1 ◆R5j2Ndo0Hc2015/08/14(金) 15:48:38.09qTGx1QWDo (1/1)


○このスレは所謂、京太郎スレです

○安価要素はありません

○設定の拡大解釈及び出番のない子のキャラ捏造アリ

○インターハイ後の永水女子が舞台です

○タイトル通り女装ネタメイン

○舞台の都合上、モブがちょこちょこ出ます

○たまにやたらと重くなりますが笑って許してください

○雑談はスレが埋まらない限り、歓迎です

○エロは(本編には)ガチでないです





【咲ーSski】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」【永水】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1392206943/

【咲―Sakj】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」春「そのに」ポリポリ【永水】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396054628/

【咲】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」小蒔「その3ですね!」【永水】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402850032/

【咲】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」初美「その4なのですよー」【永水】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410530733/

【咲】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」巴「その5ね」【永水】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422886379/

【咲】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」霞「その6ね」【永水】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433655968/

【咲】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」明星「その7まで来ましたね」【永水】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437208851/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439534918



2以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/14(金) 15:59:54.90zGGm/tN60 (1/1)

立て乙。


3以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/14(金) 16:03:16.94XRcFMHlxo (1/1)

立て乙です


4以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/14(金) 16:06:47.15QCVwRuEDO (1/1)

今回の8スレ目で永水の皆が全員スレタイに登場したなぁ……次スレのスレタイはどうなるのか


5以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/14(金) 18:55:43.20Jvi3IM3go (1/1)

たておつ


6以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/14(金) 20:16:12.097tGHH2NH0 (1/1)

くそ なんぽっぽがボツで焼身の俺を誰か  誰かスクッテー


7以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/14(金) 20:22:52.04TcXMtq0So (1/1)

成仏しろ


8以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/14(金) 21:22:37.84EdMEFVmvo (1/1)

>>6
○んぽっぽに見えた訴訟


9以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/14(金) 21:43:13.81tivAJIjG0 (1/1)

>>8
俺は新保さんコピペを思い出すが

まあ俺もなんぽっぽ派だったけど
サークルクラッシャーが見られると聞いて


10以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/14(金) 22:25:16.14XInA8cIE0 (1/1)

サークルクラッシャーって憧vs淡の方?それとも男性恐怖症の憧vs京太郎をフッた和の方?


11以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/15(土) 02:29:49.44qIIEpLiOo (1/1)

女の子だけで仲良くやってたところに現れた「俺、恋愛とか苦手で」とか言い出す金髪長身イケメンってことじゃないの
さーて何角関係になるのかなー(白目)


12以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/15(土) 18:15:14.16lgqYIwfx0 (1/1)

もうあれだな 「須賀くん? いい人だけどないよね~」 が  「す スガくん? ないよねぇ~(チラチラ 周りをけん制」
「ないない もっと見る目もてよ(ギン! 威嚇する眼」
東西南北中央で冷戦勃発ですよ




13以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/17(月) 12:10:09.074knFplSEo (1/1)

立て乙です


14以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/17(月) 21:16:17.31PEtnuGj0o (1/2)

前スレですが心配させてごめんなさい
別にやりたくない訳じゃないですし、久しぶりの安価スレを私も楽しみにしてるのですが、この前から書いてもいない内容に拒否反応を示す人たちがいたので
そういう人が流れこんで雰囲気悪くなったら嫌だなーと思ってたのですが、自分の心に従って書く事にします(´・ω・`)

と言う訳で件の息抜きスレー
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439813518/

もし、拒否反応を示す人がいても、基本的にNGで対処してくださると嬉しいです


15 ◆R5j2Ndo0Hc2015/08/17(月) 21:16:45.34PEtnuGj0o (2/2)

酉外れてた…(´・ω・`)恥ずかしい


16以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/17(月) 21:21:33.93V2Bm8fVTo (1/1)

そういう一言が余計なんだと思うが……。それも味だろうから別にいいんだけど


17以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/17(月) 21:35:15.68tfFn6tbg0 (1/1)

前スレでgdgd言ってた連中は正直鬱陶しかったからイッチがイライラするのもしゃーない


18以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/17(月) 23:19:33.88TeSjxPnz0 (1/1)

あのな、1に対して良識とか空気読めとか求めすぎじゃね。俺達は不特定多数で好き勝手に意見、感想、文句言っててそれをほとんど1に許容させてる。
対して1はSSを書きレスをし、バカをスルーしなきゃならない。それも独りでだ。
万歳!とか信奉してるわけじゃない。俺らは一人一人で書き込んでたまたま、負の意見やDQNが束になったとしても、1にとっては1対1じゃなく1対多数になるんだから、負担を考えると1の方が圧倒的だろ?  指摘とか文句とか言う前にまず謙虚になるのは俺達だと思うよ。俺は今回の空白が結構心配だよ



19以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/17(月) 23:32:39.983N4sS7PE0 (1/1)

>>18
言ってることは正論かもしれないが長いしそれじゃ誰も見てくれないよ
せめて区切って改行しないと

こういう支離滅裂な批判は人気スレの宿命ってところもあるから、そこらへんは>>1も経験豊富(意味深)だしある程度は割り切ってるとは思う
でも結構人間らしい(1日で書く分量は人間らしいとは言っていない)人という印象だから、むしろニコニコしてストレス溜め込み続ける人よりはいいなあ
そういう人のほうがエタりやすい気もする

結論としてはどうしても言いがかりに近い批判をする人もいるから、そこに油注いでもしょうもない
だからできることがあるとすれば、今回みたいに>>1が落ち込んでる?時に応援することぐらい


20以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/18(火) 01:13:47.08dhbXGzb7o (1/1)

前スレ後半はアレだったからな
しかし見る限り悪意はなさそうで頓珍漢なだけっぽいし
多少言ってもいいんじゃねとはおも


21以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/18(火) 02:26:16.05ous8ntDSo (1/1)

夏だねえ
イッチが雰囲気悪くなるのが嫌って言ってるんだから、無駄な雑談を長引かせるのはこの辺でやめとこうや
気分よく筆が乗って書かれた京子ちゃんとドMはっちゃんを俺は待っとるよ


22以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/18(火) 13:15:12.263bZ5zTI5o (1/1)

>>14
気にしないほうがいいで


23以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/18(火) 21:33:15.387WRNx3evo (1/1)

嫌なら見るな黙って去れ


24以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/24(月) 10:00:44.65rqdVjniH0 (1/1)

とりま保守


25以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/31(月) 23:40:20.14YOaeTRMAO (1/1)




26以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/01(火) 01:07:02.34mA5lGBvuo (1/1)




27以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/01(火) 08:20:37.45ueh7ENnwO (1/1)

拉致被害者と喜び組のラブコメにしか見えなくなってきた


28 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/08(火) 21:05:37.91nSSmqQiUo (1/1)

あちらでも言いましたが、クリスマススレにお付き合いしてくださった方々、本当にありがとうございました
お陰様で一ヶ月間楽しい時間が過ごせて、息抜きも十分出来たと思います

京子スレの更新意欲もムクムクと出てきたので、今日からこっちの更新に戻ります
まだちょっとしか書けていないので投下そのものはもう少し先になると思いますが、もう少しだけお待ちくださいませ(´・ω・`)極力早めに投下出来るよう頑張ります


29以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/08(火) 21:09:46.67nmP/Eoaro (1/1)

ういー

こちらも楽しませていただきましたのよー


30以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/08(火) 21:27:43.84ZXsEYmtcO (1/1)

とりあえず、クリスマススレで思った事
>>1の咲ちゃんはいつも病んでる


31以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/08(火) 22:37:51.28Oejey2IDO (1/1)

王様ゲームの咲ちゃんは病んでなかったはず……変態なだけで


32以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/08(火) 22:41:15.37xKcWRK+k0 (1/1)

いつも気付いたら安価出てて安価参加出来んかった...


33以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/08(火) 22:45:27.74S2r5Rn6m0 (1/1)

ここの咲ちゃんは病むべくして病んだからセーフ
他の咲ちゃんは…うん…


34以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/08(火) 23:30:36.35Tg18I/L40 (1/1)

結局三回でED組しかED見れなかったのが残念。
他の可愛さも凄かったがために特に。


35以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/09(水) 01:01:21.13Gr+d7PjQO (1/1)

向こうも楽しかった。
咲さんがスマホとか色んなガジェットを使えるようになるなんて愛の力だね(白目)


36 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/09(水) 21:39:00.35ppBZmF45o (1/1)

ぶっちゃけ私ももっと色んな子のエンディング書きたかったんですけどね
ユキとか初めて書いたけど思いの外書きやすかったし、あっちの聖母美穂子のエンディングとかもう色んな意味でどうしてやろうかとぐへへと考えてました
他のリーチ掛かってたヒロインも最終コミュの内容からエンディングまでちゃんと考えてたんですが…まぁ、スレの残りには勝てなかったよって事で
多分、京子スレが完結するまでにもう一回くらい息抜きしたくなると思うんで、その時、また違うスレで書けなかった分のアイデアをぶん投げたいと思ってます

またこっちの投下ですが、多分、今のペースだと土曜日には投下出来るんじゃないかなーと…
もしかしたら金曜日になる可能性もありますが、一応、予告としては土曜日としておきます(´・ω・`) Qつまり? → A短い


37以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/10(木) 00:27:15.067DJtHwRdo (1/1)

おお、他の子のエンドも書いてくれるとはありがたい。週末も含めて楽しみだ


38以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/10(木) 09:03:17.68NwMYbNGKo (1/1)

キャップと由暉子はレスもたくさんついてたし人気あったね


39以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/10(木) 09:41:50.40fMO7+7DeO (1/1)

健気だった塞さんも見てみたいね


40以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/12(土) 20:31:00.87xMdarI7L0 (1/1)

なんで咲さんは魔王系ヒロインなんてニッチなのになってしまわれたのか・・・
照はいくら麻雀が人外でも微笑ましいポンコツ系ヒロインなのに・・・


41以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 00:09:04.23QpQfV9wpO (1/1)

(あぁ、また社畜ってんだな>>1...)


