1 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 01:56:48.84jqaVaMJF0 (1/5)

ある日の事。


時子「お館様、起きて下さい。朝ですよ」


ふうま「まだ眠いよ時子……今日は日曜日じゃないか……ずっと寝てたい」


時子「甘えても駄目です。今日はライブラリーと訓練する日でしょう」


ふうま「んー……そうだった」


モミ……


時子「あ、お…お館様ったら……!」


ふうま「……しり?」


時子「もう!寝ぼけてないで起きなさい!!」


ふうま「うげっ……わかったよ」


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2 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 09:00:18.04rlZQqUNS0 (1/9)

目を覚ました俺はとりあえず顔を洗ってうがいをすると、時子の作ったホカホカの朝食を平らげた。


ふうま「ごちそーさまでした。美味かったなぁ」


時子「お粗末様でした。お館様、食後はちゃんと歯磨きする。寝癖は直す。靴下は逆に履かない!同級生に笑われますよ」


早口で喋りながらテキパキと仕事をこなしていく時子。

少々荒っぽいが、動作の一つ一つに真心を感じるので気分はいいのだ。


ふうま「わかってるわかってる……んー」


時子「これで大丈夫です」


ふうま「ありがとな、時子」


時子「はい、いってらっしゃいませ」


俺はライブラリーの待つ訓練場へ向かうのだった。今日は何を教えてくれるのか、楽しみだ。


3 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 09:01:59.98rlZQqUNS0 (2/9)

ふうま「遅いな、ライブラリー……ん?ライブラリーからメールだ」


今朝から稽古をつけてもらうはずが、

急遽用事が出来たとライブラリーから連絡がきて、お流れとなってしまった。


ふうま「マジか……」


ハードな内容ながらライブラリーとの稽古は本当に楽しい。

日々、自分が強くなっていくのを確かに実感できるからだ。


今日こそはライブラリーから一本取ろうと気合を入れていただけに残念だ。

ライブラリー早く帰ってこないかな。


4 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 09:13:35.39rlZQqUNS0 (3/9)

ふうま「ヒマだな……」


こんな時はこの手に限る。


ふうま「おーい、さくら。いるんだろ?出てこいよ」


いつも俺の影に潜んでいる陽気な居候を呼んでみたが、出てくる気配がない。


ふうま『いないのか……いつもは何も言わずついてくるのに。さては今頃[SHADOW SOUL 3]でもやってやがるな』


訓練場で胡座かいていたその時、背後に人の気配を感じた。

一切音を立てず、ゆっくりと忍び寄ってくる。

敵意も殺意も感じない。が、来た……!


ふうま「はっ!」


パシィッ……!


天音「ふふ……若、お見事です」


ふうま「天音か、何故ここにいる」


天音「私は若の執事です。若のスケジュールは全て把握しております」


5 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 11:29:29.46rlZQqUNS0 (4/9)

ふうま天音。

時子と同じく俺の執事だが、いまいち俺に対する敬意が足りない困った執事だ。

すぐ子供扱いしてくる(時子もだが)


天音「さて、手刀を受け止めた後はどうなさいますか?」


馬鹿にしやがって、見くびるなよ天音。

俺だって何時までも単なる目抜けじゃないぞ。

ライブラリー直伝の一本背負いをくれてやるぜ。


6以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/12/31(火) 11:43:35.14gW/HqMMh0 (1/1)

対魔忍のssが投稿される時代か…


7 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 11:59:20.33rlZQqUNS0 (5/9)

ふうま「こうする」


天音「なるほど」


フワッ……!


