385以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 22:05:12USYRGz46 (13/21)

………………学校 公衆電話

うるか 「寄りたいところって、ここ?」

成幸 「ああ、俺は携帯電話を持ってないからさ。連絡手段はこれしかないんだ」

成幸 「今からちょっと電話かけるから、えっと……」

成幸 「……向こうで待っててもらってもいいか?」

うるか 「へ? あ、うん。わかった」

うるか 「………………」

うるか (……あたしに電話の内容を聞かれたくないのかな?)

うるか (怪しい……) ピーン (ひょっとして、電話の相手は、女……!?)

成幸 「………………」

うるか (電話、かけたみたいだ。少し趣味が悪いかもしれないけど……)

コソコソコソ……

うるか (ちょと盗み聞きさせてね、成幸)


386以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 22:05:56USYRGz46 (14/21)

成幸 「……あっ、水希か? 俺だよ」

うるか (“水希” って、たしか妹ちゃんの名前だ……)

ホッ

うるか (なーんだ。家に電話かけてるだけかー)

成幸 「わっ……ご、ごめん。そんな大声出すなって……」

成幸 「悪かったよ。でも、仕方なかったんだ。ごめんな」

うるか (……? 謝ってる? どうかしたのかな?)

成幸 「クリスマスパーティできなかったのは、本当にごめん。せっかくごちそう作って待っててくれたのにな」

うるか (へ……?)

成幸 「ケーキも……。うん。葉月と和樹にも謝るよ。わかってる」

うるか (ひ、ひょっとして……)

成幸 「……いつも苦労をかけてごめんな、水希。うん。今から帰るよ」

うるか (あ、あたしのせいで……)

うるか (あたしのせいで、成幸にとんでもない迷惑をかけちゃったんじゃ……)


387以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 22:07:13USYRGz46 (15/21)

………………帰路

うるか 「………………」

成幸 「……冷えるなー」 ブルッ 「天気予報じゃ、雪が降るかもしれないとか言ってたもんな」

うるか 「………………」

成幸 「? 武元?」

うるか 「……あ、あのさ、成幸。あたし、ひとりで大丈夫だし、もう家に帰ったら?」

成幸 「へ? いやいや、さすがにこの時間だし、危ないだろ。家まで送ってくよ」

うるか 「いや、でも……」

成幸 「? なんかヘンだぞ? どうかしたのか?」

うるか 「………………」 スッ 「……ごめん、成幸。さっき、ちょっと電話、盗み聞きしちゃった」

成幸 「へ……?」

成幸 「……あー、聞かれたか。あんまりお前に聞いてほしくなかったんだけどな」

うるか 「……ごめん」

成幸 「いや、べつにそれはいいんだけど……」

成幸 「気にしなくていいからな? そもそもお前の補習を邪魔しちゃった俺が悪いんだから」


388以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 22:07:52USYRGz46 (16/21)

うるか 「で、でも! そのせいで、成幸にも、成幸の家族にも迷惑かけちゃったし……」

うるか 「ごめんね……。ごめんなさい、成幸」

成幸 「いや、だから、そもそも俺が悪いんだから、お前が申し訳なく思う必要はないんだけど……」

うるか 「……でも、あたしの宿題のせいで、成幸に迷惑かけちゃったのは事実だし……」

成幸 「うーん……」

パラッ……

成幸 「……うん?」

うるか 「あっ……」

パラパラ……パラ……

うるか 「雪……?」

成幸 「雪だな……」

うるか 「………………」 ポーッ 「キレー……」

成幸 「だなぁ……」

うるか 「……ホワイトクリスマスだね」


389以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 22:08:26USYRGz46 (17/21)

成幸 「……なぁ、武元」

うるか 「? 何?」

成幸 「俺さ、電話で妹には怒られたし、下の弟妹にもこれから怒られるだろうし、悪いことしたなって思うけどさ」

うるか 「……うん」

成幸 「でもやっぱり、お前に宿題教えてよかったよ」

うるか 「へっ……?」


成幸 「だって、普通に帰ってたら、雪が降ったなんて絶対気づかなかっただろ?」


成幸 「武元に宿題教えて、帰るのが遅くなったから、この雪を見ることができたんだ」

成幸 「帰ってあいつらにも、ホワイトクリスマスだってことを教えてあげなくちゃな」

うるか 「成幸……」

成幸 「ほら、早く帰ろうぜ。武元の家までダッシュだ!」 タッ

うるか 「あっ……ま、待てー! 成幸ー!」 ビュン!!

成幸 「待てとか言っておいて一瞬でぬかすのは勘弁してくれないか!?」

うるか 「遅いよー、成幸ー! 早く帰らないと、雪やんじゃうよー!」


390以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 22:08:59USYRGz46 (18/21)

………………現在

うるか (……なつかしいな。もう一年前か)

うるか (あれから色々あったよね。リズりんや文乃っちと友達になって……)

うるか (一緒に成幸に勉強教わるようになって……)

うるか (成幸に、名前で呼ばれるようになったり、“好きな人” の勘違いとか……)

クスッ

うるか (……ほんと、色々あったなぁ)

あゆ子 「おーい、うるかー?」

智波 「遠い目をしてどうしたの?」


391以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 22:09:33USYRGz46 (19/21)

うるか 「……ううん。なんでもないよ」

うるか 「クリスマスじゃなくてもデートはできるしさ」

うるか 「クリスマスは、成幸にとって家族の日だから」

うるか 「だから、いいんだ」

智波&あゆ子 「「……?」」

うるか (……去年は、あたしのせいで家族と過ごせなかったけど)

うるか (今年は、成幸が、幸せなクリスマスを過ごせますように)


おわり


392以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 22:10:14USYRGz46 (20/21)

………………幕間  「ラスト」

智波 「あ、ラストクリスマスが流れてるよ。わたしこの曲好きなんだよねー」

あゆ子 「私も嫌いじゃないな。ただ、歌詞の内容は結構ダークな感じだよな」

智波 「ねー。わたしも明るいクリスマスソングだと思ったら、ねぇ?」

うるか 「メロディは明るい感じなのに、結構物騒な曲だよね」

あゆ子 「へ……? う、うるか!? あんた、洋楽が語れるだけの英語力が身についたの!?」

うるか 「むっ、川っち、あたしのことを見くびってるね?」 フフン 「いくらなんでもラストクリスマスくらいわかるよー、だ」

智波 「まぁ、有名ってレベルの曲じゃないもんね……」

うるか 「そもそもタイトルからして物騒じゃん!」 クワッ 「“最後のクリスマス” なんて、すごく怖いタイトルだよね!」

智波&あゆ子 「「………………」」

うるか 「……? 海っち? 川っち?」

智波 「……うん。やっぱり、うるかはうるかだね」 ポン

あゆ子 「安心したよ。アホなあんたはまだ健在だね」 ポン

うるか 「なに!? あたしなんかヘンなこと言った!?」

おわり


393以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 22:16:56USYRGz46 (21/21)

>>1です。
読んでくれた方ありがとうございました。

また投下しますと言っておきながらなかなか投下できずすみません。
師走で生活が忙しいのと、年末の某イベントの原稿でなかなか投下できませんでした。
もし待っていてくれている方がいたら嬉しいですが、同時に申し訳ないことだと思います。

>>371さんと>>372さんのレスを偶然見かけて書けるなら書きたいなと思い二時間ほどで書き上げました。
誤字脱字表現のおかしなところ多々あるかと思います。申し訳ないことです。
ただ、期待されて書くというのはとても嬉しいもので、書いていてとても楽しかったです。

あまり本編の時間軸を飛び越えるのは好きではないので、本編でやっていないクリスマスの話は避けました。
ハロウィン回は、単行本のオマケ漫画でやっていたので、まぁいいだろうという判断で書きましたが。
本編の話の流れ的に間違いなくクリスマス回は話を動かすエピソードになると思います。今から楽しみです。

年末の某イベントがあるので、今年はまず間違いなくこれで投下は打ち止めだと思います。

自分語りが長くなりました。申し訳ないことです。
また投下します。失礼します。


394以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 23:16:1442VB03HE (2/2)

来とるやんけ!!
おつおつ


395以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 23:32:09B1.sXYhM (2/2)


書く速度は相変わらずのようで何より


396以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/25(火) 23:48:46DVNYyga2 (1/1)

シエンタ
>>1のおかげか知らんがもう1つ僕勉スレ立ったしな


397以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 02:28:367pmaNqWk (1/1)

おつ!
また書いてくれてめちゃくちゃ嬉しい!


398以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:13:27Co5zvoAw (1/41)

>>1です。
気分転換に書いていたら書き上がってしまったので投下します。
やや長い上に話がくどいかもしれません。


【ぼく勉】 あすみ 「そういやあの日、まふゆセンセと何してたんだ?」


399以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:13:59Co5zvoAw (2/41)

………………ファミレス

成幸 「へ……?」

成幸 「いや、あの、“あの日” って、一体……」

あすみ 「いつだか、まふゆセンセが制服着てた日のことだよ」

成幸 「う゛ぇっ……」


―――― 『誤解! 絶対君は何か勘違いをしているわ唯我君! この格好には深いわけが……』

―――― 『え…… 俺はてっきり……』

―――― 『溜め込んだ洗濯物つい全部洗っちゃって着れる服がそれしかないのかと……』


成幸 (あの日のことかぁああああああああ!!)


―――― 『……古橋さんの目に…… さっきの私達はどう映ったのかしら』

―――― 『制服だからやはり恋人同士に見えたのかしらね……』


成幸 (あっ……/// あの日のことか……////)


400以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:14:42Co5zvoAw (3/41)

あすみ 「……あん?」

あすみ (なんだ、後輩のヤロウ、急に顔を真っ赤にしやがって……)

あすみ (興味本位で聞いたつもりだったが、まさか、こいつ……)

あすみ (桐須先生と、マジで制服デートしてたわけじゃねーだろうなぁ)

ジトッ

あすみ 「……おい、後輩?」

成幸 「へっ!? あ、いや、全然、その大したことじゃないですよ?」

成幸 「ただ、ちょっと先生が……」

ハッ

成幸 (い、言えるかーーーーーーーーー!! この愉快的な先輩に!!)


―――― 成幸 『桐須先生が服を全部洗ってしまって制服以外着る服がなかっただけですよ?』

―――― 成幸 『ほんと、そそっかしい先生ですよね。あはははは』


成幸 (なんて言えるかぁあああああああああああああああああ!!)

成幸 (最悪そんなこと言ったのがバレたら桐須先生にコロされるわ!!!)


401以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:15:17Co5zvoAw (4/41)

あすみ 「後輩、お前さっきから百面相だぞ? どうした?」

ジーーーッ

成幸 「い、いえ、何も……」

成幸 (まずい。先輩が疑うような目をしている……)

あすみ (こいつ……アタシという恋人がいながら、まさか教師とイケない関係なんてこたぁねーだろうな……)

あすみ 「………………」

あすみ (……いや、まぁ、もちろん、アタシとこいつの関係は、ただの “フリ” ではあるわけだが)

成幸 「ほ、ほんと、大したことじゃないんですよ。ただちょっと……」

あすみ 「ただちょっと? ただちょっと何だよ?」

成幸 「……すみません」


402以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:16:10Co5zvoAw (5/41)

あすみ 「ん?」

成幸 「すみません。言えません……」

成幸 (桐須先生の名誉を守るために……)

あすみ 「っ……」

あすみ (言えねーってことは、つまり……そういうコトってわけか……)

ズキッ

あすみ (……ま、べつに、アタシにはカンケーねーことだけどさ)

あすみ 「……わかった。変なこと聞いて悪かったな。勉強に戻るとするか」

成幸 「そ、そうですね。そうしましょう」 アセアセ

あすみ 「………………」

あすみ (あんだよ……)

あすみ (ほんとにアタシには言えねーようなことなのかよ)


403以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:16:46Co5zvoAw (6/41)

………………

あすみ 「……んじゃ、アタシはそろそろバイトの時間だから、もう行くな」

成幸 「はい。では先輩、明日はバイト先に伺いますね」

あすみ 「おう、また明日な」

モヤモヤモヤ

あすみ (……結局あれから、あの話はなく、なんとなく気まずいまま時間だけすぎてしまった)

あすみ (いや、気まずいなんて思ってるのはアタシの方だけか)

あすみ (何でアタシはこんなに、後輩と先生のことを気にしてるんだ……?)

成幸 「先輩?」

あすみ (後輩はケロッとした顔で、普段通りだ)

あすみ (アタシが勝手に気にしてるだけ、か……)

あすみ (アタシらしくもない。でも……)

あすみ 「……なぁ、後輩」


404以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:17:20Co5zvoAw (7/41)

成幸 「? なんです?」

あすみ 「……もう一度だけ聞く。あの日、制服姿の先生と何してたんだ?」

成幸 「えっ……」

あすみ 「もし本当に答えられないなら、答えなくてもいい。しつこくてすまん」

成幸 「あっ、えっと……」

あすみ 「………………」

成幸 「………………」

ウェイトレス (す、すごい雰囲気だわ、あの席……)

ウェイトレス (あれが修羅場ってやつね……!?) ドキドキ

成幸 「……すみません。答えられません」

あすみ 「………………」

あすみ 「……そっか」

あすみ 「恋人のアタシにも言えないようなことなんだな」


405以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:17:59Co5zvoAw (8/41)

成幸 「へ……?」

成幸 「や、やだなぁ、先輩」



成幸 「俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか」



あすみ 「っ……」

成幸 「また俺をからかおうって魂胆ですね。そうはいかないですよ」

あすみ 「………………」

クスッ

あすみ 「んだよー、後輩。もっと初々しい反応期待してたってのによ」

あすみ 「拍子抜けだよ」

あすみ 「……んじゃ、今度こそ、またな」

成幸 「はい、先輩! また明日!」


406以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:18:33Co5zvoAw (9/41)

………………メイド喫茶 High Stage

あすみ 「………………」

ボーーーッ

マチコ 「……? ねえねえ、あしゅみーどうしたのかな?」

マチコ 「あんなに仕事に身が入ってないあしゅみー初めて見たよ」

ミクニ 「どうしたんだろうね」

ヒムラ 「恋かな? 恋の悩みかな」

マチコ 「!? だとすれば、もちろん相手は……」

ミクニ 「唯我クン一択でしょそんなの!」

マチコ&ヒムラ 「「だよねー!」」

ワイワイガヤガヤ

あすみ 「………………」

あすみ (……アタシ、何してんだ? いや、何しちまったんだ)

ズーン


407以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:19:23Co5zvoAw (10/41)

―――― 『……もう一度だけ聞く。あの日、制服姿の先生と何してたんだ?』

―――― 『恋人のアタシにも言えないようなことなんだな』


あすみ (何やってんだ、アタシ……)

あすみ (自分があんなに面倒くさい女だと思わなかった……)

あすみ (……っつーか)

あすみ (あれじゃまるで、アタシが後輩とセンセに嫉妬してるみたいじゃねーか)

あすみ (そりゃ、あれくらい言われても仕方ねーわな)


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ 「ッ……」 ズキッ

あすみ (……何で、あいつのあの言葉を思い出すだけで、こんなに辛いんだ)

あすみ (アタシは、そんなに……)

あすみ (そんなに、あいつに “ニセモノ” って言われたことがショックだったのか)


408以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:19:58Co5zvoAw (11/41)

あすみ (アタシは……)

あすみ (アタシは、あいつのこと……――)

客 「――あしゅみーちゃん! 注文お願いしまーす!」

あすみ 「あっ……」

あすみ (……切り替えろ、アタシ。今のアタシは、小美浪あすみである前に……)

あすみ (メイド喫茶ハイステージの、小妖精メイド、あしゅみぃなんだ)

あすみ 「はーいっ! ただいままいりまっしゅみー!」 タタタ


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ (っ……今は、思い出しちゃダメだ)

あすみ (今、考えたら、きっと仕事ができなくなる……。そんなのはダメだ)

あすみ (今は、笑顔で、接客に集中しなければ)

ニコッ

あすみ 「ご注文、お伺いしましゅみー♪」


409以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:20:54Co5zvoAw (12/41)

………………夜 小美浪家

小美浪父 「………………」

あすみ 「………………」

ボーーーッ

小美浪父 (めずらしい……)

小美浪父 (……あすみが勉強も家事もせず無為に時間を使っている)

小美浪父 「……あー、あすみ?」

あすみ 「ん……」 モゾッ 「……あんだよ」

小美浪父 (声に元気もない。さすがにこれは心配だな……)

小美浪父 「今日はバイトの前に唯我くんとデートだったんだろう?」

小美浪父 「今日はどこへ行ってきたんだ?」

あすみ 「………………」

あすみ 「……べつに。いつも通り、受験生らしく勉強しただけだよ」

小美浪父 「そ、そうか……」


410以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:21:31Co5zvoAw (13/41)

小美浪父 (こ、これは、まさか、ひょっとして……)

小美浪父 「つかぬことを聞くが、」

あすみ 「?」

小美浪父 「まさかとは思うが、唯我くんと喧嘩なんて、してないだろうね?」

あすみ 「っ……」

あすみ (喧嘩……)

あすみ (……だったら、もっと気持ちは楽かもしれねーな)

あすみ (喧嘩以前のことだ。そもそも、あいつは、アタシのことなんか……)


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ (……アタシは、何を考えてる?)

あすみ (アタシは、どうしたいと思ってる? アタシはどうしたい?)

あすみ (アタシは……)


411以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:22:09Co5zvoAw (14/41)

小美浪父 (私の問いに対して答えることもできず、急に暗い顔に……)

あすみ 「……べつに、喧嘩なんてしてねーよ。ただ……」

小美浪父 「ただ……?」

あすみ 「……なんでもない。言いたくない」

小美浪父 「!?」

小美浪父 (この反応は、考えるまでもない……)

小美浪父 (あすみと唯我くんの間に何かがあったんだ……!)

あすみ 「……もう寝るわ。おやすみ」

小美浪父 「あ、おい、あすみ!」

小美浪父 (振り返りもせず行ってしまった。ストレートに聞きすぎただろうか……)

小美浪父 「………………」

小美浪父 (いやしかし、あのあすみが、恋愛がらみで悩むことになるとはなぁ……)

シミジミ

小美浪父 (不謹慎な話ではあるが、少し感慨深いな……)


412以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:23:13Co5zvoAw (15/41)

………………あすみの部屋

あすみ 「………………」

ボフッ

あすみ 「……はぁ」

あすみ (布団、落ち着く……)

あすみ (このまま、何も考えず寝ちまえば、明日になる……)

あすみ (明日になれば、さすがにこのヘンな気持ちもどっかに行くだろ……)

あすみ (……明日)

あすみ (明日は、店に後輩が来る日だ……)


―――― 『……もう一度だけ聞く。あの日、制服姿の先生と何してたんだ?』

―――― 『恋人のアタシにも言えないようなことなんだな』


あすみ (あいつ、ちゃんと来てくれるかな……って、店でのバイトも兼ねてるんだ)

あすみ (あいつは責任感の強い奴だ。来るに決まってる……)


413以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:23:43Co5zvoAw (16/41)

あすみ (ああ、もう、ちくしょう)

あすみ (このまま寝かしてくれよ……)

あすみ (なんで……)


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ (……思い出したくもない言葉ばっかり、頭に浮かぶんだ)

あすみ (わかってるよ。アタシは、お前にとって、ただのニセモノだって)

あすみ (でも……)

あすみ (……あんな言い方しなくたって、いいじゃないか)

あすみ 「………………」

あすみ (……やっぱり後輩は、アタシみたいなちんちくりんじゃなくて、)

あすみ (まふゆセンセみたいな、スタイルのいい美人さんの方がいいんだろうな)

あすみ 「………………」

あすみ (……寝よ)


414以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:24:14Co5zvoAw (17/41)

………………翌日 メイド喫茶 High Stage

あすみ 「おかえりなさいませっ、御主人様!」

あすみ 「……って、後輩かよ」

ケッ

あすみ 「営業スマイルして損したわ」

成幸 「いつもより投げやり!? それはひどすぎないですか!?」

あすみ 「いいから早くエプロン着てこいよ。早速床掃除してもらいたいんだ」

成幸 「わかりました。じゃあ、すぐエプロン取ってきます!」

ミクニ 「……よかった。あしゅみー、いつも通りに戻ったみたい」

ヒムラ 「だねぇ。唯我クンと喧嘩でもしたのかと思ってたけど、そんなことなさそうだね」

マチコ 「………………」

あすみ 「……はぁ」

あすみ (いつも通り。いつも通り。いつも通り)

あすみ (……まぁ、大丈夫だろ。いつも通りできてるだろ。多分)


415以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:24:53Co5zvoAw (18/41)

あすみ (昨日、寝る前に色々考えた)

あすみ (アタシは、自分のことしか考えてなかったんだ)

あすみ (後輩に言われた言葉で勝手に悩んで、怒って……)

あすみ (そもそもアタシは、そんな立場にないってのに……)

あすみ (後輩は、アタシのために恋人のフリをしてくれてるだけ。ただ、それだけ)

あすみ (そんな後輩に言われたことで悩むなんて、それこそ自分勝手だ)

あすみ (……後輩が真冬センセと何をしてようが、アタシには関係ない)

あすみ (アタシがそのことについて考えるなんてことがそもそもおこがましいんだ)

あすみ (……だから、アタシはもう、後輩に不用意に近づいたり、からかったりしたらいけない)

あすみ (……うん。だから、大丈夫)

あすみ (アタシはもう、大丈夫)

マチコ 「………………」 (“いつも通り” ……?)

マチコ (……そうかなぁ? なんか思い詰めてるように見えるけど)


416以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:25:32Co5zvoAw (19/41)

………………

あすみ 「……ん、じゃあ、後輩。ここはどう解くんだ?」

成幸 「ああ、それも基本は一緒ですよ。方程式を正しく立てられれば解けるはずです」

成幸 「その釣り合いの問題なら、連立方程式が立てられると思います」

あすみ 「む……。悪い、式を一度立ててもらえると助かる」

成幸 「ああ、分かりました。ここに書きますね」

ズイッ

あすみ 「……っ!?」 ササッ

成幸 「……? 先輩?」

あすみ 「あ、いや……わ、悪い。何でもない」

成幸 「………………」 ズイッ

あすみ 「っ……」 ササッ

成幸 「………………」 ズイッ

あすみ 「………………」 ササッ

成幸 「……何で逃げるんですか、先輩?」


417以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:26:12Co5zvoAw (20/41)

あすみ 「に、逃げてなんかねーよ」

成幸 「どう見ても逃げてますよね!?」

あすみ 「お前が近づくからだろ!」

成幸 「近づかないと書きながら教えられないですよね!?」

あすみ (っ……こいつ、こっちの気もしらないで……)

あすみ (アタシはもうお前に近づかないって決めたんだよ。なのにそっちから近づいてきやがって……)

あすみ 「……よし。じゃあこうしよう」

スッ

あすみ 「アタシはお前の対面に座る。これでアタシに見せながら式を書けるな?」

成幸 「まぁ、書けますけど……逆さ文字か。難しいんだよな……」

あすみ (……すまん、後輩。だがこれもお前のためなんだ)

マチコ 「………………」

ジーーーッ

マチコ (……うん。やっぱりヘンだよね)


418以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:26:44Co5zvoAw (21/41)

………………閉店後

あすみ 「……今日もありがとな、後輩」

あすみ 「おかげでまた苦手がひとつ潰せた気がするよ」

成幸 「いえいえ。バイト代をもらいながら勉強できるんだから、願ったり叶ったりですよ」

成幸 「まだそう遅くはないですけど、暗いですから送っていきますよ」

あすみ 「あっ……いや……」

あすみ 「……ありがとな。ただ、今日はちょっと寄るところがあるから、遠慮しとくよ」

成幸 「? そうですか」

成幸 「わかりました。じゃあ、また。先輩」

あすみ 「おう。またな、後輩」


419以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:27:33Co5zvoAw (22/41)

………………公園

あすみ 「………………」

あすみ 「……はぁ」

あすみ (……あれ以上後輩と一緒にいたら、また辛い気持ちになりそうだったから)

あすみ (ウソついちまったけど、仕方ないよな……)

あすみ (っつーか、今さらな話だけど)

あすみ (よく考えたら、恋人のフリをしてもらってるって、とんでもないことだよな)

あすみ (アタシがよく知らない男の恋人のフリ……)

あすみ (たとえば、吉田、坂本、高橋あたりで想像すると……)

あすみ 「……うぇっ」

あすみ (……うん。五秒と保たずに想像の中で殴りそうになったな)

あすみ (それを考えると、知り合いでもなかったアタシの恋人役をしてくれる後輩って……)

あすみ (聖人か何かなのか?)


420以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:28:10Co5zvoAw (23/41)

あすみ (……まぁ、大変申し訳ないことではあるが、恋人のフリはこれからも続けてもらうとして、)

あすみ (やっぱり、さっき決めた通り、あいつをからかったりするのは金輪際なしにしよう)

あすみ (……今まで散々後輩に迷惑かけてきたことだし)

あすみ (受験に成功しても失敗しても、たくさんお礼をしてやらないとな……)


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ 「………………」

あすみ (……まぁ、後輩はアタシからのお礼なんかいらないかもしれないけどな)

あすみ 「……はぁ――」


「――驚愕。あなたでもそんな顔をすることがあるのね。小美浪さん」


あすみ 「へ……?」

あすみ 「あ……ま、真冬先生?」

真冬 「まったく」 ハァ 「だから、その呼び方はやめなさいと言っているはずよ」


421以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:28:54Co5zvoAw (24/41)

あすみ 「どうしてこんな公園なんかに……?」

真冬 「学校からの帰り道よ。まぁ、公園の中に入る予定はなかったのだけど」

真冬 「――ベンチでしょぼくれた顔をしている元生徒を見かけたりしなければ、ね」

あすみ 「っ……。しょぼくれてなんか……」

真冬 「……まぁ、あなたも高校は卒業しているわけだし、私もあまりかたいことを言うつもりはないのだけど、」

真冬 「あなたはまだ未成年でしょう。夜中に公園にひとりでいるのは感心しないわね」

あすみ 「………………」

あすみ (……聞いてしまえば、楽になるだろうか)

あすみ (“あの日、後輩と何をしてたんですか?” って……)

あすみ (この人に直接聞いてしまえば、楽になるのだろうか)

あすみ (ニセモノの恋人のくせに、そんな出しゃばるようなことを聞けば、)

ズキズキズキ……

あすみ (少しはこの胸の痛みもやわらぐのだろうか……)

真冬 「……ふぅ」

真冬 「まるで、受験に失敗したときのあなたを見ているようだわ。小美浪さん」


422以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:29:41Co5zvoAw (25/41)

あすみ 「なっ……」

真冬 「半年くらい前かしらね。あのときも、あなたはそんな風に、あなたらしくない顔をしていたわね」

真冬 「何かを後悔するような、何かを迷うような、そんな、小美浪さんらしくない顔を」

あすみ 「………………」

あすみ (……そっか。アタシ、今、そんな顔をしてるのか)

あすみ (受験に失敗して、つらかったあのときみたいな、そんな顔を……)

真冬 「……隣、失礼するわね」 スッ

あすみ 「あっ……な、何でまふゆセンセまで座るんですか……」

真冬 「……あなたはもう私の生徒ではないけれど、」 クスッ

真冬 「アフターサービスみたいなものよ。何か悩みがあるのでしょう? 話くらいは聞くわ」

あすみ 「そんなの……」

真冬 「必要ないかしら?」

あすみ 「………………」

あすみ 「……じゃあ、少しだけ、話聞いてもらっても、いいですか?」

真冬 「ええ。どうぞ」


423以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:30:11Co5zvoAw (26/41)

あすみ 「……恥ずかしい話ですし、ひょっとしたら “そんな程度のことで” って思われるかもしれないけど……」

あすみ 「……実は、その……友達、というか、彼氏、というか……いや、なんていうか……」

カァアアアア……

あすみ 「……まぁ、彼氏みたいな相手、と喧嘩をしてしまいまして」

真冬 「………………」

真冬 「……な、なるほど?」

真冬 (す、少しかっこつけて、元生徒の悩みを聞いてあげるつもりが……)

真冬 (急にとんでもない悩みが飛んできたわ……)

真冬 (か、彼氏……? いや、まぁ、小美浪さんくらいの年頃なら当然かもしれないけど……)

真冬 (恋愛関係の悩みなんて私の専門外よ……!?)

あすみ 「……先生?」

真冬 「あ、な、なんでもないわ。続けてちょうだい」

あすみ 「……まぁ、喧嘩というか、一方的に私が怒ってるだけというか、ヘコんでるだけというか……」

あすみ 「それで、ちょっと公園でボーッとしてたんです」


424以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:30:43Co5zvoAw (27/41)

真冬 「そう……」

真冬 「……ちなみに、小美浪さんは、その彼氏さんにどうして怒っているのかしら?」

あすみ 「……大したことじゃないです。ただ、あいつが隠し事をするから……」


―――― 『……もう一度だけ聞く。あの日、制服姿の先生と何してたんだ?』

―――― 『……すみません。答えられません』


あすみ 「……でも、それは仕方がないことだったのかもしれないとも思えてきて、」


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


あすみ 「少し、傷つくようなことも言われてしまって……」

あすみ 「……でも、あいつが言ってることが正しいんです。だから、アタシはそもそも、怒る立場にない」

あすみ 「それからずっと自己嫌悪というか、頭の中でグルグル同じ考えが回ってて……」

真冬 「……なるほどね」

真冬 (……どうしよう。小美浪さんが何を言っているのか全然分からないわ)

真冬 (恋愛経験の豊富な人なら分かるのかしら。ダメだわ。私には荷が重すぎる……)


425以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:31:18Co5zvoAw (28/41)

あすみ 「……すみません、先生。話聞いてもらっちゃって……」

あすみ 「わけわからなかったでしょ? 色々はしょりすぎたし」

あすみ (……まぁ、何もかも包み隠さず話したら、先生と後輩が制服で何をしてたのかも問いただすことになっちまうし)

あすみ (仕方ないっちゃ仕方ないんだけど……)

真冬 「………………」

真冬 (……然りとて、たとえ元生徒といえど、それを放っておいていいわけではない)

真冬 (荷が重かろうと、経験がゼロだろうと、できることをしなければ、教員である意味はない)

真冬 (私は、小美浪さんの “元” 先生なのだから)

真冬 「……言わないと、伝わらないわ」

あすみ 「え……?」

真冬 「言ったかしら? 伝えたかしら?」

真冬 「たとえ筋違いであろうと、その彼の発言に傷ついたという旨を、彼に」

あすみ 「い、言えないですよ、そんなの……。あいつは悪くないのに」


426以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:31:53Co5zvoAw (29/41)

真冬 「そうでしょうね。でも、言ったらきっと伝わるわ」

真冬 「解決するかは分からないけれど、伝わったら、きっと……」

真冬 「……あなたの気持ちを理解してくれるのではないかしら」

あすみ 「………………」

真冬 「……だって、その彼は、他でもないあなたが選んだ男の子なのでしょう?」

あすみ 「ん……」

あすみ 「………………」

真冬 (……そ、その沈黙はどういう意味なのかしら、小美浪さん)

カァアアアア……

真冬 (す、少しかっこつけすぎたかしら。今さら恥ずかしくなってきたわ)

あすみ 「……アタシのこの、モヤモヤした気持ち、わかってくれるかな、あいつ」

真冬 「……ええ、きっと。わかってくれると思うわ」

あすみ 「……そう。そうですね」


427以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:32:23Co5zvoAw (30/41)

あすみ (……アタシは、今までずっと、きっと後輩に迷惑をかけてきた)

あすみ (まずはそれを謝ろう。その上で、もし、言えるなら……)

あすみ (……そんなことを言える立場ではないのはわかっているけど、)

あすみ (ニセモノの恋人って言葉にモヤモヤしていることを、伝えよう)

あすみ 「っ……」 カァアアアア……

あすみ (そ、それってもう、つまり、そういうこと、だよなぁ……)

あすみ (いやいやいや、単純にアタシがモヤモヤしてるだけであって、決して……)

あすみ (ホンモノになりたいとか、そういうわけじゃなくて……)

あすみ (……あー、ちくしょう。またわからなくなってきた)

あすみ (でも、不思議だ。なんか……)

あすみ (まふゆセンセのおかげかな。今は、後輩に会って、早く話したくて仕方ない)

真冬 「ふふ……」 (少し表情が明るくなったかしら)

真冬 (それにしても、小美浪さんが恋愛で悩むなんて……)

真冬 (小美浪さんにこんな一面があるのね。在学中は全然知らなかったわ)


428以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:33:08Co5zvoAw (31/41)

………………翌日

あすみ 「………………」 ドキドキドキドキ……

あすみ (昨日の今日で呼び出してしまった……)

あすみ (一昨日から三日連続、後輩に会うことになるな)

あすみ (あいつにも予定があるだろうし、そもそも勉強で忙しいだろうし、)

あすみ (さすがに迷惑だよなぁ……。また悪いことしてしまった……)

あすみ 「……後輩、来てくれるかな――」

成幸 「――来られないなら来られないって、最初から断りますよ」

あすみ 「……あ、後輩……」

成幸 「どうしたんです、先輩? なんか元気ないですけど……」

あすみ 「いや、べつに……」

あすみ 「悪いな、後輩。なんか、毎日アタシに無理に付き合わせて……」

あすみ 「今までだって、恋人のフリとか、勉強とか、バイトとか、色々なことに付き合わたし……。本当に、ごめん」

成幸 「? 誰かと一緒に勉強した方が捗りますし、海とかカラオケとか、息抜きにもなりましたし、」

成幸 「俺は、先輩に無理に付き合わされてるとは思ってないですけど」


429以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:33:46Co5zvoAw (32/41)

あすみ 「そ、そっか。ならいいんだ」

成幸 「で、今日は一体どうしたんです? 昨日の力学の範囲でまた分からないことでも出ました?」

成幸 「それとも別の分野ですか?」

あすみ 「あー、いや……。勉強の前に、お前に話したいことがあってさ」

成幸 「話したいこと?」

あすみ 「……おう。聞いてもらってもいいか?」

成幸 「そりゃ、もちろん聞きますよ。なんですか?」

あすみ 「……ん。ありがとう」 (……なんて、言ったらいい?)