42以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 00:19:31.0504vm+86IO (1/1)

SWは来月になりそうやんな・・・


43 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 00:36:13.52r1YbBt8Fo (1/34)

社畜ってましたよ(白目)
今帰ってきたのでちょっと今から見直しして投下出来るようにします…(´・ω・`)待たせてごめんなさい…


44以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 00:51:21.71ohzkVpnpo (1/1)

おつかれー


45以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 00:59:20.68PxRuXmZIo (1/2)

乙ー


46 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:53:24.43r1YbBt8Fo (2/34)

今回は短くて本当に良かったでござる(´・ω・`)ちょっと突貫だけど見直し終わりましたの
今から投下していきまーす



47 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:53:51.36r1YbBt8Fo (3/34)


………


……






―― 久しぶりに腕を通した永水女子の制服は思ったよりも違和感があった。

夏休み前はほぼ毎日、着てたとは言え、ここ一ヶ月は触れさえしていない。
インターハイの最中も巫女服で過ごしてきた俺は、制服をずっとタンスの中に放置していたのだ。
その所為か、久しぶりに外を通した制服からは、微かな違和感を感じる。
居心地の悪さとはまた違うその感覚は、今まで一度も感じた事のない独特なものだった。

京子「(まぁ、それも一週間もすればなくなるだろうけれどさ)」

多分、それは俺の制服が巴さんに洗濯されたからだ。
シワ1つ許さないほど丁寧なアイロン掛けと糊付で、今の俺の制服は新品同然になっている。
買った時と殆ど変わらないそのコンディションも、一週間もすればなくなるはずだ。
その頃には制服を着ると言う事にも慣れているはずだし、違和感が長続きするという事はない。



48 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:54:22.84r1YbBt8Fo (4/34)


湧「…いてなぁー」

小蒔「ですねー…太陽さんも頑張り過ぎです…」

明星「まぁ、夏休みが終わっただけで、まだ夏が終わった訳ではありませんし」

春「残暑はまだまだ続く…」

……そんな事を考える間にも夏の強い日差しが俺達に降り注ぐ。
ギラギラとしたその激しさは道路に生えた木々が生み出す木陰の中でも、はっきりと伝わってくるほどだった。
夏休みが終わった時に、この道を通った時よりも、今の方が遥かに暑くなっている。
こうして歩いているだけでもジットリとした汗が背筋から流れていくくらいだ。

京子「(でも、顔だけは涼し気なものにしとかないと)」

しかし、俺はそれを顔を出す訳にはいかない。
俺の顔は化粧によってその雰囲気を大きく変えているのだから。
ここで顔から汗を流せば、どうしても化粧が崩れ、素の顔が露出してしまう。
それを防ぐ為にも汗で崩れにくい化粧品を選んではいるが、影響を完全に遮断出来る程じゃない。
俺の正体が周りにバレないようにするには、やっぱり汗を流さないという根本的な対策が一番だった。



49 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:54:52.80r1YbBt8Fo (5/34)


春「…京子、大丈夫?」

京子「心配してくれてありがとう。私は大丈夫よ」

そこで春が俺の事を心配してくれるのは俺の装備が彼女たちよりも多いからだろう。
身体の線を女性寄りにする特別製の下着は俺の身体を普通以上にムシムシとさせるのだから。
出来れば今すぐこれを脱ぎ捨てたいくらいだが、お屋敷の外でそれは出来ない。
俺に出来るのは汗でさらに蒸れていく感覚を我慢しながら、永水女子へと急ぐ事だけだ。

湧「げんにゃあ?」

京子「えぇ。まぁ、ちょっとは暑いけれど…」

湧「じゃっどん、キョンキョンはひとっも、暑そうに見えんよ」

小蒔「そうですね。全然、暑くなんてありませんって感じです」

明星「…ホント、良くそこまで顔を涼し気に出来ますね」

京子「ふふ。やせ我慢だけれど、ちょっとしたコツがあるのよ」

その辺のコントロールなんかも、俺はハギヨシさんに教わっている。
彼曰く、真の執事は何時如何なる状況でも、混乱や蝋梅を覚えてはいけないらしい。
主人の為、常に最高のパフォーマンスを発揮する為には高いレベルのセルフコントロールが必要だ。
俺にそう教えてくれたハギヨシさんにはまだまだ及ばないけれど、こうして顔汗を抑える事くらいは俺にも出来る。



50 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:55:59.84r1YbBt8Fo (6/34)


依子「ごきげんよう、京子さん達」

京子「あ、依子お姉さま」

そこで俺達に近づいてくるのは俺とスールの契を結んでくれた依子お姉さまだった。
こうして皆と話している間に永水女子にも大分、近づいたからだろう。
周りには俺達と同じ制服姿の女の子達がちらほらと増え始め、あちこちで挨拶の声が聴こえる。
特に依子さんの人気は凄まじく、こうして俺達に近づいてくる間にも何人もの女生徒と挨拶を交わしていた。

依子「一応、電話でもお伝えしましたが、インターハイ準優勝おめでとうございます」

依子「生徒会長として、そして何より京子さんのシスターとして私も鼻が高いですわ」ニコ

京子「ありがとうございます、依子お姉さま」

京子「依子お姉さまに少しでも喜んでもらえたなら私も嬉しいです」ニコ

残念でしたわね、と依子さんは言わない。
その辺りの事は東京にいた頃、もう聞いているのだから。
代わりに今の彼女は俺達が掴み取った成果を心から喜んでくれている。
まるで我が事のように誇らしそうな笑顔を見せてくれる彼女に俺もまた笑みを返した。



51 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:56:30.02r1YbBt8Fo (7/34)


依子「…本当にそう思ってくれていますの?」ジィ

京子「えぇ。勿論です」

京子「相手を思う気持ちは私、依子お姉さまにだって負けるつもりはありません」

依子「…それなら良いのですけれど」

京子「どうかしました?」

何処となく歯切れの悪い依子さんに、俺はそう踏み込む。
俺の知る彼女は冗談を言う事も少なからずあるが、もっとハッキリとした言葉を好む人なのだから。
ジャブのような言葉から、こうして相手を探るようなやり方なんて殆どしない。
特にスールと言う絆で結ばれた俺にとっては、もっと直接的で積極的な接し方をするはずなんだけれど…。

依子「…最近、京子さんは電話を掛けても、かけ直してくれないんですもの」

依子「忙しいのは分かりますが、そうやって蔑ろにされるとやっぱり傷つきますわ」

依子「京子さんは私の事なんか忘れてしまったんだと枕を濡らした回数は一度や二度ではありません」

京子「それは…」

…そうか、依子さん、アレからも色々と連絡くれていたのか。
彼女と話してた時の俺は色々と沈み込んでいたし…きっと心配してくれていたんだろう。
でも、結局、アレから俺のところに携帯は戻ってこなくて…当然、依子さんの連絡も届いてないんだよな。
アレから霞さん達と新しいのを買いに行ったけれど、前のアドレスや番号はまったく無関係なモノになってしまったし…。
依子さんだけじゃなくて他の友人達にも携帯を変えた事を俺はまだ伝えられてはいなかった。



52 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:56:58.07r1YbBt8Fo (8/34)


小蒔「ち、違うんです、お姉さま」

小蒔「京子ちゃんは決してお姉さまの事が嫌いになったんじゃなくって…」

小蒔「その、京子ちゃんは全然、悪くなくて、悪いのは私達で…」

でも、それを依子さんにどう伝えれば良いだろうか。
そう思って言葉を詰まらせる俺の前で小蒔さんが必死に擁護してくれる。
一生懸命、誤解を解こうとする彼女の声は辿々しく、そして、強い気持ちが篭ったものだった。
そんな彼女の姿に俺も嬉しくなるが、さりとて、ここで小蒔さん任せにしている訳にはいかない。
依子さんがこうして疑問を投げかけているのが俺である以上、誤解を解くのも俺でなければいけないのだから。

京子「…すみません。実はその…色々と理由があって携帯を突然、手放す事になってしまって」

京子「データやその他を移す暇もなく新しい携帯になったので、連絡も出来なかったんです」

依子「…本当ですの?嘘じゃありません?」

依子「私の事が嫌いになって適当な事を言っている…なんて事はないんですの?」ジィ

京子「そんな事あるはずないじゃないですか」

京子「依子お姉さまは私にとって唯一無二の人ですよ」

京子「適当な事など言えるはずがありません」

春「…」ムッ

明星「…」ジトー

……何故か、俺の背中からすっげええええ不機嫌そうな視線が突き刺さっている気がする。
まぁ、唯一無二はちょっと言い過ぎかもしれないけれど、それでも俺にとって依子さんは大事な人なんだ。
理由があるとは言え、そんな彼女に対して盛大な不義理を行ったのは事実であるし、恥ずかしいと躊躇してはいられない。
こうして疑念を口にしている依子さんの信頼は、俺の羞恥心よりもよっぽど得難いものなのだから。



53 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:57:30.23r1YbBt8Fo (9/34)


依子「では、京子さんはどうやってそれを私に証明してくれますか?」

京子「え?」

依子「勿論、私の事を大事に思ってくれているんだと証明してくださいますわね?」ジィ

京子「え、えぇ。勿論です」

……まさかそんな話になるとは。
でも、逆に考えれば、これはチャンスだ。
こうして俺を試そうとしているって言う事は、依子さんの中で、俺を信じたいっていう気持ちが芽生え始めている事でもあるんだから。
ここで依子さんの眼鏡にかなうような証明をすれば、彼女と何時も通りの関係に戻る事が出来る。
それは俺の躊躇いよりもずっと大きく、頭の中で思考をグルグルと動き始めた。

京子「(ただ…問題はそれをどうするかだよな)」

京子「(幾つか方法が思い浮かぶけれど…でも、それは今の状況にはあまり適しているとは言えない)」

京子「(今、俺たちがいるのは、永水女子への通学路なんだから)」

京子「(周りに人が…しかも、同じ学校の生徒がいる中であまり大胆な事は出来ない)」

京子「(その中で依子さんの信頼を取り戻せるような行動…それは…!)」グッ

依子「………ふふ。なんちゃって」ニコ

京子「え?」

そう結論を出した俺の前で依子さんはニコリと花咲くような笑顔を浮かべた。
何処かイタズラっぽいその笑みの中には、さっき俺に漏らしていたような疑念はない。
あるのはただしてやったと言わんばかりの満足感と微笑ましさのみ。
まるで今までの事が依子さんの思い通りであるようなその表情に、俺は彼女のイタズラにまんまと引っかかった事を悟った。



54 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:57:56.37r1YbBt8Fo (10/34)


