335Mii2019/10/29(火) 01:05:40L3Ow0O9U (11/19)




ピキッ…!



ヒルダ「――――っ!?」

デイジー「さっさと起きた方が身のためだぞ」

ロゼッタ「」



ピキッ!



ヒルダ「いやああ゙あ゙あ゙あ゙アアアアアアアアアアアアアアアアア!!」ガタガタ

デイジー「そら見ろ、狸寝入りじゃないか」

ロゼッタ「確認のためだけに指の爪をはいでいくのはやめてあげてください!?
     今のデイジー姫、機嫌を損ねるととんでもない暴虐に走りますね!?」


336Mii2019/10/29(火) 01:10:04L3Ow0O9U (12/19)

デイジー姫は、えぐえぐと泣くばかりのヒルダ姫など、もう放置して…
ふたたび、こちらに歩み寄ります。…歩み寄ってきます。

5センチも離れていない所に、デイジー姫の顔が迫ってきました。



デイジー「やはり、異常だな。
     ここまで、ゼルダやヒルダの状態を気遣い、心配することはあっても…
     虐げることは間違っている、許せない…という主張がほとんどない。
     絶望のあまり泣き叫んで、止めるよう懇願してもおかしくないというのに。

     …むしろ、お前が『ニセモノのロゼッタ』であると言われた方がまだ納得がいく。
     …本物のロゼッタか?こっそりすり替わっていやしないか?」

ロゼッタ「本物ですよ!?本人ですよ!?証拠とかは特にないですけど酷くないですか!?
      …えっと、泣き叫んだら、止まってくれるのですか?」

デイジー「余計に殺意が増すな」

ロゼッタ「ですよねー。分かっていました。
     だったら、私はデイジー姫に応えるべく、やれるだけのことをやるだけです。
     デイジー姫だって、嗜虐心だけで私たちを屠り続けているわけではないでしょう?」



今のデイジー姫は、恐ろしい。それは…確かです。
でも…少なくとも、デイジー姫を責めるのはお門違いだと思うのです。
唆した私達3人の自業自得、あるいは発端の私だけが責められるべきなのです。


337Mii2019/10/29(火) 01:12:24L3Ow0O9U (13/19)

デイジー「…………面白い。実に面白いぞ、ロゼッタ。
     ならば、こちらとしても丁重に『O・MO・TE・NA・SHI』しようじゃないか。
     その余裕が、どこで悲嘆の顔に変わるのか、あるいは乗り越えてみせるのか…
     非情に楽しみになってきた…!」

ロゼッタ「……あれ?あれれ?藪蛇ですか?
     …あと、なんだかニュアンスが変だったような。

     『とっても楽しみ』なんですよね?
     『あらん限りの絶望を与えることが楽しみ』とかじゃないですよね?」タラリ



デイジー「さあ、いざ、参る!」スッ・・・



ロゼッタ「…っ!こうなったら、当たって砕けろの精神で参りますよっ!」ビクッ


338Mii2019/10/29(火) 01:16:38L3Ow0O9U (14/19)

すぅっと、しっかりと、デイジー姫の方を向きつつ、身構えます。
…嘘です。格闘におけるポジションなど知りません。
ついでに言うと、心臓を隠せるようにだとか、足腰のバネに力を蓄えてとか…
にわか仕込みの、小手先の動きでどうにかなる相手ではないのです。

身長差からすると、私が有利…なんてことはなく、むしろ掻い潜られそう。
そう思った矢先っ!



デイジー「フッ!!」ゴウッ!

ロゼッタ「……っ!!」

――認識できない、ほどではない、拳。
――余裕を持って躱せる、なんてことはさらさらない、拳。

直感で腕を伸ばして、鳩尾を狙うデイジー姫の腕の軌道を妨害――



ロゼッタ「――しても無駄なのでっ!」



手のひらから…隔壁を、幾重にも展開、展開、展開っ!!
ただし、間違っても真正面から生成してはいけません。
デイジー姫と私との力量差の前では、向こうの拳が貫通弾となってしまいます。
繊細に…力を逃がすべく、斜めに滑らせ、受け流す!


339Mii2019/10/29(火) 01:26:43L3Ow0O9U (15/19)

ロゼッタ(よし、うまくいきました!!受け流し成功で――)

デイジー「人間の腕が2本あるのはなんでか、知ってるか?
      …交互に拳を絶え間なく繰り出すため、だぞ?」



ドガガガガガガッ!!

ロゼッタ「わっ、わわっ!?」パシン パシン

駄々をこねる子供のように、遮二無二腕を振り回すデイジー姫。
当然ながら、体のひねりなどロクに使えないため、力は籠められないはず…なのですがっ!
1発1発が、凄まじく、速くて重いですっ!山カンで防ぎに行くのが精いっぱい!



右、左、右、左、左――――っ!



フェイントも時たま交えつつ、連続攻撃で弄ばれます。
私はひたすら、体の脇へ脇へと受け流す、受け流す!

ピイイイイイィィィィン――!!

それでも。反発の勢いで、腕が大きく逸らされていきます。
その勢いは凄まじく、体ごと持って行かれます。

その隙を…見逃してくれるわけがありません。


340Mii2019/10/29(火) 01:31:18L3Ow0O9U (16/19)

くるり、とデイジー姫が身を翻します。



デイジー「セイヤッ!!!」ドゴォッ

ロゼッタ「がはっ」ガフッ ダンッ!



