321 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:05:51.20SQcoDrlX0 (33/77)

せつ菜「今の私たちじゃ勝てないんです…!お願いです…!お願いですから…っ!!」


せつ菜「助けてくださいよぉ…!!」ポロポロ


にこ「……相手は誰?」

せつ菜「凛さんと梨子さんと海未さんです……」

にこ「……そう、分かった。でも、あんたらを助けられる保証はないし、もし私が行くまでに死んでたら助けることは出来ないからね」

せつ菜「…いいんですか?私から言っといて難ですけど」

にこ「私は対アンドロイド特殊部隊では海未と曜以外のやつらが大っ嫌いなんでね、特にダイヤと凛が嫌いだから、そいつらを殺せるかもというのなら行くわ」

せつ菜「…分かりました、お願いします」

にこ「……あんたらも生きてなさいよ、ここで死んだら希も悲しむわよ」

せつ菜「…もちろんですよ!」

にこ「……じゃあね」

せつ菜「はい…」

プツッ


322 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:09:52.84SQcoDrlX0 (34/77)

せつ菜「………」

せつ菜(私と穂乃果さんは、ご存じの通り軍人として生まれた業務用アンドロイドでした)

せつ菜(それはつまり殺すことだけを考えた殺戮マシーンだったんです)

せつ菜(…しかし変わりました——いや、変えてくれたんです)


せつ菜(希さんが。希さんが私たちを変えてくれたんです)


希『んー君たちー』

せつ菜『…何か用ですか?』キッ

穂乃果『…近づくと殺すよ?』

希『んあはは…まだ何も言ってへんのに』

せつ菜『じゃあ何の用ですか?もしくだらないことだったら殺しますね』

希『んーそうやねー』


希『ウチのところで就いてみる気はない?』


せつ菜(…それが始まりでした、もちろん当時の私たちは拒否しましたよ、ふざけるなって)

せつ菜(そしたら希さん、ウチとバトルしてウチが勝ったらついてきてよっていうもんですから、なんかその勝つ気でいるような態度がムカついて衝動的に体が動いてたんです。当時の私と穂乃果さんとの連携は現在と比べてもそこまで劣っていなかったので穂乃果さんと二人がかりで希さんを負かすのではなく殺しにいったんです)


323 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:15:01.40SQcoDrlX0 (35/77)



希『がっ…!』


せつ菜『…愚かなものですね、人間風情が生意気にもアンドロイドにバトルなんて挑むから』

穂乃果『遺言は何かある?』


希『…ふふふっそっちがね」


カランッ


せつ菜『っ!?』

穂乃果『グレネードっ…!?』


ドカーン!


せつ菜(…あぁ、懐かしいですね)

せつ菜(それで私たち二人は一緒に吹き飛ばされて意識を失ってしまいました、目覚めれば手当をされベッドで横になってて、私たちが目覚めるまでずっと近くにいてくれた花丸さんが動いちゃダメずらって可愛げに言ってきたのを今でも覚えています)


324 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:17:21.29SQcoDrlX0 (36/77)

希『ふふふっ別に逃げたいなら逃げてもいいよ、でも今は逃げない方がいいよ。君たち二人を処分しようとしてる連中がいっぱいいるから』

せつ菜『! どうしてそれを…!』

穂乃果『………』

希『ウチは二人を守りたいんよ、ウチはアンドロイドの味方やもん。それに、こんな可愛い子が殺されるのを見たりなんかしたら、ウチ一生後悔しそうだからね』

せつ菜(…それから希さんの背中を少しずつ追いかけた)

せつ菜(最初は反抗ばっかだったけど、次第に心を開いて、そして優しい私へ————)


せつ菜(業務用アンドロイドではない、自分だけの心を持ったアンドロイドへと変われた)


せつ菜(その自我を持った私が心の底から救済を求めてた。これを落ちぶれたというのなら、それを私は退化と呼ぶでしょう)

せつ菜(私は成長した、誰かに頼ることのできる私になった。だから希さんには本当に感謝しなければいけません)


ピッ プルルルルルルル


せつ菜(…そして私は、再び携帯を耳に当てた)


せつ菜「もしもし、——さんですか?」




325 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:19:26.36SQcoDrlX0 (37/77)




ドドドドドド!


穂乃果「ちっ…」

梨子「穂乃果さんの相棒さん、逃げちゃったけど?」タッ

穂乃果「逃げたんじゃないよ、これも作戦の内だよ」

海未「見苦しい嘘はやめてください、私は共感性羞恥なのでそういうことを聞くのが辛いんですよ」スッ

凛「というか一人で凛たち三人を相手にしようなんて凛たちも舐められたものだね、生け捕りじゃなくてそのまま殺さないかにゃ?」バンバンッ

梨子「いいや、生け捕りで拷問して楽しむ方がいいよ」

梨子「その方が絶対に気持ちいいから」ウフフ

凛「…別に凛はそういうの興味ないんだけどなー」

海未「どっちでもいいですから戦いに集中してください、三対一とはいえ相手は軍神で、希の入れ知恵まで授かってる相手です。侮ることは許されません」

梨子「あはっ…もしかして海未ちゃん、あの紫髪の置き土産グレネードがトラウマになってる?」クスクス

梨子「怖かったよね~あんなのやられたら私死んじゃうな~」

海未「…遠まわしに私への煽りですか」

凛「いや遠まわしも何も直球にゃ…」


326 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:21:50.55SQcoDrlX0 (38/77)

海未「あなたの頭を治してくれる病院を教えてあげましょうか?」

梨子「あはははっそれはお互い様だね」


穂乃果「…あなたたち全員狂ってるけどね」ドドドド


梨子「何百人もの人を殺してるデスマシーンには言われたくないかな」シュッ

凛「自覚症状ないパターンが一番タチ悪いにゃー」

海未「私たちの話に参加する余裕があるとは驚きましたね」

海未「…というか、さっきから引いてばっかですね。戦う気あります?」

凛「時間稼がれてるにゃー」

梨子「何か企んでるね」

海未「そうですか、なら即行で方を付けましょうか!」ダッ

穂乃果「させないっ!」


バンバンバンバンッ!


海未「っ!希のショットガンですか…!」



327 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:26:01.21SQcoDrlX0 (39/77)

梨子「あれはまともに相手したら死んじゃうね」

海未「ええ、なら離れて集中砲火と行きましょうか!」ドドドド!

梨子「凛ちゃん投げ物よろしくねっ!」ドドドド

凛「了解にゃ!」

穂乃果「ちっ…」

穂乃果(このまま逃げ続けても状況は変わらない…!どうすればいいんだろう…)


タッタッタッ!


花丸「させるかーっ!」


穂乃果「…!花丸ちゃん!」

花丸「助けに来たずら!」

海未「ちっ…希のところの部下ですか」

花丸「これでも食らえーっ!」ポイポイッ

凛「っ!?グレネードにゃ!」

梨子「あんなに持ってきて…!」



328 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:27:15.47SQcoDrlX0 (40/77)



ドカーン!


花丸「穂乃果ちゃん今のうちに逃げるずら!」

穂乃果「う、うん!」ダッ

梨子「逃がさないッ!」ダッ


せつ菜「逃がしますっ!」ドドドドッ


梨子「ちっ…」

海未「帰ってきましたか…」

せつ菜(電話を終え戦場に戻った私はトリガー引いて発砲、穂乃果さんが逃げるタイミングをなんとか作った)


穂乃果「ありがとうせつ菜ちゃん、花丸ちゃん!」

花丸「このくらいお安い御用ずら!」

せつ菜「私もです!」




329 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:30:05.75SQcoDrlX0 (41/77)

海未「…感動の再開で盛り上がるのはいいですがその三人で私たちにどう勝ちますか?」

海未「二人は死にかけ、それにあなたは銃が撃てないらしいですね」

花丸「………」

梨子「んふっ…じゃあ銃が撃てないっていうなら殺しやすいあなたから殺すのが最善よねっ!」ダッ

花丸「ふっ」シュッ

梨子「あれ…戦えないんじゃなかったの…」

せつ菜(跳躍使って一瞬で距離を詰め、逆手持ちでナイフを突き刺そうとする梨子さんに対して花丸さんは飛び退け回避をした)

花丸「…マルだって最低限は動けるよ、非戦闘員だったらここに来るはずがないよね」

梨子「あはは、そうだね」

海未「…しかし最低限戦闘が出来るとしても状況は変わらない」

凛「八方塞がりだね、どうするにゃ?」


せつ菜「…戦うのみです」カチャッ


穂乃果「そうだね」



330 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:31:24.70SQcoDrlX0 (42/77)

穂乃果「…花丸ちゃんは逃げて、もうこの戦いに参加しちゃダメだからね」

花丸「…! で、でも!」


穂乃果「“穂乃果たち”を信じて」


花丸「その一人称…!」

穂乃果「ここで死んでも悔いのない戦いをするよ」

花丸「…そっか、でも負けないでね」

穂乃果「もちろん、だから花丸ちゃんは今すぐ逃げて」

花丸「…はいずらっ!」ダッ

凛「あーあの子逃げちゃったけどいいの?」

海未「別にいいです、むしろここで逃げる選択は賢明と言えるでしょう。戦えばどうせ死ぬんですから」

凛「そんなことは分かってるにゃーあの子はほぼ戦えないんだからあの子を集中的に狙ってあの子を弱点にすればいいじゃんって話だよ」

梨子「はぁ…これだから戦闘狂のおこちゃまは困るね」

凛「は?」

梨子「もしあそこにいる二人が万全の状態だったらみんなそうするけど、今は死にかけなんだからほとんど戦えない子を相手するより大怪我を追ってる大きな駒を取った方が旨味も大きいでしょ?」

凛「旨味って…」

海未「使う言葉がちょっと違いますが大体はあっています、つまり逃げだした子を狙うよりあの二人を狙った方がいいでしょう」


331 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:33:42.09SQcoDrlX0 (43/77)

穂乃果「…そうしてくれるならこっちも好都合だよ」

せつ菜「ええ」

梨子「その強気な発言がいつ崩れるか見物だね」

凛「いいからとっとと————」


凛「——やるにゃあ!」ダッ


せつ菜(やはり先陣を切るのは相手の凛さんでした、一回の跳躍で私との距離を縮めて右手を大きく後ろに構えて右ストレートかと見せかけてのローキックを繰り出してきた)

せつ菜「あぶなっ…」

せつ菜(何も考えず力任せに動いてそうな割には希さんみたいな手品の類を使ってくる相手でした、人もアンドロイドも何か構えを取れば先入観で何が来るかを読んで先にそれに対応しようとします、だからそれを逆手に取り後ろにまでやった右手に注目させて、その間にローキックを仕込むというちょっと高度な技ですが、それを今の相手がやってるとなるとこれからも何をしてくるか分かりません)

凛「その体じゃ躱しながら撃てないよね!だって片方の肩が壊れててグリップの部分が持てないから!」バンバンッ

せつ菜「ちっ…」

凛「なら攻撃を続けてればいいだけの話!」


332 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:34:41.79SQcoDrlX0 (44/77)

海未「今日ここで刀の錆びにしてあげますよ!」ダッ

穂乃果「せつ菜ちゃ——」


ドドドドド!


穂乃果「!」シュツ

梨子「穂乃果さんの相手は私だよ?」

穂乃果「ちっ…」


せつ菜「きゃっ……」

海未「ほらほらいつもの威勢はどこに行きましたか!?」ブンブンッ

海未「銃が撃てないんじゃか弱い女の子同然ですねっ!」

凛「トリックスターだけどね」

せつ菜「これでっ!」ポイッ

海未「っと…」ピタッ


凛「はっそんなものっ!」ドカッ


せつ菜「っ!?」

せつ菜(足止めくらいと考えてグレネードをぽいっと落としたのですが、何を思ったのか強引にもピンの抜かれたグレネードをサッカーボールを蹴るみたいに私の方向へと飛ばしてきた)


333 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:35:58.15SQcoDrlX0 (45/77)



カンッ!


ドカーン!

穂乃果「っあぶない……」

せつ菜「穂乃果さん…!」

せつ菜(穂乃果さんは飛んでるグレネードにナイフを投げて見事に命中、結果グレネードの軌道を変えたことにより私はほぼ無傷だった)

せつ菜(穂乃果さんが助けずとも多分死にはしてなかったと思いますけど、流石穂乃果さんは如何なる状況でも凄い人でした)

タッタッタッ!

海未「本当に軍神は厄介ですね!」ドドドド!

穂乃果「よしっ…」

せつ菜「…!」

せつ菜(穂乃果さんのその一言を聞いて私は察した、梨子さんと戦いながら苦し紛れに放ったリスクと織りなす投げナイフ、それは私を助けると同時に凛さんか海未さんが私につけてるマークを穂乃果さんに移す為での投げナイフでもあった)

せつ菜(結果海未さんは穂乃果さんへ一直線、左手が壊れててまともに銃が撃てない私に二人相手はもはや死ぬしか残された道はなく、それを解消するために穂乃果さんは動いた)



334 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:37:15.21SQcoDrlX0 (46/77)

穂乃果「なら私と勝負しようか!」ドドドド!

海未「ええそうしましょう!梨子!ついてきてください!」

梨子「もちろん!」ダッ


凛「じゃあ凛はあなたとだね!」ダッ



にこ「はい、ストップ」ドドドッ



凛「っ!?」シュッ

海未「…! にこ…?」ピタッ

梨子「にこさん…?」ピタッ

穂乃果「なんであいつが…」

せつ菜(凛さんの猛攻を再び躱そうと体を動かそうとした時、救済の手はとうとう私たちへと差し伸べられた)

せつ菜(小さな体だけど、その人の背中は誰よりも大きかった)


335 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:38:22.90SQcoDrlX0 (47/77)



せつ菜「にこさんっ!」キラキラ


にこ「はぁ…はぁ…間に合った…」

凛「…凛に発砲って何のつもり?」

にこ「悪いわね、海未」

海未「…何故私に謝るのですか?」

にこ「私にも戦う理由があるの、海未とは仲良くしたかったけど、生憎私はここの部隊じゃ海未と曜以外とは仲良く出来ない人間なんでね」

にこ「私ムカつくのよね、凛とダイヤが」

凛「…それはつまり?」


にこ「あんたらを殺しに来たのよ」


梨子「…はははっもしかしてにこさんも頭おかしくなっちゃった?」

にこ「ええ、元からおかしいわ」

にこ「でもあんたらはもっとおかしいわ、狂った私が軽蔑するほどに狂ってる」



336 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:39:10.64SQcoDrlX0 (48/77)

梨子「…あーあっそっかそっか、じゃあ結局にこさんも所詮愚者であったってことなんだね」

海未「…にこ、もし今その考えを取り下げるというのならあなたには何もしません、ですからやめましょう?そんなこと」


にこ「お断りね」


にこ「だから謝ったのよ、海未」


にこ「私も海未とは戦いたくないけど、それ以上にこいつらがムカつくからね」


海未「…そうですか、残念ですね」

にこ「……あんたら」

せつ菜「はい」

穂乃果「…何?」

にこ「適当に戦って隙を窺って逃げるわよ、今の状況じゃ勝つことは無理だから」



337 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:40:47.12SQcoDrlX0 (49/77)

凛「…耳打ちのつもりかもしれないけど聞こえてるよ?」

梨子「逃げるっていうなら尚更逃がすわけにはいかないかな」カチャッ



「そうだね、逃げる必要はないかな」バンッ!



梨子「きゃっ!?」

凛「今度は何ー!?」

海未「曜…!」

にこ「曜…!?なんで曜が…!」


曜「ふふふっせつ菜ちゃんに呼ばれたんだよ」


にこ「せつ菜が…!?」

せつ菜「曜さんっ!」キラキラ

梨子「なんで曜ちゃんがこいつらと…」

曜「ごめんね梨子ちゃん、希ちゃんが殺されちゃったっていうなら私もせつ菜ちゃんたちの味方をしないといけないからさ」



338 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:42:02.88SQcoDrlX0 (50/77)

海未「曜もですか…ですが曜、あなたは何も分かっていませんね」

曜「何が?」

海未「曜は無謀を何かと履き違えていませんか?死にかけの二人とにこ一人、そしてほぼ無傷の私たち三人というこの状況を打開できる何かを持っているのですか?」


曜「当たり前だよ」


凛「へー何?教えてにゃー」


「こんにちは、AAの皆さん」



善子「堕天使ヨハネ——こうり」



絵里「曜の助っ人として、あなたたちを潰しに来たわ」


善子「最後まで言わせなさいよぉ!」

海未「絢瀬絵里と津島善子…!?」

梨子「げっ…堕天使だ…」

凛「なにそれ?」

海未「………」

曜「これでタイ…いや、こちらが有利だね」


339 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:43:06.51SQcoDrlX0 (51/77)

海未「…あの二人を呼んできてください、向こうの殺し屋は無視してもらって結構です」

梨子「あ、うん!」ダッ

にこ「…驚いたわね、せつ菜。そして曜もね、まさか絢瀬絵里と津島善子とつるんでたなんて」

曜「あははっもう私が対アンドロイド特殊部隊にいる理由がなくなっちゃってね」

にこ「…そう」

曜「そういうにこさんこそ良かったの?対アンドロイド特殊部隊の人たちを敵にして」

にこ「いいの、確かに私は強くなる為にここに来たけど、あいつらとつるんで強くなりたいとは思わないわ、海未には申し訳ないけどね」

にこ「海未、あんたにはお世話になったわ。丁寧に色々教えてくれて、戦う時以外に可愛く笑う姿を見ればあんたもやっぱり普通の女なのねって幾度となく思った」


にこ「海未、あんたは常識人よ」


にこ「ただ海未は、“死ねないだけ”の常識人よ」


340 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:43:52.95SQcoDrlX0 (52/77)

海未「…そうですか、にこにそう言ってもらえるならとても嬉しいです」

海未「ですがやはり疑問です、ダイヤや凛がおかしいというのは私にでも分かります、ですがこの頭おかしい人たちを敵にするとまずいと一番分かってるのはにこなのでは?」

海未「今回の行動はあまり賢いとは言えませんよ」

にこ「それは私と海未が何を重要とするか、そこに違いがあっただけの話よ」


にこ「私は道徳性を重要としたいの」


にこ「もっとも、人の汚さとかじゃなくて、私は一人の姉としてダイヤを軽蔑してるだけ」

海未「…分かりませんね」

にこ「そりゃそうよ、姉という立場でしか分からないことだからね」


341 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:45:43.01SQcoDrlX0 (53/77)

凛「はっ所詮にこちゃんはにこちゃんだね」


凛「雑魚は雑魚のままだったよ」


曜「対アンドロイド特殊部隊同士じゃ戦わないから分からないと思うけど、にこさんは強いよ」


凛「へぇ曜ちゃんがそう言うのなら強いのかもだけど、やっぱり曜ちゃんも曜ちゃんだよ」

凛「今回のこの行動、ホントにバカだね。自分の強さに過信しすぎじゃないかにゃ?」

曜「…それはお互い様だよね」

善子「私たちもいるの忘れてない?この状況、人数だけでいうなら有利だからね」

凛「死にかけの二人がいるから不利だと凛は思うんだけどねー」


穂乃果「なら死にかけの私たち二人を一人としてカウントすればいいだけ」


せつ菜「私たちは二人で一人です」


海未「………」



342 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:47:12.13SQcoDrlX0 (54/77)

「戻ってきてみれば…」


ダイヤ「また随分と騒がしいことになっていますわね」


にこ「…ダイヤ、久しぶりね」

ダイヤ「にこさんですか、梨子さんから話は聞いていますが無茶なことをしますわね」

にこ「チャレンジャーなものでね」

「ふふふっあの軍神とトリックスターが死にかけなんて眼福ね」クスクス

穂乃果「…腹が立つね」

せつ菜「私もです」

絵里「…誰?」

「あら、分からなかった?ごめんなさいね」


果林「私は朝香果林、よろしくね」


果林「…あ、あなたは別に自己紹介はいいわよ?絢瀬絵里、うん知ってるから」

絵里「…別にするつもりなんてなかったわよ」

果林「あらそう?ごめんなさいね」フフフッ



343 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:48:14.97SQcoDrlX0 (55/77)

絵里「………」


曜『行かなきゃ!これは行かなきゃ絶対にダメだよ!』


絵里(曜が突然そう言いだすもので急いで準備して来てみた場所、それはまさに戦場と言ってもいい場所だった)

絵里(この状況、五対六————もしくは五対五の大規模な撃ち合いが始まる前であった)


絵里(相手も、味方も、全員が超一流)


絵里(曜はせつ菜という子と穂乃果という子を守りたいという理由が大きくて絶対に負けられないと言ってたけど、私たちからしてもこの状況は絶対に負けられない)

絵里(この勝負で雌雄を決するでしょう、ここで私たちの主力を全員投じるのだから、全て…全てを賭けた戦いが今、始まる)

ダイヤ「ではこうして向かい合ってても難ですし始めましょうか、私たちが来るのを待ってくれたのは感謝します」

曜「あはは、待ってたわけじゃないけどね」

凛「えーこれ流れ的に五対六でやるのー?なんかごちゃごちゃしてて凛イヤにゃー」



344 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:49:15.60SQcoDrlX0 (56/77)

にこ「…穂乃果、せつ菜」

穂乃果「何?」

せつ菜「何ですか?」

にこ「あんたら希に色々教わってる身でしょ?」

せつ菜「はい」

にこ「なら私と一緒に戦いなさい」

穂乃果「…なんで?連携取れないんじゃごちゃごちゃしててマイナスにしかならないよ」

にこ「あら知らないの?」

穂乃果「何が?」


にこ「私、昔は希と一緒に殺し屋してたのよ?」


穂乃果「…え?」

にこ「だから希と連携することは慣れてるの、あんたらも希に動き教わってるっていうなら多少は取れるでしょ?」

にこ「だから死にかけ二人のカバーを私がしてやるって言ってるのよ」

穂乃果「………」



345 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:50:26.17SQcoDrlX0 (57/77)



曜「私は海未さんをやるよ、希ちゃんの仇は絶対に取る」


せつ菜「待ってください、海未さんは私たちにやらせてください」

曜「え、でもその体じゃ…」

せつ菜「いいんです、希さんの仇を取るのは私たちの役目です」

果林「あははっ可愛いわね、飼い犬らしい行動だわ」

穂乃果「飼い犬だからね」

梨子「そこ弁えてるところがもっと可愛いね」クスクス


善子「うわー…あの二人相手にすると相当やばいタイプよ…」

絵里「人間関係的な意味で関わりたくないわね」


にこ「大丈夫よ、曜。私がいるから」

曜「うーん…まぁにこさんがいるなら…」

曜「…じゃあ私はダイヤさんをやるよ」


絵里「なら私たちと善子はあのオレンジ色の髪の子とぶどう色の髪したやばい子ね」


凛「凛には凛って名前があるにゃー!」

梨子「私も梨子って名前がありますしやばい子じゃないです!」

善子「いややばいでしょ…」


346 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:52:03.24SQcoDrlX0 (58/77)



ダイヤ「…戦う相手は決まりましたか?」


曜「うん、決まったよ」

ダイヤ「なら開始いたしましょうか」

果林「まぁ、そちらが決めた相手と戦えるとは限らないけどね」

にこ「知ってる知ってる、でも銃を使った乱戦が運任せの戦いになるのはあんたらも知ってるはずよ」

にこ「結局は、ここで二対二か一対一に持ってこれればどうでもいいわ」

凛「確かに」

梨子「私は死にかけの二人がいいかなぁ」


曜「いいからとっとと始めようよ!」ドドドドッ!


ダイヤ「おっと」シュッ

曜「あははっ!やっぱり戦うっていいね!胸が躍るよ!」ダッ


曜「ターゲットが変わらないうちに動いた方がいいよ」ボソッ


絵里「!」

絵里(走った直後私に耳打ちをした曜、それを聞いてすぐに私も動いた)



347 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:53:12.08SQcoDrlX0 (59/77)



絵里「いくわよ善子!」

善子「ええ!」

凛「えへっ凛の相手はあなたたちだね!」ダッ

梨子「すぐに片付けるよ!」ドドドドッ!


絵里(曜が動き出したと同時にみんなが一斉に動きだした、そうすればさっき決めた通りに対峙し始めて至る所で銃声が鳴り始めた)


タッタッタッ!


凛「にゃにゃにゃにゃー!」

絵里「はやっ…!」

絵里(凄まじい移動速度に驚きたかったけど、そんな驚く暇も与えてくれないほどに相手は速かった。そうしてそれに反応すればたちまち飛んでくる銃弾を躱し、こちらも仕返しに発砲をしようと思ったのだけど、別方向から銃弾が飛んできて反撃が出来なかった)

絵里「くっ…」シュッ

梨子「凛ちゃん!あの金髪が持ってる銃はスコーピオンEVOだよ!あんなのと真正面から対峙したら全弾は避けれないから撃たせない立ち回りをして!」

凛「了解にゃ!」

絵里「ばれてる…」

絵里(流石戦いのプロはスコーピオンEVOの存在を知ってた、だけど持ってるだけで威圧になるというのならこちらとしても好都合、相手が当たらない立ち回りをするというのならこちらは何としてでも発砲して銃弾を当てるだけの話よ)



348 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 19:56:24.74SQcoDrlX0 (60/77)

梨子「いけっ!」ドドドド

絵里「ふっ」シュッ


凛「せいやっと!」


絵里(梨子が私に向かって発砲したからもちろん私は回避を行った、けど行った直後に凛がすぐそこまで近づいてきてここは発砲ではなく格闘での接近戦を強いられた)


善子「私も忘れないでもらえる?」ドドドド!


凛「ちっ…」シュッ

善子「絵里!今よ!」

絵里「ええ!」バリバリバリ!


梨子「きったない銃声…」

善子「いつ聞いても恐ろしいわね…その銃声…」


凛「きっ…かぁっ…!」

梨子「! 凛ちゃん!」

凛「大丈夫!掠っただけ!」

梨子「ほっ…」

絵里(ブレがすごすぎて狙った位置に行かないのがスコーピオンEVO A1で、三発目辺りで既にサイトのレティクルがあらぶっていた)

絵里(その結果爆音を鳴らして飛び出た銃弾は凛の頬と首をそれぞれ二発ずつ掠めた後に、腰にかけてるマントに数えきれない穴が空けた)


349 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:00:58.72SQcoDrlX0 (61/77)

凛「そんなことより——」


凛「————お返しにゃ!」ドカッ!


絵里「くっ…」

絵里(仕返しがしたい凛は無数の銃弾を避けた後私へと近づき飛び横蹴りをしてきて、私は反動と銃を構えてたことで回避をすることが出来ず、両腕を使って受け止めた)


善子「はぁっ!」

凛「ほっと!凛も接近戦は得意だよー!」


絵里(私がガードした瞬間すぐに善子が突き蹴りでカバーしてくれたおかげで、凛は私への攻撃をやめて、別方向から飛んできた梨子の放った銃弾も危なげなく躱すことが出来た。もし善子が来てくれなかったら今頃どうなっていたか少し怖くなったわ)


350 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:07:29.07SQcoDrlX0 (62/77)



善子「これでも食らっときなさい!」ババババッ!

梨子「こっちも見てね堕天使さん!」ドドド!


善子「! よっと、危ないわね」

タッタッタッ!

凛「はいはいこっちも見てね!」パンパンッ!


絵里「二対一にはさせない!」


梨子「だからと言ってその銃は撃たせないよ!」ドドド!

絵里「くっ…」シュッ

絵里(相手の二人の目線が善子に行く中で、私がスコーピオンEVOを凛に構えれば今度は梨子が私に向かって発砲してきた。それを避けながら再び構えれば今度は凛も私に向かって発砲してるし相当私に撃たせたくないのでしょう)


351 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:14:27.74SQcoDrlX0 (63/77)



善子「どこを見てるの?」


凛「! しまっ…」

絵里(そんな中で善子が凛の後ろを取り銃のストックの部分で頭を殴ろうと両手で振りおろせば豪快ににぶい音がして、銃声が一気にシーンと静まり返った)

凛「かっ……」

善子「らしくないミスね、後ろを取られるなんて」

絵里(善子の打撃は凛の頭にヒットし、凛の頭からは血が出てた。そして当の凛は殴られてからフリーズしたままで、死後硬直とはいってもちょっと不自然だし何か違和感があった)


凛「————ちょっと甘いかなっ!」


善子「何っ!?」

絵里「善子!!」

絵里(時が止まったみたいにフリーズした凛は突然動き出し、振り向くと同時に足払いをして善子を宙に浮かせた)


凛「お返しにゃッ!!」ドカッ!


善子「かはっ…!」

梨子「堕天使さんさよなら!」ドドドドッ

絵里「間に合って!」バリバリバリ!

絵里(そしてそのまま肘打ちを食らって向こうへ吹っ飛ぶ善子へ追撃の発砲を梨子が行った。梨子が銃を構えた時点で私は発砲を察してすぐに梨子に向かって発砲した)


352 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:15:53.22SQcoDrlX0 (64/77)

凛「梨子ちゃん危ない!」

梨子「分かってるよ!」シュッ


梨子「ぐぎぅ…!!」


タッタッタッ!

絵里「善子!」

善子「くぅ…痛い…」

絵里「大丈夫!?」

善子「あいつ…頭を銃で殴ったっていうのになんで生きてんのよ…」

絵里「………」

絵里(善子は横っ腹を二発貫かれた。当たり所が横っ腹だったから死にはしなかったけどそれでも戦闘には大きく関わってくるものよ)

絵里「動ける?」

善子「……なんとかね、でも激しい動きは無理ね」

絵里「そう…」

絵里(善子を助けるために放った銃弾は梨子の上腕を貫いた、連射速度が速すぎる故に一つの跳躍が絶対に回避出来ないものと化してるからダメージは安易に与えられるものの、やはり狙った場所に銃弾が飛んでくれないのが難点だ)


353 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:17:58.83SQcoDrlX0 (65/77)

凛「梨子ちゃん大丈夫?」

梨子「うん、平気。でも帰ったら私少し休む…すごい痛いから」

凛「う、うん」

梨子「そんなことよりあの堕天使をやれなかったのがきついかな…凛ちゃんもわざと敵の打撃を食らったんだからあそこは殺らないと…」

凛「ご、ごめん凛があの金髪に撃ってれば…」

梨子「もういいよ、とりあえず今はやるべきことをやるしかないよ」


絵里「…善子、私が前線に行くわ」

善子「ええ、頼んだわ」

絵里(本当なら前衛後衛を臨機応変に変えてくのがいいけど、善子が怪我をしたのなら私が前線を張るしかない。凛に与えた後頭部への打撃や私が放った銃弾で作った梨子の上腕へのダメージなど確かなダメージは与えたものの、善子が横っ腹を撃たれたんじゃあまりいい状況を迎えてるとは言えなかった)



354 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:23:03.34SQcoDrlX0 (66/77)

絵里「………」


スタスタスタ


絵里(ほんの数秒目を閉じ覚悟を決め、目を見開く頃には足は前へ動いていた)

絵里(一歩一歩を進めば進むほど、段々と足は速くなり気付けば走っていて、銃を構えればすぐにトリガーを引く力が私に宿った)

絵里「はぁっ!」バリバリバリ!


凛「よっとぉ!」シュッ

梨子「ほっと!」シュッ


絵里(お互い両サイド別々の方向へ回避の意味を込め跳躍し、その瞬間に発砲。結果相手の二人は扇状に回避をした為に私へ歯向かう正面からのクロスファイアは危険を伴いながらも前へ突っ走るか強引に横へ跳躍してクロスファイアから逃れるかの二択を生むので、私は迷うことなく強引に横へ跳躍して生き延びることを選んだ)

善子「任せてっ!」バババッ!

絵里(そしてその後も絶え間なく来る追撃は善子にカバーしてもらった)



355 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:26:14.26SQcoDrlX0 (67/77)

絵里「………」


スタスタスタ


絵里(ほんの数秒目を閉じ覚悟を決め、目を見開く頃には足は前へ動いていた)

絵里(一歩一歩を進めば進むほど、段々と足は速くなり気付けば走っていて、銃を構えればすぐにトリガーを引く力が私に宿った)

絵里「はぁっ!」バリバリバリ!


凛「よっとぉ!」シュッ

梨子「ほっと!」シュッ


絵里(お互い両サイド別々の方向へ回避の意味を込め跳躍し、その瞬間に発砲。結果相手の二人は扇状に回避をした為に私へ歯向かう正面からのクロスファイアは危険を伴いながらも前へ突っ走るか強引に横へ跳躍してクロスファイアから逃れるかの二択を生むので、私は迷うことなく強引に横へ跳躍して生き延びることを選んだ)

善子「任せてっ!」バババッ!

絵里(そしてその後も絶え間なく来る追撃は善子にカバーしてもらった)



356 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:32:29.39SQcoDrlX0 (68/77)

凛「いった…」

絵里「悪いわね、接近戦は私も得意なの」

凛「ふーん…そっか」

凛「でも、凛はその上をいってるかな!」ダッ

絵里「はっ!」

絵里(私も凛も真正面から走りだせば私の回し蹴りと凛のチョップが交差するようぶつかり合った)


凛「はぁーっ!」


絵里(次に私のお腹へと歯向かう掌底打ち、即座に反応出来た私は凛の手首を右手で掴み、そして引っ張って左手で腰にかけてたマチェットを逆手で引き抜いて横っ腹を斬ろうとした)

凛「いやっ!」ドカッ

絵里「くっ…おとなしくしなさいっ!」


ザクッ


凛「っぁ!?あぁあああッ!!」

絵里(暴れた為に、狙った横っ腹とは別に腿に深い斬撃を入れる形となった。その結果腿から飛び出る綺麗な赤が私の服に染みついた)


357 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:34:29.86SQcoDrlX0 (69/77)



タッタッタッ!


梨子「よくも凛ちゃんをっ!」

絵里(その頃に梨子がそそくさとやってきて、薙ぎ払うようマチェットを横にふればしゃがみで避け、姿勢の低いままタックルをしてきて私は回避することが出来ず後ろへ吹き飛ばされた)

絵里「いってて…」

善子「危ないっ!」ババババッ

梨子「ちっ……」シュッ

絵里(追撃を許さないと善子のカバーが入り梨子は後ろへ飛び退き銃弾を躱す、この状況——私だけがほぼ無傷で事が進んでいた)


凛「うぅううぅううう…いだい…痛いよぉ…!」

梨子「だ、大丈夫?」

凛「うぅ…」


善子「あいつ…多分戦うのは無理かしらね…」

絵里「感触的に相当奥にまで刃が届いたからね、刃の長さ的に骨にまで届いてもおかしくないわ」

絵里(凛は斬られた腿を必死に押さえて痛みに耐えてた、ただそれを苦しそうと傍観してる私たちはどこにもいない)


絵里(これは正真正銘、殺し合いなんだから)




358 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:37:38.11SQcoDrlX0 (70/77)



絵里「まぁ今から心臓を撃ち抜くんだけどね!」バリバリバリ!


梨子「凛ちゃん引っ張るよ!」ダッ

凛「…っ……うんッ…」


絵里(私の放った銃弾は凛のお腹に当たったけど、防弾チョッキが働いたようで何ともないようだった)

絵里(ただ、それでも横っ腹や腕を貫く弾丸は凛の中にある赤を噴射させる一方だった)

凛「ああぁあああっ……!!」

梨子「ちっ…このまま逃げてても!」ダッ

絵里「!」

絵里(そして梨子は逃げに徹したのではなく、凛の手を離して攻撃することを選んだ)


凛「っ……梨子ちゃんゴーグルつけて!」ポイッ


梨子「ええ!」

善子「っ!?絵里!スタングレネードよ!」

絵里「なっ…」

絵里(マチェットを再び引き抜いて対峙しようとした間際で上から飛んできたスタングレネード、相手である梨子はこの戦いが始まる前から曜の言ってたつけてた光を抑えて尚且つ射線を見えるようにするゴーグルをつけてて、その結果対峙する直前眩い光が私と梨子の間で爆発した)


359 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:39:25.84SQcoDrlX0 (71/77)

絵里「…っあぁ!?」

梨子「よくもっ…!」

絵里(両の腕で光を遮ると突然私の左手を両手で掴む梨子————)


梨子「せいやああああっ!」

絵里「あぁっ…!」


絵里(——そして、次の瞬間には私の左腕を引っ張り後ろへ投げつけるように手を放し、私の後頭部目掛けて協力な蹴りを炸裂させた)

絵里「ぐぅ…!」

絵里(鋭い後頭部への痛みと衝撃、そして今もまだ残る眩い光から私のバランス感覚は決壊し、お腹から地面へと倒れた)

絵里「まだ…!」

絵里(だけどいつまでも倒れたままでいられない、意識がある以上は戦うのみ。だから私はすぐに起き上がろうとした)


凛「これは凛の全てを込めたお返しだよッ!!!」


絵里「!!」

絵里(だけど、まだ這いつくばった状態で頭上を見ればボウイナイフを両手に宙を舞う凛の姿)



ドスッ



絵里「…いっ…あっ……」

絵里(そうして私はどうなったんだろう)

絵里(背中を始めとした悪感に絶望を感じた。鋭利で、久々で、声も出ない終末を感じるこの痛み——背中から入った一つの刃は心を掠めて私のお腹を貫いた)



360 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:42:02.97SQcoDrlX0 (72/77)



絵里「か…は……」

善子「絵里!?絵里!!?」


凛「う…くっ……」

梨子「休んでる暇はないよ!」ドドドド!


