394 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:40:05COshComs (8/25)



「ん、んむ、ぅ、はぁ」

 てらてら光るそれへと舌を這わせる。愛おしむように、慈しむように。

「ちんちん、す、ごぃ」

 大きく舌を出して、口を開いた。

「て、とく……きもちかった、ですか? はっちゃん、のぉ、おく、……おくち、まんこ、きもちぃ、かったぁ?」

 俺の返事を待たずして、また奉仕しようとするハチを、一旦押し留める。彼女は上目遣いでこちらを見やり、本当にわけがわからない様子で、泣きそうにすらなっていた。
 なんで? なんで? そう無言で訴えかけてきている。

 正直なところ、変貌ぶりに俺は少し気後れしてしまったというのが本音ではあるのだが、理解との同時進行でもあった。きっとハチは「そういう」気質なのかもしれない。
 誰にだって性欲はある。あとは多寡の問題でしかない。それでさえ、人に迷惑をかけなければ、どうだっていいことなのだ。
 ハチは肉体関係を通じて性欲の処理ができればいいじゃないかと言っていた。あの言葉はどうやら少なからず本当らしい。


395 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:41:59COshComs (9/25)


 満足してくれるなら、それでいいじゃないかという気持ちは、確かに、ふつふつと湧いてくる。
 自分に都合のいい考えなのかもしれないが。楽な方に逃げているだけなのかもしれないが。

「してもらってばっかりは、不公平……だろう」

「……ですね」

 うなじにキスを降らせる。ちゅ、ちゅ、と音が鳴るたびに、小刻みな嬌声が耳元へと届いた。
 ゆっくり水着の肩紐に指をかけ、左、そして右、爪を立てないように丁寧に降ろしていく。ハチはその間ぺたぺた俺の腹筋や背筋を触りながら、体を身悶えさせて脱がせやすいように誘導してくれた。
 白い肌は、水着に隠れていた部分がより白かった。少し窮屈な胸元ばかりはてこずったが、次第に慣れる。

 弾力のある胸が零れ落ちるように水着から解き放たれた。汗で蒸れていて、深い谷間には珠のような汗さえ滲んでいた。普段服の上から見るだけでもボリュームの感じられたハチの胸は、今なおはっきりと主張している。
 うなじから首筋、鎖骨とキスの位置を変え、ついに胸元へと下りた。汗のせいか、少し塩辛い。それでいて、香水なのか、洗剤なのか、ボディソープの類なのか、柑橘系の爽やかさ。僅かに赤子のような甘いにおいもする。

 ハチは俺の体を掴む手に一層の力を込めた。


396 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:43:09COshComs (10/25)


「……」

 俺は一旦ハチから顔を離し、ぼんやりとしたハチの両足、膝の部分から一気に掬い上げる。一緒に背中をもう片方の手でかかえて、所謂「お姫様抱っこ」というやつだった。

「え、え?」

 困惑するハチ。しかし、俺がベッドまで連れていこうとしているのだと気付くと、すぐに口角を緩めた。すっかりしまりのない顔になってしまっている。

「……サイズあってんのか、あれ」

「あは。だいじょうぶ、です。謎の技術は、すごい、ですね」

 自室のベッドにハチを横たえる。まさかこんなことになるとは思っていなかったため、掛布団などはとっちらかったままだ。
 ハチは一度大きく深呼吸をして、

「……ていとくの、においがします」

 と言った。当たり前だ。当たり前のことを言われているのに、なぜだか羞恥心が生まれるのはなぜだ。


397 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:44:18COshComs (11/25)


「続けるぞ」

「いちいち、言わなくていいです」

 早く、と促す。

 胸元に浮いた汗を舐めとるように、肌の熱いところを重点的に、凹凸に沿って這わせていく。

「んっ、う」

 ハチが俺の頭を抱きしめてきた。柔らかさの海に頭から突っ込んで、危うく溺れそうになる。
 息苦しさを覚えながらも、視界が潰れた代わりに鼻孔一杯にハチのにおい。俺はたまらずに目の前にあった柔肌を舐め、口づけし、甘く噛んでみたりもする。そのたびにハチは小さく喘ぎながら体を震わせた。

 さすがにこれ以上抱き締められては本格的に窒息してしまいそうだ。深い胸の谷間には、それだけの力がある。俺は宝石を扱うように丁寧に、彼女の小さな手を取って、互いの指と指を嵌めあわせる。
 完全に押し倒す体勢になった。目の前にはハチの顔がある。
 幼さが依然として残るはずのその顔には、いまや発情した女の表情だけがあった。涙で濡れ、頬を上気させ、だらしなく開いた口からは妖艶に舌が覗く。


398 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:45:18COshComs (12/25)


「……はさみ、ありますか?」

「鋏? なんで」

「いい、ですから。はやく。
 ……全部脱ぐのは、めんど、ぉ、だから」

 鋏を渡すと、ハチは自らの水着の下腹部あたりを引っ張って隙間を作り、そこへ刃を差し入れた。そうして躊躇なくじょきん、じょきん、じょきん、三度刃を進める。
 布が切断されて、秘所を覆っていた部分が、ぺらりとめくれた。

「おま、え、なぁ……」

 言葉が詰まる。何やってんだと言おうとして、言ってやりたくて、けれど、俺はその光景に意識の大部分を奪われてしまっていた。

「えへへぇ」

 ハチが笑う。それとも、俺を笑ったのか。

 どうせ元に戻るんだからいいでしょ、と顔が言っている。

 それは確かにそうだが、しかし……。

 あぁ、だめだ。


399 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:46:17COshComs (13/25)


 ハチの秘所はてらてらと濡れていた。濡れそぼっていた、とさえ言ってもよかった。先ほど切り離した布地、クロッチ部分には大きく船底形の染みができあがっており、愛液が糸を引いている。
 髪の毛と同じ色の陰毛は短く、少し硬質的に見える。太ももの丸み、腰へと繋がる鼠蹊部のラインの陰影、潰されて少しだけはみ出して見える尻肉、全てが扇情的だった。
 なにより、僅かに開き、閉じるたびに、奥から新たな愛液を沁みださせるそこが、完全に俺を待ち望んでいて……。

 ハチは自らの中指をそこへやった。クリトリスを根本で、入り口を先端でそれぞれ軽く触るだけで、喉の奥から「あ、あっ」という嬌声が漏れる。ぴちゃ、ぴちゃ、ぐちゅり、準備ができたことを告げている。
 噎せ返るほどの欲望のにおいが充満していた。

 股間が痛いほどそそり立っている。
 赤黒く充血し、腹につかんとしている。


400 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:48:10COshComs (14/25)


「……普段から、そうやってオナってんのか」

「……はぁい」

「エロ同人で?」

「それも、っ、んぅ、あるしっ……提督の、こと、考えたり、も、……ん、し、ます」

 ……あぁもうこいつは!

