838 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/08(火) 22:58:45.65/x/Tepvw0 (11/14)

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+→B++ NEW
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++→A NEW
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)


839 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/08(火) 23:00:14.91/x/Tepvw0 (12/14)

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]←NEW

【支援Bの組み合わせ】

・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773]


840 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/08(火) 23:01:28.80/x/Tepvw0 (13/14)

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780]


841 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/08(火) 23:05:00.47/x/Tepvw0 (14/14)

 今日はここまでで。
 次回、戦闘準備パートです。
 ここは風の村、風神弓の威力も上がる……気がする。


842以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/12(土) 11:21:10.20T5nVrsjOo (1/1)

上がればいいのになあ


843以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/12(土) 15:05:55.55g5q6VdLDO (1/1)

弓の前にブリュンヒルデをなんとかしてさしあげろ


844 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 21:48:05.89dHa9Rfn80 (1/14)

◇◇◇◇◇◇
―白夜・風の部族村『収容塔』―

フウガ「……」

 カッ カッ カッ

フウガ「む……」

タクミ「……あんたがこの村の長、なんだね」

フウガ「ほぅ、スメラギの息子か。こんなところに足を運んでくるとは思っていなかったぞ」

タクミ「父さんを知ってるんだね。そんな人間が暗夜に味方をするなんてね……」

フウガ「ふっ、暗夜に味方か。確かに、この状況を見ればそう思うのも仕方ないだろう、それがここに攻撃を加えてきた者たちの信じる現実なのだからな」

タクミ「否定はしないんだね……」

フウガ「否定する必要があるのか?」

タクミ「あんたたちはなにを信じてる。誰を信じているっていうんだ?」

フウガ「……少なくとも白夜では無いと答えておこう。本題に入れ、己のために建前を用意する必要などないのだからな」

タクミ「……そうかい」

フウガ「……」

タクミ「僕たちの戦列に加われ。そうすれば今回の件、すべてを水に流してあげるよ」


845 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 21:55:01.13dHa9Rfn80 (2/14)

フウガ「戦列か、それはなにに対する戦列だ?」

タクミ「決まってる、白夜を裏切ったあいつを殺すための戦列だよ。あんたたちが加わってくれるなら、僕はすぐにここを出てイズモに向かえるんだ。あんたたちも罰せられることはなくなる、お互い悪い話じゃないと思うけど?」

フウガ「なるほど、捕虜の相手などしている暇はない。そう言いたいようだな」

タクミ「……」

フウガ「しかし交渉に来たにしては、穏やかではない。その手に握りしめているものがその証だろう。そう思わないか?」

タクミ「ああ、交渉に来たわけじゃないからね。僕は命令をしに来ただけだ。従わないなら……」

フウガ「……」

タクミ「わかるよね、この状態ならどう答えるのが正解なのかくらいさ……」

フウガ「ふっ、命をいつでも奪える立場か。まるで神にでもなったような気分だろう。スメラギの息子とは思えぬ、低俗さだな」

タクミ「……早くしてくれないかな。こっちは急いでるんだ、早くあいつを殺さないといけないんだからね……」

フウガ「そうか。ならば貴重な時間を使わせたことは詫びなくてはならないな」

タクミ「?」

フウガ「お前の提案に乗るつもりはない。ここにいる者たちは私を含め、今の白夜をよく思っていない。故にこの力を貸すことは無い」

タクミ「……従わない、そういうことだね?」

フウガ「ああ」

 ガチャガチャチャ ガキチャコンッ

 ギィイイイッ


846 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 22:04:23.37dHa9Rfn80 (3/14)

フウガ「……」

部族民「フウガ様……」

フウガ「このようなことに付き合わせる形となってしまったな。もしも、この中に戦列に加わりたいというものがいるなら、拒みはしないが……」

部族民「そんな冗談は酒を飲んでも言うつもりはありませんよ」

部族民「そうです。ここに残って戦ったのは私たちの誇りのため、あの者たちに力を貸すためではありません。むしろ、フウガ様の言葉に安心しているくらいですから。フウガ様は間違ってなどおりません……」

フウガ「……すまぬ」

 カツン カツン カツン ジリッ

タクミ「馬鹿だね。こんなところで意地を張って死ぬなんて、素直に従えば命を繋げられたのにさ」

フウガ「命を繋いだところで、あとは操られるだけの人生だろう。悪意という名の連鎖に飲まれ、気付けば何をしてるかもわからんそんな生物になり果てる、そんなものに喰わせる力はない。お前が意地と蔑んだ、私達の誇りを喰らって身を満たすのだな……」

タクミ「……安心して一撃で仕留めてやるからさ、時間が無いからね。少しはありがたく――」

フウガ「ご託を並べて何になる、さっさとやるがいい。それとも……まだ気が変わってくれかもしれないなどと甘いことを考えているのならば、見当違いもいいところだ」

タクミ「なに?」

フウガ「お前が屈したことがすべての人間に通用すると思わないことだ……。それがたとえ死の間際であろうとも、屈しない者は最後まで屈指はしないのだからな」

タクミ「!!!!」



 ドクン

 ドクン ドクン


タクミ(こいつらを殺せば、すぐにでもあいつがいるイズモにいける、いけるんだ)

 ドクン ドクン ドクン

タクミ(捕虜を殺せばここは放棄しても問題ない、もう監視するべき相手もいなくなる。ならやれ、今すぐ、こいつらの首を飛ばせ、飛ばせ……)

 ドクンドクンドクンドクン

(飛ばすのだ、あの女を殺しに行くために……、こいつらをすべて殺せばすぐにでも向かうことができる)

(さぁ、殺せ……殺せ……)

 殺せ!!!!


847 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 22:11:52.15dHa9Rfn80 (4/14)

タクミ「っ!!!」グッ

 ガタンッ!!!

タクミ「!」

 タタタタッ!

白夜兵「タクミ王子様、こちらにおられましたか!」

タクミ「なんだい、今僕は――」

白夜兵「それが……暗夜軍と思われる一団が現れました!」

タクミ「っ、なんだって!? イズモからここまで突破されたって言うのか!?」

白夜兵「わかりません。おかしなことに撤退してきた兵もいない状態で、私たちも何が何だか分からず困惑している限りで――」

タクミ(どういうことだ。イズモからの配送兵がいないということは、どこか別の道を使ってやってきたってこと? 明らかに数が劣勢なのにこんな場所に現れるなんて、そんなことをする奴が……)

タクミ「……まさか」

白夜兵「え?」

タクミ「……そうだよ、こんなことをしてくるのはあいつしかいない、あの裏切り者しか……」

タクミ(まさか、向こうから来てくれるなんてね……)

白夜兵「タクミ様?」

タクミ「案内するんだ、早く!」

白夜兵「はい、こちらへ! オボロ様、ヒナタ様はすでに出ておられます!」

 タタタタタタタッ



848 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 22:17:51.68dHa9Rfn80 (5/14)

~~~~~~~~~~~~~~~~

オボロ「忌々しいわね。こっちを睨んでばかりで、攻めてくる気配もないわ」

ヒナタ「そうだな」

オボロ「それにしても、一体どこから湧いて出たのかしらねぇ」

ヒナタ「わからねえ。けど……それは関係ねえ。向かってきたなら相手するだけだ」

オボロ「ええ、そうね……」

ヒナタ「それにしても全く動かねえ。様子を窺ってるだけじゃねえか?」

オボロ「そうね、流石におかしいわ……」

 タタタタタッ

タクミ「オボロ、ヒナタ」

ヒナタ「待ってたぜ、タクミ様」

オボロ「タクミ様、お待ちしておりました」

タクミ「それで、状況は?」

ヒナタ「さっきからずっと睨めっこでさ。あいつら、全く攻めてくる気配がねえから困ってる」

オボロ「数もそれほど多くないみたいです」

タクミ「望遠鏡は?」

白夜兵「弓に付けてあるものでしたら、すぐに御貸しできますが」

タクミ「それでいい」

 カチャッ カコンッ

白夜兵「こちらです、どうぞ」


849 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 22:23:57.78dHa9Rfn80 (6/14)

タクミ「……」

タクミ(たしかに明らかに少ない。正面から戦おうとしてるには明らかに戦力が不足してる)

タクミ(仮にイズモでの戦闘に白夜が敗走していたら、先に知らせが届くはずだし、今ここから見えてる敵の戦力はそれを跳ね返すほどにあるとは思えない。先に敗走兵が来ることはないんだ。なぜならあいつは裏を突いてここまでやってきたんだから。元からそんな奴だ、一筋縄じゃいかない。だからこそ、考えそうな次の一手は……)

オボロ「タクミ様?」

タクミ「オボロ、僕たちの兵はほとんどここに来ているみたいだね」

オボロ「はい」

ヒナタ「すぐに攻めてくるかと思って冷や冷やしたからな。正直なところ、拍子抜けっていうか……」

タクミ「……今正面の防備は固い、そういうことになるね」

タクミ(だとしたら……)

ヒナタ「で、タクミ様。どうすんだ? このまま睨めっこなんて――」

タクミ「わかってるよ。オボロ、全部隊に戦闘準備に入るように伝えてくれるかい」

オボロ「わかりました。では、戦線を上げ――」

タクミ「その必要はない。必要最低限の人数だけここに……、残りは合図とともに動ける準備をしておいてくれないか」

オボロ「え? それはどういうことですか、タクミ様」

タクミ「今回はこっちが奴の裏をかく……そのつもりだからだよ」



850 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 22:34:23.38dHa9Rfn80 (7/14)

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『修練場』―

 ガッ ガッ

 スタッ

カムイ「崖を登るような場所にあるなんてすごいですね、この修練場。私も城塞での修練はよく屋上で行っていましたけど、この行き来の方法ならすぐにでも力が付きそうです」

アクア「普通はこんな行き方なんてしないはずよ」

カムイ「それもそうですね。アクアさん、大丈夫ですか?」」

アクア「大丈夫よ、そんなに力が弱いわけじゃないし。ちゃんと、カミラが先行して縄を付けてくれたから思いのほか楽よ」

カムイ「それもそうですね……。それにしても、見事に誰もいないように感じますが……」

アクア「正面からの総攻撃を想定して、ほとんどの兵が動いたのね。見渡す限り、人影はないようだから……」

サクラ「うっ、うう……はうっ」

アクア「サクラ、手を」

サクラ「は、はい。ありがとうございます、アクア姉様」

アクア「……」

サクラ「アクア姉様?」

アクア「タクミとの戦いは避けられないはずよ……。肉親と戦うことになるわ」

サクラ「……確かにそれは怖いです。でも、私もカムイ姉様と一緒に戦うって決めたんです。私だけ事の成行きを見ているわけにはいきません。それに、もしもタクミ兄様が間違ったことに手を貸そうとしているのなら、それを私は止めたいんです」

アクア「……そう、強くなったのねサクラは」

サクラ「私もそう思います」

カムイ「サクラさん……」

サクラ「そんな心配そうな顔をしないでください、カムイ姉様。私も共に戦うって決めたんです」

カムイ「はい、頼りにしています」


851 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 22:45:06.54dHa9Rfn80 (8/14)

アクア「少し移動しましょう。他のみんなも上り終わる頃合いになるわ」

カムイ「そのようですね、サクラさんもこちらへ――」

???「サクラから離れろ、この裏切り者!」

 キリキリキリ パシュッ

カムイ「!」サッ

サクラ「カムイ姉様!」

アクア「カムイ!」

カムイ「……大丈夫です。というよりも、今の攻撃当てるつもりはなかったようです」

???「……」

カムイ「ですが、ここにあなたがいるということは、そういうことですよね……」

 ザッ

カムイ「タクミさん……」

タクミ「出し抜けると思っていたみたいだけど、その手には乗らないよ。カムイ……」

カムイ「何ヶ月ぶりでしょうか、マカラスであったのが何年も前のように感じます」

タクミ「馴れ馴れしく話しかけないでくれないかな。裏切り者の声なんて断末魔だけで十分なんだよ……」チャキッ

アクア「タクミ!」

タクミ「あんたもだ、アクア。元から暗夜の人間だったあんたに名前でなんて呼ばれたくもない」

アクア「っ……」


852 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 22:52:30.94dHa9Rfn80 (9/14)

サクラ「タクミ兄様、武器収めてください! カムイ姉様たちと争う必要なんてないんです!」

タクミ「サクラ……そう言うようにカムイに脅されてるんでしょ。テンジン砦でサクラを盾に降伏を迫ったって聞いてる。親族である僕に対してなら有効かもしれないからそうさせられてる。そうだろ、カムイ!」

カムイ「そんな事をするつもりはありませんよ。私はサクラさんに強要などしていません……」

タクミ「なら、その証拠を見せてくれるかな?」

カムイ「証拠……ですか?」

タクミ「ああ、サクラをこちらに返してもらう。裏切り者の傍に置いておきたくなんてないからね」

アクア「……カムイ」

カムイ「……」

サクラ「カムイ姉様」

カムイ「……わかりました。お任せします」

サクラ「はい……」

 カツンカツン……

サクラ「……」

タクミ「さぁサクラ、一緒に帰ろう。もうサクラが戦う必要なんてない、僕がみんなを守って見せる。だから戻ろう白夜王国に、みんなが待ってる場所に……」スッ

サクラ「……」

タクミ「サクラ?」

サクラ「タクミ兄様……タクミ兄様は今の白夜王国に何も疑問を抱かないんですか……」


853 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 22:57:58.82dHa9Rfn80 (10/14)

サクラ「タクミ兄様はテンジン砦で起きたことを知りません。私達をカムイ姉様たちは白夜に帰すためにここまで連れてきてくれた。なのに、それをあそこにいる方たちは利用しようしたんです。そんな場所に私は戻れません」

タクミ「何を言ってるんだサクラ! サクラは正真正銘の白夜王国の王女なんだよ!? なのに、なんで戻れないなんていうんだ!」

サクラ「……今の白夜王国は私が信じてきた白夜王国じゃないから。ずっと、ずっと白夜で生きてきました。だから私は帰れないんです」

タクミ「サクラが帰ってくれば、僕たち王族四人が揃う。みんな、みんなが僕たちのことをもう一度認めてくれる……認めてくれるかもしれないんだ!」

サクラ「タクミ兄様……」

タクミ「サクラ、こっちに戻ってくるんだ。頼む、僕が僕が守って見せるから……みんなをみんなを……」

サクラ「それは、誰から守るんですか……」

タクミ「え……」

サクラ「タクミ兄様は誰から、ヒノカ姉様をリョウマ兄様を……そして私を守りたいんですか……」

タクミ「なんで、そんなことを聞くんだ。サクラはそんなことをもう気にしなくても――」

サクラ「もう、目を逸らすことはできないんです。私をここまで守ってきてくれた人たちや、死んでしまった人たちのためにも。だから、私は今の白夜へ戻ることはできません、タクミ兄様」

タクミ「……」

サクラ「私は私を守ってきてくれた人たちを信じてます。だから、もう戻れないんです。タクミ兄様……」

タクミ「サクラ……」


854 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 23:01:11.52dHa9Rfn80 (11/14)

 ドクンッ

タクミ「あんたが……」

 ドクン!

タクミ「あんたが、誑かしたんだ……」

 チャキッ シュォン

カムイ「そうかもしれませんね。でも、だとしたらどうするんですか?」

タクミ「あんたに死んでもらうだけだ」

アクア「タクミ……」

タクミ「あんたが死ねば、丸く収まるんだ。閉されているリョウマ兄さんも、おかしくなったヒノカ姉さんも、そうやって騙されてるサクラも、平和だった白夜も、全部が戻ってくるんだ」

サクラ「タクミ兄様……」

タクミ「カムイ、あんたを殺して証明してみせる。あんたがいなければ全てが上手く行くっていうことを、あんたが死ねばすべて元に戻るってことも、全部、証明してやる!!」

 バシュンッ

 ヒュオオオオオオオオオオッ

サクラ「これは鏑矢の音……」

アクア「……さすがにタクミがここにいるとなると、そういうことよね……」

カムイ「ええ、そのようです」

 ガタンッ

 ダダダダダダッ ガチャリッ

 ザッ


855 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 23:10:35.83dHa9Rfn80 (12/14)

白夜弓兵「……」カチャコッ

オボロ「……」チャキッ

ヒナタ「……」チャキッ

サクラ「こんなにいっぱい……」

アクア「見たところ、ほぼすべてを送り込んできたみたい。私たちの動き完全に読まれていたようね」

カムイ「そうみたいですね」

タクミ「ははっ。どうせ、僕なんかに動きを見破られるわけもないって思っていたんだろうけど、それは大きな間違いだよ。正面に意識を向けさせて、僕たちを背後から襲う。そのつもりだったんだよね?」

カムイ「……」

タクミ「ふふっ、図星だから何も言い返せないよね。突然敵が現れたから誰かと思ったけど、こんなことするのはあんたしかいないってすぐにそう思ったよ。どうだい、見下してた相手にこうやって裏をかかれるのはさ?」

カムイ「……だとしてもこのまま蹂躙されるつもりはありません」チャキッ

カムイ「全員、準備してください!」


 ドクン
 ドクン……

タクミ(あんたに悩まされてきた日々を今日で終わりにできる……。あんたを殺せばきっと――。この僕を忌々しく傷め続ける痛みからも解放される……)

 ドクン……

(殺せば、すべて戻るんだから……ね)



856 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 23:18:09.15dHa9Rfn80 (13/14)

今日はここまでで
 
 必中の弓についてるあれは望遠鏡なのか、それともサイトなのか……個人的な望遠鏡だと思ってる

 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 アタックチームを作ります。
 各キャラクターのジョブ一覧

―対の存在―
・アクア(歌姫)

―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)

―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)

 次から安価です。


857 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/18(金) 23:24:22.66dHa9Rfn80 (14/14)

◇◆◇◆◇
先頭メンバーを決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

・カムイと一緒に戦うメンバー
 
>>858
>>859
>>860

・オボロが率いる部隊と戦うメンバー

>>861
>>862
>>863

・ヒナタが率いる部隊と戦うメンバー

>>864
>>865
>>866

 一度選ばれたキャラクターが書きこまれた場合、次の書き込みが適用になります。
 少々人数が多いですが、よろしくお願いいたします。


858以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/18(金) 23:29:16.27X67nVQGh0 (1/1)

乙、いよいよタクミ城かー…タクミもオボロもヒナタもどうなるんだろうか

安価はギュンターでお願いします


859以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/18(金) 23:43:15.39V+uOW8Cto (1/1)

タクミなんざ怖かねぇ!
多分近くにいる叫び兵法者と槍聖×2がやばそう
エリーゼ


860以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/19(土) 00:02:51.89BwLWxrZoo (1/2)

ルーナ


861以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/19(土) 00:03:58.49Iy4myjxso (1/1)

タクミがこれならヒノカ姉さんはもっと怖い
サクラ


862以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/19(土) 00:09:20.020VrslFTco (1/1)

オロチとかの結末を考えるとなあ
オボロと白夜隊を当てたいのでここはツバキ


863以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/19(土) 00:19:31.627IY0W0rmo (1/1)

じゃあカザハナ
なんか躊躇してくれそう


864以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/19(土) 00:46:13.43WH4Xgz1v0 (1/1)

サクラとツバキとカザハナで白夜組がトリプってしまった
うーんじゃあ…
リンカ


865以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/19(土) 08:07:29.86HeXO4KMDO (1/1)

モズメさんで。白夜ゆかり縛りですか(笑)


866以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/19(土) 08:09:24.42BwLWxrZoo (2/2)

じゃあアクア
相手も胃が痛そう


867以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/19(土) 20:48:19.755Mxans4DO (1/1)

果たして戦巫女バトラーメイドとかいう回復役の集いは、魔王オボロの攻撃を耐えきる事ができるでしょうか?
アクア(ゴリラ)、リンカ(見た目がゴリラ)、モズメ(弓聖超火力ゴリラ)の可愛い女子3人に相手してもらえるオウヨ


868 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 21:49:07.73TjNZAENy0 (1/15)

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『修練場』―

キリキリキリキリキリ……

タクミ「放て!!!」

白夜弓兵たち「っ!!!」

 パシュ!

 ヒュンヒュン

暗夜重装甲兵隊長「防衛陣を組む、いそげ!!!」

 ザッ ガタガタンッ!!!

 キィン カシュンッ

カムイ「皆さん!」

暗夜重装甲兵隊長「ふぅ、どうにか間に合いました。カムイ様、側面の攻撃はわれわれが受け切りますので下がってください」

カムイ「はい、わかりました。くっ、敵の攻撃でこちらも離れ離れになってしまったようですね」

アクア「そのようね。ここにいるのはこれだけ、向こうは予想通りあなたを狙っているみたいよ」

カムイ「ええ、ある意味予想通りですけど、ここまで散り散りにされるとは思いませんでした」


869 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 21:59:22.84TjNZAENy0 (2/15)

ギュンター「カムイ様、如何いたしますか」

カムイ「ギュンターさんは私と一緒に来てください。他の方は――」

ルーナ「あたしもいるわよ。このまま敵陣に乗り込むでしょ?」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、あたしも付いてくよ!」

カムイ「エリーゼさん、ルーナさん……わかりました。槍兵の方々はルーナさんとエリーゼさんの護衛をお願いします。先頭は私とギュンターさんが務めますので、指示があり次第出られるようにお願いします」

ルーナ「わかったわ。それじゃ、あたしについて来てくるのよ!」

暗夜槍兵「はい、私達がお供いたします」

ルーナ「ふふっ、頼りにして――」

暗夜槍兵「エリーゼ王女様!」

エリーゼ「うん、よろしくね! みんなも気を付けてね……」

暗夜槍兵「はい!」

ルーナ「ってちょっと、あたしにも付いて来なさいよ!」


870 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 22:15:32.52TjNZAENy0 (3/15)

カムイ「それで、敵はどう動いているんですか?」

ギュンター「包囲するために向かっているという状況、敵の包囲網の完成を阻止しつつ、敵の中枢へと向かうのが得策かと」

カムイ「ですね。私たちはこのままタクミさんを目指します。重装甲兵の皆さんは状況を見て移動しつつ敵の弓攻撃を引きつけてください」

暗夜重装甲兵「わかりました。全員、武器は収納し盾を支えるのに全力を尽くせ! 第一班は私と共にカムイ様に随伴、残りは後方の弓を抑えつつ後続を援護しろ!」

カザハナ「カムイ王女、あたしたちも一緒について行くからね」

カムイ「カザハナさん、それにツバキさんも……」

ツバキ「うんうん、それにサクラ様をお守りするんだったら、最適な形だと思うからねー」

サクラ「カムイ姉様、私も付いていきます」

カムイ「はい、わかりました。離れないようにしてくださいね」

サクラ「はい!」


871 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 22:26:39.44TjNZAENy0 (4/15)

リンカ「流石に王族直属の部隊だ、攻撃がすさまじいな……。だがもう少し距離を取れば攻撃は届かなくなる……」

アクア「ねぇ、リンカ。この高さをしばらくの間、飛んでいることはできる?」

リンカ「ああ、それくらいならどうにかできる、何かあるなら力を貸すぞ」

アクア「ありがとう。すぐ先にある合流地点に向かいたいから協力して」

リンカ「わかった」

アクア「それとモズメ、ちょっといいかしら?」

モズメ「なんや、アクア様」

アクア「合図を出したら援護をお願いできる? その相手を殺さないようにして、かなり難しいとは思うけど出来るかしら?」

モズメ「出来るかわからへんけど、援護の件まかせとき」

アクア「そういうわけだから、リンカすぐに準備して、あの合流地点へ先回りするから」

リンカ「ああ、わかった」

 バサバサッ

アクア「カムイ、先に行くわ」

カムイ「え、アクアさん?」

アクア「すでに動いているのがいるから、先に行って足止めして来る。リンカ」

リンカ「ああ、行くぞ」

モズメ「カムイ様、先に失礼するで」

 タタタタタッ

カムイ「私たちも行きますよ」


872 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 22:33:27.08TjNZAENy0 (5/15)