善子「ちっ……」シュッ


絵里(口から、お腹から、背中から血を流す私を置いて、戦線は変化を遂げていく。体が動かない…体が冷えていくのを感じる、今まで何回も感じたこの味は本当に不味くて、絶望の味だった)

絵里「まだ……死ね…ない…」

絵里(ずりずり這いずれば、今も刺さってるこの刃物が私の体内で微かに動いて痛みを与えた)

絵里(死っていうのは本当に一瞬で、こうして力なく地面と一緒になる私はもう無力なんだと痛感した。まだやりたいことが出来てないのに、まだ生きていたいという思う気持ちは私のお腹を中心に発生し続ける痛みで相殺されていく)

絵里「千歌…真姫…善子…果南…ことり…曜……」


絵里「……ごめんっ」


絵里(その言葉を最後に、私の意識は闇へと消えた)




361 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:45:22.42SQcoDrlX0 (73/77)




「ねえ待って」



絵里「!」

絵里(意識は闇に沈んだ、手も足も何もかもの感覚が消えた。それなのに私に問う声は聞こえた)

絵里「誰?」

絵里(声は出せた、だから私も相手に問う)

「忘れたの?私よ?」


えりち「え・り・ち♪」


絵里「………」

えりち「そんな反応しないでよ!」


362 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:47:01.84SQcoDrlX0 (74/77)

絵里「はぁ…こんな時に何の用?私は死んだのよ?」

えりち「いやまだ死んでない、生きてるわ」

絵里「…でも、体は動かない」

えりち「……あなたはどうしたいの?」


絵里「…勝ちたい」


絵里「鞠莉のところへ直接行って、あんたの作ったアンドロイドはあんた直属の部隊を潰すことも出来るんだよって言って泣き顔を拝んでやりたい…」

えりち「………」

えりち「…無理ね」

絵里「…知ってるわ、でも反旗は翻す為にあるの」

絵里「私たちが差別されない為には、悔しいけど鞠莉にどうにかしてもらうしかないの」

絵里「でもアンドロイドは人間とは違ってランダム性がない、みんながみんな誇り高き何かを持ってる。差別元となってる鞠莉に差別をどうにかしてくださいなんてプライドを捨てる行為するはずがないの、だから実力行使でやるしかないの」

えりち「………」


363 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:49:32.45SQcoDrlX0 (75/77)

えりち「…この隔離都市を抜け出すって方法もあると私は思うんだけど」

絵里「ええ、それも考えた。けど違うの、私が求めるそれは根本的な解決にはならない」

絵里「謎のカーストがあるのはこの隔離都市だけ、でも私はこの隔離都市が好きなんだと思う」

絵里「ここにはたくさんの仲間がいるんだから」

えりち「……なら、提案があるわ」

絵里「提案?」

えりち「………」


えりち「この戦いだけ、私に体を貸してくれない?」


絵里「…は?」

えりち「どうせこのままでいてもあなたは死ぬ、なら最後の足掻きとして私に体を貸してくれない?私があの戦場に立つわ」

絵里「で、でも体はもう」


えりち「動く」


絵里「!」

えりち「動かすの、動かすしかないの」

えりち「…だから私に、あなたの全てを一度委ねてほしいの」

えりち「それがパーフェクトな選択だから」


364 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:51:13.53SQcoDrlX0 (76/77)

絵里「……分かった」

絵里「…じゃあ私はどうすればいいの?」

えりち「私が戦場に立ったらあなたは眠りにつく、私とあなたが入れ替わるまでは」

絵里「……そう」


絵里「じゃあおやすみ」


えりち「…ええ、おやすみ」

絵里「すぅ…」

絵里(こんなことしてよかったのかしら)

絵里(でも、これをする以上に私の出来ることはなかったと思う。意識はあっても、感覚は消えて視界は闇に飲まれた、なら何か起こせるもう一人の私に頼るしかなかった、縋るしかなかった)

絵里(でも、この選択が正しいかと言われればどうも開いているはずの口も開かないままでいてしまう。そもそも“もう一人の私”っていう得体の知れないイレギュラーな存在に、私の体を託してもよかったのかしら)

絵里(後から考えればもう私の体は私の元へは帰ってこないのかもしれない、このまま心も体も乗っ取られて私は一生眠りにつくのかも)

絵里「……すぅ」

絵里(そう考えてると段々眠くなってきた。これが最後の眠りにならなければいいけど。そう願って眠る今はちょっと心地が悪かった)


365 ◆iEoVz.17Z22019/09/27(金) 20:56:15.51SQcoDrlX0 (77/77)

一旦中断、もしかしたら今日はこれで終わりかも。
>>331の凛「その体じゃ躱しながら撃てないよね!だって片方の肩が壊れててグリップの部分が持てないから!」っていうセリフ、片方の肩じゃなくて片手ですね。すいません


366以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/09/27(金) 22:36:39.09JJVh64YGO (1/1)

覚醒えりちくるー?


367 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:01:09.207iMNu1YO0 (1/77)



絵里「ん……」

絵里「ん…くっ…いってて……」

絵里(どのくらいの時間が経ったんだろう、目覚めと共にやってきたのは頭の奥に針を刺すような激痛と酷い渇感だった)

絵里(起き上がって頭を押さえながら開こうとしない目を擦って目を開けば、ぼやけた視界が段々と形を表していった)

絵里「ここは……家?」

絵里(見覚えのある寝室、外は真っ暗でほんのり光るランプをつけて小さな鏡で自分を映せば頬には無数の切り傷が、手には包帯がグルグル巻き、改めて自分の体を見れば至る所に包帯が巻いてあって戦いの後であることが確認出来た)

絵里「んん…うおっと…」

絵里(ベッドから降りて歩こうとすれば方向感覚が上手いように掴めなくて、足も力が入らない。よれよれでドアノブに手をかければ目眩がして、どうにもこうにもあの戦いの怪我の影響が出ているようだった)


368 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:02:46.727iMNu1YO0 (2/77)

スタスタスタ

果南「……あ、絵里!」

善子「! 絵里!?」ガタッ

ことり「よかった…起きたんだね」

絵里「あはは…おかげ様で…」

曜「絵里さん…よかった……壊れたんじゃないかと思ったよ…」

絵里「壊れたってそんな大げさな…」

善子「…いや、曜の言う通りよ」

果南「まぁまぁこうして絵里が目覚めたんだからいいじゃん」

絵里「…!あの戦い、どうなったの?」

善子「えっ…覚えてないの?」

絵里「ええ」

曜「…やっぱり壊れてるんじゃ」

絵里「…?何の話?」


369 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:10:41.307iMNu1YO0 (3/77)

善子「…どこまで覚えてるの?」

絵里「凛に背中からナイフで刺されて、それから……」

絵里「………」

絵里(もう一人の私の事は覚えてたけど、それを口にすることはなかった。なんか言い出しにくかったし)

絵里「…そこまでしか覚えてない」

善子「……曜」

曜「…うん」

絵里「…何?」

善子「…あの後絵里は突然立ち上がってさも無傷かのように戦線に復帰した」

絵里「………」

善子「その後の絵里といえば楽しそうな笑みを浮かべながらトリガーを引いて、ナイフを振って、相手を殴ったり蹴ったりする——それだけのアンドロイドだった」

善子「それに動きは殺意そのものだった。いつもの絵里なんかとは比べ物にならない俊敏さだったわ、私はそれで絵里が壊れたんだと思ったの…戦ってたのは絵里だけど、その姿は絵里とは似て非なるものだったから」

曜「…それでね、凛ちゃんを殺したその後絵里さんは私やせつ菜ちゃんたちのところにまで行ったんだ、突然スコーピオンEVOの弾が飛んできた時は驚いたよ」

絵里「………」

絵里(私とは似て非なる姿——それはまさしくもう一人の私という存在を形容するに最高の言葉だったと思う)


370 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:14:04.527iMNu1YO0 (4/77)

絵里「…じゃあ結果どうなったの?」


曜「結論から言うとね、私たちは勝ったよ」


絵里「…それで?」

曜「こちらの死人は0人、向こうの死人は……」


曜「一人…かな」


絵里「…!もしかして今言ってた凛…?」

曜「うん…死んだ」


穂乃果「あの猫女が死んだのはいい気味だよ」


絵里「!」

せつ菜「お、お邪魔してます!」



371 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:16:42.867iMNu1YO0 (5/77)

絵里「あなたたちは…」

善子「あの二人の主は死んだからね、とりあえず曜がここへ連れてきたのよ」

絵里「そ、そう…」

絵里「…そう、そうよ凛は私が殺したって……」

曜「あ、うん…絵里さんが殺したね…」

絵里「………」

善子「…そうよ、さっきも言ったわよね、俊敏だったって。あの時凛は腿を斬られてあまり動けない状況だった、だからダメ押しで攻めてスコーピオンEVOの弾を食らって死んだ」

絵里「………」

曜「…正直、無惨だったかな」

曜「自分が作った武器だけど、連射速度が高い銃はやっぱり殺した時如何に恐ろしいかが分かるよ」

善子「腹を数十発に渡って貫かれて死んだわ、多分一発か二発は脳天や心臓をぶち抜いてるんじゃないかしらね、スコーピオンはブレが酷いから狙わずとも当たるもんだわ」

絵里「…ッ」ゾクッ

絵里(想像しただけで寒気がした、確かに銃とは人を殺す為にあるもの。だけどオーバーキルにも程がある)

絵里(腹を貫ぬかれて死亡ならまだしも、何十発も貫かれて死亡なんてまともに死体が見れたものじゃないでしょう…もう一人の私は…一体何を考えて凛を殺したのかしらね)



372 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:18:04.187iMNu1YO0 (6/77)

曜「…それでまぁ、こうやって今はみんなで羽を休めてるんだ」

絵里「…そう」

果南「絵里は二週間も眠ってたんだよ?」

絵里「…え?二週間?」

ことり「そうだよ、あの戦いからずっと起きる気配が全く無かったんだよ?」

絵里「…嘘でしょ」

絵里(横長の棚の上にある時計はあの日から約二週間の月日が経っていることを示していた。今でも感じるこの不自由な体は一体何が起こって不自由になったというのだろうか)

果南「これでみんなお荷物だね」クスクス

穂乃果「だからその呼び名はっ!」

曜「穂乃果ちゃんはそんなに怒らないの、実際今はみんな戦えないんだしここでゆっくりしてようよ」ゴクゴク

ことり「…渡辺曜はくつろぎ過ぎだと思うけど」

せつ菜「私も何か飲みます!」

善子「…まぁそんなところよ、しばらくの間はみんなこの体が癒えるまで動けないわ。それは相手も同じよ」

絵里「…凛以外のやつらはどうなったの?」

善子「みんな私たちと同じくらい怪我を追って退却って感じ、今回のこの戦いは痛み分けだったわ」

絵里「…そうなのね」

絵里(戦いの結果はどうにもコメントに困るものだった、一応戦いには勝ったっぽいけどもやもやは全然消えない。もう一人の私の事も気になるし、死んだ凛の事も気になる、それに相手の事も気になる)

絵里(……だから顔は晴れないままだったと思う)


373 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:21:06.307iMNu1YO0 (7/77)

果南「はーいポテチ持ってきたよー」

曜「お、いいね!みんなも食べよー!」

せつ菜「穂乃果さんも食べましょうよ!」

穂乃果「う、うん」

果南「ことりも食べよ?」

ことり「私カロリー高いやつはちょっと…」

果南「普段から全然食べてないんだしポテチ食べた程度じゃ太らないよほらほらっ!」

ことり「分かったからポテチ押し付けないで!自分で食べるから!」

善子「果南は何をしてるのよ…」

絵里「……ふふっ」

絵里(でも、心なしかみんな楽しそうだった。あの戦場とその結果は散々なものだったけど、またここが賑やかになったのを見て少し安心した)

絵里(穂乃果って子とせつ菜って子も曜からは話を聞いてたけどすごくいい子そうでよかったわ。果南のおかげでこの空間にも馴染めてるし、私もそれで少しは心が楽になった)


にこ「絢瀬絵里、ちょっといい?」


絵里「! あなたは…」

にこ「もう敵対するつもりはないわ、あいつらを殺すつもりもない。だからちょっと来て、話があるの」

絵里「…ええ」

絵里(廊下の方から小さな声で私を呼ぶ相手、それは対アンドロイド特殊部隊のにこだった)


374 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:22:55.567iMNu1YO0 (8/77)

スタスタスタ

にこ「ここでいいかしら」

絵里「…外まで来て何を話すの」

にこ「あぁいや…」

絵里「…?」

にこ「その…ごめんなさいね」

絵里「…何の話?」

にこ「あんたらを狙って悪かったって話よ、私も目が覚めたわ、あいつらとはいたくないもんでね。海未には悪いけど」

絵里「…そう、そんなことならいいわよ」

にこ「…ありがとうって言っておくわ」

絵里「ええ」

にこ「……でもね、絢瀬絵里——いや、絵里」

絵里「…何?」


にこ「松浦果南は本当に危険よ」


にこ「これだけは譲れない、戯れ言と聞き入れても良い、でも頭のどこかで私の言葉を覚えておいてほしい」



375 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:25:32.947iMNu1YO0 (9/77)

絵里「分からないわね、どうしてそこまで果南を危険視するの?」

にこ「それは————」


ガチャッ


絵里「!」

にこ「あんたら…」

絵里(外にでてにこと話してれば、今度はそこに穂乃果とせつ菜がきた)

穂乃果「…帰る」

にこ「帰る?あんたらの家はどこにあるのよ」

穂乃果「私たちは軍人だよ、野宿くらい慣れてるよ」

絵里「え、ならこの家で」

せつ菜「そうはいきません」

絵里「…どうして?」

せつ菜「業務用アンドロイドはあなた方標準型や戦闘型と違って自分の思考通りに体が動きません」

絵里「…どういうこと?」

せつ菜「私たちはとにもかくにも業務用アンドロイド——希さんは私たちを自立出来るアンドロイドへと変えてくれた」

せつ菜「だけどどうにもこうにも業務用アンドロイドの域から抜け出せないんです。また私たちを引っ張ってくれる主が見つからないことには私たちの生きる意味も価値も、そして術もありません」


376 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:28:44.987iMNu1YO0 (10/77)

絵里「…なら私が」


穂乃果「なら私が主をやる、とは言わないよね?」


絵里「っ……」

穂乃果「私はあなたが気に入らない」

絵里「…どうして?」

穂乃果「………」

せつ菜「とにかく私たちはここから離れます。次会う時は敵かもしれませんね」

にこ「待って、その傷のまま戦闘でもしたら間違いなくあんたらは死ぬわよ。特に海未のやつは二週間も経ってるんだからもう動けるはずよ」

穂乃果「私たちは戦闘のプロ、体だけじゃなくて頭もちゃんと使えるから心配ないよ」

にこ「…無理ね、死ぬわ。百パーセント」

せつ菜「…何を根拠に言ってるんですか?」

にこ「あんたらは強いわ、二対二じゃ絶対に負けないと言ってもいいくらいに強い、そしてある程度人数に差が開いてても戦えるポテンシャルがある。だからEMPグレネードは元々あんたらを殺す為に作られたモノだった」

にこ「万全の状態なら海未にだって勝つことは可能でしょうけど、今の状態じゃ海未一人にすら勝てない。それは海未と一緒にいた私がよく知ってる」

にこ「元はといえば今回は私や曜、そして絵里と善子が助けに来てくれたから助かったけどあんたらは言えば死んでる存在なのよ?お高いプライドも大概にして、自分の出来ることを弁えてから行動に移すことね」

穂乃果「それでも私たちはいくよ、何故なら勝てるから」

にこ「あーあそうかいそうかい、ならとっとと海未のところに行って死んでくれば?そうすれば天国にいる希もあんたらに会えて嬉しいことね」


377 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:30:51.617iMNu1YO0 (11/77)

絵里「ちょ、ちょっと喧嘩は…」

穂乃果「…どんだけ私たちを殺したいの?不愉快なんだけど」

にこ「現実を見ろっていってんのよ、穂乃果の隣にいる夢追い人のせいで穂乃果にも夢追い人が感染しちゃった?」

せつ菜「私は夢追い人じゃありません!」

穂乃果「…いこっせつ菜ちゃん、こんなところにいても無駄な体力使うだけだよ」

せつ菜「は、はい」

スタスタスタ

絵里「………」

絵里(いい子なのは分かる、だけどあの二人はプライドが高い、高すぎる。だから見えるあの背中はとても冷たいものだった)


穂乃果『私はあなたが気に入らない』


絵里(…あの凍てついた顔はどうしたら綻びるのかしら)


せつ菜『とにかく私たちはここから離れます。次会う時は敵かもしれませんね』


絵里(あの固い態度を緩めるにはどうしたらいいのかしら)

絵里(さっきはあんな楽しそうな笑顔をしてたのに、それが嘘であったかのような、それがまるで本当のあなたであるような今は一体何なのかしら)

絵里(この外にいる全員の怪訝そうな顔は今も解けることはない)


378 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:34:55.477iMNu1YO0 (12/77)

絵里「あぅ…あ……」

絵里(その中で私は、この状況で何を言えばいいのか分からなかった)

絵里(軍神と謳われた相手に威圧されて弥立って言葉が上手く出せなくて、一歩進んだ足と一つ伸びた手は二人に届くことは無かった)



にこ「ったく、希が死んだせいで拠り所がないせいか昔のあいつらを見てる気分だわ」

絵里「…知ってるの?昔のあの二人を」

にこ「当たり前でしょ、希と私は元仲間だったからね、敵対関係にあっても殺し合いをすることは無かった。だから増えていくのはあいつらとの交流関係だったわ」

絵里「…そうなの」

にこ「ええ、昔なんて殺すことしか考えてなかったのに、数か月経てば何かめんどうなことがあっても穂乃果が“希ちゃんのところへ帰るよ”ってせつ菜を引率しておとなしく帰ってくもんだから驚いたわよ」

にこ「それからあいつらも常識を覚えてきたから今ではかなりまともなアンドロイドだけど、心の支えの主軸であった希が死んだからね、あいつらの道徳が決壊し始めてるんだわ」

絵里「…それはまずくない?」

にこ「…あいつらの道徳性は別に心配ないけど命は今もすり減ってる状態だわ、次第に海未とかに遭遇して死ぬのはもはや確定的」

絵里「………」

にこ「せつ菜はちゃんと自覚してたけど、結局あいつらは業務用アンドロイドなのよ」

にこ「主の導がないとあいつらは自然と死の道を選んでしまうし猜疑心はまた増えてく一方、特に穂乃果は……ね」



379 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:35:41.197iMNu1YO0 (13/77)

絵里「…何?」

にこ「昔よりもっと前、一昔前の穂乃果はよく笑ってたわ。それはせつ菜も同様」

にこ「それが今はこうなんだから、主の重要性が分かるわ」

絵里「…ならにこがやれば」

にこ「無理ね、あいつらの主が私なんかに務まるわけがない」

絵里「どうして?」

にこ「私は希ほど心は広くないし、優しくもない。希は基本的に放任主義だから穂乃果とせつ菜をたっぷり可愛がるだけで後は何もしないいわば拘束を一切しないやつなのよ」

にこ「でも私は違う、希の放任主義はある意味でいえば正解だけどある意味でいえば不正解。あんな危ないやつに好き勝手やっていいよなんて言うやつがまともなんて到底言えたものじゃないわ」

絵里「…確かに」

にこ「だからきっと私が主になった暁にはあいつらに不自由な生活を強いてしまうでしょうね、だから私はやらないわ。プライド高きアンドロイドは拘束を嫌うだろうから」

絵里「…ちゃんと弁えてるのね」

にこ「当然よ」



380 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:38:28.697iMNu1YO0 (14/77)

絵里「………」

にこ「…じゃあ私も帰るわ」

絵里「え?」

にこ「絵里が生きてるのを確認出来たならもうここにいる必要はない、あいつらもきっと絵里が目覚めたからここを出たんだわ」

絵里「…どうして?このままいればいいじゃない」

にこ「私には妹たちがいるの、例えあの部隊を裏切ろうとも戻らなきゃいけないのよ。ママはいるけどね、姉として誇りを持って生きてるの」

絵里「…姉として」

絵里(私にも亜里沙という妹がいる、だからその言葉は少し…少しばかり痛かった)

にこ「その点ダイヤは姉として最低だったわ」

絵里「…!そういえばそう、なんでダイヤを嫌ってるの?」


にこ「…あいつにはルビィっていう妹がいるの」


絵里「!!」

にこ「…でもその妹は昔あったデパートに乗り込んできた武装集団によって足を撃たれて意識は闇へと誘われた、きっと熟成した今の体なら意識はあったと思うけど、まだ幼い頃だったから痛みは体についていけてなかったんだわ」

絵里「…それ、知ってるわ」

にこ「…そう、それでダイヤはショックが大きすぎたんだわ。悲しみは次第に怒りへと変わっていき、二度と大事なモノを無くさないと対アンドロイド特殊部隊に入った。あそこの部隊は人間の中でも指折りの強者しかいないからね、あそこに入ることこそ自分が強くなる最短ルートだと思ったんでしょうよ」


にこ「そうしてそこで出会った凛に慰められて、次第に凛を本当の妹のように見るようになってしまった」


絵里「……なるほどね、でもおかしいわ。なら凛は何なの?」

にこ「あいつはぁ…そうね…ただのバカかしら」



381 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:41:21.517iMNu1YO0 (15/77)

絵里「ただのバカ?」

にこ「人っていうのは変わるものなのね」

絵里「え?」

にこ「私はそれを凛で知ったわ」

絵里「どういうこと?」

にこ「アンドロイドでも人間でも、とにかく人語を喋れる者はみんな同じ事を言うわ」


にこ「昔の方がよかったって」


にこ「昔のあなたの方が優しかった、昔のゲームの方が面白かった、昔の公園はもっと楽しかった」

にこ「当たり前よね、だってよく考えてみて、今が在った時昔の自分を見るとその時には当たり前だと思ってたものが今にはないの」

絵里「…?意味が分からないんだけど」

にこ「例えば初めて恋人が出来たっていうならそれは相手を大切にしなきゃって思う気持ちが強い時なの、だから相手に優しくするし何があっても守らなきゃって思う、つまりそこに初々しさがあるの」

にこ「でも時間ってものは残酷だわ、数か月…いや短いかしら、数年が経てばそこに当たり前のように相手がいることに気が付かなくて扱いも段々と雑になってくる、大切にしていく必要性がなくなるの、どう接すればいいか分からない泡沫の存在から元からいるような当たり前の存在に変わってしまうから」

にこ「ゲームだってそうよ、今はインターネットが盛んだから昔みたいに友達で集まってゲームをやらないの、友達がいることが当たり前だと思ってたから昔の方がいいだなんていって懐かしむの、失ったモノに気付かないままね」

絵里「………」

にこ「だから?って顔してるわね、分かるわよ」

絵里「えっ!いや…」


382 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:42:46.427iMNu1YO0 (16/77)

にこ「…回りくどくてごめんなさいね、本題を言うと凛はいじめっ子だったのよ」

絵里「いじめっ子…」

にこ「ええ、凛はここ東京出身で幼い頃から周りにまともな人間が少なくて育ちが悪かったの」

にこ「動物は遊び半分で殺すし、人の気持ちを理解しようとしない薄情者、そのおかげで凛の周りにいたのは凛と同じよう狂ったやつだけ」

にこ「好戦的なくせに反則級に強いのが凛、百戦錬磨のその姿は戦闘型アンドロイドなら必ず知ってるくらいよ」

絵里「………」

にこ「そんな中で狂ったやつらの集まりである対アンドロイド特殊部隊が入った時、凛は初めて思いやりという言葉を知ったわ」

絵里「思いやり?」

にこ「さっき言った通りよ、凛はダイヤで初めて人を労わる気持ちを覚えた。凛はそれから変わった、いい方にも悪い方にも」

にこ「人に関心のない薄情な心が初々しい交感をした、凛は初めて人の気持ちを理解した。だから凛は分からないの、他人が笑顔でくれる言葉は全て良いモノとして受け取ってしまう」


にこ「例えそれが狂った感情だとしてもね」


絵里「……そういうこと」

にこ「ダイヤは凛を本当の妹として見て、凛はダイヤの操り人形、人の気持ちを理解しようと凛は偉かったわ。でもそれ以降の凛はただのバカだった」


にこ「…だから私はバカな凛が嫌い、そしてルビィという本当の妹がいながらも凛を妹に仕立て上げたダイヤが大嫌い」


絵里「………」

にこ「だからね、今回凛を殺してくれたのはある意味言えば救済になったと思う。ダイヤは目が覚めたでしょう、凛は天国で反省してると私は嬉しいわね」

絵里「……私は」

絵里(私は凛を殺した覚えはない、死体も見てない。私がもう一人の私に全てを委ねた時から記憶は闇の中だった)

絵里(それなのにどうしてだろう、凛が死んだ——そこまでならきっとよかった。でも私が殺したっていう事実があることに、どうしても私は痛みを感じてしまっていた)


383 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:44:50.907iMNu1YO0 (17/77)

にこ「…まぁ帰るわ、私も何かない限りはここへ帰ることはないわ」

絵里「……気を付けてね」

にこ「はいよ、でも人の心配より自分の心配をしなさい。私はまだ戦える体だからいいけど絵里は違うんだから」

絵里「…ええ」

にこ「じゃあね」

スタスタスタ

絵里「………」

絵里(…どうして、みんなはそんなに一人へ…孤独へなろうとするのかしら)

絵里(協力関係は結んだならきっとそれは仲間って言っても良いと思うのに、穂乃果もせつ菜もにこも、みんなここから離れたがる)

絵里(……そんなにここの居心地が悪かったのかしら)

絵里「…いや」

絵里(そんなことはない、ムードメーカーの果南だっているしツッコミとボケ両刀の善子だっている、割かし自由人な曜や比較的まともなことりもいて、どういう性格をしててもきっとそこは馴染みやすい場所だったと私は思う)

絵里(みんな怪我してて、死ぬ危険性もあるというのに…)


絵里(どうしてみんな、そこまで死にたがりなのかしら……)




384 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:45:41.107iMNu1YO0 (18/77)

絵里「はぁ」

ことり「おかえりなさい、大丈夫だった?」

絵里「ええ、特に何も」

ことり「…あれ?矢澤にこや穂乃果ちゃんは?」

絵里「みんな帰っていったわ」

ことり「えぇ!?大丈夫かな…」

絵里「…にこは多分大丈夫だけど、せつ菜と穂乃果はやばいってにこも言ってたわ」

ことり「……どうするの?」

絵里「……正直分からない、何かあったら助けに行きたいけど、この体じゃまともには……」

ことり「………」


果南「その時は私とことりに任せてよ」


絵里「! 果南…でも二人は体が…」

果南「大丈夫だよ、もう私は戦える。もちろん万全じゃないけど、それでも充分なほどには戦えるから今度は私が絵里の代わりをやるよ」

ことり「…そうだね、私も万全じゃないけど戦えるよ。肩も動くし、足もさほど痛みはない」

絵里「…そう、でも無理はしないでね」


385 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:48:09.497iMNu1YO0 (19/77)

果南「あははっそう言ってくるのが何とも絵里らしいよ」

ことり「…分かるかも」

絵里「そ、そう?」

果南「うんうん、絵里は絵里だね」クスクス

絵里(果南はやっぱりすごい人よ、人を元気づけるのがとても上手くて尊敬しちゃうわ)

絵里(果南に腕を引っ張られてリビングに向かえば善子と曜が楽しそうにゲームをしてて、“絵里も一緒にやろうよ”って笑顔で言ってくるもんだからこれは参加せずにはいられないわよね)

スタスタスタ

絵里「………」

絵里(ただゲームの前に、テーブルに所狭しと置かれている武器が戦いの爪痕を残していた)

果南「改めて見るとすごい武器の数だよね」

曜「不良みたいだよね」

善子「いやこんな物騒な武器持ってる不良どこにもいないわよ…」

絵里「…あ、これことりの……」

ことり「あ、うん。曜ちゃんに直してもらったんだ」

絵里「ええ、よかったわね」

ことり「うんっ」


386 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:52:00.637iMNu1YO0 (20/77)



花丸「あ、あの…」


絵里「…あれ?」

ことり「…あれ?穂乃果ちゃんと優木せつ菜は帰ったんだよね?」

絵里「え、ええ」

絵里「どうして花丸さんがここに?」

花丸「マルは寝てたらなんか二人に置いてけぼりにされちゃったみたいで…あ、でもこの手紙が私のところに置かれてて…」スッ

絵里「…読んでもいい?」

花丸「…はい」

絵里「………」ペラペラ

絵里(そこに書いてあったのはせつ菜から花丸へ向けてここの家に残れというメッセージだった)


387 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:54:39.487iMNu1YO0 (21/77)

絵里「ふむ…私たちといるよりかここにいる方が何十倍も安全だから戦闘が出来ない花丸さんはここにいるべきです…か」

善子「…無責任ね、要は足手纏いって言いたいんでしょ?」

花丸「ずら……」

絵里「ちょっとその言い方は…」


曜「強ち間違ってないよ」


絵里「!」

曜「死にかけの二人が実質非戦闘員である花丸さんと一緒にいて、誰かと戦闘が始まった暁には少し荷が重いように感じると私は思うよ」

曜「だって助ける余裕がないんだもん、そんな状態で死なれてもどうしようもないし、そんな状況になるくらいなら最初から戦闘に参加しないよう心掛けるべき」

曜「だから二人の判断は正しいと私は思う」

花丸「…知ってる、マルがお荷物だなんてことは。足手纏いってことも遠回しに言ってくれるのはきっとせつ菜ちゃんなりの優しさなんだと思ってる…ううん思いたいずら……」

曜「…大丈夫だよ、せつ菜ちゃんも穂乃果ちゃんも仲間は大切にする人だから。花丸ちゃんを捨てたわけじゃないよ」

花丸「…うん」



388 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:56:08.817iMNu1YO0 (22/77)

絵里「………」

果南「…あぁもういいじゃん!ならあの軍神とトリックスターを引っ張ってくればいいじゃん!」

曜「うん、それが一番良いと思う。あの二人は今はまだここにいるべき」


曜「…だけど、私、絵里さん、善子ちゃんは戦えないね」


善子「…ええ」

絵里「この傷じゃ…足を引っ張るだけね」

曜「あの二人は絶対に抵抗してくるよ、プライドが高いからね」

果南「なら二対二になるってことか」


ことり「…私は戦いたくない」


果南「え?なんで?」

ことり「……穂乃果ちゃんとは二重の意味で戦えない」



389 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:56:47.157iMNu1YO0 (23/77)

果南「…あの時の話?」

ことり「…うん、そうだよ」

絵里「あの時の話?」

果南「絵里と善子が曜とかと戦ってる時、私たちは色々話をしてたんだよ」

ことり「そんな時にあがったのが希ちゃんのところにいたアンドロイドの話だった」

果南「そこでその高坂穂乃果っていうアンドロイドの事を聞いた、結論からいればことりは穂乃果の元親友で、でも穂乃果に殺されかけたんだって」

善子「なんで?喧嘩でもしたの?」

曜「違うね、穂乃果ちゃんは過去に一回死んだことのあるアンドロイドだよ、だからその時に埋め込まれた記憶で性格が一変した」

ことり「その通りだよ、だから私はその変わり果てた穂乃果ちゃんを殺そうとした」

絵里「…それで結果はボロ負けだったと」

ことり「…うん」

善子「なるほどね、つまり戦いたくないっていうのは腐っても元は親友であった相手で、しかも一回殺されかけたくらいに実力を知っている相手とはやりあえないってわけ」

ことり「…その通りだよ」

曜「…こればっかりは仕方ないんじゃないかな、私はことりちゃんに同情するよ」

絵里「ええ、あくせくしたって何も始まらないわ」



390 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 21:59:10.427iMNu1YO0 (24/77)

果南「…まぁね、でもそれじゃああの二人の助けようがないよ?」

花丸「大丈夫だと思う…ずら」

花丸「例え負け戦を強いられたとしても、そう簡単には死なないと思うから」

果南「…ならいいけど」


「………」


絵里’(この状況で、それは流石の果南もこの重い空気の中で何かを話そうとはしなかった)

絵里(私は考える、あの戦いは勝利であったのだろうか)


絵里(それは否、私はそう思う)


絵里(私としては敗北で、今でもピリピリ残ってるトリガーを引く感覚は人を殺めた感覚とほぼ同義なんでしょう)

絵里(私があの時——千歌が死んだ時にトリガーを引いた時から一本道であったのは確かだけど、それは今に戦えば戦うほど目標までの距離が遠く見えてくる)

絵里(それは届きそうで届かない錯覚の距離ではないし、ただ単純に目に見えて分かるほど遠い距離でもない)


絵里(私が見てるのは、どこがゴールかもわからない道のない道)


絵里(きっと発砲しても誰にも当たらないしどこかの壁に当たることもない無限の彼方で私は黄昏てるだけ)

絵里(私のいるこの道は、一体何があるというのかしら)



花丸「大丈夫…ですか?」

絵里「…心配してくれるの?」

花丸「…一応友達だから」

絵里「…ええ、そうね。私たちは友達だものね」

絵里(花丸さんと話すのは、まだ千歌が死ぬ以前の図書室に真姫といた時以来だった。その時はPR-15の事を丁寧に教えてもらって、私も花丸さんも真姫もよく分からずに親しくなってた)


391 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:02:12.637iMNu1YO0 (25/77)

絵里「……あの希って人のところの人だったのね、あなた」

花丸「希ちゃんに、マルの才能を買ってもらったずら」

絵里「あなたの才能?」

花丸「……銃にとっても詳しいっていう点で、相手を解析する役目と情報を集める情報屋として拾ってもらったずら」

絵里「拾ってもらったって言っても花丸さん人間でしょ?親はいるんでしょ?」

花丸「…ううん、一人ずら」

絵里「え?なんで?」

花丸「…ごめんなさい、その話はあんまりしたくないずら」

絵里「…そう、ごめんなさい」

絵里(人は過去を振り返りたがらない、特にこの隔離都市に住む人間はそう、みんながみんな過去を良いモノとしては見ていない)

絵里(実際そうだったでしょ?善子も、ことりも、にこも、全ては銃弾によって撃ち抜かれた運命を体験してる)

絵里(だからきっとこの花丸さんもそうなんでしょう、“そういう過去”があるんでしょう)


392 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:06:07.967iMNu1YO0 (26/77)

花丸「…まぁ一人のマルを拾ってもらって、希ちゃんの家で居候をしてたずら」

絵里「…そうなのね」

花丸「だからいつまでの話になるか分かりませんが、しばらくの間ここでよろしくお願いします」ペコリ

絵里「え、ええ…よろしくね。でもそんなかしこまらなくてもいいのよ?」

花丸「ううん、最初はいつもこうだから…希ちゃんの時も全く同じだったから…」

絵里「そ、そう…」

絵里(まだ関りが薄いっていうのもあったし、今が今なだけに私も花丸さんも口は中々開かなかった)

絵里(月明かりに照らされるだけの真っ暗な寝室で二人、どこか妖しくて丸いお月様に黄昏ていた)


「………」


絵里「ね、ねえ花丸さん」

花丸「はい、なんですか?」

絵里「これからしばらくの間休み傷が癒えたとして、それから私たちはどうすればいいのかしら?」

花丸「……あの戦いはマルたちと対アンドロイド特殊部隊だけが動く事件にはならなかった、次第に普通の警察も動きだす。だからもう派手な事は出来ないずら」

絵里「………」

花丸「だから…もう、対アンドロイド特殊部隊は無視でもいいと思うずら。絵里さんの行き先——そう鞠莉さんのところに行くべきだとマルは思う」



393 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:09:42.217iMNu1YO0 (27/77)



曜「いや、違うかな」


絵里「!」

花丸「!」

曜「それは無理だよ、鞠莉ちゃんの家は大きな豪華ホテルの最上階なんだけど、警備が分厚い上に対犯罪集団に努めシステムが厳重すぎて侵入が難しい上に侵入が出来たとしてもって感じ」

絵里「なら外にいる時に殺せば」

曜「その時に鞠莉ちゃんの近くにいるのが対アンドロイド特殊部隊とかの一流警察の集まりなんだよ、だからアンドロイド特殊部隊を壊滅させることにはちゃんと意味があるし、政府の武器庫であるY.O.L.Oを潰すことにも将来性が見える時なんだよ、今は」

花丸「…なるほど、確かにその通りずら」

曜「確か絵里さんと戦ってたぶどう色の髪をした子——梨子ちゃんっていうんだけどね、梨子ちゃんは中学一年生の時にアンドロイドに親を殺されててそれ以来ずっとアンドロイドの復讐の事しか考えてないし、後から戦場にやってきた果林ちゃんなんかは元々アンドロイドを肯定してる人なんだけどちょっと狂った美学を持ってて殺すことに美しさを感じちゃってて、だから誰かを殺しても犯罪にならない対アンドロイド特殊部隊に入ってるしで対アンドロイド特殊部隊っていうのは特別なことでもない限り一生敵でい続けると思う」

絵里「……」

花丸「…難しい話ずら」

曜「…まぁ今考えるべきことはそこじゃないけどね」アハハ

花丸「…?」



394 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:12:09.357iMNu1YO0 (28/77)

曜「今考えるべきことは…それはー?」


曜「今日の夜ご飯をどうするか!だよ!」


絵里「…?」

曜「いやいや何も難しいこと言ってないじゃん!もう十時だよ!?十時なのに何も食べてないからお腹空いたんだよ!」


グゥ~…


花丸「ずらっ…」

曜「ぷっくすくすくす……」

花丸「わ、笑わないでほしいずら!!」

絵里「よ、曜って料理作れるんじゃなかったの?」

曜「作れるよ、でもあの状況で作るのもなんか違うじゃん?」

絵里「まぁ確かに…」

曜「ほらっだから絵里さんも花丸ちゃんもダイニングとリビングに行こ?腹が減っては戦は出来ぬだ!」


395 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:12:45.997iMNu1YO0 (29/77)


スタスタスタ

絵里「…曜は強いのね」

花丸「あんな状況でも笑っていられるのは…少し羨ましいずら」

絵里(そう花丸さんと交感をして曜の後ろをついていった、ダイニングとリビングに行けば果南とことりは一つの漫画を一緒に見て変な感興の声をあげてて、善子はことりが好きそうなうさぎさんの可愛いクッションを抱いてソファで寝てた)

曜「二人ともご飯食べよー!あ、善子ちゃんはご飯出来たら起こそう」タッタッタッ

絵里「…ふふふっ」

絵里(曜も、果南もことりも、そして寝てる善子も笑ってて私はなんとなく安心した。また、いつもの雰囲気が戻ってきたような気がする)



396 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:14:27.947iMNu1YO0 (30/77)

果南「絵里たちの傷、いつ頃治るかなぁ」モグモグ

曜「アンドロイドは人間より回復が早いから絵里さんと善子ちゃんは後数週間で治るんじゃないかな」

絵里「後数週間は長いわね…」

善子「それまでに何も無いといいんだけど」

曜「そうだね、それを祈って今はくつろぐのみだ!」ワッハッハ

ことり「それはどうかと思うけど…」

花丸「ずらっ」

果南「いやいやどうせ何も無ければやることないんだし漫画とか見てるのが一番だよ」

絵里「まぁ休み方は人それぞれにせよとにかく休むことは必要よ、曜もさっき言ってた通り腹が減っては戦は出来ぬ、よ。しっかり食べなさい?」

曜「あははっなんか絵里さんお母さんみたい」クスクス

善子「なら果南は迷惑な長女ね」

果南「あ?じゃあ善子は生意気でガキな末っ子ね」

ことり「じゃあって…」

絵里「二人ともなんですぐにそういう発想になるのよ…」

曜「あはははっ」

絵里(なんだかんだ騒がしいようなこの食卓で食べる夕飯はなんとなくだけど幸せの味がした)

絵里(だから如何なる退廃的状況、そして状態でもここはまだ幸せの在り処でいてくれてるのかもしれない)


397 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:15:52.337iMNu1YO0 (31/77)

果南「ふうごちそうさま、ちょっと地下の射撃場行ってくるよ、そろそろなまった体を正さないといけないみたいだからね」

ことり「私も行く、お荷物から戦力へ成り上がったならサボることは出来ないから」

絵里「い、いいけど大丈夫?二人とも肩を撃たれたわけだし」

果南「大丈夫だよ、心配しないで」

ことり「私も」

絵里「そ、そう…」

果南「じゃっ行ってくるよ」

スタスタスタ



果南「すぅ…ふぅ…」

ことり「久々の発砲に緊張してるの?」カチャッ

果南「まさかっ深呼吸をして落ち着いて狙いがずれないようにしてるだけだよ」カチャッ

ことり「そっか」

果南「はー久々にチャージングハンドルを引いたよ」

ことり「私もだよ、これを引くだけでちょっと戦いの感覚を思い出すね」

果南「うん、そうだね」


398 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:20:46.257iMNu1YO0 (32/77)



ドドドドド!