「イくとこ、見ててやろうか」

「んっ、やぁ、や、です」

 駄々をこねる子供のように、ハチは大きく首を振った。弄る指を止めることなく。

「やだ、指じゃ、やぁ。てい、てぇとくが、提督、のぉ、ちんちん、が、いい、れすっ」

 そう言いながらも指は速さを増していく。左指でクリトリスを、右手の中指は根元まで埋まり、楕円を描くように動く。
 空気が撹拌。愛液と混じり合って、指と秘所の隙間から時折とろりとした液体がシーツに汚れを広げていく。

「あっ、あっ。やっ、やぁ、めっ、だめ、とまんないよぉ、ゆびぃ、てぇとくの、ちんひんがっ、あ、んくっ! いいのにっ」

 ハチは最早俺のことを見ていないようだった。


401 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:50:14COshComs (15/25)


「てっ、とく、ごめ、ごめんらひゃ、なひゃいっ! おまんこっ、きもちぃすぎてっ! イ、イっちゃい、まふぅ……!」

 告げるとともにハチの指がより深いところを抉った。電流が走ったようにその小柄な体が痙攣し、弓なりに背筋が仰け反る。
 たっぷり数秒はそうしていただろうか。殆ど落ちるようにベッドへ体を落ち着けて、長い長い無呼吸から復活した彼女は、前後不覚のままで空気を求める。
 大きく息を吐き、吸うたびに、自重で潰れている胸が上下した。

 指が収縮のために押し出される。粘液が泡立ち、白濁している。

 教え子の痴態を目の当たりにして、俺の下半身は萎えるどころかより一層の硬度を増していた。肌という肌の神経が全てそちらに移動してしまった錯覚が先ほどから脳を支配しているのだ。
 欲望にいま、体は全ての支配権を握られていた。必死に理性が総動員され、せめて、せめてと口から出かけようとする言葉をぐっと堪える。ここに来てもなお、俺は自らが積極的にハチと関係を持とうとするか否かを最後の防衛線としているようだった。


402 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:51:57COshComs (16/25)


 だから、彼女が、引き抜いたばかりの指を、いまだ生き物のように動いている秘所に添えて、

「わらひぃ、ばっかり、ふこーへ、い、ですよねぇ……。
 てえとくの、ぉ、ために、いっぱい、ほぐしておきました……からぁ」

 飲みこんだ唾液の音がやけにうるさい。

「はっちゃんの、おまんこ、でっ、ちんちん、きもちいく、なってぇ、ください」

 らんぼうにして、おくにたくさん、しゃせいして、ください。

 そう言われたとき、歯止めが効くはずなどなかった。


403 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:53:03COshComs (17/25)


 やはり、エロ同人の読みすぎだとも思ったが、彼女が熱に浮かされているように、俺の脳みそも茹っている。ふつふつと競りあがってくる溶岩が体内で暴れている。
 ゴーヤの顔がちらついた。けれど彼女は、俺の袖を引いて止めてくれはしなかった――都合のいい妄想だ。ただの誤魔化し。言い訳。

 ハチに覆いかぶさる。

 乱暴に――そうするつもりはなかったのだが、むしゃぶりつくように彼女の胸の先端へと吸い付いた。硬くなった突起を舌先でこねくり回しながら、頭をまたも抱きかかえられながら、俺は自らのものの根元に手をやって、角度を調節する。
 体内で荒れ狂う溶岩と同じように、彼女のそこもまた熱く滾っていた。潤んでいた。尻まで愛液が垂れ、既にいつでも受け入れる体勢はできている。

 腰を押し込んだ。

 抵抗はなかった。


404 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:54:12COshComs (18/25)


 ハチが息をのんだのがわかった。苦しくなるくらいにこちらを力強く抱きしめて、耐えているのが痛みなのか快楽なのかは判然としない。俺自身、彼女を斟酌してやれるほどの余裕はなかったから。
 彼女の中は想像以上に燃えていて、何よりきつかった。だのに十分な潤滑のせいで、動きだけはとてもスムーズだ。少し動くたびに収縮し、嬌声が部屋に響く。

 半分ほど埋まったところで俺は一旦動きを止めた。ハチの手を外すと、力なくベッドへ落ちる。ふぅ、ふぅ、と荒い息をしている。

「……はい、ったぞ。平気か? 痛くないか?」

 言動の限りだとは初めてのように思われたが、直接的に尋ねるのは憚られた。

 ハチはぼんやりと、全身を重力にされるがままとしていた。俺が尋ねてようやく視線をこちらに戻し、何かを言おうとしたらしいのだが、脱力のせいか声がうまくでないようだった。代わりに首を小刻みに振る。
 彼女の手をとって、繋がっている部分に導く。「そこ」に「それ」がしっかりと入っていることを、恐る恐る指でなぞって確認し、その事実を頭でしっかり理解すると、にこやかに笑う。


405 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:54:55COshComs (19/25)