~~~~~~~~~~~~~

 タタタタタッ

白夜剣聖部隊「いそげ!!! タクミ王子様の部隊が敵の動きを抑えている間に包囲を完成させる!」

ヒナタ「ああ、一気に斬り込んであいつらの足を止める!」

ヒナタ(この先の道を抑えれば、あいつらが進むのは難しくなるはず。そうすれば――)

白夜剣聖「よし、奴らよりも先に――」

 バサッ バサッ……

ヒナタ「! あぶねえ、下がれ!」

 ダッ

白夜剣聖「!?」

リンカ「はあああっ!!!」ブンッ

 ガキィン

白夜剣聖「ぐぉ、不意を突かれたが、踏み込みが足りん! うおおお――」

 ダッ

アクア「確かにリンカのは踏み込みが足りないわ。でも、私のはどうかしら?」スタッ

 グッ ドゴンッ

白夜剣聖「ぐおおおおあああああっ」ドサッ ドタンッ

アクア「ふぅ。リンカ、ありがとう」

リンカ「なに気にするな」


873 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 22:42:13.77TjNZAENy0 (6/15)

ヒナタ「ちっ、下を飛んできたのかよ!」

白夜剣聖「ええい、この裏切り者どもが!!!」ダッ

ヒナタ「まて!」

 パシュッ
 ザシュッ

白夜剣聖「ぐあああっ、あ、足が……いてええっ」ドサッ

モズメ「……案外簡単に当たるもんやな。いかんいかん、牽制にもう三射……えいやっ!」

 パシュパシュシュ

ヒナタ「はああっ!!!」
 
 キィン キィン キィン

モズメ「全部落とされてもうた……」

アクア「別に構わないわ。相手の足は止められたからね」

 ダダダダダッ

カムイ「アクアさん!」

アクア「カムイ、ここは私達に任せて進んで頂戴。タクミの場所まではかなり大回りしないといけないし、他の部隊が道を抑え始めているわ」

カムイ「ですが……」

リンカ「大丈夫だ、矢もちゃんと防いでもらってる。ここで全員、抑えてやるさ。だから心配しなくていい」

モズメ「だから心配せんでええよ。あたいたち負けるつもりはあらへんし、カムイ様にだけできることがあるはずやって思うんよ」

アクア「だからここは任せて、先に行って……」チャキッ

カムイ「……わかりました。ご武運を!」

 タタタタタッ


874 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 22:52:26.36TjNZAENy0 (7/15)

白夜剣聖「ちっ、待て!!!」

モズメ「いかせへんよ!!!」パシュッ

白夜剣聖「!」

 ダッ シュキンッ キィン

ヒナタ「……」

白夜剣聖「ヒ、ヒナタ様」

ヒナタ「さすがにただの女の子ってわけじゃないからな。用心した方がいい。ここまでやって来たってことは精鋭ってことだろうからよ」

白夜剣聖「は、はい。もうしわけありません」

ヒナタ「いいってことよ。それにしてもあのわずかな時間で攻撃するなんてな。さすがにこっちの方が早く動けたと思ったんだけどよ」

アクア「ええ。負けるわけにはいかないもの……」

リンカ「……そういうことだ。マカラスの時以来だな、ヒナタ」

ヒナタ「リンカ……。お前も生きてたんだな」


875以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/22(火) 22:58:41.63y4F/tY6Wo (1/1)

よく考えたらヒナタはモズメがカムイに救出されたとき居たんだよなあ
悲しいなあ


876 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 22:59:02.83TjNZAENy0 (8/15)

リンカ「ああ、カムイに助けてもらった。あいつは何でもかんでも引き入れるそういう奴だからな、それよりもお前もっていうのはおかしな言い方をするな」

ヒナタ「……あの場所で助けられたのはお前だけじゃないんだよな……。スズメや他の奴……少なくともあの時、タクミ様が撤退したときに生きていたのは全員か?」

リンカ「そうかスズメのこと、お前は覚えてるのか。お前が知ったら澄まし顔でも喜んだかもしれないな……」

ヒナタ「……ああ。正直、覚えてなかった方が良かったかもしれねえ。こうして、もともと白夜に属してたあんた達と戦うことになるのに、嫌な重しになっちまったからな」

白夜剣聖「ヒナタ様」

ヒナタ「そんな不安そうな顔すんな。もう、何を守るか決めてんだ」
 
 シャキンッ

ヒナタ「俺はタクミ様の臣下だ。タクミ様のために戦う、目の前にいるのが敵ならそれを斬り伏せる。それがタクミ様を守ることに繋がるだからな……」

アクア「なら、私たちもあなた達を眠らせるだけよ。すごく痛いだろうから……覚悟しなさい」ジャキッ


877 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 23:07:54.29TjNZAENy0 (9/15)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ルーナ「よかったの? アクア様達だけにあれを任せて」

カムイ「後続の重装甲兵の方々もいます。それが間に合えばきっと大丈夫です」

ルーナ「そ、そう……」

カムイ「ふふっ、ルーナさんとアクアさん仲良しだったんですね」

ルーナ「え、そんなわけないし。アクア様、あたしが渡した寝癖直し全然使ってくれないし、この前なんでそれで文句いって――」

エリーゼ「ルーナってアクアおねえちゃんの寝癖の世話するくらい仲良かったんだね」

ルーナ「ちょ、これはその、えっと。そう、ここで倒れたりしたら寝癖直しの効能の話とかできなくなるし!」

カムイ「ふふっ、顔真っ赤ですよ」

ルーナ「ああもう!!!」

ギュンター「無駄話はそこまでです。敵は陣を作り上げているようです」

暗夜槍兵「……弓装備の者はいないようです。それに敵の壁は厚いですが、数自体はそれほど多くはありません。各個撃破出来れるかもしれません」

カムイ(すこし足を止めて対処すれば抜けられるくらいの数ということですか?)

カムイ「ルーナさん、この先を抜けたらどう動けばいいんですか?」

ルーナ「この先を抜けたら右へ一直線、突き当たってまっすぐ行けば、あの王子のいる場所に着ける感じね。数はそれほど多くないから足止めて無力化するのもありだと思うけど……」

カムイ「まっすぐ抜けられるなら、ここで安全に対処をします。ギュンターさん、距離をゆっくり詰めます」

ギュンター「わかりました」

サクラ「回復は私達に任せてください、カザハナさん、ツバキさん準備してください」

カザハナ「わかったよ。ツバキ、あんたも早く準備して」

ツバキ「もうとっくに出来てるよー。カザハナの準備が――」

 ガチャンッ……


878 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 23:15:13.18TjNZAENy0 (10/15)

ツバキ「……ん? この音……」スッ

カザハナ「え、どうしたのツバキ」

 ガタンッ 
 ザザザッ

ツバキ「これはまずいね……」

サクラ「え……あっ!」

 ザッ

オボロ「……全員、行くわよ……。サクラ様以外は皆殺しにして構わないわ」

白夜兵法者「はい」

白夜槍聖「サクラ王女の臣下もですか?」

オボロ「ええ。タクミ様はサクラ様が無事であるなら、それでいいと言っていたわ。ならその通りにことを成すだけよ」

白夜槍聖「わかりました」

カザハナ「あれ、オボロだよね。すごい形相してるけど……」

ツバキ「このままじゃ挟まれる…」

サクラ「カムイ姉様!」

カムイ「サクラさん、どうしました?」

サクラ「後ろから別の部隊が現れて、このままじゃ……」

ギュンター「ここで足を止めては完全に包囲されますぞ」

カムイ「作戦を変更、一点突破を試みます。ギュンターさん、敵の前線列に向かって突貫して道を作ってください!」

ギュンター「仰せのとおりに」

カムイ「ルーナさんと槍兵の方々は私に半数随伴し、ギュンターさんの突撃と合わせえて穴を開けます! 残りの方々は重装甲兵と共に後方の敵を受け止めてください!」

暗夜槍兵「わかりました。エリーゼ王女は後方から支援をお願いします」

エリーゼ「うん、任せて!」

暗夜重装甲兵隊長「サクラ様たちはわれわれより後ろへ下がって、敵の攻撃の届かない範囲に!」

エリーゼ「あっ、カムイおねえちゃん、前にいたのがほそ道に入り込もうとしてる!!!」

カムイ「道が細い分厚みを増すつもりですね。一刻も猶予もありません、ギュンターさん!!!」

ギュンター「お任せを! はぁ!!!!」

 ヒヒーンッ 
 パカラパカラ!


879 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 23:23:04.01TjNZAENy0 (11/15)

白夜兵法者「暗夜の老兵が、今すぐ地獄に送ってやる!!!」

ギュンター「老兵と見くびっているとはな。まだ若いものに負けるつもりはない!!!」

 ギュッ
 
ギュンター「……行くぞ!!!!」

 ヒヒヒーンッ!!!!

 ダッ

白夜兵法者「敵、突っ込んできます!!!」

白夜兵法者「恐れる必要はない!!! 迎撃準備!!!」

ギュンター「甘いっ!!! でやああっ!!!!」ブンッ

 ガシュッ ガキィン!!!!

白夜兵法者「うおおおあっ!!!」ドサッ

カムイ「今です! ルーナさんは右の部隊へ肉薄して道を切り開いてください!!」

ルーナ「任せておいて。いくわよ、はあああっ」ダッ

 ブンッ

白夜兵法者「ちぃ、小癪なまねを!!!」

暗夜槍兵「これでも食らえ!!!」ブンッ 

暗夜槍兵「おらああっ」ブンッ

 ザクッ

白夜兵法者「ぐあああっ、ぐっ、足ばっかりねらいやがってぇえ!!!」

暗夜槍兵「正直、足ばっかり狙ってる俺達って、なんだかすげえ卑怯だよな」

暗夜槍兵「いいんだよこれで!!! 」

白夜兵法者「ちっ、抜けられるぞ!!! 阻止し――」

エリーゼ「そうはさせないよ、フリーズ!!!」シャランッ

サクラ「私たちも、えいっ!」シャランッ

カザハナ「それ!」シャラランッ

ツバキ「少しの間、動かないでねー」シャララランッ

 ナンダ、カラダガウゴカンッ!!!
 クソッ!!!

カムイ「今です、一気にここを抜けます。全員全速前進!」

 タタタタタッ


880 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 23:28:23.82TjNZAENy0 (12/15)

暗夜重装甲兵隊長「よし、われわれも続け!」

暗夜重装甲兵「は――っ!!!」ザッ

 タタタッ

オボロ「逃がさないわよ……」チャキッ

暗夜重装甲兵「うおおおっ!!!」ガサッ
 
オボロ「やあ!!!」ダッ

 ブンッ

 ガギィン

暗夜重装甲兵「ぐっ、なんだこの重さは……」

オボロ「……」ギロッ

暗夜重装甲兵「ひっ……」

オボロ「さっさと死になさいよ。タクミ様の邪魔をする暗夜の蛆虫が――」ギギギギッ ガキィン

暗夜重装甲兵「うあああっ!!!!」

 ガシャンガシャンッ

 ダッ

暗夜重装甲兵隊長「させんぞ!!!」ダッ

 ガキンッ

暗夜重装甲兵「た、隊長!」

暗夜重装甲兵隊長「私に構わずカムイ様と合流しろ! この女、一筋縄ではいかない……」

オボロ「暗夜の人間が白夜の土地を踏んで、生きて帰れると思わないことね……」

暗夜重装甲兵隊長「ぐっ、このままでは」

オボロ「終わりよ。やああっ!!!」ダッ ガギンッ
 
 ブオンッ カランカラン……

暗夜重装甲兵隊長「しま――」

オボロ「死ね……」クルクルクル ザッ

サクラ「させません、七難即滅!!!」シャランッ

暗夜重装甲兵隊長「!!!」シュオンッ

 スカッ

オボロ「……ちっ」

 シュオンッ ドサッ

暗夜重装甲兵隊長「え、さ、サクラ様」

サクラ「行きましょう、皆さんが待っています」

暗夜重装甲兵「隊長はやく!!! フリーズの効果が切れる前に!!!」

暗夜重装甲兵隊長「あ、ああ! 全員、進め!!!!」

 タタタタタッ


881 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 23:39:10.87TjNZAENy0 (13/15)

ギュンター「全員合流しました」

カムイ「……抜けてこのままいけばいいのかもしれませんが――」

ルーナ「間違いなく追いつかれるわね、この状態だと」

ギュンター「どういたしますか。ここで彼らを抑えて無力化しますか?」
 
カムイ「ここにいるのはアクアさん達が相手にしている方々の比ではありません。この量をすべて相手にするとなると……」

カムイ(それにオボロさんの気配は、明らかに他と違うものがあります。ここでどうにかしたほうがいい。しかし、ここで迎撃の構えに入れば、タクミさんは必ず攻撃部隊を差し向けてくる。挟まれたら、もう対処なんてできない――)

カムイ「どうすれば……」

 チョンチョン

カムイ「?」
 
サクラ「あの……カムイ姉様」

カムイ「サクラさん、すみません。大丈夫です、ちゃんとタクミさんの元に――」

サクラ「いいえ、カムイ姉様。ここは私達に任せていただけませんか」

カムイ「サクラさん!?」

サクラ「お願いします。たぶん、私がタクミ兄様の前に辿りついても、なにも届かないと思うんです」

カムイ「ですが、こんな危険なところに」

サクラ「……どこも危険に決まってます。大丈夫です、私には一緒にここまで来てくれたカザハナさんとツバキさんがいます。それに私に今できる最大限のことは、カムイ姉様たちがタクミ兄様の元へと辿りつけるように手助けすることだと思うんです」

カムイ「サクラさん……」


882 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 23:49:09.69TjNZAENy0 (14/15)

サクラ「……」

暗夜重装甲兵隊長「カムイ様、この先には弓兵が多く待機しています。ですが、ここに少なからず壁を作れば、相手の侵攻を送らせられるはずです。私と数名がここに残って侵攻を阻止しますので、残りを連れてお進みください」

カムイ「ですが、あの量を――」

暗夜重装甲兵隊長「われわれは盾になるのが仕事です。それにサクラ様には先ほど助けられました、そのご恩は返さなければいけません。ですから、サクラ様をわれわれに守らせていただけませんか?」

カムイ「……」

暗夜重装甲兵隊長「……」

カムイ「必ず守り通してください、これは命令です」

暗夜重装甲兵隊長「はい。よし、部隊を二つに分ける。私と数名だけでいい。この道は狭い、簡単に壁はできる。サクラ様よろしいですね?」

サクラ「は、はい!」

暗夜重装甲兵隊長「大丈夫です、必ずお守りいたします」

サクラ「……はい」

カザハナ「あたしたちも準備しよ」

ツバキ「そうだねー。できれば、こういうことはあのテンジン砦の奴らにしたかったけどさ…」

カザハナ「つべこべ言わない、もう来るよ!」

カムイ「……」

サクラ「……」コクリッ

カムイ「残りはこのまま進みます。一気にけりを付けます」

 タタタタタタタッ

暗夜重装甲兵隊長「全員、持ち場に付きましたサクラ様」

サクラ「はい……みなさん、ここが正念場です」

 ギュッ

サクラ「誰ひとりとして進ませ手はいけません! 守り切ります!!!」



883 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/22(火) 23:56:52.48TjNZAENy0 (15/15)

◇◇◇◇◇◇

タクミ「オボロの策に気づいたんだね、あいつは抜けたみたいだ」

白夜弓兵「はい。もうすぐ接近してきます。このままでは近距離戦闘になります。いかがしますか?」

タクミ「ううん、大丈夫だよ」

白夜弓兵「え?」

タクミ(感じる……ここの竜脈が、僕にどう使ってほしいのか……)

タクミ(心の中の何かが言ってる、どうすればあいつを殺せるのか……)

タクミ「……全員弓を構えて、あいつを狙うようにね」

白夜弓兵「この距離では届き――」

タクミ「いいから構えて」

白夜弓兵「わ、わかりました」

白夜兵法者「では、我々はここへ至る道を固めます」

タクミ「ああ、お前達が壁だからね。あそこの奴らみたいに抜かれないでよ」

白夜兵法者「はい、全員気合い入れろ!!!」

白夜兵法者「応!!!」ジャキッ

 タタタタタッ

タクミ「全員、構えたね?」

白夜弓兵「はい……」

タクミ(……さぁ、竜脈。僕の願いに応えてくれるよね……?)

 シュオンッ

 フオオオオオ――――

タクミ(風が僕達に味方してくれる。あいつを殺す風を起こしてやる……)チャキッ

 キリキリキリッ

タクミ「…………すぅーーーー」

タクミ(この僕が!!!!)

「射て!!!!!」


884 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/23(水) 00:00:52.348FgIhj6E0 (1/1)

今日はここまで

 オボロの形相を前にしたらジェネラル装備でも逃げ出す自信があります。


885以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/25(金) 17:24:22.0587a9ulNYo (1/1)

おつおつ
あと本当に今更だけど>>843コンマすごいね


886以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/11/26(土) 00:18:30.45YeE0+lmDO (1/1)

風の里マップのギミックの風で吹っ飛ばされるタクミが見える


887 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/28(月) 22:32:06.07MqjMkcaP0 (1/7)

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『修練場』―

 シュオオオオオンッ!!!!

エリーゼ「!!!! カムイおねえちゃん!」

カムイ「これは竜脈!?」

 ヒュオオオッ!!!!

暗夜重装甲兵「いきなり風が強く……!!」

 ヒュンヒュンヒュン

暗夜重装甲兵「全員、盾を構えろ!!! 後ろ気をつけろ、前方から矢が来るぞ!!!」

カムイ「くっ、皆さん盾の影へ!」

 ビュオオオオオオオッ!!!!

 キィンキィン キィン!!!!

 ドスドスッ

暗夜槍兵「ぐええあああっ」ドサッ

暗夜槍兵「あぐっ、うぎゃ、がふっ…」ドサッ

暗夜槍兵「くそっ! エリーゼ王女様とカムイ王女様は我々よりも前にお入りください!」

ギュンター「こちらですカムイ様、エリーゼ様もお早く!」

カムイ「ですが……」

暗夜槍兵「あなたがやられることはあってはなりません。早く!!!」

カムイ「わかりました。エリーゼさんは私よりも内側へ」

エリーゼ「うん、その……」

暗夜槍兵「気にしないでください。それよりももっと内側へ入ってください。よし、後方の連中は頭を低くしておけ、ヘルムを役立てて耐えろ!」

暗夜槍兵たち「おうっ!!!」


888 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/28(月) 22:48:05.71MqjMkcaP0 (2/7)

 ヒュンヒュンヒュン

 ビュオオオオッ

ギュンター「それにしてもこの異常な風は……」

カムイ「この風が巻き起こる直前に竜脈が作動しました。たぶん、タクミさんが竜脈を使ったのでしょう。このまま進み続けるのは難しいですね……」

エリーゼ「でも、このままここで立往生してたら、みんなやられちゃう……」

カムイ「ええ、どうにかしなければいけません。ですがこの風では……」

カムイ(くっ、動こうにも動けません。タクミさんは私達が全員で来てもこうするつもりだったんでしょう。こうして結果的に分散したことで包囲されるのを回避できたというのは皮肉ですね……)

 シュオン……

カムイ(ん?)

 シュオン……

カムイ(この、気配は……)

エリーゼ「あ、カムイおねえちゃん……」

カムイ「エリーゼさんも感じましたか?」

エリーゼ「う、うん。今の竜脈が出来た時のだよね……」

カムイ「ええ、タクミさんが起動させたことによって、他の竜脈も活発化したのかもしれませんが、今すぐにどうにかできるわけではありません……」

エリーゼ「この風、どうにかしないと……」

カムイ「ええ、ですが……」

カムイ(おそらく、敵の別動隊が私達の後方に向かい始めているころでしょう。こちらの仕掛けは間に合わない……。どうすれば……)



889 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/28(月) 23:05:03.31MqjMkcaP0 (3/7)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

白夜剣聖「くらええええっ」ブンッ

 キィン カシュッ

アクア「……力だけじゃ駄目よ。こうやって受け流されることも勘定に入れておきなさい!」

 ガシッ ドゴンッ

白夜剣聖「ぐふっ……」ドサッ

 タタタタタッ

アクア「!」

ヒナタ「はあああっ!!!!!」ブンッ

リンカ「アクア、手を!」スッ

アクア「ええ、はいっ」パシッ

 サッ バサバサ

ヒナタ「ちっ」

 クルクル チャキッ

リンカ「これでどうだっ!」ブンッ

ヒナタ「あらよっと……!」サッ

モズメ「そこや!!!」パシュッ パシュッ

 ヒュンヒュン

 キィンキィン

ヒナタ「おっと……、へへっ、中々やるじゃん……本当によ」

リンカ「ああ、負けられないからな……」

 タタタタッ

白夜剣聖「ヒナタ様、ご無事ですか」

ヒナタ「おうよ、ピンピンしてるぜ。一人伸びちまったみたいだけどな……」

白夜剣聖「我らも加わります。このまま押し切りましょう」

ヒナタ「ああ、早くしないと後続の重装甲の兵隊が来るからな。それでタクミ様のほうは?」

白夜剣聖「はい、裏切り者の王女を罠におびき寄せたようです」

ヒナタ「そっか、なら早くここを抑えて行かねえとな」

白夜剣聖「ええ」

ヒナタ「……」チャキッ


890 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/28(月) 23:24:04.95MqjMkcaP0 (4/7)

リンカ「! アクア、カムイ達が……」

アクア「え?」

アクア(カムイの周辺だけ風の動きが意図的に操られている……)

リンカ「なんだあれは、風があそこだけ激しくうねってるみたいだぞ」

アクア「……そう、タクミのことを侮っていたのは私たちのほうかもしれないわね。この力、間違いなく竜脈のものよ」

リンカ「どうする。あたし達だけでも助けに向かうか?」

アクア「風の動きが複雑よ。リンカの腕を信用していないわけじゃないわ。でも、あの暴風圏に近づくだけでも一苦労なのに、加えて攻撃を避けるなんてとてもできないわ」

リンカ「ならどうする? ここでこいつらの相手をしていたら……」

アクア「……いいえ、手はあるわ。彼らの後ろにある広場が見える……」

モズメ「広場は見えるけど、なにかあるん? あたいには何も見えへんよ」

リンカ「あたしにも見えないが……」

アクア「竜脈が現れたわ。力の流れを読む限りだと、風を操ることができるはずよ」

モズメ「はぇ~、そんなこともわかるんやな……」

アクア「まぁね……。それで……その……」

アクア(あれを起動するためには、この敵陣を突破しないといけない、そのためにはリンカの強力が不可欠。でも、そうなると……モズメが一人で孤立することになる)

リンカ「アクア?」

アクア「……いえ、このまま三人で防衛を続けて、後続の兵が合流してから――」


891 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/28(月) 23:38:31.11MqjMkcaP0 (5/7)

モズメ「……アクア様」

アクア「モズメは――」

モズメ「気にせんでええよ。あたい、どうにかして見せるから、だから最初の考え教えてほしいんよ」

アクア「……」

モズメ「たしかにあたいはもともと兵士でもなんでも無い、ただ普通に暮らしてただけや。それで死にそうになってたところをカムイ様に救われてここまで来たんや。そんな今、カムイ様が危ない目にあってるってわかるのにできることせんのは間違ってる思うんよ」

アクア「モズメ……」

モズメ「あたいはカムイ様のために命をかけたいんよ。それに、もしかしたらあたいより、動いたアクア様達のほうを追い掛けるかもしれへんし。結果的にあたいが一番楽っていうこともありえる話やから。だから、アクア様。あたいを信じてほしいんよ。カムイ様のために命使うって決めてる、このあたいを……」

アクア「……そう。リンカ」

リンカ「ああ、いつでもいいぞ」

アクア「敵を抜けて竜脈を目指すわ。準備してちょうだい」

リンカ「わかった」

モズメ「アクア様、ありがとう……」

アクア「気にしないで。その代り私達が戻るまで、絶対に耐え抜いて頂戴……。やられたりしたら承知しないわ」

モズメ「……任せとき」チャキッ



892 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/28(月) 23:46:23.32MqjMkcaP0 (6/7)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

暗夜重装甲兵隊長「全力で支えろ!!!」

白夜兵法者「うおおおおおおっ!!!!」グググッ ブンッ!!!!

