207 ◆zJZqNVVhtuCN2018/01/27(土) 02:30:08.06WitPJlKy0 (4/5)






 - 独りで酒飲みかぁ…エミリアの帰還祝いをライザと祝うつもりだったけど、しゃーない、か… -






彼女は賑やかな雰囲気や盛り上がる事が好きだ


宵が深まれば輝きを増すネオンの煌めきも、この暗黒街の喧騒――住んでいる人々の営み―――も好きなのだ




どうにも湿っぽい空気というのは性格上、嫌いで…寂しがりなのかもしれない



酒は飲めば、気分が高揚してくる

嫌な事も辛いことも一時の思考の揺らぎに任せて投げだせる、だが、親友と隣同士、語り合って飲む酒は何よりも旨いのだ




身内を養う為、命を担保にして出稼ぎを行う人生を選んだ彼女が明日を生きていく上で学んだ事だ


誰かと飲んでふざけ合って、愚痴を聞いたり言い合ったり、それこそが最高の肴なのだと






アニー「他の連中もみーんな、次の作戦に備えて他所のリージョン…船は動かないから当然帰ってこないし、参ったわね」




ガサガサと両手のビニール袋が音を鳴らす、デザートを買おうにもお気に入りの物が売り切れていたから
多少、出費が上がるが一度荷物を置いて近場のコンビニエンスストアで適当に洋菓子でも買って行こう


ぼんやりとそんなことを考えながらアニーはイタ飯屋へと向かっていた





        その矢先である…




リュート「んじゃ!またなブルー!ほら行こうぜスライム!(金塊で)臨時収入も入ったから飯たらふく食わせてやるよ」

スライム「ぶくぶく…(´・ω・`)」シュン


ブルー「やれやれ…そいつを連れてさっさと行ってくれ」スタスタ




アニー「…ブルーに、リュート?何、アイツ等知り合いだったの?」ハテ?


アニー「…」

アニー「!!…ふふ!暇そうな奴みーっつけた!」ニヤリ




酒というのは誰かと飲んでこそ楽しい物である

  特に普段スカした態度の奴が酔いつぶれて醜態を晒せば、それは最高の笑いの種(酒の肴)になる



208 ◆RUyHyPiEvo2018/01/27(土) 02:37:42.71WitPJlKy0 (5/5)

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                                        , ソ , '´⌒ヽ、
                                 ,//     `ヾヽ
                                 ├,イ       ヾ )
                               ,- `|@|.-、      ノ ノ
                           ,.=~ 人__.ヘ"::|、_,*、   .,ノノ
                        , .<'、/",⌒ヽ、r.、|::::::| ヾ、_,ニ- '
                       〈 :,人__.,,-''"ノ.。ヘヾi::::::ト
                        Y r;;;;;;;;ン,,イ'''r''リヾヽ、|;;)
                        ヽ-==';ノイト.^イ.从i'' 人
                         .ヾ;;;;;イイiヘr´人_--フ;;;)
     .,,,,,,,,,,,,,,,,,,,.    .,,.          ヾ;;;|-i <ニ イヽニブ;;;i、
   ,,,'""" ̄;|||' ̄''|ll;,.  ,i|l          ,;;;;;イr-.、_,.-'  ./;;;;;;;;i
  ,,il'    ,i||l   ,||l'  ,l|' ,,,,,. .,,,, ..,,,,,,   (;;ヾ'ゝ-'^    ,.イ;;;;;;;;;;;ヽ
  l||,,.    l|||,,,,,,;;'"'  ,l|' ,|l' .,|l .,,i' ,,;"   ヽ;;;||、_~'   .|`i;;;;;;;;;;;;;|
  ''"   ,l||l""""'ili,,.. ,|l .i|' .,i|' .,||'",,. .,,.  |;ノ|_`"'---´ゝ  `_'''''''r-、
 =======,|||=====||||=≡=≡≡=≡==≡= ~ リヽ`<二入oiン ' ン,人ヽ`ヽ、_
      .,|||'   .,,,i|ll'              /::::::/ヽ-ニ=ii@ く´  ゞ\;、_、`;ヽ、
    ''''''''''''''''''''''''''              /::::::/  .`'´ ヾヾヽ-、__ `゚  ""'''''''
                       /::::::::イ  |    .ヾ 、 `ヾ=、'
                     /::::::::/i´「`-、|     \\_,_._ンヽ- 、
                    <::::::::::::/ | └、 |      `ブ <ヽ、'~
                     レノ-'  |`-、、__ ト、、_, -' ´ _,ノヽ~
                          ~` -、、フヽ、__ ,, -'´ ̄ル~'
                            ヘ`~i、 ̄ ̄リ ノヽ ̄~
                            `|;;;;;;|ヽ~-←-ヘ
                             |;;;;;|    ヽ- ┤
                             l::::人    .ヽ  .|
                             ///     ヽ .|
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                           ` ̄        .ト、 .ヽ
                                      ヾ、.A
                                       .ヽノニ'






              今 回 は 此 処 ま で !!





                次回!飯テロ(酒飲み)回!



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209以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/01/27(土) 13:42:18.72azD7lB7YO (1/1)

ブルー逃げてー!


210以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/01/27(土) 16:08:12.80rTEAR8ByO (1/1)

いやむしろ捕まってしまえブルー!


211以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/12(月) 00:36:41.79ADsMexAi0 (1/1)

続きまだー


212以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/20(火) 22:48:19.37uP7l6IcA0 (1/1)


―――
――



ブルー「しかし…あの男が居なければこうも短期間で金を工面することはできなかったのも事実か」スタスタ



 バチバチ、と消えかけのネオン看板の下で座り込んだ浮浪者の視線が突き刺さる
荒んだ眼差しが注がれているのは彼の片手に引っ提げられた黒いアタッシュケースだった…


[ネルソン]で購入した金塊を無法都市[クーロン]で売り捌いたのだ、当然ながら"鼻の利くハイエナ"達の間ですぐ噂になる

 近場の店で売られていた黒革のケースに眼を惹かれた彼は財布に到底収まらない額のクレジットを収納する為に
即決で買い取り、札束を入れ店を去った



世間知らずの魔術師お坊ちゃんをお金に困った方々が、これまたよろしくない感情の入り乱れた眼差しで見送った










…スライムとリュートが一緒だったため手出しはしなかったが

単独である今の彼はまさしくサバンナの真っ只中を歩く高級和牛肉と同じである、後ろからブスリとやって金を盗るだけだ










ブルー(…チッ、汚らわしい)


ブルー(人をジロジロと、敵意と欲望の籠った目線…本当に汚らしい、俗物共め)






 彼とて殺意に気がつかない訳では無い…襲い掛かって来ようものならその場で焼殺死体に変えてやろうくらいの気がある

さて、どうしてくれようか?そう考えていたら…殺意とも敵意とも違う、…欲望は含まれる声と視線が背後から掛けられた










           アニー「ブルー!!良い所であったわね!」タッタッタ!




ビニール袋引っ提げた金にがめつい女が、良からぬ事を考えながら走って来たのだ…



ここ、九龍街で喧嘩を売るとヤバい奴リストに含まれる裏組織の女が

つい最近も数人の男をぶちのめして刑務所送りになったばかりのヤバい奴が、だ

その姿を確認してある者は舌を打ち、ある者は苦々しい思い出をぶり返してブルーの尾行を止めた
 アニーの知り合いであり、金を持っている人物から金品を毟り取るという行為は…
自分のタマを投げ捨てるようなモンであると、金と命を天秤に掛けて割りに合わないと判断したのだろう



213以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/20(火) 23:28:43.16vkrsvmLpO (1/1)

キター


214以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/20(火) 23:58:50.44NdDuEhDAo (1/1)

アニーの獲物を横取りとか遠回しですらない自殺という暗黙の了解さすがです


215以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/21(水) 00:08:58.04FhNODQ0S0 (1/2)





 ブルー「貴様か、アニー…」(すごく嫌そうな顔)


 アニー「何よ、その顔」



 アニー「ってか、その鞄どうしたのよ?随分良いモンじゃん」




本革製のアタッシュケース、それはビジネスに成功した経営者のトレードマークと言っても過言ではない

 安物の鞄ゆえに『間違って知らない誰かの鞄と取り違えましたー』などと言った不測の事態を
避けるという理由もそこにはある、値が張るものであればあるだけ仕事上の大事な書類の入った鞄を見失うリスクも減る


儲けている人間程ブランド品を好むが、何もただ単に成金趣味という訳では無いのだ




…このような土地では逆に悪手かもしれんが





ブルー「あぁ…これか、丁度良い嵩張るからな貴様にさっさと渡してしまうか」

アニー「はぃ?」




ブルー「ほら、約束の金だ、[ディスペア]への潜入に必要な費用、先日の礼代わりの船賃もそろって入ってるぞ」




アニー「…なっ!アンタ、マジで用意したワケぇ!?」ガーン


ブルー「…貴様が要求したんだろうが、要らんなら別に良いんだぞ」イラッ


アニー「あぁ!!嘘嘘、要るから!…っつーか見ろって!アタシ両腕塞がってるじゃん!」つ『ビニール袋』

ブルー「むっ」




アニー「はぁ…参ったなぁ、あわよくばアンタに荷物持ちさせようって思ってたのに」

ブルー「そんなこと考えってたのか貴様」




アニー「でも、そうねー…金払いの良い客はアタシ好きよ、特別に飲み会に付き合わせてあげるわ!」ニィ!



勿論、あたしの奢りで酒も飯も食わせてやる、感謝しなよ、などと言い出したが、むしろそれが本命である

べろんべろんにブルーを酔わせて、ダウンしたところを壮大に笑ってやろうと思っている
気前のいい客だから気に入った、酒と飯を奢ってやると一見善意に見えて相手を後々小馬鹿にするための口実を作る気だ



アニー「ほら、昨日イタ飯屋覚えてるでしょ、そこ行くわよ」ダッ!


ブルー「あっ、おい!」タッタッタ!


アニー「その重たい鞄でいつまでも手を塞ぎたくないんでしょ!なら置いて手も自由になる一石二鳥じゃん!ほら早く!」




216以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/21(水) 02:51:14.10FhNODQ0S0 (2/2)



―――カラン、カラン





ブルー「ほう?中々悪くない店じゃないか」





『Close』そう書かれた札付きの戸を開錠して、店内へ脚を踏み入れた蒼の術士の感想は好意的なモノだった


 入口から入ってすぐの所にイーゼルに掛けた黒板があり、描いた者は絵心があるのだろう素人目から見ても
才あるデザインのチョークアートが施されていた

 赤茶色の床タイルは仄かに薄暗い照明に当てられて雰囲気が出ていてカウンター越しに見える
石窯や木製ピザピール・パドル等調理器具への拘りも見て取れた


厨房奥では当店自慢のミートソースが仕込まれて、置いてあるのだろう何やら良い匂いがした


 四枚羽の天井扇風機<シーリングファン>によって効率よく室内に行き届いた暖房の温かさは夜は冷え込みの増す九龍街を
歩いてきた来店客への気配りが行き届いていた




アニー「よっと!さぁ~てブルー、どうやって一日で大金稼いだのよ?銀行強盗でもしたの?」クスクス

ブルー「おい、人聞きの悪いことを抜かすな」


ムッ、と眉間に皺を寄せて不機嫌を露わにする男に「冗談だってば、カリカリすんのはカルシウム足りてない証拠よ?」と
ビニール袋をカウンターレジの横に置いてアニーはケラケラと笑う



アニー「でさぁ、悪いんだけど中身だけ確認させてもらって良い?職業柄ね、こーいうのって見とかないいけないのよ」



偽札をつかまされたり、ずっしりと思い鞄をいざ開けてみたら中身は札束じゃなくその辺のスーパーのチラシの山でした
なんてことがザラなのが裏稼業というモノだ


ブルー「ふん、勝手にしろ」ドサッ


アニー「はいはい、じゃあお言葉に甘えて勝手にさせてもらいますよーだ」カチャッ パカッ!




    札束の山『 』




アニー「…」スッ


アニー「…本物みたいね」

ブルー「当たり前だ、前金で払ったんだ…仕事はしてもらうぞ」



アニー「OK、契約成立よ…代金はしっかり頂いたわ」


アニー「どうやって稼いだか知らないけど、実の所助かったわ…急遽明日までにシップの乗船代が欲しかったのよ」

ブルー「なんだと?」


アニー「友達が今色々あって[マンハッタン]に居るの、その子が連れを3人連れて[クーロン]に帰りたがってたのよ」

アニー「なんにしても助かったよ、自分のポケットマネーから立替たとしてかなり今月ピンチになる所だったわ」



217以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/23(金) 22:02:27.91HsaKbXJw0 (1/5)




その鞄諸共くれてやる、無駄に重い荷物を手放す為にブルーは彼女にそう言い放つ

その言葉にアニーはヒューッっと口笛を1つ、彼の持って来たアタッシュケースをレジ裏に置いて飲み会の準備を始める






アニー「っと、そうだったわね」ハッ!

アニー「あたしのお気に入りのデザート売り切れてたからコンビニ行こうと思ってたんだ、ねぇ!」


ブルー「なんだ」


アニー「お高い鞄を丸ごとくれた釣銭って訳じゃないけどさ、アンタもなんか奢ってやるからついてきなよ」

ブルー「荷物持ちなら御免だが」

アニー「わぁってるっての!」



カランカラン…!



 イタ飯屋の出入口を1組の男女が出てベルが鳴る、鍵を一度施錠し戸締りを確認したうえでアニーを先頭に歩き出した
魔術師はルーン探しの為に一通りこの無法都市を散策したものの地元民と比べれば圧倒的に土地勘が劣る


 徒歩10分もしない内に二人がとある店舗に辿り着く、緑、白、空色、3本カラーリングの横縞が印象的な看板灯が見えた
幟が立ち並ぶ店先には『家庭ごみの持ち込みを固くお断りします』と書かれたゴミ箱が綺麗に並び
その隣には煙草に火をつけながら屯うガラの悪い若者が座り込んでいた






ブルー「」ポカーン…キョロキョロ


アニー「ん?なんか欲しいモノでもあったわけ?」


ブルー「いや…この『"こんびにえんすすとあ"』とやらは…随分と変わった店なのだな、と」キョロキョロ







[マジックキングダム]にはコンビニという物が存在しない

異文化交流…ちょっとしたカルチャーショックを受ける魔術師、慣れた手つきで緑の籠に次々と甘味を放り込む女
なんとも奇妙な組み合わせであった


ブルー(…なるほど、確かにこの街は人口が多いし生活リズムも皆バラバラだ)

ブルー(24時間営業でも利用客はある程度確保できるか、人数も必要最低限で人件費も――)う~む








アニー(…こいつ、何そんなに難しい顔してんの?、そんなにコンビニが珍しい文化なのかしら)ヒョイ、ガサゴソ






218以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/23(金) 22:30:10.80HsaKbXJw0 (2/5)





ブルー「むっ!!!」




『プッチンプリン』



ブルー(カスタードプティングか…)ジーッ



アニー「何か欲しいモンでもあった――――ぷっ!!」



不愛想な男が棚に置いてある商品を1つマジマジと眺めていた、何かと思えばそれはお子様なら誰もが喜んだことだろう
お皿にひっくり返してポキッ!とやるあの3個入りのプリンだったのだ


アニーは思わず笑いそうになって口を手で押さえた(堪えきれなかったが)





ブルー「…なんだ、貴様悪いか」ギロッ


アニー「…くっ、ぷぷ、…い、いえいえ、なぁ~んにも悪ぅございませんよ?人それぞれですし」プッ ククッ…





 [ドゥヴァン]のカフェで砂糖とミルクたっぷりの珈琲を褒めちぎったストレスを貯め込みやすい優等生は迷わずプリンを
アニーの籠に入れてやった


レジで会計を済まし二人は荷物を置いてきたイタ飯屋前へと再び戻る、アイスクリームを購入した事もあって若干急ぎ足で
帰路についた彼女は鍵を開けて店内に入る…その彼女の後ろを根に持ったてるのか膨れっ面の魔術師が追う



アニー「…」

アニー「」チラッ





ブルー「…人が何を喰おうが勝手だろうが…そもそも、それを言えば…」ブツブツ






アニー「…」




 - なんだよ!姉ちゃんに関係ねーじゃん! -

 - うるせぇよ!好きなモンは好きなんだし仕方ねーじゃん!ふんだっ! -




アニー「そういうとこ、似てんのよね」ボソ

ブルー「は?」


アニー「なんでもないわ」





219以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/23(金) 23:17:30.77HsaKbXJw0 (3/5)

―――
――





ストトトトトト…!

ストンッ!




アニー「ほいっ!一丁あがり!」つ『生野菜スティック』


人参、大根、胡瓜、セロリ、買ってきた野菜を5㎝ほどに均等に切り分け、透明なグラスカップに入れておく
小皿にそれぞれマヨネーズとケチャップ…オーロラソースを乗せて運んでくる


テーブルの上には半額シールの惣菜たち…焼き鳥だったり、コロッケや胡椒を利かせたイカ下足炒め
麻婆茄子と皿に薄く切り分けたチーズやハム等が並べられた




ブルー「アニー…これは、どうやって飲むんだ?」つ『缶チューハイ』

アニー「はぁ?どうって…普通に開けて飲むんだろ」



ブルー「…俺は生まれてこの方、缶を開けた事が無いんだ」

アニー「はぁ~…ほれ、貸してみな…イイ?ここん所にプルタブってのがついてんでしょ?これに指を引っかけて」プシュ

ブルー「!…こうやって開けるのか」



アニー「アンタ、よくそんなんで世間に出て来れたわね、術よりまず一般教養を学びなよ」ヤレヤレ プシュッ


ブルー「…善処はする」









アニー「それじゃ!乾杯!」

ブルー「ああ、乾杯」










ブルー(……)


<んん~!!うまいっ





        ブルー(…俺は…)


        ブルー(…俺は何をしてるのだろうか)





220>>205 冒頭 ブルー独白に戻る…2018/02/23(金) 23:29:28.38HsaKbXJw0 (4/5)




ブルー(俺には使命がある)

ブルー(国家から、"親"である祖国に忠義を尽くすという大事な責がある)












ブルー(だというのに、どうしてこうなった…)チラッ







アニー「んっ、んっ…んぅ?何よ、アンタ飲まないワケ?」キョトン

















この女には【利用価値】がある



コイツが居なければ刑務所のリージョン[ディスペア]に潜入できない

"解放のルーン"を手にできなければ試練はクリアできない





それに、頭の悪そうな女だが…剣の腕は立つ、戦闘の際いざとなればコイツを囮や盾代わりにして保身に走ることもできる

…だから、"上辺っ面"だけでも取り繕い、友好的な関係を築いておいて損は無いのだろう







こいつの戯言に適当に付き合い、今のような突発的な誘いにも顔を出してご機嫌取りせねばならんのが癪だが…



せめて…[ディスペア]潜入、そしてルーン取得まではこの女の顔色を窺わねばならんな

用済みになったらすぐにでもこんな奴、こっちから捨てて――――





アニー「ちょっとぉ!!聞いてんのかって!」

ブルー「…」

ブルー「聴こえているぞ、叫ぶな」



221以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/23(金) 23:59:54.00HsaKbXJw0 (5/5)



アニー「缶持ったまんま微動だにしないし、呼んでも返事しないし、そりゃデカイ声だって出すに決まってんじゃん」

ブルー「すまなかった、少し考え事をしていてな」










ブルー(…こんな下らん茶番に付き合う時間が惜しいというのに)

ブルー(俺が呑気にこんなことをしてる間にもルージュは資質を集めているかもしれんというのに…!)






アニー「だったら飲みなよ?酒飲みなんて一人でやってもつまんないから暇そうなアンタ誘ったのよ?」フゥー


アニー「酒は誰かと騒いで飲むのが一番楽しいからね」ゴクゴク




ブルー「…」ゴクッ



 缶に口をつける…祖国には缶飲料はあった、免税店や他所のリージョンからの観光客を狙った店先で扱われる事が多く
基本的に魔法薬を瓶詰で保管していた歴史から塩漬け、酢漬けのピクルスなどは皆、瓶と最先端魔法技術で保存してきた

学院の学生寮で育った彼は缶を見る機会こそあれど口にしたのは初だった





ブルー「美味い…」





自然と口に出していた言葉だった



アニー「でしょー、食わず嫌いせずまずは何でも飲んだり食ったりするもんなのよ、缶持って硬直してたけどさぁ」

アニー「自分トコじゃ珍しい文化だからって偏見を持つのはよくないわ、うん」ゴクゴク





…別に動きを止めていたのはそういう理由じゃなかったのだが

黒い背景に桃と柑橘系のイラストが描かれたチューハイ、香りも果物の独特のフレーバーを活かし初心者でも飲みやすい物
一方対面する女の手には対照的に白に染め上げた缶でまろやかな喉ごしのサワーだった




ブルー「……まぁ、見た目だけで判断するのは誤りがあるのは確かだな、貴様の言う通りだ」ゴクッ



 目の前の人物の第一印象は「ガサツな女」「頭の悪そうな奴」「どうせ男に身を売ってるような奴」だったが
正しく見た目で判断してはいけない例だったと、打ちのめされたばかりである




222以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 00:32:25.62bwScDHXt0 (1/11)





ブルー「……貴様には兄弟が…『弟』が居た、のだったな」


アニー「ん、そうよ…前に話したじゃんか」ポリポリ



 頬杖を突きながら金髪の女はスティック胡瓜にマヨネーズをつけて食べていた
意外にも話しを切り出した男を少し意外そうに見ていた彼女に彼は続けた









    ブルー「お前にとって、『弟』というのは…自らの身を削ってでも守るべき存在なのか?」







ブルー(…俺は、本当に何を言ってるんだろうな)






 アニー「そんなん当たり前じゃん、『家族』なんだから」ポリポリ







女は男の質問に、さも事も無げに言ってのけた





 アニー「前にも話けど、あたしには妹と弟が居んのよ、んで妹は[ヨークランド]の金持ちの家に養子になったけどさ」

 アニー「悪ガキで小さい弟はあたしが養うしかないのよ」




前にも話された事だ、両親が居ないから長女である彼女が年下二人の面倒を見ていると





 ブルー「お前はその養育費を自分の為に使おうと思わんのか?」

 ブルー「今までつぎ込んできた仕送りの額がどれ程かは知らんが人間1人を食わせて行けるだけの金額だ」

 ブルー「命の危険を冒す職務などせずとも穏やかな土地で平穏に過ごせるだろう」




 ブルー「そいつの事を見捨てたとしてもそれを責める人間が、そのような環境がお前のすぐ傍にあるとでもいうのか」




この無法都市で、明日を生きるためなら隣人から財布を掠め盗るような街で


…そうでなくても365日、常に誰かが貧困の中でその命を消してしまうような土地で
誰に自身の生命を優先することを咎められようか?

ブルーが言ってるのはそういうことだ


223以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 00:55:27.20bwScDHXt0 (2/11)




アニー「…」ゴクッ



アニー「ま、アンタの言い分も分からなくないよ…そりゃあ誰だって自分で頑張って稼いだお金を自分の為に使いたい」

アニー「そう思うことは間違いじゃあないし、こんな街なら…ましてやあたし等みたいなのは庇護されない」

アニー「自分の身の安全も生活の保証も何もかも全部自分でどうにかするっきゃない」




アニー「ああ、アンタは間違ったことは言ってないよ…けどね、そういうんじゃないんだよ」




ブルー「…なんだというのだ」








アニー「そうだねー、あたしは頭良くないからさ、巧いこと説明できないけど、強いて言うなら『心』ね」


アニー「あたしの『心』がそうしたいから、損得とかそういう話じゃないのさ、…それじゃ納得できない?」







ブルー「……俺には理解できん、そこまでして『弟』を守ろうという思考が」








                弟<ルージュ>を殺す



その【思考】で祖国を出た男には、女の『感情』が今一つ理解できずに居る




アニー「ああああ!!もうっ!あたしは楽しく酒飲みたいの!なに!暗い話してんのよ!」


アニー「やめやめ!湿っぽいのは本当嫌いなんだってば!」ゴクゴクゴク!



ブルー「そんなペースだと酔いが回るぞ」ゴクッ

アニー「うっさい!!…あ、空になった、次の空けよ」ゴソゴソ






コンコン!!



<おーい!!アニー!エミリアー!ライザー!誰か居ないかー!開けてくれぃ
<ぶくぶくぶー!


ブルー「…この声は」



224以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 01:06:37.72bwScDHXt0 (3/11)




アニー「はいはい、今開けるわよ…」ガチャガチャ



ブルー「お、おい…」









             バーーーン!!





リュート「イエーイ!アニー!久しぶりだなぁ!!さっき、そこの店でおっちゃんが蟹の安売りしてたんだ!」つ『蟹』

スライム「ぶくぶくぶー!(`・ω・´)」つ『白菜、ネギ、しらたき…etc鍋セット』





リュート「いやぁ!色々あって金塊売りまくって臨時収入があってさぁ、景気よくパーッと…んあ?」チラッ

ブルー「…」ゴクゴク



リュート「ブルー!お前こんなとこに居たのかよ!丁度いい!お前も鍋パーティー参加な!!」


スライム「ぶくぶくぶくぶく!(/・ω・)/」ワーイ!ワーイ!





ブルー「貴様、この女と知り合いだったのか…」

ブルー(…あの時、リュートが言ってた知り合いの女ってアニーの事だったのか)




リュート「おう!そうそう…いやぁ~!なんつーか奇遇だよな!」

アニー「そうね、人の縁って不思議よね~」ポリポリ



ブルー「…酔いが回ってきたのやもしれんな、頭が痛くなってきた」




自分は酒には強い筈だったんだがな、とため息交じりにブルーは席を外す、少し夜風に当たって来たいと一声かけて




<リュート、このスライムなに?

<ブクブクー

<面白れぇ奴だろ!話し見ると結構楽しい奴だぞ!



ワイワイ…ガヤガヤ…!






225以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 01:25:46.59bwScDHXt0 (4/11)

―――
――




【店の外】



ブルー「…ふぅ…ドアの向こうから声が丸聴こえだ」カラン



 氷の入ったミネラルウォーターを口に含む…昼も夜も変わらない明るさが変わらない常灯の摩天楼で
イタ飯屋の壁に背を預け、騒がしい女と男、そしてゲル状生物の声を聴く








ブルー「…やれやれ、まったく喧しいったらありゃしない」ゴクッ

ヌサカーン「ほう?その割には中々にキミは楽しそうにしているがね?」

ブルー「フッ、まさか…そんな事あるわけないだろう…」ゴクッ





















ブルー「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」ブ―――ッ!!!


ヌサカーン「口に含んだ水を勢いよく噴き出すのは上品とは言えないな…」ヤレヤレ





ブルー「貴様ァ…!いつからそこに居た!」


ヌサカーン「うん?あぁ…今来たところだ、此処の店は良い所だ、偶にサングラスの店長が作ったグラタンが恋しくなる」






気がついたら、当たり前のように自分の隣に居た上級妖魔…そう、あの粗蟲共の元へ共に行った妖魔医師ヌサカーンだ


相変わらず白衣を身に纏い、そしてブルーの隣に違和感なくブランデー入りのグラスを持って立っていた





ヌサカーン「キミ、気づいていないのかもしれんがね、彼等の声に耳を傾けていた時何処となく楽しそうに見えていたよ」

ブルー「そうか、そう見えたのならば眼科へ赴くことを奨めるぞ、闇医者」




226以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 01:40:08.84bwScDHXt0 (5/11)



ヌサカーン「中々にイイ傾向だ、他者との交流、会話は自分の感情に彩をつける」

ヌサカーン「現にキミは【呆れ】や【驚き】時に【怒り】そして……相手の思考が読めない事から【戸惑い】や【疑問】」

ヌサカーン「様々な『感情』を抱き始めているではないか、交流の無い者は次第に心を閉ざしていく」


ヌサカーン「キミの心に巣食い始める病の予防薬になるだろう」ゴクッ



ブルー「突然現れて訳の分からないことを抜かすな」








    ヌサカーン「そうかね…まぁ、良い、今日はキミにしばしのお別れを告げにきたのだよ」


       ブルー「"お別れ"…だと?」






ヌサカーン「うむ、実は…訳あって私はしばらく[クーロン]を去る事になったのだ」

ヌサカーン「勘違いしないでくれたまえ、ただ[ヨークランド]に病気の少女が居ると今日来院した者に言われてな」

ヌサカーン「少し往診をしに行くのだよ」




ブルー「ふん!そんなことをわざわざ俺に言いに来たのか、暇してるようだな藪医者」



ヌサカーン「本当ならキミの旅に同行しようかと思っていたのだがね、キミは中々興味深い人間だからね観察したかった」


ブルー「それを聞いて尚更安心した、さっさと往診に行くがいい、そして戻って来るな」





ヌサカーン「やれやれ冷たいものだ、……結構な長旅になるんだがなぁ」

ヌサカーン「[ヨークランド]で患者を診た後で、もう一人気になる患者が居るから…本当に当分の間戻って来れんのだよ」



ヌサカーン「しばらくの間、私の病院に留守にしている、という主旨の書置きは残しておくが」

ヌサカーン「念のためキミに伝えておこうと思ったのだ、何かあっても私は居ない、とね」スゥゥ…






それだけを言い残し白衣の男は影となって消えた、後には空になったグラスだけがアスファルトに取り残された…




ブルー「…夜風に当たりに来たというのに、余計に気分が悪くなったな」チッ

ブルー「戻るか…」






227以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 02:22:40.57bwScDHXt0 (6/11)






               蟹すき鍋『  』グツグツ…!





リュート「豪富さんトコかぁ…そういやぁ俺が旅に出る時よりも前に言ってたっけなぁ、施設から女の子引き取ったって」

アニー「ええ…その子ウチの妹よ、生まれつき身体の弱い子だったのだけど」



アニー「それにしてもリュートが引き取り先の人の事知ってるなんてね、本当アンタ顔が広いわね」

リュート「[ヨークランド]は俺の地元だし、まぁ知ってるさぁ~…と!そろそろカセットコンロの火弱めようぜ!」カチッ


スライム「ぶくぶく(・ω・)/『お皿&ポン酢』」








ブルー「今、戻ったぞ」ガチャッ カランカラン…



リュート「おう!丁度いい感じ煮えて来たぞ!」

アニー「ブルーの分の小皿とポン酢もあるからね」スッ


―――
――



リュート「うめぇ!!」ガツガツ!

アニー「あっ!蟹取り過ぎよ!!」

ブルー「元はリュートが持って来たモノだろう」モグモグ




―――――騒がしい空気



『…おい、見ろよ、ブルーだぜ』
『学院の成績トップ、首席は揺るがないってあの…』
『アイツ気に喰わないよな、あのお高くとまった態度…ちょっと勉強できるからって』



リュート「ほらほら、もっと喰えよ!よそってやるから」スッ

ブルー「なっ!?貴様!勝手に人の皿にそんな大量に!」



――――馴れ馴れしい連中


『なんでアイツに勝てないんだよ、俺達だって必死で勉強してんのに』
『あいつ、死なねぇかな…』



アニー「それでさ!その時エミリアってばおかしんだよ!」あははっ!

ブルー「そのエミリアという女がどんな奴かは知らんが聞く限り頭の悪そうな奴なのは分かった」


―――人の気も知らないで絡んでくるこいつ等…



228以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 02:48:58.16bwScDHXt0 (7/11)













      スライム(素面)「ぶくぶくぶーー!(*´ω`*)」モグモグ しあわせ~♪



      アニー(ほろ酔い)「よーしっ!3番!アニーちゃん!いっきまーす!」

      リュート(酔い)「いいぞ!そん次俺な!4番リュート、歌っちゃうからヨロシクぅ!!」




<あーっははは!!





   ブルー(素面)「…」パクッ モグモグ…ゴクゴクッ










   アニー(ほろ酔い)「ジャグリング!そらそらぁ!!この酒瓶をお手玉のように落とさず回し続けるわよ!!」

    リュート(酔い)「おおおっ!すげぇぇぇ!!!」









――――………





―――…妬みも僻みも無い…純粋に接して来る馬鹿共










          -ヌサカーン『ほう?その割には中々にキミは楽しそうにしているがね?』-



ブルー「…ふ、馬鹿馬鹿しい…そんなことあるものか」ゴクッ


リュート「おおっ!ブルーが笑ったぞぉ!」アハハッ

アニー「マジ!?仏頂面のブルーが!よっしゃ!なんかテンション上がって来たわ!」



ブルー「笑ってなどいない、貴様らいい加減酔いを覚ませ…水置いとくぞ」ハァ…




229以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 03:00:13.99bwScDHXt0 (8/11)






俺には使命がある


国家から、"親"である祖国に忠義を尽くすという大事な責がある







こんなことをしてる暇なんて無いのに、…くだらない、こんな馬鹿馬鹿しい茶番劇に付き合って…それで―――
















―――――それで、このふざけた空気が、少しだけ悪くないとも思ってる

















            …俺は何をしてるのだろうか














           …本当に何をしてるんだろう、…酔いが回ったな、悪酔いしてるようだ








230以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 03:23:47.59bwScDHXt0 (9/11)

―――
――

【クーロン:イタ飯屋前】

リュート「うげぇ…飲み過ぎたぁぁ…ぶ、ブルー…歩けねぇ…手伝ってくれぇぃ」

ブルー「マヌケが、一人で這ってでも帰れ」スタスタ







アニー「あたた…頭痛い……なんか予定と違ったような…いたた…」ヨロッ


スライム「ぶくぶく!(;゚ω゚)」ササッ!ピトッ

アニー「あっ、転びそうな所、支えてくれてありがとう…」



スライム「ぶくぶくぶく(;´ω`)」ススッ

リュート「あ、肩(?)貸してくれんの?わりぃ助かる」フラフラ


―――
――

【クーロン:シップ発着場前】


クーン「あーっ!先生!待ってたんだよ!」

ヌサカーン「クックック!済まないね、知り合いに別れを告げて来たところだ」

フェイオン「準備はよろしいですね、ヌサカーン先生」

メイレン「さっ!シップに乗り込みましょう!」



―――
――

【マンハッタン:グラディウス支部】


ルージュ「…」

白薔薇「こんな所で何をなさっているのですか?」


ルージュ「星空を、眺めていたんです………そうしたい気分だったもので」

白薔薇「何か悩み事、ですか?」

ルージュ「まぁ…」



アセルス「あっ!二人共こんなとこに居た!晩ご飯ができたってよ」

エミリア「明日には宇宙船<リージョン・シップ>『キグナス号』で[クーロン]に行けるわ、ご飯を食べて寝た方がいいわ」


アセルス「はいっ!…[クーロン]かぁ、ヌサカーン先生って人になんとしても会わなくちゃ!」グッ

―――
――


【マンハッタン:キャンベル・ビル】

「社長!停泊中の『キグナス号』に例のブツの詰め込み完了しました!警察にも見られていません!」

キャンベル「ウフフ!いい子ね…後は貴女に任せるわ!可愛い子猫ちゃんを待たせてるからね」

「はっ!」





231以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 03:45:26.52bwScDHXt0 (10/11)


―――
――




アニー「調子に乗り過ぎたわね…」フラッ…



アニー「明日はエミリアを迎えに行くために始発で[マンハッタン]に行って合流してから『キグナス号』に乗るのに」


アニー「……ブルーの奴、ぜんっぜん酔わないし……うぅ、飲み過ぎたわ…んっ?」











        紙袋『  』





アニー(カウンター裏の…あたしがブルーから受け取った鞄の横に、これ…あのコンビニの包装?)ガサッ…パサッ











  -『アニー へ

      此処に酔い止めの薬を置いておく

      飲んで治してさっさと[ディスペア]潜入の用意を進めろ ブルー』





アニー(…あぁ、アイツ夜風に当たりたいって出て行ったわよね…)

アニー(蟹すき鍋がに煮えるまで戻ってこないのは遅いと思ったら)




アニー「……命令口調なのはアレだけど、一応ありがとう、ってとこかしらね」


―――
――



リュート「ブルー…ありがてぇ、ありがてぇ…」

ブルー「酔い止めの薬くれてやったんだ、さっさと帰れ」

リュート「何だかんだ言いつつ、薬買って俺を待っててくれるなんてありがてぇ…流石相棒だぜぇ」グスッ

ブルー「良いから!さっさと帰れ!…まったく、金塊の件はこれでチャラだ」スタスタ






各々の夜は更け、そして…朝はやってくる…双子の旅立ち、三日目

        …運命の交差点<ターニングポイント>――― 紅と蒼の道がほんの僅かに重なり合う『キグナス号』の日が…


232以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 03:52:41.30bwScDHXt0 (11/11)

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            今 回 は 此 処 ま で !



               __
              ,-‐'´::::,ゝ    _γ:ヽ   ,.ィ
            l::::::,' ̄`⌒`ヾ{:::`:,、⌒/ /
            {::::ノ      {γ´ {_;;ヽ<´  <生命の雨
             ヽL_      |    ヽ::}
                 '-l_.iヽ     ヽ ━  l
                  {;;;} `ー---、ム    }、
                      {;;;;}` ̄I;;;}


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233以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 07:57:29.66x5kik7Vc0 (1/1)

おつ


234以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 13:11:28.84bnQ3YhIs0 (1/1)

乙十字乙
アセルスェ…、ヌサカーンはブルーとクーン主人公でしか仲間にできないキャラなんだよな


235以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/24(土) 13:26:23.36nXEkGPRpO (1/1)

乙乙
キグナスと言えば赤も……?


