408 ◆xjSC8AOvWI2018/11/26(月) 00:42:24.28KO3jmfPH0 (3/3)

-----ここまで。次回は28日(水)20時くらいからの予定です


409 ◆xjSC8AOvWI2018/11/28(水) 21:39:21.58+FI3Nzrk0 (1/6)



マミ「…………そろそろ日が暮れてきたわね。今日は終わりにしましょうか?」

織莉子「ええ。お疲れ様」


 あれから私たちは戦ったのは、一回使い魔を見つけた時だけだった。

 織莉子もわたしたちと一緒に使い魔と戦ってくれてる。

 はじめて一緒にパトロールした時は、余裕がないから一人だとためらってしまうって言ってたっけ。織莉子はグリーフシード大丈夫なのかな……?


マミ「今日も使い魔が一度いただけね……」

織莉子「まあ、こうして街の平和を守れているわけですし」

マミ「ええ、そうね」


 マミは少しだけ何かを気にしたような様子で、織莉子の言葉に返事を返す。


 そうはいっても、魔法少女にとってグリーフシードはなくなったら生きていけない。

 マミは絶対にそれを言葉に出さなかった。


 『つっても、見滝原はマミの馬鹿が使い魔のうちに狩り回ってるから見つかりづらいだろうな』

 『その上今は他の奴までいるんだ。ただでさえ少ない報酬の競争は激しくなるぜ』

 ――――杏子の言葉が浮かんだ。使い魔を倒すならしかたない。




410 ◆xjSC8AOvWI2018/11/28(水) 21:41:08.59+FI3Nzrk0 (2/6)



かずみ(でも、本当にそれだけ……)



 本当はマミも、焦りを感じてきてるんじゃないのかな……?



マミ「ねえ、かずみさん。この後はどうする?」

かずみ「この後?」



・この後
1訓練がしたい
2お茶会がしたい
3早めに帰りたい
4自由安価

 下2レス


411以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/11/28(水) 21:45:53.10V3Pc6KAe0 (1/1)

魔女狩りを続行
その際にマミに最近魔女を狩れないの少し変じゃないかと話す
まるで誰かが先回りして狩ってるような気がする、もしくは使い魔だけと鉢合わせるように誘導されてるような・・・


412以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/11/28(水) 21:55:53.742DoZtQlRO (1/1)


追加でマミに織莉子の固有魔法が何か知ってるか聞く


413 ◆xjSC8AOvWI2018/11/28(水) 22:33:45.77+FI3Nzrk0 (3/6)



かずみ「まだパトロール続けない?」

マミ「もう大体回ったと思うわよ?」

かずみ「うーん、まあそうだけど……」

マミ「まあ街を隅々まで見たわけじゃないしね。明日はお休みの予定だから、もう少し頑張ってもいいかも」


 そう言うと、またみんなで行先を決めて歩き出す。

 さっきは回らなかった場所に気を回していく。


かずみ「もう魔女はいないのかな? それとも、誰かが先に倒しちゃったのかも……」

マミ「それなら仕方ないわよ。この縄張りは私達だけじゃないもの」

マミ「でも、周りの人がどうしていようと私たちの目的は……」


 グリーフシードがほしいために他の魔法少女を縄張りから追い出す。

 そういうことはやっぱりマミはしたくないようだった。

 あすみや杏子のことを良く思わないのも、キリカに対して縄張りを追い出したのもそれが理由ではなかった。


 原因がこの街の魔法少女の『誰か』にある可能性もマミは感付いている。

 それでもマミは、他の人みたいにグリーフシードを理由にしてはいけないと思っているのかもしれない。




414 ◆xjSC8AOvWI2018/11/28(水) 22:52:11.15+FI3Nzrk0 (4/6)



織莉子「ええ、街の平和を守ること。ですわよね」

織莉子「でもたとえば誰かが過剰にグリーフシードを独占しようとしていたとして……もしそうならマミさんはどうするの?」


 他の魔法少女は使い魔は狩らない。

 その使い魔を代わりに倒すのは私達だ。でももしそれをやめたら…………


マミ「どうもしないわ。卑怯な手段でも使わない限りはね」

マミ「確実にすべての魔女を私たちより先に倒すことなんてできないのだし……結局は運よ」

織莉子「本当にそう言えるかしら?」


 底知れない魔法の使い手ならつい今日会ったばかりだ。

 まさかこれもあっちが絡んでる――?


マミ「いえ…………それもかずみさんを襲う人たちの仕業だというなら説明もつくわね」


 マミも同じことを考えたようだった。

 まだ決まったわけじゃない。考えたところでどうにもならないから、いったんは考えるのをやめてパトロールに専念する。




415 ◆xjSC8AOvWI2018/11/28(水) 23:07:28.06+FI3Nzrk0 (5/6)



かずみ「マミ! 魔力の反応が!」

マミ「ええ、使い魔ね。さっき取り逃がしていた残りかしら……」

織莉子「倒しにいきましょう」


 織莉子が言う。しかしマミはためらったようにその場を動かなかった。


 使い魔を狩るのをやめれば魔女が育って、グリーフシードが手に入る確率が高くなる。

 そんなことはわかっていた。


織莉子「…………倒さないの?」

マミ「いえ、もちろん行くわよ!」



 使い魔の住み着く場所へと乗り込んでいく。三人もいれば決着はすぐにつく。

 織莉子が全体に放った水晶で動きを封じて、そこにわたしが踏み込む。距離の離れた使い魔はマミが仕留める。


 魔力の消費だって決して多くはない。――――でもそれは確実に次が手に入るという余裕がある時の話だった。




416 ◆xjSC8AOvWI2018/11/28(水) 23:55:32.77+FI3Nzrk0 (6/6)



 さすがに時間も遅くなって、今日はこのまま解散になる。

 帰り道も途中まで三人で歩く。そういえば、織莉子はよくマミの家に来てくれるけど、わたしたちは織莉子の家を知らなかった。


かずみ「……織莉子、今日訓練出来なくてごめんね。この前見て欲しいって言ってたのに」

織莉子「少しだけ操作のコツが掴めてきた気がしたから。でもいいのよ。使い魔相手とはいえ実戦で出来る事もあるもの」

織莉子「それよりかずみさんも言っていたでしょう? 余裕があったら訓練がしたいって」

かずみ「今はあんまり余裕ないから……。織莉子は器用だよね。魔力の操作も一通りはこなせそうな感じ!」

織莉子「それはかずみさんには言われたくないかもしれませんわよ? かずみさんはまだまだ知らない力を秘めているみたいですし」

かずみ「わたしの力……かぁ」


 今日見えた新しい魔法の片鱗。そのことを思い返していた。切る前と同じくらいに伸びた長い髪が今も残っている。

 わたしにしかできないこと。使えない力。たとえそれがすべて借り物だったとしても……。


マミ「美国さん、家はそっち?」

織莉子「ええ。ではまた今度」

織莉子「今度、うちにも機会があればいらしてくださいな」


 帰り道の別れ際、織莉子は手を振る。

 その言葉にマミは快く返事を返して別れた。




417 ◆xjSC8AOvWI2018/11/29(木) 00:12:06.974brtixiU0 (1/7)


かずみ「……髪、明日にでもまた切ろうかな」

マミ「訓練したらまたいきなり伸びたりしてね」


 二人だけになって、さらに家に向かってまっすぐに歩いていく。


かずみ「みんなその人にしかできないことってあると思う」

かずみ「わたしにはリボンも水晶も出せないし、二人みたいに器用なことできないもん」

マミ「そうね。私も契約したてのころは上手く扱えなくて悩んだりもしたけれど、今は自分にしかできないことがあるって思いたいわ」

マミ「この活動だって……」


 いつもだったら胸を張って言えるはずのことなのに、マミは今は少し迷いがあるようだった。

 もしこのままグリーフシードが手に入らずに魔力が減っていったら……そう思うと、今まで感じたことのない恐怖を感じていた。




418 ◆xjSC8AOvWI2018/11/29(木) 00:48:44.624brtixiU0 (2/7)

マミの家 夜



 いつもどおり夕食を食べ終わった後、食後をリビングで過ごす。

 明日も休みだからか、今日はすぐに寝る支度はしないようだった。


マミ「……かずみさん、今グリーフシード一つも持っていないって言ってたわよね」

かずみ「あ、うん。今日襲われた時に使っちゃったから」


 マミも譲れる分は持ってはいなかった。

 前からマミは魔女を倒した時、わたしに優先して回してくれていた。記憶もなくグリーフシードを一つも持ってなかったわたしを気遣ってくれてたんだ。


マミ「とりあえず今日の分はこれで浄化して」

かずみ「え? でも、そしたらマミのがなくなっちゃうんじゃ」

マミ「今日は私はそこまで使ってないわ。私も綺麗なのがなくて悪いけど……」


 マミからグリーフシードを一つ受け取って浄化する。

 でも、これで二人とも本当に今ある分しかなくなってしまった。


マミ「明日はなにがしたいかって決まってる?」

かずみ「うーん……」


 本当はあすなろに行くって話だった。でも、今の状態じゃ万全とは言い難い。

 悩んだ末、わたしはこう答えを返す。


かずみ「明日決めようかな」

マミ「そうね」


 マミはリビングのソファから立ち上がると部屋に向かっていく。

 ……その表情は、何かを決心するような重たい表情をしているように見えた。




―11日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:1個
・[20/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]


419 ◆xjSC8AOvWI2018/11/29(木) 00:49:25.334brtixiU0 (3/7)

-------ここまで。次回は29日(木)20時くらいからの予定です


420 ◆xjSC8AOvWI2018/11/29(木) 21:21:59.434brtixiU0 (4/7)

――――――



 ――――翌日、今日は休日二日目の日曜だ。



かずみ「ごちそーさま! 今日はこれからどうしようかな」

マミ「やりたいことは決まった?」


 朝ごはんを食べ終わると、わたしは鏡の前で軽く髪をとかして身支度を整えていた。

 まずはやりたいことをひとつ決めていた。


かずみ「今度はマミにこれ切ってほしいなって」

マミ「え……私そんなのやったことないわよ? 変になっちゃうかも」

かずみ「変でも大丈夫! また伸ばせるよ」


 『そういう問題かしら?』 とマミは控えめに笑う。

 魔法がなくたって髪なんていつかは伸びる。またその時もマミが一緒に居てくれればいいな……――なんて少し考える。


 鏡の前に、マミがハサミを手にして近づく。


マミ「……そういうことなら、やってみるわよ? 本当にいいのね?」

かずみ「うん。よろしくね」




421以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/11/29(木) 21:33:50.37RQCP1ARf0 (1/2)

虎刈りにならない事を祈る


422 ◆xjSC8AOvWI2018/11/29(木) 21:38:45.104brtixiU0 (5/7)



 シュキン、と髪を切る音が部屋に響いていく。

 クセのある長い黒い髪が落ちて、肩が軽くなっていくのを感じる。


 ……少しずつ短く形が整っていって、マミはその途中で手を止めた。


かずみ「……マミ?」

マミ「私じゃ前切った時とまったく同じには出来ないから、今度はこのくらいでもいいかと思ってね」

マミ「こういうのはどう? 気に入らないならもっと切ってもいいのだけど……」


 鏡を見つめた。今のわたしの髪は肩につくくらいの長さがある。

 杏子から聞いた“ミチル”はこの前までと同じような短かい髪をしていたらしい。

 わたしも昨日からこの前までと同じように短くするのしか考えてなかったけど、こういうわたし――。


かずみ「うん! いいと思う」

かずみ「じゃあそれから、それから……――――」


 わたしもマミが切ってくれた髪を気に入って、新しくなった髪型を誰かにお披露目したい気分になった。

 これからはなにをしよう?

 昨日のことがあったから、外に出るならマミにも一緒にいてもらわないといけない。せっかく今日は休みで一緒にいるんだし。


かずみ「……うーん、でも今日はホントにパトロール行かなくていいのかな?」

マミ「魔法少女のことは今は一旦忘れてもいいのよ? 魔法を使わないなら魔力も気にすることないんだから」

マミ「昨日もかなり回ったし使い魔も倒しておいたんだから、すぐには出てこないと思うわ」

かずみ「そっか、そうだね」



1どこかに行く(万全ではないので、あすなろ以外)
2織莉子に連絡してみる
3誰かを家に誘ってみる(※連絡先を持っている織莉子かあすみだけ)
4家で料理の研究
5自由安価

 下2レス


423以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/11/29(木) 21:50:58.15RQCP1ARf0 (2/2)

1駅前の屋台街
こんどこそ美味しい物食べようよ



424以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/11/29(木) 21:59:13.34xBU5R6rAO (1/1)


行く途中キリカも魔女狩りに参加させてあげたいとマミに頼む
このままだとキリカ魔女になっちゃうかも
私たちも余裕ないけどキリカはもっと余裕ないんじゃないかな?


425 ◆xjSC8AOvWI2018/11/29(木) 22:41:49.914brtixiU0 (6/7)



かずみ「あーっ! そういえば昨日はあの偽物さんに買い物邪魔されたんだった!」

かずみ「今度こそ美味しいもの食べたいな。駅前のほう行かない?」


 あれから昨日は避けていた場所。

 とはいっても、また同じ場所で会うとは限らないだろう。……どこで会うかわからないからこそ怖い。


マミ「いいわね、行きましょうか」


 でもマミがいるから安心できる。

 あの偽物はマミのとこよりも自分といるべきだって言ってたけど、そんなのわたしが決めることだ。

 わたしはやっぱり今のままのこの街で暮らしていたかった。


 もし叶うなら、あすなろには帰らずにずっと――――。




426 ◆xjSC8AOvWI2018/11/29(木) 23:04:31.564brtixiU0 (7/7)

繁華街


かずみ「わぁ! 見て見て、これすごいおいしそう!」

マミ「本当。一人だと我慢して素通りしちゃうことも多いけど、こうして見ると美味しそうなものがたくさんあるわね」


 そろそろ朝からお昼の時間に近づいてきて、みんなお腹が空いてくる頃。

 少し見回すだけで食欲を煽るものがたくさん目に入って、通りがかるといい香りが嗅覚を刺激する。

 それに、友人や家族、もしくは一人で美味しそうに食べ歩く人たち。


かずみ「あれ買ってきていい?」

マミ「いいけど……って、先にいっちゃった」

かずみ「マミもはーやくー! 二つ買うから!」




買うもの
・自由安価

 下1レス


427 ◆xjSC8AOvWI2018/11/30(金) 00:03:37.09dVFTF0Ye0 (1/1)

---ここまで。次回は1日(土)夕方からの予定です


428以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/11/30(金) 03:51:44.30oQ023dt50 (1/1)

納豆コーヒーゼリー生クリームクレープ




429以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/01(土) 12:13:27.68wcjZ0Q9BO (1/4)

↑のクレープ、下北沢に本当にあるんだね
ちょっと食べて見たいかも


430 ◆xjSC8AOvWI2018/12/01(土) 18:33:56.397OeEoRW+0 (1/9)


マミ「クレープかぁ……いいかも」

かずみ「すいません! 納豆コーヒーゼリー生クリームクレープ一つ!」

マミ「えっ!」

かずみ「あ、マミも同じの食べる?」

マミ「いやぁ……えっと、そんなのあるの?」

かずみ「あるよ。さっき注文してた人もそれ頼んでたんだから」


 若干引き気味な顔をしているマミがベンチでクレープを食べている人たちに目を移す。


かずみ「これは期待できると思って。面白いものがあるんだねぇ」

マミ「期待していいのかしら……」

*「はいっ、うちの目玉ですよ!騙されたと思って!」グッb


 店員さんが自信満々の笑顔で言う。


かずみ「ねっ」グッb


 その迫力に押され、マミも同じものを頼むことに。




431以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/01(土) 18:46:22.83wcjZ0Q9BO (2/4)

本当にどんな味なんだろうか……
生クリームが糸引いたりするのかな?


432 ◆xjSC8AOvWI2018/12/01(土) 19:45:23.617OeEoRW+0 (2/9)



マミ「……意外と普通にコーヒーゼリーの香りがするわね。あ、でも糸引いてる。納豆が出てきたわ」

かずみ「納豆ってこういう食べ方があるんだねえ」デローン


 変わったクレープを受け取って早速かぶりついてみると、中からは濃厚な生クリームとコーヒーゼリー、少し遅れて納豆が主張を始める。

 ベンチも人がいっぱいなので、食べながら適当に移動していた。


かずみ「やっぱり一緒に食べるのはいいね!」

マミ「私も一人だったらこういうのは挑戦できなかったと思うわ」

かずみ「次はなに食べよっか~?」



 食べ歩きながら次に食べたいものにも目を付けておく。

 そうしていくつか食べ物を買い歩いて、それから喉の渇きを潤すために喫茶店に入った。



433 ◆xjSC8AOvWI2018/12/01(土) 20:01:52.167OeEoRW+0 (3/9)



 お店でもマミはいつものように紅茶を飲んでいる。

 わたしもマミが勧めるので同じものを頼んでいた。たしかにおいしい。


マミ「ここのお茶は気に入っていてね、参考にしているのよ」

かずみ「言われてみればマミの家で飲むのと少し香りが似てるかも。わたしはマミや織莉子みたいに紅茶のことは詳しくないけど……」

マミ「大体めぼしいものは食べ尽くしたかしら? このあたりはよく通るけどこんなに食べ歩きしたのははじめてよ」

マミ「次はどうする? なにか買いたいものはある?」

かずみ「ショッピングもいいけど、なんかもっと遊んだりしたいな」


 お店の窓から見える反対の通りを指さす。

 ぴかぴかとした色彩が派手に光る、繁華街の中でもひときわ賑やかなゲームセンターだった。


マミ「ゲームセンター?」

かずみ「プリクラとかとってみたいなって! 思い出を残したいんだ」


 まだマミとは一度も写真を撮っていない。

 それどころか、わたしは今まで誰かと写真を撮ったことがなかった。


 思い出。……それを求めてしまうのは、いつまでもはここにいられないことをわかっているからだろうか。




434 ◆xjSC8AOvWI2018/12/01(土) 20:31:22.557OeEoRW+0 (4/9)





 ――――帰り道、マミと写ったプリクラと戦利品のお菓子を抱えて、

 わたしたちいは賑やかな通りから家のある住宅街へと戻っていた。


かずみ「今日は楽しかったね! たくさんお菓子が手に入ったし!」

マミ「ええ。私もこうして遊ぶのはどのくらいぶりかしら……」

かずみ「前は友達と?」

マミ「友達……か」


 何気なく聞いてみると、マミは少し言葉を詰まらせる。


マミ「違うかもね。昔組んでた頃の佐倉さんとよ」

かずみ「違うの? 今はそうかもしれないけど、昔は友達だったんでしょ?」

マミ「相手はそうは思ってなかったかも。あくまで師匠と弟子だったから」

かずみ「……師匠と弟子でもわたしたちは友達だよ」

かずみ「明日からはまたパトロールとか訓練とかするんだよね。それってやっぱりキリカも参加させてあげることできないかな」

かずみ「杏子が言ってたんだけど、縄張りがなくなったら新人じゃむずかしいって。わたしたちも余裕ないけどキリカはもっと余裕ないんじゃないかな?」

かずみ「このままだと魔女になっちゃうかも……」




435 ◆xjSC8AOvWI2018/12/01(土) 21:22:17.227OeEoRW+0 (5/9)



マミ「どうかしら。魔法を使わなければ魔力も減らないわよ。だってあの子やりたくないんでしょう?」

マミ「もしかしたらむしろ、本当は今もここで狩ってるってこともあるかも。そうやって腹いせに私達に魔女が回らないように……」

かずみ「そ、そんな……」


 わたしだって魔女を見つけられない理由は考えたりした。今は魔女が少ないのかもしれないけどそれだけなのかって。

 あすなろの魔法少女のこともあるし、織莉子とキリカの間にあったすれ違いのこともある。

 でも、あまり誰が悪いんじゃないかって疑心暗鬼になるのはよくない気がする。


かずみ「……でも、魔法を使わなくても『呪いを生む』ことはあるかも」


 前に会った時からキリカは荒れていた。

 魔法少女は心が落ちこみすぎたらソウルジェムに呪いを生むことがあるって。……それを思い出した。


マミ「本人がやる気がないのに私たちにはどうにもできないでしょう。美国さんのことも悪く言ってたしね」

マミ「たとえ魔女が見つかって一つグリーフシードが手に入ったとしても、分けてあげられる分なんてないわ」


 私達と織莉子、あすみも入れたら五人分。

 魔女を倒すのに使う分の魔力もある。みんなで分けるには心許ない。――そして、その中には私達よりも魔女を倒している人がいるという疑念。


 ……でも、仕方ないとはいえそんなことを言うのはやっぱりマミらしくないって思った。




436 ◆xjSC8AOvWI2018/12/01(土) 21:57:54.757OeEoRW+0 (6/9)




 わたしが初めて目を覚ました日に見たものを思い出す。

 風見野のホテルで会った時、引き出しいっぱいに入っていたグリーフシードの山。


かずみ(あすみちゃんだったらいっぱい持ってるかも)

かずみ(簡単に人に譲ってくれないとは思うけど、ダメ元で頼んでみたら…………)


 同時に、私達が余裕がないのはあすみにも原因があることも思い浮かんだ。

 あすみは他人のことを考慮して魔女を狩ったりはしないタイプだろう。あのグリーフシードの山もそうして手に入れたものなの?


 でもそれは考え方の違いだ。マミの話では魔法少女の中では私達みたいな考え方のほうが特殊らしかった。

 キリカから聞いた話も一瞬頭を過ぎった。


 『――利益でも提示されなきゃ動かないタイプだよ、あすみも』


 頭に浮かんだそれを否定する。

 織莉子もあすみもキリカも、やっぱり私は誰のことも疑いたくない――――。



―12日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:1個
・[20/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]



437 ◆xjSC8AOvWI2018/12/01(土) 22:32:18.287OeEoRW+0 (7/9)

――――――


 朝、ごはんを食べ終わるとマミは学校に行く前に準備を整え始める。

 その横で身支度をはじめるわたしを見てマミが尋ねてきた。


マミ「かずみさんもどこかへ行くの?」

かずみ「今日はわたしも途中までついていこうかなって」

マミ「……本当に大丈夫なの? あまり一人で出歩くのはよくないわ」

かずみ「大丈夫、行先にも魔法少女がいるから。パトロールはじまる時間になったら一緒にいくよ」


 マミは行先について思い当たったようで、心配そうな顔をする。


マミ「神名さんのところ?」

かずみ「この前も行ったことあるから」



 支度を終えて二人で家を出る。

 それから通学路の途中でマミと別れていった。



マミ「気を付けてね」

かずみ「うん!」


――――
――――


438 ◆xjSC8AOvWI2018/12/01(土) 23:06:59.127OeEoRW+0 (8/9)

千歳の家



 ……玄関のチャイムを鳴らすとあすみが出てくる。今日も一人のようだった。



あすみ「おー? いらっしゃい、また飯作りに来たの? それにしては早いと思うけど?」

かずみ「おはよう、あすみちゃん。ご飯も作るけど、今日はちょっと頼みたいことがあって……」


 内容が内容だけにいきなり言うのも気が引ける。

 言い方によっては即『帰れ』って言われかねない。


あすみ「何? 訓練かパトロールのこと?」

かずみ「……まあ、そうなるのかな。パトロールしてるんだけど、最近全然魔女を見つけられなくて」

かずみ「この前のあすなろの魔法少女とか、使い魔とも戦ってて魔力が余裕がないの」

あすみ「…………」


 あすみは探るように静かにただその先のわたしの言葉を待つ。


かずみ「それでお願いなんだけど……ご飯じゃ代わりにならないかもしれないけど、出来る事なんでもするからっ!」

かずみ「グリーフシード分けてくれないかな?」



439以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/01(土) 23:11:03.54wcjZ0Q9BO (3/4)

帰れ!とかいわれそう


440 ◆xjSC8AOvWI2018/12/01(土) 23:18:27.527OeEoRW+0 (9/9)



 頭を下げる。

 あすみはいつもみたいに薄い笑みを浮かべていた。


あすみ「ふーん? 今なんでもするって言った?」

かずみ「で、出来る事なら! 頑張るよ!」

あすみ「じゃあ服を脱げ」


 どことなく嫌な予感を感じながらもそう言うと、耳を疑う発言が飛び出してきた。

 いや、やっぱりといえばやっぱりって思ったけど……。


かずみ「…………えっ?」

あすみ「なーにー?そのくらいのことも出来ないの?なんでもするって言ったじゃん!」

かずみ「や、やるから! 女の子同士だし恥ずかしくないもんね」



441以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/01(土) 23:26:47.38wcjZ0Q9BO (4/4)

玄関先で裸になるのは……
もしここでゆまちゃんが忘れ物取りに戻って来たらカオスになりそう


442 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 00:00:30.76eZ58WB6h0 (1/11)


かずみ「って、中に入ってからだよね?」

あすみ「なに甘えたこと抜かしてんだこら!初対面裸だったくせに!ほら早くそこに四つん這いンなるんだよォ!」

かずみ「ええええ!?」

あすみ「ばっちり撮ってやるからさぁ」


 スマホのカメラを構えるあすみ。

 もしかしてわたし、完全に遊ばれてる?


あすみ「――よし、じゃあ次は三回まわってワンと鳴いてね?」

かずみ「わ、わんわんっ!?」

あすみ「お手」

あすみ「お座り」

あすみ「おかわり」



 …………解放されたのは散々な目にあってからだった。




443 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 00:19:56.00eZ58WB6h0 (2/11)



あすみ「はいお駄賃。そんなに欲しいなら一つだけくれてやるから感謝しな?」

かずみ「あ、ありがとう……」


 グリーフシードを放り投げられる。

 ……こうして無茶ぶりの代わりに一つのグリーフシードを手に入れたのだった。


かずみ(まあでもこれで、あすみちゃんが満足してくれたなら……)


あすみ「待て」

かずみ「わんっ!?」

あすみ「……よし」

かずみ「……くぅーん」


かずみ(最後まで気を抜けない……)




444 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 01:00:01.21eZ58WB6h0 (3/11)



あすみ「てかさぁ、グリーフシード無いなら使い魔倒すのやめれば?」


 あすみは無茶なことを言ってたさっきまではニヤニヤしてたのに、今は冷ややかにわたしを見下ろしていた。

 まるで、『そこまでする?』とでも言いたげに。


 あすみからすればこの宝石一つにそこまでプライドを折る価値はない。


かずみ「だけど……でも、街の平和を守るためのパトロールなんだし」

あすみ「大体『パトロール』ってなにそれ。魔女を倒すのは私達にとっちゃただの『狩り』に過ぎないんだよ?」

あすみ「ソレがなくなったら魔女になって死ぬってのに。だから今もここまで必死こいてたんでしょ?」

あすみ「やってること的外れすぎてウケる」


 あすみは冷笑を浮かべて、それからなんともなかったようにリビングのほうに向かってソファに腰掛ける。

 わたしもそれを追って廊下の奥へ入っていく。



1今日のパトロールについて
2自由安価

 下2レス


445以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/02(日) 01:01:42.43U42x3WDV0 (1/1)

1

安価↓


446以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/02(日) 01:17:52.52kqQVbhyX0 (1/3)

上+キリカのことも相談、あと今日の料理のりクエストを聞く

キリカの事なんだけど、マミはキリカは縄張りで魔女狩りすること許してなくて
このままだとキリカのSGに穢れが溜まっていつか魔女になっちゃうかもしれないのが心配で・・・
キリカも大切な友達だからそんな事になって欲しくないの


447 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 18:46:19.61eZ58WB6h0 (4/11)


かずみ「……あすみちゃん、今日のパトロールもついてきてくれるんだよね?」

あすみ「ついてくだけついていってもいわよ。でも使い魔は他の人たちだけでやってくれる?」

かずみ「あ、うん。それは無理にとはいわないけど」

かずみ「……わたしたちが使い魔を倒すのって、どう思ってる? 迷惑だって思ってる?」

あすみ「余計なことを、とは思ってるよ。でもそれが巴マミのやり方なわけじゃん」


 あすみはうんざりといったように話す。

 やっぱり良くは思ってないようだったけど、あすみはこう見えて争いを起こさないためのルールは守る人だ。


かずみ「それで……今日は何か食べたいものある?」

あすみ「別に何でもいい。またなんかよくわかんない洒落たの作るんでしょ?」

かずみ「なんでもいいならわたしが決めるけど、冷蔵庫には何があるのかな……?」


 あすみのいるソファの横を過ぎて、キッチンに向かう。

 カウンターの奥のほうに回りながらその姿を見ていた。


 ……ずっと見滝原にいた、ベテランのマミの力がそれだけ強いってことなのかもしれない。

 もちろんわたしとしても争いになるのはやめてほしい。――でも。


かずみ(――でも今はわたしたちもまた何度も使い魔と戦ってたら持たない。考え方の違いで済ませていいの?)

かずみ(あすみちゃんにも協力してもらえればって思うけどムリそうか)



448 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 19:33:26.97eZ58WB6h0 (5/11)



 一旦思考を切り替えようと、目の前の冷蔵庫の中身を見回していく。

 前にも思ったけど、変わったものはないけど食材はそこそこ入っていた。


 そんな時、リビングのほうからチャイムが聞こえて、あすみが立ち上がる。


あすみ「……あーごめん、やっぱ今日いいわ」

かずみ「えっ!?」


 後ろを振り返る。

 あすみが廊下に戻ってくると、その後ろには……キリカもいた。制服姿だ。

 手には制服に似合わない買い物袋も持っている。


キリカ「なんでいるんだよ」

かずみ「キリカこそ! 学校は!?」

あすみ「おさぼりらしいよ? いけないコだね」

あすみ「まあ許すわ! 今日は約束を果たしにきたようだからね」

キリカ「なんで君に許されなきゃいけないことになってるのか」




449以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/02(日) 19:39:01.17qRguG5MC0 (1/1)

キリカ無事だったか
また織莉子に始末されてないかと心配だった


450 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 20:23:11.21eZ58WB6h0 (6/11)



 キリカはソファの隣に鞄を置いてこっちのほうに向かってくる。

 キッチンの前で向かい合って立ち止まった。


かずみ「何を作るの?」

キリカ「生姜焼き」

あすみ「さあアンタは帰った帰った」

かずみ「えぇー」

キリカ「別に材料はあるんだからいいんじゃない? 一人増えても変わんないよ」

あすみ「アンタねぇ、こいつが普通の一人分で済むと思ってるの?」

かずみ「ちょっとは押さえるよ!? そこは!」



かずみ(……この二人って何かあったのかな?)


 面識があるのは知ってたけど、それ以上はあんまり想像がつかなかった。

 とりあえずキッチンから出て、すれ違いに入っていった二人の様子を眺めていた。




451 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 21:00:41.18eZ58WB6h0 (7/11)



かずみ「約束ってなんなの? 生姜焼き作るのが約束?」

キリカ「この前いろいろあって料理本あげたんだけど、失敗したっていうから」

あすみ「そんな人聞きの悪いこと言ってないでしょー? ちょっと理想通りじゃなかっただけ」

キリカ「それ何が違うのさ」

かずみ「あすみちゃんもやっぱ料理するんだね。みんなで見てようか」

あすみ「……じゃーまあ勝手にしたら」


 キッチンにあんまりいても邪魔になっちゃうから、カウンターから身を乗り出して覗いてみる。

 あすみが料理するのはわかってたけど、それよりキリカもするんだってことにちょっと関心を持った。


かずみ(生姜焼きかぁ……。そういうののほうがいいのかな?)


 二人は何度か作りながら味を見ている。

 あすみがかなり厳しく注文を付けてるみたい。 




452以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/02(日) 21:02:28.57JHOe6H0H0 (1/1)

かずみはイタリアン以外のも作れそうだからアドバイスとか出来そう


453以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/02(日) 21:33:01.42kqQVbhyX0 (2/3)

かずみなら失敗分の処理係の担当になれそうw


454 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 21:37:36.83eZ58WB6h0 (8/11)



かずみ「わたしにも味見させてよ! おなかすいてきた!」

あすみ「なんのための味見かわかってるー? まだ出来てないからね。そっちのなら食べててもいいよ」


 調理をしている横で先に置いてある皿を手渡される。

 まだ温かくていい匂い。これは完成じゃないんだろうか?


かずみ「十分美味しそうなのに。まだ何か足りないの?」


 そう思ってキッチンを見てふと気づく。もしかして、使っている材料がかなり少ない?


 キッチンの周りに置いてある調味料は、しょうゆと砂糖、それからチューブの生姜だけ。

 和風の味付けの基本っていわれるとそんなに詳しくないけど、これだけで作れるのかな?

 イタリアンじゃオリーブオイルとニンニクと鷹の爪が三種の神器になるように、料理ごとに基本になる味付けはある。




455 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 22:24:21.96eZ58WB6h0 (9/11)



キリカ「……やっぱ料理酒すらないんじゃ難しいって」

あすみ「仕方ないから買い足してくるか? それ入れたからって理想に近づくとは限らないんだけどなぁ」

かずみ「どんなのを作りたいの?」


 わたしにお昼を聞いた時はなんでもいいって言ってたけど、生姜焼きには相当こだわりがあるようだった。

 美味しいものが食べたいなら調味料を買い足してくればいい。でもそれだけじゃないらしい。


あすみ「……前食べた味、とだけ言っておく」

あすみ「でも家にあるもので作らなかったらもったいないじゃん。使うかもわからないし。『さしすせそ』っていうじゃない?」

かずみ「砂糖、塩、酢、しょうゆ、みそ?」

キリカ「別にあっても困ることないって」

あすみ「そーいえばそこになんかの酒が入ってたわね。使うなら使ってもいいよ」

キリカ「本当にそれ使って大丈夫……?」

かずみ「食べていいやつあったらわたしがどんどん食べるよ!」


――――
――――


456 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 23:15:47.96eZ58WB6h0 (10/11)



 それから試行錯誤したのちに、みんなで少し遅くなった昼食を食べていた。

 わたしは大分早くから食べてるけど、最後に完成したのは『理想の味』に出来たのかな。


かずみ「美味しい生姜焼きだね。材料あれだけでも上手く作れるって知らなかったよ!」

あすみ「まあ今日のことに関してはあいつを褒めてやったら」

キリカ「次からは君が作るんでしょ。美味しいって言ってもらえるといいね」

かずみ「誰かに作るの?」


 しかし、聞いてみるとあすみは良くない反応を返す。

 まるで隠したいものに触れられそうになったみたいな……。


あすみ「……猫、喋りすぎ。鳴きすぎよ」

キリカ「鳴きすぎってなんだよ!」

あすみ「あ、そういえば今日はかずみが犬になったんだった! あれもっかいやってよ」

かずみ「わ、わんっ!?」

キリカ「犬……?」


 ……条件反射で鳴いてしまった。

 そういえばキリカ、杏子のこと犬って呼んでたっけな。




457以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/02(日) 23:35:55.14kqQVbhyX0 (3/3)

杏子が野良犬でかずみが飼い犬?


458 ◆xjSC8AOvWI2018/12/02(日) 23:42:00.33eZ58WB6h0 (11/11)



かずみ「~~そうだった、キリカは魔力まだ大丈夫?」

キリカ「魔力? ……別に、まだそこまで使ってないし」

あすみ「アンタならそうだね、裸ネコミミにでもなって猫の集会にでも混じってくればグリーフシード恵んでやってもいいよ」

キリカ「いるか!」


 あすみは茶化したように言う。


かずみ「……マミはああ言ってたけど、わたしにとってはキリカも大切な友達だから」

かずみ「わたしはキリカが悩んでることも知ってるし」

キリカ「かずみ……」

かずみ「だからキリカにはわたしみたいな思いは……! うぅっ、そんなふうに汚れさせるわけにはいかないよ!」

キリカ「な、なにをされたんだろう……ていうかやらないから」

あすみ「猫のはもう写真に収めてあるんだけどね」

キリカ「」ビクッ



1あすなろの魔法少女について
2自由安価

 下2レス


459 ◆xjSC8AOvWI2018/12/03(月) 00:09:01.60FcDd5dB+0 (1/1)

--------ここまで。次回は5日(水)夜からの予定です


460以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/03(月) 00:09:02.57IluVJJHl0 (1/1)

1+キリカに織莉子に『利用された』事について詳しく聞く

なんか不思議な魔法?を使ってきたの。偽GSを使ったりソウルジェムを濁らせる能力をもってるし
襲われた時は杏子が助けてくれたから何とかなったけど、杏子のソウルジェムも急に濁って危なかったから2人とも気をつけてね?