依子「京子さんとスールの契を交わしたのはつい最近ですが…これまで私は貴女と濃厚な時間を過ごしてきたつもりですわ」

依子「特に理由もなくそのような不義理を行う人だとは到底、思えませんし、何かしらあった事くらい察しています」

小蒔「えっと…つまり?」

依子「さっきまでのは京子さんをからかっていただけで、本気ではなかったって言う事ですわ」クス

その言葉に偽りはないと俺も思う。
でも、それだけではない、と感じるのはさっきの彼女があまりにも真に迫った演技をしていた所為か。
勿論、演技であった事は嘘ではないだろうが、少なくとも、その心の中に拗ねるような感情はあったはず。
そうでなければ、誰よりも立派な淑女たろうとしている依子さんが、こんな場所で仲の良さを証明して欲しいなどと言うはずがない。
彼女は永水女子の生徒達から敬意を向けられるエルダーシスターであり、またそれに相応しい淑女になろうとしている人なのだから。

京子「…まったく。肝が冷えましたよ」

依子「あら、それはこっちのセリフですわ」

依子「京子さんの事は信じていましたが、決して不安がなかった訳ではありませんもの」

依子「連絡がとれなくなって、何かあったのかと日々、悶々として過ごしてきたのです」

依子「その分、ちょっぴり仕返ししたくらい許してくれますわよね?」チラッ

まぁ、元から怒るつもりはなかったとは言え、こんな事を言われるとなぁ。
実際、少なからず心配させてしまったのは事実だろうし、許さないなどとはどうしても言えない。
さっきの演技には色々と驚かされたが、別に実害があった訳ではないし、それくらいで許してくれるなら御の字だとさえ思う。



55 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:58:22.27r1YbBt8Fo (11/34)


京子「えぇ。大事な依子お姉さまのイタズラですもの」

京子「心配させたのは事実ですし、それくらいで許してもらえるなら有難いくらいですわ」

依子「あら、私、別に許すとは言っていませんよ?」

京子「え?」

依子「許すのは京子さんの言っていた『色々な事情』を聞いてからです」

依子「それまではあくまでも判断保留と言う形ですわ」

京子「な、中々、手厳しいですね」

依子「それだけ今回の件に関しては私も拗ねているのだと理解してくださいまし」ツーン

…どうやら俺は依子さんの事を想った以上に拗ねさせていたらしい。
ツーンと俺から顔を背ける彼女の顔は冗談めかしてはいるものの、何処か心配そうな色を含んでいた。
幾らか納得はしてくれたのだろうが、やはりこれだけでは気持ちも収まらないのだろう。
しかし、こうして心配してくれているとは言え、依子さんに全部、正直に言う訳にはいかないし…。



56 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:58:50.55r1YbBt8Fo (12/34)


依子「と言う訳で、今日のHRがひと通り終わったら生徒会室に顔を出してくださいな」

依子「そこで京子さんに色々と聞かせて貰いますから」

京子「色々と…ですか?」

依子「えぇ。色々と、です」クス

依子「最近は京子さんも私も忙しくてあんまりお喋り出来なかったんですもの」

依子「その分の埋め合わせはしっかりとして貰いますから…覚悟して下さいまし」ニコ

京子「ふふ。分かりました」

京子「依子お姉さまとお話出来るの楽しみにしています」

…とは言え、ここで彼女のお誘いを断る理由はないよな。
俺自身、依子さんと話す時間を、とても好ましく思っているのだから。
夏休み前から昼休みですら一緒に過ごす事が出来なかったし、今日は彼女とゆっくりするとしよう。
…まぁ、その前に携帯の件をどうするか考えておかなきゃいけないけどさ。
話すところと隠すところをハッキリさせておいて、出来るだけ依子さんに疑念を抱かせないようにしないと。

小蒔「あ、あの…それ私もご一緒して良いですか?」

依子「え?小蒔さんも…ですの?」

小蒔「は、はい。あの…えっと…」チラ

そこで小蒔さんが俺を見るのはきっと俺の事を心配してくれているからなんだろう。
さっきの彼女を見る限り、俺が携帯を失った事の責任を感じてくれているみたいだし。
俺一人に事情の説明を任せたくはないとそう思ってくれているのかもしれない。
しかし、小蒔さんも同席するとなると、隠さなきゃいけないところで口裏を合わせるのが難しくなる。
心配してくれている小蒔さんには悪いけれど、ここは… ――


57 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:59:16.17r1YbBt8Fo (13/34)


依子「構いませんわ」

京子「え…?よ、依子お姉さま?」

依子「事情は分かりませんが、小蒔さんは京子さんの事を気にかけているのでしょう?」

依子「私としては小蒔さんがいて特に困るものではないですし、是非来てくださいまし」ニコ

……流石にこの流れじゃ小蒔さんの同席は断れないよなぁ。
他ならぬ依子さん自身が、小蒔さんの事を受け入れている訳だし。
…仕方が無い、生徒会室での諸々は小蒔さんのアドリブ力に期待するとしよう。
……まぁ、彼女の中でも一番、期待出来ないところかもしれないが、その辺りは俺がフォローをするとして。

依子「それはさておき…夏休みも明けたと言う事は、もう少しで永誕祭ですわね」

京子「永誕祭…ですか?」

小蒔「あ、京子ちゃんは転校生だから知らないんですね」

依子「もう大分、永水女子にも馴染んでいますから、てっきり昔ながらの生徒だと思い込んでいましたわ」クス

京子「ふふ。それだけ依子さんに親しく思ってもらえているんだと前向きに捉える事にします」ニコ

依子さんはもう三年生な訳で、何よりずっとエルダーになるべく努力し続けていたんだ。
全校生徒の顔と名前も記憶している彼女がそう思い込んでいるって事は、それだけ俺と彼女の距離が近くなった証拠。
昔ながらの友人と思われるくらいに俺の事を快く思ってくれているのだろう。
まぁ…実際、俺と依子さんはスールの関係で結ばれている訳で。
ある意味、全校生徒の中で一番仲が良いと言える関係なのだから当然なのかもしれないけれど。



58以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 01:59:17.42PxRuXmZIo (2/2)

しっとかわいい


59 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 01:59:55.92r1YbBt8Fo (14/34)


京子「…それで永誕祭って言うのは…結局、学園祭の事で良いのかしら?」

明星「そうですね。大体、その認識で合っています」

明星「違うのは他の学校で言う文化祭と体育祭を同時に行う事と」

明星「そして、姉妹校と連携して行われる事ですね」

京子「連携?」

文化祭と体育祭を同時に…って言うのは珍しいけれど聞いたことがない訳じゃない。
その二つを一ヶ月の間に纏めて行うと言うのは俺の周りでもあったし、何となくイメージは出来る。
ただ…姉妹校と連携と言うのはどういう事なのかまったく想像出来ない。
そもそも永水女子に姉妹校があった事すら知らない俺は、明星ちゃんの説明に首を傾げた。

春「…永水女子の生徒数はあまり多くはないから」

春「学校内でチーム分けをしても、生徒の数が足りなくて出場競技が多くなる…」

春「結果一人ひとりの負担が大きくなるのを防ぐ為に…同じようなコンセプトで設立された姉妹校と一緒に体育祭を行う事になってる…」

依子「だから、永水女子の中でチーム分けなどはありませんの」

依子「そういう意味では京子さんと敵にならなくて安心ですわね」

京子「えぇ。私も依子さんを敵にしないで良いと聞いて安心しました」

まぁ、敵と言っても体育祭で点数を競う程度だし、本気で彼女を傷つけたりはしない訳だけれども。
しかし、もし、俺と戦った結果、依子さんの評価を貶めてしまったら…と思うと、中々、本気にはなれない。
無論、そういう考えが依子さんにとっても失礼な事だと分かっているが…それ以上に俺は依子さんの事を大事に思っているし。
ようやく手に入れたエルダーと言う座に相応しくなろうと今も努力を続けている彼女の足を引っ張るような真似はしたくはなかった。


60 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:00:23.93r1YbBt8Fo (15/34)


湧「…でも、あちきやあんまい楽しんじゃねかも…」ポソ

京子「え…?」

……今、なんだかわっきゅんらしくないセリフが聞こえたような…?
湧ちゃんは方言が抜け切らない所為か、割りと人見知りなところはあるけれど、根はとても活発で明るい子だし。
身体を動かすのも大好きだから、文化祭はともかく体育祭はとても楽しみにしていると思っていたけれども…。
そんなわっきゅんがこうして楽しみじゃないって漏らすって事は…何かあったんだろうか?

明星「…去年の体育祭は少々、酷かったですから」

京子「酷い?」

春「…反則ルール違反のオンパレード」

明星「気弱そうな一年の子は脅されてたって話もありましたね」

京子「そ、そこまでするの…?」

…そこまで行くと殆どエルダー選挙みたいなもんじゃないか。
いや、他校の生徒を相手に脅しや反則を仕掛ける辺り、エルダー選挙よりも酷いんじゃなかろうか。
少なくとも、お嬢様校同士のほのぼのとした体育祭を想像していた俺としては、かなりショックなのだけれど。
仮にも学校別対抗戦とは言え…そんなところでまでドロドロとしなくても良いんじゃないかな…?