236以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/25(日) 07:48:14.28TfghkQbHo (1/1)


赤と言えばブルーとスライムも運命の赤い糸で繋がってるという感じになってるなこれ
ブルーは色が気に食わんと言いそうだけど


237以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/27(火) 16:19:32.80jkvYKC5i0 (1/1)

キグナス強襲イベント楽しいよね、スポット参戦だけどエミリア以外最後まで仲間にできないアセルス姉ちゃんや他主人公と夢の共演できるし


238以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 03:53:27.56ZdG8Shi80 (1/7)

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               オマケ②【妖魔医師、ヌサカーンの診断書<カルテ>】


 【双子が旅立ってから2日目 夜 9時 54分】


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239以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 05:55:50.41ZdG8Shi80 (2/7)



その日は多くの人間にとって"散々な1日"だったことだろう


 政治の中枢たるリージョンで大規模な爆破テロが起きた、それによって各地のリージョンでシップの運行が停まった
この御時世で宇宙船<リージョン・シップ>が全便欠航となれば流通は当然ストップするのだから堪ったもんじゃない


物販店からはいつもなら棚に陳列している商品が企業や工場からの出荷が来ないという嘆きを体現するようにガラ空きで
 仕事帰り、あるいはこれから出勤予定"だった"スーツ姿のリーマンが会社から居酒屋の暖簾の奥へと姿を消す




誰も彼もが立ち往生、明日まで何処にも行けず帰れずという不測の事態に陥った

もし幸運があるとすれば目的地に丁度到着したところでシップの運行停止に巻き込まれた者等だろう









「お客さん!ワタシ身体よく効くクスリ持ってるネ!今なら安くしておくヨ!」


フェイオン「すまないが他を当たってくれ」










暗黒街[クーロン]…大通りで堂々と"おクスリ"を販売する怪しい男の誘いを突っぱねる弁髪の男は仲間達の元へ急いでいた



フェイオン「いかん、情報収集にかなりの時間を喰ってしまった…メイレンが怒っているだろうなあ」タッタッタ






彼は今日のまだ朝陽が昇り始めて、そう長くない時間までずっと巨大生物[タンザー]の体内に居た男だ



ひょんなことから、どこぞの蒼い術士と弦楽器を背負ったニートのおかげで久しく見る事の叶わなかった日光を拝んだ



 巨大生物の体内から脱出した後、彼は恋人であるチャイナドレスの似合う彼女と滅びゆく故郷を救うべく旅する少年等と




 【 全 て 集 め る と ど ん な 願 い も 叶 う 魔 法 の 指 輪 】 を集める旅に同行した




モンスター族の少年への恩返しと恋人の女性を護る為の同行だ





そんな彼は…今、汗水たらして長らく目にしていなかった人間社会の人混みを掻き分けていた

汗水たらして、と今しがた表現したが何も全速力で走っているから汗をかいたというわけではない




これは恐怖から来る冷汗だ、彼は知っている……自分の恋人は怒ればどんな怪物よりも恐ろしいヒステリックを起こす事を



240以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 06:16:12.64ZdG8Shi80 (3/7)



 男は恋人の女が取った宿が見え始めた所でラストスパートと謂わんばかりに過去最高の脚力で駆け出し
自分達の部屋へ転がり込む様に入り込んだ







    フェイオン「メイレン!遅くなってすまな「こんのぉ大馬鹿ぁぁぁ!!!」ぐぎゃあああああああっ!!」








 メイレン「情報1つ見つけて来るのに何時間かかってんのよォ!!ええ!?」メキメキ


 フェイオン「おぎゃあああああああぁぁぁ腕があああああああぁぁぁ変な方向にぃいいいいいいいいっ!」





 クーン「わぁ~!すっごーい!僕だってあんなふうに腕を曲げられないのに…フェイオンは身体が柔らかいんだね!」






 バンバン!「ギブ!ギブ!降参だ!たすけてぇぇぇ!!」と男の悲痛な叫びが宿の一室に木霊する最中
純真無垢なピュアっ子で獣っ子な緑色の少年が目の前の惨事を見て目を輝かせていた





メイレン「まったく……[ヨークランド]で"指輪"を持ってる大金持ちの豪富…その養子の女の子を治せそうな医者を探す」


メイレン「私達がわざわざ一度[クーロン]までシップに乗って逆戻りしてきたのはその為なのよ?」



クーン「僕たち運が良かったよね!!僕たちが丁度[クーロン]に戻ってきたら、船がぜーんぶ動けないんだもん」



メイレン「…クーンはポジティブで良いわね」ハァ


クーン「???」ニコニコ



メイレン「この暗黒街は大勢の人間が集う、此処を探せばあるいは…と考えたわ」

メイレン「実際、この街に妖魔の医者が居ると小耳に挟んだこともあるしね…」




メイレン「その人の居場所を手分けして探しましょうって所までは良かったわ、ええ…」


メイレン「でもね、…なぁんで探し出して2時間で私達が掴めた情報を8時間近くかけて見つけられてないのよ!!」ギリギリ



フェイオン「うぎゃああああああああああああぁぁぁぁ死ぬぅぅぅぅうううううううう!!!!」ジタバタ






241以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 06:36:14.25ZdG8Shi80 (4/7)

―――
――



メイレン「ぜぇ…ぜぇ…まぁ、良いわ、私は今からクーンと例の医者の所に交渉に行くから…」


メイレン「あなたはシップ発着場で[ヨークランド]行きの始発のチケットを手に入れて来るのね」



フェイオン「ま、待ってくれメイレン……始発のチケットは誰だって喉から手が欲しい筈だ、簡単に手には――」ボロッ




メイレン「 」ギロッ



フェイオン「ひぃぃ!?分かった!なんとかする!なんとかするから!なっ!?」土下座





クーン「わぁ~!こういうのって『かかあてんか』っていうんだよね!」



メイレン「クーン、変な言葉を覚えてきちゃ駄目よ、さぁ行きましょう…フェイオン」

メイレン「場合によってはこの部屋を交渉材料に使う事ね」


フェイオン「へ?」



メイレン「あなたも見たでしょうけど…どこもかしこも事前に宿泊施設は今日のゴタゴタで帰れない旅行客で満室よ」

メイレン「この状況で宿をとれるのは、お金が腐る程あるって奴かあるいは"早いもん勝ち競争"に勝てた人よ」





メイレン「路上で寝てればいつ身ぐるみ剥がれても、…いえ、人身売買にすら持ってかれるかもしれないこの無法都市」


メイレン「宿部屋をあげるからチケットを譲ってくださいと頼み込めば、始発便に乗れるかもしれないでしょう?」




フェイオン「!!…なるほど」



メイレン「うまくやりなさい、…期待してるわよ」ボソ




―――
――


【クーロン裏路地:ヌサカーン病院】



ヌサカーン「…それにしても彼、ブルーと言ったか…中々興味深い身体だったな」カキカキ



白衣を着た長髪の人物、その眼鏡のレンズに映っているのは現在進行形で綴られていく自分の筆跡で埋まっていく診断書だ


ヌサカーン「…彼は中身が半分、いや…あの国家は確かにそういうところがあったな…」

ヌサカーン「そういえば[シュライク]の例の研究所にも裏で資金提供を行っていたのだな、ふむ…そう考えるならば」ピタッ



242以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 06:51:20.26ZdG8Shi80 (5/7)




妖魔医師はインク壺に筆を戻す、上級妖魔であるがゆえに彼は力の流れを探ることに長けていた

彼がこの街の地脈を流れる"保護"の力を捉え、それが弱まっていることも察せられたように…





ヌサカーン「……これは、どうしたことだ?こんなドス黒い力の塊は久しく診ていないな」




妖魔の中でも変わり者、そう評される彼の生きがいは…


『誰も見たことの無い世にも奇妙な病原菌と遭遇したい』

『不治の病と呼ばれる病魔を治してみたい』

『未知との遭遇を愉しみたい』


と言ったものだった



彼はこの世で一番"病気を愛する医者"なのだ





病気を殺す、が…同時に病気を美しい女性か何かのように愛しているのだ、医者が一番病んでる、ヤンデレ





ガチャ!



クーン「あなたが…ええっと、ぬさかーん先生?入口の仕掛けすごいね!ボクすごくビックリしちゃった!」

メイレン「…あの悪趣味な仕掛け…はぁ、いいわ、文句を言いに来たんじゃないし」ゲンナリ






ヌサカーン「……」ジーッ


クーン(ボクの顔何かついてるのかな?)キョトン


ヌサカーン「…」クルッ…スタスタ ジーッ

クーン(あ、ボクを無視してメイレンの方をジーって見始めちゃった、ちょっと悲しい)ショボーン




メイレン「…?」


ヌサカーン「……」ジーッ






   ヌサカーン「…… "君が患者か"?」


  メイレン「違うわよ…私のどこをどう見て患者だと思ったのよ(こいつヤブ医者かもしれないわね)」





243以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 07:08:02.82ZdG8Shi80 (6/7)



ヌサカーン「そうか…それは失礼した(…ふむ、自覚症状なし、か)」





妖魔医師は至って身体は健康そのものと呼べる女性を見た…







いや、厳密に言えばちょっと違う…女性の"薬指についてるモノ"を診た…







クーン「あの!先生はよくわからないけど、すごいお医者さんなんですよね!!」

クーン「えっとね!えっとね![ヨークランド]って所に身体の弱い女の子が居て、その子に変な病気が憑いてるの」

クーン「どんな願いも叶う"指輪"の力でその子は死なないで済んでるけどそれも時間の問題で苦しそうで…」





クーン「お願いだよ、助けてあげて…あの子はちゃんと皺くちゃのおばあちゃんにならなきゃだめなんだよ」




自分の故郷の惑星<リージョン>……寿命で惑星のコアが持たないリージョン、滅びゆく[マーグメル]を少年は思い出す

指輪を全て集めて故郷を救う、だがその為に病気の少女を生き永らえさせている指輪を取り上げるのはまた違う




ちゃんと大人になって、お婆ちゃんになって、そして穏やかに眠らなくちゃ駄目だとクーンは言う
 それに対して医師は眼鏡の位置を指先で少し上げなおして―――





ヌサカーン「往診は基本的にしないことにしている、例外はあるがね」




メイレン「相手は大富豪の娘よ、報酬は思いのまま」


ヌサカーン「ふむ、報酬か…興味深い患者だな」





半分本当で半分嘘だ

報酬で"指輪"を仮にもらえたら、それは興味深い…だが医師は何も指輪の力で願いを叶えたいなどといった理由ではない


この医者は今、"一番興味深い患者"の旅に同行してその病の進行状態を間近で観察したいのだ

その病は"指輪"が深くかかわって来る…実に興味深い





[ヨークランド]に居る患者も確かに興味深いが、むしろそっちはオマケ程度にしか見ていない、大本命は目の前に居る





244以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 07:31:41.07ZdG8Shi80 (7/7)





メイレン「ではヌサカーン先生、私達と共にご同行を―」


ヌサカーン「あぁ、待ちたまえ…少し時間をくれ、この街に昨日知り合ったのだが[マジックキングダム]の術士が居てね」


ヌサカーン「しばしの間、[クーロン]を離れると別れを告げてきたいのだ、構わないかね?」



メイレン「ええ、問題ありませんわ、準備は大事ですものね」


ヌサカーン「では先に宿にでも戻っていると良い…君たちは見たところ他所から来たのだろう?」


メイレン「いえ…シップ発着場で落ち合いましょう」


ヌサカーン「ふむ、分かったではまた後程」






ヌサカーンは二人の背中を見送る、眼鏡のレンズには去っていく少年と患者の背が小さくなっていくのが映る





ヌサカーン「さて、まずは書置きだな…私が留守の間にヒューズの奴がくるかもしれん、っとその前に診断書も書かねば」






妖魔医師の脳裏には『ぬーべー!助けてくれぃ!』などと叫びながらタダで診察してもらおうとする不良刑事の顔が浮かぶ
あれで[IRPO]隊員なのだから不思議だ

そういいつつも何だかんだでタフで面白い奴リストに含まれる彼の為に一応書置きは残しておく

しばらく留守にするぞ、と




ヌサカーン「双子…命、…[シュライク]にある[生命科学研究所]への裏金と技術提供による…」カキカキ



ヌサカーン「大昔に滅んだリージョンの伝承に残る技術…同化、継承、7人の英雄、皇帝… 死によって 力の譲渡」カキカキ



ヌサカーン「同じく死によって、資質の…技術の髄を寄せたコレにより本来ならば得られぬ筈の――…」カキカキ


ヌサカーン「ふむ、こんなものか、…まだ時間がある、さっきの患者の診断書も書いておくか」ペラッ カキカキ







その後、ヌサカーンは"診断書"をいくらか書いてから鞄に一頻りの荷物を纏めて自宅を後にした




なお、此処で詳細を語る必要が無い為、大雑把に書いておくがフェイオンは
 その後、家族8名で狭い客室に雑魚寝するしかなかったらしい大家族と宿部屋の権利を譲る交渉で
見事シップの一室を得てメイレンに褒められ、シップ発着場にやってきたヌサカーン医師共々にシップの客室に入り
始発の時間まで一夜を明かしたらしい


~ オマケ2 完~ 
*******************************************************


245以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 15:27:29.962BCBPe4fO (1/1)

フェイオンは悪い人じゃないんです
ただちょっと運が悪くて不器用なだけなんです
がんばれフェイオン


246以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 16:22:47.69SPIc5TLw0 (1/1)

実際フェイオンいいヤツだよな
自分から協力を突っぱねるブルーにも嫌な顔ひとつしないで道案内して、それ以外の主人公6人の仲間になってくれる。


247以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/02/28(水) 21:37:20.10qiIH9IZs0 (1/1)

…ん?診断書に書いた内容ってロマサガ2のアレか?


248以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 22:37:11.29THw2g2L10 (1/2)






僕が祖国[マジックキングダム]を旅立って今日で3日目になる



国家からの支給品としてもらった資金、[リージョン移動]媒介用の宝石、医療品を入れた[バックパック]





そして…今、僕のこれまでの資質集めの旅を書いている小さな手帳














 誰に書けと言われた訳じゃない、ただ僕が自主的に書きたいから書いているんだ

 いつまで続くか分からない旅路だけど、その終着点が見え始めて、その時、この手帳を僕が見返して


 「あっ、あの時はこんなことがあったんだなぁ~懐かしいな」と思い出を振り返って笑う事ができるかもしれないから












           …あるいは―――













           ――…あるいは、もしかしたら…ううん、やめておく、縁起でもないからね!







249以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/06(火) 23:06:15.88THw2g2L10 (2/2)

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―――
――



【双子が旅立ってから…3日目、朝7時20分】




ルージュ「」パシャッ!バシャバシャ


ルージュ「…あ、また寝ぐせが…髪長いのも問題だよなぁ」つ『ブラシ』




 エミリアが所属する裏組織の支部でお世話になり、そして陽が昇り始め
人々の生活音が目覚ましのアラーム代わりに鳴り始める頃、紅き術士は洗面台の鏡に映る自分と睨めっこをしていた



瞼裏に残った眠気を洗顔で共に洗い落とす、サッパリとした気分で仲間達が待つフロアへと降りていくと



エミリア「あら、おはよう…ってあなたアホ毛みたいに寝ぐせがピンっとしてるわよ」クスクス


ルージュ「あはは…一応濡らしたんだけどなー」ポリポリ



エミリア「それと…はい、これっ!」っ『乗船チケット:キグナス号』&『キグナス号パンフレット』


ルージュ「ありがとうございます…へー、白鳥の形をしたシップかぁ」ペラ


エミリア「ええ…サービスも充実してる、とてもいい船なのよ」




いい船だ、目の前の金髪美女はそう告げるのだ、一瞬だけ哀しそうな顔をしたのを彼は見逃さなかった


 エミリアが裏組織に入った経緯は…婚約者である男声を殺害され、その濡れ衣で刑務所[ディスペア]に送られたこと
そして刑務所からの脱獄にアニー、ライザという2名の女性の助力を得て成功

後に婚約者の仇"ジョーカー"という仮面の男をこの手で討つべく、アニー等が所属する組織に加入したという






…キグナス号、この船には事件が起きる前に、エミリアが婚約者のレンという男性と共に乗っていたそうだ




同僚の女性二人にもそのことは話していないらしく、ある意味辛い思いをさせる船旅になってしまうのだろう

亡くなった彼氏との思い出の船に乗船するのだから…





エミリア「そ・れ・よ・り!!フライトまでまだ時間があるわ!街に出て何か朝食を取るなり旅支度をするべきよ!」




溌剌とした持ち前の性格で彼女は術士の背を叩いて、そう促す


もしかしたら強引に話題を変えたかっただけかもしれない…それを彼が計り知ることはできないが





250以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 01:17:45.47afQLpd/f0 (1/3)


最先端科学のリージョンを自負するだけはあり、人々の従来は目を目を見張るものであった
 シップが運行を再開した[マンハッタン]のモール街を歩く経営者の靴音、重たい荷物を運ぶロボットの機械音
田舎から上京してきた所謂"おのぼりさん"という人なのだろう、恰好からして[京]から来た人なのだろうか



ルージュ「…護身術ですか」


エミリア「ええ、ルージュは術士なのはわかるわ…でもね、いざという時に術力が切れてしまったら、その時どうするの」



ルージュ「それは…」

アセルス「エミリアさんは銃が無くても体術が使えるんですよね?」



エミリア「ええ、ライザ…ああ、私の同僚の女性なんだけどね、彼女に色々と技を教えてもらったのよ」



「…変な覆面つけられたけど」と何か遠い目をして明後日の方角を向き始めたエミリアを尻目にルージュは考えた
もしも肝心な時に術力が切れてしまったら…

魔術師が力を使い果たして術を使えない…それは銃弾が切れ補充すらもできないピストルと同じだ

その時点で戦いに置いて"敗け"が確定してしまう



ルージュ「そうか、…ならば僕も自分だけの武器を手にするべきなのか」

ルージュ「…よし、決めた!」



ルージュ「エミリアさん、銃を手に入れられるお店ってありませんか!」


エミリア「なんであの時"仮面舞踏会"と"仮面武闘会"を間違えたのかしらね…ハァ…えっ?何ごめんよく聞いてなかったわ」


ルージュ「銃ですよ、銃!銃なら剣や体術と違ってあまり身体を鍛えていない僕でも望みがあるかもしれないと…!」


エミリア「う~ん、銃ね…実際使った事無い人は分からないと思うけど」

エミリア「あれって発砲の時、反動で肩とか結構持ってかれるのよ?」

エミリア「私も組織に入って間もない頃、射撃訓練で腕がパンパンになるほどやったし…」

エミリア「…なんにしてもこのリージョンじゃ難しいわ、[クーロン]なら顔の利く店もあるし」う~ん


エミリア「低反動で負担の少ないのあるか聞いてみましょう?」

ルージュ「本当ですか!?ありがとうございます!!」




アセルス「ルージュってばはしゃぎ過ぎだよ、子供じゃないんだからさ」クスッ

アセルス「ね!白薔薇もそう思わない――――」クルッ




『現在パーティーメンバー』

ルージュ
エミリア
アセルス
白薔薇 ←(迷子)


アセルス「……」


アセルス「し、しろばらあああぁぁぁぁぁ!!!!」ガーン




251以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 01:48:14.48afQLpd/f0 (2/3)

―――
――







  わらわら…

             がやがや…

         ざわざわ…

                                 わいわい…!


















白薔薇「」ポツーン




白薔薇(ど、どうしましょう…また皆さんとはぐれてしまいましたわ…)オロオロ











            『 待 て や ァ ァ ァァ!! ゴ ル ァ ァァ!!!』



            『お、俺がなにしたってんだよォ!!!!』







白薔薇「! この声は…確かヒューズさん?…まぁ!なんという幸運でしょうか!!」ダッ!









迷子の迷子の白薔薇姫さんは、知り合いも何もいない大都会のど真ん中で独り

しかし、これは僥倖か…?昨日お近づきになった不良刑事の怒鳴り声が聞こえて来たではないか?


困り果てた彼女は知り合いの声と、必死な年若い男性の声がする方へ駆けて行った





252以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 02:13:57.53afQLpd/f0 (3/3)








   ヒューズ「こんの餓鬼ァ!!人突き飛ばしといて逃げるたぁどいう了見だァァァ!!」カチャ! ダダダッ








   サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「ひぃぃぃーーー!そりゃ俺がわりぃけどよぉぉ!」


   サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「知らないおっさんが銃構えて走ってきたら逃げるだろうがぁ!!」









  ヒューズ「 誰 が お っ さ ん だァ!!俺ぁ 2 7 だあああぁぁぁぁ!!」バキューン!!



  サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「うわぁああああああああ!?!?おっさんじゃねーか!!」ヒョイッ










 サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「くっそぉ…!なんなんだよぉ一体!?」ぜぇぜぇ


 サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「俺はキグナス号の積み荷の事を知りたいだけだってのに!!」



  ヒューズ「…あ"?キグナスの積み荷だぁ?」ピタッ









   サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「はぁ…ッ!はぁ…?なんだあのおっさん動きが止まった?」

   サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「とにかく逃げねぇと!この曲がり角を曲がればっ!!」バッ!













           白薔薇「えっ」バッ!


   サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「なっ!?―――あ、危ない!!ぶつかるッ!」






253以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 02:16:27.25baTL5JL40 (1/1)

なんてベタベタな


254以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 02:30:32.45Vlhc3VN+0 (1/1)

レッドキター


255以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 08:02:12.59xOk3hmniO (1/1)

ルージュとレッドなら衝突せずに済むな


256以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/07(水) 16:40:03.89CKtUB43BO (1/1)

遂にレッド登場かwktk


257サガフロ主人公 小此木 烈人<オコノギ  レット>編 OP2018/03/13(火) 21:53:39.12or25wmVp0 (1/4)

*******************************************************











  父さん、母さん、藍子――――――












            ――――――俺は、俺は…絶対にブラッククロスを許さねぇ!必ず仇をとってみせる!!














*******************************************************



258以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/13(火) 22:43:09.88or25wmVp0 (2/4)







【  双子が旅立つ  "数日前"  朝9時27分 】


『レッドの回想:[シュライク]の高速道路』









 都市型リージョン[シュライク]…経済特区として知られ、自然環境も整った緑溢れる街
ロボット産業を始め、生命の神秘を日夜追究する研究所も存在し独特な食文化や歴史もある平和な土地であった






 四輪駆動のエンジン音を響かせながら一台の自動車が高速道路上を走行する、乗っているのは二人組の男性
運転席でハンドルを握る男はまだ年若い19歳の子供、その横には壮年の男性―――子供の父親が乗っていた


ありふれた光景だったとも、この街じゃさして珍しくもない

 親子で自家用車に乗ってドライブなんて何の変哲もない普通の事だった、だから神妙な顔つきの父親を横目で見る
若者もこの後に起きる悲劇など予想だにしなかった





       バイオメカニクスの権威、  小此木<オコノギ> 博士





助手席に座る父親は誰もが知る著名人だ

彼はその腕に茶封筒を抱き抱えるように持ち重々しくその口を開いた




小此木博士「これは…Dr.クラインが悪の秘密結社ブラッククロスの幹部と結託している証拠だ」


小此木博士「この封筒を[IRPO]本部に持って行けば彼の悪事を阻止できる」







小此木烈人…愛称でレッドといつも呼ばれていた少年は訝し気に父親に尋ねた




レッド「父さん…なぜそこまでしてそこまでしてDr.クラインに拘るんだい」


小此木博士「彼と私は共に学んだ仲だ、だが彼は研究の為ならば手段を択ばなくなっていった」


小此木博士「私は…それを知りながら止めることができなかった、私には学会から疎外されていく彼を救えなかった」





小此木博士「私は彼にこれ以上悪事を重ねて欲しくない、あんなふうになってしまっても、彼は私の友だ…」





259以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/13(火) 23:03:29.44or25wmVp0 (3/4)






自らの知的好奇心の為、飽くなき探求心の為、―――道を踏み外し外道の道に堕ちても

それでも掛け替えのない友だから、博士は自分の気持ちを打ち明けた














               ヒュッ!ゴスッッッッッ





レッド「なァッ!?」ギュルルルゥ





哀しみ、憐れみ…そのどちらともつかない表情<カオ>の父を横目で見やった僅かな瞬間だった


突如として真上からボンネットに"鋼鉄製の何か"――今思えば、鎧武者の甲冑のようにも見えた――それが飛びついてきた



ずっしりと重みのある金属の塊が飛来し、乗用車は嫌な軋音をあげてバランスを崩した
真冬の凍り付いた路面を夏用タイヤで走ったような嫌な感覚、ブレーキペダルを踏み、ハンドルを正面に戻そうともした





だが、その金属製の人型は腕を振り上げ、車体に拳を叩き込み配線をブチブチと引き千切って操縦不能にして飛び去った






親子の乗る乗用車は長いカーブで蛇行し、最後にはカードレールを突き破って崖下に真っ逆さま

少年が最後に見たのは金属製のボディーと、その脇に抱えられた父の姿だった







     キイイイイイィィィィ   ガシャァン



―――
――





レッド「…ぅ、…ぐ」ムク


どれだけの時間意識が沈んでいたのだろうか、彼が眼を覚ました時視界に飛び込んできたのは木漏れ日の射す緑の屋根

身体を動かしてみる、奇跡的に目立った外傷は無い、上体を起こせばフロントガラスの破片がパラパラと頭から落ち首を
動かせば拉げた自家用車が黒煙をあげていた…本当によく無事だったものだ




260以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/13(火) 23:15:18.38or25wmVp0 (4/4)




レッド「いってぇ…」



レッド(くそっ…何が起きたってんだ、車運転してたら時代劇の鎧武者みてーなのが降って来て)




レッド「はっ!?父さん!…父さん!!!!」





レッド「くそぉっ!やられた!!ブラッククロスの奴らめ…」ダンッ



拳を大地に叩きつけ、歯軋りを1つ…あの鎧武者は、恐らくブラッククロスの手の者に違いない

証拠品をパトロール隊員に渡す算段を何処で知ったか知らないが連中はそうなる前に彼等親子を亡き者にしようとしたのだ





レッド「…!」ゾワ






そこまで考えて彼は背に薄ら寒いモノを感じ取った



犯罪組織は証拠隠滅の為に自分達親子を襲った…そして父の身柄拘束、ならば…









――――ならば、自分、父と来て"次は何を狙う"







レッド「…か、母さん、藍子…!!」ワナワナ






ブラッククロスの次の狙いは、恐らく小此木博士の妻と娘…即ちレッドの母と妹だ



レッド「ち、ちっくしょおおおおおおぉおぉぉ!!!」ダッ!



その場から彼は走り出した、ペース配分も何もあったもんじゃない、喉が痛くなる程の全力疾走

茂みを掻き分け、郊外にある一軒家へ、家族が居るはずの自宅へと




261以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 00:14:58.01zLD7jsdH0 (1/11)





レッド「ハァハァ…!」



[シュライク]郊外の美しい森林、その中に佇む豪邸…まだ自分が幼かった頃はすぐ外で木登りや蝶々を追いかけたあの道





レッド「…ハァ、うぐ!」ドテッ ズサーッ




まだ赤子だった妹を抱き微笑を浮かべる優しい母、休日には自分を肩車して森の中を散策した父との思い出





レッド「……こんなとこで転んでる場合じゃねぇんだよ」ググッ





学者である父の所へ都心部から自転車で本の配達に来る憧れのアセルス姉ちゃん、よくヒーローごっこに付き合ってくれた










何もかもがレッドの脳内で鮮やかに輝いていた、在りし日の思い出が




立ち上がり森林の悪路を走る、何度も転び、泥にまみれ、傷を作っても止まらずに…



寿樹の香り…花の匂い、













焦げ臭い匂い、何かが燃える音





自宅に近づけば近づくほどに【当たって欲しくない予測】が現実になっていく




乗用車の襲撃から崖下への転落、眼が醒めた時はまだ木漏れ日の射す時刻で…彼が自宅へと戻った時は既に夕刻であった




              オレンジの空、茜色の雲…そして

                            空の色と同じように燃え上がる実家が…



262以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 00:40:43.57zLD7jsdH0 (2/11)


【  双子が旅立つ  "数日前"  夕方16時47分 】




  【炎上する小此木邸 前】






パチパチ…メラメラ





現実は…残酷だ、さっきまで彼の脳裏には家族との温かな思い出が美しい鮮やかな景色があった


だが、目の前の鮮やかな"赤"はそれを否定する


頬に飛んできた火粉が当たる、熱い、ああ、熱いとも…痛いくらい熱い


これが崖下に転落し未だ昏睡状態の自分が見ている夢、幻ではなく無情な現実なのだと嫌でも彼に悟らせる痛みだ

















  レッド「う、ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――ッ!!!」










それを目の当たりにして彼は折れてしまった、膝から崩れ落ち、大粒の涙を流した



屋敷は全焼、あれではもう母も妹の藍子も……


泣くしかなかった、ただただ哭くしかなかった






しかし、世界はどうやら彼に悲しみ途方に暮れる時すらも与えてくれぬようだ…燃え盛る炎の篝を背に彼の元へ影が伸びる


項垂れていたレッド少年の頭上から声が浴びせられた





              「キサマ、小此木博士の息子だな、死ね 母と妹の後を追わせてやる」






263以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 01:16:19.75zLD7jsdH0 (3/11)




レッドはゆっくりと顔を上げた、赤々と燃える炎を背に揺れ動く人影がこちらに歩いてくる
眼を擦り、涙を振り払い暈けて見えた輪郭はしっかりとその姿を現した…


 思わず声を漏らし掛けた、何せ自分の目の前には自分よりも一回りも身の丈がある大男が立っていて
その男は両腕が義手だったのだから


義手…それも"普通の"ではない、事故で腕を切断し生活が儘ならない人間が手術で義手や義足をつけること自体は
なんら普通の事と呼べたが、目の前の男のソレは明らかに日常生活が目的で造られたソレとは異なっていた






人間にあるべき腕が無く、肩から先は無機質な金属…手首の先は鉤爪で、刃先には血糊が付着していた



自分の数歩前に男が来たことで漸く焦げ臭さと共に生臭い血の匂いが鼻孔に入り込んだ…
 よく見れば男の口元にも血液が付いていた、ギラついた眼差しでレッドを見下ろし、口元の血をジャムでも舐めるように
ペロリと舐めていた異様な人物



その両隣には護衛であろうか、顔すらも覆いつくす全身青タイツの人物が二名
 青の生地に黒い帯が交差するように腹部、そして頭部についているのがなんとも奇妙な出で立ちだ










 いや、この際そんなことはどうでもいい、重要なのはそこではなく――――










       レッド「…てめぇ、今…なんっつった」








ゆっくりとレッドは立ち上がった、青筋を立てて、未だかつてない程の怒りを、腸が煮えくり返る程の憎しみを声にした






  ――――死ね 母と妹の後を追わせてやる



目の前の人物は間違いなくそう言った、それが意味する事はつまり



   「フン、なんだ落下の衝撃で耳がイカレたのか、天国の母と妹の元へ送ってやると言っているんだ」







264以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 02:10:36.11zLD7jsdH0 (4/11)



プツン、頭の中で何かが弾け飛んだ音がした

全身の血流が一瞬だけ真逆になったかのようだ、冷静さも思考も要らない、ただ「コイツをぶちのめす」それだけがあった





レッド「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァぁぁぁぁァ!!!!」




やんちゃ坊主でよく喧嘩もしていた、著名人の父を護りたいと空手教室や銃の訓練もまともな学び舎で習った事がある






そんな彼の怒りの一撃は
















               ドゴッシャアアアアアアァァァッッッァァァアアア――――ッ!!!










                  「今、何かしたのか?」ニィ


                    レッド「うっ!?」















怒りの一撃は…腹部に放った渾身の蹴りは、あまりにも無力だった




                   「死ね」ザシュッ



小五月蠅い便所蠅を叩き落とすように軽く振るった左腕、5本指の鉤爪は自分の力が一切通用せず唖然とする
レッドの肉を一振りでズタズタに裂いた




265以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 02:19:49.47zLD7jsdH0 (5/11)



ずしゅり、身体が痛い、あまりにも呆気ない




レッド(…俺、死んじゃうのかよ)





ドサッ…




横たわった彼が真っ先に思ったのはそれだ、生温かい…自分の血ってこんな感じなんだな、血は温かくて抜け出ていく度に
身体が氷漬けになるみたいに冷たくなってく




            「へっ、口先だけの餓鬼が…」レロォ…



鉤爪の男は刃先に付着した血を舐め取り、踵を翻す…この傷じゃ助かるまいと判断したのだろう






レッド(うそだろ、俺まだ死にたくねぇよ…まだ俺は…俺は…)









レッド(おれ、は…みんなの、父さん、母さん、藍子… あいつ、まだカタキ…)













ズリッ…グッ、グググッ



    「…あぁ?」ピタッ


    「……ほー、まだ立ち上がるのか、まるで生まれたての子鹿だな」クルッ









      レッド「ハァ…ぜぇ、み んな   カタ キ…てめぇ、だけは…っっ」プルプル




     「健気だなぁオイ、泣かせるじゃあねぇか、その敬意に表して確実に殺してやる」




266以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 02:39:30.33zLD7jsdH0 (6/11)


鉤爪の男は両腕を組むような姿勢を取る、そして肩を竦めると―――



  ガシャッ、ガコンッ…!




レッド「な、んだと…!!」




「へっ、面白れぇもんみせてやるよ!ゆけぃ!![クロービット]」



男の義手が外れ、そしてその両腕は――――ッッ!!




クロービット『』ヒュンッ ヒュンッ

クロービット『』ヒュンッ ヒュンッ




レッド(義手が飛んでやがるッ!―――俺の方に回転しながらマズイッ)




鉤爪の男の両肩、腕が外れた部位は機械で出来ていて…大男は所謂サイボーグという奴だった






  悪の秘密結社ブラッククロス、狂気の科学者クラインが手を貸す前から人攫いを積極的に行い

  攫った人間を改造手術で怪人に改造する……まるで日曜日の朝に特撮ヒーロームービーでやってるようなふざけた話だ



  だが、その狂った内容を現実<リアル>で、三次元でやってるから警察も血眼になって探す犯罪組織なのだ





 父から聴かされた時は最初あまりにも馬鹿馬鹿しい話だと思い冗句か何かだと思ったが…
機械男をこうして見せられては信じざるを得ない





 「な?面白れぇだろ、俺様の腕はこの脳髄の遠隔誘導操作システムで動いてるんだ…あの世で家族に自慢しな」



クロービット『』グルグルッ ギュゥウウウ――z__ン!  ドブッジャアアアアアア!!

クロービット『』グルグルッ ギュゥウウウ――z__ン!  ドブッジャアアアアアア!!



レッド「ぐっぁああああああああああああああああぁぁぁ……」パタッ



採掘ドリルよろしく螺旋を描きながら飛んできたソレは無慈悲にも彼の胃腸、肺に大穴を開け、男の元へ戻っていく


断末魔、そして―――家族の仇をとることすら叶わず朽ちていく自分の非力さに涙しながら彼は地へと伏した…






267以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 03:25:01.07zLD7jsdH0 (7/11)
















              正義のヒーロー「シャイニングキィィィィイイイク!!!!」シュピーン!ゴシャッ!!!






                  「おごぁァ!?!?!?!?」












レッド(…ぁ、? なん だ  だれか  いるの か  もう みみ も まともに きこえな )





              正義のヒーロー「くっ、遅かったか!シュウザー!!私が相手だ!」




              シュウザー「うぎ・・ぎぎ、キサマァ…」ギロッ






その時、何処からかともなく一人の男が現れた全身鎧スーツを身に纏う男は光り輝く蹴脚[シャイニングキック]を放った
鉤爪のサイボーグ…[シュウザー]は脊髄から脳に痛みという電信信号を伝わらせた人物を恨みがましく睨みつけた




   シュウザー「きえええええええええぇぇぃぃいい!」ヒュッ シュバッ!


   正義のヒーロー「遅いっ![ブライトナックル]!!」


全身鎧スーツの闖入者目掛けて貫手、からの袈裟切りを繰り出すもそれを見越した動きで闖入者は紙一重に躱す
 そして光り輝く拳を勢いよく踏み込んできたシュウザーの下顎目掛けて打ち込む

敵の上半身はこちらへの踏み込みで、自身の拳は一回りも大きい巨体の下顎へ、お互いの体格差と動きを利用した拳は
下顎をぶち抜く、敵の方から正面衝突しにきたようなものである




  シュウザー「か"っ"…ぐ、ぶ」ツー――ッ、ポタッ


  シュウザー「俺様の顔に、よくも…クソ覚えていろ!!」バッ!ギュルルルル



唇の端から血を垂れ流したサイボーグは片脚を軸に独楽<コマ>のような大回転、砂埃を舞わせそれを煙幕代わりにし
護衛を連れて去って行った




268以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 04:02:03.07zLD7jsdH0 (8/11)




 正義のヒーロー「取り逃がしたか…、いやそんなことよりも…!」バッ



 正義のヒーロー「おい!君しっかりするんだ!おい…しっかりしろ!!」




レッド(瀕死)「 」




 正義のヒーロー「いかん、このままでは助からない……ならば」カッ!!!



レッド(瀕死)『  』パァァァァ…!


レッド(?)『』ガシィィン!!





 正義のヒーロー「おい、しっかりしろ!"アルカイザー"」





レッド(?)(ある、かいざー?)





