739以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:15:23AR9F6gVQ (82/112)

………………

あすみ 「………………」

成幸 「………………」

カリカリカリ…………

あすみ 「……なー、後輩」

成幸 「なんですか?」

あすみ 「悪い。さっきさー、洗い物してるときのお前とお母さんの会話、聞いちゃった」

成幸 「……そうですか」

あすみ 「……ごめんな。うそついてて」

成幸 「いえ、気にしてませんから、大丈夫です」

カリカリカリ……

あすみ 「……アタシさ、うちの色んな事情にお前のこと巻き込んでばかりだからさ、」

あすみ 「実は、これでも結構、申し訳ないと思ってんだよ」

成幸 「え……?」

あすみ 「だから、家事を手伝ってやれば、いつもの “彼氏のフリ” の恩返しができるかなって思ってさ」


740以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:16:25AR9F6gVQ (83/112)

あすみ 「……ただ、それをお前に言うのが恥ずかしくて、お母さんに雇われたなんてうそついてさ」

あすみ 「ごめんな」

成幸 「………………」 クスッ 「どうしたんですか、先輩。調子狂うようなこと言うなぁ」

あすみ 「むっ……」 プイッ 「悪かったな」

あすみ 「これでも、色々心配だったんだよ。お前にもお前のお母さんにも、葉月にも和樹にも、迷惑かけたんじゃないかって……」

成幸 「はぁ? 何言ってるんですか、先輩。俺と母さんがどれだけ助かったか分かってます?」

あすみ 「……?」

成幸 「葉月と和樹から聞きましたよ。先輩、一日中家にいて、ふたりに掃除の仕方とか教えてくれたんでしょう?」

成幸 「ずっと遊び相手もしてくれたって言うし、適切な時間にお昼寝も取らせてくれたみたいだし……」

成幸 「それが迷惑だなんて、そんなこと思ったら罰が当たりますよ。まったくもう」

あすみ 「な、何怒ってんだよ、後輩……」

成幸 「怒りますよ。予備校もバイトも休んだってことでしょう? どっちも先輩にとって必要なことのはずなのに……」

成幸 「俺の家のためにそこまでしてくれたくせに、迷惑だったんじゃないかって……そんなの、怒るに決まってるじゃないですか」

成幸 「……すみません。言いすぎました。でも、覚えておいてください。俺は、すごく助かりましたし、先輩に感謝してますから」


741以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:17:08AR9F6gVQ (84/112)

あすみ 「……ただ、それをお前に言うのが恥ずかしくて、お母さんに雇われたなんてうそついてさ」

あすみ 「ごめんな」

成幸 「………………」 クスッ 「どうしたんですか、先輩。調子狂うようなこと言うなぁ」

あすみ 「むっ……」 プイッ 「悪かったな」

あすみ 「これでも、色々心配だったんだよ。お前にもお前のお母さんにも、葉月にも和樹にも、迷惑かけたんじゃないかって……」

成幸 「はぁ? 何言ってるんですか、先輩。俺と母さんがどれだけ助かったか分かってます?」

あすみ 「……?」

成幸 「葉月と和樹から聞きましたよ。先輩、一日中家にいて、ふたりに掃除の仕方とか教えてくれたんでしょう?」

成幸 「ずっと遊び相手もしてくれたって言うし、適切な時間にお昼寝も取らせてくれたみたいだし……」

成幸 「それが迷惑だなんて、そんなこと思ったら罰が当たりますよ。まったくもう」

あすみ 「な、何怒ってんだよ、後輩……」

成幸 「怒りますよ。予備校もバイトも休んだってことでしょう? どっちも先輩にとって必要なことのはずなのに……」

成幸 「俺の家のためにそこまでしてくれたくせに、迷惑だったんじゃないかって……そんなの、怒るに決まってるじゃないですか」

成幸 「……すみません。言いすぎました。でも、覚えておいてください。俺は、すごく助かりましたし、先輩に感謝してますから」


742以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:18:08AR9F6gVQ (85/112)

あすみ 「後輩、お前……」

あすみ (普段、アタシがどんだけ迷惑かけたって、からかったって、怒らないくせに……)

あすみ (なんで、アタシのことでそんなに怒るんだよ……バカ……)

成幸 「……お返し、ケーキだけで済ませちゃうつもり、ありませんから」

あすみ 「ん?」

成幸 「何かあったら言ってくださいね。彼氏のフリだろうと婿のフリだろうと、何でもやりますから」

成幸 「……本当はバイト代を払えたらいいんでしょうけど、あいにくうちにお金がなくて……」

あすみ 「気にすんなよ。アタシが勝手にやったことだ。勝手に彼女のフリをしただけだからな」

成幸 「じゃあ、俺も、先輩が必要なとき、彼氏のフリをしますよ。でも、俺は言ってくれないとわからないから」

成幸 「……言ってくださいね。俺、先輩のためだったら何でもしますよ」

あすみ 「……何でも、ねぇ」

クスッ

あすみ 「じゃあ、週末、またデートしてくれるか?」

あすみ 「親父の目を誤魔化すのも大変なんだ。勉強デートとしゃれ込もうぜ」

成幸 「わかりました! それくらいならお安いご用ですよ!」


743以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:18:53AR9F6gVQ (86/112)

………………物陰

花枝 「うーん……なかなかどうして、本物の彼氏彼女に見えるわね」

花枝 「っていうか、息子は元より、あすみちゃんも結構まんざらでもない感じね」

葉月 「ほらー、母ちゃん、覗いてないで寝るわよー」

和樹 「水希姉ちゃんは水希姉ちゃんでヤバいけど、母ちゃんも結構ヤバめだよなー」

花枝 「分かったわよ。じゃあ行きましょう」

花枝 (それにしても……)

ピカピカピカ……

花枝 (家中ピカピカだわ。お料理も上手だし、葉月と和樹の相手も完ぺき……)

花枝 (成幸より年上というのもポイント高いわ……)

花枝 (ちょっと本当に嫁に来てくれないかしら)

和樹 「ほらまた母ちゃんよからぬことを考えてる」

葉月 「でもまぁ、あすみお姉ちゃんがお嫁に来てくれるのは、わたしも賛成だわー」


744以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:19:26AR9F6gVQ (87/112)

………………翌朝

あすみ 「ほら、弁当。持ってけよ」

成幸 「ん……ありがとうございます」

ジトッ

成幸 「また変なこと書いてないでしょうね?」

あすみ 「んだよ、信用ねぇな。何も書いてねーよ」

あすみ (変なことは、な)

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

成幸 「……三日間、ありがとうございました。助かりました」

あすみ 「おう。気にしなくていいぞ。おかげでアタシも勉強進んだし」

成幸 「……じゃあ、いってきます。先輩」

あすみ 「ん……? いや、ちょっと待て、後輩」

成幸 「へ?」

ズイッ……


745以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:20:03AR9F6gVQ (88/112)

成幸 「せ、先輩……?」 (ち、近っ……!? な、何を……)


―――― 『それとも、いってらっしゃいのチューでもしてやった方がやる気が出るか?』


成幸 (ま、まさか……そんな、いや……心の準備が……)

キュッ

成幸 「……へ?」

あすみ 「……ネクタイ、曲がってたぞ。まったく、だらしねーな」

成幸 「あっ……ね、ネクタイか。なんだ、びっくりした……。ありがとうございます、先輩」

あすみ 「んー? 急にアタシが近づいて、何だと思ったんだー、後輩ー?」

成幸 「な、なんでもありませんよ!」

あすみ 「にひひ、なんだよ、昨日は “婿のフリ” だってやってくれるって言ってたのに、そんな体たらくか?」

あすみ 「アタシの婿になるんなら、もう少しがんばれよ」

成幸 「急に近づかれればびっくりもしますよ。先輩は美人さんなんだから……」

あすみ 「っ……」


746以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:22:01AR9F6gVQ (89/112)

あすみ 「………………」


―――― 『っていうか、俺があんな綺麗な人と付き合えるわけないだろ』


あすみ (……ったく、軽々しく、人のこと綺麗だの美人だの言いやがって)

あすみ (こっちの気も知らないで、ほんとに、しょうがない奴だ……)

成幸 「じゃあ、先輩。いってきます」

あすみ 「おう」

あすみ (……覚えてろよ、後輩)

あすみ (いつか、本当に “婿のフリ” なんてしてもらうことになったら、)

あすみ (本当に、いってらっしゃいのチューくらいはしてやるからな)

あすみ (そのとき、後悔したって知らないからな。お前が言い出したことなんだから)

ニコッ

あすみ 「……いってらっしゃい、後輩」


おわり


747以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:22:47AR9F6gVQ (90/112)

………………幕間1 「SEISAI帰宅」

水希 「ただいまー! みんな、ごめんね。いま帰ったよー……って」

水希 「家中ピカピカ!? 台所も!? トイレも!? ついでに葉月と和樹もお肌がピカピカ!?」

水希 「そして……」

水希 「……例の、お兄ちゃんの耳をきれいにしたという女の匂いがする!!」

水希 「わたしのいない間に……!!」 ギリリリッ

葉月 「あー……」

和樹 「あすみ姉ちゃん、もう二度とうちの敷居をまたげないかもしれないな」


748以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:23:39AR9F6gVQ (91/112)

………………幕間2 「お弁当」

成幸 (先輩のことを信じないわけではないが、一応、念のため、大森がいないところで食べよう)

成幸 (と、いうことで、緒方たちと一緒に食べることになったわけだが)

うるか 「今日のお弁当もお母さんが作ってくれたの?」

成幸 「ん? ああ……いや、お前たちにうそをつくのも気が引けるから言うけど、これは小美浪せもがっ!?」

文乃 「……うん。なるほど。お母さんが作ってくれたんだね」 ニコッ 「よかったね」

成幸 「もがもが!?」 (なぜ俺の口をふさぐんだ、古橋!?)

文乃 (うん。わたしの胃が確実にダメージを受けるようなことを言わせるわけないよね)

うるか 「へー。じゃあ、失礼して、開けちゃおっかなー、っと」 パカッ

 『来週のデート楽しみだねっ 成幸くん』

うるか 「へ……? ハートマーク、と、このメッセージ、デートって……」 ジロリ

理珠 「……これは何ですか? 成幸さん? お母さんが作ったものではないですね?」 ジトッ

成幸 「いや、だからこれは小美浪せんもがっ……!」 (だからなぜ俺の口をふさぐんだ古橋!?)

文乃 (ちくしょー、だよ! どう転んでもこうなるのかよー!! だよ!!) キリキリキリ


749以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:24:16AR9F6gVQ (92/112)

………………幕間3 「小美浪家」

小美浪父 「………………」

小美浪父 (三日間唯我くんのご家庭で家事の手伝いをしたいと言い出したときは驚いたものだが)

小美浪父 (迷惑になるからやめなさいという私の言葉も聞かず、結局行ってしまった……)

小美浪父 (三日間帰ってこないということは、うまくやっているということだろうか)

あすみ 「ただいまー」

小美浪父 「ん……あすみ、おかえり。唯我くんとご家族に迷惑はかけてないだろうね?」

あすみ 「大丈夫だよ。心配だったら、後で後輩にでも聞いてみてくれ」

あすみ 「ふぁーああ……。夜遅くまで(勉強を)がんばっちまったからな、眠いや。ちょっと寝たらバイト行くわ。じゃ、おやすみ」

小美浪父 「……ああ、おやすみ」 (……そろそろ、唯我さんのお宅に挨拶に伺うべきだろうか)

小美浪父 (唯我くんのご家族はあすみのことを気に入ってくれただろうか……)

小美浪父 (しかし、夜遅くまでがんばったのか……)

小美浪父 「ふふ……、あいさつより何より先に、授かり物があるかもしれないな……」

小美浪父 (ああ、お義父さん困っちゃうな……) パァアアアア

おわり


750以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:26:33AR9F6gVQ (93/112)

>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございます。
少し長すぎたかなと反省しています。


もうひとつ投下します。
こっちは少し短いです。


【ぼく勉】成幸 「緒方の私服ってかわいいよな」


751以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:27:08AR9F6gVQ (94/112)

………………図書館

理珠 「へ……?」

理珠 「………………」 カァアアア……

理珠 「い、いきなりなんですか。成幸さん……」

成幸 「緒方って服とかあんまり頓着しなそうだけど、実は結構オシャレさんだよな」

理珠 「べつに、そこまで興味があるわけではないですけど……」

成幸 「いや、うちは家族の服を俺が作ってるんだけどさ」

成幸 「この前水希がカタログを見ててな。ちょっと覗いてみたら、緒方が着てるような服に興味があるみたいでさ」

成幸 「可愛い系? みたいな? すまん、俺も詳しくはないからよく分からないんだが……」

理珠 「私が普段着ているような服……」

ズーン

理珠 「……私のセンスは中学生レベルということですか」


752以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:27:39AR9F6gVQ (95/112)

成幸 「いや、そういうことなじゃくて、単純に好みの問題だろ」

成幸 「俺も緒方が着てるような服、可愛くていいと思うしさ」

理珠 「はう……///」

成幸 「だから、もし良かったら、水希の服を作るときの参考にしたいから、」

成幸 「服のブランドとか、どこで売ってるかとか、教えてもらってもいいか?」

成幸 「教えてもらったら、その店に服を見に行こうと思うんだ」

理珠 「いいですけど、私が買った服もありますし、お母さんが買ってきてくれた服もありますし、一概には……」

ハッ

理珠 「………………」

成幸 「緒方? どうかしたか?」

理珠 「いえ、あの……もし成幸さんが良かったら、なのですが、」

理珠 「今日の勉強が終わったら、うちに来ませんか? 私の服を見せてあげますよ?」

成幸 「へ?」

理珠 「わざわざお店に行くより、合理的だと思います」

成幸 「そりゃ、その通りだが……いいのか?」


753以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:28:32AR9F6gVQ (96/112)

理珠 「嫌な理由はありません。成幸さんにはお世話になっていますし、力になれるなら嬉しいです」

成幸 「そうか……。じゃあ、お願いしてもいいか?」

理珠 「はい。もちろんです」

成幸 「よし、そうと決まれば、おうちの迷惑になってもいけないし、今日の分、さっさと終わらせるぞ」

理珠 「はい! がんばります!」


―――― 『緒方の私服ってかわいいよな』

―――― 『緒方って服とかあんまり頓着しなそうだけど、実は結構オシャレさんだよな』


理珠 (ま、まぁ、かわいいと言われて悪い気はしませんし?)

理珠 (成幸さんが見たいと言うなら、見せてあげるに吝かではありませんし)

理珠 (……ふふふ)

理珠 (かわいい、ですか……) ニヤニヤ

成幸 「……?」 (なんか緒方、えらく上機嫌だな。何かいいことでもあったのか?)


754以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:30:02AR9F6gVQ (97/112)

………………夕方 緒方家

成幸 「悪いな、緒方。お邪魔しちゃって……」

理珠 「いいですよ。今日はお父さんもお母さんもお仕事が忙しくて店にいますし、気兼ねする必要はありません」

成幸 (逆にまずい気がする。というか、親父さんにバレたら殺されるぞ、俺……)

理珠 「どうぞ。ここが私の部屋です。まぁ、成幸さんはもう何度か入ってますよね」」

成幸 「そういえばそうだな……」


―――― 『えーっ 成幸も泊まっていけばいいじゃん!』

―――― 『そうそう 夜はまだまだこれからだよ~!』


成幸 「っ……」 (そ、そうだ。あの女子のパジャマパーティのときとか……)


―――― 『唯我さん 手 冷たいです』

―――― 『なんだかホッとして……きもちいい……です』


成幸 (緒方の家で一晩明かしたときのこととか……)

成幸 (よく考えたらこの部屋ろくな思い出ないな!?)


755以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:31:00AR9F6gVQ (98/112)

成幸 「お邪魔しまーす……」

理珠 「どうぞ」

理珠 「服を見たいと言っていましたが、具体的に言うとどのような服を見たいですか?」

理珠 「トップス、ボトムス、アウター……色々ありますが」

成幸 「ああ、水希が見てたのはトップス? かな? 上に身につけるようなやつだ」

成幸 「あとはワンピースタイプの服とかも見せてくれるとありがたいな」

理珠 「ふむふむ。それならこのあたりですね」

ゴソゴソ……

理珠 「……こういう服ですか?」

成幸 「ああ、そうそう、まさにそういうのだよ」

理珠 「でしたら、この段とこの段、好きにみてもらって構わないですよ」

理珠 「私は今日教えてもらった部分を復習していますので」

成幸 「えっ……?」


756以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:31:52AR9F6gVQ (99/112)

成幸 「い、いや、さすがにそれはまずいだろ」

理珠 「なぜです? 服を見るだけでしょう。何かまずいことがありますか?」

成幸 (……試されてる? いや、緒方の場合は本気でそう思ってる気がするな)

成幸 「その申し出はありがたいが、女子のタンスを勝手に覗くのはちょっと、気が引けるな」

理珠 「そういうものでしょうか……」

理珠 「それなら、適当に広げておきますので、勝手に見てください。手に取ってもらって構いません」

成幸 (それはそれでどうなんだろう、とは思わなくもないが……タンスを漁るよりははるかにマシか)

成幸 (きっと俺のことを信頼してくれているんだろう。それなら、俺もその信頼に応えるまでだ)

ポン……ポン……

理珠 「……こんなものでいいでしょうか。だいたい、今の時期はこれらを着回しています。重ね着とかをします」

理珠 「では、私は机で勉強をしていますから、何かあったら声をかけてください」

成幸 「ああ、ありがとな、緒方。助かるよ」

理珠 「いえいえ」

成幸 (本当に勉強を始めたぞ……。まぁ、いい。緒方の申し出は素直にありがたいし、お言葉に甘えよう)


757以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:32:44AR9F6gVQ (100/112)

………………

成幸 「ふむふむ……」

メモメモメモ……

成幸 (縫い方とか参考になるな……。糸の色や太さを変えても楽しそうだ)

成幸 (飾りのポケットとかもデザイン的に面白いぞ)

成幸 (シンプルなデザインが多いから、作るのもわりかし簡単そうだし……)

成幸 (緒方に相談して良かった)

成幸 (古橋はちょっと小綺麗にまとまりすぎてて、着る人を選びそうだし……)

成幸 (うるかはちょっと露出度が高すぎて水希には兄として絶対着させられないし)

成幸 (あしゅみー先輩はパンキッシュすぎて絶対水希には似合わないし)

成幸 (桐須先生はジャージだし関城は白衣だし、論外として)

成幸 (……いや、まぁ、それは置いておくとして……)

成幸 (服を見るだけで分かる……。やっぱり緒方の胸のサイズ、とんでもないな……すげぇ……)

ハッ

成幸 (緒方は俺を信じて服を見せてくれているというのに!! 俺はなんて不埒なことを!!)


758以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:33:40AR9F6gVQ (101/112)

理珠 「………………」

ドキドキドキドキ……

理珠 (なぜ、でしょうか……?) カァアアア……

理珠 (私はただ服を見せているだけだというのに、ドキドキが止まりません)

理珠 (まったく不可解です。成幸さんが被服作成の参考にするために、見せてあげているだけなのに)

理珠 (……なぜ、こんなに頬が熱いのですか。なぜこんなに、勉強に集中できないのですか)

チラッ

成幸 「ふむ……なるほど……」

理珠 (な、成幸さんが、私が普段着ている服を、手に取って、興味津々そうに見ている……)

理珠 (ふぅ。理解不能です。なぜ私は、こんなに……)

理珠 (いけないことをしてしまっているような気持ちになっているのでしょうか……)

成幸 「ん……? なぁ、緒方」

理珠 「!?」 ビクッ 「は、はい!? なんですか!?」


759以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:34:43AR9F6gVQ (102/112)

成幸 「……? どうかしたか?」

理珠 「い、いえ、なんでもありません……」

理珠 「何かありましたか?」

成幸 「ああ、悪い。この服がどうしても、どういう構造なのか分からなくてさ」

成幸 「どっちが表でどっちが裏かもよく分からないし、メビウスの輪かと……」

理珠 「……? ああ、たしかにその服を見て私もメビウスの輪を思い出します」

スッ

理珠 「これはワンピースタイプの服ですね。貫頭衣みたいな構造になってます」

成幸 「ふむ……作りはシンプルだけど、作り方を間違えるととんでもないことになりそうだな」

成幸 「オシャレな感じだから、作ってやったら水希が喜ぶかもと思ったが……」

成幸 「着方もよく分からないし、やめておいた方が無難か」

理珠 「……それでしたら、もしよかったらいま着てみましょうか?」

成幸 「へ? いいのか?」

理珠 「べつに減るものでもありませんし、構いませんよ。ちょっと廊下に出ていてください。すぐ着ますから」


760以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:36:05AR9F6gVQ (103/112)

………………

成幸 (実際に着てもらうことになるとは……。緒方に悪いな)

成幸 (でも、助かるな……)

スルッ……スルッ……

成幸 「……!?」 (き、衣擦れの音……)

成幸 (よ、よく考えたら、ドアの向こうで緒方が着替えてるんだよな……)

ハッ

成幸 (ば、バカか俺は! 俺のために着替えてくれてる緒方に、なんて下劣なことを……!)

ガチャッ

成幸 「!?」

理珠 「着替え終わりました。入っていいですよ……って、成幸さん、すごい顔ですよ。どうかしたのですか?」

成幸 「あ、いや、なんでもない……」

成幸 (び、びっくりした……)


761以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:36:43AR9F6gVQ (104/112)

………………

成幸 「ふむふむ、なるほど……」

成幸 「こういう構造になっているのか……」

理珠 「………………」

理珠 (うぅ……服を見られているときも恥ずかしかったですが……)

理珠 (着ている服をまじまじと見られるのは、もっと恥ずかしいです……)

モジモジ

成幸 「ん……あっ」

成幸 「わ、悪い。近くで見すぎたな。すまん」

理珠 「いえ……」

理珠 「ど、どうですか?」

成幸 「ん……大体どういう風になってるのか分かったから、結構簡単に作れそうだ」

成幸 「ちょっとメモさせてくれ」


762以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:37:21AR9F6gVQ (105/112)

成幸 「えっと……ここがこうなってるのか……」 メモメモ

理珠 「………………」

プクゥ

理珠 (……成幸さん、かわいいとは言ってくれないのですね)

理珠 (せっかく着てあげたのだから、それくらい言ってくれてもいいのに……)

ハッ

理珠 (わ、私は何を……。私から着てあげると提案しておいて、なんて厚かましい……)

理珠 (というか、私は……成幸さんに、もう一度、かわいいと言ってほしいのしょうか……)

理珠 「………………」

理珠 (そもそも、成幸さんは、私の私服がかわいいと言っていただけであって、私のことなんて一言も言っていないのに)

理珠 (……何を勝手に舞い上がっていたのでしょうか。今だって、私には目もくれず、メモを取っているのですから)

理珠 (まったく、不可解です。私は一体何を期待していたのでしょうか……)


763以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:38:03AR9F6gVQ (106/112)

成幸 「……っと、よし、メモも終わったぞ」

成幸 「緒方、ありがとな。おかげで水希に作ってあげられる服が増えそうだよ」

理珠 「……そうですか。それは何よりです」

成幸 「……? 緒方、どうかしたか?」

理珠 「何もありません」 ムスッ

成幸 (いや絶対何かあっただろ……)

理珠 「……着替えますから、また廊下で待っててもらえますか」

成幸 「あ、ああ。まぁ、それはいいけどさ……」

クスッ

成幸 「お前ってさ、得だよな」

理珠 「へ……? な、何の話ですか?」

成幸 「美人だからどんな服着ても似合うし、どんなに不機嫌そうでもかわいいことに変わりないし」

成幸 「……っと、悪い。また余計なこと言ったな。じゃあ、廊下出てるわ」


764以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:38:54AR9F6gVQ (107/112)

理珠 「………………」

カァアアアア……

理珠 (い、今のは……)


―――― 『美人だからどんな服着ても似合うし、どんなに不機嫌そうでもかわいいことに変わりないし』


理珠 (今のは、服ではなく、私自身のこと……です、ね……?)

理珠 (ま、まったく、不可解なことです……)

理珠 (さっきまで頭にもやがかかっていたようだったのが、一瞬で晴れてしまいました)

理珠 (美人……ふふ、あと、かわいい、ですか……)

理珠 (い、いけません。なぜか、笑みが止まりません)

理珠 (ふふっ……)


765以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:39:35AR9F6gVQ (108/112)

………………数日後

成幸 「緒方、この前はありがとな。本当に助かったよ」

理珠 「? ああ、服を見せたことですか。大したことではありませんから、お気になさらずに」

文乃 「……!? りっちゃん、服を見せたって……おうちで?」

理珠 「そうです。成幸さんにうちで服を見てもらいました」

文乃 (りっちゃん、服を見せるとか……大胆すぎるよ……)

成幸 「水希もすごく喜んでくれてさ。毎日着てくれてるよ」

成幸 (緒方に見せてもらった服を参考にしたって言ったら、なぜか少し不機嫌になったけど、)

成幸 (まぁ、それはわざわざ言う必要はないだろう……)

理珠 「それは何よりです。お役に立てたなら何よりです」

成幸 「おう。それでな」 ゴソゴソ 「本当は余った布で何か作ろうと思ったんだけど、生地が足りなくてさ」

成幸 「毛糸が余ってたから、手袋を縫ってきたんだ。趣味じゃなかったらミトンか軍手代わりにでも使ってくれ」

理珠 「へ……? これ、私にくれるんですか?」

成幸 「お礼だよ。本当にありがとな、緒方」


766以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:41:11AR9F6gVQ (109/112)

文乃 (手編みの手袋!? 女子力高いけど重すぎだよ成幸くん!)

文乃 (普通の女子だったら引いちゃうかもしれないレベルだよ!?)

理珠 「こ、これを、私に……」

カァアアア……

理珠 「う、嬉しいです! 使います! 絶対、使いますから!」

成幸 「お、おお、そうか? そんなに喜んでくれると嬉しいな……」

文乃 (けどセーフ! なぜならりっちゃんは結構普通じゃないから!)

