。

園子「私、天さんの手……好き」


889 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 21:53:58.77+COzPGGWo (7/11)


天乃自身も好きだし、

それだけに行為を抱いているわけではないけれど、

小学生のころから、

一緒に行きましょう。と、引いてくれたから好きなのだ

ついついよそ見をして、

立ち止まってしまっても付き合ってくれて

もしかしたら、寄り道しないためのものだったのかもしれないけれど、

二歳年上なのに小さくて、ひんやりとしているその手が好きだった。

園子「……ずっと、好き」

天乃「私も園子の手、好きよ」

子供らしくて、綺麗な手だった。

寄り道をするたびに、ちょっぴり汚れていたりして、

お転婆さを感じさせてくれた可愛らしい手。

天乃「大きくなっても、可愛いままね」


890 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 22:31:53.85+COzPGGWo (8/11)


東郷の手よりもちょっぴり日焼けしていて

けれど、より快活な友奈達よりも色白に感じる綺麗さを感じる肌

成人した時にマニキュアを塗ってみようと挑戦したものの、

なんだか変な感じがする。と、その一回で塗られることのなくなった爪

天乃「この手に指輪を嵌められるの……嬉しいわ」

園子「この手を取ってくれたのが、天さんで嬉しい」

園子はとても嬉しそうで、隣にいる星乃も「えへ~」っと笑う

小さい我が子と、大人になった恋人

二人の笑顔がよく似ていて、

天乃はちょっとだけ困ったものだと思いながら、園子の指に指輪を嵌める

本当は夏凜に送りたかった赤いダイヤモンド

それと同じくらいに稀少価値が高いと言われた純正のパープルダイヤの結婚指輪

園子の可愛らしく綺麗な指に、その指輪は程よく収まっていて、

紫色の輝きが、園子の魅力をより高めてくれる


891 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 23:11:53.07+COzPGGWo (9/11)


園子「いい色だねぇ」

天乃「でしょう? 特別な色だと思ったの」

夏凜は、よくよく動いて傷つけやすいから

あまり貴重なのは控えて欲しいとお願いされた結果、シンプルに無色だけれど

友奈達に関しては基本的に、

結婚指輪はそれぞれのイメージカラーのダイヤモンドを使っている

園子はその指輪を嵌めた手を掲げずに光を当てて、

その輝きを確認してから、静かに手を下ろす。

園子「ただ、普段は勿体なくてつけられないかな」

天乃「別に気にしなくていいのよ?」

園子「大事な時にだけつけるようにする」

一緒に出掛ける時、

何か大切な行事に参加するとき、

相手がいると、周囲に示さなければならない時。

けれど、海にはつけていけないかな……と、あと1、2ヶ月後の予定を想って

残念そうに笑う


892 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 23:54:33.82+COzPGGWo (10/11)


園子「天さんとのデートの時は、必ずつけるよ」

天乃「ありがと」

園子は可愛らしい笑顔を見せてくれる

友奈達のように、照れくささは感じられない。

それでも可愛らしいのは変わらなくて

恥じらいがない分、整った顔立ちが作り出す笑みは美しいとさえ言えるかもしれない。

けれど、見え隠れする無邪気さが、その笑顔の愛らしさを増してしまっている

それが薄れるまでは、きっと……園子は可愛いままだ

天乃「まだまだ、そんな貴女を見ていられそうで嬉しいわ」

園子「ん~?」

心の中に隠したこと

それが何なのか分からない園子のきょとんとした表情がまた、愛らしくて

しかし、これ以上は時間もかけられない。

星乃を一瞥した天乃は、園子にあとでね。と、笑みを向けて、

その対面、沙織の方へと体を向けた


893 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/10(月) 23:59:47.94+COzPGGWo (11/11)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


894以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/11(火) 00:10:52.92U1hKdqaxO (1/1)


久遠さんに唯一責められてたそのっちも立派になったなぁ


895以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/11(火) 04:33:10.84kp4WkEP+O (1/1)


沙織でラストか


896 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/11(火) 20:42:28.80uyaQdSPGo (1/4)


では、少しだけ


897以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/11(火) 20:54:02.33WhcI64r3O (1/1)

かもーん


898 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/11(火) 22:18:01.59uyaQdSPGo (2/4)


沙織「あたしがメインディッシュかぁ」

天乃「嬉しい?」

沙織「見劣りしてないかな?」

沙織は心配そうに言って見せたものの、

内心の嬉しさは隠しきれていない。

天乃「何言ってるのよ、もう」

沙織「あたし、可愛い?」

天乃「綺麗よ、貴女は」

天乃や風と同じ年齢の沙織は、

友奈達と比べて子供っぽさが抜けていて、

どちらかと言えば、綺麗なお姉さん。と、星乃達が言う程だ

沙織はまだ可愛いと言われたいらしいけれど

その願いに反して、沙織はもう大人の女性になりつつあった


899 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/11(火) 22:57:21.27uyaQdSPGo (3/4)


天乃「でも、そうやって可愛い? って窺うところはまだ子供かもしれないわね」

沙織「そうかな」

嬉しそうに笑う沙織を一瞥した天乃は、最後の一つの指輪を手に取る

沙織の要望で用意したパンプキンダイヤモンドともいわれる、

天乃の瞳の色にも似た、オレンジ色のダイヤモンドを使われた指輪

天乃「私の色が良いなんて」

沙織「だって、あたし……天乃さんの色に染まっちゃってるから」

天乃「ふふっ、それもそうね」

沙織が大人になっても、

結局、猿猴はその体に宿したままとなっている。

彼が表に出てくるのは、沙織か天乃が危険な目に遭った時くらいで

それ以外は沙織が表に出ているから問題はないし、

沙織がそれを望んでいるから問題はないのだけれど。

それは、言ってみれば天乃の色に染まっていると言えるだろう


900 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/11(火) 23:26:42.03uyaQdSPGo (4/4)


天乃「……沙織、手を」

沙織「ん」

天乃が左手を差し出すと、

沙織はその上に自分の左手を置く

やはり、天乃よりも一回りほど大きいその手は

天乃の手を、完全に覆ってしまえるほど。

沙織「小さいね」

天乃「ええ」

沙織「いつまでたっても……可愛いまま」

沙織は愛おしそうに言うと、

天乃の左手の薬指に指輪を嵌める素振りを見せる

沙織「可愛いのに、綺麗なのが――嬉しい」

天乃「え?」

沙織「お嫁さんだからね、自分よりも綺麗でかわいいのは嬉しいよ」


901 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/12(水) 00:24:22.60WsiPkEoio (1/3)


