1以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:07:139nEg0gUI (1/33)

理珠 「ほう。天体観測ですか。どこかの天文台へ行くのですか?」

文乃 「ううん。バスツアーなんだけどね、車で二時間くらいの高原に行くんだよ」

文乃 「結構コアなツアーでね。参加者全員望遠鏡を自分で持って行って、思い思いにレンズを覗くんだ」 ワクワク

文乃 「深夜に駅を出て、数時間天体観測をしたら、早朝に駅に戻ってくるって感じのツアーだよ!」

うるか 「ほへー。そんなのがあるんだねぇ」

成幸 (……それはツアーで行く意味があるのか? とかそういうことは置いておくとして)

成幸 (受験も近いのに大層な余裕だな、というツッコミも置いておくとして)

成幸 「……お父さんと一緒に行くのか?」

文乃 「うんっ! お父さんがね、誘ってくれて……」

文乃 「“一緒に行かないか” って。えへへ……」

成幸 「そうか」 クスッ 「よかったな、古橋」

文乃 「うん! ありがと、成幸くん! 道中のバスではちゃんと勉強するから安心してね!」

成幸 (この寝ぼすけ眠り姫が深夜と明け方のバスで勉強するとは思えないが……)

成幸 (まぁ、たまの息抜きぐらい、問題ないだろうし、何より……)

成幸 (古橋とお父さんの関係が、少しずつ改善しているのが、嬉しい)


2以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:08:019nEg0gUI (2/33)

………………週末 古橋家

文乃 「ふんふふんふふーん♪」

キュッキュッ

文乃 「明日の夜は天体観測~♪ 18歳になったから行けるツアー~♪」

文乃 「レンズを磨いて~♪ アンドロメダ~、プレアデス~、オリオン~♪」

文乃 「全部見られるかな~♪ かな~♪ 幸い~~♪ 明日は快晴~♪」

零侍 「………………」 (……娘のテンションがおかしなことになっている)

零侍 (よっぽど天体観測が楽しみなのだな。受験生相手だから迷ったが、誘って正解だったようだ)

零侍 「それにしても大荷物だな。そんなに大きなリュックがいるのか?」

文乃 「当然だよ。高原まで行くんだよ? もう冬も近いんだよ?」

文乃 「防寒着も必要だし、あとカイロもいるよね」

文乃 「それから、エネルギー補給のためのお菓子」 ドサアッ

零侍 (大きなリュックの中身がほぼすべてお菓子なのだが……)

文乃 「あと……」 クスッ 「成幸くんと勉強するって約束したから、バスの中で読める参考書も」

零侍 「なるほど」 (……まったく。妬けるものだな。そこで一番いい笑顔をしてくれるのだから)


3以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:09:209nEg0gUI (3/33)

零侍 「私も防寒着と傘くらいは用意しておくか。あとは……――」

prrrrrr……

零侍 「む……。研究室からだ。まったく、休日だというのに……」

文乃 「ふふ。わたしのことは気にせず、出ていいよ?」

零侍 「……ああ。すまない」

ピッ

零侍 「もしもし?」

『ああ、よかった。夜分に電話をしてすまないね。少しいいかい?』

零侍 「少しと言うからには本当に少しなんだろうな」

『まぁそう不機嫌そうな声を出すなよ。朗報だよ』

『来月の英国の学会、目玉になっていた研究者が論文の取り下げをしたらしいんだ』

『で、その件について、今日大学に連絡があった。学会の発表順を変えるらしい』

『……古橋先生? 君の論文を学会の最初に据えたいそうだ』

零侍 「……それは本当か?」

『ああ。僕も驚いているんだよ。おめでとう、古橋先生』


4以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:10:369nEg0gUI (4/33)

『……それでね、明日の夜なんだが、空けておいてくれ』

零侍 「……明日の夜?」

文乃 「……?」

零侍 「いや、明日は……」

『何か予定があるのかもしれないが、こちらを優先してくれ。先方が打ち合わせをしたいのだそうだよ』

『権威のある学会だからね。事前に君とプレゼンの内容を詰めておきたいのだと』

『別件で日本に来る用事があるから、時間を取って君と話したいと言っていたよ』

零侍 「………………」

『おいおい、まさか無理だなんて言わないだろうな』

『あの学会の最初に発表をするということがどういうことか分かっているだろう?』

『学術季刊誌の方も君がトップになる可能性があるんだぞ』

『国からの助成金は確実に増える。よりよい環境を整えられるかもしれない』

零侍 「……分かっている。分かっているが」


5以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:11:179nEg0gUI (5/33)

零侍 「………………」

零侍 (……私にとって、数学とは至上命題だった。その探究こそがすべてだった)

零侍 (いや、それは今も変わらない。数学の探究は私のワークライフであり、ライフワークだ)

零侍 (しかし……)

文乃 「………………」


―――― 『もしも新しい星を見つけたら…… 文乃ならどんな名前をつけたい?』

―――― 『んーとね んーとね……』

―――― 『「レイジ」 !!』

―――― 『お父さんの名前? えー どうしてー? お母さんじゃないのー?』

―――― 『だってだって お母さんと2人で見つけるんだもん!』

―――― 『2人の一番大好きな人の名前にしなくっちゃ!』


零侍 (ああ、そうだ。大丈夫。分かっている。もう、見失わない)

零侍 (私にとって一番大事なものは……――)


6以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:11:599nEg0gUI (6/33)

零侍 「………………」

『……? おい、聞いてるのか? おーい』

零侍 「……ああ。悪いな。学会の最初は、別の研究者に譲ってやってくれ」

『!? おい、正気か? 君の研究が円滑に進むチャンスなんだぞ』

零侍 「ああ、それでも、私は……――」


文乃 「――お父さん」


零侍 「む……」

文乃 「少し、話をしてもいい?」

零侍 「あ、ああ。……すまない。少し待っていてくれ。すぐ戻る」 スッ

零侍 「……どうかしたか?」

文乃 「………………」 ジーーーーッ

零侍 「な、なんだ? その目は……」

文乃 「……明日、無理そう?」

零侍 「い、いや、そんなことはない。大丈夫だ」


7以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:12:399nEg0gUI (7/33)

文乃 「………………」 ジーーーーッ 「ほんとぉ?」

零侍 「ほ、本当だ。ウソをつく理由がない」

文乃 「詳しいことは分からないけど、学会の偉い人が来るんじゃないの?」

零侍 「!? き、聞こえていたのか……」

文乃 「いや、普通に電話の声洩れてたし……」

ハァ

文乃 「……無理しなくてもいいよ? 天体観測はいつでも行けるしさ」

文乃 「お仕事の用事が入っちゃったなら仕方ないよ。お仕事優先だよ」

零侍 「い、いや、しかし……」

文乃 「わたしなら大丈夫だよ。天体観測、今回はひとりで行くよ。もう18歳だしね」

文乃 「それに、お母さんも言ってたじゃない」 ニコッ


―――― 『好きなことを全力で 好きにやりなさい』


零侍 「っ……」


8以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:13:179nEg0gUI (8/33)

文乃 「あれはわたしに向けての言葉だったかもしれないけどさ、お父さんも同じだと思うよ?」

文乃 「お母さんはきっと、お父さんにも、好きなことをやってもらいたいと思ってるよ」

グッ

文乃 「だから、わたしが許すよ、お父さん」

文乃 「好きなことを全力で、好きにやりなさい! ってね」

零侍 「文乃……」

零侍 「………………」

零侍 「……すまない」

文乃 「謝らなくていいよ。お仕事だもん。それに、お父さんの “好き” だからね」

文乃 「わたしも好きなことやらせてもらうんだから、お父さんの “好き” な数学も大事にしないとね」

クスクス

文乃 「あと、お父さんが大学クビになったりしたら、わたしも大学に行けなくなっちゃうし」

零侍 「………………」 フッ 「……そうだな。すまない。では、悪いが、明日は……」

文乃 「うん。ひとりで行ってくるよ! お父さん、偉い人と会うんだから、ちゃんとヒゲ剃ってから行くんだよ」

文乃 「じゃあ、わたしちょっと部屋で勉強してくるから!」 シュバッ


9以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:13:559nEg0gUI (9/33)

………………

文乃 「………………」

文乃 「……うん。大丈夫。わたしは、大丈夫。だって……」


―――― 零侍 『文乃。来週末、一緒に天体観測に行かないか?』


文乃 「あのとき、あんな風に言ってくれただけで……」

文乃 「とっても嬉しかったから」

文乃 「わたしひとりでたーくさん天体観測して、帰ってきたらお父さんに自慢してやるんだから」

文乃 「えへへ……」

文乃 「………………」

グスッ

文乃 「……うん。お父さんとは、また今度」

文乃 「きっと、また今度一緒に、行けるよね」


10以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:14:289nEg0gUI (10/33)

………………

『はぁ。まったく、まさか断るのかと思ってヒヤヒヤしたよ。勘弁してくれ』

零侍 「すまない。大丈夫だ。明日は18時にホテルに向かえばいいんだな?」

『ああ。先方の宿泊先だ。遅れるなよ。じゃあ、また明日』

零侍 「ああ、ありがとう」

ピッ

零侍 「………………」

零侍 (……これで良かったのだろうか)

零侍 (私は、また娘をないがしろにしてしまったのではないだろうか……)

零侍 (こんなことで、静流との約束を、守れていると言えるのだろうか……)

零侍 「せめて、何か……」


―――― 『成幸くんと勉強するって約束したから、バスの中で読める参考書も』


零侍 「……ん」


11以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:15:209nEg0gUI (11/33)

零侍 「………………」

零侍 (……まったく、嫌になる)

零侍 (こんなときにまで、頼ろうとしている)

零侍 (彼も受験生だ。そうそう力を借りていいわけもない。彼に失礼だ)

零侍 (しかし……)

ピッ……ピッ……prrr……

花枝 『もしもし? 古橋さん? どうかしましたか?』

零侍 「夜分にすみません、唯我さん。あの……」

零侍 「……成幸くんは、ご在宅でしょうか?」

零侍 (……許してくれ、唯我くん。私は、君に失礼であろうとも、迷惑であろうとも、)

零侍 (娘のために、何かをしてあげたいと思ってしまうんだ)


12以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:15:549nEg0gUI (12/33)

………………翌日 夜 駅前

文乃 「………………」

ワクワクワクワク

文乃 (ふふふ……バス、早く来ないかなぁ)

ハッ

文乃 (いけないいけない。こういう時間こそ勉強にあてるべきだよね)

文乃 (有意義な天体観測のために、今しっかりと勉強しないと……)

ペラッ……ペラッ……

文乃 (ふふ。バスの待ち時間もちゃんと勉強してるなんて、なんか、成幸くんみたい……――)


成幸 「――お、いたいた。ちゃんと勉強してるとは感心だな」


文乃 「へ……?」

成幸 「よっ。こんばんは、古橋」

文乃 「………………」

文乃 「うぺぇ!?」


13以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:16:409nEg0gUI (13/33)

文乃 「な……成幸くん!? 何でこんなところにいるの!?」

成幸 「なんでって……。いやいや、お前、お父さんから聞いてないのか?」

成幸 「お父さん、急な仕事で今日行けなくなっちゃったんだろ?」

文乃 「そ、それは知ってるけど……」

成幸 「で、ツアーの代金はふたり分払ってるから、お前ひとりだともったいないから、」

文乃 「うん……?」

成幸 「お父さんの代わりに俺が行くことになった」

文乃 「それは知らないかな!?」

成幸 「えぇ……。いや、だって俺、昨日の夜、お父さんに直接頼まれたんだぞ」

成幸 「18歳とはいえ、娘を深夜にひとりで出歩かせるわけにはいかないから、一緒に行ってやってほしいって」

成幸 (……まぁ、ふたりとも高校生だから色々な条例にひっかかりそうではあるが)

文乃 「えっ、いや、だって、わたし、お父さんからそんなこと何も……」

ピロリン♪

文乃 「? お父さんからメッセージ……?」


14以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:17:319nEg0gUI (14/33)

 『今日は本当にすまない。お詫びと言ってはなんだが、唯我くんに私の代わりを頼んでおいた』

文乃 「!?」 (何でそれを今言うの~~~~!!)

 『サプライズのつもりで黙っていたが、喜んでくれただろうか?』

文乃 (あーもう! 相変わらずズレてるんだから、この父親はーーー!!)

 『……とはいえ、一応言っておくが、』

 『手を繋ぐくらいは許すが、それ以上はまだお前たちには早いから、肝に銘じておくこと』

文乃 (また余計なことを最後に~~~~~!!!)

プンスカプン!!!

成幸 「あー……えっと、ひょっとして……」

成幸 「俺、来ない方が良かったか……?」

文乃 「………………」

文乃 「……け、ないでしょ」 ボソッ

成幸 「へ?」

文乃 「……そんなわけ、ないでしょ。嬉しいよ。成幸くんが一緒に行ってくれるなら」

成幸 「あっ……/// そ、そうか。それなら良かったよ」


15以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:18:079nEg0gUI (15/33)

文乃 「でも、勉強は大丈夫なの? わたしの趣味に付き合わせるのも悪いし……」

成幸 「お前が人の勉強の心配する立場かよ」

文乃 「うっ……。た、たしかに」

成幸 「まぁ、ちょっとした息抜きにちょうどいいよ。ツアーに行くお金なんかないからな」

成幸 「前にも言っただろ? 星、俺も結構興味出てきたからさ」

文乃 「あっ……」


―――― 『ペガスス ケフェウス カシオペヤ ペルセウス』

―――― 『お祭りの日に色々教えてくれたろ あれからなんかちょっと興味出てきてさ』


文乃 「そ……そっか/// そういえば、そうだったよね……///」

文乃 (うぅ……。あのときの “デート” のこと、思い出しちゃったよ……)

ハッ

文乃 (……っていうか、これって……)

成幸 「いやー、今日は冬の星座と……星団も見られるかもしれないのか!? 楽しみだなぁ……」

文乃 (か……完全に、天体観測デートだよね……///) カァアアアア……


16以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:19:059nEg0gUI (16/33)

………………バス車内

文乃 「………………」

成幸 「………………」

カリカリカリ……

文乃 (……って、ま、することは勉強だけだよね)

文乃 (分かってるよ。わたしたちは受験生で、空いた時間は勉強にあてないとだよね)

成幸 「………………」

文乃 (……まったく、澄ました顔しちゃって)

文乃 (分かってるのかな。わたしたち、また一緒に夜を明かしちゃうんだよ?)

文乃 (お祭りの日と同じように、一緒に……)

カァアアアア……

文乃 (……わ、わたしってば、何考えてるんだろ。あのときとは全然違うのに……)

文乃 (わたしもまじめに勉強しないと……)

文乃 (しない、と……) ムニャムニャ……


17以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:19:539nEg0gUI (17/33)

成幸 「………………」

成幸 (……今さらなことだけど、深夜にふたりきりで出かけるって、)

成幸 (すごい、ことだよなぁ……)

カァアアアア……

成幸 (はっ、い、いかん。古橋のお父さんは、俺を信頼して付き添いを頼んだんだ)

成幸 (俺はその信頼に応えねば……!)

……ポフッ

成幸 「……? ぽふ?」

文乃 「………………」 Zzzz……

成幸 「!?」 (ふ、古橋!? 早速寝たのかこいつ!)

成幸 (し、しかも……俺の肩に、もたれかかって……)

成幸 (シャンプーの香りが……) ハッ (お、俺はなんて不埒なことを考えてるんだ!?)

文乃 「むにゃ……むにゃ……」 Zzzz……

成幸 (……ったく、勉強するって言ってたくせに)

文乃 「えへ……お父さん、天体観測……楽しみ、だね……」 Zzzz……


18以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:20:269nEg0gUI (18/33)

成幸 「………………」

成幸 (……まぁ、起こすのも野暮ってもんか)

成幸 (バスで勉強して酔ったりして、肝心の天体観測が楽しめなかったら本末転倒だし、)

成幸 (寝かしといてやるか……)

成幸 「………………」

ハッ

成幸 (……って、ことは、だ)

文乃 「………………」 Zzzz……

成幸 (お、俺は……)

成幸 (目的地に着くまで、古橋に寄りかかられたままってことか……)

文乃 「むにゃ……成幸くん……」

成幸 (た、頼むから……耳元で名前を呼ばないでくれーーー!!)


19以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:21:179nEg0gUI (19/33)

………………到着

文乃 「すごーい! 満天の星空だよ、成幸くん! 晴れててよかったー!」

成幸 「あ、ああ、そうだな……」 ゲッソリ

文乃 「……成幸くん? どうしたの?」

成幸 「い、いや、なんでもない……」

成幸 (結局ずっと古橋に寄りかかられたままだった……)

成幸 (もう慣れたつもりだったけど、古橋ってめちゃくちゃ綺麗だから……)

文乃 「?」

成幸 (……さすがに緊張したな)

成幸 (勉強にも全然集中できなかった……)

文乃 「はっ! こうしちゃいられないよ、成幸くん! 出発時間までにできるだけたくさん星を見ないと!」

文乃 「望遠鏡と三脚を持って……っと。ほら、行くよ!!」

成幸 「あっ……ち、ちょっと待ってくれ、古橋ー!」


20以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:22:439nEg0gUI (20/33)

………………

成幸 「はー……」

成幸 (さすが、標高約1000メートル。灯りもないし空気も澄んでるし、星がすごいな……)

成幸 (落ちてくるようだ……とは思わないけど、なんていうか……)

成幸 (しっかりとした模様に見えるくらい、星がくっきりしてる……)

成幸 (星座なんて、無理矢理形にしてるだけじゃねーか、って思ってたけど、)

成幸 (人工の光が近くにないと、ぼんやりと星座に見えてくるような気がするな)

成幸 「……きれいだな」

文乃 「うん。本当にきれいだね」

クスッ

文乃 「寝そべってたら本当に眠っちゃうよ?」

成幸 「ん、悪い悪い。寝そべると視界全部が星空になってきれいでさ」

文乃 「気持ちは分かるけどね」

文乃 「……望遠鏡、セットしてみたから覗いてみない?」

成幸 「ん……何か見えるのか?」


21以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:23:359nEg0gUI (21/33)

文乃 「それは、まぁ……」 ニコッ 「覗いてみてのお楽しみ、ってことで」

成幸 「ああ。じゃあ、ちょっと拝借して、っと……」

成幸 「……!?」

成幸 「この時間にこの方角で、これって……アンドロメダ座銀河か?」

文乃 「おー、さすが成幸くん! 正解!」

成幸 「す、すごいな! こんな小さな望遠鏡で、こんなくっきりと……」

成幸 「星が密集して銀河を形成してるのが見えるとは思わなかったな……」

文乃 「そうそう。灯りがないと意外と見えちゃうんだよね」

文乃 「ほら、肉眼でも薄ぼんやり見えるでしょ」

成幸 「た、たしかに……。遠出しただけあってすごいな、ここ……」

文乃 「小さい頃からここで星を見るのが憧れだったんだよ~。すごいよね!」

文乃 「成幸くんなら一緒に感動してくれると思ったよ。えへへ」

成幸 (子どもみたいに笑っちまってまぁ……)

文乃 「じゃあ、次はプレアデス星団を探すよ! どっちが先に見つけられるか勝負だね!」

成幸 「おう! 負けないぞ!」


22以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:24:379nEg0gUI (22/33)

………………

成幸 「はー……」

パタリ

成幸 「結局、どれも古橋の方が先に見つけちゃったな。完敗だ」

成幸 「星座と星の位置関係、結構覚えたつもりだったんだけどな」

文乃 「ふふふ。まだまだだね、成幸くん」

文乃 「………………」

パサッ……

成幸 「……? おいおい、お前が寝転んだら本当に寝ちゃうぞ?」

文乃 「成幸くんが寝転んでるのをみたら、わたしも寝転んでみたくなっちゃってさ」

文乃 「大丈夫。寝ないよ。だって、目の前が……」

文乃 「うわぁ~~~~……成幸くんの言うとおり、寝転ぶとすごいね。全方位星、星、星だよ」

成幸 「……だな。こんなすごい景色じゃ、寝てられないよな」 クスッ


23以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:25:089nEg0gUI (23/33)

文乃 「………………」

文乃 「……ねぇ、成幸くん」

成幸 「うん?」

文乃 「今日はありがとね。お父さんの代わりに、わたしの趣味に付き合ってくれて」

成幸 「いやいや、礼を言うのはこっちだよ。タダでこんな良い場所まで来られたしさ」

成幸 「古橋と一緒に星を見るのも楽しかったしさ。ほんと、ありがとな」

文乃 「っ……///」

文乃 「そ、それなら、良かったけど……」

文乃 「………………」

ドキドキドキドキ……


―――― 『手を繋ぐくらいは許すが、それ以上はまだお前たちには早いから、肝に銘じておくこと』


文乃 「……ねっ、ねえ、成幸くん」

成幸 「ん?」

文乃 「もう、冬も近いし……ちょっと、寒いね」


24以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:25:419nEg0gUI (24/33)

成幸 「ああ。たしかに冷えるけど……そろそろバスに戻るか?」

文乃 「へ? う、ううん。まだ星を見てたいから、それはいいんだけど……」

文乃 「……いや、その、寒いって言ってもね、ほら、冷えるのって末端からじゃない?」

成幸 「? まぁ、そりゃ中心から冷えはしないだろうけど……」

文乃 「それで、その……ね? えっと……手がね?」

成幸 「手?」

文乃 「うん。手がさ……手袋を、してても、だね? 少し、冷えてきててさ……」

成幸 「ああ。冷え性なんだな。そりゃ大変だ。一応カイロ持ってきてるから、やるよ――」

文乃 「――いやー? カイロはさー、なんていうかー……えっとー?」

文乃 「ずっと持ってたら、低温火傷になっちゃうしね? ね?」

成幸 「いや、そりゃそうだろうけど、ずっと持ってなきゃいいだけじゃ……」

文乃 「……でもずっと何かを握っていたい、みたいな?」

成幸 「みたいなって何だ……?」

文乃 「……いや、あの、だからね?」 カァアアアア…… 「……手を、ね?」

文乃 「繋いで、ほしいな……なんて、ね?」


25以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:26:199nEg0gUI (25/33)

成幸 「へ……?」

カァアアアア……

成幸 「あっ……/// いや、えっと、それは……」

文乃 「………………」 カァアアアア……

成幸 「………………」 スッ 「……お、俺の手で、いいなら」

文乃 「………………」 コクッ


…………ギュッ……


成幸 「………………」

文乃 「………………」

成幸 (なっ……なんで、手を、繋ぎたいなんて言い出したんだ……?///)

文乃 (わ、わたしってば、何言ってるのかな……///)

文乃 (これじゃまるで、わたしが……) カァアアアア…… (成幸くんのこと……)

文乃 (うぅ……///) プシューーー


26以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:27:249nEg0gUI (26/33)

文乃 「………………」

文乃 (……そう、だよね。今さら、否定、できないよね……)

文乃 (わたし、成幸くんのこと……)

成幸 「……?」

文乃 「……ねえ、成幸くん」

成幸 「お、おう」

文乃 「わたし、ちゃんと “起きてる” でしょ?」

成幸 「ん……? ああ、まぁ……起きてるけど……」

文乃 (……そう。わたしは “起きてる” 。もう、眠り姫じゃ、ない)

文乃 (わたしは……)

文乃 「……あのね、成幸くん、わたし……わたしね……」

文乃 「わたしっ、成幸くんのこと、――」

――――グゥゥゥウウウウ……

文乃 「ふぇっ…?」

成幸 「へ……?」


27以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:28:079nEg0gUI (27/33)

文乃 「………………」

成幸 「………………」

成幸 「ふ、古橋? 今の音って……ひょっとして……――」

文乃 「……い、言わないでよ! 本当にデリカシーがないね、成幸くんは!」

成幸 「いや、だって……」 クスッ 「あんまり大きい腹の虫だから、一瞬クマでも出たのかと……」

文乃 「だっ……だから言わないでって言ってるのにーー!!」

文乃 「……仕方ないでしょ! 深夜はお腹空くし、いつもお夜食食べてるし……」

文乃 「ふんだ。お菓子たくさん持ってきたけど、成幸くんには分けてあげないんだから」

ヒョイッ……パクッ……パクッパクッパクッ……

成幸 「お、おいおい……。いくらなんでも食べ過ぎじゃ……」


28以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:28:439nEg0gUI (28/33)

文乃 (あー……もう!)

文乃 (何であのタイミングでお腹鳴るかなー! もー!!)

文乃 「………………」

文乃 (……でも、わたし……)

文乃 (あそこでお腹が鳴らなかったら……)


―――― 『わたしっ、成幸くんのこと、』


文乃 「はうっ……」

文乃 (わたし……何を言おうとしてたんだろ……)

文乃 (何を言っちゃうところだったんだろ……)


29以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:29:179nEg0gUI (29/33)

………………帰路 バス車内

文乃 「はー……」

文乃 (まぁ、色々あったけど、天体観測自体は楽しかったし有意義だったかな)

文乃 (星団や銀河があんなにはっきりと見られるなんて、ほんと来て良かったよ……)

文乃 (さっ。眠気も吹っ飛んだことだし、帰りのバスこそちゃんと勉強しないとね!)

成幸 「………………」

文乃 (さすが成幸くん。もう静かに勉強を始めてるよ。わたしも見習わないと……――)

――ポスッ

文乃 「はぇ……? ぽす?」

成幸 「………………」 Zzzz……

文乃 「へっ?」 (へぇえええええええええ!?)

文乃 (な、成幸くん!? 静かだと思ったら、勉強してたんじゃなくて寝ちゃってたの!?)

文乃 (まぁ、もう明け方だし、ずっと起きてたんだから眠いよね……)


30以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:29:529nEg0gUI (30/33)

成幸 「むにゃ……」 Zzzz……

文乃 (っ……ね、寝顔可愛い……――)

――――ハッ

文乃 (じゃなくて!! よ、寄りかかられちゃってて、すごく近い……///)

文乃 (で、でも、疲れてるだろうし、寝かしておいてあげたいし……)

文乃 「………………」

文乃 (しっ、仕方ないなぁ。文乃姉ちゃんが、成幸くんのために肩を貸してあげるとしようかな)

ドキドキドキドキ……

文乃 (えへへ……)

成幸 「むにゃ……お……理珠、お前、それ……間違って……」

文乃 「……ん?」

成幸 「うるかも、それ違っ……いや……あしゅみー先輩まで……」

文乃 「……んん??」

成幸 「……あっ、真冬センセ……違うんです。それは……」

文乃 「……んんん???」


31以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:30:329nEg0gUI (31/33)

文乃 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 (ほーう。いい度胸だねぇ、成幸くん)

文乃 (わたしの肩の上で寝息を立てておいて、見るのは他の女の夢ってかい……?)

文乃 (しかもなぜか全員名前とか愛称呼び? へー。ふーん。ほーん)

文乃 (ほんと、いい度胸だよ……――)

成幸 「あっ……」 ニコッ 「文乃……姉ちゃん……えへへ……」

文乃 「………………」

オホン

文乃 (……まぁ、最後にわたしの名前を呼んだことだし?)

文乃 (わたしの名前を呼ぶときだけ、笑顔だったし?)

ニヘラ

文乃 (しっ……仕方ないから? 許してあげようかな……///)

おわり


32以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:31:029nEg0gUI (32/33)

………………幕間 「体重」

文乃 「いや、うん。分かってたことだけどね」

ガクッ

文乃 「深夜のお菓子のやけ食いダメ絶対……!!!」

おわり


33以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:31:399nEg0gUI (33/33)

読んでくださった方ありがとうございました。


34以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:38:55ZMrC1Ml6 (1/1)

おつおつ


35以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/03(金) 23:41:59uh.6Vgpo (1/1)

おつんこ貧乳


36以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/04(土) 01:42:33VkW2zAH6 (1/1)

乙やっぱり文系なんだよなぁ…


37以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/04(土) 08:51:20gL/1g57w (1/1)

かわいい


38以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/04(土) 09:03:51so3aMNgA (1/1)


新作待ってました!めちゃくちゃ良かった


39以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/05(日) 01:12:17iRsvuDBQ (1/1)

おつ
すごく出来良くね?(謎の上から目線)
個人的にこのss大好きだわ


40以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/05(日) 17:50:58vb3lVSgU (1/1)

この完成度は見覚えがありますね


41以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 16:35:04nAmEHrAU (1/1)

ええな


42以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:23:24ZJywfASQ (1/40)

【ぼく勉】 理珠 「今週末は、町内会のお祭りなんです」


43以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:23:57ZJywfASQ (2/40)

文乃 「お祭り? ってことは、ひょっとしてりっちゃん家も出店するの?」

理珠 「ええ。夏は焼きうどんでしたが、今度はかけうどんです」

うるか 「ほへぇ。いいねぇ。あたしも食べに行っちゃおうかなー……」 チラッ

成幸 「……? 何でこっちを見るんだ、うるか」

うるか 「いやぁ、成幸的に、受験生がこの時期にお祭りに行くのはアリかなー、って」

成幸 「俺の様子を伺ってたのか……。まったく」

成幸 「受験生だって息抜きくらい必要だろ。行きたいなら行くといいよ」

うるか 「やたっ! じゃあ、文乃っち、一緒にお祭りまわろ!」

文乃 「へ? う、うん。それはもちろん構わないけど……」

文乃 (わたしじゃなくて、成幸くん誘って行ったらいいのに……)

文乃 (ヘンなところ恥ずかしがり屋なんだから。仕方ないなぁ。一肌脱いであげるとするか)

文乃 「………………」

文乃 (べっ……べつに、わたしが成幸くんと一緒がいいから、とかじゃないからね!)


44以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:24:30ZJywfASQ (3/40)

文乃 「成幸くんも一緒にどう?」

うるか 「!?」 パァアアアアアア……!!!

成幸 「へ? ああ、悪い。週末はバイトが入っててさ。たぶん無理かな」

うるか 「………………」 シューーーン

文乃 「あっ……そうなんだ。残念だけど仕方ないね」

文乃 (うるかちゃんの浮き沈み分かりやすいなぁ……。あれでバレてないつもりなんだよね……)

成幸 「悪いな。ふたりで楽しんでこいよ」

文乃 「うん! りっちゃん家のうどん楽しみだなぁ~」

うるか 「お祭りで食べると、味わいもヒトシオだよねぇ~」

成幸 「緒方も出店がんばってな」

理珠 「はいっ! 緒方うどんの美味しさをもっと多くの人に知ってもらうためにがんばります!」

成幸 (がんばりが壮大すぎる……)


45以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:25:07ZJywfASQ (4/40)

………………金曜日 緒方家

理珠 「鍋良し、おたま良し、カゴ良し、あとは、と……」 ゴソゴソゴソ……

理珠 (ふむ、完ぺきですね。小物類は全部寸胴鍋に入れておけばいいでしょうか)

理珠 (でも、寸胴鍋に荷物を入れてしまうと、重くて運びにくいですね……)

ガサゴソガサゴソ……

理珠 「他の荷物は別の段ボールに入れて、っと……」

理珠 (運ぶ回数は増えますが、これなら車まで軽く運べそうですね)

ガラッ

親父さん 「リズたま~、準備ご苦労さま。ありがとうね」

理珠 「いえ。お父さんは店で忙しいでしょうから、準備くらいはさせてください」

理珠 「二回確認しましたが、荷物は完ぺきです」

親父さん 「さすがリズたま! ありがとう!」

親父さん 「……ママは用事があって実家に帰省中だしし、リズたまに頼ってしまってごめんな」

親父さん 「明日も出店があるし、受験生なのに受験勉強もなかなかさせてあげられないし……」


46以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:25:50ZJywfASQ (5/40)

理珠 「? 私はこの家の娘ですから、お手伝いをするくらい当然だと思いますが」

理珠 「それに、普段成幸さんに教えてもらってしっかりと勉強していますから、」 フンス

親父さん 「………………」 ピクッ

理珠 「家のお手伝いを少しするくらいでどうにかなるようなことはありません!」

親父さん 「リズたま……」 (……センセイの名前が出てくるのは気になるが……)

親父さん (健気なリズたまがかわいいからどうでもいいか……) ホゥ……

理珠 (……とはいえ、明日は一日勉強ができないのは事実ですから、)

理珠 (今日は夜まで勉強しておかないとですね)

理珠 「では、お父さん。私はそろそろ部屋に戻ります」

親父さん 「ん、ああ。分かったよ。勉強がんばってね、リズたま」

親父さん 「じゃあ、俺は荷物を車に積んでおこうかな……」 グッ

理珠 「あっ、その寸胴鍋、中身が……――」

親父さん 「――だいじょぶだいじょぶ。重いものを運ぶのには慣れてんだ」

親父さん 「よいしょっ、と……」 グイッ 「ん……!?」

グキッ……!!!


47以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:26:21ZJywfASQ (6/40)

親父さん 「」

理珠 「お、お父さん……?」

理珠 「寸胴鍋、中身を別の段ボールに移したから軽いですよ、って言おうとしたんですが……」

理珠 「大丈夫、です、か……?」

親父さん 「う……うん。大丈夫だよ、リズたま。でもね、ちょっとね……」

ガクガクガクガク

親父さん 「すごく重いものを持ち上げるつもりで力を入れたら、予想以上に軽くてね……」

親父さん 「多分、なんだけど……」

ニコッ

親父さん 「腰、やっちゃった、かも……」

ガクッ……

理珠 「お、お父さん!? お父さん、大丈夫ですか!?」

親父さん 「あっ、だ、だめだよリズたま。いま揺すると、いたっ……ああああ……」

理珠 「お父さーーーん!!」


48以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:26:52ZJywfASQ (7/40)

………………小美浪診療所

宗二朗 「……うん。間違いない。ぎっくり腰だよ」

親父さん 「うぅ……」

理珠 「ぎっくり腰……」

ホッ

理珠 「急に倒れたので、大病かと慌てましたが、ぎっくり腰ですか。良かった……」

宗二朗 「うーむ。そのぎっくり腰に対しての認識は改めた方がいいかもしれんな」

理珠 「?」

宗二朗 「たとえば、ぎっくり腰の患者に、こうしてでこぴんをしてみると、」

ピーン

親父さん 「ぐおお!?」 ビキッ 「うおおおおおおお!?」

宗二朗 「まずでこぴんの衝撃で腰が痛む。その生体反応で動いてしまってまた腰が痛む」

宗二朗 「振り子の振動と一緒だね。その痛み振幅は少しずつ小さくなるがなかなかなくならない」

理珠 「な、なるほど……。恐ろしいものなのですね、ぎっくり腰とは……」

親父さん 「せ、センセイよぉ……。俺の身体でぎっくり腰の解説をすんのはやめてくれよ……」


49以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:28:20ZJywfASQ (8/40)

親父さん 「こんなの大したことねぇよ。明日まで寝りゃすぐ痛みもひくだろ……」

宗二朗 「だからそんな簡単なものじゃないと言っているんだがな」

宗二朗 「なんにせよ、しばらくまともに動けないだろう。二、三日の安静が必要だよ」

親父さん 「……安静ってのは、仕事をしても大丈夫なんだよな?」

宗二朗 「バカを言うんじゃない。仕事なんかさせられるわけないだろう」

親父さん 「!? いやいや、そりゃ困るよセンセイ! 明日は町内会のお祭りに出店しなきゃなんだ!」

宗二朗 「そう言われてもな」

ピーン

親父さん 「ぬおおおお!?」

宗二朗 「少し触るだけでそれだけ痛がっていたら、仕事なんてできるものではないと思うがね」

親父さん 「ぐおおお……」

宗二朗 「出店の方は諦めた方がいい。それから、お店の方も一週間ほどは休業した方がいいだろうな」

親父さん 「うぐ……でもな、そうそう簡単に仕事を休むわけにも……」

宗二朗 「腰は消耗品だ。軽く見てると一生仕事ができなくなるぞ?」

親父さん 「むぐっ……」


50以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:28:59ZJywfASQ (9/40)

親父さん 「……分かったよ。センセイの言うとおりにするよ」

宗二朗 「うむ。よろしい」

宗二朗 「……と、言うわけで緒方さん。お父さんは二、三日うちで預かるよ」

宗二朗 「話を聞けばお母様も家にいらっしゃらないようだし、その方がいいだろう」

理珠 「すみません。ありがとうございます。父をよろしくお願いします」

親父さん 「リズたま!? リズたまは家にひとりで大丈夫なのかい!?」

理珠 「? 何の問題もありませんが?」

理珠 (……そう。家にひとりなのは問題ない。問題は……)


―――― 『うん! りっちゃん家のうどん楽しみだなぁ~』

―――― 『お祭りで食べると、味わいもヒトシオだよねぇ~』


理珠 「……楽しみにしてくれている人が、いますからね」

親父さん 「……? リズたま?」

理珠 「安心してください、お父さん! お店は無理でも、明日のお祭りくらいなら……」

理珠 「私ひとりでどうにか切り盛りしてみせますから!!」


51以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:29:36ZJywfASQ (10/40)

親父さん 「へ……? い、いや、リズたま……?」

理珠 「……と、なればボーッとしてはいられませんね。明日の仕込みもしておかないと」

理珠 「では、先輩のお父さん! 父をよろしくお願いします!」 ペコリ

宗二朗 「あ、ああ……」

親父さん 「リズたま? ち、ちょっと待って……――」

理珠 「――お父さんはちゃんと安静にしていてくださいね!」

タタタタタ……

親父さん 「リズたまーー!?」

ズキッ

親父さん 「あいたたたた……っ」

宗二朗 「……ふむ。娘からときどき話を聞くが、理珠さんは猪突猛進なところがあるな」

親父さん 「うるせぇやい。それもリズたまのいいところのひとつなんだよ」

宗二朗 「それはそうだろうな。父親の店のために、がんばろうと走り出すくらいなのだから」

親父さん 「……いや、まぁそりゃ嬉しいがな……。出店っていったって、リズたまひとりじゃさすがに……」

親父さん 「………………」


52以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:30:09ZJywfASQ (11/40)

宗二朗 「……心配か?」

親父さん 「娘が心配じゃねえ父親なんかいるもんかよ」

宗二朗 「……ふむ。まったくその通りだな」

親父さん 「……なぁ、センセイ。少し頼まれてほしいんだが」

宗二朗 「? なんだ?」

親父さん 「電話を貸しちゃくれねぇか?」

宗二朗 「……わかった。子機を取ってくるから、ちょっと待っててくれ」

親父さん 「………………」

親父さん (……リズたまはナリは小せぇが、意志は強くて一度言い出したら聞かないタチだ)

親父さん (やると言ったらやるんだろう。明日の出店、自分ひとりで……)

親父さん (縁日の出店とはいえ、ひとりでやりきるのは無理だ……)

親父さん (情けねぇ話だが、小美浪センセイの言うとおり、俺にできることはなさそうだし……)

親父さん (ママは一日で帰ってこれる距離じゃねぇ)

親父さん (ああ、ちくしょう。情けねぇ。でも、背に腹は代えられねぇ……)

親父さん (あのヤロウに頼るしかねぇか……)


53以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:30:40ZJywfASQ (12/40)

………………緒方うどん

理珠 「………………」

理珠 「……ふん!!」

グググググ……ッ!!!