薄れゆく意識の中、レッドは暗闇に差し込む光を見た、あの落下事故で目覚めて最初に木漏れ日を見た様に






そして違和感に気がつく






レッド(?)「…うん?」ガシャッ

レッド(?)「アンタ…なんだそのふざけた格好は…俺にもこんなもの着せてふざけてるのか!」ガシャガシャ





 違和感、それは…目覚めてすぐ目の前にいる全身よろい鎧スーツという
まるで特撮物に出てくるヒーローのようなコスプレをした男と全く同じような衣装を自分も着ているということだ


つま先から肩まで全身に頑丈なアーマー、頭部はバイザー付きでユニコーンの角が生えたようなヘルメット






 正義のヒーロー「混乱する気持ちは分かるが、…いいかよく聞け、君の命を救うにはこれしか方法がなかった」


 正義のヒーロー「本来は君にその資格があるか調査し、宇宙<ソラ>の彼方にある[サントアリオ]のヒーロー協会に行き」


 正義のヒーロー「審査が通り次第、力を分け与えヒーローにするのが正式な手順だ、だが細かく調べる時間が無かった」





269以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 04:31:50.31zLD7jsdH0 (9/11)



にわかに信じられないような話だった、目の前のコスプレ男は宇宙の彼方にあるヒーローのリージョンからやってきた

 フィクションでは無い、正真正銘本物の正義のヒーローで、悪の組織ブラッククロスと戦っていた最中で
瀕死のレッドとこうして出会い、彼にヒーローに変身する力を授けたのだという


この鎧スーツ男…名をアルカールというらしいが







レッド改めアルカイザー「ま、待ってくれ話を整理させてくれ……すると俺は本当にヒーローになっちまったのか?」



アルカール「そうだ、君は今日から正義の使者『アルカイザー』だ」




アルカール「ヒーローになってしまったからには"ヒーローの掟"に従わねばならない!」


アルカール「【ひとつ、ヒーローにふさわしくないと判断されれば君は消去される】」

アルカール「【ふたつ、一般人に正体を知られた場合は記憶を全て消される】」





悪の組織に、特撮番組に登場する変身ヒーローのお約束みたいな"掟"…いよいよ以って現実かどうか頭が痛くなってきた


頭痛がする、痛いのならこれは残念ながら現実なのだろう…信じがたいが




…信じがたいが消えかけていた命の灯を救われたのもまた事実、そして






アルカイザー「…なぁ、ヒーローは強いのか?俺を強くしてくれたのか?」




あの時、朦朧とする意識の中、光り輝く脚で自分の技が通用しなかった家族の仇を"ヒーロー"は確かに圧倒していた



アルカール「…君が今何を考えているのか大体予想はつく、ヒーローの力は『正義の為』に使わなくてはならん」







        アルカイザー「ブラッククロスの奴らをこの力でぶちのめすッ!!!」ギリィッ!!


   アルカール「復讐はいかん!!正義の戦い以外に力を使えば君は消されてしまうのだぞ!」







   アルカイザー「はっ!どのみち俺は死んでたんだろう、ブラッククロスは…ブラッククロスだけは絶対許さねぇ!」






270以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 04:44:06.34zLD7jsdH0 (10/11)




―――
――



その日から、小此木烈人…レッドは父親の親友だったらしいホークという人物の誘いで

[キグナス号]という船の機関士見習いとして住み込みで働き各地のリージョンを転々とする日々を過ごした








あの日の事は一日たりとも忘れない、家族を殺され、復讐を誓ったあの時の気持ちを…!





ある時は巨大カジノのリージョン[バカラ]でシュウザーを見たという情報が入り
 そこでブラッククロスの戦闘員と怪人を倒し、またある時は[シュライク]に戻り女児誘拐事件を起こした戦闘員たちを
ヒーローに変身して次々と打ち倒していった


…その時は誘拐された女児の証言や、都市型リージョンということもあり大々的に新聞にも載ったが

変身した姿を見られなくて良かった…








そして、時は現在に戻る




[マンハッタン]の爆破テロでシップの運行が一日遅れたが彼は[キグナス号]と共にやってきた

そして…ひょんなことから船内に大量の密輸武器を見つけてしまった!!何処かで戦争でもやるというのか
こんな物騒なブツを一体どこの誰が持ち込んだのだッ!


家族の仇への復讐心は忘れない、だがそれとは別に元から彼は正義感の強い男だった


だから今回の密輸武器の真相を突き止めるべく、[キャンベル・ビル]に向かう矢先で妙な不良刑事に追い回された、と


そして―――


















           白薔薇「きゃ、きゃああああ!!!!」


        レッド「う、うわぁぁぁぁぁ…あ、ぶつかる訳にぁ行くかぁぁぁぁ!!!」キキィ―ッ!!






271今回は此処まで!2018/03/14(水) 05:41:21.67zLD7jsdH0 (11/11)

───────===========ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ三三三三三三三三三三三三三


                    今回は此処まで!!!



『BGM:サガフロより…戦え!アルカイザー!』





  液晶画面の前に居るちみっこの諸君ッッ!!今日はみんなのヒーロー、アルカイザーについて解説するッ!


 説明しようッッッ!!アルカイザーとは!!正義のヒーローが住むリージョン[サントアリオ](原作中名前しか登場しない)からやって来た
正義のヒーロー、アルカール男爵から力を授かった小此木烈人<オコノギ レット>少年が変身した姿であるッ!





彼は一部のイベント戦闘を除き全ての戦闘で『変身』コマンドが使用可能なのだ

【人間<ヒューマン>】【モンスター】【妖魔】【メカ】その4種族のどれにも属さない【ヒーロー】という特殊な種族であり
専用技ヒーロー技という特殊な技術を閃くぞ!



レッドは変身に1ターン消費してしまうが、変身した場合はHPが全回復し


  『 最 大 HP が 2 5 0 も 上 昇 ! 最 大 VIT 7 5 更 に 他 の ス テ 値 が 全 25 上昇 』

  『 気絶(即死)、石化 、睡眠 、麻痺 、毒 、精神(魅了や混乱)といった全状態異常が効かなくなるのである』




ただし、ヒーローに変身した場合戦闘終了時にステ値が上昇しないので基本は生身で殴り合いをした方が良い

噂によると変身時に自動的に装備される[レイブレード]等のヒーロー装備によってステ補正が付くから成長しないシステムだとか…
サガフロは基本的に装備すると大幅に能力値が上がる武具を装備すると成長の妨げになる

アセルス編で調子ぶっこいて[幻魔]頼りにしてるとアセルスが修行不足になりやすいとか…

結論:ヒーローたるもの日々の鍛錬を疎かにしてはならないッ!


なお、変身シーンを一般人(仲間キャラ)に見られる訳にはいかない為、味方がレッドの変身を目撃できない状態でない限り変身はできない

※ヒーロー協会は『見られさえしなければOK』のスタンスらしく、仲間が麻痺、暗闇、睡眠、石化、戦闘不能、混乱など
 仲間が全員レッドの変身を認識できない状態異常なら可能
 ちなみに、人間、妖魔、モンスターは駄目だが、メカには見られても良いらしい、命令を固く守るロボットは人に言いふらさないし、無機物だからである
───────===========ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ三三三三三三三三三三三三三
                      }  ヽ    |∨/ //    ____
                      }   `、  ./ /∨// , ・'"    `、
                      ヽ  ,r'´/~ヽ|//|///        |
                       ヾ/|‐/_,/ ||//|<_ ..-‐=、    `ヽ、
                  _........-―‐i / /  |.|~`/,r―-)    }}――‐-=}、_
                   ̄ ̄ ̄ ̄|ソ ./ .//|_/ }_/、   /li     //  ヽ、
                        .ヽ ./_//)'/ヽ_,r‐' \ヽ__.//  __/    .|
                 ,、o     {`'~>‐'´ `ヽ-.、   ヽ〈、 ̄~ ,'.l´}`lz、  |
             _,..-''"`}l     .人 |~ヽ   `、/ヽ、  | .|    ヽヽヽヽヽ./
            _}}__  }ヾ_  / >-' .`、   .`、 ヽ__ノノ}    <ヽ```ヽ/
          /  }}  `ヽ、~} / .,/ ./    `、   }    <ー'、     ̄ ̄ヽ
      ,xー=x、_..-、,r}ヾ、  ``}}ー'|,-}___  }ー--/    .∧_|        `、
     /   //  `==ヾ、   }}    |`'´`ヽ_)'<三彡}     .| .|    、     .`、
   ./    //   〉=/ r-,'~)、__..‐'‐、 /~/_`ヽ__)ヽ、,..'|" ノヽ  .`、     `、
  ./    //_,.-||// ,' ,' / |~})   >'-/__  ̄)ー-、 ) `-{´ .`、  .`、     `、
 / ,.-'´ ̄ ̄    // ) `ー'-'-'/=ー-='―' .ノ_  ̄ (~`、   ./.}   `、  `、     `、
/ /          ̄ </~ヾ、/| ̄フチフく´   `ー、ヽ ヽ  / /,--、 |   `、     |
               ヽ  ./|.,ト/ /,.|   ̄`ー―.'-‐'´ ̄~~| ,' |  .ヽ.|    `、    |
                \/〉´`l //ソ     ./~`ヽ___|,' |   `、   `、   ./
                 |/  .|/ ./    /      ./ .|  }    .}`、   `、 ./
                .,rl_/ /ー―'''´        ∧  } }    } ``‐--‐ヽヽ_,、
                ./ / /             .〈  } / /    .}      ヽ /
                }__}´ /´               } } { .{     /
             /},-、 /                 `-'ヽ {   ,〈
        }ヽ_..'// .}'/                     |ヽ  ./ |
        |~ヽ /´ 〈___/|/                     ヽ.}_/__ノ
        `ー``―'―‐'

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272以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/14(水) 14:27:58.183yZnWKRZ0 (1/1)


変身システムはレッド一人だけになるまで追い詰められた時にお世話になったのでよくできてるなぁと思いました


273以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/15(木) 16:07:41.61clHs7vPPO (1/1)

テロ後のレオナルドはシステム的にはやはりロボ扱いなんだろうなぁ……


274以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/03/16(金) 03:46:54.58axptN3b50 (1/1)

真・アルフェニックスは前情報なしで閃きたかった……


275以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/04/10(火) 22:58:28.22hrl4ammY0 (1/1)




全身全霊を掛けた急ブレーキ、靴底の踵部分が一気に数㎝すり減り、路面はマッチ箱を擦ったかのような跡と摩擦熱が残る
あわや惨事になる寸での所で彼と彼女は激突を免れた



レッド「だ、ダイジョウブ、か?」



恐る恐る、眼を開いた白薔薇に対して、心拍数が2倍速でリズムを刻む彼は片言ながら尋ねた…



白薔薇「は、はい…」




レッド「よ、良かったぁ~」ヘナヘナ


とりあえず、女性を全力で跳ね飛ばさなかった事に心底安堵したようで、彼はその場にへたり込んだ
 そんな二人の元へ遅れてやって来るのは不良刑事ことヒューズであり手にした銃を下げ目の前に奇妙な光景に眉を顰める



ヒューズ「…昨日のレディか、また迷ったんですか?」

レッド「うげっ!?お、おっさ―――ごほんっ、知り合いなのか?」



 どうやら目の前の貴婦人はこの不良刑事の知人らしい
怒り狂って先程までレッドを焼き焦がそうとしていた凶悪な重火器は――知り合いの前だからか――既に彼を狙っておらず
兎にも角にも事態が自分にとっていい方向に転がりそうな気配を少年は感じ取った


…此処で間違っても「おっさん」などと言って怒りの導火線に再点火しない限りは




白薔薇「まぁ…!ヒューズさん!またお会いできましたね!」ニコッ

ヒューズ「へへっ!いやぁ~連日のように美人さんに巡り合えるとは俺もツイてますなぁ、はっはっは!」


白薔薇「そちらの方はどうかなされたんですか?なにやらお急ぎで逃げていたようですが」


ヒューズ「え、あ、あ~、いやね?ここは大都会でしょう?白薔薇さんと同じようにこの坊主、迷子になってたんですよ」

ヒューズ「それで俺がいち警官として道案内してたってワケで」




レッド(このおっさん…よく言うぜ)




っと、見た目麗しい貴婦人の前でマジメな警察を演じ始めたおっさんに内心毒づいたが
それで自分が助かるならば何も言うまいとレッドは合わせる事に決めた



レッド「いやー、そうなんですよ、俺、あのビルに行こうとして、急ぎの用だったんで全速力で走ってて…」

レッド「本当にすいません、さっきはぶつかりそうになって」ぺこっ


白薔薇「いえいえ、良いんです、私もぼんやりと歩いていたのが悪いのですから」


ヒューズ「(…そう来たか)くぅ~…なんて良い人なんだ、オイ小僧、次からは気ぃつけて歩けや!」

レッド「わかってるって…んじゃ俺は急ぎの用なんでこれで!」タッタッタ!


道すがりの女性を利用したようで気が引けたが、ともかく彼は不良刑事のリンチから逃れるチャンスを生かし、場を去った



276以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/04/11(水) 02:59:17.740WsO7RUb0 (1/1)





             アセルス「白薔薇ぁぁぁぁ!!!!!」タッタッタ!

              ルージュ「や、やっと見つけた…」ゼェゼェ




白薔薇「まぁっ!アセルス様!ルージュさんもエミリアさんも!」


ヒューズ「げっ!?エミリア…!!」ビクゥ


ヒューズ「な、仲間が来てくれてよかったじゃないですか!じゃ、俺はこれで!」ビシッ!ダッッ!







アセルス「駄目じゃないか!!勝手に居なくなって!」

白薔薇「も、申し訳ございません…」

エミリア「まぁまぁ…それより行きましょう?」






―――
――



【双子が旅立ってから…3日目、朝8時07分 :[マンハッタン]シップ発着場】



アニー「着いたわね![マンハッタン]」

サングラスを掛けた男「そのようだな…、後2時間もすればエミリア達と合流し[クーロン]に帰る事になるだろう」


アニー「じゃあさ!!それまで買い物楽しんできても良い!?此処のアクセサリーショップ人気高いんだよね~」

アニー「風邪で寝込んだライザの分までなんかお土産買ってあげたいし」

サングラスを掛けた男「好きにしろ」



サングラスを掛けた男「君はどうする?ライザのチケットが余ったからとアニーに連れられたのだろう?」




ブルー「…別に」






元は自分の金で買った乗船チケットだ、急遽来れなくなったアニー等の仲間の1人の代わりに自分が乗る事になった

 この3日間で"保護のルーン"…なにより遭遇できるかどうかさえ怪しい[タンザー]の体内にあった"活力のルーン"を発見
その功績は大きいと言っても良い、そして…



サングラスを掛けた男「…それにしても中々感心した、君のような男が居るとは…勝利こそ男のロマン!分かっているな」

アニー「うわっ、出たよ…ルーファスの病気が」ハァ~


ルーファス「アニー、何を言うか、勝利は良いモノだ、女のお前には分からんだろうがな…!」




277以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/04/12(木) 20:21:58.35MRpS5VUSO (1/1)

なんであんなに勝利フェチなんだろうなこのグラサン


278以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/04/13(金) 22:27:03.36idnRdBzy0 (1/2)






"勝利のルーン"



 印術の資質を修得する為に乗り越えねばならぬ4つの試練、その内2つは既に乗り越え、もう半分は今この場に居る男女が
試練の成功へと繋がる鍵を握っている


刑務所への潜入はアニー、そして…―――この日の朝、ブルーが知り合ったルーファスというサングラスの男



 彼はどういう訳か"勝利のルーン"が刻まれている遺跡によく赴き
観光目的で訪れた男性客に『勝利ッ!それは男の勲章!そう思わんかね?』と問うらしい…それだけ聞けば変質者である




 先述の通り、この3日間で試練を2つも踏破したのは功績として大きい、陰と陽の資質は先日の事件が切欠で今は誰ひとり
修行することができない為、ブルーもルージュも指を咥えて待つか他の資質集めに奔走する他ない…

先に[ドゥヴァン]で小石を受け取り、既に半分試練を終えたブルーには余裕があった


仮にルージュが秘術ではなく印術の試練を選択していたと仮定しても、追い抜かれることはほぼ無いに等しいし

 万が一にも弟が兄より優れていてこの3日間で秘術の4試練を全てクリアしてたとしてもだ
[ルミナス]の封鎖が解除されるまで暇を持て余すのだ









ブルー(術の鍛錬…それと、術力が切れて魔術が使えなくなった時の対処法を練るなりしようと考えていたが…)



ブルー「ルーファス、本当に"勝利のルーン"について詳しいんだな?」





ルーンの刻まれた巨石付近は力に引き寄せられてモンスターが出没する、粗蟲共然り、スライムプール然りだ
前情報を得られるならば、聞いておいて損は無かろう…



ルーファス「ああ、何度か[武王の古墳]には潜ったことがあるからな、経験譚を聞かせてやろう」



腕を組み相変わらずサングラス越しの眼はどうなってるのか分からんが微笑を携え、それはそれはご機嫌といった様子だ








アニー「ルーファス!!ちょっと買い物行ってくるからねーーー!」



ルーファス「ああ!…さて何から話したものか…まず、入口から入って左側の奥に宝箱が3つある部屋があるがそれは」


―――
――





279以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/04/13(金) 23:06:23.35idnRdBzy0 (2/2)






ルージュ「お、おぉ…!あれがキグナス号!!」





シップ発着場の展望エリアから眺める宇宙船<リージョン・シップ>の機影に銀髪の彼は目を輝かせた

 白く美しい白鳥をモチーフにしたデザインは実に見栄えの宜しい外装であった、一眼レフカメラを手に
その姿を写真に収めるマニアのシャッター音が激しいのも頷ける



白薔薇「…綺麗ですわ」

アセルス「どう?機械にもああいうのがあるんだ」

白薔薇「ええ…[ファシナトゥール]に居た頃は全く想像もつきませんでしたが…これは」




エミリア「…」


エミリア(キグナス、か……レン、私達あの日、二人で一緒に乗ったわね…パトロール隊員なんて危険な仕事辞めてって)


エミリア(私があそこであんな事言わなければ喧嘩なんてせずに済んだの…?)


エミリア(気まずさも何も無く、もっと陽の高い内からウェディングドレスを持って家に行けて…そうすればレンも)ジワッ


エミリア「…っ!」フキフキ


エミリア「いつ見ても!綺麗な船よね!!!三人共!売店でも見に行かない?観光ガイドとか必要でしょ」ニコッ






「…おい、あの船か?」ヒソヒソ
「ああ、情報は確かだぜ…」ヒソヒソ
「よし、ノーマッドのお頭に報告だ」ヒソヒソ









様々な思惑、想い、人々を乗せて、白鳥の乗降口は閉ざされていく…








【10時25分】 [マンハッタン]発 [クーロン]行き便は今、大空の彼方へとその翼を広げ飛び立った…










280以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/05/22(火) 23:04:56.702Lg3471g0 (1/1)



混沌、それは雲が悠々と流る青空を突き抜けた先にある"空の先にある空"の事だ



 その空間は死が充満していて、あらゆる生命は放り出された瞬間に身体が圧縮されて潰れ、消滅すると学者は説いた
大気圏、という世界<リージョン>を覆うフィールドバリアに護られているからこそ地上の生物は生きていける


だが大気圏の外、即ち混沌の空では身体が重力の激流に常に晒され肉も骨も軋み縮み、最後は圧縮されて粉微塵となり死ぬ

どこかのリージョンでは混沌の事を"宇宙空間"という名称で呼ぶようだが…それは少数派である











ブルー(悪くないな)






死の空を白鳥を模した光り輝く箱舟が渡航していく

 金の髪を束ねた魔術師は船内を暇つぶしがてらに散策していた
オーバーワークな鍛錬も祖国からの任務も今日は遂行しない、適度に急速を取らねば効率が落ちる…

テラスから眺める空は、月並みな言葉しか出せないが綺麗だった

 雲を突き抜け、星が矢の様に眺める自分達の視線から外れていく…
こんなにも美しいというのに、外は一歩出れば身体が朽ちて死に至る空間だというのだ



紙コップに入った甘いカフェラッテを傾け、彼は穏やかな時間を過ごして居た…思えば初めてかもしれない
祖国に居た時は術士としての学業に明け暮れ、寝ても覚めても参考書の文面とにらめっこで


いや、遠い昔、学院を抜け出して同い年の誰かと遊んだような気がするが…この歳になってからは初めてだ





アニー「あっ!居た居た!アンタねぇ!勝手に居なくなって探したわよ!」タッタッタ!


ブルー(…鬱陶しい女が来たか)ハァ…


アニー「ちょっと、なにさ、その顔…露骨に嫌そうな顔を」


ブルー「別に、それより何か用があって来たのか?」ゴクッ



面倒臭い、そんな態度を顔に思いっ切り出しながら紙コップを口元に運び甘味を嗜む
 相変わらずの不愛想な男に少しだけムッとしつつも金髪の女は答えた


アニー「あたしの知り合いとこの船で合流する予定って前言ったじゃん?」

ブルー「ああ(聞く限りで頭の悪そうな女か)」


アニー「時間帯も丁度いいしバイキングを楽しみながらって思ったのよ、ブルーも来る?」


ブルー「結構だ」


豪華客船のビュッフェは彼自身も興味はあるが、アニーだけでなく更にうるさそうなのが一緒なのは御免だ、そう思った





281以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/05/22(火) 23:17:01.84ycsGzSzQ0 (1/1)

きたきた


282以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/05/22(火) 23:23:59.76Kh9TbcU/O (1/1)

キター‼


283このレスは判定に含めない2018/05/23(水) 00:27:33.33j4kZd+nl0 (1/3)



アニー「そうかいそうかい、ならそこに1人で居るんだね」

 折角人が飯に誘ってやったのに、と文句の1つ言ってやりたいが…
此処で騒ぐのも他の乗船客に迷惑だな、と彼女は慎む事にした

上司であるグラサン男はVIP専用の部屋で趣味の東洋刀を磨いている頃だろう…隠れ刀マニアで[シュライク]まで赴いては
[刀]を何処かの古墳から拾ってきたがっていたそうな…



青い法衣の男に背を向け、彼女は階段を下りてレストランへ向かっていく













アセルス「…美味しい」

エミリア「ふふっ!なら良かったわ」クスッ




レストランは人気が高く、昼食を求めてやって来た家族連れも含め大盛況と言っても良いだろう
銀食器で切り分けたガレットを一口、アセルスお嬢は蕩けるようなチーズとハムのハーモニーに正直な感想を漏らした


エミリア(この子も歳相応な笑顔をよく魅せるようになったわね…)

エミリア(突然、拉致同然で連れてかれてしかも人間としての生涯を奪われて…)ホロリ



アセルス「それにしてもこの料理…なんだかクレープみたいだね」

白薔薇「これはガレットですわ、痩せた土地で栽培が可能な粉を練った物で何世紀もの時を得てクレープになったのです」


アセルス「ふぅん?要するにクレープの御先祖様なんだ」クルクル


切り分けて生地で半熟卵<スクランブルエッグ>やハム等を巻いて食べる料理をマジマジと見つめる

まだ[シュライク]で普通の女子高校生として暮らしてた頃、帰り際に寄っていた屋台で売られてるホイップクリームだの
苺やバナナを包んだデザートの元となった物なのか、と感慨深げに眺めてそれからもう一口、噛み締める





白薔薇「それにしてもルージュさん、船内を探検したいだなんて」

アセルス「ルージュもあれで結構子供っぽいとこあるからなー…」



 この場に居ない紅い魔術師は目を爛々と輝かせて船内を歩き回っている
機械文明がそれほど盛んではないリージョンからやって来たのも相まって色々と見て回りたいのだろう



特に、医務室前で[医療用ロボット]を見た時なんか視線がもう釘づけで―――





アニー「エミリアーーーーっ!!」パタパタ…


エミリア「んん?アニー!アニー!!」ガタッ


アセルス(走って来る女の人、あの人がアニーさんか…綺麗な人、っていうか胸が大きい…)じーっ



284以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/05/23(水) 02:46:23.14j4kZd+nl0 (2/3)



【双子が旅立ってから3日目 午後13時40分】




レッド(…まさか、この船に兵器が積み込まれてるなんてな、クソ!キャンベルビルの社長め)

レッド(あのヒューズって刑事のおっさんと成り行きで一緒に行ったけど証拠もつかめない以上何とも言えなかったし)



ホーク「レッド!作業が雑になってるぞ!」


レッド「あ、わりぃ…」

ホーク「気をつけろ、俺達機関士は船に乗ってる客の命を預かる身でもあるんだからな」


レッド「ああ!」


―――
――



アニー「そう…アセルスちゃん、だっけ?今あの白い人に連れてかれた子」

アニー「彼女も相当苦労してるのね」

エミリア「事情は分かったでしょ?この子を[クーロン]の闇医者の所に連れて行きたいの」

アニー「ええ!そういうことならお姉さんも協力しちゃうわよ!」フフンッ

エミリア「さっすが!アニー!話がわかるわ!」



アニー「所で?あと、1人居るんじゃなかったの?」


エミリア「ああ、術士が1人居るんだけど…今は船の中を散歩中よ」





アニー「へえ?…"術士"…奇遇ね、あたしも今は連れに術士の男が居るのよね…」

エミリア「あら?本当に」



―――
――



ルージュ「凄いなぁ、モニター画面をタッチすると船の案内図がでるんだぁ」ピッ!ピッ!



白薔薇「あら、ルージュさん」

ルージュ「お二人共、どうしたんです?」


アセルス「あ、うん……調子に乗って食べ過ぎちゃって///」カァ///


―――
――


「うん?」

「どうした」

「機長、未確認シップ急接近が衝突コースに入ります」

「なんだと!コンマ1回避、エマージェンシーパルスで警告!一体どこのヘタクソだ…」



285以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/05/23(水) 03:06:02.47j4kZd+nl0 (3/3)

―――
――


ルージュ「ほらほら!これ凄いでしょ!ボタンを押すと船の見取り図が」ピッピ!

白薔薇「まぁ…!機械というのは不思議ですわね」

アセルス「う~ん、二人にはそんな風に見えるのか…」



―――
――




ブルー「…」テクテク


ブルー(道に迷った…)ズーン





<ほらほら!これ凄いでしょ!ボタンを押すと船の見取り図が

<まぁ…!機械というのは不思議ですわね









ブルー「うん?なんだ曲がり角の先に人が居るのか…丁度いい、此処がどの辺なのか訊くか」スタスタ


―――
――




アニー「それでさぁ!その男…すっっごく嫌味な奴なのよ!…変なとこで律儀だけどさ」ハァ

エミリア「何か話聞く限りその術士の人、かなりアレな人ね」


アニー「うん…悪い奴じゃないんだろうけどね」


エミリア「アニーってば、飲みすぎじゃないの?」

アニー「べっつにー、ちびちび飲んでるから良いのよ、それに迎え酒だから飲んだ方が良いのよ」






エミリア「あ、術士同士なら魔術とか共通の話題があるじゃない?アセルスの連れの彼と会わせてみない?」

アニー「うーん?あの協調性ゼロ男とぉ~」ヒック


エミリア「丁度この船に乗ってるんでしょ?これも何かの縁って奴よ」

アニー「うーん、アイツとねぇ…」

―――
――



「だ、駄目です!回避パターンに追随してきます!進路を押さえています…これは!!」

「海賊船<パイレーツ・シップ>か! 緊急事態発令、全乗客・乗員を速やかに固定位置に!急げ!」





286以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/05/23(水) 09:56:42.686x/HGBPUO (1/1)

なんと言うニアミス
てかもしかしてアニー置いて一人で脱出するのかブルー……いやいやまさかね


287以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/05/24(木) 20:58:10.58nadEptv50 (1/2)



【双子が旅立ってから3日目 午後13時48分】




 豪華客船の順風満帆な渡航は一転、最悪のアクシデントを迎える事となる

 機長の的確な指示によって突如として鳴り響いたアラートは旅行客のアルバムに忘れられない思い出の一頁になるだろう
未来予想図を語らう新婚旅行に出ていた男女、子供連れの裕福な一家、経費で優雅な船旅を楽しんでいたリーマン


酷く耳障りなサイレンと慌ただしく逃げ惑う乗客、そんな群衆を避難誘導する乗組員







   ――――混沌の大海原をフライト真っ只中、逃げ場の無い宇宙船<リージョン・シップ>内部は"檻"と呼んでも良い





近くに着陸可能な小惑星<リージョン>は無い

 これが普通の水面を走る帆船で、しかもただ座標しただけとあらば、救命ボートなり何なり出すだろうが
生憎とこれは星空を走る船、もっと言えば後ろからは武装した海賊船…乗客を乗せて緊急艇を射出しようものならどうか?



…まぁ明るい結末にはならないな






「大変だー!海賊だぁ!パイレーツが船を襲いに来たぞぉ!!」





乗客の誰かがその言葉を叫んだ、次に叫んだのは女性だった、お決まりのように「きゃー」なんてシンプルな悲鳴


 毛を逆立てた猫が飛び跳ねるが如く椅子から立ち上がるスーツ姿の男、酒気を帯びた真っ赤な顔が真っ青になる中年女性
子供を抱き抱え妻の手を引き何処かへ逃げようとする旦那、我先にと他人を押し退け、押し倒し逃げる自分勝手な輩






 阿鼻叫喚の絵図と化したレストランに取り残されたエミリアとアニー…
二人の女性もまた騒ぎの渦中から抜け出そうと藻掻いていた




「ひ、ひいいいぃぃぃ、た、助けてくれぇぇぇ!!」バタバタ

「ど、どけぇぇ!!俺が先だぁぁ!!」ドガッ




エミリア「きゃあっ!?」ドサッ!

アニー「エミリアっ!――――あたしの連れに何すんだこのクソ野郎!!」バキャァ!!


「うげーーーーっ!!」ベキッ!ズサァ―――ッ!!



アニー「エミリア、大丈夫?立てる…」スッ

エミリア「い"っ…あ、脚が…」ズキッ




288以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/05/24(木) 21:24:06.33nadEptv50 (2/2)



アニー「さっきのハゲおやじに突き飛ばされた時、思いっ切りぶつけたから…そん時に挫いて、くそっ」

アニー(武器はルーファスの所に置いて来てる…よりによってこんな時に)ギリッ






エミリアの肩に手を貸し友人をどうにかして安全な所へ移動しよう、彼女がそう判断すると同時に船体は大きく揺れた


―――
――



「コンマ5最大減速後にコンマ3回避だ!それから1コンマゼロの緊急出力で振り切る!」


「りょ、了解!パターン準備完了ですカウントダウン開始しま―――」




     ド ガァ ァァ アアアアァァァァ―—…ッッ!




「こ、攻撃です!パイレーツが砲撃を うわぁっ!」グラッ


「い、いかん…!カウントダウン停止しろ!ミニマムドライブまで減速だ………くっ、これでは奴らに乗り込まれるな」

「き、機長…」


「…おお、神よ」



―――
――



ブルー「うぐっ…」ドガッ


ブルー「なんだ…さっきからこの揺れは…海賊が外から撃って来てるのか!」



<あ、アセルス様!此処から離れましょう!
<わかった!二人共行こう!
<う、うん!あっちに乗組員さんが居るから僕たちも!

<タッタッタ…!



ブルー(あっちに行けば良いのか、…とんだ船旅だな)チッ


今しがた壁に打ち付けた背中を擦りながら蒼き術士は声がした曲がり角の先に行こうとしたが…




ウエイトレスの少女「! あ、あんなところに逃げ遅れた人が! そこの人!!!こっちへ早く来てください!!」


彼は自分を呼び止める声に脚を止め、振り返った、紺色のショートヘアーに如何にもウエイトレスですと主張する
白いフリフリのホワイトプリムを頭に付けた娘と……医療用ロボットが一機


ウエイトレスの少女「此処からなら向こうの東ブロックより西ブロックの避難エリアが最寄りです!」





289以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/05/25(金) 00:16:45.98SYiJmmwLO (1/1)

ユリアか?


290以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/05/25(金) 07:49:08.96oDhSmZuwo (1/1)

ユリアとBJ&Kだろうな
そういやゲームでは思わせ振りなわりにあっさりフェードアウトしちゃったなユリア


291>>290 ブラックレイ潜入前に一度戻るんだから会話ぐらいあっても良かったですよねー2018/05/29(火) 22:43:30.059EwUrBht0 (1/1)

―――
――



ドカッ!バキィ!


「うわらばっ!?」
「おぎゃっ」
「あばっぷぅッ」




ヒューズ「ふぃーっ、…よう、小僧」コキコキ







キグナス号を襲撃した海賊が優先的に狙ったのは機関室、そして機長らの居る操縦室だ

機関士見習いのレッド少年は世話になった父の友人ホークを人質に取られ両手を上げて降伏することを余儀なくされていた
そこへいつの間に紛れ込んでいたのか、あの不良刑事が瞬きする間もなく相手を叩き伏せたのだ


レッド「ヒューズのおっさん!アンタもこの船に乗り込んでたのか!」


ヒューズ「だ・か・ら!俺はおっさんじゃ―――ああ、このやり取り何回やらせんだボケ!」

ヒューズ「いいか、連中の狙いはこの船に積み込まれた密輸武器だ」


ホーク「海賊共が情報を掴んだのか?」



 ホークが帽子を被り直し、刑事に問う「ああ、だが情報を流したのはキャンベル社長さ、あの女、大したワルだ」と頭を
掻きながら刑事は吐き捨てる様に返答を返した



レッド「!キャンベルが海賊を使って武器の密輸売買してるって情報を隠滅しようとしてたのか!!」


ヒューズ「まっ、そういうことだわな、偶々この船に乗り合わせた乗客の皆さんにゃいい迷惑だ」




ヒューズ「ざっと見て来たが奴ら迅速だったぜ、ブリッジの占拠から避難区画に逃げ遅れた乗客を船室に押し込んで人質」

ヒューズ「こりゃモタモタしてたらあの女社長の犯罪を暴く為のブツも海賊がお持ち帰りしちまう」





レッドは正直言って碌な印象の無いヤクザ染みたこの男を初めて見直した、これでも厳選された刑事なんだな、と




ホーク「そこの配管から上へ伝って行けばレストラン方面へ出られる、どうする?」



レッド「決まってんだろ!ヒューズ!海賊共をとっちめるんなら俺も協力するぜ!」



 ヒューズはしばし、考えたがこの船に詳しい奴が1人でも居れば策は練りようがある
連れて行く価値があると判断し同行を許可した



ヒューズ「いいだろう、やり方はお前に任せるぜ、機関長のおっさんは此処を見張っててくれ」




292以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/02(土) 00:33:36.26yH3SqLpn0 (1/1)




 動力室のパイプダクトをよじ登り、天井の小さな緊急用の出入口に手を触れる
有事の際に天井扉を潜り狭い道を進んでいけばレストランに置いてあるピアノの真下に出て来れる仕組みだ

乗組員だけが知っている緊急避難ハッチ、レッドは機関長に手渡された工具で天井の戸を開けて入り、その後を刑事が続く



レッド「…まさか、ガキの頃みたスパイ映画みてぇな事するなんてなぁ」

ヒューズ「へっ、スパイ映画か…笑える例えだぜ、全く」



レッド「この真上だな、今開ける」カチャカチャ

ヒューズ「おう、匍匐前進で狭い中を野郎のケツばっか見んのも嫌だからな早めに頼むぜ」



 カチャカチャ…!カチッ!




  レストランフロア緊急ハッチ『 』パカッ!





―――ヨジヨジ、ゴソゴソ…ヒョコッ!





レッド「 」キョロキョロ


レッド「よし、誰も居ない!」バッ!


ヒューズ「……めっちゃくちゃだな、料理の乗ったテーブルひっくり返ってらぁ、勿体ねー」キョロキョロ



刑事は、ホルスターからIRPO隊員に支給される[ハンドブラスター]の電源を入れる
 敵を痺れさせるパラライザー形態から電光剣と化すソード形態にもなる多様性のある重火器だ



レッド「野郎共め…!通路を楽器で塞いでやがる」

ヒューズ「コンサート用の楽器か、出鱈目に積み上げてバリケードのつもりか」



レッド「…右側の通路と左側の通路、どっちから攻める」

ヒューズ「右だな、俺の勘だが左は奴さん達が見張ってると見たね」




スタスタ…!



ヒューズ「! 待ちな」ガシッ

レッド「おわっ!」

ヒューズ「声出すんじゃねぇ!…ほれ見て見てろ、俺の勘は正しかったろう、曲がり角の向こう」スッ

レッド「あぁ!人影が…」

ヒューズ「この船の構造上、どう見る?」

レッド「…この先に行けばグルっと回り込める…俺とアンタでアイツを挟み撃ちにできそうだ」

ヒューズ「決まりだな、レッドお前はあっちから行け」



293以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/02(土) 00:35:29.005VvMLvIe0 (1/1)

ここ無言で目配せかハンドサインしてんのかと思ってた


294以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/12(火) 22:14:20.022Jjr6Yws0 (1/4)






「ふわぁ…眠ぃ…」

「おいおい、気ぃ弛み過ぎだろ、そりゃあ長ぇこと[タンザー]の中に居たってのぁ、あったがよ」

「いいじゃねぇか、あのくっせぇ空間からやっと出られたんだぜ、リラックスしたってバチ当たらねぇだろ~?」






客室の前に二人、見張りが居た

 彼等の頭領が目的の"ブツ"を回収して出て行くまでの僅かな時間、退屈で欠伸が出る程に何も無いだろう時間が刻一刻と
過ぎていくのだろうとボヤいていた…



ましてや戦い慣れした輩が自分達を挟み撃ちにする気だなどと思いもしなかった








レッド「うおおおおおおおおおっ!!」バッ!



「なッ、だ、誰だてめぇ―――へげっ!?」ゴベキャッ



ヒューズ「おっと、援軍呼ばれちゃ堪んねぇからな、ちょいとばかし"おねんね"してなァ!」蹴り!