果南「へぇやるじゃん、全部的の真ん中なんてね」

ことり「そっちも全部的の真ん中じゃん」

果南「私にとっては当たり前だよ、何年戦ってきたと思ってるのさ」

ことり「それは私だって同じだよ、言っとくけど戦歴は私の方が長いんだからね?」

果南「知ってる知ってる」ドドドド

ことり「…というかその銃は……」


ことり「スカー?」


果南「そうだよ、SCAR-H。銃を持ち始めてからずっとこれとデザートイーグルしか使ってないんだ」

ことり「へぇ…でも松浦果南は戦闘経験が豊富っていうならそれこそスコーピオンEVOを使えばよかったんじゃないの?」

果南「…それはことりにも同じことが言えるよね」

ことり「まさかっ私は前に言ったよね、ブレが酷い銃はどうしても扱えないって」

果南「あぁそうだったね…うん、そうだね、確かにスコーピオンはブレが酷いから扱うのはかなり難しい銃だよ」


399 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:22:56.417iMNu1YO0 (33/77)

果南「みんな勘違いしがちだけど、スコーピオンは強いけど最強ではない。連射速度が速すぎる分マガジンはすぐに切れるし、銃口が小さい分一発一発の威力が低い」

果南「もちろんアンドロイドだろうと完璧に避けるのが難しいと言われる連射速度のアドバンテージは魅力的だけど、案外スコーピオンは不完全なところがあるんだよね。ブレが酷いから思った通りに弾が飛ばないせいで事故も結構多いし」

果南「その点このSCAR-Hは一発の威力が大きいし壁もよく抜けるから遮蔽物をあんまり気にせずに済むし一発敵に撃ちこむだけでも致命傷になる火力の武器、防弾チョッキなんてなんのそのそんなもの貫通するよ」

ことり「…なるほどね、あくまで求めるのは”そういうところ”なんだ」

果南「そうそう、スコーピオンみたいな器用さはいらないよっと!」ドドドド

ことり「そっか」ドドドド

ことり「…ねえ松浦果南」

果南「何?」

ことり「もし絵里ちゃんたちの傷が癒えてない時に戦いが始まったら、戦いの主軸は私たちになる」

果南「…うん、そうだね」

ことり「だからその時は…絶対に負けないようにしよう。このままお荷物ではいられないよ」

果南「そんなの当たり前だよ、千歌を殺した分はしっかり償ってもらわないとね」


400 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:24:17.847iMNu1YO0 (34/77)

ことり「…私も、助けてもらった命をふいにはしたくない」

果南「……でも、絵里は乱暴な命の使い方をしたら怒ると思うよ」

ことり「…そうだね、怒るね」

果南「あははっ本人も命の使い方は結構乱暴だっていうのに、人の事になると急に厳しくなるのがホント絵里って感じ」

果南「…でもさ…今回、ことりは何のために戦うの?」

ことり「何の為?」

果南「絵里や善子はこのアンドロイド差別を無くす為に戦ってるけど、私は違う」

果南「言ったよね、私は戦うの好きだから戦うって。だから私は戦争を起こす気でいる絵里についていったと同時に、千歌の仇討ちをしようとしてるだけ」

果南「ことりは何の為に戦うの?命を助けてもらったといってもそこで恩を返す義務はないよ」

ことり「……そうだね、なんで私は戦うんだろう」

果南「…どういうこと?」

ことり「私自身もよく分からない、でも理由はなんとなく松浦果南と同じかも」


ことり「絵里ちゃんについていこうかなって、そう思っただけかもしれない」


果南「…そっか、じゃあ私が絵里についていってるのは別に珍しいことじゃないんだね」


401 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:25:43.027iMNu1YO0 (35/77)

ことり「…うん、危なっかしいところあるしほっとけない存在なんだと思う」

果南「……そうなのかな」

ことり「そうだよ」

果南「…そっか」



絵里「花丸さん、それ何?」

花丸「これですか?」

絵里「そうそう」

花丸「これはかよさんのライブのチケットずら!ようやくチケットが取れたから是非この日は行きたいって思ってて…」

曜「あぁ知ってる、今話題のアイドルだよね!可愛らしい歌声は私もとっても好き!」

善子「かよさんってあの千歌が言ってた人のこと?」



402 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:27:59.017iMNu1YO0 (36/77)

絵里「かよ……はなよ…」


花陽『だからまた今度、お会いした時はもっといっぱいお話しましょう♪』


絵里(あの人もすごい人なんだなって思う、こんな退廃的都市を彩る歌声とその煌きは威力そのものは無いけれど心を揺さぶる波状攻撃として今も広がり続けている)

絵里(今、花陽さんは何をしているのだろうか。あの時会ってから今に至るまで、花陽さんは立ち位置があやふやでイマイチ考えてることがよく分からない不思議な人だった)

絵里(ただ分かるのは、アイドルってだけ。なのになんであの人は私を助けたんだろうか)

曜「じゃあ行けるといいね、かよちゃんのライブに」

花丸「はいずら!」


403 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:31:21.487iMNu1YO0 (37/77)

~???

「おーい、おーいってばー!」

絵里「…ん、誰?」

凛「凛だよー星空凛」

絵里「…!?なんであなたがいるの!?」

凛「ん?なんでってどういうこと?」

絵里「だって死んだんじゃ…!」

凛「あははっ勝手に殺さないでよ」

絵里「え、え…?」

絵里(目が覚めれば外は暗く周りを見ればそこは真姫の別荘の寝室だった、そして隣を見れば死んだはずの凛がニッコリ笑顔で座ってた)


404 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:33:06.577iMNu1YO0 (38/77)

絵里「…なんであなたはここにいるの?」

凛「んー?なんでだろう、凛もよく分からないや」

絵里「…私とあなたは敵でしょう?」

凛「んーどうしてだろう、もう敵じゃない気がするんだよね」

絵里「…意味が分からないんだけど」

凛「こう…気持ちの問題なのかな!しかもほらっ今の凛は武器も何も持ってないし」

絵里「…じゃああなたは何でここに来たの?」

凛「だから言ってるじゃん、よく分からないって」

絵里「はぁ?」

絵里(戦う気はないみたいだけど、その分返す答えも理解させてくれないくらいに適当なものだった)

絵里(それに今思えば曜や果南はどこに行ったんだろう、曜と果南は私と一緒に寝てたはずなのに何故か今は姿が見えなかった)



405 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:34:21.577iMNu1YO0 (39/77)

絵里「果南と曜はどこ?」

凛「知らないよ、凛はここにいるだけだもん」

絵里「いや意味分からないわよ…」

絵里「…とりあえず来て、リビングに行くわよ」

ギュッ

凛「…ダメ」

絵里「え?どうして?」

凛「…いや、よく分からないけどその扉は開けちゃダメな気がして」

絵里「何よそれ、とりあえず開けるわね?」

凛「…っだめ、やっぱりダメ」

絵里「どうしてよ、ここは安全よ?」

凛「そういう問題じゃない、凛もこう…なんて説明すればいいか分からないけどとにかくダメ!」

絵里「じゃあどうしろっていうのよ?このまま疑問を残して寝室にいるのは私いやだわ」

凛「…で、でも」

絵里「大丈夫だから、みんな優しいから仲良くしてくれるわ」



406 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:35:36.957iMNu1YO0 (40/77)


ガチャッ


バリバリバリ!


絵里「っ!?」

絵里(暗い部屋の暗い扉を開ければその先から飛んでくる聞きなれた銃声と数えきれないほどの弾丸に心臓が止まりそうなほどに驚いた)

絵里「くっ…!」シュッ

絵里(幸いにも横へ跳躍すれば廊下から見て死角へと移れる、だからダメージは無かったけど安心したのも束の間、私は死を悟った)


絵里「…凛?」


絵里(…直立不動の凛に呼びかけた、けど何も返事は無かった)

凛「…ぁ」

バタッ


絵里「! 凛!」タッ


絵里(……そう、凛の死を悟った。膝から倒れる凛を抱きかかえると私のお腹に伝ってくる大量の血は焼けてしまいそうなほどに熱かった)


407 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:36:44.087iMNu1YO0 (41/77)



絵里「ッ!? わぁあああっ!?」


絵里(そうして凛から離れて凛のお腹を見れば、服越しだろうとすぐ分かるほど無惨に貫かれたお腹の穴が私の恐怖を煽った)

絵里(お腹の穴からぽろっと出てくるほっそい弾丸は吐き気を催し、このお腹に空いた無数の穴とその死体はとてもじゃないけど見てたものじゃなかった)

絵里「うっ…ぷっ……」


スクッ


絵里「!」

絵里(お腹から沸き上がってくるものを抑えようとしてると後ろから聞こえる服と銃が擦れる音)


絵里「あなた…あッ!?」


絵里(振り返ればもうすぐそばにまで近づいたマチェットを持ったもう一人の私がいた)

絵里(この距離からして避けるのはほぼ不可能で、私は死あるのみだった)


408 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:38:26.317iMNu1YO0 (42/77)

絵里「ぁ…!」

絵里(振り返ってそして死に際に、目に光を通していないであろう濁った瞳に理解などとうに無さそうな気味の悪い無表情、私だけど私じゃないそんな姿をしたこのもう一人を見たら出る言葉も凍ってしまうでしょう?)


絵里(私の最期は、あまりにもホラーで最悪な最期だった)



絵里「わああああああぁぁぁぁあぁあぁああ!?」バサッ



曜「うわぁ!?何々!?」バサッ

果南「何っ!?敵!?」シュッ

絵里「はぁ…はぁ…はぁ……」

果南「ど、どうしたのさ絵里…」

絵里「ご、ごめん起こしちゃったかしら…」

曜「う、うん…それよりどうしたの?」

絵里「…夢…?を見たのかしら…?」

果南「なんで疑問形?」

絵里「いや…ごめんなさい。多分夢現なんだと思うわ、ちょっと冷静になれないかも…」

絵里(叫べばそこはあの時と同じ寝室、横には果南も曜もいるし多分ここが現実であの凛のいた世界が夢なんだと思う)



409 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:39:12.307iMNu1YO0 (43/77)

曜「それで何を見たの?」

絵里「それは……」

絵里「………」

絵里(喋ることに何が邪魔をしたのかしら、意識することもない頭のどこかでくだらないことって思ってしまったのかしら)

絵里(いくら内容が奇妙とはいえたかが夢、現実とはかけ離れた空想の世界の話をさも現実かのように語るのは確かにくだらないしバカバカしい)

絵里(だからこの口から、その夢が出ることは無かった)

果南「…?何?何を見たの?」

絵里「……いや、なんでもない」

曜「えぇ…あんな叫び声まで出してそれはないよ絵里さん…」

果南「そうだよ!」


410 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:39:39.827iMNu1YO0 (44/77)

絵里「…でもたかが夢でしょ?別になんでもない話じゃない」

果南「そういう問題じゃないよ、私はただ単純に絵里の夢の話が聞きたいだけ」

曜「そうそう、私も同じ」

絵里「………」

絵里(それを言うのをくだらないと私は思っているのに……しかもあの夢をどう説明すればいい?)

絵里(短い時間だったけど話せばきっと長くなる、あんな僅かな時間でどれだけの情報が交差としたというのかしら。あの夢に追及をしても何も無いと私は思う)

絵里(だから私はただの悪夢で終わらせることにした)




果南「ぶー……」

曜「んー……」


善子「…何?あれは」

ことり「いや、私は何も…」

花丸「何かあったんですか?」

絵里「あはは…私が原因かしら…」


411 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:40:32.157iMNu1YO0 (45/77)

善子「何やったの?」

絵里「いや…ちょっとね…」

善子「…?」

果南「あー!モヤモヤする!絵里!いい加減教えてよ!」

絵里「いやだから何でもないって…」

曜「その一点張りが私たちのモヤモヤを加速させるの!」

ことり「え、え?意味が分からないんだけど…」

善子「誰か堕天使ヨハネに説明をよこしたまえ…!」

果南「絵里が昨日見た夢を教えてくれないんだよ」

ことり「昨日見た夢?どうして急にそんな」

曜「絵里さん、悲鳴をあげて起き上がったんだよ。それで私も果南ちゃんも起きちゃって」

果南「そうそう、なのに夢の内容を教えてくれないんだよ!?」



412 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:41:11.187iMNu1YO0 (46/77)



善子「…くだらな」


果南「くない!夜中に突然悲鳴をあげて起き上がるなんてどんな夢を見たか気になるでしょ!?」

曜「そうだ!心を持つ者の性だよこれは!」

ことり「そこまで大げさに言う?」

花丸「でも確かに気になるところもあるずら」

曜「もちろんだよ!」

ことり「絵里ちゃんはどうしてそこまで口を割らないの?ここまで引っ張るんだったら言ってあげればいいじゃん」

絵里「いや…別に……」

ことり「んー…?」

善子「言いたくない理由があるのよ、察しさない」

果南「知らないモノがあるのなら知りたくなるのは普通でしょ?つまりはそういうことなんだよ」

善子「だからそこは相手の気持ちを尊重しなさいよ…」

曜「んー…どっちもどっちだね」



413 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:42:12.307iMNu1YO0 (47/77)

ことり「…まぁ絵里ちゃんも訳ありみたいだし我慢した方がいいんじゃない?」

果南「むー……」

曜「…まぁいいよ、そうだね。相手の気持ちも尊重しないとだよね」

絵里「え、ええごめんなさいね」

曜「いいよ、でも言ってくれる時があったら言ってね!」

絵里「ええもちろんよ」

果南「……仕方ないね、言うことは曜と同じ。言ってくれる時があったら言ってね?」

絵里「ええ」

絵里(次の日の朝、機嫌を悪くして起きる二人だったけどなんとか腹をくくってくれたみたいで助かったわ)

絵里(その後は朝ごはんを作って食べるのだけど、ことりも果南もだいぶ動けるようになったみたいでことりは自ら料理に参加するし果南は皿を運んでくれたりで戦線の復帰も見込めそうだった)



414 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:43:54.757iMNu1YO0 (48/77)



ことかな「おぉ~!」


善子「…何してんの?」

果南「漫画を見てるんだよ、善子も見る?」

善子「いや…なんか表紙からして絶対私に合ってないやつだからいい」

曜「表紙?あぁあれは恋愛モノだね」

花丸「恋愛モノならいいと思いますけど…」

絵里「善子はバトルモノが好きなのよ」

花丸「そうなんですか」

ことり「この漫画ヒロインが複数いるからドキドキしちゃって…」

果南「ことりも戦いじゃ鬼みたいな顔してるけどなんだかんだ乙女だよね」クスクス


ことり「あ?」


果南「鬼だ…」

曜「あははは……にしてもここの書物はすごいよね、私もちらっと覗いたけど図書館じゃんあれ」

花丸「あれは学校の図書室より大きかったずら…」


415 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:47:32.297iMNu1YO0 (49/77)

絵里「ここの別荘は山奥だから山奥でも楽しめるようにって真姫が本を蓄えた場所なの、その分家の面積も増えたしある意味で言えば真姫の図書館、或いは図書室かもね」

曜「へぇ…真姫さんってすごいんだね…」

花丸「真姫さんってそんなすごい人だったんですか…」

絵里「ええ、超お金持ちよ」

善子「そして絵里のパートナーよ」

絵里「あはは…どうかしらね…」

曜「ん?どっち?」

絵里「私も真姫もそのつもりはないけど、そう呼ばれてるだけなのよ」

善子「授業と短い休み時間以外はほぼ全部の時間一緒にいるからね」

ことり「なんで?」

絵里「んー…まぁ昔色々あってね」

果南「はい始まったよ、絵里の適当誤魔化し芸」

絵里「何よそれ…」

果南「絵里は人に言えないことがありすぎるんだよ、抱えないで言ってよ?私たち親友でしょ?」

絵里「んーまぁ確かに否定は出来ないけど…いいの、これは胸の内にしまっておきたいから」

果南「えー…」


416 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:49:25.527iMNu1YO0 (50/77)

ことり「…なんか思ってた以上に複雑そうだね、絵里ちゃんの過去って」

絵里「まぁ色々あるのよ」

花丸「ずらっ」

果南「んあー!もう!なんか隠してることがあるって分かるとモヤモヤが止まらない!ちょっと射撃場で乱射してくる!」タッタッタッ

曜「あ、ちょっと弾撃ち過ぎないでね?いくらここに貯蓄されてるとはいえ有限なんだから」

果南「分かってるー!」

ことり「じゃあ私外でちょっと体を動かしてくるよ」

善子「体を動かす?」

ことり「私は中国武術の心得があるから、型通りに技を繰り出したりで体を慣らすんだよ」

曜「そうだよね、初めて見た時からキレッキレの身のこなしに惚れ惚れしちゃったけどやっぱり中国武術だよねあれは」

ことり「そうだよ」

花丸「ことりさんの近接戦法は希ちゃんもマークしてて、あそこまで丁寧で綺麗な動きが出来るアンドロイド、ましてや人間でさえ見たことがないってすごい嬉しそうに言ってたのを覚えてるずら」

花丸「でも不思議ずら、どうして中国武術なの?」

絵里「そういえばそうね」

善子「確かにね、近接といえば私や絵里みたいな特に特化したものがなくて、ナイフでも持たない限り近接だけじゃ相手を殺めることのないCQCが基本なんだけどことりのそれは少し違うわね」


417 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:50:42.597iMNu1YO0 (51/77)

ことり「私、力がないから柔道みたいな投げたり固めたりみたいな近接は全然扱えなくてましてや絵里ちゃんや善子ちゃんみたいなシンプルなのも私には厳しかった」

絵里「えっ……」

絵里(ことりの飛び膝蹴りをもろに受けた私には力がないとか厳しいとか言われても正直困惑した)

ことり「だから中国武術っていう工夫されたモノを心得たんだよ、特定の構えをすることで力が手に集中して、仮にそれが胸にでも当たれば心臓を止めることも出来る殺人拳法へと変わるの」

曜「へー…恐ろしいねそれは」

絵里「ええ…そんな食らわなくてよかったわ…」

ことり「…まぁそんなところだよ」

花丸「そっか、理解したずら」

ことり「じゃあ私は行くね」

曜「あ、じゃあ私もことりちゃんのところ行ってもいいかな?ことりちゃんの公式の型が見れるのなら見に行かないわけがないからね!」

ことり「いいけど邪魔しないでね?」

曜「了解であります!」ビシッ



418 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:51:22.487iMNu1YO0 (52/77)


スタスタスタ

絵里「…行っちゃった」

善子「まぁ動けるようになった果南とことりは動きたいでしょうに」

花丸「あ、じゃあマルはあの本がいっぱいの部屋に行ってきてもいいですか?もしかしたら面白い本が見つかるかもしれないので…」

絵里「ええ、行ってらっしゃい」

花丸「はいずらっ!」

スタスタスタ

善子「……みんなやりたいことがあるのね」

絵里「…善子はないの?」

善子「驚くほどにないわね」


419 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:52:28.877iMNu1YO0 (53/77)

絵里「ゲームは?」

善子「一人でやっても面白くないわ」

絵里「漫画は?」

善子「見たいのがない」

絵里「リハビリは?」

善子「横っ腹撃たれただけの私にリハビリもクソもないわよ」

絵里「………」

善子「はぁ…暇ね」

絵里「私たちがレジスタンスである以上は娯楽にも行けないしね」

善子「堕天使になって空を飛びたいわ…」

絵里「堕天使は飛べないんじゃないの?」

善子「そんな決まりはどこにもないわ」

絵里「…そうね」

絵里(蒸し暑い夏の朝、クーラーのかかった部屋で二人ソファでだらけるだけだった)



420 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:53:06.857iMNu1YO0 (54/77)

善子「……羨ましいわ」

絵里「何がよ?」

善子「あの鳥よ」

絵里「青いわね、あの鳥」

善子「幸せを運んでくれてるのかしら」

絵里「そうだといいけど」

善子「…あの鳥のように自由に未来を羽ばたきたいわ」

絵里「……それは誰しも望むことよ、そして誰しもが諦める届かない存在」

絵里「前を向いた者は現実に押しつぶされて、後ろを向いた者は潔く夢を捨て去るのよ。そうやってこの都市のアンドロイドたちは記憶を失ってきた」

絵里「それはもはや理想郷ですらない、残された選択がNOかいいえかの違いなだけ」


絵里「…そうと分かってる私たちは一秒でも早くそこにはいかYESの選択を創らなきゃいけないのよ」


善子「…ええ、その通りね」


421 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 22:54:08.437iMNu1YO0 (55/77)

絵里「………」

善子「………」


ミンミンミンミンミン ジリジリジリジリ


絵里(蝉が沈黙を嫌って辺りを漂う何とも言えない空気に唄を混ぜ始めた。元はといえば始める気の無かったこの戦争も、何故か今では自分から始めた気になってしまっているくらいに心が戦いで沁み渡っていた)


絵里(造られた命は果たして命であったのか)


絵里(きっと世の中がもっと平等であったら私もこんなこと思わずに済んだのに、どうして私はこんなことを考えてるのかしら)

絵里「………」

絵里(鞠莉————どうしてあなたは私たちを生んだの?私という心を持った存在を創れたというのならあなたにも私たちを見下す意味があるのでしょう?)

絵里(…分からないわね、鞠莉の考えてることが)


絵里(…いや、鞠莉の全てが分からない)




422 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:00:47.087iMNu1YO0 (56/77)

善子「…まだ気にしてるの?」

絵里「何の話?」

善子「とぼけないでよ、真姫のことよ」

絵里「…お互い様でしょ」

善子「ルビィは……仕方ないじゃない、真姫とは訳が違うんだから」

絵里「…そうね、真姫がルビィと同じであったらきっと私も善子と同じだったと思う」

絵里(ルビィと真姫は違って、私と善子もまた違う存在だった。そしてそれはAかBかの平等的な違いではなくて1か10かの優劣のある違いだった)

善子「…絵里は真姫に何をした?」

絵里「命を助けたわ」

善子「…そう、だけど真姫にとってはそれ以上の事がいくつもあった」

善子「絵里が気にしてるのは、五年前のことでしょ?」

絵里「…ええ」



423 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:03:50.227iMNu1YO0 (57/77)

善子「……アンドロイドには理解出来ない心よね」


善子「恋心って」


絵里「…ちょっと違うかしら、理解出来ないんじゃないわ、私たちはそもそも恋愛というモノを知らないの」

絵里「恋愛をしたことがないから恋愛がどういうモノか学習が出来ない、恋愛が見て学べるモノであるなら私たちは恋愛を知ってるはずだし、恋愛っていうのはきっと複雑なモノなんだと思う」

絵里「……だからこそ、あの時はこう返すしかなかったでしょ?」



絵里「私は真姫に興味がない、と」



善子「……うん、間違ってない。けど、言い方は間違ってる」

絵里「…それは今なら私でも思う、だから気にしてるのよ」

善子「気負う必要はないと思うわ、私たちは恋愛というモノを知らないんだもの。真姫に対して好きという感情が無ければ興味も沸くはずがない」



424 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:05:56.487iMNu1YO0 (58/77)

絵里「……昔、小説で読んだわ。恋愛とは異なる性を持った者がし合う愛情表現の連なりと」

絵里「私と真姫は異なる性を持ってたのかしら?」

善子「……残念だけど同じ性ね、だって絵里は女なんだから」

絵里「…そうよね、私もそう思う」

善子「だからそういう視点から見ても絵里のその言葉は正しかった、女が女を好きになるのはもしかしたらあり得ないことではないのかもしれない」

善子「けど少なくとも男女がやるべき行為であるのは確かなはず、それはバトル漫画を見てる時に学んだから」

絵里「…ことりや果南が見てた恋愛モノも表紙は確か男女だったしね」

善子「ええ」

絵里「それから真姫、だいぶ控えめになったなって感じるの」

絵里「滅多に感情的にならないしいつも冷静でクールになったわ、それは劇的に変わったって程でもないけど変わったことを違和として感じることが出来るくらいには変わった」

絵里「だからもしかしたら…いやもしかしたらでもなく今でもあの時の事気にしてるんじゃないかしらって真姫と私の過去を問われると思うの」

絵里「私としては封印したい記憶だけど、それを封印したら真姫に失礼な気がしてね」

善子「…多分今でも気にしてると思うわ、だって過去は絶対に消えないモノなんだから」

絵里「…ええ、そうよね」



425 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:07:41.927iMNu1YO0 (59/77)

絵里「………」

善子「………」


カタッ


絵里「!」

花丸「ずらっ…ごめんなさい、なんか重い話で入りづらくてどうしようって思って…」

絵里「そ、そう…ごめんなさいね、こんな話をしてて」

花丸「い、いえ…」

絵里「どうしてここ?真姫の図書室に行ったんじゃないの?」

花丸「あ、はい。行ったんですけどあそこで本を読むには少し暑すぎて…だからここで読もうかと思って…」

絵里「あぁなるほど…クーラーあるから勝手につけてもよかったのに」

花丸「い、いえマルにもちゃんと礼儀ってモノがありますから」

絵里「そ、そう」


426 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:08:27.657iMNu1YO0 (60/77)

善子「…聞いたのよね?」

花丸「え?」

善子「絵里と真姫の過去のこと、聞いたのよね?」

花丸「えっ…あ、は、はい……」

絵里「…気にしないでね?でも、誰にも言わないであげて?」

花丸「も、もちろんずら!」

善子「いや、この際聞かれたことに関してはどうでもいいわ。私が花丸さんに言いたいのはただ一つ」


善子「同性に告白をする真姫をどう思うか、それよ」


善子「私たちはアンドロイド、でも花丸さんは人間よ」

善子「だから人間としての意見が聞きたい」

絵里「ちょ、ちょっと善子…」

花丸「い、いえ絵里さん、答えさせてください」

絵里「え、いいの?」

花丸「はいっ」



427 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:12:15.517iMNu1YO0 (61/77)

善子「………」

花丸「マルは…別に良いと思う……ずら」

花丸「せつ菜ちゃんもこういう漫画は大好きだったし、真姫さんは間違ったことをしてるわけではないと思います」

花丸「だけど、珍しくて一般的に受け入れ難いモノであるのもまた事実」


花丸「女が女を好きになるというイレギュラーを弁えて絵里さんに告白した真姫さんは、振られたことで今までにないダメージを負った」


花丸「人間もアンドロイドと同じで学習する生き物だからその時の真姫さんはきっと初めて失恋を体験した」

花丸「だからどうやったってもその時の記憶を消すのは無理…だけど、絵里さんのしてることは間違ってはないずら」

花丸「好きでもない人に好きっていう行為こそ恋愛への冒涜だし、きっと絵里さんはそこで恋愛を知ることで狂うモノがいくつもあったと思うから…」

花丸「マルは…絵里さんのファンクラブの存在も知ってたからそのままの絵里さんでいてほしいずら」

花丸「あの希ちゃんでさえ…絵里さんの事を色々気にかけてたくらいなんだからそのカッコよさは維持するべきモノだと思う」

絵里「…そう、ありがとう」

花丸「このくらい全然ずら!」

絵里「……やっぱり真姫は気にしてるのね」

花丸「…はい、それはもう確実に」

絵里「…そう」


428 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:16:09.717iMNu1YO0 (62/77)

善子「……何かしようと思ってる?」

絵里「いや、そういうことは考えてない」

絵里「ただ…曜と戦って帰ってきた時に電話で泣いてくれた時は嬉しかったなって……」

善子「嬉しい?」

絵里「さっきもいったけど、真姫は滅多に感情的にならないからそんな真姫が私の為に涙まで流してくれて嬉しくて…」

花丸「…素敵なことだと思う、真姫さんは昔の事を気にしながらも今の絵里さんの事を真摯に受け止めて真っ直ぐに立ち向かおうとしてる証拠ずら」

絵里「…なら、いいんだけどね」

花丸「きっと…ううん、もう確実にそうずら!」

絵里「……ふふふっありがとう」

花丸「えへへ…」

絵里(私と真姫の過去は複雑なモノだった)

絵里(五年前に突然告白をされて、私は少し考えてからあのような発言をして真姫を振った)

絵里(当時から今に至るまで恋愛というモノがよく分からなかったけど、私の稚拙な知識と考えでも同性である相手から告白をされるというのは何かがおかしいというのは分かっていた)

絵里(それにきっと告白っていうのはデリケートな問題なんだと思う、もしそうでないのならわざわざ人気のない帰り道なんて貧相でつまらない場所を告白の場所にするはずがない)

絵里(だからこれは真姫と私の問題だと思って胸の内に秘めておいた。最も善子には知られちゃったけどね)

絵里(でも、そんな過去を解き放てば花丸さんが答えに等しいモノをくれた。それを聞いて今まで頭にあったモヤモヤが消えた、そして気が楽になった)


絵里(だからもっと真姫の事を大切にしなきゃ、そう思うばかりだった)




429 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:24:14.977iMNu1YO0 (63/77)

~???

鞠莉「……とうとう動き出しちゃったのね、政府が」

海未「この際私たちは他のアンドロイドには目もくれずに絢瀬絵里たちを全力で殺しに行きます、いいですか?」

鞠莉「別に構わないわ」

鞠莉「いつかこうして大きな力を持ったアンドロイドたちが結託して反乱を起こすとは思ってたけど、案外早いものね」

海未「AIというものは常に人間の理解の範囲を超えている未知の存在です、人工的とはいえ心というモノを創れたのならそれはもはや天然と瓜二つの人の心なのです」

海未「アンドロイドがあなたの事を不服に思うのなら反乱を起こしても不思議ではないでしょう」

鞠莉「…ええ、そうね」


430 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:27:19.987iMNu1YO0 (64/77)

鞠莉「ねえ、海未に聞きたいことがあるの」

海未「なんですか?」

鞠莉「希が死んだらしいけど、希の下にいた穂乃果とせつ菜を知らない?」

海未「知りませんけどおそらくは絢瀬絵里のところにいるでしょう」

海未「というか希をご存じで?」

鞠莉「ええ、だって希はアンドロイド制作においてアンドロイドの心を創った人なのよ?そりゃあ知ってるわよ」

海未「こ、心!?そんな人だったのですか!?」

鞠莉「希は心が広くて寛容だったわ、だからほぼ全てのアンドロイドの性格を優しく作った。だけどそこで勝手に生まれたのが猜疑心と敵愾心だった」

鞠莉「元々ね、私や希が当初作ったアンドロイドは平和を望むアンドロイドだったのよ。戦いは好きじゃないし運動神経もほとんどない臆病なアンドロイド、だけど優しくて人一倍感受性に長けた寛容なアンドロイド」


鞠莉「でも、結果は違った」


鞠莉「私から見てアンドロイドは人間と全く同じだけど、されどアンドロイドは造られた命。機械仕掛けのその体と心は勝手に進化を遂げて新たな感情を作り出した」

鞠莉「AIというアンドロイドなら誰しもが持ってるその心で自ら運動神経を作り上げて、気に入らない相手に対抗する手段を作り上げた」

鞠莉「ねぇ、なんで対アンドロイド特殊部隊が女しかいないか分かる?」

海未「…分かりませんね」


431 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:30:51.947iMNu1YO0 (65/77)

鞠莉「アンドロイドは頭が良すぎるのよ、何を見て学んだのかは知らないけどもう処分されてる初期型の獰猛なアンドロイドはハニートラップってやつで戦闘慣れした男共を何百人と殺害してったの」

海未「…!なるほどだから…!」

鞠莉「そう、だから対アンドロイド特殊部隊は女しかいないの」

鞠莉「…それからアンドロイドは私の意図しなかった方向へ発展していった」

海未「………」

鞠莉「ごめんなさい、話が逸れたわね」

海未「い、いえ」

鞠莉「話を戻すけど、穂乃果とせつ菜はいくら戦闘の鬼とはいえ腐っても業務用アンドロイドよ、それは主がいないと生きていけないアンドロイド」

鞠莉「しかしあの二人は全アンドロイドの中でもかなりプライドが高いアンドロイドよ、主が死んで、そう易々と主をとっかえるほどあの二人は薄情じゃないわ」

鞠莉「……だからあの二人は今フリーである可能性が高い」


鞠莉「私から提案するなら、今はそっちをspotした方が後々有利に立ち回れるかもしれないわ」


海未「ふむ…なるほど、分かりました。少し検討してみます」




432 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:32:35.997iMNu1YO0 (66/77)

鞠莉「ええ、よろしくね」

海未「はい、では私はこれで」

ガチャッ


ドンッ!


鞠莉「……Fuck you」


鞠莉「…私はこんな結末を望んでアンドロイドを作ったわけじゃないのに」


鞠莉「………なんで死んだのよ」


鞠莉「希……」




433 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:39:17.917iMNu1YO0 (67/77)

~???

ツバサ「はーあっ疲れちゃった、あの殺し屋三人を殺そうかと思ったのにとんだ邪魔が入っちゃったわよ」

英玲奈「まったくだ、おまけに傷まで負わされて最悪だな」

ツバサ「あなたはいいわよねぇスナイパーだから遠くでチクチクやってるだけでいいんだから」


「いやいやそんな言い方はないと思うけどぉ」


英玲奈「よせっツバサ、あんじゅ、スナイパーの強みはアサルトライフルやマークスマンライフルでも対応の難しい距離から一方的に撃てることだ、むしろ傷を受けてないのは当然だ」

ツバサ「そんなの知ってるわよ、ただムカつくのよね」

あんじゅ「私が?」

ツバサ「違う、あの黒髪と青髪の女よ」

英玲奈「確か一人はダイヤ、と言っていたな」

あんじゅ「あぁあの清楚っぽい人?動きが特徴的よねー動くっていうよりかは舞ってると言った方がいいのかも」


434 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:41:05.047iMNu1YO0 (68/77)

あんじゅ「…ってその二人がムカついてなんで私に当たるの?」

ツバサ「……ムカつくから」

あんじゅ「答えになってない…」

英玲奈「あのまま戦ってたら共倒れだったかもな、幸いにももう一つの戦場で大きな変化があったようで私たちはフリーになったから逃げさせてもらったが…」

ツバサ「私たちもあの殺し屋と結託して黒髪と青髪を殺した方がよかったかしら」

英玲奈「…合理的に考えるのでいえばそうかもしれないが、後々の事を考えるとそれは悪手だな」

あんじゅ「まぁ今更何言ったって変わるわけじゃないんだし次の事でも考えたら?」

ツバサ「……ええそうね、あの殺し屋はいずれ殺すとして他にも目的があるのよね。忘れてたわ」

英玲奈「おいおい…」

ツバサ「いいわ、この際私たちのやるべきことにあの黒髪と青髪へのお返しも兼ねましょうか」


バンッ!


英玲奈「…おい、その銃で花瓶を割るな。水も垂れてるし花が可哀想だろう」

ツバサ「はっむしり取られた花に可哀想もクソもないわよ、地から離れた時点で死んだも同然なんだから」

英玲奈「………」


ツバサ「次会った時があなたの最期よ」


ツバサ「……待ってなさい」ニタァ…


435 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:42:47.627iMNu1YO0 (69/77)

~深夜、別荘

ピコンッ♪ピコンッ♪

絵里「……ん」

絵里「誰…?」

絵里(深夜、それは突然として誰かからメールが送られてきた)

絵里「……! 亜里沙…!」

絵里(そしてそのメールの送り主は私の妹である亜里沙だった)

『お姉ちゃん、元気ですか?