理珠 「……うぅ」 ペタン

理珠 (ダメです。荷物をリュックに詰め直して見ましたが、重すぎます……)

理珠 (お父さんが入院ということは、車も出せないということですから、)

理珠 (全部の荷物を会場まで徒歩で運ばなければならないというのに、これでは……)

理珠 (食材から小物、寸胴鍋まで運ぶのは、さすがに難しいですよね)

理珠 (どうしたら……)

理珠 「………………」

理珠 (……冷静に考えてみれば、よしんば荷物を運び込めたとしても、)

理珠 (出店とは言え、ひとりでお店を切り盛りするコトなんて私にはできっこないですよね……)


54以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:31:23ZJywfASQ (13/40)

理珠 (……本当は分かっている。私は、意固地になっているだけです)

理珠 (できっこないことに固執して、なんとかしようとあがいているだけ……)

理珠 (……いつもそうです。私は、こうやって、できもしないことを……――)


成幸 「――お邪魔しまーす! 緒方、いるかー?」


理珠 「……へ?」

成幸 「お、いたいた。こんばんはだな、緒方」

理珠 「………………」

理珠 「ど、どうしてうちに成幸さんが!?」

成幸 「いやぁ、まぁ、色々あったというか、なんというか……」

成幸 「とりあえず説明は後だ。準備は終わってるんだな。じゃあ、早速荷物運び込むぞ」

理珠 「へ? へ? 運び込むって、どこに……」


真冬 「疑問。閉店中とはいえ、お店の前に車を止め続けていいものかしら?」


理珠 「……?」 ハッ 「きっ……桐須先生!? なぜ!?」


55以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:31:55ZJywfASQ (14/40)

うるか 「やっほー! あたしたちもいるよ、リズりーん」

文乃 「やぁやぁ、困ってるって聞いたから来ちゃったよ」

あすみ 「よっ。親父さん大変だったな。手伝いに来たぜー」

理珠 「うるかさんに文乃先輩まで!? い、一体どうして……」

成幸 「まぁまぁ、細かいことは後だ。とりあえず荷物運んじゃうぞ」

うるか 「よしきた! うるかちゃんの力持ちなところ見せちゃうぞー!」

文乃 「じゃ、わたしはこの寸胴鍋運んじゃうねー」

理珠 「は、はい! お願いします、文乃」

理珠 (……? しかし、運び込むとは一体……。それに、さっき桐須先生は……)


―――― 『疑問。閉店中とはいえ、お店の前に車を止め続けていいものかしら?』


理珠 (車……?)

バーーーーン!!!

理珠 「……!? お店の前に本当に車が!?」


56以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:32:55ZJywfASQ (15/40)

真冬 「ええ、私の車よ。小さく見えるでしょうけど、物はたくさん詰めるから安心してちょうだい」

理珠 「先生の車!? 先生、自動車をお持ちだったんですね。意外です……」

理珠 「……いや、というか、」

真冬 「? どうかしたかしら?」

理珠 「えっと、その……先生が、車を出してくださるということ、ですか……?」

真冬 「ええ。それが何か?」

理珠 「な、何かって……なぜ……?」

真冬 「あなたが困っているって聞いたからよ」

真冬 「それとも何かしら」 ジトーーッ 「私の運転が不安?」

真冬 「何なら今からあなたを乗せて走ってみせようかしら?」 フンスフンス

理珠 「ち、違います! 滅相もないです!」

理珠 「そうではなくて、その……先生もお忙しいでしょうし、あの……えっと……」

理珠 「………………」

理珠 「……すみません。ありがとうございます」 ペコリ


57以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:33:39ZJywfASQ (16/40)

真冬 「……車を出すだけだもの。お礼を言われるようなことではないわ」

真冬 「……まぁ、本当であれば、利害関係者である生徒と私的な関係を持つのは厳禁だけれど」

真冬 「仕方ないわ。あれだけ頼み込まれてしまっては、ね」

理珠 「……?」

真冬 「ほら、緒方さんもどんどん運び入れなさい。忘れ物がないようにね」

理珠 「あ……は、はい!」

理珠 「………………」


―――― 『やぁやぁ、困ってるって聞いたから来ちゃったよ』

―――― 『あなたが困っているって聞いたからよ』

―――― 『仕方ないわ。あれだけ頼み込まれてしまっては、ね』


理珠 (……私の窮状を、誰かが皆さんに伝えた?)

理珠 (一体、誰が……いえ、) フルフル (そんなの考えるまでも、ないですよね)

成幸 「うおお……お、重い……」 フラフラ

理珠 「………………」 カァアアアア……


58以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:34:15ZJywfASQ (17/40)

………………

真冬 「では、たしかに荷物を預かったわ。明日の朝、会場に直接運び入れるわね」

成幸 「先生、分かってますよね? 物積んでますからね? 割れ物もありますからね?」

成幸 「後生だから、安全運転でお願いしますね」

真冬 「失礼。君は私を一体なんだと思っているの?」

成幸 「………………」 ボソッ 「峠の走り屋……」

真冬 「……何か言ったかしら?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「ひっ……。な、なんでもないです!」

真冬 「まったく……」 オホン 「では、また明日。緒方さん」

理珠 「はい! よろしくお願いします! 桐須先生!」

あすみ 「じゃ、アタシもそろそろお暇するか。後輩。今日の分と明日の分、貸しだからな。ちゃんと返せよー」

理珠 「……?」

成幸 「分かってますよ。ありがとうございます、先輩」

あすみ 「にひひ、ま、いいってことよ。緒方も、明日がんばれよ」

理珠 「先輩もありがとうございました。助かりました」


59以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:35:11ZJywfASQ (18/40)

うるか 「じゃ、リズりん。明日も出店手伝いに行くかんね!」

文乃 「わたしも行くよ。明日もがんばろうね!」

理珠 「すみません。助かります。バイト代は後ほどちゃんとお支払いしますので……」

うるか 「そんなん気にしなくていいってー! あたしたち友達じゃん!」

理珠 「うるかさん……」

文乃 「じゃ、また明日ねー!」

うるか 「ばいばい、リズりん。成幸もね」

成幸 「おう。ふたりとも、明日もよろしくな!」

理珠 「あ……よろしくお願いします!」

理珠 「………………」

成幸 「………………」

成幸 「……じゃ、俺も帰るな。また明日……――」

――――――ムンズ……

理珠 「……帰るなら、せめて、」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「説明してからにしてくれませんか?」


60以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:35:41ZJywfASQ (19/40)

………………少し前 唯我家

成幸 (受験ももう大詰めだ。反復練習を繰り返していかないとな……)

花枝 「成幸ー、電話よー」 ヒョコッ 「緒方さん? からよ」

成幸 「ああ、ありがと」

成幸 (緒方から電話……? あいつだったらメッセージで済ませそうなもんだけど……)

成幸 「もしもし?」


親父さん 『おう、センセイか。夜分にすまねぇな』


成幸 「へ……? 親父さん!?」

親父さん 『何度も言うが、オメェに親父さんと呼ばれる筋合いはね……いててて……』

成幸 「? どうかしました? 大丈夫ですか?」

親父さん 『おう。実はちょっと腰をやっちまってな……ぎっくり腰ってやつだ』

親父さん 『……でよぅ、センセイ。頼みてぇことがあるんだ』

親父さん 『恥ずかしい話なんだが、頼れる奴がオメェしかいねぇ』

親父さん 『だから、恥を承知で、頼む! リズたまを助けてやってくれねぇか!』


61以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:36:16ZJywfASQ (20/40)

………………

成幸 「……って、親父さんに電話で頼まれちゃってさ」

理珠 「お父さんがそんなことを……」

理珠 「すみません。我が家の事情に巻き込んで、成幸さんにご迷惑を……」

成幸 「まぁ、あの親父さんにあんなに必死で頼み込まれたら断れないよ」

成幸 「……で、物を運ぶ必要があるみたいだから、俺ひとりじゃ不安で、古橋たちを呼んで、」

成幸 「タクシーを借りても良かったんだけど、桐須先生に頼んでみたら車出してくれるって言うしさ」

成幸 「だから、こうやってみんなでここに来たんだよ」

理珠 「成幸さんが皆さんに頼み込んでくれたんですね。助かりました」

理珠 「本当に……ひとりでどうしたらいいか分からなくなっていたので……」

成幸 「みんな快く引き受けてくれたよ。だからお前が気にする必要はないと思うぞ」

成幸 「俺も、明日は出店手伝うからさ。みんなで出店がんばろうな」

理珠 「へ……? で、でも、成幸さん、明日はバイトがあるのでは……?」

成幸 「……あー、まぁ、そっちもなんとかなるから大丈夫だよ」


62以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:36:49ZJywfASQ (21/40)

理珠 「なんとかって……」

成幸 「昼は服屋でバイトする予定だったんだけど、代打を母さんに頼んだし」


―――― 花枝 『えーっ。私明日は一日休みの予定だったのにー』 ブーブー

―――― 花枝 『ま、可愛い息子の頼みじゃ仕方ないわね。引き受けてあげる』

―――― 花枝 『ふふっ。それに、可愛いりっちゃんのためじゃ、ねぇ?』


成幸 (なぜにやついていたのかは分からないが、オーケーしてくれて助かった……)

成幸 「夜はハイステージでバイトだったけど、そっちはあしゅみー先輩に頼んだから」


―――― あすみ 『仕方ねーなぁ。代わってやるよ』

―――― あすみ 『そっ……そんかわし、今度、また勉強教えてくれよ』

―――― あすみ 『へ? いつものことじゃないですか、だって? ばかっ、ちげーよ』

―――― あすみ 『久しぶりに……ふっ、ふたりきりで、って言ってんだよ……///』


成幸 (なぜ先輩が顔を真っ赤にしていたのかは分からんが、とにかく先輩に感謝だな……)

理珠 「………………」


63以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:37:24ZJywfASQ (22/40)

成幸 「……ってなわけで、明日は空けておいたから大丈夫だ。俺も手伝うよ」

理珠 「………………」 サー--ーッ……

成幸 「……? 緒方? 顔色悪いけど、どうかしたか?」

理珠 「……す、すみません、成幸さん」

理珠 「私、成幸さんにとんでもないご迷惑を……。本当にごめんなさい!」

成幸 「緒方……?」

理珠 「私、できると、思ったんです」

理珠 「出店くらいなら、ひとりでも大丈夫だって。お父さんがいなくても、私ひとりで……」

理珠 「でも……」

理珠 「……可笑しいですよね。私ひとりじゃ、荷物を詰めたリュックを運ぶことすらできませんでした」

理珠 「でも諦めることもできなくて、どうしようと悩むことしかできなくて……」

理珠 「成幸さんたちが来てくれなければ、私は……」

理珠 「私は今も、何もできず、うずくまっていたんでしょうね……」

成幸 「………………」


64以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:38:25ZJywfASQ (23/40)

理珠 「……成幸さんたちが来てくれて、“良かった” と思いました」

理珠 「“助かった” って。きっと、成幸さんたちがなんとかしてくれる、って」

理珠 「そして実際、なんとかなるような気がしてきました」

理珠 「……その裏で、成幸さんが方々にお願いや頼み事をしてくれていたというのに、」

理珠 「それを薄々勘づいていながら、大したことだと考えていなかった……」

理珠 「……いつもそうです。私は、私ひとりで、問題を解決することができない」

理珠 「だから、また私は……こうやって、迷惑を……――」


成幸 「――……それは違うよ、緒方」


理珠 「え……?」

成幸 「……まぁ、そりゃ、色んな人に声かけて、集まってもらったり、バイト代わってもらったり……」

成幸 「大変じゃなかったって言えばウソになるけどさ」 クスッ

成幸 「でも、そうじゃないんだよ。“なんとかなる” と思えるのは、それが理由じゃないんだよ」


成幸 「それはさ、お前が諦めずがんばってきたからだろ?」


65以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:38:57ZJywfASQ (24/40)

理珠 「……へ?」

成幸 「緒方が諦めなかったから、親父さんも俺に頼み込んで来たんだろ?」

成幸 「緒方が諦めなかったから、今日だって荷物の積み込みが終わったんだろ?」

成幸 「緒方がいつもがんばってるから、古橋やうるかも、明日手伝おうって思うんだろ」

成幸 「先輩だって母さんだってそうだよ。お前の名前を出したら、二つ返事でオーケーしてくれたんだぞ?」

成幸 「あの “氷の女王” が、生徒のために車を出すと思うか?」

成幸 「お前が何を言ったって諦めないって知ってるからこそ、先生は車を出してくれるんだろ」

理珠 「………………」

成幸 「……たしかに、今回、色んな人に迷惑をかけてしまったかもしれないな」

成幸 「でも、それはみんな分かってて手伝ってくれてるんだよ」

成幸 「お前に協力してあげたい……助けてあげたいって、そう思ってくれてるんだよ」

成幸 「だからさ、そんな気に病むことはないよ。お前は明日、胸張って、」 ニコッ


―――― 『緒方うどんの美味しさをもっと多くの人に知ってもらうためにがんばります!』


成幸 「緒方うどんのうまさを祭りで知ってもらうために、がんばればいいんだよ」


66以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:39:34ZJywfASQ (25/40)

理珠 「成幸さん……」

グスッ

理珠 (……私は、本当に果報者です)

理珠 (文乃にうるかさん、小美浪先輩、桐須先生……。たくさんの人に気にかけてもらって……)

理珠 (それが情けなくもあるのですが、それでも……)


―――― 『でも、それはみんな分かってて手伝ってくれてるんだよ』

―――― 『お前に協力してあげたい……助けてあげたいって、そう思ってくれてるんだよ』


理珠 (……その気持ちに応えるために、)

理珠 「……そうですね」

クスッ

理珠 「皆さんの協力に報いるために、最高のうどんを提供しなければなりませんね!」

成幸 「おお! その意気だぞ、緒方!」


67以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:40:11ZJywfASQ (26/40)

理珠 (そして……)

カァアアアア……

理珠 (私のために、たくさんがんばってくれた、この人のために……)

成幸 「明日、がんばろうな、緒方!」

理珠 「はいっ! 成幸さん!」

理珠 (そう。私の……)

理珠 (私の、大好きな、この人の、ために……)


68以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:40:55ZJywfASQ (27/40)

………………当日

「かけうどん二杯くださーい!」

「こっちは三杯ください!」

文乃 「はーい! 少々お待ちください!」

文乃 「りっちゃん、うるかちゃん! かけうどん五杯よろしく!」

うるか 「あいよー! 任せてー! ……ん、リズりん、器におだしいれたよ!」

理珠 「はい、うどんはもうゆであがります!」

成幸 (さすが緒方うどんの出店。夏に引き続き大人気だな……)

成幸 「600円ちょうど、お預かりします!」

成幸 (……よしっ! 俺も気合いいれてがんばらないと!)

成幸 「ありがとうございましたー!」


69以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:41:42ZJywfASQ (28/40)

………………

うるか 「ふはーっ。つかれたねー」

文乃 「少しお客さんも落ち着いたかな。お昼時は大変だったねぇ」

成幸 「いつもはこれを親父さんとふたりでやってるんだよな。すごいな、緒方は」

理珠 「いえ。今回は皆さんが手伝ってくれたので、すごく楽です」

理珠 「本当にありがとうございます!」 ペコリ

うるか 「へへーっ。リズりんのためならこれくらい大したことないよー、だ」

理珠 「しばらくは混まないと思いますから、皆さんはお祭りを回ってきて大丈夫ですよ」

理珠 「店には私がいるので」

文乃 「えっ、でも……」

成幸 「………………」 (緒方なりの精一杯の気遣いだろうな。なら……)

成幸 「そうだな。ふたりはお祭り回ってきたらいいよ。俺も緒方と一緒に店番してるからさ」

理珠 「えっ……? で、でも、成幸さんも……」

成幸 「俺は緒方うどんの店員でもあるんだから、いいんだよ」 ニッ

成幸 「ほら、せっかく緒方がいって言ってくれてるんだ。うるかと古橋はちょっと休憩してこいよ」


70以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:42:19ZJywfASQ (29/40)

………………


―――― 文乃 『じゃあ、お言葉に甘えてお祭りちょっと回ってくるけど、』

―――― うるか 『もしお客さんたくさん来たら、すぐ連絡ちょうだいね!』


成幸 (……本当に義理堅い奴らだな。あの様子じゃ、すぐ戻ってきそうだな)

理珠 「………………」

理珠 「……あ、あの、成幸さん」

成幸 「うん? どうかしたか?」

理珠 「成幸さんは良かったんですか。お祭り、回らなくて……」

成幸 「……ん、まぁ、お祭りって誘惑が多いしな。散財するわけにはいかないから、俺は行かなくていいんだ」

理珠 「そう、ですか……」

理珠 (……本当に優しい人です。私を気遣って、そんな風に言ってくれるんですから)

成幸 「でも良かったな。ちゃんと出店できて。うどんも美味しいって大好評だな」

理珠 「はい。本当に良かったです。皆さんのおかげです」


71以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:43:06ZJywfASQ (30/40)

成幸 「でも、ほんと朝はヒヤヒヤしたな。桐須先生の車の中で小物類が散乱しててさ」

理珠 「ふふ、そうですね。幸い、割れ物も無事でしたけど」

理珠 「桐須先生はショックを受けていましたね」

成幸 「“驚愕。私の運転って、そんなにアレなのかしら……” 。ってな」 クスクス

理珠 「あっ、今の声真似ちょっと似てました」

成幸 「そうか? ははっ」

理珠 「ふふふ……」

成幸 「………………」

理珠 「………………」

ドキドキドキドキ……


―――― ((私のために、たくさんがんばってくれた、この人のために……))

―――― ((私の、大好きな、この人の、ために……))


理珠 (不思議な感覚です。ドキドキするだけでなく、どこか、落ち着く……)

理珠 (成幸さんの隣にいると、何とも形容しがたい、幸せな気持ちになります)


72以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:43:44ZJywfASQ (31/40)

理珠 (私は……)


―――― 『当然です 何故私が恋愛などしなければならないのですか』

―――― 『好いた惚れたと曖昧なものに過分なエネルギーを割くなど非効率の極みです』


理珠 (非効率であろうと、なんであろうと、この気持ちは、もう……)

理珠 (きっと、止められるものでは、ないから……)

ドキドキドキドキ……

理珠 「……あの、成幸さん」

成幸 「ん?」

理珠 「私、本当に、成幸さんに感謝しているんです」

成幸 「へ……? い、いきなりなんだよ。照れるな」

理珠 「四月からずっと、成幸さんには本当にお世話になりっぱなしです」

理珠 「……それこそ、もう、成幸さん抜きでは、生きていけないかもしれないくらいに」

成幸 「……?」


73以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:44:39ZJywfASQ (32/40)

理珠 「だから、その……」 (そう。だから。私は……)

理珠 「……もし、成幸さんさえよろしければ、これからもずっと、私のそばにいてください」

成幸 「え……?」

カァアアアア……

成幸 「あっ……う、嬉しいな。そういう風に、言ってもらえるのは……///」

成幸 「こちらこそ、よろしくな。俺も、お前と友達になれてよかったよ」

理珠 「………………」 クスッ 「……私が言うのも何ですが、本当に、成幸さんはもっと人の心を理解する訓練が必要ですね」

理珠 「仕方ありません。私が立派な大学生になったら、成幸さんに心理学のイロハをたたき込んであげます」

理珠 (……今は、“友達” でいい)


―――― 『……今は もっと知りたい 人の気持ち 自分の気持ち』

―――― 『成幸さんの………………』


理珠 (でも、いつか……)

理珠 「……そのときは、私の気持ち、知ってもらいますからね。成幸さんっ」

おわり


74以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:45:27ZJywfASQ (33/40)

………………幕間 『ごめん紗和子ちゃん』

紗和子 「……えぐっ、ぐすっ……えぐっ……ひぐっ……」

文乃 「だ、だからごめんってばー、紗和子ちゃん」

うるか 「ごめんねぇ、さわちん。てっきり成幸が誘ってるもんだと思ってさ……」

紗和子 「ひぐっ……えぐっ……おっ……緒方理珠の、危機に駆けつけられない、なんて……」

紗和子 「大親友、失格、だわっ……」

紗和子 「かっ……かくなる……ぐすっ……上は……しんで詫びるしか……」

文乃 「め……めんどくせぇ、だよ……」 (よしよし、紗和子ちゃん。大丈夫だよ)

うるか 「文乃っち、言葉と心の声が逆になってるよ……」

おわり


75以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:52:42ZJywfASQ (34/40)

【ぼく勉】 あすみ 「今週末は高校の先輩の結婚式なんだよ」


76以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:53:14ZJywfASQ (35/40)

成幸 「へぇー、先輩の結婚式。そろそろそういう年齢なんですねぇ……」

成幸 「あれ? でも先輩の先輩ってことは、まだすごく若い人なんじゃ……」

あすみ 「ああ、あの人はミュージシャンになる! って就職も進学もしなかったからな」

あすみ 「残念ながらメジャーデビューはできなかったみたいだけど」

あすみ 「でもまぁ、音楽活動のおかげでいい人と知り合えたみたいだし、結果オーライなんじゃねーの」

成幸 「……結婚式、かぁ。ちょっと憧れてるんですよね」

あすみ 「へ?」 ドキッ 「お、お前、結婚式に憧れるって……ち、ちと早くねーか……///」

成幸 「へ?」

あすみ 「で、でも、もしこだわりとかあるなら、結婚相手とちゃんと話しておかないとダメだぞ?」

成幸 「……? あの、先輩?」

あすみ 「まぁ、べつに? だから何だってわけじゃねーけど、アタシは特にこだわりねーし?」

あすみ 「神前式だろうがチャペルだろうが、相手に合わせられるっつーか……///」

あすみ 「お前の好きなように決めてくれて構わないっていうか……///」

あすみ 「……アタシは、ウェディングドレスでも白無垢でも、どっちでも構わないけど……」

あすみ 「あ、でもやっぱり、写真撮るだけでもいいから、一度はウェディングドレス着てみたいかな……」


77以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:55:13ZJywfASQ (36/40)

成幸 「いや……いやいやいや、先輩、急に何言ってるんですか。違いますよ」

成幸 「俺、結婚式って小さい頃に行ったきりだから、友達の結婚式とかに出席してみたいな、ってだけですよ」

あすみ 「へ……?」

成幸 「自分の結婚式なわけないじゃないですか……」

あすみ 「………………」

成幸 「……先輩?」

あすみ (……あ、アタシの勘違い? っていうか、アタシ、何言ってんだ……) カァアアアア……

あすみ (いっ、今の物言いじゃまるで、アタシと後輩が結婚するのが前提みたいじゃねーか……)

あすみ (お、親父が悪い! 勝手に後輩との結婚を考えたり、後輩との子どもの名前を考えたりするから!)

あすみ (親父が悪いわけで、アタシが後輩と結婚したいわけじゃないからな!)

成幸 「……?」 (先輩さっきから何やってるんだろう……?)


78以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:56:13ZJywfASQ (37/40)

成幸 「……まぁ、結婚式ってご祝儀とかあるから、できれば働けるようになってから出席したいですね」

成幸 「友達が多い人はご祝儀だけで相当な出費になるって聞いた事ありますし」

あすみ 「あ、ああ。分からんでもないな。正直、ご祝儀三万は、浪人生的には、きつい」

成幸 「ですよねぇ……」

あすみ 「でもまぁ、先輩には色々お世話になったし、感謝の気持ちも込めて贈るよ」

あすみ 「ついでに、冷やかしたりして遊んで、ご馳走たらふく食ってきてやるって感じだな」

成幸 (いい笑顔だなぁ。その先輩、すごくいい人だったんだろうな)

成幸 「……俺はその先輩のこと知らないですけど、」

成幸 「きっといい結婚式になりますね。先輩も楽しんできてください」

あすみ 「おう!」


79以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:57:04ZJywfASQ (38/40)

………………式前日

あすみ 「………………」

あすみ 「……まぁ、こんなモンか」

あすみ (高校入学くらいのときに仕立ててもらったドレスだけど、ヘンじゃないよな?)

あすみ (化粧もいつもより濃いめで、こんな感じで問題ないだろ……)

あすみ (まぁ、どうせ化粧も髪のセットも美容院でやってもらうんだけどさ)

あすみ (にしても……) ジーーーーーッ

あすみ (自分の身体ながら、恨めしくなるよ。高一のときから全然体型変わってねーのな)

あすみ (多少胸とか尻とかがでかくなったくらいか?)

あすみ (ったく、もう少し身長伸びてくれてもいいじゃねーか) ハァ

あすみ (ま、無い物ねだりしてもしょうがねーか。緒方はあたしより小せぇのに頑張ってるしな)

あすみ 「………………」

あすみ (……まぁ、胸はあいつの方が圧倒的にでけーけど)

prrrr……

あすみ 「ん……?」 (先輩から電話……?)


80以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:58:10ZJywfASQ (39/40)

ピッ

あすみ 「もしもし?」

『あっ、良かった! 出てくれた! 助かったー!」

あすみ 「……ちわっす。相変わらずテンション高いっすね、先輩」

『いやいやいや、明日結婚式なのにめっちゃテンション低かったら逆にやばいっしょ』

あすみ 「それもそうっすねー」 クスクス 「……で? どうかしたんですか?」

『そうなのよー。大変なのよ。明日出席予定の軽音部OG、ひとりインフルになっちゃったらしくてさ』

あすみ 「へ……? ああ、まぁ、大変っちゃ大変ですけど……」

あすみ 「明日出席してもらえないのは残念かもしれないですけど、仕方ないんじゃ……」

『そうなんだけどね、欠席されちゃうと困るのよ!』

『披露宴、円卓の人数配分を完ぺきにしすぎちゃって、ひとりでも欠席が出るとそこめっちゃ目立つんだわ!』

あすみ 「……はぁ」

『だからできる限り欠席者をなくしたいのよー!』

あすみ (……またヘンなところ、こだわる人なんだよなぁ)

『でさ、あすみちゃん! カレシ、いるのよね?』


81以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/06(月) 23:59:48ZJywfASQ (40/40)

あすみ 「……は?」

『いるのよね、カ・レ・シ』

あすみ 「………………」


―――― 『彼氏の趣味で!!』

―――― 『今…… 設定上一応…… 彼氏なわけですし……』


あすみ 「……ま、まぁ、一応」 カァアアアア…… 「いるっちゃ、いますけど……」

『良かった! それでこそあすみちゃんよ! ナイス! 最高!』

あすみ 「……? あの、要領を得ないんすけど、一体……――」


『――……ってことで、明日その彼氏と一緒に結婚式来てね!』


あすみ 「………………」 ハッ 「……はぁ!? 何でこうは――彼氏を結婚式に!?」

『だいじょぶだいじょーぶ。式出席してもらって、披露宴で座っててもらうだけでいいから!』

『もちろんご祝儀はいらないし、お料理や飲み物、好きだけ飲み食いしてってよ!』

『会場近くのサロンに礼服とか靴、一揃え用意しておくから、後でカレシの諸々のサイズ送ってね!』


82以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:00:327uI8KgCw (1/25)

あすみ 「い、いやいや、ちょっと待ってくださいよ。アタシの彼氏、先輩と何の縁もゆかりもないじゃないですか!」

あすみ 「それが結婚式に出席するって、いくらなんでもおかしいでしょ!」

あすみ 「新郎側の出席者にヘンに思われますよ!」

『大丈夫! その点は抜かりないわ!』


『明日だけでいいからカレシと婚約してるフリをしてちょうだい!』 バーーーン!!!


あすみ 「へ……?」 カァアアアア…… 「へぇぇ……!?」

あすみ 「こ……婚約って、アタシ、浪人生ですよ? あいつだって、高校生だし……」

『だーかーらー、フリだけでいいってば』

『ふたりが婚約してて、私もあすみちゃんのカレシと知り合いって言えば、何もおかしくないでしょ?』

あすみ 「そ、そりゃそうかもしれませんけど……」 ハッ 「いやいやいや! やっぱり無茶苦茶ですよ先輩!!」

『お願い! 先輩一生のお願い! おーねーがーいー!』

あすみ 「………………」

あすみ (……婚約者、かぁ)


83以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:01:097uI8KgCw (2/25)

あすみ 「……わ、わかりましたよ。一応彼氏に聞いてみます」

『ほんと!?』

あすみ 「それで向こうが断ったら諦めてくださいよ? 一応あいつも受験生だし……」

『うんうんうん。そのときはあきらめるよ!』

『じゃあ、カレシと連絡ついたらこっちにも連絡ちょうだいね!』

『カレシの服と靴のサイズ聞くのも忘れずにね!!』

『じゃ、私ほかの手配も色々あるから! じゃね!!』

プツッ……

あすみ 「……はぁ。せわしないひとだなぁ。ったく」

あすみ 「………………」

あすみ 「……一応、電話して聞くだけ聞いてみるか」

あすみ 「ダメ元で、だけど。まぁ、一応、先輩に対しての義理は通すってだけ……」

prrrrr……ピッ

あすみ 「……ん、おう、後輩。突然悪いな。あのさ、ダメ元で聞くんだけどさ、」

あすみ 「……明日、タダで結婚式、出席してみないか?」


84以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:01:437uI8KgCw (3/25)

………………当日

あすみ 「………………」

あすみ (うー、やっぱり頭セットしてもらうと落ち着かねーな……)

あすみ (化粧もいつもよりだいぶ濃いし、心なしか息苦しい気がする……)

あすみ (コート羽織ってるとはいえ、ひらひらのドレスだと外は寒いし……)

あすみ (……あー、早く来いよ、後輩)


―――― 成幸 『えっ!? いや、さすがに知らない人の結婚式には出られないですよ!』

―――― 成幸 『……あー、でも、そうですか。困ってるんですか』

―――― 成幸 『………………』

―――― 成幸 『わ、分かりました。先輩がお世話になった人のためですもんね!』

―――― 成幸 『出席します』


あすみ (……いや、まぁ、頼んだのはアタシだけどさ)

あすみ (まさか本当に引き受けてくれるとは思わなかったな……)

あすみ (……婚約者、かぁ) ニヘラ


85以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:02:147uI8KgCw (4/25)

あすみ 「ん……?」

成幸 「………………」 キョロキョロキョロ

あすみ (……? 後輩、何やってんだ?)

成幸 「うーん、メッセージだともうここにいるらしいんだけどなぁ……」

成幸 「どこだろ、先輩……」 キョロキョロキョロ

あすみ 「………………」 ガクッ 「……マジか、お前」

成幸 「!? せ、先輩!?」

あすみ 「おう。何やってんだ、お前。アタシずっとそこにいたぞ」

成幸 「いや、えっと、だって……」 カァアアアア…… 「せ、先輩に、見えなくて……」

あすみ 「ほう? 役柄だけとはいえ、彼女の顔を忘れるたぁふてぇ野郎だな」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「ち、違いますよ! だって、先輩……その、すごく、綺麗になってるから……///」

あすみ 「……へ?」

あすみ 「………………」

あすみ 「……お、おう///」 カァアアアア…… 「そ、そうか。そりゃ……わ、悪かった、な」

成幸 「い、いえ……///」


86以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:03:007uI8KgCw (5/25)

あすみ 「き……今日はありがとな。来てくれて……」

成幸 「ど、どういたしまして、です。全然、大したことじゃないですけど……」

あすみ 「……でもお前、少しは、こう……化粧した女とかに耐性つけとけよ」

成幸 「へ?」

あすみ 「アタシみたいなちんちくりん相手で顔真っ赤にしてたら……」

あすみ 「今日の結婚式、アタシと同世代の女ばっかだから、大変だぞ?」

成幸 「いや、それは、多分、大丈夫かと……」

成幸 「先輩がすごく綺麗だから、緊張しちゃっただけですから」

あすみ 「っ……」

成幸 「……先輩くらいの美人さんばっかりだったら、大変かもしれないですけど」

あすみ 「……///」

成幸 「………………」 ハッ

成幸 (……いやいやいやいや!? 俺何言ってるんだ!? 口説いてるみたいになってるぞ!?)

ドキドキドキドキ……

あすみ (こ、後輩のバカ。なんでそんな、ヘンなこと言うんだよ~~~!!)


87以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:03:547uI8KgCw (6/25)

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

ドキドキドキドキ……

あすみ 「あっ……お、お前の着替えもあるし! そろそろ行かないとだな!」

成幸 「! そ、そうですね! 行きましょう!」

成幸 (な、なんだろ、今の空気……なんか、ドキドキする……///)

あすみ (うぅ~/// こんな調子で、“婚約者” やるのかよ~……)

成幸 (それにしても、先輩……)

あすみ 「………………」

カツカツカツカツ……

成幸 (高いヒールを履いてるのもあるけど、今日はすごく大人っぽくて……)

ドキドキドキドキ……

成幸 (……本当に、綺麗だな)


88以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:04:527uI8KgCw (7/25)

………………サロン

あすみ 「………………」

ソワソワソワソワ……

あすみ (大丈夫かな、あいつ。こんなところ来慣れてないだろうし……)

あすみ (入ったときも緊張しきりだったしな。ちゃんと着付けてもらってるだろうか……)

成幸 「……あっ、先輩。お待たせしました」

あすみ 「! 終わったか。短かった、な……って……」

成幸 「……えっと、どうですかね? 礼服なんて初めて着ましたけど……」

成幸 「ドレスシャツも、なんだか肌触りがなめらかで不思議な感じだし……」

成幸 「革靴も高そうだから緊張するし、コンタクトもバイトの時よりゴロゴロする気がします……」

成幸 「髪をこんなに整えられたのも初めてだし……。変じゃないですかね?」

あすみ 「………………」 ポーーーーッ

成幸 「……先輩?」

あすみ 「へっ? あ、ああ。いや、うん……えっと、いいんじゃないか?」 プイッ

成幸 (か、感想それだけ!? やっぱり変!?) ガーーン!!!