「はごっッ!」









 奇しくも、怠惰を貪りたがったサボりたがりの海賊の願いは叶う事となった
刑事の蹴りと後ろから猪突猛進で殴りかかって来た少年の手によって




レッド「ふぅ…呆気なかったな」

ヒューズ「なぁに、案外こんなもんよ…援軍呼ばれりゃそんな軽口も叩けねぇ状況になってたのはこっちだぜ」



 防音仕様の船室内では恐らく、他の下っ端共が屯ってトランプ遊びでもしてんだろう?っと
扉の前に居た二人を縛り上げながらヒューズは口にする



ヒューズ「こういうモンは各個撃破が基本だ、馬鹿正直につっこみゃやられんのは俺達だ」

ヒューズ「極力、見張りの奴さん達に見つかんねぇように動く、良いな?」


レッド「ああ」




295以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/12(火) 22:35:57.672Jjr6Yws0 (2/4)


バキッ! ゴスッ! タァンッ!

<て、敵襲
<言わせねぇぞオラァ!


ガシッ!グワァン!  ゴシカァン!

<警察舐めんな!




ガチャッ!



ウエイトレスの少女「ひっ!」ブルブル





レッド「ユリア!無事だったかっ!!」


ユリア「…ぇ、レッド?…レッドなの?」オソルオソル





 船室に押し込まれたウエイトレスの少女は何時海賊の男達に乱暴されるのかと肩を震わせていた
扉が開かれ人影が駆け込んできた時、反射的に目を瞑った彼女は聞き覚えのある声にゆっくりと目を開けた



ユリア「レッド!あぁ…!助けに来てくれたのねっ!ホークは無事なの!」ジワッ

レッド「ああ!ホークのおっさんは無事だ!他の人達は?」


ユリア「そ、それが分からないの…」

ユリア「私、BJ&Kと一緒にお客様の避難誘導に当たって…そ、それから逃げ遅れた人を案内してたら見つかって」ブルブル


レッド「ユリア…大丈夫だ、俺達が来たから…」ギュッ

ユリア「…レッド」





ヒューズ「あー、あー…うぉっほん、キミたち青春すんのは良いんだがね、TPOを弁えちゃくれませんかねぇ?」




レッド/ユリア「「あっ//」」




ワザとらしい咳払いと棒読みな刑事の発言に少年少女は照れくさそうに離れる、小声で「く、くそぉ…おっさんめぇ」っと
レッドの恨み言が聴こえた気がしたがヒューズは気にしない



ヒューズ「んで?ウエイトレスのお嬢さん、あー、ユリアさん?覚えてる限りで海賊共の動向や気になることは?」


ユリア「わ、わかりません…海賊たちは積み荷が目的みたいで私達は皆、船室に押し込まれて…」



ユリア「あっ…!あの!見つかった時に一緒に居た蒼い服を着た術士風のお客様とはぐれたんです!」

ユリア「なんとか捕まらずに逃げてくれたのなら良いんですが…もしかしたら船内の何処かに隠れてるかもしれなくて」


ヒューズ「ふむ、逃げ遅れた一般人の乗客ね、…要救助者か、貴重な情報感謝しますよお嬢さん」



296以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/12(火) 22:48:02.672Jjr6Yws0 (3/4)




レッド「わかったよ、俺達が探してくるからユリアは此処で待っててくれ!じっとしてるんだぞ」

ユリア「うん、…レッド、気をつけてね」


レッド「ああ!任せとけ!」ニィ!


タッタッタ…!バタンッ



―――
――







    ヒューズ「 こ の こ の ぉ ! 羨 ま し い じゃ ー ね か ! 小 僧 !」グリグリ







レッド「痛ぇぇ!!いででででで!や、やめろってば頭ぐりぐりすんな、おっさんてめぇ!!」


ヒューズ「くぅ~!あんな可愛い子ちゃんとよぉ!これだから最近のガキは!」グリグリ



レッド「離せっての!!」バッ




レッド「ぜぇ…ぜぇ…ったく、それより話聞いただろ?逃げ遅れた客がまだ船の中うろついてるかもしれねぇって」

ヒューズ「だな、一般人の救助も警察のお勤めだ…他の客室も回るっきゃねーな、こりゃ」


レッド「…あ、そうだ、ヒューズ、隣の部屋に行こう、戦力になりそうな奴が居るんだ!」タッタッタ!


ヒューズ「あん?…なんだぁ?"医務室"?」


レッド「とりあえず入れよ」ガチャッ!




―――
――



【キグナス号:医務室】



レッド「えっと…」キョロキョロ

ヒューズ「何探してんだよ」


レッド「…あっ!いたいた!アイツだ」





医療用ロボット(節電モード)「 」シーン


レッド「…良かった、パイレーツ達に壊されてない、電源を切られてるだけだ…」カチカチ!ポチッ!



297以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/12(火) 23:10:40.43l3uwzmumO (1/1)

ゴシカァン‼


298以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/12(火) 23:12:18.332Jjr6Yws0 (4/4)



ウイーン、という起動音と共に1台のメカがスリープモードから目を覚ます
丸っこいボールのような足が3つ、その中心はチェスの駒で言うポーンを逆さまにしたような体型

両腕を挙げて、動作確認を行い、そして開幕一言が…








医療用ロボット「異常ありません。」


レッド「異常大ありだろう!ちょっとついてこい!」ガシッ





丸っこい、愛嬌のあるロボットを掴み、医務室を出ようとするレッド少年に刑事は口を挟む




ヒューズ「おい、レッド…そいつ役に立つのか?」


レッド「ああ、立つさ…こいつは[BJ&K]、正式名称は[Black Jack&Dr.K<ブラックジャック &ドクター ケー>]」

レッド「ウチの船に派遣されてる医療用メカで最終兵器だ」


ヒューズ「最終兵器ぃ?こいつが?」



レッド「ああ、こういう緊急事態を想定してこいつには[圧縮レーザー砲]が装備されてるんだ」

レッド「どんな敵が来てもコイツのレーザービームでイチコロだぜ」




医療用ロボット…確かに怪我を負った場合、居てくれれば心強い事この上無いだろう
しかし、[圧縮レーザー砲]…


その名前を聞いてヒューズはギョッとした



それは正式な軍隊で戦闘メカに搭載される[破壊光線銃]に負けずとも劣らない重火器装備ではないか…!
風の噂では[クーロン]の闇市場でさえ、早々お目に掛かれない武装だ




ヒューズ「マジかよ…なんつーモン装備してんだよ、ってかソレ本当に医療メカかよ」


レッド「燃費の割りに凶悪な破壊力だからな……」

レッド「まぁ、俺も初めて知った時『コイツぜってぇ戦闘メカの間違いだろ』って思ったけどな」



BJ&K「」じーっ


BJ&K(?…解析結果、体調安定、怪我人無し…非常事態ゆえに体温、脈拍の乱れあり…生体反応…???)




2人のそんなやり取りの中、医療メカはレッド少年を"診て"奇妙な違和感を察知していた…

この時、それは『戦闘による緊迫や呼吸の乱れ等から来るモノ』、とその程度にしかまだ認識していないが…




299以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/13(水) 01:20:11.87BFOO71OK0 (1/2)

―――
――



【キグナス号:客室 ブルーの居る場所】



ブルー「…っち、面倒な事になったものだな」




あの後、ウエイトレスの少女ことユリア、そして隣に居た医療用メカと移動していた最中に海賊に見つかり彼は
ユリアと"ワザとはぐれた後"追って来た下っ端を"追って来れない身体"にした




ブルー「[タンザー]に飲み込まれ、ハイジャック事件に巻き込まれる…どうにも船には縁がない様だ」ぽふんっ




 自室のベッドに腰掛け、大事な荷物の入った[バックパック]を確認する…祖国からの支給品は無事だ
先日、粗蟲共の所で[リージョン移動]を落としたばかりで次は海賊に奪われましたなど、笑い話にもなりゃしない

今度からは肌身離さず持っておこうと術士は宝石を握りしめ、固く誓った








――――バンッッッ!!





「ヒャッハー――!!見ろよォ!!まだこんな所に乗客が居たみたいだぜェ!!」

「もうこの階の奴ぁ全員連れてったと思ったがこいつぁ運が無かったなァ!」ケラケラ!

「おっ!見ろよ!あの金髪のチャンネー!手に綺麗な宝石持ってんじゃんか!」









                  ブルー「…あ"?」ピクッ








チャンネー


ブルーの横顔を見て、見回りに来た海賊共は"逃げ遅れた女"が居る、そう判断したようだ




そして、その"チャンネー"は眉間に皺を寄せた、キレる数秒前である



「へへっ、そいつをこっちに渡しなぁ・・・そうすりゃ乱暴しないでやるぜ」スチャ

「おう、貰うモン貰ったら後はこの部屋に監禁する程度で済ましてやっからよぉ!アヒャヒャヒャ!





300以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/13(水) 02:00:36.72BFOO71OK0 (2/2)



―――
――



レッド「見張りが向こうを向いてる間に走り抜ける、ちょっとヒヤッとしたかな…」

ヒューズ「見つかればリンチ確定だ、[ロックバブーン]や[ドラゴンミニー]とかあれこそ集団で来られたら勝てねぇ」

BJ&K「…」ウィーン




2人(と1機)がキグナス号の廊下を、それも丁度とある客室前を歩いていた時だった




バゴンッ!!








      「うわらばっ!!!」「あべしっ!」「ひでぶっ!」ドキャ―――z____ンッ!!







レッド「うわっ!な、なんだぁ!?」




「「「――――――」」」ピクピク…



BJ&K「生体反応あり、3名とも昏睡状態、身体中に火傷、感電の痕が見受けられます」


レッド「こ、この部屋から吹っ飛んできたぞ…」




―――
――



ブルー「…ふぅー」


ブルー(アイツ等何処かで見た気がしたと思ったら[タンザー]に呑まれた時に居たな…)

ブルー(まぁどうだって良いか、くだらんことに術力を使ってしまった)



ガチャッ



ヒューズ「ちょっとお邪魔するぜ、部屋の外に吹っ飛ばされた連中…アンタがやったのかい?」

ヒューズ「おたく相当強いねぇ、協力してもらえないかい?」



ブルー「関わり無いな」シレッ



…面倒なことに巻き込まれそうだ、瞬時に判断した彼は一言そう言い放った



301以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/13(水) 06:57:51.65UAeR+Xpvo (1/1)

タンザーから脱出したと思ったらブラッククロスに木っ端微塵にされると考えてみると少し哀れな未来が待ってるなこいつら……


302以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/14(木) 20:33:46.22WJYfP/9yO (1/1)

ここで夢の共演……はさすがに無いか


303以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/15(金) 20:56:35.23+Pd6NUmR0 (1/1)

ブルーとレッドだけはどの主人公選択しても仲間にできないんだよね…


304以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/19(火) 22:59:42.74TWuTPaRG0 (1/1)




    レッド「シップが動かなきゃ困るだろ!!」バッ!





 腕を組んだまま、術士は刑事と自分の間に割って入って来た年若い男を一瞥した
齢は20になるかならないかと言った所なのだろう、血気盛んで如何にも無鉄砲な男なのだろうと彼の第一印象は決まった





ブルー(……『シップが動かなきゃ困る』か)




彼の手には輝きを秘めた宝石が握りしめられている、祖国からの支給品である魔術の媒介だ
 念じれば何時だってブルーは[ゲート]の術で脳裏に浮かべた景色へと瞬間的に跳べる




つまる所、宇宙船<リージョン・シップ>が動けようが動けまいが彼には正直何の関係も無く、1人でさっさと脱出可能という














だが…







ブルー(…ちっ、この船にはあの女が居る)




このハイジャック騒動に共に巻き込まれた金髪の女の顔が過った


 印術の試練の内、"解放のルーン"を得る為には某刑務所に潜入せねばならない
――そして唯一の架橋である守銭奴のお嬢ことアニーを置き去りにして行った場合


最悪…奴に連れて行ってもらえない可能性も浮かび上がるのだ



 今、双子の方割れが資質集めの試練をどれ程成し遂げているのか分からないが、印術を諦めて秘術へ鞍替えするとなれば
ここまでの労力はとんだ徒労に終わる
 そればかりか、ルージュの方が先に秘術を取得してしまえば……



"双子の片割れが修得した資質は取ることができない"……置き去りにして脱出するのはリスキー過ぎる





      ブルー「……そうだな、協力しよう」



彼は、刑事と少年…そして医療メカと共に同行することを決めた




305以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/20(水) 16:29:06.78UXnIYW16O (1/1)

おお、もしかして理由があるから我慢できる……?


306以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/20(水) 16:49:41.71+62fra4t0 (1/1)

なんかすごいお祭りゲーとか特別編って感じがするの好き


307以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/21(木) 05:23:51.44Q06+Rr0w0 (1/1)

このあと名乗って気が変わるんじゃないかい?


308以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/27(水) 01:26:46.72E62zd+uU0 (1/4)



レッド「本当か!?ありがとうな!」

ブルー「有事だ、やむを得ん」スッ


レッド「いやぁ、助かるぜ…ええっと」スッ



 術士は宝石を大事に仕舞いこみ、[バックパック]を背負う、まだ名も知らぬ少年と刑事に向き合い…
少年が差し出した握手の右手に目を向け、名を名乗ることにした



ブルー「自己紹介がまだだったな、ブルーだ」



ヒューズ「俺はヒューズ、見ての通り[IRPO]所属の刑事だ、そっちの小僧はレッドってんだ」


















                  ブルー「赤<レッド>…だと…?」ピタッ













差し出された右手に答えるべく手を伸ばし掛けたブルー……だが、その手が先方の挨拶には答えず、空虚を掴む事となる





レッド…red… 赤



少年の名を聞いてあからさまに術士は怪訝な顔をする

"苛立ち"…表情どころか体全体から醸し出す不愉快だと言いたげな空気に、若干少年は気圧された


レッド「ど、どうしたんよ?」







ブルー「…」


ブルー「やはり、やめた」


レッド「はぁぁぁぁぁ!?なんでだよっ!!」




309以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/27(水) 01:56:15.92E62zd+uU0 (2/4)



ヒューズ「おいおい、術士さんよぉそりゃまたどうしてだ」

ブルー「気が変わった、それだけだ」



レッド「何言ってんだよ!アンタさっき協力しようって言っただろう」




―――パシンッッ!




レッド「~っッ!」ビリッ










   ブルー「貴様の名前が気に喰わん」








差し伸べた右手は…友好の挨拶は白い手で弾かれた、乾いた音が響いた船室…一瞬の静寂と張りつめた空気



 小此木烈人<おこのぎ れっと>…通称レッド少年は…目の前の男を睨みつけた
突然の仕打ちだった、此方に一体なんの非礼があったというのか、アイスブルーの瞳はゾッとする程に冷たく

それこそ、親の仇でも見るかのような眼つき…叩かれた手の甲の痛みも熱もサッと引いてしまう程に凍てついていた




ブルー「失せろ…俺は貴様らと共に行動はせん」


ヒューズ「…おたく、"赤"って単語に恨みでもあんのかい?えらく冷たい目だな」


レッド「なんだってんだよ…くそっ!」



ブルー「……」


ブルー「船が賊共に占拠されたままなのは此方とて都合が悪い、だが俺は俺で独自に行動する」

ブルー「分かったら、さっさと出て行け」プイッ



ヒューズ「…はぁ~、レッド、理由は分からんが奴さんは梃子でも動きそうにない、諦めようぜ」

レッド「…わかったよ」



スタスタ…



ブルー「行ったか…俺もアイツ等を探しに行かねばな」




310以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/27(水) 02:11:11.16E62zd+uU0 (3/4)




レッド「何なんだよアイツ…」ブツブツ

ヒューズ「まっ、世の中色んな奴がいるってことだろ」



納得いかない、口に出さずとも表情で隣を歩く刑事に訴えかけるも「俺にぶー垂れ顔見せるなよ」と肩を竦められるだけだ
 感じの悪い陰気な奴に遭遇した、レッドはそう思って忘れることにした…パイレーツ共の事に切り替えようと…



この時、彼は思いもしなかったであろう





後に"家族の仇"が待ち構える建物に乗り込む際に、術士ブルーと手を組むことになる等と…






―――
――




白薔薇「厄介なことになりましたね」

アセルス「…うん、ルージュとはぐれるし、偶々逃げ込んだ部屋でこうして息を潜めたけど…」

白薔薇「海賊がまだ出歩いているかもしれませんからね…」


アセルス「まさか、あんなに強いのが沢山出てくるなんて思わないし、まだ大人しくしていよう」






―――ガチャッ



アセルス/白薔薇「!?」



アセルス「まさか――!この部屋に居るのがバレたのか!白薔薇は武器を持って私の後ろに下がって!」つ【幻魔】チャキッ






レッド「いてて…なんでこの廊下あんなに敵ががうろついてたんだ?この部屋は逃げ遅れた人は――――!?」



アセルス「海賊めっ!!出て行けぇぇぇ――――!!!」ブンッ


レッド「うわっ!?」



鞘に納めたままの【幻魔】を鈍器代わりにッ!アセルスは突然の来訪者目掛けて一太刀振り下ろすッッ!



レッド「ウオオオオオオオオオオオオォォォ!!」ガシィィン!

アセルス「なっ――素手で受け止められた!?」



真剣白羽取りであるッ!!



311以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/27(水) 02:51:13.42E62zd+uU0 (4/4)



         レッド(あ…危ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!)グググッ!

       アセルス「こ、この…!離して!離しなさいっ!!」グググッ!



アセルスは腕に力を籠めるも、レッドが両手で掴んだ妖刀は大岩の下敷きになった西遊記の孫悟空のように抜け出せない









          レッド「ぐぅ、ぐぎぎぎぎ……あ…?…アセルス姉ちゃん?」


           アセルス「くぅぅぅぅ…って、ぇ…? うわぁッ」スポンッ! ――ドサッ








レッドは入室と共に襲い掛かって来た襲撃者の顔を見て、―――思わず手の力を抜いた

アセルスは鞘による殴打で気絶させようとした来訪者の声を聴いて驚き、―――引っ張った[妖魔]ごと後方へすっ飛んだ






レッド「ね、姉ちゃん!大丈夫か?」


アセルス「…?誰?」




尻餅をつきながら、自分を覗き込んでくる顔を見る―――自分の名前を知ってる彼を思い出そうとするが記憶に出てこない

ふと、自分は12年間も歳を取らずに意識不明状態だったのだからそれもそうかと思い当たった…記憶にある顔の筈が、無い




レッド「やっぱり!やっぱりそうだよ!!俺だよ、烈人…おこのぎ れっと!」

アセルス「おこのぎ――――」ハッ!





レッドにとっては、実に12年ぶりの…

アセルスにとっては、ほんの僅か数日前の…


―――奇妙な再会となったのである…




アセルス「烈人くん!ああ!小此木先生の所の烈人くんか!…大きくなったな~、いやぁ全然わからなかったよ」

アセルス「でも目の辺りなんか変わってない感じかな」



彼女がまだ人間だった頃、[シュライク]の街で普通に女子高校生として生きてた頃によく遊んであげた7歳の少年
確かに、よく見れば顔に面影がある…



アセルス「…てっきり海賊が来たのかと思って、ごめんね?」



312以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/27(水) 06:59:12.70HRC0Je1fo (1/1)

やはり我慢できなかったか……まあアニー見捨てて脱出しないだけマシか


313以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/06/27(水) 20:35:55.533L3C93qBO (1/1)

キグナスクリア直前でアセルスから木陰のローブ借りパクするのはいい思い出


314以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/11(水) 00:39:42.126HTZ/fks0 (1/4)



レッド「ははは!さっきのは驚いたよ、昔のチャンバラごっこを思い出すなぁ~本当よく遊んでもらってさ」

レッド「姉ちゃん全然変わってないよな~髪の色は緑じゃなかったけど…」


 後ろ頭を掻きながら10歳年上の、それでいて憧れだった近所のお姉さんとの記憶を思い出して
レッド少年は気恥ずかしそうに笑った













そして、"違和感"に気が付いて、ピタリと顔に浮かべた笑みを消した








レッド「…い、いや、ちょっと待てよ、いくら何でも変だぞ!?」ハッ!







同じくしてアセルスの顔からも笑みが消えた、12年の時を経て、"自分を知ってる人"に巡り合えた安堵が失せた

分ってしまったのだ、そうだとも、…人間が、普通の人間が10年近く年を取らない筈がないのだのだから








レッド「どう見ても高校生くらいだ!!もう10年以上も前の話だっ!」


アセルス(…あぁ…)







悪意は、あったわけじゃない



好きで傷つけたというのでもない




誰が悪い、という話でもあるまい






レッド「貴様っ!何者だ!!」バッ!



レッドは飛び退き、大好きだった近所に住む憧れのお姉さんに化けた"何者"かに向け拳を構える




315以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/11(水) 00:54:10.316HTZ/fks0 (2/4)










アセルス(…そう、だよね…私は―――私の存在は、"おかしい"んだよね…)








白薔薇と[ファシナトゥール]を脱し、故郷の[シュライク]へ帰って来た時…彼女は自宅で育ての親の叔母に会った

少しだけ老けた叔母に、10年近く前に行方不明になった―――死亡者扱いされた――娘と同じ姿の化け物が現れた






そう言われた時のアセルスの心情とくれば、胸の奥を抉られたような心持ちだった





そして、今…再び、自身の存在を否定された

人間じゃない、自分は【バケモノ】になってしまったんだと打ちのめされる想いを再び…っ






        白薔薇「お待ちください!」



レッド「あ、アンタは…」

ヒューズ「この船に乗ってたのか!」




白薔薇「この御方は…本当にアセルス様なんです、複雑な事情があって齢を取らない肉体となり眠り続けていたのです」


レッド「そんな眠り姫みたいな話を信じろっていうのか…ぃ…」




 眠り姫、童話のタイトルがパッと思い浮かぶような御伽噺<オトギバナシ>さながらな事を言われ率直な感想を述べたが


……そこまで言いかけてレッドは、ふと『宇宙の彼方からやってきた正義の味方に命を救われ変身ヒーローになった』と
自身も大概、夢物語な体験をしてるではないかと思い当たり、否定できなくなった





レッド「………」


レッド「ほ、本当に…姉ちゃん、…なん、だな?」



アセルス「…」…コクッ


レッド「…そ、そうか……ごめんよ、俺ヒドイ事言っちまった…」ペコッ




316以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/11(水) 01:26:46.116HTZ/fks0 (3/4)





ヒューズ「はぁ~…お前らなぁ、今そんなこと言い合ってる場合じゃねーだろう」


ヒューズ「白薔薇さんに、アセルス、だったな……あの銀髪小僧と、もう一人は?」




銀髪小僧、…はぐれた紅い魔術師ともう一人…ヒューズにとって会いたくない人物ベスト1に入る女性を尋ねた



アセルス「それが二人共はぐれちゃって…」


レッド「? 知り合いが船の何処かに居るのかい?」


白薔薇「はい、金髪の女性と、紅い服を着た魔術師の方です…」




ヒューズ「まーた、船内にいる逃げ遅れの要救助者が増えたワケか」


ヒューズ「おう、二人共ここで待ってろよ…こういうのは野郎の仕事だからな、行くぞレッド」

レッド「ああ!アセルス姉ちゃん!それに白薔薇さんだったな!二人共此処に隠れててくれよな!」



アセルス「何処に行くつもり!」



レッド「ちょっくら船を取り戻しにだ!」

ヒューズ「ハイジャック犯を逮捕してボーナス貰うんだよ、かつ丼くらいは奢ってやるぞ」




アセルス「私達も行くわ!はぐれた仲間をどのみち探すつもりだったし、それに烈人君を放っておけない」

白薔薇「アセルス様の御命令とあらば御付きします」スッ




ヒューズ「…」ピタッ


ヒューズ「おい、こいつぁ映画やドラマじゃねーんだ、マジモンの実戦だ」ギロッ




アセルス「…私だって、戦える!」




レッド「…姉ちゃん」


BJ&K「…生体反応異常数値」ウィーン





レッド「…わかった一緒に行こう、いざとなったら、後ろに下がってコイツに怪我を治してもらう」

レッド「ヒューズ、今は戦力が欲しいんだろ?」


ヒューズ「……はぁ、わぁーったよ、好きにしろい」




317以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/11(水) 01:55:33.566HTZ/fks0 (4/4)

―――
――




「ひぎぃぃぃぃぃぃ――――ギッ」ボッブジュシュッッ





 蟲型モンスターが悲鳴を上げたのは、頭部が光の牢獄に囚われたからであった
球体状の発光する檻は一瞬縮み上がったかと思えば勢いよく破裂した、"中身"と一緒に弾け飛び

後には頭部を失い、手足をバタバタさせる胴体が残った…脳が焼失させられても少しの間動くのは虫ゆえの生命力の高さか


それをやった張本人は手で鼻を覆いながら、血の匂いと醜いソレの最期の"もがき"から顔ごと背けた






ブルー「…気色の悪い奴らめ、…やけに屯って居るから乗客を閉じ込めているのかと思えば」



 階段を下り続けて、パイレーツの手下どもが妙にうようよ居る通路だと、…目的の人物が囚われているかもしれない
そんな可能性が浮かび、正面から出向き残さず駆除して行ったものの




ブルー「動力室か、…当てが外れたな」クルッ



宇宙船<リージョン・シップ>の心臓部と呼べる部屋を見張っていただけだったようだ





物言わぬ屍と化したモンスターの群れを横切り、階段を上がる

…彼は共に乗って来たアニー、ルーファスを求め船内を廻っていた






ブルー「…ん?」テクテク…ピタッ



ブルー(展望エリアに居るあの後ろ姿は…あの時のウエイトレス…確かユリア、と言ったな)






ユリア?「……」



ブルー(逃げ遅れか、一応世話になった身だ…適当な部屋まで連れてってやるか)テクテク


ブルー「おい」


ブルーはユリア、と思われる後ろ姿に声を掛けました…





           ユリア?「…ふ、ふふふ、うふふふ!まだ捕まってない乗客が居たのね」ニヤッ





318以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/11(水) 09:11:25.50r6EsgT80O (1/1)

たまに親切心を出したらロクでもない目にあうとかブルーさんマジふんだりけったり


319以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/20(金) 23:00:23.7931j7vM970 (1/1)





くるり、その後ろ姿は此方へと振り向く



フリルのついた可愛らしいウエイトレス衣装も艶のある黒髪にもそぐわぬ顔がそこにあった






骨、それ以上でもそれ以下でも無い顔立ち…というか皮膚が無い、人間<ヒューマン>の肉体ではない



船内のスタッフルームから盗って来たのか、衣装を纏い鬘を被った[スケルトン]系譜のモンスターがそこに居たのだ








         ユリアに化けてた海賊「BINGO!」バッ!


          隠れていた海賊A「はーっははは!まんまと引っ掛かったな!マヌケぇ!!」バッ

          隠れていた海賊B「こうやって目立つ格好で突っ立ってればアホが釣られると思ったぜェ!」バッ







   化けてた海賊「くっくっく!我らノーマッド海賊団!死の属性トリオ!」

   隠れていた海賊A「俺達のチームワークから逃れられた奴ぁ今まで一人も居ないんだよォ!!」

   隠れていた海賊B「テメーの不幸を呪うんだなァ!!」








      海賊s「「「金目のモン頂いた後、ふんじばってやんよぉ!!覚悟しやがれッ!!」」」ヒャッハー!
















              ブルー「『<ヴァーミリオンサンズ>』」キュィィィィン!





 化けてた海賊「へっっぶぅ!?」
 海賊A「まそっぷ!?」
 海賊B「ギエピー!?」
 




320以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/20(金) 23:16:55.60U7m/0L760 (1/1)

ひどすぎるッピ!


321以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/21(土) 00:07:58.70HjqFCyQW0 (1/1)





ブルー「…なんだったんだ、今のは」スタスタ…





 やけに自信満々で襲ってきた海賊は見事なチームワークで他界した、横一列に並び最大火力の直撃で同じタイミングで
仲良く消滅したそうな…



―――
――






レッド「」キョロキョロ…

レッド「おっし!!VIPルームエリアは見張りが居ねぇ!皆!いいぜ!」サッ!



ヒューズ「ふぅーっ…VIPルームね、客室に酒のボトルでもありゃ景気づけに貰ってきたいモンだ」

レッド「[IRPO]本部に請求書出すぞおっさん」


アセルス「此処以外は全部見回ったの?」


レッド「ああ、レストランもユリアやBJ&Kが居た医務室、会計室…大体全部みたさ」

レッド「だから、その連れの人が何処かに隠れてるならこの階の可能性が高い筈なんだ」


ヒューズ「こっち側は来なかったからな…」





『VIPルーム扉前』






レッド「…みんな準備は良いか?」チラッ

アセルス「うんっ!」

白薔薇「はい」


レッド「海賊が待ち受けてるかもわかんないからな、せーので行くぞ!」

―――
――



【VIPルーム内部】



ルーファス「ふむ、それにしても君は運が良いのだな船内を逃げ回っていたら此処に辿り着いたとは」

ルージュ「いやぁ…本当に助かりました、仲間とはぐれて心細かったんです」」ペコッ、ペコッ

ルーファス「何、エミリアの知人ならそれくらいどうということはないさ、それで?行くのかね」


ルージュ「はい!外の様子も落ち着いたようですしそろそろ探しに行こうかと」




322以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/21(土) 00:19:56.11xHGBJzXqo (1/1)

ルージュは秘術だから勝利に興味持つことはなくて残念だったなルーファス


323以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/23(月) 01:41:48.88nslvRKgi0 (1/4)




 サングラスを掛けた男性にとう告げて彼は扉の前に立った、無論この部屋を出て仲間を探す為だ
しかし、彼がその扉を開けることは無かった


ガチャッ!バンッッ!


ルージュ「ほぐっ!?」ゴッッッ



鈍い痛みが頭部に走る、開けようとした扉が勢いよく開いた、開けたのはルージュではない廊下に居た人物だ



レッド「あっ…」




ルージュ「~~~っ」(頭抱えて蹲り)


レッド「そ、そのわりぃ…」アセアセ




 扉の眼と鼻の先に誰か居るとは思わなかった、その人物が海賊共の仲間かどうかは知らないが
レッドはそれよりも先に罪悪感が勝り、相手を警戒よりも謝る事を優先した…



この時、ルージュは顔を伏せていたから瞬時には気づかなかった




"さっき"見た顔と瓜二つだ、と




アセルス「ルージュ!ルージュじゃないか!」

白薔薇「まぁ!こんなところにいらっしゃったのですね!」



レッド「えっ!?ってことは探してる人なのかい?」

ルージュ「う、うっ…その声は、二人共無事だったんだね…」


レッド「あー、ルージュ…でいいんだよな?その、本当ごめん、まさかドアの前に居るとは思わなくて」

ルージュ「い、良いんだよ、僕も悪かったから…」スッ






レッド「!?」ギョッ


ルージュ「…? 僕の顔に何かついてるの?」



レッド「ぇ、あ、違う…けどよ…」



"すこし前に会った感じの悪い奴"と似通った顔

ただ、アイツよりかは眼つきがきつくなくて、なんだか温厚そうな人柄だな、と少年は思った
涙目で見てくるのと、罪悪感の所為かもしれないが…

 兎にも角にも彼がルージュ、という人物に対して抱いた感情は対立的ではなかった
ブルーの不遜極まりない態度の後でもブルー似の顔に悪い感情を持たなかったのであった



324以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/23(月) 01:58:35.56nslvRKgi0 (2/4)



レッド(…にしても、似すぎだろ)

レッド(世の中、自分にそっくりな人間が3人は居るってよく言うけどなぁ~)マジマジ




マジマジと銀髪の魔術師を眺める



蒼い法衣、金を束ねた髪…凍り付くような鋭い眼差しと人を寄せ付けない冷たい雰囲気


紅い法衣、流れる銀の髪…どこか人懐っこそうで誰とでも手を取り合ってくれそうな人柄




まるで正反対だ、なのに…"似ている"のだ、不思議なことに



白薔薇「あのー…彼がどうかなさったんですか?」

アセルス「あ!わかったぞ…そりゃ確かにルージュは女の子みたいな顔してるし初見じゃわかんないよね私も間違えたわ」




勝手に自分の中で答えを出して勝手に納得するアセルス姉ちゃん

…そう考えるのも無理はないだろう、まさか彼の双子の兄とこの船で出会いましたなどと普通思わない、世の中狭すぎだ




ルージュ「えぇ…僕、男だよ…」ゲンナリ




またか、また間違われたのか…、げんなりとした表情でアセルスの言葉に続けていく術士


そんなコント漫才染みた緊張感の無い会話が繰り広げられる中、ヒューズが1人の男をじっと見ていた…








ヒューズ「‥ほー、まさかお前が乗ってるとはなぁ、ルーファス」ニヤリ

ルーファス「…腕利きパトロールがこんな所でなにをしている?さっさとシップを取り戻せ」






方やエリート警察、方や裏社会の組織の幹部…




ヒューズ「今やってるとこだ、実を言うと戦力がちと足りてなくてな、どうだ?協力しないか」

ルーファス「…"連れ"が奴らに捕まったようだ、協力させてもらおう」ハァ…





"連れ"……サングラスの男は金に煩い部下の女と、スーパーモデルの顔を思い浮かべながらため息を吐いた





325以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/23(月) 02:35:13.75nslvRKgi0 (3/4)




レッド「って!オイ!おっさん同士で勝手に話を進めんなよ!」


ヒューズ「お前等が漫才やり始めたからだろーに」

ヒューズ「それにな、こいつは結構使える男だぜ」


ルーファス「君は?」


レッド「レッドだ、こっちは医療ロボのBJ&K、それから…」



アセルス「アセルスよ、彼女は白薔薇」

白薔薇「以後お見知りおきを」ペコッ



ルーファス「…ふむ、とすると君達がエミリアの言ってた連れか」


ヒューズ「」ギクッ


ヒューズ「な、なぁ?ルーファス、この船ってエミリアどっかに居んのか?」

ルーファス「居る、というよりも捕まっている連れの1人がそうだ」




ヒューズ「そ、そかー、たははは…」

ルーファス「お前の自業自得だ、IRPO隊員の特権で裁判なしに留置場送りにしたんだ半殺しくらい覚悟しとけ」


ヒューズ「うぐっ!?…海賊共を逮捕したら即逃げるわ…」




ルーファス「さて、よろしく頼むよレッド君達」




 妖魔2人、メカ1人、そして人間<ヒューマン>が4人…これだけの人数ならば海賊に太刀打ちできなくも無い
戦いに置いて必要な物は古来より『数』と謂われている


かの異世界<リージョン>でもとある老人が『どんな勇者も多くの敵の連係には耐えられんものだよ』と格言を残す程だ




必要最低限の人員はそろったかもしれない、だがそれでも後もう一押しだ

 敵だってアホじゃない真正面から行けば敵の[ガンファイター]共の火線真っ只中だ
それこそ飛んで火にいるナントヤラで蜂の巣にされてしまう




白薔薇「それで、どうなさるおつもりなんですか?」

ヒューズ「ああ、クソ真面目に行きゃ、あっという間にお陀仏だ…他に通路ねぇのか?」




レッド「他に…」ウ~ン

レッド「…」



レッド「いや待てよ!確か下の方に非常用の通路があるんだ!船がドライブ中でもそこからなら!」ハッ!




