225 ◆y7//w4A.QY2017/07/21(金) 00:50:27.20gkDsZ77g0 (2/7)

リツコ「クビが物理的に飛ばないで済むように祈ったら?」

看護師「……? どちらさまですか、鈴原くん、サクラちゃん、知り合い?」

サクラ「いや、うち、知らない」

リツコ「この子が例の女の子ね」

トウジ「いつからそこに」

看護師「部外者なの? ちょっと、困りますよ。ここは小児科病棟です。ご家族でないのなら室内に」

リツコ「特務機関ネルフの者です。先ほどの噂話の一部始終は聞かせてもらいました」

看護師「ああ、ネルフの……ね、ネルフっ⁉︎」

リツコ「これが身分証」パサ

看護師「はわ、はわわっ、わた、わたし、いえ、違います、違うんです」

トウジ「いつから」

リツコ「ネルフ権限における保安条例の第十四項、パイロットに関する機密保護法を著しく侵害しています。この顛末は上司に報告させてもらうわよ」

看護師「ひっ、そ、そんな」

リツコ「久しぶりね、鈴原くん。ユニゾンの時の打ち上げ以来かしら」

トウジ「……ども」ペコ

サクラ「兄ちゃん、この人、誰?」

トウジ「ネルフの人や」

リツコ「シンジくんが父親に泣きついてまで救おうとした子は思ったより元気みたいね」

トウジ「ここの病院は、スタッフがすごいし、それに……」

リツコ「前の病院ではまともな設備がなかった。満足な受けられず、徐々に悪化していくのは仕方なかったと言える」

トウジ「はい」

リツコ「ついてきて」

トウジ「は、はい?」

リツコ「シンジくんに、会わせてあげる」

サクラ「ほ、ほんまですか⁉︎」

リツコ「そっちの子は……車椅子を使えば移動できる?」チラ

看護師「可能ではありますが、まだ点滴してるので、その、なるべく運動は。針がズレたら刺し直しに」

サクラ「行きたい! じゃなきゃ言いふらしたる!」

トウジ「おい、サクラ!」

サクラ「別にええやん! 心配やないの⁉︎」

トウジ「わ、ワシはお前を」

サクラ「そんな兄ちゃんなんか嫌いや!」

リツコ「人の身体は簡単に壊れるわけではないわ。ここは病院よ。すぐに医師が駆けつけられるでしょうしね」

サクラ「話わっかるぅ~!」

リツコ「車椅子の準備を」

看護師「持ってきたらわたしの件は、なくなったり……?」

リツコ「それとこれとは話が別。あなたの仕事でしょ」

看護師「ひ、ひぃ~ん」


226以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/21(金) 02:54:29.514HhaBdmSO (1/1)

死神


227 ◆y7//w4A.QY2017/07/21(金) 13:25:52.30gkDsZ77g0 (3/7)

ちと>>225はもう一度レスしなおします


228 ◆y7//w4A.QY2017/07/21(金) 13:44:11.07gkDsZ77g0 (4/7)

リツコ「クビが物理的に飛ばないで済むように祈ったら?」

看護師「……? どちらさまですか、鈴原くん、サクラちゃん、知り合い?」

サクラ「いや、うち、知らない」

リツコ「この子が例の女の子ね」

トウジ「いつからそこに」

看護師「部外者なの? ちょっと、困りますよ。ここは小児科病棟です。関係者でないのなら室内に――」

リツコ「特務機関ネルフの者です。噂話の一部始終は聞かせてもらいました」

看護師「ああ、ネルフ……ね、ネルフっ⁉︎」

リツコ「こちらが身分証」パサ

看護師「はわ、はわわっ、わた、わたし、いえ、違います、違うんです」

リツコ「ネルフ権限における保安条例の第十四項、パイロットに関する機密保護法を著しく侵害しています。顛末は管轄にあたる上司に報告させてもらうわよ」

看護師「そ、そんな……ふひ、ふひひ、おわた……家で待ってるヒモ彼氏がいるのに」ヘナヘナ

サクラ「堪忍したってください。お姉ちゃん、悪くないよ。うちが無理言って……」

リツコ「団体、ひいては組織の規律問題なのよ。子供だって悪いことをすれば親に叱られる。違うとすれば、社会は親ほど我慢強くなく、簡単に切り捨てることね」

サクラ「それじゃ、冷たいやん」

リツコ「ふぅ、私はあくまで報告をするだけ。処分について裁定をくだすのは組織の管理者よ」

トウジ「ワシも謝りますから、今回だけは、お願いします」ペコ

リツコ「パイロットを守るための取り決めでもある。感情に左右され恩赦を与えてしまっていては改善できないわ……久しぶりね、鈴原くん。ユニゾンの時のホームパーティー以来かしら」

トウジ「え? あぁ、ども」ペコ

サクラ「兄ちゃん、この分からず屋の頭かっちかっちな人、誰なん?」

トウジ「こら、そないな言い方するもんやない。ネルフの人や」

リツコ「シンジくんが父親に泣きついてまで救おうとした子は思ったより元気みたいね」

トウジ「ここの病院は、スタッフがすごいし、それに……」

リツコ「前の病院ではまともな設備がなかった。満足な治療を受けられず、医師の判断も曖昧では徐々に悪化していくのは仕方なかったと言える」

トウジ「その通りです。せやから、転院できて感謝してます」

リツコ「ついてきて」

トウジ「は、はい?」

リツコ「シンジくんに、会わせてあげる」

サクラ「ほ、ほんまですか⁉︎」

リツコ「そっちの子は……車椅子を使えば移動できる?」チラ

看護師「可能ではありますが、まだ点滴してるので、その、なるべく運動は。針がズレたら刺し直しに」

サクラ「行きたい! じゃなきゃ言いふらしたる!」

トウジ「おい、サクラ!」

サクラ「別にええやん! 心配やないの⁉︎」

トウジ「ワシはお前が……」

サクラ「そんな兄ちゃんなんか嫌いや!」

リツコ「人の身体は簡単に壊れないわ。それに、ここは病院でもある。なにかあれば、すぐに医師が駆けつけられるでしょうしね」

サクラ「なんや、話わかるやん!」

リツコ「車椅子の準備を」

看護師「持ってきたらわたしの件は、なくなったり……?」

リツコ「それとこれとは話が別。クビになってない内は、患者の面倒を見るのが仕事でしょ」

看護師「ひぃ~ん」


229 ◆y7//w4A.QY2017/07/21(金) 14:38:44.24gkDsZ77g0 (5/7)

【付属病院 205号室】

トウジ「シンジ、おい、しっかりせぇ!」

サクラ「なんで、なんでこんなになってるん⁉︎」

シンジ「……」シュー シュー ピッピッ

リツコ「カルテを」

看護師「ドイツ語ですけど、そもそも見方わかるんですか?」

リツコ「あら、こう見えて医師のはしくれよ。もっとも、専攻はは心理学ですけど。昨夜、急な叫び声をあげたという噂話は院内でかなり広まっているの?」

看護師「う、その」

リツコ「今さら隠したってしょうがないでしょう。正直に話した方が身のためよ」

看護師「はい……入居してる患者は治療方針は医師が決定をしますが、看護師は身の回りの介助、いわゆる補佐を担当しています。その際に……あの、日常会話の感覚でポロっと」

リツコ「必要でない部分まで喋ってしまってしまっていると。口は災いの元とも言うわよ」

看護師「うう、ごもっともです」

リツコ「幸か不幸か、問題は管理体制そのものにある。コンプライアンスを徹底させなければだめね」

看護師「あの、どういう……」

リツコ「個人ではなく全体の問題だということ。意識の低下が引き起こした結果なのよ。報告したとしても、あなたのクビで責任逃れできないように言い含めておくから」

看護師「職を失わなくて済むんですか⁉︎」

リツコ「ただし、あなたがバレたというきっかけで締めつけが厳しくなる。職場の同僚から良い目では見られなくなるわよ」

看護師「それは、自業自得な部分ありますから」

リツコ「これに懲りて反省しなさいね」

看護師「はい……お姉さま……素敵……」ウットリ

リツコ「ち、ちょっと、なんなの」タジ

トウジ「そないな話より、シンジはどうなってるんでっか⁉︎」

リツコ「ごほん、見ての通り。目を覚まさないのよ」

サクラ「ぐす、怪獣と戦って怪我したん? 来てなかったやん」

リツコ「別の要因。サクラちゃん、だったわね。シンジくんが好き?」

サクラ「へ?」

リツコ「幼く純粋な思いでなら、助けになるかもしれない」

トウジ「サクラ! ワシは許さへんぞ! もがっ⁉︎」

看護師「鈴原くん、お姉様が話してるのに邪魔しないで」ギュッ

トウジ「ふむーっ! ふもふもー!」ジタバタ

リツコ「どう? 彼を助けてあげたい?」

サクラ「うち、こんな身体やし、なにができるかわからへんけど、シンジさんはみんなを守ってくれてるヒーローなんやもん! なんだってするで!」

リツコ「なんでも? なんでもと言ったわね」

サクラ「うん! なんでも!」

トウジ「ぶはっ!」

看護師「あ、もう!」

トウジ「サクラは手術を控えとるやろが!」

リツコ「黙らせて」

看護師「がってん承知!」グイ

トウジ「ふむ⁉︎ ぬうーーっ!」

サクラ「女に二言はない! 自分を守ってくれた男のためなら命でもなんでもかけたるわぁ!」

リツコ「よく言ってくれました。実は、実験に協力してほしいの――」


230 ◆y7//w4A.QY2017/07/21(金) 14:44:28.73gkDsZ77g0 (6/7)

集中力がないと誤字がやばい、たびたびすんませんがレスしなおします


231 ◆y7//w4A.QY2017/07/21(金) 15:10:36.59gkDsZ77g0 (7/7)

【付属病院 205号室】

トウジ「シンジ、おい、しっかりせぇ!」

サクラ「なんで、なんでこんなになってるん⁉︎」

シンジ「……」シュー シュー ピッピッ

リツコ「カルテを」

看護師「ドイツ語ですけど、そもそも見方わかるんですか?」スッ

リツコ「あら、こう見えて医師のはしくれよ。もっとも、専攻は心理学。昨夜、急な叫び声をあげたという噂話は院内でかなり広まっているの?」

看護師「う、その」

リツコ「今さら隠したってしょうがないでしょう。正直に話した方が身のためよ」

看護師「はい……入居してる患者様の治療方針は医師が判断をして決定をされる一方で、看護師は、医師、患者、双方にとっての負担軽減。身の回りの介助、いわゆる補佐を担当しています」チラ

リツコ「怯えなくていいから、続けて」

看護師「その際に……先生方が話てる内容を聞き及ぶケースも多く、あの、日常会話の感覚でポロっと」

リツコ「必要でない部分まで喋ってしまっていると。口は災いの元とも言うけど、知らなかったの?」

看護師「うう、お恥ずかしい限りです」

リツコ「幸か不幸か、問題は管理体制そのものにある。コンプライアンスを徹底させなければだめね」

看護師「あの、どういう……」

リツコ「個人ではなく全体の懸念事項だということ。意識の低さが引き起こした結果なのよ。報告はするけど、クビで責任逃れできないように言い含めておくから」

看護師「職を失わなくて済むんですか⁉︎」

リツコ「あなたの為じゃないわ。それに、バレたというきっかけで締めつけが厳しくなる。職場の同僚たちから良い目で見られなくなるわよ」

看護師「それは、自業自得な部分ありますから」

リツコ「これに懲りて反省しなさいね」

看護師「はい……お姉さま……素敵……」ウットリ

リツコ「ち、ちょっと、なんなの」タジ

トウジ「そないな話より、シンジはどうなってるんでっか⁉︎」

リツコ「見ての通り。目を覚まさないのよ」

サクラ「グス、怪獣と戦って怪我したん? 来てなかったやん」

リツコ「別の要因。サクラちゃん、だったわね。シンジくんが好き?」

サクラ「へ?」

リツコ「幼く純粋な想いなら、助けになるかもしれない」

トウジ「サクラ! ワシは許さへんぞ! もがっ⁉︎」

看護師「鈴原くん、お姉様が話してるのに邪魔しないで」ギュッ

トウジ「ふむーっ! ふもふもー!」ジタバタ

リツコ「どう? 彼を助けてあげたい?」

サクラ「うち、こんな身体やし。なにができるかわからへんけど、シンジさんはみんなを守ってくれてるヒーローなんやもん! なんだってするで!」

リツコ「なんでも? なんでもと言ったわね」

サクラ「うん! なんでも!」

トウジ「ぶはっ!」ガバ

看護師「あ、もう!」

トウジ「サクラは手術を控えとるやろが!」

リツコ「黙らせて」

看護師「がってん承知!」グイ

サクラ「女に二言はない! 自分を守ってくれた男のためなら命でもなんでもかけたるわぁ!」

リツコ「よく言ってくれました。実験に協力してほしいの――」


232 ◆y7//w4A.QY2017/07/22(土) 23:40:48.36Bx531VAM0 (1/1)

【同時刻 ネルフ本部 営倉】

カヲル「思ったよりお早い来訪で。さっそくボクを殺しにきましたか」

ユイ「時期ではないわ。釈放よ」

カヲル「へぇ、やけにあっさりと引き下がるんですね。ボクはかまわないけど」スッ

ユイ「その前に何点か聞きせてもらえない? シンジと会ってみてどうだった。なにか話をしたの」

カヲル「いいえ。彼は寝ていましたから」

ユイ「寝ている最中に脳を弄った方法は?」

カヲル「本来、夢というのは記憶を整理する処理作業だけど、彼の手にはアダムがあったから」

ユイ「明快な返答ね。まるであらかじめ聞かれるとわかっていたかのよう」

カヲル「遅すぎるくらいだよ。確認するには。ようやく冷静になれたのかい?」

ユイ「最後の質問」

カヲル「(本題がきた)」

ユイ「元に戻す方法、つまり、目を覚ました後、以前のシンジに戻すにはどうしたらいい?」

カヲル「彼は彼だよ。ボクは真実を知識の泉として脳に刻んだに過ぎない。受け入れれば眼が覚める、そう伝えていたはず」

ユイ「今すぐに目を覚ます方法はないというわけね」

カヲル「残念ながら」

ユイ「――本当にそうかしら」

カヲル「……」

ユイ「例えば、一度潜れたあなたなら可能なんじゃない?」

カヲル「逆効果だよ。そんなことをすれば二度と目が覚めなくなってしまう。彼の魂は今、殻に閉じこもってしまっているからね」

ユイ「補助をつければどう?」

カヲル「補助、だって?」

ユイ「シンジを純粋に心配して、想いやる気持ちを持った子を潜らせれば」

カヲル「碇シンジくんが望むとも思えないけど」

ユイ「聞きたいのはそこではないのよ。できるのかできないのか」

カヲル「……」

ユイ「十三年前にリリスを使い作られた初号機からサルベージされた経験がある」

カヲル「なにを言いたいんだい?」

ユイ「再生、シンジの意識をサルベージします」

カヲル「そうか、そういうことか。リリン」

ユイ「ピースは用意した。協力、するわよね?」

カヲル「ボクになにをしろって?」

ユイ「パイプになってもらいます。用意した子をシンジの深層意識に送り届けるための」

カヲル「勝手だね。ヒトは生きながら罪を犯し続けてしまう。汚れながらしか生きていけないから」

ユイ「この世に光、あれ。泥に汚れても、這いながらでも太陽があれば進む道を照らしてくれる。シンジは私の、いいえ、人類にとってのさんさんと輝く太陽なの」

カヲル「個人の意思を棚上げにして、神輿を作る気なのか」

ユイ「神は、全知全能であるかもしれない。だけど、苦悩がないとは限らない」

カヲル「……」

ユイ「太古から伝わる神々と同じように、アダム、リリスが抱えていた頭痛の種」

カヲル「それは?」

ユイ「孤独感よ。とても、とっても、寂しがり屋さんだったの」

カヲル「……」

ユイ「無駄話をしていた間にそろそろ到着する頃合いだわ。ついてきて」


233 ◆y7//w4A.QY2017/07/23(日) 00:24:17.15cid+e0Go0 (1/5)

【シンジ 夢の中】

シンジ「ここは……?」

レイ(少女)「ここは、L.C.Lの海。生命の源の海の中。
A.Tフィールドを失った、自分の形を失った世界
どこまでが自分で、どこからが他人なのか分からない曖昧な世界」

シンジ「心の壁を……」

レイ「あなたの真実を辿る旅路。どこまでも自分で、どこにも自分がいなくなっている静寂な世界。全てがひとつになっているだけ。世界。そのものよ」

シンジ「こんな、なにもない殺風景な場所が真実だっていうの?」

レイ(少女)「私もあなたも。最初はひとつだったのよ。虚無からすべては始まった」

ミーンミンミミンミーン――……

シンジ「夏、暑い日」

ゲンドウ『今日は暑くなったな』

シンジ「父さん……?」

ユイ『あら、もう。あなたったら。アイスなんか口につけて。いくつになっても子供みたい』

シンジ「かあ、さん?」

シンジ(少年)『えへへ』

シンジ「これは僕だ。幼い頃の僕。覚えていない記憶」

ゲンドウ『このような地獄をこの子は生きていかねばならないのか』

ユイ『生きていればなんとかなるわ。私たちの息子なんだもの。未来を希望で溢れさせてくれる。おいで、シンジ』

シンジ(少年)『はーい』

ゲンドウ『俺は、不安だよ』

ユイ『大丈夫。子供はいつのまにか成長していく。あっという間よ』

シンジ「僕の記憶。優しかった父さんと母さんとの思い出。幻なんかじゃない、たしかにそこにあったセカイ」

レイ「他人の存在。親でさえ理解できない、心の壁が全ての人々の心を引き離すわ。他人への恐怖が始まるのよ。このように」

ゲンドウ『シンジ! エヴァに乗れ! でなければ帰れ!』

シンジ『嫌だ! こんなわけのわからないモノに乗れって言うの⁉︎』

レイ「楽しい思い出ばかりじゃない」

シンジ「……」

レイ(少女)「夢は壊れる」


234 ◆y7//w4A.QY2017/07/23(日) 00:25:37.52cid+e0Go0 (2/5)

ぬお、改行がおかしなことになってるんでレスしなおします


235以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/23(日) 00:27:51.66cid+e0Go0 (3/5)

【シンジ 夢の中】

シンジ「ここは……?」

レイ(少女)「ここは、L.C.Lの海。生命の源の海の中。A.Tフィールドを失った、自分の形を失った世界。どこまでが自分で、どこからが他人なのか分からない曖昧な世界」

シンジ「心の壁を……」

レイ「あなたの真実を辿る旅路。どこまでも自分で、どこにも自分がいなくなっている静寂な世界。全てがひとつになっているだけ。世界、そのもの」

シンジ「こんな、なにもない殺風景な場所が真実だっていうの?」

レイ(少女)「私もあなたも。最初はひとつだったのよ。虚無からすべては始まった」

ミーンミンミミンミーン――……

シンジ「夏、暑い日」

ゲンドウ『今日は暑くなったな』

シンジ「父さん……?」

ユイ『あら、もう。あなたったら。アイスなんか口につけて。いくつになっても子供みたい』

シンジ「かあ、さん?」

シンジ(少年)『えへへ』

シンジ「これは僕だ。幼い頃の僕。覚えていない記憶」

ゲンドウ『このような地獄をこの子は生きていかねばならないのか』

ユイ『生きていればなんとかなるわ。私たちの息子なんだもの。未来を希望で溢れさせてくれる。おいで、シンジ』

シンジ(少年)『はーい』

ゲンドウ『俺は、不安だよ』

ユイ『大丈夫。子供はいつのまにか成長していく。あっという間よ』

シンジ「僕の記憶。優しかった父さんと母さんとの思い出。幻なんかじゃない、たしかにそこにあったセカイ」

レイ「他人の存在。親でさえ理解できない、心の壁が全ての人々の心を引き離すわ。他人への恐怖が始まるのよ。このように」

ゲンドウ『シンジ! エヴァに乗れ! でなければ帰れ!』

シンジ『嫌だ! こんなわけのわからないモノに乗れって言うの⁉︎』

レイ「楽しい思い出ばかりじゃない」

シンジ「……」

レイ(少女)「夢は壊れる」


236以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/23(日) 00:52:06.90cid+e0Go0 (4/5)

シンジ「でも、父さんとはまたやり直せる」

レイ(少女)「あの人なら壊れたわ」

シンジ「なに言ってるんだよ」

レイ「死。生命の終わり」

シンジ「死……? 父さんが死んだって言うの?」

リツコ『私の前で夫婦の会話をしないでちょうだい!』パァン

ゲンドウ『うっ』ドサ

ユイ『まったく、最後まで人に迷惑をかけるんだから』パァン

ゲンドウ『』ベチャ

シンジ「これは……?」

レイ「碇くんが知らない。私たちが覗いていた視点の出来事」

シンジ「うそだ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!!」

加持『シンジくん』

リツコ『シンジくん』

冬月『サードチルドレン』

シンジ「敵、テキ、てき、敵……! みんな嘘つきだ! 良い顔をして、何食わぬ顔をしてるだけだ!」

ユイ『シンジ……』

シンジ「畜生、チクショウ、ちくしょう……よくも、よくも僕を捨てたな。いきなりあらわれて母さんだなんて名乗って。殺してやる! 僕のカタキ、父さんの仇!」

レイ「……」

シンジ「お前もだ! 綾波さえいなければ父さんは僕を捨てなかったんだ! そうだ、綾波がいたから僕がいらなくなっちゃったんだ! お前さえ、お前さえいなければ!」ギュウ ググッ

レイ「ごほ、私の、首を、しめ……[ピーーー]……の?」

シンジ「初号機に乗る時だって、本当は父さんに嫌いだって言うつもりだったんだ! それなのに、綾波のせいで!」

レイ(少女)「向き合う勇気がなくて、自分から逃げ出したくせに」

シンジ「違う、ちがうンだ。ボクはそウジャなイ」

レイ(少女)「あなたは、本当になにも覚えていないの」

シンジ「ボクは……ッテタ。ぼクがニゲダシタ」

レイ「……」ドロドロ

シンジ「僕はニゲダシたんだ! 父さンとかあサんから!」

レイ(少女)「現実を受け止めて」

シンジ「うわああああああああああアアアッ!!!」


237 ◆y7//w4A.QY2017/07/23(日) 01:26:34.78cid+e0Go0 (5/5)

ここまでで以降は前スレと共通する箇所はあるものの、前スレでカヲルくんが死んだ展開とかもろもろが新しくなります
なので、リクのあった箇条書きまとめをします
今日は眠いんでまた後日~


238以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/23(日) 02:43:57.518625KEbDo (1/1)

乙。ここまで飛ばしたんで、箇条書きお願いします。
やっと続きが読める


239以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/24(月) 04:11:10.39RJxakNWoO (1/1)

単純に続きな訳ではなさそうだが


240以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/24(月) 10:20:49.92Pmjc3m3SO (1/2)

というか>>237に書いてる続きではないな確実に
違う展開になるからと書いてるだろ


241 ◆y7//w4A.QY2017/07/24(月) 13:09:07.98dwaKTqlv0 (1/1)

まずは流れのおさらいです
1.シンジのPCにアンケートが届く
2.シンジが誘拐、1日間拉致される
3.犯人はユイだった(原作では初号機に取り込まれていたままだったのが当SSでは生きています)
4.シンジ、ゲンドウの前にユイが姿を現わす
5.ゲンドウは粛々と補完計画を進める(元になった補完計画と変わりはありません)

6.ユイは独自の考えを持っており、またゼーレを利用した計画があります、それはゲンドウとは相入れないものでした。よってユイはゲンドウのネルフを乗っ取ろうと機会を伺います
7.ゲンドウを孤立させるには冬月、リツコがキーだとユイは目星をつけていました。
※またこっそりとシンジを拉致しアダムをシンジの掌に移植します(原作ではゲンドウの手のひらにありました)
8.加持を使い冬月とリツコを反目(裏切り)させることに成功します
※同時進行的に綾波の中でもう一人の自分が目覚めます
9.ゲンドウ死亡(前スレだとシンジの目の前で死んでいますが、シンジがいない状況で今スレではリツコによって致命傷を与えられユイにトドメをさされています)

ここからユイが新司令です
ゼーレの後ろ盾を元に組織内部図の掌握にかかります

10.ゲンドウが殺された場面を直に見せつけられ大人達を信用できず、またいつも通りになれない自分に苛立つシンジ(前スレのみの流れです)
10.渚カヲルがゼーレ、ユイの思惑の元、フォースチルドレンに選出(原作ではトウジです)
11.晴天の霹靂とも言える司令交代に日本政府、および戦自がかなり訝しみ、スパイとして見繕ったマナを送りこみます(日本政府は金の無心をしたいというのが本音ですが、単純にネルフの戦力にびびってる保守派の集まりです。戦自は実行組織)
12.ユイは戦自を釣り上げるためにネルフを停電状態にして加持に偽のデータを渡します(前スレのみの流れです)
12.カヲルはシンジ(あわよくばカヲルにも)にとってなにが一番いいかを考えます。望みである魂の解放と同時に自らの死によってアダムの魂をシンジに還元します(前スレのみの流れです)

ざっくりとですがこれまでの流れになります
前スレとの違いは
・シンジは現在昏睡中
・シンジの目の前でゲンドウが殺されていない
・ゲンドウの死を綾波によって強制的に知らせれてしまっている最中で、受け入れられないループが続き目が覚めません

レスしてる人もいますが今後の展開としては「前スレに追いついたから続き」というわけではありません
前スレとは違う流れになるのでここまででリクのあった箇条書きをしようと判断しました
わかりづらいかもしれませんが以上です


242以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/24(月) 13:26:29.19Pmjc3m3SO (2/2)


まとめてほしいなんてほぼ一人の末尾oが勝手に言ってただけだからシカトぶっこいたらいいだけでそんなくそまじめにやってやらんでいいぞ


243以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/24(月) 18:44:08.53BxbAqp16o (1/1)

個人的には一方的に垂れ流してもらう方が好きです


244 ◆y7//w4A.QY2017/07/24(月) 21:49:23.38uYiUyHRs0 (1/1)

小説系サイトではなくここは掲示板なので感想返しやリクするにも項目別に別れてませんからね
必要ない、淡々と投稿してほしいと思ってる方は「続きが読みたいだけなのに」と強制的にやりとりを見せられている状況だと思います

一方で、○○が理解できない、この流れはおかしいというのもどうしても出てくると思います
なんでそういう質問やリクに対しては応えてこうかなと思ってる感じです

個人が持っている定規はそれぞれ長さが違うので、目に余るようでしたら読むのをやめる要因になるとも思いますが、この掲示板の仕様だと思ってある程度は理解していただきますようお願いします


245以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/25(火) 00:56:22.78M6KR1Ayao (1/1)

苦労してくれてありがとう把握した。
とりあえずシンジはまだユイに不信感を持っていないようだ。

アスカのメンタルは前半の嫁状態から変化なしでよさそう


246以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/25(火) 01:09:29.93mmh101gEO (1/1)

直前の>>236ぐらい読めよ・・・
シンジはユイがゲンドウ殺したとこを知って不信感どころか殺してやるって言ってるだろ


247 ◆y7//w4A.QY2017/07/27(木) 02:49:17.61SShfyPHs0 (1/1)

【ネルフ本部 第六層】

サクラ「これ、くすぐったいわぁ。なんのテープ?」もぞもぞ

リツコ「脳波を受信する機械」ペタペタ

サクラ「じゅしん? なんかすごいね」

リツコ「これを貼れば終わり。司令、仰られていた準備が整いました」

ユイ「ご苦労様」

カヲル「……」

ユイ「なにか他に入り用?」

カヲル「ボクから確認したいことがある」

ユイ「なに?」

カヲル「ヒトは、夢を見ていると自覚していたとしても嫌な現実に立ち向かう術を見つけるには時間がかかる。リリンたちはそういう夢を悪夢、そう呼んでるね」

ユイ「ええ」

カヲル「あなたがとろうとしている行動は、碇シンジくんのためだと一定の理解はできる。でも、どうしてそこまで生き急がなければいけない」

ユイ「起きてしまった結果を嘆いていても前に進めないのよ。どんなに頑張ったって過去は変えられないでしょ」

カヲル「なにもかも決められたレールの上で生きるのが、本当に彼の為になると?」

ユイ「そうよ」

カヲル「意思は誰しもに尊重されるべきだ。叶えた願いに対して自覚していないのは、責任を放棄しているのと同義だからね」

ユイ「既に一線を超えてしまっている。シンジの手にあるアダム、夫の死。私はあの人から繋いだバトンを持ち走らなければならない。どんな方法を使っても。ゴールテープを切るまで止まらない」

カヲル「愚かだね。愚かで、悲しい生き物だ」

リツコ「……」

ユイ「そうね、私もそう思う。人は、寂しさと怒りを処理する方法を間違えるだけで簡単に崩れてしまう」

カヲル「自分の夫、息子、家族。幾千、幾万にのぼる無関係のニンゲンを巻き込んでいる気分は?」

ユイ「……」

カヲル「孤独。そうじゃないのかな」

ユイ「いつシンジの脳内に?」

カヲル「ボクが彼女とシンジくんをリンクさせる」スタスタ

サクラ「……? こんにちは」

カヲル「ボクと手をつないでもらっていいかい?」

サクラ「手?」

カヲル「そう、キミとボクとシンジくんで手を繋ぐ。シンジくんの目が覚めますようにって真剣に願ってほしいんだ」

サクラ「願う? お願いしたらええの?」

カヲル「心の底からだよ? 他は一切考えない。純粋に、それだけを願うんだ」スッ

サクラ「うーん、よくわからへんけど、やってみる!」

シンジ「……」すぅーすぅー

サクラ「(シンジさん、お願い起きて……!)」

カヲル「……」

サクラ「(シンジさん、シンジさん、シンジさん、シンジさん)」

カヲル「もっと。口にだしていいよ」

サクラ「わかった! シンジさん! もういい加減起きて!」


248以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/27(木) 21:32:29.58b7GhCSVPO (1/1)




249以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/29(土) 10:25:10.71eKFiAMLaO (1/2)



オープニングを聞きながら続きを待ってます


250以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/07/29(土) 11:24:45.72eKFiAMLaO (2/2)

このSSのイメージは破だな


なんにせよ原作へのリスペクトが見えるから良い



251 ◆y7//w4A.QY2017/07/30(日) 23:43:21.50aiYPAPVx0 (1/1)

【シンジ 夢の中】

サクラ「シンジ、さ……ん」

シンジ「いやだ、いやだ」ギュウ

サクラ「シンジさんってばぁっ! もぉ! 碇さん!」

シンジ「……?」

サクラ「こんな所で体育座りなんかして、ほんま堪忍してほしいわ!」

シンジ「誰……」

サクラ「立ってください! そろそろ起きる時間ですよ!」

シンジ「……」

サクラ「しっかりしないと! 自分の足ついてはるんでしょ⁉︎」グィ

シンジ「いやだ、父さんはもういないんだ。戻って僕になにをしろっていうの」

サクラ「私を救ってくれました!」

シンジ「キミを……? どこかで会ったことがある?」

サクラ「気づいてへんのですか⁉︎ 私ですよ! 私!」

シンジ「えっと」

サクラ「鈴原サクラです! ほら、兄ちゃんのジャージ!」

シンジ「サクラちゃん⁉︎ そんな、どう見たって僕と同じ歳ぐらいじゃないか! サクラちゃんはまだ小学生のはず」

サクラ「あれ、ほんまや。おっきくなってる」キョロキョロ

シンジ「なんで」

サクラ「うーん、あっ! もしかしたら碇さんの夢の中やからとか⁉︎」

シンジ「そ、そういうもの?」

サクラ「わからへんことは気にしたってきっとわかりません。なんかそれはわかる気がします」

シンジ「どうしてここに」

サクラ「碇さんの目を覚ますために決まっとるやないかぁ」

シンジ「帰ってよ、僕は、目を覚ましたくないんだ」

サクラ「どうしてですか」

シンジ「みんな、みんなウソつきなんだ。みんな」

サクラ「……」

シンジ「父さんを殺したのに。なんでそんな人たちのために戦わなくちゃいけないのか。僕にはわからない」

サクラ「みんな、それぞれ都合があるんですよ」

シンジ「人を[ピーーー]理由になんかならない! 正当化してるだけだ!」

サクラ「そうかもしれまへん。せやけど、シンジさんは、お父さんになにかしてあげました?」

シンジ「これからだったんだ! 父さんと仲直りして、認められたかったのに!」

サクラ「シンジさんだって、自分の欲求のために父親を利用しようとしてるやないですか」

シンジ「違う!」

サクラ「本当に、お父さんが好きやったんですか?」

シンジ「好き……」

サクラ「認められたいのは、自分のためやないんですか?」

シンジ「僕は違うんだ! 僕は」

サクラ「なにが違うんですか。父親もそうやってまわりを利用してきたんです。ゲンドウは綺麗な人間でしたか?」

シンジ「父さんは、僕の」


252 ◆y7//w4A.QY2017/07/31(月) 00:05:01.39KpI8R5Ir0 (1/3)

サクラ「父親ですね。ですけど、まわりの人にとっては赤の他人なんです」

シンジ「母さんは違う。母さんにとって父さんは夫だから」

サクラ「夫婦の問題です。すり替えないでください。シンジさんは、お父さんが好きやったですか?」

シンジ「好きじゃなかった」

サクラ「なんでですか」

シンジ「僕を見てくれなかったから。歩みよろうとしても許してくれなかった」

サクラ「受け入れて認めてほしかった」

シンジ「父親らしいことをしてほしかった」

サクラ「自分のイメージを押しつけはりたいんや」

シンジ「なんなんだよ……。どうしてサクラちゃんまでそんなに僕を責めるの⁉︎ 僕は優しくしてほしいんだ!」

サクラ「みんな、矛盾を抱えて生きてます。人は不完全なもんやから。補い合って生きてるんです」

シンジ「……」

サクラ「優しくされたい。碇さんはそれだけの世界を望むんですか。認められたいという願いは叶えられませんよ」

シンジ「どうして」

サクラ「無条件の優しさは認めているとはならないからです」

シンジ「……」

サクラ「気持ち悪ないですか? そんなセカイ。悪いことをしても、頑張ってなくても、受け入られるなんて。私やったら嫌やわ。そんなの自分が必要とされとる気がせぇへんもん」

シンジ「……」

サクラ「碇さんが変えられなかったのは、お父さんを救えなかったのは、なんの力も持たない子供やからです。ホントは気づいてるんでしょう?」

シンジ「僕には、エヴァパイロットしての価値しかない」

サクラ「そうですね、それしか力がない。すぐに力がほしい」

シンジ「階段はいきなり十段にはいけない」

アスカ『やっとわかったの⁉︎ バカシンジ!」

シンジ「わかってたんだ。地道にやるしかないって。でも、その間にも状況は変わっていく」

アスカ『だったらがむしゃらにやってみなさいよ! やる前から諦めるつもり⁉︎』

シンジ「こわいんだ。自分の無力さと向き合うのが。なにもできない歯がゆい思いをしたくない」

サクラ「はい、これ」スッ

シンジ「これは……?」

サクラ「兄ちゃんの野球道具です。グローブよく使いこまれてるでしょ」

シンジ「うん」

サクラ「球児は、ううん、本気でスポーツをする人はみんな頑張ってます。自分の限界を、乗り越えたら結果が待っていると知っているからです。碇さんはやりまへん? スポーツ」

シンジ「僕は、そういうのは……」

サクラ「苦手そうですもんね」

シンジ「まぁ、その」

サクラ「根性! って言葉があります。逃げてるだけじゃなにも変わりまへんよ」

アスカ『あんたは、約束を破らない男になるんじゃなかったの』

シンジ「……」


253 ◆y7//w4A.QY2017/07/31(月) 00:32:00.76KpI8R5Ir0 (2/3)

サクラ「うじうじ悩んで、塞ぎこんでる間にも状況は変わっています」

シンジ「……」

サクラ「碇さんは、大切な人を、みんな見捨てるんですか。エヴァパイロットっていう力があるのに」

シンジ「……」

サクラ「使徒がくれば、みんな死にますよ。お父さんだけじゃなくなるんです。やれるのなら試さへんのですか」

シンジ「……」

サクラ「私は死にたくありまへん。ちゃんと最後まで面倒を見てください。それが、碇さんの責任です」

シンジ「僕に、戦えって」

サクラ「そうです! 使徒がいなくなっても、来ていなくても誰かと戦わなくちゃあかんのです!」

シンジ「……」

レイ「許せないのならそれでもいい。選ぶのはあなた」

シンジ「僕が、選ぶ」

サクラ「意思は誰でも選ぶことのできる。自由なものなんです。雨にも風にも負けず、貫き通す信念を、保てる強さを持ってください」

シンジ「僕に、できるかな」

アスカ『やるの! できるかできないかじゃない!』

シンジ「諦めなくちゃいけなくなったら……」

ゲンドウ『そうなったら、その時にでも考えろ』

シンジ「父さん……」

ゲンドウ『シンジ。前を向け』

シンジ「僕には」

ゲンドウ『限界は己で決めるものではない。お前がどうありたいかだ』

シンジ「……」

ゲンドウ『これまですまなかった。お前がほしいのは謝罪か?」

シンジ「違うよ」

ゲンドウ『俺に認めてほしいのならば、こうしていては得られないぞ』

シンジ「もう一度、頑張る……」

ゲンドウ『現実は時に残酷だ。折れそうになっても歯を食いしばって耐えろ。いくつかは報われる時がくると信じられれば無駄な瞬間などない』

シンジ「そう、なのかな」

ゲンドウ『無駄になってしまうのは、諦めた瞬間に訪れる。お前はお前の人生を歩め』

サクラ「みんな待ってますよ。まわりにちゃんと目を向けてみてください」

トウジ『シンジ!」

ケンスケ『碇!』

アスカ『お昼ご飯まだぁ⁉︎』

ミサト『シンジくん、あなたは人に褒められる立派なことをしたのよ……』

シンジ「トウジ、ケンスケ、アスカ、ミサトさん」

レイ「……」

シンジ「綾波、レイ」

カヲル「希望。これが碇シンジくんの宿す光か」

シンジ「キミは……?」

サクラ「ほぉら、目を覚ます時間です!」

トウジ&ケンスケ&アスカ&ミサト『起きて!』


254 ◆y7//w4A.QY2017/07/31(月) 01:19:27.70KpI8R5Ir0 (3/3)

【ネルフ本部 第六層】

シンジ「……」パチ

ユイ「シンジ!」ガタッ

サクラ「あ、おはようさんです」

ユイ「シンジ、よかった……」ギュウ

シンジ「……ただ、会いたかっただけなんだ、もう一度……」

リツコ「……」

カヲル「複雑な表情を浮かべているね」

リツコ「終わったのなら帰ったら?」

カヲル「生憎と還る場所がないんだ」

リツコ「そう」

カヲル「あなたはどうするつもりなんだい」

リツコ「これから検査よ」

カヲル「聞かれている意味がわかっててはぐらかしてるね」

リツコ「答える義理はないわ」

カヲル「人を分析するのは得意だとしても、自分を客観視できるとは限らない」

リツコ「不愉快だわ」

カヲル「誰にだって踏み入れられたくない領域がある。どうやらボクは土足で踏み込もうとしているのかな」

リツコ「……」

カヲル「それじゃ、僕はこれで」スタスタ

ユイ「赤木博士。至急、シンジのメディカルチェックを」

リツコ「承知しました。サクラちゃん、手を離していいわよ」

サクラ「へ? 結局なんやったんですか? ずっと握ってるだけやったですけど」

リツコ「なにを行ったか、方法を知っている人はどこかへ行ってしまったわ」

ユイ「今はタブリスよりシンジです」

リツコ「はい。サクラちゃんも検査は一通り受けてもらうわね」

サクラ「はぁ」

リツコ「心配ないわ。終わったら病院で待ってるお兄さんに連絡してあげるから」

シンジ「サクラ……ちゃん」

サクラ「……? どないしたん?」

シンジ「手術はどう、だった」

サクラ「それなら、明後日ですよ。先生は心配あらへんて。すこし後遺症は残るかもしへんけど」

ユイ「シンジ、無理して喋らなくていいのよ」

シンジ「父さんは……」

ユイ「あの人なら、アラスカに調査に行った。長期滞在になる予定よ」

リツコ「……」

シンジ「ちょ、うさ?」

ユイ「ええ。今は休みなさい」


255 ◆y7//w4A.QY2017/08/01(火) 16:03:48.98r5dpexpO0 (1/5)

【付属病院 ロビー】

トウジ「サクラ! 大丈夫やったか? 変なことされてないか? 心配ない言うとったけどワシは心配で心配で」

サクラ「えへへ、なんもないて。シンジさん、目が覚めたよ!」

トウジ「……! そうか! それで、どこに」

サクラ「検査があるからって、MRIにかかってる。うちもシンジさん終わったらはいる」

トウジ「シンジは、なんで目が覚めへんかったんや」

サクラ「わかんない。手を握ってただけやったし」

トウジ「……さよか」

リツコ「妹さん大手柄だったわよ。今後の医療費、及び経過はネルフが全負担します」

トウジ「おお! ほんまでっか⁉︎」

リツコ「もともとそういう約束だったけど。強固なモノとして確約する。誓約書は必要?」

トウジ「いえっ! そんな」

リツコ「小児科病棟から特別室への移動を命じられています。一泊数十万の部屋にね」

サクラ「えぇ?」

トウジ「おま、なにしてきたんや」

リツコ「司令の指示。あなた達は甘えておきなさい。遠慮をするものではないわ」

トウジ「遠慮なんてするかいな! ワシは、ありがたいですし!」

サクラ「もう。どんな部屋なんやろか」

トウジ「色々設備が凄いんちゃうか?」

サクラ「うちは普通でもかまへんのに」

トウジ「せっかくなんやからご好意はいただいとけ! 遠慮なんかしたらあかんぞ!」

サクラ「いやしいなぁ」

トウジ「なんやと⁉︎ たくましいと言わんかい! こんなチャンスめったにあらへんのやからな!」

リツコ「シンジくんに会ってく?」

サクラ「兄ちゃん、そうしなよ。一緒にシンジさんとこ行こう?」

トウジ「せやけど、まだ体調悪いやないんでっか?」

リツコ「問題ないわよ。ただ、寝ていただけなんだから」

トウジ「はぁ」

レイ「赤木博士」スッ

リツコ「レイ……? あなた、どうしてここに」

レイ「碇くんのお見舞いに来ました」

リツコ「お見舞い? あなたが?」

トウジ「なんや、綾波もシンジが入院しとるて知っとたんかいな。教えてくれればよかったのに、冷たいのぉ」

リツコ「(レイが? なぜ知っているの……?)」

レイ「具合、どうでしょうか」

リツコ「先ほど目を覚ましたところ。あなたもついていらっしゃい」

サクラ「兄ちゃん、この人はだれ?」

トウジ「これや、これ」ピッ

サクラ「小指?」

トウジ「センセのハーレムの中の一人……いだ! いだだだ! 小指を噛むな!」

サクラ「むー!」

トウジ「たく、おー痛っ、腹減ったんか」

サクラ「ふんっ!」プイッ


256 ◆y7//w4A.QY2017/08/01(火) 16:35:35.75r5dpexpO0 (2/5)

