432 ◆YySYGxxFkU2019/11/02(土) 01:57:58.884SYDSyxP0 (11/12)






姫「はい。魔神も元は偶然固有スキル『囁き』を授かった人間の女の子なんです」








433 ◆YySYGxxFkU2019/11/02(土) 01:58:41.184SYDSyxP0 (12/12)

続く。
状況説明のためスローペースなスタート。

書き溜め尽きるまでは隔日更新で進行します。


434以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/02(土) 02:52:42.79uVJ2FHST0 (1/1)




435以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/02(土) 04:36:08.87QuCGoejZO (1/1)

乙!
待ってました!!


436以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/02(土) 06:54:22.67gtWKCaYqo (1/1)

乙ー


437 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:12:21.85BIBN/nXW0 (1/13)

乙、ありがとうございます。

投下します。


438 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:13:13.81BIBN/nXW0 (2/13)


女(魔神が女の子である)

女(衝撃的な情報ではあるが、各自どうにか飲み込むことは出来たようだ)



姉御「まあ女神様も人間ってくらいだからねえ」

姉御「それは分かったけど、疑問はまだまだある。話を続けてもらえるかい?」

姫「もちろんです」





姫「その女の子が授かった固有スキル『囁き』」

姫「その効果の全貌は不明ですが、明らかになっているものでいうと他人の秘めていた欲望を解放させて、それに従って生きるように唆すことが出来たそうです」



姉御「欲望に従って……つまり精神攻撃の類でいいのかい。そんなんで世界を滅亡させることなんて出来るかね」

姫「簡単ですよ。人間、誰だって欲望を理性で押し込めて生活しているんです」

姫「個々人がそれぞれの欲望だけに従って生きたら、社会は立ち行きません」

姫「直接破壊するよりもよっぽど簡単に世界を滅亡させることが出来ます」




439 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:13:43.07BIBN/nXW0 (3/13)


女(姫さんの話はなるほどだ)

女(例えば何かを食べたいという欲があったとして。その欲を手っ取り早く満たそうとしたら、それを持っている人から奪えばいい)

女(しかし人の物を奪うのは良くないという理性があるから、お金を出してそれを買う。そういう風に社会は出来ている)

女(誰かが憎い。だから殺す。そんなことが横行する社会に未来はない)



女(男君の『今の俺はいつも以上に俺だ』という言葉もなるほどだ)

女(自分の欲望に従って行動する、それはある意味一番素に近い状態だから)




440 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:14:29.54BIBN/nXW0 (4/13)


姫「さてそんな『囁き』のスキルを持った女の子ですが、幼き彼女にスキルの制御は出来ませんでした」

姫「周囲の人間に見境無くスキルをかけてしまう状態だったようで……」



姫「最初の犠牲者は女の子の父親でした」

姫「『囁き』を受けた母親が日頃の不満から来る仄暗い欲望を解放させて父親を刺したんです」

姫「次の犠牲者はその母親でした。父親を刺してしまった自己嫌悪をスキルが肥大させて自殺したようです」



姫「不幸中の幸いであるか災いであるかは判断が付きかねますが、幼き女の子には自分がしでかした事の大きさを理解する力も、善悪を判断する知性もまだ備わっていませんでした」



姫「そのため、二人を心配して様子を見に来た村人たちにも『囁き』はかかってしまい、悲劇は連鎖的に広がっていって……最終的にその村は女の子一人残して全滅しました」






441 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:15:21.90BIBN/nXW0 (5/13)


姫「もちろんその時点で時の世の中も対処に動き出しました」

姫「大規模な被害を把握していて、その女の子をどうにか確保する算段は付いていたとも言われています」



姫「そういう意味では姉御さんの言ったとおり『囁き』だけでは世界を滅亡させるのは難しいというのも当たっていますね」

姫「しかし、ここで人類にとって最悪の出会いが起きました」

姫「女の子と魔族の集団が出会ってしまったんです」



姫「魔族は別世界の住人です」

姫「それがどうしてこの世界にいたのか……書物には推測として誰かが呼び出してしまったのだと書かれていましたが、真偽は不明です」



姫「その出会いによって魔族にも『囁き』がかかってしまい、その破壊衝動を思う存分に振るい世界が滅亡するか………………」

姫「といった直前、女神様とその仲間たちが立ち上がり魔神を封印した」



姫「これが太古の昔に起きた『災い』の全貌だそうです」




442 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:16:05.41BIBN/nXW0 (6/13)


女(『囁き』。欲望を解放するスキルを持った女の子を中心とした悲劇が語り終えられる)

女(そう考えると魔族も巻き込まれた側ではあるのだろう)

女(欲望を持っていたことだけで罪になるわけではない)



女(しかし疑問が残る。私たちが出会った復活派の魔族。彼女が言っていた言葉)



魔族『魔族の悲願は一つ。太古の昔、封印された魔神を復活させてこの世界を滅ぼすことだ』



女(そのような大層な使命感はどうにもちぐはぐに思えてくるんだけど……)




443 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:16:35.02BIBN/nXW0 (7/13)


秘書「大昔の出来事は分かりました。現代の話に戻りましょう」

秘書「話によると男さんに『囁き』がかかっていたということですが、しかし魔神は封印されているはずでしょう?」

秘書「ならば不可能ではないですか?」



姫「これは私の推測ですが、学術都市で女さんたちは宝玉を提供して研究に手伝ったそうですね」

姫「つまり集まれば集まるほど力を増す宝玉を長期間一カ所に留めてしまった」

姫「そのせいで周囲が他の世界と繋がりやすい状態になっていたのかもしれません」



姫「そして女神様の『魅了』と魔神の『囁き』は表裏一体のような存在です」

姫「愛を広める前者と欲を広める後者で」

姫「魔神と女神様は何度も戦場で相見えたそうです……そのときにスキル同士に繋がりが生じたのでしょう」




444 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:17:02.94BIBN/nXW0 (8/13)