…何回かバウンドしながら、フィールドの反対側まで吹っ飛ばされました。
たいじゅうのこもった、ま、まわしげり、だなんて、は、はんそくです。
そんな威力の体術、秘匿しないでおいてほしかったですね。

…ああ、また口元に血が付いています。
いい加減、血を吐くのは飽きてきました。
このままではドレスが赤く染まって、ファイアロゼッタになってしまうではないですか…なーんて。
…実際は復活のたびに汚れはきれいさっぱりなくなりますが。

袖でグイッと拭って、さっさと立ち上がることにします。
そんな私を、フィールドの反対側から見ている、デイジー姫。
早く戻ってこい、と手招き状態。

…なんだか、にやにや笑っている気がします。
余裕ぶった態度に、少しだけ、カチンと来ました。


341Mii2019/10/29(火) 01:33:58L3Ow0O9U (17/19)

ロゼッタ「――――よし」ポワアアアン

何食わぬ顔で近づきつつ、こっそりFPを充填していきます。

一歩。また一歩。
歩くたびに、どんどんFPを蓄えます。

デイジー「のんびり歩くな、時間は有限だぞ」

ロゼッタ「すいません、今行きまーす!」

こう、呑気に手なんか振ってみたりして。

相手の視線、および死角の確認、OK。
移動先の座標、OK。
移動後の迅速な正拳を、イメージ。



…なんだか、わくわくしてきました。
ダメージを与えられるかどうかはともかく、
これが当たって、デイジー姫が少しでも驚いてくれたら、と考えただけで。

…準備完了。
最後は、少し小走りになりつつ、残り10メートルになったところで――


342Mii2019/10/29(火) 01:38:08L3Ow0O9U (18/19)

シュンッ!!

ロゼッタ「それっ!!」ブンッ!

テレポートからの、完全なる不意打ちですっ!
素晴らしい集中力の賜物で、数F程度のラグをもって拳を振るえています!
後頭部…は気が引けたので、背中に…会心の一撃!これは決まりました!





デイジー「……」クルリッ グワシッ!





ロゼッタ「…ふえっ!?」

…あれ?あれれー?
どうして、振り向きざまに拳を掴まれているのでしょう?

デイジー「気配。癖。それに勘。見破る鍵はいくらでもあるぞ。
     妙にワザとらしく手など振って、姑息なことを考えていることがバレバレだ」

ロゼッタ「」アゼン


343Mii2019/10/29(火) 01:40:55L3Ow0O9U (19/19)

デイジー「…根本的な問題として、移動と攻撃動作、合わせて10Fもあれば…
     余裕を持って対処くらいできるさ。私を誰だと思っているんだ?ん?」

ロゼッタ「あなたはデイジー姫です♪」

デイジー「…………」

ロゼッタ「…………」

デイジー「…………」ゴゴゴゴゴゴ・・・

ロゼッタ「…あ、いえ、そのう……せめて楽に死にたいなあって…」

デイジー「ハラワタをぶちまけるくらいまで殴る」

ロゼッタ「やめてください三途の川でも死んでしまいます」ガクガクブルブル

デイジー「フンッ!!!」バキィッ!



ロゼッタ「」チーン

――見失ってからの10Fでも余裕で対処可能だなんて…
――どうしようもないじゃないですか…。


344以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/29(火) 22:56:53BjpT48L. (1/9)

時計が 午後7時を 指している▼

デイジー「…よし。今日は此処までとしよう。お前たち、精々休んでおくことだな。
     食事を摂ろうが惰眠をむさぼろうが構わないが、特訓から逃げようとしようものなら――」ギロッ

ロゼッタ「一撃も入れられませんでした…はあ。速さが足りない…。
      逃げません逃げません、そんな恐れ多いことしませんってば。
     ね、ゼルダ姫にヒルダ姫!」ボロッ



ゼルダ「」

ゼルダ「」

ゼルダ「」シンダメ

ヒルダ「」

ヒルダ「」

ヒルダ「」シンダメ

ゼルダは たたかう きりょくが のこっていない

ヒルダは たたかう きりょくが のこっていない▼

ロゼッタ「」

デイジー「…そこに転がってる2人はロゼッタ、お前がなんとかしろよ」スタスタ バタン・・・


345Mii2019/10/29(火) 23:08:55BjpT48L. (2/9)

ロゼッタ「あのー、もしもし?私の声が聞こえますか?」ブンブン!

ゼルダ「」

ヒルダ「」

ロゼッタ「これは駄目かもしれません」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

ロゼッタ「とりあえず…………血濡れの2人の体を『浄化』してっと…」パアアアアア

ロゼッタ「…ああ、もうっ!無反応なら、勝手に運びますからね!
     文句は受け付けませんよ、失礼します!!」

面倒になったので、両脇に1人ずつ抱えて、仮眠室まで連れていくことにしました。
借りてきた猫…というより借りてきた人体模型なみに、ピクリとも動きませんでした。

ロゼッタ「あれ、もしかして…これって…
     血濡れのフィールドの清掃は私一人でやれということですか…
     なんという貧乏くじでしょう…はぁ…あとでやっておかなければ…」ガックリ


346Mii2019/10/29(火) 23:12:30BjpT48L. (3/9)

フィールドの料理を、チコたちとせっせと仮眠室へ運びます。
チコたちには、血生臭い場面を見せたくないこともあって、
基本的に仮眠室のお手入れをお願いしています。おかげでほこり一つありません。
私も家族の一員として誇らしいです。…シャレじゃないですよ。

ロゼッタ「さーて、それでは明日に備えて、しっかり食べておきますか――













    ……あの。ゼルダ、ひめ?
    ……一体、何をやっているのですか?」


いざ食べようとしたところ、椅子に強引に座らせたゼルダ姫が見当たりません。
はて?と見返すと、呪怨のように言葉にならない声を出しながら、
仮眠室のベッドを持ち上げて、扉の前に運んでいるではありませんか。


347Mii2019/10/29(火) 23:14:10BjpT48L. (4/9)

ロゼッタ「ふふ、まさか…デイジー姫に恐怖する余りのパニック衝動で
     彼女から少しでも遠ざかろうとする短絡的行為の現れじゃ……」





ゼルダ「…………」ポロポロ

ロゼッタ「図星ですか!?重症ですね!?」

そんな無意味な、むしろ逆効果な行為をしないでくださいよ!
デイジー姫に知れたら、一瞬笑った後、ベッドと扉もろとも吹き飛ばされますよ!?
あの強気なゼルダ姫が、ここまで動転しているだなんて…!

