1以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:40:059xbPbDTk (1/272)

ラブライブ!SS

これはホラーゲーム「影廊 -Shadow Corridor-」のパロディSSです。


ゲームは有料版と無料版があります。

リンクは貼りません。興味のある方は各自で検索してください。


ゲームに関する過度なネタバレはなるべく避けるようにします。


それでもネタバレが気になる場合はお戻りください。


また、SS内では設定の一部改変があります。



この物語はフィクションです。


2以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:41:099xbPbDTk (2/272)

善子「ある夏の日の夕暮れ時」

善子「私とルビィはなぜかある路地が気になりふと足を止めた」

善子「夕立の後の蒸し暑い湿気の中、奥からは冷たい風が吹き抜けてきていた」

善子「そしてルビィは吸い込まれるように、この薄暗いさびれた路地に入って行ってしまった」

善子「私も後を追う形でその路地へと入って行った」

善子「それがこのあと起こる悪夢のはじまりだった……」


3以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:41:459xbPbDTk (3/272)

─路地─

善子「どうしたのよルビィ」

ルビィ「うん、この路地がすごく気になって入ってきちゃった」


さびれた住宅街にある細い道だ

路地は薄暗く建物の合間を縫って夕日が差し込んでいた

エアコンの室外機から生暖かい風が吹いている


4以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:42:259xbPbDTk (4/272)

善子「早く帰るわよルビィ」

ルビィ「善子ちゃん、ちょっと奥まで探検して行かない?」

善子「ヨハネよ」

ルビィ「善子ちゃんもついてきて」

善子「ちょっとルビィ、危ないわよ」


5以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:43:099xbPbDTk (5/272)

ルビィ「こういうところってわくわくするよね」

善子「懐かしい感じ……ノスタルジックっていうのかしら」

ルビィ「静かだね」

善子「ええ」

ルビィ「奥にトンネルがあるよ」


6以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:44:149xbPbDTk (6/272)

薄暗い路地の先には細長く狭いトンネルがあった

奥にある住宅街につながっているのだろう


善子「なぜか明かりがないわね」

善子「真っ暗でよく見えないわ」

ルビィ「うゆ、りゅびぃライター持ってるよ」

ルビィ「このまえ花丸ちゃんがくれたの」

ルビィ「火をつけるね」ボッ


7以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:44:509xbPbDTk (7/272)

善子「これで明るくなったわね」

善子「ルビィ、火の扱いには気をつけるのよ」

ルビィ「うん」

善子「さすがに奥までは照らせないわね」

善子「手元や足元が見える程度ね」

ルビィ「奥まで見に行こう」

善子「危ないわよ」


8以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:45:219xbPbDTk (8/272)

コツン……コツン……

善子「足音が反響してちょっと怖いわね」

ルビィ「うん……」

善子「このトンネル、レンガでできてるのかしら」

ルビィ「……」


9以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:45:519xbPbDTk (9/272)

シャン……


善子「何、今の音!?」

ルビィ「鈴の音かな?」

善子「鈴っていっても小さい鈴って感じじゃないわね」

善子「たくさん鈴がついていて……そう神楽鈴って感じかしら」


10以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:46:329xbPbDTk (10/272)

ルビィ「あれ?」

善子「どうしたの?」

ルビィ「行き止まりだ」

善子「本当ね……でもおかしいわね」


善子「さっきまでこんな柵なかったわよ」


11以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:47:179xbPbDTk (11/272)

ルビィ「なんでだろう」

善子「なにかおかしいわね……ルビィ、戻りましょう!」

ルビィ「うん……それなんだけどね……」


ルビィ「後ろが……」

善子「え……」


12以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:48:049xbPbDTk (12/272)

善子「出口が……」


善子「さっきと違う……」


ルビィ「怖いよ……善子ちゃん」

善子「とにかく行き止まりである以上、後ろに戻って外に出てみるしかないわね」


13以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:48:499xbPbDTk (13/272)

トンネルから出ると先ほどの住宅街はなく、そこには古びた神社があった

まわりを高い崖に囲まれており、あたりには彼岸花が赤く咲いている


善子「なんでさっきと違うのよ……」

ルビィ「うぅ……善子ちゃん……」


14以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:49:229xbPbDTk (14/272)

<ギィィィ…………


目の前でひとりでに神社の扉が開いた


善子「なんで開いたのよ……」

ルビィ「うぅ……」グスン


15以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:50:029xbPbDTk (15/272)

善子「戻る方法はない……」

善子「こうなったら行くしかないわね……」

ルビィ「うん……」


赤い鳥居をくぐり神社の中へと入っていく


16以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:50:409xbPbDTk (16/272)

中には台座のようなものの上に鏡が置かれていた


善子「鏡だけしかないわね」

善子「ほかには何もないわ」

ルビィ「うん」

ルビィ「ちょっと見てみるね……」


すると突然、鏡が光り出し景色が変わった……


17以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:51:149xbPbDTk (17/272)

善子「どこよ、ここ……」

ルビィ「もしかしてルビィたち……ワープしちゃったの?」


そこは先ほどまでの路地でも神社でもなく古びた回廊であった

その暗闇の回廊はどこまでも続いていた


18以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:51:549xbPbDTk (18/272)

善子「なんかここヤバイわよ……」

ルビィ「善子ちゃん……怖いよ」

善子「ここから出なきゃ……何か危険よ……」

ルビィ「でもどうやって……」

善子「分からないわ……とにかくここから先へ進まなきゃダメみたいね」


19以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:52:299xbPbDTk (19/272)

─影廊─

善子「真っ暗で何も見えないわね」

善子「ルビィ、ライターで明かりをつけて」

ルビィ「うん」ボッ

善子「これで少しは見えるわね」

ルビィ「本当に真っ暗だよ……」


20以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:53:039xbPbDTk (20/272)

サッ……サッ……

善子「畳を歩く音すらもなんだか怖いわね……」

ルビィ「うん……」

善子「襖があるわね、開けるわよ」


サァァ…………

善子「音を聞くだけで怖いわ」

ルビィ「はぁ……はぁ……怖い……」

善子「あっちは木でできた廊下ね」

善子「壁は土壁かしら」


21以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:53:449xbPbDTk (21/272)

ドタドタドタドタ……


善子「ちょっと待って? 何か足音が聞こえない?」

ルビィ「うん……」

善子「人がいるのかしら……それにしては足音が多いような」

ルビィ「善子ちゃん……何か変だよ」


22以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:54:209xbPbDTk (22/272)

ドタドタドタドタドタドタ

善子「ちょっと待って!? この足音、近づいてきてない!?」

ルビィ「怖いよぉ!!」

善子「隠れるわよ!!」

ルビィ「どこに!?」


23以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:55:009xbPbDTk (23/272)

あたりを見ると行李(竹で編まれたカゴ、つづら箱)があった


善子「あの中よ!!」

ルビィ「二人も入るかな」

善子「あんた小さいから大丈夫よ!!」

ルビィ「善子ちゃんと2センチしか身長変わらないよ!」


24以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:55:439xbPbDTk (24/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ


善子「もう隠れるしかないわ!」

善子「ライターの火を消して中に入るわよ!」

ルビィ「うん」


二人は行李の中に隠れた


25以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:56:249xbPbDTk (25/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ


善子(すごく大きな足音ね)

ルビィ(何か呟きながら走ってるね)

善子(息をひそめて通り過ぎるのを待ちましょう)

ルビィ(竹でできたカゴだから外の様子が網目から見えるね)


26以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:57:069xbPbDTk (26/272)

ルビィ(ちょっと何が走ってるか見てみるね)

善子(嫌な予感がするわ)


網目から外を見てみると

能面をつけ、手や足がいくつも生えている化け物が猛スピードで走りまわっていた


27以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:57:439xbPbDTk (27/272)

ルビィ「ぴ、ぴぎゃぁあぁぁああ、んんんんっっ……」

善子(バカっ!! そんな大きな声出したら見つかるでしょ!!)


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ


28以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:58:159xbPbDTk (28/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ


善子(はあ……はあ……)

ルビィ「はあ……はあ……」


ドタドタドタドタドタドタ…………


29以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:58:579xbPbDTk (29/272)

善子「通りすぎたわね……」

ルビィ「はあ……はあ……おぇぇぇぇぇぇぇ」

善子「ルビィ!! しっかりして!!」

ルビィ「怖いよ……なにあの化け物」

善子「分からないわ……」


30以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 10:59:359xbPbDTk (30/272)

善子「もしあの化け物に見つかったら……殺されるかもしれないわ」

善子「なんとなくだけど、そんな気がするわ」

ルビィ「うぇぇぇぇんん……怖いよぉぉ」

ルビィ「おねぇちゃぁ……」グスン

善子「泣かないでよルビィ……」


31以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:00:119xbPbDTk (31/272)

善子(そうは言っても私も恐怖と緊張で吐くところだったわ)

善子(でも、そんなことしたらルビィがもっとパニックになっちゃう……)

善子(我慢しなきゃ……ルビィを守らないと……)


ルビィ「ハア……ハア……」


32以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:00:519xbPbDTk (32/272)

善子「そうだ! 携帯で誰かに連絡を……」


善子「ダメね……圏外だわ……」

ルビィ「ルビィのもだよ……」


33以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:01:279xbPbDTk (33/272)

ルビィ「あ、気が付かなかったけど花丸ちゃんから連絡が来てる」

善子「私たちがここに入る前に送ってきたやつね」

ルビィ「そうみたいだね」


34以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:02:069xbPbDTk (34/272)

善子「それでなんて書いてあるの?」

ルビィ「うん、読んでみるね」


花丸:ルビィちゃん!善子ちゃん! そこに入っちゃダメだよ!!


善子「路地のこと? それともトンネルのことかしら?」

善子「ごめん、入っちゃったわ」

ルビィ「もっと早く気づいてれば……」

善子「ずら丸は一体何者なのよ……」

善子「……他には何かない?」


35以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:02:499xbPbDTk (35/272)

花丸:連絡が取れなくなる前に言っておくね

花丸:影廊に入っちゃったら脱出を目指して

花丸:脱出するには回廊のどこかにある勾玉が5つ必要ずら

花丸:それを台座に置く必要があるの


善子「つまりあの化け物が徘徊してるこの回廊を探索しろってこと?」

ルビィ「う、嘘だよね? 無理だよそんなの!」


36以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:03:309xbPbDTk (36/272)

花丸:台座に置くと出口の扉が開かれるからそこから戻って来れるよ

花丸:オラは今から二人を助けに行くから出口を目指して欲しいずら


善子「ごめん花丸、頼むわよ」

ルビィ「ごめんね花丸ちゃん」


37以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:04:099xbPbDTk (37/272)

花丸:でも気をつけて欲しいことがあるずら


花丸:それは徘徊者ずら



善子「徘徊者……? さっきの化け物のことかしら?」


38以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:04:479xbPbDTk (38/272)

花丸:徘徊者はオラたちを見つけると襲い掛かってくるずら

花丸:捕まれば命はないずら


善子「私たちさっきの化け物に◯されるところだったのね……」

ルビィ「うぅ……おぇぇぇぇぇ」

善子「ルビィ!!」


39以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:05:219xbPbDTk (39/272)

花丸:敵は視覚や聴覚でオラたちを探してくるずら

花丸:まわりをよく見て逃げまわってほしいずら

花丸:もう時間がない

花丸:いまから救出に向かうから出口を目指して!


40以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:05:519xbPbDTk (40/272)

善子「花丸……」

ルビィ「怖いよぉ……」


善子「……行くわよ」

ルビィ「うん……」


41以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:09:169xbPbDTk (41/272)

ギィィ……タッ……タッ……


善子「木の廊下だから音がするわね」

ルビィ「うぅ……」

善子「どこまでも廊下が続いてる……」

善子「部屋もたくさんあるわ」


42以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:09:529xbPbDTk (42/272)

善子「この部屋に入ってみましょう」


サァァァァ…………サッ……サッ……


善子「廊下から畳の部屋に入って足音が変わるのすら嫌ね」


善子「……ん?? 足音??」

ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」


43以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:10:249xbPbDTk (43/272)

善子「ずら丸は、徘徊者は視覚や聴覚で探してるって言ってたわよね」

ルビィ「うん……」

善子「……足音も聞いてるのかしら?」

ルビィ「え……」


44以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:10:599xbPbDTk (44/272)

善子「私たちもさっきの化け物は足音で居場所が分かったわ」

善子「それは敵も同じってことかしら」

ルビィ「そんな……」


善子「とにかく分かってないことが多すぎるわ」

善子「情報を集めましょう」

ルビィ「うぅ……」


45以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:11:309xbPbDTk (45/272)

善子「棚やタンスがあるわ」

善子「中も見てみましょう……使えるものがあるかもしれないわ」

ルビィ「中からオバケしゃんとか出てこないよね……?」

善子「……あるかもしれないわね」

ルビィ「もうやだぁぁ…………」グス


46以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:12:069xbPbDTk (46/272)

善子「このタンス……開けてみるわよ……」

ルビィ「ハア……ハア……」


ザッ……


善子「……何もないわね」

ルビィ「はあ……はあ……」


47以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:12:439xbPbDTk (47/272)

善子「それにしても真っ暗ね」

善子「ライターの火だけじゃ心もとないわ」

ルビィ「あ、あそこに燭台があるよ」

ルビィ「あっちにも」

善子「なるほど、ろうそくの火ね」

善子「部屋や廊下のあちこちにあるわね」

善子「つけてまわりましょうか」


48以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:13:199xbPbDTk (48/272)

ルビィ「……火をつけて大丈夫かな?」

善子「え?」

ルビィ「敵しゃんはルビィたちを探してるんだよね?」

ルビィ「火をつけたら居場所が分かっちゃうんじゃ……」

善子「たしかに……」


49以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:13:519xbPbDTk (49/272)

善子「……これだけ広い回廊よ」

善子「少しつけても大丈夫だと思うわ」

善子「……たぶん」

ルビィ「うん……そう信じるよ」

ルビィ「暗くて怖いからつけてみるね」ボッ


50以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:14:549xbPbDTk (50/272)

善子「ろうそくに火がついたわね」

ルビィ「これで少し明るくなったね」

善子「それにしてもこの廊下、どこまで続いているのかしら」

ルビィ「この中から勾玉を5つ探すんだよね……」

善子「ええ、しかも危険な敵が徘徊しているわ」

ルビィ「うぅ……」


51以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:15:429xbPbDTk (51/272)

シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「……何か聞こえない?」

ルビィ「……鈴の音かな?」

善子「誰かがスクフェスやってるわけじゃないのよね?」

ルビィ「うん、絶対違う」


52以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:16:229xbPbDTk (52/272)

シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「こっちに来てるわね」

ルビィ「どうしよう、隠れるところなんてないよ」

善子「ライターの火を消して部屋の隅の暗がりに隠れましょう」

ルビィ「それなんだけどね、善子ちゃん」

善子「どうしたの?」



ルビィ「……ライターの火が消えそうなの」


53以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:17:009xbPbDTk (53/272)

善子「嘘でしょ?」

ルビィ「ううん、すごく火が弱くなってる」

善子「燃料がなくなってきたのかしら?」

善子「まずいわね……明かりなしでこの迷宮を探索するのは厳しいわ」

ルビィ「うぅぅ……」


54以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:17:429xbPbDTk (54/272)

善子「ちょっと待って……この火……」


善子「風も吹いてないのに揺らめいてるわよ」

ルビィ「ロマンチックなセリフだね」

善子「あんた実は余裕あるんじゃないの?」


55以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:18:149xbPbDTk (55/272)

善子「さっきの燭台のろうそくの火も揺らめいて点滅してるわよ」

善子「今にも消えそうだわ」


シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「来てるわね」


56以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:18:559xbPbDTk (56/272)

善子「……もしかして、徘徊者が接近すると火が点滅して消えるんじゃないかしら」

ルビィ「えっ」

善子「とにかくライターの火だけ消して身をひそめましょう」

善子「ろうそくの火はそのままでいいわ」

ルビィ「うん」カチャ


57以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:19:569xbPbDTk (57/272)

シャン……シャン……シャン……シャン……


暗がりで身をひそめながら見ると

能面をつけ着物を着た徘徊者が神楽鈴を鳴らしながら歩いていた


善子(あれも徘徊者ね……さっきの化け物と同じように能面を顔につけているわ)

善子(着物に詳しいわけではないけど、あれは十二単かしら?)

善子(平安時代の貴族の女の人が着ているイメージがあるわね)

ルビィ(善子ちゃん、あれ見て)


58以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:20:489xbPbDTk (58/272)

ルビィが指差すほうを見ると、燭台の火が消えていた


善子(やっぱり徘徊者が近づくと火が消えるみたいね)

善子(とにかくやり過ごしましょう)

善子(見つかったら襲い掛かってくるわ)

ルビィ(うん……)


59以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:21:209xbPbDTk (59/272)

善子(はあ……はあ……)ドクン……ドクン……

ルビィ(はあ……はあ……)ドクン……ドクン……


シャン……シャン……シャン……シャン……


シャン……シャン……シャン……シャン……


…………


60以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:21:529xbPbDTk (60/272)

善子「どこかに行ったわね」

ルビィ「またろうそくの火がついたね」

善子「やっぱり近づいてくると火が消えるわね」

ルビィ「じゃあ、つけても大丈夫かな」

善子「ええ、むしろつけたほうがいいわ」

ルビィ「え?」


61以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:22:349xbPbDTk (61/272)

善子「あちこちにある燭台に火をつけてまわれば大丈夫ね」

善子「それどころか、私たちとしては火が揺らめいたら近くに何かいるって分かるから有利よ」

善子「廊下の先で火が揺らめいたり点滅してたりしたら徘徊者がその方向にいるということ」

善子「廊下や部屋に置いてある燭台に火をつけながら探索を進めていきましょう」

ルビィ「うん……」


62以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:23:089xbPbDTk (62/272)

サッ……サッ……


善子「勾玉ってどこにあるのかしら?」

善子「それに徘徊者はどの程度の視覚や聴覚を持っているのかしら?」

善子「犬のように耳がいいのか、暗闇でも普通にものが見えるのか」

善子「まだ分からないことが多いわ」

ルビィ「うぅぅ……明かりをつけてもまだ怖いよ……」

ルビィ「むしろ見えちゃう分、逆に怖いかも……」


63以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:23:409xbPbDTk (63/272)

ドタドタドタドタドタドタドタ……


善子「どこかにいるわね」

ルビィ「怖いぃぃ……」

善子「さっきの足音のする化け物ね」


64以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:24:109xbPbDTk (64/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタ


善子「足音がするだけね」

善子「壁の向こう側の廊下を走っているのかしら?」

ルビィ「でもこっちに来てるよね」

善子「隠れましょう」

ルビィ「うん」


65以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:24:459xbPbDTk (65/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタ


バァァァァンンン!!!!


ドタドタドタドタドタドタドタドタ 


善子(!? 何、いまの音!?)

ルビィ「おぇぇぇぇ……」

善子(ルビィ!!)

善子(バレないかしら……ッ)


66以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:25:219xbPbDTk (66/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


バァァァァンンン!!!!


バァァァァンンン!!!! 


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ 



善子(お願い……早くどこかに行って……)

ルビィ「ハアッ……ハアッ……」


67以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:25:549xbPbDTk (67/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ…………


…………


善子「……どこかに行ったわね」

ルビィ「おぇぇぇ……はあッ……はあッ……」


68以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:26:299xbPbDTk (68/272)

善子「さっきの音は何だったのかしら……?」



善子「……襖や扉が蹴破られてるわね」

ルビィ「……え?」


69以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:27:119xbPbDTk (69/272)

善子「つまり……あの化け物に見つかったら……」

善子「あの化け物は足が速いからおそらく走っても逃げ切れないわ」

善子「それに襖や扉は一発で破ってくるから」

善子「部屋に隠れていても突っ込んで来られたら捕まるわ」

ルビィ「そんな……無理だよ……」

善子「見つからないように祈るしかないわね」

ルビィ「うぇぇぇんんん……おねいちゃぁあ……」


70以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:27:469xbPbDTk (70/272)

善子「とにかく探索を進めるわよ」

ルビィ「はあッ……はあッ……」ドクン……ドクン……

善子「明かりをつけて、タンスや棚を探しながらね」


善子(本当は私だって怖いわ……)

善子(ここから脱出するには……私がしっかりしなきゃ……)

善子(私がルビィを守らなきゃ……)


71以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:43:479xbPbDTk (71/272)

善子「今度はこっちの部屋ね」

ルビィ「うゆ……」

善子「……手鏡があったわ」

ルビィ「何に使うの?」

善子「分からないわ……」


72以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:44:339xbPbDTk (72/272)

善子「とりあえず何かに使えるかもしれないから持っていきましょう」

ルビィ「うゆ……」

善子「ほかには何かないかしら?」

ルビィ「善子ちゃん、爆竹があったよ」

善子「爆竹?」


73以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:45:119xbPbDTk (73/272)

善子「誰が何のために置いたのかしら?」

ルビィ「これで敵しゃんをやっつけられるかな?」

善子「うーん……そんな破壊力があるようには思えないわ」

善子「せいぜい音が鳴る程度かしら」

ルビィ「うゆ……」


74以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:45:449xbPbDTk (74/272)

善子「でも一応、持っていきましょう」

ルビィ「ほかには何もないよ」

善子「別の部屋を探しに行きましょう」

ルビィ「うゆ、ろうそくにも火をつけておくね」


75以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:46:179xbPbDTk (75/272)

ルビィ「善子ちゃん……ルビィね、思うんだ」

善子「何……?」

ルビィ「悪夢って、理由なんてないんだよ」

善子「悪夢に理由はない……?」


76以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:47:049xbPbDTk (76/272)

ルビィ「うん、特に理由もなくオバケしゃんに追いかけられたり」

ルビィ「理由はないけど、どこかに向かわなきゃいけなかったり」

ルビィ「でも、理由もなく怖い」

ルビィ「怖いから悪夢なんだよ」

善子「ええ、そうね……でも何が言いたいの?」


77以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:47:549xbPbDTk (77/272)

ルビィ「いますごく怖いよ……これも悪夢なのかな」

ルビィ「ルビィ、いまの状況が全然信じられないよ」

ルビィ「悪夢なら早くさめて欲しいよ」

善子「ええ、大丈夫よ……悪夢なら必ずさめるから」


78以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:48:249xbPbDTk (78/272)

善子「ほらカギも見つけたわよ」

善子「どこかの扉で使うかもしれないわ」

善子「いまは前に進みましょう」

ルビィ「うん……善子ちゃんと一緒でよかった」


79以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:49:059xbPbDTk (79/272)

善子「さっそくカギのかかった部屋があるわね」

善子「カギを使って開けるわよ」ガチャッ


ギィィ……


善子「中には……何か光ってる」

ルビィ「なんだろう……??」


80以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:49:419xbPbDTk (80/272)

善子「棚の上にあるけど……」

善子「!?!?」

善子「これ……勾玉じゃない?」

ルビィ「本当!?」

善子「ええ、これを5つ集めればいいのよね」

善子「1つ目をゲットしたわ!」

ルビィ「やったね!!」


81以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:50:219xbPbDTk (81/272)

善子「あっ、あまり大きな声出しちゃダメよね」

ルビィ「あ、うん、そうだね」

善子「この調子で残り4つも見つけるわよ」

ルビィ「うん」


82以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:50:589xbPbDTk (82/272)

善子「ほかには…………ん?」

ルビィ「どうしたの?」

善子「向こうの廊下の火が揺らめいてる」

善子「あっちに徘徊者がいるわね」

ルビィ「え?」


83以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:51:389xbPbDTk (83/272)

ルビィ「こっち来ないかな?」

善子「分からないわ……とにかく向こうには行くのはやめて他の道を探しましょう」

善子「こっちはまだろうそくに火がついてないから行ってない道よ」

ルビィ「うん、そうだね」


84以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:52:099xbPbDTk (84/272)

ルビィ「ルビィたちあっちから来たもんね」

善子「え?」

ルビィ「いまはじめの場所から西に来てるよ」

善子「あんた方角分かるの?」

ルビィ「うん」


85以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:52:569xbPbDTk (85/272)

善子「これだけ広くて入り組んでるのに?」

ルビィ「うん、正しい方角じゃないけど、あらかじめ決めておいたの」

善子「頼もしいわね……道も覚えてる?」

ルビィ「うん、たしかにそっちはまだ行ってないよ」

善子「すごいわね……これは案外なんとかなるかもしれないわ」


86以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:53:289xbPbDTk (86/272)

善子「あっちの道を避けて、別の道に来たけど」

善子「ほかに何かあるかしら……」

善子「懐中電灯があるわね」

ルビィ「やったね、他の明かりだよ」

善子「ええ、ライターと違って奥まで照らせるわ」


87以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:54:019xbPbDTk (87/272)

善子「こっちは……広間かしら?」

善子「襖の部屋がたくさんあるわ」


グスン……グス……


ルビィ「あれ?……女の子の泣き声……??」

善子「暗くてよく見えないわね」


88以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:54:429xbPbDTk (88/272)

ルビィ「ルビィたちと同じように迷い込んだのかな?」

善子「いえ、だとしたらおかしいわ」

善子「命の危険があるのに真っ暗な部屋の中でおとなしくしてるなんて」

善子「普通なら無理だわ」

ルビィ「ということは……徘徊者しゃん?」

善子「ええ、徘徊してないけどおそらく徘徊者ね」


89以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:55:189xbPbDTk (89/272)

ルビィ(善子ちゃん、あそこ)

善子(え?)

ルビィ(勾玉があるよ)

善子(本当ね……でも泣き声はあのあたりから聞こえてくるわよ)

善子(真っ暗で見えないけど、そこにいるんじゃないかしら?)


90以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:55:519xbPbDTk (90/272)

ルビィ(どうしよう……近づかなきゃ勾玉が取れないよ……)

善子(……)

善子(なんであの子は暗いところにいるのかしら?)

ルビィ(え……?)

善子(……)


91以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:56:409xbPbDTk (91/272)

善子(少し近づいてみるわよ……)ザッ……


<ドコ?……ドコニイルノ?……ドコニイルノ?



善子・ルビィ(!?!?)



ルビィ(はあッ……はあッ……)

善子(……)


92以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:57:279xbPbDTk (92/272)

ルビィ(善子ちゃん……反応したよ)

善子(ええ、思ったとおり耳がいいみたいね)

善子(不用意に近づけば襲われるわね)

ルビィ(ふえぇぇぇ…………)


93以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:58:019xbPbDTk (93/272)

善子(逆に視覚での探知はそんなに得意ではなさそうね)

ルビィ(どうしよう……足音を立てずに移動しても、さすがに近づいたら危ないよ)

善子(明かりを当てるのもやめておきましょう)


善子(うーん……何か気をそらすものは……)

善子(……)


94以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:58:459xbPbDTk (94/272)

善子(……爆竹を使いましょう)

ルビィ(ええ……ほかの徘徊者しゃんにバレないかな)

善子(分からないけど、やってみるしかないわ)


95以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 11:59:299xbPbDTk (95/272)

善子(おそらく音のするほうに確認に行くはず……)

善子(ルビィ、いつでも逃げられるように警戒して)

善子(あの子が移動したら爆竹が鳴っている間に勾玉を取るわよ)

ルビィ(怖いよぉ……)


96以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:00:569xbPbDTk (96/272)

善子(爆竹に火をつけて離れたところに投げるわよ)

ルビィ(うん……)

善子(……)ヒョイッ


……


パチパチパチパチパチ……


グスン……グス……

<グスン……グスン……


善子(移動してるわね……いまのうちに勾玉を取るわよ)

ルビィ(うん……)


97以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:01:299xbPbDTk (97/272)

パチパチパチパチパチ……

<グス……グス……


善子(足音を立てないように……慎重に……)

ルビィ(はあッ……はあッ……)

善子(あの子は耳がいいから気をつけなきゃ)

善子(おそらくこっちの足音は爆竹の音にかき消されてるはずだけど)

善子(念のため警戒しないと危険だわ)


98以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:02:009xbPbDTk (98/272)

<グスン……グスン……


善子(よし! 勾玉ゲット!)