お姉ちゃんの事情は分かっています、亜里沙は一人でも大丈夫だから余裕が出来た時に連絡ください。
何かお姉ちゃんの力になれることがあると思います』

絵里「亜里沙……」

絵里(流石は私の妹と言いたい)

絵里(あんな純粋無垢な子がこんな真面目な事を言ってくるのだから世の中怖いモノが減らないのよ、ここまで頼りになる妹を持って私が誇りに思う)

絵里「………」

ピッ

絵里(ただ、頼り甲斐があっても頼るとは言っていない)

絵里(亜里沙を危険な目にあわせるわけにはいかない、亜里沙は平和に暮らすべきなの。まだ戦いの味も知らない純白のままでいてほしいの)

絵里(だから私は静かにデバイスの電源を落とした)


436 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:43:27.267iMNu1YO0 (70/77)



果南「メール、返さないの?」


絵里「っ!?って果南か…脅かさないでよ…」

果南「ごめんごめん、ガサガサ音が聞こえたもので」

絵里「どんだけ音に敏感なのよ…」

果南「あははっ寝込みに襲われるっていうのは王道パターンだからなんか警戒が解けなくて」

絵里「何よそれ…」

果南「そんなことより返信しないの?」

絵里「え、ええ亜里沙には心配かけれないわ」

果南「メールを送らないことでもっと心配するかもよ?」

絵里「危険な目にあわせるよりかはマシよ、言っとくけど亜里沙は戦闘型アンドロイドなのに一回も戦ったことがないんだからね」

果南「あははっ珍しいよね、戦闘型アンドロイドなのに」

絵里「ええホントよ、血の味も知らない子なんだからずっとこのまま純粋な子でいてほしいの」

果南「んーまぁ綺麗なら綺麗のままでいてほしいのは分かるよ」

絵里「でしょう?」

果南「まぁね」


437 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:45:14.747iMNu1YO0 (71/77)



ドカッ


果南「痛っ…」

善子「んー…だからヨハネだって……zzz」

果南「善子か…酷い寝相だね…」

絵里「今日は珍しくみんな一緒に寝てるからやっぱり狭いわね…」

果南「まぁね、親睦を深めるとかどうのだけど私はいっつもこうでいいんだけどなー」

絵里「それは流石に狭くて寝苦しいんじゃない?」

果南「くっつけば大丈夫!」

絵里「…夏なのに?」

果南「大丈夫!」ピース

絵里「…そういえば善子がみんなと寝たがらないのって……」

果南「…寝相が悪いから、なのかもね」クスクス

絵里「ふふふっ可愛らしいわね」クスッ



438 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:46:14.227iMNu1YO0 (72/77)



曜「くかー…zzz」

ことり「すぅ……zzz」


絵里「曜はこう…場所を取る寝方をしてるわよね」

果南「大体大の字で寝てるからね、起きる時はいつも私のお腹か背中に曜の手が乗ってるよ」

絵里「ふふふっいいじゃない」

果南「まぁね」

絵里「ことりは見た目通り寝てる時もキュートよね」

果南「あははっ枕なんて抱いちゃってこのこのっ」ツンツン

ことり「んんー…殺してやるー……zzz」

果南「……あはは…ことりらしい寝言だね」

絵里「いやいやどんな寝言よ……」


439 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:47:16.607iMNu1YO0 (73/77)



花丸「ずらー…zzz」


絵里「花丸さんはすごいらしさがあるわよね、こじんまりとしてて」

果南「んーどうなんだろう、私はこの子のことよく知らないから何とも言えないかな」

絵里「そっか、そうよね。花丸さんと果南はほぼ初対面みたいなものだもんね」

果南「そうそう。あ、でも銃が撃てないってのは知ってるよ、それは前に聞いた」

絵里「ええ、花丸さんは銃が撃てないらしいの」

果南「へーなんでだろ?」

絵里「うーん…過去に何かあったんじゃない?」

果南「んーまぁそんなところか」

絵里「でも、過去の詮索はやめてあげて?ここの人たちの過去は語り継ぐものではないから」

果南「分かってるよ、それ私は興味がある人しかそういうことしないし」

絵里「…興味のある人って例えば誰よ?」

果南「絵里に決まってるじゃん、むしろ絵里しかいないよ」



440 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:49:16.867iMNu1YO0 (74/77)

絵里「…なんで私?」

果南「あははっ昔っからいるのに謎なところが多いし、どこからともなく発生する自信や強さの源が知りたくてね」

絵里「そんなの私でも知らないわよ?」

果南「だからこそ第三者である私が客観的に見る必要があるんだよ」ジロジロ

絵里「…やっなんか恥ずかしいから見ないで」

果南「なんで!?」

絵里「ぷっふふふ…ごめんなさいね」

絵里(今もどこかで何かが動いてるかもしれない、そんな変わりゆく戦場で私たちは真姫の別荘で平和に今を過ごしていた)

絵里(戦争は終わりなき季節、その中で私は暑い夏を過ごしている。外の世界で何が起ころうともまずは羽休めをするしかなかった)

絵里(今、亜里沙はどうしてるのだろう。今、私が殺めてしまった天国にいる凛はどうしているのだろう)

絵里「……今、何をしているのかしら」


絵里(…みんなは)




441 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:51:16.517iMNu1YO0 (75/77)

~三日後、夜

にこ「はぁ?私を主にしたい?」

せつ菜「はい、私たちはにこさんを主にしたいんです」

穂乃果「………」

にこ「はっ無理ね、私は希とは違ってあんたらを部下に迎え入れるほどの余裕と器がないの」

せつ菜「それでもいいんです!何もしなくても私たちの主っていう権利とにこさんからの導があればいいんです!」

にこ「冗談言わないで、私には妹のちびたちだけでも精一杯よ」

せつ菜「そんな……」

穂乃果「………」


カチャッ


にこ「…なんで私に銃を向ける?」

穂乃果「やっぱり人間は愚かだね、希ちゃんとせつ菜ちゃんと花丸ちゃん以外は信用するに値しないよ」

穂乃果「私は最初からあなたを主にしたいとは思ってなかった、だから変な期待しないでよかったよ」

にこ「なら私は変な期待されなくてよかったわ」


442 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:55:53.587iMNu1YO0 (76/77)

せつ菜「ちょ、ちょっと待ってください、にこさんは良い人じゃないですか!」

穂乃果「良い人なのは分かるよ、でもそれで?」

せつ菜「そ、それでって…」

穂乃果「確かに業務用アンドロイドは主がいないとやっていけない、けど主をすぐに入れ替えるほど私たちは薄情じゃないし見ず知らず他人を主にするほど能無しじゃない」

穂乃果「例え昔希ちゃんと一緒に戦ってたと言われる仲間だとしても理由がないんじゃ私は受け入れられない」

せつ菜「……でも」

にこ「やめときなさい、あんたらは二人で一人なんでしょ?私が原因で仲違いするならおとなしく引き下がって新しい主を見つけなさい」

せつ菜「で、でも新しい主なんて……」

にこ「…思ったんだけど絢瀬絵里じゃダメなの?絵里は曜やことりを扱う寛容なアンドロイドよ?それにあんたらも知ってるあの凶暴な松浦果南や昔問題を起こした堕天使と親友の仲よ、今主にするなら間違いなく絵里にするべきだと私は思うけど」

穂乃果「…あいつはイヤだ」

にこ「なんで?」

穂乃果「……とにかくイヤ」

にこ「…何?何かあるの?」



443 ◆iEoVz.17Z22019/09/29(日) 23:58:17.127iMNu1YO0 (77/77)

穂乃果「………」

せつ菜「…とにかくにこさんが無理なら分かりました、私たちは新たな主を探しに行きます」

にこ「……でも」


海未「なら、私があなたたちの主になってさしあげましょうか?」


にこ「!」

穂乃果「っ!?」

せつ菜「あなたですか…」

海未「お久しぶりですね、にこ。そしてあなたたちも」

にこ「海未…」

穂乃果「……目的は何?」

海未「そんなの言わなくても分かるでしょう?軍神とトリックスターを殺しに来たんですよ」

せつ菜「…どこまでもしつこいお方なんですね」

にこ「やめときなさい、海未。いくらあんたが再生能力お化けとはいえこいつらもアンドロイドよ、再生能力は人間より上の存在だからある程度は戦える。ある程度戦える軍神とトリックスター相手じゃ流石の海未でも分が悪いでしょう?」

海未「確かにその通りですが、私は即死でもない限りは死にませんからね、勝つ勝たないというところに観点を置くより戦うか戦わないかが私にとっては重要なんですよ」


444 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:01:17.15GdeG3AG80 (1/16)

穂乃果「…消耗戦がしたいんだね」

海未「ご名答」

にこ「なるほどね、でもそれは消耗戦じゃなくてただの八百長ね。海未相手に消耗戦で勝てるわけないじゃない」

海未「ええその通りですよ、そんなの私と戦えばすぐに分かるでしょう?私の意図が、消耗戦がしたいっていう私の目的が」

穂乃果「…なら尚更戦うわけにはいかないよね」

せつ菜「周りを見る限り今日は仲間の方もいないようですし逃げようと思えばすぐに逃げれますよ」

海未「ええ、ですが戦ってもらいます。逃げられるとしても、ダメージはちゃんとダメージとして残りますからね」

にこ「…呆れたわ、海未」

海未「はい?」

にこ「穂乃果、せつ菜、あんたらは絵里のところへ行きなさい」

せつ菜「え?」

穂乃果「なんで?」

にこ「一度海未とは本気で殺し合いをしてみたかったの。最強相手にどこまで私の実力が通用するのかやってみたかったの」

海未「………」



445 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:02:52.15GdeG3AG80 (2/16)

にこ「だからあんたらは絵里のところで傷を癒すべきよ、そして絵里を主にしなさい」

穂乃果「……あいつはイヤだ」


にこ「なら今ここで死になさい!穂乃果っ!」ドドドド!


穂乃果「っ!?」シュッ

にこ(我が儘をいう穂乃果に向かって私の愛銃——MP5で発砲した)

穂乃果「っあ……!」

にこ(そして見事私の放った銃弾は穂乃果の横っ腹を貫き、穂乃果は力なく倒れた)

穂乃果「んくっ…!」

せつ菜「穂乃果さん大丈夫ですか!?」アセアセ


せつ菜「にこさんは何をやってるのですか!?」


にこ「それで反抗する余裕はなくなったでしょ?出血を止める術なく今ここで死ぬか、絵里のところへ行って無様に助けてもらうかどちらかにしなさい」


せつ菜「にこさん…!流石の私でも怒りますよ…?」

海未「……正直、敵である私からしてもにこの行動は理解出来ないのですが」

海未「裏切ったっていうなら話は早いですが、にこから私に向けられているのは殺意と敵意、一体何がしたいのですか?」

にこ「穂乃果とせつ菜は一度底辺まで落ちるべきよ、プライドが高すぎるからね」



446 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:04:11.50GdeG3AG80 (3/16)

にこ「それでどうする?せつ菜」

せつ菜「…何がですか?」

穂乃果「く…そっ……!」

にこ「血を流すアンドロイドを助けてくれる人がいたらいいわね、まぁこんなクソみたいな都市で助けてくれる人なんていないと思うけど」

せつ菜「………」

にこ「もし助かりたいんだったら絵里のところに行くことね、あそこなら助けてくれるわよ」

にこ「それとも、今ここでせつ菜も死ぬ?せつ菜が死にたいのなら今だけは海未と手を組んで殺してあげるわ」

せつ菜「…いえ、それならそうさせてもらいます」

穂乃果「せつ菜ちゃ……」

せつ菜「穂乃果さんは喋らないでください、私にとって穂乃果さんは家族なんですから死なれては困るんです」

穂乃果「………」

せつ菜「……感謝します、にこさん」

にこ「感謝される義理はないわよ」

タッタッタッ

にこ(穂乃果はともかく、せつ菜は気付けたのかしら)

にこ(私の不器用なやり方に)



447 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:05:32.00GdeG3AG80 (4/16)

海未「…驚きましたね、まさか軍神を撃つなんて。流石の私でも呆気に取られてトリガーを引くことが出来ませんでしたよ」

にこ「そうね、私もきっと狂ってるんだわ」

海未「私も、ですか」

にこ「ええ、所詮海未も鞠莉の犬なのね」

海未「鞠莉の犬ですか…そうなのかもしれませんね。それは強ち否めないかもしれません」

にこ「ええ、海未には事情があるのだもの。知ってるわ」

海未「ええ、ですから残念ですよ。私に理解のある人と殺し合いをしないといけないなんて」

にこ「私も残念ね、もっと海未のこと知りたかったわ」

海未「…それは遺言ですか?」

にこ「どうかしらね」カチャッ


448 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:06:20.94GdeG3AG80 (5/16)

海未「…いつもより軽装なんですね」

にこ「私、基本的に小さい銃しか持たないの」

にこ「グレネードランチャーを背中にかけるための幅が無くなっちゃうからね」

海未「知ってますよ、いつも持ってますよね。そのグレネードランチャーは」

にこ「サブマシンガンとハンドガンだけじゃ火力と射程がないからね、それをグレネードランチャーでカバーするのよ」

海未「トレードオフの破棄ですか、ですがまぁ確かにグレネードランチャーなら狙いが外れても遠方へと広がる爆発でなんとかなりますしね」

にこ「そんなところよ、それじゃあやりましょうか。お互い曜の作ったガジェットを使う者同士アンドロイドをも驚かせる戦いをしようじゃない」

海未「望むところですよ、にこ相手なら正々堂々と殺してあげますよ」カチャッ


449 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:08:42.75GdeG3AG80 (6/16)

にこ「……そっちこそ変わった銃を持ってるのよね」

海未「私はこの銃声が好きなんですよ」

にこ「…そう」

にこ(海未は対アンドロイドに長けすぎた人間だった、人間離れした運動神経と人間離れした再生能力、もちろん不死身じゃないしアニメでよくある即時回復でもなければただの道から屋根へ飛び移るなんて漫画みたいなことは出来ないけどそれでも普通の域はとっくに超えてた)

にこ(私が対アンドロイド特殊部隊に入った時、一番最初に仲良くなったのは海未だった)

にこ(銃を持たない海未は一般人より可愛いだけのただそれだけの女の子だった、でも銃を持つことで海未は全てを変える、性格も何もかも)



450 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:11:08.40GdeG3AG80 (7/16)

にこ「最後に聞きたいわ」

海未「なんですか?」

にこ「…海未は鞠莉を恨んでないの?」

海未「…恨んでないって言ったら嘘になるかもしれません、ですが私に鞠莉は恨めません」

海未「助けてもらった身ですし、鞠莉は優しいお方です」

にこ「…そう」

にこ(…海未は孤児だった。親を産まれて間もない時に亡くしたせいで、奴隷のような生活を送っていた。しかし海未は産まれた瞬間そうなる運命にあった)

にこ(何故なら海未は人間とは思えない生命力を有していたから。本当ならその親と一緒に死ぬはずであった海未はその自らの生命力で命を繋ぎ止めた、だから海未は孤児として生きることが決まっていた)

にこ(そしてそんな苦しい生活を送り、海未が十歳辺りになった頃に鞠莉が海未を引き取った)

にこ(そこからかしら、海未の始まりは)

にこ(海未的には助けてもらったことに感謝してるけど、鞠莉から見ればきっと海未も駒に過ぎなかった。私はそう考える)

にこ(対アンドロイド特殊部隊には少数ながら様々な理由でこの部隊に入っている、その中でも海未は実に単純な理由だったわ)

にこ(命の恩人であった鞠莉直属の部隊だったから入っただけ、そこに曜やダイヤのような何かを求めて入った理由は無くて、凛や果林のような実力を買われたわけでもない)

にこ「……残念ね」

にこ(この残念の意味はきっと私にしか分からない)


451 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:13:31.97GdeG3AG80 (8/16)

海未「…何がですか?」

にこ「いや、なんでもない」

にこ「じゃあ始めましょうか」

海未「……ええ」

にこ(戦いの意識を研ぎ澄まして、MP5を下げて姿勢を低く構えた)

にこ(私の戦闘スタイルは身軽さに重点を置き、柔道のような投げと至近距離での射撃を主体にしたスパイのようなもの、サブマシンガンであるMP5とハンドガンで対応出来ない距離は背中にかけてあるこのグレネードランチャーで対処する、それが私のやり方よ)

海未「………」

にこ「………」

にこ(それに比べ海未は実にバランスのいい戦術を用いている、海未の使ってるアサルトライフル——AN-94は初弾と二発目の発射レートだけが非常に速く…ううんもっと簡単に言えば初弾を撃ってから二発目を撃つまでの間隔が非常に短いから初弾を避けても二発目で命中してしまうなんていうのを海未と仲間として戦場に立った時はよく見てた)

にこ(この性質は連射速度が速いスコーピオンとよく似ているけど、海未の持つ銃の連射速度が速いのは初段と二発目だけで、スコーピオンみたいに暴れ馬のような性能ではない。初段と二発目という瞬時火力を備えながらもアサルトライフルとして相応しい高い命中精度を誇る火力寄りのバランス型——これが海未の持つ銃の特徴だ)

にこ(また、アサルトライフルは遠距離を主体とした武器でなければ大体対応出来る射程を持ってるから間合いで悩むことはほとんどない)


452 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:15:07.11GdeG3AG80 (9/16)



海未「はぁっ!」ダッ

にこ「おっと」シュッ


にこ(そして、今私が躱したこの一閃が海未の最大の特徴だ)

にこ(こんな銃社会において剣を嗜む珍しいやつだからね、海未は。銃剣ってやつでサブマシンガンにもショットガンにも劣らない近距離の強さを発揮してるわ)


にこ「相変わらずの音ねっ!」

海未「この風切り音が聞こえるんですね!ならお分かりでしょうが食らえば死にますよ!」


にこ(正直、海未相手に近距離は分が悪すぎる。素早いステップとちょっと不快な風切り音と白い軌跡を残す海未の一振り一振りは避けるのに必死になっちゃってトリガーを引く余裕を与えてくれない)

にこ(…でも、私も近距離は得意なんでね。この近距離戦が不利になるのかと言われたらそれはNOかしら)


にこ「もらいっ!」


にこ(海未の横斬りをちょっと姿勢を低くすることで躱し、海未の腹部に向けて肘打ちをした。ここで海未の横切りが躱せたのは背の低さがあったからね、だから今だけはこの背の低さに感謝しないといけない)


にこ(今だけは…ね)




453 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:21:16.07GdeG3AG80 (10/16)

海未「ぐっ…」

にこ(そうして怯んだ海未の左手を掴んでそのまま強く引っ張って離し後ろに流す——そして私はよろめく海未の後頭部に向かって旋風脚を放った)

にこ「休んでる暇はないわよ!」

にこ(私の蹴りを受け倒れる海未に向かってMP5で発砲、そうすれば海未は機械みたいに銃弾へ反応して横へと半回転した後、足の裏と手のひらを地につけてブリッチのような体勢から後方へと跳躍した)

にこ「でたっ…」

にこ(やはり海未の運動神経には目を配るモノがある、跳躍した海未は空中で一回転した後に綺麗に着地して息を切らした)

海未「はぁ…はぁ…はぁ……」

にこ「曜のガジェットの恩恵は大きいわね、海未」

海未「ええ…曜は偉大ですよ……」

にこ(曜のガジェットが無ければ海未はここで弾を避けきれずに死んでいた。私や海未が履いてる靴は跳躍をすることで曲がる足首を察知することで、足元の重力の働きをほぼ一瞬だけ改変させ跳躍にブーストをかける機能がある。私たち人間の技術じゃ重力を変えることは出来ないけど、一瞬無敵というように一瞬だけならそれも可能なの)

にこ(だからそれを使って普通じゃ出来ない動きを可能にしてる)


454 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:24:48.95GdeG3AG80 (11/16)

にこ「今まで何回も海未は実はアンドロイドなんじゃないかって思ったけど、やっぱり海未も人間ね」

海未「私は元から人間って言ってましたけどね」

にこ「ええ、でも口は信用出来ないから」

海未「…そうですね」

海未「ですが……」

にこ「…?」


海未「できれば私もアンドロイドとして生まれたかったですよ!!」ドドドド!


にこ「っと…!」シュッ

にこ(息を切らす海未が突然放つ無数の弾丸、この後の展開を先に説明するなら私はその銃弾を避けるのだけど、人間対人間っていうのはアンドロイドとはちょっと違う)

にこ(きっとアンドロイドなら横方向へ大きく跳躍して反撃をしてた、けどそれはアンドロイドが射線を見ることのできる生き物だから)

にこ(相手が人間だと分かっている私たちはアンドロイドと同じ動きをすると偏差撃ちによって死ぬ、人間である以上はそれが定め)

にこ(だから人間である私が取った行動は————)

にこ「ほっ!たぁっ!」


ズサー


にこ(前方向へギザギザを作るよう左斜め前へ跳躍して次に私の胸へと向かう銃弾を右斜め前へスライディングして躱す、そしてそれと同時にMP5で発砲…うん、完璧)

にこ(人間は横幅ではなくて高低差を生かして銃弾を避けるの、死角もないフィールドなら戦いはそう長くはならない)



455 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:26:21.16GdeG3AG80 (12/16)



海未「ああああああぁああ!?がぁあ…ッ!!」


にこ(そう、人間相手ならすぐに決着がつく。跳躍しながら発砲は出来るけど発砲しながら跳躍は出来ない、それは人間もアンドロイドも同じ)

にこ(棒立ちで発砲は死亡フラグが立つわ、それを見事に回収した海未は胸と腹、そして腕に数発ぶち込まれて俯けに倒れた)


にこ(ゲームセット、私の勝ちね)


にこ「……あっけなかったわね、海未」

海未「ぁ……」

にこ「海未、あなたは強いわ。でもあなたが強いのは多人数戦と対特殊部隊アンドロイド以外の人物よ、海未がどれだけ頑張っても果林やダイヤにはおそらく勝てないわ」


456 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:27:43.04GdeG3AG80 (13/16)

海未「…ぁ……?」

にこ「何故?という顔をしてるわね、いいわよ答えてあげる」

にこ「言っとくけどね海未、対アンドロイド特殊部隊に入ってるやつは狂ってるけどそれ相応の強さがあるの、あんたみたいに孤児として生まれ才能を持つ故に、そして鞠莉の犬だから入ったとかそんな軽い気持ちで入ったやつはいないのよ」

にこ「小さい頃から戦闘の経験があって、その様々な経験で培った技術や知識がある。みんな海未と同じスタートラインを切ってるわけじゃない、銃声が好きとか適当な理由抜かして武器を手に取ってるわけじゃないのよ」

にこ「それだけの話、そう…それが海未と私の————」


ドスッ!


にこ「……ぇ?」

にこ(それは一瞬の出来事だった、銃を下げ人差し指を立てて海未に説明をして最後の一言を言おうと思ったその時、私の心臓に深く入り込む一つの刃)

にこ(するとどうなる?私の胸から、そして口から出てくるこの赤が私には何なのか分からなかった)


にこ(それが分からないまま私は———————)


海未「……私とにこの…なんですか?」

にこ「………」



457 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:29:18.99GdeG3AG80 (14/16)

海未「……きっ、けほっ………」

スタ…スタ…スタ……

海未「はや…く戻って……休まない…と………」


スタ…スタ…スタ…



タッ……タッタッタッタッ……!


海未「…っ!?」

「ふんっ!」

海未「ぐあッ!?」

海未(両手でお腹を押さえながら歩いていれば、後ろから聞こえる足音。そうして振り返った瞬間には襟を掴まれてフルパワーで地面に叩きつけられた)

海未「な——————」


458 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:31:02.99GdeG3AG80 (15/16)



カチャッ


「ごめんね刑事さん」



ルビィ「ルビィ、悪い子だから」



ドオン!





459 ◆iEoVz.17Z22019/09/30(月) 00:33:22.93GdeG3AG80 (16/16)

ここで一旦中断。
再開は明日か明後日にします


460以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/09/30(月) 08:45:57.26IIeKG0yEO (1/1)

一気に犠牲者増えたな……


461 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:09:19.53ViazdTd70 (1/62)

ルビィ「…うぅ……ホントならあんな至近距離でスナイパーなんて使いたくなかったんだけどな…」

ルビィ(青い髪の刑事さんを殺すべくしてルビィはその刑事さんの脳天に向かってゼロ距離でスナイパーをぶっ放した)

ルビィ(流石の人間とは思えない生命力でも脳をスナイパーの弾丸で撃ち抜けば死に至ると思う…そう考えた私ちゃんと息と脈を確認したけどしっかり死亡していた)

ルビィ「いたた……」

ルビィ(病院を抜け出してまだ数日しか経ってなくて、ルビィの怪我も完治してない。だから時々足が痛むし、ルビィの頭を————ううん、記憶を蝕むような痛みが発生する)

ルビィ(数年の歳月を経て動き出す体はリハビリでもしないとまともに動いてくれない、けど私は無理矢理体を動かした)

ルビィ(そして、ルビィはスナイパーを両手で下げて闇へと消える)


ルビィ(ルビィが戦える以上は、戦って生きていく)


ルビィ(————それが、ルビィが信じた未来だから)




462 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:10:46.78ViazdTd70 (2/62)

~別荘


穂乃果「すぅ…すぅ……」


善子「…まさか帰ってくるなんてね」

せつ菜「…私だってここへ帰りたくて帰ってきたわけじゃありません」

善子「なら今から帰ったら?その矢澤にこのところへ」

絵里「ちょ、ちょっと善子それは流石に酷いわよ…」

善子「私、色んな人を見てきたけどあなたたちみたいなプライドの塊とはどうも仲良く出来ないのよね。普通にしてれば可愛いのに、命が関わる時にまで意地張ってるんじゃさっさと死ねって私は思う」

曜「うわー…強烈……」

善子「その不本意ながらっていう態度、私ものすごい気にくわない。申し訳ないけど信じられないなら救えない、信仰心がなきゃ加護を与えてくれる神なんていないわよ、業務用アンドロイドにはそれが分からないの?」

花丸「………」

絵里「あちゃー……」

絵里(夜、この別荘に死にかけの穂乃果を連れたせつ菜がやってきた)

絵里(横っ腹を撃たれたみたいで、それを見たことりがすぐに手当てをした)

絵里(けど如何せんこの二人はプライドが高いもので穂乃果も眠りにつく最後の最後まで反抗的だしせつ菜も相変わらず否定しかしない)

絵里(その二人の様に怒りを覚えてしまった善子はとうとう口から爆弾を吐き出した)



463 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:12:16.26ViazdTd70 (3/62)

せつ菜「………」ウルウル

せつ菜「……だって」

善子「…だって?」

せつ菜「だってムカつくじゃないですか!希さんが気に入ってた相手なんですよ!?」

果南「気に入ってた相手?なにそれ?」

せつ菜「希さんは基本的に他人に無関心なんですよ、それ以上もそれ以下もない一定の接し方で誰とでも仲良く出来る人でしたから私たちは我が子を可愛がるようなそんな態度でした」

果南「え?それって良くない?というか絵里と何の関係が?」

せつ菜「違うんですよ…絵里さん、あなたは希さんの興味を引いてしまったんですよ」

絵里「興味?」

せつ菜「言いましたよね、他人に無関心って。私や穂乃果さんにも見せなかった感情を絵里さん相手に示して、挙句の果てにはウチの部下にしたいっておかしくありません?なんで初めて会うはずの絵里さんに?私には分かりません」

ことり「……それってさ」

曜「…あ、待って私も同じ事思ったかも」


ことよう「……嫉妬だよね?」


せつ菜「……そうですよ」

せつ菜「だって…ムカつくじゃないですか…」

善子「…それはさっきも聞いた」


464 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:15:40.77ViazdTd70 (4/62)

花丸「…確かに希ちゃんが他人に興味を示すのはすごく珍しいことずら、いつも何考えてるか分からないような人だったからどうして急にウチの部下にしたいなんて言ったのかマルにも分からないずら」

果南「それは絵里が心の広い持ち主で尚且つ強いからだよ、そうとしか私は考えられない」

善子「………」

曜「う、うーん…よく分からないけど希ちゃんが興味を示すならもっとちゃんとした理由があると思うよ」

ことり「ちゃんとした理由って?」

曜「それは私にも…」

せつ菜「私たちは業務用アンドロイドなんですよ、穂乃果さんはこんなこと言いませんけどね、業務用アンドロイドっていうのは所詮主に好かれたいだけの生き物なんですよ。主が与えてくれる導に沿っていって主に褒めてもらうことが業務用アンドロイドとしての生き甲斐なんです」

せつ菜「きっと私たちの気持ちは戦闘型にも標準型にも分からないでしょう、ましてや人間にも。でも、私たちに見せてくれなかった感情をまだ関りの薄い人に見せるっていうのは私たちに興味がないっていう死刑宣告みたいなものなんですよ…」

絵里「………」

絵里(せつ菜の言う通り、きっと私には業務用アンドロイドの気持ちは分からない。だって私には主がいないし、褒めてもらうっていう以外にも生き甲斐はちゃんとある)

絵里(しかし、せつ菜の気持ちは分からなくてもせつ菜の感じてる感情はきっと分かる。悲しいとか怒りとかそんな簡単で些細なモノだけど、きっとそれなら私にも分かる)

絵里(だから私は————)


絵里「そう…ごめんなさい」ギュッ


絵里(私も成長したのね、知らない内に小難しい話を乗り越えられる強さを手にしてた)

絵里(きっとこんな生易しい解決の仕方じゃいつか綻びしてしまうのだと私は思う、けど戦いをこの先で語るのはきっと違うでしょう)

絵里(ただ、今は“熱さ”に対する表現として、せつ菜を力いっぱい抱きしめた)


465 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:17:51.07ViazdTd70 (5/62)

絵里「…きっと私にあなたの気持ちは理解出来ないわ。でも私はあなたと仲良くしたいの、だからこの際言っちゃうけど」


絵里「私じゃ主は務まらないのかしら?」


せつ菜「…!」

絵里「あの時、穂乃果に威圧された時は言葉も出せなかったけど今ならちゃんと返せるわ」


絵里「知ってる命を失うことの意味と怖さ、私はそれを知ってる」


絵里「誰も死なせたくない、私は誰にも死んでほしくないの」

絵里(…私は千歌を失った、その死はホントに些細な出来事からで、いつ振り返ってみても儚くて呆気ないものだった感じるの)

絵里(きっと銃を持つということは人を殺す意思表示なんだと思う、けれど私はそう思いながら銃を持つのではない)

絵里(目指すところはもっと別にあって、もっともっと近くにある)

絵里(平和を夢見るのなら、戦いが避けれないのならせめて命を失わないようにしてほしい)

絵里(だから他人とはいえ、他人な気がしないせつ菜と穂乃果には死んでほしくなかった)

絵里(二人が業務用アンドロイドというのなら、私が主になって私が生きる為の導を与えたかったのよ)


466 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:19:18.85ViazdTd70 (6/62)

ことり「……ずるい」

曜「あはは、ずるいね」

果南「やっぱり絵里はこうでなくっちゃ!」

せつ菜「………」ウルウル

せつ菜「…そうですね、なんか希さんが言ってたこと分かる気がします」

曜「希ちゃんの言ってたこと?」

せつ菜「はい、あの金髪の子の事が信用出来なくてもついていけばいつか絶対に信頼出来る時が来るって」


せつ菜「もしウチが死んだらあの金髪の子を主にしな、と」


絵里「私!?」

せつ菜「はい、だから穂乃果さんは絵里さんに気に入らないって言ったんです」


穂乃果『私はあなたが気に入らない』


せつ菜「理由は私と同じ嫉妬です、希さんに絶対に信用出来るなんて言われたら私たちにはない何らかの感情や関係があるに違いありません、そう思って穂乃果さんは絵里さんを毛嫌いしたんです」

絵里「何らかの感情については知らないけど、私その希って人と関係はないわよ?」

せつ菜「ですが絶対に信用出来るって希さんは言ってましたよ?」

絵里「えっ…なんでかしら…」


467 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:19:55.78ViazdTd70 (7/62)

善子「戦ってて強いって思ったからじゃないの?曜を殺しに行く時に戦った絵里には確かに驚かされることが多かったわ」

花丸「…希ちゃんの事だから何か理由があったと思うずら、感覚とかじゃなくてちゃんとした理由が」

曜「理由か…分からないな…希ちゃん死んじゃったし」

せつ菜「…私がいれば」

花丸「そ、そんなせつ菜ちゃんのせいじゃないよ」

せつ菜「……例えそうだとしても私があの時いればもしかしたら希さんは助かったんじゃないかって思えるんです」

ことり「…確かにそうだけど、そう思っても仕方ないでしょ?」

果南「ことりの言う通りだよ、過去を悔やむならそれを今に繋げなきゃ」

せつ菜「……はい」


468 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:23:32.98ViazdTd70 (8/62)

善子「…とにかくあんたら二人は絵里を主にするの?」

せつ菜「…そうさせてもらいます」

ことり「主っていうけど主にするために何かするの?」

せつ菜「特にしませんよ、システム的に業務用アンドロイドが主と認めた人がこれからの主になります」

果南「システム的?」

せつ菜「本能みたいなモノです、基本的には主の入れ替えはないんですけど主がその人を主って思えばなんとなーく思考に補正がかかるんです、この人が主だと。でも業務用アンドロイドはそんなこと滅多にしませんよ、一番最初の主に思い入れがあるのは当たり前ですから」

善子「へぇ…なんか特殊ね…」

せつ菜「所詮業務用アンドロイドはペットみたいなモノですからね、誰かの支えがないと正しく生きていけません」

曜「業務用アンドロイドは自立出来ない生き物とは言われてたけど本当なんだね、てっきりバカにされてるだけかと思ってたよ」

果南「戦闘型は完全自立、標準型は自立的、業務用は自立不可って聞くよね」

花丸「…それがそれぞれアンドロイドのコンセプトだからずら」

絵里「知ってるの?」

花丸「希ちゃんから貰ったアンドロイドの本で学んだずら、最初に作られたのは型が決められていない何型でもないアンドロイドで、そのアンドロイドは揃いも揃って危険思想を抱いてたみたいで、アンドロイドはやることがないと今目の前にある物を破壊しようとする危険なシステムが勝手に生まれてしまうみたいずら」

花丸「だから人間を模して造られたと言われる標準型アンドロイドだけではなくて、標準型アンドロイドの上位互換である戦闘型アンドロイドっていう標準型が万が一破壊衝動を抱いても自由に戦闘を起こさないようにする抑制の存在と、標準型アンドロイドの下位互換である業務用アンドロイドっていう助けるべく存在を生んで破壊衝動の消化に努めたと記されていたずら」

善子「上位互換ねぇ…」

せつ菜「下位互換ですか…」

ことり「そんな作られ方してたんだ…」

絵里「なんか複雑ね…」


469 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:27:15.95ViazdTd70 (9/62)

せつ菜「……とにかくよろしくお願いしますね、絵里さん」

絵里「え、ええ。よろしくね」


ギュッ


絵里(いまいち実感はないけど、とりあえず私はせつ菜と穂乃果の主となった)

絵里(あの時は勢いとかで私が主になるって言ったけど、私に主が務まるのかしら?)

絵里(私は人の道を決めるほど偉くないし強くない、むしろ私は頼ってばっかの生き物だ)

果南「いやートリックスターと軍神が一緒に戦ってくれるんじゃ心強いね!さっそくY.O.L.Oってところに行く?」

絵里「いやそれはいきすぎじゃ…」

曜「…いや、そうでもないかもしれない」

絵里「えっ?」

曜「もし行くのなら流石にみんなの傷が癒えてからだけど、この戦力なら充分勝てるよ」

ことり「…確かに勝てる、対アンドロイド特殊部隊は今四人、そこに誰かが入ったとしてもこっちは八人、矢澤にこを入れれば九人になるよ」

曜「Y.O.L.Oには三人超一流の腕を持ったのがいるけどそれをプラスしても六人だから数で勝てる」

善子「確かに…」


470 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:29:35.16ViazdTd70 (10/62)

花丸「でもそれは超一流の数で勝ってるだけだよ?あそこには訓練された人が何十人もいるよ?」

果南「そんなザコは数に含まれないよ」

善子「同じこと言おうとした」

絵里「えぇ…」

曜「…でも実際そのくらいなら私たちの敵じゃないよ、私たちだって真正面からやり合うつもりは更々ないからね」

せつ菜「アンドロイドを人一人と加算するのが間違ってますね」

花丸「…確かにそれはそうずら」

果南「よしっなら次の作戦はY.O.L.Oに強襲だね、そこを潰せば政府の勢いも少しは落ちるでしょ」

ことり「そうだね、私は絵里ちゃんのやることについていこうって思ったけどなんかいよいよ終わりも見えてきたような気がするよ」

善子「確かにね、そこを落とせばいよいよ鞠莉のところだもの」

絵里「…鞠莉か」

絵里(鞠莉に会えばきっと何かが変わる、アンドロイドが蔑まれる根源を潰せば何かが変わるはず)

絵里(そう願って、そう思って戦ってきたけどその頂への道は長いようで短かった)

絵里(最初は私と善子と果南と真姫だけのレジスタンスだったのに、今じゃ曜やことり、そしてせつ菜や穂乃果まで仲間について勢力も大きくなったものよ)


471 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:33:26.10ViazdTd70 (11/62)

曜「確かに近いかもだけど、決してすぐそばにあるとは言えないよ。油断は出来ない、これだけは忘れないで」

せつ菜「その通りですよ!人数の差なんてひっくり返そうと思えばすぐにひっくり返るんですから油断はできません」

絵里「そうね、その通りだわ」


ピコンッ♪ピコンッ♪


絵里「ん、真姫から電話だわ」

果南「どうしたんだろう?」

絵里「さぁ…?」

ピッ

絵里「もしもし?」

真姫『絵里!ルビィが消えたの!』

絵里「は…は?どういうこと?」

真姫『そのままの意味よ!ルビィが病室からいなくなってる!ルビィの病室は一番下の階だったからご丁寧に窓から逃げたよと言わんばかりに窓が全開になって空いてたわよ!』


絵里「そ、それってルビィが意識を取り戻したってこと?」


善子「えっ…ルビィが起きたの…?」


472 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:35:06.41ViazdTd70 (12/62)

真姫『…分からない、そうとも言えるしもしかしたら誰かが攫って行ったのかもしれない…』

真姫『いずれにせよルビィの姿が消えたわ』

真姫『今監視カメラを見てもらって調べ————って、え!?やっぱりルビィ一人で逃げたの!?』

絵里「…善子、どうやらルビィは起きたらしいわよ」

善子「っ!今すぐ病院に行くわ!」ダッ

絵里「待って!でもルビィはもう病院にはいないって、病院から逃げたらしいわ」

善子「に、逃げたって数年も寝てたのにそんなすぐに動けるわけないじゃない!」

曜「確かに…」

善子「アンドロイドならともかくルビィは人間よ?特別な力もないのにどう動くのよ」

絵里「…真姫聞いてた?」

真姫『ええ、でもごめんなさい。私にもそれは分からないわ』

真姫『可能性を考えるなら、何か薬品を使ったか、それともルビィの体は常人と比べて強かったか、この二つかしら』

絵里「…どっちも可能性は低いと思うけど」

真姫『…ええ、私もそう思う』



473 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:37:29.77ViazdTd70 (13/62)

絵里「………」

絵里(果たしてそれは朗報であったのか悲報であったのか)

絵里(数年眠りについていた眠り姫ことルビィがついに目覚めた——けど、姿はとうに闇の中だった)

絵里(それを聞いた上で私たちはどうすればよかったんだろう)

絵里(…迷ってる私の傍らで答えはとうに出かけていた)

善子「…いい、ならルビィを探しにいくわ」

花丸「む、無茶だよ!だって今は政府も動き出してるんだよ?死にに行くようなものずら!」

善子「さっき言ったわよね、訓練された人間のようなザコは数に含まないって」

善子「別に恐怖でもないわ」

ことり「でもその傷じゃ辛いよ…」

善子「へっちゃらよ、ルビィの為だもの」

曜「…無理だよ、やめた方がいい」

善子「…ならどうしろと?」

曜「諦めるんだよ、私たちが出るより向こうにいる真姫さんや病院の人が探しに行った方が安全で効率がいい」

曜「監視の目を避けつつルビィちゃんを探すなんて無理だよ…隔離都市東京を舐めちゃいけない」


474 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:39:02.76ViazdTd70 (14/62)

ことり「…ごめん善子ちゃん、それは私も同意したい」

ことり「むしろここでのこのこ作戦会議をしてる私たちがいるのが異常なくらいだよ、日本で一番賑やかな都市がちんけな警備を施してるはずがないんだよ」

花丸「…その通りずら、あなたがアンドロイドなら分かるはずだよ、なんせアンドロイドは人間と違って自分の状況を数値化出来るんだから」

善子「………」

絵里「…善子……」

絵里(みんなから諦めの圧をかけられていた)

絵里(けど、それもそうでしょう。だって相手は政府なのよ?勝てる勝てないじゃなくてこの行為は今まで積み上げたものを崩すものとなる、監視の目が濃くなった以上もう迂闊に外出は出来ない。次誰かに見つかった時がこの別荘の捨て時かもしれない)

絵里(それをルビィ一人の為だけに私たち全員の運命を善子に託すことは到底不可能だ、こういっちゃなんだけどルビィの命と私たちの命じゃ重さが何百倍にも違うのだから)

絵里(…だから、ここは私も諦めろというしかなかった)

絵里(それが善子の為の選択でもあったのだから)


475 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:40:30.92ViazdTd70 (15/62)

善子「…ちっ……私寝る」

スタスタスタ

ことり「…行っちゃったね」

果南「善子の気持ちは分からなくもないよ、けど今が今だから仕方ないよ」

せつ菜「…ですね、こういう時当事者だったらって考えるんですけど、善子さんの気持ちもよく分かります」

絵里「……ごめんなさい、真姫。ちょっと大きな仕事になりそうだわ」

真姫『いいわよこのくらい、見つけたらまた連絡するわ』

絵里「ええ、お願い」

真姫『それじゃあね、そっちも気を付けて。いざという時は私も力になるわ』

絵里「ええ、それじゃあ」

真姫『ばいばい』

ピッ

絵里「…後は真姫に任せましょう、今の私たちに善子の気持ちを尊重する余裕はないわ」

ことり「…そうだね」

果南「流石にルビィって子一人の為だけに私たちも動けないしね…」

絵里「……本当に申し訳ないけど我慢してもらいましょう」

絵里(次の目標はY.O.L.Oであってルビィじゃない、この傷が癒えるまで私たちは動くことを許されない)

絵里(だから本当にごめんなさい善子……ルビィに会えるのはまだ先みたい…)


476 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:42:08.72ViazdTd70 (16/62)

絵里「…みんなはこれからどうする?」

せつ菜「私は穂乃果さんが目覚めるまで穂乃果さんの近くでじっとしてます」

果南「暇だし漫画でも読もうかなー」

ことり「あ、私も」

曜「んー私はY.O.L.Oに向けて色々準備するよ、傷は癒えてないけどね」

花丸「マルは……」

曜「花丸ちゃんも本でも読んでれば?」

花丸「んーじゃあそうするずら」

果南「じゃあ私たちはあの本の部屋にいくよ、何か面白そうなの見つけたら戻ってくるね」

ことり「同じく」

スタスタスタ

花丸「…あ、マルも!」

タッタッタッ

曜「じゃあ私もここの武器保管庫に行って何か面白い物がないか探してくるよ」

絵里「え、ええ」

曜「それじゃっ!」

スタスタスタ



477 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:43:40.71ViazdTd70 (17/62)

絵里「…行っちゃった」

せつ菜「みんなやることがあるんですね」

絵里「ことりと果南はやることないと思うけど…」アハハ

せつ菜「でも、楽しめるものがあるのはいいことです」

絵里「せつ菜は本好きじゃないの?」

せつ菜「大好きですよ、でも穂乃果さんの方が好きですから」

絵里「…なるほど、なら一緒にいないとね」

せつ菜「はいっ」

穂乃果「すぅ…すぅ……」

絵里「これからどうなっちゃうのかしら」

せつ菜「…毎日生きるか死ぬか、ですよ」

せつ菜「今はこれで良くても明日はきっとダメになるんです、自分の持つ強さが。そして考えが」

絵里「…そうね、その通りだわ」



478 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:45:48.61ViazdTd70 (18/62)

