1 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/02(金) 22:15:50.19dyw7JPvuo (1/7)

このスレは安価で

乃木若葉の章
鷲尾須美の章
結城友奈の章
―勇者の章―

を遊ぶゲーム形式なスレです


目的

東郷家、犬吠埼家への挨拶
伊集院家の説得
勇者部による演劇(文化祭)
元気な子供
ハロウィン
進路決定



安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります


日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2
基本的には9月14日目が最終


戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%
※ストーリーによってはHP0で死にます


wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに

前スレ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1464699221/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1468417496/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【三輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1472477551/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【四輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1477053722/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【五輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1481292024/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【六輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1484833454/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【七輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1488104860/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【八輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1491918867/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【九輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1495544664/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1499086961/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十一輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1503148550/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十二輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1507900727/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十三輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1512897754/



2以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/02(金) 22:20:25.4926f6emZ3O (1/3)

立て乙


3以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/02(金) 22:29:28.22dyw7JPvuo (2/7)



風「メイド喫茶?」

天乃「うん。お化け屋敷行く途中にそのチラシ持ってる子がいてね」

風「そういうのってアタシ達の場合は執事喫茶に行くべきじゃないの?」

天乃「そう言うものなの?」

天乃は目上の人間、格上の人間といった

対等ではない扱われ方をした経験があるが

執事やメイドと言った存在がいたことはなく

そもそもそれにおける性別以外の違いも天乃は知らない

だからこそ、好奇心も芽吹く

風「天乃がただ女の子好きなだけとか?」

天乃「…………」

風「天乃?」

天乃「……でも、定石をあえて外すって言うのも面白そうじゃない?」


4以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/02(金) 22:32:52.77+sCqi/Oy0 (1/2)

新スレ乙です!


5 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/02(金) 22:35:40.33dyw7JPvuo (3/7)


風「何? 今の間は何!?」

あら何の話? と露骨に恍けて笑って見せる天乃に、

風は本当にそうなの? と少し悩まし気に唸りながら

階段を上って2年生の階にあるメイド喫茶へと向かう

風「まぁ、執事喫茶は天乃が行くと少し面倒になるわよねぇ……」

天乃「そんなことないでしょ。有名人じゃあるまいし」

風「その有名人なんですがね」

芸能人だとかテレビに出ている有名人というわけではないが

一部では学級崩壊を起こさせた人だとかいう噂もあるし

友奈たちから伝わったり、会いに行く際に目撃されていたり

男子にとっては嬉しいその容姿と図ったような無自覚さもあって後輩からはやはり人気が高い

元々同年代よりは年上に魅力を感じるといったタイプだった風としては

先輩に憧れる男子中学生の気持ちも分かるからだろう

まぁ仕方がない。と苦笑を溢す


6 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/02(金) 22:42:13.56dyw7JPvuo (4/7)


「いらっしゃいませっ」

メイド喫茶を行うクラスの手前

受付らしき女子生徒に声をかけられて足を止める

「ご利用されますか?」

天乃「ええ、私と従者一名」

風「その他大勢みたいに言うな!」

天乃「じゃぁ……嫁さんで」

風「嫁って……」

気迫削がれて照れくさそうに笑う風

冗談めかした笑みを浮かべる天乃

2人の前にいる女子生徒は思わず笑い声を零してしまうと

すぐに「すみません」と頭を下げて色のついたバッジのようなものを差し出す


7以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/02(金) 22:49:20.48PaQ2t1dYo (1/1)

たて乙


8 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/02(金) 22:54:12.21dyw7JPvuo (5/7)


風「なにこれ」

「メイドになんて呼ばれるかの選択……みたいなものです」

天乃「へぇ……面白いじゃない」

みたいなもの。というよりはそのままだ

どうせやるなら、

呼称も自由に選べるようにしても面白いのではないか。という意見が上がったらしい

女性に関しては

普通のお嬢様から、名前を付けたお嬢様

奥様、お姉様、姉様、お嬢、姐御……と

もはやメイドが関係なさそうなものまで紛れているのは

きっと、クラスメイトによる冗談の影響だろう

天乃「風は旦那様とかどう?」

風「嫁なのか旦那なのかはっきりしなさいよ」

天乃「うどんのように臨機応変に対応するのよ、あなた」

風「ったくもう……」

確かに天乃の相手をするには柔軟でいる必要があるわねぇ。と

風が少し呆れたように漏らす一方、

2人のやり取りはとても楽しんでいるのが分かりやすくて

女子生徒はにこやかな笑みを浮かべながらその姿を見守る


9 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/02(金) 23:19:10.52dyw7JPvuo (6/7)


大赦や勇者部には一切関係のない女子生徒ではあるが

その二人の雰囲気は見ていてとても、心地よくて

「一応、旦那様とお呼びすることもできますよ?」

風「いやいやいや、普通にお嬢様で」

天乃「お姉さまじゃなくて良いの?」

風「それはあたしには似合わなそうだし」

むしろ天乃の方がそれは似合うんじゃないの? と

風はにやにやと笑いながら切り返して

風「タイが曲がっているわ。とか、無防備に距離つめて来そう」

車椅子を押し終えて離れようとすると

ちょっと待って。と呼び止められ足を止める

屈むように言われて屈んだ瞬間

数歩分の距離は一瞬で詰められて……

今も感じる良い匂いを感じている間に、首元の緩んだタイがキュッと締められる

そして、「これでいいわ」と、綺麗な笑みを浮かべるのだ

「……いいですね」

天乃「え?」

「あっ、いえ。すみません」

目の前の車椅子に座っている先輩で想像してしまった後輩は

恥ずかしそうに眼を逸らす

「そ、それで……どうしますか?」


1、お嬢様
2、天乃お嬢様
3、久遠様
4、天乃様
5、お嬢
6、姉様
7、お姉様
8、姐御
9、奥様
0、旦那様


↓2


10以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/02(金) 23:20:09.17jouo6w0IO (1/2)

9


11以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/02(金) 23:21:43.6226f6emZ3O (2/3)

2


12 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/02(金) 23:31:10.08dyw7JPvuo (7/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「じゃぁ……そうね。良く分からないからこの名前+お嬢様で」

「かしこまりました……あ、あま……天乃お嬢様」

(久遠先輩の名前を呼べる……っ)

(他の人には悪いけど、今だけは私だけの天乃お嬢様)

「えへへ」

風「うわ凄い嬉しそう……」ハァ


13以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/02(金) 23:32:26.00jouo6w0IO (2/2)


その手があったか


14以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/02(金) 23:32:59.24GqS3JZNz0 (1/1)

おっつー!


15以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/02(金) 23:38:45.3326f6emZ3O (3/3)


モブのメイドさんの心までも奪っていく妊婦さん恐るべし…


16以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/02(金) 23:47:19.55+sCqi/Oy0 (2/2)

乙!


17以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/03(土) 08:46:54.49x1w9JZeOO (1/1)

久遠さん元々男女人気あったからな
その先輩を名前呼び出来るとか特別感有りすぎる


18 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/03(土) 21:54:20.82vIYuobI+o (1/10)


では少しだけ


19以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/03(土) 22:02:32.48B+2kKiKVO (1/2)

おk


20 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/03(土) 22:04:31.66vIYuobI+o (2/10)


天乃「そうねぇ……じゃぁこれで」

特に悩むようではない事なのかもしれないから。と、思いつつ

簡素なお嬢様呼びよりは面白そうだと

名前にお嬢様を付ける呼び方を選ぶ

天乃「よろしくね?」

「は、はい。承りました……天乃お嬢様」

風「それならあたしも風お嬢様で」

天乃「あら、どうしたの?」

風「なんだか姉妹っぽいでしょ? そうすると」

名前を呼ばれるのと呼ばれない方

それが並ぶと微妙に違和感があるというのもあるが、

一番は、その姉妹のような関係が想像しやすいというのが嬉しかった

もっとも、姉妹を越えて交際しているし

将来的には名を共にしてしまう予定なのだが。

天乃「じゃぁ、私は風お姉さまと呼べばいいかしらね」

風「天乃って本当、こういうのに乗るの好きよね」

楽しそうな天乃の笑みに

風もまんざらでもなさそうに苦笑しながら車いすを押す

2日間限定の喫茶店として作られた店内は

中学生らしい手作りの作り

1人席が3つ、2人席が5つ 4人席が1つとなっており

テーブルはすべて学習机に簡単なテーブルクロスを引いたもの

椅子も同じく普段使いされているもので

一応、様々な柄の座布団や背もたれが付けられた特別仕様だ


21 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/03(土) 22:13:45.95vIYuobI+o (3/10)


「お帰りなさいませ、風お嬢様、天乃お嬢様!」

天乃「ふふっ、ただいま」

風「た、ただいま?」

「天乃お嬢様、今お座席をご用意いたしますので少々お待ち下さい」

天乃「……帰る前に準備しておきなさいっていつも言っているでしょう? これだから若い子は嫌なのよ」

「ぇっ、え、あ、は、はいっ!」

悪戯な睨みをきかせた天乃の呆れたような文句

当然、そんなことが始まるなどと思っていなかった担当の女子生徒は戸惑って

天乃「良いから早く準備し――」

風「やめんか!」

ぺしっと頭を叩かれ天乃は言葉を飲み込むと

どうすればいいのかと慌てる女子生徒に笑みを浮かべて

ごめんね、冗談よ。と声をかける

天乃「車椅子のせいだものね。用意して貰っていいかしら」

「すみません、今ご用意します」

慌てて席をずらして片方の席を端に動かしていくメイドに扮した女子生徒を眺めながら

風は少し疲れた息をつく

風「まったく、油断も隙もあったもんじゃないわねぇ」


22 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/03(土) 22:23:44.86vIYuobI+o (4/10)


天乃「なんのこと?」

風「あんなアドリブについていけるわけないじゃない。訓練された勇者部じゃあるまいし」

天乃「訓練されたって……なによ」

友奈や樹はまだまだ対応しきれないかもしれないが

東郷はもちろん

夏凜なんかはその道にプロフェッショナルだろうと風は雄弁に語ってみせる

けれど、天乃としては別に訓練したわけではないと

ちょっぴり不服そうで

天乃「私の経験値を返してっ」

風「ゲームかっ!」

天乃「そんな怒ったように言わなくてもいいじゃない」

風「いや、怒っては――」

天乃「あとでボケ役やらせてあげるから」

風「そう来るかっ!」

ちょっとしたお遊びの会話をしている間に、

席の準備が整ってもう一度メイドの女の子に招かれ

天乃達は改めて、喫茶店の席に着いた


23 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/03(土) 22:34:20.79vIYuobI+o (5/10)


「お決まりになりましたらお呼び下さい、天乃お嬢様。風お嬢様」

そう頭を下げて別のところに向かうメイド見送った風は、

テーブルに置かれたメニュー表に乗っている参考写真―各生徒の自作―と料理名を眺め

なるほど。と、少し嬉しそうに零す

風「見てみて天乃、こんなキャラ風オムライスもあるらしいわよ!」

天乃「へぇ……面白いわね。風も作ったりする?」

風「いや、アタシは……あんまりね」

やったことはないが、やろうと覚えば出来るだろうと風は思う

けれど、樹がまだ小学生とかしたの方の年頃ならともかく

中学生も半ばに差し掛かるところでのキャラ風料理というのは

聊か受けが悪いのではないだろうかと思ってしまう

それがお弁当なら、尚更

それに……と、風は苦笑いを浮かべながら

手首から先だけがピクリとも動かない右腕を上げてみせる

風「今のところさ、ほら。これだから」

天乃「……ごめんね」

風「んん。天乃は謝る必要なんかないわよ。誰にだってね」

天乃「…………」

風「アタシも、夏凜も。友奈達だって。みんな自分の意思でそうすると決めたことなんだから」


24 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/03(土) 22:45:52.50vIYuobI+o (6/10)


こうなると知らないで使っていたらきっと

とても後悔をしていたかもしれない

どこに向かうかもわからない憎しみと怒りを抱いていたかもしれない

だが、風達は天乃の苦渋の決断によって隠蔽されてきた天乃自身の秘密

根強い罪悪感に触れることによって、その存在を知った

そして、それでなお、抱く想いに従って行動したのだから

その代償に謝罪を貰うつもりは毛頭なかった

風「あーほら、天乃!」

天乃「なに?」

風「折角の文化祭で辛気臭い話してたってしょうがないでしょ。頼みましょ、料理」

天乃「…………」

風の快活な声が漂っていた暗雲を吹き飛ばしていく

そのちょっぴり強引な犬吠埼風という人柄に

天乃は苦笑を浮かべながら「そうね」と、答えて

天乃「メニュー名は普通だから……風、貴女の愛してやまないうどんもあるみたいよ?」

風「うーん……そこはぜひにも肉うどんを頼むべきか」

天乃「私はどうしようかしら……」

風「やっぱり辛いものでしょ? 一応、麻婆うどんがあるけど」

説明文には激辛お試し品。と注意書きが施されており

実物と比べてやはり差異は存在するのだろうが

載っている写真も真っ赤で色鮮やかというよりは毒々しささえ感じる

天乃「私に対して辛さのみならずあろうことか麻婆に関して喧嘩を売ってくるなんて面白いメイドさんね」

風「メイドは悪くない、悪くないから」


25 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/03(土) 22:56:34.47vIYuobI+o (7/10)


結局風はメイド喫茶などという場所の付加価値を一切排除した定石通りの肉うどんを注文し、

天乃もまた、麻婆うどんを注文する

聞いた話、メニューはすべて各生徒の実家の味らしく

天乃はにこやかにその時を待つ

風「ねぇ、聞いて良い?」

「はい風お嬢様」

風「天乃が頼んだ麻婆うどんあるじゃない? これの『甘~くする魔法』って言うのは一体何なの?」

「これはですね……え、えっと」

頼まれると思っていなかった動揺か

それともその謎の魔法の効力なのか、メイドの女子生徒は気恥ずかしそうに目を背けると

緊張を解す為だろう、深呼吸をしてから天乃達に向き合う

「あ、甘~くな~れ。甘~くな~れ……と、ちょっとした呪文的な何かを唱えながら例えば調整用スープとかで味を調えるんです」

天乃「本当の魔法ではないのね」

「す、すみません」

天乃「別に謝らなくて良いのよ。なんかこう、見栄えする特殊な技法でもあるのかなって」

中学生に何を求めているのかと天乃は自分でも思うが

お化け屋敷のクオリティがクオリティだった為に、

もしかしたら別の場所でも似たような特別感があるのではとなんとなく思ったのだ


26 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/03(土) 23:04:01.85vIYuobI+o (8/10)


天乃「むしろ辛くする呪い的なのは……」

「な、無いです」

風「メイドに嫌われてる身勝手な姫様的なシチュエーション?」

天乃「ううん。自分の物にならないなら殺して死のう的なやつ」

風「余計あるか!」

いきり立って突っ込みを入れた瞬間、

喫茶店内の喧騒は止んで

「お、お嬢様……っ、風お嬢様お静かに」

勢いの有り余った声に天乃ではなくメイドがあわてて注意を促す

楽しげに苦笑する天乃にむくれながら、風がもう関るのやめた。とぼやくと

何事も無かったかのように周りの中断された会話が再開する

天乃「風のリアクションが大きいのよ。やっぱり、疲れてるんじゃない?」

仮眠をとったりしたとはいえ、

殆ど徹夜に近い状態で、あのお化け屋敷での大絶叫

疲れていないというのはハイテンションゆえのものではという天乃に

風はそうかもしれない。と、同意して

「お待たせいたしました、風お嬢様。肉うどんです」

丁度、料理が運ばれてきた


27 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/03(土) 23:16:08.45vIYuobI+o (9/10)


風「ん……家庭的というか……ちょい薄味の匂い」

醤油や昆布などの良くある甘みを感じるにおいに混じって

いりこをふんだんに使ったであろう魚介の匂いを感じる

ダシは前がけではなく、後がけなのだろう

煮込まれ熟成し色づいた肉はダシと差し込む光によって受けて瑞々しく着飾る

風「十分美味しそうね」

見た目と香り

それだけで満足げに頷く風の手前

天乃のところにもあわせて、料理が運ばれてきた

「天乃お嬢様、こちらが麻婆うどんになります。調整がご入用でしたらお申し付け下さい」

辛味の濃度を示すが如く鮮やかに彩られた赤色

それを僅かに中和しようと無意味な努力ゆえに散った肉汁が点々と浮かぶスープ

通常よりもとろみを足されたスープに絡みつかれて赤茶色く染め上げられ

地獄へと沈められるさなかに伸びる救いを求める手のように顔を覗かせるうどん

嗅覚を刺激するのはもはや痛覚に近く

辛味と甘味の交わった豆板醤を押しのけて山椒の渋さのある辛味が

鼻を抜けて喉を通る

通常ならそれだけで敬遠されるようなにおいと見た目

だが、その毒々しさを前に、天乃は期待に胸を膨らませた子供のような笑みでスプーンを手に取った


28 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/03(土) 23:23:09.39vIYuobI+o (10/10)


ではここまでとさせていただきます
明日は出来れば22時頃から
メイド喫茶パートは恐らく安価無し進行になるかもしれません



夏凜「…………」

夏凜「そもそもメイド喫茶でうどんってなんなのよ」

東郷「至高よ」

夏凜「嗜好の間違いでしょ」

東郷「沢山の嫁がいても結局夏凜ちゃんに行く久遠先輩のような話ともいうわ」

夏凜「私よりエロイことしてる東郷に嫉妬する権利無くない?」

東郷「つまり嫉妬してるのね!」

夏凜「面倒くさいのに触れちゃったわ」


29以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/03(土) 23:30:57.83dUZM6Ul7O (1/1)


久遠さんの嫁の数考えると日替わり定食組めるぞ


30以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/03(土) 23:34:05.12B+2kKiKVO (2/2)


お嬢様気分の久遠さんが本当に楽しそうで可愛いなぁ
あと久遠さんの辛いもの好き設定久々に見た


31以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/04(日) 12:49:14.28IE/rYkqkO (1/1)

お茶目な久遠さんほんと好き
そして地味に真面目なうどん描写笑う


32 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/04(日) 21:54:57.22Xb7mJhuTo (1/10)


では少しだけ


33以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/04(日) 22:01:25.89dLRK1VMoO (1/3)

よしきた


34 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/04(日) 22:14:12.66Xb7mJhuTo (2/10)


風「ちょ、それ飲むの?」

天乃「もちろん」

あまりのにおいとからそうな見た目に

風は心配そうに言うが、天乃は平然と口に運んでゆっくりと飲み下す

温かくとろりとした麻婆のスープ

くにゅりと挟むだけで崩れていくひき肉の食感

潰れて液体に溶けていく辛味を纏っただけの豆腐

刻まれた唐辛子の微かな粒感

天乃「んー……」

そうして

香辛料や豆板醤の辛味に隠された旨みが本来は流れ込んでくるはずだが、

味覚の無い天乃にはそんな感覚などちっとも感じられないまま、

ピリピリ、ひりひりとした焼くような痛みが口腔を冒して、喉にまで伝うと

流れ込んだ胃から温かさが全身に広がって抜けていく

その抜けていく清々しい感覚に天乃は浸るように目を閉じて、笑みを浮かべる

天乃「好きよ」

「っえっ」

天乃「うどんに合わせた分、とろみは増しているけれど……だからこそ最後の最後まで余さずに感じられる」

「ぁ、り、料理……」

天乃「体から抜けていく辛味も、残るひりひりとした感覚も決して行き過ぎてないし」

天乃はそういうと、

まだ口にしていないうどんを箸でつまんで、一口分食べ進める

口の中に残った痛覚……辛さは

もっちりとした弾力感じるうどんが連れて行ってくれるのだ

天乃「いいわね、これ」


35 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/04(日) 22:23:56.35Xb7mJhuTo (3/10)


満足げな笑みを浮かべる天乃といかにも辛そうな麻婆うどんを見比べた風は

怪訝そうに眉をひそめながら自分のうどんを一口啜って口を開く

風「その痛そうなアレは天乃だから平気なんじゃないの?」

天乃「そんなこと無いわよ。ね?」

「どうでしょうか……男子は結構辛いって言ってましたが」

風「男子は基準にならないのよねぇ」

天乃「本当にそんなに辛くは無いと思うんだけど……」

味覚を超えて痛覚に達する辛味

それが濃すぎない事から天乃はそう推測するが

味覚がないせいなのかもしれないと

少しだけ考えてスプーンで一口分すくうと、風へと差し向ける

天乃「風お姉様。お口をあけてくださいな」

風「はっ!?」

天乃「何を驚いていますの? はしたないわ」

悪戯混じりの笑みと声……そして言葉

差し出される真っ赤なスープを掬い取ったスプーン

風はどうするべきかと天乃とメイドそれぞれに目を向けたが

天乃は当然、まんざらでもなさそうで

メイドはといえばなぜか少し羨ましそうで。

天乃「風お姉さま、零れてしまいそうです」

風「っ……」

口調を正すつもりはないだろう天乃の困った表情に

風は「あーもう!」と、少し控えめな声を上げてスプーンを躊躇なく咥え込む


36 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/04(日) 22:32:19.70Xb7mJhuTo (4/10)


風「っ……辛っ!? 痛っ……!」

舌を焼き、頬の裏を刺し貫いて、喉をただれさせていく

それほどの痛みを感じるような強い辛味が一瞬にして流れ込んできた風は、

周りの目を気にすることなく声を上げて席を立つ

テーブルを強く揺らす

「ふ、風お嬢様っ、今お水をお持ちいたします!」

足早にメイドが去っていく中、風はテーブルに手をついたまま俯いて

痛そうに舌を伸ばしては引っ込めてまた伸ばしてを繰り返す

風「ど、どこが辛くないって……っ!?」

天乃「そんなに辛いかしら……やっぱり味覚の問題?」

風が喘ぎ、出された水を一瞬で飲み下す前で、

天乃は顔色一つ変えることなくスープだけを何度も口に運んでは飲み下して

天乃「辛い物の経験の差かしら?」

風「はぁ……はぁっ……ん、そ、そう、なんじゃない?」

天乃「大丈夫?」

風「なんとか、落ち着いてきたから」

確かに感じる旨味はあったのだが

辛さゆえの痛みが先攻してしまっていた風は少し疲れたように自分の肉うどんを啜る

風「あー……体に沁みるぅ」

天乃「ふふっ、風にはやっぱりそう言う方が似合うわね」

麻婆うどんよりも甘味があって警戒せずに豪快に食べられる肉うどん

美味しそうに満足げに食べ進めていく風の姿を天乃はしばらく眺めてから

微笑ましそうに笑みを浮かべて、自分の分のうどんを少し抓んで……風へとまた目を向ける


37 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/04(日) 22:43:40.56Xb7mJhuTo (5/10)


天乃「ねぇ、風」

風「ん?」

天乃「私にもくれないの? あーんって」

風「っぶっ」

口に含んだうどんを吐き出しかけたが、寸前で堪えて飲み込むと

ふぅっと大きく息を吐いてからなぜか天乃からは眼を逸らしてしまう

風「急に何を言い出すかと思えば」

天乃「いいじゃない、せっかくなんだし」

風「何がせっかくなの?」

はっきり言わないと駄目なの? と

天乃はちょっぴり不服そうにむっとして言う

天乃「こうやって二人きりになる機会なんて滅多にないでしょう?」

風「そ、それは確かにそうだけど……何もこんな場所で」

友奈と同じ二学年のメイドたち

一般人から他クラスあるいは他学年の利用者達

周囲の目がある中での行為というのが風は少しばかり恥ずかしく思う

もっとも、それ以外の理由もあるのだが。

友人同士で大した意識もなく自然と行うのならば

そんな羞恥心に触れるようなこともないのかもしれないが、

恋人という関係が友人同士の自然な空気感というものを忘れさせてしまったのだろう



38 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/04(日) 22:54:14.28Xb7mJhuTo (6/10)


だが、天乃は違う

キスなどの恋人関係や特別な関係でないと行わないようなことに関してならば

外でするのにも少しの注意を払ったりするものの、食べ物のシェアや手を繋ぐこと、抱き着くこと

そう言った行為を行う際に周囲の目があるから恥ずかしいとは思わない

天乃「あなたは意識しすぎなのよ」

風「ぅ」

天乃「……えっち」

風「ふぐっ!」

風の羞恥心に秘められた考えを見透かしたように

天乃はちょっとばかり悪戯っぽく蔑んだ目を風に向けながら一言呟いて

わざとらしくキスをするように唇をすぼめながら一本のうどんをゆっくり、ちゅるりと……啜る

風「そ、そういう考え持たせるようにしたのは……そっちじゃない……っ」

そんな天乃の唇に事実目を奪われながら

風は異議ありと唸って抗議するが、天乃は小さく笑みを浮かべるばかりで

天乃「そうだったかしら」

風「そうよっ! 今回脚本を買って出たのだって天乃があんまりにも、その……ほら、なんというか、こう……」

天乃「なに?」

風「じ、焦らしてきた……から……なんというか、そ、想像力というか、妄想力というか……鍛えられたからだし」


39 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/04(日) 23:11:18.44Xb7mJhuTo (7/10)


風らしくないぼそりぼそりと聞き取りにくい小さな声

しかし、天乃は片方の耳しか聞こえないからこそ鋭敏に聞き取って、

そう言うことね。とほほ笑む

風「分かった? 天乃のせいだって」

天乃「うん……良く分かったわ。風がえっちな子だって」

風「専用トイレに連れ込んでやろうかしら」

天乃「やだ怖い」

人のことを茶化して満足そうに笑う

戦い抜き、今もなお苦しみの中にいる天乃の笑顔

文化祭だからこそ、悩みを一時的に頭の片隅へとしまい込んでくれていると分かってしまうから

決して、それを幸せそうだと、心の奥底から楽しんでくれているとは言えないけれど

風もまた「はいはい、どうせ思春期ですよー」と

冗談に乗っかりながら笑みを浮かべて、肉とうどんを箸でつまんでくるくると。

パスタのように絡みとって天乃へと差し向ける

風「あーん」

天乃「ありがと」

箸をぱくりと咥えて風の肉うどんを味わった天乃は、

ゴクリと飲み込んで

天乃「……これが初恋の味なのね」

風「な、なに言ってんのよ……まったく」

天乃は嬉しそうに感想を述べたが、風はといえばそれには触れることなく眼を逸らし、

気恥ずかしさを押し隠すようにうどんを食べ進めようとして……箸が止まる

ついさっき、天乃が口にした箸だ。

風「…………」

天乃「関節キスね」

風「止めてっ、今考えるの止めようとしたんだからっ!」

風が食べ終えるのには、少しばかり時間がかかってしまった


40 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/04(日) 23:13:04.30Xb7mJhuTo (8/10)


√10月06日目 夕(学校) ※土曜日

01~10 
11~20 体調 
21~30 
31~40
41~50 
51~60 
61~70 
71~80 体調 
81~90 
91~00 

↓1のコンマ 


※問題なければ勇者部合流


41以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/04(日) 23:13:17.52dLRK1VMoO (2/3)




42以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/04(日) 23:13:46.75Y+OHNw/DO (1/1)




43 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/04(日) 23:15:42.87Xb7mJhuTo (9/10)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


2割を引き当てる久遠さんの強運
開始地点は保健室


44 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/04(日) 23:16:37.75Xb7mJhuTo (10/10)

いえ、違いますね
失礼しました

通常通り開始地点は勇者部部室です


45以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/04(日) 23:20:12.034GENSd0xO (1/1)


あっぶね
明日の劇に向けて汚れ発散しなきゃ


46以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/04(日) 23:32:18.46dLRK1VMoO (3/3)


普段の久遠さんも発情時とは違う無意識な色っぽさがあるな
さて風先輩はどんな脚本書いてくれたんだろうか


47 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/05(月) 22:59:58.19ubE4HlPTo (1/4)

では少しだけ


48以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/05(月) 23:02:17.74Nz38+AZjO (1/1)

あいよ


49 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/05(月) 23:20:59.99ubE4HlPTo (2/4)


√10月06日目 夕(学校) ※土曜日


風「お待たせー」

夕方、一日目の文化祭が終了して

学校中の生徒や教職員が一時的な後片付けに追われる中

天乃達は勇者部の部室へと集まった

明日の劇で使う大道具の一部はすでに体育館へと移送されており、

車椅子でも問題なく入ることが出来るようになっていて

風は天乃を机の傍に連れていくと

ふと疲れた息を吐いて、適当な椅子に座る

東郷「風先輩、息抜きは出来ましたか?」

風「出来たというか、逆に疲れたというべきか……」

夏凜「天乃にしても風にしても、保健室に行かなかったんだから大丈夫だったってことでしょ」

樹「お姉ちゃん大丈夫? 本当に?」

いつも通りというべきか

やや素っ気なく言う夏凜の一方で

樹や友奈は心配そうに風を見る

天乃ではなく自分を心配そうに見るのが気になったのだろう

風は訝し気に眉を顰めて――

樹「じ、実はね、お姉ちゃんがお化け屋敷で絶叫してたって話が回ってて」

風「えっ?」

天乃「凄い騒ぎだったものね」

風「えっ、いや……えっ。そんなの……出回るほどの事じゃなくない?」


50 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/05(月) 23:40:25.45ubE4HlPTo (3/4)


夏凜「普通なら出回らないけど、幽霊役に肘打ちして逃げたってオプションがつけばそりゃ広まるわよ」

風「うぐっ」

あのお化け屋敷関係者が広めたのか、

謝っているところを目撃されたせいで広められてしまったのか

ただ確実なのは

風の致命的な弱点は恥ずかしい絶叫と行いと共に学年を越えて周知の事実になったということだ

沙織「教室の外にも別の階にも響いてた悲鳴だからね、仕方がないよ」

風「なぐさめになってなぁぃ!」

よしよしと頭を撫でる沙織に向かって

風はやや自棄になったように声を上げて蹲るが

沙織は「仕方がないって」と慰めようとする

天乃「友奈達はどこにいたの?」

友奈「私と千景さんと東郷さんは古典部で遊んでたんです。樹ちゃんと球子さんは漫研だったかな」

樹「球子さんが以前本をよく読むお友達がいたそうで……あとは外に」

沙織「あたしは占いの館とか……古典部で結城さん達と会ったね」

それぞれとても楽しめたのだろう

幸せそうな笑みで何をしていたのか、どこにいたのかを語る友奈達

その傍ら、夏凜は軽く体を伸ばすと天乃へと近づく

夏凜「あんたは楽しめたの?」

天乃「ええ、十分に楽しめたわ」


51 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/05(月) 23:54:17.72ubE4HlPTo (4/4)


お化け屋敷で風の大絶叫、大騒ぎ

可愛らしい姿をたくさん見て、聞いて

メイド喫茶でもたくさん楽しんで

天乃「至福の時間だったわ」

夏凜「そ……なら良かった。あんたはそうしてれば、下手に体調を崩さずに済むってことなのかしらね」

天乃「どうかしら……もしかしたらそうかもしれないけど」

別に学校が嫌いなわけではない天乃は

学校の授業も楽しんで受けている

それでも体調を崩してしまうのだから

夏凜「……とにかく、せっかく学校を休んでまで整えたんだから楽しめたようでなにより」

天乃「そう言う夏凜は? 私が居なくて平気だった?」

夏凜「何言ってんのよ……私は別に、常にあんたが居なきゃ駄目ってわけではないわよ」

冗談だと一周するように苦笑しながら答えた夏凜は

天乃の頬にそうっと手を宛がう

天乃「夏凜……?」

どうかしたのかと戸惑う天乃の視線が宛がわれた手に動く

そして……唇と唇が触れる

天乃「っ」

東郷「夏凜ちゃんが抜け駆けを……っ」

夏凜「抜け駆けとかどうとか無いでしょ」

ほんの数秒程度で離れた夏凜は

東郷や友奈達には目もくれず

あっけらかんとした表情で苦笑して

夏凜「これでチャラにしておいてあげるわよ」

天乃「チャラって……え? 私は何も……」

そもそもキスをしても天乃に対する嫌がらせにはならない

ただのサプライズでしかない

いや……気分を高ぶらせるという意味では

非常に有効かもしれないが。


52 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/06(火) 00:14:26.3941QWubt7o (1/9)


