396以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:08:35ho235Jjg (12/42)

トコトコトコトコ……ピタッ

美春 「……うそ、ついてしまいました」


―――― 『あ、そうだ、姉さま。関係者席のチケット、もう一枚余っているのですが……』

―――― 『……すみません。関係者席のチケットがなくなってしまったので、一般席ですが』


美春 「………………」

ピラッ

美春 「……結局、余らせてしまいました、関係者席。これは、プロデューサーにお返しした方がいいですね」

美春 (……だって、仕方ないじゃないですか。関係者席のチケットを渡したら、彼は――唯我成幸さんは、)

美春 (きっと、姉さまと一緒にアイスショーを観ることになる。仲睦まじく。お似合いの様相で)

ズキッ

美春 (……私はなんて浅ましいのでしょう。それが耐えられないと思ってしまう)

美春 (悲しいって、辛いって、苦しいって……そう、思ってしまう)

美春 (この気持ちはなんでしょう。まさか本当に、恋というものなのでしょうか)

美春 (私は、唯我成幸さんのことを好きだと……そう、思ってしまっているのでしょうか)


397以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:09:32ho235Jjg (13/42)

美春 「………………」

フルフルフル

美春 (夏炉冬扇。今は考えても詮無いことですね。本番に向けて、集中しなければ……)

美春 (私の気持ちがどうであれ、この気持ちが私の演技のプラスになるのなら)

美春 (それだって利用するだけです。私はスケーターなのですから)


―――― 『……美春さんに、あんな顔、してほしくなかったので』


美春 (……嬉しい気持ち)


―――― 『……また今度、あのデートの続きをしませんか?』


美春 (ドキドキする気持ち……)


―――― ((悲しいって、辛いって、苦しいって……そう、思ってしまう))


美春 (胸が張り裂けそうな気持ち)

美春 (その全部……全部全部、スケートのために使うだけです!)


398以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:10:26ho235Jjg (14/42)

………………アイスショー当日

成幸 「うわぁ、すごい人だなぁ……」

ザワザワザワザワ……

「桐須美春、初演劇アイスショーで初主役だって! すごいよね!」

「まだエリジブルなのに普通のショーにもたくさん出てるよな」

「スケートめっちゃうまいのにめっちゃ美人で、憧れるよね~!」

成幸 (それにしても、すごい人気だな、美春さん)

成幸 (改めて、今さらながら本当にすごい人なんだな、あの人……)

成幸 (ん、もらったチケットの席はあそこか。混んでるし、座って待ってよう)

成幸 (……目が合ったりしたら手でも振ろうと思ってたけど、こりゃ気づいてもらえないな)

成幸 (これだけ回りにたくさん人がいたら分かるはずないよな)

成幸 「………………」 ドキドキドキドキ…… (……三十分後くらいに開演か。はぁ、なんか緊張するな)

ハッ

成幸 「……ん?」 (……何で俺が緊張してるんだ?)


399以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:11:09ho235Jjg (15/42)