「これ、っ、で」

 深呼吸交じりの苦しそうな声。

「まだ、半分、なんですか」

「無理させるつもりはねぇぞ」

「……あはは」と困ったように、また笑う。「言ったじゃないですか。その……お、おまんこ、で、きもちくなっていいんですって」

 まったく、と俺は思った。まったく、本当にこいつは。

 左手を彼女の右手と絡め、残る右手は豊満な尻の下へとやって、少しだけ腰を浮かさせる。指が沈みこむ。すべすべした肌の感触だけで達してしまいそうだ。
 角度が変わって、当たる場所も変わって、中は奇妙なうねりをあげていた。縋るもののなくなったハチは、それだけがよすがであるように、絡めた指先と、そして俺のシャツの端を強く掴む。

 さらに彼女の奥深くへと進む。

 ここまで来てしまえば、誰にも止めることはできない。俺自身でさえ。


406 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:56:09COshComs (20/25)


 いっぱいいっぱいに腰を押し込んでも、根本までは収まりきらないほど、ハチのそこは小さい。反応を確かめながら進んでいったものの、どうやら本当に大丈夫らしい。ハチはいま、俺のシャツのボタンを外し、胸板を貪っていた。
 唇と舌が通過していった部分だけが、やたらに痺れてしょうがない。

 ゆっくりと前後させる。愛液が絡み付く。俺を逃がさないように内部が締まる。
 抽送を開始するとハチからの攻勢がすぐさま止んだ。わかりやすいやつだ、と思う。

 肌と肌がぶつかって音がなる。規則正しく、一定のリズムを打つ。愛液と先走りの混じったものがあぶくとなって淫靡な音を響かせる。そのたびに、ハチは強く俺の手を握った。体を震わせた。
 とはいえ、俺にもそこまでの余裕はない。収縮して締め付けられるたびに、そのまま彼女の中へと全てを吐き出してもいいんじゃないかという衝動が殴りつけてくる。
 入り組んだ肉の襞は俺の裏筋を的確に攻めてきていて、それがたまらなく気持ちいいのだ。

「ひゅ、すご、ちんち、んっ、すごいぃ……すごいよぉ……」

 またもきゅっと膣内が収縮して、あたかも俺の射精を早く早くとねだっているかのようだった。


407 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:57:28COshComs (21/25)


「て、とく、おまんこ、いっぱい、です、いっぱ、にぃ、なってます、っ。
 どう、ですか? き、もぉ、ちー……ですかぁ?」

 返事をする余裕などなかった。それこそが返事だった。
 一心不乱に、最早速度だとか深さだとか、ハチをいたわる余裕はなかった。力任せに腰を打ち付けていく。快楽を貪っていく。
 しかしそれこそがハチにとっては最も心地いいようで、体全身を丸め、助けを求めるように腕で、脚で、俺に抱きついてくる。
 ぐち、ぐちゅ、ぶちゅり、結合部から音が響く。頭を犯す。

「いいっ、きもひっ、いいよぉっ、てぇ、てえとく、しゅ、好きっ、しゅきですっ」

 耳元で為されたその宣言こそが、俺の理性を決壊させる最後の一発だった。

 湧き上がってくる射精衝動はもう抑えられそうにない。

「すまんっ」

 大きなストロークから、小刻みなストロークへ、自然と変わる。

「あはっ」

 ハチは嬉しそうな声をあげた。俺の意図を察したのだろう。

「せえし、ください、てい、とくのっ、せ、っし、なかで、ぜんぶっ」


408 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 15:59:20COshComs (22/25)


 唇を無我夢中のままにあわせ、舌を貪った。歯が音を立ててぶつかるのなど気にはならないほどの一心不乱。

 光が迸る。
 獣のような唸り声が喉の奥から、心の底から、放たれる。
 粘っこい、熱い、半固形の欲望が、尿道を我先にと掻き進んでいく。背中が粟立ち、自らの姿勢を保持できない。

「――っ」

 睾丸と陰茎が喜びに打ち震えた。終わりの見えない射精がハチを内側から穢していく。
 伴って、ハチの内側もまた喜びに打ち震えているように感じられた。嘗てないほどにぎゅっと俺を優しく包む。全身で俺を抱きしめている。

 俺もハチも息を止めていた。

 お互いを抱き締めあって、唇を塞いで、脚を絡めて、距離を可能な限りゼロにして。

「……ぷは」

「ふぅ、はぁ……」

 永遠に続くかと思われるほどの射精は、終わってみれば数秒で、その量は莫大で。
 ぴったりと密着していたはずの結合部からでも、僅かに、じわり、じんわりと、白濁したものが零れていく。


409 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 16:01:25COshComs (23/25)


「……すご」

 ハチはそんな自らの下半身などお構いなしで、いましがたの感情の奔流をどう処理すればいいのか、少し混乱しているようだった。ぼんやり天井を眺めている。
 俺はと言えば、出した直後の倦怠感、気怠さといったものが一気に圧し掛かってきていた。体力の消耗もある。俺もベッドにねそべりたい。
 体を動かそうとするも、ハチがどこに眠っていたのかという力強さで押し留めてくる。不機嫌そうな顔。

「ぬいちゃ、だめ、です」

 疲れ切った状態では一語一語をはっきり選ばないと言葉にならない。その感覚はよくわかる。だから俺も、必死に頭を回転させて、いまここで言うべき何かを見つけようとするのだが、如何せんうまくはいかなかった。
 いや、駄目と言われても……駄目ならば、しょうがないのか?