61 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:00:51.45r1YbBt8Fo (16/34)


依子「普通はそこまでしませんわ」

依子「私達はそれぞれの学校別に別れて戦うと言っても、敵対関係にある訳ではありません」

依子「永誕祭はあくまでも姉妹校同士の友好を深めるイベントです」

依子「実際、今まではもっと和気藹々として…楽しいお祭でしたわ」

依子「…ですが、相手校…星誕女子のエルダーを去年から務めている方は…その…とても負けず嫌いな方で」

こうして依子さんが言葉を選んでいるって事は…恐らく、そのエルダーはただの負けず嫌いじゃないんだろうな。
依子さんはエルダーに選ばれただけあって、結構、ストレートに物事を口にするタイプだし、それだけだったら依子さんもハッキリと言っていたはずだ。
そんな彼女がこうして一瞬、言い淀んだと言う事は、恐らく依子さんが口に出来ないような悪い評価を抱いているって事なんだろう。

依子「無論、私もエルダーですから、所属する学校に負けて欲しくはないという気持ちはあります」

依子「ですが…あの方の強引なやり方に関しては、決して共感出来るものではありません」

明星「…そもそも件のエルダーが選挙に当選したのもかなり周りに圧力を掛けていたからって言う話もありますし」

明星「ただ負けず嫌いなんじゃなくて、名誉欲が強いタイプなのは確実でしょうね」

……明星ちゃんまでそこまで言うとはなぁ…。
どうやらそのエルダーが永水女子でかなり嫌われているのは確実らしい。
まぁ、彼女たちの言葉が正しければ、星誕女子とやらが卑怯な手段を使ってまで勝とうとするのはそのエルダーが原因みたいだし。
その所為で実害を被ったであろう依子さんや、実害を被った霞さんを見ていたであろう明星ちゃんからすれば、嫌うのが当然だろう。


62 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:01:19.48r1YbBt8Fo (17/34)


小蒔「で、でも、ほら、去年は何とか勝てましたし…ね?」

依子「えぇ。でも…それは去年のエルダーがあの石戸霞さんだったからこそ」

依子「私ではあの方ほど見事に永水女子を纏められるとは思いませんし…」

依子「何より…去年と違って、今年は相手のホームで体育祭を行う事になります」

……つまり、去年よりもさらに何でもアリになってる可能性が高いって事か。
そりゃわっきゅんが楽しみに出来ないのも当然だよなぁ…。
ただ、スポーツを楽しみにしているのに…相手の卑怯なやり口を警戒しなきゃいけないなんて。
友好を深めるイベントとしても、体育祭そのものとしても大失敗が目に見えているじゃないか…。

京子「(…しかも、問題なのはそれだけじゃなくって…)」

依子さんと同じように分析している生徒はきっと永水女子の中に沢山いる。
その中で今年も目にもの見せてやると奮起してくれる子が多ければエルダーである依子さんとしてもやりやすいだろう。
だが、そうやって苦境をバネに出来るような子は決して多い訳ではないのだ。
元々、この永水女子はおっとりとした子が多いし、わっきゅんのように憂鬱になっている子は決して少なくはないだろう。
そんな子達を何とかやる気に持っていかなければいけないのだから、依子さんが弱音を口から漏らすのは責められない。



63 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:01:46.79r1YbBt8Fo (18/34)


京子「…大丈夫ですよ」

依子「…京子さん?」

京子「確かに相手は卑怯かもしれませんし、場所も相手の方が有利なのかもしれません」

京子「ですが…依子お姉さまには私がいるじゃないですか」ニコ

依子「あ…」

…ただ、そんな依子さんを放っておくつもりは俺にはない。
確かに聞いているだけでも、目の前のイベントが憂鬱になってくるし…具体的に依子さんに何が出来るか俺はまだ見えてこない。
でも、俺にとって彼女は、血の繋がらない唯一の姉と言っても良い存在なんだ。
そんな依子さんがこうして弱音を口にしたのであれば、多少、格好つけてでも支えてあげたいとそう思う。

京子「霞さんは確かに凄い人で…比較対象にすると不安になる弱気になる気持ちは分かります」

京子「でも、霞さんはどれだけ凄くてもたった一人」

京子「依子お姉さまのように誰かとスールの契を交わしたりはしませんでした」

京子「それは…とても大きな違いだと思いませんか?」

京子「少なくとも、私は依子お姉さまが辛い時は何時だってお支えします」

京子「依子お姉さまの為に私に出来る事があれば、何でも手伝います」

京子「だから、そんな風に弱気になったりしないでください」

京子「一人では厳しいかもしれませんが…二人ならきっと霞さんだって超えられるはずですから」ニギ

明星「…」ムスー

…そんな俺の視界の端で明星ちゃんがすっげえええええええ不機嫌そうな顔をしているけれど…。
まぁ、やっぱり、二人でなら霞さんを超えられる発言が気に食わないんだろうなぁ。
ただ、依子さんが先代エルダーである霞さんと比較してどうしても自分の事を卑下してしまっているのは事実だし。
彼女を少しでも勇気づける為にも、ここは霞さんの名前を出す事を許して欲しい。



64 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:02:16.48r1YbBt8Fo (19/34)


依子「…京子さん」

京子「二人で…いえ、皆で頑張りましょう?」

依子「…えぇ。そうですわね」ニコ

依子「私らしくない愚痴を聞かせてしまいましたわ。申し訳ありません」

京子「いいえ。謝る事なんてありませんよ」

京子「さっきも言ったでしょう?私が依子お姉さまの事をお支えしますと」

京子「むしろ、そうやって甘えてくれる方が、私は嬉しいですよ」

…その甲斐あってか、何とか依子さんも立ち直ってくれたらしい。
さっきまでは表情も自信なさげなものだったけれど…今は少し照れくさそうに笑っているし。
明星ちゃんが空気読んで黙っててくれた分の効果はあったって事だろう。
とりあえず一安心だけれど、後で明星ちゃんには謝っとかないとな。


65 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:02:42.91r1YbBt8Fo (20/34)


依子「…もう。本当に…」

依子「京子さんってば人の心の中に入り込んでくるのが上手なんですから」ギュ

京子「ふふ。例えそうでも…私が入り込みたいと思うほど魅力的な依子お姉さまが悪いのですよ」

依子「まぁ。私の所為にするなんて…イケナイ子ですわね」

依子「そんな子にはご褒美の依子ポイントあげませんわよ?」

京子「……それはちょっと寂しいですね」

依子「ふふ。冗談ですわ」

依子「ちゃぁんと20ポイントほど加算しておきます」クス

20ポイントヤッター。
まぁ、一体、今の依子さんポイントがどれだけたまっているのか俺も知らない訳だけれど。
確か20ポイントで膝枕で、50ポイントで添い寝、80でお泊り会で、100貯めれば依子さんから告白してもらえるんだったっけか。
…流石に告白までは冗談だろうけれど、今ので膝枕確定まで溜まったのは大きいよなぁ。
まぁ、その分、さっきまで依子さんも不安だったって事だろうから素直に喜ぶ気にはなれないのだけれど。

京子「(それに…ご褒美って意味じゃもうしっかり貰ってるしな)」

さっき依子さんの事を励まそうと彼女の手を握った俺に彼女は握り返してくれている。
いや、ただ握り返しているだけじゃなくて、微かに指を絡めてくれているんだよな。
ちょっとイタズラっぽい言葉とは裏腹に甘えるようなそれがとても可愛らしい。
不器用なその甘え方に思わず笑みが浮かんでしまうくらいに。


66 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:03:10.98r1YbBt8Fo (21/34)


明星「ゴホン」

京子「あ、えっと…」

明星「…周りには私達もいるのに、ちょっと二人だけ仲良くしすぎじゃないですか?」ジトト

…しまった、そんな事をしている間に明星ちゃんの不機嫌ゲージが溜まっていたらしい。
こうして依子さんと微笑み合う俺にすっげええええジト目を向けてくる。
若干、半眼気味になったその顔は可愛いけれど、妙な迫力があるというか…。
こう下手に刺激してはまずい感が俺の中から浮かび上がってくる。

依子「ごめんなさい。石戸さんも京子さんと仲良くしたいでしょうに…少し独占しすぎてしまいましたわ」

明星「…べ、別に私は京子さんとなんて…」チラッ

京子「…え?」

明星「…何でもないです」ムスー

…何でもないような顔には見えないけどなぁ。
少なくとも、さっきみたいに拗ねているのは確実だと思う。
ただ、その理由までは分からないと言うか…何か察して欲しがった事くらいは伝わってくるのだけれど。
でも、今の流し見のような視線だけで明星ちゃんの言いたいことを正確に理解するのは少しハードルが高いと思う。



67 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:03:39.01r1YbBt8Fo (22/34)


春「…そう言いながらお姉さま、京子の手離してない…」

依子「だって、これは京子さんが繋いでくれたものなんですから」

依子「そう簡単に手放せるはずがありませんわ」ニコ

明星「…京子さん?」ジトトト

京子「ふ、不可抗力よ」

そもそもここで依子さんと手を離したら、それこそヘタレじゃないか。
未だ彼女が俺の手と指を絡めてくれているんだから…それを周りの圧力に負けて手放したくはない。
まぁ、明星ちゃんが俺にジト目を送る理由は分かるけど…でも、それで依子さんと気まずくなったら最悪だしさ。
もう校舎も見えてきているんだから、後ほんの数分だけ我慢して欲しい。

依子「まぁ、京子さんが離して欲しいと言うのであれば…私も手を離します」

依子「えぇ。折角の夏休みだったのに一度も京子さんとお出かけしたり出来なかった寂しさも…」

依子「何度も電話したのに出てくれなかった時の不安も…」

依子「さっき私の事を励ましてくれた嬉しさも全部…全部、頑張って忘れますわ」

京子「……もしかして依子お姉さま、結構、根に持ってます…?」

依子「ふふ。後、一ヶ月はこのネタで京子さんに甘えるつもりですわよ」

つまり根に持ってるって事ですよね!!!
まぁ、電話を完全にシカトしてたのは簡単に忘れられる事じゃないだろうし…ネタにされた方が俺も気持ちがマシだけれどさ。
でも、夏休みに遊びに行けなかったのは流石にどうしようもなかったと思うんだ。
俺も忙しかったけれど…依子さんの方も大学受験の準備やらで色々と忙しかった訳だし。
何度か遊びに誘われたけれど、予定が合わなかったのは決して俺だけの所為じゃないと主張したい。



68 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:04:30.47r1YbBt8Fo (23/34)


依子「まぁ、冗談はさておき、ご迷惑ではないのであれば、別れるところまでこうして一緒にいたいですわ」

依子「久しぶりに京子さんに会えて、出来るだけ一緒にいたいと思っているのは本当ですもの」ニコ

京子「…依子さん」

…ただ、それでもこんな事言われると断れないよなぁ…。
まぁ、元々、俺に依子さんの手を手放すつもりはなかったけどさ。
でも、こうして俺の手を繋ぎながら、ちょっと恥ずかしそうに笑われると…余計に手放しがたい。
むしろ、そのあまりの可愛さに手だけじゃ我慢出来なくて抱きしめたくなるくらいだ。

京子「大丈夫ですよ。私から依子お姉さまの手を手放すつもりなんてありませんから」

京子「私も依子お姉さまといたいですから、このまま校舎まで一緒に行きましょう」

明星「…もう。本当に京子さんはお姉さまに甘いんですから…」ポソ

ま、まぁ、確かにちょっと甘いかもしれないけどさ。
でも、俺と依子さんは仮にもスールの絆で結ばれている訳だし。
生徒全員の模範でもある依子さんと俺が仲良くしていないっていうのも問題だろう。
あんまり仲良くしすぎるのも逆に問題だけど…今は手を繋いでいるだけだし。
仮にもエルダーとその妹なんだから、これくらい当然だとそう思う。


69 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:04:59.14r1YbBt8Fo (24/34)