理珠 「………………」

スッ……

理珠 「ど、どうですか? 似合いますか?」

成幸 「ああ。前に手を引いたときとかの感覚で作ってみたけど、サイズもピッタリだな。よかった」

文乃 (その発言も一般的には結構気持ち悪いと思うけど、りっちゃん的には……)

理珠 「そ、そういえば、そんなこともありましたね……///」

文乃 (やっぱり! 嬉しそうだ! よかったね成幸くん! りっちゃん!) ヤケクソ


767以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:41:49AR9F6gVQ (110/112)

成幸 「我ながら良い出来だ。似合ってるぞ、緒方」

理珠 「ありがとうございます……。ふふふ、手袋……」

文乃 (……まぁ、でも、りっちゃんが嬉しそうだからいいか)

理珠 (成幸さんが作ってくれた、手袋……)

ギュッ

理珠 「大切に使わせてもらいますね、成幸さん」

成幸 「おう!」


おわり


768以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:42:41AR9F6gVQ (111/112)

………………幕間 いつもの場所 「揉み手」

成幸 「……と、いうことで、水希のために緒方に服を見せてもらったんだよ」

文乃 「なるほどねぇ。きみは本当に……」 (天然で女の子を惑わすアクマかな?)

文乃 (ま、いっか。りっちゃん、手袋も喜んでたみたいだし……)

文乃 (手袋……)

文乃 「……さ、最近寒いねー。わたし冷え性だから、手足の先が冷えるんだよねー」

成幸 「へー。やっぱ女子って大変だな。そういや水希も似たようなこと言ってたなぁ」

文乃 「………………」 モミモミモミモミ 「はー……ほんと冷えるねー」

成幸 「はは、揉み手してると、悪い越後屋みたいだな、古橋」

文乃 「………………」 ジロリ 「……唯我くん」

成幸 「ん?」

文乃 「女心の授業、単位は上げられません。再履修してください」

成幸 「なぜ!?」

おわり


769以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 20:44:43AR9F6gVQ (112/112)

>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

わたしがあまり服に興味がないせいで、
理珠さんが服を見せるシーンがまったく具体性に欠けています。
書いていて笑いそうになりました。申し訳ないことです。


また折を見て投下します。


770以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 22:10:499SdBdkF2 (1/1)

ほんともう最高の一言です


771以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/21(日) 22:31:54uVzPNNV2 (1/1)

ここ最近の楽しみはこのスレを見ることだわ


772以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/22(月) 03:40:40QP3Tpil2 (1/1)

原作のあしゅみーエロ枠になりがちだからこっちのが好き


773以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/22(月) 10:29:05lKuZbtsQ (1/1)

まとめサイトで見てたけどスレッドここにあったのか
いつも楽しませてもらってます
最近はこのSSが上がるのが楽しみでしょうがない
最高です


774以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/22(月) 11:59:49glyjnWWQ (1/1)

これは再履修不可避


775以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/23(火) 20:24:45wE8xmduY (1/1)

レスするとスレが終わりに近づくジレンマ


776以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 00:52:56REbudaZM (1/45)

>>1です。
投下します。


【ぼく勉】うるか 「いつか、絶対」


777以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 00:54:01REbudaZM (2/45)

………………唯我家

葉月 「ふんふんふーん♪ それがー、フルピュアー、なのよー♪」

成幸 「なんだ? 葉月のやつ、えらくご機嫌だな」

花枝 「ふふ、今週の日曜日、フルピュアショーに連れてってあげるって言ってから、ずっとああなのよ」

花枝 「楽しみで楽しみで仕方ないみたい」

成幸 「フルピュアショー? 遊園地の招待券でももらったのか?」

花枝 「ううん。近くの住宅公園でやるみたいなの。入場料無料だから助かるわ」

成幸 「なるほどなぁ」

葉月 「ふふんふーん♪」

和樹 「楽しみだなー」

葉月 「うん!」

成幸 (ふふ、葉月、嬉しそうだなぁ……)


778以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 00:55:33REbudaZM (3/45)

………………週末 土曜

葉月 「えっ……。明日、行けないの……?」

花枝 「ごめんね、葉月」

花枝 「明日の仕事、休めなくなっちゃったの。どうしてもなのよ」

葉月 「………………」

ニコッ

葉月 「……だ、大丈夫なのよー。お仕事なら仕方ないわ」

葉月 「お母さんは気にしないで、お仕事がんばってね!」

花枝 「葉月……」

葉月 「大丈夫! フルピュアショーはまたいつかやるだろうし、明日じゃなくても……」

グスッ

葉月 「!? ち、違うのよー。これは、べつに……」

花枝 「葉月、ごめんね……」 ギュッ


779以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 00:56:03REbudaZM (4/45)

成幸 「………………」 (明日か……。しまったな。うるかとの勉強の約束を入れてしまったぞ……)

成幸 (うるかの試験も近いし、さすがにすっぽかすわけには……)

葉月 「……えぐっ……ぐすっ……」

成幸 「………………」

成幸 「……母さん、俺が連れてくよ。フルピュアショー」

花枝 「成幸……?」

成幸 「だから泣き止めよ、葉月。兄ちゃんが一緒に行ってやるから」

ポンポン

葉月 「ほんと!?」

成幸 「うそなんかつかないよ」

花枝 「成幸……。勉強とかは大丈夫なの?」

成幸 「ん、まぁ、一日家族のために働いて悪い結果が出るような、ヤワな勉強の仕方はしてないからな」

葉月 「わーい! 兄ちゃん大好きー!」 ギュッ

成幸 「よしよし。明日、楽しみだな、葉月」

葉月 「うん!」


780以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 00:56:43REbudaZM (5/45)

成幸 「………………」

成幸 (……俺がなんのためにVIP推薦を目指してるのか)


―――― ((このかけがえない家族にいつか楽な暮らしをさせてやるのが俺の夢だ))


成幸 (家族を幸せにするためだ。楽な暮らしをさせるためだ)

成幸 (今、泣いてる葉月を放っておいたら、それも全部うそになってしまう)

成幸 (ただ、うるかには申し訳ないな……)

成幸 (また別の日に埋め合わせしてやらないと……)

成幸 (俺のVIP推薦のためだけじゃない。うるかの夢のためにも)

成幸 (……まずは、取り急ぎ電話で謝らないとだな)


781以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 00:57:38REbudaZM (6/45)

………………武元家

うるか 「ふんふふーん♪」

うるか (……えへへ。明日は成幸と久々にふたりっきりだ)

うるか (どうしよっかな。ちょっとおしゃれしてっちゃおうかな)

うるか (海っちと川っちにそそのかされて買った服、着てっちゃったりとか……) ドキドキ

うるか (……まぁ、それでやることがベンキョーっていうのが、テンション下がるけど)

うるか (でも、成幸が自分の勉強時間を削ってあたしに付き合ってくれるんだから、)

うるか (あたしもがんばらないと……)

prrrr……

うるか 「ん……? な、成幸から電話!?」 ピッ 「も、もしもし? 成幸ー? どしたん?」

成幸 『うるか。明日、勉強の約束だっただろ?』

うるか 「へ? う、うん。それがどうかしたの?」

成幸 『……悪い。明日、行けなくなったんだ。ごめん!』

うるか 「えっ……」


782以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 00:58:16REbudaZM (7/45)

………………

うるか 「なるほどー。そういう事情なら仕方ないよね」

成幸 『……ごめん』

うるか 「謝らないでよ。全然気にしてないよ。仕方ないって」

うるか 「あたしは成幸がいなくてもひとりで勉強できるし……」

うるか 「………………」

うるか 「フルピュアショー、かぁ……」

成幸 『? どうかしたか?』

うるか 「えっ、あっ、いや……」 アセアセ 「あたしも最近フルピュア観てるって話、前にしたじゃん?」

うるか 「あたしもショーとか行ってみたかったんだよね。でもまぁ、あたしももう高校生だし……」

うるか 「もっと小さい頃にフルピュアを知ってたら、気兼ねなく行けたのかな、とか思っちゃって」

成幸 『ん……』

うるか 「あっ、ごめんね、成幸。変なこと言って。明日、楽しんできてね!」

成幸 『……なぁ、うるか。もし良かったら明日、一緒に行かないか?』

うるか 「へ……?」


783以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 00:58:54REbudaZM (8/45)

成幸 『葉月と和樹も一緒だけど、それでいいなら、一緒にどうだ?』

成幸 『たしかに高校生にもなってキャラクターショーにひとりで行くのは気が引けるかもしれんが……』

成幸 『葉月と和樹も一緒なら、付き合いで来てるようにみえるだろう?』

成幸 『それに、終わった後うちに来て、一緒に勉強もできるしな』

うるか 「……い、いいの? あたしも一緒に行っても」

成幸 『もちろんだ。葉月と和樹もその方が喜ぶだろう』

成幸 『……それに、お前には悪いけど、女手があった方が俺もありがたいし』

うるか 「あ……じ、じゃあ、一緒に行こうかな」

成幸 『よーし! じゃあ、勉強道具も忘れずにな!』

うるか 「う、うん。じゃあ、また明日」

成幸 『おう! よろしくな、うるか!』

ピッ

うるか 「………………」

ニヘラ

うるか 「ど、どうしよう……。明日、お出かけになっちゃったよぅ。えへへ……」


784以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 00:59:38REbudaZM (9/45)

うるか (葉月ちゃんと和樹くんが一緒……。フルピュアショー……)

うるか (……それなら、あの可愛い服、着てってもいいかな)

うるか (へ、ヘンとか思われないかな。似合わないとか、言わない……よね)

うるか (えへへ……)

ハッ

うるか (い、いけないいけない。明日は成幸にとっては大事な家族サービスなんだから、気を引き締めないと)

うるか (勉強道具、忘れないようにもう入れちゃおう)

うるか (あとは、ハンカチとティッシュ……チビちゃんたちもいるから、多めに持ってこう)

うるか (あとは、あとは……) ピキューン (そうだ! 経験者に聞けばいいんだ!)

ガチャッ

うるか 「ねー、ママー! あたしが小さい頃お出かけするとき何用意したー!?」


785以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:00:08REbudaZM (10/45)

うるか母 「……いきなり部屋から飛び出してきたと思ったらいきなりどうしたの?」

うるか 「ちょっと友達の弟妹とお出かけすることになったの!」

うるか母 「? まぁよく分からないけど、とりあえずあんたが小さい頃使ってたバルーンバッグ貸してあげるわ」

うるか 「!? たくさんものが入りそう! ありがとう、ママ!」

うるか母 「あんたが小さい頃、その中に必要そうなもの全部入れてったわ。なつかしいわねぇ……」

うるか 「ハンカチとティッシュは多めにいれたよ! あとは何がいるかな?」

うるか母 「そうねぇ……。飲み物を多めに持っていくのと、お菓子かしら」

うるか母 「ぐずったりしたときに便利なのよ」

うるか 「なるほどなるほど。じゃあ、あたし秘蔵のお菓子を入れとこう」 ポイポイポイ

うるか母 「あとはねぇ……」

うるか 「ふむふむ……」


786以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:00:50REbudaZM (11/45)

………………翌日 駅前

うるか 「おはよう、成幸! 葉月ちゃん! 和樹くん!」

成幸 「お、おう、おはよう、うるか」

葉月&和樹 「「おはよー! うるか姉ちゃん!」」

成幸 「なんか、えらく大荷物だな」

うるか 「ふふーん、そうでしょ? 葉月ちゃんと和樹くんとお出かけだから、」

うるか 「色々と必要そうなものを持ってきたんだよ」

成幸 「そ、そうか。なんか悪いな。重くないか?」

うるか 「大丈夫! 大して重くないよ!」

成幸 (ペットボトルとかお菓子が見え隠れしてるな……)

成幸 (葉月と和樹のために持ってきてくれたのか……)

成幸 「……俺、ほとんど荷物ないし、持つよ」

うるか 「へ……? い、いやいや、あたしが勝手に持ってきただけだから――」

成幸 「――いいから貸せよ、ほら」


787以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:01:21REbudaZM (12/45)

ズシッ

成幸 「!?」 (な、何が大して重くない、だ)

成幸 (めちゃくちゃ重いじゃねーか!)

うるか 「大丈夫、成幸? あたしヘーキだから、持つよ?」

成幸 「だ、大丈夫だ。これくらい軽い軽い」

成幸 「それに、その服、この前買った服だろ?」

うるか 「へ……?」

成幸 「せっかくかわいい服なんだから、大荷物なんか持ってたらもったいないだろ」

うるか 「………………」

ボフッ

うるか 「……か、かかかかかか、かわいい?」

成幸 「……?」 ハッ (な、何を言ってるんだ俺は!? か、かわいいって……)

成幸 (これじゃ俺がうるかのこと口説いてるみたいじゃねーか!)

成幸 (うるかには好きな人がいるってのに、俺はなんてアホなことを……!)


788以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:01:57REbudaZM (13/45)

成幸 「ち、違うぞ、うるか! 俺は、ただ、服のことを言っただけであって……」

うるか 「……っ」

うるか (そ、そうだよね。あたしには、こういうかわいい服は似合わないよね……)

うるか 「………………」

うるか (違う……)


―――― 『今日のあたしさ お姫様みたいじゃない?』

―――― 『こ……このカッコ 似合って…… ないかな……』

―――― 『あ あはは やっぱいいや!』

―――― 『成幸の感想なんてどうでもいいしっ! じゃあねっ!』


うるか (……あたしは、だって、もう、あのときのあたしとは違うもん)

うるか 「じ、じゃあさ……」

ズイッ

うるか 「この服、あたしには似合わない?」


789以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:02:33REbudaZM (14/45)

成幸 「へっ……!?」 (ち、近っ……)

成幸 「いや、えっと……」

うるか 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

成幸 「に、似合ってないわけ、ないだろ……」

成幸 「お姫様……みたいで……その、あ、えっと……」

成幸 「かわいいと、思います、です……」

うるか 「………………」

クスッ

うるか 「あははっ、成幸めっちゃ顔真っ赤ー! なんで敬語になってんのさー!」

成幸 「う、うるせーな! そういうお前だって顔真っ赤じゃねーか!」

うるか (そんなの当たり前じゃん……)

うるか (大好きな人にかわいいっていわれて、嬉しくて仕方ないんだもん!)

クイックイッ


790以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:03:05REbudaZM (15/45)

うるか 「ん……? 葉月ちゃん?」

葉月 「兄ちゃんとうるかお姉ちゃんのラブラブもいいんだけどね」

葉月 「早くフルピュアショー見に行きたいのよね」

うるか 「あっ……そ、そうだよね! ごめんごめん」

和樹 「兄ちゃん、まだ顔真っ赤だぞ?」

成幸 「う、うるせーな。わかってるよ……」

成幸 (……っ、なんか、よくわからないけど、)

成幸 (今日のうるか、めちゃくちゃかわいいな……)

ハッ

成幸 (いかんいかん。俺の事情に付き合ってくれてるうるかに、変なことを考えるな、俺)

成幸 (うるかには好きな人がいるんだ。俺が変なことを考えちゃいかん)

うるか 「ほら、成幸ー、行くよー?」

成幸 「あ、ああ……」

成幸 (……大丈夫。俺はうるかの友達。ただの、友達なんだから)


791以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:03:43REbudaZM (16/45)

………………住宅展示場

うるか 「おー! すごいね、成幸」

うるか 「オシャレなおうちがたくさん並んでるよ」

成幸 「……なるほどなぁ。色んな会社がそれぞれの家を展示してるんだな」

成幸 「そりゃ、どの会社もオシャレで見栄えがする家を展示するよな」

葉月 「フルピュアショーはどこでやるのかしら?」

成幸 「ん……ああ、案内が出てるな」

成幸 「どうも、受付を済ませる必要があるみたいだな。まず受付の建物に行こうか」

葉月 「じゃあ、早く、早く。ショーが始まっちゃうわー」

成幸 「まだ時間はあるから大丈夫だよ。……わわっ、引っ張るなって」

うるか 「……葉月ちゃん、本当に楽しみにしてたんだねー、フルピュアショー」

和樹 「んー、まぁ、うちは貧乏だから、遊園地とかのショーは行けないからなー」

和樹 「無料で観られるって知って、本当に楽しみにしてたんだよ」

うるか 「そっか……」


792以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:04:18REbudaZM (17/45)

………………受付

成幸 「………………」

成幸 (や、やばい……! 周りにいる人たち、どう見てもみんな……)

成幸 (新婚さんとか、お子さん連れとか、とにかく夫婦ばっかりだー!)

成幸 (高校生と小児連れの俺たちは、確実に浮いている……!)

係員 「あの、お客様?」

成幸 「!? は、はい!」

係員 「受付はまだでしょうか? よろしければ、こちらのカウンターでお受け致しますが」

成幸 「あ、は、はい……よろしくお願いします……」

成幸 (だ、大丈夫なのか? そもそもここ、住宅展示場だよな)

成幸 (俺みたいな高校生が来ていいところじゃないんじゃ……)

係員 「奥様とお子様も、こちらの席にお座りください。どうぞ」

うるか 「……!?」

うるか (お、奥様!?)


793以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:05:15REbudaZM (18/45)

成幸 「あ、いや、彼女は……――」

うるか 「――は、はい! 奥様です!」

成幸 「へ……!?」

うるか 「ほら、葉月ちゃんと和樹くんも、こっち座ろうねー」

葉月 「? はーい」

成幸 「う、うるか……?」

うるか 「しーっ」 コソッ 「高校生だってバレたら追い出されちゃうかもだよ?」

うるか 「ここは、夫婦のフリ、するしかないっしょ」

成幸 「そ、そりゃそうかもしれんが……」

係員 「お客様? どうかされましたか?」

成幸 「い、いえ、なんでもないです!」

係員 「では、旦那様、奥様、当展示場の説明をさせていただきます」

成幸 (旦那様……)

うるか (奥様、かぁ……///)


794以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:06:13REbudaZM (19/45)

………………受付後

成幸 「………………」

ガクッ

成幸 「……し、死ぬかと思った」

うるか 「まったくもー。成幸は小心者だなー」

うるか 「べつにウソついたわけでもないし、向こうがあたしたちのこと……ふ……」

カァアアアア……

うるか 「夫婦って、勘違いしただけだし……」

成幸 「夫婦……」

カァアアアア……

成幸 「……そ、そりゃ、そうだけど……」

葉月 「もー、うるかママも成幸パパも、見つめ合ってないで、フルピュアショー行くわよー!」

クイクイ

成幸 「ぱ、パパ……?」

うるか 「ママ……!?」


795以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:06:59REbudaZM (20/45)

葉月 「? だって、新婚さんのフリするのよね?」

和樹 「じゃあ今日一日、兄ちゃんと姉ちゃんは、成幸パパとうるかママだな!」

成幸 「い、いや、それは……さ、さすがに……///」

うるか 「い、いいじゃん! その方が、都合がいいこともあるだろうし……」

成幸 「うるかがいいならいいけどさ……」

うるか (ま、ママかぁ……えへへ……)

成幸 (パパって……さすがに、まずい気がするぞ……)

うるか 「よーし、じゃあ行くぞー、葉月ちゃん、和樹ちゃん」

葉月 「おー!」

和樹 「いくぞー!」

ドタドタドタドタ……

成幸 「ち、ちょっと待ってくれー! 荷物があるんだよー!」


796以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:07:44REbudaZM (21/45)

………………広場

葉月 「きゃー! ショーのための舞台があるわー!」

和樹 「夢にまで見たフルピュアショーだもんな。よかったな」

葉月 「うん!」

うるか 「お子様は前に行っていいみたいだよ。いってらっしゃい、ふたりとも」

葉月 「わーい!」

成幸 「パパとママはここで座って後ろから見てる感じか。なるほどなぁ……」

うるか 「大人が前に行っちゃったら小さい子が見えなくなっちゃうもんね」

成幸 「……お前は前に行かなくていいのか?」 クスッ

うるか 「! もーっ、子どもあつかいしないでよー、成幸!」

うるか 「あたしは大人なフルピュアファンだからね。後ろからこっそり応援するよ」

客1 (なんか、すごく若い夫婦……)

客2 (いいなぁ、若くて……。ラブラブだなぁ……)


797以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:08:34REbudaZM (22/45)

葉月 「うるかママー! 成幸パパー!」

ブンブンブン

成幸 「お、おー、葉月ー」

成幸 (さ、さすがに大声でママパパ呼びされると恥ずかしいな……)

成幸 (うるかもさすがに嫌かな……? うつむいちゃったぞ……)

うるか 「………………」

うるか (なにこれ幸せすぎて怖い)

うるか (これからフルピュアショー観られるってだけでも嬉しいのに、)

うるか (成幸と新婚夫婦役とか幸せすぎて怖い)

ニヘラ

うるか (ニヤけるのが止まらなくて、顔上げられないよ~~~!!)

客1 (ラブラブアベック……)

客2 (初々しい新婚さん……)

((いいなぁ……))


798以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:09:06REbudaZM (23/45)

………………フルピュアショー

怪人 『ゲッヘッヘッへ、今日は住宅展示場にお邪魔したぞ~』

怪人 『美味そうな子どもたちがいっぱいだな~、ゲッヘッヘッへ!!』

成幸 (おお、アニメと違って着ぐるみだと少し迫力があるな)

成幸 (あいつら怖がってないかな……?)

葉月 「きゃー! きゃー! 怪人さんがいるわー! 本物よー!」

和樹 「アニメよりかっこいいな。ふむふむ」

成幸 (うちの弟妹はそんなにヤワじゃないよな……)

成幸 (それにしても、まだフルピュアも出てないのにすごい喜びようだな……)

うるか 「ねぇねぇねぇ見て見て成幸! 本物の怪人さんだよ!」

うるか 「来てよかったよー!」

成幸 (お前もか、うるか……)


799以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:09:43REbudaZM (24/45)

 『お待ちなさい!!』

バーン!!!!

うるか 「キャーーーーー!!! フルピュアだよ成幸! 本物だよ!」

成幸 (どっちかっていうと、アニメの方が本物なんじゃないかと思うんだが……)

成幸 「あ、ああ、そうだな……」

葉月 「きゃー! 勢揃いしてるわー!」 ワクワク

和樹 「フルピュアって結構大きいんだな……」 ドキドキ

成幸 「………………」

クスッ

成幸 (まぁ、みんな楽しそうだしいいか……)

うるか 「きゃー! 見て成幸! フルピュアダークネスも出てきたよ!?」

バシバシバシ

成幸 「痛い痛い痛い! どんだけ興奮してるんだうるか!?」


800以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:10:22REbudaZM (25/45)

………………ショー終了後

葉月 「うるかママー! すごかったわー!」

タタタタタ……ギュッ

うるか 「そうだねぇ、葉月ちゃん。ダークネスもカッコよかったねぇ」

葉月 「うん!」

うるか 「この後は写真撮影ができるみたいだよ。ほら、並ぼう、葉月ちゃん」

葉月 「写真撮影?」

成幸 「フルピュアと写真が撮れるみたいだな。握手もしてくれるみたいだぞ?」

葉月 「本当に!? 行くわ行くわー!」


801以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:10:56REbudaZM (26/45)

………………

成幸 「ほら、葉月と和樹の番だぞ。いってこい」

葉月 「うん!」 ドキドキドキ

うるか 「あはは、葉月ちゃんも和樹くんも緊張した顔だね」

成幸 「憧れのヒーローが目の前にいて嬉しいんだろうなぁ……」

成幸 「今日、来られてよかった。ありがとな、うるか」

うるか 「へ……? べ、べつにあたしは何も……」

うるか 「今日だってついてきただけだし……」

うるか 「っていうか、はりきって荷物たくさん持ってきちゃった。ごめんね、持たせて」

成幸 「葉月と和樹のために持ってきてくれたんだろ? ありがたいよ」

うるか 「えへへ……」

チラッ

うるか (葉月ちゃんも和樹くんも嬉しそう。いいなぁ、フルピュアと写真……)

うるか (って、まぁ、高校生のあたしがうらやましいって思うもんじゃないよね)


802以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:11:53REbudaZM (27/45)

成幸 「……?」 (うるか……なんか……)


―――― 『いちフルピュアファンとして……ちゃんと3色揃ってないのはナットクいかないっつーか……』


成幸 (文化祭でも相当こだわりがあったみたいだし、本当にフルピュアが好きなんだよな……)

成幸 (ひょっとして、写真……)

パシャッ

うるか 「……ん、成幸、ふたりとも写真撮影終わったみたいだよ」

成幸 「ああ……。じゃあ、行こうか」

うるか 「……うん」

ギュッ

うるか 「……? 成幸、どうしたの?」

成幸 「すみません。次、俺たちも撮ってもらってもいいですか?」

うるか 「へっ……?」

成幸 「悪い、葉月、和樹、ちょっとそっちで待っててくれ」

うるか (成幸、ひょっとして……) カァアア…… (あ、あたしのために……?)


803以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:16:43REbudaZM (28/45)

………………撮影後

うるか 「………………」

ジーーーッ

うるか (ど、どうしよう……フルピュアと写真撮影しちゃったよ……)

うるか (全員と握手までしてもらっちゃったし……)

うるか (それに……)

うるか (……これ、成幸とのツーショットでもあるよね)

ニヘラ

うるか (えへへ……えへへへへ……)

成幸 (うるかの奴、本当に嬉しそうな顔だ)

成幸 (……ちょっと恥ずかしかったけど、写真撮ってもらってよかったな)

和樹 「よかったな、写真撮ってもらって、ハグもしてもらえて」

葉月 「うん! この写真、わたしの宝物にするの!」

成幸 (葉月と和樹も本当に嬉しそうだ。来て良かった……)


804以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:17:17REbudaZM (29/45)

うるか 「この後どうするの?」

成幸 「ん……なんか、受付でもらった袋に、チケットがいくつか入っててさ」

うるか 「チケット?」

成幸 「ああ。展示場の色々な場所に屋台みたいなのがあるみたいだな」

成幸 「……!? そこでチケットを渡せばただで食べ物がもらえるみたいだぞ!?」

葉月&和樹 「「タダ!?」」 キラキラ

成幸 「タダで食べ物がもらえるとは……ここは天国か……」

うるか (そんなに……?)

