480以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/02(火) 16:28:42.49YmoQ0jae0 (9/16)


天使はいるか、と聞かれたら。

眼前に降臨している、と今なら答えられる。

今まで貰ってきた義理チョコの中でも一番嬉しいチョコレートだ。

言葉にならない喜びをどう表現していいのか分からないから

サンディの頭をワシワシと撫で繰り回してしまう。

あわわわ、とちょっと髪が乱れながらも、気持ちよさそうな表情を浮かべる彼女が一層愛おしい。


「ありがとう、サンディ。大事に食べさせてもらうよ」

「は、はい……っ!」


幸せそうな、でもどこかでやり遂げたような顔をしているサンディ。

丁度そんなタイミングで、カウンター奥から気配がする。

どうやら注文したココアが出来上がったようだ。


「あいよ、お待たせ」

「有難う、マスター」

「あ、ありがとうございます」


マスターは僕の手元を見たあとに、サンディを見て破顔一笑。

サンディも彼を見ては何度もコクコクと頷いている。

なんだ、この一言も発さずに互いを察するようなやり取りは。

いつの間に二人とも仲良くなったんだろうか、などと少し気になったりもする。
 


481以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/02(火) 16:37:43.13YmoQ0jae0 (10/16)



まぁ、それはさておき。

僕は手元に備えていたサンディからの義理チョコをマスターに

借りを返すかの如くこれ見よがしにとちらつかせる。


「いやー、マスター。確かにいい男の前には自然と集まってしまうみたいですな」

「良かったじゃねぇか。なぁ、嬢ちゃん?」


そう言いつつサンディに話を振ると、当の彼女は真っ赤になった顔を隠そうと俯きつつ、

両手をマスターに向けてパタパタと振っている。かわいい。


「確かに、義理でも人情味があるとチョコの良さも一際グッときますね」


パタパタ振ってたサンディの手が止まった。

そして油の切れたロボットのようなぎこちなさで顔を上げ、マスターの方に向ける。

向けられた彼は片手で顔を覆いつつ、天を仰ぎながらも何某かのジェスチャーをサンディに返す。

あの阿呆には俺から言ってやろうか、的なモーションだ。

するとサンディは首をブンブン振って、ガッツポーズのような動きを取る。

これからも頑張ります、的なモーションだ。


「嬢ちゃん、そのココアは奢りだ……。ゆっくり飲みな……」

「ありがとう、ございます……」

「いいってことよ……」


僕の知らない所でハードボイルドが繰り広げられている気がする。

 


482以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/02(火) 16:49:05.50YmoQ0jae0 (11/16)



それからしばらく喫茶店でココアを堪能したのち、僕とサンディは帰路に就いていた。

帰り道の途中にある、街灯のオレンジ色に淡く灯る光が、僕らを緩く照らしてくれる。

サンディは僕の少し後ろを歩いているようだ。

がさがさと紙袋の擦れる音で、彼女がしっかりついて来てくれているのが分かる。

僕は僕で、サンディから貰ったチョコレートを割らないように

普段よりも注意深く歩いている。

鞄にしまったチョコレート、添えられたメッセージカードの真心が嬉しい。

僕もメッセージくらいは準備しておくべきだったかな。
 


483以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/02(火) 16:53:59.72YmoQ0jae0 (12/16)


一直線に長い遊歩道の中間あたりで、足を止めてみた。

誰もいない夜の狭間。静けさだけが僕らを包む。


「サンディ、おいで」

「はい」


あえて前を向いたまま呼んでみる。

少し小走りな足音が後ろから聞こえてきて、丁度僕の横に並んだ。

止まったままの僕を何事か、と彼女は覗き込んでくる。

そのタイミングで、僕は鞄から物を取り出した。

縦に長いそれは、黒を基調とした入れ物に赤色でラッピングがされている。

それを、サンディに渡してみた。僕なりの真心を。


「はい、ハッピーバレンタイン」

「……え?」

 