京子「ま、まぁ、ともかく永誕祭の話に戻りましょう」

依子「あら、私としてはもうちょっと京子さんとイチャイチャしたいのですけれど?」クス

春「…」ジィ

明星「…」ジト

京子「よ、依子お姉さま…」

さ、流石にそれはちょっと針の筵が過ぎると言うか…。
いや、俺としても依子さんとイチャイチャしたい気持ちはあるんですけどね!?
でも、他の皆もいるところでそういう事言われると、さっきから妙に厳しい視線がさらに刺を増すというか…!!
明星ちゃんなんかもう無言で俺に釘を刺すレベルになってきてるから許して欲しい…。

依子「ふふ。そんな可愛い声を出してはいけませんわよ」

依子「そのような声を聞かされると私も我を忘れて京子さんに意地悪したくなりますわ」

京子「…もう既に意地悪されているような気がするのですけれど」

依子「あらあら、まさか私の事をそんな風に思っているだなんて…」

依子「これは私の気持ちをちゃんと理解して貰えるように…もっと愛情表現をしなければいけませんわね」ススス

京子「…」ドキ

く、くそう…完全に依子さんに手球に取られてしまっている…。
こうして俺に身体を寄せてくるその仕草一つにさえもこんなにドキドキさせられてしまうなんて。
…悔しいけれど…依子さんはエルダーに選ばれるだけあって、かなりの美少女だしなぁ。
その胸は若干、物足りないけれど、イタズラっぽく笑いながら近寄ってくるその姿はかなり魅力的だ。



70 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:05:25.55r1YbBt8Fo (25/34)


小蒔「あの…お姉さま、あんまり京子ちゃんを困らせてあげないでください」

小蒔「明星ちゃんもです。京子ちゃんは何も悪くないんですから、そんな風に見ちゃいけませんよ」

明星「ひ、姫様…」

そこでさらに厳しくなった俺への視線に、小蒔さんがそっと声をあげた。
おずおずとしたそれは、しかし、ハッキリと俺の周りにいる彼女達を諌める。
普段、ポワポワとしている小蒔さんらしからぬその言葉に、驚きを感じているのは明星ちゃんだけじゃない。
俺自身、小蒔さんが明星ちゃんを諌めてまで俺の事を庇ってくれるなんて思っていなかったんだから。

依子「…まさか小蒔さんにそう言われるとは思ってませんでしたわ」

小蒔「あ、ご、ごめんなさい…」ペコリ

依子「いえ、謝らないでくださいな」

依子「私は決して不快になった訳ではありませんし…」

依子「むしろ、こちらの方こそ悪乗りしてしまって申し訳ないくらいですわ」ペコリ

そこで謝り合う二人の様子を見る限り、根本的な部分で小蒔さんは変わっていないのだと思う。
俺が会った時の穏やかでちょっと天然気味で、そして何より可愛らしい女の子のままだ。
ただ、やっぱり表面的な部分では、色々と変化が生まれつつあるのだろう。
正直、それが良い変化なのか悪い変化なのか、俺にはまだ分からないけれど。


71 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:05:51.69r1YbBt8Fo (26/34)


京子「(…一つ確かなのは小蒔さんは未だ俺の事を気に病んでいるって事なんだろうな)」

そうじゃなかったら、きっと彼女はこんな風に周りを諌めたりしない。
最早、睨むの領域に入りつつあった明星ちゃんに疑問をぶつける事はあっても、それを止めたりはしなかっただろう。
だが、小蒔さんは気心の知れた明星ちゃんだけじゃなくて、依子さんのイタズラまでも諌めてくれた。
その源が俺が彼女につけてしまった傷が原因だと思えば、例え良い変化だとしても素直に喜ぶ気にはなれない。

依子「……さて、それでは謝り合うのはここまでにして、少し話を戻しますが」

依子「皆さんも永誕祭の日は気をつけてくださいな」

依子「去年を見る感じ、つつがなく友好的なムードで終わる…と言う事はまずないでしょう」

依子「特に京子さんと十曽さんは我が校の誇る2大エースですから、最悪、実力行使…と言う事も考えられます」

…それを馬鹿げた事…と言えるほど俺はお花畑にはなれなかった。
そもそも全校生徒の模範であるエルダーを決める選挙さえ、家同士の格や力関係が関わってくるのである。
それが学校レベルにまで拡大して勝ち負けを決めるとなれば、最悪のケースがあり得ないとはどうしても言い切れなかった。
特にこうして話を聞いている限り、あっちのエルダーはかなりの問題人物で、なおかつ周りに圧力を掛けられるだけの権力を持っているようだし…。
その指示で永水女子の生徒に嫌がらせをされる事くらいは依子さんも普通に予想しているのだろう。



72 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:06:18.18r1YbBt8Fo (27/34)


依子「極力一人にはならず誰かと一緒に行動するのを心掛けてください」

依子「私も出来るだけ京子さんや皆さんといるつもりですが…永誕祭運営の仕事がありますし」

依子「一緒に居る事が出来ない時間と言うのはやっぱりどうしても出てくると思いますから」

京子「えぇ。気をつけますね」

依子「……それと…こんな事を頼むのは心苦しいのですが…」

京子「今の件、他の生徒にも周知して貰えるように、ですね」

依子「…分かりますか?」

京子「えぇ。依子お姉さまの立場が色々と難しい事も」

俺は星誕女子のエルダーがどれだけ問題人物なのか知らない。
だが、生徒会長でもあり、永水女子のエルダーでもある依子さんとしては、警戒しろと不用意に口にする訳にいかないのは分かる。
そんな事をしてしまえば、ただでさえ、去年を知る生徒達の間でうっすら流れる敵対的な感情が表へと吹き出してしまうだろうし。
元々、姉妹校同士の友好を目的とした永誕祭が一気に友好とは無縁のものになってしまう。
それだけならばまだしも、依子さんが生徒達を扇動したと難癖をつけられる事だってあり得るんだ。



73 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:06:45.61r1YbBt8Fo (28/34)


依子「出来れば文書などで正式に生徒達に警告出来れば良いのですけれど…」

京子「そんな事をしてしまえば流石に問題でしょうしね」

つまり生徒会長兼エルダーと言う全校生徒の中で最も影響力を持つ依子さんは表立っては動けない。
動いてしまえば相手に付け入られる大きな隙となってしまうのだから。
…ならば、その分は裏エルダーなどと呼ばれて、全校生徒にもそれなりに知られている俺が、いや、俺達が動いてフォローするしかないだろう。
幸いにも、こうして依子さんと一緒に歩いている俺達はそれぞれ学年がバラけている訳で。
それぞれ手分けして動けば、全校生徒にそれとなく警戒させるのもそれほど難しくはないはずだ。

明星「では、一年の方は私に任せて下さい」

春「…二年は私と京子が手分けしてやる」

小蒔「では、三年は私が頑張りますね!」フンス

依子「…皆さん、本当にありがとうございます」

実際、それぞれの担当箇所はあっさりと決まった。
まぁ、三年の担当を申し出た小蒔さんがちょっぴり不安だけれど…しかし、永水女子はそれほど人数の多い学校じゃないし。
体育などで三年のお姉さま達と話す機会は多いから、俺達がフォローする事は出来る。
何より、小蒔さんが折角やる気になっているのに水を差すのも悪いから、ここは小蒔さんに任せておこう。



74 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:07:11.16r1YbBt8Fo (29/34)


明星「お礼なんて必要ありませんよ」

明星「正直、去年はあっちの卑怯なやり方に参加者でない事が悔しく思ったくらいですから」

明星「それを晴らす機会がやってきたのですから、こっちから協力させて欲しいくらいですよ」

湧「あち…私も頑張…ります」グッ

そう星誕女子に怒りを露わにする明星ちゃんとは裏腹にわっきゅんの声は大人しいものだった。
普段の明るさが何処に言ったのかと思うほど小さなそれは、きっと目の前の依子さんがいるからだろう。
しかし、それでも明星ちゃんと気持ちは同じなのか、その小さな手にはとても気合が入っていた。
生徒への周知では役に立てない分、当日は頑張ろうと言う気持ちが今の彼女からはとても伝わってくる。

京子「(まぁ、丁度、校舎にもついた訳だし)」

ここから先は下駄箱で履き替えてそれぞれの教室に行く時間だ。
まぁ、今日は登校初日で、一時間もしない内に全校集会があるからすぐに再会出来るのだけれど。
しかし、こうして仲良く話していた皆と離れなきゃいけないというのはやっぱり寂しい。
特に今日は依子さんとしっかり手を握っているのだから尚の事。



75 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:07:37.85r1YbBt8Fo (30/34)


依子「…では、名残惜しいですが、ここまで、ですわね」

京子「えぇ。まぁ、すぐに全校集会で会えると思いますけれど」

依子「あら、壇上から見下ろすのと側にいるのとではやっぱり違いますわ」

依子「ましてや、今はこうして京子さんと手を繋いでいるんですもの」

依子「ここまで、とそう約束していたのは分かっていますが、やっぱり離れがたく思いますわね…」

…どうやら依子さんも俺と同じ風に思ってくれていたらしい。
ハッキリと俺に伝えてくれるその言葉は恥ずかしそうなものではあれど、茶化したものは感じなかった。
恐らく本気で俺と手を離す事に抵抗感を覚えてくれているのだろう。
…正直な話、そこまで素直に好意を示された事って滅多にないから気恥ずかしい気持ちはある。
ただ、それ以上に嬉しく思ってしまうのはやっぱり男の性なんだろうな。

依子「ですが、京子さんはお昼からは私に付き合ってくれるとそう言ってくれていましたし…」

依子「今は素直にお別れすると致しますわ」スッ

京子「…はい」スッ

とは言え、何時までもそうやって手を繋いではいられない。
依子さんは全校生徒の模範であるべきエルダーで、そして周りには人の目も沢山あるのだから。
情に流されて何時までも俺と一緒にいては、エルダー失格だと彼女自身が誰よりも強く思うだろう。
だからこそ、ここで俺がするべきは寂しさに負けて依子さんを引き止める事じゃない。
自分の手から力を抜き、手を離そうとする彼女を優しく見送る事だ。


76 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:08:05.62r1YbBt8Fo (31/34)