秘書「スキル同士に繋がり……そのようなことがあるんですか? 聞いたこともありませんが」



姫「ですから推測です。そもそも固有スキルは絶対数が少ないせいで不明なところも多く、女神様自身にも分からないところがあるとは書物に書かれていました」

姫「それでスキル同士の繋がりを起点に魔神は別の世界から男さんに語りかけて『囁き』のスキルをかけた」

姫「女さんが聞いたという男さんの独り言ももしかしたら魔神に対する応答だったのかもしれませんね」



女(言われてみると男君の独り言は誰かと話している……そんな感じだったようにも思える)

女(話をまとめると魔神は封印されたまま男君にスキルをかけることが可能だったというわけだ)



姫「『囁き』と魔神についての話はもう大丈夫でしょう。次は……」

秘書「私から話してもいいでしょうか」

姫「どうぞ」



秘書「話というのはこの一週間について。私はちょうど王国支部の方に視察の形で出向いていたんです」

姫「ということは……男さんがどのように王国を転覆させたのか見てきたんですか?」

秘書「ええ、その通りです」




445 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:18:41.40BIBN/nXW0 (9/13)


秘書「商会というところは様々な情報が入ります。最初はちょっとした違和感でした」

秘書「いつも時間通りに来る人が来ないだったり、兵舎が騒がしい、武器の発注が多いなど」



秘書「それでも平穏は保っていて……しかしある朝方突然鳴り響いた爆発音に私は飛び起きました」

秘書「報告を受けるとどうやら王都内で兵士同士が戦っているようだと」



秘書「これは後の調査で分かったのですが、男さんは最初王国内で暗躍していたようです」

秘書「魅了スキルを使い軍の下の方から支配を出来るだけ広げていった」

秘書「女性兵士には問答無用、男性兵士には賄賂なりなんなりで寝返らせていく」



秘書「ですがあるラインからは国への忠誠心が高くなって工作が効かなくなった。だから直接の武力で打って出たと」



秘書「結果、王都で起きた内戦は凄まじいものとなりました」

秘書「流れ弾が罪もない民を襲い……万は下らない数の民を男さんは間接的に殺したと思います」



秘書「内戦は終始男さん側が優勢でした」

秘書「勢いのまま王都にある王城に雪崩れ込み、王とその臣下を虐殺して……こうして王都内乱は終結したようです」




446 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:19:28.60BIBN/nXW0 (10/13)






女「………………」

女(語られた男君の所行に私は……)





姉御「話だけ聞くとよほどの大悪党だねえ。魔王と呼ばれるのも分かるというか」

気弱「姉御!!」

姉御「あっ……わ、悪い……」



女(気弱君が姉御の名前を呼ぶとハッとなって謝った)

女(二人は私が男君のことを好きだと知っている)

女(好きな人のことを悪く言われて、私が良くない想いをしないように配慮したのだろう)




447 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:20:08.27BIBN/nXW0 (11/13)


女「ありがと。でも、大丈夫だから」

姉御「いや、でも……ほら、あれだ! 今の男は『囁き』のせいでおかしくなっているだけだし!」



女「違うよ。『囁き』はその人の本来の欲望を解放する」

女「今の男君はいつもと違うけど、おかしくなっているわけじゃない」



姉御「それは……」

女(姉御が二の句を継げなくなる。代わりに気弱君が質問する)



気弱「女さん。思えば話し合いが始まってから、ずっと違和感がありました」

気弱「男さんが魔王になって、離ればなれになって」

気弱「なのに今の女さんは落ち着きすぎている……と、僕は思うんです」

気弱「男さんとの間に何かあったんですか? 今の女さんは何を思って行動しているんですか?」



女「………………」

女(気弱君の質問は核心を突くものだった。本当に聡い子である)

女(気付けば私に注目が集まっている)

女(あまり本題に関係ないと思って黙っていたけど……こうなったら話すしかないだろう)




448 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:20:38.99BIBN/nXW0 (12/13)






女「そうだね、これはまだ言ってなかったよね。駐留派と復活派の襲撃を受けた直前のことなんだけど……」



女「私、男君に告白したんだ」








449 ◆YySYGxxFkU2019/11/03(日) 23:24:49.50BIBN/nXW0 (13/13)

続く。

今回投下内の補足で、種族としての魔族と、現在復活派で傭兵と共に行動している個体の名前としての魔族は別です。
ss化にあたって一般名詞に置き換えた影響でちょっとゴチャついてますね。
雰囲気で理解してもらえると助かります。


450以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/04(月) 01:07:45.37Kg6TKnU10 (1/1)

乙!


451以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/04(月) 03:14:26.66iyFJlGs/o (1/1)

乙ー


452以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/04(月) 05:06:59.856FftmfH60 (1/1)

乙!


453 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:36:07.264hEi4H0x0 (1/12)

乙、ありがとうございます。

投下します。


454 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:36:42.884hEi4H0x0 (2/12)


姉御「ほう……告白かい」

気弱「お、思い切りましたね」

姫「…………」

秘書「青春ですね」



女(私が男君に告白したと明かすと、姉御と気弱君はなるほどと頷き、姫さんは顔を伏せて表情を窺えなくて、秘書さんは暖かい眼差しになっている)



姉御「で、返事はどうだったんだい?」

女「それがね、本当ちょうど返事をもらえるってときに駐留派と復活派が襲撃をかけてきて」

姉御「ああもう酷いタイミングだねえ」



女「で、さっきも言ったようにその戦闘中に男君は『囁き』にかかったんだと思う」

女「それで戦闘の後、男君は私に言ったんだ」

女「私が傷つく姿を見たくない、宝玉は自分が全て集める、私の隣にいる資格がない、告白は無かったことにしてくれ、私の気持ちは他の人のために取っておけ…………って」



姉御「………………」



女「私は……男君に拒絶されたんだよ」




455 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:37:10.484hEi4H0x0 (3/12)


女(この一週間何度も思い返した男君の言葉)

女(資格なんて必要ない。ただ隣にいてくれるだけで良かった)

女(一緒に居れるなら私はどれだけ傷ついても構わなかった)



女(なのに、男君は私を一人置いていった)

女(私と男君が通じ合えていると……そう思ったのは幻想だったのだろうか?)