 全てが億劫で面倒くさくなり、ハチの上にそのまま倒れこむ。ハチは「おもたぁ」と文句を言うが、心からの文句ではなかった。楽しそうに喋っているから。

 頬に柔らさ。さらに、もう一度。

「……なんだ」

 なぜキスをする。


410 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 16:02:57COshComs (24/25)


 振り向こうとしたら止められた。頭で強く押し返される。頭蓋骨とぶつかっている頬骨が痛い。

「……ちょっと待ってください、いま、考えてますから」

「……おう」

 やや無言の間があって、ようやく言いたいことがまとまったのだろう、ハチは俺の指を――手ではなく、人差し指を――握った。

「我儘言って、ごめんなさい」

「……」

 俺は、なぜだか、泣きたくなった。
 どうして第一声がそれなのか、問い質したくなった。傲慢かもしれないが、自分勝手なのかもしれないが、しかし、だけど、

 俺が求めていたのはそんな言葉ではなかった。

「はっちゃんは、満足しました。ありがとうございます。……提督のことが、好きです」

 俺は、やはり、泣きたくなった。

 当然堪える。

 ハチが泣いているのに、俺まで泣いてしまっては、全てがおじゃんになってしまう気がしたからだ。


411 ◆yufVJNsZ3s2019/05/30(木) 16:04:49COshComs (25/25)

――――――――――――――
ここまで

一回分にまとめようと詰め込んだら長くなった。
しかし、濡れ場のための語彙が少なくて死ぬ。

待て、次回。


412以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/31(金) 14:19:54QmtBLMgk (1/1)

はっちゃんエロすぎる…そしてせつない


413以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/31(金) 15:17:26wusU4GUw (1/1)

コレは果たしてこの一度きりで済むのだろうかなぁ……乙乙


414 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:33:30H/ThIME6 (1/31)


 ハチは小柄で、抱き締めるのに苦労はなかった。

 何も見ていない。聞いていないのだ。そう自分に言い聞かせながら、小さく丸くなって、なんとか嗚咽を噛み殺そうとしている彼女とぎゅっとしてやる。

「……」

 射精の後遺症だ。一気に、船に揺られたような三半規管の狂いがやってきた。渦の中心に向かって落ち込んでいくのにも似た眠気だった。
 せめて後始末くらいはと思うのだが、この状態から動くことは実質的に不可能である。ハチからは動こうとする意志がまるで見えない。子供のように縮こまるばかり。

 ため息をついた。失望、あるいは面倒くささのためではなかった。下半身の不快感はこの際置いておこう、別に死ぬわけでもあるまいし、三人が返ってくる前にシャワーでも浴びればいいのだ。
 ハチの背中をぽんぽんと叩いてやる。子供にやるあやしかただったが、こんな時にどうすればいいのかなんて、経験があるはずもない。

 控えめに、シャツの襟を指でつままれた。それ以上のことはない。
 きっとそれが距離感なのだ。なのだろう。ハチは過去などないと、あったところでどうしようもないと言っていたが、その理論を自らが完全に実践できているかと言えばそうではないのではないか。
 誰しもそうだ。理解と納得は別物で、実践との間にある溝は深い。


415 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:34:22H/ThIME6 (2/31)


 いつの間にか俺も眠りに落ちていて、意識を取り戻したのは、ハチが俺の肩を揺すってようやくだった。

「提督、提督」

「ん……」

 窓から差し込む陽光に輝く金髪が起き抜けの瞳に厳しい。眼を細めて、彼女の姿を認め、俺は「あぁ」と思った。具体的に何を思ったのかは定かではない。
 ハチは平静で――あくまで平静に見えた。先ほどまでの情事が全て夢の出来事だったかもしれないと錯覚してしまうほどに。
 あくまで何もなかったことにするのならば、俺もそれに乗るしかない。深追いしても誤魔化されるだけだろうから。

「さっきイムヤから連絡在りました。いまから戻るそうです」

 それは、後処理を完璧にしておけよと、そういう遠まわしな釘刺しだろうか? それとも単に勘繰りすぎか? だとすれば、やはり、俺とハチの間のことは筒抜けだということになる。
 ……いや、やめよう。いま考えても意味がないことだ。実際に後処理はきちんとせねばならないわけだし。


416 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:35:02H/ThIME6 (3/31)


 事に及ぶまでは太陽が窓から見えなかった。となれば、大体今の時間もわかる。十六時前といったあたりだ、三十分強眠っていたことになる。

「体がべたべたするな……」

 汗やら、それ以外の体液やらで。

「シャワー浴びますか?」

「おう。お前も……」

 ハチたちは基本的に浴場を使っているが、俺は自室に備え付けのユニットバス。しかしなぜかハチは俺の後をついてきていた。

「時間節約です」

 ふんす、と鼻を鳴らす。自慢げに。頭いいでしょう、私。そう顔が言っている。
 んなわけあるか、この性欲爆発娘め。体ばかり豊満に育ちやがって。

「だめだ」

「えぇ? いいじゃないですか」

 俺を後ろから抱き締めてくる。胸が背中で大きく、心地よく、形を変える。
 少し鼻にかかった吐息が背後から。押し付けられた胸の先端が、意識的にか無意識的にか、肌に擦り付けられているのだ。


417 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:36:19H/ThIME6 (4/31)


「ん、っ……」

「発情してんじゃねぇ」

 半ば無理やり引き剥がす。危うい。やばい。あんまりこいつの旺盛な性欲に巻き込まれてしまえば、とにかく泥沼だ。
 ハチはぶうたれ顔を作ったが、さすがにこれ以上はまずいという判断ができる程度には頭が生きていたようで、軽いステップを踏み踏み距離をとる。

「まぁ、一緒にお風呂は、今度ってことで」

「は?」

 こいつは何を言ってるんだ?

「え?」ハチはきょとんとした顔をする。本当に、まったく、俺の言っていることがわからないという風に、「どういうことですか?」

「それは俺が聞きたい。今度?」

「今度。はい。今度」

「今度?」

 また? 二度目?
 うん?