89以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:05:397uI8KgCw (8/25)

あすみ 「………………」

ドキドキドキドキ……

あすみ (……な、なんだよ、後輩の奴)

あすみ (けっ……結構、いけてんじゃねーか……)

あすみ (後輩のくせに……)

ドキドキドキドキ……

成幸 「……? 先輩?」

あすみ 「んお!? い、いきなりなんだ!?」

成幸 「へ? いや、何もないですけど……もうそろそろいい時間ですから、行きましょう」

あすみ 「あ、ああ。そうだな。行こう行こう」

ソソクサ

成幸 「……?」 (先輩、何か急に変になったけど、どうしたんだろう……?)


90以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:06:347uI8KgCw (9/25)

………………式場 ラウンジ

あすみ 「………………」

成幸 「………………」

成幸 「……な、なんか緊張しますね、こういうところ」

あすみ 「あんまキョロキョロすんなよ、恥ずかしいから」

あすみ 「……今日はお前、アタシの “婚約者” なんだからな」

成幸 「わ、わかってますよ。彼氏前提の、婚約者の振りですよね。ややこしい……」

「あっ、あすみじゃーん。久しぶりー」

「わー、あすみ、変わってなーい!」

あすみ 「よっ、おひさ。卒業してから一年も経ってないんだから当たり前だろ」

成幸 (? 同級生の人たちかな……?)

「ん……? ね、ねぇねぇ、あすみ。ひょっとしてその人が噂の……」

あすみ 「ん? ああ、そうだよ。アタシの婚約者の……」

成幸 「あっ……ゆ、唯我成幸です。初めまして……」

「まだ高校生なんでしょ? かっわいいー!」


91以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:08:217uI8KgCw (10/25)

成幸 「わっ……」 (ち、ちかっ……)

あすみ 「お、おい、あんまからかうなよ」

「ごめんごめん。あすみのカレってどんな子なのかなって思ってたら、ねぇ?」

「うん。予想以上に可愛い男の子だったから、びっくりしちゃってさ」

「じゃ、お邪魔してもアレだから、あたしたち向こう行ってるね」

「また後で、式と披露宴でねー。ばいばい、唯我クンっ」

あすみ 「……行ったか。ったく」

あすみ 「悪いな、後輩。軽音部の連中だから、キャピキャピしてんだよ……」

成幸 「………………」 ポーーーッ

あすみ 「……後輩?」

成幸 「……へ? あ、ああ、はい。大丈夫です!」

あすみ 「………………」


―――― 『……先輩くらいの美人さんばっかりだったら、大変かもしれないですけど』


あすみ 「……へぇ」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!


92以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:08:557uI8KgCw (11/25)

あすみ 「……お前、何か? さっきあんなこと言ってくれてた割には、おい?」

あすみ 「結構簡単に他の女に見惚れるんだな? ああん?」

成幸 「ち、違います違います! 誤解ですよ!」

成幸 「ちょっと、こう……急に近づかれたから、ドキッとして……」

成幸 「年上の女性って感じがして、少し緊張しただけで……」

あすみ 「誤解じゃねーじゃねーか!」

成幸 「ひっ……ご、ごめんなさい!」

あすみ 「ったく……」 (……なんだよ、後輩の奴)


―――― 『先輩がすごく綺麗だから、緊張しちゃっただけですから……』


あすみ (さっきはあんなこと言ってくれたくせに……)

あすみ (確かに、あいつら高校のときと比べて、遙かに大人っぽくなってるし、綺麗だけどさ……)

あすみ (それに比べたら、アタシは……)

あすみ (ちっちゃいままかもしれねーけどさ……)


93以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:14:557uI8KgCw (12/25)

あすみ 「………………」


―――― 『自分の身体ながら、恨めしくなるよ。高一のときから全然体型変わってねーのな』

―――― 『ったく、もう少し身長伸びてくれてもいいじゃねーか』


あすみ (……でも、そっか)

あすみ (仕方ねーよな。だってアタシは、全然成長してないし。ヒール履いてもこの程度の身長だ)

あすみ (胸だって、そんな大きくねーし。未だに中学生に間違われることもしばしばだ)

あすみ (……仕方ねーんだよな)

成幸 「先輩……?」

あすみ 「………………」

成幸 「……あ、あの、先輩――」


『――お待たせ致しました。式場の準備が整いましたので、参列者の皆様はご移動をお願いします』


あすみ 「……式の準備ができたみたいだな。行こうぜ」

成幸 「あ……は、はい」


94以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:15:437uI8KgCw (13/25)

………………披露宴

あすみ 「先輩、綺麗だったなー」

「ほんとにねー! 私写真めっちゃ撮っちゃった!」

「あ、それあとでグループ送っといてよ」

「オッケー」

あすみ (……ほんと、綺麗だったな。先輩のウェディングドレス)

成幸 「………………」

成幸 (うーん……。さすがに、お友達と談笑しているときに話しかけるのはアレだよな)

成幸 (後でいいか。でもなぁ……)

あすみ 「………………」 プイッ

成幸 「……うっ」 (さっきから目も合わせてくれないし、気まずい……)

あすみ 「……悪い、ちょっと出てくるわ」

成幸 「へ? 先輩、どちらに……?」

あすみ 「聞くな、バカ。お手洗いだよ」

成幸 「あっ……」 シュン 「す、すみません……」


95以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:16:347uI8KgCw (14/25)

………………お手洗い

あすみ 「……はぁ」

あすみ (さすがに大人げないよな。何やってんだ、アタシ……)

あすみ (これじゃまるで……)

カァアアアア……

あすみ (後輩に、本気でヤキモチ妬いてるみたいじゃねーか……)

あすみ (……まぁ、何にせよ、だ)

あすみ (後輩はアタシのお願いを聞いて付き合ってくれてるんだから、)

あすみ (変な態度取ってたらバチ当たっちまうよな……)

あすみ 「……よしっ、と」

あすみ (とりあえず、席に戻って後輩に謝ろう。話はそれからだな……――)

「――……いやー、花嫁さんめっちゃ綺麗だったねー」

「ほんとにね。あいつにはもったいないくらいだよね」

あすみ (ん……? 新郎側の参列者か……)


96以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:17:107uI8KgCw (15/25)

「ウェディングドレスめっちゃ似合ってたよね。あのスタイルうらやましいわー」

「あんなスラッとしたドレス、わたしが着たら絶対おかしなことになるし」

「あんたなんかまだマシでしょ。あたしが着たらお遊戯会の子どもだよ」

「もう少し足長くなんないかなー。10cmくらい?」

「あたしはそんな贅沢言わないから、もう2、3cmだけでも身長ほしかったわ」


………………


あすみ 「………………」

あすみ (今のふたり、どっちもアタシより身長高いけどな)

あすみ (まぁ、自分の身体のことだから、自分でどんな感想持つのも自由なんだけど、)

あすみ 「………………」


97以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:18:037uI8KgCw (16/25)

あすみ (……アタシは、)


―――― 『ちょっと、こう……急に近づかれたから、ドキッとして……』

―――― 『年上の女性って感じがして、少し緊張しただけで……』


あすみ (ヒールを履いたところで、ちんちくりんのままで)

あすみ (ウェディングドレスなんか着たって、きっと……)

あすみ (……きっと、似合わないんだろうな)

あすみ (嫌だな……)

あすみ (身長が低い自分が。それを恨めしく思う自分が……)

あすみ (……本当に、嫌だ……――)


98以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:18:377uI8KgCw (17/25)

………………

あすみ 「………………」

モグモグモグ……

あすみ (……お料理は、とてつもなくウマい……けど、)

あすみ (味がよく分からない……)

成幸 「はぁ……美味しい……」 ウルウルウル 「葉月と和樹にも食べさせてあげたい……」

あすみ (……結局、まだ後輩にも謝れてないし)

あすみ (そもそも、そんな気分にならねーし……)

「ね、ね、あすみ」 コソッ

あすみ 「ん? あんだよ? コソコソと……」

「いや、ね。あすみは婚約者クンに愛されてるな、って」

あすみ 「はぁ? いきなり何だよ?」

「さっき、あすみがトイレ行ってる間、ちょっとカレシと話したんだよ。そしたらね……――」


99以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:19:157uI8KgCw (18/25)

………………少し前

『ねぇねぇ、カレシくんはさ、あすみのどんなところが好きなの?』

成幸 『へ……!? い、いきなり何ですか?』

『いやー、気になっちゃってさ。ねぇ?』

『うんうん。あたしもめっちゃ気になるよ。あすみもいないし、ぶっちゃけちゃいなよ』

成幸 『そ、そんなこと言われても……うーん……』

成幸 『せんぱ――あすみさんの好きなところかぁ……』

『……あれ? そんなに悩む感じ?』

『あすみちっちゃくて可愛くて美人だし、そういうトコじゃないのー?』

『うんうん。あすみちっちゃくて子どもみたいで可愛いよねぇ』

成幸 『いや、まぁ、あすみさんが可愛くて美人なのはその通りなんですけど……』

成幸 『………………』

成幸 『……でも、あんまりちっちゃいって思ったことはないですかね』

『へ……?』


100以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:19:487uI8KgCw (19/25)

成幸 『いや、出会ったときはそれこそ中学生と勘違いしたりもしましたけど、』

成幸 『知り合って、お付き合いをさせてもらっているうちに、あんまり小さいと思わなくなって……』

成幸 『あすみさんって、すごいんですよ。リアリストで、考え方も大人で……』


―――― 『塾の授業聞くだけで成績伸びる奴なんて一部の天才だけだ』

―――― 『自分で努力せずに 結果なんて出るわけねーのにな』


成幸 『自分の夢のために一生懸命で、いつもいつも、本当に頑張っていて』

成幸 『……なのに、俺のことも気にかけてくれて』


―――― 『塾ってのは自分で勉強することを軸に 必要なものを捕捉するために存在するんだ』

―――― 『その位置づけは間違うなよ後輩』


101以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:20:397uI8KgCw (20/25)

成幸 『俺だけじゃない。他の人のことも、いつも……』


―――― 『……世話やかせやがって…… できれば触らずに助けたかったのに……』

―――― 『でもま ガキ泣かせとくような医者にゃ なりたくねーからな』


成幸 『だから……』

成幸 『すごく “おっきいな” って感じるんです』

成幸 『だから、えっと、その……』

成幸 『恥ずかしいですけど、俺があすみさんを好きなのは……』

成幸 『綺麗で、可愛くて、美人なところ……でも、それ以上に……』

成幸 『頼りになるところ。大人なところ。優しくて、人のためにがんばれるところ』

成幸 『……そういう、“おっきい” ところなんだと思います』

『へ、へぇー……///』

『そ、そっか。あすみのこと、よく見てるんだね……///』

成幸 「……あっ! だ、ダメですよ!? 今の、絶対先輩――あすみさんに言わないでくださいね!』


102以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:21:367uI8KgCw (21/25)

………………

「――……って感じでさぁ。聞いてるこっちが恥ずかしくなっちゃったよ」

「ほんとほんと。ごちそうさま、って感じ」

あすみ 「お、お前ら、アタシがいない間に後輩で遊んでじゃねーよ」

あすみ 「ったく……」

あすみ 「………………」

あすみ (……へ、へぇ。ふーん。なるほどねぇ)

あすみ (“おっきい” とこ、かぁ……///)

カァアアアア……

「あれぇ?」 ニヤァ 「あすみ、顔真っ赤だよ?」

あすみ 「……!? はぁ!?」

「わっ、あすみ可愛い~! 照れてんの?」

あすみ 「て、照れてねーよ!」

成幸 「? どうしたんです、先輩?」

あすみ 「っ……な、なんでもねーよ!」


103以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:22:247uI8KgCw (22/25)

………………お見送り

先輩 「今日は来てくれてありがとね、あすみちゃん。それから、唯我クンも」

成幸 「いえ、こちらこそお招きいただいてありがとうございました」

あすみ 「……ったく」 コソッ 「こんな無茶はこれきりにしてくださいよ、先輩」

先輩 「ごめんって。そっちのときはご祝儀はずむからさ」

あすみ 「……そっちのとき?」

先輩 「えぇ? 何とぼけてんのー?」 ニヤァ 「あすみちゃんと唯我クンの結婚式に決まってんじゃん」

成幸 「っ……///」

あすみ 「………………」

あすみ (……アタシと後輩の結婚式、ね) ジーーーーッ

成幸 「……?」

ムギュッ

成幸 「……へ? あ、あすみさん? 何で、腕、組んで……///」

成幸 (ど、ドレスで腕組まれると、素肌に触れちゃって、や、ヤバい……)


104以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:23:157uI8KgCw (23/25)

あすみ (アタシと後輩は、ただの、役だけの、恋人)


―――― ((いっ、今の物言いじゃまるで、アタシと後輩が結婚するのが前提みたいじゃねーか……))

―――― ((お、親父が悪い! 勝手に後輩との結婚を考えたり、後輩との子どもの名前を考えたりするから!))

―――― ((親父が悪いわけで、アタシが後輩と結婚したいわけじゃないからな!))


あすみ (親父を誤魔化すためだけの、ニセモノの、恋人)

あすみ (……でも)

あすみ (アタシのことをしっかりと見てくれる……アタシのことをいつも助けてくれる、相手)

あすみ (もう、きっと、否定することなんて、できない、アタシの……)

あすみ (好きな、人……)

あすみ 「……じゃ、約束ですよ。先輩」

クスッ

あすみ 「アタシたちの結婚式、絶対来てくださいねっ」

おわり


105以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:23:517uI8KgCw (24/25)

………………幕間 『小美浪家にて、つい』

あすみ 「ん、そろそろ昼飯の時間だな。作ったら食うか? 後輩」

成幸 「あ、ほんとですか。助かります、あすみさん」

宗二朗 (ナチュラルに名前呼びだと!?)

おわり


106以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 00:24:287uI8KgCw (25/25)

読んでくださった方ありがとうございました。


107以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 01:27:26DlsPH506 (1/1)

超乙!


108以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 12:53:31bslqJdkU (1/1)

おつんこ


109以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 18:38:448nynuKFY (1/1)

おつ


110以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/07(火) 19:48:1620t1F.Ek (1/1)

ワイトは先輩も好きです。


111以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/08(水) 12:54:38f/auRlPw (1/1)



先輩の長編はどう落ち着くだろう


112以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/08(水) 23:49:388fDF2L2Q (1/1)

あしゅみー先輩のデレは良いなあ


113以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/10(金) 16:07:28gizsFNOQ (1/1)

書いてくれてありがとう


114以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 22:59:28UawLMgbI (1/35)

【ぼく勉】 うるか 「今週末、ちびっ子向けの水泳教室をやるんだ」


115以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:00:02UawLMgbI (2/35)

文乃 「へぇ? 水泳教室?」

うるか 「うん。なんかこのあたりの子どもを集めて学校で教室を開くんだって」

うるか 「水泳部がやることになってさ。なんでも、地域コーケン活動ってやつらしいよ?」

理珠 「なるほど。感心なことですね」

成幸 「……うーん。まぁ、感心なことではあるけどなぁ」

成幸 「受験が差し迫った受験生にやらせることか、それ……?」

うるか 「あたしは息抜きになるからいいんだけどね」

うるか 「でも、滝沢先生もなんかぼやいてたなぁ……」


116以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:00:37UawLMgbI (3/35)

………………少し前

滝沢先生 「……ってわけで、悪いが全員で水泳教室の講師役をやってくれ」

あゆ子 「えー? それほんとですかー?」

あゆ子 「私たち、一応受験生なんですけどー」 ブーブー

滝沢先生 「ああ、そうなる気持ちも分かるが、さすがに一、二年生だけじゃ足りないしな」

滝沢先生 「協力してくれ。頼む。この通りだ」

智波 「先生にそこまで言われちゃったら、協力せざるを得ないよねぇ」

うるか 「? あたしは元々協力するつもりだよ?」

あゆ子 「うぐっ……まぁ、私もべつに、構わないですけど……」

滝沢先生 「悪いな、お前ら。助かるよ」

あゆ子 「にしても、近隣の子ども向け水泳教室ねぇ。去年はこんなのやらなかったのに」

滝沢先生 「ああ、まぁ……」

滝沢先生 「今年は、色々あったからな。主に、武元がらみで」

うるか 「へ? あたし? あたしなんかしたっけ?」


117以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:02:01UawLMgbI (4/35)

智波 「ああ……」 あゆ子 「なるほど……」

あゆ子 「つまり、うるかが軽く有名人になったから、学園の広報に利用しようって算段ですね」

滝沢先生 「うぐっ……。そうずけずけと言ってくれるなよ。学園長命令なんだよ」

智波 「先生も辛い立場ですよねぇ」

滝沢先生 「いや、逆に理解を示されても反応に困るんだけどな……」

うるか 「??? あたしがユーメイジン? どういうこと???」

あゆ子 「あ、うん。あんたはわかんなくていいよ」

智波 「うん。うるかはわかんなくていいよ。大丈夫だよ」

うるか 「?」

滝沢先生 (……ったく、学園長め。生徒に頼み込まなきゃいけないこっちの身にもなれっての)

滝沢先生 (武元のがんばりを大人の事情で利用するようで癪だが……)

滝沢先生 (水泳教室に来た子どもが、武元に憧れて学園に入学してくれれば……という広報の気持ちも分かる)

滝沢先生 (まぁ何にせよ、引き受けてしまった以上、最善を尽くさなきゃな)

滝沢先生 「……じゃあ、悪いが、今週末頼むな」

うるか 「はーい!」


118以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:02:41UawLMgbI (5/35)

………………

うるか 「って感じでさぁ」

文乃 「あ、うん……」

理珠 「そうですか……」

成幸 「………………」

うるか 「? 何でみんなちょっと渋い顔をしてるの?」

文乃 「いや、何でもないよ。うるかちゃんはいつまでもそんなうるかちゃんのままでいてね」 ギュッ

理珠 「今日だけはよしよししてあげます。よしよし。うるかさんはいい子ですね」 ナデナデ

うるか 「へ? へ? 何これ何これ? 何のゲーム?」 ワクワク

成幸 (……ったく。あの学園長、ほんと利用するものは全部利用する、って感じだよな)

成幸 (あの人だけは、教育者っていうよりは経営者って感じだな)

成幸 (……まぁ、一ノ瀬学園の全教職員のことを考えれば、管理職としては妥当なのかな)

成幸 (うるかのがんばりを利用するみたいで、俺はあんまり、好きになれないけど……)

成幸 「……ま、何にせよ、やるならがんばれよ、うるか」

うるか 「へ? そんなのトーゼンっしょ! うるかちゃんがんばっちゃうかんね!」


119以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:03:38UawLMgbI (6/35)

………………前日 唯我家

和樹 「行きたい行きたい行きたいー!」

葉月 「お願いー! かーちゃーん!!」

花枝 「そう言われてもね……。私は明日仕事だし、水希は登校日だし」

花枝 「一緒に行ってくれる人がいないのよ。ごめんね」

葉月 「うぅ……」 和樹 「でも、行きたい……」

成幸 「? 母さん、どうかしたのか?」

花枝 「ああ、成幸。こんなチラシがポストに入っててね」

花枝 「それで、ふたりが行きたいって言って聞かないのよ……」

成幸 「チラシ……?」

 『武元うるか選手にの泳ぎを見よう! 一ノ瀬学園主催、ちびっ子水泳教室!』 バーーーーン!!!

成幸 「………………」

成幸 (こ、これ、うるかが言ってたやつじゃないか……)

成幸 (学園長、露骨にうるかを推してきたな。こりゃ明日大変だぞ、うるか……)

成幸 (……ほんと、大変だろうな。きっと)


120以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:04:10UawLMgbI (7/35)

成幸 「……で、葉月と和樹はこれに行きたいのか?」

葉月 「うん! うるか姉ちゃんに水泳教わりたい!」

成幸 「そうか……」 ニッ 「わかった。じゃあ、兄ちゃんが連れてってやるよ」

和樹 「!? ほんとに!?」

花枝 「成幸、行ってくれるの? 勉強は大丈夫なの?」

成幸 「ああ、まぁ。明日一日くらいなら問題ないよ」

花枝 「それに、あんた泳げないけど、大丈夫……?」 ジトーーーッ

成幸 「そ、その辺はまぁ、こいつらに万が一がないように、十分気をつけるよ……」

花枝 「……そう」 ニコッ 「じゃあ、よろしくね、成幸」

成幸 「おう!」

葉月 「やったー!!」 和樹 「明日はプール! プール!」

成幸 「………………」 (……まぁ、葉月と和樹のお願いを聞いてやりたいっていうのも、もちろんあるけど、)


―――― 『そんなのトーゼンっしょ! うるかちゃんがんばっちゃうかんね!』


成幸 (……こんなチラシ作られて、うるかが大丈夫かも、気になるしな)


121以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:06:21UawLMgbI (8/35)

………………当日

ザワザワザワザワザワ……

うるか 「うおう……」

あゆ子 「うわぁ、こりゃまたすごい数のちびっ子たちだな……」

智波 「プールに入りきるのかな。こりゃ大変だよ」

池田 「先輩方が来てくれて良かったです。こんなの現役生だけじゃ絶対無理ですよぅ……」

あゆ子 (……まぁ、逆にうるかが来るって大々的に触れ込んだせいでもあるんだけどな)

あゆ子 (ったく、学校側はいい広報になってウハウハだろうな。バイト代くらいよこせっての)

うるか 「へへ、腕が鳴るぜー! 今日はみんなで力を合わせてがんばろうね!」

あゆ子 「ん? あ、ああ」 (うーむ。素直なうるかを見ると、自分が嫌なやつみたいに思えてくるな……)

あゆ子 「……よしっ、いっちょやるとするかー……って、ん?」

智波 「? あゆ子、どうかしたの?」

あゆ子 「いや……私の見間違いか? あの奥にいる、ちびっ子ふたりを連れた若い男……」

あゆ子 「あれ、唯我じゃないか?」

うるか 「………………」 ハッ 「……へぇ!? 成幸!?」


122以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:07:14UawLMgbI (9/35)

………………

成幸 「すごい人数だな。改めて、うるかってすごいんだな……」

葉月 「とーぜん! だって、うるか姉ちゃんは有名人だから!」

成幸 「ほんとになぁ。近隣の子どもたち、うるかのことみんな知ってるんだなぁ」

成幸 「……ほんと、すごい奴だな、うるかは……――」

うるか 「――えへへ。改めて言われると、さすがに照れるね」

成幸 「へ……?」 ビクッ 「う、うるか!? びっくりした!」

うるか 「それはこっちの台詞だよ成幸ー! 来るなら来るって教えてくれればよかったのにー!」

成幸 「あ、ああ。悪い悪い。あんまり意識させない方がいいかな、って思ってさ」

和樹 「うるか姉ちゃんだー!」 葉月 「有名人だー!」

成幸 「俺は葉月と和樹の付き添いだから、気にするなよ」

「ほんものだー!」  「かわいいー!」  「あくしゅしてー!」  「あとでサインくださいー!」

うるか 「わっ……わわっ……」 (ち、ちびっ子たちに囲まれちった……)

成幸 「ほら、うるかは有名人なんだから、お客さんのほうに来たらそりゃ大変だろ」

うるか 「そ、そだね。じゃあ、あたし一回戻るね。また後でね、成幸!」


123以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:08:03UawLMgbI (10/35)

………………水泳教室開始

あゆ子 「ほーら、まず水バシャバシャして……」

あゆ子 「冷たくない? じゃあ、とりあえず入ってみようか。おいで」

智波 「ふふ、あゆ子って子どもには優しいんだね」

あゆ子 「う、うるさいな。ほら、智波の担当の子たちも来たぞ」

智波 「はいはーい。じゃあきみたちもバシャバシャして水に慣れよー。おいでー」

うるか (川っちも海っちも頑張ってるなぁ。よーし、あたしもがんばるぞー)

うるか 「あたしの担当の子どもたちは……」

和樹 「はーい!」 葉月 「わたしたち!」

うるか 「!?」 (成幸とみずきんとこのチビちゃんたち!)

うるか (これは……)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

うるか (上手に教えられれば、成幸の好感度アップも狙えるかも……!?) ギラリ

うるか (よーし! がんばっちゃうぞー!)


124以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:08:48UawLMgbI (11/35)

………………プールサイド 保護者席

成幸 (うるかの奴、すごい張り切ってるな)

成幸 (それにしても、うるかが教えるのが葉月と和樹とは。変な因果だな……)

滝沢先生 「よう、唯我。お前も来てたのか」

成幸 「あ、滝沢先生。おはようございます」

成幸 「今うるかに教わってる子どもたち、うちの弟妹なんですよ」

滝沢先生 「ああ、葉月ちゃんと和樹ちゃんか。大きくなったな」

成幸 「……? 何であのふたりの名前を……?」

滝沢先生 「ああ、いや、な……」

滝沢先生 「こういう物言いは適切ではないかもしれないが……まぁ、お前ももう三年生だから、いいか」

滝沢先生 「唯我先生――お前のお父上には、私も新任の頃散々お世話になってな」

成幸 「あっ……」 (そっか。滝沢先生も父さんのこと……)

滝沢先生 「葬儀のとき以来だが、元気に育っているようで何よりだ」

成幸 「……はい。おかげさまで」


125以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:09:42UawLMgbI (12/35)

滝沢先生 「……唯我、お前、教育大学を目指しているんだってな」

成幸 「……はい」

成幸 「なれるか分からないですけど、学校の先生になりたいので」


―――― 『ある人が そうしてくれたように』

―――― 『人に寄り添って教えられるような教育者を目指したい』


滝沢先生 「……そうか」

ニコッ

滝沢先生 「なれるさ。お前なら。お前は、唯我先生にそっくりだからな」

成幸 「滝沢先生……」

滝沢先生 「……ま、教職取るには、大学でも体育は必須だからな」

滝沢先生 「高校卒業までに、少しは運動神経磨いとけよ?」

成幸 「うっ……ぜ、善処します……」

成幸 「ん……?」


126以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:10:17UawLMgbI (13/35)

………………プール

うるか 「よーし、プールに顔はつけられるみたいだから、身体を伸ばして浮かんでみようか」

葉月&和樹 「「はーい!」」

ザブン……

ブクブクブクブク……

うるか 「わー! 沈んでるー!」

ザバァ!!!

葉月 「ぷはぁ! ふ、不思議だわ……」

和樹 「水に沈むのって楽しいな!」

うるか 「え、えっとね、チビっこたち。くるっとすると水に沈んじゃうんだよ」

うるか 「だから、顔を水につけたら、ピーンってしてみようか」

葉月 「くるっ?」 和樹 「ピーン?」

うるか 「……えっと、えっと……」

うるか (そ、そういえばあたし、成幸に泳ぎを教えたときも上手くできなかったんだったー!)

うるか (ど、どどど、どうしよう!?)


127以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:11:54UawLMgbI (14/35)

………………プールサイド

成幸 「………………」

滝沢先生 「………………」

ハァ……

滝沢先生 「……まぁ、分かってたことだけどな」

成幸 「だったらうるかひとりにしないであげてくださいよ……」

滝沢先生 「あいつには人に教える能力も必要だよ。将来を見据えるならな」

滝沢先生 「そのいい訓練になってくれればと思ったが……うーむ。難しいな」

滝沢先生 「とはいえ、私は全体を見ていなければならないし、水泳部で空いている奴もいない」

滝沢先生 「さて、どこかに、泳ぎは苦手だけど、困ってる人を見ると放っておけない奴はいないかな」

成幸 「……言われるまでもないですよ。俺、手伝ってもいいんですね?」

滝沢先生 「助かるよ、唯我。頼む」

タタタタタ……

滝沢先生 「……はぁ、嫌なもんだな」

滝沢先生 「生徒を利用している時点で、私も結局学園長先生と同じ穴の狢、か」


128以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:13:04UawLMgbI (15/35)

………………プール

葉月&和樹 「「うるか姉ちゃん、次は、次は?」」 キラキラキラ……!!!!

うるか (うぅ……純粋な視線が痛いよ……)

うるか (まだ浮くこともできてないのに、次も何もないよー!)

ザブン……

うるか 「へ? ざぶん?」

成幸 「よう、うるか」

葉月&和樹 「「兄ちゃんだー!!」」

うるか 「へぇ!? 成幸!? プール入って大丈夫なの!?」

うるか 「っていうか何でプール入ってきたの!?」

成幸 「さすがに子ども用に浅くしたプールだから大丈夫だよ。多分……」

うるか (それでも多分なんだ……)

成幸 「俺もお前らを見てたらプール入りたくなっちゃってさ。ついでに手伝うよ」

うるか 「えっ、で、でも……」

成幸 「俺もこの学園の生徒なんだから、いいんだよ。手伝わせてくれ、うるか」


129以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:13:43UawLMgbI (16/35)

うるか 「……う、うん。そこまで言うなら……」

成幸 「よし、じゃあ、まずは伸びて浮くところからだな」

葉月 「うん。でも、沈んじゃうの」

和樹 「ぶくぶくぶくー、って!」

成幸 「うんうん。じゃあ、とりあえず顔をつけたら、手足を伸ばしてみな。お腹を支えてあげるから」

成幸 「よいしょっ、と……」

プカプカプカプカ……

葉月 「……ぷはっ」 キャッキャ 「沈まなかったー! ちゃんとできたー!」

成幸 「多分、身体が丸まっちゃうから沈んじゃうんだよ」

成幸 「もう一回お腹支えてあげるから、手足を伸ばす感覚を覚えるんだぞ」

葉月 「はーい!」

成幸 「……ほら、うるかも、和樹にやってあげてくれ」

うるか 「へ……!? あ、うん! じゃあ、かずきんも」

和樹 「うん!」


130以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:14:26UawLMgbI (17/35)

プカプカプカプカ……

成幸 「おー、ふたりとも上手だぞー……ん?」

うるか 「………………」 ジーーーッ

成幸 「ん? どうかしたか、うるか?」

うるか 「……成幸、泳ぐの苦手だよね?」

うるか 「なのに、どうしてちゃんと教えられるの……?」

成幸 「へ? いや、ちゃんと教えられてはいないと思うけど……」

成幸 「……逆に、まともに泳げないから、かな」

うるか 「……?」

成幸 「俺はそもそも運動神経が足りてないからまともに泳げないけど、こいつらは違うから」

成幸 「補講で散々教えてもらったことを、こいつらに分かりやすく伝えるだけだからさ」

成幸 「それは逆に、泳げない俺だからこそできることかな、って」

うるか 「そっか……」


131以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:15:11UawLMgbI (18/35)

葉月 「ぷはっ! ちゃんと浮いたよ、兄ちゃん!」

成幸 「そうだな。すごいぞ、葉月」

成幸 「じゃあ、次はお腹の支えなしで浮いてみようか」

葉月 「うん!」

うるか 「………………」

うるか (やっぱり、成幸はすごいな……)

うるか (……それに比べて、あたしは……)

ハッ

うるか (……いやいやいや! 落ち込んでる暇はないっしょ! がんばんないと!!)


132以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:16:03UawLMgbI (19/35)

………………

うるか 「次は手を引くから、少し進んでみよう!」

葉月 「はーい!! がぼがぼがぼ……」

うるか 「わー! また沈んでるー!」

成幸 「ほら、葉月。手足を伸ばした感覚を忘れるなー?」

葉月 「はーい、兄ちゃん!」

プカプカプカ……

成幸 「おお、葉月。上手だぞ。和樹もちゃんと浮けてるな。すごいすごい」

和樹 「ぷはぁ! やった、兄ちゃん! 少し進んだよ!」

成幸 「そうだな。手を引いてもらえれば、もうちゃんと伸びて浮けるようになったな」

うるか 「むぐぐぐ……」

うるか (ま、まだまだ! 次はもっとうまくやるぞー!)


133以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:16:49UawLMgbI (20/35)

………………

うるか 「じゃあ、ひとりで浮けるようになったところで、次はバタ足の練習だよ!」

バチャバチャバチャバチャ……

和樹 「ぷはっ……。あり? あんまり進んでない……」

うるか 「かずきん、バタ足がね、バチャバチャって感じなんだよ」

うるか 「それだと進まないから、パシャパシャって感じにしてみて」

和樹 「???」

うるか 「あ、えっと……えっと……」

成幸 「……俺が昔よく言われたのは、こんな感じかな」

成幸 「和樹、ちょっとプールサイドに手をついてみな」

和樹 「はーい!」

成幸 「で、ちょっと足の先持つぞー? 足の先を、こうやって……」

成幸 「親指と親指を擦り合わせる感じで……」

成幸 「ここを曲げないで、ここを動かして、バタ足するんだ」


134以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:17:28UawLMgbI (21/35)

和樹 「……? えっと、こう?」

バシャバシャバシャ……

成幸 「そうそう。そんな感じだ。良い調子だぞ、和樹」

コソッ

成幸 「……子ども相手だから、難しい言葉とか表現は分からないし、こんな風に身体に触って直接教えてもいいかもな」

成幸 「大人相手にはできないかもしれないけど」

うるか 「あ……う、うん。じゃあ、はづきんもバタ足の練習してみようか!」

葉月 「はーい!」

うるか 「足を伸ばして……伸ばしたまま、こうやって……」

葉月 「おー……」

バシャバシャバシャ……

うるか 「……うん。良い感じだよ、はづきん!」


135以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:18:09UawLMgbI (22/35)

………………

うるか 「………………」

うるか (……はぁ。あたし、やっぱりダメダメだな)

うるか (がんばってもがんばっても、空回りしてる気しかしないよ……)

成幸 「おー! ふたりともバタ足で進めるようになってきたなー。すごいすごい!」

葉月&和樹 「「えへへー」」

ピンポンパンポン

 『休憩時間に入ります。プールから上がってください』

成幸 「ん、もう休憩時間か。じゃあプールから上がろうか」

葉月&和樹 「「はーい!」」

成幸 「ほら、うるかも」

うるか 「へ? あ、う、うん。そだね……」

成幸 「……?」

成幸 (うるか……?)


136以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:18:48UawLMgbI (23/35)

………………ベンチ

うるか 「………………」

うるか 「……はぁ」

うるか (あたし、何やってんだろ。全然うまくできなかったよ……)

智波 「うーるかっ」 あゆ子 「よっ」

うるか 「? 海っち、川っち……」

智波 「見てたよー、うるか」 ワクワク 「唯我くんと一緒に子どもたちに教えてたでしょー」

あゆ子 「どうだ? ちゃんと唯我にアピールできたか?」

うるか 「………………」

うるか 「……えへへ、むつかしいかな。なかなかうまくいかないね」

うるか 「成幸に手伝ってもらって、なんとかなったって感じだよ。それどころじゃなかった、かな」

あゆ子 「うるか……」

智波 「あ……ご、ごめんね? 浮かれたこと聞いちゃって……」

うるか 「ううん。大丈夫。こっちこそごめんね」

うるか 「……ちょっと飲み物でも買ってくる。またね、海っち、川っち」


137以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:19:33UawLMgbI (24/35)

………………

うるか 「……はぁ。ふたりに変なところ見せちゃったな」

うるか 「あたしから元気取ったら何が残るんだよー、ってね……」

うるか 「はは……」 ズーン (……自分で言っててヘコんできたよ)


―――― 『……逆に、まともに泳げないから、かな』

―――― 『補講で散々教えてもらったことを、こいつらに分かりやすく伝えるだけだからさ』

―――― 『それは逆に、泳げない俺だからこそできることかな、って』


うるか 「………………」

うるか 「……ほんと、成幸はすごいな……――」

成幸 「――へ? 俺がどうかしたか?」

うるか 「へぇ!?」 ガバッ 「な、成幸!?」

成幸 「よっ。どうした、うるか?」

うるか 「……ベ、べつに、何もないよ」


138以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:20:08UawLMgbI (25/35)

成幸 「そうか? ならいいけど……」

成幸 「……ほら、葉月と和樹がお世話になったお礼に奢ってやるよ。スポドリでいいか?」

うるか 「へ? い、いいよ。あたし何にもしてないし……」

成幸 「何もしてないことはないだろ。ふたりとも大喜びだったぜ?」

成幸 「ちなみに今は海原と川瀬に遊んでもらってて大喜びだ。ほんと、連れてきてよかったよ」

うるか 「でも、あたしは、ほんとに何もできてないし……」

成幸 「………………」 フゥ 「……じゃ、スポドリでいいな」

スッ

成幸 「……ほら」

うるか 「あっ……」

うるか 「……ありがと、成幸」

成幸 「どういたしまして」


139以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:20:42UawLMgbI (26/35)

………………

成幸 「………………」

うるか 「………………」

成幸 「……何に落ち込んでるんだ?」

うるか 「………………」 ハァ 「……やっぱり分かる? さすが成幸だね」

成幸 「いつも元気なお前が静かだからな。そりゃ分かるよ」

成幸 「……どうしたんだ?」

うるか 「反省中、なんだ……」

成幸 「反省?」

うるか 「……全然、うまく教えられなかったな、って」

うるか 「トクイな水泳のはずなのに、全然うまく教えられなかったな、って」

うるか 「せっかく来てくれた子どもたちなのに、成幸がいなかったら大変なことになってたよ……」

うるか 「だから、反省してるんだ」

成幸 「……そっか」


140以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:21:19UawLMgbI (27/35)

うるか 「……もっと、成幸みたいに」

成幸 「ん?」

うるか 「成幸みたいに教えられたらいいな、って思うのに、全然だね」

うるか 「へへへ、やっぱり無理なのかな。あたしバカだし」

うるか 「がんばってみたけど、うまくいかないし、やっぱりあたしは……」

うるか 「……成幸みたいには、なれないのかな」

成幸 「………………」

成幸 「……まぁ、俺みたいになる必要はないと思うけどさ、」

成幸 「できるよ。うるかなら。うるかなら、絶対教えられるようになるよ」

うるか 「……? 成幸?」

成幸 「だってうるかはさ、」

ニコッ

成幸 「“できない奴” の気持ちが分かるじゃないか」

うるか 「“できない奴” ……?」


141以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:22:01UawLMgbI (28/35)

成幸 「うん。うるかも、英語が苦手で、なかなか勉強進まなかっただろ?」

成幸 「水泳で伸び悩んだときもあっただろ?」

うるか 「う、うん。そうだけど……」

成幸 「そのとき辛かっただろ? 大変だっただろ? 悔しかっただろ?」

うるか 「……うん」

成幸 「それが分かるなら大丈夫だよ。お前はその気持ちが分かるから、大丈夫」


―――― 『なあ成幸 今の悔しさだけは忘れちゃならねえぞ』

―――― 『お前は できない奴をわかってやれる男になれ』

―――― 『「できない」 気持ちがわかるのは できなかった奴だけだからな』


成幸 「……今日はうまくいかなかったかもしれないけど、いつかきっとうまくできるよ、うるか」

ニッ

成幸 「だからまた、葉月と和樹に泳ぎを教えてやってくれよ」

うるか 「成幸……」

うるか 「うん、わかったよ! うるかちゃんに任せなさい!」


142以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:22:31UawLMgbI (29/35)

うるか 「………………」

ドキドキドキドキ……

うるか 「……あのときと、同じだ」

成幸 「へ?」


―――― 『一度負けたくらいで そこまで悔しがれるなんて すごく価値のある才能だと思うけどな』

―――― 『俺には何もないから うらやましいよ』

―――― 『そこまで本気になれるものがあるって すげぇ幸せなことだもんな』


うるか (……あのときと、同じ。成幸は、いつだってあたしが本当にほしい言葉をくれるんだ)

うるか (あたしのこと、励まして、勇気づけて……元気をくれるんだ……)

うるか 「……ううん。なんでもない。えへへ、ありがとね、成幸」

成幸 「? ん、おう……」

うるか (……だから、好きだよ)

カァアアアア……

うるか (大好きだよっ、成幸!)