ルビィ(はあッ……うぅぅ……)

善子(ここから立ち去るわよ)

ルビィ(うん……)

────
──


99以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:02:309xbPbDTk (99/272)

善子「はあ、なんとかなったわね」

ルビィ「怖かったよぉ……」

善子「これで2個目の勾玉ね」

ルビィ「うん」

善子「この調子でいくわよ」


100以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:03:049xbPbDTk (100/272)

善子「この棚には……ポラロイドカメラっていうのかしら??」

善子「古いタイプのカメラね」

ルビィ「なんであるんだろう」

善子「一応持っていきましょう」

ルビィ「うゆ」


101以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:03:469xbPbDTk (101/272)

善子「ほかにもカギとかいろいろあるわね」

善子「使えそうなものはなるべく持っていきましょう」

ルビィ「あんまりたくさんは持てないから選ばないとね」

────
──


102以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:04:369xbPbDTk (102/272)

☆徘徊者について『現状』2人が分かっていること☆

・神楽鈴の徘徊者
鈴の音を鳴らしながら歩き回る着物を着た徘徊者
探知方法は現状不明

・走り廻る徘徊者
手や足のたくさん生えた異形の姿をした徘徊者
大きな足音を立てながら走りまわっている
足が速いため、もし追いかけられれば逃げ切るのは困難だろう
探知方法は現状不明

・泣き声の主
すすり泣きながら暗闇にひそんでいる少女の姿の徘徊者
主な探知方法は聴覚

────
──


103以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:14:439xbPbDTk (103/272)

シャン……シャン……シャン……


善子「相変わらず神楽鈴の徘徊者がいるわね」

ルビィ「どこにいるのかな?」

善子「分からないわ……私たちも音で判断するしかないから」

善子「壁の向こうの廊下なのか、それともすぐそこなのか」

善子「廊下がこっちまでつながっているのか」

善子「予想しなければならないわ」


104以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:15:569xbPbDTk (104/272)

シャン……シャン……シャンシャン……シャン……シャン……


善子「……いま鈴を二回鳴らしたわね」

ルビィ「なんだろうね……」

善子「音がまた向こうに行くわね……」

善子「折り返したのね」

善子「行き止まりだったのかしら?」


105以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:16:289xbPbDTk (105/272)

シャン……シャン……シャン……シャン……

……シャン……シャン……シャン……


善子「待って? 鈴の音が二つ……違う方向から聞こえるわ?」

ルビィ「え、それって……」

善子「……2体いるわね」


106以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:16:599xbPbDTk (106/272)

善子「まずいかもしれないわね」

ルビィ「もしかして……」

善子「ルビィ、つづらのある場所わかる?」

ルビィ「あっちだよ」

善子「そっちに逃げるわよ」


107以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:17:349xbPbDTk (107/272)

シャン……シャン……


善子「部屋が真っ暗になった!」

善子「すぐそこにいる!!」

ルビィ「ふぇぇ」

善子「真っ暗で見えないけど走るわよ!!」


108以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:18:079xbPbDTk (108/272)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン 

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン 


善子「見つかった!!」

ルビィ「すごいスピードでこっちに走ってくるよぉぉ!!」


109以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:18:429xbPbDTk (109/272)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン 

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン 


善子「さっきあったつづらに飛び込むわよ!!」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


110以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:19:159xbPbDTk (110/272)

善子「あった!!」

ルビィ「うゆ!!」

善子「入るわよ!!」サッ

ルビィ「ぴぎぃ!!」サッ


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


111以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:19:489xbPbDTk (111/272)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン…………


シャン……シャン……シャン……シャン……


<シャン……シャン……


善子(はあッ……はあッ……)

ルビィ「はあッ……はあッ……」


112以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:20:259xbPbDTk (112/272)

善子「見失ったみたいね……どこかに行ったわ」


善子「見つけると今みたいに追いかけてくるのね」


ルビィ「うぅ……怖かったよぉ……」

善子「よく頑張ったわねルビィ」

ルビィ「うぅ……」

────
──


113以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:21:079xbPbDTk (113/272)

善子「次の部屋ね」

ルビィ「うん……」


グス……グスン……


善子「いるわね、泣き声の主」

ルビィ「じゃあ近くに勾玉も?」

善子「ええ、あるかもしれないわ」


114以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:23:019xbPbDTk (114/272)

善子「どこまで近づいても大丈夫なのかしら?」ザッ


<ドコ?……ドコニイルノ?……ドコニイルノ?


善子(すごく耳がいいわね……足音を立てないように近づかなきゃ)


115以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:23:339xbPbDTk (115/272)

善子(勾玉はどこかしら?)

ルビィ(あそこの暗闇の中に光ってるアレじゃない?)

善子(あったわね)

善子(とにかく爆竹でおびき出してその間にゲットするわよ)

ルビィ(うゆ……)


116以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:24:129xbPbDTk (116/272)

善子(あのあたりに投げればいいかしら……?)ヒョイ


……


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


グス……グスン……


善子(いまのうちに取りに行くわよ)

ルビィ(うん)


117以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:24:559xbPbDTk (117/272)

善子(そっと……そっと……)

善子(よし! 3個目ゲット!!)

ルビィ(やったね!)


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


<ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ



善子「え……?」


118以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:25:259xbPbDTk (118/272)

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


善子(走り廻る徘徊者!?)

ルビィ(えっ!?)

善子(タイミング悪く近くに来ちゃったの!?)


119以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:26:019xbPbDTk (119/272)

善子(まずいわね……早く鳴りやんで……爆竹)

善子(それか、こっち来ないで……)


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


善子(来てる……ッ)

ルビィ(あわわわ……ッ)


120以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:26:319xbPbDTk (120/272)

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


バァァァァァンンンン!!!!


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


善子「部屋の中に入ってきた!!!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁあああああああ!!!!!」


121以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:27:029xbPbDTk (121/272)

ドコニイルノ!!


善子「まずい!! 泣き声の主にも見つかった!!」

ルビィ「もうダメぇぇぇぇぇ!!!!!」


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


122以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:27:419xbPbDTk (122/272)

ルビィ「ぴぎぃぃぃぃぃ!!!!」



ルビィは驚いて咄嗟に手に持っていた手鏡に触れた

すると手鏡は光を放ち二人はどこかに飛ばされてしまう

どうやら『ワープ』して場所を移動したようだ



善子「ハアッ……ハアッ……」

ルビィ「ハアッ……ハアッ……」


123以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:28:139xbPbDTk (123/272)

善子「はぁぁぁ……」どさっ

善子「助かったのね……」

ルビィ「はあッはあッ……おぇぇぇぇぇ」

善子「ルビィ!! しっかりして!!」

────
──


124以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:28:449xbPbDTk (124/272)

善子「……落ち着いた?」

ルビィ「うん、ごめんね善子ちゃん」

善子「でも今回は助かったわ」

善子「手鏡を使うとどこかにワープできるのね」

ルビィ「すごいね、見つけたらどんどん使おう」


125以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:29:159xbPbDTk (125/272)

善子「いいえルビィ、使うのはさっきみたいなピンチの時だけよ」

ルビィ「え……?」

善子「ここがどこか分かる?」

ルビィ「どこって……え?」



ルビィ「ここ……どこ……?」


126以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:29:499xbPbDTk (126/272)

善子「どうやらまったく知らない場所に飛ばされたみたいね」

善子「位置関係がさらに分からなくなったわ」

ルビィ「うゆ……」

善子「探索もやりなおしよ」

ルビィ「ふぇぇぇ……」


127以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:30:219xbPbDTk (127/272)

カナカナカナカナ……


善子「ヒグラシが鳴いてるわね……」

善子「ここはどこにあるのかしら……」

ルビィ「夕日が差し込んでるね」


128以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:32:199xbPbDTk (128/272)

善子「さっきまで真っ暗な廊下や部屋だったから」

善子「夕日が差し込む窓があるってことは」

善子「いま迷宮の隅っこにいるのかもしれないわね」

ルビィ「なるほどぉ」

────
──


129以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:32:509xbPbDTk (129/272)

善子「次はこの棚ね……これはコンパスかしら?」

ルビィ「うん、そうみたい」

善子「あっちが北なのかしら?」

ルビィ「……」


130以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:33:229xbPbDTk (130/272)

ルビィ「……このコンパス、出口を指してるんじゃないかな」

善子「え……?」

ルビィ「なんとなくそう思う……」


131以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:33:589xbPbDTk (131/272)

善子「分からないわね……」

善子「正しい方角が分からないから確かめることもできないし」

善子「出口がどっちにあるかも分からない」

善子「でも持っていきましょうか」

ルビィ「うん」

────
──


132以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:34:359xbPbDTk (132/272)

善子「向こうで火が揺らめいてるわね」

善子「あ、徘徊者が走ってるわよ」

ルビィ「あー、走ってるね」

善子「だんだん慣れてきたのかしらね……」

ルビィ「慣れてないはずだけど……」


133以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:35:079xbPbDTk (133/272)

シャン……シャン……


善子「鈴の音がどこからかするわね」

ルビィ「かなり遠くだね」

善子「少し動いても大丈夫ね」

ルビィ「うん」


134以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:35:579xbPbDTk (134/272)

善子「あんまり保守的になるとだんだんジリ貧になるから」

善子「少しだけ大胆に動いたほうが、かえって安全かもしれないわね」

ルビィ「うん、ちょっと怖いけどね」

ルビィ「気をつけて動かなきゃ」

善子「ええ」


135以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:36:469xbPbDTk (135/272)

善子「とはいえ、あまりにも警戒しすぎて音が鳴ってないのに何か鈴が鳴ってるように聞こえるわ」

ルビィ「ルビィもだよ……鈴が鳴ってるんじゃないかって思ってきたよ」

善子「早く脱出したいわ……」


136以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:37:209xbPbDTk (136/272)

善子「あれ? このあたりろうそくついてるわね」

ルビィ「戻ってきちゃったみたい」

善子「ほかに行ってない道を探しましょう」

ルビィ「うゆ」


137以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:38:239xbPbDTk (137/272)

シャン……シャン……


善子「今度こそ鈴の音がするわね」

善子「あっちにあるろうそくの火も揺れてる」

ルビィ「うん、隠れたほうがいいかも」

善子「この部屋、両側が襖だからどこから来ても危ないわね」


138以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:39:069xbPbDTk (138/272)

ルビィ「あ、善子ちゃん、つづらがあるよ」

善子「隠れましょう……」


ルビィ「隠れるの慣れてきたね」

善子「それどころかこの状況にも慣れてきてないかしら」


139以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:39:389xbPbDTk (139/272)

シャン……シャン……

シャン……シャン……


善子(近くまで来てるわね)

ルビィ(うん)


<ザァガラララララ


善子(!?!?)

ルビィ(!?!?)


140以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:40:129xbPbDTk (140/272)

シャン……シャン……


善子(え? 普通に襖開けて部屋に入って来たわよ?)

ルビィ(怖い……)

善子(火が消えてるから真っ暗でよく分からないわ)


141以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:40:449xbPbDTk (141/272)

シャン……シャン……


<ザァガラララララ


シャン……シャン……



善子(どこかに行ったみたいね)


142以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:41:239xbPbDTk (142/272)

善子「ふう……まさか普通に部屋に入ってくるなんて……」

ルビィ「いまのは怖かったよ……」

善子「ええ、私も見つかったかと思ったわ」

ルビィ「つづらも開けてくるのかな?」

善子「……」

────
──


143以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:42:359xbPbDTk (143/272)

善子「この部屋は……」

善子「中に勾玉があるわ」

ルビィ「やったね善子ちゃん」

善子「ええ」ガチャガチャ

善子「あら?……カギがかかってて入れないわ」

ルビィ「え……?」


144以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:43:169xbPbDTk (144/272)

善子「カギは持ってないわよね」

ルビィ「うん……」

善子「じゃあ、また探索してここに戻って来なきゃいけないわね」

ルビィ「ふぇぇ……」

────
──


145以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:43:489xbPbDTk (145/272)

善子「こっちは……廊下の角にある部屋ね」

善子「もしこの部屋で襲われたら行き止まりだから逃げ道がないわ」

ルビィ「うぅ……」

善子「早く探索を済ませて出ましょう」


146以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:44:209xbPbDTk (146/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


善子「嘘でしょ!?」

ルビィ「ぴぎぃ!?」


147以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:44:539xbPbDTk (147/272)

善子「扉閉めて!! 明かり消して!!」

ルビィ「うゆ!!」



ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ



善子「部屋の隅の暗がりに身をひそめるわよ!」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


148以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 12:45:369xbPbDTk (148/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


バアァァァァァァンンンン!!!!


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ 


善子(どこかの扉を蹴破ってるわね……)

ルビィ(はあッはあッ……)


149以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:05:499xbPbDTk (149/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


善子(すぐそこまで来てる!!)

ルビィ(はッ……はッ……)


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


150以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:06:599xbPbDTk (150/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ…………


善子(……)

ルビィ(……)


善子「はあ……どこか行った……」

ルビィ「はあ……やっぱり怖いよ……」


151以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:07:389xbPbDTk (151/272)

善子「場所が悪いからなおさらね」

善子「折り返してどこかへ行ったみたい」

善子「扉を蹴破って入って来られたらダメだったわね」

善子「助かったわ」

ルビィ「うゆ……」

────
──


152以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:08:139xbPbDTk (152/272)

ルビィ「結局カギはなかったね」

善子「ええ、困ったわね」

ルビィ「もっと遠くまで探しに行く?」

善子「……」

善子「……少し考えさせて?」


153以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:08:449xbPbDTk (153/272)

善子(ここでもっと遠いところまで探しに行けばその分、徘徊者に襲われる確率が上がるわ)

善子(でも早く勾玉を集めて出口に行かないと、それはそれで危険ね)

善子(どうしたものかしら……)


154以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:09:149xbPbDTk (154/272)

ルビィ「……善子ちゃん?」

善子「ルビィ、走る体力はまだある?」

ルビィ「え……?」

善子「カギのかかった部屋の近くに隠れられそうな部屋があったわよね」

ルビィ「うん……」


155以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:09:459xbPbDTk (155/272)

善子「カギがないのなら……」

善子「徘徊者に扉を開けてもらうわ!」

ルビィ「え……?」

ルビィ「どうやって?」


156以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:10:239xbPbDTk (156/272)

善子「さっき徘徊者が爆竹に反応してたわよね?」

善子「扉の隙間から爆竹を投げ入れて徘徊者に扉を壊してもらうわ」

ルビィ「え……それって……徘徊者しゃんをこっちから呼ぶってこと!?」

善子「ええ、その通りよ」

ルビィ「ええっ!?」


157以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:10:549xbPbDTk (157/272)

ルビィ「やめようよ、危ないよ!」

善子「たしかにリスキーだけど、成功すれば探索が楽になるわ」

善子「ここはやるわよ」

ルビィ「そんな……」

────
──


158以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:11:349xbPbDTk (158/272)

善子「カギのかかった部屋の前に来たわ」

善子「扉の隙間から中が見えるから、ここから爆竹を投げ入れるわ」

善子「ルビィ、逃走経路は確認できた?」

ルビィ「うん、あっちに行けば大丈夫だよ」

善子「徘徊者が来たらやるわよ……」


159以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:12:049xbPbDTk (159/272)

シャン……シャン……


善子「ちょうどいいところに来たわね……」

ルビィ「……」ゴクリ

善子「爆竹を投げ入れるわよ」ヒョイ

善子「音が鳴ったらあっちの部屋に隠れるわよ」

ルビィ「うん」


160以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:12:349xbPbDTk (160/272)

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


善子「隠れるわよ!」

ルビィ「うん!」


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ 


シャン……シャン……シャンシャン……シャン……


161以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:13:059xbPbDTk (161/272)

シャン……シャン……シャン……シャン……


シャン……シャン……シャン……シャン……


善子(こっちに確認に来たわね……)

ルビィ(うん……)


162以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:13:509xbPbDTk (162/272)

シャン……シャン……シャン……シャン……


ドン!!ドン!!ドン!!バアアァァァァァンンンン!!!!


シャン……シャン……


善子(思った通り部屋を開けてくれたわね)

ルビィ(すごい力だね)

善子(ええ、襲われたらひとたまりもないわ)


163以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:14:219xbPbDTk (163/272)

シャン……シャン……


シャン……シャン……


善子「遠ざかっていく……」

ルビィ「誰もいなかったからだね」

善子「これで部屋に入れるわ」


164以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:14:549xbPbDTk (164/272)

善子「部屋の前に来たけど……扉が粉々になってるわね」

ルビィ「ひぃぃ……」

善子「ものすごい力だわ……とにかく勾玉ゲットよ……」

ルビィ「これで4つ……」

善子「あと1つね」


165以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:15:269xbPbDTk (165/272)

善子「ルビィ、このコンパスは出口を指してるかもしれないって言ってたわよね」

ルビィ「なんとなくだけど、そんな気がしたんだ」

善子「……それにかけてみましょう」

善子「そうだと信じて……このコンパスが指すほうに進むわ」

ルビィ「え……?」


166以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:15:579xbPbDTk (166/272)

善子「そして途中に勾玉があれば、それを拾って」

善子「もし本当に出口ならそのまま脱出できるわ」

ルビィ「うん……そうだね……」

ルビィ「そうだと信じて進もう……」

善子「ええ……」


167以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:21:119xbPbDTk (167/272)

善子「コンパスの指すほうへ……」

善子「この棚には……」

善子「うーん……特にないわね」

ルビィ「うゆ」


168以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:21:439xbPbDTk (168/272)

善子「このタンスには……ん?」

ルビィ「どうしたの?」

善子「青く光る石があるわ」

ルビィ「石?」

善子「袋にいくつか入ってる」


169以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:22:169xbPbDTk (169/272)

ルビィ「なんだろうね、これ」

善子「分からないわ……」


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


善子「相変わらずどこか走ってる音がするわね」

ルビィ「ろうそくの火が揺らめいてるよ」

善子「じゃあ近くにいるわね……隠れましょうか」


170以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:22:509xbPbDTk (170/272)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ


善子「プレッシャーすごいわね」

ルビィ「あ、ろうそくの火が消えた」

善子「真っ暗…………じゃないわね」

ルビィ「え……?」


171以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:23:289xbPbDTk (171/272)

善子「この青い石の光……消えてないわ」

善子「敵が近づいてきても消えない光なのね」

ルビィ「どういう原理なのかな?」

善子「分からないけど、とにかく消えない光みたいね」


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ…………


善子「どこかに行ったわね……」

ルビィ「うゆ……」


172以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:23:599xbPbDTk (172/272)

善子「……この石、使えるかもしれないわ」

ルビィ「え……?」

善子「これを使えば真っ暗な廊下でも迷わずに走れるわ」

ルビィ「でもこの光、そんなに強い光じゃないよ?」

ルビィ「あたりは真っ暗だよ?」

善子「いいえ、これは目印として使うのよ」

ルビィ「目印……?」


173以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:24:339xbPbDTk (173/272)

善子「敵に追いかけられてるとき明かりが消えて真っ暗になるじゃない」

ルビィ「うん、道が分からなくなるよね」

善子「だから、この消えない光の石を逃走経路に置くのよ」

善子「そうすれば逃げる時に迷わずに逃げられるわ」

ルビィ「なるほどぉ」

────
──


174以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:25:059xbPbDTk (174/272)

善子「出口に向かいつつ、勾玉を探すわよ」

ルビィ「うゆ」

善子「コンパスはこっちを指してるわ」


善子「この部屋は……つづらがあるわね」

善子「何かあったらこの部屋に逃げてきましょう」

ルビィ「うん」


175以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:25:369xbPbDTk (175/272)

善子「こっちの部屋は……」

善子「!?」

ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」

善子「あれを見て?」

ルビィ「どれ?」


176以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:26:089xbPbDTk (176/272)

善子「部屋の真ん中に勾玉が置いてあるわ」

ルビィ「すごいね!! あれを取れば5つ目だよ!!」

ルビィ「ここから出られるよ!!」


善子「待って!!……何かおかしいわ」

ルビィ「え……?」


177以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:26:509xbPbDTk (177/272)

善子「この勾玉……罠ね」

ルビィ「え……罠?」

善子「ええ……どうぞ取ってくださいって感じで置いてあるわ」

善子「あれは取りに来たところを逆に捕まえるためのトラップよ」

ルビィ「そんな……」


178以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:27:209xbPbDTk (178/272)

善子「部屋の奥を見て……まだ部屋がある」

ルビィ「うん……」

善子「あそこに徘徊者が隠れているんじゃないかしら?」

ルビィ「え……?」


179以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:28:039xbPbDTk (179/272)

善子「もしそうならあの勾玉は取らないほうがいいわ」

ルビィ「うん……じゃあ他の探しに行く?」


善子「いいえ、それでもあれを取るわ」


ルビィ「え……? どうやって……?」

善子「これよ……さっきのひかり石」

ルビィ「ひかり石……?」


180以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:28:369xbPbDTk (180/272)

ルビィ「これを逃げ道に置くの……?」

善子「ええ、廊下にいくつか設置するわ」

善子「それで、さっきのつづらのある部屋まで走って逃げるわ」

ルビィ「ええ……怖いよ……」

善子「でもやるしかないわ……」

善子「ひかり石を置いてくるわよ」


181以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:29:259xbPbDTk (181/272)

善子「それともルビィは先に部屋に隠れてる?」

ルビィ「え……? でも一人で部屋にいるのも怖いかな……」

善子「それじゃあ一緒に走って逃げましょう」

善子「もしトラップじゃなくて追いかけられないのなら」

善子「それでいいんですもの」


182以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:30:279xbPbDTk (182/272)

善子「ルビィ、走る準備はいい?」

ルビィ「うん……」

善子「石も設置した……行くわよ!!」


ザァァ……


バアアアァァァァァァァンンンンンン!!!!!!


扉を開けると善子の予想通り奥の部屋から扉を蹴破り徘徊者が飛び出してきた!!


183以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:31:009xbPbDTk (183/272)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン 


善子「神楽鈴の徘徊者ね!!」

善子「このまま光をたどって部屋まで逃げるわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


184以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:31:329xbPbDTk (184/272)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン 

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン  


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


185以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:32:039xbPbDTk (185/272)

善子「つづらよ!! 中に隠れるわ!!」

ルビィ「うゆ!!」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン 

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


186以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:32:359xbPbDTk (186/272)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン 

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン  


善子(まだ探してるわね……)

ルビィ(うん……)


187以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:33:079xbPbDTk (187/272)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


……シャン……シャン……シャン………………


善子「見失ったようね……どこかに行ったわ」

ルビィ「はあ……」


188以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:33:469xbPbDTk (188/272)

善子「これで勾玉を取りに行けるわね」

ルビィ「やっと5つ揃うね!」

善子「まだ近くにいるかもしれないから気をつけてさっきの部屋に戻るわよ」

────
──


189以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:34:249xbPbDTk (189/272)

善子「さっきの部屋に戻ってきたわ」

ルビィ「うん」

善子「奥の扉が蹴破られて粉々になってるわね」

ルビィ「本当にすごい力だね」

善子「さあ、勾玉を取るわよ!」


190以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:34:559xbPbDTk (190/272)

善子「ふう……これで5つよ!!」

ルビィ「やったね!! 出口を探そう!!」

善子「ええ!!」



だが……


191以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:39:559xbPbDTk (191/272)

オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛ア゛アアアァァァァァァ…………


善子「!?!?」

ルビィ「!?!?」


善子「何の声!?」

ルビィ「うゆ……なんかすごく嫌な予感がするよ……」


おぞましい殺気が近づいてくる……


192以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:40:259xbPbDTk (192/272)

善子「そんな簡単には逃げさせてはくれないってことね……」

ルビィ「うゆ……今までで一番危ないかも……」



ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!



善子「何か分からないけど、こっち来てるわね!!」

ルビィ「ピギィ!! なんか怖いよぉ!!」


193以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:41:029xbPbDTk (193/272)

すぐそこにはおぞましい殺気を放ち憎悪を振りまく

着物を着た女の姿をした敵が浮遊しながら迫ってきていた

甲高い叫び声を上げながらまっすぐと二人に接近してくる


194以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:42:279xbPbDTk (194/272)

善子「なんかヤバイわよアレ!!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」

善子「逃げるわよルビィ!!!!」


195以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:43:109xbPbDTk (195/272)

善子「走って!! そうしなければ命はないわ!!」

ルビィ「ハアッ!! ハアッ!! ハアッ!!」



ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


196以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:43:409xbPbDTk (196/272)

善子「扉を閉めるわ!!」


善子「たぶんダメだろうけど!!」



バアアァァァァァンンンン!!!!



ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


197以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:44:119xbPbDTk (197/272)

善子「ダメ!! 一撃で粉砕されたわ!!」

ルビィ「ハアッ!! ハアッ!!」


ルビィ「ふぇぇ……」


ルビィは恐怖のあまり後ろを振り向く……

すると……


198以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:44:459xbPbDTk (198/272)

ルビィ「ううぅぅ……ああぁぁ……はあッ……はあッ……」

善子「どうしたの!?」

ルビィ「あの敵しゃん見てると……苦しくなってきて」

善子「見ちゃダメよ!! 命を持っていかれるわ!!」

善子「絶対に振り向いちゃダメ!!」

善子「前だけ見て走って!!!!」

ルビィ「うゆううううう!!!!」


199以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:45:169xbPbDTk (199/272)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!



善子「ダメ!! 全然引き離せない!!」

ルビィ「うぅぅ……もうダメかも!!!」

善子「あきらめないで!!」

善子「頑張って走って!!」

ルビィ「はぁッ……はぁッ……」


200以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:45:499xbPbDTk (200/272)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!



あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!



善子「ぐっ……」

ルビィ「もうダメだよ!! 追いつかれちゃう!!」

善子「はあッ……はあッ……!!」


201以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:46:379xbPbDTk (201/272)

生存本能だとでもいうのだろうか

ルビィは後ろを振り向くと抵抗するように古びたカメラのシャッターを押した


パシャッッ!!!!



オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


202以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:47:079xbPbDTk (202/272)

目がくらむほどの強烈な光を浴びせると

その敵は叫び声を上げながら怯んだ

動きが止まっている今のうちなら逃げられるかもしれない


203以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:47:429xbPbDTk (203/272)

善子「カメラのフラッシュが効いてるの!?」

ルビィ「はあッ……はあッ……」

善子「安心しないで! おそらく動きが止まるのはほんの十数秒程度よ!!」

ルビィ「ハァッ……ハァッ……」

善子「今のうちに遠くまで逃げるわよ!!」

ルビィ「う、うゆ……」


204以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:48:159xbPbDTk (204/272)

善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッはあッはあッはあッ……」


善子「ぐっ……」



ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


205以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:49:009xbPbDTk (205/272)

善子「来てるわね!!」

ルビィ「はあッ……はあッ……振り向いてシャッター押したい……」

善子「ダメよ!! 使える回数はあと数回でしょ!!」

善子「それに振り向けば体力を持っていかれるわ!!」

善子「あの叫び声だけ聞いて近づいてきたその瞬間に振り向いてシャッターを押すのよ!!」

ルビィ「うゆ……怖すぎるよぉぉぉぉ!!!!」


206以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:49:339xbPbDTk (206/272)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!



ルビィ「ピギィ!! もうダメ!!!!」


ルビィが振り向くと敵は地を這いずりながら高速で接近してきていた


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁああああああ!!!!!」


207以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:50:219xbPbDTk (207/272)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!



ルビィは恐怖のあまりシャッターを押す!!



パシャッッ!!!!



オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!