沙織は本当に嬉しそうな声色で、

慈愛に満ちた瞳で、天乃を見据える

大人になった沙織の、綺麗な表情

天乃はそれをまっすぐ見上げて、少しだけ困ったように笑みを浮かべる

綺麗と言われるのも、かわいいと言われるのも悪い気はしない

だけれど、沙織の身長は天乃の婚約者の中でも比較的高く

押しの強さを覚えている体はドキリとしてしまって……天乃は軽く深呼吸をする

天乃「ありがと」

沙織「ううん、ありがとうはあたしだよ」

沙織の薬指に指輪を嵌める。

沙織はそれを静かに受け入れて

天乃の手が離れてもまだ、支えられたままであるかのようにその場に漂わせる

沙織「正直、あの頃は諦めてたから……だから、ありがとう」

指にはめられた結婚指輪

天乃の色に輝くダイヤモンドはとても美しくて

それはまるで天乃の瞳のようだと、沙織は右手で大事そうに覆った


902 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/12(水) 00:24:54.79WsiPkEoio (2/3)


では、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


903以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/12(水) 03:11:27.08hcI55ip5O (1/1)


沙織も歳とるんだな


904以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/12(水) 06:11:29.93uwIYaOinO (1/1)


沙織も成長しないって設定だったような
あれ半霊だから成長するんだっけか


905以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/12(水) 09:26:13.18dANqu/3CO (1/1)

すまん>>708で沙織以外の精霊は変わらないってあるから沙織は成長するんだな


906 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/12(水) 21:55:49.83WsiPkEoio (3/3)


すみませんが本日は所用のためお休みとさせていただきます。
明日はできれば早めの時間から


907以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/12(水) 22:03:44.84d3VaUt6JO (1/1)

乙ですー


908 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/13(木) 21:30:41.47L+mnrdnNo (1/3)


では少しだけ


909以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/13(木) 21:43:01.00G19V2+viO (1/1)

あいよ


910 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/13(木) 22:39:52.71L+mnrdnNo (2/3)


沙織「大切にする……指輪も、天乃さんも」

天乃「ええ、お願いね」

沙織「絶対に、最後まで責任を取るよ」

沙織は半霊ゆえに長生きすることになる

天乃や千景たち純精霊と違って、歳はとるし変わっていってしまうけれど

それでも、沙織は夏凜達に比べれば長生きすることになるだろう

子供がいて、精霊がいる

天乃は生涯孤独になることはありえないけれど、

可能な限り一緒にいたいと思っている。

伴侶として当然の考えかもしれないが。

沙織「あたしの中のこの力がなくなるまではね」

天乃「今の私なら、その力を返してもらうこともできるのよ?」

沙織「出来るだろうけど、長期間体調崩すだろうし……あたしはこのままが良いな」


911 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/13(木) 23:20:20.20L+mnrdnNo (3/3)


以前に比べ、天乃の体調面に大きな影響はないだろうと九尾は言っていたけれど

たとえ天乃に力を戻しても、

絶対に安全が保障されているのだとしても、

沙織は天乃に力を戻す気はない

人間じゃなければ出来ないこともあるけれど、

半霊でなければ出来ないことがある。

ならば、少しでもできることが多い半霊を選ぶ。

たとえ、その出来ることのほとんどが必要のない世界であったとしても

沙織「必要な時に、必要なことが出来ないなんて嫌だからね」

天乃「そうよね、沙織は」

沙織「ふふふっ、愛してます」

天乃「……私も愛しているわ」

沙織は、どこか物足りなさそうな顔をしているけれど

これ以上は、今は難しい


912 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/14(金) 00:23:39.14U9GmDntKo (1/5)


誓約の代わりにキスをすると言う選択もあったが、

言葉を交わす方が良いとの話でそうなった。

7回の接吻と誓約、指輪交換

それをするのは時間がかかるため、

みんなの前での接吻は削ってしまっている

やっぱり、全部終わってからが少し大変になるかな……と、

天乃は思わず笑って。

天乃「ありがとう、ずっと……傍に居てくれて」

沙織「……うん。連れて行ってくれて、ありがとう」

流石に沙織は余裕を一切失わずに

天乃のお礼に笑顔で答える

いつだって置いていかれてもおかしくなかった

けれど、天乃はずっと連れて行ってくれた

少しだけ強引に袖を引っ張ったこともあるけれど……。

それでも置いていかずにいてくれた

だから、ありがとう。と、沙織は言う

天乃「ついてきてくれたのは貴女だわ。ありがとね」

それでも天乃は上乗せして、沙織に背を向ける。

隣の星乃からの「もどるの~?」という問いに、頷く

天乃「うん、千景ママのところで待っててね」

星乃「は~い」

二人がママと呼ぶから千景ママ

千景は違うというけれど、そうなってしまったから仕方がないと思いながら、

天乃は自分のいるべき場所へと足を進めた


913 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/14(金) 00:28:11.28U9GmDntKo (2/5)


では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から


914以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/14(金) 03:37:28.58AEl9EubcO (1/1)


みんなそれぞれ思いがあっていいなあ


915 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/14(金) 22:12:52.30U9GmDntKo (3/5)


では少しだけ


916以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/14(金) 22:32:31.26ZX6iSBwZO (1/1)

きてたか


917 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/14(金) 23:12:38.84U9GmDntKo (4/5)


瞳「では、ここに結婚証明書を用意しております」

天乃が定位置に戻ったのを確認した司会の瞳は、

近くに控えておいた手製の結婚証明書を参列者に見えるように提示する。

本来の結婚証明書ではそもそも7人もの名前が納まらない。

証明書でさえ―ここで提示するものに限るが―自由にできるのが、

天乃達にとってはとてもありがたいものだった。

瞳「新婦のみなさんには、こちらに拇印を押していただきます」

証明書には、すでに天乃たち全員の名前が書かれている。

印鑑を押せとばかりに名前の隣に書かれたちょっぴり歪な丸は、星乃と月乃が書いたものだ

そこに、拇印を押すことになっている。

瞳「お願いします」

証明書を置くのに程よいテーブルの上に瞳が紙を置く

その周囲に、天乃を中心にしてみんなが集まっていく


918 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/14(金) 23:36:50.46U9GmDntKo (5/5)


