翌日　学校プールにて

堀川「ワカメちゃーん！」

ワカメ「あ…堀川くん」

堀川「ワカメちゃんがプールの授業を休むなんて珍しいね。ワカメちゃんってプールの授業大好きだった筈なのに」

ワカメ「え…うん」

フネ（回想）『生理が治まるまではプールの授業はお休みするんだよ。身体に毒だからね』

ワカメ「ちょっと今日は調子が悪くって…」

堀川「熱でもあるの？」

ワカメ「そういう訳じゃないんだけど…」

堀川「じゃあどこが悪いの？」

ワカメ「もう放っておいてよ…」

堀川「もしかして人に言えない程具合が悪いの？」

ワカメ「お願いだから放っておいてよ…」

堀川「僕に出来る事なら何だってするから素直に話してよ。一体どこが悪いんだい？」

ワカメ「勘弁してよぉ…」

磯野家　

フネ「ワカメ、大丈夫かねぇ」

サザエ「そういえば昨日ワカメに初潮が来たんだっけ？」

フネ「一応昨日ナプキンを渡しておいたし、生理の事やナプキンの使い方もちゃんと説明したけど色々と心配でねぇ」

サザエ「確かに他の子達より生理が来るのが早めだったから色々と心配になるのもわかるわ。でもワカメなら大丈夫よきっと」

タラオ「ママ、生理ってなんですか？」

サザエ「タラちゃんはまだ知らなくていいのよ」

タラオ「気になるですぅ」

フネ「タラちゃんが大人になったらお婆ちゃんが教えてあげるよ」

タラオ「今知りたいですぅ」

フネ「あらあら、困ったねぇ」

ｶﾞﾗｯ

ワカメ「ただいま…」

サザエ「おかえりなさい」

フネ「生理は大丈夫だったかい？ナプキンは一人で上手く使えたかい？」

ワカメ「全然大丈夫じゃないわ…ナプキンはちゃんと使えたけど、今日プールの授業を休んだら堀川くんに変に思われた」

フネ「おやおや。きっと堀川くんは保健体育の授業をまだ受けていないのね。生理の事を知らないのも無理はないよ」

ワカメ「だとしてもデリカシーがなさ過ぎて困るわ！」

フネ「あの年頃の男の子なんてそんな物だよ」

サザエ「上手く誤魔化すしかないわね」

ワカメ「でも堀川くん、一度気になったら意地でも調べる子だから色々心配だわ…」

サザエ「いくら堀川くんでも流石に女の子の生理の事を気にするなんてないでしょ」

ワカメ「そうだといいけど…」

タラオ「ワカメお姉ちゃん。生理ってなんですか？」

ワカメ「タラちゃんは少し黙ってて！」

タラオ「うわーん！酷いですぅ！」

フネ「こらワカメ！タラちゃんを泣かせちゃ駄目だよ！」

ワカメ「だってタラちゃんが…」

サザエ「きっと生理で気が立ってるのね。その内慣れるからそれまでの辛抱よ」

ワカメ「うん…」

翌日　学校プールにて

堀川「ワカメちゃん、今日もプールお休みなの？」

ワカメ「うん…調子が悪くて」

堀川「ワカメちゃんが二日も連続でプールの授業を休むなんてやっぱり変だよ」

ワカメ「いいから、放っておいて…」

堀川「でもやっぱり僕心配だよ。一度病院で診てもらった方がいいんじゃないの？」

ワカメ「放っておいてって言ってるでしょ！」

堀川「わ、ワカメちゃん…？」

ワカメ「もう何なのいつもいつも！この前だって私の家に勝手に入って家の床下でおたまじゃくし育ててたし」

ワカメ「その前だってヒヨコにわかめって名前付けて卵産んだら私に食べさせるとか言ってたし！本当いつも何なの！？いつもいつも変な事ばかりして、いい加減にしてよ！」

堀川「ワカメちゃん…？一体何をそんなに怒っているの？」

ワカメ「何でもないから放っておいてよ！」

堀川「ワカメちゃん…」

放課後　磯野家庭にて

カツオ「今日もいい天気だなぁ」

堀川「お兄さーん！」

カツオ「堀川くん。また勝手に人の家の庭に入ってきたのかい？ちゃんと玄関から入ってきてくれよ」

堀川「すみません。今度からは見つからないようにします。それはそうとお兄さんに聞きたい事があるんですけど…」

カツオ「一体なんだい？」

堀川「ワカメちゃん、最近変なんです。大好きなプールの授業を二日も連続で休むし、なんか怒りっぽくなってるし…」

カツオ（なるほど。この前の赤飯はそういう事か…）

堀川「それにいつも違ってちょっと変な匂いもするし…」