女(この会議に参加しているのも異世界を混乱させている事件に対処しないといけないという義務感から行動しているだけで、特に何か思いがあるわけでもない)



女(大事な会議で個人的な悩みを打ち明けたこと、未曾有の事件にどうにか頑張ろうとしているみんなに対して冷めている私)



女(何だか何もかもが申し訳なくて謝ろうとしたそのとき)




456 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:37:47.154hEi4H0x0 (4/12)




姉御「えっと……それはノロケかい?」

女「……え?」



女(姉御が顔を赤くして、頬をかきながら言ったことに理解が追いつかなかった)

女(気付くと気弱君も同じで、いつもクールな秘書さんでさえ少し赤くしている)



姉御「いやだから、女と男はこれだけお互いのことを思い合っている……って自慢なんだろ?」

女「ど、どうしてそうなるの!? 私は真剣に悩んでいるんだよ! 男君に拒絶されたって!!」

姉御「いや、その拒絶っていうのも…………ああもう、アタイには無理だ! 気弱頼んだ!!」

気弱「ええっ!? 僕ですか!?」



女(今にも顔から火を噴き出しそうな姉御が気弱君にバトンタッチする)




457 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:38:37.164hEi4H0x0 (5/12)


女「どういうこと、気弱君!!」



気弱「え、えっと……どう説明すればいいんでしょうか」

気弱「……そうですね、仮にですけど女さんは男さんが傷付く姿を見たらどう思いますか?」

女「そんなの見たくないよ!」

気弱「じゃあそれを防ぐための手段があるとしたら?」

女「迷わず実行する!」



気弱「それと全く同じ事を男さんもしているんですよ」

女「…………え? あれ…………そうなるの?」



女(好きな人の傷付く姿なんて見たくない。当然のことだけど……あれ、もしかして男君も同じで……)




458 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:39:12.934hEi4H0x0 (6/12)


気弱「そして確認なんですけど実際男さんは女さんのことを置いていった」

気弱「それは事実なんだと思いますけど……そのとき別に一緒にいたくないだとか嫌いだとか言ったわけじゃないんですよね?」



女「う、うん。俺には隣にいる資格が無いって言っただけで……告白の方も気持ちは嬉しいけど、無かったことにしてくれって」

気弱「いや、もう答え言ってるじゃないですか。気持ちは嬉しいって……嫌いな人から好かれて嬉しい人なんていませんよ」



女「……え? ……えっ!?」

女「で、でもだったらどうしてその気持ちは他の人のために取っておけなんて言ったの!?」



気弱「そのとき既に男さんは魔王になる決心をしていたんだと思います」

気弱「魅了スキルをフル活用しても茨の道であることは想像が付くその手段」

気弱「結果的に成功しましたけど、途中で倒れる覚悟もしていて」

気弱「そのときに好きな人の気持ちをずっと自分に縛り付けたくないからそう言ったんだと…………」



気弱「ああもう、解説する僕の方が恥ずかしくなってきたじゃないですか!!」



女(珍しく声を荒げる気弱君。姉御同様顔から火を噴き出しそうなくらい真っ赤だ)




459 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:39:48.084hEi4H0x0 (7/12)




女「ってことは……男君はそれだけ私のことを好きだってこと!?」

女(そう思うだけで、私の心は小躍りしたくなるくらいに舞い上がる)







気弱「はぁ……どうしてこんなことも分からなかったんでしょうか?」

姉御「……あーそういえば、女は元々恋愛においてはクソ雑魚メンタルだったねえ」

姉御「そして男は女友も一緒に連れて行ったんだろう? そのせいで外から指摘する人がいなかった」

気弱「なるほど……ってことは、女友さんはずっとこんなことしてきたんですか」

姉御「ということだろうねえ。今度会ったら労ってやろうか」

気弱「ですね」



女(気弱君と姉御が何か言っているけど、私の耳を素通りしていく)




460 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:40:15.734hEi4H0x0 (8/12)




姫「なるほど指摘はもっともかもしれませんが……現実問題として、女さんが男さんに置いて行かれた事実は変わりませんよね?」



女(そのときずっと黙っていた姫さんが口を開いて……その言葉は素通りしなかった。私は突っかかる)



女「聞いてなかったの、姫さん? 男君は私が好きだからこそ置いていったんだよ」

姫「ただの推測でしょう。本当は女さんに呆れて置いていった可能性だって否定できません」

姫「男さんは優しいですから言葉をオブラートに包んだだけです」



女「そっちこそ推測じゃない。男君は私のことが好きなの。それが決定事項なの」

姫「告白に答えてもらえなかったのに、ですか?」

女「ぐっ……それは……」



女(言い詰まる私に、姫さんはさらりと言った)




461 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:40:43.064hEi4H0x0 (9/12)