キリカ、織莉子に利用されたってどういうことなのか詳しく教えて?
マミは織莉子のことを信用していて聞く耳持たないって感じだけど、私はキリカが嘘であんな事を言ってるとは思えない
最近魔女が全然狩れてなくてマミも私も疑心暗鬼になってるのかもしれないけど、織莉子が私達を利用するために近づいたのなら・・・



461以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/03(月) 00:28:08.55mh7EiNJuO (1/1)


追加でキリカに杏子と仲直りしないかと話す
初対面があんな感じだったから反目しちゃってるだけだよ。
二人とも面倒見が良いし甘いもの好きだし話せばきっと話が合うと思うよ?




462 ◆xjSC8AOvWI2018/12/05(水) 21:16:38.02VdlQT35K0 (1/6)



 キリカは引き気味にしてたと思ったら、いつのまにか白く固まってしまっていた。

 それより今伝えきゃいけないことをハッと思い出す。


かずみ「そうだ、キリカにも伝えておかなくちゃ!」

かずみ「今あすなろから魔法少女が来てるの。一応知り合いの魔法少女には伝えてるんだ。目的はわからないけどわたしを浚おうとしてるみたい」

かずみ「何人いるのかもわからなくてこの前また襲われて……。不思議な魔法を使ってたからキリカも気をつけて」

キリカ「不思議な魔法?」

かずみ「他の魔法少女の魔法を使ったり、グリーフシードみたいな形のもので街の人を魔女にしたり、ソウルジェムを濁らせたり……」

かずみ「杏子が助けてくれたから何とかなったけど、危なかった」

かずみ「だから、ごめんね……キリカとあすみちゃんもわたしと一緒にいたら狙われちゃうかも……」


 テーブルの上に置いた拳をぎゅっと握った。わたしといるだけでみんなを巻き込んでしまうかもしれない。

 厄介事運んできて迷惑だって思われちゃうかな。


あすみ「どっちみちその前からあの痴女は私に敵意向けてたじゃん。あれの仲間でしょ?邪魔するならそれ相応に対処するだけだから関係ないね」


 あすみはなんでもないことのように言う。その姿は自信に満ちていた。

 怖かったり不気味だったりするように見えることもあるけど、今はすごく頼もしく思える。思えば私が最初に助けてもらったのもあすみだっだ。




463 ◆xjSC8AOvWI2018/12/05(水) 21:43:15.08VdlQT35K0 (2/6)



 次にわたしはキリカのほうを見やった。


キリカ「……おかしいよ」


 キリカはぽつりとつぶやく。

 キリカは魔女との戦いも嫌がってたし、あすみや杏子ほど経験や実力に自信があるわけじゃない。


キリカ「なんで謝るの? 別にかずみのせいじゃないじゃん」

キリカ「前泣いてた時のことと関係あるの? そいつら関係ない人にまで魔法使ってるんでしょ。かずみの意思を無視して襲ってくる奴らが絶対悪いよ」

かずみ「……うん! 二人ともありがとう」


 ……キリカが怒ったのはわたしに対してじゃなかった。


 今度こそ不満をぶつけられるかと身構えていたが、そんなのは杞憂だった。

 こうして改めて考えてみると、わたしの周りは恵まれてるなって思う。

 なのにグリーフシードや縄張りのことが絡むとみんなすれ違ってしまうのはどうしてなんだろう。 


キリカ「……けど、あすなろか。もしかしたら私、そいつ知ってるかも」

かずみ「えっ!?」


 キリカは私を励ましてくれた後、どこか思い当たることがあるらしく難しい顔をして考え込んでいた。



464 ◆xjSC8AOvWI2018/12/05(水) 22:42:53.71VdlQT35K0 (3/6)


キリカ「マミからここで狩るのやめろって言われた後、一度あすなろに行ったことあるんだよね」

キリカ「その時とこっちでも一回、変な魔法少女に会った。素顔も素性もわからなかったけど」


 それを聞くとわたしも心当たりを感じた。

 この前の魔法少女はユウリの『変身』の魔法を奪ってユウリの姿になっていた。素顔がわからないというのが一致している。


かずみ「何かされた!?」

キリカ「私も最悪なちょっかいをかけられたけど、直接何かあったのは織莉子のほうだと思うよ?」

かずみ「!」


 話の中でキリカの口からその名前が出たことに驚く。

 キリカも織莉子と何かあったのは本当なんだ。でもなんでここで織莉子が?


かずみ「……よければ織莉子と何があったのかも聞かせてくれないかな?」

キリカ「君はあいつより私を信じてくれるの?」

かずみ「聞かないとなにもわからないよ。この前は話聞く前に遮っちゃったけど、もしすれ違いとかあるならなくしたいし!」




465 ◆xjSC8AOvWI2018/12/05(水) 22:53:39.13VdlQT35K0 (4/6)



キリカ「…………」

あすみ「…………」


 キリカは暗い表情で悩む。

 その隣で、あすみもいつものポーカーフェイスでテーブルに肘をついて私達を見守っていた。


キリカ「私が他の魔法少女襲ってたっていうのは知ってるでしょ? その前に八つ当たりであいつのこと襲ったんだよね」

キリカ「でも負けちゃってさ。おまけに結構やられ方も酷くって」

かずみ「織莉子からはパトロール中に偶然会ったとは聞いた……その前ってことは、その時は他と違うの?」

キリカ「うん。その時はもう死ぬかもって思った。でも私を助ける代わりに駒になれってさ。そこからは魔法少女を襲う理由も目的も変わるよ」

かずみ「……駒?」

キリカ「あいつのためにグリーフシードを調達してくるのが目的になった。まあ、戦ってる最中に手柄横取りしたり、直接脅かして奪ったり」

キリカ「でもそんなことしてたら、そこのあすみに返り討ちにされちゃって」


 あすみは肘をついたまま薄く笑みを浮かべる。


あすみ「そりゃ手当たり次第に襲っていつまでも勝てるわけないじゃん?」

あすみ「この縄張りには私やマミみたいのが居るんだし、最近急増したとかいう新人共が相手だってわからない」

かずみ「じゃ、じゃあキリカの言ってることはホントなの!? 織莉子がキリカに魔法少女襲わせてグリーフシードを集めさせたって!」


あすみ「それはどうかな」




466 ◆xjSC8AOvWI2018/12/05(水) 23:04:45.90VdlQT35K0 (5/6)



 ――あすみは変わらない調子で言った。読めないポーカーフェイスだ。


キリカ「……え?」

あすみ「たしかに私は襲ってきたこいつを倒して巴マミに突き出したけど、だからって私に証言求められても知らないよ?」

あすみ「美国かこいつか、どっちを信じるかはアンタ次第だよかずみ」

あすみ「でもアンタとマミは美国と仲間なんだよねぇ? それ裏切っちゃっていいの?」

キリカ「…………」


 キリカは予想外のことが起こったみたいに目を見開いたままテーブルに視線を落とす。

 たしかに織莉子とは仲間で、いっぱい訓練もパトロールもお茶会もしてきた。そんなに簡単に疑えない。

 だからって、キリカの言ってることが嘘だって決めつけていいの? だってこんなの――――誇張やすれ違いになる余地もない。


 襲ってきたからって、キリカに死にそうになるくらいの怪我を負わせたの? それに駒? グリーフシードのために魔法少女を襲わせた?


キリカ「……わかってたよ。そんなに簡単に味方をしてくれないことは」

あすみ「話を続けなよ。まだあすなろに繋がってないよ」

キリカ「魔法少女襲ってたんだけど、あすみには負けたしマミからは活動止められるしもう続けられないでしょ?」

キリカ「だから今度はあすなろに移って襲えって言われたんだ。そしたらあすなろに着いたところでまた命令されたんだけどね……」

キリカ「……そいつが偽物だった。よくわかんないけど、“プレイアデス聖団”とかいうのに嫌がらせをしたかったらしい。魔法少女チームを壊滅させて縄張り奪えって」




467以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/05(水) 23:06:03.936aJOI6qz0 (1/1)

あすみは織莉子の目的は知ってるはずだけど、どこまでバラすかな?


468以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/05(水) 23:14:46.83g9QlrG24O (1/1)

かずみって嘘を直感的に見抜けるんじゃ?



469 ◆xjSC8AOvWI2018/12/05(水) 23:37:17.12VdlQT35K0 (6/6)



かずみ「プレイアデス!?」

キリカ「おかげで変な魔法少女には殺されそうになるし散々だったよ。さすがにムカついて織莉子に言ってやったんだけど、そこで言い合いになって縁切った」

キリカ「その話聞いてもまだ同じ命令してきたからね。あいつは人殺しの魔法少女相手にも何とも思ってないし、本当の目的はグリーフシードだけじゃない」

かずみ「じゃあ、本当の目的ってなんなの……?」

キリカ「わかんないよ、頑として教えられなかったし。でも人殺しすらなんとも思わないような駒が欲しかったんだ。それは否定しなかった」

キリカ「そのプレイアデスもヤバいよ。助けてくれたかと思ったけど、ソウルジェム奪われそうになったからね。あの街ヤバい奴しかいないんじゃない」

かずみ「…………」


 “プレイアデス”は私を造った人たち。

 でもその話を聞いたら怖くなった。――その人たちのことが。あすなろの街が。


 この前の魔法少女はキリカの話に出てきた魔法少女と同じだろう。同じように誰かの姿を借りて出てきたらしい。


あすみ「まだその話が本当とは限んないかもよー?」

かずみ「で、でもっ! この前見た魔法少女とも合ってるし、こんな話作れるかな?」

あすみ「嘘を吐くなら真実を織り交ぜて話すのは常套。例の魔法少女に会ってることは本当かもね」

かずみ「あすみちゃんは織莉子を信じてるの?」

あすみ「私は中立の立場でアドバイスしてるだけだけど?」



 ……ああもう、頭がこんがらがってくる。



1自由安価
2信じる、と伝える
3まだわからない

 下2レス


470以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/05(水) 23:52:06.84GU5Q49Co0 (1/1)

3まだわからない
織莉子についてもっと質問してみる


471 ◆xjSC8AOvWI2018/12/06(木) 00:35:35.30oxMTNJwj0 (1/1)

----ここまで
次回は8日(土)夕方からの予定です


472以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/06(木) 00:52:07.74brFz0IX40 (1/1)

3
キリカと話してる時の織莉子の態度とかを詳しく聞く

私達と一緒にいる織莉子は冷静で激する様子なんてなかった、マミとは紅茶の話をしてる時は楽しそうだった
でも、織莉子の笑顔はなんか嘘っぽい感じがした。
キリカが美味しいものを食べた時の本当の笑顔なんかじゃない、どこか作り物のようなそんな感じがした


473 ◆xjSC8AOvWI2018/12/08(土) 20:24:24.36mr/AGVLf0 (1/4)


かずみ「キリカの前では織莉子は悪い人だったの?」

キリカ「さっきの話からどう取るかは自由だけど、私は本当のことしか言ってないよ!」


 誰かを犠牲にしてまでグリーフシードを求める姿勢。

 それは、マミが味方として認める、わたしたちと一緒にいる織莉子とは正反対だった。


かずみ「じゃあ、キリカは本当の織莉子を見たことがあるの?」

キリカ「……それはどういう意味? 本性ってことなら、マミの前では相当取り繕ってたけど?」

キリカ「いつも一方的な命令ばっかで、あんなに穏やかに笑いながら話してたことなんてないし!」

かずみ「キリカにはそう見える?」


 そう尋ねると、キリカはどういう意味かわからないって顔をした。


かずみ「キリカとは紅茶って飲んでた?」

キリカ「は? そんなことなんの関係が……」

かずみ「織莉子、すっごくお茶に詳しいの。マミと紅茶の話をしてる時は楽しそうに話してたよ」

あすみ「ああまたお得意のその謎理論。紅茶も食べ物に入るんだ?」



474 ◆xjSC8AOvWI2018/12/08(土) 21:39:58.53mr/AGVLf0 (2/4)


かずみ「まだわからないけど」

キリカ「お茶出す時はいつも紅茶だったよ。家に行くと大体紅茶飲んでた」

かずみ「そっか」


 否定しにかかってるわけじゃないことがわかるとキリカは答えてくれたけど、まだ納得いかないようだ。

 キリカは焦れたようにわたしに詰め寄る。


キリカ「じゃあどっちを信じるの?」

あすみ「それアンタ一人で決められることかな? 巴マミに相談したところであいつが信じないなら何も変わらないよ?」

キリカ「大切な友達なら信じてよ。誰に対しても言うような八方美人ならいらない!」

あすみ「これからも三人仲間としてやってくのに、一人疑心抱いたままでいいの? しかもさっきの話が全然違ったら?」

かずみ「たしかにマミに話しても受け入れないと思う」

かずみ「わたしだって織莉子のことも……キリカのことも、どっちかが嘘ついてるなんて疑いたくない。どっちも友達だって思ってるから」

かずみ「でも、マミのことは心配なの。もしかしたらマミがひどい目にあうんじゃないかって――――」


 ――その時、あすみが俯いてどこか一点に視線を向ける。携帯の短い電子音だ。

 あすみは携帯を取り出して私達にその画面を見せる。


あすみ「……パトロール、今日やらないってさ」




475 ◆xjSC8AOvWI2018/12/08(土) 22:22:17.54mr/AGVLf0 (3/4)



 食べ始めたのは遅かった。それからもみんなもうとっくに食べ終わって時間が経っていた。

 あすみが空の食器を下げ始める。……時刻を確認してみると、いつのまにか学校の終わる頃になっている。


かずみ「なんで? 今は魔力がないんだから、パトロールしなくちゃ……」

あすみ「魔力がないからじゃない? 魔女と戦う前に使い魔と戦ったら結局減るでしょ」

あすみ「ほら、そろそろ行った行った。集まりがないなら私はここでゆっくりさせてもらうよ」


 片づけをしながら素っ気なく言う。

 織莉子はわたしの相談に乗ってくれた。あすみが今わたしたちと活動してるのも、織莉子がつれてきてくれたんだ。



 ……わたしはどこか違和感を覚えていた。



かずみ「……うん。じゃあそろそろ帰るね」

キリカ「ていうかさっきから聞きそびれてたけど、髪それウィッグ? エクステ?」

かずみ「ううん、本物だよ。本当はもっと長かったんだけどマミが切ってくれたの」

かずみ「あとさ、私はキリカのこと本当に友達だと思ってるから! 今日の話も信じてないわけじゃない」

かずみ「それと杏子とも仲良くしてよ。きっと最初が悪かっただけで、二人とも面倒見が良いし甘いもの好きだし話せばきっと話が合うと思うよ」




476 ◆xjSC8AOvWI2018/12/08(土) 22:38:41.05mr/AGVLf0 (4/4)



 ――――二人に挨拶をしてあすみの家を出ていく。

 ――――すれ違いに、小さい女の子の姿が目に入った。



かずみ(……あすみちゃんの家に入った?)




――――



あすみ「……なんで私がアンタとウシ乳AV女の関係知ってることかずみに言わなかったの?」

キリカ「今度はその下品な例えは誰?」

あすみ「一人しかいないじゃん! アンタの元ご主人様で、アンタと巴マミより乳のデケー奴!」

キリカ「そんなの……あんたに否定されたら終わりじゃないか。悔しいけどあんたに口の上手さで勝てる気はしてない」

あすみ「猫、アンタはかずみに信じてほしいって言ったけど、その割にアンタも人のこと信じてないよね」

あすみ「ていうか、他人にあんまり期待してないでしょ? 誰かが助けてくれることなんてないって思ってる」

キリカ「えっ?」




477 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 00:03:56.77GONJCl/j0 (1/12)

――――
――――
放課後・見滝原中学校校門



 学校帰り、校門を出るとマミは知り合いの姿に駆け寄っていく。


マミ「美国さん」

織莉子「ごきげんよう。ちょうど学校が終わったところかしら?」

マミ「どうしたの? わざわざこっちのほうまで来て。白女からだと近くはないでしょう?」

織莉子「特に理由はありませんわ。どうせこの後パトロールだから、こっちに寄ってみようかと思ったの」


 周りには他にもたくさんの見滝原の生徒が帰り道を歩いている。

 織莉子はマミと話しながら、それを気にするようにも目を向けていた。


マミ「もしかして、気になる? この前話したイレギュラーの魔法少女の話」

織莉子「一度挨拶をしたほうがいいんじゃないかと思いまして」

マミ「そうね……気難しそうな子だけど、そろそろちゃんと話してみたいわね。相手が応じてくれれば、だけど……」




478 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 00:26:58.54GONJCl/j0 (2/12)


織莉子「では、そろそろ行きましょうか? あまり話し込んでいては、家でかずみさんがお待ちでしょう」


 織莉子が促すが、マミはまだ動かなかった。

 織莉子は急かすことなく隣に立ったまま待ち続ける。


マミ「……ねえ、美国さん。あんまりこういうこと頼みたくはないのだけどね、パトロールの前に少し話をしてもいいかしら?」

織莉子「ええ、どうぞ?」

マミ「美国さんって今どのくらいグリーフシードを持ってる? もし余裕があればでいいんだけど、少し分けてもらえないかと思って」

マミ「実は私もかずみさんも今手持ちがないの……」


 切り出しにくそうにしながら、後ろめたいことのようにマミは話し始める。


 これまで『平和』と『使命』を第一にグリーフシードのことを考えずにやってきたマミは、自然に手に入る分以上にそれを欲することは悪だとさえ思っていた。

 現に魔法少女の真実を知らなければ、この状況でも仲間とはいえ誰かに頼んだりすることなんてなかっただろう。

 マミにとってはそれほどまでに意を決する頼み事だった。


織莉子「最近パトロールをしてもグリーフシードが手に入らないから?」


 しかし、断るにしても受け入れるにしても、織莉子なら優しく返答してくれるという安心はあった。

 そんな時マミにかけられたのはどこか『冷たさ』すら感じる声。


織莉子「……どうしてもっと早くに言わなかったの?」




479 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 00:51:01.31GONJCl/j0 (3/12)

-----------ここまで。次回は10日(月)夕方くらいからの予定です


480 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 17:39:05.14GONJCl/j0 (4/12)


マミ「余計な心配をかけさせたくはないし、美国さんにも負担になるでしょう? それにまだ大丈夫だと思ってたの」

織莉子「それで切羽詰まってから人に頼むの? 最初に貴女には話したはずよ」

マミ「……そうだったわね」


 マミは最初に出会った時織莉子と話したことを思い出す。

 元々魔力の消費が激しいらしく、魔力に余裕がないから魔力を扱う訓練をはじめていた。使い魔を倒すと言った時に織莉子が躊躇したのもそれが理由だったのだ。


 しかし、ずっと観察してきたマミは今思えばおかしいところがあることにも気づきはじめる。


 今までを思い返してみても、魔力の使い方が不器用だというふうには見えなかった。いくらか上達もしている。

 それでも減るのは、まるで魔力が漏れ出ているような――。もしくは、『何か別の事』に使われているとしか思えない。


織莉子「私に断られたらどうするの?」

織莉子「魔力がなくなれば私たちは魔女になるのよ」

マミ「!」



481 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 18:52:10.43GONJCl/j0 (5/12)


織莉子「悪いのだけど、私にも余裕はない。マミさん、貴女は……――私達にとってのグリーフシードを少し軽く考えているのではないかしら?」

マミ「ずっとそうしてきたの。街の平和のために戦うのが私の生き方で、それが使命だと思ってたから!」

マミ「私たちが魔女に成るって知っても、その前に死ねばいいって思った。その時が来るまでは今までと変わらずに生きてやるって……」

マミ「でも……いざそれが近づいて終わりが見えてくるとね。やっぱり嫌なのよ。死にたくないの」


 マミの甘い予想とは裏腹、織莉子は冷静にマミに釘を刺す。


 厳しい現実を突きつけられ、自ら口にした言葉に不安は極限まで高まる。

 今まで実感がなかっただけだった。今のマミには死ぬことも魔女になることも同じくらいに怖く思えた。


マミ「私はわがままなのかしら?」

マミ「でも私だけじゃないのよ。このままじゃかずみさんも……それに美国さんだって、みんな死ぬしかないじゃない」


 同時に、自分よりも重く真実を見ながら冷静に話す織莉子をやっぱり疑問に思った。


織莉子「いいえ、私はまだ死なない。マミさん、貴女もよ」

マミ「でもグリーフシードはないのよ? このままじゃ死ななくても魔女になってしまう」

織莉子「『平和のため』を望むなら、他に出来ることがあります。――それは目先の人助けよりも重大なこと」

織莉子「マミさん、実は私も今まで言っていなかったことがあるの」

織莉子「グリーフシードを得る手立てなら他にもある。それは貴方が選ばなかったもの。ですが、今は救世を遂げるために……共に別の『使命』を果たしませんか?」



482以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/09(日) 18:55:31.771rml4mTa0 (1/2)

>>1が予定日より早めに予告なしにやるなんて珍しい


483以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/09(日) 19:10:45.85rsCLgehJ0 (1/4)

あれ?更新来てる?
明日じゃなかったの??


484 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 19:34:10.94GONJCl/j0 (6/12)


マミ「別の、使命……?」

織莉子「前に話した『世界を滅ぼす魔女』の話……あれは本当のことよ。この“力”でその未来を視た」

織莉子「私も街の平和を願うのはマミさんと同じ。それを阻止できなければ、どれだけ使い魔から人を救ったって無意味になる」

織莉子「もしも力を貸してくれるのなら、グリーフシードを譲ってもいいわ」


 前にカフェで話した時に聞いた話を思い出す。世界を滅ぼす魔女になる少女がいるなら――そんな例え話。

 その時は少女をどうするべきかと話していたのだったか。


マミ「……わかったわ。力を貸しましょう」


 差し出されたグリーフシードを、マミは受け取った。

 それは約束の代わり。


 ――――碧色の瞳は冷たくブレない。

 目の前の瞳が真実を前にしても平静でいられるのは、その『使命』がそうさせているのだと……そうマミは思った。


――――
――――


485 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 19:35:37.48GONJCl/j0 (7/12)

--------
予定日ミスってることに気づく…月曜に夕方からできないやん…
まず区切りのいいとこまで。人がいるようなら続けます。


486以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/09(日) 19:37:02.121rml4mTa0 (2/2)

続けて下さい


487以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/09(日) 19:38:36.38rsCLgehJ0 (2/4)

スレ主、間違えは気にしてないので続けちゃってください!


488 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 20:17:38.61GONJCl/j0 (8/12)



かずみ「マミ、遅いな……」


 マミの家に戻ってきても誰もいなかった。

 あのメールが来たのは放課後を少し過ぎた頃。それから少しずつ日が暮れてきてもわたしはまだこの家に一人でいた。


 しばらく一人で待っていると、ようやく玄関の扉の開く音がして出迎えに行く。


かずみ「あっ!マミ、おかえり」

マミ「ええ、ただいま。遅くなっちゃってごめんなさいね」

かずみ「いいのいいの。今日は何かやることあったんでしょ? パトロールは明日も出来るんだし」

マミ「そのこと……なんだけどね。これからは私たちも魔女だけを狩るようにしようと思うの」


 今までマミがずっと変えずに貫いてきたこと。

 この前にもマミは何かを決心したようだった。……余裕がないなら仕方ないのかな。


マミ「グリーフシードは大事よ。なくなれば魔女になるのだから。でも今死んでいる場合じゃないのよ」

マミ「世界を守らないと」




489 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 20:48:56.55GONJCl/j0 (9/12)



 わたしはマミの雰囲気の違いに気づく。


かずみ「……世界?」

マミ「ええ。今日美国さんから聞いたの。このまだと世界が滅んでしまうそうよ。これから魔女になる一人の少女によって」

かずみ「それどういうこと!? なんで織莉子はそんなこと知ってるの?」

マミ「『未来を予知する力』……美国さんはその魔法を使えるんだって」


 その話も気になったけど、織莉子といえばまっさきに今日キリカから聞いたことが浮かんだ。

 予知の魔法が使えるなんて聞いてない。多分、マミが知ったのも今日のことなんだと思う。


 ……そう考えたら、どうしても疑念がわいた。


かずみ「……なんで隠してたのかな?そんな大事な未来のことも。最初からみんなで話し合えばよかったのに」

マミ「混乱を避けるためじゃないかしら?」

かずみ「本当に? あのね、今日キリカから織莉子のこと聞いたんだけど」

かずみ「織莉子はグリーフシードのためにキリカを駒にして魔法少女を襲わせてたんだって」




490 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 21:48:15.84GONJCl/j0 (10/12)



マミ「……え?」

かずみ「それも本当かどうかなんてわかんなかったけど、でも…………」

かずみ「織莉子が今まで言わなかったことがあるなら、まだ知られちゃまずいことがあるんじゃないかなって」

マミ「そ、そんなのデタラメでしょう? 大体そんな嘘で私をどう利用しようというの?」

かずみ「とにかく明日にでも織莉子と話そう? 聞かないとわかんないよ。それに本当ならどうするか考えなくちゃ」

マミ「そうね……」


 ごそごそとポケットを探って、マミに一つのグリーフシードを見せる。

 朝あすみのとこに行って譲ってもらったやつだ。


かずみ「マミ、今日グリーフシードもらえたんだよ! あすみに無理言って譲ってもらったの!」

かずみ「だから、少しは余裕ができたよ? あんまり思いつめないで」


 明日からのパトロールは今までのような『パトロール』じゃなくなる。


 もしかして、それも織莉子から聞いた話とその決心と関係があるの?

 今は余裕がないのはわかるけど、やっぱりわたしはマミに変わって欲しくない。




491以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/09(日) 21:52:15.18rsCLgehJ0 (3/4)

まだかずみがストッパーになってるっぽい?
キリカ編の時みたいに振り切れたマミにはなってほしくはないなぁ


492 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 22:27:11.46GONJCl/j0 (11/12)


マミ「あの神名さんに? どうやって?」

かずみ「それは……えぇっと、わたしが無理言って」


 さすがにその内容までは言えないけど。


マミ「……でも一つでしょう? まだまだ余裕がないことには変わりはないわ」

かずみ「~~でもっ、0と1じゃあ全然ちがうよ」

かずみ「世界を守るのは大切だけど、わたしはそのために小さな犠牲を見逃すようにはなってほしくないかな……」

マミ「じゃあ、それはかずみさんがもってて。私も美国さんから一つもらってきたの」


 マミはキッチンのほうに回っていく。紅茶を淹れるようだ。

 わたしたちは元々多くグリーフシードを持っているほうじゃなかったし、今まではそれで余裕がないとは思っていなかったはずだった。



かずみ(マミ…………大丈夫かな)




―13日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・[20/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]


493 ◆xjSC8AOvWI2018/12/09(日) 23:26:01.74GONJCl/j0 (12/12)

---------ここまで。次回は12日(水)夜からの予定です


494以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/09(日) 23:34:55.13rsCLgehJ0 (4/4)

乙でした

状況が混沌としてきましたね
マミがどうなるか不安ですがかずみが傍に居れば大丈夫かな?


495 ◆xjSC8AOvWI2018/12/12(水) 23:38:56.97tDrJk3Sy0 (1/1)

-----待ってた人には申し訳ないのですが、ちょっと今日は無理そうなのでまた明日にします。


496 ◆xjSC8AOvWI2018/12/13(木) 21:41:26.26+90Mtbwy0 (1/3)

――――――
放課後・美国邸


 その翌日、わたしたちは織莉子の家に集まっていた。


かずみ「わあ! 織莉子のおうちでっかいね!それに薔薇がいっぱいできれいー!」

かずみ「あれ? もしかして織莉子って相当なお金持ち……?」

マミ「私もこんなのはじめて見るからびっくりしたけど、白羽女学院ってお嬢様学校なのよ。美国さんもそんな雰囲気あるから」

かずみ「へえー」

織莉子「さあ、みなさんどうぞ入って」


 はじめて家を訪ねたわたしとマミはその豪奢な造りに驚く。

 内装も綺麗だ。みんなで集まるにも広く、高級そうで落ち着いた家具の揃った空間だ。


 この場にあすみも一緒にいる。

 あすみはお茶を淹れに行った織莉子に呼びかけて悪態をつく。


あすみ「私のはジュースでいいって言ったよねー。用意してあんの?」

織莉子「……スムージーでよければ」

かずみ「あ、わたしもそれもらおうかな」

織莉子「紅茶は?」

かずみ「どっちも飲む!」



497 ◆xjSC8AOvWI2018/12/13(木) 22:14:22.18+90Mtbwy0 (2/3)



 それからテーブルに紅茶とスムージーが出されてみんなが着席する。


かずみ「いいね、美味しそう!」

あすみ「気取ったのが好きじゃないんだって、フツーにその辺で売ってる安いのでいいんだけどな。気軽に飲めないじゃん」

織莉子「別に気軽に飲んでくれて構わないのよ? 必要なら追加を作ります」

マミ「でも確かにこれをジュースみたいに気軽に飲んでいたらカロリーが気になるかも……」


 フルーツの数種類入ったスムージーは、なんだかお洒落な朝食のお供みたいだ。

 グラスに口をつけてみると濃厚な香りがした。

 ……紅茶もいいけど、こっちのほうが飲みやすいかも。甘くて美味しい。


 こうして集まって、みんなの雰囲気はいつもと変わらない。

 強いて言うならどこか引っ掛かっていることは、あすみが当然のようについてきてくれていることだ。

 この前からホントは少し疑問に思っていたけれど――――。




498 ◆xjSC8AOvWI2018/12/13(木) 23:15:16.90+90Mtbwy0 (3/3)



 あすみの横顔が一瞬だけ見えてからすぐに視線を織莉子のほうに移す。


かずみ「それで、昨日マミから少し聞いたんだけど……」

織莉子「世界を滅ぼす魔女の話?」

かずみ「そう、それ。それってどういうことなの?」

織莉子「マミさんに協力してもらいたいことがあったのよ。この街や世界を守ることについてね」




 話すこと
1グリーフシードのことについて
2キリカから聞いた話について
3自由安価

 下2レス


499以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/13(木) 23:27:07.53Zp8mpkee0 (1/1)

1グリーフシードのことについて とこれからマミと何をするのか訊く


500以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/13(木) 23:37:20.36rWg4Bs8h0 (1/1)

1+2

予知ができるなら魔女の出る場所とかも判るはずなのにどうして教えてくれなかったの?
織莉子は予知で知った情報を誰かに教えてたんじゃないかな?だとしたらGSが確実に手に入るわけだから利害関係は結べるよね

あと世界を滅ぼす魔女になるからってその子をどうする気なの?・・・まさか殺す気なの?
世界を救うからって小を切り捨てるなんて私は絶対に認められないよ
織莉子の言ってる事は産まれたばかりの赤ちゃんに『その子は将来人を殺すから、犠牲者を出さないために今殺しましょう』って言ってるようなものだよ

織莉子は予知で『結果』だけを見て『過程』を視てないじゃないかな
そもそも織莉子の予知って必ず当たるの?そうでないなら織莉子の考えは机上の空論に過ぎないよ


501 ◆xjSC8AOvWI2018/12/14(金) 00:04:16.96NHbYqeq00 (1/4)



 織莉子は穏やかに話す。

 ……信じていいのかな?


かずみ「……昨日グリーフシードをくれたんだよね。これからはどうするの?」

織莉子「残念ですが……余裕がないのなら今は魔女だけに絞るべきかと。身を滅ぼしてはどうにもなりませんから」

織莉子「あすみさんは余裕は? 使い魔を見つけたら狩ったりしてくれる?」

あすみ「余裕はあるよ。でも使い魔なんて狩るわけないじゃーん」

織莉子「ということです。心は痛むのだけどね……」

かずみ「余裕がないから……」


 成長前の使い魔を倒さなければ魔女も増える。魔法少女としてはそのほうがいいことはわかってる。

 でも、わかってるけど、なんだかこれから以前とは変わってしまう気がして。


マミ「かずみさん、昨日も話したけどやっぱり仕方のないことよ」

マミ「それに、世界を救うことができればもっとたくさんの人を助けることが出来る」

マミ「前までのやり方に戻るのはそれから考えましょう。それが一番いいはずだわ」




502 ◆xjSC8AOvWI2018/12/14(金) 00:33:25.81NHbYqeq00 (2/4)


かずみ「世界を救うって、その未来予知?って魔法のことなんで黙ってたの?」

かずみ「その魔法があれば……そうだ、たとえばもっとパトロールの時にも役に立てられたかも!」

織莉子「少し不安定でね。思ったより自分に必要な情報は得られないのよ、これ」

織莉子「あまり頼りすぎていいものかわからないから簡単には口に出来なかった」

かずみ「それに、キリカから聞いた話は……――」

あすみ「お、それ本人に聞いちゃう?」

マミ「かずみさん。あの話なら突拍子がないし、気分のいい話じゃないわ……」


 あすみが口を挟み、続けてマミが制止する。

 その空気に押されて、わたしもこの場では一旦口をつぐんだ。

 そうするといつも通りの平穏は戻る。頼れる友達がいて、なんだかんだとついてきてくれるあすみちゃんがいて、そんな空間。


 ……いや、本当はいつも通りとはすでに違ってきている。


織莉子「私が今日みんなに話したいのは、その方法について。魔女の素体は見つけられたのだけど、まだ一筋縄ではいかないわ」

織莉子「私は窮地に立たされてしまった」



503 ◆xjSC8AOvWI2018/12/14(金) 00:50:19.71NHbYqeq00 (3/4)


織莉子「他にその未来を識る者が居る。そして、彼女の狙いも素体となる少女――鹿目まどか。彼女はそれを『手に入れる』と言った」

織莉子「その彼女が、かずみさんを狙っている者よ」

かずみ「!!」


 突然わたしの話に繋がって驚く。

 それはキリカが言っていたこととも一致した。キリカも会ったと言っていた。確かその時は織莉子の格好をして……


かずみ「…………」

織莉子「だから、まずは一刻も早くその魔法少女を倒さないといけない。ぜひ、みんなの力を貸してもらいたいの」

あすみ「でもどうやってさ? 予知で片っ端から炙り出すってのが手っ取り早いと思うけど、姿変えてるならそれも意味ないでしょ」

マミ「それが難しいところね。街で見かけても私達には気付けるかどうか……」

マミ「狙いは素体と言うけれど、本当の目的はかずみさんでしょう? かずみさんの事情にも関わっているのだし、早く何とかしたいのはやまやまなのだけど」

あすみ「……そいつがなんで鹿目まどかを狙うかだね。世界を滅ぼしたい願望でもあるのか?」



 その後もいくらか話し合ってみたけど、これといった答えは出ない。

 情報を交換して整理して、一通り話した後に織莉子がこう言った。



織莉子「さあ、それじゃあそろそろ今日も『パトロール』に向かいましょう」



 同じように『パトロール』と言うけれど、それは前までとは違う意味になっていた。


 わたしは使い魔を狩るのを嫌がる人がいるのはしょうがないと思ってる。

 でも、使い魔まで倒してくれる人が誰もいなくなったらどうなるの?