143以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:24:17UawLMgbI (30/35)

………………

学園長 『皆様、本日の水泳教室は楽しんでいただけたでしょうか?』

学園長 『未来のトップアスリートを目指して、皆さんが本校に入学してくれるのを待っています』

滝沢先生 (……ったく。急に来たかと思えば、広報活動か)

滝沢先生 (熱心なことだね、ほんと。まぁ、学園のためといえば、何も言えないんだけどな)

学園長 『それでは、最後になりますが、本校が誇るトップスイマー、武元うるか選手によるデモンストレーションです!』

ワーワーワー!!! カッコイイーー!! カワイイー!! タケモトセンシュー!!! ガンバレーーー!!!

うるか 「やぁやぁー! どうもありがとうー!」

成幸 (ほんと、すごい人気だな、うるかの奴……)

うるか 「………………」

シーーーーン

成幸 (……真剣な泳ぎとなるや、表情が変わるんだもんなぁ)

成幸 (大人も子どもたちも、一斉に静かになった。その場を変えるような雰囲気を持っている、)

成幸 (ホンモノの、アスリート――――)

――――――ピッ…………パシャン……


144以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:25:07UawLMgbI (31/35)

成幸 「………………」

ゴクリ

成幸 「……すげぇ」

葉月 「ふぁー……」 和樹 「はやいなぁ……」

成幸 (……それは、その場を支配するような泳ぎだった)

成幸 (競技会のときとは違う、ある種余裕のある伸びやかな泳ぎは、むしろ、)

成幸 (うるかの強さを誇示するかのようで……)

成幸 (そしてそれは、それ以上に……)

成幸 (……ただただ、美しくて)

成幸 (きっと、その場にいた誰もが、改めて垣間見ただろう)

成幸 (武元うるかというアスリートの、輝かしい未来を)


145以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:25:46UawLMgbI (32/35)

………………

うるか 「……ぷはぁ」

うるか (まー、こんなもんかなー)

うるか (滝沢先生には、それなりに本気で泳げって言われたから、まぁまぁがんばったつもりだけど……――)

パチパチパチパチパチパチ!!!!

うるか 「……へ?」 (拍手……!?)

うるか (お、泳いで拍手されるって初めてだよ。なんか……恥ずかしいな……///)

うるか 「あっ……」

成幸 「……」 グッ

うるか (……成幸。ちゃんと見ててくれたんだ)

うるか 「………………」

うるか 「えへへっ……」


146以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:26:17UawLMgbI (33/35)

………………

「すごいね、たけもとせんしゅ!」 「かっこいいね!」

「それなのにきれいでかわいくて、アイドルみたい……」

「ねえねえお母さん! わたし、たけもとせんしゅみたいになりたい!」

葉月 「……うーん。わたしも目指そうかな……」

和樹 「ならまずは水希姉ちゃん越えないとなー」

成幸 「………………」 クスッ (……なんだよ、もうできてるじゃないか、うるか)

成幸 (今日は、あんまりうまく教えられなかったかもしれないけど、それでも……)

成幸 (泳いだだけで、こんなに多くの子どもたちに、たくさんのことを教えられてるんだ)

成幸 (……なぁ、うるか。お前は俺みたいになりたいなんて、嬉しいこと言ってくれるけどさ、)

成幸 (俺は……)

グッ

成幸 (……お前みたいになれるように、がんばってるんだよ)

成幸 (お前は俺の、憧れる人の、ひとりだから)

おわり


147以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:26:58UawLMgbI (34/35)

………………幕間  「逆」

水希 「………………」 ブスーーーッ

成幸 「? 水希の奴不機嫌そうだけど、どうしたんだ?」

花枝 「どうも、葉月と和樹に自分が教える前に他人に水泳を教えられたから、ご機嫌ナナメみたいなの」

成幸 「我が妹ながらめんどくさい奴だな……」 (なるほどなぁ……)

花枝 「成幸。逆、逆」

成幸 (……うーん。仕方ない。ちょっとご機嫌取ってやるか)

成幸 「……あーあ、葉月と和樹も少し泳げるようになったし、俺が泳げないままじゃ長男の沽券に関わるなぁ」

成幸 「水希、今度水泳教えてくれないか?」

水希 「!?」 パァアアアアアア……!!! 「プールデート!? それとも海デート!?」

水希 「とりあえず室内プールデートだね! 来年の夏は海に行こうね!!」

成幸 「……お、おう」

花枝 「我が娘ながら少し怖いわね……」 (ほんと、仲良いわね)

葉月 「母ちゃん、」 和樹 「逆、逆」

おわり


148以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/11(土) 23:27:36UawLMgbI (35/35)

読んでくださった方ありがとうございました。


149以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/12(日) 01:40:34A/pleFt. (1/1)

アニメ見て改めて思ったがあれだよな
妹ぐうかわ


150以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/12(日) 02:30:12ejYXBOmc (1/1)

おつ


151以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/12(日) 21:13:54WeWBxLmg (1/1)

あすみー先輩もっともっと読みたいな


152以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/13(月) 00:36:13IV/CI4Dg (1/1)

向こうに書けなかったからこっちに乙
脳内再生余裕過ぎてビビる
母の日との相性最悪だと思ってたけど、そういうパターンがあるのね
流石だわ


153以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/21(火) 23:22:03fSGKTlJQ (1/1)

おつやで


154以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/27(月) 00:19:52CjO02D7I (1/1)

すまん、妹かわいすぎんか?


155以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 22:53:02AmFXmFmY (1/30)

【ぼく勉】 真冬 「今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの」


156以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 22:53:37AmFXmFmY (2/30)

成幸 「あ、はい、分かりました。何時に伺えばいいですか?」

真冬 「……?」 ジトッ 「……君は、私のことを何だと思っているのかしら」

成幸 「へ?」

真冬 「私は教員よ? これ以上、生徒に家事の手伝いをさせるわけにはいかないわ」

真冬 「当然、やるのは私ひとりで、よ。私の部屋なのだから当たり前ね」

成幸 「はぁ……? まぁ、自分で掃除するのはいいことだと思いますけど……」

成幸 「なぜそれを俺に……?」

真冬 「これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの」

真冬 「あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるのよ」

真冬 「……と、いうことで」

真冬 「覚悟しておきなさい、唯我くん。私はもう、きみに惨めな姿をさらすことはないのよ」

成幸 (何を覚悟しろというんだろう……?)

真冬 「今度、きれいになった部屋にご招待して差し上げるわ」

成幸 (あ、掃除の手伝い抜きで家に伺うのはありなんだ……)


157以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 22:54:14AmFXmFmY (3/30)

………………週末 HighStage

成幸 「ありがとうございましたー! いってらっしゃいませー!」

成幸 「ふー……」 (今日は本当にお客さん多いな。急に呼ばれるわけだよ……)

あすみ 「よ、後輩。雨だってのに、忙しいからって急に呼んで悪かったな」

成幸 「いえ、気にしないでください。頼られるのは嬉しいですから」

成幸 「最近、緒方たちもできるだけ自分で勉強しようとして、なかなか頼ってくれなくて……」

成幸 「桐須先生も……」


―――― 『これは私なりの、あなたとに甘えることへの決別の決意表明なの』


あすみ 「あん? 真冬センセがどうかしたのか?」

成幸 「あ、いえ、なんでもないです」

成幸 「とにかく、最近頼られることが少なくて落ち着かなかったのでちょうど良かったです」

あすみ 「お、おう。そうか、そりゃ良かった……のか?」

あすみ (なんかこいつ、将来付き合う女を次から次へとダメ人間にしそうだな……)

あすみ (……し、仕方ねーなぁ。被害者を出さないためにも、アタシがこいつのこともらってやるしかねーか///)


158以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 22:55:11AmFXmFmY (4/30)

成幸 「じゃあ、俺そろそろトイレ掃除入りますね!」

あすみ 「ん、おう。じゃあ頼むわ」

成幸 (危ない危ない。先生のことを話すところだった……)

成幸 (小美浪先輩に話したら、また先生がからかわれてしまう)

成幸 「………………」


―――― 『今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの』


成幸 (……先生、大丈夫かな。ちゃんとできてるかな)

成幸 (また部屋が嵐の後のようにならないといいんだけど……)

成幸 (って、人の心配してる場合じゃないな。急に呼ばれたとはいえ、バイト中なんだから)

成幸 (がんばらないと。よーし、トイレ掃除気合い入れてピッカピカにするぞ!)


159以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 22:56:11AmFXmFmY (5/30)

………………閉店後

成幸 (結構雨降ってたけど、結局閉店まで店は混み合ったままだったな……)

ヘトヘト

成幸 (……つかれた)

マチコ 「ごめんね、唯我クン。せっかくのお休みなのに、ずっとバイト入ってもらっちゃって……」

マチコ 「受験生なのに、悪いことしちゃったよね……」

成幸 「いえ、気にしないでください。お役に立てたなら何よりです」

マチコ 「唯我クン……」 キューン 「本当にいい子だねぇ、唯我クンは。そういうところ、大好きっ」

成幸 「は、はい。ありがとうございます……」 ドキドキ (気軽に大好きとか言わないでほしいなぁ……)

マチコ 「今日の出勤分、特別手当も足しておくからね。進学費用の足しにしてね」

店長 「えっ!?」

成幸 「へ? いいんですか?」

マチコ 「もちろん!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「いいですよね、店長?」

店長 「あ、ああ。もちろんだ。好きにつけてくれ……」 ガックリ

成幸 (マチコさん強い!!) キラキラキラ


160以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 22:56:41AmFXmFmY (6/30)

マチコ 「店内もトイレも、忙しいのにピッカピカにしてくれたしね」

マチコ 「給料日楽しみにしててね、唯我クンっ」

成幸 「はい、ありがとうございます、マチコさん!」

成幸 (……ピッカピカ、かぁ)

成幸 (大丈夫かな、桐須先生。ちゃんと掃除できてるかな……)

あすみ 「ほら、受験生だなんだっていうなら、もう解放してやれよ、マチコ」

あすみ 「……っていうか、それ言うならアタシも受験生なんだけどな?」

マチコ 「やだなぁあしゅみー。ナンバーワンのあしゅみーの給料をこれ以上上げたら、うちの店潰れちゃうよ」

あすみ 「……調子いいこと言いやがって。ま、いいけどな」

あすみ 「で、後輩、どうだ? この後、どこかで一緒に勉強、とか……」

あすみ 「今日親父は学会で遅くまで帰ってこないから、うち来るか?」

ドキドキドキドキ……

あすみ 「今日の詫びに晩飯も作るし、何だったら泊まってってくれてもいいし……」

マチコ (!? 今日のあしゅみー積極的! かわいい~!)


161以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 22:57:31AmFXmFmY (7/30)

成幸 「………………」 (心配だ。また部屋をグチャグチャにしてないだろうか……)

あすみ 「……? 後輩?」

成幸 「……へ?」 ハッ 「あ……すみません。少し考え事してて、聞いてませんでした」

成幸 「もう一回言ってもらってもいいですか?」

あすみ 「………………」

成幸 「……先輩?」

あすみ 「……ふん。知らねー」 スタスタスタスタ……

成幸 「へ? 先輩? どうしたんですか?」

あすみ 「知らねーって言ってるだろ。ついてくんな。また今度な!」 スタスタスタスタ……

成幸 「行っちゃった……なんだったんだろ……?」

ポン

成幸 「……? マチコさん?」

マチコ 「今のは唯我クンが悪いよ……」 シミジミ……

店長 「……うむ」 シミジミ……

成幸 「店長まで!?」


162以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 22:58:03AmFXmFmY (8/30)

………………帰路

成幸 (あしゅみー先輩、何だったんだろ)

成幸 (俺が話を聞いてなかったせいで怒らせちゃったし、悪いことしちゃったな……)

成幸 (今度謝らないと……)

成幸 「………………」

テクテクテクテク……

成幸 「……ああ、もう」

成幸 (ここ通ったら家まで遠回りのはずなのに。雨も降ってるから、早く帰りたいってのに、何で俺は……)

成幸 (……まぁ、理由なんて分かりきってるけどさ)


―――― 『今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの』


成幸 (この角を折れたら、マンションの入り口だ)

成幸 (もしあの人が困り果てていたら、きっと、入り口前に腰かけているはず……)

スッ………………

成幸 「………………」 (……いない、か。まぁ、雨だしな)


163以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 22:58:44AmFXmFmY (9/30)

成幸 (……不思議な気持ちだ)

成幸 (ホッとしたような、肩すかしを食らったような……複雑な気分)


―――― 『私は教員よ? これ以上、生徒に家事の手伝いをさせるわけにはいかないわ』

―――― 『当然、やるのは私ひとりで、よ。私の部屋なのだから当たり前ね』

―――― 『これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの』

―――― 『あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるのよ』


成幸 (まぁ、あそこまで言っておいて、俺に頼るようなことはしないか……)

成幸 (……何やってんだ、俺は。早く帰ろ……)

成幸 「………………」 (でも、本当に大丈夫だろうか……)

トコトコトコトコ……

成幸 「………………」 (逆に、俺に頼ることができないから、余計とんでもないことになっているんじゃ……)

…………ピタッ

成幸 「……ちょっとだけ」

成幸 「ちょっとだけ、様子を見るだけだから……」


164以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 22:59:27AmFXmFmY (10/30)

………………マンション二階廊下 201号室前

成幸 「………………」

成幸 (……いやいやいや!? 結局部屋の前まで来ちゃったぞ!?)


―――― 『違います誤解です!! 俺はここの住人の友人で……ッ!!』

―――― 『ストーカーはみんなそう言うんだよ!』


成幸 (いかん! 人の家の前で突っ立ってるなんて……)

成幸 (古橋のときみたいに、またいらん誤解を受けるかもしれない)

成幸 (もう帰ろう……)

成幸 「………………」

ボソッ

成幸 「……大丈夫、だよな」


 『キャーーーーーーーー!!』


成幸 「……へ?」


165以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:00:05AmFXmFmY (11/30)

成幸 (先生の部屋から、悲鳴……?)

成幸 「………………」

成幸 「……いやいやいや! 迷ってる場合じゃない!!」

成幸 「先生!? 先生、大丈夫ですか!?」

ガチャッ!!

成幸 (あっ、鍵空いてる!!)

成幸 「すみません、先生! 入ります!!」

バン!!!!

成幸 「先生!」

真冬 「あ……唯我くん!!」

成幸 「……!?」

成幸 「せ……先生?」

カァアアアア……

成幸 「な、何で、バスタオル一枚なんで……――」

――――――タタタタタ……!!! ガバッ!!!! ムギュッ!!!


166以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:00:44AmFXmFmY (12/30)

成幸 「うぺぇ!?」

真冬 「お……おおお、恐ろしいわ……」

ムギュッムギュッ!!!!

成幸 (れ、冷静に、今の状況を、分析すると……)

成幸 (バスタオル一枚を身体に巻き付けた、先生が……)

成幸 (俺の姿を認めるや否や、走り寄ってきて、抱きついて……)

成幸 (げ……玄関で、押し倒されて……いる……)

成幸 「………………」

成幸 (……なんだこの状況!?)

成幸 「きっ、桐須先生! 一体どうしたんですか!?」

成幸 「……っていうか、離れてください! 色々とマズいです!」

真冬 「む、無理……。腰が抜けてしまったわ……」

成幸 「な、なんかすごくデジャヴるんですが……まさか……」

カサカサカサカサカサカサ……

成幸 「……ああ、やっぱり出たんですね、G……」


167以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:01:31AmFXmFmY (13/30)

成幸 「っていうか、それにしたって、何で裸なんですか!?」

真冬 「シャワーを浴びていたのよ! そうしたら排水溝から……」


―――― G『やぁ』


真冬 「って……」 ガタガタガタガタ

成幸 「ああ、あいつら水回り移動しますからね。マンションとかだと排水溝から出てくるらしいですね」

真冬 「戦慄! 恐ろしいことを言わないで!!」

ハラ……ハラハラリ……

成幸 「……!?」 (せ、先生のバスタオルの締めがゆるくなりつつある……)

成幸 (これはマズい! 色々な意味でまずい!)

成幸 (っていうか今まさにダイレクトに感じられる先生のやわらかい肌とか濡れた髪とかがヤバいのに!)

成幸 (その上バスタオルがはだけたりしたら……それ以前に、ないとは思うけどこんなところを誰かに見られたら……――)


美春 「――――――こんにちはー、姉さまー!! 美春がサプライズで参りましたよー!」 バーーーン!!!


成幸 「!?」


168以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:02:12AmFXmFmY (14/30)

美春 「……へ?」

美春 「ね……姉、さま……? 唯我、成幸、さん……?」

ポワンポワンポワンポワン……


―――― 成幸 『せ、先生、ダメですよ。こんなところで……///』

―――― 真冬 『ふふ。ダメなことないわ、唯我くん。私、もうベッドまで我慢できないもの……』

―――― 成幸 『あっ……せ、先生……』

―――― 真冬 『ベッドではできない悪いコト、教えてアゲル……』


……ポワンポワンポワンポワン

美春 「………………」

成幸 「み、美春さん? 違います。これは、違うんですよ?」

美春 「………………」

成幸 「……あ、あの、美春さん?」


169以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:03:02AmFXmFmY (15/30)

美春 「……うわぁああああああああああん!!! 美春の姉さまがーーーー!!」

美春 「すっかりイケない女教師になってしまいましたーーーーー!!!」

美春 「悪いコトってどんなコトですかーーーーーーー!?」

タタタタタタ……!!!

成幸 「えっ、ちょっ、待って!! 待ってください!! 美春さん!!」

成幸 「悪いコトって何の話ですかーーーー!!」

ムギュッ

成幸 「はうぁ!?」

真冬 「き、禁止! 何でもするから!! 私を置いていかないで!!」

成幸 (この人はこの人で何でもとか言い出したぞ!?)

成幸 (っていうか……///)

成幸 「せ、先生、どこも行かないですから、あんまりしがみつかないでください!!」

成幸 「い、色々と……!! 当たってますから!!」


170以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:03:39AmFXmFmY (16/30)

カサカサカサカサカサカサ……

真冬 「ヒッ!? 音がするわ! 動いてるわね!? 動いてるのね!?」

ムギュムギュムギュムギュッ!!!!

成幸 「い、いやいや、変に動かないでください!! 当たってるんですってば!!」

真冬 「当たってる!? (Gが)当たっているの!?」

成幸 「はい! ですから当たってます!! (Eが)当たってるんですって!!」

真冬 「きゅうっ……」

……クタッ

成幸 「へ……? 先生!? ちょっと、しっかりしてください! 先生!?」

真冬 「………………」

成幸 「先生ーーーー!! しっかりしてください!!!」


171以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:04:25AmFXmFmY (17/30)

………………

真冬 「………………」

成幸 「………………」

オホン

真冬 「さっきは取り乱してしまって申し訳なかったわね」

成幸 (身だしなみを整えて、今さら体裁を保とうとしている……)

成幸 (まぁ、ゴキは退治したし、もう大丈夫だとは思うけど……)

真冬 「虫が出て、少し動揺してしまったわね。もう大丈夫よ」

成幸 「いや、えっと……」

グッチャァァアアア……

成幸 「何も大丈夫じゃないと思うんですが……。あの、今日は掃除をしていたのでは……?」

真冬 「し、していたわ。していたけれど……」

真冬 「やっぱり、なかなかどうして、うまくいかなくて……」

成幸 「……いや、掃除終わってないのに何でシャワーを浴びようとしたんですか」

真冬 「!? それは、その……」


172以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:05:14AmFXmFmY (18/30)

真冬 「そ、掃除中にバケツをひっくり返してしまって、水をかぶってしまったの」

真冬 「だから一度シャワーを浴びていたのよ」

成幸 「なるほど……」

成幸 (……いや、なるほどとか言ってるけどまったく理解はできないけど。本当に、器用に不器用な人だな……)

成幸 「………………」 ウズウズ (しっ……仕方ないなぁ……)

ニコニコニコニコ

成幸 「先生、俺、掃除手伝いますよ」

真冬 「えっ、いや、でも……」

成幸 「このままじゃ日をまたいでも終わらないですよ、掃除」

真冬 「うっ……」 モジモジ 「でも、今日こそ、あなたの手を借りずに……」

成幸 (まじめな人だもんなぁ。一度決めたことを曲げたくないんだよな……)

成幸 (その気持ちは汲んであげたいし、偉いと思うけど……)

成幸 (さすがに、この部屋の惨状をこのままにはできないし……)


173以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:05:55AmFXmFmY (19/30)

成幸 「………………」

成幸 「……分かりました。では、」

真冬 「……?」

成幸 「俺が勝手に手伝います。先生は、嫌だって言ってるのに、俺が勝手に手伝うだけなら、いいでしょう?」

真冬 「へ? あ……えっと……」

成幸 「あっ、先生はいいと言ったらダメですね。俺が勝手にやるんだから」

成幸 「ってことで、勝手に掃除始めます。迷惑だと思いますけど、ごめんなさい」

イソイソイソイソ……

真冬 「あっ……」

真冬 「………………」

真冬 「……ごめんなさい。お願いするわ」

成幸 「いえいえ、謝ることじゃないです」 ニコニコニコニコ

真冬 「……?」 (唯我くん、どうしてあんなに嬉しそうなのかしら……?)


174以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:06:40AmFXmFmY (20/30)

………………

真冬 「……おお」

ピカピカピカピカ……

成幸 「ふー。こんなもんですかね」

成幸 (なんとか日をまたぐ前には終わったな。良かった良かった……)

成幸 (一日中バイトしてからの掃除……結構ハードだったな……)

真冬 「……結局、今回もきみに頼ってしまったわね。唯我くん」

真冬 「生徒に――受験生にさせることじゃないわ。本当にごめんなさい……」

成幸 「いえ、気にしないでください。俺が好きでやったことですから」

真冬 「……そういうわけにはいかないわ」

成幸 「へ……?」

真冬 「私は教員で、あなたは生徒。そこは明確な線引きがなされなければならない」

真冬 「なのに私は、生徒であるあなたに、毎度毎度頼ってしまって……」

真冬 「……情けないわ」 ズーーン


175以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:07:40AmFXmFmY (21/30)

成幸 (あー……)


―――― 『あっ、先生はいいとら言ったダメですね。俺が勝手にやるんだから』

―――― 『ってことで、勝手に掃除始めます。迷惑だと思いますけど、ごめんなさい』


成幸 (まさかこんなに気に病んでいたなんて、申し訳ないことしてしまったな……)

成幸 「……あの、ごめんなさい。先生がそんなことまで考えているとは思わなくて……」

成幸 「勝手にお手伝いをしてしまって……」

真冬 「!? ち、違うのよ? きみを責めているわけではないの」

真冬 「ただ、自分が情けないだけで……」

成幸 「いや、でも俺……最初から、先生のこと、手伝うつもりでここに来たので……」

真冬 「え……?」 ハッ


―――― 『先生!』

―――― 『あ……唯我くん!!』


真冬 「そういえば、どうして唯我くんはうちに……?」


176以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:08:10AmFXmFmY (22/30)

成幸 「……すみません、先生。俺、先生のことが心配で、家まで来てしまったんです」

成幸 「俺、今日一日、先生のことが頭から離れなくて……」

成幸 「大丈夫かなって、何度も考えてしまって……」

成幸 「こんなこと言うと気持ち悪いと思われるかもしれませんけど、」

成幸 「……わざと遠回りして、このマンションの前を通って……」

成幸 「先生がいないから大丈夫だろうって思ったんですけど、気づいたら部屋の前まで行ってて……」

成幸 「悲鳴が聞こえたから中に入ったんです」

真冬 「………………」

成幸 (……いやいやいや!! 冷静に考えてみると、俺、ストーカーそのものじゃないか!?)

成幸 「す、すみません! 家まで押しかけちゃって……」

成幸 「先生はもう俺の手伝いはいらないって言ってたのに、迷惑ですよね……」 ペコリ 「本当に、ごめんなさい!!」

成幸 (こ、怖い……。先生、どんな顔をしているんだろう。きっと、軽蔑するような顔を……)

真冬 「………………」

真冬 「……顔を上げなさい、唯我くん」


177以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:08:49AmFXmFmY (23/30)

成幸 (あれ……? 先生、怒ってないのかな……?)

真冬 「謝る必要はないわ、唯我くん。私も同じだもの」

成幸 「同じ……?」

真冬 「ええ。恥ずかしい話だけど、白状するわ。私がシャワーを浴びていた本当の理由」

真冬 「バケツをひっくり返したなんてウソよ。本当は、表で自動車に水を浴びせられたの」

成幸 「……? え、でも、何でそんなウソを……?」

真冬 「それは、その……」

真冬 「……――みを、…………って、いた、から……」

成幸 「え? すみません、よく聞こえないんですが……」

真冬 「だっ、だから……! 君を……待っていたから、って言ったのよ……」

成幸 「へっ?」

真冬 「……君が来てくれるんじゃないかと期待して、外で待っていて……」

真冬 「そのときに自動車に水を浴びせられて、そんなこととても君には言えないから……」

真冬 「だから、ウソをついたの。ごめんなさい……」


178以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:09:28AmFXmFmY (24/30)

成幸 「い、いやいや、謝ることではないですよ。そんなの……」

成幸 (え……? でも、先生、俺を、待っていてくれた……?)

成幸 (俺を……///)

真冬 「恥ずかしいわ。私、教師だというのに、結局あなたを頼ろうとしてしまったわ」


―――― 『これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの』

―――― 『あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるの』


真冬 「あんなことまで言ったというのに、私は結局……」 ズーン

成幸 「………………」

成幸 「……えっと、あの、どう言ったらいいのか分からないので、思ったことをそのまま言いますね」

真冬 「……?」

成幸 「……すごく、嬉しいです」

真冬 「う、嬉しい……?」

成幸 「はい、さっきも言いましたけど、俺、先生のこと心配していたので……」

成幸 「先生が俺のことを頼ろうとしてくれたのが、とても嬉しいんです」


179以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:10:12AmFXmFmY (25/30)

成幸 「……もちろん、俺と先生は生徒と教師で、線引きは必要でしょうけど、」

成幸 「でも、俺は、こうやって先生の部屋を片付けるの嫌いじゃないです。だから……」

成幸 「もし先生が嫌でないなら、これからもずっと先生の部屋の掃除をしたいです!」

真冬 「ずっ……ずっと……?」

成幸 「はい! むしろ、高校を卒業してからの方が健全ですよね!」

真冬 「そ、それはその通りだと思うけど……」

真冬 「君は、高校を卒業した後も、私の家に来て、掃除をしてくれるというの?」

成幸 「はい!」

真冬 「っ……」

真冬 (まっすぐ返事をしてくれるものだわ。まったく、こっちの気も知らないで……)


―――― 『最愛の息子が…… 親のいぬ間に半裸の年上女性を連れ込んで…… 私は一体どうしたら……』

―――― 『あぁぁやっぱりダメエェ!! そういうのはせめて!! せめてしっかり卒業してからに……』

―――― 『あ でもなんにせよそういうのはちゃんと卒業してからね』


真冬 (お母さんを心配させないように配慮したこっちの気も知らないで……まったく……)


180以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:11:04AmFXmFmY (26/30)

真冬 (お母さんを不安にさせまいと、君を家から遠ざけようとしたというのに……)

成幸 (? 先生、黙り込んじゃってどうしたんだろ……?)

真冬 (あ、でも……)

真冬 (“卒業” してからなら、いいのかしら……?)

真冬 「………………」

ハッ

真冬 (教師である私が、一体何を考えているのかしら!?)

真冬 (でも、もし……もしも……)


―――― 『でも、俺は、こうやって先生の部屋を片付けるの嫌いじゃないです。だから……』

―――― 『もし先生が嫌でないなら、これからもずっと先生の部屋の掃除をしたいです!』


真冬 (卒業した後も、本当に彼が同じように言ってくれるなら……)

真冬 (……少し、お言葉に甘えても、いいのかしら)

おわり


181以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:11:54AmFXmFmY (27/30)

………………幕間 『責任』

真冬 (!? でも、このまま受験生の彼の勉強の邪魔ばかりしていては……)


―――― 成幸 『うぅ……第一志望に落ちてしまった……』


真冬 「………………」 ワナワナワナ (それはまずいわ! 絶対ダメよ!)

真冬 (そんなことになったら、“先生” にも顔向けできないわ!)

真冬 (でも、もし、万が一そういうことになったら……)

成幸 「……? あの、先生? どうかしましたか?」

真冬 「………………」

ガシッ

成幸 「!? せ、先生……? ど、どうして手を……///」

真冬 「安心して、唯我くん!」

真冬 「万が一のことがあったら、私が責任を取ってあげるから!!」

成幸 「!?」

おわり


182以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:12:31AmFXmFmY (28/30)

読んでくださった方ありがとうございました。


183以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:18:21AmFXmFmY (29/30)

>>1です。
ちょっとやってみたいことがあるので、安価というほどのことではないですが、
少しお付き合いいただけたら嬉しいです。
タイトルだけ安価をさせてください。よろしくお願いします。
(メインヒロインでもサブヒロインでもいいですが、女子キャラだと助かります)


【ぼく勉】 成幸 「今週末は、>>186と出かける約束なんだ」


184以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:19:49AmFXmFmY (30/30)

>>1です。連投申し訳ないです。
安価が踏まれてから書いて投下しますので、ラグがあると思います。


185以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/29(水) 23:57:29XaFv5NuY (1/1)

来てるやんけ!!


186以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 00:03:50Ca35RFNY (1/2)

おつんこ
文乃が好きだから文乃で、
と思ったけど水希ちゃんでお願いします!


187以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 00:06:07iwhEGbg2 (1/1)

そういや乙な

>>186
スレ監視してそう


188以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 00:10:19Ca35RFNY (2/2)

>>187
更新待ち遠しくて定期的に確認してるからね…


189以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 00:27:13WO/bOOK. (1/3)

乙です


190以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:23:58cxG0DenQ (1/24)

【ぼく勉】 成幸 「今週末は、水希と出かける約束なんだ」


191以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:24:28cxG0DenQ (2/24)

うるか 「ほへー、みずきんと?」

成幸 「ああ、買い物に付き合ってほしいらしいんだ」

成幸 「勉強もあるけど、最近あんまりあいつに構えてないしな」

成幸 「ま、たまの家族サービスかな」

理珠 「サラリーマンみたいなことを言いますね……」

文乃 (ふふ、成幸くん、微笑ましいなぁ。パパみたい)

ハッ

文乃 (……ん? 今週末?)

ペラッ……ペラッ……

文乃 「………………」

文乃 「……えっと、成幸くん、あの、水を差すようで悪いんだけど、」

成幸 「ん? どうした、古橋?」

文乃 「今週末、わたしの新しい問題集選びに付き合ってくれる約束をしていたような……」

成幸 「え……?」


192以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:25:20cxG0DenQ (3/24)

成幸 「!? そういやそんな約束してたような気がするぞ……」

ペラッ……ペラッ……

成幸 「で、でも、手帳の予定表には何も書いてないぞ。おかしいな……」

文乃 「えっと、その約束したとき、たしか成幸くんは、」

文乃 「……手帳じゃなくて、スマートフォンの方に予定を登録していたような……」

成幸 「へ……?」

スッ……

成幸 「うわっ、ほんとだ。しっかりカレンダーに予定登録してある……」

理珠 「……まったく。機械オンチなのに無理してスマホの機能を使うからです」

うるか 「あちゃー。完全にブッキングしちゃってるねぇ」

成幸 「ど、どうしよう。水希とは昨日約束してしまったし……」

成幸 「古橋とはもっと前から約束してるわけだし……」

オロオロオロオロ……

文乃 「………………」 ハァ 「……まったくもう、仕方ない弟だよ、君は」

文乃 「わたしのことは気にしなくていいよ。また別の日に付き合ってよ」


193以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:26:00cxG0DenQ (4/24)

成幸 「いや、しかしな。お前の勉強を円滑に進めるために、できるだけ早く参考書は買っておきたいし……」

成幸 「何より、お前の方が先に約束をしていたんだから、そっちをなくすというのも道義的にな……」

文乃 「そ、そこまで深刻に考えなくても……」

成幸 「………………」

成幸 「よしっ、決めた! 古橋、週末はやっぱり一緒に参考書選びをしよう!」

文乃 「えっ、でも水希ちゃんは?」

成幸 「水希も一緒に買い物に行く! 三人で一緒に行けば全部解決だ!」

文乃 「………………」

文乃 (……さも名案を思いついたような顔で何を言い出すのかな!?)

うるか 「まぁ、そうすれば問題ないよね」 理珠 「ですね」

文乃 (君たちもどうしてしたり顔でうなずけるのかな!?)

文乃 (相手はあの水希ちゃんだよ!? お兄ちゃんとのデートにわたしが着いていったりしたら……)


―――― 水希 『……へぇ。お兄ちゃんと私のデートを邪魔するつもりですか。いい度胸ですね』 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!


文乃 (ってなるに決まってるじゃない!!)


194以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:26:37cxG0DenQ (5/24)

成幸 「とりあえず帰ったら水希に聞いてみるから、またメッセージで伝えるな!」

文乃 「あっ、ちょっと、成幸くん!?」

成幸 「じゃあ、また明日な!」

ビューン!!!!

