1以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:02:05.2390oVfUlV0 (1/13)

今日は日曜日。
仕事も休みなので久方ぶりに本を読もうと思ったのだが、あいにく今ある手待ちの本は全部読みきってしまっていた。
名作をもう一度読み直してみてもよいのだが、なんとなく今日は新しい話が読みたい気分なので、街へと出かけてみた。
雲もなく、綺麗に晴れた青空が気持ちよかった。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1494428524



2以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:02:38.8890oVfUlV0 (2/13)

「……新刊、出ていたのか」

アイドルの活動の裏で、好みの作家が新刊を出していた。

「いい買い物をしたな」

思わず頬が緩む。
街に出てきてよかった。
しかもなかなかのボリュームだ、一週間は楽しめるだろう。


3以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:03:07.6790oVfUlV0 (3/13)

「……あれは?」

車道を挟んで反対側に見覚えのある姿を見つけた。
鷺沢文香、その人だ。
以前「本」という共通点で番組に呼ばれ、対談したのだが、本の趣味が合い、また同い年ということもあって親しくさせてもらっていた。
そしてその隣には、男性の姿が。
見知らぬ顔ではなかった。
鷺沢文香のプロデューサーの彼であった。
おれが見たこともない笑顔を、彼に向けているのが無性に悔しくて思わず走って、その場を離れてしまった。



4以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:03:49.7890oVfUlV0 (4/13)

気持ちを表す言葉なら千だって万だって思いついた。
この感情の正体なんて考えずともすぐ分かる。だというのに。
「お前の好きな女はお前を好いてはいない」
そんな剥き出しの言葉と感情がおれを殴りつけてくる。
そうなのかもしれないと思った。
そうであってほしくないと願った。
しかし現実はそうではなかった。
鷺沢文香が好きなのは、九十九一希ではなく、彼女のプロデューサー。
ただの事実の確認。
どうして、あの人なのだろうか。
どうして、おれは彼女を好きになってしまったんだろうか。


5以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:04:26.3890oVfUlV0 (5/13)

家にまっすぐ帰ろうとしたが、そちらに歩みは進まず、おれはなぜか事務所に向かっていた。
事務所にはプロデューサーがいた。
「せっかくのお休みなのに仕事熱心だね」と言うのをかわし、事務所のソファに座る。
事務所で買った本を読めば立ち直れる、と思った。思っただけだったが。

文章は読んでいるはずなのに、物語が入ってこない。
ページをめくっても心が少しも震えない。


6以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:06:14.3590oVfUlV0 (6/13)

「お茶、飲みます?」
お盆に湯のみを二つ乗っけて、プロデューサーがおれにそう尋ねてきた。
どうせ最初から読み直すことになるだろうから、栞は挟まずに本を閉じ、おれはプロデューサーの誘いに応じた。

「何かありましたか?」
お茶を一口啜り、プロデューサーはそう聞いてきた。
心配されるほど暗い顔をしていたのか、おれは。


7以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:06:43.7990oVfUlV0 (7/13)

「……恋の悩み、かな」

どうしてそれを、と言おうとしたのが顔に出たのだろう。九十九くんみたいな歳の子が悩むのは、だいたい友情か恋愛だからね、とおれが聞く前に答えられた。
観念して、おれは事の顛末を話した。

「まぁアイドルに恋愛はご法度っていう建前は置いといて……」

少し小声で、キョロキョロと近くに社長の姿が無いのを確認して、プロデューサーはそう切り出した。


8以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:07:34.4590oVfUlV0 (8/13)

「好きだったの?」

「……そう言われると、自信がないな。ただ鷺沢さんが見たことない顔で楽しそうだったのが、」

「ショックだったんだ」

「あぁ。……その時に感じたのが嫉妬なら、おれが鷺沢さんに抱いていたのは『恋』だったんじゃないかと思う」

「そっか。……いっそ告白できてたほうが楽だったのかもね」


9以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:08:50.6790oVfUlV0 (9/13)

ポツリと呟くようにプロデューサーはそう言った。
恐らくそうだろうとおれも思う。
勝負して負けたならまだ気持ちに納得がいったことだろう。
ただおれはその勝負の土俵に立つことさえ出来なかった。
告白もしないうちに振られて、でもその想いが無くなるわけでもなくて。
苦しいのに、何も出来ない。それでも恋しくてたまらない。
かと言って、今鷺沢さんに伝えるというのも違う。
彼女の表示を見れば、そこにおれが入り込む余地など無いことなど明白だ。
振られるために、自分がスッキリするために彼女に辛い思いはさせたくはない。
前にも後ろにも行けない。
そして、袋小路。
だから辛いんだ。


10以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:10:06.0490oVfUlV0 (10/13)

「かもな……。プロデューサーもそういう経験あるのか」

「どうだと思う?」

「あったんじゃないかなって、……思う」

「正解。ねぇ、九十九さん?」

「うん?」

「泣きたいくらい、叫びたいならそうしたっていいんですよ。……私はあなたの傷は癒せないし、埋められない。でもあなたの声だけは聞いてあげられますから」

プロデューサーはそう言い、微笑んだ。



11以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:10:34.4990oVfUlV0 (11/13)

泣いて叫んで、自分の気持ちを吐き出して。
どうにか忘れて、忘れたようなフリをしたよ。
自嘲気味にそう言ってプロデューサーは笑った。
おれもそれに倣うことにした。


12以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:11:39.4790oVfUlV0 (12/13)

初めてかと思うほど、大声で泣いた。
泣いて、泣いて、涙が枯れ果てるほど泣いて。
そうしたら少しスッキリした。
きっとこの傷はいつか癒えるだろう。
何でもないことのように振る舞えるだろう。
嗚呼。
なんで人は、好きになってくれる人だけを、……好きになれないんだろうか。


13以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 00:12:51.2290oVfUlV0 (13/13)

お読みいただきまして、ありがとうございました。


14以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 01:14:23.62jedjVcIuo (1/1)

つまんね二度と書くなよガイジ


15以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 01:56:13.13I1krFLVNO (1/1)

これは擁護のしようもないくらい酷い作品だった


16以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 09:41:18.91gbZTzlX7O (1/1)

ちょっと>>13が見えないなあ


17以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 10:24:09.43EhdA40Rvo (1/1)

おつ
嫌いじゃないな、こういうの


18以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/11(木) 19:52:43.718pAH3+fxO (1/1)

興味深い邂逅だった
狭量な言葉に自分のやりたいことを曲げることはないのでこれからも期待しています


19以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/12(金) 05:11:15.652fuPZThkO (1/1)

九十九さんならではってものがないから
よく知らないのに踏み台にした感じ


20以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2017/05/12(金) 09:52:14.97XxKLpIFLO (1/1)

越境NL書くやつっていつもこんな感じだね
どっちかがどっちかの踏み台になってageられる
片方にわかなんだから触らないでほしいわ