姫「結局男さんから直接言葉にされていない限り、状況証拠でしかありません。確証にはなり得ません」

姫「ですからさっさと告白の返事をもらってきてください」



女「……え?」

姫「女さんがさっさとフラれないと私がアタックしにくいじゃないですか」



女「で、でも……男君は告白を無かったことにしてくれって」

姫「そんなの聞いてなかった、で済ませればいいんですよ」

女「ご、強引すぎない……?」



姫「大体乙女が勇気を出して告白したのに、答えない方が悪いんですよ」

姫「男さんが100で悪い上に勝手なこと言ってるんですから、こっちだって勝手なこと言えばいいんです」



女「…………」

姫「何ですか、黙って」

女「えっと……ありがとね」

姫「礼を言われる筋合いはありません。私は私のために動いているだけです」



女(姫さんはそう言ってのけるとプイと顔を背ける)




462 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:41:12.214hEi4H0x0 (10/12)




気弱「あれ、姫様ってもしかして……」

姉御「あーそういえばあいつら独裁都市でも騒動に巻き込まれたって言ってたねえ」

姉御「何か支配されてた姫様を助け出したって話も」

気弱「そのときに男さんが姫様に惚れられた……ってことでしょうか?」

姉御「状況的にそうなんだろうよ。何とも罪作りな男だねえ」






463 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:41:40.464hEi4H0x0 (11/12)




女「……うん、そうだね。私、決めたよ!」

女「男君に告白の返事をもらいにいく!!」

女「そのため王国に、魔王城に乗り込む!!」



女(決意新たに私は宣言する)



姉御「まあ前向きになったことはいいことだよ。ただ、一人で乗り込むなんて言うんじゃないよ」

気弱「そうですね。今の男さんは王国の全てを掌握しています。いくら竜闘士といえど正面突破出来る勢力ではありません」

姫「そのためにも準備は整えないと、ですね」

秘書「古参商会もバックアップ出来ると思います。男さんの宣言以降、各地で起きている混乱は早めに静めたいところですから」



女(姉御、気弱君、姫さん、秘書さんの四人もそう言ってくれるのだった)



464 ◆YySYGxxFkU2019/11/06(水) 00:42:32.584hEi4H0x0 (12/12)

続く。


465以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/06(水) 01:03:46.47XJhjHzwHO (1/1)

乙ー


466以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/06(水) 04:11:54.87r25qXZrpO (1/1)

乙!


467 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:21:00.23islyLKZY0 (1/21)

乙、ありがとうございます。

投下します。


468 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:22:00.07islyLKZY0 (2/21)


女(魔王城に、男君のいるところに乗り込む)

女(今後の大きな方針が決まった)



女(そうだ、私は何をごちゃごちゃと悩んでいたんだろう)

女(はっきりとした言葉で拒絶されたならともかく、あんなふんわりとした言葉で私の長年の想いを否定されてたまるものか)



女(男君に告白の返事をさせる。返ってくる言葉は絶対にYESだ、みんなもそう言っているし)

女(そして恋人同士になった私たちは、色んな場所に一緒に行って、同じ気持ちを共有して、二人の思い出を紡いでいく)

女(そんな日が来るのが楽しみで…………楽しみすぎて……)



女「ねえ、今すぐ魔王城に乗り込んじゃ駄目なの?」



女(抑えきれずに私は提案していた)




469 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:22:31.21islyLKZY0 (3/21)


姫「はぁ……話を聞いてましたか?」

姫「男さんは今や王国の持っていた軍事力を保有しているも同然なんですよ」

姫「内戦による同士討ちで少しは削れたかもしれませんが、いずれにしても竜闘士一人で敵う相手じゃありません」

姫「各所から対抗できるだけの戦力を集めるしかないわけで、それまでおとなしく待ってください」



女「その理屈は分かっているんだけど……実際そんな正面衝突になるのかなぁ、と思って」

姫「……はい?」

女「いや、だからね。男君は私のこと大事に思っているわけでしょ?」

女「だから案外私だけで王国に向かったら、叩き潰すようなこと出来なくて、魔王城までスルっと到達できるんじゃないかな……って」



姫「断言します。有り得ませんね」




470 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:23:05.49islyLKZY0 (4/21)


女「いや、まあ姫さんがそう言いたいのは分かるけど……」

姫「鼻に付く言い方ですね……先ほど神妙に振る舞って損した気分ですよ」

姫「それと別に嫉妬で言っている訳じゃありません。男さんは女さん相手に手を抜くことは無いでしょう」

女「え、どうして?」



姫「その程度の覚悟で王国を支配するなんて出来るはず無いからです」

姫「女さんを置いていくことが正しいと思ったなら、簡単に翻すとは思いません」

姫「元々男さんは頑固な人ですから」

姫「私のときだって自分が犠牲になることが正しいと、どれだけ説得しても聞く耳持たずに貫こうとしましたし」



女「……そっか、そうだよね」

姫「加えて『囁き』がその思いをさらに強固にするでしょうから……本気で対抗してくると思いますよ」






471 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:23:37.07islyLKZY0 (5/21)


女(男君は思いこんだら頑ななところがある)

女(そのせいで私と男君は何度も衝突してきて、それを乗り越えることで絆を深めてきた)



女(今回もそれと同じ……いや、それ以上だ)

女(『囁き』の影響だけじゃない、今まで男君は私に魅了スキルをかけてしまったという負い目をいつだってどこか感じていたはずだ)

女(しかし、今やその嘘も暴かれた)

女(本気でぶつかってくる男君はとても厄介になるだろう)



女(でもそれが私には嬉しかった)

女(障害が大きければ大きいほど、乗り越えた時の報酬も大きくなる……そう思うから)




472 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:24:06.23islyLKZY0 (6/21)


姫「といっても男さんも今はまだ王国内外の対応に忙しいでしょうし、しばらくは私たちに何かする余裕も無いと思いますけど」

女「そっか、その内に準備を進めておきたいね」



女(男君がどんな手を打ってくるか、想像も付かない)

女(出来ることは早めにやっておかないと)