せつ菜「…戦えないっていうのは分かってるんですけど、今もこうしてる間に何かが動いてるって思うとじっとしてられないんです」

絵里「……そんな強く穂乃果の手を握ったら穂乃果も苦しいわよ?」

せつ菜「あ、ご、ごめんなさい…」

絵里「…確かにもどかしいかもだけど今はここでゆっくりするのが一番だわ」

せつ菜「それは分かってます…」

絵里「ならいいじゃない、ここは果南や曜とか一緒に遊んでくれる人もいるんだし」

せつ菜「そんなゆるゆるなんですかここは…」

絵里「戦いの時以外はね」

せつ菜「そうですか…しかしここに籠るのなら外の情報が欲しいところですね」


穂乃果「……花丸ちゃんに任せたら?」


絵里「うわぁ!?」

せつ菜「お、起きてたんですか!?」

穂乃果「今起きたの、いってて……」

せつ菜「そ、そうですか…でもよかったです。無事目覚めてくれて」ギュッ

穂乃果「うん、なんとか命を繋ぎ留められたよ」エヘヘ


479 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:47:53.20ViazdTd70 (19/62)

穂乃果「…それでこれはどういう状況なの?」

せつ菜「…私たちは絵里さんを主にして生きていくことにしました」

穂乃果「…それでいいの?せつ菜ちゃんは」

せつ菜「私は構いません、それに絵里さんならなんとなく信用出来そうなんです」

穂乃果「……なら私も何も言わない。いくら気に入らなくてもこの状況で自らみんなと離れることはしたくない…にこちゃんに教えられたよ、今は余裕がない」

せつ菜「…そうですか、納得してもらえるならよかったです」

せつ菜「ですが穂乃果さん、案外絵里さんも悪くないかもしれません」ボソボソ

穂乃果「なんで?」ボソボソ

せつ菜「ちゃんと思いやりがあるからですよ、私たちをモノとして見ないその様は信用出来るものがあります」

穂乃果「…そっか」

せつ菜「はいっ」


480 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:49:58.21ViazdTd70 (20/62)

果南「ただいー…ってあれ?穂乃果がいるじゃん!」

穂乃果「か、果南ちゃ」

果南「丁度よかった!今暇してたんだよ!穂乃果も一緒に本探してよ!こう…バトルモノでがががっとしたもの!」グイッ

穂乃果「えっちょ、ちょっと待ってよ!」

果南「待たない!よしいこうすぐ行こう!穂乃果イチオシのバトルを教えてよ!」


タッタッタッ


穂乃果「せつ菜ちゃん!」アセアセ

せつ菜「果南さんといるのも意外に楽しいものですよっ」

果南「よーし相方のせつ菜から許可が下りたことだから行こう!」グイッ

穂乃果「せつ菜ちゃーん!!!?」

タッタッタッ

絵里「…相変わらず嵐のようなやつね、果南は」

せつ菜「穂乃果さん、すごくクールそうですけど実はそうでもないんでああやって無理矢理引っ張った方が本当の穂乃果さんが見れて楽しいんですよ」

絵里「へえせつ菜も悪い子ね」

せつ菜「私は怖い穂乃果さんより可愛い穂乃果さんが見たいんですからっ」

絵里「ふふふっそうね」



481 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:50:48.70ViazdTd70 (21/62)

絵里「…そういえば穂乃果の言ってた花丸ちゃんを使ったら?っていうのは何なの?」

せつ菜「花丸さんは戦えないんですけど情報を集める情報屋として非常に優秀な方なんですよ」

絵里「え?でも花丸さんは銃が撃てないんでしょ?いざ戦いが起こった時どうやって戦うのよ?逃げてるだけじゃこの都市は生きることはほぼ不可能よ?」

せつ菜「銃を使わなきゃいいんですよ、ああ見えても花丸さんはナイフを用いた接近戦ならそこらの有象無象より全然強いんですよ」

絵里「へぇ…でもなんか戦法がアナログね…」

せつ菜「銃が使えない花丸さんにとっては本で蓄えた知識とそのナイフ裁きだけが武器ですからね、花丸さんは人間ですし運動神経もそこまでよくありません。だからそれで戦ってくしか花丸さんは出来ないのですよ」

絵里「難しいものね…」

せつ菜「でも、花丸さんは弱い人じゃありません。頭は誰よりもいいですから殺し屋の私たちにとって花丸さんの持ってくる情報はすごく役立ちました」

せつ菜「だから今回も花丸さんに任せるのがいいかもしれませんね」


482 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:52:17.95ViazdTd70 (22/62)

絵里「うーん…でもなんか危なくない?」

せつ菜「大丈夫なはずです、花丸さんだって素人じゃありませんから」

絵里「そう?でもうーん…」

せつ菜「…絵里さんは優しいんですね、希さんはそこは“任せた”って言って笑顔で見送ってました」

絵里「…きっと花丸さんの強さを見たことないっていうのが原因なんだと思う」


絵里「それに知ってる人の命を失いたくないの」


絵里「ここで私が花丸さんに任せたって言って花丸さんが戦いで死んでしまったらきっと後悔すると思うの、行かせなきゃよかったって」

絵里「…それに今は政府も動いてるわ、いくら花丸さんが対象外とはいえ対アンドロイド特殊部隊には目をつけられている。それだけでも充分危険だわ」

せつ菜「……そうですね、その通りです」

絵里「……時が来るまではみんなでゆっくりしてましょう?私はみんなと一緒にいたいの」

せつ菜「…分かりました、絵里さんが主である以上はそれに従います」


483 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 18:54:16.16ViazdTd70 (23/62)

絵里「…それは構わないけど、イヤならイヤって言ってほしいわ。無理に従う必要はないし…」

せつ菜「分かりました、でも今回は私も賛成したいです。花丸さんに死んでほしくないのは私も同じですから」

絵里「…そう、ならよかったわ」

せつ菜「はいっえへへ」

絵里「ふふふっ」

絵里(私が標準型である故に、なのかしら)

絵里(私が望むのはリスクと対になるリターンではなくて、みんなが安心していられる安寧の場所だった)

絵里(ここに緊張感は欲しくない、だから穂乃果が私が主になるっていうのに納得してくれて正直心底安心した)

絵里(この硝子みたいにすぐに壊れてしまいそうな安心感をずっと心に秘めたままにしておきたくて、その上で穂乃果とせつ菜のプライドは実にひやひやさせてくれるものだった)

絵里(…だから今となってはその脱力感が体を巡ってる気がした)


484 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:00:21.13ViazdTd70 (24/62)



タッタッタッ

果南「ほらほらこっち!」

穂乃果「わぁああぁわあ!」

ガチャッ!

果南「ふーとうちゃーく」

穂乃果「急に引っ張って走らないでよー!」

果南「あははっいいじゃん」

穂乃果「私は怪我してるの!」

果南「元気そうじゃん」

穂乃果「うぬぬ…」

ことり「あ、果南ちゃん」

ことり「…!ほ、穂乃果ちゃん……」

穂乃果「…ことりちゃん」

果南「ことり……」

果南(私には分かる、ことりが穂乃果に対して控えめになる理由が)

果南(一度は殺されかけた相手、旧友でもあった穂乃果に初対面のような初々しさはことりにはないだろう)


485 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:01:58.88ViazdTd70 (25/62)

穂乃果「…前にも思ったけど、やっぱりあなたと会うのは初めてじゃない気がする」

ことり「!!」

穂乃果「あなたの雰囲気、私の探してる人にすごく似てる。同じ人なんじゃないかって思えるくらいにそっくり」

スタスタスタ

穂乃果「ちょっと手貸して」

ことり「え、うん」


ギュッ


穂乃果「…やっぱりあなたの温もりは私の探してる人にそっくりだね」

ことり「…そうなんだ」

果南「………」


ことり『…私の親友だったアンドロイドも人探しで活動してるんだって、だから方向性の一致で協力してるんだとか』


果南(ことり本人から聞いた、穂乃果のことを。穂乃果の探してる人————今の穂乃果の発言を聞けばすぐにでも分かるよ)


果南(穂乃果の探してる人はことりなんだって)


果南(記憶を失っても微かに残ってたのかな。雰囲気とか温もりとかそんなものが体に焼き付いてるのかもしれない)



486 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:02:52.43ViazdTd70 (26/62)

ことり「…見つかるといいね、その探してる人」

果南「ことり…?」

ことり「………」フルフル

果南(…だけどことりは首を横に振って、その話題を膨らませずに流した)

果南(不器用で見知らぬ感情を機械の心に宿した私からすればことりの行為には理解が出来なかった、そしてことりの考えてることが分からなかった)

穂乃果「…うん、ありがとう」

ことり「………うん、頑張ってね」

果南「ことり……」

果南(そして、穂乃果に対しての返事に間が空く理由も私は分かる)

果南(ことりは私があの時に胸を撃ち抜いたことで感情の欠如が発生して笑えなくなった。きっと今の場面はことりが笑う場面だった、けど異常を来した機械の体は笑うことを許さなかった)


487 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:04:19.25ViazdTd70 (27/62)

穂乃果「そういえばなんで私の事知ってるの?」

ことり「あぁいや…私も戦闘型アンドロイドだから軍神の事は分かるよ」

穂乃果「……そっか」

ことり「うん、そうそう」

花丸「あれ!?穂乃果ちゃん目覚めたんだ」

穂乃果「うん、ついさっき」

花丸「どうしてここに?」

穂乃果「この人に連れてこられたんだよ」

果南「えーこの人呼ばわりは納得いかないなー」

花丸「なんで穂乃果ちゃんをここに?」

果南「ん?いやー向こうでせつ菜と絵里と穂乃果が変な話始めそうだったから無理矢理こっちに穂乃果を引っ張って強制終了させたんだよ」

穂乃果「変な話…?そんなことの為に止めたの?」

果南「そんなことって言うけど絵里にとってはとっても大事な話なんだよ、絵里と一番長くいる私はよく分かる」

果南(穂乃果に本を選んでもらうっていう体で進めた話だけど、そんな気はない)

果南(花丸単身で監視の目と銃弾が飛び交う街へ向かわせるのはきっと絵里にとって不安で胸が張り裂けてしまうほどの出来事だろう)

果南(戦闘型アンドロイドは耳がいいもので、本の部屋の扉を開けてると絵里とせつ菜の声が自然と聞こえてくる)

果南(だから話が大きくならないうちに楔を打っておいた)


488 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:06:00.52ViazdTd70 (28/62)

ことり「…?何の話?」

花丸「同じく…」

果南「なんでもないさ、もう終わった話だから」

穂乃果「…そうなの?」

果南「そうそう」

ことり「…?」

花丸「気になるずら…」

ことり「……そういえば、絵里ちゃんと一番付き合い長いんだね」

果南「そうそう、だから絵里の事は私にお任せ!」

穂乃果「絵里さんってどんな人?」

果南「うーん聡明で、頭が良くて、強い人かなぁ」

ことり「果南ちゃんより強いの?」

果南「うーんどうだろうね~」


489 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:07:11.36ViazdTd70 (29/62)

花丸「気になるの?絵里さんが主なのが」

穂乃果「…うん、だってあの人のこと全然知らないし」

ことり「絵里ちゃんは命の使い方がバカな人だよ」

花丸「…?どういうことですか?」

ことり「絵里ちゃんはバカだよ、殺し合いという命を賭けた戦いをしてるのに、相手の命を尊重するバカだよ」

穂乃果「なにそれ…」

ことり「…でも、そのバカのおかげで私は救われた。私を助けても戦力にはならないし、むしろ自分の命を危険に晒すだけだったのに私を助けてくれた」

ことり「戦いに損得を求めないその姿勢は、何より最もな信頼になるの」


ことり「穂乃果ちゃんの主だって、そういう人でしょ?」


穂乃果「…うん、私とせつ菜ちゃんも善意だけで助けてもらった」

ことり「…そういう人だよ、絵里ちゃんは」

果南「…ことりにしては珍しい発言だけど、間違ってはいないかな」


490 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:12:28.47ViazdTd70 (30/62)



曜「そうだね、間違ってないよ」


穂乃果「!」

果南「あれ、曜じゃん。どうしたの?」

曜「ん、いやーY.O.L.Oに備えて敵の情報をおさらいしてこうと思ったんだけどここにもしかしたらアンドロイドの本があるかもって思ってさ」

ことり「アンドロイドの本?」

曜「希ちゃんから聞いたことあるんだ、実在するアンドロイドをまとめた図鑑のようなものがあるって」

花丸「あ、マルも持ってるよ。ただマルが持ってるのはデジタルデータだけどね。希ちゃんから貰ったずら」

曜「ホント!?よかったらそれ貸してほしいな」

果南「ず、図鑑ってそんなものがあるの…?」

ことり「なんか気持ち悪い…」

花丸「図鑑は言い方が悪いけど、戦闘型アンドロイドをまとめたデータならあるずら」

花丸「希ちゃんの話によると開発者用にまとめられたものらしくて、世には出回ってないらしいずら」

穂乃果「…なんでそんなものを希ちゃんが持ってるの?」

花丸「それはマルにも…」


491 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:15:32.13ViazdTd70 (31/62)

果南「その希って人がアンドロイドの開発者だったりして」

ことり「まさかそれはないよ」

花丸「その通りずら」

穂乃果「………」

曜「…まぁとりあえず借りてもいい?」

花丸「分かりました、ちょっと待っててください」

スタスタスタ

曜「…にしても、絵里さんの話をしてたんだね」

果南「うん、穂乃果が絵里の事がよく分からないからって」

曜「んーそっか、そうだねぇ~絵里さんは優しい人だよ、でもちょっと優しすぎる人なんだよ」

曜「お人好しで、ことりちゃんの言う通り相手の命まで尊重しちゃうくらいに優しい人、だから放っておけないんだよ」

曜「希ちゃんもそうだったでしょ?毎回危なっかしい行動ばっかで、最初のうちは放っておけなくてついていったんでしょ?」

穂乃果「…!どうしてそれを…」

曜「あはは、分かるよ。私も希ちゃんに初めて会った時はそんな感じだったもん」


492 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:19:52.93ViazdTd70 (32/62)

曜「まぁ私は希ちゃんとは立場上敵だったから共同戦線をすることは少なかったけど、でも放っておけなかったかな」

曜「…だから、絵里さんは希ちゃんに似てるんだよ」

曜「行動に損得をつけず相手の命を尊重する、だから放っておけない人なんだよ。穂乃果ちゃんもせつ菜ちゃんも絵里さんの下に就けば、とりあえずは安心だよ?」

曜「私——曜やことりちゃんが言うんだもん、少しは絵里さんの事、分かってもらえたかな?」

果南「曜…」

曜「えへへ、今は私も絵里さんの部下だからね」

穂乃果「……そっか、曜ちゃんがそこまで言うならそうなんだね」

曜「うんっ!」

果南「…ん?曜と穂乃果を知り合いなの?」

曜「んーとそうだね、元々希ちゃんと私が知り合いだったから穂乃果ちゃんとは意図せずともよく会ってたよ」

曜「希ちゃんと会う時は大体後ろに穂乃果ちゃんがいたからね、希ちゃんが離れると寂しそうな顔して私が慰めるとちょっと気を遣って笑ってたのを覚えてるよ」

穂乃果「あ、それは言わないで!」

果南「へー可愛いところあるじゃん」クスクス

ことり「可愛いねっ」

穂乃果「もーっ!」

果南(穂乃果はプライドがお高いとは聞いてたけど可愛いところもあってなんかちょっと気が抜けた)

果南(これならこの先も心配はなさそうだね)


493 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:22:50.04ViazdTd70 (33/62)

花丸「曜さーん、はいっどうぞ」

曜「お、ありがとう花丸ちゃん」

ことり「…そういえばそれアンドロイドのデータなんだよね?」

曜「そうだよ」

ことり「なんでアンドロイドのデータなんか見るの?私たちの敵は対アンドロイド特殊部隊でしょ?」

曜「んーまぁそうなんだけど実はY.O.L.Oには戦闘型アンドロイドが三人いるみたいなんだ」

果南「へー強いの?」

曜「それが分からないから調べるんだよ」

果南「え?だってY.O.L.Oって曜の施設でしょ?」

曜「そうなんだけど私はあそこにたまに通うだけの人だったからあそこのことはよく知らないんだ、私のしてることといったら何かの設計図をあそこに渡して帰るだけだし」

果南「そ、そうなんだ…」

穂乃果「…でも敵の事何も分からないんじゃ探しようがないんじゃないの?」

曜「まぁそうなんだけど一人だけ分かってるんだ、型番はA-083って」

果南「ふーん…A-083ってことは初期型?」

曜「いや、これがA-83だったら初期型だけどA-083は違うんだよ」

果南「へーそうなんだ」


494 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:24:34.92ViazdTd70 (34/62)

曜「んーとA-083はっと……」

曜「あ、あった」

ことり「A-083…」

果南「可愛いじゃん」

果南(型番と一緒におそらくイメージと思われるイラストが描いてあった。髪は肩くらいまで届くくらいのセミロングで右の耳元に善子みたいなお団子を作っててちょっと特徴的な髪型、それ以外はごく普通の女の子だけど、これが戦闘型アンドロイドなのかと思うとやっぱりか弱そうにも見える)

花丸「この子がY.O.L.Oに?」

曜「みたいだよ」

穂乃果「…!この子…!」

ことり「どうしたの?」

穂乃果「P-83の次世代モデル、または戦闘型アンドロイドへと変形させた後継機って私の後継機じゃん……」

曜「えっ…ってホントだ…穂乃果ちゃんってP-83じゃん…」

ことり「穂乃果ちゃんの後継機…」

穂乃果「後継機なんてあるの…?」

花丸「マル……聞いたことがあるずら、型番は基本的にAとFとPの三種類があって戦闘型アンドロイドはA、標準型はF、業務用アンドロイドはPとアンドロイドの種類によって最初につくアルファベットが違うずら」

ことり「それはなんとなく分かってたよ、今まで戦ってきたアンドロイドは揃いも揃ってAの人ばっかだったから」

穂乃果「そうだね、少し戦えばある程度法則性が見えてくるね」


495 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:27:17.28ViazdTd70 (35/62)

花丸「そう、そこまでならほとんどの人が気付くことが出来る」

花丸「ただここからが問題で、英語の次の数字が0のアンドロイドは何かの後継機と希ちゃんから聞いたことがあるずら」

果南「私はA-822だから誰の後継機でもないなぁ」

ことり「…あれ?そういえば果南ちゃんってそんな型番の数字が大きいんだ」

曜「型番の数字は作られた順じゃないよ、最もことりちゃんや穂乃果ちゃんみたいな初期型の時代は作られた順だったけどね」

ことり「そうなんだ…初めて知ったよ」

果南「絵里はF-613だし善子はA-710だし絵里も善子も違うね」

穂乃果「せつ菜ちゃんはP-101だし案外いないね、後継機って」

曜「きっとレアな存在なんだよ」

曜「…というかやっぱりアンドロイドによってわざと性能分けてるんだね、分かってはいたけど再確認して納得したよ」

果南「…ホントだ、得意武器とか書いてあるじゃん。特徴…P-83の後継機に相応しい射撃テクニックと近接戦闘…か」

穂乃果「……なんかイラつくね」

ことり「穂乃果ちゃんの後継機だもんね…」



496 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:33:03.98ViazdTd70 (36/62)

穂乃果「…この子の相手は私がしたい、次世代モデルとかいうんならこの手で殺して次世代を上回るよ」

果南「いいじゃん、私は応援するよ」

曜「え、でも単純に考えてこのA-083は穂乃果ちゃんより性能がいいよ?正直穂乃果ちゃんが戦うのは分が悪い気がする…」

穂乃果「…それでも戦うよ、後継機がいる以上負けた気がしてならないから」

曜「うーん…」

果南「いいじゃん、曜だって自分の上位互換がいるとか言われたらいやでしょ?」

曜「まぁそれはそうだけど……」

穂乃果「……そういえばそのデータって戦闘型アンドロイドが載ってるんだよね?」

花丸「そうだよ」

穂乃果「なら果南ちゃんとかもいるんでしょ?」

果南「えっ……」

曜「あ、いいね!面白そう!」

ことり「私も気になる!」

果南「ちょ、ちょっとやめようよ、私のなんて見ても面白くないよ?」

曜「へー果南ちゃんがそう言うんなら尚更見たくなったよ」ペラペラ

果南「こいつ…」


497 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:35:27.10ViazdTd70 (37/62)

曜「あ、あった。A-822…ってあれ?これ果南ちゃんだよね?」

ことり「果南ちゃん、最初は髪下ろしてたんだね」

果南「まぁね」

穂乃果「どうして変えたの?」

果南「髪が長いと戦いづらいんだよ、だから私からすればせつ菜やことりはよくそんな髪伸ばして戦えるなって思うよ」

ことり「んー私髪の事は気になったことないなぁ」

曜「同じく」

穂乃果「そうだね」

果南「へー羨ましいよ」

曜「まぁいいやA-083の情報を把握出来たから私はまた準備に戻るよ!花丸ちゃんありがとね!」

花丸「あ、はい!」

曜「それじゃあ!みんなもばいばいっ!」

ことり「う、うんばいばい」

穂乃果「ばいばい」


498 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:36:03.49ViazdTd70 (38/62)

タッタッタッ

果南「よーし、それじゃあそろそろ本題に移ろうか」

穂乃果「本題?」

果南「え?何?忘れたの?穂乃果に本を選んでもらうって言ったじゃん」

穂乃果「えぇ…私本読まないよ…」

果南「そこはもう感覚で選ぶんだよ!ほらっ!さっさと選ぶ!」

穂乃果「んもー」

花丸「ふふふっ」クスッ

ことり「私も見つからないから穂乃果ちゃんに選んでもらおっ」

スタスタスタ


499 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:39:00.01ViazdTd70 (39/62)

~???

梨子「えっ…海未さんが死んだ…?」

鞠莉「ええ、にこと共倒れらしいわ」

梨子「にこさんと共倒れって…」

鞠莉「……ねぇ梨子」

梨子「なんですか?」

鞠莉「なんで私はアンドロイドを作ったんだと思う?」

梨子「えっ…」

鞠莉「だって、おかしいと思わない?私が作ったのよ?なのに私がそれを壊すの?」

梨子「別におかしいことじゃないと思いますけど…だって神話にもいましたよね、破壊と創造両方を司る神が」

鞠莉「…そう言われては返す言葉がないわね」

梨子「………」

鞠莉「アンドロイド————それは今思えば私の失敗作でしかなかった」

梨子「どうしてですか?」

鞠莉「………語るに及ばないわ。それに話せば長くなる」



500 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:40:38.64ViazdTd70 (40/62)

梨子「…いえ、対アンドロイド特殊部隊所属である私にはそれを知る義務と権利がある。そう思っています」

鞠莉「……ならそこに座りなさい、立ってると疲れるわよ」

梨子「…分かりました」

スタスタスタ ストンッ

鞠莉「……アンドロイドはそうね、それはいい意味でも悪い意味でもつまらない運命を変えた存在だった」

鞠莉「私は恵まれた環境で育ち、恵まれた才能を持っていた」

鞠莉「それは12歳にしてアンドロイドのシステムを作り上げた頭脳と常識に囚われない無限の世界を述べる想像力、またの名はクリエイターとしての素質…それはまさに天が私に二物を与えたと言っても過言じゃなかった、私の才能は多くの人間を虜にして世界の人々の目を惹かせた」

鞠莉「人間そのものとしか思えないロボットを作るなんてすごすぎるって、そういう言葉を初めてとして私の技術とアンドロイドの性能は高く評価された」

鞠莉「……今振り返ってみれば、そういう単純なことだけ私に来てればよかったのにって思うの」

梨子「…何の話ですか?」

鞠莉「…みんな……いや具体的には悪知恵が働く、あるいは合理主義者であった人間というのはアンドロイドは戦争で使えるだとか、少子化問題の解消に繋がるんじゃないかとか本来私の意図せぬ方向でアンドロイドの興味を引いた」

梨子「………」

鞠莉「…まぁね、いいのよ別に。アンドロイドには心があるから好きな人が出来たら結婚でも性行為でもなんでもしていいし、戦いたいだとか強くなりたいだとか自分の志すものに通じているのなら自衛隊にでもなればいい」


501 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:42:24.07ViazdTd70 (41/62)

鞠莉「だけど、アンドロイドを瞳に映し関心を覚える人々は不思議なことに、本来考えるべきである“一つの焦点
”にfocusを当てないの」



鞠莉「何故私がアンドロイドを作ったのかを」



梨子「……!」

鞠莉「…何故だと思う?」

梨子「…護衛の為だと思います、もし私が鞠莉さん本人の立場であったなら自分の才能を狙う人物が絶対に出てくると思います。だったら自分を守ってくれる優秀なボディーガードを作ったと思います」

鞠莉「なら——」

梨子「そうです、私たちの存在がおかしいですよね。もし私の言ったことが正解ならなんでわざわざ人間なんか雇ってボディーガードをさせるんだって話になります」

梨子「だからこれは違います、なので私には分かりません」

鞠莉「…そう、でもごめんなさい。答えを言う気は最初から無いわ。あくまで梨子がどう思ってるか、それを聞きたかっただけだから」

梨子「…そうですか」

鞠莉「ええ、ごめんなさいね?」

梨子「……大丈夫ですよ」


502 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:45:18.90ViazdTd70 (42/62)

鞠莉「んん…話を戻すけど、そもそもアンドロイドというのはアンドロイドを動かす全体的、そして根本的なシステムは私が作り、アンドロイドの性格である心は小さい頃からの友人であった希が作った。私なんかより感受性に富んだ希は優しさの塊だったわ、お節介の鬼、損得の感情の消失、表裏一体女なんて色々言ってた記憶がある」

梨子「希って人物は分かりますけど、そんな人だったんですね」

鞠莉「…そうね」

鞠莉「…それで、アンドロイド第一号が完成した時はとにかく嬉しかったわ、達成感や爽快感、そして自分らで創った人間が動き喋って私を私として認識するのよ、興奮しないわけないじゃない」

梨子「………」

鞠莉「けどその後の結末は随分と酷いものだった」

鞠莉「ねえ、梨子は何にもやることがない時何をしたいと思う?」

梨子「何もやることがない時?」

鞠莉「周りに遊べるものが無くて、話しかけられる友人、ましてや人もいない」

鞠莉「やるべきことも目標もなくただ人生を真っ白に染めて生きてるだけ。そこで梨子は何を見出す?」

梨子「……今の私がそんな状況になったら、タイムマシンを作りたい」

鞠莉「タイムマシン?」

梨子「…“こんなこと”になる前の過去に行って未来を変えたい」

鞠莉「…梨子って意外にも引きずるのね、いつもアンドロイドを痛めつけるようなことしか考えてないと思っていたわ」


503 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:47:36.81ViazdTd70 (43/62)

梨子「あはは、笑えない冗談ですね」

鞠莉「………」

梨子「………」

梨子「…私がアンドロイドを信用できる日は一生来ないと思います」


梨子「もし、そんなことさえ取り払ってくれるアンドロイドがいたんならきっと私も幸せだったんでしょうね」


鞠莉「…さぁ?どうかしらね」

鞠莉「……また話が逸れたわね、話を戻すと梨子がタイムマシンを作りたいといったように人間の心は何も無ければ何かが生まれるの、無は在を生む、それはアンドロイドも同じだった」

梨子「…というと?」

鞠莉「私がアンドロイドに課せた最初の目標は簡単すぎるものだった、その目標は作って一日で達成した。だから目標の延長線上は在っても目標を達成したことに変わりはなく、それは無に等しい有様だった」

鞠莉「だからこそアンドロイドは見出した」


鞠莉「何も無いと、破壊を生み出すということに」


梨子「…!」


504 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:52:14.81ViazdTd70 (44/62)

鞠莉「アンドロイドの心は自分たちで作っておきながら実にイレギュラーな存在だったわ、だって何も無いと破壊を生むなんてそんなのをシステムに埋め込んだ覚えはないわ、ちゃんと確認もした。けどアンドロイドはどうも目の前にあるものをdeleteしたくなるらしいの」

鞠莉「そしてそれは今も直せてない、どれだけ修正してもどれだけ時間をかけても数万という数字が勝手に列と法則に沿った文字を並べて新たなシステムを確立させる」

鞠莉「だから次第に希はこう言ったの」


鞠莉「破壊衝動を生み出すのはアンドロイドとしての本能なのではないかと」


鞠莉「何も無いから破壊を生み出す、そういう結論に辿り着いた私たちはこじつけでもいいからアンドロイドに何か目標を与えようと思った」

鞠莉「その結果が今よ、戦闘型アンドロイドは破壊衝動を逆手に取ったタイプだったわ。戦うことを目的としたアンドロイドなんて言われてるけど、決して戦わせる為に作ったわけじゃない」

鞠莉「業務用アンドロイドは極端なシステムを割り振った、業務用アンドロイドっていうのは他のアンドロイドと比べて頭があまりよくないの、けどその分前向きで何に対しても熱心な性格をしたタイプがほとんどだった」

鞠莉「だからひたむきに今やるべきことに立ち向かえる、それが業務用アンドロイドだった」

鞠莉「そして最後に標準型アンドロイド。このアンドロイドこそ私たちにとって最大の脅威となりえるものだった、何故なら人間にClosestなのがこのアンドロイドだからね」

鞠莉「標準型アンドロイドは言ってしまえば人間と何一つ変わらない生き物、もちろん成長する速度とかある程度の身体能力に違いはあるけど人の心をちゃんと持ってるの、だからこそバグが起きやすい」


鞠莉「標準型という感受性に富んだアンドロイドは見知らぬ感情を本能的に作り出してしまうの」


鞠莉「結果、この道徳的退廃を迎えている東京に住むアンドロイドは防衛本能として銃を持とうとする心と人を殺す、或いは物を壊すという破壊衝動が勝手に生まれる。私はそう考えてるわ」


505 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:54:45.10ViazdTd70 (45/62)

梨子「…じゃあもうアンドロイドって」

鞠莉「そう、手遅れなの」

鞠莉「他国や他県で暮らすアンドロイドがここほど問題を起こさないのはそういうことなの、周りに影響されて人格を作り上げる性質から平和なところで生まれ育ったアンドロイドっていうのは東京にたくさんいるアンドロイドとは違って武術の心得が一切ないの」

鞠莉「だからどうしたものかと考えはしたけど、アンドロイドの心を大事にするなら自己学習AIを搭載しないといけない。だけどそれを搭載すると周りの環境に影響されて結局は二の舞で破壊の限りを尽くすだけ」

鞠莉「だからといってそれを搭載せずアンドロイドの心を疎かにすると、そもそもそれがアンドロイドでなくなるの。Heartを持たないアンドロイドは私たちの作りたかったものじゃなかったから破壊衝動が出ると分かっていてもこの選択は絶対になかった」

梨子「………」

鞠莉「だから少なくともここにいるアンドロイドはもう手遅れなの」

鞠莉「…ただ、そんな中でも救いだったのが銃を持っていたり武術の心得がある自己防衛に努めたアンドロイドたちは他のアンドロイドや人間と関係を深めてそのほとんどのアンドロイドがここ東京に身を置く形となった」

鞠莉「アンドロイド一人がここに残ればそのアンドロイドと関係を持ったアンドロイドもここに残る、一人のアンドロイドが二人のアンドロイドに、二人のアンドロイドが四人のアンドロイドにというようにこの東京に滞在する理由を感染症のように広めていった」

鞠莉「だから過激な色に染め上げられたアンドロイドが他のところに行って暴れるという事例はほとんどないわ」

梨子「…そうなんですね」

鞠莉「ええ」



506 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:56:29.26ViazdTd70 (46/62)

梨子「……でも、正直私には分かりません」

梨子「アンドロイドが危険だと、手遅れだと分かってるのなら今すぐにでも排除するべきものではないのですか?」


梨子「それに、私たちは何のためにいるのですか?」


鞠莉「……梨子、あなたには分からないかもしれない」

鞠莉「きっと私の抱えるこの気持ちは複雑すぎて私にしか…いや、希は分かると思うけど、いずれにせよ普通じゃ分からないことなの」

梨子「…つまり?」

鞠莉「私はこの東京が大好きよ、常にchaosで満ち溢れてて毎日誰かがドンパチやってるここはとにかく刺激的で退屈しない、だから私はここが好きなの」

鞠莉「でも、アンドロイドに好き放題やらせたら破滅はもはや秒読みよ、だからある程度歯止めを利かせる為にこの都市には対アンドロイド特殊部隊っていう“必要悪”がいなきゃいけないのよ」

鞠莉「つまり対アンドロイド特殊部隊はアンドロイドの殺害よりかは抑制を目的としたものなの」

鞠莉「危険度の高いアンドロイド——いえば破壊衝動を作ってしまったアンドロイドだけ排除しとけば後はアンドロイドと人間が勝手に街を盛り上げてくれる、そんな造られたvoltageが私は好きなの。優しさは常に一人じゃ生まれないものよ、だから二人で優しさを生んで盛り上げるの」

梨子「………」

鞠莉「ごめんなさいね、こんなくだらない理由で」

梨子「いえ、むしろ安心しました。ここで鞠莉さんがどう答えようと私がアンドロイドを殺すことには変わりないですが、胸糞悪いものは胸糞悪いですから」

鞠莉「そう、ならよかったわ」



507 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:58:15.38ViazdTd70 (47/62)

梨子「…ですが今の状況はあまりよくないと思いますけど」

梨子「堕天使と松浦果南、軍人とトリックスター、曜ちゃんや南ことりまでもが主格である絢瀬絵里の下についているかもしれないのですよ」

鞠莉「……そうね、下手したらその七人だけで一つの国くらいなら亡ぼせそうなくらいだわ」

鞠莉「………」

梨子「…鞠莉さん?」

鞠莉「梨子は……どうしたい?」

梨子「どうしたい?」

鞠莉「次絵里が狙ってくるのはおそらくY.O.L.Oよ、梨子はそこでどうする?」

梨子「それならもちろん迎撃するのみです、叩き潰してそして……ふひひっ…」


梨子「じっくり味わいたいなぁ……」




508 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:58:53.35ViazdTd70 (48/62)

鞠莉「…それは別に構わないけど、それは何かしら特別なactionが無いと無理ね」

梨子「…どうしてですか?」

鞠莉「確かに梨子は強いわ、でも相手が悪すぎる」

鞠莉「梨子が戦えるのはあの中では一番性能が低いとされていることりか、同じ人間である曜しか無理よ」

梨子「でもこれはゲームじゃない、数値化出来ない物事に確定勝利も確定敗北もないはずです」

鞠莉「その通りね、でも果南だけはやめなさい。死ぬわよ」

梨子「どうしてですか?」

鞠莉「果南は戦闘型とはいわず全アンドロイドの中でも特に優れた性能よ、戦闘型だから耳が良くておまけに果南は他のアンドロイドと比べて目が非常に良い。だから観察眼が凄まじくて頭の回転も速いわ」

鞠莉「とにかく攻撃的で運動神経はもちろん最上級、でもあいつの一番怖いところは何も考えて無さそうで実は誰よりも数十倍と頭の中で考えが浮かんでるところよ」

鞠莉「希は果南のことを必要以上に避けていたわ、アンドロイドなのに、そしてアンドロイド故に何を考えてるのか全く分からないのよ」

梨子「………」

鞠莉「あのアンドロイドに寛容な希でさえ避けるくらいなんだから果南と戦っていいことはないわよ。あいつは大人しく果林に任せることね」

梨子「…そうですか、分かりました」

鞠莉「話は以上、傷はまだまだ癒えないでしょうけど次はY.O.L.Oに来ると思ってなさい」

梨子「分かりました、では」

スタスタスタ ガチャッ


509 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 19:59:59.39ViazdTd70 (49/62)

鞠莉「…銃は人を変えてしまうものだわ」


希『アンドロイドが笑えるのはありがとうを言う為、アンドロイドが泣くのは————』


鞠莉「……さよならを言う為」

鞠莉「…でも、さよならなんてなかったわね」

鞠莉「…アンドロイドはあなたの為に作ったのに」


鞠莉「海未……」




510 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:01:20.24ViazdTd70 (50/62)

~約一ヶ月後

絵里「今回の作戦をまとめましょう」

善子「ええ」

ことり「りょうかいっ」

穂乃果「分かったよ」

絵里(あれから一ヶ月と一週間半後、傷もほぼ完治した私たちはリハビリを終えとうとうY.O.L.Oへ向かおうとしていた)

真姫「…ええ」

絵里(そしてこの場所にはレジスタンス全員が集まった)

絵里(それぞれがそれぞれで一番適した格好をしてリビングで緊張感を募らせた)


511 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:02:22.57ViazdTd70 (51/62)

せつ菜「いよいよ始まるのですね…」

絵里(せつ菜は防弾チョッキを着た上に赤いネクタイと派手なスカートが特徴的な服…?衣装のようなものを着てその戦場には似つかわしくない姿を披露していた)

穂乃果「絶対に負けないよ」

絵里(それに対して穂乃果は実に軽装だった、防弾チョッキと腰にベルトを巻くだけの簡単なマガジンポーチ、そしてヘッドホンタイプの通信機をつけて最低限必要な物をつけて後は紺の戦闘服を着て動きやすさに全てを置いたような姿だった)

ことり「うんっ勝とうね」

絵里(ことりは随分と分かりやすい装備だったわ、相変わらずスカートの裏には投擲物がついていて一応固定されてはいるものの時たまスカートの中でカランッと投擲物から不穏な音が鳴る)

絵里(そしてことりは予想以上に重装で、真っ黒いダークな戦闘服の上に防弾チョッキ。ここまでなら普通なんだけど驚くべきはマガジンポーチの数——それはまず胸に四つ、そして腰に六つ、右の腿に二つ。ちなみこの中に入ってるのは胸の二つ以外全部投擲物らしい)

絵里(それでいて平然と動いてるんだから怖いものだわ…重くないのかしら…?)