………………開演

~~~♪

成幸 (……演目は “白鳥の湖”)

成幸 (正直、台詞も何もない、スケートリンク上で演技をするだけのショーで何が分かるんだって思っていたけど、)

ゴクッ

成幸 (すごい……!)

成幸 (遠目でしか見えないから、細かい表情もよく分からない。でも……)

成幸 (美春さんの動きすべてから、まるで感情が流れ込んでくるみたいだ……)

成幸 (それに……) カァアアアア……

成幸 (すごく、きれいだ。デートしていたときと違うきれいさで……) ドキドキドキドキ……

成幸 (あの人が、本当に……)


―――― 『かわいいモフモフがたくさんいますよ、唯我成幸さん!!!』

―――― 『ぎゃんカワです!! これがぎゃんカワというものなのですね唯我成幸さん!!』


成幸 (あの桐須美春さんと同一人物なんだなぁ……) ドキドキドキドキ……


400以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:13:43ho235Jjg (16/42)

………………

美春 (好き……好き……)

美春 (だから、悲しい。好きだからこそ、裏切りが、つらい)

美春 (いまは少しだけ、気持ちが分かる……)

美春 (気持ちを重ねて、姫の心をなぞって……)

美春 (わたしは……)


―――― 『美春』

―――― 『美春さん』


美春 (……姉さまのことが好き。唯我成幸さんのことも、きっと……)

美春 (でも、だからこそこれはきっと、本物じゃない)

美春 (恋に恋しているだけ。そうでなければ、私はこんな風に、この気持ちを利用したりはできない)


401以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:14:16ho235Jjg (17/42)

美春 (だから……)


―――― 『……美春さんに、あんな顔、してほしくなかったので』

―――― 『……また今度、あのデートの続きをしませんか?』


美春 (嬉しかった言葉も、戸惑う気持ちも、悲しい想いも、すべて……)

美春 「………………」

美春 (もう演目の終わりも近い。姉さまも見てくれている。この気持ちを、そのまま曲に乗せて)

美春 (きっと唯我成幸さんも見てくれている)

美春 (どうですか、唯我成幸さん。私の演技、見てくれていますか?)

美春 (しっかりと舞えていますか? 滑れていますか? 私は、魅力的ですか?)

美春 (……なんて、一般席のどこにいるかも分からないあなたに問いかけても、どうしようも……――)

パッ……パァッ……!!!

美春 (へ……?)

美春 (ど、どうして……?)

美春 (どうして、あなたを見つけてしまえるのでしょう……唯我成幸さん……!)


402以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:15:01ho235Jjg (18/42)

………………リンク脇

プロデューサー 「………………」

ブルブルブルブル!!!!

プロデューサー (素晴らしいわぁ! 素晴らしい演技よ美春ちゃん!!!!)

プロデューサー (つい先日まで、恋のこの字も表現できていなかったあの子が……!)

プロデューサー (今は本物の悲劇のお姫様のように、優雅に、可憐に舞っている……)

プロデューサー (ああ、次回公演の発想がどんどん湧いてくるわぁ!!)

プロデューサー (予定さえ合えば、また美春ちゃんを主役に……)

プロデューサー 「……ノン! 美春ちゃんの予定に合わせて次回公演を組むわぁ!!」


403以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:15:52ho235Jjg (19/42)

………………

美春 (こんなに多くの観客がいる中で、どうして……)

美春 (唯我成幸さん、どうしてあなたはそんなにも光り輝いて見えるのでしょう)


―――― 『恋をすると、回りが見えなくなるの。相手しか見えなくなるの』

―――― 『それなのに、周囲すべてが輝いて見えるわ。もちろん、恋する相手もね』


美春 (ああ、もうこんなの、自分を誤魔化すことすらできないではないですか……)

美春 (私は……ええ、そうです。私は……!!)



美春 (私はあなたのことが好きです。唯我成幸さん)



美春 (……届いてほしい)

美春 (この気持ちを、唯我成幸さんに届けたい……!)

美春 (好き! 好き……!! あなたのことを……)

美春 (お慕い申し上げております、唯我成幸さん!!)


404以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:16:22ho235Jjg (20/42)

パチパチパチ……パチパチパチパチパチパチパチパチ……!!!!!

美春 (へ……?)

美春 (あっ、い、いつの間にか、演目が終わっていました……)

美春 (こんなに演劇に没頭できるなんて思っていませんでした……)

美春 (でも、すごく……)

美春 (満ち足りた、やりきった気持ちです……)

美春 「………………」

美春 (……ねぇ、唯我成幸さん。私の気持ち、届きましたか?)

美春 (私の想い、感じてくれましたか? ドキドキ、してくれましたか?)


―――― 『……また今度、あのデートの続きをしませんか?』


美春 (……そのときに、お返事聞かせてもらいますからね)

ニコッ

美春 (そのときこそ、私の魅力で、あなたをトリコにしてみせますから!)


405以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:16:54ho235Jjg (21/42)

………………観客席

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

成幸 (す、すごかった。後半、ずっとドキドキしっぱなしだった……)

成幸 (最後の最後まで見入ってしまった。すごい……)

美春 「……」 ニコッ

成幸 (へ……?)

成幸 (いま、俺の方を見た……?)

成幸 「………………」

成幸 (い、いやいや、こんなに人がたくさんいて、俺のことを見分けられるわけないよな……)

成幸 「………………」

成幸 (……ない、よな?)

おわり


406以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:17:39ho235Jjg (22/42)

………………幕間1 「配置」

美春 (唯我成幸さんから頂いたペロはどこに置きましょうかね)

美春 (んー、配置で考えるなら姉さま人形の隣がベストでしょうか……)

ポン

美春 「………………」

モヤモヤモヤモヤ……

美春 (……姉さまとペロがくっついていると、少しモヤモヤしますね)

ススススッ……

美春 (少し離して……これでよしっ、と)


407以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:18:22ho235Jjg (23/42)

………………幕間2 「ねぞう」

美春 「左に姉さま人形、右に唯我成幸さんからいただいたペロを寝かせて、と」

美春 「ふふ……ふふふふ。まさに両手に花状態ですね」

美春 「これはきっと良い夢が見られるはず! おやすみなさーい!」

………………翌朝

美春 「……むにゃ、もう朝ですか……」 ムクリ

美春 「あれ? ペロと姉さまは……」

ハッ

美春 「ぺ、ペロが姉さまに覆い被さってますー! ハレンチです!」

美春 「私の隣で寝ていたはずなのにー! そんなに姉さまがいいんですかー!」

美春 「唯我成幸さんのばかー! 浮気者ー!」

おわり


408以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:20:53ho235Jjg (24/42)

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。
とりあえず今週末シリーズは一区切りかなと思います。
原作での立ち位置がどうであれ、好意を明示するというテーマで書きました。
くどい話が多かったと思いますが、わたしは書いていて楽しかったです。

次、投下します。

【ぼく勉】 真冬 「洗濯機が壊れた日に」


409以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:21:23ho235Jjg (25/42)

………………唯我家

花枝 「参ったわねぇ……」

成幸 「……んー、うんともすんともいわないな」

成幸 「さすがにこれは俺にどうにかできるようなことじゃないな」

花枝 「急に洗濯機が壊れるなんてねぇ。困ったわ」

成幸 「まぁ仕方ないよな。物心ついた頃からこの洗濯機だし」

成幸 「修理は?」

花枝 「さっき電話したけど、来られるのは早くても明日になるそうなの」

花枝 「今日のお洗濯はコインランドリーに行くしかないわね」

成幸 「ああ、じゃあ俺が行ってくるよ。参考書持って行けば待ってる間勉強できるし」

花枝 「あら、ほんと? 助かるわ。じゃあお願いしてもいいかしら」

ズシン……!!!

成幸 「!? か、母さん? 何、その洗濯物の量は……」

花枝 「どうせコインランドリー行ってもらうなら、大物もついでに洗ってもらおうかな、って」

花枝 「じゃ、よろしくね♪ 成幸」


410以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:22:03ho235Jjg (26/42)

………………

成幸 「………………」

ヨロヨロヨロヨロ……

成幸 (……母さんめ。息子の厚意を利用するとは、なんて母親だ)

成幸 (うー、カーテンとかマットとかも入ってるから重い。っていうか、これ、ビニール袋破けないよな……)

ビリッ……ビリビリッ……

成幸 (ヒィーーー!? ほんとに破けてきたー!?)

ドサッ……

成幸 「ああ……」 (もっと小分けにしてビニール袋にいれればよかったな……)

成幸 (うーん、どうしよう。全部身体に巻き付ければ持って行けるかな)

成幸 (でも、それだと洗濯物のお化けみたいになりそうだな……)

成幸 (また職務質問されるのはカンベンだし。うーむ……――)

  「――奇遇。そんなところで立ち尽くして、一体どうしたの、唯我君」

成幸 「へ……? あっ、桐須先生。こんにちは」

真冬 「ええ、こんにちは。一体どうしたの? それは……洗濯物?」


411以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:22:38ho235Jjg (27/42)

成幸 「はい。家の洗濯機が壊れちゃって、コインランドリーに行く途中だったんですけど……」

成幸 「ビニール袋に洗濯物を詰め過ぎちゃって、破れちゃったんです」

真冬 「軽率。あなたは本当に、ヘンなところが抜けているのだから」

成幸 「面目ないです……」

真冬 「……まったく。仕方ないわね」

スッ

真冬 「洗濯物、半分持つわ。二人なら持てない量じゃないわ」

成幸 「本当ですか。助かります。でも、先生、どこかへお出かけの予定だったんじゃ……」

真冬 「偶然が重なって少し驚いたけれど、実は私もなの」

成幸 「へ……?」

真冬 「私も洗濯機が壊れてしまって、これからコインランドリーに行くところだったのよ」

真冬 「だから何の問題もないわ」 ヒョイヒョイッ 「……さ、行きましょう。一番近くのコインランドリーでいいわね?」

成幸 「あ、はい! ありがとうございます!」


412以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:23:17ho235Jjg (28/42)

………………コインランドリー

成幸 「あっ……」

真冬 「? どうかしたの、唯我君。早く洗濯機を回したら?」

成幸 「あ、いえ、そうしたいのはやまやまなんですけど」 カァアアアア…… 「恥ずかしながら、洗剤を忘れてしまって」

真冬 「……閉口。今日のあなたは本当に抜けているわね」

成幸 「全く返す言葉もないです……」 シューーーン 「買うのももったいないので、家までダッシュして洗剤取ってきます……」

真冬 「待ちなさい。その往復時間は、受験生にとってとても貴重なはずよ」

真冬 「私の洗剤を使いなさい。普段使っているものとは違うでしょうけど、洗濯だけなのだから問題ないでしょう」

成幸 「桐須先生……」 キラキラキラ……!!!! 「ありがとうございます!」

真冬 「そ、そんなに感謝されるようなことじゃないわ。ほら、使いなさい」

成幸 「いえいえ、本当にありがとうございます……って……」

成幸 (なんかめちゃくちゃ高そうな洗剤だ。うちの安い粉洗剤とは全然違うぞ……)

成幸 (でも、使っていいって言ってくれてるんだから、大丈夫だよな……)

キュッ……カパッ……フワッ

成幸 (……あっ、これ、桐須先生と同じ匂いだ)


413以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:23:58ho235Jjg (29/42)

………………

ゴウンゴウンゴウンゴウン……

真冬 「……前より間違いが減ったわね。いいことだわ。要素に紐付けて時系列を見られるようになっているわね」

成幸 「ありがとうございます。世界史は先生に教わったおかげで、少し得意になったと思います」

真冬 「……私は関係ないわ。君が頑張った結果でしょう」

真冬 「あら、そこ間違っているわよ」

成幸 「あっ、ほんとだ……」

真冬 「まったく。まだまだ不安ね。もっと精進なさい」

成幸 「そうですね。がんばります!」

カリカリカリ……

成幸 「………………」

真冬 「………………」

真冬 「……最近、どうかしら?」

成幸 「へ? どうって……」


414以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:25:11ho235Jjg (30/42)

真冬 「……緒方さん、古橋さん、それから、武元さんもだけれど」

成幸 「ああ、あいつらの進捗ですか? それなら……」

グッ

成幸 「すごいですよ。模擬問題の解答精度がどんどん上がっています」

成幸 「武元も英単語の記憶量がどんどん増えてますし、発音もよくなってきています」

成幸 「三人全員の進路実現が、現実味を帯びてきてますよ」

真冬 「そう……」

成幸 「まぁ、もちろん結果は保証できませんけど……」

成幸 「でも、大丈夫だと思います。最近のあいつらを見てると、心の底からそう思うんです」

真冬 (……まったく。いい顔で笑うものね)

真冬 「……君もよ。唯我君」

成幸 「?」

真冬 「……なれるわ。絶対。お父さんのような、立派な教育者に」

成幸 「へ……?」 カァアアアア…… 「き、急になんですか……」

真冬 「褒めているのよ。他意はないわ」


415以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:25:57ho235Jjg (31/42)

成幸 (そうは言ってもな……)

ドキドキドキドキ……

成幸 (滅多に褒めてくれない先生が、あんなにストレートに褒めてくれるなんて……)

成幸 (驚くなというほうが無理な話だよ……)


―――― 『……なれるわ。絶対。お父さんのような、立派な教育者に』


成幸 「………………」

真冬 「……? 唯我君?」

成幸 「……あ、いや、すみません。嬉しいです。すごく。ありがとうございます。でも……」

真冬 「?」

成幸 「……俺、たしかに親父……父さんみたいな教師になりたいと思っています」

成幸 「父さんみたいに、人を励まして、一緒に成長できるような教育者に」

成幸 「……でも、今は思うんです。それと同じくらい、目指すべき先生の姿があるって」

ニコッ

成幸 「俺は、桐須先生みたいな教師になりたいって、そう思うんです」


416以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:26:27ho235Jjg (32/42)

真冬 「へ……?」

ハッ

真冬 「わっ、私!?」

成幸 「はい! 先生みたいな、生徒を想って、生徒のためにがんばれる先生に!」

真冬 「なっ……な、何を……///」

プイッ

真冬 「わ、私は、教師として当然のことをしているだけで、そんなの……――」

――ピーーーーーーッ

真冬 「!?」

成幸 「あっ、洗濯終わったみたいですね。取り出さないと……」 トトトトト……

真冬 「………………」 ドキドキドキ (ま、まったく、急に何を言い出すかと思えば……)


―――― 『俺は、桐須先生みたいな教師になりたいって、そう思うんです』

―――― 『はい! 先生みたいな、生徒を想って、生徒のためにがんばれる先生に!』


真冬 「っ……///」


417以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:27:09ho235Jjg (33/42)

………………

成幸 「今日はありがとうございました。おかげで勉強が捗りました」

成幸 「それから、洗剤まで借りてしまって……」

フワワワーン……

成幸 (うぅ……なんか、桐須先生と同じ匂いが、洗濯物から……///)

真冬 「気にしなくていいわ。待ち時間に勉強を教えるくらい大したことではないもの。もちろん、洗剤も」

真冬 「ただし、忘れ物には気をつけなさい。受験で同じ事をしたらアウトよ」

成幸 「はい。肝に銘じておきます」

真冬 「よろしい」 クスッ 「……じゃあ、また明日学校で。唯我君」

成幸 「はい。では失礼します」


418以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:27:41ho235Jjg (34/42)

………………翌朝

うるか 「あっ、成幸! おーっす!」

成幸 「おう、うるか。古橋と緒方も、おはよう」

理珠 「おはようございます」

文乃 「おはよ、成幸くん」

うるか 「ん……?」

クンクンクン……スンスン

成幸 「な、なんだよ、うるか。出会い頭に人のシャツに顔近づけて……」

成幸 (っていうか、めちゃくちゃ近いぞ……///)

うるか 「んー……成幸、洗剤変えた? 匂いがいつもと違うんだよねー」

文乃 (いつもとって……うるかちゃん、そんなに恒常的に成幸くんの匂い嗅いでるの……?)

文乃 (まぁ、うるかちゃんって誰に対しても結構そういうところあるもんなぁ……)

成幸 「……あー、それ昨日コインランドリーで洗ったからだよ。家の洗濯機が壊れちゃってさ」

理珠 「それは大変でしたね。だから匂いが変わったんですね」

成幸 「あー……」 (本当は加えて桐須先生に洗剤を借りたからなんだけど……)


419以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:28:24ho235Jjg (35/42)

うるか 「んー? でもその匂い、誰かの匂いと似てるような……」

文乃 「あはは。ほんと、うるかちゃんって匂いに敏感だよね」

文乃 (……まぁ、そのせいでわたしも成幸くんの家にお泊まりしたときドキッとさせられたんだけど)

文乃 (……ん? ってことは、まさか……――)


真冬 「――あら、おそろいで登校かしら? おはよう」


成幸 「あ、桐須先生。おはようございます」

緒方 「あ……お、おはようございます、先生」

文乃 「おはようございます!」

成幸 (うんうん。普通に挨拶できてるな。だいぶ先生とのわだかまりがほぐれたみたいだ。良いことだな)

うるか 「おはようございまーっす! ……ん?」

クンクンクン……

真冬 「ち、ちょっと、武元さん? どうして私のシャツに顔を近づけるのかしら?」

真冬 「というか、その距離はさすがに、近いわ……」

うるか 「……やっぱり! 成幸と同じ匂いだよ!」


420以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:29:50ho235Jjg (36/42)

真冬&成幸 「「!?」」

真冬 「……ぐ、偶然! 洗剤が一緒だっただけでしょう」

真冬 「わ、私は朝礼業務があるから、失礼するわ」

真冬 「あなたたちも遅刻しないようにするのよ!」

トトトトト……

理珠 「? 桐須先生、少し慌てているように見えましたが、一体どうしたのでしょうか?」

うるか 「先生と洗剤がかぶるなんて、すごい偶然だね、成幸!」

成幸 「へ? あ、ああ、まぁ、そうだな……」

成幸 (い、いや、なんで嘘ついてるんだ、俺? っていうか、何で先生はあんな誤魔化しを……?)

成幸 (これじゃ、なんかやましいことがあるみたいで、今さら本当のことも言えないぞ!?)

文乃 「………………」 ジトーーーーーッ

成幸 「……!?」 ビクッ 「ど、どうかしたか、古橋?」

文乃 「……うん」 ニコッ 「とりあえず、昼休み、ツラ貸せやコラァ、だよ、成幸くんっ」

成幸 「……はい。文乃姉ちゃん」

おわり


421以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:30:46ho235Jjg (37/42)

………………幕間 「いつもの場所」

成幸 「……ってことで、かくかくしかじかで先生の洗剤を借りただけだよ」

文乃 「なんだ、それだけか。よかったよかった」

文乃 「また先生の家にお邪魔して、洗濯が必要な某かを致したのかと思ったよ」 ニコッ

成幸 「笑顔で反応しづらいようなえげつないことぶち込んでくるよなぁお前って……」

成幸 「……ん、でもそろそろまた先生の家に行って掃除しないとな」

成幸 「そろそろ汚れる頃だろうし、それこそ洗濯物もたためてないだろうしな」

文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「……? 古橋?」

文乃 「……ナチュラルに女教師の家に通い妻してる君にえげつないなんて言われたくねぇ! だよ!」

おわり


422以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:31:59ho235Jjg (38/42)

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。


次投下します。


【ぼく勉】 理珠 「地鶏の研究をしているんです」 文乃 「えっ、自撮り?」


423以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:32:39ho235Jjg (39/42)

と思ったのですがすみません、眠いので明日投下します。


424以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:44:27R.Syq8Go (1/1)

更新多すぎて草
おつやで


425以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 01:07:09KmaczHPw (1/1)

おお復活したのか
おかえり


426以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 12:25:57e/31zRzA (1/1)

やっぱ文系ちゃんの相談役ポジションおいしいよなあ


427以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 13:43:00dAVZuhfo (1/1)

おつおつ


428以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 23:57:57ho235Jjg (40/42)

>>1です。