―――― 『たとえ筋違いであろうと、その彼の発言に傷ついたという旨を、彼に』

―――― 『そうでしょうね。でも、言ったらきっと伝わるわ』

―――― 『解決するかは分からないけれど、伝わったら、きっと……』

―――― 『……あなたの気持ちを理解してくれるのではないかしら』


あすみ (……うん。大丈夫。わかってる)

あすみ (ただ、伝えるだけ)


430以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:34:23Co5zvoAw (33/41)

あすみ 「……一昨日のことだから、後輩は覚えてないかもしれないけどさ、」

成幸 「一昨日?」

あすみ 「……お前、“ニセモノ” って言っただろ?」

成幸 「……?」


―――― 『俺たちはフリをしてるだけのニセモノの恋人じゃないですか』


成幸 「ああ……」

あすみ 「……すごく勝手なことだし、自分でもわけわかんないんだけどさ、」

あすみ 「それが、すごく……なんていうか、嫌でさ……」

成幸 「へ……?」

あすみ 「わ、わかってるんだ! 実際ニセモノで、ただのフリで、そんなの、分かってるんだけど……」

あすみ 「……でも、嫌だったんだ。“ニセモノ” って言われるのが、すごく」

成幸 「………………」

あすみ 「わ、悪い。ヘンなこと言って。忘れてくれていい。すまん……」


431以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:34:59Co5zvoAw (34/41)

あすみ (い、言ってしまった……)

あすみ (何言ってんだろ、アタシ。もっとこう、ドキドキするもんかと思ってたけど……)

ドキドキドキドキ……

あすみ (このドキドキは、想像してたドキドキじゃない)

あすみ (怖いだけだ。糾弾されて、拒絶されて、絶交される。そんな、恐怖のドキドキだ)

成幸 「先輩……」

あすみ 「っ……」 (怖い。怖くて、後輩の顔も見られない。後輩はどんな……――)


成幸 「――――すみませんでした!!」


あすみ 「ふぇっ……?」

成幸 「いま思い返してみれば、すごく無神経なことを言いました。すみません」

あすみ 「あ……えっと……」

カァアアアア……

あすみ (ああ、そっか……。後輩、アタシの勝手な言い分を、聞いてくれたんだ……)


432以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:35:29Co5zvoAw (35/41)

あすみ (……まふゆセンセの言った通りだ)


―――― 『……だって、その彼は、他でもないあなたが選んだ男の子なのでしょう?』


あすみ (後輩、分かってくれたんだ……)

成幸 「そりゃ、嫌ですよね。っていうか、俺だってそんなこと言われたら嫌ですよ……」

成幸 「本当にごめんなさい、先輩……」

あすみ 「あ、いや、そんな、謝れってわけじゃなくて、ただ……」

あすみ 「少しモヤモヤしてたから、それを言いたかっただけだから……」

あすみ 「むしろ、ごめんな。変な気を遣わせるようなことを言って」

成幸 「いや、先輩は悪くないですよ」

成幸 「先輩と俺の恋人関係はただのフリですけど……」

成幸 「先輩と海に行ったり、バイトを手伝ったり、家事代行をしたり……」

成幸 「先輩としてきたことは、ニセモノなんかじゃないですもんね!」

あすみ 「あっ……いや……///」

あすみ (な、なんて恥ずかしい台詞を言えるんだ、こいつは……。こっちが恥ずかしい……)


433以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:36:02Co5zvoAw (36/41)

あすみ (でも、そっか……)


―――― 『先輩としてきたことは、ニセモノなんかじゃないですもんね!』


あすみ (この関係がニセモノでも、アタシたちがしてきたことはニセモノじゃない、か……)

あすみ (……うん)

成幸 「先輩、あの……」

あすみ 「……なぁ、後輩? 悪いと思ってるか?」

成幸 「へ? そ、そりゃもう。申し訳ない気持ちでいっぱいですよ」

あすみ 「わかった。じゃあ、詫び代わりにひとつやってもらいたいことがある」 ニィ

成幸 「はい! 俺にできることだったら、何でも!」

あすみ 「うん。じゃ、とりあえず」

スッ

成幸 「せ、先輩……?」 (ち、近い……っていうか、)

成幸 「なんで俺の耳を塞ぐんですか?」


434以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:36:49Co5zvoAw (37/41)

あすみ 「……聞こえるか?」

成幸 「えっ? 何です、先輩? 耳を塞がれてるから何言ってるのか分からないですよ?」

あすみ 「うん。それでいい。そのまま聞いてくれ」

あすみ 「……鈍いお前は、“ニセモノって言われて嫌だった” って言ったくらいじゃ気づかないみたいだからな」

あすみ 「まぁ、気づかれるかもしれないって怖さもあったから、虚しさ半分安堵半分ってとこなんだが、」

成幸 「えっ? なんです? 何を言ってるんですか?」

あすみ 「……だから、聞こえないままで、聞いてくれ」

あすみ 「今は、どんなに否定しても “ニセモノ” かもしれない」

あすみ 「でも、いつか……」


あすみ 「……いつか、アタシはお前の “ホンモノ” になりたいんだ」


あすみ 「っ……///」

あすみ 「それだけ、だよ……」

スッ……


435以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:37:27Co5zvoAw (38/41)

成幸 「あっ……先輩? 耳を塞ぎながら、なんて言ったんですか?」

あすみ 「……なんでもねーよ。今のでチャラにしてやるから、感謝しろよ?」

成幸 「先輩がそれでいいならいいですけど……」

あすみ 「……それから、」

成幸 「?」

あすみ 「今まで、色々なことに付き合わせて悪かったな。ありがとう」

成幸 「へ……?」

あすみ 「……あと、これからもよろしくな。後輩」

成幸 「………………」 クスッ 「はい、先輩!」


おわり


436以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:37:57Co5zvoAw (39/41)

………………幕間 あすみの部屋 「娘の彼氏の趣味」

成幸 (……とりあえず、先輩の家で勉強をすることになったが、家についた途端先輩はどこかへ消えてしまった)

ガチャッ

成幸 「あっ、先輩。やっと戻って来……――!?」

あすみ 「にしし、さすがに外で着る勇気はないが、着てみるもんだな。我ながら悪くないんじゃねーか?」

成幸 「な、何で制服着てんですか!?」

あすみ 「いやな、まふゆセンセの制服がイケるならアタシもイケるだろ、って思ってさ」

成幸 「イケるって何が!?」

あすみ 「言わせんなよー、ドスケベくーん?」

成幸 「アンタ何言ってんすか!? っていうか、その……」

あすみ 「む……。なんだよ。まふゆセンセは大丈夫で、アタシの制服姿は見られたもんじゃないってか?」

成幸 「い、いやいや、似合ってますよ。違和感がまるでないです。後輩って言われても自然なくらいです」

あすみ (……それはそれでムカつくけど) ニィ (にしても、後輩の奴、顔真っ赤だな。制服好きなのか、こいつ)

あすみ 「……じゃ、今日はこのまま勉強会といこうか」

成幸 「なぜ!?」


437以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:38:28Co5zvoAw (40/41)

ガチャッ

小美浪父 「大声が聞こえるが、どうした? まさかまた喧嘩をしているんじゃ……」

あすみ 「あっ……」

成幸 「あ……」

小美浪父 「………………」

ポッ

小美浪父 「す、すまない。制服で、と……なるほど、ああ、邪魔をしてしまったな」

成幸 「ち、ちょっと待ってくださいお父さん!? なんか勘違いしてますからね絶対!」

小美浪父 「いや、大丈夫だ。何も勘違いしていない。その……まぁ、唯我くんがコスプレさせる趣味があるのは知ってるから」

小美浪父 「大丈夫。許容範囲だ」

成幸 「許容しなくて良いです! 全部勘違いですからね!? あ、いや、メイド服の件はたしかにその通りですけど!」

小美浪父 「メイド服だけでなく高校の制服も好きなのだね……。い、良い趣味だと思うよ」

小美浪父 「では、これ以上は本当にお邪魔だろうから失礼するよ。唯我くん。えっと……ごゆっくり」

成幸 「ちょっと待ってください! 待って!? 俺の話を聞いてください! お父さん!?」

おわり


438以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 21:41:00Co5zvoAw (41/41)

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。

毎回あすみさんのSSを書くたびに言っている気がしますが、
本編のあすみさんはこんなにチョロくないですし、好意も明示されていません。
わたしは単純なのでついチョロくしてしまいます。申し訳ないことです。

幕間も1レスで収められませんでした。それも反省点です。


また投下します。


439以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 23:07:229HQ5Bh0Q (1/1)

おつんこ
寝る前の楽しみが復活したわサンクス


440以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/26(水) 23:50:36HCkEQ9GU (1/1)

やはりあしゅみー先輩が最強よ・・・。


441以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/27(木) 20:14:11BnW2v6Oc (1/1)

乙です


442以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/27(木) 20:57:20B7SVs8J6 (1/1)

おつおつ


443以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/30(日) 22:25:451sIqWGVU (1/1)

これはひょっとして大晦日お正月のSSを期待したら書いてくれるんじゃないか?
期待


444以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 01:28:053jPs3JVQ (1/1)

大掃除ssはよはよ


445以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 12:46:23j6WLDCu2 (1/1)

初詣も頼むわ


446以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 21:54:29F6bN4iBg (1/3)

各ヒロインの初夢話お願いしますわ


447以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 21:57:13F6bN4iBg (2/3)

各ヒロインの初夢話お願いしますわ


448以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:10:50T80BSgvU (1/26)

>>1です。
投下します。

環境がいつもと違うので、変なミスなどあるかもしれませんが、ご容赦ください。
それから、あまり本編の時系列を超えるのは好きではないのですが、今回、明確に超えました。
今後本編が進んだらこのSSはなかったことにしてください。
その時点で二次創作として破綻しているとわたしは思います。

それを踏まえた上で、読んでいただけたら嬉しいです。


【ぼく勉】 真冬 「今年こそ」


449以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:11:56T80BSgvU (2/26)

………………年の瀬 真冬の家


『拝啓 真冬お姉様

 こちらはとても寒いです。日本も、とても寒いようですね。

 今週末には実家に帰ります。お姉様も帰ってくれると嬉しいです。

 ……もし無理そうなら、日本にいる間に、一度お姉様のおうちに伺います。

 それでは、風邪などに気をつけて、良い年をお迎えください。

 敬具

 美春』


真冬 「……わざわざ遠征先から手紙だなんて、まったく、マメな子ね」

真冬 「でも、ごめんなさい、美春。今年も実家へは帰れそうにないわ」

真冬 「なぜなら……」

グッチャアアアァアアアア

真冬 「この部屋の惨状をどうにかしなければならないから……!」


450以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:12:49T80BSgvU (3/26)

真冬 (二学期の成績処理や担任団と進路指導部のヘルプに入ったおかげで、)

真冬 (家に帰っても寝るだけという生活をしていたせいね)

真冬 (毎年のことではあるけれど、二学期の後半からこっち、)

真冬 (“どうせ大掃除をするのだからそのときでいい” なんて考えてしまうのが悪いのよ)

真冬 (……そして毎年毎年、結局、綺麗な部屋で年を越せた憶えがないわ)

真冬 (今年こそ、大掃除をやりとげなければ!!)

真冬 (……とりあえず、通販で買ったものを開封するところから始めようかしら)

真冬 (段ボールをまとめて捨てて、それから、部屋を片付けるだけのこと)

真冬 (大丈夫よ、真冬。ひとつずつこなしていけば、今日中にでも終わってしまうわ)


451以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:13:26T80BSgvU (4/26)

………………図書館

成幸 「……はー、今日は勉強はかどったな」 ホクホク

成幸 (今日は久々にひとりでゆっくり勉強できたし、まんぞくまんぞく……)

成幸 (午後からは家の大掃除の約束だからな。名残惜しいけど、急いで帰らないと)

成幸 「……ん?」

真冬 「………………」

成幸 (桐須先生? 真剣な顔して、何か本でも探してるのかな……?)

成幸 (……それにしても、桐須先生は知的に見えるから、図書館が似合うなぁ)

成幸 (ジャージにコートを羽織った装いじゃなければ、だけど……)

真冬 「……ん、あった」

成幸 (お、本、無事見つけられたみたいだ) ハッ (って、これじゃ俺、先生のストーカーみたいだ)

成幸 (挨拶だけして帰ろう)

真冬 「……届かないわね」

成幸 (ん? 近くにあった踏み台を持ってきて、置いて、乗って……)

成幸 (先生大丈夫かな。いや、さすがに踏み台に乗ったくらいで落ちたりしないよな……) ハラハラ


452以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:14:22T80BSgvU (5/26)

真冬 「む……これでもまだ足りないかしら。仕方ないわ」

ピョンピョン

成幸 (あっ、俺この先の展開読めた)

真冬 「あっ……」

グラッ……

成幸 「やっぱりドジって落ちるー!」

……ドサッ

真冬 「……あ、あれ? 痛くない……?」

真冬 (何か、やわらかいものが下に……?)

真冬 「!? ゆ、唯我くん!?」

成幸 「……間に合って良かったです。ケガしてないですか?」

真冬 「え、ええ。ケガはないけれど……きみは?」

成幸 「俺も大丈夫です。けど、とりあえず、上からどいてもらってもいいですか?」

真冬 「あ、ごめんなさい! すぐ降りるわ!」

真冬 「……大丈夫? 立てるかしら」 スッ


453以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:14:57T80BSgvU (6/26)

成幸 「あっ……すみません」 ギュッ

真冬 「でも、一体どうしてきみが私の下敷きに……?」

成幸 「あー、えっと……」

成幸 (……先生が踏み台に乗った時点で嫌な予感がしたから駆け寄りました!)

成幸 (なんて言ったら絶対怒るよなぁ……)

成幸 「本を探してたら偶然近くにいただけです」

真冬 「そう……? まぁ、何にせよ助かったわ。ありがとう」

成幸 「いえ……」

成幸 「ところで、どの本を取ろうとしてたんですか? 俺、取りますよ」

真冬 「本当? 助かるわ。えっと、一番上の列の……」

ハッ

真冬 「………………」

成幸 「……先生?」

成幸 (一番上の列って……あっ)

『年の瀬に最適! 片付け・掃除術コーナー!!』


454以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:15:40T80BSgvU (7/26)

成幸 (先生、また部屋を汚くしたのか……)

真冬 「……不覚。生徒にあんな棚の本を取ろうとしていたところを見られるなんて」

成幸 「い、いやいや、ああいう本を読んで基本を確認するのも大事ですよ」

成幸 「べつに恥ずかしい話ではないと思いますよ」

成幸 「っていうか、今まで散々部屋を片付けてきた俺に見られたところで何の問題が……?」

真冬 「へ、変なこと言わないでちょうだい。散々っていうのは言いすぎだわ」

成幸 「……あー、はい。すみません。……ってことで、どの本ですか? 取りますよ」

真冬 「……一番右の」

プクゥ

成幸 (またむくれて……。子どもみたいだ)

成幸 (えっと、一番上の列の、一番右の本は、と……)

『馬鹿でも猿でもできる! ゴミ屋敷脱出術!!』

成幸 (……挑戦的すぎるだろあのタイトル)

成幸 「よっ……と。はい、取れましたよ、先生」

真冬 「……ありがとう」


455以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:18:18T80BSgvU (8/26)

成幸 (……っていうか、この人の場合、本を読んでできるようになるレベルの掃除オンチじゃないよなぁ)

成幸 (新年までそう日にちもないし、汚い部屋のまま年越しっていうのは辛そうだ……)

成幸 「……ところで先生。秋ごろに一度俺が掃除をしたはずですけど、」

成幸 「まさかもうグチャグチャに……?」

真冬 「ち、違うわ。少し、片付けを工夫しようかな、って思っただけよ」

真冬 「決して、汚くなった部屋を大掃除しようとして逆にゴミ屋敷のようにしてしまったわけではないわ!」

成幸 「………………」

ハァ

成幸 「……俺、手伝いに行った方がいいですか?」

真冬 「………………」

真冬 「……ごめんなさい」 カァアアア 「お願いしてもいいかしら」

成幸 (はぁ。まぁ、放ってはおけないよなぁ……)

成幸 (後で水希に謝らなくちゃいけないな)

成幸 「じゃ、行きましょうか」


456以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:19:40T80BSgvU (9/26)

………………真冬の家

成幸 「おおう……」

グッチャアアアァアアアア……!!!!

成幸 (な、なんだこれは……想像を絶するぞ……)

成幸 (今までで一番グチャグチャじゃないか……!?)

真冬 「あっ、あんまり見ないでちょうだい、唯我くん……」 カァアアアア…… 「恥ずかしいわ……///」

成幸 (時と場合によってはドキドキしそうなセリフだけど……)

成幸 「本気で恥ずかしがってます!? よくここまで散らかせましたね!?」

真冬 「し、失礼。大掃除に失敗してしまっただけよ」

成幸 「大掃除に失敗ってあります!?」

真冬 「ため込んだ通販の荷物を取り出してから掃除をしようと思ったら……」

真冬 「段ボールから出した荷物とゴミが混じり合ってわけのわからないことに……」

成幸 「何でまず段ボールを開けるんです!? 普通、掃除してから開けません!?」

真冬 「め、面目ないわ……」 シュン


457以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:20:19T80BSgvU (10/26)

成幸 「あっ……」

ハッ

真冬 「………………」 ズーン

成幸 (……今ここで先生を責めても仕方ない。っていうか、そんなことをするためにここに来たわけじゃない)

成幸 「すみません、先生。言いすぎました」

真冬 「え……?」

成幸 「俺も手伝いますから、なんとか今日中に片付けが終わるようにがんばりましょう!」

真冬 「あっ……」 プイッ 「そ、そうね。がんばりましょう」


458以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:21:29T80BSgvU (11/26)

………………唯我家

水希 「………………」 ルンルン♪

花枝 「どうしたの、あの子。ごきげんね」

和樹 「今日は午後からみんなで大掃除だからなー」

葉月 「姉ちゃんずっと楽しみにしてたからー。久しぶりにお兄ちゃんと一緒、って」

花枝 「ふーん……」

水希 「えへへ……お兄ちゃん早く帰ってこないかな~」

prrrr……

水希 「あっ、電話。わたし出るよー」

ガチャッ

水希 「もしもし?」

成幸 『あ、水希か? 俺だ』

水希 「お兄ちゃん? どうしたの?」

成幸 『すまん。今日、大掃除の約束だったけど、事情があって帰れなくなった……』

水希 「えっ……」


459以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:22:12T80BSgvU (12/26)

成幸 『本当にごめん! 埋め合わせは必ずするから、今日だけは許してくれ!』

水希 「………………」

水希 (ずっと楽しみにしてたけど……)

水希 (お兄ちゃん、すごく真剣な声だもん。きっと、やむにやまれぬ事情があるんだよ……)

水希 (ワガママを言っちゃダメ。ここは、妹として余裕を見せてあげないと……)

水希 「だ、大丈夫だよ。みんなでやっておくから。お兄ちゃんは気にしないで」

成幸 『すまん。助かる。みんなにも謝っておいてくれ』

ドンガラガッシャーン

成幸 『あ……』

水希 「!? お兄ちゃん!? すごい音したけど大丈夫?」

成幸 『あ、ああ。だ、大丈夫……だと思う、けど、ちょっと、もう切るな?』

水希 「えっ? ちょっと待って。お兄ちゃんいま何を――」


  『――ゆ、唯我くん! 悪いけど、助けてくれると嬉しいわ!』


水希 「!?」 (女の声!?)


460以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:22:51T80BSgvU (13/26)

成幸 『わかりました! いま行きます!!』

成幸 『ってことで、ごめん、水希。もう切るな』

ブツッ

水希 「お兄ちゃん!? お兄ちゃんってば!!」

花枝 「……? 成幸、どうかしたの?」

水希 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

花枝 「水希……?」

水希 「……女」

花枝 「女?」

水希 「お兄ちゃん、女と一緒にいた……」

花枝 「ああ……」

水希 「わたしのお兄ちゃんを奪った女……!! 絶対許さない……」

花枝 「……さ、お姉ちゃんは放っておいて、そろそろ大掃除を始めましょうか」

葉月&和樹 「「はーい!!」」


461以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:23:27T80BSgvU (14/26)

………………真冬の家

成幸 「何でゴミ袋にゴミを入れていただけなのに棚が倒れてくるんですか!?」

真冬 「ゴミを拾うのに夢中になっていたら、お尻から棚にぶつかってしまって……」

成幸 (相変わらずドジだけは器用な人だ……)

成幸 「よい、しょっ……と」

ゴトッ

成幸 「……ふぅ。気をつけてくださいね、先生」

真冬 「面目ないわ。穴があったら入りたいくらいよ……」

成幸 「気にしなくていいですから。とにかく、いらないものを捨てていきましょう」

成幸 「俺はグチャグチャの台所を片付けてますから」

真冬 「……ごめんなさい。よろしくお願いするわ」


462以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:24:10T80BSgvU (15/26)

………………数時間後

成幸 (……ふぅ。だいぶ片付いていたな)

成幸 (この分なら、夕飯には間に合うかな……)

成幸 (っていうか、お昼食べてないからお腹空いたな……)

真冬 「………………」

キュッ……キュッ……

成幸 (さすがに部屋が汚いまま年越しは嫌なのか、先生もいつになく真剣だ)

成幸 (……ん、そういえば……)


―――― 『それに 姉さまがこっちの道に戻ってくればきっと』

―――― 『父さま母さまだって……』


成幸 「……先生」

真冬 「? どうかしたかしら?」

成幸 「年末年始は、ご実家に帰られたりしないんですか?」


463以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:25:08T80BSgvU (16/26)

真冬 「……そうね」

フッ

真冬 「実家には帰るつもりはないわ。しばらく帰ってもいないしね」

成幸 「あっ……」 (やっぱり、何か事情があるんだ……)

成幸 「すみません……変なこと聞いて」

真冬 「……気にしないでいいわ。べつに、どうでもいいことだもの」

成幸 「ん……」 (どうでもいい、こと……?)

真冬 「……? 唯我くん?」

成幸 「……すみません。えっと、その……」

成幸 「すごく、失礼なことを言ってしまうことになってしまうかもしれませんけど……」

成幸 「どうでもよくなんて、ないんじゃないですか……?」

真冬 「えっ……?」

成幸 「だって、どうでもよかったら、そんな顔、しないですよね……」

真冬 「っ……。そんなの、べつに……」


464以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:25:46T80BSgvU (17/26)

成幸 「あと、たぶん、これは想像ですけど……」

成幸 「先生みたいなまっすぐな人のご家族だったらきっと……」

成幸 「どうでもいいような人たちじゃ、ないんじゃないですか……?」

真冬 「………………」

成幸 「あっ……す、すみません! また、変なこと言ってしまって……」

成幸 「俺には関係ないことでしたよね! 忘れてください!」

真冬 「……そうね」

成幸 「……?」

真冬 「家族のことを、どうでもいいなんて言うのは、ダメね」

真冬 「……あなたは家族のことが大好きなのね、唯我くん」

成幸 「へ? あ、ああ、まぁ……そうですね。大好きです」

真冬 (……やはり、まっすぐな子。唯我くん、本当に良い子ね、きみは)

真冬 (あなたにとって、家族とは、本当に大切な存在なのでしょうね……)

真冬 (私も、あなたみたいに……なんて、そんなこと考えても仕方ないわね)

真冬 (私は、私にしかなれなかったのだから)


465以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:26:17T80BSgvU (18/26)

………………

成幸 「………………」

真冬 「お、終わったわ……」

ピカピカピカピカ……

成幸 「……なんとか終わりましたね」

成幸 (結局、夕飯の時間を過ぎてしまった……水希、怒ってるだろうなぁ……)

真冬 「結構な時間になってしまったわね……」

真冬 「お礼というとアレだけれど、出前でも取るわ。何か食べていきなさい」

成幸 「あっ……いえ、その……、今日はすみません。もう家に帰らないといけないので……」

真冬 「そ、そうよね。年の瀬だもの。お家でやることがあるわよね……」

真冬 「……忙しい師走の終わりに、私事に巻き込んでしまって本当に申し訳ないわ」 ズーン

真冬 「今日は本当にありがとう。埋め合わせは必ずするから、気軽に何でも言ってね」

成幸 (また何でもとか言ったぞこの人……)

成幸 「では、先生。今年は大変お世話になりました。また来年もよろしくお願いします」

真冬 「ええ。こちらこそ、来年もよろしくお願いします」


466以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:27:20T80BSgvU (19/26)

………………大晦日

水希 「~~~~~♪」

成幸 「なんだ、水希? ご機嫌だな」

水希 「えへへ、わかる?」

成幸 「そりゃ、まぁ……」 (鼻歌してりゃな……)

成幸 「どうしてご機嫌なんだ?」

水希 「ふふ、内緒♪」

成幸 「……?」

水希 (……えへへ、お兄ちゃんったら!)

水希 (そんなの、お兄ちゃんと一緒におせち作ってるからに決まってるよ……///)

葉月 「姉ちゃんほんとにご機嫌ねー。大掃除の日はおかんむりだったのに」

和樹 「兄ちゃんが埋め合わせにおせち作り手伝うって言ったら途端にアレだもんなー」

花枝 「……あの子の将来がそろそろ真剣に心配だわ」

水希 「えへへ……えへへへへ……」

水希 (こうやってふたりで台所に立ってると……新婚さんみたい)


467以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:28:25T80BSgvU (20/26)

………………

花枝 「……で、ご機嫌でおせち作りをしていたら、こうなった、と?」

水希 「……はい」

バーーーーン

花枝 「こんなに作ってどうするのよ……。お重に入りきらないじゃない」

水希 「ごめんなさい……。つい、やる気が入り過ぎちゃって……」

成幸 「すまん。俺も、作りすぎだって気づくべきだった……」

花枝 「……ま、いいわ。あんたに任せっきりにしちゃった私も悪いし」

花枝 「こんにゃくとかゴボウの煮物とか、茶色い物ばかりだけど……」

花枝 「ご近所さんにちょっと配ろうかしら……」

成幸 「……ん」


―――― 『実家には帰るつもりはないわ。しばらく帰ってもいないしね』


成幸 (……そういえば、先生はああ言ってたけど)

成幸 (たぶん、おせちなんて何年も食べてないんだろうな……)


468以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:29:23T80BSgvU (21/26)

………………真冬の家

真冬 「………………」

カタカタカタカタ……

真冬 (部屋がきれいだと仕事もはかどるわ……)

真冬 (……って、なぜ私は大晦日に仕事なんかしているのかしら)

真冬 (やっぱり、年末年始の休業日に仕事なんか持ち帰るべきではなかったわね)

真冬 (まぁ、どうせ、家にいたところですることもないのだけど)

真冬 (……暗いことは考えない方がいいわね。区切りも良いし、カップ麺のソバでも食べようかしら)

ピンポーン

真冬 「……?」 (こんな時間に一体誰かしら? 何か注文していたかしら……?)

真冬 「ん……?」

真冬 「唯我くん……?」


469以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:29:59T80BSgvU (22/26)

………………

ガチャッ

成幸 「あっ、先生。夜分にすみません……」

真冬 「唯我くん、こんな時間にどうしたの?」

成幸 「大したことじゃないんですけど……」 スッ

成幸 「今日、妹とお正月のおせち料理を作っていたら作り過ぎちゃって……」

成幸 「良かったらもらってくれませんか? 妹の料理はとても美味しいので、味は保証します!」

真冬 「おせち料理……?」

真冬 「あっ……」 (まだ温かい……作ったばかりなのね……)

真冬 「……とても、嬉しいわ。もらってもいいの?」

成幸 「はい! 尋常じゃない量なので、もらってくれるとありがたいです」

真冬 「ありがとう。いただくわ。明日、食べさせてもらうわね」

成幸 「はい、ぜひ!」

真冬 (……あまり、利害関係者からの物の授受というのはよくないのだけど)

真冬 (そんな固いこと言うものではないわね。こんなに美味しそうなお料理、もらえなかったらもったいないわ)


470以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:31:34T80BSgvU (23/26)

真冬 「……ごぼうとこんにゃくの煮物ね」

成幸 「あ、はい。恥ずかしいですけど……」

成幸 「うちはあまり裕福ではないので、おせちの中身もそういう安上がりなお料理ばかりで……」

真冬 「恥ずかしいことなんてないわ。これも立派なおせち料理よ

真冬 「ゴボウはまっすぐ伸びることから、ゴボウの煮物は子どもたちの健やかな成長を祈るお料理よ」

真冬 「そして手綱こんにゃくは、家庭内の不和をなくし、家庭円満を祈願するお料理よ」

真冬 「だから誇るといいわ。とても良いおせち料理だわ。素敵なご家庭ね」

成幸 「そ、そうですか……?」 テレテレ 「そう言ってもらえると、嬉しいです」

真冬 (本当に嬉しそうな顔をして……。ご家族のことを褒められるのが本当に嬉しいのね)

真冬 (家族……か)

真冬 「………………」

真冬 (……私も、いつまでも逃げてはいられないかしら)

真冬 「……唯我くん、二度目の挨拶になってしまうけど、」

真冬 「良いお年を」

成幸 「はい! 先生も、良いお年を!」


471以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:32:09T80BSgvU (24/26)

………………

『美春

 手紙が届く頃にはもう日本にいないかもしれないと思い、メールで返信します。

 家には帰りません。ごめんなさい。

 でも、あなたが私の家に来る必要もありません。

 そんな暇があるなら、このオンシーズンの調整に当てなさい。

 勝手な姉と思うかもしれません。そう思われても仕方ないと思います。

 でも、勝手なお願いとは分かっているけれど、もうすこしだけ待ってほしいです。

 ……勝手なことばかり言ってごめんなさい。

 あなたも体調管理に気を遣って、良いオンシーズンを。

 真冬』


おわり


472以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:32:40T80BSgvU (25/26)

………………幕間 「ひどい」

真冬 「ひどい……」

真冬 「ひどすぎるわ、唯我くん……!!」

ムシャムシャムシャムシャ……!!!!

真冬 「こんなにおだしの効いた美味しい煮物を食べちゃったら、」

真冬 「レトルト食品やカップ麺が美味しく食べられなくなっちゃうじゃない……!!」


おわり


473以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:35:12T80BSgvU (26/26)

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。
年末の某イベントが無事終わったので、気兼ねなくSSを書くことができました。

今年は「ぼくたちは勉強ができない」という素晴らしい作品と出会えたいい年でした。
また来年も投下すると思います。
失礼します。


474以下、名無しが深夜にお送りします2018/12/31(月) 23:59:59F6bN4iBg (3/3)

乙です、新年も期待しています


475以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/01(火) 10:04:11M6HgD6Js (1/1)

おつんこ


476以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/01(火) 10:55:51NMC6XEFU (1/1)




477以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/01(火) 22:18:31pgVjrWLQ (1/1)

おつ
明けましておめでとう。今年もお世話になります!


478以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/04(金) 13:03:59pikOTF8Q (1/1)

ちなイッチはコミケではどんな作品を書いてるの?


479以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/04(金) 13:53:32UAb/649Q (1/1)

今までどんなSS書いてたのかも知りたい


480以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:28:44GTAXl2Ic (1/27)

>>1です。
投下します。

以前、作品の時系列を飛び越えるのは嫌だと言いましたが、それをやってしまいました。
想像していたら止まらなくなり、書き上げてしまいました。
完成したものを消そうとも思いましたが、手前味噌ながらとても面白く仕上がりました。
もったいないと思ってしまいました。

自分では、すごく面白いと思います。
なので、勝手ではありますが、投下します。
本編で言及されていないことについて、多く書いています。
わたしの想像によるところも多いので、不快に思われる方もいるかもしれません。
それだけ、前置きしておきます。

まとめサイトの方、載せていただいても構いませんが、このレスを最初においてくれると嬉しいです。


【ぼく勉】 成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」


481以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:34:44GTAXl2Ic (2/27)

………………唯我家

カリカリカリ……

文乃「……できた!」

文乃「成幸くん、採点お願いしてもいい?」

成幸 「ああ、任せとけ」

キュッキュッ……キュッ……

成幸 「……ふんふん……うん……おお」

成幸 「すごいぞ、古橋。満点じゃないか。初めてじゃないか?」

文乃「ほんとに!? ケアレスミスもなし!?」

パァアアアアアア……!!!

文乃「やったー! やったよ成幸くんっ!」 ギュッ

成幸 「っ……」 (う、嬉しいのはわかるが、古橋……!)

成幸 (急に両手を握るのはやめてくれ……!!) カァアアアア……

成幸 「ふ、古橋っ」

文乃「? なぁに、成幸くん?」


482以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:35:15GTAXl2Ic (3/27)

成幸 「……ち、近い。あと、手……」

文乃「……?」

ハッ

文乃「わぁ!」 パッ

文乃「ご、ごめんね、成幸くん。数学で満点なんて、びっくりして、嬉しくて……」

文乃「つい……」

成幸 「あ、ああ。気持ちはわかるし、分かってくれればいいよ……」

文乃「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃「あっ、あの……――」


「――――……ウォッホン!!」


文乃「……!?」 ビクッ

文乃「み、水希ちゃん……?」


483以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:35:55GTAXl2Ic (4/27)

水希 「………………」

ジトーーーッ

水希 「……まじめに勉強してると思ったから、少し目を離したらこれですか?」

水希 「もう試験までそう日にちもないんでしょうから、」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 「もう少しまじめに勉強した方がいいと思いますよ?」

文乃「た、たしかにその通りなんだよ……ごめんね、成幸くん」

文乃 (うぅ……相変わらずすごい圧だよ、水希ちゃん……)

成幸 「い、いや、俺の方こそ、ごめんな……」

成幸 (怖え……。一体何に怒ってるんだ、水希の奴……)

水希 (まったく、油断も隙もあったもんじゃないんだから)

水希 (目を光らせてないと)

和樹 「……なぁなぁ、母ちゃん。頼むよー」

葉月「わたしからもお願いー。おーねーがーいー」

花枝 「そんなお金はないの。これで我慢しなさい」


484以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:36:40GTAXl2Ic (5/27)

水希 「……? こら、和樹、葉月。またわがまま言ってるの?」

水希 「お母さん内職で忙しいんだから、邪魔しないの」

葉月&和樹「「はーい……」」 ショボーン

文乃「……? わっ、小さくてかわいいクリスマスツリーだね」

文乃「そっか。もうクリスマスの季節かぁ……」

葉月「……そうなの。小さいの」 ショボーン

和樹 「テーブルに置くようなやつだよ。飾り付けとかできない……」 ショボーン

成幸 「……あー、飾り付けとかしたいのか。俺も小さい頃憧れたなぁ」

成幸 「兄ちゃんが働いてお金稼げるようになったら買ってやるから、今はこれで我慢しな」

葉月「うん……」

文乃「クリスマスツリー……」

ハッ

文乃「……ねえ、成幸くん」

成幸 「うん?」

文乃「もし良かったら、なんだけど……」


485以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:37:26GTAXl2Ic (6/27)

………………翌日 唯我家

葉月「わぁああああああああ!!!」

和樹 「うおーーーーーーー!!!!」

葉月&和樹 「「大きいクリスマスツリーだぁ!!!」」

キラキラキラ……

成幸「……ふぅ。持ってくるだけで一苦労だったな」

文乃「おつかれさま、成幸くん。車でも出せたら良かったんだけど」

成幸 「いやいや、そんな贅沢は言えないよ。それより……」

成幸 「いいのか? あのツリー、借りちゃって……」

文乃「いいのいいの。もう十年くらい物置から出してなかったし」

文乃「……お母さんが亡くなってから、出したことなかったし」

成幸 「あっ……そ、そうか……」

文乃「……ん、ごめんね、変な話して」

文乃「もう使ってないから、使ってくれた方がきっとツリーも嬉しいと思うし」

成幸 「……おう。ありがとな、古橋」


486以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:40:34GTAXl2Ic (7/27)

葉月「わー、飾り付けもいっぱいはいってるー!」

和樹 「兄ちゃん、文姉ちゃん、一緒に飾り付けしようぜ!」

成幸 「……そうだな。じゃあ、やるか、古橋」

文乃「うん! よーし、久しぶりにやっちゃうぞー!」

ワイワイワイ……

葉月「この大きなお星様は、てっぺんね。兄ちゃん、つけて」

成幸 「よしきた。任せとけ」

成幸 「……よいしょっ、と。おお、様になるな」

文乃「ふふ……」 (成幸くん、いいお兄ちゃんだなぁ……)

文乃 (……なつかしい)

文乃 (昔、わたしも、お母さんとお父さんと、三人で飾り付けしたなぁ……)

文乃 (お父さん、そういうセンスがないから、お母さんとふたりでダメだししたりしたっけ)

文乃 (ふふ……)


487以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:42:25GTAXl2Ic (8/27)

成幸 「……ん」

成幸 (古橋、なんか……笑ってて、楽しそうなのに……なぜか、)

文乃「………………」

成幸 (“寂しそう” ? に、見えるような……)

成幸 (そういえば……)

成幸 「……なぁ、古橋。今年のクリスマスは、お父さんとパーティか?」

文乃「……ううん。お父さん、クリスマスは研究室の忘年会なんだって」

成幸 「なっ……」

成幸 「あのお父さん、またそんなこと言って……!」

文乃「あっ、ち、違うんだよ? わたしが、忘年会の方に行ってって言ったんだよ」

文乃「お父さんは、忘年会は欠席しようかなって言ってくれたんだけど……」

文乃「……お父さんの仕事の邪魔になりたくないから。だから、行ってって言ったんだ」

成幸 「ん、そうか……。なんか、ごめん。いきなり、お父さんのこと悪く言いそうになって……」

文乃「……ううん。そうやって、わたしのことで怒ってくれるのは、嬉しいよ」

文乃「でも、わたしは大丈夫だよ。もうお父さんと仲直りできたし。気にしないで」


488以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:43:20GTAXl2Ic (9/27)

成幸 (……俺は短絡的すぎる。てっきり、また古橋が寂しい思いをするのかと思って、頭に血が上ってしまった)

成幸 (っていうか、研究室もクリスマスなんかに忘年会を入れるなよ……)

成幸 (俺は絶対、大学進学しても、クリスマスは家に帰って家族と過ごすぞ)

成幸 (……いや、そんなことは今はどうでもよくて)

文乃「わっ、葉月ちゃんも和樹くんもきれいに飾り付けしてるねぇ。わたしも負けられないな」

成幸「………………」

成幸 「……なぁ、古橋。もしよかったらなんだけどさ、」

文乃「うん?」

成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」

文乃「へ……?」

ボフッ

文乃「へぇえ……?///」


489以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:44:02GTAXl2Ic (10/27)

………………夜

成幸 「……ってことで」

成幸 「母さん、水希、頼む! クリスマスパーティ、古橋を呼んでもいいか?」

花枝 「まぁ……まぁまぁ……」 パァアアアアアア……!!!