クスッ

うるか 「よーし、じゃあ、展示場回って食べ物もらいに行くかー!?」

葉月&和樹 「「おー!!」」

成幸 「タダで食べ物……タダで……す、すごすぎるぞ……」

うるか 「いつまで驚いてんのさー、成幸ー。行くよー!」


805以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:18:08REbudaZM (30/45)

………………

成幸 「ほ、ホットドッグ!? ホットドッグをタダで!?」

スタッフ 「え、ええ、そうですけど……」

スタッフ 「4名様ですよね。どうぞ」

ゴソッ

成幸 「に、人数分!? 人数分、タダでくれるんですか!?」

成幸 「ほ、本当にタダなんですか!? 帰りにお金を請求されたりとか……」

うるか 「もー、恥ずかしいからやめてよ成幸! 大丈夫だよ!」

………………

成幸 「焼きそば!? 焼きそばもタダで!?」

成幸 「しかも結構大きいパッケージに……また人数分!?」

成幸 「お肉も野菜もたくさん入ってて……マヨネーズかけ放題ですって!?」

スタッフ 「え、ええ……」

成幸 「本当にタダなんですか!? どうしてタダにできるんですか!?」

うるか 「もー! だから恥ずかしいからやめてってばー!」


806以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:19:11REbudaZM (31/45)

………………

成幸 「タダでお腹いっぱいになってしまった……」

成幸 「しかも葉月と和樹は風船までもらって……」

成幸 「罰が当たらないだろうか……」

うるか 「大丈夫だよ、もー」

うるか 「スタッフの人も言ってたじゃん。展示場を回ってもらうためのイベントなんだって」

うるか 「だから、あたしたちが屋台を回ってタダで食べ物をもらうだけでいいんだって」

成幸 「む……仕組みは理解しているんだが、なんかこう、釈然としないというか……」

葉月 「フルピュアショーも写真撮影もタダでできて……」

和樹 「おなかいっぱいになるまでご飯食べられて、風船までもらって……」

葉月&和樹 「「天国だ……」」

うるか 「兄弟だねぇ……」

うるか 「ほら、ふたりとも、喉渇いたでしょ。お茶飲みなー」

葉月&和樹 「「はーい」」


807以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:20:02REbudaZM (32/45)

成幸 「ありがとな、飲み物。本当に助かるよ……」

うるか 「なんのなんの。家にあったやつだから気にしないで」

成幸 「……悪い。ありがとう」

ハァ

成幸 「それにしても、こうもカラフルで立派な家が並んでると壮観だな」

うるか 「そうだね。三階建てとか憧れるよね」

成幸 「うちはまず平屋だから二階建てに憧れるけどな」

成幸 「………………」

成幸 「……なぁ、うるか。ちょっと俺の話をしてもいいか?」

うるか 「? 成幸の話? いいけど、どんな話?」

成幸 「……俺さ、いつかお金をたくさん稼いで、家を建てるんだ」

うるか 「へ? 家?」


808以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:20:53REbudaZM (33/45)

成幸 「おう。できるだけ立派で広い家。それこそ……」

葉月 「……はー、あとはお菓子もあったら言うことないわね」

和樹 「さすがに天国でもそこまではムリだろー」

成幸 「……母さんと水希と、あいつらふたりが、不自由しないような家」

成幸 「いつか絶対、建てたいんだよ。こういうところに来ると、がんばらなきゃって思えるな、って感じてさ」

成幸 「俺の夢は、家族に幸せに楽な暮らしをさせてやることだからさ」

成幸 「家を建てるっていうのも、俺にとってはきっと夢のひとつなんだろうな、って……」

成幸 「……ははっ、悪い。何を言いたいんだかよく分からない、つまらない話をしちゃったな。悪い。忘れてくれ」


―――― ((このかけがえない家族にいつか楽な暮らしをさせてやるのが俺の夢だ))


成幸 (はは、俺の夢……。そんなの夢じゃないとか、つまらないとか、そういう風に言われること、多いしな……)

成幸 (うるかだってこんな話されて困って……――)


うるか 「――……つまらなくなんて、ないよ」


成幸 「えっ……?」


809以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:21:37REbudaZM (34/45)

うるか 「だってそれ、成幸にとって、大事な夢なんでしょ?」

うるか 「立派じゃん。すごいじゃん。本当に、すごいことだよ、それって」

うるか 「だから、つまらなくなんてないよ。大事な話、してくれてありがとう、成幸」

ニコッ

成幸 「うるか……」 ドキッ

成幸 「ま、まぁ、葉月と和樹の教育資金も必要だし、家なんかいつ建てられるか分からないけどな」

成幸 「母さんだっていつ体調崩すか分からないし……」

うるか 「……でも、いつか叶えられたらいいね」

うるか 「……ううん。いつか、絶対叶えようね、その夢。一緒に大きなおうち建てようね!」

成幸 「……おう!」

成幸 (……ん? 一緒に……? 一体どういう意味だ?)

うるか (はっ、し、しまった……! ついつい、成幸が夢の話をしてくれたのが嬉しくて、一緒にとか言っちゃった!)

成幸 (……まぁ、いいか。きっと大した意味じゃないだろう)

うるか (まぁいいよね! きっと成幸ニブチンだから気づかないし!)


810以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:23:02REbudaZM (35/45)

葉月 「……ん?」

(´(ェ)`)ノシ

葉月 「……んー? んん??」

和樹 「? どうかした?」

葉月 「あのおうちから、くまさんが手を振ってるわ」

和樹 「くまさん……? ああ、玄関から手振ってるな」

葉月 「おいでおいでしてる?」

和樹 「してるな」

成幸 「? おい、どうしたんだ?」

葉月 「クマさんが呼んでるのー」

和樹 「行ってみようぜ、兄ちゃん――じゃなかった、パパ!」

成幸 「あ、ち、ちょっと待てって!」


811以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:23:45REbudaZM (36/45)

タタタタタ……

葉月 「クマさん、こんにちは!」

和樹 「こんにちは!」

クマ 『こんにちは!』

クマ 『ふたりとも挨拶できて偉いね~!』

クマ 『お父さんとお母さんはいるのかな?』

和樹 「うん! いまこっちにくるよ!」

クマ 『そっかぁ……』

キラン

クマ 『実はね、おうちの中に、美味しいジュースとお菓子があるんだけど、』

クマ 『食べに来ないかな?』

葉月 「お菓子!? ジュース!?」  和樹 「いいの!?」


812以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:24:30REbudaZM (37/45)

成幸 「……? お、おいおい、なんか展示住宅の中に入っちゃったぞ!?」

うるか 「誘拐!?」

ドタドタドタドタ……

スタッフ 「こんにちは。先ほどのお子様の、お父様とお母様ですか?」

成幸 「え、ええ。そうですけど、葉月と和樹は……」

スタッフ 「中にご案内しております」

ニコッ

スタッフ 「温かいお茶のご用意もありますので、旦那様、奥様もどうぞ」

成幸 「えっ、い、いや、でも……俺たち、その、お金もないし……」

スタッフ 「ご予算のご相談でしたらお受け致しますし、低金利のローンもご用意できます」

スタッフ 「ぜひ、お話だけでも聞いていただければと思います」

成幸 「えっ、あっ……えっと……」


813以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:25:00REbudaZM (38/45)

………………展示住宅内

葉月 「きゃー!」

和樹 「広いなー! きれいだなー! うちの何倍あるかなー!」

ドタバタドタバタ……

成幸 「こ、こら! 余所様のお宅なんだから、静かにしなさい!」

スタッフ 「大丈夫ですよ、お客様。弊社の住宅の一番のウリは頑丈さですから」

スタッフ 「他のスタッフがお子様の遊び相手を務めておりますので、ご心配なく」

成幸 (ど、どうしよう、うるか。仕方なく入っちゃったけど、高校生ってバレたら怒られるかな……) コソッ

うるか (バレないってばー。大丈夫だよ。どんと構えてようよ) コソッ

成幸 (こういうとき、お前の脳天気さが頼もしいよ……) コソッ

スタッフ 「では、お客様。家の中をご案内いたしますね」


814以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:25:36REbudaZM (39/45)

………………

成幸 「………………」

成幸 (すごい……!!)

成幸 (鉄筋コンクリート製の家は外だけじゃなく中も立派だ)

成幸 (トイレも風呂もキッチンも非の打ち所のない美しさと機能を兼ね備えている!!)

成幸 (収納も多いし部屋数も豊富だ。いつか葉月と和樹が大きくなったとき、それぞれに部屋を与えることもできるだろう……)

成幸 (ただし!)

スタッフ 「えー、ただいま見ていただいたこの家ですと、大体ピー千万円からになります」

スタッフ 「弊社でご用意させていただく土地をご購入いただければ、土地自体は格安ですし、オプションをおつけすることもできます」

成幸 「ち、ちょっと、そのお値段は手が届かないかな、と……」

スタッフ 「そうですか。もっとお安い間取りもございますので、こちらのモデルプランをぜひお持ちください」

スタッフ 「低金利のローンのご用意もございますので、ぜひご検討いただければと思います」

成幸 (うぅ……。たしかに魅力的な家だが、さすがにまったく検討もつかない金額だから何も考えられんな)

うるか 「ふむふむ……なるほどなるほど……」

成幸 (頼みの綱のうるかは向こうで別のスタッフさんと何か喋ってるしー!)


815以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:26:22REbudaZM (40/45)

うるか 「……!? ほんとですか!?」

うるか 「ねえねえ成幸! すごいこと聞いちゃったよ!」

成幸 「……?」

うるか 「たとえばあたしが仕事なりパートなりをして、月々の生活費を捻出できれば、」

うるか 「成幸の給料から葉月ちゃんと和樹くんの教育ローンと家のローンも組めるって! しかも貯金もできる!」

うるか 「ボーナスをローン返済に回せば、三十年ローンを組んだとして、十五年で完済できるかもって!」

成幸 「お、おう……。お前の口から難しい言葉が出てくるとなんか違和感あるな……」

成幸 「……っていうかその試算、お前が働くって前提だろ? 俺の給料だってまだ不確定だし……」

うるか 「大丈夫! 成幸のお給料で足りない分は、あたしががんばって稼ぐし! 家事だってがんばるし!」

うるか 「成幸の夢、叶えるためだったらいくらでもがんばるよ!」

成幸 「お、おう……///」 (お、奥さんのフリ、具体的にやりすぎだろ……さすがに照れるぞ……)

スタッフ 「……良い奥様ですね」 コソッ

成幸 「へっ……!?」 カァアアアア……

うるか 「?」

成幸 「………………」 コクッ 「……そう、思います。本当に」


816以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:27:26REbudaZM (41/45)

………………帰路

葉月&和樹 「「………………」」 zzz……

成幸 「ったく、散々遊び回って、疲れたら寝ちまうんだからなぁ……」

うるか 「子どもらしくていいじゃん。ふたりとも幸せそうだし」

成幸 「悪いな。葉月おんぶさせちゃって」

うるか 「ううん。寝てる子どもの体温、湯たんぽみたいで気持ちいいよ。得した気分」

成幸 「……お前のその前向きさ、ほんと見習いたいよ」

うるか 「そう? えへへ、褒められちったー」

ルンルン♪

成幸 「………………」

クスッ

成幸 「……お前はほんと、“良いお嫁さん” になりそうだな」

うるか 「……はぇ!?」

カァアアア……

うるか 「き、急になに、成幸……」


817以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:27:58REbudaZM (42/45)

成幸 「いや、そう思ったから言っただけだよ。料理も美味いし、前向きだし、体力もあるし、元気だし……」

成幸 「……って、変なこと言ったな。悪い」

うるか 「………………」

うるか (まったく、成幸ったら……人の気も知らないで……)

うるか (でも、そっか……。成幸がそう思ってくれてるんだ)

うるか (あたしのこと、“良いお嫁さん” になるって思ってくれるんだ)

グッ

うるか 「……うん。なるよ」

成幸 「ん?」

うるか 「なるよ。“良いお嫁さん”」

成幸 「あ、ああ。そうか。そうだよな」 ニコッ 「本当に、なると思うよ。“良いお嫁さん”」

うるか (いつか、成幸の、“良いお嫁さんに”)

ニコッ

うるか 「うん! いつか、絶対。なってみせるから」

おわり


818以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:28:41REbudaZM (43/45)

………………幕間1 夜 唯我家 「敵」

水希 「今日は本当にありがとうございました、武元さん」

うるか 「へ……? あたしなんかしたっけ?」

水希 「葉月と和樹から聞きました。フルピュアショーが本当に楽しかったって」

水希 「あのふたりがニコニコ嬉しそうにわたしに言うんです。だから、本当に楽しかったんだろうな、って……」

うるか 「いやいや、あたしが勝手についていっただけだから、気にしなくていいよ」

うるか 「あたしも楽しかったしね!」

水希 (この人は本当に、葉月と和樹のために色々してくれたらしい……。武元さんには気を許してもいいかな……――)

葉月 「――あっ、うるかママー! ……じゃなかった、うるかお姉ちゃーん」

水希 「………………」 ガシッ 「……待って、葉月。ママって何?」

葉月 「? ちょっとね? 誤魔化さなくちゃいけなかったから? うるかお姉ちゃんがママ役で、兄ちゃんがパパ役をやっただけよ?」

水希 「……ふーん、そう」 ギリッ (お兄ちゃんがパパで、武元さんがママ……へー、ふーん、そうかぁ……)

うるか 「? 水希ちゃん? どうかした?」

水希 「いえ……」 (やはり……)

水希 (やはり、この人も……敵!!)


819以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:29:21REbudaZM (44/45)

………………幕間2 「ツーショット」

海原 「なんか唯我くんと進展あったんだって、うるか?」

川瀬 「教えろよー。何があったんだ、一体」

うるか 「えへへ……実は、ツーショット写真、撮っちゃったんだ」

川瀬 「な、何ぃー!? 奥手なあんたが!?」

海原 「よくがんばった! よくやったよ、うるか!」

川瀬 「して、その写真は?」

うるか 「は、恥ずかしいけど……見てもらおうかな。ほら」

海原 「……?」 (フルピュアの着ぐるみに抱きつくうるかとその隣の恥ずかしそうな唯我くん……)

川瀬 (これはツーショットと言えるのか……?)

うるか 「えへへー。ツーショット~。これ、宝物にするんだ~」

海原 (……まぁ)

川瀬 (うるかが嬉しそうだし)

海原&川瀬 ((ツーショットってことでいいか……))

おわり


820以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/24(水) 01:32:22REbudaZM (45/45)

>>1です。
見てくださった方、ありがとうございます。
感想や乙をくれる方、ありがとうございます。
励みになりますので、いただけると本当に嬉しいです。

まだまだ書きたい話がありますので、このスレが埋まったら恐縮ですがまた新しいスレを立てようかと思います。
まだ先の話ではありますが。

もし万が一何か書いてほしい話・キャラ等がありましたらレスください。
実現できそうだったら書きます。

また折を見て投下します。


821以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:09:13Tg00Lxe6 (1/20)

>>1です。
投下します。


【ぼく勉】文乃 「この場所で、また君と」


822以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:11:34Tg00Lxe6 (2/20)

………………朝 一ノ瀬学園

文乃 「………………」

ハァー

文乃 (あ、息、少し白いや)

文乃 (朝方は空気が冷えるようになってきたなぁ)

文乃 (今年は秋が短い気がする。ついこの前まで暑かったはずなのにな)

文乃 (……もう、冬なんだね)

文乃 「………………」

文乃 (もう受験、なんだよね……)

文乃 (春からこっち、長かったような、短かったような……)

文乃 (本当に色んなことがあったな)

クスッ

文乃 (そのほぼすべてに、“彼” が関わっているんだよね)

文乃 (今だって、来るか来ないかもわからない彼を待っているわけだし)


823以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:14:09Tg00Lxe6 (3/20)

文乃 (……いつ頃からだっけ。こうやって、ここで彼を待ったり、待たせたりするようになったのは)

文乃 (最初はりっちゃんとうるかちゃんの成績ががた落ちしたときだったよね)

文乃 (鈍い彼は、どうしてふたりの成績が落ちたのか分からなくて、苦労してたなぁ)

文乃 (彼の相談や愚痴、他愛もない話を聞いているうちに、いつの間にかここに来るのが習慣になって……)

文乃 (最初の頃はメールで約束したりもしていたけれど……)

文乃 (いつからか、こうやってなんとなくここに来るようになって……)

文乃 (……わたし、本当に、最近は毎日ここに来てるな)

文乃 (今日は彼は来ないみたいだ。待ちぼうけだね)

クスッ

文乃 (……まぁ、わたしが勝手に待っているだけなんだけどね)

文乃 (時間ももったいないし、数学の公式でも覚えようかな)

文乃 (成幸くんお手製のフラッシュカード……。本当だったら自分で作るべきなんだろうけど)

文乃 (“教材は俺が作るから、そんな暇あったら勉強してろ” だもんなぁ……)

文乃 (わたしはいつも、彼に甘えてばかりだ。でも、だからこそ……)

文乃 (……その彼の頑張りに報いるためにも) グッ 「……がんばるぞ、わたし!」


824以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:15:40Tg00Lxe6 (4/20)

………………???

文乃 「ん……?」

パチッ

文乃 (あれ、ひょっとして、わたし寝てた……?)

文乃 (こんなに寒いところで寝てたら、また風邪引いちゃうよ……)

文乃 (……あれ? でも、なんか……)

文乃 (寒くない?)

?? 「文乃? 起きたの?」

クスクス

文乃 「はぇ……?」 (あれ、わたし、目線が低い……?)

文乃 (ここは、どこ? 目の前で笑っている、この人は……)

文乃 「お母さん……?」


825以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:16:13Tg00Lxe6 (5/20)

………………???

文乃 「あ、あれ……?」

カーン……カーン……カーン……

文乃 (今度は何? 広場 ?工場……? いや、ここは……)

文乃 (ロケット!? えっ!? じゃあ、発射場!?)

文乃 (っていうか、わたし、なんで白衣なんて着てるの……?)

?? 「博士、イオンエンジンのマイナーチェンジ案、完ぺきですね」

文乃 「へ……?」

?? 「博士の提案された設計をいま出力しています。完成し次第、イオン反応テストを行いますが、」

?? 「博士の理論通りの推力が期待できます。従来型から36%もの推力アップです」

?? 「これなら、惑星間航行の定期便化も夢じゃありませんよ」

文乃 (博士……? わたしが……?)


826以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:16:44Tg00Lxe6 (6/20)

………………???

パシャッ……パシャッ

文乃 「あ、あれ……?」

文乃 (今度は、何……? 大量のカメラ。フラッシュ……)

文乃 (記者会見場のような……)

?? 「古橋博士! こちらへ目線お願いします!!」

?? 「こっちにもお願いします……」

?? 「博士が理論を提唱したイオンエンジンについて、簡単にご説明願います!!」

?? 「惑星間航行の大幅なコストダウンに貢献されたことについて、コメントを!!」

?? 「火星の定期便第一号に博士が搭乗されるとのことですが、それに向けて一言お願いします!」

文乃 「へ……? へ? へ?」

?? 「ちょっと待ちなさい! まだ写真撮影ですよ! 質問は控えてください!」

?? 「質疑応答の時間は後で取りますから! マナーを守れないようならご退出いただきますよ!」


827以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:17:28Tg00Lxe6 (7/20)

………………???

『さて、火星間の定期便第一号が出発します、ギアナ宇宙センターからリポートしております』

『皆様、ご覧ください。あの雄々しいながらもスマートなロケットを』

『あのロケットには、人類史に残る発明――イオンエンジンの理論提唱者である古橋博士が搭乗しています』

『若い女性でありながらロケットエンジンの第一人者として頭角を現し、』

『今や世界最高レベルのエンジニアでもある古橋博士。彼女は日本の宝であります』

『イオンエンジンの、化学エンジンとは比べものにならない推力、そしてとてつもないコストダウンにより、』

『今や宇宙へ旅立つことは人類にとってそう難しくないことになりつつあります』

『日本……いえ、地球が誇る稀代のエンジニア、古橋文乃博士の旅立ちを、世界中の人が見守っています!』

『古橋博士! どうか良い宇宙の旅を!』


828以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:18:05Tg00Lxe6 (8/20)

………………???

文乃 「……ん、あれ、今度は……」

成幸 「ああ、起きたか。文乃」

文乃 「へ……?」

文乃 「成幸くん……? なんか、背伸びた? っていうか、なんか大人っぽいような……」

成幸 「はぁ? ここ最近はお互いずっと一緒にいるだろ? いきなり何言ってんだ?」

成幸 「寝ぼけてるのか? この寝ぼすけ眠り姫め」

ギュッ

文乃 「へ……? へぇ!?」

文乃 「い、いきなり何をするのかな、成幸くん!? せ、セクハラだよ!?」

成幸 「お、おいおい。さすがにそれは傷つくぞ? 抱きしめるくらいは許してくれよ」

成幸 「約束通り、結婚するまではキスもしてないんだからさ」

文乃 「はぇ……? け、結婚、って……」

キラッ

文乃 (わたしの薬指、これ……婚約指輪……?)


829以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:18:48Tg00Lxe6 (9/20)

文乃 「わたし、結婚するの!?」

成幸 「お前、大丈夫か? 変な夢でも見てたのか……?」

成幸 「それとも、やっぱり……俺と結婚するの、嫌なのか?」

ズーン

成幸 「それなら、まぁ……仕方ないと思って、あきらめるけどさ……」

文乃 「しかもきみと!?」

成幸 「そこも把握してなかったのか!?」

文乃 「わ、わたしと、きみが、結婚……?」

カァアアア……

文乃 「……わたしなんかと結婚して、いいの?」

成幸 「はぁ? 何を言ってるんだ、一体」

成幸 「お前と結婚したいんだよ、俺は。お前以外の誰と結婚しろって言うんだよ」

成幸 「イオンエンジンの理論提唱者にして、世界最高のエンジニア、古橋博士」

成幸 「……お前と結婚したい男なんて1億人は下らんぞ」

成幸 「まぁ、俺はそういう肩書きなんかどうでもよくて、ただ古橋文乃が好きなだけだけどな」


830以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:19:44Tg00Lxe6 (10/20)

文乃 「はうっ……////」

文乃 (で、でも、だって……きみには、りっちゃんとうるかちゃんが……)

成幸 「あ、そうだ。理珠とうるか、あすみ先輩も真冬先生も式に来られるってさ」

成幸 「いい男捕まえるって息巻いてたぜ。エンジニア仲間でも紹介してやれよ」

文乃 (……そっか)

文乃 (わたし、きみと幸せになっても、いいんだね……)

成幸 「……? 文乃?」

文乃 「……よろしくね。成幸くん」

文乃 「わたしのこと、幸せにしてね」

成幸 「………………」

ニコッ

成幸 「当たり前だろ。任せとけ」


831以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:20:19Tg00Lxe6 (11/20)

………………???

文乃 (ん……? ここは……教会……?)

文乃 (純白の衣装……こんなの、考えなくたって、分かる……)

文乃 (ウエディングドレス、着てるんだ、わたし)

文乃 (結婚、するんだね。わたし、成幸くんと……)

成幸 「………………」 ドキドキドキ……

文乃 (ふふっ、緊張した顔しちゃって……)

うるか 「文乃っちー、きれいだよー!」

理珠 「おめでとうございます、文乃。本当にきれいです」

あすみ 「まさかお前と後輩がなぁ。人生どうなるかわからないもんだな。ま、おめでとさん!」

真冬 「おめでとう、古橋さん。……いえ、もう唯我さん、ね」

文乃 (えへへ……)

文乃 「みんな、ありがとー!」


832以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:21:35Tg00Lxe6 (12/20)

………………???

文乃 (ん……?)

文乃 (あれ? わたし、結婚式で、みんなに祝福されて……)

文乃 (ここは……?)

?? 「あなたに理系受験は無理よ」

?? 「よしんば受かったとして、大学の理系授業について行けると思うの?」

文乃 「!? い、いきなりなんですか? そんなの、やってみないと、わからないじゃないですか!」

?? 「文乃。ひどいです」

?? 「文乃は、私が成幸さんのことを好きと知っていて、その上で……」

?? 「私から成幸さんを奪い取ったんですね」

文乃 「ち、違うよ!? わたしは、ただ……」

?? 「違わないよ! 文乃っち、ひどいよ!」

?? 「あたしが成幸のこと好きって知ってたんでしょ!? 心の中で笑ってたんでしょ!?」

?? 「最後に勝つのは自分だって、笑ってたんでしょ!!」

文乃 「違うよ! わたしはそんなこと考えてないよ!」


833以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:23:01Tg00Lxe6 (13/20)

?? 「……文乃」

文乃 「へ……?」

?? 「………………」

文乃 「おとう、さん……?」

?? 「………………」

文乃 (……いやだ。怖い。なんで。どうして)

文乃 (どうして、こんな……)

……ギュッ

文乃 「えっ……?」 (ひんやりして、心地良い、この手は……)

文乃 「成幸、くん……?」

成幸 「……行くぞ、古橋」

ニコッ

成幸 「一緒に行こう。一緒なら、大丈夫だ」

文乃 「成幸くん……」 (ああ、そうか、きみは……きみだけは、わたしを……)

文乃 「……うん!!」


834以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:24:16Tg00Lxe6 (14/20)

………………

文乃 「……ん」 パチッ

文乃 「あれ……? わたし……」

  「起きたか?」

文乃 「へ……?」

文乃 「成幸くん……?」

成幸 「おう。なんだ? 寝ぼけてるのか?」

文乃 「……んー、そう、かも? ちょっと、怖い夢を見て……。えっと、結婚式は?」

成幸 「はぁ? 結婚式? 誰の?」

文乃 「誰って……きみとわたしの結婚式に決まってるでしょ」

成幸 「………………」

成幸 「は、はぁ……?」 カァアアアア……

文乃 「へっ……? あっ……」 (成幸くん、制服……?)

ハッ

文乃 (夢!? そうだ、わたし、夢を見てたんだ! 全部夢だったんだ!)