投下します。

【ぼく勉】 理珠 「地鶏の研究をしているんです」 文乃 「えっ、自撮り?」


429以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 23:59:02ho235Jjg (41/42)

理珠 「はい、(うどんに)乗せるための地鶏(料理)の研究です」

文乃 「えっと、載せるって……SNSに載せるための自撮り、ってこと……?」

理珠 「その通りです、文乃。さすがですね。時代はSNSですから」

理珠 「ただ、これがなかなか難しくて、SNS映えする地鶏(料理)が思い浮かばないんです」

うるか 「あ、そ、そうだね。構図とかなかなか難しいよね……」

理珠 「? たしかに、撮る構図も大事ですね。色々試してみます」

文乃 「………………」 うるか 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

うるか (り、リズりんが……) 文乃 (承認欲求を求めるSNS女子に……!?)

うるか 「えっと、でもリズりん? 自撮りをSNSに乗せるのって、ちょっとマズくない……?」

理珠 「? なぜです?」

うるか 「えっ、な、なぜって……そりゃあ……ネットにのっちゃうと、もう二度と消せない、し……」

理珠 「? なぜ消す必要があるんですか?」

文乃 (リスク管理ガバガバすぎだよりっちゃん!?)


430以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 23:59:36ho235Jjg (42/42)

うるか 「ち、ちなみにどんな自撮りをアップするつもりなの?」

理珠 「それを悩んでいるんです。胸(肉)を使うつもりではあるんですが……」

文乃 「!?」 (り、りっちゃん!? 自分のおっぱいの破壊力を正しく理解していたんだね!?)

文乃 (Gカップりっぱいを武器にどんな自撮りをアップするつもりなの!?)

理珠 「でも、やはりモモ(肉)の方がやわらかくていいかなとも思いますし……」

うるか (フトモモ!? リズりんのフトモモはおっぱいよりやわらかいの!?)

うるか (今度フトモモ揉ませてもらおう……じゃなくて!!)

文乃 (どんなエッチな自撮りを撮るつもりなのりっちゃーん!!)

文乃&うるか 「「………………」」

理珠 「? 文乃? うるかさん? 黙りこくってしまって、どうかしましたか?」


431以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:00:16KTVNI7b6 (1/43)

文乃 「……だめ」

理珠 「へ?」

文乃 「やっぱりダメだよりっちゃん! 自撮りなんて!」

うるか 「そうだよリズりん! もっと自分を大事にして!」

理珠 「??? えっと、地鶏の何がダメなのでしょうか……」

文乃 「自撮りをするのはいいけど、エッチなのはダメ!」

うるか 「そう! リズりんのおっぱいとフトモモの自撮りなんか、絶対許さないよ!」

文乃 「そうだよ! そんなの、ナニに使われるか分からないんだから!」

理珠 「……は?」

文乃 「とにかく!! 男の子が喜んじゃうエッチな自撮りなんか、絶対に許さないからね!!」

うるか 「そうだよ! 成幸みたいなエッチな男の子は、そういうの大好物なんだから!!」

理珠 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

理珠 「……はぁ?」


432以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:04:36KTVNI7b6 (2/43)

………………

文乃 「………………」 [わたしたちはアホな勘違いをしました。]

うるか 「………………」 [反省中です。]

理珠 「……まったく。何を考えているんですか、あなたたちは」

理珠 「私の言葉が足りなかったのも悪かったとは思いますが、地鶏を自撮りと間違えますか、普通」

文乃 「うぅ……ごめんだよぅ、りっちゃん……」

うるか 「えへへっ、日本語ってむつかしいね」

理珠 「それに、エッチな自撮りって……まったく……」

理珠 「なぜ私がそんなものをネットにアップしなくてはならないのですか」

文乃 「てっきりりっちゃんが承認欲求バリバリSNS女子になったのかと思って……」

うるか 「そのおっぱいを使ってネットの住人をトリコにしよーとしてるのかと……」

理珠 「バカなんですか?」

文乃 「うぅ、返す言葉もないよぅ」

成幸 「………………」

成幸 「……えっと、何やってんだ、お前ら?」


433以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:05:11KTVNI7b6 (3/43)

………………前日 緒方うどん

親父さん 「うーん……」

理珠 「お父さん? 珍しくため息なんかついて、どうかしましたか?」

親父さん 「ああ、リズたま。いや、実は町内会から頼まれごとをされちまってな」

親父さん 「何でも、新しくブランド化した地鶏を使ったメニューを出してほしいそうなんだ」

理珠 「地鶏? ああ、最近見かける “七緒鶏” ですか?」

親父さん 「おう、それだそれだ。それを使った新メニューを、商店街の店で一斉に出して、PRがしたいんだそうだ」

親父さん 「協力すれば鶏肉を安く売ってくれるらしいから、こっちにとっても願ったり叶ったりなんだが……」

親父さん 「いかんせん、俺ぁこういうの考えるのが苦手でな。どうしたもんか……」

理珠 「ふむ……」

理珠 「……よろしければ、その新メニュー、私に任せてもらえませんか?」

親父さん 「!? リズたま、本当かい!? 助かるよ!」

理珠 「はい! 緒方うどんの一人娘の名にかけて、素晴らしい新メニューを考えてみせます!」


434以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:05:45KTVNI7b6 (4/43)

………………帰路

理珠 「……と、いうことがありまして」

理珠 「困っている父を見るに見かねて申し出たのですが、これがなかなか難しくて……」

成幸 「なるほどな。お店の売り上げにも関わるだろうし、地域振興も兼ねてるとあれば難しいよなぁ」

成幸 「……で、まじめに悩んでいた緒方に、あいつらはアホな事を言った、と」

理珠 「まったく、何がエッチな自撮りですか」 プンプン 「理解に苦しみます」

成幸 「まぁまぁ、あいつらもお前のことが心配だったんだろうし、そう怒ってやるなよ」

成幸 「……それにしても、新メニュー開発かぁ。大変そうだな」

理珠 「鶏天を乗せるのでもいいかと思ったのですが、今までの鶏天との違いが分かりにくいですし……」

理珠 「炒め物にしてみたら、鶏が細かくなって隠れてしまって、せっかくの地鶏が薄れてしまいますし……」

理珠 「昨日も色々試作してみたのですが、どうもしっくりくるのが思い浮かばないんです」

理珠 「新メニュー開発がこんなに難しいとは思いませんでした……」

成幸 「そう思い詰めるなよ。新メニューは今週末から一斉スタートなんだろ? まだ時間はあるじゃないか」

成幸 「役に立つかは分からないけど、俺もバイト中に色々考えるからさ。元気出せよ」

理珠 「えっ、本当ですか?」 パァアアアアアア……!!! 「成幸さんが一緒に考えてくれるなら百人力です!」


435以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:06:19KTVNI7b6 (5/43)

成幸 「お、おう? いや、そんな大げさな。俺なんかきっとあまり役には立たないよ」

理珠 「そんなことありません!」 ガバッ

成幸 「のわっ……!? ちょっ、緒方、ち、近い……///」

理珠 「成幸さんは、文化祭の時だって、たくさんたくさん助けてくれました!」

理珠 「最後の一押しのもみじおろしうどんだって、成幸さんが考えてくれたじゃないですか」

理珠 「……1000食完売したのは、成幸さんのおかげといっても過言ではありません!」

成幸 「ど、どうどうどう。そう言ってくれるのは嬉しいが、少し落ち着こう、緒方」

成幸 「ち、近い、というか……その、色々と、くっついてる、から、な?」

理珠 「へ……?」 ハッ 「ひゃっ!? す、すみません……」

成幸 「いや、全然、俺は大丈夫だから……――」


「――ほーう。人んちの前で娘と密着とは、やってくれるじゃねぇか。センセーイ?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「お、親父さん!? なんで……」 ハッ 「って、もう緒方うどんの目の前!?」

親父さん 「何とぼけようとしてんだテメェー!! 今日という今日はバイト前に駆除してやらぁー!」


436以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:07:14KTVNI7b6 (6/43)

………………緒方うどん

成幸 「……はぁ」 (また今日もひどい目にあったな)

成幸 (親父さん、悪い人じゃないんだけど、緒方が絡むと人が変わるからな……)

親父さん 「………………」 ギラギラギラ

成幸 (あー、こりゃ今日は一日機嫌が悪いままだな。気をつけないと……)

……ポコン

親父さん 「のわっ……っと、リズたま? なぜおたまで俺の頭を……?」

理珠 「いつまで不機嫌そうな顔をしているんですか。さっきのは誤解だと言ったでしょう」

理珠 「私が成幸さんに抱きついてしまっただけで、成幸さんは悪くありません」

親父さん 「り、リズたま。そうは言ってもな……」

理珠 「もしまだそんな顔を続けるつもりなら、今日はお手伝いをボイコットします。成幸さんと一緒に」

理珠 「なんだったら、そのまま賃上げ要求のストライキに移行してもいいんですよ?」

親父さん 「賃上げ要求!?」

成幸 (経営者の娘が賃上げ要求のストライキに参加するってすごいな) クスクス (泥沼の家庭事情がありそう)

成幸 (……って違う。アホなこと考えてる場合じゃない!)


437以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:08:00KTVNI7b6 (7/43)

親父さん 「り、リズたま、でも俺ぁ、リズたまのことが心配で……」

理珠 「私はもう子どもじゃありません。いい加減、過保護にするのはやめてください。迷惑です」

成幸 (ま、まずい……)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

親父さん 「………………」

理珠 「………………」

成幸 (未だかつてないくらい親子間が険悪な雰囲気だー!?) アセアセアセアセ……

成幸 (こ、こんなときはお袋さんに間に入ってもらうしかない。今日はお袋さんは……) ハッ

成幸 (一日留守にするから俺がバイト入ってるんだったー!!)

ガラッ

成幸 「あっ……い、いらっしゃいませー!」

成幸 (夕食時のお客さんも入り始めた! とにかくこのままやるしかない!)

親父さん 「………………」  理珠 「………………」

成幸 (……不安だ)


438以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:08:39KTVNI7b6 (8/43)

………………

理珠 「お父さん、注文です」

親父さん 「……おう」

親父さん 「……あがり。持ってってくれ」

理珠 「はい」

成幸 「………………」

成幸 (……いつもより、口数は少ないけど)

成幸 (意外と普通だな。もっとこう、まったく無言でやるのかと思ったけど……)

「……ちょいちょい、バイトのあんちゃん」

成幸 「あ、はい!」 (常連のおじさんだ。追加かな?)

トトトトト……

成幸 「ご注文ですか?」

「いやいや、大したことじゃねーんだけどさ。オヤジと理珠ちゃん、また喧嘩してんのかい?」

成幸 「えっ……? あ、ああ、やっぱり分かります?」

「そりゃ、俺は何年もここに通ってるからなぁ」


439以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:09:09KTVNI7b6 (9/43)

「でもよ、おもしれぇだろ? あんちゃん」

成幸 「面白い……?」

「傍目からも喧嘩してるって分かるのに、息ピッタリだろ?」

成幸 「……?」

理珠 「お父さん。注文は」

親父さん 「ん。いまできる」

親父さん 「……リズたま、あれは――」

――コトッ

理珠 「さっき倉庫から持ってきました。なくなりそうだったので」

親父さん 「……おう。ありがとう」

理珠 「いえ」

成幸 「……たしかに。口数は少ないのに、全部伝わってる感じですね」

「おう、さすが理珠ちゃんのカレシだねぇ。よくわかってるじゃねぇの」

成幸 「かっ……!? ち、違いますよ。俺と緒方はそういう関係じゃ……」


440以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:09:39KTVNI7b6 (10/43)

「へぇ? そうなの? でも、オヤジの奴と飲むと、いつも言ってるぜ?」

「“うちはリズたまが上等な跡継ぎを連れてきてくれたから安泰だー” とかなんとか……」

成幸 「へっ……!?」

「バイトの奴だって言ってたから、それ間違いなくあんちゃんのことだろ?」

成幸 「い、いや、そんなわけないですよ。だって俺、親父さんに覚えめでたくないし……」

「いやいや、素直になれねぇだけなんだって。オヤジの奴、飲むといつもお前さんのことべた褒めで……――」


――――ドン!!!


親父さん 「……うどん、お待ち」 ギロッ

「お、おう。ありがとよ」

親父さん 「……ふん」

「……ふぅ。ビビったビビった。これ以上余計なこと言ったら後がめんどくせぇな、こりゃ」

「仕事の邪魔して悪かったな、あんちゃん」

成幸 「は、はぁ……?」

成幸 (……? 一体何だったんだ?)


441以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:10:09KTVNI7b6 (11/43)

理珠 「………………」

親父さん 「………………」

理珠 「……お、お父さん」  親父さん 「リズたま……」

理珠&親父さん 「「!?」」

理珠 「……っ、お、お父さんから、どうぞ」

親父さん 「……い、いやいや、リズたまから……」

理珠 「……むっ」 ジトッ

親父さん 「……わ、わかったよ。俺から言うよ」

親父さん 「さっきは悪かったよ。話も聞かず、センセイに怒ったりして」

理珠 「いえ、それは成幸さんに言うべきことだと思いますけど……」

理珠 「……まぁ、いいです。私も、ごめんなさい。言いすぎました」

親父さん 「そ、そっか……」

理珠 「はい」

成幸 「………………」 クスッ (……ほんと、似たもの親子だよな。でも、いい親子だ)

成幸 「……ん? “親子” ?」


442以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:10:41KTVNI7b6 (12/43)

成幸 「………………」

ハッ

成幸 「そうだ! 親子だ! 親子だよ、緒方! 親父さん!」

親父さん 「!? な、なんだ、急に大声出して……」

理珠 「成幸さん、どうかしましたか?」

成幸 「親父さん、例の地鶏なんですけど……」

親父さん 「例の地鶏って…… “七緒鶏” のことか?」

成幸 「その “七緒鶏” って卵も美味しかったりしませんかね?」

親父さん 「卵ぉ……?」

親父さん 「………………」

親父さん 「……おう。ちと町内会長に聞いてみらぁ」

成幸 「……はい! ありがとうございます!」

親父さん 「けっ。うちの店のことだ。テメェに礼を言われる筋合いはねぇよ」


443以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:11:18KTVNI7b6 (13/43)

………………週末 緒方うどん

理珠 「町内会の呼びかけもあって、お客さんがたくさんですね」

ワイワイガヤガヤ……

理珠 「みんな、地鶏の新メニューを楽しみにしてくれているみたいです」 クスッ

理珠 「成幸さんの考えた新メニューを、です」

成幸 「や、やめろよ、緒方。ただでさえ緊張してるんだから……」

ドキドキドキドキ……

成幸 (だ、大丈夫だよな。試食したらめちゃくちゃ美味しかったし……)

成幸 (うるかも古橋も美味しいって言ってくれたし、関城も……)


―――― 『やっぱり緒方理珠の作ったうどんは最高ね! 一本一本に緒方理珠を感じるわ!』


成幸 (……いや、あいつは緒方のものは何でも美味いって言うけど)

成幸 (と、とにかく、お客さんが満足してくれることを祈ろう……)

ギュッ

成幸 「へ? お、緒方?」


444以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:11:50KTVNI7b6 (14/43)

理珠 「大丈夫ですよ」 ニコッ 「成幸さんが考えたメニューです。皆さん満足してくれるに決まっています」

ムギュッ

理珠 「それに、私は好きですよ?」

成幸 「へ……?」 ボフッ 「す、好きって……。っていうか、くっつきすぎじゃないですかね、緒方さん?」

理珠 「ふふ♪ 成幸さんの考えたうどん、好きですよ」

成幸 「あ、ああ。うどんね。そ、そうだよな……」

理珠 「とても美味しいですから。だから、大丈夫です」

グッ

理珠 「自信持ってください、成幸さん!」

成幸 「……おう」 グッ 「ありがと、緒方」


445以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:12:23KTVNI7b6 (15/43)

親父さん 「おう、センセイ! 人の店で娘とくっついてんじゃねぇ!」

成幸 「ヒッ……! す、すみません!」

親父さん 「……新メニュー、あがったからお客様にお出ししてくんな」

成幸 「あ……は、はい!」

ドキドキドキドキ……

成幸 (だ、大丈夫かな。ちゃんと美味しいかな……)

……バシッ!!!

成幸 「っ……お、親父さん?」

親父さん 「胸ぇ張れよ」 フン 「俺がうめぇって言ったんだ。大丈夫に決まってんだろ」

成幸 「あ……」 クスッ 「はい!」

成幸 「お、お待ちどうさまです! 新メニューの、“七緒鶏の親子うどん” です!」

成幸 「地鶏のお肉と卵を使った親子丼の具を、熱々の釜揚げうどんの上にかけました!」

成幸 「熱々のうちにお召し上がりください!」

「おおー!」  「おいしそー!」  「鶏肉やわらかそー!」  「たまごふわふわしてるー!」

 『いただきまーす!!』


446以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:12:56KTVNI7b6 (16/43)

ズルズルズル……ムシャムシャムシャ……

成幸 「………………」 ドキドキドキドキ……

「う……」  「えっ……」  「お……」

成幸 「!?」 (へ!? な、何その反応!? 美味しくなかった!?)

 『……お……美味しいーーー!!!』

成幸 「あっ……」

パァアアアアアア……!!!

成幸 「ありがとうございます!!」

親父さん 「けっ。だから言っただろうが」

クスッ

親父さん 「おい、センセイ。次々上がるからさっさとお客様にお出ししねぇか!」

成幸 「は、はい! いまいきます! 親父さん!」

親父さん 「だからテメェに親父さんって呼ばれる筋合いはねぇってんだよ!」


447以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:13:43KTVNI7b6 (17/43)

親父さん 「………………」

「これおいしーね、ママ!」  「ほんとね。優しい親子丼の味がうどんによく合うわ」

「地鶏だけじゃなく卵も使うとは、考えたなぁ」  「“七緒鶏” って、卵も美味しいんだな」

「こりゃ、他の店の限定メニューも食べてみないとだな」  「今度地鶏と卵、買ってみようかしら……」

親父さん (……ふん。まぁ、好調じゃねぇか。まぁ、俺とリズたまが作ったんだから当然だけどな)

成幸 「親父さん、新しい注文です。親子、五丁お願いします」

成幸 「……? 親父さん?」

親父さん 「……おう、センセイ」

成幸 「?」

親父さん 「……ありがとよ。テメェの考えたメニュー、最高だよ」

成幸 「えっ」 カァアアアア…… 「あ、あはは。なんか親父さんに褒められると変な気分です」

「店員さーん! 注文お願いしまーす!」

成幸 「あ、はーい! ただいま!」 クルッ 「じゃ、親父さん。追加で五丁、お願いしますね」

親父さん 「あいよ!」


448以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:14:17KTVNI7b6 (18/43)

理珠 「お父さん、こちらも親子追加で四丁お願いします」

親父さん 「おう! そしたらリズたま、麺が……――」

理珠 「――そろそろ足りなくなるだろうと思って、もう持ってきてあります」

親父さん 「ん、わかった。ありがとな、リズたま」

理珠 「いえ。あと、さっき来た出前の注文ですが……」

親父さん 「三十分後だろ? 十分前には仕上げとくから、おかもちだけ準備しといてくれ」

理珠 「わかりました」

成幸 「………………」


―――― 『とても美味しいですから。だから、大丈夫です』

―――― 『……ありがとよ。テメェの考えたメニュー、最高だよ』


成幸 (……本当に似たもの親子だな) クスッ (なぁ、緒方。親父さん。この親子うどんが美味しいのは、きっと、)

成幸 (……ふたりが相性抜群の仲良し親子だからだよ)

おわり


449以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:15:08KTVNI7b6 (19/43)

………………幕間 「試食です」

文乃 「これ成幸くんが考えたの!? すごいね、本当に美味しいよ!」 ズルズルズル……

文乃 「……おかわり!」

成幸 「いや、俺は考えただけだけどな」

文乃 「いやいや、それでもすごいよ。さすがの発想力だね」 ズルズルズルズルズルズル……

文乃 「……おかわり!」

成幸 「そう言われると照れるな。えへへ……」

文乃 「………………」 ズルズルズルズルズルズルズルズルズル……

文乃 「……おかわり!」

成幸 「いやさすがに食い過ぎだ! っていうか味の感想言わないならもう食うな!」

紗和子 「ま、負けないわ。うっぷ……」

クワッ

紗和子 「お、緒方理珠のうどん、誰よりたくさん……うぷっ……食べてみせるわ!」

成幸 「お前も変な対抗心燃やすんじゃない関城! っていうか古橋に勝つのは無理だから諦めろ!」

おわり


450以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:16:00KTVNI7b6 (20/43)

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。

投下します。
時季外れもいいところですが。

【ぼく勉】 紗和子 「レッド・ホット・バレンタイン」


451以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:17:17KTVNI7b6 (21/43)

………………化学室

紗和子 「………………」

グツグツグツグツグツ……

紗和子 「ふふふふふ……」

紗和子 「あとはこれを、こう、と……」

コトコトコト……マゼマゼマゼ……

紗和子 「………………」

ニィィ……

紗和子 「ふふ……あとはこのチョコを型に流し込んで固めれば完成よ!!!」