 ドゴンッ

暗夜重装甲兵「ぐううっ」

カザハナ「だ、大丈夫!? えいやっ」シャランッ

暗夜重装甲兵「たすかりました」

白夜兵法者「ふんっ、魂まで暗夜に売ったか、カザハナ」

カザハナ「……覚えててくれる人もいるんだね。正直、もうサクラ様以外忘れられてる気がしてたけど」

ツバキ「ここにいる人たちは覚えてるんじゃないかなー。まぁ、相手からしたら僕たちのほうが悪者な気もするけどねー」

サクラ「カザハナさん、ツバキさん。援護の手を休めないでください!」

カザハナ「わかってるよ」

白夜兵法者「そんな暗夜の服に身を纏うとは、王族に仕える身として恥ずかしくないのか! 剣を捨て暗夜の奉仕服に身を包むなど!」

カザハナ「ちょっと、奉仕服って何よ!?」

ツバキ「まぁ、メイドってそういう風に取られても仕方ないからねー」

カザハナ「何よそれ、確かにこの服着てレオン王子に奉仕したことはあるけど……」

ツバキ「うわぁ……」

サクラ「それすごく誤解されそうな発言ですよ、カザハナさん!!」

カザハナ「え? だって奉仕したのは――」

サクラ「もう、それまでにしてください!!!」


893 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/28(月) 23:55:49.52MqjMkcaP0 (7/7)

白夜兵法者「……やはり、貴様らはもう白夜の人間では無いのだな……。ならばここで果てろ!」

白夜槍聖「せやあああっ」タタタタッ

カザハナ「そういうわけにはいかないのよ! はぁっ!」スパッ

 ザシュッ

白夜槍聖「ぐっ、まだまだ!!!」

白夜兵法者「オボロ様。ここは我々で盾を一気に崩しましょう」

オボロ「ええ、援護頼むわね。そこのあなたはその体に刺さったの抜いて来なさい」

白夜剣聖「は、はい。オボロ様」サッ

オボロ「いくわよ。タクミ様に近づけないあの裏切り者の王女を殺しにいくためにね」

 タタタタッ

暗夜重装甲兵「絶対に通さ――」

オボロ「ああ?」クワッ

暗夜重装甲兵「ひっ」

暗夜重装甲兵隊長「気負けするな。足に力を入れろ!!!」

暗夜重装甲兵「は、はい!!!」グッ

オボロ「まったく、どいつもこいつもタクミ様の邪魔ばかりして、本当に目触りな害虫が……さっさとどきなさいよぉ!!!!」ブンッ

 ドゴンッ

 ベゴンッ

暗夜重装甲兵「へっ、盾がひしゃげた!?」

オボロ「死になさい」ブンッ


894 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/29(火) 00:01:29.92u2Xra+Px0 (1/4)

 シュパッ シュパッ

オボロ「! はああっ!!」クルクルクル

 キィン キィン

暗夜重装甲兵「あっ俺……」

暗夜重装甲兵隊長「今のうちに下がれ! 早く!」

暗夜重装甲兵「は、はい!!!」タタタタッ

オボロ「……本当にそちらの味方なのね、あなた」

カザハナ「そうなるかな」

オボロ「わからないわ。あんな国で生きてきた人間の味方をするなんて言う行為……。いや、わからないは違うわね、わかりたくもないわ」

カザハナ「あたしも今の白夜で剣を振う意味がわからないよ。あのテンジン砦で何があったのか、あんたは知らない……あそこでどれくらいの人が殺されたのか知らないから!」

オボロ「ええ、知らないわ。知らなくても別に構わない、暗夜に味方したものは無条件で悪よ。多くのものを奪ってく暗夜が消えてなくなりすれば、そんな心配もなくなるもの」

ツバキ「ふーん、なら俺達が来るまでタクミ様がここにいたのはなんでなのかなー。タクミ様はカムイ様のことを倒すために来たのなら、ここにいることはないはずなんだけどねー」

オボロ「……」

ツバキ「もう今の白夜は王族の力を必要となんてしてない、利用できるものとしか考えてない。だからここで捕虜の世話係をさせられてたんじゃないかなーって俺は思うんだけど。違うかな?」

オボロ「挑発してこっちを惑わそうとしてるのなら、甘い考えよ」

ツバキ「……手痛いね」

オボロ「ねぇ、あなた達サクラ様を大切に思っているなら、どちらに戻るべきかは考えなくてもわかるでしょう? 暗夜が滅びれば、白夜は元に戻るわ。裏切り者もいなくなる、そう考えれば――」

カザハナ「オボロ、それ真面目に言ってるの? 今の白夜が暗夜を滅ぼしたくらいで元に戻ると思ってるわけ?」


895 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/29(火) 00:07:49.71u2Xra+Px0 (2/4)

オボロ「ええ、戻るわ。暗夜がすべてを狂わせてる、悪いものが消えされば、しかるべき形に戻るだけ。あの頃みたいな穏やかな白夜が戻ってくるわ」

カザハナ「戻ってくるわけない!!!」

オボロ「!!!」

カザハナ「サクラがサクラがどれだけ、どれだけ傷つけられたと思ってるの? 本当なら……白夜との戦いは終わるはずだった、あたしもツバキもサクラもスズメたちも一緒に白夜に……白夜に帰れるはずだった!それをあいつらは壊したの。そんな場所に戻ることなんてできない。サクラをそんな白夜に帰せない、ただそれだけだよ」

オボロ「……」

サクラ「カザハナさん……」

カザハナ「……気にしないで、サクラにまた同じこと言わせたくないだけだから。それにあたしも口にしたかったの。もう帰らないって……」

ツバキ「俺の分は残してくれないんだねー。残念だなー」

カザハナ「ツバキは最初に色々言ってたでしょ……」

ツバキ「うん、それと今さら何だけどカムイ様。危ないことになってるんじゃないかって思うんだけど……」

カザハナ「え? って、あれ何!?」

サクラ「すごい風ですね。さっき、竜脈が発動した気配がありましたけど、それが影響しているのかもしれません」

ツバキ「あのままだと、後方から動いてる別動隊に挟み撃ちにされちゃう気がするんだよねー」

カザハナ「今から追いかける?」

サクラ「いいえ、その、オボロさんたちの奥、あそこに竜脈の気配があります。多分、風を操ることのできるものだと思うんです」

ツバキ「そういうことですね。サクラ様、わかりました」

カザハナ「うん、わかったよサクラ。いつでもいけるよ」

サクラ「すみません、隊長さん。お願いできます」

暗夜重装甲兵隊長「ご命令の通りに、われわれはあなた方を守る壁なのですから……」

サクラ「ありがとうございます。皆さん、一つ先の広場まで敵を押し上げてください。私も……」チャキッ シュオンッ

サクラ「戦います……」



896 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/29(火) 00:25:03.24u2Xra+Px0 (3/4)

暗夜重装甲兵隊長「よし、全員、敵を押し上げる。戦列」

暗夜重装甲兵たち「おおおおおーーーーーっ!!!」

 ザッ ザッ

白夜兵法者「なっ、前進してきた!?」

白夜槍聖「はっ、血迷ったか!? 一気に押し崩して――」

ツバキ「なら、これをあげるよ。ウィークネス!!!」シュオンッ

カザハナ「サクラ、今だよ」

サクラ「はい。少し、痛いの我慢してください!」ググッ パシュッ

 ズビシャンッ

白夜槍聖「ぐああっ!!!」ドタッ

カザハナ「サクラ、次は左のが来るから仕掛けるよ!」クルクルクル

サクラ「はい。カザハナさん、杖を振り回さないでください」

カザハナ「ごめんね。いくよ、ウィークネス!!!」シュオンッ

白夜兵法者「ぐぬぬっ、こんなことが……」

サクラ「ごめんなさい。でも、今の白夜に負けるわけにはいかないんです!」パシュッ

 ズビシャ……

サクラ(このまま、竜脈まで行ければ。カムイ姉様、待っていてください……)




オボロ「………」

オボロ(どうして、どうして、そんなに信頼しあえるの……)

オボロ(あの暗夜にいて、どうしてそんなに信じあえるのよ)

オボロ(そんな風に振舞うのはやめなさい……)

オボロ(暗夜は私から何もかも奪ってく。全部、奪っていく、白夜を守るという意思も奪ってく……)

オボロ(なら最後に私に残るのは……)

オボロ(タクミ様……だけ)

 チャキッ トントンッ

 ググッ ググッ

オボロ(タクミ様、私を……)

(最後まで信じてくれますよね…………)


897 ◆P2J2qxwRPm2A2016/11/29(火) 00:35:17.07u2Xra+Px0 (4/4)

今日はここまで

 竜脈『タクミが使うと弓射程+2、一定エリアの移動力強制1』みたいなの
 日付は過ぎたけどオボロ誕生日おめでとう。
 


898 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 22:10:49.006QOVEngV0 (1/11)

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『修練場』―

 ダダダダダッ

サクラ「カザハナさん、ツバキさん! そろそろ広場に差し掛かります。入口を守っている方たちにウィークネスを!」

カザハナ「わかったよ」

ツバキ「わかりました。俺たちの術の効果が見えたら、一気に切りこんでもらえるかな?」

暗夜重装甲兵隊長「わかりました。全員、敵を吹き飛ばすぞ」

暗夜重装甲兵たち「はい!」

カザハナ「いくわよ。ツバキ」

ツバキ「カザハナこそ、遅れないようねー」

カザハナ「ふん、馬鹿にしないでよ」

ツバキ「はは、準備出来てるってことだね。それじゃ、行くよ」

『ウィークネス!!!』シュオンッ

 グォンッ……

白夜槍聖「ぐっ、また面妖な技を!!」

白夜兵法者「怯むな、敵が来る!!」

暗夜重装甲兵たち「うおおおおおおっ!!!!」

タタタタタッ ガシィン

白夜槍聖「ぐおっ!!!!」

暗夜重装甲兵「このまま押し切れ!!!」

白夜兵法者「くそ、このままでは――」

オボロ「前衛開けなさい!」

 ダッ

オボロ「行かせないわ!!!」ダッ

 ググッ ブンッ

 ガキィン!!!!!

 ズザザザザーーー

暗夜重装甲兵隊長「そう簡単にはいかないか」

オボロ「舐めるんじゃないわよ!!!!」ググッ


899 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 22:27:17.886QOVEngV0 (2/11)

暗夜重装甲兵隊長「ぐぐっ、まだまだああああ!」ドゴンッ

ツバキ「カザハナ、オボロにウィークネスを使うから足止めしてくれるかな?」シュオンッ

カザハナ「わかったよ。……オボロ、痛いと思うけど我慢してよね。はあっ!」パシュパシュ

ツバキ「ウィークネス!」

ツバキ(これなら――)

オボロ「はぁ!!!」サッ

 パシュンッ

 キィンキィン

カザハナ「うえぇ、今の避けたの!?」

ツバキ「避けられちゃったね……」

オボロ「……はぁはぁ、……んぐっ」

オボロ(体力が……でも、まだまだいける……)

白夜兵法者「オボロ様!」

オボロ「ちゃんとしないさい。ここはタクミ様に任された場所なのよ。私達が負けるわけにはいかない、こんな暗夜で過ごしてきた奴らに負けるなんて許されないわ」

白夜槍聖「お、オボロ様……」

オボロ「早く隊列を組み直しなさい。大丈夫よ、私達が戦う理由は一つだけ、それを信じて戦うだけ……そうでしょ?」

白夜兵法者「は、はい。全員気合い入れろ!!!」

白夜兵たち「おうっ!!!!」

オボロ(そう、負けられるない。タクミ様が信じてくれているはずだから。奴らがここに入り込もうとしてるのは何か理由があるから。なら、それを絶対に阻止してみせる……タクミ様のためにも!)

オボロ「来たら抑える、引いたら攻める。相手に判断の隙を与えちゃ駄目よ」

白夜兵たち「はい!」チャキッ


900 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 22:47:00.386QOVEngV0 (3/11)

カザハナ「すごい統率力、すぐに士気が戻っちゃった」

ツバキ「うん、正直一人一人相手にしてたら間に合わない……。どうしたらいいのかな……」

サクラ「……あの、カザハナさん、ツバキさんよろしいですか?」

カザハナ「サクラ? 何かいい方法思いついたの?」

サクラ「はい。そのかなり危険だと思います……」

カザハナ「いいから話してよ」

サクラ「あの……向こうはオボロさんを中心に戦っていて、正直このまま真正面で相手をしていても辿りつけ無いと思うんです」

ツバキ「確かにね。オボロの威圧が周りに伝染してるみたいにも感じるよ。みんな魔王みたいな顔してるからね」

カザハナ「般若の見本市みたいになってる……」

サクラ「だからといってこのまま手をこまねいていたら、カムイ姉様たちがやられてしまいます」

カザハナ「それはわかってる。それでどうするの?」

サクラ「強行突破して竜脈を起動させます。そうすれば私にオボロさんの意識が向くと思うんです。その隙を突きます」


901 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 22:52:46.356QOVEngV0 (4/11)

ツバキ「ちょっとサクラ様、その竜脈って敵陣のど真ん中にあるんですよね?」

サクラ「はい……」

カザハナ「ちょっと、いくらなんでも危険過ぎるよ!」

サクラ「わかってます。でも、今できる最大限を考えたらこれくらいしかないって思うんです。カザハナさんとツバキさんには敵の足止めに心血を注いで、私が到達できるように支援をお願いします」

カザハナ「サクラ……」

サクラ「おねがいします。たぶん、オボロさんは私達が何か理由があってあの場所を目指してることを察してる気がするんです。だから、その目的がわかった時だけ隙が生まれる……そう思うんです。だから、お願いします」

ツバキ「……」

カザハナ「……」

ツバキ「……わかりましたサクラ様」

カザハナ「ツバキ!?」

ツバキ「サクラ様の判断、信じますよ。カザハナは嫌かい?」

カザハナ「……それは……だって危険なんだよ?」

サクラ「覚悟してます。だから、カザハナさんの協力が不可欠なんです。私は竜脈に集中する必要があります、だから……」

カザハナ「……」


902 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 23:01:17.776QOVEngV0 (5/11)

サクラ「……カザ――」

カザハナ「はぁ、わかったよ、こうなったらサクラは話を聞かないもんね。任せて、相手の動き完全に止めるから安心して竜脈まで向かって、起動させちゃってよ」

サクラ「ありがとうございます、カザハナさん、ツバキさん。あの――」

暗夜重装甲兵隊長「道を作ればいいのですね?」

サクラ「はい。あの地点まで……作れますか?」

暗夜重装甲兵隊長「無理ではないかと。ですが、到達したとして長く維持はできないかと」

サクラ「五秒でも持たせてくれればそれでいいです。私が竜脈に入り込んで起動させれば、タクミ兄様に仕えているオボロさんなら気づくはずです。あの人の隙は、たぶんそれくらいしかありませんから……」

暗夜重装甲兵隊長「わかりました。全員、一点突破を試みる、一歩後退し準備に入れ!!!」

カザハナ「サクラ、フリーズの準備整ったよ」

ツバキ「こっちも準備できました」

サクラ「はい……」

サクラ(手筈は整ってる。あとは私が勇気を振り絞るだけ……)

 ギュッ

サクラ(カムイ姉様、私が助け出してみせます……)

サクラ「行きます!」


903 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 23:07:27.306QOVEngV0 (6/11)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 バサバサッ

白夜剣聖「敵、突っ込んできます!!」

ヒナタ「正面からってことか。おもしれぇ、いくぜ!!!」ダッ

 チャキッ シューー キィン

ヒナタ(一撃だけとは思えねえ。たぶん、避けた後にもう一撃……来る可能性が高い、なら先に斬りおとす!!!)

アクア「リンカ、ヒナタの攻撃と同時に急上昇よ」

リンカ「わかってる。振り落とされないようにしろよ」

アクア「ええ」ギュッ

リンカ「よし、うおおおおおっ!!!」バサバサバサッ

ヒナタ「はあああああっ」ブンッ

 サッ バサバサバサッ

ヒナタ(急上昇、このまま刀を振り上げれば、届く!!!)サッ

 タッ ブンッ

アクア「っ! リンカ、槍を!」

リンカ「!」ブンッ!!

 キィン!!!

ヒナタ「ちっ……」サッ

リンカ「アクア、すまない」

アクア「いいのよ。思ったよりもヒナタの攻撃が速かったから、間に合ってよかったわ」

リンカ「どちらにせよ、助かった」

アクア「礼はあとにして、今ならいける」

リンカ「ああ、いくぞ!」

 バサバサバサッ

白夜剣聖「俺たちの頭上を!?」

ヒナタ「ちっ、何する気かわかんねえけど、逃がす――」

 パシュッ

ヒナタ「っ!」


904 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 23:16:27.986QOVEngV0 (7/11)

 サッ

モズメ「余所見してたらあかんよ」パシュパシュッ

 キィンキィン

ヒナタ「そうだったな。……お前、あの村の生き残りだよな……」

モズメ「……せやな。でもそんなこと関係あらへん。今は敵同士なんやから、それとも見逃してくれるん?」

ヒナタ「そうはいかねえ。俺は俺の信じる道が何かわからなくなっちまってるからな。だから今はタクミ様を守ること以外の道がねえからな」

モズメ「……あたいも同じや。だから、倒されるわけにはいかんのや」パシュ

 シュパッ キィン

ヒナタ「正面の相手は弓だ、俺ともう一人いればいい。残りは向かったあの二人を追え」

白夜剣聖「はい!」

 タタタタタッ

ヒナタ「任せるぞ」

白夜剣聖「はい、ヒナタ殿。お任せください」チャキッ

モズメ(……相手は二人。一人動きを止めても、もう一人に接近されるはずやな。正直避け切れるかわからへん……)

『私達が戻るまで、耐えて頂戴……』

モズメ(気負けしたらそれで終わりや。まず一人、一人どうにかする。アクア様が信じてくれたんやから、わずかな間耐えればええだけの話……)

モズメ「……」カチャッ チャキ……

 キリリリリリッ


905 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 23:25:05.746QOVEngV0 (8/11)

白夜剣聖「ヒナタ殿。私を盾にしてください」

ヒナタ「いいのか?」

白夜剣聖「はい。奴の腕はとてもいいです。正直、避けられるものじゃありません」

ヒナタ「ああ、たしかにな。あれでただの村に住んでたとは思えねえよ」

白夜剣聖「ははっ……。接近で来ても私では手加減ができません。ですが、ヒナタ殿でしたら出来るでしょう?」

ヒナタ「何言って」

白夜剣聖「ははっ、あなたはとてもまっすぐな方ですからね。できれば降伏させたい、本心ではそう考えてる」

ヒナタ「俺はそんなふうに考えたりなんて――」

白夜剣聖「そうかもしれませんね。ですが、私はそういうあなたのまっすぐなところ、いいと思います。ですから、私が矢避けになります。準備を……」

ヒナタ「……あんがとよ。期待には応えるさ……。こんな俺を信じてくれたんだからよ……」

白夜剣聖「はい」ジリッ


906 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 23:32:49.316QOVEngV0 (9/11)

モズメ「……すぅー、はぁー……」

モズメ(距離、詰めて来よるな……。さすがに殺さないように言われる以上、当てる場所に注意せなあかん……)

モズメ(外すつもりはあらへんそうなると、もうヒナタさんは止められへん。前衛請け負った人も打たれることは勘定に入れ取るはず)

モズメ「…熊だったら小刀だけでも倒せる自信はあるんやけどね……」

モズメ(……でも、できることやるしかあらへんよ。運良く敵が二人だけになったんやから、これでどうにかできないでどうするんや……)

 ギリッ

モズメ(あの時みたいに、楽になることばっかり考えてええことなんてあらへん。あの時の村の時とは違うんやから……)

モズメ(全部、真正面から受け止める。それで全部受け止めて――)

白夜剣聖「!」ダッ

ヒナタ「!」ダッ

 タタタタタタッ

モズメ(きちんと捌き切ったる……!)スッ

 シュパッ!!!!


907 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 23:35:34.476QOVEngV0 (10/11)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜・風の村『修練場・中心部』―

 ヒュオオオオオッ

白夜兵法者「すごい……奴らの侵攻が完全に止まっている。さすがはタクミ様だ!」

白夜弓兵「タクミ様、抑え込みはほぼ完了しています」

タクミ「わかった。後続隊に指示を出す、もう逃げられないように囲い込む、最後の仕上げだよ」

白夜弓兵「はい、鏑矢準備!!」ガサゴソッ

タクミ「ははっ、まんまと罠に嵌って無様だね……。僕たちを裏切って暗夜に味方したあんたみたいな奴の最後としては、すごくお似合いだね」

タクミ(白夜を……いや、みんなを狂わしておいて楽に死ねるなんて思ってないよね。暗夜に味方するくらいならあのとき死んでしまえばよかったんだ)

タクミ(あの日、義母さんと一緒に、一緒に死んでいたら僕は……こんなに悩まないで済んだ。みんな、こんなに狂わなかったはずだ。あんたが、暗夜を選んだあんたがあそこで死んでいれば……こんなことになんてならなかった)

 チャキッ シュオンッ

タクミ(あんたはあそこで死ぬべきだった……僕たちのために、白夜のため、なにより――)

(我のためでもあるのだからな……)


908 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/02(金) 23:43:33.606QOVEngV0 (11/11)

今日はここまでで
 
 そろそろピエリの誕生日だなぁ


909以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/04(日) 16:11:12.11X+MWWxEPo (1/1)

ウィークネスはルナクラでもボス相手くらいしか使った覚えがない
フリーズ、ドローあたりは良く使ったんだけど

あと、よくキャラの誕生日とか覚えてるなww


910 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 22:32:16.21px3EC+yO0 (1/16)

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『修練場』―

モズメ「……そこや!」

 パシュッ

白夜剣聖「くっ!!!」

 キィン

モズメ(早い! これ以上接近させたらあかん!) 

 パシュシュッ

 キィン ザシュ

白夜剣聖「ぐっ、ヒナタ殿! あとは――」

ヒナタ「ああ、任せろ!!!」

 タタタタッ

ヒナタ(このまま弓ごとぶっ叩く!)

ヒナタ「ハアアアアッ!!!!」ブンッ

モズメ「!」チャキッ

 キィン

ヒナタ「ちっ……」

モズメ「くぅ……」

モズメ(弓に鉄板貼っておいて正解やった……けど……)

 グググッ カシィン!
 