天乃「えっと……?」

樹「あ、あの……とりあえず明日のことで話さないんですか?」

東郷「それは夜でも出来るわ樹ちゃん、でも、夕方のキスは今しかできないのよ」

友奈「東郷さんは少し落ち着いた方が良いと思うなぁ」

風「はいはい」

ぱんぱんっと手を叩いた風は、

半ば呆れたように各自の注目を集めて「明日のことね」と切り出す

明日は文化祭2日目

その体育館を使う最後の時間に天乃達は劇を行う

セリフを覚えたくらいで

全く合わせることの出来なかった劇

練習などちっとも行えていない現状

そこに、風達は危機感を覚えていた

多少間違えたりしたとしても

お金を取って行うものではないし

素人による演劇なのだから許されるだろう

けれども、それでは成功とは言えないのだ


53 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/06(火) 00:24:26.9441QWubt7o (2/9)


風「本当なら徹夜ででも練習したいところだけど、まずそれは無理よね」

天乃「……そう、ね」

天乃の体のこともそうだが

風達自身も徹夜明けでさらに徹夜をするような元気はないし

それをして結局翌日潰れたりなんだりしてしまっては意味がない

東郷「こほん……そこで、明日は多少なりとも練習をしようと思います」

せっかくの文化祭最終日

だが、そこを練習に費やそうというのだ

風「天乃はそれでいい? 文化祭を楽しむよりも練習するってことで」

天乃「友奈達は、賛成してるのね?」

友奈「はい……私達はまた来年もあるので……でも」

天乃「私達3年生にはないから……と」

とはいえ、風はもう賛成しているだろうし

沙織は天乃が決めた方にするだろう

なら、天乃がどうしたいか

それによって大きく変わってくるが……


1、練習する
2、練習しない

↓2


54以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 00:27:20.31pdnfKUyuo (1/2)

始まってたか
1


55以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 00:34:27.90EcQaX+jA0 (1/1)

1


56 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/06(火) 00:45:58.0941QWubt7o (3/9)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


風「物語はまず、姫である天乃が魔王に攫われて嫁にさせられるところから始まるわ」

風「勇者は一人一人魔王の僕を倒していくけど」

風「なんと、それは姫が産まされた魔王との子供だったのよ……!」

風「幾多の戦いを乗り越えて魔王を倒し、姫を救い出したものの」

風「姫の体は魔王に犯されてすでに第二の魔王となりかけていると知った勇者は」

風「苦渋の決意を胸に、姫を討つ……!」

東郷「まるで官能物語ね!」

夏凜「ただの黒歴史の間違いでしょそれ」


57以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 01:00:15.39Akri4S360 (1/1)




58以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 01:43:51.17pdnfKUyuo (2/2)


いろんな意味ですごい話だな…


59以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 08:07:34.17RVqkcyJpO (1/1)


そのうち夏凜ちゃんとの時間も作っておきたいな


60 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/06(火) 21:49:05.0641QWubt7o (4/9)


では少しだけ


61以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 21:53:20.40lvdIvvO1O (1/3)

かもーん


62 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/06(火) 22:12:12.2941QWubt7o (5/9)


天乃「妥当な判断ね、練習しましょう」

勇者部で行う演劇

それを成功させる事こそ、この文化祭を一番楽しむ方法なのだ

天乃「文化祭は高校生でも出来るけれど……このメンバーで出来るのはこれが最初で最後だもの」

去年できたとしても樹や夏凜がいなかった

若葉達がいなかった

その前はさらに風や沙織以外のみんながいなかった

だから、これが最初で最後

天乃「みんなで劇を成功させて、最高の文化祭にしましょう」

沙織「そうだね。久遠さんが言うようにあたし達が讃州中学で集まれるのはこれが最後だからね」

学校がどうにかならない限り

天乃達が留年でもしない限り

皆での文化祭はこれが最後

笑っても泣いても終わりが来るのならば

最高の笑顔になれる終わりにしたいのだ

東郷「では決まりですね。本当ならここに宿泊したいところですが、文化祭開催中ですから、帰りましょう」

天乃「あら、今日はみんな帰ってくるのね」


63 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/06(火) 22:31:30.3341QWubt7o (6/9)


夏凜「嬉しそうな顔しちゃって」

天乃「べっ、別に……」

夏凜「寂しかったんでしょ」

天乃「園子と歌野がいたから」

夏凜「はいはい」

天乃「もうっ、馬鹿にしてっ」

天乃が少しむっとした顔をしても

夏凜は気にせずに笑い声を溢しながら天乃の頭を頭を撫でる

寂しい思いをさせてしまったと夏凜は思う

だが、本当は夏凜自身も……だから、

夏凜もまたからかいながらも嬉しそうに笑みを浮かべる

友奈「夏凜ちゃんも寂しかったんだよね」

夏凜「あんたもでしょ、しょっちゅう天乃の名前出して」

樹「誰がとかじゃないですよ、みんなです」

樹は隙ありと言わんばかりに、

天乃の後ろから車椅子ごとぎゅっと抱きしめて

車椅子を動かす役目を担う


64 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/06(火) 22:46:25.6241QWubt7o (7/9)


風「相変わらずね、まっ、半日貰ったあたしは気にしないけど」

東郷「私も車椅子が連結さえできればっ」

友奈「そのためにきかいこーがくっていう勉強してるの……?」

沙織「さぁさぁかえろーっ!」

丁度、送迎係である瞳から到着の連絡が来たのを確認してから

沙織が先導するように扉を開けて廊下へと出ていく

みんなが後を追って部室を出ていく中

天乃は風が戸締りをする寸前、夕日の差し込むどこか神秘的な部室へと振り返って、息をつく

天乃「……みんなでいられるのも」

若葉達とだけではない

友奈達とも、この学校に通うことが出来るのもあと少しだけ

そして天乃はその大半を

病院で過ごしてしまうことになる

夕暮れの部室を見てしまうと

それがより鮮明に明確に

確かな感覚となってしまうような気がして

天乃は眼を逸らして、息をついた

身体の調子は問題ない

明日も問題がなければいいけれど、と

窓から見える近くも遠い海を眺めた



65 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/06(火) 22:56:39.0841QWubt7o (8/9)


√10月06日目 夜(病院) ※土曜日


01~10 
11~20 夏凜
21~30  樹
31~40 風
41~50 
51~60  東郷
61~70  若葉
71~80 友奈
81~90 
91~00  千景

↓1のコンマ 



66以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 22:56:49.18lvdIvvO1O (2/3)




67以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 22:57:07.0340Wp/tusO (1/2)




68 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/06(火) 23:09:14.9441QWubt7o (9/9)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「夜、病院のベッド」

東郷「そして散々放置され要求不満になった少女」

東郷「何もしないわけがなく……」チラッ

夏凜「…………」

東郷「否定しない!?」

夏凜「そういうときもあるわ」


69以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 23:10:09.5740Wp/tusO (2/2)


汚れのこともあるししょうがない


70以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 23:20:23.66lvdIvvO1O (3/3)


夏凜ちゃんはこのまま本番前に久遠さんと本番してしまうのだろうか
あと東郷さんや、発言がアレ過ぎて友奈ちゃんにちょいちょい引かれとるぞ


71以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/06(火) 23:22:15.56NBzrNbe20 (1/1)


オマケの東郷さんとかいうコミックリリーフ
正直すき


72以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/07(水) 14:15:18.27kE3OZNEAo (1/1)

夏凜ってコンマ運凄いよね…ここぞって時に来る


73以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/07(水) 21:14:24.96dMiA5ENZO (1/1)

1周目2周目はコンマ振るわなくてヒロイン逃したから揺り戻しが来てるんだよ


74 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/07(水) 22:20:49.57HNXu9aG3o (1/5)


では少しだけ



75以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/07(水) 22:25:11.448O3LhTV/O (1/3)

おk


76 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/07(水) 22:30:21.78HNXu9aG3o (2/5)


√10月06日目 夜(病院) ※土曜日


世界が寝静まろうとし始める時間

ベッドが微かに軋み、歪んだのを体に感じて天乃は目を開く

天乃「……誰?」

夏凜「起こすつもりはなかったんだけど……」

天乃「起きなかったら何するつもりだったの?」

夜目に慣れていない天乃は

ぼんやりとした視界の中、目の前にいる夏凜に訝し気な目を向けながら

ほんの少しだけ体をずらしてスペースを作る

天乃「お腹が大きいからあれだけど、一緒に寝るならこっち来て」

夏凜「あんた、寝ぼけてたりすると慌てたりしないわよね……ほんと」

天乃「何の話……?」

朝や昼間などに不意を突くように迫ると慌てた反応をするのに

覚醒していない状態だと、天乃にはどこか手慣れている感があって

夏凜は思わず呆れたような苦笑を溢してそっと身を寄せる

気付かれたからと、自分のベッドに戻るつもりはないらしい

夏凜「あんた、今日はずっと調子良かったわよね」

天乃「ええ」

夏凜「昨日、園子と歌野しかいなかったのに」


77 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/07(水) 22:42:33.76HNXu9aG3o (3/5)


表情は確認しにくいが、

夏凜の声はそれを強く意識しているのだと分かりやすいもので

天乃は段々と覚醒しつつある頭を休めようと一旦目を閉じて

天乃「それがどうかしたの?」

夏凜「どうかって、あんた。穢れと子供の件で多少やる必要があるってやつ……」

天乃「……………」

夏凜「もしかして、やらなくても平気になってきたんじゃないのかと、思って」

天乃「やっぱり、心配してたのね」

特に連絡もなく、あまり心配していないように思えてくるような素っ気なさ

皆がいるから誰がが何とかしているだろう

そう考えつつ、裏ではしっかりと気にしてくれていたこと

それが夏凜自身によってはっきりして、天乃は嬉しそうに笑みを浮かべて夏凜の頬に手を伸ばす

天乃「それに関しては相変わらず必要なままよ」

夏凜「それにしては、今日はやけに調子が良かったんじゃない?」

いつもだってしていないわけではない

だけれど、それでも天乃は昼時になると体調を崩してしまっていたのだ

それが、今日に限っては丸一日平気なままだった

だからこそ、夏凜は気になってしまう



78 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/07(水) 22:55:45.15HNXu9aG3o (4/5)



天乃「それは……」

夏凜「園子に夜這いでもかけた?」

天乃「私のこの体で出来るはずないでしょ」

夏凜「なら、歌野……」

夏凜はそう言いかけたが、

あの歌野に出来るとは思えないんだけど……と

歌野が聞けば一言は反論を返しそうなことを呟いて、首を振る

天乃の体調が崩れなかった。ならそれでいいと夏凜が終わらせられないのは

別に、天乃が誰かと性的な行為を行った可能性があるからではない

その誰かに嫉妬も妬みも僻みも恨みもない

ただ、天乃が一日を無事に送ることのできる方法があるのならば

それがもしも、誰しもが行える何かであるのならば。

それをしっかりと把握して、役立てるようになりたいというだけで。

天乃「そのことなんだけど……」

とはいえ、天乃としては

九尾にされつくした淫らな行為は少々……口にしたくない思い出なのだが。


1、九尾とエッチなことしただけよ
2、大したことでは……無いのよ。別にね。いつも通りと変わらないわ

↓2


79以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/07(水) 22:57:06.99/qp58k3hO (1/2)

1


80以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/07(水) 22:57:12.888O3LhTV/O (2/3)

1


81以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/07(水) 22:57:23.59WqgmHya5O (1/1)

1


82 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/07(水) 23:11:55.08HNXu9aG3o (5/5)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


樹「ちょっと嫉妬してます……? 夏凜さん」

夏凜「多少はね」

東郷「夜這い……しても良いのよ? 夏凜ちゃん」

風「それは東郷の出していい許可じゃ――」

東郷「貞操帯の鍵はここにありますが」

友奈「それ東郷さんが使ってるものだよね」


83以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/07(水) 23:13:02.27/qp58k3hO (2/2)


そもそもなんで久遠さん貞操帯してるんですかね


84以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/07(水) 23:22:20.768O3LhTV/O (3/3)


九尾のプレイはレベル高そうだしな…夏凜ちゃん再現するのかな
あととーごーせんせーは夏凜ちゃんの下心のなさを見習いなさい


85以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/07(水) 23:31:54.92eZFLLDJi0 (1/1)


ここの東郷さんは何だろう、生徒会役員とか向いてると思う


86 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/08(木) 22:00:17.37VItnr/mvo (1/10)


では少しだけ


87以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/08(木) 22:02:24.6163RXkWFRO (1/2)

よっしゃ


88 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/08(木) 22:13:59.78VItnr/mvo (2/10)


天乃「それなんだけどね……? 実は、九尾にして貰ったの」

夏凜「して貰ったって、アレ?」

天乃「そう、えっちなこと」

どうしても体と心が我慢できなかったし

そのせいで体調を崩しかけていたこともあって

どうしようもない措置だったと言えるだろう

天乃「ただね、九尾の行為がちょっと……激しかったのよ」

夏凜「激しいだけで良いなら、沙織か東郷にでも一任したらいいだけなんだけど」

天乃「私の体がもたないからそれはちょっと」

夏凜「でもそうじゃないと体調崩すんでしょ?」

天乃「それは……でも、東郷たちとするだけじゃまた体調崩す可能性があると思うの」

あれは九尾がしてくれたからこそで

きっとただ激しく淫らな行為をすればいいだけではないと天乃は思う

体から力が抜けていくような感覚は誰としても感じるが

その感覚が一際大きく

それがより心地よさを増していたのを覚えている

天乃「思い出したくないくらいに乱れちゃってたわ」

夏凜「それを園子と歌野は見せられてたわけね」


89 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/08(木) 22:32:31.15VItnr/mvo (3/10)


夜の暗さに慣れてきた瞳に映る夏凜は、

少し眉を顰めながら園子がいるであろう方向のカーテンを眺めたが

ふと息をつくと天乃へと視線を戻して、「園子も治ればね」と呟く

天乃「一応カーテンは閉めてたわよ。見られたくなかったし……声は……我慢したかった」

夏凜「出来なかったのね」

天乃「…………」

頬を染めた夏凜はふいっと顔を逸らして、誤魔化す

出来なかったものは、仕方がない

手で押さえたり、布団に噛みついたりとしてはみたが

九尾のすることはまるで直接穢れに触れているかのように力強くて

抜き出されていく心地よさには逆らえなかったのだ

夏凜「そこは流石九尾……ってところよね」

そもそも、

天乃の体が穢れによって淫らなことを求め、

淫らな事によって体の不調が和らぐ

そう言ったことを教えてくれたのが九尾だ

昔から存在しているという九尾という精霊は

やはり、そう言った点においては群を抜いているということだろう

夏凜「さすがに、私が手を出せる領域じゃぁないわね」

九尾と変わらない恩恵を天乃に与えることは出来そうもないと

夏凜はちょっぴり残念そうに本音を漏らした


90 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/08(木) 22:42:55.91VItnr/mvo (4/10)


天乃「聞きたい? 九尾がどんなやり方してきたのか」

夏凜「んな悪趣味なことは聞かないっての……大体……」

天乃「?」

夏凜「いや」

夏凜は一度口を閉ざして首を横に振ると一言呟いて

夏凜「明日も早いんだから、余計な話をしたりしない方が良いんじゃないの?」

天乃「起こした人が何を言うんだか」

明らかに言おうとしたのとは違うことを言った夏凜

そう分かってはいても

簡単な追及には本音を明かすことはないだろうと天乃は微笑んで見せて、

もう少しだけ、ベッドの隙間を広げていく

天乃「えっちなことは出来ないけど、一緒に寝るくらいなら出来るわよ?」

風はともかく、夏凜は意外と寝相が悪くない

それは友奈や東郷も同じで、樹は残念ながら風と同じ

風や樹は犬吠埼家として逃れられないものなのかもしれないと

天乃は小さく笑みを浮かべて夏凜へと目を向ける

天乃「どうする? 一緒に寝る?」

夏凜「なによ、えらく強気じゃない」

天乃「そんなことないわよ」

むっとした表情こそ見せないが、

語気の強まった夏凜を横目に、天乃空けた空間をそのままにして身体を横へと向ける


91 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/08(木) 22:52:51.13VItnr/mvo (5/10)


天乃「別にエッチなことしようって誘ってるわけじゃないのよ?」

天乃が自分からそんな誘いをしてきたとしたら、

それこそなにを強気になっているのかと聞きたくなることだが、

そうではなく、ただ一緒に寝るのかどうかをたずねているだけなのだ

そこに強気も弱気も無い……無防備ではあるのだが。

夏凜「そんなこと分かってるわよ、私はただ――」

天乃「なんだって余裕が無いときにとか言われても困るわ」

夏凜「…………」

天乃「みんなが忙しいときに力担当みたいな夏凜貸して欲しいとかなかなか言い出せないに決まってるでしょ」

自虐的な意味合いを含めてため息をついた天乃は

ましてこの私なんだからそのくらいわかって欲しいわ。と

自分の事でありながらどこか自信に満ちた声色でつぶやいて、苦笑いを浮かべて見せる

天乃「歌野たちが着てくれたんだから、夏凜だって行く意思さえあれば来ることが出来たはずじゃない」

夏凜「それは……」

風たちならほぼ確実に……というよりも確実に

嫌味な笑みを浮かべながらも「どうぞどうぞごゆるりと」とでも茶化しながら送り出してくれた事だろう

天乃「でも、夏凜はしてくれなかったんでしょ?」

夏凜「してくれなかったんでしょ? って……それは反論できないけど」


92 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/08(木) 23:04:25.15VItnr/mvo (6/10)


夏凜「だったらあんただって指名したらよかったでしょ。今日だってわざわざ休んでる風なんか連れ出して」

天乃「そこは別に挑発するような意味は無かったわよ。ただ純粋にねぎらうべきだと思って」

夏凜「それでお化け屋敷つれていったんなら相当鬼だわ」

天乃「それで勘違いして嫉妬してみんなの前でキスするくらいならもっと早く発散しに着たらよかったじゃない」

天乃はそういうと夏凜のことをにらむように見つめて、

半人分くらいのスペースはあるベッドの空白をたたいて夏凜にぐっと近づく

天乃「夏凜はいつもそうなんだから。みんなが。みんながって。なんなのよ、わがままになれとか人にあれだけ迫っておいてどうなのよ」

夏凜「自分の事棚に上げて言うか」

天乃「今はわがまま言ってるもん」

ふんっ。と全く持って気迫の感じない唸り声を漏らして

天乃「今棚に上げてるのはどこの誰なんだか」

夏凜「私だけどなによ、文句あんの。散々迫ってきてたこっちの気持ち少しでも理解できたんじゃないの?」

天乃「なんでそんな勝ち誇った言い方――」

風「あの、お二人さん、痴話喧嘩ならよそでやってくれませんかね」

カーテンの隙間から顔を差し込んだ風は、

呆れ果てた声で割って入ると、天乃と夏凜を交互に見渡して

深々とため息をつく


93 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/08(木) 23:14:08.81VItnr/mvo (7/10)


風「別に好きなだけ痴話喧嘩はしていいのよ。あんた達そういうこと滅多にしないし」

もちろん、仲がいいというか

ほぼ完全に分かり合っているような関係性だから良いのかもしれないが

少しはしてくれるといいと風は言う

風「ただ、時と場合を考えて。お願い。明日文化祭、朝早い、寝たい、疲れてる。OK?」

天乃「……ごめんなさい」

夏凜「痴話喧嘩ではないけど、悪かったわ。静かにする」

分かってくれたなら良し。と

満足げに言った風が引いて行ったのを見送って。

天乃「…………」

夏凜「…………」

乱された空気感に耐え切れず黙り込んで見つめ合った二人

天乃がとりあえず。とベッドの空いた空間を叩いて布団をめくると

夏凜が少し遠慮がちにその空間を埋める

夏凜「痴話喧嘩は、してないわよ」

天乃「してないわよ、忠告しただけ。夏凜が意地っ張りだから」

夏凜「はぁ……そう言うことにしておいてあげる」

天乃「なにその仕方がないけど。みたいな……たまには東郷たちみたいにぐいぐい来て欲しいって私は」

夏凜「私まで迫ったらあんたが休めなくなるでしょうが」

天乃「……べつに、モヤモヤするくらいなら休めない方が良いし」

夏凜「…………」

いじらしく俯きがちに答えた天乃を見つめていた夏凜は

何かを言おうと口を開いたが、悩ましそうに首を振って

夏凜「そうならそうと……せめて袖の端でも引っ張ってくれれば夜這いでも何でもするわよ」

天乃「…………」

夏凜「だからって今引くな。明日もあるんだから今日は寝るわよ……一緒に」

二つの熱は一つの温もりとなって、ゆっくりと夜は更けていく


94 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/08(木) 23:14:55.59VItnr/mvo (8/10)


1日のまとめ

・   乃木園子:交流有(賑やかな病室)
・   犬吠埼風:交流有(お化け屋敷、メイド喫茶)
・   犬吠埼樹:交流有(文化祭)
・   結城友奈:交流有(文化祭)
・   東郷美森:交流有(文化祭)
・   三好夏凜:交流有(ただの痴話喧嘩)
・   乃木若葉:交流有(文化祭)
・   土居球子:交流有(文化祭)
・   白鳥歌野:交流有(文化祭)
・   藤森水都:交流有(文化祭)
・    郡千景:交流有(文化祭)
・  伊集院沙織:交流有(文化祭)
・     九尾:交流無()
・     神樹:交流無()


10月06日目 終了時点

乃木園子との絆  67(高い)
犬吠埼風との絆  96(かなり高い)
犬吠埼樹との絆  82(とても高い)
結城友奈との絆  102(かなり高い)
東郷美森との絆  112(かなり高い)
三好夏凜との絆  132(最高値)
乃木若葉との絆  93(かなり高い)
土居球子との絆  40(中々良い)
白鳥歌野との絆  42(中々良い)
藤森水都との絆  34(中々良い)
 郡千景との絆  40(中々良い)
  沙織との絆  114(かなり高い)
  九尾との絆  62(高い)
  神樹との絆   9(低い)


95 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/08(木) 23:17:16.78VItnr/mvo (9/10)


√10月07日目 朝(病院) ※日曜日

01~10 体調
11~20 友奈
21~30 
31~40 若葉
41~50 夏凜
51~60 
61~70 沙織
71~80 
81~90 
91~00 体調

↓1のコンマ 


96以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/08(木) 23:17:39.97E+fizGc/O (1/2)




97 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/08(木) 23:25:27.88VItnr/mvo (10/10)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
これは何もしなかった三好さんのせい


沙織「平和だねぇ」

園子「可愛いよねぇ」

東郷「夫婦喧嘩は犬も食わないと言いますが」

東郷「今回ばかりは流石に犬も喰らいましたね」

風「なに東郷、もしかして喧嘩売ってる?」


98以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/08(木) 23:27:29.97E+fizGc/O (2/2)


夏凜が意地張るから……
にしても久遠さんも責められたい願望あるのね


99以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/08(木) 23:31:53.1263RXkWFRO (2/2)


あまにぼの痴話喧嘩が可愛過ぎるw
でも中々エロシーンに発展しないこの健全さが逆に仇になったか…?


100以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/08(木) 23:32:53.89lG8E7E0Ro (1/1)


夏凜ちゃんほんとコンマに恵まれねえよな……


101以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/08(木) 23:37:51.39OuIO0MxMO (1/1)


やはり発散は必要だったのか
っていうかプチ欲求不満久遠さんが可愛すぎて砂糖吐いた


102以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/09(金) 06:53:27.00r4vU8OBgO (1/1)

一見言い争いに見えるけどどう考えても悪化する気がしない喧嘩とかそら犬も食いませんわ

そしてここでか…2割やぞ


103以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/09(金) 14:55:59.36i7EpyKKqo (1/1)

久遠さんマジ悲劇のヒロイン(ガチ)
劇はどうするんだろう…中止するのかな


104以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/09(金) 20:44:15.563/NHcgSaO (1/3)

朝のうちになんとかして昼前から学校行くしか……


105 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/09(金) 22:12:23.53Q8hlvhBho (1/8)


では少しだけ


106以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/09(金) 22:13:21.80KAejfB4dO (1/2)

あいよー


107以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/09(金) 22:13:29.25jyViC7SW0 (1/1)

やった!


108 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/09(金) 22:18:44.75Q8hlvhBho (2/8)


√10月07日目 朝(病院) ※日曜日


夏凜「状態は……?」

「良くあるつわりの症状です……が、それでも比較的重度の兆候が見られます」

朝早い時間から吐き気を訴え、

検査が始まっても、検査中でも何度も嘔吐してしまっており

落ち着いたかと思えばむせて、口から溢れるように吐き出す

それが朝からずっとだ

夏凜「劇は……」

風「そんなこと今の天乃が出来るわけないでしょ」

夏凜「演劇とか、出来るようにはできないの?」

風「夏凜!」

「今の状況ですと運よく改善されても数時間での快復は……それにたとえ改善されても言葉を発することすら難しいでしょう」

厳しいことを言うことにはなりますが。と

夏凜達の表情を見てか、医師自身も辛そうに言葉を絞り出す

「はっきりと、言ってしまうのなら……彼女が言うように不可能ですね」

夏凜「おかしいでしょ……おかしいでしょ、そんなの……!」

東郷「夏凜ちゃん……」

夏凜「天乃は、楽しみにしてて、絶対成功させるんだって、みんなで最後だろうからって、本当に……っ」


109 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/09(金) 22:31:09.55Q8hlvhBho (3/8)


昨日の夜だって何も問題がなさそうに見えた

昨日の丸一日をとても楽しそうに過ごして、

つわりの症状など、身体の辛さなど全く感じさせないような様子だった

それが、一番大切な日に……何も出来なくなるような重い症状があらわれて

夏凜「あんた医者なんでしょ……なんとか、なんとか出来る方法探――」

沙織「三好さん!」

手加減のない力強い平手が夏凜の頬を打ち、

平手の主である沙織は悲し気な怒りを携えながら声を張り上げて

夏凜を打って震える手を自分で握る

沙織「この人を責めたってどうにもならないよ……三好さんが怒ったって何にもならないよ」

夏凜「そんなこと分かってるわよ。でも……天乃は泣くことも、何にもできないのよ!」

夏凜だけが、見てしまった

夏凜だけが、聞いてしまった

体調を崩して、苦しそうだと、辛そうだと

そんなことを言うことすら烏滸がましいような酷い状態になってしまった天乃が

検査と治療のために運ばれていく中で

たった一言「ごめんね」と、笑みを浮かべたのを。

だからどうしても、我慢ならなかった


110 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/09(金) 22:49:07.09Q8hlvhBho (4/8)


東郷「みんなで何か出来る事、戦いなんかじゃなくて、こういう平和な行事で出来る事。久遠先輩がどれだけ、切望していたか」

そこに自分を含めずに考えている時期も確かにあった

だが、やがてその考えを改めて、天乃は自分も含めたみんなでのそう言った世界を望むようになった

そのためにどれだけの苦しみを味わい、悲しみに包まれてきたか。

決して想像に易いものなどではないと東郷は首を振る

東郷「それが、ここにきて……その悲しさは例えであろうと代弁したくはないわ」

若葉「……どうする? 風」

風「どうするって……」

樹「久遠先輩がいないまま、やる?」

風「……っ」

どうするべきか否か

演劇をやるならば変更点も大きく出てくる

しかし、やらないのであれば楽しみにしてくれているみんなに、

会場である体育館その設備の準備係

沢山の人を困らせ失望させることだろう

けれど、果たしてこんな状況で成功させられるのだろうか

勇者部部長というもの以上の責任を感じる風は

硬く、唇を噛み締めて――

友奈「……やりましょう、風先輩」

黙り込んでいた友奈が、口を開いた


111 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/09(金) 22:57:53.04Q8hlvhBho (5/8)


夏凜「友奈、何言ってるか分かってんの?」

友奈「分かってるよ……分かってる」

夏凜「分かってるならなんで……」

友奈「久遠先輩が楽しみにしてたからだよ!」

夏凜「!」

友奈は悲しみを抱えたまま声高に叫ぶように夏凜へと言い放つ

力のこもった体は今にも襲い掛かりそうなほどで

想いの込められた言葉が、夏凜にぶつかっていく

友奈「成功させたいってそう言ってたから……」

だから。と

友奈は泣き出してしまいそうに震えた声で、続ける

友奈「私達は止めるべきじゃない……例え久遠先輩が出られなくても……みんなで、笑顔で、劇は大成功でしたって……久遠先輩に報告するべきなんだって私は思います」

歌野「結城さんの言う通りね。やりませんでした。なんてリポート。それこそ久遠さんは傷つくと思うし、レッツプレイあるのみ」

夏凜「…………」

樹「やりましょう、夏凜さん」

夏凜のつよく握りしめられた手を握りながら持ち上げて

夏凜が自分へと目を向けてくれたのを感じると、樹はまっすぐ見返す

樹「夏凜さんが一番良く分かってるはずです。ここで私達が引いた時、久遠先輩がどんな気持ちになるのか」

天乃はここでやらなかったら、きっと自分のせいだと強い自責の念に駆られることだろう

どれだけこっちが決めたことだからといっても

そうしなければいけなかったのは、自分の不調のせいだから。と

夏凜「……どうせ、成功させたってあいつは迷惑かけてごめんねって、言うわよ」


112 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/09(金) 23:10:28.32Q8hlvhBho (6/8)


激昂していた夏凜はその荒々しい雰囲気を段々と落ち着けて行き

震えるほど強く握られていた手は収まって力が抜ける

夏凜「そっちの方が、100倍マシか……」

沙織「怒っていたってどうにもならない。あたし達が出来ることをやらなきゃ」

若葉「夏凜はここに残した方が良い……と、思ったが」

千景「それは逆効果よ。乃木さん」

若葉「分かっているさ」

誰か一人

心配だからと残しても天乃は気負ってしまう

はっきりいって自己犠牲精神の塊過ぎるところがあるのだ

球子「これで本当に失敗出来なくなったな」

夏凜「別にいいでしょ。元々失敗するつもりなんかなかったんだから」

風「中止にするべきとか喚いてたくせに~」

夏凜「うっさい! あいつがいないならやる意味ないって思っただけよ」

そう怒鳴った夏凜に、

風は茶化すように笑いながらそうっと身をよせて、

触れるか触れないかの距離を保って苦笑する

風「でも、それだけ天乃のことを想ってるってことでしょ……だったら、昨日の夜みたいなことしないでちゃんと我儘言いなさい」

夏凜「っ」

夏凜が反応するよりも早く言い逃げしようと風は足早に去って行って

残された病室、おとなしくしていた園子へと夏凜が目を向けると

園子はゆったりとした笑みを浮かべて

園子「天さんの傍には私がいるから」

夏凜「……行ってくるわ」

園子「頑張ってね」

穏やかに、見送った


113 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/09(金) 23:22:55.51Q8hlvhBho (7/8)



01~10 
11~20 九尾
21~30 
31~40 
41~50 九尾
51~60 
61~70 
71~80 体調
81~90 
91~00 

↓1のコンマ 

※空白 通常


114以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/09(金) 23:23:19.343/NHcgSaO (2/3)

はい


115 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/09(金) 23:31:31.93Q8hlvhBho (8/8)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「………」カチャカチャ

風「……東郷何してんの?」

東郷「久遠先輩の不調が穢れのせいなら」

東郷「神である神樹様の枝の一本でも煎じて飲めばよくなるかと思いまして」

東郷「とりあえず壁に穴でもあけようかと」

夏凜「私が提案したのよ」

風「ツッコミの夏凜ちゃんがボケた!?」


116以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/09(金) 23:38:39.00/idmwuFfO (1/1)


久遠さん復活の目はないのか…


117以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/09(金) 23:39:59.17KAejfB4dO (2/2)


どこまでも運には見放されてる久遠さん…
友奈ちゃんのおかげで劇の主役不在でも暗くならずドラマチックな展開になってくれたのが救いか


118以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/09(金) 23:50:42.463/NHcgSaO (3/3)


久遠さんも楽しみにしてたのにかわいそうだな


119以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/10(土) 14:16:46.513+OZdR7Xo (1/1)

神様(コンマ)がえげつねぇ…


120以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/10(土) 21:11:35.43SovuvVmaO (1/1)

何も劇の日じゃなくてもいいのに


121 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/10(土) 22:33:58.39O3lCbAUjo (1/6)

では少しだけ


122以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/10(土) 22:36:52.45R58RllfLO (1/2)

よしきた


123 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/10(土) 23:00:16.78O3lCbAUjo (2/6)