ルビィ「はあッ……はあッ……はあッ……!!!!」

善子「もっと遠くまで逃げるわよ!!」


208以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:50:519xbPbDTk (208/272)

善子「はあッ……はあッ……!!!!」

ルビィ「はあッ……ぐっ……どこまで逃げればいいの!!」

善子「……ッ」

ルビィ「もう無理だよぉ!!」


209以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:51:239xbPbDTk (209/272)

善子(正直、もうダメかもしれないわ……)

善子(カメラが使えなくなれば……私たちはおしまい……)

善子(ごめんねルビィ……守ってあげられなくて……)

善子(みんな……ごめんね……)


210以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:51:539xbPbDTk (210/272)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!



善子「来てるわ!! でも振り向かないで!!」

善子「もっと引き付けて!!」

善子「そうしないと逃げられる距離が短くなるわ!!」

善子「なんとしても出口にたどり着くのよ!!」

ルビィ「はあッ……はあッ……!!」


211以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:52:239xbPbDTk (211/272)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!



善子「今よ!! シャッターを押して!!」

ルビィ「うゆ!!」


パシャッッ!!!!



オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


212以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:52:559xbPbDTk (212/272)

善子「はあッ……はあッ……」


善子(あと何回使えるかしら……)

善子(5回だとしたらあと2回)

善子(でももし3回なら……いま3回使ったから終わり……)


善子(くっ……出口は見つからない……どうしたら……)


213以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:53:259xbPbDTk (213/272)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!



善子「ルビィ!!」

ルビィ「うゆ!!」


かちゃっ……かちゃかちゃ……


善子「え……?」

ルビィ「ぴぎぃぃ!?」


214以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:53:589xbPbDTk (214/272)

善子「3回……」

善子「もうそのカメラは使えないわ!!」

ルビィ「うぇぇぇぇんんんん!! おねえちゃあああああああ!!!!」


善子「もうダメぇぇぇぇ!!!!」


215以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:55:099xbPbDTk (215/272)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!


善子(ごめんね……)



ドオオオォォォォォォンンンン!!!!


……


216以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:55:409xbPbDTk (216/272)

善子「……え?」

ルビィ「……え?」


ルビィ「敵しゃんの動きが……止まってる……」

善子「どういうこと……?」



??「オラが時を止めたずら」



善子・ルビィ「!?」


217以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:56:139xbPbDTk (217/272)

善子「その声は……」


善子「ずら丸!!!!」


花丸「善子ちゃん、ルビィちゃん、大丈夫ずら?」


善子「どういうことなのよこれ」

花丸「話はあとずら……ここから離れるずら」


218以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:56:489xbPbDTk (218/272)

ルビィ「うぇぇぇんんんんへなめるちゃぁぁぁあああ怖かったよぉぉぉ!!!」

花丸「ルビィちゃんよしよしずら……」

善子「はあッ……はあッ……」

善子「とにかくここから離れましょう」

花丸「うん、出口はこっちだよ」

────
──


219以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:57:189xbPbDTk (219/272)

─影廊・出口─

花丸「ここが出口ずら」

花丸「その台座の上に勾玉を5つ置いて」

善子「ええ」

ルビィ「うゆ」


220以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 13:58:099xbPbDTk (220/272)

花丸「あ、そのまえに……」



花丸「そして時は動きだす」



ドオオオォォォォォォンンンン!!!!


花丸「ここまで来れば大丈夫ずら」


殺気はどこかへと消え去った……

────
──


221以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:01:009xbPbDTk (221/272)

☆ここまでに出現した敵☆

・神楽鈴の徘徊者

・走り廻る徘徊者

・泣き声の主

・憎悪を振りまく影

────
──


222以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:01:339xbPbDTk (222/272)

花丸「台座に勾玉を5つ置くずら」

善子「ええ」


善子たちは台座に勾玉を置いた


<ギィィ……


奥の扉が開いた


223以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:02:159xbPbDTk (223/272)

花丸「奥にある鏡で元の世界に帰れるずら」

善子「ええ、帰るわよ」

ルビィ「うゆ」


祭壇のような部屋を進み、3人は奥の部屋の鏡の前に来た


224以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:02:469xbPbDTk (224/272)

善子「これで帰れるのね……」

花丸「うん……」

ルビィ「帰ろう……」


鏡が光を放つ

3人は元の世界に帰ることに成功した


225以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:03:179xbPbDTk (225/272)

─元の世界─

善子「ここは……迷い込んだときのトンネルね……」

善子「ひどい目にあったわね」

ルビィ「うゆ……ごめんね善子ちゃん……」

花丸「二人とも無事でよかったずら」


226以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:07:089xbPbDTk (226/272)

善子「それにしても驚いたわよ」

善子「どうやって徘徊者たちの動きを止めたのよ」

花丸「それなんだけど……」

ルビィ「……??」


227以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:07:409xbPbDTk (227/272)

花丸「あの状況だと二人を助けることは不可能だった」

花丸「だから、人間をやめるしかなかった」

花丸「ごめんね二人とも……」

善子「どういう……こと……?」


228以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:08:119xbPbDTk (228/272)

そう言うと花丸は

どこからか取り出した能面を

自らの顔につけるのだった……



シャン…………シャン…………


229以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:08:449xbPbDTk (229/272)

どこかで鈴の音がした気がした……



おわり……?


230 (1/2556)




231 (2/2556)




232 (3/2556)




233以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:11:129xbPbDTk (230/272)

花丸「なんちゃってずら~☆」

花丸「冗談ずらよぉ~☆」


善子「~~っっ!!」ポコポコ

花丸「いたいずらよぉ善子ちゃん」

善子「びっくりしたわよ!!」

花丸「ごめんずら」

────
──


234以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:11:539xbPbDTk (231/272)

善子「トンネルを抜けると照りつける光に目がくらんだ」

善子「夏の日差しは強烈に、私たちを日常へと引き戻した」


善子「あのとき彷徨ったあの場所は一体何だったのかしら」

善子「ずら丸は何か知っているみたいだったけど、それ以上は教えてはくれなかった」

────
──


235以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:12:399xbPbDTk (232/272)

─後日・浦の星女学院─

花丸「おはよう善子ちゃん」

善子「おはようずら丸」

善子「……」

善子「今日もルビィは休み?」

花丸「うん……」


236以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:13:129xbPbDTk (233/272)

善子「ここのところずっとね……」

花丸「仕方ないずら……あんなことがあったんだから」

善子「そうね……元気になるといいわね」

善子「……」


237以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:13:519xbPbDTk (234/272)

善子(実を言うと私もあまり元気ではない)

善子(あれからというもの毎晩、鈴の音が聞こえる気がする)

善子(暗闇が怖いし、堕天使の話も控えているわ)

善子(どうしちゃったのかしら……)


善子「……」

花丸「……」


238以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:14:299xbPbDTk (235/272)

善子「……」

花丸「ルビィちゃんのお見舞いに行かない?」

善子「……そうね、行きましょうか」


────
──


239以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:15:579xbPbDTk (236/272)

─黒澤家─

ダイヤ「お二人ともルビィのお見舞いありがとうございます」

善子「ええ、当たり前じゃない」

花丸「……」

ダイヤ「こちらの部屋ですわ」

────
──


240以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:16:309xbPbDTk (237/272)

─ルビィの部屋─

ルビィ「あ、二人とも……」

善子「ルビィ……大丈夫?」

ルビィ「うん……」

花丸「ダイヤさんにはあのこと話してないずらね?」

ルビィ「うん……話してない」


241以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:17:019xbPbDTk (238/272)

善子「そうよね……」

ルビィ「まだ怖いよ……」

善子「ルビィ……よく頑張ったわね」なでなで

ルビィ「うゆ……」


242以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:17:409xbPbDTk (239/272)

善子「私たち学校で待ってるから……元気になったら来なさいよ」

ルビィ「うん……ありがとう」

ルビィ「……あのね」

善子「……?」


243以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:18:119xbPbDTk (240/272)

ルビィ「3人でお泊りしたいな……」

善子「ええ、そうね」

花丸「オラもしたいずら」

────
──


244以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:18:419xbPbDTk (241/272)

善子(私もまだ怖かった……)

善子(でも3人でいられると聞いてほっとした)

善子(この3人でよかった……)

────
──


245以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:19:189xbPbDTk (242/272)

善子「後日、あのトンネルを訪れると反対側は住宅街につながっていた」

善子「あの場所に行くことはもうないはずだ」

善子「これでよかったんだ……そう思うことにしよう」


花丸「……また、このトンネルに来ちゃったずらか?」


246以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:19:489xbPbDTk (243/272)

善子「ずら丸……どうしてここに?」

花丸「なんとなく善子ちゃんの様子がおかしかったから」

花丸「ここにまた来るんじゃないかなって……」

善子「ええ……実はまだちょっと怖いわ」


247以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:20:209xbPbDTk (244/272)

花丸「大丈夫……もう善子ちゃんやルビィちゃんがあの場所に行くことはないずら」

花丸「……たぶん」

善子「え……?」

花丸「分からないずら……もしかしたらまた呼ばれてしまうこともあるかもしれないから」

善子「そんな……」


248以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:20:529xbPbDTk (245/272)

花丸「善子ちゃん……本当はまた行きたいんじゃないずら?」

善子「え……?」

花丸「怖いんじゃなくて……またあの場所に行きたいんじゃない?」

善子「そ、そんなはずないじゃない!!」

善子「あんなに怖い思いをしたのよ!!」


249以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:21:239xbPbDTk (246/272)

花丸「じゃあ、なんでまたこのトンネルに来たの?」

善子「え……?」

花丸「本当に怖いならもうここには二度と来ないはずだよ?」

善子「それは……」

花丸「善子ちゃん……」


250以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:21:559xbPbDTk (247/272)

花丸「またあの場所に行きたいの……?」

善子「そんなはずないわ……でも、なんでかしら……?」

善子「そう言われると……もやもやがスッキリした気がする」

善子「もしかして本当に行きたいのかしら?」


251以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:22:299xbPbDTk (248/272)

善子「非日常的な体験が私を変えてしまったのかしら?」

善子「堕天使とかに憧れる私だから特別な何かに惹かれるのかしら?」

善子「でも危ないことだって分かってる」

善子「近づいちゃダメなんだって」

花丸「……」


252以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:23:069xbPbDTk (249/272)

花丸「善子ちゃん、ここに能面があるけど……被ってみる?」

善子「え……?」

花丸「あの化け物たちはみんな能面を被ってたよね?」

善子「えぇ……」

花丸「特別な力が手に入るかもしれないよ?」

善子「……」


253以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:23:369xbPbDTk (250/272)

善子「ずら丸……あんた何言ってるの?」

花丸「オラはあのとき時間を止めたよね?」

花丸「それがこの能面の力だとしたら?」

花丸「あの徘徊者たちと同じように」

花丸「人間を超越した力を手に入れられるとしたら?」

花丸「この能面を被る?」

善子「……」


254以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:24:069xbPbDTk (251/272)

善子「……」

善子「……被らないわ」

花丸「……そうずらか」

善子「私は私だもの……」

花丸「分かったずら……たぶん善子ちゃんたちはあの場所には二度と行かないずら」

花丸「なんとなくだけど……」


255以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:24:559xbPbDTk (252/272)

善子「ずら丸……あんたは何者なの?」

花丸「……オラはオラずら」

花丸「善子ちゃんとルビィちゃんの友達」

花丸「二人の味方……信じて欲しいずら」

善子「……分かったわ」

善子「あんたを信じる」

花丸「ありがとう、善子ちゃん」


256以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:25:279xbPbDTk (253/272)

善子「じゃあ、あの場所はなんだったの?」

花丸「……それは答えられないずら」

善子「そう……私も深くは聞かないでおくわ」


257以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:26:009xbPbDTk (254/272)

善子「じゃあ、その能面は何?」

花丸「オラがいま手に持ってるのは、何の力もないただの能面ずら」

善子「は?」

花丸「善子ちゃんをちょっとからかっただけずらよ」

善子「あんたねぇ……」


258以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:26:369xbPbDTk (255/272)

花丸「それじゃあ一緒に帰るずらよ」

花丸「ルビィちゃんとお泊り会するずら」

善子「……はあ、そうね」

善子「……私も楽しみだわ」

────
──


259以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:27:069xbPbDTk (256/272)

善子「あの後はずら丸とルビィとお泊り会をしたわ」

善子「私もルビィもすっかり元気になって、ルビィもまた学校に通うようになったわ」

善子「これでまたAqoursの活動ができそうね」


260以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:27:379xbPbDTk (257/272)

善子「結局、いろいろなことが分からなかったけど」

善子「私たちは無事に脱出できたのだ」


善子「深い闇に鳴り響く、あの鈴の音はもう二度と聞こえることはなかった」

────
──


261以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:28:099xbPbDTk (258/272)

─後日─

果南「1、2、3、4、1、2、3、4……」

果南「はい今日の練習はここまで!」

ダイヤ「皆さんお疲れ様です」


ルビィ「善子ちゃん!花丸ちゃん! 一緒に帰ろう!」

善子「えぇ」

花丸「ずら~」


262以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:28:409xbPbDTk (259/272)

曜「千歌ちゃん! 一緒に帰りましょうであります!!」

千歌「うん! 帰ろう!!」

千歌「はあぁ今日も練習疲れたね!!」

────
──


263以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:29:109xbPbDTk (260/272)

千歌「……」

曜「そういえば千歌ちゃん!」

曜「……千歌ちゃん? どうしたの?」

千歌「あの路地が気になる」

曜「え……?」


264以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:29:409xbPbDTk (261/272)

千歌「そう、この路地!!」

千歌「なんていうのかな、こう……」

千歌「冒険心がくすぐられる……っていうのかな」

曜「たしかに……日本の夕暮れの景色って感じ」

曜「ノスタルジックっていうのかな?」


265以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:30:139xbPbDTk (262/272)

千歌「ちょっと奥まで行ってみない?」

曜「え? 危ないよ?」

千歌「大丈夫だよ、ちょっとだけ」

曜「やめようよ」


266以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:30:499xbPbDTk (263/272)

千歌「曜ちゃん♡ おねがい♡」

曜「もぉ~しょうがないでありますなぁ////」

千歌「わぁい♡ 曜ちゃん大好き♡」

曜「えへへへ////」


267以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:31:209xbPbDTk (264/272)

??「やめておいたほうがいいわよ?」

千歌「え?」

曜「……鞠莉ちゃん?」

鞠莉「その奥へ行くのはやめておきなさい」


268以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:31:529xbPbDTk (265/272)

曜「鞠莉ちゃんがこんなところにいるなんて珍しいね」

千歌「たしかに」

鞠莉「嫌な予感がして来てみれば……」

千歌「嫌な予感……?」


269以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:32:249xbPbDTk (266/272)

鞠莉「……さあ、ここには近づかないでマリーと一緒に帰りましょう!」

鞠莉「レッツゴーよ!!」

千歌「あ、待ってよぉぉ」

曜「待ってぇ、千歌ちゃん!」

────
──


270以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:32:589xbPbDTk (267/272)

ある夏の日の夕暮れ時

あなた(ゲームのプレイヤー)はある路地の入口でふと足を止めた

夕立の後の蒸し暑い湿気の中

奥から冷たい風が吹き抜けてくる


ふと幼いころの夏の日を思い出し

心の奥にしまっていた冒険心をくすぐられたあなたは

さびれた路地へと足を踏み入れた……

────
──


271以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:33:309xbPbDTk (268/272)

おわり


272以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/05(金) 14:34:009xbPbDTk (269/272)

以上で完結です。


ありがとうございました。


273以下、名無しが深夜にお送りします2019/04/19(金) 09:32:23xGwU6Cwk (1/1)

乙、面白かったわ

花丸・ザ・ワールド!


274以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 09:59:42gdc9acus (1/184)

前スレ
善子「影廊」ルビィ「再びあの迷宮へ」
ttps://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1625275226/
※httpsのhを抜かしてあります。

約2年前に完結させた当スレのSSですが、今回、続きを書くことにしました。
ラブライブ!板にスレを立て続きを書いていたのですが、
現在、ラブライブ!板は規制が厳しく、書き込めなくなってしまったので、
このスレに続きを書くことにしました。

このスレのSSの続編です。

書き手は当スレおよび前スレと同じ人です。

ラブライブ!とホラーゲーム「 ShadowCorridor 」のSSです。

ラブライブ!のSSとして書きますが、シャドーコリドーのキャラも出てきますので注意してください。

またネタバレがかなりあるので読む場合は注意してください。

オリジナル要素もあります。注意してください。

あと影廊2(仮)の制作が開始されたと、昨日、制作者さんのTwitterにありました。楽しみです。


275以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:03:54gdc9acus (2/184)

ちょっと日本語がおかしいところがありました……が、とにかく書いていきます。

善子「影廊」ルビィ「再びあの迷宮へ」


276以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:04:42gdc9acus (3/184)

善子「ある夏の日の夕暮れ時、私とルビィはあの時の路地が気になりふと足を止めた」

善子「夕立の後の蒸し暑い湿気の中、あの時と同じように奥から詰めたい風が吹き抜けていた」

善子「そしてルビィはまた吸い込まれるように、この薄暗いさびれた路地に入って行ってしまった」

善子「私も後を追う形でその路地へと入って行った」


277以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:05:52gdc9acus (4/184)

─路地─

善子「どうしたのよルビィ……ここはあのときの路地じゃない」

ルビィ「うん……」

善子「あんた、また近づかないでおいたほうがいいんじゃない?」

ルビィ「そうだね……」


ルビィは路地を気にしている。

さびれた住宅街にある細い道だ。

路地は薄暗く建物の合間を縫って夕陽が差し込んでいた。

エアコンの室外機から生暖かい風が吹いている。

あの時とまったく同じ……悪夢への入り口……


278以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:06:44gdc9acus (5/184)

善子「ルビィ、大丈夫だとはいえ、念のためここには近づかない約束でしょ? 帰るわよ」

ルビィ「善子ちゃん、ちょっと奥まで行ってみない?」

善子「ヨハネよ」

ルビィ「善子ちゃんもついてきて!」

善子「あんたねぇ、また大変なことになっても知らないわよ!」


私とルビィは以前、この路地に入り

バケモノが徘徊する夕暮れの日本屋敷のような迷宮をさまようことになったのだ。

そして命がけで脱出した。

ルビィだって、あの時の恐怖を忘れているはずがない。

これはおかしい……まるで誘い込まれているようだ。

まだあの時の出来事は終わっていなかったの?


279以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:08:05gdc9acus (6/184)

ルビィ「やっぱり夕暮れの街ってなんかいいね」

善子「ノスタルジックっていうのかしら、前もこんな話しながら入っていったわね」

ルビィ「あれ? エアコンの室外機の上に新聞が置いてあるよ?」

善子「新聞? 何かしら?」

ルビィ「読んでみようよ」

善子「今日のかしら……まだ新しいわね」


280以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:08:52gdc9acus (7/184)

善子・ルビィ「……」

善子「ふむふむ、どうやら100年以上前の神隠し事件の記事ね」

ルビィ「神隠し事件?」

善子「ええ、そしてたくさんの人がいなくなったみたい」

善子「そしてみんなは、バケモノのしわざだ……と口をそろえて言ったみたいね」

ルビィ「神隠し事件……怖いね……でもルビィたちもこの前、神隠しみたいなことあったよね」

善子「ええ、思い出したくもないわ」


281以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:09:31gdc9acus (8/184)

ルビィ「とにかく先に進もう、善子ちゃん!」

善子「ヨハネ」


シャリン……


足元で鈴の音がした。

見ると黒い猫が私たちの前を横切っていた。


ルビィ「あ、猫しゃん!」

善子「黒猫ね」

ルビィ「追いかけようよ!」

善子「ルビィ、気をつけて」

ルビィ「あれ? 猫しゃんいなくなっちゃった」

善子「あら? さっきまでそこにいたのに」

ルビィ「でもあっちに行ったよね! 行ってみようよ!」


あっち……まさか……


282以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:10:21gdc9acus (9/184)

薄暗い路地の先には細長く狭いトンネルがあった。

例のトンネルだ。

黒猫は待っているかのように私たちのほうを向いて座っていた。

そしてその猫はトンネルの中へと入っていった。


ルビィ「ここって……」

善子「ええ、あのトンネルよ」


古びた小さなトンネルで中には明かりがない。


善子「相変わらず暗いわね」

善子「中の様子がやっぱり分からないわ」

ルビィ「このライターを使おうよ」

善子「ええ、火の扱いには気をつけるのよ」


283以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:11:12gdc9acus (10/184)

善子「これで明るくなったわね」

ルビィ「中に入って行こうよ」

善子(たしかに花丸はもう大丈夫だと言っていた……)

善子(疑うわけではないけど、本当に大丈夫かしら……)

ルビィ「善子ちゃん、花丸ちゃんも大丈夫って言ってたから大丈夫だよ!」

善子「そうね、花丸の言うことを信じましょう」


私とルビィはトンネルの奥へと入っていった。


284以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:12:07gdc9acus (11/184)

善子「さすがに奥までは照らせないわね」

善子「手元や足元が見える程度ね」


コツン……コツン……


善子「足音が反響してちょっと怖いわね」

ルビィ「うん……」

善子「このトンネル、レンガでできてるのかしら」

ルビィ「……」


285以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:12:52gdc9acus (12/184)

善子「以前はここで鈴の音がしたのよね……」

善子「それで気がついたらあの変な世界にいた……」


シャン……


善子「そう、あの時とまったく同じ……」

善子「まったく同じ……?」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「まさか……ルビィ、奥はどうなってる!?」

ルビィ「行き止まりだよ」

善子「戻るわよ!」

ルビィ「うん!」


私とルビィは引き返してトンネルを出た。


286以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:13:23gdc9acus (13/184)

善子「出口に来たわ……でも」

ルビィ「あの時と同じだ」

善子「出口が……」


善子「さっきと違う……」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「ルビィ、私たちはまたこの世界に来てしまったのかもしれないわね」


トンネルから出ると先ほどの住宅街ではなかった。

森の中だ。

あの時と同じように地面にはたくさんの彼岸花が咲いている。


287以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:13:57gdc9acus (14/184)

ふと見ると黒猫が地面に横たわっていた。


ルビィ「あ、猫しゃん!」


私とルビィが黒猫に近づこうとしたその時だった……


頭の中に何かの映像が流れた。


288以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:14:29gdc9acus (15/184)

氾濫する川……


怒号する人々……


手をつなぐ二人の少女……


来ちゃダメ……叫び声……


そして森の中で何かが……


289以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:15:03gdc9acus (16/184)

善子「……何、今のは」

ルビィ「善子ちゃん……いまの何なの?」

善子「分からないわ……」

ルビィ「あれ? 猫しゃんがいない」

善子「あっちを探してみましょう」


私とルビィは森の奥へと進んでいく。


290以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:15:51gdc9acus (17/184)

奥へと進むと丘の上に神社のような建物があった。

彼岸花が咲き乱れ、地面を赤く彩っている。

夕陽はオレンジで建物から地面に影を落としている。

そして赤い大きな鳥居があった。


善子「あのときと同じね」

ルビィ「うん……」


ギィィィィ……


神社の扉は私たちを誘導するようにひとりでに開いた。


善子「入るわよ、ルビィ」

ルビィ「怖いよ、善子ちゃん」


赤い大きな鳥居をくぐり、彼岸花の中を進み、神社の中へと入る。


中にはやはり台座の上に鏡が置いてあった。


291以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:16:30gdc9acus (18/184)

善子「いくわよ」

ルビィ「またあんなところに……」

善子「ルビィ……」


鏡は光り出し、まわりの景色が変わった……


─影廊─


そこは先ほどの路地でも神社でもなく古びた回廊であった。

あの時と同じだ。

その暗闇の回廊はどこまでも続いていた……


292以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:17:50gdc9acus (19/184)

善子「真っ暗で何も見えないわね」

善子「ルビィ、ライターで明かりをつけて」

ルビィ「うん」ボッ

善子「これでまわりが少しだけ見えるわね」

ルビィ「真っ暗だよ……」


サッ……サッ……

善子「畳を歩く音すらもやっぱり怖いわね……」

ルビィ「うん……」

善子「襖があるわね、開けるわよ」


サァァ…………

善子「音を聞くだけで怖いわ」

ルビィ「はぁ……はぁ……怖い……」

善子「あっちは木でできた廊下ね」

善子「壁はやっぱり土壁かしら」


293以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:18:23gdc9acus (20/184)

ドタドタドタ……


善子「足音……ルビィ! あいつが来る!」

ルビィ「隠れなきゃ!」


ドタドタドタドタ


善子「こっちに近づいて来てるわよ!」


あたりを見ると行李(竹で編まれたカゴ、つづら箱)があった。


善子「その中に入るわよ!」

ルビィ「またこの中に隠れるんだね!」

善子「早く入って! ライターの火も消して!」


294以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:18:59gdc9acus (21/184)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


善子(すごく大きな足音よね……おそらくあのバケモノが走ってるんだわ)

ルビィ(怖いよ……)

善子(ルビィ、我慢して)

ルビィ(ちょっとだけ外が見えるね……それが逆に怖いよ)


隠れながら外を見ると

能面をつけ、手や足がいくつも生えている巨大な化け物が猛スピードで走りまわっていた。


ルビィ「ぴ、ぴぎゃぁぁぁ、んんんんっ……」

善子(大きな声を出さないでルビィ! 見つかったら○されるわよ!)