 ボロボロ

モズメ「壊れてしもた……」

ヒナタ「……すげぇな。思いっきり振り切ったのに、受け切るなんてよ」

モズメ「間けられへんから、でもこれはもう使えへん……」

ヒナタ「だろうな、それで俺に丸腰で戦って勝てると思ってるのか?」

モズメ「丸腰じゃ勝てへんよ」

ヒナタ「……つまり、丸腰じゃねえってことか?」チャキッ

モズメ「……どうやろな?」ジリッ


911 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 22:39:44.80px3EC+yO0 (2/16)

ヒナタ(降参するようには見えねえ…。ってことは何か隠してやがるな……)

モズメ(ほな、いくで……)タッ

 チャキンッ

ヒナタ(小刀? まさかの白兵戦かよ。ならこっちも遠慮なく行かせてもらうぜ。痛いだろうが、少しは我慢してくれよな!)タッ

モズメ(来た。小刀に釣られたんやろうけど、流石にこれで戦えへんわ)

 ポイッ

ヒナタ「な、武器を捨てた!?」

 パシッ
 スチャッ
 
モズメ(近距離弓なら、こっちの方が先に準備できる!)

ヒナタ(短弓! くそ、それが狙いか!)タッ

モズメ「当たってや!!!」

 パシュッ!!!

 ザシュッ ポタタッ

ヒナタ「ぐっ……」

モズメ(当たったには当たった……。せやけど、浅い!)

ヒナタ「へへっ、びっくりしたぜ。そんじゃ今度はこっちが驚かせる番だ」ダッ

モズメ「!!!!」

 チャッ キリリリッ パシュッ

ヒナタ「はぁ!!!」ブンッ

 キィン キィン
  キィン カキィン
 
ヒナタ(このまま懐に入り込んで足を叩き伏せる。足を折れればそれで終わりだ!)

モズメ「はっ、せいやっ!」パシュ パシュッ

 サッ サッ

  タッ ジリッ

モズメ(懐に入ろうとしとる。なら――)

ヒナタ「もらった!!!!」

 ブンッ

モズメ「甘いでっ!」タッ

 パシュッ

 キィン

ヒナタ「っ……。後ろに飛びながら射ってくるのかよ」

モズメ「出来れば避けへんでほしかったわ」

ヒナタ「無茶言うなよ……」


912 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 22:50:13.21px3EC+yO0 (3/16)

モズメ「そこは少し負けてくれへん? 市場のおじちゃんなら負けてくれると思うんよ」

ヒナタ「残念だけど、俺はそういうことしたくねぇ頑固な店主ってことだよ。このまま続けるなら、本当に命を奪うかもしれねえ」

モズメ「……やっぱり、あたいを殺すつもりで攻撃してへんかったやな」

ヒナタ「あんたもそうだろ? 当てる場所、全部急所じゃねえし、さっきの攻撃胴体に当てればいいのに足を狙ってたじゃねえかよ」

モズメ「当たり前や、それをカムイ様は望んでる。それに従うって決めてるから、あたいはその通りに戦うんよ」

ヒナタ「……そんなんでいいのか。甘い気がするぞ」

モズメ「それでいいんよ。それにどんなものも同じやけど、殺す方が簡単で甘いと思うんよ。殺した後のことなんて、いろいろと理由を付けられるもんやから」

ヒナタ「理由付け……」

モズメ「動物を殺したのは何か悪いことが起きそうだったからとか、山に供物としてとか聞こえはええけど、実際殺した理由を薄めてるだけやし、戦ってる以上はそれが普通なんよ。だから、そう考えるとカムイ様は難しいことばっかりしとる。戦ってる以上、殺すことより生かすことの方が何倍にも面倒なことのはずやのに」

ヒナタ「……」


913 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 22:58:05.67px3EC+yO0 (4/16)

モズメ「あの日助けられた時もそう。あたいなんて放っておいたほうが楽やったんよ。怪我なんてせえへんかったし、あたいなんかに気を掛ける事もなかったはずやから。助けようとしたけど助けられなかったで片付けるのが一番周りが納得できることだったりするんよ」

モズメ「でも、カムイ様はあたしのこと助けてくれて慰めてくれた。面倒なことを背負い込んでいくあの人の力になれるなら、あの人の望んだことにあたいは全力になるだけなんよ」

ヒナタ「……なるほどね。それが正しいってことか?」

モズメ「あたいに聞いても答えなんて出ると思ってないやろ。あたいはあたいの戦うことを言っただけや……」チャキッ

ヒナタ「……それもそうだな。なら少しだけ変えさせてもらう」クルッ

モズメ「……」

ヒナタ「命まではもらわねえ。だが、腕一本は覚悟しろよ」ジリッ

モズメ「元からしとる……あんたもかなり痛いから覚悟しいや!」

ヒナタ「そうか。それじゃ、行くぜ」

 ザッ

モズメ「!」パシュ

 キィン

モズメ「っ」

モズメ(さっきよりも動きが早くなっとる。懐に入り込んで攻めの姿勢崩して仕切り直さんと!)

 タッ

 パシュパシュッ

ヒナタ「ちっ」

 タッ 

 キィン キィン

ヒナタ「……」チャキッ

モズメ「……」ギリリリッ


914 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:03:45.63px3EC+yO0 (5/16)

モズメ(次が最後……)

ヒナタ(次の仕切り直しはねえ……、ここで決める!)

ヒナタ「……!」ダッ

モズメ「!」チャキッ パシュッ!!!

ヒナタ「そこだ!!!!」ブンッ

 ザシュッ

モズメ「―――っ!!!」

ヒナタ(……)

モズメ「捉えたで……」チャキッ

ヒナタ(ちっ、浅い!!!)

モズメ「勘忍しいや!!!」

 シュパッ

 ザシュンッ!!!!

ヒナタ「ぐっ……まだまだああああ!!!」

ヒナタ(負けられねえ。こんな形で、負けられねえんだ。ここで、ここで負けちまったら、どうにか受け入れたものが崩れる、それを崩すわけにはいかねえんだよ!!!)

 ググッ ダッ

 シュタッ スタッ ザッ サッ
 
モズメ(速い……! でも、この動きなら――!)

モズメ「そこや!!!」パシュッ

 パシュッ ザシュンッ!!!

ヒナタ「ぐぅ、もろにもらっちまった。けど、俺の勝ちだ!!!」ダッ

 チャキッ

ヒナタ(この距離なら避けさせねえ……腕の一本は確実に飛ばせる。これで終わりだ!!!)

モズメ(あかん、この距離じゃ。だめや、回避が間に合わへん!)

ヒナタ「おらああああっ!!!!!」

モズメ「――――っ!!!」

 ブンッ


915 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:10:49.08px3EC+yO0 (6/16)

 バサバサバサ!!

???「はあああああっ!!!!」

 ブンッ

 キィン!

モズメ「えっ……あ……」

リンカ「どうやら間に合ったみたいだな。やあああっ!!!」ブンツ

 キィン

ヒナタ「ぐっ……」ダッ

 ズサササーッ

モズメ「リンカさん?」

リンカ「ぼけっとするなモズメ! まだ戦いは終わっていない!」

モズメ「わ、わかっとるよ」カチャッ 

ヒナタ「はぁはぁ、くそっ」

ヒナタ(さっきの矢の痛みが……。もう走りだせねえ……)

ヒナタ(動いたらすぐに飛んでくる。あんなの避けられる状態じゃねえ……)

ヒナタ(……そうか、俺負けちまったんだな)

 ポロポロ

モズメ「あんた、泣いとるんか……」

ヒナタ「ははっ、みてえだ……。情けねえよ、こんだけ頑張って、マカラスのこととか。タクミ様のしたこととか、そういうの全部受け入れて、タクミ様を支えるためにとかそんな風に思ったばっかりなのにさ。もう足がちゃんと動いてくれねえ」

リンカ「……」

ヒナタ「あんたらを追った奴らは?」

リンカ「あたしとアクアでボコボコにしてやったさ。今は全員、静かに眠ってる。安心しろ、殺してはいない」

ヒナタ「そっか……すげえな」

モズメ「まだ戦うん?」

ヒナタ「……いや、もういい。疲れちまったからな。降参だよ、降参……」

 カチャンッ……カシャンッ

リンカ「わかった……。ちょうど後続が到着したみたいだな」

モズメ「あうっ」クタリッ

リンカ「お、おい、大丈夫か? 斬られているみたいだな」

モズメ「みたいやね。……リンカさん」

リンカ「なんだ?」

モズメ「あたい、命張って闘えとるかな?」

リンカ「……もちろんだ。さぁ、傷口を見せてくれ、軽いが応急処置してやるからな」

モズメ「えへへ、ありがとう……」




ヒナタ「……」

ヒナタ(タクミ様、すまねえ。やっぱり俺、あの時からずっと引っ掛かりが取れなかったのかもしれねえ。どこかで、タクミ様のこと、本当に信じられてたかもわからねえ)

ヒナタ(あの時にもう、俺は……タクミ様を信じられなくなってたのかも知れねえから……)

ヒナタ「タクミ様……ごめん……」


916 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:14:29.25px3EC+yO0 (7/16)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

暗夜重装甲兵隊長「行けぇ! 敵陣の一点でいい、突破し道を作り上げろ!」

 ガシャンガシャンガシャンッ

白夜兵法者「させるか!!!」ダッ 

 ガシッ

サクラ「カザハナさん、あの方に!」

カザハナ「わかったよ、ウィークネス!!!」

 シュオンッ

白夜兵法者「ぐぬっ――」

暗夜重装甲兵隊長「そこだ、一気に突き上げろ!」

暗夜重装甲兵「おらああああっ」ドゴンッ

白夜兵法者「ぐああああっ」ドサッ

サクラ「今です! 一気に道を作り上げてください!」

 ウオオオオッ!!!

オボロ「ちっ、全員先頭集団の進路をふさいで、早く!!!」

白夜槍聖「わかり――」

ツバキ「残念だけど、そこで止まっててくれるかなー。フリーズっと!」

 シュオンッ

白夜槍聖「なっ、くっ、体が。うごか――」

暗夜重装甲兵「どけっ!!!」ドゴンッ

 グオオオオッ
 ドサッドササッ

暗夜重装甲兵隊長「よし、先頭は私が固める。左右、敵の侵攻を許すな!」

白夜兵法者「オボロ様、敵が入りこんできます!」

オボロ「一点でいい、さっさと崩して分離させ――」

 パシュッ ヒュン
 
 キィン

オボロ「――なっ」

サクラ「……」

オボロ「サクラ様……」

サクラ「オボロさん……邪魔をしないでください」

オボロ「……」


917 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:21:59.24px3EC+yO0 (8/16)

ツバキ「サクラ様!」

サクラ「大丈夫です。ツバキさんは、向かってくる方たちの足止めを続けてください。オボロさんは私が抑えます」パシュッ

オボロ「っ!!!」キィン

カザハナ「サクラ、早く。前方に攻撃が集中してる。長く持たないよ」

サクラ「はい」

 タタタタタッ

オボロ(そこに何かあるのはわかる。でも、それを止められないなら何の意味もない。どうにかしてでも止める)

オボロ(……裏切れない。裏切れない、裏切れないのよ。タクミ様を支える臣下として――)

オボロ(裏切れないのよ!!!!!!)

 ダッ ガシッ

白夜槍聖「オボロ様?」

オボロ「あんたたち、合図したらこういう風に動いてちょうだい)

白夜槍聖「わ、わかりましたが何をなさるつもりですか」

オボロ「奴らの狙いを阻止して壁を壊すわ。だから他のみんなも準備しなさい……」




サクラ「はぁはぁ、見えた! 皆さん大丈夫ですか?」

カザハナ「うん、まだ全然耐えられるって、早く用事済ませてさっさと退こう?」

サクラ「はい」

サクラ(あ、これがその竜脈ですね。予想した通り、この竜脈で風の動きを変えられるはず!)

サクラ「今から起動させます。その間は――」

カザハナ「わかってる。ちゃんと守ってあげるからね」

サクラ「ありがとうございます。えっと、ここですね」

サクラ(これでカムイ姉様の援護を……そして同時に……)

サクラ(私も悪い子になっちゃったかもしれません。だけど、こうするしかないんです。許してください……)

 フワッ ヒュオオオオッ


918 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:24:11.15px3EC+yO0 (9/16)

暗夜重装甲兵「……敵の戦列が入れ替わるぞ。全員、気を引き締めろ!」

 タタタタタッ

白夜兵法者「オボロ様、サクラ王女が何かを――」

オボロ「絶対にさせないわ! やるわよ!」

白夜槍聖「はい、全員屈め!!」

 ザッ

 タッ

白夜槍聖「今だ!」スッ

 ダッ

白夜重装甲兵「なっ、人を踏み台にして!?」

オボロ「あそこね……」

サクラ「……」

オボロ(タクミ様の妹のくせに、それを受け入れないあんたなんて白夜の王女でもなんでも無い。そんなに邪魔したいなら、こっちも手加減なんてできないわ)

オボロ(私から、私から奪おうとするあんたは敵、ならそんなの殺しても……構わない。私にとって守りたいものは――)

タクミ『オボロは僕のことを信じてくれるよね』

オボロ(タクミ様だけで十分なのよ!!!)

 チャキッ

暗夜重装甲兵隊長「くっ、サクラ様!!!!」

カザハナ「サクラ!!!」タタタッ

ツバキ「くっ、間に合わない!!!」

サクラ「……」

オボロ「死ね……」チャキッ


919 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:27:01.71px3EC+yO0 (10/16)

 パシュッ

 ザシュッ

サクラ「……」

オボロ「……あ……」

 ドサッ ドササッ……

サクラ「……」

オボロ(何が起きて……)

サクラ「……」

オボロ(なんで私はサクラ様を見上げて……いったいどうして……。なんだか胸が痛い……)

 スッ
 ビチャ……

 ドクンッ

オボロ「あ……」

オボロ(血……。私、撃たれたの……?)

オボロ「あぐっ、うぐうう……」

白夜槍聖「オ、オボロ様!!!」ダッ

サクラ「止まってください」チャキッ

白夜槍聖「なっ、サクラ王女……」

サクラ「投降してください。オボロさんを助けたかったら」

白夜槍聖「サクラ王女、やはりあなたは暗夜にその心まで――」

サクラ「勝手に思いたければ思ってもらって構いません。でも、あなた達が戦いを続けるというのでしたら、私達はオボロさんへの救命処置を始めることができません……」

白夜兵法者「あなたが暗夜の片棒を担ぐなど、タクミ王子もあなたを救うためにここまで来たというのに!」

サクラ「……だとしても、今の私はあなたたちに従うわけにはいかないんです。早く武器を収めてください」

白夜槍聖「……くっ」


920 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:32:34.98px3EC+yO0 (11/16)

オボロ「あ、あんたたち なにを、やってるのよ……」

白夜槍聖「お、オボロ様。動かれてはいけません!」ポタタタッ

オボロ「私になんて構わず、さっさと攻撃しな……さい。こっちは、もう勝てる形なのに、なんで躊躇しているのよ……うぐっ」ポタタタッ

オボロ「今動かないで、いつ動くのよ……。こんなところで裏切るわけにはいかないの、タクミ様を失望させたくない……あぐっ」ドサッ

サクラ「……」

オボロ「やめて、奪わないで…。私の、私の戦う理由を…奪わないで……」

サクラ「……それを私達は奪わないといけないんです」

オボロ「いや、いやよ……。タクミ様、私はまだ、まだ戦える…戦えるから……。みんなも戦って……」

サクラ「オボロさん……」

オボロ「見限られたくない。タクミ様に……必要ないって思われたくない。ずっとそばで支えていくのよ。だから、負けるわけにはいかない……のに……」ポタタタッ

 ザザッ ザザッ

オボロ「タク……様……」クタリッ

 ポタタタタッ

白夜槍聖「オボロ様!!!」

サクラ「カザハナさん、ツバキさん!」

カザハナ「う、うん!」チャキッ

ツバキ「……わかりました」チャキッ

白夜槍聖「くっ、サクラ王女、あなたという方は!」

サクラ「……あなた達が決めてください。このまま戦いを続けるのかどうかを。オボロさんの言葉の通りにするのか、それともオボロさんを助けるのか……。それを決めるのはここにいるあなた達です。オボロさんを救えるのはあなた達しかいないんです」

白夜槍聖「では、サクラ王女はなにを救うために、ここで戦っているのですか」

サクラ「……皆さんを含めた、多くの人たちです。そして、それを成し得ることができるのはカムイ姉様だけだと信じています。そして、みなさんはタクミ兄様を信じてここに来てくれた。今の白夜ではなくて、タクミ兄様を信じて」

白夜槍聖「だからこそサクラ王女、あなたのことも私達は――」

サクラ「私のことを王女と呼んでくださって嬉しいです。その言葉も偽りでないと分かります。だからこそ私は……そんなあなた達が汚れて欲しくはないんです」


921 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:34:47.82px3EC+yO0 (12/16)

白夜槍聖「サクラ王女……」

サクラ「私はもう白夜の王女を名乗れる立場にはいません。だからこれはただの一人の戯言と言ってもいい事だと思います。でも、私達が戦いを続けても戦争が終わりません、ずっとずっとそれが続いて行くだけ、そんなことは終わらせなければいけません」

白夜槍聖「……」

オボロ「……」ドクドクドク……

サクラ「私たちにオボロさんを助けさせてください。そして、私の大切な家族を……、タクミ兄様を今の白夜という呪縛から解くために力を貸してください……」

白夜兵法者「……」

白夜槍聖「……サクラ王女、あの裏切り者はタクミ王子を……救えるのですか?」

サクラ「……はい。少なくとも私はそう信じています」

白夜槍聖「……」

サクラ「……」

白夜槍聖「……全員、武器を納めろ」

白夜兵法者「……」カチャンッ

白夜槍聖「サクラ王女、あなたのその言葉を信じたこと、後悔させないでください」

サクラ「後悔はさせません、絶対に……。……カザハナさん、ツバキさん。オボロさんへの応急処置を!」

カザハナ「う、うん。ツバキ、オボロの体を起こして傷口を塞ぐから」

ツバキ「わかったよ。途中で起きたりしたら、そのまま首を持っていかれそうだなー」

カザハナ「つべこべ言ってないで、はやく!」

 ガサゴソガサゴソ

サクラ「……」スタッ
 
 ヒュオオオオッ

サクラ「……カムイ姉様……あとはお願いします」

 シュオンッ
 シュオオオオオ

サクラ(私にはもう、ここで信じることしかできないから……)


922 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:37:59.01px3EC+yO0 (13/16)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ヒュオオオオーーッ

白夜剣聖「ぐぐぐっ、なんだこの力は……」クタリッ

白夜剣聖「くそ……」

アクア「……」シュンシュンシュン カチャッ

アクア(リンカの援護は間に合ったはず。さすがにこの人数をどうにかできるかは不安だったけど……、意外と何とかなるものね)

アクア「ん?」

 シュオオオオオオオオ……

アクア(……もう一ヶ所の竜脈の気配、それにこの波紋…)

アクア「サクラ、頑張ったのね。私も早く……」

 スッ シュオンッ

アクア(それにしても、最初に発動した竜脈。あれは元々この地にあったものではなかった。ここにあった竜脈のほとんどは活性化するには弱すぎるものの、それが噴出したのは意図的に生み出された竜脈の影響、そんなことができる者がいるとすれば……あいつしかない)

 シュオオオオオッ

アクア(あいつの野望はまだ終わってない。それはカムイと私達が目指そうとしている場所を隠そうとしてる)

アクア(悪意を増幅させて、終わらない戦いを呼び寄せることをまだ続けるというなら、それを私は阻止するだけ)

アクア「……多分、あそこに奴はいる」

アクア(間違いなく形は違うけど、でも確かにいるはず。だとすれば、ここまでのことを予想しているなら、奴の本当の狙いは……)

 ビュオオオオオオオッ

アクア「そんなことはさせない、絶対に……」


923 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:40:58.43px3EC+yO0 (14/16)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜・風の村『修練場・中央』―

 ヒュオオオオオッ
 
白夜弓兵「タクミ様、風が!」

タクミ「……ヒナタとオボロが負けたみたいだね」

白夜弓兵「いかがしますか、タクミ様」

タクミ「いいよ、二人とも時間をちゃんと稼いでくれたんだ。ここであの裏切り者を殺せばそれで勝ち、こっちの別動隊も動いてる。さすがに竜脈の効果をどうにかされるとは思ってなかったけど、あいつはもう詰んでるんだからね」

タクミ(そう、もう、殺すための道筋はできてる。一直線道で回避行動も取れない中、どうやって両方の攻撃を受け止め続けるか見物だね)

白夜兵法者「敵、こちらに前進してきます」

タクミ「仕上げだよ、兵法者は前方を受け止める準備、弓兵は攻撃態勢に入って。あいつらを蜂の巣にしてやるんだ」

白夜弓兵「はい」

白夜兵法者「別動隊、敵の後続に接触します」

タクミ「……よし、一斉正射!!!」

 パシュ パシュシュ

 ヒュンヒュン!

タクミ(はははっ、これで終わり。もう、あとは時間の問題、そうだろカムイ!!!)