天音「若、肩をお借り致します」


パシィ!タンッ……


ふうま「…」


天音「惜しかったですね」


ふうま「それは……どうかな!」


8 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 12:31:28.81rlZQqUNS0 (6/9)

天音は自由な方の腕で俺の肩に手を添え、逆立ちをするように技を外しにかかる。


そう来るのは分かっていた。

どうせ華麗に俺の技を捌いて説教を垂れるつもりだったんだろう。


俺はあえてスキを晒し、そこに漬け込んで来たスキに天音の髪の毛を掴んでやった。


当然ながら戦場ではあらゆる物を利用する。ライブラリーの教えだ。


女の髪の毛を掴むのは少し気が引けるが、容赦せん!


天音「?……あ、若!髪はズルいです!!」


ふうま「うるせー!舌噛むぞ!!黙って投げられてろ!!!」


天音「あぁ!?」


9 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 12:35:25.26rlZQqUNS0 (7/9)

ふうま「とった!」


天音「なんの……!まだまだ!!」


ジタバタ!


ふうま「わっ!?馬鹿、無茶するな!おわぁー!」


天音「負けませんよ……!」


揉み合いになりながら、2人揃って派手にすっ転んだ。


ふうま「いってぇ……この負けず嫌いが……」


天音「若、お怪我はございませ……ん……か」


どうやら天音は倒れる直前、俺の下敷きになったようだ。


それでいて技の威力は完全に殺し、自らの安全も確保している。


見事な技だ。


10 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 12:43:00.91rlZQqUNS0 (8/9)

ふうま「…」


天音「…」


2秒程度だろうか、俺と天音は無言で見つめ合っていた。


ムニムニ……


柔らかい。そしてでかい。

執事服の上からでも、ムッチリとしたハリのある弾力を感じる。


俺の右腕は天音の頬に添えられ、左腕は胸を鷲掴みにしていた。


無意識だった。この時反射的に腕が動いた。


そう言えば、ほっぺとおっぱいは同じ柔らかさらしいなぁ……


服が無ければもっと細かく解りそうだ。


天音「若、ご無事なようですね。そろそろ離れて下さいませんか……?このままでは立てません」


生意気だが、やはりいい身体をしている……


名残り惜しいものの、いつぞやのように邪眼を使われたらかなわない。もう金縛りはごめんだ。


ふうま「すまんな、事故だ」


俺は何事も無かったように立ち上がって見せる。


11 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 13:07:55.24rlZQqUNS0 (9/9)

天音「強くなりましたね」


ふうま「ライブラリーの指導が良いんだよ」


天音「……おのれライブラリー」


ふうま「何?」


天音「いえ、何も。若、訓練でしたら私が見て差し上げましょう」


ふうま「えぇー……天音がぁ?」


天音「不服ですか?」


ふうま「別に……」


天音「ライブラリーの指導などより、さらに強くなれますよ」


ふうま「遠慮しておこう」


天音「……何故です」


ふうま「だってまた小言言われんのヤだし。ライブラリーはネチネチ小言なんて言わないしなぁ」


12 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 16:54:57.16jqaVaMJF0 (2/5)

天音「つまり、私よりもライブラリーの方が良いと?」


ふうま「訓練ならな」


天音「おのれぇ……ライブラリー」


なんだか天音の表情がキツくなって来た。逃げよう。


ふうま「じゃあな天音。この後、災禍と約束してるから」


天音「災禍と!?若、それは何の約束ですか!!」


ふうま「約束は約束だよ。訓練場の掃除しといてくれよ。命令だ」


天音「承服しかねます。災禍は只の荷物番です。空腹でしたら私が食事を……」


ふうま「そういう人を見下した言動が感に触るんだぞ。掃除頼んだからな、天音」


天音「くぬっ……御意」


13 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 22:48:40.14jqaVaMJF0 (3/5)

災禍との約束は口から出まかせだったが特に行く所も無いので、


そのまま災禍の住んでいる離れに顔を出してみる。


ふうま「ん?鼻歌……??」


庭の方から聞こえてくる。


災禍「♪」


災禍だ。鼻歌を歌いながら、縁側で編み物をしている。


いつもの扇情的な対魔忍スーツに家庭的な編み物と言うのがまたアンバランスである。


手編みのセーターだろうか。上手いものだ。


……編み物をしている災禍を見ていたら、急にイタズラ心がふつふつと湧き上がってきた。


裏口から回り込み……抜き足、差し足、忍び足……


14 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 22:53:36.63jqaVaMJF0 (4/5)