【付属病院 205号室】

リツコ「シンジくん。入るわよ」コンコン

シンジ「どうぞ」ムクッ

トウジ「よっ!」

シンジ「トウジ?」

サクラ「ちょっと、はやく入って。後ろつかとんねん」

トウジ「せかすな! 今入るわ」

シンジ「サクラちゃんも」

レイ「……」スッ

シンジ「綾波……」

リツコ「私は先にカルテを確認してくるから。好きに喋ってなさい。サクラちゃんは検査がある、もう少ししたら呼ばれると思うけど」クル

トウジ「大丈夫か? 寝て目が覚めへんかったらしいやないか」

シンジ「平気だよ。心配かけちゃったみたいだね」

トウジ「なにがあったか話すことはできんのか?」

シンジ「うん……」

トウジ「水臭いやっちゃのー。そんなん言わなわからんやろが」

シンジ「機密に触れてたら迷惑がかかるし、言っても理解できないと思うから」

トウジ「ふぅー」

シンジ「綾波」

レイ「なに?」

シンジ「聞きたいことがあるんだ。夢の中の出来事を知ってるの?」

レイ「ええ」

シンジ「……! やっぱり、あれは全部夢じゃなかったの⁉︎ 綾波は夢にいたの⁉︎」

トウジ「な、なんや」

シンジ「少し、二人で話せないかな」

レイ「かまわないわ」

トウジ「いったい……」

サクラ「むー」プクー

シンジ「ごめん。トウジは少しここで待ってて」

レイ「監視カメラがついてないところへ。屋上に行きましょう」

シンジ「わかったよ」

サクラ「兄ちゃん! なにぼーっとしてんの⁉︎」


257 ◆y7//w4A.QY2017/08/01(火) 16:36:43.64r5dpexpO0 (3/5)

トウジ「は?」

サクラ「シンジさんまだ起きたばっかりやないの! それでも友達なん⁉︎」

トウジ「いや、でも、案外平気そうやし」

サクラ「このグズ!」

トウジ「な、なんやとぉ⁉︎ シンジが二人で行くのになんで……はっ! ま、まさか、お前」

シンジ「……?」

トウジ「あかんぞ! まだはやいやろ!」

サクラ「な、なにを勘違いしてんの⁉︎」ボッ

トウジ「なにをて! なにを顔赤くしとんねん! マセガキが、小学生から色気づくなや!」

サクラ「なんやて⁉︎ 女は男より精神年齢上なんやもん!」

トウジ「アホか!」

サクラ「アホとはなんやねん! 女は度量がある生き物なんや! 母ちゃんもそう言うとったやろ!」

トウジ「変な影響ばっかり受けよって……!」

サクラ「兄ちゃんだって男はっていうこだわりは父ちゃんからやないか!」

トウジ「やかましい! いかがわしい知識をつける前に怪我を治さんかい! ワシは許さへんぞ!」

レイ「碇くん、行きましょう」

シンジ「……? ああ、うん」


258 ◆y7//w4A.QY2017/08/01(火) 22:55:06.62r5dpexpO0 (4/5)

【付属病院 屋上】

レイ「なにか、頭に浮かんだ?」

シンジ「いや」

レイ「どうして、私に聞いてきたの」

シンジ「夢なのに、はっきりと覚えてるんだ。まるで現実みたいに。それに、今なら、エヴァがなんなのか。使徒がどうしてくるのかわかる気がする」

レイ「そう」

シンジ「綾波は、なんで僕の夢にいたって言ったの? 使徒、天使の名を持つシ者。綾波はなにか知ってるの?」

レイ「碇くんが知っているのと同じ」

シンジ「僕がなにを知っているっていうのさ⁉︎」

レイ「この世界の理(ことわり)。ヒトがどこに進むのか」

シンジ「……」

レイ「向き合えたわけではないのね」

シンジ「父さんは、本当にアラスカにいるの?」

レイ「……」

シンジ「答え、られないんだね。そうさせるのは、僕なのか。教えてほしいんだ。母さんはなにをしようとしてるの?」

レイ「人類の補完。生命をひとつにしようとしている」

シンジ「生命を、ひとつに?」

レイ「……」

シンジ「違う。僕は本当はわかってる。わからないのはまだ逃げてるからだ。そうだよね、綾波」

レイ「どうすべきか選ぶのはあなた」

シンジ「僕は……僕は……」ギュウ

レイ「……」

シンジ「まだ、エヴァに乗るよ。綾波に協力してほしい」

レイ「私に……?」

シンジ「僕を助けてほしいんだ。僕は弱いから。力だってない。綾波が必要なんだ」ギュウ

レイ「な、なにを言うのよ」ボッ

シンジ「頼りないままじゃいけないのはわかってる。僕ひとりじゃどうしようもないんだ、だから……!」

レイ「て、手を離して」

シンジ「あっ、ご、ごめん! その、勢いでつい!」

レイ「いい」

シンジ「あの、だめ、かな」

レイ「なにをしたいの?」

シンジ「母さんがなにを考えているのか知りたい。リツコさん、加持さん、副司令たちが関係しているよね」

レイ「詮索は命令違反になる」

シンジ「そうかもしれない。だけど、知りたいんだ」

レイ「……」コクリ

シンジ「助かるよ、綾波がいてくれてよかった」ニコ

レイ「べ、別に」

シンジ「どうしたの? 顔が赤いけど」

レイ「赤い?」

シンジ「うん。少しだけ。だけど、そっちの方がいいよ」

レイ「あ、ありがとう」


259 ◆y7//w4A.QY2017/08/01(火) 23:19:25.92r5dpexpO0 (5/5)

【付属病院 205号室】

トウジ「おう、おかえりさん。なんや? 綾波は帰ったんか?」

シンジ「うん、この後ネルフに用事があるって。サクラちゃんは?」

トウジ「検査や……パイロットは大変やのー。拘束時間ばっかりで」

シンジ「これが普通だから」

トウジ「……」

シンジ「綾波が持ってきてくれたりんごがあるけど、食べる?」

トウジ「いや」

シンジ「……? どうかしたの?」

トウジ「シンジ。お前がなにを抱えとるか知らん。言われたとしても半分でさえ理解できるかわからん、ワシはバカやからの」

シンジ「……」

トウジ「せやけど、話を聞く相手ぐらいなれるはずや。なんかあったなら話せや」

シンジ「ありがとう。でも、大丈夫だよ」

トウジ「しみったれた話はワシは好かん。なんもない言うならまわりに心配かけたらあかんで」

シンジ「うん」

トウジ「男は肩に荷を背負うもんや」

シンジ「そうだね。僕には、重すぎるかもしれないけど」

トウジ「道を見据えたならまっすぐ進まなあかんぞ! ワシらに何にもないって決めたなら押し通せ! ワシも黙って待ってやる! それが男の友情ってもんや!」

シンジ「ぷっ、トウジらしいや」

トウジ「大事なことなんやぞ!」

シンジ「わかってるって」

トウジ「ふん、サクラの検査が終わったらワシも家に帰る。学校はまだしばらくこんのか?」

シンジ「いや、明日から行くよ。リツコさんにもそう伝えるつもり」

トウジ「体調は平気なんか? 手に包帯しとるが」

シンジ「これは、気にしなくていいよ。いつも通りだから」

トウジ「……?」

シンジ「そうだ。これ、あげるよ」

トウジ「ウォークマンやないか。お前、これ」

シンジ「僕には、もう必要ない」

トウジ「さよか……あっ! 妹はやらんぞ!」

シンジ「い、いもうと?」

トウジ「サクラがほしかったらあと十年! いや! あと十五年は待ってからやな!」

シンジ「なに言ってるんだよ」

トウジ「くぅーっ! まさかセンセがここまでスケコマシ野郎やったとは! なにもサクラまで!」

シンジ「はぁ」




260 ◆qR6TCtkvbo2017/08/22(火) 16:01:11.79Y5phI0Uu0 (1/3)

【同時刻 ネルフ本部 執務室】

ゼーレ02「我らの悲願たる補完計画」

ゼーレ05「計画された“終末の時”まで、残された時間は少ない。その理由を教えよう」

加持「いやはや、驚きましたな」

ゼーレ03「こそこそと嗅ぎ回っているようだからな。キミの目の前にある極秘ファイルを手に取りたまえ」

ゼーレ04「発端は十三年前よりはるか以前に遡る。具体的には、我々がゼーレを発足するきっかけとなったその録画データだ」

加持「これが……? 黙示録とも呼ぶべきものを――」

ゼーレ02「なにを躊躇う。よもや今さら命が惜しくなったわけではあるまい。キミに渡そう、好きにしたまえ」

加持「タダより高いものはないと知らない子供じゃありませんよ。見返りを要求されるとわかっているので、ビビっているだけです」

ゼーレ05「ふっ。臆病だな」

加持「――しかし、臆病だからこそ今日(こんにち)まで生き延びてこれたんです。たとえそれが地獄のような場所だとしても」

ゼーレ05「我々が望むべきは二つ」

ゼーレ04「碇ユイに関する情報を提供と抹殺」

ゼーレ02「データを提供するかわりに我々の“鈴”になってもらいたい」

加持「これはまた、物騒なお話ですね。キール議長はこの件をご存知で?」

ゼーレ04「この問題は、我々だけで決めた。不安材料の解消に対して保険をかけるべきを是としたからだ」

ゼーレ02「左様。キール議長とて完璧ではない。いや、人類そのものか。我々にも補佐という役目がある」

加持「なぜ、わざわざ俺に情報の開示をするんです? その気になれば圧力をかけられるでしょう」

ゼーレ03「手の内にあるデータの一部を渡したにすぎない。試供品だよ、それは」

ゼーレ05「喉から手をでそうなほど欲している資料はまだ一部というわけだ。働きに応じてさらなる開示をしよう」

ゼーレ05「キミの資料は確認済みだ。孤児達の無念を晴らしたければ彼女ではなく我々につけ」

加持「……」

ゼーレ03「断れば、待つのは死。裏切っても、死あるのみだ」

加持「日本政府にも内通していると知ってて言ってるんでしょ?」

ゼーレ02「無論」

加持「ふぅ……。俺にトリプルスパイになれというわけですか。あなた方の益になるように。どうやら、碇ユイ博士は信頼を勝ち得るまで成功していないようですな」

ゼーレ05「目的が達成されるのならば、人選についてとかく言う意義はなし」

ゼーレ06「だが、我々の実行機関たるネルフ。その私物化は許されない」

ゼーレ02「彼女と我々。キミにとってどちらが魅力的な餌か。選択の時だ。加持リョウジ」


261 ◆qR6TCtkvbo2017/08/22(火) 16:40:42.32Y5phI0Uu0 (2/3)

【加持 デスク】

加持「……――ふぅ」ピッ

ゲンドウ『お集まりいただき恐縮です。今日は皆様方に終末について話したい』

キール『続けたまえ』

ゲンドウ『我々人類は破滅の瀬戸際にいる。妻がもたらした裏死海文書の目録にある使徒の襲来。治療法のない病気。破滅を叫ぶ原理主義者ども」

ゼーレ『……』

ゲンドウ『やつらは制御できない集団とかしています。知恵をもたざる者にいきすぎた玩具(兵器)を与えてしまったため、本来の理念を失っている』

キール『それで?』

加持「……」カチャ シュボッ

ゲンドウ『これらを克服したとしてもさらなる脅威が待っている。先のセカンドインパクトは計画性をもっておこしたことでニアで済みましたが、気候の変動で50年後における可住地は9割が海に沈む』

加持「……事前に起こしただって……」ポロ

ゼーレ『必要な粛清がよもやあのような中途半端な結果になるとはな。いずれ貧困と飢餓がくる。そして、新たな争いの火種になる』

ゲンドウ『これは予測ではなく事実だ。必然に起こる事態』

キール『使徒が来ずとも世界の終わりは近い。わかりきったことをつらねる為にここに立っているわけではあるまい』

ゲンドウ『――ふっ。では、滅びますか?』

ゼーレ『……』

ゲンドウ『我々の手で、世界を終わらせ……いえ、救済するのです。我々の望む形でだ』

キール『……』

ゲンドウ『人類終末のシナリオを我々が作るのです。かつて行われ、大成功を収めた、“ノアの方舟”ですよ』

ゼーレ『方舟……? どこにそんなものがある? 宇宙船でも作って新天地を目指すというのかね。馬鹿馬鹿しい』

ゲンドウ『これまでの発想と変わりません。我々には死海文書の外典があるのですから。理想の地球、そして完璧な個体へと人類は昇華できます』

キール『方法を聞こう』

ゲンドウ『救済の手段は既に我らの手に。ご覧ください、こちらが悲願を達成するその道具、人型決戦兵器エヴァンゲリオンのプロトタイプです』

ゼーレ『おお……! これは、セカンドインパクトにあったコピーか』

加持「――ここでおしまいか。どうしたもんかねぇ」


262 ◆qR6TCtkvbo2017/08/22(火) 19:52:43.39Y5phI0Uu0 (3/3)

【ネルフ本部 執務室】

冬月「息子の様子はどうだね。後遺症の心配はないか?」

ユイ「経過は良好です。思った以上に前向きな姿勢を見せているので違和感がありますが」

冬月「タブリスに脳を弄られていたんだろう? なにかこちらが知り得えない情報があるのではないか?」

ユイ「時間が必要です。今のところそれらしき変化は見受けられません」

冬月「しかし、どうも気になる。あのタブリスを模した少年。本当に味方と考えていいのか」

ユイ「騙し合いをしている内はまだお互いの腹の中を探っていると同義です。多少、行動に問題があると認めますが、駒を使いこなせない打ち手は無能です」

冬月「使えない駒だとしてもかね」

ユイ「盤上に不要な駒なぞありません。手の内に何枚、どのような個性を携えている駒をかかえているか……。相手の数十手先を予測し対策を行えばよいだけです」

冬月「サードチルドレンの保護観察はどうする? 碇の時と同様に一人暮らしを行う方針ではないだろう」

ユイ「職員と同居させます」

冬月「葛城宅に戻すか。それもいたしかたある――」

ユイ「いえ、そうはしません」

冬月「なに? では、赤木博士のところか?」

ユイ「違いますよ」

冬月「おい、わかっているのか。もはや俺たちの計画の要は息子が握っていると言っても過言ではないのだぞ」

ユイ「だからこそ、です。怪しまれず、なにも疑うことを知らない者にまかせましょう」

冬月「ううむ、末端の職員か」

ユイ「伊吹二尉の元にアルバイトという口実で押しこみます。赤木博士も協力的ですし、彼女から言ってもらえれば滞りないでしょう」

冬月「……」

ユイ「明日からシンジは学校に通うと言っていましたので、今日中にアパートの契約を解除しておいてください」

冬月「一度押しこんでしまえば、あとはなし崩し、か」

ユイ「帰る家がなければネルフで保護するしかありません。次の入居先のアパートが決まるまでの間、伊吹二尉の元に住まわせる。こういうテイでいきます」

冬月「わかった。すぐ手配しておこう」

ユイ「……? 先生。私が地下にいる間、だれかここに来ました?」

冬月「いや、そんな報告はあがっていない。なにか不審な点でも?」

ユイ「そう、ですか。それなら、いいんですけど……」


263以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/22(火) 22:51:15.51Q3fwL43Vo (1/1)

まってまひた


264 ◆y7//w4A.QY2017/08/23(水) 00:00:16.04p8MuYZWJ0 (1/2)

【ネルフ本部 ラボ】

マヤ「シ、シンジくんをうちでですか?」

リツコ「急で悪いんだけど」

マヤ「あの、葛城一尉のお宅だと都合が悪いんでしょうか」

リツコ「だめよ。司令には私から推薦をしておいた」

マヤ「えっ! そ、そんな。急に言われても困ります……」

リツコ「マヤ、これはあなたにとっての更生プログラムでもあるのよ」

マヤ「……」

リツコ「潔癖症の自覚、あるわよね。ひとえに潔癖症と言っても細菌に対し嫌悪感を覚えているわけじゃない。あなたのは対異性、つまり男を強く感じる性への不快感」

マヤ「あの、これまで、なんとかやってこれましたし」

リツコ「ふぅ……そうやってとりつくろって生きているとこの先辛いわよ。純情な反応……いいえ、過剰防衛とさえ思える拒絶の所以はそこにある」

マヤ「どうしても、受け入れ、しなくちゃダメですか……?」

リツコ「相手は中学生で、無害な小動物とでも考えなさい。あなたが最も優先すべきことは“異性への慣れ”。綺麗なだけの世界なんて存在しないと頭でわかっている。でも心で受け入れられないのね」

マヤ「仕事に支障はないぐらいに我慢できていますし、これからも尊敬する先輩の下で働けるのなら私……!」

リツコ「あなたの才能は見込みがあると評価しています」

マヤ「ほ、ほんとですかっ⁉︎」

リツコ「でもね、機械相手だけじゃない。人ともうまくやれる術を身につけなさい。技術者はただでさえ内に籠もりがちな環境にいるんだから。孤独は、虚しいだけだと気がつく前に……」

マヤ「先輩?」

リツコ「とにかく、これは司令からの発令なのよ。私を失望させないで」

マヤ「断ったら、先輩は、失望するんですね」

リツコ「好きだけを仕事にしたいのなら転職を提案します。ましてや、その理由が中学生の面倒を見るのが嫌だからだなんて。あの子がマヤに対して危害をくわえると思う?」

マヤ「そうは、言ってませんけど……あの、いつからですか」

リツコ「本日付けでサードチルドレンの荷物を搬送するそうよ」

マヤ「ええぇぇっ⁉︎ そ、そんなっ⁉︎ それって、業者が⁉︎」

リツコ「鍵なら副司令に頼まれてスペアキーを渡しておいたから」

マヤ「来てますよね⁉︎ もう私の家にシンジくんの荷物届いてますよね⁉︎」

リツコ「でしょうね」コト

マヤ「ど、どうしようっ! 下着、隠さないと! し、失礼しますっ!」


265 ◆y7//w4A.QY2017/08/23(水) 00:57:52.19p8MuYZWJ0 (2/2)

【マヤ宅 玄関前】

シンジ「……? えっと、僕はマンション暮らしじゃありませんよ」

諜報部員「……」

シンジ「聞こえてないのか。すぅー、僕はアパート暮らしで――」

諜報部員「サードチルドレン、以下一名を伊吹二尉宅まで護送するよう連絡がありました」カチ ピンポーン

シンジ「え? てことは、ここはマヤさんの? どうして……」

諜報部員「詳細について存じあげません」

シンジ「母さんがなにか手配したのかな」ボソ

諜報部員「私に降りてきた指示は赤木博士によるものです」カチ ピンポーン

シンジ「リツコさんが?」

諜報部員「はい。それ以上のことはわかりかねます。これが仕事ですので」カチ ピンポーン

シンジ「は、はぁ」

マヤ「す、すいませーんっ! ちょっと待ってもらえませんか!」ガチャ

諜報部員「ドアチェーンを外してください。伊吹二尉。サードチルドレンがお待ちです」

マヤ「シンジくん! 少し待てるわよね⁉︎」

シンジ「あ、あのっ!」

マヤ「ご、ごめんね! 10分で済ませるから!」バタン!

シンジ「な、なにを済ませるんだろう」

諜報部員「――……さぁ」


266以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/23(水) 02:12:02.78+mJLMP+Ro (1/1)

盛り上がって参りました


267 ◆y7//w4A.QY2017/08/23(水) 16:47:34.057woo+S8g0 (1/5)

【マヤ宅 リビング】

シンジ「……」

マヤ「……」チラ

シンジ&マヤ「……あ、あのっ!」

シンジ「あ、どうぞ」

マヤ「いえいえ、そちらこそ……」

シンジ「……」

マヤ「……」

シンジ「……ぷっ、くっくっく」

マヤ「ど、どうしたの?」

シンジ「なんだか、おかしくなっちゃって」

マヤ「あ……。ごめんね」

シンジ「いえ、謝る必要ないです。あの、僕はどうしてここにいるんですか?」

マヤ「……? シンジくん。なにも聞いてないの?」

シンジ「はい」

マヤ「そう、なんだ。てっきり先輩から話が通ってるのかと思ってた」

シンジ「話?」

マヤ「最初は、アルバイトって話だったみたいなんだけど。シンジくんが私のところで」

シンジ「僕がですか?」

マヤ「うん、そう。料理とか掃除とか。ほら、家政婦ってあるじゃない? それ」

シンジ「僕はなにも聞いてない……」

マヤ「あっ! きっと、すぐに知らせるつもりだったのよ。司令の交代とかあってドタバタしてたから遅れたのかもしれないし」

シンジ「はぁ」

マヤ「あのね、シンジくん。あなたはパイロットでしょ?」

シンジ「はい、まぁ」

マヤ「見つけてきた物件は防犯上の問題であまり良い条件とは言い難いらしいの。保安部を警護につけたとしてもパイロットの身になにかあれば大問題ですもの」

シンジ「……」

マヤ「だから、もう少し、探してみてくれない? 見つかるまではここに住んでかまわないから」

シンジ「えっ、ここに?」

マヤ「うん……」

シンジ「いや、いいですよ。マヤさんにご迷惑かけますし、ネルフのコンテナで寝泊まりすれば」

マヤ「……」

シンジ「……あの?」

マヤ「私の、更生プログラムでもあるらしいの。先輩が推薦したって」

シンジ「……?」

マヤ「突然、こんなこと言われたら戸惑うわよね。あの、私、男の人とか少し、苦手で……」

シンジ「……」

マヤ「先輩は、たぶん、シンジくんと同居させることで私に少しでも慣れさせようとしてくれてるみたい」

シンジ「あ……」

マヤ「私事で、ご、ごめんね。だから、シンジくんだけのせいじゃないの。都合が良かったんでしょうね、私たち」


268 ◆y7//w4A.QY2017/08/23(水) 17:02:04.647woo+S8g0 (2/5)

シンジ「あの、僕の荷物とかは?」

マヤ「それなら、奥の部屋に。あんまり荷物ないのね。ダンボールひとつだなんて」

シンジ「はい。必要なものはバックに収まるぐらいしか」

マヤ「そっか。……お腹すいてない? なにか食べる?」

シンジ「えっと、そうですね。……あの、本当にいいんですか? 僕がここにいて」

マヤ「ごめんなさい。本当は私、今もいっぱいいっぱいで、中学生って子供、なのよね。でも、家にあげたことないから」

シンジ「べ、べつにおかしくないと、思いますけど」

マヤ「おかしいわよ。もうハタチ超えてるのに。で、でも! 恋愛経験がその、まったくないってわけじゃ! いいかなー、って人は、これまでいたし……」

シンジ「は、はぁ」

マヤ「でも、やっぱりだめ。向こうからアプローチされても、こっちからアプローチしようにも、距離感の測り方をうまくとれないの」

シンジ「……」

マヤ「仕事だったら、必要な業務連絡を事務的に済ませればいい。日常会話で困らない程度に、ごまかす術を身につけた。自分に」

シンジ「……」

マヤ「や、やだ。なに話てるんだろう。よっぽど余裕ないのかな、私。ごめん、あの、なにか作ろうか?」

シンジ「よければ、僕が……」

マヤ「だめ!」ガタンッ

シンジ「あ……」

マヤ「ご、ごめんなさい。あの、私物にあまり触ってほしくなくて。……ごめんね」

シンジ「いや、えっと、自分の家、ですもんね。僕もなにがどこにあるかわからないし」

マヤ「その、荷物見てきたら? 奥の部屋はそのままシンジくんの部屋にしていいから」

シンジ「そう、ですね。そうします」


269 ◆y7//w4A.QY2017/08/23(水) 17:37:50.797woo+S8g0 (3/5)

【ネルフ本部 執務室】

リツコ「サードチルドレンは予定通り、伊吹二尉の宅に送り届けました」

ユイ「ご苦労様。辻褄合わせは完璧ね。伊吹二尉とシンジはもちろん、周囲も疑わないでしょう」

リツコ「マヤの場合は、症状が複雑化しているので容易でした」

ユイ「女性は世の中の習慣から、なにかにつけて守られている者という概念が強い。だからこそ自立性のある女性に特異性が生まれ、強く輝く。……皮肉ね、あなたは夫に依存して体面を保っていただけなのに」

リツコ「……!」ギリッ

ユイ「しかし、伊吹二尉はあなたの弱さを知らない。赤木博士に抱いているイメージは“どこまでもフラットで科学者な自立した女性”」

リツコ「仕事には、どんなものにも妥協しないという性質がいい面であらわれています。しかし、汚れ仕事を嫌う癖があります」

ユイ「完璧すぎる貴女はまさに彼女のなりたい自分そのもの。理想像なのでしょう。男がいなくても毅然としているカッコイイ人、かしらね。ふふっ」

リツコ「それはご自分だとおっしゃりたいのですか?」

ユイ「あら? 私?」

リツコ「不倫をしていると知っていても冷静に対処なさっていたではありませんか。しかも、私を部下に引き入れるだなんて」

ユイ「うーん、そうね? でも、あなたは優秀だから。それだよ」

リツコ「一度も、あの人を恨まなかったんですか?」

ユイ「恨む?」

リツコ「一度もなかったんでしょうか? 夫婦の契りを結び、裏切られていると知っていながら」

ユイ「一人が一人と結婚して永遠の愛を誓い合う。この永遠というのは、意識があるまでと仮定すれば死ぬまでと該当するけど。それじゃ、論理的に愛とはなにかを説明できる?」

リツコ「……」

ユイ「私ね、こう見えても、学生の頃はけっこーぶいぶい言わせてたのよ? ぶいぶいって死語か。そうねぇ……なにが言いたかっていうと」

リツコ「……?」

ユイ「――男は人類の半分よ」


270 ◆y7//w4A.QY2017/08/23(水) 18:10:41.107woo+S8g0 (4/5)

【マヤ宅 リビング】

シンジ「ごちそうさまでした」

マヤ「洗い物はそのままにしてくれていいから」

シンジ「すみません。自分の食器用意できてなくて」

マヤ「仕方ないわよ。でも、その、明日にでも買ってきておいてもらえる?」

シンジ「わかりました」

マヤ「あ、忘れちゃうところだった。私のクレジットカード渡しておくわね」

シンジ「いいんですか?」

マヤ「うん、高額な使い方されても、後で請求できると思うし、ネルフに」

シンジ「いや、そんな使い方はしませんけど。……わかりました。では、明日お返しします」

マヤ「……」チラ

シンジ「……」

マヤ「もう、寝る?」

シンジ「そうですね」

マヤ「えっ、と、あの、まだはやくない? 21時になってないけど」

シンジ「かまいませんよ。眠れなければ部屋にいますから」ガタ

マヤ「あの! シンジくん!」

シンジ「はい?」

マヤ「私、ひどい態度してない?」

シンジ「……いや、そんなことは」

マヤ「平気、なの?」

シンジ「慣れないのならしょうがないです。それに、先生の所にいた時とあまり変わりありませんから」

マヤ「それって、ネルフに来る前ってこと?」

シンジ「はい。身の回りのことは自分でやれって教わってきました。礼儀作法についても一通り。食卓も毎日がこんな感じで」

マヤ「そう、なんだ」

シンジ「僕も自分のことを話すのが苦手だから、なんとなくわかる気がします」

マヤ「あ……」

シンジ「なにかルールを決めたければ、言ってください。守れることがあれば協力します」

マヤ「あ、ありがとう」

シンジ「それじゃ、僕はこれで」

マヤ「……うん……ってちょっと待って! お風呂入ってないよね⁉︎」

シンジ「あぁ、そうですね。でも明日の朝でも」

マヤ「衣食住はキチンと不自由がないようにしなきゃ。これが私の仕事だもの。だから、入って」

シンジ「はぁ。あの、風呂はためていいんですか?」

マヤ「え……? 後で私には入れってこと? うっ、ふ、不潔」

シンジ「あぁ、えぇと、それなら、シャワーだけとか」

マヤ「だめよ。あの、後で入れ替えるから気にしないで入って?」

シンジ「は、はぁ」


271 ◆y7//w4A.QY2017/08/23(水) 18:51:49.847woo+S8g0 (5/5)

【翌日 第三新東京市立第壱中学校 HR前】

男子生徒A「おい、まだかよ」そわそわ

男子生徒B「うっせーな。もうちょいだろ」そわそわ

女子生徒A「なにあれ。そわそわしちゃってダッサ」

女子生徒B「ねーっ、ほんと男子って露骨」

シンジ「……? なんだか、今日はみんな落ち着きないね」

トウジ「あぁ、てんこーせーがくるっちゅう話やからな」

ケンスケ「そーそー。オスとしてはかわいい子がきたら嬉しくなるサガってもんだよ」

シンジ「転校生……? この時期に?」

ケンスケ「はぁ……。碇ぃ、そこはかわいいってところに反応するべきじゃないかぁ?」

シンジ「あぁ、うん……」

ケンスケ「たしかに、ウチのクラス偏差値は低くはないからねぇ。ま、主に引き上げてるのはパイロット二名の存在だけど」

トウジ「センセは不自由しとらんやろしなぁ。サクラもまったく……」

ケンスケ「……? ま、でも碇がモテてるわけじゃないんじゃないか? 彼女ってわけじゃないもんな?」

シンジ「そんな。僕は、モテてないよ。アスカと綾波はパイロットって繋がりがあるだけだから」

トウジ「これやからなぁ」

ケンスケ「あのなぁ、他にはないもんがあるっていうのはアドバンテージなんだぜ? 悪いけりゃ意味ないけど。単純に、一緒にいる時間が多いって話だろ。ネルフの仕事っていう公認でさ」

シンジ「それが?」

ケンスケ「だぁもぅっ! 碇がその気になれば、口説けるって話だよ! そういうのがしやすい環境っていえるだろ」

シンジ「あ、あはは。でも、アスカや綾波は、興味ないと思うよ」

ケンスケ「どうしてわかるんだよ?」

シンジ「なんとなく、かな。それに、選べるなら僕なんか、嫌だと思うし」

トウジ「選ぶ権利は男にだってあるやろがい! あんなゴリラ女とかこっちから願い下げや!」

ケンスケ「トウジは関係ないだろ」

トウジ「お、そうか」

ヒカリ「ちょっとあんたたち! またくだらないこと話てるんでしょ!」バン

ケンスケ「いや、その、聞こえてた?」

ヒカリ「鈴原の声であんなに大きく言えば聞こえるわよ!」

トウジ「なんや! ワシはなんも間違った発言はしとらんぞ! 女のそれはな、自意識過剰っちゅーんじゃ!」

ヒカリ「突然なに言ってるのよ!」

トウジ「男にだって選ぶ権利がある! 性格ブスは嫌に決まっとる!」

ヒカリ「せ、性格、ブスぅ……っ⁉︎ ちょっと、それ、誰のこと?」

トウジ「ふん、ゴリラ女に決まって――」

アスカ「成敗っ!」ゴン

トウジ「かはぁっ!」ガターン

アスカ「朝っぱらからやっかましいわねぇ、北京原人はバナナでも食ってなさい」

シンジ「アスカ、おはよう」

アスカ「ふん」


272以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/23(水) 22:30:46.790skklPono (1/1)




273 ◆y7//w4A.QY2017/08/25(金) 02:09:20.11ymj1j9CJ0 (1/5)

【数十分後 HR】

マナ「はじめまして、霧島マナと言います。親族の都合で越してきました。これからよろしくお願いします」ペコ

男子生徒一同「おお~~、か、かわいい」

アスカ「はん、ばっかみたい」

教師「席はぁ、そうですね。碇さんの隣があいているようだから、そこにしなさい」

マナ「はいっ!」

男子生徒A「なぁなぁ、写真よりも実物のが全然いいなっ!」

男子生徒B「シッ! 黙ってろ! 歩いていらっしゃるだろうが!」

マナ「……」スタスタ

男子生徒C「な、なんでかわいい子はいい匂いがするんだろなぁ」

男子生徒D「オーラだよ! オーラが違うんだ!」

ヒカリ「そんなわけないじゃない」

マナ「よいしょっと」ガタ

シンジ「……?」

マナ「よろしくね、碇くん」ニコ

シンジ「あ、あぁ、どうも、よろしく」

教師「霧島さんはまだ端末がきてないんだったね。碇さん、見せてあげなさい」

シンジ「はい」

マナ「あの、先生。机くっつけてもかまいませんか?」

教師「もちろんだ。ノートパソコンであるからそうしないとみれないだろう?」

マナ「ですよね、えへへ」ガタ

シンジ「あ、僕が移動させるよ」

マナ「ありがとう」スッ

シンジ「え……」

マナ「優しいんだね」

シンジ「いや、あの、手……を重ねられると、移動が」

男子生徒A「……!」

男子生徒B「ま、また! またあいつなのか……!」

マナ「ご、ごめんなさいっ! あの、私が机を移動させようとしてたから」

シンジ「ああ、そういうこと。ごめんね、気がつかなくて」

マナ「ううん、いいの」


274 ◆y7//w4A.QY2017/08/25(金) 02:11:27.67ymj1j9CJ0 (2/5)

アスカ「……」ジー

シンジ「よっと、先生、もう大丈夫です」

教師「ふむ、よろしい。おっと、もうこんな時刻か。今日は私が担当の教科なのでこのまま一限目をはじめる。洞木さん、号令を」

ヒカリ「はい。きりーつ!」

生徒一同「……」ガタガタッ

ヒカリ「礼。ちゃくせーき」

教師「では、端末を立ち上げて」

マナ「……ね、もうちょっと近くにいっていい? 私、近眼で」ズイ

シンジ「う、うん」

マナ「……? どうしたの?」

シンジ「いや、ちょっと近かったから、びっくりして」

マナ「もしかして、照れてる?」

シンジ「いや……」

マナ「ふぅ~ん。碇くんって、かわいいんだ?」

アスカ「……!」パキッ

ヒカリ「……? アスカ、どうしたの?」

アスカ「あぁ、シャーペンの芯折れたみたい」

ヒカリ「シャーペン使わないよ?」

アスカ「あれ? そうだっけ」

ケンスケ「こりゃあ、一波乱ありそうな。いやぁ~な予感」

トウジ「ほんま、センセは。どうなっとるんや」


275 ◆y7//w4A.QY2017/08/25(金) 02:39:19.52ymj1j9CJ0 (3/5)

【ネルフ本部 司令室】

マヤ「ふぅ……」

シゲル「おっ。めずらしいねぇ~、マヤちゃんがため息つくなんざ」

マヤ「私だって、ため息ぐらいつくわよ」

シゲル「なんか悩み事?」

マヤ「別に」

シゲル「あいかわらずガードのかたいこって。女は少しぐらい隙を見せたぐらいがちょうどいいぜ?」

マヤ「余計なお世話です。またギター雑誌見てるの?」

シゲル「いんや。今日はコレ」バサ

マヤ「なに……? そ、それって……!」

シゲル「かぁ~わいいっしょ? 今話題のアイドルグループのグラビア。漫画の付録についてんだけどさぁ」

マヤ「不潔っ!」バンッ

シゲル「……ん?」

マヤ「職場でそんなの見るなんて不謹慎よ! 家に帰ってから見たらっ⁉︎」

シゲル「今は空き時間だし」

マヤ「そういう問題じゃない! これは立派なパワハラよ!」

シゲル「お、おいおい」

ミサト「どったの~? なんの騒ぎ?」

マヤ「葛城さん! 聞いてくださいよ! 青葉くんが!」

ミサト「あっ! これ今話題の子たちじゃなぁ~い!」

シゲル「葛城さんも知ってるスか?」

ミサト「もちのろんよ~。くー、若い肌って羨ましいわねぇ」

マヤ「え……」

シゲル「俺はこのセンターの子が押しなんすよ」

ミサト「どれどれ……? だっはっはっ! やぁだぁっ! まだ子供じゃないのー!」

マヤ「……」ギュウ

シゲル「それがいいんじゃないすか。あどけない感じがして」

ミサト「そお~? あら? 伊吹二尉?」

マヤ「あの、葛城一尉はなんとも思わないんですか?」

ミサト「……?」

マヤ「私たちの職場でこんなの見てるんですよっ!」

ミサト「あぁ~、なる」

シゲル「マヤちゃんさぁ。ちょっと堅苦しすぎないか?」

マヤ「どうして⁉︎ 私が間違っているって言うの⁉︎」

シゲル「そうは言ってないが。そんなんじゃ、一生独身だぜ?」


276 ◆y7//w4A.QY2017/08/25(金) 02:53:37.81ymj1j9CJ0 (4/5)

マヤ「どうしてあなたなんかにプライベートの心配されなくちゃいけないのよ⁉︎」

シゲル「俺はそんなつもりじゃ……!」

ミサト「はいはい、そこまで」

シゲル&マヤ「……」

ミサト「たしかに、こういうページを嫌がるというのも理解できるわ。同じ女として、ね?」

シゲル「そういうもんすかねぇ」

ミサト「空き時間の使い方までとやかく言うつもりないけど。青葉くん、コンプライアンス違反にならない程度にね」

シゲル「うす」

ミサト「それで、マヤちゃんはぁ……ちょっち、肩の力入りすぎかな?」

マヤ「私は間違ったこと言ってません!」

ミサト「人間はね、機械じゃないの。常に正しいことで抑えつけようとしてはだめ。息抜きは必要だって理解してあげなきゃ」

マヤ「別の手段があるはずです! なにもソレを選ばなくたっていいじゃないですか!」ビシ

ミサト「そうね、言ってることはもっともだわ。だけど、改めて言うけど、“辻褄が合う行動だけ”をするのが人じゃないのよ」

マヤ「……」

ミサト「セクハラになると感じた?」

マヤ「はい、だって、そんなの……」

ミサト「そんなに嫌だったのね。……いいわ。女性に見せびらかす行為は今後控えるように」

シゲル「ちぇ」

ミサト「相手を選びなさい」

シゲル「了解」

マヤ「私が融通きかないみたいじゃない。なんで……私がこんな思いしなくちゃいけないの。間違ってないのに……!」

ミサト「すこし、落ち着きなさい」

マヤ「いいです! 失礼します!」


277以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/25(金) 05:24:33.50k3q1VMPvo (1/1)




278 ◆y7//w4A.QY2017/08/25(金) 23:51:42.58ymj1j9CJ0 (5/5)

【ネルフ本部 第四通路 女子トイレ】

マヤ「……うぷ……おぇぇっ……」ベチャベチャ

リツコ「……」スッ

マヤ「……! せ、せんぱい……」

リツコ「また、吐いてたの?」

マヤ「……」ジャー

リツコ「よくうがいなさい」

マヤ「大丈夫です」キュキュ

リツコ「やはり、その癖を治す必要があるわね。男という生物は無神経でズボラ。感性が違うのだもの」

マヤ「そうでしょうか」

リツコ「少女漫画の主人公のような、幻想から卒業できないんでしょ、あなた」

マヤ「わ、わたしは……そんなつもり……」

リツコ「汚れていないから。一線を踏みこえていれば案外割り切れるものなのに」

マヤ「仕事があれば、私」

リツコ「マヤの卒業論文を読み私はあなたを部下にするとを決めた。着眼点が優れていたからよ」

マヤ「……」

リツコ「もっと視野を広げるには、今のままじゃ頭打ち。なぜだと思う?」

マヤ「わかり、ません」

リツコ「わからないというのは思考停止しているの? それとも、わかっていて言いたくないという拒絶反応かしら?」

マヤ「人生経験は他で代用できます! 恋愛経験が全てじゃ……!」

リツコ「あなた、なにか勘違いしてない?」

マヤ「え……」

リツコ「私は結果だけを求めているの。あなたができると言うのならかまわないわ。できているのならね。……で、今は?」

マヤ「そ、それは」

リツコ「提案をしているだけなのよ。いわゆる、きっかけを。男の為に頑張る、旅行にいく、なにかを覚える、経験する、そうした動機が行動を生み可能性と言う選択肢を広げる」

マヤ「……」

リツコ「現状を打開するにあたり、なにをすべきか考えてごらんなさい。失敗をこわがっているようじゃ科学者に一生なれないわよ」

マヤ「失敗は成功の母、ですか。納得できません」

リツコ「自分自身に、なにがプラスになるか。やり方は自由よ」


279以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/26(土) 02:30:06.67Y3QeeAseO (1/1)

まだ続いてたのか


280以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/26(土) 02:46:08.40S8HqIS1to (1/1)

リッちゃんイイヨー


281 ◆y7//w4A.QY2017/08/26(土) 11:32:59.80bPa3y6d00 (1/9)

【第三新東京市立第壱中学校 昼休み】

トウジ「さぁて、購買パン買いに行くかぁ」

シンジ「トウジ、僕も行くよ」

トウジ「今日は弁当やないんか?」

シンジ「あ、うん。しばらくそうなりそう、かな」

トウジ「行くならはよ行くで。カツサンドが売り切れてしまうからな」

マナ「あの……」

トウジ「お」

シンジ「……? なにか用? 霧島さん」

マナ「お昼まだなんだけど、購買パンてどこで買えばいいのかな?」

シンジ「それなら、一階の――」

トウジ「センセはだあっとれ!」グイ

シンジ「むぐっ⁉︎」

マナ「口と鼻塞いだら息が」

トウジ「霧島、やったか。俺らも今からとこやから一緒に行くか?」

マナ「いいの?」

トウジ「かまへんで。お前やったら、男子どいつに聞いても喜んで案内するやろうが」

マナ「そ、そんなこと」

トウジ「まぁ、転校初日からいきなり女王様状態になると女子達からやっかみがあるやろからなぁ。ゴリラ女ほど強靭な精神しとるなら話は別やが」

マナ「ご、ゴリラ女?」

トウジ「ほんま、女っちゅーのは猫かぶるから信用できひん。あいつはまさに唯我独尊みたいやつや」

マナ「は、はぁ。その、碇くん、顔が……」

トウジ「なんや、やっぱりシンジが目当てやったんか?」

マナ「そうじゃなくて」

トウジ「こいつはなかなかにモテよるからのお。ライバルは多いで?」

シンジ「……」グタァ

マナ「い、碇くんっ⁉︎」

トウジ「なんや? ……っておわぁっ⁉︎ おい、シンジ、しっかりせぇ!」


282 ◆y7//w4A.QY2017/08/26(土) 12:40:41.26bPa3y6d00 (2/9)