花枝 「文ちゃんをクリスマスに誘ったの!? まぁ……」

花枝 「いいに決まってるでしょ! よくやったわ、成幸!」

成幸 「え? ああ、うん……」 (よくやったってなんだ? まぁ、賛成してくれてよかったけど……)

成幸 (問題は……)

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (こっちだよなぁ……)

葉月「ねぇねぇ、姉ちゃん見て見て!」

和樹 「クリスマスツリー! きれいだろ。文姉ちゃんが貸してくれたんだ!」

水希 「うん、とってもきれい」 ニコッ 「ふたりとも飾り付けがんばったのね。えらいえらい」 ナデナデ

葉月&和樹 「「えへへ~」」


490以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:45:02GTAXl2Ic (11/27)

水希 「………………」

水希 (……葉月も和樹も嬉しそうだわ。悔しいけど、古橋さんのおかげ、だよね)

水希 「……いいよ」

成幸 「ん……?」

水希 「いいよ。古橋さん呼んでも。きっと、葉月と和樹も喜ぶだろうし」

成幸 「ほ、本当か!?」 パァアアアアアア……!!!「ありがとう、水希!」

水希 「……べつに、わたしにお礼言うことないと思うけど」

花枝 「……ふふっ」

水希 「なに、お母さん?」

花枝 「べつに~」 クスクス 「なんだかんだ、あんたも文ちゃんのこと大好きだもんね」

水希 「なっ……」 カァアアアア……「そ、そんなわけないでしょっ! べつに、古橋さんのことなんて……」

水希 「………………」

水希 「……嫌い、では、ないけど」 プイッ

花枝 「ふふ」


491以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:45:55GTAXl2Ic (12/27)

花枝 「文ちゃんが来るなら、クリスマスパーティ、気は抜けないわね」

花枝 「水希。特別に牛肉の購入を許可します。ローストビーフを作ってちょうだい」

葉月「牛肉!?」  和樹 「ローストビーフ!?」

水希 「いいの?」

花枝 「もちろんよ。文ちゃんが来るとなっては手は抜けないわ。気合い入れてごちそう作るわよ、水希」

水希 「……ま、まぁ、そうね。美味しいごちそうを山ほど用意して、唯我家の女のすごさを見せてあげないと」

水希 (……古橋さんって、本当に美味しそうにごはん食べてくれるから、作りがいがあるんだよね)

水希 (えへへ。ごちそう用意したら、どんな顔して食べてくれるかな。美味しいって言ってくれるかな)

水希 「……?」

ハッ

水希 (い、いけないいけない。あの女は、お兄ちゃんによりつく悪い虫)

水希 (たとえどんなに良い人でも、気を許しちゃダメなんだから)

水希 「………………」

水希 (……まぁ、でも)

水希 (ごちそうは、たくさん食べてもらおうっと。えへへ、何作ろうかな)


492以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:47:07GTAXl2Ic (13/27)

花枝 (水希ったら、表情コロコロ変えて、なんだかんだ楽しそうじゃない)

花枝 (本人は否定するけど、ほんとは文ちゃんのこと大好きなのよね)

クスクス

花枝 (でも、そっか……古橋さん、クリスマスは忘年会なのかぁ。まぁ、お付き合いもお仕事の内だものね)

花枝 (でも今の古橋さんだったら、忘年会が終わってすぐ、家に駆けつけそうなものだけど……)

花枝 「………………」

花枝 「……いけるかしら」 ボソッ

成幸 「? 母さん、何か言ったか?」

花枝 「……ううん。なんでもない。文ちゃんに喜んでもらうには、どういしたらいいか考えてただけよ」

成幸 「はは。あいつは食いしん坊だからな。食べ物山ほど用意すれば喜ぶよ」

花枝 「………………」

成幸 「……母さん?」

花枝 「あんたさ、もう少し女心ってものを勉強したら?」

成幸 「古橋みたいなことを母親に言われた!?」


493以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:47:41GTAXl2Ic (14/27)

………………古橋家

零侍「文乃」

文乃「……? なぁに?」

零侍「いや……」

零侍「……クリスマスは唯我さんの家に伺うのだろう。失礼のないようにな」

文乃「わかってるよ。ちゃんとするよ」

零侍「美味しい美味しいと、人様の家で食い意地を張らないようにな」

文乃「わかってるよ! それが年頃の娘に言うこと!?」

零侍「す、すまん……」

文乃「あ、いや……そんな、本気で怒ってるわけじゃないから、気にしないで……」

零侍「そうか……。すまない。私も、冗談のつもりだった」

文乃「……うん。わかってるよ。大丈夫」

零侍「………………」

文乃「………………」


494以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:48:27GTAXl2Ic (15/27)

文乃 (……気まずい、けど)

文乃 (嫌じゃ、ない。お父さんが、必死で、がんばって、わたしと会話をしようとしてくれてるって、わかるから)

クスッ

零侍「……ん、どうかしたか?」

文乃「ううん。あのね、お父さん。クリスマスツリー、成幸くんに貸したって言ったじゃない」

零侍「ああ」

文乃「成幸くんの弟妹ちゃんたちと一緒に飾り付けもしたんだよ。そしたらね……」

文乃「……そうしたら、思い出したんだ。昔、三人でクリスマスツリー、飾り付けしたこと」

零侍「………………」

文乃「……えへへ。すごく楽しかったなぁ、って。それだけ」

零侍「……ああ。私も、楽しかったと思うよ。なつかしいな」

文乃「うん」

零侍「………………」 スッ 「……今年のクリスマスも、楽しんできなさい」

ポンポン

文乃「……うん!」


495以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:49:06GTAXl2Ic (16/27)

………………

零侍「……はぁ。我ながら、本当に……なんというべきか。不器用だな」

零侍「……まぁ、いい。今日明日で気を許せるわけもない」

零侍「文乃が受け入れてくれるなら、私は、私に出来る範囲で、会話を続けなければ」

prrrrrr……

零侍「ん……? 電話?」 (こんな時間に、なんだ? 研究室からか?)

零侍「……!?」

ピッ

零侍「……古橋ですが」

零侍「ええ。おかげさまで、一応、順調ではあるかと……」

零侍「……え?」

零侍「は、いや、しかし……私は……」

零侍「……わ、わかりました。そうさせていただきます。はい……はい。では、失礼します」

零侍「………………」

零侍「……な、なんてことだ」


496以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:49:37GTAXl2Ic (17/27)

………………クリスマス当日 唯我家前

文乃「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 (服装、よし。髪型、よし。プレゼント、よし。うん、完ぺき……だと思う)

ドキドキドキドキ……

文乃 (い、いつも勉強教わりに来てる成幸くんの家とはいえ……)

文乃 (さすがに、余所様の家庭のクリスマスパーティに参加するのは緊張するなぁ……)

文乃 (それに……)


―――― 『クリスマス、うちに来ないか?』


文乃「はうっ……」

カァアアアア……

文乃 (あ、あくまで家庭のクリスマスパーティにお呼ばれしただけだから!)

文乃 (だから……)

ドキドキドキドキ……


497以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:50:09GTAXl2Ic (18/27)

ガラッ

文乃「……!?」

成幸 「お、いたいた。来てたなら入ればいいのに。どうしたんだ?」

文乃「な、何もないよ。えへへ……」

文乃 (きみのことを思い出してドキドキしてたんだよ!)

文乃 (……なんて、口が裂けてもいえないよ)

文乃 (……っていうか、うるかちゃん、りっちゃん、違うからね! これは、ただの……)

文乃 (ただの、クリスマスパーティだからね!)

成幸 「? どうした? 早く入れよ」

文乃「あ、うん! お邪魔します」

パンパンパン!!!

文乃「わっ……」

葉月&和樹 「「文ねーちゃん! メリークリスマス!!」」

文乃「葉月ちゃん、和樹くん」 ニコッ 「メリークリスマス!」


498以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:50:59GTAXl2Ic (19/27)

成幸 「ごめんな、古橋。ふたりがお前のこと驚かせたいって言ってたからさ……」

文乃「ううん。クラッカーの音なんて久々で、少しびっくりしたけど、」

文乃「こうやって出迎えてくれるの、すごく嬉しいよ。ありがとう、葉月ちゃん、和樹くん」

葉月&和樹 「「えへへ~」」

成幸 「さ、上がってくれ。水希と母さんが、古橋が来るからって大はりきりで作ったごちそうが待ってるぞ」

葉月「そうそう! すごいごちそうなの!」 ギュッ

和樹 「文姉ちゃんも絶対すごいって言うぞ!」 ギュッ

タタタタ……

文乃「わっ、わわわっ……」

ガラッ

花枝 「あら、文ちゃん。いらっしゃい」

水希 「……こんにちは、古橋さん」

文乃「どうも、こんにちは。お邪魔してます……って」

キラキラキラ……!!!!

文乃「す、すごい……!!」 パァアアアアアア……!!!「ほんとにすごいごちそうだぁ~~!!!」


499以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:51:55GTAXl2Ic (20/27)

水希 「べっ、べつに……そんな、大したお料理じゃないですよ」

水希 「古橋さんがいつもお料理を美味しそうに食べてくれるから、ついつい気合い入れて作っちゃったとかじゃないですから!」

和樹 「? なんだ、姉ちゃん? 新手のツンデレってやつか?」

葉月「姉ちゃんも文姉ちゃんのこと大好きなのね!」

水希 「なっ……///」 ボフッ 「べ、べつに、そういうのじゃないもん……」

花枝 「ふふ……。さ、成幸も文ちゃんも、席について。お料理が冷める前にいただきましょう」

文乃「あ、はい!」

花枝 「……じゃ、いただきましょう。いただきます」

 『いただきます!!』

文乃 「どれも美味しそう……。どれからいただこうかな……」

水希 「……ん、では、これからどうぞ」

文乃「? これって……ローストビーフ?」

水希 「……牛肉なんか滅多に買えないから、作るの初めてですけど」

水希 「食べてみてください」


500以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:52:37GTAXl2Ic (21/27)

文乃「うん。じゃあいただくね」

パクッ……モグモグ……

文乃「………………」

水希 「……ど、どうですか?」

文乃「……ふにゃ~、美味しい~~~~!!」

文乃「お肉がすっごくやわらかくて、ソースとよく合うよ! 本当に美味しいよ、水希ちゃん!」

水希 「そ、そうですか。それなら、よ、よかったです……」 プイッ

和樹 「? 姉ちゃん、顔赤いぞ?」

葉月 「文姉ちゃんに美味しいって言ってもらえて嬉しいのねー」

水希 「ち、ちがうわよ! そんなのじゃないんだから……」

成幸 「いやー、しかし、ほんとにどれも美味しいな……」 モグモグ

成幸 「水希みたいな妹がいて、俺は本当に幸せ者だなぁ……」

水希 「も、もうっ。お兄ちゃんったら……///」

花枝 (兄の発言に照れる方を恥ずかしいと思ってほしいところだけど……)

花枝 (……まぁ、しょうがないわね。水希だものね)


501以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:53:15GTAXl2Ic (22/27)

文乃「でも、ほんとにどれもこれも美味しいよ」

文乃「いいなぁ、成幸くん。わたしも水希ちゃんみたいな妹ちゃんがいてくれたらなぁ……」

水希 「……え?」

文乃「へ?」

葉月 「……文姉ちゃん。いい方法があるわ」

文乃「?」

和樹 「文姉ちゃんが、兄ちゃんの嫁に来たら、姉ちゃんは文姉ちゃんの妹になるぞ!」

文乃「っ……//」

成幸 「なっ……///」 ボフッ 「ば、ばかなこと言うんじゃない!」

水希 「………………」 ギリッ (……悔しい)

水希 (古橋さんが姉になるのを想像して、それもアリかな、なんて思っちゃう自分が、悔しい……!)

成幸 「ほら、せっかくのごちそうが冷めちゃうぞ。どんどん食べろ」

葉月&和樹 「「はーい」」


502以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:55:37GTAXl2Ic (23/27)

………………食後

文乃「……はふぅ」

文乃「本当に美味しかったよ。ごちそうさまでした。お母さん、水希ちゃん」

花枝 「お粗末様でした。文ちゃんは本当に美味しそうに食べてくれるから、作りがいがあるわぁ」

花枝 「……ね? 水希?」

水希 「っ……」 プイッ 「ま、まぁね。美味しく食べてくれるから、嬉しいことは嬉しいかもね」

文乃「えへへ……。ありがと、水希ちゃん」

水希 「べつに……」 プイッ

文乃「あ、そうだ。あのね、クリスマスプレゼント持ってきたんだよ」

和樹 「クリスマス」  葉月 「プレゼント!?」

文乃「うん。えっと……」 ガサゴソ 「……はい、葉月ちゃんと和樹ちゃんには、クリスマスブーツ」

文乃「お菓子がたくさん入ってるよ。一気に食べちゃダメだよ」

葉月&和樹 「「ありがとう!! 文姉ちゃん!!」」

成幸 「……悪いな、古橋。プレゼントなんて用意させちゃって」

文乃「ううん。気にしないで。クリスマスパーティにお呼ばれしたんだから、これくらいは当然だよ」


503以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:56:56GTAXl2Ic (24/27)

文乃「あと、水希ちゃんには、これ」

水希 「えっ……わ、わたしにもあるんですか?」

文乃「もちろん! はい、保湿クリーム。これわたしのお気に入りなんだ~」

水希 「あ、ありがとうございます……」 (すごく高そうなやつ……っていうか……)

文乃「わたしが使ってるやつと同じだよ。おそろいだね!」

水希 「っ……/// そ、そうですね……」

文乃「あと、お母さんにも。どうぞ。水希ちゃんと同じ保湿クリームです」

花枝 「私にも? なんか、気を遣わせちゃったみたいね。ありがとう」

文乃「いえいえ。気にしないでください。こちらこそ、こんな素敵なパーティにお招きいただいて、ありがとうございます」

水希 「……じゃあ、わたしからも」

文乃 「へ?」

水希 「プレゼントです。どうぞ」

文乃 「えっ……? わ、わたしに……? 用意してくれたの?」

水希 「……はい。いつも、兄と葉月、和樹がお世話になってますから。ツリーも、ありがとうございました」

文乃 「あっ……」 パァアアアアアア……!!! 「ありがとう、水希ちゃん!」


504以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:57:45GTAXl2Ic (25/27)

文乃 「開けてもいい?」

水希 「……は、恥ずかしいので、おうちに帰ってから開けてください。大したものじゃないので」

文乃 「うん。わかった! 開けるまで楽しみだよ~」

水希 「大したものじゃないから、そんなに期待しないでください……」

花枝 (……うんうん。水希とも良い感じじゃない。いいことだわ)

花枝 (文乃ちゃん、本当に良い子だし、まじめな話、本当に嫁に来てくれないかしら……)

水希 (お母さん、またろくでもないこと考えてる顔してる……)

水希 「……ケーキも作ってあるんです。持ってきますね」

文乃「ケーキ!?」 キラキラキラ……!!!!

文乃「はぁああ……水希ちゃんが作ったケーキ。絶対美味しいやつだよ……」

ジュルジュル

文乃「楽しみだね、成幸くん!」

成幸 「あ、ああ。よだれ垂れてるぞ、古橋……」


505以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:58:33GTAXl2Ic (26/27)

水希 「……ちゃんとしたオーブンなんてないですから、なんちゃってケーキですよ」

水希 「そんなに期待しないでくださいね」

トトト……

葉月 「わたしたちもケーキ作り手伝ったの!」

和樹 「かーちゃんがフルーツ使う許可もくれたから、豪華なフルーツケーキだぜ!」

文乃「本当に? 楽しみだなぁ~」

ピンポーン

成幸 「? インターフォン? 誰だろう?」

花枝 「……あら。来たわね」 クスッ 「私が出るからいいわ」

成幸 「? なんだろう。何かの配達かな?」



  「……お邪魔します」



成幸 「? 男の人の声……? お客さんか?」

文乃「……!?」 (こ、この声……まさか……!?)


506以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/05(土) 23:59:11GTAXl2Ic (27/27)

ガラッ

零侍 「あ……こ、こんばんは」

文乃「お父さん!?」

葉月 「へぇ?」  和樹 「文姉ちゃんのお父さん?」

文乃「な、何で成幸くんの家にお父さんが来るの!?」

零侍 「なぜ、とはまたご挨拶だな。忘年会が終わったから来たのだが……」

文乃「そういうことじゃないよ!? お父さんが来るなんて聞いてないよ!?」

零侍 「聞いてない……?」 チラッ 「……やりましたね、唯我さん」

花枝 「ふふ。これくらいのサプライズはいいでしょう?」

零侍 「……まぁ、そうかもしれませんね」 フッ

零侍 「唯我さんに誘われたんだ。忘年会が終わったら、家に来ないかと」

零侍 「お言葉に甘えてお邪魔したのだが……嫌だったか? 文乃」


507以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:00:02qnUp5uO. (1/16)

文乃「っ……」

文乃「嫌とか、そういうのは、ない……っていうか……」

プイッ

文乃「嫌なわけないじゃない。お父さんが、来てくれたんだもん。嬉しいよ」

零侍 「そ、そうか……」

花枝 「ふふっ♪」

成幸 「……俺にくらいは教えておいてくれてもよかったじゃないか、母さん?」

花枝 「あんた、文ちゃんにバラしちゃいそうだから。敵を欺くにはまず味方から、ってね」

成幸 「……はぁ。母さんが楽しそうで俺は嬉しいよ」

零侍 「あー……はじめまして。文乃の父の、古橋零侍です。こんばんは」

葉月 「こんばんは! 双子の姉、葉月でーす!」 和樹 「双子の弟、和樹でーす!」

葉月&和樹 「「文姉ちゃんの父ちゃんめっちゃイケメンだー!!」」

零侍 「あ、ああ、どうも? ありがとう?」

文乃 「……イケメンではないと思う」 ボソッ

零侍 「……何か言ったか、文乃」


508以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:01:14qnUp5uO. (2/16)

………………

零侍 「む……このケーキは、本当に……美味しいな」 モグモグ

文乃 「本当だよ。すごく美味しい」 ジーーッ 「お父さんがいなければ、もっとたくさん食べられたのにな」

零侍 「……その言い方は、冗談でも傷つくぞ」

文乃 「あ、ご、ごめんね。うそだよ?」

零侍 「……すまない。今のも冗談だ」

文乃 「………………」

零侍 「……そう怒るな。私が悪かったよ」

文乃 「……べつに。怒ってないし」

水希 「………………」 (古橋さんのお父さんって言うから、どんなすごい人かと思ったけど……)

水希 (少し暗い雰囲気だけど、普通の人だな……)

零侍 「あ……水希さん、だったかな?」

水希 「え? あ、はい」

零侍 「ケーキ、とても美味しいよ。ありがとう」

水希 「あ……ありがとうございます。そんな、大したものじゃないですけど……」


509以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:01:46qnUp5uO. (3/16)

水希 「……ん、そういえば、あのクリスマスツリー」

零侍 「うん?」

水希 「貸していただいて、ありがとうございます。おかげで、葉月と和樹も大喜びで……」

葉月 「ああいう大きなツリーに飾り付けするの夢だったの!」

和樹 「めちゃくちゃ楽しかったんだ!」

零侍 「……そうか。それはよかった。ずっとしまっていたものだから、使ってくれるなら、逆にありがたい」

成幸 「……なぁ、古橋」 コソッ

文乃 「? なぁに?」 コソッ

成幸 「お父さん、来てくれてよかったな」

文乃 「ん……ま、まぁね。お父さんも楽しそうだし、良かったんじゃない?」

成幸 「そんなこと言って、古橋」 クスッ 「お前も楽しそうだぞ?」

文乃 「なっ……」 カァアアアア…… 「そ、それは、元々、この家にいるのが楽しいだけで……」

文乃 「べ、べつに、お父さんがいるかいないかなんて関係ないもん」


510以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:02:27qnUp5uO. (4/16)

成幸 「ふふ、そうかよ」


―――― 『うちのお父さんが そういう人だからかなぁ……』

―――― 『今日はお父さんが家にいるから…… あんまり帰りたくなくて』


成幸 (……古橋、お前は気づいてないかもしれないけどさ)

成幸 (お父さんが怖くて、お父さんがいる家に帰りたくないって言ってた頃に比べたら、)


―――― 『べ、べつに、お父さんがいるかいないかなんて関係ないもん』


成幸 (“いてもいなくてもいい” ってことは、すごいことだぞ)

成幸 (まだぎこちなくて、仲良しとは言えないかもしれないけど、)

クスッ

成幸 (お父さんと、ちゃんと、父娘に戻れたんだな)

零侍 「む……」

零侍 (……唯我くんと、文乃。何やら楽しそうにコソコソ話している)

零侍 (ふむ……)


511以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:03:09qnUp5uO. (5/16)

………………玄関前

文乃 「今日はお招きいただいて、ありがとうございました」 ペコリ

成幸 「そんなに改まらなくていいよ。お前にはいつも世話になってるしさ」

零侍 「私からも。本当にありがとう、唯我くん。とても楽しかったよ」

成幸 「はい。お父さんも来られて良かったです。ふるは――文乃さんも、嬉しそうでしたし」

文乃 「なっ……よ、余計なこと言わないでいいよ、成幸くん!」

成幸 「ははは……」

零侍 (……うむ。やはり)

零侍 「あっ、しまったな。大学に忘れ物をしてしまった」

零侍 「すまない、文乃。先に家に帰っていてくれ。私は一度大学に戻ってから帰る」

文乃 「それはいいけど……。もう遅いし、明日じゃダメなの?」

零侍 「今日必要なものなんだ」

零侍 「すまない、唯我くん。とても厚かましいお願いだとは思うのだが、娘を家まで送ってあげてくれないか?」

成幸 「もちろん、いいですよ」

文乃 「えっ……でも、さすがに悪いよ。寒いし……」


512以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:03:46qnUp5uO. (6/16)

成幸 「夜道は物騒だしな。もう夜も遅いし、いいから送らせろよ」

文乃 「……うん。ありがと、成幸くん」

零侍 「……ちなみに、帰りはかなり遅くなる。間違いなく日をまたぐ。2時以降の帰宅になる」

文乃 「そんなに遅くなるの?」

零侍 「ああ。もう一度言う。唯我くん。私の帰宅は間違いなく日をまたぐ。帰宅は2時以降だ」

零侍 「もし万が一早く帰宅してもそのまま寝室に直行してそのまま寝るだろう。だから何の心配もいらない」

成幸 「え……? あ、はい……」 (何で俺に言うんだ……? っていうか心配って何だ……?)

文乃 「じゃあ、わたしたち行くね。お父さんも気をつけて大学行ってね」

零侍 「ああ」

零侍 「……行った、か」 (……まったく。手くらい繋いだらいいものを。文乃のやつ、本当に楽しそうだ)

零侍 「……いかんな。ガラにもなく、唯我くんに嫉妬しているのか、私は――」

花枝 「――あら? いいと思いますよ? 年頃の娘さんのお父さんですもんね」

零侍 「……!? ゆ、唯我さん。いらっしゃったのですか……」

花枝 「ナイスアシストですね、古橋さん?」

零侍 「……アシストできているか、分かりませんが。娘の恋の応援くらいは、できるかなと」


513以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:05:33qnUp5uO. (7/16)

花枝 「せっかく相手のお父さんがご厚意を向けてくれてるのに、うちの息子はニブいですけどね」

花枝 「成幸がもう少し恋心を分かってくれればいいんですけど」

零侍 「彼のそういうまじめなところに、好感を憶えます。それは美徳だと、私は思います」

花枝 「だといいんですけどね」 クスッ

零侍 「………………」

零侍 「あ、あの、唯我さん……」

花枝 「?」

零侍 「今日は……いえ、いつも、うちの娘がお世話になっています。本当に、ありがとうございます」

零侍 「この間のことも……本当に、どうお礼を言ったらいいか……」

花枝 「気にしないでください。息子が勝手にやったことがほとんどですから」

零侍 「……とはいえ、大人として、このままでは、あまりにも情けないと思います」

零侍 「なので、あの……もし、ご迷惑でなければ……」

零侍 「お礼と言うと、浅ましいですが……今度、一緒にお食事でも、と……」

花枝 「お食事? 私とですか?」

零侍 「は、はい……」


514以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:06:46qnUp5uO. (8/16)

花枝 「……ふふっ」

零侍 「……?」

花枝 「いいですよ。ぜひ」

零侍 「!? ほ、本当ですか!?」

花枝 「うそなんかつかないですよ」

零侍 「あ……そ、それは、そうですよね」

零侍 「……では、また。その……電話をします」

花枝 「はい。待ってます」

零侍 「………………」

零侍 「……では、また」

花枝 「ええ。古橋さん、お気をつけて。それから……」

零侍 「?」

花枝 「メリークリスマス」 ニコッ

零侍 「あっ……」 ドキッ 「め……メリー、クリスマス」


515以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:07:23qnUp5uO. (9/16)

………………

文乃 「えへへ、今日は本当に楽しかったなぁ……」

成幸 「“美味しかったなぁ” の間違いじゃないのか?」

文乃 「むっ……成幸くん? きみは、わたしのことを、ただの食いしん坊だと思ってないかい?」 プンプン

成幸 「冗談だよ。悪かった」

文乃 「ふーん、だ」 プイッ

文乃 「………………」

クスッ

文乃 「……ふふ」

成幸 「? どうかしたか?」

文乃 「ううん。楽しくって仕方なくてさ」 ニコッ 「怒るフリもできないよ」

成幸 「っ……」 ドキッ (そ、その笑顔はいくらなんでも反則だろ……)

文乃 「……ねぇ、成幸くん」

成幸 「お、おう。なんだ?」


516以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:08:02qnUp5uO. (10/16)

文乃 「はい、これ」

成幸 「へ……? これ……プレゼント?」

文乃 「うん。成幸くんへのプレゼントだよ」

文乃 「さっき渡したら良かったんだけどね……えへへ」

文乃 (……なんか、みんなの前で渡すのが恥ずかしくて……なんて言えないよね)

成幸 「……あ、ありがとう。嬉しいよ」

成幸 「えっと……その……俺も」 ゴソッ 「……プレゼント」

文乃 「へ……?」

文乃 「あっ……ありがとう」 カァアアアア……

成幸 「俺も、さっき渡したらよかったんだけど……」

成幸 (みんなの前で渡すのが恥ずかしかった……なんて言えるわけないよな)

文乃 「……ふふ。なんか、わたしたち、似たもの同士だね」

成幸 「……だな」


517以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:08:39qnUp5uO. (11/16)

文乃 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 (……ああ、もう。否定することも、難しいよね)

文乃 (こんなの、ずるいよ……だって……)


文乃 (――好きにならないわけ、ないじゃない)


文乃 (……ごめんね。りっちゃん、うるかちゃん)

文乃 (正々堂々、明日、ふたりに、ちゃんと言うね)



文乃 (わたしが、唯我くんのことが好きだって、ふたりに言うね)



文乃 (だから、今日だけは許して)

文乃 (ふたりから嫌われちゃうかもしれないけど……)

文乃 (今日、いま、このときだけは……)


518以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:09:10qnUp5uO. (12/16)

文乃 「……ねえ、唯我くん」

成幸 「ん?」

文乃 「わたし、初めてなんだ。こんな風に、男の子とふたりで、クリスマスを過ごすって」

成幸 「へ……?」

カァアアアア……

成幸 「い、いやいや、さっきまで俺の家族とお父さんと一緒だっただろ?」

文乃 「うん、そうだね。でも、今はふたりきりだよ?」

成幸 「いや、まぁ……それは、その通りだけど……」

文乃 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

文乃 「……ねえ、唯我くん。わたしが今、何を考えてるか、わかる?」

成幸 「えっ……?」

成幸 「そ、そんなの、わかるわけないだろ」


519以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:10:06qnUp5uO. (13/16)

文乃 「……うん。そうだよね。成幸くんは成幸くんだもんね」

成幸 「……?」

文乃 「じゃあ、それが分かるようになるまで、女心の授業は続くよ、成幸くん」

成幸 「!? 女心が分かれば、お前が今何を考えてるかも分かるようになるのか……すごいな、女心の授業……」

文乃 「わたしの授業は半端を許さないからね。覚悟しておいてね」

成幸 「……ああ、分かってるよ。お前が単位をくれるまで、お前の授業を受けないとな」

成幸 「はぁ。単位修得まで、どれくらいかかることやら」

文乃 「そうだね。がんばらないとだよ、成幸くん」

文乃 「……高校を卒業しても、単位を与えられなかったら、補習は続くからね」

成幸 「うへぇ。女心って大変だな……」

成幸 「でもまぁ、お前が付き合ってくれるなら、がんばって補習を受けるとするよ」

文乃 「ふふ……」

クスッ

文乃 「今の、言質とったからね。成幸くん」

おわり


520以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:10:51qnUp5uO. (14/16)

………………幕間1 「TOMODACHI」

文乃 「お、おう……」

文乃 「すごいセンスだね、水希ちゃん……」

文乃 「でかでかと 『TOMODACHI』 と刺繍されたエプロンとは……」


………………

水希 (古橋さん、プレゼント開けてくれたかなぁ。気に入ってくれたかなぁ)

水希 (ふふ……)

キラン

水希 (……まぁ、認めてあげないこともないですが、)

水希 (まずは清く正しく、お兄ちゃんのお友達から始めてもらわないとね……ふふふ……)

水希 「………………」

水希 (……来年のクリスマスプレゼント用に、『KOIBITOMIMAN』 エプロンも作っとこうかな)


521以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:11:30qnUp5uO. (15/16)

………………幕間2 「オマケ」

零侍 「……ゆ、唯我さん?」

花枝 「ごめんなさいねぇ、古橋さん。外食に行くって話をしたら……」

葉月 「こんばんは! 文姉ちゃんのお父さん!」

和樹 「ついてきちゃいました!!」

花枝 「お母さんだけずるいって言われてしまって……」

零侍 「あ、いえ……構いませんよ。葉月さんと和樹くんにもお礼をしなければなりませんから」

零侍 「葉月さん、和樹くん、何が食べたい? 私が何でも食べさせてあげよう」

零侍 (……まぁ、落胆していないと言えばウソになるが)

花枝 「あら、良かったわね、葉月、和樹」

葉月 「うーん、うーん……」 和樹 「何がいいかな……」

零侍 「……うむ」

零侍 (唯我さんの嬉しそうな顔が見られただけで、良し)

零侍 (しかし、まぁ……) ハァ (唯我くんのニブさは、間違いなく母親譲りだな)

おわり


522以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:14:38XuaKvmLc (1/1)

乙!!!!!


523以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:16:13S8mU02Bk (1/1)

乙!!!
いい最終回だった!


524以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:19:27qnUp5uO. (16/16)

>>1です。

まず第一に、わたし自身がコミックス派なので、本誌の話を先に出すことがためらわれました。
(文乃さんの家出のときだけ誘惑に負けてジャンプを買ってしまいましたが)。
また、明示されてない好意に関しても本編に先んじて描くのもよくないと思いました。
ただ、思いついて、書いていると、勝手ながらとても面白いと思ってしまいました。
なので、言い訳がましい前置きをして投下させてもらいました。
申し訳ないことだと思います。

今後、こういうのは控えようと思います。が、自分で面白いと思ったら、また投下すると思います。
不快に思われた方がいたらすみません。もうしわけないです。


>>478
あまり匿名掲示板で明言するのも正しくないと思うのでジャンルだけ言いますが、「プリキュア」の小説です。

>>479
今で匿名掲示板で投下したのは主に「とある」と「プリキュア」のSSです。
ギャグが苦手なのでシリアスばかりです。



また投下します。


525以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 00:35:08FgSAvOmk (1/1)

好きなように書いてくれてええんやで


526以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 01:15:281oT6qPsk (1/1)

とりあえず無限の可能性を秘めた女の子の画像貼っときますね
https://i.imgur.com/4gRGYWO.jpg


527以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 07:45:41ML9R6WoI (1/1)

>>478だけどありがとう
委託してるか知らんが探してみるわ


528以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 21:17:43X3tVyTOU (1/2)

もう


529以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 21:18:32X3tVyTOU (2/2)

誤送信してしまった
もうこれ本編でいいだろって出来だな
最高だよ


530以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/06(日) 21:43:29u4hlzuRA (1/1)

>>526
ぐうかわ


531以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/07(月) 18:44:39Ru94J.Qg (1/1)

おつ


532以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/09(水) 01:11:47u39T5QFQ (1/1)

今週のジャンプもいとおもしろく


533以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:45:541QrxQ.1A (1/15)

>>1です。
投下します。


【ぼく勉】 文乃 「成幸くん、散々わたしの胸のことバカにしてたよね?」 ボイン


534以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:46:481QrxQ.1A (2/15)

………………5年後

文乃 「で、今現在、これだけ大きくなったわたしの胸を見て、どう思う?」 タユン

成幸 「へ……?」

成幸 「バカにしてたって……べつに、そんなことないだろ……」

成幸 「あと、胸の大きさなんて……そんな……」

文乃 「ふふん。そんなおぼこみたいな反応したって無駄だよ」 ムギュッ

文乃 「文乃お姉ちゃんは全部お見通しなんだからね」 ムギュムギュ

成幸 「お、お姉ちゃんてお前……何年前の話だよ……」

成幸 「あとお前、その……さっきから、胸が、当たってるんだけど……」

文乃 「わ・ざ・と。当ててるに決まってるでしょ」

成幸 「……お前な。そういうの、はしたないからやめろって」

ジトッ

成幸 「まさかお前、俺以外の男にも、同じようなことしてるんじゃないだろうな?」

文乃 「……!? 他の男の子に? す、するわけないじゃん! 成幸くんのえっち!」

成幸 「……お前の恥ずかしがるポイントがまるで分からないよ」


535以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:47:381QrxQ.1A (3/15)

文乃 「あっ……は、話を逸らそうったってそうはいかないよ?」

ムギュウムギュッ

文乃 「正直、成幸くん、付き合い始めた頃は、わたしのおっぱいに関しては色々あきらめてたよね?」

成幸 「胸に関して諦めるってどういうことだよ」

文乃 「わたしのおっぱいが小さいから、りっちゃんのおっぱいを揉みたいとか思ってたよね?」

文乃 「あの、最終的にIカップ寸前まで成長したハザード級のおっぱいを」

成幸 「思ってねーよ! 恋人と共通の友達のおっぱい揉みたいとかただのダメ野郎だろそれ!」

文乃 「えっ? じゃあうるかちゃんの健康的な日焼け跡おっぱい?」

成幸 「お前ほんと俺のことなんだと思ってるんだ?」

文乃 「……ふーん。じゃあ、成幸くんは、わたしのおっぱい以外はどうでも良かった、と?」

成幸 「……いや、それを肯定しても、俺、お前のおっぱい目当てで付き合ったことにならないか?」

文乃 「……当時のわたしのAカップおっぱいには何の価値もなかった、と?」 ゴゴゴゴゴ………

成幸 「そんなこと一言も言ってないよな!?」


536以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:48:291QrxQ.1A (4/15)

文乃 「じゃあ、質問を変えるけど、」

ムギュッ

文乃 「今現在、きみの恋人のおっぱいは、Fカップですが、それに関して何かコメントは?」

成幸 「コメントって……」

カァアアアア……

成幸 「……えっと、その……どんなお前も魅力的だけど……」

成幸 「……とても、その……よろしいと、思います、です……」

文乃 「よろしい」 フフン

成幸 「………………」

成幸 (得意げな顔がムカつく……。どうでもいいとか言うと拗ねるくせに……)

成幸 (まぁ、でも、そんなところもかわいいけど……)

文乃 (……なんてことを考えてる顔だね。あれは)

ニヤリ

文乃 (まったく。成幸くん、かわいいのは、照れながらも正直に答えてくれるきみの方だよ)


537以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:49:061QrxQ.1A (5/15)

成幸 「……ったく、お前が胸のコンプレックス爆発させたせいで時間食っちまったじゃないか」

成幸 「新婚旅行の行き先、今日中に決めるって約束なんだから、早く探さないとだぞ」

文乃 「わかってるよー、だ。しっかり者の旦那さんを持ててわたしは幸せ者だなー」

成幸 「……ほんっと、調子いい女になったよな、お前」

クスッ

成幸 「俺も、お前みたいな美人でおっぱいの大きい嫁さんもらえて幸せ者だよ」

文乃 「えへへ……」

成幸 「午後からは結婚式の最終打ち合わせもあるんだからな?」

文乃 「うん! えへへ……」

成幸 「? どうした?」

文乃 「……ううん。結婚式、楽しみだなぁ、って」

成幸 「……まぁ、そうだな」

文乃 「えへへ。幸せにしてね、成幸くん!」

成幸 「おう!」

………………


538以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:49:391QrxQ.1A (6/15)

………………古橋家

文乃 「えへへ……えへへへへへ……」

文乃 「ふにゅ……」

パチッ

文乃 「……ん……う?」

文乃 「あれ……成幸くん……?」

文乃 「………………」

ハッ

文乃 (……夢!? えっ、ちょっと待って……夢!?)