部員 (関城元部長、引退したのに何やってるんだろ……?)

紗和子 「待っていなさい、唯我成幸! このチョコであなたもイチコロよ!」

部員 (ああ、チョコ作ってたんだ。バレンタインかな)

部員 (唯我成幸さんって、部長の好きな人なのかな。部長もそういう人いるんだなぁ)

紗和子 「ふふ……ふふふ……!!」

部員 (それはそうと、マッドな笑いが似合うなぁ部長……)


452以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:17:56KTVNI7b6 (22/43)

………………翌日 登校日 放課後

陽真 「なーりーちゃん、かーえろ」

陽真 「……って、どうしたの、その紙袋」

成幸 「ん? いや、なんかしらんけど今年はバレンタインのチョコをたくさんもらっちゃってさ」

成幸 「モテ期到来かー、なんてな。全部義理だよ。それでもありがたいけどな」

陽真 「………………」 ウーム 「……ちなみに誰からもらったの?」

成幸 「? えっと、これはうるかと緒方と古橋にもらったな」


―――― うるか 『なっ……成幸! こ、これ、チョコ! 食べてね! あたしの気持ちだから!』

―――― 理珠 『成幸さん! あの……よ、よかったら、食べてください……。私の、気持ちです……』

―――― 文乃 『お父さんに毒味してもらったから大丈夫! ちゃんと食べられるから!』


成幸 「全員顔真っ赤だったけど、風邪でも引いてんのかな。大事ないといいけど」

陽真 「あ、うん」

陽真 (……成ちゃん、間違いなくそれ全部本命だよ……)


453以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:18:35KTVNI7b6 (23/43)

陽真 「? でもそれにしてはチョコ多くない?」

成幸 「ああ、あとは学校に来る前に会ったOGの先輩と……」


―――― あすみ 『お、おう、後輩。朝から呼び出して悪いな。よかったら、これ……』


成幸 「……こっちは、内緒にしてくれって言われたけど、お前にならいいかな。桐須先生からなんだ」


―――― 真冬 『他の人には内緒よ。これ、がんばって作ったから、食べてくれたら嬉しいわ』


陽真 「あー、うん……」

成幸 「風邪、流行ってんのかな。ふたりも顔が真っ赤だったけど……」

陽真 (もはやそのニブさは犯罪的だよ成ちゃん……)

成幸 「で、実はこの後、緒方と勉強会なんだ。だから、悪いけどまだ帰れない」

陽真 「あ、そうなの。残念。大森も用事あるみたいだし、ひとりで帰るとしようかな」

成幸 「っていうか、せっかくのバレンタインなんだから海原と一緒に帰ったらいいだろ」

陽真 「智波ちゃんは部活だよ。卒業前の後輩への指導ラストスパートだってさ」

陽真 「でも心配ご無用。部活が終わった後デートの約束があるからね」


454以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:19:06KTVNI7b6 (24/43)

成幸 「そうかよ。聞くんじゃなかったよ……」

陽真 「はは、じゃ、成ちゃん勉強がんばってね――」


紗和子 「――――唯我成幸ーー!!」 バーーーーーン!!!


成幸&陽真 「「!?」」

紗和子 「教室にいてくれたのね、良かったわ」

成幸 「……せ、関城、急に登場するなよ。心臓飛び出るかと思ったわ」

紗和子 「間に合って良かったわ。うちのHRが長引いて、どうなることかとヒヤヒヤしたわ」

成幸 「? そんなに急いで何か用か?」

紗和子 「その前に確認なんだけど、あなたこの後緒方理珠と勉強会よね?」

成幸 「へ? そうだけど……」

紗和子 「……よし。完璧ね」 (ふふ……ふふふふふふ……!!)

成幸 「?」

紗和子 (さぁ、始めるわよ! 私の、在学中最後であろう、緒方理珠への恩返し!)

紗和子 (レッド・ホット・バレンタイン作戦、決行よ!!)


455以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:19:50KTVNI7b6 (25/43)

………………昨夜

紗和子 「……うんうん。見た目は完全にただのチョコね」

紗和子 「完璧に仕上がったわ。これで唯我成幸も緒方理珠の魅力に気づいてイチコロね!」

紗和子 「……でも、しまったわね。何も考えずに適当に安いチョコの型を買ってしまったから……」

キャピルーン♪

紗和子 (思いっきりハート型のチョコになってしまったわ)

紗和子 (それにラッピングも安いのを適当に買ったら、すごくハートハートしてるわ……)

紗和子 (……ま、まぁ、効能がしっかりあれば、形なんてどうでもいいのよ!)

紗和子 (ハート型だろうとなんだろうと、それでも問題はないはず!)

紗和子 (あとはこれを、明日の緒方理珠と唯我成幸の勉強会の直前に渡せば……!!)

紗和子 「……ふふ、ふふふふ!!」

紗和子 「そう、この新発明チョコレート、『レッド・ホット・チョコ・ペッパーズ』 、略してRHCPをね!!」


456以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:20:33KTVNI7b6 (26/43)

………………

紗和子 (RHCPは、唐辛子の辛み成分、カプサイシンを多分に含ませたチョコレートよ)

紗和子 (普通に唐辛子成分をチョコに混ぜ込んだのでは、当然チョコは辛くなってしまう)

紗和子 (けれど、このRHCPは、唐辛子からカプサイシンだけを抽出し、小さなカプセルで包みこんでいるわ!)

紗和子 (だからRHCPを口に入れても、辛みは感じない。ただの甘いチョコレートとしか感じないわ)

紗和子 (そしてそのカプセルは、チョコレートが胃に到達する段階で溶け出し、カプサイシンは人体に吸収される)

紗和子 (……そう、つまりこのチョコレートを食べると、辛みを感じることなくカプサイシンを摂取することができる!)

紗和子 (そしてカプサイシンには、新陳代謝を促進する効果がある。当然、脈拍も上がることになるわ)

紗和子 (今このチョコを唯我成幸に食べさせれば、緒方理珠と勉強をしている間にその効果が表れ始め……)

紗和子 (カプサイシンによる脈拍上昇。それによるドキドキで、ふたりの距離は……)


―――― 成幸 『……あれ? 何で俺、こんなにドキドキしているんだ……』

―――― 理珠 『成幸さん……?』

―――― 成幸 『っ……』 ドキッ 『お、緒方……。緒方って、なんでそんなに可愛いんだ……?』

―――― 理珠 『へっ……?』 トゥンク……


457以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:21:18KTVNI7b6 (27/43)

紗和子 (……そう! そして、ふたりは末永く結ばれることになるのよ!!) グッ

成幸 「……えっと、関城? 黙り込んじゃってどうしたんだ?」

成幸 (っていうか、拳握って天を仰いで、一体何やってんだこいつは……)

紗和子 「何でもないわ! ところで唯我成幸! 今日は何の日かしら?」

成幸 「へ? いや、何って……バレンタインデーだろ?」

紗和子 「そう、その通り、バレンタインよ! だからこれあげるわ!」

成幸 「え……? ああ、ありがとう」

成幸 「えへへ、なんか義理って分かってても、こういうのもらうと嬉しいよな……って」

成幸 「!?」

成幸 (……ら、ラッピングがめっちゃハートなんだけど!?)

成幸 「せ、関城、このチョコって……」

紗和子 「へ? そりゃ、バレンタインのチョコよ。決まってるでしょ?」

紗和子 (ふふ、感謝しなさいよ、唯我成幸! 私が全力で緒方理珠との仲を応援してあげてるんだから!)

紗和子 「……私の(緒方理珠への)想いがたっぷり詰まってるわ」

成幸 「!?」 陽真 「!!」 ニヤァ


458以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:21:52KTVNI7b6 (28/43)

紗和子 「……? どうしたのよ、顔を真っ赤にしちゃって」

ハッ

紗和子 「ま、まさか変なこと考えてるんじゃないでしょうね? 当然、義理よ?」

成幸 「あ、ああ、そうだよな。悪い、わかってる」

紗和子 「……じゃ、食べて?」

成幸 「へ?」

紗和子 「だから、食べて。今ここで」

成幸 「今? いや、でも……」

陽真 「いやぁ、成ちゃん」 ニヤニヤ 「女の子がこんなに、“食べて” って言ってるんだから、いただかないとバチが当たるよ?」

成幸 「……わかったよ。まぁ、小腹も空いてたし、いただくよ」

成幸 (なんか、もらったチョコを教室で空けるのって恥ずかしいな。他の奴の目もあるし……)

スッ……ハラリ……

成幸 「……!?」

成幸 (チョコもめっちゃハート型なんだけどー!?)

陽真 「!!」 ニンマリ


459以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:22:41KTVNI7b6 (29/43)

ザワザワザワザワ…………

「お、おい、唯我の奴、またチョコもらってるぞ!」

「しかもあれ、隠れファンも多い化学部の関城さんじゃ……」

「お姫様たちのみならず、関城さんまで……」

「唯我の野郎……!」

成幸 「せ、関城、これ……」 カァアアアア…… 「なんで、ハート型なんだ……?」

紗和子 「へ? 何でって……」 (うーん、型を適当に選んだからなんだけど、わざわざ言う必要もないわよね)

紗和子 「当然、その方が(緒方理珠のあなたへの)気持ちが伝わると思ったからよ!」

成幸 「ぶっ……!」

陽真 「……いやぁ、成ちゃんがモテモテで俺は嬉しいよ」

陽真 「じゃ、俺帰るね。成ちゃん、ごゆっくり」

成幸 「お、おい、小林! 変な言葉を残して行くな!」

紗和子 「……ねえ、唯我成幸。早く食べて?」

成幸 「へ? あ、ああ……じゃあ、いただきます」

パクッ


460以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:23:24KTVNI7b6 (30/43)

ムシャムシャムシャ……

紗和子 「………………」 ジーーーッ

紗和子 (大丈夫かしら。ちゃんと辛みは隠れてるかしら……)

成幸 (めっちゃ見てくる。なんだろう。感想でもほしいんだろうか)

成幸 「……えっと、美味しいぞ、関城」

紗和子 「えっ、あ、そう?」 ホッ 「なら良かったわ」

紗和子 「実は味見するのを忘れていたから、少し心配だったのよね」

成幸 「ん、味見してないのか。ほんとに美味しいから、お前も食べてみたらどうだ?」

パキッ

成幸 「ほら、口つけてないとこ」

紗和子 「あっ……ありがと……」 パクッ

紗和子 「ん……」 モグモグ 「あらほんと。我ながら結構美味しくできたわね」

紗和子 (うまく辛みも隠れているし、これなら大丈夫そうね)

成幸 「……ん、本当に美味しいな」 モグモグモグ……

紗和子 (……それにしても、美味しそうに食べてくれるわね。ちょっと嬉しいじゃない)


461以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:25:08KTVNI7b6 (31/43)

トトトトトトト……

理珠 「……あっ、成幸さん」

理珠 「よかった、まだ教室にいらっしゃったんですね」

成幸 「ああ、緒方。お前もHR終わったんだな。じゃあ図書室行くか」

理珠 「それが……父から電話がありまして、お店の手伝いに戻ってきてほしいと……」

理珠 「すみません、成幸さん。せっかく時間を取ってもらっているのですが、今日の勉強会に行けなくなりました」

紗和子 「!?」

紗和子 (な……なんですってー!?)

成幸 「ああ、そうなのか。大丈夫か? 俺も手伝いに行った方がいいか?」

理珠 「い、いえいえ! そこまでではありませんから、大丈夫です」

成幸 「そうか? なら、俺のことは気にせず帰ったらいいよ」

理珠 「はい。すみません、そうします。成幸さん、関城さんも、さようなら」

トトトトト……

成幸 「家業の手伝いじゃ仕方ないよな。今日はひとりで勉強するか……」


462以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:25:40KTVNI7b6 (32/43)

紗和子 (そ、想定外の事態だわ! まさか緒方理珠が勉強会をキャンセルするなんて……)

成幸 「んー、緒方に解いてもらいたい物理の問題があったんだけどな……」

紗和子 (ど、どうしようかしら。日を改めてまた唯我成幸にRHCPを食べさせて……)

成幸 「どこかに緒方くらい理系が得意な奴いないかな……」

紗和子 (……いやいやいや! さすがにバレンタインでもないのに手作りチョコなんか渡したら不自然だわ!)

成幸 「……ん?」

紗和子 (どうしたら……)

ガシッ

紗和子 「……へ? ゆ、唯我成幸!?」

成幸 「関城! この後時間あるか?」

紗和子 「へ……?」


463以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:26:15KTVNI7b6 (33/43)

………………生物室

紗和子 「………………」

カリカリカリ……

紗和子 「……はい、解けたわよ。たぶんこれで合ってると思うけど」

成幸 「……ん、解答と同じだ。さすがだな、関城」

紗和子 「ふふん。緒方理珠には及ばないまでも、理系の問題だったらそれなりの自信はあるわ」 ドヤッ

成幸 「ふむふむふむ……ああ、なるほど。こうやって解くのか」

成幸 「……関城の途中式、すごく分かりやすいから助かるよ」

紗和子 「……まぁ、教えてほしいって言われたからには、分かりやすく解いた方がいいでしょ」

成幸 「緒方は大体の問題を暗算で解くし、途中式書いてもらっても解読に時間がかかるからな……」

紗和子 「あの子は特殊なのよ。理系の物事に関しては脳みその作りが私たちと違うのよ」

成幸 (関城も結構そっち寄りだと思うけどな……)

成幸 「それにしても悪いな。無理言って勉強付き合ってもらっちゃって……」

紗和子 「べつにいいわよ。家に帰ったって勉強をするだけなんだから、変わらないわ」


464以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:27:20KTVNI7b6 (34/43)

紗和子 「………………」

カリカリカリ……

紗和子 (……まさか緒方理珠の代わりに私が勉強会の相手に指名されるなんて)

紗和子 (うまくいかないものね。お節介はやめろという神様の思し召しから)

紗和子 (……なんて、非科学的ね。私らしくもない)

紗和子 「……ねぇ、唯我成幸。緒方理珠からチョコレートはもらったのよね?」

成幸 「ん? ああ、もらったぞ」

紗和子 「そう。なら、まぁいいかしらね」

成幸 「?」

紗和子 (ひょっとしたら、私がお節介をかけるまでもないのかもしれないわね)

紗和子 (あの子にはもう、私の手助けは必要ないのかしらね……)

紗和子 (ふふ、そう考えると感慨深いような、寂しいような……)

紗和子 (……ん? でも、何か忘れているような)

成幸 「……それにしても暑いな。暖房そんな強くしてないのに不思議だな。上着脱ぐか」 ヌギヌギ

紗和子 「……!?」


465以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:27:54KTVNI7b6 (35/43)

紗和子 (わ、忘れてたーーーー!! 唯我成幸にRHCPを食べさせたんだったわ!!)

成幸 「ふーっ。なんか上着脱いでも暑いな。変だなぁ。関城は暑くないか?」

紗和子 「へっ!? べ、べつに暑くなんかないけど!?」

成幸 「? なんで焦ってんだお前。っていうか、汗すごいぞ?」

紗和子 「!?」 ダラダラ (そ、そういえば私も、少し暑いような気が……)

紗和子 「……あ」


―――― 『――お前も食べてみたらどうだ?』


紗和子 (そういえば私も食べたんだったわ!!)

紗和子 (さすが私の発明品ね! ひとかけら食べただけでカプサイシンの作用がすごいわ!)

紗和子 (……ってそんなこと考えてる場合じゃないわね!?)

紗和子 (とりあえず……) ヌギヌギ (暑いのは如何ともし難いから、白衣を脱ぎましょうか)

成幸 「っ……」

紗和子 「? どうかしたかしら?」

成幸 「い、いや、何でもない……」


466以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:28:41KTVNI7b6 (36/43)

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

成幸 (な、何でこんなにドキドキしてるんだ、俺……?)

成幸 (っていうか、なんか……)

紗和子 「……?」

成幸 (……白衣を脱いだ関城って、なんか、不思議な感じだ)

成幸 (私服姿は何回か見たことがあるけど、制服姿は新鮮で……)

成幸 (かわいい……)

成幸 「……?」

ハッ

成幸 (……お、俺は何を考えてるんだ!? 女友達を “かわいい” だなんて……)

ドキドキドキドキ……

成幸 (ああ、もう! 何でこんなに暑いんだ? 何でこんなにドキドキするんだよ……)

成幸 (……いかんいかん。勉強に集中しなければ)


467以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:29:12KTVNI7b6 (37/43)

………………

成幸 「………………」 カリカリカリ……

紗和子 「………………」 カリカリカリ……

ドキドキドキドキ……

成幸 (……相変わらずドキドキするし、身体がぽかぽかするけど)

紗和子 (少なくとも勉強に支障はないわね)

成幸 (さすがに、俺から勉強会に誘っておいてもう解散ってのも悪いし……)

紗和子 (もう少し。もう少しだけ付き合ったら、別れないと……)

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

成幸 (……あっ、やっぱり関城ってすごくきれいだな。制服姿、似合ってるな)

紗和子 (……唯我成幸、前より筋肉質になったかしら。少しかっこいいじゃない)

成幸 「あっ……」 (やべっ、目が合った……)

紗和子 「ん……」 (いま、唯我成幸、私を見ていた……?)

成幸 (な、なんだ、この感じ……/// ものっそいドキドキする……)

紗和子 (図らずも私の発明品の効能が実証されつつあるわ……///)


468以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:30:06KTVNI7b6 (38/43)

ガラッ……

「あら、関城さん。今日もお勉強?」

紗和子 「あ……先生! すみません。今日もお借りしています」

生物教師 「いいのよ。以前に許可は出していますからね。勉強に使うのなら大歓迎よ」

生物教師 「あら……?」

成幸 「あっ、こ、こんにちは。関城さんにお願いして、俺も使わせてもらっています」

生物教師 「ふふ、関城さんが緒方さん以外の誰かと一緒に勉強をしているなんて、めずらしいわね」

生物教師 「それに、男の子だなんて。ふふ、本当にめずらしいわ」 ニコニコ

紗和子 「へ……? な、何ですか?」

生物教師 「彼氏かしら? 一緒にまじめに勉強ができる関係って、ステキね」

紗和子 「へぇ!?」

ボフッ

紗和子 「ち、違いますよ! 私たちは、そういう関係じゃ……」

紗和子 「ね、ねぇ!? 唯我成幸!」

成幸 「へ!? そこで俺に振るのかお前!?」


469以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:30:44KTVNI7b6 (39/43)

成幸 「い、いや、そりゃ、俺と関城は、そんなんじゃ……」

カァアアアア……

成幸 「……ない、です」

成幸 「あの、全然、ほんと、これっぽっちも……」

成幸 「関城のこと、きれいとか、かわいいとか、制服姿が新鮮で似合ってるとか……」

成幸 「……お、思ってないですから」

紗和子 「へぇ……!? ゆ、唯我成幸? あなた、何を言って……」 カァアアアア……

成幸 「へ……?」 ハッ (!? お、俺、何を言ってるんだ!?)

紗和子 (か、顔が赤くなるのが、自分でも分かる……。ほっぺが熱いわ……)

生物教師 「あらぁ、あらあらあら……」 ニコニコニコ

生物教師 「青春ねぇ。邪魔しちゃアレだから、私はもう行くわね」

紗和子 「あっ、ち、ちょっと待ってください! 絶対何か勘違いをしていますよね!」

生物教師 「それじゃ、ごゆっくり」

ピシャリ……

紗和子 「ああ……」 (行ってしまった。先生、絶対何か勘違いしてるのに……)


470以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:31:20KTVNI7b6 (40/43)

紗和子 「………………」

成幸 「………………」

成幸 「……あ、えっと……なんか、すまん」

紗和子 「……いいわ。元はと言えば、私のせいだし」

成幸 「?」

紗和子 「……そろそろお開きにしましょうか」

成幸 「ん、ああ。そうだな」

成幸 「今日は付き合ってくれてありがとな。問題の解き方も教えてもらったし」

紗和子 「どういたしまして。本当は緒方理珠が来られれば良かったのだけどね」

成幸 「……ん、まぁ、緒方が来られなくなったのは残念だけどさ、」

成幸 「お前とふたりきりで勉強できて良かったよ」

紗和子 「っ……」 プイッ 「そ、そう。それなら良かったわ」

成幸 「?」


471以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:31:58KTVNI7b6 (41/43)

紗和子 「………………」

ドキドキドキドキ……

紗和子 (……違うから。これは、ただのカプサイシンの効能だから)


―――― 『関城のこと、きれいとか、かわいいとか、制服姿が新鮮で似合ってるとか……』

―――― 『……お、思ってないですから』


紗和子 「っ……///」

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

紗和子 (違う! これは、私の発明品の効果がすごいだけ。だから……)


―――― 『お前とふたりきりで勉強できて良かったよ』


紗和子 「……はうっ///」

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

紗和子 (あー、もう! いい加減、効果消えなさいよ~~~~!!)

おわり


472以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:32:53KTVNI7b6 (42/43)

………………幕間 「妹はチョコッと危険なフレグランス」

水希 「ふふ……ふふふふふ……」 クワッ 「今年こそ実行に移すとき!」

水希 「チョコを何倍かに希釈した水を自分にスプレーして、っと……」

シュッシュッ……


―――― 水希 『ごめん、お兄ちゃん。お金がなくて、チョコ用意できなかったよ……』

―――― 成幸 『あれ? でも、水希からほのかにチョコの香りが……』

―――― 水希 『……うん。だから、お兄ちゃん。チョコの代わりに……わたしを食べて……?』


水希 「ふふっ……ふふふふふふっ……むふっ!!」

水希 「名付けて “妹はチョコッと危険なフレグランス” 作戦よ!!」

葉月 (……ああ、姉ちゃんがどんどんわけわからなくなっていく)

和樹 (姉ちゃんはぶれないよなぁ……)

葉月 「……じゃあ、とりあえず、和樹」

和樹 「ほいさ」 スッ

おわり