もちろん、そんな未来は御免被りたいので。
私とヒルダ姫で、とっとと元通りに…。

ヒルダ「…………」フラフラ

ロゼッタ「頼みます。お願いですから、そのタンスをもとの場所に戻してください。
     ゼルダ姫の後追いをしないでほしいのですが」

ヒルダ(ブンブン)ポロポロ


348Mii2019/10/29(火) 23:15:55BjpT48L. (5/9)

ロゼッタ「…チコ。みんな以外に味方がいないようなので、
     元の場所に戻すのを手伝ってもらえるかしら?」

チコ「わ、わかった!」

チコ「はーい!」

チコ「おしごとおしごとー!」



ヒルダ「やあああぁぁ……」ポロポロ

ロゼッタ「しがみ付かないでください!幼児退行までしないでください!心が痛むではないですか!
     それでも、ここは心を鬼にして…強行突破です!」ガシッ


349Mii2019/10/29(火) 23:17:26BjpT48L. (6/9)

どうにかこうにか、再び席に着かせたのはいいものの。
ぼそ、ぼそ、と。
うわ言を吐き続けて、一向に食事を摂らないお二人。
黙々と私だけ食事を摂ります。



…………沈黙が痛い。



ヒルダ「――――は」

ロゼッタ「……もぐ。はい?どうかされましたか、ヒルダ姫?」モグモグ



ヒルダ「――ロゼッタ、は。どうし、て。へいき、なの、ですか…?」



ロゼッタ「…別に、平気というわけではありません。
     撃墜されれば痛いですし、骨肉を毟り取られれば悶絶する痛さです。
     でも、自分の成長のためと割り切れば――」


350Mii2019/10/29(火) 23:23:14BjpT48L. (7/9)

ゼルダ「そんな、ことっ!
    …できるはずが、ないでしょうっ!!」バンッ!!



ゼルダ姫の渾身の一殴りが、テーブルをいとも簡単に粉砕していきました。
木くずが、ばらばらばらと、はじけ飛びます。
…料理を巻き添えにして。ああああっ!!なんてことを!

料理の心配をしている私の襟元を掴んで、涙ながらにゼルダ姫が訴えてきます。



ゼルダ「ロゼッタっ!貴方は、精神がおかしい!
    どうして、平然として、いられるのですか!?狂っているっ!
    此処まで虚仮にされてっ!此処まで殴り倒され虐げられてっ!

    …命を、幾度となく、笑いながら、奪われてっ!

    尊厳もなにもないっ!なにもないのですよっ!!」ポロポロ

ロゼッタ「…それは、デイジー姫が『特訓に本気になっている』だけで」

ゼルダ「違うっ!認識を改めなさいっ!
     あの女は、もはや単なる狂人なのだと!
     なんとしてでも、あの殺人鬼を、止めなければならないっ!」ググッ


351Mii2019/10/29(火) 23:25:53BjpT48L. (8/9)

…っぐ。流石に、首が締まります。

ロゼッタ「…ゼルダ姫の気が少しでも晴れるのなら、私の命の一つくらい…
      喜んで差し上げますよ。いつでもどうぞ。すぐ復活しますし。
      
      ですが、そちらこそ、訂正してください。
      …デイジー姫を侮辱する行為は、彼女の友人である私が…
      ぜったい、に。ゆる、しません」

ゼルダ「――っ!!」



そのひとことに、目を見開いて。
毒気も抜かれたのか、パッと手を離してしまうゼルダ姫。

そのまま、放心したのか膝まで付いて、顔を手で覆って――
再び泣き始めてしまいます。
もう、女王の威厳など、どこにも残っていないのです。


352Mii2019/10/29(火) 23:40:11BjpT48L. (9/9)

ゼルダ「グズッ…ロゼッタ…あなた、確実に…完全に、壊れているわ…」
(致死寛容レベル:Lv.5)

ヒルダ「あと――何回、いのちを、おとせば、かいほうされるのでしょう、か…。
    もう、いや…だれか、おしえてください…
    10かい、ですか?……100かい、ですか!?ねえ、誰か――っ!」シンダメ
(致死寛容レベル:Lv.3)



ポンッ。

ヒルダ「――ロゼッタ?」

ロゼッタ「大丈夫ですよ――――――――




      1日あたり18時間の特訓として、3分ごとに命を落とし続けたとしても、
      1時間で20回、18時間で360回。90日で32400回。…1人あたり、たかだか10800回が限界です!
      何とかなります、頑張りましょう!」

(致死寛容レベル:Lv.32    残機がある限り 致死・致命傷の精神負担に対し + 31%鈍感化!)

ヒルダ「ロゼッタっ!!もうちょっと命を大事にしましょうよっ!?
     これはゲームじゃないんですよ!?」ソウハク

ロゼッタ「まあまあ、そんな甘いことを言っていては…
     …うっ、なんだかブーメランが刺さったような錯覚が」イタタ


353以下、名無しが深夜にお送りします2019/11/09(土) 03:28:344hNQ2EJY (1/1)

寛容などというレベルじゃない


354Mii2019/11/10(日) 17:32:57EJfM3NDc (1/30)




朝を、迎えました。



ロゼッタ「おはようございます…って、その疲れ切った顔…まさか徹夜したのですか?」ジトー

ゼルダ「……なんで、すか。文句、ありますか?」ブルブル

ヒルダ「夢から醒めるまで、寝ていたい…っ!」ブルブル



私はともかく、ゼルダ姫とヒルダ姫は、ガタガタ震えるばかりで、
休息を取るどころか逆に疲労困憊、満身創痍の状況です。酷いクマができています。
自分で自分の首を絞めていないでしょうか…心配です。


355Mii2019/11/10(日) 17:39:03EJfM3NDc (2/30)

そのとき。
ドドドドドドド――――ッと、突如として、激しい地響き、駆ける音。

ゼルダ「――ひっ!?」ブルッ

ヒルダ「――――っ!!」ガタガタブルブル

思わず互いに抱き合う、ゼルダ姫とヒルダ姫。どう考えても、デイジー姫でしょう。

ゼルダ「いいい、一体何事ですか!?」サァッ

ロゼッタ「あ、そういえば。少し寝過ごしたせいか…
     昨日の開始時刻より30分ばかり遅れていますね」

ヒルダ「ひいいいぃぃ!?ま、ままままさか、それで激怒して乗り込ん、で――」

ヒルダ姫の顔色が、青色を通り越して土気色になっています。
…あ、目の色まで死にました。頼みます、戻ってきてください。ゆさゆさ。

ゼルダ「ヒルダ姫っ!こうなったら、土下座でもなんでもして許しを請うのですっ!
    いいですかヒルダ姫っ!デイジー姫…いえデイジー様が靴を舐めろと言ったら、
    満面の笑みをもって、言われた通り舐めるのですよ!」