依子「…その代わり、お昼の約束、忘れちゃ嫌ですわよ?」

京子「勿論ですよ。私だって依子お姉さまとお話出来るのを楽しみにしているんですから」

依子「ふふ。その言葉、信じさせてもらいますわ」

依子「では、皆様、ごきげんよう」

小蒔「じゃあ、私もまた後で、です」ニコ

そのまま依子さんはペコリと一礼して三年の下駄箱の方へと歩いて行く。
それにトテトテとついていくのは彼女と同級生の小蒔さんだ。
二人はそのまま一緒に並んで、にこやかに会話しながら俺の視界から消えていく。
依子さんとスールの関係にある俺は勿論の事、小蒔さんも彼女とかなり仲が良いからな。
さっきまで依子さんと話していたのは俺がメインだったし色々と話したい事も残っていたんだろう。

明星「…じゃあ、私達もそろそろ行きましょうか」

湧「ん」

京子「あ、あの…明星ちゃん…?」

しかし、そんな二人とは違って、明星ちゃんの方には幾つかお詫びを入れなきゃいけないところがある。
特に致し方ない事とは言え、依子さんを励ます事に霞さんの名前を出汁に使った事は念入りに謝罪しなければいけないだろう。
明星ちゃんにとって石戸霞と言う姉は世界で一番だとそう断言するほど大事な相手であるのだから。
それを出汁に使われたら良い気がしない事くらい俺にだって分かる。



77 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:08:31.82r1YbBt8Fo (32/34)


明星「…別に構いませんよ」

京子「え?」

明星「…さっき姫様が言った通りです」

明星「私には京子さんとお姉さまが仲良くするのを止める権利なんてありませんし…」

明星「…変に嫉妬…い、いえ、気を回した私が空回りしていただけなんですから、京子さんが謝る必要はありません」

明星「むしろ、こっちの方が申し訳ありませんでした」ペコリ

京子「え、えぇっと…」

…あれ?なんで、俺は明星ちゃんに謝られているんだろう?
しかも、彼女が謝罪しているのは空回りしていた事についてらしいんだけれど…。
でも、俺の正体を知る彼女からすれば、仲良くなりすぎて俺の正体がバレないように気を揉むのは当然の事だろうし。
少なくとも、俺が彼女に要らぬ心労を掛けたのは事実なんだから、特に謝られるような事ではないと思うのだよなぁ…。

京子「明星ちゃんの立場からすれば色々と心配だったのは分かるし、明星ちゃんの方こそ謝らなくても良いのよ」

明星「…でも、あんまり嫉妬して嫌われたりしたら嫌ですし…」ポソ

京子「…嫉妬?」

明星「あっ…い、いえ、ち、違います…!」カァァ

明星「し、嫉妬ではなくて…そ、そうSHIT!です!!え、英語の方の!!!」

京子「そ、そうなの…」

……何時から明星ちゃんはルー○柴的なキャラになったんだろうか。
流石にそれは苦しいと思うんだけれど…でも、こうして明星ちゃんが誤魔化そうとしている訳だし。
ここはとりあえずスルーして、彼女が嫉妬した理由は後で考えるとしよう。
どうしてかは分からないけれど、明星ちゃんが嫉妬してモヤモヤしていたのは事実みたいだからな。
俺が再犯しないように状況分析はしっかりとしておいた方が良い。



78 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:09:13.80r1YbBt8Fo (33/34)


明星「…と、ともかく、私はもう行きますから!!」

明星「ごきげんよう!!!」ダッ

湧「キョンキョン、春さあ、またね」フリフリ

京子「えぇ。また後で」

……そのまま明星ちゃんの方は赤くなって去っていったけれど…まぁ、ここはわっきゅんに任せておいた方が良いよな。
ここで俺が彼女のことを追いかけても状況が悪化する未来しか見えないし。
わっきゅんと明星ちゃんは唯一無二の親友と言っても良いくらいに仲が良いのだから、彼女のことはわっきゅんに任せよう。
それよりも今は… ――

春「…じゃあ、私達も行こう?」

京子「そうね。そうしましょうか」

まだ最初のHRが始まるまでそれなりに時間があるとは言え、ここでダラダラしていても意味はないしな。
特に俺は携帯を失ってしまって、友人たちの連絡先すら分からない状態なんだ。
先生が来るよりも先にその辺りの説明と、そして連絡をくれた子達にお詫びをしなきゃいけない。
それを考えるとゆっくりはしていられず、俺は春と一緒に下駄箱で靴を履き替えて。




―― そして一ヶ月ぶりとなる永水女子の校舎の中へ足を踏み入れたのだった。







79 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/13(日) 02:11:23.25r1YbBt8Fo (34/34)

ってところで今日は終わりです(´・ω・`)短くてごめんなさい
新学期って事でオリキャラの依子が出張ってますが、体育祭が終わればもう出番は殆どないはずなので許してください…

そしてクリスマススレに関してですが、あの後のエンディングなどを書くつもりはありません
あくまでもボツネタを次の息抜きに流用したいって言うだけなので、あの続きを書いたりはしないと思います
誤解させるような事を言ってしまって申し訳ありません(´・ω・`)


80以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 02:18:35.44YPC8dYkn0 (1/1)

依子おねーさまかわいい!
名前の通り京子ちゃんへの依存度が上がってる可能性が……?


81以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 07:04:57.43EnxviUP7O (1/1)

乙ー。
依子ポイント、実は京子が知らないだけで結構危ないところまで貯まってそう。
そういや、良子さんの出番の予定ってありますかね?

そして、なんだかんだ今回の体育祭は湧ちゃんのターンになりそうな気がビシビシ感じる。


82以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 09:54:18.127wtxRmCOO (1/1)

乙です


83以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 12:08:39.53r7VbjPd0o (1/1)

乙です


84以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 12:42:01.16ODq+uTfAo (1/1)

乙です。連絡取れない間に依存度あがるって軽く病んでるよね


85以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 12:43:03.21pXc1l9sRO (1/1)

>>1の書く女性は基本病んでる


86以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 13:07:47.18njBwL/Ch0 (1/1)

出番がなくなった依子様はSSの舞台裏で一体どんな行動を取ってるのか・・・
京ちゃん達が写真取ったら、必ず見切れて写ってる的な病んデレになってたり?
咲日和ならぬ、京日和を自作してたり?


87以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/13(日) 13:20:59.784N3W999qo (1/1)

依子さん可愛すぎる


88以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/14(月) 00:44:25.07ZGnL0RHSO (1/1)

クリスマススレ終わったしそろそろ投下来るかなーとか思ってたらもう投下されていた・・・
乙です。京ちゃんは姉妹校の生徒何人位たらすんでしょうかねぇ


89以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/14(月) 17:00:31.55Ej5zXyJ10 (1/1)

遅くなったがクリスマススレ完結乙です。そして京子スレにおかえり>>1

あっちの咲さんとしずもん見てゾクゾクしました。
オレ、ヤンデレ苦手なはずだったのに…悔しい!でも感じちゃう!ってやつか…


90以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/15(火) 00:30:15.38l/iZgplXO (1/1)

星誕女子ってオリキャラかなあ
咲キャラがいたらいたで面白いけど難しいか


91以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/15(火) 00:50:51.964Ukm74MOO (1/1)

勝つために相手を競技とは別のところで潰そうとする連中の中に原作キャラがいるとかやだろ。


92以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/15(火) 10:02:19.38WJfLAu760 (1/1)

いやもう、全国中継での京子ちゃんに見惚れて生徒会長以下殆どの生徒がたらしこまれてんじゃね?
んで、前年度みたいな事をする気はさらさらないけど京子を好き放題したいが為に脅しの材料につかってイチャコラする・・・みたいな?


93以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/15(火) 10:12:58.31Jzv/VJoFo (1/1)

sageろ


94以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/15(火) 23:03:14.72wlrVALBs0 (1/1)
95以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/16(水) 00:06:06.540OIr951t0 (1/2)

>>94
新しく支援する人が出たか。いいぞ~コレ。
個人的に右下の湧ちゃんが良い味出してる。


96 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/16(水) 01:45:56.02fNwYNaQOo (1/3)

>>94
また支援絵…しかも今度はカラーで来た…だと…!?
あまりの驚きにたった今帰ってきた疲れとか全部吹っ飛びました…!!
ありがとうございますありがとうございます

何というかもう京ちゃんのイケメンっぷりがヤバい
これは原作の女顔京ちゃんじゃなくて、神代家に色々と翻弄された後、覚醒した後のキョンキョンですわ(確信)
個人的には露出した腕や胸板の辺りから感じる色気が危ないレベルに到達してると思います
こんな身体に抱きしめられたら、どんな女の子も即メス堕ちしそう
後、書いてくれた人のこだわりを感じるなぁって思ったところは京ちゃん状態でもハッキリと分かる腕の細さや腰のくびれですね
女装しなきゃいけないが故に引き絞られた京ちゃんの身体が良く表現してあるなーと思いました

それに対して京子ちゃんモードはもうなんつーか、これ絶対悪女だ…!
顔立ちそのものはあまり変わってないのに、表情や肌の色から色気がムンムンしてますし
巫女服姿も相まって、狐が擬人化して男を誑かしてる最中だって言われても信じられるレベルですね…
美少女と言うよりも美女オーラが出まくってますし、ヘタすれば上級生にさえお姉さま呼ばわりされてそうな気さえします
個人的に一番、良いなと思ったのは胸元をそっと隠すような手ですね
穏やかそうでちょっとイタズラっぽい表情と相まって、「おさわりは禁止です」って言われてるような気がしてもうグヘヘヘ^q^

最後になりましたが、右下のわっきゅんは反則だと思いますwwwwww
こんなに色気がある二人が並んでるのに真っ先に目がいったのわっきゅんでした
しかも、原作で一コマしか出てきてない上、こんなにデフォルメされてるのに一目でわっきゅんだって分かるのは凄いなぁと
京ちゃんに対して無邪気に好意を示しているんで、ひたすらナデナデしてあげたい可愛さに溢れてますね

そしてお陰様でテンションがバク上げになったので、もし見たい小ネタとかあったらリクエストしてくださいな
絶対とは言いませんが極力、希望に添えるように頑張ります(´・ω・`)



97以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/16(水) 01:59:18.26r+tUGnxWO (1/1)

>>94
すばらっ!
描写少ないのに湧だとわかるデフォルメって凄い


98942015/09/16(水) 02:23:15.22jeQsGXeq0 (1/1)

>>96
うっはーご感想ありがとうございますー!
いろんなとこまで見てくれて嬉しいです

リクエスト…って程でもないですが、このSSのわっきゅんが大好きなんでいつも通り可愛く書いてくれたらそれだけで充分です!