夏凜「やっぱりちょっと曲がってるわね」

東郷「小さいのもあるわ」

子供の書いた丸の差にちょっぴり笑みを浮かべる

星乃と月乃

二人が好きな相手ほど丁寧で、嫌いな人ほど適当……なわけではなく

星乃が上から下へ、月乃が下から上へ

天乃で1つ、夏凜達で7つの計8つ

1人4個の丸を書いていった結果、崩れてしまっただけの話。

文句はないし、怒ることもない。

失敗しちゃった。と、残念そうにしているのを何度も見た

ノート一杯に丸を無数に書いているのを見た。

だから、小さな不器用さはただただ微笑ましいものだ


919 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/15(土) 00:17:41.88LEZSiT08o (1/4)


天乃「みんな、手を出して」

天乃がそう声をかけると、夏凜達が揃って左手を出す。

拇印を押すなら右手という話を聞いたが、

そんな決まりなど、天乃達には関係ない。

きめ細かい羊毛を用いた柔らかい筆を赤く染め上げ、

まずは一番近い友奈の親指に走らせる

友奈「んっ……」

園子「ゆーゆ、エッチな声はダメだよんっ!」

くすぐったさに呻いた友奈に声をかけた園子の指にこっそり筆を流してあげると、

ビクンっと震えた園子の顰めた視線が刺さるけれど

どっちも可愛い。なんて、思わずにやけてしまいそうになる。

天乃「次はだれにしようかしら」

夏凜「遊んでると奪うわよ?」

天乃「ふふふっ、ごめんなさい」

夏凜に睨まれては仕方がない。と、

天乃は遊ぶのを諦めて、筆を強く握った


920 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/15(土) 00:20:57.35LEZSiT08o (2/4)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から


921以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/15(土) 02:21:30.48BaCvKJrLO (1/1)


本当にほほえましくてなにより
みんなかわいいな


922 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/15(土) 22:00:42.53LEZSiT08o (3/4)


では少しだけ


923以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/15(土) 22:15:35.49wne8jb/pO (1/1)

よっしゃ


924 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/15(土) 23:01:02.71LEZSiT08o (4/4)


どきどきすると言う風

ちゃんと押さないと。と、確認する樹

筆もありですねと、真剣な表情の東郷

緊張するね。と、笑う沙織

塗ってあげる。と、筆を受け取る夏凜

そして、左手を差し出した天乃

一人ずつ親指に塗って、

天乃は夏凜へと右手を出す

天乃「筆、貸して」

夏凜「友奈に悪戯するんでしょ。ダメ」

天乃「分かったようなこと言っちゃって」

筆を戻した夏凜に苦笑する。

最初に塗った友奈の親指はまだてかてかと潤いを感じさせている

けれど、もう一度――と、思ったのだけれど。

天乃「友奈、親指の、まだ大丈夫そう?」

友奈「はい、まだ大丈夫そうです」

天乃「なら良いわ。渇く前に押しちゃいましょ」


925 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/16(日) 00:05:11.842qUqKY6Xo (1/10)


自分の名前の隣、

子供達の描いた丸の中に、それぞれ親指を押し付けていく

ぐっと押し込むと少しだけ紙に皺が寄る

樹が先に離して、園子が離す

東郷が続いて、友奈が続く

沙織がゆっくりと手を引いて、夏凜が指を上げる

天乃「……これで、完成ね」

みんなが離したのを確認してから、天乃も離す

結婚証明書には8つの赤い指紋がついている

分かりやすくそれぞれの名前の横にあるそれは

大小さまざまで、風が一番大きく見えて

やっぱり、天乃が一番小さい

ちょっぴり薄いものや傾いているものがあったりもして

少し個性が出ているようにも感じる


926 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/16(日) 01:06:55.142qUqKY6Xo (2/10)


天乃「ふふっ、なんかいいわね」

沙織「綺麗に押せなかったのが悔い残るかも」

風「まぁ、良いんじゃない?」

それはそれで味が出るじゃないと風は嬉しそうに言って、

自分の押した部分を一瞥する

もちろん、そこまでの差はないが、

天乃と比べると一回り大きく見えてしまいそうな指紋

少しダイエットすべきかな。なんて思ったのを察してか

樹は「大丈夫じゃないかな」と、笑う

樹「お姉ちゃんは別に太ってないよ」

風「もう……樹ってば」

東郷「手が大きい方が、より優しく包めますよ」

困り顔の風に東郷の囁きが続く

何を大きく包めるのか

手ではないような気がしたけれど、

天乃はあえて何も言わずに、指を拭ってから一歩下がって瞳に目を向けた


927 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/16(日) 01:21:23.712qUqKY6Xo (3/10)


天乃が下がったからか

夏凜達も同じように下がって瞳が列席者に見えるようにする。

瞳「ありがとうございました。確かに、確認いたしました」

瞳は改めて確認するように証明書を見てから、

天乃に笑みを浮かべ、夏凜に嬉しそうな表情を見せて

そうして、証明書を列席者に見えるように掲げてから、小さく息をつく

大事な言葉

だから、噛んでしまったりしないように

瞳「ここに誓いが成されました。皆さま、結婚の承認を頂けるのでしたら、盛大な拍手をお願いいたします」

讃州中学時代の友人

天乃や夏凜達の両親や、兄弟

決して多くはないかもしれないが、少なくもない人たち。

最初は認めてくれなかった人もいる

けれど、今はもう、そんなことはない。


928 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/16(日) 02:19:22.792qUqKY6Xo (4/10)


星乃「ママーっ」

月乃「はくしゅーっ」

我先に……と言う意図もないのだろう

元気よく声を上げた二人の大きな拍手が響く

それに続くように周りのみんなが手を叩いて、

少しずつ、大きくなっていく

子供たちの元気の良さ

それに負けじと張り合う球子に若葉達は困った顔を浮かべて、天乃達の方に目を向ける

若葉「祝福だ」

歌野「そうね。ようやく」

祝福の中心、天乃達はとても幸せそうに見える

今はもう、誰にも反対されない

駄目だと言われることもない

千景「……お疲れ様、久遠さん」

もう何度も口にしてきたけれど、もう一度

千景は小さく口にして、ひと際大きく手を叩く

星乃と月乃の振り返った笑顔に、千景は微笑んだ


929 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/16(日) 02:23:03.902qUqKY6Xo (5/10)


遅くなりましたがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


930以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/16(日) 04:30:55.13mjqS3L5gO (1/1)


とうとう結婚完了かあ
ここまでの道のり考えると感慨深いな


931以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/16(日) 07:23:42.49bmY6oAVyO (1/1)