ヒルダ「ワカリマシタ」

ロゼッタ「え、あの。ゼルダ姫――?
      昨日あれだけ自信満々に言っていた、ゼルダ姫を奮い立たせるはずの誇りとか立場とか、
      どちらのゴミ捨て場にお捨てになられたのですか?」


356Mii2019/11/10(日) 17:40:47EJfM3NDc (3/30)

なんだか馬鹿な感想を口にしてしまう私をよそに、
扉が強く、強く叩き開けられ、デイジー姫が乱入してきます。

すぐさま、ゼルダ姫とヒルダ姫が、なけなしの元気を振り絞って。

ゼルダ「大変申し訳――――」

ヒルダ「生まれてきてごめんなさい、どうか――――」











デイジー「ほんっっっっっとぉぉぉぉ――――――――――――に、
      すんませんっしたあああぁぁぁぁああ――――っ!!」ドゲザ

ロゼッタ「」

ゼルダ「」

ヒルダ「」


357Mii2019/11/10(日) 17:42:11EJfM3NDc (4/30)

ゼルダ姫が、口を、ぱくぱく、させています。
わかります、わかりますよ、その気持ち。



ロゼッタ「…………『気絶するか、寝るか、はたまた命を落とすかで…
      意識を一度失うと、自己暗示が解ける』…?」

デイジー「そぉー!そぉなの、100点満点の理解、ありがとねロゼッタぁっ!!
     暗示が一度掛かると、自分の意志だとどうしようもできなくてっ!
     ただ、自ら暗示を解こうとはしないけれど、
     眠くなって自然と寝る分には割と素直みたいだから、私――っ!」

ゼルダ「は、はは、は」
     
ゼルダ姫が、ぷつんと緊張の糸が切れたのか、
へなへなと座り込んでしまいました。

乾いた笑いをしばらく続けたあと、大きな大きな、ため息、ひとつ。
警戒は無駄に終わってしまいましたが…心底、安心していることでしょう。
ほら、目元が潤んでいます。

ヒルダ「う…うわあああああぁぁぁあんっ!よかった、よかったです――――っ!」

ロゼッタ「ちょ、ちょっとヒルダ姫。感極まって抱き着かないでくださいな」

ヒルダ姫、泣きじゃくります。…仕方ないですねえ。
思う存分、泣いて、泣いて、すっきりしてください。
優しく背中をさすって抱きしめてあげると、一層激しく泣き始めました。


358Mii2019/11/10(日) 17:44:59EJfM3NDc (5/30)

デイジー「…………」

ロゼッタ「…………」ジッ

未だ、デイジー姫は――委縮したまま、土下座を続けて、
視線を下へ下へ持って行こうとしています。
彼女は…心底、私達を傷付け、殺めたことを…悔いて、嘆いているようです。

デイジー「……ねえ、みんな。私、少しは、みんなの役に、立てた、かな?」

ロゼッタ「やっぱり、デイジー姫は、素晴らしいファイターだったのですね。
      …ええ、デイジー姫の特訓、とても厳しくて…ために、なりました」

デイジー「――――そっか。それなら、まあ、悔いはない、かな。
      ――――ロゼッタ。ゼルダ。ヒルダ。

      ――――これまで、色々と、ありがとう、ね。
      ――――楽しかった。本当に、本当に…楽しかった」グズッ

ロゼッタ「…え?一体、なにを――」





デイジー「ごめん。私もう、ここには――居られないよ。
     ――これは、チカラを使うと決めたときからの――既定事項」


359Mii2019/11/10(日) 17:46:59EJfM3NDc (6/30)

ロゼッタ「…本当に――何を、言っているの、ですか?」



おもむろに立ち上がったデイジー姫が、一歩、二歩、三歩。
まるで「ちょっと用事を思い出したからじゃあね」と言わんばかりの軽やかな足取りで、
ごく自然に去っていくもので…思わず、5秒ほど、固まってしまいました。



大切な物を、手の指の隙間からこぼれ落としそうな気がして、
慌てて、必死に、全力で。
デイジー姫を追いかけ、その腕を掴みます。



ロゼッタ「答えてください、デイジー姫っ!!」



掴まれ動きを止められて、それでもこちらを振り返ることなく、
デイジー姫は、淡々と口を開きます。

デイジー「気持ち悪かったよね?軽蔑し、憎悪したよね?『あの』私。
      みんなのこと――たくさん、たくさん、殺したんだ。
      こうなること、わかってた。私、馬鹿で、融通利かないから」


360Mii2019/11/10(日) 17:49:23EJfM3NDc (7/30)

ロゼッタ「それはデイジー姫の過失ではありません!むしろ貴方は被害者でしょう?気に病む必要なんて――」

デイジー姫は、相変わらず、遠い彼方を見ながら。

デイジー「あるよ。幾ら唆されようが…最終的に、『肉体暴走』することを選んだのは、私。
     知性暴走なら、まあ死人が出ることはなかったんだけどなー。あーあ、残念―。
     まあ、絶交されること覚悟で、納得して使ったけど、さ。

     …ゼルダの激怒も、ヒルダの絶望も、至極尤もだよ。
     気付いていないかもしれないけど、とんでもない恐怖を、
     私は――みんなの頭の奥に突き刺したんだから。

     この恐怖、完全に消えることはないよ。あのピーチですら、今でも――
     私の言動の中にチラッと暴走の気配を感じれば、息が止まるって言ってたし」

ゼルダ姫、ヒルダ姫が――まだ怯えを見せながら、デイジー姫の方をみやります。
――孤高の、姫を、みやります。

ロゼッタ「…それで。ここから離れて、どうするおつもりですか?
     そもそも、今は結界にみんな閉じ込められている状況なのですが」

デイジー「脱出のための共闘は惜しまないよ。
      でも、一緒に同じ場所にいるのは、やめにしよう。
      みんなが特訓するときは、私は部屋にこもってる。
      出くわさないようにうまいこと食事は運び込むから、
      そっちはそっちで、こっちはこっち一人で…頑張ろう。
      脱出するまで…脱出してから、も」