【十分後 再び教室】

トウジ「めしやめしー」

ケンスケ「驚いたよ。まさか噂の転校生と一緒に食べるとはねぇ」

マナ「迷惑だった?」

ケンスケ「い~や。ただ、普通は男子は男子、女子は女子でグループを作るモンだろ? 転校初日だし、友達を作るにしたって僕たちのところにきたのが意外でさ」

シンジ「……」ガサガサ

マナ「うん、私もできれば、女の子と仲良くなりたいけど。なんか、視線がきつくて」

トウジ「あん? そんなん気にしとったらあかんで。最初は物珍しさも相まってるだけやろ」

ケンスケ「ま、素材がかわいいからねぇ。嫉妬に巻き込まれやすいのは納得。そういや、碇と惣流が転校してきた時もけっこう騒ぎになったもんなぁ」

マナ「そうなんだ?」

ケンスケ「ああ。碇はロボットのパイロットだとみんなに発覚した時。同じパイロットの惣流は持ち前の美貌から」

マナ「碇くんが⁉︎ すごいっ!」

シンジ「そんな。たいしたことないよ」

マナ「みんなを守ってるんでしょう⁉︎ かっこいいなぁ」

ケンスケ「はぁ。やっぱり、エヴァの操縦士はステータスだよなぁ」

マナ「でも、不思議。パイロット同士で食べないんだ?」

シンジ「そうだね。僕たちは、あくまでネルフという繋がりがあるだけだから。プライベートまで仲良くなる必要はないんだ」

マナ「一緒にいる時間が長ければ仲良くなったりしないの?」

ケンスケ「ほらほら、みんなそう思うよなぁ?」

シンジ「はは。……そうなってもおかしくないのかもしれないけど、そうはなってない」

トウジ「仲良くなるにしても相手次第っちゅーことや。合う合わんはある。だいたいあんなゴリラ女――」

ケンスケ「わかったわかった。パン食いながら喋るなよ」

マナ「惣流さん? って、どの人?」

ケンスケ「あいつなら、あそこ。髪にブローチつけてるから目立つだろ。そうじゃなくったってクォーターだし」

マナ「あぁ、あのキレイな子……教室に入ってきた時から、目についてた」

ケンスケ「素材はいいんだけどねぇ」

マナ「もう一人、キレイな子いるよね?」

ケンスケ「綾波かぁ? そっちもエヴァのパイロットさ」

マナ「へぇ……。このクラスにパイロットが三人も……?」

ケンスケ「うん、まぁ、言われてみれば凄い偶然だよな」

マナ「惣流さん、綾波さんと話してみたいなぁ」

トウジ「やめといたほうがえーで。噛みつかれるわ」

シンジ「アスカと綾波はそんなことしないよ」

ケンスケ「とっつきやすいとは言いがたいんじゃないか。特に綾波はシンジじゃないと会話になるのかさえ怪しいし」

トウジ「せや。それやったら、委員長を間に挟めばええんとちゃうか」

ケンスケ「惣流相手だと、いい考えだね。綾波は――」

シンジ「……?」

トウジ&ケンスケ「シンジ。出番」

シンジ「へ?」

トウジ「紹介しようにもセンセの他に誰が会話になるっちゅーねん」

マナ「あ、あの。迷惑だったら……」

トウジ「かまへんかまへん。友達は作っとくべきや。な、シンジ」

シンジ「……うん、そうだね。アスカと綾波、どっちからにする?」


283 ◆y7//w4A.QY2017/08/26(土) 13:03:57.94bPa3y6d00 (3/9)

アスカ「――でさぁ、加持さんったらこんなこと言うのよ?」

ヒカリ「……? 碇くん?」

シンジ「食事中にごめん。ちょっといいかな?」

マナ「あの、どうも」

アスカ「転校生じゃない。なに?」

シンジ「まだ、友達がいないんだ。だから、仲間にいれてあげてくれないかな」

ヒカリ「私はいいけど。アスカは?」

アスカ「ふぅ~ん。どうして私達のところなの?」

マナ「碇くんたちから話を少し聞いて。話てみたいなって。深い意味はないんだけど」

ヒカリ「あ、そっか。碇くんとは席が隣同士だもんね」

シンジ「うん、アスカは悪い子じゃないし。話してみたらいいんじゃないかなって」

アスカ「ぶっ」

ヒカリ「……うん、一緒に食べよ? あ、もう食べちゃった?」

マナ「あ、うん。今日は」

アスカ「はぁ……。席、そこらへんの使っていいんじゃない? 昼休みだし、文句言ってこないでしょ」

シンジ「よかった。ありがとう、アスカ、洞木さん」

マナ「碇くん、ありがとう。わざわざ紹介してもらって」

シンジ「また後で、綾波にも紹介するから。声かけてくれたら」

アスカ「ファーストに?」

シンジ「綾波、友達少ないだろ。だから、いいんじゃないかと思って」

マナ「ち、違うの。惣流さんにも綾波さんにも私が」

シンジ「僕からってことにした方がいいよ」こそ

マナ「あ、ありがとう。……優しいんだね」

アスカ「……? そ。まぁどうでもいいけど。どうせろくに話続かないと思うし」

ヒカリ「とりあえず座ったら?」

シンジ「僕はこれで」

マナ「わかった。また後で。……あの、シンジくんって呼んでもいい?」

アスカ「はぁ?」

シンジ「いいけど……」

マナ「よかった! その、シンジくんともお友達、だよね?」

シンジ「ああ、うん」ポリポリ

ヒカリ「……」チラ

アスカ「ちょっと! 座るの⁉︎ 座らないの⁉︎」

ヒカリ「あ、アスカ」

マナ「ご、ごめんなさい。えへへ」

シンジ「それじゃ」スタスタ


284 ◆y7//w4A.QY2017/08/26(土) 13:29:26.86bPa3y6d00 (4/9)

アスカ「……」

マナ「よろしく。霧島マナっていいます」

アスカ「朝聞いたからそれは知ってる。あんなのと友達になったってろくなことないわよ?」

マナ「……?」

ヒカリ「……」もぐもぐ

アスカ「三馬鹿グループにはいるよりかはこっちに入った方が断然いいわ。判断は間違ってなかったわよねぇ」

マナ「惣流さんは、シンジくんと仲良くないの?」

アスカ「あ~ら、もう親しく名前呼びなんだぁ? さっきの今で随分躊躇なく呼ぶじゃなぁ~い?」

マナ「え? その……」

ヒカリ「仲、いいよ! アスカは素直じゃないだけから」

アスカ「ヒカリっ!」

ヒカリ「もう、霧島さんはなにもわからないんだから」

マナ「えっと、洞木さん、だよね?」

ヒカリ「ヒカリって呼んで? 私もマナって呼んでいい?」

マナ「もちろん。惣流さんは……」

アスカ「ちっ、アスカでいーわよ」

ヒカリ「ご、ごめんね。アスカ、碇くんの話題になると厳しめっていうか、ちょっと扱いが難しくなるんだ。女の子同士だと凄く良い子なんだけど」

アスカ「ちょっと! どーゆう意味!」

マナ「(くすっ、意識してないわけじゃないんだ)」

ヒカリ「マナ、驚いちゃってるじゃない。名前呼びだって気にしないの」

アスカ「その言い方っ! 私がつっかかってるみたいじゃない!」

ヒカリ「違うの?」

アスカ「違うわよ!」

マナ「本当に、席が隣で親切にしてもらったからってだけだよ」

アスカ「……あいつムッツリだから。気をつけた方がいいわよ」

マナ「そうは見えないけど」

アスカ「それがまた曲者なのよぉ~。そうよ、私はただ転校生に助言をしてるだけ。わかった? ヒカリ」

ヒカリ「はいはい」

マナ「わかった、気をつける」

ヒカリ「親族の転勤だったっけ? めずらしいね、この時期に」

マナ「急でドタバタしちゃったんだけど」

アスカ「使徒がくるこの街に越してくるなんてなかなかいないわよね、おまけに都心はネルフ関係者しか住めないし」

ヒカリ「疎開、する人も少なくないもんね」

マナ「危ないってわかってるけど、守られてるし。そうだ、シンジくん達に聞いたけど惣流さん、パイロットなんでしょう?」

アスカ「あいつ……! なにベラベラ喋ってんのよ」

ヒカリ「隠してたわけじゃないでしょ」

アスカ「まぁ、そうだけど」

マナ「わぁ、かっこいいなぁ!」

アスカ「そ、そう?」

マナ「うんっ! 憧れちゃう」

アスカ「……そっか。まぁ、トーゼンよね! なんてったって私はエリートなんだから!」


285 ◆y7//w4A.QY2017/08/26(土) 22:03:23.93bPa3y6d00 (5/9)

【放課後 教室】

ヒカリ「アスカ、今日、ネルフの用事は?」

アスカ「なにもなーい」

ヒカリ「それじゃ、途中まで一緒に帰らない?」

マナ「あの、私もいいかな?」

ヒカリ「いいけど……。住まいはどこらへん?」

マナ「地名はまだ。コンフォート17マンションってところなんだけど」

アスカ「え……? そこって、私が住んでるマンション?」

マナ「そうなの?」

ヒカリ「へぇ、偶然だね。なら大丈夫。一緒に帰ろ?」

マナ「う、うん!」

アスカ「親族ってなにしてる人なの?」

マナ「興味ないから詳しくは。なんだったかな……エンジニアしてるって言ってたけど」

アスカ「ふぅ~ん」

マナ「アスカっていつもはネルフに寄るの?」

アスカ「テストとかがある時はね」

マナ「そうなんだぁ。大変だね?」

アスカ「ま、これもエリートの義務ってやつね。あたしはエースなんだし」

マナ「エース? 凄いなぁ。一番成績がいいんだ?」

アスカ「あったりまえよ。成績だけじゃないわ。迫り来る使徒に対してもあたしとあたしの弐号機は唯一無二なんだから」

マナ「他の二人は?」

アスカ「あいつらは単なるおまけ。チョコボールのおまけより粗末なモンね」

マナ「じゃあ、アスカがこれまでの怪獣を全部やっつけちゃったんだ?」

アスカ「う……。そ、そういうわけじゃ」

マナ「……?」

アスカ「あたしはまだ日本に来て間もないし! 初陣が終わったぐらいなの!」

マナ「へ? えっと、これまでにいくつかきてるよね……」

ヒカリ「碇くんと綾波さんが倒したのよ」

マナ「そうだったんだ」チラ

アスカ「……」ぶっすぅ

マナ「こ、これからだもんね! アスカは!」

アスカ「ふん」プイ


286 ◆y7//w4A.QY2017/08/26(土) 22:42:47.16bPa3y6d00 (6/9)

【ネルフ本部 模擬体室】

リツコ「シンジくん。変わりはない?」

シンジ『はい』

リツコ「次、射撃訓練に移行して」

マヤ「……」

リツコ「マヤ? なにぼーっとしてるの」

マヤ「あっ、す、すみません。えっと、なんですか?」

リツコ「インダクションモードへの移行」

マヤ「了解、バーチャルリアリティスタンバイ。仮想敵の投影、開始します」

リツコ「シンクログラフに変化は?」

マコト「チェック2550までオールクリア」

シゲル「臨界点まで、後0.5。全回路、異常なし。パルスによる侵食ありません」

リツコ「やはり、脳に影響は見受けられないみたいね……」

マコト「……? なんのテストですか? これ」

リツコ「独り言よ。気にしないで。本案件は、新兵器のデータ採取」

シゲル「ポジトロンスナイパーライフルの小型化ですか。あれ、燃費悪いっすからねぇ」

マコト「なにせ電力がなぁ」

リツコ「実用化が進めば、威力は多少落ちるでしょうけど中距離戦において大きな戦力アップが見込めるわ」

ミサト「そりゃ助かるぅ~」クルクル

リツコ「椅子をまわして遊んでるの、楽しい?」

ミサト「それほどでも。しかし、シンジくんとマヤちゃんが同居するなんてビックリだわ」

マヤ「……」ピク

シゲル「俺も俺も。意外な組み合わせっすよね」

リツコ「またその話? 無駄話をしないで。これは遊びじゃないのよ」

ミサト「だってさっきよ? 聞いたの。あたしゃ心配してたんだからさぁ」

リツコ「ミサトが?」

ミサト「そ。シンジくんが一人暮らしするって聞いてあのアパートじゃ。リツコにだって話てたじゃない」

リツコ「そういえばそうだったかもしれないわね」

ミサト「あらま。あいかわらず淡白ね~」

リツコ「興味ないもの」


287 ◆y7//w4A.QY2017/08/26(土) 23:22:30.68bPa3y6d00 (7/9)

【夜 マヤ宅 リビング】

マヤ「ふぅ……よし。シンジくーん。ご飯できたよー」

シンジ「はーい」

マヤ「シンジくんのお皿は、これよね?」

シンジ「そうです」

マヤ「今日もテストお疲れ様。新兵器開発、うまくいくといいね」

シンジ「そうですね、それがみんなの為になるなら」

マヤ「みんなもそうだけど、シンジくんだって痛い思いしなくて済むかもしれないのよ?」

シンジ「期待すると、ガッカリしますから」

マヤ「あ……そ、そうよね。前線で戦ってる側からしたら気休めにならないか」

シンジ「かまいませんよ。それが僕のやるべきことですから」

マヤ「疲れない? そういう生き方」

シンジ「すこし。だけど、できることがわかる内はやろうって決めたんです」

マヤ「へぇ……」

シンジ「いただきます」パク

マヤ「今日は、魚のムニエルにしてみたんだけど」

シンジ「……」もぐもぐ

マヤ「どう? 私、料理を振る舞うのすらあんまり」

シンジ「おいしいですよ。すごく」

マヤ「よかった。健康管理は私の仕事ですから、たくさん食べてね」カチャ

シンジ「あっ! ま、マヤさん!」

マヤ「……?」

シンジ「食べるんですか? それ」

マヤ「食べるわよ? 私もお腹すいてるし」

シンジ「僕、今日はすごくお腹すいてるんです。よかったらもらえませんか?」

マヤ「えぇ? そんなに?」

シンジ「はい」

マヤ「シンジくんって結構食べるのね?」

シンジ「今日は授業で体育があったんです。男子はバスケットボールで」

マヤ「そうなんだ。……わかった。私は後で作りなおすから、食べていいよ」

シンジ「わぁ、嬉しいなぁ」

マヤ「ふふっ、そうしてると本当に中学生みたいね」

シンジ「はは」もぐもぐ


288 ◆y7//w4A.QY2017/08/26(土) 23:32:13.80bPa3y6d00 (8/9)

【数十分後 同リビング】

マヤ「シンジくん、メンズ用シャンプー買ってきたの置いておくから」

シンジ「ありがとうございます。先に風呂はいりますね」

マヤ「えぇ。上がる時に風呂の栓を抜いておいてね」

シンジ「はい」ガラガラ

マヤ「ふぅ……。うまくできたかな、相手は子供なんだし、少しずつ慣れていけば、少しずつ」

TVCM「本当の自分をあなたに! コンタクトで世界が変わりますよー」

マヤ「本当の自分、か。さて、私もご飯食べよっと。……あ、フライパンに少し残ってるんだった」ぱく もぐもぐ

TVCM「うまーい! エバラの焼き肉のタレ!」

マヤ「うっ! ま、まずっ! ……なにこれ⁉︎ うそっ⁉︎ お砂糖とお塩間違えてる⁉︎」

シンジ『おいしいですよ、すごく』

マヤ「え? だってさっき、たしかそう言って……――」

シンジ『僕、今日はすごくお腹すいてるんです』

マヤ「も、もしかして、わざと……? 私に食べさせないために?」

シンジ『わぁ、嬉しいなぁ』

マヤ「バカ。私、なにやってるのよ……。中学生に気を使わせて」


289以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/26(土) 23:37:58.29lkKpu6jI0 (1/1)

大人過ぎる


290 ◆y7//w4A.QY2017/08/26(土) 23:53:27.90bPa3y6d00 (9/9)

【コンフォートマンション マナ宅】

マナ「定時連絡です。サードチルドレン、セカンドチルドレンへの接触に成功しました」

戦自高官「ご苦労。反応はどうだ」

マナ「初日ですので積極的な行動は控えています。ファーストインプレッションは滞りなく取り入れられたと思います」

戦自高官「もう一人のチルドレンについては?」

マナ「明日未明に接触を試みます」

戦自高官「とりあえず、出だしは順調といったところか。目的を忘れるなよ。仲良しクラブを作るために派遣したのではない」

マナ「了解しています。あの、ムサシとケイタは……」

戦自高官「心配に及ばんよ。今は訓練生として従事している」

マナ「少しだけでも! 話できませんか⁉︎ 私、頑張りますからっ!」

戦自高官「頑張りなど必要ない。良い知らせだけを期待している。キミの貢献に対して、我々は必ずや応えるだろう」

マナ「だめ、ですか」

戦自高官「まずはデータだ。サードチルドレンから碇一族について情報を聞き出せ」

マナ「でも、あの子、普通の子みたいでしたよ!」ギュゥ

戦自高官「ふん、さっそく情に流されだしたか。親が特殊なのだよ。親が親なら子も子だ。なにか引き出しがあるはず」

マナ「もし、なかった場合は?」

戦自高官「内閣府の可決で、中東に人材を派遣する法案が近々通るそうだ。数千人ほどな」

マナ「そんな⁉︎ 治安の安定していない激戦区じゃないですか! そこにムサシとケイタを⁉︎」

戦自高官「霧島隊員。絶対になにかある。貴様の任務を忘れるな」

マナ「……了解……しました」

戦自高官「時間の猶予はある。励めよ」プツ


291 ◆y7//w4A.QY2017/08/27(日) 00:22:03.53dg9h+A5m0 (1/9)

【コンフォートマンション ミサト宅】

ミサト「よっほっ! ふんっほっ!」

アスカ「なにしてんの……?」

ミサト「ふんっ、ほっ、エクササイズのっ、ダンスっ! アスカも、やるっ?」

アスカ「いい」

ミサト「ふぅ……」カチ

アスカ「なんでまた急に」

ミサト「青葉くんがアイドルのグラビア見てたんだけどさぁ、あたしもまだまだ負けてらんないかなって闘志がね」

アスカ「その発言がますますババくさい」

ミサト「アスカもねぇ、油断してるとほんとあっという間よ? 今は若いから肌も代謝もいいけど」

アスカ「あーそー」

ミサト「さて、エビちゅ、エビちゅっと」

アスカ「エクササイズした意味あんの? それ……」

ミサト「これはクスリなの! 明日への活力! 今日を頑張った自分へのご褒美!」

アスカ「めんどくさ。好きにしたら? 風呂はいるわよ」

ミサト「ちょっちまった。忘れるとこだった。アスカにも一応教えておくけど、シンジくんの一人暮らしなくなったわよん」

アスカ「えぇっ⁉︎」

ミサト「これで一安心かなぁ。さすがにあの歳でアパート暮らしのたった十万支給はねぇ……」

アスカ「いつ⁉︎ いつここに帰ってくんの⁉︎」

ミサト「っと、おんやぁ~? シンちゃんが恋しいのぉ~ん?」

アスカ「あれ見ても同じセリフ吐ける?」チラ

ミサト「な、なぁ~る。けっこーたまってるわね。キッチンの洗い物」

アスカ「それだけじゃないわよ! 洗濯物も! あぁんもう、ミサトがコインランドリー行かないからじゃなぁい!」

ミサト「そ、そりは……。忙しくて」

アスカ「無駄な努力をやってたやつが言う⁉︎」

ミサト「む、むだってぇ。あたしだってイケるって」

アスカ「衣・食・住! これ生活のキホン! 三大要素!」

ミサト「めんぼくない」シュン

アスカ「で? シンジはいつ帰ってくるの?」

ミサト「それがぁ、その……」

アスカ「嫌な予感がする。なんで言いづらそうにしてんのよ」

ミサト「さぁ~すがアスカ! もう、勘がいいんだからぁ~ん」カシュ

アスカ「……ここには、帰ってこない?」

ミサト「んくんくんくっ、ぷはぁ~~っ! はい! 帰りません!」

アスカ「なんとかしなさいよっ!!」


292以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/27(日) 13:19:57.36Ch61ICrmo (1/1)

更新頻度上がってうれしい


293 ◆y7//w4A.QY2017/08/27(日) 17:02:04.02dg9h+A5m0 (2/9)

【翌日 早朝 マナ宅】

マナ「はぁ~い?」ガチャ

加持「ちょうど近くを通りかかったもんでね、これから学校だろ?」

マナ「誰かと思ったら、加持監査官でしたか」

加持「不用心にドアを開けてよかったのか? 相手が誰か見当がついていなかったんだろ」

マナ「いいんです、そこまで息を潜めなくて。私は、私らしさを忘れたくない。上がっていきますか?」

加持「そのつもりで寄らせてもらったんだ。……ああ、用意しながらでかまわない。昨日一日の様子を聞いておこうと思ってな、失礼するよ」

マナ「はい、どうぞ。適当に座ってください」

加持「――それで、シンジくんたちの印象をどう見る?」

マナ「まだ初日を終えたばかりですよ? そう早々と結論はだせません」

加持「現時点でキミが受けている見解を聞いているのさ。これからやりとりを重ねるにつれて情報は増えるだろうが、とりあえずのね」

マナ「普通の子じゃないですか?」シュル パサ

加持「それだけかい?」

マナ「はい。戦自にも昨夜、定時連絡の折にそう報告しています」

加持「ふっ、それだけじゃ頭のお堅い連中は納得しなかったろう?」

マナ「頑張りますって言っても……相手にされませんでした。意思表明は必要ないって」

加持「だろうね。マナちゃんの経歴書に目を通させてもらったよ。この、度々でてくるムサシとケイタというのは友達かい?」

マナ「幼馴染です。私たち、物心ついた時から、辛い時も楽しい時も同じ環境で過ごしてきました」

加持「戦自に入隊しようとした動機を聞いても?」

マナ「最初は……志願した理由ってほんとにささいなきっかけで。なんだと思います?」

加持「さてね」

マナ「お腹いっぱいご飯を食べられる。それだけだったんです」

加持「……」

マナ「私は、ムサシとケイタと笑って毎日が過ごせるなら満足でした。でも、入隊してから数ヶ月がたったある日、二人の様子がだんだんと変わっていったんです」ギュゥ

加持「国のためという大義名分。団体生活の中で洗脳されていったのか」

マナ「二人ともなにも見えてないんです! 私たちは兵士で、使い捨てのただの駒扱いだって!」

加持「間違っちゃいない。国はそういう目的で人材をかき集めているからな」

マナ「こわくなりました。二人が、もしかしたら……ううん、このままだと間違いなく、死んじゃうって」

加持「なるほど。それで、この任務で白羽の矢が当たった時、キミは飛びついたわけか」

マナ「これしかないんだもん。救うためには」

加持「……」

マナ「戦自の上官は私に約束してくれました。必要な情報を引き出し、結果を示せば、三人とも前線から遠い情報作戦室に配置してくれるって」

加持「(ウソだろうな)」

マナ「だから、それを信じて私は、やります」

加持「事情は把握した。俺からこの道の先輩としてひとつアドバイスをしよう」

マナ「……?」

加持「自分を守れるのは、自分だけだ。退路は常に用意しておけ」

マナ「簡単に言わないでくださいよ」

加持「頭の片隅に入れておくだけでも違うもんさ。良心の呵責でまわりを利用するのに躊躇しちゃいけない、一瞬の判断の遅れが生死を分ける」

マナ「……」

加持「例えば、シンジくんに辛い思いをさせてまで利用することになってもね」

マナ「私は、そのつもりです。ターゲットなんですから」

加持「そうは言っても一線をなかなか踏み越えられないものさ。ま、どう行動するかはマナちゃん次第だけどな」



294 ◆y7//w4A.QY2017/08/27(日) 17:35:29.40dg9h+A5m0 (3/9)

【第三新東京市立第壱中学校 HR前】

シンジ「おはよう」ガララ

アスカ「あ、シン――」

マナ「シンジくん! おはよう!」タタタッ

アスカ「っと」

シンジ「マナ、おはよう」

マナ「あの、端末がまだ来てないんだ。明日には届くらしいんだけど。だから、今日も……」

シンジ「ああ、うん。大丈夫だよ」

ヒカリ「これで日直の仕事終わりっと。……? アスカ、手あげたまま固まってなにしてるの?」

アスカ「えっ⁉︎ あ……え~と、それはその~、あ、あ~コンタクトズレちゃったぁ~」

ヒカリ「へ? アスカ、コンタクトしてたの?」

アスカ「してないけど」

ヒカリ「は、はぁ……」

マナ「あのね、今日は、あとで綾波さんに紹介してほしいな。シンジくんが暇な時でかまわないから」

シンジ「わかった。昼休みでいい?」

マナ「うん、ごめんね? なんだか、いろいろ迷惑、だよね……?」

シンジ「そんな。気にしなくていいよ、マナはまだ二日目だし」

マナ「ありがとうっ! 嬉しいっ!」ハグ

シンジ「わわっ⁉︎」

男子生徒A「だ、抱きついたっ⁉︎」

男子生徒B「なんてうらやま、けしからんやつぅ!」

女子生徒A「なぁ~にあれ。見せつけちゃってさぁ」

ヒカリ「わぁ……大胆だね、マナって」

アスカ「ヒカリ、席につくわよ」

ヒカリ「いいの? アスカ」

アスカ「なにが?」

ヒカリ「う、うーん? いいなら、いいけど」

シンジ「その、みんなこっち見てるから、離れて」

マナ「あっ! ご、ごめんなさい! つい嬉しくってはしゃいじゃった、えへへ」

シンジ「素直なんだね、マナは」

マナ「そう? 前の学校ではそう言われることあったかも」

シンジ「そうなんだ? 前はどこに住んでたの?」

マナ「ここよりずっと田舎の方。のどかで、私は嫌いじゃなかった」

シンジ「……さみしいの?」

マナ「昨日も、思い出して泣いちゃった。まだきたばっかりだからかな。ちょっと、ホームシック」

シンジ「あ……」

マナ「でも、アスカやヒカリみたいな新しいクラスメートができて嬉しい。それに、その……シンジくん、優しいし……隣でよかった」ポッ

シンジ「いや、まぁ、その」

アスカ「ちっ」

ヒカリ「……」


295 ◆y7//w4A.QY2017/08/27(日) 17:59:44.40dg9h+A5m0 (4/9)

アスカ「あたし思うんだけどさぁ、パイロットて常日ごろから危機意識もたないといけないんじゃないかしら?」

ヒカリ「はじめて聞いた」

アスカ「だらしなく! デレデレと! するのはどうかと思わない? 私たち使命があるんだから」

ヒカリ「そうだね?」

アスカ「マナもマナよねぇ。昨日せっかく注意してあげたのに、上っ面に騙されちゃだめだって」

ヒカリ「う、うん」

アスカ「委員長、注意しなくていいの?」

ヒカリ「へ? なんで?」

アスカ「風紀の乱れは校則の乱れでしょ!」

ヒカリ「でも、あれぐらいいいんじゃない?」

アスカ「ぐぬぬ……」

ヒカリ「アスカ、もう少し、素直になりなよ。アスカだって、とってもかわいいのに」

アスカ「はぁ、なにについて? まるで私がシンジに素直じゃないみたいじゃない。私は、あくまでも――」

マナ「あの、今度、お礼がしたいな。一緒にどこか遊びにいかない?」

アスカ「ちょ、ちょっと」

ヒカリ「わあ、大胆プラス積極的」

シンジ「そこまでしてもらっちゃ悪いよ。僕はできることしかしてないから」

ヒカリ「断るのかな」

アスカ「とーぜん!」

マナ「全然! 気にしないで? むしろ、私が申し訳なくて……」

シンジ「うぅん」

アスカ「なに悩んでんのよバカシンジ! 男らしくきっぱり断りなさいよ!」

ヒカリ「ちょっと待ってて」ガタ

アスカ「……?」

マナ「や、やっぱり、迷惑だよ、ね?」

シンジ「そういうわけじゃ」

ヒカリ「碇くん、マナ、おはよう」

マナ「ヒカリ。おはよう」

シンジ「おはよう」

ヒカリ「どこかに遊びにいくの?」

マナ「え? 聞いてた?」

ヒカリ「ごめんね。ちょっと聞こえちゃって」

シンジ「いや、僕は」

ヒカリ「アスカと鈴原たちも誘ってみんなでプールに行かない?」

マナ「わぁ、いいね! そうしようよ!」

ヒカリ「うん、よかった。アスカぁー! ちょっとこっちきて!」

アスカ「……」ぶっすぅ

ヒカリ「みんなで遊びにいかないかって! もちろん行くよね?」

シンジ「女の子同士で行ってきな――」

ケンスケ「そりゃないんじゃないか碇ぃ~! なんだぁ? 友達におすそ分けしないってのかぁ?」

シンジ「ケンスケ、おはよう。おすそ分けってなにを?」

ケンスケ「プライベートの水着姿なんて高く売れるに決まってるだろ!」こそ

シンジ「ああ……」


296 ◆y7//w4A.QY2017/08/27(日) 22:44:24.63dg9h+A5m0 (5/9)

【同学校 昼休み】

シンジ「綾波」

レイ「……? 碇くん?」

マナ「こんにちは。話するのはじめてだね、えへへ」

シンジ「転校生の霧島マナさん。こっちが綾波。エヴァのパイロットだよ」

レイ「……」ジー

マナ「よろしく。よければ、友達になってもらえないかな?」スッ

シンジ「……」

レイ「私が? あなたと?」

マナ「え? ……うん」

レイ「なぜ?」

マナ「え、えっと」

レイ「命令があれば、そうするわ」

マナ「命令って……あの、碇くん」

シンジ「綾波は誰に対してもこうだから。こういう子なんだよ」

マナ「碇くんにも?」

シンジ「僕だって例外じゃない。最近は、少し喋るようになったけど。それに、いきなり仲良くできなくても仕方ないじゃないか」

マナ「(碇くん、綾波さんとアスカで接し方が違うのね。この違いは……? 個性の違い? なにか、ひっかかるような……)」

シンジ「どうしたの? 考えごと?」

マナ「う、うぅん。私、反省してたの。そうよね、いきなり仲良くなってなんて無理よね」

シンジ「よかった、綾波のこと嫌いにならないでくれて。少し、時間がかかるかもしれないけど、僕がいない時も話かけたらいいんじゃないかな」

レイ「碇くん」

シンジ「うん?」

レイ「報告したい件がある。この前の話」

マナ「(……なんだろう、もしかして、情報……?)」

シンジ「わかった。ここじゃなんだから、屋上に行こうか」

レイ「ええ」

シンジ「マナ。僕たちは少し席をはずすね」

マナ「うん……」


297 ◆y7//w4A.QY2017/08/27(日) 22:46:11.75dg9h+A5m0 (6/9)

名称が碇くんになってしまってるミスあるんで訂正レスします


298 ◆y7//w4A.QY2017/08/27(日) 22:47:16.87dg9h+A5m0 (7/9)

【同学校 昼休み】

シンジ「綾波」

レイ「……? 碇くん?」

マナ「こんにちは。話するのはじめてだね、えへへ」

シンジ「転校生の霧島マナさん。こっちが綾波。エヴァのパイロットだよ」

レイ「……」ジー

マナ「よろしく。よければ、友達になってもらえないかな?」スッ

シンジ「……」

レイ「私が? あなたと?」

マナ「え? ……うん」

レイ「なぜ?」

マナ「え、えっと」

レイ「命令があれば、そうするわ」

マナ「命令って……あの、シンジくん」

シンジ「綾波は誰に対してもこうだから。こういう子なんだよ」

マナ「シンジくんにも?」

シンジ「僕だって例外じゃない。最近は、少し喋るようになったけど。それに、いきなり仲良くできなくても仕方ないじゃないか」

マナ「(シンジくん、綾波さんとアスカで接し方が違うのね。この違いは……? 個性の違い? なにか、ひっかかるような……)」

シンジ「どうしたの? 考えごと?」

マナ「う、うぅん。私、反省してたの。そうよね、いきなり仲良くなってなんて無理よね」

シンジ「よかった、綾波のこと嫌いにならないでくれて。少し、時間がかかるかもしれないけど、僕がいない時も話かけたらいいんじゃないかな」

レイ「碇くん」

シンジ「うん?」

レイ「報告したい件がある。この前の話」

マナ「(……なんだろう、もしかして、情報……?)」

シンジ「わかった。ここじゃなんだから、屋上に行こうか」

レイ「ええ」

シンジ「マナ。僕たちは少し席をはずすね」

マナ「うん……」


299 ◆y7//w4A.QY2017/08/27(日) 23:11:10.20dg9h+A5m0 (8/9)

【同学校 屋上】

レイ「手の具合、どう?」

マナ「……」ソォー

シンジ「問題ないよ。アダムがいる違和感はあるけど」

レイ「同化は……――」

マナ「(ここからじゃよく聞こえない……)」ススッ

シンジ「昨日、部屋で包帯をとってみたんだ。確認したら体内にとりこめるんだね」

レイ「碇くんの一部になればなるほど、外見上は普通になっていく」

シンジ「神経を集中していないと思うように目立たせなくできないから、まだ包帯は必要だけど」

レイ「そう」

シンジ「母さんはここまで知っていて僕に移植したのかな」

レイ「ええ」

シンジ「そう、だよね。怪我はいつか治るし、このままの状態じゃ隠せるわけないんだ」

レイ「赤木博士のデータベースにアクセスした」

シンジ「どうだった?」

レイ「権限はレベルEEE。リリスがいるフロアのヘブンズドアと同じ」

マナ「(シンジくんの手になにが……? リリスって……?)」

シンジ「やっぱり、調べるのは難しそう?」

レイ「……」コクリ

シンジ「どうしようかな……。リツコさんに頼むわけにも……」

レイ「電子制御は、アダムの力を使えばできなくもない」

シンジ「え?」

レイ「衝動は平気?」

シンジ「昨日の夜中に少し。アダムからの干渉なの?」

レイ「たぶん」

シンジ「壊したいって思った。なにか、なんでもいいから。積み木や砂場の山をこわすように」

レイ「凶暴性を抑えきれなくなったら言って。協力する」

シンジ「わかった。……ありがとう。さっき、僕の同化が進めば、電子制御できるって言ったよね? それってアクセス権限に関係なく、できる?」

レイ「可能になる。アダムの持つ力は、強い電磁波を発生させるから」

シンジ「……」

マナ「(なに……? なんの話……?)」

シンジ「試してみるよ」


300 ◆y7//w4A.QY2017/08/27(日) 23:31:36.76dg9h+A5m0 (9/9)

レイ「……」

シンジ「アダム、最初の人間にして、始祖たる存在の一人。使徒、天使の名を持つ使者。……そして、綾波。今なら、母さんが言っていた真実を信じられる」スタスタ

レイ「……」

シンジ「ここから見える景色。街に来た最初の頃は、嫌で嫌でしかたなかったのに。不思議だね、今はそれすら遠い過去に思えるんだ」

レイ「不変なものは存在しないわ」

シンジ「そうかな。僕はそう思わない。取り巻く環境、父さん……はいなくなってしまったけど、かわらないものがあるんじゃないかな」

レイ「……?」

シンジ「綾波は変わった?」

レイ「私?」

シンジ「うん。ネルフで父さんや色んな人と接して、時間を過ごして変わったと思う?」

レイ「わからない」

シンジ「不変なものは存在しないってリツコさんが言ってたの?」

レイ「……」フルフル

シンジ「じゃあ、父さんかな」

レイ「……」コクリ

シンジ「やっぱり、そうなんだね。綾波がちょっとだけ、羨ましい」

レイ「なぜ?」

シンジ「父さんのそばにいられたから」

レイ「……」

シンジ「もっと色々教えてほしかったんだ。ただ、それだけ。でも、こうなってしまった。空、見てみてよ」

レイ「……」スッ

シンジ「雲が流れてる。なにが起こっても、僕たちはちっぽけな人間なんだね」


301以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/28(月) 02:23:24.19HEcdXEVNo (1/1)

(ここで猿岩石)


302以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/29(火) 00:38:30.74m0bnnDrNo (1/1)

まだかな


303以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/29(火) 02:28:05.05oPh0r+HcO (1/1)

遠ざかーる雲を見つめ~て~


304 ◆y7//w4A.QY2017/08/29(火) 22:04:55.62L8nioMnc0 (1/2)

【同学校 教室】

マナ「……」スタスタ

ヒカリ「あ、マナ。どこ行ってたの?」

マナ「学校の中を見て回っててたの」

シンジ『父さんのそばにいれたから』

マナ「(あの時見せた、悲しそうな表情はなんなんだろう……やっぱり、上官の言う通り普通の子じゃないのかな……)」

アスカ「見学なんてして楽しい?」

マナ「うん……どこになにかあるか知りたかったって理由もあるよ。アスカは、転校してきたときしなかったの?」

アスカ「はっ、こんなこじんまりした学校のどこに見所があるってのよ。キャンパスと比べて見劣りするじゃない」

ヒカリ「大卒だもんね。飛び級って言ってたっけ? 凄いなぁ、優秀だって認められるなんて」

アスカ「ちょおっとひっかかるんだけど。あたしが才能だけで選ばれたと思ってない?」

ヒカリ「漫画みたいにずば抜けた才能があったんじゃないの?」

アスカ「これだから凡人は。発想が貧弱なのよ。まぁ、日本人はトランスファー制度だって浸透してないし大目に見てあげる」

ヒカリ「むっ。私だって知ってますよーだ。大学で転校するみたいな話でしょ?」

アスカ「大雑把にいうとね。ヒカリ、よく知ってたわね。この国だと大学に在籍したら四年間は同じ場所で過ごすのが普通でしょ?」

ヒカリ「えへへ、たまたまなんだ。海外の学習事情のこと、前ニュースでやってたから」

アスカ「変な国よね、ここ。しなきゃいけないってわけじゃないけど、発想に柔軟性がないような環境っていうか」

マナ「みんな、頑張って生きてる。それだけじゃだめなのかな……」

アスカ「……?」

マナ「エリートとか、凡人とか。そんなので優劣つけたって楽しくないよ。笑って過ごせればいいじゃない」

ヒカリ「マナ……?」

マナ「私は嫌だな。差別意識を助長してる気がして」

アスカ「ひけらかすつもりないけどさぁ、世界経済は一握りの天才がまわしてるもんなのよ」

マナ「アスカも、エリートって“枠”を作りたいの?」

アスカ「そうじゃなくて。頭がいい人、悪い人。抜けてる人。良く言えばそれも個性よね。でも頭がいい人の足を引っ張るのは“行動するバカ”の仕業が大半なのよ」

マナ「そうかな……」

アスカ「バカは自分で考えないでしょ。なぜそうなるのか、どうして辿り着くのか。視野が狭いし考える必要ないもの」

ヒカリ「……」

アスカ「思考停止してるようで自分の楽しいことだけを繰り返す。それこそ、本能だけでね。だけど、それはひとつの正解」

マナ「……」

アスカ「インテリは短絡的思考のバカを嫌うもんよ。世の中が民主主義でよかったわよねぇ、エリート思考なんて考えだとロクなことにならないし」


305 ◆y7//w4A.QY2017/08/29(火) 22:41:23.98L8nioMnc0 (2/2)

【ネルフ本部 ラボ】

ミサト「フォースの選定ぃ? 三号機の搬入に合わせて? 都合よくホイホイ決まるもんねぇー」

リツコ「マルドゥックから通達があったそうよ。これが、候補者の子の氏名とデータ」ピラ

ミサト「また子供。……しかも、レイと同じ出自不明の少年、か」

リツコ「……」

ミサト「ねぇ、なんでマルドゥックはエヴァのパイロットに関する公開レベルに差をつけるの?」

リツコ「知らないわ。存在自体が謎のヴェールに包まれているもの。選定方法もね」

ミサト「あんた、なにかウソついてない?」

リツコ「あら。どうしてそう思うの?」

ミサト「女の第六感ってや~つ」

リツコ「男に対する浮気に使うものじゃなくって?」

ミサト「あたしの勘は侮れないわよん?」

リツコ「根拠のない自信ね。ウソはついてないわよ」

ミサト「ほんとにぃ?」

リツコ「私がなにに対して興味をもつのか。友人歴の長いミサトだったらわかるでしょ」

ミサト「人の心なんてわかるもんじゃないわよ」ボソッ

リツコ「え……? 何か言った?」

ミサト「ま、リツコが隠し事をするときはある癖があるしねぇ~」

リツコ「はじめてね。ミサトがそんなこと言うの。お生憎様、ひっかけにのってあげるのはまた今度ね」

ミサト「ぶーぶー」

リツコ「おちゃらけるのも結構だけど、そろそろ身を落ち着けたら? 加地くん戻ってきてるんだし」

ミサト「やぁだぁ。あいつの話はやめてよー」

リツコ「いつまで逃げ切れるかしらね、過去から」

ミサト「はいはい。お説教がはじまりそーなんで退散しまーす」

リツコ「(やはり、ミサトは勘づいてくるわね……)」


306以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/30(水) 05:23:11.31kbXMosxZo (1/1)




307 ◆y7//w4A.QY2017/08/30(水) 14:02:19.69r21iIkAN0 (1/8)

【ネルフ本部 執務室】

リツコ「――葛城一尉に関する報告は以上です。人事内部の大幅な改変。これに加えフォースの選定があまにも露骨すぎです。代替え案を提唱します」

ユイ「これがバイタルデータのすべて?」

リツコ「え? え、えぇ。シンジくんの心理状況は極めて安定しています。タブリスの干渉による二次副産物はないもの考えられます」

ユイ「おかしいわ」

リツコ「え……?」

ユイ「赤木博士。人が夢を見る特徴をご存知よね?」

リツコ「レム睡眠とノンレム睡眠時で違いがあります。内容についての分類は諸説ありますので断定はできませんが、なんらかの脳の処理だという点において相違ありません」

ユイ「研究にて睡眠をとる度に毎回、必ず夢を見ることが判明してる。中には“見なかった”という例もあるけど、それは“忘れている”だけ」

リツコ「はい。ですので、シンジくんは記憶の保持ができていないかと」

ユイ「夢を覚えていない確証はない……」

リツコ「……? なぜでしょうか?」

ユイ「前提が不自然なのよ。まず、シンジは本当に睡眠状態と同じだったのかしら」

リツコ「は?」

ユイ「医師の診断報告書によると、光を当ててみても眼球の瞳孔が拡大したままだったとあるわね。普通はそうなる?」

リツコ「たしかに……。しかし、そう裏付けるデータを今回のシンクロテストで――」

ユイ「なぜ、なぜ変化がないの……?」

リツコ「……」

ユイ「タブリスをここに」

リツコ「シンジくんは経過観察でよろしいのでは。今はネルフ内部掌握の件を優先すべきです」

ユイ「いいから呼びなさいっ!」バンッ


308 ◆y7//w4A.QY2017/08/30(水) 14:27:57.15r21iIkAN0 (2/8)