文乃 (わ、わたし……夢を見てた……?)

文乃 「………………」

スカッ

文乃 (……あ、うん。わかってたけどね。うん。胸、こうだよね。これがわたしの胸だよね)

ズーン

文乃 (っていうか……) カァアアアア…… (わたし、なんて恥ずかしい夢を見てしまったんだろう……)


539以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:50:291QrxQ.1A (7/15)

………………一ノ瀬学園

うるか 「おっはよー! 文乃っちー!」

文乃 「あ、お、おはよ、うるかちゃん」

文乃 「………………」 ジーーーーッ

うるか 「? どったの? あたし、なんか変?」

文乃 「………………」

文乃 (……うん。相変わらず、筋肉質ながらもやわらかそうなおっぱいがふたつ)

文乃 (でも、夢の中のわたしは、もっと大きかった……)

うるか 「ふ、文乃っち? そんなに見つめられると、恥ずかしいよ……///」

文乃 「……ふふっ」

文乃 (なんだかわからないけど、少し勝った気分だよ……!)

文乃 (それと同時に、とんでもない虚しさを感じるよ……)

成幸 「……? 朝っぱらから何やってるんだ、あのふたりは」

理珠 「なんだか分かりませんが、関わらない方がいいと思います」


540以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:51:041QrxQ.1A (8/15)

………………放課後

理珠 「……はぁ? 胸が大きくなる夢を見た?」

文乃 「……うん」

文乃 (恥ずかしいけど、笑い話になるかなと話してしまった……)

うるか 「へぇー。文乃っちのおっぱいが大きくなる夢ねー……」

うるか (……もし、文乃っちのおっぱいが大きくなったら、きっと完全無欠の超絶美女のできあがりだよね)

うるか (そうなったら……) ジーッ

成幸 (……そういう話は女子だけのときにしてくれないかな……)

うるか (……きっと成幸も、文乃っちのこと大好きになっちゃうよね)

うるか 「だ、ダメだよ! 文乃っちはおっぱい大きくなっちゃ!」

文乃 「ダメ!? 禁止されるようなことなの!?」

うるか 「文乃っちにもひとつくらい欠点がないとダメだよ! じゃないと……」

うるか (成幸が文乃っちのこと好きになっちゃうかもしれないし!!)

文乃 「……さりげなくわたしの胸が小さいことを欠点扱いされた」 ズーン


541以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:51:401QrxQ.1A (9/15)

成幸 「ほ、ほら! アホな話してないで、さっさと勉強に戻るぞ。受験生だろ」

理珠 「その通りですよ。胸が大きくなる夢なんて、文乃の潜在的な欲求が表れただけのことでしょう」

理珠 「取るに足らないことですよ」

文乃 「………………」

ムギュッ

成幸 「なっ……///」

理珠 「な、なぜ無言で私の胸を鷲づかみするのですか!? 文乃!」

文乃 「“取るに足らないこと” ……?」

ギラリ

文乃 「そんな悪いことを言うのはこの胸かー! この凶悪なおっぱいなのかー!?」 ムギュムギュムギュウ

理珠 「や、やめてください! 成幸さんもいるんですよ……っ」

うるか (……成幸がいないとこでなら揉んでもいいのかな? 今度やってみよ)

成幸 「お、落ち着け、古橋! 緒方の胸を揉んでもお前の胸は大きくならないぞ!?」

文乃 「何でそこで全力で煽りに来るのかな成幸くん!?」


542以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:53:031QrxQ.1A (10/15)

………………

文乃 「……ごめんなさい。取り乱しました」

理珠 「いえ、こちらこそ、取るに足らないことというのは言いすぎでした。ごめんなさい」

成幸 「……うん。俺も空気読めないことを言って悪かったよ」

うるか (胸ねー。水泳選手的にはあんまりないほうがいいんだけど……)

うるか (それを言ったらまた文乃っちが暴れ出しそうだからやめとこーっと)

うるか 「ん、そういえばさ、リズりん。さっきなんか変なこと言ってなかった?」

理珠 「はい?」

うるか 「文乃っちのセンザイテキナヨッキューがどーの、とか……」

理珠 「ああ……。潜在的な欲求の表出ですか」

理珠 「……最近、受験勉強の合間に心理学の勉強をしているのですが、読んだ本に出てきたんです」

理珠 「“即物的すぎる夢は、当人の潜在的な欲求を示している場合が多い”」

うるか 「???」

理珠 「……オホン。うるかさんに分かりやすいように、簡単な言葉に直すと、つまり……」

理珠 「夢に出てきたことが、本人が望んでいることだ、ということです」


543以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:53:341QrxQ.1A (11/15)

うるか 「夢がそのまま本人の望むもの……」

うるか 「……つまり、文乃っちはおっぱい大きくなりたいってこと?」

理珠 「……身も蓋もない言い方をするとそうなりますが、」

文乃 「………………」 ズーン

理珠 「今度こそ文乃の目が死んでしまったので、それ以上はやめてあげてください」

うるか 「えー、でもそれって面白いね!」

文乃 「……面白い? わたしが胸が小さいことで悩んでるのがそんなに面白いかー!!」

うるか 「ど、どうどう、文乃っち。そうじゃなくてさ……」

うるか 「夢に出てきたことをその人が望んでるってコトなんでしょ?」

うるか 「文乃っち、夢の中で、おっぱいが大きくなること以外に、何かなかったの?」

文乃 「えっ……」

文乃 「……あ」


―――― 『午後からは結婚式の最終打ち合わせもあるんだからな?』


文乃 「……っ」


544以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:54:331QrxQ.1A (12/15)

うるか 「お、なんかあったのー? 教えてよー」

文乃 「だ、ダメ! ダメだよ! 絶対言えないよ!」

理珠 「? どうしたのですか、文乃。そんなに顔を真っ赤にして」

理珠 「胸が大きくなったこと以上に恥ずかしいことなのですか?」

文乃 「わたしがとんでもなく恥ずかしいやつみたいな目でみるのはやめてくれないかな!?」

うるか 「えーっ、じゃあいいじゃん。教えてよ~」

文乃 「………………」 (い……言えるかー!!)


―――― 文乃 『いやー、実はふたりの好きな人と結婚する夢を見たよ』

―――― 文乃 『それがわたしの望みなんだとすると、今日からわたしたちライバルだね!』


文乃 (そんなこと言えるかーーーーーーー!!)


545以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:55:171QrxQ.1A (13/15)

成幸 「……ったく。ほら、そろそろいい加減にしろよ」 スッ 「古橋も話したくないみたいだし」

文乃 「あっ……成幸くん……」

うるか 「えーっ! 文乃っちのガンボーが知りたいのにー」

成幸 「ダメだ。今から十五分後に英単語の確認テストをするぞ」

うるか 「へ!? 十五分後!? じ、時間ないじゃん! 早く勉強しなきゃ!」

成幸 「緒方も。十五分後に古文の活用の穴埋めテストするからな」

理珠 「は、はい! 今日こそ完ぺきにしてみせます!」

成幸 「古橋は、今日はひたすら計算だな。そろそろインテグラルとは友達になれそうか?」

文乃 「えっ、あ、う、うん。まだ殴り合いをしてる真っ最中かな……」

成幸 「存外熱血な友達の作り方だな。ま、いいや。不定積分の練習問題を繰り返しやっておいてくれ」

文乃 「うん!」

成幸 「気を抜くなよ。そろそろ積分と三角関数が同居を始めるからな」

文乃 「……あんまり考えたくない、けど……」 グッ 「がんばるよ。成幸くん!」

成幸 「ああ、その意気だ」


546以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:55:591QrxQ.1A (14/15)

………………

文乃 「………………」

カリカリカリカリ……


―――― 『わかってるよー、だ。しっかり者の旦那さんを持ててわたしは幸せ者だなー」』


文乃 (……わたしの胸が大きくなくても)

文乃 (わたしたちが結婚式を間近に控えた恋人同士じゃなくても)

文乃 (きみがしっかり者であることは、変わらない)

文乃 (……ねえ、りっちゃん、うるかちゃん。そして、成幸くん)


―――― 『夢に出てきたことが、本人が望んでいることだ、ということです』


文乃 (……わたしは、それを望んでもいいのかな)

文乃 (わたしは……)

文乃 (きみを、好きになっても、いいのかな……)

おわり


547以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 22:57:391QrxQ.1A (15/15)

>>1です。読んでくださった方、ありがとうございました。
個別レスしませんが、乙や励ましの言葉、嬉しいです。ありがとうございます。
感想をくれる方、とても嬉しいです。ありがとうございます。


また投下します。


548以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/10(木) 23:30:5056lcqZPA (1/1)

乙です


549以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/11(金) 19:26:25NjlEfpX2 (1/1)

おつんこここ


550以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/11(金) 20:57:32F21GcOTU (1/1)


今週ないのをこれで乗り切れる気がする


551以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/12(土) 02:20:13uWc/XS6A (1/1)

これは正妻ですわね?


552以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/12(土) 10:52:40d1TmaCA2 (1/1)

おつぱい!!!!


553以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/12(土) 13:50:550Y0Jaolc (1/1)

おつ!


554以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/14(月) 09:54:02qxtQW6K. (1/1)

母親も貧乳なので残念ながらね


555以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/19(土) 14:47:42XJCkUcqI (1/1)

シエンタ


556以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/22(火) 01:27:384hgKH4tU (1/1)

まだかな


557以下、名無しが深夜にお送りします2019/01/29(火) 02:26:239WLA6o9Y (1/1)

アニメまであと2ヶ月か
期待できるかは置いといて楽しみだな


558以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/12(火) 22:55:13Gckp7Fdc (1/1)

もう首がちぎれそうですわ


559以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 07:58:498Fa4HPeQ (1/1)

よしイベントだから更新日だな


560以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 12:33:36ZEUZ8Dsw (1/1)

はよはよ


561以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:38:16D3bTG5yg (1/24)

>>1です。
投下します。
本編の時系列飛び越えてしまいますが、内容は日常回程度なのでお許しください。


【ぼく勉】 水希 「チョコ菓子の作り方?」


562以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:38:46D3bTG5yg (2/24)

………………唯我家

成幸 「ああ。ちょっと教えてもらいたくてさ」

成幸 「毎年俺と家族の分作ってくれるだろ? 今年は俺にも一緒に作らせてもらいたいんだ」

水希 「それはいいけど……」

水希 「……作ったお菓子、誰かにプレゼントするの?」

成幸 「えっ……?」

カァアアアア……

成幸 「ま、まぁ、そうだな」

水希 「……ふーん」

水希 (目を逸らして顔を真っ赤にして、あの表情……)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 (間違いない。お兄ちゃんは、作ったお菓子を誰かにプレゼントするつもりだ……!)


563以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:39:17D3bTG5yg (3/24)

水希 (……どこの女にプレゼントするつもりだろう)

水希 (否。どこの誰が相手だろうと、思うことは変わらない)

水希 (……うらやましい!!!)

水希 (あーもう! どこの誰よ! わたしのお兄ちゃんからチョコを贈りたいと思われる幸せ者は!)

水希 (そんな女のためのチョコ菓子作り、協力するのは躊躇われるけど……)

成幸 「水希? なんかすごい顔してるけど……お菓子、一緒に作っちゃダメか?」 クゥーン

水希 (……こんな捨てられた子犬みたいな顔をするお兄ちゃんのお願いを断れるわけないじゃない)

水希 「いいよ、お兄ちゃん。一緒にとっても美味しいお菓子作ろうね」

成幸 「本当か!? ありがとう! 助かるよ」

成幸 「俺ひとりじゃ美味しく作れる気がしなかったからさ……」

成幸 「……せっかく贈るなら、美味しいのを食べてもらいたいからさ」

水希 (っ……) ズキューン (健気!!! 健気すぎ! 可愛すぎだよお兄ちゃん……!)

水希 (こんなに可愛いお兄ちゃんからチョコをプレゼントされる女……)

水希 (許すまじ……!)


564以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:39:59D3bTG5yg (4/24)

………………

水希 「じゃあ、チョコ作りを始めるよ、お兄ちゃん」

成幸 「はい! よろしくお願いします、水希先生」

水希 「や、やだなぁ、先生だなんて……。えへへ」

水希 (先生かぁ……)


ポワンポワンポワンポワン………………

成幸 『水希先生、聞きたいことがあるんですけど……』

水希 『あら、何かしら。成幸くん』

成幸 『あの……先生のことを考えるとドキドキして、頭がボーッとして……』

成幸 『俺、病気なんですかね……』

水希 『あらあら。ふふふ、そうね。病気かもしらないわね』

水希 『でも大丈夫よ。それは、恋の病だから』

成幸 『恋の病……?』

水希 『今から先生が治してあげる。ほら、こっちにおいで。成幸くん』


565以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:40:27jG2xNT6Q (1/1)

来てるやん!!


566以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:40:39D3bTG5yg (5/24)

………………ポワンポワンポワンポワン

水希 「……えへへ、うふふ……ぐふっ」 クネクネクネ

成幸 「水希? おい、大丈夫か?」

水希 「はっ……生徒成幸くんとわたしはどこに……?」

成幸 「何を言ってるんだお前は……」

水希 「あ……」 ハッ 「ご、ごめんね、お兄ちゃん。ちょっと考え事をしてただけだよ」

成幸 (どんな考え事をしていたんだか気になるが怖いからスルーしよう……)

水希 「じゃあはりきってやっていこー! 今年作るのはしっとりチョコマフィンだよ!」

成幸 「しっとりチョコマフィン……」 キラキラ 「想像するだけで美味しそうだな」

水希 「生地にココアパウダーを混ぜるだけだと、普通のチョコマフィンになっちゃうから、」

水希 「今日は湯煎して溶かしたチョコを生地に混ぜていくよ」

成幸 「はい、先生!」

水希 「ということでお兄ちゃん、この割れチョコを湯煎するから、包丁で細かく刻んでね」

成幸 「わかった。刻めばいいんだな」


567以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:41:21D3bTG5yg (6/24)

成幸 「………………」

ザクザクザクザク……

水希 「えへへ……」 (なんか、こうやって一緒に台所に立っていると……)

水希 (新婚さんみたいだよぅ……)

成幸 「……ふぅ。これくらいでいいか?」

水希 「あ、うん。十分だよ。じゃあ、その刻んだチョコをこのボウルに入れて、バターも入れて……」

水希 「今度はヘラで、ゆっくりかき混ぜながら溶かしてね」

成幸 「わかった。まかせとけ」

水希 (はぅぅ……) キュンキュンキュン (本当に新婚みたいだよ……鼻血出そう……)

成幸 「………………」 ペタペタグルグル

水希 (……すごい、真剣な顔)

水希 (プレゼントする相手のために、あんな顔してるんだよね……)

ズキッ

水希 「っ……」 (悔しいな……)


568以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:42:34D3bTG5yg (7/24)

………………

成幸 「最後に、余った割れチョコを上に乗せて……っと。これで生地は完成か?」

水希 「うん。お疲れ様、お兄ちゃん。あとはオーブンで焼くだけだよ」

成幸 「美味しく出来るかな。不安だけど……」 ニコッ 「水希と一緒に作ったんだから、美味しくないはずないよな」

水希 「えへへ。きっと美味しいよ、お兄ちゃん」

水希 「………………」

水希 「……ねえ、お兄ちゃん」

成幸 「うん?」

水希 「こんなにたくさんのマフィン、誰にあげるつもりなの?」

成幸 「ああ、いつもお世話になってる人たちに配りたいと思ってさ」

成幸 「小林とか大森とか……あとは、古橋、緒方、うるか、先輩、先生……」

成幸 「今年一年で友達が増えたからさ。他にも渡したい奴がいるんだ」


569以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:43:06D3bTG5yg (8/24)

水希 「そっか……。じゃあ、これは誰にあげるの?」

水希 「……この、ひとつだけ大きいカップのマフィンは」

成幸 「う゛ぇっ……!?」 ギクッ 「い、いや、それは……その……」

成幸 「誰というか……その……」

水希 「………………」 ジーーーッ

成幸 「……な、ナイショ」

水希 「……そっか。わかった」

水希 「無理に聞くつもりはないよ。でも、その人はお兄ちゃんにとってとても大事な人なんだね」

成幸 「あっ……」 カァアアアア…… 「そ、そうだよ。とても……大事な人だよ」

水希 「……うらやましい」 ボソッ

成幸 「へ? なんか言ったか?」

水希 「ううん。なんでもないよ」

ニコッ

水希 「その人が、美味しく食べてくれるといいね」

成幸 「……おう!」


570以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:43:47D3bTG5yg (9/24)

………………バレンタインデー当日 一ノ瀬学園 3-B教室前

うるか 「………………」 ドキドキドキドキ…… (手作りのチョコケーキ……)

ガサッ

うるか (持ってきちったけど、これ、成幸に渡せるかな……)

うるか (あー、もう! あたしのバカバカバカー!)

うるか (義理チョコと同じラッピングにすればよかったのに、)

うるか (成幸のラッピングだけめっちゃハートだよ!! こんなの……)

うるか (……これが本命だってバレバレじゃん……////)

理珠 「? おや、うるかさんじゃないですか」

うるか 「あ、リズりん。おいっすー」

理珠 「うるかさんもチョコレートを成幸さんに渡しに来たんですか?」

うるか 「え? あ、うん。そうだケド……。ひょっとしてリズりんも?」

理珠 「はい。成幸さんにはいつもお世話になってますから」

理珠 「揚げたうどんにチョコをトッピングしたうどんチョコです。美味しいですよ」

理珠 「うるかさんの分もありますので、おひとつどうぞ」


571以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:44:23D3bTG5yg (10/24)

うるか 「あ、うん。ありがとう、リズりん」

うるか (うどんチョコ……。見た目はポッキーみたいで美味しそうだけど……)

ハムッ

うるか 「……あっ、これめっちゃ美味しい」

理珠 「ふふふ。そうでしょうそうでしょう。うどんは何にでも合うんです」 ムフー

うるか 「じゃあ、あたしからもリズりんに。チョコケーキだよ」

キラキラキラ

理珠 「お、おお……。ありがとうございます、うるかさん。キラキラしててとても美味しそうです」

うるか 「えへへ。お口に合うと嬉しいな」

ワイワイワイ


572以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:44:59D3bTG5yg (11/24)

………………物陰

文乃 「………………」

文乃 (で、出て行きにくい……)

文乃 (昨日は手作りチョコにチャレンジしてみたものの、できあがったのはダークマターだし……)

文乃 (味は美味しいかもと思ってお父さんに無理矢理食べさせた――もとい、食べさせてあげたら)


―――― 零侍 『後生だから二度と台所に立たないでくれ』


文乃 (……仲直りからこっち、久々に見たなぁ。あんな真顔のお父さん)

文乃 (だから、朝コンビニで買ってきたチョコしかないよ……)

文乃 (うるかちゃんの綺麗にラッピングされたチョコと、りっちゃんの独創的なチョコと比べられるの、イヤだなぁ……)

文乃 (とりあえず、今は回れ右で教室に帰ろ……――)

「――……あらぁ~、古橋さんじゃないですか~」

文乃 「……!?」

うるか 「へ? 文乃っち? と、鹿島っち」

理珠 「おや、文乃。奇遇ですね。文乃もチョコレートを成幸さんに渡しに来たのですか?」


573以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:45:59D3bTG5yg (12/24)

文乃 「い、いや、わたしは……っていうか!」

鹿島 「ふふふ~」 ニンマリ

文乃 「鹿島さん! いまわざと大声でわたしのこと呼んだよね!? っていうかどこから出てきたの!?」

鹿島 「さて~? 何のことやら~」 クスクス 「ではわたしは教室に戻る途中でしたので、これで失礼します~」

うるか 「? どうかしたん、文乃っち?」

文乃 「べつに、なんでもないけど……」

文乃 (うぅ、近くで見れば見るほど、豪華なチョコだようるかちゃん……)

うるか 「ま、いいや。はい、文乃っち。これ文乃っちのだよ」

理珠 「私からもどうぞ。うどんチョコです!」

文乃 「あ……ありがとう。嬉しいな」

文乃 「……わたしからも、これ。手作りじゃなくて申し訳ないけど……」

うるか 「あー、コンビニのバレンタイン限定スイーツじゃん! こーゆうの美味しいんだよねー! ありがとう、文乃っち!」

理珠 「ふむふむ。最近のコンビニはうどんも美味しいですからね。これもきっと美味しいのでしょうね」

理珠 「ありがとうございます、文乃」

文乃 (うぅ……。ひとりだけ既製品って、わたしだけ女子力ゼロみたいだよぅ……)


574以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:46:49D3bTG5yg (13/24)

うるか 「じゃ、みんなで成幸にチョコ渡しに行こー!」

文乃 「えっ……!? いや、わたしは……」

うるか 「ってことで、B組に失礼しまーす!」 ガラッ

文乃 (即断即決!? 行動が早いようるかちゃん!)

成幸 「ん? おお、うるかに緒方に古橋か。どうかしたのか?」

うるか 「またまたー、とぼけちゃってー」 カァアアアア……

うるか 「ど、どーせ、チョコをもらえるかもらえないか、昨日は不安で夜も眠れなかったでしょー?」

文乃 (恥ずかしさをこらえるためにわざとテンションを上げてるんだねうるかちゃん。健気な子……)

成幸 「ああ、チョコか。わざわざ作ってきてくれたのか。ありがとな、うるか」

うるか 「え、えへへ……///」

文乃 (そしてさすがだね成幸くん。明らかに本命と覚しきピンクピンクしたハートまみれのラッピングなのに、)

文乃 (眉一つ動かさずお礼を言えるなんて……。まったく分かっちゃいない顔だよあれは)

理珠 「わたしからも、どうぞ。うどんチョコです!」

成幸 「お、おお。また斬新なチョコレートだな。でも美味しそうだ。緒方もありがとな」

理珠 「いえいえ、成幸さんにはいつもお世話になっていますから」


575以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:47:32D3bTG5yg (14/24)

文乃 「わ、わたしも……手作りじゃないけど、あげるね」

成幸 「古橋もありがとう。買ってきてくれるだけ嬉しいよ」

文乃 (まぁ、成幸くんはわたしが料理下手だって知ってるもんね……)

文乃 (手作りを期待したりはしてくれないよね)

成幸 「ちょうど良かったよ。俺も放課後渡そうと思ってたけど、いま渡しちゃうな」

文乃 「へ……?」

成幸 「チョコマフィン、昨日水希と一緒に作ったんだ。チョコがしっとりしてて美味しいぞ」

うるか 「な、成幸の手作り!?」

理珠 「ふぉぉお……とても美味しそうです!」

文乃 「………………」

成幸 「べつに男子が贈ってもいいかな、って思ってさ。いつもお前たちにはお世話になってるし」

成幸 「……いつもありがとな」

うるか&理珠 「「……っ」」 ズキューン

文乃 (……ハートを撃ち抜かれた音がしたよ。正直、わたしも撃ち抜かれたい気分だけど) ズーン

文乃 (意中の男の子に既製品のチョコをあげ、その男の子から手作りチョコを返されるわたしって……) ズズズーン


576以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:48:12D3bTG5yg (15/24)

文乃 「………………」 ガサガサ

ハムッ

文乃 「……あっ、美味しい」

成幸 「本当か!? いや、一応味見はしたけど、みんなの口に合うか不安でさ……」

文乃 「これ、本当に美味しいよ。マフィンなのにパサパサしてなくて、チョコでしっとりしてる……」

理珠 「わ、私も食べてみます!」  うるか 「あ、あたしも!」

ハムハムハムッ

理珠 「ほあああああ……!! 文乃の言うとおりです! とても美味しいですよ、これ!」

うるか 「うんまーーーーい! さっすがみずきん。とっても美味しいよ!」

成幸 「おいおい、作ったのは一応俺だぞ?」

うるか 「分かってるよー。ありがとね、成幸」

文乃 (手作りチョコをくれるだけでもアレなのに、その上美味しいなんて……) ズズズズーン

文乃 (こ、こうなったら……練習して練習して練習しまくって、美味しいチョコを作ってみせるんだから!)

文乃 (とりあえず今日も作ってみて、またお父さんに食べてもらおう……!!)


577以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:49:07D3bTG5yg (16/24)

………………大学

零侍 「っ……!?」

ゾクッ

学生 「? 古橋先生? どうかしましたか?」

零侍 「い、いや、何でもない……」

零侍 (な、なんだ、今の悪寒は……。明確な殺意を向けられたような感覚だったが……)


578以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:49:56D3bTG5yg (17/24)

………………夕方 唯我家

水希 「………………」


―――― 『無理に聞くつもりはないよ。でも、その人はお兄ちゃんにとってとても大事な人なんだね』

―――― 『そ、そうだよ。とても……大事な人だよ』


水希 (……お兄ちゃん、“大事な人” に渡せたかな。あのチョコマフィン)

水希 (昨日、オーブンで焼いた後、あの一際大きなチョコマフィンに、ホワイトチョコペンで何か書いてたし……)

水希 (あれは間違いなく本命用だよね……)

ズキズキ……

水希 (……はぁ。昨日は作りながら、何度も頭をよぎった。マフィンをまずくしてやろうか、って)

水希 (でも、食べ物を粗末にするのは絶対にしちゃいけないことだし、何より……)


―――― 『……せっかく贈るなら、美味しいのを食べてもらいたいからさ』


水希 (あんな顔をするお兄ちゃんの邪魔なんて、絶対できないよね……)

ガラッ


579以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:50:26D3bTG5yg (18/24)

成幸 「ただいまー!」

葉月 「兄ちゃん帰ってきたー!」 和樹 「帰ってきたー!」

水希 「ん……」 (お兄ちゃん、もう帰ってきたんだ。今日は早いなぁ)

トトトト……

水希 「おかえり、お兄ちゃん。チョコマフィン、食べてもらえた?」

成幸 「ああ、おかげさまで大好評だったよ。みんな美味しい美味しいって喜んでたよ」

成幸 「ありがとな、水希」

水希 「どういたしまして。でも、わたしは何もしてないよ。お兄ちゃんががんばったから美味しくできたんだよ」

ドキドキドキドキ……

水希 「……あの大きなマフィンも渡せたの?」

成幸 「ん……ああ、あれか……」

クスッ

成幸 「実はまだ渡せてないんだよ。これからだな」

水希 「これから……?」


580以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:51:04D3bTG5yg (19/24)

………………

成幸 「冷蔵庫の中に……あったあった」

水希 「あっ……昨日の大きいマフィン。冷蔵庫に入れてたの?」

成幸 「ああ。帰ってきたら渡そうと思ってたからさ。ってことで……」

成幸 「はい、水希。いつもありがとう」

水希 「へ……?」

水希 「……こ、これ……わたしに?」

成幸 「毎年お前からチョコをもらってさ、今年は俺もお前にあげたくてさ……」

成幸 「でも俺一人じゃ美味しく作れないと思ったからさ、本末転倒だとは思ったけど、お前に教えてもらったんだ」

水希 「あっ……ありがとう……」


 『いつもありがとう』


水希 「あっ……」 (お兄ちゃん、昨日チョコペンでこれを書いてたんだ……)

水希 (わたしのために……)


581以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:51:55D3bTG5yg (20/24)

水希 (そ、そっか……)


―――― 『無理に聞くつもりはないよ。でも、その人はお兄ちゃんにとってとても大事な人なんだね』

―――― 『そ、そうだよ。とても……大事な人だよ』


水希 (“大事な人” って……)


―――― 『……せっかく贈るなら、美味しいのを食べてもらいたいからさ』


水希 (わたしのこと、だったんだ……)

水希 (ど、どうしよう……)

カァアアアア……

水希 (う、嬉しすぎて、お兄ちゃんの顔も見られない……)

水希 (今すぐ踊り出したいくらい、嬉しい……!)

クイクイ

水希 「ん……?」

葉月&和樹 「「………………」」 キラキラキラ


582以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:52:35D3bTG5yg (21/24)

水希 「あっ……」

クスッ

水希 「葉月と和樹も食べたいよね。じゃあ、お茶にしましょ」

水希 「このお兄ちゃんの手作りマフィン、みんなでわけっこして食べようね」

葉月&和樹 「「わーい!」」

水希 「お兄ちゃんも一緒に食べよ」

成幸 「ああ。ありがとう」

水希 「えへへ……」

水希 (お兄ちゃんにとって、“大事な人” って……)

水希 (古橋さんでも緒方さんでも、武元先輩でもなく……)

水希 (わたしなんだね……///)

水希 「……ねえ、お兄ちゃん」

成幸 「ん?」

水希 「わたしも、お兄ちゃんのこと、大好きだからねっ」

おわり


583以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:53:26D3bTG5yg (22/24)

………………幕間1  『ダブスタ』

女子1 「鈴木先生、バレンタインのチョコです。どうぞっ」

鈴木先生 「おお、わざわざすまんな。ありがとう」

女子1 「あと、佐藤先生も、どうぞ!」

佐藤先生 「手作りかー。嬉しいよ。ありがとう」

真冬 「………………」 (……まったく。お菓子とはいえ、生徒と物の授受をするなんて)

真冬 (鈴木先生も佐藤先生も、教員としての自覚が足りないのではないかしら)

成幸 「失礼します」 ガラッ 「3年B組の唯我成幸です。桐須先生、お願いします」

真冬 「? 唯我くん。どうかしたの?」

成幸 「いえ、大したことじゃないんですけど……」

成幸 「これ、昨日妹と手作りしたチョコマフィンです。よかったら食べてください」

真冬 「へ……?」 カァアアアア…… (唯我くんが、私のために……?)

成幸 「? 先生?」

真冬 「あっ……ありがとう。いただくわ」

真冬 (ま、まぁ、バレンタインデーだものね。お菓子くらいは大目に見るべきね!)


584以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:54:10D3bTG5yg (23/24)

………………幕間2 『殺意の正体』

零侍 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

零侍 (この世のものとは思えない、禍々しい瘴気が立ち上っている……)

零侍 (……果たして、私は明日の朝日を拝むことができるだろうか)

文乃 「………………」

ニコッ

文乃 「お父さん、お帰りなさい。ちょうどよかったよ。いまできたばかりなの」

零侍 (見てくれているかい、静流。私たちの娘はこんなに立派に育ったよ)

文乃 「……さ、たくさんあるから、どんどん食べてね、お父さん」

零侍 (そして私は、思ったより早く君の元に行くことになりそうだよ)

おわり


585以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/14(木) 23:59:01D3bTG5yg (24/24)

>>1です。
なんとかバレンタインデーに間に合わせられました。
読んでいただけたら嬉しいです。

>>527
遅レスになってしまって申し訳ないですが、委託はしていません。すみません。
ほとんど無料配布しかしないので……。



ここは匿名掲示板ですので、宣伝するつもりはありませんし、あくまで報告のつもりですが、
四月の某即売会とC96をぼく勉で申し込みました。
こんなにハマるとは思っていませんでした。自分でも驚きです。
アニメが今から楽しみで仕方ありません。


仕事や他諸々で投下が滞ってしまってごめんなさい。
また投下しますが、それがいつになるかわかりません。
また読んでくれたら嬉しいです。


586以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/15(金) 02:20:32HwlswbCE (1/1)

おつおつ


587以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/15(金) 07:55:46hFH.gI/2 (1/1)

よきかな


588以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/15(金) 08:27:20Emq5dg86 (1/1)

アニメ効果でぼく勉増えたらいいな
なにはともあれ面白かった乙


589以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/15(金) 12:18:04CxwohszY (1/1)

ダークマターでもいいから是非食べてみたいですね


590以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/15(金) 18:43:178fjqN7iw (1/1)

おつ


591以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/16(土) 20:03:29y4BgMncg (1/1)

更新乙
貧乳で料理下手っていいよな(混乱)


592以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:06:25NSO23Erk (1/30)

>>1です。投下します。

【ぼく勉】 文乃 「わたしのお誕生日会?」


593以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:13:11NSO23Erk (2/30)

………………文乃の誕生日 唯我家

成幸 「と、いうわけで……」

成幸 「水希の下着は、間違えて古橋に渡しちゃったんだ……」

成幸 「すまん……」

花枝 「まぁ、間違えちゃったものは仕方ないわね。ブラジャーはまた買ってくるとして……」

花枝 「あんた、さすがに余所様の娘さんに下着をプレゼントするのはドジじゃ済まないわよ」

成幸 「わ、わかってるよ。よく確認しなかった俺が悪かったよ」

成幸 「水希もごめんな。ブラジャー、なくて困らなかったか?」

水希 「………………」

成幸 「水希……?」

水希 「……お兄ちゃん、もしかして、古橋さんはそのブラジャーを、着けたのかな?」

成幸 「へ……?」 ギクッ 「な、なんでそんなこと聞くんだ……?」

水希 「……答えて?」 ニコッ

成幸 「あ、ああ……。えっと、その……今日、着けてきてくれた、みたいだけど……///」

水希 「……へぇ」


594以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:14:15NSO23Erk (3/30)

花枝 「……あら、あらあらあら」 ニンマリ

花枝 (普通、同級生の男の子からブラジャーなんてもらったら、怖がるか気持ち悪がるかだと思うけど……)

花枝 (これはひょっとしてひょっとすると、文ちゃん、成幸のこと、憎からず思ってくれてたり……?)

クスッ

花枝 (なんて、あんな可愛い子がうちの冴えない長男を好きになるわけないかー)

水希 (……うん。古橋さんは、お兄ちゃんがプレゼントした下着を、身につけたんだね)

水希 (それだけじゃない。わたしの誕生日のとき、お兄ちゃんを家に招き入れて、ふたりで仲良くカレーを作ったり……)

水希 (……まぁ、それはわたしのためでもあるから感謝してるけど。カレー美味しかったし)

水希 (それはともかくとして……)

水希 「……敵だね」 ボソッ

成幸 「……!?」 ビクッ (敵って!? 敵ってなんだ妹よ!)