文乃 「……あー、もうっ。行っちゃったよ」

理珠 「? どうかしましたか、文乃?」

うるか 「文乃っち元気ない?」

文乃 「いや、うん、まぁ……大丈夫だよ……」

シュン……

文乃 「………………」

文乃 (……ふんだ。成幸くんの、バカ)

文乃 (参考書選びとはいえ、久々にふたりきりでのお出かけだって、楽しみにしてたのに)

文乃 (……楽しみに、してたのにな)


195以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:27:08cxG0DenQ (6/24)

………………週末 デパート

成幸 「……あ、古橋。悪い、待たせたな」

文乃 「成幸くん。ううん、今来たトコだよ。大丈夫」

成幸 「そうか。ならよかった」

文乃 「えへへ……」

文乃 (……なんか、デートみたいな受け答えしちゃった)

文乃 (これで……)

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 「……どうも、こんにちは、古橋さん」

文乃 「こ、こんにちは、水希ちゃん」

文乃 (……圧たっぷりの水希ちゃんがいなければなぁ、なんて)

ハッ

文乃 (いけないいけない。今日のわたしは、兄妹水入らずを邪魔してしまっている立場なんだから)

文乃 (謙虚な気持ちを忘れないようにしないと……)

文乃 「水希ちゃん、今日はごめんね。せっかく兄妹でのお出かけなのに、邪魔しちゃって……」


196以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:27:41cxG0DenQ (7/24)

水希 「ふふ、可笑しなことを言いますね、古橋さん」 ニコッ

文乃 (……? あれ、意外と怒ってないのかな……?)

水希 「しっかりと邪魔をしておいて、“ごめんね” なんて、ああ可笑しい……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 (あ、うん。しっかり怒ってるね、これは)

成幸 「こ、こらこら、水希。悪いのは約束をブッキングさせてしまった俺なんだから、古橋を責めるなよ」

水希 「………………」

ニコッ

水希 「……そうだね、お兄ちゃん。ごめんなさい、古橋さん。変なこと言っちゃって」

文乃 「う、ううん。大丈夫だよ。邪魔しちゃってるのは事実だし……」

成幸 「邪魔なんかじゃないよ。ほら、まずは古橋の問題集選びだ。行こうぜ」

水希 「うん、お兄ちゃん♪」

文乃 「うん、成幸くん。よろしくね」


197以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:28:42cxG0DenQ (8/24)

………………書店

成幸 「うーん、古橋もだいぶ応用がきくようになってきたからな」

成幸 「ちょっと難しい問題集にするべきか……」

成幸 「いやしかし、受験も近い。今から応用を鍛えるよりは、基礎を固めた方が堅実か……」

成幸 「うーむ……」

水希 「………………」

文乃 「………………」

文乃 (うー……。問題集選びを手伝ってもらうと言えば聞こえはいいけど、実質選ぶのは成幸くんだし……)

文乃 (水希ちゃんとふたりきりは、少し気まずいな……)

文乃 「そ、そういえば、水希ちゃんも高校受験だよね」

文乃 「どこを受けるのかな?」

水希 「……一応、水泳のスポーツ推薦を狙っているので、取ってくれるところなら、どこでも」

水希 「二ツ葉でも、一ノ瀬でも、どこでも……」

文乃 「スポーツ推薦かぁ。大変だね、それは」


198以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:29:25cxG0DenQ (9/24)

水希 「大変でも、頑張らないと。武元先輩みたいになりたいですし、何より……」

文乃 「? 何より?」

水希 「……お兄ちゃんに、これ以上負担をかけられないから」

水希 「お兄ちゃんが、大学で伸び伸びと、がんばりたいことをがんばれるように……」

水希 「せめて私の高校の学費は、できる限り減らしたいから……」

文乃 「水希ちゃん……」

成幸 「……よし、決めた。この問題集がいいな!」

成幸 「おーい、古橋。ちょっと見てくれ。これがいいと思うんだけど、どうだー?」

文乃 「あ、うん! いま行くよ!」

文乃 (……そっか。そうだよね。成幸くんの家、裕福ってわけじゃないもんね)


―――― 『まぁそりゃ あなたの境遇には同情しますけど』


文乃 (……それなのに、あのとき……、あんな風に言ってくれたんだよね)

文乃 (本当に、優しくて良い子。成幸くんの妹って感じだよね……)


199以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:30:22cxG0DenQ (10/24)

………………水着店

成幸 「………………」

文乃 「………………」

成幸 「……買いたいものって、水着?」

水希 「うん! 実は、そろそろ部活用の水着がきつくてね。どこがとは言わないけど!」 ジーーーーッ

文乃 (めっちゃ見てくる! めっちゃ見てくる!)

文乃 (くぅぅぅ!! 中学生のくせにぃ~~~!!)

水希 「だから、新しい水着を買わなきゃなんだ。わたしひとりじゃ不安だから、お兄ちゃん、付き合って♪」

成幸 「不安も何も、サイズ合うの買うだけだろ!? しかも競泳用だろ!?」

水希 「いやぁ、ほら、間違えて古橋さんサイズのを買っちゃうとさ、」 ニコッ 「私には絶対入らないからさ」

文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「……うん、そうだね、水希ちゃん。間違えたら大変だね」

ガシッ

水希 「へ……?」

文乃 「じゃあ、お姉さんが一緒に見てあげようかな。間違いなくサイズが合う水着を……」 ニコッ


200以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:31:04cxG0DenQ (11/24)

………………数分後

水希 「………………」 ズーーーーン 「……お兄ちゃんに、見てもらう予定が……」

文乃 「………………」 ズーーーーン 「で、でけえ、だよ……。一ノ瀬に入ったら間違いなくC組以上だよ……」

成幸 「お前ら、何で水着店に入っただけでそんな満身創痍なんだ……?」

水希 「やってくれましたね、古橋さん……」

文乃 「ふふふ……。無為に年上に喧嘩を売るからこうなるんだよ、水希ちゃん……」

成幸 (……まぁなんか楽しそうだからいいか)

成幸 「そろそろお昼だな。せっかくデパートまで来たんだから、何か食べて行こうぜ」

水希 「で、デパートでお昼!? 私、そんなお金持ってないよ」

成幸 「心配するなよ。今日のお詫びだ。ふたりとも俺が奢ってやるよ」

水希 「お兄ちゃん、そんなお金あるの……?」

成幸 「バイトで貯めたお金があるよ。それにこんなことするのは今日だけだし、大丈夫だよ」

文乃 「でも、わたしまでご馳走になるのは悪いよ」

成幸 「水希の水着選び手伝ってくれたんだろ? そのお礼もあるから気にするなよ」


201以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:31:41cxG0DenQ (12/24)

文乃 「でも……」

水希 「………………」

水希 「……うん。じゃあ、ご馳走になろうかな」

水希 「もちろん、古橋さんも行きますよね?」

文乃 「へ……?」

文乃 「あ……えっと……」

文乃 「……じゃあ、わたしも、お言葉に甘えて……」

成幸 「決まりだな。じゃあ行こうぜ」

文乃 「……?」

文乃 (水希ちゃん、どうして……?)


202以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:32:16cxG0DenQ (13/24)

………………

文乃 「ごちそうさまでした、成幸くん。美味しかったよ」

水希 「ごちそうさま、お兄ちゃん! ありがとね」

成幸 「いやいや、どういたしまして。ふたりとも、今日は悪かったな」

水希 「気にしてないよ。また今度、埋め合わせでデートしてくれればね」

成幸 「はは、さすがに受験が終わってからにしてくれよ……」

成幸 「……ん、ちょっとお手洗いに行ってくるな。待っててくれ」

水希 「はーい」

文乃 「いってらっしゃい、成幸くん」

水希 「………………」

水希 「……座って待ちましょうか」

文乃 「あ……うん」


203以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:32:52cxG0DenQ (14/24)

水希 「………………」

水希 「……ふたりきりになれて良かったです。今日は、古橋さんとお話もしたかったので」

文乃 「ん……。だからお昼ご飯、わたしも一緒にって言ってくれたの?」

水希 「……それもあります」

文乃 「? それ “も” ?」

水希 「……気にしないでください。言葉の綾です」

オホン

水希 「そんなことより、お兄ちゃんが戻ってくる前に、聞きたいことがあるんです」

文乃 「……何かな?」

水希 「………………」

水希 「……古橋さんが家に泊まったとき、お風呂場で言っていた言葉は、本当ですか?」

文乃 「へ……?」


―――― 『わたしと…… お兄さんは 絶対そんな関係にはならないから』


文乃 「あっ……」 (あ、あのときの、あれか……)


204以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:33:25cxG0DenQ (15/24)

水希 「………………」

文乃 「……えっと、その……」

文乃 「……もちろん、本当だよ。うそじゃないよ」

水希 「……本当ですか?」

水希 「本当に、兄のことを好きになったり、ましてや恋人になったりなんてこと、ないんですね?」

文乃 「………………」

文乃 「……うん。もちろん、そうだよ。わたしは……」


―――― 『天文学の前は…… 幸せなお嫁さんになるのも夢だったから!!』

―――― 『じゃあさ古橋…… 今からデートしないか』

―――― 『星のこと話してる古橋 俺は好きだけどな』

―――― 『お前が本当にやりたいこと 俺が 全力で応援してるからな』


文乃 「わ、わたし……は……」


―――― 『起きてる』


205以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:34:04cxG0DenQ (16/24)

文乃 「………………」

水希 「……古橋さん?」

文乃 「………………」

スッ……

文乃 「……ごめん、水希ちゃん」

水希 「……?」

文乃 「わたし、うそついたね。うそに、なっちゃったんだね……」


文乃 「ごめん、水希ちゃん。わたし、お兄さんのこと……成幸くんのこと、好き」

文乃 「大好き、なの……」


水希 「………………」

文乃 「……だから、そういう関係になりたい。恋人になりたい。成幸くんの……」

文乃 「お嫁さんに、なりたいっ……!」

水希 「………………」

文乃 「………………」


206以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:34:48cxG0DenQ (17/24)

水希 「………………」

フゥ

水希 「……そう。そうですか」

水希 「そう、ですよね」

文乃 「へ……?」

文乃 「怒らないの……?」

水希 「はぁ?」 ジロリ 「怒って欲しいんですか?」

文乃 「い、いや、そういうわけじゃないけど……」

水希 「怒りませんよ。怒れるわけないじゃないですか。お兄ちゃんのこと、好きになったことを」

水希 「仕方ないです。お兄ちゃんは本当に魅力的な人ですから」

文乃 「そっか……」

水希 「わたしはただ、煮え切らない態度を取っているあなたに怒っていただけです」

水希 「あなたは、好きになることを遠慮しているような、ためらっているような……」

水希 「……そんな風に、見えたから」

文乃 「んっ……」


207以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:35:30cxG0DenQ (18/24)

文乃 「……そうだね。そうかもしれない」

文乃 「でも、決めたよ。わたし、もう逃げない。わたしは、“起きてる” から」

文乃 「わたし、負けたくない。成幸くんのこと、大好きだから」

水希 「……そうですか」

水希 「………………」

ギリッ

水希 「……私は……――」


文乃 「――――だからわたしたち、今からライバルだね!!」


水希 「……へ?」

文乃 「え? だってそうでしょ? わたしは成幸くんのことが好き。水希ちゃんも成幸くんのことが好き」

文乃 「ってことは、ライバルでしょ?」

水希 「………………」

水希 「……へぇ!?」 カァアアアア……

水希 「わ、わたしは、べ、べべべべべべつに!? お兄ちゃんのことなんか好きじゃないですけど!?」


208以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:36:04cxG0DenQ (19/24)

文乃 「………………」

文乃 「え、えぇぇええ~~……今さらツンデレ妹キャラ出しちゃう……?」

水希 「だ、だってそんな、わたし、妹だし……」

水希 「お兄ちゃんは、お兄ちゃんだし……そんなの……」

文乃 「? でも、水希ちゃん、お兄ちゃんのこと好きなんでしょ?」

水希 「……そ、それは、まぁ……その……」

コクリ

水希 「……好き、です、けど」 ボソッ

文乃 「じゃあわたしたちライバルだよ! 負けないからね!」

水希 「ら、ライバルって……古橋さんは、変だと思わないんですか?」

水希 「気持ち悪いって思わないんですか? 私のこと……」

文乃 「へぇ? 何で?」

水希 「何でって……実の、血の繋がった兄が好きって、変でしょう……?」

文乃 「んー……まぁ、一般的な社会通念的にはズレてるかな、とは思うけど」

文乃 「でも、成幸くんのこと好きなんでしょ?」


209以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:36:57cxG0DenQ (20/24)

水希 「す、好き……ですけど……」

文乃 「じゃあいいじゃない。マイノリティが尊重される時代だよ」

文乃 「妹がお兄ちゃんを好きでも、べつに問題ないじゃない。まぁ、遺伝子的にはちょっとアレかもしれないけど……」

グッ

文乃 「なんにせよ、がんばれ、水希ちゃん! 応援してるよ!」

水希 「………………」

クスッ

水希 「応援って……。それ、まずいんじゃないですか?」

文乃 「はっ!? そ、そういえば、わたしも成幸くんのこと好きなんだった!」

文乃 「い、今の取り消し! やっぱり応援はしない!」

文乃 「負けないからね、水希ちゃん!」

水希 「………………」 ニヤリ 「こちらこそ、です」

水希 「絶対負けませんからね、古橋さん!」


210以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:37:49cxG0DenQ (21/24)

水希 「………………」

水希 (ああ、この人は、こういう人だ……)

水希 (だからわたしは、この人のことが、好きなんだ……)

水希 (お兄ちゃんから約束のブッキングのことを聞いて、悔しくて、でも……)

水希 (同時に、古橋さんと一緒に出かけられるのが、少し楽しみで……)

水希 (そう、わかってたんだ。この人は、優しくて、とてもいい人)

水希 (わたしの、お兄ちゃんへの、拙い愛情すら、肯定してくれる人


―――― 『……それもあります』

―――― 『? それ “も” ?』


水希 (ああ、もう。バレてないよね)

水希 (“あなたにだったら、お兄ちゃんを任せてもいいよ” って……)

水希 (思いかけてしまっていること、バレていないよね……)

おわり


211以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:38:38cxG0DenQ (22/24)

………………幕間 『最強の敵』

水希 「それにしても、誰も彼も、お兄ちゃんのことを好きになりますね」

文乃 「ああ、りっちゃんたちのこと?」

水希 「そうです。緒方さんや、この前家に来ていた先輩と先生もです」

水希 「まったく。お兄ちゃんの魅力に気づくのはいいですが、虫みたいにたからないでほしいです」

文乃 「虫って……」

水希 「でも、大丈夫です。お兄ちゃんと私には、とてても心強い味方がいますから」

文乃 「味方?」

水希 「もちろん、武元先輩です!」

文乃 「えっ」

水希 「武元先輩は、いつもお兄ちゃんのことを気にかけてくれて、変化があるとすぐに教えてくれるんです!」

水希 「武元先輩だけは、私の味方なんです!」 キラキラキラキラ……

文乃 「あー……」

文乃 (……ごめん、水希ちゃん。うるかちゃんは多分、最強の敵だよ)

おわり


212以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:39:48cxG0DenQ (23/24)

読んでくださった方ありがとうございました。
安価もありがとうございました。
文乃さんと迷われているようだったので余計なお世話とは思いつつ文乃さんも入れてしまいました。


213以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 02:45:27cxG0DenQ (24/24)

すみません、もう少しだけお付き合いいただけると助かります。

【ぼく勉】 成幸 「今週末は、>>216と>>217する約束なんだ」

文章繋がらなくても適当にタイトルにするので構いません
>>216キャラ名と>>217何かすることをお願いします。
同じ方が二つとも踏んでくれても構わないのですが、
別の方が踏んでくれるとわたしはとても楽しいです。たぶん。
よろしくお願いします。


214以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 14:06:48WO/bOOK. (2/3)


美春


215以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 17:42:01/Jb6XPw. (1/1)

せんせー


216以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 18:16:44szoPGfYA (1/1)


智波ちゃん


217以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 18:22:43qv24418c (1/1)

真冬先生


218以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 19:41:45s9TtTp0U (1/1)

色々と早すぎてビビるわ?


219以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 20:03:237hh4/SuM (1/1)

おつつつつ

文乃お姉ちゃんだからね、そら妹ともセットになるよ(錯乱)


220以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 21:05:490kLsBePI (1/1)


妹と文系の関係好きよ


221以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/30(木) 22:30:19WO/bOOK. (3/3)

サプライズ


222以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/31(金) 12:11:16dNyovOrg (1/1)

誰得だよ


223以下、名無しが深夜にお送りします2019/05/31(金) 22:02:39M0/tNEls (1/1)

公式で姉妹してて草
https://i.imgur.com/BR6EOIo.jpg


224以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/01(土) 08:52:21doYRSdv6 (1/1)

>>223
この妹ちゃんの表情好き


225以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/02(日) 22:55:40.H2ShQb. (1/1)
226以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/05(水) 00:14:15Kp9YTYeQ (1/1)

12巻記念で誰か先生SS書いてくれないかなぁ


227以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/05(水) 01:46:171mj172Qg (1/1)

シエンタ


228以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/06(木) 00:10:2635cU.sxE (1/1)

1は小説版読んだのかな


229以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/23(日) 14:20:19JgZpUIGg (1/1)

アニメの先輩くっそかわいいじゃん!


230以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/24(月) 00:22:219bd34RUc (1/1)

原作でもかわいいぞ


231以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/27(木) 21:03:17PuAMbG86 (1/1)

小説版の表紙すき
https://i.imgur.com/tGR3sAa.jpg


232以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/28(金) 17:58:07J6iebV6k (1/1)

アニメ2期決定記念ssはよ


233以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/29(土) 20:45:38dBK094l2 (1/1)

すまん、智波ちゃんて誰や?


234以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/29(土) 22:57:53WpIDvgmM (1/1)

>>233
水泳部の短髪の方って言えばいいかな?


235以下、名無しが深夜にお送りします2019/06/30(日) 03:10:09Vo0o6zq2 (1/1)

アニメ終わったし再開してほしいな


236以下、名無しが深夜にお送りします2019/07/05(金) 12:30:2990wSHPuQ (1/1)

追いついた支援


237以下、名無しが深夜にお送りします2019/07/07(日) 12:38:52hh8gsOaI (1/1)

七夕ssはよはよ


238以下、名無しが深夜にお送りします2019/07/11(木) 01:50:36KqXiYuIo (1/1)

アニメ2期まであと3ヶ…


239以下、名無しが深夜にお送りします2019/07/29(月) 01:02:14IdsuREVE (1/1)

>>231
いい表情だなぁ…


240以下、名無しが深夜にお送りします2019/08/01(木) 23:21:40GfAUGzic (1/1)

花火大会やBBQといった夏の話書いてほしい


241以下、名無しが深夜にお送りします2019/08/08(木) 12:29:26rM9R1Nd2 (1/1)

天の光はすべて星


242以下、名無しが深夜にお送りします2019/08/13(火) 00:55:30XKR43jLw (1/1)

読み返していて思ったが>>1の自己安価タイトル一挙できていいな


243以下、名無しが深夜にお送りします2019/08/16(金) 04:13:38zmPo8FRw (1/1)

前スレにあった面白かったssだけど
ポニーテールは振り向かないが最高でしたわ・・・


244以下、名無しが深夜にお送りします2019/08/17(土) 13:31:03jBdNViHc (1/1)

そういやC96をぼく勉でエントリーしたって言ってたな
やっぱ小説なのかね?


245以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/01(日) 20:07:59R3mdfaZw (1/1)

3ヶ月か


246以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/01(日) 23:01:09rFmw/ZZ6 (1/1)

俺は待ち続けるぞ


247以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:29:23x0BKGJhc (1/70)

>>1です。
もし待っていてくださった方がいらっしゃったらありがとうございます。
申し訳ありませんでした。
とりあえず投下します。
>>213の安価からです。

書いていて楽しかったですが色々とくどいかもしれません。



【ぼく勉】 成幸 「桐須先生の補習に出たら週末に海原が家に来ることになった」


248以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:30:03x0BKGJhc (2/70)

………………一ノ瀬学園

成幸 「ふぁ……ぁあ……」

文乃 「? 成幸くん、すごいあくびだね。昨日夜遅くまで勉強でもしてたの?」

成幸 「あー……」

成幸 「……うん、まぁそんなとこかな」

文乃 「ふふ、仕方ないなぁ。でも次の授業は桐須先生だよ」

文乃 「居眠りなんかしたら大目玉だよ。気をつけてね」

成幸 「わ、わかってるよ。ビビらせるなよ……」

文乃 「ふふふ、ごめんごめん」

文乃 (……まったく。夜更かししちゃうなんて、仕方ないなぁ)

文乃 (もし成幸くんが居眠りしちゃったら、お姉ちゃんが起こしてあげるとしようかな)

文乃 (手のかかる弟だよ、まったく……)


249以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:30:41x0BKGJhc (3/70)

………………授業中

真冬 「この時代の事象は後の世に大きな影響を与えるの」

真冬 「大航海時代の今後を決める重要な事件・事柄ばかりよ」

真冬 「この周辺に関しては、一年ごとに重要なイベントを覚えるようにした方がいいわ」

文乃 (ふむふむ。この時代に関しては、一年ずつ覚えていく、と……)

カリカリカリ……

文乃 (さて、成幸くん、大丈夫かな。お舟漕いでたりしないかな、っと……)

成幸 「………………」 Zzzzz……

文乃 「!?」

文乃 (ふ、舟を漕ぐどころの騒ぎじゃねえ、だよ……)

文乃 (がっつり眠りの大海原を彷徨ってるよ!?)

文乃 「ち、ちょっと、成幸くん」 コソッ 「まずいよ。起きてよ」

成幸 「………………」 Zzzzz……

文乃 (起きる様子がない!!)


250以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:31:21x0BKGJhc (4/70)

文乃 「成幸くんってば!」

成幸 「む……ふむ……」

文乃 「あ、成幸くん、起きた……?」

成幸 「えへ……ふふ……」

ニヘラ

成幸 「文乃姉ちゃん……」

文乃 「っ……///」

文乃 (なっ、何!? わたしの夢を見てるの……?)

文乃 (わ、笑いながらわたしの夢を見てるって……一体、どんな夢なの……?)

文乃 (うぅ……お、起こすに起こせないよ。続きが気になって……)

成幸 「だ、ダメだよ、文乃姉ちゃん……」

文乃 (だっ、ダメって何かな、成幸くん……) ドキドキドキドキ…… (まさか、ちょっとエッチな……――)

成幸 「――……そんなに食べたら……また太るよ……。おなかぽにょぽにょになるよ……」

文乃 「………………」 ピキッ 「……へぇ?」

文乃 「へぇえ……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!


251以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:31:58x0BKGJhc (5/70)

文乃 「………………」

スッ

文乃 「桐須先生」

真冬 「? 質問かしら、古橋さん」

文乃 「いえ、報告です。唯我くんが居眠りしています」

真冬 「………………」 ピクッ 「……なんですって?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「……むにゃむにゃ……」

真冬 「……なるほど」

カツカツカツ……

真冬 「……唯我くん」

成幸 「……むにゃ」

真冬 「唯我くん」 トントン

成幸 「へ……?」

パチッ


252以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:32:36x0BKGJhc (6/70)

成幸 「………………」

真冬 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「……あ、えっと……」

成幸 (……目覚めた瞬間、目の前には怒り顔の桐須先生と、なぜか同じように怒っている古橋の顔があった)

成幸 (状況はよくわからなかったが、ひとつ、間違いなく言えることは……)

真冬 「いい度胸ね、唯我くん。まったく、どうしてくれようかしら……」

文乃 「まったくだよ。本当に君は、仕方のない生徒だね……」

成幸 (……あ、俺、死んだな)


253以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:33:25x0BKGJhc (7/70)

………………昼休み

成幸 「うぅ……」

理珠 「なるほど。それで桐須先生に絞られて、そんなにやつれているんですね」

うるか 「居眠りしちゃうなんて、成幸はしかたないなー」

成幸 「……まったくその通りだから返す言葉もないよ」

文乃 「ふんだ。自業自得だよ、まったく……」

理珠 「……しかし、それでどうして文乃が怒っているのですか?」

成幸 「それが、理由を教えてくれないんだよ」

文乃 「ふーん、だ!」 プイッ

成幸 「……でさ、本題なんだけど、今日の放課後、桐須先生に居眠り分の補習って言われちゃってさ」

成幸 「だから、勉強会少し遅れると思う。先に図書室で始めててくれ」

うるか 「ん、わかった。できるだけ早く来てよね、成幸」

成幸 「分かってるよ。俺だってそうしたいところだけど、桐須先生次第かな……」

理珠 「まぁ、成幸さんが悪いのだから仕方ありません。がんばってください」

成幸 「おう、ありがとな」


254以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:33:55x0BKGJhc (8/70)

………………午後

真冬 「……で、あるからして、残されたパイを奪い合う大航海時代が幕を開けたわけね」

真冬 (……ふぅ。午前中は唯我くんが居眠りをして、少し驚いたけれど)

真冬 (さすがに受験生だもの。午後の授業は、居眠りする生徒なんていなそうね)

真冬 「ん……?」

コクリ……コクリ……

真冬 (……舟を漕いでいる生徒がいるわね。一体誰からしら。心当たりなら何人かいるけれど)

真冬 (まったく……)

カツカツカツ……

真冬 「……起きなさい」

? 「ふぇっ……? あ……」

? 「す、すみません、桐須先生! 私、寝ちゃってました……?」

真冬 「……あら、あなたは……」

真冬 (めずらしいことが続くものね。普段まじめな子が、立て続けに居眠りをするなんて……)


255以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:34:34x0BKGJhc (9/70)

………………放課後

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「うぅ……」 (心なしか、生徒指導室から怒りが漏れ出ている気がする……)

成幸 (気のせい……気のせいだよな……)

成幸 (そもそも、授業後にあれだけ絞られたんだ。今日の授業内容をおさらいしてくれるだけだろ……)

成幸 (たぶん……)

ガラッ

成幸 「し、失礼します。3年B組の唯我です!」

? 「おや? 唯我くん?」

成幸 「へ……? う、海原?」

智波 「やぁやぁ、桐須先生から補習はもう一人いるって聞いてたけど、唯我くんだったんだね」

成幸 「お前も補習なのか。居眠りでもしたのか? めずらしいな」

智波 「あはは。そういう唯我くんこそ、ガリ勉くんなのにめずらしいね」

成幸 「ガリ勉くんは余計だよ。悪かったな」

智波 「褒めてるんだよー」 ケラケラケラ


256以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:35:19x0BKGJhc (10/70)

成幸 「で、どうしたんだ? 夜遅くまで勉強、ってキャラじゃないだろ、お前」

智波 「まぁね。ちょっと、色々やってたら寝るのが遅くなっちゃってさ」

成幸 「……?」

成幸 「……海原、お前ひょっとして……――」

――――ガラッ……

真冬 「ふたりとも時間厳守で揃っているようね。結構」

真冬 「では、補習を始めます。唯我くん、号令」

成幸 「あ、は、はい! 起立! 気をつけ! 礼!」

成幸&智波 「「お願いします!!」」

真冬 「よろしい。でははじめましょう」

真冬 「今日の内容は、大航海時代の始まりと変遷に関してよ」

真冬 「重要な事象ばかりだから、ざっくり時系列順に並べるから、頭にたたき込むこと」

成幸 「は、はい!」


257以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:36:03x0BKGJhc (11/70)

カリカリカリ……

智波 (うへー。ノート書くだけで大変だよー)

智波 (まぁ、仕方ないよね。授業中に居眠りしちゃった私が悪いし)

智波 (むしろ、わざわざ時間を取って補習までしてくれる桐須先生に感謝だよ)

成幸 「………………」

ガリガリガリガリ……

智波 (相変わらずすごいなぁ、唯我くん。シャーペンの音が大きいな)


―――― 『……海原、お前ひょっとして……』


智波 (そういえば、さっき唯我くん、何を言おうとしてたんだろ)


258以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:36:36x0BKGJhc (12/70)

………………校内 ベンチ


―――― 智波 『ごめん、陽真くん! 授業中に居眠りして、桐須先生に呼び出されてるんだ!』

―――― 智波 『すぐ終わらせるから、待っててくれると嬉しいなっ!』


陽真 「ふふ。まったく、智波ちゃんったら仕方ないなぁ」

陽真 (そろそろ来る頃かな。早く会いたいな……)

陽真 「あっ……」 (向こうから歩いてくるのは……智波ちゃんと、成ちゃん……?)

成幸 「――……それにしても、夜更かしの理由が俺とまったく同じだったとはな」

智波 「えへへ、びっくりだね。考えることがこんなに被るなんて、さすが同中だねぇ」

成幸 「いや、べつに同中なのは関係ないだろ」

陽真 (……? なんかすごく楽しそうだなぁ。成ちゃんと智波ちゃんってあんなに仲良かったっけ?)

陽真 (なんか、声かけるのがためらわれるな……)

智波 「でも、なかなかうまくいかなくてさ。唯我くんそういうの上手だからうらやましいよ」

成幸 「まぁ、昔から色々やってきたからな。良かったら教えようか?」

智波 「ほんとに!? うわー、すごく助かるよ!」


259以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:37:21x0BKGJhc (13/70)

陽真 (……何の話してるんだろ?) モヤモヤモヤ (……なんだろう。すごくモヤモヤする)

ハッ

陽真 (お、俺は一体何を考えてるんだ! 大好きな彼女と幼なじみを疑うようなことを考えるなんて!)

成幸 「じゃあ、土曜とかどうだ? 俺は午後なら空いてるけど」

陽真 (へ……?)

智波 「うん、私も大丈夫! じゃあ、お願いしてもいい?」

陽真 (へぇっ……?)

成幸 「おう。ちょっと弟妹の面倒も見なきゃいけないから、うちでもいいか?」

陽真 (!?)

智波 「ん、分かった! じゃあ、土曜日は唯我くんの家にお邪魔するね!」

陽真 (!!??)

智波 「あっ……」 パァアアアアアア……!!! 「陽真くん! ごめん、お待たせ!」

陽真 「あ……えっと……」

智波 「? 陽真くん?」

陽真 「……あ、ううん、なんでもない。補習、おつかれさま」


260以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:37:56x0BKGJhc (14/70)

陽真 「成ちゃんも桐須先生に呼び出されてたんだ。めずらしいね」

成幸 「ああ、まぁ、授業中に居眠りなんて普通はしないからな……」

陽真 「………………」

成幸 「小林……?」

陽真 (今、ふたりで、土曜日に何かする約束をしてたよね……)

陽真 (……って、聞けたらどんなに楽だろう。ダメだ。怖い)

陽真 (彼女と幼なじみをいっぺんに失ってしまうんじゃないと思うと、怖い……)

智波 「? 陽真くん、どうかした? 大丈夫?」

陽真 「へ? あ、うん。大丈夫だよ。ごめんごめん」

成幸 「じゃ、俺はこの後うるかたちと勉強会だから、もう行くな」

陽真 「うん。また明日ね、成ちゃん」

成幸 「おう。海原も、またな」

智波 「うん、ばいばーい!」


261以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:38:46x0BKGJhc (15/70)

陽真 「……じゃあ、行こうか」

智波 「うん。本当に待たせてごめんね、陽真くん」

陽真 「気にしないで。全然待ってないからさ」

陽真 「……と、ところでさ、」

智波 「うん?」

陽真 「さっき、成ちゃんとすごく楽しそうに話してたけど、何の話をしてたの?」

智波 「う゛ぇっ……?」

智波 「え、えっと……そ、その、大した話じゃないよ。うん。全然、これっぽっちも」

陽真 「……智波ちゃん?」

智波 「ほ、ほんと! 全然大した話じゃないから!」

智波 「え、えへへ……」 アセアセアセ……

陽真 「………………」 (めっちゃ動揺してる!?) ガーーーン!!!

陽真 (えっ、ちょっと待って。まさか、本当に、そういう感じ……?)

陽真 (い、いやいや、智波ちゃんと成ちゃんに限って、そんなはず……)


262以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:39:49x0BKGJhc (16/70)

智波 「あ、そうだ、ねぇねぇ陽真くん」

陽真 「? な、なぁに?」

智波 「唯我くんの連絡先、教えてくれない? さっき聞くの忘れちゃって……」

陽真 「へっ……? い、いいけど……どうして?」

智波 「えっと、それは……」

カァアアアア……

智波 「な、ナイショっ! 恥ずかしいから……///」

陽真 「!?」 ガーーーン

陽真 (こ、これは、まさか、本当に……)

智波 「? 陽真くん? どうかした?」

陽真 「………………」 チーーーン

智波 「陽真くん!? わー、陽真くんが固まっちゃったー!!」

智波 「陽真くーーーーーーーん!!」


263以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:40:19x0BKGJhc (17/70)

………………土曜日

陽真 「………………」

ハァ

陽真 (……今ごろ、智波ちゃんと成ちゃん、何してるんだろう)

陽真 (成ちゃん家で、何を……)

ブンブンブン

陽真 (ああもう! よくよく考えたら、智波ちゃんと成ちゃんがそんなことするはずないじゃないか)

陽真 (女々しいなぁ、俺。こんなウジウジするならはっきり聞けば良かったんだよ)

陽真 (……いや、今からでも、智波ちゃんに電話して聞いてみればいいんだよ)

陽真 「………………」

陽真 (……それができない時点で、俺は彼女と幼なじみのことを疑ってるんだよな)

陽真 (……情けない)

陽真 (家にいても気が滅入りそうだ。ちょっと散歩にでも出ようかな……)


264以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:41:05x0BKGJhc (18/70)

………………商店街

水希 (……部活が長引いて遅くなっちゃったな)

水希 (お兄ちゃんにお留守番してもらってるから、早く帰らないと……)

水希 「ん……?」

陽真 「……あっ、水希ちゃん」

水希 「小林さん? お久しぶりです。こんにちは」

陽真 「うん、こんにちは。部活の帰り?」

水希 「はい! 小林さんはお買い物ですか?」

陽真 「あー……まぁ、そんなところかな」

水希 「……?」

水希 「小林さん、なんか元気ないですね。大丈夫ですか?」

陽真 「え……? あ、いや、そんなことないよ。全然……」

水希 「む……」

ズイッ

陽真 「み、水希ちゃん……?」


265以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:41:40x0BKGJhc (19/70)

水希 「……私、これでも、小林さんのこと、もうひとりのお兄ちゃんみたいに思ってるんですよ」

水希 「だから、分かります。小林さんが何かで悩んでることくらい」

水希 「私じゃお役に立てないかもしれないですけど、それでも、もしよければ……」

ニコッ

水希 「話だけでも聞かせてもらえませんか?」

陽真 「水希ちゃん……」

陽真 「……ごめん。ありがとう。すごく嬉しいよ」

陽真 「じゃあ、お言葉に甘えて、聞いてもらおうかな」

水希 「はい!」


266以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:42:12x0BKGJhc (20/70)

………………

陽真 「成ちゃんから聞いてるかもしれないけど、実は、夏に彼女ができたんだ」

水希 「そうだったんですね。おめでとうございます」

水希 「小林さんの彼女さんって、すごく幸せな人ですね」

水希 「小林さんみたいな優しくて格好良い人の彼女になれるなんて、うらやましいです」

陽真 「はは……。そうだったらよかったんだけどね……」

水希 「? 彼女さん、どうかしたんですか?」

陽真 「……うん。実は、今日、彼女の智波ちゃんが俺の友達の家に行くみたいでさ」

水希 「へ……?」 カァアアアア…… 「と、友達って、男の人、ですか?」

陽真 「うん……」

水希 「な、なんですかそれ! 彼女さん、陽真さんという人がいながら、他の男の人に行くなんて……!」

水希 「そんなの、ひどいじゃないですか!」

陽真 「あ、で、でもね、そうとも言い切れなくて……」

水希 「? 何でですか?」

陽真 「いや、その……その友達っていうのがさ、何を隠そう……――」


267以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:43:01x0BKGJhc (21/70)

………………

水希 「………………」

テクテクテクテク……

水希 「………………」

クスッ

水希 (まったくもう、小林さんったら……)


―――― 水希 『お兄ちゃん?』

―――― 水希 『やだなぁ、小林さん。お兄ちゃんがそんなことするわけないじゃないですか』

―――― 水希 『小林さんもよく知ってるでしょう? お兄ちゃんがどんな人か』

―――― 水希 『きっと何かの聞き間違いですよ。ね?』

―――― 陽真 『そう……そうだよね』

―――― 陽真 『ごめんね、水希ちゃん。変なこと言って。水希ちゃんの言うとおりだ』


水希 (でも、小林さんも納得してくれたみたいだし、少し元気も出たみたいだったし)

水希 (よかったよかった) ニコニコニコ


268以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:43:47x0BKGJhc (22/70)

水希 (……ん、もう家だ。お留守番してたお兄ちゃんたちのために、お菓子でも作ってあげようかな)

ガラッ

水希 「ただいまー。帰ったよー……――」


成幸 「ん、そうそう。上手いぞ、海原。その調子だ」

智波 「……うん。えへへ、我ながら良い出来だよ。この調子で、っと……」


水希 「………………」

ワナワナワナワナ……!!!