326以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/23(月) 03:08:06.69nslvRKgi0 (4/4)


―――
――



【キグナス号:操縦室】


ノーマッド「"ブツ"の積み込みはまだ終わらないのかいっ!」


海賊A「もう少しですお頭」


ノーマッド「ったく、チンタラしてたらサツが来ちまうだろうに」


ノーマッド「ま、いざとなりゃあこの人質共を使うがねぇ」ニィ




「ひっ!」ビクッ
「なんで…こんなことに、私は旅行を楽しんでただけなのに」グスッ


海賊B「ぶつくさ言ってんじゃねえぞ人質共!撃ち殺されてぇのか!ああ"?」ジャコッ



「ひぃぃっ!!」
「~~~っ」プルプル

アニー「…」
エミリア「…」

「こ、殺さないで…」ガタガタ


海賊B「けっ!」チャキッ、スタスタ…




「もう、もうやだよぉ…」
「うっ、ううっ…」

エミリア「…アニーごめんね、私が脚を挫いたりしなきゃ逃げれたでしょ?」ヒソヒソ


アニー「ダチ見捨てて逃げる程アタシは腐っちゃいないよ」ヒソヒソ


アニー「何度も一緒に組んでヤバい橋を渡った仲じゃんかよ、だから今度も運命共同体って奴だわ」ニィ


エミリア「アニー…」

アニー「大丈夫、まだルーファスや…期待していいか分かんないけど知り合いの魔術師が居るわ」

アニー「海賊共が吠え面かくのを楽しみにしましょう」フフッ


エミリア「ふふっ、それもそうね、こんな時だからこそ前向きにならなくちゃね」




―――
――



【双子が旅立ってから3日目 午後16時10分  キグナス号:非常用通路前】


レッド「着いた、ここがそうだ」

ルージュ「此処から、操縦室に行けるの?」

レッド「ああ…けど、覚悟を決めた方がいいぜ」




327以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/23(月) 09:19:19.94qu9/6D6YO (1/1)

ヒューズは一度ちゃんとエミリアに半殺しにあっといたほうがその後の責任回避的にいい気が……


328以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/24(火) 22:59:01.575UEKilyt0 (1/1)



レッド「この非常通路を通れば操縦室に辿り着ける、…海賊もまさかこの通路から人が来るなんて思わない」

ルージュ「うん?そういう場所程普通は警戒するんじゃないの?」



 至極尤もらしい意見だ、機関室から配管をよじ登った所にある業務員しか知らない隠された緊急脱出用通路なら兎も角
こんな船内の誰の眼からも見える位置に堂々と扉があるのだ




レッド「言ったろ、覚悟決めた方がいいって」

レッド「このドアの向こうは"船外"だ…混沌<宇宙空間>の海をドライブ中に宇宙船<リージョン・シップ>から出れば…」



ヒューズ「おいおいおいおい!ちょいと待てって…この船は普通に渡航中だせ?」

ヒューズ「んな状態で外になんざ出たらどうなるか分かってんのか?」





混沌の海…見渡す限りが闇である空間、星々<リージョン>の合間にある暗黒の海


そんな所に生身の生物が出れば瞬時に身体が圧縮され、最後は消しゴムになって消滅する…塵どころか脳細胞1つ残らない




ヒューズ「混沌に飲み込まれるのはごめんだぜ、まだ敵さんの弾掻い潜る方がマシってもんだ」


カンベンしてくれよ…と大袈裟に腕を振るう、他の面子も顔色は優れない



レッド「俺にも詳しいリクツは分かんないけど、船の周りにリージョンと同じでフィールドが張られてるんだ」

レッド「だから短時間なら外に出ても大丈夫だってホークが言ってたんだ」



 機関士であり上司の言葉を口にするレッド少年、この非常用通路は本当に有事の際にしか使われない
仲間が述べているように、生身で混沌の海に出るのだ


 短時間は大丈夫だと言っても、"あくまで短時間"だ…道中で立ち止まったり、何か躓いたりしようものなら
その場で身体は圧縮され、暗黒海の地平線の遥か彼方に消え去り、THE・ENDである




ルーファス「立ち止まらずに駆け抜ける、そういうことだな」


アセルス「うっ…それしかないんだね」



レッド「姉ちゃん…危ないし、今なら引き返せる、俺達が後はなんとかすっからさ」

アセルス「…いや、私も行くよ!」


ヒューズ「はぁ…腹括るしかねーな」





一同は、扉の前に立つ…レッドが戸を開ける為に手を伸ばす…後ろで息を飲む音、駆け抜ける準備をする者

…全員が覚悟を決めた





329以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/25(水) 00:05:18.79DfKh3z180 (1/3)



…ペタペタ


カモフック「お頭~!」ペタペタ





彼は[カモフック]見ての通り、モンスター族でありノーマッド団の一員である

http://epsaga.sapp-db.com/zukan_det.php?no=512&tid=2
※参考画像


 海賊帽子を被り、右腕が"フック船長"宛らの鉤爪で二足歩行で語尾が「~カモ」という団員きっての愛苦しさである
キュートな足をペッタペッタ鳴らしながら彼はノーマッドに積み荷の積み込み作業が終わった所を報告しに来たのだ



カモフック「"ブツ"の積み込み終わったカモ~!」

ノーマッド「あぁん"?終わったかもぉ?ハッキリしなこのバカチン!」バキッ


カモフック「ふげっ!?い、痛いカモ…」


ノーマッド「荷物運ぶのに時間を掛け過ぎだよ!仕事は迅速にやんな!」

ノーマッド「…チッ、パトロール隊員の小型艇がこの船に取りついてたって報告が今更来たんだ…」

ノーマッド「こうして正面口に[ガンファイター]を配備して見張っちゃいるが…どーにも嫌な予感だ」




 腕を組み、女海賊は苛立ちを隠さないでいた
海賊の勘が知らせている、雲行きが怪しいと……パトロール隊員もそうだが、それ以上に操縦室のモニターに映る
混沌の地平線を彼女は眺めていた…


何も見えない、映らない暗黒の宇宙…胸騒ぎはその深淵の先にあるようでならなかった



ノーマッド(…なんだってんだい、援軍のパトロールでも来るってのかい…)





闇の向こうに、何か、自分達のとって好からぬ者がいる気がしてならない

嘗て、海賊として強奪を行った帰り道[タンザー]に飲み込まれたあの日のような…言い知れぬ悪寒がするのだ




ノーマッド「気分が悪いったらありゃしない、おい!カモ!酒持ってきな!」イライラ


カモフック「わかりましたカモ…」トボトボ








結論から言おう

リージョン強盗団、ノーマッドの勘は正しかった





今、この瞬間も離れた宇域からキグナス号の様子を監視する一機の機影がある

…それは軟骨魚介類の鱏<エイ>の様な形をした漆黒の機体であった



330以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/25(水) 00:42:10.60LYxy+VXyo (1/1)

勘が良くても回避しようがなければなぁ……


331以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/25(水) 00:46:55.54DfKh3z180 (2/3)





ガチャッ!ドタドタドタ…!





カモフック「…?なんか下の階が騒がしいかも」ペタペタ


カモフック「かもっ!?!?」








ヒューズ「動くな!パトロールだ!全員手を上げろ!」カチャ!


ノーマッド「なっ!こいつら…どっから沸いて出たんだいッ!カモ!やっちまいなっ!」バッ!

レッド「あっ、待て!」



カモフック「行かせないかもぉ!!」ガコッ ヒュッ!





 気の抜けた声とは裏腹に、茶色の体毛を逆立たせ海賊の一員は敵意を"文字通り"飛ばして来た
先述したが[カモフック]の右腕は鉤爪になっており、彼奴の右腕は着脱が可能なのだ

右脚を前に出しのめり込むように踏み込んで、その勢いを活かしながら右手首を軽く曲げる
投球でスナップを利かせて変化球を投げるのと同じ様に…


金属製の鉤爪は遠心力を伴い、空を切りつけながら舞う、彼奴の独自の戦法[ブーメランフック]だ!



   レッド(!? 腕を…金属の腕を飛ばして来やがったッ!)









           -『へっ、面白れぇもんみせてやるよ!ゆけぃ!![クロービット]』 -






   レッド「…っ、義手を…飛ばす…攻撃っ!」ピタッ





ふと、彼の脳裏には1つの風景が思い起こされた、炎上する自宅、白髪の大男…あの忘れもしない家族の仇の顔がッ!



ヒューズ(あんの馬鹿っ!何棒立ちしてんだ!)

ヒューズ「レッド!避けろォ!」


レッド「―――ハッ!う、うわぁぁ!」





332以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/25(水) 01:47:08.12DfKh3z180 (3/3)






        アセルス「――-―危ないっ」ディフレクト!

         レッド「ね、姉ちゃん!?」





ヒューズにも、ルーファスでさえも反応しきれない速度で前に出る人物が居た
 それは引き抜いた妖刀と人ならざる者の血が混ざったアセルスだからこそ可能な反射速度であった

女性の細腕が繰り出したとは思えない劔の一閃、刀身は輝く義手を弾き飛ばし幼馴染の身を守る盾となる



カモフック「おおっ!?や、やるぅかも~!」バッ!カポッ、カチャッ タァン!タァン!


二足歩行の鴨はその場で高く飛び上がり器用にも宙に跳び、そのまま弾き飛ばされた義手を手首が離れた右腕に装着する
 左腕のライフル銃で銃を撃ち始めたヒューズ、[サムライソード]片手に接近を試みるルーファスを牽制しながら



レッド「姉ちゃん…すまねぇ!油断した!」

アセルス「気にしなくていい!白薔薇!ルージュ!アイツの動きを!」



白薔薇「はい!」ポォォォ!
ルージュ「任せてよね!」キュィィン




ルージュ「『<エナジーチェーン>』

白薔薇「其、御心は我の前に伏せよ!―――『<ファッシネイション>』」





深紅の魔術士は指先から人の念動力による鎖を――

薔薇の淑女は妖魔が扱える妖<あやかし>の魅了術を―――



                           ―――――それぞれ、放つッ!





ヒュッッ バチィィ!!


カモフック「はぎゃぁッッ!」ビリィィ!!



金属製の鉤爪の先端部に念の鎖が絡みつく、そして身体全身に伝わる電流に鴨は身を焦がし…
 プスプスと焦げ臭い匂いを漂わせる彼奴の瞳にハート型の薄いピンクの光が飛び込んでくる



カモフック(―ぉ、ぉあああぁつ!!)クラッ




がくがく、と脚を震わせ、惚けた顔で天井をぼんやりと眺める海賊…淑女の放った魅了魔法にに骨抜きにされた彼目掛けて




          BJ&k「圧縮レーザー、発射します」ピピッ ビーーーッ!!




333以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/07/31(火) 22:59:54.84rxMo2bYc0 (1/1)



 光学兵器の輝きは真っすぐ、[カモフック]目掛けて飛んでいく




    ボジュッッッ!!



 アセルスの剣技や白薔薇の妖術、ルージュの『<エナジーチェーン>』…ヒューズの体術やルーファスの[稲妻突き]
そしてレッドの鍛え抜いた拳による一撃


 この面子の中で恐らく尤も高火力であろう物騒な代物を搭載した医療メカは惚けた顔で棒立ちの鴨を
こんがり焼けた香ばしい北京ダックに変えてやった




カモフック「…ゲホッ…やばい、かも」




嘴を開けば、喉の奥から真っ黒な黒煙が出てくるという漫画タッチな見た目と化した彼は今更ながら数の上での不利を悟る




カモフック「し、下っ端かもーん!!」ダッ!







ソルジャービル×4「「「「キィーーーーッ!!」」」」





レッド「あっ!あんにゃろう手下を呼び出して自分だけ逃げやがった!」

ルージュ「くっ!!マズイぞ…アイツ、人質が居るところへ向かったんだ!」


ソルジャービルA「キッキィー」ダダダダッ



 槍の先端に勝らずとも劣らない[クチバシ]を吐き出す様な姿勢で突撃を始める兵隊達
それを蹴り飛ばすレッドとヒューズ、嘴を刀の鍔で受け切って殴りつけるルーファス、単純な戦力で言えばこの様に
攻撃を防ぎつつ返り討ちにてきる程度……


つまり、何ら問題無く倒せる"雑魚"だ




本当に単なる時間稼ぎだ、…そう逃げ出した鴨にとって時間さえ稼げればいいのだ














人質の首元に刃を押し当て戻って来れる時間だけの時間さえ稼げれば…っ!!







334以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/01(水) 00:15:46.51YYc+HEkOo (1/2)

カモめ、大人しく北京ダックになっていればよかったものを……


335以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/01(水) 00:44:43.68pViOsR1g0 (1/1)


 リージョン強盗団、ノーマッド一味は悪運の強い奴か否かで言えば…まぁ強い方なのだろう
[タンザー]に飲み込まれても、"指輪"を探しに来た緑の獣っ子たちに助けられることもあり、こうして外に運よく出れた


そんな彼等も今日ばかりは運に見放されていたのかもしれない



 レッド少年、武装した医療メカ、刑事のヒューズ、妖魔二人組に紅き術士、裏組織の幹部…早々たる顔ぶれが
寄りにもよって今日同じ船に乗り合わせたのだから



カモフック「これで逆転のチャンスかもー!今に見てろ~」ペタペタ…!



そして、人質が一か所に集められているスペースに裏組織の構成員が二人、つまりアニーとエミリアである












カモフック「…かも?」








     ガンファイターの残骸×2『  』プシュー プスプス…







そして、…そして、もう一人




この船には寄りにもよって、厄介な人物が後1人、乗り込んでいる



…非常口から突っ込んで来た襲撃者たち以外に、まさか"それとは別で単独行動してる奴"が居るとは思わなかったのだ












        ブルー「…ほう?蛻の殻だったからな、人質を置いて海賊共は皆逃げたと思ったが…」

        ブルー「ちゃんと見張りを置いていたようだな」








…神は言っている、オマエは此処で北京ダックになる定めだと




336以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/01(水) 01:02:27.58MhUReRJlO (1/1)

まるで逃げた先にケンシロウでも待ち構えているかのような絶望感


337以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/01(水) 06:25:05.66YYc+HEkOo (2/2)

逃げ出した先に楽園なんてありはしないのさと言わんばかりの絶望


338以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/01(水) 11:47:01.92VYiB5yFpO (1/1)

ある意味なおさら悪いところに突っ込んだなww


339以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/04(土) 21:11:09.90xEUqCl450 (1/1)

知らなかったのか?大魔王からは逃げられない


340以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/04(土) 23:32:13.25PiyknoQk0 (1/1)

期待


341以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/18(土) 22:10:51.49NpR4Vt+Q0 (1/3)

―――
――




アセルス「うぐっ…!」ズサァァ!!


ソルジャービル「クワアアアァァァ!!」ヒュッ!











ルーファス「背がガラ空きだ」ザシュッ!スパッ



 ソルジ/ャービル「 」(真っ二つ)



アセルス「あ、ありがとうござい「身の丈に合った武器を使え、でなくばいざという時に死ぬぞ」ダッ!


アセルス「っ!」



 これまで、幾度となく戦闘を重ねてそこそこ戦える力を得たと思っていた…
手にした妖刀[幻魔]も最初期と比較すれば扱えはしていた


 だが、わかる人間には分かるのだ、"アセルスは剣に引き摺られている"っと
達人の眼から見れば使用者の技量が武器と釣り合わないと



ヒューズ「おう、あんま気にすんなよ野郎はいつもあんな感じでな、昔っからデリカシーってのがねぇのさ」ガシッ バキィ!

ソルジャービル「ほか"っ」ゴキャッ




 鋭い[クチバシ]の突きを繰り出して来た兵の下顎から脳天をぶち抜くようなアッパーカット
頭部が天を見上げるを通り越し背後を見据えるようになった、脊髄があり得ない曲がり方をしている…



ソルジャービル「」ドサッ



ヒューズ「ふぃーっ…朴念仁なんだよ野郎は、あんなんだから13歳年下の鉄の女に関節技キメられんの、さッ!!」ブンッ!




ソルジャービル死骸「 」グワァン!!


ヒューッ!ドガッ!!! ぐべぇ!? ドシャァァ!!




BJ&K「レーザー標準、OK、発射します!」ギュィーーン!



チュドーン! ぎぃびぃいいいいいい!?!?




342以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/18(土) 22:34:28.15NpR4Vt+Q0 (2/3)



ルージュ「大分…よっと! 数が減って来たね!!」サッ! ゲシッ!!


 突っ込んで来た敵を避けに蹴り飛ばし、それをすぐ傍で彼同様に術で援護していた白薔薇が切りつける
サングラスを掛けた男が一刀両断した個体、不良刑事の剛腕で撲殺された者…



レッド「どっせいぃぃぃ!!!」シュバッッ!



ソルジャービル「ぅぎゅッ!!―――ぎ、ぎゅ」バタッ




ソルジャービル「き、キィイイイイイイイイイイイイイイイ!!」



 残すは1体、次々と倒れる同胞を見て破れかぶれとなったか
見境なく突撃を繰り返す…此処までくれば勝敗など決まった様なものだ



ルーファス「ヒューズ!行けッ!道を塞いでいた障害は粗方排除した!コイツ1体どうという事は無い!」



先の[カモフック]が人質を取って戻ってくれば戦局は一変、此方は手出しもできず一方的に嬲られる可能性はあり得る
 敵の半数以上は既に落ち、この状態であれば人員の一人二人追跡に欠いたとしてもさして問題は無いだろうと判断した



ヒューズ「へっ!あんがとよ!お前ん所の店で今度お高いメニュー注文してやるよ!」ダッ!


ルーファス「注文するより飲み食いしたままのツケをいい加減払え!」バッ!カキィィン!!ブンッ!






ルージュ「アセルス!レッド!僕がルーファスさんを援護する!君達も行くんだ!」

白薔薇「この中で脚が速いお二人ならば間に合います!さぁ!」



レッド「すまねぇ!恩に着る!BJ&Kお前も来てくれ!」ダッ!

アセルス「分かった二人共!後で合流しよう!」バッ!

BJ&K「了解、戦闘行為を一時中断します」ウィーン!




 捜査官ヒューズの後をレッド、アセルスが追い、人質に万が一の事があった場合を考え医療ロボを連れて戦線離脱をする

 持久走なら術士の自分よりも体力がある少年少女(後、疲れという概念が無いロボット)に任せるのが賢明だろうと
紅き術士は、未だ死に物狂いで抵抗を続ける[ソルジャービル]と対峙する壮年の援護に回った



―――
――




タッタッタ…!


ヒューズ「…?なんだぁこりゃ」



        北京ダックにされた者「 」ブスブス…




343以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/18(土) 23:38:40.99NpR4Vt+Q0 (3/3)



ヒューズは困惑した、鴨が一足早く人質を確保し最悪の展開を想定していた為…これは何とも面食らった様な感覚だ



[カモフック]はもう何処にもいない

代わりに黒ずんだ鴨肉が焦げ臭い匂いを漂わせながら転がっているだけだ




よく目を凝らすと顔が"あった"と思われる部分から、此処で恐ろしい何かがあったのだろうと苦悶に満ちた表情が伺えた




レッド「ヒューズぅぅぅ!!…ぜぇ、ぜぇ…!人質はみんな無事なのか―――…?えっ、こいつは…」

アセルス「…うわっ…なにこれ、死んでる………うっ」




 犯罪者ではあった、しかしながらさっきまで生きてて人語を喋ってた生物が此処まで惨ったらしく死んでいるというのは
流石にキツイ光景であった、モンスターの命を奪うことを体験して来たアセルスお嬢でさえ口元を覆う死にざま



BJ&K「…ピピッ!生体反応なし…」

BJ&K「死因、焼殺、外肉に留まらず、胃腸、肝臓…内肉まで完全に焼かれていると判断、死亡推定時刻は…」





ヒューズ「…こりゃあ、本当にすぐのすぐだった見てぇだな、まだほんのり熱が残ってらぁ」ピトッ



死骸に手を触れ、それからカモフック……だったモノ、の瞼をせめて閉じさせる

眼を見開いたまま絶命していて、食品店で売ってる水揚げされた魚…いや、調理済みの塩焼きみてーな目だと思った




「ひ、ひぇぇぇ…!」ガクガク!

「う、うわぁぁぁ…!なんだあの死骸はぁ!?」



ヒューズ「んん?…人質の皆さんか? あー!うぉっほん!皆さん!落ち着いてください!IRPOの者です!」バッ!



刑事が[IRPO]捜査官であることを証明する腕章を見せ、解放された人質を宥め始めた
 聞くところによると、金髪の中世的な顔立ちをした人物が部屋に入って来て、人質一人の縄を解いた後




 『何があったか知らんが、見張り一人置いて海賊共は撤退したらしい…無駄に疲れた、俺は自室で寝る、後は任せたぞ』




とだけ、知り合い?らしき金髪の女性にそれだけ告げて足早に去っていた、らしい


「あ、あの死体…あの刑事がやったのかな?」ヒソヒソ

「うわぁ…ヒくわ…」ヒソヒソ



ヒューズ(えぇ…なんか、俺が虐殺したみたいな流れになっちゃってるよオイ…)





344以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/18(土) 23:52:07.331oEKjxjb0 (1/1)

なんだこれ懐かしいうえに面白い
期待


345以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/19(日) 00:20:15.78jPo/7H4A0 (1/3)



ヒューズ(捕まってた人質に怪我人は無し、か…)


ヒューズ「負傷者はいねぇ見てぇだ…おいレッド!逃げたノーマッドの奴を追――」チラッ









エミリア「けほっ、けほっ…ちょ、ちょっとなによ、この焦げ臭い匂い…」

アニー「うえ…っ、本っ当鼻にくる匂いじゃん…くっそ、ブルーの奴~…助けに来たかと思ったら人に全部押し付けて」









ヒューズ「レッド、ノーマッドを追うぞ、めちゃくちゃダッシュで」ガシッ


レッド「えっ、お、おわぁ!?」


アセルス「あっ!?ふ、二人共!?」



<嬢ちゃんとメカは人質の面倒みてくれーーーッ!





 ぞろぞろと部屋の奥から出て来た人質の皆さん、その中で一人、ブロンド髪の美人を目にするや否や逃げるように刑事は
走り去っていった
 後には唖然とした顔で残されたアセルスと、テキパキ人質の健康チェックを行う勤勉な医療メカの姿あった




―――
――


【双子が旅立ってから3日目 午後17時37分  キグナス号:展望デッキ】



レッド「くそっ!」ガンッ


 逆立った黒髪の少年は握り拳を作り、下唇を悔しそうに噛んでいた…そんな彼の横に立つ刑事はデッキの窓から
遠ざかっていく1機の船体を眺め心底、憂鬱そうに溜息を吐いた


ヒューズ「逃げられちまったな、積み荷は奪われちまってこれであの会社がクロだって証拠はパーだ」


ヒューズ「…後は何処の惑星<リージョン>に逃げるか知らんが海賊共をとっ捕まえて吐かせるしかねぇな」


…めんどくせぇ、とぼさついた髪を掻きながら、「エミリアとは相乗りだし、今日も厄日だぜ…」と彼は呟き
窓硝子から背を向けて退室しようとした直後であった




  レッド「!? ヒューズ!!なんだあれは!!」





逃げた海賊の船に近づく1機の黒い機影をレッドが見つけたのは―――!



346以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/19(日) 01:04:14.19VRZZAVsAo (1/2)

逃げ足早いなヒューズ……


347以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/19(日) 01:37:48.07jPo/7H4A0 (2/3)



混沌の空間を漆黒の鱏<エイ>が泳いでいた、バーニアスラスターを吹かし白亜色の炎が箒星の輝きを創り前方へ進む



プロペラ式の海賊船とステルス機能を始めとした科学の最先端を織り込んだ漆黒の機体では距離が縮まるのは当然であり
 魚介類を模した機体は生物で言う口にあたる部位を海賊船に向ける



バチッ



星が弾けたような眩さだった、喩えるならば夏の夜に火をつけたばかりの一本の線香花火


見渡す限り闇しかない空間で光の華が咲いた






漆黒の機体から放たれた破壊光線は、寸分違わず"獲物"を花火にしてしまったようだ


一瞬の光、上がる火の手、赤々と上がる火柱にミニチュア人形の影が、遠目に見ていた彼等の眼には映った






…混沌<宇宙空間>の中を、―――生物が生きられない空間で生身の人間が船から放り出されたらどうなるか
それこそ先刻、レッドが全員を引き連れて、非常口から突入する前に説明した通りである




ヒューズ「…あれは、"ブラックレイ"…捜査官の間でも与太話だと噂されていたが…実在したのか…」


ヒューズ「ブラッククロスの戦闘シップが…!」



レッド「…ブラッククロス」ピクッ




両親と妹の仇である悪の秘密結社の名前…レッドはそれを聞いて青筋が浮かぶ想いだった



レッド「…キャンベル社長と、ブラッククロス…」




少年も刑事も考えることは一緒だった、あまりにも状況が出来過ぎている

武器の売買を行っていた会社の女社長からのリーク

それで積み荷(密輸武器)を奪いに来た海賊…

その海賊船を粉微塵にした犯罪組織の戦闘シップ



ヒューズ「…ま、あの女社長はクロだと睨んでたがね、目論見通り証拠は隠滅、ってことか」

レッド「シーファー商会」ボソ


ヒューズ「あ"?」


レッド「言ってたろ、[クーロン]のシーファー商会ってトコと取引してるって、キグナス号の次の目的場は[クーロン]だ」


レッド「…ブラッククロスとキャンベルは繋がっている、となればその商会も怪しいもんだ、停泊中に降りて調べてやる」



348以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/19(日) 01:53:27.46jPo/7H4A0 (3/3)

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      ー{   ー─一 ´  . -=ニニニ -=≦ニ}ニニj
       ≧=-------=ニニニニニニニ} ̄ ¨¨¨  ̄
          ̄ ̄ ¨¨¨¨¨¨  ̄ ̄


 T-260G「…ゲン様、私達出番が少ないです」

 ゲンさん「うぃーっく!酒だ酒ぇ…」





              今 回 は 此 処 ま で !!  次回 3章



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349以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/19(日) 02:05:55.97n3E2h3Yv0 (1/1)




350以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/19(日) 03:01:19.29VRZZAVsAo (2/2)


ゲンさんは秘術で出番があるだろうがT-260Gは……


351以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/20(月) 23:47:32.81cL/2cY5BO (1/1)

乙乙!


352以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/21(火) 22:55:49.49RUt02vHU0 (1/2)

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  何か忘れてると思ったら、リージョン強盗団 ノーマッドに関してのちょっとした解説を書き忘れてた




 【リージョン強盗団ノーマッド】は作中で登場する場面が大きく分けて2カ所です




 ① キグナス号

 ② タンザー




 サガフロは7人の主人公が居て、プレイヤーはその7人から1人選んで各主人公のシナリオを進めていく

 当然選んだ主人公次第では発生しないイベントやそもそも行けないリージョン等もある


例)クーンが[ファシナトゥール]や[時間妖魔のリージョン]に行けない等



原則的に一部を除いて術の資質集めイベントは誰であっても行うことは可能です

その中で"印術"を得る為、各地にある石の試練を通過する際、必ず[タンザー]には立ち寄ることになります





印術の試練を開始して、[勝利] [解放] [保護]何れかのルーンを1つ取得した状態でシップに乗ると強制的に

事故率が高いと(悪い意味で)有名なシップ、スクイッド型に搭乗します…



タンザーに飲み込まれ、そこで開幕早々にノーマッド一味に絡まれるというのが全主人公共通のシナリオです


※主人公によってはノーマッド一味の部下と戦闘になる

正義感の強い、クーン、アセルス、レッド等は乗客を脅す部下たちに突っかかり


逆に、我関せずのスタイルを崩さないブルー、呆れ顔で静観するエミリア、穏便に済まそうとするリュート等々…











さて、既にお気づきかもしれません…






>※主人公によってはノーマッド一味の部下と戦闘になる
>正義感の強い、クーン、アセルス、レッド等は乗客を脅す部下たちに突っかかり





レッド主人公の場合、自由行動が可能になるのはキグナス号強襲事件の後です…タンザーに行けるようになるのはその後


そう… "ブラック・レイによって粉微塵にされたはずのノーマッドが平然とタンザーの内部に居るのです!!"


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353以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/21(火) 23:08:06.02RUt02vHU0 (2/2)

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 タンザーに飲み込まれた後のレッド自身の台詞からも、あの時のパイレーツか!と発言する辺り

 サガフロ時系列的にノーマッドがタンザーに飲み込まれたのはキグナス強襲後の出来事…











 つまり、船が砲撃で粉微塵にされ、全員が混沌の海<宇宙空間>に放り出された直後

 死ぬより早くタンザーに飲み込まれ助かるという悪運の強さが分かるワケですね…



 女頭領、ノーマッドの悪運高さはこれだけに留まらず


 彼女が持つ【全て集めるとどんな願いも叶う魔法の指輪の1つ『盗賊の指輪』】を求めて来たクーンに追い詰められ


 タンザー内部の消化器官に喰われ、一定ターン以内にタンザーの器官を戦闘で倒せないと
 ノーマッドが飲み込まれるという結果に終わるのですが


 何故かクーン編のEDで普通に生存してる姿が確認できるという…







            \  すっごーい!   /

                     i`ヽ   ,`ヽ
            ,,,-、   .iヽi  ヽノ   }
            |  ` ‐-+、        i,-,  ,ノ⌒i
        __,-‐―!    { `ヽ :::.  _,,{_ノ_ i   }
       ヾ、:.:.:.:.:.:.:.:.:.: :.:.:.ヽ   ヽ、., '     ヽ、__{
          ,‐ミ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ、   ノ            }
        ,-‐'  `ヽ‐-:::::::::::::::::::_{`´   ,、        ノ
      `ヽ、:.:.:.:.::.:.:::::::_,. -‐ ´ }    | ` 、   / {
         ` ‐- 、;;;;:{     人  {  ● ` ´ ●
              ヾ   } (  ヽ-、!        ノ
               }  ├i `‐-、  ` --─一´
           ,-‐‐´  _ノ .|  { !,, ,,-‐''´
           {`‐-< ̄   .{  {  X  } ヽ
           ヽ  ノ       ヽ_>‐{ !⌒   ヽ
            `´           { ノ''ヽ ̄`―´
                     `‐、  }
                       `´


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354以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/21(火) 23:25:08.10wxMc/4O00 (1/1)

異能生存体かな?


355以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/08/22(水) 01:22:01.84tvb8a5nzO (1/1)

星の海を股にかける大海賊だから多少はね?


356以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/16(火) 22:33:23.10O7fjBJ/k0 (1/3)



 その日は、一際暑い一日だった


 東風が熱を帯びた身で忙しなく巡る人々の肌を焼く、日傘をさして歩く者も在らば麦わら帽子を被る者
露店で売られている飲料を透き通るグラスに一杯注ぎ氷をひとつまみ入れる
銅貨を数枚手渡し、これ見よがしに、それでいて贅沢に茹だる様な暑さに苛まされる者に見せつけて喉を潤す住人




 暑い中、二人のよく似た少年…整った顔立ちと長く伸びた髪から少女にも見えたかもしれない





 蒼を身に纏った金髪と、紅を身に纏った銀髪が石畳の広場を歩き、木陰でお互いに笑い合っていた






    『そのおもちゃよっぽど気に入ったんだな』ペラッ
    【そーれ!バーン!バーン!…えへへ!露店のおじさんがサービスでくれたもんね!】カチッ!


    『ああ、何故か服を着てない女の本を返しただけでな』
    【不思議だよねぇ~、キミはその[ワカツ]の剣術の本面白いの?】


    『そうだな…魔術とは違い、闘気というモノを操る剣術は興味深い』
    【剣かぁー僕は運動神経よくないからなぁ…それに剣より銃の方が何か恰好良いもん】カチッ!カチッ!


    『フッ、飛び道具など術があるだろう、実用性を考えれば懐に入られた時の為の剣が良いに決まってる』
    【むぅ!意見が別れたね…】








    『…久々に笑った気がするな』
    【えっ?】






    『学院で同じ歳の奴らと話してて此処まで楽しいと思ったことはなかった…本当何故だろうな』

    『心が晴れ晴れとしているんだ…なんで安心するんだろうな』
    【……へー、不思議、僕もなんだか安心するんだ】


    【なんだかずーっと昔に落として無くなっちゃった宝物をタンスやベッドの裏で見つけたみたい】


    『…ぽっかりと、空いた何かが埋まった感じ、か?』

    【! そーそー!すごいね!今僕の考えてる事と同じだよぉ!…いやぁキミ人の考えを読むの巧いね】



    『いや…そうじゃないんだ…別にお前の思考を当てたワケじゃない…ただ』
    【?】






    『俺が、純粋に今、思ったことなんだ』


―――
――



357以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/16(火) 22:43:47.30O7fjBJ/k0 (2/3)













パチッ…


         …? …あぁ、そうか鴨肉を焼いた後、アニーに丸投げして仮眠を取るため客室に戻ったんだな














時計は……【20時15分】…とんだアクシデントに見舞われたモノだ


陽の高い内に[クーロン]を出て帰って来るのが夜中とは…






…丁度今、発着場に着陸するとアナウンスも流れて来た…荷物を持って降りる支度でもしておくか






358以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/16(火) 22:54:26.70O7fjBJ/k0 (3/3)







           ※ - 第3章 - ※



    ~ 資質を得る、という事…ぶらり、いい旅夢気分 ~







359以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/16(火) 23:22:16.71NjW0TnI/0 (1/1)

いよっ!待ってました!


360以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/17(水) 23:27:18.20fnGjHvzgO (1/1)

素早い復帰で嬉しい
続きも待ってます!


361以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/26(金) 23:18:38.97ks/1nI6H0 (1/1)

【双子が旅立ってから3日目 午後20時28分】




 仮眠を取り、目覚めてすぐの身体は節々がまだ少し鈍ったように思えた
術士は気怠げに蒼の法衣をはためかせながら発着場を後にした…目指す先は自分が金塊で得た資金にモノを言わせた安宿だ


 長期滞在、という形で宿室を確保した彼の半ば仮住まいと化したオンボロ宿屋へと向かう最中
ふと見覚えのある後ろ姿が目に留まった






リュート「はーい!皆さん拍手拍手!スライムの曲芸だよ~!この輪っかを見事潜り抜けたら拍手~」

スライム「(`・ω・´)」キリッ! ピョーンッ!



シーン…




 路上のど真ん中で曲芸とやらをやっている1人と1匹が居た、彼等の手前には空っぽの蓋がくり抜かれた缶詰の缶がある
おそらく道行く人の御捻りを入れて貰う為なのだろう…今のところの儲け?空っぽであることから分かる通りだ




リュート「…ちぇっ、世知辛い世の中だなぁ…」ポロロン♪

スライム「(´・ω・`)」シュン…





ブルー「…」







ブルーは見なかったことにした、というか他人のフリをした、知り合いだと思われたくない








リュート「おぉっ!?オイ見ろよスライム!ブルーだぜ!帰って来たんだな!おーい!ヤッホー!」手フリフリ

スライム「(`・ω・)ぶくぶくぶー!」ピョーン!ピョーン!