512 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:02:54.57ViazdTd70 (52/62)

果南「油断はしないようにね」

絵里(そして果南は実に普通だ、戦闘服の上に防弾チョッキを着て、ベスト型のマガジンポーチを着て特に尖った部分はなく、邪魔な物は持たずに必要最低限の装備で行くらしい)

曜「もちろんっ!困ったら私に通信入れてね」

絵里(曜も普通かしら、着ているものはほぼ私と同じで、違うところがあるなら予備の通信機が腰にかけられていて射線が見えるのとフラッシュに備えたゴーグルをつけてることだった)

善子「ええ、了解よ」

絵里(善子はこの前と全く同じ、不便さは感じてなかったようね)

絵里「じゃあ、話すわね」

絵里(そして私も同じ)

花丸「はいっ」

真姫「質問あるならみんな言うようにね」

絵里(この二人は戦えないからお留守番。花丸さんは一応戦えるみたいだけど真姫を一人にするのはあまりにも危険すぎるから残ってもらった)


513 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:03:53.31ViazdTd70 (53/62)

絵里「今からY.O.L.Oへ強襲を行うわ」

絵里「それにあたって私たちはそれぞれグループに分かれて戦うことになる」

絵里「グループAは私と善子、グループBはせつ菜と穂乃果、グループCはことりと曜」

花丸「…あれ?果南さんは?」

絵里「果南には一人で動いてもらおうと思ってね、私たちが気を引いてる間に裏から内部を抉ってく暗躍者として動いてもらいたくて」

果南「んーちょっと考えたんだけど絵里と善子のところについていっていい?」

曜「えっ暗躍者がいた方がいいんじゃない?果南ちゃんは強いんだし」

果南「うん、確かにそっちでもいいんだけどある程度は絵里と善子と一緒にいようと思ってさ。もしY.O.L.Oのアンドロイドと戦うことになった時、私個人としては数で勝ちたいと思ってるんだ。相手の情報が何一つ分かってないから色々試すためにカバーが欲しいんだよね」

絵里「なるほど…」

ことり「…まぁいいんじゃない?フォーメーションの変更はきっと向こうに行った後でも出来るし臨機応変にやってこうよ」

曜「まぁそれもそうだね」

果南「ふふふっありがとことり」

ことり「別に…」


514 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:04:46.69ViazdTd70 (54/62)

絵里「ちょっと変更があったけどいいわ、それで穂乃果とせつ菜のグループは正面でプッシュしてほしいの」

穂乃果「了解だよっ」

せつ菜「分かりました」

絵里「その間に私たちは横や後ろから内部に侵入、中にいるであろう敵と対峙しながら機械を破壊していきましょう。今回は爆弾も持ってきたから最後は派手に爆破して撤退よ」

曜「いいね、文句無し!」

ことり「私も良いと思う」

絵里「何らかの戦えない状況に陥ってしまったら一言連絡を入れて引いて、勝つのも大事だけど死んでしまったら意味が無いわ」


絵里「戦うのなら生きて勝ちましょう」


善子「ええ、もちろんよ」

絵里「質問ある?」

真姫「戦えない私如きが口を出すことじゃないと思うんだけど、穂乃果とせつ菜ってこの中でも特に強いんでしょ?それをデコイ扱いにしていいの?」

絵里「デコイのつもりはないわ、第一三人いると言われてる戦闘型アンドロイドの一人は正面にいると思ってる、だからそれと対峙してもらうのが二人の役目。そして敵はもちろんそれだけじゃない。一番ヘイトが溜まるのは正面だからそこは真姫も言う通りでこの中で特に強い二人に任せるわ」

真姫「そ、そう。分かったわ」


515 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:07:35.55ViazdTd70 (55/62)

絵里「他は質問ある?」

曜「私は大丈夫」

穂乃果「私も」

果南「準備はとっくに出来てるよ」

善子「同じく」

絵里「ええ、なら行きましょうか」

絵里(人の波が酷い街中から少し外れて、長くて細くていれくんでる道に囲まれた大きな建物であるY.O.L.Oはまず侵入さえ難しい要塞だった。つまり今から私たちは迷路に飛び込むのよ)

果南「真姫と花丸には感謝しないといけないね」

絵里「ええ、あの二人の力無しでは侵入さえできなかったと思うわ」

絵里(全員持ってるデバイスの中に記録されたマップデータは全部真姫と花丸さんが作り出してくれたもので、花丸さんはマップの作製を、そして真姫はそのマップをデジタルデータに変換した。そのおかげで迷路のような道も迷わずに目的地であるY.O.L.Oへ向かうことができる)


516 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:08:07.10ViazdTd70 (56/62)

絵里「じゃあ私たちは正面から見て左側から攻めるわ」

曜「了解、なら私とことりちゃんは右側だね」

ことり「うんっ」

せつ菜「正面は任せてください」

絵里「ええ、任せたわ」

真姫「…絶対に死なないでよね」

花丸「いい知らせを待ってるずら」

果南「あははっ首を長くして待っててよ、すぐに終わらせるからさ」

真姫「ええ、頼んだわよ」

果南「任されたよ」エヘンッ

絵里(それぞれがそれぞれの誓いや約束、決意などをして自らを奮い立たせて戦場へと駆けだした)



517 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:11:23.69ViazdTd70 (57/62)


タッタッタッ!

絵里「!」ピタッ

果南「お、ついに来たね」

善子「ここからね」

絵里(そうして走って歩いてを繰り返してたどり着いた路地裏、しかし路地裏という割には道幅は結構広いのだけど道に明かりがほとんどないので人が全くいなく、時折ある防犯灯の明かり周辺を飛び交う虫がよく目に映って実に不快だった)

絵里「監視カメラは壊さずになるべく避けて通りましょう」

善子「ええ」

絵里(そして善子の言う“ここから”というのは監視カメラを警戒してのことよ、ここを抜ければY.O.L.Oへ行ける。だけどその前に通らなければいけないここは監視カメラの多さが目立つ)

絵里(雑に攻略するならば監視カメラを撃って壊して進んでいけばいいだけだけど、なるべく隠密行動で行きたい私たちは回り道をしたり上手く死角を作ったりして見つからずに着々と前へ進んでいった)

スタスタスタ

絵里「…!監視カメラがあるわ」

善子「…ホントだ、でもどうする?あそこの監視カメラ…向こうに行くまで別れ道も何もないわよ。回り道していくのもいいけどここからだと時間がかかる…」

絵里「…どうしたものかしら」


518 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:12:49.92ViazdTd70 (58/62)



果南「上を通っていけばいいんだよ」


絵里「上を通る?」

果南「ここの路地裏、ご丁寧に足場が作られてるじゃん。屋根や突起物を利用すれば屋上に行けると私は思うんだけどね」


果南「こうやってね!」シュツ


タッタッタッ!

絵里「ウソでしょ…」

善子「ホントに行ったわあいつ…」

絵里(ダクトやパイプ、小さな屋根や換気扇を足場にして颯爽と屋上へ上っていった果南に私たちは唖然、そうしてしばらくしてるとすぐそこの角を曲がった先の監視カメラの奥から“ほっと”なんていう果南の声が聞こえてきた)


519 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:16:10.30ViazdTd70 (59/62)

絵里「…私たちも行くしかないようね」

善子「ええ」

絵里「じゃあ行きましょう!よっとっ!」シュッ

絵里(だから私も果南と同じように足場を使って屋上へと上る。果南ほど早くはないものの思いの外上手く上れていて屋上まで上がったら今度は果南のところに下りた)

絵里「ふう」

果南「よしっ行けたね」

絵里「ええ、でも驚いたわ。いくらなんでも無理矢理すぎよ…」

果南「あははっここの壁を見てたら行けるかなって思って」

絵里「流石果南ね…」


善子「今いくわねー」


絵里「ええ、待ってるわ」

絵里(次第に善子も屋上へと上ってきて、ここまで下りてきた。しかしその下り方と言えば誰よりも丁寧で私も、そしてきっと果南も善子らしいなって思ってたはず)

善子「よっと」

絵里(そうしてジャングルジムの一番上くらいの高さからここへジャンプで下りた時、それは起こった)


絵里(私の人生を変える最大の選択————私の運命を変える最悪の選択)


絵里(その選択はあまりにも突然で、一寸先の闇は何かを待っていたように姿を現した。運命は再び銃弾で、そして火薬でその先の未来を照らし出した)




520 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:18:18.89ViazdTd70 (60/62)



ドォンッ!


善子「…ぁっ!?」

絵里「っ!?善子!?」

絵里(重々しい銃声と共に放たれた銃弾は善子を貫いた。銃声の方向からするにその銃弾が地上から放たれたものであるのはすぐに確認出来た)

絵里(…だけど、そんなことに意識を向けてる場合じゃなかった)

絵里「ねぇ善子っ!善子ってば!!」

絵里(跳躍する善子を貫いた銃弾、防犯灯の光によりスポットライトのように照らされたその善子の貫かれた部分を見ればこの一件の答えはすぐに出てきた)

絵里「善子ぉ…!善子ってばぁ…!!ねえ善子ぉ!!!」

絵里(綺麗な直線で貫かれた善子の頭部。そうすればたちまち真っ赤なサンシャインが噴射して辺りは一時的な雨が降り、当の善子は地面に叩きつけられ後の祭り)

絵里「善子…ねえ善子…!!起きてよッ…!」

絵里(イヤだ。分かりたくない。頭の中で考えるよりまず視認して勝手に出てくる答えが私の心を痛めつけた)

絵里(目を開けたまま動かない善子の顔は実に不気味で恐怖そのものだった。地面を、私の手を、服を真っ赤に染め上げ今もとめどなく出てくるこの赤はアンドロイドとして…そして生き物としての終わりの証拠でしかなかった)

絵里「うあああああ…!ね、ねえ果南私たちどうすれ……ッ!?」

絵里(情けない顔で果南の方を振り向く私。だけど振り向いた先はそんな情けない顔も一瞬にして固まるほどの絶望と混乱の世界だった)


521 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:19:50.09ViazdTd70 (61/62)



果南「……最高の殺し方」


果南「最高の死に様」


果南「最高のシチュエーション」




果南「…そして、さいっこうの舞台《ステージ》だね…絵里…」






522 ◆iEoVz.17Z22019/10/01(火) 20:21:44.78ViazdTd70 (62/62)

今日はここで中断。
再開は明日か明後日にします


523以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/10/01(火) 20:39:32.06o/sdYWrK0 (1/1)

果南さんマジかよ・・・


524以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/10/02(水) 12:43:00.74zZKlXZvtO (1/1)

混沌めいてきたな


525 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 17:55:49.60Kb3Xmjfp0 (1/101)

絵里「何を……言ってるの…?」

絵里(絶望のその先に見えたのはデザートイーグルを片手に持ち気味悪く恍惚に佇む果南の姿、果南から私へと伝うその明確な狂気を感じればすぐにでも善子を殺した犯人が果南だと分かってしまう)

果南「絵里、やっとなんだね」


果南「やっと絵里と本気で戦えるんだね」


絵里「何を、言ってるのよ…何を言ってるのよ!?」

果南「私はずっとこの時を待ってた、私と絵里とで殺し合いをするその日を。どちらかが死ぬまで戦い続けて、邪魔者も誰一人入らない二人だけの空間で戦いたかった」

絵里「果南あなた自分が何をしたか分かってるの!?」

果南「分かってるさ、私が善子を殺した。それが何?」

絵里「善子は大切な仲間なのよ!?それが何って…それが何って何ッ!?」

果南「ごめんね絵里、でも善子は私にとって他人でしかない。私は絵里にしか興味がないんだよ、絵里以外は信用出来ない、絵里以外はいらない」

絵里「果南……!」



526 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:00:03.45Kb3Xmjfp0 (2/101)

果南「私ね、小さい頃からずっと絵里に憧れてたんだ。本当は出会っちゃいけない私たちだったけど、絵里の強すぎる正義感は私との出会いを作った」

果南「当時は凶暴だった私の前に突然やってきて“暴れるのはやめて”なんていうからビックリしたよ、当時私も人殺しってことでそこそこ有名だったからさ、強さには自信があってその凛々しい顔を泣き顔に変えて命乞いをさせてやろうって思ったよ」

果南「だから行動はすぐに出た、絵里にパンチやキックをお見舞いして最初こそ私の方が優勢だったのに段々と躱されるようになって、その後も怯むことなく次の行動へ移せばすぐに対応されて、最終的には足払いをされてそのまま馬乗り、そうして首を絞められたのを今でも覚えてる」

絵里「………」

果南「……ただ、そこでみねうちをされて私気付いたよ、強さってこうであるべきなんだって」

果南「絵里は言ったよね。“あなたはもっと考えて行動するべき”って」

果南「だからその時からずっと絵里に憧れを感じてずっと考えながら生きてきたよ、脳筋で凶暴だった私を常識人に変えてくれてたくさんの仲間を作ってくれた。その憧れとこの胸に宿る輝きは今になっても未来になっても消えることはないと私は思う」


果南「ねえ知ってる?私の髪型がポニーテールなのは絵里に憧れてたからなんだよ?」


果南「ファンクラブを作ったのも私。絵里の事が気に入らないと思ってるやつを潰しまわってたのも私、そのおかげで比較的絵里は平和に日常生活を送れたんだよ?」



果南「私は絵里のこと、大好きだよ」



絵里「……私も果南の事、好きだったわ」


527 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:01:22.80Kb3Xmjfp0 (3/101)

果南「ふふふ、ねぇ絵里」


果南「私ってさ、目がいいって言ったよね」


絵里「………」

果南「だからすぐに分かっちゃうんだよ、相手の強さが」

果南「絵里と一緒にいるようになってから絵里より強い人を見たことがなかった」

果南「最近だと穂乃果やせつ菜、あと曜や果林ってやつには驚かされたけどそれでも絵里は最強のまま」

果南「殺意も無ければ覇気もなくて、むしろのほほんとしたオーラをまとってる絵里が一番強いのは、いつまで経っても私には理解できなかったね」

果南「でも…こう……なんていうのかな。正義感とか性格とか、理屈じゃ説明できない気がするんだよね」

絵里「………そう」

絵里(失望、絶望、退廃、虚無、そのネガティブ全てを同時に感じた私にもはや流れる涙は無かった)

絵里(怒ることも泣くことも出来なくて。感じた感情が凍ってしまって考えを巡らせてはすぐさま真っ白になり、私という本能がこの現実を拒絶しようとしていた)


528 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:03:15.80Kb3Xmjfp0 (4/101)

果南「まぁいいよ、結果がどうであり私と絵里が戦うのは変わらないからね」

絵里「…逃げればいいだけよ」

果南「いいの?監視カメラに発見されてみんなに迷惑かけちゃうよ?」

絵里「連絡を取ればいいだけ、言っておくけど私はアンドロイドよ、果南に勝てなくても果南の攻撃を躱すことは出来る」

果南「…ふふふっじゃあ連絡を取ってみればいいじゃん?待っててあげるよ」

絵里「ええそうさせてもらうわ」


ザーザーザー……


絵里「…なにこれ」

絵里(連絡を入れれば聞こえてくるのは砂嵐。私たちが持ってるのは携帯じゃなくて戦闘の為だけに用意されたデバイスと通信機、そのいずれもが使えないモノとなっていた)

果南「ごめんね絵里。絵里のデバイスはインターネットが使えないよう通信手段を全て遮断したよ、通信機は内部を破壊した」


果南「これで連絡取れないね」




529 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:04:14.42Kb3Xmjfp0 (5/101)

絵里「っ! お前……!」

果南「あはははっ!絵里、本気なんだね。いいよ、私に本気を見せてよ!」


果南「私は絵里を超えたいからさぁ!」ダッ


絵里「ちっ…!」シュッ

絵里(避けては通れぬ道なのね)

絵里(果南は私に向かって跳躍しながら背中にかけてたSCAR-Hを構え発砲、反応した私は後ろへ飛び退けすぐに曲がり角へ逃げ込んだ)


タッタッタッ!


果南「そっちは監視カメラの方向だよ!いいの?」ドドドドッ!

絵里「そんなの気にしてたらこっちが死んじゃいそうなんでね!」タッタッタッ!


絵里(連なり木霊する足音をかき消すが如く鳴り響く低い銃声。銃という武器の特性上直線で対になると流石のアンドロイドでも避けれない。いくら横幅があるからとはいえ結局は狭い道であることを否めない)

絵里(つまりこの状況で真正面からやり合うのはどう考えても悪手、果南は撃たれることも覚悟しての勝負だろうけど私にとってはこのY.O.L.Oを破壊してから次のフェイズへ移らないといけない為に果南とは訳が違ってダメージ覚悟ではない)

絵里(だからとにかく角を利用として何かを見出そうとした)


530 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:05:39.39Kb3Xmjfp0 (6/101)



タッ


果南「角を使って逃げてても私はついていくよ!」


絵里「知ってるわ」カチャッ

果南「っ!」

絵里(角という相手の目だけじゃ把握出来ない場所で待ち伏せて果南が曲がり角に来たと同時に発砲。実にシンプルだけど分かっていなきゃ対処法もそこまでないいつまで経っても廃れない強さを持ってるわ)

果南「と思うじゃん?分かってるよそんなの!」

絵里(ピンチであるはずの果南はニヤリと笑って、壁を蹴り壁に引っ付く何かの足場を上手く利用して縦横無尽に、そしてアグレッシブに動いてすぐさま発砲したスコーピオンEVOの弾丸全てを翻弄し避けきった)

絵里「……!」

絵里(その間に一体私の何が機能したというのかしら、私の頭上から落ちてくるグレネードに私は気付いた。それは本当にわずかな音だった、落下で風を切る音が私の耳に伝った時、これはグレネードだと分かった)


果南『と思うじゃん?分かってるよそんなの!』


絵里(…流石果南としか言いようがない)

絵里(私の行動を読んでいただけでなく次の一手まで既に用意していたその手際の良さと戦闘センスはやはり脅威でしかない)

絵里(…ただ、そこまで戦況を把握し攻撃に転じる術と深い読みがあるというのなら、私が次起こす行動も読めてるのかしら?)

絵里(…やってみる価値はありそうね)


絵里「私も行くわよ!果南っ!」


果南「!? なんで!?」


絵里(私も果南と同じように階段や換気扇などの足場を使って縦横無尽に宙を駆け巡り、同じく宙を舞う果南の元へと向かった)

絵里(もちろん発砲はしてくるんだけど如何せんアンドロイドなもので射線が見えてるから次避けるための最適ルートが即座に頭に浮かんできて当たるはずがなかった)


531 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:08:59.83Kb3Xmjfp0 (7/101)



果南「これならどうっ!銃が全てじゃないよ!」

絵里「もちろん知ってるわよ!」


絵里(腰にかかっていたアーミーナイフを逆手に持ち空中で応戦を試みる果南に対し私も腰にかかっているマチェットを取り出し果南に向かって飛びついた)


ドカーン!


絵里「っ!?」

絵里(私の向けた刃と果南の向けた刃が交わるという時、私の上空を飛んでたグレネードが地面に着弾して爆発した。その結果私は爆風により背中に激しい圧力がかかった為に大きく体を仰け反り、下から上へと飛ぶ慣性が強まった為に下へ落ちるのではなくて上へと落ちていき予期せぬ作戦の変更を強いられた)

絵里「…いや、いい」

絵里(ただ、これでよかったのかもしれない)

絵里(すぐさま私はハンドガンを取り出して爆風と仰け反った勢いを利用してそのまま縦に半回転、そうして果南に向かってトリガーを引いた)


果南「…っ!このっ!」バンッ!


絵里(私がハンドガンを構えて察したのか果南もすぐに対応し、デザートイーグルを片手で構え発砲した)

絵里「ひっ!?」

絵里(私の放った弾丸は果南の放ったデザートイーグルの弾丸とぶつかった。その結果、二つの弾丸は弾道を変える事もなければ擦れることもなく、私の放った弾丸だけが墜ちていきデザートイーグルの弾丸は私の股の下を通って後ろの電線を切っていった)



532 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:10:12.39Kb3Xmjfp0 (8/101)



絵里「くっ」

果南「ん…」


絵里(そうしてお互いなんとか怪我の無い着地をして睨み合う。今まで笑ってた果南も流石に今は笑ってなかった)

果南「…やっぱり絵里はすごいよ、多分絵里と穂乃果…そうだね…もしかしたら曜もだけどそれ以外はあのグレネードに気付かずに死んでたよ」

絵里「…果南のことは私が一番よく知っているつもりよ、だけど私には二つ疑問がある」

絵里「仮にここで私と穂乃果、そして曜以外が果南と対峙して、それで今さっきのグレネードで葬れたとしましょう、つまり結果は果南の勝利、果南はダメージを受けることなく相手に勝利した…それだけの戦果をあげられるというのに何故ことりとの戦いでダメージを負ったの?」

絵里「今のところ果南がダメージを負う必要性が無いと感じているんだけど」

果南「ことりは強いよ、この世界はRPGじゃないし魔法も使えない、銃の世界に圧倒的な差は出来ないんだよ」

果南「だからことりと戦った際は肩を撃たれて終わった。その分は私はことりの胸や腿を貫いたけど、やっぱりことりも手練れだからね、無傷は無理だったさ」


533 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:12:08.91Kb3Xmjfp0 (9/101)



果南「——でもね、この場所は違うよ」


果南「この薄暗くて狭い場所、宙に浮くグレネードも全く見えないし壁のあちらこちらに跳ぶための足場がある」

果南「曲がり角も多くて直線を作りやすい。ホントに素敵な場所だよ」


果南「私が生まれた頃からいた場所だもん、私が有利になるのは当然だよね?」


絵里「……そういうこと」

絵里「…じゃあ千歌はどうしたの?仇を取るんじゃなかったの?」


果南「あっはは、もういいよそんなの」


絵里「…!」

果南「確かに最初は千歌の仇の為に私は絵里と共に戦うことを選んだよ、でも絵里が穂乃果や曜を仲間にしていった時点で別に私が動かなくても千歌の仇は果たされることに気が付いた、それに気づいた瞬間私がやるべきである本来のことに焦点を当てたんだよ」


果南「絵里と本気で殺し合いをする、私の夢」


果南「でも、絵里と戦ってみて思うのはやっぱり絵里は最強だね。こういう場所には頭のおかしい人たちが溜まる、私は昔っからそんなやつらをこの地形を利用して殺害を繰り返してた」

果南「だから私がこのステージでの動き方を熟知してるのは当たり前、それなのに絵里はなんでグレネードを回避出来た?なんで私みたいに縦横無尽に動けた?」

果南「あれ?おかしいよね?」

絵里「……何が言いたいの?」



534 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:14:18.83Kb3Xmjfp0 (10/101)

果南「絵里はいつもそうだよね、そういう人なんだよね。いつも自分の事じゃなくて相手の事を考えちゃう、そんな優しい絵里が私は好きだよ」

果南「…でも、優しいってホントに邪魔なステータスだよね」

果南「戦いの中で温情?同情?慈悲?なんてバカらしくない?そういうモノが戦いの中で恐怖に変わっていくんだよ、人を殺す恐怖、自分が殺される恐怖、平和が崩れていく恐怖…戦いには慣れってものが必要なんだよ、だから私たちは今すぐにでも殺すことに慣れてなきゃいけない」


果南「だけど、私から見て絵里にはそれが欠落しているように見えるんだよね」


絵里「………」

果南「ねぇ絵里、私と組まない?私と絵里だけ――――そう、二人だけで」

絵里「…組むって?」

果南「絵里が人を殺すことに恐怖を抱いているのは知ってるよ、だから私が代わりに殺してあげるから一緒に手を組もうよ、絵里と私の二人だけでね。それ以外はみんな敵だよ」

果南「そして鞠利を殺すんじゃなくて、東京を私と絵里のモノにしちゃおうよ」

絵里「それ、本気で出来ると思ってる?」

果南「ふふふっそんなこといったら絵里もそうじゃない?対アンドロイド特殊部隊を壊滅させて鞠利に勝とうなんて無謀すぎると私は思うんだけど」

絵里「そう?もうすぐそこまで来てると思うんだけど」

果南「そうなんだよねぇ」


535 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:16:47.48Kb3Xmjfp0 (11/101)

果南「…まぁそれもこれも全部絵里がいたからここまでいったんだろうけど」

絵里「……私を神格化させたいの?」

果南「絵里は色んな面を含めて最強なんだよ?絵里もよく考えてみてよ」


果南「自分が誰なのかを」


絵里「自分が誰なのか……?」


果南「…まぁ、それが分からないから絵里は絵里のままなんだけどね!」ダッ


絵里「っ!」


絵里(凄まじい速度で前へ跳躍しながらトリガーを引いた果南——跳躍から着地へと移ればまたすぐさま跳躍をし壁を蹴って再び縦横無尽に宙を舞う)

果南「ホントに絵里はバカだね!ことりの言ってた通りだよ!」


果南「意志が強い人は周りを見ることが出来ないってね!」ドドドド!


絵里「何の話よ!?」タッタッタッ!

絵里(状況はまさに蟻地獄に放り込まれた蟻のようなもの。果南の祭壇の上でどう踊ればいいか分からない私はとにかく逃げ続けた)

絵里(時折ハンドガンを使って威嚇射撃程度に撃つけど如何せん当たるはずもなくて、銃弾の雨は止まることを知らないようだった)


536 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:20:18.29Kb3Xmjfp0 (12/101)



果南「逃げてても状況は変わらないよ絵里!」

絵里「そんなのやってみないと分からないじゃない!」

果南「なら分からせてあげるよ!」


絵里(そう言って何が起こるのか確認する為に振り向けば赤い線が視界いっぱいに現れた)

絵里(赤い線の出現先はもちろん果南の持ってる銃口————だけど、銃口の位置がおかしかった)


絵里「なに…それっ…!」


絵里(…でも考えてる場合じゃない、今はとにかくこの数えきれないほど見える射線を避けきるのが先。そう答えを出した私はすぐ横にあった木のドアを突き破って室内へと入った、Y.O.L.Oの周りの建物は廃れていて基本的にここら辺に住んでる人はいない、だから突き破っても案の定人はいなくてピンチながらもちょっと安心した)


果南「やっぱりこれも避けるんだね絵里は!流石だよ!」ドンッドンッ!

絵里「何よそれは!」


絵里(ドアを突き破ればついてくるのは当たり前。だけど果南はどこからか取り出したショットガンのようなもので壁に穴を開けて私を追ってきた)


537 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:23:15.06Kb3Xmjfp0 (13/101)



果南「アンダーバレルショットガンって知ってる?」


果南「本来の銃口の位置の下をアンダーバレルっていうのは絵里も知ってると思うんだけど、そこにもう一つ銃を取り付けられるんだよ、だから私のSCARにはアンダーバレルにショットガンがついてるんだよ、こんな風なショットガンがっ!」バンッ!

絵里「ちっ…」

絵里(ガラスを突き破って外へと出ればたちまち後ろから低い銃声が聞こえてきて私の頭上を掠めていく)

絵里(果南の言うアンダーバレルについたショットガンで撃つだけ撃ったら今度は本来引くべきであるアサルトライフルのトリガーを引いて私の狙ってくる)

絵里(使い方にもよるけどそれは単純な話、手数が増やせて相対的に装弾数が増える。そして遠近共に対応できる万能な存在になり火力だけを追い求めながらも完璧な構成が作られている…)

絵里(…一体果南はこのプライマリーを完成させる為に何人の人を…そしてアンドロイドを殺したのだろう)


絵里「このっ!」ポイッ


絵里(しかし私も逃げてばっかりじゃない、窓を突き破った後はグレネードを転がして牽制をした)

果南「ピンが抜かれたばっかのグレネードは怖くないね!」タッタッタッ!

絵里(しかしまるで意味を成してない様子。例え直撃のレベルにはならなくても爆風で吹っ飛ばされるというのだからここは大人しく引くのが賢明だとは思うんだけど果南には他の考えがあるらしい)


538 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:25:10.31Kb3Xmjfp0 (14/101)



ドカーン!


絵里(そして案の定果南の背中にはgがかかる、しかしそれでも見えてくる無数の赤い線————それと真正面からやり合ったら負けるのは間違いなく私。いくらレートの高いスコーピオンとはいえショットガンの瞬時火力には勝てない)

絵里(だから爆風に吹き飛ばされて…いや、爆風を利用して私の元へ高速で向かってくる果南には付き合わないことにした)


果南「そうだよね!射線が見えるなら絶対に撃ち合わないよね!知ってるよ!だって幼馴染だもん!ずっと昔から絵里の事知ってるから!」


果南「でも私相手じゃ“いつも通り”は通用しない!絵里には絶対に戦ってもらうよ!」ブンッ!


絵里「っ!?っぶな…!」


絵里(暗闇から突然姿を現す無数のナイフ。ナイフは銃弾とは違って射線は見えないから機械の反応速度で対応するしかない、けど夜な上に常に闇が彷徨うここだと視界の悪さが目立つ為に果南がナイフを投げてから私が反応するまでにタイムラグがある、だからこそ避けれるかも危ういところだった)


539 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:27:32.38Kb3Xmjfp0 (15/101)

果南「私は他のアンドロイドや人間とは違うよ!ずっと絵里と一緒にいて、ずっと絵里のこと見てきたんだから絵里を逃すわけないじゃん!」

絵里「あなたねっ…ッ!」

果南「何かを待って逃げるよりさっさと覚悟を決めて私と戦った方が絵里的にもいいと私は思うんだけどね!」ドドドドッ

絵里(そこら中で火花を散らす銃弾を潜り抜け角を曲がって逃げ続けるけど横移動を満遍なく使うことのできない細道では真正面からの撃ち合いを強いられる、けどどう考えてもそれじゃあ良くて相打ちの結果に終わる。脱出ゲームのようにいれくんだこの迷路ではまだまだ広いところに出れるような気配はしないしどこかで果南と対面する必要があるのを既に私の考えが示していた)


絵里「ならここでっ!!」バリバリバリバリッ!


絵里(私のプライマリーであるスコーピオンのトリガーを引けばたちまち路地裏の壁に穴が空く。みんなの持つ銃と一際銃声が違うのが恐ろしさの体現であったと思う)


果南「スコーピオンなんて怖くないね!」タッタッタッ


絵里「っ!?」

絵里(だけどどういうことなのかしら、果南はこの数えきれない銃弾に対し動きを止める素振りもなくましてや何かに隠れようとする様子さえない。果南もアンドロイドであるはずなんだから射線は見えてるはず、ならこの銃弾を全て躱しきるなんてそんなの無理って分かってるはずなのに)

絵里(死ぬことを選んだ…?いや、果南から向けられる殺意はまだ残ってる。何かがあるはずよ…)


540 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:29:06.81Kb3Xmjfp0 (16/101)

果南「ほっと、やっと!」

絵里(ジグザグ走行で避けれる弾は躱すけど、果南と私の距離が近づけば近づくほど果南が不利になる。装弾数が52発であるスコーピオンのマガジンならこの対面で弾切れはまずない、そうと分かっているのにどうして果南は私の元へ来るのか理解出来なかった)


果南「完璧主義者の絵里には到底理解出来ないだろうねっ!」ズサー


絵里(そして一気に距離をつめるようにスライディングをするけど、果南も分かってるはず。スライディングをしたところで弾を全て避けきるのは不可能、そう、“完全”には……)


絵里「…! まさかっ!?」


果南「そうだよ!この弾だけ受ければ絵里と接近出来るからねっ!」


絵里(私の放った銃弾は果南の左上腕を貫いた。だけど果南はそれでも足を止めず顔を歪ませることなくスライディングで私へと近づいた)


541 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:29:40.13Kb3Xmjfp0 (17/101)



果南「もらったっ!」


ドスッ


絵里「ぃ…かっ…………」

絵里(トリガーを引き続けていた私が高速で近づく果南に対して回避行動を出来るはずもなく、果南は私のお腹にナイフを突き刺した)

絵里(……負けた。私の口やお腹から血が飛び出てくる以上はそれ以外なかった)

絵里(でも、不思議とまだ息が絶えることはなかった。諦めたくなかった、死にたくなかった)

絵里「はぁ…あ……」

絵里(仰向けに倒れると星々が連なる広い宇宙が瞳に映る。そんな景色に一瞬の黄昏を支げるとその星空を遮る果南の姿が私の視界に入り込んだ)



542 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:31:02.68Kb3Xmjfp0 (18/101)

果南「……ねえ絵里、考えたことある?」

絵里「なに…を…よ」


果南「このナイフについた血、そしてその絵里の口から出る血————誰のモノだと思う?」


絵里「誰の…モノ?」

果南「そうでしょ?まさか絵里は自分の血が赤い絵具やトマトジュースなんて思ってるわけじゃないでしょ?私のこの腕から出る血だって、本物の血だよ。でも本物の血ってどういうことなんだろう」

絵里「………」

絵里(果南にしては珍しい真面目な話は自然と私の脳を働かせた。しかしあまり力が入らないのでアホっぽく口をあけて死体のような姿を自分自身で作っていたと思う)



543 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:32:19.51Kb3Xmjfp0 (19/101)

絵里「…人…でしょ…?」

果南「そうだよ、人だよ」

果南「人の血が私たちには流れてるんだよ」

果南「絵里は言ったよね、アンドロイドの差別を無くしたいって」

果南「だから安心してよ、アンドロイドは決して特別な生き物じゃないよ。人の血が流れてる以上何を言おう人でしかないんだよ」

絵里「………」

果南「……ごめんね、絵里。もし私がここで邪魔をしてなければ87パーセントの確率でY.O.L.Oを破壊できた」

果南「でもね、ここで奇襲を成功させたら絵里と私が戦う機会はもう一生来ないと思うんだよね」

果南「だから今やった」

絵里「ふざけっ…ないで…!」

果南「……ふふふっ絵里の死体は私がずっと保管しておくからね」

絵里「なに……笑ってんのよ…!!」

果南「あはは、絵里に勝った証と同時に絵里の全ての所有権を私が手にするんだよ?そんな顔がにやけちゃうに決まってるじゃん」

絵里「さい…ってい……」


544 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:33:19.51Kb3Xmjfp0 (20/101)

果南「…もういいよ、無理しなくて」カチャッ

果南「絵里のその意志は私が全て受け継ぐよ、ちゃんと鞠利は殺すしアンドロイド差別が無くなるよう励むとするよ」


果南「私なりのやり方で」


果南「そして今日から私が絢瀬絵里として生きていくよ、この名前…大切にするから」

絵里「かなぁ…ん!!」

果南「それじゃあね、愛してるよ絵里」



バァンッ!!!



絵里(明日もあるか分からない毎日を過ごしてた私だったけど、死ぬ時は本当にあっさり死ぬものなのね)

絵里(響く銃声は耳の奥に何重にも木霊して突き抜けた)

絵里(ずっと真っ暗闇な世界は黒以外の色を付ける気配はなかった。銃で語られた黒は実に固くて重くて絶望によく似た色だった)


絵里(…“声”が聞こえるまでは)




545 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:34:30.57Kb3Xmjfp0 (21/101)



果南「あ…れっ……?」


バタッ


絵里「……えっ?」

絵里(声が聞こえて開かないはずだった目を見開いた)

絵里(そうすれば倒れる果南が私の体にかぶさりそれからそれ以上のことはなくて辺りは沈黙状態だった)

絵里「はぁ…ああ…ッ…はぁはぁ…!」

絵里(声を出してから微動だにしない果南と、さっきより明らかに大きくなった血だまりを見ればすぐに果南が死んだのが分かる。でも、そうと分かってもどうすることも出来ず今も止まることを知らなそうに出る荒い息と血を止めようと私は私の身体に抗うだけだった)


スタスタスタ


絵里(足音がする。果南じゃない、そして私でもない第三者の足音)

絵里(…ここで私は殺されるのかしら、それとももっと最悪な捕虜とか奴隷として扱われるのかしら。この“機械的”な息も止まりそうにないし、今の私に助けを求める心と頭は無かった)


546 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:36:04.99Kb3Xmjfp0 (22/101)

絵里「はぁ…はぁ……ッ!?」


「…絵里さん」


絵里(そうして足音の正体を瞳に映せばどうかしら、血のように真っ赤に染め上げられた赤い髪と可愛く、そしてそれはあざとく仕上がったツインテール、そして宝石のようなコバルトブルーの瞳を潤わせて私を見るその相手)

絵里(…そう、その相手はずっと病院で寝たまんまだった善子の親友——————)



絵里(————ルビィだった)



ルビィ「……危なかったね」

絵里「なん…で…?」

絵里(赤色に染まったスナイパーライフルを両手に持ったルビィ————私のところに来るや否や果南の生死を確認するのを見て果南を殺したのはルビィだと気付いた)



547 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:37:03.22Kb3Xmjfp0 (23/101)

ルビィ「……たまたまだよ、でも絵里さんを助けられたのは必然だったかも」

絵里「……んぅ?」

ルビィ「あ、ご、ごめんなさい。今の状態じゃ喋れないよね…」


ギューッ


絵里「……ぇ?」

ルビィ「………今は何も言わないから、今は何もしなくていいから絵里さんはゆっくり休んでて」


ルビィ「ルビィもちょっと休みたい…なんか疲れちゃった…」


絵里(私を震わせる強く、弱い包容は不思議な香りと気分がした。まるで自分が若返ってしまったような、昔の意志も体も技術も拙い自分に戻ってしまったようなそんな感覚に陥ってた)

絵里(病院の臭いが染みついたルビィの匂いにノスタルジックが襲ってきて、自然と涙を流してた。千歌も善子も果南も死んだ。昔馴染みはもうルビィと真姫しかいない、そんな残されたルビィに抱きしめられた私は心の底から安心出来たような気がした)

ルビィ「……っ」

絵里(背中だけで感じれるルビィの震えた手や緩急な力の入り具合を見るに、ルビィは味方だとすぐにわかる。小さい頃からずっと臆病だったルビィにはきっと果南の死体は耐えきれないんでしょう)

絵里(……だから私もルビィを強く抱きしめて、そのまま深い闇に堕ちていった)



548 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:38:29.62Kb3Xmjfp0 (24/101)

~同時刻


ザーザーザー……

プープープー……


曜「…ダメ、繋がらない」

ことり「……もしかしてなんかあったんじゃ」

曜「……否定したいけど正直その可能性の方が高いんだよね」

ことり「殺されたりは……してないよね」

曜「まさかそんなことあるはずないよ、だってあの三人だよ?裏路地から入ってるのにそんな三人を殺すほどの戦力がそこにあるとは思えないよ」

ことり「私もそう思う、ならなんで繋がらないの?」

ことり(現在私と曜ちゃんは将来的に芳しくない状況にあった。絵里ちゃん善子ちゃん松浦果南とほぼ同時刻に違う方向から同じ裏路地に入りそれぞれの侵入口で一斉に入る予定で、私と曜ちゃんは無事に辿り着いたけど他の三人全員と連絡がつかない状況だった)


549 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:40:15.09Kb3Xmjfp0 (25/101)

ことり「…引き返す?」

曜「……そうするしかないんじゃないかな」

ことり「………」

ことり(こんな時にあの三人は何をしてるんだろう、流石に意図的に連絡を遮断しているわけではないと思うし何かあったと考える他ないんだけど、そう考えて私はどうすればいいんだろう)

ことり「…!…ッ!」ダッ

曜「えっちょ、ちょっとどこに行くの!?」

ことり「絵里ちゃんのところだよ!ここでじっとなんかしてられないよ!!」

曜「絵里さんのところっていってもどこか分かるの!?」

ことり「戦闘型アンドロイドは耳がいいの!だから音で見つける!」タッタッタッ

ことり(曜ちゃんを気にすることなく私は再び裏路地へと入り階段を使って屋上へと上り屋根伝いに進んでいった)

ことり(アンドロイド特有の進み方だったから曜ちゃんはついてこれるはずもなく、ある程度進んだら目を瞑り音にだけ意識を集中させた)


550 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:42:43.18Kb3Xmjfp0 (26/101)

ことり「すぅ…はぁ……」


コツ…コツ…コツ…


ことり「! 見えたっ!」ダッ

ことり(誰かの足音が聞こえた。誰かは分からないけどとりあえずその足音の方向へ進む)

ことり(闇に紛れて風を切って進む私はまさに神風だ。久々にこんな本気で移動した気がする……こんな心と体が熱くなれるのは全部絵里ちゃんのせいだよ…)

ことり(命まで助けてもらったら絵里ちゃんを見捨てることなんて出来ないよ…だからこれからの絵里ちゃんには絶対に勝ってもらいたかった)

ことり(だけどそんな絵里ちゃんと連絡が取れないっていうなら焦るのも当然だと思わない?私だけじゃなくて、あの冷酷だった穂乃果ちゃんや対アンドロイド特殊部隊のエースである曜ちゃんまでもが絵里ちゃんに従うのを見れば絵里ちゃんの強さと優しさがホンモノであるっていうのは明白だよ)

ことり(ならその事実を、そのホンモノを信じるなら)



ことり(今瞳に映った赤髪の子を殺したって誰も文句は言わないでしょ?)