水希 「……ねぇ、お兄ちゃん」

成幸 「お、おう!? なんだ、水希?」

水希 「古橋さんにはお兄ちゃんもお世話になってるだろうし、わたしも誕生日にカレーを作ってもらったりしたし……」

水希 「週末、うちに招いて誕生日パーティでも開いてあげたらどうかな?」


595以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:15:05NSO23Erk (4/30)

成幸 「へ……? あ、ああ……。誕生日パーティ……?」

花枝 「あら、いいじゃない! 葉月と和樹もしょっちゅう遊んでもらってるし、日頃の感謝も込めて家族でお祝いしてあげましょう」

花枝 「良いこと言うわね~、水希」

水希 「……うん。まぁね」 ギラリ

成幸 (……水希が何を考えてるのか分からなくて怖いが、)


―――――― 『星が綺麗な夜だとついつい 死んじゃったお母さんの星 探しちゃうんだよね』

―――――― 『今日はお父さんが家にいるから…… あんまり帰りたくなくて』


成幸 (古橋、お母さんは亡くなってるそうだし、お父さんとはあまり良い関係ではないようだから、)

成幸 (きっと、誕生会なんか開いてもらってないんだろうな……)

成幸 「……うん。俺もすごく良い考えだと思う。明日、古橋を誘ってみるよ」

水希 「うん! 古橋さんが来られるなら、わたし、日頃の感謝も込めて、ごちそう作っちゃうよ」

水希 (……そう。日頃の色々な恨み辛みを込めて、ね) ニヤリ


596以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:16:15NSO23Erk (5/30)

………………翌日 一ノ瀬学園 いつもの場所

成幸 「……ってことで、もし予定がなければ、週末うちに来ないか?」

文乃 「そっか。妹さんがそんなことを……」

ドキドキドキドキ……

文乃 (まぁ、正直、あの成幸くんのこと大好きな妹さんが、わたしのことを想ってくれてるとは思えないけど……)

文乃 (……いけないいけない。せっかくの妹さんの厚意を疑うなんて、人間として最低だよね)

文乃 (誕生日会、かぁ……)

文乃 (……何年ぶりかな。正直、すごく、嬉しい。けど……)

ジーーーッ

成幸 「……? どうした、古橋?」

文乃 「わたし、本当にお邪魔しても良いのかな。ご迷惑じゃない?」

成幸 「迷惑なもんかよ。母さんも葉月も和樹も楽しみにしてるぞ」

成幸 「あと、水希も、カレーのお返しだーって、気合い入れてごちそう作るつもりだぞ」

成幸 「お前さえ良ければ、ぜひ来てくれよ」


597以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:17:19NSO23Erk (6/30)

文乃 「そ、そっか……。えへへ、嬉しいな」

文乃 「じゃあ、週末、お言葉に甘えて、お邪魔させてもらうね」

成幸 「よしっ。じゃあ、母さんと水希に伝えておくな」

文乃 「うん! ありがとね。とっても楽しみだよ」

文乃 (……ん、そういえば、水希ちゃんといえば……)


―――― 『いや……それはさすがに…… ご査収いただければ……』


文乃 (あのブラジャー、結局わたしがもらってしまったけど……)

文乃 (きっと水希ちゃん困ってるよね)

文乃 「………………」

文乃 「……ねえ、成幸くん」

成幸 「ん? なんだ?」

文乃 「週末、お家に伺う前に、少し買い物に付き合ってもらってもいいかな?」

成幸 「へ……?」


598以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:18:29NSO23Erk (7/30)

………………週末

成幸 「………………」 ダラダラダラ

文乃 「何してるの、成幸くん。ほら、早く行くよ?」

成幸 「……いや、えっと、その、古橋さん?」

文乃 「なにかな、成幸くん?」

成幸 「ここ、ランジェリーショップだよな!?」

文乃 「そうだけど?」

成幸 「そうだけど、って……」

文乃 「だって、仕方ないでしょ。成幸くんが間違えてわたしにブラを渡したせいで、妹さんいま困ってるんじゃない?」

文乃 「だから、ブラを一枚もらってしまったことは確かだから、妹さんに一枚プレゼントしようかなって思ったの」

成幸 「うっ……いや、それはありがたいというか、俺が迷惑かけてごめんなんだけど……」

成幸 「だからって、俺が一緒に来る必要あるか?」

文乃 「へー」 ジトーッ 「きみは、きみのミスを棚に上げて責任全部をわたしに押しつけるつもりかな?」

成幸 「わ、わかった! 俺が悪かったよ。付き合うから、その目はやめてくれ……」

文乃 「わかればよろしい。では、レッツゴーだよ、成幸くん」


599以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:19:45NSO23Erk (8/30)

成幸 「わかったよ、文乃姉ちゃん……」

文乃 (……っていうのは建前で、水希ちゃんにブラを渡すとき、変な反発が予想されるから、)


―――― 水希 『お兄ちゃんに近づくメスネコからの施しなんか受けません!!』 フシャーッ


文乃 (成幸くんが選んだってことを言えば、きっと素直に受け取ってくれるだろうから、連れてきたんだけど)

成幸 「うぅ……」 カァアアアア……

文乃 (……反応が予想以上にかわいい)

ニヤリ

文乃 (ついついいじめたくなっちゃうなぁ……なんてね)

店長 「ん……? あ、ナリユキくんじゃなーい! おっひさー!」

成幸 「あっ、店長さん。どうも、ご無沙汰してます……」

店長 「またお店手伝ってよー。きみがいると若い女の子のブラの売り上げが上がるんだよね~」

成幸 「あっ、いや、その……」

文乃 「………………」 ジトッ 「……へー。何人の若い女の子にブラを売りつけたのな、きみは」

成幸 「ご、誤解だ、古橋! その蔑むような目をやめてくれ!」


600以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:20:28NSO23Erk (9/30)

店長 「ん? んん?? んんん???」 パァアアアアアア……!!!

店長 「まさか、ナリユキくん、その子はきみの……彼女さん?」

文乃 「へっ……!?」

成幸 「へぇ!? い、いやいや、違いますよ!」

店長 「またまた~、照れなくてもいいのに~」 ニヤニヤ 「花枝さんにはナイショにしといてあげるから、ゲロっちゃいなよ」

成幸 「だから違いますってば! ただの同級生ですよ!」

店長 「へー。つまりきみは、ただの同級生とふたりでランジェリーショップに来たってこと? 勇者だね」

成幸 「いや、そうじゃなくて……いや、そういうことになっちゃいますけど、それには深いわけが……」

店長 「ま、いいや。ナリユキくんの彼女の下着選びってんなら私も気合い入れなくちゃね」

文乃 「い、いえ、ですから……――」

店長 「ふーん、ほーん、なるほどー……」 ジーーーーーッ

店長 「……えっと、そうね。彼女さんは、このAカップのゾーンを見てもらったらいいかなー」

文乃 「今日はわたしのブラを選びに来たわけじゃないんです!」


601以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:21:17NSO23Erk (10/30)

………………

文乃 (まったくもう、悪い店長さんじゃないんだろうけど、一言多いよ) プンスカプン

成幸 (古橋、怒ってるかな。怒ってるよな……)

文乃 「……ほら、成幸くん。早くブラを選んじゃおう」

成幸 「えっ……? お、俺が選ぶのか?」

文乃 「その方が間違いなく妹さんが喜ぶだろうからね」

成幸 「そんなこと言われてもな……」

成幸 (……っていうか、たとえばここで、俺が水希のブラを選ぶとして、)

成幸 (たとえば、ああいう子どもっぽいのを選んだら……)


―――― 文乃 『へー。きみは妹さんにいつまでも子どもでい続けて欲しいって幻想を抱いてるんだね。ああおかしい』


成幸 (なんてことを言われそうだし、ちょっと過激なのを選んだとしたら……)


―――― 文乃 『へー。きみは妹さんにもそうやって下劣なお胸への劣情を抱いているんだね。ああ怖い』


成幸 (どっちにしろハズレじゃないかそれ!?)


602以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:22:17NSO23Erk (11/30)

文乃 「どうしたの? そんなに悩むようなこと?」

成幸 「へっ!? あ、いや……」


―――― 文乃 『妹さんのブラ選びにどれだけ真剣になってるの? 怖いんだけど……』


成幸 (ま、まずい。このまま考え込んでても死が待ってる……)

成幸 (どうあがいたって死が待ってるならさくっと選んで終わりにしてしまおう)

成幸 (着ぐるみで接客したとき、うるかが買って行ったようなデザインの……)

成幸 「……とりあえず無難に、こういうのでいいんじゃないかな」

文乃 「ふんふん。白地に少しレースの入った、普通のだね。ふーん……」

成幸 (ど、どうなんだ、その反応は……) ドキドキドキ……

文乃 (へー。そっか……) ドキドキ (成幸くんは、こういうデザインが好きなんだ。ふーん……)

ハッ

文乃 (べ、べつに、だからどうだってわけじゃないけど……)

文乃 「ん、じゃあ、この前のブラと同じサイズ、買って来るね。外で待ってて」


603以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:22:52NSO23Erk (12/30)

成幸 「あ、ああ……わかった……」 (セーフ……なのかな? いや、それより……)

成幸 「古橋。あの下着は俺が間違えてお前に渡しちゃったやつだから、俺が買ってくるよ」

文乃 「へ?」

成幸 「お前にお金を出させるのはやっぱり忍びないというか……悪いのは俺だし」

文乃 「ふふ、おかしな成幸くん。じゃあ、これ持ってレジ行ける?」

成幸 「い、いや、それはちょっと……」

文乃 「じゃあ、ダメだね。そもそも、これはわたしの自己満足みたいなものだから」

文乃 (……まぁ、自己満足というよりは自己防衛というべきだけど)

文乃 「ブラ買うお金があるならさ、参考書でも買いなよ。お金のことは気にしなくていいから」

成幸 「……わかった。すまん」

文乃 「謝らないでいいってば」 ハァ 「じゃ、わたし買ってくるから、ちょっと待っててね」 トトト……

成幸 「……はぁ」 (なんか、古橋に悪いことしちゃったな……)


604以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:24:15NSO23Erk (13/30)

店長 「……ナリユキくんナリユキくん」 コソッ

成幸 「? 店長さん?」

店長 「いや、さっき、彼女さんのご機嫌を損ねちゃったみたいだから、申し訳なくってさ」

ガサッ

店長 「これ、私からのプレゼント。後で彼女さんに渡しといてよ」

成幸 「古橋に……? でも、この紙袋の中身って……」

店長 「もち、この店のブラ! 安心して! さっきナリユキくんが選んだブラと同じデザインのサイズ違いだから!」

店長 「サイズももちろんぴったしだよ! 私は服の上から見ただけで大抵のお客さんのトップとアンダーが分かるからね!」

成幸 (何をどう安心しろと言うんだ!?)

成幸 「いや、でも……――」

客 「――あの、すみません。ちょっとサイズを測ってもらいたいんですけど……」

店長 「あ、はーい! 今いきまーす!」

店長 「ってことで、彼女さんにそれプレゼントしてご機嫌取っといてね!」

店長 「今後ともうちの店をごひいきに! ってことで、またね、ナリユキくん!」

成幸 「あ、ちょっと! 店長さん!?」


605以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:25:30NSO23Erk (14/30)

成幸 (行ってしまった……)

ゴソッ

成幸 (これ、どうしよう……って、古橋に渡すしかないよなぁ……)

成幸 (でも、これ……俺が選んだブラの、サイズ違いなんだよな……)

カァアアアア……

成幸 (無難なのを選んだだけとはいえ、俺が選んだブラを、古橋に……――)

文乃 「――お待たせ、成幸くん。買ってきたよー、って」

文乃 「どうしたの? 顔真っ赤だよ?」

成幸 「へ!? いや、な、なんでもない!」 コソッ

文乃 「? そう?」

成幸 「さ、そろそろ俺の家に行こうぜ。母さんたちも待ってると思うし!」

文乃 「それもそうだね。じゃあ、行こうか」


606以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:26:32NSO23Erk (15/30)

成幸 (……思わず隠して誤魔化してしまったが)

成幸 (まぁ、今渡す必要もないだろう。後でゆっくりしっかり、店長さんからのお詫びだと説明して渡せばいいんだ)

文乃 「あ、そうだ。おうちにお邪魔するのに手ぶらってわけにもいかないよね」

文乃 「何かお菓子でも買ってから行かないと」

成幸 (……俺が選んだデザイン云々とか、そういうのはわざわざ説明しなくてもいいよな、うん)

文乃 「? 成幸くん? 聞いてる?」 ズイッ

成幸 「!? ふ、古橋、どうかしたか?」

文乃 「………………」 ジーーーッ 「なんか怪しいなぁ。何か隠し事してない?」

成幸 「ないない! 何もないぞ!」

文乃 「……ふーん。ま、いいけどさ」

文乃 「じゃあ手土産を買いに行こ。そしたら成幸くんの家に行こうね」

成幸 「お、おう。わかった」 (はぁ。さすがに、古橋は鋭いな……)


607以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:27:08NSO23Erk (16/30)

………………唯我家

文乃 「………………」 ドキドキドキ (ふぅ。今さらだけど、すごく緊張してきたよ……)

文乃 (お誕生会なんて、お母さんが亡くなってから一度もやってもらってないし、)

文乃 (本当に今さらな話だけど、提案されたこととはいえ、)

文乃 (やっぱり友達の家でお誕生会を開いてもらうなんて、厚かましかったかな……)

成幸 「どうした、古橋? 入るぞ?」

文乃 「あ、うん……」 (……さて、とりあえず、水希ちゃんが怒ってないといいなぁ)

ガラッ――

 『――――文ねーちゃん! お誕生日おめでとーっ!!』

パンパン!!!

文乃 「わっ……葉月ちゃんと和樹くん」

葉月 「いらっしゃい、文姉ちゃん!」

和樹 「ほらほら、上がってー! ごちそうがまってるぞ!」

ギュッ

文乃 「わっ……わわわ……」


608以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:27:49NSO23Erk (17/30)

文乃 「わっ……」

キラキラキラ……

文乃 (す、すごい……!! すごいごちそうが並んでるよ!!)

水希 「……どうも、古橋さん」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 「お誕生日、おめでとうございます。ようこそおいでくださいました」

花枝 「お誕生日おめでとう、文ちゃん。今日はゆっくりしていってね」

文乃 「あっ、水希ちゃんと成幸くんのお母さん。本日はお招きいただいてありがとうございます」

花枝 「そんなかしこまらなくていいわよ。自分の家だと思って、楽しんでいってね」

花枝 「……じゃあ、文ちゃんと成幸もついたことだし、みんな席について、改めて……」

「文ちゃん」 「古橋さん」 「「文姉ちゃん」」 「古橋」 『お誕生日おめでとーーっ!!』

パチパチパチ……

文乃 「あっ……ありがとう、ございます……」

文乃 (ど、どうしよう……。こんな風にお祝いされると、予想以上に……)

文乃 (嬉しくて、感極まりそう……)


609以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:28:31NSO23Erk (18/30)

文乃 (それにしても……)

文乃 「すごいごちそうだね。全部水希ちゃんが作ったの?」

水希 「ええ、まぁ。わたしにかかればざっとこんなものってところでしょうか」

水希 (ふふ。これで、わたしのお兄ちゃんに色目を使うことの愚かさを少しは思い知ったかしら)

水希 (お兄ちゃんはわたしの美味しいお料理を食べて舌が肥えてるんだから……)

花枝 (またくだらないこと考えてるわね、水希ったら……) ハァ

文乃 「………………」

文乃 (うっ……嬉しい……)

文乃 (わたしのために、こんなに豪華なお料理を作ってくれるなんて……)

ガシッ

水希 「へ? な、なんでわたしの手を握るんですか……?」

文乃 「水希ちゃん、ありがとう! わたし、いますごく感激してるんだよ!」

文乃 「こんな美味しそうなごちそうをたくさん作ってくれたんだね。本当に……」

グスッ

水希 「!?」


610以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:29:12NSO23Erk (19/30)

文乃 「……あっ、ご、ごめんね。えへへ、嬉しいのに、なんか……」

水希 「そ、そんな、泣くほどのお料理じゃないですよ」 アセアセ

水希 「ローストビーフは特売の牛肉だし、チキンだって安い手羽元をそれっぽく料理しただけだし……」

水希 「そもそもこれは、夏のわたしの誕生日のときに作ってくれたカレーの、」

水希 「(あてつけのつもりの) お返しですから、気にする必要なんてないですよ」

文乃 「ご、ごめんね。でも、お誕生会なんて久しぶりで、すごく嬉しくて……」

文乃 「そのうえ、こんな素敵な、手作りのごちそうまで用意してもらって……」

ニコッ

文乃 「本当にありがとう、水希ちゃん」

文乃 (ああ、わたし、本当に恥ずかしいや。水希ちゃんはわたしのためにこんなにがんばってくれたのに……)

文乃 (わたしはそんな水希ちゃんの厚意を疑うようなことを……うぅ……本当に最低だな、わたし……)

水希 (ど、どうしよう。どちらかといえば負の気持ちで料理をしたのに……こんなに喜ばれると……)

水希 (さすがに良心が痛むわ……)

花枝 「……さ、いただきましょう。お料理が冷めちゃうわ」


611以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:29:57NSO23Erk (20/30)

葉月&和樹 「「いただきまーす!」」

文乃 「あっ……い、いただきます」

ハムッ

文乃「……!?」 パァアアアアアア……!!! 文乃「美味しいぃいいい~~~~~!!!」

ヒョイッパクッヒョイッパクッヒョイッパクッ

文乃「どれもこれもすっごく美味しいよ、水希ちゃん!!」 ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ

水希 「っ……で、ですから、そんなに言うほどの料理じゃないんですって……」

花枝 「ふふ」 (水希も嬉しそうだわ。なんだかんだ、文ちゃんのこと好きなのね)

成幸「ああ、やっぱり水希の料理はピカイチだな。こんなに料理上手な妹がいて俺は幸せ者だよ」

水希 「えへへ……。まったくもう、お兄ちゃんったら……」

文乃 (はぁ~、本当に美味しいなぁ。ほんと、成幸くんが羨ましいよ)

葉月「チキンおいしー!」 和樹 「こんなにたくさん肉が食えるなんて久しぶりだな!」

文乃 (それに、何より、こうやって家族みんなで幸せそうなのが……)

ズキッ

文乃 (……本当に、うらやましい)


612以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:30:37NSO23Erk (21/30)

………………

水希 「ふー……」

水希 (洗い物も終わったし、後片付けはこれくらいかな……)

水希 (晩ご飯は残り物だけで良さそうだし、ご飯を炊いてお味噌汁を作るだけでいいかな)

水希 「………………」


―――― 『どれもこれもすっごく美味しいよ、水希ちゃん!!』


水希 (……やだな。古橋さん、あんなに喜んでくれたのに、わたし……)

水希 (……嫌な妹だな)

水希 「はぁ……――」

 「――あっ、ねえ、水希ちゃん」

水希 「へ!? ふ、古橋さん……?」

文乃「ごめんね、水希ちゃん。後片付けまで全部やってもらっちゃって……」

水希 「それは、べつに……古橋さんはお客さんですから、気にしないでください」

水希 「葉月と和樹と遊んでくれてるだけで大助かりですから」


613以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:31:09NSO23Erk (22/30)

水希 「ところで、どうかしましたか?」

文乃「あ、うん。えっとね、ちょっと、水希ちゃんに渡したいものがあって……」

ガサッ

文乃「これなんだけど……」

水希 「? 何です?」

文乃「ほら、この前、成幸くんが間違えて水希ちゃんのブラをわたしにプレゼントしちゃったじゃない?」

水希 「……ええ」

文乃「それで、結果的にわたしが水希ちゃんのブラを一枚もらったことになっちゃうから、困るかな、って思って、」

文乃「それはそのお詫びの品というか……早い話が、ブラだよ」

水希 「へ……?」

水希 「間違えたのはお兄ちゃんなんだから、そんなの、古橋さんが気にすることじゃないのに……」

文乃「まぁ、それはそうかもしれないけど……今日はわざわざわたしの誕生日会も開いてくれたし、」

文乃「そのお礼の意味もあるから、受け取ってくれると嬉しいな」

水希 「あっ……わ、わかりました。ありがとうございます」

文乃「うん!」


614以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:31:52NSO23Erk (23/30)

水希 「………………」

水希 (……わたし、本当に恥ずかしいや)

水希 (古橋さんは、わたしのことまで考えてくれているのに、わたしは……)

水希 (いつも、自分とお兄ちゃんのことばかり。古橋さんに嫉妬して、嫌な妹だ……)

水希 (前から分かってたけど、古橋さんってすごく良い人だ……)

水希 (お兄ちゃんのことも何とも思ってないみたいだし、この人には、気を許してもいいかな……)

水希 「……中、見てもいいですか?」

文乃「もちろん、どうぞ」 (ああ、そうだ、言っておかないといけないよね)


文乃「ちなみに、そのブラを選んだのはわたしじゃなくて、成幸くんだからね」 ニコッ


水希 「……え?」

文乃「ん?」

水希 「お兄ちゃんが? ブラを? 選んだ?」

水希 「……それってつまり、お兄ちゃんと、ランジェリーショップに一緒に行ったってことですか?」

文乃「……!?」


615以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:32:26NSO23Erk (24/30)

文乃 (し、ししし……)

文乃 (しまったぁあああああああああああああああ!!)

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 (そりゃそうだよ! そりゃそうなるよ!)

水希 「古橋さん?」

文乃「は、はい!」

水希「……どういうことなのか、説明、してほしいなぁ?」

文乃「えっと、それは、その……その方が、水希ちゃんが喜んでくれるかな、って思って……」

水希 「………………」

クスッ

水希 「……ま、そんなところですよね」

文乃「へ……?」

水希 「えへへ。お兄ちゃんが選んでくれたブラかぁ……」

水希 「最高の贈り物ですよ、古橋さん。ありがとうございます」

文乃 (よ、よかった……。地雷を踏み抜いたかと思ったよ……)


616以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:32:58NSO23Erk (25/30)

水希 (……まぁ、正直、お兄ちゃんとふたりでランジェリーショップに行ったっていうのはちょっとムカつくけど)

水希 (古橋さんに他意はないだろうし、わたしのためにしてくれたって言うのも本当だろうし)

水希 (何より、お兄ちゃんに選ばせるあたり、分かってるというか……あ、鼻血出そう)

文乃 (……とりあえず、正解だったみたいでよかったよ)

文乃 (今後も成幸くんの家で勉強することもあるだろうから、唯我家の皆さんとは仲良くしないとだからね)

成幸 「……ん、いたいた。古橋」

文乃 「? 成幸くん?」

成幸 「忘れる前に渡しちゃうな。これ」 ガサッ

文乃 「へ……? これ、プレゼント? いや、でも、もうボールペンもらったよ?」

成幸 「いやいや、俺からじゃないよ。今日失礼なことを言っちゃったからって、店長さんからのお詫びの品」

成幸 「渡してくれって頼まれたんだ」

文乃 (えっ……? それって、つまりこの紙袋の中身は……)

水希 「………………」

水希 「……お兄ちゃん、ソレ」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「この紙袋と、同じだね?」

成幸 「へ? あ、いや、まぁ……中身、下着だからな」


617以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:33:42NSO23Erk (26/30)

水希 「……ふーん。へー。ほー」

水希 「つまりお兄ちゃんは、また古橋さんに下着をプレゼントするんだ……」

成幸 「い、いやいや! これは俺のプレゼントってわけじゃ……」

成幸 「たしかに俺が選んだブラと同じデザインのサイズ違いって言ってたけど……」

文乃 (きみはなんでそんな余計なことを言うのかな!?)

成幸 「……じゃなくて! とにかくこれは、俺からじゃなくて店長さんからだから!」

文乃 「……う、うん。じゃあ、ありがたくもらっておくね」

文乃 (これ……)


―――― 『……とりあえず無難に、こういうのでいいんじゃないかな』


文乃 (なっ……成幸くんが選んだ、ブラなんだよね……しかも、わたしのサイズにぴったりの……)

文乃 「っ……」 (だ、だめ……どんなに我慢しても、顔赤くなるし、口元も緩んじゃうよ……)

水希 「………………」 (……うん。やっぱり。間違いない)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 (この人は、敵……!!!)


618以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:34:12NSO23Erk (27/30)

………………その夜 古橋家

文乃 「………………」 ドキドキドキドキ……

文乃 (……成幸くんが選んだデザインのブラ)

文乃 (これ、つけてもいいのかな……。い、いいよね?)

スッ……

文乃 (あ、サイズ本当にぴったりだ)

文乃 (似合ってる、かな……?)

文乃 (……この姿のわたしを見たら、成幸くんは……)

文乃 「……喜んで、くれるかな」

ハッ

文乃 (な、なんてはしたないことを考えてるの、わたし……///)

文乃 (りっちゃん、うるかちゃん、違うからね!!)

文乃 (……違うけど、せっかくもらったものだし、明日、つけてっちゃおうかな……)

文乃 (えへへ……///)

おわり


619以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:36:43NSO23Erk (28/30)

………………幕間1 『秘密の花園について[x]は如何程に秘密を吐露したか』

うるか 「今日の体育はA組と合同かー! 負けないかんねー!」

文乃 「あはは。うるかちゃん元気だねー」

うるか 「……んう? あれぇ、文乃っち、そんなブラ持ってたっけ?」

文乃 「へ!? あ、いや……あ、新しく買ったやつだよ?」

文乃 (人の下着とかよく覚えてるなぁ……。危ない危ない。油断できないね……)

うるか 「なんかあたしのと似てるね。えへへ、なんかおそろいみたいでドキドキするねっ」

文乃 「はは……」 (うるかちゃんってときどきすごいこと言うよなぁ……)

うるか 「このブラ、ランジェリーショップの店員さんに選んでもらったんだよね~」

うるか 「着ぐるみの新人さんだったんだけど、もうお仕事には慣れたかなー」

文乃 (着ぐるみの新人っぽい店員……)

文乃 (……ああ、なるほど) ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! (うるかちゃんの下着も選んだ、と……)

うるか 「文乃っち……?」

文乃 (成幸くん、今度、ぶつ)


620以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:37:39NSO23Erk (29/30)

………………幕間2 『鼻血』

水希 「………………」 ドクドクドクドク……

花枝 「………………」

花枝 (洗面台の鏡の前でブラジャーを身につけ鼻血を流し倒れる娘……)

花枝 (どこで育て方を間違えたのかしら……)

葉月 「和樹、いつもの」

和樹 「あいさ」 スッ

おわり


621以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 21:38:24NSO23Erk (30/30)

>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

また投下します。


622以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 22:26:45tke93D4U (1/1)

おつんここ


623以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/17(日) 23:00:143mDNnq16 (1/1)

相変わらずいいすなぁ・・・


624以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/18(月) 01:41:02oMyh4n9U (1/1)

おつ


625以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/18(月) 12:40:44hErkqsg. (1/1)

お昼休みに更新を確認する毎日や
このスレで文系派になったわ


626以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/18(月) 13:00:33rNR0MKfM (1/1)

考えてみれば他人から貰ったブラつけるって確かにやばいなwww


627以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/18(月) 22:44:46XfeoPyfQ (1/1)


原作が文系に全振りしたらありそうな話だな
商業誌である以上それは叶わないから、このスレは本当にありがたい


628以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:43:50HAJPKQlU (1/27)

>>1です。投下します。

先に言っておきますが夢オチです。
例に漏れずチョロくなっています。

【ぼく勉】 あすみ 「お前もキスなんかしたことないだろ?」


629以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:44:41HAJPKQlU (2/27)

………………???

あすみ 「ん……」 モゾッ 「う……?」

あすみ (朝……? いま、何時だ……?)

あすみ 「……?」

成幸 「………………」 Zzzz……

あすみ 「……なっ!?」

あすみ (アタシの横で、後輩が寝てる!?)

あすみ (いや、それも相当だけど……)

あすみ (そもそもどこだここ!?)

成幸 「むにゃ……」 Zzzz……

あすみ 「っ……」 ビクッ

成幸 「……肉まん、こんなにいっぱい……むにゃ……幸せ……」

あすみ 「………………」

あすみ 「……ご機嫌な夢みてんなー、こいつ」

あすみ 「おい、起きろ、後輩」 ユサユサ


630以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:46:00HAJPKQlU (3/27)

成幸 「んん……」 モゾモゾ

成幸 「あれ? あしゅみー先輩……?」

あすみ 「おう。おはよう」

成幸 「………………」

成幸 「……なんだ夢か」 モゾモゾ

あすみ 「夢じゃねーよ。寝直すな。起きろ」

成幸 「夢じゃない……?」

ハッ

成幸 「……って先輩!? 何で一緒のベッドに!? っていうかここどこですか!?」

あすみ 「ワンテンポ遅れて驚いてくれてありがとう。とりあえず耳が痛い」

成幸 「あっ……す、すみません……」

あすみ 「その様子だとお前も何も知らないみたいだな」

成幸 「はい。まったく……。昨日はたしか、普通に床に入って寝て……」

あすみ 「アタシもだ。で、起きたらこのベッドで寝てた」

成幸 「一体何なんでしょうか……」


631以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:46:50HAJPKQlU (4/27)

あすみ (見たところ、何の変哲もない部屋だ)

あすみ (棚にはたくさんの本。奥には台所と生活家電。ドアにはバスルームとトイレの表示)

あすみ (ワンルームのアパートみたいだな……けど、)

ガチャッガチャッ

あすみ 「……開かねーな」

成幸 「はい。外から鍵をかけられてるみたいです」

あすみ (出入り口とおぼしきドアには外から鍵。こりゃ出られそうもねーな)

ピラッ

あすみ 「ん……?」

成幸 「先輩、なんか紙が落ちてきましたよ」 ヒョイッ


 『キスしないと出られない部屋』


あすみ&成幸 「「………………」」


632以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:47:30HAJPKQlU (5/27)

 『キスしないと出られない部屋』

 『ここは “キスしないと出られない部屋” です。
  その名の通り、この部屋から出るには、キスをする必要があります。

  食料はありますが、補給等はありませんので、早めのキスをお勧めします。

  それでは、よいキスを』


あすみ 「………………」

成幸 「………………」

あすみ 「……後輩、ケータイとか持ってるか?」

成幸 「いえ。先輩は?」

あすみ 「アタシもないな。んー、どうしたもんかな」

あすみ (……アタシと後輩はその紙を無視することにした)


633以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:48:00HAJPKQlU (6/27)

………………

あすみ (あれからしばらく経った)

あすみ (とはいえ、部屋に時計はないし、窓もない)

あすみ (いまが昼なのか、夜なのか、加えてどれくらいの時間が経ったのかすら分からない)

あすみ (後輩とふたりで部屋を探索し尽くしたが、特に新しい発見はない)

あすみ (とりあえず冷蔵庫・冷凍庫には食材が、床下収納にはレトルトや缶詰が詰め込まれていて、)

あすみ (当面の食料に困ることはなさそうだ)

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

成幸 「あっ……あの……――」

あすみ 「――あー! 腹減ったなー! 後輩、お前も腹減っただろ?」

成幸 「へ……? あ、はい」

あすみ 「仕方ねーなー。この小美浪あすみの手料理を振る舞ってやろう。ちょっと待ってろ」


634以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:48:55HAJPKQlU (7/27)

………………

トントントントントン……

あすみ 「………………」

あすみ (……つい、逃げるように台所に来てしまった)


―――― 『あっ……あの……――』


あすみ (後輩が何を言おうとしていたのか、アタシは知らない)

あすみ (でも、想像はつく。きっとこの部屋についてだろう)

あすみ (『キスしないと出られない部屋』 とかいうふざけたこの部屋について……)

あすみ (キス……)

カァアアアア……

あすみ (……つまり、後輩と、キスをしろということだろう) チラッ

成幸 「……うーん。やっぱりこのドア開きそうにないなぁ。どうしたもんかな」

あすみ (後輩と……////)


635以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:49:30HAJPKQlU (8/27)

………………

成幸 「わぁあああ……!! すごく美味しそうです、先輩!」

あすみ 「ふふーん。そうだろうそうだろう。アタシは家事に関しては自信があるからな」

あすみ 「ほら、冷めないうちに食べようぜ」

成幸 「はい! いただきます!」

パクッ……モグモグ……

あすみ 「……味はどうだ?」

成幸 「美味しいです! ありがとうございます、先輩」

あすみ 「おう。お口に合ったようで何よりだ」

成幸 「改めて、先輩って何でもできますよね。すごいなぁ」

あすみ 「おいおい、おだてても何もでねーぞ? お前だって家事得意じゃねーか」

成幸 「でも、料理だけはあんまり得意じゃないんですよね。練習しないとなぁ……」

成幸 「先輩、ここから出られたら料理を教えてくださいよ」

あすみ 「ああ。お前にはいつも世話になってるし、それくらいお安いご用だ」


636以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:50:06HAJPKQlU (9/27)

成幸 「ありがとうございます。まぁ、出られたら、ですけどね」

あすみ 「っ……」

成幸 「あっ……」

成幸 「す、すみません……」

あすみ 「いや……」

あすみ (……ドアが開く様子はない)

あすみ (外に人の気配もない。どういう状況かはかりかねているというのが正直なところだが、)

あすみ (いつまでもボーッとしてるわけにもいかないか)

あすみ (けど……)


―――― 『キスしないと出られない部屋』


あすみ 「っ……///」

成幸 「………………」

成幸 「あの、先輩」


637以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:50:57HAJPKQlU (10/27)

あすみ 「ん、何だ?」

成幸 「ここには勉強道具もないですし、このままここにいるのが良いこととは思えません」

あすみ 「……まぁ、そうだな」

成幸 「それでですね……その……えっと、なんて言ったらいいか分からないんですけど……」

カァアアアア……

成幸 「ここから出る手段は示されていますし、本当に出られる保証はありませんけど……」

成幸 「……試して、みませんか?」

あすみ 「……キスを?」

成幸 「っ……///」

成幸 「くっ、口に出さないでください。意識しちゃうじゃないですか」

あすみ 「ひっひっひ。後輩は本当にスケベ君だなぁ」

成幸 「やめてくださいってば……」

あすみ 「そんなにアタシとチューしたいのか。まったく後輩は……」

ドキドキドキドキ……

あすみ 「ほっ……本当に……仕方ないなぁ」


638以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:52:02HAJPKQlU (11/27)

あすみ 「そもそもな、キスするって言ったって、お前はいいのかよ」

成幸 「いいって……」

あすみ 「……だって、お前もキスなんかしたことないだろ?」

成幸 「う゛ぇっ……!?」

あすみ 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

あすみ 「あ゛?」


639以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:53:00HAJPKQlU (12/27)

あすみ 「……後輩、お前、キスしたことあんの?」

成幸 「い、いや、違うんですよ先輩! あれはそういうのじゃなくて……」

成幸 「……2回目のあれも着ぐるみ越しだし……」

成幸 「3回目もあれはあいさつだって言ってたから、そういうのじゃないし!」

あすみ 「は!? お前三回もキスしたことあるの!?」

成幸 「!? いやいやいや、違いますって! 全員そういう関係の相手じゃないですし!」

あすみ 「………………」

ジロリ

あすみ 「…… “全員” ?」

成幸 「あっ……」

あすみ 「お前、まさか三回とも違う相手とキスをしたのか……?」

成幸 「いや、違っ……くはないですけど、違うんですよ! 違うんです!」

成幸 「……いや、というか、“お前もキスなんかしたことない” ……?」

あすみ 「ん?」


640以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:53:39HAJPKQlU (13/27)

あすみ 「……あっ」


―――― 『……だって、お前もキスなんかしたことないだろ?』


あすみ 「い、いや、違う! 断じて、そんな……キスの経験がないなんてことはない!」

成幸 「ああ……」

成幸 「……すみません。てっきり先輩は、経験豊富だと思ってたから……」

成幸 「やっぱり初めては好きな人とがいいですよね。他に出る方法を探しましょう」

あすみ 「だから違うって言ってるだろ! アタシはもう……そりゃ、キスなんかしまくりだ」

あすみ 「キスの相手に困ったことは一度もないからな!」

成幸 「……あ、はい。わかりました」

あすみ 「絶対信じてないだろお前! っていうか、話逸らしやがったな!」

あすみ 「三人以上とキスしたことあるなんて聞いてないぞ。このドスケベ!」

成幸 「ガチトーンでスケベって言うのはやめてくださいよ! そういうのじゃなかったんですってば!」

成幸 「不慮の事故と成り行きとあいさつなんですってば!!」

あすみ 「不慮の事故はともかく成り行きとあいさつってなんだよ! やっぱりスケベじゃないか!」


641以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:54:14HAJPKQlU (14/27)

………………

あすみ 「………………」

成幸 「………………」

あすみ (……気まずい)

あすみ (いくら動揺したからといって、スケベスケベ言いすぎたかもしれない)

あすみ (後輩が女たらしなんて知ってたはずなのに、それを実感した途端、)

あすみ (……それと、後輩がもうすでに三人以上の誰かとキスをしているということを知った途端、)

ズキッ

あすみ (……すごく、嫌な気持ちになってしまった)