835以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:25:02Tg00Lxe6 (15/20)

文乃 (わ、わたし……成幸くんにもたれかかって……寝て……)

文乃 (エンジニアになって、成幸くんと……結婚する、夢……)

文乃 「ご、ごめん。変な夢見ちゃったみたい。忘れてっ」

成幸 「あ、ああ。まったく、朝から寝ぼすけだな……」

文乃 「でも、成幸くん、どうしてここに……?」

成幸 「ああ。古橋がいるかなと思って来たら、フラッシュカード持ったまま居眠りしてるお前がいたから……」

成幸 「悪い。気持ち良さそうに寝てたからさ。起こすのも気が引けて隣で勉強してたんだが、」

成幸 「途中で俺にもたれかかってきて……。すまん」

文乃 「そ、そっか……。こちらこそごめんね、成幸くん」

文乃 「ん……?」

パサッ……

文乃 「……あれ、これ……成幸くんの、ブレザー……?」


836以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:25:47Tg00Lxe6 (16/20)

文乃 「寝てるわたしに、かけてくれたの……?」

成幸 「……さすがにこんな寒い中、制服だけで寝てたら風邪引くだろ」

成幸 「へくしっ……」

文乃 「成幸くんが風邪引いちゃうよ! ごめんね。返すよ」

成幸 「俺は大丈夫だよ。でも、どこでも寝ちまうお前には困ったもんだな」

成幸 「こんなところで寝るくらいなら、教室で寝ろよ」

文乃 「それは、まぁ、その通りなんだけど……」

文乃 (……きみを待っていたら、いつの間にか居眠りしちゃったなんて、言えないし)

文乃 (きみの夢を見てたなんて、もっと言えないし……)

カァアアアア……

文乃 (きみと結婚する夢を見ていたなんて、絶対言えないよね)


837以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:26:19Tg00Lxe6 (17/20)

成幸 「ん……もうこんな時間か」

成幸 「そろそろ教室行くか」

文乃 「……そうだね。行こうか」

文乃 (……手の隙間から、砂がこぼれ落ちていくように、夢の中での出来事が、頭の中から少しずつ消えていく……)

文乃 「………………」

文乃 「……ねぇ、成幸くん。数学の公式、結構覚えたから、また問題出してね」

成幸 「おう。とりあえず今日の放課後だな。あとは……」

成幸 「明日の朝、ここでもやるか」

文乃 「……うん!」


838以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:26:56Tg00Lxe6 (18/20)

文乃 (夢は夢で、わたしはきみとどうなったわけでもない)

文乃 (わたしが、何を思って、あんな夢を見たのかなんて、きっとわからない)

文乃 (ただ、ひとつ分かること。確実なこと……)

文乃 「……また明日だね、成幸くん」

成幸 「? 今日の放課後も一緒に勉強するだろ?」

文乃 「ふふ、そうだね……」

文乃 (鈍い君はきっと気づかない。気づかなくていい。気づかれちゃ、きっとダメ)

文乃 (だから、そっと、心の中だけで、なぞる)

文乃 「………………」

ニコッ

文乃 (この場所で、また君と)



おわり


839以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:27:33Tg00Lxe6 (19/20)

………………幕間 「出歯亀の会」

鹿島 「!? 居眠りした古橋姫の隣に唯我成幸さんが座りましたね~!」

蝶野 「!? おお!? 唯我さん、古橋姫に自分のブレザーを羽織らせたっスよ!」

猪森 「!? なんだと!? 古橋姫が唯我くんにもたれかかったぞ!?」

鹿島 「これは……」

蝶野 「なんとも……」

猪森 「とてつもなく……」

鹿島&蝶野&猪森 「「「尊い……!!」」」



おわり


840以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 00:29:40Tg00Lxe6 (20/20)

>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

非常に短い話です。
ほとんど夢の中の出来事という二次創作的には禁じ手に近いようなものを書いてしまいました。
本編で文乃さんの過去や家庭の事情が明らかになるのが今から楽しみで仕方ありません。

また折を見て投下します。よろしくお願いします。


841以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 06:06:09MQC3KiDY (1/1)

いいっすねえ…


842以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/25(木) 22:41:57y7iV49tw (1/1)

ド定番に王様ゲームとか...


843以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 00:06:25MtoRC5vY (1/1)

突然だがぼく勉って先輩キャラはいるのに後輩キャラがいないな


844以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:05:05aVLVUSo6 (1/76)

>>1です。投下します。


【ぼく勉】理珠 「王様ゲーム?」


845以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:05:40aVLVUSo6 (2/76)

……………… “愛してるゲーム” 後 緒方家

理珠 「………………」


―――― 『あ……あいしししししししししししししししし』

―――― 『緒方さんがバグった!!』

―――― 『今度はまた別のイミで壊れたレコーダーに!!』


理珠 (まったく、不可解です……)

理珠 (なぜ私はあんな単純なゲームで後れを取ったのでしょうか)

理珠 (せっかく、成幸さんにゲームで勝利するチャンスだったというのに……)

理珠 (成幸さんのお友達相手ならいくらでも言えることが、どうして成幸さんには言えなかったのでしょうか)

理珠 (なぜ……)

理珠 「“愛してる” ……」 ボソッ

理珠 「……っ」 カァアアア……


846以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:07:12aVLVUSo6 (3/76)

理珠 (い、いけません。なんだかわかりませんが、これはきっと、ダメです)

理珠 (しかし、ずっと負けっぱなしというのもなんとも情けない話です)

理珠 (なんとか、成幸さんにゲームで勝つことはできないでしょうか……)

理珠 「………………」

ハッ

理珠 (……逆説的に考えれば、勝てるゲームを探せばいい……!?)

理珠 (なんということでしょう。私は天才ですか。成幸さんに勝てるゲームで勝負をすればいいんです)

理珠 (そうと決まれば、インターネットで少し調べてみましょうか)

理珠 「……えっと、そうですね……。“男子に勝てる ゲーム” あたりで調べてみましょうか」

理珠 「………………」

理珠 「……? 合コン必勝法……? 王様ゲームで優位に立つ……?」

理珠 「王様ゲーム?」

理珠 「……!?」 (す、すごい情報です……! 王様ゲームに持ち込めば、女子は絶対男子に勝てる!?)

理珠 (王様ゲームというゲームなら、成幸さんに勝てるのですね……!)


847以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:08:19aVLVUSo6 (4/76)

………………翌日 一ノ瀬学園 3-B教室

理珠 「……と、いうことで、今日の放課後、四人で王様ゲームをしましょう」

成幸 「………………」

成幸 「うん。とりあえず、何が 『と、いうことで』 なのか分からんが……」

成幸 「今日の放課後も勉強だよ! 何考えてるんだお前は!」

理珠 「そ、そんな! せっかくクジも用意してきたんですよ!?」

成幸 「何に情熱燃やしてんだお前は!? どんだけ王様ゲームやりたいんだ!?」

文乃 「ま、まぁまぁ。成幸くんもおさえておさえて……」

文乃 「りっちゃん、どうしていきなり王様ゲームなんて言い出したの?」

理珠 「む……それは……」


―――― ((す、すごい情報です……! 王様ゲームに持ち込めば、女子は絶対男子に勝てる!?))


理珠 (妙なことを言って成幸さんに警戒されるわけにはいきませんね……)

理珠 「わ、わたしがやりたいと思ったからです。面白そうなゲームだから……」

文乃 「面白そう!? 王様ゲームが!?」


848以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:08:56aVLVUSo6 (5/76)

うるか 「でも、リズりんいいの? 成幸もいるんだよ?」

うるか 「成幸にエッチな命令とかされちゃったらどうする~?」

理珠 「え、エッチな命令!?」

ジトーーーーッ

理珠 「な、成幸さん、不潔です! 最低です!」

成幸 「俺何も言ってないんだけどな!?」

ハァ

成幸 「まぁ、やる気がなくなったならちょうどいいや。やめておこう。な?」

理珠 「そ、そんなことは言ってません!」

理珠 「お願いします。そんなに時間は取りません。少しだけでも、やってみたいんです……」

成幸 (どんだけ王様ゲームがやりたいんだ、こいつは……。とはいえ……)

文乃 (王様ゲームって、合コンとかでやるいやらしいゲームってイメージだから……)

文乃 (桐須先生あたりにバレたらめちゃくちゃ怒られると思うんだけど……)

成幸 (古橋は乗り気じゃなさそうだし、うるかは……)


849以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:10:07aVLVUSo6 (6/76)

うるか 「………………」

うるか (……王様ゲームって、よく考えたら、あたしが王様になったら成幸に命令できるってことだよね)

ポワンポワンポワン……

 『成幸、あたしの肩を揉んで』

 『はい。うるか女王』

 『成幸、今度は足をマッサージして』

 『はい。うるか女王』

 『成幸、今度は優しく抱きしめなさい』

 『はい。うるか女王……いや、かわいい俺のうるか姫』

 『あっ……こらっ。どこ触って……』

 『いいだろ? ほら、女王様? それじゃかわいい顔が見せませんよ?』

……ポワンポワンポワン

うるか 「………………」 ニヤァ

成幸 「……!?」 ゾワッ (な、なんだ、あのだらけきった顔は……)

うるか 「はいはいはーい! あたしもリズりんにさんせーい! ちょっと気晴らしにやろーよ!」


850以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:11:02aVLVUSo6 (7/76)

成幸 「ん……うるかもやりたいのか、王様ゲーム」

成幸 「……どうする、古橋。俺もまぁ、気晴らしになるならいいかなと思うけど」

文乃 「………………」

ジーーーッ

成幸 「な、なんだよ、その目は」

文乃 「成幸くん、わたしたちにいやらしい命令、しない?」

成幸 「!? しねーよ! 信用ないな俺!」

文乃 「冗談だよ。成幸くんがそんなことしないって知ってるよ」

クスッ

文乃 「しょうがないなぁ。少しだけだよ、りっちゃん」

理珠 「やってくれますか。ありがとうございます! 嬉しいです」

ニヤリ

理珠 (ここまでは計画通りです。あとは、いかに効率的に命令を下し……)

理珠 (成幸さんに勝利するか、それだけです!!)


851以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:11:56aVLVUSo6 (8/76)

………………放課後 空き教室

理珠 「では、ルールを説明します」

理珠 「ここにクジがあります。1~3の番号が振られたものが一本ずつと、王様と書かれたものが一本です」

理珠 「クジを引く際は、番号が自分以外の人に見えないようにだけ注意をしてください」

理珠 「順番にクジを引いてもらい、王様を引いた人が番号をコールして命令を出します」

理珠 「ただしその際、絶対に実行不可能な命令や、常識の範囲を外れた命令は無効となります」

理珠 「その判定は全員で行いましょう」

文乃 (ふむ……。りっちゃんのことだからとんでもないことを言い出すんじゃないかと身構えたけど、)

文乃 (常識という言葉も盛り込まれたし、あまり心配はなさそうかな……)

理珠 「そして、常識的かつ実行可能な命令を遂行できなかった者が、負けになります」

文乃 (……そもそも王様ゲームって勝ち負けを決めるようなゲームじゃないと思うんだけど)

理珠 「……他、細かいルールは実際にやりながら確認していきましょう。では、はじめます」

理珠 (ふふふ……王様ゲームの必勝法はリサーチ済みです)

理珠 (絶対に負けません! 王様を取ったら、絶対に勝ちます! 成幸さんに!)

成幸 (……なぜそんな熱い視線を俺に向けるんだ、緒方。怖いんだけど)


852以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:12:50aVLVUSo6 (9/76)

………………一回目

文乃 (……うおう)

『王様だーれだ!』

文乃 「はい、わたしです……」

理珠 (……まぁ、仕方ありません。最初から王様をとれるとは思っていません)

文乃 (うーん。どうしようかなぁ……。まぁ、最初は無難に……)

文乃 「……えっと、じゃあ、3番に肩を揉んでもらおうかな」

成幸 「げっ……」 ピラッ 「3番、俺だ……」

文乃 「へっ……」

文乃 (な、成幸くん!? しまったぁああああ、だよ! 成幸くんのことを忘れてた!)

文乃 「や、やっぱ今のナシで――」

理珠 「ダメです。王様の命令は、たとえ王様であっても取り消しはできません」

文乃 (なんですとー!?)


853以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:13:45aVLVUSo6 (10/76)

成幸 「いや、でもさすがにさ、俺が女子の肩に触れるっていうのは、いくらなんでも……」

文乃 「……ううん。いいよ。軽率だったわたしが悪いし」

文乃 「来て、成幸くん! 肩揉んでください!」

理珠 「ほら、成幸さん。王様の命令は絶対ですよ」

成幸 「……あー、わかったよ」

スッ

成幸 「悪い。古橋。行くぞ?」

文乃 「う、うん……」 ドキドキドキドキ……

グッ……グイッ……ググッ……グイッ

文乃 「んっ……」 (へぇ……? な、なにこれ……?)

文乃 (とてつもない快感が……)

文乃 「ふへぇ~~~ふにゃぁ~~~~~~」

うるか 「成幸!? 文乃っちに何してるの!? 文乃っちが壊れちゃったよ!?」

成幸 「何って、肩揉んでるだけだけど……」

うるか (いいなぁ、文乃っち。あたしも成幸に肩揉まれたいよぅ……)


854以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:14:31aVLVUSo6 (11/76)

成幸 「もういいか? 古橋?」

文乃 「ふにゃぁ……」

成幸 「よさそうだな」 パッ

文乃 「……ふぅ。す、すごかったよぅ……」

文乃 「肩を全方位からくすぐられているような、それでいて心地よい圧力をかけられているような……」

文乃 「今まで味わったことのない感触だったよ……」

文乃 「しかも肩も軽くなった気がする! ありがとう、成幸くん」

成幸 「そりゃ良かった。でも、古橋、あんまり肩凝ってるように感じなかったぞ」

成幸 「俺の見立てでは、緒方とうるかの方が肩凝りがひどそうだな」

文乃 「………………」

ギロリ

文乃 「……見立て、って、一体どこを見て言っているのかな? 成幸くん?」

成幸 「!? ち、違うぞ!? そういう意味じゃなくて、単純に肩だけを見てだな!」

文乃 「そういう意味ってどういう意味なのかな? ねぇ、教えてほしいなぁ?」

成幸 「つ、次行こう! 次! 早くクジの準備をしよう、緒方!」


855以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:15:49aVLVUSo6 (12/76)

………………二回目

文乃 (どういうことなのかな、これは……)

『王様だーれだ!』

文乃 「……ごめんなさい。またわたしです」

理珠 (ぐぬぬっ……いえ、まだまだ二回目。チャンスはまだまだあります)

うるか (ぬー、うらやましいよ文乃っちー!)

文乃 (胃が痛いなぁ……) キリキリキリ (被害が少なくて、なおかつ成幸くんでも問題ないような命令……)

文乃 「えっと、じゃあ……2番の人、ゲームが終わるまでポニーテールにしてください」

理珠 「む……2番はわたしです」

文乃 「ん、じゃあ髪ゴム貸してあげるから、やってあげるね」

スッ……キュッ……

文乃 「できた……けど……」 (やっぱり髪が短いから、ちょんまげみたいになっちゃったなぁ……)

理珠 「ど、どんな感じになっていますか? 怖いです……」

うるか 「ほら、手鏡。こんな感じだよー」

理珠 「っ……く、屈辱です……!」


856以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:16:51aVLVUSo6 (13/76)

うるか 「えーっ、似合ってると思うよー」 (赤ちゃんみたいでかわいいし)

文乃 「う、うん! 似合ってるよりっちゃん!」 (赤ちゃんみたいで!)

理珠 「……ふたりとも目が泳いでいますよ?」

うるか&文乃 「「うっ……」」 ギクッ

成幸 「………………」 ジーーーッ

理珠 「!? あ、あまり見ないでください!」

成幸 「あ、いや、すまん。かわいいと思ってさ」

理珠 「……!? か、かわいい、ですか……?」

成幸 「うん。まぁ、普段の緒方の方がいいとは思うけど、かわいいぞ」

理珠 「そ、そうですか……///」

成幸 (……子連れ狼の大五郎みたいで)

成幸 (とは、言わない方がいいだろうな……)


857以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:17:50aVLVUSo6 (14/76)

………………三回目

文乃 (……もしかしてりっちゃん、何か仕組んでる?)

『王様だーれだ!』

文乃 「またまたわたくしめでございます……」

理珠 (ぬー! どうして文乃ばかりー!) ハッ (い、いけません。冷静に、冷静に……)

うるか (あたしも早く成幸に命令したいー!)

文乃 「えっと、じゃあ……どうしようかな……1番の人、逆立ち、とかどうかな?」

うるか 「あっ、1番あたしだ」

うるか 「ふふふん、逆立ちなんか朝飯前だよー」

文乃 「あっ、今日体育あったから、ハーフパンツあるから、貸すよ」

うるか 「心配ごむよーだよ、文乃っち。じゃあ行くよー」

成幸 「!? ち、ちょっと待て! そのまま逆立ちしたら、スカートが……!」

うるか 「いきまーす!」

ヒョイッ……タン

文乃 「わひゃっ!? 成幸くん、見ちゃダメ!」 ガバッ


858以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:18:28aVLVUSo6 (15/76)

成幸 「うお!? 視界が!」 (っていうか俺の目を隠しているつもりなんだろうけど、古橋!)

成幸 (勢いつけすぎて俺に抱きついてるみたいになってるぞ!?)

理珠 「………………」 ジーーーッ 「……近いですよ、文乃」

うるか 「あははっ、ってゆーか大丈夫だって! ほら!」

うるか 「あたし、今日は夜練あるから、もう水着に着替えちゃってるし!」

うるか 「パンツじゃなくて水着だから、見られても全然平気だもんねー」

理珠 「……えっと、でも、うるかさん?」

文乃 「そうは言っても……正直……」

うるか 「うん?」

文乃 「……スカートがめくれ上がって、真っ白な水着の下だけ見えてるって……」

文乃 「……その、大変言いにくいんだけど、パンツよりいやらしいと思う」

うるか 「……!? わっ……わわわ……」

スタッ

うるか 「な、成幸見た!? 見てないよね!?」

成幸 「み、見てねーよ!」


859以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:19:03aVLVUSo6 (16/76)

………………四回目

文乃 (うそでしょ……)

『王様だーれだ!』

文乃 「……はい」

理珠 (なぜ!? どんな強運の持ち主ですか文乃!)

うるか (あーん! ずるいよ文乃っちー!)

文乃 (あー、なんかもう、純粋にゲームを楽しんだ方が楽な気がしてきた)

文乃 (……どうせだし、一石を投じてみようかな。その結果として胃が痛くなるかもだけど、もう知らないよ)

文乃 「じゃあ、2番の人、何かひとつ、恥ずかしい秘密を暴露してください」

成幸 「げっ……。2番、俺だよ……」

文乃 「!?」 (ふたりに一石を投じるつもりが一番投げちゃいけない方向に爆弾を投げてしまったー!)

成幸 (秘密……秘密ねぇ……)


860以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:19:42aVLVUSo6 (17/76)

成幸 (うーん、今ぱっと思いつくのは、やっぱりこの三人との間の秘密かなぁ)

成幸 (緒方は……)


―――― 『あ あの 昨日のアレは…… 物理現象としてはアレ……かもしれませんが……違いますから……』

―――― 『ただの接触事故…… ですからね』


成幸 (言えるかーーーー!! 接触事故があったなんて言えるかーーーー!!)

成幸 (これは却下だ。ダメだ。絶対言っちゃダメなやつだ)

成幸 (あとは、うるか……)


―――― 『お前の好きな奴って…… 俺……?』


成幸 (言えるかぁあああああ!! 言えるわけねえだろ!!)

成幸 (俺が何日間布団の中で恥ずかしくて悶え苦しんだかわかってんのか!?)

成幸 (しかも古橋には友達の話って体で相談してるし!)

成幸 (それを今さら実は自分のことでしたー、なんて言えるかぁああああああ!!)


861以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:21:29aVLVUSo6 (18/76)

成幸 (あとは古橋……は……)


―――― 『大丈夫です』

―――― 『姉弟ですから!!!』


成幸 (……まぁ、これは緊急避難的な意味合いもあったから、言っても大丈夫とは思うが)

成幸 (前、言おうとしたら古橋に止められたし、言わない方がいいんだろうなぁ)

成幸 (しょうがない。俺単独の秘密を思い出すか。うーん……)

成幸 「……あっ、そうだ。少し恥ずかしいけど、話せる秘密があるな」

うるか 「な、なになに? どんな秘密?」 ズイッ

理珠 「どんな秘密ですか」 ズイズイッ

文乃 (うるかちゃんもりっちゃんも食いつきすぎだよ……)

文乃 (でもまぁ、わたしも気にならないと言えば、うそになるけど……)

成幸 「大して面白い話じゃないぞ? 俺と妹の話だよ」

成幸 「俺さ、小学生の頃ずっと、水希と結婚するもんだと思い込んでたんだよな」

文乃 「……へ?」 うるか 「えっ」 理珠 「………………」


862以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:22:08aVLVUSo6 (19/76)

文乃 (本人は軽いノリで話し始めたみたいだけど、こっちは結構ドン引きだよ!?)

成幸 「小さい頃から水希に、兄妹は結婚するものだよ、って言われ続けてな」

成幸 「そういう神話とか物語とかもたくさん読み聞かせられて、」

成幸 「そのせいで俺もそういうものなんだと思い込んでてさ」

成幸 「葉月と和樹が生まれるとき、双子のきょうだいだって知って、」

成幸 「母さんに 『生まれてくる子たちはふたりで結婚できるな!』 って言っちゃって」

テヘッ

成幸 「そこでようやく姉弟や兄妹が結婚するってありえないことなんだって知ったんだよ」

成幸 「いやー、こんな話を改めてすると恥ずかしいな。ま、子どもの頃の話だしな!」

うるか 「う、うん、そうだね……」 プイッ

理珠 「そうですね。次、いきましょうか」 プイッ

成幸 「!? なぜ目を逸らす!? 恥ずかしいからせめて笑ってくれるとありがたいんだけど!?」

文乃 (笑えるかーーーー!! 唯我家の闇を見た気持ちだよ!?)

文乃 (っていうか、水希ちゃんは一体なぜそんなことをしたんだろう……)

文乃 (……やめよう。考えたらいけない気がしてきたよ)


863以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:23:36aVLVUSo6 (20/76)

………………五回目

うるか 「やったー!! あたし! あたし王様だよ!」

理珠 「王様だれだ、の前に言わないでください! 次やったら反則ですよ!」

理珠 (悔しいです……まだ一度も王様になれていないなんて)

うるか 「えへへ、ごめんごめん。嬉しくてつい、ね」

うるか 「さてさて、じゃあ何をしてもらおうかな~」

うるか (なんてね! 実はもうしてもらうことなんて決まってるんだよ!)

うるか (しかも、偶然ちらっと、成幸の引いたくじの番号が見えちゃったし……)

うるか (少し反則かもしれないけど! ごめんね、みんな!)

うるか 「じ、じゃあねー、えへっ……2番の人に、『愛してる』 って言ってもらおうかな、なんて……」

うるか (成幸の番号は2番だったはず! これなら……――)

文乃 「……2番、わたしだよ?」

うるか 「えっ!?」

成幸 「なんつー危ない命令を出すんだ、うるか。俺が2番だったらどうするつもりだったんだよ!」

うるか (成幸3番だー! 先端で2だと勘違いしちゃったの!?)


864以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:24:19aVLVUSo6 (21/76)

理珠 「……まぁ、常識的な範囲ではあると思いますので、実行してください、文乃」

文乃 「まぁ、べつにいいけど……」 チラッ

うるか (うぅ……2番じゃなくて3番かぁ……) シクシクシク

文乃 (成幸くんに言ってもらうつもりだったんだろうなぁ……)

文乃 (ま、いいや。パパッと済ませちゃおう)

文乃 「はい、うるかちゃん。こっち向いて」

うるか 「……うん」

ドキッ

うるか (わっ……改めて真正面から見ると、文乃っち、本当に美少女だなぁ……)

文乃 (わぁ、うるかちゃんって目が大きくて可愛いなぁ……)

文乃 「……う、うるかちゃん。いくよ?」

うるか 「う、うん」

文乃 「……うるかちゃん、愛してるよ」

うるか 「はわっ……////」

文乃 「うぅ……///」


865以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:25:01aVLVUSo6 (22/76)

成幸 「………………」 (……なんか、その、なんていうか)

成幸 (……淫靡だ) ドキドキドキ……

うるか (め、めっちゃドキドキした~! 変な気分だよ~~~~!!)

文乃 (何かに目覚めちゃいそう……)

理珠 「はい、ではクリアということで、次行きましょう」

文乃 「わたし結構がんばったのにドライすぎないりっちゃん!?」

成幸 「っていうか、そろそろやめにしないか? 勉強もあるし……」

成幸 (なんかとんでもないことになりそうな気がするし……)

理珠 「……勝ち逃げするつもりですか、成幸さん?」

ギロリ

成幸 (何で怒ってるの緒方さん!? っていうか俺も一回も王様になってないんですけどー!?)

成幸 (お、おい、古橋) コソッ (緒方の奴、自分が王様になるまでやめるつもりないみたいだぞ)

文乃 (みたいだね。仕方ない。どうにかしてりっちゃんに王様を引かせてあげようか) コソッ

成幸 (そうは言ってもな……。緒方がクジを握っている以上、逆不正もできないし……)


866以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:25:36aVLVUSo6 (23/76)

………………十数回目

理珠 (……ふふ、苦節十数回。ようやくです)

『王様だーれだ!』

理珠 「私です」

文乃 (や、やっとだよ……)

成幸 (や、やっとか……)

理珠 「では、いきますよ。ふふ、ふふふふ……」


―――― 『2番の人に、『愛してる』 って言ってもらおうかな、なんて……』


理珠 (緒方さんもいい線いっていましたが、完全に勝利するにはもう一押しでしたね!)

理珠 「命令します。1番、2番、3番、全員、わたしに 『愛してる』 と言ってください」

成幸 「!?」


867以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:26:24aVLVUSo6 (24/76)

すみません。>>866訂正です。


………………十数回目

理珠 (……ふふ、苦節十数回。ようやくです)

『王様だーれだ!』

理珠 「私です」

文乃 (や、やっとだよ……)

成幸 (や、やっとか……)

理珠 「では、いきますよ。ふふ、ふふふふ……」


―――― 『2番の人に、『愛してる』 って言ってもらおうかな、なんて……』


理珠 (うるかさんもいい線いっていましたが、完全に勝利するにはもう一押しでしたね!)

理珠 「命令します。1番、2番、3番、全員、わたしに 『愛してる』 と言ってください」

成幸 「!?」


868以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:27:13aVLVUSo6 (25/76)

成幸 「ち、ちょっと待て、全員か!?」

理珠 「ええ、全員です」 ムフー

文乃 (りっちゃん、すごいドヤ顔してる……)

うるか 「そ、その手があったかーーー!!!」

ガクッ

うるか 「うぅ、そうしていれば……」 (成幸に確実に愛してるって言ってもらえたのにー!)