551 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:45:37.37Kb3Xmjfp0 (27/101)



ことり「ハァッ!!」ドドドドッ!


ことり(壁に背中を寄せて座り込んで気を失ってる絵里ちゃんの肩に、左手を置いて何かを考えてる赤髪の相手にアサルトライフルで発砲した)

ルビィ「ぴぎっ!?」シュッ

ことり「ちっ…やり逃した…」

ことり(屋上からの完全な奇襲だったというのに避けられた。なんでかは分からないけど可能性があるなら相手がアンドロイドだったか、ここに来る前に大胆に地面を蹴る音が響いてたからそれで気付かれたんだと思う)


ことり「もう要らないっ!」ポイッ


ルビィ「ライフルを捨てた…!?」

ことり(リロードに時間がかかるアサルトライフルはもう要らない、視界に映る絵里ちゃんからは血が出てるし出血死の可能性を感じる今は一秒でも時間が惜しい。開けたところならともかくこの狭い道なら近接でも充分勝負は決められる、銃撃戦より接近戦の方が得意な私からしたらそうした方が勝率は高いはず)


552 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:47:58.59Kb3Xmjfp0 (28/101)



ことり「絵里ちゃんを返せッ!」ブンッ!


ことり(地面に着地するや否や跳躍で超接近し、お腹目掛けて掌底を繰り出した——けど相手は体を捻り難なく避け、捻った勢いをそのままに後ろ回し蹴りを繰り出してきた)


ことり「きっ…」ガッ

ルビィ「っ!」


ことり(相手の蹴りは私の顔にヒット寸前という時に片手上腕でガードした。相手もまさか受け止めると思っていなかったのか驚きの顔を隠せていなくて瞳が揺れているのが確認できた。だから動揺している今がチャンスと思い腰にかけてあったタウルス・ジャッジを相手の顔に向けた。この拳銃は他の拳銃とは違って銃口から散弾が飛ぶ————なら例え相手がアンドロイドであったとしてもこれを避けるのは不可能なはず…)


ルビィ「お姉ちゃんに比べたらそんな銃なんてっ!」スッ


ドカッ!


ことり(何…この子…!?)


ことり(それは一瞬の出来事だった、私が銃口を向けて相手が取った行動は受け止められながらももう片方の足を使って再び後ろ回し蹴りだった。拳銃を手を持った瞬間、その速すぎる判断と行動に私のトリガーを引くスピードが追い付けてなくて、仮に追いついたとしても相手の角度の取り方が上手くて撃てても銃口の先は相手のあざといツインテールを貫く程度だった)

ことり(ねえ分かってる?アンドロイドの私でさえ反応出来ない速度を相手は持っているんだよ?おかしいじゃん、そんなの)


553 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:49:31.40Kb3Xmjfp0 (29/101)

ことり「ッ…!!!」クラッ

ことり(そして後ろ回し蹴りで私の拳銃を弾いた後は驚く暇さえ与えずに上段蹴りが飛んできて私の顔にクリーンヒット。倒れはしないものの一瞬だけ上下左右がよく分からなくなって、気付いた頃には絵里ちゃんの隣にまで後ずさりをしていた)


カチャッ


ことり(そうして私の足元では絵里ちゃんの相棒が雄たけびをあげる、アサルトライフルは捨て、射程のないタウルス・ジャッジしか持ってない私にはミッドレンジどころかこの路地裏の壁と壁の距離ですら戦えない。なら今こそと私の足に当たったことで雄たけびを上げた絵里ちゃんの相棒を使うべきだと私の本能が訴えていた)

ことり「……っ!」

ことり(心の中で“借りるね”と絵里ちゃんに向かって一言添えて絵里ちゃんの相棒であるスコーピオンEVOの銃口を相手に向けた————と、同時に私の頭目掛けて飛んでくる一つの赤い射線に私は思わず目を見開いた)


ルビィ「………」

ことり「………」


ことり(お互い照準を頭に向けた状態で睨み合った。誰かの血がついたスコーピオンEVOを持った私に対し赤く装飾されたハンドガンを持つ相手——その可愛らしくあざとい姿に銃器は似合わないものの、明らかに手慣れているであろう持ち方は年季を感じた)


554 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:50:31.03Kb3Xmjfp0 (30/101)

ことり「……!」

ことり(相手の目線を見て気付いたけどこの相手……銃口を私の頭に向けてるだけで目線は多分別のところを見てる…何か隠し玉はないか、この状況でどう避けれるのか左右の障害物を見たり、一つ一つ懸念材料を潰して可能性を増やしてる…)

ことり(それを見て思った)


ことり(この相手、相当強い…とね)


ことり(…多分、穂乃果ちゃんや曜ちゃんとも全然戦える子だと思う)


ルビィ「………」

ことり「……っ」


ことり(私が銃口を相手に向けてる間は永遠に緊張感が木霊して相手に意識を向ければ向けるほど鼓動の音が大きく聞こえて汗が止まらなかった)


555 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:52:37.31Kb3Xmjfp0 (31/101)

ことり「………」


ルビィ「…そこっ!」バンッ!


ことり「!」

ことり(いい加減睨み合うだけの膠着状態に痺れを切らした相手は戦いのトリガーを引いた、弾を左に躱せば相手も私に引っ付いてくるよう拳銃を下げ左へ突っ走って私へ寄ってくる。それをスコーピオンEVOを使ってしっぺ返しを狙えばどんな反応速度と運動神経をしてるのか前方向へ強く走っているのにも関わらず突然後ろへ1、2、3回と素早く飛び退き換気扇の小蔭に隠れてスコーピオンの弾全てを避けきった)

ことり「この子……」

ことり(スコーピオンの弾を全弾避けきるのはあの星空凛ですら無理だったのに一体何が起こってるというのだろう、確かにこの相手なら絵里ちゃんだって屠ることももしかしたら……!)


ことり「ちっ…そんなことあるはずないっ!」バリバリバリッ!


ことり(自然と頭の中に浮かんだ一つの可能性を否定するよう必死にトリガーを引いた。この銃はブレが強すぎるからとてもじゃないけどことりじゃブレ制御が出来ない)

ことり(だからこういう時には銃のグリップの上の辺りにあるセレクターレバーをフルオートからバーストに切り替えてトリガーを引く。そうすると本来フルオートであったスコーピオンが三点バーストに切り替わる)

ことり(これなら肩とサイトの上昇をある程度抑えられて、どんな銃でもそこそこに安定したリコイルを可能に出来る)

ことり(もちろん火力は下がるけど…)


556 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:54:34.59Kb3Xmjfp0 (32/101)



ルビィ「狙いがでたらめだよ…」スッ


バンッ!


ことり(小蔭から突然と飛び出し私の足元に拳銃を向け次の瞬間には発砲、もちろんそれには当たらないんだけど避けた瞬間私のおでこに赤い射線が飛んできた)


ことり「偏差撃ち…!?」


ルビィ「終わりだよ」

ことり(ハンドガンやライフルのような単発式の銃はフルオートと違ってトリガーを引いた際発砲で生じるブレに一定時間拘束されることがない、ハンドガンというのは撃って肩が跳ね上がって終わりの順序良き武器だ)

ことり「そんなっ…!!」

ことり(だから私はこのどうしようもない展開を強いられた。“ハンドガン”で私の足を目掛けて発砲して、その瞬間から私のおでこに照準を向け完全なる偏差撃ちを可能にさせた。この場合私は跳躍途中だから偏差撃ちの弾丸を回避する術を持っていない、これがマシンガンだったらこうはいかなかっただろう)

ことり(マシンガンは撃ちながら高速で照準を動かすことはできない、ハンドガンだからできた芸当——この子は間違いなく————)


ことり(————私より強い)




557 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:56:07.78Kb3Xmjfp0 (33/101)



ルビィ「……はぁ、やめにしませんか?」ストンッ



ことり「————えっ?」

ことり(私の死を直前にして突然相手は今まで私に向けていた敵意殺意を消してその場にへたり込んでしまった)

ルビィ「はぁああ……多分あなたって絵里さんの知り合いです…よね?ルビィもそうだから…そうだから戦いはいいよ…」

ことり「…それホント?」

ルビィ「ホントだからもういいよね…?ルビィ疲れたよ…」

ことり「…!そういえばルビィって…!」


絵里『そ、それってルビィが意識を取り戻したってこと?』


ことり「絵里ちゃんや善子ちゃんが言ってた病院から抜け出した子……」

ルビィ「えへへ…やっぱり絵里さんや善子ちゃん、ルビィの事気にしてたんだ」

ことり「当たり前だよ、数年寝たきりだったのにいきなり外へ出たら体もまともに動かせないだろうし一方的に殺される可能性もあるって…」

ルビィ「……確かにこの都市はそうなのかも」


558 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:57:03.10Kb3Xmjfp0 (34/101)

ことり「…でもおかしいよね、なんで動けてるの?」

ルビィ「それは………」


ルビィ「………」


ことり「……何か隠したいことでもあるの?」

ルビィ「…黒澤家はお金持ちだよ」

ことり「え?どういうこと?」

ルビィ「ルビィは人間だもん、アンドロイドみたいに特殊なチカラはなくて、絵里さんの言う通り数年動かさなかった体で戦うなんて無理。だからその特殊なチカラを“投与”するしかないんだよ」

ことり「投与…?ってまさか……」


ルビィ「………」


ことり「なんでそんな…」

ことり(私の考えてることが正解なのかは分からない、けど投与という言葉を使うには状況が限定されすぎてしまう)


559 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 18:59:19.78Kb3Xmjfp0 (35/101)

ルビィ「……だってそうじゃん、今ルビィが動くにはそれしかないんだもん。昔はよくお世話になったモノだし全然怖…くないよ」

ことり「………」

ことり(ウソばっかり。なんでそんなモノに手をつけるんだろう。人体に影響が出るかもしれないっていうのに、目覚めてからに無理に動く必要なんかなかったのに)

ことり「だからって……」

ことり(お金持ちっていうのはつまりそう言う事なんだと思う。お金持ちだからつまり“薬”も入手出来てこの通り動けてる、こんな臆病そうな子が薬を使うなんて人は本当に見た目だけじゃ判断出来ないね)


ルビィ「うっ…ぎ…ッ!」


ことり「!? どうしたの!?」

ルビィ「頭がいだい…!!」


ルビィ「うぎゃぁああ…あッああああああああああっ!!!!!」


ことり「うっ…」

ことり(その叫びはもはや人間じゃなかったよ、甲高いを通り越した奇声をあげたからすぐさま私は耳を塞いだ。それでも突き抜けてくる声は耳の奥だけじゃなくて頭まで痛くなる声だった)


560 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:01:37.34Kb3Xmjfp0 (36/101)



ルビィ「ぴぎいいいいいいいいいいいいッ!」


絵里「ん……」

ことり「うるさいっ!」ドカッ!

ルビィ「ぎゃっ……」バタッ

ことり「死ぬかと思った…声だけで…」

ルビィ「………」

ことり「…薬の影響なのかな」

ことり(塞いでも突き抜けてくる声は私の命までをも破壊できると思う、そんな中で無抵抗に耳を塞いだままにするわけもなく急いで頭を押さえるルビィって子のお腹を蹴って気絶させた)

ことり(しかし耳から手を離してもさっき放たれた頭の押さえてしまうほどの奇声が頭の中を蝕んでくる)

ことり「RED GEM WINK……」

ことり(髪型や瞳の色は派手な割に闇を纏うような黒いコート姿をしたこの子のポケットから出てきたRED GEM WINKと書かれた何かの袋。まぁ“何か”って言っても薬だろうけど…)

ことり(薬だろうとなんだろうと詳しいことは袋の裏に載ってるからとりあえず袋の裏を見てみたけど案の定日本語じゃないし、ましてや英語でもないどこか別の国の言葉で読めなかった)

ことり(…でもアンドロイドの私でも反応出来ない速度で攻撃出来るんだから代償や副作用もそう易しいものじゃないはず、しかしあそこまでの悲鳴をあげるとなるときっと私の想像を遥かに超える痛みなのかも)


561 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:03:47.60Kb3Xmjfp0 (37/101)


ことり「よかった生きてる…」

ことり(あの赤髪の子と出会った時からお腹から血を流して倒れてる絵里ちゃんを見て出血死してるんじゃないかって思ってた、けどホント僅かに声を出してくれたからまだ生きてるのは確認出来て安心した)

ことり(…でも、このまま放置してたら絶対に死んじゃう……)

ことり「…ごめん!」

ことり(申し訳なさを抱えながら赤髪の子が来ていたコートを脱がせて絵里ちゃんのお腹に巻いた。私は戦闘服だし絵里ちゃんは制服だから服を破るという概念がない。だからこれは仕方なかった…)

ことり「……どうしよう」

ことり(赤髪の子は気絶してて、絵里ちゃんは起こすにも起こせない。そんな状況一人取り残された私はどうすればいいんだろう、私は考える)

ことり「………」

ことり(…だけど、答えは出てこない。おんぶするにも二人もおんぶできるほど私は大きくないし力もない、だからといって一人を見捨てるわけにもいかないしどちらかは目覚めるまで待つかしないのかな…)


562 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:04:49.24Kb3Xmjfp0 (38/101)

ことり「…いや………」

ことり(でもそれだと絵里ちゃんが死んじゃう…出血部分にコートを巻くだけで死を回避出来るはずがない、それはあくまでも応急手当、安心出来ることをしたわけじゃないんだよ)

ことり「…仕方ないよね」


ズルズルズルズル…


ことり「…ごめんね」

ことり(断腸の思い…とはちょっと違うけど倒れる二人の手を握って引きずりながら出口へと向かった。昔の私ならきっと自分だけ助かればいいやって思ってたはずなのに“誰かさん”のせいで私まで誰かを助けなきゃっていう思考なっちゃった…)

ことり(……一体誰のせいなんだろうね)



563 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:08:07.58Kb3Xmjfp0 (39/101)

~同時刻

曜「もーことりちゃんどこ行ったんだろう…」

曜「勝手にどっか行っちゃうしそれで何か起こされたらたまったものじゃないのに…」

曜(……まぁ単独行動しかしてなかったことりちゃんに集団行動は酷な話かな…絵里さんや善子ちゃんの命が関わってるんだし)

曜「……にしてもどうしよう…」


「もし暇なら、私と少し遊ばない?」


曜「!」

曜(ことりちゃんがそそくさとどこかへ行っちゃったからこれからどうするか悩めばすぐに聞こえる誰かの声、小さい時の戦闘で培った勘…みたいなモノが働いたのかな、聞こえる声はどこか不快で明らかな敵意を感じた)

曜「…誰?」

「そんな警戒することかな?ただ話しかけただけなのに…」

曜「…! A-083…」


曜『まぁそうなんだけど一人だけ分かってるんだ、型番はA-083って』

穂乃果『P-83の次世代モデル、または戦闘型アンドロイドへと変形させた後継機って私の後継機じゃん……』


曜「…穂乃果ちゃんの後継機」


564 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:09:23.33Kb3Xmjfp0 (40/101)

「穂乃果ちゃん?もしかして私のオリジナルの人?」

曜「そうだよ、でもそっか。あなたが穂乃果ちゃんの後継機なんだ」

「うん、軍神と呼ばれた人の後継機だよ」

曜「へぇー名前は?」


歩夢「歩夢————上原歩夢だよ」


曜「歩夢ちゃんか、覚えておくよ」

歩夢「…覚えていられるかな?」

曜「…それはどういう意味?」

歩夢「だって……」


カチャッ


歩夢「今日ここであなたは死ぬんだから」


曜「…面白いこと言うね、控えめそうな見た目してるのに随分と強気なんだね」

歩夢「あなたこそ人間だというのに軍神の上位互換に勝とうなんて無謀にも程があるよ?」


565 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:12:26.37Kb3Xmjfp0 (41/101)

曜「私ね、一度戦ってみたかったんだよね。軍神————ううん、穂乃果ちゃんとは」

曜「軍神が戦場に立てばたちまち火の海が広がって血だまりで溢れかえるとまで言われたいわば兵器の存在。アンドロイドもそこまでいなかった初期型の時代じゃ穂乃果ちゃんの力は圧倒的すぎて将来はアンドロイドに地球を征服されてしまうのではないかと懸念された時もあったね」

歩夢「…それで?」

曜「うん、でも今じゃ時代も進化して穂乃果ちゃんに対抗出来るアンドロイド——そして人間も増えてるんだよ」


曜「——そしてその一人がこの私」


曜「穂乃果ちゃんとは前から面識があったけど敵ではなかった。それに穂乃果ちゃんの主である希ちゃんとは友好な関係にあったし、穂乃果ちゃんと戦うことはなくてもどこまで通用するのかずっと確かめたかったんだ。穂乃果ちゃんと戦わずして穂乃果ちゃんと同じかそれ以上のあなたと戦えるのならいい経験になりそうだよ!」カチャッ!

歩夢「…それが最後にならなきゃいいね」

曜「当然だよ、話すことは話したからさっさと始めようか」


曜「私今、すごくドキドキしてるから」


歩夢「変わった人なんだね」

曜「強い相手ほど燃えるタイプなんでね!」ダッ

歩夢「っ!行くよ!」

曜(私はライトマシンガン以外なら何でも使える——けど、今回は動きやすいようにサブマシンガンとハンドガンを選んだ。だから私の手持ちはMSMCとデザートイーグルだ)

曜(MSMCはサブマシンガンにしては発射レートが遅く、近距離の火力がそこまで高くない分発砲した際に肩があまり跳ね上がらないから照準がぐらぐらになることがなく他のサブマシンガンと比べてミッドレンジも対応できるバランスの取れた武器で私が初めて使ったサブマシンガンでもあるんだ)


566 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:16:07.68Kb3Xmjfp0 (42/101)



歩夢「MSMC…だいぶ古い銃を使うんだね!」ドドドド!


曜「そっちはだいぶ新しい銃を使うんだね!」ドドド!

曜(あの子の持ってる武器……見たことある。確か名前はAK-15だった気がする…穂乃果ちゃんの持ってる武器の二世代か三世代先の銃…だけど私が知ってるのはそれくらい…)

曜(銃に詳しい花丸ちゃんなら知ってるかもだけど、いずれにせよ私の知らない未知の銃だ)


歩夢「人間なのに銃弾を躱す…!?」

曜「あれ?そんなことも知らないの?」


曜「世代は新しいみたいだけど知識は全然昔のままだね!」


曜(私の靴には跳躍にブーストをかける機能があり、私のつけるゴーグルには弾道予測線が見える。この二つのおかげで銃弾だってアンドロイドのように躱せる)

曜(これは自画自賛だけど、私の発明は穂乃果ちゃんみたいな強すぎるアンドロイドに対抗する大きなキッカケになった思う。もしこれが無ければ人間というのはアンドロイド相手に真正面で戦うのは不可能だったからね)

曜(…でもね、例えアンドロイドと真正面でやりあえても私は真正面から戦う以外の心も忘れたわけじゃないよ。小さい時から色んな人と戦ってきたんだもん、例え最強と謳われた軍神の上を往く存在なら運動神経に関わるポテンシャルだけじゃなくて経験と作戦があってこそ勝利は掴めるものだ、だから私は負けるつもりはない)


曜(そう強く心に誓った私はまず初めに銃弾を避けながら相手に近づき接近戦を誘った)




567 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:17:33.92Kb3Xmjfp0 (43/101)



曜「せやぁ!」


曜(相手の首を貫くことも可能であろう刃渡り数センチのナイフで一閃————相手の瞳に充分な脅威を与えれば即座に後ろへ飛び退き発砲しだした。弾道予測線が私の胸を貫く頃には私もすぐに横へ短い跳躍を繰り返して回避行動をとる)

曜「うわぁ…」

曜(私の通った場所に軌跡を残す白い弾道を見ていると、飛んでくる弾は上下へ一寸のブレもなく射撃精度はまさに完璧の一言で、まだ分からないことだらけだけどこれに関して言えば確実に穂乃果ちゃんより上だった)


曜「でも、想定済みかな!」バンッバンッ!


曜(予め穂乃果ちゃんの上位互換なんていう情報があったんだからどんな行動をしても別に驚くつもりはない。だから私は銃弾を避けた後はシンプルな対応として腰にかけてたハンドガンを殺意を込めて二発発砲した)


568 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:18:31.50Kb3Xmjfp0 (44/101)



歩夢「はっ!よっと!」

曜「そうそう避けるよね!それも知ってる!」


曜(私の使うハンドガン—―いやマグナムであるデザートイーグルは装弾数六発で威力高めの手数が少ない分火力を高めた一発重視型)

曜(絵里さんや善子ちゃんが持つハンドガンは一発の威力は低いものの装弾数が多く手数で攻めるタイプに対して私のハンドガンは全く違うタイプだ)

曜(しかしそれ以前に、時と状況にもよるけどこの場合私のハンドガンは本来のハンドガンとしての用途が違う)


曜(一発が大きいんだからそれを確実に回避させて隙を作る)


曜(銃で人を殺すのに対して一発の大きさなんてほとんど関係無いけどアンドロイドは撃たれても普通に動けるものでね、このハンドガンの殺意は当たらなくても充分な効果を発揮するといえる)


曜(そして私は歩夢ちゃんに接近戦を仕掛けた)




569 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:22:27.52Kb3Xmjfp0 (45/101)



曜「穂乃果ちゃんの上位互換の力、みせてもらうよ!」

歩夢「望むところ!」


曜(銃弾を避けた直後の相手に対し走り込みで距離を詰めハンドガンのグリップ部分を使い首目掛けて打撃を放った)


歩夢「首は欲張りすぎだねっ!」

曜「そうだねっ!でも穂乃果ちゃんみたいな相手だったら長期戦にはしたくないんでね!」


曜(アンドロイドは機械、それは言わずもほぼ全てのステータスが人間より上だ。だから学習能力や対応力も私以上で穂乃果ちゃんほどの戦闘力を有した相手と長期戦をすればほぼ詰みに近い状態になる、なら私の持ってるカードを今すぐにでも使って短期決着を目指すのみだよ)

曜(そう思った私は、ハンドガンでの打撃の後に右フックをするけどもちろんそれも飛び退き回避される。だけどそれでも攻撃はやめずに、右フックの勢いを消さず体を捻り相手に背を向けながら相手方向に跳躍——そして後ろ回し蹴りを左足で行った後に右足で蹴り上げと、鋭い蹴り二連撃を繰り出した)


歩夢「くっ…」


曜(私の蹴りの一発目を腕でガードした時点で相手の拘束は出来てた、だから二発目は相手の持つアサルトライフル目掛けて蹴りを入れた)



570 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:23:03.22Kb3Xmjfp0 (46/101)



歩夢「あっ…!」


曜(そうして私の二発目の蹴りが当たり、相手の持つアサルトライフルが手元を離れて宙を舞えば次に起こる運命はもはや決まってた)


曜「チェックメイト、さよならだね」



バァンッ!



歩夢「ぁ…!!」


曜「……ふう、呆気ないね」

曜(銃を弾かれて怯む相手の脳天に一発ハンドガンの銃弾を撃ち込むだけ————それだけ相手は死んだ)

曜(穂乃果ちゃんの上位互換とはいえど経験に勝るステータスはない、次世代モデルと言われるくらい最近出来たアンドロイドなら戦闘経験も少ないし、銃を弾かれただけで回避行動にも移れないのはまだ稚拙なメンタルを持っている証拠で、まだまだ未熟としか言いようがない。小さい頃から色んなのと戦ってきた私に性能だけで勝とうなんて思わないでほしいね)

曜「………」

曜(固いコンクリートの上に染み込む赤色は久々の感覚だった。何かを…生き物を殺す感覚————これほどまでに爽快で、不快で、中毒的で、忌々しい感覚は早々ない)


曜(アンドロイド隔離都市東京では今日も人が死ぬ)


曜(その犠牲者を私は作り上げたんだ。この手で。この銃弾で)


571 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:24:26.23Kb3Xmjfp0 (47/101)

曜「…まぁいいや、みんなと合流しないと」

曜(戦いは終わった、なら私のするべきことは仲間の誰かと合流すること。だからすぐさま止めた足を動かした)


バンッ!


曜「っ!?」シュッ


曜(…そう、“誰か”の放った銃弾のせいでね)

曜「っぶな…!」


歩夢「これも効きないんだね」


曜「な、なんで!?今頭を撃ったよね!?」

歩夢「私は新型だよ?未踏の地っていうのは踏むためにあるんだよ」

曜「くっ、厄介だね…新型ってやつは」

曜(どういう仕組みなんだろう…頭を撃っても死なない……何が起こってるんだろう…)


572 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:25:27.01Kb3Xmjfp0 (48/101)



歩夢「うんそうだよ!だから私が死ぬまでちゃんと付き合ってね!」カチャッ!


曜(空気を切り裂く銃弾は絶望への一手だった。頭を撃っても死なないとなると有効な対処法が見つからない)


曜「仕方ないね!でもすぐ片付けるよ!」シュッ


曜(…とは言ったけど、アンドロイド相手にがむしゃらに撃っても当たるはずがなく、だからといって弱点が見当たらないんじゃ撃つ意味もない。ほんの一瞬だけこいつは死なないのでは?と考えたけどそんな馬鹿な話あるはずがない)

曜(ここは一旦引くか…いやでも逃がしてくれるかな……思い付く作戦は懸念と不安が瞬時にかき消してくる)

曜「…いや」

曜(やるしかないか…未知との戦闘なんて今まで何回もあった、何も初めてではないんだから臆する必要なんてないよね)


曜「…そうだね!そうこなくっちゃ!」

曜「やろうよ!バトル!」


曜「殺しあいをさ!!」ドドド!


曜(サブマシンガンで数発撃って回避をさせてから相手に近付いた。相手は回避と同時にこちらへ発砲してきたけど射線が見える私には足止めにもならない)


573 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:27:16.67Kb3Xmjfp0 (49/101)



歩夢「またCQCって相当近接戦闘が好きなんだね!」

曜「銃で戦うよりよっぽと安定性があるからね!」


曜(お互いが同じ状態――――いわば、射線が見えて並外れた運動神経を有すアンドロイド同士の戦いを仮定した時に一番有効なのは近接攻撃だ)

曜(私はアンドロイドではないけど、恵まれた運動神経と靴に施されているブーストはアンドロイドの身体能力に対して引けを取らないと自負してる、だから結局ここでは近接攻撃が要になるはずだ)

曜(幸いにも相手は経験が浅いせいなのか自分自身の有効手段に気付いていない、なら悟られる前に一気に方をつけるだけ)


曜「ふんっ!」


曜(颯爽と相手の顔目掛けて右ストレートを打ちこめば相手は軽く顔を横に動かし回避してみせた、そうしてやってくる相手は裏拳を使い大きく半円を描きながら私の顔目掛けて打撃をいれてきたので私はしゃがんで回避し、そのまま足払いをし相手を宙に浮かせた)


曜「これでどう!」バンッ!


曜(宙に浮いた相手の心臓部——胸に向かってハンドガンで発砲し、見事命中。貫いた場所からは血が噴出してて死亡確認も出来た)


曜(……はずだった)




574 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:28:30.44Kb3Xmjfp0 (50/101)



歩夢「それで勝ったつもり?」


曜「なんでっ!?」

曜(死に際に絶望を悟ったような無表情な顔から一変、薄気味悪い笑いを浮かべて喋った相手。笑うや否や両手から着地し次の一瞬でひざをつき四つん這いのような状態から、膝を上げ立ちながら後ろ回転をし、先私の方へ来る左足で後ろ回りにローキックを繰り出してきた)


曜「ぎっ…」


曜(もちろん一発銃弾を撃ち込んだ直後の出来事だったから、私にそれを回避する術はなかった。結果私はさっきの相手と同じよう宙に浮いた)


歩夢「さっきのお返しだよっ!」


曜(そう言って飛んでくる飛び膝蹴りは私のお腹にヒット。ここで顔を狙うのではなくてお腹を狙うのが何とも厭らしいかった)


曜「けっ…かはっ……ああぁあああっ!!」

歩夢「痛いよね、私も分かるよ?でもあなたと私じゃ決定的な違いがある」

曜「ああああぁ…!うああああああっ!!」

歩夢「そりゃあアンドロイドの一撃だもん、人間の一撃なんかより数倍痛いに決まってるよね」


575 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:29:04.71Kb3Xmjfp0 (51/101)

曜「うっ…おえええぇ……」

歩夢「ぷっふふふっ…汚いなぁ」

曜「ああああぁ…ッ!」

曜(数メートル吹っ飛ばされた私に反撃する力はなかった)

曜(悶絶して、のたうち回って、苦しみの絶頂に達して……今まで味わったこともない激痛は口から様々なモノを噴射させた)


曜「あぁあああっ…ッ…!!」

歩夢「何?そろそろ痛いのが辛いから死にたい?」


曜(血、吐瀉物、悲痛な叫び、空気、もう私の口は何が何だか分からなくなってた)

曜「あああああああ…あぁ…あああ……」

曜(……ダメだ、頭がぼーっとしてきた。視界がぼやけてきて、不意にたくさんの白を描く夜空へ手を伸ばすと次の瞬間には力が入らなくなって手がそのまま地面に力なく落ちてきて、ついに私も死ぬんだ——なんて自覚が出てきた)


576 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:29:51.63Kb3Xmjfp0 (52/101)



歩夢「……潮時だね、ありがとう。誰だか分からないけどあなたは強かったよ、きっと私が最新型じゃなければ負けてたね」


歩夢「それじゃあね」カチャッ


曜「……ぁ」

曜(死を悟って目を瞑った、さっきの攻撃では咄嗟に取り出せなかったハンドガンの銃口を私の頭に向けて終わりへのトリガーを引こうとしてた)


曜(……そう、引こうとしてた)




577 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:30:19.77Kb3Xmjfp0 (53/101)



曜「…っ!!」カチャッ!

歩夢「っ!あっ!?」


曜「はあああああっ!」ダッ

曜(一瞬は諦めた、けどまだ諦めきれない。そんな思いは私の手を動かした)


タッタッタッタッ


曜「はぁはぁはぁ…!」

曜(私の銃にはレーザーサイトという銃口が向いてる先を人には無害な光のレーザーによって可視化するアタッチメントがついてる。これをつけることで狙っている先が分かり相対的な射撃の精度上昇が見込める)

曜(しかしそんなサポートに徹したようなアタッチメントだけどこのアタッチメント、強力な光を使ってレーザーを発してるわけで、それを人の目に向ければスタングレネードにも負けない強力な閃光になる)

曜(それを知ってた私は悪あがきにハンドガンについたレーザーサイトの光を相手の目に向けた)


曜「よしっ…なんとか…ッ!」


曜(そうして結果は大成功、最後の力とも言っていいその力を振り絞って全力で逃げた。もちろんは相手は追ってくるだろう)


578 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:31:45.68Kb3Xmjfp0 (54/101)



ドカーン!


曜(……今の爆発で傷を負っていなければだけどね)

曜(希ちゃんみたいなことをしちゃったよ、やっぱりグレネードって不意打ちに使う道具なんだね、よく分かった)


曜(相手が怯んだその隙にグレネードを転がして私は逃げる)


曜(経験と知識があってよかった、その時は心底そう思った)


タッタッタッタッ


曜「はぁはぁ…!まだっ…止まれない…!」

曜(無我夢中で走った、生き延びる為————この大きな戦争に勝つ為に)

曜「んうう…!んぇ…」

曜(死んでしまうほどの激痛も今は我慢するしかない…逃げ切ったことが今は奇跡なんだから一切合切死んだって仕方ない。仕方ないから今は痛みを堪えて逃げるだけ)


曜(そうして私が向かった先は————————)




579 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:37:22.03Kb3Xmjfp0 (55/101)

~同時刻


ドカーン!


穂乃果「くっ…」


せつ菜「右から来ますよ穂乃果さん!」


穂乃果「分かってる!」シュッ


「行って姉様!」

「もちろんです!」ドドドドッ!


穂乃果「きゃっ…!」

せつ菜「スモーク!」ポイッ!

穂乃果「ありがとうせつ菜ちゃん!」

せつ菜「一度合流しましょう!」

穂乃果「うんっ!」

穂乃果(現在私たちは敵本拠地Y.O.L.O直前ですらない暗い森の中だった)

穂乃果(作戦通り私たちはY.O.L.Oを前から押していくつもりだった、だけどそんなところにいく暇もなく敵は現れた)



580 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:38:21.90Kb3Xmjfp0 (56/101)



穂乃果「あれがY.O.L.Oを防衛するアンドロイドの二人か…」


穂乃果(向かう途中それは突然戦いの幕が切って落とされる。不意の銃撃をギリギリで躱して次に飛んでくるのはスタングレネードで、それをせつ菜ちゃんが狙撃すれば相手と私たちの間で眩い光が発生し、戦いはたちまち目まぐるしいものへと変化を遂げた)


スタスタスタ ピタッ


穂乃果「……どうする?」

せつ菜「まさかここまでやれるアンドロイドがいるなんて驚きですよ…」

穂乃果「…そうだね」

穂乃果(せつ菜ちゃんが投げたスモークグレネードにより一時的に相手と私たちの間に壁が出来たから、その間にお互いゆっくりと背中を合わせ僅かな時間で次の行動を話し合う。フィールドが森だから視界が悪く時折足元がいれくんでいるところもある、だからこの戦いでは如何に私たちのアドリブ力があるかが試される)


581 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:39:02.38Kb3Xmjfp0 (57/101)

せつ菜「…相手のコンビネーションプレイはもはや私たち以上です、あれは絶対に機械的に意思疎通をしてていわば知覚共有をしてるとしか考えられません……」

穂乃果「…ならどうする?一旦引く?それとも何か攻略法を見つけに戦う?」

せつ菜「……分かりません」

穂乃果「………」

穂乃果(相手の人数は二人、こちらの人数も二人————その中で重要視されるのは一人がアクションを起こした後の相方のカバーだよ。どれだけ息の合った戦いが出来るか、それだけで何もかもが違う)


穂乃果(私とせつ菜ちゃんはずっと前から二人で戦ってきた)


穂乃果(それはつまりタッグバトルのプロ、阿吽の呼吸でもありその言葉要らずに通じる私たちだからこそ最強と謳われてきた)


582 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:41:18.03Kb3Xmjfp0 (58/101)

穂乃果「…なんて言ったっけ、あの人たち」


せつ菜「理亞さんと聖良さんですよ」


穂乃果「……姉妹なんだよね」

せつ菜「設定上はそうらしいですね」

穂乃果「………」

穂乃果(…それなのに、あの姉妹は私たちをも驚かせるコンビネーションプレイを見せてきた。それは今までにないくらいの強敵で、対アンドロイド特殊部隊を壊滅に近づけられるほどの強さだと思う)


聖良「そこにいるのは分かってますよ」

理亞「逃げてもいいけど、それじゃあ軍神とトリックスターの名が廃ると思うんだけど?」


穂乃果「…お姉ちゃんの方を狙おう。妹の方は持ってる武器が厄介だから妹を追うよりお姉ちゃんを狙った方が戦いやすいはずだよ」

せつ菜「分かりました、カバーをしますけど何が起こるか分からないので気を付けてください」

穂乃果「もちろんだよ」



583 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:42:38.85Kb3Xmjfp0 (59/101)

穂乃果「…じゃあ行こうか」

せつ菜「はいっ!」


ダッ!


穂乃果(二人同時にそれぞれ別方向へ大きく放物線を描き相手を挟むように走った、視界が悪い上に木という壁がある為に私たちが向かっているということを把握していてもどこからくるのかはわからないはずだよ、それに二人相手だっていうならこっちも二人で制す他ない)


せつ菜「はっ!」穂乃果「はっ!」


穂乃果(相手もさっきの私たちと同じように二人固まってた為にせつ菜ちゃんと同じタイミングで跳躍し二人を挟んで発砲した)


聖良「そのくらいの攻撃なら既に予想済みです」


穂乃果(だけど流石にこれじゃあ死にはしないよね。相手はお姉ちゃんが前方向へ走り、妹が後ろ方向へ走り出した)

穂乃果(もちろんそうなれば私もせつ菜ちゃんもお姉ちゃんである聖良って人を狙う。けど、妹のカバーの早さは尋常じゃない、自分が狙われてないと分かった途端私へ発砲しながら全力疾走で私へ近づいてきた)



584 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:44:01.63Kb3Xmjfp0 (60/101)



理亞「姉様!」

聖良「分かってますよ!」


穂乃果「何っ!?」


穂乃果(妹の方の持ってる武器はとにかく軽く、それ故に動きが俊敏だった。だから私が姉の方に意識を向け発砲してる間に妹は私のすぐそばまで来てて、手に持つサブマシンガンを鈍器のように扱い私に向かって殴ってきたのでそれを後方へと跳躍し回避すると感じる死の感覚)

穂乃果(射線が私の頭を貫いてる、そうと分かった次の展開はもう目に見えてる)


穂乃果「またッ…!」


ドドドドッ!


せつ菜「穂乃果さんっ!?」

穂乃果「っあ…!まだッ!」

穂乃果(咄嗟に空中での体をねじって頭部への命中は避けた、だけどそれでも肩へと命中し後の祭り感は否めない)


585 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:44:58.61Kb3Xmjfp0 (61/101)

穂乃果「いだぃ…!!」


理亞「ここで死ねば楽になるよ軍神!」ババババッ!


穂乃果「それは絶対にいやあっ!」シュツ

穂乃果(痛みに耐えながら着地しても私へ歯向かう射線は消えない)


せつ菜「跳躍で回避しちゃダメです穂乃果さん!」


穂乃果「!」

穂乃果(不意にせつ菜ちゃんの叫びが私に耳に届いた。確かにそうかもしれない、一つの行動で早く長い距離を移動できる跳躍は回避する方向が一定な上にした後の行動がだいぶ限られる。さっきはそれを利用されて私はダメージを受けた)

穂乃果(なら走って逃げるだけ、幸いにもここは木が多いからそんなに早く走らなくても木を使って銃弾を回避出来る)


586 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:46:33.78Kb3Xmjfp0 (62/101)



ドドドド!


穂乃果「はっ!」シュッ


聖良「ちっ…木が多い場所である森をフィールドにしたのは間違いだったかもしれませんね。後少しのところで隠れられるともどかしいです」

理亞「姉様、そんなことはないと思うよ」ポイッ!


穂乃果「! グレネード!」


穂乃果(木で隠れられるのはいい、けどその後に展開を見据えてみると木に隠れるというのは悪手だ)


理亞「相手が隠れるというのなら、炙り出せばいいだけの話」


穂乃果(木なんていう縦に伸びただけのオブジェクトは投げもの一つで簡単に移動を強いることは出来る。それじゃあ隠れる意味がまるでない)

穂乃果(グレネードが飛んできたのを察知した私は木から飛び出すと同時に肩を押さえながら妹に向かって発砲した、肩を射貫かれたせいで狙いはでだらめではあるけど発砲はまだ出来る。だから威嚇射撃程度にトリガーを引き続けた)


587 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:47:23.93Kb3Xmjfp0 (63/101)



せつ菜「手伝いますっ!」パサパサパサッ


穂乃果「うんっ!」

穂乃果(私が木から飛び出し発砲したと同時に相手の後ろに回ってたせつ菜ちゃんも発砲。ちょっと唐突だったけど綺麗なクロスファイアが組まれもちろん相手も回避に移るけどこれで終わる私たちじゃない)


穂乃果「カバーはさせないよっ!」バンッ!