あすみ (そもそも、アタシと後輩はただの勉強友達でバイト仲間なんだから、)

あすみ (後輩が誰とどんなただれた関係を築いていようと関係ないはずなんだよな)

あすみ (……アタシはただの、フリをしてるだけの恋人にすぎないんだから)

成幸 「……あの、先輩」

あすみ 「……ん」


642以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:54:50HAJPKQlU (15/27)

成幸 「……さっきはその、すみませんでした。キスのこととか……」

成幸 「ヘンなこと話して、先輩の気分を悪くさせちゃって……」

成幸 「でも、信じてほしいんです。俺は本当にやましいこととかはなくて、ただ……」

成幸 「……ただ、俺自身キスをするとかそういう自覚なく、そうなってしまったというか」

成幸 「でも、よく考えたらその方が最低かもしれません。だから、俺……」

あすみ 「………………」

あすみ 「……悪かったよ」

成幸 「え……?」

あすみ 「お前がそんなに器用な奴じゃないって知ってるはずなのにな」

あすみ 「……信じて、いいんだな?」

成幸 「あ……はい! 誓って、俺はまだキスをしようとしてしたことはありません!」

あすみ 「……にひひ、胸張って言うことかよ、それ」

成幸 「あっ……す、すみません」


643以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:55:33HAJPKQlU (16/27)

あすみ 「……っつーか、アタシの方こそ悪かったよ」

あすみ 「そもそも、べつにアタシが不機嫌になる道理はないよな」

あすみ 「気まずくさせて悪かった。お前がどこの誰とキスをしてようと、アタシには関係ないもんな」

成幸 「先輩……」

あすみ 「……あー、ちくしょう。この際だから言っちまうけど、」

あすみ 「アタシはキスなんかしたことねーよ。生まれてこの方、一度もだ」

あすみ 「つーか、男と付き合ったのも、お前が初めてだ」

成幸 「……意外です。先輩美人できれいだから、モテるもんだと……」

あすみ 「軽音やってた頃はまぁ、それなりにモテたけどな。部活に勉強に忙しかったからそんな暇なかったよ」

あすみ 「……はぁ。こんな恥ずかしことお前に言うつもりはなかったんだけどな」

あすみ 「バカにするならしろよ。けっ」

成幸 「バカにできないですよ。俺だって、お付き合いなんて先輩が初めてですよ?」

あすみ 「……ほー、それでキスを三回も、か。モテる方は違うなー。さすがだなー」

成幸 「だっ、だから違うんですってば!」

あすみ 「ひひひ、冗談だよ」


644以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:56:28HAJPKQlU (17/27)

成幸 「あー、もう、まったく、先輩は……」

あすみ 「悪かったよ。怒るなって」

あすみ (……良かった)

あすみ (このまま気まずいままだったら、と少し考えていたから)

あすみ (正直なところ、後輩がキスを経験していたという事実は、まだ心の中でくすぶっている)

あすみ (でも、それを言えるような立場にないということも、分かっているから)

あすみ (……そして何より、初めて付き合った相手が自分であるという事実が、少しだけ心を安らかにさせてくれたと思う)

あすみ 「………………」

あすみ (今さら、否定することも難しいだろう)

成幸 「……先輩?」

あすみ (アタシは……)


645以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:57:06HAJPKQlU (18/27)

あすみ (……アタシは、今までずっと、何度も何度も)


―――― 『キスくらいしとくか?  「彼氏」 なんだし』

―――― 『ん? なんだ? やっぱしたくなったか? 後輩 このスケベめ』

―――― 『そろそろ一回くらいチューしとくか?』

―――― 『よっぽどチューしたいらしいな このたらし野郎が』


あすみ (後輩とのキスを望んで、せがんでいた……)

あすみ (アタシは、だから、きっと……)

成幸 「せ、先輩、どうしたんですか? 何で、近づいてきて……――」


――――ギュッ


あすみ (後輩のことが……)


646以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:57:37HAJPKQlU (19/27)

成幸 「せ、先輩!? なっ、なんで、抱きついて……?」

あすみ 「……なぁ、早く外に出て勉強したいよな? 後輩?」

成幸 「へ……? ま、まぁ、そりゃ……」

あすみ 「外に出て、アタシから料理、教わりたいよな?」

成幸 「はい……」

あすみ 「……じゃあ、もう仕方ないよな」

成幸 「えっ……?」

あすみ 「……みなまで言わせんな、バカ」

スッ

あすみ 「………………」

成幸 「あっ……」 アセアセ 「でも、先輩、初めてなんじゃ……」

あすみ 「………………」

成幸 「っ……」


647以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:58:35HAJPKQlU (20/27)

あすみ (……こいつはもう、キスをしっている)

あすみ (アタシは、しらない)

あすみ (どんなにがんばっても、アタシはそれに関しては、こいつの一番にはなれない)

あすみ (だから、せめて……)

あすみ (フリであろうとなんであろうと、後輩の最初の彼女であるアタシが……)

あすみ (後輩から “キスをされる”、最初になりたい)

あすみ 「………………」

成幸 「………………」


スッ………………………………


………………

…………

……


648以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 22:59:24HAJPKQlU (21/27)

………………

あすみ 「……こう、はいっ……ん……」

あすみ 「……しょっ、そんな、激しっ……」

あすみ 「アタシ、初めてだって……」

パチッ

あすみ 「………………」

あすみ 「ん……う……?」

あすみ 「………………」

あすみ (見慣れた勉強机。見慣れた “必勝” の文字。まぎれもない、アタシの部屋だ)

あすみ (……瞬間的にすべてを理解した)

あすみ (夢だ)

あすみ (アタシは後輩からもらったマスコットを両手で握りしめ、熱いキスをかましていた)

あすみ 「……あっ……ああああ……」

カァアアアア……

あすみ 「ちっ……ちがっ、今のは、夢の中だから……違うからっ!」


649以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 23:00:04HAJPKQlU (22/27)

………………唯我家

成幸 「……ん、今日は先輩とファミレスで勉強の約束か。そろそろ出ないとな」

成幸 「先輩、前回渡した化学の問題全部解けたかなー、っと……」

ピロリン♪

成幸 「……? 先輩からメッセージ?」

成幸 「今日は体調が悪いから休む……?」

成幸 「………………」

成幸 「……あの先輩が体調不良!?」


650以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 23:00:38HAJPKQlU (23/27)

………………小美浪家

あすみ 「………………」

あすみ (……うそをつくのは気が引けるが、あながちうそでもないだろう)

あすみ (今日、後輩と顔を合わせたりしたら、間違いなく死ぬ)

あすみ (絶対、とんでもないことになる)

あすみ (だから、うそじゃない。体調不良みたいなもんだ……)


―――― ((フリであろうとなんであろうと、後輩の最初の彼女であるアタシが……))

―――― ((後輩からキスをする、最初になりたい))


あすみ 「っ……///」

あすみ (夢。夢だから。あれはただの夢だから……)

あすみ 「っ~~~~~~~~~~~~~!!」

あすみ (ダメだ。絶対ダメだ。せめて今日一日は絶対後輩と顔を合わせちゃダメだ!)


651以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 23:01:25HAJPKQlU (24/27)

………………唯我家

成幸 「あの完ぺき超人の先輩が、体調不良……」

成幸 「心配だ。何か悪い病気じゃないだろうな……」

成幸 「先輩の家は病院だから心配はないだろうけど……」

成幸 「………………」

成幸 「……よしっ」

成幸 「お見舞いに行こう!」

おわり


652以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 23:01:58HAJPKQlU (25/27)

………………幕間1  「○○○に入る言葉を答えなさい」

水希 「お兄ちゃん、起きて! 起きてってば!」

成幸 「ん!? なんだ水希!? どうした!?」

水希 「わたしたち、とんでもないところに閉じ込められちゃったよ!!」

成幸 「何!? 閉じ込められた!? とんでもないところって、どこだ!?」

水希 「『○○○しないと出られない部屋』 だよ!」 キラキラキラキラ


653以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 23:03:04HAJPKQlU (26/27)

………………幕間2  「本編でも強ち」

文乃 「大変だよ成幸くん! とんでもない部屋に閉じ込められたよ!」

成幸 「今度は一体何だ、古橋!」

文乃 「これは困った! これは本当に困る! ああもう、本当に嫌だなぁ!!」

成幸 「何だ!? 一体どんな部屋だ!?」

文乃 「『人気飲食店の商品全部食べ尽くすまで出られない部屋』 だよ!」 キラキラキラ……!!!!

おわり


654以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/20(水) 23:04:42HAJPKQlU (27/27)

>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

夢オチのコメディを書きたいなと思いながら書き始めて、
結果中途半端になってしまったと思います。

また投下します。


655以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 03:31:51Lcs/eQSk (1/1)

おつ


656以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 12:42:331t8JVcRM (1/1)

おつんこ
書くの早いな


657以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 19:32:37ZDtxQMO6 (1/1)

やっぱり先輩がNo.1!!


658以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:20:59.1QY/f6c (1/26)

>>1です。投下します。


【ぼく勉】 紗和子 「あら、奇遇ね」


659以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:21:38.1QY/f6c (2/26)

………………放課後 一ノ瀬学園

理珠 「すみません、成幸さん。母が急用で店を開けなくてはならないそうなので、今日は帰ります」

文乃 「わたしも、荷物を受け取らなくちゃいけないから帰るね。ごめんね」

うるか 「あたしも、ママ……じゃなくて、お母さんからお遣いたのまれちってさ。ごめん」

成幸 「おお、そうなのか。じゃあまた明日だな」

文乃 「うん。ごめんね、成幸くん。また明日!」

うるか 「じゃーねー、成幸ー」

理珠 「さようなら、成幸さん。また明日」

トトトトトト……

成幸 「………………」

成幸 (んー、あの三人が帰ってしまったということは、俺ひとりか)

パァアアアアアア……!!!

成幸 (久々にひとりで伸び伸びと勉強できる!? やったー!)


660以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:22:19.1QY/f6c (3/26)

………………図書室

ザワザワザワ…………

成幸 「わぁ……」

成幸 (今日は混んでるなぁ。うーん、座れないことはないけど……)

成幸 (せっかくひとりなんだから、静かに勉強したいところだな)

成幸 (……ん、そういえば)


―――― 『あっ そういえば一箇所心当たりが!』


成幸 「………………」

成幸 (もし空いてそうだったら、あそこを借りてもいいかな?)


661以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:23:03.1QY/f6c (4/26)

………………生物室

成幸 「………………」

カリカリカリカリ……

成幸 (案の定、誰もいないから勉強にうってつけだ)

成幸 (家に帰ったら和樹と葉月がいるし、ここでがっつり勉強して帰るとしようかな)

標本 「………………」


―――― 『ねーねー知ってる? あのウワサ』

―――― 『放課後になるとね…… あそこの骨格標本がひとりでに生物室内を徘徊し始めるんだって……』


成幸 (……い、いやいやいや、大丈夫、大丈夫。あんなのはただの噂だ)


―――― 『あれ……変ね 電池が入ってないわ』


成幸 (あれは……うん、まぁ、説明はつかないけど……でも……――)

――――ガラッ

成幸 「ヒッ……!?」 ビクッ


662以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:23:37.1QY/f6c (5/26)

紗和子 「……? あら、唯我成幸じゃない。奇遇ね」

成幸 (な、なんだ。関城かよ……) ドキドキドキドキ……

紗和子 「どうかしたの? 床に座り込んだりして……」

成幸 「い、いや、何でもない。ちょっとこけちゃってさ……」

成幸 (言えない……驚いて椅子から転げ落ちたなんて……!)

紗和子 「まったく、そそっかしいわね。大丈夫?」 スッ

成幸 「あっ……」 ギュッ 「わ、悪い……」

紗和子 「図書室が混んでいたからここで勉強しようと思ってきたんだけど、あなたも同じ考えだったようね」

成幸 「ああ。ここは静かに勉強できるからな」

紗和子 「緒方理珠たちは?」

成幸 「今日は急な用事で帰ったよ。だからこそ余計に静かに勉強したかったんだけど……」

成幸 (この生物室が怖くて、逆に集中できてなかった……なんて言えないよな)

紗和子 「えっ……」 ガーン

紗和子 「あっ、じ、じゃあ、私もお邪魔よね? ごめんなさい。失礼するわ」

成幸 「!?」


663以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:24:22.1QY/f6c (6/26)

成幸 「ま、待ってくれ!」

ガシッ

紗和子 「ふぇっ……!?」

成幸 「い、行かないでくれ。お前が来てくれてすごく嬉しかったんだ。だから……」

成幸 (関城がいなくなったらまたこの生物室にひとりきりになってしまう!)

紗和子 「なっ……///」

紗和子 「う、嬉しかったって、あなたには緒方理珠が……」

成幸 「……? 緒方? 緒方は関係ないだろ」 (もう帰っちゃったし)

紗和子 「………………」

紗和子 「……そっ、そこまで言うなら、まぁ」

紗和子 「本当に私がいても邪魔じゃないのね?」

成幸 「邪魔なもんか。一緒に勉強しようぜ、関城」

紗和子 「……え、ええ」 カァアアアア……

標本 「………………」


664以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:25:00.1QY/f6c (7/26)

………………

紗和子 「………………」

成幸 「………………」

標本 「………………」

カリカリカリ……

成幸 (ひとりきりなら怖かったものも、ふたり以上になれば怖いも何もない)

成幸 (骨格標本だって、化学部の改造によって電動になっているらしいが、よくよく考えればただの模型だ)

成幸 (噂だって、電動になった骨格標本が動く様を目撃した生徒がいただけのことだろうし、)

成幸 (電池が入っていなくても動いたことに関してはまぁ、説明はつかないけど……)

成幸 (なんにせよ、関城がいてくれれば心強い。静かに勉強ができて何よりだ)

成幸 (……そして、さすがは化学部部長といったところだろうか)

成幸 「……ん? これって……」

紗和子 「……?」

成幸 「なぁ、関城。ここの結合ってこういう風に分解はできないのか?」

標本 「………………」


665以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:25:50.1QY/f6c (8/26)

紗和子 「? ……ああ、それだとイオン化ができないからそもそも分解されないわよ」

成幸 「? 教科書のイオン化の例と何が違うんだ?」

紗和子 「……ああ、それは高校レベルじゃやらないから分からないのも無理ないわね」

紗和子 「仕方ないわね。少し長くなるけど、説明する?」

成幸 「本当か? 助かるよ」

成幸 (関城は俺の分からないところを丁寧に説明してくれる)

成幸 (いつも教えている身としては、同級生に教わるのはなかなか新鮮だ)

成幸 (理系科目――特に化学に造詣が深い関城は、やや高度な疑問にもすぐに答えてくれる)

成幸 (本当に、関城が来てくれてよかった……)

ニコニコニコ

紗和子 「……? 何にやにやしてるのよ」

成幸 「へ? ああ、悪い」 クスッ 「表情に出てたか」

成幸 「いや、お前が来てくれて良かったなって思ってさ」

紗和子 「は……?///」


666以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:26:20.1QY/f6c (9/26)

紗和子 (なっ……なんなのかしら、さっきから……)


―――― 『「ま、待ってくれ!』

―――― 『い、行かないでくれ。お前が来てくれてすごく嬉しかったんだ……。だから……』

―――― 『いや、お前が来てくれて良かったなって思ってさ』


紗和子 (まったくもう、唯我成幸ってば。あなたには緒方理珠というステディがいるでしょうに……)

紗和子 (なんで、私が来たくらいでこんなに大喜びするのよ……)

紗和子 (そっ、それじゃまるでっ……)

カァアアアア……

紗和子 (あなたが私に気があるみたいじゃない……///)

成幸 「……?」

成幸 「関城、なんか顔赤いけど、大丈夫か?」

紗和子 「はっ……!? あ、赤くなってないけど!?」

成幸 「いや、めっちゃ赤いけど……」

標本 「………………」


667以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:27:10.1QY/f6c (10/26)

紗和子 「なってないって言ってるの! ほら、せっかくの勉強時間なんだから、勉強に集中するわよ!」

成幸 「……ああ、それもそうだな」


―――― うるか『成幸ー、勉強飽きちゃったよー。つかれたよー』

―――― 文乃 『………………』 Zzzz……

―――― 理珠 『全然分かりません。成幸さん、ここはどういうことですか?』


成幸 (あいつらもここ最近はここまでひどくはないけど……)

成幸 (……ああ、なんか、いつもとの落差がすごい)

成幸 (いつもだったら、こっちががんばれと励ます方なのに……)

成幸 (関城は俺のことを励ましてくれるんだな……)

成幸 「……あー、ほんと、お前が来てくれてよかったよ」 ホロリ

紗和子 「っ……/// ま、またヘンなこと言って……」

成幸 「? 変じゃないだろ?」

成幸 「なんだったら毎日お前と一緒に勉強したいくらいだぞ?」

紗和子 「あ……う……」 カァアアアア……


668以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:27:44.1QY/f6c (11/26)

紗和子 「………………」 プスプスプス……

成幸 「関城? なんか、顔が真っ赤になりつつあるぞ?」

紗和子 (あなたがヘンなこと言うからでしょーがー!)

紗和子 (まったく、この男は一体何を考えて……――)

――――ピタッ……

紗和子 「ふぇっ!?」 (手!? おでこ!? え!?)

成幸 「……んー、熱はなさそうだな」

紗和子 (あう……/// 唯我成幸の手、冷たくて、気持ちいい……)

ハッ

紗和子 (って私は何を考えてるの!? 唯我成幸は私の大親友、緒方理珠の想い人!)

紗和子 (そんな相手に、私は、何を……)

成幸 「本当に大丈夫か?」

紗和子 「……あっ、だ、大丈夫。大丈夫だから!」 プイッ

標本 「………………」


669以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:33:29.1QY/f6c (12/26)

成幸 「あっ……」

ハッ

成幸 「わ、悪い。急におでこに手を当てたりして……」

紗和子 「それは、まぁ……いいけど」

紗和子 「や、やっぱり私、ちょっと体調悪いみたいだわ」

紗和子 「今日はこれで帰るわね。あとはひとりで集中して勉強したらいいわ」

紗和子 (これ以上ここにいたらヘンになりそうだし……)

紗和子 「それじゃ、またね。唯我成幸――」

成幸 「――あっ、待ってくれ! 俺も一緒に帰るよ!」

紗和子 「ふぇっ!?」 アセアセ 「そ、そんな、いいわよ。あなたはここで勉強していったら……」

成幸 (ここでひとりになったらまた怖くてきっと集中できない! だったら家に帰った方がマシだ!)

成幸 (けど、それを関城に悟られるのはさすがに恥ずかしいし……)

成幸 「た……体調の悪そうなお前をひとりで帰すわけにはいかないだろ。送ってくよ」

紗和子 「えっ……」

標本 「………………」


670以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:34:01.1QY/f6c (13/26)

紗和子 「あっ……えっと、その……」 カァアアアア……

成幸 (さすがに苦しいか……?)

紗和子 「じ、じゃあ……お願いするわ……///」

成幸 「……?」

成幸 (なんでまた顔を赤くしてるんだ……?)

成幸 「ん、じゃあ行くか」

紗和子 「え、ええ……」

紗和子 (ち、違うから! 違うのよ、緒方理珠! これは、友達だから送っていってくれているだけで……)

紗和子 (決して、“そういうの” じゃないんだから!)

………………

標本 「………………」

ギギギギ……

標本 「………………」

ギシッ……ギシッ……


671以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:34:34.1QY/f6c (14/26)

………………帰路

紗和子 「………………」

ドキドキドキドキ……

紗和子 (ど、どうしたらいいのかしら。胸がすごいことになってるわ……)

チラッ

成幸 「……ふむふむ」

紗和子 (歩きながらも勉強……。本当にガリ勉ね)

紗和子 (でも、そんな横顔が……) カァアアアア…… (なぜか、いつもより精悍に見えるわ……)

成幸 「ん……? どうかしたか、関城?」

紗和子 「えっ? いえ、何もないわ……」

成幸 「……?」

紗和子 (……ああ、どうしたらいいのかしら。今、横にいる男の子は、大親友の想い人だというのに……)

紗和子 (なんでこんなに、ドキドキするの……)

………………

標本 「………………」 コソッ


672以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:42:25.1QY/f6c (15/26)

成幸 「おい、本当に顔真っ赤だぞ? 大丈夫か?」

紗和子 「………………」

紗和子 「……ダメ、かも」 ボソッ

成幸 「!? やっぱり体調が悪いのか。もっと早く言えよ」

紗和子 「ご、ごめんなさい……」

紗和子 (体調ではなく精神的なものなのだけど……でも、そんなこと言えないし……)

成幸 「荷物持つよ。教科書とか入ってて重いだろ」 スッ

紗和子 「あっ……」

成幸 「歩けるか? おんぶするか?」

紗和子 「さ、さすがにそこまでは大丈夫よ。歩けるわ」

成幸 (でも辛そうだな……ん?)

成幸 「公園があるな。ちょっと休んでくか? それとも早く帰った方が楽か?」

紗和子 「公園……?」


673以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:43:14.1QY/f6c (16/26)

紗和子 (公園といえば……)


―――― 『は 初デートはどこがいいかしら!?』

―――― 『なるべく金のかからない所が…… 公園とか』


紗和子 「っ……」

紗和子 「あっ……えっと……」

成幸 「ん?」

紗和子 「………………」

紗和子 「……ちょっと、寄っていくわ」

成幸 「ん、分かった。ベンチがあるから、そこで少し休もうか」 ニコッ

紗和子 (わ、私……)

紗和子 (自分で、公園に寄ることを選んで……これじゃ、まるで……)

紗和子 (唯我成幸と、公園デートしたがってるみたいじゃない……///)

………………

標本 「………………」 ジーーーーッ


674以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:43:45.1QY/f6c (17/26)

………………公園

成幸 「ほい、関城。自販機でコーヒーと紅茶買ってきたけど、どっちがいい?」

紗和子 「ん……じゃあ、コーヒーをいただくわ。ありがとう」

成幸 「どういたしまして」

紗和子 「………………」 ズズズ……

紗和子 (……ひょっとして、こうしてベンチの隣に座っていると)

紗和子 (傍から見たら、私たちは、恋人同士に見えたりするのかしら……)

紗和子 (なんて……)

紗和子 「………………」

紗和子 (……違う)

紗和子 (違う)

紗和子 (絶対に違う……!)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!


675以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:44:18.1QY/f6c (18/26)

紗和子 (こんなの、何かがおかしいわ)

紗和子 (今まで、私は、大親友のために色々とがんばってきた……)


―――― 『あら! そこにいるのは唯我成幸じゃない! 偶然ね!』

―――― 『ちょうどよかったわ 唯我成幸 緒方理珠の新しいペンケースを一緒に選んでやってくれないかしら』

―――― ((やはり…… せっかく好きな人と2人きりで出かけられるチャンスを 大親友の私が奪うわけにはいかないわよね))

―――― 『じゃッ!! 私はトイレに行ってくるから! 2人ともグッドラック!!!』


紗和子 (そんなこの私が……!)

紗和子 (この、化学部部長、関城紗和子が!!)

紗和子 (大親友にして大恩人、緒方理珠を裏切るようなことをするはずがない……!!!)

成幸 「関城? すごい顔してるけど、大丈夫か……?」

紗和子 (この男を、唐突に奪い取るようなマネをするはずがない!!)


676以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:44:55.1QY/f6c (19/26)

………………

標本 「………………」 ギシッ……

標本 「………………」 ギシギシギシッ……

標本 「………………」

ガシャッ……ガシャッ……ガシャッ……――――


    「――そこまでっスよ」


標本 「……!?」

蝶野 「美少女霊媒戦士、マジカルチョーノとミラクルイノポンが相手になるっスよ」

猪森 「いや、君は何もしないだろう、蝶野。というか、勝手に変な名前をつけないでくれ」

猪森 「……またあの骨格標本に変な霊が取り憑いたか。まったく、度し難いな」

蝶野 「どうも唯我成幸さん周りのラブコメの波動に引き寄せられてるみたいっスね」

蝶野 「前回同様、ラブコメ好きの霊が取り憑いてるみたいっスよ」

猪森 「……一体何なんだ、ラブコメの波動とか、ラブコメ好きの霊って」

蝶野 「ツッコんだら負けっスよ、いのぽん」


677以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:45:33.1QY/f6c (20/26)

………………

紗和子 「……唯我成幸」

成幸 「ん?」

紗和子 「私とあなたは、友達?」

成幸 「……? いきなりなんだよ」

紗和子 「答えて。お願い」

成幸 「……ん、まぁ、そりゃ……友達だろ?」

紗和子 「……うん」 クスッ 「嬉しいわ」

成幸 「? なんだそりゃ」

紗和子 (……うん。だって、そうよ)

紗和子 (それだけで十分だもの)

スゥ……

紗和子 (好きになんて、ならない。そもそも、好きになる要素なんて、ない)

紗和子 (だから私は、これでいい……)


678以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:46:23.1QY/f6c (21/26)

………………

標本 「……!?」

猪森 「どうやら、今回は関城さんと唯我くんのふたりに変な念をおくっていたようだが、」

猪森 「残念だったね。関城さんは、自分の精神力ひとつでお前のラブコメ念波を打ち破ったようだ」

猪森 「なんにせよ、人に迷惑をかけてはいけない。悪いけど、除霊させてもらうよ」

標本 「………………」 フルフル

猪森 「ん? なになに? ラブコメ念波なんて送ってない……?」

猪森 「“ちょっと素直になっちゃうビーム” を関城さんに撃ってただけ……?」

猪森 「………………」

猪森 「ていっ」 ぺしっ

オギャアアアアアアア………………

蝶野 (さすがはいのぽん。無視してそのままおフダをたたき込んだっス)


679以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:47:06.1QY/f6c (22/26)

猪森 「ふぅ。除霊完了だな」

蝶野 「お疲れさまっス、いのぽん」

猪森 「ああ。蝶野も、付き合ってくれてありがとう」

蝶野 「……それにしても、関城さんもよくよく取り憑かれやすい人っスね」

猪森 「そういう体質なんだろう。まぁ、近くに私みたいな人間がいてよかったよ」

蝶野 「……そう言って、ミラクルイノポンは笑う」

蝶野 「人知れず、今日も美少女霊媒戦士の戦いは続くのである」

猪森 「一体何のナレーションなんだ……?」

猪森 (それにしても、“ちょっと素直になっちゃうビーム”か……)

猪森 (不謹慎な話ではあるが、)

クスッ

猪森 (うちのお姫様にも、撃ってくれればいいのにな)


680以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:47:39.1QY/f6c (23/26)

………………翌日

成幸 「あっ……」  紗和子 「あっ」 バッタリ

紗和子 「……お、おはよう、唯我成幸」

成幸 「ああ、おはよう。体調は大丈夫か?」

紗和子 「おかげさまでよくなったわ。昨日は手間をかけさせたわね」

紗和子 (……不思議だわ。昨日はあんなに騒がしかった心臓が、今はすっかり鳴りを潜めている)

紗和子 (まるで、昨日は何かの呪いでも受けていたんじゃないかというくらい不自然だったわ)

成幸 「なぁ、関城。また化学で教えてほしいことがあるんだけどさ、」

成幸 「また今度、ふたりで勉強とかできないかな?」

紗和子 「? 何でふたりなの? 緒方理珠たちも誘えばいいじゃない」

成幸 「いや、まぁ、そうなんだけどさ……」 コソッ 「お前とふたりの方が、勉強に集中できるからさ……」

紗和子 「っ……し、仕方ないわね……」


681以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:48:21.1QY/f6c (24/26)

紗和子 (ない。絶対ない)

カァアアアア……

紗和子 (昨日考えたとおり、絶対、ない)

紗和子 (この男を好きになったりなんて、そんなこと、絶対ない)

紗和子 (……ない、のに)


―――― 『お前とふたりの方が、勉強に集中できるからさ……』


紗和子 (何で、“嬉しい” なんて思ってるのよ、私……!!)

紗和子 (違うから! 絶対違うからね、緒方理珠!)

紗和子 (あなたの好きな人を奪い取ったりなんて、絶対しないから!)

おわり


682以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:49:20.1QY/f6c (25/26)

………………幕間 「肩こり」

猪森 「前回の霊は緒方さんと唯我くんのラブコメを見るために寄ってきて、」

猪森 「今回の霊は関城さんと唯我くんのラブコメを見るために寄ってきた……」

蝶野 「我々 『いばらの会』 としては、ぜひとも霊に古橋姫に取り憑いてもらいたいものっスね」

猪森 「滅多なことを言うなよ、蝶野。霊になんて憑かれないに越したことはないんだから」

猪森 「それに、古橋姫は多分霊に取り憑かれることはないよ」

猪森 「霊に取り憑かれると肩こりがするようになるんだ。そして、オカルトにおいて、因果と結果は相関関係にある」

猪森 「つまり、逆説的に言えば、“肩こりになりやすい人は霊に取り憑かれやすい”」

蝶野 「あっ……つまり……」

猪森 「ああ。肩がふにゃふにゃなくらい柔らかく健康的な古橋姫は、霊に取り憑かれにくい」

蝶野 「まさか胸のアドバンテージがこんなところでも表れるとは……はっ!?」

文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

猪森 「ふ、古橋さん!? いつからそこに……?」

文乃 「……なんかしらないけどすごく失礼なことを言われた気がしたから、ふたりともとりあえずつねるね?」

おわり


683以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/21(木) 23:53:35.1QY/f6c (26/26)

>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。


問70の霊は、ひょっとしたら理珠さんと成幸くんのイチャラブを見た方のでは?
なんてことを考えていたら書けてしまった話ですが、色々と雑かもしれません。申し訳ないことです。



今さらな話ですが、本紙派の人はコミックス幕間を読めていないわけで、
わたしが今まで書いてきた話で何のこっちゃ分からない話があったかと思います。
申し訳ないことです。
これを機にコミックスも買っていただけたら嬉しいなと思います。

また投下します。


684以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/22(金) 00:07:53YXHdKQ4Y (1/1)




685以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/22(金) 01:31:137QnFaMJg (1/1)

おつおつ


686以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/22(金) 12:36:466cyf.K5I (1/1)

かわいい


687以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/22(金) 15:32:26ORWQ2hEA (1/1)

すまん、先輩くっそかわいい


688以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/22(金) 23:19:53W6HYjLRA (1/1)

更新頻度多くて嬉しいですわ


689以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:01:35seYST57A (1/25)

>>1です。投下します。


【ぼく勉】 真冬 「自習監督の桐須です」 理珠 「…………」


690以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:02:44seYST57A (2/25)

………………3-D教室 共通科目授業

真冬 「と、いうことで、体調不良の先生に代わって自習の監督を私が務めます」

ドーーーン

真冬 「好きな教科の好きな勉強をして構わないと言われています」

真冬 「各自、自習だからといって手を抜かず、受験に向けてがんばりなさい。以上よ」

男子1 (よ、よりによって “氷の女王” 桐須先生かよ……)

女子1 (眠るどころかまどろむことも許されない雰囲気……)

男子2 (最悪だ……)

理珠 「………………」

理珠 (よりによって桐須先生ですか……)

理珠 (まぁ、自習監督なら関係ないですね。私は私の勉強をするだけです)

理珠 (それにしても……)

シーーーーーン

理珠 (……水を打ったような静けさ、とはまさにこのことではないでしょうか)

真冬 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!


691以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:03:26seYST57A (3/25)

理珠 (桐須先生が教卓についているだけで、すごい効果です。これは集中できそうですね)

理珠 (ちょうどいいタイミングです。今日成幸さんに教えてもらう予定だった範囲を先に仕上げて……)

理珠 (成幸さんを驚かせてあげましょう!)

理珠 「………………」 ガリガリガリガリ……

理珠 (ふふ……) フンスフンス (成幸さん、きっと喜んでくれますね!)

真冬 (……ふむ。緒方さんが開いている参考書は現国かしら。熱心に勉強しているようね)

真冬 (まったく。唯我くんが希望を与えるから、ああやってがんばってしまうのよ)


―――― 『でも俺は…… 「できない」 ことに本気で立ち向かっている奴らを』

―――― 『「できないからやめろ」 なんて見捨てるくらいなら 胸張って一緒に後悔する道を選びます』

―――― 『先生が 「才能」 の味方なら 俺は 「できない」 奴の味方ですから』


真冬 (……まぁ、あそこまでの信念を持っているのなら私はもう何も言うべきではない)

真冬 (……否。そもそも、私には何も言う権利もないというべきね)

真冬 (私は、緒方さんと古橋さんの教育係を放棄したも同然の身なのだから……)


692以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:04:01seYST57A (4/25)

………………

真冬 「………………」

真冬 (……暇。自習監督をやるのはいいのだけれど、まったくもって暇だわ)

真冬 (仕事を持ってくるのも自習監督として適切とは思えないし、かといってボーッとしているのも無為だわ)

男子1 「……んー、ここってどうやって解くんだっけな……」

真冬 「……あら、わからないところでもあるのかしら?」

男子1 「あっ……き、桐須先生」 ビクッ 「そんな……大したことじゃ……」

真冬 「せっかくの自習時間だわ。分からないところは、自習監督に聞くのも手だと思うけれど」

男子1 「いや、でも、これ数学ですよ? 先生は世界史の先生じゃ……」

真冬 「当然。たとえどんな教科の内容であれ、高校レベルの問題が解けないはずないでしょう」

真冬 「……なるほど。連立合同式の証明ね。これは一工夫必要だけど、それさえ分かれば帰納法で証明できるわね」

真冬 「互いに素である条件に合致する場合、この連立合同式がどうなるのかを考えてみたらどうかしら」

真冬 「そうすれば、証明の道筋が立てられるはずよ」

男子1 「……あっ、なんかわかりそうな気がします! ちょっと考えてみます!」

真冬 「ええ。がんばって」


693以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:04:34seYST57A (5/25)

女子2 (す、すごい……)

女子1 (さすが氷の女王! 数学まで完ぺきなんて……!)

男子2 (お、俺も教わっちゃおうかな……)

男子2 「すみません、桐須先生! 俺も教えてもらいたいところが……」

女子1 「あ! その次あたし、お願いします!」

女子2 「その後で私に教えてください!」

真冬 「わかったわ。順番に回っていくから待っていなさい」

理珠 「………………」 (……まぁ、さすがといったところでしょうか)

理珠 (私には関係のないことです。私は私の勉強に集中するだけです)

理珠 (さっさとこの評論問題を解いてしまいましょう。ん……?)

 『~近畿の一部地域では、翻車魚を御御御付けの具材として用いることがある。また~』

理珠 「なっ……」

理珠 (なんですかこの漢字は……!?)

理珠 (ほんしゃぎょ……? みみみづけ……? これは一体……)


694以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:05:34seYST57A (6/25)

理珠 (漢字から推察するに、おそらく “ほんしゃぎょ” は魚の種類でしょう)

理珠 (そして、“みみみづけ” はなんらかの料理と考えられます)

理珠 (そこだけわかれば、別段この漢字の読み方が分からなくても、問題を解くことはでき――)


 『傍線部の漢字を答えなさい』

 『翻車魚           』

 『御御御付け         』


理珠 (――ないじゃないですかこれではーーー!!)

ガクッ

理珠 (……今は自習時間とはいえ授業中。しかも相手は桐須先生です)

理珠 (スマホを出したら怒られるでしょうし、この問題はもう諦めるしかないですね……)

理珠 「うぅ……」


695以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:06:16seYST57A (7/25)

………………

真冬 「――……と、いったところね。これでわかったかしら?」

女子2 「はい! ありがとうございます! よくわかりました!」

真冬 (ふぅ。まぁ、教卓で暇しているよりははるかにマシね)

真冬 (私に教えられる程度の内容で助かったわ)

真冬 「ん……?」

理珠 「うぅ……」

真冬 (緒方さん? さっきまでまじめに勉強していたのに、肩を落としているわね)

真冬 (ひょっとして何か分からない問題でもあったのかしら)

真冬 「………………」


―――― 『そんなことで本当に文系受験するつもり?』

―――― 『言われるまでもありません!』


真冬 (……どうせ私が行ったところで、彼女を不快にさせてしまうだけだわ)

真冬 (私は彼女の望む進路を否定して、教育係を投げ出した、いわば敵のようなものなのだから)


696以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:06:58seYST57A (8/25)

理珠 「………………」 ズーン

理珠 (情けないです……)

理珠 (漢字のひとつやふたつだけで、問題が進まなくなってしまうことが、本当に……)

理珠 (私は本当に文系受験なんてできるのでしょうか。勉強は進んでいるのでしょうか)

理珠 (一歩進んで、二歩下がっているような気がします……)

ズズズーン

真冬 「………………」

真冬 (……承前。然りとて、あれを放っておくこともできないかしらね)

真冬 「……緒方さん?」

理珠 「……!?」

理珠 (桐須先生……?)