理珠 「ふふ、そうですよ、うるかさん」 (これなら確実に成幸さんに勝てるんです!)

文乃 (絶対すれ違ってるよねこのふたり)

文乃 「……ま、いいや。王様の命令は絶対だもんね。じゃあ、わたしから」

文乃 「愛してるよ、りっちゃん」

理珠 「……?」

うるか 「じゃあつぎあたしー! リズりん、愛してるよっ!」

理珠 「?」


869以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:28:06aVLVUSo6 (26/76)

理珠 「……あの、なんか、さっきと比べてふたりとも軽くないですか?」

文乃 「へ……? そ、そんなことないと、思うけどな……?」

文乃 (しまった……)

うるか 「うん。ぜんっぜん、そんなことないと思うけどなぁ~」

うるか (ただでさえ幼いリズりんがちょんまげヘアだから……)

文乃&うるか ((子どもを相手にしてるような気持ちで軽く言っちゃった……))

理珠 「………………」 ジトッ

理珠 「……まぁ、いいです。さぁ、成幸さんの番ですよ?」

成幸 「ほ、ほんとに俺も言うのか……?」


―――― 『あ……ッ あ う…… あ…… ぁぃし…………』


理珠 「当然です。王様の命令は絶対ですから」

理珠 (ふふ、“愛してるゲーム” でリサーチ済み。成幸さんは絶対に言えないはずです)

理珠 (この勝負、私の勝ちです!)

成幸 (……うぅ、本当に言うのかよ)


870以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:28:44aVLVUSo6 (27/76)

理珠 (ふふ。言えないはずです。私の勝ちです) ムフー

成幸 (……ん?)

成幸 (でも、なんかただでさえ小動物っぽい緒方が、ご満悦顔で……)

成幸 (しかも今はちょんまげヘアの大五郎スタイル……)

成幸 「………………」

成幸 「……愛してるぞ、緒方」 サラッ

理珠 「……!?」

文乃 (言えちゃうの!?)

うるか (あーん!! リズりん羨ましいよーーーー!!)

理珠 (言われた……? あ、あれ……?)

カァアアアア……


―――― 『……愛してるぞ、緒方』


理珠 「ふぁ、ふぁ……////」

成幸 (い、言えたは言えたが……さ、さすがに恥ずかしいな……)


871以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:29:57aVLVUSo6 (28/76)

文乃 「あっ、も、もうこんな時間かー。さすがにそろそろ勉強始めないとだね。そろそろ終わりにしようか」

理珠 「ほわぁ……」

文乃 (りっちゃんがポーッとしてる今がチャンスだよ! なんとかこの不毛な勝負を終わりに……――)

うるか 「――ええっ!? ちょっと待ってよ文乃っち! あたしまだやりたいよー!」

文乃 「えっ!?」 (りっちゃんがおとなしくなったと思ったら今度はうるかちゃん!?)

うるか (あたしも成幸に愛してるって言ってもらいたいよー!)

成幸 「さ、さすがに勉強の時間が取れないからダメだ! ほら、終わりだ終わり」

うるか 「うぅ……はーい。分かったよ……」

文乃 (やっと終わったよ……)

文乃 (本当に不毛の極みだったよ。りっちゃんは結局何がしたかったのかな?)

理珠 (うぅ……不可解です。なぜこんなに、ドキドキするのでしょうか……)

理珠 (今日も成幸さんに勝てませんでした。悔しいです……)

理珠 「………………」 (『愛してる』 ですか……////)

文乃 (……でもまぁ) クスッ (りっちゃん、すごく嬉しそうだから、いいか)

おわり


872以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:30:33aVLVUSo6 (29/76)

………………幕間1 夜 「グッジョブ」

成幸 「今日は学校で王様ゲームをやってさ」

水希 「は?」

成幸 「ん? 王様ゲームをやったんだけどさ」

水希 「は? 何ゲーム?」

成幸 「いや、だから、王様……」

水希 「……王様ゲーム? 緒方さんたちと?」

成幸 「そうだけど……」

水希 「……うん。そっか。へぇ」 ゴゴゴゴゴ……!!!

成幸 「それで昔、俺とお前が結婚すると思い込んでたことを話したら、みんな少し引いてたんだよ」

水希 「グッジョブ」

成幸 「へ?」

水希 「お兄ちゃん、グッジョブ」


873以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:31:05aVLVUSo6 (30/76)

………………幕間2 翌日 「王様ゲームのプロ」

大森 「唯我ー! お姫様たちー! 今日は王様ゲームをやろうぜ!」

大森 「何を隠そう俺は王様ゲームのプロだぜ!」

成幸 (昨日の今日でまた厄介な奴が……!)

理珠 「!? 王様ゲームですか!? 受けて立ちますよ!」

理珠 (今日こそ成幸さんに勝って見せます!!)

うるか 「あたしもやりたーい! やろうやろう!!」

うるか (今日こそ成幸にあんなことやこんなことしてもらうんだ!!)

大森 「よっしゃー! 初めて女子とやれるー!」

文乃 「……!?」 (……女子以外の誰とやってプロに……?)

成幸 「悪い、大森。昨日の遅れを取り戻さなきゃだからやれないよ」

理珠 「あっ、成幸さんが不参加なら私もパスで」 うるか 「あたしもー」

大森 「なぜ!? ちくしょー! 唯我このヤロー!」

成幸 「なぜ俺に怒る!? っていうか勉強してるんだよ邪魔すんな大森!!」

おわり


874以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 01:33:31aVLVUSo6 (31/76)

>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。


>>842さんがくださったアイディアを元に書きました。ありがとうございます。
コメディとしてはそれなりのものが書けたと思います。ありがたいことです。

また何かアイディアやネタがありましたら、実現できるかわかりませんがいただけると嬉しいです。
また投下します。


875以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 07:25:19QnxM3vkk (1/1)

人の挙げたお題にもこの投稿速度とかすごごご


876以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 11:40:253PK38R16 (1/1)

投稿は速いのにクオリティは高いしで本当にこのスレお気に入り


877以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:33:51aVLVUSo6 (32/76)

>>1です。投下します。



【ぼく勉】文乃 「ひょっとして、わたしって」


878以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:34:45aVLVUSo6 (33/76)

………………昼休み 3-A教室

蝶野 「ぶっちゃけた話っスけど、」

蝶野 「実際、唯我さんとふたりでお泊まりはしたんスよね?」

文乃 「………………」

文乃 (……青天の霹靂とはまさにこのことなんだよ)

文乃 「……憩いの時間であるはずの昼休みにいきなり何を言い出すのかな、蝶野さん」

蝶野 「いや、そのままの意味っスけど」

文乃 「……しましたけど、何か」

蝶野 「それで古橋さんに何もしないって、唯我さんって本当に男なんスかね」

文乃 「………………」 ムッ

文乃 「……男の子だよ。紳士だよ。女の子と同衾したからって、妙なことを考えるような下劣な男じゃないだけだよ?」

ゴゴゴゴゴゴ…………

蝶野 「あー……気を悪くしたなら訂正して謝るっス。言葉を選び間違えたっス」

文乃 「あっ……。べ、べつにわたしは、気を悪くしたりしてないけど……」


879以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:36:43aVLVUSo6 (34/76)

鹿島 「古橋さんは~、本当に唯我さんのことを信頼されているんですね~」

ニコニコ

鹿島 「少なくとも、やむにやまれぬ状況とはいえ、同じ部屋で夜を明かすことができるくらいには」

文乃 「鹿島さん、何を考えてるか知らないけど、あなたが考えているようなことはないからね」

鹿島 「分かっておりますとも~。おふたりは強い信頼関係で結ばれているのですよね~」

文乃 (ぜってぇわかってねぇ、だよ……)

文乃 (これでもし、同じ部屋どころか、同じ布団で寝てしまったことまでバレてしまったら……)


―――― ((少しひんやしして…… でも心地良く包み込んでくれる ああ……これはお母さんの 手の……))


文乃 (思いっきり抱きしめられて、わたしはわたしで身体を預けて寝てたなんてバレたら……) カァアアア……

文乃 (絶対ろくでもないことになる!!)

文乃 「わたし、そろそろ勉強の時間だから、もう行くね」

文乃 「絶対ついてきたりしないでよ」

鹿島 「ご心配なく~。いってらっしゃいませ、古橋さん」

文乃 (……信用ならないんだよなぁ)


880以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:37:17aVLVUSo6 (35/76)

鹿島 「………………」

鹿島 「……さて、古橋姫が王子様のところへ向かわれたところで」

鹿島 「いばらの会、幹部会議を始めましょう~」

鹿島 「蝶野さん、軽い“ジャブ打ち”、ご苦労様でした~。損な役回りをさせてしまいましたね」

蝶野 「……古橋姫、めっちゃ怖かったっス」 ズーン

鹿島 「しかし、おかげで、古橋姫の唯我成幸さんに対する並々ならぬ信頼を改めて確認することができました~」

猪森 「古橋姫は見た目通りの大和撫子だからな。奥ゆかしいのだ。仕方ない」

猪森 「しかし、あまり積極性に欠けると、親指姫や人魚姫に遅れを取ることになりかねない」

猪森 「本来であれば、唯我の方から古橋姫に迫るくらいであってほしいけどな」

鹿島 「あまり積極的すぎる殿方は、古橋姫の王子様としては不適格ですよ~」

鹿島 「それが故のアンビバレントなのですけどね~」

鹿島 「さてさて、どうしたものでしょうかね~」


881以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:37:58aVLVUSo6 (36/76)

………………3-B

文乃 (まったくもう、鹿島さんたちは……) プンプン

理珠 「……?」

理珠 (文乃、どうしたのでしょう?) コソッ

うるか (なんか不機嫌だよね~。何かあったのかな?) コソッ

成幸 「……? お前ら、なにこそこそやってんだ。集中しろよ」

理珠 「す、すみません……」

うるか 「わかってるよー。成幸のけちんぼー」

成幸 「ったく……ん?」

文乃 (まったくもう、本当に……)

文乃 (唯我くんはわたしの先生で弟なんだから、わたしに変な気持ちなんてあるはずないんだよ)

文乃 (それに唯我くんは付き合ってもない女の子とどうこうっていう軽い男の子じゃないし)

成幸 「……古橋? どうしたんだ、手が止まってるぞ?」

文乃 「へっ……?」


882以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:38:54aVLVUSo6 (37/76)

文乃 「わっ……ご、ごめんなさい。少し考え事してて……」

成幸 「おいおい、古橋もか。文化祭も終わってここからスパートって時期なんだから、集中してくれよ……」

成幸 「二学期の中間テストも近いんだからな?」

文乃 「うぅ……返す言葉もございません……」

文乃 (……成幸くんの言うとおりだよ。気を抜いてる暇なんかないんだから)

文乃 (わたしばっかり色々考えちゃって、恥ずかしいや)

文乃 「………………」

文乃 (……わたしばっかり、かぁ)

成幸 「……緒方。そこの心情描写大事だからな。全編に渡っての主人公の気持ちが丁寧に描かれてる場面だ」

文乃 (なんでもない顔をしているきみは、やっぱり、わたしみたいに色々考えたりしないのかな)

文乃 (……わたしは、あのとき手を握ってくれたきみのことを思い出して、)

文乃 (ひとりで勝手に、温かい気持ちになっていたりするんだけど)

文乃 (きみは……)

文乃 (……いけない。また考え事してる。切り替えないと)

文乃 (勉強、がんばろ……)


883以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:39:57aVLVUSo6 (38/76)

理珠 「では、成幸さん。この部分は……」

ズイッ……ブルンッ

成幸 「うおっ……そ、そう勢いよく近づくなよ……」

成幸 「そこは……ああ。心情描写にも強がりがあるだろ? だから……」

文乃 「………………」

文乃 (んんんん……?)

うるか 「成幸ーっ、ここの和訳なんだけどさー」

ズイッ……タユッ

成幸 「うおうっ……! お、お前も急に近づくなよ」

うるか 「? どしたん、成幸?」

成幸 「な、なんでもない。そこはかなり口語訳されてるから、まず正しい文法に訳し直してから……」

文乃 (んんんんんんんん……???)


884以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:40:38aVLVUSo6 (39/76)

文乃 (ち、ちょっと待ってよ、成幸くん)

イライライライラ……

文乃 (きみ、わたしに集中しろって言ってたよね?)

文乃 (それが何かな? どういうことなのかな?)

文乃 (りっちゃんとうるかちゃんのお胸の圧力にあてられて、顔がまっかだよ?)

文乃 (うんうん。どういうことかなこの野郎)

文乃 「………………」

ペターン

文乃 (……もしかして)


―――― 『それで古橋さんに何もしないって、唯我さんって本当に男なんスかね』


文乃 (唯我くんが紳士だからとか、そういう理由ももちろんあるだろうけど)

文乃 (ひょっとして、わたしって……)

文乃 (女としての魅力に欠けている……?)


885以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:41:14aVLVUSo6 (40/76)

………………帰路

理珠 「今日も勉強が捗りました」 キラキラ

理珠 「どうですか? この後、うちでうどんでも食べていきませんか?」

うるか 「おっ、いいねー! 行く行く!」

文乃 「………………」

ズーン

文乃 (昼休みからずっと、放課後も使って考えたけど……)

文乃 (そうだよ。よくよく考えてみれば当たり前の話だよ)

理珠 「文乃? どうかしましたか?」 ブルンッ

うるか 「なんか元気ないね? だいじょーぶ?」 タユッ

文乃 (このふたりと毎日毎日比べられてるんだから……) ペターン

文乃 「ううん、なんでもないよ。ちょっと色々考えちゃってさ……」

文乃 「今日はわたしはうどんは遠慮しておくよ。まっすぐ帰って勉強するね」

理珠 (文乃、どうかしたのでしょうか……)

うるか (何か悩みでもあるのかな……)


886以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:41:48aVLVUSo6 (41/76)

………………唯我家

成幸 「……で、心配になって、いてもたってもいられず俺のところに来た、と」

理珠 「そういうことです。すみません、急にお邪魔しちゃって……」

成幸 「まぁ、べつに構わないけど……」

うるか 「成幸、何か心当たりない? 文乃っちが悩むようなこと」

成幸 「お前たちに心当たりがないなら、俺にあるわけないだろ?」

成幸 「受験前が近づいてきてナーバスになってるだけじゃないか?」

うるか 「むー! 成幸冷たいよ!」

理珠 「文乃のことが心配ではないのですか?」

成幸 (んー、そう言われてもな……)


―――― 『わっ……ご、ごめんなさい。少し考え事してて……』


成幸 (……まぁ、たしかに古橋の様子は変ではあったが)

理珠 「……今日、私たちが聞いても何も教えてくれませんでした。“なんでもない” の一点張りです」

うるか 「でも、ひょっとしたら成幸にだったら話してくれるかもしれないよね」


887以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:42:46aVLVUSo6 (42/76)

理珠 「………………」

うるか 「………………」

ジーーーーッ

成幸 「……はぁ。わかったよ。明日聞いてみるよ」

理珠 「本当ですか!?」

うるか 「さっすが成幸! ありがと!」

成幸 「今日も勉強に集中できないみたいだったしな。『教育係』 としては放っておけないよな」

成幸 「ただ、あんまり期待すんなよ? うまく聞き出せるかも分からないし……」

成幸 (それに……)


―――― 『今日はお父さんが家にいるから…… あんまり 帰りたくなくて』


成幸 (……家庭の問題だったりしたら、俺がヘタに聞くのも迷惑だろうし)

成幸 (よくよく考えてみれば、俺って……)

成幸 (古橋のこと、全然知らないんだよな)


888以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:43:38aVLVUSo6 (43/76)

………………翌朝 一ノ瀬学園 いつのも場所

文乃 「あっ……おはよ、成幸くん」

成幸 「おう、おはよう、古橋」

文乃 「メールで呼び出したりして、どうしたの? また何か相談事?」

成幸 「いや……」

成幸 (古橋の奴、いつも通りの、なんでもないような顔をして……)

成幸 「……なぁ、古橋。担当直入に聞くが」

文乃 「うん?」

成幸 「お前、何か悩み事とかないか?」

文乃 「へ?」

アセアセ

文乃 「な、悩みなんて、べつに……何もないよ?」

成幸 (……あからさまに目を泳がせやがって。絶対うそじゃないか)

文乃 (何でわかったの!? しかもニブチンの成幸くんが!?)

文乃 (りっちゃんやうるかちゃんの気持ちには全然気づかないくせに、どうして……)


889以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:44:22aVLVUSo6 (44/76)

成幸 「……なぁ、ムリして話せとは言わないよ。もし話せるようだったら教えてほしい」

成幸 「俺はお前の 『教育係』 だ。勉強に集中できないことが続くなら、それを解決してやりたい」

成幸 「俺にできることは少ないかもしれないけど、もしお前の力になれるなら、なりたいんだ」

文乃 「成幸くん……」

ドキッ……

文乃 (……りっちゃんやうるかちゃんには、絶対、こんな悩み話せないけど)

文乃 (きみになら話してもいいのかな……)

文乃 (他でもない、きみに……)


―――― 『かっこいいよなぁ 古橋は』


文乃 (あのとき、何を考えていたのか、聞いてもいいのかな……)

文乃 「……あ、あのね、実は……友達が、」

成幸 「友達?」

文乃 「う、うん。あくまで、友達の話なんだけど、その友達が悩んでて、それでわたしも悩んじゃってるっていうか……」


890以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:45:29aVLVUSo6 (45/76)

文乃 (きみとうるかちゃんの常套句だけど、使わせてもらうよ)


―――― 『あ うん 俺の友達と…… そいつの中学校からの友人の女子の話なんだけどな……』

―――― 『あっ! あくまで友達話だかんね 友達のっ!』


文乃 (どうせ鈍いきみは、気づかないだろうし……)

文乃 「その友達がね、ある日、中の良い男友達と、とあるハプニングから同じ部屋で一夜を明かすことになったの」

成幸 「ぶっ……」 アセアセ 「そ、そうか……。それは、なんというか……///」

文乃 (照れるなーっ! こっちだって恥ずかしいんだよー!)

文乃 「そ、それでね……その友達は、その男の子のことを信用していたし、実際、その男の子とは何もなかったんだ」

成幸 「ふむふむ」

文乃 「でもね、その子が、女友達から、“それは変だ” って言われちゃって……」

成幸 「変……?」

文乃 「何もなかったなんて変だって。その男の子は、本当に男なのか、って……」

文乃 「でもね、その子は、それを違う風にとらえちゃったんだ」

文乃 「“男の子が何もしなかったのは、自分に魅力がないからじゃないか” って……」


891以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:46:55aVLVUSo6 (46/76)

文乃 「……その子はそれで悩んじゃってね。特に、その子とその男の子の周りには、可愛い女の子がたくさんいるから」

文乃 「その男の子は、他の女の子の胸元を見て顔を赤くしたりするくせに、同じ部屋で一泊したときには何もしてこなかった」

文乃 「……その子たちと比べて、自分は女としての魅力が劣っているんじゃないか、って」

文乃 「もちろん、その子は男の子に何もされなくて、それで良かったと思ってるんだよ?」

文乃 「男の子はすごく紳士で、良い子で、女の子も彼のことを信頼していたから」

文乃 「……でもね、成幸くん、女の子って面倒くさい生き物なんだ」

文乃 「何もされなくて嬉しかった。でも、何もされないってことは、自分を女として見てくれていないのかな、とか……」

文乃 「考えても仕方ないことを考えちゃうんだよ」

成幸 「………………」

文乃 「……あっ、ご、ごめん。いつものノリで女心の授業みたいなこと言っちゃったね」

文乃 「わたしの話はおしまいだよ。ごめんね。聞いてくれてありがとう」

成幸 「……いや、逆に話してくれてありがとう。それで昨日も勉強に身が入らなかったのか」

文乃 「うん。ごめんね。でも、今日からは大丈夫だよ。ちゃんと勉強するから」

成幸 「ああ……」


892以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:48:10aVLVUSo6 (47/76)

成幸 「………………」

成幸 「……なぁ、お前はこんな言葉を求めてないかもしれないし、何の解決にもならないかもしれないけどさ、」

文乃 「?」

成幸 「……俺は、その女の子の思い過ごしだと思うぞ」

文乃 「え……?」

成幸 「そもそも、ただの友達なんだろ? 何もなくて当然だと俺も思うしさ」

成幸 「それに、俺は古橋の友達を知らないからなんとも言えないけど、」

成幸 「その男子、他の女友達には、まぁ、多少下劣な視線を向けても、その子には何もしなかったってことは……」


成幸 「その男子は、その子のことを特別に思ってるんじゃないかな」


文乃 「へっ……?」

成幸 「まぁ、あくまで俺の予想だけどさ。俺だったらきっとそうだから」

成幸 「決して、魅力がないとかではないと思うな」

成幸 「……ひょっとしたら、その男子、その友達のこと好きなのかもな」 クスッ

文乃 「ふぇっ……!?」 (な、何を、成幸くん……きみは……)


893以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:48:48aVLVUSo6 (48/76)

成幸 「……? どうかしたか、古橋? 顔真っ赤だぞ?」

文乃 「な、なんでもないっ!」 プイッ

成幸 「?」

文乃 (き、気づかないって分かってたけど……それでも……)

文乃 (少しくらいは察してよ。まったく、どこまでニブチンなのさ、きみは……)

文乃 (成幸くん、それってつまり、きみがわたしのことを特別に思ってくれてるってことなんだよ?)

文乃 「………………」

文乃 (……わかってる。成幸くんにそんな意図はない。あくまで、一般論として言っているだけ)

文乃 (わかってる、そんなの……――)

成幸 「――それにしても、青春してるんだなー、お前の友達」

文乃 「……?」

成幸 「話を聞いただけでわかるぜ、古橋」 グッ 「その友達、その男子のこと好きだろ?」

文乃 「へっ!?」 カァアアアア…… 「そ、そんなわけないじゃん! 何言ってんの、成幸くん!?」

成幸 「えぇ? そんなにムキになって否定することか?」

文乃 (っていうかきみは自分の鈍さを棚に上げてよくドヤ顔でそんなこと言えるね!?)


894以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:49:33aVLVUSo6 (49/76)

成幸 「俺の見立てだとまず間違いないな。男子の方もその子に脈があると見た」

文乃 「……きみは、まったくもう」

成幸 「ん?」

文乃 「……つまり、きみは、私の友達と、その男の子は、両想いだって言うんだね?」

成幸 「ああ、まぁ、そういうことになるのか」

文乃 「……それ、あくまで参考意見として、その友達に伝えてもいい?」

成幸 「? まぁ、それは構わないけど……」

成幸 「それでその友達の悩みが解決したらすごいな。俺ってカウンセラーの素質があるかも……?」

文乃 (調子に乗ってるなこの野郎……)

クスッ

文乃 (……でも、たしかに、悩みは解決しちゃったかも)

文乃 (そっか。きみは……)

文乃 (きみ自身が意識してそう思っているわけではないかもしれないけれど……)

文乃 (わたしのこと、特別に思ってくれてるのかな……)

文乃 「……話、聞いてくれてありがと。きみの話をしてあげたら、たぶん友達も元気になると思うよ」


895以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:50:18aVLVUSo6 (50/76)

成幸 「本当か? それならよかった」

文乃 「そろそろHR始まっちゃうね。教室行こうか」

成幸 「……ん、もうそんな時間か」

文乃 「ねぇ、今日した話、りっちゃんとうるかちゃんには内緒だよ?」

成幸 「ああ、人のことベラベラ喋ったりはしないよ」

成幸 「……でも、もし古橋が良かったら、その女の子と男子の話、これからも聞かせてくれよ」

文乃 「? どうして?」

成幸 「だって、もしそいつらがうまくいったりしたら、俺も晴れて “女心” の単位修得だろ?」

文乃 「………………」 クスッ 「……そうだね。わかったよ」

文乃 「もしも、その女の子と男の子が……その、つ、付き合ったりしたら……」

文乃 「……きみにも教えてあげる。誰より先にね」

文乃 (……そう。誰よりも、先に)

ニコッ

文乃 (きみにぜんぶ、教えてあげる)

おわり


896以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:51:18aVLVUSo6 (51/76)

………………幕間 「寸胴」

文乃 「ってことで今日はラーメン屋さんに来たよー! 何食べよっかなー」

うるか (リズりん、文乃っち元気になったみたいだね。よかったよかった) コソッ

理珠 (ええ。さすがは成幸さんです) コソッ

文乃 「うーん、どうしようかな。チャーシュー麺大盛りチャーシューマシマシとライス大盛りいっちゃおうかなー」

理珠 「さ、さすがに食べ過ぎではないですか……?」

文乃 「大丈夫だいじょーぶ! いまご機嫌でおなかもペコペコだから!」

文乃 「あとチャーハンも食べちゃおっかなっ!」 ルンルン

ムシャムシャムシャモグモグモグ

文乃 「はぁ~~~美味しかった~~~~。幸せだよ……」

文乃 「……ん?」

ハッ

文乃 (ひ、ひょっとして、今のわたし……)

文乃 (胸よりお腹の方が出てる!?) ガーン

おわり


897以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 18:52:37aVLVUSo6 (52/76)

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございます。

感想・乙、励みになります。ありがとうございます。
特に理由がなければ、投下時以外あまり目立ちたくもないので、sageていただけると助かります。

それではまた、折を見て投下します。


898以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:32:23aVLVUSo6 (53/76)

>>1です。
こんなに連続で投下するつもりはなかったのですが、書き上がってしまったので投下します。



【ぼく勉】成幸 「武元うるかの好きな人」


899以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:33:15aVLVUSo6 (54/76)

………………一ノ瀬学園 図書室

うるか 「む……ええっと、これは……」

うるか 「…… “私はトムのことをよく知りませんが、エミは彼のことをよく知っています” かな?」

成幸 「おお、正解だぞうるか。すごいな。基本的な引っかけ問題には引っかからなくなってきたな」

成幸 「前までのお前だったら、後半を “エミのことなら知っています” って訳してただろうからな」

うるか 「うん! 前に教えてもらった、主語に○をつける訓練を繰り返したらわかるようになったんだ!」

成幸 「すごいぞ、うるか。ちゃんと勉強してる証拠だな。偉い偉い」

うるか 「えへへ~」

うるか 「……あっ、そろそろ水泳部の練習だ! じゃあ成幸、あたし行くね!」

成幸 「おう。今日出した宿題、次までにやってこいよ。水泳の方もがんばれよー!」

うるか 「まっかせなさーい!」

タタタタ……


900以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:33:57aVLVUSo6 (55/76)

文乃 「うるかちゃん元気だねぇ。苦手な勉強をしながら、部活までがんばって……」

理珠 「あの元気は分けてもらいたいです。一体どこから湧き上がってくるのでしょうか」

成幸 「さて、なんだろうな」

成幸 (ひょっとしたら、例の “好きな人” がいるからなのかな、なんて……)

成幸 (ガラにもないこと考えちまったな。恥ずかしい)

成幸 「さ、お前たちも残りの問題がんばれよ。今日は大量に用意しておいたからな」

文乃&理珠 「「はーい……」」

成幸 「……ん? これは、筆箱……? うるかのか」

成幸 「ったく、うるかの奴、忘れていきやがったな。仕方ない……」

成幸 「ふたりで問題やっててくれ。俺はうるかに筆箱届けてくるから」


901以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:34:51aVLVUSo6 (56/76)

………………

成幸 (まったく。うるかの奴……)

成幸 (色々やることがあって注意力散漫になってるんだろうな)

成幸 「まぁ、仕方ないよな……――」


  「――どうせ、仕方ないとか思ってるんでしょ。もー」


成幸 「ん……? 海原と川瀬、と、うるか……?」

うるか 「だって仕方ないんだもーん! 何やったって気づかないしさー!」

海原 「そりゃー、言わなきゃ気づかないって」

川瀬 「いい加減さ、向こうが気づいてくれるって幻想を捨てなよ」

うるか 「むぅ……。そんなの分かってるけどさぁ……」

成幸 (何の話をしてるんだか分からんが、話しかけづらいな……)

うるか 「好きだって言えるなら、苦労はないよ……」

成幸 「!?」 (こ、これは……)

成幸 (恋バナ!?)