 ドドドドドドッ


 
白夜弓兵「む、あれは……」

タクミ「? どうしたんだい?」

白夜弓兵「いえ、正面入り口を守っていた者たちでしょうか、あそこから続々と」

タクミ「何をしてるんだ。正面にも暗夜兵はいたのにどうして―――」

タクミ(…いや、あれは白夜の部隊じゃない……あれは――)


924 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:50:45.60px3EC+yO0 (15/16)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
ルーナ「ちょっと、まだなわけ!?」

カムイ「もう少しだと思います。どうにか正面の攻撃が止んで態勢を立て直せました。あと少しだけ耐えるだけで済むはずです!」

エリーゼ「このままじゃ、医療杖も壊れちゃう……どうしよう」

カムイ「大丈夫、必ず、必ず間に合うはずです――」

 ドドドドドドドッ

カムイ(この足音は――)

白夜兵「むっ、なんだ。援軍か? お前らこっちだ、この戦列に加われ! この暗夜の者たちを――」

???「ああ、参加させてもらおう」チャキッ

「お前たちと戦っている、その暗夜の者たちの戦列にな!」ダッ

 バシッ ドゴンッ

白夜兵「ぐああああああっ」ドサッ ドササッ

白夜兵「な、一体何が!?」

風の村の民「……」タタタタタッ

白夜兵「な、貴様ら牢にいたはずでは――」

風の村の民「出てきたんだよ!」ブンッ

 ドガッ ズザサー

ギュンター「どうやら間に合ったようですぞ。カムイ様」

カムイ「そのようですね……」

白夜兵「ぐあああっ!!!」ドサッ

???「お前がカムイか?」

カムイ「はい、すみません。このように巻き込む様な形になってしまって」

???「なに、気にするな。元よりここは私たちの村……」

フウガ「助けに来てくれたおまえたちを手助けすることに何の迷いもありはしない」

カムイ「はい、ありがとうございます」

フウガ「私はフウガだ。しかし、話をしている暇など今はない。いくぞ皆の者!」

風の村の民「フウガ様、わかりました。全員、ここにいる奴らを抑え込むぞ!」

 ウオオオオオオッ

フウガ「でいやあああっ!!!」ブンッ

 バキィン ドササッ

フウガ「ここの者たちは任せて進め。なに、お前達が負けるとは思っていない、積もる話はすべてが一段落してからでも遅くはない」

カムイ「はい、お願いいたします」

フウガ「ああ……気をつけろ。あの王子、何かよからぬ気配がした……」

カムイ「……わかりました。気を付けていきます」

フウガ「うむ、……その剣が導く道、見させてもらうぞ」

カムイ「はい……。皆さん、仕上げです」

「行きましょう」

 ダッ


925 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/09(金) 23:52:34.96px3EC+yO0 (16/16)

今日はここまでで

 残り二回でこの章、終わります。
 サイファにリリスのカードが来たようですね(にっこり)


926以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/11(日) 00:02:04.16MYjeWRmgo (1/1)

おつんちん


927 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/14(水) 23:22:27.71p1KvaYl20 (1/3)

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『収容塔』―

 ~十数分前~

 ガチャンッ ガチャンッ ガコンッ

 ギィィィイイ

ゼロ「レオン様、終わりました」

レオン「ああ、多分この中にいるはずだ」

オーディン「はい、レオン様」

 ザザザッ

フウガ「ほう、何か外が騒がしいと思っていたが。よもや助けが来るとは思わなかった」

レオン「フウガ公王……」

フウガ「フウガでよい。こうして命を救われることになったのだからな、感謝しきれんよ」

レオン「いや、あなた方が抵抗し時間を稼いでくれたからですよ、僕達がこうしてここに来られたのは」

フウガ「そうか、ツクヨミの計らいということか。まったくどうして親離れできぬ奴よ」

レオン「……確かにそれもあるけど、僕達がこうして来たのは助けるためだけじゃない。ゼロ、オーディン」

オーディン「はいこちらにあります。言われた通り全部新品同然に仕上げましたよ。この輝き、まるで暗雲立ち込める世界に――」

ゼロ「ふっ、新品同様の矛で敵を突けるなんて、最高だねぇ。俺の腕もビンビンなっちまうなぁ……」

レオン「……」

フウガ「ふっ、個性的な臣下を携えているようだな。そしてそこにある多くの武器、それを使いこなすには手数が足りないようにみえるが?」

レオン「言ったでしょ、助けるためだけにここに来たわけじゃないって。でも、フウガ公王がそれを望むならそれでも構わないけど?」

フウガ「ふっ、意地の悪い問いかけだな。答えなど決まっているというのに……。皆の者、よいな?」

 コクリッ

レオン「ありがとう。こっちは戦力がカツカツだからね。断られたらどうしようかと思ってた」

フウガ「ふっ、ここまでされたのだ、返さねばならん。それにレオン王子、お前達をこちらに向かわせた者、カムイともじっくり話をしたいのでな」

 ガシッ グググッ

フウガ「これより、戦列に加わろう」

レオン「ああ、姉さんたちを助けに向かってほしい、ここは僕達だけで何とかなるからね」

フウガ「心得た……暗夜の王子よ」


928 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/14(水) 23:31:28.42p1KvaYl20 (2/3)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜・風の村『修練場』―

カムイ(ここにフウガさん達が来たということは、レオンさんたちが正面の制圧を始めたということ。あとはこの中枢を叩けばそれで終わりです)

タクミ「……あと一歩なのに、どうして邪魔ばっかりするんだよ、あんたってやつは!!!」

カムイ「ギュンターさん、エリーゼさん、正面の壁役の排除をお願いできますか?」

ギュンター「任されました。エリーゼ様、右の処理お願いいたします」

エリーゼ「う、うん、うまくできるかわからないけど、やってみるよ」チャキッ

ルーナ「大丈夫。うまく決めたらあたしがぱぱっとやっちゃうから。だから成功することだけ考えなさい」ナデナデ

エリーゼ「……」

ルーナ「あ、えっと、そのこれはね。安心できるおまじないっていうか。な、なによ、文句ある!?」

エリーゼ「な、なんで怒るの!? でも、ありがとうルーナ、なんだかホっとちゃった」

ルーナ「あ、安心したならいいのよ」」

ギュンター「では、参りますぞ!」パカラッ

白夜兵法者「敵がきます!」

白夜兵法者「たった一人だ、さっさと抑え込め!」

ギュンター「はあああっ」チャキッ

エリーゼ「いくよ……ドロー!!!!」ブンッ シャラン

 シュンッ 

 ポンッ

白夜兵法者「へ!?」

ルーナ「御苦労さま。とりあえず眠ってなさい!」ドゴッ

白夜兵法者「げひっ」ドサッ

白夜兵法者「なんと面妖な攻撃を――!」

ギュンター「余所見とはいい度胸だ。はあああっ」ブンッ

 ドゴンッ

白夜兵法者「ぐああああっ」ドサドササッ

カムイ「今です! 重装甲兵の方々を先頭に弓の攻撃から隠れながら前進してください!」

 ザッザッザッ


929 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/14(水) 23:43:35.37p1KvaYl20 (3/3)

タクミ「くそっ、あの裏切り者だけを狙うんだ。あいつを殺せば、この戦いも終わりになる!! 全員、第二射準備!」

 ヒュンヒュンヒュンッ
 カキィンキィン

カムイ「それでは次の段階ですね。ルーナさん、敵陣を私と一緒に撹乱しに行きます。先頭をお願いできますか?」

ルーナ「わかったわ。あたしが先頭で引っ張ってあげるんだから、ちゃんと付いて来なさいよね」

カムイ「はい、頼りにしてますよ」

ルーナ「任せて、あたしにかかればあんな奴らちょちょいって倒せちゃうんだから」

カムイ「はい。ギュンターさん、全体的な戦力を右に集中して敵の意識を引きつけてください」

ギュンター「わかりました。右の陣を厚くします。エリーゼ様、中心からカムイ様たちの援護をおねがいしますね」

エリーゼ「うん、おねえちゃんもルーナもがんばってね」

ルーナ「はいはい、あたしの華麗な活躍見ておきなさいよ」

カムイ「では、一気に攻め上げます」



タクミ「射て!!!!」

 パシュパシュパシュ!

 キィンキィンキィン

タクミ「敵の陣、右側が突出し始めた。あそこから一点突破で来るつもりか? なら……」

 バッ

タクミ「全員、右の陣に攻撃を集中、敵の突破を阻止するんだ!!」

ギュンター「やはり大軍を恐れたか。しかし、まだまだ甘いぞ」

エリーゼ「おねえちゃん、敵の攻撃がほとんど右に向いたよ!」

ルーナ「それじゃ、行くわよ」

カムイ「ええ、目標は正面の弓兵部隊です」

ルーナ「わかってる。ノンストップで駆け抜けるから、転んだりしないでよ」

カムイ「何もない場所では転べませんよ」


930 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/15(木) 00:02:45.483MxNAfKg0 (1/8)

 ダッ

 タタタタタタッ

白夜弓兵「! 敵二人きます!」

白夜弓兵「はっ、死ぬ気か。たった二人で抜けられるとでも――」

エリーゼ「……そうはさせないよーだ。フリーズ!!」シュオンッ

白夜弓兵「なっ、う、うごけ――」

ルーナ「一番乗り!!!」ブンッ

 ドガンッ!!!!

カムイ「二番乗りですね、はああっ!!!」ザンッ

 ドスンッ

タクミ「何をしてる。入り込んだ二人を殺せ!!!」

 ガサガサッ

ギュンター「よし、今が勝機だ。進め!」

 ザッザッザッ

白夜弓兵「て、敵。前進してきます!!!」

白夜兵法者「くそ、迫ってくる奴に対処しろ!」

ルーナ「あたし達がいること忘れてんじゃないわよ」ドゴンッ

カムイ「失礼しますよ」バシュッ

白夜兵法者「ぐああああっ!!!」ドササッ

タクミ「くそっ、隊列を立て直すんだ今すぐ!!!」

タクミ(なんだよこれ、僕が僕が有利だったはずなのに!)

白夜弓兵「敵にこのままでは包囲されます!」

白夜弓兵「くそっ、ちゃんと敵の侵攻を抑えてくれ!!!」

白夜兵法者「こちらも手いっぱいだ」

白夜弓兵「このままじゃ、囲まれて嬲り殺しにされる!」

タクミ「怯むな! まだ、まだ僕たちの負けじゃない!!! 一点でもいい穴をあけてそこから崩すんだ!」



ルーナ「さてと……かなり引っかき回したけど、これ相手側かなり悲惨な形になってるんだけど。まるで玉ねぎを一枚一枚スライスしていくみたいに、もうボロボロよ

カムイ「こちらの策がうまく嵌ったということでしょう。風の村の方たちの増援を見て、少し萎縮したこともあるはずです」

ルーナ「それでどうするの? このまま戦いを続ける? 正直大将までは遠いから、相手の死傷者が増えるばっかりよ?」

カムイ「そうですね……敵をさらに細分化して、タクミさんを孤立させます。ギュンターさん、こういう風にできますか?」

ギュンター「わかりました。すぐに仕掛けさせます」

カムイ(さて、どうでますか?……タクミさん)


931 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/15(木) 00:07:16.253MxNAfKg0 (2/8)

白夜弓兵「くそっ、開け!!!」パシュッ

 キィンキィン

カムイ「……このまま押し切ります。総員準備!」

タクミ(あれは!!! 前に出てくるなんていい度胸だよ。それが命取りだってこと教えてやる!!!)

タクミ「全員、あの箇所に攻撃を集中させるんだ。あそこはまだ薄い、全員で攻撃してあいつを追い詰める!」

 パシュシュシュ
 ヒュンヒュンヒュン

暗夜重装甲兵「!!!」

 ザザザッ

白夜弓兵「道が開いた!!!」

タクミ「今だ、僕に続け!」

カムイ「くっ!」タッ

タクミ(ははっ、カムイそこにいるのはわかってる。今度こそ、この風神弓でお前を!!!)

 タタタタタッ

カムイ「……」

タクミ「くらえっ!!!」パシュッ

カムイ「……」サッ

タクミ「待て!!!!」タタタタッ

白夜兵法者「タクミ様!!! 全員遅れを取るな!!」

 タタタタタタッ

ギュンター「……ふむ、今ですエリーゼ様」

エリーゼ「うん!!!! フリーズ!!!」

 シュオンッ

白夜弓兵「がっ、体が!!!」

 タッ タスッ

白夜弓兵「お、おい、何を止まっている!」

白夜弓兵「体が動かねえんだよ。くそ、なにがどうなって――」

暗夜重装甲兵「今だ! 陣を戻せ!!!」

 ザザザザッ

タクミ「!?」

 ザザザザザッ

 ガシャンッ!
 ガシャンッ!!!

白夜兵法者「タクミ様!」チャキッ

白夜弓兵「か、囲まれた!?」

暗夜重装甲兵「動くな。この包囲状況、よもや説明する必要もないだろう」

暗夜槍兵「……」チャキッ

白夜兵法者「くっ……」


932 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/15(木) 00:12:21.163MxNAfKg0 (3/8)

タクミ「な、なんだよ。なんなんだよ、これは!!!」

カムイ「なんだではありませんよ。ただ、私の仕掛けたことにタクミさんがものの見事に引っ掛かっただけ、ただそれだけのことです」

 ジャリッ

 ザザザザッ

 ガシャンッ

タクミ(くそ、完全に孤立した……。罠だったんだ、僕の前に姿を見せて攻撃する箇所を決めさせて、そこを一瞬だけ手薄に……。僕が選ぶ選択を先読みして――)

タクミ「カムイ!!!」

カムイ「タクミさん、もう終わりです。これ以上の戦いに意味はありません。どんなにあなたがあがいても、この状況を変えることはできません」

タクミ「黙れ黙れ!!! あんたは何時だってそうだ、そんな風になんでもわかっている顔、虫唾が走るんだよ」

カムイ「私には何も分かりませんよ。わかっているなら、こんな戦い起きていません」

タクミ「わからないかな、あんたが死んでいればこんな戦い始まらなかって言っているんだ。あんたは、あんたはあの時死んでいればよかったんだ。そうすれば、母さんは死なずにすんだ。あんたがあんたが殺したんだ!!!」

カムイ「…そうですね。私が生き残って、ミコトさんは死んでしまった。こんな私をどうしてミコトさんが助けてくれたのか、今でも分かりません。私より、ミコトさんが生きるべきだったと今でも思います」

タクミ「なら、今すぐにでも死んでくれないかな。あんたが死ねば、王族の汚名は消え去る。また民から信頼されるようにもなる。すべてが元に戻るんだ!」


933 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/15(木) 00:17:20.953MxNAfKg0 (4/8)

カムイ「……私の命一つですべてが元に戻るなら、こんな命切り捨てています」

 チャキッ

カムイ「……でも、私が死んでも状況は何も変わりません」

タクミ「変わるさ。あんたが死ねば――」

カムイ「では私を殺したあと、タクミさんはどうするんですか?」

タクミ「……なに?」

カムイ「先のことですよ。私を殺して、サクラさんを取り戻して、王族の地位を取り戻したそのあと……。あなたは何をするんですか?」

タクミ「……」

カムイ「私という復讐の対象を失ったらタクミさん、あなたは――」

タクミ「黙れ……」

タクミ「黙れ、黙れ黙れ黙れ!!!!」

 チャキッ シュオンッ

タクミ「あんたに何がわかる」

カムイ「……分かりません。私はタクミさんじゃありませんから、わかるわけもありません」

タクミ「だろうね、当たり前だ。あんたは白夜の人間じゃない、僕の家族でもない! だからこそ、あんたは僕たちにとって毒なんだ! その首を取って晒しあげて、後悔せてやる。僕たちを、僕たちを裏切ったことを!!!」チャキッ

カムイ「……」チャキッ

タクミ「死ね、カムイ!!!」パシュッ


934 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/15(木) 00:22:34.423MxNAfKg0 (5/8)

 シュパッ

 キィン

カムイ「やあああっ!!!」ブンッ

 サッ

タクミ「甘いんだよ!」パシュ

 バシュンッ

カムイ「ぐっ!!!」

ルーナ「カムイ様!!! 今―ー」

カムイ「手出しは無用です!」サッ

タクミ「はっ、ここに来て正々堂々としても意味なんてないのに、何やってるのさ?」

カムイ「あなたなんて私一人で十分というだけです」

タクミ「……いい気になるなよ!!!」タタタタッ

タクミ(このまま、ハチの巣にしてやる!!!)

 パシュッ
 パシュッ

 キィンキィン

 ダッ

カムイ「いい気分になんてなりませんよ。こんな戦いなんて!」

タクミ「なにがだよ、ここまで白夜と戦って来たくせに。お前が倒してきた白夜の民は――」

カムイ「私が白夜の人間を倒してきたのは事実です。でも私にとっては白夜も暗夜も関係はありません」

タクミ「関係あるさ。関係があるからこうやって戦っているんだ!!!」ドゴッ

 キィン ガキィン

カムイ「なら、その関係を捨てればいい。暗夜も白夜も関係ない、人は人を信じて生きていけるはずだから!」


935 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/15(木) 00:27:03.453MxNAfKg0 (6/8)

タクミ「はっ、この状態でよくもそんなこと言えるよ!!! あんた初めて会った時言ってたよね。すぐに信用なんてできないし、しない方が普通だって」

カムイ「ええ、そうですよ。だからこそ、相手を理解して行かなくてはいけないんです。その道を、これ以上壊されるわけには行かないんです」ダッ キィン

タクミ「くっ!!!! この距離でも――」チャキッ

カムイ「そこです!!!!!」

 ブンッ

 バキィン
 
 フォンフォンフォン カラカラカラー
 
タクミ(風神弓が、しまっ――)

カムイ「……タクミさん。私はあなたのことを思った以上に知りません。あなたが私を怨む理由もです。だからこそ、そんなものに負けるわけにはいかないんです」

タクミ「僕は――」

カムイ「だから、あなたのその怨みを果たす機会、ここで奪わせてもらいます」

 ドスンッ!!!!!

タクミ「がっ……ううっ、くそっ……」

タクミ(駄目だ、気を失うな。失ったら、失ったらもう、果たせなくなる……。僕が、みんなを皆を守って、あいつよりも皆に、みんなに思われる家族に……家族になる……ん……だ……。僕が……みんなを……)

 ドサリッ……

カムイ「………」

ルーナ「……カムイ様」

カムイ「ここにいる白夜の兵に告げます。タクミさんは倒れました。これ以上の戦闘を続けるならば、その命を保障できません。武器を捨て投降してください」

白夜兵「……くそっ……」ガシャンッ

 カランッ ガランッ ゴトッ……

エリーゼ「カムイおねえちゃん、白夜の人たち武器を置き始めたよ」

カムイ「そうですか……。エリーゼさん、負傷者の手当てを優先してください。ルーナさんはその手伝いをお願いします」

ルーナ「わかった。ほら、エリーゼ様早く行くわよ」

エリーゼ「う、うん!」

カムイ「……はぁ、はぁ……)

カムイ(……どうにか、これで―――)

 パシュッ
 
 ズビシャッ……


936 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/15(木) 00:29:49.653MxNAfKg0 (7/8)

カムイ「えっ……」

 ポタポタタタッ

カムイ「あぐっ、うううっ、あああっ」

ギュンター「! カムイ様!!!」

 パシュッ

ギュンター「くっ」キィン

カムイ「ああっ、ううっ」

カムイ(こ、これは風神弓……ま、まさか――)

 ジャリッ

タクミ「……」シュオンッ チャキッ

カムイ「タクミさん……」

タクミ「しねばいい……。しねばいいんだ……」

 パシュッ

カムイ「!」

ルーナ「はあああっ!!!!」キィン

カムイ「はぁはぁ、ルーナさん……」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、すぐに治療するから!!!」

ルーナ「しっかりしなさい。それにしても、負けたふりして立ちあがって攻撃とか、卑怯極まり――」

タクミ「……」フラフラ

エリーゼ「……こ、これって……」

ギュンター「エリーゼ様、お下がりください」

ルーナ「……まさか、こいつ……」

カムイ「……あなたは……誰ですか……」

タクミ「ははは……そんなのどうでもいいことだよ……」

「あんたがしぬいがいのことなんて、どうでもいいことなんだからさ……」


937 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/15(木) 00:31:56.873MxNAfKg0 (8/8)

今日はここまでで 昨日はタクミの誕生日だった。おめでとう

 あと一回でこの章が終わります。
 今年は最後にピエリ×ルーナとピエリリスやって終わりだと思います。


938以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/17(土) 08:46:45.14VNxxAWp9o (1/1)

おつー


939 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:04:04.97bywkiV+U0 (1/11)

 シャランッ

エリーゼ「これで多分大丈夫だよ、カムイおねえちゃん」

カムイ「ありがとうございます、エリーゼさん。ですが、このまま逃げるというわけにはいきません」

タクミ「……」

エリーゼ「この感じ、あの時のおとうさまと同じ……」

ルーナ「……すごい威圧感、人間とは思えないわね」

カムイ(まさか、これがハイドラだというのですか? 私達が倒すべき敵、それが今目の前にいるというんですか……)

白夜兵「……」

タクミ「おまえたち、なにをしてる。ぼくはたおれてなんていない、まだまけじゃないんだから、そいつらをころすんだ……はやく」

白夜兵「た、タクミ様……」

タクミ「……なんで、ぼくをそんなめでみるんだよ……。そのめをむけるあいてはぼくじゃないはずだ……」チャキッ

カムイ「ギュンターさん!!!」

ギュンター「はい、てやあっ!!!」ダッ ザッ

 パシュッ

 キィン!!!

白夜兵「タクミ様、な、なにを――!!!」

タクミ「たたかわないなら、しねばいいんだ。ぼくのめいれいにしたがわないなら――」

白夜兵「た、タクミ様……。わ、我々は!」

 ザッ

ギュンター「私より前に出た者は守り切れませんぞ」

白夜兵「くっ……」



940 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:11:52.81bywkiV+U0 (2/11)

 パシュッ

ルーナ「はあっ!!!」ブンッ

 キィン

ルーナ「どうやら見えてるの皆敵って考えでよさそうね」

ギュンター「ああ、そのようだ。それにしても何という殺気。いや、殺気だけといえばよいのかもしれませんな」

カムイ「ええ、この気配、レオンさんの屋敷で相対した見えない者たちと同じです……」

カムイ(だとすると、すでにタクミさんは……。いや、そんなはずはありません。さっきまでのタクミさんとは明らかに別人過ぎる。さっきの私の攻撃で命まで奪えたとは思えない……)

タクミ「……あはははっ。なにもしてこないならこっちからいくよ」チャキッ パシュッ

 キィン

タクミ「はやくしね。すぐしね。ぼくのまえでいきたえてよ。そうすれば、こんなあくむからはかいほうされる。あんたさえいなくなれば!!!!」パシュッ 

カムイ「くっ……」

タクミ「みんなしねばいい、ぼくにひつようなものなんてなにもない。あんたをころせるならそれでいい……」

カムイ「タクミさん、あなたはここまで共に来てくれた方々に矢を向けるのですか!? その刃は私だけに向けるべきもののはずです!!」

タクミ「いいんだ。けっかてきにあんたがくるしめばそれでいい、それでいい――」

???「そう、それでいいのだ……カムイ」


941 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:20:32.02bywkiV+U0 (3/11)

カムイ「!!!!」

カムイ(今の威圧……)

タクミ「……」チャキッ

カムイ(間違いない。今一瞬だけタクミさんの殺気とは違うものがありました……)

タクミ「……」パシュッ

 キィン

カムイ(明確な悪意、殺すためではなく苦しませることを目的とした明確な悪意……)

カムイ(このまま放っておけば、タクミさんは容赦なくここにいる人を殺す、誰もを平等に殺していく。私が死んでタクミさんが正気に戻ったとしても、誰かがタクミさんの蛮行を聞き伝えればいい。それだけで、新しい悪意が生まれる。それを止めるためには――)

カムイ(タクミさんを殺すしかない……でも、そんなことできるわけがない)

カムイ(それをしてしまったら、結局元に戻ってしまう。溝はもう埋まらない。戦争はこの先も続いて行く、人が死に絶えるまで。それをさせないためにここまできたというのに!!!)

 ギリッ

タクミ「……」

カムイ(これが人間すべてを怨むほどの悪意、それが望む筋書きだというんですか!!!)


942 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:29:25.18bywkiV+U0 (4/11)

 パシュパシュッ

ギュンター「ぐっ、カムイ様」

ルーナ「きゃああっ」ドサッ

エリーゼ「ルーナ!!! やめてよ、こんなこと!!!!」

タクミ「しね……さっさとしんでよ。おまえがしねば……もう、それでおわりなんだからさぁ!!!!」

カムイ(終わるわけない。私が死んだとしても、あなたは絶対に終わりになんてしない、それがあなたの目的だから)

カムイ(なあ、私はそれに抗う。私は救ってみせると決めたんです、そのために私はここまで来たのだから!!!)

カムイ「あなたに負けるわけにはいかないんです!!!!」

 


 バサバサッ

カムイ(これは、羽の音……?)

???「ええ、その通りよ。あなたに屈するわけにはいかない。だから私は皆と歩む道を選んだのだから!」

カムイ「その声は、アクアさん!)

アクア「カムイ、ここは任せて、少しだけでもいい、タクミの意識を逸らしてちょうだい」

カムイ「わかりました。はああっ!!!」

タクミ「……」チャキッ 

 パシュッ

 キィン


943 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:34:48.77bywkiV+U0 (5/11)

リンカ「なんとか間に合ったな」

アクア「ええ、ありがとう。リンカ」

リンカ「気にするな。それよりも、早くした方がいい。タクミの様子がどう見てもおかしいからな」

アクア「ええ。リンカ、この距離を維持して頂戴。あと、絶対に動かないで頂戴、流石に動かれると難しくなるから」

リンカ「ははっ、こんな上空でか、狙われたら最後だな」

アクア「大丈夫、カムイを信じて。あと、私のこともね」

リンカ「当たり前だ。その代わりとして特等席で聞かせてもらうさ。あんたの歌声をな」

アクア「ふふっ……」

アクア(終わった後、カムイに怒られてしまうかもしれないわね。でも、これだけは私にしかできないことだから……命を掛けてでも、カムイの力になるために……)

 スゥー

アクア「ユールラリー ユレリー」


944 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:40:29.46bywkiV+U0 (6/11)

 ♪~
  ♪~
   ♪~

カムイ「こ、この歌は……」

ギュンター「ふむ、アクア様のようですな」

エリーゼ「この歌って……」

ルーナ「アミュージアの時のものと一緒……っていうことは……」

タクミ「うぐ、うあああっ、ぐあああああっ……」

カムイ「!!!」

タクミ「うああっ、頭が……ぐうあああっ」

 カランッ 

カムイ(風神弓が落ちた、今なら!!)