久遠さんやっと幸せを勝ち取ったんだなぁ…


932 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/16(日) 18:47:47.482qUqKY6Xo (6/10)


では少しだけ


933 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/16(日) 19:27:38.402qUqKY6Xo (7/10)


瞳「皆さまありがとうございます。ご承認を得て、ここに結婚が成立致しました」

瞳は心からの祝福を持って、告げる

数年前からいつか行うと決めていたことだし、

育ての親――あるいは、義姉として

夏凜の傍に居た瞳にも、込み上げるものはあるけれど

嬉しくとも泣いてしまうわけにはいかないのだと、息を飲んで

瞳「……ご結婚、おめでとうございますっ」

噛みしめるように祝福を口にする。

夏凜を見ると、流石と言うべきか夏凜は気付いて軽く礼をする

瞳は「夏凜ちゃん……」と、小さく呟いて

瞳「これをもちまして、挙式は無事に相調いました。めでたく結ばれました彼女たちに今一度盛大な拍手をお願いいたします」

司会である瞳の言葉に応えるように、祝福が広がっていく

星乃と月乃の嬉しそうな声

二人を宥める千景の困った声

それも聞こえているのだろう、

天乃の小さな笑い声が聞こえる

瞳「末永い幸せを願い、祈って……人前結婚式を閉式とさせていただきます」


934 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/16(日) 20:07:56.892qUqKY6Xo (8/10)


司会進行という大切な役目……それも、あと一言で終える

嬉しいような寂しいような

そんな少しばかり複雑な気持ちを抱きながら、瞳はそれを口にする

瞳「それでは、これより新婦の退場でございます。皆さまの大きな祝福でお送りください。新婦の……退場です」

瞳のその言葉に、やっぱり大きな拍手が続いて

天乃を先にして、夏凜達が続いていく

天乃達が参列者の前を通ると、

親や友人

そして、千景たち天乃の精霊

みんなの手から花が舞い上がって

高く高く、風に巻き上げられたかのように

一枚一枚、降りていく

細やかなフラワーシャワー

その中を、天乃達はゆっくりと進んで――退場していった


935 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/16(日) 20:56:55.452qUqKY6Xo (9/10)


控室へと戻ってきた天乃は、

最初に座っていた椅子に座って、大きく息を吐く

疲れはあるし、緊張もした。

7年も前からずっと望んできた結婚式がようやくひと段落ついたのだ

少しくらいは落ち着いてもいいだろうと、天乃は綿帽子を外す

天乃「はぁ……あっつい……」

時期を考えての白無垢の装いにはなっている

それでも、普通に生活するよりは熱を持ってしまう

特に、今の時期は。

少しだけ着崩して、張り付くような肌着をわずかに浮かせて空気を含ませる

天乃「結婚、結婚ね……ふふっ」

今までは結婚ではなく婚約だった。

それでも一日中必ず誰かが傍に居て、

休みの日はみんなが一緒に居て

そんな生活だった

そこから大きく変わる様なものはないかもしれない

だけど、自分たちだけでなく

親や友人、兄弟姉妹からの祝福を得られた結婚は、

やはり、心持が変わってくる

天乃「結婚、しちゃった」

指輪を嵌めた左手の薬指

その手を天井に掲げて透かしてみれば……宝石が優しい輝きを見せてくれた


936 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/16(日) 22:54:38.422qUqKY6Xo (10/10)


天乃「さて……」

結婚式は終わった

お色直しをして、披露宴

白無垢が和式としたら、

洋式の装いであるウェディングドレス

そして、なぜかタキシードに紋付袴

計3回の色直しになる

どこの大富豪の披露宴なのかと頭を抱えそうになるけれど、

みんなの希望なのだ、やってあげるべきだろう

扉を叩く音が聞こえて、入室を許可する

お色直しの為に入ってきた数人の係

着替えるウェディングドレスが持ち込まれてきて

その袋の膨らみに、天乃は思わず苦笑する

どれだけ大きいのかは試着の段階で分かっていることなのだけれど

天乃「申し訳ないけれど、宜しくお願いします」

「大丈夫ですよ。お疲れではありませんか?」

天乃「平気です……せっかく、用意したんだもの」

「白無垢もお似合いだから、少し勿体ない気もしますが……出来るだけ早く、綺麗に仕上げて見せますね」


937 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/17(月) 00:16:34.96aqPhPDzso (1/3)


ウェディングドレスは、オレンジ色を織り交ぜた薄めのカラードレス

白無垢が純白だっただけに、

ウェディングドレスは色があったほうが良いという話になったのだ

タキシードは黒色だし、

紋付袴はそれなりに色がある

天乃「んっ……」

「きついですか?」

天乃「いえ、大丈夫」

白無垢でもそれなりに腹部への圧迫感があるのだが、

天乃の場合、最も苦しいのは胸になる

身長からして、天乃が着るものは言わば子供向けのサイズになってくる

そうなると、子供におさまらない胸囲を持っている天乃には辛いものになってしまう

とはいえ、私服のように全体的にサイズの大きい服にするわけにはいかないので

胸のサイズをやや無理矢理に調整する必要がある

それが……痛い

天乃「むーっ」

「ふふふっ、久遠さんほんと特別な魅力のあるお体していますね」

天乃「ありがとう。でも、私の伴侶が怒るからダメよ」

そういうつもりはないと分かっているけれど、

天乃は茶化すように、そう言った


938 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/17(月) 00:19:14.49aqPhPDzso (2/3)

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


939以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/17(月) 00:35:24.48dr0QteT8O (1/1)


披露宴は何するんだろうか
そして久遠さんの胸は最後まで目立つなぁ


940 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/17(月) 22:24:59.93aqPhPDzso (3/3)


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から


941以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/17(月) 22:34:07.66lalbhwPLO (1/1)

乙です


942 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/18(火) 23:47:23.08oU0euq7Co (1/1)


遅くなりましたが少しだけ


943 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/19(水) 01:02:59.595UuP8/OYo (1/5)