902以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:35:45aVLVUSo6 (57/76)

成幸 (ま、まずい……さすがにこれを盗み聞きしてたら、最低すぎる。さっさと退散しないと……)

海原 「でもいつまでも片思いしてたら辛いでしょーに」

うるか 「そうだけど……でも、向こうにも迷惑だろうし……」

川瀬 「もっと自分に自信持ちなよ。あんた、可愛いんだからさ」

海原 「陽真くんにタイプとか聞いてもらおっか? 陽真くんカレと仲いいし……」

成幸 (な、なんだって!? うるかの好きな人は、小林と仲が良いのか……)

成幸 (ひょっとして、俺も知ってる奴か……?)


―――― 『あたしの好きな人……とある情報によるといつもおっぱいばっかり見てるらしくて……』

―――― 『だからその……大きく見せられるセクシー系がいいのかなーとかなんとか……』


成幸 (いや、待て! そんな最低男、俺の友達にはいな――)

川瀬 「――っていうか、もう直接唯我に聞いてしまえば話は早いんだけどな」

成幸 「!?」

うるか 「もー! だから何度も言ってるけど、それができたら苦労はないんだってばー!」

成幸 (ま、まさか……!!)


903以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:37:05aVLVUSo6 (58/76)

成幸 (俺の名前が出るくらい、俺と仲が良い奴!)

成幸 (なおかつ、小林とも仲が良い奴……!!)

成幸 (そして、胸ばっかり見るような最低な奴……!!!)

成幸 (そんな奴、ひとりしかいないじゃないか……!)

タタタタタタ……

川瀬 「ん……?」

うるか 「どしたん、川っち?」

川瀬 「いや、いまその角に誰かいるような気がしたんだが……」

うるか 「へ!? 今の話誰かに聞かれたの!?」

海原 「うーん、いや、誰もいないよ?」

川瀬 「……だな。気のせいだったみたいだ」

海原 「まぁ、今さらうるかのこと誰かに聞かれたところで、みんな知ってるだろうけどね」

うるか 「あたしが成幸のこと好きってそんなに有名なの!?」

川瀬 「……恋愛まったく興味ない奴以外、見てりゃ気づくっての」


904以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:38:18aVLVUSo6 (59/76)

………………

成幸 「………………」

ドキドキドキ……

成幸 (と、とんでもないことを聞いてしまった……)

成幸 (まさか、うるかの好きな人が、あいつだったなんて……)


―――― 『陽真くんにタイプとか聞いてもらおっか? 陽真くんカレと仲いいし……』

―――― 『っていうか、もう直接唯我に聞いてしまえば話は早いんだけどな』


成幸 (俺と小林の名前が出てたってことは、俺たちふたりとと仲が良い奴……)

成幸 (そして、胸に興味津々のスケベな男……。そんなの、あいつしかいないじゃないか……)



成幸 「大森……ッ」 ギリッ



成幸 (……盗み聞きをしてしまったようなものだから、これは胸の中にしまっておかないと)


905以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:41:31aVLVUSo6 (60/76)

成幸 「………………」

成幸 (……いや、しかし。うるかの好きな人だぞ。つまり……)


―――― 『あたしの好きな人…… とある情報によるといつもおっぱいばっかり見てるらしくて……』

―――― ((最低男じゃないか!!!))


成幸 (……うん)

成幸 (『教育係』 として、このままにしておいていいのか?)

成幸 (もし大森とのことで、うるかが受験を失敗したりしたら大変だ)

成幸 (俺はうるかの 『教育係』 だから。あくまで、『教育係』 として)

成幸 (……あいつがうるかに相応しいのか、しっかりと見極める!!)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (……っと、その前に、師匠に相談しておくか)

成幸 (師匠になら、うるかのことを話しても大丈夫だろ)


906以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:42:23aVLVUSo6 (61/76)

………………立ち食いそば屋

文乃 「えっ……? うるかちゃんの好きな人がわかった?」

文乃 (……勉強会が終わった後、話があると言われて来てみれば……またとんでもないことを言い出したよ)

成幸 「そうなんだよ。人の話だから、あまりペラペラ喋りたくはないんだが、お前にだけは相談に乗ってもらいたくてさ」

文乃 (……すごい) ドキドキ (成幸くん、とうとううるかちゃんの気持ちに気づいて……――)

成幸 「――それが、相手がどうやら、うちのクラスの大森みたいなんだ」

文乃 「……は?」

成幸 「だろ!? 俺も聞いたときはそんな反応だったよ! なんであいつなんだ?」

文乃 (……いや、むしろきみに “は?” なんだけど) キリキリキリ……

文乃 (どうしてそんなわけのわからない勘違いをするんだろう。胃が痛いなぁ……)

成幸 「お前も知ってのとおり、あいつはノリで生きてるし、人に迷惑をかけることもしばしばだ」

成幸 「しかも、人の盗み撮りを勝手にSNSにアップするような奴だ」

成幸 「……いや、わかってる。俺だって友達のことを悪く言ったりしたくはない」

成幸 「大森にいいところがあることも知ってる。あいつは決して悪い奴じゃない」

成幸 「……けど、不安なんだ。うるかは騙されてるんじゃないかって。何か勘違いをしてるんじゃないかって」


907以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:44:24aVLVUSo6 (62/76)

文乃 (もう完全にパパ目線だよ、成幸くん……。うるかちゃんはきみの娘さんかな?)

文乃 (わたしやりっちゃんのことも同じように娘みたいに思ってるのかな……?)

ズキッ

文乃 (……じゃなくて、えっと、この勘違いをどうしたらいいか、だよね)

成幸 「それでな、俺は、大森がうるかに相応しいのかこの目で確かめようと思うんだ」

文乃 「へ……?」

成幸 「お節介なのは分かってる。うるかにとってはありがた迷惑な話だろう。それでも……」

成幸 「うるかのことが心配で心配で……」

文乃 (だからきみはうるかちゃんのお父さんかな?)

文乃 「……っていうか、うるかちゃんが大森くんのことを好きっていうのは本当なの?」

成幸 「確実だ。俺はたしかに、海原と川瀬が話しているのを聞いたんだからな」

文乃 (絶対きみが勘違いしてるだけだよ、なんて言うわけにもいかないしなぁ……)

文乃 (もう意志は決まってるみたいだ。今さらわたしが何を言ったところで変わらないだろう)

文乃 (だったらわざわざわたしに相談に来ないでほしいんだよなぁ……)

成幸 「それで、明日、大森の行動を見極めてみようと思うんだ」


908以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:45:34aVLVUSo6 (63/76)

文乃 「へ? 見極める?」

成幸 「もちろん、うるかが誰のことを好きになるかは自由だ」

成幸 「でも、もしうるかが確実に不幸になると分かっていたら、俺は恨まれてもいい。全力で止める」

成幸 「明日は、その見極めをしようと思う。一日、大森を行動を注視しようと思うんだ」

文乃 「はぁ」

成幸 「幸い俺はあいつの友達だし、クラスも一緒だ。授業が別になるとき以外は監視できる」

文乃 (監視しなきゃいけないような間柄は果たして友達と言えるのかな……)

成幸 「明日、古橋にも協力してもらうことがあるかもしれない。そのときはお願いできるか?」

文乃 「うーん……まぁ、それは構わないけど、そもそもわたしは……」

文乃 「……うるかちゃん、別の男の子のことが好きなんじゃないかなー、なんて思うんだけど」

成幸 「……? なんでそう思うんだ? うるかの好きな人を知ってるのか?」

文乃 (知ってるよ! っていうかきみだよ!!) ハァ (……なんて、言えたら苦労しないよね)

文乃 「ううん。知らないよ。なんとなくそう思っただけ。明日は協力してあげるから、何かあったら言ってね」

成幸 「本当か!? 助かるよ、古橋!」

文乃 (……うーん。さて、一体どうしたものかなぁ)


909以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:46:20aVLVUSo6 (64/76)

………………翌日 朝

成幸 (……さぁ、はりきって大森の行動を監視するぞ!)

成幸 (あいつが悪い奴じゃないのは俺もよく分かってる。でも、うるかの恋人に相応しいかどうかは、また別の話だ)

ジーーーーーッ

大森 「……? どうかしたか、唯我? 俺の顔になんかついてる?」

成幸 「何もない。気にするな」

ジーーーーーッ

大森 「いや、気にするなって言われてもな……」

大森 「まぁいいや。そういや唯我、この前サンドイッチで買ってもらったHな本すごく良かったぜ!」

大森 「今度お前にも貸してやるよ」

成幸 「いらんわ! お前は本当にろくでもないことしか言わないのな!?」

大森 「えーっ、なんだよ。せっかくあの幸せを共有してやろうと思ったのに……」

成幸 (やっぱりこいつがうるかに相応しいとは到底思えないぞ!!)

小林 (……成ちゃん、今日は一体何をやってるんだろう)


910以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:47:12aVLVUSo6 (65/76)

………………昼休み

大森 「おー! 今日も唯我の弁当うまそうだな」

成幸 「毎度言ってる気がするが、やらんからな」

大森 「いいじゃねぇかよー、少しくらいよー。可愛い妹ちゃんが作った弁当っていう幸せを少しは俺に分けてくれよ」

成幸 (そしてこれだ。人の弁当をかすめ取ろうとする食い意地の悪さと、人の妹を引け目なく “可愛い” などという軽薄さ」

成幸 (……まぁ、もちろん、俺が弁当がない日にオカズを分けてくれたりもする良い奴ではあるが)

成幸 (俺の友達として相応しいかじゃない。うるかの想い人として相応しいかだ。厳しくいくぞ)


………………物陰

文乃 (……うーん、成幸くんが心配で来てみたけど、本当に大森くんをじろじろ見てるよ)

文乃 (どうやって勘違いだって気づかせてあげたらいいんだろ……)

キリキリキリ……

文乃 (……胃が痛いなぁ)

  「あれ? 文乃っち、教室の前でどしたん?」

文乃 「わひゃっ!? う、うるかちゃん!?」

うるか 「そ、そんな驚かなくても……」


911以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:48:16aVLVUSo6 (66/76)

文乃 「ご、ごめんごめん。B組に何か用事?」

うるか 「うん。ちょっと英語で成幸に聞きたいところがあってさー」

うるか 「旅は道連れってことで、文乃っちも一緒行こー」 ガシッ

文乃 「えっ!? いや、あの、うるかちゃん……!」

うるか 「よー、成幸ー。勉強教わりに来たぜーっ」

成幸 「う、うるか!? と古橋も!?」

大森 「うお……相変わらずいいご身分だな、唯我……」

大森 「この学校のお姫様ふたりが尋ねてきてくれるなんて、うらやましいぞ、ちくしょー!」

成幸 (この野郎……! お前はそのうちのひとりから好かれてるんだぞ!?)

成幸 (なんて言うわけにもいかないし。もどかしい……!)

小林 「ほら、大森。邪魔になっちゃうから向こういくよ」

小林 「じゃ、武元も古橋さんも、ごゆっくり」


912以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:49:03aVLVUSo6 (67/76)

うるか 「あっ……こばやんも大森っちもあっち行っちゃった」

うるか 「なんか申し訳ないことしちゃったな」 シュン

成幸 (!? 大森が去った瞬間、少し悲しそうな顔を……!?)

成幸 (もう疑問を挟む余地はないな! うるかは完全に、大森のことが好きなんだ……)

うるか (成幸、せっかく男同士楽しそうにお昼食べてたのに、邪魔しちゃったよ)

うるか (……重い女とか、面倒くさい女とか、思われてないかな) ズーン

文乃 (……わたし自分のクラスに帰ってもいいかな)

成幸 「……で? 勉強って、何を教わりに来たんだ?」

うるか 「あっ……えっとね、昨日指定された問題は全部解いてきたから、早く答え合わせしたくて……」

うるか 「ごめんね。本当は次の勉強会までまで待ってれば良かったんだけど……。今日は部活だし……」

うるか 「がんばったから、早く成幸に見てもらいたくて……えへへっ……」

文乃 (おおう……こんなラブラブビームを放ってるんだから、さすがの成幸くんも……)

成幸 「おお、そうか。偉いぞ、うるか。じゃあ見させてもらうな」

文乃 (まぁ気づくわけがないよねきみが) ビキビキ


913以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:49:45aVLVUSo6 (68/76)

………………放課後 いつもの場所

成幸 「もう確定だ。やはり、うるかは大森の奴のことが好きなんだ」

文乃 (きみは本当に、一体どこに目をつけてるのかな?)

文乃 (……なんかもう、わたしが気を回すことじゃない気がするよ)

成幸 「と、いうことで、もう直接大森を呼び出して問いただすことにした」

文乃 「へっ? 問いただすって、何を? まさか変なことを伝える気じゃ……」

成幸 「安心しろ、古橋。さすがに俺も野暮なことはしない」

成幸 「これで最後だ。あいつの覚悟を問う。あいつがうるかに相応しい男か直接見極めてやるんだ」

文乃 (将来成幸くんに娘さんができて、成長して結婚する段になったら、彼氏は大変だろうな……)

文乃 (っていうか、水希ちゃんが結婚するときもこんなことしそう……。いや、絶対するね。彼は)

文乃 「……まぁ、好きにしたらいいんじゃないかな」

成幸 「おう。ってことで、大森に教室で待ってるように言ってあるから、俺行くな!」

タタタタタ……

文乃 「行っちゃった……」 (はぁ、まったくもう……)

文乃 「ほっとくわけには、いかないよね……」


914以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:50:27aVLVUSo6 (69/76)

………………3-B教室

ガラッ

大森 「ん? おー、唯我。呼び出しておいて消えるからどうかしたのかと思ったぞ」

成幸 「……ああ。待たせて悪かったな」

成幸 「とりあえず座ってくれ。話がある」

大森 「なんだよ、改まって。なんか顔が怖いぜ?」

成幸 (……そう。にわかには信じられないが、海原と川瀬の話、そして今日のうるかの反応から、)

成幸 (うるかが好きな男は、間違いなくこいつだ……!!)

成幸 (密室で先輩に迫られるのに興味があって、俺と古橋の盗み撮りをSNSに無断でアップするような、こいつだ……!!)

大森 「で? どうかしたのか、唯我?」

成幸 「……ああ。いくつか聞きたいことがあるんだ」

大森 「聞きたいこと? なんだ?」

成幸 「……お前、付き合ってる女子とかいるの?」

大森 「………………」

大森 「……逆に聞きたいんだけど、俺にいると思う?」


915以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:51:38aVLVUSo6 (70/76)

成幸 (……まぁ、そうだよな)

大森 「おい唯我、お前ひょっとして俺をからかうために残らせたのか?」

成幸 「違う。まだ続きがある。じゃあ、お前は好きな人とかはいるのか?」

大森 「へ……?」

大森 「……なんか意外だな。唯我ってそのテの話嫌いなんだと思ってた」

成幸 「嫌いじゃない。苦手なだけだ」 ジロッ 「……答えられるなら答えてくれ」

大森 「んー、まぁ、気になる女の子というか、きれいとかかわいいとか思う女の子は大勢いるが」

大森 「特定の誰か、ってのはないかなー。俺はほら、誰でもウェルカムだし?」

成幸 「………………」 イラッ

成幸 「……そうか。じゃあ、最後に聞かせてくれ」

成幸 「お前は、武元うるかのことをどう思ってる?」

大森 「は……? “人魚姫” のこと?」

成幸 「………………」

大森 「……えっと、質問の意図がまったく見えないけど、そうだな……」

大森 「かわいいとは、思うぜ? 日焼けも健康的でいいと思うし……」


916以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:52:26aVLVUSo6 (71/76)

成幸 「そ、そうか……」

ズキッ

成幸 (んっ……なんだ? そう答えてくれることを期待していたのに……)

成幸 (どうして、息苦しいんだ? どうして、胸が痛いんだ……?)

大森 「急になんだ? お前今日変だぞ? ほら、これやるよ」

スッ

大森 「体調大丈夫か? せっかくずっと勉強がんばってきたんだから、この時期に体調崩すなよ?」

成幸 「えっ……? 缶コーヒー、俺に……?」

大森 「今日、唯我の様子が変だったからさ。温まれよ」

大森 「お前が来るのが遅いから、ちょっとぬるくなっちまってるけどな」

成幸 「大森……。わるい。ありがとう」

大森 「気にすんなよ。二学期期末の試験範囲も頼むぜー?」

成幸 (こいつは、そうだ……。根は悪い奴じゃない。気遣いもできる……)

成幸 (少しうるさくて、面倒くさい奴ではあるけど……でも……間違いなく、良い奴だ)

成幸 (こいつのことを穿った見方をしていた自分が、恥ずかしい……)


917以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:54:12aVLVUSo6 (72/76)

大森 「……んで? なんだっけ? “人魚姫” の話だっけ?」

成幸 「あ、いや……それはもういい。忘れてくれ」

成幸 (あとはもうなるようになってもらおう。うるかの気持ちをどう受け取るかはこいつ次第だ……)

成幸 (俺は 『教育係』 として出過ぎたマネをせず、ただ眺めていよう……――)

大森 「―― “人魚姫” 、日焼けも健康的だし、スタイルもいいし、何より胸が大きくていいよなー!」

成幸 「………………」 ビキッ 「……は?」

大森 「えっ? そういうこと聞いてたんじゃねーの?」

大森 「でも、あくまで俺の好みだけど、顔は “眠り姫” の方が好みなんだよな」

成幸 「………………」

大森 「でもなぁ、“眠り姫” は胸が小さいしなぁ……」

大森 「その辺が悩みどころだよな! 唯我はどう思う?」

成幸 「………………」

ニコッ

成幸 「……うん。とりあえず、正座」


918以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:55:55aVLVUSo6 (73/76)

大森 「へ……?」

成幸 「うん。正座。早く。ハリーアップ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

大森 「唯我、なんか怒って――」

成幸 「正座」

大森 「……はい」 ピシッ

成幸 「……なぁ、大森。俺はお前の友達だ。だから言うぞ?」

成幸 「女子の好みの話をするのは大いに結構だ。ただなぁ」

成幸 「人がコンプレックスに思ってる身体的特徴をどうこう言うのは、最低だと思うぞ?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

大森 (あ、これ、ほんとに怒ってるやつだ)

大森 「わ、悪い。たしかにその通りだな……。俺も目が横線一本とか言われたら嫌だわ……」

成幸 「うん。分かってくれたならいい」

成幸 「……コーヒー、ご馳走様。今日は呼び出して悪かったな」

大森 「い、いや、いいよ」 アセアセ 「気にしなくて大丈夫」


919以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:56:29aVLVUSo6 (74/76)

成幸 「……じゃあ、俺行くから」

大森 「お、おう。じゃあ、また明日な、唯我」

成幸 「おう」

成幸 (……当人たちに任せようと思ったが、そういうわけにいかなくなった)

成幸 (今のこいつにうるかは任せられん!!)

成幸 (こいつが成長して、もう少し大人になったら考えてやらんでもないが、今はダメだ!)

成幸 「大森」

大森 「……は、はい!」 ビクッ

成幸 「今のお前にはうるかは渡せん」

大森 「へ……?」

タタタタタ……

大森 「行っちゃった……? けど、なんで、“人魚姫” ……?」

大森 「一体なんだったんだ……?」


920以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:57:34aVLVUSo6 (75/76)

………………教室外 少し前

文乃 (……心配になって聞き耳を立ててみれば)


―――― 『でも、あくまで俺の好みだけど、顔は “眠り姫” の方が好みなんだよな』

―――― 『でもなぁ、“眠り姫” は胸が小さいしなぁ……』


文乃 (なぜわたしがとばっちりでダメージを受けなくちゃいけないんだろう……) ズーン

文乃 (はぁ……――)


  成幸 「――女子の好みの話をするのは大いに結構だ。ただなぁ」

  成幸 「人がコンプレックスに思ってる身体的特徴をどうこう言うのは、最低だと思うぞ?」


文乃 「へ……?」

文乃 (成幸くんの声……怒ってる……?)

文乃 「……成幸くん。うるかちゃんだけじゃなくて、わたしのことも、」

文乃 「……わたしのことも、そうやって守ってくれるんだ」 カァアアアア……

文乃 「えへへ……///」


921以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/27(土) 23:58:07aVLVUSo6 (76/76)

………………夕方 正門前

うるか 「……あっ、成幸ー!」

成幸 「おう。悪いな。急にメール送ったりして」

うるか 「いいよ。っていうか、部活終わるまで待たせちゃってごめんね」


 『部活が終わったら会えないか? 話があるんだ』

 『正門前で待ってる』


うるか (急にあんなメールが来たから、しょーじきビックリしたけど……)

ドキドキドキドキ……

うるか (話ってなんだろ?)

成幸 「……あのさ、うるか。今から言うことは、お前にとって、すごく不快なことかもしれない」

うるか 「へ?」

成幸 「大きなお世話かもしれない。ひょっとしたらお前は俺のことを嫌うかもしれない」

成幸 「ただ、俺はお前の 『教育係』 として、友達として、言っておかなくちゃと思うんだ」

成幸 「……聞いてくれるか?」


922以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:01:27Tnw.rbtQ (1/11)

うるか (な、なんの話だろ……)

うるか 「そこまで言ったなら、言ってよ。気になるし……」

成幸 「わかった。じゃあ、言うな」

うるか 「う、うん……」

ドキドキドキドキ……

成幸 「あのな、うるか……」



成幸 「お前の好きな人、偶然知ってしまったんだ」



うるか 「………………」

うるか 「へ……?」

うるか 「へぇええええええええええええええええええええ!!??」


923以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:02:09Tnw.rbtQ (2/11)

成幸 「すまん! 本当に偶然知ってしまったんだ! ごめん!」

うるか 「う、うそでしょ!? ほんとに!?」 カァアアア…… 「ほんとのほんとに!?」

成幸 「本当だよ。すまん……」

うるか 「……ま、マジかぁー……」

うるか (う、うそうそうそ!? どうすんの!? どうしたらいいの!?)

うるか (あたしが成幸のこと好きだってバレたってことだよね!?)

うるか 「ま、待って!? じゃあ、それを知って、成幸は……」

うるか 「……な、成幸は、どうしたいって、思うの?」

成幸 「………………」

成幸 「……悪い。俺は、正直、やめておいたほうがいいと思う」

うるか 「っ……」 ズキッ

うるか 「なっ……なんで、そう思うの?」

成幸 「お前はすごい奴だ。水泳だけじゃない。家事だって完ぺきだし、料理だってプロレベルだ」

成幸 「勉強だって最近がんばってるだろ? 昨日出した宿題を今日の昼に持ってきやがって……」

成幸 「……お前はすごいよ。だからこそ、今のお前と、今のあいつじゃ、釣り合わないと、俺は思う」


924以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:02:55Tnw.rbtQ (3/11)

うるか 「………………」

うるか (ん……?)

うるか (あいつ……?)

成幸 「もちろんわかってる! こんなの俺の一方的で独善的な考えだ!」

成幸 「恋愛ってのはそういう単純なことで決まるわけじゃないことも、なんとなくわかる!」

成幸 「でも、俺は……お前みたいなすごい奴に、今の軽率なあいつと付き合うようなことはしてほしくないんだ……」

うるか 「ち、ちょっと待って、成幸……――」

成幸 「――そうだ、俺の勝手な偽善だ。お前にとってはありがた迷惑……いや、ただの迷惑かもしれない」

うるか 「いや、だから、成幸――」

成幸 「――それでも俺は! 嫌なんだ。だから、あいつがもう少し成長して、お前に相応しい男になるまで待って――」

うるか 「――うん。ちょっと話聞いてくれる? 成幸?」 ニコッ

成幸 「へ……?」

うるか 「まずはっきりさせたいんだけど、あたしの好きな人って、誰?」

成幸 「えっ……? いや、だって、そんなのお前が一番……――」

うるか 「――うん。そういうのいいから。教えて?」


925以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:03:50Tnw.rbtQ (4/11)

成幸 「え、あ、えっと……大森、だろ?」

うるか 「………………」

うるか (……ようやくナットクできたってゆーか、なんとゆーか……)

ヘナヘナヘナ……

うるか (焦って損したよ。よく考えたら、成幸が自分で気づくわけないか……)


―――― 『お前の好きな奴って…… 俺……?』

―――― 『そんなわけないじゃん! 何言ってんのもーっ!!』


うるか (……あたし、一回否定しちゃってるしね)

うるか (もう一回気づいてくれるほど成幸がするどかったら、あたいしもこんな苦労してないよね)

成幸 「お、おい、うるか? どうした?」

うるか 「……気が抜けたの。成幸は成幸だな、って」

成幸 「へ? へ? どういうことだ?」

うるか 「……あたしの好きな人、大森っちじゃないよ?」

成幸 「えっ……」


926以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:04:38Tnw.rbtQ (5/11)

成幸 「………………」

カァアアアア……

成幸 (お、おいいいいいいいいいい!? マジで!? マジか!?)