理珠 「……何かご用ですか?」

真冬 「いえ、用というほどのものではないのだけれど、」

真冬 「もし勉強で困っているのなら、力になるわよ?」

理珠 「へ……?」


697以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:07:38seYST57A (9/25)

理珠 「あ……えっと……」

理珠 「この漢字の読み方が分からなくて……」

ハッ

理珠 (や、やってしまいました! 漢字程度で困っていることを知ったら、この先生のことです……!)


―――― 真冬 『あらあら、文系受験を目指されている緒方さん? こんな漢字も分からないの?』

―――― 真冬 『失笑。冗談も大概にした方がいいと思うわよ?』


理珠 (きっとこんな風に、こちらの心を抉りにくるに決まって……――)


真冬 「―――― “マンボウ” と “おみおつけ” よ」


理珠 「えっ……?」

真冬 「だから、“マンボウ” と “おみおつけ” よ。おみおつけはお味噌汁のことね」


698以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:08:15seYST57A (10/25)

理珠 「あっ……」 (メモをしておかなければ……) カリカリカリ……

真冬 「まぁ、これは初見ならば読めなくても仕方ないわね。雑学程度に覚えておくといいと思うわ」

真冬 「それにしても、この漢字の読みを答えさせるって、かなりいやらしい問題ね」

真冬 「……他に分からないことはある?」

理珠 「い、いえ、今のところはないです」

真冬 「そう。今後何か分からないことがあれば、気軽に言いなさい」

理珠 「は……はい。ありがとうございます」

理珠 (……なぜ、そんなことを言ってくれるのでしょうか)

理珠 (だって、桐須先生、あなたは……)


―――― 『笑止千万 あきらめなさい』


理珠 (そういう人だった、はずなのに……)


699以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:09:02seYST57A (11/25)

カサカサカサ……

女子1 「……?」 ハッ 「ご、ごきぶり!?」

真冬 「……!?」

女子2 「きゃー! ほんとにゴキブリいる!」

男子1 「うお、びっくりした!」

ザワザワザワ……

真冬 「し、静かに! 騒ぐようなことではないわ!」

真冬 (ど、どうしたらいいかしら。って、私がなんとかするしかないわよね……)

真冬 (私が、どうにか……)

カサカサカサカサカサカサ……

真冬 「ヒッ……」 (で、できるわけないわ!!)

女子1 「ちょっと男子! 誰かなんとかしてよ!」

男子1 「あー、俺無理だわ。虫とか苦手なんだよ」

男子2 「俺も。生き物コロすのはちょっと……」

女子2 「あーん、もう! ヘタレー!」


700以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:09:37seYST57A (12/25)

真冬 「………………」

キッ

真冬 (ここは、学校! 私は、教員! 情けないことを言っている場合ではないわね)

真冬 (いらないプリント類をまとめて丸めて……)

真冬 (これで、叩くだけ。それだけで終わるのよ、真冬)

真冬 「みっ……みんな、大丈夫よ。虫一匹くらい、私が退治するから」

理珠 (あれ、桐須先生、たしか……)


―――― 『少し……意外でした 先生……虫が苦手だったんですね』


理珠 (虫が苦手なはずですよね……?)

真冬 「大丈夫。大丈夫、だから……」 ガタガタブルブル

理珠 (……やっぱり。やせ我慢してるじゃないですか)


701以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:10:20seYST57A (13/25)

理珠 「………………」


―――― 『まぁ、これは初見ならば読めなくても仕方ないわね。雑学程度に覚えておくといいと思うわ』

―――― 『そう。今後何か分からないことがあれば、気軽に言いなさい』


理珠 (……仕方、ありませんね) クスッ

真冬 「………………」

カサカサカサカサカサカサ……

真冬 「ひっ……」 (怖い怖い怖い……でも、生徒の前で醜態を晒すわけには……――)

――――パシッ

真冬 「へ……?」

理珠 「すみません、先生。この丸めたプリント借ります」

理珠 「太郎さん一名ご来店です!」

バシッッッ!!!

理珠 「……ゴキブリ一匹程度、桐須先生の手を煩わせるまでもありません」

女子1&2 ((緒方さんカッコイイ……!!!))


702以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:11:19seYST57A (14/25)

理珠 「どなたか、ホウキとちりとりを持ってきてください」

男子1 「あ……じゃあ俺、持ってくるよ」

男子2 「あ、俺も行くよ」

真冬 「あ……では、私は職員室から消毒用のスプレーと拭くものを持ってくるわね」

理珠 「お願いします」

真冬 「………………」

トトトトト……

真冬 (……私のことなんて、好きではないでしょうに)



―――― 『すみません、先生。この丸めたプリント借ります』

―――― 『……ゴキブリ一匹程度、桐須先生の手を煩わせるまでもありません』


真冬 (まるで、私のことを庇うように、ゴキブリを退治して……)

真冬 (あまつさえ、私が虫が苦手だということを、周囲に悟られないように気遣っているようですらあった……)


703以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:11:55seYST57A (15/25)

真冬 (なぜ、そんなことをしてくれたの、緒方さん……)

真冬 (あなたは、私のことなんて、好きではないはずなのに)


―――― 『尋問のようなマネはすぐやめてください!』

―――― 『言われるまでもありません!』


真冬 (……それに、彼女にとっては、恐らく苦痛に感じるようなこともたくさん言ったわ)


―――― 『どうしたって人には 向き不向きはあるものよ 緒方さん』

―――― 『そんなことで本当に文系受験するつもり?』

―――― 『笑止千万 あきらめなさい』


真冬 (後悔はしていない。今だって、緒方さんには、できれば理系受験をしてもらいたいもの)

真冬 (でも……)

真冬 (……目標に向かって一生懸命がんばっている彼女に、また同じ事が言えるの?)

真冬 (私は……)


704以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:12:27seYST57A (16/25)

………………放課後

理珠 「ふふふ、どうですか? 成幸さん!」

成幸 「おー、まさかこの範囲を、ひとりで放課後までに終わらせてくるとはな」

成幸 「すごいぞ、緒方。えらいえらい」

ナデナデナデ

理珠 「はうっ……///」

理珠 「こっ、子ども扱いしないでください!」

成幸 「ああ、ごめんごめん。嬉しくってさ」

成幸 「難しい漢字やいやらしい問題も多かったのに、よく解けてるじゃないか。すごいぞ」

理珠 「ま、まぁ、私が本気を出せば、こんなものでしょうか」

クスッ

理珠 「……でも、本当は一箇所、桐須先生に教えてもらったところがあるのですが」

成幸 「えっ!? 桐須先生に!?」

理珠 「? そんなに驚くようなことですか?」


705以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:13:01seYST57A (17/25)

成幸 「いや、驚くことだろ……桐須先生も、一体どういう風の吹き回しだよ」

成幸 「そんなキャラじゃないだろうに……――」


真冬 「――――失礼。それは言いすぎではないかしら、唯我くん」


成幸 「のわっ……!?」

真冬 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (き、急に出てきた……心臓が飛び出るかと思った……)

真冬 「緒方さん、まだ学校にいてくれてよかったわ。話があるの」

理珠 「私に話ですか……?」

成幸 「あっ……俺、席外した方がいいですか?」

真冬 「……いえ、唯我くんなら、いてもらって構わないわ」

真冬 「……緒方さん」

理珠 「? はい」

真冬 「……その……今日は、ありがとう」

理珠 「……?」


706以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:13:35seYST57A (18/25)

理珠 「お礼を言われるようなことは何もないと思うのですが……」

真冬 「自習の時間、ゴキ――虫が出たとき、私の代わりに虫を退治してくれたでしょう?」

理珠 「ああ……」

成幸 (そんなことがあったのか……。虫嫌いの桐須先生からしたら地獄だろうな……)

真冬 「そのお礼よ。本当に助かったから……」

理珠 「なんだ、そんなことですか」

理珠 「先生が虫が苦手というのは知っていますから、当然のことをしたまでです」

理珠 「お礼を言われるようなことではないと思います」

真冬 「……いえ、私は教師だわ。ならば、生徒に頼るようなことはしてはいけないはずよ」

真冬 「また、情けない姿を見せてしまったわね。でも、あなたのおかげで、他の生徒に醜態を晒さなくて済んだわ」

真冬 「……だから、ありがとう」

理珠 (情けない姿……?)


707以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:14:08seYST57A (19/25)

理珠 「………………」


―――― 『みっ……みんな、大丈夫よ。虫一匹くらい、私が退治するから』


理珠 「……情けなくなんて、ないと思いますよ?」

真冬 「え……?」

理珠 「だって先生は、私たちのために、苦手な虫をなんとかしようとがんばっていたんですよね?」

理珠 「それを情けないなんて思う人の方が情けないと思います」

真冬 「緒方さん……?」

理珠 「私は、苦手だと分かっていても、果敢に立ち向かった先生を、すごいと思いますよ?」

真冬 「っ……///」

真冬 「せ……生徒が教員を褒めるようなことを言うものではないわ」

理珠 「む……」 プクゥ (せっかく本心を言ってあげているのに、嫌味な人ですね!)

真冬 「………………」 プイッ 「でも……」

真冬 「……嬉しいわ。ありがとう」


708以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:21:25seYST57A (20/25)

真冬 (私は……)


―――― 『昔ね…… そんな限られた大切な時間を 一時の感情で無意味な道に費やして 二度と戻れなくなった女がいたの』

―――― 『馬鹿な女よね』

―――― 『故に結論 教育者は生徒の感情の如何に依らず 才ある道に導くことに徹するべきなのよ』


真冬 (それを間違いだとは思わない。それが正しいと信じている。けど……)


―――― 『先生が 「才能」 の味方なら 俺は 「できない」 奴の味方ですから』

―――― 『私は、苦手だと分かっていても、果敢に立ち向かった先生を、すごいと思いますよ?』


真冬 (……ああ、そうね。私はもう、きっと、)


―――― 『「できない」 自分を認め 向き合えること』

―――― 『……それが 君の長所でしょう?』


真冬 (「できない」 人の 「苦手」 を、応援したいと、思ってしまっているのね……)


709以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:22:06seYST57A (21/25)

真冬 「……緒方さん」

理珠 「?」

真冬 (立場上、私は決して、この子の進路を応援することはできない。それは、私の信念を揺るがすことになるから。だから……)

真冬 「……正直、私はあなたに今からでも進路選択を変更してほしいと思ってはいるけれど、」

真冬 「でも、その道しかないというのなら、がんばりなさい。応援はできないけれど、ね」

理珠 「へ……?」

真冬 「では、ふたりとも、さようなら。日が落ちるのも早くなってきたわ。勉強もほどほどにして、早めに帰りなさいね」

成幸 「あ、はい。さようなら、桐須先生」

真冬 (願わくは、あなたの進路に、幸多からんことを)

真冬 (私のように、後悔だらけの人生を、歩まないで済みますように)


710以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:22:50seYST57A (22/25)

………………

理珠 「一体全体、桐須先生は何が言いたかったのでしょうか?」

理珠 「わけが分かりません。応援していないと言いながら、がんばりなさいとも言う……」

理珠 「私には、本当にわけが分かりません……」

成幸 「……まぁ、仕方ないよ。あの人も色々と面倒くさい人だからさ」

成幸 「ま、せっかくがんばりなさいのお言葉もいただいたわけだし、さっさと図書室行って勉強始めようぜ」

成幸 「今日の分がもう終わってるってことは、明日の分に取りかかれるってことだからな」

理珠 「はい。そうですね」 フンス 「放課後もがんばります!」

成幸 「おお、気合い入ってるな。俺もがんばらないとな」

理珠 「………………」

理珠 「がんばりなさい、ですか……」

理珠 「言われなくたって、」

クスッ

理珠 「もちろん、がんばりますよ、桐須先生」

おわり


711以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:23:34seYST57A (23/25)

………………幕間1 「眠り姫」

真冬 「自習監督の桐須です。各自、受験に向けて自由に自習をしてください」

文乃 (わーい、自習だー! バリバリ勉強して、成幸くんを驚かせるぞー!)

………………十分後

文乃 (バリ……バリ……やって……おど、ろ……むにゃ……)

文乃 (あっ……ダメ、昨日夜遅くまで勉強したから、緊張感ないと、眠気に勝てな……むにゃむにゃ……)

文乃 「………………」

Zzzz……

真冬 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

真冬 「……本当にいい度胸ね、古橋さん?」


712以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:24:34seYST57A (24/25)

………………幕間2 「それは」

文乃 「……ってことで、桐須先生に昼休みにめっちゃ怒られたよ」 ズーン

文乃 「やっぱりわたし、桐須先生に嫌われてるのかなぁ……」

成幸 「ああ……」

うるか 「うん……」

理珠 「まぁ……」

成幸&うるか&理珠 「「「それは単純に古橋(文乃)(文乃っち)が悪い(です)よ」」」

文乃 「わーん! そんなの分かってるよー!」

文乃 「だからってそんな3人で追い打ちかけなくたっていいでしょー!」

おわり


713以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:27:04seYST57A (25/25)

>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

数えてみたらこれで49個目でした。
次で50個になります。


感想、本当に励みになります。ありがとうございます。嬉しいです。
ないとは思いますが、書いてほしい題材やキャラ、設定等ありましたらレスいただければ考えます。
もしあれば、レスしていただければ嬉しいです。


また投下します。


714以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 00:46:39Ii.dLlQ6 (1/1)

おつんこっこ
キスをしないと出れない部屋の他の人バージョンとか
>>1の書きやすい人がいれば


715以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/23(土) 01:48:22Gc9tOhZM (1/1)

更新速くて嬉しい。おつです!

酔ってないデレた桐須先生が読みたいです。


716以下、名無しが深夜にお送りします2019/02/26(火) 11:19:20AlEcOYuU (1/1)

おつおつ


717以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 22:56:58BODDsAFI (1/19)

>>1です。投下します。
>>714さんのお題です。
先に言っておきますが、また夢オチです。

【ぼく勉】 成幸 「キスしないと出られない部屋?」


718以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 22:57:56BODDsAFI (2/19)

………………

成幸 「なんてことだ」

成幸 「キスしないと出られない部屋に閉じ込められてしまったぞ……」

理珠 「キス……」

理珠 「………………」


―――― 『私は別にッ』

―――― 『緒方危な……ッ』


理珠 「はうっ……」 ボフッ

成幸 (まぁ……やっぱりそうなるよな。俺も恥ずかしいし……)

成幸 (っていうか、それ以前に、だ

文乃 「キス……///」  うるか 「き、キスかぁ……///」

真冬 「バカらしいわね。まったく……」  あすみ 「その割には顔赤いですよー? まふゆセンセ?」

成幸 (普通こういう部屋ってふたりで閉じ込められるものじゃないのか!?)

成幸 (何で俺含めて六人も放り込まれてるんだ!?)


719以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 22:58:36BODDsAFI (3/19)

………………

真冬 「まず状況を整理しましょう。現状、我々は6人はこの部屋に閉じ込められている」

真冬 「電気水道ガスなどのライフラインは正常。食料も当面は心配なさそうね」

真冬 「この部屋から出る唯一の方法は、きっ……キスをすること」

真冬 「理屈は知らないけれど、キスをすれば、この部屋の鍵が開けられるそうよ」

あすみ 「改めて説明されるとわけわかんない上にアホすぎるな……」

文乃 「まぁ、その通りなんですけど……」

うるか 「キス……キス……キス……」

理珠 「うぅ……」

文乃 「約二名そのアホな状況以上にアホっぽくなっちゃってるので……」

成幸 (……さすが天才たち。状況の飲み込みと処理が早い)

成幸 (俺は未だにこのわけのわからない部屋に戸惑っているんだけど……)


720以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 22:59:27BODDsAFI (4/19)

あすみ 「………………」

ニィ

あすみ 「ま、なんにせよいつまでもここにいるわけにもいかんだろ」

あすみ 「勉強道具はないし、お前たちは学校があるだろうし、センセも仕事がありますよね?」

真冬 「まぁ、その通りだけど、かといってどうすることも……」

あすみ 「はぁ? 先生、本気で言ってます?」

あすみ 「しちゃえばいいじゃないですか、キ・ス」

真冬 「!? は、ハレンチよ、小美浪さん! そんなことできるわけがないでしょう!」

あすみ 「ハレンチて……。先生、年頃の女の子じゃないんだから……」

あすみ 「なんだったら、アタシがしますよ? なぁ、後輩?」

成幸 「!? お、俺ですか!?」

あすみ 「そりゃ男はお前しかいないんだからしょーがねーだろ?」

成幸 「べっ、べつに、男女でしろとは指定されていないんですから……」

あすみ 「ほー。つまりお前は、アタシと女子誰かの百合百合しいキスを見たい、と?」

あすみ 「このスケベ♪」


721以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:00:09BODDsAFI (5/19)

成幸 「ち、違いますよ! そういうことじゃないです!」

文乃 「へぇ……。成幸くんそういう趣味なんだ」 ジトーーッ

理珠 「そういえば、私と関城さんが一緒にいるとき、ときどきいやらしい視線を感じます……」 ジトーーッ

うるか 「あたしがリズりんのおっぱい揉んでるときも顔を真っ赤にしてたよね」 ジトーーッ

真冬 「ふっ、不潔! 唯我くん、あなたは女子をどういう目で見ているの!」

成幸 「だから違いますってば!」

あすみ 「こんな後輩の前で女子同士キスなんかしようもんならどうなるか分かりませんよ?」

あすみ 「後輩の夜のお供にされちゃうかもしれないですね、センセ?」

真冬 「夜のお供? 一体それは何の話かしら?」

理珠 「?」  うるか 「???」

文乃 「せっ、先輩、何言ってるんですか! もうっ……///」

あすみ (マジかよ。古橋以外全員訳分からない顔をしてるぞ。先生まで……)

成幸 「?」

あすみ 「ってお前もかよ!」


722以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:00:40BODDsAFI (6/19)

あすみ 「……オホン。何にせよ、後輩の前で女子同士のチューは御法度ということで、」

成幸 「すごく釈然としませんけどもうそれでいいです」

あすみ 「しっ、仕方ねーから、アタシがキスしてやるよ。光栄に思えよ?」

うるか&理珠&文乃 「「「!?」」」

成幸 「へ……!? ほ、本気ですか先輩!?」

あすみ 「仕方ねーからだって言ってるだろ。べつに、アタシだってしたいわけじゃないけどさ……///」

あすみ 「ほら、後輩、こいよ」

成幸 (誘い方がめっちゃ男らしい……)

成幸 「え、えっと……」

真冬 「待ちなさい。それは不純異性交遊に当たるわ。教師として許可できません」

真冬 「キスとは、とても神聖なことのはずよ。強制されてするものではないわ」

あすみ 「っ……」

成幸 (考え方意外と乙女なんですね、先生……)


723以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:01:30BODDsAFI (7/19)

理珠 「そ、その通りです! 以前、成幸さんも言っていました!」


―――― 『キスというのは女子にとって…… いや男子にとっても神聖なものでなくてはならんのだ!!』


成幸 「!?」

うるか 「へぇ~……」 ジトーッ

文乃 「成幸くん、りっちゃんにキスの講釈を垂れるなんて、すごいね」 ジトーッ

うるか 「そういえば、一学期に誰かとキスしたんだもんねー」 ジーーーーッ

文乃 「一体誰とキスしたんだかねー」 ジーーーーッ

成幸 (なぜ俺が針のむしろに……!?)

理珠 「……!?」 ビクッ

真冬 (……やはり、事故とはいえ、唯我くんと接吻をしてしまった緒方さんは辛そうだわ)

真冬 (教育者として、そんな緒方さんにこれ以上キスの話を聞かせるわけにはいかない。早急に手を打たなければ……)

真冬 (……致し方ないわね)


724以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:02:22BODDsAFI (8/19)

真冬 「……生徒に変な役目を与えるわけにはいきません」

成幸 「せ、先生……!」 パァアアアアアア……!!!

成幸 (さすがは桐須先生だ。キスなんてバカげた解決方法に頼らない手を考えてくれたんだ……)

真冬 「唯我くんには申し訳ないことをしてしまうけれど、私が唯我くんとキスをします」

成幸 「今の話の流れで何でそうなるんですか!?」

あすみ 「へぇー?」 ニヤリ

あすみ 「アタシはもう生徒じゃないんだから気にする必要ないんじゃないですか?」

真冬 「……? 何が言いたいのかしら、小美浪さん?」

あすみ 「ひょっとして先生、後輩とキスしたいだけなんじゃないですかー?」

真冬 「なっ……」 カァアアアア…… 「憤慨! なんてことを言うの、小美浪さん!」

あすみ 「そんな顔を真っ赤にして、ますます怪しいなー?」

真冬 「こっ……小美浪さんっ!」


725以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:03:13BODDsAFI (9/19)

成幸 (ああもう、また先輩、先生のことからかって遊んでるよ……)

成幸 (先生も乗せられやすいんだから……)

チョンチョン

成幸 「ん……? うるか?」

うるか 「ねぇねぇ、成幸。早くこんな部屋出て、勉強したいよね?」

成幸 「まぁ……そりゃそうだけど……」

うるか 「……ん、じゃあ……」 カァアアアア…… 「さっさと、出なきゃだよね」

成幸 「あ、ああ、そう、だな……? いや、ちょっと……」

成幸 (何でどんどん距離を詰めてくるんだうるか!?)

うるか 「動かないでよ、成幸。あたしだって恥ずかしいんだからさ……」

成幸 「いや、待て、うるか、お前、まさか……わっ」

ドテッ

成幸 「いててて……っ!?」

うるか 「えへへ……もう逃げられないよ、成幸っ」


726以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:03:51BODDsAFI (10/19)

成幸 (ま、まずい! このままじゃ、うるかにキスを……)

成幸 (うるかと、キス……)


―――― 『だからずっと…… ちゃんと見ててねっ!!!』


成幸 「っ……///」

うるか (えへへ……成幸と、キス……キス……)

グイッ

うるか 「ふぐっ……」

文乃 「ストップだよ、うるかちゃん。どうどう」

うるか 「文乃っち! 何するのさー!」

文乃 「……ねぇ、うるかちゃん、気づいてる?」

文乃 「倒れた成幸くんに覆い被さってるうるかちゃん、控えめに言って痴女さんみたいだよ?」

うるか 「ふぇっ……!?」 ハッ 「ち、違うよ!? あたし、その……」

うるか (あたし、一体何やってんのー!?)


727以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:06:07BODDsAFI (11/19)

成幸 「ふぅ、助かった……」

文乃 「大丈夫、成幸くん?」

成幸 「ありがとな、古橋。うるかの奴、一体どうしたんだか……」

文乃 (うん。それで気づかないあたり君は本当に君だよね、成幸くん)

文乃 「………………」 チラッ

理珠 「はうぅ……///」

あすみ 「先生、どんだけ後輩とキスしたいんですかー?」

真冬 「だ、だから違うと言っているでしょう!」

うるか 「うぅ……あたしってば、なんて大胆なことを……///」

文乃 (……みんな、なんかすごいことになってるなぁ)

文乃 (……ひょっとしてひょっとすると、これは)

文乃 「……チャンス、かな」 ボソッ


728以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:06:39BODDsAFI (12/19)

成幸 「ん? なんか言ったか、古橋?」

文乃 「……ううん。なんでもないよ」

文乃 (そう、そうだよ)

文乃 (うるかちゃんとりっちゃんは言わずもがな成幸くんのことが大好きだし、)

文乃 (小美浪先輩は成幸くんと恋人のフリをしてるらしいし、)

文乃 (桐須先生は定期的に成幸くんを家に招いているらしいし……)

文乃 (……うんうん。そういう人たちに、キスを義務的にさせるなんて、やっぱりダメだよね)

文乃 (その点わたしは、成幸くんのことを弟としか思っていないから問題ないし)

文乃 (ここは、わたしがキスをするべきかな!)

文乃 「………………」

文乃 (べつに、わたしが成幸くんとキスをしたいわけじゃないからね!)


729以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:07:19BODDsAFI (13/19)

文乃 「ねぇ、成幸くん」

成幸 「ん?」

文乃 「わたしは君のお姉ちゃんです」

成幸 「……は?」

文乃 「わたしは君のお姉ちゃんです」

成幸 「いや、えっと……」

文乃 「……わたしは君のお姉ちゃんです」

成幸 「は、はい。文乃姉ちゃん……」

文乃 「よろしい。わたしは君のお姉ちゃんなので、何の問題もありません」

成幸 「いや、あの……えっと、何の話?」

文乃 「だから……っ」

文乃 「わたしと君は姉弟だから、キスをしても何の問題もないって言ってるの」

成幸 「お前まで何とち狂ったこと言ってんだ!?」


730以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:07:56BODDsAFI (14/19)

理珠 「む? 何をしているのですか、文乃」

うるか 「!? 文乃っち、ひょっとして成幸とキスしようとしてる!?」

文乃 「へっ!? いやいやいや、そんなことしてないよ!?」

真冬 「ダメよ、古橋さん! そんなそんな役目、あなたにさせるわけにはいかないわ!」

あすみ 「そんなこと言って後輩とキスしたいだけのくせにー」

真冬 「なっ……! だ、だからそうではないと言っているでしょう!」

ワーワーギャーギャー

成幸 (あ……阿鼻叫喚だ……。止めないと)

成幸 「みんな、ちょっと落ち着いて……」

ドン!!!

成幸 「わっ……!?」 (誰かの手が当たって、バランスが……!)


731以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:08:45BODDsAFI (15/19)

コケッ

成幸 「うおっ……!?」 (やば! 倒れ……!)

文乃 「!? 成幸くん、危ない!」

理珠 「成幸さん!」

うるか 「成幸!」

真冬 「唯我くん、手を……!」

あすみ 「後輩!」

ドタドタドタッ……!!!

成幸 「……!?」

チュッ……

?? 「あっ……」

?? 「今、くちびる、当たって……」

成幸 (い……今のって、キス……?)

……………………………………

…………………


732以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:09:19BODDsAFI (16/19)

………………唯我家

成幸 「……ん……あっ……」

成幸 「……き……キス!?」

ガバッ

成幸 「………………」

成幸 「……夢、か」

成幸 「夢……」


―――― 『今、くちびる、当たって……』


成幸 「っ……」 カァアアアア……

成幸 「いや、でも、夢だし。うんうん。夢だから、べつに……」

成幸 「………………」

成幸 (……いやキスする夢を見るってヤバいだろ常識的に考えて!!)

成幸 (っていうか 『キスしないと出られない部屋』 !? バカなのか俺は!?)


733以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:09:56BODDsAFI (17/19)

成幸 (……いや、いやいや、それより)


―――― 『後夜祭で打ち上げられる一発目の花火』

―――― 『そいつが上がった瞬間に触れ合っていた男女は 必ず結ばれるんだってさ……』


―――― 『あ……ありが……』


成幸 (あのときと、同じ相手……)

ドキドキドキドキ……

成幸 (俺は……)

成幸 (ひょっとして、あのときのことを意識してるのか……?)

成幸 「………………」

成幸 (“必ず結ばれる” か……)

成幸 (……いやいやいや)

成幸 (何を考えてるんだろうな、俺は。恥ずかしい)


734以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:10:28BODDsAFI (18/19)

………………???

?? (っ、何で、あんな夢……)

?? (『キスしないと出られない部屋』 なんて、何を考えて、そんな……)

?? 「………………」


―――― チュッ……


「っ……///」

ソッ……

?? (残ってる、この、くちびるに……)

?? (彼とのキスの、感触が……)

?? 「……えへへっ」

おわり


735以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/02(土) 23:13:28BODDsAFI (19/19)

>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

>>714さんが期待したようなのかは分かりませんが、お題ありがとうございました。
>>715さんのもすぐに書けると思います。

また投下します。


736以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/03(日) 00:25:20jWKUPpx6 (1/1)

おつつつ


737以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/03(日) 01:51:41EzaVMotg (1/1)

控えめに言って最高だわ


738以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/03(日) 09:29:02hPSwbrG6 (1/1)

からかう先輩もからかわれる先生もかわいい


739以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/03(日) 14:28:063OoVCj/I (1/1)

おつ


740以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:12:17./mOxEco (1/53)

>>1です。投下します。

【ぼく勉】 成幸 「あの日、この境内で」


741以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:12:58./mOxEco (2/53)

………………夕方 図書館

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

カリカリカリ……

成幸 「んっ……。もうこんな時間か」

成幸 「先輩、そろそろ帰りませんか? 日が暮れちゃいますよ」

あすみ 「ん? ああ、いつの間にか夕焼けだな。時間経つのはえーなー」

成幸 「それだけ集中できてるってことですね。いいことです」

あすみ 「あんまり問題が解けてないのがアレだけどな。はぁ……」

成幸 「焦っても仕方ないですよ。ちゃんと理科系科目の苦手潰しは進んでるんですから」

あすみ 「……ま、そうだな。今日もありがとよ、センセ」

あすみ 「じゃ、まぁ、帰るとするか」

成幸 「はい! 暗くなるといけないですから、送っていきますよ、先輩」

あすみ 「ん……」 プイッ 「じゃあ、ま、お願いするわ」


742以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:13:54./mOxEco (3/53)

………………帰路

成幸 「……なので、その値は無視できます。測定結果に影響を与えない微量ですから」

あすみ 「んあー、そうか。いちいち有効数字で考えないといけないか……」

成幸 「加算と乗算ではそのあたりも意味合いが変わってきますから、」

成幸 「常識の範囲内で、その数字が計算に必要かどうかを判断するといいと思いますよ」

あすみ 「ん、頭に留めとくわ」

あすみ 「ん……?」

成幸 「あ、神社……ここって……」

あすみ 「?」

成幸 「……この神社、なつかしいな。」

あすみ 「なつかしい? この辺、昔来たことあるのか?」

成幸 「……まぁ、そうですね。最近はあまり寄ることもなかったですけど」


743以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:15:46./mOxEco (4/53)

あすみ 「ふーん、そっか。偶然だな。アタシも昔はよくここに来てたよ」

成幸 「先輩もですか?」

あすみ 「うちから一番近い神社だからな。それに、思い出の場所でもあるから……」

成幸 「思い出……?」

あすみ 「あ、いや、なんでもねーよ。そんな大した話じゃねーし」

成幸 「そうですか。いや、実は俺もこの神社には思い出……というよりは、思い入れがあるんですよ」

あすみ 「……? 後輩?」

成幸 「……すみません、先輩。少し寄っていってもいいですか?」

成幸 「久しぶりにお参りをしていきたいんです」

あすみ 「……ん、わかった。ついでだ。アタシもお参りしてくとすっかな」


744以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:17:46./mOxEco (5/53)

………………神社

チャリンチャリン……パンパン

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

チラッ

あすみ (……熱心な顔してまぁ。何をお願いしてるんだか)

あすみ (まぁ、受験生なんだから、当然志望校への合格とかだろうけどな)

成幸 「………………」

パチッ

成幸 「……お待たせしました、先輩」

あすみ 「いやいや、べつに待っちゃいねーよ。何をお願いしてたんだ?」

成幸 「お願いはしてないです。ただ、ありがとうございました、って」

あすみ 「?」

成幸 「あ、いや……」 アセアセ 「すみません、わけ分かんないですよね」

成幸 「大したことじゃないんです。忘れてください」


745以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:18:21./mOxEco (6/53)

あすみ 「意味深なことばっか言いやがって。気になるだろ」

あすみ 「……お前がいいなら、教えてくれよ。この神社にどんな思い入れがあるんだ?」

成幸 「あ、えっと……」

成幸 「……ほんとに、大した話じゃないですよ? それに、楽しくもない話だし……」

あすみ 「アタシが気になるから聞いてんだ。もしお前がいいってんなら、」

あすみ 「受験勉強の息抜きだ。ここで少し話してくれよ。お前の昔の話をさ」

ニィ

あすみ 「やっぱりカノジョとしては、気になるだろ? カレシの昔の話なんて」

成幸 「もう、先輩は……」

ハァ

成幸 「……分かりました。じゃあ、話します。あれは、もう五年以上前のことかな」

成幸 「中学に上がってすぐくらいの連休に、高熱を出したんです」

………………………………

………………


746以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:18:56./mOxEco (7/53)

………………五年前 春 深夜

水希 「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」

成幸 「あ……ああ、水希……ゴホッ、ゴホッ……」

成幸 「うつるといけないから、離れてなさい……ゴホッ……」

水希 「お母さん! お兄ちゃんすごく辛そうだよ! 熱も全然下がらないし……」

水希 「40度越えてるんだよ!」

花枝 「分かってるわよ。でも、救急車は全部出払っているって言うし、かかりつけのお医者さんもお留守だし……」

花枝 「救急センターの人も、近隣で開いてる病院はないって言うし……」

成幸 「ゲホッ……ゴホッ……」 ゼェゼェゼェ…… 「ごめん、母さん……」

成幸 「父さんがいない、から……俺が、しっかりしてなきゃいけない、のに……」

花枝 「っ……」

花枝 (……そう。あの人はもういない。子どもを守れるのは、私だけ)

花枝 「……水希」

水希 「? 何?」


747以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:19:30./mOxEco (8/53)

花枝 「もう五年生よね? ひとりでお留守番できる?」

花枝 「ひとりでお兄ちゃんのこと看ていてあげられる?」

水希 「え……? それは、大丈夫だけど……お母さんは?」

花枝 「私は……」

スッ……スッ……」

葉月&和樹 「「………………」」 Zzzz……

花枝 「葉月と和樹を連れて、人がいる病院を探してみるわ」

花枝 「閉院していても、人がいれば開けてくれるかもしれないから」

水希 「お母さん……」

花枝 「大丈夫よ、水希。つらい思いをさせてごめんなさいね。お兄ちゃんのことよろしくね」

水希 「………………」 コクッ 「うん! 大丈夫! お兄ちゃんのことちゃんと看てるから!」

水希 「お母さん、気をつけてね。何かあったらすぐ戻ってきてね」

花枝 「ええ。それじゃ、いってくるわ。戸締まりをしっかりね」


748以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:20:05./mOxEco (9/53)

………………

ドンドンドン

花枝 「……すみません! どなたかいらっしゃいませんか!」

シーン

花枝 「っ……」

花枝 (……これで五軒目。連休中だからでしょうけど、どこもお留守だわ)

花枝 (まだまだ。何軒回ってでも、お医者さんを探さなくちゃ……)

花枝 (水希が待ってる。成幸がつらい思いをしている。それなら、私がへばってる場合じゃない……)

葉月&和樹 「「………………」」 Zzzz……

花枝 「……ふふ、あんたたちは良い子ね、葉月、和樹」

花枝 「あんたたちが寝てくれているだけで助かるわ。ありがとう」


749以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:20:46./mOxEco (10/53)

………………数時間後

花枝 「………………」

ゼェ、ゼェ、ゼェ……

花枝 (小さな、個人経営の病院……)

花枝 (灯りは、ついていない……)

花枝 (お願い。誰か、いて……)

ドンドンドン

花枝 「夜分にすみません! どなたかいらっしゃいませんか!」

花枝 「………………」

花枝 「っ……」 グスッ 「っ……ふぐっ……うっ……」

花枝 (……どうしよう。どうしたらいいの?)

トボトボトボ……

花枝 (もし、成幸にもしものことがあったら、私は……)

花枝 (とにかく、一度家に戻って、なんとか……――)

――――――カランカラン……


750以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:21:28./mOxEco (11/53)

花枝 「へ……?」

花枝 「神社……?」 (いつの間に、こんなところに……?)

花枝 (神社、か……)

花枝 「………………」

パンパン!!!