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


295以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:20:03gdc9acus (22/184)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


善子(はあ……ッ はあ……ッ)

ルビィ(はあ…はあ…はあ…)


ドタドタドタドタドタドタ…………


善子「通りすぎたわね……」

ルビィ「はあ……はあ……怖いよぉ……」

善子「ルビィ、よく我慢したわね……」

ルビィ「うん……」

善子(本当は私だって怖いわ……でも私が冷静でいなきゃ……ルビィまでパニックになっちゃう……)


296以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:20:35gdc9acus (23/184)

善子「ルビィ、花丸から連絡ない?」

ルビィ「うん、ないみたい」

善子「前はあったのに……」

ルビィ「やっぱり圏外になってる……誰かに連絡するのは無理そうだよ」


297以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:21:05gdc9acus (24/184)

善子「いい? ルビィ、覚えているわね?」

ルビィ「この世界、影廊のことだよね」

善子「ええ、前回と同じならやることは同じ」

善子「まずこの永遠に続く暗闇の迷宮を探索する」

善子「あのバケモノに捕まったら○されてしまう」

善子「私たちは身を隠しながらこの迷宮のどこかにある勾玉を5つ探し出して出口にある祭壇の台座に納める」

ルビィ「またこの暗闇の中を……」

善子「ええ……」


298以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:21:43gdc9acus (25/184)

ギィィ……タッ……タッ……


善子「木の廊下だから音がするわね」

ルビィ「うぅ……」

善子「相変わらずどこまでも廊下が続いてる……」

善子「部屋もたくさんあるわ」

善子「この部屋に入ってみましょう」


サァァァァ…………サッ……サッ……


善子「廊下から畳の部屋に入って足音が変わるのすら嫌ね」


299以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:22:15gdc9acus (26/184)

善子「徘徊者は視覚や聴覚を使って私たちを探しているわ」

善子「なるべく足音に気をつけましょう」

善子「大きな声も出さないようにね」

ルビィ「うん……」

善子「私たちが知っている徘徊者はあの3種類……ともう1種類」

ルビィ「前に会ったよね……」

善子「ええ……」


300以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:23:09gdc9acus (27/184)

善子「まずは廊下のあちこちにある燭台に火を灯しましょう」

善子「このろうそくの火は道しるべになるし、徘徊者が近づいてくると点滅して消える」

善子「だからなるべく点けてまわりましょう」

ルビィ「うん、さっそく火をつけていくね」

善子「ええ……」


ボッ……


ルビィ「少し明るくなったね」

善子「ルビィ……この広い回廊を進むわよ」

善子「……」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「大丈夫よ、私たちならできるわ」

ルビィ「……うん」


301以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:23:45gdc9acus (28/184)

シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「来たわね」

ルビィ「鈴の音だね」

善子「神楽鈴の徘徊者ね」

善子「おそらく索敵方法は視覚と聴覚」

善子「以前、拾った爆竹の音に反応していたもの」

ルビィ「近づいてくると廊下の明かりが点滅してる、ライターの火も」

善子「隠れるわよ、その台の裏に隠れましょう」

ルビィ「うん……」


302以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:25:35gdc9acus (29/184)

シャン……シャン……シャン……シャン……

善子「こっちに来てるわね」

ルビィ「ライターの火を消すよ」

善子「ええ、明かりが点いていたらバレてしまうわ」


シャン……シャン……シャン……シャン……

暗がりで身をひそめながら見ると

能面をつけ着物を着た徘徊者が神楽鈴を鳴らしながら歩いていた。

善子(神楽鈴の徘徊者……扉を蹴破るほどの力があることが分かっているわ)

善子(もし見つかれば、ただでは済まないはずよ)

ルビィ(善子ちゃん、あれ見て)

ルビィが指差すほうを見ると、燭台の火が消えていた

善子(やっぱり徘徊者が近づくと火が消えるみたいね)

善子(とにかくやり過ごしましょう)

善子(見つかったら襲い掛かってくるわ)

ルビィ(うん……)


303以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:26:21gdc9acus (30/184)

善子(はあ……はあ……)ドクン……ドクン……

ルビィ(はあ……はあ……)ドクン……ドクン……


シャン……シャン……シャン……シャン……


シャン……シャン……シャン……シャン……


…………


善子「どこかに行ったわね」

ルビィ「またろうそくの火がついたね」

善子「やっぱり近づいてくると火が消えるわね」


304以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:27:00gdc9acus (31/184)

善子「いまみたいにやり過ごしながら勾玉を5つ探すわよ」

ルビィ「うん……」


サッ……サッ……


私たちが歩いていると壁に貼り紙があるのを見つけた。


善子「何かしら? これ」

ルビィ「前はこんなの見なかったよね」


305以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:27:43gdc9acus (32/184)

貼り紙にはこう書かれていた。


あなたたちの身に何が起こったか理解できず混乱しているかもしれないけれど

どうか私の言うことを信じてちょうだい。

奴らに見つかる前に、すぐにそこから移動してほしいの。

もし見つかってしまえば、きっとあなたたちの命はないわ。

ここから脱出するためには、勾玉を集めて祭壇に納める必要があるわ。

勾玉は鍵の掛かった部屋や、泣き声の主の近くに置いてある可能性が高いわ。

そして、コンパスを探すのよ。

コンバスの針が指す方向に祭壇があるわ。


私はこの回廊の奥で、あなたたちを待っているわ。

私たちがこの世界から出るためにも、あなたたちの協力が必要なの。

あなたたちと生きて会えることを願っているわ。


─ K


306以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:28:29gdc9acus (33/184)

善子「私たち以外にもこの迷宮に迷いこんだ人がいるみたいね」

ルビィ「うん……それにヒントもくれたね」

善子「前回はそうなんじゃないかと考えながら進んでいたけど、これではっきりしたわね」

善子「勾玉とコンパスを探すわよ」

ルビィ「うん」


私たちは迷宮を進んでいくことにした。


307以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:29:50gdc9acus (34/184)

ドタドタドタドタドタドタドタ……

善子「また走ってるやつがいるわね」

ルビィ「相変わらず怖いよ」

善子「足音のバケモノ……足が速いから見つかったら終わりよ」

ドタドタドタドタドタドタドタドタ

善子「足音がするだけね」

善子「壁の向こう側の廊下を走っているのかしら?」

ルビィ「でもこっちに来てるよね」

善子「隠れましょう」

ルビィ「うん」

ドタドタドタドタドタドタドタドタ

バァァァァンンン!!!!

善子(!?)

ルビィ「うっ……」

善子(ルビィ、我慢して!!)


308以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:30:27gdc9acus (35/184)

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ


バァァァァンンン!!!!


バァァァァンンン!!!!


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ



善子(お願い……早くどこかに行って……)

ルビィ「ハアッ……ハアッ……」


ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ…………


…………


309以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:30:58gdc9acus (36/184)

善子「……どこかに行ったわね」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


善子「どこかの襖や扉を蹴破って走っているようね」

善子「やっぱり見つかれば命はないわ」

ルビィ「うう……」


善子(本当は私だって怖いわ……)

善子(ここから脱出するには……私がしっかりしなきゃ……)

善子(私がルビィを守らなきゃ……)


310以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:31:36gdc9acus (37/184)

善子「とにかく、タンスや棚を調べながら進みましょう」

ルビィ「うん……」

善子「タンスを開けるわよ」


サァ……


善子「これは……ひかり石ね」

ルビィ「前に使ったよね。 敵しゃんにはこの石の光が見えないんだよね」

善子「ええ、これは道しるべや目印、緊急時の光源として使えるわ」

ルビィ「うゆ、でも数に限りがあるよ」

善子「ええ、とりあえず通った場所で隠れられそうな場所に置いていきましょう」


311以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:32:12gdc9acus (38/184)

善子「次はこっちの棚ね……これは……手鏡ね」

ルビィ「これも前にも使ったよね。 どういうわけか他の場所に飛べるんだよね」

善子「ええ、他の部屋にワープできる……」

ルビィ「今回も使えるかな?」

善子「分からないわ……とにかく緊急時のために取っておきましょう」

ルビィ「こっちには爆竹があるよ」

善子「それも敵の気を引くためのものね。 取っておきましょう」


312以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:32:45gdc9acus (39/184)

善子「見てあれ」

ルビィ「また火が揺らめいてるね」

善子「あっちに何かいるみたいね」

ルビィ「それなら別の道を通ろうよ」

善子「そうね、他の道を探していきましょう」

善子「方角も現在地も分からないこの迷宮ではコンパスが必要よ、コンパスを探して勾玉を集めましょう」

ルビィ「うゆ」


313以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:33:17gdc9acus (40/184)

善子「広い部屋に出たわね」


グス……グス……


ルビィ(善子ちゃん!)

善子(ええ、分かってる……女の子の泣き声がするわ)

ルビィ(泣き声の主って子だね)

善子(ええ、近くに勾玉があるかもしれないわ)

善子(でも気をつけて、前に分かったことだけど、泣き声の主は耳が良いみたい)

ルビィ(うゆ、歩いて近づくと居場所がバレちゃうんだよね)

善子(ええ、慎重に近づくわよ)


グスン……グスン……


ルビィ(怖いよ、善子ちゃん)

善子(……)


314以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:34:04gdc9acus (41/184)

ルビィ(そぉっと……そぉっと近づいて……)


サッ……


ドコニイルノ……


ルビィ(ぴぎぃ!? 気づかれちゃった!?)

善子(ルビィ落ち着いて! 大丈夫よ)

ルビィ(う、うゆ……)

善子(勾玉はどこかしら……あった、あれね)


見ると泣き声の主の目の前の台座に緑色に光る勾玉が置いてあるのが見えた


315以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:34:50gdc9acus (42/184)

善子(いい? 爆竹で誘導するのよ)

善子(泣き声の主は音がするほうを見にいくわ)

ルビィ(うゆ……怖いよ……)

善子(もし別の徘徊者が来た時、隠れられるようにしましょう)

善子(近くに隠れられそうなところは……あの後ろね)

ルビィ(うゆ……)

善子(火を点けて……爆竹を投げて音が鳴りはじめたら、慎重に移動して勾玉を取るわよ)

ルビィ(うん……)


316以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:35:33gdc9acus (43/184)

善子(投げるわよ……)ヒョイ



……


パチパチパチパチパチ……


グスン……グスン……


グス……グス……


善子(あっちに誘導できてるわ、今のうちに勾玉を取ってここから離れましょう)

ルビィ(うん……)


私とルビィは勾玉を取ると、この場から立ち去った……


317以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:36:12gdc9acus (44/184)

ルビィ「ぴぎぃ……怖かったよぉ……」

善子「これで勾玉1つゲットね」

ルビィ「あと4つ必要だね」

善子「ええ、この勾玉を祭壇に納めて脱出よ」

ルビィ「うゆ」


私たちは暗闇の廊下を歩いていく……


318以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:36:58gdc9acus (45/184)

善子「ここの棚には……鍵が置いてあるわね」

ルビィ「善子ちゃん、こっちの扉は鍵がかかってて進めないよ」

善子「じゃあ、この鍵を使いましょう」


ガチャ


鍵は1回しか使えない……使うとボロボロになって使えなくなってしまう……


善子「1回しか使えないのが不便よね……」

善子「それより、この部屋には勾玉がある可能性があるわ」

ルビィ「善子ちゃん、あったよ」

善子「これで2個目ね。 今のところ順調よ」


319以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:37:32gdc9acus (46/184)

カナカナカナカナ……


善子「……窓から夕陽が差し込んでる」

善子「ヒグラシの声も聞こえてくるわね」

ルビィ「っていうことは迷宮の隅っこに来たってことだね」

善子「ええ、そういうことになるわね」

善子「ここのろうそくにも火を点けて……あら?」

ルビィ「どうしての善子ちゃん?」

善子「……階段がある」

ルビィ「え?」

善子「上に行けるようになってるわね」

ルビィ「何だろう? 今までなかったよね?」

善子「ええ……」

ルビィ「どうするの善子ちゃん……」

善子「行ってみましょう」

ルビィ「ええっ!? もし敵しゃんがいたらどうするの!?」


320以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:38:10gdc9acus (47/184)

善子「たしかに……いま襲われたら手鏡以外に頼れるものがないわ……」

善子「でも上が気になるのもたしかね……」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「行くわよ……」

ルビィ「そんな……」


私とルビィはおそるおそる上がっていく……


善子「特に広くない、何もないわね……あら?」

ルビィ「何かあったの?」

善子「あれを見て?」

ルビィ「祭壇……?」


321以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:38:54gdc9acus (48/184)

ルビィ「じゃあここが出口ってこと?」

善子「いえ、何か違うわね」

善子「この前見たときと違う……何かしら……何かが置いてあるわね」

ルビィ「怖いよ善子ちゃん……壁に鬼のような顔の面が飾ってある……」

善子「ルビィ、その下を見て……何かがあるわ」

ルビィ「善子ちゃん、近づくの? 危ないよ!」


私とルビィは慎重に面が飾られている祭壇に近づく……


322以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:39:35gdc9acus (49/184)

善子「これは……勾玉?」

ルビィ「え……? でもルビィたちが集めてる勾玉とは何か違うね」

善子「ええ……大きさは私たちの集めている勾玉より大きいし、色も緑じゃなくて茶色ね……」

ルビィ「なんだろうね、これ……ルビィたちが脱出するのに何か関係があるのかな?」

善子「分からないわ……持っていきましょう」

ルビィ「大丈夫かな……取った瞬間、お化けしゃんとか出てこない?」

善子「……取るわよ」

ルビィ「……」

善子「……」

善子「何も起きないわね」

ルビィ「よかった……」

善子「この大きな勾玉も持っていくわよ」

ルビィ「うゆ」


私たちは祭壇から出て階段を下り、再び迷宮を探索する。


323以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:40:12gdc9acus (50/184)

現状、2人が分かっている徘徊者の情報

・神楽鈴の徘徊者
鈴の音を鳴らしながら歩き回る着物を着た徘徊者
顔に能面をつけている
探知方法は視覚と聴覚

・走り廻る徘徊者
手や足のたくさん生えた異形の姿をした徘徊者
顔に能面をつけている
大きな足音を立てながら走りまわっている
足が速いため、もし追いかけられれば逃げ切るのは困難だろう
探知方法は視覚と聴覚(主に視覚)

・泣き声の主
すすり泣きながら暗闇にひそんでいる少女の姿の徘徊者
顔に能面をつけている
探知方法は聴覚(かなり敏感に音に反応する)
爆竹で気を引くのが有効

・憎悪を振りまく影
着物を着た女性の姿をし、おぞましい叫び声を上げながら迫ってくる敵
顔に能面をつけていない
見ると呪いの力で命を削り取られる
探知方法は不明
撒く方法も不明
以前は花丸ちゃんのおかげで助かったが……


324以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:40:50gdc9acus (51/184)

善子「この棚には……これは……あったわ! コンパスよ!」

ルビィ「やったね!」

善子「それにしても変わった形のコンパスよね」

ルビィ「それで、どっちに祭壇があるの?」

善子「あっちね、ここからは祭壇を目指しながら勾玉を集めましょう」

善子「それが一番効率がいいわ」

善子「もし祭壇に辿り着いても勾玉がなかったら引き返せばいいだけだもの」

ルビィ「うゆ、先に祭壇を見つけても近くで勾玉を拾えばいいもんね」

善子「それに……あいつが出てくるかもしれないからね……」

ルビィ「……まさか」


325以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:41:38gdc9acus (52/184)

善子「あのおぞましい○気を放つあのバケモノよ」

ルビィ「ひぃ……」

善子「あのバケモノは他の徘徊者とは何かが違うわ」

善子「そして撒くことはできない……前回は花丸のおかげで助かったけど……今回はどうなるか分からないわ」

ルビィ「ど、どうしよう善子ちゃん……ルビィたち……」

善子「この前は5つ目の勾玉を取ったら出てきたわ」

善子「それを考えると、祭壇すぐ近くで5つ目の勾玉を取る必要があるわ」

ルビィ「ひぃぃ……無理だよ……こんな広い迷宮で……」


326以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:42:13gdc9acus (53/184)

善子「念のため古いカメラも探しておきましょう」

ルビィ「フラッシュバルブ式のカメラだよね」

善子「ええ、電球の入れ替えに時間がかかるけど……強い光で目眩ましできるわ」

善子「作戦はこうよ」

善子「あいつが出てきたらコンパスを頼りに祭壇に向かって走る」

善子「すぐ近くに祭壇があることを想定しているわ」

善子「そして出くわしたらカメラのフラッシュで目眩ましよ」

善子「そして祭壇に辿り着いたらすぐに勾玉を納めて祭壇の奥の鏡から脱出よ」

ルビィ「うゆ……怖いよ善子ちゃん……」

善子「大丈夫よルビィ……私たち2人ならできるわ」


善子(本当は私だって怖いわ……でも私がしっかりしなきゃ……ルビィはどうなるの……)

善子(一緒に脱出する……強い気持ちを持つのよ……)


327以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:42:49gdc9acus (54/184)

ルビィ「善子ちゃん、ここにも勾玉が置いてあるよ」

善子「ええ、これで3つ目ね」

ルビィ「カメラも見つけたよ」

善子「ええ、持っていきましょう」

善子「コンパスはあっちね」

ルビィ「うゆ……怖いよ……勾玉を集める度に、あのお化けしゃんが来るかもって……」

善子「……」


328以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:43:21gdc9acus (55/184)

善子「鍵のかかった部屋ね……」

ルビィ「ここにも勾玉あるかな?」

善子「ここから部屋の中を覗けるわ……勾玉あるわね」

ルビィ「うゆ、でも鍵がないよ」


シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「ちょうど来たわね」

ルビィ「まさか善子ちゃん……」

善子「ええ、今回もやるわよ」

善子「ルビィ、隠れられる場所はある?」

ルビィ「この台の裏かな?」

善子「分かったわ、爆竹を部屋に投げるわよ」


シャン……シャン……シャン……シャン……


329以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:44:06gdc9acus (56/184)

善子「……えい!」ヒョイ


……


パチパチパチパチパチ……


シャンシャン……シャン……シャン……


善子(隠れるわよ!)

ルビィ(うゆ!)


善子(これで音が鳴っている部屋の中を探すはずよ)

善子(鍵のかかった扉を蹴破ってもらうわ)


330以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:44:38gdc9acus (57/184)

シャン……シャン……シャン……シャン……


ドン……ドンドンドン……バァァァァァァァンンンン!!!!


ルビィ(ぴぎぃ!?)

善子(ルビィ! 我慢して! それにしてもすごい力ね……扉が木っ端みじんよ……)

ルビィ(はあ……はあ……)


シャン……シャン……シャン……シャン……


シャン……シャン……シャン……シャン……


331以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:45:21gdc9acus (58/184)

ルビィ「どこか行ったね」

善子「ええ、この方法なら鍵を使わずに扉を開けられるわね」

ルビィ「ルビィは怖いからあまりやりたくないよ……」

善子「これで勾玉は4つ……」

善子「次は祭壇を探すわよ、そのあと5つ目の勾玉よ」

ルビィ「うゆ……」


332以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:45:55gdc9acus (59/184)

ルビィ「はあ……ッ はあ……ッ」

善子「ルビィ、大丈夫? 息が荒いけど……」

ルビィ「大丈夫だよ……」


善子(ルビィは無理してる……私もきついけど……)

善子(広い暗闇の迷宮……命の危機と隣り合わせ……疲労困ぱいなんだわ……)


333以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:46:33gdc9acus (60/184)

善子「あった! 祭壇よ! あとは戻って近くで勾玉を拾うだけ!」

ルビィ「うゆ! やったね!」

善子「5つ目の勾玉を探すわよ!」


────

──


ルビィ「見て善子ちゃん! ここにあるよ!」

善子「あった! ……でも気をつけて、あいつが来るかもしれない」

ルビィ「うゆ……」

善子「取るわよ……」


……


善子「……」

ルビィ「……」


334以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:47:08gdc9acus (61/184)

善子「あれ? 来ない?」

ルビィ「よかった……」

善子「来ないならそれでいいわ……よかった……」

ルビィ「祭壇の位置も分かってるし、戻ろう!」

善子「ええ、これで脱出よ」


善子「……」


善子「あの貼り紙……」


善子「……Kって誰だったのかしら」


ルビィ「善子ちゃん! はやく!」

善子「ええ、いま行くわ」


335以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:48:00gdc9acus (62/184)

ルビィ「祭壇に着いたよ」

善子「勾玉を納めるわよ」

ルビィ「うゆ」

ギィィィ……

目の前の扉が開いた

善子「あそこにある鏡に触れれば脱出よ!」

ルビィ「やった! 行こう善子ちゃん!」

善子「ええ!」

次の瞬間だった……

シャン!!

私とルビィは落とし穴に落ちた……

下は川になっていて流されていく……

怪我はしなかったけど……

このままどこまで行くのかしら……

────
──


336以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:49:56gdc9acus (63/184)

川が氾濫し、すべてのものが流される……

そんな光景が見えた……


────

──


目が覚めると、知らない場所にいた。

ルビィも一緒にいる……私たち助かったのね……

どうやら流されてここに来たみたい……


目の前にあの時の黒猫がいる。


善子「もしかして……あなたが助けてくれたの……?」

善子「……そんなわけないか」


337以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:50:34gdc9acus (64/184)

よく見ると鍵をくわえている……

猫はその鍵を地面に置いた。


善子「くれるの……?」


シャリン……


猫は鈴を鳴らしてどこかへと歩いて行ってしまった……


338以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:51:10gdc9acus (65/184)

善子「何だったのかしら……」

善子「そうだ……ルビィ、起きて」

ルビィ「うゆぅ……まだ眠いよ、おねいちゃぁ……」

善子「起きなさい」

ルビィ「……あれ? 善子ちゃん……」

善子「ルビィ、まだ脱出できていないわよ」

ルビィ「そんな……」


339以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:51:43gdc9acus (66/184)

見渡すとそこは洞窟のような場所だった。

川が流れ、地面はぬかるんでいる。

よく見ると川の端は何か白いもので埋め尽くされている。


ルビィ「なんだろうこれ……」

善子「これって……」


善子「骨……」

ルビィ「ピギィ!?」

善子「大量の骨が水に流されてきているんだわ」

ルビィ「善子ちゃん……何ここ……」

善子「分からないわ……とにかくここから出る方法を探すしかないわね」


340以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:52:13gdc9acus (67/184)

─???─

善子「とにかく歩いていくわよ……こんなところに鉄格子の扉がある……」

ルビィ「あっちで鍵拾ったよ」

善子「鍵は2個ね……開けていきましょう」

ルビィ「うゆ……」


ガチャ


小さな川になっている道を進んでいく……足元はびしょびしょだ……


善子「さっきみたいに何か使えるものがないか探しながら進みましょう」

ルビィ「うゆ……あ、善子ちゃん! あっちに何かあるよ」

善子「地面ね……こっちの川は深くて進めないわ……そっちに行くしかなさそうね」


341以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:53:04gdc9acus (68/184)

善子「ここは何かしら……」

ルビィ「うゆ……善子ちゃん、レバーがあるよ?」

善子「引いてみましょう」


ザァァァァ……


善子「何の音かしら……」

ルビィ「善子ちゃん! 水が流れる音じゃない?」

善子「水……あっちに行ってみましょう」


342以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:53:37gdc9acus (69/184)

善子「川の水がなくなってる……」

善子「あっちで水をせき止めていたのね」

ルビィ「あのレバーを引けば水がなくなるんだね」

善子「ええ、これで前に進めるわ」

ルビィ「これどこに向かってるんだろう」

善子「分からないわ、とにかく進んでこの世界から脱出する方法を考えるしかないわね」

ルビィ「うゆ……」


343以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:54:09gdc9acus (70/184)

善子「こっちに棚があるわ……カメラもあるわね」

ルビィ「懐中電灯もあるよ」

善子「らせん階段ね……地の底まで続いているみたい……」

ルビィ「怖いよ……」

善子「こっちで鍵が使えそうよ」

ルビィ「ここを開けて……」


344以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:54:46gdc9acus (71/184)

善子「うわ……」

ルビィ「床から下が見えるね……」

善子「足を踏み外して落ちないように気をつけましょう」

ルビィ「下がどうなってるか見えないね……」


善子「あそこに鍵が2つぶら下がってるわ」

ルビィ「こっちの扉は鍵がかかってるよ」

善子「あの鍵を取って進まなきゃ……」


善子「あっ……」


チャリン……

鍵は暗闇の中に消えていった……


345以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:55:18gdc9acus (72/184)

善子「1個落としちゃった……」

ルビィ「善子ちゃん……」


善子(気が張ってて分からなかったけど、私もかなり疲れてるみたいね……鍵を落とすなんて……)

ルビィ「だ、大丈夫だよ、1個残ってるし」

善子「え、えぇ……持っていきましょう」


346以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:56:12gdc9acus (73/184)

善子「ここは……この板が橋になっているのね」

ルビィ「こんな細い板を渡るの!?」

善子「それしかないわ……」

ルビィ「おねいちゃぁ……」


板の下は真っ暗闇……落ちればただでは済まない……


善子「ここを渡って……」

ルビィ「はぁ……はぁ……」

善子「ルビィ、大丈夫?」

ルビィ「うゆ……」


347以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:56:42gdc9acus (74/184)

私たちは道を進んでいく……

すると、突如、後ろで扉を蹴破る音がした!


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「ってちょっと!? 急に鈴の徘徊者が出てきたじゃない!?」

ルビィ「善子ちゃん! 逃げなきゃ! 捕まっちゃうよ!」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


348以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:57:15gdc9acus (75/184)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「あの部屋! 鏡があるわ!」

ルビィ「出口かな!?」

善子「中に入るわよ!」


ガチャガチャ……


善子「扉に鍵がかかってる!?」

ルビィ「ええ!?」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「このままじゃ追いつかれる!!」

ルビィ「やだぁ!!」


349以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:57:51gdc9acus (76/184)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「この部屋以外逃げる場所がない、他に道も部屋もない」

善子「私が鍵を落としたからだわ……」

ルビィ「善子ちゃんのせいじゃないよ!」

善子「でもルビィ……ごめんなさい!!」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


350以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:58:22gdc9acus (77/184)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「ああ!! ○ぬ……」

ルビィ「もうダメ!!!!」


チャリン……


善子「えっ……鍵……」


さきほどの黒猫だ。

どうやら鍵を拾ってくれたようだ。


善子「ありがとう猫ちゃん!! ルビィ! 扉を開けるわよ!!」

ルビィ「ピギィ!? 猫しゃんも逃げて!!」


351以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:59:05gdc9acus (78/184)

善子「ああぁ!! 手が震えて鍵がハマらない!!」

ルビィ「善子ちゃん!!」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「お願いはやく!!」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


ガチャ


善子「開いた!! 飛び込むわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは部屋に入ると鏡に触れた。

一瞬で景色が別の場所に変わる。

どこかへと移動できたようだ。


352以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 10:59:39gdc9acus (79/184)

善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」

善子「……」

ルビィ「猫しゃんありがとう……」

善子(正直、もう終わったと思っていたわ……でもなんとかなった……)


善子「問題は……」


善子「まだこの世界から脱出できていないということね」


ルビィ「ぴぎぃ……」


353以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:00:09gdc9acus (80/184)

私たちは懐中電灯で前を照らしながら先を進む……


すると……


オオオオオオオオオオオオァァァァァァァァァ!!!!


どこからともなくあのおぞましい叫び声が聞こえてくる……


善子「嘘でしょ……この状況で……あの○気が……」

ルビィ「もうやだぁ……」


354以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:00:47gdc9acus (81/184)

善子「とにかく先に進むしかないわ……」

ルビィ「うゆ……」

善子「あら? ここは開けてる場所ね……」

ルビィ「うゆ……あの岩の上に鍵があるよ」

善子「気をつけてルビィ……」


ルビィが鍵を取ったその瞬間……


オオオオオオオオオオオオァァァァァァァァァ!!!!


ルビィ「ピギィ!? 出たぁぁぁぁ!!!!」

善子「逃げるわよルビィ!!!!」


355以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:01:25gdc9acus (82/184)

それは突然現れた!!

能面をつけていない、着物を着た女性の姿のバケモノが甲高い叫び声をあげながら近づいてくる!!


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


おぞましい○気が近づいてくる!!


356以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:01:57gdc9acus (83/184)

善子「はあッ……!! はあッ……!!」

ルビィ「はあッ……!! はあッ……!!」


善子「走って!! とにかく逃げるのよ!!」

ルビィ「ぴぎゃあぁあああああ!!!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


357以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:02:34gdc9acus (84/184)

ルビィ「ピギィ!! 怖いよお!!」


ルビィは恐怖のあまり後ろを振り向いてしまう。


ルビィ「はあ……ッ はあ……ッ!!」


善子「見ちゃダメよルビィ!! 目を合わせれば呪いの力で命を削り取られるわ!」

ルビィ「うう……!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


358以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:03:09gdc9acus (85/184)

善子「そのカメラのフラッシュで目眩ましをするのよ!!」

ルビィ「カメラ!!」

善子「いい? 1回使うごとに電球を取り替えなきゃいけないわ!」

善子「連続でカメラは使えないの!」

ルビィ「うん!」

善子「つまり、後ろを見ずに走って、あいつが近づいてきたのを察知したら、すかさず振り向いてシャッターを切るのよ!」

善子「そうしなければ電球を切り替える前に追いつかれるわ!」

ルビィ「ぴぎぃ!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


359以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:03:49gdc9acus (86/184)

ルビィ「いやああああ!! 怖いよおおおお!!」


パシャ


オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


凄まじい光が放たれるとバケモノは叫び声をあげた!!

目が眩んでいるようだ!

動きが止まっている今のうちに逃げられるかもしれない。


360以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:04:21gdc9acus (87/184)

善子「ルビィ!! 逃げるわよ!!」

ルビィ「もう無理!! 走れない!!」

善子「走らなきゃ生きて帰れないわ!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


バケモノはまた動き出す……


善子「はあッ……!! はあッ……!!」

ルビィ「はあッ……!! はあッ……!!」


361以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:05:07gdc9acus (88/184)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


ガチャガチャ……


ルビィ「善子ちゃん、この扉、鍵がかかってるよ!!」

善子「開けてルビィ!!」

ルビィ「あわわわ……手が震えて開けられない……!!」

善子「はやく!! 追いつかれるわよ!!」


ガチャ


ルビィ「開いたよ!!」

善子「入って!! 走り続けて!!」


362以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:05:42gdc9acus (89/184)

善子「はあッ……!! はあッ……!!」

ルビィ「はあッ……!! はあッ……!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


善子「近づいてきたわ!! ルビィ!! カメラの用意よ!!」

ルビィ「うゆ!!」


パシャ


オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


善子「すごい叫び声……ッ!!」

ルビィ「ぴぎぃ……もう無理だよ!!」


363以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:06:23gdc9acus (90/184)

ルビィ「善子ちゃん!!」

善子「細い板でできた橋……これを渡るの!? こんなところじゃ走れないわよ!!」

ルビィ「ぴぎぃ……!!」

善子「ルビィ、カメラを私に渡して」

ルビィ「善子ちゃんは……?」

善子「あんたが先に行きなさい」

ルビィ「そんな……ッ!!」

善子「はやく!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


364以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:07:05gdc9acus (91/184)

バケモノは地面を這いながら迫ってくる!!