「そんなこと言ったか?」

「いえ。でも、ないとも言ってません」


418 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:36:55H/ThIME6 (5/31)


「待て。違う。違うぞ。俺はこれっきりだと――」

「言いましたか? 言ってませんよね?」

「……」

 確かに、そんな約束をした覚えはなかった。なかったが。

「はっちゃんが性欲を持て余していたということは、お恥ずかしい話ですが、提督もよく分かったと思います。機械にはメンテナンスが必要です。兵器も然り、人間もまた然り、です」

 恥ずかしい自覚があるのなら、そのドヤ顔をやめろ。誇らしげに胸を張るな。そもそも早く水着を着ろ。前を隠せ。
 桜色の乳首から視線を隠すように、俺は呆れたふりをして――事実として半ば呆れていた――顔に手をやる。

「自分で発散しろ」

「二人一部屋だと、いつもというわけにはいきませんで、はい」

「一人部屋を何とかしてあてがってやるから」

「それよりも提督の部屋にお邪魔したほうが早くないですか?」

「急いては事をし損じる、だぞ」

「兵は拙速を尊ぶものでして」

 ああ言えばこう言われてしまう。埒が明かない。


419 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:39:13H/ThIME6 (6/31)


「良く考えてみてください。このままでは、はっちゃんは夜の街に男漁りに繰り出さなきゃいけなくなります。不特定多数を相手にするよりも、情欲を管理してくれる人がいてくれた方が、色々便利じゃないですか。
 提督がこの体に不満があるのでしたら拒否も仕方がありません。でも、この豊かなおっぱいと、すべすべの肌、そしてむちっとした太腿とお尻。随分と気にいってくださったようなので」

「理詰めはやめてくれ」

 本当にやめろ。言い返せなくなる。それは即ち敗北のレールに乗っかってしまっているということで、実にまずい。
 行為に及ぶ前にも同じようなやりとりをした気がする。一度手を出してしまえば、説得力は否が応にも増す。反論がとにかくしづらい。確かにあの肉体を味わってしまえば、そして痴態を見てしまえば、男は誰でもくらっと来てしまうに違いない。
 術中に嵌ってしまったか? これは一服盛られたか?

 自分の身体を賭けの代に使う人間は時たまいるもので、そういう輩は大抵厄介なものである。俺も、田丸を初め軍の上層部と多少の交流はあるため、なんとなくだがそういうやつらは目を見ればわかる。


420 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:40:20H/ThIME6 (7/31)


 人間には二種類いる。実行できるヤツとできないヤツ。脅しだけでは済まず、本当にビルから飛び降りることのできる、頭の螺子が外れた存在。そんなヤツは強い。
 ハチは恐らく前者だった。俺が首を縦に振らない限り、本当に夜の街に繰り出すだろう。そして問題を起こす。そのあとに笑いながら「だから言ったじゃないですか」とあっけらかんと釈明して見せる。そんな未来が確かに見えた。

 我儘言ってごめんなさいと、先ほど泣いていた人間の言動とは思えなかった。

 ……ある種喜ばしいことでもあったけれど。

「別に提督に損はなくないですか? 勿論ゴーヤが拒否すれば、これ以上は言いません。本当に提督が嫌なら、無理強いもしません。週一で抱きしめてくれるので手を打ちましょう」

 ドア・イン・ザ・フェイスはやめろ。心が揺らぐじゃねぇか。そんなテクニックを誰に教わった。
 ……訓練生時代に俺が教鞭を執った気もする。忘れよう。

 きっとハチはゴーヤに話をきちんとつけるだろう。「本当に」と枕詞を置いたということは、押せば俺が落ちるという確信を抱いてもいるはず。


421 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:40:57H/ThIME6 (8/31)


 ハチが先ほどしていたように、理詰めで考えた場合、俺に断る理由はないことが最大の問題点であった。勿論道徳的、倫理的な側面はある。だがハチがゴーヤと何らかの協定を結んでいることは恐らく確実で、ハチと肉体関係を続けることは、俺にとっての損はない。
 あまり面と向かって、真っ直ぐに認めづらい事実ではあるのだが、確かにそうなのだ。俺にはハチの申し出を拒む理由がどこにもない。それこそが目下のところのネックであった。
 道徳的、倫理的側面を除けば。

 そしてハチはそんなことどうだっていいと思っている節がある。

 手のひらがじっとりとしている。
 きっと、俺は拒めないだろうなという、極めて他人事のような理解があった。

 ゴーヤを惚れさせようとして、それは成った。ハチに対してもそうだ。俺は罪悪感に苦しんでいたが、ゆえに責任をとらねばならないとも、思うのだから。


422 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:42:18H/ThIME6 (9/31)


「……その話は、またあとでやろう。ひとまずシャワーだ。部屋の換気もせにゃならん。あいつら帰ってくるんだろう? 顔を顰められるのは、ごめんだ」

 逃げの一手を打ったものの、逃げ切れないことは明白。さりとてこのまま時間を浪費することもできず。
 ハチは少し不満顔だった。ただ、俺の言いたいことはわかってくれたようだ。こいつは寧ろ利口な方なので、助かる部分も、困ってしまう部分も多い。

「提督」

 顔を覆っていた手を取られた。ハチの顔が眼前にある。
 その気になれば唇が簡単に触れ合える距離で、俺たちはしかし、口づけを交わさない。

「ん?」

「今日言ったことは、嘘じゃありませんから」

「……」

 俺を愛しているということを。
 交わりに快楽を覚えていたということ。

 そして……謝罪。

 どれについてだ、とは訊かなかった。


423 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:43:30H/ThIME6 (10/31)


「それでですね、あの」

 恥らいながらハチが上目遣いで尋ねてくる。

「今度、試してみたい同人誌のシチュエーションがあるんですけど……」

「……」

 こいつ頭おかしいんじゃねぇのか。

* * *


424 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:44:32H/ThIME6 (11/31)


* * *

 その後、帰ってきた三人は久しぶりの買い物に疲れ果てていたようで、デパートの紙袋を両手に談話室のソファにぐったりとしていた。
 俺とハチが出迎えて、荷物を自室へ運び込むことを手伝う。中身をちらりと見たが、俺にはよくわからないものだった。服と、化粧品の類だったようにも思うが、同定には至らない。

 青葉も取材から戻ってきて、五人揃っての食事。テレビをつけながら会話に花を咲かせる。毎回同じ面子では話題も尽きてしまいそうな気がするのに、イクやゴーヤはとにかく感受性が豊かで、興味深いことからどうでもいいことまで話題を俎上にもってくるのだ。
 たとえば、いかにデパ地下がきらびやかな空間なのかを一席ぶってみたり、新しく買った服のデザイナーについてだったり、かと思えば対爆雷の戦術論だったり、道端に顔を出し始めたヨモギやツクシの話だったり。


425 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:45:18H/ThIME6 (12/31)