【数十分後 同執務室】

カヲル「まだなにか僕に用が? 約束の時まで早すぎるようだけど」

ユイ「この書類を見てちょうだい」

カヲル「……」ペラ

ユイ「あまりにも安定しすぎている。脳を弄ったさいに、なにを見せたの? なんの目的であの子を――」

カヲル「ふっ」

ユイ「やはり、なにか仕込んだのね?」

カヲル「貴女は見当違いをしている」

ユイ「……」

カヲル「いいよ。教えるかわりに、僕に何をしてくれるんです?」

ユイ「現在の独居房暮らしから第6区画への移住を認めます。生活が人間らしくなるわよ」

カヲル「ボクがそれを望んでいるわけじゃない。なぜ、ヒトと同じ定義で捉えるのかな」

ユイ「そうだったわね。……あなたの望みをひとつ叶えましょう。できうる限りで」

カヲル「黙秘を希望するよ」

ユイ「バカバカしいやりとりをさせないで! はやく教えなさい!」

カヲル「息子のことになると必死になるのを直した方がいい。冷静さを失っては、愚者の姿になるからね」

ユイ「……!」ギリッ

カヲル「ボクが彼にしたのはほんの“火遊び”さ。最終目的は共通している。碇ユイ博士の障害になるようなマネはしていないよ」

ユイ「シンジは本当にあなたに脳を弄られたという自覚がないのね?」

カヲル「おそらくは」

ユイ「……そう」ギシ

カヲル「わざわざ確認するためにボクをここに? ネルフ総司令は割とお暇なようだ」

ユイ「……」

カヲル「自分の息子に直接聞くのがこわいんだ。違うかい?」

ユイ「……」

カヲル「どんなに優秀であれ、所詮はただのヒトなんだね」


309 ◆y7//w4A.QY2017/08/30(水) 15:03:01.11r21iIkAN0 (3/8)

【数時間後 ネルフ本部 第四通路】

シンジ「試そうと思ったけど力って、どうやって使えばいいんだろう。聞くの忘れちゃったな」

放送「メンテナンスを実行中。作業員は、現在の区画の予備パイプを――」

シンジ「エヴァと同じで念じればいいのかな」スッ

カヲル「そうじゃないよ」

シンジ「キミは……?」

カヲル「こんにちは、碇シンジくん。起きている時に会うのはこれがはじめてだね」

シンジ「(なんだ、この感じ。綾波に似ている)」

カヲル「音声は拾えないけど、ボクとキミの姿は監視映像で残ることになるから。これでますます疑念を持つだろうけど」

シンジ「……?」

カヲル「アダムの力を使いたいのかい?」

シンジ「あ、うん。知ってるならやっぱり、キミも綾波と似た存在なんだね」

カヲル「彼女もボクと同じだけど、原理的な話をすればキミの方が近しい存在だけどね。アダムの力の使い方をレクチャーしてあげるよ」

シンジ「え……? 知ってるの?」

カヲル「簡単だよ。まずは能力の正体について話をしようか」

シンジ「うん」

カヲル「アダム、その他の使徒と呼ばれる個体が持っている様々な特性は人類が手にしていない未知の構成で成り立っている」

シンジ「……」

カヲル「彼らは自ら望んであの形に進化した。学習してね。さて、そのうえでだ。アダムに特性があるとしたら、どんな能力だろうね」

シンジ「綾波は、電磁波を発生させると言ってたけど」

カヲル「あくまでもそれは、一端だとは思わないのかい? 格好いいとは思わないけど、例えば、“電磁波の味がわかる”……とか」

シンジ「そんな、食べるわけじゃないし味なんてしないよ」

カヲル「ヒトの常識で物事を判断してはないけない。キミはヒトとは別の使徒の力を行使しようとしているのだから」

シンジ「なんだか、超能力者みたいだね」

カヲル「……そうだね、こう考えたらいい。今ある身体能力に余分な要素が増えただけと」

シンジ「使い方は?」

カヲル「最初に言ったはずだよ。簡単だって。キミは呼吸にする時、念じて息をするのかい? 試しに、僕が目の前にある扉の施錠を解除してあげるよ」チラ

シンジ「……⁉︎ す、すごい。目配せだけで?」

カヲル「キミの手に感じる違和感が証拠になる。受け入れていないんだ。身体の一部として」

シンジ「つまり、綾波が言ってた、僕と同化が進めば可能になるって……」

カヲル「そのままの意味ってことさ」


310 ◆y7//w4A.QY2017/08/30(水) 15:43:07.93r21iIkAN0 (4/8)

【ネルフ本部 執務室】

ユイ「いらっしゃい。ラクにしていいわよ」

アスカ「……」

ユイ「嫌われたものね。苦手? 私が」

アスカ「なんの為にここに呼んだんですか?」

ユイ「キョウコに関することを質問されたのがそんなにイヤだったのね。信じてほしいんだけど、私は、キョウコの友人だった」

アスカ「白々しい。そうやって涼しい顔して平気で嘘を並べ立てる大人ばっかりじゃない」

ユイ「あなたは、はやく大人になりたいんじゃないの?」

アスカ「私は、自分でなんでもできるようになりたいってだけ。それが大人だっていうのならそう。その為に貪欲に色んな経験をしたいの」

ユイ「向上心を持っていて素晴らしいわ。野心もあるのかしら。だとすれば、それはなに?」

アスカ「質問が命令じゃないなら拒否する」

ユイ「駆け引きができるのね、頭がいい。さすが、幼少時代から英才教育を受けてきたエリート。キョウコが存命ならさぞ喜んだでしょう」

アスカ「そんなの当たり前――」

ユイ「だけど、叱られるわよ。今のあなた」

アスカ「……!」

ユイ「もっと自分の為に生きなさい! 私に褒められるだけが人生じゃないのよ! ってね」

アスカ「あんたなんかに……っ! ママのなにがわかるっていうのよ!」

ユイ「これ、見てくれない?」ペラ

アスカ「……? こ、これって……!」

ユイ「そう。キョウコと撮った写真なのよ。私たち、いい笑顔してるでしょ?」

アスカ「ほんとに仲よかったの⁉︎」

ユイ「もちろんよ。研究してる分野は違ったけど、よく昼食を一緒に食べたり、遊びに行ったりしてた。訃報を聞いて、残念に思ったわ……」

アスカ「ママ……」クシャ

ユイ「あなたは、早くに母親を亡くして、孤独で辛い想いをしてきたことでしょう。父親の再婚相手に馴染めずに、不信感を抱いたまま成長してきた」

アスカ「……」

ユイ「これからは私が面倒を見るわ。ネルフにいる間はね、それが亡き親友にできる、精一杯のことだから」

アスカ「ママを、頭がおかしくなったって思ってないの……?」

ユイ「以前に言ったけど、今なら信じてもらえる? 私はキョウコの頭がおかしいなんて思ったことはない。彼女は、聡明で、賢い女性よ」ニコ

アスカ「あ……」

冬月「ユイ君、誰も通すなと言っていたようだが――……なんだ。セカンドチルドレンがいたのか」

ユイ「副司令。どうなされました?」

冬月「戦自について調べが進んだのでね、後でよかろう」

ユイ「かまいません。このまま報告を」

冬月「しかし」

ユイ「いいんです。大切な子なんですから」

アスカ「た、大切な……?」

ユイ「ええ。息子よりとっても優秀な、エヴァのパイロットなんですもの。違う?」

アスカ「いや、その、違わない、けど……」

冬月「……戦自から潜りこんでいるネズミの件だ。霧島マヤだよ」

アスカ「え……?」


311 ◆y7//w4A.QY2017/08/30(水) 15:46:58.10r21iIkAN0 (5/8)

霧島マナのミス


312 ◆y7//w4A.QY2017/08/30(水) 16:05:00.82r21iIkAN0 (6/8)

ユイ「やはりこちらの予想通り内部工作が目的で?」

冬月「そう考えて問題なかろう。わざわざ潜伏させるにあたり、具体的な指示は不明だがネルフに対する調査か、あるいは破壊工作だと見て間違いあるまいな」

アスカ「そんな……うそでしょ……?」

ユイ「どうしたの? 驚いてるみたいだけど、知り合い?」

アスカ「クラスメート……」

ユイ「あら、初耳ね。副司令、たしかですか?」

冬月「ああ。資料によると彼女の在籍している学年は2-A。奇しくもチルドレン達と同じ教室だ」

ユイ「困ったわね。警告をだした方がいいかしら……」

冬月「目的がわからない以上、こちらが下手に動くわけにもいくまいよ」

ユイ「そうですね。アスカって、呼んでもいい?」

アスカ「え? ……はい」

ユイ「このことはサードチルドレンにもファーストチルドレンにも秘密にしておいてほしいの。時がくれば、通達できると思うから」

アスカ「シンジにも? だって、自分の息子でしょ?」

ユイ「あの子、すこしだらしないから。アスカの方が信頼できるわ」

アスカ「私を、信じてくれるの?」

冬月「……」

ユイ「だからこその“お願い”よ。強制はしない。だって、あなたはそんなことする子じゃないって思ってるから」

冬月「もしの場合の責任はどうするつもりだね」

ユイ「私が全て負います」

冬月「まだキミたちは知り合って間もないだろう。セカンドチルドレンを買いかぶりすぎではないか。こんなじゃじゃ馬ムスメを」

アスカ「なっ……!」

ユイ「副司令。発言が過ぎています。他言はありませんよ。それと、また同じような暴言をすれば、罰を与えます」

アスカ「……あ、あの……」

ユイ「アスカ、この後の予定はある?」

アスカ「いえ、帰るだけですけど」

ユイ「それじゃぁ、一緒にご飯を食べない? おいしい店があるのよ」

アスカ「えぇと」チラ

冬月「ふん、好きにしろ」

ユイ「すこし、表で待っててくれる? 小言を聞かなきゃいけないから」

アスカ「はい、わかりました」


313 ◆y7//w4A.QY2017/08/30(水) 16:45:47.26r21iIkAN0 (7/8)

冬月「――見えすいた三文芝居をさせおって」

ユイ「なかなかいい演技でしたよ」

冬月「さしづめ私がムチでキミがアメといった役割か。事前に渡されたメモがなければ意図するところが理解できなかったよ」

ユイ「すこしずつ警戒心を和らげていけばよいのです。利用できるのですから」

冬月「それで? セカンドチルドレンに霧島マナを監視するよう言うのか?」

ユイ「そんな要求をすれば、“対価のためにとりいっている”という印象をいだくでしょう。ですので、そのままです」

冬月「なにも言わないのかね?」

ユイ「ネズミの情報をチラつかせ、彼女を実力で正当評価していると思わせる。たったこれだけで、報告をしてほしいなんて言わずとも、セカンドチルドレンから進んでするようになります」

冬月「親代わりになり信頼を得るか。よかろう」

ユイ「ご一緒にいかがです?」

冬月「遠慮しておく。私は子守りは苦手だよ」

ユイ「葛城一尉宅に仕掛けておくようお願いした爆弾の件は?」

冬月「既に完了してある。マンションを倒壊させるほどの爆薬だ。在宅していれば確実に息の根を止められるだろう。ネズミもろともな」

ユイ「では、そちらも手筈通り、赤木博士に起爆スイッチを渡しておいてください」

冬月「承知した」


314以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/08/30(水) 17:28:39.65eLapNNPpo (1/1)

(怖い)


315 ◆y7//w4A.QY2017/08/30(水) 17:32:42.12r21iIkAN0 (8/8)

【ネルフ本部 独居房】

シンジ「ここに、住んでるの?」

カヲル「借り暮らしさ、ボクの還るべき場所はここじゃない」

シンジ「でも、住むような場所じゃ……」

カヲル「キミだって似た環境で過ごしていたんじゃないのかい? 父親の、他人のぬくもりを知らずに」

シンジ「人並みに住める家だったよ。それに、不自由はしなかったから」

カヲル「……」スッ

シンジ「な、なに? いきなり肩に手をおいて。なにかついてた?」

カヲル「実験だよ。やはり、人との接触を極端に警戒する傾向にあるね」

シンジ「誰だって、初対面相手だとこうじゃないかな」

カヲル「ヒトは、なにか行動する際に理由を求める。ただ手をおきたかったことだって立派な理由のひとつじゃないのかい?」

シンジ「それは、時と場合によるよ。いきなりそんな……」

カヲル「常識……それとも、不安? それぞれが独立した個であるヒトゆえに次の行動を予測できない」

シンジ「良い気持ちはしない、それだって立派な理由じゃないか」

カヲル「そうだね。だけど、そこに起因するのは心の壁に階層があるからだろう?」

シンジ「……」

カヲル「忘れていた。自己紹介がまだだったね。ボクは渚カヲル。もっとも、名前なんてものは何者か知覚てできるボクたちにとって無価値に等しいけど」

シンジ「僕は、シンジ。碇シンジ」

カヲル「改めまして、よろしく。ボクはフォースチルドレンだよ」

シンジ「え? エヴァは?」

カヲル「近々、三号機が新たに配備される。そのパイロット」

シンジ「キミが……。渚、くん」

カヲル「カヲルでいいよ。シンジくん」

シンジ「やっぱり、その、カヲルくんも母さんの味方なの?」

カヲル「どうして?」

シンジ「ネルフの総司令官は母さんだから。父さんの時は綾波。母さんの時はカヲルくんなんじゃないのかなって」

カヲル「なるほど。でも、前例とまったく同じってわけじゃない」

シンジ「違うの?」

カヲル「純粋だね、キミは。他人の言う意見を間に受けすぎだよ」

シンジ「……」

カヲル「しかし、だからこそキミの無垢な魂は崇高な存在になりえるのかもしれない」

シンジ「教えてほしいんだ。母さんがなにを考えているのか」

カヲル「ボクはただの駒。裏で操作している本人か、委員会の連中に聞くといい。キミがこのまま同化していけば、むしろあちらからすり寄ってくるだろうからね」

シンジ「委員会……。また僕の知らない名前だ」

カヲル「ひとつ教えておいてあげるよ」

シンジ「……?」

カヲル「碇博士はキミにふさわしい相手を見つけるつもりのようだ」

シンジ「ふさわしい、相手?」

カヲル「ボクが言えるのはそれだけ。……そろそろ行かなきゃいけない場所があるから。また会えるといいね、シンジくん」


316 ◆y7//w4A.QY2017/08/31(木) 21:48:39.51v7KgEaxY0 (1/4)

【第三新東京都市 レストラン】

ウェイター「ご予約名は?」

ユイ「碇です」

ウェイター「お待ちしておりました、碇様。ご案内します」

ユイ「いきましょうか」コツコツ

アスカ「……」スタスタ

ウェイター「こちらのお席になります」スッ

ユイ「ありがとう」

アスカ「シンジは?」

ユイ「あら。どうしてシンジが一緒だと思うの?」

アスカ「だって、息子だし」

ユイ「自分の子供だからという理由で特別扱いしないわよ。あなたがここにいる理由だってキョウコの娘だからというわけじゃない。どうしてかわかる?」

アスカ「……」

ユイ「私は、あなたに期待しているの。副司令は過大評価だと言うけれど……きっと、今よりもっともっと成長できると信じてる。その点においては、彼女の子供だからという甘めの基準になってるかもね?」

アスカ「シンジだって、親が優秀という話なら一緒だわ」

ユイ「私を褒めてくれるの?」

アスカ「そうじゃない……です。経歴だけを見たら、そう思うから」

ユイ「たしかにね。私と夫は、積み重ねてきたモノがある。でも、息子はこれまでなんの努力もしてこなかった。ただ、まわりに合わせるように流されて生きてきただけ」

アスカ「……」

ユイ「あなたは違うわ。才能だけで辿り着けない域にまで己を高めてきた」

アスカ「……」

ユイ「ふふっ、さ、なにを食べたい? ここね、ドイツ料理が美味しいと評判のお店なの。日本人に合った味付けをしているから、郷土料理までいかないと思うけど」

アスカ「あの、ママの話を、聞かせて」

ユイ「ゆっくりね? まずは注文を済ませましょ。時間はあるんだから――」


317 ◆y7//w4A.QY2017/08/31(木) 22:12:43.51v7KgEaxY0 (2/4)

【マヤ宅 リビング】

シンジ「(アダムを僕の一部だと受け入れる……)」もぐもぐ

マヤ「あの、今日は味付け上手にできてると思うんだけど……」

シンジ「え? えぇと」

マヤ「おいしくなかった⁉︎」ぱくっ もぐもぐ

シンジ「あ、いや。そんなつもりは。すいません、少し考えごとしてて味を――」

マヤ「ああ! やっぱり少ししょっぱい……! ちゃんと味見して確認したのに。どうして……」

シンジ「あの?」

マヤ「こんなんじゃダメ! やっぱり、先輩が私の問題点を改善する必要があると言ったのはその通りだったんだわ!」

シンジ「マヤさん?」

マヤ「ごめんね! シンジくん!」ガタッ

シンジ「は、はぁ?」

マヤ「私、変わらなきゃ! シンジくんは中学生、シンジくんは子供、シンジくんは良い子、シンジくんは不潔じゃない……」ぶつぶつ

シンジ「おいしいですよ。これ。そんなに気にするほどじゃ……」

マヤ「馬鹿にしないでっ!」バンッ

シンジ「……!」

マヤ「あ……ち、違うの。その、子供に気を使ってもらうと、私のちっぽけなプライドが……」

シンジ「……僕は、マヤさんにお世話になってる身ですし、馬鹿になんてしてません。それだけわかってもらえれば」

マヤ「うぅ……ごめんね?」

シンジ「謝らないでいいですよ。僕もいつも他人謝ってばかりだから、なんだか自分を見てるような気がします」

マヤ「私って中学生と一緒なの……」

シンジ「他意はないんです。僕は、こう思ってるって普段あんまり主張しないから。自分でもわかってるんです。だけど、自分じゃどうしようもできない」

マヤ「……」

シンジ「抜けだすのって難しいんですよね。同じ経験をしてると勝手に僕が思ってるから言っただけで」

マヤ「どうしたら、いいのかな」

シンジ「マヤさんは仕事ができるし、そんなに悩むことないと思います」

マヤ「でも、私には仕事しか……」

シンジ「(やっぱり、エヴァしかないって思ってる僕と同じだ)」

マヤ「仕事をしてれば、自分を誤魔化すことで見ないふりができる。だけど、それだけじゃ先輩に見捨てられちゃう……」


318 ◆y7//w4A.QY2017/08/31(木) 22:35:44.21v7KgEaxY0 (3/4)

シンジ「それぞれペースってあるんだと思います。ゆっくりでいいんじゃないですか?」

マヤ「そうかな」

シンジ「僕も、変わろうと決めたところなんです。なかなかうまくいってません」

マヤ「シンジくんも……?」

シンジ「はい。決意表明みたいに宣言する必要はないんじゃないかって。毎日少しずつ変われたらそれで」

マヤ「そっか……。なんだか、少し似てるのかもしれないわね、私たち」

シンジ「そうですね。僕もマヤさんも縋るものの違いだけで、コンプレックスを抱えてるんじゃないでしょうか」

マヤ「私は、異性への対人関係だけど、シンジくんは?」

シンジ「僕は、エヴァしかないってずっと思ってました。パイロットでいれば、みんなが褒めて、一員だと認めてくれる。なぜ乗れるかすらわからないままなのに」

マヤ「あ……そう思ってたんだ」

シンジ「でも、言葉って大事ですよね。行動も。言わなきゃ伝わらないし、動かなきゃ結果はついてこない」

マヤ「……」

シンジ「こわかったんです。悪い結果になるのが」

マヤ「うん、うん、わかる」

シンジ「だから、マヤさんだって――」

マヤ「シンジくんっ!!」ギュウ

シンジ「は、はい……?」

マヤ「一緒に頑張りましょう! 私、シンジくんが子供だと誤解してた!」

シンジ「あ、はぁ」

マヤ「こうなったら年齢は関係ないわ! ううん、そうよ。ただ歳を重ねてたってなにも経験しなければ子供と同じ……」

シンジ「あの、手が痛い……」

マヤ「シンジくんも私も! 絶対に変わりましょう! ねっ!」

シンジ「はぁ……」

マヤ「よーしっ! そうと決まればカリキュラムを作らなくちゃ!」

シンジ「あの、もう食べないんですか?」

マヤ「ラップしといてくれる?」ドタドタ

シンジ「かまいませんけど、どこに?」

マヤ「効率的に変わる計画を立てるの。お互いにね。私だって、先輩に見初められてネルフに入れたんですもの。……私にできる武器……お姉さんが見せてあげる!」

シンジ「……?」

マヤ「お、お姉さんだなんて自分で言っちゃった」

シンジ「(照れるなら言わなきゃいいのになぁ)」


319 ◆y7//w4A.QY2017/08/31(木) 23:04:26.37v7KgEaxY0 (4/4)

【数時間後 風呂】

シンジ「(見た目が気持ち悪い……体内に戻るよう念じれば普通の手と変わらないけど)」ごしごし

アダム「……」ドクンドクン

シンジ「(脈打って生きてるのがわかる。キミはなんの為に生まれてきたの?)」

マヤ「できた!」ガチャッ

シンジ「わ、わぁっ⁉︎」

マヤ「これね、今後の改善点をいくつか考えてみたんだけど――」

シンジ「……あ……あ……」

マヤ「――……へ? あ、ちょ」

シンジ「お風呂ですよ!ここ!」

マヤ「きゃ、きゃあああっ! なんか、なんかついてる!」

シンジ「ど、どこ見てるんですかっ!」

マヤ「見たくて見てるわけじゃ!」

シンジ「泡流して、湯船に……!」キュッキュッ

マヤ「ちょっと! 扉あけたたまま!」

シンジ「へ?」ザーッ

マヤ「わっ、きゃ」

シンジ「し、閉めてくださいよっ!」

マヤ「やだ、こっち向かないでよ!」ポイ ポイ

シンジ「いた、いつっ、なんなんですかもうっ!」

マヤ「汚いもの見せないで!」ブンッ

シンジ「そうだ、僕が閉めれば……! いたっ」カポーン ゴチン

マヤ「え……?」

シンジ「」

マヤ「すごい音……ってやだ。丸見え……そんな場合じゃないのに。うう、不潔」

シンジ「」

マヤ「あの? 大丈夫?」ツン ツン

シンジ「……」ムクッ

マヤ「あ、よかった。大丈夫なのね、すぐ閉めるから」

シンジ「……」スッ

マヤ「え、手、なにそれ――」


320以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/01(金) 01:20:02.76iChoc6/ko (1/1)

おお、導入が丁寧になったな


321以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/01(金) 02:40:56.29WjNVKN11o (1/1)

期待


322 ◆y7//w4A.QY2017/09/01(金) 03:28:55.47dd98dZqR0 (1/6)

【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「夢は、性欲に対する願望の表れであると提唱したフロイト……これは、ナンセンスね」カタカタ

加持「遅くまで忙しそうだな。調べものかい?」

リツコ「ノックが聞こえなかったわよ?」

加持「この研究室に必要なのはコレ。……カードキーさ。分厚い金属で隔てられてちゃ、音が届くとは思えない」

リツコ「あいかわらず、へらず口ばっかり」

加持「いつかに言ったかもしれないが、俺の持ち味なんでね。……脳? 調べてたのは、シンジくんの件かい?」

リツコ「正確には、“タブリスがなにをしたのか”よ」

加持「……」

リツコ「加持くんはどう思う?」

加持「さてね、思惑になんて興味ないさ。第壱使徒の名を冠していても所詮、やつはただの駒だろうからな」

リツコ「黒幕にだけ?」

加持「もっと厳密に言えば“真実により近しいやつ”かな」

リツコ「急がば回れ……。全てを知りえた時にあなたの命はあるのかしらね」

加持「そうなったらその時考えりゃいい」

リツコ「ミサト、泣くわよ」

加持「晴れない雨なんてありはしないさ。俺は俺の思うままに……。葛城は女の幸せを自分で掴みとるだろうよ」

リツコ「薄情ね」

加持「――……どれ、タブリスが昏睡状態にあるシンジくんを覚醒させた方法を聞かせてもらえないか?」

リツコ「知らなかったの?」

加持「その場にいなかったからな、俺は。資料は読んでいるが、リッちゃんの口から説明願いたいね」

リツコ「おそらく、なんらかの方法でシンジくんの深層心理にダイブしたんだと思うわ」

加持「鈴原トウジの妹、サクラ……だったか。彼女を使ったのは?」

リツコ「家族、友人の純粋な気持ちが患者本人の情熱を呼び起こす。シンジくんを引っ張りあげるために利用したと推察できる」

加持「過去に同じ例が?」

リツコ「脳に関わる臨床ではたびたび、医学的根拠や客観的な診断くつがえす。つまり、驚異的な回復をうながすケースがなくはないのよ」

加持「……それで、シンジくんのなにを?」

リツコ「“夢を覚えているのか、いないのか”」

加持「覚えていたとしてなにか問題でも?」

リツコ「覚えているとすれば、なにを見たの?」

加持「そこで、タブリスがなにをしたかに集約するわけか」

リツコ「正攻法での追求は不可能ね。自白剤の投与を検討してみようかしら」

加持「使徒相手に人間の薬品が効くと思えないがね」

リツコ「理論だけで試さず結論付けていたら、科学者なんて置物と一緒だわ」


323以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/01(金) 14:40:06.11CtThqPp+O (1/1)

おもしれーわこれ


324 ◆y7//w4A.QY2017/09/01(金) 21:15:27.18dd98dZqR0 (2/6)

【ミサト宅 リビング】

アスカ「ただいま」カチャ

ミサト「今日は遅かったのね~。夕ご飯先に食べちゃった……元気ないみたいだけど、どしたの?」

アスカ「別に」

ミサト「アスカは夕ご飯は? クラスメイトの……誰だったか、えぇと、ヒカリちゃんっだっけ? あの子の家に言ってたの?」

アスカ「誰だっていいでしょ、ミサトは保護者じゃないんだから」

ミサト「あらぁ~、今は私が保護者代理よ?」

アスカ「だとしても、プライベートはほしい。全部報告する義務あんの?」

ミサト「うーん、ないかな」カシュ

アスカ「あっそ、だったら部屋に……」

ミサト「アスカ、私ね、一緒に暮らすのがいつまでかわからないけど……。住んでる間は、本当の家族のように接してるつもり」

アスカ「……」

ミサト「代理は仕事だけど、私情もはいってる。それは認める」

アスカ「それを聞いて、私にどうしてほしいの?」

ミサト「なにかしてほしい、なんてないわ。ただ、私の気持ちを伝えただけ」

アスカ「……」

ミサト「なにかあったら、言いなさい。相談ぐらいなら乗れるから。……以上! 後でちゃあ~んとお風呂はいりなさいよん?」

アスカ「……ミサト……」

ミサト「ん?」グビ

アスカ「今日、碇司令とご飯、食べてきた」

ミサト「え、司令と?」

アスカ「ママの、友達だったみたい。ミサトも、知ってるでしょ。私の資料読んで……ママのこと」

ミサト「……」コト

アスカ「同じ研究員同士だったみたいで、色々、話聞いてきた」

ミサト「そう……。どうだった?」

アスカ「ふぅ……私が知らないママの顔、たくさん知ってるのね、あの人。本当のこと言っているかわからないけど」

ミサト「司令がアスカにウソをつく意味があるとは思えないけど」

アスカ「わかってる。証拠があるわけじゃ……でも、なんか嘘くさい」

ミサト「……?」

アスカ「表情が、言葉が、全部が。作り笑いしてるけど、目の奥は笑ってない感じ」

ミサト「……」

アスカ「ミサトは、司令をどう思ってるの?」

ミサト「そうねぇ、考えてみればまだあまり話たことすらないかな?」

アスカ「作戦司令なのに?」

ミサト「肝心の使徒が来てないんですもの。ブリーフィングが行われるでもないし、相手はネルフの最高責任者よ? 私なんかがやすやすとお目にかかれる相手じゃないわ。前司令の頃からね」

アスカ「……」

ミサト「これだけは言っておくわ。大人はね、簡単に本心をさらけ出さないものよ」

アスカ「……」

ミサト「ずる賢くなっちゃうのよね、生きてく上で。効率的ってわけじゃなく、他人を、時には自分を欺く術を身につけるの」

アスカ「知ってるわよ、そんな大人、たくさん見てきた」

ミサト「アスカは、シンジくんやレイとはまた違う環境で育ってきているから、見えている景色が違うのよね。お母さんのこと、知りたかったの?」

アスカ「うん」


325 ◆y7//w4A.QY2017/09/01(金) 22:16:12.45dd98dZqR0 (3/6)

ミサト「警戒するのは、無理ないのかもしれない」

アスカ「……」

ミサト「アスカのこれまでの経験から、私たち大人に対して、なにを信じていいかわからないのよね?」

アスカ「違う。あたしは、チャンスだと思った」

ミサト「……」

アスカ「今日、食事についていったのは、ママのことを知るのに現実的な手段だったから」

ミサト「……」

アスカ「ママの死後、エヴァパイロットとして英才教育を受けて……。死にものぐるいで頑張ってきた。ママの子供はこんなにも優秀だって、狂った親なんかじゃないって、証明するため」

ミサト「……」

アスカ「褒めてほしかった人はもういないのに。だから、あたしはママに認められるように、周囲を黙らせるように。……結果を求めて、代わりのいない、エースだっていう絶対的地位がほしい」

ミサト「大切なものは、今のあなたなのよ」

アスカ「でも! それは私のなりたい自分とイコールじゃないっ!」バンッ

ミサト「……」

アスカ「あたしだって……! 普通に、そこらにいるバカなやつらのようにのほほんと生活してみたくないわけじゃないわよ……っ!」

ミサト「キリがなくなってしまう。壊れてしまうわよ」

アスカ「加持さんに聞いても教えてくれない! どうしたらいいか、わからないのよっ! 自分自身が嫌! なにもかも嫌っ!!」

ミサト「私の父はね、研究に生きる人だった。アスカとは追い求めるモノが違う。嫌いだったの、私」

アスカ「……」

ミサト「家庭をかえりみず研究する父に、母さんは、いつも冷めた夕飯を前にして泣いてた……」

アスカ「……」

ミサト「死んじまえ、クソ親父って、そう思ってた。……だけど、ある日、父がめずらしく私に言ってきたの。社会勉強だ、研究に同行しなさいって」

アスカ「……」

ミサト「勝手よね、今までほったらかしだったのに。嬉しさより戸惑いの方が強かったのは……印象に強く残ってる」

アスカ「……」

ミサト「場所は南極だった。そう、セカンドインパクトの爆心地」

アスカ「……」

ミサト「あんなに嫌いだったはずなのに、最後にあたしを庇って死んだの。この、ペンダントを残して――」チャラ

アスカ「形見なの?」

ミサト「ええ。今でも、その時の傷痕が身体に残ってる。……でも、もっと根深い見えないモノが私の中で、毎日疼くのよ」

アスカ「……」

ミサト「私たち、生きてかなきゃいけない。アスカのママ、そして、私の父。残された者は、大切な人たちの証を色褪せさせちゃいけないわ」

アスカ「……」

ミサト「悩んだっていいじゃない。ギリギリかもしれないけど、女は強いんだから」


326 ◆y7//w4A.QY2017/09/01(金) 22:53:53.64dd98dZqR0 (4/6)

【ネルフ本部 初号機ケイジ】

レイ「……」チラ

カヲル「アダムより生まれしエヴァシリーズ。おっと、この初号機とキミの乗る零号機は違ったかな」

レイ「あなた、なにしに来たの?」

カヲル「シンジくんにご執心なようだけど、キミの目的はサードインパクトを起こすことなんだろう? 碇博士や委員会と違う形で」

レイ「……」

カヲル「彼を崇高な存在にまで高める。それには、試練が必要だ。魂の浄化がされないからね」

レイ「碇くんは、もうただのヒトではないわ」

カヲル「揺れている、と言ったらわかるかな。僕たちの側に立つか、ヒトの側に立つか」

レイ(少女)「その為に“私達”がいる」

カヲル「全ての使徒、第十七使徒である人類も含めて、シンジくんを頂点にするつもりなのか」

レイ「あなたは、わかってない」

カヲル「……」

レイ(少女)「損得じゃないの。彼の純粋な想いは、種の壁を顧みない」

カヲル「どういう……?」

レイ「あなたに、碇くんは特別な対応をした?」

カヲル「いや」

レイ「私達が違うと知っていても尚、利用しようとしない。思惑がない。あるのは、他のヒトに対する恐怖。他人への畏怖」

カヲル「臆病なだけでは?」

レイ(少女)「そう、あの子はあなたの言う通り、臆病でどちらにも傾く。可能性の塊」

レイ「だから、ひとつになる」

レイ(少女)「純粋にだってなれる」

カヲル「……! この共鳴は――」

レイ「また、アダムの侵食が進んだのね」


327 ◆y7//w4A.QY2017/09/01(金) 23:04:31.92dd98dZqR0 (5/6)

【再びマヤ宅 脱衣所】

マヤ「か、かは……っ!」

シンジ「……」グググッ

マヤ「し、シンジ……く、ん……はなし……てっ……息が……」

シンジ「くっ、クックックッ」ニヤァ

マヤ「うっ……ぐっ……」

シンジ「……!」ググッ

マヤ「(すごい力、ふりほどけない……! シンジくんの、目が赤く……この瞳、どこかで、レイと同じ……? 意識が……とお、く……)」

シンジ「壊す、壊すんだ。最優先で僕のしたい願望。マヤさん、マヤさんは壊れる時、どんな悲鳴をあげるの?」スッ

マヤ「えほっ! けほっ!」

シンジ「手は離してあげたよ。ゆっくり息をするんだ。吸って、吐いて……」

マヤ「すぅー、げほっ、ごほっ」

シンジ「ああ、器官が伸縮しているんだね。首に僕の手形がついちゃってる」

マヤ「な、なに……? どうしちゃったのよ、シンジくん」

シンジ「わからないんだ。目が覚めたら頭が妙にスッキリしてて。遠くの水滴でさえ、聞こえてる」

マヤ「……?」

シンジ「僕が僕じゃないみたいな感覚なんだ。そうか、これが、抑えられなくなった時なんだね、綾波」

マヤ「シ、シンジくん……? あなた、変よ……」

シンジ「マヤさんに物を投げられた拍子に頭を打って朦朧としたのが原因か、それとも単なる偶然なのか、僕にはわからない。だけど――」

マヤ「ひっ! こ、こないで」

シンジ「衝動を沈めたいんだ、違う、誰かにぶつけたい。なにかに向けることで発散したい」

マヤ「手にあるのは、なんなの……? なんなのよ、それぇっ!」

シンジ「――ごめんなさい、マヤさん」ガシッ

マヤ「いたっ!」

シンジ「ぐっ! 逃げて……」スッ

マヤ「え? ……へ?」

シンジ「はやくっ!! ここから出てってください!」

マヤ「どうなってるの?」

シンジ「くっ、僕が出ていけば……!」ヨロヨロ

マヤ「ねぇっ! どうしちゃったのよ! そ、そうだ! 本部に連絡――」

シンジ「余計なことをして僕を刺激しないでくださいよっ!」バンッ

マヤ「あうっ!」ドンッ ドサ

シンジ「……はぁ……はぁっ……」

マヤ「」

シンジ「だめだ、だめだ、だめだ、手を出しちゃだめだ……! 今すぐに、出ていかないと……!」


328 ◆y7//w4A.QY2017/09/01(金) 23:34:15.45dd98dZqR0 (6/6)

【ネルフ本部 執務室】

諜報部「ご報告です。伊吹一尉宅より、サードチルドレンが――」ザザッ ザザー

冬月「電波障害か。アダムが本格的に活動を開始するまで時間はかからなかったな」

ユイ「想定の範囲内です。それにしてもシンジったら。破壊衝動を抑える為に女を犯すなり、壊してしまえばいいのに」

冬月「こうなると予見して末端の職員の所に住まわせたのかね」

ユイ「保険ですよ、いつも通り」

冬月「……だが、万一そうなった場合、サードチルドレンの性格からして面倒にならないか」

ユイ「罪の意識――。人は生まれながらにして原罪に抗えません。綺麗になるには、汚れていると自覚させるのが始まりです」

冬月「……」

ユイ「シンジが誰かを壊すまで、もう少しですよ。先生」

冬月「碇がマシに見えてくる。歪んでいるよ」

ユイ「心外ですね。夫は私の為、私はシンジの為を想いやっているのです。誰か一人が不幸になっても、それは必要な犠牲ですわ」

冬月「今はまだ、ことの成り行きを見守るしかできんか」

ユイ「(もうすぐ、もうすぐアダムとあなたは完全にひとつになる。汚れる覚悟を決めなさい、シンジ)」

冬月「伊吹一尉の今後はどうする?」

ユイ「一週間の休暇を与えましょう、その間、今日の記憶を消すように手はずを整えます」

冬月「記憶を操作するのは容易ではないぞ」

ユイ「結果、消えていれば問題ないのです。脅迫、拷問。物理的になろうと手段は問いません」

冬月「サードチルドレンがこのことを知ったら憎まれるのではないか?」

ユイ「そんな役ぐらい。なんだっていうんです?」

冬月「承知した。この電波障害がおさまり次第、諜報部を彼女の家に派遣させる」


329以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/01(金) 23:54:51.61jJiSHwy7o (1/1)




330以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/02(土) 00:51:45.77E8WGmvgZO (1/1)

外道や


331 ◆y7//w4A.QY2017/09/02(土) 23:25:05.82hPZpEBXJ0 (1/1)

【第三新東京都市 公園】

シンジ「ふぅ……」

レイ「……」

シンジ「綾波? どうしてここが――」

レイ「シグナルと同じ。私達使徒は、特殊な電波を発信してる。ヒトはそれを解析しパターン青などと呼んでるわ」

シンジ「そっか……。僕も、普通のヒトじゃなくなったんだね」

レイ「波に襲われた時、そばにいた人を壊したくなったはず」

シンジ「前に綾波がそうなった時に言ってって言ってたのは――」

レイ「私なら、代わりがいるもの」

シンジ「そんな……」

レイ「……」

シンジ「綾波は、死んだらどうなるの?」

レイ「次の私にかわるだけ。私は容れ物。碇くんのように魂の融合はできない。元となるモノが空っぽだから」

シンジ「できるわけないよ……」

レイ「……? どうして?」

シンジ「だって、綾波だって生きてるじゃないかっ! 僕にとって綾波は、変わらない人間で」

レイ「あなたは私が他と違うと知ったのよ」

シンジ「だからなんだっていうんだ……。今喋ってるじゃないか! それなのに、人形みたいに扱えるわけないよっ!!」

レイ「衝動は、いずれ抑えが効かなくなるわ。それは碇くんの意識ではどうしようもない」

シンジ「……!」

レイ「アダムに飲み込まれないように私がいる。安心して、あなたは壊れないわ。私が守るもの」

シンジ「次の綾波に変わったら、記憶はどうなるの? 引き継げるの?」

レイ(少女)「わからない」

シンジ「君は、もう一人の綾波だね、夢にいた」

レイ(少女)「私は、前の私。本来ならば、存在しない私。その私でも、どうなるか未知の部分はある」

シンジ「綾波達が僕に見せたって、今までの記憶?」

レイ「ひとつは、私達が持ちうる全ての知識。碇くんの父親、碇司令のすぐそばで見てきた事柄。それを伝えた」

レイ(少女)「もうひとつは、私達の魂であるリリスの真実。ゼーレが発動せんとする補完計画の狙い」

シンジ「ゼーレって」

レイ「人類補完計画委員会の主要組織。ネルフを実行機関とし、各国政府を統率する権力者たち」

シンジ「委員会は、その人たちのことだったのか」

レイ(少女)「いずれ、委員会は碇博士の狙いに気がつく。その時、あなたの中にあるアダムを奪還しようとする」

レイ「しかし、アダムは碇くんの魂レベルにまで癒着し融合され、手は出せないはず。それが碇ユイ博士の狙い。あなたをトリガーの中心に見据えて固定すること」

レイ(少女)「碇くんがいなければ補完計画は発動できなくなる」

シンジ「もともとは、補完計画はどうやって発動するつもりだったの?」

レイ「初号機を依り代にして、量産機を利用する予定。つまり、あなたは直接的には必要じゃない。“初号機パイロット”が必要なだけ」

レイ(少女)「どの道、初号機を動かせるには碇くんだけだったけど。碇くんがダメになった場合を想定してのダミー計画だった」

レイ「でも、ダミーそのものに意味はなくなる。あなたがスペアのない唯一無二の“鍵”になる」


332 ◆y7//w4A.QY2017/09/03(日) 00:08:09.93zirDl0S50 (1/7)

シンジ「それじゃあ、補完計画を発動するとき、初号機と量産機は無人機の予定だったってこと?」

レイ「量産機はそうだけど、初号機に関してはどらちでもよかったが正解。オリジナルのコピーである初号機さえ在ればよかった」

レイ(少女)「碇ユイ博士は他にもなにかやろうとしている。それは私達にはわからない」

シンジ「……」

レイ「衝動はおさまった?」

シンジ「うん、今は、なんとか」

レイ「そう。これから融合が進むにつれ、もっと頻度は多くなり、間隔は短くなる。あなたは、選ばなければならない」

シンジ「また、またなのか。僕が選ぶことのできない選択肢ばかりに振り回されて……」

レイ「最後の防波堤に私達がいる。忘れないで」

レイ(少女)「なにも気にしなくていい」

シンジ「だから、そうじゃないって――」

レイ「伊吹一尉を助ける?」

シンジ「え?」

レイ(少女)「諜報部員を乗せた車が今、気を失ってる彼女の元に向かってる」

シンジ「そんな、どうして」

レイ「おそらく、碇ユイ博士の指示によるもの。碇くんの手にあるアダムを見られたから」

シンジ「どうやって、それを……母さんは僕を監視してたの?」

レイ「……」コクリ

シンジ「綾波は?」

レイ(少女)「助けるのなら急がなければならない。私はまだ手をだせない。碇くんの力で」

シンジ「そんなっ! 僕ひとりでどうやるのさ!」

レイ「また、逃げるの?」

シンジ「違うっ! だけど、方法が……!」

レイ(少女)「あなたは殺されることはないわ。今説明した通り、誰より必要だから」

シンジ「……!」

レイ「どうする?」

シンジ「行くよ! 行くに決まってるだろ!」クルッ

レイ「あの、気をつけて」

シンジ「わかった! ありがとう、綾波!」タタタッ

レイ(少女)「まだ、アダムは赤子同然の状態」

レイ「それは碇くんも同じだわ」

レイ(少女)「全ては、碇くんの意思の強さに」


333 ◆y7//w4A.QY2017/09/03(日) 00:34:09.31zirDl0S50 (2/7)