361Mii2019/11/10(日) 17:51:26EJfM3NDc (8/30)

…なんでしょう。うまく言い表せないのですが…こう、もやもやとした怒りが、
沸々と胸の奥底から湧き上がってきます。

ロゼッタ「それは…なんとも、馬鹿げた話ですね。
     私は、デイジー姫と…これからもずっと、仲良く――」



デイジー「――――無理だよっ!!」



ロゼッタ「…っ!」

デイジー「もう、そんな呑気なことを言える資格なんて、私には残ってない!
     一方的に、みんなの心を踏みにじった罪は、消えてくれないっ!
     みんなと顔を合わせるたび…血みどろになったみんなが脳裏に蘇って、
     胸が張り裂けそうで張り裂けそうで、堪らないよ!」

ロゼッタ「……」

デイジー「何度命を奪ったと思ってるの?
     ゼルダ75回、ヒルダ76回、……ロゼッタ229回だよ!?
     それも、安らかな死とは程遠いありさまで!」

あ、横の2人がまた気分が悪くなって口元を抑え込んでしまいました。
ヒルダ姫に至っては、私の背中に隠れてブルブル震えています。
い、一応確認しておきますが、その位置からリバースしないでくださいね?
復活すれば衣装も元通り?それは流石にレディを馬鹿にしています。


362Mii2019/11/10(日) 17:52:53EJfM3NDc (9/30)

改めて数を突き付けられると、得体のしれない薄気味悪さ。
…でも、どうしたことでしょう。
皆さんに「異常だ」と言われている私、ことロゼッタ。
いまいち、絶望感が襲ってきません。

というか、どうして3人の中で、ゼルダ姫が一番死亡回数が少ないんですか!
そしてどうして私だけ飛び抜けて多いのですか!?むしろ驚きの方が大きいです!

…はい、2人の肩代わりで特訓をし続けたからです、終わり。
なんだか理不尽です。
     


嗚咽を漏らしながら、ただ泣くだけのデイジー姫。
デイジー姫は、根が優しいですから。本当に。
自責の念に駆られて、駆られて。どうしようもない状態なのでしょう。


363Mii2019/11/10(日) 17:55:12EJfM3NDc (10/30)

ゼルダ「…そう、ですね。私たちも調子に…乗って、いました。
    金輪際、あの姿の貴方は見たくない。今の状態の方が好ましい――」

ヒルダ姫も、おずおずと、ゆっくりと、か細い声で問いかけます。

ヒルダ「……で、でも。その。もう、あんな暴走状態になることはないんですよね?
    あの狂暴だった時のデイジーとはとても仲良くはやっていけないかもしれませんけど…!
    今の、穏やかなデイジー姫となら、問題なく友達として、友人として――」



――違う。

――違う。



ロゼッタ「……違い、ますっ!!」バッ!

ヒルダ「!?」

ヒルダ姫には悪いですが、なんとか振り絞ろうとしていた声に横槍。
それでは駄目です、2人とも。全然、デイジー姫のことを想えていません。

ロゼッタ「ゼルダ姫っ!ヒルダ姫っ!失礼ながら、穏やかな状態のデイジー姫を慕い、
     野性味を浴びた状態のデイジー姫を憎む…などといった使い分けは
     私は…私は、承服しかねます!」

2人の方を向いて、赤裸々に想いを語る。語らなければなりません!


364Mii2019/11/10(日) 17:56:31EJfM3NDc (11/30)

ゼルダ「…どう、してですか?」

ロゼッタ「どちらも、デイジー姫が人生で得てきた人格、姿ではないですか!
     どちらが正義でどちらが悪だとか、優劣があるだとか、
     価値のない、秘めておくべき人格があるとか…そんなこと、おかしいです!」

デイジー「……っ!」

デイジー姫が、一瞬息を、飲む。しかし、すぐに真顔に戻ります。

デイジー「……ありがとう、ロゼッタ。私をそこまで庇ってくれて。
     でも、私自身、『裏の私』の逸脱ぶり、危険性は重々承知してるから。
     他人に庇ってもらえるようなもんじゃない。
     …だから、余計な事、しないでほしいな。
     もっとも、表の方の私との友達付き合いがしたいっていう――
     ゼルダ姫やヒルダ姫の願いも叶えることは無理なんだけど」

ロゼッタ「デイジー姫、貴方まで、なんてことを言うのですか!
     貴方自身が否定してしまったら、何もかも――」


365Mii2019/11/10(日) 17:58:44EJfM3NDc (12/30)

デイジー姫が、ゆらりと、立ち上がりました。



デイジー「――――れ」

ロゼッタ「……え?今、なんと――」





デイジー「――――黙れっ!」ゴウウウッ!!





ロゼッタ「…………なっ!?」ゾワッ!

ヒルダ「…ひっ!!!!」カキーン!

ゼルダ「…嘘……!ま、まさか、貴方――!!」

デイジー「何?ビックリしたか?所詮、同じ『私』だからな。
     『裏の私』の思考をトレースし、殺気を真似ることくらい…できるさ。
     まあ、自己暗示不足のせいで、戦闘力は底上げされてないけど、さ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・


366Mii2019/11/10(日) 18:00:53EJfM3NDc (13/30)

まさか、表の状態のデイジー姫でも、この位の造作ならできる、だなんて。

そのまま、猛烈な眼光、殺気をもって私を睨み据えます。

たちまち、私は、凍えきってしまいます。

ロゼッタ「…………くっ――」ジリッ

デイジー「だから、無駄なことはやめろ。
     ゼルダ姫たちと同調するのも、当然許さない。
     私とは…そうだ、言ってみれば今後はビジネスパートナーとして、
     最低限の助け合い、利害一致による協力関係さえあれば――」



ロゼッタ「――――う…あ…………」ガクガク



自分の意志が、呑み込まれていく。
強者に従うまま、喉元で意見が押し戻される。
わたし、には。どうする、ことも――。


367Mii2019/11/10(日) 18:02:48EJfM3NDc (14/30)






――――それで、いいの?