聖良「なっ!?」

穂乃果(妹に向かってはアサルトライフルで、お姉ちゃんに向かっては腰にかけてあったハンドガンで応戦する。アサルトライフルを持つ片方の肩はあまり使い物にならないけど、それでも使えないわけじゃない。だからここは無理矢理にでも発砲して二つの武器を同時に発砲する荒業で戦況をいい方向へ加速させた)

理亞「うわっ!?」

穂乃果(相手二人が同じ方向に逃げたもので妹に撃った銃弾は下手すりゃお姉ちゃんにも当たる。相手から見て射線はどんな感じに見えてるのだろう、想像しただけでも怖いものだよ)


588 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:48:40.75Kb3Xmjfp0 (64/101)



理亞「ぎっ…いったっ……!!」

聖良「大丈夫ですか!?」


理亞「大丈夫…まだ…まだ大丈夫…!」


穂乃果「後少しだったのに…!」

穂乃果(相手の首元を少し抉った。後一センチでも中心に近かったら相手を殺せてた、でもここで悔しがってちゃいけない。弾はまだ10発残ってる、リロードをする前に仕留めたい)


聖良「こちらも避けてるだけじゃないですよ!」ドドドド!


穂乃果「ちぃ…っ!」タッ

穂乃果(ここで攻撃に転じるのが手練れの証なのかな。妹は逃げに徹して姉は私に向かって発砲してきた)

穂乃果(もちろんそれを走り込みで回避すれば今度は別の方向から飛んでくる銃弾、せつ菜ちゃんも弾を使い切った今はカバーもないからここは自分でなんとかするしかない)


589 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:50:32.68Kb3Xmjfp0 (65/101)



タッタッタッタッ


理亞「旧型のクセに随分と性能がいいんだね!」


穂乃果「そっちこそ新型のクセに旧型と対になってしまうくらい性能が悪いんだね!」


聖良「安い挑発に乗るつもりはありませんよ」ドドドド!

穂乃果(私が走れば妹もお姉ちゃんも走ってくる。風を切る音が三つ…いや四つあって二人の銃弾を躱していればようやくカバーが回ってきた)

穂乃果「いち…にい…さん…」


穂乃果「今っ!」


せつ菜「せいっ!」ポイッ!


聖良「何っ!」

理亞「ピン抜きグレネード…!?」


穂乃果「ハァッ!」ドドドドッ!

穂乃果(せつ菜ちゃんはさっき弾切れを起こした時からリロードなんてするつもりはなかった、私が走り出した瞬間グレネードを二つ用意して二人を追いかけた。そうして私が手を下げてさりげなく三本指を立ててカウントダウンをした)

穂乃果(それに気付いたせつ菜ちゃんはカウントダウンを開始した直後にグレネードのピンを抜いた。結果せつ菜ちゃんがグレネードを投げると同時に私が二人に向かって発砲する…完璧なコンビネーションプレイだよね)


穂乃果(前門の私、後門のせつ菜ちゃんだよ)




590 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:54:44.34Kb3Xmjfp0 (66/101)

穂乃果(前門の私、後門のせつ菜ちゃんだよ)


ドカーン!


せつ菜「……終わった」

穂乃果「………」

穂乃果(私の目の前で大きな爆発が広がった。木の葉を吹き飛ばし木々を燃やし地形を崩すそんな爆発が大きな赤と共に弾けた)


シュッ


聖良「残念ですね」


穂乃果「っ!?」


理亞「終わったのはあなただよ」


ザシュッ!


穂乃果(何が起こったんだろう、爆発の赤からものすごいスピードで飛び出してきた二人——そして次の瞬間に感じるバカみたいな痛み)

穂乃果(力が抜けていくのを感じる。視界が歪んでいくのを感じる。手元から銃が放れていくのを感じる——そう色々なモノを感じた上で、不意に私の体は急激な退廃を迎え始めた)


591 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:55:50.63Kb3Xmjfp0 (67/101)



穂乃果「ぁ……」


バタッ


せつ菜「穂乃果さんっ!?」ダッ

穂乃果「………」

せつ菜(……まだ生きてる…!)

せつ菜「…でも……ッ!」


ドドドドッ!


せつ菜「!」シュッ


聖良「悲しむ時間を作ってあげるほど私たちは優しくありませんよ」

理亞「あなたも今ここで死ぬのだから」


せつ菜「くっ……」

せつ菜(穂乃果さんの脈を確認したけどほんの微かに動いている、けど両の肩をナイフで斬られた穂乃果さんの寿命はもうない。すぐにでも手当てをして延命しないと…でもこんな状況じゃ助けられない…!!)


592 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:56:48.36Kb3Xmjfp0 (68/101)



タッタッタッタッ


聖良「やはりあなた方は所詮旧型ですね、カウントダウンのやり方がアナログすぎます」

理亞「指で合図は流石に分かりやすすぎるね」

聖良「ええ、おかげで爆風を利用して軍神を仕留めることが出来ました」

理亞「……正直ちょっと痛かったけど」

聖良「痛かったですね」


せつ菜「ふざけないでください…!」


理亞「悔やむなら旧型として生まれた自分を恨むことだね、さっきの行動は新型であったならきっとこうはならなかったから」

せつ菜(近づく死の音————遠ざかる穂乃果さん。このもどかしさは今までに感じたことのない感情だった)

せつ菜(私の相棒…ううん家族が今死のうとしてるのに私は逃げることしかできないなんてそんな最悪の一言以外何も無かった)

せつ菜「どうすればっ…」

せつ菜(でも、今ここで二人に挑んでも勝てる未来が見えない。新型旧型以前に数で劣る私に勝てる道があるなら誰か教えてくださいよ…!)


593 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 19:59:10.07Kb3Xmjfp0 (69/101)



ザーザーザー……


せつ菜「!」

せつ菜(そんな時私のつけてたカチューシャ型の通信機に一つの応答が入った)


穂乃果『せつ菜…ちゃ……』


せつ菜「穂乃果さん!?」

穂乃果『わた…し…の…こと、は…もう……いい』

穂乃果『だから……にげ……てぇ…』

せつ菜「いやです!絶対に逃げません!穂乃果さんと一緒に帰ります!」


理亜「帰らせないけどね」ドドド!


せつ菜「邪魔しないでください!」パサパサパサッ

穂乃果『もう……ダ、め…し、べる………の……も、つ、らいぃ…』

せつ菜「そんな!ダメです!死なないでください!」

せつ菜(穂乃果さんの声は今まで聞いたことないモノだった。精気が感じられない覇気ゼロの死の声だった)


594 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:00:15.12Kb3Xmjfp0 (70/101)



曜『はぁ…はぁ…はぁ…お話中悪いけど穂乃果ちゃん今どこ?』


せつ菜「!」

穂乃果『も…り……』

曜『分かったよ、GPSを頼りにして私が助けにいくからせつ菜ちゃんは逃げて』

せつ菜「ま————」

曜『ダメ、声にすると相手に情報がばれる。一度撤退しよう、緊急事態が発生して何も作戦が実行出来てない』

せつ菜「………」

曜『…私も正直今立ってるのが辛いけど、穂乃果ちゃんの為にいく。だからせつ菜ちゃんも全力でその相手から撒いて』

せつ菜「……分かりました」

曜『じゃあね、そこまで冷静になると怪しまれるから演技しといた方がいいよ』

曜『穂乃果ちゃんはもうちょっと耐えてて』

穂乃果『ぅ……ん…』



595 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:02:26.44Kb3Xmjfp0 (71/101)



ザーザーザー…


せつ菜「………」

せつ菜(逃げる。私のやるべきことは決まった)


タッタッタッタッ


せつ菜(…ここは希さんから教わった秘儀を使うしかないようですね)

せつ菜「っ!」カチャッ


理亜「!」ピタッ

聖良「やる気ですか」カチャッ


せつ菜「はっ!」

せつ菜(ずっと走ってた私だけど突然振り向き、相手に向かって片手で銃を持ち銃口を向けた——けど、戦うつもりは更々ない)


596 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:03:34.95Kb3Xmjfp0 (72/101)



カランカランッ


聖良「っ!」

理亞「グレネード!?どこに持ってた!?」


せつ菜(この戦い、ましてや作戦実行の前の準備の時から私の着ている衣装の裏に隠してたグレネード三種。それを背中につけることで不意に、そしてすぐに使えるようにしておいたのです)

せつ菜(私が相手に銃口を向けることで注目は銃口と私の顔に行きます。となるともう片方……つまり背中に置いてた手には目も行きません。だから相手は気付けなかった)


せつ菜(私の————希さんの秘儀が)


ドカーン!




597 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:04:13.15Kb3Xmjfp0 (73/101)



タッタッタッタッ


せつ菜「………」

せつ菜(今回はさっきとは違って成功した)

せつ菜(相手が追ってくる様子はなく、足音も聞こえないし爆発の中から飛び出してくることもなかった)

せつ菜(やはり希さんはすごい方です、今着てるこの衣装のような服だって今では私のアイデンティティとなってますが元々はグレネードとかを隠すカモフラージュとして希さんから提案されたものでした)


せつ菜(才能には努力ではなく知恵で勝つしかない)


せつ菜(それが希さんの教えでした)

せつ菜(当時はよく分かりませんでしたけど、今の状況なら痛いほど分かります)

せつ菜(…きっとスポーツなら知恵以外にもあるんでしょうけど、銃社会においては違うんですよね)

せつ菜(深く理解したつもりでいる私はその場から颯爽と逃げ出した)


598 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:05:45.28Kb3Xmjfp0 (74/101)

~その後、別荘付近

曜「あ、来た来た」

ことり「お待たせ…」

せつ菜「ふー……」

曜「二人ともお疲れ様…」

ことり「助かったよせつ菜ちゃん、赤髪の子をおんぶしてくれて」

せつ菜「いえいえ、なんてことないです」


ことようせつ「………」


せつ菜「…そういえば善子さんと果南さんはどちらへ?」

ことり「…それが分からないんだ」

せつ菜「分からない?」

曜「連絡がつかなくてね、撤退しようってことになって絵里さんだけ見つけたけどその二人が行方不明で…」

せつ菜「その見つけた絵里さんも倒れていた…と」

ことり「…うん、絵里ちゃんを見つけた時にこの赤髪の子——ルビィちゃんっていうらしいんだけどこの子が寄り添ってたんだ」


599 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:07:03.68Kb3Xmjfp0 (75/101)

曜「え?ルビィちゃんってこの前話してた子?」

ことり「うん、そうみたい。それであの時の私はものすごく焦ってて…この子と戦ったんだ」

曜「戦った!?この子病み上がりだよ!?」

ことり「そう…なんだけど、正直…後五秒戦いを続けてたら私負けてたと思う…」

せつ菜「…それはどういうことですか?」

ことり「この子…ものすごい強いんだよ、あり得ない反応速度と身体能力、そして射撃技術——特に偏差撃ちに関して相当熟知してるんじゃないかな…」

曜「偏差撃ちって…というかルビィちゃんって戦えるの?」

ことり「…戦えるね」


600 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:07:54.89Kb3Xmjfp0 (76/101)

ことり「…ただね、薬を使ってるらしいんだ」

曜「薬?」

ことり「病み上がりの体じゃまともに動かせないからって薬を利用していつも通りを保ってたらしい、だからその薬の副作用で…」

せつ菜「……倒れたと」

ことり「そうそう」

せつ菜「こんなか弱さそうな子が薬に手を染めているんですね……」

ことり「…東京の悪しき姿の体現だね」

曜「……ことりちゃんをも葬れる相手ということは絵里さんはルビィちゃんにやられたの?」

ことり「…そんなことはないと思う、だって最初見た時は絵里ちゃんの肩に手を置いて寄り添ってたんだよ?」

曜「んー……」


せつ菜「…状況は最悪ですね」


曜「…そうだね、善子ちゃんと果南ちゃんは行方不明だし、絵里さんと穂乃果ちゃんは致命傷だし、ルビィちゃんに関してもよく分からないし」

ことり「……一旦帰ろうか」

せつ菜「…そうですね」


601 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:09:50.66Kb3Xmjfp0 (77/101)

~別荘

ガチャッ

曜「ただいま~…」

真姫「おかえりな……さい?」

ことり「…あはは、ごめん。負けちゃった」

真姫「ま、負けた…?なんでよ…?」

曜「…単純に相手が強かったのと、色々事故があったんだ。それで負けた」

スタスタスタ

花丸「…でも、よかった。みんな無事で」

せつ菜「花丸さん…ごめんなさい…」

花丸「…問題ないずら」


602 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:10:34.90Kb3Xmjfp0 (78/101)

真姫「ぶ、無事って三人が抱えてるその三人は生きてるの…?」

曜「首の皮が一枚繋がってるくらいだから早く手当しないと多分まずいね…」

真姫「じゃ、じゃあ早く手当しないと!」

ことり「手当は私に任せて」

花丸「マルも手伝うずら!」

タッタッタッタッ

せつ菜「…ごめんなさい、あなたの大好きな人をこんなにさせちゃって」

真姫「うぇぇええええ!?だ、大好きってそんな!」

真姫「……でも、仕方ないわ。絵里も最強じゃないもの、むしろ絵里を助けてくれてありがとう」

せつ菜「そう言ってもらえると私も助かります」


603 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:11:33.73Kb3Xmjfp0 (79/101)

曜「…でもまさかこんなにボロボロになるなんてね」

真姫「…そんなに強かったの?」

曜「私は穂乃果ちゃんの次世代機と呼ばれるアンドロイドと戦ったよ」

せつ菜「…!穂乃果さんの次世代機と戦ったんですか!?」

曜「うん、でもね技量は明らかに私の方が上だった」

真姫「……でも負けたんでしょ?」

曜「うん…なんかおかしいんだ」

せつ菜「おかしい?」

曜「確かに私はあのアンドロイドの頭と胸を銃弾で貫いたはずなのに生きてるんだ。普通に、何事もなく…」

真姫「気のせいとかじゃなくて?」

曜「いや、それはない、だってちゃんと血も出てた。そして血も出てたのにも関わらず普通に動いてた」


歩夢『私は新型だよ?未踏の地っていうのは踏むためにあるんだよ』


曜「……新型の機能なのかな」



604 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:13:07.77Kb3Xmjfp0 (80/101)

せつ菜「そ、そんなおかしいです!だってそれじゃあ…だってそれじゃあ人間の域を超えてるじゃないですか!」


せつ菜「人間じゃないですよ!!!」


真姫「…確かに」

せつ菜「頭を撃たれても記憶を失わない、胸を撃たれても心が欠如しない。それってもはやアンドロイドでもないですよ……」

曜「……生まれ変わろうとしてるのかも」

真姫「生まれ変わる?」

曜「アンドロイドという概念が生まれ変わろうとしてるのかもしれない。だってアンドロイドの母である鞠莉ちゃんは今現在ではアンドロイドの制作に関与していない、だから鞠莉ちゃんの意図してないアンドロイドが生まれても何も不思議じゃないんだよ」

せつ菜「…それじゃあ私たちは一体何なんですか」

曜「…分からない、けど新型の命がどこにあるかが分からない限り旧型に勝ち目はないね」

せつ菜「………」


605 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:13:42.64Kb3Xmjfp0 (81/101)

真姫「ならその情報系は私に任せて」

曜「…それは頼もしいけどアンドロイドの情報っていうのはかなり固くて漏洩もほとんどしない、つまり情報の発信源がないんだ。それなのにどう探すの?」

真姫「……それは今の段階じゃ何も言えない、けど絶対に見つけてみせるわ」

せつ菜「…頑張ってください」

真姫「ええ」

真姫「……そういえば善子と果南は?」

曜「…行方不明」

真姫「はぁ!?」

曜「応答がないんだ、試しにかけてみてよ」


ツー………


真姫「……ホントだ、なにこれ」

曜「それが分からないんだよ」

真姫「……状況は思ったより深刻そうね」



606 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:15:46.99Kb3Xmjfp0 (82/101)

せつ菜「現在戦えるのが私とことりさんと曜さんしかいません。絵里さんと穂乃果さんは当分戦えませんし善子さんと果南さんは今だ行方知らずの状態…これではY.O.L.Oに攻めるどころか対アンドロイド特殊部隊にも勝てません」

曜「……この後私たちはどうするべきなんだろうね、ちょっと詰まりすぎて私も分からないや…」

せつ菜「…そこまで絶望を感じているのですか?」

曜「当たり前だよ…だって心臓を撃っても頭を撃っても死なない生き物なんて初めてなんだからさ…それに絵里さんも穂乃果ちゃんもやられちゃったっていうのに」

せつ菜「……正直言うと、私も酷く絶望してます」

せつ菜「私たちも戦いました、Y.O.L.Oを守ってると言われてるアンドロイド二人と」

曜「穂乃果ちゃんがあんなになる相手なんだから相当強かったんだろうね」

せつ菜「ええ、おそらく最新型故に秘匿通信のようなものが使えるようで通信機を使わずとも心の中の声だけでやりとりができるようです」

真姫「なにそれ…ズルじゃない…」

せつ菜「ええ、二対二というコンビネーションプレイが大事な対面で声も発することなくコンビネーションプレイが出来るその秘匿通信はもはやチートです」

せつ菜「……もし次戦うというのならこれをどうにかしないといけませんね」


607 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:18:38.09Kb3Xmjfp0 (83/101)

真姫「EMPグレネードはどうなのよ?曜は作れるんでしょ?」

曜「もちろんそれは有効な手段だけどせつ菜ちゃんが使うのは難しいかな、何故ならせつ菜ちゃんもアンドロイドだから自分にも食らうよ。EMPグレネードは他のグレネードと違って爆発しても痛みを受けるようなものは一切飛ばなくて、爆発して飛ぶモノといったら電子機器を狂わせる特殊な粒子かな」

曜「人間にとってはただの風でしかないけど、アンドロイドにとっちゃグレネード以上の危険物だから人間以外は扱えないものだね」

曜「まぁだからといって人間がぽいぽい使ってアンドロイドを簡単に無力化出来るようなら最初からそうしてるよって話だけどね」

真姫「どういうことよ?」

曜「今さっき言ったけどEMPグレネードはグレネードみたいに爆発でダメージを与えるものではなくて小さな粒子を大量に体内へ流し込んで攻撃するバイオテクノロジーにも関与してる特殊なグレネード、言葉だけでこのEMPグレネードを推し量るなら間違いなく最強だけど、EMPグレネードは案外不便なところもあるんだよ」

せつ菜「不便なところ…ですか、想像もつきませんね」


608 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:19:43.99Kb3Xmjfp0 (84/101)

曜「まぁまぁ聞いてよ、粒子っていうのはそこまで早く動くものじゃなくて空気の流れによって移動するものだから基本的に粒子は鈍足なんだ」

せつ菜「ふむ…」

曜「まぁだからね?EMPグレネードが爆発した際に出てくる風っていうのは粒子を高速で飛ばす為の流れを作る為で、その爆風範囲外にいられると簡単に避けることが出来ちゃうんだ。つまり外なんかの広いフィールドだとEMPグレネードもそこまで脅威にはならないってことだよ」

真姫「む、難しいのね…」

曜「うん、だから結局のところグレネードと同じで工夫した使い方をしないと意味がないんだよね」

せつ菜「…まぁ仕方ありませんね、曜さんも今言っていましたが使って解決するなら最初から使ってますよ」

真姫「………」

曜「やっぱり戦いって、奥が深いなぁ」


曜「希望という光も、絶望という闇も感じれるのは一瞬だけなんだから…」




609 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:22:07.35Kb3Xmjfp0 (85/101)

~???

鞠莉「…新型アンドロイド、なんて不快な響きなのかしら」

鞠莉「まさか堂々と人間の域から外れたアンドロイドを作るなんて……」

鞠莉「私の知らないアンドロイド…もはや要らない子ね」


果林「…急にどうしたの?私を呼び出して」


鞠莉「…Y.O.L.Oの防衛に対アンドロイド特殊部隊は参加しないわ」

果林「どうして?絢瀬絵里たちを殺せるチャンスでしょ?」

鞠莉「私は新型アンドロイドの存在が気に入らない、私はあくまでアンドロイドを人間に模して作ったのよ。それなのに新型ってやつはあからさまに人間の域を超えてきた。そんなの第一アンドロイド開発者として認めない、不届き千万もいいところよ」


610 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:24:01.97Kb3Xmjfp0 (86/101)



果林「…じゃあ、Y.O.L.Oにいる新型アンドロイドを潰しちゃう?」


鞠莉「…それはいい案かもしれないわ」

果林「私から提案しといて難だけど、そんなことして大丈夫なの?政府が黙ってないと思うけど」

鞠莉「私からしたら私の技術を悪用されて怒り心頭なんだから誰にも文句は言わせないわ」キッ

果林「あら怖い怖い」クスクス


鞠莉「新型アンドロイド…今すぐにデストロイすべきだわ…」


鞠莉「…でも、その前に準備が必要そうね……」


611 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:25:47.58Kb3Xmjfp0 (87/101)

~??日後

絵里「ん……」

絵里「あれ…私……」


絵里「……生きてる?」


絵里(目覚めの感覚が伝っても尚私には伝わらない生の意識。それから両手を閉じて開いてを繰り返してようやく自分が生きてることに気が付いた)

「すぅ…すぅ…」

絵里「真姫…曜…」

絵里(私の寝ていたベッドには私を挟むよう両サイドに曜と真姫が寝てた、傍から見れば微笑ましい光景だけど、私は無意識的にあることに気付いた)


ポロポロ…


絵里「…あれ、私なんで……」

絵里(涙が出てきた、無意識に)

絵里(隣に真姫がいることにとてつもない罪悪感と敗北感を感じた。いや、真姫が悪いわけじゃないけど“真姫の位置”に何かが欠落してた)


612 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:27:24.04Kb3Xmjfp0 (88/101)



絵里「…っ!果南!善子!?」


曜「わぁ!?」バサッ!

真姫「何っ!?」バサッ!

絵里「私…そうだ…!私…ッ!」

真姫「え、絵里目覚めたの!?」

絵里「真姫…!私どうしたら…!」ポロポロ…

真姫「ど、どうしたのよ急に…」オロオロ

絵里「善子が…!果南が死んじゃったぁ…!!」

曜「!!」

真姫「ど、どういうことよそれ…」

絵里(言葉が上手く出せなかった、けど私は必死に真姫と曜に説明した。涙が私の言葉をかき消して、儚さが私の涙を加速させる。未だに拭えない絶望は混乱を招き、善子と果南の死体がまだ鮮明に私の瞳に映ってくる)


613 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:28:47.28Kb3Xmjfp0 (89/101)



絵里「うわあぁああああああ……!!」ポロポロ


曜「………」

真姫「………」

曜「…やっぱりね」

真姫「やっぱり?」

曜「前に花丸ちゃんから借りたアンドロイド名鑑に載ってたんだ、果南ちゃんの項目……」


曜「全アンドロイド中トップの性能を誇る最強に近いアンドロイドの一人。何も考えてないようで実は誰よりも深い考え持つテロリズムとアンビバレンスの持ち主————いわば危険思想の塊」


曜「…と書いてあった。それを見てなんとなく察してた、初めてこの家で夜を明かした時からずっと何か変な事を考えてたんだろうと」

曜「……でもまさかこんな形になるなんて思ってなかった。まさか仲間を殺して…そして憧れであった絵里さんと一対一になるフィールドを作って殺し合いをするなんて」

真姫「………」


614 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:29:58.88Kb3Xmjfp0 (90/101)

曜「…にしても、もし絵里さんたちのところが通常通り作戦を実行したら成功率87パーセントか…」

真姫「何かあるの?」

曜「何か引っかかるんだよね、だって穂乃果ちゃんやせつ菜ちゃんのグループは穂乃果ちゃんが負傷したことでシンプルに撤退せざるを得ない状況になるし、そんなんで87パーセントも成功率あるのかな…」

真姫「言われてみれば確かに…」

曜「…果南ちゃんの数値化が間違ってた……?でも全アンドロイドの中で特に性能がいい果南ちゃんが間違うのかな」

曜「分からないな…死人に口なしとはよく言ったものだよ。今じゃ果南ちゃんの見えてたものが何も分からないよ……」

絵里「うわあああああ……」

真姫「…絵里は泣かないの!まだ私がいるんだから!」ギューッ

絵里「うぅ…だってぇ…!!」

曜「……問題は山積みだね、著しく戦力の低下が起こってる。次の作戦は考えこまなきゃ負けちゃうね」

真姫「…そうね」

絵里(目覚めた世界はいつもに増して退廃的だった。大切な仲間を二人失い、当の私はまた当分戦えなくなるくらいの傷を負った)


615 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:30:28.44Kb3Xmjfp0 (91/101)



果南『そして今日から私が絢瀬絵里として生きていくよ、この名前…大切にするから』


絵里(戦いが終わった今でも果南のあの行動は理解出来ない、憧れが曲がるとああなるのかしら)


果南『絵里と一緒にいるようになってから絵里より強い人を見たことがなかった』


絵里(一体何を見て、一体何を思って私が最強と視えたのかしら)


絵里(第一あの時の果南の戦いはルビィがいなきゃ死んでたし、凛と梨子と対峙した時はそもそも一回死んだようなものだし、曜と戦った時はだいぶ運がよかったとしか言いようがない)

絵里(私が最強である要素がまるで見当たらない、私が最強であるなら少し分かりやすいステータスとアドバンテージがあってもいいはず、耳がいいとか目がいいとかそんな強化五感の一つだけでもいいのにそれすらも見当たらない)


絵里(果南はどこを見た?何を見た?)


絵里(……考えても、分からないままだ)



616 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:32:01.01Kb3Xmjfp0 (92/101)

絵里「うぅ…といれぇ…」メソメソ

真姫「行ってきなさいよ…」

絵里「うん……」


スタスタスタ


絵里(激しい戦いを乗り越えてから歩く家の廊下は数年の歳月を感じるくらいに懐かしかった。それだけ眠りの世界は一日千秋なもので、手にしたこの平和はやはり温かいものね)


スタスタスタ


曜「絵里さん」


絵里「!」

絵里「よ、曜?」

曜「ごめんね、止めちゃって。でもちょっと聞いてほしいんだ」


617 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:33:22.38Kb3Xmjfp0 (93/101)

絵里「な、何…?」

曜「…こんな時に言うべきじゃないのは分かる、けど言わせてほしい」



曜「絵里さんは何者?」



絵里「わたし…?」


果南『絵里は色んな面を含めて最強なんだよ?絵里もよく考えてみてよ』

果南『自分が誰なのかを』


絵里「!」

絵里(そういえば果南も同じようなこと言ってた、私は誰なのか、そんな意味深なことを言ってた)


618 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:34:33.79Kb3Xmjfp0 (94/101)

絵里「私は…アンドロイドよ、コードF-613。誕生日は10月21日、名前は絢瀬絵里。年齢17の高校三年生」

曜「…知ってる、でもおかしいじゃん。それ」

絵里「おかしい?どこが?」

絵里(曜の引き締まった表情に私の涙と弱い心はとっくに引っ込んだ。次第に頭が回り始めて消えないはずの痛みが今だけは消えてくような気がした)

曜「………」

絵里「…曜?」

曜「なんで…なんで絵里さんはさ……」



曜「標準型アンドロイドなのに、どうして戦闘型アンドロイドや高い戦闘力を有した人間と戦えるの?」



絵里「…!!」



619 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:35:53.15Kb3Xmjfp0 (95/101)

曜「絵里さんの言う標準型が嘘であるっていうのも考えたけど、ちゃんと首元にはFと書いてある。別に標準型でも戦える子はたくさんいるけど絵里さんに関しては頭一つ抜けてるんだよね」

曜「…というかね、標準型っていうのは人間を元にして作られたアンドロイドなんだよ、だから絵里さんが標準型であるというのなら、その標準型にしては高すぎる能力値を鑑みるに」


曜「絵里さんは人間を模して造られたわけではない気がする」


絵里「私が…?じゃあ私は…何者なの…?」

曜「…希ちゃんから聞いたことがあるんだよね」


希『実は探してる人がウチには二人いるんよ』


曜「…てね」



620 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:36:54.11Kb3Xmjfp0 (96/101)

絵里「探してる人?」

曜「一人は東京で大規模な銃撃戦が発生した時に民間人側として参加してた殺し屋の異名を持つスナイパー」

曜「そしてもう一人は————」


曜「——鞠莉ちゃんだけしか正体を知らない標準型アンドロイドXと称されたアンドロイド」


絵里「!!」

曜「そのアンドロイドはまだ全然情報が無かった、だから希ちゃんもある程度情報が揃うまでは希ちゃんと花丸ちゃんだけの秘密にしておいたらしい」

曜「だけど如何せん何も手がかりがないもんで、私にまで希ちゃんのその話が来たわけだけど」

曜「一つそのアンドロイドで確実に言える事があるならね」


曜「そのアンドロイド、金髪なんだよね」


絵里「えっ……」


621 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:38:34.75Kb3Xmjfp0 (97/101)

曜「デバイスを開いて」

絵里「え、うん…」


ピコンッ♪


絵里「…?これは?」

絵里(曜から送られてきたのは何らかの画像のデータだった)

曜「花丸ちゃんと希ちゃんが一ヶ月鞠莉ちゃんのPCとサイバー戦争をして手に入れたって言ってた画像データだよ、あまりにも複雑なプログラムとセキュリティを通り越してきたデータだからノイズ化しちゃってるんだけど、それでもその左上のところ、髪の色だけ分かるんだよ」

絵里「…!ホントだ、金髪ね」

絵里(いつかに花丸さんから見せてもらったアンドロイドのデータと同じようにそこには“誰か”が描かれてた。体系もどんな顔をしてるかも分からないけど金髪だ。横にある説明文らしきところには“標貅門梛繧「繝ン繝峨ΟイドX”と名前欄と思わしきところに書かれていて、その下の説明文は読めたものじゃなかった)

曜「そういう文字化けってやつは解読ができるんだけど、どういうわけかその文字化けは特殊なプログラムが張り巡らされてて解読出来ないんだ」

曜「こう…画像を開くたびに文字が違って、それを解読しても支離滅裂な言葉しか出てこない」

曜「だからすごく厳重に保管されてるんだろうね…」

絵里「………」


622 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:40:11.34Kb3Xmjfp0 (98/101)

曜「…でもまぁその標準型アンドロイドXと呼ばれるアンドロイドが金髪だと分かっても金髪の標準型アンドロイドなんて世の中たくさんいる、それをしらみつぶしに探し回ってたらキリがないって希ちゃんも半分諦めかけてた」

曜「でもよくよく考えて思ったよ、多分希ちゃんも同じこと思ってたと思う」

絵里「………」

絵里(次曜の口から出てくる言葉はなんとなく分かってた。私もきっと曜やその希って人と同じことを想ってるはずだから)


曜「標準型アンドロイドXっていうのは絵里さんのことなんじゃないか、と」


絵里「…そうよね、そうなるわよね」

曜「元々標準型アンドロイドXっていうのは鞠莉さんしか正体を知らない特別なアンドロイドということしか知らない、だから希ちゃんも会ってみたかったんだと思う」

曜「…絵里さんには何か特別なモノがあるの?」

絵里「私に……」

絵里(どうだろう、少し考える。だけど考えて出てくる特別なモノはこれといってなかった。確かに標準型なのに凛や果南とまともにやり合える私はおかしい、けどそれしかない。それ以外、他にない)


623 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:40:53.35Kb3Xmjfp0 (99/101)



絵里「…!」


絵里(いやまって…これを特別と言っていいのかは分からないけどあった)


絵里「…えりち」


曜「ん?」

絵里(私より強いもう一人の私。私の心の中に住み着く謎の————ある意味特別な存在が私には宿ってた)

絵里(…でも、それを言葉にするのはどうだろうか。別に言いたくないわけじゃないけど、言うのを躊躇ってしまう。何かが私の口を開かなくさせていた)

絵里「…ごめんなさい、やっぱり私には分からないわ」


624 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:42:55.58Kb3Xmjfp0 (100/101)

曜「…そっか、でもやっぱり標準型アンドロイドは絵里さんなのかな…」

絵里「…多分ね、よくよく考えればおかしいものね。私標準型なのに」

曜「ううん、聞きたかっただけだから気にしないで」

曜「それじゃあ私寝室戻るね!」

絵里「え、ええ」

スタスタスタ

絵里「………」

絵里(もし、本当に私が標準型アンドロイドXだとしたら私の正体ってやつは一体なんなのかしら)

絵里(鞠莉の人形なのかしら、それとも新型なのかしら)

絵里(……当たり前だけど、考えて分かる問題ではなかった)


625 ◆iEoVz.17Z22019/10/03(木) 20:45:00.02Kb3Xmjfp0 (101/101)

今日はここで中断。
再開は明日か明後日やります


626以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/10/04(金) 12:25:59.30reThwItbO (1/1)

いよいよえりちの正体に近づいてくる?
展開が目まぐるしくて飽きないな


627 ◆iEoVz.17Z22019/10/05(土) 18:37:53.95dIWqa2t10 (1/101)

~次の日

絵里「ふぁー……っていったっ!?」

絵里(眩しい光を受け瞼を閉じて、それに負けじと無理矢理瞼を開けて背伸びをした直後、私に激痛が走る)

絵里(お腹を中心とした痛みが体の中で広がっていく。すぐさまお腹を見れば包帯越しでも赤く染まっているのが分かる)

絵里「…果南か」

絵里(果南の遺した傷は随分と痛い。それは直接的でもあって精神的でもあった)

絵里(今頃果南と善子が生きてれば戦況はどうなってたのかしら、在りもしない希望を掲げた絶望がイマジネーションを発生させた。鞠莉という一人の人物を殺すのになんでこんな想いをしないといけないんだろう、世界は常に理不尽で謎しかない)

絵里「……変な顔」

絵里(誰もいない寝室のテーブル、さりげなく置かれた誰かの鏡を見ると私の瞳とその周りは赤かった)

絵里(泣いたのかしら、でもいつ泣いたのかしら?)

絵里(果南と善子が死んで冷静でいる自分が少しおかしく感じてはいたけど、やっぱり無意識の中の私はとてもつもなく悲しいのよね、分かるわよ)


絵里(こんな退廃的世界で次は何をしてけばいいのかしら)


絵里(エンドロールに向かっていくはずの私は、足を動かすことも憂鬱だった)




628 ◆iEoVz.17Z22019/10/05(土) 18:40:23.44dIWqa2t10 (2/101)



絵里(エンドロールに向かっていくはずの私は、足を動かすことも憂鬱だった)


スタ…スタ…スタ…


ことり「! 絵里ちゃん!」

花丸「絵里さん!?」

せつ菜「絵里さん!」

絵里(二足歩行で歩くのが辛くて、壁に寄り添いながら少しずつ歩いてリビングへ向かった。昨日の深夜とは違って痛みは鮮明に感じる、だから今の身体はものすごく不自由だった)

スタスタスタ

絵里「ありがとうことり、せつ菜」

ことり「いいよっ絵里ちゃんは無理しないで」

せつ菜「その通りです!」

絵里(二人の肩を借りて一緒に歩いてもらった。そうすればだいぶ楽に歩けるようになった)

絵里「よいしょっいたたっ…」ストンッ

真姫「あんまり無理しないようにしなさいよ?」

絵里「え、ええ…」


629 ◆iEoVz.17Z22019/10/05(土) 18:41:19.06dIWqa2t10 (3/101)

ことり「…曜ちゃんから聞いてたけど、やっと起きたんだね」

曜「今回は二週間で起きれたね」

絵里「に、二週間!?」

せつ菜「穂乃果さんはまだ目覚めません…」

絵里「そ、そんな経ってたの…」


ルビィ「おはようございま…ってぴぎっ!?」


絵里「ルビィ!」

ルビィ「絵里さん!」


ギューッ


絵里「…あの時はありがとう」

ルビィ「…いいんです」


630 ◆iEoVz.17Z22019/10/05(土) 18:42:55.60dIWqa2t10 (4/101)

ことり「…どういう状況?」

絵里「ルビィは私を助けてくれたの」

ことり「…じゃあやっぱりあの時は助けた後だったんだ」

ルビィ「あ、はい…」

ことり「そっか…ごめん」

ルビィ「大丈夫です、焦る気持ちはルビィも分かるので!」

絵里「…そういえば果南と善子の事は話したの?」

曜「いや…まだ…」

花丸「…?果南さんと善子さんがどうなったかを知ってるんですか?」

絵里「あぁ…うん……」

絵里(私の口からはあまり言いたくない事実だった。でも、当然よね。過去は消せないけど、あんな忌々しい記憶はそうと分かっていても消したくなるものよ)

曜「あ、えっとね…私の口から言うと善子ちゃんと果南ちゃんは…死んじゃったんだ」

ことり「っ!?」

せつ菜「ど、どうしてですか!?」

曜「それは————」

絵里(それ以降は昨日の深夜私が話したのと同じだった、初めて聞くせつ菜とことりは昨日の真姫と曜と同じ反応をしてた)


631 ◆iEoVz.17Z22019/10/05(土) 18:45:54.14dIWqa2t10 (5/101)

ことり「……やっぱり」

曜「やっぱり?」

ことり「連絡がつかなくなった時、何かやらかすなら絶対に松浦果南だと思った。だから私は急いで絵里ちゃんを探しに行ったんだよ」

曜「…今見返せばもっと気にするべきだったのかな」

ことり「……いや、気にするのは多分無理だよ、だって仲間だもん」

せつ菜「…そうやって、穂乃果さんも一度死にましたからね」

ことり「うん……」

絵里「………」

曜「これは最近知ったことなんだけど、対アンドロイド特殊部隊も今著しい戦力の低下が起こってるらしいんだ」

絵里「どういうこと?」

曜「海未さんとにこさんが死んだらしいんだ」

せつ菜「………」

絵里「えっ…」

ことり「…内紛を起こして共倒れしたんだって」

絵里「そんなことが…」


632 ◆iEoVz.17Z22019/10/05(土) 18:47:02.62dIWqa2t10 (6/101)

せつ菜「にこさん…海未さんを倒せるほど強かったんですね…」

曜「…それは私も思った、確かににこさんは強いけどまさかあの生命力お化けの海未さんを殺すなんて……」


ルビィ「…殺してないよ」


花丸「え?」

ルビィ「にこさんは確かに海未さんに勝ってた、けど最後に油断したせいで海未さんに殺された。だから結果的に海未さんの勝利だった」

せつ菜「ど、どうしてそんなことが分かるんですか?」

ルビィ「…だってルビィいたもん、その時そこに」

曜「えっ…じゃあ海未さんって……」


ルビィ「ルビィが殺した」




633 ◆iEoVz.17Z22019/10/05(土) 18:48:16.78dIWqa2t10 (7/101)

ことり「……やっぱりあなた只者じゃないよね、あの時の戦闘といい何かの戦闘員でしょ」

ことり「あの時のハンドガンだって随分と持ち慣れてた、少なくとも私は穂乃果ちゃんや曜ちゃんとも対等に戦える強さだと思った」

曜「最初はずっと泣いてたからあまり気に留めてなかったけど…」

せつ菜「あなたは一体…?」

絵里「…それは私から話すわ」ガタッ

絵里「ルビィはね……」

スタ…スタ…

絵里「昔東京で起こった大規模な銃撃戦で民間人として参加した————」

スタ…スタ…


絵里「——殺し屋という異名を持つ子なの」ポンッ