秘書「女さんが前向きになったようで何よりです」

秘書「古参商会としても各地で混乱が起きているこの状況では商売上がったりです」

秘書「何としてでも解決するよう尽力いたします」



女(秘書さんの言葉にふと疑問が沸く)




473 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:25:01.42islyLKZY0 (7/21)


女「そういえば魔王君臨における各地の混乱って具体的にはどういうことなんですか?」



秘書「まずは単純に王国を乗っ取る勢力の登場による恐怖ですね」

秘書「王国の武力は誰でも知っていましたから、それを圧倒する力への畏怖が一つ」

秘書「もう一つは男さんの出した宣言、宝玉を差し出すように迫ったことによるものです」



女「宣言がですか? 王国が手段を選ばないって言っている以上、抵抗するのも難しいですから、みんな普通に差し出して終わりだと思ってましたけど」



秘書「ええ。宝玉の所在が分かっている地域はその通りの対応ですね」



女「……あ、そっか。私たちが観光の町で体験したように、宝玉がどこに行ったのか分からない地域もあって……」



秘書「そういう場所では血眼になって宝玉を探す者や、急ぎ避難しようとする者、行政に対してさっさと差し出すように詰めかける者もいて……軽いパニックになっていますね」

秘書「場所が分かっていても、所有者が首を縦に振らない場所などもあるようです」

秘書「安全のためとはいえ、宝玉は高価な宝石です」

秘書「差し出せと言われて、はい分かりました、とは行かないのが人間ですから」



女「思ったより大変なことになっているんだ……」

女(他者に迷惑をかけることを嫌がる男君らしくない手段…………いや、そういう遠慮を取っ払ったのが今の男君だ)




474 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:25:31.43islyLKZY0 (8/21)


秘書「……。……。……」

秘書「とりあえずこれまでの会議の内容と急ぎ対抗戦力を集めるよう進言するため、私は一度商会に戻ろうと思います」



女(秘書さんが窓の外を眺めながら言った)



姫「はい。お願いします」

女「本当にありがとうございます!」

秘書「いえいえ、私に出来ることはこれくらいですから。それでは」



女(姫さんと私が礼を言うと、秘書さんはお辞儀をして執務室を出て行った)




475 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:26:05.31islyLKZY0 (9/21)


姫「古参商会が全面的にバックアップしてくれるのはありがたいですね」

女「私たちが宝玉を順調に集められたのも、最初に商業都市で古参商会とのパイプが出来たおかげです」

姫「独裁都市としても復興にとても協力的で助かっていますね」



女「でも商売上がったりなのにそんな協力してもらって……何か悪い気もするね」

姫「まあそれこそが古参商会がここまで繁盛した本質なんでしょうけど」

女「……?」



姫「本来なら商会にとって今は絶好の稼ぎ時なんですよ」

姫「王国に武器を売って、不安になった周辺諸国にも武器を売って、緊張下で不足した物資を値段を釣り上げて売って……」

姫「お金を稼ぐだけならこんなにも楽なことはありません」



女「そっか古参商会も色々手広く商売しているから……」

姫「ですがそうやって一時的に儲ける代わりに顧客の不興を買えば、長期的に見るとマイナスになるに決まっています」

姫「商売に大事なのは信用。それを分かっているからこそ、この非常時に多くを助けるように活動しているんでしょう」



女「私たちに協力するのもその一環ってことか……なるほど」

女(古参商会の裏にある打算……とても暖かいものに触れて、私も嬉しくなる)




476 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:26:44.52islyLKZY0 (10/21)


姫「とにかく早めに古参商会と連携を取れたのは助かりました」

姫「秘書さんを会議に呼んでくれてありがとうございます、女さん」

女「いえいえ、そんなこと。呼んだのは姫さんでしょう。こちらこそ助かりました」



姫「何言ってるんですか。秘書さんが女さんに誘われたって言ってたんですよ」

女「そちらこそ間違っています。姫さんに誘われたって言ってました」



姫「とにかく私は秘書さんに声をかけていません」

女「こっちこそ声をかけていません」



姫「………………」

女「………………」





二人「「………………?」」





女(二人とも首を傾げる)

女(この齟齬は……一体どういうことだろうか?)




477 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:27:25.95islyLKZY0 (11/21)


姉御「何だい、何だい? 結局どっちが正しいんだ?」

気弱「ちなみに言っておくと僕たちも違いますよ。連絡を受けてこの独裁都市に急ぎ向かうので精一杯でしたから」

女(気弱君の補足)





女(誰も声をかけていないとしたら……秘書さんはこの会議のことをどこで知ったのか?)

女(どうして参加したのか?)





女(ちょうどそのとき執務室の扉がドンドンとノックされ、答える前に扉が開けられた)



古参会長「秘書!! 秘書はここにいるのか!!」



女(ドタバタと慌てた様子で入ってきたのは意外な人物。古参商会の長、古参会長だった)

女(商会の本部がある商業都市にいることが多いと聞いていたので、わざわざ独裁都市まで足を運ぶのが意外ということである)




478 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:28:05.68islyLKZY0 (12/21)


姫「いつもお世話になっています。それにしても急な訪問ですね」

女(姫さんが立ち上がって一礼する。予定にない来客のようだが、復興の世話になっている恩もあって歓迎して当然だ)



女「秘書さんならさっきちょうど出て行って……あれ、タイミング的に鉢合っていると思ったけど」



古参会長「おぉ……良かった、良かった……! 秘書……生きておったのだな!!」



女(古参会長は感極まって涙まで流した)





女「……?」

女(事態がうまく飲み込めない。涙? 生きていて? でも……)




479 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:28:50.17islyLKZY0 (13/21)