ブルー「畜生ッ!」




だが、人混みに紛れて姿を眩ませるのが間に合わなかった

敢え無く彼は、センスが無くて売れない路上パフォーマーの知り合いという奇異の眼で群衆の注目を浴びた



―――
――


リュート「はっはっは!なんだよ、そう怖い顔すんなよ~俺達、一緒に大金稼いだ仲だろ、相棒?」ニコッ

馴れ馴れしく肩に手を置き笑ってくる男を恨めし気にブルーは睨みつけた



362以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/27(土) 02:47:10.48P1zUPoOk0 (1/1)



 2人(と1匹)は[クーロン]の寂れた通りにある、おでん屋台の古木を組んで作った簡素な長椅子に腰掛けていた
悪態を吐いてすぐに立ち去ろうとしたが弦楽器を背負った無職にしつこく付き纏われ
最終的に折れて少しだけ話に付き合うという所に落ち着いたのだ

 眠らない魔都の雑踏や目が白黒するようなネオンライトが仮眠明けの覚醒し切ってない脳に嫌に響く
せめて静かな場所に移動しろ!とキレ気味に抗議した結果が寂れた通りのおでん屋の屋台に移動した経緯であった




…まぁ[クーロン]で"まともな静かな場所"など無いに等しく、今彼等の居る場所も比較的に静かな場所でしかないのだが



裸電球を針金で吊るしただけのか細い灯りと古めかしいラジオから流れる時代遅れの選曲がこれまた哀愁を漂わせていた
 おでんと書かれた赤提灯と紺色の暖簾…夕食をまだ取っていない彼は何か軽く胃に詰められるモノは無いかと思っていた
空腹を埋めれるのであれば店の外装なぞどうでも良かった、味さえ悪くなければ何でもいい


トクトクトク…


 硝子のコップに注がれる焼酎とやらを呷るように飲むリュート…飲み始める前からコイツは酔ってるのではないかと
ちびちびと飲みながら横目でブルーはこのプー太郎を訝しんだ


リュート「いんやぁ、災難だったなぁ~船がハイジャックされたんだろう?」

ブルー「まったくだ…[タンザー]の件と良い、これと良い…どうも俺はシップと相性が悪い」



味の染みこんだ煮卵を割りばしとやらで器用に食っていくリュート
その横で味噌という調味料を塗ったくった"デンガク"という食べ物にがっつくスライム


箸、という食器を使うのはブルーにとってあまり馴染が無くどうにもモノを巧くつかめなかったがそれでも意地になって
串のように突き刺さずに苦戦しながらも大根を口に放り込んだ

 昨日の蟹すき鍋の時と良い、このリージョンの人間は何故ナイフやフォークでなく箸などという物を愛用したがるのか
言葉には出さずに少しだけ呆れとも感心ともどちらともつかない感情を抱いた





ブルー「…味は、悪くないな」モグモグ





食べ辛いのが難点だが、祖国の料理に勝らずとも劣らないなとオンボロ屋台のおでんを彼は高く評価した



リュート「だろぉ?なんだって食ってみるもんさぁ~、えーっとどこまで話したっけ?」

リュート「あー、そうそう船がジャックされた話だな、そんで犯人たちと戦ったんだろう?」


ブルー「まぁな、奴らなど術で一網打尽だったがな」フッ


リュート「う~ん、術かぁ…便利だよなぁ、やっぱ使えた方が就職に役立つよなァ」



[マジックキングダム]は完全な術の実力社会主義だ、魔術師としての才能の有無で将来性が決まる節がある
故にリュートのぼやきを相槌を半分流しで聴いていたブルーはそれには心の中で頷いた




リュート「しっかし考えてみると便利そうだけど、術だけってのも問題なんじゃないのかい?」

リュート「肝心な時に術力が切れて、うわーガス欠だーってなったら困るし術を反射したり効き目の無い敵と会ったら?」



ピタリ、不慣れな箸の動きが止まりブルーは眼を丸くした…
馬鹿だ馬鹿だと思っていた男が意外にも的を得た質問をしてきたのだから



363以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/31(水) 01:12:02.02FFroIjC90 (1/4)



ブルー「貴様の言う事も一理あるな」




ブルーは術が使えなくなった時、自衛の手段が恐ろしい程に無くなる


 それは以前、アニーと二人で[保護のルーン]があった空間に行ったときに証明されている
巨蟲の一撃で術の詠唱ができない状況に陥ったあの時同様に喉や、肺をやられれば立ちどころに蹂躙される未来しかない


術の使えない術士など、非力な人間でしかないのだから…





彼は昔、本で学んだことがある…世には己の術力全てと引き換えに全てを焼き払う『<塔>』という術が存在すると


高位の術士が使えばその火力たるや現在確認されている術の中で隣に並ぶモノはいないと評されるほどである

使えばありとあらゆるものが屈服すること間違いなしだが、これは本当に最後の切り札と言っても過言ではない






もう一度言うが己の術力全てと引き換えに、だ




 短期決戦や1対1のサシでの勝負ならともかく、その後も敵の増援が控えて居たりと
長期戦を想定した場合に使えばどうなるか…


ガソリンが底を尽きた自動車が荒野のど真ん中に置き去りにされるようなモンである





ブルー「術に頼らずに戦う術を手にすることを考えねばな…」



顎に手を当て、空腹さえも忘れ黙り込む―――武器…銃、は…不要だな、とバッサリ考えから外す

 手頃で使いやすいだろうが…それでも敵との相性がある
例をあげれば[スケルトン]種のようなモンスターには銃撃は効果が薄い



…すぐさま浮かんだのは、剣だ



 運命のいたずらか、彼は自分の幼い日の夢を見た…顔はぼやけていて思い出せないが自分と同じ年頃で銀髪の少年と
祖国を廻って遊んだ一夏の思い出


記憶の中の自分は[ワカツ]剣術の本を読んでいて
その中には術の力とはまた別の闘気なるモノを用いた特殊な攻撃がある事を知った


よくよく思い返せばアニーが虫共に対して撃ち放っていたのもそうだ




ブルー「…アニーか、女の腕力でも技と速さを生かして十分に立ち回る…」フム



ブルー(癪だが奴に相談してみるか)


 隣の席で考え事に耽っているブルーのおでんを盗み食いしようとするリュートに気づくことさえなく
ブルーは今後の予定を決めた…



364以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/31(水) 01:54:43.38FFroIjC90 (2/4)

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―――
――


【双子が旅立ってから3日目 午後20時20分】


噂通りの場所だなーっと、観光パンフレットを片手にルージュは呟いた

 乗客の大半はまだまだ警察…即ち[IRPO]の事情聴取を受けている中、ハイジャック騒動で刑事に協力したルージュ等は
優先的に手短な手続きだけで解放された…「面倒だがこれも規則なんでな、まっ!ちったぁ融通は利かせるぜ!」と
ヒューズ刑事の計らいで長い列に並ばされることなく済んだわけである



暗がりの街に目が痛くなる程の光の渦、耳鳴りを覚えそうなくらいに様々な音が流れていく



エミリア「ささ、こっちよ!着いて来て銃を販売してる店を紹介するから」


ルージュ「はいっ!ところで、ルーファスさんは?」

エミリア「うん?ああ、アイツならアニーと先に帰ったわ」


ルージュ「アニーさん…確かエミリアさんのお友だちの方ですね、僕はまだ一度もお会いしていませんが」

エミリア「ええ、あの海賊たちのドタバタで結局紹介できなかったわね…」


エミリア「この街で困った事があったら彼女を頼ると良いわって会わせてあげたかったんだけどねー」


ルージュ「この名刺を渡せば良い、んでしたっけ?」


エミリア「そうよ、私があげたグラディウスの名刺ね…あの子いつもイタ飯屋の前に立ってるから」

エミリア「なんかあったらエミリアから紹介を受けたって言って名刺を差し出すと良いわよ」



エミリア「それにアセルスと白薔薇ちゃんはもう彼女と面識があるし協力を取り付けやすい筈よ」




エミリア「…ところで二人は?」




約束通り、銃を扱う店を紹介してくれるとルージュは金髪美女の後をついてく…

…何故、マンホールの下へ降りて行こうとするのか疑問に思った所で話題に上がった同行者の話を振られた





ルージュ「あの二人は別行動中ですよ、心配だからついて行こうとかと言ったら、問題無いと言われまして」

ルージュ「なんでも、このリージョンにお住まいの"ヌサカーン"というお医者様の元を尋ねるそうでして」



エミリア「妖魔医師って白薔薇ちゃん言ってたわよね…アセルス、人間に戻れるのかしら?」

ルージュ「……僕には、何とも言えません」






ルージュ「…あの、さっきから気になってるんですが、なんでマンホールの下へ降りるんですか?」

エミリア「あ、この街の武器屋はマンホールを下りた下水道にあるのよ」ヒョッコリ


地中から顔をだした土竜のようにひょっこりと顔だけ出して引き攣った顔のルージュにエミリアは答えた



365以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/31(水) 02:40:47.01FFroIjC90 (3/4)

―――
――

【双子が旅立ってから3日目 午後20時20分(ルージュ&エミリアが武器屋に行く同時刻)】



ポツッ…ポツッ…




 光化学スモッグに薄汚れた街の配管から濁り水が流れ落ち、それは雨水が生み出した小さな溜まり場に行きつく
無数の交差する電線の上には行き倒れの人間そのものを喰らわんとする鴉が眼を光らせており…

常人ならば誰も好んで通りたくないだろうそんな裏通りを一組の女性たちが歩いていた


一人は美しい貴婦人のような出で立ちで頭に白い薔薇の飾りをつけた淑女

もう一人は可憐さよりも凛々しさの方が前に出る整った顔立ちで緑髪が目立つ少女





 綺麗な花には棘がある、などとはよく言ったモノで…一見すれば彼女等は治安の悪いこの街の通りでは
恰好の餌に見えるだろうが、この二人は人間<ヒューマン>ではない、妖魔だ


不用意に敵意を以て近づけば、路地裏に転がる冷たい骸になるのはこっちである



丁度、彼女等二人の眼界にある建物の主と同じ…危険な人物なのだから








アセルス「…此処が、そのヌサカーンって人の…」ゴクッ


白薔薇「はい、妖魔医師ヌサカーン様ですわ、この御方ならばあるいは…」





アセルスは一度だけ白薔薇の顔を見た、自分に付き添ってくれたこの姉の様な優しいヒトを

…固唾を飲み、不安とも期待とも取れる奇妙な感情を胸に暗黒街にひっそりと存在する闇医師の居城の門戸に手を掛けた




ガチャッ!ぎぃぃぃ…







アセルス「た、たのもーーーーっ!」

白薔薇「…アセルス様、それでは道場破りか何かですわ…」





…アセルスお嬢は緊張していた



アセルス「あ、あぁ…!そ、そうだね!ごめんくださーい!どなたかいませんかー!」





366以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/10/31(水) 03:34:22.28FFroIjC90 (4/4)



 薄暗い室内、古びた柱時計に古き良き時代からあるダイヤル式の黒電話
鼻につんっ!と来る病院特有の薬品臭さ…病院の立地条件も相まって院内は不気味そのもので
10代半ばの少女アセルスは歳相応の反応をするのも無理は無かった





アセルス「…あのー…どなたか、…い、いらっしゃいませんかー…」ピトッ

白薔薇「アセルス様、大丈夫ですから」ナデナデ




 さっきまでの威勢の良さはどこへやら、普段は勝気でモンスターとの戦闘にもめげない彼女が語気を弱め
姉代わりの貴婦人の腕にぴたりと、夏場の樹に止まった蝉か何かようである

そんなアセルスを教育係の白薔薇姫は微笑ましくなでるのであった、そして…





白薔薇(それにしても、変ですわね…)ハテ?



白薔薇(ゾズマから聴いた話では来客を驚かせる"おもてなし"に精を出す奇人だとはお聞きしていましたが…)


白薔薇(にしては、あまりにも気配が無さすぎる…何処かに隠れている、ような感じにはとても)






そして、黒電話が置かれた受付机の上に置かれた来客者に宛てたであろう…この病院の主の文を見つけた












【 ちょっと、[ヨークランド]まで緑の獣っ子と往診に行ってきます

      あと各地を廻って奇病を抱えた女性客を診るので しばらく [クーロン]に帰りません ヌサカーンより】














アセルス「 」( ゚д゚)

白薔薇「…あらあら、まぁ…」







……かくして、アセルスの人間に戻れるかもしれない、という期待はいともたやすく崩れたのであった




367以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/11/01(木) 11:50:22.33DMumBUm9O (1/1)

あの仕掛けはリアルにビビる


368以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/11/02(金) 21:48:15.92vBgNsOZB0 (1/2)

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【双子が旅立ってから3日目 午後20時20分(ルージュ組、アセルス組がそれぞれ同時進行中)】




「ブラッククロスぅ~?知らねぇな」スタスタ…

レッド「そうか、ありがとう」







暗黒街[クーロン]…海賊騒動の件を終え、レッド少年は自分の家族の仇である悪の秘密結社の情報を掴もうと
 キグナス号乗務員が次の小惑星<リージョン>へ旅立つ前の休息期間を利用して一人、…いや一機と闇市を歩いていた





BJ&K「…」ウィーン


レッド(…あの後、医務室でコイツに『異常発見、特殊な…』と言われかけた時はビビったな)



 医療ロボット、BJ&K…彼はレッドの生体反応を見て、通常の人間とは違う事に気が付いた
レッドが遠い宇宙の何処かにあるヒーローの惑星<リージョン>から来た人物に力を託され一命を取り留めた人間だと
機械ゆえに生体反応から分かったのだ



レッド(バレたら俺はヒーロー協会の掟とやらで抹消されちまうからな)

レッド(咄嗟にそれ以上喋るな、喋ったらお前をぶっ壊す、俺の傍から離れても壊すっつっちまったからな)




 後ろ頭を掻きながら、乱暴な事を言ったもんだと彼は少し後悔した
そして医療ロボは「命令内容が不正ですが壊されたくないので私もついていきます」と律儀についてくるという



「…ひひっ」
「くすくす♥」





レッド「…」スタスタ




 齢19、まだ大人になりきれない年頃の彼は…正直に言うとこの街の雰囲気に少しだけ気圧されそうではあった
物陰でまだ年若い彼を見ながらほくそ笑む男女の声色や目線、その全てが
まだ大人になり切れない彼の少年の部分に触れてきそうで心細さはあった





BJ&K「…ピピッ、人の大規模な集まりを確認、情報収集に適しそうですよ」

レッド「!」ハッ

レッド「あ、あぁ…ありがとうな」





…たとえ、メカでも今は"独り"じゃなくて良かった、彼は思った




369以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/11/02(金) 22:55:44.29vBgNsOZB0 (2/2)



情報収集に勤しむ少年は医療ロボと共にひたすら暗黒街を渡り歩く、彼はメカと違い人間<ヒューマン>だ

 動けばカロリーも消費する、あの騒動でそういえば何も食ってなかったなと身体が空腹の音で知らせ出した頃
適当に眼に止まったコンビニエンスストアで何か軽いモノを買って行こうと歩きだした





「へっへっ…よぉ!見ろよあの頭!」

「ヒューッ!まぁ~ったく奇妙なヘアースタイルだぜぇ!!鳥の巣かww」
「ちっげーよ、サボテンだろぉ?」



「「「ぎゃーはははははっwwww」」」






…治安の悪い街でこの程度のゴロツキ共はまだタチの良い方だろう

どこの惑星<リージョン>にもまるでお決まりのようにいるコンビニ前で屯うガラの悪い若者という奴だ

 緑、白、空色、3本カラーリングの横縞が印象的な看板灯の下
『家庭ごみの持ち込みを固くお断りします』と書かれたゴミ箱の前に座り込み煙草の吸殻をこれでもかと言わんばかりに
撒き散らしているモヒカンヘアー達



レッドは何も言わずに彼等に背を向けた



「サボテンくぅ~ん、アタシ等とあそんでかなぁ~い…イイ事してあげるわよ!キャハハ」

「おい俺らが遊んでやるっつってんだ、無視すんなよ、なんとか言えよォ」




背を向けたレッドは無表情で静かに歩き出した



「へへっ、そんなこというなよなァ~ビビッて逃げちゃうよ、弱虫くんなんだから、あっ!もう逃げてるか」


「「「「ぎゃーっはははははwwww」」」」


―――
――



暗がりの道を白熱灯の灯りを頼りに階段を降りていく、小さな安宿の横をレッドとBJ&Kが降りていく


レッド「…」



レッド「……昔の俺なら、蹴り入れてたな、オレも大人になったということか‥‥フッ」




[シュライク]に住んでた頃、まだ学生時代だった頃なら余裕でシメてただろうなと思った

…ヒーローになってから何が切欠で抹消されるか分からんと慎重になっていたのはあるかもしれない




以前の自分なら考えるよりまず行動だったが、少しだけ考えるようになった、そんな気がするのだ




370以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/11/03(土) 00:30:17.81EDU40oww0 (1/1)



「聞いたか?この街の裏通りに居た闇医者が他所のリージョンへ行っちまったとよ!」

「あ~、あの奇病フェチで無一文でも診察してくれる変人の…勿体ねぇ」




「俺は見たんだ!アイツが鉄パイプでロープを切るのを!アイツぜってー[ワカツ]の剣豪だって!」




「さっき変な路上パフォーマーが居たんだけどさぁー、あの芸クッソつまんなかったわよねぇ」
「あっ!わかるぅ~!」




レッドは歩いた、だが…得られた物は全くと言って良い程に何も無かった…

―――
――




レッド「…収穫無し、か…しゃーない、戻るか」クルッ



スタスタ…


白熱球の灯りに照らされた階段を昇り来た道を戻る…、一度通った道を戻るという事は当然ながら先のコンビニ近くを
通るわけで、当然―――




「お、お、おぉ…サボテンくん戻って来たよぉ…スゥ、ハァ…」



―――当然、ガラの悪い連中がまだそこには居た

透明なビニール袋に何か透明な液体が入っていて、彼等は"ソレ"の匂いをしきりに嗅いでいた


「へ…ふえへへ」スゥ…ハァ


「おひゃ、らいふえげ」





レッド少年は露骨に顔を顰めた、彼はヒーローになる前から正義感の強い男だった
 だから目の前の"行為"を行う集団に心底嫌悪感を抱いたのだ




レッド(こいつら、"ヤク"やってやがるな…)



犯罪都市[クーロン]では日常茶飯事な光景だが、観光客からしたらひどく不愉快な光景である
 これ以上、この手の輩に関わり合いたくないとその場を離れようとしたレッドは次の瞬間信じられないモノを目にする


「う、ウゴゴ…ウウゲエエエエエエエ」…ベキッ、 ベコッメキョ…グッ ボコボコ


「きゃあああああああああぁぁ!」

「らんらー。ろうしたんら?おまえあー ―――ウゲッ」ガッ!




レッド「!? な…なんだぁ!?あれは!!」



371以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/11/13(火) 22:43:36.89FWNstqpd0 (1/2)


【双子が旅立ってから3日目 午後20時29分】



エミリア「どうかしら?」

ルージュ「色々種類はあるけど、いきなり強い銃はやっぱり扱い辛さもあるし」


ルージュ「これにしときます!」つ 【アグニCP1】


エミリア「確かに初心者向けではあるわね…ね、基本的に店頭に並ぶ銃は此処ぐらいしか良い店は無いわ」

エミリア「もし、それに慣れたら新しい銃を新調しに[クーロン]にくると良いわよ」


ルージュ「この場所以外にはないんですか?」



エミリア「…んー、銃、といえば銃だけど
       メカにパーツとして組み込んだ方が良さそうな重火器専門の店が一応裏通りにあるのよね…」


エミリア「横流し品で正規軍から色々と強いのを取り揃えてるけど…重火器は、ねぇ…」


ルージュ「何か不都合が?」キョトン

エミリア「いや…戦闘が終わった後の成長性が…」ブツブツ



ルージュ「???」


―――
――


ルージュ「それでは!エミリアさんお元気で!」ペコリ

エミリア「ええ、術の修行の旅ってのはイマイチ私には分からないけど大変なんでしょう?頑張るのよ!」



 腰まで伸びた白銀の長髪は去っていくブロンドの女性に礼を告げ、裏通りに住まう医者の居城へと向かうべく踵を翻す
おそらく、緑髪の少女らが居るからだ…待つよりどうせなら迎えに行った方がいいと判断してだ





タッタッタ…!

ルージュ「うん?」クルッ





巡礼者「 」バッッ! ドンッ



ルージュ「うわっ!」ドサッ


ルージュ「いたた…な、なんだぁ?あの人…凄く急いでるみたいだけど、人にぶつかって謝りもしないなんて…」ムゥ…


「てめぇ!!待ちやがれェ!!」タッタッタ!


ルージュ「…あれ?この声は…」ハッ!





レッド「でめぇ!!そこの巡礼者風の男ぉ!麻薬売りは貴様だな!!」タッタッタ!




372以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/11/13(火) 23:15:10.86FWNstqpd0 (2/2)



ルージュ「君は…確かレッド!レッドじゃないか!」ダッ!



レッド「―――あっ!アンタは確かルージュ…だったな!丁度いい!アイツ捕まえんの手伝ってくれ!」ダッ!




 見知った顔の少年が一人の巡礼者を追っていた
紅き術士は自分の名と同じ意味合いを持つ少年と奇しくも早い再会を果たす


 何事かと魔術師は少年に並走するように走り、事態を問うと追跡に夢中だったレッド少年は横目でチラリと
自分についてきたルージュの存在に漸く気づいたのだ…そして第一声が「アイツ捕まえんの手伝ってくれ!」なのだから
術士は目を丸くした





レッド「話せば長くなっちまうから手短に言う!アイツはこのリージョンで麻薬<ヤク>を売ってんだ!」

ルージュ「麻薬だって!?」

レッド「ああ!」




マンホール下の武器屋で銃を品定めしていた合間に、レッド少年は奇妙な光景を目の当たりにした

あの屯って居たガラの悪い若者たちの内の一人が突然、"変貌"するという怪奇だ



 腕や顔…いや、身体全身の皮膚がボコボコと沸騰した鍋底の熱湯のように泡立ち膨れ上がり、瞬く間に人間から怪物へと
その姿を変えていき、手当たり次第近くにいた通行人を襲い始めたのだッ!



それは"ただの麻薬"ではない…飲む者の細胞を意図的に変質させ、人体を改造し化け物を生み出すという―――






レッド少年が追い続ける悪の秘密結社【ブラック・クロス】の人物が新薬の実験、組織の資金を集める為の物だったァッ!





 群衆の眼があるが故に"アルカイザーに変身することができなかった"彼はそのまま生身で改造戦士と化した男を倒し
事の成り行きを見ていた巡礼者風の装いをした男を見つける…そして奴こそが薬物を売っていた張本人と聴き

被害の出た一般人の治療をBJ&Kに任せ一人で追跡していたとうのが此処までの経緯であった







ルージュ「麻薬だなんて…っ!そんなの放っておけない!わかった!」ダッ!

レッド「っ!すまねぇ…恩に着るぜ!」





共闘はした、が出会ってそこまで過ごした時間は僅かだというのに…普通、こんなヤバい事件に首を突っ込んでくれる奴は
いないというのに、ルージュはレッドの突然の申し出に快く頷いてくれたのだ


"正義の心"を持つ少年と共に並走するこの紅き魔術師も、…彼もまた正しいと思う行動の為に動くタイプの男だった…っ!
レッドは心の中で、この青年の純粋な心に感謝した



373以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/12/11(火) 23:15:48.896QiV02sE0 (1/1)



 鮮赤と深紅が暗黒街の闇を切り裂く様に並走する、ネオンの輝きも何事かと窺う人々の顔も目に映るモノ全てが
線になっては視界の端から逸れていく


竹笠の後を追い、街の闇へ奥へと進んでいく――ネオンの輝きも人の気配も失せ、ついには街の裏通りへと入り始めた頃だ







レッド「チクショウ!!…見失っちまった」ギリッ

ルージュ「レッド!落ち着くんだ!…僕達は此処までアイツとはそれ程距離に差をつけられずにつけて来た」

ルージュ「とすれば、何処かに隠れて息を潜めているんだ!」


レッド「あ、ああ…一体どこに」キョロキョロ




長い階段、雑居ビルの天辺まで一気に駆け上がれる錆びついた梯子…開きっぱなしのマンホール、候補など幾らでもある




ルージュ「危険ではあるけど、手分けして探さないか?」

レッド「二手に分かれるのか」

ルージュ「ああ、事前に裏通りは治安が悪いとは聞いていたけどキミと僕ならきっと余程の事が無い限りはきっと…!」


 レッドは[ソルジャービル]達との戦闘を顧みる、術士として後衛を務めながらも
懐に飛び込んで来た敵兵を避けて蹴り飛ばした姿を見るに護身術も多少は齧っている…ならば行けるか?と


レッド「わかった、その手で行こう無理はするなよ!危険だと思ったらすぐに退いてくれ」

ルージュ「うん、キミも気を付けてね」




互いに頷き、捜索を分担して行う事にした―――異臭のする配管が剥き出しの路地裏を一人ルージュは歩く…


"麻薬の売買"という悪行を許すわけにはいかないと、彼はつい勢いでレッドについて来てしまったが
 結果的に言えばこの裏通りの何処かにまだ居るかもしれない仲間のアセルス等をほったらかしにしてしまったことに
今更ながら後ろめたさを覚えた




ルージュ(緊急事態だったとはいえ、やっぱり悪い事だったかな…あとで二人と合流したら謝ろう)タッタッタ…


―――
――

時を同じくして…そのアセルスお嬢は…



「ひひひ、ね、ねぇ?そこのお嬢さんたちイイモノ売ってるんだけど買わない?今なら安くしておくよ」ヒヒヒ


アセルス「 お 断 り し ま す ! 」



あからさまに怪しい白衣の男に商談を持ちかけられていた

「…ちぇ、いいよ…[裏メモリボード]を50クレジットなんて破格なのに」ブツブツ スタスタ…


白薔薇「変わった方が多いリージョンですわね」

アセルス「…はぁ、ヌサカーンってお医者様が居ないのに変なのは居る、か」ガックシ…



374以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/12/12(水) 02:09:50.35INgrk9Io0 (1/1)



一筋の希望が見えたと思えば、それは此処に在らず
目に見えて落胆する少女を見て白薔薇姫は暫し迷った、項垂れた緑髪が雨に濡れ余計に悲壮に見えてしまう


白薔薇「アセルス様、まだ手が無いワケではございません…」

アセルス「白薔薇…?」





白薔薇「望みは薄いかもしれませんが、良き知恵をお貸しくださる方に心当たりがございますわ」

アセルス「誰なの?その人は…」



 厳密に言えば知恵を貸してくれそうなのは"2人"だ、2人ではあるが…その内の一人[零姫]と呼ばれる女性が現在消息不明
何処かで生きていることは間違いないのだが、白薔薇はその人物が何処にいるか知らない為、残る一人の名だけを挙げた









 白薔薇「その御方は…妖魔の君の一人、氷炎の小惑星<リージョン>、[ムスペルニブル]に城を構える御仁」







        白薔薇「人呼んで、指輪の君…ヴァジュイール様に御座います」






アセルス「ヴァジュイール?え、でも妖魔の君って」

白薔薇「はい、…オルロワージュ様と同じく頂点に立たれる御方です」





それを聞いてアセルスは身の毛もよだつ怒りに駆られた、オルロワージュと同じ妖魔の君!?冗談じゃないッ!

 自分の都合だけで女の人を攫って、あまつさえ勝手に人間を辞めさせて自分の愛人に仕立てる奴と同格の妖魔なんて
そんな碌な奴じゃない!山豹を思わせる彼女の怒りに貴婦人は「どうかお怒りを鎮めください…」と宥める



白薔薇「ヴァジュイール様に限らず、妖魔の君と呼ばれる方々は
       全てがオルロワージュ様と同じ思想をお持ちではありません」




ある者は修行に明け暮れ術の道を究めて最終的に自身の"時"を停めたり

"退屈"を何よりも嫌い、客人を手厚く持て成し"興"に何よりもめり込むなど…その考え方は千差万別であると



 そして指輪の君も、相当な変わり者として妖魔の中ではあらゆる意味で有名な人であり
また人間から見て寛容な大人物と評する声もあるのだ…(一方で勝手に人をテレポートさせる自己中心的との声もあるが)




白薔薇「あの御方のお眼鏡に叶えば…あるいはお力添えを頂けるかもしれません」


ひょっとしたら零姫の事も何か存じていて、せめて居場所くらい教えて貰えるのでは?と淡い期待も貴婦人の中にはあった
無論、彼が彼女等を気に入り、良き友として見てくれるならばの話だが…



375以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/12/15(土) 11:12:18.31Iy7IpdVQO (1/1)

つ【ハイドハイドハイドハイドビハインド】


376>>375 ヴァジュ様「う、美しい…ッ!」花火ボーン!2018/12/19(水) 00:44:33.38GIh0EGVY0 (1/6)



アセルス「…白薔薇がそこまで言う人なら…」



 納得、とまではいかないのも無理はない、彼女の境遇の元凶たる妖魔の君が如何様な存在か
彼女の知る最たる例が魅惑の君だけなのだから気持ちも分らなくはない膨れっ面のアセルスお嬢は渋々と頷きながらも
裏通りから[クーロン]の繁華街へと通ずる道へ向き返った



アセルス「なら帰ってルージュと合流しよう、そろそろ銃も手に入ってる頃だろうから…」



タッタッタ…



白薔薇「そうですわね――――アセルス様」


タッタッタ…


アセルス「!」ピクッ



タッタッタッタッタ…!!





 その足音に初めに気が付いたのは白薔薇姫だった
同じく妖魔と化したアセルスも遅れて此方に何者かが走って来る音に気が付く、犯罪都市の裏通りだ浮浪者の一人二人が
金品目当てに追剥をしたとしても何ら可笑しなことは無い


白薔薇は静かに[フィーンロッド]に手を伸ばす

同じくアセルスお嬢も侍が腰に差した刀に手を伸ばすように白薔薇姫と同じ武器の柄を握りしめる









       -『身の丈に合った武器を使え、でなくばいざという時に死ぬぞ』-





あの一件…キグナス号でサングラスを掛けた男、ルーファスに言われた言葉だ

妖刀[幻魔]を完全に扱い切れていない自分では…この武器に頼り切った自分ではいつか、地に膝をつくことになる
己自身が強くなり、成長した時こそ[幻魔]を手に戦おう、彼女はそう誓い、此処へ来る前に武器を新調したのだ


[幻魔]は今、ルージュの[バックパック]に預けてある



だから妖刀の力には頼れない、信ずるべきは己の力、ただそれのみッ!


アセルス(…落ち着け私、…そんじゃそこらの奴になんか負けっこない)キッ



 西洋剣の構えを取る白薔薇姫、侍が抜刀する様を彷彿させる東洋剣のスタイルで身構えるアセルス…同じ武器にして
全く異なる剣術の形を取る女性二人が目にした突然の来訪者…それはッ!



            巡礼者「 」タッタッタ…!


アセルス「ふえ!?…お、お坊さん…?」キョトン


377以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/12/19(水) 01:14:31.43GIh0EGVY0 (2/6)





意外ッ!それは巡礼者ッ!






…身構えていたアセルスは毒気抜かれたような顔をした、浮浪者―――もしくはオルロワージュの放った刺客かと!?―と
本気で身構えていた分、草鞋で水溜りの上をばしゃっ!と踏み歩くお坊さんの登場に目を丸くした


勿論、単に獲物を油断させる為だけにそのような恰好をしていて、そこから懐に忍ばせた刃物でグサリ!なんてことも考え
すぐに緩んだ気を引き締めたのだが…




タッタッタ…


シーン…




白薔薇「…行ってしまわれましたわね」

アセルス「…そ、そだね」カァ///





 ただの通りすがりの坊さんだったようだ
自分達二人の真横を素通りして走り去る姿を見て水溜りに映る自分達の姿が滑稽に見えた


思い出したらなんだか顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなってきた…






タッタッタ…!


アセルス「ってまた足音―――」









ルージュ「ハァ…ハァ……って、あ、あれ!?二人共!?」タッタッタ


アセルス「ルージュ!?なんで此処に…迎えに、来た、の?」


ルージュ「いや、人を追っかけてたら―――そうだ二人共!この辺で笠を被って、棒を持った人が走ってこなかった!?」

白薔薇「その御方でしたら彼方へ向かわれましたがどうかなさいましたか?」スッ


白薔薇姫の指差す方向を見てルージュは簡潔に理由を説明する



ルージュ「時間が無いから手短に言う、アイツは街で麻薬を売ってたんだ!レッドと捕まえる為に追ってる!」

アセルス「烈人くんも!?」





378以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/12/19(水) 01:48:57.69GIh0EGVY0 (3/6)



アセルス「それだけ聞ければ十分だ!白薔薇!私達も追おう!麻薬なんて売る奴は放っておけないって!」

白薔薇「アセルス様の御命令とあらばご一緒します」



ルージュ「二人共、巻き込んでごめん!ありがとう!」



三人が早速、巡礼者を追おうとしたその時だった























ゾワッ










三人の中でいち早く"ソレ"に察したのはルージュだった





それは彼自身が魔術師だからなのか、単に彼という人間の[霊感]が高かったからなのか、昔からそうだ

[ルミナス]でアセルス等があの全身青色で統一した妖魔…[水の従騎士]が正に彼女等に襲われる直前がそうだった



嫌な予感を直感的に察知することができた



背筋に嫌な感触が走り思わずルージュは立ち止り身震いした

次に気が付いたのは上級妖魔である白薔薇だ、最後に気が付いたのはアセルスお嬢





ルージュはゆっくりと、ゆっくりと裏通りの…薄汚れた街角の小さな一角を見た、降りしきる雨、雨樋<あまどい>から
伝ってくる汚水に晒され…錆びて腐り切った鉄材や何かの工事で使う気だったのか
キノコや苔、黴菌<かび>が繁殖してもはや使い物にならない角材



…その角材の上に腰を下ろして座りながら此方を眺める"ソイツ"とルージュは目が逢った


黴菌<カビ>だらけで、毒々しい茸が生えて…胞子のようなものをふよふよ漂わせていたソイツと…




379以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/12/19(水) 02:27:04.76GIh0EGVY0 (4/6)










               「ふしゅるるるる…終わりだ!!」









380以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/12/19(水) 03:05:03.90GIh0EGVY0 (5/6)



妖魔だ、見た瞬間に理解した
今までアセルス等を追って来た刺客たちの中でもコイツだけは"別格"だ、と


騎士と呼ぶには細い体つきで、手に持った武器が杖である所からも魔法使いといった印象が強い


全身が緑系統の配色でこの濁った雨が降りしきりコンクリートジャングルではその姿はさぞ目立つ
 しかしながら、初めからそこに居るという気配を感じさせない、奇妙なこの感覚…


目の前にいるのに、居ない


魂だけのお化けか何かと対面しているように錯覚する、手を伸ばせば触れられず、雲をつかもうとでもしてるんじゃないか
そう思わせる程にソイツは…存在感を消していた、視界に入っているのに




森の従騎士「我こそは森の従騎士…主の御命令に従い、姫を取り戻しに来た邪魔立てする者は排除する」フシュルルル





白薔薇を庇うように前に出るアセルス、いつでも術を放てる姿勢に入るルージュ…一斉に戦闘態勢に入る



ルージュ(…なんだ、アイツの身体の周りに浮いてるあの白いのは…)ゴクリッ




白銀の魔術師は森の従騎士と名乗った妖魔の風貌に言いようの無い不安を抱いた…
緑色を基調とした身の周りに蛍のように薄らと半透明で光る"何か"が浮いてるのだ、直感的に分かる


"アレに触れてはいけない"




森の従騎士「立ち塞がるか、ならば死ね」コォォォォ…
白薔薇「! お、お二人共!一か所に固まっていてはいけません!散開してくだ―――」




騎士を名乗る者がどのような攻撃を放つか
  ――いや術を唱えるのか?ならば相手が先に詠唱を終える前に術を反射する術を掛ければ良い!

と、紅き術士も、体術や杖を用いた棒術が来るなら[ディフレクト]しようと構えていた麗人の少女も浅はかな考えでいた



あろうことか敵が仕掛けて来た戦法は術でもなければ剣技や棒術のような物理攻撃ですらなかった



    パカッ


従騎士の仮面の唇にあたる部位…マスクが音を立てて開いたのだ





 森の従騎士「ヴァアアアア アアアアアアア"ア""アアア アアアアア""アア"" ア"ア"ア  ア" ア ア""」キィィン





怒声、悲鳴、絶叫、奇声


無数の音が、騎士の声帯から同時に発せられ

それは無数の糸が絡み合い帯を造る様なうねりとなった…特定の魔物が使う技、音波攻撃の[スクリーム]だ



381以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/12/19(水) 04:29:27.92GIh0EGVY0 (6/6)



 本来であれば不可視の衝撃波…もとい"音撃波<ソニックウェーブ>"は大気を震わせ空間をも歪め――そう喩えるならば
真夏の猛暑日に遠くの景色がぐらぐらと揺らいで見える陽炎現象に似たモノが垣間見える

輪っか、円環状の振動が相手の口部から放たれ波状に広がる様に伸びていくのが確かに認識できる




…もう一度言うが波状に広がるように伸びていく、[スクリーム]は大勢の敵を巻き込む範囲攻撃の一種として界隈で有名だ



一番後ろに居た白薔薇姫、その彼女を庇うように前に出ていたアセルス、そしてその二人より前に居たルージュ




直撃だった、音の振動が身体全身に響き渡り…銀髪の好青年は自らの身体から嫌な音が鳴るのを直に感じた
ビリビリとした痺れ、鈍い痛み、手足の指、関節が思う通りに動かなせない





ルージュ「――」ドサッ





硬い地面に前のめりに倒れ、血反吐を吐き出す…まだ意識はあるが受けたダメージは彼自身が思う以上に深刻だった

骨に罅、振動は体内を駆け巡り、内臓、脳…あらゆるものを文字通りシェイクしていった




アセルス「――っ ハァ、―フゥーッ…ぐぅ…ハ、  る、るーじゅ?」


偏に魔術師が盾になったのもあるが妖魔の血で人間<ヒューマン>ではなくなったアセルスと
一番後ろに居た妖魔の白薔薇姫だけである、まともに動ける状態なのは…



ルージュ「 」ピクッ、ピクッ




アセルスの目の前には目は焦点があわず、地に伏せたまま痙攣する親友の姿だ
上記の通り、体内にもダメージが行き届いている所為か彼は起き上がることもできずにいる

気絶はしていない意識は確かにある…だが指先から膝や肘、身体の自由がもう効かないのだ



アセルス「」プッツン



アセルス「あぁぁぁぁああああァァァ―――ッ!!お前ぇぇ!!よくも…っ!!」ダッ!!



目の前で親友がやられたッ!!激昂したアセルスは感情のままに[フィーンロッド]を構え突っ走る

 重傷のルージュを見て彼の生命を繋ぎとめようと迅速に回復術の詠唱に入った白薔薇はそれを見て何かを叫ぼうとして
一瞬躊躇った…森の従騎士の事は彼女がよく知っている、故に最初の[スクリーム]が来ると分かった時点で「散開しろ」と
そう言いたかった、間に合わなかったが


そして今回も音撃波から立ち直り、すぐにでも伝えるべきを伝えるべきだったがそれよりも生死に関わる彼を救うのが
最善手だと判断した…

事態は一刻を争う、1秒でも早く回復術を紅き魔術師に掛けねば手遅れになってしまう…っ!
アセルスに何かを叫びたかった白薔薇姫は『伝えるか』『ルージュを見殺しにするか』を天秤に掛けた結果、詠唱を続けた



だからこそアセルスが今行った、森の従騎士に対して行なってはならない禁忌<タブー>を伝えきれなかった




382以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/12/19(水) 12:09:13.99cLWp4x5r0 (1/1)

炎と水は2人でも楽勝なクソザコなのにこいつからいきなり難易度はね上がるんだよなぁ


383以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2018/12/19(水) 20:09:46.23GSEMXO/TO (1/1)

森の従騎士>>>(越えられない壁)>>>>>>>猟騎士


セアト・・・。


384以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/01/30(水) 00:49:36.37yXOt2kS70 (1/1)



助走をつけてアスファルトを蹴り、[フィーンロッド]の先を目前の敵の喉首目掛けて突き立てる


ガッ!!


アセルス(くっ…か、堅い!喉に全然突き刺さらないなんて!)


 苦虫を噛み潰したような顔をする彼女を見て従騎士の仮面は再び口元を開く
アセルスは口部が再びオープンフェイスになったことをみてゾッとした、この至近距離であの[スクリーム]を浴びるのかと

動揺の走るアセルスの意に反して目の前の騎士は――――!



森の従騎士「――――くくっ…」ニタァ




…アセルスお嬢の警戒した攻撃を放たなかった、いや放つ必要が無いのだ
彼奴が態々口を露わにしたのは…そのほくそ笑みを見せつける為だ



 アセルスの瞳に白い光の球が映った、自分と敵の合間に割って入って来た発光体
常に森の従騎士に纏わりつく様に浮いていた光るソレの正体をこの時、間近で見て漸く分かった







                  首だけの骸骨「ケカカ…」ボォォォ





アセルス「ぁ―――」


頭蓋骨が宙に浮いていた―――歪んだ並びの悪い歯並び、生身の人間なら突き出た鼻がある部位はガッポリと穴なっていて
その奥の空洞までくっきりと見える、眼球が収まっているはずの空虚には何も無い筈なのに

そこには確かにアセルスを凝視する目玉があるようにさえ錯覚する…っ!!







        白薔薇「『<スターライトヒール>』―――アセルス様ぁぁ!!!」パァァッ!

      森の従騎士「汝、呪いあれ『<カウンターフィアー>』」ボソッ






2人の詠唱が終わるのはほぼ同時であった奇跡の星光が傷つき倒れたルージュに生命を宿し

蚊の鳴くような呟きで囁かれた呪いの言葉が頭蓋骨を模った怨讐の思念に勅令を下す


ボッ!バシュッ!バシュッ!


 光と化した生首が流れ星のように一筋の線を描き少女の体内に入り込む、防具をすり抜け
肉体すら関係無いと言わんばかりに彼女の胸の中に入っていく


   "呪い" が アセルス の 精神 に 入り込む ! アセルス の 精神 が 侵食 されていく !



     アセルス「―――――――――」




385書き溜め分少しだけ投下2019/02/17(日) 02:19:36.90HGQPydB/0 (1/18)



 森の従騎士を知る人物であれば対峙した際に決して行ってはならない禁忌<タブー>を誰もが熟知していた



 何故ならばソレがこの刺客の代名詞と呼んでも過言でない程に凶悪極まりなく、又、これまでに屠られてきたであろう
数多の標的達が苦しめられた戦法であるからだ

 ["カウンターフィアー"]その名に違わぬ性能を持つ不死の属性を持つモンスターが使う技
我が身に直接触れた相手に等しく精神汚染の呪いを掛けるのだ…
肉を切らせて骨を断つとは諺で言うが、これは骨を切らせて心を折るとでも言うべきか



 ―――ドクンッ!
    ――――ドクンッ!