ロゼッタ(…………っ!!)

よいわけが、ありません。





――――ママは、そんなに、弱い人じゃ――ないよね?
――――困っている人のためなら、人一番頑張れる、人だもん。



ロゼッタ(…………)

ロゼッタ(……………………)

ロゼッタ(…………………………………………ありがとう、サヤカ。
     もう少し…いえ、まだまだ――私は、頑張れる!)


368Mii2019/11/10(日) 18:04:29EJfM3NDc (15/30)

ほんのちょっと、夢の世界にでも飛び立っていたのでしょうか。
一瞬だけ下を向いて、小さくひとつ、息を吸って、吐く。

目の前に立ちはだかる、デイジー姫を。
顔で怒って、心で泣いている、彼女を、しかと、二つの眼で睨みつけて。



デイジー姫が、私を、そう睨みつけるように――!!





ロゼッタ「――いい加減に、しなさいっ!!!!!」ギンッ!!





デイジー「――――っ!?」



デイジー姫の、信じられないという感じで面食らう顔。
それに優越感を得るわけでなく、考えを改めようともせず。
私は、気持ちと気合をありったけ篭めて、声をデイジー姫にぶつけます――!


369Mii2019/11/10(日) 18:07:20EJfM3NDc (16/30)

ロゼッタ「デイジー姫!結局貴方は、やはり私たちのことを信じてくれていない!
     自分ひとりで何もかも判断して、全部背負って!
     私たちの言葉に耳を塞ぐだけ!

     自分の気持ちを、分かってもらおうとする努力を怠って!
     心配でならない私たちの気持ちを、理解する努力を怠って!
     
     ならば、こちらにも考えがある!
     幾ら嫌だと、関わりたくないと駄々をこねても!
     救いの手を、声を、拒絶しつづけ切り裂き続けても!

     手を差し伸べ続けることを、決してやめない!
     齧り付いてでも、羽交い絞めにしてでも、深淵の闇から引き摺りだしてみせる!」

デイジー姫が、固まっています。戸惑っています。
まさか、私に反撃されるとは思ってもみなかったのでしょう。
感情の奔流に、私が呑み込まれると――心底思っていたに違いありません。


370Mii2019/11/10(日) 18:09:23EJfM3NDc (17/30)

デイジー「な、なにを急に、らしくもない――」

ロゼッタ「――らしくも」

激情に任せて、体が勝手に動く。

ロゼッタ「――ないのは」

信じられない、力が、湧いてくる。
懐かしい愛娘には、感謝、感謝です。



ロゼッタ「――貴方だ、デイジー姫っ!!」ガンッ!



デイジー「――ぐっ……何!?」ダンッ!

ゼルダ「――なん、ですって」

不意を衝いたとはいえ、激しく地を蹴って俊敏に動いた私の体は――
固く握った拳をこめかみにクリンヒットッ!
…させることはできず咄嗟に両手で受け止められたものの、
かなりの勢いを殺し切れずに、大きくズサァっと後退させる。

そのままダダッと追い縋り、全身全霊で突撃しながらの――肘突きっ!
すぐ後ろの壁に叩きつけられ、さしものデイジー姫もカハッと空気を吐きます。
そのまま、凄まじい剣幕で、伸ばした腕をドンッと彼女の肩に突き付け――。


371Mii2019/11/10(日) 18:11:18EJfM3NDc (18/30)

ロゼッタ「……………………」ウツムキ

デイジー「……ロ、ロゼッタ?」






ロゼッタ「……こひゅぅ……こひゅぅ――」ペタン

ロゼッタ「すいま、せん。電池、切れです」ゼェゼェ

ゼルダ「」

ヒルダ「」

デイジー「」



肩に押し付ける、どころか軽くタッチすることも出来ず、
火事場の馬鹿力の反動で、全身から力が抜けて…
激しくぜぇぜぇ息を吐きながら、デイジー姫の足元に膝を付いてしまいました。
ギャグ的に言うなら目がグルグル~、の状態です。全然、格好が、付きません。


372Mii2019/11/10(日) 18:13:33EJfM3NDc (19/30)

ロゼッタ「……ごほごほっ――で、でもま、あ。
     今のデイ、ジー姫、が。『表の状態』であったと、して、も。
     力量差が、思い切り、あるの、ですから、ね。
     とう、ぜん、でした、か――ごほっ…」

デイジー「…………」

デイジー姫が、心配そうな顔をして、私を見つめています。
手を差し伸べようとしゃがみ込もうとして、躊躇して、そんな感じ。
…仰天したせいで裏の顔のなりきりが途切れたのか、よく知る朗らかなデイジー姫です。

ロゼッタ「――――言って、おきま、すが、さっきの、私の、主張、は、本心、ですよ」

デイジー(ビクッ)



そこに映るのは、後悔、恐怖、怯え、色々な感情が混ざる表情。

まだ体が本調子ではないですが、五臓六腑を奮い立たせて、なんとかかんとか立ち上がる。
そのまま、デイジー姫に一歩一歩、ふらりふらりと近づきます。
体中痛みますが、目線は決して逸らさない。


373Mii2019/11/10(日) 18:16:20EJfM3NDc (20/30)

デイジー「…い、嫌。やめ、てよ、ロゼッタ。…こっち、来ないで!」

両腕で自身を抱きしめて、悲嘆はまだまだ尽きない様子。

ロゼッタ「やめません。デイジー姫とは、これまでもこれからも、
     親友で、居たいですから」

デイジー姫が、怯えるまま後ずさる。
その分だけ、――いえその分以上に、私は歩を進め、距離を減らす。

デイジー「何度も、何度も、何度もっ!
     ロゼッタ、貴方の命を奪ったのよ!?」

ロゼッタ「残機があった、とそれこそ何度言えば分かるのですか。
     それに、貴方は――その回数まで、しっかり覚えてくれている。
     1回1回、その瞬間を軽んぜず、脳裏に刻んだということでしょう?
     むしろ、私の方が『辛い思いをさせて本当に御免なさい』ですね」