姫「ええと、事情を窺ってもいいですか?」

姫「思えば先ほどもノックに答える前に扉を開けるほど慌てていて……古参会長らしくない振る舞いでしたが」



古参会長「ああ、そうだな。説明すると……事の始まりは秘書が一週間ほど前から王国支部に視察に行っていたことからだな」

古参会長「四日ほど前から連絡が取れなくなって――王国で内戦が始まったからであろう」

古参会長「私はいてもたってもいられなくて、秘書の安否を確認しようと王国には入れないでも、周辺諸国で情報でも集めるためにこの辺りまでやってきて……」

古参会長「そしたら秘書がこの地にいると聞いてすっ飛んできたのだ」



女(この独裁都市はわりかし王国から近い位置にある)

女(思えば秘書さんは内戦に巻き込まれたと他人事のように語ったが、実際かなり危険だったということだ)

女(だからこうして古参会長も心配した)



女(なるほど…………と納得しそうになったが、そうなるとまた一つ疑問が浮かび上がる)

女(姫さんも同じ事を思ったようでそれを指摘する)




480 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:29:21.64islyLKZY0 (14/21)


姫「おかしいですね……」

姫「秘書さんはこの状況をどうにかするためにも古参商会として私たちをバックアップすると言っていたので」

姫「既に会長には連絡を付けて話くらいはしているのだろうと思ったんですが」



古参会長「どういうことだ? もちろん協力をするのは吝かではないが……」

古参会長「秘書がそのような大事なことを私に相談せずに決めるとは思えん」

古参会長「あくまで私の秘書であって、商会の長ではないのだからな」



女(いくら古参会長が秘書さんのことを大事に思っていたとしても、そういう公私混同はしないだろう)



女「そもそも会長が心配していることを想像して、真っ先に連絡を取るはずだよね」

古参会長「そうだな、秘書はそこまで気を回せる人だ」



女(私の言葉も頷かれて……ますます分からなくなる)




481 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:29:55.90islyLKZY0 (15/21)


女「………………」

女(私は思考する)

女(秘書さんが去ってようやく気付いた違和感の数々)

女(これが意味するものは……ただの勘違いで済ましていいのだろうか?)





女(いや、そういえば秘書さんは去る直前窓の外を見ていて…………………………)





女「……そっか。そういうことか」

姫「何か分かったんですか、女さん」

女「うん。姫さんも見ていたと思うけど、秘書さん執務室を去る直前、窓の外を見ていたでしょう?」

姫「そういえばそうでしたね。……って時間的に考えると秘書さんが見たのは」

女「古参会長がこの神殿にたどり着いたのを見たんだと思う。だからこの場から去った」



女(商会に報告をするためという理由は、ここまで連絡していないことを見るに嘘だろう)




482 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:30:28.07islyLKZY0 (16/21)




古参会長「どうして私を見て去ったんだ?」

女「それは古参会長と出会えば、嘘が暴かれて自分が商会に連れ戻されることが分かっていたからです」



古参会長「……? 当然だろう、秘書は商会長である私の秘書だ」

古参会長「連れ戻すも何も、商会は帰ってくる場所だ」



女「ええ。ですがそれでは今の秘書さんは困るんですよ。だって――――」



女(私はその可能性を――早速打たれていた手を指摘する)





女「それでは命令を遂行出来なくなるじゃないですか」








483 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:30:58.29islyLKZY0 (17/21)


姫「なっ……!?」

気弱「それは……」

姉御「なるほどねえ……既に一本取られていたってことかい」



女(会議で話していた三人はすぐにその意味を察知する)





女(秘書さんが王国にいたという時点で怪しむべきだったのだ)

女(王国にいる人のことを、そして彼女自身この異世界で二番目に魅了スキルをかけられたという事実を)





女「…………」

女(どうしよう、今からでも追ってその身柄を確保するべき?)

女(いや、秘書さんは商業都市で最初居酒屋にいたとき周囲に全く気づかれなかったほどの隠蔽スキルの持ち主だ)

女(だから古参会長に見つからずに神殿を出ることが出来た。今さら追ったところで捕らえられないだろう)




484 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:31:32.04islyLKZY0 (18/21)


古参会長「命令とは……まさか王国を支配した者の正体は……」

古参会長「少年がそんなことをするはずがないと、嘘だと思っていたが――」



女(古参会長のところまではまだ情報の真偽について、確証高い物が届いていなかったようだ)

女(私はその人の名を呼ぶ)





女「はい。王国を支配した魔王、男君」

女「秘書さんはその手の内にいるんだと思います」





女(本気の意味をその身で思い知る)

女(想像していたよりも一手も二手も速い)




485 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:32:08.43islyLKZY0 (19/21)






 二日後、王国。

 王都の中心、かつては王城と呼ばれ、現在は魔王城と呼ばれるその建物。

 最上階に位置する謁見の間にて。





秘書「潜入調査してきた女さんたちの動向について報告します」

 休み無く行軍して独裁都市から王都へと帰還した秘書は、現在の主の前で膝を付く。








486 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:32:48.87islyLKZY0 (20/21)






男「ああ、聞かせてもらおう」



その主……男は座ったまま尊大な態度で先を促した。








487 ◆YySYGxxFkU2019/11/07(木) 23:33:17.26islyLKZY0 (21/21)

続く。

男の魔王ムーブ開始。


488以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/08(金) 00:36:40.19vuG1KueMO (1/1)

乙!


489以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/08(金) 00:49:53.28rqcnnoACo (1/1)

乙ー


490以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/15(金) 06:09:08.81xVInREqC0 (1/1)

乙!