      アセルス「は、はぁぁぁ―――はがあか"あぁ――――ッ!」




呪いを一身に受けた少女の眼は瞳孔が開き、悲鳴とも咆哮とも分からぬ叫びを空へ向かって放つ
 傷は癒え一時とは言え昏睡していたルージュが立ち上がり状況を飲み込もうとする最中で白薔薇がアセルスの名を呼ぶ



 アセルス「―――っ」ブツブツ ブンッ!ブゥンッ!



何かを小さな声で呪詛しながら手にした武器をあらぬ方向へ振り続ける少女はこちらへと向き返りそして



 アセルス「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!来ないで!私は人間…人間よ、バケモノなんかじゃないっ」ブツブツ、フーッ フーッ


 ルージュ(! なんだ、正気を失っているのか!?)


 アセルス「あああああああぁぁぁぁぁ!!来るなぁ!」ダッッ! グンッ!!



 精神に潜り込んだ呪いの影響で【混乱】したアセルスが刺突を構えて白薔薇に一直線に駆け出す
この瞬間、紅き術士は何が最適解か判断するのが僅かに遅れた

錯乱状態のアセルスが唯一の回復術の使い手である白薔薇へ攻撃
更に森の従騎士は泣きっ面に蜂とでも言うのか毒素をばら撒く[胞子]を構えていると来た

騎士を止めるか、アセルスを止めるか







 ルージュ「 ぼ、僕を護れッ!『<サイコアーマー>』!!」PSY UP!! VIT UP!!





 光の帯が術者を包み込んでいく…輝く環が脚の爪先から頭部まで覆い尽くし終えた後ルージュは己の術で
身体中を駆け巡る霊感能力の上昇と、肉体の強度が増した事を実感する



 ルージュ「くっ…!間に合えぇぇぇ―――っ!!」ダッ



視えざる強固な鎧を装備した彼はアセルスお嬢と白薔薇姫の間に割って入れるようにアスファルトを蹴る




386以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:20:22.45HGQPydB/0 (2/18)



 ふよふよ、緩やかに毒素をばら撒く死人茸の胞子が降って来る、冬の頭頃に見受けられる可愛らしい粉雪の様に
ファンシーな見た目とは裏腹な殺傷力を持つそれを浴びてしまう前に為さねばと脚を動かす




―――グシュッ!




 ルージュ「こっっ、ぁ――」ブジャッ!

 白薔薇「る、ルージュさん!!」


 ルージュ「いい!!肩がやられただけそれより下が――」



下がれ、言い切る前に[胞子]は無慈悲にもその場にいた3人に降り注いだ
 肉がジュウウウ!と音を立てて溶解する音、焼ける痛みに声を押し殺せない、ルージュも白薔薇もアセルスさえも



ルージュ「」ドサッ

白薔薇「」ドサッ

アセルス「」ドサッ…カランッカランッ



 術士も妖魔の貴婦人も武器を取りこぼした少女の姿も、森の従騎士の仮面奥にある瞳には映っていないのだろう、と
倒れた一行には冷たい雨が降る中で表情が一切窺えない騎士が何の感動も無くその様を見ているように思えた



アセルス「ぅ、うぅ… ふたり、とも、ごめんなさい…」


白薔薇「…正気に戻られたのですね」
ルージュ「…キミは悪くない、って暢気な事言ってる場合じゃないよね」チラッ



誰一人動けなかった…反省会なんてしてる場合ですらない、頭ではわかる


だが身体は言う事を聞かない、小指一本すら動かない、頭は動くというのにだ



 諦めの境地…っ! もはや悟りのような心境…っ!

      勝機を見いだせないからこそそんな事を言っていられる…っ! 絶対絶命の万事休す…っ!



倒れた一行の視線は皆、一点を見つめていた


森の従騎士「……」カシャッ


 従騎士の仮面は先程見せた口部の動きと同じように目元を開かせた、此処で初めて3人は自分達を見つめる
騎士の眼つきを知る事となる…


ゆっくりと取るに足らない虫けらを見るような眼つきで此方を観ながら歩み寄り
致命傷となるであろう[スクリーム]を直撃させるべく口部マスクを開いた森の従騎士の姿だ


誰もが思った、『嗚呼…ここで全滅するんだな』と


パカッ…!

森の従騎士「任務は遂行する、邪魔者は始末…そして、白薔薇姫様…[ファシナトゥール]へお戻りを…」スゥゥゥ


これからの大絶叫の為にと肺に多量の空気を取り組むべく騎士は大きく息を吸い込んだ…



387以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:20:54.19HGQPydB/0 (3/18)























            「させるものかぁぁぁぁ!!シャイニングキィィィィックゥゥ!!!」ドウッ!























        ドゴシャァァァッッッッッッツ!!!! !  !  !     !












騎士は三人にトドメの一撃を繰り出すことはできなかった、否、逆に"奇妙な闖入者"に一撃喰らわされた





388以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:22:34.64HGQPydB/0 (4/18)


【双子が旅立ってから3日目 午後20時58分 (森の従騎士戦 開始直後)】



 ばしゃり、降り頻る雨のレースカーテンを掻き分ける様にレッド少年は犯罪都市の裏通りを疾走していた
偶々繁華街で出会った気の良い術士とは二手に別れて捜索しようという提案を受けた後だった



 レッド「くっ…見失っちまったってのかよ」



 目立つ格好、走り辛い見た目に反して男二人を振り切る脚力を持った巡礼者風の姿は既に影も形も無い

元より入り組んだ土地であったし、雑居ビルの屋上まで伸びる錆びた非常階段や鉄梯子、下水道へ繋がるマンホールと
逃げようと思えば何処にでも行けるし身を潜めることも容易いのだ

追跡対象を見失った彼は小さく舌を打ち、両手をズボンのポケットに入れて空を仰ぐように見つめた


喉の奥が少しだけ痛かった、こんなことは学生時代に誰にも負けまいという意志を持ったままゴールテープ切った時以来だ



僅かに開いた唇から零れる吐息は寒空の下で吐く白息に似ていて、煙雨に紛れて薄くなり消えていく…
 その様子をぼんやりと眺め、運動後の脳に酸素が回り始めた頃に彼はルージュの方は巡礼者を見つけられたのかと考えた



 レッド(此処でボケっと空見上げててもしゃーないか)



 少年は麻薬売りを追って全速力でかっ飛ばして来たが、そもそも奴がこちらの方面に逃げたという確証が無い
枝分かれした何処かの小道でルージュの向かった方角に逃げ去ったのかもしれない

ズボンに手を突っ込んだまま首を横に振って逆立った髪から水分を飛ばす、踵を返して来た道を歩み始めた時だった――















 -   ヴァアアアア アアアアアアア"ア""アアア アアアアア""アア"" ア"ア"ア  ア" ア ア""  -









  レッド「っ、な、なんだぁこの頭が割れそうな甲高い音は!?」キィィン





耐えかねてポケットから取り出した手を耳に当てる


…それは厳密に言えば"音"ではなく"声"だ
少年の見やる方角で今この瞬間にアセルス等を追って来た刺客の一人が[スクリーム]を放ったのであった



 レッド「…音が鳴り止んだ…?あっちの方角で何かあったのか」ダッ



休めていた脚に再び鞭を打ち、彼は何らかの事体が起こったと思わしき現場へ駆け始める



389以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:23:10.47HGQPydB/0 (5/18)




  レッド(くそっ!なんだってんだ…胸騒ぎがするぜ)ハァ…ハァ…



 自分でさえ自覚できる程に動悸がする、それは碌な休息も取らずに肺を酷使しているからでもはない
レッドは奇妙な既視感を覚えていた、あの日―――



   レッド「くそったれ、これじゃあまるで…っ!!」



――あの日、自分の家族を失ってしまった日と同じじゃあないか!!


 敬愛する父を自家用車の助手席に乗せて高速道路を走ったあの日

 悪の秘密結社なんていう餓鬼向けの番組に出てきそうなふざけた連中が突然やって来て父を、母を、妹を…

 レッド少年の家族とありふれた平穏な日常を焼き切った忌まわしき日を連想させるには十分だった…っ!




 郊外にあった小此木邸が炎に包まれ、赤焼け空に立ち昇っていく火粉、両腕が義手の大男の姿
組織のシンボルマークを表すバツ印を強調した全身タイツの戦闘員、己の腹部を抉る鉤爪…


どれもこれも忘れたいと思っても忘れえぬ記憶だ


 降っているのは建物が燃える煤でも火粉でもない、自分の頬にあたるのは濁った空が落とした涙滴
水分が火事の熱気で飛ばされ乾き切った空気とは真逆のじめりとした湿り気と水滴なのだ


だが、胸は煩いくらいに脈打つのだ…っ!


ここで走らなければ後悔する、間に合わなければ自分は"また失ってしまう"と警鐘を打ち鳴らしているのだ…ッ!



 レッド「…!なんだ、何か光が見えるぞ!」タッタッタ!


 雑居ビルで構築されたコンクリートジャングル、鉄骨と石材の雑木林を抜けた先に一点の星光を見た
それは[スクリーム]で危うく命を落とし掛けたルージュを救うべく白薔薇が唱えた[<スターライトヒール>]の輝きだった



 ―――間違いない、あれは"戦闘"の光だ


この先で戦闘行為が行われている、では誰だ?一体どこの誰が何者と対峙しているのか…






           アセルス『は、はぁぁぁ―――はがあか"あぁ――――ッ!』

            白薔薇『アセルス様ぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!』




 レッド「ッッッ!?」ビクッ




それは…幼少の頃、家族同然のように遊んでくれた"近所のお姉ちゃん"の悲鳴とその人の名を呼ぶ悲痛な叫びだった


 行方不明者として扱われて12年、生存はもはや絶望的で死亡者扱いされていた人、実姉のように慕ってきた人との再会は
家族を失い悪の組織への復讐心に燃えるレッド少年にとって何よりも心の救いだった


その彼女が…!そのアセルスが…っ!! この瞬間、今度こそ生命を断ち切られてしまうかもしれない場面に直面したッ!



390以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:23:36.50HGQPydB/0 (6/18)




 レッド(な、なんだよこれは…っ)



 息が詰まる、息が止まる、次々と飛び込んでくる景色――アセルスが錯乱して味方に刃先を突き立てようとする所
銀髪の術士が防御術を掛け身を挺して仲間を救いに行く場面、だが虚しくも敵の一撃で全員が倒れていく景色



無意識に強く握る拳があった、沸々と込み上げる激情があった




 キグナス号で共に海賊共と戦った仲だ、3人共戦闘に関してはそこそこやれる実力はあったのは彼とて知っている
だが、目の前の緑を基調とした魔導士を思わせる姿の妖魔は複数人を一度に相手しこうも打ち負かしている

恐らく、レッド少年一人が戦闘に加わった所で付け焼刃程度のモノだろうな










"レッド"であるならば、な









 レッド(…か弱い女に加勢するんだ、なら"ヒーローの掟破り"なんて言わねぇだろ、アルカールよ!!)グッ!







              レッド「 変 身 ッ!! ア ル カ イ ザ ー !!」カッッッッ!!ピカーッ!!







―――
――




森の従騎士『任務は遂行する、邪魔者は始末…そして、白薔薇姫様…[ファシナトゥール]へお戻りを…』スゥゥゥ


 [変身]が終わると同時に駆けだす、ただの人間<ヒューマン>から変貌した彼は生身の時とは比較にならない速度で地を蹴る
肉体に滾るエネルギー、全身を駆け巡るエナジーッ!全てが物の僅か数秒で人間の領域を超え、"超人"のラインを跨ぐッ!





       正義の使者――アルカイザーッッ!!ここに推参ッッッ!!





          アルカイザー「させるものかぁぁぁぁ!!シャイニングキィィィィックゥゥ!!!」ドウッ!







391以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:24:12.62HGQPydB/0 (7/18)


森の従騎士「なに!?まだ仲間が居たの、か"ぁ!?」ドゴッ


音撃波<ソニックブーム>を繰り出す寸での所で不発に終わる、闖入者の光り輝く蹴り[シャイニングキック]が炸裂したからだ

 オープンフェイスとなったマスクの瞳が初めて驚愕の色を覗かせた
振り向いた先に只ならぬ熱量を帯びた蹴りが迫っていたのだから仕方がない、強襲に近いソレを胸部に受け
森の従騎士は大きく身を仰け反らせながら水溜りに後ろ頭から突っ込んだ





             ドバシャアアアアアア―――z_____________________ァァァァッッッ!!






森の従騎士「ぐ、ご…き、貴様…何者だ…っ」ワナワナ



濁り水から顔を揚げ、トドメを刺すところで壮大に邪魔をしてくれた闖入者を怒り心頭の眼で睨みつける


 先述、奇妙な闖入者と称したがその出で立ちが正しく奇妙そのものであったからだ
赤とオレンジ、暖色系のカラーリングの脚部から頭部まで一切肌の露出が無い全身鎧
無論その人物の素顔も決して見ることができないフルフェイス仕様のヘルメットでバイク乗りが被るそれと同じ様に目元は
バイザーになっていて着用者の眼にはどう映るのか分からないが此方から見る限りは背中にはためくマントの色と同じ
孔雀青色の淡い輝きを放っている…、兜の天辺には鬼、否、一角獣のソレに見える角があり、耳の付け根の裏には翼が…


 ユニコーンとペガサス…有名な神話の生物の象徴を模した飾りをつけ、その鮮紅色のスーツを纏った拳から稲妻が迸る


彼が―――この惨状に対して抱いた怒りをそっくりそのまま表すように…



      アルカイザー「何者か、だと…?」





                      }  ヽ    |∨/ //    ____
                      }   `、  ./ /∨// , ・'"    `、
                      ヽ  ,r'´/~ヽ|//|///        |
                       ヾ/|‐/_,/ ||//|<_ ..-‐=、    `ヽ、
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             _,..-''"`}l     .人 |~ヽ   `、/ヽ、  | .|    ヽヽヽヽヽ./
            _}}__  }ヾ_  / >-' .`、   .`、 ヽ__ノノ}    <ヽ```ヽ/
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/ /          ̄ </~ヾ、/| ̄フチフく´   `ー、ヽ ヽ  / /,--、 |   `、     |
               ヽ  ./|.,ト/ /,.|   ̄`ー―.'-‐'´ ̄~~| ,' |  .ヽ.|    `、    |
                \/〉´`l //ソ     ./~`ヽ___|,' |   `、   `、   ./
                 |/  .|/ ./    /      ./ .|  }    .}`、   `、 ./
                .,rl_/ /ー―'''´        ∧  } }    } ``‐--‐ヽヽ_,、
                ./ / /             .〈  } / /    .}      ヽ /
                }__}´ /´               } } { .{     /
             /},-、 /                 `-'ヽ {   ,〈
        }ヽ_..'// .}'/                     |ヽ  ./ |
        |~ヽ /´ 〈___/|/                     ヽ.}_/__ノ
        `ー``―'―‐'


     アルカイザー「正義の使者ッ!アルカイザー!悪を挫く為に此処に見参したっ!!」バッ!



       森の従騎士「せ、正義の使者…だと?」




392以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:24:42.94HGQPydB/0 (8/18)




 ルージュ(う、うぐっ ぅ…い、一体何が起きたんだ…)チラッ



 毒素の塊を浴びて身体中、焼けるような痛みが走る…意識が朦朧とし掛ける最中、紅き魔術師は…赤い正義の姿を見る
自分達は今まさに死刑を執行される所だったがマントを靡かせる……男性?…なのだろうか?


全身鎧の所為で性別は分からない、―――いや、身長、体格の良さ、後は声の低さでやっぱり男性なのだろうな

"聞き覚えの無い声"だが、彼は何者だ…友人とか知人とかではないし、助けてくれる理由は一体何なのか…



 ルージュ(い、いや…そんな事どうでもいい、この機を逃すわけには――確か[傷薬]が僕の[バックパック]に)ゴソゴソ



 従騎士の注意は幸いにも目の前の謎の人物に向いている、気取られない様に薬を出して自分の体力を回復させる
そして、脚が動く様になったらヒーラーの白薔薇姫も目覚めさせなくては…っ!!








  森の従騎士「…ならば問おう正義の使者とやら、貴様なにゆえこの者達に肩入れする、無関係な者共であろう」

 アルカイザー「無関係?いいや、違うね」


  森の従騎士「なんだと?」ピクッ



 アルカイザー「目の前で殺されそうになっている人が居てそれを見て見ぬフリをするなど俺にはできない」

 アルカイザー「そんな人が居ると知ってしまった以上は、俺にとってもう"無関係"ではないッ!」



  森の従騎士「…ふっ、まるで人間<ヒューマン>の子供向けに造られた三文芝居の脚本をそのまま読んだような台詞を…」

  森の従騎士「話しにならんな、くだらん正義感で我ら妖魔の問題に首を突っ込んだ事を、死んで後悔するがいい!!」


 アルカイザー「むっ!?」ヒュバッ!



 従騎士は杖を振り翳す、するとアルカイザーが立っていた地点に妖気が収束され、それは蜘蛛の巣状に展開される
取り込んだ者の生命力を絡め捕り奪い去る呪法の一種[エクトプラズムネット]だ
 一早くそれに気が付いたヒーローは呪いの網が完全に広がり切る前に跳び発ち難を逃れようとする
そして鞘から光り輝く劔[レイブレード]を引き抜き、勢いに乗って敵に切りかかる…っ!!



  森の従騎士(…くくっ、愚か者め、そうやって私に近づく者は誰であろうと――――)









 …森の従騎士を知る人物であれば対峙した際に決して行ってはならない禁忌<タブー>を誰もが熟知していた

何故ならば触れた者を【混乱】させる[カウンターフィアー]こそがこの刺客の代名詞と呼んでも過言でない程の戦法だから




それは、自他認める戦法であり

必然、この騎士にとっても今まで多くの敵を葬り去って来た実績共に不動の"勝ち確パターン"という奴だと自負していた




393以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:25:28.60HGQPydB/0 (9/18)

















―――――――――――――――――――… それゆえに …―――
















  森の従騎士(…待てよ、そういえば何故こやつは先の蹴りを私に放った時に…ッ!?)ハッ!











 …良く言えば自分の力に絶対的な、確固たる自信を持っていた

 …悪く言うならば、慢心、驕りでもあった



 迫りくる正義の使者の[シャイニングキック]をその身に受けた時、想定外の事態であるが為に気が回らなかった
自分に触れた者には何時だって必ず[カウンターフィアー]が発動して如何なる相手にも精神汚染の呪いが張り込む筈だった

だが実際はどうだ?

この全身鎧兜の人物は錯乱しているか、否、正気を保ち続けている
 従騎士はこの時点で気が付くべきだったのだ…、自分の必勝パターンが既に崩されているという事実に…ッッ!!




 積み上げて来た勝利の数だけ、『嗚呼、この闘い方をすれば絶対に勝てる、負ける通りなどありえない』と
信頼も等しく積み重なる…空気が1%も入っていない風船がはち切れそうな程に膨らんでいくのと同じで
騎士の油断もまた大きく膨らんでいったのだ


自分も認めるし、周囲の他人もまた、"こいつの戦法には隙が無いな"と認めたが故に誰も咎めない、忠告しない


自他認める戦法である――――それゆえに――――気が付くのに遅れた


生涯で全くもって一度たりとも予測しないレベル…っ!


想定する必要性が消え失せてしまった可能性…っ!



  森の従騎士「ぅ、ぅううおおおおおおおおおおおおおっっ!?」バッ!


騎士は淡く輝く空色の劔が身体を裂かんとする直前で、漸く"手遅れな受け身の姿勢"を取り始めた



394以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:26:02.34HGQPydB/0 (10/18)



        ズバシャァァァッッッッッ


  森の従騎士「ふ ぐっぅおお お おお"お  おお"おぉォ"ォ""ォ!!」



[レイブレード]の輝刃は相手の左肩から右脇腹まで大きな切り傷を生み出し、妖魔特有の青い血液が噴き出る
 半妖のアセルスの筋力を以てしても刀身が突き刺さりさえしなかった騎士を名刀で豆腐でも斬るかの如くやってのけた


  森の従騎士「ふ、ふしゅるるるる…っ、ギ、キ"サマ"アァ"…」ボタ…ボタッ…


 アルカイザー「その傷だ、帰還してすぐに手当すれば助かる…だから二度とこの人達に手を出すな!」


  森の従騎士「ふ、ふざけ"るなぁ"ぁああ あ あ !!ふしゅるるるるるぅぅぅ!」



 激昂すればするほどに青い血が傷から噴き出す、だが青い噴水の勢いと同じく騎士の怒りは収まらなかった
これまで上から受けた勅令はいつだって熟して来た誇りに罅を入れてくれたのだ

もう輝かしい誇りではない、埃を被った誇りだ

戦績に塗られた泥も、おめおめと逃げ帰ったとあれば主に始末されどちらにせよ退路など無い事も
 なによりもくだらん正義感で首を突っ込んで来た部外者という存在が一番、癇に障る



  森の従騎士「コロ"して"やる…っ コ"、コロ"ス、殺すッ…白薔薇姫以外全員だ
             黴<かび>と毒茸の菌糸に塗れて蛆虫の沸いた死骸にしてやるッ」ギリィ



 アルカイザー「……ならば、仕方ない」スチャ




 どういう訳か知らないがこの全身鎧スーツの戦士には[カウンターフィアー]が…いや、"『【状態異常】が効かない』"
一撃で意識を刈り取るべく[エクストラズムネット]を試みても恐らく先程の様に[見切り]をつけられるだろう



  森の従騎士「ならばこれはどうだ鎧の戦士よ!」ビュオオオオォォォ



杖を手にした腕を前に突きだし円を描く様に杖を旋回させる、無風の筈であるコンクリートの渓谷に小規模の竜巻が発生し
気流の塔は倒れ、縦から横へ……アルカイザー目掛けて獲物を丸のみにしようする蛇のように伸びていくッ!!


      ズバッ!  ズババッ
                     スパッ


 アルカイザー「くっ、[強風]か…!だがこれしきの事で!」ズバッ! ズシュッ!



 喩えるなら渦中にいるヒーローは見えない換気扇のプロペラで幾度も刻まれているようなモノで、腕をクロスさせ
身を守る自身の身体にも切り傷が走り、赤い血液が滴り始める


だが、騎士の狙いはこれではない





  アルカイザー「…!なんだと!!」



 アルカイザー…否、"レッド少年"がバイザー越しに見た光景はこともあろうに、自ら使用した[強風]を利用して
倒れたままの"アセルス姉ちゃん"目掛けて飛んでいく森の従騎士の姿であった


   森の従騎士「ならば…キサマのそのくだらん正義感を利用させてもらおうではないか!!」




395以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:26:55.40HGQPydB/0 (11/18)



 自らの技で我が身を切り刻んででも人質を取る、―――任務はあくまで"白薔薇姫を[ファシナトゥール]に連れ帰る"
邪魔をする者は排除しても良いという命令であった

 なにより、従騎士の主人…セアトはアセルスお嬢が気に喰わなかった
願わくば外界に出て不慮の事故で死んでくれればとすら切に願う程だ、邪魔をしたから排除したとすればさぞ喜ばれる


二重の意味でアセルスを人質に取るのは都合が良かったのだ



只でさえ[レイブレード]に切られた箇所が痛む上、自滅同然の[強風]に自ら巻き込まれたダメージで仮面下の顔を曇らせる
しかし、リスクを背負ってでもやる価値がある…


今から少女を人質に鎧男を嬲った時の苦渋の色、そして死の寸前で少女の首を折り曲げて殺してみせた時の反応が楽しみだ


騎士はほくそ笑みながら未だ倒れたままの緑髪の少女目掛けて一直線に――――ッッ!!











              ルージュ「[エナジーチェーン]っ!」ギュイイイィィン






  森の従騎士脚部「」グルンッ!ギュルルルッ

    森の従騎士「―――!?!?お、お前は…まだ息が―――ッ!」




 ルージュ「…さっき[サイコアーマー]を掛けた分、VIT<丈夫さ>が上がってたんだ今度は失神しなかったさ!」ブンッ!


 森の従騎士「ぐ、ぐおおおおぉぉぉぉ!?」グワァン!!



  アルカイザー「すまない助かった!恩に着るぞ![ディフレクトランス]!!」ダンッ!




 漁師の一本釣りよろしく、念波の鎖で脚を取られた騎士は渦の中から上空へ弾き飛ばされる
そこへ追い打ちで大地を蹴り上げ、雑居ビルの壁すらも利用した三角飛び蹴り…[ディフレクトランス]を繰り出すッッ!



 本日二度目の光り輝く蹴り技を喰らい、更に上空へと押し上げられる騎士は粉々になった仮面の破片
青血を口から吐きだしながら自分が人質にしようと目論んでいた少女が[スターライトヒール]で生気を取り戻し
立ち上がる姿をしっかりと見た





     アセルス「……皆には、本当迷惑かけてばっかりだったわね…」スチャ!



     アセルス「だから、最後くらいは…取り戻さないとね」




静かに、目を瞑り両手は拾い上げた[フィーンロッド]の鞘を握りしめる、刀身は空を差し

掲げるように自分の額へと運ぶ―――その佇まいは中世の貴族騎士が神に祈るように剣を掲げるようにも見える




396以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:27:54.37HGQPydB/0 (12/18)





  森の従騎士「おのれ…っ、おのれ…おのれ、おのれぇぇぇぇぇェェェェ!!」





オープンフェイスの従騎士は血走った眼で少女を睨む、彼奴の周囲には[カウンターフィアー]の怨念が未だ嘗てない程蠢く


祈るように目を閉じ姫騎士は精神を研ぎ澄ます、武器に想いを込める…強い敵意、降って来る殺意を退けるべく





  森の従騎士「ならばせめてお前だけでもみ、み、みぃ、道連れにぃぃぃいいいいい!!」




  アセルス「打ち砕けぇ!![ファイナルストライク]-―――っ!!」










                 ――――-カッッッッ!!










アセルスは、祈り…手にした剣…いや杖<ロッド>を天へと投げた、神話に語り継がれる戦女神の投擲槍のように





[フィーンロッド]は騎士の心臓に突き刺さる、そして膨大な熱量と光の迸流…稲妻が踊り、力が螺旋を描く


―――
――






 「ンッンン~、アセルスってばやるねぇ~♪こりゃ頑張って頼まれ事早めに終わらせて見に来た甲斐があったよ」



 雑居ビルの屋上でその様子を一人の妖魔が眺めていた、褐色の肌に黒髪を結った美青年…ではあるのだが
上半身が裸で唯一肌を隠すのが乳首の位置につけたお星さまという誰がどう見ても変態にしか見えない残念な美青年だった



 ゾズマ「いやぁ、これで従騎士を3人もやったのか…しかし森の奴、飼い主同様にやっぱり見苦しい妖魔だったね」

 ゾズマ「…そして、彼女達は今後どうするつもりか、これまた見物だね」シュンッッッ!!



見物人はそれだけ言うと姿を消していった…


―――
――




397以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:28:23.60HGQPydB/0 (13/18)


【双子が旅立ってから3日目 午後21時18分】


――――ザァァァァァァァァ

     ――――ザァァァァァァァァ




     アセルス「…」ジッ




光が収まった


常雨の犯罪都市[クーロン]の空に最後の従騎士が散ったのだ



  ルージュ「や、やったの…か?」ヨロッ


   白薔薇「はい、気配はもう微塵も感じませんわ…今ので完全に消滅したに違いありません」



  ルージュ「お、終わったぁ…」ヘナヘナ、べしゃっ



 水浸しの地面に両膝を着く、思いっ切りずぶ濡れになるけど構うものかっ!と銀髪の術士は天を仰ぐ
ジッと空を見つめていたアセルスも緊張の糸が解けたのか胸を撫で下ろしホッと安堵の吐息を漏らす、そんな彼女を見て
微笑ましい表情で見守る白薔薇、そして―――




  ルージュ「えっと、アルカイザー…さん?ありがとう、助かりましたよ…」ペコッ


  アルカイザー「いや、礼には及ばない、偶々アイツに襲われている君達の姿を見つけたから救援に入っただけさ」

  アルカイザー「それより、キミのさっきの術…良かったぜっ!!」ニィ


  ルージュ「えっ、い、いやぁ~それ程でも…あはは///」テレッ



 照れくさそうに右頬をポリポリとかく紅き術士に赤き正義は手を伸ばす、そしてヒーローは言うのだ
「本当にナイスファイトだった、キミがいなければこうはならなかっただろう」と


 …正義のバイザーの下にある、"本当の彼"―――――"素顔であるレッド少年"――は実姉のように慕ってきたアセルスを
人質に取られることだけは何が何でも避けたかった




  アルカイザー「本当に助かったよ」スッ




……"また失ってしまう所だった"




 二度も家族を失うあの恐ろしさを痛感させられる所だった



  ルージュ「……よっと!立たせてくれてありがとう」ザバァ、…ポタッ ポタッ


  ルージュ「段々思い出してきたよ、新聞紙やテレビのニュース、それにこの惑星<リージョン>でも貴方の噂は聞いてた」

  ルージュ「確か、[シュライク]って惑星<リージョン>で子供の誘拐事件を解決したヒーローが居るって」




398以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:29:19.94HGQPydB/0 (14/18)



  ルージュ「この星<リージョン>に来たのも何か事件がとかで?」


  アルカイザー「…ああ、実はパトロール中に麻薬の密売「ああああぁぁぁぁ!!」




…正義のヒーロー、アルカイザーは麻薬密売組織の調査をしていた時"偶然"妖魔に襲われている一行を見つけ救援に来た

…と、言う体裁にしておこう、そう思い立ちその内容で話し始めた時だったアセルスの甲高い声が上がったのは




  ルージュ「ど、どうしたんだ!?」





  白薔薇「あ、実は…」チラッ









  アセルス「わ、私の武器が……」


 [ファイナルストライク]を放って壊れたフィーンロッド『 』ボロッ



  ルージュ「うわっ、なんだコレ、もう使い物にならないじゃないか…」

  アルカイザー「きっとさっきの技を使用したことで耐え切れずに自壊したのだろう…」
  アルカイザー(…ビビったぁ、てっきりアセルス姉ちゃんに正体バレたかと、俺が掟で抹消されちまう)ドキドキ



  アセルス「ルーファスさんに言われたから、[幻魔]を扱う前に自分自身を鍛えようとしたけど…これじゃ」




身の丈にあった武器を使え、使い手が未熟では折角の剣も錆びつかせてしまうだけだ
 少女は助言を聞き、まずは剣術の基礎を磨こうと簡単な武器で心身共に鍛えるつもりであったが…肝心の武器がこれでは



  ルージュ「……」


  ルージュ「アセルスの武器もそうだけど、全体的に今の僕達自身にも問題があるのかもしれない…」



 顎に手を当てて術士は現状の問題点を挙げる、まず防具面に関してだが"耐性防具"が非常に乏しい
先の戦闘に関しても誰か一人が[音波無効]効果のある装備を付けていたらどうだろうか?[スクリーム]の直撃を受けても
助かり全滅の危険性が大幅に減ったのではないだろうか?


このパーティはその辺の工面が全くと言って良い程にできていないし、入手できる機会さえもなかった
 装備に関して仕方ない部分もあるから置いておくとして次に重要な問題があるとすれば"回復術"だ

誰か一人が倒れた、そうなった場合は[傷薬]片手に床に伏した仲間の元へ駆けつける必要がある


その倒れた誰かしか回復薬を持っていなかったら?あるいは回復術の使い手だったら?


 アセルスだけが無事で、ルージュ、白薔薇が先に戦闘不能になっていれば間違いなく戦線復帰は不可能で
チェスや将棋で言うところの"詰み"という状況であった筈だ


せめて全員が緊急時に備えて仲間、あるいは自分自身の傷を治癒する手段を持っていることが望ましいのだ




399以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:30:01.14HGQPydB/0 (15/18)





  ルージュ「…せめて僕かアセルスが白薔薇さんと同じように[スターライトヒール]を使えればいいのだけど」




……生憎とその[陽術]を覚える為の施設は、全身青一色の従騎士と乱闘騒ぎを起こした所為でしばらく封鎖中
資質も取れないし、術単品でテイクアウトもダメといった状態なのだ


今回は偶々強いヒーローが駆けつけてくれたから事なきを得たが、いつもそのような幸運が起きるとは限らない……
















            アルカイザー「ならば[京]に行ってみるのはどうだろうか?」








              ルージュ/アセルス/白薔薇「「「え?」」」






   アルカイザー「リージョンシップ『キグナス号』の次の目的地だ、なんでも全体的に"和"をイメージした惑星で」

   アルカイザー「毎年、各地の惑星<リージョン>から修学旅行の学生や観光客で賑わう」


   アルカイザー「ただの観光目的ではなく、そこでは[心術]の"資質"を得られる修行場もあるんだ」


   ルージュ「[心術]の資質…!」






――資質


[マジックキングダム]を旅立った双子の術士ブルー、ルージュの両名がこの旅で得るべき必要なモノ

資質を厳しい修行の末に得た人間は、その力を発展させてより高位の術を練りだす事ができる…魔術師として資質は大事だ
しかも人間の内なる心に眠る力、精神に宿る潜在能力を引き出す[心術]となれば身体の傷を癒すこともできる


…行って損はない筈だ




 アルカイザー「キミは見たところ術士だろ?なら今の話で[京]に興味が沸いたのではないだろうか?」

 アルカイザー「広い"宇宙空間<混沌の海>"から旅人もそれ目当てでやって来る、優れた剣や装備品の情報も恐らく」


  ルージュ「なるほど…」
  アセルス「[京]…か」




400以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:30:41.75HGQPydB/0 (16/18)



 リージョン界は広い、宇宙<ソラ>に煌めく数多の星々の数だけ知的生命体が生きる異世界<リージョン>がある
であらば[クーロン]では知り得なかった情報を知る機会もまたあるかもしれない



   白薔薇「アセルス様はどうなさいますか?」

  アセルス「…私は、行ってみたい」



 指輪の君、と呼ばれる上級妖魔の居城の門戸を叩くべく[ムスペルニブル]へ行くにしても準備だけは万全にしておきたい
白薔薇姫の事は当然ながら信頼しているが、あくまで白薔薇姫のこと『は』であって基本妖魔は信用したくない


鬼コーチだったり、突然背中を剣で突き刺すセアトだったり、半裸の変態だったり…etc



……


 まぁ、準備は大事だ、その人が半妖から人間<ヒューマン>に戻れる方法を知っていたとして教えてくれる保証はない上
知らなかったら知らなかったで無事に帰してくれる保証も無いのだから


 この時のアセルスは知らないが、実際問題ヴァジュイール氏は自分に無礼を働く者をその力で
何処ぞへと強制的に転移させる気難しい人物なのだ、丸腰で行ってモンスターの巣窟に飛ばされた日は堪ったモノではない




   アセルス「あっ、ルージュは…どうするの」


   ルージュ「とーぜんっ!僕も着いてくよ!此処まで来ちゃったら乗りかかった船って奴でしょ!」


  アルカイザー「話しは決まったようだな」ザッ



三人の旅の方針が決まった所で窮地を救ったヒーローはマントを翻し背を向ける



   アセルス「あっ、アルカイザー!…その、本当にありがとう!私達を助けてくれて!!」


  アルカイザー「当然の事をしたまでだ、麻薬組織の一員を追跡する任務がある、俺はこれで!――とうッ!」シュバッ!




  ルージュ「わわっ…すっげぇ、ビルの壁を山鹿みたいにピョンピョン蹴って飛んでっちゃったよ…」ほえ~

  ルージュ「参ったな、めちゃくちゃ有名人だしサインとかもらっとくべきだったかな…」


   白薔薇「何にせよ今日はもうこの街で宿を取ってお休みになりましょう…皆さんずぶ濡れですし」

  アセルス「あはは…そうだね」クスッ


びっしょりと濡れた自分達を見て、アセルスは笑う


つられて術士も貴婦人も笑った





世界は雨だが、心はカラリとした空模様だった―――それは困難を乗り越え、お互いが無事であるからこそなのだろうな





  きっと …きっと この何が起きても大丈夫、不思議とそんな気になる瞬間だった…




401以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:31:24.66HGQPydB/0 (17/18)






 ルージュ「それにしてもあんな戦闘の後でも麻薬組織の一員を探す任務にすぐ戻るなんて」テクテク

 ルージュ「お休みも無くてヒーローって大変なんだなぁ…」テクテク







 ルージュ「……」テクテク


 ルージュ「………」テクテク






  ルージュ「………あれ?僕なんか大事な事忘れてるような?」ハテ?











―――
――







    巡礼者「  」タッタッタ…!




   レッド「ちっくしょう!!待ちがやれぇぇ――ッッ!!ぜぇぜぇ…!」ダダダダッ!


   レッド「見失ったのをやっと見つけたと思ったらこんな時間に……くっっっそぉぉぉぉ!!」ダダダダッ!











…ルージュがレッドの事を思い出し、慌てて宿を飛び出したのは深夜0時をとっくに過ぎ

麻薬密売人も[京]行きのキグナス号の乗客に紛れて完全に撒かれて

某ボクサー漫画の「燃え尽きたぜ…真っ白にな」状態で項垂れるレッドを丁度、おでん屋の屋台で発見したそうな…








402以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 02:35:29.39HGQPydB/0 (18/18)

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                 今 回 は 此 処 ま で !