ふうま「だーれだ」


定番のイタズラだ。特に嫌がる様子もなく、災禍は笑っているようだった。


災禍「まぁ、誰でしょう」


ふうま「ヒントは災禍の大事な人」


災禍「命より、大事な人ですよ。若様」


ふうま「バレたか」


災禍「若様ならば足音だけでも解ります。今日はどうなさいました?また時子に叱られたのですか?」


ふうま「違うよ。今日はライブラリーと訓練する日だったんだけど、ライブラリーに急用が出来たみたいでさ。お流れになっちゃったんだよ」


災禍「なるほど、稽古の相手をお探しですか?」


ふうま「いや、災禍に会いたかっただけ」


15 ◆AvmY.MI1o.2019/12/31(火) 22:57:04.22jqaVaMJF0 (5/5)

災禍「!……そうですか。ふふふ、おだててもお小遣いはあげませんからね。お金は与えないよう時子に厳しく言われていますから」


ふうま「小遣いはいいから、まったりさせてくれ」


災禍「御意……どうぞ、若様」


災禍は肉付きの良い太ももをポンポンし始めた。


なんてことを……こんなことをされたら、もう寝ないわけにはいかない。


ふうま「あー……落ち着く」


災禍「ごゆっくり」


編み物を中断した災禍は、俺の頭にそっと手を置くと一定のリズムで優しく撫でてくれた。


不思議だ。時子や天音に子供扱いされた時は少しだけ腹が立つが、


こうして災禍に甘やかされるのは嫌ではない。むしろ好きだ。


子供扱いにも種類があるのだろうか。


……俺が身勝手なだけか。


思案している内に、俺はたちまち睡魔に襲われた。


16 ◆AvmY.MI1o.2020/01/02(木) 03:27:34.59QmHR92Az0 (1/1)

天音「……と言う訳だ。若の為を思うなら、お前は身を引け」


時子「…」


災禍「ねーんねーんころりよー…」


ふうま「すー……」


天音「今すぐ私と代わるんだ。今日から私が屋敷に住み込み、若のお世話をする。お前は離れで暮らせ」


時子「何度も断って来たはず。私の気持ちは変わらないわ」


天音「お前では力不足だと言っているのだ。私こそ若の執事にふさわしい」


時子「お館様を守るのは私の使命だ。誰にも譲るつもりはない」


天音「私も今まで我慢に我慢を重ねてきたが、もう今日と言う今日は我慢できんぞ」


災禍「天音……若様を想う気持ちはよく解る。それは私も時子も同じだ。しかし、突然執事を替えてしまっては、若様を心配させてしまう。今まで通りで良いだろう」


天音「良くない。兎にも角にも、お前たちは甘過ぎる。災禍、お前は若の頼み事を嫌とは言えないだろう。そして、それを知りながらいつも見逃していたな、時子」


時子「…」


災禍「…」


天音「私が知らないとでも思ったか?そんなことでは、若は立派な当主には成れん。若には私が必要なのだ」


17 ◆AvmY.MI1o.2020/01/03(金) 02:29:10.001l/t7dRZ0 (1/1)

ふうま「…」


いつしか俺は目を覚ましていた。が、未だたぬき寝入りを続けている。


ふうま『起きるタイミング逃した……』


目は覚めていたのだが、何やらお目付け役3人が集まって面倒な事を話している。


……どうやって脱出する?


というか人の家の(災禍の家)の庭先で喧嘩してんじゃねぇよお前ら。


どうやら天音は時子と交代したいらしい。


冗談じゃないぞ。


時子でも十分厳しいのに、更に厳しい天音が側にいるなんて息が詰まる。