カムイ「ルーナさん!」

ルーナ「ええ、ちょっと拝借するわよ」ヒョイッ

タクミ「はぁ、はぁ、…んぐっ、貴様ら……」

カムイ「……タクミさんを返してもらいます」チャキッ

タクミ「ははっ、ふはははっ、貴様一人で何ができる。何もできないことを誰よりもわかっているはずだ。なのにもがく、それは見ていて面白いものだ」

カムイ「負け惜しみですか」

タクミ「ははっ、負け惜しみか……。ならその負け惜しみで、もがいてもらうとしよう……」

 ジリッ ジリリッ
 
カムイ「なっ!!」

カムイ(崖の方角に、まさか!!!!)ダッ

???(自分の力の無さを痛感するがいい。結局お前は、何もできはしない。どこまでもがこうとも結果は変わりはしない)

カムイ(だめです、それはそれだけは!!!!)

???(その中でもがき続けるがいい……カムイ!)

 フラッ

カムイ「タクミさん!!!!!」ダッ

エリーゼ「え、カムイおねえちゃん!?」

ギュンター「お待ちください、カムイ様!!!」

ルーナ「ちょ、あんた!!!」

カムイ「はああっ!!!」

 バッ

 ヒュオオオオッ―――――


945 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:43:58.75bywkiV+U0 (7/11)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

タクミ(……頭が痛い。さっきからずっとずっと。それもようやく晴れてきたのに……)

タクミ(なんだよその顔、なんでそんな辛そうな顔してるんだよ。辛いのはこっちなのに……)

タクミ(裏切ったあんたにそんな顔する権利なんてないんだよ。裏切り者は裏切者らしく、笑っていればいいんだ。その方が、こっちは気が楽になるっていうのに、どうして――そんなに僕のことを心配してるんだよ)

 フワリッ

 ヒュオオオオオーーーー

タクミ(空を飛んでる……。いや、落ちてるだけか。そうか、たぶんこれで終わりってことだよね……)

タクミ(あんたは家族でもなんでも無いって突き放してるのに、どうしてそんな風に僕を見れるのか、最後まで分からなかったけど……)

タクミ(もしも、あんたが白夜に残ってくれたら、ちゃんと弟として接することができたのかな)

 ヒュオオオオオーーー

タクミ(もう、遅いけど、このまま落ちて死んで行くだけだ。……多分、僕があんたを殺したとしても、何も変わらないことくらい……わかってる)

タクミ(でも……僕は……それくらいしか……考えられなかった)

タクミ「ごめんよ……みんな……。不甲斐無いままで……」

タクミ(もう、僕は……)



 ヒュオオオオオーーーー


 パシッ


946 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:46:04.20bywkiV+U0 (8/11)

タクミ「えっ」

タクミ「なんで、あんたがここに……」

カムイ「やっと、届いた……」

 チャキッ

カムイ「はあああっ」ドスッ

 ガキィン ギイイイイィッ

カムイ「止まってください!!!!!」

 ギギギギィ

 ブチッ バシュッ
 ビチャッ

 ガシュンッ

 ポタタタタッ

カムイ「ははっ、何とかなるものですね……」

タクミ「……」

カムイ「大丈夫ですか、タクミさん……」

タクミ「どうして、こんなことをするんだよ……」

カムイ「タクミさんあまり動かないでください。腕がとても痛いんですから……落ちてしまいますよ」

タクミ「何が痛いからだよ……こんなことして、僕は敵だよ。あんたを殺そうとしてきた、なのにどうして……」

カムイ「言ったじゃないですか。あなたから怨みを果たす機会を奪わせてもらうって……だから、もうタクミさんから奪うものなんて何もありません。もう終わったんです」 

タクミ「だからって、なんで助けるんだ。勝手に落ちて死にに行ったんだ。なら、こんなことしてまで助ける必要なんて……」

カムイ「……タクミさんに死んでもらいたくなかったからですよ」


947 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:49:47.24bywkiV+U0 (9/11)

タクミ「馬鹿だよ、あんたは。一歩間違えたら、死んでいたじゃないか。戦いに勝ったのに、その相手を助けるために命を掛けるなんて。僕が後々あんたを殺すことだってあり得るっていうのに……」

カムイ「そうですね、それもあるかもしれません。でも私の理由は変わりません、私はあなたに生きていてほしいんです。タクミさんに……」

タクミ「……だから、なんでそう……うぐっ……」

カムイ「腕を貸してください。私の首に回して、はい……。これでしばらくは大丈夫ですよ。足場がある場所で止まって助かりました」

 ドクンドクン

カムイ「タクミさんの心臓の音、とても心地良いです」

タクミ「なにをいってんだよ、こんな時に」

カムイ「こんなときだからですよ……。今は私に任せてください、もうすぐ助けが来てくれますから、少しだけおねえちゃんでいさせてください……」

タクミ「……そんなのごめんだよ……。でも、今だけは……あんたに任せるからね……」

カムイ「はい……」

タクミ「……」

タクミ(……温かい……なんでこんなに温かいんだよ……)

タクミ(くそ……くそ……)

 ギュッ

(僕の負けだ……。姉さん……)

 第二十一章 おわり


948 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:53:09.36bywkiV+U0 (10/11)

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB++
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメC+→B NEW
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)


949 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/19(月) 22:56:10.23bywkiV+U0 (11/11)

今日はここまでで

 さり気にカムイの胸に顔をうずめるタクミだった。

 なんか無駄に長くなり過ぎて申し訳ない。
 今年の本篇更新はここまでです。
 年明け、新しいスレを建てようと思います。
 
 24日にルーナピエリ
 25日にピエリリスで終わる感じです。


950以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/19(月) 23:43:27.28rfwwTb/Jo (1/1)

お疲れ様
タクミもようやくだなあ…ずっと追ってるから感無量というかなんというか
しかしこのスレのピエリとルーナ人気は異常だと思う(こなみ)


951以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/21(水) 18:55:29.84ym/EuBpAo (1/1)

おつおつ
ヒノカか…


952 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:21:45.79S6YpyFGu0 (1/30)

 ルーナ×ピエリ 番外

◇◆◇◆◇

 それはまさに唐突な出来事と言えた。雪が降り、目に見えて寒々しくなった暗夜王国、その王城たるクラーケンシュタイン、そこにルーナは呼び出されていた。
数日前に大規模なノスフェラトゥ討伐を最後に、今年の遠征予定は無い。また、ルーナが所属していた隊は全体から見ても抜きんでた成果を収めたこともあり、年明けまでの休暇を頂いていたのである。
 ルーナにはしたいことがあった。 だからその準備を始めようと決めていた。しかし、その翌日朝に現れた伝令から城に来るように急かされ、内心気分は傾いている。
 大きな扉を開き中央廊下を直進して、マークスの執務室にたどり着く。
 予定に水を差されたのだから、何かしら大事な要件なのだろう。そうでなければ文句の一つも言ってやるわと意気込んで扉を開ける。
 大量の書類、それらがきちんと整理整頓されて置かれている。ルーナの部屋とは大違いに整ったその部屋の中央にマークスはいた。

「むっ、ルーナか。よく来てくれた。すまないな、お前には休みを出したというのに」
「別にいいわよ。むしろ、休みを無くしてまで呼ばれたわけが聞きたいんだけど」

 世間話などは良いからさっさと本題に入ってほしいと、ルーナは捲し立てる。その語尾に感じ取れる威圧にも似たもの、とても王に向けるものではないが、そういった遠慮なく言ってくるところをマークスは認めていた。認めていなければ多分、いや絶対にルーナはここにいられなかっただろう。

「ああ、そのことなのだが、先日昔の文献を漁っていたらこのような物が出てきた」

 そういってマークスが静かに本を手渡してくる。かなり古い本で年号を見る限りガロンさえまだ生まれていなかった頃のものらしい。
 その本の読んでもらいたいと思われる場所には帯があり、それをルーナは捲る。捲ると何やら昔に描かれたであろう絵画の写しがあった。
 初老の男の絵だ。口に蓄えた髭、どこか優しい表情もあり、パッと見て人当たりは良さそうな男。それだけなら何も気にしないのであるが、ルーナもさすがにその絵の意味不明さに首を傾げた。


953 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:23:33.95S6YpyFGu0 (2/30)

 その初老の男は何から何まで赤いのだ。帽子も服も何から何まで赤い、こんな服で戦場を歩いていたら、すぐに的にされるのではないか思えるほどに真っ赤である。赤い甲冑ならば百歩譲る。しかしどう見ても布細工で戦う風貌にも思えない。背中に背負っている白い袋に武器があるのかと思ったが、清潔感溢れる着色が成されていて、とてもそういった武器の類が入っているようには見えなかった。
 ルーナはその絵を丹念に見た。だが、結果的に何もわからなかった。わからなければ質問する以外に道はないと顔を上げる。

「えっと、マークス様。これってなんなの?」
「ああ、その昔暗夜に存在していたというある集団の絵だ。話によると、毎年の年末にそのような格好をして街をうろついていたらしい。諸説にはこれを退治しようとした者たちもいたと聞く」

 もう一度その者たちを見る。
 年末、雪降る街を赤い服を着た謎の集団が闊歩する。考えただけでも恐ろしいことだ、これを退治しようとした者たちの意思、わからないわけでもなかった。
 しかし、それと呼び出されたことに何の関係があるのか、ルーナには皆目見当がつかない。まさかだと思うが、これの目撃情報があったのか。ノスフェラトゥを大量討伐している隙を突いて暗夜王国内にこんな奴らが現れた、そういうことなら非番の自身に声が掛かったのも頷ける。

「なるほどね、こういう格好してるやつを片っ端から捕まえろってことでしょ? あたしがすぐに全員捕まえてあげるんだから。それでそいつらは何処にいるの? 当然、大体の目星はついてるんでしょ?」

 ルーナは熱意に燃えていた。それもそうだろう、彼女にはやらなくてはいけないことがあるのだ、それを考えたらこんな仕事さっさと終わらせるに限る。それで済むものだと思っていた。
 だからである、一向にマークスが頷かないことに何やら嫌なものを感じた。

「あのー、マークス様」
「ルーナ、残念だがそういった仕事ではない。ルーナに来てもらったのは闘ってもらうためではないのだ」
「じゃあ、何のためにあたしは呼ばれたわけ?」

 ルーナの質問にマークスは一度下を見て、そしてゆっくりと顔を上げたのだった。


954 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:24:58.51S6YpyFGu0 (3/30)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

12月の24日というのはただの平日である。
その日が来たからと言って、仕事が休みになるわけでもないし、ノスフェラトゥが大量に発生するといったことが起こるわけでもない。
 朝から寒さに震えながらも、人々は己の生活をいつも通りに始める。そんな普通の日なのである。そんな普通の日、朝から暗夜王国の各地で不思議な出来事が起きていた。
 それを見た住民は口々に言う。何が始まるのか?と。
 多くの住民がその様子を眺める中、ルーナはいつも通り偉そうにも不機嫌そうにも見える顔で、用意された箱の中身を逐一確認する作業を進める。
 今日は雪がまだ降り始めていないこともあって、作業は捗っている。しかし、彼女の心中はとてつもない大吹雪であった。

「なんでこんな格好しなくちゃいけないのよ」

 ルーナは自身の格好に視線を下ろして悪態を吐く。
 全身真っ赤の服装、自身の髪の色よりもさらに赤いその服装にため息が止まらない。あの本に描かれていた集団と同じ格好をしている。唯一ちがうとすれば下が白いふわふわが付いたスカートなことくらいだろう。

「なにが、ルーナになら任せられる!よ。っていうか、なんで男の連中はズボンなのに女はスカートなわけ?」

 スカートの発案者はマークスだった。そしてこの企画もマークスが思いついたもので、その理由は例の集団が何を行っていたかに起因する。


955 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:26:14.42S6YpyFGu0 (4/30)

 例の赤い集団はこの時期、すべての人に平等に資源を惜しみなく渡していたのだそうだ。それは貴族であろうと貧困街の者たちであろうと平等に、である。つまり赤服の彼らは良いことをしていたのだという。だからマークスは思ったのだ。1年の終わり、そういった催しがあってもよいではないかと。その結果、この催しが企画され実行されるに至った。
 そしてマークスは赤が似合うだろう人物を考え、その人物としてルーナが思い浮かんだのだという。そう、完全に巻き込まれただけであった。
 白夜から取り寄せた薄い布生地のおかげで生足は防げているものの、この格好は何とも言えないものがあった。多くの男性たちはマークス王の趣味に涙を流していたが、女性たちからの視線はいささか冷たいものである。しかもその冷たい視線は一緒に仕事をする男たちに向けられていることから、マークス王の狡猾さが伺えた。

「……はぁ」

 もう始まってしまったからにはしょうがないと思いながら、ルーナは個人的に持ってきた箱に手を伸ばして開ける。
 中身を確認して、またため息を漏らしてそれを閉じると顔を上げた。時間的に間に合うかどうかわからないこともあって、その焦りが心の中で猛吹雪になっている。

「仕事終わったら、早く完成させないと……」
「何を完成させるの?」

 突然聞こえた声にルーナは驚いて振り返った。


956 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:28:27.00S6YpyFGu0 (5/30)

「うわっ、ピ、ピエリ。いきなりなによ!!!」
「ん、ルーナどうしたの? 箱の中、何か変な物でも入ってるの?」

 ルーナが閉じた箱を指差すピエリがそこにいた。同じように赤い上着に赤いスカート、薄地の赤い靴下、頭に乗せた赤い帽子は彼女がピョンピョンと動く度に軽やかに揺れる。どう見ても楽しんでいる子供そのもので、その能天気さをルーナはとてもうらやましく思う。

「ちょっと、一応仕事なんだから、ちゃんとしなさいよ」
「わかってるの。えへへ、この服ピエリ好きなの上も下も赤くてとってもきれいでとってもカッコいいのよ」
「はいはい、くるくる回るの止めなさい。スカートの中見られちゃうでしょ」
「別に減るものじゃないと思うの」
「女として最低限の配慮くらいしなさいって言ってるの」
「はーい、わかったのー」

 はしゃぐのを止めたけれど、ピエリは終始ニコニコと笑っていた。ニコニコと笑っているけど、歯が顔をのぞかせているその笑顔は果たしてこれからすることに向いているのかと言われると疑問が浮かぶ。共に剣を振るっているルーナから見て、その笑顔は敵を殺しているときによく見る顔だからだ。子供が見たら脱兎のごとく逃げ出すかもしれない。

「大丈夫かしら?」
「ルーナ、何が大丈夫なの? ピエリにちゃんと教えるの」
「別に何でもないわ。それよりもあたしたちの場所決まってるんだから、さっさと行くわよ」

 どうにかこのけったいな格好への羞恥心を消し去って、ルーナはようやく出発の準備を整える。白夜の職人がこの人のために組み上げた特注のソリに配布するケーキが入った箱を丁寧に入れていく。戦争が終わってから行われる大々的な行事ということもあって、その気合の入り方はすさまじいものだ。なにせ配布するケーキの箱には氷の魔術が掛けられており、明後日くらいまでなら保つことが出来るという配慮までなされている。正直、少々やりすぎだった。


957 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:30:18.91S6YpyFGu0 (6/30)

 ルーナが属するグループが行うのはこの中央広場周辺、すでに人々が垣根のよう集まり様子を伺っていた。誰もがあの箱の中身が気になっているといった具合である。

「箱の中身、みんな気になってるみたいなの」
「話を聞いてなかったら、気になるわ。それにあたしたち、絶対怪しい集団にしか見えてないだろうし」
「えへへ、でも、みんな喜んでくれたらうれしいの」
「まぁ、貰って悪いものじゃないとは思うわ。このケーキの監修って、ピエリがしたんでしょ?」
「そうなの! マークス様からピエリにしかできないって言われたの。ピエリのケーキは絶品だから、皆美味しいって言ってくれるはずなのよ。だから残した人はえいっしちゃうの」

 手をシュッシュと動かしながらピエリはそう言う。これは冗談ではない、真面目にそうするつもりだということをルーナは理解していた。ピエリは子供なのだ。見た目は成長した大人に見えても、さっきの笑みから見える無邪気さには子供特有の軽さがあったように、やはり子供という印象をルーナは持ち続けている。

「はいはい、でもその場で食べろなんて言っちゃだめだからね。やっぱり家に帰ってから食べたいはずだから」

 そんな釘を刺して、ルーナはソリを引く馬の背中を撫でると歩き始める。
 ルーナとピエリの担当場所はそれぞれ別々なので、一度ここで別れることになった。

「それじゃ、終わったらここでね?」
「うん、わかったのー。ピエリが最初に来て待ってるのよ」
「ふふん、あたしの方が先に終わらせて先に待っててあげるんだから、負けるつもりないわよ」
「えへへ。ならピエリも負けないように頑張るのよ」

 当たり触りの無い返答を貰い、ルーナは歩み始めた。その手に個人的な思いを込めた箱も持って、その中身を仕事の合間に完成させるために。



958 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:31:35.78S6YpyFGu0 (7/30)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ケーキの配布は順調に進み、残りの数もあとわずかほどになる。
 ピエリ監修ベリーケーキも残りが少なくなってくるにつれて、イベントそのものの終わりが近いことがわかり始めてくる。

「しょっと、あと少しだからがんばらないとね」

 多分交代はないだろうという時間、ルーナはお渡し会場に設営された天幕の中でいそいそとしたかった作業を始める。朝確認した時に比べれば、完成まであと少しと言ったところで、ルーナは声を掛けられるまでせっせと作業を続けることにする。
 その手元にあるのはかなり長めのマフラーだ。寒い季節、特に年中寒い場所が存在する暗夜領では重宝するものだが、すこしだけそれは歪な物でもあった。形になっているしほつれてはいないのだが、全体的にどこか不格好に見える。だからこそ手作り感が半端なかった。

(……どうしよう、想像してたのと全然違う……)

 ルーナの中の想像では綺麗に分かれた灰色と白が均等の二層を描いている物であったが、現在出来上がっているのは均等と呼べるものではなかった。灰色のエリアに白が混じりこんでいたり、あべこべになっていたりとルーナが当初思い描いていたものとは似ても似つかぬものである


959 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:33:49.67S6YpyFGu0 (8/30)

(……どうしよう。これはちょっとあれよね……)

 無地の物とはいざ知らず、二色に挑戦した故だった。
 でも、ここまできてやり直すというわけにもいかない、なにせ今日は12月24日で、あげる相手の誕生日なのだから。

(……はぁ、よく考えてみると、おかしい話よね。世界救ってさっさと帰るはずだったのに、こんな風に残ってプレゼント作ってるなんて……)

 元々この世界の住民じゃないこともあった。だから関係なんて言うのは最低限で済ませようと考えてきたっていうのに、ルーナは多くのつながりを持っていた。主のカミラとも相棒のベルカもそうだ。思った以上に、あの世界からここにやってきた者たちは、人との繋がりを捨てきれない。だからその分、割り切ることが難しくなる。この世界との別れを。
 それを考えたら、縫い上げていく手が少しだけ遅くなったのを感じた。

(はぁ、ダメね……。こういう時にどうしてそういうこと考えちゃうかな)

 いつか別れが来るとして、それがいつになるのかもわからないことはルーナにもわかっている。ハイドラから受けた加護も無くなった今、どのようにこの世界から消えていくのか想像は出来なかった。

(……やだなぁ。そういうの……)

 まるで自身の母親のようだと思った。
 何も言わずにどこかへと行って帰ってこなかった母親と同じ、そんな藪は踏みたくなかった。だけど、何れその日がやってくる。
 異物は取り除かれるべきで、その摘みだされる方法なんてものを選べるわけはないからとルーナは手の動きを速めていく。考えると嫌なスパイラルに嵌っていく気がしたからだ。
 今はこれだけをやっていればいいと身を引き締めて、残り僅かな作業に没頭し始めてみたけど、最後の場所だけが何だか縫えない。これを縫い終えたら消えてしまうような錯覚に陥って、気が付くと指が止まりそこから動けなくなっていた。


960 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:34:56.17S6YpyFGu0 (9/30)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ルーナ、遅かったの。ピエリの勝ちなのよ」

 蟠りが残った足で撤収を終えて戻ってくるとすぐにルーナを見つけてピエリが駆け寄ってくる。ルーナよりも早く撤収準備を終え、広場で待っていたピエリは満足そうに駆け寄り、勝負が自分の勝ちだと嬉しそうに告げた。

「うん、そうね」
 だが、それに対して何か言い返す気力もなかったルーナは素っ気なく言葉を返すしかない、それにピエリの表情が神妙なものになる。

「ルーナどうしたの? 何か変な物でも拾って食べたの?」
「そんなんじゃないわよ……」
「嘘なの、いつもなら悔しそうな顔をするの。それにぴへえええええんって嘘泣きもしてないのよ」
「さすがにしないわよ!!!!」

 思わず大きな声を上げると、ピエリは朝と同じような笑みを浮かべていた。すごく安心したように。

「えへへ、元気出たみたいなの」
「べ、別に元から元気よ。そう、元気だから……」
「変なルーナなの」
「で、なんであんた着替えてないのよ。その格好じゃ寒いでしょ。雪が降ってくる前に戻らないと、風邪引いちゃうから」
「確かに少しだけ寒いの。でもこの服、赤くてとってもいいの。だからもらって帰ることにしたの。ルーナも持って帰るの、持って帰ってこの格好のままパーティするのよ」


961 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:36:29.76S6YpyFGu0 (10/30)

 そうしてピエリはてくてくと先を歩み始める。ルーナが付いてきてくれると確信して後ろを振り返ることもなく。そこには幼い思考特有の信頼があった。きちんと見てくれているという無邪気な思考、それをルーナは裏切れなかった。着替える事無くピエリの後を追いかけて、横に並ぶとピエリは嬉しそうに肩を寄せた。
 二人で歩く街路はどこか寒々しいけど、多くの家々に灯る明かりが照らしてくれているから視覚的には暖かかった。
その暖かさと比例するように隣にあるこの世界の繋がりが近くにあればあるほど、不安がルーナを包み込んでいく。考えなければいいことを考えてしまったと後悔しても、そう簡単に拭えない、それを拭うようにピエリの肩に肩を摺り寄せた。

「はぁ、息が真っ白なの。はぁ~はぁ~、えへへ、見てなの。ピエリの息、モコモコ雲みたいで面白いの」
「そうね……」

 素っ気ない返事をしてルーナは思考の渦に落ちていく。
 手に握った小さな箱の中にはあと少しで完成するプレゼントが入っている。今日には完成させる予定だっただけに何とも言えない気持ちになっていた。
 気分が浮かない、あれほどやる気になっていたのに、完成させたいという気がなくなっていく。こういう風に何か物事に参加していると……この世界とのつながりを強く感じてしまう。それがいつか来る終わりの到来に震えているのだと、ルーナは百も承知だった。


962 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:38:28.65S6YpyFGu0 (11/30)

「ぶー、ルーナ、やっぱりおかしいの」
「そんなこと……」
「だってルーナ、ピエリの話真面目に聞いてないの。何か考え事してるの……。何か困ってるなら話をしてほしいのよ。ピエリ、ルーナのお話なら聞いてあげられるの」