 そう思うと、グリーフシードが欲しい魔法少女からは疎まれても自分がやめるのはちょっと抵抗があったんだ。



 ――――疑念は確信に変わった。




504 ◆xjSC8AOvWI2018/12/14(金) 00:52:13.92NHbYqeq00 (4/4)

-------ここまで。次回は15日(土)夕方くらいからの予定です


505 ◆xjSC8AOvWI2018/12/15(土) 20:10:53.55h7N8NzIi0 (1/5)





 いつもみたいに散々街を歩き回る。

 その末に魔力の反応を見つけて、あすみが口を開く。


あすみ「……本日一匹目の使い魔出たけど?」


 やっと反応があったと思ったら使い魔。

 イヤリングから具現させたソウルジェムを見ているだけじゃ、わたしにはどっちのかは判別できない。

 マミと織莉子は敢えて反応しようとしてなかったように見えた。


あすみ「ま、スルーするならいいや。こっちもそのほうがありがたいし」


 戦わないと言ってたあすみが反応を言葉に出したのはわざとなんだろうか。

 それから更に歩き続けると、今度はみんなが一斉に魔女の魔力を察知して反応する。


 ――――喜ぶべきなんだろうけど、こんな時に限って。


マミ「……魔女がいるわよ」

あすみ「あぁ、昨日は私も魔女狩ってなかったからねぇ」

織莉子「戦いましょう。四人もいれば大丈夫よね」

かずみ「うん……」



506 ◆xjSC8AOvWI2018/12/15(土) 21:22:42.82h7N8NzIi0 (2/5)

―影の魔女結界



 ……久しぶりの魔女戦。



かずみ「織莉子、どっちに進めばいいかってわかるの?」

織莉子「さすがにそこまで当てることは難しいかしら」

マミ「使い魔は出来るだけ避けていきましょう。いざとなったら私と美国さんで援護するわ」

あすみ「前衛二人に後衛二人だからバランスはいいよねぇ」


 白黒の結界を駆け抜けていく。

 そして、魔女の元までたどり着いた。

 白黒の中で目立つ赤い塔の建つ結界の奥には、一見無防備に見える魔女の背中がある。



かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・[20/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


仲間:
マミ 状態:正常
織莉子 状態:正常
あすみ 状態:正常


敵:影の魔女Elsamaria <- 攻撃対象デフォルト
  使い魔Sebastian's(小)×20
  使い魔Sebastian's(大)×6

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0~15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
5自由安価

 下1レス


507以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/15(土) 21:30:23.79uHFtqrGiO (1/1)

あすみを援護するように1


508以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/15(土) 21:34:28.00dKLM1VEX0 (1/1)

↑追加で戦闘中織莉子に注意を払う


509 ◆xjSC8AOvWI2018/12/15(土) 22:50:32.35h7N8NzIi0 (3/5)



 まずわたしとあすみが同時に走り出した。

 杖が届く至近距離まで近づいて振り上げると、背を向けたままの魔女に異変を感じる。


あすみ「私の前に突っ込むんじゃない。邪魔だどいてな」

かずみ「きゃっ!!」


 衝撃を受けて横に倒れる。後ろを魔女の背中から突き出した影の攻撃が伸びていった。

 あすみが鎖でわたしを払いのけて、影を絡め取るように壊して魔女本体まで狙う。


 走り出したのは同時だったのにいつのまにかあすみは途中で足を止めていた。

 鉄球が十分に届く程度に距離を取っている。


かずみ「ごめん、ありがとう! わたしもちょっと下がって援護するから!」

あすみ「いーらーないっての! 後ろのマミならともかく、アンタにちょろちょろされると邪魔!」


 あすみの攻撃に続くように打ち込まれた銃撃が見える。たしかにマミの狙いは正確だ。

 周りには織莉子の水晶も魔女を囲むように浮かんでいく。


 ……わたしはどうしようか? 役立てないのは悔しいな。 少し大技でも使う? わたしももっと後ろにいく?



かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・[20/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


仲間:
マミ 状態:正常
織莉子 状態:正常
あすみ 状態:正常


敵:影の魔女Elsamaria
  使い魔Sebastian's(小)×20
  使い魔Sebastian's(大)×6

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0~15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6自由安価

 下1レス


510以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/15(土) 22:56:56.11lqhN9VGr0 (1/1)

6
あすみに言われたとおり後ろに下がって>>508


511以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/15(土) 23:24:38.950khFVZw3O (1/1)

何か技増えてる


512 ◆xjSC8AOvWI2018/12/15(土) 23:29:57.29h7N8NzIi0 (4/5)



マミ「魔女の背後から伸びる攻撃にさえ注意していれば、あとは使い魔に気を払いつつ魔女を追い詰めるだけね」

織莉子「こちらも囲んだわ。一気に片を付けましょう」

あすみ「こんなのヨユウ!」


 マミの弾丸が魔女近くの使い魔を殲滅し、囲んだ水晶が一気に魔女を襲っていく。


 ……わたしはあすみに言われた通り後ろに下がって、その織莉子の横顔を見た。

 魔女に集中していてこちらに視線は返されない。その顔はいつも見る冷静で整った表情だ。



 そうして決着がついた。



かずみ「…………」

マミ「ちょっと、どうしてなにもしなかったの? こっち見てた?」

かずみ「ごめん」

あすみ「アンタ邪魔だとは言ったけどさー、色々出来ることはあるじゃん?」

かずみ「魔力使うと思ったから」

織莉子「まあ、そうね。無駄に魔力を使うことはないわ。今の戦いで消耗した人はいるかしら?」

マミ「私と美国さんは使っているでしょう? 残りはどうするの?」

マミ「ただでさえ余計に溜め込んでいそうな神名さんには必要ないと思うけど……」


 マミが不満の目であすみを見る。

 もう耐えられない。




513 ◆xjSC8AOvWI2018/12/15(土) 23:56:49.29h7N8NzIi0 (5/5)



あすみ「バッカ―、あすみも武器の状態いじんのにちょっとは使ってるんですー。消耗分は返してもらうから」

マミ「なら本当にその分だけよ。でもそんなに使ってないでしょう?」

かずみ「もうやめてよ! わたしが好きだったのはこんなのじゃないよ!」

かずみ「織莉子は…………予知や世界を滅ぼす魔女のことは本当なんだよね」

かずみ「嘘ならわたしを狙う魔法少女が織莉子とキリカに近づく理由がないもん」

織莉子「……何故あの子が出てくるの?」

かずみ「キリカから話を聞いたんだ。その時はキリカも目的はわからないって言ってた。織莉子の目的も知らないから」

かずみ「でも織莉子はあの魔法少女の目的を知ってた」


 織莉子は私の前ではじめて少しだけ表情を変える。


マミ「何を言ってるの?」

かずみ「織莉子は目的があってわたしたちに近づいたんだよね。グリーフシードを集めるのにキリカを駒にしたように」

かずみ「織莉子があすみちゃんをつれてきたのも、予知でわたしたちが出会う魔女のことを教えたから」

マミ「それは予知が万能に情報を集められるわけじゃないからって言って!」

かずみ「わたしとまどかを狙う魔法少女を倒したあとはどうするの?」




514以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/16(日) 00:05:52.57x4godrdBO (1/2)

かずみがオコ


515 ◆xjSC8AOvWI2018/12/16(日) 00:24:03.86RFHnm4YS0 (1/4)



 そのままわたしは織莉子の様子を逃さないように見ていた。

 しかし、織莉子は思いがけないほどあっさりとわたしの話を認める。

 結界が消えた人気のない道の隅、わたしたちの間に流れる空気は凍てついていた。


織莉子「……その話は本当よ。救世を遂げるためにはグリーフシードが必要」

織莉子「魔力の扱いはこれでも努力した。それでも残念ながら私はこの魔法のせいで魔力の効率が悪く常に余裕はない」

織莉子「それを補うためには自分以外に魔女と戦える戦力も必要。そして、救世の魔女の前身を倒すためにも……」

マミ「え…………!?」

織莉子「私がもし失敗すれば世界が滅ぶのよ?」

織莉子「それほどまでに、迂闊に知られてはいけない。余力を持って挑まなくてはならない。作戦を実行するにも一人では攪乱も戦闘もできない」

織莉子「そして私はそれまでに死んではならない。絶対に遂げなくてはいけないことだというのはわかるでしょう?」


 織莉子は淡々と言う。その言葉は見苦しい言い訳とも違う。ただわたしたちに理解させるために。


 マミは信じていた人に裏切られ打ちひしがれていた。

 それをあすみが裏を全て知っていた傍観者のように笑い飛ばす。


あすみ「ていうか気づくのおそすぎ!」

あすみ「かずみもついに気づいて責めにきたかと思ったら、私のせいだってのにさ。よりによって私に懇願してきたからもう滑稽」

あすみ「必死すぎて面白かったから一個やったけど」

あすみ「あ、もしそれがなかったらゼッタイにあげないよ? この世界そんなに甘くないからね」



516 ◆xjSC8AOvWI2018/12/16(日) 00:35:17.59RFHnm4YS0 (2/4)



かずみ「……やっぱりそうなんだ」

かずみ「わたしは織莉子のこともあすみちゃんのことも信じてたんだよ!」

かずみ「織莉子が友達になって相談に乗ってくれたのも、あすみちゃんが来てくれた時もうれしいって思ってたの!」

あすみ「まあオイシイ話があったら乗るしかないよね。あすみ別に『信じてくれ』なんて言ってないしー」

あすみ「そもそもアンタらに良いことした覚えもないし、信じて騙される方が悪い。これを機に学習したら?」


 わたしはただ悲しかった。でも黙って合わせてるより納得した。


かずみ「あすみちゃんは全部知ってたの?」

あすみ「いや? 私も目的とか聞いたのは昨日だよ」

織莉子「マミさんは理解できるでしょう? 同じ、人々を守る使命を誓う魔法少女なのですから」

マミ「私は…………」


 ……織莉子は言い訳するでもなく、当然のように言った。

 まるで試すように。


マミ「私は……――――そうね、人を守る魔法少女だわ」


 しかしその姿は力なかった。


――――
――――


517 ◆xjSC8AOvWI2018/12/16(日) 00:45:32.94RFHnm4YS0 (3/4)


住宅街



「じゃーね、さやかちゃん」

「うん、また明日ねー」


 夕刻の住宅街、駅前から帰る途中の道で二人が手を振って別れる。

 その様子を少し離れた場所で見ている人物が居た。


「あれっ、ほむらちゃんもう帰ったんじゃなかったの?」

「……いえ、少しこっちに用があることを思い出しただけよ」

「そっか。ほむらちゃんも、じゃあ気を付けてね」

「ええ」



 『ほむら』と呼ばれたその人物は、別れてから彼女の方を振り向く。

 ……夕暮れの照らすその背中をじっと見ていた。



―14日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・[20/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]


518 ◆xjSC8AOvWI2018/12/16(日) 00:46:11.63RFHnm4YS0 (4/4)

-------ここまで。次回は17日(月)夜からの予定です


519以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/16(日) 00:52:38.28yGHbW5FI0 (1/1)

乙です

マミさんメンタルボロボロだな
世界のために小を切り捨てるか、世界のために人に仇そうとする魔法少女と袂を別つのか
マミさんあどっちを選ぶのかな?


520以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/16(日) 14:55:07.49x4godrdBO (2/2)

マミは織莉子につくのかこれまで通りかずみと一緒にいるのかどっちを選ぶかな?



521 ◆xjSC8AOvWI2018/12/17(月) 21:36:50.93ZfZcWNGF0 (1/7)

――――――
朝・マミの家



 マミが学校に行く前の朝、わたしが作った朝ごはんがテーブルに並ぶ。

 軽く身支度を整えたマミがやってきた。


かずみ「今日はどうするの?」


 ……朝ごはんを食べながら今日のことを聞いてみた。

 いつもならマミはどれも喜んでくれるメニュー。でも今朝はいつもよりフォークの手が遅い。


マミ「今日は……ちょっと私、一人で魔女を探しに行こうかなって」

かずみ「えっ?」

マミ「かずみさんはここにいてもいいけど、どうする?」

かずみ「えぇっと……」


 わたしがいけるのはあすみか織莉子の家くらい。

 でも、あんなことがあったのに……?




522 ◆xjSC8AOvWI2018/12/17(月) 21:46:55.07ZfZcWNGF0 (2/7)



かずみ「マミは織莉子のことはどうするの? 今日もやっぱり、一人でも昨日みたいなパトロールをするの?」

マミ「……昨日の美国さん、すごく冷たい目をしていた」

マミ「私のことも……そういうふうにしか思ってないのかなって……」

マミ「でも、しょうがないじゃない? どんなに残酷でも大勢の命のかかった使命なんだから」


 話しているうちに手は完全にストップしていた。

 それに気づいたマミが時計を見て慌てる。


マミ「ごめんなさい、遅れないようにはやく食べなきゃね」

マミ「……じゃあ、行ってくるわ。お留守番よろしくね」



 珍しく慌ただしく出て行くマミを見て、

 わたしはやけに静かになった家の中でこれからどうしようか考える。



かずみ「…………」




523以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/17(月) 21:48:53.86/0ahGyTK0 (1/3)

マミは織莉子の救世に傾いてるのか


524 ◆xjSC8AOvWI2018/12/17(月) 21:50:33.36ZfZcWNGF0 (3/7)



かずみ「……――――よしっ! こんな時はたくさんごちそう作って待っていよう」

かずみ「もっと料理の勉強もするぞー! マミが持ってる本もいっぱい置いてあるもんね」

かずみ「あ、これマミが書いたメモだ。見てもいいかな? なになに?」




・作りたい料理(複数可)

 下1、2レス


525以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/17(月) 22:03:50.28/0ahGyTK0 (2/3)

前菜に温野菜のサラダ・カラスミパウダー
メインにビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ
デザートにパンナ・コッタ


526以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/17(月) 22:07:02.79GeaNKV3/O (1/1)

パンドーロ


527 ◆xjSC8AOvWI2018/12/17(月) 22:35:21.80ZfZcWNGF0 (4/7)



 キッチンの横に置いてある料理本やマミの書いたノートを読みふける。

 こんなところでもマミの努力家な一面は垣間見えていた。


かずみ「あ、これおいしそう。 へえ、マミはこんな隠し味を……」

かずみ「作りたいものがいっぱい出てきたなあ」


 勉強とイメトレが終わったら、次はさっそく実践だ!


かずみ「まずはお昼ご飯、つくってみよっと!」


 マミの切ってくれたセミロングの髪をまとめてキッチンに立つ。

 このくらいの長さだと色々とアレンジもしやすい。まとめているとパッと見、前と同じように見えるかもしれない。


 時間のかかりそうなものから先に仕込んでおこう。

 前菜にメインにデザートに、豊富な材料を使って料理を作っていく。

 練習がてら昼ごはん用にも作ってみて、それらが仕上がる頃には昼を少し回るくらいの時間になっていた。


かずみ「さて、そろそろお昼ごはんは完成かな?」

かずみ「……ん?」


 そろそろ完成ってところでインターホンが鳴った。

 前にも同じようなことがあったような。




528 ◆xjSC8AOvWI2018/12/17(月) 23:11:57.12ZfZcWNGF0 (5/7)



かずみ「なに? 杏子? いいタイミングで来たね!」


 カメラを確認して玄関の扉を開くと、杏子はなにやら深刻そうな顔をしていた。

 そして、わたしのこの呑気な挨拶が気にくわないというように――。


杏子「アンタ、へらへらしてる場合なのかよ!?」

かずみ「えええっ! なにが?」

杏子「何じゃねえ! あたしはこの前のグリーフシード返しにきてやったんだ!」

杏子「グリーフシードがなくなったら魔女になるんだろ? 一個もねえってのに無茶しやがって、まったくどこまでバカなんだよ?」

杏子「そんな時に他人に渡すか? あたしはあんたらとは違ってグリーフシードくらい持ってんだよ!」

杏子「あたしもそれ知ってて返さないほど外道じゃねえ。それで自分たちが魔女になんかなっちまったら意味ないだろうが……」

かずみ「あ、ありがとう……」


 捲し立てるように怒鳴る杏子に気圧されちゃったものの、そう言ってくれたことは素直にうれしかった。

 杏子、あんなにグリーフシードを優先してたのに……。


杏子「ついでに、姿を変える魔法を持った敵を相手にしてるってのに、ちょっと姿だけ確認して入れるのも不用心じゃないか?」

かずみ「うん、気を付ける。 でも本当にいいとこに来たよ! 上がって上がって!」

杏子「?」


 作り立ての料理。杏子も玄関まで漂うその匂いに気づいたようだった。




529以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/17(月) 23:15:20.27/0ahGyTK0 (3/3)

杏子やっぱり良い奴だなぁ


530 ◆xjSC8AOvWI2018/12/17(月) 23:42:26.02ZfZcWNGF0 (6/7)



かずみ「お昼ごはんいっぱい作ったから一緒に食べよ!」

杏子「おお! 一人だったのによくこんなん作るな。肉にサラダに、プリン? あとケーキ!」

かずみ「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナに、温野菜のサラダ・カラスミパウダ」

かずみ「それからパンナコッタに、パンドーロだよ」

杏子「また舌噛みそうな必殺技だな」

かずみ「必殺技? まあ、おいしいものっていくらでも食べられるからね!これは練習も兼ねてで本番は夜なんだけど」


 杏子をリビングに招き入れると、自慢の料理を出していく。

 わたしにとっても丁度いいタイミングだったみたい。やっぱり一人で作って一人で食べるより、誰かと食べたほうがいいや。


杏子「今夜はパーティでもやるのか? もう死にかけててもおかしくないかもって思ってたけど、意外と元気そうにしてんな」

かずみ「……実は逆なの。マミが元気なさそうだったから」

かずみ「マミ、変わっちゃったんだよ。パトロールのやり方も前とは変えたんだ」

かずみ「違う目標が出来たから。そのためにはもっとグリーフシードが必要なんだって。誰かを犠牲にしても……しょうがないんだって」

杏子「!」



・織莉子から聞いたこと、話す…?
1話す
2話さない
3自由安価

 下2レス


531 ◆xjSC8AOvWI2018/12/17(月) 23:57:09.73ZfZcWNGF0 (7/7)

----------ここまで。次回は20日(木)夜からの予定です


532以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/18(火) 00:02:42.67jClfJhZt0 (1/1)

1+杏子にマミと話し合って欲しいと話す

織莉子の話が本当でも私はそんなやり方は絶対に認めないし認めたくはない
一般人を害するなんて魔法少女の話し以前の問題だよ、そんなのただの人殺しだもん
産まれたばかりの赤ちゃんに『その子は将来人を殺すから、犠牲者を出さないために今殺しましょう』って言ってるようなものだよ

だからマミには考えを改めてもらいたい、そのためには杏子も一緒に話してもらいたいの
まだマミは迷ってるんだと思う。『魔法少女』の使命に縋ろうとと、いや逃げようとしてるように見える
マミは寂しがりやなんだよ、ずっと1人で戦ってきたんだもん・・・だから傍で支えてあげる人が必要なんだよ

その人は他人を駒扱いする織莉子なんかじゃない、ぽっと出の私でもない。初めてパートナーを組んだ杏子だと思うんだ。
だから一度マミと本音をぶつけて話し合ってみてよ。



533以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/18(火) 00:11:11.45cQ9iq34GO (1/1)


追加で杏子にマミと話す時は必ず自分を立ち会わせて欲しいと話す

杏子が一人で行ったらキリカ編の時みたいになりそうなので


534以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/20(木) 22:20:19.01+JNPiZzH0 (1/1)

今日は来ないかな?


535 ◆xjSC8AOvWI2018/12/20(木) 22:39:27.43uepAHtoK0 (1/2)



杏子「……そうか。結局マミもかよ」


 ……てっきり、杏子なら『そのほうがいいだろ』とかマミの変化を肯定することを言われると思ってた。

 使い魔なんて見逃したほうがいいって、そう言ってたのは杏子も同じだった。

 でも、杏子はまるで投げやりみたいな反応を返す。その表情はどこか何かを諦めるように悲しげに見えた。


かずみ「でもね、その目標も人助けのためなんだよ。それっておかしいよね?」

かずみ「人を助けるのに人を犠牲にしてもいいなんて」

杏子「人助けだと? 今度は何の話だよ!」

かずみ「鹿目まどかっていうすごい素質を持った人がいて、その人が魔女にならないようにしないと世界が滅ぶんだって……」

杏子「それは本当なのか?」

かずみ「本当だと思う。……織莉子が言ってたの」

杏子「じゃあちょっとそいつに話を聞きに……!」

かずみ「待って!」


 勢い余って席を立とうとする杏子を止める。


かずみ「織莉子はわたしの友達なんだ。だから、これはわたしたちの問題にしたい」

かずみ「杏子は言いたいことがあるならマミと話してあげて」




536 ◆xjSC8AOvWI2018/12/21(金) 00:00:00.25uepAHtoK0 (2/2)



杏子「わーったよ……、今はゆっくり腹でも満たしておくことにするよ」

杏子「夜になったらまた来る。あいつは嫌がるかもしれないけどな」

かずみ「うん! 料理たくさん作っておくよ!」


 杏子が席に座りなおしたのを見て、わたしもまた落ち着いて食事に戻る。

 ……杏子の反応はちょっと意外だった。


かずみ「マミは寂しがりやなんだと思う。わたしが来るまで、ずっと一人で戦ってきたんだもん」

杏子「……そうだな」

かずみ「だから、杏子も傍にいてあげてよ。今だったらきっと、二人とももう少し素直に話し合えると思うんだ」


 喧嘩して離れちゃっても、杏子も本当はマミのこと嫌いじゃないんだ。

 本当は根は変わってないんだってわかった。




537 ◆xjSC8AOvWI2018/12/21(金) 00:14:56.85RCuwg6vg0 (1/2)



杏子「けど、あたしは誰かを助けるために誰かを諦めるってのは間違ってないと思うぜ」

杏子「誰もかも救うなんてできっこない。時に誰かを犠牲にしたり騙したりしてもな」

杏子「けど、それだって覚悟がいることだろ? 世界がどうのとか、大それたこと言ってても関係ない」

杏子「その真実を知ってるアンタらはさ、一体誰を助けたいんだ?」

かずみ「わたしは誰もかも助けたいよ」


 そう言うと、杏子はその言葉を笑い飛ばす。

 いつも見るような反応だった。マミとはそれで喧嘩することもあったけど――。


杏子「アンタって…………ほんっとーに、バカなやつ」

杏子「でもアンタもマミも、そうじゃないとやっぱ調子狂うんだよな」


 杏子は呆れたようにため息をつく。

 わたしもそんな杏子に『えへへ』と笑みを返した。


 ……馬鹿にされてもいい。やっぱり、出来ることなら私も私のやることに自信をもっていたいから。




538 ◆xjSC8AOvWI2018/12/21(金) 00:15:27.02RCuwg6vg0 (2/2)

--------次回は22日(土)夕方からの予定です


539 ◆xjSC8AOvWI2018/12/22(土) 22:20:18.01ijW7LZE/0 (1/1)

----------用事が長引いたり色々あったので今日は中止にさせていただきます。
次回は23日(日)夕方からの予定です。


540 ◆xjSC8AOvWI2018/12/23(日) 18:59:04.94qqtuzxZ10 (1/7)

――――
――――
放課後・繁華街



 友達や恋人との時間を過ごす人。目的を持ってどこかへ往く人。

 その中で、人々の行き交う一番大きな通りを特に目的もなくふらふらと歩いていた。


キリカ(なんか……ツマンナイなー)


 キリカはさっき買ったお菓子を食べながら歩く。

 かといって純粋にお菓子を味わうために来たのかというとそれも違った。こんな行動を契約してから何日も繰り返していたような気もする。


 クラスの友達とも本当は一緒に遊びに行く話はたまに出ているのだが、今はあまり他人に気を回したくもなかった。

 そう言う気分じゃない。かといって、何をしたいのかと言われれば――それもわからなかった。


 人には囲まれているのに自分は一人。ここにいると周りの喧騒も遠くのことのように思える。

 ここにいる他の人たちが自分とは違う存在のように思えるのだ。

 誰も見知らぬ他人に注意を向ける人はいない。とはいえ、キリカからしても興味はなかった。




541 ◆xjSC8AOvWI2018/12/23(日) 19:17:50.50qqtuzxZ10 (2/7)



キリカ(さすがに食べ歩くのだけじゃ飽きるし。買いたい物も今はべつにないんだよね)

キリカ(そんなにお金もないし……)


 街の景色を眺めながら、なんとなくゲームセンターのほうに目を向ける。

 派手な電子音が鳴り響くそこに、吸い込まれるように足を踏み入れていった。


 娯楽を提供してくれる機械。暇をつぶすなら絶好の場所。

 鞄から財布を取り出してみる。そこにはわずか数百円分のコインしか入っていなかった。

 予想外に少ないそれにキリカは茫然とする。


キリカ(……帰ろうか?)


 その発想は当然のもの。


 金がなくなってきたのはわかってたはずだった。

 だからさすがに自制して休日は家で寝てたし、毎日買い歩いてる場合じゃないとも思っていた。


 わずか数回分くらいのお金を全部使ってまでやることじゃない。馬鹿げている。

 ――――しかし、その時別の考えも浮かんだ。




542 ◆xjSC8AOvWI2018/12/23(日) 19:57:59.50qqtuzxZ10 (3/7)



キリカ(そりゃそうなるよねぇ、さいきん金遣い荒かったし……)


 その時浮かんだのは、ちょっとしたトラブルのせいで出会った時から嫌っているはずの杏子の声だった。


 杏子は利己主義の魔法少女。彼女ならこんな時どうしているか。

 あすみもそうだ。マミのような“例外”を除いて、彼女らが言うにはそれが魔法少女の『フツウ』。

 そうすればお金を気にする必要もない。食べたい物も買いたい物も全部手に入れることが出来る。



 考えてみれば、それを自分もできる“力”を持っている。たとえ見つかったとしても余裕で振り切る事も出来る。……恐れることはない。



 自分もすでにどちらかといえばそっちのほうに入りかけてるんだろう。

 魔法少女を襲ったりしてた時点で、今更そういう行動を取ることのハードルも低かった。




543 ◆xjSC8AOvWI2018/12/23(日) 20:05:18.42qqtuzxZ10 (4/7)



 気が向かないときは学校にすら行ったフリで、放課後は遅くまで時間を気にせず遊び歩く。

 その遊ぶためのお金や商品を手に入れる手段は強奪や盗み。……そしたら立派な不良じゃないか?


 多分今まで自分が道を外すことなんて考えたこともなかっただろう。

 なのに意外なほど、ほんのちょっとしたきっかけでみんなそうなることがあるんだ。と、そんな考えがふと頭を過ぎって――――



 ――――キリカはまたどこかへ歩きだした。

 そして道端から見える店の前で立ち止まり、目に入ったものを手に取る。それを懐に入れるだけ。やってみれば意外と簡単に終わる。



「……なにをしているの?」

キリカ「!」


 キリカは手に持ってたものを落とす。

 小さなぬいぐるみのようだったけれど、別に欲しいと思ったわけでもなかった。



 声をかけられて気づいた。本当に、なにをしていたんだろう?





544 ◆xjSC8AOvWI2018/12/23(日) 20:33:48.71qqtuzxZ10 (5/7)





マミ「…………」



 マミは何も言わずにじっと見つめていた。

 キリカを咎めるでもなく、落ちた商品を拾うでも店の人に言いつけるでもなく、その瞳はひたすら無感情だ。

 ……それがキリカには余計に怖く感じて焦った。


キリカ「お、怒んないの? なんで?」

キリカ「あんたならこんなことするの許せないでしょ! どうしてこんなことしたかとか聞かないの?」

マミ「……じゃあどうしてしたの?」

キリカ「自分でもどうしてだかわかんないんだよ! だから怖いんだよ」

マミ「怖い?」

キリカ「自分が、どんどん変わっていきそうで――――」


 確かに少し前までのマミなら万引きしようとした罪やこれまでの素行について厳しく責めていたところだろう。

 けれど、今はそんな魔法少女たちを矯正する気はなかった。自分だって人の事をいえなくなるからだ。


 店の前で騒いでいる声に奥の店員も気づいて寄ってくる。


*「アンタたちなにやってんの?」

キリカ「私は悪い事をしたんだから謝らなくちゃ……マミは関係ないんだからさっさと行きなよ……」


 逃げたかった。殴り飛ばして済むならそうしたかった。自分には出来るのに、怖い事なんかないって思ったはずなのに。

 でもそれじゃダメだと心の中に強く叫び声のように鳴っている。


 ……いつになく素直な態度を取る。キリカは異様に青い顔をしていた。




545以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/23(日) 21:41:48.51jU/n0xYg0 (1/2)

やってることがエリカと同じだからか?


546 ◆xjSC8AOvWI2018/12/23(日) 21:55:18.17qqtuzxZ10 (6/7)



 ――――あれから繁華街から離れた場所を二人は歩いていた。

 未遂のうちに止められたからか、あの場では注意を受けて事は済んだ。

 マミも一言二言あったことを話したが、それ以上キリカを責めたり、不利になるようなことは言わなかった。


 とはいえそれから二人の間に会話はない。

 顔さえ合わさず、キリカは拗ねるようにそっぽを向いていた。


キリカ「……そんで、あんたは? パトロール?」

マミ「ええ、そうね」

キリカ「一人なの?」

マミ「今日は一人よ」


 再び会話が途切れる。


 キリカには以前、マミがこの街での魔女狩りを禁じている。

 念のためもう一度釘を刺しておいたほうがいいかとも考えたが、その時とは意味が大きく異なっている。


 やり方なんて関係ない。他人にグリーフシードを取られないためだ。

 しかしそう思ってからマミは、『キリカが織莉子に使われていた』ということも思い出した。とはいえ、今はその関係はなくなっているが。


 あれこれ思考を巡らせながら、マミはふと足を止めた。




547以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/23(日) 22:34:02.79jU/n0xYg0 (2/2)

マミ、大分考え方が変わってきてるな
変な方向にぶっ飛ばなきゃいいけど


548 ◆xjSC8AOvWI2018/12/23(日) 23:35:39.56qqtuzxZ10 (7/7)



キリカ「どうした?」

マミ「いいえ」


 キリカも足を止めてマミのほうを振り向く。

 それから手元にソウルジェムを具現させて確認していた。


キリカ「倒しにいく? 別にとったりしないよ」

マミ「……これは使い魔よ?」

キリカ「じゃあ取るもなにもないね」


 キリカはそのまま明滅を見ながら居場所を探っていこうとする。


マミ「ちょっと待って。使い魔も倒すの?」

キリカ「魔女も使い魔も同じじゃない? 人を襲うんだから」


 キリカは不思議そうな顔で答える。

 それは昔、マミ自身が言ってきた言葉と被った。

 自分はもうやめてしまったのに、それを当然のものとして言っていることにハッとさせられた。それも今まで散々『自分たちとは違う』と敵視してきた人に。


 ……キリカはやる気はないが、この活動自体は紛れもなく正義の活動だと思っていた。




549 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 00:14:03.391F5t6m350 (1/11)



マミ「あなたはグリーフシードが欲しくはないの?」

キリカ「別に私は欲しいわけじゃない。ズルができる力も別にいらなかった」

マミ「グリーフシードがなければ魔女になるのよ?」


 一瞬失言したとも思った。しかし、特に驚いた反応は返ってこない。

 キリカはただうんざりしたような顔を向ける。


キリカ「……あぁ、あれか。もうみんな知ってるの?」

キリカ「なんでそんなことのためだけに必死になって魔女狩って、せこせこグリーフシード集めなきゃいけないんだ?」

キリカ「それって今までと変わらずに生きてるっていえるのかな。……そこまで人間捨てなきゃいけないのかな」



 『自分たちとは違う』は、言い換えれば『悪い人』ということだ。

 じゃあ、何が正しくて何が正義なのか?


 …………それが、マミにはわからなくなった。



――――


550 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 00:14:48.581F5t6m350 (2/11)

----------ここまで。次回は24日(月)夕方からの予定です


551 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 18:34:23.031F5t6m350 (3/11)

マミの家



マミ「……ただいま」

かずみ「おかえり! 早かったね」


 マミが帰ってきたのは、まだ夕方にもならないうちだった。

 夕飯用のご飯の準備もまだ整っていない頃。今日は驚かせようと思ってたけど、ちょっと裏側を見られちゃったような気分だ。


かずみ「パトロールしてきたの?」

マミ「ええ、一応」


 玄関まで迎えに行って、マミと廊下を進んでいく。

 そしてリビングに着くと、マミはそこにいる『来客』の姿を見て目を見開いた。


マミ「……佐倉さん」

杏子「よう」




552以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/24(月) 18:57:09.78ge2unE50O (1/2)

杏子ずっとマミの家に居たんだ


553 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 19:48:01.201F5t6m350 (4/11)



マミ「なぜあなたがここにいるの?」

杏子「思ったより早かったな。こっちも早めに来て正解だった。本当はもっと言いたい事まとめる時間あると思ってたんだけどな」

マミ「……」

杏子「飯もないならもう面倒な前置きはなしだ。回りくどいことも今日はなしにする……つもりだ」

杏子「……アンタついに使い魔も見逃すようになったんだってな。誰かから奪ってもいいんだってな」


 杏子は言葉を選ぶように口を開く。

 いつもなら挑発するようなことばかり言ってマミと反発してきたが、今日の杏子の話し方は慎重だった。


 その言葉にマミも何が言いたいか気づく。しかし、その反応は穏やかなものではなかった。


マミ「……もしかしてあなた、私に説教でもしにきたの? それとも嫌味?」

マミ「だってあなたもやってきたことでしょう。私にもそうなればいいって散々馬鹿にしてきたくせに!」

杏子「説教なんてするつもりはない! あたしだって、そんな資格ないことくらいわかってるよ!」

マミ「じゃあ何をしに来たの?」




554 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 20:06:20.711F5t6m350 (5/11)


杏子「あたしは……」


 自分の心の中から言葉を探る。自分の嘘偽りない気持ちを。

 だって、今日は嘘つかないって決めたんだ。


杏子(――――だって、そうじゃねえと)


 身体中の血が一点に上ってきたかのように、杏子の顔は熱くなった。

 いつもなら、こんなことでもなければ言えなかった。

 思ってたはずなのに、言葉を探ることもせず自分で気づくことすらしないでいた言葉を言う覚悟を決める。


杏子「……――あたしは、マミに変わってほしくなかったんだよ」

杏子「あたしは無理だったけど、マミにはあの時のままの青臭いヒーローでいてほしいんだよ!」


 ……でも、今になると、どうしてこんなことも言ってやれなかったのかと思ってしまう。

 思えば、去って反発して、馬鹿にすることしか言ってこなかった、そんな自分が追い詰めた責任だってあるのかもしれなかった。


杏子(今そうしないと、あたしの信じたかったものは全部なくなっちまうんだろ!?)