デイジー「ちが…ちがうよ、そんなに私…思いやりのある、優しい人間じゃない…………
     自分の力不足を他力本願で埋め合わせようとしたロクデナシで…」


374Mii2019/11/10(日) 18:19:03EJfM3NDc (21/30)

ロゼッタ「私にとっては十二分に、優しさに満ち溢れた人ですよ?
     …『表のデイジー姫』も、『裏のデイジー姫』も、ね」

デイジー「……っ!!」ハッ

ロゼッタ「私の知るデイジー姫は、そうですね…。

     表では、はっちゃけていて、ちょっと仕事に不真面目で…
     真面目に政務を執るピーチ姫からは頻繁に呆れられていて。
     突拍子もないことを言って、周囲を振り回したりして。
     でも、どんなときでも前向きで、めげなくて、ムードメーカーで。
     困難に立ち向かおう、強敵にも果敢に挑もうっていう強い意志の塊で。
     ピーチ姫や私を、その元気と勇気で数多く助けて、救ってくれた。

     裏では、視界に入る者すべて、思い通りにならないと済まない苛烈な人で。
     最適解を妨害する者、導出に意義を唱える者には遠慮なく制裁するスタンスで。
     …でも、私たちの無理強いと自分の未来とを天秤にかけて、一度決めた事なら。
     たとえそれが、『表のデイジー姫』の耐え難い苦痛、苦難になったとしても、
     少しでも早く私たちが経験値を積めるように、冷酷に徹することができて。
     自分本位のようでいて、あくまで他人本位の本質は変わっていない。

     おまけに、ゼルダ姫も白旗を上げる、凄まじい戦闘力――
     これを遺憾なく発揮できる、素晴らしいファイターであることに気付かされました。
     ……私は、1人の友人として、とても嬉しく、誇らしく思います」


375Mii2019/11/10(日) 18:21:33EJfM3NDc (22/30)

デイジー姫が、目尻にぎっしりと、涙を蓄えています。
どんな葛藤が、これまであったのか。私などには知る由もありませんが。

優しく、優しく。デイジー姫を、ふんわりと抱き締めました。
今は、これだけで、十分でしょう。

ロゼッタ「ですから。親友でいられないだなんて、
     悲しいこと、言わないでください。寂しいこと、言わないでください。
     私たちはそんなこと耐えられませんし、貴方だってきっと耐えられない。

     これからももっと、デイジー姫のことを知っていきたい。
     デイジー姫に、私たちのこと、もっともっと知ってもらいたい。
     呆れられたり、時には喧嘩することもあったりするでしょうが、
     ずっと親友でいたい。

     ――この願い、どうか叶えて頂けないでしょうか?」ギュッ

デイジー「――――――――う―――あ――――――――」

ロゼッタ「最後に決めるのは、『表のデイジー姫』でも、『裏のデイジー姫』でもない。
     全部ひっくるめて、貴方が決めちゃってください、『デイジー姫』!」

デイジー「――――――――――――――――――――――――
     うわああああああああああぁぁぁぁ――――ん!!!!!!」



堰を切ったかのように、たちまち涙雨、号泣し出すデイジー姫。
ああ、本当に、本当に……お疲れさま、でした。


376Mii2019/11/10(日) 18:24:24EJfM3NDc (23/30)

ひっく、ひっくと、デイジー姫は私の腕の中で、まだまだ泣き続けます。

デイジー「グズッ…マリオに、縋って、わだじ、強く、なったの。
     厳しい、条件付きとはいえ、確かに、強く、なったの。

     でも、お父様亡き後のサラサ・ランドで政務に本格的に取り掛かってみたら…
     性格の苛烈さが仇となって…表の私がびっくりするくらい、裏の私に怪我を貰う人たちが続出して!
     もともと、それほど仲の悪くなかった大臣や役人たちにまで、愛想尽かされて!

     お城に生き残った1割の、更に半分が下野しちゃって!
     一体私、何をやってるんだろうって悔やむばかりでぇっ!!」

ロゼッタ「…今は、どうなのですか?」

デイジー「……私のこの二面性を受け入れてくれている人――
     そんな人たちだけで、ほぼ全ての役職役員が構成されてる。
     そのおかげで、ようやく軌道には乗り出したけど、でも…!」

ロゼッタ「なら、よいではないですか。デイジー姫のことですから、
     苛烈になりながらも真面目に改革を図ったのでしょう?
     理屈で負けているのにそれに異論を唱えて、女王に反撃されて。
     それで下野するというのなら、それまでの人材だったということですよ」

ゼルダ「ロ、ロゼッタ。施政者でないとはいえ、ズバッと斬りますね…。
    ヒルダ姫、彼女の言い方を真に受け過ぎてはなりませんよ。
    上に立つ者としては、清濁併せ持ち、吟味に吟味を重ねて…」

ヒルダ「は、はい、わかったようなわからない、ような…」

むう。そんなこと、今言わなくてもいいじゃないですか。


377Mii2019/11/10(日) 18:27:01EJfM3NDc (24/30)

ロゼッタ「デイジー姫。ともかく、貴方が『仮面の姫』となるすべを身に付けたことは、
     何ら恥じるべきことではない、と私は思います。むしろ誇るべきです。

     ただ、仮面という表現の仕方はちょっと違いますね。
     どんな姿であろうとデイジー姫なのですから。切り離すことなどできないのですから。
     そこを正々堂々と主張して主張して、認めさせればよかったのですよ。
     ええ、認めさせてやりましょう!私も微力ながら、協力させていただきます。
     困ったときは、いつでも仰ってください」



デイジー姫は、泣きながら、こくこく、とうなずくばかり。



ロゼッタ「離れ離れだなんて提案は撤回してくださいね。
      これからも、よろしくお願い致しますね!」



デイジー「うんっ!――うんっ!!ロゼッタが親友で――本当に、よかった」ポロポロ


378Mii2019/11/10(日) 18:29:58EJfM3NDc (25/30)

ゼルダ姫とヒルダ姫も、思わず貰い泣きしています。
これで、一件落着といったところですかね。

ロゼッタ「それでは、とりあえず朝食としましょう。
     皆さん、お腹がすいたことでしょう?
     デイジー姫も、いっぱい食べて、元気になって下さいね!」

デイジー「うんっ!――うん!!」ポロポロ

ロゼッタ「さあ、私たちの友情も雨降って地固まる。弾みも付きましたし、
     明日からの特訓も、是非お願い致しますね、デイジー姫!
     少しでもデイジー姫のご期待に沿えるよう、全力を尽くします!」グッ

デイジー「うんっ!――うん!!