 ピエリが右腕に絡みついて上目遣いに聞いてくる。どこでそういうのを覚えるのかわからないけど、同性相手に使うものじゃないとルーナは内心笑った。
 心の中で笑顔を作っていると暖かいものがこみ上げてくる気がした。多分、親愛というものだとルーナは思う。同じように髪を二つに結んでいること、強くて可愛いところ、そして母親にある種の執着心を持っていること……
 前、母親のことでルーナはピエリを支えた。ピエリが至ろうとしている理想の人、それにどうやって向かおうとしているのか。人を殺し、血を浴びることで、ピエリはどんどん母親に近づいている気になっていた。綺麗になっているという実感を、ピエリは死んだときの母親の姿から得ていた。ピエリにとって綺麗な女性というのは、この後にも先にも母親しかいない。だから、ピエリは最後血に塗れて死ぬ道を選ぶ気がしたのだ。
 あの日、血まみれのままにキッチンに立つピエリをルーナは思い出す。お母さんになれた気がしたのかもしれない。でも、その時にルーナはその道からピエリを引きずり出すことに決めた。


963 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:39:30.05S6YpyFGu0 (12/30)

 ルーナは知っているから、親は誰しも子供に死んでもらいたくなどないのだと。少なくとも、ピエリはその中に入っているのだと。一緒にお出かけして服を買って、綺麗になる方法を色々と考えて、そして気づけばルーナとピエリの距離はこれほどに近くなっていた。
 だから、その上目遣いの視線も含めてピエリに負けてしまったのかもしれない。ルーナの足は止まってしまった。

「……ねぇ、ピエリ」

 少しだけ息を吸い込んだ。吸い込んで、その言葉を口にする。遅くても早くても、それはいつかやってくるのなら、先に伝えておこうと思った。だって、こうしてピエリが腕を組んでくれているのだから、ルーナを逃がさないように腕はがっちりと抑えられている。
 多分、今ここで消えてなくなるなんて意地悪はしないと思う。なにせ今日はピエリの誕生日、その当日に消えるというのは出来すぎている。そう思うと今が一番いい機会だと、心の蓋が開いた気がした。

「あたしがいつか……どこか遠いところに行っちゃうって言ったら、どうする?」

 出てきた声はどこか震えていた。寒さの所為じゃなかった、暗い世界を彩る民家の明かりも、今はどこか寂し気で、それを聞いたピエリの顔からは笑顔が確かに消えた。


964 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:40:55.71S6YpyFGu0 (13/30)

「……ルーナ、どこかに行っちゃうの?」
「うん。多分……。ちがうわ、絶対にどこかに行っちゃう。それも凄く遠いところに」

 一度希望的なことを言おうとした。多分とか、もしもの話とか。冗談っぽくしようとして、でもそういう茶化しはしたくなかった。もう決まっている事、誤魔化すにはピエリとの絆は強すぎたから。それがほつれてしまうかもしれない。
告げてからそう考え、怯えて顔を下ろすと真剣なピエリがそこにいた。子供っぽいその顔は、今は真摯に向き合う瞳を携えている。

「ピエリ……?」
「大丈夫なの。ルーナ、心配しないでなの」

 腕を抱く力がさらに増した気がした。赤と赤が重なって混じり合うように、ピエリの髪にルーナの髪が触れる。毛先が静かにピエリの頬に触れると、どこかくすぐったそうに笑顔が戻り始める。
 だから、こうやって覚悟を決めて口にしたルーナの方が腑に落ちないという顔をした。

「どうして、そういう顔できるのよ」
「そういう顔ってどういう顔なの?」
「その、別に気にしてないみたいな顔よ。あたしがいなくなっても、寂しくないように見えるっていうか……その……つまりそういうことよ」
「どういうことかわからないの。でも、ルーナがどこかに行っちゃったら、ピエリとっても寂しいのよ」
「言葉と顔が合ってないって言ってるのよ。寂しいんだったら、そういう…顔しなさいよ……」
「……だって、今ルーナはピエリの隣にいるの……。こうやって――」

 腕から離れたピエリがルーナを正面から抱きしめて胸に耳を当てる。突然の行動にルーナは言葉を失っていたが、それに構わずピエリは言葉を紡いでいく。


965 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:43:28.79S6YpyFGu0 (14/30)

「抱きしめてるからわかるの。お胸の音もちゃんと聞こえる。ルーナの匂いもする、ちゃんと目の前にいるのに悲しむことなんてできないの」
「でも、いつかいなくなっちゃうって言ってるの、わからないの?」
「ピエリ、ルーナに会ってお母さんのこと色々思い出せたの。お母さんは、ピエリの中にいてくれてるの。でも、それはちゃんとピエリと一緒にいてくれたからなの。いつかルーナがどこかに行っちゃうのは寂しいの。本当はね泣きたいの。でもそしたらルーナ、大泣きしちゃうの」
「し、しないわよ!!!」

 そう言いながらも、すでに色々とルーナは限界だった。目尻に溜まった物に風が当る度に冷たい鋭いものを感じる。でも、泣いて溜まるかと無理に踏んばった。零したくないと頑張る、でも、それを見ているピエリはそれを簡単に壊しにやってきた。

「ピエリと同じでルーナも本当は泣き虫さんなの。だから、そうならないようにしたいの。ピエリ、ルーナと過ごす思い出まだまだほしいの。いつかわからないのに悲しむ思い出なんて欲しくないのよ。ルーナとの思い出は一緒に過ごした思い出だけ欲しいの。だから、ルーナ、泣いちゃいやなの」

 そろそろと手が伸び、ルーナの目尻に優しく触れると溜まっていた雫が零れた。

「ルーナもピエリみたいに笑うの。いっぱい楽しいことしてその日まで過ごすの。いつか分からないことなんて、気にしないの。ピエリが一緒にその日までいてあげるから、心配しないでなの」

 咄嗟にルーナは両目を拭った。零れた雫に合わせておくから流れてきた物を隠すために、ここまでさんざん考えてきたというのに、ピエリはルーナの心配を全部壊していった。


966 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:45:13.62S6YpyFGu0 (15/30)

 こんなの反則だ。
 あたし、すごくかっこ悪いじゃないの。
 思ったことを頭にのせても、ピエリに本当の意味で慰められてしまったことは違いなくて、その無垢な笑顔をもう一度見るために何度も目を拭った。

「ルーナ、目が真っ赤かなの」
「だ、誰のせいだと思ってんのよ」
「泣いたルーナの所為なの。ピエリの所為じゃないの。ピエリの所為だっていうなら、ピエリを捕まえてみせるの」

 そう言ってピエリは抱き着いていた腕を離れて走り始める。
 ルーナはそれを追いかけ始めた。
 雪の積もった街路に響き渡る二人の足音。誰もいないように感じてしまう静かな世界の中で、確かにルーナの視線にピエリの姿はあった。
 その視線を隠すように雪がチラつき始める。白い白い雪、淡い雪も強さを増せば、先を見ることが出来なくなる。いずれ来る未来を暗示するようにも思えるそれ、でもルーナにはもう関係なかった。怖がる必要はもうないのだ。

(なら、別にフライングしてもいいわよね……)

 そう考えると、ルーナは手に持っていた箱の鍵を開ける。中に入っていたのはあとわずかで完成という形のマフラー、それを構うことなく手に取ってピエリとの距離を詰める。


967 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:47:07.72S6YpyFGu0 (16/30)

 足の速さなら負ける気はなかった。
 みるみる距離は狭まっていく。あと数歩というところでピエリの方がバテ始め、その肩に手が触れた。

「うーーっ、掴まっちゃったの」
「ええ、捕まえたわよ。それ!!!」
「わふっ、これ……なんなの?」

 首に巻かれたそれを見てピエリは目をぱちくりさせる。ルーナは明後日の方角を見ながら、顔を少し赤らめた。

「誕生日プレゼントよ。まぁ、まだ出来上がってないから。その、家に帰るまでお試しっていうことで、ほら、雪降ってきたし……」

 白と灰色、あべこべ模様の長いそれをピエリは不思議そうに眺めて、そして垂れている片方を手にするとルーナの首にも掛けた。

「ちょっと、なに?」
「ルーナもつけるの。こうすればとってもあったかいの」
「ちょっと、これはあんたへのプレゼントなんだから」
「ピエリのプレゼントなら、ピエリが好きに使わせてもらうの。だからルーナも一緒に巻かれるのよ。これであったかいでしょ?」

 押し切られる形で首にマフラーが巻かれ二人の距離が更に近くなると、ルーナの顔は真っ赤に燃えた。

「ふふっ、ルーナのお顔真っ赤なの。お顔でスリスリしてあげるの」
「ふにゃっ、やめ、ちょ、はずかしいっ、んだから、もうっ……」

 猫のように頬ずりをするピエリに何を言っても聞かないと諦めて、ルーナはゆっくりと足を進め始める。目と鼻の先にあるピエリ、マフラーで繋がった互いの体はさらに寄り添うように腕を絡め合う。いずれこれも解かれていくけど、今はここで繋げていることが重要だった。


968 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:49:39.28S6YpyFGu0 (17/30)

「なんだか恋人同士みたいなの」
「恋人ねぇ……。正直、相手が子供っぽいわ……
「ぶーっ、ルーナの方が子供っぽいの」
「ピエリに言われたくないんだけど!?」

 言い合いが始まっても腕の力が緩むことはなかった。
 むしろ、言い合いが続けば続くほどに、その力は増していく。
 ルーナは離さないように、ピエリはどこかに行かないように。
 互いが互いの繋がりを確かなものにするように、二人は道を歩いていく。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 いずれ来るかもしれない、避けられない別れを知りながらも。
 その足は確かに、その未来に向かって進んでいく。
 一緒にいられる時間を多く続けるために……




 ルーナピエリ番外 おわり


969 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 12:56:19.62S6YpyFGu0 (18/30)

 午前中はここまで

 ピエリ、誕生日おめでとう!


970 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 22:21:42.29S6YpyFGu0 (19/30)

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 久々に早く起きました。
 時折の休みに主人が帰ってくるこの場所に未だに住んでいる私が、こんなに朝早く起きるのは久しぶりの事で、こうして目を覚ませられるものなんだなと思った。
 寝返りで乱れた髪を櫛で梳かし着馴れた服ではなく、今日のために準備してもらったディアンドルに袖を通す。
 いつもと服が違っているのは特別なお仕事をすることになっているからで、この仕事を引き受けることになったのは私自身に原因があったります。

「うん、これで良さそうですね」

 衣装鏡に映ったいつもと違う服装を確認して、一度くるりとその場で一回転。ふわりとスカートが浮く、真上から見れば綺麗な円を描いているのかなって思いながら、最後に髪の準備に取り掛かる。
 主であるカムイ様に貰ったカチーフではなく、ある子に前貰ったリボンで髪を纏め、扉を開いて廊下に出て窓から外を見る。
 今日の空はとても澄んでいて、そんならを見上げながら私は今日一日の役目を考える。

(はぁ……、確かに誕生日を知らなくてプレゼントを用意していなかった私が悪いとは思いますけど……)

 城塞を出て厩舎小屋に向かい、前に比べて少なくなった馬の一頭借りて寒い世界に飛び出す。寒いけど、あの子は遅れると直ぐに癇癪を起こす。それで時間が遅れたりすると私の所為にされるので、それは出来れば回避したかった。

「ふふっ」

 でも、癇癪を起している姿を思い浮かべて笑ってしまうのは、なんだかんだで私が楽しみにしていることの証明で、気づけば手綱を力強く持って速度を上げていた。


971 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:05:14.06S6YpyFGu0 (20/30)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 その子は貴族のお嬢様で、大きな屋敷を持っている。その屋敷も今日だけは騒がしく、多くの装飾が施されていていつもとはまるで違う雰囲気を醸し出していた。
 馬を引き連れて私が至ると、門の前で待機している知り合いのメイドさんと目が合う。合ったと共にすぐさま深々とお辞儀されたので少しだけ戸惑った。いつもなら軽い会釈くらいなのだが、今日に限って来賓にする深々としたものだからだ。

「おはようございます、リリス様」
「そんな様なんて大丈夫ですよ。いつもリリスって呼んでくれてるじゃないですか」
「そうですね。でも、本日のリリス様は特別なお客様ですから、ここは少々冷えます。ご案内いたしますので、どうぞこちらへ」

 そう促されて、私は色々と準備の進んでいる館の中を進んでいく、外で立っていたのは私を待つためのようで門が閉まる音を遠くに聞いた。作業している人々はそれぞれの従事服に身を包み、その作業に没頭している姿はどこか圧巻で、一人指定があったとはいえディアンドルであることに少しだけ浮いていることを自覚する。

「ふふっ、お嬢様からご指定があったそうですね」
「はい、私もできればいつもの服装が良かったんですけど……その、誕生日プレゼントを、用意し忘れて……」
「そうだったのですか? お嬢様とリリス様は戦争の頃からのお知合いのはずでは?」
「……その、誕生日に関しては全く知らなかったんです。戦争が終わった時は出会って半年以上経過してましたから。それに――」

 私自身そういうのがわかりませんからと告げようとして、思わず口を閉じた。

「それに?」
「その、知り合って長く時間が経ってから聞くのって恥ずかしいじゃないですか……」
「ふふっ、そういうことですか。でも、そんなあなたのおかげでお嬢様は――」

 と、メイドさんも何かを言い掛けて口を閉ざすと、にっこりと笑みを浮かべた。この自分だけ知っていることを、渦中の相手に見せつけている顔、私はあまり嫌いじゃなかった。だけど、やっぱり気になる。

「私のおかげって一体……」
「ごめんなさい、これ以上は言えません」

 そう言って話を切り上げて、吹き抜けのホールの階段をのぼり、来賓室に到着する。いつも以上に綺麗になっているその部屋を一望してからソファに促され腰を下ろす。それに合わせて、紅茶が準備され私の前に差し出された。シナモンが加わったその紅茶の香りが鼻を擽る。

「では、お嬢様をお呼びいたしますので。ここでお待ちくださいませ」

 その言葉に深々としたお辞儀をして彼女が退室し、それと同時に紅茶を口にしてすぐに考え込む。


972 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:10:18.16S6YpyFGu0 (21/30)

 今さっきの話、私が誕生日を知らなかったことであの子が得をするという意味だとは思うけど、一体何の得をするのでしょうか?

「……わかりません。そもそも、知らなかったことって結構失礼なことですよね……」

 それなりに交友がある人が自身の誕生日を覚えていなかったらと考えると、とても悲しいとは思う。なにせ、少しは期待したいものだと思うから、小さくてもいいからお祝いをしてもらいたいと思うのが、誕生日というものだろう。

「うーん、まったくわかりません」

 紅茶をもう一口、口の中に広がる味を確認しながら、再び考える。
 しかし、考えて考えてもまったく答えは出てこない。私自身が誕生日というものを知らない所為もしれなかったけど。
 ただ――

「確かにすごく嬉しそうでしたね……」

 記憶に思い出せる、今日のことを告げてきたあの子はとても子供のようにうれしそうな顔をしていた気がする。
 もう一口紅茶を啜ったところで、結構な時間が経っていることに気が付いて、私は腰を上げた。もう紅茶も空っぽになってしまって、何か問題でも起きたのではないかと来賓室から外に出る。
 あの子の部屋は二階の奥だったと廊下を進んでいく、一度角を曲がった突き当りにある部屋がその部屋だった。だから角を曲がってドアの前で待機するメイド数名を見て、どうやら何かあったようだと理解する。
 私の登場にメイドの方々は照らし合わすように互いにアイコンタクトを取る。そして私に状況を話し始めた。
 それに呆れて息が漏れた。本当の手筈なら、来賓室にあの子がやってきて始まることになっていたけど、このままメイドの方々の手を煩わせるのもあれだと思うと、すぐに口が動いた。

「わかりました。あとは私に任せてください」
「いいんですか?」
「はい、それに、今日は元々そういう日ですから。皆さんにも担当されていることがあると思いますし……」

 そう私は告げる。告げたけど、一応私はお客様的な立場なわけで、すぐに了承するとは――

「ではリリス様、あとはお願いいたします」

 思えなかったのに、すぐに私の提案を受け入れてそそくさと去って行ってしまう。これは信頼されていると取ることにして、私は扉をノックした。


973 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:22:43.47S6YpyFGu0 (22/30)

『まだ、まだなの。もう少し、もう少しなの―』

 中から可愛らしい声が聞こえる。耳を澄ませば衣擦れの音もするし、何やらパタパタと歩く音もした。朝からそんなに張り切る必要はないと思うんですが、やっぱり楽しみにしているということなんでしょう。少しだけ笑みをこぼして、私は扉を静かに開ける。中には下着姿で衣装鏡の前でてんやわんやしている子がいた。

「……まだ入って来ちゃダメなの、お洋服選び終わってないのよ」

 鏡に一瞬だけ映った私を確認して、その子はまた試着作業に戻る。
 パーティーの本番は夜だけど、昼間から来賓される人もいる。その時の服を選んでいるみたいだけど、全然決まる気配はなかった。
 だからメイドの方たちは困っていたんですね。まったく本当に子供なんだからと思いながら、私はそこの横に立った。
 私が横に至ったところで、彼女がこちらに視線を向ける。まだ結んでいない髪は私より少しだけ薄い青色で、その毛先にはピンクでとても奇抜で、初めて見た人でも覚えるような色している。そして何よりも男性なら目を釘付けにされそうな大きな胸があって、下着姿なのにそれを隠す事はしてなかった。

「下着姿はよくないですよ」
「なら、リリスが着付けしてほしいの。今日のリリスはピエリのメイドなのよ」

 そう堂々と彼女が言ってきて、その自信満々の顔にクスリと笑うと、私はその解れている止め紐を手に取った。

「はい、それがピエリさんのお望みでしたら……」

 今日の私はピエリさんの専属メイド、それがピエリさんの誕生日を知らなかった私がするべきことで、同時に誕生日プレゼントになるらしい。だから今日一日はピエリさんに振り回されるんだろうなと、内心苦笑した。


974 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:28:12.28S6YpyFGu0 (23/30)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「そろそろ参加される方々がお見えになる時間でしょうか」
「多分そうなの。リリスは着付けお上手なの」
「ふふっ、ありがとうございます。でも、ピエリさんのドレスは綺麗な見た目ですけど、着付けの方法がシンプルですからね」
「そうなの?」
「はい、カムイ様のあの衣装はすごく時間が掛かりますから。他にもカミラ様やエリーゼ様のドレスなんかも着付けが難しいものばかりなので、こういうシンプルなのは結構久しぶりです」

 四着目の淡いピンク色のドレスの着付けを終えて、私は一息ついた。
 ピエリさんの持っているドレスの数はなんだかんだお嬢様ということもあってかなりの量だったりする。さっきまで選んでいたこともあって数は少なくなっているけど、あと六着はピエリさんに着られるのを待っている気がした。

「リリス、どう? ピエリ可愛くなれてるの?」
「そうですね……」

 パーティーということもあって、いつも二つ結びにしている髪は頭の上に纏める形になっている。よく料理をしている時の格好だけれど、二つ結びの時に比べると大人っぽい雰囲気があるからドレスに合うと思った。

(まるでパイナップルみたいだなぁ、なんて言って怒られたことありましたね)

 初めてその髪形を見た時、そんなことがあったなって思いながらクスリと笑うと、その記憶の中と同じようにピエリさんがむくれる。

「ぶー、リリス笑ったの。そんなにおかしかったの?」
「あ、これは違います。あー、でも違わないかもしれません」

 むくれてプリプリと怒っていると髪がゆらゆらと揺れるから、さらにパイナップルっぽく見える。青い外見でも中は子供の夢が詰まっていると思うと、ピエリップルは甘酸っぱい果肉じゃなくて、甘くて蕩ける果肉が入っているのかななんて思った。

「うー、今日のリリスはピエリのメイドなの。だから、綺麗って聞かれたら綺麗って答えるの」
「はいはい、綺麗ですよー」
「今は可愛いか聞いてるの。リリス、ピエリの言ってくれたこと、覚えてないなんて酷いのよ」
「ふふっ、ごめんなさい。それでどうしますか、そろそろお時間ですし、あと一着、できても二着といったところですよ」

 それを聞いてピエリさんはうなり始めた。


975 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:33:45.64S6YpyFGu0 (24/30)

 ピエリさんなりにこれだという服を選んでいるとは思う、すべてを着てから決めたいという思いはあるのだろうけど、やっぱり時間が押していた。選ばれた服のこの中で、一着だけが選ばれるとするなら、その服はすべての服の期待を背負っていくんだろう。正直、私はそういう立場に立つのは真っ平だなって正直に思った。
 そんなことを思った矢先――

「うー、リリスはどれがいいと思う、ちょっと選んでみてほしいの」

 ピエリさんがそんなことを言い出した。
 いやいや、今背負っていくのはまっぴらごめんと思ったばかりなのに。なんなんですか、その私が選んだ服にするという意味にも取れそうな提案は。心の中でも読んでいるのかという視線をピエリさんに向けるけど、彼女は何も悪びれた様子もなく、まだ選ばれていない残り六着の中から選ぶように聞いてくる。流石に辞退したかった。

「あ、あの、さすがに私が選ぶというのは……」
「ダメなの、ピエリが今日のリリスの服を決めてあげたから、今度はリリスがピエリに似合いそうな服を選ぶの。これは命令なのよ」

 えっへんと胸を張るピエリさん、どうやら選ばなければ話が進まないようだった。
 ピエリさんの期待するような瞳に晒されながら、私は六着のドレスに目を通していく。通していくけど、ピエリさんのイメージに合う服というのがあまり無かった。というよりもさっきまでの四着はそれなりにピエリさんだったけど、ここにある六着は私から見てピエリピエリしていない気がした。

「うーん」
「どうなの、リリスはどれがピエリに似合うと思うの?」
「その……」

 目線を六着以外の物へと向けていく、衣装棚には先ほどまで選定されていたけどここに並ぶことが叶わなかったものがいっぱい並んでいて、その中にある一着に視線が引かれる。多分、この色は最初の四着にあるものだと思う、だけど純粋さと雰囲気が違っていた。


976 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:41:20.89S6YpyFGu0 (25/30)

 私の中にあるピエリさんのイメージは子供だった。自分よりも弱いものを殺していく残虐性は子供特有のものだし、あらゆる物事の受け止め方に遠慮がない子供そのものだから、それをイメージしていると純粋さというものを求めてしまう。
 だから、そのヒラヒラと揺れる白いレースの入った純白といっていいドレスがある意味私が抱くピエリさんのイメージそのもので、下着の黒は残虐性、上のドレスは物事に対して遠慮なしに対峙する姿勢と考えると、これかなと手を伸ばしていた。

「……これ、ですかね?」

 その白いドレスを見てピエリさんは無言になった。
 二つの瞳がゆったりとしたまま私を見ている。いい感触かなって思ったところで、その目がいぶかしげなものに変化した。相手に気を遣うことを知らない、思ったことをストレートに言ってくる私の中のピエリさんのイメージそのままに。

「それ、ピエリ全然違うって思ったの」
「そうですか。私の中のイメージだとこんな感じですから、ピエリさんは子供ですから」
「ピエリは子供じゃないの。立派な大人なのよ。お胸見るの、こんなに大きいのよ! それにカミラ様も言ってたの、大きな胸の膨らみは何でもできる証拠って、だからピエリはリリスよりも大人なの!」

 ドレスの上から胸を強調するように手に取ってゆさゆさとする。うん、全く持って子供で殿方が見たら目線に困る様な事だが、雰囲気を大事にする殿方からは情緒がないと鼻で笑われそう。実際私も後者だった。
 ドレスは脱がしていく過程で見える柔肌が良いと、社交界の場で話し合う男たちもいた。それには私も同意見だった。