【マヤ宅 リビング】

諜報部A「運べ、急げよ」

マヤ「……」グタァ

シンジ「はぁっ、はあっ」ガチャ

諜報部A「……!」

シンジ「まって、待ってください!」

諜報部A「ちっ、面倒な」

シンジ「マヤさんをどこに連れて行くんですかっ!」

諜報部A「おい、そのまま連行しろ」

シンジ「待てって言ってるでしょ!!」ダンッ

諜報部B「……」スッ

シンジ「質問に答えてくださいよ!」

諜報部A「存じません。本部からの発令です」

シンジ「やっぱり、母さんから……! 母さんに繋いでください! すぐに命令を撤回――」

諜報部A「仕方ない。手加減してやれ」

諜報部B「了解」ガシ ドカッ

シンジ「うっ!」ドサッ

諜報部B「恨むなよ。俺たちも仕事なんだ」ボソ

シンジ「おぇ……おぇぇっ!」

諜報部A「みぞおちにキレイに決まったな」

諜報部B「このまま伊吹一尉の身柄は本部に」

シンジ「まっ、て」ガシ

諜報部B「……」ピタ

諜報部A「おい、小僧。あんまり俺たちを怒らせるなよ。こっちはプロだぞ。ダメージのみを与え苦しめる方法ならいくらでも知ってる」

シンジ「おねが、いします。母さんに、連絡を」

諜報部B「……」

シンジ「マヤさん、起き、て」

マヤ「……」

諜報部A「ほどほどに痛めつけてやれ」

諜報部B「しかし、外傷が残ってしまっては、司令に」

諜報部A「止むをえん。後から報告するしかあるまい」

シンジ「……!」

諜報部B「相手は、子供ですよ」

諜報部A「そうか、お前はガキが産まれたばかりだったな。どけ、俺がやる」


334 ◆y7//w4A.QY2017/09/03(日) 00:46:00.58zirDl0S50 (3/7)

諜報部B「……」

シンジ「マヤさん!!」

マヤ「……」ピクッ

諜報部A「躾のなってないやつには接し方ってもんがある、お前はそこで見てろ」グイッ

シンジ「くっ……!」

諜報部A「歯を食いしばらなくていい。顔に傷をつけちゃ今後の生活に支障をきたすだろうからな」ドカッ

シンジ「うがぁ! う、うぷっ……おぇ……」

諜報部B「隊長、もう充分でしょう」

シンジ「だめ、だ」

諜報部A「……」

シンジ「連れて、行かせない!」

諜報部A「みぞおちに二発。呼吸が困難な中で根性は認めてやる。中学生にしちゃあな!」ドカッ

シンジ「うっ!」ドサッ

諜報部B「隊長!」

マヤ「う……うん……」

シンジ「おぇぇっ……!」

マヤ「あれ……? 私……? シンジくん?」

諜報部A「これで、どうだ!」ドカッ

マヤ「……! あなたたち! なにやってるんですか!」

シンジ「ぐう、マヤさん、目がさめ」

諜報部A「目が覚められましたか。本部より貴殿を連行するよう仰せつかっています」

マヤ「私を? どうして、本部にはまだなにも連絡を――」

諜報部A「ご同行願います。手段は問わないとの通達です」

シンジ「逃げて! 逃げてください! 母さんは、マヤさんの口封じをするつもりで……!」

マヤ「な、なに言ってるの?」

シンジ「僕の秘密を見たでしょ! あれは見ちゃいけないものだったんです!」

諜報部A&B「……」

マヤ「どういうことですか? あの、私を連行する理由は? シンジくんの言ってるのは本当に……?」

諜報部B「我々がそれを知る必要はありません。上の命令に従うのみ。あなたもネルフの一員ならご理解いただけるかと」

シンジ「だめだ! ついていっちゃだめです!」

諜報部A「少し黙れ」ドカッ

シンジ「うっ!」

マヤ「ちょっと! 暴力はやめてください!」

シンジ「けほっ、こんなの、エヴァで戦う痛みに比べたら……母さんから、連行した後なにか言われてるんじゃないんですか」

諜報部A「……」


335 ◆y7//w4A.QY2017/09/03(日) 01:02:45.00zirDl0S50 (4/7)

マヤ「先輩に、赤木博士に連絡させてください」

諜報部A「まったく、本当に面倒になった。おい」

諜報部B「はい。これは仕方ありませんね」ガシッ

マヤ「きゃっ!」

諜報部B「ご静粛に願います。こちらとしても手荒なマネはしたくありませんので」

シンジ「くっ……! このっ! うあああっ」ドカッ

諜報部B「むっ!」

マヤ「し、シンジくん」

シンジ「はやくっ!! 走って逃げて!」

マヤ「……!」タタタッ

諜報部B「この、離せ」

諜報部A「ここまで肝が座ってるなんて思わなかったぜ、なかなか見所があるな。お前」グイッ

シンジ「うっ」

諜報部B「ターゲットが。すみません、自分の失態です」

諜報部A「まだそんなに遠くには行ってないだろう。こんな簡単な任務を失敗したとなっちゃ厳罰ものだ」

諜報部B「応援を呼ばれますか?」

諜報部A「馬鹿野郎。今言ったろ。なに、すぐに解決できる。行き先はわかってるからな」

諜報部B「赤木博士ですか。すぐに連絡をいたします」

シンジ「母さんに……」クタ

諜報部A「ふん、逃がした安堵で気を失いやがった。大方、火事場の馬鹿力ってとこか」

諜報部B「子供だと思っていましたが、やるもんですね」

諜報部A「それに関しちゃ同感だ。お坊ちゃんなりに男を見せやがったな」

諜報部B「サードチルドレンはどうされます?」

諜報部A「このまま布団まで運んでやるか。起きた頃には終わってるよ」


336 ◆y7//w4A.QY2017/09/03(日) 01:32:08.32zirDl0S50 (5/7)

【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「――ええ、了解したわ」カチャリ

マヤ「はぁっ、はあ、せ、せんぱい、よかった、はぁ……はぁ、まだ、残ってて」

リツコ「……」スッ

マヤ「ふぅ、ふぅ、あのっ! シンジくんが――」

リツコ「まずは水を飲みなさい。脳に酸素を送らないと順序立てて説明できないわよ」

マヤ「あ……で、でもそれどころじゃ」

リツコ「シンジくんの手の平にあるものを見たのね?」

マヤ「……!」

リツコ「まさか司令がこういう算段であなたの家にシンジくんを送りこんでいただなんて」

マヤ「せ、先輩? あの、どうして知ってるんですか?」

リツコ「私も知っていたから。知っていて協力していると言えば意味は伝わるでしょう」

マヤ「そ、そんな……」

リツコ「ただし、今回の処置については知らなかったわよ。あなたを生贄にするつもりはなかった」

マヤ「生贄って」

リツコ「皮肉なものね。誰かの為にと思ってやった結果が、苦しめてしまう」

マヤ「どうしてなんですかっ! 私の問題を解決する為だって……」

リツコ「私はもとよりそのつもりだった。でも、司令はそうじゃなかった。それだけよ」

マヤ「シンジくんの手になにがあるかなんて知りません!」

リツコ「……」

マヤ「それでいいでしょう⁉︎」

リツコ「そうね、そうであれば問題ない。でも、あなたに楔を打つ必要がある」

マヤ「……」

リツコ「もし喋れば、あなただけじゃない。血縁関係者全員が死ぬことになるわよ」

マヤ「……! せ、先輩は……」

リツコ「今さら驚いたの? 仕事を一緒にしていても本質がなにも見えていない証拠ね。あなたが抱いていたのは幻想。これが本当の私。残酷?」

マヤ「……」ギリッ

リツコ「これでも恩赦を与えているのよ。諜報部員にあのまま連行されていたら、拷問を受けていたでしょうね。外的ショックで喋ることへの恐怖心を植え付ける」

マヤ「シンジくんは、私を……」

リツコ「彼、頑張ったみたいね。相手が子供だと思って油断していたんでしょうけど」

マヤ「……」

リツコ「マヤの保証人には私がなってあげる。これまでのよしみでね。ただし、これ以上の追求はなし。第三者に喋った場合は言った通りよ」

マヤ「それで、これまで通りってことですか」

リツコ「あなたが望むならね。二十四時間体制で監視がつくけど、荷物をまとめて実家に帰ってもいいわよ。後のことは私がなんとかするわ」

マヤ「……」

リツコ「水、飲んだら?」



337以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/03(日) 06:06:18.25AFq0B7L9o (1/1)




338以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/03(日) 22:22:32.52WWyBcyXAo (1/1)

ところで伊吹二尉だったような


339 ◆y7//w4A.QY2017/09/03(日) 23:53:34.44zirDl0S50 (6/7)

あら?ホントだ
途中からずっと一尉になってますね、手直し不可能なのでこのまま続けます


340 ◆y7//w4A.QY2017/09/03(日) 23:54:40.40zirDl0S50 (7/7)

不可能ではないか
レスしなおすしか方法ないのでこのまま続けます


341 ◆y7//w4A.QY2017/09/04(月) 00:38:09.91fkwizG0h0 (1/9)

【マヤ宅 シンジ部屋】

シンジ「……う……ここは? 僕、どうして、あ、いっ!」

マヤ「おはよう、お腹、痛む?」

シンジ「いてて……。マヤさん?」

マヤ「まだ、夜中だよ。それと、ごめんなさい」

シンジ「あの後どうなったんですか? それに僕なら平気ですから、謝らなくても――」

マヤ「そうじゃないの。謝りたくないから謝った。謝れなくて、ごめんなさい」

シンジ「……?」

マヤ「どうして……? どうして私が巻き込まれなくちゃいけないの? ねぇ、どうして?」

シンジ「あ……」

マヤ「なぜあなたに助けてもらわなくちゃいけなかったのよ! なにもかもあなたのせいじゃないっ!!」

シンジ「……」

マヤ「優しかった先輩を返して! 私の……日常を……返してよ……」ポロ

シンジ「この手にあるのは」

マヤ「聞きたくないっ!」

シンジ「……」

マヤ「知ってどうしろっていうの⁉︎ これ以上私を巻き込まないで!」

シンジ「すみません、そう、ですよね」

マヤ「今の自分が最低だってわかってる。だから、先に謝ったの」

シンジ「……」

マヤ「ネルフの一員で、私は大人だもの。こんな時、優しい言葉のひとつでもかけてあげなきゃいけないんだろうけど……」

シンジ「……」

マヤ「“なんで私が”って気持ちが強くて。それしか考えられない」

シンジ「わかりました」

マヤ「それで、いいの?」

シンジ「いいんです。慣れてますから」

マヤ「どうして⁉︎ どうして我慢しようとするの⁉︎ おかしいわよ、先輩も、あなたも、ネルフもっ!! 人の命をなんだと思ってるの⁉︎」

シンジ「僕は、少しほっとしてます」

マヤ「え……?」

シンジ「僕のせいで嫌な思いをさせてますけど、こうしてここにいるんですから」

マヤ「そんなの自己満足じゃない。私は望んでなかったのに」

シンジ「すごく、よくわかります。僕もそうなんです。いつも、自分の望む形でいられてない。だけど、今回は違う。僕がマヤさんをそうしてしまった」

マヤ「……そうよ、私は巻き込まれただけで……」

シンジ「すみません、謝ることしかできなくて。僕はなにか力になれますか?」

マヤ「私の知らない先輩に、いつもと種類の違う平坦な表情で言われたわ。シンジくんに関して詮索をやめるように。他に喋ったら血縁者を殺すって」

シンジ「(母さん。……父さんと同じか。目的のためなら手段を選ばないんだね)」

マヤ「私の家は……ううん、これから、ずっと監視の目がつきまとう」


342 ◆y7//w4A.QY2017/09/04(月) 01:00:00.83fkwizG0h0 (2/9)

シンジ「……」

マヤ「でも、残ると先輩に伝えた。このまま帰ったら、きっと私は後悔するから」

シンジ「え……」

マヤ「あなたの為じゃない。ネルフの為でも、先輩の為でもない。そう、これは自分のため」

シンジ「やり残したことがあるとか?」

マヤ「悔しい。ただ、そう思うだけ」

シンジ「たぶん、母さんやリツコさんはまたマヤさんを利用しようとすると思いますよ。弱者に変わりないから」

マヤ「……」

シンジ「僕のこの手バレてしまっているので、今まで以上に露骨に要求してくるかもしれません。同居やアルバイトなんて遠回しをせずに」

マヤ「シンジくんは知ってて私の家に?」

シンジ「いえ、知りませんでした。もしかしたら、そうなんじゃないかって思ったんです」

マヤ「……」

シンジ「僕がここから出ていけばいいんです。それすれば、以前と変わらず、は……無理かもしれないけど、新しいことに巻き込まれないで済みます。僕と、接点がなくなるので」

マヤ「だめ、それはだめよ。シンジくんがここにいるのことが私の生命線になる」

シンジ「でも」

マヤ「よく考えて。あなたが出て行けば、たしかに、これから先は巻き込まれないかもしれない。でも、私は用済みにならない? 秘密を知ってしまってるのよ」

シンジ「……」

マヤ「先輩は、保証してくれるって言ってたけど、それもあなたの受け入れ先という前提があってなのかもしれない。そうじゃないと断定できるまでここにいて」

シンジ「わかり、ました」

マヤ「音声が筒抜けかもしれないから、こわくて下手なこと言えないけど、あなたのせいじゃないって。一人だけじゃどうしようもないってわかってる」

シンジ「……」

マヤ「ほんとに、どうして……」グスッ

シンジ「……」

マヤ「私は一人で考えたいから。おやすみ、シンジくん」

シンジ「おやすみなさい」


343以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/04(月) 11:00:43.92LKvmFUNFo (1/1)

おはようございます


344 ◆y7//w4A.QY2017/09/04(月) 14:18:40.78fkwizG0h0 (3/9)

【ネルフ本部 執務室】

リツコ「諜報部への手引きの件。寛大な計らいに感謝いたします」

ユイ「……」

リツコ「マヤが例の件を漏らした場合は、私を如何様にでもなさってくださって結構です」

ユイ「やはり、情をとるの?」

リツコ「……」

ユイ「とるにたらない職員でしょう。よく面倒を見ていた子で思い入れが強いのね。その有様だと、やはり葛城一尉に――」

リツコ「いいえ、今後、あの子は役に立つからです」

ユイ「と、いうと?」

リツコ「決して軽率に動く子なわけありませんもの。実務能力は私に及ばず、まだひよこですが、だからこそ操作しやすい」

ユイ「……」

リツコ「事情を知っていても尚、抑えこむことが可能であれば……これ以上ない都合の良い駒になります」

ユイ「伊吹二尉の言動を制御できると判断しているのね?」

リツコ「はい」

ユイ「よろしい。では、通達通り伊吹二尉は現状維持のまま技術局一課への配属を認可します」

リツコ「……」

ユイ「ふふっ、これであなたは私にひとつ借りができたわね」

リツコ「この処置は利益になる決定で――」

ユイ「いかに面倒を省くかが重要。あなたは直属の上司であるから、本人が持つ癖をよく把握しているでしょうね」

リツコ「……」

ユイ「しかし、仮にここで私が首を横にふっていたら、あなたはどう思うのかしら」

リツコ「……」

ユイ「血も涙もない外道かしら。それとも、逆張りをして尊敬する? ま、どちらでもかまわないけど。一度、私は彼女を排除すると決めたのよ。結論を覆したのは、伊吹二尉ではない。あなたへの譲歩」

リツコ「はい。感謝しております」

ユイ「これであなたにも楔がついてしまったわね。もし、私を裏切るようなマネをすれば、伊吹二尉もただでは済まない」

リツコ「……」ギリッ

ユイ「いい取り引きだった。用件は済んだわ、下がっていいわよ」


345 ◆y7//w4A.QY2017/09/04(月) 14:43:25.88fkwizG0h0 (4/9)

【数十分後 同執務室】

冬月「いささか締めつけすぎではないか」

ユイ「充分に譲歩していますよ。交渉の余地を与え目的を達成させてあげたのですから」

冬月「赤木博士は碇の時同様、キミの側近という立場だろう。部下を大切に扱えば今後の為になる」

ユイ「甘くしすぎてしまえば増長を招く結果になりかねません。赤木博士が必要ならばこそ、時には厳しくですわ。飼い主は手綱をしっかりと握る義務がありますので」

冬月「……」

ユイ「中でも、弱みを掴むのはもっとも有効な手段であると言えるでしょう。伊吹二尉をかばったのは、赤木博士を操作する上でおつりがくるほどです」

冬月「あやつも女だからな。男を失って、なにをしでかすかわからないという危険はあった」

ユイ「人は、立場によって、守るものがあると弱くなります。本当にこわいのは、なにもない人間なんです。予測が難しい」

冬月「今後は、サードチルドレンと赤木博士に伊吹二尉を、いうなれば“人質”として実質的な機能させるわけか」

ユイ「シンジは、甘いですから。セカンドチルドレンを同じダシにして同様に楔を打ち込めるでしょう。……しかし、赤木博士に該当するのは、葛城一尉か伊吹二尉しかいません。それがよくわかりました」

冬月「起爆放置を彼女に持たせたのはそういう理由だったのかね」

ユイ「そうですよ。爆弾を仕掛け、彼女に起爆スイッチを持たせる。そうすることで、葛城一尉を“いつでも殺してやるぞ”、と脅しをかけていたんです」

冬月「……」

ユイ「観察している限りだと、あまり効果的ではないのかと思いはじめていましたが……やはり、私の読みは正しかった」

冬月「……」

ユイ「――土壇場になれば、赤木博士は情に流されます。ふふっ、うふふっ、愚かな」


346以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/04(月) 14:43:45.26FWdxu2dro (1/1)

ユイはいちいち癪に触る言い方するよな
愛した男の元嫁関係なく恨みを買うわ


347 ◆y7//w4A.QY2017/09/04(月) 15:10:46.30fkwizG0h0 (5/9)

【ネルフ本部 MAGI配線室】

リツコ「記録を残し続けるのは、もうすぐ終わりになるかもしれないわね」カチ

リツコ(ボイスレコーダー)『――碇ユイ博士の挑発に乗ってしまった。やりとりをしていて気がついた。ミサトの自宅に仕掛けられた起爆装置は、ミサトを危険視しているのではなく、私に無言の圧をかけていたのだろう』

リツコ「……」カチ

リツコ「母さん、どうしたらいいのかしら」スッ

ミサト『そ、ミサト。葛城ミサト。よろしくね」

リツコ「母さんに友達ができたって言ったら、喜んでくれたわね……」

ナオコ(幻聴)『リッちゃん。あなたは自分の幸せを逃してしまわないか心配です』

リツコ「バカ。母さんだって、不幸なまま死んでしまったじゃない」

ナオコ(幻聴)『私はいいのよ。女としての幸せだったんだから』

リツコ「科学者としての自分、女としての自分。男の為にすべてを投げ出して。それが、女の幸せ?」

ナオコ(幻聴)『研究だけの人生はつまらないわ。飽きてしまう。燻るジレンマが、あなたもわかるでしょう?』

リツコ「ふぅ……気持ちはわからなくもないけど。結局、私も母さんと同じ道を歩んでいたんだもの」

ナオコ(幻聴)『でも、リッちゃんは生きてる』

リツコ「ただ時間を無為に浪費してるだけよ。なんの為に生きてるか――」

ナオコ(幻聴)『苦しいのね、生きづらいでしょう』

リツコ「ふふ、とっても。でも、まだ死ぬわけにはいかない」


348 ◆y7//w4A.QY2017/09/04(月) 15:37:57.44fkwizG0h0 (6/9)

【翌日 第三新東京都市第壱中学校 昼休み】

シンジ「ふぅ」

アスカ「はぁ」

トウジ「なんや、あの二人。揃って一日中ため息ばっかついとるで」

ケンスケ「こないだのユニゾンの続きなんじゃないか?」

トウジ「今さらか?」

ケンスケ「さぁね、僕が知るわけないよ」

マナ「おはよう」

トウジ「おう、おはよーさん」

ケンスケ「どうしたんだ、荷物かかえて」

マナ「これ? 端末が届いたから、事務室に取りにいってたの」

トウジ「ああ、そういや今日か」

ケンスケ「トウジの妹さんの手術も今日じゃなかったか?」

トウジ「アホ。学校の備品のついでみたいに言うな」

ケンスケ「あれ? 行かなくていいのか?」

トウジ「そのつもりやったんやけどなぁ。連絡がきた頃には終わっとった」

ケンスケ「へ?」

トウジ「なんでも、今日の朝イチでやってくれたらしい。サクラの前に手術を予定しとった患者さんが昨日の夜遅く、急遽取りやめになったそうや」

ケンスケ「そんなことあるんだな。何時からやってたんだ?」

トウジ「昨日の深夜に点滴を開始して、朝の七時にはもう手術台の上に乗っ取ったって聞いとるで」

ケンスケ「だったら、シンジに教えてやれよ」

マナ「ねぇ、鈴原くんの妹さん怪我かなにかしてたの?」

トウジ「ん? ああ、そうや、霧島は知らんかったな。ちと、ひどい怪我でな」

ケンスケ「碇が怪我させたんだよ」

トウジ「ちっ、おい、ケンスケ」

マナ「シンジくんが?」

ケンスケ「隠したってなんになるんだよ。ああ、そうさ。初陣の時にね」

マナ「そうなんだ……」

トウジ「ワシはもうなんとも思っとらん。最初は、殴ったりもしたが、それでもう帳消しや!」

ケンスケ「よく言うよ。その後にシンジに転院を頼んでたじゃないか。あいつだからよかったものの」

マナ「……?」

トウジ「そ、それで帳消しや!」

マナ「ねぇ、経緯を詳しく聞かせてくれない?」


349 ◆y7//w4A.QY2017/09/04(月) 15:39:52.25fkwizG0h0 (7/9)

>>348間違ったんでレスしなおし


350 ◆y7//w4A.QY2017/09/04(月) 15:41:36.43fkwizG0h0 (8/9)

【翌日 第三新東京都市第壱中学校 昼休み】

シンジ「ふぅ」

アスカ「はぁ」

トウジ「なんや、あの二人。揃って一日中ため息ばっかついとるで」

ケンスケ「こないだのユニゾンの続きなんじゃないか?」

トウジ「今さらか?」

ケンスケ「さぁね、僕が知るわけないよ」

マナ「よいしょっと」ゴト

ケンスケ「どうしたんだ、重そうに荷物かかえて」

マナ「これ? 端末が届いたから、事務室に取りにいってたの」

トウジ「ああ、そういや今日か」

ケンスケ「トウジの妹さんの手術も今日じゃなかったか?」

トウジ「アホ。学校の備品のついでみたいに言うな」

ケンスケ「あれ? 行かなくていいのか?」

トウジ「そのつもりやったんやけどなぁ。連絡がきた頃には終わっとった」

ケンスケ「へ?」

トウジ「なんでも、今日の朝イチでやってくれたらしい。サクラの前に手術を予定しとった患者さんが昨日の夜遅く、急遽取りやめになったそうや」

ケンスケ「そんなことあるんだな。何時からやってたんだ?」

トウジ「昨日の深夜に点滴を開始して、朝の七時にはもう手術台の上に乗っ取ったって聞いとるで」

ケンスケ「だったら、シンジに教えてやれよ」

マナ「ねぇ、鈴原くんの妹さん怪我かなにかしてたの?」

トウジ「ん? ああ、そうや、霧島は知らんかったな。ちと、ひどい怪我でな」

ケンスケ「碇が怪我させたんだよ」

トウジ「ちっ、おい、ケンスケ」

マナ「シンジくんが?」

ケンスケ「隠したってなんになるんだよ。ああ、そうさ。初陣の時にね」

マナ「そうなんだ……」

トウジ「ワシはもうなんとも思っとらん。最初は、殴ったりもしたが、それでもう帳消しや!」

ケンスケ「よく言うよ。その後シンジに転院を頼んでたじゃないか。あいつだからよかったものの」

マナ「……?」

トウジ「そ、それで帳消しや!」

マナ「ねぇ、経緯を詳しく聞かせてくれない?」


351 ◆y7//w4A.QY2017/09/04(月) 23:07:19.83fkwizG0h0 (9/9)

マナ「――ふぅん。男の子の友情って感じ?」

ケンスケ「そんなにキレイなもんじゃないさ。トウジが頑固なだけだよ」

トウジ「ぬぐっ!」

ケンスケ「そりゃぁ、怪我させちゃったのは碇にも責任がある。乗ってる理由が望んでも望んでなくてもね。だけど、トウジはその後のやり方がまずい。それはそれ、これはこれって感じ」

マナ「お互いに許してるんだね。いい関係」

トウジ「ふんっ!」

ケンスケ「まぁ、こいつは元々こんなやつだからねぇ」

マナ「なんだか、友達のこと思い出しちゃった」

ケンスケ「前の学校かぁ?」

マナ「うん、子供で、いつも張り合って喧嘩して。いざと言う時助け合って……」

ケンスケ「碇は消極的だからなぁ。わざとぶつからないようにしてる」

トウジ「せやな。たまにこっちから行動おこさへんと。あんな生き方して辛くないんかのぉ」

ケンスケ「本人に自覚ないんじゃない? 自然だから。我慢するのが」

マナ「どうして、シンジくんは我慢するようになったのかな?」

ケンスケ「僕らも碇が転校してくる前の話はほとんど知らないよ。聞きもしないし」

トウジ「興味ないしな」

マナ「……」

ケンスケ「碇のことをどうしてそんなに知りたがるんだ? やっぱり、エヴァの操縦してるから?」

マナ「あ、う、うん……かっこいいなぁって思う」

トウジ「女に人気でるもんかのぅ」

ケンスケ「碇をもっと知りたいんだったら、エヴァパイロットだからって言わない方がいいよ」

マナ「……? どうして?」

ケンスケ「あいつ、嫌がって乗ってるんだよねぇ」

マナ「……」

トウジ「しかたなしやろ。誰でも乗れるわけちゃうからな」

ケンスケ「くぅ~っ! 運命は不平等だよ! 僕なら喜んで乗るってのに!」


352 ◆y7//w4A.QY2017/09/05(火) 00:11:57.71M0MZMnUf0 (1/3)

シンジ「(やっぱり、こっそり調べるよりも一度母さんと話しなくちゃだめだな)」

マナ「ねっ!」ドン

シンジ「いつっ⁉︎」

マナ「あれ? そんなに強くしたつもりないんだけど」

シンジ「い、いや。昨日ちょっと打っちゃってて」

マナ「そうなんだ? ごめんね、痛かった?」

シンジ「どうしたの? さっきまでトウジたちと話してなかった?」

マナ「……見てたんだ?」

シンジ「まあ、なんとなく」

マナ「本当に?」

シンジ「やだな。それ以外になにがあるっていうのさ」

マナ「ぶっぶー。そういう言い方をしちゃいけませ~ん」

シンジ「……?」

マナ「黙ってジッと見られてるのイヤだけど、見てた?って聞かれた時は少しって答えるのが正解」

シンジ「なんで?」

マナ「全く興味ないって言われてるようでイヤだもの。女の子として見てほしいの」

シンジ「はぁ」

マナ「私って、そんなに魅力ない?」

シンジ「いや、どうかな。そんなことないと思うよ」

マナ「シンジくんってさ、もしかして……ホモの人?」

シンジ「なっ⁉︎ ち、違うよ⁉︎」

マナ「あはは、ムキになってる。かわいい」

シンジ「か、からかわないでよ! もう!」

マナ「だって、シンジくんの浮いた噂聞かないんだもん」

シンジ「そんな……」

マナ「エヴァパイロットってモテるでしょう? 彼女、作らないの?」


353 ◆y7//w4A.QY2017/09/05(火) 00:23:57.57M0MZMnUf0 (2/3)

シンジ「偏見だよ、そんなの……」

マナ「そうかなぁ。シンジくんがその気になればすぐにできると思うけど。クラスメイトってさ、例えばギターができる、ダンスが上手とか。そんな些細なモノで一気に目立ったりするよね?」

シンジ「うん、まぁ……」

マナ「シンジくんはパイロットなんでしょ? それもみんなを守ってる!」

シンジ「僕は、別に」

マナ「(この反応は。相田くんの言ってたことは本当なのね)」

シンジ「それに、恋愛なんてよくわからないし」

マナ「異性として見れない?」

シンジ「そうじゃないけど……好きってなんだろうって」

マナ「ライクじゃないラヴ。他人を好きになったこと、ないんだ?」

シンジ「そうかも、しれない」

マナ「じゃあ、真っ白だね!」

シンジ「なにが?」

マナ「なにも色がついてない紙と一緒。知ってる? 男の子って、初恋の子は生涯忘れないっていうよ?」

シンジ「あぁ、まぁ、テレビで見たことあるような」

アスカ「ちょっと、マナ」ピタ

マナ「っと、どうしたの?」

アスカ「……」

マナ「アスカ?」

アスカ「(こいつがスパイねぇ)」

シンジ「……?」

アスカ「シンジ、少し話があるんだけど」

シンジ「あぁ、うん。わかった」

マナ「(ヤキモチ? まさかね……)」


354以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/05(火) 11:44:14.56yJhUSizso (1/1)

冬月の言うように締め付け過ぎだろう。
リっちゃんにしてみれば前妻に付き従う理由なんて無く、いまやただの義務感で仕事してるのに。


355以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/05(火) 17:09:20.76oXrX0EyAo (1/1)




356以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/05(火) 20:47:29.599r/nXaTPo (1/1)

冬月はわかっているが技術畑で頭脳派のリツコは大事にすべきだろう。怒らせたら
ミサトなんかよりよっぽど脅威になる。夫婦で利用され嫁にはコケにされリツコはそろそろキレていい


357 ◆y7//w4A.QY2017/09/05(火) 23:47:38.28M0MZMnUf0 (3/3)

【第壱中学校 体育館裏】

シンジ「……? ねぇ、アスカ。どうしてこんなところへ」

マナ「(ふぅ……やけに警戒してるな。重要な情報あるのかも)」

アスカ「バカねえ。日本じゃ壁に耳あり障子に目ありって言うでしょ。いつどこで誰が聞いてるかわからないんだから、用心するにこしたことはないわ」キョロキョロ

マナ「(ふふっ、あるのは木の上なんだけどね)」

シンジ「なにかあったの?」

アスカ「あんたホントに聞いてないのぉ?」

シンジ「なにを?」キョトン

アスカ「くっ、なぜだか拍子抜けしてムカつく。平和ボケもたいがいにしなさいっつってんのよ!」バシ

シンジ「いたっ!」

アスカ「……? なんか大袈裟ね」

シンジ「いっつつ。なんなんだよ、もう。言ってくれなくちゃわかるわけないじゃないか」

アスカ「あの霧島マナって子に気をつけなさい」

マナ「(……!)」

アスカ「これは忠告。あんた抜けてるから、色仕掛けされたらデレデレ鼻の下伸ばしちゃいそうだし」

シンジ「はぁ、どうして?」

アスカ「スパイらしいわ。人は見かけによらないっていうけど」

マナ「(うそっ⁉︎ もう身元が割れてるの⁉︎)」

シンジ「マナが? どこの?」

アスカ「戦自」

マナ「(まずい……どうしよう……アスカはどこから? ううん、もしかしたら校内に既に……まだ死ぬわけにはいかないのに……!)」

シンジ「そうなんだ」

アスカ「はぁ? 感想はそれだけ?」

シンジ「うん。アスカは誰から聞いたの?」

マナ「(……!)」ゴクリ

アスカ「あんたのママ。なに考えてんのかしらね、あの人」

シンジ「……」

アスカ「スパイがいるのがわかってるなら捕まえればいいじゃない? でも、そうはしてないみたいだし」

マナ「(母親。……データによると碇ユイ! ネルフの新指令……! しまった! なにか落ち度があったの⁉︎)」

シンジ「母さんは、きっとマナを利用できないか考えてるんじゃないかと思うよ」

アスカ「あいつを?」

マナ「(私を?)」

シンジ「マナを守らなくちゃ」

アスカ「ばっ、バカァ⁉︎ あんたなに考えてんの⁉︎」

マナ「(へ?)」

シンジ「マナはどういう目的でスパイをやってるんだろう。母さんに利用されないようにしないと……」

アスカ「あ、あんたねぇ! 協力体制だとしても、今回の懸案はそういうモノじゃないのよ⁉︎ 戦自はネルフを調べてるんだから!」

シンジ「うん、だから、マナはどういう理由でここに転校してきたのかな」

アスカ「はぁ?」

マナ「(……そう、シンジくんも私を利用するつもり……?)」

シンジ「なにか事情があると思うんだ。僕たちと同い年でスパイだなんて、普通じゃないよ」

アスカ「そんなのどうでもいいでしょ! あいつは敵……かはまだわからないけど、限りなく敵に近いやつなんだから!」


358 ◆y7//w4A.QY2017/09/06(水) 00:05:44.83Z0wh0f1m0 (1/5)

シンジ「うん、そうかもしれないね」ポリポリ

アスカ「ようやくその足りない頭で事態が――」

シンジ「だけど、決めつけるにはまだはやいよ」

アスカ「……!」

マナ「(も、もしかして、シンジくんってすごくお人好し……?)」

シンジ「アスカ。アスカは、僕がどうしてマナを守らなきゃって言ったかわかる?」

アスカ「知るわけないじゃない! あんたのそのトチ狂った発想なんて知りたくも――」

シンジ「母さんが、こわいんだ」

アスカ「……?」

シンジ「母さん。ほとんど知らない人。顔さえ覚えてなかった。でも、そんな人がある日突然母親だと名乗りでてきたんだ」

アスカ「……」

シンジ「親しげな声で僕の名前を呼ぶ。僕は誰かわからなかったのに。懐かしさはどこかで感じていたよ」

アスカ「それとは話が別でしょ」ボソ

シンジ「同じなんだ。僕の中では。父さんと違う種類のこわさを感じてる。やってきたことを見ても、僕は、こわくてたまらない」

アスカ「はぁ、はいはい。百歩譲って関係あるってことにしといてあげる。で? だから、マナを守るの? あたしたち、ネルフ全体に害をなす存在かもしれないのに?」ビシ

マナ「(……)」

シンジ「うん。まずは話を聞いてみないと。どうやって聞こうかな……」

アスカ「ちっ、司令の判断に納得したわ。あんたに話したってろくなことにならないってことがね」

シンジ「マナってスパイだよね? はおかしいだろうし」ブツブツ

アスカ「あんたの今の言葉、報告しとくから」

シンジ「誰に?」キョトン

アスカ「決まってるでしょ!!」

シンジ「あぁ、母さんか。うん、いいよ」

アスカ「な、なぁっ⁉︎」

シンジ「話はそれだけ?」

アスカ「それだけって……」

マナ「(あは、あははっ。変な子、だめ、声我慢しないと)」

アスカ「だぁ、怒る気も失せてきた。あんたってたまに大物なのか本気のバカなのか判断が難しくなんのね」


359 ◆y7//w4A.QY2017/09/06(水) 01:01:56.26Z0wh0f1m0 (2/5)

アスカ「なんか変に警戒するのがアホらしくなっちゃった。教室に戻るわよ」

シンジ「待って」ガシ

アスカ「なによ。気安く触らないでくれない?」

シンジ「僕が気になってるのはアスカなんだ」

アスカ「うげ、気持ち悪う」

シンジ「(母さんは、どうしてアスカに話したんだろう)」

マナ「……」

アスカ「はぁ、まぁでも溢れ出る魅力にようやく気がついたってところかしらねぇ」

シンジ「(母さんに確認しなくちゃいけないことがまた増えちゃったな……)」

アスカ「お金はとるけど、デートしてあげないことはないわよ?」

シンジ「うーん」

アスカ「煮え切らないわねぇ、冗談にしても男ならそこは女の子を立てるべきでしょ」

シンジ「……? あ、あぁ、うん、そうだね」

アスカ「っとに、あんたは抜けてるのよねぇ」

シンジ「はは」

アスカ「本気でなおそうとしない。すぐに限界を決めて諦める」

シンジ「うん。それはそうだね」

アスカ「身分ってもんをわきまえなさい? デートなんかあと十年は早いんだから。べーっだ」

シンジ「デート……?」

アスカ「はっはーん、とんだ笑いもんだわ。断られたからってなかったことにするとか。ダサっ」

シンジ「(なに言ってるんだろう……?)」

アスカ「なによ? そんなにしたかったの?」

シンジ「したい?」

アスカ「またすぐ誤魔化そうとする。ストーカーになられたらイヤだし。……一回だけなら、いいわよ」

シンジ「えっ。あの……」

マナ「(ぷっ、くっくっ、声でちゃいそう)」


360以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/06(水) 01:34:58.46F1xEJg3Co (1/1)




361 ◆y7//w4A.QY2017/09/06(水) 21:16:29.84Z0wh0f1m0 (3/5)

【再び教室 放課後】

マナ「(私の正体がバレてるなら、ろくな情報引き出せそうにないな……それに戦自が事態を把握すれば……ここで終わりだなんて)」

ケンスケ「おい、霧島」

マナ「(それにしても、どうして……? どこから突き止めたのかしら。ううん、今はそれよりも今後の身の振り方が最優先。いっそ、ムサシとケイタに全てを打ち明けて……)」

ケンスケ「おいってば」

マナ「(だめ……! 無駄だわ。あの二人は戦自にマインドコントロールされていて私の意見なんか聞いてくれない。救うには、どうしたら。……ちがう。私は、自分の身でさえ守れないのに……)」

ケンスケ「なぁ」ポン

マナ「なによっ⁉︎」バンッ

ケンスケ「お、おう」

マナ「……あ……ど、どうしたの?」

ケンスケ「機嫌でも悪いのか?」

マナ「ご、ごめんね。ちょっと、嫌なこと思い出してて。なにか用?」

ケンスケ「ファンからの手紙を預かってるよ」

マナ「……?」

ケンスケ「ラブレターってやつ。転校してきてまだ数日しかたってないのになぁ」

マナ「あ……」

ケンスケ「渡しておいてくれって頼まれたからさ。とにかく、渡したぞ」カサ

マナ「(こんなの、受け取れるわけないじゃない)」グシャ

ケンスケ「お、おい。いきなり握りつぶすのは」

マナ「ありがとう。言っておいてくれない?」

ケンスケ「……?」

マナ「手紙で想いを伝える男の子なんて嫌いですって」

ケンスケ「辛辣だねぇ。日時と場所が書いてあるだけじゃないか?」

マナ「それも含めて、ね?」

ケンスケ「……はぁ、りょーかい」

マナ「あっ、ちょっと待って!」

ケンスケ「あん? 気が変わったのか?」

マナ「シンジくんは?」

ケンスケ「碇なら下駄箱じゃないか?」

マナ「ありがとっ!」ポイッ タタタッ

ケンスケ「あーあ。こんなゴミみたいに捨てられちゃって。差し出し人は、碇からなんだけどなぁ」カサ


362 ◆y7//w4A.QY2017/09/06(水) 21:33:38.02Z0wh0f1m0 (4/5)

【下駄箱】

シンジ「(マナ、来てくれるかな。待ち合わせ場所まで急がなくちゃ――)」トントン

マナ「シンジくんっ!」

シンジ「マナ……?」

マナ「今帰り?」

シンジ「うん、そう、だけど……」

マナ「(今すべきことは、保身……! ネルフがいつどういう風に動くのかわからない、接触を待っていてはだめ。昼休みの話を聞く限り、シンジくんは私に敵対心を持ってない、はず……)」

シンジ「あの、手紙、見てくれたの?」

マナ「手紙……?」

シンジ「ええと、ケンスケに渡してもらうように頼んだんだけど」

マナ「――えぇっ⁉︎ さっきの手紙ってシンジくんからっ⁉︎」

シンジ「呼んでないの?」

マナ「あっ、えっと! も、もちろん読んだよ! 嬉しくてすぐに飛び出してきちゃった」

シンジ「嬉しい? ……手紙には、場所と時間しか」

ケンスケ「お、いたいた」

マナ「あ、相田くんっ⁉︎」

ケンスケ「やっぱりまだ下駄箱にいたんだな」

シンジ「うん」

マナ「どうして相手を言わないのよっ⁉︎」

ケンスケ「ファンからだって言ったろ?」

マナ「そんな、シンジくんなんて思うはず――」

シンジ「二人とも、どうしたの?」

ケンスケ「ん? いやぁ、なんにも」

シンジ「僕は先に待ち合わせ場所で待ってるから」

マナ「それなら、一緒に……!」

シンジ「別々に学校を出た方がいいよ」

マナ「(やっぱり、シンジくんはあのことで……!)」

ケンスケ「……いいのか?」

シンジ「うん、手紙見たって言ってくれてるから」

ケンスケ「ふぅ~ん?」チラ

マナ「……!」

ケンスケ「それなら、なにも心配ないな」

シンジ「それじゃ、ケンスケまた明日学校で。頼みごと聞いてくれてありがとう」

ケンスケ「今度! ネルフに連れてってくれるって約束! 忘れんなよ!」

シンジ「わかってる」スタスタ


363 ◆y7//w4A.QY2017/09/06(水) 21:48:44.25Z0wh0f1m0 (5/5)

マナ「手紙」スッ

ケンスケ「なんのことだ?」

マナ「……」ヒクヒク

ケンスケ「あ、しまった! おーい、碇! 霧島からのメッセージが」

マナ「ちょっと!」ガバッ

ケンスケ「ぬぐっ! ふむむっ!」

マナ「……さっきのは、訂正する。だから、お願い。手紙を」

ケンスケ「もご?」

マナ「どこ? 手紙」スッ

ケンスケ「ほしいのか? これが」

マナ「相田くん?」

ケンスケ「霧島、うまい話があるんだけど」

マナ「……?」

ケンスケ「実はさ。霧島の写真をほしいって連中がけっこーいてね」

マナ「……」

ケンスケ「いつもは隠し撮りすんだけど、霧島はなんかガードが堅いっていうか。うまく撮れないんだよな。もしかして、気づいてた?」

マナ「……最低」

ケンスケ「いやいや! そんな! 違うよ! これは霧島に正式に依頼して取り分の半分を!」

マナ「写真のことならとっくに気がついてる。相田くん、転校してきた初日から私を撮ろうとしてたでしょ?」

ケンスケ「ああ、やっぱり――」

マナ「でも、それって盗撮だよ? 良くないことをしてるって自覚ないの?」

ケンスケ「うっ、そ、それは……」

マナ「見て見ぬふりをして黙ってたのは、悪い人じゃないんだって信じてたから。それなのに、手紙をネタに脅迫みたいなマネするなんて」

ケンスケ「そんなつもりは……!」

マナ「同じことだよ! 私が断りにくい状況で話を持ち出してきたじゃない!」

ケンスケ「あ……いや、僕は、霧島に、損はない話だって……」

マナ「手紙、返して。じゃないと大声で叫ぶわよ」

ケンスケ「え?」

マナ「下校中だし、まだ生徒はたくさんここを通る。ほら」

男子生徒A「お、霧島だ。かわいいなぁ、いつ見ても。相田となにしてんだ?」チラ

ケンスケ「うっ……」

マナ「立場が逆転しちゃったね」

ケンスケ「す、すまない、霧島。僕、どうかしてて」スッ

マナ「いいの。でも、これからはこんなマネしないでくれるかな?」

ケンスケ「あ、あぁ。気をつけるよ」

マナ「(余計な手間……それよりも、内容は……)」カサカサ

ケンスケ「あのさ、霧島。写真なんだけど――」

マナ「それじゃ! また明日!」トントン タタタッ


364以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/07(木) 00:41:58.58VWcu6J+Do (1/1)