473以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 00:41:50KTVNI7b6 (43/43)

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。
とりあえずたまっていたものはこれですべてです。
書きかけのはいくらでもありますが。

長らく空白の期間を設けてしまってすみません。
待っていてくださった方がいたら申し訳ありませんでした。

美春さんの話は、本当はもっとコンパクトにまとめたかったのですが、
どうせなら書きたいこと全部書いてやろうと思って滅茶苦茶長くなりました。
わたしのSSは短ければ10kB程度、長くても30kBいかない程度です。
が、これは60kBを超えました。もっとうまくできたかなーとも思います。
申し訳ないことです。

関城紗和子さんのSSを2つも書いているとは思いませんでした。
完成品を眺めていたら関城さんの名前が2つ並んでいて自分で笑ってしまいました。

なんだかんだ、アニメはすごく良かったと思います。
二期も楽しみですね。

レス全然見られていないのでリクエストっぽいのがあって書けそうだったら書きます。

自分語りが長くなりました。
申し訳ないことです。
また投下します。


474以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 01:19:28045EXMvQ (1/1)


バタフライフィールドさんのお話とかどうでしょう


475以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 01:56:10xFu7Fop. (1/1)

本誌読んだ時には全く気づかなかったわ


476以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 02:15:47cF0YOMt6 (1/1)

おつおつー。長くても面白いし全然OK

茨の会とかメイド喫茶のキャラ達みたいなサブキャラの話もみたいな


477以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/07(土) 02:44:18kSeqCqQQ (1/1)

相変わらずの高クォリティで安心した


478以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/08(日) 10:00:285lwwXXN. (1/1)

再開待ってたわ


479以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/09(月) 15:24:274g.A2kuQ (1/1)

水泳部の池田さんの話をぜひお願いします


480以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/09(月) 19:19:09zf5nzWSU (1/1)

敗北者じゃけえ…


481以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/12(木) 23:39:44jPNv9trQ (1/1)

おつやで


482以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/18(水) 00:20:23wPto6ljY (1/1)

原作の雰囲気が不穏だからこのスレにあるss読んで凌ぐんだ…


483以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/24(火) 00:26:52SvCQQs/k (1/1)

不穏さは一週で消えたな


484以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/29(日) 20:32:260l2HjuyQ (1/1)

シエンタ


485以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/08(火) 12:28:53OArscQ9g (1/1)

アニメ始まってるじゃん


486以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/13(日) 02:58:43SrnLRntY (1/1)

ここのssもアニメ化してくれませんかね?


487以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 00:42:17WREau8ic (1/1)

アマプラで2話見たけど、>>1のssで読んだ文系が居眠りするやつと頭の中でごっちゃになってて笑ったわ
完成度高すぎ


488以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:50:59yuN6bUJk (1/26)

>>1です。
投下します。


【ぼく勉】 文乃 「合宿最終日はバーベキューだよ、唯我くん!!」


489以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:51:55yuN6bUJk (2/26)

………………勉強合宿三日目夜 うかり荘

成幸 「急にハイテンションになってどうした、古橋」

文乃 「だ・か・ら! バーベキューなんだよ、唯我くん!」

文乃 「今さっき先生方がお話してるのを偶然聞いちゃったんだ!」

文乃 「明日の午前の講習が終わったら、先生方のカンパでバーベキューらしいよ!」

うるか 「!? それほんと、文乃っち!」

文乃 「ほんともほんとだよ~! 何でも、高級牛肉からブランド豚肉までそろえてくれてるみたいだよ~!」

成幸 「分かった分かった。そりゃ楽しみだけど、明日に取っておこうな」

成幸 (今さっき風呂場でとんでもないことがあったばかりのにもう立ち直りやがった……)

成幸 (ほんと食いしん坊だな、古橋は……)

理珠 「まったく、文乃とうるかさんは食いしん坊ですね」

成幸 「騒ぐのはそれくらいにして、今日のおさらいをやって早く寝るぞ」

文乃&うるか 「「はーい」」

成幸 (……にしても、先生方のカンパでバーベキューか。塾講師ってのも大変だな)


490以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:52:31yuN6bUJk (3/26)

………………翌日 昼

真冬 「………………」

ブルルルン……プスプスプス……

真冬 「迂闊。やってしまったわね……」

真冬 (夏休みも終わりに近いからと有給を取って峠を攻めに……もとい、ドライブをしにきたけれど)

真冬 (まさかガソリンがこんなに減っていただなんて……)

真冬 (こんな峠道でガス欠なんて洒落にならないわ。どうしたものかしら……)

真冬 (夏休みとはいえ世間は平日。さっきから車も通りかからないし……)

真冬 「ん……?」

キャッキャ……ワーワー……

真冬 「……喧噪。近くに人がいるようね。キャンプかしら」

真冬 (恥を忍んでガソリンを譲ってもらうしかないわね)


491以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:53:01yuN6bUJk (4/26)

………………広場

ワイワイガヤガヤ……

成幸 「おー、さすがに大盛り上がりだな。先生方も太っ腹だなぁ」

文乃 「お肉がたくさんあるよ、唯我くん!」

うるか 「旅館の人がカレーも作ってくれてるみたいだよ!」

理珠 「あっちに冷やしうどんもあるみたいですよ!」

グイグイグイグイ

成幸 「わっ、わかったわかった。わかったから引っ張るなって……」

成幸 「食べ過ぎてお腹壊したりしないようにな。ほら、好きなもん取ってこい」

文乃&うるか&理珠 「「「はーい!!」」」

バヒューン!!!!

成幸 「だー、もう! 人がたくさんいるんだから走るなよー!」

成幸 「……って、もういないよ。まったく」


492以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:54:01yuN6bUJk (5/26)

成幸 「……はしゃいじゃってまぁ」

クスッ

成幸 「ま、今日の午前中まで目いっぱい勉強がんばってたしな。これくらいのご褒美があっても……――」

「――なーにひとりで呟いてんだ、こーはいっ」

ピトッ

成幸 「ひうっ!? 冷たっ!?」

あすみ 「にひひ、ほんといい反応してくれるよな、お前って」

成幸 「先輩……。やめてくださいよ、もう……」

あすみ 「悪い悪い。ほら、麦茶取ってきてやったから飲めよ」

あすみ 「散々子どもたちの引率してノドカラカラだろ、“先生” ?」

成幸 「引率って……。あいつらは俺と同い年ですよ」

成幸 「でも、ありがとうございます。たしかにノド乾いてたから嬉しいです」

あすみ 「ま、確かに引率の先生というよりは、娘たちに振り回されるパパって感じだったけどな」

成幸 「ぶっ……! だ、誰がパパですか! 変な事言わんでくださいよ!」


493以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:54:34yuN6bUJk (6/26)

あすみ 「にひひ。そういやそうか。お前はパパじゃなくて、弟なんだっけ?」

成幸 「へ?」

あすみ 「……なぁ? “成幸くん” ?」

成幸 「なっ……なんですか、いきなり……」

あすみ 「いや、べつに大したことじゃねーんだけどな。昨日から気になっちまってさ」

ニヤニヤ

あすみ 「お前と古橋、どうして姉弟ごっこなんかするに至ったのかが、さ」

成幸 「いや、本当に大したことじゃないですよ。お祭りの日に……」

成幸 「……!?」 ハッ


―――― 『大ありです 問題ないと思ってる時点で問題だらけです』

―――― 『あとで徹底的に補習です』


成幸 (あっ、あっぶねー!! 古橋に言うなって言われてるの忘れてたー!)

成幸 (危うく先輩に言ってしまうところだった……!)

成幸 (さすがあしゅみー先輩! 隙をつくのが上手い……!!)
   ※成幸くんが隙だらけなだけです。


494以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:55:14yuN6bUJk (7/26)

あすみ 「? ん、どうした、後輩?」

ニヤニヤニヤニヤ

あすみ 「なんか言えない事情でもあるのかー? んー?」

成幸 「い、いえ、べつに、そういうわけではないんですが……」

成幸 「っていうか、先輩、その……」

あすみ 「ん?」

成幸 「ち、近い、です……」

あすみ 「………………」 ニィ 「……ほーぅ、やっぱり先輩に迫られるのが好みか、後輩」

あすみ 「密室じゃなくて悪かったな」

成幸 「だ、だからあれは違うんですってば! もー!」

あすみ 「にひひ。ほんとにからかい甲斐がある奴だよな、お前って」

あすみ 「……で? 何で姉弟ごっこなんてすることになったのか、そろそろゲロっちまえよ」

成幸 「結局その話蒸し返すの!?」

あすみ 「えー、教えてくれないのかよー、後輩ー」

成幸 「ダメなんです! 話しちゃダメって言われてるんです!」


495以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:55:48yuN6bUJk (8/26)

あすみ 「へー……」 (話しちゃダメ、ねぇ……?)

あすみ (どうせ大した話じゃねーだろと思ってたけど、ここまで隠そうとするとはな)

あすみ (それに、口止めされてる? 古橋にか?)

モヤモヤモヤ……

あすみ (なんかわかんねーけど、それはちょっと……ムカつく)

あすみ 「ちぇっ、ひどいよなー、後輩は」 チラッ

あすみ 「人に無理矢理キスしようとしといて、そんなツレない態度を取るのな」

成幸 「なっ……!?」 (あ、あの写真は……カラオケボックスでの写真……!?)

成幸 「それどう見ても先輩が俺にキスしようとしてるじゃないですか!」

――――ガサッ

真冬 「……失礼。ぶしつけで申し訳ないのですが、もしよろしければ、ガソリンを分けてもらえないでしょうか」

あすみ 「……へ?」

成幸 「へ?」

真冬 「……? こ、小美浪さん? 唯我君?」

成幸 「な……な、なんでここに先生が!?」


496以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:57:20yuN6bUJk (9/26)

………………

あすみ 「へぇー」

ニヤニヤニヤ

あすみ 「峠を攻めに来たはいいけど、ガソリンの残量が少ないのを忘れていてガス欠、ですか」

真冬 「きっ、禁止! そう何度も言わなくてもいいでしょう、小美浪さん!」

真冬 「それに私は峠を攻めたりなんかしません! ちょっとドライブに来ただけよ!」

成幸 「ま、まぁまぁ。なんにせよ良かったですね。旅館の人にガソリンを分けてもらえて」

真冬 「その上、予備校の方にバーベキューにまで混ぜてもらってしまって……申し訳ないわ」


―――― 『ああ、一ノ瀬学園の先生ですか! 休暇中に生徒たちの様子を見に来るだなんて、熱心な先生ですね!』

―――― 『ぜひバーベキューに参加していってください! 生徒たちも喜ぶでしょう!」


真冬 (……予備校の先生にも盛大な勘違いをされてしまったわ。恥ずかしい……)

あすみ 「いやぁ、さすがは熱心ですね、真冬センセ?」

真冬 「や、やめなさいっ! 小美浪さん!!」

あすみ 「にひひひっ」


497以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:58:40yuN6bUJk (10/26)

成幸 「ど、どうどうどう。先生、落ち着いてくださいよ」

成幸 「それに先輩もあんまりからかわないでください」

あすみ 「へいへい。わかったよ」

真冬 「……オホン。当然、最初からずっと落ち着いているわ」

成幸 (どこがだよ……)

成幸 「ところで、こんな奥にいないで、せっかくのバーベキューですし、何か食べに行きましょうよ」

真冬 「不可。そんなことできないわ」

成幸 「? どうしてですか?」

真冬 「あなたたちがいるということは、ここにはあの子たちもいるのでしょう?」

成幸 「あの子たち……? ああ、古橋と緒方ですか? まぁ、いますけど……」

真冬 「このバーベキュー、勉強合宿の最終日、最後の息抜きだと聞いているわ」

真冬 「あの子たちも、せっかくがんばった最後の息抜きに、私の顔なんか見たくないでしょう?」

成幸 「先生……」

真冬 「だから私はお誘いの面目が立つ間くらいここにいるわ。こんな端にあの子たちも来ないでしょう」


498以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 21:59:10yuN6bUJk (11/26)

真冬 「……それに、まだあなたたちふたりに聞かなくてはならない話もあるし、ね」

ジロリ

真冬 「……さっきの話を詳しく教えてもらいたいのだけれど」

あすみ 「? さっきの話?」

成幸 「?」

真冬 「誤魔化そうとしたってそうはいきませんからね。さっき、とんでもないことを言っていたわね」


―――― 『人に無理矢理キスしようとしといて、そんなツレない態度を取るのな』

―――― 『それどう見ても先輩が俺にキスしようとしてるじゃないですか!』


成幸 「……!?」

あすみ 「あー……聞かれてたかー」

真冬 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

真冬 「……どういうことか、しっかり教えてもらうわよ」


499以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:00:27yuN6bUJk (12/26)

………………

文乃 「ふんふんふーん♪」

ムシャムシャムシャムシャムシャパクパクパクパクパクパク

文乃 「お肉も野菜もカレーもうどんもサイコー! やっぱり夏はBBQだね!」

文乃 「りっちゃんもうるかちゃんも楽しんでるみたいだし、先生方も粋なことしてくれるよねぇ」

文乃 「唯我くんも……って、そういえばさっきから見ないなぁ」

文乃 (先輩もいないし、ひょっとして……)

文乃 (……ふたりで、こんなときまで勉強してたりして)

文乃 「………………」

文乃 (あり得るなぁ……)

文乃 (勉強は良い事だけど、休むときはしっかり休まないとだよ)

文乃 (仕方ないなぁ……) クスッ (文乃お姉ちゃんがお肉でも持って行ってあげようかな)

文乃 「まったく、本当に……」

文乃 「手のかかる弟だなぁ、成幸くんは」

文乃 (さて、どこにいるのかな)


500以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:01:04yuN6bUJk (13/26)

理珠&うるか 「「………………」」 キョロキョロキョロ

文乃 「……? りっちゃん、うるかちゃん、どうかしたの?」

理珠 「あ、文乃。成幸さんを見かけませんでしたか?」

うるか 「見当たらないんだよねー」

文乃 「唯我くん? 偶然だね。わたしも探してたとこなんだよ」

文乃 (……ん? りっちゃんとうるかちゃん、うどんとカレーを持ってるけど、ひょっとして……)

文乃 「……ふたりとも、ひょっとしてそれ、成幸くんに持って行ってあげるのかな?」

理珠 「へっ? あ、いえ、べつに、その……」

アセアセアセ

理珠 「……そ、そうです。先ほどから見当たらないので、どうせ勉強でもしているのだろうと」

理珠 「うどん持って行ったら喜んでくれ――じゃなくて、食べるかな、と」 カァアアアア……

文乃 (おっ、乙女ーーーー!! 恋する乙女すぎるよりっちゃん!)

うるか 「べ、べつに成幸に喜んでほしいとかじゃないからね!」

うるか 「お腹空かせてたら可哀想だから、持って行ってあげるだけだかんね!!」

文乃 (こっちはこっちでテンプレ乙女ーーーー! ふたりとも可愛すぎるよ!)


501以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:01:42yuN6bUJk (14/26)

うるか 「……? ところで文乃っち、その大量のお肉は?」

文乃 「……へ?」

ハッ

文乃 「えっ、あ、いや、これは、その……」

うるか&理珠 「「………………」」 ジーーーーッ

文乃 (ど、どうしよう。成幸くんに持って行くつもりだったけど、この二人に知られたくないし……)

文乃 「も、もちろん自分用だよ。お肉美味しいから、いくらでも食べられちゃうね!」

うるか 「おー、さすが文乃っち。食べまくってんね」

理珠 「文乃ならフードファイターになれると思います。すごいです」

文乃 (ひ、人の気遣いも知らず、この子たちは……!)

文乃 「……ん?」

成幸 「……」

文乃 「あ、成幸くん。あんな茂みのほうで何やってるんだろ」

うるか 「? あ、ほんとだ」

理珠 「誰かと話しているのでしょうか。とりあえず行ってみましょうか」


502以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:02:32yuN6bUJk (15/26)

………………

真冬 「まさかとは思うけれど、あなたたち、不純異性交遊をしているのではないでしょうね」

成幸 「うぇっ!? な、なんでいきなりそんな話になるんですか!?」

あすみ 「いや、まぁキスだの何だのの話を聞かれてたらそうなるだろ」

成幸 「先輩はどっちの味方なんですかー!」

真冬 「……唯我君、きみは小美浪さんに無理矢理キスをしようとしたの?」

成幸 「してませんよ!」

真冬 「じゃあ、小美浪さん、あなたは唯我君にキスをしようとしたの?」

あすみ 「んー……」

ニヤァ

あすみ 「……まぁ、それを肯定してもウソにはならないかなぁ」

成幸 「先輩!? 何言ってんですか!」

真冬 「……! ふ、不潔! やはり不純異性交遊をしていたのね!」

あすみ 「えー、やだなぁ、センセ」 ムギュッ 「不純じゃないですよ?」

成幸 「うぺぇ!? な、何で抱きつくんですか、先輩!?」


503以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:03:21yuN6bUJk (16/26)

真冬 「!? 淫靡!! 離れなさい、小美浪さん!」 グイッ

成幸 「!?」

成幸 (ぎ、逆側から先生に……!?)

あすみ 「きゃー、センセったらだいたーん。先生も後輩に抱きつきたいんですか?」 グイッ

真冬 「か、からかわないでちょうだい! そんなわけないでしょう!」 グイグイ

あすみ 「どうだかなー?」 グイグイグイ

成幸 (り、両側から引っ張られて、やわらかいやら良い匂いやらで、何がなんだか……) フラフラ

文乃 「――成幸くーん? こんなところで何してるの?」

真冬 「!?」

シュバッ

成幸 「へ……? わっ……わわわっ……」 グラッ

あすみ 「……? のわっ……」

ドターーン!!!

文乃 「……? へ……?」

文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「……本当に何をやってるのかな、きみは」


504以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:03:54yuN6bUJk (17/26)

成幸 「いてててて……」

成幸 「……ん?」

あすみ 「………………」

成幸 「………………」

成幸 (……これはあくまで俺の推察だけれど)

成幸 (古橋たちの声が聞こえて、先生は慌てて俺の手を離して茂みに隠れて、)

成幸 (そのせいで先輩に一方的に引っ張られることになった俺は、そのまま先輩の方に引っ張られ……)

成幸 (結果として、先輩を押し倒しているような姿勢になってしまっている……のだろう)

文乃&理珠&うるか 「「「………………」」」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 「……ケダモノ」 ボソッ

成幸 「ち、違う! 断じて違うぞ! お前らは何か誤解をしている!」

理珠 「ほぅ。では成幸さんは、先輩を押し倒して何をするつもりだったのですか?」

成幸 「いや、べつに押し倒したつもりはないからな!?」

うるか 「成幸のヘンタイ! エッチ!」

成幸 「ストレートに傷つくからやめろ! 誤解だ!」


505以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:04:37yuN6bUJk (18/26)

あすみ 「……おい、後輩。とりあえず重いから、どけ」

成幸 「あ、は、はい!」 イソイソ 「すみません、先輩……」

成幸 (先生、いくら古橋と緒方に会いたくないからって、急に手を放さないでほしいよ……)

理珠&文乃&うるか 「「「………………」」」 ジトーーーーーッ

成幸 (おかげで変な誤解をされてるし、正直に話してしまいたいところだけど……)

真冬 「………………」 フルフルフルフル

成幸 (茂みからの視線がすごい……。これは、話しちゃダメなやつだよな……)

成幸 (さて、どうしたもんか……)

あすみ 「………………」 ハァ (……ったく。しゃーねぇ後輩と先生だな)

あすみ 「……お前ら、何か勘違いしてるみたいだが、お前らが考えてるようなことはないぞ」

あすみ 「つまずいた後輩がよろけただけだ。偶然、アタシを押し倒したようになっちまったけどな」

成幸 「先輩……」

うるか 「な、なんだぁ。それだけかぁ」 ホッ

理珠 「そ、そんなことだろうと思ってました」

文乃 「そうだよね。わたしはもちろん、そう思ってたよ、成幸くんっ」