555 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 20:28:47.621F5t6m350 (6/11)



杏子「そうしたらちょっとはあの時のあたしも間違ってなかったって、ちょっとは救われるって思えるかもしれないだろ?」

マミ「……佐倉さん、私にそんな期待をかけているの? 自分は無理だったのに?」

マミ「私にだけそんな期待を背負わせるの?」


 口調だけは穏やかなままマミの顔は悲しげに歪む。

 杏子にとっては必死の願いだが、マミにとってはそれは重くのしかかり縛りつける鎖にもなる。

 ……マミは杏子の思いに、そんな卑怯さを感じ取ってしまったのだ。


マミ「私も同じ気持ちだったわ……私もあなたが去って行った時、同じ気持ちだった」

マミ「あなたに変わってほしくなんかなかったのよ。信じてたのに、私を置いていってほしくなかったのよ」

かずみ「な、ならマミも杏子も仲直りできないかな? どっちも気持ちがわかるなら辛い思いしないようにするべきだよ!」

マミ「でも、安心していいのよ。あなたの思いは裏切られない。私は変わらないの」

マミ「ヒーローをやめる気はないし、使命を捨てるわけじゃない。あなたと一緒ではない……のよ」


 マミはまるで与えられたセリフを読むように喋る。しかし最後まで言うのを躊躇い語尾につれて言葉は失速した。

 それは自分の言葉ではないみたいな――。


 少し前だったら心から信じられたそれが言い切れなくなっている。迷っている? あの使命を聞いて、仕方ないって諦めたのに。




556 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 21:23:45.851F5t6m350 (7/11)


杏子「世界を救う云々とかいう話か? そりゃあたしは詳しいことはなにもしらねーけど!」

杏子「……使命なんて言葉でごまかしてんだろ?」

杏子「なんでそうなるんだよ!? グリーフシードが足りないからなのか? そこまで思いつめることないだろ!」

杏子「まだ足りないならやるよ、ほら!」


 杏子がポケットに手を突っ込んでから手を開くと、バラバラと黒い宝石が床に転がる。

 マミは言葉を失ったまま床と杏子を交互に見た。

 あの杏子がそこまでしたことが信じられなかった。いや――今の自分の言動でそんなことをさせていることが。


杏子「……だってそんなのは、あたしと同じだ。何も見えてないで人を犠牲にしようとしてんなら自分のためと同じだろ」

杏子「それに気づけないなら偽善者、あたしがイチッバン反吐の出る野郎だ」

杏子「そんなの今までのマミとは全然違うじゃんか」

マミ「……私は、見えてない?」


 自分ですらずっと心に引っ掛かりながらも気づかなかったことを言い当てられたような。

 マミはただ、驚いていた。



557 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 22:09:27.721F5t6m350 (8/11)



かずみ「大丈夫だよ。これだけあればわたしたちは魔女になったりしないよ」

マミ「今まで魔女に出会えなかったのは神名あすみのせいだったのよね?」

かずみ「うん。それと……織莉子のせい」


 裏切られたなんて思いたくない。

 言葉にするのは辛いけど、あえてはっきり言葉にした。だってそれが事実なんだ。目を背けてたってなんにもできないから。


マミ「これからは本当に大丈夫なの? それがなくたって元が少ないのには変わりないのよ」

かずみ「思いつめないで。きっとこれからなんとかなるから。救世のことだって、もっとみんなを助けながらだって出来るはずだよ」

かずみ「どうしようもなくなったらみんなで助け合おうよ! 諦めるのはそれでも無理だった時だけにしよう!?」

かずみ「だから、杏子もこれからは仲間になってくれるよね?」

杏子「あ……――ああ、そいつの返事次第だけどな!」


 思いがけなかったところで話を振られて、杏子は戸惑ったように返事を返す。

 その時はまた少しだけ素直じゃない様子に戻っていたが……――

 口にしてから杏子は少し心配になって、その返事を待った。




558 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 22:11:48.221F5t6m350 (9/11)



かずみ「マミは人助けをしたいんだよね? 世界を救ったっていう“英雄”になりたいんじゃないんだよね?」

かずみ「最初から諦めたり傷つけたりなんかしてたら、杏子の言う通り何をやっても偽善者になっちゃう」

かずみ「わたしも……そんなマミはいやだ」


 真剣な目でマミを見つめる。

 ……すると、マミは力なく顔を伏せてしまった。


マミ「本当に……佐倉さんに説得されちゃった。今まで間違ってるって、自分が正しいからって思って威張ってきたのに」

マミ「呉さんのこともそう」

マミ「神名って子、本当に人の本質を見抜くのが得意なのね。私だって気づきたくなかった」


 マミの脳裏にはいつかした会話が過ぎっていた。


 あすみ『――ねえかずみ。巴マミみたいなやさしー人が、いつでも優しくて正しいと思う?』

 あすみ『ああいう表面上常識人ぶった『いい人』ほど、つつけばどうなるかわかんないもんだよ』

 あすみ『アンタのことも、アンタが自分に従順なイイコだから喜んでるとか』


マミ「……すべて、その通りになってるじゃない」




559以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/24(月) 22:35:57.66e0AE2tqG0 (1/2)

あすみはなぁ
読心はあるけど人の汚くて醜い部分を嫌というほど見てきたから・・・


560 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 23:14:13.491F5t6m350 (10/11)


マミ「私ってそんなに嫌な人だったの?」

杏子「お、おい……」

かずみ「わたしはマミに助けてもらったし、マミのこと好きだよ。これからのことはどうにでもできるよ!」


 どうにか杏子と私の言葉は伝わったみたいだけど、マミはどこか自信を失くしてしまったようだった。

 杏子はどう声をかけたらいいか迷っている。わたしも完璧な答えなんてわからない。
 

マミ「私は佐倉さんが思ってるほど立派な人じゃないのよ。そんな弱さを必死に隠して……」

マミ「でもそれすらなくなったらこんなに弱いの」

かずみ「……そのグリーフシードをどれだけ受け取るかはマミが選んで」

かずみ「わたしはご飯の準備の支度に戻るね。今日は豪華なんだよ!マミのために作ってみようって思ったの!」


 わたしは再びキッチンのほうへ回って準備にとりかかった。そこから二人を眺める。

 とりあえず杏子も傍についてるなら安心できるかな。この二人はわたしの知る前から一緒に魔法少女やってたんだから。



1これからの活動について
2二人の会話を眺めている
3自由安価

 下2レス


561以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/24(月) 23:30:37.88e0AE2tqG0 (2/2)

料理しながら2、1は食事中か後に
あとマミにさっきキリカのこが口に出た理由も聞く

マミも杏子ももっと素直になっていいと思うんだ
今マミが言ったように弱いとこ見せたって良いんだよ、誰だって弱いとこがあるんだから杏子に甘えてもいいと思うよ?
杏子も今は不良さんみたいだけど大事なのはこれからなんだから!
これまでのことがあって素直になれないっていうのなら・・・あれかな?ツンドラってやつ?

さっきキリカのこと話してたけどキリカと何かあったの?
杏子もキリカと仲直りしてね?マミと出来たんだし2人共甘いもの好きだからきっと気が合うと思うよ?


562以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/24(月) 23:35:17.14ge2unE50O (2/2)

安価↑
マミがキリカの事を悪く言わなくなってたら、明日学校でパンドーロを渡してと頼む


563 ◆xjSC8AOvWI2018/12/24(月) 23:54:26.991F5t6m350 (11/11)


杏子「……たしかに、あたしはアンタに期待かけすぎてたんだろうな」

かずみ「!」

マミ「……」


 作業をしながら聞こえてきた言葉に耳を傾ける。

 失望とかそんなふうにも聞こえるけど、杏子の言いたいことはそれともちょっと違った。


杏子「結局甘えてたんだ。マミならどんなふうに当たっても強いから大丈夫だって」

マミ「素直じゃなさすぎて全然甘えてるようには見えなかったけど……」

杏子「まあ……あれだよ、反抗期みたいなもんだよ」

杏子「さすがに本当の親父やおふくろにはやることなかったけど、マミのことも【家族】みたいに思ってたからさ」

マミ「佐倉さん…………」

マミ「……前は父さん、母さんって言ってなかったっけ? 反抗期?」

杏子「なっ! それは関係ないだろ!」

マミ「今度はそういう甘え方じゃなくて、ちゃんと甘えてよ。じゃないと、また裏切るみたいに去られるのはいやよ」


かずみ(…………こっちはこっちで集中しよっと)




564 ◆xjSC8AOvWI2018/12/25(火) 00:10:38.18rMwdvhr30 (1/4)




 ―――料理の仕上げを終えて、出来上がったものからテーブルに運んでいく。

 いつのまにかリビングのガラスのテーブルには料理の皿がところ狭しと並んでいた。



かずみ「さぁて、今日はおいしいもの食べて元気出そ!」

マミ「……ええ」

かずみ「マミも杏子ももっと素直になっていいと思うんだ。弱いとこ見せたっていいんだよ。マミも杏子に甘えたっていいと思う」

かずみ「誰だって弱いとこがあるんだから……」


 それはわたしもそうで、マミもそうで、杏子もそうで……。

 ――――それに、わたしたちを裏切った織莉子も。


かずみ「杏子も今は不良さんみたいだけど、大事なのはこれからなんだから!」

杏子「ケッ、どうせ不良だよ」

マミ「これからなんでしょう?」

かずみ「これまでのことがあって素直になれないっていうのなら……あれかな?ツンドラってやつ?」

杏子「おう? 寒そうだな」


 杏子がぶるりと震えるような身振りをとる。

 マミは意味を知ってか知らずか、苦笑いのようなものを浮かべていた。




565以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/25(火) 00:15:55.23XrVeZ00e0 (1/2)

ツンデレとツンドラを素で誤字った・・・


566 ◆xjSC8AOvWI2018/12/25(火) 00:30:54.51rMwdvhr30 (2/4)



かずみ「……そういえば、さっきキリカのこと話してたけどキリカとは何かあったの?」

マミ「少し魔女狩りの最中に会ったのよ」

マミ「結局今日は魔女は狩ってないわ。使い魔一匹倒しただけ」


 使い魔をもう狩らないと決めていたはずのマミが――それを聞くと違和感を覚えて、それから少しだけなにがあったかを理解した。

 今日のキリカとの出会いがマミに何かの影響を与えたんだということを悟る。

 それから杏子も反応する。この前は一応心配するようなことを言っていたけど……。


杏子「あいつのことか」

かずみ「あ、杏子もはやいとこキリカと仲直りしてよ? マミとも出来たんだし、二人とも甘いもの好きなんだからきっと気が合うと思うから!」

杏子「またそのことかよ。アンタもなんでそんなに仲良くしてほしいんだよ?あいつとは仲良かったことないっつの!」

かずみ「だって二人ともわたしの友達なんだもん!」

かずみ「マミも、今日少しでも良い印象に変わったならお礼でも持っていってよ。残りのパンドーロひとかけ包むから」

杏子「残すのかよ?」

かずみ「杏子もそこくらいは譲ってくれるとうれしいなぁ~……」

マミ「かずみさんからってことで渡してほしいのならまあいいわよ」

マミ「……私のお礼は私が用意するから」

かずみ「うん!」


 二人の心がこうして解けたように、冷たくいがみあってた魔法少女たちもこうして少しずつ理解し合っていくことができるのかもしれない。

 温かい料理とみんなとの騒がしい談笑に、そんな小さな希望が胸に灯っていく。


杏子「結局あいつが話に出てきたせいで分け前減るじゃねえか、ここにいないくせに」

かずみ「…………」


 ただ、こっちの溝はまだ深いのかな~……って、思った。




567 ◆xjSC8AOvWI2018/12/25(火) 00:31:49.02rMwdvhr30 (3/4)

------------ここまで。次回は26日(水)夜からの予定です。


568以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/25(火) 00:36:07.42XrVeZ00e0 (2/2)

乙でした

マミが元に(?)戻って杏子が仲間になった、のか?
キリカと杏子の溝は深そうだ、流石食い物の恨みw



569 ◆xjSC8AOvWI2018/12/25(火) 23:18:06.03rMwdvhr30 (4/4)

---------*避難所にてクリスマス小話投下中*
https://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1539087062/


570 ◆xjSC8AOvWI2018/12/26(水) 22:09:46.26V47tosXV0 (1/3)


――――……
――――…


織莉子「…………」


 静寂の部屋、目の奥に映るは騒がしく楽しげな声。

 ……瞬間、彼女は薄い碧の瞳を鋭く絞る。



「――――……んにちわっ、お嬢さん?」


織莉子「!」






 ――――それは、また別の時間の別の場所だった。




571 ◆xjSC8AOvWI2018/12/26(水) 22:29:29.86V47tosXV0 (2/3)




 軽く舞うようなステップを踏むと、彼女は唯一人相の見える口元に薄く邪悪な笑みを浮かべる。

 しかし、それすらも彼女の本当の顔かはわからない。


「……何の用?」


 正体不明の女に、黒髪の守護者は平静を崩さず問いかける。

 目の前に居るのに眼中にないような、まるでお前のことなど興味がないとでも言いたげな目をそこに向けていた。


「まあまあ、そんなに睨まないでくれないかな。君にイイこと教えてあげにきたんだ」

「君の大切な人を狙っている人がいるよ」

「!」


 その言葉を聞くと、守護者ははじめて目の前の人物を目に入れる。……その言葉には、心当たりがあったから。



「――……美国織莉子。君の大切な人を殺さんとする魔法少女の名だ」





572 ◆xjSC8AOvWI2018/12/26(水) 23:42:32.79V47tosXV0 (3/3)





 大きな粒をした汗が、その陶器のように更に血の気をなくした白くなった頬を一筋伝った。




――――
――――


 豪勢な夕食を終えて杏子も帰ると、部屋の雰囲気はどこか寂しくなったように思えた。

 でも、わたしにはマミがいる。これまでと変わらない……いや、これまでともまた違った道を歩もうとするマミが。

 そう思ったらなんだかこの静かになった空気にも落ち着いた気分になった。


かずみ「……ねえ、マミ。わたしも自分のこと話そうと思うんだ」

マミ「どうしたの? 急に」

かずみ「わたしも弱いから誰にも言えなかったことがあったんだ」

かずみ「でも、今日マミや杏子を見てたら、苦しいことずっと一人で抱え込んでるのってやっぱりダメだなって思って……聞いてくれる?」

マミ「……ええ、もちろん。話してくれる決心がついたのなら」

かずみ「わたしの本当の正体はね……――――」



 キュゥべえから聞いた、今までわかっている自分のことを全部話した。

 わたしが魔女だってことがバレたら嫌われちゃうかもって思ってた。自分でも嫌だったから、言いたくなかった。

 そうやって明るいところだけを見せようとして……。でも、わたしもちゃんとマミのこと信じるから。


 きっと、甘えたり弱音を吐くのだって強さなんだ。




573 ◆xjSC8AOvWI2018/12/27(木) 00:08:38.623HFiGV9c0 (1/3)



マミ「……そうだったの」


 マミはわたしの話を静かに聞いてくれた。

 わたしの本当の『成り立ち』を。わたしがどうやって、『何』を材料にして造られたのかを――ついにすべて知られてしまった。


かずみ「前にわたしが『造られた』存在だってことは言ったよね。そういうことなんだ」

かずみ「今まで隠しててごめん。マミはそれがわかっても一緒にいてくれる? 嫌わないでいてくれる?」

マミ「当たり前じゃない。だって、私の目の前にいるのは魔女なんかじゃないわ。ミチルって人でもない」

マミ「私だってソウルジェムが濁れば魔女になるのは同じ……」

マミ「……でも今までの思い出まで否定したくないから、これからの未来も信じてみようと思うの」

マミ「私もかずみさんも、そう簡単に魔女になんてならないって」

かずみ「うん。わたしもそう思ってる」



 わたしもやっと、心から思うことができた。



かずみ「信じてればきっと大丈夫だよ。希望を持っていれば絶望になんて負けないから」




―15日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:5個
・[20/100] ・[100/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv4]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

杏子
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv20]


574 ◆xjSC8AOvWI2018/12/27(木) 00:09:34.643HFiGV9c0 (2/3)

-----ここまで。次回は28日(金)夜からの予定です


575 ◆xjSC8AOvWI2018/12/27(木) 02:39:56.413HFiGV9c0 (3/3)

-------避難所更新&安価出しました。サツバツとした本スレの後の甘ったるい口直しにどうぞ。


576 ◆xjSC8AOvWI2018/12/28(金) 22:30:36.73t+jLups80 (1/2)

――――――


マミ「おはよう、かずみさん」

かずみ「マミおはよう。朝ごはんもうできるよ! 座って座って」


 食卓に料理を並べ、マミとテーブルを挟んで座る。

 朝食の準備が整うと、他愛もない会話をしながら食べはじめていた。


マミ「昨日は本当においしかったし、楽しかったわ。佐倉さんとも久しぶりにちゃんと話せて。ありがとうね」

かずみ「うん! あ、パンドーロも忘れずに持っていってね」

マミ「そうね。また釣れるかもしれないわね。……今日は訓練するでしょう?」




 ――――昨日、パーティの最後にこんな会話をしたことを思い出す。


かずみ「これからどうしようか?」

杏子「これから?」

かずみ「マミと仲直りしたってことは、杏子もわたしたちの仲間になってくれるんでしょ!?」

マミ「グリーフシードも手に入ったし、そろそろ訓練もしたほうがいいわね」

マミ「今のままじゃまたかずみさんを狙う魔法少女に襲われた時に対抗できないかもしれない」

マミ「前言ってたでしょう? かずみさんの力について。まだ調べたいことがあるって……」

杏子「……あぁ、あの時のか。たしかにまだわかってない力があるみたいだな」

杏子「それが解決するまでは、訓練には付き合ってやってもいいよ」

かずみ「わたしの力……」


 杏子も納得するように言った。

 杏子はあの時一緒にそれを目の当たりにしている。




577 ◆xjSC8AOvWI2018/12/28(金) 23:26:45.37t+jLups80 (2/2)



かずみ「杏子も呼ぶんだよね」

マミ「正確には、佐倉さんも携帯を持っていないから『来てくれる』ってところね」

マミ「佐倉さんも場所は知っているわ。前に一緒に訓練してたことがあるから」

かずみ「そっか」


 今日からは杏子が来てくれる。キリカのことも、もし来てくれるなら受け入れる気はあるようだ。

 前と同じ『訓練』なのに、織莉子やあすみとやっていた頃とは面子も雰囲気もずいぶん変わったように思えた。


 ……これからもうマミはあの二人に関わらないつもりなんだろうか。


かずみ「でも、あの魔法少女をなんとかしないとってこともそうなんだけど、まどかのことはいいの?」

マミ「そうね…………それもまた考えないといけないわね」


 まどかを狙う人をなんとかしても、それだけじゃまだ契約する未来は残ってる。

 それにこのままなら、その魔法少女のことが解決した途端に織莉子が何をするかわからないんだ。


かずみ「じゃあ、マミ。またあとでね」

マミ「ええ。行ってくるわね」



 ――……そんなことを考えながら、ひとまず学校に行くマミを見送った。





578 ◆xjSC8AOvWI2018/12/29(土) 00:19:19.80DGfwoHzz0 (1/7)


――――
――――
放課後・土手



 放課後の時間、マミと一緒に訓練場所に向かうと杏子はすでに土手で待っていた。

 約束してたみんなが揃って、さっそく魔力の衣装に身を包む。


 ……軽く力を込めるようにぎゅっと握った手に目を落とす。マミと杏子もわたしを見ている。

 今日のメインはわたしのようなものだ。

 でも、今まで使おうと思って使ってきた魔法と違って、『どうしたらいいか』がまったくわからなかった。


杏子「どーだ? ニセモノヤローから逃げてきた時のは使えんのか?」

マミ「何故か髪が伸びていた魔法よね。出来そう?」

かずみ「うーん……」



1もう少し粘る
2再生成のほうの新技を試す
3再生成・『髪が伸びた魔法』とはまったく違う魔法を試す

 下2レス


579以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/29(土) 00:28:27.81grDSVnIYO (1/5)

1
ところでキリカは来てないのかな?


580以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/29(土) 00:29:08.687jqvxkfQ0 (1/3)

1でうまくいかなかったら3

この間テレビで見た魔法を気晴らしにやってみる「テレポート!」


581 ◆xjSC8AOvWI2018/12/29(土) 00:38:29.41DGfwoHzz0 (2/7)



かずみ「……ムリ! わかんないものはわかんない!」

マミ「その時の感覚とかまったく覚えてないの?」

かずみ「あの時は夢中だったんだよ」

マミ「その時は『逃げるため』に使ったのよね。どうしてそれで髪が伸びたのかを考えてみるのはどうかしら?」

杏子「どうしてなんだよ?」

かずみ「わたしも知らないよ!」



1その時の状況を再現してみるのは?
2もっと考える

 下2レス


582以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/29(土) 00:42:22.49grDSVnIYO (2/5)

2かな?


583以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/29(土) 00:44:52.387jqvxkfQ0 (2/3)

2


584 ◆xjSC8AOvWI2018/12/29(土) 01:09:14.25DGfwoHzz0 (3/7)



 うーんと唸りながらもう一度頭を捻ってみる。


 ……わたしは今まで魔法を考えて使ってなかった。あの時も咄嗟だった。

 でもきっとなにか理由とかつながりはあるはずなんだけどな……。

 実際に、“速く逃げられた”のと関係ないはずの“髪が伸びる”っていう不思議現象がおきてるんだし……。


かずみ「……速くする魔法、だったんじゃないかな」

マミ「速くする魔法? 呉さんの逆みたいな?」

かずみ「すごく極端な話だけど……」

杏子「ちょっと速くした程度でそんなに伸びるかよ。速くするにしたって、歩いて大体せいぜい数十分の距離だぞ?あの伸び方は年単位はあるぞ」

マミ「でも歳までは取ってないでしょう?」

かずみ「速くしたのは時間じゃなくて、身体だけってこと?」

杏子「わかるのはありえないくらい速く動いたってだけだな」


 イメージとしては、身体を活性化させる魔法ってことでいいのかな?


かずみ(……でも、なんかむずかしいな。考えたら余計に使えなくなりそーな……)



1再生成・『髪が伸びた魔法』とはまったく違う魔法を試す
2その時の状況を再現してみるのは?

 下2レス


585以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/29(土) 01:14:12.71grDSVnIYO (3/5)

2


586以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/29(土) 01:15:19.087jqvxkfQ0 (3/3)

1


587 ◆xjSC8AOvWI2018/12/29(土) 01:21:10.32DGfwoHzz0 (4/7)


・成功判定

 下1レスコンマ判定
0およびゾロ (選択肢から)安価指定可能
1~20 習得フラグ


588以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/29(土) 04:24:08.71grDSVnIYO (4/5)

成功!


589 ◆xjSC8AOvWI2018/12/29(土) 21:42:06.07DGfwoHzz0 (5/7)




 あれからほかにも別の魔法を色々試してみたけど、ダメだった。




杏子「あん時の状況を再現してみるのはどーよ?」

マミ「いいかもしれないわね」

かずみ「きゃーっ!」


 ……ひたすら武器と魔法で襲い掛かってくる二人から逃げ回る鬼ごっことかもしたけど、目ぼしい成果をあげることはできなかった。

 ただ、普通に訓練らしくちょっと体力はついたかな。攻撃の気配とか、回避のコツとかが掴めてきた気がした。



★[格闘Lv4]→[格闘Lv5]




590以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/29(土) 21:44:15.37grDSVnIYO (5/5)

そろそろ魔翌力コントロールも上げた方がよくないかな?


591 ◆xjSC8AOvWI2018/12/29(土) 23:09:47.15DGfwoHzz0 (6/7)



かずみ「やっぱりもっと明確な目的意識がないと使えないのかな?」

マミ「そうなのかもしれないわね。魔法少女の力の源は『願い』だから」

マミ「……でもかずみさんには願いがあるわけじゃないのよね」


 杏子はどういうことかと訝しむような顔をしてた。

 そういえばまだ杏子には言ってなかったっけ。


かずみ「わたし、魔法で作り出された存在なんだ」

杏子「は?」

かずみ「記憶喪失じゃなかったんだって。わたしはミチルから作り出されたけどミチルじゃない」

かずみ「だからキュゥべえとも契約してないんだ。生まれた時から魔法が使えるの」

杏子「……よくそんなこと平気な顔して言えるな」


 杏子は驚いてたけど、同時に感心もしていた。

 でもわたしだって最初から受け入れられてたわけじゃない。

 わたしが受け入れられたのは、マミやキリカ、色んな人がいてくれたからだ。


かずみ(もう少しなにか……手がかりがあれば)




592 ◆xjSC8AOvWI2018/12/29(土) 23:56:43.85DGfwoHzz0 (7/7)



マミ「今日の訓練はこのくらいにしましょう。あまり一度に根を詰めすぎても好転しなさそうね」

杏子「まああたしらもさすがにかずみ追いかけ回して疲れてきたしな」

かずみ「絶対逃げてたわたしのが疲れてると思うんだけど……まあ力にはなったからいいや」

杏子「もう解散か? ならあたしは帰るぞ」

マミ「私達も帰りましょうか」

かずみ「待って!」


 家の方向に歩き出したマミを止める。


かずみ「帰る前に寄りたいところがあるの」

マミ「……?」




593 ◆xjSC8AOvWI2018/12/30(日) 23:29:25.602DF/Azzg0 (1/2)




 その後、わたしたちが向かったのは織莉子の家だった。



――――
――――
美国邸


 チャイムを押すとすぐに織莉子が出てきて、わたしたちを迎え入れてくれた。

 しかし、織莉子は目を逸らしたまま口を利かなかった。あの時みたいに客人を迎える紅茶もない。

 やがてこれ以上の沈黙は無駄と判断したのか、織莉子が尋ねてくる。いつもより少し淡々とした口調だ。


織莉子「……何をしにきたの? 今日は何も連絡は無かったはずだけど」

かずみ「急に押しかけてごめんね。でも話したいことがあったから」


 いや、用があったのはわたしだけだ。マミにはついてきてもらっただけ。


かずみ「まどかのことについて話し合おうと思って。その作戦会議」

織莉子「そう、まだ私と組むつもりなのね?」

マミ「かずみさん、それは……」

かずみ「もちろんだよ! 世界を守るために、わたしも協力する! わたしもこの世界好きだもん!」

かずみ「一緒にこの世界のみんなのこともまどかのことも助けてあげよう!」



594 ◆xjSC8AOvWI2018/12/30(日) 23:57:23.272DF/Azzg0 (2/2)



 織莉子は驚いた顔をする。

 しかし、それからまた呆れたように肩を落とした。


織莉子「何を言うかと思ったら…………世界も鹿目まどかも救うですって? 」

織莉子「そんなだから、本当はもっと内密に動くつもりだった。貴女なんて仲間にしたくなかったのよ」

織莉子「マミも同じ考えなの? これも貴女のせいで」

かずみ「え……」

織莉子「世界を救うための最善手が鹿目まどか、及びその守護者の始末なの。彼女を狙う魔法少女を倒してそれを行う。それが今私たちのすべきことよ」

織莉子「どちらも救うなんて現実的じゃない。どうしてそんなこともわからないの?」

織莉子「甘い事を言ってどうにかなると思っているの? まるで子供の我儘だわ」

織莉子「だから私は貴女が嫌いだった……! 私の仲間になると言うのなら、その覚悟くらいしなさい。私はとっくに覚悟をした」


 織莉子は今度こそ冷たい眼で睨んでくる。

 その視線は研ぎ澄まされた刃のように鋭く、向けた人を圧倒するほどの冷酷なオーラと恨みのようなものを醸し出していた。


 でもわたしは引かない! そこに同じくらい強い意志を込めて見つめ返す。

 すると織莉子はわずかにみじろぐ。




595 ◆xjSC8AOvWI2018/12/31(月) 00:50:27.21nwZpV9pG0 (1/6)


かずみ「織莉子は……たとえば“将来大犯罪者になる”って人がいたとして」

かずみ「生まれたばかりのその子のことを殺そうと思うの?」

織莉子「その例えならそうでしょうね。自分の意思で悪質な犯罪を犯すような人格も、育つ環境も、そう簡単に変えられるものじゃない」

織莉子「でも、鹿目まどかは生まれたてですらない。もう猶予は残されていないの」

かずみ「まどかとは話せるんだよ。 織莉子はまどかがどんな人か知ってるの? 悪い人なの? 自分の意思で世界を滅ぼしちゃうほど?」

織莉子「そうだとしたら貴女はどうするの?」

かずみ「それでも話して思い留まってもらう。無理かもしれないけど最初からあきらめたりしない」

かずみ「織莉子がもしそれすらも知らないなら――まずは確かめてみようよ!魔女になるまどかだって被害者なんだよ」

かずみ「何も知らずに殺すなんて、そんなのって後味悪いよ。だって、無事終わったらたくさん美味しいもの食べてパーティするんでしょ?」

かずみ「またみんなでお茶会しよう?」


 ――マミと紅茶のことを話す織莉子は楽しそうだった。

 わたしにはちょっとついていけなくなるくらい。

 あの光景を思い出して懐かしさが滲んだ。


織莉子「……貴女何を勘違いしてるの? あぁ、まだあの根拠もない絵空事のことを言っているのかしらね」

織莉子「だったら私、紅茶が好きなわけじゃないって言わなかったかしら? 私はただ“詳しいだけ”」



596 ◆xjSC8AOvWI2018/12/31(月) 01:10:51.57nwZpV9pG0 (2/6)


織莉子「わかっているの!? 貴女は最初から騙されていたのよ。私に騙されて、裏切られたの。そんな私のことをまだ……」

かずみ「あのね……織莉子が嘘ついてるのはわかってたよ。あの時、最初に一緒にパトロールに行った時から」

織莉子「……なんですって」


 織莉子の目は、冷たい眼差しから徐々に感情の籠った眼差しへと変わっていた。

 凍てつくような冷たさの奥にあったのは激情。ともすれば狂気にも思えるようなそれが剥き出しに見えてくる。


かずみ「何か無理してるって気づいてたの。織莉子とはせっかく友達になったんだ。それなのにこのまま見捨てたくないんだ」

かずみ「私はまだ織莉子に本当の笑顔をさせてあげられてないのに……!」


 作られた笑顔の奥にあったのは?

 今のわたしにはその答えが少しだけ見えてきたけど、すべてをわかってはあげられなかった。


マミ「ねえ、美国さん。あなたは本当はかずみさんにも知らせずにもっと内密に動く予定だったって言ってたわよね」

マミ「それなのに他人に知られるリスクを冒して神名さんやかずみさんに話したのはどうして?」

マミ「……それほど余裕がなくなっているからじゃないの?」

織莉子「…………そうね」




597 ◆xjSC8AOvWI2018/12/31(月) 01:41:45.04nwZpV9pG0 (3/6)


織莉子「神名あすみに話したのは理想的な協力者の資格を満たしているからよ。マミも駒として扱えると思った」

織莉子「……でもかずみ。貴女はいらなかった。私の駒じゃなくなったキリカも」

織莉子「駒を降りられた時点ですでに警戒心を持たれていたから難しいかもしれないけれど、それでもリスクを考えればすぐにでも殺すべき人だった」

織莉子「でもそれじゃ、今までの私のやり方じゃもう未来が見えなかったのよ!」

織莉子「だから……最悪みんなにバレても、いざとなったらあいつに立ち向かってくれそうな魔法少女の『数』がどうしても必要だった」

かずみ「それでもあきらめちゃダメなんだよ! 今までのやり方でダメだったなら違うやり方を試せばいいじゃん!」

かずみ「そのためにわたしはここにきたんだ!だって織莉子とみんなの目的は同じなんだよ?」

織莉子「……違う、貴女は何もわかってない」


 わたしたちがここに来た時から相当追い詰められていたんだろう。

 どん詰まりの状況に陥った織莉子は見開かれたその瞳に絶望の色を映していた。ついに剥き出しの『本性』が暴れ出す。


 ――ドン、と拳を叩き付ける大きな鈍い音が響く。


織莉子「このままじゃアイツに世界を奪われてしまうのよ? どうしてそれなのに貴女達はわかってくれないの!」

織莉子「みんなそうよ。私の手から離れていったキリカも!あんなの所詮、私に敗北したただの駒のくせに!」

織莉子「鹿目まどかも救う? ……そんなこと考えたこともなかった。考えたくもなかった」

織莉子「あの子がもし良い人だったら? それでも防げなければ殺すしかないのに」

織莉子「……誰も『私達』のことを理解してくれない。だから私が守るしかないの。私の世界を。その世界に鹿目まどかは不要な人。それだけだわ」


 テーブルを叩いた弾みに空のカップが転げ落ち、音を立てて割れていた。

 織莉子はそれを視界の端に捉えると、さきほどの狂気から一転、悲しげな表情をする。


かずみ「…………そっか」

かずみ「織莉子は、まどかが『もし良い人だったら』殺せなくなってしまうから怖かったんだね」

かずみ「だから考えようとしなかったんだ。やっぱり織莉子は悪い人じゃないよ。でもそれだって“逃げ”だよ?」



598 ◆xjSC8AOvWI2018/12/31(月) 02:17:11.15nwZpV9pG0 (4/6)


織莉子「これでも私を『良い人』ですって?」

織莉子「嬉しいなんて思わないわ。私は悪逆の道でも構わないと覚悟をしてきたのよ」

織莉子「……紅茶に詳しいのもそういう『環境』があった。ただそれだけ」

かずみ「逃げたり諦めたりするのは覚悟じゃないよ」

かずみ「わたしは織莉子のこと、根っから悪い人とは思わないけど……思ってたよりも『弱い人だったんだ』って思った」


 織莉子は衝撃が走ったように言葉を失い、息を飲む。

 ……それから驚きの表情が怒りへと変わっていく。


織莉子「私が……弱い?」

織莉子「『悪人』なんかより、そんなふうに言われることの方が不愉快だッ!」

織莉子「どうしてお前なんかにそんなことを言われなければいけない!? そんなはずはない! 私はいつだって……!」


 ――――その時、無防備にしゃがみこんだわたしの身体に伸ばされた織莉子の手がわずか数センチというところで空中に止まる。

 この場に湧き起こった二つの魔力。……手を上げようとした織莉子をマミのリボンが縛り上げていた。


マミ「言っておくけど……このまま武器を出したりなんてしたら私もこれ以上を考えなきゃいけなくなるわよ?」




599 ◆xjSC8AOvWI2018/12/31(月) 02:29:52.78nwZpV9pG0 (5/6)



 わたしは床の破片を『再生成』の魔力で組み直す。

 ……鈴の音が響くと、壊れたカップは元に戻っていた。それを拾って織莉子の目の前に差し出した。


かずみ「はい。大事なものなんでしょ」

織莉子「……!」

かずみ「織莉子の言う『私達』……守りたい人のものかな。もう落としたりしないでね」

織莉子「…………もういないのよ。お父様は、もう……」

織莉子「守れなかったの」


 もう抵抗の意思は消えていた。

 たとえ戦ったとしたって事態は好転もしない。織莉子も無意味なことはわかっていたはずだった。

 様々な感情を映した目から今度は涙が伝う。いつのまにかリボンも消え、支えるものもなくなった織莉子はその場に崩れていた。



【※今回はマミ視点でも安価可能です。1や指定がない場合はかずみになります】
1織莉子の見た未来について教えて
2自由安価

 下2レス


600以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/31(月) 03:14:44.31YvKHBfdU0 (1/1)

1


601以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/31(月) 03:43:30.939S2KzgbCO (1/1)

1+織莉子に頼れる人はいなかったかどうか聞く

ねぇ、織莉子。弱さは悪い事じゃないんだよ?
織莉子が守りたかった大切な人を失ってから何があったかはわからない。
でも、織莉子のことを気にかけて声をかけてくれてた人はいると思うんだ。
そんな人はいなかった?



602以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2018/12/31(月) 21:42:24.33opdSy8yD0 (1/1)

スレ主、ここ最近〆で次の予定が抜けてるので書いてほしいです
目安がないのは困るので、お忙しいかと思いますがよろしくお願いします


603 ◆xjSC8AOvWI2018/12/31(月) 23:23:53.51nwZpV9pG0 (6/6)

---------
更新しようと思ってたのが気付いたら夜になってしまった…
今日も深夜にちょっと投下すると思います


604 ◆xjSC8AOvWI2019/01/01(火) 00:50:55.84V/mOuVbX0 (1/9)


かずみ「ねぇ、織莉子。弱さは悪い事じゃないんだよ?」

かずみ「織莉子はお父さんのことが好きだったんだね」

かずみ「家族を失うって辛いと思う。わたしには家族がいないから想像しかできないけど……信じてた支えがなくなるってことだから」


 ……微笑みかけながら話すわたしを、織莉子は不思議そうな目で見上げる。


織莉子「どうしてそんなことを知りながら笑っていられるの? 所詮貴女が『作り物』だから?」

かずみ「…………」

マミ「美国さんッ!」

かずみ「お父さんがいなくなってから何があったかはわからない」

かずみ「でも、織莉子のことを気にかけて声をかけてくれてた人はいると思うんだ」

かずみ「わたしには居た。だから前を向いて笑えるようになった。わたしは造られた存在だけど、わたしの心は……作り物なんかじゃないよ」


 それを知った時は自分でも信じられずに迷ったと思う。

 でも今なら胸を張って言える。……それは、誇らしいことなんだ。


織莉子「……住む世界の違う貴女達は知らないでしょうね。私が世間からどんな目で見られているか」

織莉子「お父様は名の知れた議員だった。これまで私は才ある美国の娘として慕われてきたのに、父の汚職からその羨望の眼差しはすべて軽蔑へと変わったの」

織莉子「その『才』は自分で努力して得てきたつもりだったのにねぇ……他の人はそうは思ってくれてなかったのよ」

織莉子「まあ、そんな人たちの事はどうでもいいわ」



605 ◆xjSC8AOvWI2019/01/01(火) 01:37:22.29V/mOuVbX0 (2/9)


織莉子「私、お父様以外の家族は嫌いなの。ちなみに母もとっくに死んでるから。今テレビに出ている伯父さんは世間の同情を集め、葬式にも来なかった」

織莉子「今も周りには嫌がらせをする者が現れ、学校に行けば陰口が聞こえてくるのよ。そんな人いるわけ――――」


 諦めたような様子でただただ淡々と自分の置かれた“惨め”な状況を話していく織莉子だったが、途中でその言葉を途切れさせた。

 ――どこか自分の言葉に引っ掛かるところでもあったのだろうか?