披露宴と言っても、

よくあるプログラムに則ったものではない。

普通の結婚式や披露宴では、

どちらかに偏った関わりしかない人もいるが、

今回に限っては、参加者はみんな天乃達をよく知る人物しかいない

婚約から約8年

家族ぐるみの付き合いも多かったし、

讃州中学時代の付き合いも途切れることはなかった

そんな身近な人しか呼ばなかったからだ

その点で言えば、披露宴はもうすでに終わっていると言えるだろう

だから、やるのはお祝い

披露するのは、式では見せなかった衣装

ケーキ入刀は当然のように――やるけれど。

天乃「ウェディングドレスって、軽いのね」

千景「軽くはないでしょう? 白無垢に比べたら軽いけれど、数キロあるわ」

天乃「その白無垢を着てたから言ったのよ。相変わらず熱いけどね」


944 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/19(水) 01:46:32.465UuP8/OYo (2/5)


千景「辛かったら声をかけなさい」

天乃「ありがとう。でも、すぐにタキシードに着替えることになるから」

千景「ケーキ入刀はタキシードで行うの?」

天乃「ううん、そのためのウェディングドレスよ」

入場は通常通り行い、

食事が始まってから少し待って、ケーキ入刀

少し待つのはみんなが食事を楽しむためだが、

撮影会になるのは――まず間違いない

天乃はウエディングドレスだが、夏凜はタキシードだ

他に、友奈や風、沙織もタキシードを着る予定で、

東郷や園子、樹は天乃と同じようにウェディングドレス

大きなケーキではなく、少し大きめのケーキを7つ

天乃「太らないのが幸いだわ」

千景「7回食べさせあうのは……大変ね」

きっと、星乃達もしたがるから9回になるだろうけれど。

と、今は傍に居ない二人のことを考えて、千景は苦笑する


945 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/19(水) 02:01:15.845UuP8/OYo (3/5)


千景「それより、エスコートは私で良かったの?」

天乃「若葉なら真っ先に園子に取られちゃったわ」

ご先祖さまと、子孫

正確には違うかもしれないが、

300年の時を経たその関係があるのに、駄目とは言えなかった

夏凜は瞳で、樹が歌野

風は球子がエスコートすることになっている

そして、友奈は東郷たっての希望で東郷と一緒

千景「三好さん……夏凜さんと一緒でも良かったでしょうに」

天乃「それはお色直しの後にするのよ。ふふっ、お色直しが多い時の利点よね」

そこに利点があるなんて天乃達くらいだろうと千景は思ったけれど

嬉しそうな天乃の笑みに小言は言えなくて、笑うだけに留めて

天乃「さぁ、そろそろ時間よ。千景」

天乃は手を差し出す

綺麗なドレスに身を包んだ花嫁の手を受け取るのは

本当に自分で良いのかと少し躊躇って――その手を取る

千景「私もタキシードを着たほうが良いかしら」

天乃「着ても良かったのよ? きっと似合ったわ」

天乃の遠慮のない褒め言葉に、千景は「伊予島さんを喜ばせる気はないわ」と、首を振った


946 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/19(水) 02:01:45.935UuP8/OYo (4/5)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


947以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/19(水) 06:08:13.55N1Rv5/ZPO (1/1)


披露宴もじっくり描写していくのもいいね


948 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/19(水) 23:02:50.355UuP8/OYo (5/5)


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から


949以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/19(水) 23:04:20.34a5o45ieKO (1/1)

乙ですー


950 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/20(木) 19:32:53.17P8Hp4tOpo (1/7)


では少しだけ


951 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/20(木) 20:50:49.04P8Hp4tOpo (2/7)


天乃達が式場そして利用したのは、天乃の実家の神社だ

大赦の上層に祖母がいたり、大規模ではないがお祭りを行っていたりと

地域に愛されていると言っていいこの神社には、

披露宴の会場として利用できる建物も併設されている

その大広間と言える扉の前まで来た天乃は、

すでにタキシード組が待っているのが見えて、笑みを浮かべる

天乃「やだ……みんな似合ってるじゃない」

風「天乃も似合ってるわよ。流石ね、やっぱり」

友奈「素敵ですよ。白無垢も似合ってましたけど……ウェディングドレスは格別ですね」

天乃「ありがと、友奈も格好いいわね」

友奈「ふふっ、ありがとうございますっ」

タキシードを着ている友奈は、

白無垢を着ているときよりも大人びて感じさせる雰囲気で

落ち着いているからか、照れていてもまだ余裕は感じられた


952 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/20(木) 21:19:41.71P8Hp4tOpo (3/7)


沙織「白無垢の時よりも可愛くみえるね」

天乃「そうかしら? 綺麗じゃなぁい?」

クルッと回って見せようとしたものの、

流石にウェディングドレスでは出来なくて、両手を広げるだけに止める

沙織は「綺麗だよ」と言ったが、

夏凜は天乃を見て慈しみを感じる笑みを浮かべた

夏凜「正直言っていい?」

天乃「うん」

夏凜「星乃達が試着させて貰ってはしゃいでたのを思い出した」

風「あっ」

天乃「あってなによ……あって、もう……」

どういう意味か分かってはいるのだが、

ちょっぴりむくれてやろうかと思った天乃の隣で、

千景は「そうね」と同意する

千景「厳かさが減った分可愛らしいと思うわ」


953 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/20(木) 22:00:42.24P8Hp4tOpo (4/7)


結婚式でどちらにするかと言えば、ウェディングドレスと言うのが、

千景の時代の基本だったように思うと、千景は懐かしみつつ考える。

当然、あの頃の自分が考える必要もないことだったので

本当にそれに傾いていたのかは定かではないのだが、

知る限りで言えば基本的に教会式で、ウェディングドレスだった。

だから、稀にしか目にしない白無垢は、神前式というイメージも先行して厳かさを感じる

ウェディングドレスも煌びやかで美しいとは思うものの、

天乃の容姿も相極まって、明るくて可愛らしいものに見えてしまう。

瞳「そうですね。久遠さん、お綺麗で可愛らしいですよ」

歌野「キュートだわ。凄く」

天乃「綺麗って言って貰いたいのに、もう」

かわいいと言われるのも嬉しいけれど、

綺麗と言われたいお年頃なのだ

樹「お待たせしました」

東郷「友奈ちゃんっ、天乃さんっ」

園子「待った~?」

遅れてきた三人が綺麗としか言えないのならば、なおのこと。


954 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/20(木) 22:35:25.25P8Hp4tOpo (5/7)