√10月07日目 朝(病院) ※日曜日


天乃「ぅ……っ!?」

耐え切れずに何度も何度も吐き続けて

喉が焼けるような痛みにもがき苦しんで

ようやく嘔吐が収まって息を吸えば

取り込んだ酸素を押し返すように強い吐き気が再び訪れる

天乃「げほっ、けほっ……ぅぇっぁあ゛っ」

むせたり咳込んだりしたが最後

喉の強い痛みと止まらない吐き気、嘔吐に呼吸が乱さされたままの苦しい時間が延々と続くのだ

それが収まっても、油断をしたり急いだり

咳込めばまだぶり返す恐怖と緊張感に気が休まることはない

朝から疲弊しきって、でも、眠れない

内容物を出し切って胃液まで使い切った体の内側はボロボロで

空気が入り込むだけで喉はピリピリとした痛みを発する

声は当然出すことはままならないし

視界はぼやけ、涙に歪み全く見えない

今日は文化祭最終日

一番快調で一番参加しなければいけなかった日

それなのに

自分はここで何をしているのだろうかと、怒りさえこみあげて来てしまう


124 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/10(土) 23:18:19.83O3lCbAUjo (3/6)


天乃「っ……ぁ」

体を起こそうとして伸ばした手は近くに立っていた点滴用のスタンドに触れてなぎ倒し、

タオルを用意しに行っていた看護師は、響いた騒音に驚き慌てて病室へと駆け込む

出かけるなんて不可能だ

文化祭で劇を行うなんて不可能だ

それ以前に声が出せない

それよりももっと、根本的に呼吸さえ今は上手く出来ないのだから

「駄目ですよ……安静にしててください!」

天乃「ぃ……」

「駄目です、無理です……っ、声すら出せていないんですよ!」

抑えても体を起こそうとする天乃を必死に抑えながら、

看護師の女性は影響がないように気を配りながら抑える手に力を込めていく

無理矢理押し倒せば体が変に圧迫されてより体調を崩してしまいそうだからだ

「ここで無理をしたらお腹の中の子供にまで悪影響が出てしまいますよ」

天乃「っ……ぅ」

そんなことまで言われて無理をするわけにはいかなくて

天乃は看護師の力に抗うのを止めて、ベッドへと横になる


125 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/10(土) 23:29:11.02O3lCbAUjo (4/6)


「皆さまは学校に向かわれました。劇に関しては久遠さん抜きに行うと伺っています」

勇者部から聞かされたことを伝えながら、

新しく用意したタオル等で天乃の汚れた口元を拭うと

吐き溜められた袋を一瞥して心配そうに顔を顰める

「血が混じってますね……出来る限り吐かないよう絶対安静にしていてください」

袋の口をしっかりと閉じて二重三重に包み、

改めて袋に入れ終えてから新しい袋を用意する

血まで出てきているということは

喉まで完全にやられてしまったということだ

それでもなお吐き気に耐え切れず何度も嘔吐してしまった場合

更に症状が悪化してしまう可能性があるからだ

天乃「ぁ……たし……」

「無理です。文化祭への気持ちは分かりますが――」

天乃「何がわかっ……っ! ぅ゛……ぅっ……うぅ」

「……簡単に言ってごめんね? でもどうか安静にしていて」

さかのぼる吐き気に顔をゆがめた天乃を優しく介抱しながら

看護師は悲し気に息をつく


126 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/10(土) 23:50:14.99O3lCbAUjo (5/6)


通常の妊娠とは全く違う特殊な状態の妊婦で

体調も胎児の成長も不安定

検査の回数は普通ではありえないほどに何度も行い

対応も厳戒態勢といった特殊すぎる状況だが、

当の本人たちはそれを除けばいたって普通の学生だった

文化祭を楽しみにしていて、頑張っていて

体調不良が続いているからと警戒してわざわざ文化祭までに学校を休んだりして。

明日は自分たちの出し物があるからと張り切っていた……それで、こんなことになって。

分かるだなんて発言は軽率だったと看護師は後悔する

常套句だったとはいえ、場面的に使うべきではなかったと。

天乃は3年生だ。

あの中学生の面々との文化祭はどうあがこうともこれが最後

だからこそ絶対に参加したかっただろうし、

出し物を成功させたかったはずなのだ

「神樹様……どうか、お恵みを……」

絶え間なく押し寄せてくる吐き気にもがき、

冬の近い寒々しい季節でありながら汗を流し続ける天乃の体や額を拭いながら

看護師の女性は何度もつぶやく

沢山の後輩や同級生に慕われている姿を知っているから

だから、思う

こんなに苦しまなければいけないような子ではないはずだから。と

大切な場面で足を挫かれてしまうような子ではないはずだから。と

みんなでの最後の文化祭

そんな些細で普遍的な当たり前の楽しみを奪われていいはずがないのだから。と

「……救ってあげてください、神樹様」

しかし。

そのような祈りなど、弱ってしまっている神樹様の加護など

今の天乃を癒せる力は全くといっていいほどに……無かった


127 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/10(土) 23:51:51.95O3lCbAUjo (6/6)


√10月07日目 昼(病院) ※日曜日

01~10 
11~20 九尾
21~30 
31~40 
41~50 若葉
51~60 
61~70 
71~80 九尾
81~90 
91~00 九尾

↓1のコンマ 





128以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/10(土) 23:52:09.757ikXyIgSO (1/1)




129以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/10(土) 23:52:28.46R58RllfLO (2/2)




130 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 00:07:05.66Dch8/a0zo (1/13)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば昼頃から


九尾交流


131以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 00:20:28.61hDcpRL9LO (1/1)


九尾が落ち込んでる久遠さんの心のケアしてくれるかな?


132以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 00:21:09.41TVXyOGWeO (1/1)


思ってたよりも重症とか…何で久遠さんはいつもこれからって時に不幸な目に会うんだ
今回ばかりは九尾に賭けるしかないか


133 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 16:24:27.66Dch8/a0zo (2/13)


では少しずつ


134以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 16:26:20.91vfnOq5snO (1/4)

やったぜ


135 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 16:53:00.95Dch8/a0zo (3/13)


√10月07日目 昼(病院) ※日曜日


昼になっても押し寄せる吐き気は収まることを知らず、

気を抜けばすぐにでも嘔吐に繋がる不安は残り

吐き続けて疲弊し、瞼が重くなりつつあってなお

天乃は一瞬さえも眠ることは出来ずにいた

天乃「……………」

それでいて、何も出来ない

体を動かす事はもちろん、

話すことや本を読むこと、テレビを見ること……何一つ

本来文化祭に参加している時間を空っぽにした吐き気による永遠にも思えそうな拘束感に

抗うことも振り切ることも出来なかった自分に

なぜだかとても苛立ってしまう

だが、その怒りさえも

発散させようとひとたび体を動かせば長時間にも及ぶ嘔吐をつづけることになる

九尾「安静にしておけ。今の主様には何も出来ぬ」

天乃「…………」

不快感と嫌悪感のみが溢れかえる中

ふいに姿を見せた九尾は女性の姿ではあるが

臀部から生やした九尾の尾の一つで天乃を優しく包み、汗に濡れた頬を細い手で拭う


136 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 17:25:01.59Dch8/a0zo (4/13)


天乃「ぅ……」

頬に触れる手を握る天乃の手の力はとても弱弱しいものだった

衰弱してしまっているのもそうだが

余計な所に力を入れた瞬間にまた体調を大きく崩してしまいそうな不安があるからだろう

呼吸することだけに意識を集中しながら

救いを求める視線を向けてくる天乃を見つめて

九尾は冷静さを感じる表情をわずかに曇らせた

九尾「妾にどうにかできる状況ではない」

天乃「…………」

九尾「理由かや……? 至極単純な答えじゃが」

九尾は握るというよりは触れて来るだけの天乃の手を優しく握って

聞くまでもないことだと前置きをしながら、天乃のことを一目見て息を吐く

普段の発作とは全く違い、

今までに経験したことが無いほどに辛く苦しいつわりの症状だが

九尾からしてみれば、それはいつ来てもおかしくないものだったし

不思議なことではなかった

九尾「主様は双子を身籠っておるがゆえに、そもそもの負担は一般のそれとは違う」

それに加えてこれが初めての妊娠であり、まだ15歳の体なのだ

成長期を迎えて体が作り替えられているとはいっても

当然のことながら適応しきれているわけがない


137 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 17:41:45.37Dch8/a0zo (5/13)


にも拘らず、穢れと神聖な力を受け継ぐことによって

妊娠における周期は滅茶苦茶になってしまった

不安定な状況に陥った体は何とか適応するために

天乃を発情させることで穢れの発散を促したりとしていたが

それでも間に合わずに体調不良を起こしてしまっていたのがここ数日の事

九尾「要約するとな。主様の体は受け入れることを選んだのじゃ」

妊娠による症状は少しずつ流出させても次から次へと蓄積されていく

それならば一度溜まった症状を放出してから

体が回復していくのに合わせて適応力を底上げする方が

苦しみは長引かないし体への影響も少ないと勝手に決めつけてその処理を行った

いや、今現在行っている最中なのだ

九尾「そこで妾の力が割り込んでしまうと、さらに乱れることになる……下手は打てぬのじゃ」

天乃「…………」

体の中のものすべてを使い果たし、適応させていく

母乳の件で胸が大きくなってしまうのもその一端だ

もっとも、天乃の場合は延々と流れる力がかかわってくるため

元のサイズに戻るのかどうかは怪しいところだが。


138 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 18:59:37.12Dch8/a0zo (6/13)


天乃「…………」

九尾「今日は、諦めるんじゃな」

ずっと見てきた九尾としては

天乃を文化祭に参加させてあげたいと思わないことはないが

こればかりはどうしようもないことなのだ

不運だった。という他ない

九尾「これを乗り越えれば、安定期に入るじゃろう……」

声をかけながら天乃の目元をそうっと拭う

皆に心配をかけて、迷惑をかけて

何かしたくても何もできない

けれど眠ることは出来なくて、憔悴しきった体の重みをただただ感じるだけ

そんな天乃の傍に寄り添って、九尾は静かに目を瞑る

九尾「しばしの辛抱じゃ」

天乃「ゅ……」

九尾「無理に話さなくてよい。吐かぬことだけを考えておれ」




139 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 19:41:48.92Dch8/a0zo (7/13)


√10月07日目 昼(病院) ※日曜日


01~10 若葉
11~20 
21~30 
31~40 九尾
41~50 
51~60  ……
61~70  大赦
71~80 
81~90  晴海
91~00 

↓1のコンマ 






140以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 19:43:08.04XLE7QkS+O (1/3)




141 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 20:21:58.83Dch8/a0zo (8/13)


若葉「……そうか」

九尾「お主達も主様抜きでやると決めたのじゃろう? 予定は変わらぬ」

若葉「それはそうだが……」

昼頃になってどこからともなく姿を現した若葉は、

九尾から天乃の状況を聞くと

悲し気にまゆをひそめて、天乃へと目を向ける

予定は変わらないとは言うが

もしかしたら。という希望は持っていたからだ

若葉「数時間たってなお、話すのも無理か」

天乃「……ぇ……ね……」

若葉「いや、気にするな。ゆっくり休んでくれ」

罪悪感に満ちた天乃の表情

自分の言葉が失言だったと悔いながら

天乃へと声をかけ、そっと天乃の頬に触れる

汗ばんでいて火照った体は

熱を出しているようだと、若葉は思う

若葉「本当に大丈夫なのか?」

九尾「問題ないと言っておろう……それより、おぬしたちの劇は問題ないのかや?」


142 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 20:52:44.66Dch8/a0zo (9/13)


若葉「ああ、何とか問題は無くなった」

天乃が出てくる場面の全てを削り取り、

つぎはぎにしてもストーリーは滅茶苦茶になってしまう

それゆえに、天乃に関係なく場面を削減し

脈絡ない展開にならないように再構築したのだ

最初に予定していた劇と比べればやや面白みに欠けるかもしれないと風は言っていたが

そのおかげで大雑把な練習とはいえ

だいぶ出来ているのだから、ある意味では良かったのかもしれない

そもそも、それ以外に方法はなかったのだから仕方がないだろう

若葉「天乃の子供が無事に生まれてくるためのものだと知れば、夏凜も安心する」

天乃「……ぅ?」

若葉「声は聞こえなかったか? 朝は一番慌てていてな……中々見れない姿だったぞ」

大変な事だったとしても

過ぎたことだからと若葉は冗談めかした笑みを浮かべながら

学校でも意気込みすぎていて不安だったからな。と

天乃に寄り添いながら学校での様子を語る

若葉「まぁ、それも夏凜に限った話ではないのだがな」


143 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 21:25:18.45Dch8/a0zo (10/13)


若葉「友奈達も成功させようと張り切っていて……いや」

張り切り過ぎていてむしろ心配にさえなったな。と

若葉は苦笑して天乃へと目を向けたが

天乃の目が「気遣わないで」と言っているようなきがして思わず眼を逸らす

精霊だから自由に行き来することが出来る

だからこそ任命されたこの場

不安にさせないように

罪の意識を感じさせないように

そう気負ってなかったと言えば、嘘になる

だが……

若葉「すまない……天乃がこんな状況に陥っていてあれだが、私も安心したんだ」

天乃の体調不良は何か大きな問題があるものではなく

子供を無事に産むための仕方ないことで

ここからなにか悪いことが起きるのではないと九尾から聞かされて

安心してしまったから、少しでも楽しむ余裕が出て来てしまったのだろう

若葉「……少しだけ、日常というものを味わえて嬉しいと思った」

友人の為に全力でなにかを成功させようとする

命がけではなく、そう言ったことをするのは

とても学生らしいと、日常らしいと若葉は思ったのだ

若葉「だから、すまないな」

そう言った若葉は、笑みを浮かべていた


1、手を握る
2、首を振ろうとする
3、笑みを浮かべる
4、睨む

↓2




144以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 21:28:30.47uhqk0NBfO (1/1)

4


145以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 21:29:08.426dBEDQxw0 (1/1)

4


146以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 21:29:34.83vfnOq5snO (2/4)

2


147 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 22:19:24.30Dch8/a0zo (11/13)


天乃「…………」

若葉「そう睨まなくてもいいだろう……?」

天乃の睨むような視線に、

若葉は困ったように呟いて顔を逸らす

しかし肌に触れる手は天乃から離れずに

九尾がしていたように天乃の手を握っていて

若葉「気が抜けたんだ」

今日に限って体調を崩すことになって始末たのは不運だとは思うし

若葉自身、出来るならそれは翌日以降になって欲しかったとも思う

若葉「私だって、天乃と一緒にやりたかった。だが、子供の為なら仕方ないだろう?」

天乃「っ……」

若葉「だから体調が戻ったら、みんなでなにかしよう。今月は……確かハロウィンがあったな」

かつて聞いたことを想い出して

若葉は何をしようかと考えて苦笑する

若葉「そのためにも、今日は……ゆっくり休んでくれ。劇は必ず成功させるからな」

安心してくれ

そう言った若葉は天乃の頬に優しく触れると、そっと離れていった


148 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 22:27:53.21Dch8/a0zo (12/13)


√10月07日目 夕(病院) ※日曜日


01~10 
11~20  晴海
21~30 
31~40 
41~50 
51~60  大赦
61~70 
71~80 
81~90 
91~00  ……

↓1のコンマ 

※何もない場合は勇者部


149以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 22:29:37.92vfnOq5snO (3/4)




150以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 22:31:50.99XLE7QkS+O (2/3)

何事だ


151 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/11(日) 22:37:19.71Dch8/a0zo (13/13)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「母乳は乳頭から出ます」

東郷「久遠先輩は妊娠したことで力が胸に流れている」

東郷「そして母乳にも力が宿るということになります」

東郷「……もしかして、力がある限り半永久的に母乳が出る体になるのでは?」

九尾「それはそうじゃが……自力でその答えに至るとは思わなかったぞ」






152以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 22:38:36.01XLE7QkS+O (3/3)


久遠さんのミルク(100%)


153以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 22:58:52.31vfnOq5snO (4/4)


久遠さんの乳なら実際にそうなりそうだからなぁ…
あとコンマに晴海さんがいるってことは遂に久遠家も関わってくるのかな


154以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/11(日) 23:33:05.15YuG+Xa5BO (1/1)


マジかよエロい…母乳飲まれながらイかされる久遠さんヤバいって


155以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/12(月) 12:57:41.27/ysvMmzXo (1/1)

乙乙
イベントを的確に引くコンマ好き


156以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/12(月) 14:07:25.87I7ToRBjPO (1/1)

本編中ではもう仕方ないけど久遠さんが参加できた場合の劇ってどうなってたのか気になるなあ


157以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/12(月) 15:51:20.92YcHaRdmo0 (1/2)

3連休ヒマだったので面白いスレ見つけたと思って最初からぶっ続けで読んでようやく追いついた。
wikiのオマケも全部読んだと思うんだけど二週目のBADENDの続きって未完なの?

すんごい続きが気になるところで終わってるのに見当たらないから困惑してる。


158以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/12(月) 16:47:43.51llvtKSnFO (1/1)

たしか内容的にキツ過ぎてあの後はあらすじのみ載せてギブアップしてた気がする
流石にあれ以上はしんどそうだったし仕方ない




159以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/12(月) 17:08:34.85qUs8s/nsO (1/1)

あれってスレとはだいぶ毛色違うけどあらすじ読んでも結構面白そうな内容だから>>1の負担にならないなら>>1の文章で読んでみたかったから気持ちはわかるわ


160以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/12(月) 18:38:09.12YcHaRdmo0 (2/2)

そうか、続き無いのね続きが気になってたから残念。

でも今の話も面白いし安価の参加は難しいかもしれないけど楽しむよ、教えてくれてありがとう。


161以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/12(月) 20:30:25.540SiMfvvJO (1/1)

気合い入ったエロと戦闘みるにモチベーションさえあれば文章力としては商業紙に匹敵するくらいになるからなぁ…期待したい気持ちは解る


162 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/12(月) 22:38:12.45RjDi/+Aeo (1/6)


では少しだけ


163以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/12(月) 22:39:09.991j7QR2V9O (1/1)

かもん


164 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/12(月) 22:44:36.08RjDi/+Aeo (2/6)


「まだ、しておるか」

「これが最期の私の役目なのよ」

「無茶をする……ただでさえ短い命がさらに短くなるぞ」

「良いわよ別に。それで未来が守られるのなら」

2人の女性の内、背の低いまだ若い少女は苦笑しながら抱く我が子を撫でて

奉納された刀へと目を向ける

満足げな表情、満たされた表情を見せられては女性も何も言えなかったのだろう

少し開いていた口を閉ざして呆れたように首を振る

「いつか、人は外の世界に出なければいけない時が来るわ。そのために必要な事よ」

「別に、ここでしなければいけない事ではないと思うが」

「私以外の誰かに出来ると思う?」

自慢げに

しかし、どこか自嘲の混じったはかなげな笑みを浮かべる少女に、

女性は不快感を露にしたにらみを利かせて、ため息をつく

「犠牲を増やせば出来る事は出来るじゃろうな……もっとも、それでは主様の考えている結果には至らぬやもしれぬが」

「今の神樹の力を使い尽くせば出来ないこともないと思うけどね……それでは結局再侵攻されて終わるわ」

しかし、神樹が自らを犠牲にして力を使い尽くすような行為はしないだろうし、

何かきっかけが必要なのだと、少女は零す


165 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/12(月) 23:00:13.26RjDi/+Aeo (3/6)


バーテックス、天の神

それに対してもそうだが、人類を守護しているという神の集合体である神樹に対しても

人類はなにかを示さなければいけないはずだ。と

「それにはきっと長い時間がかかると思うのよ……だからその時には神樹の力は衰えていて解放しきる力が足りない可能性もあるから」

「だから主様が命を賭す。と? 浪費されていく結界ではなく、愚かな人類、愛すべき我が子に託すと?」

笑みを浮かべながら語る少女に対し、

女性はその選択を受け入れがたいと言いたそうに顔を顰めながら問いかけるが

少女は表情を変えることなく頷く

「私は結局、うわべだけの付き合いで終わってしまった。千景にも、杏にも、友奈にも、球子にも、若葉にも、ひなたに対しても」

そして、その結果が救いようのない結果だったのだと零す。

大崩壊が起きて以降、裏切られ続けた人生だった

憎まれ、恨まれ、呪われ続けた人生だった

人を信じるなど、愛するなど、心の底から出来るような状態ではなかった

だから仕方がなかったのかもしれない

しかし、少女は「でもね」と呟く

「誰か一人でも信じてあげられたら、愛してあげられたら、きっと結果は違っていたんだと思うの」

「想い一つで変わることなどあるとは思えぬが」

「あるわ。きっとある。だって……失ってしまってからこんなにも強い後悔をしてしまうんだもの」


166 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/12(月) 23:26:14.41RjDi/+Aeo (4/6)


失いたくないという想いは、誰かに対して抱く信頼は

何よりも強い力になるはずなのよ。と、少女は笑みを浮かべる

「誰かを想う気持ちこそ、この世界を救う一つのカギになってくれるはずだから」

「くだらない妄想じゃな。根拠がまるでない」

「でも、貴女は人間の愛を利用する妖狐だったはずでしょう?」

挑発するように問いかけた少女は、

不機嫌に眉を顰めた女性を真っ直ぐ見つめながらクスリと笑う

完全な、嘲笑。

「それとも、貴女の立派な伝承は人間の心を知らない哀れな妖怪の物語だったのかしら」

「言うではないか……小娘」

女性は瞬く間もなく姿を大きな九本の尾を持つ妖狐へと姿を変化させたが、

少女は全く驚いた様子も見せずに呆れたため息をつくだけで。

牙をむいて唸る妖狐など全く恐れてはいなかった

「貴女はこれからも私の血と共にいてくれるのでしょう?」

「……そう言う契約じゃからな」

「なら、私の血を引く私の子供を愛してみて頂戴」

「主様の子をか……? 意味があるのかや?」

「子供たちはきっと苦しむ。そして、苦しみながら私の呪いによってその命は儚く散っていくでしょうね……」


167 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/12(月) 23:42:50.15RjDi/+Aeo (5/6)


「それを知りながら愛せと?」

妖狐の怪訝な表情に対し、少女はにこやかな笑みを浮かべながら頷く

それは悪戯を考え付いた子供のような純粋さがある

けれど、子供にはない根付いた闇を感じるものだった

「貴女は愛したものが散っていく虚しさを知ることになるでしょうね……けれどきっと、貴女はその愛によって小さな灯が見せる輝きに心を奪われる」

「……くだらぬな。他を愛することを捨てたお主がそれを口にするか」

「愛した時期、愛を捨てた時期。どちらにも踏み込んだ愚か者だからこその言葉よ」

少女はそう言うと、切なげな笑みを浮かべて妖狐を見つめる

「とにかく、見守ってあげて欲しいの……そして、私が遺した力の使い方を教えてあげて」

「その程度ならばよいが、愛するか否かは約束せぬぞ」

「貴女はそう言って、結局対応してくれるから助かるわ」

少女は妖狐のことなど分かり切っているとでも言いたげに

自信に満ちた笑みを浮かべる

それは今は天乃の精霊である九尾と、先祖である陽乃の話

いや、天乃にも与えた久遠陽乃と九尾の記憶の一つ。


168 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/12(月) 23:53:44.37RjDi/+Aeo (6/6)


天乃「ぅ……」

九尾「…………」

そんな遥か昔のことを想い出しながら、

魘されたように呻く天乃の口元からこぼれ出る濁った液体を拭い

九尾は不安げに眉を顰めて天乃へと覆いかぶさっていく

九尾「主様の体はいつになく脆い……触れれば砕けてしまいそうなほどに」

人間の一生は儚く脆く小さなものであると

九尾は長年の記憶から分かり切っている

その一つ一つに愛情を注ぐなど、心を痛めるなど無意味であるとも分かっている

だが、それでも。

産まれ落ちたときから寄り添い、互いを認識しあってきた相手というものは

どうしても、気にかけてしまうものなのだと……九尾は諦めたように笑って。

九尾「悪質な契約を交わすとは……妾も愚かじゃのう……」

この場にいることになった最も大きな原因

その契約者である久遠陽乃へと、恨み言のように呟いた


169 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/13(火) 00:00:12.5414SvooMCo (1/7)


√10月07日目 夕(病院) ※日曜日


01~10 
11~20  少し回復
21~30 
31~40 
41~50 
51~60  晴海
61~70 
71~80 
81~90  大赦
91~00 

↓1のコンマ 

※何もない場合は勇者部



170以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/13(火) 00:00:49.05XSWKVxU+O (1/2)




171 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/13(火) 00:07:14.4614SvooMCo (2/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


通常通り勇者部帰宅
久遠さんは身動きできず


172以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/13(火) 00:08:42.37XSWKVxU+O (2/2)


嫁たちに癒してもらおう


173以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/13(火) 00:14:12.66a7V81XKMO (1/1)


凄い久々に西暦時代の回想がきたけど相変わらず陽乃さんは救いがないなぁ…
もしもくあゆ版のゆゆゆいとかあったらみんなで助けてあげたい



174 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/13(火) 22:06:12.7914SvooMCo (3/7)


では少しだけ


175以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/13(火) 22:09:28.83AYaVFHPoO (1/3)

おk


176 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/13(火) 22:31:43.7514SvooMCo (4/7)


√10月07日目 夕(病院) ※日曜日


夏凜「文化祭、終わったわよ」

天乃「ぅ……」

夏凜「一応、無事に終わったし……劇もちゃんと成功させたから安心して休んでなさい」

天乃の体調不良が子供を無事に産むためのものであると納得したからか

朝のような感情的な部分は嘘のように穏やかに話す

天乃が横になっているベッドに寄り添うように座り

優しく握れば握り返してくる弱弱しい力に笑みを浮かべる

夏凜「明日には体調戻るの?」

風「んー聞いた話ここまでの重さだと何日かはかかるんじゃないかって」

友奈「その間ずっと気持ち悪いままなのかな……」

東郷「お医者様は多少話せるようにはなるはずだと思いますとは言ってたけれど」

天乃ほどの重症さは前例がないわけではない

だが、天乃の身体的状況でのこの症例は前例がない

だから、医者もはっきりとしたことは何も言えないのだ

樹「でも、子供の為になっていることなら大丈夫なんじゃないかな……」

長引いてしまうことにはなるかもしれないが

きっと治ると信じて樹は言う

沙織「ということで、久遠さんはまたまた絶対安静ということだね」



177 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/13(火) 23:00:52.9114SvooMCo (5/7)


もはやそれが一つの楽しみであるかのように明るく言う沙織に

風達は少し困ったような反応を見せるが

沙織は関係なさそうに笑みを浮かべながら天乃へと近づく

夏凜「沙織はどうせ、また二人きりになれるとか思ってんでしょ」

沙織「よくご存じで」

風「学校でもクラス一緒なのに」

沙織「これはこれ、それはそれ。同じベッドでも家と保健室じゃ違うよね」

夏凜「沙織と東郷にだけは任せたくないんだけど」

こんな弱っているのに何をするつもりなのか。と

夏凜は呆れた表情で沙織を一瞥する

流石に弱った状態の天乃に手を出すことはないだろうが

影響のない範囲で何かをしそうだからだ

東郷「とにかく、久遠先輩がこのような状態である以上、あまり騒がしくしたら駄目ね」

友奈「そうだね、久遠先輩がちゃんと休めるようにしないと」

文化祭の打ち上げや、若葉が天乃に言っていたハロウィンの計画

色々と話したいことはあるが、

友奈達はベッドで横になったまま殆ど身動きしない天乃へと目を向ける




178 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/13(火) 23:16:59.4114SvooMCo (6/7)


風「それで、どうする?」

夏凜「どうするって言われても、こんな状況じゃ天乃にはどうにもできないでしょ」

樹「そうですよね……出来る限り久遠先輩のしたいようにしたいんですけど」

以前にも行ったことだが、

今回は寂しい寂しくない以前に手を貸すことのできる誰かが天乃の傍にいるべきなのだ

今は吐き気のみで嘔吐することは無くなっているが

そういった状況に陥ったときに誰も居ませんでした。は非常にまずい

友奈「みんなで一緒にいるのは……」

沙織「久遠さんはそう言うのほんと喜ばないからなぁ」

皆で心配して傍にいると

そんなことをさせてしまったと抱えこんでしまう

だからといって一人にしておくと寂しがる

少し難しいよね。と冗談ぽく言って笑う沙織に

夏凜は小さくため息をついて……

夏凜「一人くらい残すのは許しなさいよ……? 天乃」


1、手を握り返す
2、何とか声を出そうとしてみる
3、頷く
4、何もしない


↓2


179以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/13(火) 23:17:49.47OyKn62lCO (1/2)

2


180以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/13(火) 23:18:36.80AYaVFHPoO (2/3)

2


181 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/13(火) 23:38:53.5614SvooMCo (7/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈「そう言えば、久遠先輩の身長が伸びないのってなんでなんだろう?」

風「確かに……3年間1㎜も変わってないって言ってたし何か理由があるのかもね」

東郷「神樹様に逆らうと永久的に小さい子供になるって言う噂がありますが」

夏凜「罰辺りにもほどがあるでしょその噂」

沙織「久遠さんはあれ、膨大な力を留めるためにあえて小さく固まった結果なんだよね」






182以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/13(火) 23:40:01.12OyKn62lCO (2/2)


久遠っぱいにもいっぱい詰まってるからな


183以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/13(火) 23:49:39.98AYaVFHPoO (3/3)


そんな小柄な体で戦闘で傷つき、穢れで死にそうになり、双子を身籠るという…すさまじい苛酷さだよなぁ


184以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/14(水) 09:49:25.44W0OhLVEXO (1/1)

>>1はサディスティックなところがあるからな…そこにコンマが重なって倍増
ほんと鬼畜である


185以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/14(水) 16:13:58.72qd28PCb2o (1/1)

15歳148cm経産婦…


186 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/14(水) 22:11:41.46WcfFiCpfo (1/7)


では少しだけ


187以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/14(水) 22:15:56.25gUV5JRJ1O (1/2)

あいよー


188 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/14(水) 22:22:14.40WcfFiCpfo (2/7)


天乃「ぁ、ぅ……」

何とか声を出そうとする

しかし、かすれて潰れた声はただの呻き声にしかならず

飲み込めず吐き出せない唾液が溜まっていたのだろう

コポコポと危うげな音が漏れ出して頭の下に引かれたタオルを濡らしていく

天乃「ぁー」

夏凜「ちょっ……あんた大丈夫なのっ?」

天乃「ぅ」

夏凜「無理して喋らなくて良いから!」

天乃が口を微かに動かそうとするたびにあふれ出してくる唾液

そのまま窒息してしまいそうな不安を感じて

夏凜は思わず声を上げて天乃の頭を持ち上げて口元を拭う

天乃「ぁ……ぃ……ぃ」

夏凜「んな状態で……あーもう……」

別に答えて貰おうとしたわけじゃなかったのに。と

夏凜は自分の問いかけた言葉のせいだろうと察して悲しげな表情を浮かべる

夏凜「無理して話したら吐くんでしょ……? 止めてお願いだから」

風「朝のあの姿を見て相当トラウマになってるわね」

友奈「離れてた私でも凄く怖かったので……隣にいた夏凜ちゃんはもっとずっと怖かったと思います」


189 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/14(水) 22:30:13.26WcfFiCpfo (3/7)


バーテックスとの戦いやそれによって負う怪我などに関しては

全くと言っていいほどに動じることなく一心不乱に突き進むことが出来る

けれど、天乃がほんの些細なことで死にかけて憔悴しきっている姿は

とてもではないが、耐えられなかったのだ

東郷「夏凜ちゃん、一緒にいること出来る?」

樹「一目も離さずに見ていてくれそうですけど……夏凜さんが心配です」

夏凜「…………」

夏凜は不安そうに天乃を見つめると

東郷や樹へと目を向けて「平気」と答える

恐怖心がないと言えば嘘になってしまうが、

その臆病な部分があるからこそ、ほんの些細な切っ掛けも見逃さずにいられると思うからだ

夏凜「こんな天乃、放っておくわけにはいかないでしょ」

沙織「三好さんは正妻だからね。側室なんかには負けないよね」

友奈「側室ってなんですか?」

東郷「一番の妻以外の女の人の事よ。友奈ちゃん。でもけして悪い意味ではないから安心して」

樹「東郷先輩はあまり答えない方が良いんじゃ」

友奈「知らなかったら恍けてるって解るくらいに遅いかなぁ……」

苦笑いを浮かべる友奈に、東郷はなんでそんなことを言うのかと悲し気で

そんな東郷を樹は呆れ交じりに見つめて

風「待って樹もしかして――」

樹「勉強したから……あ、ちなみに愛人とはまるで違うので一緒にしたら駄目ですよ友奈さん」

友奈「そうなんだ……」

風「ひぃぃぃっ、樹がイケナイ知識を付けてるぅ~っ!」



190 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/14(水) 22:59:36.98WcfFiCpfo (4/7)