成幸 (ま、待て待て待て!! つまり俺は……)


―――― 『お前の好きな奴って…… 俺……?』

―――― 『そんなわけないじゃん! 何言ってんのもーっ!!』


成幸 (あのときのようなアホな勘違いをまたしてしまったってことか……!?)

成幸 (恥ずかしいなんてレベルじゃないぞこれは!? そういえば、大森にも余計なことを……)


―――― 『今のお前にはうるかは渡せん』


成幸 (かっこつけて何言ってんの俺!? アホなのか!? いやアホなんだけど!!)

成幸 (何が “うるかは渡せん” だよ!? 穴があったら潜り込んでフタをしたい!!)

ヌォオオオオオ………………


927以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:05:13Tnw.rbtQ (6/11)

成幸 「………………」

成幸 「……すまん、うるか。忘れてくれ」

成幸 「俺の早とちりだ。俺はアホだ」

うるか 「い、いいよ。何か知らないけど、勘違いしちゃったんだよね」

うるか 「べつに気にしてないから。ね?」

成幸 「うぅ……お前の優しさが心に沁みるよ。ありがとう……」

うるか 「……成幸、あたしが大森っちのこと好きだと勘違いして、わざわざあたしを呼び出したの?」

成幸 「……そうだよ。お前が心配になってさ」

成幸 「友達の俺が言うのもなんだが、あいつはスケベだし、マナーが悪いときもあるし……」

成幸 「もちろん悪い奴ではないし、いいところもたくさんあるけど、それでも……」

成幸 「……もしお前があいつのことを好きなら、『教育係』 として色々と忠告しておこうかと思ってな」

成幸 「傲慢なことをしようとした罰が当たったのかもしれん。恥ずかしい……」

うるか 「そっか……」

うるか 「……成幸、あたしのこと心配してくれたんだ?」


928以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:05:44Tnw.rbtQ (7/11)

成幸 「? そりゃ当たり前だろ。お前とは中学の頃からの付き合いだし、」

成幸 「俺はお前の 『教育係』 だからな」

うるか (……そっか)

うるか (成幸、あたしが他の男の子のこと好きって思い込んでて、その相手を勘違いして……)

うるか (あたしのこと、心配してくれたんだ……)

カァアアアア……

うるか (今はまだキョーイク係として、かもしれないけど、)

うるか (あたしのこと、少なくとも大森っちには任せられないって思ってくれたんだ)

うるか 「えへへ……」

成幸 「? どうして笑ってるんだ?」

うるか 「……えへへへ、内緒」

成幸 「なんだそりゃ……?」

うるか (あたしのこと、“渡したくない” って、思ってくれたんだ……)

うるか (……嬉しいな)


929以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:06:47Tnw.rbtQ (8/11)

うるか 「ねえ、成幸」

成幸 「うん?」

うるか 「もう二度と、成幸がそーいう勘違いしないように、いま約束するね?」

成幸 「約束?」

うるか 「うんっ!」

ニコッ

うるか 「あたし、好きな人に告白する前に、絶対に成幸からアドバイスもらうから!」

うるか 「……だから、安心してていいよ。当分は、成幸のそばに、『生徒』 としていてあげるから」

成幸 「な、なんだそりゃ……?」

うるか 「えへへ……」

うるか (……いつか、絶対)

うるか (『生徒』 としてじゃない。ひとりの女子として)

うるか (……隣に行くからねっ、成幸!)


おわり


930以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:07:38Tnw.rbtQ (9/11)

………………幕間1 「ガルガル期」

成幸 (……そもそも、前回も今回も、水泳部のせいで勘違いすることになったんだ)

成幸 (これからは、水泳部の連中の言うことを真に受けないようにしよう)

海原 「あっ、唯我くーん。なんかうるかが探してたよー? また和訳をチェックしてほしいんだってー」

成幸 「ほ、本当か!? うそじゃないだろうな!?」 ガルルルッ

川瀬 「……おい、小林。唯我の奴、今度は一体どうしたんだ?」

小林 「俺に聞かれてもなぁ……」

滝沢先生 「お、唯我、ちょうどいいところに」

滝沢先生 「水泳の補習点足しといたから、無事体育の単位出るぞ。良かったな」

成幸 「本当ですか!? うそじゃないでしょうね!?」 ガルルルルッ

滝沢先生 「……おい小林。こいつ一体どうしたんだ?」

小林 「だから分かりませんってば……」

小林 (……成ちゃんが壊れるとみんな俺に説明を求めにくるから困るんだよなぁ)

小林 (っていうか、朝から大森の姿が見えないけど、どこ行ったんだろ)


931以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:08:33Tnw.rbtQ (10/11)

………………幕間2 「身体的特徴の誹謗中傷ダメ絶対」

大森 「むーっ! むーっ! むーーーーっ!」

鹿島 「あらあら、無駄ですよ、大森さん。この時間、体育館裏には誰も来ませんから」 ニコッ

蝶野 「古橋姫を悲しませるような暴言を吐いたと聞いたっス。無事に帰れると思わないでくださいっス」

猪森 「ふふ、さて、手始めにどれからやってやろうかな。ふふふ……安心しろ? 全部間違いなく痛いから」

大森 「むーっ! むーっ!」

大森 (助けてー! 唯我ー! 古橋さーーん!!)



おわり


932以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 00:09:37Tnw.rbtQ (11/11)

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。


また折を見て投下します。


933以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/28(日) 01:26:29S9p6CV.Y (1/1)

あぁ��文系との関係性たまらん


934以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/29(月) 01:53:35TMvJk6nI (1/1)

文乃多くて嬉しい
次スレでもよろしく
スレタイはぼく勉ssみたいなのの方がいんじゃないかな スレ開くまでめっちゃ伸びてるあしゅみーssかと思ったし


935以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/29(月) 12:09:077kyRu/Lg (1/1)

あしゅみーかわいいからね仕方ないね


936以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/29(月) 18:03:09.HQDY3HU (1/1)

下着屋の店主とあしゅみー先輩って似てね?


937以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:51:48UudYFwz2 (1/28)

>>1です。
投下します。



【ぼく勉】あすみ 「来年の夏祭りは」


938以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:52:36UudYFwz2 (2/28)

………………小美浪家

小美浪父 「夏祭りのときはすまなかったな」

あすみ 「……いきなりどうした。親父」

あすみ 「家の手伝いをするくらい、浪人させてもらってる身なら当然だろ」

あすみ 「それに、夏祭りの救護係も町医者の大事な仕事だろ」

あすみ 「いつかこの医院を継ぐあたしにとっちゃ予行練習みたいなもんだしな」

小美浪父 「いや、そういうことじゃない」

あすみ 「……?」

小美浪父 「……うちの手伝いをしていたせいで、唯我くんと夏祭りを回れなかっただろう?」

小美浪父 「娘が愛する彼氏と一緒にいられなかったのが、申し訳なくてな……」

あすみ (相変わらずこの親父頭わいてやがる……)

小美浪父 「と、いうことで、秋祭りも救護係の依頼がきているが、」

小美浪父 「お前は手伝わなくていい。その代わり、唯我くんとデートしてきなさい」

あすみ 「手伝いをしなくていい代わりに後輩とデートって……」


939以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:53:15UudYFwz2 (3/28)

あすみ 「親父ひとりじゃ大変だろ。夏祭りだって後輩に手伝ってもらってようやくだったのに……」

あすみ 「あたしも手伝うよ」

小美浪父 「ふふ、あまり父を甘く見るなよ……」

あすみ 「?」

小美浪父 「祭りのしきり役に頼み込んだ結果、町内会の方から人を借り受けられるようになった」

小美浪父 「せいぜいが軽い体調不良やケガ人しか来ないから、それで十分だろう」

あすみ 「娘のデートのためにそこまでするか、あんたは……」

小美浪父 「……どうしたんだ、あすみ? もう少し喜んでくれるかと思ったが」

小美浪父 「まさかお前……」

あすみ 「!?」 (まずった……! 後輩とのことがウソだってバレ――)

小美浪父 「――唯我くんと喧嘩でもしたんじゃないだろうな?」

あすみ 「………………」 (……鋭いかと思えば鈍いよなぁ、この親父)

あすみ 「してねーよ。わかったよ。秋祭りは後輩と一緒に回ることにするよ」

小美浪父 「そうだな。それがいい。そうしなさい」 ニコニコ


940以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:54:24UudYFwz2 (4/28)

あすみ 「……っていうか、あんた、大事な大事な娘が心配じゃないのか?」

小美浪父 「む?」

あすみ 「どこの馬の骨とも分からん奴と娘が付き合ってるんだぞ?」

小美浪父 「……? お前は何を言っているんだ?」

小美浪父 「そもそも、唯我くんがお前を泣かせる未来が見えん」

小美浪父 「どちらかというとお前が唯我くんを泣かせないか心配だ」

あすみ (この親父……)

小美浪父 「ほら、これを見ろ、あすみ」

ドサッ

あすみ 「あん? なんだこの紙束。学会で報告する論文か?」

小美浪父 「お前と唯我くんの結婚式での挨拶文だ」

あすみ 「は……?」

小美浪父 「お前の生い立ちから唯我くんとの出会い、唯我くんの素敵なところ、唯我くんとの思い出……」

小美浪父 「そのすべてを書いていたらこんな厚みになってしまったよ」 テレテレ


941以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:55:35UudYFwz2 (5/28)

あすみ (……ダメだ、この親父)

あすみ (こりゃ、是が非でも来年医学部に入学して、後輩とのことを正直に話さないと)

あすみ (このままじゃ本当に後輩と結婚することになっちまうぞ、あたし)

あすみ 「………………」

あすみ (……まぁ、べつに、あたしとしちゃ、それでも構わないけど)

クスッ

あすみ (なんて後輩に言ってやったら、あいつどんな顔するかな)

あすみ 「……デート、か」

小美浪父 「ん……? おい、あすみ」

あすみ 「ん?」

小美浪父 「口元、ニヤけてるぞ。やっぱりお前も唯我くんと一緒に回りたかったんだな、お祭り」

あすみ 「なっ……」

あすみ 「そ、そんなんじゃねーよ! べつに、あたしは……」

あすみ (……ま、後輩の都合がつくかもまだ分からんしな)

あすみ (とりあえず、誘ってみっか)


942以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:56:22UudYFwz2 (6/28)

………………数日後 予備校

あすみ 「……ってことで、秋祭りの日、予定あいてるか?」

成幸 「先輩、相変わらず大変そうですね……」

成幸 「協力してあげたいのはやまやまなんですけど、実は……」


―――― 花枝 『秋祭りの日、どうしても仕事が抜けられないのよ』

―――― 花枝 『水希も部活で遅くなるみたいだし……』

―――― 花枝 『申し訳ないんだけど、葉月と和樹を連れていってあげてくれない?』


成幸 「……って母さんに頼まれちゃって」

あすみ 「ああ、この前家にお邪魔したときにいたチビちゃんたちか」

あすみ 「そのふたりがいてもあたしは構わないぞ」

あすみ 「むしろ、幼児ふたりを高校生がひとりで引率って大変だろ」

あすみ 「後輩にはいつも世話になってるしな、あたしも一緒に行ってやるよ」

成幸 「本当ですか? 葉月もいるから女手があると助かりますけど……」

成幸 「……でも、先輩の勉強時間を取ってしまうのは忍びないです」


943以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:56:53UudYFwz2 (7/28)

あすみ 「構わねーよ。どうせお前と祭りを回れないなら親父の手伝いをするだけだ」

あすみ 「じゃあ、秋祭りの日、会場で待ち合わせだな」

成幸 「はい! ありがとうございます、先輩!」

あすみ 「べつに礼を言われるようなことじゃねーけどさ」


―――― 『次はさ…… 2人で一緒にまわりたいな 縁日』


あすみ (……べつに、意識したわけじゃねーけど)

あすみ (結果的に、前に後輩をからかったとおりになってしまったな)

成幸 「……はー、でも本当に助かるな。混み合う場所にあいつら連れてくと大変だから」

あすみ (……こいつはあのときのことなんて、全然覚えてないみたいだけど)


944以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:57:24UudYFwz2 (8/28)

………………

吉田 「唯我、あの野郎……!!」

高橋 「武元さんたちのみならず、小美浪先輩までも……!!」

吉田 「しかも秋祭りデートだと!? 受験を舐めてるのか!?」

高橋 「俺だって武元さんとデートしてぇよ!」

吉田 「俺だって古橋さんとお祭り回りてーよ!!」

坂本 「………………」

吉田 「む? どうした、坂本。お前も共に怨嗟を叫ぼう」

高橋 「一緒に怒りを力に変えよう」

坂本 「……いや、ほら、俺ハコ推しだから」

坂本 「最近は、唯我も含めて “ハコ” な気がするからさ」

坂本 「どっちかっていうと、今のやり取りで萌えてた」

吉田 「お、お前……リアルの知り合いのカプに萌えるって……」

高橋 「とうとう来るところまで来たって感じだな……」


945以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:58:03UudYFwz2 (9/28)

………………秋祭り当日 夕方

あすみ 「………………」

あすみ (……ったく。今日はチビちゃんたちもいるから、いつも通りの格好でいいって言ったのに)


―――― 小美浪父 『何!? 浴衣を着ない!? 彼氏とのデートで浴衣を着ない!?』

―――― 小美浪父 『着ていきなさい! 唯我くんだってきっとお前の浴衣姿を見たいはずだ!』


あすみ (前に救護テントの手伝いをしてもらったときに散々見られたっつーの)

あすみ (……まぁ、あのときは、一言も “似合ってる” とも “かわいい” とも言ってくれなかったけどな)

ムカムカ

あすみ (……って、アタシは何イラついてんだ)

成幸 「あっ……先輩!」

あすみ 「んあ……? おお、後輩。早かったな」

成幸 「こいつらが早く行きたいって聞かなくて……」

和樹 「メイドのねーちゃん!」  葉月 「こんばんは!」

あすみ 「おう、こんばんは。おチビちゃんたち」


946以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:58:53UudYFwz2 (10/28)

成幸 「先輩も随分早いですね。約束の時間までまだ三十分くらいありますよ」

あすみ 「ああ。救護テントの設営だけ手伝ってから来たからな」

あすみ 「……あの親父は色んなセンスが壊滅的だから、ひとりにすると心配なんだよ」

あすみ 「まぁあの親父の話はいいだろ。ちょっと早いけど、もう行こうぜ」

葉月 「メイドのおねーちゃん、手つないでー!」

あすみ 「おう、いいぞー」

ギュッ

和樹 「で、おれと葉月が手をつないで、兄ちゃんとおれが手をつないで……」

葉月 「あらふしぎ! 仲良し一家の完成だわ!」

和樹&葉月 「「ってことで、メイドのねーちゃん、嫁に来て?」」

成幸 「お前ら……」

あすみ 「式の日取りはいつにする、ダーリン?」

成幸 「先輩も乗らないでください! こいつら本気にしますよ!」


947以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 00:59:46UudYFwz2 (11/28)

………………

葉月 「兄ちゃーん、わたしりんご飴食べたーい!」

和樹 「兄ちゃん、おれ広島焼き!」

成幸 「わかったわかった……」

成幸 (うぅ……問題集に使うはずだったバイト代よ、さらば……)

あすみ 「………………」

あすみ 「葉月ー? りんご飴結構大きいけど、ひとりで食べきれるか?」

葉月 「? あれくらいの大きさならペロリだわ」

あすみ 「でも、他にも食べたいものあるだろ? 食べられなくなっちゃうぞ~?」

葉月 「! 他の物も食べたい……!」


948以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:00:26UudYFwz2 (12/28)

あすみ 「よーし。じゃああすみ姉ちゃんもりんご飴食べたいから、半分こしよう」

あすみ 「……ってことで、アタシは葉月とりんご飴買ってくるから」

あすみ 「後輩、お前は和樹と広島焼き買ってこい。またここ集合な」

成幸 「あ、でも先輩、お金……」

あすみ 「アタシが食べたいからりんご飴を買うんだ。お前に出させる謂われはねーよ」

あすみ 「ほら、行くぞ葉月! りんご飴にダッシュだ!」

葉月 「りんご飴ー!」

ピューン

成幸 「行ってしまった……。先輩、パワフルだなぁ……」

成幸 (葉月たちに合わせてくれてるんだよな、きっと……)

和樹 「……かっこいいなー、あすみねーちゃん」

成幸 「ん? ああ、まぁ、そうだな」

和樹 「嫁に来てくれないかな」

成幸 「それは俺じゃなくて先輩に聞いてくれ。ほら、俺たちも行くぞ、和樹」


949以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:01:06UudYFwz2 (13/28)

………………

葉月 「りんご飴~、甘くてさわやかで~、とろける~」

和樹 「広島焼き、あつあつでうめー!」

葉月 「はい、あすみおねーちゃんも食べて!」

あすみ 「おう、ありがと。葉月」 ハムッ

あすみ 「……うん。美味しいな、葉月」

葉月 「うん!」 スッ 「兄ちゃんも、どうぞ!」

成幸 「えっ? 俺も食べていいのか? じゃあ……」 ハムッ

成幸 (りんご飴なんて食べたのいつ振りだ……? 結構イケるな……)

葉月&和樹 「「………………」」 ニヤニヤニヤ

成幸 「ん? 何だよ、お前ら?」

葉月 「兄ちゃんとあすみおねーちゃん……」  和樹 「かんせつチューだな!」

成幸 「!?」 ボフッ 「な、何をバカなこと言ってんだ……!」

成幸 「まったく……」


950以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:01:50UudYFwz2 (14/28)

あすみ 「………………」 ニヤニヤニヤ

成幸 「……なんですか、先輩?」

あすみ 「いやー、アタシのファーストキス、奪われちゃったなー、って思ってさ」

成幸 「ぶっ……こ、このふたりよりアホなこと言い出さないでください!!」

あすみ 「ひどい! アタシとのこと、遊びだったのね!」

成幸 「まだ続けるんすかその茶番!」

葉月 「あー……」  和樹 「兄ちゃん最低だな……」

成幸 「お前らもノらなくていいよ!」

成幸 「まったくもう……!」 プンスカプン

和樹 「機嫌直せよ兄ちゃん。ほら、広島焼きあげる」

成幸 「……おう」 パクッ 「……おう。結構美味しいな」

あすみ 「和樹ー、アタシにもくれー」

和樹 「はい、あすみねーちゃん」

あすみ 「うんうん。祭りって言ったらやっぱりこの味だよなー」


951以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:03:05UudYFwz2 (15/28)

………………射的

真冬 「………………」

真冬 (今日も学園長から祭りの巡回を仰せつかってしまったけれど)

真冬 (前回の失敗は、お面で変に顔を隠して悪目立ちしたのがいけなかったんだわ)

真冬 (そもそも、これだけ人がいるお祭り会場で、生徒と出くわすとは思えないわ)

真冬 (変に目立たなければ、誰とも出くわさずお祭りを楽しめ――じゃなくて、巡回できるわね)

真冬 (だから今回は普通に。顔を隠さずに。射的を楽しみま――巡回しましょう)

パシュッ……パシュパシュッ……

「うおー! すごいぞ、あの美人!」  「百発百中どころじゃないぞ!」

「まさか、あの伝説の射的荒らしが素顔を見せているだと!?」

「俺も撃たれたい!」  「踏まれたい!」 

真冬 「……?」 (なぜかしら。以前よりギャラリーが多い気が……――)

「――まふゆセンセ、何やってんです?」

真冬 「!? こ、小美浪さん!?」


952以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:03:53UudYFwz2 (16/28)

あすみ 「高そうな浴衣着て、射的にはしゃいじゃって……。お祭り楽しんでますね」 ニヤニヤ

真冬 「ご、誤解! 私はただ、生徒が羽目を外しすぎないか巡回しているだけで……!」

真冬 (僥倖。見つかったのが元生徒である小美浪さんで、まだ良かったと考えるべきね……)

成幸 「あれ? 桐須先生……」 ジトッ 「……また景品もらいまくってるんですか」

真冬 (何で毎度毎度私の前に現れるのあなたは!?)

和樹&葉月 「「………………」」 ジーーーーッ

真冬 「……? この子たちは?」

成幸 「ああ、俺の弟妹です。今日はお祭りに一緒に来たんです、けど……」

和樹&葉月 「「………………」」 ジーーーッ

成幸 「こ、こら! 人の物を物欲しそうに見るんじゃない」

真冬 「………………」

スッ

真冬 「……口止め料。どれでも好きな物を持って行きなさい」

成幸 「えっ!? いいんですか?」

真冬 「小さな子どもの純粋な目には勝てないわ」


953以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:04:30UudYFwz2 (17/28)

成幸 「ありがとうございます、桐須先生。ほら、お前たちも」

葉月 「ありがとー!」  和樹 「美人の姉ちゃん!」

真冬 「………………」 テレテレ 「……悪い気はしないわね」

あすみ 「マジすか。悪いなぁ。じゃあアタシもひとつ……」

真冬 「あなたにあげるとは一言も言っていないのだけれど?」

あすみ 「ちぇーっ、まふゆセンセのケチんぼー」

真冬 「……聞き捨てならないわね。小美浪さん」

真冬 「というか、今日は救護テントは手伝わなくていいのかしら?」

あすみ 「まぁ、今日は親父からお祭りを回れって指令が出てるもんで」

真冬 「? それでどうして唯我くんと一緒に……?」

あすみ 「ああ、まぁアタシと後輩付き合ってますし」

真冬 「そう」

ハッ

真冬 「……えっ?」

あすみ 「? どうかしました、センセ?」


954以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:05:14UudYFwz2 (18/28)

真冬 「付き合ってるって……あなたと唯我くんが!?」

真冬 「そ、そうだったの……」

真冬 (……まずいわ。もし唯我くんが私の家に来てしょっちゅう掃除をしていることがバレたりしたら……)


―――― あすみ 『へぇー。まふゆセンセ、人の彼氏をそういう風に使うのが趣味なんですねー』

―――― あすみ 『しかも自分の生徒。教師が聞いて呆れますね』


真冬 (教師としての威厳が地に落ちるどころの話じゃないわ!? ヘタしたら訴訟物よ!)

アセアセアセ

あすみ 「……?」 (あれ……? 冗談だって言おうと思ったのに……この人なんでこんなに焦ってるんだ?)

あすみ 「あ、あの、先生? 冗談ですからね?」

真冬 「えっ……?」

ホッ

真冬 「そ、そうなの。良かったわ……」

あすみ (何が良かったんだろう……? 聞くのも怖いしこのまま聞かなかったことにしよう……)


955以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:05:50UudYFwz2 (19/28)

葉月 「わたしこれにするー!」 和樹 「おれ、これ!」

成幸 「うん。じゃあ、改めて桐須先生にお礼を言おうな」

和樹&葉月 「「ありがとう、きりす先生!」」

真冬 「どういたしまして」

真冬 「……じゃあ、唯我くん、小美浪さん。遊ぶのもいいけど、門限までには家に帰ること。いいわね?」

真冬 「特に小美浪さんは年上なのだから、唯我くんの見本となるような行動を心がけなくてはいけないわよ」

あすみ 「はーい」

真冬 「では、私は巡回に戻るわ。さようなら、唯我くん、小美浪さん。それから、唯我くんの弟妹さんたち」

和樹&葉月 「「ばいばーい!!」」

あすみ (……うーん、まふゆセンセのさっきの動揺は一体なんだったんだろう)

あすみ (アタシと後輩が付き合ってるのがそんなに焦るようなことなのか?)