マダー


365 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 10:44:17.98nADDI2Sj0 (1/9)

【第三新東京都市 工業団地マンション】

シンジ「……」

マナ「はぁっ、はぁ、シンジくん、待った?」

シンジ「あ、よかった。越してきたばかりだから道がわからないのかと心配してた」

マナ「ごめんね、バスを一本乗り遅れちゃって」

シンジ「気にしなくていいよ。それより、話があるんだけど」

マナ「ふぅ、ふぅ……うん、実は、私も」

シンジ「先に、いいよ」

マナ「シンジくん、私の正体に気がついたんでしょ?」

シンジ「どうして、それを?」

マナ「……アスカと話してるの聞いてたんだ。ごめんね、盗み聞きするような真似して」

シンジ「昼休みの? あの場にいたんだ?」

マナ「うん、会話が聞こえるように。そばに木があったでしょ? 登って聞いてたの」

シンジ「わぁ、すごいや。よく登れたね」

マナ「太い木だったから。掴みやすかったし、ってそうじゃなくて、私が、戦自から出向してるってこと。知ったんだよね?」

シンジ「うん」

マナ「ごめんなさい!」ペコッ

シンジ「……?」

マナ「任務で仕方なくて! こうするしかなかったの!」

シンジ「謝らなくていいよ。なにかされたわけじゃないし」

マナ「どうして……? バレなかったからって罪は軽くならない。もし、バレてなかったら、そのままシンジくんや、アスカたちにひどいことしてたかもしれないんだよ?」

シンジ「でも、行動を起こす前にこうなったじゃないか」

マナ「……」

シンジ「“未遂”だった。あるいは、“事前に防ぐことができた”ってことじゃないかな。僕はなにもしてなくて知らされただけ。マナのやろうとしていた目的に関与すらしてないよ。だって、これからやろうとする所だったはずだから。……違う?」

マナ「そう、だけど」

シンジ「うん。その上で聞きたいんだ。マナはどういう目的で、僕やアスカや綾波、ネルフに近づこうと思ったの?」

マナ「なぜ、知りたいの?」

シンジ「もしかしたら、協力できるかもしれない。話を聞くまではわからないけど」

マナ「……どうして、シンジくんは?」

シンジ「母さんがこわいから」

マナ「……?」

シンジ「このまま流れに身を任せていると、母さんに全て壊されてしまいそうな気がするんだ。知り合い、大切な友達、僕の日常。不思議、なんだ。エヴァに乗って戦う日々がたまらなくこわくて嫌だったのに、それ以上にこわいと思う存在ができたら、なんともないと思う」

マナ「勘違いだったらごめんなさい。もしかして、シンジくんは、ネルフに……うぅん、お母様と敵対しようとしてるの?」

シンジ「それは違うよ、僕は守りたいだけ。僕の大切なものを壊そうとするから」

マナ「……」

シンジ「マナの不安は、僕に話たところで庇護されるか。……母さんに殺されないかって思ってるはず。情報の出所は、僕じゃなくネルフだからね」

マナ「(この子、普通じゃない……。頭が良い)」

シンジ「口約束で申し訳ないけど、ここでの話は誰にも言わないと密約するよ」

マナ「(違う、そんなはずない。資料によると普通の中学生だって……。シンジくんも考えなきゃいけないほど追い詰められてるんだわ。そして、自分の感覚を研ぎ澄ましてる)」ゴクリ

シンジ「どう?」

マナ「取り引きってこと?」

シンジ「うん。お互い、有益になるのであれば協力できると思う」

マナ「(どの道、ここは――シンジくんに賭けてみるしか……!)」


366 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 11:22:25.94nADDI2Sj0 (2/9)

シンジ「――それじゃぁマナは友達の為に?」

マナ「うん。二人ともちょっと血の気が多くて、どうしようもないんだけど、憎めないの」

シンジ「……」

マナ「シンジくんたちに近づいたのは、私に命令が下ったから。“碇一族に関する情報を引き出せ”、“セカンドチルドレンとファーストチルドレンに近づいてほしい”って……」

シンジ「……」

マナ「戦自は、ネルフにつけいる隙がほしいみたい。ないなら、作るつもりなんだと思う。急な人事異動に目星をつけて」

シンジ「マナの任務が終わったら、友達は?」

マナ「前線から遠い情報部に異動してくれるって約束してくれた」

シンジ「(マヤさんみたいなポジションてことか)」

マナ「全部、自分の為。これが、私がここに転校してきた理由……」

シンジ「ありがとう」

マナ「へ?」

シンジ「話してくれて」

マナ「シンジくん、本当に優しいんだね。でも、これは私の為に話してるの。今言ったことだって、作り話かもしれないよ?」

シンジ「信じるよ」

マナ「あ……」

シンジ「ウソだとしても、僕はマナを信じる」

マナ「……」グスッ

シンジ「情報を集めるまでに期限はあるの?」

マナ「……う、うぅん、明確な期限は。進展がなければプレッシャーをかけてくると思うけど。まだ始まって間もないし」ゴシゴシ

シンジ「……」

マナ「シンジくんは、なにかプランは?」

シンジ「まず、マナの安全を確保しなくちゃいけない。マナは戦自に属していて、任務を引き受けた時点で正規の手段を使い抜けることは難しい」

マナ「うん」

シンジ「友達を救いたいんだよね? だったら、逃げられない。戦自を欺く必要がある。まだマナの正体はバレてないって、引き続き任務を続けてる体裁を守らなきゃならない」

マナ「うん」

シンジ「問題は、母さんがいつ仕掛けてくるのか。マナの情報を戦自に漏らさない保証と、マナの身の安全の確保」

マナ「(す、すごい。一般人が、よく、ここまで……)」

シンジ「両親や僕の情報については、定期的に教えてあげるよ」

マナ「ほ、本当っ⁉︎」

シンジ「ただし、戦自に怪しまれない程度に。一度に話してほしいんだろうけど、必要な経緯がないと話に無理がでてしまうだろうから」


367 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 11:26:06.53nADDI2Sj0 (3/9)

マナ「それは、そうかも。間違ってないか情報を精査するには時間がかかる。過程で私の正体がバレてるって疑いを持たれたら……」

シンジ「うぅ~ん」

マナ「……」

シンジ「そうなると、やっぱり、ネルフ側の対応次第だね」

マナ「うん……」

シンジ「これから、母さんと話てみようと思う。……マナのことだけじゃないよ。色々、確認しなくちゃいけないから」

マナ「……」

シンジ「僕に任せる?」

マナ「……!」

シンジ「マナの身の安全、友達のこと。マナがこのままだと、友達も道連れ、だよね」

マナ「いいわ、シンジくんに賭けてみる」

シンジ「……」

マナ「どうせここで終わりだったのかもしれない。どうなろうと恨んだりしない」

シンジ「よく考えなくていいの?」

マナ「時間なんてないもの。こうして話してる瞬間にもネルフか戦自が突入してくるかもしれない」

シンジ「……」

マナ「――私と、ムサシとケイタの運命を、あなたに託します」


368 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 11:44:57.51nADDI2Sj0 (4/9)

【ネルフ本部 司令室】

冬月「なに? ユイくんに会いたい?」

シンジ「はい。今日はシンクロテストがないので、少し話がしたくて」

冬月「キミが自分からとはめずらしいな」

シンジ「母ですし、なにも不思議なことは」

冬月「そうではない。表立って要求をしてくることがだ。父親の時は言った試しがなかったろう」

シンジ「何度か試しましたよ。電話をかけてみたり。忙しいってすぐ切られましたけど」

冬月「ふっ、そうだったのか。碇がやりそうな応対だな」

シンジ「母は忙しいでしょうか?」

冬月「そうだな、いまなら多少の時間はあろう。確認をとるから少しそこでまて」カチャ

シンジ「ありがとうございます」

冬月「――……もしもし、私だ。今、司令はなにをしている?」

シンジ「……」

冬月「ああ、そうだったか。……うん、十分後にサードチルドレンを連れて執務室に向かうと言伝を頼む」

シンジ「(母さん、まともに話するのは僕が麻袋を被せられていた時以来になるのかな……)」

冬月「ではな」カチャ

シンジ「……」

冬月「この後、明日の県議会に出席する為、移動する予定がある。それまでの間、時間を作るそうだ」

シンジ「はい」

冬月「では、降りるとするか」


369以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/07(木) 12:02:08.40S56uxep9o (1/1)

(いつも更新楽しみにしております)


370 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 12:21:12.07nADDI2Sj0 (5/9)

【ネルフ本部 執務室】

冬月「進みたまえ」

シンジ「失礼します」

ユイ「……」スッ

冬月「(まともに話をしようとしている姿を見るのは、これが初めてか。感動の対面、というわけにもいくまいな)」

シンジ「忙しいのにわざわざ時間を作ってくれてありがとう」

ユイ「気にすることないわ。手の具合はどう? 心配してたのよ」

シンジ「うん、悪くないよ。母さんがコレを僕の手にいれるように指示したの?」

ユイ「ど真ん中どストレートできたわね。駆け引きを楽しむ余裕も必要よ?」

シンジ「どっちみち、僕は母さんに敵うと思ってないし。負けのわかってる勝負なんてつまらないだけだよ」

ユイ「よろしい。実に理にかなった行動です。学習したわね。答えない場合まで想定してる?」

シンジ「選ぶのは母さんだ。答えないという選択だってできる」

ユイ「成長したわ。では、“答える必要はない”と言ったら?」

シンジ「僕は、この手を切り落とす」

冬月「……!」ギョ

ユイ「本気?」

シンジ「試してみる? ほんの二秒あれば手首から先を切り落としてみせるよ……!」

ユイ「交渉テーブルに自らを乗せてきたのね。ふぅん……悪くない。けど、その前にシンジを私たちが取り押さえたら?」

シンジ「もちろん、考えたよ。だから、こうしてすぐ起こせるようにナイフを用意してきた」スッ

冬月「こやつ、正気か?」

ユイ「そんなバタフライナイフで素人が切れるとでも? でも、シンジが怒るのは無理ないわね、あなたの望まない形になっているでしょうから。……それを指示したのは私」

シンジ「……」

ユイ「私からも質問が一点」

シンジ「なに?」

ユイ「覚えてる? 昏睡状態の出来事を」

シンジ「覚えてないって先に報告してあるはず。どうして、これを? 母さんはなにをしようとしてるんだよ」

ユイ「知ってどうするつもり?」

シンジ「僕に関係あるんだろっ!! なにも知らされてないなんておかしいじゃないかっ!!」

ユイ「……」

シンジ「僕には知る権利がある! そうじゃないの⁉︎」

ユイ「あなたは、理解しようとするの? それが、望まない結果になっても、他人を不幸にさせてしまっても受け入れられるほど強くなった?」

シンジ「やらなくて後悔するよりはいいっ!」

冬月「……」

シンジ「なにもかも勝手じゃないか!! マヤさんにしたのも母さんの仕業なんじゃないの⁉︎ どうしてそんなことするんだよっ⁉︎」

ユイ「……あなたの為なのよ……」

シンジ「僕は望んでないよっ!!」

ユイ「シンジ。この世界はね、近い将来、いずれ滅んでしまうの。使徒が来る来ないに関わらず、私たち人類は人口、民族、紛争、食糧危機、未知の病原菌。様々な現実に直面している」

シンジ「……」

ユイ「個人の幸せにかまけている問題ではなくなってしまっているのよ。人類が生き延びる術、全体なの。私たちはセカイを、新しくゼロから仕切りなおさなければならない。それしか方法がないのよ……!」

シンジ「違う、そんな理由じゃないだろ。母さんが望んでるのは」

ユイ「……!」

シンジ「もっともらしいこと言って。そういえば僕が納得するとでも思ったの?」


371 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 12:47:36.52nADDI2Sj0 (6/9)

ユイ「ふふ、男子三日会わずんば刮目して見よ。……本当に強くなったわね。なにがあなたをそこまでステップアップさせたの? アダム?」

シンジ「正直に言うよ。僕は母さんがこわい」

ユイ「……」

シンジ「顔色を変えずに、僕にこんなことを。マヤさんを危険な目に合わせたのがこわいんだ」

ユイ「……」

シンジ「今日の昼休みにアスカから聞いたよ。戦自からスパイが潜り込んでるって」

冬月「ちっ」

シンジ「あの子をネルフで守ってほしい」

ユイ「それに対する見返りは?」

シンジ「僕の協力。母さんの望む働きになれるように――」

ユイ「あなたは優しいもの。あの子ではなくても、鈴原ヒカリ、セカンドチルドレン、伊吹二尉、葛城一尉、排除したとして代わりはいくらでもきく」

シンジ「……」ギリッ

ユイ「代替え案は?」

シンジ「たしかに、母さんにとっては僕がイヤイヤ協力しようが、進んで協力しようが結果は同じこと」

ユイ「そうね」

シンジ「だったら僕は、また自分をかけるしかない」

ユイ「……」

シンジ「この手にあるのは、必要なモノだから。僕も必要なんじゃないの?」

ユイ「……」

シンジ「僕を失うか、目的を達成するまで他に手をかけないか、選ぶのは二つに一つだよ」

ユイ「あなたは私を敵と思ってるのね?」

シンジ「……」

ユイ「及第点を与えましょう。今回は子供の駄々に付き合ってあげます。副司令、霧島マナのファイルを」

冬月「どうするつもりだ?」

ユイ「こちらが証拠を握っているのです。まずは、信頼の証として、それをシンジに渡しましょう」

シンジ「それだけじゃだめだ。データは残ってるはずだ」

ユイ「もちろんね。デジタル化してる現代において、コピーがないなんてありえない。重要であれば尚更」

シンジ「戦自に解放の働きかけはできない?」

ユイ「それは無理よ。大人には大人の都合がある。ネルフから戦自にそんなことをすれば、なにを要求されるかわかったものではないわ」

シンジ「つまり、現状維持」

ユイ「そうね、あなたにネズミの扱いは一任しましょう。それも、シンジが非協力的な態度を見せたらご破算になるけど」

シンジ「……」

ユイ「シンジ。これはあなたに、とっても不利な条件なのよ? わかるわね?」

シンジ「(僕が、協力しなくても、母さんの気が変わっても……だけど、時間稼ぎにはなる)」

ユイ「それを踏まえて発言してるのね?」

シンジ「うん。それならいい」

ユイ「まだまだね。もっと成長しなさい。話は以上どす。副司令、シンジと共にさがってください。原本を渡すのをくれぐれも」

冬月「ああ。こっちだ」


372 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 13:11:48.48nADDI2Sj0 (7/9)

【ネルフ本部 副司令室】

冬月「このUSBメモリーに件の情報がはいっている」

シンジ「本体に保存してありますよね」

冬月「無論だ。科学とは便利な道具だからな。活用しない手はなかろう」

シンジ「(仮に端末の情報を消去してもらって……無理だ。情報は一度公開されれば、一生残ってしまう」

冬月「しかし、短期間でよくぞここまで変貌をとげたものだ」

シンジ「え?」

冬月「キミの話だよ。これまで、ことなかれ主義で生きてきたのではないか? それがたった数日で機会主義へとガラリと変わっている」

シンジ「そうさせたのは、僕じゃありません」

冬月「人は、立場によって求められる分野が違うからな。望む望まないにしろ、盤面の駒のように成るべくして裏返ったか。どうした? 受けとらんのかね?」

シンジ「……」スッ

冬月「サードチルドレン。情報は武器になる。我々がこうして優位性を保っていられるのも、戦自が喉から手をだす勢いで欲しているのも、“生きた情報”に他ならない」

シンジ「……」

冬月「それはなぜか。手札は多い方がいいからだ。勝てるカード、ジョーカーの有り難みをよく知っている」

シンジ「……」

冬月「しかし、切れ味抜群のジョーカーといえど扱い方を間違ってしまえば諸刃の剣。弱みがないわけではない」

シンジ「そう、ですね」

冬月「言っている意味がわかるかね? “一撃で、人生は簡単にひっくり返る”。要は機会次第という話だな」

シンジ「……」

冬月「今日の出来事はキミという人間を若干ではあるが見直した。引き続き精進するんだな」


373 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 13:56:17.40nADDI2Sj0 (8/9)

【マナ宅】

マナ「――シンジくんっ!」

シンジ「不安になってるだろうと思ったから、報告にきたよ。ごめんね、突然」

マナ「上がって? 私のマンションさっき教えておいてよかった」

シンジ「監視は平気?」

マナ「盗聴器、カメラがないか入念に調べてるよ。尾行は?」

シンジ「大丈夫。そんなことをする意味もないだろうから」

マナ「……?」

シンジ「玄関先でいいよ。これ、渡しとく」スッ

マナ「なに、これ?」

シンジ「マナの個人情報が入ってるUSBメモリー。端末に接続して確認する前にウィルスがないかチェックした方がいいと思う」

マナ「えっ⁉︎ もう⁉︎」

シンジ「結果だけを言うと、現状維持。ネルフはマナに関して静観する姿勢になったよ」

マナ「ほ、ほんと?」ヘナヘナ ペタン

シンジ「うん」

マナ「それで、このデータを?」

シンジ「コピーは抑えられてる。原本だって言ってたけど、そんなことになんの意味もないんだ」

マナ「……」

シンジ「信憑性は疑いのないものだから」

マナ「静観するっていつまで?」

シンジ「僕が協力する限りは。でも、それすらも曖昧で。母さんの気が変わってしまえばその限りではないんだと思う」

マナ「……」

シンジ「ごめん。せっかく僕に。もっと良い条件を引き出すべきだったんだけど」

マナ「そんな。シンジくんがいなかったら今頃……。私は、今後どうしたらいい?」

シンジ「戦自のスパイとして、これまで通りだよ。アスカにはバレてるけど、マナはバレてるって知らないって感じで」

マナ「黙認するのね」

シンジ「うん。ただ、アスカはあまり刺激しない方がいいと思う。ネルフに報告されるだろうから」

マナ「私、敵、だもんね。アスカにとって」

シンジ「自分の居場所は守らなくちゃいけない。アスカのこともわかってやってくれないかな?」

マナ「大丈夫」

シンジ「僕に聞きたいことがあれば、教えるから。これで時間稼ぎをして、次の手を考えよう。アダムと同化すれば――」

マナ「え……?」

シンジ「いや、なんでも」

マナ「怯えて暮らさなくてもいいんだよね?」

シンジ「そうだね、近い内にどうこうならなくて済んだよ」

マナ「ありがとう。どうして私にこんなことしてくれるの? 切り離した方がラクなのに」

シンジ「うーん」ポリポリ

マナ「理由なんていい。シンジくんは私を助けてくれた。私になにかできることがあったら言って? なんでも力になる」

シンジ「それだけだから。また明日、学校で」

マナ「あ、うん! もういいの?」

シンジ「マヤさんとも話しなくちゃ」

マナ「あのっ! ……あれ? あれ? ちょ、ちょっと立てない。こ、腰が抜けちゃったみたい。あはは……」


374以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/07(木) 14:54:56.572hwFOqQeo (1/1)

>>371
急にユイが京都弁になっててワロタ


375以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/07(木) 15:56:15.90bvmZTCxoo (1/1)

ホンマやわあ


376 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 21:47:20.03nADDI2Sj0 (9/9)

【ミサト宅 リビング】

アスカ「うーん、これとこれの組み合わせは……無難っちゃ無難。ていうか、普通ね」ポイ

ミサト「ただい~……?」

アスカ「これかな?」ポフ クルッ

ミサト「……」

アスカ「いい感じ。やっぱり夏は紫外線が強いし日焼け対策はかかせないわよね。うん、我ならがら見事なもんだわ。だいたいシンジも気づくのが――」

ミサト「シンジくんが、なにを?」

アスカ「うわぁっ⁉︎」ギョ

ミサト「おめかししてるのね?」

アスカ「み、みみみみミサトッ! 帰ってきたら挨拶しなさいよ!」

ミサト「姿見の鏡でファッションショーを開催してるから邪魔しちゃ悪いと思って。テーマは……海?」

アスカ「べ、べつに!」

ミサト「……デート?」

アスカ「ち、ちがっ!」

ミサト「そっか……アスカも色を知る年齢なのね。まぁ、背伸びしてるからそうなっても不思議じゃないけど」

アスカ「……っ」プイ

ミサト「隠さなくたっていいじゃなぁ~い。誰しもが通る道よ。この世の半々は男と女なんだからね」

アスカ「経験してみたかっただけ。普通のデート。いつできなくなるかわからないし。パイロットなんだから。でしょ?」

ミサト「そうね。あなた達エヴァの操縦士は常に最前線。裸一貫で突撃する兵士よりは科学の力で守られているけど、相手は正体不明の使徒。命の危機に晒される機会は多いわね」ゴト

アスカ「そう、だから。一度はね」

ミサト「さぁ~て」ガサガサ

アスカ「またビールぅ? 夜ご飯は?」

ミサト「アスカはほら、これ。じゃじゃーん! ほっ○もっとのお弁当」カサ

アスカ「またぁ?」

ミサト「どうしようかしらねぇ、うちの台所事情」

アスカ「ミサトの安月給じゃ家政婦を雇うお金ないでしょ。節約だってしてるわけじゃないし」

ミサト「うっ」カシュ

アスカ「はぁ……」

ミサト「し、シンジくんに頼もうか?」

アスカ「なんて?」

ミサト「作り置きができる料理ってあるじゃない? 例えば三日もつカレーとか。冷凍保存して後は焼くだけのハンバーグとか」

アスカ「ハンバーグ?」ピクッ

ミサト「シンちゃんの作る料理おいしいわよね」

アスカ「ミサト、味オンチじゃなかったっけ」

ミサト「あたしだってそれぐらいわかるわよぉ~! ツマミなんかサイコーなんだから! あぁ、声をかければ自動でお料理、お酒がでてくる日々……!」

アスカ「まんま扱いが使用人のそれと同じね」

ミサト「よし! そうしましょう! シンジくんには、私から頼んでおく――」

アスカ「いや、待って。あたしから言ってあげるわ」

ミサト「アスカから?」

アスカ「二つ返事でオーケーすると思うし」

ミサト「やけに自信たっぷりじゃない。マヤちゃんの所とここに通うのは、結構手間よ?」

アスカ「ま、このあたくし様の魅力が成せる技ってところかしらね。罪よねぇ、あたしって」


377 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 22:28:37.7257RrcVXAO (1/2)

【再びマナ宅】

マナ「(シンジくん、か。一時的にとはいえ、こんなに早く安全を確保してくれるだなんて……。私が想定していたより、ずっと、大人びているのかもしれない)」コト

加持「……」

マナ「(あの落ち着きようは普通じゃない。肝がすわってる? ……私が託した瞬間からこうなるってシンジくんは予想できてたのね、きっと)」ジャー

加持「皿はこっちでいいのか?」

マナ「(どうしたんだろう、私。帰った後も、シンジくんのことばかり考えてる……)」

加持「勝手に置かせてもらうぞ」

マナ「はぁ……」

加持「恋のはじまりのため息かい?」

マナ「いえ、そんなんじゃ……っ! って、てててててぇっ⁉︎」

加持「お邪魔してるぞ」

マナ「ど、どこから入ったんですかっ!」

加持「窓」

マナ「どうやって……? ここ、8階ですよ⁉︎」

加持「隣の部屋からちょいとな。なに、ベランダづたいに渡ればそう無理な話じゃない」

マナ「隣って……まさかっ⁉︎」ダダダッ

加持「そう慌てて走ってかなくても。気がついた通り、このフロアは全て、戦自が貸し切っている」

マナ「(しまった! それじゃぁ、部屋の中で盗聴器をいくら探してもでてこないはず……!)」ピタッ

加持「音波振動って知ってるか? 例えば、壁にコップを当てて音を拾う。あの要領でね、隣の部屋でシンジくんとの会話を聞かせてもらったよ」

マナ「くっ!」ガタゴト

加持「……」

マナ「動かないでっ!」カチャ

加持「USPか。拳銃は携行してたんだな」

マナ「隣の部屋にいるのは何人⁉︎ 本部に連絡したの⁉︎」

加持「まさか、ミイラ取りがミイラになっちまうとはな。キミの魅力で骨抜きにするんじゃなかったのか?」

マナ「質問に答えて!」

加持「誰もいやしないよ。連絡しちゃいない。これで満足か?」

マナ「信じられない」

加持「おいおい、連絡していたら、今まさに、キミはここにいられないだろう?」

マナ「……」

加持「銃をおろしてくれないか? 落ち着いて話がしたいんでね。それとも俺を殺すかい?」

マナ「考えてる」

加持「最善の手段を選べよ。俺の口封じをしたところで、上官にどう説明する?」

マナ「任務中の事故で済ませるわ」

加持「それがうまくいっても、代わりの者が派遣されるだけだ。仕事とはそういうシステムだからな。組む相手が融通の効くほうがやりやすいんじゃないか?」

マナ「どういう……?」

加持「俺がその相手だといってるんだよ。キミの正体がバレたことを、誰かに報告しようと思っちゃいない」

マナ「なに? なに言ってるの? あなたも戦自のスパイでしょ⁉︎」

加持「そうだよ。だが、ネルフのスパイでもある。こう言えば、おわかりいただけるかな?」

マナ「まさか……! 二重スパイ……っ⁉︎」

加持「(三重になろうとしてるところだがね)」

マナ「……」スッ

加持「ようやく話が通じたようだ。助かるよ、理解がはやくて」


378 ◆y7//w4A.QY2017/09/07(木) 22:47:58.8057RrcVXAO (2/2)

加持「まず、ひとつ訂正をしておく。キミがどう聞いてるのかは知らないが、俺の上司は戦自じゃない。政府筋の関係者だ」

マナ「日本政府、直属の……」

加持「ま、頭が違うだけでやってる中身は同じなんだがね。ただ、指揮系統が違う。キミが戦自の意向に従うのと同様に、俺は政府の意向に従うのさ」

マナ「政府からは、どういう命令で?」

加持「ネルフの断面図の入手。構造の把握を図りたいようで、それが俺に下された最優先事項ってとこだな」

マナ「私は、碇一族に関する、組織図……。加持監察官は、ネルフ本部の断面図……」

加持「これの意味するところは、政府と戦自は連携して、ネルフの直接掌握に乗り出そうとしている。――水面下で」

マナ「……!」

加持「俺たちは意外と重要な任務を任されているんだよ。そこで、だ」

マナ「なんですか?」

加持「戦自にキミの失態をバラして代わりの者を補填してもらってもいいが、めんどくさい。関係構築にね」

マナ「……」

加持「俺は俺で、キミとうまくやっていけたらいいと思っている。目的のためにね」

マナ「あなた、なに考えてるんですか? それじゃまるで、任務の他に目的が――」

加持「そういう意味で言っているよ。俺は」

マナ「私になにを?」

加持「追って連絡する。必要になった時にね。それまでは、口裏を合わせよう」

マナ「……」

加持「かわいい顔してたろ? シンジくん」

マナ「……は……は?」

加持「あの手の顔立ちは好きなやつだと思うんだが、マナちゃんはどうだい?」

マナ「な、なに言いだすんですか、突然。……シンジくんは、顔だけの薄っぺらい男性じゃありません」

加持「惚れたか?」

マナ「か、からかわないでください! そんなにすぐに好きになるわけじゃないですかっ! そんな場合でもないし……」もごもご

加持「やれやれ。こうなっちゃおしまいだな。自分の顔を鏡で見てみろ。ほれ」スッ

マナ「え……」

加持「これが、女の顔だ。魅力的だと思う異性があらわれた時の」

マナ「そんな……! 違いますっ!」


379以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/08(金) 01:00:41.94CSIzaHx0o (1/1)

(ゲームの攻略1番最後にしてゴメン)


380 ◆y7//w4A.QY2017/09/08(金) 14:30:11.31YBbsuFXv0 (1/7)

【ネルフ本部 執務室】

マヤ「……ご用でしょうか?」

ユイ「シンジにこれを」スッ

マヤ「……」カサ

ユイ「手紙よ。中は見ないように」

冬月「ユイくん、そう圧をかけるな。怯えているではないか」

ユイ「心外です。私はいつも通りですよ。意識して過剰反応しているだけで……そうよね?」

マヤ「は、はい。すみません」

ユイ「あなたの管轄は赤木博士です」

マヤ「あの、先輩は……」

ユイ「居場所? ラボにいるんじゃない?」

マヤ「いえ。そうじゃなくて、先輩は本当に全部知ってて協力を?」

ユイ「その通り。伊吹二尉も彼女の性格はよく知っているでしょう、頭の良さも。黙って利用される女性ではない」

マヤ「……」

ユイ「(例外は男。この様子じゃ、夫との関係は知らないままなのね)」

マヤ「大変、失礼なんですが……脅されてとか?」

冬月「それはないと断言できる。彼女は自分の意識で我々に協力しているよ」

マヤ「どうして――」

ユイ「身の安全を保障する条件に、詮索をするなと伝えられているはず。なぜ、どうして、知りたい、そういった疑問や好奇心は捨てなさい。生きのびたいのなら」

マヤ「……」

ユイ「命はひとつしかない」

マヤ「は、はい」

ユイ「これからは、技術部の仕事の他にこうして用事をお願いするかもしれないから」

マヤ「……」

ユイ「シンジをよろしくね」ニコ


381 ◆y7//w4A.QY2017/09/08(金) 14:50:57.19YBbsuFXv0 (2/7)

【数時間後 マヤ宅】

マヤ「……」パタン

シンジ「おかえりなさい」

マヤ「た、ただいま」

シンジ「今日は遅かったですね」

マヤ「一人で、仕事してたから。仕事の能率が悪くて」

シンジ「……」

マヤ「手紙、預かってる。司令から」カサ

シンジ「母さん?」スッ

マヤ「そ、それじゃ、私は部屋にいるね」タタタッ

シンジ「あ、あのっ……」

マヤ「ごめんなさい、まだ頭の中で整理できてないの。一人にしてほしい」ピタ

シンジ「……わかりました」

マヤ「ごめんね」スー パタン

シンジ「ふぅ……やっぱり、ショックだよな。手紙、なんだろう」

『伊吹二尉を犯しなさい』

シンジ「……っ⁉︎」ガタッ

『あなたは協力すると言ったわね。まさか、自分の手が汚れる覚悟もなしに? 断れば、どうなるかわかってるでしょう』

シンジ「そんな……」

『アダムの破壊衝動は、いずれ抑えがきかなくなる。それはあなたのせいじゃない。アダムのせいなのよ。したがって、これは必要な通過点』

シンジ「……」カサ

『先ほど、あなたは私にこう言った。選ぶのは二つに一つだと。私は選んだ。次は、シンジの番ね』

シンジ「ウソ、でしょ……続きは? これで終わり?」

マヤ「――シンジくん」

シンジ「……っ!」ビクッ

マヤ「……? なんか、物音がしたけど、平気?」

シンジ「だ、大丈夫です」ガサガサ

マヤ「手紙になにか……やっぱり、いい」

シンジ「……」

マヤ「お風呂はいっちゃうね」

シンジ「ま、まだ洗ってなくて」

マヤ「いいわよ、それぐらい自分でできるし。そういえば、ご飯は食べた?」

シンジ「あ、はい。自分で買ってきて済ませました」

マヤ「そう……。わかった」スッ

シンジ「(母さん……)」カサ グシャ


382 ◆y7//w4A.QY2017/09/08(金) 19:29:21.66YBbsuFXv0 (3/7)

【数十分後 マヤ宅 リビング】

マヤ「まだリビングにいたの? お風呂、栓を抜いて洗っといたよ」

シンジ「マヤさん」

マヤ「……なに?」

シンジ「お話が――」

マヤ「嫌っ! 聞きたくないっ!」

シンジ「でも」

マヤ「私に何を話そうって言うの⁉︎ 面倒ごとはもうたくさん!」

シンジ「話さなくちゃ」

マヤ「聞きたくないって言ってるでしょう⁉︎」バンッ

シンジ「……」

マヤ「私、明日も朝はやいから。シンジくんもお風呂に入ったら寝て」

シンジ「はい」

マヤ「こんなの、おかしい。納得できない!」

シンジ「……」

マヤ「私が八つ当たりしてると思ってるんでしょう⁉︎ だけど、私だってこんなこと言いたくないのよ!」

シンジ「よく、わかってます」

マヤ「息苦しい……。いつまでこんな生活を続けなきゃならないの……」ギュウ

シンジ「マヤさん」

マヤ「……」

シンジ「勝手な言い草だと自分で思います。だけど、僕はマヤさんのこと嫌いじゃありません」

マヤ「私だって……。!シンジくん個人に対して嫌悪感はないわよ。ただ、状況が」

シンジ「はい、そう感じてます。もっと別の形だったらうまくできてるんじゃないかって。ストレスにならずに」

マヤ「……」

シンジ「多くの人が関わってます。僕だけじゃどうしようもないぐらい」

マヤ「それは、わかってる」

シンジ「これからも、まだしばらくはこの暮らしが続きそうです。だから、お互いにいないモノと考えるか、歩み寄るのか。マヤさんの判断を待とうと思います」

マヤ「……」

シンジ「答えが出ないうちに僕が出て行くことになるかもしれません。でも、それもひとつの結論だと思いますから」

マヤ「このままじゃいけないって、わかってる」

シンジ「マヤさんの望みは、これまでの毎日を取り戻したい。でも、知ってしまって、巻き込まれたからには戻れないとわかってる。そのジレンマですよね」

マヤ「……よく、わかるわね」

シンジ「僕も同じなんです。できれば、使徒との戦いに怯えているだけの日々に。でも、それはできない」

マヤ「……」

シンジ「エヴァに乗ったのだって」

マヤ「あ……」

シンジ「だから、気持ちがよくわかるんです」

マヤ「ごめんなさい、私」

シンジ「いいんです。ひとつだけ、話をさせてくれませんか? マヤさんにつらい現実になります」

マヤ「……」

シンジ「どうしても話さなくちゃいけないんです」

マヤ「わかった……。聞くわ。でも、髪乾かしてからでいい?」

シンジ「はい」


383 ◆y7//w4A.QY2017/09/08(金) 19:56:04.15YBbsuFXv0 (4/7)

【数十分後 リビング】

マヤ「――そんな、コレって!」ワナワナ

シンジ「……」

マヤ「うぷっ!」ドタドタ

シンジ「……」

マヤ「おぇっ! おぇぇっ!」ジャー

シンジ「ふぅ」

マヤ「はぁっ、はぁ……」

シンジ「手紙に書いてある意味はそのままだと思います。なぜ必要なのかわからないけど、母さんはそう望んで……いえ、僕にやれと命令しています」

マヤ「……」

シンジ「僕は逆らえません。守らなくちゃいけない人がいるから。選ぶのは二つに一つ、最後の文面にある言葉は、僕にマヤさんかもう一人かを選べと言ってきてる」

マヤ「もう一人って、誰」

シンジ「それは言えません」

マヤ「……! あなた、なんなの⁉︎ どうして⁉︎」

シンジ「すみません。できれば、両方守りたい。それが僕の望みです」

マヤ「はっ! この部屋に盗聴器は……っ⁉︎」

シンジ「今は、遮断する妨害電波を流しています。神経をかなりすり減らすので長くは持ちませんが」

マヤ「妨害電波? すごい汗。それに瞳の色が赤く……。シンジくん、あなた、人、なの?」

シンジ「僕の定義も曖昧になりつつあります。でも、そこまで知ってしまうとマヤさんの為にならない。だから、要点だけを話しましょう」

マヤ「私は、イヤよ」

シンジ「はい、それはわかっています。イヤイヤするのなんて許せません」

マヤ「そうよ、こういうのってお互いの意思が重要で」

シンジ「母さんにとってはそんなの関係ないんです。結果だけがあればいい」

マヤ「……」

シンジ「しなければいずれバレます。そうなると他の子が危険にさらされます」

マヤ「だから、私に我慢しろっていうの⁉︎」

シンジ「早とちりしないでください。幸い、今すぐにとは書かれていません」

マヤ「……時間稼ぎをしたところで、司令が納得する成果を見せなくちゃいけないんじゃないの?」

シンジ「正直、それぐらいしか。僕もどうしたらいいかわからないんです」

マヤ「……」

シンジ「どちらも守りたい。いや、そっとしておいてあげたい、僕が関与することで不幸な目に合わせたくない……! だけど、ほっておいたら、道具としてみんな殺されてしまう」

マヤ「……」

シンジ「どうしたら、いいのか」ツゥー

マヤ「シンジくん……泣いて――」

シンジ「打開策を見つけて見せます。マヤさんにどうしても教えておかなくちゃいけないと判断したのは、関係することだからです」

マヤ「う、うん」

シンジ「それじゃ、僕は」フラ

マヤ「……?」

シンジ「ぐっ」ガタ パタリ

マヤ「し、シンジくん! ねぇ、大丈夫っ⁉︎」


384 ◆y7//w4A.QY2017/09/08(金) 22:15:24.36YBbsuFXv0 (5/7)

【再びネルフ本部 執務室】

冬月「息子との溝は深まるばかりだな。これでよいのか?」

ユイ「できれば、あの子に配慮してあげたかったのですけど。敵は、状況によって逐一変わります」

冬月「……」

ユイ「例えば、戦自がネルフに雪崩れこんでくればシンジは条件を出さずとも協力するでしょう。私もシンジたちを使い対抗せざるを得ません」

冬月「共通の敵になるだろうからな」

ユイ「敵とは、その程度。……符号なんですよ」

冬月「……」

ユイ「時々で共通認識さえ有れば、優先順位によって変化する。……勧善懲悪というはっきりとした図式が成り立つ条件は、一貫してなければならない。不変ではないのです」

冬月「あえて憎まれ役になるということかね」

ユイ「これは証明ではありません。私たちは親子ですから。血の繋がりはそう簡単に断ち切れないという事実です。見直すきっかけさえあればいい」

冬月「感情を軽視しすぎている。取り返しのつかない事態になるやもしれんぞ」

ユイ「あの子は一度、汚れさせる必要があります」

冬月「なせだ? なぜそこまで」

ユイ「痛みを知らない子供は綺麗事を並べたがります。我を通す、その一点のみ。うまくいったと思わせて叩き潰すのです」

冬月「その先の、再起に新たな成長があると?」

ユイ「ふふ、それだけじゃありません。目的がありますもの」

冬月「起きあがれなかった場合は――」

ユイ「必ず起こします。たとえ、電気ショックのような荒療治を使っても」

冬月「あまりに酷すぎやしないか」

ユイ「良心の呵責ですか? まだそのようなくだらない感情が」

冬月「ヒトはロボットではない。生物学で博士号を修得したキミなら重々承知しているだろう。本能、欲求、様々なものが感情となって」

ユイ「それすらも、我々は縛られています。人の限界です」

冬月「き、キミは……」

ユイ「科学と知恵を使い進んでいくだけよ……!」


385 ◆y7//w4A.QY2017/09/08(金) 22:45:32.57YBbsuFXv0 (6/7)

【マヤ宅 部屋】

シンジ「うっ、はぁ……はぁっ」

マヤ「……」チャポン ギュー

シンジ「うぅっ!」

マヤ「すごい熱。どうしよう、本部に連絡するべきかしら」スッ

シンジ「はぁ……ま、やさん」

マヤ「え? な、なに?」

シンジ「すみません、こんな」

マヤ「……」

シンジ「僕は」

マヤ「今はしっかりと休んで。喋ると体力を使うわ」

シンジ「はい……」

マヤ「(元の瞳の色に戻ってる。なにが、シンジくんをここまで突き動かしてるの)」

シンジ「……」

マヤ「(頑張ってるのはわかる。身の丈を超えてよくやってる。私だと、たぶん……無理。こんな子じゃないと思ってた。でも、本当にそうかしら)」

シンジ「うぅ」

マヤ「(これまでだって、普通の中学生が使徒と戦える? そんな選択をできる? シンジくんを、私は、いえ、私たちは過小評価していたのかもしれない。消極的な少年だって)」スッ

シンジ「……?」

マヤ「(人は、変われるんだわ)」ギュ

シンジ「ふぅ……手を握られてると安心します」

マヤ「――へ? あ、私」

シンジ「自分で自分の手を握ってもなにも感じないのに。誰かに握ってもらうとあたたかい気持ちになれる」

マヤ「そうね」

シンジ「少し、そのまま握っててくれませんか」

マヤ「……」

シンジ「ありがとう、ございます」

マヤ「(このままじゃいけない。私も変わらなくちゃ。だって、ネルフに残ると決めたのは私なんだから。なにか、シンジくんの力に――)」


386 ◆y7//w4A.QY2017/09/08(金) 23:07:23.79YBbsuFXv0 (7/7)

【翌朝 マヤ宅 部屋】

シンジ「ん……あれ? ここは。そうか、僕は眠って」ムク

マヤ「おはよう、シンジくん」ニコ

シンジ「おはよう、ございます」

マヤ「熱がさがってよかった。もう大丈夫だと思うけど、計ってみて」スッ

シンジ「あ、はい」

マヤ「食欲は? ある?」

シンジ「はぁ、まぁ」

マヤ「お粥がいいかな」

シンジ「あの! ここマヤさんの部屋ですよね。僕がベッドを使ってたら」

マヤ「いいのよ。気にしないで」

シンジ「は、はぁ……えっと、どこで寝たんですか?」

マヤ「それは私の心配? それとも、機嫌が気になって聞いてる?」

シンジ「マヤさんの、心配ですけど」

マヤ「やっぱり、顔色を伺ってるってわけじゃないのね。私たち、まだお互いのことなんにも知らないみたい」

シンジ「え?」

マヤ「私はネルフの職員。シンジくんはエヴァのパイロット。それだけの関係だったのよ。誰のせいとか、どちらが悪いかとかじゃない」

シンジ「……?」

マヤ「うまく、やろうと思う。お互いに歩み寄れるか試してみないとわからないもの。その為に、前向きな気持ちは大事だわ。そう思わない?」

シンジ「まぁ」ポリポリ

マヤ「まずは、こういった価値観の違いから埋めていきましょ。私はこう思ってる、シンジくんはこう思ってる。違いをおそれずに、できる?」

シンジ「大丈夫、ですけど」

マヤ「よし! 火にかけてくるから待ってて!」タタタ

シンジ「な、なんなんだ、一体」ポカーン






387以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/09(土) 01:32:13.08PbdqREL2o (1/1)