 ハチの様子は普段と変わらなかった。少なくとも俺にはそう見えた。し、応対するゴーヤやイムヤ、イクの姿も、普段通りに思えた。
 ただ食事を終えて各自が自室へと戻る中、ゴーヤが珍しく俺の仕事を――食器の洗い物と明日の朝食の用意を手伝うと言ったとき、そしてやたらと隣に立ちたがり、隙あらば手を繋ごうとしてきたとき、さすがに俺だって察する。

 当然俺はゴーヤに言い訳めいたことを言うつもりはなかったが、かといって知らんふりするのも違う気がした。ゴーヤが知らないという態度をとるならばそれに付き合うし、それでいて心配を和らげてやると言う行為は、決して矛盾するものではない。
 ゴーヤの手を握ってやると彼女は心底嬉しそうに、同時に安堵したようにも見えた。なら初めからハチと関係を持つべきではないというのはあまりに大人の意見だろう。


426 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:46:29H/ThIME6 (13/31)



 ゴーヤは俺の手のひらに刻まれた線を指の先でなぞった。むず痒さが変な笑い声を引き起こす。
 手相を見ているわけでもあるまいに、どうした、いきなり急に。尋ねても曖昧な笑みが返ってくるだけだった。きっと意味はないのだろう。世の中、意味のないことのほうが多い。甘く見積もっても半々がいいところだ。

「てーとく」

「ん?」

「これから手伝ってあげるでち。手伝ってもいーい?」

「そりゃ助かるな」

 良識ある人間は俺をなじるのかもしれない。断罪するのかもしれない。それは、もしかしたら、仕方ないことなのかもしれない。

 ただ。

 彼女に真摯に向き合うことによって、ハチを――イムヤもイクも含めて、他の誰一人として蔑ろにするような真似はしたくなかった。
 それが俺にできる最善の行動だと思ったし、最低限の筋の通し方だと思った。


427 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:47:30H/ThIME6 (14/31)


 過去はなくならない。清算できるものではない。償う行為に意味がないとは言わないが、そんなのはあくまで自己満足に過ぎない。そんなことに血反吐を吐くくらいなら、今を見据えたほうがずっと、よっぽど、生産的だ。
 ハチはそう言った。納得できる意見だった。少なからず、ある程度は。
 俺の人生観を、何より罪悪感を、百八十度転換させるには至らないけれど、いくばくかの心の支えには十分だ。

 できることをしよう。

 騙し、嘘によってできあがった関係であったとしても、いずれそれが本物になり替わる日が来ることを信じて。
 こいつらが少しでも笑顔でいられるように、俺は一秒でも長く提督でいよう。

 そう思った。

* * *


428 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:48:37H/ThIME6 (15/31)


* * *

 それから一ヶ月が経った。俺たちは定期的に近海掃討を行い、練度を上げ、赤ヶ崎へ向かって演習に臨む。いまだに勝ち星はゼロだったけれど、日々の訓練、そしてブリーフィング、なにより神通や球磨による薫陶の賜物か、手ごたえは日に日に充実してきていた。
 これならば正式な任務に就けるのもそう遠くはないだろう。データ上の数値もそれを裏付けている。心配事は、ひとまずない。

 俺は日報をまとめ、きりのいいところまで四人のデータを解析にかけると、椅子から立ち上がって伸びをした。どうして二時間ごとのこんな些細な行為が気持ちいいのだろうか。
 考えなければならないこと、備えなければならないことは多々あるものの、将来についての心配はそれほどでもない。無論、皆無というわけにはいかない。目的はもっと長期的なものだからだ。
 けれど、遠洋に出る許可はまず間違いなく降りるだろうし、赤ヶ崎以外の泊地への遠征許可も申請済みだ。第五海域攻略中の佐世保鎮首府に田丸が口を利いてくれたということもあって、活躍のチャンスは広がっている。

 あとはどうやって潜水艦がゆえのメリットを上層部に認識させられるか、そこがポイントになってくるだろう。


429 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:50:03H/ThIME6 (16/31)


 と、ノックがあった。パソコンを閉じ、バーチャルディスプレイもピンチアウトで畳む。

「てーとく? 大丈夫でちか? 仕事終わった?」

「おう、ナイスタイミングだな。ちょうどだ」

 ゴーヤが静かに入ってくる。俺は満面の笑顔でそれを受ける。

 扉が閉じた瞬間にゴーヤは俺の胸へと飛び込んできた。風呂上りだからだろうか、いつもよりシャンプーのにおいが強い。桃の香り。主張しすぎない、ふわりとしたものだ。
 彼女の香りを至近距離で嗅ぐたび、己の内側の衝動が強くなっていくのを感じる。力いっぱい抱きしめたくなるのをなんとか我慢して、可能な限り優しい手つきでゴーヤの頭を撫でたり、頬をさすったり、髪の毛を梳いたりする。

 為されるがままにされていた彼女が眼を瞑ったのを見て、すかさず口づけを交わす。それだけで満足そうに、俺の胸元へと顔を埋めた。何度やっても恥ずかしそうに、腕をバタバタさせながら、シャツを強く握ってくる。


430 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:50:46H/ThIME6 (17/31)


 においによって衝動を強化させられるのは俺だけではないらしかった。ゴーヤは既に耳まで紅潮させ、言葉にはしないけれど、何かを期待している。

 ……その何かは言うまでもなかった。俺は部屋の電気を豆球にして、二人、もぞもぞとベッドに潜り込む。

「てーとく、好き」

 俺の上に跨って、腰を一番下まで降ろしながら、ゴーヤは言った。

* * *


431 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:51:19H/ThIME6 (18/31)