491 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:22:11.88ZvONJyR/0 (1/18)

乙、ありがとうございます。

随分間が空いて申し訳ありません。

投下します。


492 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:22:46.44ZvONJyR/0 (2/18)


女友(魔王城、謁見の間にて)

女友(女たちの動向を探っていた秘書さんの報告を、王座に座って聞く男さんの横で)



女友「はぁ……」

女友(私は周囲に気付かれないようにため息を吐きました)



女友(どうしてこんなことになったのか)

女友(一週間ほど前からずっと思っていることです)




493 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:23:16.56ZvONJyR/0 (3/18)




女友(学術都市で駐留派と復活派の襲撃を退け、様子の変わった男さんによって女を一人置いて連れ立ち、そこからの日々はもう大変の一言で表せないほどでした)



女友(先に逆スパイとして潜入させていた近衛兵長さんの情報も使って、どうやって王国を転覆させるかを男さんは考え、命令して私たちに実行させる)



女友(裏で暗躍するのはもちろんのこと、男さんが持っている駒の内、魔導士の私は最強格の駒として戦闘にも参加させられる)



女友(王国の上層部はまあ世界征服なんて事を本気で考えている連中で腐っている人たちばかりでしたから、体制を破壊しても心こそ痛まなかったのは幸いでしょうか)



女友(そうして王国を制圧して少しは楽になるかと思えば、今度は内部の統治と外部への対応とさらに忙しくなって……もう本当に大変です)






494 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:23:51.45ZvONJyR/0 (4/18)


女友(そんな折りに飛び込んできたのが、現在なされている帰還した秘書さんによる報告でした)



女友(数日前、王国の支配を完了する前から先を見越して男さんが女の動向を探るために、秘書さんに命令していたようです)



女友(古参会長がその場にやってきて、それ以上は嘘が露呈して調査の続行が不可能になると判断して帰還したようです)

女友(そのため報告されたものは対策会議における発言だけでしたが十分な収穫でした)



女友(男さんの言葉に惑わされていた女が、みんなの力も借りて前向きになり事態を解決しようとしている)

女友(久しく聞いていなかった親友の様子に、つい私は涙腺が緩みそうになりました)



秘書「報告は以上です。失礼します」



女友(さて報告を終えた秘書さんを下がらせて、謁見の間に残ったのは三人です)

女友(王座に座る男さん、その左に立つ私と、右に立つのは――)




495 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:24:22.43ZvONJyR/0 (5/18)




女友「それにしても未だにあなたが殊勝に協力していることが信じられません」

近衛兵長「今さらだな。そろそろ信用してくれていると思ったが」



女友(王国のスパイにして、元独裁都市の近衛兵長です)

女友(聖騎士の職を持つ彼女は、強さこそ私と同等のためこうして並び立つのもおかしくはないと言えますが……)



女友「あなたは王国に忠誠を誓っていたじゃないですか」

女友「王国を転覆させた私たちに従っているのはおかしなことです。魅了スキルの命令でも心までは操れませんし」



近衛兵長「それなら簡単なことだ」

近衛兵長「私も終わってから気付いたが、忠誠を誓っていたのは王国というとてつもない力に対してだったようだ」

近衛兵長「ならばそれ以上の力を持つ新たな主に従うのは自明のこと」



女友(そんな理屈で近衛兵長は現在男さんに忠誠を誓っている)

女友(腹の内で本当はどのように思っているのかは分からないですけど)




496 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:25:08.15ZvONJyR/0 (6/18)


女友(まあ今それは置いといていいでしょう)

女友(気にするべきは先ほどの報告。私たちへの対策会議とやらは、秘書さんによって一言一句逃さず報告されました)



女友(それは男さんが未だに女のことが好きであるだろうということ)

女友(女が告白の返事を聞くために魔王城に乗り込むという言葉もです)



女友「………………」



女友(あの日、『囁き』がかかってから男さんは己の感情を全く表に出すことが無くなりました)

女友(表情はいつも能面のように無で、口を開くのは命令をするときくらいです)



女友(とはいえ流石にこの報告を聞いて何も思わないはずがありません。私でさえ少し顔が赤くなりましたし)

女友(久しぶりに今までの男さんらしい様子が見れると期待して)




497 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:25:34.46ZvONJyR/0 (7/18)






男「想定の範囲内だな」





女友(一言、つまらなさそうに言った男さんに裏切られました)





女友「…………っ!」



女友(どういうつもりですか!)

女友(反射的にかけようとした言葉が音になることはありませんでした)



女友(自由に動いているように見えて、私は今も魅了スキルの虜となった身)

女友(命令によって男さんの胸の内を問いただすことや説き伏せようとすることを禁じられています)

女友(命令までしてそんなに自分が言い負かされるのが怖いんですか…………という言葉を発することも、今の私には出来ないのです)




498 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:26:07.82ZvONJyR/0 (8/18)




近衛兵長「あのとき戦った竜闘士か」



女友(近衛兵長は偽りの結婚式の際、助けに入った女と一戦交えています)





近衛兵長「個人としても伝説級の力を持つ竜闘士に、大陸最大の古参商会と着々と力を取り戻しつつある独裁都市のバックアップ」

近衛兵長「王国にとって最大の反抗勢力となると思うが、どうする我が主よ」





男「対処法は考えている。おまえが心配することじゃない」

近衛兵長「これは失礼、承知した」





女友(男さんの厳しい言葉にも近衛兵長は動じた様子はありません)




499 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:26:34.70ZvONJyR/0 (9/18)






男「女……やはりおとなしくはしてくれないか」

男「まあいい布石は……秘書によって嘘の情報も流させた」





女友(男さんが漏らしたつぶやき)

女友(秘書さんに流させた嘘の情報……確かに報告された会議の様子で私も一つ気になるところがありましたが……しかしあんな嘘を吐かせて何になるというんでしょうか……?)