カツオ「あー、堀川くん。その事だけど…」

堀川「お兄さん！やっぱり何か知ってるんですか！？」

カツオ「堀川くん、100円あげるからこの件からは手を引いてくれ」

堀川「え…でも…」

カツオ「ワカメの名誉の為なんだ。短ければ3日。長ければ10日もあればこの件は治まるだろうからこれ以上詮索しないでくれ。わかったね？」

翌日　学校の教室にて

堀川「ワカメちゃん、昨日僕ワカメちゃんの様子が最近おかしいってお兄さんに言ったら百円渡されたんだ」

ワカメ「堀川くん。その事を詮索するのはもうやめて」

堀川「でもあのお兄さんが僕におこずかいをくれるなんておかしいよ。ワカメちゃん、一体僕に何を隠しているんだい？」

ワカメ「何も隠してなんかいないって！私ちょっとトイレ行ってくるから！」

堀川「あ、ワカメちゃん…！」

堀川（あんなに取り乱すなんて…これは絶対に何か裏がありそうだ…これは探偵堀川の出番だな）

堀川（そういえばトイレと言えば、最近ワカメちゃんのトイレの時間が長いなぁ）

堀川（ワカメちゃんは基本的に授業中にトイレに行く子じゃないのに、最近は授業中でもトイレに行く事が多いし）

堀川（休み時間中にトイレに行く時だって、普段なら時間に余裕を持って行ってたのに最近は休み時間が終わるギリギリに戻ってくる事が多い…）

堀川（となると秘密はトイレにあると見て間違いないなあ…）

女子トイレ

堀川（ワカメちゃんが使ったトイレを調べればきっと何かわかる筈だ。調べよう）

ミユキ「ちょっと堀川くん！ここ女子トイレだよ！？」

堀川「うん。知ってるよ」

スズ子「男の子なら男子トイレに行ってよ！」

堀川「トイレを使いたい訳じゃないんだ。ちょっと調べ物があってね」

ミユキ「いいから出てってよ！」

堀川「調べ物をしたら出てくよ」

スズ子「駄目だこいつ話が通じない。先生！誰か先生呼んで！」

堀川「わー！やめてよー！先生が来たらワカメちゃんの秘密が暴けないよー！」

放課後

堀川（いやぁー、酷い目にあったなぁ）

堀川（まったく、男の子が女子トイレで調べ物をしたくらいであんなに怒られるなんてどうかしてるよ）

堀川（それにしてもうーん、どうしたらワカメちゃんの秘密を解明出来るんだろう…）

堀川（なんとかしてワカメちゃんが使った後のトイレに入れればなぁ…）

堀川（あ、そうだ！）

堀川（ワカメちゃんの家でトイレを借りればいいんだ！）

堀川（そしたらきっとワカメちゃんの謎が解き明かせるぞ！くふふふふっ！）

磯野家宅

堀川（さーて、トイレはどこかなぁ）

ワカメ「堀川くん！？なんでこんな所にいるの！？」

堀川「ちょっと調べも…じゃなくて、トイレを借りたくってね」

ワカメ「勝手に家の中に入らないで！」

堀川「ごめん、今度から見つからないようにするよ」

ワカメ「まあ！」

堀川「それはそうとワカメちゃん、トイレはどこにあるの？」

ワカメ「あっちだけど、勝手に家に入らないでよ。家に入るならちゃんと断り入れて玄関から入ってよ」

堀川「わかってるよ。次からは見つからないようにするよ」

ワカメ「だからそういう事じゃなくて…」

堀川「ごめん、今さっき自販機でジュースを買って飲んだからもう洩れそうなんだ！ワカメちゃん、トイレ借りるよ！」

ワカメ「あ、堀川くん！もう！」

磯野家茶の間

ワカメ「もう！堀川くんの態度は本当に困るわ！」

フネ「一体何が困るんだい？」

ワカメ「いつも変な事ばかりするし！今だって勝手に家の中に入ってきたし非常識よ！本当に迷惑！」

サザエ「迷惑だなんて友達にそんなこと言っちゃ駄目よ」

フネ「サザエの言う通りだよ。堀川くんくらいの年の子は好奇心旺盛なんだから、勝手に家に入るくらい多めに見てやりなさい」

ワカメ「好奇心旺盛以前に不法侵入は普通に犯罪でしょ！」

サザエ「まあ！友達を犯罪者呼ばわりするなんてなんて子なの！」

フネ「私はあんたをそんな子に育てた覚えはないよ！」

ワカメ「だってそうでしょ！いつもいつも堀川くんは変な事ばかりしてるのになんで誰も疑問に思わないよ！？」