 崩れ落ちたまま下を向く織莉子にわたしは手を差し伸べた。


かずみ「いなくってもわたしがなるから!」

かずみ「織莉子に必要なのは悪逆の道に進む覚悟なんかじゃないよ! 一緒にみんなを助ける仲間になろう!」

織莉子「……わかったわ。ありがとう」



 織莉子はついに、その手を掴む――――。





織莉子(本当にそんな温い考えが上手くいくの? いえ、どの道このままでも未来はないのだから…………)

織莉子(わざわざまた仲間になってくれるというのならせいぜい利用すればいい)

織莉子(でも……醜いところを曝け出して、否定されて、それでも手を取ってくれたのがわたしは嬉しかったの)

織莉子(そんな人が他にもいるかしら? “友達”ではないけれど――)



606 ◆xjSC8AOvWI2019/01/01(火) 01:59:29.56V/mOuVbX0 (3/9)



かずみ「ねえ、織莉子の見たこれからの未来について教えてもらってもいいかな?」

織莉子「……貴女や鹿目まどかを狙う魔法少女を倒しても、鹿目まどかには守護者が居る」

かずみ「守護者?」

織莉子「遠くないうちに、その人が私の事を殺しに来るでしょう」


 『殺しに』――その言葉に背筋にゾクッと寒気のようなものが走った。

 せっかく本当に友達になれそうなのに。



織莉子「既に私の計画はバレているの」





607 ◆xjSC8AOvWI2019/01/01(火) 02:14:44.72V/mOuVbX0 (4/9)




 ――――それから織莉子の家を後にし、わたしたちは今度こそ家路についた。



マミ「『仲直りしにいく』なんて言った時、驚いたのよ。まさか自分を裏切った人のことも許す気なんて」

かずみ「織莉子も言ってたとおり仲間は多いほうがいいよ。それに、隠してたとこがあっても友達だったんだから」

マミ「じゃあ、神名あすみのことは?」

かずみ「あすみちゃんか……」


 織莉子がグリーフシードを集めるのはあくまで目的があってのことだった。

 その目的に至る考え方と行動は到底許せなかったけど、話し合って解決することができた。

 対して、あすみは純粋に自分が得をするためだけに私たちを裏切っていた。


 それとは割り切って、あすみは自分に利益があることなら組んでくれるだろう。

 救世の計画に乗り気だったのも損得が理由だった。わたしたちの考え方に賛成してくれるかもその実現性によるだろう。

 ……あとは、それをマミが許せるかどうかだ。


かずみ「今度話しに行ってみようよ」


 マミはまだ織莉子のことも完全には信頼を置いていないようだった。


マミ「でも…………本当に彼女のことは信じられるのかしら?」




608 ◆xjSC8AOvWI2019/01/01(火) 02:45:28.03V/mOuVbX0 (5/9)


――――
――――



織莉子(私はマミが土壇場でかずみの側についたのは、神名あすみが私に協力すると言っておいてかずみにグリーフシードをやったせいだと思っていた)

織莉子(協力者としては理想的だったけれど、あの子は気まぐれが過ぎる)



――夜・『千歳』の家


あすみ「……ほら、そろそろ寝ないと。【ゆま】」

ゆま「うん」


 ゆまと呼ばれた小さい少女は素直にうなずく。

 あすみは少女が眠ったのを確認すると、こっそりとベッドから身体を起こした。


あすみ「さて、ちょっと片づけたら私も寝るか」


あすみ(……ウシ乳の奴、あれから何の連絡も寄越さないな。猶予はないんじゃないのか?というより、本当にこのままどうにかする気があるのか)

あすみ(その猶予すら相手に握られてるなら、完全に遊ばれてるようなものだ。そんなのは気に食わない)


あすみ「――――オイシイ話には乗っただけで、あいつに利用されてやるとは言ってない」

あすみ「私は紅茶は好きじゃない。特にあいつのは気取ってるみたいでムカつくんだよね」



―16日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:5個
・[20/100] ・[100/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv1] [格闘Lv5]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

杏子
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]


609 ◆xjSC8AOvWI2019/01/01(火) 02:47:02.80V/mOuVbX0 (6/9)

-------ここまで
次回は1日、多分夕方くらいから


610以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/01(火) 03:13:36.70V0gmc5BtO (1/1)




611 ◆xjSC8AOvWI2019/01/01(火) 20:11:29.73V/mOuVbX0 (7/9)

――――――
朝・マミの家


 マミは支度を整えて玄関の前に立ち、スマホを片手にたった今受信したメッセージを確認していた。


マミ「美国さんもう電車の中なのね」

かずみ「それでなんて?」

マミ「放課後には来るんですって。その後どうするかは置いといて、私もその時には帰らないとね」

かずみ「なんかお土産あるかな!?」

マミ「どうかしら……」


 今日の放課後には織莉子もうちに来る。

 まどかを殺す計画を知られて命を狙われている以上、自分の家にいるよりはうちにいるほうが安全だろう。


 今まで嫌がらせを受けながらも平常通りに登校し“いつも通り”を装っていたのは、素体の存在、異常事態をキュゥべえに悟られないためらしい。


 といっても命を狙われてはさすがに平常通りを続けてはいけなくなった。


、しかし鹿目まどかが学校に通っているなら守護者も放課後までは動けない。

 それならばまだいつも通りに学校には行ってからにする……と言っていた。




612 ◆xjSC8AOvWI2019/01/01(火) 21:21:17.17V/mOuVbX0 (8/9)



マミ「じゃあ、私は行ってくるわね。お留守番お願い」

かずみ「うん、いってらっしゃい」


 マミがこちらに手を振りながら玄関の外に消えていき、扉が閉まる。


かずみ(居候が増えたらこうして見送る人も増えるのかな?)


 それはそれで楽しそうだけど理由が理由だけに喜んでいられないかな。

 閉まった後の扉を見ながら、そんなことを考えていた。



――――
――――
見滝原中学校 教室内


マミ「はい。今日はちゃんと来てるのね」

キリカ「?」


 唐突に自分を呼ぶ声と目の前のプレゼントのような物に、キリカは不思議そうに顔を上げる。

 差し出されると一応受け取ったものの、まだどうしていいかわからないようにラッピングを見回していた。




613 ◆xjSC8AOvWI2019/01/01(火) 23:20:39.31V/mOuVbX0 (9/9)


キリカ「またかずみから? そりゃ嬉しいけどもらえる理由がよくわかんないっていうか……」

マミ「……それは一応私から。理由は『お礼』や『お詫び』で納得してくれるかしら?」


 マミはわずかに気まずそうにもじもじとしている。

 いつもきっぱりとした言動で仕切ってきたマミにしては珍しい姿だ。


キリカ「じゃあ開けるよ。……わあ、クッキー?」

マミ「昨日はクラスメイトから渡してもらったでしょう? その分だとちゃんと手元に渡ったみたいだけど」

キリカ「……だって、他にいくとこないし」

キリカ「もうサボるのもやめた。学校がキライなわけじゃないよ。ただちょっとだけ気が向かなかっただけ」

マミ「そういえば、もう訓練はやる気はない? 魔女狩りのことももう制限しないわ」

キリカ「結局織莉子とはどうなったの?」

マミ「一応まだ仲間をやってるわ。でも、これまでとはやり方を変えるって」

マミ「あなたの言う通り、騙されてて裏切られたんだけどね……かずみさんが説得をしたのよ」

キリカ「……どーでもいいよ。死なないうちには狩りに行くから心配しないで」


 一応用件は達成して、話したいことは話せた。

 マミは教室を去っていく。


マミ(やっぱりむずかしい……か)



614 ◆xjSC8AOvWI2019/01/02(水) 00:17:22.526qxYbQY+0 (1/9)

――――
――――
放課後



かずみ「織莉子、いらっしゃい!ねえ、なにかお土産は?」

織莉子「何もないわ。対価が欲しいなら家賃を渡してもいいけど……」

マミ「べ、別にそこまでしてもらなくても! そんな何万もかかるわけじゃないんだから!」

かずみ「お金とかじゃなくってさ……せっかく集まったんだからみんなでおやつ交換とかしたら楽しいかなって思っただけだよ」

かずみ「あっ、でもいつものとこ行かないと杏子が待ちぼうけしてるかも!杏子も連絡手段持ってないから!」

マミ「そうね……」



1織莉子も訓練に連れていく
2織莉子には待っててもらって訓練
3杏子もここに連れてくる
4自由安価

 下2レス


615以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/02(水) 02:28:16.94y0H0y7kzO (1/2)

訓練馬車に着いたら自分はキリカを探しに行く
見つからなかったらあすみのとこに行ってみる



616以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/02(水) 06:41:30.53PuSJnl9x0 (1/2)


織莉子に学校はどうだったか、声を掛けてくれる人はいたかどうかを聞いてみる


617以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/02(水) 09:24:46.61y0H0y7kzO (2/2)

↑↑ですが1が抜けてました
あと出来ましたら↑も追加をお願いします


618 ◆xjSC8AOvWI2019/01/02(水) 14:11:08.216qxYbQY+0 (2/9)

----夜再会


619 ◆xjSC8AOvWI2019/01/02(水) 21:13:39.566qxYbQY+0 (3/9)



マミ「美国さんは外に出さないほうがいい?」

かずみ「うーん、でも織莉子だけ残しておくのも危険かも」


 杏子には織莉子のことを話してない。

 計画のことはちょっとだけ話したけど、ちゃんと話して挨拶もしたほうがいいかな――。


かずみ「今日の訓練、杏子にも会わせたいから織莉子も一緒に来て!」

織莉子「わかったわ。いつもの土手に行けばいいのね?」

かずみ「うん、いざとなったら私たちも守るからさ。おやつタイムはそれからにしよっか。杏子もとっても食いしんぼうなの」


 ……織莉子は大体納得した様子だったけど、家を出る前にどこか悩むように疑問を呟いた。


織莉子「かずみとどっちのほうが……?」

マミ「そうね……どっちもどっちじゃないかしら……」


かずみ(なんだ、そういうことか……)


 わたしたちはみんなで土手に向かった。




620 ◆xjSC8AOvWI2019/01/02(水) 21:38:30.136qxYbQY+0 (4/9)



 その場所にはすでに杏子が来て待っていた。


杏子「……そいつは?」

かずみ「紹介するね。わたしたちの仲間の織莉子」

杏子「前に話してたヤツか……」


 杏子は織莉子のことを見定めるように見る。多少警戒しているようだ。

 織莉子はそんな杏子の目の前に出る。


織莉子「美国織莉子です。……よろしくお願い致します」

杏子「……あぁ、よろしく」


 まだ若干硬い雰囲気だ。でも、そのほうがいいんじゃないかと思う。

 だって私は、織莉子の嘘の笑顔を知ってるから。


かずみ「緊張しなくていいよ! 一緒に訓練しよ!」

杏子「それより気になることがあるんだよ。世界を救う話はどうなった?こいつが情報元なんだろ」

織莉子「話の真偽を疑っているのならその話は本当よ」



621 ◆xjSC8AOvWI2019/01/02(水) 21:58:42.956qxYbQY+0 (5/9)


かずみ「杏子にもそのことで一緒に手伝ってほしいんだった。杏子はもちろん手伝ってくれるよね?」

杏子「そりゃマジなら世界と一緒に滅びたいわけねーけど。使命がどうとか人助け以前の問題だし……――」

かずみ「ね? みんな手伝ってくれるでしょ?」

かずみ「じゃあわたし、ちょっと他の人にも仲間を呼んでくるよ! みんなはさき訓練はじめてて!」


 みんなにそう言い残すと、わたしは街のほうに走り抜けていった。


 ……そしてこれはその後の取り残された人たちの会話。




杏子「……で、アンタは何ができんの?」

織莉子「単純な遠隔操作可能な飛び道具と予知の魔法を少々」

マミ「美国さんは前から私が見てたから。前の続きからやりましょうか」



622 ◆xjSC8AOvWI2019/01/02(水) 22:05:11.456qxYbQY+0 (6/9)

----【訂正】
かずみ「じゃあわたし、ちょっと他の人にも仲間を呼んでくるよ! みんなはさき訓練はじめてて!」 ↓
かずみ「じゃあわたし、ちょっと他の人も呼んでくるよ! みんなはさき訓練はじめてて!」
------------


623 ◆xjSC8AOvWI2019/01/02(水) 22:11:59.496qxYbQY+0 (7/9)

――――


 繁華街の通りを駆けて周りを見回す。

 しかし知り合いの姿はない。いつもだったらこのあたりをうろついてそうなキリカも見かけなかった。


かずみ「あれ、いないや……」

かずみ「――――まあいいや、もう一人呼ぶつもりだったし!」


 再び走り出して、あすみの――『千歳』の家を目指す。

 家の前に着くとインターホンを押してみた。


かずみ「ごめーんくださーい」

あすみ『あら、アンタが来るなんて。何の用?』


 機械越しに声が聞こえてくる。


かずみ「今一人?」

あすみ『……一人じゃないけど』

かずみ「誰かいるんだね。もしかしてキリカがいる?」

あすみ『違うよ。アンタには関係ない人だ。それよりわざわざアンタが訪ねてくるのはなんのつもりかって聞いてんだけど?』

あすみ『この前騙された意趣返しか説教なら受け付けてないから』

かずみ「そんなことじゃないよ」



624 ◆xjSC8AOvWI2019/01/02(水) 22:42:05.916qxYbQY+0 (8/9)


あすみ『……は?』

かずみ「今みんな集まってるから訓練場所に来てほしいんだ!あすみちゃんは救世の計画も知ってるし織莉子とも仲間でしょ?」

かずみ「たったさっき仲間も増えたから顔合わせしたほうがいいかなって」

あすみ『……意味はわかるけどアンタが来る意味がわかんないな』

あすみ『でもそういえばアンタは破壊的なレベルの能天気のお人好しだったわ』

かずみ「のーてんき!?」

あすみ『ちょっとだけ待ってなさい』


 機械の声が一旦切れて、あすみの言葉を信じてしばらくその場で待っていると出てきてくれた。

 さっそく訓練場所へと向かって戻っていく。


あすみ「まさかとは思うけど、美国のことは許してまた組んでるってことでいいのよね。また騙されるとは思わないの?」

かずみ「ちゃんと話し合って仲直りしたから。前のやり方とは違うよ。もう目的のために誰かを傷つけたりしない」

あすみ「やっとなんか動き出せるの? その為に私の力が必要とか?」

かずみ「いや……まだあの魔法少女のことはわかってなくて、むしろ追い詰められてるところなんだけど……」



625 ◆xjSC8AOvWI2019/01/02(水) 23:08:07.376qxYbQY+0 (9/9)


あすみ「追い詰められてんの? 私の力が必要ってそっちの意味?」

かずみ「織莉子が今命を狙われてるんだ。まどかを守ろうとしてる人がいて、その人に織莉子のことがバレたからって」

あすみ「……そんなの自業自得じゃん。殺そうとしてたんだから」

あすみ「『人を呪わば穴二つ』って言葉知らないの?」

かずみ「で、でも今は違うよ!」


 今まで話しながら歩いていたが、土手に着くまでの途中であすみは一度足を止める。


あすみ「ねえ、私を連れてみんなで集まるって言うけどさ。マミは私のこと許してんの?」

あすみ「アンタが他人に激甘なお人好しなのはこの際ツッコまないけどさ、他の人も同じとは限らないんだよ?」

かずみ「それはそうかもしれないけど……でもわたしはできるだけみんな仲良くしてほしいって」

あすみ「さっきキリカの名前出してたけどさ、あいつの事は?」

あすみ「理由知ったところでどうかね。これから美国とつるむならアイツは誘っても来ないと思うよ。なあなあには出来ないよね」

あすみ「そんなに早く心変わりしてくれるとも思えないし」



1それでも信じる
2どうしたらいいかな?
3自由安価

 下2レス


626以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/02(水) 23:21:21.94w54kzGKJ0 (1/1)

2


627以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/02(水) 23:23:29.64PuSJnl9x0 (2/2)

2であすみの考えを聞いてから3

そんなに簡単に心変わり出来るとは私も思ってないよ
今まで信じてきた事、それが間違いだと判ってもその事実に向き合う事は簡単には出来ないと思う
人は誰だって弱いから・・・それを認めたくないから自分に嘘をついたり誤魔化したりする

でも、誰かが傍に居てはっきりとそれは間違いだって言い続けないといけないと思う
そのためにはまずは話し合って本音をぶつけ合わないと!
キリカは織莉子の事は許せないと思うけど、それでも心の整理は・・・ケジメはつけなきゃいけないと思うんだ


628 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 00:40:38.41BRwgNkSW0 (1/11)


かずみ「……どうしたらいいかな?」

あすみ「そんなの知らないよ。救いようのない奴は救えない。信用ならない奴なら見放せばいいんだ。そしたら安泰でしょ?」


 あすみに助言を求めてみるが、あっけなく突き放される。

 厳しい物言いだけど、あすみは自分の事も言ってるのかもしれない。

 彼女は苦い現実を突きつけるけど、それをどうにかしたいとは考えていないんだ。


 だったらわたしが考えないといけない……。

 織莉子と本当に分かり合うためには。みんなで仲良くしてもらうには。


かずみ「……たしかに、簡単に心変わりはできないかもしれないっていうのはわかるよ」

かずみ「でも間違ってるなら、誰かが傍にいて、はっきりとそれは間違いだって言い続けないといけないと思う」

あすみ「人によって何が正しいと思うかなんて変わるからね。相手はそれが正しいって思ってるんだと思うよ?」

かずみ「それでもちゃんと話せば変わることも分かり合えることもあるよ。そのためにもまずは話し合って本音をぶつけ合わないと」

かずみ「キリカは織莉子の事は許せないと思うけど、それでも心の整理は……ケジメはつけなきゃいけないと思うんだ」

あすみ「はぁ……わかったよ、アンタが学習とかしないってことは。元からわかってたことだけどさ」

かずみ「あっ、待ってよ!」


 あすみはため息をついてから足早に歩き出す。

 ……わたしも置いていかれそうになって慌てて後を追った。




629 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 01:15:10.59BRwgNkSW0 (2/11)


かずみ「みんなー、あすみちゃんも連れてきたよ」

あすみ「ヤッホー、ここにみんなが集まってるんだって?この私を省いて先にはじめてるとはいい度胸ねっ」


 わたしが土手に戻る頃には、三人は訓練をしていた。いつもの魔力を扱う訓練らしい。

 さっきのシリアスな忠告とは打って変わって、あすみは妙に明るいキャラを作ってそこに駆け寄っていく。


マミ「貴女……よく私の前に来られたわね」

あすみ「だって呼ばれてきてやったんだし?」


 マミの鬱陶しそうな目もお構いなしだ。開き直っているかのように図々しい態度。

 ……わたしはそれを見て、やっぱりあすみもわたしたちに『本当』なんてほとんど見せていないんだと思った。

 でもあすみは織莉子以上に掴みどころがない。


あすみ「気づかないほうが悪いんだから。でもこれから同じ目的に向かう仲間なんだから、力は貸してやるよ」

杏子「アンタも仲間か。じゃあ、揃ったんなら昨日の続きでもするか?」


 杏子はあすみのことは受け入れてくれそうだ。


1活性?の魔法の習得を試みる
2再生成・『活性?』とはまったく違う魔法を試す
3自由安価

 下2レス


630以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/03(木) 05:13:16.13xiCRnWN4O (1/1)

魔翌力コントロールの訓練


631以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/03(木) 08:10:16.47i+T6bUzT0 (1/5)

1や2をする前に魔力コントロールLV1だしね
上げれば補正付くかも?


632 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 20:01:32.35BRwgNkSW0 (3/11)



かずみ「うーん……でも、アレかあ……」


 前回やった時はまったく糸口が見えなかった。それを思い出すと、このまま同じことを続けることへの不安が沸き起こる。

 そもそも『続き』ってなにをすればいいんだろう?

 すると、みんなもわたしの迷いを察したらしい。


杏子「ニセモノヤローへの一番の対抗手段がソレなんだろ?」

マミ「ねえ、かずみさんも今日はこっちに加わってみる? 魔法も魔力の扱いが元なんだし、上手になれば出来ることも増えるかも」

かずみ「そうだね、じゃあそうしてみようかなー……」


 今日は織莉子と一緒に訓練をしてみることにした。


 人に教えられるレベルの魔法少女も増えている。

 織莉子の様子も隣で見ていると、前みたいに武器の水晶の扱いを考えた訓練のほかに、魔法の精度を上げることも試しているみたいだった。

 集中している織莉子の目には今何が見えているんだろう……。




★[魔力コントロールLv1]→[魔力コントロールLv2]

★[??]習得フラグ

★[????]習得フラグ



633 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 20:35:53.30BRwgNkSW0 (4/11)



マミ「魔力の扱いも慣れてきたわね。どう?」

かずみ「うん、まあ最初よりは」

杏子「で、なんか新技の手がかりは掴めそうか?」

かずみ「いやぁそれは全然だけど……」

あすみ「あれ、もうこんな時間。じゃー私はそろそろ帰らせてもらうから」


 あすみは一人時計を確認して、一足先に訓練を終わりにしようとする。


 ……帰る時も身勝手な振る舞いだった。


 日が落ちかけている。たしかにそろそろ切り上げるにはいい頃だろう。

 昨日も杏子が言ってたけど、格闘も魔力操作も一度に長くやりすぎると効率が下がってしまう。

 特に今は消耗しきってたらまずい事情があるわけで――。


マミ「まったく本当に自由気ままよね……」

杏子「まあでも、そろそろいい時間なんじゃねーの。あたしも腹減ってきたしな」


 杏子は杏子でまた勝手で、いつのまにか持ってたお菓子を食べ漁って空腹を満たそうとしていた。



634 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 21:02:24.12BRwgNkSW0 (5/11)


かずみ「あっ、いいな!」

杏子「仕方ないな、ほらよ」


 わたしも羨望の眼差しを向けてねだって杏子のお菓子を分けてもらう。

 『お茶会』というほど優雅じゃない、小さなおやつタイムがここではじまっていた。


 ……最早演技の必要もなくなった織莉子の見る目は、“呆れ”だった。


織莉子「いつのまにかおやつの時間が始まってしまったけど……私たちも帰ります?」

マミ「そうね……ところでまた何か危険な予知は見えてない?」

織莉子「さっきも訓練中に使っていたけれど特には……」


 あすみが歩き出す。杏子も『そろそろ行くか』とお菓子を持ったままどこかへ行こうとする。

 最後に、私達もさっきまで訓練をしていた場所に背を向けて道に向かおうとする。

 わたしも少しだけ遅れてそれに着いていこうとするが、その時何かものすごい“イヤな予感”がした。


かずみ(…………え)


 何が見えた気がした。それは理由のあるイヤな予感。

 その光景が、確かに“自分たちがこれから見ることになるもの”だとわかりきっているような――――。




635 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 21:20:01.77BRwgNkSW0 (6/11)



マミ「どうしたの? 帰ったらまた紅茶淹れて何か作るから行きましょうよ」

かずみ「あ、うん。……本当に大丈夫なんだよね」

マミ「美国さんも特になにも視えなかったって言ってるんだし、大丈夫でしょう」


かずみ(じゃあ気のせいかな……?)


 彼女の予知はしばしば、自分にとって重要な破滅のきっかけとなる未来を映さない。

 そんな特性はわたしは知らなかったけど、意識して特定の未来を探るには十分に信頼の出来る精度を持っていた。




1杏子を呼ぶ
2あすみを呼ぶ
3このまま帰る

 下2レス


636以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/03(木) 21:28:47.09jpkYcwBE0 (1/1)

1


637以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/03(木) 21:34:17.28i+T6bUzT0 (2/5)

2


638 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 22:03:53.31BRwgNkSW0 (7/11)



 わたしは走り出していた。もう随分と離れてしまった姿を追って。


かずみ「あすみちゃん!」

あすみ「……何?私早く帰りたいんだけど。『お茶会』とかくっだらないことなら勝手にやっててくれる」

かずみ「そうじゃなくて……」

あすみ「じゃあ何さ」


 一番に帰ろうとしていた彼女。

 呼び止めてから焦れたようなイライラが伝わってくる。


かずみ「……マミとも話し合ってよ」

あすみ「だから許さないっつってるモンは無理だって。あすみが謝る気もないし」

かずみ「……」

あすみ「あと一人だけふざけたすんの呼び方やめてよね。私のほうが格上なんだからさぁ。実質歳もアンタ赤ちゃん同然だっけー?」

あすみ「私の事“ちゃん付け”していいのは私だけ。ナメられるのが一番嫌いなんだ」


 あすみは小悪魔的な笑いを浮かべ、再び背を向けて歩き出す。

 ……あすみがキュゥべえを殺した事件の時から、二人はずっと険悪だ。でも呼び止めた理由はそれだけじゃない。

 本当は何が言いたかったんだろう。――突き動かしたのは根拠のない勘だった。それを理由とするにはあまりにも脆すぎてまとめることができない。


 しかし――これだけは心の中ででも言い返したい。


かずみ(あすみちゃんが呼んでるみんなへの呼び方のほうが絶対ふざけてるよっ!)




639 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 22:27:49.05BRwgNkSW0 (8/11)



 それからわたしはマミと織莉子のほうへと戻り、帰り道はみんなで雑談をしていた。


かずみ「そうだ、織莉子、学校はどうだった?」

織莉子「変わったところはないわ。これでも平常を続けるためにきちんと毎日通っているの」

マミ「明日からはどうするの? うちから通うの?」

織莉子「私がマミの家に居るという時点ですでに異常な状況は作られているわ。そこだけ取り繕う必要もないでしょう」

かずみ「明日からは学校も行かないんだね……織莉子にとって辛いだけならそのほうがいいのかな」

織莉子「まあ……そうね」

かずみ「?」


 わたしは少しだけその言葉に違和感を覚える。それは織莉子が一瞬言いよどんだように見えたからだ。

 その時ちょうどマンションについて、マミの部屋の前へ立つ。


 マミがカギを開けると、私たちは廊下を進んだ先に驚くべき“光景”を見た。




640以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/03(木) 22:34:08.78i+T6bUzT0 (3/5)

何が起こった?


641 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 22:43:46.61BRwgNkSW0 (9/11)



 消灯したリビング。

 誰もいないと思っていた部屋には“誰か”の姿があった。


 その上それは、見覚えのある“光景”だった。


かずみ(さっき見た人! あれはやっぱり……!)


 あやふやな勘と切り捨てたもの。照明をつけて、闇の中から輪郭が浮かび上がる。


マミ「こんな暗い中に客人がいたとはね。歓迎が出来なくてごめんなさいね? ――暁美さん」


 銃弾とリボンが衝突したのはマミの言葉と同時だった。

 しかし目の前にはすでに人はいない。


織莉子「!」

ほむら「貴女たちが“美国織莉子”と組んでいるのは聞いているわ」

ほむら「まず私が用があるのは彼女よ」


 どうやって回り込んだか、黒光りする拳銃は素早く織莉子を狙って突きつけられていた。




642 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 23:05:38.25BRwgNkSW0 (10/11)


マミ「それで待ち伏せしてたのね……?」

かずみ「えいっ!」


 わたしが魔法を使うと、拳銃と織莉子の間に巨大なぬいぐるみが現れる。

 覚悟してなければこんなに速く反応して動き出すことは出来なかった。

 しかしそれは直後に撃ち込まれた数発の弾丸によってボロボロに砕け散る。


ほむら「抵抗するなら仕方ないわ」

かずみ「待って! 話を聞いて!」


 今度はわたしを狙って弾丸が飛んでくる。鉄壁の『守護者』たる暁美ほむらは攻撃をやめない。

 彼女の目は冷たさを増す。聞く耳を持たない猛攻だった。

 また再生成で遮蔽物を作り出すことは出来るが、それでも全部防ぐことはできない。




643以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/03(木) 23:08:27.081ykFxxkN0 (1/1)

ガチで殺しに来られたら既に全員死んでるんだよな


644以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/03(木) 23:10:52.48i+T6bUzT0 (4/5)

時間停止は初見殺しどころではないしね


645 ◆xjSC8AOvWI2019/01/03(木) 23:32:17.68BRwgNkSW0 (11/11)



 血の噴き出す肩を押さえながら織莉子を呼ぶ。


かずみ「とりあえず織莉子は逃げて!」

織莉子「やはりこうなりますか……」

ほむら「いいえ、逃がさない。この場に居る誰もよ」


 ほむらはまた見えない動きで姿を消し、いつのまにか武器を持ち替えていた。

 背後から連続した発砲音が聞こえる。


 ……振り向くと血塗れの姿が目に入る。

 織莉子はギリギリのところで急所のソウルジェムだけ守るように防いでいた。




かずみ 魔力[80/100]  状態:負傷(右肩)
GS:5個
・[20/100] ・[100/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


仲間:
マミ 状態:正常
織莉子 状態:負傷(中)


敵:暁美ほむら

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0~15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6自由安価

 下2レス ※強制的に攻撃をやめさせないと落ち着いて会話はできません


646以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/03(木) 23:58:43.41i+T6bUzT0 (5/5)

うーん、良い選択肢が思い浮かばないけど・・・

5+目に捕らえにくい糸のようなものを絡み付ける
もしくはドサクサ紛れでタックルとかかけて組み伏せる


647 ◆xjSC8AOvWI2019/01/04(金) 00:17:56.08cDBxd4en0 (1/1)

--------ここまで
次回は5日(土)夜からの予定です


648以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/04(金) 00:18:53.736ozl966nO (1/1)


追加でほむらに警告

織莉子の事をあなたに教えた人もまどかを狙ってるんだよ!?
今あなたがこんなことしてるうちにまどかを誘拐してるかもよ!


649 ◆xjSC8AOvWI2019/01/05(土) 18:45:00.492+PEG7AY0 (1/10)


かずみ「『ネーロ・ファンタズマ』!」


 次にわたしが仕掛けるのは数の暴力だ。

 相手に襲い掛かるように。また、負傷した織莉子を庇うように。


 しかし、前にユウリと戦った時と違って傷を治せるような暇はなかった。

 無機物から生まれた分身はフェイクの意味を持たない。加えてもう一つ弱点があった。


かずみ(数が少ない……)


 瓦礫や土などの使える材料がたくさんあった外とは違い、ここは無駄な物もほとんど置かれてない部屋の中。

 分身も攻撃に向かうよりも前に小銃の掃射で動きを止められ、ダメ押しに的確な一点集中の攻撃によって速攻で撃破される。


 身体を動かす要所を破壊されたわたしと同じ姿の人形たち。あれが分身でなかったらと思うと寒気まで感じる。

 ただすでにわたしの想像を現実にすべく、暁美ほむらの標的はこっちに移り始めていた。


 ――紫の目に捉えられる。それだけで射抜かれたも同然。

 その次には踏み出し銃を向ける課程すら飛ばして襲いかかるのだとわかっていた。


かずみ「インヴィズィービレ・アッビンドラメント!」


 だがその直前に、すべての分身を再び“違うもの”へと生成し直した。

 パッと見、消えてしまったようにしか見えない。わたしは間に合えたんだろうか。




650 ◆xjSC8AOvWI2019/01/05(土) 18:52:14.092+PEG7AY0 (2/10)


ほむら「やってくれたわね」


 彼女の若干不健康なほどに白い皮膚の何箇所かから血が噴き出していた。ほむらは冷たいながらも忌々しそうな怒りの表情を湛えている。

 わたしが再生成したもの、それはほむらを中心に取り囲むように張り巡らせた透明なワイヤーだった。

 しかしそれも……――――


かずみ(もう切られてる……?)


 傷つけることには成功したが、決して深い傷を負わせられるものではない。

 せめて動きを制限できたらと思っていたが、こんなに早く全部切られてしまうなんて……?


かずみ「……っ!」


 銃を構えるほむらに向けて、捨て身のタックルをかけてみる。

 もう策がない。銃の射線をすり抜け、なりふり構わず懐へと飛び込もうとする。


 足を踏み出した一瞬で、肩の負傷のせいかバランスを崩してしまったことに気づく。

 銃弾は飛んでこなかったものの、膝で蹴り上げられ軽くあしらわれてしまう。


 もちろんその隙を狙って二人も動いた。マミが銃弾を撃ち込み、別の方向からは織莉子の水晶が吹雪のように襲う。

 しかし、その次の瞬間にはまた忽然と姿を消す。挟み討つような攻撃の嵐が虚しく虚空を通り過ぎ去っていった。

 そして次に現れた場所がまずかった。



651 ◆xjSC8AOvWI2019/01/05(土) 18:58:24.032+PEG7AY0 (3/10)


マミ「ッ……! くぅ……」


 わたしの時と同じ、利き手を狙ったものだったのだ。

 それからほむらはすぐに反対の腕も狙い、銃を扱うマミの手を封じようと動く。


 彼女は的確に不意を突く位置を取ってくる。それこそ未来でも見えて初めて対処が出来るくらいに。

 ただ、対処はできても間に合わない。出来て、やっと一番当たってはいけない攻撃を防げるくらいだった。

 それだってもちろん何度も耐えられるわけではなく……私達じゃ時間稼ぎにしかならない?


ほむら「まず貴女には大人しくなってもらうわ」


 銃使いなら近距離の格闘は苦手――――とは限らないことはこの前のユウリとの戦いで思い知らされている。

 しかしこれはあまりにも自分の知る魔法少女たちとは別格だった。


 ……いや、別格だと思ったのはもう一人居た。


かずみ「織莉子の事をあなたに教えた人もまどかを狙ってるんだよ!?」

ほむら「だとしても両方殺すわ」


 返ってきたのは揺るぎない一言だけ。バッサリ切り捨てられる。

 こんなことじゃ見逃してくれない。話している暇もない。




652 ◆xjSC8AOvWI2019/01/05(土) 19:05:46.232+PEG7AY0 (4/10)



 まともに戦って勝てる相手じゃない。

 三人がかりなのにも関わらずだ。これなら織莉子が諦めるのも納得がいく。

 ベテランとして努力も怠らず、実力に自信のあったマミでさえそう思った。


 狙われているのは織莉子。なら、それだけ差し出してしまえばいいんじゃないか――――?

 脳裏に浮かぶ考え。特にマミはそれを色濃く思っていた。


マミ(……美国さんを許したのは、かずみさんが優しすぎるだけだわ)

マミ(大体、私たちは騙されたのよ? 鹿目まどかを守るのなら暁美さんの決意も間違いじゃない。庇う義理なんてないじゃない)


 最初に計画を聞いた時、犠牲を進んで出すような織莉子の方針に乗ったことも棚に上げ。


ほむら「貴女達の事も」

マミ「!」

ほむら「やはりまどかのことも知ってるのね。協力者ならあとの二人もどのみち殺すしかない」

マミ「ッ……」


 『そんなの理不尽だ』とマミは思った。

 結局のところ、仲間だと思われているから、行動を共にしているから自分のことまでそんなふうに見るのだ。


 自分は被害者だ。騙してた時は決して見せなかった酷い一面を見た。

 正直に言って、マミは織莉子の事を許せておらずまだ疑っていた。その疑念から胸の内の黒い影が広がっていく。


マミ(私たちは仲間だからついでで殺される……? 仲間意識なんてないのに……?)




653以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/05(土) 19:31:05.77MnGVTLAu0 (1/4)

家の中メチャクチャだろうな、これじゃあ


654 ◆xjSC8AOvWI2019/01/05(土) 19:50:13.162+PEG7AY0 (5/10)



 ほむらは今度こそ執拗に正確に織莉子を狙う。


 血染めのドレスの、宝石の付いた胸元だけを押さえて織莉子は見上げる。

 押さえた手も真っ赤に染まっている。そして、攻撃に使わない腕の代わりに封じたのは足だった。

 といっても、織莉子が万全に動けたとして、目に見えぬ動きで消えては現れるように移動するほむらには狙うのになんら障害にはなり得なかった。

 この状況からわかるのは、ただただこれ以上ないほど『追い詰められている』ということだけだった。


 それでも織莉子は命乞いもせず強気のままほむらに問いかける。


織莉子「……私を殺して貴女に救えるの?」

織莉子「私を殺せば貴女は何も為せずに死ぬ。鹿目まどかは魔女に成り、貴女は踊らされたまま――――」


 ほむらは言葉を聞き終わることも待たずに引き金を引く。

 そこにわたしは――。


かずみ「待てって、言ってるでしょうがーっ!!」


 鳴り響く鈴の音。

 ――織莉子のほうへと踏み出したはずだったわたしは、その目の前へと移動していた。


ほむら「!?」

かずみ「くっ……」




655以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/05(土) 19:52:34.16MnGVTLAu0 (2/4)

かずみも時間停止?それともテレポート?