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」

善子「ルビィ、先に行って!!」


善子「十分に引きつけて……」


パシャ


オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


ルビィ「はあ……ッ!! はあ……ッ!!」

善子「はあッ……!! はあッ……!!」


365以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:07:38gdc9acus (92/184)

善子「渡ったわ!! もっと先に走って!! まだ追ってくるわ!!」

ルビィ「はあッ……!! はあッ……!! もう無理だよ!!」

善子「走ってルビィ!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


366以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:08:15gdc9acus (93/184)

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!」

善子「どうしたのルビィ!!」

ルビィ「行き止まりだよ!! 善子ちゃん!!」

善子「えっ!!」


私とルビィが走っていくとその先は行き止まりだった……

他に逃げられそうな場所もない……


367以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:08:47gdc9acus (94/184)

善子「嘘でしょ!?」

ルビィ「もうダメ!!」


善子(今度こそおしまい……ごめんねルビィ!)

善子(前は花丸が助けてくれたけど……)


善子(みんなごめん……)



ドォォォォォンンンン!!!!


────

──


368以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:09:18gdc9acus (95/184)

善子「あれ……?」

ルビィ「時が……止まってる?」

善子「もしかして……花丸?」

ルビィ「花丸ちゃぁ……」


カンッ!!


上からはしごが……


???「あんたたち!! 大丈夫!? こっちに来なさい!!」


善子「ルビィ!! はしごをのぼるわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私とルビィははしごをのぼっていった……


────

──


369以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:09:50gdc9acus (96/184)

???「そして時は動き出す」


おぞましい○気はどこかへと消え去った……


???「はあッ……はあッ……」


そこには1人の少女がいた。

背を向けて、息を切らしている。

あの少女が助けてくれたようだ。


善子「た、助けてくれてありが……」


???「それ以上近づかないで!!」


ルビィ「ぴぎぃ!?」


370以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:10:28gdc9acus (97/184)

???「最初に言っておくわ……あなたたちと馴れ合うつもりはないわ」


善子「あなたが……あの回廊に貼り紙をした K ね?」

ルビィ「この人が Kしゃん?」

K「ええ、そうよ……」


Kはそう言いながら振り向く。


善子「っ!? あなた、その顔の面……」


Kは徘徊者たちと同じ能面をつけていた。


371以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:11:11gdc9acus (98/184)

K「この面ね、呪いのようなものよ……彼女に会えば、あなたたちもすぐに分かるわ」


ルビィ「彼女……?」


K「この世界から出る方法を知るとしたら、彼女だけでしょうね」


善子「その彼女って子に会えば出られるのね?」


K「ええ、普段は道が閉ざされていて会うことはできないけれど……」

K「あなたたちなら話は違うわ」

K「ついてきて」


372以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:11:47gdc9acus (99/184)

Kについていくと、遠くに不思議な建物が見える場所に来た。

建物のまわりは水で囲まれている。

その建物には鳥居があり、まるで大きな神社のようだった。


K「そこで止まりなさい」

K「あそこよ」


どうやらあの建物に彼女とやらがいるらしい。


K「最奥の部屋で、彼女があなたたちを待っているわ」

K「直接出口を聞きに行くというのなら、止めはしないわ」


373以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:12:21gdc9acus (100/184)

K「だけどね、1つ忠告しておくわ。あの子の口車には絶対に乗ってはダメよ」


善子「口車……?」

ルビィ「うゆ……」


K「あと、そこにある水晶玉も持って行きなさい」

K「私の力を閉じ込めてあるわ」


善子「力を閉じ込めてある……?」


K「危なくなったら使いなさい。水晶玉が割れると十数秒、時が止まるわ」

K「それとこれはさっき拾った大勾玉よ」

善子「大勾玉……回廊の2階で拾った何かが違う勾玉ね……これはいったい」

K「さあ、私にも分からないわ」

善子「K、あなたって一体……」


374以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:13:11gdc9acus (101/184)

そのときだった……


オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


ルビィ「ぴぎぃ!?」

善子「この声は……さっきの……」


K「あの面なしの怪物はあなたたちを追っているわ」

K「他の徘徊者とは一線を画している得体のしれない奴よ」

K「命が惜しいのなら、早く行きなさい」


善子「ありがとう、行くわよルビィ!!」

ルビィ「うゆ、Kしゃんありがとう!」

────
──


375以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:13:54gdc9acus (102/184)

私とルビィはあの不思議な建物を目指して歩き出す。


善子「水がすごいわね」バシャバシャ

ルビィ「うゆ……」バチャバチャ


そして、赤い巨大な鳥居の前

つまり建物の前へと辿り着いた。


善子「おそらく中はまた迷宮になっているわ」

善子「ルビィ、あきらめないで行くわよ」

ルビィ「うゆ……」


376以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:14:46gdc9acus (103/184)

Kは一体何者なのだろうか……

そして、「彼女」とは……


「出口を知るとしたら彼女だけだ」


良い予感などしなかったが、私とルビィはその言葉だけを頼りに

暗黒の回廊へと足を踏み入れた……


377以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:15:17gdc9acus (104/184)

─???─


善子「またあの鈴の徘徊者とかがいるのかしら……」

ルビィ「うゆ……」

善子「中はまた広いわね……壁や床は木でできているのかしら……朱色に塗られているみたいだけど」


ギシ……ギシ……


善子「足音も鳴るわね……どんな徘徊者がいるか分からない以上、慎重に行きましょう」

ルビィ「うぅ……」


378以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:16:00gdc9acus (105/184)

善子「おそらく今回も勾玉を5つ集めて祭壇に納めればいいはずよ」

善子「そして奥にいる彼女とかいう子に出口を聞けばいいんだわ」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「どうしたの……ルビィ」

ルビィ「ライターの火が……」

善子「えっ……揺らめいてる……」

ルビィ「うゆ……」

善子「燃料切れかしら……いや違うわね……」

ルビィ「徘徊者しゃん?」

善子「おそらく……近くにいるわ……」


379以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:16:33gdc9acus (106/184)

善子「でもおかしいわね……足音も鈴の音もしないわ」

ルビィ「よ、善子ちゃん……!!」

善子「ルビィ、大丈夫よ、落ち着いて隠れれば……」


ルビィ「後ろ……」

善子「ッ!?」


振り向くとそこには足音を立てずにゆっくりと歩きまわる異形の姿をした徘徊者がいた。

顔とおぼしき場所には他の徘徊者と同じように能面がついている。

足が数本生えており、まるで蜘蛛のようだ。


380以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:17:40gdc9acus (107/184)

善子「あんなところを歩いていたのね……」

ルビィ「怖いよ……」

善子「大丈夫、まだ気づかれていないわ」

善子「足音を立てずにそっちの台の裏に隠れましょう」

ルビィ「うゆ……」


徘徊者はゆっくりとゆっくりと私たちの目の前を通る……


381以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:18:15gdc9acus (108/184)

善子「……」ドクン……ドクン……

ルビィ「……」ドクン……ドクン……


善子(……すごく遅いわね)

ルビィ(あれならもし追いかけられても大丈夫だね)

善子(違うわ……まずアレの接近に気づかずに近寄られたらおしまいよ)

善子(廊下や角でバッタリ出会うわけにはいかないから接近に気がついたら隠れるしかないわ)

善子(さらにあいつの足が遅いことで、私たちは隠れなきゃいけない時間が長くなる)

善子(そうなればジリ貧よ)

ルビィ(ぴぎぃ……そっか……他の徘徊者しゃんもいるんだもんね……)

善子(ええ、しかも追いかけられたら、他の徘徊者と出くわすリスクもあるわ……)

ルビィ(怖いよ……ずっと隠れてなきゃいけないなんて……)


382以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:18:50gdc9acus (109/184)

善子「……」ドクン……ドクン……

ルビィ「……」ドクン……ドクン……


善子(足音がしないから近くにいるのか、遠くにいるのか分からないわ)

善子(確認するために顔を出せば見つかる可能性もある……)

ルビィ(はあッ……はあッ……)

善子(ルビィ、我慢して……)


ドクン……ドクン……


383以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:19:24gdc9acus (110/184)

善子「……」

ルビィ「……」


善子(どこかに行ったかしら……それさえも分からないわ)

ルビィ(うゆ……あ、ろうそくの火がつきはじめてるよ)

善子(ということはどこかに行ってるみたいね……)


善子「もう大丈夫……とはいえないわね」

ルビィ「なんで?」

善子「移動速度が遅いということは、私たちがいそいで探索すればまた出くわす可能性があるということよ」

善子「ジリ貧の状況で、焦ったりすることも許されないのよ」

ルビィ「ひぃぃ……」


384以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:19:54gdc9acus (111/184)

善子「とにかく先に進むわよ……」

ルビィ「うゆ……」

善子「コンパスはこっちを指しているわね」

ルビィ「さっきの徘徊者しゃんがどっちに行ったか分からないから、進むの怖いなあ……」

善子「そうね……あの徘徊者がいるだけでもプレッシャーね……」


善子「ここの棚も調べて……そっちのタンスには何かある?」

ルビィ「ううん……特にはないよ」


385以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:20:33gdc9acus (112/184)

ルビィ「あ、見て善子ちゃん! あそこに勾玉があるよ!」

善子「本当ね……でも取らないほうがいいかもしれないわね」

ルビィ「え?」

善子「前にもあったでしょ、あれはおそらく罠よ」

ルビィ「ぴぎぃ!?」

善子「そう、あの勾玉を取ろうとして部屋に入ったら奥から何かが飛び出してくるわ」

善子「そうでなければあんなところに勾玉を置いたりしないわ」

善子「前と同じなら奥から鈴の徘徊者が出てくるはずよ」

ルビィ「そんなぁ……」

善子「もしやり過ごしても、この迷宮の中に鈴の徘徊者が1体追加されることになるわ」

ルビィ「うゆ……」


386以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:21:09gdc9acus (113/184)

善子「ここの勾玉を取るなら隠れる場所を探さなきゃならないわね……」

ルビィ「でも徘徊者しゃん増えちゃうんだよね……」

善子「ええ、その分、脱出が難しくなるわ」

ルビィ「ひぃぃ……」

ルビィ「まだ勾玉1個も取ってないから、やめとこうよ」

善子「……そうね、後回しでもいいわね」

ルビィ「追いかけられずに済むよ……」

善子「あとで来るかもしれないけど」

ルビィ「ピギィ!?」


387以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:21:40gdc9acus (114/184)

善子「ほかの勾玉を取りにいきましょう」

善子「これだけ広い回廊よ、他にも勾玉があるはずだわ」

ルビィ「うゆ……」

善子「コンパスはこっちを指してるから……」


ドコ……ドコニイルノ……ドコニイルノ?


ルビィ「ぴぎぃ!?」

善子「ルビィ、静かにして」

善子「泣き声の主よ……耳がいいから気をつけて」


ドコニイルノ……ドコニイルノ……


388以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:22:12gdc9acus (115/184)

善子「泣き声の主はろうそくの火が揺らめかないからどこにいるか分かりにくいわね」

ルビィ「うゆ……どこにいるんだろう?」


ドコ……ドコニイルノ……


ドコニイルノ?


善子「!? しまった!! 目の前にいるわ!! 廊下を歩いていたんだわ!!」

ルビィ「ぴぎゃぁ!? なんで普通に廊下を歩いてるの!?」

善子「暗くて見えなかった!! まさかここまで接近されているなんて!!」


ドコニイルノ!!


389以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:22:52gdc9acus (116/184)

善子「見つかった!! 逃げるわよルビィ!!」

ルビィ「うゆ!!」


ドコニイルノ!!


善子「追ってくるわ!! すごく足が速いわね!!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!」

善子「ルビィ!! そこの扉閉めて!!」

ルビィ「分かったよ!!」


390以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:23:27gdc9acus (117/184)

ドコニイルノ!!


ダンッ!! ダンダンダンッ!! バァァァァァァァンンンン!!!!


善子「扉を蹴破ってきた!!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!! すごい力だよ!!」


善子「しかも待って!! 向こうに何かいる……あれは!!」

ルビィ「足音が鳴らない徘徊者しゃんだよ!!」

善子「まずい!! はさみうちされてしまうわ!!」


ドコニイルノ!!


391以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:24:00gdc9acus (118/184)

善子「このままだとあの忍び寄る徘徊者にもバレるわ!!」


バレた────ッ!?


アヒャヒャヒャヒャヒャ!!


その異形の化け物は飛び跳ねながら追いかけてきた!!


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!! あっちの徘徊者しゃんは笑いながら追いかけてくるよ!!」

善子「もうダメ!!」


そのとき私は Kから渡された水晶玉を無造作に投げた!

無駄だと分かっていても抵抗するつもりで振った手だった。

水晶玉は手から投げ出され、床に落ちて割れた!


パリィィィィィンンンン!!!!


キュキュキュキュキュキュ……


392以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:24:37gdc9acus (119/184)

善子「はあ……はあ……時間が……止まった……!?」


見ると徘徊者たちは動かなくなっていた。


ルビィ「善子ちゃん!! 今のうちに逃げよう!!」

善子「そ、そうね! 今のうちに逃げるわよ!!」


私とルビィはその場から走り去った……


そして時は動き出す……


393以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:25:07gdc9acus (120/184)

善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」

善子「なんとか撒いたわね」

ルビィ「うゆ……もうダメかと思ったよ……」

善子「Kのおかげで助かったわ……」

ルビィ「怖かったよ……」

善子「ここは前の回廊と違って接近に気づきにくい敵が多そうね……気をつけましょう」


私とルビィは再び廊下を進んでいく……


394以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:25:38gdc9acus (121/184)

現状、2人が分かっている徘徊者の情報

・忍び寄る徘徊者
音もなく回廊をゆっくりと歩きまわる異形の姿をした徘徊者
顔とおぼしき場所には能面をつけている
接近に気づくのは難しく、どこにいるのか分かりにくい
探知方法は視覚と聴覚
2人の走る足音にも反応するようだ


395以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:26:10gdc9acus (122/184)

ドタドタドタドタドタドタ……


善子「あいつもいるのね……走り廻る徘徊者……」

ルビィ「うゆぅ……」

善子「やり過ごして先に進みましょう」


ドタドタドタドタドタドタ……


善子「どこかに行ったわね……」

善子「こっちのタンスも探して……」

ルビィ「善子ちゃん、鍵も見つけたよ」

善子「ええ、ありがとうルビィ」

ルビィ「鍵のかかった部屋には勾玉があるかもしれないもんね」

善子「そうね、まだ勾玉が1つも集まっていないものね」


396以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:26:42gdc9acus (123/184)

ガチャガチャ……


善子「ここが鍵がかかった部屋ね……」

ルビィ「鍵で開けるよ」

善子「ええ、頼むわね」


ガチャ……


ザァァァァ……


善子「あった、勾玉ゲットね」

ルビィ「やっと1つ手に入ったよ……」


397以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:27:14gdc9acus (124/184)

善子「コンパスはこっちを指してる……だけど行き止まりだから引き返してあっちの道を……」

ルビィ「善子ちゃん、あそこにも勾玉があるよ」

善子「本当ね、取りにいきましょう」


ザァァァァ……


扉を開けたその瞬間だった!


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

 
奥の扉から神楽鈴の徘徊者が飛び出してきた!

 
善子「嘘でしょ!?」

ルビィ「ピギィ!!」

善子「罠部屋だったの!?」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


398以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:28:35gdc9acus (125/184)

善子(まずい!! 逃げ遅れた!! 目の前まで来てる!!)

ルビィ「ぴぎぃ!!」


ルビィは咄嗟に手鏡を使った!


景色が別の場所へと変わる。


私たち2人は別の場所へと移動したようだ。


善子「ワープしたみたいね……ここがどこか分からないけど……助かったわ、ルビィ」

ルビィ「ぴぎぃ……」

善子「……迂闊だったわ、罠だと気づけなかった」

ルビィ「ごめんね、善子ちゃん……ルビィのせいで大事な手鏡を使っちゃって、それに徘徊者しゃんも増えちゃった……」

善子「ルビィ……大丈夫よ、ルビィは悪くないわ……あのままだったら2人とも○されていたかもしれないわ。私だって罠だと気づけなかったし、水晶玉のことだって使ってしまったのは私だし」

ルビィ「……うぇぇぇぇんんんんごめんなさい……うぅ……」グスン

善子「泣かないで、大丈夫よ」

ルビィ「うぅ……」グスン


399以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:29:18gdc9acus (126/184)

善子(ルビィも疲れているのね……)


善子(でもまずい状況になったのは事実……)

善子(いま身を守るものが何もなくなってしまった……)

善子(時を止める水晶玉、ワープできる手鏡、徘徊者を一時的に怯ませられるカメラ……)

善子(どれも使ってしまった……いま襲われれば助からないわ)

善子(さらに徘徊者が追加されてしまった)

善子(この状況で身を守るものを探しつつ、勾玉を探す……あと4つも)

善子(状況としてはかなりきびしいわね……)


400以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:29:51gdc9acus (127/184)

ルビィ「善子ちゃぁ……」グスン

善子「大丈夫よ、ルビィ……私たちは今までだってAqoursとしてきびしい練習をしてきた、どんな問題だって乗り越えてきたわ」

善子「それに比べればたいしたことない、きっと無事に帰ってまたみんなに会えるわ」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「だから泣かないで、先に進むわよ」

ルビィ「うん!」


私たちは暗闇の中を進んでいく……


401以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:30:22gdc9acus (128/184)

善子「次は……ここも鍵のかかった部屋ね……」

ルビィ「ここは開けられないね」

善子「徘徊者に開けてもらう方法もあるけど……」


そこまで言いかけてやめる。

身を守るものがないから襲われたらひとたまりもない、徘徊者に開けてもらうのはやめましょう……

そんなことを言えば、優しいルビィはきっと傷つくわ……自分のせいでこうなったんだって……

誰も悪くない……こんな状況でも絶対あきらめない……


善子「……」

ルビィ「……善子ちゃん?」

善子「……鍵がかかってるなら鍵を探さなきゃダメね」

ルビィ「うん……?」


ルビィだってつらいはずよ……私がしっかりしなきゃ……


402以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:31:00gdc9acus (129/184)

善子「……はあッ……はあッ」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「大丈夫よ、ちょっと疲れただけ」

ルビィ「うゆ……」

善子「鍵はどこかしら……」

ルビィ「ここの棚は……あっ、あったよ」

善子「ありがとうルビィ、戻って勾玉を探しましょう」

ルビィ「うゆ!」


403以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:31:30gdc9acus (130/184)

善子「あった! 勾玉よ! これで2つ……」

ルビィ「ひかり石もあったよ」

善子「これも何かに使えそうね」


善子「コンパスはあっちを指してるわ……あっちに行ってみましょう」

ルビィ「うゆ!」


グスン……グスン……


善子「今度は泣き声の主ね……あそこの広い部屋にいるのかしら」

ルビィ「そうだね……今度は廊下を歩いていないよね」

善子「気をつけて確認しましょう……大丈夫そうね」

ルビィ「じゃあ、あそこに勾玉が……」

善子「あるかもしれないわね……気をつけて取るわよ」


404以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:32:07gdc9acus (131/184)

善子「隠れる場所はある?」

ルビィ「あそこの裏とか……」

善子「大丈夫そうね……爆竹で誘導するわよ、えいっ」ヒョイ


……


パチパチパチパチパチ……


ドコ……ドコニイルノ……ドコニイルノ……


善子「気を引くことができてるわね、勾玉を取って……これで3つ」

ルビィ「次に行こう、善子ちゃん」

善子「ええ、脱出するわよ、ルビィ」


405以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:32:38gdc9acus (132/184)

善子「ここの廊下をまっすぐ行って……」

善子「ここは一本道なのかしら?」

ルビィ「……」


ガラガラガッシャーン!!!!


ルビィ「ピギィ!?」

善子「何!?」


振り返るといままで歩いていた道が塞がれていた

建物が崩れて、天井から木や土、棚が降ってきて道を塞いでしまったのだ


善子「これじゃ後ろに戻れないじゃない……」

ルビィ「うゆ……怖かった……巻き込まれなくてよかったね……」

善子「本当ね……建物が古いからところどころ崩れたりするみたいね」


私たちは先を進む。


406以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:33:26gdc9acus (133/184)

善子「今度はこっちを行って……あら? 綺麗な場所に出たわね」

ルビィ「水が引いてあるね、灯籠も浮かんでるよ」

善子「ここの廊下をまっすぐ行って……」


善子「え……行き止まり?」

ルビィ「えっ?」


善子「待って、ここまで一本道……後ろは道が塞がっている……」

ルビィ「出られないってこと……?」

善子「嘘でしょ……」

ルビィ「うゆ……」


善子(この世界から出る前に、閉じ込められてこの場所から出られないなんて……)


407以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:33:59gdc9acus (134/184)

ルビィ「あ、あそこに勾玉があるよ!」

善子「取りましょう……これで4つ……でも閉じ込められたから、祭壇まで行く方法がない……」

ルビィ「うゆ…………うゆ? 善子ちゃん!」

善子「どうしたのルビィ」

ルビィ「ここに手鏡が置いてあるよ!」

善子「!? 本当だわ……これでこの場所から脱出できる!!」

ルビィ「うゆ!」

善子「飛ぶわよ!!」


手鏡に触れると一瞬で景色が変わる。

どうやら別の部屋に移動できたようだ。


408以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:34:34gdc9acus (135/184)

善子「ここは……ここって……」

ルビィ「罠部屋の前だよ! あとで来るかもって言って、取らなかった勾玉がある!」

善子「ここなのね……そしてまだ罠が残ってる……中には鈴の徘徊者がいる……」

ルビィ「うゆ……」

善子「……ルビィ、あれをやるわよ」

ルビィ「まさか……」

善子「前やったでしょ、ひかり石で道を作るのよ」

ルビィ「ぴぎぃ! また走るの!?」

善子「ええ、やるわよ、隠れる場所を探して」


私たちはひかり石を廊下に置いていき、隠れるための行李まで道しるべを作った。


409以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:35:15gdc9acus (136/184)

善子「これでよし、徘徊者に追いかけられている間は明かりが消えてしまうわ」

善子「でもこの石の光は消えることがない」

善子「だから暗闇の中にひかり石で道を作ることで迷わず走ることができるわ」

ルビィ「うゆ……追いかけられるの怖いよ」

善子「大丈夫よ、ここで勾玉を取れば5つ揃うわ、そうしたらコンパスが指すほうに歩くだけだもの」

ルビィ「うゆ……頑張るよ……」


善子「部屋に入るわよ……」


バァァァァァァァンンンン!!!!

 
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


予想通り奥から神楽鈴の徘徊者が出てきた!

善子「来たわよ! ルビィ、走って!!」

ルビィ「ピギィ!!」

 
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


410以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:35:46gdc9acus (137/184)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


私たちは暗闇の中に光る道を走っていく!


善子「あった! つづら箱よ!! 中に隠れるわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは2人で箱の中に隠れた!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


411以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:36:17gdc9acus (138/184)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


シャン……


シャン……シャン……シャン……シャン……


シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「……」

ルビィ「……」


善子「……見失ってくれたみたいね」

ルビィ「ぴぎぃ……」

善子「しばらく待ってあの鈴の徘徊者がいなくなったら勾玉を取るわよ」

ルビィ「うゆ……」

────
──


412以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:36:49gdc9acus (139/184)

善子「あった、勾玉よ」

ルビィ「うん、これで5つだね」


善子「……あら? 奥に部屋があるわ……」

善子「祭壇……そして鬼の面……」

ルビィ「前の回廊であった、大勾玉の祭壇と同じだね」

善子「ええ、これも持って行きましょう……これで大勾玉は3つよ」



善子「勾玉が5つそろった、あとは祭壇に行って勾玉を納めればいいだけ」

ルビィ「コンパスはあっちを指してるよ」

善子「そっちね、行きましょう」

────
──


413以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:37:21gdc9acus (140/184)

私たちはなんとか祭壇に到着した。

その場所はまわりを湖に覆われていた。

そして湖には大きな赤い鳥居がある。


善子「地下に大きな湖があるなんてね」

ルビィ「うゆ、善子ちゃん、勾玉を納めようよ」

善子「ええ、そうね」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


私たちが勾玉を納めると湖の水が割れていき、その中から橋が出てきた!


ルビィ「わあ、すごい!」

善子「この橋を渡れってことね」


414以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:38:19gdc9acus (141/184)

私とルビィは橋を渡る……


ルビィ「見て善子ちゃん、橋を渡った先、あそこに鏡があるよ」

善子「これで脱出できるのかしら……」

善子「だとしたら Kの言っていた 彼女って誰なのかしら」


橋を渡った先で鏡に触れた。

すると景色が一瞬で変わった。

どこかへと移動したようだ。


415以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:38:50gdc9acus (142/184)

ルビィ「ここは、どこ?」

善子「ここは……部屋? 廊下?」


シャン……シャン……シャン……シャン……


そこには神楽鈴の徘徊者がいた。

襲いかかってくる様子はない。


ルビィ「徘徊者しゃんだ……怖いよ……」

善子「襲いかかってこない……まるで私たちを待っているみたいだわ」


善子「……近づいてみましょう」

ルビィ「うゆ…………え? ……ええッ!?」


416以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:39:20gdc9acus (143/184)

ルビィ「善子ちゃん! 危ないよ!」

善子「……」


私が近づくと神楽鈴の徘徊者は振り向いて廊下をまっすぐと歩きはじめる。


シャン……シャン……


善子「ついていくわよルビィ……彼女って子に会いに、ね」

ルビィ「ぴぎぃ……こわいよ……」


シャン……シャン……


善子「長い廊下ね……」

ルビィ「この奥にその子がいるのかな……」


417以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:39:50gdc9acus (144/184)

シャン……シャン……


廊下の先にたどり着くと、徘徊者はそこで止まった。

そこには扉があった。


善子「この先ね……」

ルビィ「うゆ……」


私たちは扉をくぐる……扉は後ろでバタンっと閉まった。


ルビィ「ぴぎぃ!!」

善子「……ここが最奥ね」


418以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:40:20gdc9acus (145/184)

水が滝のようになって下に流れ落ちている。

橋の先……そこには宙に浮かぶ巨大な結晶があった……


ルビィ「何ここ……それにあのクリスタルは……」

善子「私もゲームとかでしか見たことないわね……こんなもの」


善子「何かしら……これ」


???「やっぱりあなたたち、とても良い魂を持っているのね」


後ろから声がした。

振り向くと、そこには黒い着物を着た、黒髪の少女がいた。


419以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:40:59gdc9acus (146/184)

ルビィ「ぴぎゃぁぁ!!」

善子「…………あなたが、彼女ね……」


ルビィ「びっくりしたよ……」


謎の少女「みんな私を化け物と呼ぶけど……あなたもそう呼びたいなら好きにするといい」

謎の少女「実際、今の私は化け物みたいなものだし」


謎の少女「でも私に言わせれば、人間の方がよっぽど質が悪いわね」


善子「私たちはこの世界から出る方法を探しているの……何か知っていたら教えてちょうだい」


420以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:41:43gdc9acus (147/184)

謎の少女「出口を探しているならあきらめなさい。私のような力ある者にしか開けないし、あなたたちをここから出すつもりもない」

ルビィ「そんな!!」

善子「……」

謎の少女「でも、良い話があるの」


少女が手をかざすと能面が現れた。徘徊者たちが被っているものと同じものだろうか。


謎の少女「永遠の命……いつの世も人間が渇望した力。あなたたちはその力にふさわしい魂を持っている」

謎の少女「この面を被れば、あなたたちはどんな病にも害されない。どんな猛獣でもねじ伏せることができるようになる」


善子「……」

ルビィ「……善子ちゃん?」


善子「……そんな口車には乗らないわよ」


ルビィ「えっ、口車……? あ、Kしゃんが言ってた!」


421以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:42:14gdc9acus (148/184)

謎の少女「そう……」

謎の少女「じゃあ、言い方を変えましょう」


謎の少女「あなたの魂に用があるの。 細工をさせてもらうから、大人しくしていなさい」


善子「……ッ!?」

ルビィ「どういうこと!?」


シャン!!