506以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:05:54yuN6bUJk (19/26)

成幸 「お前ら、調子良いこと言うよなぁ……」

あすみ 「で、その食べ物、後輩のために取ってきてくれたんだろ?」

あすみ 「向こうのテーブルで食べるから、先待っててくれ。部屋に忘れ物があるんだ」

理珠 「分かりました! うどんもっと用意して待ってます!」

文乃 「肉も増やしておくね!」

成幸 「い、いや、それ以上はちょっと……」

うるか 「じゃ、待ってるねっ! 成幸! 先輩!」

トトト…………

あすみ 「……ふぅ。行ったか」 スッ 「出てきて大丈夫ですよ、真冬センセ」

真冬 「……感謝。うまく誤魔化してくれて助かったわ、小美浪さん」

あすみ 「ええ。後輩はアタシを押し倒した性犯罪者になりかけましたけどね」

成幸 「ぶっ……! 洒落にならんようなことを言わないでください!」

真冬 「……謝罪。急に手を放したのは申し訳なかったわ。ふたりともケガはないかしら?」

あすみ 「あれくらいでケガするようなヤワな身体はしてませんよ」

真冬 「そう……。よかったわ」


507以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:06:30yuN6bUJk (20/26)

真冬 「………………」

成幸 「……先生?」

真冬 「あの子たち、とても楽しそうね」

成幸 「へ……?」

理珠 「……」 うるか 「……」 文乃 「……」 ワイワイワイ

成幸 「ああ……」 クスッ 「ええ。勉強は大変そうでしたけど、でも、充実してましたよ」

成幸 「たくさん頑張ったから、今はすごく楽しいんだと思います」

成幸 「そう……」

あすみ 「せっかくなんだし、声でもかけてったらいいじゃないですか」

真冬 「迷惑。あの子たちは、大嫌いな私の顔などみたくもないでしょう」

成幸 「そ、そんなこと……」

真冬 「………………」

クルッ

真冬 「予備校と旅館の方に挨拶をして帰るわ。これ以上、あの子たちと接触するリスクは避けたいから」

あすみ 「あれ、先生? キスのことはいいんですか?」 ニヤァ


508以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:07:17yuN6bUJk (21/26)

成幸 「……!?」 (何でわざわざ蒸し返すんだ先輩!?)

成幸 (いや、間違いなく俺が困る様を見るためだろうけど!!!)

真冬 「………………」

成幸 「ち、違うんですよ先生! キスも何もないです! 俺と先輩はそういう関係じゃ……――」

真冬 「――……不問。キス云々のことは、とりあえずおいておくことにするわ」

成幸 「……って、へ?」

真冬 「あなたの帰りが遅くなると、またあの子たちが探しに来るわ。だから、仕方なく、よ」

ジロリ

真冬 「ただし、不純異性交遊は絶対に許しませんからね」

成幸 「先生……」

あすみ 「……だってさ、後輩?」 ニヤリ 「じゃ、不純じゃない交遊としゃれ込むか?」

成幸 「良い感じの話で終わりそうだったのに何でそう蒸し返すんですかー!!」

あすみ 「……とまぁ、後輩からかうのはこれくらいにして、と」

あすみ 「……真冬センセ」

真冬 「……? 何かしら?」


509以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:07:58yuN6bUJk (22/26)

あすみ 「あいつら、べつに先生のこと嫌ってなんかいないと思いますよ」

真冬 「っ……。何の根拠があって、そんなことを言うのかしら」

あすみ 「根拠と言われると弱いですけど……」

あすみ 「アタシも散々進路変えろって先生に言われましたけど、」

あすみ 「……アタシ、べつに真冬センセのこと嫌いじゃないですよ?」

真冬 「………………」

カァアアアア……

真冬 「……し、主観。客観性に乏しい、ただのあなたの感想だわ、それは」

あすみ 「ま、そりゃそうか」 クスクスクス……

真冬 「……失礼するわ。邪魔したわね。唯我君、小美浪さん」

トトトトト……

あすみ 「……結局何も食べずに行っちゃったよ。ま、緒方たちがいるなら仕方ないか」

成幸 「………………」 ニヤニヤニヤ

あすみ 「……あんだよ、後輩。その生暖かい目は」

成幸 「いや、先輩も優しいところあるなぁ、って……」 ニヤニヤニヤ


510以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:08:33yuN6bUJk (23/26)

あすみ 「ほーぅ。いい度胸だな、後輩」

あすみ 「今度真冬センセにあることないこと吹き込んでやろうか?」

成幸 「じ、冗談です! それだけは勘弁してください!」

あすみ 「……ったく。すぐヘタれるようじゃアタシに喧嘩売るのは百年はえーっての」

あすみ 「………………」

あすみ 「……なぁ、後輩」

成幸 「……? なんですか?」

あすみ 「いつか、センセと緒方たち、フツーに話ができるようになるといいな」

成幸 「………………」

成幸 「……はい、本当にそう思います」

成幸 (……本当に、いつになるか分からないし、そんなときが来るのかも分からないけど、)

成幸 (あのまっすぐな奴らと、まっすぐな先生が、一緒に笑い合えるような日がくれば、いいな)

おわり


511以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:13:47yuN6bUJk (24/26)

………………幕間1 「別腹」

うるか 「あ、センパイ! 成幸! 遅いよもー!」

あすみ 「悪い悪い。ちょっと手間取ってさ」

理珠 「先輩の分も取ってありますから、存分に食べてください」

成幸 「ああ、ありがとな……って……」

ドーーーーーン

成幸 「な、なんだこの肉の量は……」

文乃 「へ? 成幸くん、男の子だからたくさん食べるかなと思って、一人前+α取っておいたよ?」

文乃 「ちょっと多かったかな? じゃあ私も一緒に食べるね!」

うるか 「あれだけ食べてまだ食べるの文乃っち……」

文乃 「もちろん! お日様の下で食べるお肉は別腹だよねー!」 ムシャムシャムシャ

あすみ 「ツッコむ気も湧かねーな……」

おわり


512以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:14:20yuN6bUJk (25/26)

………………幕間2 「姉弟」

あすみ (……ん、そういや結局姉弟云々のこと後輩に聞きそびれちまったな)

あすみ (ったく。何が姉弟ごっこだよ。アタシは後輩が弟なんてご免だけどな……)

ポワンポワンポワンポワン………………

成幸(弟) 『あすみ姉ちゃん、受験頑張ろうな!』

成幸(弟) 『大丈夫だよ! 姉ちゃんなら絶対国立医学部受かるよ!』

成幸(弟) 『えへへ。姉ちゃんのために、対策プリントたくさん作ったからな』

成幸(弟) 『俺、姉ちゃんの作ってくれるご飯大好き! 姉ちゃんの料理は世界一だな!』

成幸(弟) 『いつもありがとな、姉ちゃん。姉ちゃん、大好きだよ!』

………………ポワンポワンポワンポワン

あすみ 「………………」 ハッ 「……あ、アタシは何考えて……ん?」

ツーーーーーポタッ……

あすみ 「な、何で鼻血が……」

おわり


513以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 22:18:13yuN6bUJk (26/26)

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。

>>240さんから着想を得て書きました。
ありがとうございました。
夏ももう終わってから投下するなよと自分でも思いますが。
申し訳ないことです。
今回の話はアニメに準拠しているつもりです。


毎週、アニメの話からSSを書こうかなと思います。
近いうちに第二話に関係したSSも投下したいと思います。
ちょっと出足が遅れてしまいましたが、三話以降はアニメ放送後すぐくらいに投下できるようにがんばりたいです。


また読んでくれたら嬉しいです。


514以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/15(火) 23:38:52XP21mx9w (1/1)

おつー


515以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/16(水) 06:33:41YMQGMkAM (1/1)

乙です


516以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/16(水) 12:10:38sWV4VY4k (1/1)

きてるやん!!
おつんこ


517以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/16(水) 15:31:02maOO1N7. (1/1)

乙です
楽しみにしていました


518以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/16(水) 22:43:58EIKuiBbg (1/1)

おつ


519以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/29(火) 21:43:59TGvyu8.2 (1/1)

アニメは旅館後のsns騒動カットか…


520以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/30(水) 23:57:30ipRpMCgc (1/1)

再開来てたか乙
ここのssもアニメ化してほしいわ


521以下、名無しが深夜にお送りします2019/10/31(木) 21:46:25ssobg012 (1/1)

ハロウィンssはよはよ��


522以下、名無しが深夜にお送りします2019/11/06(水) 03:49:42mn.Omhak (1/1)

シエンタ


523以下、名無しが深夜にお送りします2019/11/07(木) 00:15:10iLuObUaI (1/1)

ようやっとアニメ5話まで見たぞ
やっぱり敵対心丸出しの水希ちゃんかわいいよね

だから>>190このssも早くアニメ化して?


524以下、名無しが深夜にお送りします2019/11/14(木) 21:23:53xtkT2/V6 (1/1)

舞ってるで


525以下、名無しが深夜にお送りします2019/11/19(火) 05:04:16PO4bTZT2 (1/1)

やっぱ文系回面白いわ


526以下、名無しが深夜にお送りします2019/11/20(水) 00:19:00tKMIRqCI (1/1)

ほんと1年振りくらいに話進展しましたね


527以下、名無しが深夜にお送りします2019/11/21(木) 01:24:13ZalBax36 (1/1)

本スレで語りたいのに語れないジレンマ
五等分も僕勉も今週は神回よ


528以下、名無しが深夜にお送りします2019/11/22(金) 22:32:2469Y3XYnQ (1/1)

いい夫婦の日記念ssはよ


529以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/01(日) 01:49:56ET2AQN0g (1/1)

アニメが神回だったのでこのスレも復活はよ


530以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/09(月) 19:41:38G3/J96O2 (1/1)




531以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/26(木) 17:05:46Plix4l3. (1/1)




532以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:36:27bivwmP6g (1/18)

>>1です。
すみません、結局長らくお待たせしてしまいました。
待っていてくださった方、いらっしゃいましたらありがとうございます。ごめんなさい。

アニメ二話直後の話と思っていたければ幸いです。
ついでに、桐須先生のお誕生日記念のSSだと思っていただければ嬉しいです。

成幸 「俺ひとりで家事代行サービスですか?」


533以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:41:43bivwmP6g (2/18)

………………朝 メイド喫茶HighStage

マチコ 「そうなの。唯我クンご指名なの。必ずひとりで来るように、って」

マチコ 「しかも時間指定は上限一杯で依頼は掃除だよ。変だよね」

成幸 「はぁ……?」

ヒムラ 「なにそれ? ちょっと怪しくない?」

ミクニ 「唯我クン可愛いからなぁ。ファンの妙齢のお姉さんとかじゃない?」

ヒムラ 「だとすれば、唯我クンが無防備にひとりで家に入った瞬間、パクッと……」

ミクニ 「!? だから時間が上限一杯なのね!? 唯我クンを目いっぱい堪能できるように!」

成幸 (何言ってるんだろうこの人たちは……)

マチコ 「うーん、そんなことになったらあしゅみーが悲しむよねぇ……」

マチコ 「怪しいし、やっぱり断っておいた方がいいかな」

成幸 「ちなみに、どんな方からのお願いなんですか?」

マチコ 「ああ、うん。お名前と住所はこれだよ。この人」

成幸 「……? ん?」 ハッ 「えっ、この人ですか……?」

マチコ 「へ? 唯我クン、知り合いなの?」


534以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:42:13bivwmP6g (3/18)

………………マンション前

成幸 「………………」

成幸 (……なぜあの人がわざわざ俺を指名したのか、理由は分からなくはないけど)

成幸 (でも、何でわざわざハイステージにお願いをしたんだろうか……)

成幸 (ま、いいけどさ。そろそろ時間だし、インターフォン押すか……)

ピンポーーン……ガチャッ

?? 「正確。時間厳守ね。素晴らしい心がけだわ」

成幸 「どうも、こんにちは。ハイステージから家事代行で参りました、唯我です……」

成幸 「……って、わざわざ自己紹介する必要もないですよね……」


成幸 「――……桐須先生」


真冬 「ええ。では、お願いするわ。唯我君」

成幸 「はい。お邪魔します」


535以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:42:48bivwmP6g (4/18)

成幸 (どうせいつもどおりグチャグチャなんだろうな……)

成幸 「……!?」

キラキラキラ……!!!!

成幸 「なっ……!」

真冬 「どうかしたかしら?」

成幸 「……す、すごく綺麗な部屋ですね。桐須先生」

真冬 「あら、どうもありがとう」 フフン

成幸 (すごいドヤ顔だ。がんばって掃除したんだろうな……)

成幸 「でも、家事代行の依頼は掃除になっていますけど……」

真冬 「謝罪。どうやら、生来の綺麗好きがたたってしまったようね」

クスッ

真冬 「……と、いうことで、掃除に関してはしてもらうことはないわ」

成幸 「へ……? でも先生、時間は上限一杯指定されてますけど……」


536以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:43:20bivwmP6g (5/18)

真冬 「ええ。だから、あなたには他に何をしてもらおうかしら」

成幸 「……!?」


―――― 『なにそれ? ちょっと怪しくない?』

―――― 『唯我クン可愛いからなぁ。ファンの妙齢のお姉さんとかじゃない?』

―――― 『だとすれば、唯我クンが無防備にひとりで家に入った瞬間、パクッと……』

―――― 『!? だから時間が上限一杯なのね!? 唯我クンを目いっぱい堪能できるように!』


成幸 (ま、まさか、ヒムラさんとミクニさんが言っていた通り……!?)

真冬 「さ、唯我君。早く出しなさい」

成幸 「だ、出しなさいって、いや、そんな……」

真冬 「どうせ持っているんでしょう? 勉強道具」

成幸 「いや、俺は、その、そういうのは……」

成幸 「………………」

成幸 「……へ?」


537以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:44:10bivwmP6g (6/18)

………………

成幸 「………………」

カリカリカリ……

真冬 「完璧。だいぶ基礎が身についてきているわね。いいことだわ」

成幸 「あ、はい。ありがとうございます、先生」

成幸 (……何をアホな勘違いをしていたんだろうか、俺は)

成幸 (いや、でもまさか、お金を払って俺を家に呼んで、勉強させるとは思わないもんな……)

成幸 (……っていうか俺、何で仕事中に勉強してるんだろう)

真冬 「……ん、そろそろお昼ね。休憩しましょうか」

成幸 「はい、わかりました。お茶でもいれますね」

真冬 「いいわ。君は座ってなさい。私がいれてくるから」

成幸 「あっ……」

成幸 (……俺が動く前に、本当に台所に行ってしまった)

成幸 (俺が家事をしなくちゃならないのに、先生にさせるのは申し訳ないな)

成幸 (っていうか大丈夫かな。また湯飲みでも割ってケガでもしないかな……)


538以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:44:44bivwmP6g (7/18)

真冬 「お待たせ。緑茶よ……って」

真冬 「……救急箱を持って何をしているの、君は」

成幸 「あ、いえ。先生がいつケガしてもいいようにスタンバイしてました」

真冬 「……君は本当に私のことを何だと思っているのかしら」

成幸 (……ドジっこ無防備女教師)

真冬 「今、とてつもなく失礼なことを考えていないかしら……?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「め、滅相もないです! お茶、いただきます!」 ズズズ……

真冬 「まったく……」 ズズズ……

成幸 「………………」

成幸 「……あの、先生」

真冬 「? 何かしら?」

成幸 「どうして俺を指名して家事代行をお願いしたんですか?」

成幸 「しかも、掃除を依頼していたのに、しっかりと掃除してあるし……」

真冬 「前と同じよ。教師の威厳を保つために、小美浪さんには汚い部屋なんて見せられないわ」

真冬 「だから君を指名して家事代行をお願いしたのよ」


539以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:45:14bivwmP6g (8/18)

真冬 「そうしたら偶然掃除をする気になってきて、君が来る前に部屋が綺麗になってしまったの」

真冬 「それだけよ」

成幸 「………………」

成幸 「……いや、それで納得しろというのはいくらなんでも無理ですよ、先生」

真冬 「ん……」

成幸 「………………」 ジーーーーッ

真冬 「……分かったわ。白状するわよ」

真冬 「この前のお詫びよ。それから、日頃の感謝かしら」

成幸 「へ……?」

真冬 「この前、小美浪さんと一緒に家事代行に来たとき、あなたに掃除をさせてしまったでしょう?」

真冬 「あなたに申し訳ない事をしてしまったから、そのお詫びと……」

真冬 「いつも、あなたに掃除をさせてしまって、勉強時間を奪ってしまっているから……」

真冬 「その感謝の気持ちも込めて、バイトの時間も勉強をさせてあげようとしたの」

カァアアアア……

真冬 「羞恥。自分で話すと恩着せがましくて嫌だわ。だから言いたくなかったのよ……」


540以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:46:01bivwmP6g (9/18)

成幸 「先生……」

クスッ

真冬 「唯我君……?」

成幸 「……まったくもう。最初は何事かと思いましたよ。そんなことを考えてくれてたんですね」

成幸 「ありがとうございます。そのお気遣いだけで嬉しいです」

成幸 「でも、さすがに勉強を教えてもらってお金は受け取れないですよ」

真冬 「不可。後で払うからちゃんと受け取りなさい。それは正規の契約に基づいた謝礼なのだから」

成幸 「でも……」

真冬 「日頃掃除をしてもらっているのだから、それくらいさせてちょうだい」

真冬 「でないと、一生あなたに頭が上がらなくなってしまうわ」

成幸 「……わかりました」 ニコッ 「ありがとうございます、先生」

真冬 「それから、もう一つ……約束もあったから」

成幸 「へ? 約束……?」

ピンポーーーーン

真冬 「来たようね。ちょっと待っていてちょうだい」


541以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:46:42bivwmP6g (10/18)

成幸 「?」 (お客さんかな……?)

真冬 「ご苦労様です。どうもありがとう」

成幸 (いや……)

真冬 「……お待たせしたわね。さ、机の上を片付けてくれるかしら」

成幸 「へっ? 先生、それって……」

成幸 「店屋物?」

真冬 「ええ。少し早いけど、お昼ご飯にしましょう」

コトッ

真冬 「これで、やっと約束が果たせるわね。さ、どうぞ」

成幸 「……!?」

成幸 (こ、この四角い器は、お重!? これは、まさか……)

成幸 (噂に名高い超高級品の……)

パカッ

成幸 「ほんとにうな重だー!?」

キラキラキラキラキラ……!!!!!


542以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:47:19bivwmP6g (11/18)

成幸 (キラキラと独特の光沢を放つ焦げ目……)

成幸 (身の合間から見えるタレの染みこんだご飯……)

成幸 (そして何と言ってもこの、香ばしいタレの香り……)

グゥゥゥウウウ……

成幸 (なんて食欲をそそる食べ物なんだ……!!)

成幸 (でも……)

真冬 「? どうかしたかしら?」

成幸 「こ、こんなお高い食べ物を、いただいていいんでしょうか……?」

真冬 「……? 何を言っているの、唯我君。約束したでしょう」

成幸 「えっと……すみません、さっきから言ってる “約束” って……」

真冬 「したわ。小美浪さんとふたりでうちに来たとき」

真冬 「……あなたに掃除をしてもらったときに」


543以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:48:07bivwmP6g (12/18)

成幸 「へ……?」


―――― 『うわっ なんでたった数日で元に戻ってるんですか!』

―――― 『え……? 教師の威厳? はぁ……』

―――― 『えっ うな重!!?』


成幸 「あっ……」 ハッ 「あのときですか!」

真冬 「ええ。思い出してもらえたようで何よりだわ」

真冬 「そういうことだから、遠慮する必要はないわ。食べてちょうだい」

成幸 「じ、じゃあ、そういうことなら……」

成幸 「いただきます!」 モグッ…… 「……!?」

成幸 (う、うなぎやわらかー! タレとからまって、ご飯とよく合うなー!)

成幸 (うな重って、こんな美味しいものなのか……)

モグモグモグ……

成幸 (し、幸せ……) ジーーーン……

真冬 「………………」 クスッ (……まったく。美味しそうに食べてくれるものね)


544以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:49:10bivwmP6g (13/18)

………………夜