* * *

「……えへえ」

 胸元に飛び散った精液をハチは指で丁寧に拭い、舐めとっていく。まずいまずいと言いながらも、ハチは絶対に、白濁したそれを口へ運ぶのをやめなかった。

「おっぱい、気持ちかったです?」

 わかっているだろうに。なんとなく正直な言葉を口に出すのも負けた気がして、俺は髪の毛をぐしゃぐしゃにしてやった。

「できない日でごめんなさい」

 ハチは謝ったが、それが正しいのかは判断がつかない。俺がしてやれなくてすまないというべきだったのかもしれないし、そもそも女性の体はそう言う風にできているのだから、誰のせいでもない気もした。
 俺が答えにあぐねていると、ハチは精液と唾液にまみれた俺の股間に舌を伸ばす。きれいにしますからねと言って、そうしてまたまずいと顔を顰めるのだ。


432 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:52:59H/ThIME6 (19/31)


 ……結局俺はハチとの逢瀬を続けることにした。「続けることになった」という表現もできたが、適切ではない。的確ではない。まるで自分の意志ではないかのような言い方は、ハチにも、ゴーヤにも、失礼な気がしたからだ。

 二人が示し合せているのかはわからないが、ハチは週に一度、ゴーヤは週に二度、俺の部屋を訪ねてくる。するときもあればしないときもある。どちらかと言えばするときのほうが多い。
 まぁ、示し合せているのだろう、とは感じていた。そこを深堀することは、よくない結果しか生まない気がして、俺は気にしないようにしている。

「提督」

「ん?」

「ぎゅーってしてください」

 俺は言われるがままに抱きしめてやった。胸が肋骨にあたって心地いい。

「……もっかいします?」

 手のひらに唾液を塗りこんで、俺の勃起を促しながら、ハチは自慢げに一瞥した。

* * *


433 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:53:31H/ThIME6 (20/31)


* * *

 食堂で夕食の準備をしようと思ったら、既に先客がいた。イクがソファに寝転がりながら本を読んでいたのだ。
 珍しい、というのが素直な感想だった。イクはどちらかといえばアウトドア系で、本を読むのはもっぱらハチがイムヤだと思っていた。
 もしかしたらハチあたりから借りたのかもしれない。

「あ、提督さん! ご飯の準備?」

「そうだ。お前は何読んでんだ?」

「流体力学」

 さらりとイクが言った。流体力学。心で呟く。

「またなんつうか、難しいもんを」

「なんかねー、最近伸び悩みっていうか、航行と雷撃の調和がとれてない気がするのね」

「そうか? データ上は特に問題なかったと思うが」

「ちっちっち。そういう数値に現れない微妙な誤差から、大事故は起きたりするものなの」


434 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:54:54H/ThIME6 (21/31)


 そういうものかもしれないが、こいつの感覚は俺にはどうにも理解できない。それは決して俺だけではなく、他の三人もそうなんだろうが。
 だから、流体力学、か。本を読んでどうにかなる問題なのかどうか、それさえも俺にはあやふやだが。

「理解できんのか?」

「半分くらいは?」

 すげぇな。高等物理の世界じゃないのか?

「イクには構わなくていいから、提督さんはおいしいご飯作ってほしいのね」

「おう、任せろ」

 それは俺の役目なのだから。
 キッチンに向かった俺に、イクが「そうそう」と声をかけてくる。

「ゴーヤとはどうなの?」

「おかげさまで、うまくやってるよ」

 関係を公言はしないけれど、周知の事実だという前提で振舞う。それが最も妥当な落としどころだというのは、全員の共通認識としてあった。


435 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:55:52H/ThIME6 (22/31)


「ハチとは?」

「……まぁ、そっちもな」

「そっか。ならいいけど、あんまり女の子を泣かすような真似をしたらだめだかんねー?」

 言われずともわかっているが、実践できるかどうかは別問題である。勿論なんとしてでも実践しなければいけないことなのだけれど。
 イクも、そしてイムヤも、俺のことを軽蔑しないでいてくれることだけが本当にありがたかった。女を弄ぶくそやろうだと思われてしまうことが何より避けたいことではあったから。
 いや、事実ではあった。事実として俺はあいつらの感情を利用しているくそやろうだった。そこを誤魔化すわけにはいかない。履き違えてはならない。俺は悪人だ。

 悪人のままで、四人を笑顔にするのだ。
 全てを成功に導くのだ。

「イクもそのハーレムの中に加えてもらおうかなぁ」

「勘弁してくれ」

 これ以上は体がもたない。
 そう言うと、イクは手を大きく打った。

* * *


436 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:57:34H/ThIME6 (23/31)


* * *

 それから、さらに一ヶ月が経った。

 談話室にはブルーシートが引かれ、イクが一升瓶を抱きしめたまま眠っている。ソファに折り重なるように倒れているのはハチ。青葉はテーブルに突っ伏し、何やら寝言をもごもご言っていた。
 転がった缶チューハイや菓子の袋、乾きものなどが見るも無残である。
 俺は、なんだか異常なほどの体の重さを感じ、目をしばたかせた。すると重たさも当然か、ゴーヤが俺の腹を枕にしていたのだった。頬をこすりつけながら、涎を垂らしている。見ているこちらまで顔が綻ぶほど幸せそうな寝顔がそこにはある。

 ようやく意識がはっきりしだす。昨日は初めて赤ヶ崎との演習に勝利をおさめたので、その祝勝会が開かれたのだ。そうだ、イクがどんどん日本酒をついでくるから、危うく記憶が飛びかけていた。


437 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 00:58:56H/ThIME6 (24/31)


 そういえば、イムヤがいない。一足先に自室に戻って、ベッドで眠っているのかもしれない。それとも風呂にでも入りに行ったのか。

 いまだ明晰でない頭を回転させ、あぁこの惨状を片付けるのはいやだなぁと考えていたところ、イムヤから通信が入る。

「どうした?」

『高速修復剤の希釈液ってある?』

「棚に並んでなかったか?」

『いや、ラスイチ使っちゃったみたいでさ。裏の物置にあるかな?』

「いやぁ、そっちにはないと思うぞ。……どうした? 怪我でもしたか?」

『そういうわけじゃないけど。……あれって二日酔いに効くんだよ』

 なんと。そういうことなら俺もその効果に預かりたいものだが。

『いや、だめでしょ』

 イムヤが笑った。まぁそうだろうな、と俺も笑って返す。
 そんな使い方をしているから、希釈剤がすぐになくなるのだ。呆れ交じりの声でそう言うと、イムヤは下手くそな口笛で誤魔化しにかかる。困ったやつだ。