>>386
いいな、この会話。曖昧で


388以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/09(土) 09:37:20.05jTzAdogEo (1/1)

犯せと書いてるんだから期限が設定されてるとかは実質無く今すぐっやれって事なんじゃないかな
期限指定しないなら犯せなどの言葉使わないで体の関係をもちなさいとか別のヒョウゲンするでしょ



389以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/09(土) 11:23:35.90VG0jLwExo (1/1)

不意討ちならいつやっても犯せだろ


390 ◆y7//w4A.QY2017/09/09(土) 23:38:40.64eWW0NNXG0 (1/1)

【ネルフ本部 発令所】

シゲル「いぇ~い! じゃかじゃかじゃん!」

マコト「おい、うるさいぞ。静かにしろ」

シゲル「ちっ、エアギターぐらい気分よくセッションさせろよ」

マコト「精神年齢が低すぎるんだよ、お前は。いつまでも学生気分が抜けてないんじゃないか?」

シゲル「その言い草は心外だねぇ。やるべきことはきちんとやってるぜ?」

マコト「エアギターのなにがいいんだか」

シゲル「そりゃあ俺だって、本物がいいに決まってるさ。かと言って職場で演奏するわけにはいかないだろ?」

マコト「口でやってちゃ同じことだろう!」

シゲル「はぁ、ああ言えばこう言うってか。いちいち嫌味だなぁ、理屈っぽいやつって」

マコト「俺たちは仕事をしにきてる。遊びにきてるわけじゃない」

シゲル「息抜きって知ってるか? 能率を上がる為に必要なルーチンワーク」

マコト「はぁ……。マヤちゃんを見習えよ、まったく」

マヤ「……」カタカタ

シゲル「ふん、精がでるこって」

マコト「マヤちゃん、浅間山で行われる予定の陽電子砲(ポジトロンスナイパーライフル)の日程は聞いた?」

マヤ「だめ、これは違う」カタカタ

マコト「うん?」

シゲル「……?」

マコト「(なにしてるんだ……?)」ソォー

マヤ「……」カタカタ

マコト「ヒトゲノム計画? DNA配列の解析……? 過去のデータを取り出してなにやってるんだ?」

マヤ「日向くん⁉︎ ちょっと、なに勝手に見てるのよ!」

マコト「いや、さっき呼びかけたんだけど返事がないから」

マヤ「あっ、そうだったの?」

マコト「それで、なに調べてたの?」

マヤ「これ? ……エヴァってA10神経で接続してるでしょ? だから、少し、仮説を立ててみたんだけど」

マコト「どんな?」

マヤ「エヴァに乗れる理由について。……詳しくはまだ言えない。立証できるかわからないから」

シゲル「取り憑かれたような目つきしてたぜ?」

マヤ「もう、茶化さないでよ」

マコト「仕事してたわけじゃないのか」

シゲル「ざぁ~んねん。真面目な堅物は一人だけだったな」

マコト「しかし、どうして突然?」

マヤ「うん、私達ってサポートに回るしかないじゃない? テクノロジーという英知を使って」

シゲル「なにを今更。食い扶持だろ」

マヤ「当たり前って、実感してはじめてわかることがある気がするのよ」

マコト「哲学……?」

シゲル「怪しい宗教にでもハマっちまったかぁ?」

マヤ「だから茶化さないでってばぁ」

シゲル「ま、どっちみち俺には関係ねぇ話だ」


391 ◆y7//w4A.QY2017/09/10(日) 00:31:40.17iB/Tnx2K0 (1/8)

マコト「赤木博士から頼まれたとか?」

マヤ「先輩は――」

リツコ「私の陰口?」

マコト&シゲル「おはようございます」

マヤ「……」

リツコ「おはよう。まだ就業時刻前だから。堅苦しい挨拶は抜きにしてラクにしていいわよ」

シゲル「ひゅ~! さっすが、話がわかる~。葛城一尉といい、部下の扱い方をわかってる上司がいて幸せっすよ」

マコト「はぁ」

シゲル「つーわけで、聞いてくださいよ。日向のやつ、朝っぱらから仕事仕事ってうるさくて」

リツコ「それが彼の性分なんじゃない?」

シゲル「フォローすることねぇスよ」

リツコ「よく飽きないものだと呆れただけよ。マヤ?」

マヤ「は、はい」ビクッ

リツコ「ラボに来なさい。用事があるから」

マヤ「あ、あの。調べ物が終わってからじゃだめですか?」

リツコ「……?」

シゲル「なんでも、パイロットについて論文を書くつもりらしいすよ」

マヤ「青葉くんっ!」

シゲル「あんだよ? サポートに徹するマヤちゃんが立証するって言ってたし間違っちゃいないだろ」

マヤ「どうしてそう軽いの⁉︎ 立証するじゃなく、できるかわからないって……! 裏付けがほしいだけよ!」

リツコ「……」

マコト「だから、精神年齢がガキなんだよ。こいつは」

リツコ「調べ物はいつでもできるでしょう?」

マヤ「……はい」


392以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/10(日) 18:13:57.28jQtzor3Mo (1/1)




393以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/10(日) 20:39:19.50iB/Tnx2K0 (2/8)

【第壱中学校 昼休み】

シンジ「これ、なに?」

マナ「お弁当! お昼、惣菜パン食べてたでしょう? だから、作ってみたんだけど」

トウジ「なんや? って、おわぁっ! なんで学校にお重箱が⁉︎」

マナ「えへへ、ちょっと張り切りすぎちゃって」

トウジ「ひゃ~! 朝になんや四角いもん運んどると思ったら弁当やったんかいな! 」

マナ「やっぱり、ちょっと、大きいよね」

トウジ「ちょっとどころやあらへんやろ。何人分入っとるんや……ひい、ふぅ、みー、と。三段重ねか」

マナ「あ、あはは……。いきなり、引いた、かな」

シンジ「あっ、いや。嬉しいよ。ありがとう」

トウジ「おい、シンジ! ワシも手伝ったろか⁉︎」スリスリ

シンジ「トウジは食べたいだけじゃないの」

トウジ「なんや! ワシを卑しいもん扱いするっちゅーんかいな!」

シンジ「うーん」チラ

マナ「……」ニコ コクリ

シンジ「……わかった。一緒に食べよう」

マナ「それじゃ、机ひっつけようか? それとも、屋上で――」

アスカ「はい、そこまで!」バンッ

マナ「え?」

アスカ「シンジ。あんた、今日は私と昼食とる約束でしょ?」

トウジ「……? そうやったんか?」

アスカ「そうよ。ほら、惣菜パン買うんじゃないの? 付き合ってあげるからさっさと立ちなさいよ」

トウジ「買わんでもここに……」

アスカ「それ、どういう目的で作ってきたのかわからないもの」

マナ「(あっ、そっか。アスカは私を警戒してるんだった。いけない、忘れてた……でもっ、そんなつもりじゃ)」

トウジ「なに言うとるんやお前。いちいちそんなもん……いや、待てよ。そーか! さてはやきもち……もが!」ガターン

アスカ「どお~ぉ? ハイキックで味わう上履きのお味は? 堪能した?」

トウジ「いつつ……。暴力ゴリラめ、そんな一瞬で味がわかって」ムク

アスカ「じゃあおかわり⁉︎」ダンッ

トウジ「――もう、お腹いっぱいですぅ」

アスカ「行くわよ、バカシンジ」

シンジ「アスカも、一緒に食べようよ」

アスカ「まだ理解してなかったのぉ」ジトー

マナ「し、シンジくん」

シンジ「せっかく作ってきてくれたのに。無下にしちゃ失礼だよ」

アスカ「ソレ。どういう目的で作ってきてるかあたしにはわかる。昨日話したわよね」スッ コソ

シンジ「構わないよ。それでも。ネルフの情報を漏らさなければいいんだろ」コソ

アスカ「……? あんた、わかってるのに食べるの?」

マナ「あ、あのっ! 私っ!」ガタッ

シンジ「いいんだ、マナ」スッ

アスカ「なに……? その雰囲気。あたしが意地悪ばあさんみたいじゃない?」

シンジ「そんな、アスカの思い違いだよ。僕たちは悪く思ったりなんかしてない」

アスカ「あんたがどう思っていようと! 余計な横槍を入れてるように見えんじゃないのってこと!」


394 ◆y7//w4A.QY2017/09/10(日) 21:01:57.77iB/Tnx2K0 (3/8)

ヒカリ「どうしたの? なんの騒ぎ?」

マナ「ヒカリ……」

ヒカリ「なにそれ……お重箱、よね? 誰が――」

トウジ「そら言わずもがな! 決まっとるやないか! なっ! シンジ!」ポンッ

シンジ「トウジ、そういうのいいから」

ヒカリ「えぇ? 碇くんにマナが?」チラ

アスカ「……」

ヒカリ「(アスカが仁王立ちしてるのはそういう……。こんな大きな箱、どこに置いてたのかしら)」

マナ「あの、いいよ。シンジくん、アスカと食べてきて」

アスカ「バッカみたい。なんであたしが邪魔者みたいな扱いなのよ」

マナ「そうじゃないの。先約だったんだよね? それなら当たり前だし」

シンジ「アスカ」

アスカ「なによ」キッ

ヒカリ「……」ゴクリ

トウジ「しっかし、腹減ったのぉ」

ヒカリ「鈴原っ! 呑気なこと言ってんじゃないわよ!」

シンジ「そんな約束、ないだろ」

アスカ「……っ!」

シンジ「僕たちは友達なんだから。一緒に勉強してる。それだけだよ」

アスカ「へぇ~ぇ。このあたしに歯向かう気? 心配してやってんのよ⁉︎」

シンジ「(どちらか、か。大なり小なり選択肢は日常にありふれてる……これは母さんの言う通り。どちらもと思う僕は、傲慢なんだろうか)」

アスカ「なんとか言ったらどうなの⁉︎」

シンジ「できれば仲良くしたいんだ。マナに対してもアスカに対しても、それだけ」

アスカ「……」

トウジ「まぁまぁ、シンジが優柔不断なのは今にはじまった話やあらへん」

ヒカリ「黙って!」ガバッ

トウジ「ふごっ⁉︎」

アスカ「どうなったって知らないわよ」

シンジ「アスカの期待にこたえる言葉を選べなくて――」

アスカ「それ以上言わなくていい」クルッ スタスタ

ヒカリ「あ、アスカ」

アスカ「……」ガララッ ビシャンッ!

男子生徒B「うぅ、すっげー音。教室の引き戸壊れたんじゃないか?」

女子生徒A「修羅場ね。碇くん、どっちを選ぶのかしら」

男子生徒A「ちっくしょおおおっ! なんであいつばっかり!」


395 ◆y7//w4A.QY2017/09/10(日) 21:22:12.07iB/Tnx2K0 (4/8)

シンジ「……食べようか」

ヒカリ「追いかけなくていいのっ⁉︎」

マナ「ご、ごめんなさい」ギュウ

シンジ「いいんだ。誤解は後で――」

ヒカリ「それじゃアスカがあんまりよ!」

シンジ「……」

トウジ「もがっ、ふぅ……おい、イインチョ」

ヒカリ「さっきから空気の読めない発言ばかりしてる鈴原は黙ってて!」キッ

トウジ「たしかにワシはそうかもしれん。せやけど、お前、霧島の気持ち考えとるんか?」

ヒカリ「え? ……あっ」

トウジ「お前がアスカを大事に思うのはわかる。霧島はまだ転校してきて数日間もないからな」

マナ「鈴原くん! いいの!」

トウジ「お前は、友達をそんな扱いするんか」

ヒカリ「違う、そんな……。ただ、今は追いかけるべきだって。だって傷ついてるから」

トウジ「お前が心配しとるんは、霧島やない。惣流や」

シンジ「トウジ、やめなよ」

トウジ「シンジもシンジや。どっちつかずの言い方は、どちらも傷つける場合だってある」

シンジ「……」

マナ「違うの! シンジくんは悪くない! 私がっ」

トウジ「見てみい、シンジ。霧島はお前のせいで尻拭いをしようとしとる」

シンジ「……」

トウジ「おい! シンジ!」グィッ

シンジ「うっ」

トウジ「霧島になんも声かけたらんのか⁉︎ 優しさっちゅーのはなぁ! どっちつかずのもんとちゃうんや! 腹くくらんかいっ!」

マナ「鈴原くん! シンジくんを離して!」ガシ

ケンスケ「さーて、今日のパンはぁ~っと……」ガララッ

ヒカリ「わ、私……。先生を」

ケンスケ「な、なんだぁ?」ポロ ポトポト


396 ◆y7//w4A.QY2017/09/10(日) 21:46:16.91iB/Tnx2K0 (5/8)

シンジ「トウジ!」グィッ

トウジ「おっ」

シンジ「たしかに、トウジの言い分はよくわかる。どうして怒ってるのかも」

トウジ「お前のためやと思っとんのか? 自惚れんなや」

シンジ「違うんだ。信じてほしい」

トウジ「はぁ?」

シンジ「関係にだって波がある。うまく行くとき、行かない時。全てが予測できていたらそんなことなくなるけど」

トウジ「一時的なもんやと?」

シンジ「そうならないかもしれない。僕は僕にできることを精一杯やろうって決めたんだ。今、この状況だけで判断しないでもらえないかな」

トウジ「……」

ケンスケ「どうしたんだよ、これ」

ヒカリ「相田くん……アスカと、その後に鈴原が」

ケンスケ「……惣流? いないじゃないか?」

ヒカリ「もう! 説明がややこしいの!」

シンジ「ごめんよ。きっと、煮え切らないんだよね。僕も同じだから」

トウジ「ちっ」スッ

マナ「シンジくん……」

トウジ「しゃーないわ。黙って待つんも友のあり方やろからなぁ」

シンジ「色々、迷惑をかけてるのは僕だから。マナも、ごめんね?」

マナ「私が……浅はかだったのに。嬉しくて、浮わついちゃって」

シンジ「いいんだ。自分を責めないで」

マナ「……」

ヒカリ「(ちょ、ちょっと。これって……ひょっとして……碇くん、マナのこと……)」

シンジ「昼ごはんは美味しくないと。どうせ食べるならさ。そうだろ? トウジ」

トウジ「それについては同意やな!」

シンジ「うん、僕は少しアスカと話てくるよ。今はどうにもならないだろうけど、追いかけることに意味がある。洞木さん」

ヒカリ「え……? え? なに?」

シンジ「マナのことよろしく。トウジの言う通り、どちらも嫌な思いをしてるだろうから」

ヒカリ「あっ……うん」

ケンスケ「さっぱり意味が。話においてきぼりなのは、また僕なのか……」


397以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/10(日) 21:50:03.75uDGjG22Xo (1/1)

トウジは本当にウザいな


398以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/10(日) 22:16:14.79uCklTmkbo (1/1)

トウジまじでガイジやなたょっとエヴァで踏み潰そうぜご退場願おう


399 ◆y7//w4A.QY2017/09/10(日) 22:40:32.12iB/Tnx2K0 (6/8)

【第壱中学校 屋上】

シンジ「アスカ、やっぱりここにいたんだね」キィー バタン

アスカ「……」

シンジ「(やっぱり取りつく暇がない。関係悪化させないようにしないと)」

アスカ「はぁ……田舎よね、ここ」

シンジ「え?」

アスカ「セカンドインパクトが終わってから、陸地が津波と水位上昇で海の下に沈んで、難民で溢れて。土地の低い主要都市は壊滅状態」

シンジ「……」

アスカ「この国は、マシな方みたいだけど。それにしたって、武装都市? だっけ? 一部だけ。開発途中で遠景は森に山」

シンジ「ドイツは、そんなことなかったの?」

アスカ「あんまり変わんない。なんていうか、建物に味わいがあったような気がする……。皮肉ね、住んでる頃はなんとも思わなかったのに」

シンジ「……」

アスカ「それで? なにしにきたの?」クルッ

シンジ「あ、いや」

アスカ「まさか、あたしが傷ついてるなんて思ってないでしょうねぇ?」

シンジ「そうじゃ、ないの?」

アスカ「Natürlich(もちろん)! それこそバカな話! なんであんたが原因であたしが傷つかなきゃいけないのよ。一人でえーんえーんって泣いてるとでも思ったの?」

シンジ「……」

アスカ「戻ってあげたら? 私はもう少し風にあたりたい」

シンジ「本当に、そうかな?」

アスカ「……?」

シンジ「僕は、アスカがさみしいって言ってるように見える」

アスカ「はぁ?」

シンジ「なんとなく、だけど」

アスカ「下々に心配されちゃエリートもおしまいね」

シンジ「違うんだ、僕はアスカのことが」

アスカ「黙って」

シンジ「……」

アスカ「あんたにドイツのことを少し、ほんの少しだけど話たのは、たまたまそういう気分だっただけ。故郷に帰りたいわけでもない。アメリカにだっていたし、一人は慣れっこなの」

シンジ「どうして、そう自分に言い聞かせるように言うのさ」


400 ◆y7//w4A.QY2017/09/10(日) 22:42:25.75iB/Tnx2K0 (7/8)

アスカ「私はっ! あんたに説明してやってんの!」

シンジ「ねぇ、アスカ。人間関係って難しいよね」

アスカ「……」

シンジ「僕の言いたいこと、アスカの言いたいこと。お互いになんでわからないんだろう、どうして伝わらないんだろう。そう思う時がある」

アスカ「当たり前ね。そういう状況を総称して“合わない”って言うのよ。つまり、あんたと私」

シンジ「でも、それだけじゃないと思うんだ。本当はわかってるけど、認めたくないとか、ない?」

アスカ「……」

シンジ「プライドとか意地とか。誰にだってあるものじゃないか」

アスカ「汲み取った対応できないようじゃガキよ」

シンジ「そうだね、僕は子供だ。でも、認められないアスカだって僕と同じ。エリートとか能力があるとか、まったく関係ない話なんじゃないの」

アスカ「なにが言いたいのよ」

シンジ「今はアスカの望んでる、理想像に程遠いかもしれない。でも、僕は……」

アスカ「……」

シンジ「どっちかを選ぶんじゃない、別の道を模索したいんだ。うまくいけるようになったらいいなと思う」

アスカ「マナは戦自に属してるのよ? いくら頑張ってもどうにもならないってこと、あるわ」

シンジ「……」

アスカ「まさか、マナをちょっといいかなとか思ってんの?」

シンジ「――へ?」

アスカ「そういうことね……昨日はあたしにあんなこと言ったくせに。ほんと、男ってのは……まぁ、言い方きつすぎたか」

シンジ「……?」

アスカ「べ、別に。あ、そうだ。あんた、今日の帰り時間あるでしょ? シンクロテストないはずよね」

シンジ「うん……どうして?」

アスカ「あたしんとこのマンションに寄って。用事があるから」

シンジ「は、はぁ……」


401 ◆y7//w4A.QY2017/09/10(日) 23:13:36.56iB/Tnx2K0 (8/8)

【一方その頃 同中学校 教室】

トウジ「こらうまい! こらうまい!」ガツガツ

ヒカリ「きゃ……あー! 米粒が制服に! 口に頬張ったまま喋らないでよね!」

トウジ「むぐっ⁉︎」

マナ「あ、お茶ならあるよ」

トウジ「むごっ⁉︎ んくんくっ! ぷはぁ~! 死ぬとこやったで!」

ケンスケ「よく噛まないからそうなるんだよ」

トウジ「それもそやな。あっというまになくなってしまうし」

ケンスケ「シンジの分残しておかなくていいのか?」

トウジ「センセはちょっとお灸を据えた方がええ」

ヒカリ「そうかな。碇くん、わかってたんだと思うけど」

トウジ「かぁーっ! 委員長がそんなこと言い出しよる! さっきは惣流を追いかけずに憤慨しとったやないか」

ヒカリ「そうだけど……。あの時は動転してて。落ち着いてみると、碇くんにだって考えがあったのかなって」

トウジ「女はずるっこいのぉ。言うことをコロコロ変えよって」

マナ「シンジくんはそんな人じゃないって、私はずっと言ってたよ」

ヒカリ「マナ、さっきは、ごめんね?」

マナ「うぅん、いいの」

ケンスケ「お、この唐翌揚げうまい」

トウジ「おっ! どれどれぇ~?」

ヒカリ「ちょっと、二人とも。碇くんの分が本当に――」

トウジ「かまへんかまへん」

マナ「ねぇ」

トウジ「あん?」

マナ「それ、誰が作ったかわかってる?」

トウジ「そらぁもう! 霧島さま!」

マナ「そうなんだぁ? わかってて食べてるんだぁ?」

ケンスケ「……」ピタ

マナ「えいっ」ギュム

トウジ「なんや? 手の甲になんか……あいだだだだっ⁉︎」

マナ「つねられると痛い?」ギリリリッ

トウジ「チカラこめすぎ、ちょ、ねじるな! ち、ちぎれる!」

マナ「残しとこうね? お箸、もういらないでしょ?」ニコ

トウジ「は、はいぃぃ」ポロっ

ケンスケ「(霧島マナ。こいつは、おそろしいやつ!)」


402以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/10(日) 23:35:28.69eCdbwSXGo (1/1)

取りつく島もない、ですね
あと二次創作のキャラなんだから皆落ち着こうぜ


403以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/11(月) 01:07:33.48yel3masUO (1/1)

ヒカリのどこに置いてたのに草
さすがエヴァの中で数少ない常識人


404以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/11(月) 01:32:38.80x18QTZ8No (1/1)

トウジええやつやん


405以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/11(月) 04:23:13.66eApzqvZHo (1/1)

トウジいいじゃないか。シンジの為に怒って、シンジの言い分も聞いてやって。
殴り飛ばしたあのトウジじゃないだろ


406以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/11(月) 11:35:33.72JkViZPtAO (1/1)

いいやつでもシンジも誰もトウジに答えや意見求めてないんだよな
かってにトウジが暴走してるだけ


407以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/11(月) 12:23:58.31P9LxskFao (1/2)

男の子はこのくらいの方がいい


408 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 18:16:01.31cmSxQmug0 (1/15)

>>402
ご指摘どうもです。暇で覚えてました
そしていつも唐翌揚げが唐翌翌翌揚げになる俺の謎変換&見落としはなんなんだ


409 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 18:16:40.72cmSxQmug0 (2/15)

あれ?ちょっとテスト
唐翌揚げ


410 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 18:17:47.30cmSxQmug0 (3/15)

え?からあげをそのまんま変換すると勝手に唐翌揚げになる?


411 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 18:23:10.37cmSxQmug0 (4/15)

メール欄のsagaテスト

唐揚げ


412 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 18:29:21.54cmSxQmug0 (5/15)

ググって原因判明したので続けます
唐翌揚げに関してはこの板のコマンド仕様だったんすね


413 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 19:01:49.21cmSxQmug0 (6/15)

【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「なに考えてるのよ」

マヤ「え? あの……」

リツコ「無用な駆け引きなんてやりたくないし、面倒ごとは御免被りたい。なぜ調べていたのか、簡潔に説明なさい」

マヤ「それは」

リツコ「待って。やはり文句を言わない気がすみそうにない。保証人には私がなってるのよ? 言わなきゃわからないほど不用心?」

マヤ「すみません、でも」

リツコ「反抗する動機は愚痴る相手がいないから? それともストレスが溜まってる自覚があるの?」

マヤ「そんな、違います! 私は、なにか自分で力になれるんじゃないかって」

リツコ「言い訳なんて聞きたくないわ。他人の中で自立した女性になりたいのなら、ぐっと我慢して胸の奥にしまっておきなさい!」バンッ

マヤ「……」ギュウ

リツコ「ふぅ……マヤ。冷静になって。あなたがこれからすべきことは、知らぬ存ぜぬで過ごすこと。パイロットがエヴァになぜ乗れるのか、その真相解明をすることなの?」

マヤ「どうして、縛られなくちゃいけないんですか」

リツコ「……」

マヤ「私、なんにも悪いことしてないのにっ!」

リツコ「答えは簡単よ。これが“現実”だから」

マヤ「……っ!」

リツコ「理不尽だと思う? 巻き込まれた、自分のしたいようにできるはずのことができないって歯痒いわよね。……しかし、選べるモノの中から取捨選択をするしかないわ! 子供じゃないんだからわかるでしょう⁉︎」

マヤ「で、でも。私は」

リツコ「できない状況、どうしてもやるというのなら止めはしないけど。それ相応の覚悟を持ってやるのね。二度、助けはしない」

マヤ「……」

リツコ「前言撤回します。問いただしたのは忘れて。どういう理由があったのか喋らなくていい」

マヤ「……」

リツコ「成人している大人ですものね。自分自身の行動に責任を持ってやりなさい」


414 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 19:25:50.74cmSxQmug0 (7/15)

マヤ「先輩は……! 先輩はどうして協力なんかしてるんですかっ⁉︎」

リツコ「……」

マヤ「こんなの、おかしいです! 司令が企んでるのってネルフの、組織の私物化に該当しませんか⁉︎ 数式で証明できないことばっかり! 私たち、技術者なんですよ⁉︎」

リツコ「……」

マヤ「理不尽なんてもの通り越してます! 異議を申し立てるなですって⁉︎ 己を押し殺して⁉︎ 奴隷がほしいんですか⁉︎」

リツコ「いい加減になさいっ!」ブンッ パァン

マヤ「きゃっ!」

リツコ「あっ」

マヤ「……!」キッ

リツコ「少し、休みを――」

マヤ「必要ありません! 私は、そんなの! ……先輩には、失望しました」

リツコ「……」

マヤ「そんな人じゃないと思ってたのに」

リツコ「ふ、ふふっ。あなたが勝手に勘違いしてただけじゃなくって?」

マヤ「そうかもしれません。ですけど、期待していたのも事実です。その幻想は崩れてきています」

リツコ「だからなに? 幻想と現実が乖離したから失望したって言うの?」

マヤ「現実を受け入れます。尊敬するに値しないって」

リツコ「底が浅い。それだけじゃない、あなたが学ぶべき点は他にもなにかあったでしょう。私こそ、あなたの将来性を買いかぶっていたよう」

マヤ「業務に関しては話が別です」

リツコ「それならば問題ないわ」


415 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 19:55:30.72cmSxQmug0 (8/15)

【ネルフ本部 発令所】

シゲル「透析データは終了っと」

マヤ「……」

シゲル「あれれぇ~? どったの? なんか暗いんじゃん」

マヤ「ほっといてよ」

シゲル「もしかして、アノ日か?」

マヤ「……っ!」キッ

シゲル「おやま、ビンゴ?」

マヤ「デリカシーのかけらもない人ね。シンジくんに爪の垢でも煎じて飲ませてもらったら」

シゲル「はぁ、なんでシンジくんが? ……そういやぁ、今は共同生活してるんだっけ?」

マヤ「関係ないことでしょう? プライベートの詮索はやめてもらえる?」

シゲル「まぁそう硬くなんなって。どうなんだ? 彼との生活は。頻繁に顔を合わせてるんだろ」

マヤ「普通よ」

シゲル「へぇ、こりゃ驚いた。俺なら気が気じゃないけどね。マヤちゃんこんなだしさ」

マヤ「どういう意味? バカにしてるの?」

シゲル「いや、別に。見たまんまの感想。でも、中学生だろ? マヤちゃんの下着とか――」

マヤ「いい加減にしなさいよっ!!」バンッ

シゲル「な、なんだよ」

マヤ「私たちになにができるか考えたら⁉︎ 負担を減らす方法とか! あの子達が戦うことしかできないように、私たちには活かせる技術、技能があるでしょう⁉︎」

シゲル「俺だってずっと遊んでるわけじゃねえさ」

マヤ「だったら……!」

シゲル「なんかおかしいな。内面に変化するようなことあったのか?」

マヤ「え?」

シゲル「だってそうだろ? これまでだって俺たちがやってる業務内容に違いはないぜ? 突然そういうこと言いだすのって変じゃないか?」

マヤ「そ、それは……その、人は誰でも問題を抱えてると思うし」

シゲル「はぁん? なんだよこいつ」

マコト「おい、もうそのくらいで――」ブーッ ブーッ

マヤ「エマージェンシーコール?」

マコト「……⁉︎」ガタッ

シゲル「こりゃあ……!」

マコト「各オペレーターに通達! 葛城一尉に連絡を! 大至急だ!」


416 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 20:23:29.65cmSxQmug0 (9/15)

ミサト「――状況は⁉︎」

マヤ「パターンオレンジ。不規則に点滅を繰り返しています」

ミサト「正体不明? ……使徒じゃないの? 日向くん、どうなってる?」

マコト「微弱ながらも電波を発しています」

ミサト「特定、できる?」

マコト「無理ですね、信号が弱すぎて」

ミサト「使徒じゃ、ない?」

シゲル「断定はできません。MAGIによる可否は賛成が2、反対が1」

マヤ「……! キャッチしました! 受信データを照合! パターン、オレンジから青! 使徒と確認!」

ミサト「あっさり確定したわね。ようやくおでましか」

シゲル「イチイチサンゴウへ入電! 管制塔応答せよ、速やかに警戒態勢へ移行されたし!」

マヤ「ま、待ってください! 信号ロスト! 全てのセンサーから反応がなくなりました!」

ミサト「なにが起こってるの?」

リツコ「……使徒?」コツコツ

ミサト「そのようね。戦自からの連絡は?」

シゲル「巡航中のイージス艦から報告。目標は、完全に消失」

ミサト「どうなってんのよ。赤木博士、見解は?」

リツコ「これだけじゃなんとも言えないわね。使徒が戦術的判断をしている可能性はなくはないけど」

ミサト「使徒にそんな能力が?」

リツコ「使徒も生き延びたいから。私達人類と同じように学習して知恵を身につけていてもおかしくないわ。問題は、この仮説を証明する方法が使徒の出方次第ってこと」

ミサト「見えない、敵、か……」

マコト「どうします? パイロットを待機させますか?」

ミサト「うぅーん。どう思う?」

リツコ「判断を求められるたびに縋らないでくれる? 作戦の指揮権はミサトでしょう」

ミサト「それもそーね。……各員に通達! 警戒態勢を第二種に移行! パイロットは呼ばなくていいわ。そのかわり、いつ使徒が来ても対処できるよう、準備しておいて」

マコト「了解。これよりネルフ本部は第二種警戒態勢に移行! 繰り返す――」

ミサト「もうすぐ、三号機の搬入予定日ね」

リツコ「零号機は凍結命令がでているけど、ことと次第によっては、解除されると思うわよ」

ミサト「間に合わない場合ってことね」

リツコ「そのパイロットもね」

ミサト「……了解。司令に連絡を。今頃は遠方の県議会に出席しているはずだから」

リツコ「ええ、わかったわ」


417 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 20:49:50.54cmSxQmug0 (10/15)

【第壱中学校 放課後】

アスカ「警戒態勢? 使徒がきたの?」

ミサト「みたいなんだけど。動きがないのよねぇ」

アスカ「なにその煮え切らない感じ」

ミサト「だぁって、そうなんだもの~。ま、どーんとかまえてりゃいいのよ」

アスカ「私はどうすればいいの?」

ミサト「普通に帰ってもらってかまわないわよぉ~ん」

アスカ「わかった。ミサトは? 今夜は遅くなるの?」

ミサト「電話を切ってもう少ししたら帰ろうかなと」

アスカ「防犯意識、低すぎない?」

ミサト「来たるべき時に疲れて動けなかったら本末転倒でしょーが。本部は第二種警戒態勢に移行してるから心配しなさんなって」

アスカ「はぁ、なにそれ?」

ミサト「第一種の前の段階ってことね。外出禁止、帰宅禁止、外部への連絡禁止とか。様々な制限をかけられるけど、第二種は同一種のさらに事前段階」

アスカ「はぁーん。どうでもいい情報」

ミサト「あんたが聞いたわよね! 今!」

アスカ「今日は、シンジに夕ご飯作ってもらうから」

ミサト「おっ、シンちゃんが了承してくれたんだ? やるわねー、アスカ」

アスカ「だから言ったでしょ? 二つ返事でオッケーだって」

ミサト「さよーですか。シンジくんとレイにも伝えといてくれる?」

アスカ「了解。それじゃ、切るわよ」ピッ

トウジ「それにしても、霧島の弁当はホンマうまかったなぁ!」

シンジ「そうだね、僕も驚いた」

マナ「おだてても、なにもでないよ?」

シンジ「本心だよ」

マナ「えへへ! もう、口がうまいんだから」

マナ「あの、碇くん。一緒に――」

アスカ「シンジー!」

シンジ「ん? どしたのアスカ」

アスカ「あいつは?」

シンジ「……?」

アスカ「察しが悪いわねぇ、あたしがあいつって言ったらあんたかもう一人しかこの教室にいないでしょ」

シンジ「綾波?」

アスカ「そ。伝えなきゃいけないことがあるから」

シンジ「えぇと、さっき帰ったと思うけど。なにかあったの?」

アスカ「使徒」

シンジ「え?」

アスカ「だぁーかぁーらぁっ! 使徒が来たのよ! バカシンジ!」


418 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 20:59:29.10cmSxQmug0 (11/15)

ちと間違ったんでレスしなおし


419 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 21:03:52.39cmSxQmug0 (12/15)

【第壱中学校 放課後】

アスカ「警戒態勢? 使徒がきたの?」

ミサト「みたいなんだけど。動きがないのよねぇ」

アスカ「なにその煮え切らない感じ」

ミサト「だぁって、そうなんだもの~。ま、どーんとかまえてりゃいいのよ」

アスカ「私はどうすればいいの?」

ミサト「普通に帰ってもらってかまわないわよぉ~ん」

アスカ「わかった。ミサトは? 今夜は遅くなるの?」

ミサト「電話を切ってもう少ししたら帰ろうかなと」

アスカ「国防意識、低すぎない? ちゅーか、人類の未来がかかってんでしょ?」

ミサト「来たるべき時に疲れて動けなかったら本末転倒でしょーが。本部は第二種警戒態勢に移行してるから心配しなさんなって」

アスカ「はぁ、なにそれ?」

ミサト「第一種だと外出禁止、帰宅禁止、外部への連絡禁止とか。様々な制限をかけられ、待機命令を含むけど、第二種はさらにその前の事前段階」

アスカ「はぁーん。どうでもいい情報」

ミサト「あんたが聞いたわよね! 今!」

アスカ「今日は、シンジに夕ご飯作ってもらうから」

ミサト「おっ、シンちゃんが了承してくれたんだ? やるわねー、アスカ」

アスカ「だから言ったでしょ? 二つ返事でオッケーだって」

ミサト「さよーですか。シンジくんとレイにも伝えといてくれる?」

アスカ「了解。それじゃ、切るわよ」ピッ

トウジ「それにしても、霧島の弁当はホンマうまかったなぁ!」

シンジ「そうだね、僕も驚いた」

マナ「おだてても、なにもでないよ?」

シンジ「本心だよ」

マナ「えへへ! もう、口がうまいんだから。あの、碇くん。一緒に――」

アスカ「シンジー!」

シンジ「ん? どしたのアスカ」

アスカ「あいつは?」

シンジ「……?」

アスカ「察しが悪いわねぇ、あたしがあいつって言ったらあんたかもう一人しかこの教室にいないでしょ」

シンジ「綾波?」

アスカ「そ。伝えなきゃいけないことがあるから」

シンジ「えぇと、さっき帰ったと思うけど。なにかあったの?」

アスカ「使徒」

シンジ「え?」

アスカ「だぁーかぁーらぁっ! 使徒が来たのよ! バカシンジ!」


420 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 21:40:34.02cmSxQmug0 (13/15)

【下駄箱】

シンジ「綾波っ! はぁっ、はぁ。よかった。間に合って。あの、使徒がきたんだって」

レイ「了解、非常召集?」

シンジ「いや、家に帰っていいみたいだよ。僕たちができるのは心構えぐらい。聞きたいんだけど、僕は今後、使徒が来たりしたらわかるようになる?」

レイ「時と場合による」

シンジ「……?」

レイ「アダムの持つ力は万能ではない、ただの個性。使う用途によって応用のきく場面があるか、それはケース次第。ただ――」

シンジ「ただ?」

レイ「会えばすぐわかるようになる。ヒトが人間とその他の生物を区別できるように。使徒が人型をしていて、自らをヒトだと詐称していても騙されない」

シンジ「目視しないといけないってこと?」

レイ「あとは、波長が似ているか」

シンジ「よく、わからないな」

レイ「碇くん、手」スッ

シンジ「……? 差し出せばいいの?」スッ

レイ「なにか感じる?」ギュッ

シンジ「え? いや、あの、暖かいな、としか」

レイ「もっと。胸の奥でなにか鼓動を感じるはず。……ここ」スッ

シンジ「ちょ、ちょっ⁉︎ あ、あやなみっ! 僕の手が!」

レイ「心臓の鼓動をイメージして。魂の揺らぎ」

シンジ「で、できないよ! だって僕の手が綾波の胸に!」

レイ「自分の胸でもいい」

シンジ「そ、それならそう言ってくれれば……」

女子生徒A「なにあれ。今の見た? 碇くん、今度は綾波さん?」ひそひそ

女子生徒B「ひぃやぁ~。三角関係? おもしろー!」ひそひそ

女子生徒A「あんた、相当なゲスね」ひそひそ

シンジ「あっ……!」キョロキョロ

レイ「……」ジー

シンジ「ご、ごめん! 僕っ!」バッ

レイ「……?」

アスカ「――あんた達、こんなところで見つめ合ってなにやってんの?」

シンジ「あ、アスカっ⁉︎」ギョッ

マナ「どうしたの? どういう状況?」ニコ

ケンスケ「おいおい、碇。死にたいのかぁ?」

トウジ「昼休みのさっきの今で次は綾波かいな」

ヒカリ「碇くん、それはちょっとどうかと思う」

シンジ「ち、ちちちちっ、違うよっ! 僕はただ!」

ケンスケ「慌てるのがますます怪しい。放課後、下駄箱とくりゃー、ラブレ――あいっ⁉︎」

マナ「あ、ごめん。なんかイラっときてついつねっちゃった」

ケンスケ「ついでつねるのかよ!」

マナ「写真のこと、言いふらそうか?」コソ

ケンスケ「ひっ! ……いやぁ! やっぱり僕の気のせいだったミタイダー!」

シンジ「違うって。ネルフからの言伝を」

アスカ「はぁ、もういいから。さっさと帰るわよ」


421 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 22:09:24.86cmSxQmug0 (14/15)

【下校中】

マナ「あの~」

アスカ「だめ、存在を無視できない。どうして並んで歩いてんのよ!」

マナ「だって、私の家も同じマンションじゃない」

アスカ「それは知ってるけど! ちっ、昨日はわざと時間ずらして帰ったのに」ブツブツ

シンジ「(さっきの、聞こえてきた、三角関係って誰のこと言ってるんだろう。えぇと、アスカと、マナのことかな。綾波もいれたら三角にならないし。僕がモテてると勘違いしてるのかなぁ。まさかねぇ)」

マナ「シンジくん、さっきから指折り曲げてなに考えてるの?」

シンジ「え? えぇと、いや、なんでも」

アスカ「算数もまともにできないの? 暗算できないアホの子みたいだからやめてよね」

シンジ「いや、そうじゃなくて。あは、あはは」

マナ「さっきのシンジくんかわいかったな。あんなに慌てるんだね」

アスカ「こいつはいつもこんなもんよ。ビクビクしてるし」

マナ「そう? 私はそう思わないけど」

アスカ「会って数日でしょ? そんな期間でなにがわかるっつーのよ」

マナ「そっか。アスカったらなんにも知らないんだ」

アスカ「はぁ?」

マナ「シンジくんのかっこいいところ」

アスカ「はっ! こいつがかっこいい? マナ、男の趣味悪いんじゃないの? 本心じゃないんでしょうけどねぇ」

シンジ「(そうだよ、マナは自分の立場でそう言ってるだけ。うん、まわりに流されて僕が勘違いしちゃいけない)」

マナ「ちゃんと思ってるよ。どうして私がウソつかなくちゃいけないの?」

アスカ「……っ! マナ、いや、あんた、とんだ狸ね。現在進行系で騙そうとしてるくせに」

マナ「アスカはなにも知らないもの。知らなくていい」

アスカ「なに言ってるの?」

マナ「ねっ! シンジくん」

シンジ「うんと、その……」

アスカ「なんでそこでバカシンジに……はぁ~ん、なるほど。そういう演出ってわけ?」

マナ「へ?」

アスカ「あたしより自分の方がいいってわざとしてるんでしょ? 計算で」

マナ「……そんなんじゃないもん」

シンジ「ちょ、ちょっと、二人とも」

アスカ「残念ねぇ~。これからシンジはあたしの家で……ゴホン……このあ・た・しの為だけにご飯を作ってくれるみたいよー?」

シンジ「……え? ご、ご飯? 用事って」

マナ「なに、それ。どういう意味?」

アスカ「スタートラインが違うって言ってんのよ。50メートル地点がゴールだとしたら、あたしは既に30メートルぐらいかしら。いや、もっとかも?」


422 ◆y7//w4A.QY2017/09/11(月) 22:39:27.99cmSxQmug0 (15/15)

マナ「ふぅん、アスカってば、普段はツンケンな態度してるくせに、シンジくんを男だって意識してるんだ?」

アスカ「な、ななななんでそんな解釈になんのよ!」

マナ「だって、ゴールしたいんじゃないの?」

アスカ「立ち位置の話よ!」

マナ「じゃあ、シンジくんと私が仲良くなってもいいの?」

アスカ「だ、だって、あんたは……」もごもご

マナ「(言えないものね。アスカは私が戦自のスパイだって知ってるって。あんまりいじめちゃかわいそうか……)」

シンジ「あの、アスカ。ご飯って、なに?」

アスカ「しっ! あんたは黙っときなさい!」

マナ「……? シンジくん、なにも聞いてなかったの?」

アスカ「……(喋ったら、[ピーーー])……」キッ

シンジ「……」ゴクリ

マナ「シンジくん?」

シンジ「いや、僕が忘れてたみたいだ。たしかに、そんなこと、言ってたような」

マナ「もしかして、言わされてない?」

アスカ「そんなわけないじゃなぁ~い! 昨日デートに誘われたんだから!」

シンジ「デート⁉︎」

マナ「……」

アスカ「しかたなぁくオーケーしてあげたんだけどさぁ」

マナ「アスカ。変だよ」

アスカ「……?」

マナ「甘えてるんだね、シンジくんに」

アスカ「な、なにが? あたしがシンジに?」

マナ「素直になれない自分を。ぶつけることで求めてるんでしょ?」

アスカ「聞き捨てならないわ! 喧嘩売る気⁉︎」

マナ「エリート? それがなに……? 私には、ハリボテの前で威張ってる裸の王様に見える」

アスカ「この! よくも言ったわね!」ブンッ

シンジ「もうやめよう。二人とも」パシッ

アスカ「……っ⁉︎ ちょ、離して!」グィッ

シンジ「マナ、アスカ。喧嘩することに僕は否定的じゃない」

アスカ「(うそっ⁉︎ 振りほどけない⁉︎ なんで、ビクともしない、のっ!)」グィッ

マナ「……ごめん、また、私」

シンジ「暴力って傷つける悪いイメージだけど、わかり合ったり、すっきりしたり、そういう必要な時もあると思うから。ただ、今はそうじゃない」パッ

アスカ「いっつ、もう、痕になったらどうして……あれ? なにも残ってない? 強く掴まれてた気がしたのに」

シンジ「帰ろう。向き合わなくちゃいけない時は、きっと来るから」


423以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/11(月) 22:50:44.35P9LxskFao (2/2)

もっともっと


424以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/12(火) 02:24:33.44ZE04esyFO (1/1)

シゲルが随分ゲスいな


425 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 13:29:23.36ygreSJtC0 (1/16)

青葉シゲルは喋ってる機会の多いPSPとPS2で発売されたゲーム版を参考に性格形成してます
使えそうだなと思ったセリフを織り交ぜていたり(ゲーム中で使用されている)しますが
書いている二次SSに合わせているので見せ方の問題もあると思います


426 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 14:32:53.26ygreSJtC0 (2/16)

【ミサト宅 リビング】

シンジ「……な、なんだこれ……」

アスカ「よっ、ほっ、と」

シンジ「ど、どうしてこんなことに」ソォー

アスカ「あぁ、そっちじゃないっ! その服まだ着るんだから踏まないでよね!」

シンジ「え?」ピタ

アスカ「そっち通って」

シンジ「脱ぎ散らかさないで畳めばいいじゃないか。それに、食べた後の弁当箱も。こっちはビール缶」

アスカ「やーよ。めんどくさい」

シンジ「アスカ。生活っていうのは、掃除をしないと。洗濯物も。臭くなっちゃうよ」

アスカ「ミサトに言ってよ。なんであたしに言うの?」

シンジ「だって、アスカだってここで生活――」

アスカ「してるけど。そう思うならあんたやって」

シンジ「な、なんで? 自分でもできるだろ」

アスカ「あんた程度でもできるって言ってんの! あたしがわざわざしなくちゃいけないなんてイヤ!」

シンジ「はぁ……」

アスカ「その、デートしてあげるんだし、それでチャラでしょ」

シンジ「あの、それっていつ?」

アスカ「そんなにはやくしたいの? せっかちな男ねぇ」

シンジ「(いつ約束したのって意味なんだけど……)」

アスカ「日時と場所はあんたが決めていいわよ。女の子をエスコートするなんて土台無理な話でしょうけど、まぁ、我慢してあげる」

シンジ「……はぁ、それにしても、どこから手をつけようか。明日の天気予報なんて言ってた?」

アスカ「晴れだって言ってたわよ」

シンジ「それなら、夜干しになっちゃうけど洗濯物からにしようか。炊飯器は……」カチ パカッ

アスカ「あたし、ソファーで雑誌見てるから」ポイッ

シンジ「うっ! あ、アスカぁっ!」

アスカ「なにー?」

シンジ「ご飯いつのだよこれ! 保温切っておいてたの⁉︎ カサカサじゃないか!」

アスカ「あー。えっと、三日ぐらい前?」

シンジ「食べないなら冷凍して釜は洗えよ!」

アスカ「えぇ~」

シンジ「このまま放置するつもりだったの⁉︎」

アスカ「気がつかなかったらそうなるんじゃない?」

シンジ「気に! しろよ!」

アスカ「うっさいなぁ。あんた、小姑みたい」

シンジ「(だめだ。今まで当たり前のように僕がやってたから気がつかなかったけど家事に対する感覚が圧倒的に違う、ミサトさんはズボラだってわかってたけど、アスカもまるで興味がないなんて)」

アスカ「お菓子、お菓子、と」ポフッ

シンジ「ねぇ、なんで自分でやらないの? こんな空間で住みたくないよね?」

アスカ「まぁ、そりゃーね。衛生的なのは良い。だからってなんであたしがやらなくちゃいけないの? 物の置き場所はわかってるし不自由はないし」

シンジ「改善できるから、とか」

アスカ「ただの雑用でしょ? わかる? あたしパイロット。本来はサポートされてるべきよ。監督者の管轄義務であってこっちの問題じゃない。折れてやらなくたって……日本人はこれだから」

シンジ「(海外って、こうなのか。いや、アスカ個人の問題のような……)」

アスカ「はいはい、小言はいいから、さっさとやって」ゴロン


427以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/12(火) 14:42:10.99UIql0MwWo (1/1)

いつも思うけどシンジってよくキレないよな
ミサトは年上だから遠慮があるのはわかるけどアスカにはキレるわ


428以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/12(火) 14:46:11.02sDBKv7HSO (1/1)

洗濯屋シンちゃん


429以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/12(火) 14:51:21.61Gw2QV2W7O (1/1)

いまこそ衝動に身を任せて…!