東郷「愛人は見つかったら断罪されるようなことだった……らしいし」

沙織「一方で側室はほんと大昔にあった上の身分の人達が多く子供を残すために関係を持った周りに許された関係だからね」

友奈「知らなかった」

風「いや、普通は知らないからっ」

夏凜「あんたらうっさい」

どうでも良い他愛ない話

それを繰り広げていく風達に対して

落ち着いた様子の天乃を抱き抱える夏凜は怒ったように

しかし天乃を刺激しすぎないようにと気遣った声で注意を促す

夏凜「正妻だの側室だの愛人だのどうだっていいっての……天乃の療養の邪魔するなら帰れ」

風「……すみません」

樹の知識と怒られたショックでしょんぼりと答えた風は

みんなと一緒にそれぞれの場所へと戻っていく

夏凜「ったく……んなこと、天乃自身無自覚だろうに」

正妻側室、なんたらかんたら。

むしろ天乃にそんな知識がないだろうと夏凜は思う

天乃「…………」

夏凜「あんたは気にしなくて良いからゆっくり休みなさいよ?」


191 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/14(水) 23:12:07.49WcfFiCpfo (5/7)


優しく、額に張り付いた前髪を撫でるように払って

夏凜は天乃の額に額をくっつける

熱を持った体は熱く、平熱ではない熱さが額から伝わってくる

命に別状はないと分かってはいても

不安になるし、怖さが当然あって

それによって苦しんでいる姿は「なぜ今日だったのか」といまだに言いたくなってしまう

夏凜「……傍にいるから」

風邪のように周りに移せば治るかもしれないなんて馬鹿げた噂はない

だが、せめてこの体の熱さだけでも

その苦しみ、その辛さ、そのほんの一部分でも自分に移ってはくれないだろうか。と

夏凜「早く元気になりなさいよ……」

今日のような、苦しに苛まれた姿

数か月前のような、ふさぎ込んでいる姿

そんな姿が見たくて傍にいるわけではない

そんな天乃に対して少しでも力になりたいと思った

昨日のような、幸せそうな天乃の姿を見たいと思った

だから、そばにいるのだ

夏凜「何もできないときほど、もどかしいことはないわ……ほんと」

それにも関わらず無力な今の自分に

夏凜は少し苛立ちを募らせながら、天乃の肌に現れる汗を拭っては

優しく風を送り、少しでも和らげようと努めた


192 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/14(水) 23:23:22.90WcfFiCpfo (6/7)


√10月07日目 夜(病院) ※日曜日

01~10 
11~20 夏凜
21~30 友奈
31~40 
41~50 沙織
51~60 
61~70 
71~80 千景
81~90 
91~00 夏凜と若葉

↓1のコンマ 



193以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/14(水) 23:23:42.061lZelsXUO (1/2)




194 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/14(水) 23:31:01.70WcfFiCpfo (7/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


夏凜「…………」

風「まだ起きてるの? いい加減寝ないと――」

夏凜「平気」

風「平気って夏凜、明日も学校あるのよ?」

夏凜「……眠くない。寝れないのよ」

夏凜「朝起きてまた天乃が苦しんでたらって思うと……寝ようとも思えないのよ」


195以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/14(水) 23:33:08.551lZelsXUO (2/2)


夏凜が公式で正室に


196以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/14(水) 23:42:45.31gUV5JRJ1O (2/2)


何だかんだ言ってみんな夏凜ちゃんのこと応援してる節があったからねぇ
これで久遠さんとここまであまりえっちな関係になってないのがある意味凄いけど


197 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/15(木) 23:03:07.65p+elefopo (1/1)


本日はお休みとさせていただきます
明日は出来れば少し早い時間から


198以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/15(木) 23:04:20.91M+V04ULlO (1/1)

乙ですー


199以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/15(木) 23:21:57.39x5O559HOO (1/1)


無理はしないで


200以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/16(金) 10:39:34.83rzlWmMJ4O (1/1)

このスレが休みのときって年中無休の店が臨時休業するレベルの違和感ある


201 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/16(金) 22:29:14.57ITnOfnTBo (1/6)


では少しだけ


202以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/16(金) 22:30:03.65lRHlimUtO (1/1)

よっしゃ


203 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/16(金) 22:39:27.10ITnOfnTBo (2/6)


√10月07日目 夜(病院) ※日曜日


夏凜「……寝てくれてよかった」

九尾「昼間は眠る事さえままならなかったからのう……一安心じゃろう」

体調の影響からか、

時々魘されたように声を漏らしてはいるが

眠れないほどの辛さはなくなってきたようで

聞こえる寝息、閉じた瞼に夏凜は穏やかな表情を向けて

そうっと前髪を払い除ける

夏凜「でも、明日もまだ動くことはできないのよね?」

九尾「じゃろうな……下手に動けばまた逆戻りするじゃろう」

夏凜「…………」

今朝のことを、思い出す

嘔吐すると本人さえ思ったいなかったかのように

ゴポリ……と、口から溢れ出させて

それからはもう絶え間なく吐き続けていた天乃の姿

ほんの一瞬、頑張りに頑張って吐き気を抑え

たった一言「ごめんね」と言って見せた苦笑い

あんなのは……二度と見たくない

夏凜「今後無茶させるわけにはいかないわね」


204 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/16(金) 23:02:27.27ITnOfnTBo (3/6)


とはいえ、元々無茶していたわけではない

昨日だってそうだ

夜になってみだらな行為を誘うようなそぶりを見せてはいたが

そこには乗らずに今日の為に無理に体を動かすことは控えた

その結果が、これなのだ

夏凜「妊娠って難しいのね」

九尾「主様が特殊なだけじゃぞ。前触れなく急激なつわりに襲われるなどそうそうあることではない」

夏凜「私達に関係あんのはその天乃でしょ」

九尾「そう焦るものではないぞ、三好夏凜」

夏凜「……解ってるけど」

分かってはいるけれど、しかし、だ

散々な目に遭い続けた天乃のことを心配するなと言うのも

その姿を見て不安になるなと言うのも

一つ一つの不幸な出来事に焦るなと言うのも到底無理な話

それくらいには、天乃の体は限界なのだ

夏凜「あんたはどうなのよ。天乃を見てて不安にならないわけ?」

九尾「不安にはなるじゃろう。むしろ、主様の傍にいてならない人間がいるのだとしたら、そ奴はただの人形じゃろうて」

夏凜「本当に何ともないのよね? 天乃……ちゃんと回復するんでしょ?」

九尾「妊娠による症状なのは間違いないからのう、それは約束できるが……」


205 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/16(金) 23:16:28.29ITnOfnTBo (4/6)


言葉を濁すように途絶えさせた九尾は、

ちらりと目を向けた夏凜の怪訝そうな表情からは逃れられないと感じたのか

騙したところで意味がないと判断したのか

あからさまなため息をついて、夏凜だけを真っ直ぐ見る

赤い瞳は揺らいで、どこか危険な気配さえ漂わせて

九尾「あとは主様の体次第じゃな……内面は穢れによって非常に脆くなっておる。子を産めたとして、生き残れるか確実とは言えぬ」

夏凜「……は?」

九尾「子を産む消耗によって母体が憔悴しきって命を落とす可能性があるということじゃ」

通常の人間にも起こりうることじゃろう? と

九尾は冗談めかした声色で語るが、

しかし、その表情はいたって真面目なものだった

夏凜「でも、天乃は勇者なんだから……」

九尾「自然な流れによる死は避けることは出来ぬ……そもそも、主様には穢れが影響しておるがゆえ、神樹の力もあてには出来ぬ」

だからこそ、天乃はみんなに協力して貰うような形で性行為を行い穢れの放出を行う

子供への悪影響は母体への悪影響にもなるから。

夏凜「……出来る事ないの?」

九尾「今まで通り関係を続けておればよい……特にお主、性行為は非協力的じゃろう」


206 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/16(金) 23:30:43.67ITnOfnTBo (5/6)


夏凜「必要に応じて相手にはなってるわよ。ただ……天乃が疲れてるように見えるから」

九尾「確かに、主様はその行為によって力の喪失を起こしておる」

例えばじゃ。と

九尾は換え用のタオルを夏凜が持ち込んでいたペットボトルに巻き付けて置く

九尾「このように主様は力を芯に動いておるからのう。当然、芯が抜ければ崩れ落ちる」

言うのと同時にペットボトルが引き抜かれ

芯を失ったタオルは柔らかく崩れてしまう

ごく自然の、当たり前の結果だ

九尾「しかし、主様はその芯があろうがなかろうが次から次へと中心に流れ込む」

夏凜「つまりどういうことよ」

九尾「こう言うことじゃ」

もう一度巻いたタオルの中心に自分の手を差し込み、

九尾は言うや否や、腕を命一杯に左右へと引きはがしてタオルの拘束を弾き飛ばす

九尾「主様の体はもちろん、力を受ける胎児はその力の供給量に耐え切れず死ぬじゃろうな」

夏凜「っ」

九尾「ゆえに、むしろ主様は疲れ果てている方が救われているということになる」

とうぜん、翌日には元気になるからな。と

九尾はここぞとばかりに笑いながら言う


207 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/16(金) 23:56:17.71ITnOfnTBo (6/6)


九尾「じゃから相手してやれ」

夏凜「……疲れ切って問題はないの?」

九尾「有り余っている以上の問題はない」

夏凜「そう……そういうことなら、分かったわ」

もやもやするくらいなら……そう言っていた昨日の天乃を思い出して

もしかしたらそういう状態だと分かっていたからこそのものかもしれない。と

夏凜は考えて首を振る

夏凜「けど……穢れの発散が性行為ってのはちょっと良く分かんないんだけど」

九尾「放出するにはそれが手っ取り早く確実というだけじゃ」

元来不浄な行いとされている性行為は

溜まってしまった不浄……穢れを放出する行為として実に適切なのだ

もちろん、異性を受け入れる場合は逆に流れ込むため、

今の天乃のように内側で絡み合って留まることになるわけだが。

そうでなければ放出される一方で済む

夏凜「あんま納得いかないけど……とりあえずすればいいんでしょ?」

九尾「うむ。主様の為じゃ」

夏凜「解ったわよ」

そう言って頷いた夏凜は、

ちょっぴり照れくさそうに頬を染めて、首を振る

いまさら初心であると自分を偽るつもりは無いが。

ある意味医療行為だとでも割り切らないと、意識してしまうために中々気恥ずかしさは抜けそうに無かった


208 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 00:04:56.17jkQRDUggo (1/11)


九尾「言うておくが……今日はなしじゃぞ?」

夏凜「わっ、分かってるわよ……っ!」

そんな見境なしに襲うほど性に飢えていないと

夏凜は起こったように言い放って九尾を追い払う

夏凜「……今日はただ心配だから一緒にいるだけだっての」

チラリと天乃へと目をむける

呼吸に合わせて動く膨らんでは沈む布団

嘔吐によるカサつきを抑えるためにリップクリームを塗られて潤んだ唇

唇にキスをしたら、布団をめくったら

もしも昨日、していたら

そう考える頭を振り、夏凜は優しい視線を天乃へと向けながら

そうっと頬に触れる

柔らかな頬は心地よくて、もっと念入りに堪能したいという気持ちが湧く

けれど夏凜は「そういうのは元気になってから」と、

自分自身へと強く言い聞かせて

眠る天乃を穏やかに見守って……夜が更けていく


209 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 00:12:41.83jkQRDUggo (2/11)


√10月08日目 朝(病院) ※月曜日

01~10 友奈
11~20 体調
21~30 樹
31~40 
41~50 
51~60 夏凜
61~70 
71~80 
81~90 体調
91~00 

↓1のコンマ 



210以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/17(土) 00:13:57.888SN6JvqFO (1/2)




211 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 00:17:27.09jkQRDUggo (3/11)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば早めの時間から

明日、再開時にいちにちまとめ


212以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/17(土) 00:20:56.04PjyxN0yyO (1/1)


久遠さんの地獄を終わらせないコンマェ…
体調もだけど夏凜ちゃんのメンタルも心配になってきた


213以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/17(土) 00:26:56.708SN6JvqFO (2/2)


コンマが…
劇の前日相手しなかったこと夏凜が凹みそう…


214以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/17(土) 17:21:30.35Oq3Tj69S0 (1/1)

ここまで体調不良がつづくなんて、倒れてから飲み食いしてないだろうし久遠さんの体がすごく心配だ。


215 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 21:40:18.96jkQRDUggo (4/11)


では少しだけ


216以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/17(土) 21:44:23.05k3I4G6XyO (1/2)

いえす


217 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 21:52:11.80jkQRDUggo (5/11)


1日のまとめ

・   乃木園子:交流有(体調不良)
・   犬吠埼風:交流有(体調不良)
・   犬吠埼樹:交流有(体調不良)
・   結城友奈:交流有(体調不良)
・   東郷美森:交流有(体調不良)
・   三好夏凜:交流有(一緒に、体調不良)
・   乃木若葉:交流有(10月のイベント)
・   土居球子:交流有(体調不良)
・   白鳥歌野:交流有(体調不良)
・   藤森水都:交流有(体調不良)
・    郡千景:交流有(体調不良)
・  伊集院沙織:交流有(体調不良)
・     九尾:交流有(体調不良、穢れ)
・     神樹:交流無()


10月07日目 終了時点

乃木園子との絆  67(高い)
犬吠埼風との絆  96(かなり高い)
犬吠埼樹との絆  82(とても高い)
結城友奈との絆  102(かなり高い)
東郷美森との絆  112(かなり高い)
三好夏凜との絆  133(最高値)
乃木若葉との絆  94(かなり高い)
土居球子との絆  40(中々良い)
白鳥歌野との絆  42(中々良い)
藤森水都との絆  34(中々良い)
 郡千景との絆  40(中々良い)
  沙織との絆  114(かなり高い)
  九尾との絆  62(高い)
  神樹との絆   9(低い)


218 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 22:02:51.48jkQRDUggo (6/11)


√10月08日目 朝(病院) ※月曜日


風「こーら、屋上はともかくここは立ち入り禁止よ~?」

病院の屋上、そこに出るための部屋のさらに上に顔をのぞかせた風は、

目的の相手を見つけて、呆れたように呟くが

自分も備え付けのはしごを使ってよじ登り、隣に座る

風「別に夏凜が原因ってわけじゃないでしょ?」

夏凜「どうだか……案外、私が関係してるかもしれない」

回復するだろうと思われた天乃は

今朝になってまた体調を崩してしまって

結局、話せるようになるかもしれないだとか

普通にしていられるとか

そんなほんのささやかな希望でさえ打ち砕かれてしまった

しかも最初に体調を崩したのも、今回も

自分がそばにいたとなればそう考えてしまうのも仕方がないだろう

夏凜「天乃は?」

風「昨日の今日だから……」

期間中のつわり症状が一括にまとまってきたような状態など

普通ならばあり得ないようなことだが、

一般の人間がそんな症状になった場合、

衰弱死してしまう可能性は非常に高い。と風は聞いたことをそのままに言う


219 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 22:20:06.50jkQRDUggo (7/11)


風「嘔吐というよりもはや吐血……看護師の人ですら見てられないって」

夏凜「っ……」

風「点滴を打とうにも苦しすぎて動いちゃうから、もう少し落ち着かないと無理みたい」

夏凜「後回しにして間に合うの?」

風「しなきゃ点滴の針とかで危ないし……拘束しなくちゃいけないのよ」

天乃の意思に関係なく、

体の内側から湧き上がる苦しさと辛さ

そして底知れない痛みに体はどうしても動いてしまう

それが点滴台を弾き倒したり、

針が変に抜けたり刺さったりしてしまうなど

非常に危険なのだ

夏凜「九尾は治るだろうっていったはずなんだけど」

風「それだけ天乃の力が強かったか、複雑になっちゃってるかよねぇ」

天乃の体調に関して九尾が嘘をつくことはないだろう

であれば、誕生んに九尾の想定すら上回った形で

天乃の体が蝕まれているということになる

風「もしかしたら、神樹様が関係あるのかも」

夏凜「切り倒せとでもいうわけ?」

風「そうじゃなくて、その力の干渉に天乃の力が押しつ押されつして悪化してるんじゃないかってこと」


220 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 22:39:16.17jkQRDUggo (8/11)


そう言った風を一瞥した夏凜は

霞がかって見えるか見えないか微妙な神樹様による壁を見つめて、息をつく

夏凜「それ結局神樹様のせいだから切り倒した方が良いやつでしょ」

風「神樹様だって悪気があってしてるわけじゃない……はずだし」

あやふやな言い方をした風は困ったように夏凜を見つめ、

切り倒しに行かないのを確認してから小さく笑う

風「学校行く?」

夏凜「行くわよ。私は天乃の傍にいない方がよさそうだし」

風「でも、天乃は夏凜に一緒にいて欲しいんじゃない?」

天乃がそんなことを考えている余裕があるのか

そもそも今日傍に夏凜がいたのだと分かっているのかすら不確かではあるが

もし分かっていたのだとしたらきっと

夏凜のせいではないから。と、言いたいだろうと風は言う

夏凜「だからって体調不良になられたら怖いのよ……解る? 呻き声で目を覚まして、枕が血に染まって、震えてんのよ」

風「……それは」

真横にいたからこその経験

それをしていない風にはとても、夏凜のトラウマを分かるとか、それでも。とか

簡単には言えそうになくて

夏凜「まず茫然……何かしないとって思うのに何が出来るか何にも分からない、考えられない……馬鹿みたいに天乃を見てるだけ」

それから悲鳴にも似た声を上げて大慌ててナースコール

半狂乱にどうしたら、どうしたらというだけで

夏凜「最悪だった」


221以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/17(土) 23:03:49.07IQVCoOrF0 (1/1)

ヒエッ
そらパニクりますわ


222 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 23:04:23.79jkQRDUggo (9/11)


自嘲するように話す夏凜は精神的にひどく疲れているようで

目を離してしまうのは不安しかない風は一息ついてから立ち上がってスカートを払う

風「夏凜も今日は学校休みなさい。あたしも休むし……多分友奈達も」

夏凜「はぁ?」

風「流石に学校行くような精神状態じゃないでしょ……友奈達だって」

屋上に来る前に話した友奈ですら

不安と恐怖に酷く怯えていたのだから

樹や東郷が「学校行きましょう」なんて言い出せるわけがなかったし

そもそも、離れることで身が入らず不安にしかならない学校になど

逆に行かない方が良いのではないかと言うのか

風と沙織、三年生組の見解だった

天乃は嫌がるかもしれないが、こればかりはどうしようもない

夏凜「なら私だけでも――」

風「良いから休む! 自分の顔見た? 酷い顔してんのよ夏凜は」

夏凜「…………」

風の半ば強制的な欠席命令

従う義務はないが

自分がまったく平常心を保てていないことは分かっていて。

軽く頷いて「解ったわよ」と呟く

夏凜「でも、天乃に近づくつもりはないから」

あの光景を思い出してしまいそうで

どうしても、今は近づきたくなかった


223 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 23:07:42.72jkQRDUggo (10/11)


√10月08日目 昼(病院) ※月曜日

01~10 
11~20 沙織
21~30 
31~40 風
41~50 若葉
51~60 友奈
61~70 
71~80 千景
81~90 
91~00 九尾

↓1のコンマ 


224以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/17(土) 23:08:23.09m6ZG5sY5O (1/2)




225 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/17(土) 23:22:33.54jkQRDUggo (11/11)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「友奈ちゃん、大丈夫?」

友奈「うん……平気だよ。東郷さんは……」

東郷「平気とは言えないかな……友奈ちゃんと一緒」

友奈「……あははっ、そう、だよね」

友奈「ごめんね、ちょっと顔洗ってくる」

沙織「待つしかない事が辛いなんて、久しく忘れてたよ……」


226以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/17(土) 23:23:54.43m6ZG5sY5O (2/2)


久遠さん復活してくれ


227以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/17(土) 23:28:25.61k3I4G6XyO (2/2)


体調悪化で夏凜ちゃんは勿論、みんなの心へのダメージが…
今回は本当に誰も悪くない不幸だから余計な辛いな


228以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/17(土) 23:42:37.56fIW5Q+P6O (1/1)


死ぬ方がましな苦しみだろうなこれ…夏凜はもうトラウマだしアカンぞ


229以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/18(日) 13:39:42.65kFcGL+3Do (1/1)

どんだけ非情なのよこの世界は


230以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/18(日) 18:48:13.22Pxprq5nGO (1/1)

今日は夜から?


231以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/18(日) 19:36:44.77/LQbhNSgO (1/1)

出来ればお昼頃からじゃないから多分そう


232 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/18(日) 22:11:58.94kcmnsckOo (1/8)


では少しだけ


233以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/18(日) 22:13:48.93sKdbUr+5O (1/2)

よっしゃー


234 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/18(日) 22:18:54.46kcmnsckOo (2/8)


√10月08日目 昼(病院) ※月曜日


天乃「かっ……けはっ……ぁ……ぁー……」

ぼたぼたと枕元に赤く染まった唾液が滴り落ちる

もはや体の中に残っているのは、自分の血だけ

それさえも吐き出させようとしているかのように、不快感、吐き気は絶え間なく襲う

天乃「いぁ……っぁっぇ゛」

吐き気に耐え切れずに吐く動作へと移ると、

呼吸が出来なくなってしまうし

傷ついた喉が刺激されて強い痛みまでもが全身を駆け巡っていく

考える間でもなく、死を直感する状態だった

いっそ死んでしまいたいとさえ思いたくなってくる苦しさだった

痛くて、苦しくて、辛い

それが延々と続く中、傍には誰もいない

吐き出せるのは赤い血

零れ落ちるのは透明の涙

助けを求めるための声など出せるはずもない

天乃「は……ぁ゛っぁ……ぅ゛ぅぅぅ……」

痛みを堪え、吐き気を飲み込んで強引に呼吸をする

そして飲み込んだ吐き気は次の吐き気と重なって長引き、

苦しみ喘ぎ続ける中、息が出来ない苦しみに悶えてまた、無理をする

ずっと、その繰り返しだった


235 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/18(日) 22:35:51.14kcmnsckOo (3/8)


友奈「…………」

面会謝絶

その注意書きが扉にかけられた病室の扉の前で、

友奈は唇を強く噛み締めながら、佇んでいた

東郷や樹には大丈夫だと言った

途中で出会ってしまった風にも平気だと答えた

けれど、前向きな事は何も言えなかったのだ

いや、それどころか考える事すらできなかったと友奈は否定する

友奈「……何にもできない」

扉の前にいると、天乃の苦しみ喘ぐ声がする

けれど、それに対して自分は何もできない

それを言葉にすると離れればいいのにと言われるかもしれないが

離れるのは嫌だった。その声すら聞こえなくなってしまうのは不安だったから

何もできない無力感、途切れることなく聞こえる悶絶の悲鳴

それは強く心を傷つけてしまうのに離れられなかった

友奈「夏凜ちゃん……風先輩見つけられたかな……」

あたしが行くから任せて。と、言われたが、

友奈は自分も行くべきだったのではないかと思う

かけられる言葉はないかもしれないが、

きっと、少しは前向きな考えを強引にでも引き出せたはずだから


236 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/18(日) 22:44:42.24kcmnsckOo (4/8)


友奈「夏凜ちゃん、泣いていた……」

赤く汚れた寝間着と手、周りの視線

何一つ気に掛ける余裕さえないとわかるくらいに泣いていて

看護師に抱きしめられながら病室から連れ出されているそんな夏凜の姿を見ただけの友奈も

全く動けなかった

今よりも強く聞こえた天乃の苦しみにあえぐ声

複数の看護師と医師の鬼気迫った声

何が起きているのかは明白で、どうなってしまっているのかが分かってしまって。

朝になったらまたいつもの天乃に会えると思っていた心は瞬く間もなく叩き潰されてしまったのだ

そのまま呆然としているうちにみんなが来て、

風は夏凜と話をする為に探しに行って、東郷はこの場にいられそうもない樹の為に、

病室に連れて行ってと一緒に居なくなって

友奈だけが、何かあったときのためにとこの場に残った

友奈「久遠先輩……」

この場における自分の存在の無意味さ

それを痛感させられていく悔しさ、その痛み

けれども決して天乃の苦しみには釣り合わないだろうと

友奈は自分の痛む胸元を抑え込みながら、思う

そして不意に体が傾き、柔らかさと甘い匂いに包まれて

沙織「あたし達もいるから、病室に戻っても良いんだよ?」

沙織の声が聞こえた


237 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/18(日) 22:56:40.56kcmnsckOo (5/8)


沙織「何もできない自分って言うのは、想像以上に辛いものなんだよ」

無力なもどかしさもあるが

相手を想う気持ちが強ければ強いほど

自分の不甲斐なさに失望し、自信が持てなくなっていく

その経験を経てきた沙織としては

刻一刻と精神を抉られていくだけの友奈を見ているだけなのは我慢できなかった

沙織「無理にでも寝た方が良い」

友奈「でも、学校が」

沙織「今日はみんなお休み。空気感の違う学校になんて言ったら余計に疲れちゃうからね」

友奈「…………」

文化祭明けの学校

そこはきっと、普段ならとても居心地のいい世界だろう

楽しかった時間の後に訪れる授業という日常的な苦。

それにたいしてふざけ半分で向き合い、休みたかった、楽しかった。そう言い合うクラスの空気は、

天乃が体調を崩してしまっている今、

不安と恐怖に苛まれている勇者部面々には絶対に合わずなにか良くないことが怒る可能性さえあるからだ

沙織「子供を産んで死んじゃうお母さんもいる」

友奈「っ!」

沙織「久遠さんはもしかしたら、そうなっちゃうかもしれないって九尾さんは言ってた」

友奈「どっ、どうしてですか……?」

沙織「単純に久遠さんの力が強いのと、弱っていること、そこに神樹様の力も関わってきているから不安定なんだって」


238 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/18(日) 23:11:05.62kcmnsckOo (6/8)


九尾の想定以上の体調の悪さ

それゆえに九尾はその可能性もあることを告げたのだろう

双子に分けなければいけないほどの力の強さとはそれほどのリスクも兼ねているということだ

九尾と死神

二つの力を同時に使用することで最恐にして最高峰の力を発揮する代償として酷く体が蝕まれていったように

友奈「そんな……」

沙織「あたしも当然、久遠さんが居なくなるなんて考えてないし考えたくもない。でも、これはそう簡単じゃないみたいだから」

友奈「考えなくちゃいけないんですか……っ?」

沙織「……そう、なる可能性はあるかもしれない」

例え現状から回復していったとしても

いざ出産した際に体が耐えきれるという保証はない

それが不安になってしまくらいに、今の天乃の状態は良くないのだ

友奈「久遠先輩……」

振り向いて見える扉

ずっと聞こえる憔悴しきった声

頑張って、頑張って

結局死に向かっていくというある意味都合のいい悲劇の流れ

仕組まれたバッドエンド

そんな気さえして、友奈は顔を伏せる

友奈「それでも、私は久遠先輩の強さを信じます……辛い思いをしながら苦しみ続けた久遠先輩に救いを与えてくれると、神様を信じたいです」

沙織「結城さんは強いね……」

けれどそれは人のために強くあれる久遠さんと同じ強さだよ。と

心の中に思って、握りつぶす

そんなことを言っても何にもならない

沙織「……でも、確かにそうだね。報われるべきだよ。幸せになるべきだよ。だって、ずっとずっと傷つき続けてきたんだから」


239 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/18(日) 23:14:40.06kcmnsckOo (7/8)



√10月08日目 昼(病院) ※月曜日


01~10
11~20 東郷
21~30
31~40 樹
41~50
51~60 若葉
61~70
71~80 風
81~90
91~00 千景

↓1


240以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/18(日) 23:14:59.122/HuxBbRO (1/2)




241 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/18(日) 23:23:21.73kcmnsckOo (8/8)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
しばらくは日曜日も通常時間(22時~)の場合があります



東郷「………」カチャッ

風「ちょっ、東郷なんで武装してんの!?」

東郷「軽く壁に穴開けようかと思いまして」

風「ま、待った待った!」

友奈「……正義が正しいとは限らないんです風先輩!」グッ

風「おちつけぇ!」


242以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/18(日) 23:27:38.152/HuxBbRO (2/2)


苦労人の風先輩


243以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/18(日) 23:45:09.09sKdbUr+5O (2/2)


久遠さんのことだからマジで子供を産んで命を落とすとかなりかねないのが困るな…
バッドエンドの前例があるだけにね


244以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 07:01:40.30ocSL3YETO (1/1)

仕組まれたバッドエンドとか自白してるって思ったけどコンマのお導きだから>>1ではなく神様が仕組んで…やっぱり神樹様に穴あけるしかない…?


245以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 12:23:53.098yR0Y4rMO (1/1)

仮に乗り越えたとしても久遠さんの代償は神樹様には治せないことを園子以外は知らないんだよな…


246以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 12:58:34.60iUq0zjEGO (1/1)


ここはもう三つ子にしてさらに力分けたりしないと...


247以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 14:10:17.66/zZ/f3Y5o (1/1)

>>1は推しキャラを幸せにしようとは思わないのか…?