   ルージュ、アセルス、白薔薇はレッド(あとBJ&K)の乗るキグナスに乗ってそのまま[京]へ向かいます













  森の従騎士「カウンターフィアー!」

  アルカイザー「あ、自分…原作のゲームシステム的に【混乱】とか状態異常効かないッス」

  森の従騎士「\(^o^)/」


*******************************************************


403以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 03:40:43.289z34UB780 (1/1)


いつも楽しみにしています


404以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/17(日) 11:53:09.86RTp4rglWO (1/1)

乙でした
ところがどっこい、レッドはレッド編でしか登場しないから、残念ながらこのSSみたいな展開にはならないんだよなぁ…


405以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/18(月) 14:25:06.69PacNkGlNO (1/1)

乙乙
こういうゲームではできない展開が熱くて面白い


406少し投下2019/02/19(火) 04:54:20.20T2Ou5U2b0 (1/5)


―――
――


時間は少し遡る、ルージュ一行が森の従騎士を撃破する数分前の事――




【双子が旅立ってから3日目 午後21時12分(アセルス、[ファイナルストライク]発動直前)】





リュート「げへへぇ、ブル~ぅ、もう一件くらい"はしご"しに行こうぜ、いい店知ってるんだ」


ブルー「やかましいッ!このへべれけ男がっ!…梯子酒がしたいなら一人で行け俺を巻き込むな」チッ


リュート「へべれけってなぁ~俺酒は強い方なんだぜぇ、酔ってなんかいねぇよ[ヨークランド]魂なめんなよぉ」


スライム「(・ω・)ぶくぶくぶー」リュート ノ ニモツ ハコビチュウ




リュート「大体、お前こんな時間から何処行くんだよ…どう見ても安宿の方角じゃないだろう」

ブルー「…」スタスタ


ブルー「…力」


リュート「あい~?」
スライム「(。´・ω・)ぶく~?」キョトン?



ブルー「…力をつけたいんだ、今以上の力を」


リュート「…」
スライム「…」



ブルー「術が使えない局面とやらを想定したとき俺が生存できる可能性は絶望的になる」

 ブルー「…何が何でも俺は生き延びる、ルージュを殺して、俺が故郷に帰る為にも…っ」



 リュート「…あー、お前さ」ポリポリ

 リュート「なに、他所の国の風習だとか、ルールだかにあんま干渉する気はねぇけども」


 リュート「一つの事に囚われ過ぎなんじゃねーの?」



  ブルー「なんだと…?」


  リュート「お前見てるとそう思うんだよなぁ、良くも悪くもストイックでこう疲れねぇか?」


  リュート「……まぁ部外者の俺がとやかく言うのもあれだけどさ」


  ブルー「貴様はさっきから何が言いたいんだ」




   リュート「人生ってのはいつだってギャンブルなんだぜ?どんだけ万全を期したって100%成功するなんて」

   リュート「そんなモンは何処の誰が決めたんだい?」




407以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/19(火) 04:55:44.32T2Ou5U2b0 (2/5)


  リュート「完璧にしたつもりでも失敗する時は失敗するし、逆に中途半端な奴が人生の成功者になることだってある」


  リュート「そりゃ準備しときゃ確率は上がったかもしれねぇけど…どうせ運なら最後の大勝負が来るまでの間に」

  リュート「人生たーっぷりと甘い蜜吸っときたいって思わねぇか?」

  リュート「ん~、よくある子供向けの質問なんかであるだお、もし明日世界が滅ぶなら貴方は何したいですか~的な」


  ブルー「…くだらん」


  ブルー「本当にくだらんな、ああ、餓鬼向けの莫迦な問答だ」クルッ、スタスタ…



  リュート「あっ、オイ!待てってよぉ~!」タッタッタ…!


  ブルー「…酔っ払いとの無意味な会話に付き合う程暇じゃない」スタスタ


  リュート「だ~か~ら!酔ってねぇよォ!!なんか、なんかよ…その、アレだよ!アレなんだよ!!!」ハァハァ…!

















   リュート「――"お前の人生"、それでいいのかよ…!」



      ブルー「…」スタスタ…ピタッ










  リュート「俺は、なんだその、基本的に自分が楽しいことやって好きな事やって
               んでもってソレで食っていけたら最高の人生だなってのが俺の自論なんだ」


  リュート「お前のその、双子の弟さん…ルージュって奴とそう遠くない未来で殺し合うん…だ…ろ?」


  リュート「さっきも言ったが人生ってのはいつ何が起きるか分からない、それこそマジに運否天賦のギャンブルだ」


  リュート「…ルーレットを回して球っころが赤に入るか青に入るかみたいなモンなんだ」


  リュート「お前が強いのはそりゃ一緒に[タンザー]で暴れた仲だからわかっけど」


  リュート「万が一にだって負けちまう場合もある、そん時の走馬燈って奴が楽しい思い出の1つも無かったら―――」




   ブルー「 黙 れ ッ !!俺が負けるだと!?俺がアイツより劣っているとでもいうのかっ!!」



リュート/スライム「「!!」」ビクッ



408以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/19(火) 04:56:12.24T2Ou5U2b0 (3/5)



     ブルー「…ハァ…ハァ…っ」ハッ!


<ザワザワ…
<ナニナニ、喧嘩?イヤネェ
<でけぇ声だなァ


    ブルー「―――くっ!」ダッ!


   リュート「あ、待てって!」
   スライム「(;´・ω・)ぶくぶー!」


 …らしくない、このちゃらんぽらんな男に対しては怒声を浴びせることも多々あるが此処まで感情的に怒鳴るのは
自分らしくない、蒼き術士は自己嫌悪を覚えつつも人の大海を掻き分け突き進む


   ブルー「くそ…なんだっていうんだ!人生はギャンブルだの万が一にも俺が負けるだのと…ッ」ブツブツ



   ブルー「………俺が、負ける?」ブツブツ、ピタッ

   ブルー「俺が"死ぬ"、というのか…この俺が、……」



   ブルー「……」



   ブルー「…はっ!はははっ、なにを馬鹿げた事を…」

   ブルー(そうとも俺が負ける筈が無い、小さい頃からずっと鍛錬に打ち込んで来たんだ…)

   ブルー(周りの奴らの妬みや僻み、…陰口だってそんなものは聞き流して来た、できない奴らとは違う)

   ブルー(……ずっとそうしてきたじゃないか、寝る間も惜しんで血反吐を吐いてでも修練に明け暮れて)

   ブルー(それで…―――)





     - 『…おい、見ろよ、ブルーだぜ』 -

     - 『学院の成績トップ、首席は揺るがないってあの…』 -

     - 『アイツ気に喰わないよな、あのお高くとまった態度…ちょっと勉強できるからって』 -

     - 『なんでアイツに勝てないんだよ、俺達だって必死で勉強してんのに』 -

     - 『あいつ、死なねぇかな…』 -





   ブルー(……)





- リュート『俺は、なんだその、基本的に自分が楽しいことやって好きな事やって
               んでもってソレで食っていけたら最高の人生だなってのが俺の自論なんだ』 -


- リュート『万が一にだって負けちまう場合もある、そん時の走馬燈って奴が楽しい思い出の1つも無かったら―――』-






  ブルー(………)

  ブルー(くだらない、努力した奴は報われる筈だ、対価を払うからこそ見返りがある…俺は、勝てる筈なんだ)




409以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/19(火) 04:58:11.42T2Ou5U2b0 (4/5)




「おおっ、なんだ雷かぁ~?裏通りの方が一瞬光ったなぁオイ」グビグビ、ウィック
「へぇー雨ならともかく雷たぁこの街じゃあ珍しいぜ、ぎゃははwww」



  ブルー(…うん?)チラッ、ジーッ





一瞬光った[クーロン]裏通りの方角『 』…シーン



  ブルー「…今、強い力の暴走があったな、ヌサカーンの家の方だ……」

  ブルー「いや、俺には関係の無い話か…」テクテク




 時を同じくして抹殺対象であるルージュの旅の同行者が放った[ファイナルストライク]の閃光を背にブルーは歩き出す
向かうべき先はこの数日既に何度も足を運んだ店先、緑白赤の三色旗<トリコローレ>だ


―――
――




  エミリア「うおらあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!![ジャイアントスイング]ぅぅぅぅ!!!」ブゥンブゥン!

  ルーファス「 」グルンッグルンッ!




  ブルー「 」




 『close』ではなく普通に『open』の札が掛かっていた、蜂蜜色の結った髪を持ち蒼の法衣に包まれたブルーは普通に
飲食店の店を開けました、そして思う『あれ、俺間違ってファイトクラブのドア開けちゃった?』と



剣術を教えてくれそうな知り合いを訪ねてイタリアンカフェレストランの戸を開けば、レスリング大会が行われていた

な、なにを言ってるのかわからねーと思うが催眠術とか超スピードじゃあry



  エミリア「睡眠薬盛られて直後にヤルートのハーレムに送り込まれた恨みぃぃ!!忘れてないわよぉ!!」ブゥンブゥン!

  ルーファス「 」グルンッグルンッ!



  エミリア「キグナス号じゃ海賊騒動のドタバタでこの"お礼"をしてやれなかったけどね!」

  エミリア「この機に乗じて有耶無耶になんてさせないんだからぁぁ!」

  エミリア「喰らいなさいぃライザ直伝怒りのプロレス技ぁぁぁ!!」キィーーーッ




   ドゴンッ! ボッゴンッ!! ゴシャァァ! メメタァ! ゴシカァン!



  ブルー「 」ボーゼン


 アニー「ヒュー♪ヒュー♪いいぞぉ!エミリアぁ!やっちまいなぁ!グラサンなんて叩き割っちゃえ」イエーイ

 ライザ「良い機会だから、女心を理解しない男はそうなるって叩き込んでやりなさい」




410ここまで2019/02/19(火) 04:59:18.73T2Ou5U2b0 (5/5)


<オトコ ナンテー!![スープレックス]!!
<エ、エミリ――ゴボッ!?


  アニー「あっはっはっはww―――ん?」チラッ


  ブルー「 」ドンビキ


  アニー「あっ!なんだよブルーじゃないの!今ウチの上司と同僚が武闘会やってるとこなのよ」
  ライザ「あら、噂の術士さんね話は聞いているわ」ペコッ


  ブルー「あ、あぁ…」


引き攣った顔で奥の惨状を見ながら美人二人に返事を返す、妖艶な大人の色香を魅せる紫髪を持つライザ
 溌剌とした活力にあふれる魅惑的な女のアニー…そして元スーパーモデルの美女エミリア

男であれば誰もが脚を運びたがる甘い蜜蜂の巣のような店なのだが――



  エミリア「でぃぃいいいいえええええぃ!!!   [ D  S  C ]!!!」豆電球ピコン!



ズサァァーーーーーッ!! ガッ! ガシッ!ギュルンッ!ヒューッ ズッッッゴンッ!グッ! ドッッッゴンッ! グルンッグルンッ!ブンッ! タンッ!ガッ!


                 ゴッッッッッッッッッッ ッ  ッ ッ  ッ ッッ!




  アニー「き、決まったァ!!エミリアの[DSC<デンジャラス・スープレックス・コンボ>]だぁ~!」ガッツポーズ!グッ!

  ライザ「ええっ!!ルーファスがそこそこの実力者だったから閃いたのね!!!おめでとう!!!」



ルーファス「 」ダメージ11243… - LP2



  エミリア「や、やったわッ!ライザ、アニー!遂に…遂に[DSC]をマスターしたわッ!!」


  エミリア「こんなに、こんなに…嬉しいなんて…グスッ、アニー、私少し泣く」
  アニー「うん…私でよければ胸くらい貸すって」


  エミリア「―――ふぅ、泣いてすっきしたわ、ライザ!次の技は!」


ルーファス「 」ドクドク…


  ライザ「もういいわ、貴女は免許皆伝よ…」フフッ

  エミリア「ライザ…」

  ライザ「これ以上何かを背負う必要はないわ」

  アニー「こんな時に変な言い方だけど、楽しかったよ、エミリア」


  エミリア「アニー…みんな、みんなのこと忘れないからっ!!」



ルーファス「」


  ブルー(……)

  ブルー(……え、これは…なんなんだ?)アゼン


 イタリアンレストランの室内でちょっとしたコント劇場が繰り広げられている様を見せつけられてブルーは困惑した
何故か[ヨークランド]の片隅にある小さな教会が背景に見えて、エンディングテーマが流れてる気さえする




411以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/19(火) 10:33:16.79e3wAcppJO (1/1)

やだ…なにこれ…


412以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/19(火) 18:23:05.58Gjy/T36D0 (1/1)

ジョーカー撃ち殺しエンドの方じゃないですかやだー


413以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:45:30.13omphqAj60 (1/18)


――-
――



【双子が旅立ってから3日目 午後22時11分】



アニー「悪いわね客のアンタにまで手伝ってもらっちゃって」

ブルー「いや、構わん…(なんで俺がこんなことを)」


小劇場後の店内は―――局地的なハリケーンでも到来したかのような惨状だった、お洒落なパイン材の円卓は綺麗な半月に
 四脚の椅子は三脚だったり二脚に早変わりで、しかも[ジャイアントスイング]の余波で椅子やらテーブルの木片
更には硝子コップや純銀製の食器<カラトリー>が東洋文化の手裏剣の様に壁や天井に突き刺さているのであった


…今更ながら蒼き術士は背筋に嫌な汗が伝うのを感じた


 見物人二人と同じく出入口付近に居たから良かったものの数歩先――例えば料金でも払ってどっかの席に着き
暢気にディナータイムでも過ごしてたら額にスプーンの一本でも突き刺さっていたやもしれん



ブルー「こっちの破片は箒で全部掃いたぞ、…この店いつもこんななのか?」

アニー「サンキュー、まぁ客居なくて暇なときとかね…大丈夫よ、ちゃんと一般客巻きこまないように加減してるから」


ブルー「……」ジトーッ


アニー「…いや、そんなジト目で見ないでよね、マジだからさ」



ブルー(…あの頭の悪そうな女といい、こいつといい…それにサングラスの男を介抱しているライザという女)

ブルー(こいつ等、相当戦い慣れてるな……この実力者揃いが単なるウェイトレスの訳が無い、何なんだこの店)ジトーッ





妖艶な大人の色香を魅せる紫髪を持つライザ

溌剌とした活力にあふれる魅惑的な女のアニー

そして元スーパーモデルの美女エミリア





男であれば誰もが脚を運びたがる甘い蜜蜂の巣のような店なのだが――


        ――――――暗黒街[クーロン]にある法律で裁けぬ者にも鉄槌を下す裏組織…"グラディウス"の支部…




それこそが妖香漂う蜜蜂の巣の実態なのだ…

言葉通り"蜜蜂の巣"だ…拾った小石を投げたり、枝で突くような真似をすれば泣きっ面を見る事になる



  アニー「でさ、アンタ此処へ何しに来たのよ…あ、もしかして[ディスペア]潜入の用意はできたかって催促?」

  アニー「まだ作業員に変装する為の一式やIDカードできてないんだから待っててよね」


  ブルー「いや、それもあるが…」



 …術が使えなくても、戦いたい…[剣術]や[体術]…いや最悪[銃技]に詳しい奴を教えて欲しかった訳だが

この店に来たのは本当に彼にとって"大当たり"だったかもしれない、それぞれの分野に特化した人材が居るのだから



414以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:46:47.49omphqAj60 (2/18)




  ブルー「貴様に借りを作るのは癪だがアニー、貴様に剣術を教わりたい」

  アニー「わーお、上から目線だなこの野郎」



しれっと言い放った言葉に、いらっと来るがこの男はこういう奴だと出掛けた言葉を飲み込んだ…
 この無礼極まりない大層ご立派な術士様がどんな心境の変化で剣術を学びたいかくらい聞いてやろうじゃないか、と



  アニー「一応聞いとくわ、理由は?」

  ブルー「……」









  ――自分の弟を殺す為





  アニー「…ん?なによアンタ理由も言えないワケ?そんな奴には教えたくないわね~?借り作るの癪らしいしぃ~?」




ワザとらしく人差し指を右頬につけてお道化てみせる守銭奴に術士は言った



  ブルー「……同郷の者でな、どうしても勝ちたい競い相手が居るんだ、そいつとの試合に勝つためだ」


  アニー「…? 故郷の競い相手と試合??? なによアンタ…熱血スポ根物の少年漫画みたいな事やってんのね」


  ブルー「報酬は弾む、頼む」




 帰って来た返事に「へぇ、以外だわ…」と目を丸くしてアニーは呟く
この冷血男は誰だか知らんが故郷に居る知人と試合をするために力をつけているのかと…

よくある不良が夕暮れの河川敷げ殴り合うアレか、とそう解釈した





『同郷の者』『競い相手』、『試合』――まぁ嘘は言ってない


ただ"詳細説明"……そして最終的に"敗者の末路"に関してを省いただけだ、訊かれなかったから答えなかった、それだけ



  アニー「まっ!金払ってくれるっていうならみっちり!アタシがしごいてやるわ!」フフンッ♪

  ブルー「ああ、それと剣術の他に体術にも詳しそうな奴が居ると思うのだが…」チラッ


  アニー「あ~、アンタが見てる従業員以外立ち入り禁止ドアの先に居る2人ね」


  アニー「ライザは体術専門だけど、さっきルーファスをヤったエミリアは寧ろ[銃技]専よ」


  ブルー「…エミリア、か…そういえばリュート達と蟹鍋を囲んだ時にチラッと話してたな…あの女が」

  アニー「体術習うならライザだし、銃のプロなら彼女ね」


  ブルー「…今は[剣術]だけでいい、余裕を持てそうなら他の分野にも手を伸ばす」



415以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:47:21.00omphqAj60 (3/18)


ガチャッ、パタン…


  ライザ「アニー片づけは終わったようね?それとブルーさん、でしたねお見苦しい所をお見せして申し訳ありません」

  アニー「あのグラサンどうだった?流石にやりすぎたかもってエミリアと介抱したんでしょ」

  ライザ「1日寝てれば何事も無かったかのように復帰してるわよ」



 従業員以外お断り、そう書かれた扉の向こうからライザと呼ばれた紫髪の女性が戻って来た
身内にお恥ずかしい場面を見せて申し訳ないと頭を下げた彼女に蒼き術士も首を振って返す


   「アニー、ライザ、お客さんまだ居る~?なんか私が荒しちゃった店内の片づけ手伝ってくれたってお礼とか――」



最近、"グラディウス"に加入したブロンドの美女エミリアもまた扉の向こうから姿を見せた―――そして…









      エミリア「………っ!  ―――ぇ、ぁ、なんで?」



      ブルー「?」






金髪美人は一瞬、時でも止まった様に彼の顔を、蜂蜜色の髪を持つ端麗な顔を見て息を呑んだ




     アニー「あぁ、そう言えばキグナス号の時は紹介できなかったわね」

     アニー「ほら?アタシさ言ってたじゃんか、食べ放題ビュッフェのあの席で―――」























      エミリア「ルージュ!こんなところで何をしているのよ!アセルス達は一体どうし―――」



       ブルー「―――――――――――――――――――――――――――――――」










416以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:48:15.75omphqAj60 (4/18)






  逆鱗に触れる、という言葉が世には在る、もしも触れたならば身を以て知るだろう祟り神に容易に手を出したことを





 電光石化の動きだった、破損していない椅子に腰かけていた蒼き術士が"名前"を耳に入れると同時に勢いよく立ち上がる

毛を逆立てる山豹、青筋を立てた悪鬼、血走った眼を向ける殺人鬼、荒れ狂う妖怪…もののけ




 端麗なその顔立ちは一変、おぞましいバケモノと見紛う程であった…



対面して座っていたアニー、ライザでさえ、ぞわりと身の毛がよだつ敵意




     ブルー「貴様ぁぁッ!!ルージュを見たのかッ!どこだ!?何処にいるッッ!言えぇぇぇッッ!!」ガシッ

     エミリア「キャアっ」ビクッ!




  アニー「ちょ!?ば、何やってんだブルー!!」ガタッ!

  ライザ「これは流石に止めないとマズイわ!」バッ!



     エミリア「い、痛いっ、やめ――っ!やめてってばっ…ほんとう、や、、め …ぁぁ!」



      アニー「っっ!いい加減にしろ!!なんだってんだ…このぉ!!」
      ライザ「手を離しなさいっ!」





         リュート「スライムッ!!いっけぇぇぇぇ!!」ブンッ!

         スライム「(`・ω・´)ぶくぶーーーーーっ」ヒューーン






        ブルー「なにィ!?ぐ―――がぼっ、ごぼっ!?」(顔面にスライム命中)




   リュート「そのままブルーの顔に引っ付けッ!呼吸できなくて気ぃ失っちまうまでだっ!!!」

   スライム「(; ・`д・´) ぶ!? ぶくぶ!」ガッ!グッグッ!




     ブルー「――! ~~~っ!? --!  ---」 ジタバタ!ジタバタ!……バタッ!




  リュート「…や、やったか!?……ふ、ふぃーーーマジに焦ったぜぇ」ヘナヘナ…

  リュート「心配でスライムと二人で夜の町中探し回ったらまさかの修羅場とか…ビビったぞ」ハァ…


―――
――



417以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:49:04.61omphqAj60 (5/18)




     ロープぐるぐる簀巻きブルー「 」


  アニー「エミリア…本当ごめん、あたしの連れが…」

  エミリア「ううん、いいのよ何処か怪我した訳じゃないし…」


  アニー「……いきなり飛び掛かったこの馬鹿には後で事情聞いたり、みっちりと言い聞かせとくから、本当ごめんっ」

  アニー「暴れないようにロープで縛ったから目が醒めるまで奥の倉庫にでもぶち込んでくるわ」



  グッ…ズルズル…



 アニーはそう言うと騒ぎを起こした連れを『従業員以外立ち入り禁止』の奥…
この店の裏の顔の1つへと向かって引き摺っていく、そんな姿を見送り完全に姿が見えなくなったのを確認してから



   ライザ「さて、色々説明してもらおうかしら」

   エミリア「ライザ?」



   ライザ「リュート…彼と面識があるのでしょう、まぁその前にエミリアからね」

   ライザ「さっき貴女はブルーの顔を見て『ルージュ』と呼んだ、それからよ?何事も無かった彼が血相を変えたの」



   エミリア「あっ、その…なんていうか、よく見たら"人違い"だったっていうか…そのぉ」


   ライザ「人違い、というのはどういうことかしら」



支部とはいえ組織のトップであるルーファスの片腕を任される鉄の女はエミリアの発言が齎した変化に関して指摘を挙げる
 歯切れの悪い彼女の情報を整理すると、偶然知り合った魔術師のルージュなる人物とブルーの顔が瓜二つだった、と


ただ、髪色が違うし服装、細かい装飾も…なにより雰囲気だ






【銀髪の紅き術士】は温和で人懐っこい印象を受ける好青年だったが――

『金髪の蒼き術士』は冷たく気難しい感じのする何処か近寄りがたい人物だったように思える――



    ライザ「…無関係、では無いわよね、名前を耳にしてあの取り乱しようなのだから」



    リュート「…あー、そのことなんだが、よぉ…」ポリポリ



おずおず、と弦楽器を背負ったニートが話に割って入る
 エミリアが知り得る情報は顔が瓜二つの人物が居て蒼き術士は紅い方を知っていて…只ならぬ関係だと

それ以上の事は一切知らず、進展が無いと踏み…次いでブルーの知り合いであるリュートの話を聞くことにした



    ライザ「なにかしら、その切り出し方からして事情を知っているということでよろしくて?」

    リュート「ん、まぁな…これはアイツの人生に関わる個人的な問題だからあんま話すべきじゃないが…」





418以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:49:32.74omphqAj60 (6/18)


【双子が旅立ってから3日目 午後22時29分】



店内は嫌に静まり返っていた

 面白可笑しく生きるのがモットーである男の口から告げられたのは
何処よりも優れた魔法王国を謳う国家に生まれた双子の宿命であった―――



  エミリア「っ!」キュッ

   ライザ「…」



  リュート「―――と、これが俺の知る限り全てさ顔も見た事が無い、名前しか知らない血縁者を殺す」

  リュート「アイツはその為だけに術を究めようと世界各地を渡ってるってワケだ」





  エミリア「そんなのっ!!――残酷過ぎるわッ!」バンッ!


  ライザ「…エミリア机叩かないで頂戴、数少ない無事だった物なんだから」


  エミリア「でもっ、そんな…兄弟同士で命を奪い合うだなんてそんなの…!…あの、ルージュが…」ギュッ…!

  ライザ「ええ、倫理に反してるわね」










       ライザ「けどね、果たしてそれを"私達<裏社会の人間>"がどうこう言える立場かしら?」


       エミリア「っ」ハッ





   ライザ「私達はね…正義の味方じゃないの、法で裁く事のできない屑を違法を以て潰すわ」


   エミリア「……うん」


   ライザ「私は、他人が"そういう事"をしたとしてもとやかくは言わない」

   ライザ「誰かが誰かに対して"ソレ"をするのは、そこに抗えない理由や当人にしか理解できない葛藤があるから」


   ライザ「もしも、もしもの話よ?エミリア…」




  ライザ「貴女が自分の婚約者を殺したあの仮面の男、[ジョーカー]への復讐心を綺麗さっぱり忘れろ、と」


  ライザ「そう言われたら『はい、わかりました、シャバでのうのうと笑顔で生きてる仇は忘れます』と言い切れて?」




  エミリア「……」



…ブロンドの美女は口を開かない、否定ではなく沈黙で応じた




419以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:50:25.72omphqAj60 (7/18)



 エミリア「でも、それとこれとは話が」
  ライザ「違わないわよ、人間一人殺すのに必要な動機<エピソード>なんてものは精々、刑罰を軽くできるかどうか」

  ライザ「法廷でお高いスーツを着た人が書類片手に読み上げて情状酌量の材料にするかしないか程度の話でしかない」



   ライザ「殺人を犯したという"結果"はね…"人間よりも上の人"から見たら大差ないわ…」





どこか、…どこか疲れたような顔で裏組織に属する鉄の女は天を仰ぐように見つめた



モデルとしてスポットライトの光を浴びて来たエミリアとはまるで違う
 半生を薬莢と血生臭い世界を駆けて"知りたくも無かった醜悪なモノ"を数多く見て来た女性が言うのだ…



  ライザ「ブルーにはブルーでそうまでしなきゃならない理由がある、国からの命令だからする、そういうものよ」



  リュート「エミリア、俺ぁなんだ…裏社会の人間じゃねぇけどよ国によって独自の文化、風習とか掟だとかさ…」

  リュート「そういうのってある、とは思うんだわ」


  リュート「そこに干渉し過ぎちまうのも…やっぱマズイかな~って、いや誰も死なないならそれが良いけどよぉ」


  エミリア「…リュートも"そっち側"、なのね」ハァ



   ライザ「勘違いだけはしないで頂戴、貴女の気持ちだって分かる…」

   ライザ「ただ、世の中には知っていて止められない流れや安易に首を突っ込むべきじゃない物事もあるって話よ」




  ライザ「……私は貴女に"ミイラ取り"になってほしくないの、お願いだからわかって」

  エミリア「…わかったわよ」ハァ




 5年分の歳月しか変わらない年上の、しかしその5年が自分以上に多くの物事を観て来た人生の先輩から助言を受け
エミリアは不満げに叩いた机に頬杖をつく、ライザとて『倫理に反している』と自身で言う様に"正しい事"とは思わない
ただ全否定をしないだけ、全肯定もしないだけなのだ




コインに裏と表があるのと同じ、元は同じ物質なのに角度を変えれば見解、見識が180℃グルリと変わる


戦争で"正義"の名の元に戦う軍隊があるとすれば敵は悪ではなく、単純に"別の正義"だったというだけの話





  ライザ「……」

  ライザ「でも、そう、ね…アニーにはこの事を隠しておいた方がいいかもしれないわ」


 エミリア「え?」



 簀巻きにされたブルーをアニーが奥へ連れ完全に見えなくなったのを見届けてからライザはこの話を切り出した
双子の兄弟で殺し合うとまでは流石に想像できなかったが、エミリアの知り合いの名前を聞いて激昂する辺り
何か面倒な事になるのであろうと…

冷静に分析し敢えてあのタイミングでライザは切り出したのだ



420以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:51:40.57omphqAj60 (8/18)



  リュート「ほ~ん?なんでまたアニーにゃ黙っとくんだい」

   ライザ「あの子の性格を考えると一悶着ありそうなのよ…」ハァ



   ライザ「アニーも…このグラディウスのメンバーとして"裏"には長い事居るわ…」

   ライザ「大雑把で開放的な見た目に反して幼い頃から厳しい環境で育ったから自己保存と自己防衛本能が強い」

   ライザ「二人には前に話したけどこの仕事向きの"能力"ではあるわ…でも"性格"までそうかと言われると、ね」






   ライザ「昔、こんなことがあったのよ…家族を皆殺しにされた客が仇を討ちたいからアジトへ案内してくれって」


   ライザ「アニーは報酬の代金を受け取って契約通り案内を済ませた、後はそのまま帰って来るだけ、でも―――」





   エミリア「…帰らずに、その依頼人について行った?」


   ライザ「ご名答、頼まれたのは"道案内"だけであって一緒に戦うなんて契約には無い、無論お駄賃だってない」


   ライザ「『ここからは"ビジネス"じゃなくて"ボランティア"だからカネなんていらないわ』」

   ライザ「そういって依頼人の仇討に加担したのよ…無償で」ハァ…



   ライザ「能力は間違いなく裏社会での仕事向きよ、能力は、ね…」



   リュート「実は双子の弟殺す為に修行してまーすっ!、なんてブルーの目的知ったら…」


   ライザ「…」ハァ…



 本日何度目になるか分からない溜息をライザは吐き出した…、義理堅い、情に熱いというのは美徳だ
闇の中でも失われない光を持つのが手の掛かる妹分の美徳だと感じていて同時に危うくも思う


―――長所と短所は表裏一体だ、浅くない付き合いだから分かるエミリア以上にきっと



バタンッ!


  エミリア/リュート/ライザ「「「!?」」」ビクッ、ガタッ!




  アニー「ただいまー!あの馬鹿とりあえず適当に―――って何よ?どうしたの?」キョトン?


  エミリア「え、あぁ…ホラ?あれよ、アレ…あの人なんで怒ってたのか分かったわー」(目逸らし)

  リュート「お、おう話し合い終わったとこで急に来るもんだからな、心臓飛ぶかと思ったわ」


  リュート「あ、俺急用あったんだ!――ほら、スライム起きろ!行くぞ!」ユサユサ

  スライム「ぶくぶ…zzz……ぶくっ!?Σ(゚□゚;)」スヤァ……ハッ!?


  リュート「じ、じゃ!俺はこれで…さいなら!」ダダッ!

  アニー「えっ、ちょっとぉ!!」




421以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:52:19.61omphqAj60 (9/18)


ドタバタ…



  アニー「…なんだってのよ、…ってか事情分かったって?」クルッ


 慌ただしく出て行った知人とゲル状のモンスターから同僚に顔を向け、問いただす


  エミリア「ええ、そうよ…コホン、いいアニーよく聞いて頂戴…」

   アニー「いいけど」


―――
――


【グラディウス倉庫】



  ブルー「…うぐっ、…こ、ここは…」キョロキョロ

  ブルー(段々思い出して来たぞ…確かリュートにスライムを投げつけられて…)





  アニー「…どうやら気が付いたようね」ガチャッ!

  ブルー「!」バッ!




 古い木板の匂いがする床の上で目覚めた彼は最初暗がりに慣れず、何も分からなかった
立ち上がろうにも両脚の自由が利かず、また腕も拘束されている事に気づくのはすぐだった声は出せる辺り
口は封じられていない…

ボサボサ頭に民族帽を被った無職とゲル状生物の所為で失神さえられたこと、その件に対する怒りが込み上げるよりも先に
彼の心にまだ見ぬ弟との邂逅があったと思しき女の存在が入り込んだ


 なんとか此処から脱出してエミリアと呼ばれていた女に問い詰めねばッ!
そう思った矢先で部屋に廊下から漏れる灯りが雪崩れ込む、木製のドアを背凭れ代わりに
見知った顔が腕を組んで此方に睨みを利かせていた



   アニー「なんで縛られてるか、わかるわよね?」

   ブルー「…」プイッ



顔を背ける、言われるまでも無い



  アニー「はぁ~~~、餓鬼かアンタは、…そうやって都合悪いと拗ねる辺りあたしの悪ガキの弟と同じだわ」スタスタ

  アニー「縄解いてやるわよ…ただし!エミリアにはちゃんと謝る事、そしてアタシのいう事にも従う事良いわね?」



  ブルー「…拘束を解く、だと?」



  アニー「別に怪我した訳じゃない、大事じゃなかったからいいってさエミリアも御人好しよね~」スタスタ…ガシッ

  アニー「…」シュルッ…スルスル



  アニー「…ルージュって奴の事、エミリアから聴いたわ」

  ブルー「ッッ!?」




422以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:54:45.54omphqAj60 (10/18)



  ブルー「…そう、か…聞いたんだなっ」ワナワナ…!


知らず知らずのうちに術士は震えていた…

胃の底から込み上げてきそうな何かを抑え、溢れそうな部分を言葉に変化して出すように確認を取る


  アニー「ええ、…あたしがアンタを此処に運んでる間にリュートからも詳細を聞いたって」






    アニー「ブルー…あんた…」ジッ

    ブルー「…っ」ギリッ





 廊下から差し込むLEDライトの照明を背に伸びる彼女の影が歯軋りをしながら彼女を見返すブルーの顔を丁度隠す
逆光の中に入る女と、影で表情を窺い辛い男…二人の間に沈黙が流れ、そして…






   アニー「…ぷっww――いや、確かにアンタ見たまんま"エリート坊ちゃん"って感じの性格だからね」

   アニー「そりゃあ弟の方が優秀でスポーツ万能、性格良しとかじゃ敵意剥き出しにするわけだわ…ぷぷっ、くくっ」






   ブルー「……」


   ブルー「は?」




 呆気

 思わず間の抜けた声を漏らしてしまった、パチンッ、倉庫の照明をOFFからONへ操作して未だ小馬鹿にしたような笑いを
絶やさぬ女がイマイチ状況の飲み込めない男に言い続ける



  アニー「いやいや、あたしに報酬払うから剣を教えてくれーとかキャラに似合わないことすんなぁ~とか思ったわ」


  アニー「故郷の競争相手ってのはブルーの弟なんだろ、学生時代の自分より成績が上で」

  アニー「しかもコミュ力高くてリア充しまくってた弟の鼻を明かしてやろうって努力してるんだろう?全部聞いた」



  ブルー「お、おい、ちょっと待て…貴様さっきから何を――」



  アニー「…あー、うん分かってる、わかってるから"兄より優れた弟なんて存在しない"、だろ?うんうん」肩ポンポン

  アニー「しっかし、アンタさ…くくっw 澄ました顔しちゃってさ」

  アニー「そ~んなコンプレックスの塊だなんて可愛いとこあんじゃんww」プッ…


  ブルー「 」


 この女は黙って聞いてれば何を頓珍漢な事をほざいているのだろうか、オイなんだその顔はやめろ!
その微笑ましいものを見るような慈愛に満ちた笑顔はやめろ!肩をポンポン叩くなァ!

ブルーはそう言いたかった



423以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2019/02/20(水) 00:55:18.42omphqAj60 (11/18)



  アニー「あたしだって姉弟の中で一番上だしさ、情けない姿見せちゃあ面目が立たないとか気持ちは分かるわよ」

  アニー「けどさぁ、エミリアに掴みかかった時みたいなああいうのは良くないわよ?」


  アニー「ほらほら!向こうは許してやるって言ってんだ、ちゃちゃっと謝りに行くよ」スタスタ





  ブルー「お、おいィ!!……あ、あの女言いたい事だけ言って…ふ、ふざおってからにッ!!」プルプル




  ブルー「~~っ」プルプル

  ブルー「…」


  ブルー「リュートからも聞いただと?…だがあいつの口ぶり
           どうも【"決闘"】でなく『"ただの試合"』としか思ってないような」




"試合"と"死合"


 妙に緊張感の無い言い方、恐らく彼女は双子の闘いを学生がよくやるような剣道大会の試合
要はスポーツ感覚のソレと勘違いしているのだろう


 実際に行われるのは中世の騎士が立会人の下、どちらかが命尽き果てるまでに斬り合う決闘<デュエル>だ
魂の尊厳、何より自分自身の"生"の為に西部劇のガンマンが早さ比べをする様式とも取れるソレであって
 間違っても負けたら「いいファイトだったぜ、またやろう」みたいな爽やかな笑顔で握手し合う交流試合のノリじゃない



弱肉強食、負けた方が勝った方に生存の権利を譲る―――そういうモノであるはずなのだ




  ブルー「何をどう聞かされたのか、確認を取るか、ルージュの件もある」スッ、スタスタ…




 少し頭に血が昇り過ぎていたな、…蒼き術士は幾らかクールダウンした脳で先刻の接触は悪手だったと今更後悔した


初対面の人間に対する"猫かぶりの対応"を思わず忘れる程の激情、蒼は紅を体現した人物名でその彩に染まっていた
 どうにも故郷を発ってからこういう事が多い、情緒不安定な所が際立つ





 普段、名の通りの男と故郷で言われたが実際は違う、彼とて人の子だ……世間を知らず箱の中で育ち

外界など古臭い書物の紙面に乗った洋墨でしか知らない、鳥籠で産まれ、鳥籠で死ぬ小鳥と何が違うというのだ…



山も、川も、雲さえ知らない鳥がある日、飼い主の身勝手な都合で籠から追い出され野に放たれたも同然だ



見た目だけが成人を迎えた子供<お坊ちゃま>……ただの22歳児でしかない



コツコツッ……ピタッ



  アニー「エミリア、連れて来たわ」

  ブルー「……」