656 ◆xjSC8AOvWI2019/01/05(土) 20:09:55.792+PEG7AY0 (6/10)



 ついにほむらはその冷たく固まった表情に驚きの感情を表した。

 庇った代わりにわたしは胸にいくつもの弾丸を受けていた。

 血が勢いよく噴き出し続け、鼓動の響きがいつもより大きく身体を揺らしているように感じる。


 ……これ、『普通の人間』だったらもう駄目だったのかな?


マミ「かずみさん!」

かずみ「大丈夫……!」


 それでもわたしはまだしっかりと両足でそこに立っていた。

 『大丈夫』と言ったのは、怪我のことだけじゃない。まだ負けない意思が、そして不思議と勝てる自信まであったからだ。

 以前あの魔法少女からわたしと杏子を守ってくれた魔法。今度こそ、今のわたしは誰よりも素早く動けるって確信したから。


 ……それはまるで今わたしたちと対峙しているほむらが使う、『瞬間移動』のようだった。

 でも本当は仕組みは違う。さっきワイヤーを張った時、全部同時に切られていたことを思い出した。


かずみ「それより、今のわたしに触れちゃダメだよ」


 これを相手よりも速くぶつければ――。


 火花が散る。




657 ◆xjSC8AOvWI2019/01/05(土) 20:53:32.872+PEG7AY0 (7/10)



 その決意の“瞳”に、この時ほむらも何かしようとしたんだと思う。

 私は相手が『それ』をする前にわたしは全力でほむらに跳びかかり、そのまま身に纏う電撃に焼いた。


ほむら「ッ!」


 強大な光と音、それから鋭い悲鳴が上がる。

 この場のみんなが驚愕していた。


ほむら「ッぐ……ぁ、あなた……一体――」


 電撃が収まると、ほむらが掠れた声で問う。指の一本も動かない。もう攻撃できる状態ではなかった。

 この一瞬にして逆に追い詰められたほむらが抱いたのは、紛れもなく『恐怖』だ。

 わたしたちは戦いに勝てたんだ――――。


かずみ「……――――」


 ……それを知って、気が抜けたと同時にわたしは気を失ってしまっていた。


――――
――


658以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/05(土) 20:59:45.09MnGVTLAu0 (3/4)

かずみが眼を覚ましたらほむらが既に処分されてた、なんてことにならなきゃいいが・・・
といってもそうされても文句は言えない事やらかしてるからなぁ


659以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/05(土) 21:04:17.26SFzaeFZMO (1/2)

電撃って事はサキの魔法か
恐れてるプレイアデスの魔法に救われるとか皮肉だな


660 ◆xjSC8AOvWI2019/01/05(土) 21:51:15.122+PEG7AY0 (8/10)



 鈴の音が絶え間なくわたしの意識の中で鳴り響いている。


 誰かの姿が見える。

 この魔法も確かに……わたしに残された“記憶”の一部だった。


――――
――――



ほむら「――……なら、二人はまどかを殺そうとはしてなくて美国織莉子も今は考えを変えたと?」

ほむら「そんなの信じられると思うの!?」

マミ「信じてもらえないのなら仕方ないことよ。どちらかが敵意を向けるなら、戦いの末に殺してしまうしかなくなる」

マミ「……でもそれって、悲しいことだとは思わない?」

ほむら「勘違いで済ませるには根拠がないわ」


 聞こえてくる声とともに夢から現実に意識が切り替わり目を覚ます。

 気付けば、わたしは部屋の片隅に横たえられていた。身体の傷も、出血の酷い胸を中心に応急処置程度に治癒されていた。


織莉子「私たちは今なら簡単に貴女を殺せるわね。痺れて指一つ動かせなかったたさっきなら尚更」

織莉子「それをしないことが証明にはならないかしら」

ほむら「……」

かずみ「そ、そうだよっ!」




661 ◆xjSC8AOvWI2019/01/05(土) 23:05:18.682+PEG7AY0 (9/10)



 少しだけ様子を見守ってたけど、飛び起きるとみんなの視線が集まった。


かずみ「名前は“ほむら”でいいんだよね。わたしたちもまどかのこと助けたいって思ってるんだ!てことはわたしたち目的は同じでしょ?」

かずみ「ほむらも協力してくれたら心強いよ!だってすっごく強かったし」

ほむら「貴女は本気でそう思っているの?」

かずみ「うん! でしょ?」


 みんなに返事を求めると、二人は肯定の言葉を口にする。

 ほむらは詰め寄った時からやや押され気味だ。……しかしクールな表情は変えなかった。


ほむら「……貴女たちのことは信じたいわ」

ほむら「でも所詮他人。貴女達はまどかのことを知っている。その危険性も。そして……少なくとも彼女は一度は覚悟しているはずよ」

ほむら「『救えない』と判断したら意見を変えるかもしれない……そんな可能性を残すわけにはいかない」


 ほむらの言う『彼女』はもちろん織莉子のことだ。でも疑ってるのはそれだけじゃない。

 その視線に、さっきの戦いの最中のように鋭さが増す。


ほむら「薄っぺらい言葉じゃないか、覚悟を見ないと信じられない」

ほむら「それに、『今なら私を簡単に殺すことが出来る』と本当に言っているの?」

ほむら「こんなリボンで私を封じられると思う? やっと治した利き手は応急処置程度。……私の魔法なら抜け出すことは容易だわ」

織莉子「だ、だから私たちは言っているじゃない……貴女に敵対しない……と」

ほむら「どんな時でも私の優先順位は常に変わらない。貴女が一番に優先する人は誰?」



1協力の必要性を説く
2みんなが大事
3優先順位なんてない

 下2レス


662以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/05(土) 23:18:58.15MnGVTLAu0 (4/4)

1+3
誰かを助ける事に順番なんてないよ
誰かを守る事はみんなを守ることだし、みんなを守るのは誰かを守る事だから
助ける必要がある誰かがいたら全力で助ける!それだけだよ!


663以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/05(土) 23:21:33.11SFzaeFZMO (2/2)





664 ◆xjSC8AOvWI2019/01/05(土) 23:53:33.382+PEG7AY0 (10/10)


かずみ「誰かを助ける事に順番なんてないよ。誰かを守る事はみんなを守ることだし、みんなを守るのは誰かを守る事だから」

かずみ「助ける必要がある誰かがいたら全力で助ける!それだけだよ!」

かずみ「それと、さっき質問に答えられなかったから今答えとくね。わたしの名前はかずみ。苗字はない、『かずみ』っ!」

かずみ「あなたの目的、わたしにも手伝わせてもらえないかな?」


 マミにリボンをほどかせて、手を前に差し出す。

 それはマミや織莉子でさえ多少の躊躇いや戸惑いはあったようだけど……

 ――……ほむらの表情からは冷たさが消え、ただ驚いているようだった。


ほむら「……本当に信じていいの?」

かずみ「うん」


 急かすことはしない。

 『信じたい』と言っていた、その気持ちに答えられるように――ほむらがこの手を取るまで待っていた。


かずみ「…………ありがとう。よろしく」



665 ◆xjSC8AOvWI2019/01/06(日) 00:32:55.39pM1srIJq0 (1/6)


マミ「暁美さん、そういうことならよろしく。私もずっとあなたのことは気になっていたのよ」

ほむら「そうね……私も出来ればあなたを殺したくはなかった。『殺す』覚悟よりも信じる覚悟をしてみてもいいかと思ったの」

織莉子「元はといえば私が悪いのです。なのにお二人にまで迷惑をかけてしまって……こんな私を信じろと言う方が難しいとは思いますが、宜しくお願いしますわ」


 散らかった部屋の中に、今までなかった穏やかな雰囲気が流れ始める。

 争って、互いに血を流して、ようやく手をつなぐことが出来たのだ。


かずみ「マミのリボンを魔法で抜けられるっていうのは嘘だよね」

かずみ「ほむらは私の張ったワイヤーを一瞬にして全部切ってた。『瞬間移動』じゃないと思う」

ほむら「貴女は私のハッタリに気づいていて……」

かずみ「うん。それでもやることは変わらないよ。それとね、わたし色んな魔法が使えるんだ。今わかってない魔法ももっと使えるものがあると思う」

かずみ「さっきのは電気を操る魔法!生命活動まで操ることができる電撃を出せるんだ。これで速く動くこともできる」

かずみ「といっても、わたしもさっきちゃんと気づいたんだけど……」

マミ「新しい魔法ね!すごいわ!」


 この前と同じ『活性』を二回使ったけれど、どちらも距離が短いからか今度は特に身体に変化はなかった。

 戦いの中で使うくらいなら、前ほど負担はかからないだろう。


 そうしていると、不意にインターホンが鳴る。マミによると隣人のようだった。


マミ「……弁解してくるわ。とりあえず、暁美さんもこれ片づけるの手伝って頂戴ね」


 ……個人宅が舞台にされた戦いの終幕の後は、その後始末まで大変だった。




666以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/06(日) 00:37:42.79sP042tph0 (1/1)

銃声とかは時間停止中だから響かなかったのかな?
聞こえてたら警察沙汰だしね


667 ◆xjSC8AOvWI2019/01/06(日) 01:18:17.57pM1srIJq0 (2/6)



 散らかったものをみんなで元の位置に戻して、壊れた家具や壁は再生成の魔法で修繕する。

 応急処理程度だった治療も落ち着いて完治させた。ここでもかずみは大活躍だった。


 隣人のおばさんには、銃声はリアルなゲームの音だと言って信じてもらった。打撃音はその時についやってしまったと謝った。

 遊びがヒートしすぎた中学生たちを叱りつけながらも、おばさんは最後には『最近のゲームはおっかないねぇ』などと残して帰っていった。

 ……苦しい言い訳だが、まさかR-15をやっと見られるようになった(?)くらいの少女たちが、ゲームみたいな戦いを実際に繰り広げていたとは思わないだろう。


 死者も出ず、痕跡は跡形もなくなったからこそそう言い張れた。

 しかし、ほむらが変身を解いても薬莢が消えないままだったことには三人は疑問を抱いた。それも本人の口からすぐに語られることとなる。


ほむら「……かずみの考察は正解よ。私の魔法は『時間操作』。時間を止めているうちに自分で動く必要がある」

ほむら「それに魔力で作れるのはこの盾だけ。銃は本物だわ」

マミ「えっ……それ本物だったの?」

かずみ「じゃあ、ほむらも本当は迷いはあったんだ」

ほむら「え?」

かずみ「問答無用で殺すことはしないでくれたんだなって。本当は私達に姿も見せないで殺しちゃうことも出来たんでしょ?」



 自分の力を知られることは敗北や死へとつながる。今回ほむらがここまで圧倒できたのは、相手がなにも知らなかったからだ。

 マミほど実力があり機転の利く魔法少女ならば、『時間停止』の仕組みを全て知っていれば弱点を押さえて対抗することも出来ただろう。

 逆に言えば、何も知らない状態ならほぼ勝ち目がないほむらの実力の高さにもなるのだが――。



 目の前の、自分の仲間になると言ってくれる人を信じたかった。信じられる仲間が欲しかった。

 けれど、『信じる』ことも勇気が要るんだと――――ほむらはそれをこの時理解した。


 誰にも頼らず、まどかを最優先にするために、ここに来るとき障害となる物を『殺す』勇気と覚悟を決めたからこそ、

 信じることがこんなにも難しいものなのだと実感していた。


 ……けれど、本当はどちらの勇気を出せば最終的に目的につながるのか。その正解はわからなかった。




668 ◆xjSC8AOvWI2019/01/06(日) 01:58:24.05pM1srIJq0 (3/6)



ほむら「そういえば、私に美国織莉子のことを教えた女のこと……あれは動揺を誘うための誤魔化し?」

かずみ「あっ、そうだ! 嘘じゃないよ。織莉子のほかにもまどかを狙ってるっていう人がいて……」

かずみ「あいつも色んな魔法を使うんだった!とにかく気を付けて!」

ほむら「ええ。私がまどかの傍で彼女を守るから」

かずみ「明日はまたみんな集めて対策会議しよっか。まだ協力してくれる人はいるんだ」

織莉子「…………」


 かずみやマミの二人とはどこか違う視線を受け、ほむらは見つめ返してその意味を思案する。

 綺麗に元通りになった部屋を出る時、ほむらは去り際に言った。


ほむら「……私はまだ貴女のことは本気で信じたわけじゃない」






ほむら(この選択でよかったのかしら)

ほむら(元々存在を知った時からまどかを殺すつもりだったという美国織莉子……彼女はまだ合わせている可能性はある)

ほむら(……でも、全部知ってて同じ目的を持ってくれる仲間なんてなんて初めてだわ)



―17日目終了―


かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:4個
・[0/100] ・[20/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [体術Lv3] [射撃能力Lv20]

杏子
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv20]

織莉子
[魔力コントロールLv3] [体術Lv3]

ほむら
[魔力コントロールLv4] [体術Lv2] [射撃能力Lv6]



669 ◆xjSC8AOvWI2019/01/06(日) 02:00:54.85pM1srIJq0 (4/6)

------ここまで。次回は6日(日)夜からの予定です


670 ◆xjSC8AOvWI2019/01/06(日) 22:57:43.05pM1srIJq0 (5/6)

――――――
朝・マミの家


 目を覚ますと、まだ誰も起きてこないリビングの中を見回してみる。

 昨日暁美ほむらとの戦いを繰り広げていた部屋だ。

 あれ以降大掃除の時以上に大改造したものの、表面的な外観はさほど変わっていない。

 むしろ、普段手の付けられない場所の埃がなくなって以前より綺麗になっているくらいだった。


かずみ(早く起きちゃったなぁ……)


 今日が休日だということを忘れていたにしても、時計を見てみればいつも以上に早い。

 あまり物音をたてて他の人の安眠を妨げても悪いけど、とりあえず朝起きた時から感じている欲求をお腹の音とともに確かめる。


かずみ(おなかすいた)


織莉子「あら、起きてたのね。おはよう」


 そうしてると声をかけられた。

 誰も起きてこないと思って相当ぼけっとしてたところだったのでちょっと驚く。


かずみ「おはよう、織莉子!」


 織莉子の居候はほむらから身を隠すための提案だったけど、

 折角用意を済ませてしまったので昨日はそのまま泊まっていくことになったんだった。



671 ◆xjSC8AOvWI2019/01/06(日) 23:36:53.68pM1srIJq0 (6/6)



かずみ「織莉子っていつもこんな早いの……? それともよく眠れなかった?」

織莉子「普段から早起きなだけですわ」

かずみ「織莉子もなんか食べる? わたしなんかお腹すいちゃったよ」

織莉子「でしたら、飲み物だけお願いできるかしら? まだあまりお腹は空いてないので」

かずみ「飲み物かぁ。マミみたいに紅茶は出せないけどなんか用意するよ」


 マミが起きて朝食を食べる頃にはまたおなかがすいてるだろう。

 朝食よりも前の軽食を用意して、わたしも織莉子の居るテーブルに向かい合って座った。


織莉子「『軽』食……?」

かずみ「? うん。軽食だよ?」


 ただ、織莉子にはこれが軽食には見えなかったようで。

 優雅にミルクを飲む織莉子に珍しいものを見るような目を向けられていた……。


 早朝のリビング。雰囲気はとても静かで穏やか。


1ほむらの件すぐ終わっちゃったね
2みんなをどう思うか?
3自由安価

 下2レス


672以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/07(月) 00:02:48.73ZlWk9L4m0 (1/1)

1+2


673 ◆xjSC8AOvWI2019/01/07(月) 00:26:23.26lP2Fm0k40 (1/1)

-------ここまで
次回は10日(木)夜からの予定です


674以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/07(月) 20:03:27.83dce97rm4O (1/1)

安価↑ ↑
追加で織莉子に学校で話しかけてくれる人の事を詳しく聞いてみる
あとキリカに謝る用に話す

織莉子の事情を知ってて話しかけてくるならその人なりに織莉子の事気にかけてるんじゃないかな?
あとキリカに会ったらごめんなさいしようね?



675 ◆xjSC8AOvWI2019/01/10(木) 23:24:22.77umLRN00K0 (1/1)

------深夜の迫る時間の連絡ですみませんが、本日は中止で次回は11日(金)夜からにさせていただきます。


676 ◆xjSC8AOvWI2019/01/11(金) 23:04:39.38f0iB1xT80 (1/2)


かずみ「ほむらのこと、思ったよりあっさり終わっちゃったね」

織莉子「ええ。私も驚いているわ。それに、まさか仲間に取り込めるとは思っていなかった」

織莉子「……わからないものね。私一人なら問答無用で確実に殺されていたでしょう」

かずみ「織莉子と暮らすのも楽しみにしてたんだけどなぁ。もう織莉子は帰っちゃうんだよね?これからは学校はどうするの?」

織莉子「問題は解決し、マミの家での居候も“異常”を察せられるような規模ではなくなった」

織莉子「ならば、また平常を装うことに越したことはないでしょう」

かずみ「でも、行きたくないんじゃないの?」


 淡々と話す織莉子の言葉には感情がない。だからわたしはあえて織莉子自身の感情を問いかけてみた。

 ……それはきっと、場合によっては残酷なことなんだろう。理性で固めた思いを揺るがそうとしている。




677 ◆xjSC8AOvWI2019/01/11(金) 23:59:44.59f0iB1xT80 (2/2)


織莉子「別にそんなことはないわ。……言ったでしょう? 私は周りの中傷など気にしていない」

織莉子「私や計画にとって意義の無い時間ではあるかもしれないけれど、それだけよ。余計な事は気にせず最善手を取らせて頂戴」


 前に友達だった時と比べて、織莉子の言動にはこういう硬くて冷たいような感じの言葉が増えた。

 こういうとこは、隠していた織莉子の本当の部分なんだろう。でもきっとそれだけじゃないはずなのにって、そう思った。


かずみ「そうだね。じゃあ、友達になれそうな人を探してみるのはどうかな?」

織莉子「……言いにくいんだけど、貴女私の状況を分かって言っているの?」

かずみ「うん。でもわたしも前に言ったでしょ?」

かずみ「もしかしたら、イヤな人ばっかりじゃなくて織莉子のことわかってくれる人だっているかもしれないから」


 得意げな笑顔で返す。

 そうすると織莉子は少し驚いた反応でわたしを見る。


 “何故そうまで自信を持って前向きでいられるのか”……それが織莉子には本気でわからなかったのだ。




678 ◆xjSC8AOvWI2019/01/12(土) 00:53:53.49rh0ptX3J0 (1/9)


かずみ「織莉子は今はみんなのことどう思ってる?」

織莉子「貴女の望む答えはわかっているつもりだけどね。ひとまず言わせてもらうなら……『味方』と言っておくわ」

かずみ「味方?」

織莉子「ええ。少なくとも貴女は私を裏切ったりしない。でも、他の二人に関してはまだわからないわ」

織莉子「疑心は残っているはずよ。あの二人は“貴女に”ついてきている。誰もが割り切れるものではない」


 織莉子の言葉に、あすみに言われたことを思い出した。


織莉子「神名あすみに至っては完全に“利害の一致”よ。こちらがなんと思おうと、向こうはそう思っているはず」

かずみ「そう、だけど……やっぱ全部がそうだとは思わない」

かずみ「あすみの言うことってなんだかんだ的中すること多いし、あすみにも感情はあるから利害だけじゃない行動だってあるよ」

織莉子「『気まぐれ』の範囲内だわ。……まあそれを友情と呼ぶならそうなんでしょう」

かずみ「じゃあキリカは? キリカにも今度謝ろうよ」

織莉子「謝って許してくれるかしら?」

かずみ「許してくれなくても。このままじゃどっちにもよくないと思う」


 ミルクを飲み干して、織莉子が空のカップを置く。

 わたしもそろそろちょうどよく腹ごしらえができて、早くに起きすぎた代償の眠気が復活してきていた。


1自由安価
2もう一眠り

 下2レス


679 ◆xjSC8AOvWI2019/01/12(土) 00:55:04.31rh0ptX3J0 (2/9)

-----次回は12日(土)夜からの予定です


680以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/12(土) 01:19:00.44IWMMRtWR0 (1/3)

織莉子の登校についていく
その後は久しぶりにあすみの家に料理を作りに行き、夕方は見滝原中に行く

ここで寝たら牛になりそうだから頑張って寝ないようにしよう
あ、織莉子の学校見たいから付いて行っていいかな?ていうか眠気覚ましの散歩がてらに行くから!



681 ◆xjSC8AOvWI2019/01/12(土) 01:22:26.81rh0ptX3J0 (3/9)

>>680 この日は休日です…


682以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/12(土) 01:29:00.19IWMMRtWR0 (2/3)

>>681
おっと失礼、休日でしたか
では登校云々は止めて織莉子かマミにキリカの連絡先を聞いて知ってたら教えてもらう、に変更で
連絡が取れたらあすみの家で一緒に料理をしないかと誘う


683以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/12(土) 01:47:44.10TjzbZmFuO (1/2)


帰ろうとした織莉子がここでも二人の前でドジをやらかすを追加で
かずみが悪意のない慰めで織莉子の心をグサグサ抉り泣かすような感じで



684 ◆xjSC8AOvWI2019/01/12(土) 20:29:05.76rh0ptX3J0 (4/9)


かずみ「織莉子! キリカの連絡先って知ってる?」

織莉子「勿論持っているけれど?」

かずみ「じゃ、教えてよ!わたしが料理の腕を振るうからさ、みんなで集まろ!その時に織莉子も一緒に行こう!」

織莉子「でもそうまでして関わりたいと思うかしら。元々関係のない人だったのよ。災難に巻き込まれないほうが相手にとっては幸せでしょうに」

かずみ「これから仲良くなればいいじゃん!もうまどかを殺さないんでしょ!」

かずみ「悪く思われたままじゃ友達のわたしがイヤなんだ。織莉子が変わればきっといつかは受け入れてくれるよ」

かずみ「だから、さ……」


 なんとか頼み込んでみる。

 織莉子は最初乗り気じゃなさげだったけど、熱心な説得に織莉子も折れてくれたようだ。


織莉子「……わかったわ。そこまで言うのならいいでしょう。計画の仲間も多い方がいいものね」

かずみ「それじゃあ織莉子、わたしはちょっとまた寝てくるよ。ごはん食べたらまた眠くなっちゃった」

織莉子「……私は少し読書でもしているわ」


 織莉子が自分の荷物から本を取り出す。

 暇つぶし用にいくつか持ち出してきたみたいだけど、分厚くて見るからに難しそうで、私には馴染めそうになかった。

 “罪と罰”と書かれた表紙だけが印象に残る。


 大きく欠伸をした口元に手を当てながら、わたしはマミの居る部屋に戻っていった。

 いつもなら鳴るはずの目覚まし時計も鳴らない。昨日の戦いでマミも疲れてるんだろう。

 マミの穏やかな寝顔を確認して、そっと隣の布団に入った。



685 ◆xjSC8AOvWI2019/01/12(土) 20:39:59.91rh0ptX3J0 (5/9)



 ――――静けさを増したリビングで、ページをめくる音だけがやけに響く。


織莉子「望んだ通りに殺し、世界を救えたとして、その後に私が受ける“罰”は――――」

織莉子「あすなろに行ったキリカは魔法少女と殺し合いをした。相手は殺人鬼。手加減をしては戦えない相手」

織莉子「けれどもキリカは生き残った。あの時から私の教えた真実に対する疑念が消え去っていた。私達の命の法則を断言形で言った」

織莉子「口には出さなかったけれど、一人格とはいえあの子はもう私より先に人の命を奪ったのね」


 もしこれを普通の社会に当てはめたとして、未成年であることを除いて考えても、正当防衛の条件には該当する。

 政治家であり元弁護士であった父の真似をして、書斎にあった法律の本を幼少期から熱心に読みふけっていた織莉子は、その項に書かれた文面を想起した。

 しかし相手と状況のおかげで薄れるとはいえ、実際に死を目撃する心への負担はそれと無関係なところにある。


織莉子「……いえ、あの子は戦いが常に命懸けであることを知らなかった。あの攻撃性も、全ては私の見込み違いだった」

織莉子「もし何かが間違って事故が起こったとしても、あの子はこの小説の主人公にもなれなかった」


――――
――――


686 ◆xjSC8AOvWI2019/01/12(土) 21:37:33.34rh0ptX3J0 (6/9)



 学校のある日より遅めに起きてきたマミと一緒に朝ごはんを食べた後は、連絡のつく人には全員に連絡をしてお昼の約束を取り付けていた。

 とはいっても、連絡がつく人って織莉子から教えてもらったキリカとあすみくらいだ。

 昨日ほむらと話していた集まりにもそのまま行っちゃおうって考えだった。……けど、キリカがそこまで来てくれるかはわからない。


 キリカには『なんで私の連絡先知ってるの?』って返されて、織莉子から聞いたことは言った。

 でも織莉子が一緒なことは言ってなかった。言ったら来てくれなくなる気がして。あすみや織莉子の話も聞いて、簡単に許すことが出来ない気持ちもわかっていた。

 騙すようで悪いけど、無理にでも会ってもらわないと謝るチャンスすらなくなってしまう。


 あすみは『約束の集合時間には行くんだからいいでしょ』とのことだった。

 あからさまにそれ以外に時間を割きたくなさそうだ。あすみの家でやることも提案しようとしてたけど、最早言う前に拒否されてしまった。


かずみ「……昼食会の場所はいつも通りここになりそうかな。マミはいい?」

マミ「私は構わないけど」


 で、昼食会のメンバーはわたしとキリカとマミと織莉子の四人。

 わたしが腕を振るうって言ったけど、折角これだけ居るんだからわたしだけが頑張るのももったいない。

 みんなで協力して料理を作ろうってことで、親睦を深めるのが狙いだった。


かずみ「後で知れたら杏子はガッカリしそうだなぁ……。なんとか伝えられたらよかったんだけど。それとほむらの連絡先も聞いとけばよかった」

マミ「今回は仕方ないわね」

織莉子「……それと心配なのは、私が見えた途端にキリカが気を悪くして帰らないかってことね」



1まだ心配なの?と励ます
2待つ
3自由安価

 下2レス


687以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/12(土) 21:49:43.37IWMMRtWR0 (3/3)

1+杏子に連絡用の携帯を持たせたら?と提案

多分キリカは怒って帰っちゃう可能性が高いと思うから、そのときは私が追いかけるね
織莉子もキリカにどんな風に謝ればいいかわからないんだよね?
まずはキリカに織莉子の『謝罪したい』気持ちを受け入れてもらわないとね
許す許さないはキリカの意思次第だけど、心の区切りというかケジメをはっきりつけてもらわないとね


688以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/12(土) 21:57:41.69TjzbZmFuO (2/2)


作る料理とデザートについて二人に相談
マミの腕前はわかっているけど織莉子は料理出来るの?


689 ◆xjSC8AOvWI2019/01/12(土) 22:39:36.21rh0ptX3J0 (7/9)


かずみ「まだ心配なの?」

織莉子「心配というより、その可能性のほうが高いと思うわよ」

かずみ「そのときは私が追いかけるよ!」

かずみ「……織莉子もキリカにどんな風に謝ればいいかわからないんだよね? まずはキリカに織莉子の『謝罪したい』気持ちを受け入れてもらわないと」

かずみ「許す許さないはキリカの意思次第だけど、朝も言ったみたいにいつかは信じてもらえるかもしれないから」

かずみ「心の区切りというかケジメをはっきりつけてもらわないとね」

織莉子「ケジメ? 私じゃなくて向こうに?」

かずみ「もちろん織莉子もなんだけど……。キリカにも受け入れてもらわないと」


 織莉子を励ます気で言ったけど、心配してるのはわたしもだった。

 しかし織莉子は、冷たく落ち着いた響きを持ってわたしに話す。


織莉子「貴女はよく『受け入れないと』、『みんな仲良くしないと』と言うけれど……それは押し付けね」

織莉子「関わらなくて良い相手とは無理に付き合わないほうが互いに良い思いをすることもある」

織莉子「貴女はなんでも信じようとしてしまうから。貴女が信じ、強制したそれがのちに不和や悪い結果を生むこともあるかもしれないわよ」

かずみ「……この前みたいに?」

織莉子「ええ。この前みたいに」


 織莉子とあすみの二人から騙されていることを知った時には、たしかにすごく悲しかったし怒りだって沸いた。

 その気持ちはわかる。でも、それでもわたしは信じたかったし救いたいと思った。

 押し付けって言われたらどうしようもないけど、悪い結果にならないように正面から向き合って食い止めたいって思った。

 ……それで結果的に不和を生み、悪い結果を食い止められなかったとしても?


 織莉子は忠告じみたことを言った後、ふっと雰囲気を柔らかくする。


織莉子「……まぁ、いいわ。私も善処しましょう」



690 ◆xjSC8AOvWI2019/01/12(土) 22:58:13.18rh0ptX3J0 (8/9)


かずみ「ねえねえ、デザートは何作る?」

マミ「えっ……あぁ、そうね……無難にケーキとかならみんな喜ぶんじゃないかしら?」

かずみ「マミはケーキ作りもプロ級だからね! ちなみに織莉子は? 料理したことある?」

織莉子「ええ、大体一通りは。これでも小さい頃から一人で家事をやっていたので」

マミ「意外だわ。てっきりお嬢様だから、料理なんてメイドさんに任せてるかと思ってた」


 マミがそう零すと、明らかに織莉子は気分を害したような表情をする。

 しかし、すぐに取り繕った。


織莉子「……そんなことはないわよ。うちはそこまで裕福じゃないしプライドがあるの」

かずみ「そっか、せっかくの団欒の時間だもんね」


 織莉子の言うプライドがなんなのかは今なら少しわかる。

 マミには悪気はなかったけど、苦労を馬鹿にされたように思われて怒ったのかも。


織莉子「今はもう無い話だけれどね。それでも何不自由なく暮らしているわけではないわ」

マミ「そ、そう……それは悪かったわね」


 少しだけぎこちない雰囲気が流れる。


かずみ「それじゃあ、何のケーキ作ろうか!みんなで作るならショート?」

マミ「ショートケーキかぁ。シンプルだけど悪くないわね。それに呉さんも料理できるとは限らないでしょう?」

かずみ「キリカも別に心配しなくていいと思うよ!この前お世話になったから」

マミ「お世話……?」


 ――その雰囲気を変えるように、再びお菓子の話題を広げていくことにした。




691 ◆xjSC8AOvWI2019/01/12(土) 23:34:04.72rh0ptX3J0 (9/9)



 食べ物の話は想像してるだけでおなかがすいてくる。

 特にキリカが来るなら、もしかしたら怒った時にもちょっとは機嫌が良くなるかもしれない。


かずみ「……で、じゃあメインは何を作る? イタリアン?和食?それとも中華?」

マミ「私はなんでもいいけど、二人だと洋食かイタリアンが多いわよね」

かずみ「キリカも来てから決めればいいかな? ちょっと冷蔵庫チェックしてくるね」


 キッチンの方に駆けだす。

 冷蔵庫を開けてみると、朝も見た通り何でも作れそうなくらいには揃ってる。


マミ「どうだった?」

かずみ「昼食会の前に買い出しに行く必要はなさそうかな。みんな来たら何が食べたいか聞こう」



 そうしてあれこれ話をしながらしながら待つことにした。

 出来るだけみんなが楽しくなるような話題を探す。お泊りはもう終わりでも、せっかく前みたいに三人揃ってるんだから。


 ……でもまだ、織莉子の口数は少なかった。




692 ◆xjSC8AOvWI2019/01/13(日) 00:36:05.24KoNlUbET0 (1/8)





 ――――来客を知らせるチャイムが鳴ったのはお昼の時間。

 インターホンごしにマミが出て、まずは二人で玄関で出迎える。


かずみ「おお、久しぶり! よく来てくれたね」

キリカ「ん、まあヒマだったし……」


 キリカはじとっと目線を逸らして頬をかく。

 わたしと、隣に居るマミの姿を見てから誘われるままに上がっていく。

 マミとは仲が悪かった時があるからか少しぎこちない。しかし廊下から広いリビングが見えた時、もう一人を見てキリカは顔を上げた。


 マミ相手のぎこちなさとは違う、まずいものでも見たようなあからさまな警戒の表情をしている。

 ……危険を生むものと知っている、天敵に向ける表情だ。


キリカ「……こいつも一緒だったの?」


 予想外の人物との対面。気まずそうかつ忌々しそうだ。




693 ◆xjSC8AOvWI2019/01/13(日) 01:08:23.32KoNlUbET0 (2/8)



キリカ「あー……、未だに仲間やってるっていうのは知ってるよ。そういうことねえ……」

キリカ「悪いけどやっぱ私はパス! もしくはこいつを帰らせてくれない?」

キリカ「ていうか、もうつるまないほうがいいって!騙されたんでしょ?忠告もしたのにさ!」


 キリカにとって、最大の妥協点は自分と織莉子の交換だった。二人そろって居合わせることがなければいいということ。

 最初は気まずげだけどまだ穏便な口調を保っていた提案が、『なぜ一緒にいるのか』――という怒りに変わる。


 ……今言わなきゃ。わたしは織莉子にサインを送る。


織莉子「……これまでのことは謝るわ。あの時のことも言い過ぎだった。後悔はしているわ」

キリカ「後悔?駒を逃がしたことへのかい? ……それとも、本当に今になって考え変えたとでも言い張るつもりなのか?」

織莉子「ええ。もう前みたいなやり方はやめにした。もう貴女の事を『殺人の道具』なんて見ていないわ」

キリカ「それは……私が使えないからじゃないの?」

織莉子「いいえ。今度こそちゃんとやり直すためよ」

織莉子「私の本当の目的も教える。貴女の力も私と、そしてかずみさんやマミさん、みんなのために貸してほしい」

織莉子「最悪私を許さなくてもいい。そのためにもどうか……私にやり直せるチャンスを与えてくれないかしら?」




694 ◆xjSC8AOvWI2019/01/13(日) 01:28:22.63KoNlUbET0 (3/8)



 キリカはひとしきり疑心の表情で織莉子を見る。

 さっきまでは正面に入れたくないような目の逸らし方をしていたけど、今度は探り睨み負の感情をありのままにぶつけて見定めるようだ。


キリカ「……かずみはどうなの?」


 そして、二択の最後の意思決定。それは意外にもわたしに委ねられることになる。


かずみ「たしかにキリカの話は本当だったし、忠告は全部当たってたよ。織莉子とあすみが手を組んでるかもしれないって」

キリカ「……そこまで当たってたんだ」

かずみ「うん。キリカはみんなのことよく知ってたんだね。それにわたしより現実を見てたんだと思う」

キリカ「そこまで言うのにどうしてまだ一緒にいようと思った?」

かずみ「だって……友達だから。信じたいから。見捨てたくないって思った。間違ってるなら傍にいて正してあげればいいんだよ」

かずみ「それに織莉子がやろうとしてたことだって、やり方を変えればたくさんの人を救えるから」

マミ「……美国さん個人のことはともかく、みんなに関係ないとは言えない問題よ」

マミ「仲間は私たち以外にもいる。それも、このあたりの魔法少女がおそらく全員」

マミ「協力するかしないかはあなたの意思を尊重するけど、あなた一人が無関係とは言えないでしょうね」


 マミがフォローに入り、そこまで言われてはキリカもこの場から動けなくなった。

 ……そうしてやっと、わたしや織莉子が心配していた『怒って帰る』という事態は避けられたように見えた。


1今日の料理について
2自由安価

 下2レス


695 ◆xjSC8AOvWI2019/01/13(日) 01:39:11.93KoNlUbET0 (4/8)

------ここまで。次回は13日(日)夕方からの予定です


696以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/13(日) 09:54:09.95xGmoNaN50 (1/2)

キリカに色々と話したあとに1

織莉子のことはすぐに結論を出せないと思うし、心の整理もふんぎりも簡単にはつかないと思う
だから今は織理子のことを信じると言った私を信じてくれないかな?
私達を心配して忠告してくれたキリカを私も信じる!それにキリカともっと一緒にいたいし!


697以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/13(日) 10:53:56.91wqyo0hkVO (1/3)


作る料理を和洋中イタリアンの4種類作ろうと提案
あと作った料理を杏子とあすみに渡す分を包んでおく
あすみはともかく杏子は絶対に文句を良いそうだから


698以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/13(日) 15:56:42.88xGmoNaN50 (2/2)



1人1種担当だとこんな感じかな?