248以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 20:52:36.50bhRUb0Fh0 (1/1)

こればかりはどうしようもない。
久遠さんやその恋人たちが頑張って踏みとどまれるように応援しよう。


249 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/19(月) 22:17:48.96a8BG1ayqo (1/7)


では少しだけ


250以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 22:19:24.01gzy0CYICO (1/4)

よしきた


251 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/19(月) 22:23:17.46a8BG1ayqo (2/7)


√10月08日目 昼(病院) ※月曜日


東郷「友奈ちゃんもさすがに、こればかりは元気でいられなかった」

昨日もそうだが、普段の友奈はとても明るい

何か困ったことがあったりしたとしても

なせばたいてい何とかなる。と、張り切って、前向きに全力で向かっていく

そんな元気の代名詞ともいえる友奈がふさぎ込んだ表情をしていたのを

東郷はしっかりと見ていて

しかし、そんな表情をしていてはだめだとは言えなかった

何をもって元気の糧にしたらいいのか

それを東郷にも見いだせていなかったからだ

そして、天乃が子供を産むことで死んでしまう可能性があるとより明確になった今、

ただでさえ暗がりに引き込まれつつあった未来は、

欠片ほどの光も失せてしまっていた

もちろん、確定した未来ではない

もしかしたらという程度の話であり、

天乃は無事に生き抜いてくれている可能性も当然あるのだ

東郷「だけど、久遠先輩の今の状態ではそれこそ可能性のない未来になってしまっている……」

樹たちも、友奈も

それだからこそ明るさを取り戻せずにいる

天乃に一番近しい九尾が明日には回復するだろうといったにもかかわらず、

悪化してしまったというのが、それにさらに絡みついて

東郷「生きるために子供を作ったのに、それが原因で死ぬなんて……そんな悲劇はあり得ないわ」


252 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/19(月) 22:35:38.88a8BG1ayqo (3/7)


二年前、大切な友人を失った

自由に動かせた足が動かせなくなり、

心の拠り所になれるはずだった家族の記憶を失い

孤独に生きることになった

一年前、記憶を失ったかつての友人と一から始めて、

二年前に失った味覚を隠し通し、様々なことに付き合ってくれた

味がしなければ苦痛でしかないであろう食べ物も喜んで口にしてくれていた

東郷「……私が、苦しめてしまった」

戦いが始まり、隠しきれなくなって

東郷の体の秘密、天乃の体の秘密、壁の外

抱え込んでいたたくさんの秘密を打ち明けてくれた

一人が背負うには大きすぎることを、ずっと抱えていてくれた

それなのに、誰も苦しむことがないようにと

ただでさえボロボロな体で頑張ってくれた

東郷「私達のようにならないようにと、ずっとかばってくれた」

血を吐くような苦しみを味わうと分かっていながら、

意識を失うほどの痛みに襲われると知りながら、守ってくれていた

みんなに傷ついてほしくない

その思い、抱く優しさがきつく首を絞めることになるのに、

みんなの願いだからと第一線から退いてくれた

東郷「きっと、心は酷く傷ついた……それでも、約束だからと戦わずにいてくれた」

生きるために、たった15歳の小さな体で子供を身ごもった

簡単に羅列するだけでも壮絶すぎる人生だったと言わざるを得ないほど、

久遠天乃という少女の人生は凄惨なものなのに。

神はそこに苦痛のままに死を与えようとしている

東郷「……許せない」


253以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 22:38:00.58gzy0CYICO (2/4)

あっ…


254 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/19(月) 22:44:18.15a8BG1ayqo (4/7)


この世界に神様がいるのだとしたら、

天乃の人生を報われないままに終わらせるはずがない

もしもそれで終わらせる神がいるのだとしたら

それは神様ではなく悪魔だと、東郷は思う

東郷「久遠先輩は幸せになるべきだわ……子供を産んだとしても死ぬことなく、みんなで……」

子供を産むうえで体がひどく衰弱してしまうというのは

普通の人間であっても起きてしまう場合はあるという

だが、それであっても天乃は無事に終えられるべきだ

神による抽選が行われているのならば

優先的に選択されるべき存在なのだ

誰かが否定するのだとしても

東郷はそれ以外にあり得ないと否定を否定する

東郷「居なくなってしまうなんて……考えられない」

東郷美森、鷲尾須美

二つの記憶を持つ東郷は長い付き合いがある

それでなくても、

東郷にとって勇者部にとって天乃の存在は必要不可欠だった

誰に対してでも優しい気持ちを持ち、

誰に対してでも厳しくあれる強さを持ち、

相手が求めることに関して一生懸命に答えてくれる人

たくさんの人を魅了し、たくさんのひとに羨望の眼差しを向けさせた人

その優しさがあったからこそ、その厳しさがあったからこそ

勇者部は各々が成長することが出来て

その成長があったからこそ苦難に立ち向かうことが出来て、今がある


255 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/19(月) 22:55:37.67a8BG1ayqo (5/7)


東郷「久遠先輩を失ってしまったら……」

勇者部は元気を取り戻すことができるだろうか

誰かを助けるボランティアなどということを行えるだろうか

自分たちが一番大切にしたい人

一番尽くしたい人を失ってしまったのに

そう考えて、東郷は首を振る

それはきっと無理な話だ。と

東郷「……そうなるくらいなら、私は私の命だって懸けられる」

もしもまた戦いがあって

それが天乃に何らかの悪影響を与える一因なのだとすれば

満開、あるいはそれに準じた力を行使してでも戦う

もしも戦い以外での何らかの問題があったとしても

何か役立てることがあるのならば

全力を持って尽くそう……と、東郷は強く心を決める

たとえそれが、神樹様に牙をむくようなことであったとしても。

東郷「……久遠先輩は嫌がるかもしれないけど」

たとえ嫌われることになったとしても

生きていてくれるのなら。と、東郷は寂しく……笑みを浮かべた


256 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/19(月) 23:04:12.82a8BG1ayqo (6/7)


√10月08日目 夕(病院) ※月曜日


01~10 天乃
11~20 
21~30 九尾
31~40 
41~50 若葉
51~60 
61~70 千景
71~80 
81~90 樹
91~00 

↓1


257以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 23:04:49.62i+4gewflO (1/2)




258以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 23:05:15.15gzy0CYICO (3/4)




259 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/19(月) 23:12:00.61a8BG1ayqo (7/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈「だっ、駄目だよ東郷さん!」

東郷「久遠先輩を苦しめるだけの神様なんていらないわ」

東郷「それとも、友奈ちゃんは久遠先輩が死ぬのは運命だから仕方がないって言うの!?」

友奈「……言わない、言えないよ!」

友奈「ただ、ただね……私、思うんだ」

友奈「――赤信号だって、みんなで渡れば怖くないって!」

風「結局そっち側かいっ!」バンッ

風(あーもう夏凜が戻ってこないとアタシの胃が……ッ)


260以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 23:13:42.33i+4gewflO (2/2)


風先輩過労死しちゃう


261以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/19(月) 23:16:33.13gzy0CYICO (4/4)


終始ちゃんとシリアスしてる東郷さん見たのいつ以来だろうか
しかし早く何とかしないと原作の悪夢が再来しそう…


262 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/20(火) 22:36:21.56fxVCFLiho (1/9)


では少しだけ


263以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/20(火) 22:40:52.7997Rv9GicO (1/3)

あいよー


264 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/20(火) 22:42:09.24fxVCFLiho (2/9)


√10月08日目 夕(病院) ※月曜日


若葉「……屋上にまで呼び出してどうしたんだ、千景」

千景「貴女に大切な話があるのよ」

天乃の心の平和を願うばかりに、

自分たちの消滅という一手を掲げた乃木若葉

西暦時代、戦っていた勇者を率いたリーダー

千景が羨望を抱かされた勇者

千景「……久遠さんには、怒られてしまうかもしれないわね」

若葉には聞こえないほどの小さな声で呟くと、

微かに笑みを浮かべて、息を吐く

これは身勝手な行いだ

従うべき精霊の独断専行

だが、考えた末の行いだと言えば

天乃のことだから笑って許してくれるかもしれない。と

千景は考えて、若葉へと目を向ける

千景「乃木さんは今でも久遠さんの為に消えてしまおうと考えているのよね?」

若葉「……? ああ、そうだ。その考えは変わっていない」

千景「文化祭を経験した後も?」

若葉「変わらない……それとも、千景は天乃をまた戦いの不安に引き戻したいのか?」

呼び出された戸惑いの表情うから一転、

瞬間的に凛とした表情へと切り替わった若葉は問いかけながらも

答えを待つことなく、口を開く

若葉「私達は歴代の勇者にして戦いの象徴だ。そして、彼女の武器なんだ」


265 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/20(火) 22:50:33.60fxVCFLiho (3/9)


天乃自身は戦うことが出来なくなったが、

天乃の代理として若葉たちは戦線に参加することができる

その存在がある限り、天乃が真の意味で戦線から退くことはできない

西暦勇者、精霊

その存在が片隅にある限り

戦いが終結したと心の底から安堵することはできない

若葉「そう思ったからこそ私は提案し、みなはそれに同意したのだろう? それを今になって覆してどうする」

千景「久遠さんが苦しんでいる姿を見ても、変わらないのね」

若葉「それは……」

それは関係ないと言いかけた若葉だったが、

その言葉を飲み込んで首を振ると

悲しげな表情を浮かべて空を見上げる

若葉「関係ないとは言えないな……それが天乃の精神的な負担になったことは間違いない……」

こうなると予想できたことではないし、

その考えを述べたことは決して悪いことではなかったはずだ

だが、若葉たちの存在を今後どうしていくのか

その悩みが妊婦である天乃の精神を脆くして

身体的苦痛をより重くしてしまった可能性は十分に考えられる

若葉「だが、だからこそ私は多方面において不安要素になりえる精霊は消失すべきだと改めて言わせて貰おう」

力強い宣言

天乃の姿を目にしても揺るがない決意

その若葉の強さに対して強くこぶしを握り、千景は目を向ける

千景「貴女のその強い意思には申し訳ないけれど……本題に入るわ」

若葉「本題……だと……?」


266 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/20(火) 23:01:36.57fxVCFLiho (4/9)


千景「乃木さんに黙っていたことがあるの」

若葉「……聞こう」

話の流れからして

絶対に良い話関連ではないことは明白で

なおかつ天乃のことに関する重要な機密事項だと若葉は察しつつも

不穏な空気を身にまとう千景へと手を差し伸べる

それはきっと、一人で抱えるべきことではないと思ったからだ

千景「私達が消滅する選択をとった場合、私達が久遠さんから借りている力のすべてが久遠さんの体に戻ることになるわ」

若葉「どういう意味だ?」

千景「久遠さんが失った体の機能、それが……私達が借りている力」

若葉「それはつまり、私達が消えれば天乃は五体満足になれるということだろう? ならば――」

千景「そう。久遠さんは五体満足になって力を取り戻してしまう……現状で耐えきれていない力よりも強い力を」

一瞬、天乃の体が治るという思ってもいなかった幸福を前に若葉は喜びかけたが、

千景はその希望を味わう間も与えずに話を続ける

そんな余韻に浸らせるわけにはいかない

抱いた希望など、これからの話でつぶされてしまうのだから

千景「耐え切れなかった場合、久遠さんは死ぬわ」

若葉「っ……だ、だが天乃は五体満足に戻る。本来持っていた力を十分に発揮できるようになるのなら保てるのではないか?」

それをいま戻せば体調だつて改善される可能性まであるじゃないか。と

やや切羽詰まった様子で口にする若葉を、千景は冷静に見つめて、首を振る


267 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/20(火) 23:11:51.53fxVCFLiho (5/9)


千景「けれど、今の弱り切った久遠さんでは力に耐え切れない可能性が高い」

若葉「っ……」

精霊である千景たちは、

天乃の力を借りることでこの世界に存在しており、

その存在を消失させることによって

天乃へと借り受けた力を返却し、失われた身体機能の回復も行うことができる

だが、天乃がその貸した力を受け止めるだけの容量があるのかどうか

今の状態から考えれば、それは首を横に振らざるを得ないだろう

千景「もし私達の分の力が戻ることで久遠さんが救えるのだとしたら……それは私も考えた」

だが天乃はほんの少しの力の乱れで体調を崩し

体の内側がボロボロになるほどの状況に陥っている

力の乱れによる吐血……この症状は二つの力を同時に行使した時と全く同じ症状なのだ

若葉「つまり、天乃は今まさに力を使っている状況だということか?」

千景「九尾曰く、可能性は微かながらあると言っていたわ。そこに私達の力が加わった場合、久遠さんは許容量をオーバーして本当に壊れてしまうかもしれない。とも」

若葉「だが、それは今の話だろう? 産後ならどうだ」

千景「久遠さんの体が私達の力がない状態を通常として戻った場合……久遠さんはまた体調を崩してしまう可能性がある」

そして消耗しきってボロボロになった体だ

例え産後数ヶ月間安静にしていたとしても

霊的な部分は非常にもろくなっている可能性がある

若葉「そこまで……そこまで天乃は傷つかなければいけないというのか……っ!」

千景「私達はそのリスクを覚悟のうえでもう一度考える必要がある……」

若葉「覚悟だと……? それは私達ではなく天乃じゃないか……」

失った体、自分の力

それを取り戻すためですら、天乃は尋常ではないリスク

生か死かの極端なギャンブルを強いられるのだ



268 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/20(火) 23:21:18.19fxVCFLiho (6/9)


若葉「……天乃は体が戻ると知っているのか?」

強引に絞り出したかのような声

うつむいた表情は見えず、

ただ苦しそうな雰囲気だけが漂う若葉の問い

千景は「知ってるわ」と、簡潔に答えて目をそらす

若葉「そうか……知っているのか。だが、戻そうとしたら死ぬかもしれないとは知らないのだろう?」

千景「ええ」

若葉「……残酷だな。本当に、酷く、この世界というのはいつの時代も久遠の人間には冷酷なんだな……」

世界の為に戦い抜いてきたにもかかわらず、

戦うための代償を求められ

大切なものを守ろうとしただけなのに

守った代償を強いられて

使った力、貸し与えた力

それを己の手に取り戻すことにすらリスクを背負わされている

千景「そうかもしれないわね」

若葉「……分かった。もう一度考え直そう。今回のリスクも踏まえたうえで、私の考えは正しいのかどうか」

そう言い残して去っていく若葉の後姿はとても悲しい雰囲気に包まれていて

千景はそれに引かれるように悲し気な表情を浮かべる

千景「貴女には悪いことをしたわ……」

天乃の姿を見て決意が揺らいでくれていることを期待した

心配だからやはり止めよう。このまま一緒にいよう

そういう考えに移ってくれていれば

こんな悲しいことにはならなかったはずだから。


269 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/20(火) 23:35:01.78fxVCFLiho (7/9)



千景「…………」

千景は一人屋上でため息をつくと

自らの武器である大鎌をどこからともなく出現させて地面を軽く叩く

過去と今、

バーテックスを切り刻んできた武器

しかし、これはかつて乃木若葉を傷つけた力でもあるが

その罪があってなお友人と呼び

その罪ごと包み込んでくれる優しさを与えてくれる人がいる

だがその人は今、世界によって苦しめられているのだ

千景「久遠さんの体に干渉する神樹の力……それは、確かに世界そのものね」

薄く笑う。冷酷であれ。と

そして、燻る熱を激しい炎へと昇華させていく

もしかしたら、友人とまた刃を交えることになるかもしれないが

それでもかまわないと千景は思う

千景「貴女は幸せになるべきだわ……そのための苦痛を味わってきたのだから」

だからこそ。と、千景は力強く呟いて大鎌を振るう

それは迷いを断ち切るための……そう

武器本来の持ち主が友人の喪屋を切り倒したように

己がそれに対して抱く想いを切り払う一振り

千景「……貴女を許さない世界を私は決して許さない」

神殺しの力を託された精霊にして、裏切りの勇者

だからこそ、これは成立する

千景「久遠さんが死ぬリスクを背負うなら、世界にも同じリスクを背負ってもらうわ……神樹様」


270 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/20(火) 23:38:23.30fxVCFLiho (8/9)


√10月08日目 夕(病院) ※月曜日


01~10 
11~20  夏凜
21~30 
31~40  友奈
41~50 
51~60  樹
61~70 
71~80  歌野
81~90 
91~00  球子

↓1


271以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/20(火) 23:39:06.08IhMSNvtlO (1/2)




272以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/20(火) 23:39:22.5097Rv9GicO (2/3)




273 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/20(火) 23:48:07.66fxVCFLiho (9/9)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


千景「久遠さんは私を救ってくれた」

千景「郡千景の罪を償う機会を与えてくれた」

千景「その罪を認めながら、友人だと言ってくれた」

千景「だから、私はもう一度だけ裏切り者になる」

千景「久遠さんが、乃木さんが……みんなが出来ないたった一つの答えを出すために」


274以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/20(火) 23:49:28.90IhMSNvtlO (2/2)


久遠さんー!早く起きてくれー!


275以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/20(火) 23:55:39.6897Rv9GicO (3/3)


東郷さんに続いて千景までよからぬことを…
そして久遠さんの代償を戻したくても戻せないとかマジ絶望やん


276以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/21(水) 08:11:29.86eN5ikYLlO (1/1)

ゆゆゆいになんか悪役(?)っぽいやつが出てきたな
久遠一族を凄い利用しそう


277以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/21(水) 09:48:29.07A9+AEDcaO (1/1)

あれはゆゆゆいのキャラでは?というかどうせ久遠さんの周囲に叩き潰されるし
久遠さんに辿り着いたらイチコロだから


278以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/21(水) 13:50:14.38BTNTh2iEo (1/1)

千景…それで良いのか?


279 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/21(水) 22:35:40.78TP2J+ghbo (1/6)


では少しだけ


280以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/21(水) 22:37:25.97+kqaiirBO (1/2)

おk


281 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/21(水) 22:38:48.11TP2J+ghbo (2/6)


√10月08日目 夕(病院) ※月曜日


樹「……どうしたら、いいのかな」

東郷もいる病室

締め切ったカーテンに囲まれたベッドに横になっている樹は

真っ白な天井へと手を伸ばして、呟く

天乃の体調不良

それが子供の為の体の変化だけでなく、

天乃が持っている力の乱れによる影響の可能性があるとなった今、

何か手を打つ必要があるかもしれないと

病室に戻るまでの間、東郷と話していたのだ

だが、道中の短い時間ではもちろんその答えなど出るはずもなく

樹「久遠先輩の力になりたい……出来ることがあるなら、何でもするのに……」

出来ることが、何一つないのだ

東郷は言った。

これはとても考えなければいけないことだと

各々で答えは変わってくるものだろう。と

樹「……頼り切るのはいけないことだって、分かってるけど」

体を起こして、枕元に置いておいたタロットカードを取り出す

本来はしっかり準備するべきだが、

布団の皺を伸ばしてカードを混ぜ合わせて、一息

樹「久遠さんの力になりたい……久遠さんの為に、私はどうしたらいいですか?」


282 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/21(水) 22:51:05.60TP2J+ghbo (3/6)


問いを述べてカードを一枚引き……めくる

ワンオラクルと呼ばれる単純なその方法は

多方面での問いに対して適応させやすい

そこで現れたのは――皇帝の正位置

樹「意味は、失敗を恐れない行動力。問題への素早い対応」

つまり、この天乃の問題の解決に関しては

可及的速やかに動く必要がある。ということだろう

だが、どのような手段をとるべきなのかが明確ではないのだ

失敗を恐れるな

しかし、どんな失敗を恐れてはいけないのかが不明確

樹「……行う覚悟はある。あとは、何を行うか……だよね」

失敗を視野に入れなくてよいのであれば、

それを考えずに行動を起こせというのならば……簡単だ

樹はもうすでにそんな覚悟など完了しているのだから。

天乃の聞かれれば怒られることは目に見えているが

天乃の為に命を賭す覚悟が樹にはある

いや、樹だけではなく

勇者部みんながその覚悟を決めている

もちろん、無駄に浪費するつもりはない

樹「私が考え付くことなんて、きっと誰かがすでに考えたことだから」

それならば。

ここでとるべき手段はただ一つ

樹「……東郷先輩、相談があります」

カーテンを勢いよく開け放ち、

同じ病室内で、同じ悩みを抱く東郷美森

勇者部の頭脳ともなり得る存在に、助力を求めることだ


283 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/21(水) 23:04:45.82TP2J+ghbo (4/6)


東郷「久遠先輩を助けるための一手?」

樹「はい、久遠先輩の力になりたいけど……どうしたらいいかが分からなくて」

東郷「なるほどね……」

悩まし気に呟いた東郷は少し考えてから

樹ちゃん。と、優しく声をかける

いつもと変わらないように聞こえるが、

どこか覚悟を決めた緊迫感のある声に樹は思わず息を呑む

東郷「樹ちゃんは、久遠先輩が居なくなってしまった未来を受け入れられる?」

樹「嫌です」

東郷「そうよね……私もそう。久遠先輩が居なくなるなんて考えたくない。そんな未来になるのなんて絶対に……」

だからと言って、神樹様を完全に滅ぼしての心中といった手段はとるわけにはいかない

それこそ、天乃の頑張りや犠牲を無駄にしてしまうことになる

そして、みんなの生きて欲しいという我儘を受け入れてくれた天乃の気持ちを無意味にすることになってしまう

それだけは……だが、もしも打つ手がなくて

天乃が死んでしまうことが確定した未来しか残されていないのだというのならば

果たして、その世界に意味はあるのだろうか?

三ノ輪銀が守ってくれた世界

久遠天乃が守ってくれた世界

だから、なんだというのだろう?

大切なものを犠牲にしなければ残すことができない世界だとしたら

今後もまた、何か大切なものを犠牲にしなければ存続させることはできないかもしれない

天乃の死を許し、残された子供たちは受け継いだ力を用いて戦うことになるだろう

その子供たちがまた、免れられない生贄にされる可能性は非常に高い

東郷「樹ちゃん……私ね。久遠先輩がこれ以上苦しむようなら神樹様を破壊してすべてを終わらせようって思うの」


284 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/21(水) 23:30:36.30TP2J+ghbo (5/6)


樹「東郷先輩……?」

東郷「久遠先輩は苦しまされ続けた上に、運命によって殺される……そしてきっと、その子供たちも殺されてしまう」

天乃が居なくなってしまう世界なんて受け入れられない

だが、満足げに「ありがとう」と言われたら

幸せそうに「子供たちをよろしくね」と言われたら

きっと、最愛の人を失った世界でも生きていけてしまうのだろう

しかし、その最愛の人が遺した子供たちまで世界は奪おうとするだろう

否、失うことを運命づけているだろう

東郷「そんな世界なら……命を懸けてまで守る理由にはならない」

みんながいるこの世界のまま

すべてを終わらせて永遠のものとしてしまった方がいい

死後の夢の世界で、当たり前の苦しみの後に愛おしい子供を抱く天乃とみんな

それで幸せに過ごしていく

東郷「樹ちゃんだって、久遠先輩を失った世界で生きていたくないでしょう?」

樹「それは、そうですけど……」

果たして、それは正しいことなのだろうかと思う

生きていたくないから世界を壊してしまうというよりも、

大切な犠牲を強いるこの世界を守る意味はないと見限ったというほうが正しいその選択

それはきっと、極端ではあるが全てを救う方法の一つなのではないかと樹も思う

とても簡単で、明確で、単純な一手

だが、それが【皇帝】の差したものなのか

樹「私は違うと思います」

東郷「!」

皇帝のカードはすぐに行動を起こして精力的に目標へと向かうことが成功へのカギだという意味もあるが

夢の為に前向きな行動をとり続けるべきだ。という意味もある

だからこそ、樹は否定する

自分の考えが、ここで出した答えがのちに響かせる影響など考えずに。

樹「それは、久遠先輩が望んだ未来を諦めただけです!」

それが、樹の決断だ


285 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/21(水) 23:35:21.28TP2J+ghbo (6/6)


途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日も通常時間から

樹と東郷の交流、続き


286以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/21(水) 23:42:55.22A6l0VOyuO (1/1)


ありがとう樹


287以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/21(水) 23:50:33.18+kqaiirBO (2/2)


樹ちゃんまで闇堕ちしたらどうしようかと思ったわ
今の成長した樹ちゃんなら西暦勇者達がいなくなっても十分やっていけそう


288以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/22(木) 01:14:25.48abhDWYFs0 (1/1)


いっつんかっけえ
そりゃ次期部長にもなるわ


289以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/22(木) 13:36:34.95avRIMqdZO (1/1)

コンマ外れてるのにイベントが起きてる謎があるけど普段描写されないみんなの描写は好き


290以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/22(木) 14:31:45.837U0cI63sO (1/1)

東郷さんや千景のイベント見る限りむしろ当たっちゃいけない感じのコンマの可能性も…?


291以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/22(木) 20:05:17.27VT5wPLtgo (1/1)

それはありえる


292 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/22(木) 22:21:08.49Nbrq2T6lo (1/6)


では少しだけ


293以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/22(木) 22:21:27.85jxrC/whxO (1/3)

よしきた


294 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/22(木) 22:28:35.24Nbrq2T6lo (2/6)


樹「東郷先輩言ったじゃないですか……久遠先輩が苦しんだままで終わるのが許せないって」

東郷「……言ったわ。だけど」

樹「東郷先輩のやろうとしてることは、久遠先輩を苦しいまま死なせちゃうんですよ」

東郷「っ……」

それでいいのかと、樹は問う

幸せにしたいといった相手を

幸せになりたいと我儘を言ってくれた相手を

幸せにすると誓ったこの手で殺めてもいいのかと

樹「もっと別に、出来ることがあるはずです!」

東郷「樹ちゃん……」

樹「私は諦めたくない……諦めたくないんです東郷先輩」

だが、その望みを抱くだけではどうしようもない

だから、樹は東郷へと声を掛けに来たのだ

樹「……諦めないための知恵を私に下さい」

東郷「諦めないための、知恵……」

樹「諦めないための覚悟は私達がします」

何があろうと、どんなことがあろうと

決して諦めない強さは自分達が持つ

だから、その背中を押してくれる力になってほしいと樹は言う

樹「きっと、友奈さんだって諦めない。お姉ちゃんだって諦めない……夏凜さんだって、きっと」


295 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/22(木) 22:42:38.76Nbrq2T6lo (3/6)


同じ人を愛しているからこそ、樹は確信をもってそう言える

年初めのような弱さのない樹の強い瞳

姉譲りの力強さを持つ声

樹「教えてください東郷先輩、私達がどうするべきなのか」

東郷「…………」

一人ではきっと、何もできることはないのだろう

自分だけで考えれば

きっとろくな考えも浮かばないのだろう

だがこの心強い仲間たちの、諦めを知らない覚悟があるのならば

東郷「分かったわ……なら、少しだけ時間を頂戴」

樹「お願いします。東郷先輩」

後輩である樹の成長を喜ぶかのように

東郷は数時間前に浮かべたのとは全く違う笑みを浮かべながら、息をつく

諦めないための手を考えて欲しいと願われたのだ

それを導き出せると信頼を向けられたのだ

ならば、応えてあげるのが先輩の務めというものだろう

東郷「樹先輩が認めてくれる一手、なんとかしなきゃ」

樹「うぅ……先輩って言わないでください」

東郷「ふふっ、冗談」

冗談を言う余裕が出てきたのだと

樹と東郷は互いに思って、苦笑する

少しは明るい考えを持てるようになっただろうか

少しは前を向くことができただろうか

東郷「ありがとね……樹ちゃん」


296 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/22(木) 23:07:18.64Nbrq2T6lo (4/6)


樹「いえ、こんなにちゃんと言えるようになったのは皆さんのおかげです」

年初めの自分だったらこんなに強く出ることはできなかっただろう

誰かの決意を否定することなんてできはしなかっただろう

嫌なこと、辛いこと、苦しいこと、悲しいこと

たくさんの経験があった

嬉しいことも楽しいこともあった

本来ならば出会わない人との出会いを得て、

学べなかったはずのことを学ぶことが出来た

樹「だからこそ、私は諦めるわけにはいかないんだと思います」

もしも諦めてしまったら

天乃や東郷達だけでなく、

その精霊である千景や歌野、若葉たち

同じ部活の仲間として、友人として

同じ人に恋をしてしまった者として

同じ戦場に立った者として成長させてくれた人達すべてを裏切ってしまうことになるから

尽くしてくれた時間を無意味にしてしまうことになるから

東郷「本当……見違えたわ。樹ちゃん」

樹「恋する女の子は強いんですっ!」

えへへっ。と

自分の発言にちょっぴり恥ずかしそうに笑みを浮かべた樹に

東郷は「確かにね」と、同意する

東郷「分かるわ……何でもできそうな気がするのよね」

失くしてしまったわけではない

あまりにも非情な世界に忘れてしまっていただけ

だが、もうきっと忘れることはないだろう

東郷「その強い思いを余すところなく使い果たせる確実な何かを、私が考えて見せるわね」

樹「はいっ、お願いします!」


297 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/22(木) 23:10:42.23Nbrq2T6lo (5/6)

√10月08日目 夜(病院) ※月曜日


01~10 
11~20  歌野
21~30 
31~40  若葉
41~50 
51~60  夏凜
61~70 
71~80  友奈
81~90 
91~00  東郷

↓1



298以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/22(木) 23:11:24.59jxrC/whxO (2/3)




299以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/22(木) 23:12:24.88cpHNRTlSO (1/2)




300 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/22(木) 23:39:01.04Nbrq2T6lo (6/6)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


301以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/22(木) 23:45:15.41cpHNRTlSO (2/2)


夏凜はどう動くか


302以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/22(木) 23:48:30.25jxrC/whxO (3/3)


樹ちゃんの成長が東郷さんを救ったな
あとは夏凜ちゃんをどう元気付けさせるかだが…


303以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/23(金) 14:15:14.22SAbe3997o (1/1)

夏凜のイベント…怖いな


304 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/23(金) 22:31:36.03Ma0bZ5RAo (1/6)

では少しだけ


305以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/23(金) 22:34:46.275CuN9gwFO (1/2)

かもーん


306 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/23(金) 22:41:47.91Ma0bZ5RAo (2/6)


√10月08日目 夜(病院) ※月曜日


夏凜「……はぁ」

病室には戻りたくない

天乃の傍に戻りたくない

そう風に告げて出てきた中庭に差し込む光はもうすでに月明かりと人工灯のみとなっていて

何度目かの看護師からの注意を跳ね除けた夏凜はため息をつく

10月に入ってもう一週間以上経過した夜にまぎれていく吐息は白く色づいて

肌寒さも感じているのに、夏凜は戻ろうとは思えなかった

夏凜「誰も呼びに来ない辺り、天乃の体調があれ以上崩れたってことはないはずだけど……」

話せるほどに良くなったということもきっとない

相変わらず予断を許さない状況で

当然ながら面会など出来るような状況でもないだろう

そもそも、

今の天乃に誰もあえなくなったのは

天乃の体調悪化を傍で見てしまった夏凜の精神が崩壊しかけたからだ

何もできず、半狂乱になって

天乃の血に染まった状態で看護師によって運び出された数時間前の記憶

今思い出しても、

それはとても心を締め付けるもので

夏凜「…………」

血を洗い流したはずの手はまだ時々、血まみれになっているのではないかと怯えてしまう

それくらいに怖かったのだ

風には言葉で語ったが

言葉では語り切れないほどの恐怖があの場にはあった

心配と不安を抑え込んで絶句してしまうほどの恐怖が。


307 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/23(金) 22:53:06.19Ma0bZ5RAo (3/6)


夏凜「私がそばにいるせいだとしたらきっと、300年前に分け与えられた力のせい……よね」

使う使わないの意思に関係なく、力は共鳴して干渉しあって

それが天乃の体に不調をきたしてしまっているという可能性は十分にある

だとすればやはり、近づかないことが得策だろう

もっとも、神樹様の干渉があるのだとしたら

夏凜一人離れたところで無意味かもしれないが……

夏凜「ったく……なんだってこんな――?」

悩んでも悩んでも答えの出なそうな状況の中、

ふと視界の端の気配に気が付いて、その姿を目で追う

気配だけでは判断しきれないが、

鍛えぬいた感覚が千景だと判断して、身体が動く

夏凜「こんな時間に……なんで……?」

千景らしき姿を追えば追うほど強く感じる天乃の力

血まみれになってもだえ苦しむ天乃のことがフラッシュバックしそうになるのを堪えながら、

病院の出口寸前で追いつき「千景!」と名前を呼ぶ

千景「…………」

夏凜「こんな時間に何してんのよ」

千景「私は精霊だから制限はないわ。でも、三好さんは違うはず」

何をしているのかという問いには答えず

なぜここにいられるのかの理由だけを答えた千景

何かがあるのではと一瞬訝しんだ夏凜は息を呑んで、苦笑する

風に見せたのと同じように、自嘲する笑みだ

夏凜「二日連続で体調不良を目の当たりにしたのよ? 帰れるわけないでしょ」

千景「別に貴女が引き金とは限らないわ」

夏凜「分からないじゃない」

千景「いいえ、分かるわ……貴女ではなく、この世界が久遠さんを苦しめているということも」


308 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/23(金) 23:08:45.55Ma0bZ5RAo (4/6)


静かな語り口調はいつもの千景らしいが

そこに危うげなものが潜んでいるように夏凜は感じていた

何かを切り捨ててしまったかのような、良く言えば精錬された鉱石のように一途ななにか

夏凜「……やっぱり、神樹様が天乃の体に影響を与えてるってわけ?」

千景「貴女は九尾さんの話を聞いていないのね」

夏凜「九尾の話? どういうことよ……何かあったの?」

だれも呼びに来ていないから何もなかった

そう考えていた夏凜の驚いた表情に、

千景は表情を一切変えることなく、九尾が話していたことを伝えた

天乃の体は単なる体調不良ではなく、

体内に宿る力の乱れまでもが大きく影響していること

それには神樹様からの干渉も影響している可能性があるということ

そして、それによって天乃は通常時でも体に大きな負荷をかけていた

あの二つの力の同時利用をしているような状況に陥っている可能性があるということ

誤魔化すことなくすべて語った千景は

言い切ったことを示すように息を吐いて

千景「久遠さんはこの世界によって死のリスクを負わされていると言っても良い」

夏凜「……だから、こんな時間に外出するってわけか」

千景「三好さんも考えたのね」

夏凜「干渉してくる神樹様の排除……そりゃ、私だって考えるわよ」


309 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/23(金) 23:26:24.69Ma0bZ5RAo (5/6)


神樹様の干渉があると断定される前から

神樹様の力が関与しているというのであれば

神樹様そのものを叩き切ってやろうか。なんて考えたのだと、

夏凜は千景と目を合わせることなく苦笑いを浮かべて、自分の手を見つめる

かつて、鍛錬に明け暮れて木刀を握り続けた手

力を得て、握るものを刀へと変わった手

そして今日、天乃の血に塗れた手

もう赤くはないと分かっていても

そこに天乃がいないのだと分かってはいても

どうしても体が震えてしまう

千景「……でも、神樹が干渉していると分かったわ」

夏凜「だから私にも力を貸せって言うの?」

千景「そんなことは言わないわ」

千景は救援要請を否定すると

闇に紛れて見えなくなっている神樹の方角を睨み、

夏凜から少しずつ離れていく

千景「これは、裏切りよ……汚名を着るのは私一人で十分」

夏凜「裏切りだって分かってて……」

千景「そう。分かっていても行かなければいけない。裏切りの世界を裏切って正す」

例え、そこで正されることなく世界が崩壊してしまうのだとしても

それは、世界がその程度だったということ

久遠家を裏切るという行いに罪はなく

久遠家を苦しめる行いに恥はないということ

なればそんな世界など滅ぼしてしまおうというのだ

それが、千景が神樹様に背負わせる死のリスク

千景「貴女はそのまま病室に戻ってくれればそれでいいわ。出来る限り久遠さんの大切な人は傷つけずに終わらせたいから」


310 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/23(金) 23:30:39.26Ma0bZ5RAo (6/6)


では途中ですが時間なのでここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

真面目な話は長い……明日で千景と夏凜の交流終了予定


311以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/23(金) 23:37:56.625CuN9gwFO (2/2)


久遠さんを守るために再び一人になろうとする千景
一周目の久遠さんを彷彿させる行動だな…


312以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 06:59:20.17+/oAC0lOO (1/1)


今こそみんなの結束が試されるな


313以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 13:06:42.87UaED911so (1/1)

暴走ではない裏切りって
正義対正義の戦いみたいでなんか難しいな


314 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/24(土) 21:58:51.145EMK8rbRo (1/8)


では少しだけ


315以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 22:00:21.40k1zFh1YWO (1/2)

ほいさ


316 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/24(土) 22:14:14.545EMK8rbRo (2/8)


例え仲間であっても、友であっても

大切な人を守るためならば阻むすべてを打ち倒して進む覚悟がある

どれだけ嫌われることになろうと

どれだけ自分の心が傷つくことになっても

だが、戦う必要がないならば戦うことはないとも思う

千景「……久遠さんのことは、任せるわ」

夏凜が何も言わずにいるのを少しだけ待った千景は

表情を変えることなく背を向けて歩き出す

何も言わない、何もしないそれならば……と

夏凜「……目には目を、歯には歯を、毒には毒を」

千景がしようとしているのはそういうこと

それによって神樹様が天乃への干渉をしなくなれば良し

干渉を続けるというのならば

天乃やその後の久遠家が苦しむくらいなら、世界を崩壊させてしまおうという

夏凜「そんな身勝手な行為……裏切りを千景は自分の意志で、天乃のためにやろうとしてる」

震えている手ではない

目的を見定め、犠牲にするものをしっかりと把握したうえで

しっかりとした足取りで向かっている

――本当に、そうだろうか?