あすみ (……まさか、まふゆセンセ、後輩に気があったり……) チラッ

葉月 「すごく美人の先生ね、兄ちゃん」

成幸 「ん? ああ、まぁ、そうだな……」

成幸 (中身は色々残念だけどな……)


956以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:06:50UudYFwz2 (20/28)

和樹 「浴衣も似合ってたなー」

成幸 「そうだな。あの人は基本的に何でも似合うよ。綺麗な人だからな」

成幸 (ジャージもスーツも……スクール水着もメイド服も制服もチャイナドレスも修道服もフルピュアも……)

あすみ 「………………」

成幸 「? どうかしました、先輩?」

あすみ 「……何でもねーよ」

成幸 「?」

あすみ 「………………」 (……あんだよ。“あの人は何でも似合う” ねぇ)

あすみ (……ふーん。そうかい)

あすみ (……べつに、アタシには関係ないか)

あすみ (そもそも、後輩はアタシと親父に巻き込まれているだけなんだから)

あすみ (……アタシみたいなちんちくりんじゃなくて、きっと……)

あすみ (まふゆセンセみたいな、スタイルの良いおとなっぽい人が、好みなんだろうな)

あすみ (……けっ)


957以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:07:25UudYFwz2 (21/28)

………………帰路

和樹&葉月 「「………………」」 zzz……

成幸 「……散々はしゃぎ回って、遊んで食べて、とうとう寝たか」

あすみ 「まぁ、楽しそうだったからな。疲れたんだろ」

成幸 「すみません、先輩。葉月をおぶってもらっちゃって……」

成幸 「しかも、うちまで来てもらうことになってしまって……」

あすみ 「気にすんなよ。お前ひとりじゃふたりも連れて帰るの大変だろ」

成幸 「ありがとうございます」

成幸 「……あ、あと、今日、葉月と和樹に色々買ってくれましたよね」

成幸 「お金、返すんで、いくらだったか言ってください」

あすみ 「うん? どうしてお前が金を出すことになるんだ?」

あすみ 「アタシは自分で買ったものを、ちょっと葉月と和樹に分けてやっただけだぜ?」

あすみ 「ヨーヨー釣りだって、くじ引きだって、アタシがやりたかったからやって、景品を葉月と和樹にあげただけだ」

あすみ 「お前が金を払う道理はねーよ」

成幸 「先輩……」


958以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:08:02UudYFwz2 (22/28)

成幸 「……すみません。今日は葉月たちの世話をしてくれるだけでありがたかったのに、」

成幸 「お金まで出させてしまって……」

あすみ 「だーかーらー、アタシはべつに金を出したつもりはねえよ」

あすみ 「……そもそも、アタシはお前の先輩だからな」

あすみ 「後輩に奢ってやるくらい、当然だろ?」

成幸 「……わかりました。ありがとうございます」

成幸 「お礼に、明日からも気合い入れて勉強教えますからね!」

あすみ 「頼もしい限りだな。頼りにしてるぞ、後輩」

成幸 「はい!」

あすみ 「………………」 (……こいつは本当に良い奴だ)

あすみ (いつまでも、こんな風にアタシの事情に巻き込んでおくわけにはいかない)

あすみ (いつまでもこいつに甘え続けるのは、アタシの矜持が許さないし、何より、こいつに申し訳ない)

あすみ (なんとしても、今年中に国立医学部に入学して、親父に本当のことを話す……)

あすみ (……そして、後輩を開放してあげよう)

あすみ (もし受験に失敗しても、とにかく、親父にウソを謝ろう。そして、後輩を自由に……)


959以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:08:36UudYFwz2 (23/28)

成幸 「……あ、先輩、そういえば」

あすみ 「ん? なんだー?」


成幸 「浴衣、似合ってますね」


あすみ 「………………」

あすみ 「……へ?」

成幸 「本当は会ってすぐ言いたかったんですけど、葉月と和樹がいて恥ずかしくて……」

成幸 「前の縞模様だけの浴衣もシンプルでカッコ良かったですけど、」

成幸 「今日の花柄の入った浴衣、先輩によく似合っててきれいです」

あすみ 「………………」 プイッ 「……お、おう、そうか」

成幸 「……? 先輩?」

あすみ (ま、まじか、こいつ……)

あすみ (超越的なくらい鈍いくせに、何で、こんな……)

あすみ (……的確に、ほしい言葉をくれるんだ。バカ)


960以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:09:23UudYFwz2 (24/28)

あすみ (今回の浴衣だけじゃなくて、夏祭りのときの浴衣まで……)

あすみ 「………………」

成幸 「あの、先輩?」

あすみ (……やめろよ。そんな優しい言葉をかけるなよ)

あすみ (せっかく、来年の春で開放してやろうと思ってたのに……)

あすみ (……お前を、手放したくなくなるじゃねーか。バカ)

あすみ (バカ……)

あすみ 「……ありがとう。嬉しい」

成幸 「大丈夫ですか? 顔赤いですけど……」

あすみ 「大丈夫だよ。気にすんな」

あすみ 「……なぁ、後輩」

成幸 「はい?」

あすみ 「……来年の夏祭りは、ふたりで回りたいな」

成幸 「へ……?」


961以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:12:22UudYFwz2 (25/28)

成幸 「……ま、またからかうようなこと言って」

あすみ 「………………」 ジッ 「……ダメか?」

成幸 「えっ? いや、そんな……ダメとかでは、ないですけど」

あすみ 「……そうか。よかった」

ニコッ

あすみ 「じゃあ、約束な。来年の夏祭りは、ふたりきりで回ろう」

成幸 「は、はい……」 ドキッ

成幸 (なんだよ……。不意打ちすぎだろ)

成幸 (……先輩、笑うとめっちゃかわいいんだから)

成幸 (急に無防備な笑顔を見せないでほしいよ……) ドキドキ……

あすみ 「………………」

あすみ (親父にウソを話して、その上で。お前は……アタシの隣にいてくれるかな)

あすみ (……願わくは、来年の夏は、“ニセモノ” じゃなく、本物として)

あすみ (お前の隣にいられたら、いいな)

おわり


962以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:12:56UudYFwz2 (26/28)

………………幕間1 「鈍い彼がなぜ浴衣を褒めることができたのか」

成幸 「!?」 (先輩、今日の浴衣も綺麗だな……)

成幸 (前回のシンプルなデザインの浴衣も良かったけど、今回の浴衣……)

成幸 (これは絶対上等な生地だ。あの浴衣、安物じゃないぞ……)

成幸 (うーむ。織り方も秀逸だ。染めも一級品だな、これは……)

成幸 (……いつか、絶対!!)

成幸 (安物の生地でも、これに負けないような浴衣を水希に作ってあげるぞ……!!)


おわり


963以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:13:28UudYFwz2 (27/28)

………………幕間2 「かわいそう」

紗和子 「ほらほら、緒方理珠! 何から食べる!? 私はとりあえずたこ焼きが食べたいわ!」

理珠 「ちょっと待ってください、関城さん。あんまりはしゃぐとはぐれますよ」

うるか 「さわちんご機嫌だねぇ」

文乃 (……よっぽど夏祭りに誘われなかったのが悲しかったんだろうな)

紗和子 「友達とお祭りに来るのってこんなに楽しいのね! 初めて知ったわ!」

文乃 (……発言のひとつひとつが笑えないよ)

文乃 (今日は紗和子ちゃんに優しくしてあげよう……)


おわり


964以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 01:16:15UudYFwz2 (28/28)

>>1です。
いつも読んでくださる方、感想くださる方、ありがとうございます。
個別レスしませんが、いつも感謝しています。ありがとうございます。

毎度思いますが、あすみさんはこんなにチョロくないです。
というか、原作で心情描写が圧倒的に少ないので、なかなかどうして彼女の本心は把握しづらいです。
そのあたりがあすみさんの魅力だと思うのですが、わたしは単純なのでどうしてもチョロくしてしまいます。
申し訳ないことです。


そろそろスレも終わりに近づいてきて、次くらいでラストかなと思います。
また思い立ったらスレを立てるつもりですが、どうするかは全く決めていません。

また折を見て投下します。


965以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 08:22:476nm/36q6 (1/1)

おつんこ


966以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/30(火) 13:59:17bN7g4.MM (1/1)

今週のジャンプこれ文系のターン来たろ


967以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 12:25:47hTglVXm2 (1/1)

妹ブチ切れ不可避


968以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:48:02GqEZX2ZI (1/22)

>>1です。
投下します。


【ぼく勉】真冬 「トリックオアトリート」


969以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:49:21GqEZX2ZI (2/22)

………………一ノ瀬学園 職員室

ワイワイガヤガヤ……

真冬 「……?」

真冬 (何かしら? 今日はやけに職員室が騒がしいわね……)

真冬 (職員会議で大事な議題でも上がっていたかしら?)

佐藤先生 「あ、桐須先生。先生は明日どうされますか?」

真冬 「? 明日は平常授業だったと思いますが、何かありましたか?」

鈴木先生 「やだなぁ、桐須先生。明日はハロウィンですよ」

鈴木先生 「職員会議で学園長がおっしゃっていたじゃないですか。教職員もお菓子を用意を推奨するって」

佐藤先生 「生徒に合い言葉を言われたらお菓子を渡さなきゃ、イタズラされちゃいますよ」

真冬 「ああ……」

真冬 (……そういえば、先日の職員会議で学園長が楽しそうにそんなことを言っていた気がするわ)

真冬 (バカらしいと思って話半分に聞いていたけど、まさか本気だったとは……)

真冬 (……というか、それを本気にする教職員がこんなにいるというのも驚きね)


970以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:49:57GqEZX2ZI (3/22)

佐藤先生 「だから、鈴木先生とどんなお菓子を用意するか相談していたんですけど、」

鈴木先生 「もしよかったら、桐須先生も一緒に用意しませんか?」

鈴木先生 「この後買い出しに行く予定なんです」

佐藤先生 「そ、その後で、一緒に食事でもどうかな、なんて……」

真冬 「……せっかくですが、結構です。私はお菓子を用意するつもりはありませんから」

真冬 「では、社会科準備室で仕事がありますので、失礼します」

スタスタスタ……

佐藤先生 「……あー、また振られたかー」

鈴木先生 「今のところ全敗ですね。今日もふたりで寂しく飲みましょうか」


971以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:50:27GqEZX2ZI (4/22)

………………帰路

真冬 (まったく。職務怠慢……とまでは言わないけれど、職務専念義務違反だわ)

真冬 (学園長も学園長ね。一体何をお考えなのか……)

真冬 「………………」

真冬 (明日は、例年通り、生徒も友達同士、お菓子を交換したりするのでしょうね)

真冬 (そして今年はきっと、顔見知りの先生に、元気よく “Trick Or Treat” と言うのでしょう)

真冬 「………………」

真冬 (……イタズラをされてしまっては敵わないし)

真冬 (学園長命令だから、生徒を叱ることもできないでしょうし)

真冬 (自衛。生徒から身を守るために、お菓子を用意するのも致し方ないことかしら)

真冬 (そう。これはあくまで自衛。自衛のためのこと)

真冬 (……私はべつに、お菓子を用意したいわけではないわ)


972以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:51:01GqEZX2ZI (5/22)

………………スーパー

真冬 (さて、結局スーパーに来てしまったけれど、何のお菓子を買おうかしら……)

真冬 (生徒たちが好きなお菓子なんて分からないし……)

真冬 (……まぁ、私もまだ20代前半ではあるわけだから、そう生徒と好みも変わらないでしょう)

真冬 (私の好きなお菓子を適当に買えばいいわね)

真冬 (まず外せないのはこのパイよね。サクサクした食感とザラメの甘みがたまらないわ)

真冬 (ああ、このチョコも外せないわね。中のパフが甘みを引き立てるのよ)

真冬 (甘い物が苦手な生徒もいるかもしれないわね。ぽんち揚げも買っておきましょう)

真冬 (和菓子が好きな子もいるかもしれないわね。どら焼きとおまんじゅうの詰め合わせと……)

真冬 (あと、これとこれと……これも買おうかしら)

ポイポイポイポイ……


973以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:51:52GqEZX2ZI (6/22)

………………会計後

ズシッ……

真冬 (と、とんでもない量になってしまったわ……)

真冬 (これは持って帰るのも一苦労ね……)

真冬 (ふふ。でも、これで明日のハロウィンは完ぺきだわ)

真冬 (……生徒たち、喜んでくれるかしら) クスッ

ハッ

真冬 (べ、べつに、生徒のためにお菓子を買い込んだわけではないわ)

真冬 (自衛のため。あくまで自分の身を守るためよ)


974以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:52:29GqEZX2ZI (7/22)

………………

あすみ 「はぁ? ハロウィンに教員がお菓子をくれるだぁ?」

成幸 「そうなんですよ。だから、明日は先生方もお菓子をたくさん用意するみたいです」

あすみ (あの学校、生徒には良い環境かもしれないけど、教員にとっちゃブラック企業だな)

あすみ 「……ってことは、あの “氷の女王” まふゆセンセもお菓子を用意するってことか?」

成幸 「どうですかね。桐須先生がそういうのを用意するって、想像つきませんけど……」

あすみ 「……ん? なぁ後輩。あれ、そのまふゆセンセじゃねーか?」

成幸 「えっ……? あっ、本当だ」

あすみ (あの両手に提げてる買い物袋から見え隠れするシルエットは……)

ニヤリ

あすみ 「おい後輩、ちょっとあいさつしてこーぜ」

成幸 「えっ? あ、ち、ちょっと先輩!?」

あすみ 「まふゆセーンセ、こんにちは」

真冬 「えっ……!?」


975以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:53:21GqEZX2ZI (8/22)

真冬 (小美浪さん!? 唯我くんも!?)

真冬 「こ、こんにちは。小美浪さん、唯我くん」

あすみ 「先生、聞きましたよ。明日の学校、教職員もお菓子を用意するんですって?」

真冬 「え、ええ。そうらしいわね。私には関係のないことだけれど」

あすみ 「えーっ、先生用意しないんですかー? お菓子」

真冬 「するわけないでしょう。この私が、そんな浮わついたこと……」

あすみ 「じゃあ、その両手に提げた買い物袋の中身はなんですか?」

真冬 「……こっ、これは、ただの……私が食べるためのお菓子です!」

真冬 「生徒にあげるためとか、そんなことのために身銭を切るはずがないでしょう」

成幸 (あ、先生、ハロウィンのためにお菓子買ってくれたんだ……)

成幸 (まぁ、変に律儀な人だしなぁ……)

成幸 (っていうか、どうせ明日バレるうそをなぜつくのだろうか……)

真冬 「で、では、私は家で仕事があるから失礼するわ! ふたりとも早く帰るのよ!」

あすみ 「……おやおや、焦って行っちゃったよ。あの人、ほんとおもしろいよなー」

成幸 「あんまりからかわないであげてくださいよ。まじめな人なんだから……」


976以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:54:00GqEZX2ZI (9/22)

あすみ (……にしても、あのまふゆセンセがハロウィンにお菓子を用意、ねぇ)

あすみ (教職員でそうすると決まったからって、そんなことするとは思えないけど……)

あすみ (あの人も変わったんだな。間違いなく、こいつのせいで) ジロッ

成幸 「? なんですか、人の顔をじろじろ見て……」

あすみ 「なんでもねーよ。ところで後輩は? 友達と交換するお菓子とか用意しないのか?」

成幸 「……残念ながらそんなお金はないです」

ガクッ

成幸 「今年も友人たちが和気藹々とお菓子交換をしているのを眺めているだけの寂しいハロウィンです……」

あすみ 「ああ……」

ポン

あすみ 「ま、元気出せよ。この後ハイステージで甘いもん奢ってやるから」

成幸 「ほんとですか!?」 パァアアア……

あすみ (チョロいなこいつ……)


977以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:54:54GqEZX2ZI (10/22)

………………翌日

真冬 「………………」

ドキドキドキドキ……

真冬 (結局、昨日買ったお菓子をすべて職場に持ち込んでしまったわ)

真冬 (おかげで机の中がパンパンだわ……)

真冬 (ふふ……。私がお菓子をあげたら、皆どんな顔をするのでしょうね……)

女子生徒1 「鈴木センセー、トリックオアトリート!」

鈴木先生 「お、ではイタズラをされては敵わんから、ほら、お菓子だぞー」

女子生徒2 「わー! 鈴木センセーだーいすきー!」

鈴木先生 「ふふ、女子生徒にモテて困るな……」

佐藤先生 「ほらー、こっちにもお菓子があるぞー」

女子生徒2 「あっ! これ私の好きな奴だー! 佐藤先生もっと好きー!」

鈴木先生 「何!?」


978以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:55:28GqEZX2ZI (11/22)

真冬 (やっているわね……)

真冬 (準備は万端よ。いつでもいらっしゃい……) ジーーーーッ

女子生徒1 「……!?」 ビクッ (“氷の女王” がこっちを見てる……!)

女子生徒2 (お菓子なんかもらいに行ったらどれだけ怒られるか……)

女子生徒1 (っていうかすでに職員室で騒いじゃって怒られるかも!?)

女子生徒1&2 「「し、失礼しましたー!!」」

真冬 「あっ……」

シュン

真冬 (……行ってしまったわ)

真冬 (ま、まぁ、まだ午前中よ。時間はまだまだあるわ)


979以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:58:57GqEZX2ZI (12/22)

………………昼休み 3-B

うるか 「………………」 ドキドキドキ……

うるか (今年は学校全体でハロウィンハロウィンしてるから、成幸にトリックオアトリートって言いやすい……)

うるか (成幸はお金がないからお菓子を持っていない!)

うるか (そして、お菓子がないならイタズラをするしかない! ゴーホー的に成幸の身体にイタズラをするチャンス!!)

ガラッ

うるか 「やーやー! 成幸ー! トリックオアトリート!」

成幸 「ん、うるかか。ほれ、クッキー」

うるか 「へ……? 成幸、お菓子持ってんの? っていうかこれ、手作り!?」

成幸 「ふふふ、去年、しょぼくれてた俺を見るに見かねた水希が、今年は朝からお菓子を作ってくれてな」

成幸 「水希の絶品クッキーだ。心して食えよ」

うるか 「う、うん。ありがと……」 モグモグモグ 「……めちゃくちゃ美味しい」

うるか (うあぁあああ!! こんなことなら去年イタズラしておくんだったー!!)

成幸 「えへへ、そうだろ。水希が俺のために作ってくれたんだ~」 ニヘラ 「今年は俺もお菓子を配れるんだ」

うるか (でも成幸の嬉しそうな顔が見られただけでも良し!)


980以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 22:59:39GqEZX2ZI (13/22)

………………放課後 職員室

真冬 「………………」

ズーン

真冬 (……結局、今日一日、誰も私のところに来なかったわ)

真冬 (よく考えたら当然よね。私は融通も利かないし、生徒に好かれるような性格でもない)

真冬 (……生徒が私にお菓子をもらいにくるなんて、ありえないわね)

真冬 (学園が浮かれているだのなんだの言って、結局一番浮かれていたのは私だったのね)

ワイワイガヤガヤ……

滝沢先生 「ほら、お前ら、お菓子」

海原 「わー、美味しそうな詰め合わせだー! ありがとうとざいます、滝沢先生!」

川瀬 「ふむふむ……ラインナップから年代が分かりますね」

滝沢先生 「ほう。川瀬はお菓子がいらんと見えるな」

川瀬 「冗談ですよー! いただきまーす!」

真冬 (未だに職員室の中は、お菓子をもらいにくる生徒であふれているというのに……)

真冬 (私だけひとりぼっちみたいだわ……)


981以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 23:00:20GqEZX2ZI (14/22)

ガラッ

成幸 「失礼します。2年B組の唯我です。滝沢先生、提出物を持ってきました」

成幸 (うわっ……いつにないくらい職員室に生徒がいる。みんなお菓子もらいに来てるのか……)

滝沢先生 「お、来たか唯我。いつも提出物集めさせて、悪いな」

成幸 「いえいえ。それじゃ、俺はこれで……」

滝沢先生 「せっかくだし、お前も持ってけよ。ほら、お菓子」

成幸 「あっ……す、すみません。ありがとうございます」

成幸 (食べたい……けど、持って帰って葉月と和樹にも分けてあげないとな……)

成幸 「ん……?」

真冬 「………………」 ズーン

成幸 (あれ? なんか、桐須先生の周りだけ誰もいない……?)

成幸 (でも先生、昨日お菓子を山ほど買ってたよな……)

成幸 「………………」

成幸 (……もしかして)


982以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 23:00:54GqEZX2ZI (15/22)

………………

真冬 (はぁ……。落ち込んでいても仕方ないわ。仕事に戻りましょう)

成幸 「あ、あの、桐須先生?」

真冬 「……? ああ、唯我くん」

真冬 「何か用かしら?」

成幸 「いや、その……」

成幸 「………………」



成幸 「……トリックオアトリート」



真冬 「へ……?」

真冬 「あっ……」

ガチャッ……ゴソゴソ…………

真冬 「あ、あげるわ。これ、私の好きなお菓子の詰め合わせよ……」

成幸 「あ……ありがとうございます!!」


983以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 23:01:42GqEZX2ZI (16/22)

「“氷の女王” にお菓子をねだって……」

「もらえただと!?」

「……っていうか、私、文化祭以来、桐須先生のファンなんだよね」

「行くのためらってたけど、お菓子もらえるみたいだし……」

「お話をするチャンスになるかもだよね」

ゾロゾロゾロ……

桐須先生 「え? え? え?」 (な、なぜ、私は生徒に囲まれているの!?)

生徒 『トリックオアトリート!』

真冬 「あっ……ち、ちょっと待ってちょうだい! あげるから、ちょっと……」

真冬 (……唯我くん、ひょっとして)

真冬 (私を気遣って……?)


984以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 23:02:18GqEZX2ZI (17/22)

………………

成幸 (あっという間に生徒に囲まれてしまった……)

成幸 (桐須先生って、厳しくて怖いけど、まっすぐな先生だから嫌われてはいないんだよな……)

真冬 「あ……ち、ちょっと待ってちょうだい! すぐ用意するから……!」

成幸 (不器用な人だから、手渡しにすら戸惑ってるよ……)

クスッ

成幸 (まぁ、でも、桐須先生も嬉しそうだから、いっか)

成幸 (……文化祭のときのように)

成幸 (桐須先生が、ただ怖いだけの人じゃないって、わかってもらえたら、いいな……)



おわり


985以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 23:03:18GqEZX2ZI (18/22)

………………幕間1 「近親憎悪」

真冬 「……ふぅ。やっと生徒がはけたわ」

「あの、先生」

真冬 「? お、緒方さん?」

理珠 「成幸さんから聞きました。お菓子を配っていると……」

真冬 「え、ええ、そうだけど……」

理珠 「……先生が渡している詰め合わせの中に、私がとても好きなお菓子があります」

理珠 「だから、決して、その、先生に気を許しているわけではありませんが、」

理珠 「……トリックオア、トリート」

真冬 「………………」 クスッ 「……仕方ないわね。ほら、あげるわ」

理珠 「あっ……」 パァアアア…… 「ありがとうございます!」

真冬 「どういたしまして」

真冬 「……ただ、発音が悪いわ」 ジロリ 「“Trick Or Treat” よ。そんなことでは理系科目だけでなく英語も心配ね」 ゴゴゴゴゴ……!!!!

理珠 「ご心配には及びません」 ジロリ 「英語の発音は受験には関係ありませんから」 ゴゴゴゴゴ……!!!!


986以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 23:04:02GqEZX2ZI (19/22)

………………幕間2 「やだ」

成幸 「ただいまー」

水希 「おかえり、お兄ちゃん。クッキーどうだった?」

成幸 「おー、みんな美味しいって食べてくれたぞ。小林と大森も大喜びだったよ」

水希 「えへへ。それなら早起きして作った甲斐があるよ」

成幸 「あと、うるかと緒方と古橋にもあげたけど、大喜びだったぞ。美味しいって」

水希 「………………」 ニコッ 「……へー」

成幸 「ハロウィンって楽しいんだな。来年は俺も手伝うから、また作ってくれよな」

水希 「やだ」

成幸 「へ……?」

水希 「やだ」


987以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 23:04:50GqEZX2ZI (20/22)

………………幕間3 「おかしい」

文乃 「………………」

文乃 「……おかしい」

文乃 「先生方ほぼ全員からお菓子をもらって、」

文乃 「成幸くんから水希ちゃんお手製のクッキーをたくさんもらって、」

文乃 「りっちゃんからデザートうどんをもらって、」

文乃 「うるかちゃんから水泳選手常食の高カロリーブレッドをもらって、」

文乃 「みんなに配りきれなかったお菓子をもったいないから全部食べただけなのに」

文乃 「………………」

文乃 「なんでこんなに体重増えてるの!?」



おわり


988以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 23:08:58GqEZX2ZI (21/22)

>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。


今日がハロウィンだったと途中で気づき、慌てて書きました。
アラが目立つのはそういうわけです。申し訳ないことです。


1000までそうないので、感想等ありましたらかき込んでくれると嬉しいです。
どれが一番面白かったとか教えてくれるとすごく嬉しいですし参考になります。
質問やご意見もいただければ答えます。

次投下する際はこのスレを埋めて新しいスレを立てると思います。
そのとき投下するタイトルをそのまま新しいスレタイにします。
誤解を招くかもしれませんが、それは変えたくありません。ご容赦ください。


989以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 23:14:30GqEZX2ZI (22/22)

>>1です。
SS本文でもないのに連投してしまってお目汚しすみません。
書き忘れたことがありました。

二ヶ月間ほどこのスレにお付き合いいただいた方、本当にありがとうございました。
全部読んでくれたよ、なんていう方がいたらとても嬉しいです。

今まで色々な題材でSSを書きましたが、こんなに一気に大量に書けたのはこの作品が初めてです。
アニメが始まる頃に、ぼく勉SSが増えることを祈っています。

本当にありがとうございました。
次スレもまた立てると思います。よろしくお願いします。




あと、最後に全然関係ない上にどうでもいいことですが、あしゅみー先輩のお祭りのSSで
あしゅみー先輩が着ていた浴衣は五巻の表紙の浴衣をイメージしています。
一応わたしが勝手に花柄の浴衣を着せたわけではないことだけ釈明しておきます。


990以下、名無しが深夜にお送りします2018/10/31(水) 23:50:23FRZlX7HQ (1/1)

>>989
最初から読ませて頂いてます!これからも無理のない範囲で頑張ってください!


991以下、名無しが深夜にお送りします2018/11/01(木) 01:44:55iBjeY8c. (1/1)

>>988
全部読ませていただきました、面白かったです!
本当に全てレベルが高く、どれが面白かったかと言われると迷うのですが、原作にあまり出てきてくれない水希ちゃんや小林くんが出てくる回が新鮮でよかったです!
次スレも応援してます!


992以下、名無しが深夜にお送りします2018/11/01(木) 02:25:526i/2LgB2 (1/1)

おつおつ 成幸が徹夜して本読む奴が一番好き
俺が文乃スキーなのは関係ないはず

水希ちゃんは単行本によく出てくるから気になる人は買おうぜ
このスレみたいな登場の仕方だけど


993以下、名無しが深夜にお送りします2018/11/01(木) 09:13:15pc/Klrwc (1/1)

おつおつ


994以下、名無しが深夜にお送りします2018/11/01(木) 23:28:33/.3rN8ZM (1/1)

あまりにも不器用すぎる先生かわいい


995以下、名無しが深夜にお送りします2018/11/02(金) 01:04:17wyPjphZs (1/1)

愛してるゲームとか、海の帰りとか原作補完の話がなんとも言えなくて好き
ただ先生が好きなだけかもしれないけど…
先輩や文系の話もすごく面白い


996以下、名無しが深夜にお送りします2018/11/02(金) 12:15:25Ok0GwWRU (1/1)

原作で読んだ話なのかここで読んだ話なのかこんがらがって来るレベルのクオリティよ
また書いてくれたら嬉しいな


997以下、名無しが深夜にお送りします2018/11/02(金) 23:59:305dBdiF62 (1/1)

おつおつ 面白かった


998以下、名無しが深夜にお送りします2018/11/06(火) 00:04:30U85.jAH2 (1/1)

全部読んだ。全部良かったけどやっぱり文乃関連が一番好き。


999以下、名無しが深夜にお送りします2018/11/06(火) 18:45:37iELA8746 (1/1)

最後の先生の話とか本当にありそう


1000以下、名無しが深夜にお送りします2018/11/06(火) 18:51:59trA5kroY (1/1)

はい神スレ