水希 (お兄ちゃんが知らない女を連れ込んでるーーーーーー!?)

水希 (えっ、っていうか、あの女の人ってもしかして……)

成幸 「ん、水希、おかえり。葉月と和樹は良い子にしてたぞ」

智波 「あっ、こんにちは! お兄さんの友達の海原智波です。お邪魔してます」


―――― 『……うん。実は、今日、彼女の智波ちゃんが俺の友達の家に行くみたいでさ』


水希 「もしかしなくてもそうだった……」 ガクッ


269以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:44:31x0BKGJhc (23/70)

成幸 「? 急にうなだれてどうしたんだ?」

水希 「………………」

成幸 「ひょっとして、海原って七尾南水泳部のOGだし、会ったことあるんじゃないか?」

水希 「………………」

智波 「私はうるかと違って中学にお呼ばれしたりしてないからなぁ……」

水希 「………………」

成幸 「……水希?」

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

海原 「水希ちゃん……?」

水希 「………………」 スッ 「……正座」

成幸 「へ?」

水希 「正座、してください。お兄ちゃんも、海原先輩も」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!


270以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:45:14x0BKGJhc (24/70)

………………小林家

陽真 「………………」

ドキドキドキドキ……

陽真 (……水希ちゃんにはああ言ったものの、実際電話をかけようと思うと緊張するなぁ)

陽真 (うん。よくよく考えてみれば、智波ちゃんも成ちゃんも、そんなことをするはずないし)

陽真 (よし……電話を、して……)

陽真 「………………」 ガクッ (……うぅ。ダメだ。やっぱり怖くてできない)

陽真 (ふたりのこと信じてるのに……)

陽真 (俺って、こんな弱虫だったんだな……)

――ピンポーン……

陽真 (……? 今日、荷物でも届く予定あったかな。何だろう)

トトトトト……ピッ

陽真 「……へ?」

成幸 『あ、こんにちは。唯我と申しますが……』 智波 『こんにちは。海原と申します……』

陽真 「……成ちゃんと智波ちゃん!?」


271以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:45:49x0BKGJhc (25/70)

………………

成幸&智波 「「このたびは本当に申し訳ありませんでした!!」」

バーーーン!!!

陽真 「……いや、家に上がってすぐ土下座されても……」

陽真 「えっと……謝るってことは、もしかして……」

智波 「あ、ち、違うんだよ、陽真くん! わたしと唯我くんは全然そんなじゃないよ!?」

成幸 「そうだぞ小林! そもそも俺みたいなガリ勉男を好きになる女子がいるわけないだろ!」

陽真 「いや、こんなときまでツッコミをさせないでほしいな、成ちゃん……」

智波 「ほんとにね……」

成幸 「へ? へ? へ?」

陽真 「……まぁいいや。えっと、ふたりにいくつか聞きたいことがあるんだけど……」

成幸 「ああ、その気持ちはわかるし、俺たちも色々と説明したいんだが……」

智波 「ごめんね、陽真くん。その前にひとつ、やってしまいたいことがあるんだ」

陽真 「?」


272以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:46:24x0BKGJhc (26/70)

成幸 「……よし、じゃあいくぞ、海原」

智波 「うん。せーのっ……」

陽真 「……?」


成幸&智波 「「小林陽真くん! お誕生日おめでとう!!」」 バーーーン!!!


陽真 「………………」

陽真 「……へ!? 誕生日!?」

成幸 「……ん、まぁ、正確に言うともう数日先だが、緊急事態だから仕方ないと思ってな」

陽真 「これって……プレゼント?」

智波 「うん。私からのと、唯我くんからのの二つだよ」

智波 「がんばって用意したんだけど、気に入ってくれたら嬉しいな」

陽真 「あっ……ありがとう」

陽真 「……開けてもいい?」

智波 「……うんっ」

カサカサカサ……


273以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:47:03x0BKGJhc (27/70)

陽真 「……エプロン?」

陽真 「これ、ひょっとして智波ちゃんの手作りなの?」

智波 「うん。だから、ちょっと不格好なところもあるんだ。ごめんね」

陽真 「いや、すごくよくできてるよ! すごいよ」

智波 「最近、陽真くんお料理にこってるみたいだったからがんばって手作りしたんだけど、」

智波 「喜んでくれてよかったよ。唯我くんに手伝ってもらって、今日完成させたんだ」

陽真 「成ちゃんに手伝ってもらって……今日……?」

陽真 「あっ……」


―――― 『まぁ、昔から色々やってきたからな。良かったら教えようか?』

―――― 『ほんとに!? うわー、すごく助かるよ!』


陽真 (そっか。あのとき言ってたのはこのことだったんだ……)


274以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:47:44x0BKGJhc (28/70)

智波 「……で、話を戻すんだけどね。今日、実は唯我くんの家に行ってたの」

智波 「でも勘違いしないでね! ほんとに、やましいことは一つもないんだよ!」

成幸 「というか葉月も和樹もずっと一緒だったしな。そんなことありえないっていうか……」

智波 「……そもそも、こんなこと言うと唯我くんに悪いかもしれないけど、」

智波 「唯我くんのこと、男の子として見てなかったっていうか……」

成幸 「うんうん。俺も海原のことはただの友達としか思ってなかったから、つい家に誘ってしまってな」

智波 「だから唯我くんのお家にお邪魔することに、少しも疑問を持たなかったんだ……」

智波 「陽真くんに内緒にしてたのは、サプライズのつもりだったからなんだけど……」

智波 「でも、陽真くんからすれば心配だよね。嫌だよね。そういうこと考えられなくて、本当にごめんね」

陽真 「………………」

智波 「……陽真くん?」

陽真 「……よかった」 グスッ 「本当に、何もなくてよかった……」

成幸 「わ、わー! 小林、泣くな! すまん!! 本当に悪かった! 申し訳ない!!」

智波 「わーん! 陽真くん、本当にごめんねー!!!」


275以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:48:37x0BKGJhc (29/70)

………………

陽真 「……急にぐずったりしてごめん」 グスッ

智波 「ううん。気にしなくていいんだよ。私たちが悪いんだから」

成幸 「本当に悪かったな。家に帰ってきた水希に散々説教されて、ようやく気づいたんだ」

陽真 「水希ちゃんが……そっか……」

智波 「………………」

ギュッ……

陽真 「ん、智波ちゃん?」

智波 「……心配にさせて、本当にごめんね」

陽真 「あ、いや……」 カァアアアア…… 「もう大丈夫だよ」

陽真 「俺の方こそ、勝手に変な勘ぐりして、疑ってごめんね、智波ちゃん」

智波 「ううん。謝らないで、陽真くん」

陽真 「智波ちゃん……」

成幸 (ん……?)


276以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:49:20x0BKGJhc (30/70)

成幸 「あー……じゃあ、俺はそろそろおいとまするな」

成幸 「……えっと、その、ちなみに、俺のプレゼントの中身はミトンだから」

成幸 「俺も、最近料理に凝ってるお前のために作ったんだけど、海原とかぶらなくてよかったよ」

成幸 「ちなみに、ちゃんとワタたくさんつめて作ったから、使いやすいと思う……って」

陽真 「智波ちゃん……」 智波 「陽真くん……」

成幸 「……もう聞いちゃいないか。じゃ、またな」

ガチャッ……パタン……

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

成幸 (な、なんだろう、今の雰囲気……///)

成幸 (ものっそいドキドキするぅ……)


277以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:49:55x0BKGJhc (31/70)

………………

智波 「………………」

ギュッ

智波 「……ねえ、陽真くん。今日もご両親は遅いのかな」

陽真 「……うん」

智波 「……あのね、もう少し一緒にいても、いい?」

陽真 「……もちろん」

ギュッ

智波 「ねぇ、陽真くん」

智波 「大好きだよ」

陽真 「……うん。俺も、大好きだよ。智波ちゃん」

…………………………

……………………

………………


278以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:50:57x0BKGJhc (32/70)

………………翌週

成幸 「うぃーす、小林」

陽真 「おはよ、成ちゃん」

陽真 「もらったミトン、早速使ってみたよ。すごく使いやすかったよ」

陽真 「ありがとね。それから、ヘンなことで疑ってごめんね」

成幸 「いやいや、常識的に考えればおかしいのは俺だから、謝るなって」

成幸 「俺の方こそごめんな。そういうの疎くてさ。水希に叱られて初めて気づいたよ」

陽真 「いや、もう大丈夫だよ。気にしないで」

陽真 「おかげで、智波ちゃんともっと仲良くなれたしね」

成幸 「……?」

成幸 (小林って元々落ち着いてて大人っぽかったけど……)

成幸 (なんか、今まで以上に、余裕があるというか……? 大人っぽいというか……)

成幸 「………………」

成幸 (……いやいや、そんな、まさか、なぁ?)

おわり


279以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:51:35x0BKGJhc (33/70)

………………幕間1 「唯我家での一幕」

智波 「でも、私がエプロン、唯我くんがミトンを手作りって、すごい偶然だね」

成幸 「まぁなぁ。お互いかぶらなくてよかったよ」

チクチクチクチク……

葉月 「姉ちゃんは嫁候補じゃない?」

智波 「ごめんねぇ。私は陽真くんの彼女さんだからねぇ」

和樹 「そうかー。残念……」

智波 「でも大丈夫だよちびっ子たち。お兄さんはモテモテだからねぇ」

成幸 「ははは、本気にするなよー、葉月、和樹」

成幸 「兄ちゃんはモテたりしないからなー」

智波 「これがなければねぇ……」

葉月&和樹 「「ほんとにねぇ……」」 ウンウン

成幸 「な、何で初対面なのにそんなにシンパシー感じてるんだお前ら……」

おわり


280以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:52:06x0BKGJhc (34/70)

………………幕間2  「虫さされです」

智波 「おはよー、うるか、あゆ子」

あゆ子 「おう、おはよ、智波……って……」

うるか 「おはよー、海っち……あっ……」

智波 「? どうしたの、ふたりとも。顔真っ赤にして……」

あゆ子 「えっと、とりあえず、これ……///」

智波 「へ? バンソーコー?」

うるか 「……うん。首、貼っといた方がいいかも……///」

智波 「へっ? あっ……///」

おわり


281以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:53:46x0BKGJhc (35/70)

>>1です。
小林くんは間違いなくこんなに面倒くさい男ではないです。
申し訳ないことです。

次投下します。


【ぼく勉】 紗和子 「今週末は発表会の予定なのよ」


282以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:54:21x0BKGJhc (36/70)

うるか 「発表会? なにそれ?」

理珠 「あっ、ひょっとして例の、化学部で参加するという発表会ですか?」

紗和子 「さすがは我が親友、緒方理珠ね! その通りよ!」


―――― 『15時間効果を維持する超強力接着剤よ!』

―――― 『え…… だって 今度化学部が発明品を発表会に出展するじゃない?』

―――― 『当然OGとして試作品のひとつでも作りたいじゃない?』


成幸 「ああ、あのときの……」


―――― 『何故全部脱いでいるのですか関城さん!?』

―――― 『え? 脱がなきゃ服が濡れちゃうじゃない こっち見ないでよ唯我成幸』

―――― 『お…… 緒方……!? ちょ……ッ』

―――― ((寝れる…… わけあるかこんなん!!!))


成幸 (あのときのか……///)

文乃 (……その反応、また何かあったんだね、成幸くん) キリキリキリ……


283以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:55:00x0BKGJhc (37/70)

成幸 「じゃあ、例の15時間キープする接着剤について発表するんだな」

紗和子 「ええ。『1DAYトレンD』 ね」

成幸 「……で、それをなぜ図書室にまで来て俺たちに言うんだ?」

紗和子 「えっ? だって、部員たちもみんな自分の発明品を発表するじゃない?」

成幸 「フム……」

紗和子 「発表会に、ひとりは知ってる人に来てもらいたいじゃない?」

理珠 「フムフム……」

紗和子 「で、化学部以外でこんなことに呼べる友達、あなたたちしかいないじゃない……?」

文乃 「お、おー!! わざわざ誘いに来てくれたんだね紗和子ちゃん! 嬉しいなぁ! 光栄だよ!」

うるか 「あーもうこりゃ行くっきゃないね! さわちんの晴れブタイを見に!」

紗和子 「……ほ、本当!?」 パァアアアアアア……!!!

文乃 「えっと、今週末は……」  うるか 「えーっと……」

文乃 「あっ……。ごめん、紗和子ちゃん。その日はちょっと鹿島さんたちと用事が……」

うるか 「……ごめん、さわちん。あたしも海っちたちと約束がある……」

紗和子 「そう……そうよね……。みんな、私と違って、他にもお友達がいるものね……」 ズズズズズーン


284以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:55:32x0BKGJhc (38/70)

成幸 「あ、だ、大丈夫だぞ関城! 俺はその日空いてるぞ! せひ見に行かせてくれ!」

成幸 (本当は勉強したかったけど!!)

理珠 「わ、私も空いていますよ、関城さん! ぜひ見に行かせてください!」

理珠 (本当は成幸さんと勉強会の予定でしたけど!!)

紗和子 「あなたたち……」 キラキラキラ……!!!!

紗和子 「これ、パンフレットよ! 私の勇姿、とくとその目に焼き付けるといいわ!」

成幸 「お、おう、ありがとな」

成幸 (……まぁ、関城には世話になってるし、これくらいはな)

理珠 「……あ、あの、関城さん」

紗和子 「? 何かしら、緒方理珠」

理珠 「楽しみです。がんばってくださいね!」

紗和子 「あ……」 カァアアアア…… 「え、ええ! ありがとう、がんばるわ!」

成幸 (……緒方もまんざらでもなさそうだしな) クスッ


285以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:56:08x0BKGJhc (39/70)

………………週末

成幸 「………………」

成幸 (んー、緒方のやつ遅いな。そろそろ待ち合わせの時間だけど……)

ピロン……

成幸 (ん? 緒方からメッセージ……?)

 『すみません、成幸さん。お店に急に大口の出前が入って、手伝いをしなければならなくなりました』

 『関城さんの発表時間には絶対に間に合うように行くので、先に会場に入っていてください』

成幸 「あー……」 (お店が急に忙しくなったんじゃ仕方ないよな……)

成幸 (関城の発表には間に合うみたいだし、緒方の言うとおり、俺は先に入ってるとするか)


286以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:56:40x0BKGJhc (40/70)

………………会場内

ガヤガヤガヤガヤ……

成幸 (へー、色んな学校が発表に来てるんだな)

成幸 (小さなホールと廊下に展示物がいっぱいだ)

成幸 (各学校のブースで、今日の発表物の展示をしてるんだな)

成幸 (で、発表会は、大きなホールでやるんだな。ふむふむ……)

成幸 (高校生の展示なのに、結構面白そうな発明品が並んでるな。あとでゆっくり見てみようかな)

成幸 (とりあえず、一ノ瀬の化学部のブースは、と……)

紗和子 「……」 イソイソイソイソ……

成幸 (……探すまでもなかったな。制服の上に白衣を着てるようなやつ、ひとりしかいないもんな)

成幸 「よ、関城。精が出るな」

紗和子 「あら、唯我成幸。早いわね。発表会はまだよ?」

成幸 「ああ、緒方とふたりでちょっと早めに待ち合わせしてたからさ」

成幸 「あ、そうだ。緒方が店の手伝いで少し遅れるってさ」

成幸 「発表会には間に合うみたいだから、心配しなくていいってさ」


287以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:57:32x0BKGJhc (41/70)

紗和子 「そう。それは良かったわ」

紗和子 「……っと、ごめんなさい。実はブースの設営を急いでやらなくてはいけなくて」

成幸 「ああ、悪い。邪魔しちゃったみたいだな」

成幸 「……ん? っていうか、他の化学部の部員はどこに行ったんだ?」

紗和子 「ああ、それなら……」 スッ 「ほら、向こうで来てくれた保護者の相手をしてるわ」

ワイワイワイワイ……

成幸 「ああ、あれか……」 ハッ 「いやいや、だからOGのお前ひとりで大忙しなんだろ。何でこんな……」

紗和子 「だって仕方ないじゃない。あの子たちには、晴れ舞台を見にきてくれる家族がいるんだから」

紗和子 「その相手をさせてあげられないようじゃ、化学部元部長、関城紗和子の名が廃るというものよ」

成幸 「お前が保護者のところに行けって言ったのか。でも、お前だって……」

紗和子 「私の親、今日も仕事だから。元々、来てくれるはずもないからパンフも渡してないけどね」

成幸 「あっ……」 シュン 「すまん……」

紗和子 「……気にしなくていいわよ。湿っぽい話して、こちらこそごめんなさいだわ」

紗和子 「一般開場の時間までにブースを仕上げないといけないの。悪いけど、別の学校でも見ていてちょうだい」

ガチャガチャ……トン……ポン……


288以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:58:04x0BKGJhc (42/70)

成幸 「………………」


―――― 『うちの親は放任主義だし 共働きであまりいないから 一晩ぐらい問題ないわよ』


成幸 (そういえばそうだ。前、そんなことを言ってたな……)


―――― 『だって仕方ないじゃない。あの子たちには、晴れ舞台を見にきてくれる家族がいるんだから』


成幸 (あのときと同じ、寂しそうな声だった。やせ我慢してるような、声……)

成幸 (引退したくせに、部員がやるべき仕事を買って出て、ひとりで無理して……)

成幸 (まったく……)

紗和子 「……ん、これ、どう設置しようかしら。こうした方が見栄えがいいかしら」

成幸 「………………」

スッ

成幸 「こっちのほうがいいんじゃないか。この小さいのは全部、台の上に乗せようぜ」

紗和子 「へ? 唯我成幸……?」

成幸 「手伝うよ。俺は部外者だから、お前が気にする必要もないだろ」


289以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:58:40x0BKGJhc (43/70)

成幸 「それに、他校のブースも、完成してから見たいしな。それまで、暇つぶしさせてくれよ」

紗和子 「唯我成幸……」

紗和子 「し、仕方ないわね! 手伝わせてあげるわ!」 プイッ

成幸 「はいはい。感謝するよ、関城」

成幸 「これ、台の上に置いちゃっていいか?」

紗和子 「え、ええ。お願いするわ」

紗和子 「………………」

紗和子 「……唯我成幸」

成幸 「ん? なんだ?」

紗和子 「……あっ、ありがとう」

成幸 「………………」

クスッ

成幸 「……おう。どういたしまして」


290以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 22:59:11x0BKGJhc (44/70)

………………一般開場

ザワザワザワザワ…………

成幸 (ふー、なんとか開場に間に合ったな。よかったよかった)

紗和子 「……唯我成幸、はい」

成幸 「ん? 缶コーヒー?」

紗和子 「手伝ってくれたお礼よ。受け取りなさい」

成幸 「……ん、ありがとう。じゃあ、いただくな」

プシュッ……

紗和子 「……ふぅ。一仕事終えた後の缶コーヒーはたまらないわね」

成幸 「おっさんみたいなこと言うなよ」

成幸 「……俺と一緒にいていいのか? ブースの店番とかはないのか?」

紗和子 「さすがにその辺の本業は現役部員にやらせるわよ。じゃないと育たないしね」

紗和子 「私は、発表会以外は裏方に徹することに決めてるの」

成幸 「……ふーん。そっか」

成幸 (……なんだかんだ、しっかり部活や部員のこと考えてるんだよなぁ、こいつ)


291以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:00:18x0BKGJhc (45/70)

成幸 「………………」

成幸 「……なぁ、関城」

紗和子 「何かしら?」

成幸 「……ご両親のことだけどさ」

成幸 「今からでも、メッセージとか、送れないかな」

成幸 「ひょっとしたら、来られるかも、とか……」

紗和子 「………………」

紗和子 「ありえないわ、そんなの。仕事だもの。来られるはずがないわ」

紗和子 「……何を勘違いしているのか知らないけど、唯我成幸」

紗和子 「私ももう高三よ? 親が来てくれないから寂しい、なんて思ってるはずないじゃない」

成幸 「ん……そっか。ならいいんだけどさ」

  「あ、お父さんお母さん! 来てくれたの!?」

  「当然だろ~! 発表会、全部ビデオ撮っておくからな!」

紗和子 「………………」 フッ 「……でも、いいものよね、ああいうの」

紗和子 「ああいう親子の幸せそうな笑顔って、私から見ても、素敵に見えるもの」


292以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:01:07x0BKGJhc (46/70)

成幸 「関城……」

紗和子 「ふふ、ごめんなさい。なんかガラにもないこと言っちゃったわね」

紗和子 「……じゃあ、そろそろ発表会の準備があるから、私はもう行くわね」

成幸 「ああ、発表、がんばってな。緒方とふたりで見てるからな」

紗和子 「ええ。ありがとう」

トトトトト……

成幸 「………………」


―――― 『私ももう高三よ? 親が来てくれないから寂しい、なんて思ってるはずないじゃない』

―――― 『ああいう親子の幸せそうな笑顔って、私から見ても、素敵に見えるもの』


成幸 「関城……」

成幸 (寂しくないって言うなら、もっとどうでもよさそうな顔しろっての)


―――― 『当然だろ~! 発表会、全部ビデオ撮っておくからな!』


成幸 「……ビデオ、か」


293以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:02:01x0BKGJhc (47/70)

………………発表会場

理珠 「……はっ、はっ……」

トトトトト……

理珠 「まっ、間に合いました……」

成幸 「ん、緒方。ぎりぎりだな。間に合ってよかったよかった」

理珠 「すみません。配達に手間取ってしまって……」

成幸 「そろそろ関城の番だぞ。ほら、隣座れよ」

理珠 「はい。ありがとうございます」

理珠 「……あの、ところで成幸さん?」

成幸 「ん?」



理珠 「携帯電話を構えて、一体何をしているのですか?」


294以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:02:16GbDmtDdc (1/1)

来てるやん!!?!?


295以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:02:39x0BKGJhc (48/70)

………………

 『無事間に合いました! 客席に座っています。がんばってくださいね!』

紗和子 「……ふふ」 (緒方理珠、急いできてくれたみたいね)

紗和子 (大親友が応援してくれている。私は、それだけで十分だわ)


―――― 『私ももう高三よ? 親が来てくれないから寂しい、なんて思ってるはずないじゃない』


紗和子 (……そう。だから、何の問題もない。緒方理珠と唯我成幸が見にきてくれているだけで、)

紗和子 (私は大満足だわ。他に何を望む必要もない)

  『続きまして、一ノ瀬学園化学部、関城紗和子さんの発表です!』

紗和子 (……私は、私のためにきてくれたふたりのために、がんばるだけよ)

紗和子 (ふたりに恥じないような、最高の発表を見せてあげなくてはね!)


296以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:03:13x0BKGJhc (49/70)

………………発表後

紗和子 (……はぁ。さすがにちょっと緊張したわね。でも、手応えもあったし、これは賞も狙えるんじゃないかしら)

紗和子 (ふふ、楽しみだわ)

紗和子 (さて、私も観客席で後輩たちの発表でも見てあげようかしら)

紗和子 「ん……」

理珠 「あ、関城さん」 コソッ 「発表、お疲れさまでした。堂々としていて、いい発表でしたよ」

紗和子 「あっ……」 カァアアアア…… 「あ、ありがとう。緒方理珠」 コソッ

紗和子 (と、友達に……大親友に褒められるって、こんな気持ちなのね……///)

紗和子 「……あら?」

紗和子 「ねえ、唯我成幸は? 一緒じゃないの?」

理珠 「ああ、成幸さんなら、関城さんの発表が終わった瞬間、会場を飛び出していきましたよ」

紗和子 「へ……?」


―――― 『悪い、緒方。やることができたから、関城によろしく伝えてくれ!』


理珠 「……とのことです」


297以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:04:14x0BKGJhc (50/70)

紗和子 「そう……」

紗和子 (ひょっとして、唯我成幸、今日は私のために無理してきてくれていたんじゃ……)

紗和子 「唯我成幸、本当は今日、用事でもあったのかしら」

紗和子 「私が無理を言ってしまって、迷惑をかけたんじゃ……」

理珠 「あ、そうではないと思います。そもそも、今日は私と勉強する予定でしたから」

理珠 「それに、やることができた、と言っていました。元々用事があったのならそんな言い方はしないと思います」

理珠 「……だから、そんな言い方しないでください。そんな顔、しないでください」

ニコッ

理珠 「成幸さんも私も、関城さんの発表を見たいから、ここに来たんですから」

理珠 「なんといっても、私も成幸さんも、関城さんの友達、ですからね」 エッヘン

紗和子 「緒方理珠……」 クスッ 「……ごめんなさい。ありがとう」

紗和子 (……少し前まで、こんなことを言えるような子ではなかったのに)

紗和子 (唯我成幸のおかげで、こんなに変わることができたのね。この子は)


298以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:04:58x0BKGJhc (51/70)

紗和子 (……そして、きっと私も)


―――― 『手伝うよ。俺は部外者だから、お前が気にする必要もないだろ』

―――― 『それに、他校のブースも、完成してから見たいしな。それまで、暇つぶしさせてくれよ』


紗和子 (私も、唯我成幸のおかげで、きっと……)


―――― 『お前…… 楽しみにしてたんじゃないの? 今日 緒方と出かけるの……』

―――― 『あーあー 楽しみにしてたわよ 何!? 悪い!?』


紗和子 「………………」


―――― 『あーもー とにかく急いで誤魔化すぞ!! そっち持ってくれ関城!』

―――― 『あああ 愛してるわ唯我成幸ーー!!』


紗和子 (……よくよく思い返してみれば、いつも助けられてばかりね、私)

紗和子 (今度、お礼でもしないといけないわね……)


299以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:05:36x0BKGJhc (52/70)

理珠 「……? 関城さん」

紗和子 「へっ? な、何かしら、緒方理珠」

理珠 「いえ、大したことではないのですが……」

理珠 「顔が少し赤いですが、大丈夫ですか? 体調でも悪いのでは……?」

紗和子 「!?」 (顔、赤……!? そ、そんなこと……)

ピトッ

紗和子 (……熱いわ。ほっぺ)


―――― 『……なんか最近 少し頼もしくなったわね』

―――― ((ちょっとカッコイイじゃない))


紗和子 「……なんでもないわ。大丈夫よ」

理珠 「? そうですか」

紗和子 (……そう。大丈夫。だって私は……)

紗和子 (私は、この子の大親友だから……)

紗和子 (だから……――――)


300以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:06:06x0BKGJhc (53/70)

………………

成幸 「……ああ、小林。急に悪い」

成幸 「今家か? ……ん、そりゃ良かった。今から家に行ってもいいか?」

成幸 「お前、パソコン持ってたよな。ちょっと頼みたいことがあるんだ」

成幸 「……うん。わかった。詳しいことは家に行ったら話すよ。いつも悪いな」

成幸 「ああ、ありがとう。じゃあ、また」

ピッ……

成幸 「………………」


―――― 『そういうの自慢できる友達…… あなたたちしかいないじゃない……?』

―――― 『発表会に、ひとりは知ってる人に来てもらいたいじゃない?』

―――― 『ああいう親子の幸せそうな笑顔って、私から見ても、素敵に見えるもの』


成幸 (……こんなの、ただのお節介だろう。ありがた迷惑だろう)

成幸 (でも……)

成幸 (あんな寂しそうな顔してるやつ、放っておくこと、できないよな)


301以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:07:05x0BKGJhc (54/70)

………………夜 関城家

紗和子 「……ただいまー」

紗和子 (緒方理珠と勉強していたら、もうこんな時間だわ)

紗和子 (ギリギリ補導されるような時間ではないけれど、至福の時間というのは早く流れるものね)

紗和子 (でも、今日は本当は唯我成幸と勉強する予定だったらしいし、悪いことしてしまったわね)

紗和子 (……少なくとも、勉強面では役に立てたならいいのだけど)

紗和子 「ん……?」

「おかえりなさい、紗和子」

紗和子 「……お、お母さん!? お父さんも……」

紗和子 (ふたりそろって出迎えてくれるなんてめずらしい。何かあったのかしら……)

「今日は発表を見に行ってあげられなくてごめんね」

「その代わりといってはなんだが、これ、一緒に見ないか?」

紗和子 (……? どうしてお母さんとお父さんが発表会のことを知っているのかしら)

紗和子 (それに、それって……)

紗和子 「DVD……?」


302以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:07:56x0BKGJhc (55/70)

………………翌週 登校時

成幸 「………………」

ヨミヨミヨミ……

紗和子 「……唯我成幸」

成幸 「……へ? あ、関城」

紗和子 「おはよ。いくら受験が近いと言ったって、歩きながらの参考書は感心しないわよ」

成幸 「ああ、悪い。つい、な……」

紗和子 「まったく。本当にガリ勉ね」

成幸 「そんなところでどうしたんだ? 誰か待ってるのか?」

紗和子 「ええ。待っていたの。あなたをね」

成幸 「……俺を?」

紗和子 「……週末はどうもありがとう。設営の手伝いや、発表を見てくれたりして」

成幸 「あ、ああ。なんだ、そんなことか。何かやらかしたかと思ったよ」

成幸 「どういたしまして。気にしなくていいよ。片付け手伝えなくてごめんな」

紗和子 「それこそ謝られるようなことではないけどね」


303以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:08:40x0BKGJhc (56/70)

紗和子 「……それから、」

成幸 「ん?」

紗和子 「これ。あなたね? うちの両親に渡したの」

成幸 「……なんだ、それ? CDか?」

紗和子 「私の発表が録られたDVDよ。分かってるくせに、とぼけちゃって」


―――― 『紗和子の友達だって言う男の子が届けてくれたのよ』


成幸 「へ、へぇ。親切なやつがいたもんだな」

紗和子 「言っておくけど、私の男友達なんて、あなた以外いないわよ?」

成幸 「………………」

紗和子 「……ん?」

成幸 「……はぁ。悪かったよ、余計なマネして。良かれと思ってさ」

紗和子 「謝れなんて言ってないわよ。悪いとも言ってない。ただ……」

成幸 「ん?」

紗和子 「……どうしてそんなことをしてくれたのか、教えてほしいだけよ」


304以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:09:27x0BKGJhc (57/70)

成幸 「どうしてって……。言わせるのか、それを」

紗和子 「何よ。気になるから聞いてるんだから、教えなさいよ」

成幸 「っ……まぁ、いいけどさ……」

成幸 「………………」

成幸 「……――に、見えたから……」

紗和子 「……? よく聞こえないのだけど……」

成幸 「いや、だから……」 カァアアアア…… 「……お前が、寂しそうに見えたから」


―――― 『私の親、今日も仕事だから。元々、来てくれるはずもないからパンフも渡してないけどね』


紗和子 「へ……?」

成幸 「……お前がどう思ってるかなんて分からなかったから、余計なお世話だったかもしれないけど」

成幸 「お前ががんばってきたものを、お前のお父さんとお母さんにも見せてあげたいと思ったんだよ」

成幸 「化学部で三年間がんばってきたこと、ご両親が全然知らないなんて、寂しいだろ」

紗和子 「唯我成幸、あなた……」 カァアアアア…… 「は、恥ずかしい人ね。そんなこと考えてたの……」


305以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:10:22x0BKGJhc (58/70)

成幸 「悪かったな。仕方ないだろ。そうしたいと思ったんだから」

紗和子 「……まったく。あの後、家に帰ってから大変だったんだから」

成幸 「? 何かあったのか?」

紗和子 「自分が発表している姿を延々とリピートされる様を想像してみなさいよ」

紗和子 「しかも両親と一緒に、よ。気恥ずかしくて仕方なかったわ」

成幸 「……ああ、それは確かに恥ずかしそうだな」

紗和子 「それに、あなた余計なこと言ったでしょ」

成幸 「へ?」

紗和子 「『今まで寂しい思いをさせてごめんね』 って謝られたわ」

紗和子 「受験が終わったらどこかに行こうとか、欲しいものはないかとか……」

成幸 「あ、いや、俺は……すまん。お前に迷惑をかけるつもりは、本当になかったんだ……」

成幸 「家庭に口を出すつもりもなかったんだが……つい、口から……」

紗和子 「………………」 クスッ 「……冗談。迷惑とか余計とか、全然思ってないわ」

ニコッ

紗和子 「唯我成幸。私、あの日の夜、本当に嬉しかったのよ。あなたのおかげよ。だから、本当にありがとう」


306以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:11:15x0BKGJhc (59/70)

成幸 「あっ……そ、そうか。なら良かったよ」

成幸 (な、なんだろ。なんか、変な感じだ。関城って、笑うと……)

成幸 (……あんなにきれいなんだな)

ハッ

成幸 (あ、アホか俺は。友達相手に一体何を考えてるんだ)

成幸 「……関城、そろそろ行こうぜ。学校に遅れちまう」

紗和子 「……そうね。行きましょうか」

紗和子 「………………」


―――― 『……なんか最近 少し頼もしくなったわね』


紗和子 (きっと、いつもあの子はこんな気持ちなのね)

ドキドキドキドキ……

紗和子 (最近というわけじゃない。きっとずっと前から、あの子は知っていたのね)

紗和子 (唯我成幸という男子が、こういう人だって)


307以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:11:49x0BKGJhc (60/70)

紗和子 「………………」

ドキドキドキドキ……

紗和子 (静まりなさい。火照ってはダメよ。顔を赤くしては、ダメ)

紗和子 (私は緒方理珠の親友。親友の想い人に、抱いていい感情ではないから)

紗和子 (……でも、もしも)

紗和子 (唯我成幸、あなたが、緒方理珠の想い人でなかったなら……)

紗和子 「………………」

紗和子 (……バカね、私。何考えてるのかしら)

紗和子 (仮定の話なんて意味がない。あるのは、彼が親友の想い人だという事実だけ)

紗和子 (だから……――)

成幸 「――……あっ、そうだ。関城」

紗和子 「……? 何かしら」

成幸 「発表会の後まっすぐ帰ったから、言えてなかったな」

成幸 「発表、すごくよかったよ。よくあんな大勢の前で堂々と喋れるなって感心しちゃったよ」


308以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:12:37x0BKGJhc (61/70)

紗和子 「あっ……///」 ボフッ 「そ、そんなことないわよ。あれくらい、練習すれば誰だって……」

成幸 「いやいや、大したもんだよ。分かりやすかったしさ」

成幸 「一気にお前のファンになっちゃったよ……って、これはちょっと気持ち悪いか」

紗和子 「………………」 プイッ

成幸 「……? 関城? 横向いてどうした?」

紗和子 「……なんでもないわ。なんでもないから、ちょっとしばらく、向こうを向かせてちょうだい」

成幸 「? いいけど……」

紗和子 (……バカ。唯我成幸の、バカ)

カァアアアア……

紗和子 (必死でおさえてたのに、表情がニヤけちゃうじゃない。それに、顔だって……)

紗和子 (鏡を見なくても分かるわ。絶対、真っ赤になってるもの……)

紗和子 (……ああ、もう! やめなさいよ、唯我成幸)

紗和子 (あなたのこと、好きになってはいけないのに、好きになってしまうじゃない……)

おわり


309以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:13:31x0BKGJhc (62/70)

………………幕間 『成ちゃんを幸せにしてくれるなら』

陽真 「おや、あれは成ちゃんと……」

陽真 (……週末、DVDに焼いてあげた動画の女子じゃないか)

智波 「むっ……あれは関城さんだね。緒方さんと仲が良い子だよ」

智波 「……でも、唯我くんとふたりだけってめずらしいな。うーん……」

陽真 「どうしたの? 難しい顔しちゃって……」

智波 「いや、これはあくまでも私の女の勘だけど……」

陽真 「?」

智波 「うるかにライバルが増えそうだと思ってさ」

陽真 「……ああ」 クスッ 「……たしかに、そんな顔してるね。関城さん」

智波 「だよね! うるかにうかうかしてられないよって焚きつけてあげないと」

陽真 「俺は成ちゃんを幸せにしてくれるなら、誰とそういう関係になってもいいけどね」

智波 「私は断然うるかを推すよ!」 フンスフンス 「こればっかりは譲れないからね!」

陽真 (……あー、これは、DVDの話は智波ちゃんには内緒にしておいたほうがよさそうだなぁ)

おわり


310以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:33:02wLvv/LDU (1/1)

来てた!乙
今回もありがとうございます、>>1の書く関城さん好きです


311以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:46:23x0BKGJhc (63/70)

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。

次投下します。
長いです。
今までで一番長かったのが、水希さんの修学旅行中にあすみさんが押しかけ女房をする話(?)だったのですが、
その1.5倍くらいあります。長い。
三話完結くらいの長編だと思っていただければと思います。
申し訳ないことです。


【ぼく勉】 美春 「今週末、アイスショーがあるんです」


312以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:47:23x0BKGJhc (64/70)

真冬 「知ってるわ。うちの学校にもパンフレットとポスターが来ていたもの」

美春 「洽覧深識。さすが姉さまです!」

美春 「と、いうことで、関係者席のチケットを用意しました! 見に来てくれますよね、姉さま」

真冬 「ありがとう、美春。でも、予定が空いているかどうか確認しないと……」

美春 「……え?」 ブワッ 「ま、まさか、姉さま、来てくれないなんてことは……」

真冬 「………………」

真冬 「……わかったわ。行くわ。多分仕事もないでしょうから」

美春 「姉さま!」 パァアアアアアア……!!! 「とっても嬉しいです!」

真冬 「まったく……」 クスッ (……もう大学生だというのに、無邪気に笑って)

真冬 (この子には敵わないわね……)

真冬 「それにしても、さすがね、美春」

真冬 「まだエリジブルだというのに、もう本格的なアイスショーに、それも主役で出演だなんて」

美春 「いえいえ、私なんて姉さまの全盛期に比べればまだまだです」

美春 「もっともっと練習して、技術を磨かなければなりません!」


313以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:48:34x0BKGJhc (65/70)

真冬 「……まぁ、私を立ててくれるのは嬉しいけれど、あなたが言うほどすごくはなかったわよ」

美春 「そんなことはありません!」

美春 「姉さまは……それはもう、素敵な滑りをなさっていました。今でも私の目標です!」 ウットリ

真冬 「そ、そう。なら、そういうことにしておくわ……」

真冬 (困ったものだわ。子どもの頃に見た私の滑りが強く印象に残りすぎているのね)

美春 「あ、そうだ、姉さま。関係者席のチケット、もう一枚余っているのですが……」

美春 「どなたかお誘いしたい方はいらっしゃいますか?」

真冬 「ん、そうね……」


―――― 『俺は先生を幸せにしたいです』


真冬 「っ……」 (何故……! なぜ彼の顔が思い浮かぶのかしら!)