438 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 01:00:06H/ThIME6 (25/31)


「とりあえず、急ぎで頼んでおくよ」

『ありがとー』

 現在時刻は八時過ぎ。今日のスケジュールは、思いだせる限りでは、全て午後からだったはずだ。もう一度眠ってもいいが……。
 とりあえずのメールチェック。重要そうな連絡は二通、佐世保の第五海域攻略が難航していることと、来月からその佐世保鎮首府との連携しての任務が追加されること。
 こう言ってはなんだが、第五海域の攻略が難航していることについては、ありがたい話ではあった。すんなりと制圧が済んでしまえば俺たちの出番などなくなってしまう。海上艦では対処できないこと、潜水艦にしか対応できないこと、俺たちが求めているのはそれなのだ。

 レ級と呼称される新型の深海棲艦が猛威を振るっていること、そして複雑な海流と海風のため、望んだ方向への進軍が難しいことが、難航している理由として挙げられていた。
 さて、どうなるか。


439 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 01:00:46H/ThIME6 (26/31)


 ネットのニュースサイトでは、ついに明らかにされた深海棲艦と艦娘の存在で、連日もちきりになっていた。深海棲艦とはなんなのか。どうやって対処するのか。艦娘とはなにか。人権侵害ではないのか。喧々諤々の議論が繰り広げられている。
 俺たちに言わせれば、それらの話はとっくに済んだことだった。既に内々で全てはまとまっていて、外野が大きく騒ぎ立てたとしても、結論は変わらない。そういうものだ。そういうことになっているのだ。

 見切り発車と事前の根回しで世の中の大半は成立している。俺が大人になってから知った重要なことの一つ。

「うぅん……うん?」

 ゴーヤがぺたぺたとビニールシートを触っている。いきなり筋肉質の枕がなくなったので、違和感を覚えているのだろう。
 残念ながらそれほど尻に――頭に敷かれる趣味はない。あまり午前中をだらだらと過ごすのも不健康だろう。俺はカーテンを勢いよく開ける。
 眩しい光が飛び込んでくる。

 朝食にはベーコンエッグなんてどうだろう。

* * *


440 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 01:01:25H/ThIME6 (27/31)


* * *

 俺と青葉はチェーンの喫茶店で待ち合わせをしていた。泊地から大きく離れた、東京の店。寂れた商店街にはない代物だ。
 俺は同じく提督業を務める者たちの同期会で、青葉は艦娘通信の発行に関して広報部との折衝があるとのことで、それぞれ数時間の道のりをやってきたのだった。
 どちらも互いの仕事は済ませた。青葉が電車で帰ると言うので、ならばいっしょに俺の車で帰ろうと言う話になり、その前に伝えたいことがあるとのこと。正直全く想像もつかない。


441 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 01:02:30H/ThIME6 (28/31)


 青葉に任せている用件の筆頭は赤ヶ崎泊地の性的虐待についてである。しかし、二か月を過ぎてなお、いまだ気配は掴めなかった。最早俺と青葉の間には、性的虐待なんて存在しないんじゃないかという空気さえ漂っている。
 とはいうものの勝手に調査を打ち切りになどできない。定期的に報告は田丸へとあげているのだが、中止の指示は出ない。証拠を捏造しろとまでは言われないのがせめてもの救いではある。

「あ、待たせてすいません」

 青葉がやってきた。手には大きいサイズのアイスカフェラテを持って、サングラスとマスク、特に特徴のないシャツにセーター。

「どうした?」

「……まぁ、色々と」

 煮え切らない返事は青葉には珍しかった。

「それで、どうした」

 同じ言葉で、本題を促す。

「……」

 無言だった。青葉はサングラスとマスクを外さない。辺りを警戒しているようにも思える。
 こいつは、そういえば、命を狙われているのだ。それを思えば人ごみを気にするのも当然なのかもしれなかった。今でこそ普通に過ごせているが、それも田丸の権力あってのもので、今後どうなるかはわからないのだ。


442 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 01:04:55H/ThIME6 (29/31)


 その恐ろしさを俺には想像できなかった。脚が戻らないのとは、わけが違う。眠れない夜だってあるのかもしれない。

「……あの、ですね」

「おう」

「……」

 またも、無言。言い辛いのか。言葉を選んでいるのか。

「まだ、未確定な情報というか、裏がとれていない話というか……どう取り扱えばいいのか、青葉も判断にあぐねておりまして」

 長い長い前置き。少しばかり言い訳じみた、こちらの覚悟を問うような。

「いや、それでもやはり、これを青葉一人のものにはできないなと。気のりはしないのですが、国村提督にお伝えしなければ、始まらないなと思いまして」

「……なんだ」

 空気がぴりぴりと痛む。口内が渇く。
 手元にあったブレンドで唇を濡らしたが、渇きがなくなったようには思えなかった。
 すっかりブレンドは冷めてしまっていたのに、なぜだか手に汗が滲む。

 なんだ。なんなんだ。
 青葉。

 お前は一体何を、


443 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 01:06:10H/ThIME6 (30/31)






「あの四人は経歴を詐称しています」





 ……言っているんだ?


444 ◆yufVJNsZ3s2019/06/01(土) 01:07:14H/ThIME6 (31/31)

――――――――――――――
ここまで。

ラストスパートに入ります。
あと三分の一くらいかな? 構成次第、悩み中。
最後までお付き合いください。

待て、次回。


445以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/01(土) 01:07:356WWvDd7I (1/1)

お疲れ様です。
舞ってる次回


446以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/01(土) 08:19:40LlbYMWvg (1/1)

乙乙、一気に時間が進んだと思ったら……4人って、4人のことだよな……どうなる次回


447以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/04(火) 01:52:11SfrtCzc6 (1/1)


待つぞ


448以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/07(金) 05:13:47G7YtkRFI (1/1)

すげーひきこまれる