謎の少女が手をかざすと能面が私たちのほうにとんでくる……


ルビィ「ピギィ!! このままじゃあの面を被らされちゃうよ!!」

善子「……ッ!!」


422以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:42:44gdc9acus (149/184)

その時だった……


カランコロン……


どこからともなく勾玉が床に落下する。


バシュン……


突然、あたりは光に包まれた!

能面は消え去り、光の中から Kが現れた!!


善子「……K!! 助かったわ!!」

ルビィ「ぴぎぃ……怖かったよぉ……」


423以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:43:40gdc9acus (150/184)

K「ギリギリだったわね。あなたたちのおかげで上手く忍び込めたわ」

謎の少女「ああ、あなた……」

K「ようやく会えたわね、ずっとこの時を待っていたわ」

K「あんたはここにずっと引きこもっている、そこの物体、クリスタルがあるここにね」

K「思うに、あんたにとってそのクリスタル、さぞかし大事な物なんでしょう? ……違わないわよね」


シャン……

謎の少女は Kに向かって手をかざす。


K「うわぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」

Kは苦しみだし、地面に膝をついてしまう……


ルビィ「ピギィ!? 大丈夫!?」

善子「K!! しっかりして!!」

謎の少女「その面、自分から被ったんでしょ。 自業自得ね。 そこで大人しくしていなさい」


424以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:44:12gdc9acus (151/184)

謎の少女は私たちのほうに近づいてくる。


ルビィ「ぴぎぃ!!」

善子「くっ!! このままじゃ……」 


K「はあッ……はあッ……」


Kは息を切らしながらよろよろと立ち上がる……

そして私たち2人を必死に守ろうとする……


謎の少女「あなた、それ以上無理すると、人ではいられないわよ。 どうしてそこまで……」

K「ふふっ……さあ、どうしてかしらね……」


425以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:44:43gdc9acus (152/184)

善子「K!!」

ルビィ「Kしゃん!!」


K「あんたたち、私から離れていなさい……」

K「いままでギリギリで保ってきたけど……もう限界みたいね……私の意識が保っているうちに、早く逃げなさい!!」


K「うわぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」


Kは苦しみ再び地に膝をついてしまう……


K「最後の悪あがきよ……あんたにもらったこの力……利用させてもらうわよ……ッ!!」


426以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:46:52gdc9acus (153/184)

K「うわぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」


Kの体は光だし、異形の化け物へと姿を変えた!!


そこにあったその姿は、能面をつけ、その下に大きな口を開く、宙へと浮かぶ巨大な化け物であった。


その異形は謎の少女に飛びかかる!!

少女は光に包まれ、どこかへと消え去った。

どうやら回避したようだ。


化け物となったKはクリスタルへと向かって飛んでいく!!


K「うわぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」


パリィィィィィィイイイイイインンンンンン!!!!!!


Kはクリスタルへと体当たりし、クリスタルを破壊する!!


427以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 11:47:23gdc9acus (154/184)

善子「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」

ルビィ「ぴぎぃぃぃぃぃぃ!!!!」


その衝撃で地面は崩壊し、私たちは滝の下へと落ちていった……

────
──


428以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:10:24gdc9acus (155/184)

私とルビィは水の中へと落ちた……


善子「はあッ……はあッ……ルビィ! 大丈夫!?」

ルビィ「うゆ……!!」


水から上がる……私もルビィも怪我はしていない……


ルビィ「ここは……」

善子「水路……かしら?」


この道には水が張り巡らされている……


しかし……


善子「……!?」

善子「ルビィ!! 上から来るわよ!! 気をつけて!!」


上からは異形の怪物と化した Kが降ってきていた!!

水路に落ち、バシャァァァァンンンン と水しぶきを立てる!!


429以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:11:29gdc9acus (156/184)

善子「K!!」

ルビィ「Kしゃん!!」


あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


自我を失っているのだろうか。

化け物となったKは叫び声をあげながら、私たちのほうに迫ってくる!!


ルビィ「ピギィ!? Kしゃんが!! ルビィたちを守ってくれたKしゃんが!!」

善子「逃げるわよルビィ!! このままだと危険だわ!! 走って!!」


あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


叫び声をあげながら迫ってくるK……

私たちは水をバシャバシャとかき分けながら走る!!


430以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:12:03gdc9acus (157/184)

ルビィ「ぴぎぃぃ!! 走りにくいよ!!」

善子「走るのよルビィ!!」


ルビィ「Kしゃん!! Kしゃん、しっかりして!!」

善子「K!! 私たちのことが分からないの!?」


あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


善子「ダメよルビィ!! なんとかして逃げ切るのよ!!」

ルビィ「ふええええええんんんん!!!!」


目の前を見ると水門があった。

巨大な木の板が上から落下して、水を止める仕掛けになっているようだ。


431以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:12:34gdc9acus (158/184)

善子「あの水門まで逃げるわよルビィ!!」

善子「あの下にレバーがあるわ!! きっと水門のスイッチよ!!」

善子「あれを使って通せんぼするわ!!」

ルビィ「うゆ!! わかったよ!!」


私たちはなんとか水門の内側に逃げ込んだ!


善子「ルビィ!! レバーを引いて!!」

ルビィ「うゆ!!」


巨大な板はザバァァァァンンンン と水しぶきを立てて下に落ち、道を塞いだ!!


善子「これでこっちまで追って来られないはずよ!」

ルビィ「はあッ……はあッ……助かったの……?」


あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


432以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:13:04gdc9acus (159/184)

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


ダァンッ!!


次の瞬間、凄まじい音が鳴り響く!

どうやら化け物となったKが水門を破壊しようと体当たりしているみたいだ!


善子「ちょ、ちょっと……嘘でしょ……? まさか、壊れたりしないわよね……?」

ルビィ「うゆ……」


433以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:14:20gdc9acus (160/184)

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


ダァン!! ダァン!! ダァン!! ダァン!!


バァァァァァァァンンンン!!!!


水門は木っ端みじんになってしまう!!

そしてKはその巨大な体でこちらに迫ってくる!


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!! 突き破ってきたぁぁ!!」

善子「逃げるわよルビィ!! 水路の奥へ!!」


私とルビィは走って奥へと逃げ込む。


434以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:14:57gdc9acus (161/184)

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


善子「あった!! 水門よ!! 逃げ込みましょう!!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!! それで足止めするしか方法ないよね!?」


私は水門のレバーを引く!

巨大な板はザバァァァァンンンン と水しぶきを立てて下に落ち、道を塞いだ!


ルビィ「はあッ……はあッ……でも突き破ってくるよね!?」

善子「ええ、ちょっとの間しか足止めできないわ」

善子「でもね、足止めしてるこの時間に、次にどうするか考えるのよ」

ルビィ「ピギィ!? 追いかけられてるんだよ!! 考えてられないよ!!」

善子「次の水門まで走って!! 考えるわよ!!」


435以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:15:41gdc9acus (162/184)

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!

ダァンッ!!

ダァン!! ダァン!! ダァン!! ダァン!!


バァァァァァァァンンンン!!!!


水門は木っ端みじんになる!


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!! 無理だよぉぉ!!」

善子「あきらめないでルビィ!!」



善子「ッ!? 見て!! あそこに鏡があるわ!!」

ルビィ「え!! 本当だ!! 台の上に鏡が置いてある!!」


善子「あの鏡に触れるわよ!!」


436以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:16:11gdc9acus (163/184)

鏡に近づいたその時だった……


シャン……


ふふふっ……ふふふ……


鈴の音と少女の笑い声が聞こえる……

次の瞬間、鏡は消えてしまった……


それどころか行き止まりだったはずの場所が道に変わっていた。


善子「なんでよ!!」

ルビィ「もしかしてあの女の子が地形を操っているの!?」

善子「そうかもしれないわね!! だとするとまずいわ!! どこに逃げても無駄かもしれないわ」

ルビィ「ピギィ!? 無理だよそんなの!!」

善子「それでも逃げるのよ!!」


私とルビィは必死になって走る……


437以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:16:42gdc9acus (164/184)

善子「次の水門……あった!! ってもう板が降りてるじゃない!!」

ルビィ「善子ちゃん!! このレバー引くよ!!」


水門の水を止める板はゆっくりと上にあがっていく……


あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


善子「はやく……追いつかれてしまうわ!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!! もうすぐそこにいるよ!!」


善子「お願い!! はやくして!!」

ルビィ「ぴぎぃぃぃぃ……」


善子「くぐって!! 反対側にレバーがあるわ!!」

ルビィ「うゆ!!」


438以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:18:48gdc9acus (165/184)

私とルビィは水門の内側に入り、再びレバーを引く。

巨大な板は再び下に落ち、道を塞いだ。


あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


ダァンッ!!


善子「まだ来るわね……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」

善子「走るわよルビィ!!」

ルビィ「うゆぅ!!」


439以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:19:32gdc9acus (166/184)

私たちが走っていると鈴の音とあの少女の笑い声が聞こえた。


シャン……


ふふふっ……ふふふ……


地形が反転している!!


善子「こうなったってことはまさか……」

ルビィ「ぴぎぃ!! Kしゃんが正面が来るよ!!」

善子「嘘でしょ!?」


後ろにいたはずのKが私たち2人の正面から迫ってくる!!


440以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:20:15gdc9acus (167/184)

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」


ふふふっ……ふふふ……


善子「ふふふ、じゃないわよ!!」


私とルビィは急いで引き返して逃げる!


善子「走ってルビィ!!」

ルビィ「ぴぎぃ!! 善子ちゃん!! こっちは真っ暗だよ!!」

善子「嘘でしょ!? 真っ暗だと水門の位置もレバーの場所も分からないわ!!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!! もうダメぇぇぇぇ!!!!」


441以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:20:48gdc9acus (168/184)

シャリン……


ルビィ「あ、あの猫しゃんの鈴の音……」

善子「猫の鈴の音……?」


見ると、光の球が 道の真ん中にふわふわと浮かんでいた。

その光はまるで道案内でもしているかのように次の水門の場所まで移動し、明るくレバーを照らしていた。


シャラララランキラリラリン……


442以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:21:56gdc9acus (169/184)

ルビィ「善子ちゃん、あれはなんだろう? 猫しゃんの鈴の音がしたけど」

善子「分からないわ! でもついていくしかないわ!」

ルビィ「うゆ、信じるよ! 猫しゃん!!」

 
シャラララランキラリラリン……

 
私たちはその光の球についていくことにした。

照らされたレバーを引き、水門を閉じる。


443以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:22:31gdc9acus (170/184)

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


ダァンッ!!

ダァン!! ダァン!! ダァン!! ダァン!!


バァァァァァァァンンンン!!!!


水門を破壊しながら、凄まじい勢いで Kはこちらに迫っている!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


444以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:23:02gdc9acus (171/184)

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


善子「何がなんでもあの光についていくのよ!」

ルビィ「うゆ!!」


光についていくと鏡があった!


善子「あそこよ!! ようやく逃げ切れるわ!!」

ルビィ「今度こそだね!」


シャン……

ふふふっ……


またあの少女のしわざだろうか……鏡は消え去ってしまう。


善子「だから、ふふふ、じゃないわよ!」

ルビィ「ピギィ!! まだ逃げるの!?」


私たちは奥へと向かって走っていく……


445以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:23:33gdc9acus (172/184)

ルビィ「!? 善子ちゃん!! 前が!!」

善子「!? 滝!?」


なんと目の前は滝になっていた。

これ以上、先へと逃げることはできない。


あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


後ろから Kが迫ってきている!


ルビィ「もう逃げられないよ!!」

善子「まだよ!! まだあきらめないで!!」


善子(そうは言っても、もう逃げ切れないわ……今度こそおしまいかもしれない……そんな……)


446以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:24:05gdc9acus (173/184)

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!


シャラララランキラリラリン……


光の球は、迫ってくるKに向かって飛んでいき、強い光を放つ!


Kは怯んでよろよろと壁に激突する!!


ルビィ「やったの……?」

善子「ルビィ!! 気をつけて!!」


Kが壁に激突した衝撃で天井が崩れ落ちてきていた!

このままだと私たちは崩落した天井の下敷きになってしまう!!


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」

善子「くっ!!!!」


447以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:25:24gdc9acus (174/184)

すると、Kは私たちに覆い被さった……


ガラガラガッシャーン!!


────

──


そこには身を呈して私たちを守るKの姿があった……


善子「K……私たちを助けてくれたの……?」

ルビィ「Kしゃん……」


448以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:25:56gdc9acus (175/184)

Kは苦しそうに話し出す。


K「あんたたち……無事かしら……」

善子「あなたが守ってくれたから2人とも怪我ひとつしてないわ」

ルビィ「Kしゃん……」

K「あんたたちを○そうだなんて……ごめんなさいね……」

ルビィ「Kしゃん……どうしてそこまでしてルビィたちを助けてくれるの……?」

K「そうね……あなたたち、スクールアイドルでしょ……? 見れば分かるわ」

ルビィ「えっ……ルビィたちはたしかにスクールアイドルだよ……」

K「やっぱりね……そんな気がしていたのよ……」


K「私もね……スクールアイドルなのよ……」

ルビィ「えっ……」


449以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:26:28gdc9acus (176/184)

K「少し長い話になるわ……私はここに迷い込んだ時、病気でね……先が長くなかったの……」

K「それでも、向こうの世界に置いてきたみんなとまた一緒に、歌いたい、踊りたい、その一心で出口を探したの……」

善子「……」


K「そして、あの女の子と出会ったわ……」

K「彼女は永遠の命をくれると言った」

K「私は永遠の命などいらなかったけれど、もう一度みんなに会いたいと、藁にもすがる思いでこの面を被ったのよ」

ルビィ「Kしゃん……」


K「だけどね、その代償は大きかったわ……」

K「面を被った瞬間、とてつもなく大きな力が体の奥から湧いてきて、意識をぐちゃぐちゃにかきまわされた」

K「そして気がついたら……まわりのありとあらゆるものを破壊していたわ……」

K「それから私は、たった一人で機会をうかがっていたの……」

K「湧き上がる力を押さえつけながら……自我を失って、もしかしたら誰かを傷つけるのではないかと怯えていたの……」

K「でも、やっと……あの子に一矢報いてやることができたわ……あなたたちのおかげよ……」


450以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:27:21gdc9acus (177/184)

善子「同じスクールアイドルだから……私たちを助けてくれたの……?」

K「違うわ……でもね、あなたたちに向こうの世界においてきたみんなの面影を見たの……」

K「スクールアイドルの先輩として、後輩の盾となるのは当然よ……若い芽は摘ませない……」

K「きっと、あなたたちの先輩も、私と同じことを言うわ……」

K「私は……あなたたちが歩む未来を信じる……」

K「あなたたちは……これからの未来を切り開いていく……希望の光なんだから……」

ルビィ「Kしゃん……」


451以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:27:54gdc9acus (178/184)

K「そろそろ限界みたいね……今度自我を失えば、もう二度と自分を取り戻すことは出来ないでしょうね……」

K「あなたたちに会えてよかった……この面も悪いことばかりじゃなかったわね……」

K「絶対に生きてこの世界から出なさい……もう一度、みんなの元に戻るのよ……」


善子「K……」

ルビィ「Kしゃん……」


K「どんな困難が訪れようと、希望を捨てないで……」


K「次は……助けてあげられないから、ね……」


そう言い残すと Kは滝の底へと落ちていった……

────
──


452以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:28:30gdc9acus (179/184)

ルビィ「……Kしゃん」グスン

善子「K……」


ルビィ「どうしたらいいの……どうしたらルビィたちは……Kしゃんの分まで……」

善子「ルビィ……生きてここから出ましょう……そしてKが出来なかった分まで、ちゃんとスクールアイドルをやるのよ……」

善子「それが、私たちの未来を信じてくれた Kに対して、私たちができる精一杯のことよ……」

ルビィ「……うん」


私とルビィは先に進むために道を探した……

どうやらすぐ近くに別の場所へと続く廊下があるようだ……

私たちはそこへ向かって歩き出した……


453以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:29:00gdc9acus (180/184)

廊下を歩いていくと台の上にあの黒猫がいた……

口には鍵をくわえている。


ルビィ「猫しゃん……」

善子「……鍵を持ってるわね」


シャリン……


猫は鍵を置くと、どこかへと行ってしまった……


ルビィ「……」

善子「ルビィ、あの猫についていくわよ」

ルビィ「うゆ……」


454以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:29:51gdc9acus (181/184)

猫についていくと船着き場のような場所に到着した。


善子「奥に扉があるわね……鍵がかかってるわ」ガチャガチャ

ルビィ「猫しゃんからもらった鍵で開けよう」

善子「そうね」カチャ


善子「鬼の面の祭壇……大勾玉ね……これで4つ」

ルビィ「大勾玉ってなんだろうね」

善子「分からないわ……あら? 猫ちゃんは?」


黒猫はとまっている舟の先頭……船首に乗るとそこに座った。


善子「舟に乗れってことかしら……」

ルビィ「うゆ……乗ろう善子ちゃん」

善子「ええ……」


私たちは舟に乗る。

すると誰も動かしていないのに舟はひとりでに動きはじめた……


455以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:31:12gdc9acus (182/184)

ルビィ「舟はどこまで行くのかな……」

善子「分からないわね……またどこかへ誘導しているのかもしれないわね」


舟は大きな赤い鳥居をくぐり、地下の湖をゆったりと静かに進んでいく……

湖には灯籠も浮かんでいる……


善子「ちょっと疲れが……」

────
──


456以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:31:46gdc9acus (183/184)

少しうたた寝していたのかもしれない……

気がつくと舟は地下の湖のどこかを進んでいた。


善子「寝てたのかしら……あ、ルビィ」


ルビィは私の肩に寄りかかって眠っていた……


善子「ルビィもだいぶ疲れているみたいね……少し休ませてあげましょう……」


静かな時間が流れる……

────
──


457以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 12:32:22gdc9acus (184/184)

Kは命が尽きるまで、何度も私たちを守ってくれた

彼女に応えるためにも、私たちは絶対に元の世界に帰らなければならない


状況は悪くなる一方だが

そう決意すると勇気が湧いてきた


船は自分の行くべき場所を知っていたかのように

ひとりでに船着き場に流れ着き

いつの間にか猫は姿を消していた


そこには、今までとは明らかに違う異様な雰囲気が漂っていた……


458以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 13:00:4181ywHGMk (1/1)

一区切りだね
乙乙

最後まで…頼むよ


459以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 13:06:53lJW7hKng (1/1)

ラブライブ!板から来ました
続き期待


460以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/07(水) 20:09:39lM13Cpa6 (1/1)

期待


461以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:06:590q8CGXTE (1/59)

─???─


善子「ルビィ、起きて」

ルビィ「うゆ……」

善子「着いたわよ」

ルビィ「うゆ? ……ここは?」

善子「分からないわ……船着き場に着いたみたい……それと……」


善子「……また回廊への入り口があるわ」

ルビィ「ぴぎぃ!?」

善子「しかも前の回廊より異様な雰囲気よ……なんていうか……不気味だわ」

ルビィ「うゆ…………あれ? 猫しゃんは?」

善子「分からないわ……船着き場に着いたらどこかに行っちゃったみたい……」


462以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:07:490q8CGXTE (2/59)

善子「今度の回廊も気を引き締めていくわよ、ルビィ」

ルビィ「うゆ……」


私たちは回廊へと入っていく……


ピチャ……ピチャ……


善子「中は……気味が悪いわね……歩くと水の音がピチャピチャと鳴るわね」

ルビィ「うう……ここ怖いよ……」

善子「ええ、不気味さは前の回廊の比ではないわ……」


463以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:08:190q8CGXTE (3/59)

善子「え……これって……」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「下の階がある……この回廊、上の階と下の階に分かれて複雑な構造になっているわ」

ルビィ「え……ということは……」

善子「今まで以上にきびしい探索になりそうね」

ルビィ「うゆ……」

善子「やることは同じはずよ……勾玉を5つ集めて祭壇に納める……」

ルビィ「うん……でも前の回廊よりも難しいよね……」

善子「……」


464以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:09:070q8CGXTE (4/59)

ルビィ「上と下、どっちに行くの?」

善子「下を見てみましょう……」


下の階を見るために階段を降りる……


善子「下の階には水が張っているわ……おそらく腰まで浸かるくらいの深さ……」

善子「これは歩くのも大変だわ……水が張っていて速く走れないから、下の階で徘徊者に襲われればまず逃げ切れないでしょうね……」

ルビィ「ぴぎぃ……」

善子「しかも奥まで複雑に回廊が続いている……ここを長時間探索するのは得策ではないわ……」

ルビィ「うゆ……」

善子「念のため水が張っていない上の階から調べていきましょう」

ルビィ「そうだね、そのほうが安全だよね」


私とルビィは上の階から調べることにした。


465以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:09:380q8CGXTE (5/59)

善子「とはいえ……上の階も複雑な構造をしているわね……」

ルビィ「うゆ……」

善子「タンスや棚を調べていきましょう」

善子「こっちには……カメラ、爆竹……」

ルビィ「こっちも調べるよ……ひかり石、それから……」

善子「鍵を見つけたわ」

ルビィ「うゆ、鍵があれば勾玉が取れるね」

善子「ええ、あと手鏡とかがあれば欲しいわね」


466以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:10:500q8CGXTE (6/59)

善子「こっちにはレバーがあるわ」

ルビィ「うゆ……何のレバーだろう?」

善子「引いてみるわね」ガチャ


ザッパァァァァァンンンン


その瞬間、下で水の音が鳴った。

どうやら水門の板が下に落ちた音のようだ。


善子「これでここが通れるようになるけど、下は通れなくなったわけね」

ルビィ「ということは……下を通りたい場合、上のレバーを引かなきゃいけないから……」

善子「かなり複雑な構造の上に、この仕掛けはきびしいわね」

善子「これまで以上に気を引き締めていくわよ」

ルビィ「うゆ……」


467以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:11:380q8CGXTE (7/59)

善子「それからこっちを通って……」


善子「えっ?」


ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」


善子「……もう1つ上の階がある」

ルビィ「え……」

善子「嘘でしょ……ここに来て複雑になりすぎじゃない……?」

ルビィ「うゆぅ……」


468以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:12:210q8CGXTE (8/59)

善子「しかも見て……階段が……」

ルビィ「うゆ? 階段……?」

善子「例えばあそこの階に上るにはあっちからまわっていって……階段を上ったあとそっちにある階段を……」

ルビィ「ええ……これじゃあどこにいるか分からなくなっちゃうよ」

善子「そうね、どっちに進んでいるのかも分からないわね……」

ルビィ「でもコンパスがあれば大丈夫でしょ?」

善子「そうだけど……あっちに行くには……」


そこまで言いかけて気がついた。


廊下の奥から何かが来ている!


469以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:12:530q8CGXTE (9/59)

善子「ルビィ、隠れるわよ……何かいる!」

ルビィ「うゆ!」


私とルビィは障子を閉めて小部屋に隠れた。

外の様子はところどころ破れた障子や格子窓から見える。


善子「何かしら? あれ……」


見ると、人の顔をした霊魂のようなものが浮遊している。

何かぶつぶつと囁いているのも聞こえてくる。


470以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:13:410q8CGXTE (10/59)

善子「徘徊者かしら? でも能面を被っていないし……燭台のろうそくの反応もない……」

善子「でもここに隠れていれば大丈夫なはず……ルビィ、コンパスで方向を確認しましょう」

ルビィ「善子ちゃん、それが……」

善子「……どうしたの?」


ルビィ「コンパスの針がくるくるまわってて、祭壇がどっちなのか分からないよ」


善子「嘘でしょ……?」


そうしている間にも霊魂のような何かは浮遊しながら私たちの横を通っていった。


471以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:14:330q8CGXTE (11/59)

善子「とにかくアレに見つからずに済んだわ」

善子「もし見つかればどうなるか分からないもの」

ルビィ「うゆ……あれ?」

善子「どうしたのルビィ?」

ルビィ「あのお化けしゃんが通りすぎた後、コンパスのくるくるが止まったよ」

善子「え? ということは祭壇の方角を指しているのね」

ルビィ「うゆ」

善子「……なるほど、あのお化けが近くにいるとコンパスが狂ってしまうというわけね」

ルビィ「お化けしゃんが近くにいるとコンパスがおかしくなる……」

善子「ええ、いつ使い物にならなくなるか分からないからこまめに確認しましょう」

ルビィ「うゆ……」


私たちは先を進んでいく……


472以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:15:160q8CGXTE (12/59)

グスン……グスン……


善子「どこかに泣き声の主がいるわね……」

ルビィ「うゆ、下の階にいるみたいだね」

善子「勾玉があるってことね」

ルビィ「上と真ん中と下があるからどこに徘徊者しゃんがいるか分かりにくいね」

善子「階段があるわ、これで下に降りて勾玉を取りにいきましょう」

ルビィ「うゆ」


グスン……グスン……


善子「いたわ、勾玉が置かれた台の横にいる……爆竹で誘導して勾玉を取るわよ」

ルビィ「隠れられそうな場所は……」

善子「このあたりはなさそうね、もし襲われたらそっちに逃げましょう」


473以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:15:540q8CGXTE (13/59)

善子「爆竹を……えいっ」ヒョイ


……


パチパチパチパチパチ……


グスン……グスン……


善子「移動し始めたわ、誘導できているうちに慎重に勾玉を取るわよ」

ルビィ「うゆ」


私たちは台の上から勾玉を取ると、その場から立ち去った。


474以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:17:030q8CGXTE (14/59)

善子「なんとか1個目ゲットね」

ルビィ「うゆ、頑張ろう善子ちゃん」

善子「ええ、脱出するわよルビィ」


ドコニイルノ……


善子「待って、歩いてる泣き声の主もいるわ」

ルビィ「うゆ……」

善子「離れるまで慎重に移動するわよ」


ドコ……ドコニイルノ…………ドコニイルノ……


私とルビィは静かに移動する。


475以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:17:440q8CGXTE (15/59)

善子「ふう、これで大丈夫ね。 びっくりしたわ……」

ルビィ「うゆ……これだけ離れれば大丈夫だね」


そのときだった……


リーン……


どこからか鐘の音が聞こえてくる。


ルビィ「ぴぎぃ!? 何の音!?」

善子「落ち着いてルビィ……新しい徘徊者かしら……」

ルビィ「怖いよ善子ちゃん……」


鐘の音……それともただどこかで音がしただけ……?


善子「とにかくここから離れるわよ」

ルビィ「うん」


476以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:18:310q8CGXTE (16/59)

善子「ここまで来れば大丈夫かしら」

ルビィ「ねえ善子ちゃん」

善子「どうしたの?」

ルビィ「向こうから水たまりがすごいスピードで近づいてくるよ?」

善子「どういうこと?」


ピチャピチャ……


善子「本当ね……水たまりがこっちに来てる……そして私たちの足元で止まった」


チャポポポポポ……


ルビィ「水たまりの中からお年寄りの人が出てきたよ……」

善子「本当ね……じゃないわよ! 徘徊者じゃない!?」

ルビィ「ピギィ!?」


なんと水たまりの中から提灯と鐘を持つ老人の姿をした徘徊者が出てきた!

他の徘徊者と同様に顔には能面をつけている。


477以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:19:350q8CGXTE (17/59)

善子「逃げるわよルビィ! 完全に姿を現す前に!!」

ルビィ「うゆ!!」

私たちはその場から離れる!