千景は犠牲にしてしまうものすべてを把握できているのだろうか?


317 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/24(土) 22:28:40.705EMK8rbRo (3/8)


夏凜「……天乃」

暖かく感じた瞬間から冷えていく血に濡れた手は

次から次へと吐き出される血に塗り固められ

目の前の大切な人にでさえ触れることを阻んだ

だが、その血はなぜ流れるのだろうか

二つの力の同時利用は死を意味するとされた状況だったはずの天乃が

それと同等の苦しみを味わい、血を流し絶叫しながらもなお

その苦しみと痛みから逃げ出していないのはなぜなのだろうか

そもそも、それを味わう切っ掛けである子供を作ったのは……なぜなのだろうか

夏凜「なぜ……? なぜかって……?」

苦しむ天乃が脳裏に浮かび、呻き声が木霊し

手に触れた血液のぬめりと熱さと冷たさがフラッシュバックし始めて

震える手を強く握りしめ、噛み切るほどに強く唇を噛む

夏凜「そんなの……あいつが生きたいからに決まってるでしょうが……」

生きていたいからこそ、

苦しみを味わってなお生きようともがいているのだ

血反吐を吐きながら呻き、苦しみに喘いで死にそうになりながらも

その先にある【生】を勝ち取るために這いずってでも生きようとしているのだ

苦しいことばかりの世界で

辛いことばかりの世界で

裏切られてばかりの世界で

それでもなお世界を守るために奮闘してきた久遠天乃という勇者は

受け入れようとしていた死から道をそれることを決意した

それはなぜか

夏凜「私達が願ったからだ……生きて欲しいって一緒に居たいんだって」


318 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/24(土) 22:45:35.275EMK8rbRo (4/8)



生きるのは夏凜たちの為だ

一緒にいるためだ

こんな世界であろうとも死に抗ってくれているのはみんなの為だ

だったら、夏凜たちは天乃の為に行動するべきだろう

何かをなすべきだろう

そうした考えの中、千景は天乃を苦しめる世界への反逆を選んだ

天乃を裏切り、仲間を傷つけることもいとわず、

世界が壊れてしまうリスクを覚悟のうえで。

神によって持たされる何らかの事象に対して、奇跡が起きなければ達成できない賭けに出る

それはきっと、何もできないよりは良いことなのかもしれない

――けれど。

夏凜「千景」

千景「…………」

夏凜「神樹様に手出しはさせないわ」

夏凜は千景を呼び止める

今度は見逃してはもらえない

力づくで押し通そうとするのだと分かっていても

夏凜は止めなければいけないのだと一歩踏み込む

夏凜「天乃はこんな世界でも生きようとしてくれる。私達が願ったから、私達がいるから、あんたたちがいるから」

千景が振り向き、

夏凜は振り向かれ向けられた鋭い視線を交わすことなく向かい合う


319 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/24(土) 23:03:16.715EMK8rbRo (5/8)


千景から感じる敵意と信念

単なる暴走や諦めではなく、世界への挑戦であるのだと信じて疑わない決意

簡単に説得できるようなことではないのは確かだ

300年前、苦しみを味わった千景は当時に気づくことが出来なかったとはいえ

同様に、あるいはそれ以上に凄惨だったであろう久遠家を知っており

そして、今の天乃に対する世界の在り方を傍で見てきた千景

その経験から導いた答え

千景「だから私を止めようというのね。こんな世界を守ろうというのね」

夏凜「勘違いしてんじゃないわよ、千景。私が守りたいのは天乃の世界よ」

神樹様によって作り出されているこの世界

それを今ここで守ろうという気はない

守りたいのは天乃の世界

学校があって、クラスメイトがいて、

瞳がいて、芽吹がいて

友奈や東郷、樹や風に園子達勇者部

若葉や千景、球子に歌野に水都に九尾といった精霊達

みんながいる世界だ

それを作っているのは神樹様ではない

それを守ってきたのは神樹様ではない

夏凜「ここまで守ってきたのは天乃……でも、この世界を作っているのは私達だから」


320 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/24(土) 23:14:31.445EMK8rbRo (6/8)


手の震えは止まらない

刻まれた恐怖が消えることはない

だが、それでもいいのだと夏凜は思う

この恐怖は喪失の恐怖

この不安は敗北の不安

周りが消えてしまわないように

周りの何かが損なわれてしまわないように

天乃がたった13歳の頃から背負い続けた責任だ

そしてそれが今、この手にあるのだというのなら

夏凜「天乃の世界を守る」

それが、それこそが

共に歩むと決めた三好夏凜のすべきこと

天乃の周りからは誰も欠けさせない

苦しみを耐え抜いた先で

誰かが居なくなってしまった世界にならないように

夏凜「あんたをぶん殴ってでも連れ帰る……この世界を壊させないために!」


321 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/24(土) 23:30:42.405EMK8rbRo (7/8)


千景「…………」

千景は駆けだして出ていくようなことはせずに夏凜の覚悟を黙って聞くと

小さく息をついてこぶしを握り締める

夏凜の覚悟から逃げるというのなら

それは自分の覚悟に後ろめたさがあるということになるからだ

千景「それでは300年続く呪いを断つことはできない」

久遠陽乃から始まった久遠家の苦しみ

認められず、許されず、苦しみと痛みと怒りをぶつけられ続けた一族

300年経ってなお世界を守った代償がそんな呪いであるのは変わらない

人は優しくなった

久遠天乃の周囲にはとても優しい人たちが集い

温かみのある世界になりつつあるのかもしれない

だが、世界の在り方自体は変わってなどいないのだ

いつまでも久遠の血を引く存在を苦しめようとする死を与えようとする

ならば、世界には死のリスクを負いながら更生してもらうしかない

千景「私は久遠さんを解放する……苦しみから、呪いから……」

裏切り者という悪の称号を持ち、神さえも殺める呪いの力を保持している自分がいる今しかできないこと

今やらなければきっと、これからも続くことになると思うから

千景「私は貴女を倒して先へと進む……彼女の在り方をこの世界に認めさせるために!」

夏凜の言い分が正しいと分かっていても、郡千景は身を引かない


322 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/24(土) 23:41:08.615EMK8rbRo (8/8)


ではここまでとさせていただきます
明日は出来れば昼頃から
交流が終わると言いましたが、嘘です



夏凜「褒めちぎったときの照れ笑い!」

千景「意外と敏感な内股!」

夏凜「天才と言われる影での努力!」

千景「その裏にある不器用さ!」

夏凜「……中々やるわね」

千景「三好さんこそ……ここ半年のポッと出ヒロインとは思えないわ」

風「戦うんじゃないんかいッ!」バンッ

樹「お姉ちゃん……今、胃薬貰ってくるからねっ!」


323以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 23:43:18.70TNDmTDUpO (1/1)


コンマバトル開幕かな?
明日都合で参加できないのが残念


324以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 23:45:18.13k1zFh1YWO (2/2)


デスヨネー
でもこうなってくると樹ちゃんが東郷さんを止めてなかったらさらに大惨事になってたかも…


325以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/25(日) 10:34:59.92wBzOgDVpO (1/1)

千景も間違ったことは言ってない…だけどそれじゃ駄目なんだ


326 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 12:17:18.68Ae9ImADwo (1/12)


では少しずつ


327以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/25(日) 12:25:41.30h731W3k7O (1/2)

来てたー


328 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 13:08:14.57Ae9ImADwo (2/12)


夏凜「千景、力を使わないつもり?」

千景「三好さんが勇者になれない以上、私だけ力を行使するのは不公平だから」

それに、

力で圧倒的優位に立っての勝利などではなく、

同等の状況下で

自分の想いで打ち勝てなければ

相手の想いを上回ったとは言えないのだ

これは決して手加減でも驕りでもない

想い人の為であるという意地だ

夏凜「殴り合いとか……千景らしくないんじゃない? ハンデになるわよ?」

千景「貴女以上にシビアな世界で生きてきた私を舐めないでもらいたいわね」

左手をゆっくりと握りしめながら前へと突き出し

体を傾けて臨戦態勢へと推移させていく

格闘術を得意としているわけではないが

そう言った教材はたくさん見てきたのだと千景は記憶を弄る

どれもこれも通常の人間には出来るはずもない芸当――だが。

千景「行くわよ三好さん……貴女の想いで止められるのなら、止めて見せて」

西暦時代の勇者にして

久遠天乃の精霊である千景に、不可能などない


329 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 13:28:00.46Ae9ImADwo (3/12)


千景→夏凜 命中判定↓1  01~51 命中

夏凜→千景 命中判定↓2  01~89 命中


330以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/25(日) 13:36:04.82h731W3k7O (2/2)




331以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/25(日) 13:38:03.95CN+tDczmO (1/1)




332 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 14:27:13.97Ae9ImADwo (4/12)


千景「……ッ!」

一気に踏み込んで、加速

本来なら大鎌を持っている手には何もない

圧倒的なリーチ不足

だが、だからこそ思考はただ一つに収束する

夏凜「……一点突破!」

二人の間にあったわずかな距離を滑走し詰め寄った千景は、

踏み込んだ足をそのまま滑らせ身を屈めて――

千景「ふっ!」

夏凜「!」

夏凜の右手を左手で弾き、

引きはがした右腕をそのまま掴む

弾いたらそれでいい、その油断が命取りになる一戦

ゆえに捕らえて離さず引き寄せてこぶしを握る

穿つために、貫くために

だが――

千景「一撃決……」

どこからともなく目の前を覆った黒い影

夏凜「ぶっとべぇッ!」

夏凜の鍛え上げられた足が迫り、

千景は貫くべき拳を地面へとたたきつけて回避する


333 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 14:57:33.46Ae9ImADwo (5/12)


靡いた髪を蹴り抜いた足をそのまま強引に傾け、かがんだ千景目掛けて振り下ろす

斜めに切り裂く刀のような軌道

下手にしゃがんでも回避は間に合わない

千景「なら!」

あえて、突撃する

ゼロ距離状態の突貫では夏凜に大したダメージは入らない

しかし、蹴り飛ばすための力が込められた足に直撃するよりは

夏凜のバランスを崩すだけの衝突の方が断然マシだった

夏凜「くっ」

千景「……ままならない、けど!」

夏凜を突き飛ばして距離をとった千景は

もう一度こぶしを握って前を向く

一度打ち合っただけでわかる力量の差

鍛錬を積んだとはいえ300年前

武器のない状況では勝機は薄いと残念ながら分かってしまう

それでもだ

千景「どんな状況でも諦めない人が、いつだって私の前にいてくれた」

見せてくれたその背中

学ばせて貰ったその経験を無駄にはしない

例え仲間と戦っているこの状況であろうと

己の想いを遂げるためならば

千景「私は諦めない……だから力を貸して、高嶋さん。貴女が救いたかった久遠さんの魂を救うために!」


334 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 15:08:14.62Ae9ImADwo (6/12)


千景→夏凜 命中判定↓1  01~61 命中

夏凜→千景 命中判定↓2  01~84 命中


335以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/25(日) 15:14:40.64g0qfWW4dO (1/1)




336以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/25(日) 15:16:04.32wXMgL5VtO (1/1)




337 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 16:49:02.54Ae9ImADwo (7/12)


近接戦闘での経験は夏凜が上

よって技量もまた夏凜の方が上であることは明白

であるのならば、とれる策は一つしかない

千景「……カウンター覚悟で叩き込む!」

さっきとは真逆に、

右拳を前へと突き出しながら右足を差し出し、

夏凜に向けた体を直線にまとめて一つの線と成す

夏凜「また突撃してくるつもり?」

千景「一途に想って何が悪いッ!」

夏凜「誰も悪いとは――言ってないっての!」

半ば怒りのような声に合わせて飛び出してきた 千景に引かれるように

夏凜もまた地を踏み抜き、駆ける

大した距離もないミドルレンジとロングレンジの中間距離

二人の素早い足取りによって、それは無となり衝突する

千景「これこそが未来を救うと分からないのなら!」

ぶつかり合う肘と肘

動かせば掬われる足

出方をうかがうべきその場面でいの一番に動いたのは千景だった

ぶつかった肘に肘を打ち付けてさらに距離を詰め、

そのまま身を屈めてみぞおちを穿たんと潜り込む――が

夏凜「それこそが天乃を苦しめると分からないなら!」

夏凜は引かれた左腕を無理やりに伸ばして拳を突き出し、

伸びかけた千景の左腕を叩き落す

夏凜「今ここで教えてやるッ!」


338 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 17:02:45.85Ae9ImADwo (8/12)


千景「くっ」

夏凜「逃がすかッ!」

左手を叩き落され崩れたバランスのままに距離を取ろうとした千景に対し、

夏凜は滑って転んでしまうリスクを無視して踏み込み、前のめりに千景を追う

ゼロ距離からショートレンジへ

距離は開いたが、攻める夏凜に対して逃げの体制の千景では圧倒的に不利だった

千景「だとしても――っ!」

夏凜「!」

それでも、千景は差し迫る夏凜の振り抜く拳を足に受け、

ダメージと引き換えに体勢を転換

その瞬間にも夏凜が迫る

振り抜いた左拳を追う右拳

本気の一撃、本気の想いが込められた最高の一打

千景「久遠さんの未来を掴み取る為なら!」

地に足つかない状態のまま、

千景は強く、右手を握り締めて想いを込めていく

落下による重力加速は加算されない

だが、そんな道理をこじ開けて打ち貫くのが精霊の一撃

千景「最後の苦しみを与える裏切り者にだって成り下がる覚悟がある!」


339 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 17:14:58.72Ae9ImADwo (9/12)


千景が消えてしまうことになったら、天乃は悲しむだろう

千景が無理をしたら、天乃は心配に胸を痛めるだろう

それらの犠牲、その行いが

自分の為だと知ってしまったら

きっと罪悪感を抱かずにはいられないだろう

その悲しみ、その痛み、その罪すべての憎しみを一手に引き受ける覚悟があると、千景は言う

しかし――

夏凜「この世界の正しさが天乃にとっての正しさにはなり得ないって――」

千景の想いは夏凜の顔の真横を通り抜けていく

掠りもせず、靡いた髪にも触れることが出来ずに拳は空間を穿ち

夏凜「――言ったでしょうが!」

夏凜の想いが千景のほほを撃ち貫く

激しい鈍痛を彷彿とさせる衝突音が響き、千景の体が宙を舞って地面を転がる

精霊ゆえに痛みは軽減されているにも関わらず

千景は痛みに呻いてふらつくように顔を上げた

夏凜「あんたは神樹様や千景だけの犠牲で終わると思ってるかもしれない……けど、そばに居たらわかるはずよ」

千景「…………」

夏凜「千景のそれは結局、天乃から幸せを奪う結果に繋がるんだって」


340 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 18:10:46.71Ae9ImADwo (10/12)


千景「……でも、傷は貴女達なら癒せると信じた。だから私は」

夏凜「天乃の心の傷が癒せるような人間がいたとしたら、それは創作上の主人公だけだっての」

底知れない優しさを持つ天乃は

犠牲にしてしまった人達のことを忘れる事が出来ない

いつまでも心のどこかにその人々への想いを抱いて生きていくのだ

それをなかったことにはできないし、

千景たちの犠牲によってそれがまた掘り起こされようものなら

もう二度と、癒してあげることはできないだろう

夏凜「あいつはああ見えて一番脆い……他人の為に強いだけの馬鹿なのよ」

それを知らない千景じゃないはずだけど。と

夏凜は声をかけながら千景に手を差し述べて、立たせる

夏凜「だから千景は無理すんな」

千景「止められた以上は従うわ……けれど、もしもの時は」

夏凜「分かってるわよ」

例え神樹様相手であろうとも剣を向ける

誰か一人が無理をするのではなく

全員が納得した上での反逆

その時が来たら協力は惜しまないと、夏凜は頷いた


341 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 18:12:09.99Ae9ImADwo (11/12)

√ 10月08日目 夜(病院) ※月曜日

01~10 
11~20 体調
21~30 
31~40 
41~50 九尾
51~60 
61~70 
71~80 体調
81~90 
91~00 沙織

↓1のコンマ  


342以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/25(日) 18:17:29.86ji88SKXrO (1/2)




343 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/25(日) 18:28:46.70Ae9ImADwo (12/12)


では少し中断します
場合によってはこのまま終了で明日の持ち越しとなりますが
その時はおそらく連絡なしに再開は明日の通常時間になります


344以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/25(日) 18:36:03.51ji88SKXrO (2/2)

一旦?乙


345以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/25(日) 18:42:47.66d/rxTfs8O (1/1)

一旦乙
夏凜も阻止に成功して良かった…


346以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/26(月) 12:27:46.85J20GtfVjO (1/1)

これもし千景を止められなかったら即バッド行きだったんだろうか
重要な別れ道だっただけにifルートも見てみたいなぁ


347 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/26(月) 21:43:10.72oHKIaNuko (1/8)


では少しだけ


348以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/26(月) 21:50:17.70PNeVFRpmO (1/3)

よっしゃ


349 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/26(月) 21:59:43.44oHKIaNuko (2/8)


√ 10月08日目 夜(病院) ※月曜日



ゆっくりと病室の扉を開けて中に入った夏凜は

すでに寝静まった空気を乱さずに済んだことを確認して、一息つく

風に戻らないといった手前

こんな時間に戻ってくるのはいささか気が引けたのだが

千景を連れ戻すといったのだ

戻らないわけにはいかなかった

夏凜「自分で首を絞めるってこういうことなのね」

夏凜のベッドの隣の空白

きれいに整頓されたまま動いていない天乃のベッド

それを見るのが嫌でさっさと自分の布団に入ろうとしたところで、

その向かい、風のところから声がこぼれてきた

風「戻ってこないんじゃなかったっけ?」

夏凜「なんで起きてんのよ」

風「部長だから」

夏凜「……色々あったのよ。色々と」

あそこで千景が出てこなければ、

きっとあのまま考え直すようなことも何もなく

外の暗闇の中で一夜を明かしていたかもしれない

天乃の血に自分が濡れた理由

この手が震えてしまう理由

なにも考えずに、天乃の苦しみがただ自分のせいなのだとふさぎ込むだけだったかもしれない


350 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/26(月) 22:15:41.58oHKIaNuko (3/8)


夏凜「でも、ちゃんと戻ってきたわよ」

風「なら良し。明日の天乃の不安はあるけど、早く寝なさーい」

夏凜「起きてたやつが何を言うか」

呆れたように、出来るだけ押し殺した声で呟いて

ベッドの周囲のカーテンを閉める

明日の天乃の不安

だが、明日の天乃の希望もある

もしかしたら体調がよくなっているかもしれないと思うのは

連日の不幸のせいか少し臆病になってしまうが

誰かが希望を持たなければ

本当に駄目になってしまう気がして

夏凜は震える右手を左手で強く握りしめて、祈るように胸元へと引き挙げる

夏凜「……天乃、あんたは弱いし寂しがり屋だけど。でも、誰よりも強い」

待っている人がいるから

願っている人がいるから

想う人がいるから、天乃は強い

そんな人たちがいればいるほど

天乃は本来の弱さなど嘘のように力強さを見せてくれる

夏凜「普段はやめろとか言っときながらアレだけど、今は許す」


351 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/26(月) 22:27:05.61oHKIaNuko (4/8)


そんなこと言ったと知れたら

天乃はきっと文句を言うだろうと考え、

お茶目で子供っぽさを残した天乃の笑みを想い浮かべて、

夏凜は思わず苦笑する

夏凜「…………」

だからこそ、

天乃の笑み、温かみのない今は少しだけ寂しいと思ってしまう

人の温もりが欲しい時期に与えて貰えなかった夏凜は、

夢路瞳という家族ではない人に貰うことが出来たが

それはただただ、優しかった。厳しさはなかった

肉親にはある厳しさがそこには欠けていて

あくまでも他人であるという異物感が拭えることはなかった

しかし、天乃は違った

心配ゆえに怒り、厳しく接することもあって

安堵ゆえに喜び、優しく接してくれることもあって

時と場合によっては本気で怒ることもある

夏凜にとって天乃は、家族よりも家族らしい大切な人なのだ

夏凜「エロいことが控えめなのも、多分そういうことなのかも」

もちろん、だからと言って一切したくないというわけでもないが。


352 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/26(月) 22:41:39.11oHKIaNuko (5/8)


傍にあるからこそ有難みは薄れて

失くしてしまった瞬間にその大切さに気付く

天乃の場合は常に死にかけているせいか、

傍にある有難みが薄れることも忘れてしまうこともないけれど。

夏凜「……明日は、元気になってるといいけど」

少なくとも、吐血するほどの酷さでなければいい。と

夏凜は願うように目をつむって息をつく

千景と戦った体の熱はまだ少し残っていてなかなか眠れないが

それでも、と、呼吸のリズムを一定に保って心身を穏やかにし、

ゆっくりと眠りへと落ちていくのを待つ

夏凜「私の力……それが少しでも、役に立てば……」

300年前に分け与えられた力

それが天乃を苦しめるだけなはずがない。と

自分の存在が天乃にとって害であるはずがない。と

夏凜は自分とその力を信じて願う

夏凜「あんたが無事に戻るまで、私はあんたの世界を守ってやるから……」

早く、戻ってきなさいよ。

誰もいない隣のベッドにそう声をかけて

夏凜は眠りへと、落ちていく


353 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/26(月) 22:50:43.86oHKIaNuko (6/8)



1日のまとめ

・   乃木園子:交流有(体調不良)
・   犬吠埼風:交流有(体調不良、夏凜)
・   犬吠埼樹:交流有(体調不良、東郷、決断)
・   結城友奈:交流有(体調不良、沙織)
・   東郷美森:交流有(体調不良、樹、神樹様への反逆)
・   三好夏凜:交流有(体調不良、風、千景、自分にできること)
・ 
 乃木若葉:交流有(体調不良、千景、消滅するということ)
・   土居球子:交流有(体調不良)
・   白鳥歌野:交流有(体調不良)
・ 
 藤森水都:交流有(体調不良)
・    郡千景:交流有(体調不良、消滅に関して、自分なりの正しさ)
・  伊集院沙織:交流有(体調不良、友奈)

    九尾:交流有(体調不良)
・     神樹:交流有(穢れに満ちた異物)


10月08日目 終了時点

乃木園子との絆  67(高い)
犬吠埼風との絆  96(かなり高い)
犬吠埼樹との絆  82(とても高い)
結城友奈との絆  102(かなり高い)
東郷美森との絆  112(かなり高い)
三好夏凜との絆  133(最高値)
乃木若葉との絆  94(かなり高い)
土居球子との絆  40(中々良い)
白鳥歌野との絆  42(中々良い)
藤森水都との絆  34(中々良い)
 郡千景との絆  40(中々良い)
  沙織との絆  114(かなり高い)
  九尾との絆  62(高い)
  神樹との絆   9(低い)


354 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/26(月) 23:09:19.29oHKIaNuko (7/8)



√ 10月09日目 朝(病院) ※火曜日

01~10 
11~20 体調
21~30 
31~40 
41~50 体調
51~60 
61~70 
71~80 大赦
81~90 
91~00 晴海

↓1のコンマ  


355以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/26(月) 23:09:46.11Tv/kBnzN0 (1/1)




356以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/26(月) 23:10:43.54srK/rzwyO (1/2)




357以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/26(月) 23:12:58.28PNeVFRpmO (2/3)

久遠さん死んじゃう…


358 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/26(月) 23:32:23.93oHKIaNuko (8/8)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


園子「これは天の神の呪いっていってね」

園子「穢れの正体なんだ」

友奈「これが、久遠先輩を苦しめてる元凶……」

夏凜「神殺し……バーテックスの親玉って言うなら遠慮はいらないわね」


バーテックス「待って、違う。冤罪、冤罪だッ!」


359以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/26(月) 23:33:24.19srK/rzwyO (2/2)


いままでと違って体調しか書いてないから体調回復の可能性も


360以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/26(月) 23:40:13.45PNeVFRpmO (3/3)


これ以上酷く悪化したらいよいよみんなのメンタルが…
もうしばらく安価はお預けになりそうなのも痛いな


361以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/27(火) 12:39:28.82Rpi3gtc8O (1/1)

夏凜の願いが無慈悲にも…
この理不尽っぷりはいかにもゆゆゆシリーズらしいが


362以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/27(火) 21:17:00.665rxibPueO (1/1)

赤嶺がついに来た…さてどう組み込んでくるんだろう?
死神とかの設定とかそうだけどちゃんと違和感少な目でやってくれるから楽しみだわ


363 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/27(火) 22:22:12.30/gSErutOo (1/7)


では少しだけ


364以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/27(火) 22:24:42.45LYyg5C87O (1/3)

よしきた


365 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/27(火) 22:26:08.84/gSErutOo (2/7)


√ 10月09日目 朝(病院) ※火曜日


夏凜「天乃は!?」

風「しーっ!」

夏凜「っ」

沙織「今は落ち着いてるって」

慌てて天乃の病室へと駆け寄った夏凜は、

風の制止、沙織の返答に足を止めて

面会謝絶を掲げる扉の取っ手を掴んだところで周りに集まった勇者部の面々へと目を向ける

東郷「面会は久遠さんを下手に刺激すると危ないからダメだって言ってたわ」

夏凜「変に刺激って……」

夏凜がいつも通りに過ごそうと鍛錬へと出かけている最中のことだ

天乃は吐き出すような体力さえなく

溜まってしまった血と唾液が窒息させて殺しかけたのだ

もちろん、勇者ゆえに何らかの方法で窒息死はしないだろうが

それゆえに延々と苦しみ続ける可能性があったという

それを止めた九尾だけは今も中にいる状況

彼女ならばしっかりと見ていてくれるだろうと

みんなも心配しつつも中へと入るのは抑えているのだ

友奈「もう吐くような元気さえないなんて」

樹「連日なので食事がとれてないみたいで……点滴も打てていませんから」

風「衰弱する一方……ってわけか」

沙織「吐くのは体が苦しみから逃れるため。でも、それさえ出来なくなったら苦しみだけが続く……まずいね」


366 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/27(火) 22:35:33.09/gSErutOo (3/7)


夏凜「とはいえ、私達にできる事なんて」

東郷「一つ、提案があります」

友奈「東郷さんには、考えがあるんだね」

打開策とは言えないけどね。と

東郷は少し申し訳なさそうに友奈から樹へと視線を動かすと

一瞬、考え込むように目を伏せて

東郷「久遠家……久遠先輩のご両親のいる神社になら、久遠家の力に関しての何らかの情報が得られるのではないか。と」

樹「でも、それなら九尾さんに話を聞いた方が」

沙織「どうかな……九尾さんは穢れの対処法は知っていたけど、妊娠と出産をしたのは久遠家だから。その時の対処法にまで手は伸ばしていないと思うんだ」

特に、バーテックスとの戦いがなかった期間は

基本的に表に出てきてはいなかったはずだし、

同じように干渉も控えていたことだろう

であれば、そう言った知識が九尾には渡らずに久遠家の中に眠っている可能性は非常に高い

夏凜「考えは分かった。けど、天乃と同じレベルの症例があるの?」

東郷「そこは行ってみないとなんとも……ただ」

ただ、確実に言えるのは。と

東郷は鬼気迫る表情で全員を見渡す

普段は明るい友奈達も

その雰囲気に押し負けてか、息を呑んで

東郷「行かなければ何もわからない。たとえ断片しか得られないのだとしても、私達は出来ることをするべきだと思うわ」

沙織「それはそうかもしれないけど……いや、こんな状況で余計な考えはいらないよね」


367 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/27(火) 22:48:30.66/gSErutOo (4/7)


樹「何かあるんですか?」

沙織「久遠さんの状況を考えれば全然大したことじゃないんだけど……」

大した事ないとは言うが

今の天乃の状況と比べて勝るものなどとてもではないがないだろうと思うみんなを見渡した沙織は

少し困った様子で

沙織「ほら、一応久遠さんってみんなの家……東郷さんと犬吠埼さんはまだだけど挨拶回りに行ったよね」

友奈「あっ」

風「そういえば……あたし達って誰も行ってなくない!?」

夏凜「確かに今はくだらないけど結構な問題よね。それ」

怒涛の展開に苛まれていたとはいえ、完全に失念していたのだ

相手が相手ならふざけるなと怒鳴られても仕方がないまであるのではと樹は言ったが

沙織は「話せばわかってくれる人だよ」と、なだめて笑う

沙織「とにかくそういうことだから、気を付けようね」

樹「そうですね……本当は久遠先輩と一緒にご挨拶したかったですけど、背に腹は代えられないっていうもんね」

球子「それなら学校はまた休むのか?」

風「球子……いつの間に」

千景「精霊だからどこにでもいるわ。学校を休むならついでに乃木さんも連れて行って」

若葉も九尾の力を借りて学校に通ってはいるが

みんなが行かない場合根掘り葉掘り聞かれてしまうため、

当然、若葉も欠席となる

そして、若葉は天乃の傍にいるよりは心が落ち着くだろうと千景は言う


368 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/27(火) 22:49:34.74/gSErutOo (5/7)


若葉「少し気になることもあってな……それに、挨拶は私もすべきだろう?」

消えるかどうかは未定

だが、付き添う一人として話をするべきだという若葉に

夏凜たちは頷いて同行を求める

風「球子と千景、歌野に水都と九尾が残りか……いろいろな意味で十分安心か」

天乃に下手に手出ししたりするようなメンバーはいないし

万が一何かが起きたとしても

出来る限り冷静に対応できるであろうメンバーだ。

もっとも、球子には多少の不安はあるが。

夏凜「なんにせよ、遊びじゃないし浮かれてもいられない。決まったならさっさと行くわよ」

東郷「やる気に満ちているわね、夏凜ちゃん」

夏凜「出来ることをやるだけよ……ただ、全力で」

友奈「そうだねっ、夏凜ちゃんの言うとおりだ」

元気よく言って見せた友奈は我先にと踏み出して、

友奈「今はやれることを頑張ろう!」

皆はそれについていく

少しでも天乃の為に出来ることを行うために

見つけ出すために


369 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/27(火) 22:54:46.61/gSErutOo (6/7)


√ 10月09日目 朝() ※火曜日

01~10 残念ながら
11~20 九尾
21~30 
31~40 
41~50 沙織
51~60 残念ながら
61~70 
71~80 風
81~90 
91~00 夏凜

↓1のコンマ  


370以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/27(火) 22:57:02.33iR5PMxmu0 (1/2)

はい!