予定の時間よりも少し早く全員そろって

定刻通りに会場入りを行う

結婚式では司会だった瞳が夏凜のエスコートを行うため、

披露宴では司会を九尾が務めることになっている

もちろん、妖狐の姿ではなく人としての姿で。

金色の髪に赤い瞳。

天乃よりは控えめだが、モデル歳て通用する容姿な彼女は

やはり、加齢を感じさせない。

そんな目を引く九尾の司会に続くように、天乃達は入場を開始する

明るい音楽が流れる中で、

ウェディングドレスとタキシード

4人ずつの入場をして、横並びの長いテーブルに向かう

さっそくと言わんばかりに親や友人の端末やカメラでの撮影が始まった


955 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/20(木) 23:03:26.92P8Hp4tOpo (6/7)


「夏凜ちゃ~ん、天乃さんのことお姫様抱っこして~」

夏凜「はっ?」

「やってやって~」

本来の披露宴ならばしないかもしれない。

けれど、今までお世話になった親族や友人

みんなへの感謝も含めたこの披露宴は、自由だ

夏凜「大丈夫?」

天乃「その大丈夫は何の話なのかしら?」

夏凜「少なくとも体重以外の話」

子供を妊娠しているときは別だが

天乃は基本的に体重の変化がない

全盛期ほどの身体つきに戻すことは出来るが、それ以上にはなれないからだ。

天乃「じゃぁ、どうぞ。私を抱いてくださいな」

夏凜「ったく……酔ってる?」

天乃「お酒は飲めないわ」

夏凜は「そうだけど」と、周りの視線から逃れるように目を背けて

両手を広げる天乃に一歩近づく

肩に手をあてがうと、天乃も少しだけ腰を落として、

膝の裏側からもう一方の腕を近づけて、スカートを押し込んで膝裏を押さえる

夏凜「行くわよ」

天乃の背中側、真っ先に体重がかかる右足を軸にして天乃の体を横倒しにして

足を一気に持ち上げて天乃の体をぐっと持ち上げる

周りの楽しそうな声と、鳴りやまない撮影の音に

天乃と夏凜は困ったように顔を見合わせた


956 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/20(木) 23:13:51.96P8Hp4tOpo (7/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


ウェディングドレス→タキシード→紋付袴
それぞれで夏凜達との交流
それで終わりの予定になります。


957以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/20(木) 23:26:51.37N48w0qmsO (1/1)


久遠さん今までで一番幸せそう…
三周目は長いことやってただけに終わりは寂しくなるな


958以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/21(金) 00:15:10.48QChSJX+xO (1/1)


もうすぐ終わりか…
148cmで23歳で経産婦とかいうおに盛り設定


959以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/21(金) 01:29:28.10HkzY2pY1O (1/1)


終わるのも寂しいが幸せそうでよかった


960 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/22(土) 00:24:04.46PVefUbmyo (1/4)


すみませんが本日は所用のためお休みとなります
明日は可能であれば通常時間から


961以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/22(土) 06:55:01.01YtQKraLlO (1/1)




962 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/22(土) 21:45:51.21PVefUbmyo (2/4)

遅くなりましたが、少しだけ


963以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/22(土) 22:07:30.51eONnDxzzO (1/1)

よしきた


964 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/22(土) 22:26:53.20PVefUbmyo (3/4)


夏凜「もう降ろすわよ」

「え~っ」

夏凜「え~じゃないの。ケーキも来るんだから」

天乃「ゆっくり降ろしてね」

夏凜「任せなさい」

お姫様抱っこをするのはこれが初めてではない。

抱き上げるのも降ろすのも手慣れたものだ

天乃「友奈達も大変ね」

天乃と夏凜がさせられていたように、

友奈は東郷を

風は樹を

そして沙織は園子をお姫様抱っこさせられていて、

夏凜はそれを横目に天乃を降ろして、ドレスの皺を少しだけ伸ばす

夏凜「身体平気?」

天乃「ええ、流石の抱かれ心地だったわ」

夏凜「そ。ならよかった」


965 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/22(土) 23:08:59.15PVefUbmyo (4/4)


天乃「重くなかったでしょ?」

夏凜「軽くて驚いたくらい」

天乃「いつも抱いてくれてるくせに」

重くなった天乃のことも、

軽くなった天乃のことも

夏凜は変わらず抱いてくれているから、驚くなんてありえない。

ただ、ウェディングドレスを含んでも軽いという点には、

やっぱり、思うところはあるだろうか

天乃「もう少し、重い女が良いかしら?」

夏凜「精神的に重いのは勘弁して頂戴」

天乃「ふふふっ」

言葉の意図を読んだうえで断った夏凜に天乃は笑みを浮かべて、

あなた次第だわ。と、委ねておく。

もちろん、天乃はそんな気なんて毛頭ないけれど。


966 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/23(日) 00:56:26.60CbdfwSRUo (1/10)


天乃「ケーキ入刀、楽しみね」

夏凜「でっかいの突っ込むかじゃないでしょうね……」

天乃「ふふっ、それは気分次第だわ」

夏凜「私も出来るってこと、忘れないでよ?」

ニヤリと笑う夏凜だけれど、

天乃はドレスで夏凜はタキシード

どっちが無茶をさせられるかと言えば、

間違いなく夏凜の方である

いや、

衣装がどうであろうと関係ないかもしれない

夏凜「まぁ、天乃が私の後に6回あるって考えると軽めにするべきよね」

天乃「あら、ありがと」

夏凜「だから私にも優しくしてくれると嬉しいんだけど」

天乃「そうねぇ……私の気持ちくらいの大きさにしてあげる」

夏凜「あぁもう。好きにしていいわよ」

困ったように頬を染めた夏凜に、

天乃は柔らかく微笑んだ


967 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/23(日) 00:57:08.92CbdfwSRUo (2/10)


遅くなりましたがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから


968以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/23(日) 01:20:08.70AoEkOgMYO (1/1)


エロォい!!