430以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/12(火) 15:22:15.66xqo5cPsDO (1/1)

衝動のままに家事を!


431 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 15:28:17.90ygreSJtC0 (3/16)

【数十分後 同リビング】

シンジ「食べたらせめてゴミ箱に……」ガサゴソ ポイッ

アスカ「シンジー! お風呂も洗っといてねー!」

シンジ「コップも洗ってないし、このまま二人で生活していたらどうなるんだろう」

アスカ「ちょっと、シンジ! 聞こえてないのー?」

シンジ「やっとくよっ! ……アスカは雑誌読むの飽きたのか部屋に行っちゃったし」

アスカ「……」ガララ トタトタ

シンジ「ご飯ならまだ」

アスカ「じゃじゃーん!」

シンジ「……?」

アスカ「はぁ、あいかわらずポンコツな反応ね。あんたとのデートに着ていってあげようと思った服よ」

シンジ「あ……に、似合ってるよ」

アスカ「もうちっと嬉しそうにしなさいよ! 気に入らなかった?」クルッ

シンジ「(状況が飲み込めてないからなんだけど)」

アスカ「あんた、どんな格好の女の子が好きなの?」

シンジ「……いや、本当に似合ってるよ。ごめん、こんなにかわいいとは思わなかったから」

アスカ「へ? ま、まぁ、そうよね! 当たり前の反応!」

シンジ「その、ハットにアスカがいつもつけてるヘアバンドの形が浮いて猫耳みたいになってるのが気になるけど」

アスカ「あぁ、ヘッドセットつけたままなの忘れてた」

シンジ「それって気に入ってるの?」

アスカ「髪をまとめるのに便利だからつけてるってだけ」

シンジ「え、でも、それだったらヘアゴムとか」

アスカ「いちいち目ざといわねぇ。……昔ね、ママがこの形で二つ、よくリボン結んでくれたの」

シンジ「あ……」

アスカ「エヴァのパイロットっていう証。それをママに見せたいのよ」


432 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 15:29:08.96ygreSJtC0 (4/16)

シンジ「お母さんって、どんな人だったの?」

アスカ「……」ギュウ

シンジ「アスカ……?」

アスカ「優しい人だった。私はママが大好きで、笑ってくれるのが嬉しくて、とにかく私を見てほしくて。今でも思い出は大切に胸にしまってる」

シンジ「そうなんだ」

アスカ「でも、ある日全てが変わっちゃった。音なんか聞こえるはずないのに、音を立てて崩れるってこういう時に使うんだなって理解がストンと落ちてくる感じ」

シンジ「なにか、あったの?」

アスカ「わかんない。それでも、ママが喜んでくれるように私は必死で頑張ったわ。笑顔になれるなら、なんでもやろうって思って」

シンジ「……」

アスカ「今日はなんだかおかしい。あんたにこんなこと話すなんて。絶対にないと思ってた」

シンジ「アスカ……」

アスカ「間違っても同情なんかやめてよね、ウソくさいから。みんな、みんな、ウソばっかり。上部だけ取り繕っちゃってさ」

シンジ「……」

アスカ「誰でも自分が一番かわいいのよ。パパだって自分を許せないからとか、相手の為とか。変な理屈をつけて正当化しても、結局はそれ。ウソがない人なんかいない。

シンジ「……」

アスカ「もし、“自分はウソつきじゃない”ってやつがいたとしたら、それがウソ。もしくは、気がついてないだけ。だから、私はなんでも自分で出来るようにならなきゃいけないの」

シンジ「わかった、もういいよ」

アスカ「エースでいなくちゃいけないの」

シンジ「アスカ。もういいんだ」

アスカ「感情の波が押し寄せてくんのよ! 自分でもどうしようもないの!」バンッ

シンジ「(触れちゃいけないことだったのか。でも)」

アスカ「ふぅー……。わかってる、あたしが勝手に話ただけ。あんたは、家事に戻って忘れて。私も忘れ――」

シンジ「忘れないよ」

アスカ「……」

シンジ「そうした方がいいなら、そうする。だけど、大事な話だと思うから」

アスカ「好きにしたら」

シンジ「うん。わかった」


433 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 16:30:03.07ygreSJtC0 (5/16)

【数時間後 同リビング】

ミサト「見違えるようになったわね~! やっぱり家庭はこうでなくっちゃ!」

シンジ「普段からちゃんとしておけば、普通ですよ」

ミサト「普通ってのはねぇ、積み重ねるもんがあってはじめて成立すんの。あたしとアスカにとっては普通じゃない、労力を使うお仕事」

アスカ「まぁまぁね、あんた、もぐもぐ、味落ちてんじゃないの」パクパク

ミサト「リスみたいな顔して頬張ってるのはかわいいけど。説得力ないわよ」グビ

アスカ「んぐっ、ごくり、ミサトは肝硬変になるわよ」

シンジ「……」コネコネ

ミサト「シンちゃんは食べないの?」

シンジ「ハンバーグのタネを作っちゃいます。冷凍しておけばあとは焼くだけなので」

ミサト「あらあら。アスカの好物ぅ? よかったわねぇ~?」

アスカ「ふ、ふんっ」

シンジ「それより、今後どうするんですか」

ミサト「と、申されますと?」

シンジ「生活ですよ。こんなにひどくなってるなんて思わなかったから。野生に帰るつもりですか?」

ミサト「ぶっ、だっはっはっ! ここジャングルじゃないんだけどぉ~」

シンジ「……」ジトー

ミサト「あ、あら? けっこうマジ?」

シンジ「ミサトさんと……アスカはちょっと理由が違うかもしれないけど。誰でもできることです。やってないだけでしょ」

ミサト「あ、あたしは仕事がちょっち忙しくてさぁ~」

シンジ「だったら、協力するとかあるじゃないですか。僕がいた頃ゴミ出しをしてくれたみたいに」

ミサト「うっ、そ、そりはぁ、あくまでついでだったからといいますかぁ……アスカ! あんたもだかんねっ!」

アスカ「あたしに責任転換しないでよ。監督者はミサト」

ミサト「いくらあたしに監督義務があると言っても、自分で作るぐらいできるでしょーが!」

アスカ「イヤっ!」

ミサト「そ、そんなキッパリ」

シンジ「そこまでで。改善するには、どちらかがやるしかありませんよ。話合ってルールを決めれば――」

アスカ「あんたが定期的にここへくればいいじゃない」

シンジ「な、なんで僕がっ⁉︎」

ミサト「おっ、ナイスアイディア~!」

シンジ「ミサトさんっ⁉︎ 冗談ですよね⁉︎」

ミサト「ごめんねぇ~シンちゃん、私も家政婦雇いたいんだけど、生活が苦しくて」

アスカ「イヤなの? 女二人の花園に入り放題になんのよ? ひとりはおばさんだけど」

ミサト「ほっほぉ~う? アスカは後でゆっっくり話をするとして。どう? お小遣いになる程度の時給にするから」

シンジ「はぁ……」


434 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 20:21:29.96ygreSJtC0 (6/16)

【マヤ宅 リビング】

マヤ「遅いなぁ、シンジくん」

シンジ「……」ガチャ バタン

マヤ「あっ、お、おかえり!」

シンジ「あれ? リビングでなにを……」

マヤ「あのね、シンジくん」

シンジ「はい?」

マヤ「遅くなる時は連絡しなくちゃだめでしょう? どこでなにやってたの?」

シンジ「あ、すみません。ミサトさんの家に呼ばれてて」

マヤ「葛城一位のお宅に?」

シンジ「はい、夕ご飯を作りに」

マヤ「えぇ? なんで?」

シンジ「なんでって、その、ミサトさんもアスカも家事をやらないから」

マヤ「それだけの理由で? 自分たちでやらせたらいいじゃない」

シンジ「たしかにそうなんですけど。ほっとけないっていうか」

マヤ「はぁ……そう。ご飯は?」

シンジ「(ラップして置いてある。作って待っててくれたのか……食べてきたけど)」

マヤ「もしかして、済ませてきた?」

シンジ「いえ。ちょうどお腹が空いてたんです、美味しそうだなぁ。食べていいんですか?」

マヤ「よかった。まだだったのね」

シンジ「鞄を置いてきます」

マヤ「手もちゃんと洗ってね?」

シンジ「わかりました」


435以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/12(火) 20:25:01.664u0/UlWko (1/1)

なんか女キャラではマヤが一番まともな気がしてきた


436 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 20:42:14.46ygreSJtC0 (7/16)

マヤ「……」ジー

シンジ「……」もぐもぐ

マヤ「おいしい?」

シンジ「はい、おいしいです」

マヤ「これも食べてみて。得意料理なんだけど」

シンジ「そうなんですか? あむ……うん、大根によく味が染みてておいしいや。いつ仕込んだんですか?」

マヤ「今日。普通は煮込めば煮込むほど味わいがますものだけど」

シンジ「そうですね。短時間でここまで」

マヤ「うん、母さんからやり方教わったの。あなたも将来食べさせる相手ができるだろうからって。そんな相手、まだできる気配すらないけど」

シンジ「お袋の味ってやつですか。いいな、そういうの」

マヤ「あ……シンジくんは司令にそういうの教わった経験は?」

シンジ「なにもありませんよ。父さんとはご存知の通りですし、母さんは生きてることすら知りませんでしたから」

マヤ「そ、そうよね。ごめんね、なんだか重い雰囲気にしちゃって」

シンジ「そんなつもりないですよ。ありのままを言ってる、僕にとっては、それが普通なんです」

マヤ「シンジくんがもうちょっと歳近かったらなぁ」

シンジ「……?」もぐもぐ

マヤ「ねぇ、あのこと、話してもいい?」

シンジ「待ってください……」カチャ

マヤ「(あ、また瞳の色がうっすら赤く)」

シンジ「いいですよ、どうぞ」

マヤ「手紙の内容。期限はいつまでとたしかに書いてなかったけど、いつまでも誤魔化せないと思うの」

シンジ「そうですね」

マヤ「なにか、考え浮かんだ?」

シンジ「ふぅ……正直なところ、なにも」

マヤ「演技じゃだめかな?」

シンジ「それは済ませたということですか? 母さんは確認するかもしれませんよ」

マヤ「どうやって?」

シンジ「わからないけど。どんな手を使ってきてもおかしくないと思います」

マヤ「うーん。ここって監視されてるのよね? 盗聴器だけなのかしら?」

シンジ「どうかな。カメラがあるとしたら、以前のやりとりの時に踏みこんできてもおかしくないと思いますけど」

マヤ「小型化してるし、ありがちな所だと、熊のぬいぐるみの目の中とか。そういうところに隠してるんじゃ?」

シンジ「探しますか? 人力になっちゃいますけど」

マヤ「見つけられればいいけど。天井とか、全部の壁紙をひっぺがすわけにもいかないし……」

シンジ「……どうして、確認を? 見られてるのが嫌だから?」

マヤ「目で見たものは信じる。演技って言ったじゃない?」

シンジ「はい」

マヤ「だから、その、あのね」

シンジ「……」

マヤ「寸前まで、やったらいいんじゃないかって」

シンジ「寸前? それって、どこまで?」

マヤ「や、やだ。シンジくんは、本当にわからなくて聞いてるんだものね……。言わせようとしてるわけじゃない、うん」

シンジ「あの、まさか」

マヤ「そ、そう。その、そ、そそそそそそ挿入する直前まで」


437 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 21:01:05.75ygreSJtC0 (8/16)

シンジ「……」ポカーン

マヤ「そのっ! あくまで演技よ! 実際にするわけじゃないし! 挿れるのはなし! 太ももに挟んで」

シンジ「ほ、本気ですか?」

マヤ「私だって! 考えたけど! どうしようもないじゃない!」

シンジ「いや、たしかに、方法が浮かばないのはそうですけど」

マヤ「シンジくんは、よく見たら女の子みたいな顔してるし、身体つきだって」

シンジ「マヤさんはそれでいいんですか?」

マヤ「だから、実際にするわけじゃないって……」

シンジ「それでも、身体は密着するわけですし。前に話た時に男が苦手って言ってましたよね」

マヤ「う、うん」

シンジ「いきなりハードル高すぎませんか。僕も慣れてるわけじゃないですよ」

マヤ「勇気をだして言ってるの。このままじゃ。シンジくん、もう一人の誰かを守りたいんでしょう?」

シンジ「そ、それは……」

マヤ「だったら、これしか方法がない。私、イヤだけど、我慢できる、と思うの」

シンジ「やっぱり嫌なんじゃないですか、我慢するってことは」

マヤ「わ、わたしもっ! 踏ん切りをつけなきゃいけないから! もういい歳だし!」

シンジ「は、はぁ」

マヤ「本当に、直前までよ?」

シンジ「それはもちろん、わかってます」

マヤ「いつ、する?」

シンジ「……」

マヤ「台本を用意した方がいいかな? お、犯せって書いてあったし、シンジくんが襲う段取りで」

シンジ「やめましょう、他に方法が――」

マヤ「考えてる時間あるのっ⁉︎」バンッ

シンジ「……」

マヤ「思いつかなかったら⁉︎ そしたら申し訳ない顔して、仕方ないって言ってやるんでしょう⁉︎」

シンジ「……」

マヤ「だったら、せめて勇気が出た時にやらせてほしい。私のペースで。どうにかなるかもしれないって、希望だけをもたせるなんてひどいわ」

シンジ「僕は……」

マヤ「これが、私たちに選択できる“落とし所”なんだよ。失うものはないもの」

シンジ「……」

マヤ「納得、できないよね。苦しいよね。私も一緒。痛いほどわかる。だから、だから、私はシンジくんと肌を重ねる。私のために、自分のためにやって」

シンジ「……わかり、ました」

マヤ「具体的にどうする?」


438 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 21:25:16.08ygreSJtC0 (9/16)

シンジ「……」ギリッ

マナ「シンジくん、話して。ね?」

シンジ「母さんがどういう意図でこの手紙を渡してきたのか。ある程度、予測がついてるんです」

マナ「そうなの?」

シンジ「はい、といっても文面そのままですけど」

マナ「もしかして、破壊衝動ってところ?」

シンジ「その通りです。あの日、マヤさんを突き飛ばして僕がこの家から出て行きましたよね」

マナ「うん」

シンジ「詳しくは話せませんが、衝動を抑えきれなくて、マヤさんに危害を与える状況だったからです」

マナ「(首を締めてきたのは、そのせい……)」

シンジ「自分の力じゃどうしようもなくて。不定期に波がくる感じなんです。いつくるのか、それはわからない」

マナ「つまり、その解消に私を使えって話ね?」

シンジ「おそらくは」

マナ「ひどい。そんな、私をなんだと思って……!」

シンジ「巻き込んでしまって、すみません」

マナ「待って」

シンジ「はい?」

マナ「その衝動はいつから? 生まれつき?」

シンジ「いえ、最近です。一週間ぐらい前から」

マナ「そ、そんな、うそよね? だったら、シンジくんがここにきたのも、もしかして、全て仕組まれて……」

シンジ「ありえなくは、ありません」

マナ「せ、先輩も協力してるって。わ、わたし、なにも聞いてないのに」

シンジ「……」

マナ「どうして、シンジくんが?」

シンジ「僕もわかることは少ないけど、知っていたとしても話せません。マヤさんは演技を済ませて、母さんを信じさせてさえしまえばいい」

マナ「……」

シンジ「話を続けます。なので、僕が衝動を抑えきれず襲う演技をすれば説得力はでると思います」

マナ「……わかった。私は、思いきり嫌がればいいのね」

シンジ「はい、合意の上ではないという演出が必要です」

マナ「部屋、散らかっちゃうね」

シンジ「そ、そうですね」

マナ「嫌がるのは、たぶん、演技じゃなくて本気でできると思う。シンジくんは平気?」

シンジ「え?」

マナ「私は土壇場になって拒絶感が勝っちゃうだろうから。そのままの私。シンジくんはそうじゃないでしょう?」

シンジ「……」

マナ「一度、はじまったら、途中で躊躇なんかしちゃだめよ。バレたらなんの意味もなくなる」

シンジ「はい」

マナ「今日、やろっか」

シンジ「えっ⁉︎ そ、それは! だって、監視カメラの確認もできてないのに」

マナ「カメラがなくても盗聴器がある。どちらかひとつがあるのは確定してるの。じゃないと、あんなタイミングよくここに諜報部員が来れない」

シンジ「……」

マナ「シャワーだけ浴びさせて。あとは、シンジくんのタイミングにまかせる」


439 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 21:28:08.04ygreSJtC0 (10/16)

あらら、予測変換でマナと打ってるんでレスしなおし


440 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 21:29:50.31ygreSJtC0 (11/16)

シンジ「……」ギリッ

マヤ「シンジくん、話して。ね?」

シンジ「母さんがどういう意図でこの手紙を渡してきたのか。ある程度、予測がついてるんです」

マヤ「そうなの?」

シンジ「はい、といっても文面そのままですけど」

マヤ「もしかして、破壊衝動ってところ?」

シンジ「その通りです。あの日、マヤさんを突き飛ばして僕がこの家から出て行きましたよね」

マヤ「うん」

シンジ「詳しくは話せませんが、衝動を抑えきれなくて、マヤさんに危害を与える状況だったからです」

マヤ「(首を締めてきたのは、そのせい……)」

シンジ「自分の力じゃどうしようもなくて。不定期に波がくる感じなんです。いつくるのか、それはわからない」

マヤ「つまり、その解消に私を使えって話ね?」

シンジ「おそらくは」

マヤ「ひどい。そんな、私をなんだと思って……!」

シンジ「巻き込んでしまって、すみません」

マヤ「待って」

シンジ「はい?」

マヤ「その衝動はいつから? 生まれつき?」

シンジ「いえ、最近です。一週間ぐらい前から」

マヤ「そ、そんな、うそよね? だったら、シンジくんがここにきたのも、もしかして、全て仕組まれて……」

シンジ「ありえなくは、ありません」

マヤ「せ、先輩も協力してるって。わ、わたし、なにも聞いてないのに」

シンジ「……」

マヤ「どうして、シンジくんが?」

シンジ「僕もわかることは少ないけど、知っていたとしても話せません。マヤさんは演技を済ませて、母さんを信じさせてさえしまえばいい」

マヤ「……」

シンジ「話を続けます。なので、僕が衝動を抑えきれず襲う演技をすれば説得力はでると思います」

マヤ「……わかった。私は、思いきり嫌がればいいのね」

シンジ「はい、合意の上ではないという演出が必要です」

マヤ「部屋、散らかっちゃうね」

シンジ「そ、そうですね」

マヤ「嫌がるのは、たぶん、演技じゃなくて本気でできると思う。シンジくんは平気?」

シンジ「え?」

マヤ「私は土壇場になって拒絶感が勝っちゃうだろうから。そのままの私。シンジくんはそうじゃないでしょう?」

シンジ「……」

マヤ「一度、はじまったら、途中で躊躇なんかしちゃだめよ。バレたらなんの意味もなくなる」

シンジ「はい」

マヤ「今日、やろっか」

シンジ「えっ⁉︎ そ、それは! だって、監視カメラの確認もできてないのに」

マヤ「カメラがなくても盗聴器がある。どちらかひとつがあるのは確定してるの。じゃないと、あんなタイミングよくここに諜報部員が来れない」

シンジ「……」

マヤ「シャワーだけ浴びさせて。あとは、シンジくんのタイミングにまかせる」


441 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 21:55:30.93ygreSJtC0 (12/16)

【数十分後 リビング】

シンジ「(昨日、お互いの違いを埋めるって言ってたらかりなのに。マヤさん、焦ってるのかな。不安、なのかもしれない)」

マヤ「シンジくん、あがったよ」

シンジ「あ、はい。僕も」

マヤ「お風呂ためなくて平気?」

シンジ「大丈夫です。食器、洗ってから入りますね」

マヤ「置いておいてくれていいわよ」

シンジ「いえ、悪いですから」

マヤ「わかった。私、今日は警戒警報で疲れてるの。先に部屋にいるね」

シンジ「はい」

マヤ「……」スッ

シンジ「(僕に、できるだろうか。いや、やるしかないんだ。そうしないと、マナが。でも、それすら自分に言い訳してるだけなんじゃ……)」スッ ガタッ

マヤ『躊躇なんかしちゃだめよ。バレたらなんの意味もなくなる』

シンジ「(迷っちゃだめだ。はぁ、こういう時、都合よく衝動がくればな。たった今、アダムの力を使ったはずなのに。……そのせいにしてしまったら、逃げてるだけ、か)」

マヤ『シンジくんのタイミングに合わせる』

シンジ「(最悪なのは、勇気を、覚悟を無駄にしてしまうこと。マヤさんはすごい決断をしてるんだ。それに応えなくちゃ――)」


442以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/12(火) 22:14:36.95+KJPseSDo (1/1)

ワッフルワッフル


443 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 22:53:13.97ygreSJtC0 (13/16)

【数時間後 マヤ部屋】

シンジ「(なりきりるんだ。僕はアカデミー俳優。僕は演技賞受賞俳優、よし、マヤさんを……)」スーッ パタン

マヤ「すぅー……すぅー……」

シンジ「(あ、あれ? ね、寝てる⁉︎)」

マヤ「う、うん」ゴロン

シンジ「(いや、きっとこれも演技なんだ。やるしかないんだ……)」

マヤ「うぅーん」

シンジ「寝てるんですか? それなら都合がいいや」

マヤ「ん……あ、シンジくん……もう朝?」

シンジ「起きたんですね。眠りが浅かったのかな」スッ

マヤ「え、時間……まだ、夜?」

シンジ「だめなんです。どうしても抑えきれなくて」ガシッ

マヤ「きゃっ、いたっ、な、なにっ⁉︎ し、シンジく――」

シンジ「騒がないでください!」ガバッ グッ

マヤ「むーっ!」

シンジ「無理なんですよ、もう……だから!」ブチ ブチ

マヤ「むっ⁉︎ むぅぅーっ⁉︎ ぷはっ、きゃああっ! 誰かっ!」

シンジ「ブラ、見えちゃいましたね」

マヤ「いやっ! くっ、このっ!」ガンッ

シンジ「いつっ」

マヤ「(あ、つい膝蹴りしちゃった。でも、予想してた以上に、こ、こわい……!)」

シンジ「……抵抗しても無駄ですよ」ムク

マヤ「ひっ!」ガタンッ ダダダッ

シンジ「逃げても無駄だって言ってるでしょう!」ダンッ ガシッ

マヤ「いや! 手首を離して! だ、誰か助けて!」ガシャンッ

シンジ「前、はだけてますよ。そんな姿を見せていいんですか」むにゅ

マヤ「あっ、嫌、嫌、気持ち悪い! 触らないでっ!! シンジくん⁉︎ 正気⁉︎ なにやってるかわかってるのっ⁉︎」

シンジ「わかってますよ。それでも、無理なんだ……!」

マヤ「なにが無理なのよっ⁉︎ こ、こんなことになるなんて」

シンジ「……」スッ グイッ

マヤ「いやあああっ!!」

シンジ「マヤさん、ピンク色なんですね」

マヤ「(こ、これ、本当に演技⁉︎ シンジくん、まさか本当に……⁉︎)」


444 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 23:12:51.66ygreSJtC0 (14/16)

シンジ「こわいんですか? そんなにガタガタ震えて」

マヤ「ひっ、や、やめて。もう。今ならなにもなかったことにしてあげるから……!」

シンジ「そんなこと言って。マヤさんもこういうこと好きなんじゃないんですか?」スッ

マヤ「あっ、乳首、やめてっ。つまんじゃ」

シンジ「敏感なんですね。それとも、弱いのかな。もっともっと反応で楽しませてよ」

マヤ「やめっ、てっ! しつこく、しないで」ビク

シンジ「どうしたんですか? 嫌だって言ってたのに」

マヤ「だめ、本当に、あんっ、ちょっと待って! やめてったらぁっ!」

シンジ「(こ、これは、思った以上に、その、やっちゃいけない感が……)」

マヤ「お願い、もうやめてよぉ」ポロポロ

シンジ「……っ! 乳首、たってきてますよ」パク

マヤ「えっ⁉︎ きゃ! あ、ああっ、そんな、うそ、あぁんっ!」

シンジ「(途中でやめちゃここまでが無駄になってしまう。母さんにも、バレる! マヤさん、もう少しですから!)」

マヤ「あっ、舐めないで。やだ、やだやだやだやだ、気持ち、悪い」

シンジ「……」スッ

マヤ「……っ⁉︎ そ、そっちはだめ!」

シンジ「んっ、壊したいんです。だから、もっと悲鳴を聞かせてください」

マヤ「(そ、そんなっ⁉︎ ただ太ももに挟むだけじゃ⁉︎ や、やっぱり、ちゃんと打ち合わせしておけば!)」

シンジ「……」

マナ「あっ、んっ! 舌でころころ転がさないで、んっ!」キュッ

シンジ「はぁ、急に内股になって……そっか。気持ちいいんだ」

マナ「ち、違うわっ! 今のはただ、条件反射的に反応して……! こんなのひどすぎる! 無理やり!」

シンジ「こっちは?」グィッ

マナ「や、やめてっ! パジャマ脱がさないで!」

シンジ「はぁ、はぁっ」

マナ「ちょっ、ちょっと待ってったら! シンジくん!」


445 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 23:31:35.19ygreSJtC0 (15/16)

シンジ「あつい。熱がこもってる、もしかして、これが濡れてるっていう」

マヤ「そ、そんなはずないっ! 勘違いしないで! 童貞のくせに!」キッ

シンジ「…‥くっ、くっくっくっ」

マヤ「な、なに? なにがおかしいの。あなた、狂ってる……!」

シンジ「誤魔化してるのがおかしいんですよ。ここをこんなにしておいて」

マヤ「(まずっ……もしかして、本当に濡れてきてるかも……なんで? こんなの、理想じゃない。はじめてはもっと、なのに、なんで体が熱く)」

シンジ「ここから、いやらしい匂いしてますよ」くんくん

マヤ「ひっ、なに、やって⁉︎ 嗅がないでよ! このっ! 変態!」

シンジ「自覚させてあげてるんですよ」

マヤ「(やだ、恥ずかしい。やめて、そんなに顔近づけないでぇ……!)」

シンジ「マヤさん、もしかして、マゾの気質あるんじゃないですか?」

マヤ「ば、バカ言わないでよ! 女性は防衛するためにしかたなく愛液を!」

シンジ「そんな話聞いたことありませんよ。僕が知ってるのは発情してるってだけ」サワ

マヤ「ひゃっ⁉︎」ビクゥ

シンジ「こうやって、指でなぞれば、身体は反応する」

マヤ「き、汚い指で……っ! んぁっ! やだったら、そこは、だめよっ」

シンジ「キレイですよ、マヤさんのここ」ボソ

マヤ「はぁっ、んっ、え? あっ!」

シンジ「ここの、先端のところは?」

マヤ「そ、そこはっ⁉︎ クリッ⁉︎ 」ビクゥッ

シンジ「僕に教えてください」

マヤ「んっ、いや、動かさないで、押しつけないでっ! ぁあっ」

シンジ「……」

マヤ「(か、感じる……気持ちっいい。しん、じられ、ないっ! 私、本気で、感じて……っ! ゾクゾクする……!)」


446 ◆y7//w4A.QY2017/09/12(火) 23:53:22.69ygreSJtC0 (16/16)

シンジ「もう、抑えなくて大丈夫みたいですね」

マヤ「んっ、んっ」ビク ビク

シンジ「顔、よく見せてください」

マヤ「(なに、なんなの、この感覚。なんでこんな。屈辱しかないはずなのに。男なんて……粗暴で、不衛生で……)」

シンジ「目がうるんでますよ。泣いているせいだけじゃないですよね」

マヤ「(なのに……! なんでこんなに興奮してるのよぉぉ……)」キッ

シンジ「まだ睨む元気が……もっとですか? 」

マヤ「あっ、ご、ごめんなさっ、やめっ、あっ。小刻みに動かしちゃ」

シンジ「どうなるの?」

マヤ「い、イキたくないっ! イキたくないの! 止めて!」

シンジ「へぇ」

マヤ「ど、どうしてっ⁉︎ やめてって……っ! 言ったぁっ!」

シンジ「さっきから何度も聞いてますよ。でも、僕は?」

マヤ「ご、ごめんなさいっごめんなさいっ、謝ります! やめてください! 指をとめて!」

シンジ「ほら」

マヤ「(な、なんでこんなにうまく……あっ! 波きてるっ! なにも考えられなくなる!)」

シンジ「イきそうですね」

マヤ「だめぇえぇえ~~~~っ!!」ビクゥ ビクゥ

シンジ「……」

マヤ「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

シンジ「変態は、どっちですか?」

マヤ「はぁ、へ? な、なに?」

シンジ「僕、中学生ですよ。わかってますよね」

マヤ「そ、そんなの――」

シンジ「じゃあ、イッたマヤさんはなんなんですか? もしかして、普段から[田島「チ○コ破裂するっ!」]してました?」

マヤ「そんな⁉︎」

シンジ「クリトリスだけでイクなんて」

マヤ「そ、それは……その……」

シンジ「隠れてしてたんだ? なにをオカズに?」

マヤ「(ああ、言わないで。そんなに責めないで。言わされちゃうんだ……言うしかないんだ)」

シンジ「マヤさん?」

マヤ「せ、先輩の、こと」

シンジ「リツコさん? お、女ですよ?」

マヤ「だ、だって、男なんて……」

シンジ「(こ、これは知らなくてよかったな)」






447 ◆y7//w4A.QY2017/09/13(水) 00:14:26.19xQjA2YmQ0 (1/22)

マヤ「あの……もう、やめてくれるの?」

シンジ「そんなわけないじゃないですか」ヌギ

マヤ「(やっぱり、シンジくん、本当に抑えがきなくなっちゃってるんだ。このまま犯されるの? 悔しい……でも、体の奥が熱い)」

シンジ「ここ、こんなになってるんですよ」

マヤ「……っ! それ、男の人の」

シンジ「見たことないんですか?」

マヤ「その、父さんのはチラッと。でも、反り返ってなかったし! そ、それに、みんなそんなにおっきいの⁉︎」

シンジ「(恥ずかしい)」

マヤ「(あ、あんなのはいるの? でも、無理やりされちゃうんだろうな……想像しただけで、ゾクゾクしちゃう)」

シンジ「足、ひろげてください」

マヤ「い、いやよっ!」

シンジ「今さらですか?」

マヤ「(やっぱり……今日、わたし……)」

シンジ「ベッドに戻りますよ」スッ ヒョイ

マヤ「え? わっ⁉︎ わ、私重いよ! ど、どこにそんな力が!」

シンジ「……今は、なんでもできそうな気がします」

マヤ「(これも、瞳の色のせい? 力まで強くなるの? さ、逆らえない。シンジくんに、私が支配されてしまう)」

シンジ「……」ドサ

マヤ「(今から、無理やり犯される……。反り返ったお、おちんぽで私を貫いて、征服するつもり。泣いても、頭をおさえつけて。声をだしたら、ふさがれて……)」トロン

シンジ「こっちに」ギュ

マヤ「(あっ、男の人の、腕。もっと、もっと汚して。なにもかも考えられないくらい)」

シンジ「マヤさん、大丈夫ですか?」コソ

マヤ「……」ポーッ

シンジ「あの、布団かぶせますから。足を閉じて」コソ

マヤ「はい……」スッ

シンジ「ちがっ⁉︎ 開いてどうするんですか! 閉じるんですよ!」コショコショ

マヤ「はい、足を絡め……たらいいの」ガシッ

シンジ「(うっ! ちょ、ちょっと⁉︎)」


448 ◆y7//w4A.QY2017/09/13(水) 00:38:15.48xQjA2YmQ0 (2/22)

マヤ「し、シンジくぅん」

シンジ「んっ⁉︎」

マヤ「もっと、もっと罵ってぇ。私を叱ってぇ」

シンジ「(な、なんなんだよ、これ⁉︎ こんなはずっ⁉︎)」

マヤ「はぇ……どうしたの? うふふ、そんなに戸惑った顔して……あ、そっか。私が変態だから軽蔑してるんだ……そんな目で」

シンジ「マヤさんっ! しっかり!」コソ

マヤ「……? 今から私を犯すんでしょう? んっ」

シンジ「(き、キスっ⁉︎ こ、こんなつもりじゃ)」

マヤ「(ああ、汚い。唾液交換してる。汚い、キタナい。でも、それがいい……!)」

シンジ「んっ、ちゅ、マヤっ」

マヤ「ちゅ、ちょう、らいっんっ、唾液、シンジ、んっ」

シンジ「(アダムのせいなのか⁉︎ なにか他にも⁉︎)」

マヤ「ぷはぁっ、ここ、ほら」シュシュ

シンジ「くっ、マヤさん、握ってこすらないで」

マヤ「軽蔑する? こんな変態なことして気持ち悪いよねぇ」シコシコ

シンジ「ちょ、落ち着いて」グィッ

マヤ「きゃっ! あぁ、やっぱり、犯されるんだ。いいよ、その汚いおちんぽで、さっさとやれば⁉︎」

シンジ「や、やるわけ……」

マヤ「おまんこがわからないの? ぷっ、やだ。さっきは凄いテクだったくせに。やっぱり童貞なんだ」

シンジ「(ど、どうしたら。離れたらバレるし。とりあえず、腕を)」グィッ

マヤ「どうせ抵抗しても無駄なんでしょ⁉︎ どうする気⁉︎ ……私に誘導させる気なの? そんな屈辱。どこまで私を……」スッ

シンジ「……っ? あ、あれ、急に身体の力が」

マヤ「(もっと、もっと、はやく。焦らさないで」

シンジ「(し、しまった。アダムの力を使いすぎた。身体に負担が)」クテ

マヤ「シンジくん……? なに? まさか、私に上に乗れって?」

シンジ「いっ、言ってなっ!」

マヤ「どこまでもひどい……。私、はじめてなのよ? 本当に中学生? この、どS」

シンジ「(口がうまく、まわらない)」

マヤ「し、仕方なくよ。いいわ、私、自分を守るために、やる」

シンジ「(……? 守るため? 正気に戻ったのか?)」ゴロン

マヤ「そうやって、見上げて、私の反応を楽しむんでしょう?」

シンジ「(も、戻ってない! 絶対、戻ってない!)」


449以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします2017/09/13(水) 00:51:49.63Gx8ClO3co (1/1)

(思ってたんと違わない…)


450 ◆y7//w4A.QY2017/09/13(水) 01:12:21.32xQjA2YmQ0 (3/22)

マヤ「んっ」ヌチ

シンジ「(本当にはいっちゃ……! さ、さきっぽが)」

マヤ「こ、こわい、こわいよぉ」ポロポロ

シンジ「や、やら……!」

マヤ「あっ、い、いたっ」ヌチュ

シンジ「(くそっ、やっぱり呂律がうまくまわらない!)」

マヤ「んっ……あっ、いつっ、あ、あぁ」ググッ

シンジ「(動け、動け、腕を動かしてマヤさんをどけないと……!)」ググッ

マヤ「あっ! し、シンジ、くん? なにして、足」

シンジ「(よ、よし、もうちょっと)」

マヤ「だめ! 足が踏ん張れなくなる! やめて! ま、まさか、はやくしろって⁉︎」

シンジ「(違うよ!)」

マヤ「きゃっ⁉︎」ツルッ ブチュン

シンジ「……っ!」

マヤ「か、かはっ!」プルプル

シンジ「(え、う、うそだろ)」

マヤ「(は、はいっちゃった)」

シンジ「(女の人の中って、こんな……!)」ピクッ

マヤ「う、動かないでっ!」グィッ

マヤ「きゃんっ! う、うごっいちゃ、くっ、いたっ」

シンジ「(は、はやく抜かないと)」

マヤ「言っても無駄なのね。動けばいいの……? さっさとっ、だして、終わりにっしてっ」ヌチュヌチュ

シンジ「うっ、はぁっはあっ」

マヤ「(やっぱり、凄く痛い! お腹の中にはいってるのがわかる。私、あんなに嫌だった男をくわえこんで)」

シンジ「ま、マヤっ」

マヤ「はぁっはぁっ、んっ、気持ちよく、なんかっ、ないっ」

シンジ「腰、ふり、すぎ」

マヤ「(こんなに、つらい……あれ? でも、なんかフワフワしてきたような。シンジくんのおちんちんの形がよくわかって……)」

シンジ「ぐぅ」

マヤ「はぁっはぁっ、満足? 私の膣にいれて。これが見たかったんじゃないの」

シンジ「(中がウネウネしてて……締まる)」

マヤ「(き、気持ちいっ。……気持ちいい? 指で触ってるのとはまた、全然違う、なにこれ。こんなの、知らない)」

シンジ「(動けぇぇっ!)」

マヤ「あっ、やめっ、下からっ突き上げないでっ! あっんっ、んっんっんっ」

シンジ「(そ、そうじゃないって!)」

マヤ「(入り口、感じて。こ、この子。私を、女にしようとしてる? シンジくんのおちんちんの形を覚えさせようとしてるの?)」

シンジ「ぐっ!」

マヤ「だめ、だめ。今、イかされたら。だめよ、戻れなくなっちゃう!」

シンジ「(そんな、押しつけちゃ)」

マヤ「は、激しくしちゃ……!」

シンジ「(してるのはマヤさんですよ!)」

マヤ「いく、いく、いっちゃうぅぅぅ~~」