99以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/16(水) 02:46:22.980OIr951t0 (2/2)

そういや依子ってどんな外見してんだろ。
お嬢様的なのと胸が残念らしいことはわかってんだが。


100以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/16(水) 03:06:57.37+lmCkSFf0 (1/1)

94よ! 依子様を具現化してくれ! 頼むこのとおりだ (焼き土下座


101 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/16(水) 06:00:53.61fNwYNaQOo (2/3)

>>98
そこまでうちのわっきゅんを気に入っていただき本当に嬉しいです
そして可愛いわっきゅん、了解です
今、頑張って本編書いていますが、それ以上に気合を入れて頑張っていこうと思います

>>99
あくまでも本編には直接関わりのないサブキャラなんでそこまで詳しく設定してはいませんが
外見のイメージで一番近いのは透華です
ただ、髪の毛はセミロング程度になってストレートに
癖っ毛やアホ毛はなくなって、顔つきも穏やかになっています
お嬢様と言うよりもお嬢さんになった透華と言えば、イメージしやすいかもしれません
胸のサイズはBからCに掛けてで決してない訳じゃないですが物足りない感じ
実はフェンシングが得意なので、身体は大分、引き絞られていてくびれのラインなんかは独特の色気を感じるレベルです
ただ、足回りはちょっと太めで、本人もコンプレックスに思っており、毎日、体操してシェイプアップしようとしていますが中々、上手くはいっていません
また趣味は寝る前に文学作品を読む事で、ついつい夜更かししそうになる事もままあるようです
そんな生活をずっと続けているので、実はあんまり視力は良くなく、勉強する時はメガネを掛けています
得意教科は語学系で、理系はあまり得意とは言えませんが、それでも学年一桁程度の学力があります
ただ、そんな学力を持ってしても昔飛びつかれて怖い思いをした犬だけはどうしても苦手です
小型犬などは大丈夫ですが、大型犬などを見ると今でも身体が緊張してしまいます
女の子らしく甘いものは好きですが、エルダーになる為に努力してきた彼女は寄り道の経験もあまりありません
なので、友人と一緒にクレープなどを食べると言う事に、微かな憧れを持っています
逆に辛いものは苦手で、今でもカレーは甘口でなければ食べる事が出来ません
家事全般は花嫁修業として人並みに出来ますが、去年エルダーを務めた霞が完璧すぎた故にまだ足りないとそう思っているようです
また顔も知らない許嫁がいますが、本人は特に結婚するつもりはなく、大学で好きな勉強を思いっきりしたいと思っています
しかし、最近は夢であったエルダーに選ばれ、京子と言うパートナーが出来た為、刻一刻と近づく卒業の時期にノスタルジックな感情を抱く事もあるようです
最近の悩みは、ここ最近、京子と擬似恋愛のようなイチャイチャをするのが楽しくて楽しくて仕方が無くて、ついついやり過ぎてしまう事
京子に嫌われたくないと言う事と、あまりの居心地の良さに実は自分は自覚がなかっただけで同性愛者だったのかと悩んでいるようです


※尚、これらの設定が本編中に出る事はまずありません




102 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/16(水) 06:05:03.25fNwYNaQOo (3/3)

まぁ、好感度としては
京子が男だとバレてしまったら一ヶ月ほどギクシャクした後、何とか仲直りするもののそれまでと同じようには出来なくてついつい意識しちゃう程度にはあります
ただ、逆に言えばその程度なので、まだ本気で京子の事が好きと言う訳ではありません
なので、私としては別に今回の依子はそこまで依存してたり、病ませてたつもりはないんですが…そんな風に見えてたんでしょうか…?(´・ω・`)あるぇ



103以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/16(水) 06:47:11.3673RuJDkSO (1/1)

>>101
詳しく設定していないとはなんだったのか・・・
詳しくってなんだっけ?


104以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/16(水) 09:37:20.39GoyHTw5/O (1/1)

つまりあれだよ。
この程度の量は>>1にとって「詳しい」の内に入らないんだよ。

成程なー。大体脳内イメージが固まったわ。
ありがとう>>1。


105 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 02:17:41.00OruhSbu3o (1/23)


明星「はぁ…胸を大きくしたい?」

湧「…ぅん」カァァ

うららかな休日の昼下がり。
縁側でのんびりしていた明星は親友の言葉に思わず聞き返してしまう。
瞬間、顔を赤くしてモジモジと身体を揺らす親友の姿は同性から見ても可愛らしい。
頭の後ろで小さく結んだ髪がゆらゆらと揺れる姿はそのまま抱きしめたいくらいだった。

明星「…まぁ、理由は聞かなくても分かるけど」

湧「…わ、分かっちゃう?」

明星「どう考えても京太郎さん絡みでしょ」

湧「はぅ」マッカ

そう呆れたように明星が言うのは、湧が口にした悩みが今までの彼女からすれば無縁なものだったからだ。
方言を気にする湧は一見、人見知りで大人しく見えるが、その実、とても元気で明るい性格をしている。
特に武道家である両親の事はとても尊敬しており、二人と共に鍛錬する時間をとても楽しみにしていた。
そんな湧が恋愛に興味など持つ訳もなく、今まで殆ど化粧すらした事がなかったのである。



106 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 02:24:21.80OruhSbu3o (2/23)


明星「(…それが京太郎さんが来てから随分と変わっちゃって)」

まず湧が覚えたのは今まで殆ど気にしていなかった指先や髪のケアだった。
その次は服で、三番目が化粧。
それで終わりかと思いきや、今度は胸の悩みまでこうして口にするようになったのである。
京太郎と出会ってから、あっという間に女の子に目覚めていくような親友の姿が、明星には若干、眩しく思えた。

明星「まぁ…そう言われても、正直、私だって特に何かしている訳じゃないわよ」

明星「食べてるものだって湧ちゃんと同じだしね」

明星「多少の運動はバストアップにも良いって聞くけど…そっちは湧ちゃんの方がよっぽどやっているだろうし」

湧「うぅ…」

勿論、出来れば明星もそんな親友の力になってあげたい。
しかし、現実、明星には自分の胸を育てた覚えなどまったくないのだ。
ごく普通に生活しているだけで自然と大きくなったのだからアドバイスなど出来たりしない。
寧ろ、食べているものもほぼおなじ、運動量は湧の方が上となれば、考えられる事は一つだけしかなくて。



107 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 02:30:08.17OruhSbu3o (3/23)


湧「…やっぱい遺伝…?」

明星「じゃないかしら?」

湧「だよね…」

石戸家は霞を含めてバストサイズが大きめの女性が多い。
それに対して十曽家は、代々、あまり胸が大きくならない事で有名だった。
実際、湧の母親も微かに胸の膨らみがある程度で、谷間すら作る事が出来ない。
そんな母親のサイズを小学生の頃から上回っていた明星の言葉に湧はそっと肩を落とした。

明星「あ、で、でも、気落ちする事はないんじゃない?」

明星「ほら、男の人に揉んでもらうと胸も大きくなるって言うし…」

湧「…じちゃ毎日してもろてるんじゃっどん、ひとっも、ふとーならなくて…」

明星「そ、そうなの…」

…出来ればそういう話は聞きたくなかったかしら。
明星の内心に浮かんだその言葉は、湧の言葉が性事情に直結するモノだったからだ。
無論、二人が既に付き合っている事くらいは知っているが、やはり毎日、そういう事をしていると聞かされると恥ずかしい。
ついつい二人が睦み合っているところを想像して頬が熱を持ってしまう。



108 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 02:37:22.28OruhSbu3o (4/23)


湧「こんままじゃあちきキョンキョンにえそ尽かされちゃう…」

明星「正直、それはないと思うけど…」

京太郎と湧は年がら年中発情期のようにイチャイチャし続けている。
時に近づく事さえ躊躇うほどのそのイチャイチャっぷりは、二人の気持ちが未だ激しく燃えている証拠だと明星は思う。
しかし、恋する乙女となってから盲目になってしまった湧にはそれが見えない。
愛する恋人と一緒にいる時はさておき、こうして彼と離れていると妙な不安を覚えてしまう。

湧「だって、キョンキョン、今も皆んおっぱい見ちょるし…」

明星「ま、まぁ…そうだけれど…」

それは京太郎自身、胸の大きな女性が好みだったという事も無関係ではない。
事実、彼は出会ってからずっと明星や霞達の胸を目で追い続けていたのだから。
時折、面と向かって注意されるその目の動きは、湧と恋人同士になっても収まる気配がなかった。
それが元々、少ない湧の女性としての自信をゴリゴリと削り、こうして不安にさせている。



109 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 02:44:14.64OruhSbu3o (5/23)


明星「(…まったく、しっかりしてよね)」

無論、明星や湧も、それが男性として致し方ない事くらいは理解している。
だからこそ、明星はそれをあまり注意したりしないし、湧も目に見えて嫉妬を表したりはしなかった。
だが、そうやって頭でどうにか出来る部分はさておき、どうしても根っこの部分では色々と考えてしまう。
特に明星にとって京太郎は親友を女にした最初の恋人なのだから、もっとしっかりして欲しい強く感じた。

湧「じゃっどん、あちきのおっぱいふてーなれば、キョンキョンもあちきの事見てくれるようになるはずだし…」

明星「…」ナデナデ

湧「ど、どげんしたの?」

明星「ううん。何となく、ね」

そんな明星と違って、湧は京太郎の事をまったく責めようとはしていない。
寧ろ、悪いのは胸の小さい自分だとそう思い込み、湧は自分の胸のサイズを改善しようとしている。
そうなればきっと京太郎も自分を見てくれるのだと健気にそう漏らす親友に明星の手は勝手に動き出した。
その頭をナデナデと優しく撫でるそれに明星は不思議そうな顔をしながらも抵抗しない。
それどころか少し嬉しそうに頬を染める湧のその姿に明星は内心、京太郎への苛立ちを強めた。



110 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 02:50:34.04OruhSbu3o (6/23)


湧「そいで…何か方法ある?」

明星「うーん…何かと言われても…」

明星「あ、そうだ。そう言えば、友達が最近、胸を大きくする機械を買ったって言ってたような…」

湧「そやげんにゃあ!?」ガバッ

明星「う、うん。本当よ」

思いっきり食いついた湧の勢いに若干、引きながらも明星は小さく頷いた。
元々、明星は記憶力の良い子で、他人との会話はまず忘れない。
ましてや、それは胸を大きくする機械という普段、聞き慣れないフレーズが混じったものだったのだ。
興味がなかったので商品名までは聞いていないが、そういうものがあるのは確実だと明星は自信を持って応える事が出来る。
ただし ――