969以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/23(日) 06:51:33.12CaNctS8CO (1/1)


夏凜から別の意味のケーキ入刀なんて台詞が出てくるとは…
その場面是非見てみたいですハイ


970 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/23(日) 17:10:06.97CbdfwSRUo (3/10)


遅くなりましたが、少しずつ


971以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/23(日) 18:02:51.87YmXCWl2lO (1/2)

きてたか


972 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/23(日) 18:16:34.11CbdfwSRUo (4/10)


天乃達のもとに運ばれてきたウェディングケーキ

四角い、開かれた本の形をしているケーキ

天乃はせっかくなら煮干しの形も面白いんじゃない? と言ったけれど

夏凜に一蹴され、本の形に落ち着いた

縁を囲むクリームとフルーツ

中央は薄いクッキーの板

チョコレートで文字を書かれており、二人分の名前が書けるようになっている

実際目にしてみれば、とても可愛らしい形だ

天乃「あら、私達の名前が書けるのね」

夏凜「そう言うことも出来るっていうから、選んだのよ」

天乃「夏凜ったら、ロマンチックな子なんだから」

夏凜「なによ。ダメ?」

天乃「ううん、可愛いわ」


973 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/23(日) 18:40:49.49CbdfwSRUo (5/10)


天乃よりもロマンチックな考え方をする夏凜は、

それがなくともだけれど、天乃にとって可愛い人だ

もちろん、可愛いだけでなく

格好いい時も綺麗な時もあるけれど。

天乃「名前どっちに書きたい?」

夏凜「ん?」

天乃「チョコレートよチョコレート。私、字には自信があるわ」

夏凜「楽しんでるじゃないの……」

天乃「ふふっ、実は子供達の為にキャラ弁の勉強してるのよ」

夏凜「それは知ってる」

雑誌を買っていることも

それを参考に実際に作っていることも

夏凜「手作りケーキでお祝いだってしたわけだし――って、ちょっと!」

天乃「遅いから書いちゃった」

夏凜「自由なんだからっ」

上下に並んでいる名前を書く空欄

上に自分の名前を書いた天乃は、笑顔でチョコレートのペンを差し出す


974 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/23(日) 20:13:42.54CbdfwSRUo (6/10)


天乃「上の方が良かった?」

夏凜「それはどっちでもいいけど」

天乃「私の上に重ねて書いても良いのよ?」

夏凜「何言ってんのよ」

まぁそうよね。と、天乃は笑いながら身を引いて、

ペンを握る夏凜の手をじっと見つめる

夏凜も料理をするにはするが、

デコレーションとして文字を書いたことは一度もない。

自作のケーキだって、

その辺りは東郷か風そして天乃の役割だ

天乃「ふーってしていい?」

夏凜「やったらケーキの5割を突っ込んでやるからね」

ちょっぴり緊張で震える手

一本一本の線が綺麗に書かれている天乃に比べると

少し、歪んでいたり乱れてしまっている夏凜の字は下手に見えてしまう

けれど、それも思い出になる


975 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/23(日) 21:17:22.42CbdfwSRUo (7/10)


天乃「今度一緒にデコレーションの練習する?」

夏凜「……少し教えて」

天乃「はーい」

夏凜の赤らんだ頬に苦笑しながら、

天乃はケーキの横に置かれたケーキナイフを手に取る

右手で持ち、夏凜の方に持ち手を差し出すと、

夏凜は左手で天乃の手を包むようにナイフを掴む

九尾「こほんっ」

九尾のようやくか、と言いたげな咳払いがマイクから聞こえて

ケーキ入刀……と、声がかかる

夏凜「良い?」

天乃「大丈夫よ」

二人で揃って、ケーキにナイフを入れていく

中央で割れているクッキー生地の間、

そこを通してホイップクリームとスポンジ、

中に隠れたイチゴを断って、ナイフを引く


976 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/23(日) 22:21:16.28CbdfwSRUo (8/10)


乱れることなくきれいにカットできたケーキを一瞥して、

傍らに置いてあった、大きな煮干しの形をしたものを手に取る

夏凜「諦めなかったのね」

天乃「もちろんよ」

煮干し型のケーキは諦めたけれど、

ならばスプーンの代用は煮干しっぽいもので

そう企んだ天乃の用意した煮干しっぽいバターナイフ

縁はスプーンのように丸まっている安心仕様

「でっかくいこ~っ!」

「やっちゃえあまの~ん」

夏凜「他人事だと思って……」

天乃「私の気持ち、どのくらいがお好みかしら?」


977 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/23(日) 23:16:43.20CbdfwSRUo (9/10)


さっき、夏凜は好きにして良いと言ったけれど

ならば、どのくらいの気持ちが良いのかと、天乃は聞いてみる

ケーキの量で気持ちが量れるわけではない

天乃としては、このケーキ一つでは物足りないほどだ

天乃「みんなは夏凜の顔がケーキで汚れるのを期待してるみたいだけど」

夏凜「じゃぁ……すくいあげられるだけ、全部」

天乃「このにぼスプーンはすっごいのよ」

夏凜「スプーンなの? それ」

クッキーの薄い生地をパキっと割って、

ケーキの上から煮干しの頭を差し入れる

尻尾の部分を摘まんで、頭がお皿に触れるまで押し込む

すくいあげた煮干し型のナイフの上には

スライスされたイチゴを含むクリームを間に挟んだ二段のスポンジ

上部にはクリームとイチゴやベリーなどのフルーツが乗せられていて

一口で食べることを難しくするクッキーが乗っている。

天乃「はい、あ~んっ」

夏凜「ぐ……」

にこやかな笑み

危なげなくケーキを差し出してくる小さな手

それはいいけれど、みんなに見られているというのが恥ずかしくて、

夏凜は思わず躊躇ってしまう


978 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/23(日) 23:22:47.47CbdfwSRUo (10/10)


では短いですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から


979以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/23(日) 23:33:25.35YmXCWl2lO (2/2)


なんというあまにぼによる甘甘展開だ…


980以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/23(日) 23:48:35.091fd9BX43O (1/1)


久遠さんが幸せそうでなにより
新婚みたいないちゃつき具合だけど7年同棲してるのよねこの子達


981 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/24(月) 20:29:23.853ehgIUwho (1/6)


では少しだけ


982以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/24(月) 20:37:52.006Dmq4xDIO (1/2)

かもーん


983 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/24(月) 21:57:09.123ehgIUwho (2/6)


天乃「ほら、零れちゃうから」

夏凜「っ……」

二人きり

あるいは、友奈達なら見られても仕方がないから簡単にできる

けれど、それ以外の人たちから注目されているというのが

夏凜の羞恥心を強く揺さぶる

天乃は平気なのだろうかと、目を向けるが

天乃はまったく気にしていないといった様子で

煮干しの上から落ちてしまいそうなケーキのことを気にしている

天乃「あ~んっ」

夏凜「っ……あぁもうっ」

逃げられない

そもそも逃げられることではない

ならばもう勢いだと、夏凜は大きく口を開けて、

天乃の差し出しているケーキへと突っ込んでいく


984 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/24(月) 22:41:31.823ehgIUwho (3/6)