花枝 「……お願いします! 神様! 助けてください!」

花枝 「お願いします! お願い! お願い……」

花枝 「……お願い、だから……――」



   「――……どうかしたかね?」



花枝 「へ……?」

?? 「こんな夜更けに抱っこひもひとつで小さなお子さんと一緒に歩き回っているとは……」

?? 「何か事情がおありのようだ。私は医者だ。もし力を貸せることがあれば、何なりと言ってほしい」

花枝 「あっ……あの! た……助けてください!」


751以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:22:42./mOxEco (12/53)

………………現在

成幸 「……とまぁ、そんな風に、この神社でお医者さんと出会ったんだそうです」

成幸 「それ以来、母さんに連れられて、この神社にお参りすること何度かあったんですよ」

あすみ 「………………」

あすみ 「……えっ、いや、まさか、いや、いやいや……」

成幸 「? 先輩?」

あすみ 「へっ!? あ、すまん。なんでもない……」

あすみ 「にしても、ドラマみたいなことがあるもんだな」

成幸 「俺も母さんから話を聞いただけだからどこまでほんとか分かりませんけどね」

成幸 「まぁ、この神社でそのお医者さんと出会ったのは本当にただの偶然でしょうけど、」

成幸 「でも、母さんにしてみたら、この神社の神様がそのお医者さんと巡り合わせてくれたと思うでしょうね」

あすみ 「……まぁ、だろうな」

あすみ (……五年前の春。アタシも、そんな話を聞いた事がある)

あすみ (他でもない、アタシの親父から。ここで、急患と出会ったと)


752以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:23:25./mOxEco (13/53)

………………五年前

あすみ 「……ったく、親父帰ってくるのおせーなー」

あすみ 「飯作っとけって言ったなら、せめて時間通りに帰ってこいっての」

ドタバタドタバタ……

あすみ 「ん、帰ってきたか。おい、おせーぞ、親父――」

小美浪父 「あすみ、急患だ。悪いが、診療所を開けてくれ。それから入院用のベッドの準備も頼む」

あすみ 「はぁ!? この時間からか!?」

あすみ 「っていうかあんた、今時間外の往診行ってきたばっかだろうが!」

小美浪父 「急患を見つけてしまったのだから仕方ないだろう。いいから早くしろ」

小美浪父 「重度の肺炎だ。命に関わる可能性もある」

小美浪父 「奥さん、とりあえずこの毛布の上に寝かせてあげてください」

花枝 「は、はい」

成幸 「……ゴホッ……ゲホッ……」


753以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:23:59./mOxEco (14/53)

あすみ 「っ……」 (本当に辛そうだ。ありゃ高熱が出てるな)

あすみ (その上呼吸も満足にできないんじゃきついだろうな)

あすみ (……ったく。お節介な親父だな)

あすみ 「親父、院内処方用の新しい抗生物質、まだ倉庫から出してねーから後で持ってくる」

あすみ 「解熱剤はいつものとこに入ってる」

小美浪父 「む、分かった」

あすみ 「あと、ストレッチャーと点滴カートも用意するけど、他なんかいるか?」

小美浪父 「今はそれだけでいい。もう寝る時間だというのに、いつもすまんな、あすみ」

あすみ 「ほんとにいつものことだから気にしなくていいよ。小遣いさえ弾んでくれればな」

タタタタタ……

あすみ (……ま、文句垂れつつも親父の手伝いしちまうアタシも、相当アレだけどな)


754以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:24:54./mOxEco (15/53)

………………

あすみ 「……ふー」 (……さすがにこの時間にドタバタ走り回ると疲れるな)

小美浪父 「奥さん、もう大丈夫ですよ。熱が下がり始めています」

小美浪父 「抗生物質も点滴で投与しましたから、すぐによくなりますよ」

花江 「あっ……ありがとうございます!」

成幸 「………………」 Zzzz……

花江 「よかった……」 ポロポロポロ 「本当に、よかった……っ」

花江 「なんてお礼を言ったらいいか……」

小美浪父 「そんなことは気にしなくていい。奥さんも夜の街を走り回って疲れだろう」

小美浪父 「患者の容態は安定しているから、大丈夫。心配でも隣のベッドで休んでいなさい」

花江 「すみません……。あ、でも、娘たちが……」

あすみ 「ああ、一緒についてきた女の子と双子ちゃんたちですか?」

あすみ 「それならアタシが見ときますし、隣の部屋で寝かせますよ」

小美浪父 「ああ、すまんな。頼むぞ、あすみ」


755以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:25:43./mOxEco (16/53)

………………廊下

水希 「………………」

あすみ 「よっ」

水希 「……!? び、病院の方!」 ガバッ 「あの、お兄ちゃんは!?」

あすみ 「ん、もう大丈夫だよ。解熱剤で熱も下がり始めたし、抗生物質も打った。問題ないよ」

あすみ 「でも、肺炎のウイルスは子どもにうつりやすいから、今は病室に入らない方がいい」

水希 「……はい」

あすみ 「ん。心配だろうけど、我慢できて偉いな。よしよし」 ナデナデ

葉月&和樹 「「………………」」 Zzzz……

あすみ 「……この子たちも良い子たちだな。あれだけ騒いでるのに眠りっぱなしだ」

水希 「……はい。本当に。助かってます」

あすみ 「お前も疲れただろ? 隣の部屋のベッド用意しておいたから、寝ろよ」

あすみ 「そのおチビちゃんたちはアタシが見てるからさ」


756以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:26:16./mOxEco (17/53)

水希 「………………」

水希 「……いえ、帰ります」

あすみ 「お、おいおい。もう深夜だぞ? さすがにお前たちだけで帰せねーよ」

水希 「……だって、」

水希 「お兄ちゃんの治療費だって出せるか、わからないのに……」

水希 「その上、入院費用とか、わたしたちの宿泊費用なんて……」

水希 「……そんなの、払えるわけないもん」 グスッ

あすみ 「……あー、なるほど」

あすみ 「あんまり裕福じゃないのか、家?」

水希 「……お父さん、死んじゃった、から……」

あすみ 「そっか……。大変なんだな」

あすみ 「……でも、大丈夫。その点は心配いらねーよ」

あすみ 「大変遺憾なことに、うちの親父は、経営のセンスがゼロだからさ」

水希 「……?」


757以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:26:51./mOxEco (18/53)

………………翌日

コンコン

小美浪父 「……? どうぞ」

花江 「失礼します……。すみません、お仕事中に」

小美浪父 「構いませんよ。どうかしたかな?」

花江 「あの、その……お世話になっておいて、大変厚かましいというか、恥ずかしいことなのですが……」

花江 「実は、その、あまり……家に、お金がなくてですね……」

花江 「もちろん、お題はお支払いします。入院費も、私や娘たちの宿泊費も含めて」

花江 「……ですが、その、支払いを待っていただくことは、できないでしょうか?」

花江 「割賦にしていただけると、助かるのですが……」

小美浪父 「………………」

花江 「……っ」

小美浪父 「……あっ、しまった! あー、やらかしてしまったなー。困ったぞー、これは」

花江 「えっ……?」


758以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:27:33./mOxEco (19/53)

小美浪父 「私はあなたに、息子さんの健康保険証の提示を求めるのを忘れておりました」

花江 「へ? あ、保険証ならここに……――」

小美浪父 「いやいや、医師法によって、保険証の提示は治療前に求めなければならないと規定されているんですよ」

花江 「え? えっと……」

小美浪父 「いやー、しまった。院内処方の薬も、健康保険なしでやってしまったなー」

小美浪父 「あー、これは明確な医師法、薬事法違反だ。まずいぞー。これはー」

小美浪父 「……そこで、奥さん、ひとつ相談なんですがね」

花江 「……?」

小美浪父 「このままでは私は、医者としてしてはいけないことをしてしまったことになる」

小美浪父 「なので、息子さんの診療記録や入院記録、そして娘さんたちの宿泊の記録もつけないことにする」

小美浪父 「……記録がないなら、お金も取りようがないですね?」

花江 「え……?」

小美浪父 「……と、いうことで、ご相談だ。今回の診療、なかったことにしてくれますね?」


759以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:28:45./mOxEco (20/53)

………………ドアの外

あすみ 「……な? うちの親父、経営のセンスゼロだろ?」

水希 「………………」

あすみ 「……?」

水希 「っ……ひぐっ……」 ポタッ…… 「ふ……ぐっ……」 ポタポタポタ……

あすみ 「!? お、おいおい、妹ちゃんよ、何も泣くことはねーだろ」

水希 「……ありがとう……ありがとう、ございます……!」

あすみ 「よーしよし。泣くの我慢しなくていいぞー」 ギュッ 「お前もがんばってんだなー」

あすみ 「小さい弟妹がいるから、気抜けないんだよな。その上、お父さんもいないんだもんな」

あすみ 「それで大好きなお兄ちゃんが倒れちまって、怖かったんだよな」

あすみ 「今はアタシがいるから、たくさん泣いていいぞー」 ナデナデナデ

水希 「ひぐっ……うぇ……うぇええええええええええええええん!!」

あすみ 「よしよーし。がんばったなー。えらいなー。大丈夫だぞー」

あすみ (……ったく。またロハで仕事しやがって親父の奴) クスッ

あすみ (ま、でも……そんな親父だからこそ、アタシも……医者になりたいって思うんだけどさ)


760以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:29:55./mOxEco (21/53)

………………現在

成幸 「……実際、病院ではそんな感じだったみたいですよ?」

成幸 「って言っても、やっぱり俺は熱のせいであんまり覚えてないんですけどね」

あすみ 「………………」

あすみ (……あー、うん。まさかあのときの急患が後輩だったとは)

あすみ (そういやあんとき肺炎になってた子ども、よく思い出してみるとこいつそっくりだな)

あすみ (……あのとき、本当に感謝してくれる妹ちゃんとお母さんを見て、)

あすみ (医者になりたいと強く決心することができた。アタシにとっても、この神社の巡り合わせは大切な思い出だ)

成幸 「俺はそのお医者さんたちにまだ会ったことないんですよ」

成幸 「でもいつか、俺がお金を稼げるようになったら、お礼をしにいくつもりです」

成幸 「会って、直接、お礼を言いたいし、ちゃんと治療費も払いたいですから」

あすみ 「………………」

クスッ

あすみ 「……だな。いつか、会ってお礼が言えるといいな、後輩」

成幸 「はい!」


761以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:30:32./mOxEco (22/53)

………………小美浪診療所

コンコンコン

小美浪父 「? どうぞ?」

花江 「失礼します。お久しぶりです、先生」

小美浪父 「……またあんたか。何度来れば気が済むんですか?」

花江 「何度来ても変わりませんよ。先生がお金を受け取ってくれるまでは」

小美浪父 「何度も言うがね、私はあの日の診療記録も何も持ってない」

小美浪父 「健康保険の診療記憶にも残っていないはずだ」

小美浪父 「だから、奥さんからお金をもらうことはできないんだよ」

花江 「分かってます。だから、三割負担でなく、十割負担の金額を用意してあるんです」 ニコッ

小美浪父 「いや、だから、そういうことじゃなくてだね……」

花江 「ま、いいです。受け取ってくれるのはいつでも」

花江 「今日は普通に診療してもらおうと思って来たんです。来る途中でちょっとこけちゃって……」

小美浪父 「む、それはいけない。さっそく治療を……」


762以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:31:42./mOxEco (23/53)

花江 「その前に、はい、健康保険証。またお代を払えなかったらたまったもんじゃないですからね」

小美浪父 「……奥さん、あんたは私を何だと思ってるんだ?」

小美浪父 「……ん? んんん???」

花枝 「? どうかされました?」

小美浪父 「…… “唯我” ? 唯我さん、とおっしゃるのか」

花枝 「……あれ? 名乗ってませんでしたっけ?」

小美浪父 「……唯我、成幸、くん。ああ、そうか。なるほど。あのときの子が……」

花枝 「? 先生?」

小美浪父 「……奥さん。いや、唯我さん。ひとつだけお願いがあるんだが、」

花枝 「何ですか?」

小美浪父 「……うちの娘を、息子さんの嫁にもらってやってくれないだろうか?」

花枝 「!?」 キラン 「その話、詳しくお聞かせ願えます!?」

おわり

次回! 暴走する小美浪家の父! 唯我家の母!
唯我家・小美浪家、結納編突入!
うそです。


763以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:34:31./mOxEco (24/53)

>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

過去の妄想をしていたら止まらなくなって書きました。
二次創作としてはわたしもあまりいい手とは思いません。
当然、あまり愉快に思わない人もいると思います。申し訳ないことです。

>>715さんのもすぐに投下できると思います。お待たせしてしまっていたらすみません。

また投下します。


764以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:49:410UL9UOoI (1/1)


結納編気になるな


765以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 00:53:10./mOxEco (25/53)

連投すみません。>>1です。
IME任せにしてたら名前の漢字をいくつか間違えていました。申し訳ないことです。
以後気をつけます。
それから>>758あたりの法律関連の話は厳密に言えば間違ってるので一応注意をしてください。(そんな話を始めたら病院周りの描写は矛盾点や間違いだらけなのですが、悪しからず)

ともあれ、ここのところ少しノリと勢いだけで書きすぎかなと思います。
がんばりますので、今後も読んでいただけると嬉しいです。


766以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 07:54:10P90oUCa. (1/2)

おつ
ずいぶんと本格的なスレだな


767以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 12:44:39V.HkGXtE (1/1)

これは運命ですね


768以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 12:54:00YslaApJ2 (1/1)

>>715だけど、>>1のペースで書いてくれ

おつでした


769以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:35:46./mOxEco (26/53)

>>1です。投下します。

【ぼく勉】 文乃 「手に入れたかったのなら」


770以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:36:17./mOxEco (27/53)

………………問94直後

文乃 「……はぁ」


―――― 『わーっ 大っきいドハっちゃん!』

―――― 『じゃあ 古橋にやるよ』

―――― 『ええっ!! いいの!? ありがとー!!』

―――― ((また…… 成幸くんからプレゼント……)) ぎゅ……

―――― 『そんなに…… 好きなのか?』

―――― 『ぜ……ッ 全然っ ちがいますけどっ!!!』

―――― 『じゃあさ…… ぶしつけで悪いんだが…… アタシがもらっても……いいか?』


文乃 (あの大っきいドハっちゃん、本当だったらわたしがもらっていたのにな……)

モヤモヤモヤモヤ

文乃 (……一回、わたしにくれたのに)

文乃 (成幸くんの、バカっ……)


771以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:37:28./mOxEco (28/53)

文乃 「………………」

文乃 (……なんて、ね)

文乃 (あれは元々成幸くんのもので、誰にあげるかを決めるのは成幸くんだもんね)

文乃 (小美浪先輩は、ドハっちゃんが大好きなんだもんね)

文乃 (そんな先輩に、ドハっちゃんをあげるのが、自然だよね……)

文乃 (そう。それでいい。それでいいはずなんだ)

文乃 (本当に好きな人が、好きなものを手に入れた方がいいに決まってる)

文乃 (手に入れたいのなら、欲しいと思わなくちゃいけない……)

文乃 (だから……)


―――― ((うん 大丈夫 絶対ない))

―――― ((絶対好きになんてなるはずがない 友達が 好きな人のこと))

―――― 『もー先輩…… そんなに好きなら最初から素直に言ってくれればいいのに……』


文乃 「っ……」 ズキッ


772以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:38:00./mOxEco (29/53)

………………翌日 一ノ瀬学園

うるか 「でね! 例の友達がね、やっぱりあきらめたくないって!」

うるか 「本気で、一番を取りたい……本当に、成ゆ――男の子の一番になりたいんだって」

うるか 「そのために、がんばる。本気で、一番になる。ずっと、自分のことを見ていてもらいたいから!」

うるか 「えへへ、それで、文乃っちにお礼を言ってほしいって言ってたから、代わりに言うね?」

うるか 「ありがとう、文乃っち!」

文乃 「……うん。どういたしまして。そのお友達によろしくね」

文乃 (ふふ、相変わらずバレバレだけど、可愛いなぁうるかちゃん)

文乃 (とうとう、気持ちを固めたんだね)

文乃 (成幸くんの一番になるって、決めたんだね)

文乃 (そっか……)

うるか 「ん、もうこんな時間! 今日は部活に顔出す約束だからもう行くね!」

うるか 「じゃーねー、文乃っち!」

文乃 「うん。練習がんばってね。また明日、うるかちゃん」

文乃 「………………」 ハァ 「……今日は勉強会の約束もないし、帰ろっかな」


773以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:38:31./mOxEco (30/53)

理珠 「おや、文乃ではないですか」

文乃 「あ、りっちゃん。今帰り?」

理珠 「はい。今日はお店のお手伝いなので」

文乃 「そっか。じゃあまっすぐ帰らないとだね」

文乃 「………………」

文乃 「……もしよかったら、わたしも一緒に帰ってもいいかな」

文乃 「久々にりっちゃんの家でうどんが食べたいな、って」

理珠 「本当ですか。嬉しいです」 フンスフンス 「一緒に行きましょう!」

文乃 「うん!」

文乃 (なんか昨日からモヤモヤして落ち着かないけど!)

文乃 (りっちゃん家のおうどん何杯か食べればきっと落ち着くよね!)


774以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:39:02./mOxEco (31/53)

………………帰路

理珠 「ふむふむふむ……」

ペラ……ペラ……

文乃 「もー、りっちゃん。歩きながら参考書読んだら危ないよ」

文乃 「成幸くんじゃないんだから……」

理珠 「……あっ、すみません、つい」

理珠 「たしかに今のは、成幸さんみたいでしたね……」

文乃 「まったくもう。りっちゃんは成幸くんに影響受けすぎだよ」

文乃 「ほんとに……」

文乃 (……ほんとに、成幸くんのこと、大好きなんだね、りっちゃん)

理珠 「………………」

理珠 「……そう、ですね」 クスッ 「春に出会って、まだ半年ほどしか経っていないのに、」

理珠 「成幸さんに、どれだけお世話になってるか。だから、つい真似もしてしまいます」

文乃 (あれ……? 少し怒るかと思ったけど……)

文乃 (りっちゃん、なんか嬉しそうだな……)


775以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:39:39./mOxEco (32/53)

文乃 「……りっちゃんは、さ」

理珠 「? はい?」

文乃 「成幸くんのこと、どう思ってるの?」

理珠 「へ……?」

理珠 「………………」

理珠 「そうですね……。ときどきヘンなことをしますし、むっつりさんですけど……」

理珠 「尊敬していますよ。成幸さんのこと」

文乃 「そっか……。うん、そうだよね」

ニコッ

文乃 「成幸くん、良い人だもんね」

理珠 「はいっ!」

文乃 (……そっか。そうだよね。りっちゃんは、少なくとも、こうやって素直に言うことはできるもんね)

文乃 (今はまだ、恋心がどういうものか分かっていなくて、成幸くんへの感情を掴んでいないだけで、)

文乃 (きっと、りっちゃんが恋を知ったら、すぐに成幸くんにアプローチし始めるだろうな)

文乃 (……それこそ、うるかちゃんよりも積極的なくらい)


776以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:40:23./mOxEco (33/53)

? 「ん? おお、古橋と緒方じゃないか」

文乃 「へっ? 成幸くん!?」

理珠 「小美浪先輩も一緒ですか。こんにちは」

あすみ 「おう。今から一緒にバイトなんだ」

成幸 「ま、今日は勉強メインの日ですけどね」

文乃 (先輩と成幸くん、仲よさそう……)

文乃 (でもまぁ、このふたりはきっと、ただの先輩後輩ってだけの関係だよね)

文乃 (先輩みたいなオトナっぽい性格の人が、成幸くんみたいな男の子に本気になるわけないし)


―――― 『いや? けっこーいいと思ってっけど? カワイーじゃんそいつ』

―――― 『ま ウソだけど』


文乃 (恋人のフリも、お父さんを誤魔化すためのものだって言うしね)

文乃 (先輩はただ成幸くんをからかって遊んでるだけだろうし)


777以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:41:03./mOxEco (34/53)

成幸 「古橋と緒方も今から一緒に勉強か?」

理珠 「はい! お店のお手伝いをしながらうどんを食べながら勉強します!」

あすみ 「忙しそうな勉強会だな……」

ポヨン……

文乃 「ん……あっ……!」

あすみ 「ん?」

文乃 「そ、そのバッグについてるドハっちゃん、かわいい~! ちっちゃーい!」

あすみ 「おお、このちっちゃいやつか。へへ、いいだろ」

文乃 「これ、どこで売ってるんですか? こんなの持ってる人初めて見ましたよ」

あすみ 「ん……えっと、まぁ、その、なんだ……」

カァアアアア……

あすみ 「……後輩が、作ってくれたんだよ」

文乃 「え……?」

文乃 (作った? 成幸くんが? 手作り?)


778以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:41:43./mOxEco (35/53)

文乃 (いや、いやいやいや、そんなことより……)

あすみ 「……///」

文乃 (何その可愛い照れ顔はーーーーー!?)

成幸 「ほら、前、一度お前に渡した大きいドハっちゃんぬいぐるみがあっただろ?」

成幸 「色々あって、あれがなくなっちゃって、先輩が残念そうだったからさ」

成幸 「作ってあげたんだ。小さくてブチャイクになっちゃったけど……」

理珠 「ほうほう。ドハっちゃん……。クラスメイトがハマってると言っていましたね」

理珠 「でも、意外です。先輩もこういう子どもっぽいものに興味があるのですね」

あすみ 「うぐっ……」

あすみ 「……わ、悪かったな。どうせキャラじゃねーよ。でも……」


―――― 『……キャラじゃなくたって いいじゃないですか』

―――― 『俺…… 素直に喜んでくれる先輩見れて 嬉しかったです』


あすみ 「少なくともアタシは、これが好きだってことを、隠したくないんだよ」

あすみ 「わざわざ手作りしてくれた後輩のためにも、さ……」


779以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:42:25./mOxEco (36/53)

理珠 「あっ……」 アセアセ 「すみません。その、バカにしたりするつもりはなかったんです」

理珠 「ヘンな風に聞こえてしまったならすみません。その……」

理珠 「先輩に似合っていて、とても可愛いと思います。ただ、意外だっただけで……」

あすみ 「ん、おお、ありがとな。このブチャイクさが可愛くてさー」

理珠 「たしかによく見ると、ブサイクながらもどことなく愛嬌が……」

文乃 「………………」

文乃 (……ああ、そっか)

成幸 「先輩……」 ジーン 「そんな風に思っててくれてたなんて……」

あすみ 「なっ……! 何涙流してんだ! 恥ずかしいやつだな!」


―――― 『もー先輩…… そんなに好きなら最初から素直に言ってくれればいいのに……』

―――― 『う うるせーな こんなのキャラじゃねーしハズいだろ……』


文乃 (もう、あのときとは違うんだ。きっと、先輩はもう、“好き” から逃げない……)

文乃 (きっと先輩は、成幸くんのことを憎からず想っている。それが、本当に自覚できたとき、きっと……)

文乃 (先輩もまた、成幸くんの心を手に入れようと、がんばるだろう……)


780以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:43:17./mOxEco (37/53)

………………緒方うどん

理珠 「かけうどん一杯、お待ちどう、です」 コトッ

文乃 「……ん、ああ、ありがとうりっちゃん」

文乃 「おだしのいい匂い~! 食欲がそそられるよね~。いただきまーす!」

理珠 「では、私も、いただきます」

ズルズルズル……

文乃 「………………」


―――― 『そのために、がんばる。本気で、一番になる。ずっと、自分のことを見ていてもらいたいから!』

―――― 『尊敬していますよ。成幸さんのこと』

―――― 『少なくともアタシは、これが好きだってことを、隠したくないんだよ』


文乃 (……みんな、すごいなぁ)

文乃 (自覚のあるなしに関わらず、たぶん、みんな、成幸くんのことを……)

文乃 (わたし……わたしは……)


―――― 『じゃあさ…… ぶしつけで悪いんだが…… アタシがもらっても……いいか?』


781以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:43:47./mOxEco (38/53)

文乃 「っ……」

文乃 (……わたしは、欲しいって言えなかった)

文乃 (だって、欲しいのか、欲しくないのか、わからなかったから……)

文乃 (でも、今さら、やっぱり欲しかったなんて思ってる……)

文乃 (……ほんと、浅ましい女だ、わたし。きっと、これからもそんなことばかりなんだろうな)

文乃 (成幸くんのことも、きっと……――)

理珠 「――……文乃?」

文乃 「へっ!?」 ビクッ

理珠 「大丈夫ですか? ボーッとしていましたけど……」

文乃 「え? あ、あはは、ごめんごめん。うどんがあんまりにも美味しくてさー」

スカッ

文乃 「あ、あれ? もうない……?」

理珠 「無表情でうどんをすすり続けていましたから……」

文乃 「あ……そっか……」


782以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:44:32./mOxEco (39/53)

文乃 「………………」

理珠 「……大丈夫ですか、文乃? 元気がないように見えますが」

文乃 「……うん。大丈夫だよ。でも、ちょっとだけ、頭が痛いかも」

文乃 「ごめん、りっちゃん。うどんごちそうさま。今日はもう帰るね」

理珠 「……えっ、一杯だけで大丈夫ですか?」

文乃 「もー、りっちゃん。当然でしょ。女子高生だよ? うどんを何杯も食べたりしないよ」

理珠 (いつもなら軽く三杯は食べていくでしょう……)

文乃 「じゃあ、りっちゃん、お会計よろしく」

理珠 「あ、はい。いま行きます」

理珠 (文乃……)

理珠 (やっぱり、元気がないように見えます……)


783以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:45:05./mOxEco (40/53)

………………夜 唯我家

成幸 「………………」

カリカリカリカリカリ……

成幸 (今日は先輩の勉強を見るのがメインだったから、あまり自分の勉強が進まなかったからな……)

成幸 (今日の分だけは少なくとも終わらせないと……)

prrrrrr……

成幸 「ん……? 緒方から電話……?」

ピッ

成幸 「もしもし? 緒方か?」

理珠 『はい、こんばんは、成幸さん。突然電話してしまってすみません』

成幸 「いや、べつに構わないよ。何か分からないところでもあったのか?」

理珠 『いえ、そういうことではなく……ちょっと、相談したいことが』

成幸 「相談? ああ、俺が聞けるようなことなら話したらいいよ」

理珠 『ありがとうございます。助かります』

理珠 『……その、実は、文乃のことなのですが……』


784以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:45:47./mOxEco (41/53)

………………古橋家 文乃の部屋

文乃 「………………」

文乃 (……勉強、しなくちゃいけないのに)

文乃 (こんなことで勉強が手につかなくなるなんて、自分が情けないよ)

文乃 (わたしは……)


―――― 『大丈夫 絶対ない 絶対好きになんてなるはずがない 友達が 好きな人のこと』

―――― 『起きてる』

―――― 『ぜ……ッ 全然っ ちがいますけどっ!!!』


文乃 (わたし、は……)

文乃 (好き、なの……?)

文乃 (好きになっても、いいの……?)

文乃 (りっちゃんとうるかちゃんが好きな人のことを、好きになっても……)

文乃 (わたしは……)


785以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:46:26./mOxEco (42/53)

………………唯我家

理珠 『……と、そんな様子で。うどんだって一杯しか食べなかったんですよ』

理珠 『いつもだったら軽く三杯食べてカレー丼も食べて帰るのに……』

成幸 (それは食い過ぎだけど、まぁ……)

理珠 『元気もなかったし、体調不良というよりは……その、何かに悩んでいるように見えて……』

理珠 『……心配なんです』

成幸 「……うん。そうだな。大切な友達だもんな。心配だよな」

理珠 『……はい』

成幸 (……緒方の話を整理すると、最初は元気だった古橋が、俺と小美浪先輩と会ってから元気をなくし始めたらしい)

成幸 「………………」

成幸 「……うん、わかった。なんとなく、古橋が元気をなくした理由が分かった気がするんだ」

理珠 『!? 本当ですか!? さすがは成幸さんです!』

成幸 「まぁ、まだ分からないけどな。でも、古橋とは明日話をしてみるよ」

成幸 「大船に乗ったつもり……とは言えないけど、まぁ任せてくれよ」

成幸 「俺はお前たちの 『教育係』 だからさ」


786以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:46:58./mOxEco (43/53)

………………

成幸 (……古橋が元気のない原因)

成幸 (心当たりがないわけじゃない。よく考えたら、俺は無神経だった)

成幸 (古橋だって、先輩と同じはずなのに……)

成幸 「……明日の朝まで、数時間。間に合うか。いや、」

成幸 「間に合わせるしかないよな……」

ハァ

成幸 (……まぁ、自分で撒いた種だ。自分で回収するしかない)

成幸 (勉強は……まぁ、明日がんばればなんとかなるだろ!)

成幸 「……っし。今日は久々の徹夜だな!」

成幸 (こんなことが先輩とお父さんにバレたらまた休めって怒られるな……)


787以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:47:41./mOxEco (44/53)

………………翌朝 一ノ瀬学園 いつもの場所

文乃 「………………」 ソワソワソワソワ……


―――― 成幸 『おはよう、古橋! ちょっと話があるから、HR前にいつもの場所に来てほしい』


文乃 (……朝起きたら、こんなメッセージが届いてるんだもんなぁ)

文乃 (メッセージの着信時間、すごい早朝だったし。ひょっとして成幸くん寝てないのかな?)

文乃 (でも……)

ドキドキドキドキ……

文乃 (急に呼び出しなんて、一体何なんだろう。びっくりするからやめてほしいよ……)

成幸 「……お、いたいた。おはよう、古橋」

文乃 「っ……」 ビクッ 「お、おはよう。成幸くん」

成幸 「朝から呼び出して悪かったな」

文乃 「それは、まぁ、べつに、大丈夫だけど……」 ドキドキドキ

文乃 「はっ、話って、何かな?」

成幸 「ああ……実は、ひとつ謝らなくちゃいけないかなって思ってさ」


788以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:48:26./mOxEco (45/53)

文乃 「謝る……?」

成幸 「いや、俺も考えが足りなかったかな、って」

成幸 「……っていうか、少し考えれば分かることだよな」

文乃 「? 何の話?」

成幸 「誤魔化すなよ。昨日元気がなかったって、緒方が心配してたぞ」

成幸 「……お前も、欲しいんだよな。当たり前だよな」

文乃 「へ……?」


―――― ((好きになっても、いいの……?))


文乃 「へ……へぇえええええええ!?///」

成幸 「……やっぱりそうか。そりゃそうだよな。お前だって欲しいよな」

文乃 「ち、ちょっと待って! 違うから! 違うよ!?」

文乃 「わたしは別に、欲しいなんて思ってないよ!?」


789以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:49:02./mOxEco (46/53)

成幸 「誤魔化さなくていいよ。だって、すごく嬉しそうな顔してたじゃないか」

成幸 「……自分のものになるってときに。本当に、嬉しそうな顔を、してたじゃないか」

文乃 「そ、そんな顔してないよ……」


―――― 『起きてる』

―――― 『だから…… あとほんのちょっとだけ…… このままでもいい……?』


文乃 「……!?」

文乃 (……し、してた、かも。あのときは……)

文乃 (いや、だって、あのときは……しかたないじゃない……)

ドキドキドキドキ……

文乃 (でも……)

文乃 「……じ、じゃあ、成幸くんは、どうにかしてくれるの?」

文乃 「わたしが、“ほしい” って言ったら、くれるの?」

ドキドキドキドキ……


790以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:49:33./mOxEco (47/53)

成幸 「……ああ、そのために、今日はお前を呼び出したんだ」

成幸 「古橋が欲しいものを、あげるために」

ギュッ

文乃 「へ……?」

ボン!!!!

文乃 「へぇええええええ……///」

文乃 (手……手! 手、握られて……!!)


―――― 『少しひんやりして…… でも心地よく包み込んでくれる ああ…… これはお母さんの 手の……』

―――― 『……成幸くん 前にもこうして手を握ってくれたよね』


成幸 「……古橋」

文乃 「ひゃ、ひゃい!」 ビグゥ!!!

成幸 「だからこれ、受け取ってくれ。あんまり上手じゃないけど……」

文乃 「へ……?」 モニュッ 「…… “もにゅっ” ?」

文乃 「これ、って……ドハっちゃん?」


791以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:50:15./mOxEco (48/53)

成幸 「いやー、緒方からお前が元気がないって聞いたとき、ピンと来たんだよ」

成幸 「よく考えたら、あの大きなドハっちゃんぬいぐるみ、手に入れられなかったのは先輩だけじゃないもんな」

成幸 「お前も先輩のために譲ってくれたわけだし、先輩だけにプレゼントするのは悪いかな、って」

成幸 「それで元気がないのかなーって思ったから、昨日作ってきたんだよ」

成幸 「悪かったな、古橋。もっと早く気づいてあげればよかったよ。ごめんな」

文乃 「………………」

成幸 「……古橋?」

文乃 (……まったくもう)

文乃 (ほんと、成幸くんは成幸くんだね)

クスッ

文乃 「……ありがと、成幸くん。これ、大切にするね」

文乃 「えへへ、実は昨日、小美浪先輩がドハっちゃんのぬいぐるみ持ってて羨ましかったんだ」

文乃 「さすが成幸くん。少しずつ女心が分かるようになってきてるね」


792以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:51:24./mOxEco (49/53)

成幸 「!? ほんとか!?」

パァアアアアアア……!!!

成幸 「古橋の問題を解き続けてきた甲斐があったな。俺もとうとう女心の単位修得か……」

文乃 「……ふふ、まだまだだよ。これくらいじゃ単位はあげられないよ」

成幸 「ぐっ……さすがは古橋師匠、厳しいな」

文乃 「……ねぇ、成幸くん」

成幸 「うん?」

文乃 「……わたし、決めたよ。もう迷わないし、恥ずかしいとも思わない」

文乃 「わたしも、一番になりたい。尊敬してるって言いたい。欲しいって、言いたい」

文乃 「だって……、」

成幸 「?」

文乃 (……好き)

成幸 「古橋……?」

文乃 (好き、好き、好き……! 好きだから。君のことが……)

文乃 「――――……大好き、だから……!!」


793以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:52:06./mOxEco (50/53)

成幸 「へ……?」

カァアアアア……

成幸 「なっ……す、好きって……」

成幸 「あ、そ、そっか。ドハっちゃんのことだよな。はは……」

成幸 (び、びっくりしたぁ……)

文乃 「………………」

クスッ

文乃 「……うん。そうだよ。今は、それでいいよ」

文乃 「でも、覚悟しててね、成幸くん」

ニコッ

文乃 「いつか、君の全部を、もらっちゃうからねっ」

おわり


794以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:52:36./mOxEco (51/53)

………………幕間1 「全部」

成幸 (俺の全部……? あれは一体どういう意味だ?)

成幸 (全部……? もしかして……)


―――― 文乃 『ヒャッハー! 唯我家の土地家財全部差し押さえだー!』

―――― 文乃 『かわいい妹たちも連れてくぜー!』


成幸 「………………」 ガタガタブルブル

陽真 「? 成ちゃん、どうしたの?」

成幸 「ど、どうしよう、小林!」

成幸 「俺の家が古橋に世紀末にされてしまう!!」

陽真 「なんて?」


795以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:53:24./mOxEco (52/53)

………………幕間2 「鼻血の会」

文乃 「………………」 ニヘラ 「……えへへ」

文乃 (……成幸くんからもらった、小さなドハっちゃんぬい。かわいいなぁ……)

文乃 (えへへへへへ……)

文乃 「………………」

キョロキョロキョロ

文乃 (だ、誰もいないよね……)

文乃 「………………」

チュッ

文乃 「……っ///」 カァアアアア……

………………物陰

鹿島 「……唯我くんからもらったぬいぐるみに、キス」 ボタボタボタ

猪森 「ふむ。困ったな。尊すぎて鼻血が止まらないぞ」 ボタボタボタ

蝶野 「今回に関してはまったく同意ッス……」 ボタボタボタ

おわり


796以下、名無しが深夜にお送りします2019/03/04(月) 22:56:41./mOxEco (53/53)

>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

問99であすみさんがバッグにドハっちゃんぬいをつけているのを発見し、
感極まって興奮しすぎていてもたってもいられずに書きました。
それでなぜ文乃さんの話になったのかはわたしにもわかりません。なぜでしょう。

また投下します。また読んでくれたら嬉しいです。