善子「かなり距離を離したわ、これでなんとか……」


リンリンリンリン!!


ルビィ「見つかっちゃったよ!!」


老人の姿をした徘徊者は鐘を鳴らしながらゆっくりとこちらに向かってくる。


善子「鐘を鳴らしてるわね、足はそんなに速くないわ」

ルビィ「これなら逃げられるね」


善子「いえ、違うわ!! 走って!!」

ルビィ「違うってどういうこと!?」


私とルビィはそのまま走り続ける!


478以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:20:290q8CGXTE (18/59)

善子「いい? あの徘徊者は鐘の音を鳴らしながら追ってくるわ!」

善子「そして近くには泣き声の主がいる! あの子はすごく耳がいいわ!」

ルビィ「まさか……」


ドコニイルノ!!


予想通り泣き声の主が物凄い速さでこちらに走ってきていた!


善子「あの子は足が速い!! 振り切れないわ!!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」


ドコニイルノ!!


479以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:21:230q8CGXTE (19/59)

善子「走って!!」

ルビィ「もうダメぇ!! 追いつかれちゃう!!」


そのときだった!


ガラガラガッシャーン!!


天井が崩落して徘徊者と私たちの間の道が塞がれた!

廊下には棚や木材が落ちてきていて、徘徊者がこちらに来ることはできない。


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


善子「助かった……」

ルビィ「ぴぎぃ……」

善子「あの老人の姿の徘徊者はまわりの徘徊者を呼び寄せるみたいね……」

ルビィ「怖いよ……」


480以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:22:110q8CGXTE (20/59)

善子「はあ……はあ……さあ、先に進みましょう」


一歩踏み出したその時だった!


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


目の前の扉から神楽鈴の徘徊者が飛び出してくる!!


善子「嘘でしょ!? ここ罠部屋なの!?」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」

善子「後ろには逃げられない!! 横の部屋に入るわよ!!」

ルビィ「ぴぎぃ!!」


私とルビィはすぐ横の部屋に入る!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


481以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:23:020q8CGXTE (21/59)

ルビィ「ぴぎぃ!? この部屋行き止まりだよ!!」

善子「嘘でしょ!?」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「待って!! あの台を見て!! 勾玉があるわ!!」

ルビィ「手鏡もあるよ!!」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「飛ぶわよ!! ルビィ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは2個目の勾玉を取るとすぐ横に置いてあった手鏡でワープした……

一瞬で景色が変わる。

どうやら上手く他の部屋に移動したみたいだ……


482以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:23:400q8CGXTE (22/59)

善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


善子「何なのよ……本当に……」

ルビィ「うゆ……」


善子「今までの回廊の比ではないわ……複雑さだけでなく徘徊者も……」

ルビィ「ルビィ怖くなってきたよ……」


私たちは少し休んでから探索を続けることにした。


483以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:24:180q8CGXTE (23/59)

善子「台の上に何かの記事があるわ」

ルビィ「記事?」

善子「ちょっと読んでみるわね」


善子「……」

ルビィ「……」


善子「ふむふむ……」

ルビィ「どんな内容だったの?」

善子「向こうの世界で新聞を読んだじゃない?」

ルビィ「うゆ……神隠し事件の記事だったよね」

善子「これもその話みたい」

ルビィ「うゆ?」


484以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:24:480q8CGXTE (24/59)

善子「化け物が神隠し事件を起こした、と。 その詳細が載ってるわね」

ルビィ「うゆ……」

善子「要約するわよ。 千里眼の能力を持つ不思議な力を持った母親とその子供が村から離れた神社に住んでいたんだって」

ルビィ「千里眼……未来とか見えるんだよね」

善子「ええ、それで千里眼の能力を忌み嫌った村人はこの家族から距離を置いていたらしいの。 母親には冷たく接していたみたい」

ルビィ「…………」

善子「村人たちは、その子供もいつか本性を現し、母親をないがしろにした自分たちに復讐するのではないかと恐れていたらしいわ」

ルビィ「うゆ……」


485以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:25:210q8CGXTE (25/59)

善子「そして、そのときが来た……その子供が川に鉄砲水を起こして、その結果、村の子供たちは流されてしまったみたいね……」

ルビィ「そんな……」

善子「村人たちは村の子供たちが○されたと怒って、その母親と子供を○そうとしたらしいの」

ルビィ「ぴぎぃ……」

善子「そのとき、その子供が光り輝いて、その光が森を飲み込んだ……まわりのものすべてが、はじめから何もなかったかのように消えていた」

善子「神社も人々も夕暮れのヒグラシの声も……という話らしいわ。 その昔、当事者の誰かにインタビューして、その人が答えたことをまとめた記事みたいね」

ルビィ「うゆ……千里眼……鉄砲水……神隠し事件……」

善子「でもなんでこんな記事がこの回廊にあるのかしら……」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィは回廊の探索を続ける……


486以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:26:340q8CGXTE (26/59)

ルビィ「今度は開けた場所に出たね」

善子「ええ、真ん中にレバーと床は……」


見ると床は木でできており、格子状になっている。


ルビィ「まるで落とし穴だね……レバーを引いたら床が落ちたりして」

善子「そうね、これは落とし穴……だからレバーは引いちゃダメよ」」

ルビィ「うゆ、やっぱり落とし穴だよね……」

善子「そのレバーを引くとここの木の床が落ちるようになっているわね……」

ルビィ「なんでこんな分かりやすい罠があるのかな……」

善子「分からないわ……下が見えるわね……そんなに高くはない……おそらく落ちても怪我はしない……」

善子「あれは……?」

ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」


善子「部屋があるわ……」


487以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:27:090q8CGXTE (27/59)

ルビィ「部屋……?」

善子「ええ、落とし穴のすぐ下の壁、穴があるわ」

ルビィ「穴……本当だ、部屋かな? 行ってみる?」

善子「いえ、後にしましょう……祭壇と勾玉が優先よ」

ルビィ「うゆ、そうだね……」


私たちは落とし穴の部屋を後にする……


488以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:27:450q8CGXTE (28/59)

善子「とにかく複雑な構造ね……」

ルビィ「うゆ……ここはどこだろう……うゆ……? なんだろうこれ?」


見ると変わった模様の鈴が置いてあった。


善子「猫がつけてる鈴って感じね」

ルビィ「あの猫しゃんの鈴に似てるね……」

善子「これも何かに使えるかしら……? 分からないわ……」

ルビィ「かわいいから持っていっていい?」

善子「いいけど……他の使えるものが優先よ、カメラとか爆竹とか」

ルビィ「うゆ」

善子「それにしてもさっきの記事といい、なんでこんなものが置いてあるのかしら……」


私たちは先を進んでいく……


489以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:28:210q8CGXTE (29/59)

善子「下に勾玉があるわね」

ルビィ「でもあそこってどうやって行くんだろう?」

善子「分からないわ……」

善子「鍵を開けただけでは手に入らないようになっているわね」

善子「今までの回廊とまるで違うわ……」


ドタドタドタドタドタドタ……


善子「隠れなきゃ」

ルビィ「うゆ」


シャン……シャン……シャン……シャン……


490以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:28:540q8CGXTE (30/59)

善子「ここに隠れて……」


シャン……シャン……シャン……シャン……

ドタドタドタドタドタドタ……

ドコ……ドコニイルノ……ドコニイルノ……

リーン

シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「すごい数ね……鈴の徘徊者なんて近くに2体もいるわ」

ルビィ「これじゃあ全然動けないね……」


491以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:29:440q8CGXTE (31/59)

ルビィ「ここに隠れて何分くらい経つんだろう」

善子「そもそもこの世界に時間の概念があるとは思えないけど……」


善子(複雑すぎる回廊……数が多すぎる徘徊者……祭壇の位置はコンパスがくるくるまわって分からない……)

善子(まるで地獄絵図だわ……身動き一つ取れないし……徘徊者が通るたびにプレッシャーがかかる……)

善子(見つかれば○される……どうすればいいのかしら……)


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「善子ちゃん……?」

善子「大丈夫、ちょっと疲れただけよ」

ルビィ「善子ちゃん……」ギュッ


ルビィは私を抱きしめてくれた。


善子「ルビィ……大丈夫よ」

ルビィ「無理しないで……ルビィも頑張るから」

善子「ええ、ありがとう……ルビィのおかげで落ち着いたわ。 一緒に脱出しましょう」


492以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:30:200q8CGXTE (32/59)

現状、2人が分かっている徘徊者の情報

・警鐘の徘徊者
提灯と鐘を持つ老人の姿をした徘徊者。
顔には能面をつけている。
水たまり状態で索敵し、高速で接近してくる。
実体化すると鐘を鳴らしてまわりの徘徊者を呼び寄せる。


493以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:31:250q8CGXTE (33/59)

善子「ここは鍵がかかってるわね」

ルビィ「鍵を開けるよ」ガチャ

善子「……何もない部屋ね」

ルビィ「レバーがあるよ」

善子「このレバーを引くと……」ガチャ

カラカラカラカラ……


善子「下の水門が開いたわね……」

ルビィ「あそこに勾玉があるよ」

善子「これであそこにある勾玉が取れるってわけね……やっぱり鍵を使うだけじゃ勾玉を入手できないようになっているわね……」

ルビィ「うゆ、あっちに行って勾玉を取ろうよ」

善子「ええ……」


私たちは下の階で3つ目の勾玉を入手した。


494以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:32:410q8CGXTE (34/59)

善子「ずいぶん近いところに4つ目の勾玉があるわね」

ルビィ「うゆ、真ん中においてあるね」

善子「それじゃあ取りにいくわよ」

ルビィ「うゆ」


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「嘘でしょ!? ここも罠部屋なの!?」

ルビィ「善子ちゃん!!」

ルビィは咄嗟にカメラのフラッシュを焚く!!


パシャ!!


凄まじい光で神楽鈴の徘徊者は怯んだ!

ルビィ「善子ちゃん、勾玉を取って逃げよう!」

善子「ありがとうルビィ! 助かったわ!!」


495以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:33:130q8CGXTE (35/59)

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「まだ追ってくるわよ!」

ルビィ「うゆ!」

善子「ここの扉を閉めて時間稼ぎするわ! 扉を蹴破ってる間に走って逃げて物陰に隠れるわよ!」


ガラガラ……


私は扉を閉めた!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


ダン! ダン!ダン!ダン! ダァァァァンン!!


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャン!! ……シャン……シャン……シャン……シャン……


496以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:33:460q8CGXTE (36/59)

善子「はあ……ッ はあ……ッ」

ルビィ「はあ……ッ はあ……ッ」

善子「どうやら逃げ切ったみたいね……見失ったみたい」

ルビィ「うゆ……」

善子「でもこれで勾玉4つ……あと1つで脱出できるわ」

ルビィ「うん!」


私とルビィは暗闇の中を進む……


497以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:34:300q8CGXTE (37/59)

善子「それにしても暗いわね……下へ降りる階段がある……」

ルビィ「下は水が張り巡らされてるね……」

善子「ええ、襲われればひとたまりもないわ」

ルビィ「ここを通るしかないよね」

善子「ええ……」


善子「……」バシャバシャ

ルビィ「……」バシャバシャ


善子(かなり疲れてきている……)

善子(ここで襲われれば逃げ切れない……)

善子(はやく上に上がる階段を見つけなきゃ……)


ドタドタドタドタドタドタ……


498以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:35:080q8CGXTE (38/59)

ドタドタドタドタドタドタ……


ルビィ「善子ちゃん……」

善子「大丈夫よ、上の階だわ……」

ルビィ「分かりにくいね……」

善子「ええ、下に降りてこないといいわね」

ルビィ「ぴぎぃ……」


霊魂のような存在も何かをつぶやきながら近くを通っているようだ……

ボソボソという声が移動しているのが聞こえてくる……


善子「コンパスが狂うわね……勾玉が4つあるから、5つ目は祭壇の近くで取りたいわ」

ルビィ「祭壇に向かいたいのにコンパスが使えないと移動しにくいね……」


499以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:35:480q8CGXTE (39/59)

善子「上にのぼる階段……ようやくね」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィは階段をのぼり、先に進む……


ルビィ「善子ちゃん、あの開けたところに勾玉があるよ!」

善子「また罠かしら……慎重に近づくわよ……」


私とルビィは勾玉を取りに近づく……


善子「……」

ルビィ「……」


善子「何も起こらないわね……」

ルビィ「うゆ……」


500以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:36:200q8CGXTE (40/59)

善子「じゃあ5つ目の勾玉を取るわよ、祭壇に向かいましょう」

ルビィ「うゆ!」


勾玉を取ったその時だった!


オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


どこからかあの化け物の叫び声が聞こえてくる!!

憎悪を振りまく影がいる!


ルビィ「善子ちゃん……ッ!!」

善子「嘘でしょ……」


おぞましい○気が近づいてくる……


501以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:36:530q8CGXTE (41/59)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


その叫び声はこちらに向かってきている!


善子「あの時……前の回廊でも5つ目の勾玉を取ったときあの化け物は現れたわ」

善子「今回も現れるなんて……」

ルビィ「善子ちゃん……!!」


善子(完全に油断していた……あれだけ注意を払ったつもりだったのに……)

善子(しかも今回はまずい……まだ祭壇の位置を把握していない……コンパスも使い物にならない……)

善子(祭壇に向かえばいいはずだけど……どっちに逃げればいいのか分からないわ……)


ルビィ「善子ちゃん……ッ!!」

善子「ルビィ! カメラの用意をして!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


502以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:37:240q8CGXTE (42/59)

善子「カメラはあと何回使える!?」

ルビィ「あと1回だよ!」

善子「1回……そのうちに祭壇を見つけるの……ッ!?」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


ルビィ「ぴぎぃ!! 善子ちゃん!! もう来てるよ!!」

善子「ルビィ、走って!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


503以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:37:570q8CGXTE (43/59)

善子「はあ……ッ はあ……ッ」

ルビィ「はあ……ッ はあ……ッ」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


ルビィ「もう追いつかれちゃうよ!!」

善子「待って!! あの棚に手鏡がある!! あれでワープするわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは手鏡を拾うとすぐにワープする!!

一瞬で景色がどこかの部屋へと変わる。

どうやら別の場所に移動できたようだ。


504以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:38:440q8CGXTE (44/59)

善子「はあ……ッ はあ……ッ」

ルビィ「はあ……はあ……これで大丈夫?」

善子「いいえ、あいつはどこまでも追いかけてくる……ここに来るのも時間の問題よ!」

ルビィ「ぴぎぃ!! どうするの!!」

善子「コンパスはまだ使えない?」

ルビィ「うゆ、まだダメだよ」


善子「身を守れるものは……あとカメラ1回だけ……そしてコンパスは使えない……これで祭壇まで行く……」

ルビィ「無理だよそんなの!!」

善子「やるしかないのよルビィ! やらなければ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


505以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:39:560q8CGXTE (45/59)

ルビィは持っていた猫の鈴を握りしめ、祈るように言う……

ルビィ「お願い、猫しゃん……ルビィたちを助けて……」

善子「ルビィ……」

そのときだった……


シャリン……


私たちの目の前に光の球が現れた!

善子「これは……あの時の光……私たちを助けてくれたあの光だわ」

ルビィ「猫しゃん……」

宙に浮かぶ光の球はどこかへと移動しはじめる……

善子「私たちを導いてくれるの……?」

ルビィ「ついて行こう善子ちゃん!!」

善子「ええ、今はそれしかないわ!」


私とルビィはその光についていく……


506以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:40:270q8CGXTE (46/59)

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


善子「来てるわね」

ルビィ「うゆ……」

善子「カメラを用意して!」

ルビィ「できてるよ!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


507以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:41:230q8CGXTE (47/59)

善子「来たわ!! カメラを使って!! 今よ!!」

ルビィ「えい!!」


パシャ!!


オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


凄まじい光に化け物は叫び声を上げて怯んだ!


善子「今のうちにあの光の球についていくわ!」

ルビィ「うゆ!!」


508以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:42:040q8CGXTE (48/59)

光は暗闇を照らしながら進む……


すると祭壇のような場所へと辿り着いて消えた……


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


善子「着いたわ!! あいつが来てる!! はやく勾玉を納めるわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは集めた5つの勾玉を祭壇に納めた!


おぞましい○気はどこかへと消え去った……


そして目の前の扉が開いた……


509以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:42:360q8CGXTE (49/59)

善子「とにかく中に入りましょう」

ルビィ「うゆ!」


私とルビィは走って奥へ行く。

すると……


バタン!!


後ろで扉が閉まった……それと同時に!


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


目の前の扉を蹴破って神楽鈴の徘徊者が飛び出してきた!!


510以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:44:260q8CGXTE (50/59)

善子「嘘でしょ!? 後ろの扉は閉まってるし逃げられる場所なんてないわよ!?」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」


シュィィィィィンン


突然、神楽鈴の徘徊者は謎の光に包まれる!

そして神楽鈴の徘徊者は倒れて動かなくなった……


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……怖かった……」


善子「何が起きているのかしら……」


私たちは奥へと進んでいく……


511以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:45:030q8CGXTE (51/59)

奥へ行くと祭壇のような場所に出た……

そしてそこには畳と布団があり、誰かが布団に横になっている……


ルビィ「誰だろう……」

善子「眠っているのかしら……?」


そのとき、後ろから声が聞こえた。


???「私のお母さんよ」


振り向くとそこにはあのときの謎の少女がいた……


512以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:45:380q8CGXTE (52/59)

善子「あなた……」

ルビィ「この人、あなたのお母さんなんだね」

謎の少女「もうずっと長い間眠ったまま。その魂は体を離れ、底知れぬ憎悪に苛まれながら、今もこの世界を彷徨い続けている」

謎の少女「何とか体は維持していたけど……あの子が器を壊してしまった」

善子「Kのことね……」

謎の少女「もう時間がない、今すぐ生き返らせなければ……」

善子「どういうこと……?」

謎の少女「魂と体を一体化させるためには、途方もない力が必要なの。あの器で普通の魂を集めても、お母さんの体を維持するのでやっと」

謎の少女「だから、これを被せた」


少女が手をかざすとあの能面が現れた。


謎の少女「この面を被れば、魂の力が何倍にも増幅される。元となる魂が強ければ強いほどね」

謎の少女「その力の大きさゆえに大抵は自我を失い、人ならざる者へと変異する。でも、そういう者達は普通の魂を集めるのに役に立った」

謎の少女「あの子は素晴らしい魂を持っていた。あんなに自我を保っていられるなんて、正直驚いたわ」

ルビィ「Kしゃん……」


513以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:46:120q8CGXTE (53/59)

謎の少女「本当は、増幅した魂を収穫したかったけど……分かるでしょ、もう時間がないの」

謎の少女「あなたたちには、今○んでもらうわ……」

善子「……ッ!?」

ルビィ「ぴぎぃ!?」


謎の少女はそう言って手をかざす……


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!」

善子「ここまでなの……ッ!!」


しかし何を思ったのか、少女はその手を下ろした……


謎の少女「……」

善子「……?」

謎の少女「……まあいいわ……素の魂なんて、足しにもならない」

ルビィ「……え? 助かったの……?」

謎の少女「そこで見てるといい」


514以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:46:570q8CGXTE (54/59)

善子「何をするつもり……」


少女は横たわる彼女の母親の前に進み、力を使う……

緑色のエネルギーのような光が母親に注がれていく……


母親を蘇らせようというのだろうか……


しかし……


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


その光の中から異形の姿をした怪物が飛び出してきた!


善子「なに……ッ!?」

ルビィ「ぴぎぃ……」


謎の少女「なんで……!? こんなはずじゃない!! 待って、お母さん!!」


515以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:47:410q8CGXTE (55/59)

善子「なんだったの……」


見ると目の前から少女と母親はいなくなっていた……

あたりは崩壊し、岩が落ち、ところどころ炎が上がっている……


???「遅かった……」


振り返ると、そこにはあの黒猫がいた。

首には勾玉の首飾りをつけている。


ルビィ「猫しゃん、あなたが話したの……?」

猫「やっと私の声が届きましたね」

善子「猫がしゃべってる……」

猫「事態は一刻を争うので、手短に話します。私のことは、ひとまず置いておいてください」

猫「彼女は、復活に不足していた力をこの世界を構成する力で補填したようです」

猫「お陰で私の声が届くようになりましたが……この世界はまもなく崩壊するでしょう」


516以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:48:200q8CGXTE (56/59)

猫「復活のために集められた魂はどれも苦痛や憎悪によって歪んでいた」

猫「それがあの人を変えてしまいました」

猫「今のあの人は、もはや人ではありません。底なしの憎しみに呑み込まれた怪物。憎悪そのものです」

ルビィ「そんな……」

猫「あの怪物は、やがてあなたの世界に現れることになります。人の魂を食らい、さらにその力を増し、とてつもない災厄になる……」

善子「なんですって……」

猫「まだ力が弱いうちに、こちらの世界で対処しなければなりません」

ルビィ「どうやって?」

猫「この世界の礎となった27の人柱、その魂が燻っている場所があります。今なら、私でもその封印を解けるでしょう」

猫「27の人柱は膨大な力を蓄えている。とても制御はできませんが、真っ先にあの怪物に向かっていくはずです」

猫「あとは、彼らが足止めしてくれます。時間が稼げれば、あの怪物もこの世界と共に消え去るでしょう」

猫「あなたたちは、その場所まで怪物を誘導してください。道中は、私が力を貸します」


517以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:48:500q8CGXTE (57/59)

猫「上手くいけば、あなたたちを元の世界に返しましょう。 それでいいですね?」

善子「……」

猫「この首飾りを持って行ってください。あなたの身を守ってくれます。封印を解くためにも必要ですので、くれぐれも無くさないように」


そう言って猫は勾玉の首飾りを私たちの足元に置いた。


猫「私は先回りしています。また後で会いましょう」


そう言い残して猫はどこかへと行ってしまった。


ルビィ「……大変なことになっちゃったね」

善子「……ええ」


518以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:49:200q8CGXTE (58/59)

善子「話をまとめましょう……あの子のお母さんは怪物へと姿を変えた……」

ルビィ「そのお母さんはルビィたちの世界にやって来ちゃうんだよね」

善子「そうならないためにも今ここで足止めをする……」


善子「……ええ…………」

ルビィ「うゆ……ルビィたちに出来るかな……」

善子「やらなければならないわ……絶対に……」

ルビィ「うゆ……」


私たちは歩みを進める……


祭壇の奥にあった鏡から別の場所へと移動した……

────
──


519以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 04:49:500q8CGXTE (59/59)

復活した少女の母は

少女が望んでいた、かつての母の姿ではなかった


強大な力を得て肥大化した憎悪は

今、全ての命を食らい尽くさんとしている


いずれこの世界は消滅する

私たちが生き残るためにも

あの怪物を止めなければならない


520以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/09(金) 12:59:07PdR/OAs. (1/1)

世界観に引き込まれる

最後まで頼む


521以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:22:151///zhAs (1/110)

─???─

善子「ここは……」

ルビィ「綺麗なところ……」


荒廃した世界は夕陽に照らされ橙色に染まっていた。

建物は崩壊し、岩や鳥居は宙を浮いている。

広い荒野の地面が続いている……


善子「歩いていきましょう……」

ルビィ「うゆ……」


私たちはこの荒廃した美しい世界を進んでいく……


522以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:23:041///zhAs (2/110)

橋を渡っていくと、崖の前にあの謎の少女がいる……


善子「近づいてみましょう」

ルビィ「うゆ」


謎の少女「私は昔……人間として生きようとした」

謎の少女「でも……大切なものは全て人間が奪っていった」

謎の少女「私は、人間であることを捨て、心を捨てた。そして、数えきれない人間を殺した」

謎の少女「全ては、もう一度お母さんに会うため……そのためだけに……」

謎の少女「これで終わらせない……もう、あの時の私とは違う……」

謎の少女「今度こそ……絶対にお母さんを助ける……!」


少女の手は震えていた……そしてその震える手を握りしめる……


善子「……」

ルビィ「……」


523以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:23:491///zhAs (3/110)

オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


肥大化した憎悪がその姿を現した!

少女の母は醜い化け物へと姿を変えていた。

その姿は、浮遊する巨大な金魚のようであった……

おぞましい叫び声、魚のような外見、するどく巨大な牙……

激しい憎悪によって歪んでしまったその姿は、あの猫の言う通り、まさしく憎悪そのものだった。


善子「あれが……あの子のお母さん……」

ルビィ「そんな……こんなひどいことが……」


524以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:24:261///zhAs (4/110)

憎悪の化け物は少女に向けて金魚型の追尾弾を発射する!

ゆらゆらと揺れながら少女めがけて飛んでいく金魚型の追尾弾……


シャン!!


少女は手をかざす。

金魚たちは少女の目の前で爆発する。

着弾する前に打ち落としたようだ。


少女は鳥居の上に瞬間移動する! 彼岸花のような光が飛び散る。


しかし……


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


憎悪の化け物は鳥居ごと食い散らかし、すべてを破壊する!!

少女はたまらず崖の下へと落下していった……


525以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:25:241///zhAs (5/110)

ルビィ「ああ!! あの子が!!」

善子「ルビィ! 私たちも行くわよ!! 人柱が封印されている場所へ、アレを誘導するの!!」

ルビィ「うゆ……ッ!!」


後ろから巨大な金魚の化け物が私たちを追いかけてくる。 私とルビィは走り出した!

化け物は、地面も建物も、何もかもを食らい尽くしながら迫ってくる!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


ガラガラガッシャーン!!


善子「とんでもなくやばいわね! 追いつかれたらそれこそ終わりよ!!」

ルビィ「ぴぎぃ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


526以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:26:081///zhAs (6/110)

善子「はあ……はあ……廊下みたいなところに来たわね!」

ルビィ「うゆ……嫌な予感がするよ……」


すると、私たちの足元から影ような黒い手が無数に生えてきた!!


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!! 下から手がたくさん出てくる!!」

善子「捕まったら終わりよ!! 走って!!」


空間を切り裂くように無数の手が地面から出てくる……

私たちはそれを避けながら走る……


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


527以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:26:561///zhAs (7/110)

善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……今度は開けた場所に来たよ」


憎悪は自分の体から金魚型の追尾弾を無数に発射する!!


善子「あれは……ルビィ!! あの岩の裏に隠れるわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは岩の裏に隠れて様子をうかがう……


金魚型の追尾弾は着弾すると爆発して消えるようだ……


善子「あれを食らうとやばいわね……ルビィ、隠れてやり過ごしながら走るわよ!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁぁ無理ぃぃぃぃ!!!!」

善子「やらなければ帰れないわ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


528以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:27:431///zhAs (8/110)

善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


金魚たちは私たちを追うようにゆらゆらと揺らめきながら飛んでくる……


善子「まだ走って!! あそこまで行くのよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


善子「今度は建物の中……障子がいっぱいあるわね」


バァァァァァァァァンンンン!!!!


金魚たちは障子に着弾すると障子が木っ端みじんになって飛び散る!!


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


529以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:28:251///zhAs (9/110)

善子「タイミングを見計らって走るわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


バァァァァァァァァンンンン!!!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


バァァァァァァァァンンンン!!!!


善子「あの物陰に隠れるわ!!」

ルビィ「うゆ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


530以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:29:061///zhAs (10/110)

善子「はあ……はあ……」


あの巨大な化け物は私たちの真横まで接近する……


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」


キィィィィィィン


すると化け物の目が光り出す!!


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


善子「神通力で攻撃してきてるみたいね!! この辺り一帯を焼き尽くす光の攻撃……物陰に身を潜めてやり過ごすわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」

善子「あのおぞましい○気よりやばいわ……あれは目を合わせると呪いの力で命を削り取られたけど、こっちは光に当たるだけで体力を持っていかれる!!」

善子「物陰に隠れていれば大丈夫みたいね」


531以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:29:481///zhAs (11/110)

キィィィィィィン


善子「いい? 光が消えた瞬間に向こうの物陰まで走るわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」

善子「今よ!! 走って!!」

ルビィ「はあ……はあ……」


キィィィィィィン


善子「隠れて!!」

ルビィ「うゆ!!」


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


532以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:30:411///zhAs (12/110)

憎悪の化け物からの攻撃は苛烈を極める……

私とルビィはなんとかやり過ごしながら目的地へと走る!