両頬、顎の部分

さらには鼻にまでべっとりとクリームをつけて

夏凜は咥えこんだ煮干しを唇で挟んで――にゅるりと抜き出す

夏凜「っ」

口の中一杯のケーキ

話すことなんて当然できなくて、頬をもふもふと動かしている

動画を取っている人

連写で撮影している人

色んな音が入り混じって賑やかになっていく

夏凜はそれが恥ずかしいようで顔を背けようとしたが

天乃はそれを許さない

天乃「ダメよ、夏凜」

夏凜「ん……」

天乃「背けちゃダメ」


985 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/24(月) 23:10:39.773ehgIUwho (4/6)


本来の披露宴でして良いことなのか分からないけれど、

これはそんな格式ばったものではない

なにより、みんなが少し面白いものを期待している

せっかくの披露宴だ

長年待ち続けたようやくの結婚式を終えて、

正しく誓い合った仲になった

だから――と、天乃は夏凜の両手首を掴んで、下に引く

天乃「屈んで」

夏凜「………」

本当なら、布巾で拭ってげるべき

でも、それだけじゃ物足りない

あとが大変になるとは思う。

でもそれでもいい

少し頑張れば届くほどの高さにまで屈んだ夏凜の頬にキスをする


986 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/24(月) 23:21:33.103ehgIUwho (5/6)


クリームの盛り付けられた、甘い頬

自分の口元が汚れるのも厭わずに天乃は口づけをして

ぺろりと、クリームを舐めとる

夏凜は分かっていただろうけれど、ビクンっと震えて

ざわめき立つ周囲からは、端末を取りこぼしたような音さえも聞こえてくる中で

天乃はほんの少し上げていたかかとを下げる

天乃「ふふっ、甘いわね」

夏凜「っ……」

天乃「美味しい」

嬉しそうにそう言った天乃は

用意されていた布巾を手に取って夏凜の口元と頬、鼻先を拭ってから

本当は拭いて欲しいけど。と、呟きつつも自分の口元を拭う

天乃「ちゃんと食べてからじゃないと、喋ったらだめよ?」

夏凜「ん……」

顔の赤い夏凜は何も言えずに顔を背けてしまったけれど

天乃は止めずに、撮影するみんなに向けて「夏凜は可愛いでしょ?」と、笑顔を見せた


987 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/24(月) 23:23:27.843ehgIUwho (6/6)

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


988以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/24(月) 23:28:41.786Dmq4xDIO (2/2)


このシチュエーション、そのっちが物凄くハッスルして見てそう


989 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/25(火) 21:27:14.185BanpIeGo (1/4)


では少しだけ


990以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/25(火) 21:29:25.49D6GV/BN7O (1/1)

よっしゃ


991 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/25(火) 21:47:30.815BanpIeGo (2/4)


夏凜の愛らしさを堪能した天乃は、すぐ隣に並んでいた友奈へと近づく

夏凜とのやり取りを見ていたからだろう

顔の赤い友奈は自分の唇に指をあてて、少しだけ後退りする

キスをされること自体は嫌ではない

むしろされたいと思う

けれど、夏凜の反応を見てしまっては……気後れしてしまう

天乃「あら、友奈もして欲しいの?」

友奈「ふぇ……ぇ……ぁ、そのっ」

天乃「タキシードが似合う、可愛い女の子ね」

友奈「っ」

離れかけた友奈は踏みとどまったものの

天乃はそのまま近づいて、友奈の手を取る

お嫁さんの尻に敷かれる旦那を思わせるような流れだが

そんなことよりも――と、見ている人たちは動画を撮っていた

なにせ、普段は生き生きとした明るさで男顔負けな友奈がたじたじなのだから、貴重だ


992 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/25(火) 22:21:59.415BanpIeGo (3/4)


天乃「かわいい女の子には、無理はさせられないわね」

友奈とのケーキは、

パイ生地を土台にしたもので

ストロベリーやパイン、キウイなどの果汁を使ったクリームと

普通の生クリームを用いてデコレーションし、

花をモチーフにカットされた果物をあしらったものだ

スポンジのような柔らかさがない分、

夏凜と同程度では友奈の口に入ることさえないだろう

天乃「私の手を握るのと、私に握られるの……どっちがいい?」

友奈「えっ」

天乃「ケーキ、切らなきゃ」

手を引いて友奈を近づかせると

天乃はケーキの横に置かれていたナイフに右手で触れる

天乃「今は、その時間だもの」

友奈「そ、それは分かってますけど……その、ち、近いですっ」

天乃「大丈夫よ、キスはしないから。ね?」


993 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/25(火) 23:42:30.645BanpIeGo (4/4)


右手でナイフを握って、

左手は友奈の腰に――なんて考えもしたけれど

友奈の精神が限界に来るだろうからと、天乃は断念する

天乃「どうする? 私の好きにさせてくれるのかしら?」

友奈「わ、私の手を握ってください」

天乃「はい」

ナイフから天乃が手を離し、友奈が手に取る

その手を天乃は包むようにして握ってあげると

友奈はピクリと体を跳ねさせて、天乃を見つめた

天乃「なぁに?」

友奈「擦ったりしないでくださいね?」

天乃「言われるとしたくなっちゃうのに」

困っちゃうわ。と、

わざとらしい天乃に友奈は困ったように眉を曲げて笑う

友奈「困っちゃうのは私です」


994 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/26(水) 00:21:11.92mougWsVSo (1/3)


天乃「その方が可愛いかしら?」

友奈「可愛くないですっ」

かわいいのに。と、

天乃は心の中で思いながら、

友奈の導くような手の動きに従ってナイフをケーキへと下ろす。

夏凜のケーキよりも大きめで形のあるフルーツが多く

それを避けると花の形になっている可愛らしいフルーツを切らなければいけなくて

クリームを押しつぶして形が崩れてしまうのを諦め、ナイフを通していく

友奈「どうしたら――」

天乃「少し力を抜いて、私に合わせて」

パイ生地が崩れてしまわないかと心配する友奈に、天乃は優しく囁く

ここまで上部にたっぷり盛りつけられている状態は初めてだが、

パイ生地は押し切ってしまうのが基本だ

そう入れた力に、友奈の力が加わって思ったよりも簡単に下まで切ることが来た


995 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/26(水) 00:21:56.54mougWsVSo (2/3)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


996以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/26(水) 02:25:59.26JmXWiggBO (1/1)


友奈かわええ


997 ◆QhFDI08WfRWv2020/08/26(水) 22:04:41.39mougWsVSo (3/3)


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から

次スレは明日


998以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2020/08/27(木) 06:04:01.29U0gJ4IT/O (1/1)