484以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/02(火) 17:08:57.94YmoQ0jae0 (13/16)


サンディは目を丸くして驚いている。

まさか自分が貰えるとは、といった心境だろうか。

昨今は男性から女性に送るバレンタインも珍しくないらしいので

僕からの小さなサプライズを送ってみた。


「い、いいんですか……?」

「いいも何も、君のためだけに準備したチョコだよ。受け取ってくれたら嬉しいな」


なんだか少々照れ臭い。いや結構照れ臭いなこれ。

サンディが僕にチョコ渡す前に顔が真っ赤になっていた理由が何となく分かった。

自身の耳が赤くなってそうだが、そこはハードボイルドらしく冷静に振舞っておこう。

そんな僕の義理チョコを受け取ってくれた彼女は、

胸いっぱいにそれを抱きしめている。

幸せそうに、幸せそうに、抱きしめている。

 


485以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/02(火) 17:10:51.20YmoQ0jae0 (14/16)


「じゃ、じゃあ用件も済んだことだし、帰ろうか」

「はい……!」


サンディは僕の横に並んだかと思えば、スキップするような足取りで軽やかに抜き去って

数メートル先の街灯の下まであっという間に辿り着いていた。

喜んでくれたのは素直に嬉しく思う。

こういう些細な喜びがある日々をもっと増やせていけるよう、僕なりの努力はしてみたい。

義理と人情で引き受けたサンディとの共同生活だけれど。

一握りくらいは愛を込めてもいいのかな。

そんな事を思いながら、サンディの待つ橙色の光が灯る街灯まで駆け出した。

 


486以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/02(火) 17:18:50.78YmoQ0jae0 (15/16)



~ 後日談 ~


サンディから受け取ったメッセージカードには、

沢山の感謝の言葉が綴られていた。

出会った頃に助けてもらった事から始まり、何でもない日々の中で本人すら覚えていないような

些細な気遣いの行動に関して等、とめどなく溢れるような沢山の感謝の言葉。


締め括りの文章に書かれていたのは下記の通り。



“私と居てくれてありがとう、おにいさん。 好きです。大好きです。”



それを夜中に読んでいた探偵は、

あまりの尊さにおうおう涙を零しながら、うわごとのように

「うちの子本当に可愛いんですよ……」を只々繰り返すだけのマシーンと成っていた。

 


487以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/02(火) 17:29:54.08YmoQ0jae0 (16/16)

「季節感」とかいう置いて行かれるためだけにある言葉よ。
ネタはあるものの書き溜めしていないと、どうしても時間がかかりますね。

業務多忙の日々も少し落ち着いたゆえ、久々に綴ってみまして。
読んでくださった方々が少しでも楽しんでくれたのなれば幸いです。

作業用BGMより一曲



488以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/02(火) 21:29:32.70Vjx0L5x2O (1/1)


浄化される…


489以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/03(水) 01:20:56.84lIPkH7iso (1/1)

いやー…尊い


490以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/03(水) 08:21:17.97AXP6EEd0O (1/2)

更新乙です

あぁ、癒される??


491以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/03(水) 08:23:44.34AXP6EEd0O (2/2)

せっかくの感想誤字ってる( ̄▽ ̄;)

でもこれで研修頑張れます


492以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/04/05(金) 22:04:36.33fCLfJEqw0 (1/1)

更新乙です
ソフトマイルドなお兄さんよりハードボイルドしてますねサンディさん…


493以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/05/01(水) 05:05:40.57XMZ3frEk0 (1/1)

令和記念


494以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/06/07(金) 21:00:08.85gsIZWItq0 (1/1)

保守


495以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/06/16(日) 13:23:48.74MPJ0sY3a0 (1/1)

まだ待ってますよ~ (*^-^*)ノ


496以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/07/29(月) 19:57:10.561u2H/ZMS0 (1/1)

保守


497以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/08/15(木) 20:46:17.00dn7JADrJ0 (1/1)

保守