371以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/27(火) 22:57:11.60LYyg5C87O (2/3)




372 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/27(火) 23:10:32.87/gSErutOo (7/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


夏凜「天乃の部屋に入り込んだりとかするんじゃないわよ?」

東郷「小学生時代の久遠先輩……」ジュルリ

夏凜「なんか危ない何かが聞こえたんだけど!?」

友奈「大丈夫だよ~東郷さんは私が見てるから」モゾモゾ

夏凜「あんたは天乃の体操服着ようとするなッ!」バシンッ


風「ふぅ……夏凜がいてくれてよかった」

樹「お姉ちゃん……」


373以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/27(火) 23:19:41.04LYyg5C87O (3/3)


久遠さんが不在でついに久遠家編へ突入かぁ
兄貴たちは久遠さんの状態を知ったらなにを思うのだろうか…


374以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/27(火) 23:19:57.78iR5PMxmu0 (2/2)

乙です!


375以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 08:08:16.22Zf8OQYFhO (1/1)

まだ出たばかりの設定だからどうなるか分からんが九尾は赤嶺時代には不在だったっぽい?


376以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 11:50:05.17JLgk6uo/O (1/1)

話す必要無いことだし話して無いだけで知ってるとは思う
若葉が気になることがあるって言ってるしここで絡めて来そうだ


377以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 14:06:27.28eoF/7qZu0 (1/1)

陽乃さんが子供作ったのが1○歳で
赤奈ちゃん達が戦ってた(?)のが神世紀72年だから
陽乃さんの孫とかは関わってたかも?


378 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/28(水) 21:41:58.49f+1qXTYao (1/7)


では少しだけ


379以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 21:51:02.01CL5ZvN+wO (1/2)

かもん


380 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/28(水) 22:16:24.51f+1qXTYao (2/7)


√ 10月09日目 朝(神社) ※火曜日


友奈「ここが久遠先輩のご実家なんですか?」

沙織「当然だけど寝泊まりしてるのは別だよ。もうちょっと離れ」

風「天乃のお母さんか……」

顔も見たことのない風達にとって、

天乃の母親というのは全く想像がつかない人物だった

天乃やその姉である晴海はお転婆というべきか自由奔放

その兄も然り。

であれば母親もそうなのではないかと思ってしまうが。

夏凜「東郷は何か知らないわけ? 一応付き合いあるんでしょ?」

東郷「あるにはあるけれど、ここに来るのは私も初めてなの」

友奈「久遠先輩は自分のところに呼ぶより相手のところに行こうとしそうだもんね」

風「行くって言うより押し掛ける感じよねぇ……きっと」

東郷「どこかに連れ出されることが多かったわ」

当時は緊張感がなくてふざけている、抜けている

適当だ、年長者としての自覚、選ばれたものとしての責任

色々なものが欠けていると不満ばかりだった態度だが

今思えば自分たちには荷が勝ちすぎていた重い責任だったからこそのものだったと

東郷は懐かしく思って、笑みを浮かべる

若葉「ふむ……とにかく急ごう。境内のどこかに母上がいるはずだ」


381 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/28(水) 22:58:24.05f+1qXTYao (3/7)


お守り売り場のにいる雇われ巫女さん達の助力を得て天乃の母親の居場所を突き止めた夏凜達だったが

本殿の中に入る許可……までは下りなくて外で待機していると

天乃の母親らしき人が姿を見せた

巫女装束に包んだ体は天乃よりも高いが、平均を下回った小柄さで

専用の垂髪というあまり目にしない結び方をされた髪は

天乃よりも少し色濃くなっているが

確かに桃色で

「なるほど……あなた達ですか」

全員を見渡し、大人びた冷静さを持った声で呟いた母親は

小さく息をつくと「どうぞお入りなさい」と

て招いて本殿の中へと導く

案内されたのはその一室、客間のような内装になっている場所

風「あの、大切な話があるんです」

「大方の話は聞いています。あの子の体の事でしょう?」

東郷「伝わっていたのなら、どうして――」

「赤の他人に見舞われても困るだけでしょう」

鷲尾の両親がそう言った姿勢を貫いていたように

久遠家もまた、基本的にはその姿勢を貫くつもりだったのだ

最も、天乃はそれでも結婚のあいさつに来たのだが。


382 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/28(水) 23:27:49.94f+1qXTYao (4/7)


樹「あ、あのっ」

「ん?」

樹「ご挨拶できなくてすみません……でも、今はもっと大切なことがあるんです」

同性でありながら結婚するといった特殊な件等含めて

色々と話すべきことがあるのだろう

だが、今はそれよりも大切なことがあるのだと

樹は気力を振り絞って言う

樹「久遠先輩の体に関して、その久遠家がどんなふうに対応していたのかとか……」

東郷「その対処法を記した何かが在ればお借りしたいんです」

「そうねぇ……」

悲し気に眉をひそめた母親は

言葉が続くのかどうか微妙な状態で口を閉ざして

「私も探しはしたのだけれど、見つかっていないのよ」

夏凜「っ」

「もちろん、すべてを探しきったわけではないから可能性がないとは言わないわ。でも」

若葉「なら、私達にも探させては頂けないでしょうか? 手は多い方がいいと思いますし」

風「倉庫整理とか、猫探しとか得意ですよあたし達!」

友奈「ね、猫は関係ないですけど……でも、まだ可能性があるのなら。私はその1%を信じたいです」


383 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/28(水) 23:43:02.09f+1qXTYao (5/7)


誰も諦めようとしない

例え99%可能性がないのだとしても

たった1%の希望があるのなら

それを信じて出来る限りに突き進む

それが、天乃に集まった少女たちの生き方

今ここにいる、勇者たちの答え

夏凜「……だめ、ですか?」

「…………」

駄目押しのように求める夏凜へと目を向けた母親は、

改めて全員をその視界に収めて、沈黙する

見定めているかのような視線にはどこか威圧感があって

けれど、樹でさえも動じることはなかった

古い書物ゆえに、それは久遠家が持つ大切な歴史

簡単に触れさせていいものではない

けれど……

「分かったわ。そこまで言うのなら手を貸してもらうわ」

元々、そんな歴史だのなんだのにこだわっていられる状況ではない

「ただし、あまり期待はしないで頂戴ね」


384 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/28(水) 23:49:44.87f+1qXTYao (6/7)


01~10 風
11~20 若葉
21~30 
31~40 樹
41~50 東郷
51~60 若葉
61~70 
71~80 
81~90 夏凜
91~00 友奈

↓1のコンマ

※空白はなし


385以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 23:50:25.05CL5ZvN+wO (2/2)




386以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 23:51:13.876uZICaxhO (1/2)




387 ◆QhFDI08WfRWv2018/02/28(水) 23:55:57.84f+1qXTYao (7/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


風「あ、あった! あったわよ!」

東郷「流石です風先輩、猫探しが得意なのは伏線だったんですね」

夏凜「いや、猫は関係ないでしょ」

東郷「ううん、久遠先輩は【猫】だから関係あるわ」

夏凜「はぁ?」

友奈「あはは……夏凜ちゃんの言う猫と東郷さんの言う猫は絶対に意味が違うと思うよ」


388以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 23:56:54.476uZICaxhO (2/2)


総受けだししゃーない


389以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/01(木) 00:03:17.80NK1QR5OUO (1/1)


晴海さんたちがお見舞にこないのもそういう理由なのかねぇ
あとは風先輩ここでファインプレーをみせるのか…?


390 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/01(木) 22:40:36.45/IS+lPhwo (1/5)


では少しだけ


391以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/01(木) 22:41:14.17L6rI6mz4O (1/2)

あいよー


392 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/01(木) 23:11:55.42/IS+lPhwo (2/5)


久遠家が貯蔵する古い歴史書などの書物は多くはないが

それ以外の置物などが多く、そのうえ壊れやすいものが多かった

風「パッと見た感じじゃガラクタにも見えるけど……大事そうに保管されてる辺り、価値があるってことなのよねぇ」

東郷「経年劣化は物の定めですから」

風「東郷はこれがどんなもので何なのか―とか分かる?」

東郷「いえ、さすがの私にも手がかりなしには分かりません」

触れば砕け散ってしまいそうなほどに劣化した棒状の何か

刀のようにも見えなくはないが

すでに大部分が崩れてしまっているため、判別は不可能だった

風「天乃の神社って外観や内装的には比較的新しく見えるけど……古いものが結構あるわよね」

東郷「改装したり手入れをしっかりしているからではないかと」

風「んー……」

本当にそれだけなのだろうか

それにしては古めかしい品々の量が多すぎる気がするのではないか。と

悩ましく思いながらも

一つ一つを丁寧に除けては時折まぎれた書物に目を通して

風「……ん?」

東郷「風先輩、どうかしたんですか?」

風「久遠家の五代目の人に関してのことが書いてるのがあったんだけど……どうやら、それっぽいわ」


393 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/01(木) 23:28:14.54/IS+lPhwo (3/5)


夏凜「対処法が見つかったって?」

樹「まだわからないですけど、書物は見つかったみたいです」

手分けして探していた全員を呼び集めて客間へと戻り、

劣化してしまっている手記のような紙の束を全員で見つめる

若葉「五代目……それでもまだ神世紀75年か」

友奈「五代目で始まったばっかりだったとか」

「いえ、初代……私達の先祖である陽乃の死に際が神世紀の始まりですから75年の間に二代から四代までがすでに……」

後継者争いが酷かったなど到底あり得ないようなことがあったとすれば

一人の寿命程度の期間に三世代も入れ替わって当然かもしれないが

そんなことはなかったはずだ

樹「勇者だったから、とか」

風「だといいけど……」

ちらりと目を通した風は

樹や友奈の言葉に反対意見こそ述べなかったが

明らかに浮かない表情で

夏凜「風……それで何が書いてあったのよ」

風「なんでも72年に厄介なことが起きたせいで不安定だったらしくて、五代目も酷く苦しんだらしいのよ」


394 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/01(木) 23:50:22.19/IS+lPhwo (4/5)


東郷「72年と言えば、カルト集団による大規模な事件という歴史の教科書にも載っているお話ですよね」

若葉「だが、きっとそう簡単な話ではなかったのだろうな」

少なくとも

カルト集団による大規模な事件などという簡素な言葉で片づけてはいけないような

とても凄惨なことだったに違いないと若葉は零す

風「問題は、その苦しみを和らげた方法……なんだけど」

樹「お姉ちゃん?」

風「……心して見るのよ。五代目がどうやってそれを凌いだのかが書かれてるわ」

風は自分での説明を避けて

該当したページを開いた状態で机の上に置くと

全員が固唾をのんでそのページに影を落とす

書かれていたのは確かに解決方法だった

けれどそれは

天乃が絶対に嫌がるような解決法

友奈「穢れによって発生する呪いを他人に肩代わりさせ、それを犠牲とすることで五代目自身が蝕まれることから逃れた……?」

「要するに身代わりを作ったということですね……そしておそらく、それが72年の事件にも関与しているのでしょう」

夏凜「つまり……なによ。天乃が楽になるには誰かがその穢れの依り代として犠牲にならなきゃいけないってこと?」

東郷「書かれていることが事実なら、そういうことになるわ」

あり得ない手段

あってはいけない解決策

それを突き付けられ、口を閉ざすしかない勇者部の面々の中

ただ一人、若葉だけは手記に最後まで目を通し、息をつく

若葉「……この協力者となっている弥勒家を探して話を聞こう。もしかしたら、逃れる術を見つけ出している可能性がある」

諦めるにはまだ早い

そう言うような力強い声で次の行動を示した


395 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/01(木) 23:53:46.04/IS+lPhwo (5/5)


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


協力者である弥勒家の結末は、『楠芽吹は勇者である』 をお読みください


396以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/01(木) 23:54:49.60Vi+eyygmO (1/1)


重い展開だな…


397以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/01(木) 23:56:18.82PqdZ0k6H0 (1/1)


重いし上手いし何より取り入れるの早い...


398以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/01(木) 23:59:45.48L6rI6mz4O (2/2)


解決できるどころかさらに厳しい現実が待っていたか
身代わりなんてしたら久遠さんむしろ身投げしそう…


399以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/02(金) 00:16:31.98ZYPJt7YUO (1/1)


こんなのいつから考えてたんだよ…ひでぇ


400以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/02(金) 14:10:20.64gkNkQ3sNo (1/1)

組み込み方はほんと巧いと思う
弥勒家の設定に隙があったとはいえ現状で公開されてる部分が問題なく入るし
これは赤嶺編にも期待出来るのでは?(無茶振り)


401以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/03(土) 08:49:19.53ztsVGYDGO (1/1)

最近休み増えたな日曜日も昼再開じゃなくなったし


402以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/03(土) 12:48:35.61QNoAIoVJO (1/1)

>>1だって忙しいだろうししゃーない
そもそも毎日更新が異常


403以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/03(土) 21:39:36.59if4mWUu+O (1/1)

>>1 さん満開祭り参加とかしてるのだろうか?


404 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/03(土) 21:58:07.66NCVijC7zo (1/6)


では少しだけ


405以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/03(土) 22:00:21.04AUzfPvpbO (1/3)

待ってたぞー


406 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/03(土) 22:07:35.93NCVijC7zo (2/6)


夏凜「弥勒……?」

風「知ってるの夏凜?」

夏凜「どこかで聞いた覚えはあるのよ……どこだっけ」

風「いやあたしに聞かれても」

弥勒という名前

どこかで聞いた覚えはあるという夏凜だが

それがどこでだったのか

どんな人物だったのかはあまり記憶にない

けれど、人との付き合いを頑なに絶ってきた来た人生において

出会いの場はそうそうないと夏凜は自称して

夏凜「もしかしたら楠……いや、芽吹なら」

東郷「少し前までは一緒にいた人なのに……こういう時にいないなんてまるで」

運命に翻弄されているようだ。と

東郷は言いかけた言葉を飲み込む

もしもそうだとしたら、

天乃の現状もまた、運命による悪戯ということになってしまう

その考えは、非常に危険だ

友奈「そ、それじゃ芽吹ちゃんに会いに行けばいいんだよね?」

風「そうなんだけど、大赦が会わせてくれるかどうか」

夏凜「兄貴に会えるよう手配できないか連絡できれば早いんだけど」

樹「瞳さんならお兄さんに直接お話しできないんでしょうか?」

夏凜「……可能性が一番高い、か」


407 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/03(土) 22:25:33.72NCVijC7zo (3/6)


実際に出来るのかどうかはわからないが

重要人物である天乃の送迎係―今は休みが多いが―で

その報告を任されている立場である瞳ならば

意外と重要な役どころを任されている春信相手であっても

直接話をできる可能性はあるだろうと考え、ひとまずは瞳と合流することに決めた

東郷「では、瞳さんがこちらに来てから行動開始ですね」

夏凜「すぐ来るって話だからもう外で――」

若葉「言い出した立場で申し訳ないが、私はここにのこっても構わないだろうか?」

風「ん? なにかあるの?」

若葉「ああ……もしかしたらまだ眠る情報があるかもしれないからな」

樹「でも、ほぼ全部の書物は見ちゃったってお義母さんが」

天乃の母親は、

ここではこれ以上得られる情報はないと思う。と言っていたし

実際、古めかしい書物が貯蔵されていた場所に置かれていたものに関しては

すべて目を通したと言っても過言ではないかもしれない

だが、若葉はそれでも。と切り込む

若葉「私一人で構わない。少しでも情報を得たいんだ」

ただ希望的観測を抱いているわけではないと分かる若葉の瞳は

どこか不安に満ちているようにも見えて

友奈はぐっと足に力を込めて、一歩進み出た

友奈「あの全員行く必要もないと思うので……何かあるかもしれないなら別行動も必要だと思います」


408 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/03(土) 22:34:23.64NCVijC7zo (4/6)


風「まぁ、確かにね……というか、別に若葉の行動を止めるような理由もないし」

夏凜「とはいえ、若葉一人じゃ連絡取れない――」

友奈「それなら私が残りますっ、力仕事とかあるかもしれないので」

東郷「車いすの私が……と思ったけれど、確かにそれがあると私には力不足だわ」

少し残念そうに言った東郷は、

それなら友奈ちゃんと若葉さんだけ残って調べ物をする形で

私達は予定通り楠さんに話を聞きに行きましょう。と、提案する

もう少し人数をここに割いても問題ないのではと樹が言ったが

芽吹を探したりしないといけない可能性や

その後の捜索等が行われる可能性もある以上は、と若葉が断った

東郷「友奈ちゃん、若葉さん。こちらのことはよろしくお願いします」

友奈「うんっ、何かあったら連絡するからね」

風「こっちも、出来る限り最善の方法を見つけてくるから」

今分かっている解決策では

天乃に秘密にして勝手に行わない限り

天乃のことを救うことは出来ない

天乃のことのみ考えれば、それも良いと行えてしまうが

しかし天乃を第一に考えるならば、そんなことをするわけには行かないから

若葉「すまないが、そちらはよろしく頼む」

夏凜「元々、大赦と若葉では相性悪いだろうし妥当な判断でしょ。頼んだわ」

吉報を用意できるようにと願い、

互いの拳を軽く打ち合わせて若葉と友奈、夏凜たちに分かれて行動を行うことにした


409 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/03(土) 22:46:39.15NCVijC7zo (5/6)


√ 10月09日目 昼() ※火曜日

1、若葉組(若葉・友奈)
2、夏凜組(夏凜・風・樹・東郷)


↓2

※視点変更


410以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/03(土) 22:47:45.68tew5zbjO0 (1/1)

2


411以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/03(土) 22:48:04.03AUzfPvpbO (2/3)

2


412以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/03(土) 22:49:37.76I9H0K+qHO (1/2)

2


413 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/03(土) 23:12:40.16NCVijC7zo (6/6)


ではここまでとさせていただきます
明日はおそらくお休みをいただくかと思います



若葉(私の記憶の中では、久遠家を大赦に取り込み存在の抹消を図っていた)

若葉(だが……それが今や一般の神社として開放されている)

若葉(本来なら、それはあり得ない)

若葉(ここは一体、何のために? 久遠家はなぜ、表立って活動できている?)

若葉(……嫌な、予感しかしないな)


414以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/03(土) 23:17:41.45I9H0K+qHO (2/2)


ゆっくり休んで下さいね


415以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/03(土) 23:24:15.27AUzfPvpbO (3/3)


勇者部以外の人物も活躍する場面がくるのはくあゆシリーズならではだな
一方でまたもや闇が深そうな謎が浮上してきたか…


416以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/04(日) 08:54:27.6974Jk3GgqO (1/1)

>>1は確か満開祭りだけじゃなく観音寺イベントにも参加してなかったかな…
今日は満開祭りだし会場のどこかにいるんじゃないか?


417以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/05(月) 08:19:54.36G9fNPcaVO (1/1)

投稿ない間物語を見返してたんだが2~4代目の久遠さんって17前後で亡くなってるらしい
ただこれだと計算が間違ってなければ5代目が赤嶺時代だと20台半ばまで生きてることになると思うのだが…?


418以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/05(月) 09:00:39.33Pp0GbjN8O (1/1)

仮定 正式 (誕/死)
陽乃 初代 (2)  享年15?
初代 二代 (2/17) 享年15
二代 三代 (15/30) 享年15
三代 四代 (28/44) 享年16
四代 五代 (42/58) 享年16
五代 六代 (56/72) 享年16

陽乃さんから二代目に移ったのがいつか解らないけど
五代目というのが間違いじゃないなら二代目が初代(一代目)と数えて五代目の可能性があるな
正式に建て直せたのが二代目だからかな?


419以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/05(月) 12:27:56.71rCLhNTBXO (1/1)

単純に五代目の時に陽乃さんの力に耐性がついて多少寿命が伸びたってのもありそう
どちらにせよ五代目の久遠さんに色々何かが起こった事には違いないし、いずれ明らかになるだろうさ


420 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/05(月) 22:50:43.605Tq2q4B1o (1/7)


では少しだけ


421以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/05(月) 22:51:12.10M3Dn83NyO (1/1)

よっしゃ


422 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/05(月) 23:01:10.735Tq2q4B1o (2/7)


瞳「友奈ちゃんは戻られないんですか?」

夏凜「友奈と若葉は残ってもう少し調べ物をする事になったのよ」

瞳「そっか……それで夏凜ちゃん、お話って?」

夏凜「ちょっと探してる人がいるのよ」

夏凜は、

自分の知り合い―記憶にはあるがない程度―である弥勒家の人間を探しており

それが訓練生時代の同期である可能性が高いこと

そこに近づくために芽吹に会いたいが

居場所などが分からないために春信と連絡が取りたいことを

全部話して、連絡が取れないかどうか求めた

瞳「なるほど……確かに、私は春信さんと連絡を取っていますが、それはあくまで久遠さんに関する報告であって私用ではないんです」

樹「それは解ってます、でも、どうしても必要で……」

瞳「春信さん以外も目を通す連絡だから……」

協力したい気持ちはやまやまだが

天乃に関しての報告用ということもあって

当然ながら春信以外の目にもとまるようなものとなっている

そのため、下手に連絡をすると周りに知られ報告係等

色々な部分に手を加えられてしまう可能性まで出てくるのだ

そうなると、不具合やいろいろな問題も生じてくるわけで


423 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/05(月) 23:14:37.495Tq2q4B1o (3/7)


瞳「どうしてもというのなら弥勒家を探すという手もありますが……そう簡単ではないですし」

西暦のまだ何事も無かった時代と比べれば、

この世界はとても狭い小さな場所かもしれないが、

四国という一つの大きな地域でもある以上、

その中からたった一つの家を見つけるというのは至難の業だ

瞳「でも……そうですね」

瞳は悩ましげに粋をつきながら零すと、

東郷たちを一周してまた夏凜へと目を向ける

いつも瞳から何かを言うとそれに答えるようなことばかりだった夏凜は

いつからか天乃に関して色々と言う様になった

報告だと、情報のすり合わせだと

なんだかんだ理由をつけていた最初の頃

それが今ではほぼ一日中一緒にいるような関係にまでなっているし

瞳のところに帰ってくることはもうほとんど無くて

天乃の体調もあって送迎係の仕事も減ってきていることもあって

寂しくないといえば嘘になる

けれど、同時に嬉しくもあるのだ

自分の子供ではないが、

他とは一線を引いていた夏凜がいまや勇者部に完全に溶け込んで

その為にがんばろうとしているのは。

瞳「皆さんには申し訳ないですが、久遠さん……久遠様を利用させてもらえれば可能かと」


424 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/05(月) 23:26:22.215Tq2q4B1o (4/7)


風「利用?」

瞳「言い方は悪いですが、久遠さんの体調の不安定さを利用して春信さんを呼び出そうかと」

現状、天乃の意思確認を行うことはできないが、

妊娠検査の立ち合いを春信に行うなど

大赦の関係者でも春信ならばある程度は許されるだろうという身勝手な考えの元

実際に立ち会ってもらえるように頼むのだ。

一部大赦の人間は

天乃の体調不良が災いの予兆ではないかと警戒する声も上がっており

慎重な対応が求められている今なら

本来は許されないだろう春信の呼び出し、個人的な接触も許容されるのではないか。というのが

瞳の考えだった

夏凜「…………」

瞳「言いたいことがあるのは分かりますが、夏凜ちゃん。確実性の高い方法はそれしかないんです」

夏凜「……いや、形振りかまってられない状況だってことは、私が一番分かってるから」

ただ。

そう、ただ、身内である自分ですらあまり自由に連絡できず

出来ても第三者が目を通すという今の関係が今更ながら納得出来なかっただけで。

瞳の提案が間違っているとは思わないし

そこに抱く嫌悪感はない


425 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/05(月) 23:41:19.825Tq2q4B1o (5/7)


東郷「では瞳さん、それでお願いできますか?」

瞳「うん、でも早くて夕方か夜。遅ければ明日になるかもしれないけど、いいかな?」

何よりも優先すべきことではあるのだが

それでも絶対に今すぐ会えるということはないだろう

少なくとも、昼間の時間は無理だ

夏凜「何でも良い……弥勒家の手掛かりがつかめるなら」

瞳「分かった……分かりました。連絡してみますね。少し待っていてください」

瞳が連絡のためにその場を離れていったのを見送ってから

風はそっと夏凜の隣に並ぶと

少しだけためらいながら、小さく口を開く

風「弥勒家の人には必ず会えるからきっと大丈夫よ」

夏凜「分かってるけど」

風「…………」

弥勒家を探さないといけないとなってから

ずっと浮かない顔をしている夏凜

その気持ちはわかるけれど……

垂らした腕に力と優しさを少し

そしてぺしっと軽く夏凜の背中を叩くと

振り返った夏凜に、風は困った表情を浮かべる

風「ならそんな顔しない。しゃきっとする!」

夏凜「風……」

風「夏凜が弥勒さんのことを覚えてなかったことを悔やんでるのは分かるけどね」

覚えてないことは仕方がない

むしろどのような?がりがあったのかだけでも覚えていただけで

十分なのだと風は言う

風「その時にこんな重要な人になるなんて普通思わないだろうし」

夏凜「風に言われなくたって分かってるわよ」



426 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/05(月) 23:49:25.475Tq2q4B1o (6/7)


けれど、覚えていればもう少しスムーズに行けたかもしれないとは思うのだ

もちろん、風が言うように気にしているわけがないし

覚えていなくても仕方がないと言うのは十分わかっているけれど

それでも。

夏凜「天乃の体の事だってそう、気遣って手を出さなかったらエロいことが足らなかったとか言われるし私っていろいろ足りてないのよ」

風「そりゃまぁアタシも思った。スキスキオーラ――」

夏凜「出てない」

風「……出てるのに、あんまりしようとしないでしょ? 天乃が発情期に入っても基本あたし達任せで」

夏凜「発情期は止めてあげなさいよ」

似たようなものだけど。

そう思って、小さく笑う

人間も動物と言えば動物だけれど

発情期というのはなんだか余計に獣的で違うような気がしたのだ

もちろん、九尾に触発されて女狐っぽくなっている可能性も否定は出来ないが。

風「天乃が一番好きなのは夏凜だってわかってるでしょ?」

夏凜「どーだかね。あいつの場合、好きに順位とかない気がするけど」

風「天乃が意識的に優劣付けられないとしても無意識に定めてる感じはあると思うわよ?」

夏凜「……まぁ、多少は」

風「あたし達は天乃が居れば幸せだし、天乃にとってもきっと、同じ」

皆がそばにいてくれることが、天乃にとっての幸せなんだから

役に立つとかならないとか

そんなことで曇っていたらきっと

天乃には叱られるだろうと風は思う

天乃はそういう子なのだと風は笑う

風「だから、あたし達はこれからも天乃がそばにいられるように頑張るのよ」


427 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/05(月) 23:56:38.135Tq2q4B1o (7/7)


東郷「そうですね。仮に夏凜ちゃんが弥勒家の人間を覚えていたとしても、きっとこの手順は変わらなかったはずですし」

樹「結局大赦の人達に駄目って言われちゃうと思うので」

夏凜が覚えていても、いなくても

結局、瞳のことを頼りにして

春信のことを頼りにして

そこから弥勒家の人間へと接触する

風「言っちゃえば、起点が違ってても落ち着くところに落ち着いちゃうもんなのよ」

だから落ち込んでいたって仕方がないのだと

今は瞳が連絡を終えて戻ってくるのを待てばいいのだと

風達は口をそろえて言う

夏凜「んな気にしなくたって大丈夫だっての」

樹「気にしてたのは夏凜さんですよ?」

夏凜「……悪かったわね」

風「アタシとの対応の差がひどくない!?」

風に対しては強く

樹に対しては甘めな仕草を見せる夏凜に不満の声を上げる風

いつもいる友奈と天乃の欠けた勇者部を見つめる東郷は

やはり、足りないのだと思う

東郷「久遠先輩……早く何とかして上げられたらいいのに」

逸る気持ちは一緒

だからこそ夏凜が分かっていても自分を責めてしまう気持ちを

東郷も樹も風も、みんな共感できる

あんな対策とは言えないような対策を知ってしまった今、なおさら

こうなるよりも早く何とか出来る何かがあったのではないか。と

東郷「でも……赤嶺の名しか聞かない時点で、弥勒家に関しては嫌な予感がするわ」


428 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 00:03:55.60OmNTud/9o (1/11)


√ 10月09日目 昼() ※火曜日

01~10 翌朝
11~20 夕方
21~30 
31~40 夜
41~50 
51~60 夕方 
61~70 
71~80 夜
81~90 
91~00 翌朝

↓1のコンマ  

※空白は翌朝以降


429以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 00:04:37.12Py4G8T1BO (1/2)




430 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 00:14:05.13OmNTud/9o (2/11)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


春信合流=夕方


431以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 00:19:21.47Py4G8T1BO (2/2)


重い展開が続いて緊張する
久遠さん治ったら毎日えっちなことしそうな夏凜ちゃん


432以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 00:20:57.01cyixuSvLO (1/1)


状況が状況なだけに早めに合流できたのはラッキーだったな
春信さん出番少なめな分今回も重要な役回りになりそう


433以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 12:22:47.99fqig87IFO (1/1)

いつの間にかさおりんの霊圧が消えてる…?