     ――――――――――――――――うん?」ピタリ

ゼルダ「うん?」

ヒルダ「うん?」


379Mii2019/11/10(日) 18:33:40EJfM3NDc (26/30)




デイジー「……ごめん、それって、どういうこと?」



はて、デイジー姫が泣き止んで、素の状態に戻っています。
それは嬉しいのですが、一体どうしたというのでしょう。



ロゼッタ「え?ですから……





     前の日から自己暗示が必要、発動したら就寝まで効果が持続するということは…
     あの特訓、1日おきになら問題なくできるということでしょう?
     効率はもともとの予定の半分ですが、それでも十分やる価値はあると思います!」フンスッ

デイジー「ファッ!?」

ゼルダ「」

ヒルダ「」


380Mii2019/11/10(日) 18:37:19EJfM3NDc (27/30)

ゼルダ「じょ、冗談ではありませんっ!もう、あのような拷問はこりごりです!
    どんなことがあろうとも、デイジー姫を暴走させてはならない!」マッサオ

ロゼッタ「私の話をちゃんと聞いていましたか?
     そういう、二面性の一方を否定すること自体が誤りなのですよ?」

ゼルダ「い、いえ、流石にそれとこれとは話が別でしょう!?
    特訓に本気にさせることはよろしくない、と言っているのですよ!!」

デイジー「そ、そーだよロゼッタ!今回ばかりは、ゼルダの主張が100%正しいよ!」

ヒルダ(こくこくこくこく)

ロゼッタ「むむぅ…では、私だけでもいいので鍛えて頂けませんか?
     そのように自己暗示をすれば解決するのですよね?」

デイジー「ま、まあ、ロゼッタのみに絞った特訓をするって自己暗示くらいなら、
     できなくはない、とは思うけど…やったことはないけど…」

ゼルダ「……付き合いきれません。そんなに死にたいのなら勝手にやってください。
     あとで泣いて後悔しても遅いですし助太刀も一切しませんよ」プイッ

デイジー「ゼルダぁ、ロゼッタを諦めさせるの、協力してよ…」

ロゼッタ「……………………」


381Mii2019/11/10(日) 18:41:47EJfM3NDc (28/30)

ロゼッタ「よし、なんだかワクワクしてきました!デイジー姫!
     とりあえず、残りの期間を全て私に充てて頂けるのならば、
     ゼルダ姫 く ら い なら実力で追い抜けますよね!頑張ります!」

ロゼッタは ちょうはつした!▼

ゼルダ「は?」イラッ

ロゼッタ「デイジー姫の指導は、ゼルダ姫 な ん か とは比べ物にならないほど
      的確でお上手ですからね!最長で90日もあれば、
      外の世界で何年分、いえ何十年分も特訓するのと同じ価値がありますよ!
      こんな特訓を独り占めできるだなんて、なんて私は幸運なのでしょう!」ウットリ

ゼルダ「あぁん?」ギロッ

ロゼッタ「どうしたのですか、ゼルダ姫。
     特訓から尻尾を巻いて逃げ出す貴方には、関係のない話でしょう?
     私は勝手に強くなりますので、どうぞどうぞ、安全第一で過ごしてください」

ゼルダ「誰が逃げると言いましたか、誰がっ!
    よいでしょう、そこの馬鹿な女を黙らせるために、
    私も特訓を続行しようではないですか!後悔することですね!
    デイジー姫、さあ、さあ、さあっ!」ズイッ

ゼルダは ちょうはつに のってしまった!▼

デイジー「ゼルダァ――ッ!?」

ヒルダ「」


382Mii2019/11/10(日) 18:49:39EJfM3NDc (29/30)

デイジー「」チラッ

ヒルダ「わわわわわ私は絶対に嫌ですからねっ!逃げますからねっ!?
    後ろ指差されようと、馬鹿にされようと、断固拒否しますからねっ!!!」ズサッ

デイジー「う、うん。わかってる、わかってるから。
     そんな怯えた目で私を見ないでくれるかな」

ロゼッタ「では朝食を持って参ります!私にお任せください!
     みなさんはお疲れでしょうから、ここで待っていてくださいね!」

バタン。

デイジー「…ふう。参ったな、こりゃ。ロゼッタにはかなわないや。
      ――――――――――――――――――――――――ありがとう」ボソッ

ヒルダ「…凄いですね、ロゼッタは。…あれ、ゼルダ姫?また顔が青く…」

デイジー「今頃になって挑発の効果が解けて後悔しだしてるんじゃないかなー。
      なんだったら、私からロゼッタに『ゼルダはやめておく』って伝えておこうか?」クスッ

ゼルダ「いいいいりましぇんよそんな気遣い!」ガクガクブルブル

ヒルダ「…ふふっ」

デイジー(あれ?そういえば、何かの事故で血塗れたりしたら…私って
      ゼルダとヒルダの見分け、しっかり付くのかな…ま、いっか)

ヒルダ「…っ!?何ですか、この悪寒は!?」


383Mii2019/11/10(日) 18:52:51EJfM3NDc (30/30)

ロゼッタ「お待たせしました!
     今朝は、割とフルーツが多めに出現してくれましたよ!
     脂っこく無くて、本当によかったです!

     あと、栄養のことを考えて、こちらも大量に用意しておきました!
     いくらでも飲んでくださいね!お代わりもすぐ作れますから!」トンッ




トマトジュース「1人あたり2Lもあるぞ」マッカッカ



ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」ウプッ

ロゼッタ「…あれ?どうしたのですか、2人とも。急に顔色を変えて、口元を押さえて…
     え?ちょっとトイレに行ってくる?い、いきなりどうしたのですか!?」



ダダダダダダダッ――――



ロゼッタ「何か、悪いことをしてしまったのでしょうか…?」

デイジー「そ、そうだね、私から見ても極悪非道なことをやったと思うよ」