成幸 「………………」

ピピピピピピ……

成幸 「あっ、仕事終わりのアラーム……ってもうこんな時間か」

真冬 「時間が経つのを忘れていたということは、集中できていた証拠よ。がんばったわね」

成幸 「はい。いつもより頭が冴えている感じがします。ありがとうございました、先生」

真冬 「……だから、何度も言わせないでちょうだい。日頃のお返しよ」

真冬 「さ、では暗くなる前に帰りなさい。今日は家事代行ご苦労様でした」

成幸 「何もしてないですけどね」

成幸 「うな重もごちそうさまでした。めちゃくちゃ美味しかったです」

真冬 「それも約束を果たしただけよ。気にすることはないわ」

真冬 「……いつも、本当にありがとう」

成幸 「っ……」 ドキッ 「い、いえ。べつに、そんな……」

成幸 (な、なんだろ。今日の先生、妙にしおらしくて、少しヘンな感じだ……)


545以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:49:49bivwmP6g (14/18)

真冬 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

成幸 (な、なんか、調子狂うな……――)

ガタッ……

成幸 「ん……?」

バタバタバタバタドンガラガッシャーン!!!!

成幸 「!?」

真冬 「あっ……」

成幸 (クローゼットと戸棚から一斉に、物が雪崩のようにくずれ落ちてきたぞ!?)

真冬 「………………」

成幸 「……あの、先生? 片付けたって言ってましたよね?」

真冬 「………………」 プイッ 「……一応、片付いてはいたでしょう?」

成幸 「ゴミや不要物をどこかに押し込めることを片付けとはいいませんよ!」

真冬 「む……」


546以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:50:19bivwmP6g (15/18)

真冬 「………………」

プクゥ

成幸 「またそんなむくれた顔をして……」

成幸 (……まったくもう)

クスッ

真冬 「……な、なんにせよ、あなたの家事代行の時間は終わったでしょう。早く帰りなさい」

成幸 「ええ、そうですね。家事代行は終わったので……」

スッ……

真冬 「……っ、何をやっているの。片付けは私がやるわ。だから君は――」

成幸 「――家事代行は終わったので、いつもどおり一緒に片付けをしましょうか、先生」

真冬 「へ……?」

成幸 「今日はいつも勉強を教わるのを、先払いしてもらっちゃいましたし」

クスッ

成幸 「さ、先生も。早くやりましょう」


547以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:50:54bivwmP6g (16/18)

真冬 「唯我君……」

クスッ

真冬 「……まったくもう。またお返しをしなくちゃいけないじゃない」

成幸 「それより何より、まず部屋を汚さないようにしてください」

真冬 「し、辛辣。正論は時に人を傷つけることを知るべきだわ、君は」

成幸 「はは……」

成幸 「………………」

成幸 (……先生、いつも俺が掃除をしていること、感謝してくれてたんだな)

成幸 (でも、先生)


―――― 『時間が経つのを忘れていたということは、集中できていた証拠よ。がんばったわね』


成幸 (それと同じくらい、俺も……)

成幸 (先生が勉強を教えてくれること、感謝してるんですよ)

おわり


548以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:51:46bivwmP6g (17/18)

………………幕間 「におい」

葉月 「んー?」

成幸 「ん、どうした、葉月。兄ちゃんにそんなにべったりくっついて」

葉月 「なんか、兄ちゃんの服から良い匂いがするの。美味しそうな匂い……」

成幸 「あ、ああ。今日兄ちゃん、ごちそう食べて来ちゃったからな……」

成幸 「ごめんな、葉月。いつか兄ちゃんがお金稼げるようになったら、葉月にも食べさせてあげるからな」

水希 「………………」

ギラリ

水希 「……そうだね、葉月。お兄ちゃんから匂いがするね」

水希 「どこの誰か知らないけど、発情した年上のメスネコらしき匂いが……!」

和樹 「そっち!?」

おわり


549以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 00:58:34bivwmP6g (18/18)

>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
長らく間を開けてしまって申し訳ありません。

宣伝というわけではないですが、本日、某イベントに参加します。
夏はこの一連のスレで投下したSSを小説調に直して頒布というかなり手抜きな内容だったのですが、
今回はきちんとイベントのために書いた小説を頒布します。
恐らく明日ぼく勉で参加するのは私だけかと思いますので特定は簡単かもしれません。それが何だというわけではありませんが。
とりとめもない自分語りをしてしまいました。申し訳ないことです。


来年はできるだけ間を開けないようにこのスレにSSを投下し続けたいと思います。
本編も佳境に入ってきたような気がしますが、今後が非常に楽しみですね。明日のアニメもとても楽しみです。
このスレも、時々覗いていただければ幸いです。

本年、見ていただいた皆さん、レスをくださった皆さん、ありがとうございました。
また来年も見て頂ければ、レスをいただければ嬉しいです。


550以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 03:49:05mybs7Tvg (1/1)

おつ。来年もよろしく


551以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/28(土) 04:37:456QT4AYjQ (1/1)

乙です
久しぶりの投下ありがとうございます
来年も宜しくお願いします


552以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/29(日) 16:56:02FLk5IAt2 (1/2)

おおお!!



553以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/29(日) 23:33:11FLk5IAt2 (2/2)

遅れてアニメ見たら酷過ぎてビビったわ


554以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/30(月) 00:50:23GpJqPOZY (1/1)

まあ、作者がうるかエンドにするって決めたんだからしゃあない
もう辛くて原作読めないが
このssスレだけ楽しみにしてます…


555以下、名無しが深夜にお送りします2019/12/31(火) 03:21:53eMIy9H3g (1/1)

アニメネタバレはしないでしょ(願望)
3期を完全に潰された方が辛いよ


556以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/01(水) 08:50:24.YtgyuNg (1/1)

おつんこ!

コミケのタイミング悪いな
あのアニメと同日の開催て
うるか好き以外全滅したで


557以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/01(水) 09:28:23Pg.blAn6 (1/1)

まあ何はどうあれ>>1のssは神
今年も楽しみに待ってます…!!


558以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 18:17:438j7WrGb. (1/2)

後生だからコミケの本委託してくれ


559以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:00:59cJVSX9MM (1/25)

>>1です。
投下します。


【ぼく勉】 理珠 「もう気づいてしまいましたから」


560以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:01:30cJVSX9MM (2/25)

………………年末 七緒図書館

理珠 「うー……」

文乃 「むむむむ……」

うるか (リズりんと文乃っち、難問に当たってるみたいだなぁ)

うるか (クリスマスからずっと根詰めてるもんね。センター受ける組は大変だ)

うるか (でも最近険しい顔してることが多い気がするなぁ。うーん……)

ハッ

うるか 「……ねぇねぇ、リズりん、文乃っち」

理珠 「? なんですか、うるかさん?」

うるか 「大晦日の夜なんだけどさ、一緒に初詣に行かない?」

文乃 「へ? 初詣?」

うるか 「うん! 息抜きとゴーカクキガンも兼ねてさ! 最近ふたりとも根詰めすぎだかんね!」

文乃 「うるかちゃん……」

理珠 「うるかさん……」


561以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:02:26cJVSX9MM (3/25)

文乃 「せっかくだし、行こっか、りっちゃん」

理珠 「そうですね。少しくらいならいいですよね」

うるか 「せっかくだし、みんなも誘っちゃおっか! あたし、海っちと川っちに声かけてみんね!」

文乃 「んー、じゃあわたしも鹿島さんたちに声かけてみようかな」

理珠 「では、私は関城さんに声をかけてみます」

うるか 「えへへ、なんか楽しみになってきたね! 屋台で色んなもの食べよーね!」

理珠 「まったく……。うるかさん、メインはお参りと合格祈願ですからね」

文乃 「ふふ、そんなこと言って、りっちゃんも屋台のうどんが楽しみなんじゃない?」

理珠 「む……。それは、否定しませんが……」 プイッ 「文乃はずるいです」

文乃 「えへへ、ごめんごめん。わたしも屋台の食べ物楽しみだよ」

文乃 「アメリカンドッグに焼き鳥に焼きそば……。あと牛串とか……」

うるか 「ふ、文乃っち。どんだけ食べるつもりなの……」


562以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:04:14cJVSX9MM (4/25)

うるか 「……あっ、でさ、あのさ」

カァアアアア……

うるか 「べ、べつに他意はないけどさ。その……のけ者にするみたいで嫌だし……」

うるか 「なっ、なな、成幸もさ、その……誘って、みよっか、とか……///」

うるか 「べ、べつにヘンな意味はないからね!? と、友達として? 誘ってあげるだけで……」

理珠 「おお、それはいいですね。成幸さんこそ根を詰めすぎな気がします。いい気晴らしになると思います」

うるか 「そ、そうだよね!」 パァアアアアアア……!!! 「じゃあ、こばやんと大森っちに誘ってもらうね!」

文乃 (うるかちゃん乙女すぎるよ。色々とだだ漏れだよ……)

文乃 (ここにいるのがりっちゃんじゃなかったら色々とお察しされてるところだよ……)

理珠 「……成幸さんが、来る。成幸さんと一緒に、お参り……///」

理珠 「ふふふ。楽しみです……///」

文乃 (りっちゃんはりっちゃんで色々と漏れてるよ……)

文乃 (まったく。ふたりとも可愛いんだから) クスッ

文乃 「………………」

文乃 (……成幸くん、来るのかぁ)


563以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:04:57cJVSX9MM (5/25)

文乃 (べつに、だからってわたしは、ふたりと違って何かあるわけじゃないけど……)


―――― 『ねーねーどうかなぁ唯我君? ゆ・か・た! 似合ってる?』

―――― 『ふ 2人とも似合ってるな』

―――― 『古橋なんてとくに板についてるというか…… 大和撫子って感じだよな』


文乃 「………………」

文乃 「……わたし、振り袖でも着てっちゃおうかな」 ボソッ

文乃 (そしたらまた、夏祭りの時みたいに褒めてくれるかな……)

ハッ

文乃 (わ、わたしってば、何バカなこと考えてるのかな。そんなの……)

うるか 「文乃っち……?」 理珠 「文乃……」 ジーーーーッ

文乃 「へ……? へぇ!?」

文乃 (ひ、ひょっとしてわたし、声に出してた!?)

うるか&理珠 「「………………」」 ジーーーーーーーーッ

文乃 (ま、まずいよ~~~! 2人とも滅茶苦茶こっち見てくるよ~~~~!)


564以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:06:20cJVSX9MM (6/25)

うるか 「いいね! 振り袖って着たことないけど着てみよっか!」

文乃 「へ……?」

理珠 「わたしも興味があります。和装は慣れていますが、振り袖は着た事がありません」

文乃 「あ……そ、そうだよね。ふたりも着てみたいよね!」

文乃 (せ、セーフ! 成幸くんに関してのところは声に出してなかったみたい!)


―――― ((そしたらまた、夏祭りの時みたいに褒めてくれるかな……))


文乃 「っ……」

文乃 (わたし……何考えてるんだろ。成幸くんはわたしの弟みたいなもので、りっちゃんとうるかちゃんの好きな人で……)

文乃 (でも……――)

うるか 「――でも、振り袖ってどうやって着るの? っていうか、家にあるかなー」

文乃 「へ!? あ、そ、そうだね。たぶん美容室とかでレンタルと着付けをしてもらうんだと思うけど……」

文乃 「……よく考えたら年の瀬の今からで間に合うかな。もうどこも予約で一杯かな」

うるか 「うーん……」

理珠 「美容室ですか……」


565以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:07:53cJVSX9MM (7/25)

理珠 「………………」

文乃 「りっちゃん?」

うるか 「リズりん?」

理珠 「……ちょっと聞いてみないと分かりませんが」

理珠 「予約が空いているであろう美容室に心当たりがあります」


566以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:08:30cJVSX9MM (8/25)

………………大晦日

文乃 「………………」


―――― 理珠 『電話をしてみたところ、快くオーケーをしてくれました』

―――― 理珠 『振り袖もたくさんあるから、好きなものを選んでもらって構わないとのことです』

―――― 理珠 『大晦日の夕方くらいに伺う予約を取ったので、待ち合わせて一緒に行きましょう』

―――― うるか 『さっすがリズりん! すごいね!』


文乃 (……水を差すようで嫌だったから何も言わなかったけど、怪しいよね)

文乃 (着付けまでしてくれる美容室って、この時期すごく忙しいんじゃないのかな……)

文乃 (しかも、ついこの前まで自分で髪を切ってたりっちゃんがそんな美容室をしってるなんて……)

文乃 (……変なお店だったら、わたしがりっちゃんとうるかちゃんを守らないと)

うるか 「あ、文乃っちー! こっちこっちー!」

文乃 「あっ、うるかちゃん、りっちゃん」

理珠 「全員揃いましたね。では――」

「――――きゃァーーーーーーッ!! すごい逸材揃いだわァ!?」


567以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:09:02cJVSX9MM (9/25)

文乃 「!?」

ドドドドドド……!!!!

文乃 (変な女の人がすごい勢いでこっちに走ってくる!? 変質者!?)

理珠 「あちらの方が美容室の烏丸さんです」

文乃 「あれが!?」

烏丸 「は、はぁ、はぁ……」 ゴクリ 「ち、近くで見ると、改めてすごいわァ……!」

烏丸 「緒方さん、ご紹介ありがとう! あなたのお友達だけあって美人揃いねェ!」

烏丸 「ダイヤにルビーにサファイア……! 壮観な光景だわァ!!」

ツーーーー……

烏丸 「い、いけないわァ。興奮しすぎて鼻血が……」

文乃 (紗和子ちゃんといいこの人といい、りっちゃんはこの手のヘンタイに好かれるフェロモンでも出してるのかな!?)

うるか 「あはは、なんかすごい人だねぇ、文乃っち」

文乃 「あの人を笑って済ませられるあたりうるかちゃんも大物だよね……」

牧上 「……あっ、いた! ちょっと、店長! 勝手に店飛び出してどこかに行かないでくださいよ!!」


568以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:09:47cJVSX9MM (10/25)

………………SALON'DE KARASUMA

牧上 「先ほどは店長が大変失礼致しました……」 ペコペコ

文乃 「い、いえ……」 (この店員さん、苦労してそうだなぁ)

牧上 「ヘンな人ですが、腕は確かなので安心してくださいね」

烏丸 「牧上さァん! 準備できたかしら!? 私もう我慢できないわァ!」

文乃 (そうは言っても不安だよ……)

烏丸 「ん……? んん!?」 ズズイ

文乃 「ひっ……!? な、なんですか?」 (近い! 近すぎだよこの人!)

うるか 「ほんとにすごい人だね、文乃っち」 クスクスクス

文乃 「笑ってられるうるかちゃんもなかなかだよ……」

烏丸 「この香りは……あなたたち、恋をしているわねェ?」

文乃&うるか 「「!?」」

文乃 「な、何を、いきなり、そんな……」

うるか 「こ、恋なんて、なんのことやら分からないかなぁ~……?」


569以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:10:18cJVSX9MM (11/25)

烏丸 「誤魔化してもダメよォ。この毛先から香る恋する乙女のフレグランスを見落とす私じゃないわァ」

烏丸 「し・か・も」

クスッ

烏丸 「この後、ひょっとしてその相手と会う予定があるんじゃないかしらァ?」

文乃&うるか 「「!!??」」 ギクギクッ

うるか 「な、何のことだか~、わ、わかりませんなぁ~」

アタフタアタフタ

うるか 「こ、恋とかフレグランスとか、身に覚えがないというかなんというか~」

文乃 (誤魔化すうるかちゃんも可愛いなぁ……) ホッコリ

烏丸 「武元さんは認めてくれないようだけど、あなたはどうかしら? 古橋さん?」

文乃 「へ!? い、いやいや、わたしも何のことだか分かりませんけど!?」


570以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:11:22cJVSX9MM (12/25)

烏丸 「あら、ほんとにィ?」

文乃 「本当ですよ! 恋とか、そんなの……」


―――― 『星のこと話してる古橋 俺は好きだけどな』

―――― 『起きてる』


文乃 「!?」

文乃 (わ、わたしのバカバカバカ! 何で成幸くんのことなんて思い浮かべてるのよー!)

文乃 (成幸くんはりっちゃんとうるかちゃんの好きな人なんだからー!)

文乃 (そういうのじゃないんだからー!)

ポカポカポカポカポカ!!!

うるか 「ふ、文乃っち大丈夫? 急に自分の頭たたき出してどうしたの……?」

烏丸 「フフフ、可愛い子たちねェ」

烏丸 「あら……?」

理珠 「………………」 ペラ……ペラ…… 「……ふむ、なるほど。こんな髪型もあるのですね……」

理珠 「毛染めは……受験に支障が出る可能性があるのでやめておいた方がいいですね」


571以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:12:18cJVSX9MM (13/25)

烏丸 (一心不乱に女性向け雑誌を読んでいる……?)

理珠 「ふむふむ……」

烏丸 「………………」


―――― 『あ あの…… 美容室って初めてでよくわからないのですが……』

―――― 『そこまでするものなのですか……? 私あまりお金は……』


烏丸 (以前とは全然違うわね。すごくいいことだわ……)

烏丸 「……緒方さん、ちょっと待っていてちょうだいねェ。先に二人をやってしまうから」

理珠 「はい、わかりました。待ってます」

烏丸 「……さ、では始めましょうか、武元さん、古橋さん」

烏丸 「ふたりの魅力を振り袖で最大限引き出すヘアメイクをしてあげるわァ!」

うるか 「はーい! よろしくお願いしまーす!」 文乃 「あはは……よろしくお願いします」

烏丸 「さァ! ルビーとサファイアの原石をピッカピカに磨いていくわよォ!」

牧上 「店長! 採算のことは考えてくださいね!?」


572以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:19:15cJVSX9MM (14/25)

………………

うるか 「………………」 文乃 「………………」

キラキラキラ……!!!!

うるか 「な、なんか、すごいね、文乃っち」

文乃 「う、うん。少し髪を整えてもらっただけなのに、なんか、綺麗になった気分……」

文乃 (腕は確かだったんだなぁ、あの人……)

烏丸 「フフ♪ お相手さんに褒めてもらえるといいわねェ」

うるか 「!? だ、だから、べつに相手なんて……」

うるか (でも、成幸が褒めてくれたら……えへへ……///)

文乃 (ふふ、いちいち可愛いなぁ、うるかちゃん)

文乃 (ダメダメ朴念成幸くんが褒めてくれるわけないけど、でも、もし褒めてくれたら……)

文乃 「……///」

牧上 (店長じゃないけど、このふたり可愛いな……)

牧上 「……では、着付けとメイクをしますので、こちらへどうぞ」

文乃&うるか 「「はーい!」」


573以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:19:45cJVSX9MM (15/25)

烏丸 「……さて、お待たせしたわねェ、緒方さん」

スッ

烏丸 「前より髪が伸びたわねェ。どうする? 前みたいにエクステを使ってみる?」

理珠 「いえ、あれは重くて大変なので……」

理珠 「それに、今回は一時的なものではなく、その髪型をできるだけ維持したいと思っているので……」

烏丸 「あら? イメチェンしたいってことかしらァ」

烏丸 「なら、どんな髪型にしたいかしら?」

理珠 「それが……先ほどから雑誌を読んでいるのですが、よく分からなくて……」

理珠 「どんな髪型が有効なのか、まるで分からないのです」

烏丸 「有効……?」

理珠 「はい」

スッ……

理珠 「好きな相手が、どんな髪型が好きか。どんな私なら好きになってくれるか……」

理珠 「それが、まるで分からないのです」

烏丸 「!?」


574以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:20:45cJVSX9MM (16/25)

烏丸 「お、緒方さん……?」

理珠 「? どうかしましたか?」

烏丸 (す、すごい変化だわァ! 進歩というべきかしらァ!?)

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

烏丸 (それにしても、とんでもなくストレートに感情を表す子ね……)

烏丸 (不覚だわァ。この私がこんなにドキドキさせられるなんて)

理珠 「……あの、烏丸さん。だから、お願いしたんです」

理珠 「烏丸さんにお任せします。私を、可愛く、綺麗に、魅力的に、してください」

理珠 「私はもう……」


―――― 『私は すこぶる ゲームに弱いのですね』

―――― 『好きになれました いいえ たぶん……』

―――― 『大好き です』


理珠 (……私はもう、気づいてしまいましたから)