500 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:27:09.06ZvONJyR/0 (10/18)


女友「………………」

女友(分かりませんが……私も覚悟を決めました)

女友(男さんに今まで協力していたのはもちろん命令で強制されていたというのもありますが、私が協力しなければ途中で死んでもおかしくないくらい無謀なことをしでかしていたからです)

女友(様子が違っていても仲間を、親友の好きな人を死なせるわけには行かせませんから)



女友(正直なことを言うと、現在の男さんの目的は分かりません)

女友(ただ宝玉を集めて元の世界に戻る……それだけで無いことは確かです)



女友(だって私たちの手元には今までの旅で集めてきた宝玉六個があります)

女友(元の世界に戻るためには八個必要なので残りは二個)



女友(それを集めるだけならこのように王国を支配するのは大がかりすぎます)

女友(適当に宝玉のある地を二つ訪れて、魅了スキルを駆使して宝玉を手に入れる方が楽です)



女友(ですからおそらく男さんは宝玉を八個以上手に入れたいのだと……それが私の読みです)






501 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:28:03.22ZvONJyR/0 (11/18)




女友(その先に何を見ているのかは分かりませんがもう付き合いきれません)

女友(王国の支配も盤石となってきた今、私の協力ももう必要ないでしょう)





女友(ここから脱出して女たちと合流する)





女友(もちろんそのようなことは魅了スキルの命令で禁止されています)

女友(ですけどね、男さん。あなたの命令を一番聞いてきたのは誰だと思っているんですか?)



女友(何度も命令無視する姿を見せた私には警戒されて今まで以上に雁字搦めな命令をされていますが……)

女友(それでも抜け道はありますから)




502 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:28:35.22ZvONJyR/0 (12/18)


女友(私が決意を新たにしていると男さんは次の事を考えていました)



男「もう一つ対処しないといけないことがある。復活派だ」

男「今朝各地に張り巡らさせた諜報員から、やつらと思しき二人組に宝玉を奪われたと報告があった」



女友「復活派……ですか?」



女友(私の口から純粋な疑問が漏れます)

女友(魔神復活派。その目的は名前の通り魔神の復活です)



女友魔神の固有スキルである『囁き』。男さん一人にかかっただけでこんな大惨事を引き起こして……いや、男さんだからこそとも言えますが……とにかく魔神が復活すればこれ以上の事態になることは容易に想像が付きます)



女友(しかし太古の昔に虚無の世界へと飛ばされた魔神を呼び戻すには宝玉が十二個も必要です)

女友(学術都市で駐留派に協力したことから、復活派の所持している宝玉は七個)



女友(新たに一個入手したところでまだ状況は変わらないはず)




503 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:29:11.42ZvONJyR/0 (13/18)






男「やつらの最終目的は魔神復活。だが当面必要な宝玉は八個のはずだ」

女友「……え?」





女友(私の思考を読んだかのような男さんの言葉)

女友(どういうことでしょうか? 復活派も私たちと同じ八個必要?)



女友(宝玉八個で出来ることは指定した世界に多数の存在が通れるゲートを開くことです)

女友(そんなことをして復活派に何の得が…………)






504 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:30:39.32ZvONJyR/0 (14/18)






女友「まさか……」



男「復活派の魔族。太古の昔、この世界に一人残った『魔族』で……別の世界にはやつと同じような『魔族』がたくさんいる」

男「それも種族特性として、各々が固有スキルを持っているわけだ」



女友「…………」



男「それらを呼び出して集団となりこの世界を蹂躙して、宝玉を奪い今度こそ魔神を復活させる。これが俺の読みだ」

男「いくら王国の勢力が巨大とはいえ、固有スキル持ちを複数人も相手にするのは面倒」

男「だから――俺が出る」






505 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:31:27.91ZvONJyR/0 (15/18)




女友(私たち支配派のブレインであり、魅了スキルにより支配を維持する要)

女友(万が一でさえあってはならない存在。であるからこそ王国に侵攻して以来、男さんは裏方に徹してきました)



女友(そんな男さんが直接出るほどの事態)





男「近衛兵長、おまえと何人かを連れて護衛しろ」

近衛兵長「はっ!」





女友(近衛兵長は異を唱えることもなくその命令に従います)



女友(近衛兵長の名前だけが呼ばれたということは……私は留守番をしろということでしょうか?)

女友(まあトップが不在なのもマズいですし、せめて私を残しておくと)





女友(だとしたらこれはチャンスです)

女友(男さんがいない間に何としてでも命令を破って女たちと合流して――――)








506 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:31:56.14ZvONJyR/0 (16/18)






男「ああそうだ。女友、おまえにも命令がある」



女友「……何ですか?」



男「おまえの手で女たちを潰せ」








507 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:32:22.83ZvONJyR/0 (17/18)






 魔王君臨事件から数日。

 世界は落ち着くことなく、新たな騒動に巻き込まれていく。








508 ◆YySYGxxFkU2019/11/19(火) 00:32:52.52ZvONJyR/0 (18/18)

続く。

次の更新もまた間が空くと思います。


509以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/19(火) 00:57:20.29BZfwLeq+O (1/1)

乙!


510以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/11/19(火) 10:45:03.81mv/Fa6YBo (1/1)

乙ー


511 ◆YySYGxxFkU2019/12/02(月) 18:10:16.56uU+NetVho (1/1)

ご無沙汰しております。
期間が空いてきたので途中報告です。

最近リアルが忙しいのと、次が傭兵と魔族の過去編でぶつ切り投稿も良くないなーと書き溜めしている関係で投稿が滞っています。
もうしばらくお待ちくださいm(_ _)m


512以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/12/02(月) 21:52:40.5772y1DTblO (1/1)

待っとるよー


513以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/12/03(火) 00:22:22.79FWiw1gO/O (1/1)

待ってるぜ!


514以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/12/03(火) 05:57:24.03kMNIMDbs0 (1/1)

舞ってる