和・キリカ
洋・織莉子
中・かずみ
イタリアン・マミ





699以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/13(日) 22:43:04.39wqyo0hkVO (2/3)

こないな


700 ◆xjSC8AOvWI2019/01/13(日) 23:16:38.10KoNlUbET0 (5/8)

----ちょっと続きに時間がかかった!かかりすぎた!
ちょっとだけ投下します。


701 ◆xjSC8AOvWI2019/01/13(日) 23:17:13.20KoNlUbET0 (6/8)


かずみ「……やっぱりすぐに結論は出せないかな?」

キリカ「本当にそいつのやろうとしてたことがみんなに関係あんの?」

かずみ「うん。やろうとしてたこと自体は間違いじゃないよ。だからって簡単には織莉子のこと許せないかもしれないけど……」

かずみ「心の整理やふんぎりがつかないなら、今は織理子のことを信じると言ったわたしを信じてほしい」

かずみ「私達を心配して忠告してくれたキリカをわたしも信じる!それにキリカともっと一緒にいたいし!」

マミ「詳しいことはこれから他の仲間も一緒に集まる予定だから、その時に話しましょう。ついてきてくれる?」

キリカ「……そこまで言うなら、一応行ってあげるよ」


 キリカは渋々の返事を返す。そこには自分の見たことのない、意外なまでの冷めた表情。

 わたしはその様子を少しだけさみしく感じながら見る。



 ――話を聞くことは決めつつも、キリカが心の底で思ったのは『みんなしてこいつに騙されてたら』という可能性だった。



 そして、最近になって自覚していたことがあった。あすみにも指摘されたことだ。

 それは『人のことを信じていない』ということだった。心の底で誰にも期待をしていない。誰かが助けてくれることなんてない。


 それが今まで好印象がなく、一度信頼を失っている人なら尚更だった。

 敵でも悪人でも、最後には切り捨てずに無条件で手を差し伸べるのがかずみの性質。キリカの根底にある考えはかずみの信じる性善説とは程遠い。


 この場から一歩引いて見ていた。それだけキリカからの織莉子に対する信用は低い。



702 ◆xjSC8AOvWI2019/01/13(日) 23:31:52.41KoNlUbET0 (7/8)



かずみ「それじゃ、料理は何にする? わたしもうお腹すいちゃった!」

マミ「実は美国さんだけじゃなくて、私もこの機会にちゃんと話せたらと思って。呉さんは食べたいものはある?」

キリカ「えっと……」

織莉子「……キリカさん、改めてよろしくお願いしますね」


 しかし、基本的に流されやすいのも彼女の性質だった。


 疑心もぎこちなさも全て置いて流れは変わっていく。

 本題だった料理、そして今みんなの抱える空腹の解消へと。


キリカ「……はあ。ここに来る前考えてたこと全部飛んじゃったよ。美味しければなんでもいいよ。あと甘いもの」

かずみ「ケーキ一緒につくろうね」

キリカ「そういえば、他にも仲間がいるならなんで私だけなの?」

マミ「神名さんは時間を割きたくないみたい。佐倉さんは携帯がないから。あとはもう一人いるけれど連絡先を聞いてないわ」

かずみ「杏子にも通信機っていうか、なんか連絡取れるものがあればなぁ。その前にわたしもか」

マミ「その気になればインターネットを使えば通信は出来るかもしれないけど、佐倉さんが使いたがるかしらね」




703以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/13(日) 23:43:17.70wqyo0hkVO (3/3)

コードレス糸電話なら杏子でも使えるだろ
通話距離数メートルだけどw


704 ◆xjSC8AOvWI2019/01/13(日) 23:45:30.95KoNlUbET0 (8/8)



かずみ「これだけいるし、みんな料理できるんでしょ? どうせならもう欲張って和洋中イタリアン四種類は作ろうよ!」

かずみ「杏子とあすみに渡す分も作っとく? あすみはともかく杏子は絶対に文句言うよね」

キリカ「この場にいないし労働もしてない人に分けてやる必要あるわけ?」

かずみ「それ杏子も同じようなこと言ってた!」

キリカ「はぁ!?」

マミ「まあまあ、そのおかげで呉さんにお菓子を渡すことになったのよ」


 そう言われると何も言えない。

 ……キリカはそんなふうにしばし黙り込む。


キリカ「……あすみに渡すなら二人分にしたほうがいいよ。なくても文句は言わないだろうけど、多分喜ばれるから」

かずみ「二人? どうして?」

織莉子「『妹』と二人暮らしだから、でしょう?」

かずみ「えっ!? あすみはあの家を乗っ取ったって……――」


 そこまで言って失言に気づく。

 織莉子には前に相談した。でも訳知り顔の織莉子を除いて二人、マミとキリカは怪訝に顔を歪ませた。




705 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 00:12:49.88ZVr+WF800 (1/12)


キリカ「乗っ取ったってどういうこと?」

マミ「……まさか、その子のことを魔法で洗脳でもしているの? それなら親は?」


 対象は変わるが、再びこの場に差した大きな疑心の影。

 わたしだって受け入れがたいほどの疑心を覚えたそれを今思い出してしまった。


 あすみは深追いしないほうがいいと言っていた。

 私はその時言われるまま引き下がったけど、一緒にいるという子があの家の子なら親はもう殺されている可能性が高い。

 ……あすみともまたうまく付き合っていかなきゃって思ってた矢先、その事実はさすがにわたしにも堪えた。


キリカ「……いや、でも、ないって。ていうか子供の世話なんてそんな面倒臭いこと好む性格に見える?」

マミ「子供までは殺さなかったってだけかもしれないわよ? 子供は従順だから殺さなかった。でも大人の方はもう……」

キリカ「あれが洗脳には見えないけど……」

かずみ「で、でも、二人暮らしってことはやっぱり親は殺してるんだよね?」


 そんなわたしたちの暴走を抑えるように声をかけたのも、やっぱり訳知り顔の織莉子だ。


織莉子「……殺したのは事実だけど、あまり悪いようにばかり考えなくてもいいかと思うわよ?」

かずみ「織莉子はなんか知ってるの!?」

織莉子「私の口から語ることは控えさせてもらうわ。彼女から恨まれそうだしね」


 織莉子だけはケロっとしていた。それは全部知ってるからなんだろうか?

 その言葉を信じて今は一旦追及しないようにする。……本人がいない場所で言ってても仕方ない。



706 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 00:46:09.16ZVr+WF800 (2/12)



 ――――料理の準備に取り掛かる。

 何を作るか決める前に、それぞれ得意料理を発表していった。


マミ「私は……最近パスタに凝っているわね。カルボナーラやペペロンチーノも簡単に見えて奥が深いのよ」

かずみ「パスタ美味しいよね! さっと作れるし。でもわたしは得意料理っていう得意料理が思い浮かばないなぁ。記憶がないから……」

かずみ「手が動いたらインスピレーションで作れちゃうって感じ! 食べたいものならたくさんあるなぁ。ビーフストロガノフに、グラタンに、オムレツに」

キリカ「なんだろ……しいて言うなら魚の煮つけとか」

かずみ「織莉子は?」

織莉子「……和洋中イタリアン、だったわね。レシピがあれば大体作れるんじゃないかしら」


 一人一種作るって決まったわけじゃないけど、みんなの発言を総合して考えると決まったようなものだった。


かずみ「この流れだと中華任せたいね!」

織莉子「はぁ……中華ね」

かずみ「よし、作ってこう!」



・今日のメニュー

 下2レスまで


707以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/14(月) 00:51:34.99MQo6ZDrk0 (1/2)

茶―ハーン、回鍋肉、餃子


708以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/14(月) 00:52:16.46MQo6ZDrk0 (2/2)

>>707はスルーしてください。↓2だと勘違いしていました。
安価↓


709以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/14(月) 00:56:57.482zP/yCy60 (1/3)

ぶりの照り焼き、一口ハンバーグ、八宝菜、たらこスパゲッティ
あと杏子達用におにぎり


710以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/14(月) 01:01:09.86CY3kt+e2O (1/4)

青椒肉絲
オムライス
ラザニア
鯖味噌煮


711以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/14(月) 01:02:45.67CY3kt+e2O (2/4)

おっと、もう決まってたか
みんな旨そうだ


712 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 01:27:46.57ZVr+WF800 (3/12)



 料理はインスピレーション! 深く考えず、みんなで食べたいものを挙げて作っていく。

 手が空いたら他を手伝って、そうやってキッチンを所せましと回る。


かずみ「そろそろラザニアも出来上がる頃かな? ブリ照りも良い匂いしてきたね!」

キリカ「ハンバーグもそろそろ焼きはじめてもいいんじゃない」

マミ「たらこのソースもそろそろ作る?」


 時間のかかるものから取り掛かる。

 なんといっても出来上がったものが冷めすぎないようにタイミングを計るのが大変だった。


 ……それより、ここにきてドジ(?)が発覚した人もいた。


マミ「美国さん、それまだ早くない?」

キリカ「あれ? ここに置いといたソースは?」

かずみ「織莉子、それ入れてる調味料違うー!」

マミ「……大体何でもできるって言ってなかったかしら?」

織莉子「レシピを見ればなんでもとは言ったけど、忙しすぎるのよ。それに表現が曖昧すぎる……」


 とまあ、こんな感じで調理は完成へと進んでいく。ひとまずこれだけいるからフォローは問題なかった。

 ちなみに、まったくもって悪い意味で織莉子がさらに本領を発揮したのがケーキ作りの時間だったのも、

 またまた予想外だったんだけど……。




713以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/14(月) 01:35:21.972zP/yCy60 (2/3)

ん?ラザニア?


714以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/14(月) 01:38:17.24CY3kt+e2O (3/4)

イタリアンだけ二品か


715 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 02:10:30.19ZVr+WF800 (4/12)



 ――なんとか料理はすべて完成する。

 いつもマミと二人だけのテーブルは今は人も増え、料理でいっぱいだ。


マミ「これだけ数があるとまるでビュッフェみたい」

かずみ「オムライスも卵とろとろだよ! アツアツのうちに召し上がれ」

かずみ「でも何でもできるって言ってた織莉子が失敗だらけだったのが一番の収穫かな。ごまかさないで答えて。本当の得意料理は?」

マミ「昨日のプライドの話は一応嘘じゃないんでしょう? 作ったことのある料理を挙げて欲しいわね」


 そういえば、これじゃプライドはずたずたなはずだ。

 今も、みんなから見栄を張ったか、自信過剰だったかって目で見られていた。


織莉子「……一番自信があるのは『目玉焼き』よ」

かずみ「目玉焼き?」

織莉子「簡単な料理って思ったんでしょう?」

織莉子「一人の間に見様見真似で包丁と卵を持って腕を奮った。でも小さい私は何度も失敗した」

織莉子「最初は形にすらならなかった。なんとか形になってもお父様好みの目玉焼きにならなくて」


マミ(目玉焼きに包丁……?)


織莉子「そのたびに絶対に知られたくなかったからこっそり処分もしてたけど、最初にきちんと作れたのがそれだった」

織莉子「お父様は気づいてたんでしょうね。ゴミ箱の中の卵のこと。でも美味しいと言ってくれた」

かずみ「そっか……頑張ってたんだね。今日もどうせなら目玉焼き作ればよかったのに」

かずみ「でも、食べ物捨てちゃダメ! 物語の中だったら、織莉子は生きてエンドロールを迎えられないよ」


 わたしは真剣な表情で織莉子を見る。

 ……織莉子は無表情にわずかに苦笑の表情を浮かべた気がした。



1料理についてみんなに話を振る
 aマミ
 b織莉子
 cキリカ
 d全員に向けて
2自由安価

 下2レス


716 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 02:11:00.79ZVr+WF800 (5/12)

-------ここまで。次回は14日(月)夕方からの予定です


717以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/14(月) 02:35:00.382zP/yCy60 (3/3)

1cのあと1d

キリカは和食が得意なんだねー、煮付け以外にもいろいろ作れるの?
私もマミもどっちかというとイタリアンと洋食がメインだから、今度和食作りのコツを教えてほしいな

やっぱり料理は自分で食べるために作るより、誰かに食べてもらって「おいしい」って言って貰える事がうれしいよね!



718 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 19:42:19.09ZVr+WF800 (6/12)


かずみ「まあいいじゃん! 上手く出来たんだし。このちょっと和風版な八宝菜も新鮮でいい感じ」

かずみ「味付けはキリカが作ってたソースで出来上がってたんだよね。この前の生姜焼きの時といい、キリカは和食が得意なんだねー」

キリカ「そんなにカッコいい料理があんまり浮かばないだけだよ」

かずみ「煮付け以外にもいろいろ作れるの?」

かずみ「私もマミもどっちかというとイタリアンと洋食がメインだから、今度和食作りのコツを教えてほしいな」

マミ「美国さんよりは頼れそうね……」

織莉子「…………」


 次から次へと箸が、スプーンが、フォークが進む。

 マミもキリカも食事は堪能しているようだ。

 表情だけはいつもどおりのまますっかり無言になってしまった織莉子も、食べる手は変わらなかった。


かずみ「やっぱり料理は自分で食べるために作るより、誰かに食べてもらって『おいしい』って言って貰える事がうれしいよね!」

マミ「私は今まで一人だったから、かずみさんが来てからは特に感じるわ。呉さんも、今日のはどう?」

キリカ「うん。なかなか良いものは食べられたよ。私は普段は家族がいるからあんまり気にしたことないけど」


 それから、あれだけあった料理がなくなると次は冷ましておいたケーキが登場する。

 ――デコレーションはまだ未完成だ。




719 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 20:49:46.44ZVr+WF800 (7/12)



織莉子「器用なものね……」

かずみ「プロ級って言ったでしょ?」

マミ「あんまり見られてると落ち着かないわよ?」


 マミが最初に全体にクリームを塗っていく。

 それからみんなで順番こにクリームを絞ってデコレーションしていって、フルーツを飾り付けていった。


マミ「ケーキまであるなんてすごいわよね。これから訓練って気が起こりにくくなるけど、動かなきゃ消費できないから頑張らないと」

かずみ「まさかもうおなかいっぱいなんてことないでしょ? 甘いものは別腹って言うし……」


 ケーキを切り分けると一つ分皿に取る。

 真っ先に手を出したのがキリカだ。わたしの視線にも気づかずもくもくと食べているキリカに話を振ってみる。


かずみ「ね、キリカ」

キリカ「もぐ?」

かずみ「甘いものは別腹って」

マミ「あと訓練も頑張ろうってこと」

キリカ「あー……まあ、そーだね」


 キリカは曖昧に唸って、口の中のものを飲み込んでからそう言った。


キリカ「私はまだ話を聞くとしか言ってないよ」

かずみ「……うん、今はそれで十分!」



 ……約束の集合時間まで、わたしたちは長いお昼とデザートのひとときを楽しむ。


 一見同じ場所で同じことをしているように見えるみんなだが、心の中にある見えない隔たりまではわからない。

 でも、いつかはもっとこの場所に集まる人を増やしたい……と思った。




720以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/14(月) 21:00:04.77CY3kt+e2O (4/4)

織莉子のドジは料理だけか?



721 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 21:20:07.33ZVr+WF800 (8/12)



かずみ「そろそろいこっか。 みんなへのおみやげも用意してあるよね?」

マミ「ええ、詰めたわよ。おにぎりと料理を少しずつ。けど、あの神名あすみの話…………」

かずみ「……聞いてみるしかないよ。わたしたちがあれこれ考えてもしかたないし」


 荷物をまとめて集合場所の土手に向かう準備をする。

 これで居候――とまではならなかったお泊りもおしまいだ。織莉子はうちに来るときに持ってきた大きな荷物を持っていた。


キリカ「それでどこに行くの? 前のとこ?」

かずみ「うん、まあついてきてよ」


 キリカも今は何も聞かずにわたしたちと一緒にその場所へとついてくる。

 『そのために今までここにいた』――その目的を達成しないと意味がない。


 ……キリカは、他のひとに気づかれないようにそっとマミの袖を引き、自分と同じ列の後ろの隣へ誘う。

 そうして四人で並ぶのに自然な形に分かれた。キリカとマミにはかずみと織莉子の凹凸の大きい二人の背が前に見えている。


キリカ「君も心からかずみと同じように信じて和解してるのかい?」

キリカ「だとしたらそれは嘘だ。君は疑り深い人間だよ。……警戒心があるって言ってもいいかもね」

マミ「ええ……そうね」



722 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 21:54:42.52ZVr+WF800 (9/12)


マミ「私は簡単には許すことも信じることも出来ない。まだ警戒はしてる」

マミ「けど、私はそれよりも『使命』を優先したいと思ってる。……これから話すことね」

キリカ「そんな大げさなこと……」

かずみ「――ねえマミ! ちょっとこれ見て」

マミ「なにかしら?」


 隣にいたマミの意識が前のほうへ向く。

 ……一人残されたキリカは心の中で叫ぶ。


キリカ(……この状況、私がおかしいんじゃないよね!?)

キリカ(まあ『使命』ってゆーのが本当で、これからやらかさないんならいいか……)


 そして、マミも本心では限りなく近いものを持っているということには気づいた。

 この周辺の魔法少女全員。個人単位というよりはチームの結束のほうが大きいのかもしれない。


 と――。


――――
――――


723 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 22:22:55.27ZVr+WF800 (10/12)

昼下がり・土手



 ちょうど日差しと風の心地よいこの時間帯、そこには暇を持て余して立ち尽くす二つの影があった。

 早く来てしまったものは仕方ない。あすみは一人しか居ない話し相手に声をかけることにしていた。


あすみ「この時間に先に来てるのが二人だけなんてねー」

あすみ「かずみたちはどーせ一緒に来るんだろうけど、まだ話せてないイレギュラーさんとかと濃い話もしたかったのに」

あすみ「どうせだからアンタとも親睦を深められる話をしよっか! ――で、アンタって処女?」

杏子「しょっ……――――はぁ? どういう意味だよ? 質問の意図がまったく見えないんだけど?」

杏子「も、もしかして…………宗教的な意味かなんかか!? どうせあたしなんて穢れてるよ。聖女や楽園とは程遠い身さ」

あすみ「? しゅーきょーとかよくわかんないけどキョーコは経験豊富っと。よければその体験談も聞かせてほしいわね」

あすみ「ドロッドロで生々しい奴!初めては好きな人とできたのかしら?それとも犯された系ー?」

あすみ「杏子って遊んでそうだもんね。互いの体験談でも語って親睦を深めましょうか。まずは私が話したほうがいい?」

杏子「聞きたくねえよ!あと勘違いすんな!そういう経験はねえ!」


 一旦は除外した『まさか女の子がそんなこといきなり聞いてくるわけないよな』からつながった勘違いを、杏子は必死に否定する。

 草をかき分けてこちらに迫る足音が響いたのはそんな時だった。


マミ「こんにちは。珍しい二人で話が弾んでるみたいね?」

杏子「あっ、マミ!――――……ッ助けろ!こいつが気持ち悪い!」

あすみ「あら今日はよくお揃いね。みんな聞いてよ、杏子は経験豊富だって」



724 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 22:41:19.35ZVr+WF800 (11/12)



かずみ(経験……?)


かずみ「……ああ! 杏子は経験豊富だって思ってたよ」

杏子「なんで!?」

マミ「し、しいて言うなら今までの行いや言動じゃない……?」

かずみ「そんなの今更だよ! でもマミはもっと経験豊富だよね」

マミ「えっ! いや、そんなことはないわよ!」

あすみ「待ってなんか純粋なアホの子がいる」

かずみ「だって二人とも強いもん!たよりになるし、そりゃ経験も努力もいっぱいしてきたんだってわかるよ」


 ……なぜかわからないけど、マミと杏子がホッと肩の力を抜いたのが目に見えた。


あすみ「こんの! 今時カマトトキャラなんて流行らないんだよアホ毛揺らしやがって!」

かずみ「えー、なんで怒ってるの? かみのけつかまないでよ痛いー」

杏子(あたしってそんなに遊んでるみたいに見えるのかな……)


 しばらくアホ毛を掴まれたりで暴れてたりしてたけど、改めてあすみを見るとさっきまで聞こうとしてたことを思い出す。


あすみ「なにさ突然静かになって?」

かずみ「……あすみちゃん……あすみに聞きたいことあるんだ」



725 ◆xjSC8AOvWI2019/01/14(月) 23:44:16.28ZVr+WF800 (12/12)


かずみ「今住んでる家の本当のことを教えてよ。その家の人のこと殺したの?」

あすみ「うん、殺したね」

かずみ「どうして殺したの!?その家の子とは一緒に住んでるんでしょ?」


 ふざけてた時のままの体勢で固まる。そこにある空気はいたって真剣だ。

 他のみんなも厳しい目であすみを見ていた。


あすみ「深入りしないほうがいいって言ったじゃん。みんなして恐い顔しちゃって、何この話さないと許してくれない雰囲気」

あすみ「……私と被ったからだよ。あの子の親のことは、殺したいから殺したの」


 あすみのほうもいつのまにか今までにない真剣さを持った表情をしている。


織莉子「それで伝わるのかしら。とはいえ殺したのなら罪は罪。貴女はまだアレとこのまま一緒に居るつもりなのよね」

あすみ「黙れウシ乳女狐」

織莉子「牛なのか狐なのか狼なのか、一つにしてほしいわね……」

あすみ「アンタにゃそれで充分だ。許しませんってんならそれでもいいよ。帰るし。でも世界の滅亡はなんとかしなきゃだろ?」

キリカ「世界の滅亡……?」

あすみ「あれ、いつのまにかなんも知らない猫ちゃんが増えてるね。さっさとこいつにも説明して訓練はじめたほうがいいんじゃない」



726 ◆xjSC8AOvWI2019/01/15(火) 00:18:08.50rCESW0XF0 (1/1)

------ここまで。次回は19日(土)夕方からの予定です


727以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/15(火) 00:22:48.86rBv9Smb6O (1/1)

乙です
あすみとの関係、これからどうなるかな?


728 ◆xjSC8AOvWI2019/01/19(土) 20:39:30.73+h5ULZui0 (1/5)


かずみ「でもまだほむらが来てないよ?」

あすみ「これだけ揃ってるんだから先に始めててもいーでしょ」


 周りを見回す。

 今ここに居るのは、わたしと一緒に来たマミと織莉子とキリカ、それからわたしたちよりも先に来てた杏子とあすみの六人。

 あと一人だ。このまま何もせず待つ必要もないけど、みんな動き出そうとしつつもまだ納得いかない空気は残ったままだった。


キリカ「そいつも含めたら、これでこの辺の魔法少女が全員?」

あすみ「なわけないじゃん! そいつが契約させた新人が大量にいるんだから」

マミ「え……何? どういうこと?」

あすみ「アンタも? 元々アンタの街なのに知らなかったとかダサくない?」

織莉子「鹿目まどかを隠すために私が仕掛けた囮よ」

かずみ「囮……!?」

あすみ「インキュベーターの目を鹿目まどかから逸らすために候補者探して紹介して契約させたの」

あすみ「おかげでグリーフシードもとりにくくなってこっちは大迷惑だけどね。ま、何人かはグリーフシードになってるかもしんないけどさ」



729 ◆xjSC8AOvWI2019/01/19(土) 21:33:00.85+h5ULZui0 (2/5)



  あすみ『そりゃ手当たり次第に襲っていつまでも勝てるわけないじゃん?』

  あすみ『この縄張りには私やマミみたいのが居るんだし、最近急増したとかいう新人共が相手だってわからない』


 そういえば――前にあすみがそんなことを言ってた気がした。その時はそこまで考えられなかったけど。

 魔法少女の真実はいつだってショックをもたらし心を蝕む。

 わたしたちも一度は実感をもって味わった。何人も契約させて、その中でもし競争に敗れた人がいたら――。


かずみ(魔法少女の契約はそんな運命へと誘うもの。……それを織莉子が)


織莉子「……そのおかげで実際に鹿目まどかの存在すら気づかれないままでここまでやってこられた」

かずみ「そんなの間違ってるよ!上手くいったかもしれないけど、間違ってる!」

織莉子「そんなことはわかっているわ。まあ……――過ぎてしまったことは仕方ないでしょう?」

織莉子「それより、そろそろ隠しておくのも限界。候補者も無尽蔵にいるわけじゃない。これからのほうが大変だわ」

あすみ「うん、まあ確かにそれは現実的で一理あるよね。間違ってるだの合ってるだの気にしてる場合じゃない」

あすみ「最後に目的が達成できる事、それが正解だ。かずみの言う倫理を気にして世界が滅びちゃ間違いにしかならないね」

かずみ「それは、そうかもしれないけど……」


 そんなやり方じゃダメだって言いたいのに。それがなかったらってことも考えると間違いだって言い切れない。


 そしてあすみもやはり現実的な損得に即してそれをあっさりと言い捨て、それを肯定している。

 ――――かに見えたが、あすみの主張はまだそれだけでは終わらなかった。


あすみ「……けど、やられるほうはたまったもんじゃないよね」

あすみ「倫理を気にして世界が滅びちゃ間違いだとは言ったけど、人の感情を軽く見て怒りを買って、目的も達せずに殺されたらそのほうが間違いになる」

あすみ「そのうえ呪いだけ振り撒いてんだから性質が悪い」



730以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/19(土) 21:43:42.97hDRUJbMx0 (1/2)

あすみ編でもそうだったけど、あすみは織莉子の本質を見抜いてるから織莉子に対して容赦ないよね


731 ◆xjSC8AOvWI2019/01/19(土) 22:25:05.30+h5ULZui0 (3/5)


あすみ「で、実際イレギュラーからは一度殺意を向けられて殺されかかったわけだ?」

織莉子「…………」


 二人の間に入り込めない微妙な空気が生まれる。

 互いに向けられた目は冷ややかさを感じさせた。

 あすみの視線は冷静さを持っている。冷ややかだけど冷徹ではない。ただまっすぐと現実を見ている目だ。


織莉子「まあ、どちらも昔のことですわ。これからは変えていけばいいでしょう……みなさんの納得する通りに」


 織莉子はあすみから目を外して自分からその空気を崩しにかかる。

 この場では引いたようだ。


かずみ「そうだ、これからどうするかも考えないと! まどかのことも助けるし、これからは違う方法を考えよう!」

キリカ「……なんか、話が見えてこないんだけど?」

かずみ「その前にキリカにも話さないとね。そしたら、私達とも一緒に考えて欲しいな」




732 ◆xjSC8AOvWI2019/01/19(土) 23:24:01.59+h5ULZui0 (4/5)




 ――――……まどかのことについに、わたしたちの知ってることのすべてを話していった。

 改めて話していくうちに、計画と呼んでいたもののまだそういうふうにも呼べない段階だったことに気づく。

 これから考えなきゃいけないこともいろいろ出てきたが、それよりキリカはまだ実感わかなそうにわたしたちの話を頷きながら聞いていた。


マミ「困ったわよね……まずは話してみるしかないと思うけど」

キリカ「……ていうかその前に、まずはあの変な魔法少女倒さなきゃいけないってことでしょ?」

あすみ「私たちもそうは思ってたんだけどねぇ。そろそろ他の事考えなきゃいけない段階でしょ。そいつさえ倒したら万事解決するわけじゃないんだから」


 ここから先の話はこれからどうしたいかの話。まどかを助けるというのはあすみにも初めて話すことだった。


杏子「話しかけるなら同じ学校の奴らが話すしかないんじゃねえの。イレギュラーとマミとキリカ、あんたらは同じ学校なんだろ」

織莉子「本人に事情を話すの?」

かずみ「うん!だってそれしかないよ!話せばきっと契約しないでくれるだろうし、わたしもまどかを助けたい!」

あすみ「これまでの美国のやってきたこととは正反対のスタンスだねー。まあ妥当じゃない?」

あすみ「コソコソ妨害続けるのも無理あるし、殺害なんて企てたらイレギュラーに殺られるから現状なしね」

杏子「ていうか本人の性格にもよるけど、フツー最初に考えるべきはそっちじゃね? それとも無理な理由でもあんのか」

織莉子「……」


 織莉子は重く押し黙る。それから口を開くと淡々と忠告のように話しだした。


織莉子「その時はわかってくれたつもりでいても、願い事に頼らざるを得ない状況が生まれたら?」

織莉子「真実を知っていれば警戒されるわよ。そして契約されれば私たちに勝ち目はない」



733以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/19(土) 23:32:38.07hDRUJbMx0 (2/2)

あすみ編ではあすみがほむらの事も含めて暴露したけど今回はかずみも居るしどうなるかな?


734以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/19(土) 23:36:16.780zITTMjDO (1/1)

カンナもまどかを狙ってるしな
ていうかあすなろの方は今どうなってるんだろ?


735 ◆xjSC8AOvWI2019/01/19(土) 23:47:17.76+h5ULZui0 (5/5)


かずみ「願い事に頼らざるを得ない状況って?」

織莉子「貴女は願い事がないから実感がわかないのね」


 織莉子の救世の目的はお父さんへの想いが元になっている。契約したのもお父さんの悲劇がきっかけなのかな。

 わたしとキリカ以外のみんなは少なからず思い当たるところがあるようだった。


織莉子「自身や友人、家族の悲劇。それらが突発的に人生に舞い込むことはままあることよ」

マミ「……単純だけど、もし大怪我でも負ったらどうしようもないわよね」

マミ「戦いを生きてきた今の私ならともかく、契約して魔女になったら世界が滅ぶからって潔く死は選べないかも。家族や友達の事故ならもっと受け入れられない」

杏子「それでもくらだないことで契約することはなくなるだろ?あたしなら知ってれば契約してないよ。あたしもくだらなかったからな」

かずみ「それならまどかを守らなきゃいけないね。でもその役割ってたしか――――」

織莉子「ええ。イレギュラーこと暁美ほむらが守護者よ。でも彼女だけでは不足だわ」

織莉子「これからワルプルギスの夜が来る。この街を滅ぼすほど超弩級の大型魔女よ。あと一週間弱……といったところかしら」

かずみ「大型魔女!?」

織莉子「戦いになれば鹿目まどかが手空きになる。護衛をつけるとしても戦力は分断されるわ。その時にでも襲撃者に来られれば……」

あすみ「まさしく一巻の終わり、だねぇ」

織莉子「そして、彼女がそんなチャンスを狙わないわけがない。少なくともその日まで彼女を生き残らせておくわけにはいかないわ」



736 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 00:20:41.35IXMuZ1Vh0 (1/21)



 また織莉子の口から恐ろしく強い言葉が出た。わたしはそれに少し表情をこわばらせる。


かずみ「生き残らせてはいけない……って、織莉子は殺す気なの?」

あすみ「世界を滅ぼそうとしてる上、アンタ狙われてるんでしょ? しょうがなくない? 手加減できる相手でもなさそーだし」

かずみ「でもなんにも知らないんだよ。ねえ、みんなはどう思う?」

キリカ「あぁ……ごめんなさいさせて諦めてくれればいいんじゃない? 進んでやりたくはないね」

杏子「そんな簡単にごめんなさいさせられっかよ。そんなんだと足元掬われるぞ?」


 荒れだす議論を見て織莉子は再び押し黙る。


 ……この話題を置いといても、わたしは織莉子が立ちふさがるものをすぐに殺すことに結びつけようとするのは、不器用だからなんじゃないかと思った。


 織莉子はなんでもこなせてしまう器用な天才肌に見えて、実はとても不器用だ。

 料理も一ミリ一秒、『どうやって』『どのくらい』が正確に決められていないと失敗するし、何度も失敗を積み重ねてこなさないと上手くなれない。

 前に言ってた才というのも、全部努力で伸ばした結果なんじゃないかと思える。


 ……おそろしく不器用だけど、努力は出来る人だ。

 そうしていつのまにか誰よりも強い才能に発展させられる、それも才能だと思った。

 でも、その努力が正しい方向に向いてくれればとても心強い。




737以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 00:25:42.55S3xBcJXF0 (1/10)

織莉子は自分から目を背けて自分に嘘をついてる内はまともにはなれないんだけどね


738 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 00:39:35.77IXMuZ1Vh0 (2/21)



かずみ「……とりあえず、訓練しない? 後のことはほむらが来てからまた話し合おうか」

かずみ「ずっとまどかの傍に居るのはほむらなんだし、わたしたちだけで考えるよりいい案が浮かぶかも」

織莉子「そうね……それに賛成するわ」

杏子「じゃーそれでいいよ。今日は最初は誰が相手だ?もうこれだけ増えたしな」

マミ「呉さん、見てもらったら?」

キリカ「えー…………わかったよ。私もちょっと実力が足りないとは思ってたところなんだ」


 ちょっと面倒くさそうにしてたキリカもなんだかんだで意気込んでいる。


 杏子、あすみ、キリカの三人はみんなで格闘の訓練をやるみたい。

 でもわたしは、対ニセモノさんを考えるとやっぱり格闘より魔法の習得を急いだほうがいいのかな?

 なんにしても、超弩級の魔女――ワルプルギスの夜が来るまでになんとかしなきゃいけないのは決まってる。



1今まで使ってきたものとはまったく違う魔法を試す
2自由安価

 下2レス


739以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 00:44:39.93S3xBcJXF0 (2/10)

前回使った電撃魔法の訓練、と見せかけて瞬間移動の魔法が使えないか試す
無理なら魔力コントロールの訓練


740以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 00:49:03.31OIana3sjO (1/5)


追加で訓練終了後に対ワルプル用に合体魔法みたいなの出来ないかどうか提案


741以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 00:57:05.12S3xBcJXF0 (3/10)

キリカ編でやった結界みたいのかな?
あれが出来れば街への被害も抑えられるし、メガほむ編の速度停止も出来ればなお良いな


742 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 01:03:50.99IXMuZ1Vh0 (3/21)


 ……とはいえ、なにもないところから手がかりを掴むのは難しいところだ。


かずみ(わたしは電撃の使い方を訓練してみようかな……)


 電撃を放つという単純な魔法だからこそ強い。身体を超高速化させての瞬間移動は消費も大きいけど、他にも出来る事はあるかもしれない。

 それにすでにわたしは他の魔法も使うことが出来る。

 せっかくならその多彩さを活かしてもっとうまく魔力をコントロールできるように頑張ってみよう。


 魔法を切り替え、魔力を切り替える。わたしの中には何人分もの想いが蓄積しているようだ。

 本当はこれだけじゃない――。


かずみ「……………………あ」


 ――その時、ふと頭に映像が浮かんだ。



743 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 01:27:57.47IXMuZ1Vh0 (4/21)


杏子「……よわっちいな。いくら新人ってもこれじゃ骨がなさすぎるんだけど。いつまで寝てんだ?」

キリカ「ッ……勝った気でいるなよ!倒すまでは決着ついてないんだから!」


 一方、格闘訓練のほうでは息一つ乱さず余裕で直立する杏子と、その足元に倒れるキリカの姿があった。

 黒い衣装が砂で白く汚れている。それも気にせずにキリカは立ち上がる。


あすみ「お、やる気出てきたね。杏子がやる気出させるの上手いの?」

キリカ「だって悔しいじゃん、こんなやつに!すっごい馬鹿にしてくるんだよ」

あすみ「うわー、単純。まあ、どっちもどっちでお似合いだよね」

杏子「どういう意味だっての!」

あすみ「ちょっと、いきなりこっちにくんのやめてよ」

杏子「もうお前らまとめてかかってこい!相手してやるよ!」


 キリカは少し真剣な光を眼帯に隠れていない片方の瞳に灯す。

 その心の中には、自分の実力を思い知ったあの外道な多重人格少女との戦いのことが過ぎっていた。


 ……乱闘が一区切りついたところでわたしは話しかけた。


かずみ「ねえみんな、ちょっと思いついたことがあるんだ!」

杏子「なんだ?かずみも身体動かしたくなったのか?」

かずみ「ううん、違うの!でもちょっと見てたけど、みんな頑張ってるんだね」

キリカ「多分このままじゃあの魔法少女にもワルプルギスにも勝てないだろうから、ちょっと真剣にやってみようかなって」

キリカ「私はもう関係ないし関わらないって思ってたけど、そうも言ってられなくなったし」

キリカ「かずみのためにも世界を救うためにも出来る限りのことはするよ。役に立てないかもしれないけどさ」



744以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 01:33:44.96S3xBcJXF0 (4/10)

>>かずみのためにも世界を救うためにも

このキリカは『愛』に生きてはいないけど、世界よりも先にかずみが先に来てるのがらしいというかなんというか・・・
というかこれってある意味告白では?w


745以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 01:37:44.94OIana3sjO (2/5)

杏子とキリカの組み合わせはお互いにムキになるな
ある意味似た者同士だからか?