434 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 21:20:01.51OmNTud/9o (3/11)


では少しだけ


435以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 21:26:10.42zlEF6DWLO (1/3)

かもーん


436 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 21:32:46.75OmNTud/9o (4/11)


√ 10月09日目 夕(病院) ※火曜日


天乃の身体的および精神的な異常に関しての報告は

天乃本人を見て貰った方が早いという瞳の連絡に対して

春信は早々に手を打ってくれたらしく、夕方には会うことができるという

夏凜「……寒くなってきたわね」

春信が到着するまでの間

屋上へと忍び込む……忍び出ていた夏凜は

10月にしては肌寒く感じて身震いする

気温的にはそこまで低くないはずだが

脳裏をよぎる恐怖と、体を震わせる不安がそう勘違いさせるのかもしれない

夏凜「弥勒家……どんなやつだったっけ……」

その名前を耳にしたはずだし

記憶のどこかではそんな名前を言っていた誰かがいたのを覚えている

けれど、どんな顔どんな人物だったのかが

全く見当もつかないのだ

夏凜「確か、しきりに弥勒家の名前を出してた気がするんだけど……」

当時は勇者候補として集中していたのだ

他人に無関心とまではいかないが

ここにきてまで覚えているような相手でもなかったのだろう

夏凜「というより……こっちに来てからの内容が濃すぎたのよ」


437 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 21:50:15.54OmNTud/9o (5/11)


勇者の力を確かめようと讃州中学を訪れ、当時はへらへらしている腑抜けたやつだと思って叩き潰した勇者

その時は叩いたのは天乃だと思っていたのだが……それが友奈であり

車椅子に乗った状態の天乃にコテンパンに叩きのめされて。

夏凜「思い返せば私が今の状況に落ち着いたのって色々あれよね」

最初は逆恨みにも近い状態だったのが、

今や苦しんでいる姿を見る事さえ心苦しくなる

それだけ天乃は放っておくことができない人だったのだろう

夏凜「……ほんと、濃密すぎて一生分経験したって言っていいのかも」

こんな考えは絶対にしてはいけないと分かっている

だが、自分に陽乃の力がほんのわずかにでも流れているのならば

穢れを引き受ける身代わりになる適正はあるのではないか

もし何の対策も見つからなかった場合は

それも視野に入れるべきではないかと思う

夏凜「もちろん、最後まであきらめるつもりはないけど」

自分だけでなく勇者部が欠けたらそれこそ天乃の生きる理由が薄れてしまう

幸せではなくなってしまうとよく分かっているから

それでもどうしようもない場合は検討するべきだと、夏凜は息をついて

風「夏凜ちゃーん。春信さん。来たみたいよー?」

夏凜「今行く」

風「夏凜は天乃についてても良いのよ?」

夏凜「どうせ面会できないし……酷い状況らしいから天乃だって見られたくないわよ」

それなら早く話を聞いておきたいし

多少なりとも知っている自分もいるべきだと夏凜は言って

風と一緒に春信たちの場所へと向かう


438 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 22:06:25.09OmNTud/9o (6/11)


春信「……なるほど、君はやはりそちら側というわけか」

瞳だけではなく

全員が集まってきたのを確認した春信は

確かめるようなそぶりで瞳へと声をかける

瞳「今更なことです。それに、春信さんもこちら側では?」

春信「今語るべきことはそれではないのだろう?」

沙織「逸らしますね……」

春信に関しても天乃たちの味方だという認識があるためか、

沙織は楽し気に苦笑して、頷く

春信の立場的に天乃の味方であると言う発言はし辛いというのもある

今はそこに固執している場合でもないのだ

沙織「春信さんに単刀直入に伺います、弥勒家をご存知ですか?」

春信「ああ、知っているが」

樹「それなら教えてください! 会いたいんです……久遠先輩の体を治すのに必要なんです」

春信「彼女の……理由を聞かせて貰えるか?」

天乃にかかわることだと聞いた瞬間、

興味を持った素振りを見せた春信に一応は説明責任を持つ瞳が

天乃の体があまりにも調子が悪く

その原因が妊娠だけでなく穢れにもあると知って対策を調べたところ、

弥勒家の名前が出てきたから会う必要があるのだと。

風達から聞いた話をそのまま伝える


439 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 22:15:29.07OmNTud/9o (7/11)


春信「にわかには信じ難い話だが」

瞳「ですが、春信さんが先ほど確認されたように久遠様の症状は明らかに異常です」

春信「…………」

天乃という取り扱いに関して非常に慎重かつ確実でなければいけない妊婦の為に用意した

この世界で最も手馴れているであろう産婦人科医の人間ですら言葉を失うほどに

今の天乃の状況は極めて悪い

春信「本来、勝手に情報を開示――」

夏凜「ルールなんてどうでも良いわよ!」

東郷「夏凜ちゃん! 駄目よ!」

春信へと詰め寄った夏凜を制止しようと東郷が声を上げたが、

伸ばした腕はむなしく空を切って夏凜の体が春信へと肉薄する

夏凜「立場が大事だって言うなら脅されたとか、どうとか……好きに理由作ったら良いじゃない」

瞳「……夏凜ちゃん」

春信「しかし」

夏凜「言われなくたって分かってるわよ!」

声を張り上げる

今更大赦からの心象など知ったことではない

そう言いたげに兄であり大赦に与する春信を睨む

夏凜「大赦にとって私達は不適切な勇者。予め見初められた勇者部はともかく、非正規の三好夏凜は今後排除するべきだとでも言われてるんでしょ?」


440 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 22:26:52.83OmNTud/9o (8/11)


夏凜自身、自分よりも勇者になるべきだったと思う人がいる

その人も、天乃や勇者部にかかわったことで

以前は多少問題となったであろう対人関係も改善されているし、

勇者として戦うこと、勇者部の一員となることに問題はないはずだ

夏凜「別にいいわよ、勇者の権利なんて……守りたいやつも守れないやつが勇者だなんて笑い話にもなりゃしないっての……」

春信「…………」

夏凜「だから、教えて。弥勒家の人間がいる場所。弥勒家の人間に会う方法……お願い」

樹「わ、私からもお願いします!」

東郷「……もしも対価が必要と言うのであれば、この身になせることならばどのような事であろうと尽くします。ですから、どうか」

風「いや、天乃は副部長。なら対価は部長であるアタシが払います。だからお願いします」

沙織「あたしからも、お願いします」

願いを述べ、頭を下げる勇者の少女達

その対象となってしまった春信は少し困ったように眉を顰めると

傍らにいる瞳へと目を向けたが

瞳もまた、「お願いします」と言うだけで。

春信「……まず、話を聞いてほしいのだが」

東郷「何なりとお申し付けください」

春信「あ、いや……そうかしこまらなくて良い」

東郷「大丈夫です……男性が求める事を受け入れる覚悟はできています」

春信「は、話が進まないな。一度話を戻させて貰う」

動揺する心を落ち着けるようなため息をついた春信は

数分経ってからようやく、心の整理がついたのだろう

崩れかけていた言葉遣いは整っていた

春信「本来、情報を口外することは禁じられているが。彼女の力は未知数であり、その対策ということならば多少の融通をきかせることもできるだろう」


441 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 22:38:52.16OmNTud/9o (9/11)


樹「本当ですか!?」

春信「ただ、それには二つ条件がある」

東郷「やはり――」

風「東郷はちょっと黙ってて」

横やり封じをした風を一瞥して安堵の息を漏らした春信は

もう一度気を取り直して夏凜へと目を向ける

春信「そこには私も同席させてもらう。また、そこで得られた情報は大赦に共有する」

もしも天乃の力への対策があり

それが天乃にとっての致命的な弱点だったとしても

それを大赦に共有しなければいけないということだ

それはつまり、

場合によっては天乃のことを大赦が力技で押さえつけることもできるようになってしまうということだ

春信「それが許せるのならば、私も情報を提供しよう」

東郷「……それで構いません、異論も同じくありません」

樹「東郷先輩」

東郷「久遠先輩の力に関して個人で研究をするには限度がある。それなら、敵の手を借りてでも救う方法を見つけたいわ」

風「東郷の言うとおりね。リスクはあるけどリターンもある。なら、アタシは情報の共有に賛成する」

夏凜「……大赦は、天乃を救うことに力を尽くしてくれる保証がある?」


442 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 22:54:53.14OmNTud/9o (10/11)


夏凜の問いに、

春信は答えをためらいながら、首を横に振る

否定はしきれないが、肯定もできない

そして、どちらかと言えば……ざんねんながら答えはノーだ

春信「大赦は彼女ではなく世界を救うために彼女の研究をするだけだろう。保証は出来ない」

沙織「そうですよね……久遠さんの死がなんの被害も産まないと確定したら死なせる事さえ視野に入れそうだもんね」

もちろん一応は勇者であるため、そう簡単に死ぬことはない

だが、この体調の悪化の末に命を落とし

それがこの世界にとって災厄をもたらす様なことでないのならば

大赦は大の命の為に、その命を見捨てるだろう

春信「それでも、かまわないか?」

夏凜「弥勒家に接触するにはそれしかないんでしょ?」

瞳「無理に探すという手はあるけど、どれだけ時間がかかるか……」

後は春信を脅して口を割らせるかだが

そんなことをしてはきっと面倒くさいことになるだろう

だが、自力で探し出しているような余裕はまずない

ならば……

夏凜「共有してもしなくても天乃が不利とか……ほんと、この世界はどんだけ腐ってんのよ……」

この世界ではなく、

大赦という組織が。かもしれないが

ただの多くの命とただの一つの命を天秤にかけて考えれば

大赦の考え方も間違いだとは言い切れない

それが苦渋の決断ならの話だが。



1、情報共有する
2、情報共有はしない
3、春信を脅してでも情報を奪い取る


↓2


443以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 22:56:14.33zlEF6DWLO (2/3)

1


444以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 22:59:34.28T1s/SzzX0 (1/1)

3


445以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 23:05:39.72abweNH3P0 (1/1)

…結構キツい方向の選択っぽいけど、吉とでるか凶とでるか


446 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/06(火) 23:16:42.05OmNTud/9o (11/11)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「この体を貴方に渡しても」

東郷「心だけは絶対に渡したりしません!」

春信「いや、だから私は……」

東郷「あくまで私から奉仕させようと……くっ、姑息ですね……」

風「あー東郷。ややこしくなるから黙ってて、お願い」

東郷「こういう場合はこれが正しいと……」

風「よーくわかった。とりあえず記憶を供物に満開してきなさい」


447以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 23:25:35.21zlEF6DWLO (3/3)


安定のオマケの台無し感w
それにしても大赦の信用のなさ、夏凜ちゃんもせめて手加減してあげて…


448以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 23:59:35.09pFy+B0ajO (1/1)


脅迫とは穏やかじゃないな


449以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 08:16:42.3441OdYUFrO (1/1)

わざわざ大赦の協力によるデメリットも教えてくれた辺り夏凜たちを試しているようにもみえるけど…さてどうなる


450以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 17:22:30.03JAFwyTWz0 (1/1)

この前一周目を読み返したんだけど
一周目では平成の時代にバーテックスが現れたことで久遠家が三つに別れたって語られてたよね
大赦側の三ノ輪と中立の久遠とバーテックス容認派の無道ってやつ
無道家はバーテックスにやられてもう存在してないって言われてたけど
一周目と同じなら赤嶺とは何か関わりがあったのかな


451以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 18:39:14.13dejBftkeo (1/1)

この世界線は一族郎党皆殺しにされたんじゃなかったかな


452 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/07(水) 22:23:40.55aiGaZH17o (1/7)


では少しだけ


453以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 22:25:25.98ls/PkpqtO (1/1)

あいよ


454 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/07(水) 22:34:18.09aiGaZH17o (2/7)


夏凜「……ごめん」

春信「ッ!」

ぼそりと呟いた夏凜は、

不意をついて春信の襟ぐりを掴んで引き寄せると

膝裏に足を引っかけて強引に膝を折らせて――壁へと向かって春信の体を押し付ける

風「ちょ、何やってんのよ夏凜!?」

樹「夏凜さんのお兄ちゃんじゃないんですか!?」

夏凜「うっさい!」

実兄であることくらい分かっているし

これが本来やるべきではないことだとも

しっかりと分かっているつもりだ

けれど、そうしなければならない理由があると夏凜は言う

夏凜「天乃の対処法を知らないからこそ、大赦は手出しできないってのに……それが知られたら何されるかわかんないのよ」

東郷「その懸念は理解してるわ。でも、それでも久遠先輩を確実に救うには――」

夏凜「弥勒家の研究だけで完成してれば、大赦の手を借りる必要なんてない」

沙織「それはそうだけどね……」

ちらりと春信へと目を向けた沙織は、

ふと息をついて首を振る

天乃の精霊となってからはだいぶ疎遠となってしまっているが

それまでは巫女だったこともあって知っていることもあって。

沙織「残念だけどあまり過激な行動はしない方がいいと思うよ」

夏凜「そんなこと――」

春信「……本当に分かっているか?」


455 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/07(水) 22:49:18.55aiGaZH17o (3/7)


沙織へと反論を述べようとした夏凜の声を遮り、

春信は壁へと押し付けられる息苦しさに耐えながら目を向ける

兄である春信から感じる視線はいつも穏やかだった

けれど、今感じるのはどこか冷たくて

夏凜は一歩引いてしまいそうな足を何とか踏み留める

春信「すでに分かっている子もいるだろうが、君達の言動の責任はすべて君達ではなく彼女が負うことになる」

夏凜「は……?」

東郷「道徳教育を施された私達は本来なら大赦や神樹様に歯向かおうという考えには至らないわ」

もちろん、何か問題が起き

それが歯向かうに値する様なことであれば可能性はあるだろうが

滅多にあることではない

それこそ、天乃によって知らされた満開による代償

それを黙認され続けて行使してしまっているなど、今後の生活に直結してくるようなことなどだから。

東郷「けれど、私達は久遠先輩の為なら銃口や切っ先を神樹様に向けることも厭わない。でも、それは自命に関することだから当然と言えば当然」

沙織「でも思い出してほしいんだけど、勇者としての力がないクラスメイト達が大赦や神樹様に不信感を抱いて暴動を起こした。さて、それはなぜ?」

夏凜「それは」

春信「夏凜が今こうしているのと同じ理由だ」

それらはすべて、他人であるはずの天乃の為を思ってのことだ

神樹様に守られ、その加護に育まれ、

道徳を学び、善悪を教え込まれてきた少女たちが

詳細も定かではない他人の為に善であるはずの神樹様にでさえ歯向かおうとしたのだ


456 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/07(水) 23:02:44.68aiGaZH17o (4/7)


春信「あれには大赦の人々も穏やかではいられなかった」

瞳「私の聞いた話になりますが、一部では久遠様はバーテックス……つまり、天の神の遣いではないかという考えも上がっています」

風「そんな馬鹿なこと誰がっ」

春信「だが、現に彼女の存在は人々を大いに惑わし内乱にまで発展しかけるようなことも行われただろう?」

夏凜「……だから、大赦は天乃を救うつもりはないってわけね」

人類にとっての大事な戦力であることは大赦も重々承知していることだ

しかし、同時に世界を終わらせかけない非常に危険な存在であることもまた理解している

現状でも持て余しているそんな危険な存在は

動けない状況に陥ってなお周りの心を突き動かして内乱を起こさせようとしているとなれば

貴重な戦力ということなど簡単に塗り潰して有り余る危うさがある

春信「人々を狂わせ内部から崩壊させるバーテックスの策。そうではないと彼女の身を保証する何かが私達には用意することはできない」

樹「あんなに頑張って皆を守ってくれたのに……ですか?」

沙織「バーテックスはほぼ無尽蔵。だからパフォーマンスではないか。と」

東郷「……面白い冗談を言われる方々もいるんですね」

体を張り続け、ボロボロになってしまった天乃

それでもさらに頑張ろうとしていた彼女のそれがパフォーマンスだと口にできた人を殺してしまうのではないかと思うほどに

東郷は酷く冷め切った笑みを浮かべて車椅子のひじ掛けを握る

春信「問題は、彼女のその傷ついた状況が反乱を招いたことだ。それが彼女の責任となり汚名となって功績に泥を塗ってしまったんだ」


457 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/07(水) 23:09:12.30aiGaZH17o (5/7)


噛み締めた歯軋りと握りしめた拳の音

今にも怒号を上げそうな夏凜を前にして

春信はようやく自分の意志で悲し気な表情を見せると

自分を押し倒した夏凜の頭に手をのせる

こんなことをしたのはいつ振りか

そんなまだ平和だったころのことを思い出しながら。

春信「これ以上彼女の立場を悪くするわけにはいかないだろう?」

夏凜「でも……素直に協力を要請したら天乃の情報が洩れるんでしょ?」

春信「そうだ」

夏凜「それなら……それなら私は」

天乃と疎遠になるのだとしても

独断専行で突っ切って情報を得ることも厭わない

そう言おうとして、春信の懐かしい兄の笑みが見えて息を呑む

三好の人間として不出来だった夏凜

努力に努力を重ねてなお、不出来であると否定された夏凜

だが、春信だけは「良く出来てるじゃないか」と「凄いな」と

やることの一つ一つをほめてくれた

そんな兄の、笑み

春信「私の同行が認められないなら情報を渡すことは出来ない」

瞳「は、春信さ――」

春信「君たちが個人的に探しても無駄だろうし、我々も彼女に関しては最善を尽くす」

風「っ」

春信「……だから勇者部は安心して部活及び勇者としての鍛錬に励んで欲しい」


458 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/07(水) 23:24:21.27aiGaZH17o (6/7)


瞳「春信さん、それはあんまりでは」

春信「現状、勇者としてのお役目は休息となっているが、またいつ招集が掛かるか分からないのだ。準備は怠らないべきだろう」

樹「お兄さん……」

情報の共有をしないということにしたせいか

春信は大赦の一職員としての態度で接することにしたのだろう

さっきまでの夏凜の兄という雰囲気はかき消されていて

樹は思わず、一歩引きさがってしまう

春信「彼女が近いこの地域では集中できないというなら、宇多津にある臨海公園付近に足を運ぶのも悪くはないと思うが」

夏凜「臨海公園……?」

春信「少し離れてはいるが、彼女に車を出してもらえばすぐに着く」

東郷「お言葉ですが、私達は久遠先輩の体について調べるつもりです。鍛錬なんてしている余裕はありません」

冷静なように聞こえるだけだ。

冷静さを失った怒りの満ちた声色に気付いて風達は身震いしたが、

春信は我関せずと息をつく

春信「やはり、君たちはまだ中学生の少女だな。考えが足りていない」

東郷「ッ!」

春信「それでは一部の有効手段に惑わされてそれが引き起こす惨事にまで考えが至らない。非常に危険だよ」

沙織「……春信さんが言うことにも一理はあるかな。あたし達は久遠さんを救うためだって一生懸命になりすぎて冷静さを欠いてると思う」


459 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/07(水) 23:47:33.96aiGaZH17o (7/7)


風「沙織までそんなこと言うなんて」

沙織「事実、多少血迷った考えを持った子だっているよね?」

東郷「…………」

大赦や神樹様に牙をむくとか

いっそこの世界を滅ぼしてしまおうだとか。

そんな考えの一端にでも触れることがなかったのかと聞かれれば

答えをためらうような経験がそれぞれにあって。

沙織「そこはあたしも自信をもって否定できないけどね」

東郷「大赦は私達に満開による後遺症を話さないという一時の偽りを用いていたと思いますが」

春信「それは耳が痛い話だが……」

風「友奈がいないのがここまで辛いとは」

友奈が居れば、

ここで殺気立った空気をなだめる何かをして見せてくれるのだろうが

残念ながらまだ戻ってきていない

だからと言って放置すると

夏凜に代わって東郷が殴り掛かりそうな不安がある

東郷「そもそも、私達が大赦を信じられなくなったのはそう言ったことがあるからです。それをさも私達が……いえ、久遠先輩が悪いなどと……」

樹「東郷先輩……少し落ち着いた方がいいと思います」

東郷「っ……」

樹の小さな手に手を掴まれて、

東郷は続けかけた口を閉ざして樹へと目を向ける

樹は少し引っ込みながらではあるが

東郷の手だけは離さずに、首を振る

樹「大赦の人を信じろって言われると難しいですけど。でも、夏凜さんのお兄さんは夏凜さんのお兄さんですから」


460 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/08(木) 00:00:13.56PY+mOFSvo (1/7)


夏凜「ちょっと良く分かんないんだけど」

風「ツンデレの兄もまたツンデレって話じゃないの?」

樹「それは違うよ」

風「ごめん」

ほとんど適当に言ったことだが、

即答で否定されては流石に落ち込むと言わんばかりにしょんぼりと呟く風を横目に

春信は夏凜へと向き直る

春信「そういうことだ。私は協力することはできない」

瞳「夏凜ちゃんのことを思うなら弥勒家と会わせてあげてもいいじゃないですか」

春信「私にも立場というものがある。今の為に今後を切り捨てることは出来ない」

瞳「守りたいものも守れずに得る未来に意味はあるんですか?」

春信「なら、その未来にある守るべきものはどう守ればいいと君は考える?」

瞳「…………」

春信「理想を掲げるだけではどうしようもないことばかりなんだ。分かるだろう夏凜」

瞳ではなく、夏凜へと声をかけた春信は

すっかり緩くなった夏凜の拘束から逃れて立ち上がると

春信「私はこの後も用事があるので失礼する。ここでのことはなかったことにするが、これからは気を付けて欲しい」

一言忠告を述べただけで

部屋を出て行ってしまった


461 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/08(木) 00:13:38.56PY+mOFSvo (2/7)


東郷「……見損なったわ」

風「そりゃ、立場が大事だって言うのもわかるわよ? でも……」

樹「勇者部のボランティア活動で知り合った人たちにも協力をお願いしてみるのはどうでしょうか」

勇者部のホームページ

そこに記載して助力を求めたり

弥勒家の人間に関する情報を集めるという作戦だ

あまり悠長なことは言っていられないが

やみくもに探すよりはいいかもしれない

そう賛同する東郷の傍ら

大赦に所属する一人でもある瞳は少しためらいながらも踏み込んで

瞳「私は春信さんをもう一度説得しに行きます。こんなの認め――」

夏凜「いや、それよりも明日……宇多津の臨海公園に連れて行ってくれない?」

瞳「え?」

風「ちょ、本当に鍛錬しに行くつもり!?」

夏凜「まさか」

風の戸惑いに苦笑いを浮かべながら否定した夏凜は

春信が去っていった方向を見つめながらため息をつく

夏凜「兄貴はいつだって私の味方だった。それは今でも変わらない……だから私は唯一明確に示した場所は行く価値があると思う」

宇多津の臨海公園

そこで何があるのかは分からないが

きっと何かがあるはずだからと、夏凜は春信を信じてそう口にした


462 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/08(木) 00:14:34.42PY+mOFSvo (3/7)


√ 10月09日目 夜() ※火曜日

01~10 九尾
11~20 若葉
21~30 
31~40 
41~50 友奈
51~60 
61~70 
71~80 夏凜
81~90 
91~00 千景

↓1のコンマ  


463以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/08(木) 00:15:41.94B1mj0HhRO (1/2)




464以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/08(木) 00:16:24.83HlDgBHRcO (1/2)




465 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/08(木) 00:21:26.95PY+mOFSvo (4/7)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃の為の行動が天乃を追い詰めるという理不尽な流れ


466以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/08(木) 00:25:23.85B1mj0HhRO (2/2)


原作にもありそうでないタイプの鬱展開だな
こうなったら春信さんの不器用な優しさを信じるしかないか…


467以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/08(木) 00:27:31.05HlDgBHRcO (2/2)


負けるな久遠さん


468以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/08(木) 00:34:31.67QNC3tnPSO (1/1)


宇多津の臨海公園ってくめゆで夕海子がティータイム楽しんでた場所だったような…


469以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/08(木) 08:15:41.54TpKIt2jLO (1/1)

ヒヤッとしたけどヒントらしきことを教えてくれたみたいだな
春信さんの話聞く限り協力したらむしろ不味いことになってたっぽい?


470 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/08(木) 22:43:53.08PY+mOFSvo (5/7)


では少しだけ


471以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/08(木) 22:44:41.914sBIuUb/O (1/1)

よしきた


472 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/08(木) 22:58:59.68PY+mOFSvo (6/7)


√ 10月09日目 夜() ※火曜日


千景「…………」

もう動くことさえ出来なくなってしまった天乃は

無機質なリズムを奏でる医療機器に囲まれ、

時々体を強張らせて吐血する

声をかけても、手に触れても反応がなく

瞼を閉じているため起きているのかどうかも分からないが

ただただ、苦しんでいるのだけが分かる

それに対し何もできないもどかしさに眉を顰める千景は

ふと、気配を感じ取って口を開く。

千景「……帰ってくるの遅かったわね」

若葉「すまない。春信さんとの話についてはさっき聞いてきたよ」

天乃の傍にいた千景たちも後から話を聞いたが

その時にさえ戻ってきていなかった若葉は

疲れを感じさせる声で謝罪を述べると、

生命維持装置らしき機械に繋がれた天乃を見つめて首を振る

千景「結城さんは?」

若葉「もう病室に戻っている」

千景「……久遠さんの実家で得られたものはあったの?」

若葉「どちらかと言えば、あったといえるが」


473 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/08(木) 23:25:24.19PY+mOFSvo (7/7)


あいまいな返答で口を閉ざした若葉へと千景が振り返ると

若葉は浮かない表情のまま天乃を見つめていた顔を上げて千景へと目を向ける

ためらいを感じるその瞳には羨望を抱かせた力強さは感じられない

若葉「話すべきではないような気もするんだ……」

千景「結城さんにも口止めを?」

若葉「友奈は何も聞かないでくれたんだ。言えないと思うなら大丈夫ですから。と」

流石友奈というべきか

本当は気になっただろうし不安にもなったはずなのに

何も聞かず、何も言わせなかった友奈のことを千景は考えて

千景「なら、私も聞かないべきかしら?」

若葉「……いや、すまないが聞いて貰えるだろうか。友奈は普通の少女だが、私達は精霊だ。彼女の為にも知った方がいい可能性がある」

千景「穏やかじゃないわね……良いわ。屋上に行きましょう」

夜のこの時間は屋上へと出る扉は施錠されているため

本来ならば出ることは不可能だが

精霊である若葉たちにはそんなことは関係ない

ゆえに、人に聞かれないほうがいい話をするには最適だった

若葉「すまない。助かる」

千景「いちいち謝る必要はないわ。貴女は悪いことをしているわけではないでしょう?」

若葉「そうなんだが……すまな……いや、ふふっ、気づけば口癖になっていた」

またしても謝りかけて千景に見つめられた若葉は

苦笑しながらそう呟いて首を振る

笑ってなお、心に抱いた不安が解消されることはない


474 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/09(金) 00:19:00.23BGo3WQrEo (1/10)



千景「嫌な空気ね……神樹が相当弱っているということかしら」

屋上につくと、不快にしか思えない纏わりつくような風を肌に感じて

千景は自分の体を抱きしめながら振り返ったが

若葉は感じなかったのだろう

悩まし気にどこかを見つめていた視線を千景へと向ける

千景「乃木さん?」

若葉「……前提として私達は陽乃のことを、久遠家のことを一般社会に復帰させることはなかったことを覚えておいてほしい」

千景「その時点で疑問があるのだけど……続けて」

若葉「続けたいところはやまやまなんだが……ここで一つ問題が生じたんだ」

若葉は打つ手なしとでもいうように困り果てた苦笑いを浮かべて

若葉「実は、久遠家がどのようにして民間に利用される神社になったのかがまるで分らないんだ」

千景「どうして? 聞いた話、75年に書かれた五代目の文献があったのでしょう?」

若葉「75年の五代目の文献があったのではなく、【そこからしかない】んだ」

5代目ということはそれ以前が存在していたはずだし、

多少なりと何か情報が残っていても良いはずなのに

それ以前の情報が欠片ほどにも存在していなかったのだ


475 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/09(金) 00:42:56.44BGo3WQrEo (2/10)


千景「……どういうこと?」

若葉「それが分からなかったんだ。天乃の母親の母親。つまり祖母なら知っている可能性は高いと言われたが……」

久遠家は民間に近しい神社を営む一族ではあるが

大赦の中でも有力であり、祖母は春信以上に入り込んだ立場にいるため

そう簡単に話をすることは出来ないのだ

精霊の力を用いて忍び込むことはできるが

それで状況が好転するはずもない

千景「なら結局、75年前後のわずかな記述しか分かっていないという状況からは何も変わらなかったのね?」

若葉「少なくともそれ以前の記録が抹消されるような悪いことが起きたということだけは分かった」

千景「…………」

若葉「そう不快そうな顔をしないでくれ……私もこんな報告しかできないとは思わなかったんだ」

ならしなければよかった。と言われればそれまでだが

久遠家の過去を遡ろうとしているこの状況で

昔に、少なくとも何かよからぬことが起きた可能性があるという情報を隠すのは悪手だと若葉は思ったのだ

情報の良し悪しに関わらず情報共有は必須であることは千景も分かっているからか

軽く首肯して、目を伏せる

千景「75年の五代目そして、72年の事件……乃木さんは本当にさかのぼるべきだと思う?」


476 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/09(金) 01:20:58.99BGo3WQrEo (3/10)


若葉「知りたいのは事件の方ではなく、五代目や協力者の弥勒家が行った穢れの回避方法だ」

千景「でも、それが結局隠された五代目や72年の事件を引き出してしまうことになる」

改訂されてしまっている教科書にでさえ残る大事件は

その文面だけ見ても良くないことが起きてしまったと分かるような悪い歴史

だが、そこには書かれていないもっと凶悪な何かがそこには隠されているはずで

勇者部がそれに触れ、呪いのように伝播していってしまうことを不安視して、考えを述べる

千景「私が思うに、久遠家の神社はただの神社ではないわ」

若葉「……大赦とつながりがあるからか? 久遠家だからか?」

千景「違うわ……久遠家はバーテックスに縁ある血筋であるとあの時代は言われていたでしょう?」

そして今もまた言われ始めてしまっている。と

千景は考えて言葉を組み立てながら

まるで歴史の再現をしているようで不気味なのだけど……と、こぼす

千景「今の久遠さんは人望によって周りの心を突き動かしているけれど……神樹信仰の視点から言えばそれは異端」

若葉「つまり、何が言いたい」

千景「教科書にも載っているカルト団体による凶行と、その突き動かされた私達の反乱や奮闘は過程や結末は違えど似ていると思わない?」

若葉「……千景はつまり、こういいたいのか」

口にしたくないと思いながら

答えを得るためには言うしかないのだと若葉は引き絞った唇を重そうに開いて言葉を紡ぐ

若葉「72年の凶行は久遠家によって引き起こされ、中心となったからこそ久遠家は民間の神社として現代まで続いていると」

千景は頷くと「あえて付け加えるなら」と前置きして

千景「バーテックスに魅入られ通常では鎮まることの出来なくなってしまった魂を鎮めるための異空間だと私の中の死の力は感じているわ」


477 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/09(金) 01:28:43.71BGo3WQrEo (4/10)


まだ途中ですが時間が時間なのでここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

余裕があれば続き分のみどこかの時間に流すかもしれません


478以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/09(金) 05:19:58.47ORrb1w+UO (1/1)


夜遅くまでありがとうございます


479以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/09(金) 06:53:21.11EWcbnXspO (1/1)


久遠さんの知らない間に話がどんどん大事になっていくな…


480以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/09(金) 17:15:27.49Jrzr3sc3O (1/1)

そりゃ久遠さんはメインヒロインだから仕方がない


481 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/09(金) 22:13:25.76BGo3WQrEo (5/10)


では少しだけ


482以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/09(金) 22:19:11.34gm6BHpLPO (1/3)

かもん


483 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/09(金) 22:30:39.46BGo3WQrEo (6/10)


若葉「そんなことがあり得るのか……?」

千景「あり得ないとは言えないというだけの話よ。乃木さん」

もちろん、勘違いの可能性もわずかでは存在すると千景は思う

自分の力に関しての自信はあるが

だからと言ってそのすべてを掌握しきれているわけではないのだ

まだ扱いきれていない力である以上

感じ取ってしまっている何らかの感覚が

自分がそうだと思ったことと一致しているとは限らない

千景「それに、私が借り受けている魂に干渉する死神の力によってそんなことになっている可能性もあるわ」

若葉「死神の力か……強い思念を持つ霊魂は良くないことを起こすという話もあったな……」

千景「いずれにしても思っている以上に久遠家の闇は深いのかもしれないわ」

若葉「弥勒家に関しても覚悟をしておけということか」

若葉の問いに満たないつぶやきに対して千景は肯定するように頷いて息を吐くと

夏場の蒸し暑さのようなまとわりつく不快感がより酷さを増していくように感じて若葉へと目を向けるが

やはり、感じていないのか

それともただ鈍感なだけなのか、若葉は変わらず平然としていた

千景「歴史から抹消されたということはつまり、弥勒家もまた良くないことに見舞われたということ」

その歴史が残っており、

現代にまで伝わってきているのだとしたら

千景「弥勒家は久遠家に対し計り知れない憎悪を抱いている可能性もある」


484 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/09(金) 22:42:20.09BGo3WQrEo (7/10)


若葉「ま、まさかそんな」

千景「ないとは言い切れないのが恐ろしいのよ……乃木さん」

弥勒家に何かが起こり

その原因が久遠家に通ずるということが伝わっていることが大前提の話

そうそうないとは思うけれど。と

千景は後から続けて

千景「今ある久遠さんの神社に接触していれば神社にいった時点で弥勒家の情報を得られるはずよ。つまり、関係は途絶えていると私は推測するわ」

若葉「確かに、天乃の母親は知らない様子だったが……千景。それなら態々そんなこと言わなくてもよかったんじゃないか?」

千景「可能性の一つとして頭の片隅には置いておくべきでしょう?」

良いことは当然

悪いこともしっかりと考えを話しておかなければ

その事態に直面した際に戸惑ってしまうし

悪い方の考えとはいえ

そうなった場合の対策も考えておくべきだと千景は思う

千景「とにかく、出来る限り昔の事には触れない方がいいわ」

若葉「それが難しいから言われると困るんだが……警戒はしてこう」

けれど

天乃を救うためならば過去に触れることは躊躇わないだろうと若葉は呟いて

千景に背を向ける

若葉「そろそろ戻ろう。明日は宇多津の臨海公園に行くらしい。良ければ千景も来てくれ」

千景「遠慮しておくわ。久遠さんが心配だから……そっちは乃木さんに任せる」


485 ◆QhFDI08WfRWv2018/03/09(金) 22:57:38.80BGo3WQrEo (8/10)


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流無()
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()
・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()


10月09日目 終了時点

乃木園子との絆  67(高い)
犬吠埼風との絆  96(かなり高い)
犬吠埼樹との絆  82(とても高い)
結城友奈との絆  102(かなり高い)
東郷美森との絆  112(かなり高い)
三好夏凜との絆  133(最高値)
乃木若葉との絆  94(かなり高い)
土居球子との絆  40(中々良い)
白鳥歌野との絆  42(中々良い)
藤森水都との絆  34(中々良い)
 郡千景との絆  40(中々良い)
  沙織との絆  114(かなり高い)
  九尾との絆  62(高い)
  神樹との絆   9(低い)


※天乃との直接の交流はありませんでした