美春 「姉さま……?」

真冬 「な、なんでもないわ」 オホン 「思い当たる人はいないわ。大学のお友達にでも渡したらどうかしら?」

美春 「わかりました! では、そうします!」


314以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:49:13x0BKGJhc (66/70)

美春 「と、ところで、あの姉さま?」

真冬 「? 何かしら?」

美春 「アイスショーは競技種目ではありませんから、普段とは違う滑りを心がけるつもりです」

美春 「終わった後、姉さまから講評をいただければ嬉しいです、なんて……」

真冬 「………………」

真冬 「……私はもうスケーターではなく一介の教師だわ」

真冬 「だから、今もがんばっている現役選手のあなたの講評なんて恐れ多くてできないわ」

美春 「姉さま、でもっ……――」

真冬 「――けれど、講評はできなくとも、感想を伝えるくらいはするわ。私はあなたの姉ですもの」

美春 「へ……?」

真冬 「………………」 ニコッ 「……だから、がんばってね、美春。応援しているわ」

美春 「姉さま……」

グッ

美春 「はい! 私、全力でがんばります!!」


315以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:51:54x0BKGJhc (67/70)

………………スケートリンク 通し稽古

美春 「………………」

シャッ……シャーーーッ……シャッ!!!

美春 (私はまだ、エリジブルという立場。プロスケーターではありません)

美春 (でも、だからこそ、私の持ちうる能力のすべてで、当たらなければ!)

美春 (……けどっ!)

シャーーーーーッ!!!!

美春 (自分でも分かるくらい、調子が良いです!)

美春 (もちろん、プロの方々と比べて遜色がないとは言えないだろうけど、)

美春 (これならプロデューサーも太鼓判を押してくれるでしょうし、何より……)


―――― 真冬 『よくやったわね、美春。すごいわ』


美春 (姉さまに褒めてもらうのも、夢ではないかもしれません!!)

美春 「えへへ……えへっ……」

プロデューサー 「………………」


316以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:52:30x0BKGJhc (68/70)

………………

美春 「へ……? ぜ、全然ダメ、ですか……?」

プロデューサー 「そうよぉ、美春ちゃん。今のままじゃ、あなたに主役をさせられないわ」

美春 「で、でも、滑りも演技もかんぺきなはずです!」

美春 「どうして……」

プロデューサー 「たしかに、動作だけを取ればあなたは完ぺきよ。エリジブルとして完成されつつあるのね」

プロデューサー 「でも、あなたの滑りはただ動作のみを完ぺきにしただけ」

プロデューサー 「とても演技とは呼べない。これはアマチュアの大会ではないの」

プロデューサー 「プロの演劇のアイスショーの舞台なのよ」

美春 「……わっ、わかりました! では、今から猛特訓して演技力を身につけます!」

プロデューサー 「いえ、違うわ。あなたがしなければならないのは、演技の練習ではないわ」

美春 「へ……? それは、どういう……?」


317以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:53:25x0BKGJhc (69/70)

プロデューサー 「……時に美春ちゃん、少しセクハラめいた問いかけになってしまうのだけど、」

プロデューサー 「あなた、恋をしたことがあって?」

美春 「ふぇっ……?」 ボフッ 「な、なななな、なぜ急にでそんなことを……!?」

プロデューサー 「ああ、答えなくて結構よ。その反応で大体分かってしまったわ」

プロデューサー 「恋がなんだか知っている。でも、具体的には何一つ分からない」

プロデューサー 「なぜなら、経験がゼロだから……ってところかしら」

美春 「うぅ……///」

プロデューサー 「ああ、ごめんなさいね。あなたに恥をかかせるためにこんなことを言っているわけではないのよ」

プロデューサー 「恋を知らないあなたが、恋をして、裏切られたお姫様の表現ができて?」

美春 「そ、それは……」

プロデューサー 「と、いうことで、美春ちゃん。あなたは週末まで練習に出なくて結構よ」

美春 「……つまり、私は降板ということでしょうか」

プロデューサー 「ノンノンノン、違うわ。話は最後まで聞いてちょうだい」


318以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/04(水) 23:53:57x0BKGJhc (70/70)

プロデューサー 「ねえ、美春ちゃん。恋というものは、とてもすごいものなのよ」

美春 「……はぁ」

プロデューサー 「恋をすると、回りが見えなくなるの。相手しか見えなくなるの」

プロデューサー 「それなのに、周囲すべてが輝いて見えるわ。もちろん、恋する相手もね」

プロデューサー 「一緒にいると、ドキドキして落ち着かなくなる」

プロデューサー 「でもそれと同時に、どこか落ち着く。ずっと一緒にいたいと思う」

プロデューサー 「……そんな恋を、あなたに知ってもらいたいのよ」

美春 「えっと……、つまり、どういうことでしょうか?」

プロデューサー「……だから美春ちゃん、あなたは週末まで、やってもらいたいことがあるの」

美春 「?」

プロデューサー 「恋愛を経験してきてちょうだい!!」

グッ

プロデューサー 「それこそ、身を焦がしそうなほどのね!!」

美春 「へ……?」

美春 「へぇええええええええええ!?」


319以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:00:47PQ1Q6G.6 (1/63)

………………

美春 「………………」 トボトボトボ


―――― 『もちろん、本物の恋愛をしてこいという意味ではないわ』

―――― 『美春ちゃん、少女漫画は読んだことあるわね? なら話が早いわ』

―――― 『少女漫画でも恋愛小説でも映画でも何でもいいわ』

―――― 『週末までに、恋を題材にした作品にできるだけたくさん触れてきてちょうだい』

―――― 『本当は、実際に殿方とデートをしてみるのが一番いいのだけど、それは難しいものね』

―――― 『と、いうことで、ゲネプロまでに、しっかりと恋愛に触れてくること。いいわね』

―――― 『あなたの中には激しい情動……パッションとラブを感じるわ!! でもそれはまだ眠っているの!」

―――― 『それを呼び覚ますことができれば、あるいは……』

―――― 『週末を楽しみにしているわ!!』


美春 (……はぁ。何がパッションとラブですか。意味わからないです)

美春 (とはいえ、あの人は国内外を問わず凄まじい実績を残している辣腕プロデューサー)

美春 (そして元一流のコーチでもある。きっと言っていることは正しいのでしょう)


320以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:01:21PQ1Q6G.6 (2/63)

美春 「………………」


―――― 『本当は、実際に殿方とデートをしてみるのが一番いいのだけど、それは難しいものね』


美春 (……まるで、私には恋愛なんてできないだろ、と言わんばかりの口調でした)

美春 (いや、もちろんプロデューサーにそんな意図はないのでしょう。でも、そう感じてしまいました)

美春 「………………」

美春 (悔しい。悔しいんです。だから、ゲネプロで、目に物見せてあげます!)

美春 (そっ、そのために……)

ボフッ

美春 (と、ととと、殿方と、おデート、してみようじゃありませんか!!)

美春 「破釜沈船! 生きて帰らぬものと思えば、何だってなせます!」

美春 (……とは、勢いよく言ったものの、実際にデートをするような男性の知り合いは……)


―――― 『あ はい よろしくお願いします美春さん!』


美春 「……ひとりだけ、心当たりがいますね」


321以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:02:10PQ1Q6G.6 (3/63)

………………一ノ瀬学園

陽真 「なーりーちゃん。やっと放課後だね。帰ろー」

成幸 「おう。今日は久々にひとりで勉強できる日だからな。さっさと帰らないと……」

陽真 「うへぇ、さすが成ちゃん。帰った後も勉強か……」

陽真 「明日から連休だってのに、すごいなぁ」

成幸 「連休って、今まで貯めに貯めてた振替休日だろ。実質、受験生のために学校が用意した勉強休日だな」

陽真 「ま、俺はほどほどに勉強するよ。智波ちゃんと一緒にね」

成幸 「そうかよ。お前が幸せそうで俺は嬉しいよ」

ザワザワザワザワ…………

成幸 「ん? なんか校門の方が騒がしいな。どうかしたのかな」

陽真 「人だかりができてるね。有名人でも来てたりして」

成幸 「んなアホな……――」


美春 「――ああっ! いました、唯我成幸さん!!!」


成幸 「……へ?」


322以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:04:31PQ1Q6G.6 (4/63)

トトトトトトト……

美春 「校門前で会えるだろうと待っていた甲斐がありました! お久しぶりです、唯我成幸さん!」

成幸 「あ、えっと……どうしてここに? 美春さん」

美春 「ですから、言っているではありませんか! あなたに会いに来たんです!」

ドヨッ……!!!!

「ゆ、唯我に会いに来た……?」  「あのガリ勉に……!?」

「なぜいつもあいつなんだ!?」  「お姫様たちもそうだが、なぜ唯我ばかり!?」

美春 「そうしたら私の正体がばれてしまって、サインをせがまれて囲まれてしまって……」

美春 「でも、良かったです。こうしてあなたに無事会うことができました」

陽真 「おーう、本当に有名人がいたとはねー」

ニヤニヤ

陽真 「なになに、成ちゃん。実は年上が好きなの?」

成幸 「にやつくのはやめろ、小林。そんなんじゃねーよ」


323以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:05:22PQ1Q6G.6 (5/63)

美春 「……?」

成幸 (美春さんがなぜ俺を訪ねてきたのか、理由も何も分からないけど……)

ザワザワザワザワ…………

成幸 (このまま騒ぎが大きくなったら、きっと生徒指導部の先生が来る)

成幸 (そうしたら、俺だけじゃなくて、美春さんも怒られかねない)

成幸 「美春さん! 美春さんは俺に用があって学校に来たんですよね?」

美春 「? 明明白白。その通りですが……?」

成幸 「なら……」

ギュッ

美春 「!? ふぇっ!? ゆ、唯我成幸さん!?」

美春 (て、手を……!? 殿方に手を握られてしまいました!!)

成幸 「悪い、小林! 先帰っててくれ。また来週!」

タタタタタタ……

陽真 「……はぁ。まったく」 クスッ 「相変わらず、面白いことに巻き込まれるなぁ、成ちゃんは」


324以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:05:55PQ1Q6G.6 (6/63)

………………路地裏

成幸 「……はぁ……はぁ」

成幸 (ここまで来れば大丈夫かな。野次馬たちも追いかけてきてはなさそうだ)

美春 「あっ……あの、唯我成幸さん……///」

成幸 「? はい?」

美春 「そ、そろそろ、その……手を、放していただけると……///」

成幸 「あっ……」

バッ

成幸 「ご、ごめんなさい! あのままじゃ騒ぎが大きくなると思ったので、つい手を……」

美春 「いえ……」

ドキドキドキドキ……

美春 (と、殿方に手を引かれて走るなんて、初めてです……)

美春 (少女漫画のようなことをしてしまいました……///)

成幸 「……あ、あの、今日は一体、俺にどんな用があったんですか?」

美春 「は、はい、実はですね……かくかくしかじかで……」


325以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:06:35PQ1Q6G.6 (7/63)

………………

成幸 「なるほど。そんなことが……」

美春 「悔しかったので、なんとか殿方と……でっ、デートを、と思いまして」

成幸 「……それは分かりましたけど、その……」 カァアアアア…… 「な、なんで俺なんですか?」

美春 「……お恥ずかしながら、男性の知り合いというと、あなた以外思い浮かばなかったので」 ズーーーン

成幸 「ああ……」 (美春さん、男の人苦手みたいだもんなぁ……)

成幸 (こんなきれいな人とデートだなんて、なんか気後れしちゃうけど……)

成幸 (向こうは年上の女子大生。俺のことなんか弟程度とも思ってないだろうし……)


―――― 『悔しかったので、なんとか殿方と……でっ、デートを、と思いまして』


成幸 (それで俺を頼ってくるってことは、よっぽど悔しかったんだろうな……)

美春 「厚かましいお願いなのは分かっています。でも、あなた以外に頼める人がいないんです」

美春 「どうか……どうか、お願いします! 私のデートの相手になってください!」

美春 「何でもしますから!!」

成幸 「ぶっ……!!」


326以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:07:13PQ1Q6G.6 (8/63)

美春 「? どうかされましたか、唯我成幸さん」

成幸 「い、いえ。美春さんは桐須先生とよく似ているな、と思いまして……」


―――― 『なんでもするから 私をひとりにしないで』


成幸 (姉妹そろって、なんというか、警戒心が強いように見えて、その実無防備だよなぁ……)

成幸 (……まあ、困ってるみたいだし)

成幸 「わかりました。いいですよ。役に立てるか分かりませんが、俺でよければ相手になります」

成幸 「以前、ファミレスでもお世話になりましたしね」

美春 「!? ほ、本当ですか!?」

成幸 「はい。本当に、お役に立てるかは分かりませんけど……」

美春 「あ、ありがとうございます! 助かります! あなたは私の恩人です!」

成幸 「恩人って、そんな大げさな……」

成幸 (まぁ、今日の勉強時間がなくなってしまうのは痛いが、仕方ないよな。困ったときはお互い様だ)

成幸 (明日からの休日を使って勉強すれば――)

美春 「――では、これが今日から週末までのデートプランになります! 目を通しておいてくださいね!」


327以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:08:34PQ1Q6G.6 (9/63)

ドサッ

成幸 「へ……? こ、この広辞苑もビックリな分厚さの冊子が、デートプラン……?」

成幸 「い、いや、というか、空耳ですかね? “今日から週末まで” ……?」

美春 「はい? どうかしましたか、唯我成幸さん」

ニコッ

美春 「今日から週末まで、毎日、デートの相手役をやってくれるんですよね?」

成幸 「へ!? ま、毎日ですか!?」

美春 「はい、一ノ瀬学園は明日から休日ですよね。ですから、明日からは朝から夕方までお願いします!」

成幸 (下調べバッチリ!?) 「い、いやいやいや! さ、さすがにそれは……」

美春 「……首鼠両端。おやおやおや?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

美春 「さっき、引き受けてくれると言ってくれたと思うのですが、」

美春 「……まさか、前言撤回するなんて、言うわけじゃありませんよね?」

成幸 「えっ、いや、えっと、その……」


328以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:09:55PQ1Q6G.6 (10/63)

成幸 (ああ、そうだ……)


―――― 『それはそれ これはこれ 何を帰ろうとしているんですか まだ勉強は終わっていませんよ』

―――― 『有言実行 約束の24時間にはまだあと16時間残っています』

―――― 『言ったでしょう 美春は完璧主義で融通が利かないと』


成幸 (この人は、こういう人だった……)

成幸 (うぅ……仕方ないよな。俺が相手役を引き受ける前に、ちゃんと確認しなかったのが悪い……)

成幸 「……毎日、やらせてもらいます」

美春 「えへへ♪ ありがとうございます、唯我成幸さんっ」

美春 「もちろん、デート後に勉強時間は取りますし、しっかり私が教えますから、安心してくださいね」

成幸 「本当ですか!? それは助かります! ありがとうございます!」

成幸 (以前教えてもらったとき、時間はともかくとしてすごく分かりやすかったから、それは純粋にありがたいぞ)


329以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:10:50PQ1Q6G.6 (11/63)

美春 「………………」

美春 (姉さまの恋人である唯我成幸さんにこんなことをお願いするのは、ややインモラルかもしれませんが、)

美春 (そもそも、教師と生徒がそういう関係を持っている時点でインモラルですし……)

美春 (それに、私はまだ、姉さまと唯我成幸さんの関係を認めたわけではありませんし!)


―――― 『でも姉さま 少し声が明るくなりました 美春はそれが一番嬉しいです!』


美春 (……まぁ、もちろん、あのときのことは感謝していますけど)

美春 (姉さまが教師を続けると決めたのなら、それこそ教師を続けられなくなるような事態だけは回避しなければ)

美春 (懲戒解雇。教え子との恋愛だなんて、職場や保護者にバレれば、即刻クビになってしまいます!)

美春 (今回はあくまで、私のアイスショーの演技力向上のための練習ですが、)

美春 (けれど、それと同時に、私の溢れる色香で今度こそあなたを虜にしてみせます)

美春 (そして、姉さまの平穏な教員生活のために、姉さまを諦めさせてみせますよ、唯我成幸さん!!)

美春 「……では、参りましょうか。今日はもう夕方ですから、近場からです!」

美春 「私を “ゲームセンター” という場所に、連れて行ってください!」

成幸 「ゲームセンター……?」


330以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:11:34PQ1Q6G.6 (12/63)

………………ゲームセンター

ザワザワザワザワザワザワ……

美春 「喧々囂々。随分と想像しい場所ですね……」

成幸 「色々なゲームの音とかも騒がしいですからね。人も多いですし」

美春 「少女漫画ではそんな描写はなかったから分かりませんでした……」

成幸 「少女漫画?」

美春 「い、いえ、なんでもありません」

成幸 「? ところで、ゲームセンターでしてみたいことがあるんですよね?」

美春 「へ? えっと……」

美春 「そのあたりは、よく分からないのであなたにお任せできたら、と……」

成幸 「えっ? いや、でも、俺もゲーセンなんか滅多に来ないから分からないですよ」

美春 「!? 普通の高校生は毎日ゲームセンターで遊んでいるのでは!?」

成幸 「どういうイメージですかそれ……」


331以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:12:16PQ1Q6G.6 (13/63)

成幸 「そういえば、前にお姉さんと一緒にゲームセンターに来たときは、」

美春 「!?」 (姉さまとゲームセンターデート!?)

成幸 「一緒にクレーンゲームをやりましたね」

美春 「………………」

成幸 「……? 美春さん?」

美春 「やりましょう」

成幸 「へ?」

美春 「それをやりましょう、唯我成幸さん」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

美春 (姉さまと一緒にやったことなら、それを上書きしてさしあげます!)

成幸 「じゃあ、いくつかありますから見てみましょうか」

美春 「はい!」


332以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:12:54PQ1Q6G.6 (14/63)

………………クレーンゲーム

美春 「はぁ~~~~……」 パァアアアアアア……!!!

美春 (か、かわいい! かわいいものがいっぱいです!!)

美春 (ゲームセンターなんて不良が行くところだと思い込んでいましたが……)

美春 (こんなにかわいいものがたくさんあるなんて……!!)

美春 「あっ! これがいいです! このくまさんのぬいぐるみストラップがほしいです!!」

成幸 「はい、じゃあ百円玉を入れて、やってみましょうか」

美春 「はいっ」 ワクワクワクワク……

チャリン……

美春 「次はどうしたらいいですか!?」 キラキラキラ……!!!!

成幸 「ええと、そのボタンを押すとアームが横に移動して、次は……」

ズイッ

美春 「!?」 (ち、近い! 近いです唯我成幸さん!!)

美春 (で、でも、姉さまとの思い出を上書きするには、これくらいのことは……)

カチッ……カチッ……


333以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:13:40PQ1Q6G.6 (15/63)

ウィーーーン……

美春 「あっ……」 (間違えて押してしまったら、アームが動き始めてしまいました)

成幸 「あ……」

ムンズ……ポイッ……

成幸 「す、すごい!! 一発で取れちゃいましたよ!」

美春 「100円でストラップが手に入ってしまいました……! やりました!」 ピョンピョン!!!!

成幸 (はは、飛び跳ねて喜んじゃって。こういうところ、妹だけあって桐須先生とそっくりだな)

成幸 「さすが美春さんですね。先生がやったときはなかなか取れなくて、結構お金を使ってましたよ」

成幸 「最終的に一緒に押してくれなんて言って、それでやっと取れたんですから」

美春 「!?」 (一緒に!? 共同作業!? どれだけラブラブですか!!)

美春 (一発で取れてしまっては、姉さまとの思い出を全然上書きできてないですね……)

美春 「も……もう一回! もう一回やります!!」

グイッ

成幸 「わっ……」 アセアセ 「み、美春さん!?」

成幸 (何で急に腕を組まれたんだ!?)


334以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:14:14PQ1Q6G.6 (16/63)

美春 「もうひとつ手に入れます! そうしたら、それをあなたに差し上げます!」

チャリン……

成幸 「あ、は、はい……」

美春 「……なので、今度は一緒にやってください」

ズイッ

成幸 (ちっ、近い! 顔が、すぐ近くに……!)

フラッ……カチッ、カチッ……

成幸 「あっ……」 (ふらついた拍子に、ボタンを押してしまった……)

ムンズ……ポイッ……

成幸&美春 「「あっ……」」


335以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:14:44PQ1Q6G.6 (17/63)

成幸 「……取れちゃいましたね」

美春 「……取れてしまいましたね」 ズーーーン (姉さまとの思い出を上書きする必要があるのに……)

美春 「……これ、さしあげます。どうぞ」

成幸 「あ、ありがとうございます」 クスッ 「色違いですけど、おそろいですね」

美春 「お、おそろい……?」

カァアアアア……

美春 (な、なんて蠱惑的な響きでしょうか。おそろいだなんて……)

美春 「………………」

美春 (おそろい、ですか……)

美春 (えへへ……)

ハッ

美春 「!?」 (わ、私は一体、何を考えて……!?)

成幸 「美春さん? 次はどうしましょうか?」

美春 「ふぇっ!? あ、そ、そうですね! では、次の場所に向かいましょう! 次は流行りの喫茶店です!」


336以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:15:21PQ1Q6G.6 (18/63)

………………喫茶店

成幸 「すごい偶然ですけど、ここも以前先生と一緒に来たことがあるんですよ」

美春 「!?」

成幸 「そのとき、先生が間違えてこのカップル専用の飲み物を頼んでしまって大変でした」

美春 「!?」 (さ、さすがは姉さま! 唯我成幸さんの誘惑に余念がないですね……!!)

美春 (でも、負けません!!)

店員 「ご注文お決まりでしょうか?」

成幸 「あ、では、この一番安いコーヒーを……――」

美春 「――あ、あの! 私たちは恋人同士なので!」

美春 「このカップル専用のドリンクをいただきます!!」

成幸 「!?」

美春 「それから、このカップル専用ハート型パンケーキもいただきます!!」

成幸 「美春さん!?」


337以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:15:57PQ1Q6G.6 (19/63)

………………

成幸 「うおう……」

バーーーーーーン!!!

成幸 (す、すごい。飲み物は相変わらずだけど、パンケーキの迫力もすごい……)

美春 「………………」

ドキドキドキドキ……

美春 (わ、私は今、すごくはしたないことをしている気がします……!)

美春 (今から、このストローで、ふたり同時にこのドリンクを……)

美春 「………………」

カァアアアア……

美春 (寡廉鮮恥!! 世の恋人たちはなんてはしたないのでしょう!!)

美春 (でも……こ、これも、恋する少女の気持ちを知るため……)

美春 (そして、唯我成幸さんと姉さまを引き離すため……)

美春 「で、では行きますよ、唯我成幸さん!」

成幸 「!? 本当に一緒に飲むんですか!?」


338以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:16:49PQ1Q6G.6 (20/63)

美春 「……はむっ」

美春 「………………」 ジーーーーッ

成幸 (ストロー咥えたままめっちゃ見てくる。これは、早くしろということだろうな……)

成幸 (うぅー……)

成幸 (ええい、ままよ!)

ハムッ

美春 「!?」 (こ、これは予想以上に、近いです……!)

美春 (と、殿方のお顔がこんなに近くにあるなんて……)

成幸 (うぅ……)

美春 (はうっ……)

………………


339以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:17:27PQ1Q6G.6 (21/63)

………………

美春 「………………」

カァアアアア……

美春 (も、もうお嫁に行けません。ジュースを通して、唯我成幸さんの口と繋がってしまいました……)

美春 (これが俗に言う “間接キス” というものなのですね……) ※ちがいます。

成幸 「うぅ……///」 プシューーーー

美春 (でも、まだ姉さまに並んだにすぎません! 次は……)

美春 「さあ、では唯我成幸さん、次はパンケーキですよ!」

成幸 「そ、そうですね! これは普通に半分こして食べればいいですもんね……」

美春 「ええ! では、行きます!」 ズイッ

美春 「さあ、食べてください! あーん!」

成幸 「!? 自分で食べればよくないですか!?」

美春 「ダメです! ほら、メニューにも!」

 『カップルで食べさせ合うのにぴったりのホットなパンケーキです♪』

成幸 「その煽り文句真に受ける必要あります!?」


340以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:18:06PQ1Q6G.6 (22/63)

美春 「ほら、食べてください!」

ズイズイッ

成幸 「わ、わかりました……」

ハムッ……

美春 「……!?」 (またまた少女漫画みたいなことをしてしまいました……!)

美春 (でも、まだです……)

美春 「おっ、美味しいですか、唯我成幸さん」

成幸 「は、はい……///」

美春 「で、では……次は、私に、食べさせてください」

成幸 「!? 俺もやるんですか!?」

美春 「至極当然! やってください!」

成幸 「わ、わかりました……」

成幸 「えっと、あの……」 カァアアアア…… 「あーん……」

美春 「……あ、あーん」 ハムッ


341以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:18:44PQ1Q6G.6 (23/63)

………………

成幸 (け、結局全部食べさせあいっこで食べたぞ……)

ドキドキドキドキ……

成幸 (大変だった……)

美春 (はうぅ……)

ドキドキドキドキ……

美春 (なんてことをしてしまったのでしょう。結婚相手でもない殿方と、とんでもないことを……)

美春 (姉さまはこんなことを毎日やっているのですか。さすが姉さまです……)


342以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:19:16PQ1Q6G.6 (24/63)

成幸 「……美春さん、次はどこに行きますか?」

美春 「次は、えっと……」

美春 「……ショッピングの予定ですね。まだ時間は大丈夫ですか?」

成幸 「はい。さっき遅くなると家に連絡はしたので、大丈夫です」

成幸 「そういえば、服も先生と一緒に見ましたよ」

成幸 「先生は本当にジャージ大好きですよね。また新しいジャージを見てましたよ」 クスッ

美春 「!?」 (ね、姉さま……! あらゆるところに唯我成幸さんを連れて行っているのですね……!)

美春 (望むところです! 姉さまのため、絶対に姉さまに負けませんから……!)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (すごい、やる気満々だ。スケートについて、少しの妥協もしたくないんだな……)

成幸 (美春さんがこんなにがんばってるんだ。俺も、恥ずかしがってる場合じゃない!)

成幸 (勉強も教えてくれると言ってくれているんだ。なら、その分程度はしっかりがんばらないとな!)

成幸 「じゃあいきましょう! 美春さん!」

美春 「はい!」


343以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:19:54PQ1Q6G.6 (25/63)

………………服屋

美春 「お洋服屋さんについては事前にしっかりと下調べをしておきました!」

美春 「このお店は安くてデザインもいいと評判でした……って、どうかされました、唯我成幸さん?」

成幸 「……あ、いや、えっと」

成幸 (な、何でよりによってこのお店なんだ!? 俺のバイト先じゃないか……)

店長 「いらっしゃいませー……って、ナリユキ君じゃないか。オフなのに来てくれるとは嬉しいねえ」

成幸 「あっ、店長。いらっしゃったんですね……」

店長 「そりゃ、あたしの店だからねぇ……ん?」

美春 「……? お店の方とお知り合いなのですか、唯我成幸さん?」

店長 「……おやおや、おやおやおやおや?」 ニヤァアアア

店長 「……まったく君も、隅に置けないねえ、ナリユキ君」

成幸 「店長が何を考えてるか分かりませんけど、それ絶対違いますからね」

店長 「彼女に服でも買ってあげるのかい? このこのー。しかもすごい美人さんじゃないかー」

店長 「ひょっとして年上好きかー? ませてるねー」

成幸 「いや、だからそういうのじゃないんですって!」


344以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:20:47PQ1Q6G.6 (26/63)

美春 「その通りです、店長さん。私と唯我成幸さんはそういう関係ではありません」

成幸 (美春さん! そうだ! 言ってやってください!)

美春 「私が頼み込んで無理にデートをしてもらっているので、服を買って頂くなんて、道義的に許されません!」

成幸 「……美春さん!?」

店長 「へぇ……?」

美春 「今日のデート代だって、全部私が持つつもりです!」

美春 「唯我成幸さんにお金を出していただくつもりはこれっぽっちもありません!」

店長 「へ、へぇ~……///」 カァアアアア…… 「も、モテるんだね、ナリユキ君。お姉さん尊敬しちゃうよ……」

店長 「でも、あんまり健全な関係とは言えないかな。一応花枝さんに報告しておくべきか……」

成幸 「絶対やめてください! 誤解です誤解!」

店長 「……ん? あれ、そういえば彼女さん、どこかで見たことあるような……?」

成幸 「!?」 (まずい、正体がばれたらまた騒ぎになる……!)

客 「あの、すみません。この服のサイズなんですけど……」

店長 「あっ、はーい! ただいま!」

店長 「じゃ、ナリユキ君、またバイトよろしくね。彼女さんも、あんまりナリユキ君甘やかしちゃダメだよ!」 タタタタタ……


345以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:22:23PQ1Q6G.6 (27/63)

成幸 「……はぁ」 ガクッ (どっとつかれた……)

美春 「……はうっ」 ポッ

成幸 「美春さん? どうかされました?」

美春 「彼女扱いされてしまいました……///」

成幸 「今そこですか……」

美春 (私が、この方の、彼女……)

美春 (今の私は、唯我成幸さんの彼女に、見えているということ……――)

成幸 「――美春さん?」

美春 「ひゃいっ!?」 ビクッ

成幸 「服、見ないんですか?」

美春 「み、見ます! もちろん見ますとも!」

美春 (意味不明。理解不能。私はなぜ……)

美春 (それを、“嬉しい” などと思っているのですか……)


346以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:23:25PQ1Q6G.6 (28/63)

………………ボウリング店

美春 「次はボウリングです! 初めてなのでやり方を教えてください」

成幸 「はい……って言っても、俺もそんなに詳しくないですけど、こうして……こうです」

美春 「ふむふむ……」

スッ……パッカーーン!!!

成幸 「おお! さすが美春さん。早速ストライクだ……」

美春 「なるほど。あのピンをたくさん倒せばいいわけですね」

成幸 「さすがですね。先生も毎回ストライクを出していましたよ。300点取ってたかな」

美春 「……ほう。なるほど。そうですか。やはりここにも姉さまと来たことがある、と……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「へ……?」

美春 「分かりました。それなら、私も300点を取らなければならないようですね……」

美春 (そして、今度こそ姉さまとの思い出を上書きしてみせます!)


347以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:24:16PQ1Q6G.6 (29/63)

………………

美春 「今日はすみませんでした。すっかり遅くなってしまって……」

成幸 「い、いえ……」

成幸 (300点出すまで帰らないって意地になってたからな。さすが完璧主義者……)

成幸 (もうすっかり真夜中だ……)

成幸 「ところで、少しはお役に立てました? 俺」

美春 「へっ? そ、それは……」


―――― 『色違いですけど、おそろいですね』

―――― 『あーん……』

―――― 『彼女に服でも買ってあげるのかい?』


美春 「はうっ……」 ドキドキドキドキ……

成幸 「あはは、まぁ、俺なんかじゃなかなかうまくいかないですよね」

美春 「い、いえ、そんなことは!!」

成幸 「気を遣わなくていいですよ。明日はもっとお役に立てるようにがんばりますね!」


348以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:25:17PQ1Q6G.6 (30/63)

成幸 「それじゃ、美春さん。明日は駅前に集合ですよね。また明日」

美春 「あ……唯我成幸さん! まだ勉強を見ていないですが……」

成幸 「ああ、もう遅いですし、明日に響いてもよくないですから、今日はいいですよ」

成幸 「また明日、教えてください」

美春 「わ、わかりました! 明日、絶対教えますから!」

美春 「あと、あの、その……」

成幸 「?」

美春 「明日も……楽しみに、していますから」

成幸 「あっ……」

カァアアアア……

成幸 「……はい。俺も、楽しみです」

美春 「では、また明日、唯我成幸さん」

成幸 「はい、また明日。美春さん」


349以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:26:17PQ1Q6G.6 (31/63)

………………夜 唯我家

成幸 「………………」

成幸 (うーん、うまくデートの相手ができなかった気がするぞ……)

成幸 (デートの相手役って、どういう風にすればいいんだ……?)

成幸 (こういうとき、頼りになりそうなのは……)

成幸 (まぁ、ひとりしかいないよな)

ピッ……prrrr……

 『もしもし? 成幸くん? こんな時間にどうしたの?』

成幸 「ああ、古橋。悪いな。夜中に電話して」

文乃 『べつに、これくらいの時間だったらいいけど。勉強中だったし……』

成幸 「実は、お前に相談したいことがあってさ。例によって、お前にしか相談できないようなことなんだけど……』

文乃 『へ、へぇ。わたしにしか話せないようなこと、ね』

文乃 『しっ、仕方ないなぁ』 ニヘラ 『弟の相談に乗るのも、姉の役目だからね。もちろん、聞いてあげるよ』

成幸 「ああ、いつもありがとな、文乃姉ちゃん」


350以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:26:55PQ1Q6G.6 (32/63)

………………古橋家

文乃 (まったく、成幸くんは仕方ないなぁ……)

文乃 (わたししか頼れる相手がいないんだね。まったくもう、本当に……)

ニヤァアアア

文乃 (しっ……仕方、ないんだから……///)

文乃 「で? 相談ってどっちのこと? りっちゃん? うるかちゃん?」

成幸 『へ? 緒方とうるか? いや、あいつらは関係ないけど……』

文乃 「へ?」

文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「へぇ。へぇ。なるほど? で、相談って何?」

成幸 『な、なんだ? 急に声が怖くなった気がするんだけど……』

文乃 「そんなことないよ。いいから早く話しなよ、唯我くん」

成幸 『そ、そうか? ならいいけど……』

成幸 『えっと、相談っていうのが……ちょっと恥ずかしいんだけど……』



成幸 『デートって、どんな風にしたらいいんだ?』


351以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:27:43PQ1Q6G.6 (33/63)

文乃 「………………」

文乃 「……は?」 メキョッ

成幸 『……? なんか、今、何かが軋むような音がしたんだけど……』

文乃 「気のせいだよ。何もないよ。携帯電話が応力でひずんだりしてないよ」

文乃 (……デートを、どんな風にしたらいいか、だって?)

文乃 「……あの、唯我くん、まさかとは思うけど、明日からの勉強休みに、誰かとデートするのかな?」

成幸 『へ? ああー……まぁ、うん。成り行きでそうなっちゃってさ』

文乃 「へぇ……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 「で、その相手はりっちゃんでもうるかちゃんでもない、と?」

成幸 『何でその二人の名前が出てくるんだ? 違うに決まってるだろ』

文乃 「なるほどなるほど」

文乃 (……この男、今度は成り行きでフラグを……) ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!