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


善子「今度は建物の中ね……」

ルビィ「暗くてよく見えないよ」


シャリン……


あの光の球が現れた!


ルビィ「猫しゃん!!」

善子「あの光についていくわよ!!」


533以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:31:171///zhAs (13/110)

私たちが光の球についていくと下から影のような黒い手がまた無数に出現する!


善子「また来たわね! 走るわよルビィ!!」

ルビィ「うゆ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


私たちは走って光の後をついていく!


外へと出ると光の球は消えた……


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


534以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:31:591///zhAs (14/110)

善子「ここは……開けた場所ね」

ルビィ「彼岸花がいっぱい咲いてるね」


赤い巨大な鳥居が立てられ、地面は石畳になっている。

彼岸花が辺り一面に咲いている。


そして、奥に高台が見える!!

あそこが目的地だ!!


善子「あそこまで行くわよ!」

ルビィ「うゆ!!」


彼岸花が咲き乱れる地を走って進んでいく!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


535以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:32:321///zhAs (15/110)

高台に到着するとあの化け物が浮遊していた……

どうやら上手く誘導できたようだ!


そして勾玉の首飾りが光り出した!


化け物の下の大地に紋様が浮かび上がり、光り出す!


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


地の底から無数の巨大な手が伸びてきた!


無数の手は肥大化した憎悪を捕まえると地の底へと引っ張っていく!


謎の少女が化け物に向かって走りながら叫ぶ!!


謎の少女「お母さん!」


あの黒猫がその後ろから少女を追いかける。


猫「いっちゃだめ!」


536以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:33:191///zhAs (16/110)

少女は高台から飛び降り、化け物が引きずり込まれた地の底へと落ちていった……


善子「そんな……」

ルビィ「あの子が……」


猫「……」


猫「こうするしか方法がなかったの……ごめんなさい……ヒバナ……」


ルビィ「あの子、ヒバナちゃんっていうんだ……」

善子「ヒバナ……」


猫は少女が落ちていった地の底を見つめている……


537以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:34:011///zhAs (17/110)

猫「……」


猫「彼女はこの世界で、あまりにも多くの人の命を奪ってきました」

猫「ですが、母に会うために彼女はそうするしかなかったんです」

善子「……」

ルビィ「かわいそう……」


猫「彼女は人としての心を捨て、母のために化け物として生きた」

猫「その苦悩は想像を絶します。 彼女は、とても優しい人でしたから……」

猫「ですが……もうこれ以上、彼女が苦しむこともありません」

善子「……そうね」


538以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:34:341///zhAs (18/110)

猫「この世界も間もなく消え去り、誰かが迷い込むことも無くなります」

猫「あなたたちのお陰です」

ルビィ「……」

猫「あなたたちには、話しておきたいことが沢山ありましたが……」

猫「残念ながら、もう時間がありませんね」

善子「話しておきたいこと……」

猫「約束通り、あなたを元の世界へと送りましょう」

ルビィ「猫しゃんも一緒に脱出しないの……?」

猫「私は、この世界に残ります」

猫「この世界は、彼女の心そのもの。彼女が創ったこの世界の終わりを、見届けてあげたいんです……」

猫「あなたたちが来てくれてよかった」

善子「……」


539以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:35:131///zhAs (19/110)

猫「ありがとう……ございました……」

 
  
   
     
善子「…………ごめんなさい」

 
  
   
私たちは元の世界へと帰ったのだった……


540以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:35:511///zhAs (20/110)

─元の世界─


気がつけばあのトンネルにいた……

外からは光が差し込んでいる……


善子「……」

ルビィ「……」


ルビィ「……かわいそうだったね」

善子「……ええ」


???「ルビィちゃん! 善子ちゃん!」


541以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:36:361///zhAs (21/110)

ルビィ「……花丸ちゃん……花丸ちゃぁ!!」ギュ

花丸「ルビィちゃん!!」ギュ

善子「……帰ってきたのね、私たち」

花丸「よかったずら……本当に無事でよかったずら……」グスン

ルビィ「花丸ちゃぁ……」グスン


542以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:37:091///zhAs (22/110)

化け物と恐れられた少女は母と共に奈落へと消え

その悲願を遂げることは叶わなかった

それは、彼女が背負った業なのだろう


「もう一度母に会いたい」という少女の願いは

化け物と呼ばれるには、あまりにも人間らしく純粋なものだった……


543以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:37:401///zhAs (23/110)

善子「……ごめんなさい」

ルビィ「……善子ちゃん?」

善子「……ごめんね」グスン

ルビィ「善子ちゃん……」

花丸「……善子ちゃん…………」ギュ

善子「ずら丸……」

花丸「……マルには何があったか分からないけれど、善子ちゃんのせいじゃないずらよ」

善子「そう……だけど……」


544以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:38:121///zhAs (24/110)

善子「私には……私には、あの子が悪いだなんて、そう簡単に切り捨てることはできない……」

善子「失った命を蘇らせるなんて…………あの子のやったことは決して正しいと言えることではない」

善子「でもね、あの暗闇の迷宮はあの子の心……あの子がどれほど悲しい思いをしてきたか、すごく分かるの」

花丸「善子ちゃんは優しいから……」

善子「やっと分かったの……私、この前、あの世界から戻ってきてからずっと心の底に引っかかりを感じてた」

善子「心がなんかもやもやして……ずっと……でもようやく分かった……あの迷宮はあの子の悲しみ……きっとあのときの私はそれを感じ取ったのよ」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「もしかしたら私はあの子を助けられたかもしれない……そう思うの」

善子「そう考えたら……悲しくて……私がもっとちゃんとしていたら……」

花丸「善子ちゃん……」

花丸「残酷な時の流れを巻いて戻す術なんてないずら……」

花丸「善子ちゃんの心の傷を治す術も……マルには……」

花丸「……」


545以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:39:061///zhAs (25/110)

花丸「善子ちゃん……もう一度やり直せるとしたら、善子ちゃんはまた前を向いてくれる?」

善子「ええ……でも時を戻すことなんてできない……いくらあんたでも……」

花丸「マルにはそんな力ないずら……でも……」


花丸「これがあるずら」


花丸は珍しい和柄の懐中時計を握っていた……


善子「それは……」

花丸「これは……時をほんのわずかに戻すことができる時計ずら……」

花丸「マルのお寺にあった時計……書物にも書いてあった……」

花丸「1回だけしか使えない……本当は見せるつもりもなかった……」

花丸「でも……マルはこんなに悲しむ善子ちゃんを見たくないの……」


546以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:39:391///zhAs (26/110)

善子「それを使えば、あの子を助けられるの……?」

花丸「分からない……崩壊して消え去った世界まで戻るかどうかも……」

花丸「でも賭けてみる価値はある……」

善子「……」

花丸「使ってみる……?」

善子「……ええ」

ルビィ「そんな……善子ちゃん! あの世界に戻るなんて!」

花丸「オラも本当は行って欲しくないずら……」

花丸「大事な友達が危険な目にあうなんて……もしものことがあったら……オラの心は耐えられないずら……」グスン

善子「ずら丸……」


547以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:40:261///zhAs (27/110)

善子「でも私、やっぱりあの子を助けたいの! お願い! 力を貸して!」

花丸「……そう……でも約束して……必ず生きて帰ってくるって」

善子「ええ……」

ルビィ「善子ちゃん!!」

善子「ルビィ、あんたは残りなさい……一緒に来る必要なんてないわ」

ルビィ「ううん、ルビィも行くよ……ルビィもあの子を助けたいもん!」

善子「ルビィ……」

花丸「決まりずらね……オラも一緒に行くずら」

善子「でもあんたは戻った時の先にいないわよ……」

花丸「すぐに追いかけて行くから先に行っててほしいずら」

善子「……分かったわ」

花丸「……与えられた猶予を大事にしてね」

善子「ええ……きっとやり遂げる」


548以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:41:051///zhAs (28/110)

私たち3人は手をつないだ。


善子「一緒に行くわよ!」

ルビィ「あの子を助けて、みんなで生きて帰るよ!」

花丸「マルも協力するずら!」


私たち3人は時を戻す懐中時計を使った……


あの子を助けるために……再びあの世界へと戻る……


キュキュキュキュキュキュ……

────
──


549以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:41:441///zhAs (29/110)

─???─

善子「ここは……船の上……Kとの別れて、そのあと船でうとうとしていた時ね……」

善子「いま私たちは時を巻き戻してここまで戻ってきた……」

善子「花丸はいないわよね……別行動を取るつもりみたいね……ルビィ! ルビィ起きて!」

ルビィ「うゆ……ここは……」

善子「どうやらあの世界へと戻って来たみたいよ」

ルビィ「本当だ……戻って来てる……」

善子「ルビィ……やるわよ……」

ルビィ「うゆ!」


550以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:42:201///zhAs (30/110)

ルビィ「善子ちゃん、具体的には何をするの?」

善子「ここまで戻ってきたということは何か意味があるはず」

善子「でも、さっきと同じことをやったのでは最悪の未来は避けられないわ」


善子「今まで祭壇の扉を開くためには勾玉を5つ集めてきたわよね」

ルビィ「うん」

善子「じゃあ大勾玉は今いくつある?」

ルビィ「ええっと、4つあるよ」

善子「そう、4つ……あと1つあるってことよ」

ルビィ「どういうこと?」

善子「大勾玉は何かを守っている……大事な何かをね」

善子「賭けてみるのはそれよ! この先のあの不気味な回廊で大勾玉を取るわ」

善子「そして、その大勾玉でもう一つの未来をつかみ取るわ!」

ルビィ「うん……ルビィは善子ちゃんを信じるよ」

善子「私を信じてくれてありがとう、ルビィ」


551以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:43:371///zhAs (31/110)

善子「そしてあなたのことも助けるわ、猫ちゃん」

私は船首に座る猫に言う。


船はあの不気味な回廊の船着き場へと着いた……

あの猫はどこかへといなくなってしまった……


善子「いくわよ……」

ルビィ「うゆ……」


善子「いい? 今回はいつも取っている勾玉は取らないわ」

善子「大勾玉だけ取ることを考えましょう」

ルビィ「うゆ」


私たちは大勾玉を取るため前へと進む……


552以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:44:201///zhAs (32/110)

善子「本当に不気味な回廊ね……」

ルビィ「うゆ……」

善子「おそらく大勾玉は鍵のかかった部屋にあるわ」

善子「そして、特別な部屋にも鍵がかかっているはず」

ルビィ「特別な部屋……?」

善子「ええ、落とし穴の部屋を覚えてる?」

ルビィ「うん」

善子「あそこに特別な部屋があるわ」

ルビィ「そうなの?」

善子「おそらく…………あと戻りできない場所に大勾玉を置くとは考えにくいわ」

善子「そうなると大勾玉は別の場所にあって、あそこは特別な部屋ということになるわ」

ルビィ「……その落とし穴の下の部屋に鏡があれば戻れるんじゃない?」

善子「ちょっと! 急に不安になってきたじゃない!」


553以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:45:001///zhAs (33/110)

善子「でもやることは一緒よ、大勾玉を探して、見つけたら落とし穴の部屋から下に降りる」

善子「仮に見つけられなくても下に降りてみる」

善子「これでもし落とし穴の下の部屋が大勾玉の祭壇だったとしても大丈夫よ」

善子「念のため手鏡も持って行きましょう」

善子「下の部屋から帰れなくなると困るから」

ルビィ「うゆ! 分かったよ!」


私たちは暗闇の中を彷徨い続ける……


あの徘徊者たちをやり過ごして先へと進んでいく……


そしてついに大勾玉の祭壇を見つけることができた……


鬼の面が飾ってある祭壇だ……私たちは大勾玉を取った。


554以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:48:211///zhAs (34/110)

善子「これで大勾玉5つゲットよ!」

ルビィ「うゆ! 落とし穴の部屋に行こう!」


私とルビィは落とし穴の部屋に行った……

────
──

善子「落とし穴の部屋を見つけた……さあ、やるわよ……レバーを引いて下に落ちる……あそこの穴、つまり部屋に飛び移るわよ」

善子「高さはさほど高くないから落ちても大丈夫よ」

ルビィ「うゆ!」

善子「いくわよ……穴に向かって走って!!」

ルビィ「うゆ!!」


私とルビィは走りながら下へと落ちていく……

そして部屋のある穴に飛び移ることに成功した!


555以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:49:001///zhAs (35/110)

善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」

善子「ルビィ、どこか怪我してない? 足とか痛くない?」

ルビィ「うゆ、大丈夫だよ」

善子「私も大丈夫よ……さあ、中に入りましょう」


私とルビィは鍵を開けて部屋の中へと入っていく……


556以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:49:311///zhAs (36/110)

部屋の中には鏡があった……


善子「これでどこかへワープするのね」

ルビィ「うゆ、行こう」


私とルビィは鏡に触れた……一瞬で景色が変わり、どこかへと移動したことが分かる……


善子「ここは……どこかの部屋ね」

ルビィ「奥に扉があるよ!」

善子「行きましょう」


私とルビィは部屋の奥へと行く……


557以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:50:271///zhAs (37/110)

善子「また綺麗な場所に出たわね」

ルビィ「うゆ」


扉を開けると中には大きな鳥居があった。

あちこちから滝のように水が流れ落ちている。

まわりには灯りのともった石灯籠があり、洞窟の中のような場所なのに明るい。

石畳の階段の上には何かの祭壇のようなものがあり、大勾玉を5つ納めることができそうだ。


善子「行きましょう、あそこよ」


私たちはゆっくりと階段をのぼっていく。


558以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:51:201///zhAs (38/110)

善子「納めるわよ……」

ルビィ「うん!」


この世界のあちこちで手に入れた特別な勾玉……大勾玉を5つ納めると目の前の巨大な石の門が開いていく……


ゴゴゴゴゴゴゴ……


石の扉は大きな音を立てて開いた。


善子「開いたわ……」

ルビィ「すごいよ善子ちゃん! 大勾玉の秘密を解いちゃうなんて!」

善子「でもここからよ、ルビィ」


善子「あの子を助けるために、行くわよ」

ルビィ「うゆ!」


559以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:51:551///zhAs (39/110)

巨大な石の門をくぐり、中へ行くとそこには彼岸花が咲き乱れる石畳の道があった。

洞窟の中のような場所だが、灯りのともった石灯籠があちこちにあり、明るかった。

彼岸花は赤く光り、その花びらは宙へと舞っていた。

彼岸花と石灯籠による光の道が続いていた。


善子「進むわよ」

ルビィ「綺麗な場所だね」


進んでいくと小さな赤い鳥居があった。

彼岸花に囲まれ、その中央には台座と鏡が置いてあった。


善子「行くわよ……」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィは鏡へと触れた……一瞬で景色が変わる……どこかへと移動したようだ。


560以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 04:52:251///zhAs (40/110)

まるで何かを守っているかのように

堅く閉ざされていた石の大扉が

重々しい音を立てて開いた


少女のこと……

不思議な猫のこと……

この世界のこと……


私たちは、隠された真実に迫ろうとしていた


561以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 07:24:32PYsN6Aj. (1/1)

いよいよ聖域か…
続き期待


562以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 15:23:06JRQNeJHY (1/1)

巻き戻してやり直してくれたのか
助かる


563以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:43:321///zhAs (41/110)

─???─

善子「ここは……また回廊かしら?」

ルビィ「え、ということはまた迷宮を彷徨うの……?」

善子「そうなるわね……でもやることは変わらない……勾玉を5つ集めて祭壇に納めればいいのよ」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィは先へと進む……


善子「彼岸花が咲いてるわね……水も流れてるわ……綺麗なところ……」

ルビィ「うゆ……」

善子「さあ、入るわよ」


中に入ると暗闇の回廊が奥へと続いていた……


564以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:44:161///zhAs (42/110)

善子「床は木材や畳……壁は土壁かしら? 白を貴重としていてとても綺麗な印象ね……」

ルビィ「うゆ……あの不気味な回廊よりは綺麗だね」

善子「燭台がないわね……ろうそくに火をともして明かりを確保したかったんだけど……」

ルビィ「あちこちに鉢植えがあるよ、彼岸花が植えてある」

善子「なんでこんなに彼岸花が置いてあるのかしら……まさか……」


私は彼岸花に灯りをともした……

ふわっと花びらが散り、彼岸花は赤く光り、あたりを照らしていた。


ルビィ「綺麗……」

善子「この彼岸花……光るのね……」

ルビィ「じゃあ、彼岸花で灯りをともせばいいんだね!」

善子「そういうことね……」


565以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:45:041///zhAs (43/110)

善子「もっと探索していきましょう」

善子「こっちのタンスや棚を調べて……」

ルビィ「爆竹……ひかり石……それからカメラに手鏡、鍵もあるよ」

善子「これは……何かしら?」

ルビィ「何だろう? お皿の上に乗ってるね?」

善子「まさか……トカゲの尻尾?」

ルビィ「ぴぎぃ!? なんでこんなものが!?」

善子「……持って行きましょう」

ルビィ「嘘でしょ善子ちゃん!?」

善子「コンパスはこっちを指しているわ……行くわよ」

ルビィ「うゆ……」


566以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:45:341///zhAs (44/110)

グスン……グスン……


善子「泣き声の主ね、爆竹で誘導してあそこにある勾玉を取るわよ」

ルビィ「うゆ、もし他の徘徊者しゃんが来たときのために逃げる場所も考えて……あっちとかどうかな?」

善子「ええ、大丈夫そうね……じゃあ、爆竹で気を引くわよ……えい」ヒョイ


……


パチパチパチパチ……


グスン……グスン……


善子「移動してるわね……慎重に勾玉を取るわよ」

ルビィ「うゆ」


私たちは1つ目の勾玉を入手すると、その場を立ち去った。


567以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:46:101///zhAs (45/110)

善子「次いくわよ……あら? あんなところに勾玉があるわ」

ルビィ「本当だね、取ろうよ」

善子「ええ……」ガチャガチャ

善子「扉が開かないわね、鍵が閉まってるわけではないみたいだし」

ルビィ「こっちの部屋は鍵がかかってるよ」

善子「開けてみましょう」

ルビィ「中にはレバーがあるよ」

善子「引いてみましょう」ガチャ

カチッ

善子「あ、こっちの部屋の扉が開いた」

ルビィ「うゆ、じゃあ勾玉を取ろうよ」

善子「ええ、2つ目ゲットね」


私たちはさらに先に進んでいく……


568以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:46:421///zhAs (46/110)

シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「神楽鈴の徘徊者ね、隠れましょう」

ルビィ「うゆ」


シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「あら?」

ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」

善子「彼岸花の灯りが……点滅してない」

ルビィ「本当だ」


シャン……シャン……


善子「どこかに行ったわね」

ルビィ「うゆ……」


569以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:47:151///zhAs (47/110)

ルビィ「この灯りは徘徊者しゃんが来ても消えないんだね、やったね!」

善子「逆よ、ルビィ」

ルビィ「え?」

善子「灯りが消えないということは、もし徘徊者が近づいてきてもどっちから来てるか分かりにくいということよ」

善子「今まではろうそくの火の揺らめきでなんとなく位置が分かっていたわ」

善子「でも灯りが消えないから自力で徘徊者を探さなくちゃいけないの……」

ルビィ「うゆ……そう考えるとたしかに怖いね……」


570以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:47:521///zhAs (48/110)

善子「それにしても、おかしい……」

ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」

善子「簡単すぎる……」

ルビィ「え……? 善子ちゃん? それはおかしいよ……だって命の危機だよ?」

善子「分かってるわ、そうじゃなくて……さっきの回廊に比べて簡単すぎるのよ……」

ルビィ「何か問題があるの?」

善子「これは何かおかしいわ……逆に不気味ね……これは何かあるわ」

ルビィ「うゆ……考えすぎじゃないかな……」


571以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:48:221///zhAs (49/110)

ドタドタドタドタドタドタ……


善子「走り廻る徘徊者もいるのね」

ルビィ「うゆ」

善子「あっちに行きましょう」

ルビィ「うゆ……こっちは水路?」

善子「そうね、水路になっているわね」

ルビィ「それじゃあ、こっちに行ってみようよ」

善子「ええ、そうね」


572以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:49:021///zhAs (50/110)

善子「ここも鍵を開けて……3つ目の勾玉をゲット」

ルビィ「順調だね!」

善子「ええ……もうここまで来たら残り2つは祭壇に向かいながら集めてもいいかもしれないわね」


そのときだった!


いあを~かひれあきおいおやうぃき~♪

う~さみりあみねまそおわづほ~♪

い~にあうぃおおぬたなののこのく~♪

いあを~かひれあきおいおやうぃき~♪


どこからともなく女性の歌声が聞こえてくる!!


善子「何!? この歌!?」

ルビィ「善子ちゃん!! なんか怖いよ!!」


歌声はこちらに近づいてきていた……


573以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:49:501///zhAs (51/110)

ルビィ「よ、善子ちゃん……この歌声、どんどんこっちに来てるよ」

善子「落ち着いて……落ち着いて隠れましょう、あそこの部屋に入るわよ」

ルビィ「うゆ……そ、そうだね」


私たちは部屋に隠れた……


いあを~かひれあきおいおやうぃき~♪

う~さみりあみねまそおわづほ~♪

い~にあうぃおおぬたなののこのく~♪


ガラガラ……


何者かがこの部屋の扉を開けて入ってきた!!


ルビィ「ぴぎぃ!?」

善子「嘘でしょ!? なんでここにいるって分かったの!? ルビィ、カメラを用意して!!」


574以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:50:251///zhAs (52/110)

見ると、そこには頭部が肥大化した人型の徘徊者の姿があった!

顔には他の徘徊者と同様に能面をつけている。

徘徊者はこちらに向かって近づいてくる!


ルビィ「ぴぎゃぁ!!」

善子「見つかった!! ルビィ!! シャッターを切って!!」

ルビィ「うゆ!!」


パシャ


凄まじい光が放たれ、その徘徊者は怯んだ。 今のうちなら逃げられるだろう……


善子「ルビィ!! 走るわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私とルビィは走って部屋から出る!!


575以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:50:551///zhAs (53/110)

善子「はあッ…… はあッ……」

ルビィ「はあッ…… はあッ……」

善子「ここまで走れば大丈夫ね……どうして私たちの居場所が分かったのかしら……隠れるところは見られてないはずだし、大きな物音も立ててないはずよ」

ルビィ「うゆ……偶然じゃないよね?」

善子「ええ、あの動きは確実に私たちのことを捕捉してたわ」


しかし……


いあを~かひれあきおいおやうぃき~♪

う~さみりあみねまそおわづほ~♪

い~にあうぃおおぬたなののこのく~♪


善子「またあの歌声が近づいてきてるわよ!?」

ルビィ「ぴぎぃ!! 怖いよ!!」


576以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:51:421///zhAs (54/110)

善子「いえ、歌声が聞こえてきてるだけかもしれないわ……あそこに隠れましょう」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィはもう一度隠れる……


善子「今のうちにカメラの電球を取り替えて、何かあった時のために準備しておいて……何か嫌な予感がするわ」

ルビィ「うゆ」


いあを~かひれあきおいおやうぃき~♪

う~さみりあみねまそおわづほ~♪

い~にあうぃおおぬたなののこのく~♪


善子「来る!!」


その徘徊者は私たちが隠れている場所に一直線で向かってくる!!


577以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:52:211///zhAs (55/110)

善子「居場所がバレてる!! こっちに向かってきてるわ!! ルビィ!! シャッターを切って!!」

ルビィ「うゆ!!」


パシャ!!


またカメラのフラッシュで怯む徘徊者……


善子「走るわよ、ルビィ!!」

ルビィ「うゆ!!」


いあを~かひれあきおいおやうぃき~♪

う~さみりあみねまそおわづほ~♪

い~にあうぃおおぬたなののこのく~♪


不気味な歌声は後を追ってくる……


578以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:52:521///zhAs (56/110)

善子「ダメ!! 振り切れないわ!!」

ルビィ「ぴぎぃ!!」


追いつかれたその瞬間、あたりの景色が一瞬で変わった!!

どうやら別の場所へとワープしたようだ。


善子「はあッ…… はあッ……」

ルビィ「はあッ…… はあッ……」


善子「どうして助かったのかしら……」

ルビィ「うゆ……」

善子「手鏡を使ったわけではないわよね……だったらなぜ……」

善子「あら……?」


善子「トカゲの尻尾がなくなってる……」


579以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:53:291///zhAs (57/110)

善子「トカゲの尻尾……どこかで聞いたことがあるわ……おまじないとかでよく使われるって」

善子「きっと魔除けの力が込められた不思議なものだったのね……だから私たちに危機が迫ったときに効果があったのね」

善子「私たちが命の危機に陥ったからワープさせてくれたのよ」

ルビィ「はあ……そのおかげで助かったよ……」

善子「でも次はないわ……またあの徘徊者に出くわす前に何か考えておかないと……」

ルビィ「うゆ……何かヒントになりそうなものあるかな……?」


善子「こんなところに何かの書物が置いてあるわね」


善子「八尾の狐の昔話」


ルビィ「昔話……何かの役に立つかな?」


善子「分からないわ……でも先人たちはこういうお話の中に生きる知恵を残しておいたりしたのよ」

善子「もしかしたら何か分かるかも……?」

ルビィ「うゆ……」


580以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:54:011///zhAs (58/110)

善子「……」

ルビィ「……」

善子「ふむふむ」

ルビィ「何か分かった?」

善子「いえ、分からないわ……でもお話はこうよ」

善子「昔々、人里離れたある山に、八つの尻尾を持つ化け狐がいた」

善子「尻尾の数は強い妖力の証で、その狐は長い年月の研さんを積んでようやく九尾の狐になるところだった」

善子「九尾の狐は天狐と呼ばれ、千里先のことを見通す力を持ち、妖狐たちを束ねる頭領となるという」

善子「深い慈愛と徳と威厳を称えたその八尾の狐は、他の妖狐からの信頼も厚く次の頭領となることを誰もが疑わなかった」

善子「でも狸がその狐をからかったの……八尾の狐はそこで力を使い、雨雲を呼び寄せた」

善子「大嵐となり、雷鳴がとどろき、雨は土を砕き岩を押し流した。その大雨による川の氾濫に多くの人が巻き込まれたの」

善子「八尾の狐は、嘆き悲しみ軽率な自分を責めた……そして人間たちの屍の中から一人の子供を見つけると、その子に命を分け与えた」

善子「八つあった尻尾は四つになってしまったそうよ」

善子「そして狐の頭領は四尾となった狐を強く叱責し、彼の次期頭領としての座を剥奪した。四尾の狐は、仲間たちから追放された」

善子「そして、再び川で人が命を落とすことが無いよう、川の守り神となった……」


581以下、名無しが深夜にお送りします2021/07/10(土) 19:54:381///zhAs (59/110)

善子「というお話ね」

ルビィ「うゆ……きつねしゃんかわいそうだね……」

善子「そうね……でもいま私たちがこの状況を打開するための情報は特になかったわね」

ルビィ「九尾のきつねしゃんは千里先も見通す力があるっていったよね、あの徘徊者しゃんも遠くまで見えたりして……」

善子「まさかね……いえ…………まさか……ッ!?」

善子「あの徘徊者の能力……その正体は……」


善子「千里眼……」


善子「千里眼の徘徊者……ッ!!」


ルビィ「ぴぎぃ!? 千里眼の徘徊者しゃん!?」

善子「そうかもしれないわ……まだ分からないけど、そうでなければあんなに的確に私たちの居場所が分かるはずがないもの……」

ルビィ「うゆ……だとしたらここにいるのもバレてるのかな……」

善子「分からないわ……障害物があっても透けて見えるとしたら……どうすればいいのかしら……」