575以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:21:20cJVSX9MM (17/25)

理珠 「文乃も、うるかさんも、とても綺麗な人です。そんなふたりと一緒だからこそ……」

理珠 「私を、あのふたりと同じくらい……いえ、あのふたりより綺麗にしてください」

烏丸 「緒方さん……」

理珠 「……そんなことが不可能なのは分かっています。でも、私は……」


―――― 『ああ そうか』

―――― 『この人は 私のなりたい私だ』

―――― 『私の…… なれない私だ』


理珠「……好きになってほしい相手がいます。その人に振り向いてほしいから」

理珠 「私の好きな人に、私を好きになってもらいたいから」

理珠 「だから……」

烏丸 「……あなた、変わったわね。以前とは大違いだわ」

烏丸 「良い恋ね。本当に素敵な恋をしているのね」

烏丸 「……いいわァ、緒方さん。燃えてきたわよォ……!!」


576以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:21:52cJVSX9MM (18/25)

烏丸 「全力でいくわ。いいえ、全力を超えていくつもりで……」

理珠 「……烏丸さん」


―――― 『はァ……』

―――― 『フゥ…… やる気が出ないわァ 牧上さん……』


烏丸 (やる気が出ず、無為に時間を過ごしていた私をたたき起こしてくれたこの子のために……)

烏丸 (……そして、この子なら)

烏丸 (いいえ、この子だからこそ、私ももっと高みを目指せる気がするわァ……!)

烏丸 「あなたというダイヤを、ピッカピカに磨き上げてあげるわァ!!」

烏丸 「そしてあなたの恋を、きっと成就させてみせるわァ!!!」

カッ!!!!!!

理珠 「は……はいっ!」

理珠 「よろしくお願いします!!」


577以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:23:04cJVSX9MM (19/25)

………………

文乃 「いっえーい!」 パシャッ

うるか 「えへへ、なんか振り袖で自撮りって照れちゃうね。自分じゃないみたいだよ」

文乃 「あはは、でもうるかちゃんとっても似合ってるよ。可愛いよ」

うるか 「えへへ、ありがと、文乃っち。文乃っちもめっちゃ似合ってるよ」

うるか 「こーいうのなんて言うんだっけ? イタについてる、って感じ?」

文乃 「……ほう? 誰のどこが板だって?」 ズイッ

うるか 「ど、どしたん、文乃っち。なんか怖いよ」 アセアセ

うるか 「それにしても、リズりん遅いね。どうかしたのかな」

文乃 「そういえば、わたしたちより時間かかってるね。大丈夫かな」

うるか 「リズりんのおっぱいが収まる振り袖がないとかかなー? なんて……――」

文乃 「――ひょっとしてわたしに喧嘩を売るのが目的かな?」

うるか 「だからなんで怒ってるの文乃っち!?」

スッ……

牧上 「お待たせしました。緒方さんも着付けが終わりました」


578以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:23:52cJVSX9MM (20/25)

うるか 「あ、文乃っち、終わったみたいだよ……って」

文乃 「うるかちゃん? ねぇ、同じことをわたしの胸を見ながらでも言えるの……って」

理珠 「あ、文乃、うるかさん。お待たせしてしまってすみません」

キラキラキラ……!!!!

うるか 「り、リズりん……?」

文乃 「りっちゃん……?」

理珠 「! ふたりとも、振り袖がよくお似合いですね! とても綺麗です!」

うるか 「へ? あ、う、うん。ありがと」

文乃 「ありがとう、りっちゃん……」

理珠 「? ふたりとも、どうしたのですか? 何か様子が変ですが……」

理珠 「……はっ!? ひ、ひょっとして、私何か変ですか!? 似合っていないですか!?」

理珠 「や、やはり、髪型をいじってもらうべきではなかったのでしょうか……」

うるか 「!? ち、違うよ? なんていうか、その……」

文乃 「似合ってないなんてことないよ! とっても綺麗だよ、りっちゃん! ただ……」

理珠 「!? その、なんですか、うるかさん! ただ、なんですか、文乃!」


579以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:24:49cJVSX9MM (21/25)

うるか 「……キレイになりすぎじゃない、リズりん」

理珠 「……へ?」

文乃 「うん。なんていうか、雰囲気が大人っぽくなったっていうか……」

理珠 「き、綺麗……。大人……」

カァアアアア……

理珠 「お、お世辞でも嬉しいです。ありがとうございます」

うるか 「お世辞なんかじゃないよ! リズりんめっちゃキレーだよー!」

文乃 「うんうん! ほんと、雰囲気が変わっちゃって一瞬誰だか分からなかったくらいだよ!」

理珠 「ふ、ふたりとも褒めすぎです……///」

理珠 (……でも、良かった。私は、少しでもふたりに近づけたでしょうか)

理珠 (成幸さんも……)

カァアアアア……

理珠 (……キレイと言ってくれるでしょうか)

文乃 「………………」 クスッ (……りっちゃん、本当に変わったな)


580以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:25:41cJVSX9MM (22/25)

文乃 (……ねぇ、りっちゃん)


―――― 『好きになりたかったはずの自分が どんどん嫌いになる』

―――― 『私は文乃 ずっとあなたのようになりたかった けれど昔以上に 今はそれが遠く感じる』


文乃 (泣きそうな顔であんなことを言っていたりっちゃんは、もういないんだね)


―――― 『好きになれました いいえ たぶん……』

―――― 『大好き です』


文乃 (りっちゃん、がんばってね。うるかちゃんは強敵だよ)

文乃 (……ふふ、成幸くんったら、こんな美少女ふたりに好意を寄せられて、幸せ者だね)

ズキッ

文乃 (っ……)

文乃 (……痛くない。苦しくない。何も、ない)

文乃 (だってわたしは、りっちゃんとうるかちゃんの、友達なんだから……)

おわり


581以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:26:16cJVSX9MM (23/25)

………………幕間1 「裏で」

智波 「ってことで、うるかに頼まれたんだけど、陽真くん、唯我くんのこと初詣に連れ出せる?」

陽真 「それくらいならお安いご用だよ。成ちゃんにも息抜きが必要だし」

智波 「でも、ごめんね、陽真くん。ふたりきりで初詣できなくなっちゃって……」

陽真 「気にしなくていいよ。俺は、友達を大事にする智波ちゃんが大好きだよ」

智波 「陽真くん……」

ギュッ

智波 「わたしも、そんな陽真くんが大好き……///」

あゆ子 「……うん、色々言いたいことはあるが、」

奏 「とりあえず俺らがいないみたいな空気で話を進めるのはヤメロ」


582以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:26:53cJVSX9MM (24/25)

………………幕間2 「採算」

牧上 「でも店長、うちの店、振り袖三着セットもあったんですね。私見たことないですけど」

烏丸 「当然よォ。だって、緒方さんに三人分の着付けとレンタルをお願いされてから買ったんだもの」

牧上 「へ……?」

烏丸 「京都から取り寄せた最高級の振り袖よォ。ふふふ、それをしっかりと着こなすあの三人の行く末が怖いわァ……!」

牧上 「………………」

烏丸 「……? 牧上さん?」

牧上 「店長……」

クワッ

牧上 「久々のお客さんなのに、完全に赤字じゃないですかーーーーー!!」

牧上 「ただでさえ閑古鳥が鳴いてるのにーーー!! どうやって年を越すんですかもぉおおおおおおお!!!!」

おわり


583以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 20:29:00cJVSX9MM (25/25)

>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

年末に間に合えばよかったのですが無理でした。
今年も読んでもらえると嬉しいです。

また投下します。


584以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 21:22:26M8JcjeDk (1/1)

乙です、次も期待しています


585以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/02(木) 22:49:408j7WrGb. (2/2)

おつぞ


586以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/03(金) 00:18:360mZtDmLA (1/1)

おつ


587以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:20:22i657rC06 (1/16)

>>1です。投下します。

>>474さんリク書きました。


【ぼく勉】 蝶野 「あなたが感謝してくれたから」


588以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:20:58i657rC06 (2/16)

………………三学期 蝶野家 朝

蝶野 「………………」

パチッ

蝶野 「………………」

リリリリリリリリリリ……!!!!

……カチャッ

蝶野 「………………」

蝶野 (……三学期、三年生は自由登校)

蝶野 (いつものくせで、目覚ましをかけてたみたいっスね)

蝶野 (目覚ましがなかったところで、結局その前に目が覚めてるんだから、習慣ってすごいっス……)

蝶野 「………………」

蝶野 (受験生としては、さっさと起きて勉強をするべきっスけど……)

蝶野 (……とりあえず、SNSでも見て、と……って、うわっ)


589以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:21:28i657rC06 (3/16)

………………タイムライン

「バタフライフィールドの占いが更新されなくなって早数日……」

「バタフライフィールドの占いがないと不安で会社に行くのが怖いです」

「お願いだから早く復活して!」

………………

蝶野 「あー……」

蝶野 「………………」

蝶野 (……見なかったことにして、ネットニュースでも、っと……わっ)

………………ネットニュース

【速報】バタフライフィールドのブログコメ欄、オーバーフロー

【悲報】テレビ局も困り果てた!? バタフライフィールドはどこへ!?

………………

蝶野 「………………」

蝶野 (……冬休みに入ったから更新お休みしてたらすごい騒ぎになってるっスね)

蝶野 (テキトーにやってるだけなのになぁ)


590以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:24:10i657rC06 (4/16)

蝶野 「………………」

ポチポチポチポチ……ピッ

蝶野 「……まぁ、これで文句はないっスかね……――」

――――ピロンピロンピロンピロンピロン!!!!!

蝶野 (こ、コメントがすごい勢いで増えているっス……)

蝶野 (こんなことで感謝感激されるとは、なんともはや……)

蝶野 「………………」

蝶野 (……まぁべつに、悪い気はしないっスけど)

蝶野 「………………」

蝶野 (目、覚めちゃったし……)

蝶野 (久しぶりに学校にでも行ってみるっスかね……)


591以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:26:00i657rC06 (5/16)

………………

 一年生の、晩秋の頃のことだっただろうか。

 『おはよ、蝶野さん』

 『おはようっス、古橋さん』

 その人は、百人中百人が認めるであろう、美しい女性だった。

 同級生で同性の自分すら――いや、きっとクラスメイト全員が見惚れるくらい、美しい女性だった。

 『今日も冷えるね。冷え性だから困っちゃうよ』

 『午後から雨みたいっスよ。だからもっと寒くなるかもしれないっスね』

 『ええっ!? 雨なの!? 天気予報で言ってなかったから傘持ってきてないや……』

 『あー……』

 いらないことを言ったと思った。

 私は、天気予報なんて見てはいない。なんとなく、分かるから言っただけだ。

 私にはなんとなく分かる。見える。午後、雨が降ることが。

 自分でも気味が悪いことだが、分かるのだ。

 自分でも気味悪く思えることを、どうして言ってしまったのだろう。


592以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:26:40i657rC06 (6/16)

 『雨、降るのかぁ……』

 『あ、いや、天気予報で降らないって言ってたなら、降らないかも……――』

 『――よしっ! いまのうちに職員室で傘を借りてこよう! 降り出してからじゃみんな殺到するもんね!』

 『へ……? いや、でも、天気予報では降らないって……』

 『信じるなら、天気予報なんかより友達の言葉でしょ』

 その人は、あっけらかんとそう言った。

 『じゃ、職員室行ってくるね、蝶野さん』

 『あ、は、はいっス……』

 その人は、職員室に向かう素振りを見せたかと思えば、パタリと立ち止まり。

 『あ、言い忘れることだった。

 その美しい顔で、咲った。

 『雨のこと教えてくれてありがとね、蝶野さん』

 その笑顔を、きっと、私は一生忘れないだろう。

 本当に本当に美しかったのだ。


593以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:27:27i657rC06 (7/16)

………………通学路

蝶野 「………………」

蝶野 (……二年以上も前のことっスね)

蝶野 (それから、かしまんといのぽんとも意気投合して、いばらの会を作ったんスよね)

蝶野 (あの人の笑顔を曇らせたくないから。あの人を、近くで見守るために)

蝶野 (でも、あの人は……)

蝶野 「………………」

蝶野 (……段々と、笑わなくなっていった)


594以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:28:15i657rC06 (8/16)

………………

 『おはよう、蝶野さん』

 『あ、おはよっス、古橋さん』

 それは表面的には何も変わらず訪れた、些細な変化だ。

 疲れるような、辛いような、苦しいような。

 そのどれとも違うような、複雑な何かが見えた。

 私には、猪森さんのように、超常的な何かを見る力はない。

 けれど、なんとなく、行く末が見える。

 なんとなく、雨が降る、だとか。なんとなく、よくないことが起こる、だとか。

 目の前に相対した人の、少し先が、漠然と見える。

 『……大丈夫っスか、古橋さん』

 『へ? 何が?』

 その人は、出会った頃と変わらない笑顔で、あっけらかんと言った。

 『大丈夫だよ。元気も私の取り柄の一つだからね!』


595以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:29:13i657rC06 (9/16)

 『っ……』

 その瞬間、見えた。

 見えてしまった。

 その人が――美しいその人が、苦悶の表情を浮かべ、涙する姿が。

 その人の将来に、良くないことが――とても良くないことが起こる、その未来が。

 『そ、そうっスか。なら、良かったっス……』

 けれど、私はそれ以上何も言えなかった。

 何を言っても、力になれないと思ったから。

 そのときから、そう。

 私は、ずっと。

  ((助けて))

 待ち続けていたのだろう。

  ((誰か、この美しい人を、助けて))

 彼女に手を差し伸べてくれる、王子様のような人が、現れるのを。


596以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:30:14i657rC06 (10/16)

………………通学路

蝶野 「………………」

蝶野 (……で、また、なんというか、タイミングが良いというか悪いというか……)

成幸 「……ん? あ、えっと、蝶野……で合ってるか?」

蝶野 「おはようっス。合ってるっスよ。古橋さんのクラスメイトの蝶野っス」

成幸 「おう、おはよ。自由登校なのに朝早くに登校とは感心だな」

蝶野 「そっちも同じじゃないっスか」

成幸 「せっかくだし学校まで一緒していいか?」

蝶野 「それはまぁ、構わないっスけど……」

蝶野 「大丈夫っスかね? 唯我ファンに刺されたりしないっスか?」

成幸 「ははっ、なんだそりゃ。俺のファンなんか俺の弟妹くらいだから安心していいぞ」

蝶野 (半分冗談半分本気だったっスけど、本当に無自覚っスね、この人……)

蝶野 (あなたの周りの女子、ほとんどあなたのファンっスよ)

蝶野 (……って言っても、信じないっスよね)

蝶野 (うちの姫も含めて、みんなあなたのファンっスよ。まったく……)


597以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:31:14i657rC06 (11/16)

………………

 三年生に上がってすぐのときだ。

 その人は、とある男子生徒と出会った。

 その人にかかっていた、暗い暗い何かが、少し晴れて見えた。

 少しずつ、本当に少しずつだけれど、暗い何かが減っていくのが分かった。

 それと同時に、その人の未来が、少しずつ変わっていくのが分かった。

 相変わらず暗い未来だったけれど、明確に変わった。

 その人が、ひとりきりではなくなった。

 どんなに苦しいことや辛いことがあっても、誰かが一緒にいてくれるような、そんな未来。

 そして、数ヶ月が経ったある日。

 それは、劇的に変化した。

 ピカピカと光り輝いて見えた。

 元々美しかったその人が、なお一層輝いて美しく見えた。


598以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:32:43i657rC06 (12/16)

 『何かいいことでもあったっスか?』

 私は、思わずそう聞いていた。

 『えっ? い、いいことって、べつに……』

 その人は、逡巡した後、こっそりと教えてくれた。

 『……実は、お父さんと仲直り……ってわけじゃないけど、なんていうか……』

 『少し、腹を割ってお話できたんだ。進路も認めてくれるって言ってくれて……』

 『あとは、成幸くんが……』

 『……って、これは絶対言っちゃダメな奴だ! 今のなし! なしだからね、蝶野さん!』

 ああ、もう結果なんてわざわざ言うまでもないだろうけれど。

 その人の未来は、決定的に変わっていた。

 私には、たしかな未来は見えない。はっきりとした何かは見て取れない。

 占いのようなものだ。不定形の、もやのようなカタチでしか分からない。

 けれど、その人の未来が、美しく切り替わったのだけは、分かった。

 きっと夢を叶え、多くの人に囲まれて、幸せに生きているであろう未来が、見えたのだ。


599以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:33:27i657rC06 (13/16)

………………通学路

蝶野 「唯我さんは、今日はどうして登校するんスか?」

成幸 「ん、ああ、今日は古橋と約束があるんだよ。センター前の最終確認だな」

成幸 「センターまで十余日。あんまり猶予はないけど、最後までできることはしてやりたいからな」

蝶野 「………………」 クスッ 「……まじめっスねぇ」

成幸 「悪かったな。俺はどうせ、ガリ勉しか能がないつまらない男だよ」

蝶野 「そんなこと言ってないっスよ」

ニコッ

蝶野 「唯我さんはカッコ良くて、頼りになるって思ってるっスよ。本当に」

成幸 「っ……」

成幸 「そ、そうかよ……」 プイッ

成幸 (お世辞でも同級生にカッコいいとか言われると、照れるな……)

蝶野 「………………」

蝶野 (……そう、本当に)

蝶野 (本当にそう思ってるっスよ、唯我さん)


600以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:34:35i657rC06 (14/16)

………………

 ―――― 『雨のこと教えてくれてありがとね、蝶野さん』

 あの日、あなたの笑顔が嬉しかったから、占いも始めた。

 ブログで発信したら、たくさんの人が喜んでくれて、良かったと思った。

 私にたくさんのものをくれたあなたのために、恩返しがしたいと思った。

 あなたが好きな――きっとあなたを救ってくれたのであろう、彼と。

 末長く結ばれてほしいと思った。

 でも、残念。

 私には、はっきりとした未来は見えない。

 だから、あなたの好きな彼の未来を占っても、やはり幸せそうな姿しか、見えない。

 その隣に立っている、誰かの正体までは、分からない。

 けれど、ああ、願わくは。

 彼の隣で立っている誰かが――彼の手を取る誰かが、あなたであることを。

 あなたが彼の隣で、幸せになることを。

 おわり


601以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:35:17i657rC06 (15/16)

………………幕間 「似た者父娘」

文乃 「………………」

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

文乃 「……!? バタフライフィールドのブログが更新された!?」

零侍 「何!? それは本当か、文乃!?」

文乃 「よ、良かったよぅ。最近これを見ないと少し不安だったから……」

零侍 「ああ、本当に良かった。私もこれがないと不安でな……」

 父娘そろってすっかりバタフライフィールドにハマってました。

おわり


602以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:39:35i657rC06 (16/16)

>>1です。

完全な妄想です。私の脳内で補完した内容が大変多いです。
不快に思われた方がいたら申し訳ないことだと思います。

3-Aの生徒ほぼ全員が古橋姫の見た目の美しさだけに心酔しているとは思えないので、
きっと皆何かしら古橋姫の内面の美しさに触れる機会があったのだろうなと思っています。
かしまんもいのぽんも、きっとそうだと思っています。


あとすみません、今回のSSと関係ないですが、ひとつ前の理珠さんの話ですが、
皆さんお分かりと思いますが原作123話の直前のつもりです。
理珠さんのイメチェンには、絶対に烏丸さんが関わってるだろうと踏んだ私の妄想です。


また投下します。


603以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 00:55:23bSUr.7/U (1/1)

おつ


604以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 03:18:1270dsccVA (1/1)

おつです


605以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/13(月) 10:59:55mnBZANRY (1/1)

ええな


606以下、名無しが深夜にお送りします2020/01/14(火) 02:06:38ot7Jjn3M (1/1)

蝶野さんにこんな裏設定があってもいいよね