352以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:28:48PQ1Q6G.6 (34/63)

成幸 『古橋師匠なら知ってるだろ? デートの作法というか、なんというか……』

文乃 「知らない」

成幸 『へ? あ、いや、えっと……』

成幸 『俺、そういうの全然分からないからさ。教えてほしいんだけど……――』

文乃 「――知らない」

成幸 『そ、そう言わず、教えてもらえると……」

文乃 「……だから、知らないんだってば」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 「成幸くんのことなんて、もう知らないって言ってるの」

成幸 『へ? ふ、古橋……――」

――プツッ……

文乃 「……ふんだ。成幸くんのことなんか、もう知らない」

文乃 「人が色々がんばってあげてるのも知らないで、またどこかの誰かとフラグ立てて……」

文乃 (……わたしはべつに、彼がどこの誰と一緒にいようと、知らないけど)

文乃 (べつに、わたしには関係ないことだけど、さ……)


353以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:29:20PQ1Q6G.6 (35/63)

文乃 「………………」


―――― 『実は、お前に相談したいことがあってさ。例によって、お前にしか相談できないようなことなんだけど……』


文乃 (……成幸くん、困ってるんだろうな)

文乃 (急に怒って電話切ったりして、悪いことしちゃったかな)

文乃 「………………」

文乃 (……わたしはもちろん、りっちゃんとうるかちゃんの友達で、ふたりを応援してあげたい)

文乃 (だから、成幸くんのどこの誰とも知らない相手とのデートを応援してあげることは、できない)

文乃 (でも……)

文乃 (同時に、わたしは唯我くんの友達で、成幸くんの……お姉ちゃん、だもんね)

文乃 (困ってる成幸くんを助けてあげるくらいは、いいよね)

文乃 (……仕方ないなぁ) ハァ (少しだけ。少しだけだからね、成幸くん)

ピッ……ピッ、ピッピッ……


354以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:29:59PQ1Q6G.6 (36/63)

………………

成幸 「………………」 ズーーン (……何か知らんが古橋を怒らせてしまった)

成幸 (きっと俺がまた失言をしたんだろうな。うぅ、古橋に申し訳ない)

成幸 (とりあえず、メッセージで謝っておかないと……――)

…………ピロリン♪

成幸 「ん……? 古橋から?」

 『さっきは急に電話を切ってごめんなさい。ちょっとびっくりしちゃってさ』

 『お詫び、というわけではないけど、男子高校生必見のデート指南サイトをいくつか送ります』

 『よく目を通して、デート、がんばってね』

成幸 「………………」 ブワッ (師匠……!!)

成幸 (なるほど! さっき古橋が少し怒っていたのは、何でもかんでもまず自分を頼るなということか!)

成幸 (まずは自分で色々なものを読んで、その上でがんばれということだな!)

成幸 (さすがは師匠だ! 答えをすぐ教えず、俺に考えるチャンスをくれたんだな!)

成幸 「……よし、明日のデート、がんばるぞ!」

水希 「!?」 (い、今お兄ちゃんからデートって言葉が聞こえた!?)


355以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:35:17PQ1Q6G.6 (37/63)

………………東景女子大学 学生寮

美春 「………………」

美春 「……えへへ。かわいいストラップを手に入れてしまいました」

美春 「唯我成幸さんと、おそろいの、くまさんのストラップ……」

カァアアアア……

美春 「……あ、あれ? 何ででしょう。顔が熱いですね」

美春 (……明日は、遊園地デート)


―――― 『明日も……楽しみに、していますから』

―――― 『……はい。俺も、楽しみです』


美春 「っ……」 ボフッ (ち、違います。私はただ、遊園地が楽しみなだけです)

美春 (唯我成幸さんだって、きっと話を合わせてくれただけです)

美春 (……でも、) クスッ

美春 「本当に楽しみですね。遊園地デート」

おわり


356以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:35:55PQ1Q6G.6 (38/63)

………………幕間 「デート」

水希 「お兄ちゃんがデート……」

水希 「デート……」

水希 「………………」

ポン!!

水希 「……よしっ! 明日は学校サボって尾行ね!!」

葉月 「和樹」 スッ

和樹 「ほいさ」 スッ

おわり


357以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 00:37:49PQ1Q6G.6 (39/63)

>>1です。
すみません。眠気が相当なので寝ます。
ちょうど半分くらいです。
明日後半を投下します。明後日かもしれませんが。

あともういくつか書き上げてある話があるので、それも一緒に投下できたらと思います。


358以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 07:26:14Ll8ZvOCE (1/1)

おつ!


359以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 19:38:56jG0I.A.w (1/1)

おつんこ
やっぱり妹が最かわなんだよ!!


360以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:00:3135jgZeyU (1/1)

怒涛の更新で歓喜だわ


361以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:38:59PQ1Q6G.6 (40/63)

>>1です。
続きから投下します。


362以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:39:33PQ1Q6G.6 (41/63)

………………翌日 駅前

美春 「………………」 ドキドキドキドキ……


―――― 『……はい。俺も、楽しみです』


美春 「うぅ……///」

美春 (私は何をしているのでしょう……)

美春 (アイスショーの演技力を高めるため、そして姉さまの安寧な生活のため、がんばると決めたのに……)

美春 (これから唯我成幸さんと会うと考えるだけで、どこか浮ついた気持ちになります……)

美春 「………………」

グッ

美春 (こんなことではいけません! 私は、アイスショーのため、そして姉さまの未来のため、がんばると決めたのです!)

美春 (こんなことでは……――)


成幸 「――あっ、美春さん。もう来てたんですね」


美春 「……!?」 ズザザザザッ!!!!


363以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:40:26PQ1Q6G.6 (42/63)

成幸 「お待たせしてごめんなさい……って、」

成幸 「……なぜ、受け身を?」

美春 「なっ、なんでもありません。リンクで転倒したときの受け身の練習をしていただけです」

成幸 (往来でスケートリンクの受け身が取れるとは思えないけど……)

成幸 「……えっと、美春さん。かなり早いですね。まだ集合時間の三十分前ですけど」

成幸 (古橋の教えてくれたサイトで勉強して、三十分前には待っていようとがんばったのに……)

美春 「え、ええ。偶然、家を早く出てしまいまして。でも、ついさっき来たところですから」

美春 (……本当は、寮にいると落ち着かなくて、早く出過ぎてしまっただけですけど)

成幸 「………………」

美春 「………………」

ドキドキドキドキ……

美春 (うぅ、さっき決意を新たにしたばかりだというのに、また浮ついた気持ちに……)

成幸 (な、なんだろう。美春さん、昨日とまた少し違う格好で、すごく……)

成幸 (きっ、綺麗だな……)


364以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:41:26PQ1Q6G.6 (43/63)

成幸 「………………」


―――― 『女心鉄則! 「お出かけ時は必ず服を褒めるべし!!!」』


成幸 (よ、よし。今こそ師匠の今までの教えをフルに活用するとき……!!)

成幸 「み、美春さん!」

美春 「は、はい!」 ビクッ

成幸 「えっと……」

カァアアアア……

成幸 「き、昨日も、すごく素敵でしたけど……今日も、その……」

成幸 「……今日も、その、すごくきれいで、素敵です」

美春 「………………」

成幸 「………………」

成幸 (……し、しまったぁああああああ!! これは外したやつか!? ダメなやつだったか!?)

成幸 (セクハラで訴えられるやつか!?)


365以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:41:59PQ1Q6G.6 (44/63)

美春 「………………」

ボフッ

美春 「ひゃっ、ひゃい……あ、ありがとう、ございます、です……///」

美春 (ひゃあああああ……と、殿方に褒められてしまいました!!)


―――― 成幸 『昨日も素敵でしたけど、今日もきれいで素敵だよ、美春さん』(※誇張あり)


美春 (ひゃああああああああああああ……!!!)

成幸 (よ、よかったぁあああああああ……。セーフみたいだ……)

美春 (きれい……きれい、ですか……)

美春 (えへへ……)

成幸 (で、でもなんか、恥ずかしいな、これ……)

成幸 「……ん?」

成幸 「あ、そのぬいぐるみのストラップ……」

美春 「へ……? ああ、これですか? 可愛かったので早速カバンにつけてしまいしまいました」

美春 「ちょっと子供っぽいですかね……」


366以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:42:41PQ1Q6G.6 (45/63)

成幸 「あ、いや、全然いいと思います。すごく自然ですし……」

成幸 「えっと……その、一応、恋人役なので、その……俺も、」

スッ

成幸 「ちょっと恥ずかしかったけど、昨日いただいたストラップ、つけて来ちゃいました」

成幸 「……お、おそろい、ですね」

美春 「へっ……///」 カァアアアア…… 「そ、そうですか。それは、その、なんというか……」

美春 「……あっ、ありがとう、ございます……?///」 (な、何故お礼を言っているのですか私は……)

成幸 「あ、いや、全然、そんな……こちらこそ、ありがとうございます……?///」

通行人 (……初々しいバカップル)

通行人 (なにあのカップルめっちゃかわいい……)

通行人 (無自覚純情バカップル……)

男の子 「ママー、カップルー」

お母さん 「こら、指さしちゃダメよ」

成幸&美春 「「っ……///」」


367以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:44:06PQ1Q6G.6 (46/63)

………………遊園地入り口

成幸 「そういえば、今日の予定は遊園地でしたね……」 ゴクリ

美春 「? なぜそんなに緊張しているんです?」

成幸 「いや、うちは貧乏なので、あまりこういう場所に来たことがないので……」

成幸 「あの、入園料とかすごく高いですよね。さすがに俺も少しは……」

美春 「結構です。私が頼み込んで、無理を言って来てもらっているんですから」

成幸 「でも……」

美春 「でもも何もありません。そもそも、年下の男子にお金を出させるなんて、女がすたるというものです」

成幸 「……わかりました。じゃあ、チケット、いただきます。ありがとうございます」

美春 (だから、私が頼んで来てもらっているのだから、お礼を言う必要もないというのに……)

美春 (まったく、融通の利かない子ですね。そういうトコロ、きらいではないですが……)

美春 「………………」 ハッ (き、きらいでないだけで、好きというわけではありませんからね!?)

美春 (……って、私は一体誰に言い訳しているのでしょうか? は、恥ずかしい……)

成幸 「……?」 (美春さん、なんかあたふたして、どうかしたのかな……?)


368以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:44:49PQ1Q6G.6 (47/63)

………………

成幸 「美春さん、何か乗りたいものとかありますか?」

美春 「えっと……」 カァアアアア…… 「実は私も、恥ずかしながら、あまりこういったところに来たことがなくて……」

成幸 「ああ、そうなんですね。そういえば先生も同じようなこと言ってたしなぁ」

成幸 「じゃあ、俺と同じですね。パンフレットを見ながら、行きたい場所を探してみましょうか」

バサッ……

美春 「色々なところがありますね……うーん……」

成幸 (ふふ、悩んでるなぁ、美春さん。アスリートだから、ジェットコースターとか好きそうだけど……)

美春 「……ああっ!」

成幸 「気になるところがありました?」

美春 「ここ! ここに行きたいです!」 ビシッ

成幸 「……? “キャラクターたちと遊ぼう! ファンシーエリア” ……?」


369以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:46:37PQ1Q6G.6 (48/63)

………………

美春 「きゃああああああああああああ!!!」 キラキラキラキラ……!!!

美春 「かわいいモフモフがたくさんいますよ、唯我成幸さん!!!」 ブンブンブン

成幸 「あ、はい。大丈夫です。俺にも見えてますから。揺らさなくていいですよ」

美春 「ぎゃんカワです!! これがぎゃんカワというものなのですね唯我成幸さん!!」 ブンブンブン

成幸 「あ、はい。その言葉は知らないですけどたぶんそうです」

成幸 (揺すられすぎてアトラクションに乗ってもいないのに酔いそうだ……) ウップ

美春 「えっ、一緒に写真を撮っていいんですか!?」 キラキラキラ……!!!!

美春 「唯我成幸さん! キャラクターさんたちと写真を撮りたいので、撮影をお願いしてもいいですか?」

成幸 「あ、はい。わかりました」

美春 「だ、抱きついてもいいですか? ……わっ、もふもふです」

成幸 (キャラクターに囲まれて、子どもみたいにはしゃいじゃってまぁ……)

クスッ

成幸 「じゃあ撮りますよ。はい、チーズ」

パシャッ


370以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:48:56PQ1Q6G.6 (49/63)

………………

美春 「………………」

カァアアアア……

美春 「す、すみません。はしゃいでしまって……」

成幸 「いえいえ、楽しかったなら何よりじゃないですか」

成幸 「写真、たくさん撮ったから送りますね」

美春 「うぅ……。こんな無防備に笑って、はしたないです……」

成幸 「そんなことないですよ。どれも良い笑顔だと思いますよ」

成幸 (……ん、そういえば古橋師匠の教えてくれたサイトに、こんなときのアドバイスもあったな)

成幸 (こういうときは、たしか……)

成幸 「……えっと、その……どの写真も、とっても可愛くて、綺麗です」

美春 「ふぇっ……」 ボフッ 「しょ、しょう、でしゅか……///」 プシューーー

成幸 「あっ……」 (しまったな。やっぱり俺に言われても嬉しくないよな。そっぽ向いちゃった……)

美春 (と、とととと、殿方に、可愛いなどと言われてしまいました。うぅ……///)


371以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:49:48PQ1Q6G.6 (50/63)

成幸 (……でも、どの写真も、本当に楽しそうだ)

成幸 (アイスショーのこととか抜きにしても、普通に楽しんでくれているなら、何よりかな)

成幸 「……美春さんは可愛いものがお好きなんですね」

美春 「へ……? え、ええ。昔、犬を飼っていたことがあって。そのときからずっと、モフモフは好きです」

成幸 (……ああ。例の逃げ出してしまったというワンちゃんか)

美春 「こうやってキャラクターに囲まれて写真を撮るなんて初めてで、興奮してしまいました」


―――― 『……全てにおいてフィギュア第一だったから』

―――― 『あんな風に 学校帰りに寄り道して談笑した記憶もほぼないわね』


成幸 (……先生は、友達と一緒に遊んだり、そういったことはほとんどしたことがないと言ってたけど)

成幸 (やっぱり、美春さんもそうなんだろうな……)

成幸 「………………」

成幸 (……よし、それなら!) グッ (アイスショーの助けになるのは元より!!)

成幸 (できるだけ、今みたいに美春さんに楽しんでもらえるように、がんばるぞー!)


372以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:50:33PQ1Q6G.6 (51/63)

成幸 「美春さん、次はどこに……って、あれ? 美春さん?」

美春 「………………」 ジーーーーッ

成幸 (いつの間にか売店にいる……。忙しない人だなぁ……)

美春 「ふわぁあああ……」 キラキラキラ……!!!!

成幸 「美春さん? 何を見てるんですか?」

美春 「あ、すみません。ちょっと、ぬいぐるみを……」

美春 「このぬいぐるみ、昔飼ってた犬にそっくりでかわいくて……」

成幸 「ああ、さっき言ってた子ですね」 (なんか、俺がよく着させられる着ぐるみにも似てるな……)

美春 「………………」 キラキラキラ……!!!!

ハッ

美春 「い、いけません。またぬいぐるみを増やしたら、母さまに怒られてしまいます!」

美春 「実家に置きっぱなしの子たちもいるんだから、我慢しないと……」

美春 「……では、次に行きましょう、唯我成幸さん。次はジェットコースターに乗りたいです!」

成幸 「? いいんですか? もっと見ていっても……」


373以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:51:16PQ1Q6G.6 (52/63)

美春 「いいんです。もう大学生なのだから、子どもっぽい趣味も大概にしないといけませんし」

美春 「姉さまみたいな立派な女性になるには、大人にならないといけませんから」

成幸 (言うほどあの人は立派な女性だろうか……。いや、言うとまた怒られそうだからやめておこう)

成幸 (でも……)

美春 「……はぁ、でも本当にかわいいですね」 シューン

成幸 「あ……すみません、ちょっとお手洗いに行って来ます。待っててください」

美春 「? わかりました」

成幸 「………………」

トトトトト……

成幸 (……チケットも何もかも奢ってもらって、悪い気持ちもあるし)

成幸 (少しくらい、いいよな……)


―――― 『いいんです。もう大学生なのだから、子どもっぽい趣味も大概にしないといけませんし』


成幸 「………………」

成幸 (……あんな寂しそうな顔、してほしくないしな)


374以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:52:36PQ1Q6G.6 (53/63)

………………ジェットコースター搭乗後

美春 「ふふっ、楽しかったですね、唯我成幸さん! 加速感がたまりません!」

成幸 「うっぷ……うぅ、そ、そうですね……」 フラフラフラ

成幸 (事前に美春さんに揺すられていたのも相まって、滅茶苦茶酔ってしまった……)

成幸 (加速感とか言っちゃうあたり、この人はやっぱり桐須先生の妹だな……)

美春 「もう一回乗りましょう、唯我成幸さん!」

成幸 「か、勘弁してください……」

………………コーヒーカップ

美春 「ふふふ、回転軸が自分にない回転は新鮮です!!」 グルグルグルグルグル!!!!

成幸 「うぷっ……ち、ちょっと、美春さん、回しすぎ……」

成幸 「っていうかよく酔いませんね……」

美春 「鍛えてますから! これくらいの回転数なら首を回さなくても酔いません!」

美春 「もっと速く回せませんかね、これ!」

成幸 「か、勘弁してください……うぷっ……」


375以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:53:10PQ1Q6G.6 (54/63)

………………

成幸 「………………」 グタッ……

美春 「唯我成幸さん、大丈夫ですか?」

成幸 「すみません……。少し、休ませてもらえると……」

美春 「もちろんです! ゆっくり休んでください!」

シューーーン

美春 「……すみません。私のせいですね」

美春 「楽しくて、ついハメを外しすぎてしまいました……」

成幸 「あ、いや、全然、美春さんのせいじゃないですよ……うぷっ……」

美春 「ああっ、やっぱりつらそうです。何か飲み物でも買ってきますね!」 ピューン!!!!

成幸 「おかまいなく……って、もう行っちゃったか」

成幸 (うぅ、情けない。がんばるって決めたのに、もうダウンしてしまった……)

成幸 (美春さん、せっかくすごく楽しそうだったのに……――)

  「――……えぐっ、ぐすっ……」  「お母さん、どこー……えぐっ……」

成幸 「ん……?」


376以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:53:49PQ1Q6G.6 (55/63)

………………

美春 「………………」

ハァ

美春 (私としたことが、後先考えず、唯我成幸さんに迷惑をかけてしまいました)

美春 (年上の女として、色香を振りまいて誘惑するつもりが、何をしているのでしょうか、私は)

美春 (……きっと、唯我成幸さんも呆れているでしょうね)

美春 (これ以上の醜態を晒す前に、今日は早々と勉強タイムにした方がいいでしょうか……)

美春 「……ん?」

成幸 「そうかそうか。お母さんとはぐれちゃったのかー」

みな 「えぐっ……ぐずっ……」 コクコクコク かな 「ぐすっ……」 コクコクコク

成幸 「怖かったなー。でも大丈夫だぞー。お兄ちゃんと一緒に迷子センターに行こうな」 ナデナデ

かな 「ぐすっ……ん……」 ギュッ みな 「……うん」 ギュッ

美春 「……? 唯我成幸さん、その子たちは?」

成幸 「ああ、美春さん。どうも迷子みたいです。お母さんとはぐれてしまったみたいで……」

美春 「迷子さんですか。おやおや、それは困りましたね……」


377以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:54:28PQ1Q6G.6 (56/63)

成幸 「……すみません。あの、恋人役をやっている最中で、恐縮なのですが」

成幸 「この子たちを迷子センターに届けてもいいでしょうか」

美春 「当然です! 小さな子供の庇護は何をおいても優先されるべきです!」

美春 「お嬢さんたち、この桐須美春が来たからにはもう安心ですよ!」

かな&みな 「「………………」」

スススススッ……

成幸 「あっ……」 (俺の後に隠れてしまった……)

美春 「なっ……」 ガーーーーン

美春 「………………」

美春 「……では、行きましょうか、唯我成幸さん。お嬢さん方」 ズーーーン

成幸 (迷子に振られて少し暗くなってしまった。分かりやすい人だ……)


378以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:55:22PQ1Q6G.6 (57/63)

………………迷子センター

成幸 「放送もしてもらいましたし、じきにお母さんも来るでしょう」

成幸 「あとは係員さんに任せて大丈夫だと思います。すみません、お時間を取らせました」

成幸 「遊園地デートの続きに戻りましょう」

美春 「……いえ、まだ無理だと思いますよ」

成幸 「へ?」 ギュッギュッ 「あっ……」

かな&みな 「「………………」」 ジーーーーーーッ

成幸 (俺の服の裾を掴んで離しそうにない。目線は無言で何かを訴えている……)

成幸 「……あー、えっと、その、美春さん。大変申し上げにくいのですが……」

美春 「皆まで言う必要はありません。先ほども申し上げた通り、子供の庇護が最優先です」

美春 「唯我成幸さんがいた方がその子たちの精神が安定するのなら、一緒にいてあげてください」

成幸 「あ、何なら美春さんだけ遊園地を回っていていただいても……」

美春 「は? 私に一人で遊園地ではしゃぎ回る浮かれた成人女になれと?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「……すみません。一緒にいていただけると、すごく頼もしいので一緒にいてください」


379以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:55:53PQ1Q6G.6 (58/63)

………………

美春 (……とは言ったものの)

かな 「おにいちゃん、まえにどこかであったことある?」

成幸 「え? ……んー、そういえば、見たことがあるような……」

みな 「かな、おにいちゃんなんぱしちゃだめよ」

かな 「なんぱじゃないよぉ。ほんとにどこかであったことあるのー」

美春 (ふたりとも随分と落ち着いて来たようですね。いいことではありますが……)

みな 「かな、むこうのおねえちゃんがしっとしちゃうわ」

美春 (……随分とませたことを言うものですね)

美春 (まぁ、私のことは少し怖いようですし、このまま少し離れたところにいれば……――)

かな 「……? あ、くまちゃん!」

美春 「……?」 (こっちを見て、一体何を……)

美春 (……ん、ひょっとして、昨日ゲームセンターで取ったこのぬいぐるみのストラップですか)

かな 「くまちゃん……」 キラキラキラ……!!!!


380以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:56:55PQ1Q6G.6 (59/63)

美春 「………………」

美春 『や、やぁ。ぼくはくまきち! こんにちは!』

成幸 「!?」

かな&みな 「「……!」」 パァアアアアアア……!!!

かな 「おねえちゃん、くまちゃんしゃべったよ!」

みな 「そうね、かな。かわいいわね」

美春 (口元に当てて喋っただけですが、想像以上に喜んでくれている……)

美春 (す、少し嬉しいですね……)

成幸 「………………」 クスッ (美春さん、嬉しそうだな。じゃあ……)

成幸 「ふたりとも、くまきちくんを呼んだら、きっとこっちに来てくれるよ?」

かな&みな 「「!!」」

かな 「くまきちー! おいでー!」

美春 「あっ……」

美春 『い、いま行くよー!』

トトトトト……


381以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:57:35PQ1Q6G.6 (60/63)

………………

成幸 『こ、こんにちは! わたしはくまこ!』

かな 「くまこちゃん! こんにちは!」

みな 「くまこちゃんはおんなのこなのね!」

成幸 (気づいたら成り行きで俺までごっこ遊びに巻き込まれていた……)

成幸 (でも懐かしいな。昔、よく水希、葉月、和樹にせがまれてごっこ遊びをしたなぁ)

みな 「くまこちゃんとくまきちくんはどんなかんけいなの?」 ワクワク

成幸 「えっ、関係……?」 (なんでこの子たちはこんなにませているんだろう……)

成幸 『えっと、わたしとくまきちくんは、仲良しのお友達よ』

美春 『そう、ぼくたちは仲良しのお友達!』

みな 「ほんとに~? そんなこといって、ないしょでおつきあいしてたりしない?」

美春 「な、内緒でお付き合いって……」 (本当におませな子たちですね……)

かな 「ちゅーするかな。ちゅーするかな」 ワクワク

みな 「きっとするわよ、かな」 ワクワク

成幸 (本当におませだな!)


382以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:58:08PQ1Q6G.6 (61/63)

………………

かな 『くまこちゃん。ただいまー』

みな 『くまきちくん、おかえりなさい』

かな 『ただいまのちゅー……』

みな 『もうっ、くまきちくんったら……ちゅっ』

美春 (っ……私と唯我成幸さんの、おそろいのストラップが、キスを……///)

成幸 (気づけばストラップも取られてしまいましたね) コソッ

美春 (!?) ビクッ (そ、そうですね! でも楽しそうに遊んでいるようで何よりです) コソッ

成幸 (? 元気に遊んでる間にお母さんが来てくれるといいんですが……――)

「――かなー! みなー!」 バーーーン!!

かな 「! おかあさん!」

みな 「おかあさーん!」

ギュッギュッ

お母さん 「ふたりとも、遅くなってごめんね! 無事で良かった……!」


383以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:58:55PQ1Q6G.6 (62/63)

………………

お母さん 「本当に、なんとお礼を申し上げていいか……」

成幸 「気にしないでください。一緒に遊んでいただけですから」

かな 「おにいちゃん、おねえちゃん、ありがとー!」

みな 「くまきちくんとくまこちゃんも、ありがとね」

かな 「くまきち……くまこ……」

みな 「ほら、かな。おにいちゃんとおねえちゃんにかえしてあげないと」

かな 「うん……」

美春 「………………」

クスッ

美春 「くまきちもくまこも、ふたりと一緒に行きたいって言ってますよ」

かな 「へ……?」

美春 「だから、もしよければ連れて行ってあげてくれませんか?」

みな 「……いいの?」

美春 「はいっ! ふたりとも、かなちゃんとみなちゃんと遊ぶのが楽しかったみたいですから!」


384以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/05(木) 23:59:44PQ1Q6G.6 (63/63)

………………

成幸 「ふー。やっと解放されましたね。ませた子たちでしたね」

美春 「………………」

成幸 「……美春さん? どうかしました?」

美春 「すみません、唯我成幸さん。あなたのストラップまであげてしまいました」

成幸 「へ?」

美春 「あれは、私があなたに差し上げたものなのに、勝手をしました。ごめんなさい」

成幸 「い、いやいや! 謝らないでください。あの子たち喜んでたじゃないですか」

成幸 「俺は気にしてないですから、大丈夫ですよ」

美春 「……はい」


―――― 『……お、おそろい、ですね』


美春 (……せっかく、おそろいだったのに)

美春 「……ん?」

美春 (“せっかく” ……?)


385以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:00:19ho235Jjg (1/42)

美春 「………………」

ハッ

美春 (わ、私は、何を考えているのでしょう……/// こ、これではまるで……)

美春 (私が、唯我成幸さんとおそろいの物がなくなったことを残念がっているようではありませんか……///)

成幸 「………………」

成幸 「……あ、あの、美春さん」

美春 「!? ひ、ひゃい!? な、なんでしょうか、唯我成幸さん!」

成幸 「えっと……その、ストラップの代わりというわけではないのですが……」

成幸 「こ、これを……」

スッ

美春 「へ……? この遊園地の包装紙……? これは何ですか?」

成幸 「さっき買ったんです。あの……お気に召すか分からないですけど、開けてみてください」

美春 「は、はい……」

ガサゴソガサガサ……

美春 「あっ……」


386以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:00:56ho235Jjg (2/42)

美春 「……ふぁぁあああああああああああああ!!」 パァアアアアアア……!!!


―――― 『このぬいぐるみ、昔飼ってた犬にそっくりでかわいくて……』


美春 「さ、さっきのペロ似のぬいぐるみ! なんで……?」

成幸 「さっきトイレに行くフリをして、こっそり買ってたんです」

美春 「そ、そうではなくて! どうして買ったのかを聞いているんです」

成幸 「いや、それは、だって……」


―――― 『いいんです。もう大学生なのだから、子どもっぽい趣味も大概にしないといけませんし』


成幸 「……美春さんに、あんな顔、してほしくなかったので」

美春 「へ……?」

カァアアアア……

美春 「は、はうっ……///」

美春 「……えっと、あの……その……」 ギュッ

美春 「あ、ありがとうございますっ! すごく嬉しいです……」


387以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:02:07ho235Jjg (3/42)

成幸 「あっ……///」 カァアアアア…… 「そ、それなら良かったです」

美春 「……あ、あの、大切にします。大切に……///」

成幸 「は、はい……///」

美春 (……摩訶不思議。少し寂しい気持ちだったのがウソのようです)

美春 (今は、とても満ち足りた気持ちです……) ドキドキドキドキ……

成幸 「……? 美春さん?」

美春 (落ち着いているのに、胸は高鳴っている……)


―――― 『恋をすると、回りが見えなくなるの。相手しか見えなくなるの』

―――― 『それなのに、周囲すべてが輝いて見えるわ。もちろん、恋する相手もね』

―――― 『一緒にいると、ドキドキして落ち着かなくなる』

―――― 『でもそれと同時に、どこか落ち着く。ずっと一緒にいたいと思う』

―――― 『……そんな恋を、あなたに知ってもらいたいのよ』


美春 (……私は) ドキドキドキ

美春 (ああ、そうか。私は、この人のことを……) ドキドキドキドキ……


388以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:02:45ho235Jjg (4/42)

成幸 (……? 美春さん、急にボーッとしちゃったけど、どうしたんだろ)

美春 「………………」

美春 「……何かをつかめた気がします」

成幸 「へ?」

美春 「感謝します、唯我成幸さん。そして、ごめんなさい」

美春 「この感覚を忘れないうちに、練習に戻りたいんです。なので……」

成幸 「………………」 ニコッ 「何か分かったんですね! すごいじゃないですか!」

成幸 「俺のことは気にせず、練習に戻ってください!」

美春 「あっ……ありがとうございます!」

美春 「すみません。勝手を言って、勝手に振り回して……ご迷惑をおかけしました」

美春 「結局勉強も見て差し上げられませんでした。本当にごめんなさい」

美春 「この埋め合わせは必ずします! それでは、また!」

トトトトト……

成幸 「あっ……」 グッ 「が、がんばってくださいねー! 応援してますからー!」

美春 「はいっ! がんばりますー!」


389以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:03:17ho235Jjg (5/42)

………………スケートリンク

プロデューサー 「………………」

プロデューサー (……さて、美春ちゃんは今ごろ何をやっているかしらね)

プロデューサー (まじめなあの子のことだから、古今東西あらゆるラブストーリーを観ているかしら)

プロデューサー (それとも、本当の恋愛に挑戦していたりして……)

クスッ

プロデューサー (……なんて、まさかそんなことは……――)

――――バーーーーン!!

プロデューサー 「!? み、美春ちゃん!?」

美春 「………………」 ゼェゼェゼェ……

プロデューサー 「そ、そんなに息を切らしてどうしたの!? ゲネプロは三日後よ?」

美春 「わっ……わかり、そうなんです……」

プロデューサー 「へ……?」

美春 「わかり、かけているんです。恋心、というものが、きっと……」


390以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:04:19ho235Jjg (6/42)

美春 「その人と一緒にいるとドキドキして、でもどこか心地よくて……」

カァアアアア……

美春 「だから……」 キッ 「私を練習に戻してください! 私が、この気持ちに慣れてしまう前に!」

プロデューサー 「………………」

美春 「………………」

プロデューサー 「……わかったわ。美春ちゃん。何かをつかめたようね」

プロデューサー 「練習に戻る事を許可します。早速着替えてらっしゃい」

美春 「は……はい!」 パァアアアアアア……!!!

トトトトト……

プロデューサー 「……驚いた。二日で随分と変わったものだわ」

ドキドキドキドキ……

プロデューサー 「この私がドキドキさせられてしまうなんて、相当ね……」

プロデューサー (……さすがだわ、桐須美春。まったく、将来有望ね)

プロデューサー (それにしても……) クスッ

プロデューサー (一体どこの素敵な殿方かしら。あの美春ちゃんに、あんな顔をさせるなんて)


391以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:05:00ho235Jjg (7/42)

………………週末

成幸 「………………」

カリカリカリ……

成幸 「……ふぅ。少し休憩しようかな。だいぶ進んだし」


―――― 『へ……? こ、この広辞苑もビックリな分厚さの冊子が、デートプラン……?』


成幸 (……結局、あれから美春さんから連絡はない)

成幸 (きっと、俺とのデートで何かが掴めたんだろう。今も練習しているに違いない)

成幸 (それは純粋に嬉しいし、俺も役に立てたなら少し、誇らしい気持ちもある)

成幸 (でも、不思議だ。本当だったら今日もあの人とデートをしていたと思うと……)

クスッ

成幸 (……少し、寂しい、なんて思ってしまうのだから)

成幸 (まだ、冊子の半分も終わってなかったんだけどな……――)

――――ピンポーーン

成幸 「……? 誰だろ?」


392以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:05:33ho235Jjg (8/42)

ガラッ……

美春 「あっ……」

成幸 「へ……? 美春さん?」

美春 「ど、どうも、唯我成幸さん。こんにちは」

成幸 「こんにちは。一体どうしたんですか? 俺の家、よく分かりましたね」

美春 「姉さまに教えてもらったんです。生徒の個人情報だからと渋られましたが……」

成幸 「あ、お茶でもいれますよ。どうぞ上がってください。今は家族も誰もいませんし」

美春 「!? い、いえ! すぐに練習に戻らないといけないので、結構です!」

美春 (とっ、殿方一人のお宅にお邪魔するなんて、さすがにできません!)

美春 「あの、今日はこれをお渡しするためだけに来たんです」

成幸 「……? 何です、これ? チケット?」

美春 「は、はい。明日、私が出演するアイスショーのチケットです」

美春 「も……もしよろしければですが! 観に来ていただけませんか……?」

成幸 「えっ……あっ、えっと……」

成幸 「……わ、わかりました。わりがとうございます。観に行きます。絶対」


393以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:06:08ho235Jjg (9/42)

美春 「は、はい! ありがとうございます! 嬉しいです!」

成幸 「う、嬉しいって、そんな、大げさな……」

美春 「……いえ、嬉しいです。本当に」 クスッ 「正真正銘。本当の本当ですからね」

成幸 「は、はい……」

美春 「……すみません。関係者席のチケットがなくなってしまったので、一般席ですが」

成幸 「いえいえ! チケットがもらえるだけで嬉しいです!」

美春 「………………」

成幸 「………………」

美春 「……では、そろそろ、私は練習に戻ります」

成幸 「あ、はい! わざわざ来ていただいて、ありがとうございました」

美春 「いえいえ、お勉強の邪魔をしてしまいましたね。それでは、また」

成幸 「……は、はい。また……」

成幸 「………………」

成幸 「……あっ、あのっ」

美春 「……? 何でしょうか?」


394以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:06:43ho235Jjg (10/42)

成幸 「……この前のデート、とても楽しかったです」

美春 「えっ……」 ドキッ

成幸 「だ、だから、その……」

カァアアアア……

成幸 「じ、自家撞着、です。まだあのデートプランの半分も終わってないですよ」


―――― 『では、これが今日から週末までのデートプランになります! 目を通しておいてくださいね!』


成幸 「み、美春さん的にも、一度自分が言った事を曲げるのは、納得いかないんじゃないですか?」

美春 「えっ……ええと……」 ドキドキドキドキ……

成幸 「だから、その……俺は、楽しかったので、もし美春さんさえよければ……」

成幸 「……また今度、あのデートの続きをしませんか? 俺の受験が終わった頃にでも」

美春 「ふぁっ……」 カァアアアア…… 「そっ、そそそ、そう、ですね……」

美春 「一度言った事を曲げるのは、やっぱり、だ、ダメですよね……」

成幸 「も、もちろんそのときは、ちゃんとバイトしてお金を貯めておきますから!」

美春 「………………」 クスッ 「……ふふ。なんですか、それ。そんなこと気にしていませんよ」


395以下、名無しが深夜にお送りします2019/09/06(金) 00:07:56ho235Jjg (11/42)

美春 「………………」

成幸 「………………」

美春 「……では、そろそろ失礼しますね」

成幸 「はい。引き留めてしまってすみません。練習、がんばってくださいね」

成幸 「アイスショー、楽しみにしていますから!」

美春 「ありがとうございます。がんばりますっ!」


―――― 『その人と一緒にいるとドキドキして、でもどこか心地よくて……』

―――― 『私を練習に戻してください! 私が、この気持ちに慣れてしまう前に!』


美春 (プロデューサーにあんな啖呵を切ってしまいましたけど、杞憂でした……)

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

美春 (な、慣れるはずありません。ますますドキドキが大きくなった気がします……)


―――― 『……また今度、あのデートの続きをしませんか?』


美春 「っ……///」