746 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 01:44:00.90IXMuZ1Vh0 (5/21)


 キリカの言葉がじーんときた。


 キリカも協力してくれるし、あすみもまどかを助ける提案を受け入れてくれた。

 これならきっと、みんなで世界だって救える。


かずみ「……うん!みんなで頑張ろう!」

かずみ「それでね、みんなで合体魔法を試してみるのはどうかって言いにきたんだ!みんなの魔力を一つにして強力な魔法にするの」

あすみ「……そんなことできんの?」

杏子「合体魔法って言ってもなぁ……簡単に言うけど難しいと思うぞ?見たこともない」

かずみ「ううん、できるよ!」


 みんなが難色を示しているけど、わたしには断言できるほどの自信があった。

 なぜならば、その光景はさっきわたしの目に映ったからだ。


かずみ「見たから。魔法少女が力を合わせて魔法を使えるって」

あすみ「前世の記憶とやら?」

かずみ「うん。わたしじゃないけど、ミチルと仲間は一緒に戦ってたよ。やろうと思えばできないことはない」

杏子「そうか。ならあっちの連中も呼んでやろーぜ。あたしも魔力の扱いは慣れてるんだし、やってできないことはないだろ」


 そう言って杏子はマミと織莉子を呼びに行った。

 自信満々な背中がなんとも頼もしい。




747 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 01:50:28.96IXMuZ1Vh0 (6/21)

-----ここまで。次回は20日(日)夕方からの予定です

>>745
「かずみのため」が最初にきたのは、かずみが狙われてることを最初に知ってたからですねー。
実はまどかを狙ってることを知るよりも前に発言する予定だったセリフなんですけど、
世界のほうが圧倒的に規模はでかいものの、問題としてそれほど大小なく捉えていることと、知った順番でこうなりました。


748 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 01:51:18.97IXMuZ1Vh0 (7/21)

失礼、↑は>>744宛てでした


749以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 01:54:15.81S3xBcJXF0 (5/10)

乙でした

解説ありがとうございます
言われてみればかずみが悩みを打ち明けたのはキリカが最初でしたね
かずみの事情を一番知っているのはキリカだとマミさんが知ったら嫉妬しそう
まぁ、マミには杏子がいるからいいかw


750以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 01:58:30.11OIana3sjO (3/5)

乙です
合体魔法がどうなるか楽しみ


751 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 18:45:19.05IXMuZ1Vh0 (8/21)



 それから魔力の扱いに集中していた二人も杏子に連れられて、みんなが六人で陣を組むように囲んで一か所に集まる。


織莉子「私たちも聞いたわよ。みんなの魔力を合わせて魔法を使うんですってね……」

マミ「合体魔法なんて私も盲点だったわ。今まで魔法の研究はしてきたつもりだったけど、一人が染みついてると考え付けないものね」

マミ「でも、どんな魔法にするの?」

かずみ「うーーん、そうだなぁ……」


 どんな使い方でも、やってできないことはない! とは思うけど……

 ――まず最初に試すのはどうしよう?




1攻撃魔法【エピソーディオ・インクローチョ】
2防御魔法
3自由安価 ※個人の持つ魔法の特性を強化したような能力に特化した魔法も可能

 下2レス


752以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 18:49:04.799jVLky/s0 (1/1)

1


753以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 18:51:05.97S3xBcJXF0 (6/10)

1+>>741にあるようなイメージの魔法
速度停止はほむらが来てから相談


754 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 19:05:49.03IXMuZ1Vh0 (9/21)



かずみ「まずは敵を倒すのに使える必殺技かな!複雑なこと考えるよりはすぐにできそう」

マミ「攻撃魔法ね。いいと思うわ」

杏子「合わせてぶつけりゃいいんだな?」


 それぞれが武器を高く掲げ、魔力を込めるポーズをとる。

 そこからは、魔力を足していくように一つにして集めていく感覚が研ぎ澄まされた。


 みんなが力を一つにする光景を見てわたしは思う。今ここに居る人数は6人。陣を組んだ中心に魔力が増幅していく。

 わたしじゃないわたしとよく似た少女は、前にもこうして力を合わせていた。

 その仲間たちには、誰もが互いを心から信頼し合える絆があったと思う。


 ――でもまだあと一人が足りない。


 それはこの場に居ないほむらを思ったのか。それとも別のわたしの中にある記憶か。

 ふとそう思った時、集められた魔力が相いれず反発し合うように火花を散らした。




755 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 19:22:17.73IXMuZ1Vh0 (10/21)


かずみ「わっ! あぁッ!」


 爆発する。それが分かった時、先に動いたのは誰よりも魔力の扱いが上手いマミだった。

 細かい縺れからいよいよ拗れてこの場で暴れ出した魔力の根源の密度を散らして掻き消す。


 ……幸い、陣を囲んだ6人の間に暴風が吹き荒れるのみで済んだ。

 みんなしりもちをついている。


マミ「何が起きたの……?」

杏子「途中まで上手くいってたのになんでだよ。あたしはしくってねぇぞ!」

キリカ「なんだよそれ。私たちが悪いっていうの!?」

織莉子「まあまあ、落ち着いて。確かに魔力の扱いに熟達していない私が足を引っ張っている可能性も否定はできません……」

あすみ「私はそこのガチ初心者共よりは魔力の扱いは長けてるけどさー、ベテランならもっとフォローして合わせてやってもいいんじゃない?」

キリカ「一緒くたにしないでよ」


 みんなが言い合いを始める中、わたしは自分の中に出てきた結論を口に出す。

 記憶の中の光景との違い。それはみんなで仲良くしたいと思ってたわたしには信じたくないことだけど……。


かずみ「…………絆、じゃないかな」



756 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 19:36:03.02IXMuZ1Vh0 (11/21)



 みんなが一斉にわたしのほうを見る。

 ハッとしたような表情で。


かずみ「みんなの心がバラバラだから、合わないんじゃないかな。……ちょうど今みたいに」


 失敗の原因を擦り付け合う、そんな行動もそれを表していた。

 この6人は一緒にいるけど、本当の意味で一緒じゃない。


マミ「無意識のうちに合わせるつもりがないから反発したってことね? ともかく練習は必要ね。今は一緒に戦う仲間なんだから」


 マミもみんなもわたしの言ったことを納得したようだった。

 マミは草と土を払って立ち上がると、何事もないようにまたさっきと同じ位置に着く。


かずみ「みんなでやるのはまたほむらが来てからやってみない?攻撃以外にもまた色々考えたいし」

織莉子「そういえば彼女、遅いわね……集合時間からどのくらいになるかしら?」

あすみ「イレギュラーさんって時間にルーズなんだねぇー」


 あすみは軽く言ったけど、それだけとは思えなかった。

 無論あすみ自身もふざけた態度の下で考えてはいるだろう。


 まどかの守護者であるほむらが来ない。そのことが示す可能性を。




757 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 19:45:04.51IXMuZ1Vh0 (12/21)



あすみ「……鹿目まどかに何かあった?」

織莉子「…………もしくは………………」


 二人が表情を重くする。その時、草を揺らす音が響いた。

 その音は迫る。ゆっくりゆっくりと踏みしめるように、不規則なリズムを立てて。


 やがて、その音の主はわたしたちの前に姿を現す。

 長い黒髪はまばらに乱れて垂れ下がり、いつも堂々と胸を張る細い身体はバランスも保てずに折れ曲がっている。


 その傷だらけの姿はわたしたちの前に立ったと思うと地面に倒れ伏した。


かずみ「ほむら!?」



 ――――そう。もしくは、何かあったのは両方か。ということだった。





758以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 19:54:52.83S3xBcJXF0 (7/10)

先手を打たれたか


759 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 19:59:06.76IXMuZ1Vh0 (13/21)



 ほむらの怪我は最初に駆け寄って行ったマミが治した。

 他に治療の得意なメンバーがいなかった。わたしも自分の回復には特化してるけど、他人に使うにはそこまで向いていないようだ。

 ほむらが死んでいなかったのは良かった。とは思うけど……。


織莉子「……答えなさい。鹿目まどかはどうしたの?」


 治療が済んでまともに口を利けるようになったほむらに、織莉子が一番に問いかけた。


ほむら「……――……れたわ」


 しかし、俯いたまま発せられるほむらの言葉は弱弱しくて聞き取れない。

 もう傷は治したはずなのに。


織莉子「はっきりと喋りなさい。どんな屈辱的で受け入れがたい事でも、それが真実なのだから」

ほむら「浚わ……れたわ。…………私が勝てなかった」


 織莉子が厳しく問い詰めると、ほむらは昨日の戦いで聞いた以上に無感情な抑揚のない声で言った。

 予想はできていた。けれど、この場に居るみんなが驚愕に目を見開いた。




760 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 20:18:39.46IXMuZ1Vh0 (14/21)


かずみ「何があったの!?」

マミ「……どうして負けたのか、詳しく教えてくれるかしら?」


 実際に殺意すら持っているほむらと戦ったことのある私たちからすれば信じられなかった。

 そして、織莉子はその事実に苛立ちを感じているようだった。

 姿を偽っての騙し討ち。不意打ちでの拘束。考えられる手はあるけど、あんなふうに傷だらけになるように嬲るにはどうにも違和感がある。


ほむら「わからない……わからないのよ。隙を突かれた?とにかく私の一切の攻撃が通用しなかった」

ほむら「……時間停止も含めてね」


 ほむら自身が一番に混乱している。

 けれど、その中から対策となるものを改めて見つけ出そうとする。


ほむら「それどころか……私の予想では相手も時間を止めていたように見えた」

ほむら「なにより、正面きって戦ったのに勝てなかったのよ。私はそんな相手とも戦ったことはあるわ。でも、こんなのあまりに納得できない……!」


 ほむらは涙混じりに語り、やる瀬ない気持ちを発散するように握った拳を細い足へと下ろした。

 もちろんこんなことで発散できるわけもない。更にやる瀬なさが増すだけだった。



761 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 20:54:23.17IXMuZ1Vh0 (15/21)


織莉子「何を泣いているの? 泣いてどうにかなると思っているの? あれだけ鉄面皮を気取っておきながら内面はまるで幼子」

織莉子「私はこうなることを識っていたわ。貴女はあの魔法少女にもワルプルギスの夜にも負けると」

織莉子「でもどうにもできなかった。それは私を殺し、鹿目まどかを守る運命を選んだ貴女に責任がある」

織莉子「貴女は世界の誰より鹿目まどかのほうが大事なんでしょう? その極めて自分勝手な執着が皆を危険に晒した」


 織莉子は今まで実際に顔を合わせる前からほむらに抱いていた怒りをぶつける。

 涙は止まらずにほむらは強く歯を噛み締め、そこから嗚咽が漏れる。

 織莉子が鉄面皮と言ったように、対峙した時少しだけ見ただけのほむらのクールそうなイメージではこんな姿は想像もできなかった。


マミ「美国さん……何もそこまで言わなくても。暁美さんだって十分悔やんでいるはずよ」

織莉子「でも事実こうなったのよ? 貴女達は本当に今起きていることの重大さをわかっているの?」

キリカ「……それ、最初からこの人がまどかを守らずに自分が殺していればってことだよね」

あすみ「ぶっちゃけウシ乳の言うことも一理あるよ。でもそんなこと言ってる場合じゃなくね」

織莉子「……諦めるにはまだ早いわね。今ならどうにか出来ることはあるはずよ」


 ほむらへの糾弾から現実に引き戻したのもあすみの一言がきっかけだった。

 現実的な議論に移ることで一旦落ち着いたかのように見えた。それから織莉子は場をまとめたつもりだったが、まだ疑念は噴出する。



762 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 21:24:16.31IXMuZ1Vh0 (16/21)



杏子「おいおい偉そうなこと言うけどよ! 負けるってわかってたならなんでそんなこと黙ってたんだよ!」

杏子「いつやられるかわかってりゃどうにか出来たかもしれねぇだろ?」

織莉子「ええ。でもそれが視えたのは前なのよ。その時とは状況も変わったし、それがいつ起こるかまではわからなかったわ」

織莉子「それからは一切その予知は視えなかった…………何故?」


 もちろんその未来が回避できたわけでもない。現に最悪の状況は今起きている。

 そして、織莉子は自分の力に裏切られたもう一つの場面を思い出して茫然とする。


織莉子「そういえば私は昨日も、自身の重大な危機を予知できなかった」


 その魔法がどうでもいい事ばかりを予知して、重要な事を知らせないことはこれまでもあった。

 鬱陶しさと魔力の消費、両方の面で織莉子が契約した時からこれまでずっと悩んでいることだ。

 それを直すために今もこうしてマミに習って訓練をしている。


 それでも立て続けに役立たずを発揮されると疑念が沸いた。今回ばかりは少しおかしい。

 昨日もマミに聞かれ、かずみにも念を押されてはっきりと答えただけに自分の力が信じられなくなる。


 予想もしない未来ならともかく、昨日も今日も気を張っていた。意図して探っても出てこないのは異変だった。

 使い勝手は少々悪いが、近未来の意図した予知であれば、その精度の恐ろしさはその魔法にやられたキリカもよく知っているものだった。




763 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 21:43:09.67IXMuZ1Vh0 (17/21)


キリカ「……アレってそんなに使えない魔法だったっけ?」

マミ「私は詳しい性能は知らないけど……美国さんは魔法が上手く使えなくて悩んでいたんだったのよね」

キリカ「冗談言うなよ。戦いの中で私が床に落ちてた携帯を見た時の数秒、それを引き当てて狙えるくらいは精度があるよ?」

織莉子「待って……貴女は今日、あの女との戦いで時間停止を使えなかったのよね」


 キリカやかずみの前でも使ったという変身魔法に気を取られていたが、

 織莉子は自分もあの女と対峙した時、魔法どころか魔力さえ使えなかったことを思い出す。


 変身魔法は借り物。本質はそっちだ。そこから導き出されるのは一つ。


ほむら「……あの魔法少女は私たちの魔法や魔力に干渉が出来る?」


 ――――コネクト。


 魂を拘束するように縫い付けられた、その見えない糸に気づく。

 操りの糸はこの中の誰もに結び付けられているかもしれない。


マミ「他人の魔法を奪うのもその一種ね……そして厄介な予知の魔法は制限された」

かずみ「でも、わたしは……見えたんだ。昨日、ほむらがマミの家で待ち伏せて襲ってくるっていう光景」



764 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 22:15:19.93IXMuZ1Vh0 (18/21)


かずみ「予知のできる織莉子が『何も起きない』っていうから気のせいかなって思ったんだけど……」

織莉子「実際に襲撃は起きた。貴女は昨日、私と一緒に訓練をしていたわね。もしかしてそのせい?」


 かずみがおずおずと喋り出す。

 そこに織莉子は例の魔法少女とは別種類での『他人の魔法を奪う性質の魔法』の可能性を見出した。

 今やそれだけがここから状況を巻き返す希望だった。


かずみ「それって、じゃあ……わたしも他人の魔法が使えるってこと?」

織莉子「……今はかずみのほうが正しい。そして、恐らく敵も未来を見て私達の動きを探っているのでしょう」

あすみ「なんていうか……本当に厄介な敵だな。ホントに時間ないよ。どうする?」


 あすみまでもが余裕のなさそうなシリアスなトーンで話す。

 まどかは連れ去られてしまった。今も例の魔法少女が彼女に何をしているかわからない。


かずみ「……たとえ今世界が滅ぶ未来が見えてもあきらめないよ」

かずみ「ニセモノさんはわたしが欲しいんでしょ? わたしが囮になってなんとかする! きっとそうすれば出てくるはずだから」

かずみ「まどかのことも助けだしてくるよ。ねっ?」


 かずみの心にあるのは屈さない強い意志だった。

 そうして涙に崩れた顔のほむらに笑いかける。




765 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 22:34:32.38IXMuZ1Vh0 (19/21)



ほむら「あなたは…………」

かずみ「え?」

ほむら「……どこかまどかに似ているわ。代わりになんて思えないけどね」


 ――――そう言われて、わたしはきょとんとする。

 話したこともないからわたしが似てるかなんてわからないけど、ほむらを見てたら絶対に助けなきゃって思った。


 ほむらの顔は少しだけ穏やかになっていた。まどかはそんな顔をさせられる人なんだろうから。



★技習得
 解析 :魔法や魔力に使うと性質や弱点を解析できる。魔法を観察することでその魔法を真似ることが出来る。
     本来は読み取るための媒体が必要だったが、その魔力の性質のみ受け継いだため実質本家より魔法が強化されることになった。

 未来予知 :数秒~一か月程度を予知することができる。近い未来の方が精度が高く、対象がピンポイントなほど消費が大きい。基本的に自発使用のみ。

★魔法の習得条件解放。


かずみ「ニセモノさんはわたしも狙うつもりなんだから、一人になれば絶対に来るよ。戦わなきゃいけないのは同じだから」

マミ「……すぐに向かうの? あなたまで負けてしまったら元も子もないわ。準備くらいは整えたほうがいいんじゃないかしら?」



・準備
1解析させてもらう
 Aマミ
 B杏子
 Cほむら
 Dあすみ
 Eキリカ
2今まで使ったことのない魔法の習得(選択式)

3囮作戦決行
4自由安価

 下2レス


766以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 22:40:39.39S3xBcJXF0 (8/10)

1D、あすみが拒否したらE
3の前にキュウベェを呼んで来たらまどかの場所を聞く

キュウベェ、まどかを浚った魔法少女の事教えて?
まどかに死なれたら困るはずだよね?


767以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 22:44:02.08OIana3sjO (4/5)


追加で連絡手段が欲しいので誰かから携帯を借りる
あと囮作戦の前に杏子とあすみに料理を渡す


768 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 23:04:57.46IXMuZ1Vh0 (20/21)



かずみ「わかった。じゃあ行く前に、あすみの魔法を解析させてくれないかな? 駄目なら他の人にするけど……」

あすみ「こんな命のかかった局面で拒否るほど馬鹿じゃないよ。でも何の魔法かも知らずに選んでいいの?とんだハズレ引くかも」

かずみ「そんなに役に立たない魔法じゃないと思う。だってあの時はマミも大変だったんだから……」


 わたしはあすみの使う魔法を詳細に知ってるわけじゃないけど、その片鱗は見ている。

 ユウリがあんな姿になったのもマミが不幸続きになったのもその魔法の効果だ。あれを見て甘く見られるわけがなかった。


あすみ「……ソイツがアンタに悪意を持ってるんだったら効くよ。不幸に突き落としてやれ」


 悪意を持ってるなら……か。

 目的はわからない。まどかを浚ったのは世界を滅ぼすためなのか。わたしを浚うのは何のためなのか。



・習得技選択
1死神の鎌 :問答無用でクリティカル確定・相手の攻撃分のダメージを返す。悪意のない相手に効果が薄いのが欠点。
2読心 :心を読む。
3やっぱ他の人にする
 Aマミ
 B杏子
 Cほむら
 Dキリカ

 下2レス


769以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 23:12:15.70OIana3sjO (5/5)

カンナはかずみ大好きだから1は効果ないかな?
2で


770以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 23:13:21.24S3xBcJXF0 (9/10)

目的を探るなら2かな


771 ◆xjSC8AOvWI2019/01/20(日) 23:33:23.35IXMuZ1Vh0 (21/21)



かずみ「悪意を持ってなかったら……?」


 人さらっといて悪意がないなんてあるのかとは思う。

 けど、あすみの限定的な言い方が気になった。


あすみ「……ま、そんときゃそれなりに利くっしょ。大した戦力にはならないかもしれないけど」


 そう言うあすみの後をついていった。

 全部は一気に覚えられないから、まずは二人だけでその魔力を観察する。


――――
――――


★技習得
 読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?


かずみ「ありがとうっ!」

杏子「そういやコイツの魔法ってなんだったんだ?」

あすみ「さてね。私の口からは言わないわ。かずみの口から聞くのは教えた以上しょうがないとは思うけど」

あすみ「……やっぱ似合わないな、コイツに」




772以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/20(日) 23:43:22.69S3xBcJXF0 (10/10)

里美みたいに動物と心を通わせる事もできそう


773 ◆xjSC8AOvWI2019/01/21(月) 00:10:09.07VkJpeZkO0 (1/3)



マミ「かずみさん、もう行くのよね?」

かずみ「うん、あんまり時間かけてられないから」

マミ「念のため私の携帯を貸しておくわ」


 マミのスマホを受け取る。それを握りしめて、ポケットに入れた。

 あの魔法少女を倒せたら連絡しよう。そして、全部終わったら返さないと。


マミ「……無事で帰ってきてね。かずみさんがやるのはあくまで囮よ」

マミ「例の魔法少女にとっても狙い目だろうけど、注意を引いて倒しに行くんだものね」

キリカ「ああ言ったのに、結局なにもできないのはつらいな。負けないでね。もし機があったらみんなで駆けつけるよ」

杏子「アンタはなんだかんだみんなの心配も期待も背負ってるな。無事帰ってきたらどうせお茶会やるんだろ?なんか食わせてくれよ」

あすみ「私の魔法までやったんだから勝ってこいよ。エグいことには使えるから」

かずみ「そんなにエグい使い方はわたしには無理だと思うよ!?」

織莉子「命運は貴女が握っているわ。恐らく対抗できるのも貴女しかいない」

ほむら「気を付けて。そして、まどかのことも……」

かずみ「うん! 連れて帰ってくる!」


 ここを離れる前に、荷物を探ってあるものを取り出す。

 お昼に詰めた料理だ。今のうちにこれを渡しておかないと。


かずみ「それと、はいこれ!わたしとマミと織莉子とキリカで作ったの!今日の夜ごはんにでも!」

杏子「へえ、気が利くじゃねーか」

かずみ「あすみのはちゃんと二人分あるよ。キリカから聞いたんだ。そのほうが喜ぶって」

あすみ「……もー、あの猫は余計なことを。今日あんなこと聞いてきたのってそれが原因でしょ?」

あすみ「でもまあ確かに嬉しいっちゃ嬉しいわ。助かるし。気が利くわね」


 キリカの言った通り、たしかにあすみは喜んでくれた。

 そんな貴重な不気味さを含まない笑顔を見て、みんなに手を振って別れを告げる。


 これまでは一人にならないようにしてきた。

 そこを敢えてみんなと離れていく。

 日の落ちてきた空と慣れてきた見滝原の街並みを眺めながら、わたしは単身土手の外に繰り出していった。




774 ◆xjSC8AOvWI2019/01/21(月) 00:10:41.48VkJpeZkO0 (2/3)

--------ここまで。次回は26日(土)夕方からの予定です


775以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/21(月) 00:15:48.70i96pSNCF0 (1/2)

乙です

かずみとカンナに一騎打ち、どうなるかな?
選んでおいてなんですが、読心より呪いの方がよかったなんてことのならなきゃいいけど
次は土曜?いいとこなのに時間空くなぁ・・・自分もそうだけどスレ主さんも忙しいのかな?

久しぶりにイラストのリクエスト
マミがカットしてくれた今のかずみの髪型のイラストをお願いします


776 ◆xjSC8AOvWI2019/01/21(月) 00:23:26.59VkJpeZkO0 (3/3)

モノローグでもヒント程度に出してますが、例の魔法少女さんが善意しかないので呪いが効きにくいは正解です。
あの描写で呪いのが有効だったら作者性格悪ッ!ってなると思います。
今週はちょっと残業が多そうです…。予想を裏切って時間ができたら避難所のほう更新するかもしれないけどあんまり期待はしないでください。


777以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/21(月) 00:48:04.22i96pSNCF0 (2/2)

自分も棚卸し等で残業続きですよ・・・
イラストの方はお時間があるときにでもお願いします
お互いお仕事頑張りましょう!


778 ◆xjSC8AOvWI2019/01/26(土) 21:24:18.79a09F8Y7G0 (1/5)

――――
???


 どこかの研究所のような鈍色の壁が覆う無機質な建物内。周りにはカプセルのようなものがたくさんあった。

 その異質な空間を見渡す余裕もなく、二人向かい合ううちの小さな少女は怯えと絶望に目を見開く。


「…………ぁ……」


 桃色の瞳は揺れ、喉からは声にならない声が漏れる。


「だーかーらー、見てただろ? 次はキミの番。これから私はお友達を殺して家族を殺して、最後にキミを殺す」

「どうしてほむらちゃんがひどいことされなきゃいけなかったの?なにも悪いことしてないのに!」

「んー? 強いて言うなら、君が君であるから、かな」

「……え?」


 見知らぬ女から告げられたそれは、まどかからすれば滅茶苦茶な理由だった。

 まどかはこの性質の悪すぎる悪夢に涙する。


「あなたがこんなことする意味がわからない……こんなの夢だよね?」


 いきなり訪れた非現実を受け入れられるはずもなかった。


 まどかは普通の少女。お金や権威、家柄があるわけでもない。ずば抜けた才能があるわけでもない。一言でいえば、平均・平凡に埋もれるような人だった。

 母は一般企業のOL。父は専業主夫。それを友達に話すと珍しがられることはあるが、とはいえ特に一般的な家庭と違うところはない。

 それどころか、その自身の平凡さはむしろまどかのコンプレックスにもなるほどだった。


 ――狙われる訳がわからない。そう思っていた。自分の破格の素質をまどかは知る由もない。



779 ◆xjSC8AOvWI2019/01/26(土) 21:54:47.42a09F8Y7G0 (2/5)


「ノンノン、現実逃避しないでほしいな!夢じゃないよ。まあ、いっこだけ回避する方法があるけど。

 さっきのは魔法。キミの友達が使ったのも魔法……まあ、にしてはなんだか硝煙くさかったけど」

「そうだ……なんでほむらちゃんがあんな武器持ってたの……?」

「さあね。盗んだんじゃない? お得意の魔法で」

「魔法って……」


 どこまでも現実感のない言葉に、まどかは目を背けようとする。

 しかしまどかの目を背けた先には、この残酷さに似合わない容姿の見たこともない白い獣が佇んでいた。


「やあ、はじめましてだね。【カンナ】から聞いているよ。君が鹿目まどかか。

 ボクはキュゥべえ。魔法の使者さ。キミも僕と契約さえすれば魔法を使えるようになれる」


 否が応にも目が合う。小首を傾げた生物の持つまんまるの赤い瞳は、透き通ってまどかの姿を反射している。

 まどかは目に涙をにじませたまま何も答えられずにいた。


「安心していいよ。契約ってそんなに難しいことでも怖いことでもないんだ。

 ただ君が意思を示してくれればいいんだよ。君の願い事が契約の意思になる。それさえ決まれば、僕がそれを叶えよう。それで契約は完了だ」


 ただ実感がわかなくて怯えて悲しむばかりのまどかの首を無理やり掴むと、魔法少女は強引に自分に目を向けさせた。

 そこに送り込まれるのは強烈なイメージ。

 荒れ狂った学園を巣食う怪物たちがクラスメイトや先生を貪り、教室に死体の山を築き上げる光景。

 我が家が血に染まり、大好きな家族みんなが無惨に引き裂かれた光景。


 まどかは顔を覆って叫びをあげる。


「……一人一人殺していくよ。でも絶対にキミは最後になるまで殺してやらない」


 たとえこれがただの悪夢だとしてもこんな続きは一度だって見たくない。絶対トラウマじゃすまないことになる。

 でもこれはただの夢妄想では終わってくれない、そう思える生々しさがあった。

 まどかにとって一番残酷な映像は、嫌な現実感を伴ったまま脳裏に焼き付いて離れない。



780 ◆xjSC8AOvWI2019/01/26(土) 22:46:46.92a09F8Y7G0 (3/5)


「わたしの……願い事……?」


 平凡で、どんくさくて、どこにいても何の役にも立たなくて。そんなだからいつも自信がなくて胸を張れない。

 でも家族も友達もみんな大好きで、誰かの役に立ちたい。……死なせるなんて絶対に嫌だ。


「契約しよう、まどか。みんなも助けられるよ。こんなことで屈したらダメだ!」


 キュゥべえはまどかの思いに付け入るように誘う。

 もっともらしく味方のように振る舞っているが、これも魔法少女が用意した舞台でしかなかった。

 茶番のような勧善懲悪の形だけ取った劇。ここにはまどかを助けてくれる人などいない。


 しかし、まどかは何かが正しくて誰に助けを求めればいいのかさえすでに錯覚を起こし始める。






 …………それから魔法少女は一人でこの場所を出て行った。

 壁のカプセルたちを一瞥して、そこに冷たい視線を送る。


「……箱庭の結界はもう崩れた。ここももう残骸だな」


――――


781 ◆xjSC8AOvWI2019/01/26(土) 23:27:08.44a09F8Y7G0 (4/5)



かずみ(……こうやって一人で出歩くのってひさしぶり)


 風見野で目を覚まして、最初は自分のことがわからなくて一人だった。

 あれから今のわたしにはたくさん仲間がいる。一人が新鮮なのもそのおかげだ。


 一応気は張りつつ、散歩のように景色を見回してみる。

 敵はいつくるかはわからない。でも相手も未来を覗けるならそのチャンスも絶対に見てるはずだ。


 敵は一人とは限らない。偽物さん以外の人が襲ってくるっていう可能性もありえる。そしたらどうしよう。

 ……けど、どんなに注意深くしてても、そもそも偽物さんの姿もわたしたちは知らないんだから見た目じゃわからない。

 危険なことが起こるかもってことだけ気を付けているしかない。


 キュゥべえはもうまどかと出会ってしまったのだろうか。

 織莉子がたくさんの人を囮にしてまで隠してきたもの。

 なにもできずにまどかが契約してしまったらその人たちの犠牲はどうなるのか。



 川沿いを進み、町はずれってほどでもない程度に人通りのすくないほうへと行ってみる。

 日常の空気が広がる街の中、誰もいない小さな公園にぽつんと人影が見える。

 わたしを見ると、人影はまるで待っていたように手を振った。




782 ◆xjSC8AOvWI2019/01/26(土) 23:51:16.71a09F8Y7G0 (5/5)



「やあ」


 穏やかに笑う人影。見たことのない少女の姿だった。

 みんなの証言みたいに顔や正体を隠しているわけでもなく、ロングのパーカーについたフードは後ろに垂れている。


かずみ「……あなたがわたしを浚おうとしてる人なの?」

「やっと挨拶が出来るよ。これからよろしく、かずみ。私のことは【カンナ】とでも呼んでほしい」

かずみ「これが本当の姿なの?」

「それはどうかな」


 わたしは警戒心を向けてるのに、カンナと名乗る少女は親しい友人にでも話しかけるように喋しかけてくる。

 でもこの問いかけに対してはどこかごまかすように意味ありげな答え方をした。

 それが少し気になった。


「今日は私に会いにきてくれたんだろ?やっとみんなと離れる決心がついたんだ」

かずみ「それは違う!」

かずみ「わたしはみんなと一緒に過ごすためにここに来たの!まどかは今どこにいるの!?まどかを返してあげて!」

「……まどか?」


 そして、わたしがそう言うと、カンナは一気に機嫌が下がったように表情を消した。

 暖かさを感じさせていた笑みが消えると、その表情は冷たく背筋が凍りそうになる。



783 ◆xjSC8AOvWI2019/01/27(日) 00:44:12.439b8F80D40 (1/3)



「そう。まどかといえば、私のほうも準備を済ませてきたんだ」

かずみ「準備っていったいなんのこと!?」

「あとは君だけだ。君がくればすべてが完成する」


 カンナはわたしに向けて手を差し出す。顔に穏やかな笑みは戻っている。

 しかしさっきの表情を知ると、どこかその奥が冷たい――――。


 底知れないものを感じて警戒を強める。もちろん手を取るわけはない。

 その場からは動かず、代わりに風に揺られてもいないのに鈴の音が鳴った。


かずみ「――――……!」


「アレー……どうしたの?」


 その心を覗くべくあすみからもらった魔法を使ってみた。

 そこで知った内容のおそろしさにわたしは絶句する。


かずみ「う、嘘だよね……あなたは……!」

「……私の心を読んだの? あの仲間の一人の魔法か。あの小さくて生意気そーなヤツ」




784 ◆xjSC8AOvWI2019/01/27(日) 01:04:16.969b8F80D40 (2/3)



 わたし以外の人の話をする時は、いつだってカンナは忌々しそうに表情を歪ませる。


「君の周りことはずっと見てたよ。私が見てるのがウシ乳のお嬢からコピーした未来だけだって思ってた?」

「私は魔法も魔力も、思考や感情さえも思いのままに干渉することができる。君たちの行動なんてあんな予知使わなくたって筒抜けなんだよ」

「君さえこっちに来たら、人類は一匹残らず滅亡させてやる。そのための舞台装置はまどか、例の絶望の魔女の素体だ」

「そうすればわたしとかずみだけの世界になる」

「あんな奴らのことは私が忘れさせてあげるよ。だから――――……“ヒュアデスの世界<こっち>”においで、かずみ」



 差し出された手の本当の意味を知る。



 本気でそんなことを考えてるの?

 思ったよりもずっとおぞましい気持ちになった――本当にそんな魔法が使えるの?


 自分で魔法を使った結果なのに疑って動揺してしまった。

 相手の考えていることがわかれば、少しは理解が出来るかもしれないって思った。隙をつくこともできるかもって思った。

 でも頭がいっぱいになって、とてもじゃないけどこれ以上探ることも隙をつくこともできなかった。




785 ◆xjSC8AOvWI2019/01/27(日) 01:17:35.389b8F80D40 (3/3)



「こないならこっちからその手を取りに行くよ!」


 ――――来る。

 この前ユウリの姿で襲ってきた時にも見覚えのあるケーブルを伴って。


かずみ「わたしは行かない! 決着をつけに来たんだ!」



かずみ 魔力[100/100]  状態:正常
GS:3個
・[0/100] ・[0/100]
・[100/100] ・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv2] [格闘Lv5]


敵:カンナ

1杖:近接武器戦闘(魔力-0)
2リーミティ・エステールニ(魔力-25):杖から魔力を放出してぶつける、かずみの必殺技
3再生成(内容により0~15消費変動):何かを変えることが出来る(安価内容で)
4プロルン・ガーレ(魔力-10) :自分の指から最大10発のミサイルを作り出す。なくなった指は作り直すが直後は手を使う格闘が出来ない。
5ロッソ・ファンタズマ【ネーロ・ファンタズマ】(魔力-10):その辺のものから分身を大量に作り出す必殺技
6電撃(魔力-5) :電撃を放ったり、雷を落とす事の出来る魔法。
7活性(魔力-20) :電撃の発展系。近距離への瞬間移動。
8未来予知(魔力-3/ターン) :数秒先の予知。相手に関する特定の未来も絞れるが、消費が大きくなる。基本的に自発使用のみ。
9読心(魔力-7/1ターン):人の心を読む。もしかしたら動物も…?
10自由安価

 下2レス


786以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/27(日) 01:37:46.72BASsHc+P0 (1/1)

6で牽制


787以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2019/01/27(日) 08:51:14.96xj/qxOIiO (1/1)




788 ◆xjSC8AOvWI2019/01/27(日) 18:54:33.37NHHeGOio0 (1/9)



かずみ「だってそんなさみしい世界いやだよ!どうしてそんなことを考えてるの!?」

かずみ「それに世界を滅ぼす魔女なんて生まれたらあなただって危ないのに!」


 こちらに伸びるケーブルを焼き尽くさんと電撃を放つ。

 熱と光が収まると、その奥にグリーフシードを持つ手が見えた。

 ……この前杏子を襲った歪んだ形の偽物じゃない、あれは正真正銘本物の『魔女の種』だ。


「……かずみ、私はキミをあまり傷つけたくはなかったんだけどな」

「私は魔女だって操れる。使い終わったらガラクタの装置はグリーフシードにでも還ってもらうさ。君が心配することじゃない」

「こんな身近に私の望みを叶えるのに丁度いい駒がいてくれたなんて……私はツイてるなぁ」

「――――魔女を手に入れた私は無敵だよ。私はこの世界のみんなが大嫌いなんだ。等しく絶望して死んでほしい」


 カンナは恍惚と、正気とは思えない答えを返した。

 そして間もなく、誰もいない小さな公園が異界に包まれた。