「はいはい、ドレスに皺が寄っちゃいますから。ふふっ、どうやらピエリさんのお役に立てなかったみたいです」
「そうなの! リリス、こういうことはダメダメなのよ。この中から選んでほしかったのよ」
「ふふっ、そうでしたね。すみません、もう一度考えさせてください」

 そのドレスから手を離して再び六着に目を戻す。ならと残虐性が開花した後に現れる赤を選ぶ。人を殺した時に吹き出る色、ピエリさんにとっての幸福色、汚れていない白いピエリさんを汚していくだろう色。まるで血飛沫を受けたように赤が刺されているそのドレスを選んだ。

「えへへ、やっぱりこれなの。ピエリ血の色大好きなの」
「まぁ、やっぱりピエリさんと聞くと大抵はこのイメージを皆さん持ちますからね」
「でも、リリスは違ったのよ。ピエリ、白なんて似合わないの」
「これでピエリさんと一緒にいる時間、それなりに多いと思っていますし、信頼されてなかったら、こんな役目を与えられることはなかったと思いますから」

 それを聞いて、ピエリさんの顔が少しだけ赤くなった。
 純粋に照れているみたいで、その仕草はやはり子供っぽく何とも言えない可愛らしさがある。そして、それに反比例するように成長している体が不格好に思えて、空気を抜く様に私は小さく笑った。


977 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:45:21.83S6YpyFGu0 (26/30)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おおーっ、ピエリさん。いやいや、今年も一段とお美しくなられたことだ」
「ありがとうなの! 伯爵さんのおひげもこの前より、もっとキュートになってるの」
「ははっ、そう言われたくて朝から入念に仕上げたからね」
「えへへ、でもお腹大きくなってるの。太りすぎなのよ」
「これでも絞った方なのだぞ」
「まだすごく肉汁でそうなの。豚さんと間違えて輪切りにしちゃいそうなの」

 パーティーの来客に挨拶をするピエリさんの後ろで、私は直立不動のままワインを持って待機する。ピエリさんから誰かの場所に行くことはほとんどない、向こうからこちらにやってくるという形だ。
 ピエリさんの子供のような振る舞いを多くの人は知っている。お転婆だ、空気が読めない、ズコズコ言ってくるし、気に入らないことがあればすぐに泣き始めると、大人が一番対応したくないタイプであることは明白で、それを避けているのか話しかけてくる人はほとんどいなかった。
 先ほど豚さんと間違えてと言われた伯爵様は、毎年毎年参加していることもあって、すべて大らかに受け止めている。というか、話をしている間、すごくうれしそうにしていたから、多分至福の時間を味わっているのだと思った。

「では、私はお父様とお話をしてまいりますので、この辺で失礼いたしますぞ」
「うん、パーティー楽しんでってなの。中央の大きなケーキはピエリも頑張ったからぜひ食べてほしいのよ」
「おおっ、それはとても楽しみだ。では……」

 ルンルン気分で去っていく伯爵様を見届けてピエリさんが歩き始めると、私もその後を追って足を進めた。
 足を進めても、多くの人たちは挨拶をするが話しかけてきたりはしない。あの伯爵様の様な方は多くはいないのだということは理解できた。なんというか、祝ってはいるけど、少し寂しく感じる誕生日パーティーだと思った。
 だけど――

「ふふーん。えへへ」

 ピエリさんは思った以上に嬉しそうだった。多分、あの伯爵様は毎年行われているこの誕生日会で話しかけてくる数少ない人の一人なんだろう。それもあって気分が高揚していると考えれば筋が通った。
 接近してくる人がいないからスムーズに会場を移動できるのはいいことで、ピエリさんは中央の配膳テーブルが並ぶ場所にたどり着く。そこには今日のために用意された料理が大量に置かれていて、その中でひときわ目立つのが大きなケーキだった。多分、さっきの話に上がっていたケーキとはこれのことだと思った。


978 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:50:01.05S6YpyFGu0 (27/30)

「リリス、ピエリも手伝ったケーキなのよ。美味しいベリーを入れたから最高の味に仕上がってるの」

 案の定、それをピエリさんは誇らしく私に見せつけてくる。これがピエリさんの魅力だと思う。自分のしたことに自身を持っていること、私はそんなに自信家じゃないから、そんな風に思うことなんてできない。

「ふふっ、ピエリさんは本当に料理が上手なんですね。私じゃとても作れませんから」
「リリスも練習すればできるようになるの。だから、ピエリのお料理いっぱい食べて、覚えるのよ」

 ピエリさんはケーキをカットして小皿の上に乗せると、私の方に向いてくる。そしてフォークで一口分掬って、あ~ん、と差し出してきた。

「ちょ、ピエリさんなにを……」
「早くぅ、リリス食べるのよ」
「これって、立場的に私がやるべきことなんじゃないんですか?」
「え、リリスもしてくれるの?」
「いえ、私だけがすれば――」
「リリス、ピエリの作ったケーキ食べたくないの? ひどい、ひどいの……ひっぐ」
「あー、食べたいです。すごく食べたい、あー、ピエリさんの作ったケーキ食べたいですねー」
「それじゃ、すぐに食べるの。はい、あーんなの!」

 満面の笑みで急かすピエリさん、周りメイドさんたちの視線が一斉に集まっている気がする。というか、仕事しないでいいんですかというくらいに皆が見ている気がした。
 だけど、このまま放置したらピエリさんがまた癇癪を起してしまうし、今日はピエリさんの誕生日なわけで私は覚悟を決める。

「あ、あーん」

 遠慮がちに口を開ける、スーッと入ってきたフォークとケーキが口に入るとベリーの酸味のと甘味が広がる。噛みしめる度にベリーの果肉が弾けて、口の中に広がるクリームの甘味が層になっていく。スポンジも程よい柔らかさと甘味で、口の中に広がる味をしつこくないものへと変えていく。極上ベリーケーキというだけあって、文句なしにおいしかった。

「ど、どうなの? おいしいの?」

 でも、なぜか聞いてくるピエリさんは少しだけ不安そうにしている。なんだか私の知らないピエリさんで、なんでだろうと思った。もっと自信満々においしい?って聞いてくれてもいいのになんて、思いながらすべてを味わって飲み込んで、素直にとってもおいしかったと私は答える。


979 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:52:20.67S6YpyFGu0 (28/30)

 その答えにピエリさんが今日見た中で一番の笑顔を返してくれる。自分の作った料理を褒められてうれしかったということだと思う。なら、それをピエリさん自身も味わうべきと、その手に持った小皿を取ると、フォークで掬ってピエリさんに差し出す。

「それじゃ、今度はピエリさんの番ですね。はい、どうぞ」
「う、うん。あ~んなのー」
「はい、あ~ん」

 ピエリさんは私とは違って躊躇することなくケーキにぱくりとか噛みついた。ちゅるんという音がしそうな感じにフォークから唇を離すと、そのまま残りのケーキも食べさせてと目でせがんできた。

「はい、それじゃもう一口、あ~ん」
「あ~ん。んんー、リリスが食べさせてくれるケーキは格別なのよ」
「誰がやっても同じですよ。ピエリさんのケーキはとってもおいしいんですから」
「ううん、リリスがしてくれる方が一番おいしいの。ピエリ……そう思ってるのよ」
「え?」
「もう、残りも早く食べさせるの!」

 なぜだか、また顔を赤らめるピエリさんを見て苦笑する。照れ隠しのようにケーキを食べさせてと口を大きく開けて、私がケーキを運ぶのを待っていた。口の周りにはケーキのクリームがついていて、ケーキを全部食べさせてすぐにナプキンでその口を拭う。

「んにゅ、りりしゅ……ふにゃ」
「少しだけ我慢してくださいね」
「ふにゅ……ひやっ……んんんーっ」
「はい、綺麗になりました」

 先ほどまで、クリーム塗れの子供だったピエリさんはいなくなって見た目だけは大人のピエリさんが現れる。それと同時にホールの中央に空間ができ始め、二階の踊り場に楽器が多く並び始めた。

「これからダンスみたいですね。ダンスに参加される方々が集まっているみたいですよ」
「……あ! そうだったの! リリス、ここで待っててほしいのよ!!!」

 そう言ってピエリさんは一目散に会場を走っていく。追いかけるべきなのだろうけど、ここで待っているようにと言われた以上、私は動けない。よく見ると、走り始めたピエリさんに合わせて数名のメイドさんがそのあとを追っていくのが見えた。
 何か、私の知らないところで準備が成されているようで嫌な予感がした。そしてそれはすぐ目の前に現れる。


980 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:55:23.58S6YpyFGu0 (29/30)

「じゃっじゃーん。リリス、これ見てなの!」

 そうとても楽しそうにピエリさんが現れる。その身に着けているドレスを見て私はやっぱりそういうことですよねと、溜息を漏らす。
 ピエリさんは白いドレスを身に着けていた。元々選んでいたものじゃない、私が持つピエリさんのイメージで選んだあの白いドレスだ。
 無邪気にそれを見せびらかすピエリさんの姿はやはり無邪気で、その青とピンクの混ざった髪のおかげで白いドレスがさらに際立っている。

「ふふーん、リリスが選んでくれたドレス、とってもヒラヒラしてるの」
「なんで、私の選んだドレスを着るんですか。もっとこう、違うのにしてもよかったのに」
「だって、リリスが選んでくれたのよ。だって、今日のリリスはピエリのメイドさんなの。メイドさんを立たせるのも主人の役目なの」

 どこでそう言ったことを覚えてくるのかわからないけど、つまりは私が選んだドレスを見せびらかしたいということらしくて、なんだかこんな衆人の中に自分が思っているピエリさんのイメージを見せびらかしているみたいで、恥ずかしさを覚えてしまう。
 少しだけ顔が熱くなっているのを感じていると、私は手を引っ張られる。気づけばピエリさんに手を引かれてダンスの行われる場所に向かっているようだった。

「リリスはピエリと踊るのよ」
「え、わ、私ダンスなんて久しぶりなんですよ」
「ピエリも久しぶりだから問題ないの。それに、ピエリはリリスと一緒に踊りたいの」

 演奏が静かに始まる。私は否定の言葉も躊躇の言葉も出せないままにダンスの中心にピエリさんと一緒にいたった。
 伴奏に合わせてピエリさんがステップを静かに刻み始めて、私もそれに合わせて覚えている限りに合わせ始める。私とピエリさんが始めたのをきっかけに、周りの人たちも輪に加わり、まるで大輪の花が開くように人々が動き始めるた。

「えへへ、久しぶりって言ってたのに、リリスうまく出来てると思うの」
「ピエリさんも上手ですよ。本当に久しぶりなんですか?」
「……えへへ、実は違うの。少し前から練習してたのよ。リリスがピエリに付いてこれるか心配なの」

 少しだけ挑発するような笑みを浮かべるピエリさん、だんだんとダンスの難易度は上がっていく。姿勢もかなりきついし、何よりもここから足のステップが情熱的な物になってくる。でも、私はとても楽しかった。
 対面に見えるピエリさんの笑顔は頭上に光るシャンデリアよりも美しく感じるし、自分が選んだドレスも軽やかに舞っている。メイドの役目を任されただけでも、信頼の証だと言えるのに、私の選んだものを身に着けてくれて、尚且つこうやってダンスにも誘ってもらえた。普通のメイドならばこんなに名誉なことはないと思う。

「どうして、そんなに私の選んだものにしてくれるんですか?」
「今日の専属メイドはリリスなの。だからなの、それだけなのよ」

 どこか顔を赤らめて、ピエリさんがそういう。それが堪らなく愛おしくも感じた。
 交わることなんてないと思っていたお父様が憎んだ世界との繋がり、多分私みたいな中途半端な存在にはもったいないほどの物だと思う。
 だから、それを感じさせてくれるピエリさんに今日をめいいっぱい楽しんで貰いたくて、私はそのステップを刻み続けた。
 いくつものダンスを重ね、永遠に続くと思える夜の宴。そう思わせるようにして、盛況のままに誕生日パーティーは終わりを迎えた。


981 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/24(土) 23:58:17.66S6YpyFGu0 (30/30)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「えへへっ、やっぱりリリスは抱き枕に最適なの」

 真後ろから聞こえる声と温かみを感じながら、私は最後の役目たる抱き枕になり果てる。
 誕生日パーティーが終わって、体を清めたりといろいろと物事を行い終えた頃、ピエリさんの部屋に置かれた大きな時計は、今日という日が残りわずかであることを知らせる。
 もう終わりになろうという矢先で、ピエリさんは最後の命令を出してきて、私は人間から竜へと姿を変える。久々になるこの姿、いきなりの変身で体が寒さに慣れていなかったからか、すぐさまピエリさんのいるベッドの中に私は飛び込んでいた。

「ううっ、寒いです」
「寒いの? ならピエリが抱きしめてあげるの、こうやって包み込んであげるから、リリスすぐに暖かくなるはずなのよ」

 ぎゅうっと音が聞こえてくるくらいに、ピエリさんが私を引き寄せる。背中の鰭にピエリさんの膨らみが押し当てられ、その場所がとても暖かくなってくるのがわかった。

「もう、そんなに押し付けないでくださいよ。私、全然ないんですから」
「揉んだら大きくなるってカミラ様言ってたのよ。ピエリがリリスの揉んであげてもいいのよ」

 そう言いながらピエリさんが私のお腹を手で撫でてくる。ピエリさんは私のお腹のことをモチモチポンポンと言っている。それはなんだかたるんでいる気がして、少し嫌な気持ちなのだけど……

「きゅぅ……」

 触られるのは存外嫌いじゃないから、口に出せないでいる。

「えへへ、リリスのモチモチポンポン、とっても柔らかくて暖かくて触り心地がとってもいいの。頬ずりもしたくなっちゃうのよ」

 お腹をサワサワされていると、途端に眠気が増してくる。気持ちがいいから、それに合わせて眠気も歩み寄ってくるのかもしれない。大きく口を開けて欠伸をする。人の時とは違って目尻にまで達している口角もあって、私は大きく口を開いた。

「リリス、とっても大きな欠伸なの……」
「すみません。まだ今日が終わってないのに」
「ううん、いいのよ。リリス、今日はピエリのためにいっぱい頑張ってくれたの。だから、最後はご主人様のピエリがリリスにご褒美を上げる番なのよ」

 そう言って私はピエリさんと向き合う形になる。向きを変えると、そのまま胸に引き寄せられる。石鹸とピエリさんが混じり合った甘い匂いがした。


982 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/25(日) 00:00:51.52VNmWVmvk0 (1/7)

「リリス、温かくなったの?」
「はい、とっても。あ、尻尾……んっ、くすぐったいですよ」
「えへへ、リリスの尻尾足で捕まえちゃったの」

 ピエリさんの足が私の尾鰭を絡めとる。くすぐったいのに暖かて、その所為で私の眠気が急速に力を増し始めていた。

「んっ、……ピエリさん。私、もう、眠くて……」
「そうなの? まだまだ夜はこれからなのよ?」
「ごめんなさい……でも、今日はあと少ししかないから……」
「ぶー、少しはサービスしてほしいのよ」
「今日だけって約束じゃないですか……。それに、ピエリさんの抱き枕になるのが私の最後の仕事だと思ったんですけど……なにか、私にしてほしい事、まだありますか?」

 寝ぼけ眼に私は聞く。ピエリさんの胸の感触とか、股に挟まれた尾鰭に感じる温かみとか、色々と男性だったら眠気を吹き飛びそうなものばかりだけど、実は何度も抱き枕代わりにされていたこともあって、私には態勢がついてしまっていた。
 だから、もう眠気に抗うことが難しくなっている。でも、ピエリさんがあと数分以内にしてもらいたいことがあったら、それくらいならしてあげられるかなって思った。
 それにピエリさんは少しだけ、少しだけ考えて。こんなことを言ってきた。

「わかったの、それじゃリリス。ピエリよりさきに眠っちゃうの」
「……それでいいんですか?」
「そうなの。それだけでいいのよ。今日のリリスはピエリのメイドさんなの、だからピエリの命令守らないとだめなのよ」

 それは多分、疲れ果てている私を思っての事かもしれなかった。なんだか、最後の最後で気を使わせてしまった気がして、少しだけ申し訳ない気持ちになった。

「大丈夫なの、そんな悲しい顔しないでほしいの。ピエリがご褒美あげてるの、だから素直に受け取ってほいいのよ」
「ふふっ、すごいご褒美ですね。それに命令ならしかたないです……」

 一瞬だけ、部屋にある時計に目を向ける。もう針は残りわずかでしかない。それが終わったら、今日の一日メイドは終わり、なら最後の命令に従って私は役目を終えよう。

「ピエリさん……おやすみなさい……」
「リリス、お休みなの……」

 頭を優しく撫でる感触を最後に、私は暖かい夢の中に落ちていった。



983 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/25(日) 00:06:49.04VNmWVmvk0 (2/7)

~~~~~~~~~~~~~~~~


 時計の針が誕生日を通り過ぎた部屋の中で、リリスの寝息が静かに漂ってる。
 胸の中に納まって心地よさそうに眠っている姿を見てると、胸の中が途端に熱くなって大きく深呼吸した。
 今日はずっと心臓が鳴りっぱなしで、それは数日前からずっとのことだった。。

「……リリス、ごめんなさいなの」

 あの日、リリスがピエリの誕生日を知らないことがとっても嬉しかった。何でも言うことを聞いてくれるかもしれないって思って、リリスに誕生日だけピエリのメイドさんになってほしくて、だから今日のことをお願いした。
 リリスはすぐに受け入れてくれて、朝から言われた通りの服を着てピエリの下に来てくれた。メイドのみんなと話し合って、ドレスの事とかも全部リリスが決めてくれるように段取りも組んでた。
 リリスといるととっても楽しくて、時々胸が熱くなって、なのに時々しょんぼりってしちゃう。そして、今はとっても胸がドキドキしていて、リリスの顔が触れている胸がの音が聞こえちゃうんじゃないかって、手が少し震える。
 心地いいけど、なんだか痛い、嫌じゃないけど、好きじゃない。よくわからないものがピエリの中にあった。
 それから逃げだせるかもしれないって、メイドに教えられたことがあって、それをしようって思った。
 だけど、それを誕生日の内に頼めなかった。だって、それを誕生日の内にお願いしたら、多分リリスはすぐにしてくれると思う。リリスは仕事とか使命とか、ピエリが良くわかってないものを割り切ってできる子だと思うから。
 だけど、今日ドレスを選んでくれた時、リリスはピエリが選んだものじゃないものを選んでくれた。ピエリにはとっても似合わないと思ってた白いドレスも、リリスに選ばれたら着たいってすぐに思えた。


984 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/25(日) 00:15:42.41VNmWVmvk0 (3/7)

「リリス……」
 
 抱きしめる手が強くなる。リリスが近くにいるのがとっても嬉しかった。
 ケーキも本当においしいって言ってもらいたかったのはリリスだけ、ダンスを踊りたかった相手もリリスだけ、ピエリはリリスと誕生日を過ごせればそれでよかった。
 だけど、本当にしたいことは誕生日を越えた先にしたかった。だって、誕生日にしたり、リリスに頼んでしてもらったら……。全部、意味のないことになってしまう気がして、それがとっても嫌だった。
 ピエリにとっての誕生日は、今まで欲しいものが全部手に入るものだったのに、これだけはそういう特別じゃない日に欲しいって思った。
 昔のピエリが今のピエリを見たら……、たぶんおかしいって顔する気がする。
 視線を下げると、リリスの顔がある。健やかに眠っている、人の時とは違う竜の時のリリスの顔。でも、どんな顔もピエリにとってはリリスでそれを見るとやっぱり胸がトクリッと音を立てた。目の前が蕩けたみたい、顔は熱くて頭はフラフラする。でも、瞳の中にはリリスがいて、その中に一番はっきり見える場所に、また胸が鳴った。

「リリス……」

 時計の針はもう境界線を越えてるから、魔法はもう使えない。
 誕生日の魔法が解けてるからピエリはただのピエリに、リリスはいつものリリスに戻る。魔法はもともと使えないからこれでよかった。
 少しだけ、リリスの体が震えてる。寒いからかもしれないって体を寄せた。
 一回、二回、三回、もう一度深呼吸して、息を呑む。
 そしてゆっくりと、その柔らかそうなそこに近づいた。


◇◆◇◆◇

 ピエリの誕生日。
 その魔法が解ける24時の先。
 その先のことは、彼女だけの秘密になった……


 ピエリリス誕生日SS 終わり


985 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/25(日) 00:21:33.92VNmWVmvk0 (4/7)

 これにて、今回のスレは終了します。
 ここまで読んでくださった方々ありがとうございました。

 そろそろ、公式さんリリスの誕生日情報を開示して……

 ルーナとピエリの番外は、このスレにおけるピエリとルーナの支援を前提にしているので、そちらを読んでからのほうが、二人の関係性がわかりやすくなると思います。

 来年になったら新しいスレを立てようと思いますので、よろしくお願いいたします。

 最後に、現在のキャラクター関係の一覧を貼り付けたいと思います。 


986 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/25(日) 00:23:50.16VNmWVmvk0 (5/7)

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB++
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメB
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)


987 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/25(日) 00:26:37.02VNmWVmvk0 (6/7)

仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780]


988 ◆P2J2qxwRPm2A2016/12/25(日) 00:52:58.74VNmWVmvk0 (7/7)

 最後に埋めも兼ねて安価をしたいと思います。
 参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 カムイの様子を見に行くキャラクター(支援Aのみ)

・アクア
・ラズワルド
・ルーナ
・カミラ
・エリーゼ
・サクラ
・シャーロッテ

>>995までの合計が多かったキャラクターにしようと思います。
 995の時点で同票がいた場合は>>996のキャラクターになります。

◇◆◇◆◇
 最後に次にやる番外を決めたいと思います。
 これは最終書き込みのものに決まります。

・『ミタマの二頭筋事情』
・『もしサクラ隊がレオンじゃなくてカミラに匿われていたら?』
・『ガンズが笑う時』
・『マキュベス第二幕』
・『リリスの多世界観察日記2』

 この五つのどれかにしようと思いますので、すみませんがよろしくお願いいたします。

◇◆◇◆◇
 
 また、次のスレへの誘導はないと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、また次のスレで……、よいお年を


989以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/25(日) 01:43:04.80hDgErfvSO (1/1)

セレナさん


990以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/25(日) 02:00:46.39eqH95Y5DO (1/1)

カミラ


991以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/25(日) 10:03:40.29/YugKvHNo (1/2)

ルーナちゃん!


992以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/25(日) 16:49:39.95gwGYX6qg0 (1/1)

番外どれもおもしろそう
シャーロッテ


993以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/25(日) 17:00:08.66n5vZ3ZVwO (1/1)

カミラ



994以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/25(日) 17:04:43.68Hb0VRCxao (1/1)

ルーナ


995以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/25(日) 17:07:08.782HbyJpDXo (1/1)

唯一の男であるラズが見たかったなあ
あっちでは散々な目に遭ってるし


996以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/25(日) 22:56:17.25/YugKvHNo (2/2)

全員1000狙いかこれww
踏み台ガンズ


997以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/25(日) 23:32:27.55z0CaUZKSO (1/1)

サクラifで


998以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/26(月) 00:14:08.02MacTrWhW0 (1/1)

多世界観察日記2


999以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/26(月) 06:28:12.72uigeagODO (1/1)

サクラがカミラに…の話で


1000以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/12/26(月) 08:50:28.571Dsb+s69o (1/1)

手堅くサクラifで
今年はありがとー楽しかったです