ワカメ「壁の染みを弟だって言ったり、夜中に電話かけてきたり、お兄ちゃんに切手舐めさせようとしたり、自販機に抱きついたりしてどう考えても頭おかしいでしょ！」

フネ「きっと生理で気が立ってるのね。でも直に慣れるよ」

ワカメ「違うわよ！」

堀川『うわああああああー！』

サザエ「この声は」

フネ「堀川くんだね」

堀川「ワカメちゃん！大変なんだ！トイレを漁ってたらこんな物が…」

ワカメ「堀川くん、その手に持ってる物って…」

堀川「最近ワカメちゃんの様子がおかしくって、トイレの時間が長いからトイレに何かあるって思ったんだ！」

堀川「それでトイレの中を調べたら、中にあったゴミ箱みたいな物の中からワカメちゃんの匂いがしたから調べたんだ！」

堀川「そしたらこんな血のついたガーゼのような物がたくさん入っていたんだよ！ワカメちゃんは今までこれの事を隠していたんだね！」

フネ「あらあら…」

堀川「毎日こんなにたくさんの血が出て来るなんてただ事じゃないよ！こんな病気聞いた事がないよ！今すぐ病院に行って治してもらうべきだよ！」

ワカメ「ほ…」

堀川「ほ…？」

ワカメ「堀川くんなんて大っきらい！うわーん！」ﾀﾞｯ

堀川「あ…ワカメちゃん…」

サザエ「あらあら」

堀川「お姉さん方も笑ってる場合じゃないですよ！ワカメちゃんがこんな酷い病気に掛かってるんですよ！はやく病院に連れていくべきです！」

フネ「病気っていうか…」

サザエ「ねぇ…？」

堀川「毎日トイレに行くたびにこんなに血が出て来る病気なんて、一体これはなんて言う病気なんですか？」

タラオ「生理ですぅ」

堀川「生理？病名がわかってるのなら早く見てもらわないと！」

フネ「いいえ、生理は病院で診てもらう必要はないんだよ」

堀川「何言ってるんですか！？はやく治さないとワカメちゃんが…！」

サザエ「堀川くん、保健体育の授業は確かまだならってなかったわよね？」

堀川「ええ…そうですが…」

フネ「いいかい？生理ってのはね…」

夕食時　磯野家茶の間

一同『あははははは！』

ワカメ「……」

波平「それにしても堀川くんには毎度驚かされるな」

マスオ「堀川くんの年じゃまだ保健体育の授業はやってない筈ですからねぇ」

サザエ「にしても血のついたナプキンを持ってくるとは思わなかったわ」

フネ「さぞビックリしたでしょうねぇ」

カツオ「堀川くんは好奇心旺盛だからねぇ…本当いつも困るよ」

ワカメ「……」

マスオ「ワカメちゃん、さっきから黙ってるけどどうかしたのかい？」

タラオ「具合でも悪いんですか？」

ワカメ「皆どうかしてるわ！ご飯食べながら私の生理の話を笑いながらするなんて、デリカシーがないにも程があるわ！」

フネ「こらワカメ、折角皆で楽しく談笑してるのになんて口のきき方をするの！」

ワカメ「もう皆なんか知らない！うわーん！」

サザエ「ああ、ワカメ！」

タラオ「ワカメお姉ちゃん、泣きながら部屋に籠っちゃったですぅ」

マスオ「あのくらいの年頃の子は気難しいですからねぇ」

波平「左様」

フネ「きっと生理で気が立ってるだろうね」

カツオ（やれやれ…どうやらまともなのは僕とワカメだけのようだな）

翌日　通学路

堀川「ワカメちゃーん！」

ワカメ「……」

堀川「ワカメちゃん？」

ワカメ「……堀川くんとはもう話したくない」

堀川「ごめんよワカメちゃん。あの後ワカメちゃんのお姉さんと御母さんから生理の事をちゃんと聞いたんだ」

ワカメ「もういいから黙ってて…」

堀川「ワカメちゃんはどこも悪くなかったのに、病気だなんて言ってごめんよ」

堀川「それでね。僕、お詫びの品を持ってきたんだ」

ワカメ「お詫びの品？」

堀川「薬局の店員さんに聞いたら子供用のナプキンもあるって言ってたからそれを買ってきたんだ。よかったら使ってね！」

ワカメ「……」

堀川「ワカメちゃん？どうかしたの？」

ワカメ「ほ…」

堀川「ほ？」

ワカメ「堀川くんの馬鹿！大っきらい！」

堀川「そんなぁー、ワカメちゃーん！」


完

見てる人いるかわかりませんがお付き合いしてくれてありがとうございました
ちなみに私は堀川くん回だとヘイキチ回が一番好きですが二番目に好きなのはヒヨコのわかめ回です