湧「あいがと!さしつけ調べてくるね!!」ダッ

明星「あ、湧ちゃん!?」

その効果には個人差があるらしい。
とても重要なそのフレーズを明星が口にする前に湧の身体は駆け出していた。
まるで短距離走を走り切るようなその加速に流石の明星は追いつけない。
待ちきれないのだと身体全体でアピールするように視界の端から去っていった親友に明星は一つため息を吐いて。

明星「(…とりあえずこの責任は京太郎さんに取ってもらおう)」

全ての責任を原因である京太郎にぶん投げる事を心に決めたのだった。



111 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 02:56:27.91OruhSbu3o (7/23)


………

……



湧「ふんふんふんふーん♪」

数日後、湧が両手で抱えるのは中サイズのダンボールだった。
その表面に吸引器と書かれたそれを彼女はスキップしそうな様子で運んでいく。
勿論、それはダンボールの中に入っているのが、湧待望のバストアップマシーンだからだ。

湧「(こいであちきのおっぱいもふてーなるはず…!)」

少なくとも湧が見たネット上の広告は劇的と言って良いほどの差があった。
一ヶ月でバストサイズが10cmは増えるそれがあれば、揉む胸すらない状態からは脱出出来る。
いや、もしかしたら愛する京太郎に胸を使った奉仕までしてあげられるかもしれないのだ。
その時、京太郎がどれほど喜んでくれるかと考えてくれるだけで、湧の顔はクニャリと崩れ、だらしない笑みを浮かべてしまう。



112 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 03:03:30.22OruhSbu3o (8/23)


小蒔「あれ、湧ちゃん?」

小蒔「どうしたんですか、その荷物」

湧「あ、姫さあ」

そこで湧と出会ったのはこの屋敷の主である神代小蒔であった。
しかし、主と言っても、彼女はとても気さくで、本来なら分家の湧達にも分け隔てなく接してくれている。
ただ、その胸のサイズに天と地ほどの差があった事を湧はずっと気にしていたが、今はあまり気にならない。
自分ももうすぐ小蒔と同じサイズになれるのだと彼女は心からそう信じていたのだ。

湧「えへへ、今はひみっです♪」

小蒔「えー…そう言われるとすっごく気になっちゃうんですけれど…」プルン

湧「効果が出たらいっかせっあげますねっ」ニコー

小蒔「はい。それじゃあその時を楽しみに待ってます」

故に箱を覗き込んだ時に微かに揺れた小蒔の胸にも彼女は嫉妬を覚えたりしない。
今までは自分にもそんな胸があったら、何度も胸の中に浮かんできた羨望は完全になくなっている。
寧ろ、今の彼女はもうすぐその揺れを自分も手に入れられるのだと内心、喜びを強めていた。
だからこそ、満面の笑みを浮かべながら、彼女は自分の部屋へと急いで。



113 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 03:09:33.03OruhSbu3o (9/23)


湧「よいしょっと…」

そのまま自室でダンボールを開いた湧は真剣な眼差しで説明書を読み始める。
無論、普段の彼女はフィーリングを大事にする方で、あまり説明書を真剣に読んだりしない。
しかし、目の前の機械には自分と京太郎の夢が詰まっているのだ。
もし万が一間違えて使用し、効果が出ないなんて事になってはいけない。
そう思う湧は何度も何度も説明書を読み続け、細心の注意を払いながら、機械を組み上げていく。

湧「ん。出来たっ」

湧の前に出来上がったのは人用の搾乳機のようなものだった。
胸に貼り付けるカップの先にホースが繋がり、電源を入れた瞬間からグイグイと引っ張る構造になっている。
特殊な軟膏との相乗効果により、胸の乳腺を刺激して胸の成長を促すと説明されていたそれに湧はもう我慢出来ない。
一刻も早く試してみたいと着ていた巫女服を肌蹴させる。



114 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 03:13:48.28OruhSbu3o (10/23)


湧「…」ペターン

湧「…………はぁ」

瞬間、湧の目に映るのはまったく何の起伏もない身体だった。
僅かな胸の膨らみすらないそれは貧乳を超えてナイチチと呼ばれるレベルである。
あまりにも女性として貧相なその身体に、湧は思わずため息を漏らしてしまった。

湧「(じゃっどん…こげなごてとはきゅでおさらばだもん)」

見ているだけで悲しくなってくる自身の身体に湧はそう言い聞かせる。
彼女にとって目の前の機械はその悲しさを取り払ってくれる救世主なのだから。
無論、彼女が見ていた広告が完全に嘘であり、吸引しても何の効果もないだなどと欠片も考えてはいない。
昔からある詐欺の手口に引っかかってしまったなど今の湧は露ほども思ってはいなかったのだ。



115 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 03:18:50.35OruhSbu3o (11/23)


湧「ん…っ♪」

だからこそ、湧は躊躇いなく自身の胸に軟膏を広げ始める。
瞬間、冷たい軟膏の感覚に小さく声が漏れてしまったが、それもすぐさま消えていった。
代わりに湧の胸に広がっていくのは、ジンジンとした熱。
何処か疼きにも似たそれに何度か声を漏らしながらも、湧は胸全体に広げ終わって。

湧「(よし。そいじゃあ…)」

京太郎「おーい、わっきゅんー」

湧「あ、はーい………あ゛っ」

瞬間、聞こえてきた恋人の声に湧は反射的に答えてしまう。
しかし、今の彼女は到底、京太郎に見せられるような姿ではない。
巫女服の前を肌蹴させ、その小さな乳首までぷっくりと膨れ上がらせているのだから。
ともすれば痴女のように思われかねないその格好を、湧は京太郎に見せたくはなかった。



116 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 03:28:04.28OruhSbu3o (12/23)


京太郎「部屋にいるのか?」

湧「ち、ちちちちちっと待って!!」

京太郎「??? おう」

必死な恋人のその声に、湧の部屋のすぐ前まで来た京太郎は小さく首を傾げた。
何度もお互いの部屋に出入りしているのに、今更、隠すようなものなどあるのだろうか。
内心、そう思いながらも、京太郎はここで踏み込むほど空気の読めない男ではない。
恋人が待ってと言っているのだから極力待とうと襖の前で足を止めて。

湧「…き、キョンキョン?」スス

京太郎「もう大丈夫か?」

湧「う、うん。待たせてこらいやったらもし」

京太郎「いや、急に来たのは俺の方だし、気にしてねぇよ」

数分ほど後に部屋の襖を開いた湧は巫女服をしっかりと着直していた。
軟膏を拭き取る暇がなかったので胸のあたりに巫女服が張り付いて不快感を覚えるが、今はそれを気にしている暇はない。
彼女にとって京太郎はただの恋人であるだけではなく、女性としての魅力に乏しい自分を恋人にしてくれた恩人でもあるのだから。
初めての恋人と言う事もあって、何においても、彼の事を優先したがる湧にとって、ほんの数分待たせただけでも申し訳なく思うには十分過ぎた。





117 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 03:32:40.74OruhSbu3o (13/23)


京太郎「それより、ちょっと話があるんだ」

京太郎「折角だし、部屋に入っても良いか?」

湧「うん。どうぞ」

そんな京太郎が部屋に入りたいと言っているのを拒む理由はない。
そもそも両親との鍛錬が趣味である湧にとって、私物はあまり必要ないものなのだから。
最近は色々とオシャレを覚えて物も増えてきたが、それらは綺麗に整理整頓されている。
何時、京太郎が部屋に来ても大丈夫なように湧はちゃんとそれらを片付けるようにしているのだ。

京太郎「お邪魔しま…あー…」

湧「??」

だからこそ、そこで京太郎が何とも言えない声を漏らした理由が湧には分からなかった。
朝からずっと鍛錬をしており、ついさっき部屋に帰ってきたばかりの湧の部屋は何時もと同じのはずなのだから。
昨日も寝る前にしっかりと指や髪をケアした後、片付けをしたし、そんな風に京太郎が声をあげる理由などないはず。
そう思って首を傾げた湧は数秒後、さっきまで自分が持っていたダンボールの事を思い出した。



118 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 03:40:03.49OruhSbu3o (14/23)


湧「(し、しもた…!機械の方は片付けたけど、ダンボールは忘れちょった…!!)」

それは湧にとって不覚と言っても良いものだった。
日頃から整理整頓をキッチリしているのは、ちゃんと片付けが出来る女の子だと京太郎にそう思って欲しかったからである。
しかし、突然の来訪に気持ちが焦ってしまった所為で、ダンボールの事をすっかり忘れていたのだ。
結果、部屋の中で開きっぱなしになっているダンボールに一体、京太郎が何を思うかを湧は考えたくすらない。

湧「(…きっとほんのこちゃ整理整頓でけんダメなおなごじゃったんだって思われちょっ…)」

京太郎「えーっと…」

湧「うぅぅ…」

そんな湧の心境を京太郎は正確に察した訳ではない。
しかし、今の彼女が穴を掘って埋まりたいくらいに後悔しているのは縮こまる姿から簡単に想像がついた。
何処か申し訳なく思っているのすら感じるその姿に、京太郎はフォローの言葉を必死で探す。
だが、混乱しているのは京太郎の方もまた同じであり、中々、良い言葉が見つからなかった。







119 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 03:48:25.03OruhSbu3o (15/23)


京太郎「…その、ごめんな」

湧「え?」

だからこそ、京太郎はフォローの方を諦める。
代わりに彼が口にしたのは、湧の事を探していた本題の方だ。
しかし、湧にはそうやって彼が謝る理由がまったく分からない。
そもそも京太郎はスケベではあるが、恋人として自分の事を心から愛してくれている事を湧は身体と心の両方で感じているのだから。
謝るのは自分の方であり、彼にはまったく非がないと彼女はそう思っていた。

京太郎「俺の所為で、こんなもの買わせちゃったんだろ?」

湧「い、いや、キョンキョンの所為じゃ…」

京太郎「じゃあ、どうしてこんな豊胸グッズなんて買ったんだ?」

湧「それは…」

そこで湧が口ごもるのは、その大元が、京太郎に自分の事を見て欲しいと言う感情だからだ。
勿論、京太郎は毎日、湧に愛を囁き、また彼女も愛の言葉を返すが、それでも嫉妬や不安と言った感情はなくならない。
それはある種、恋する乙女としては当然の感情なのだが、これまで恋をした事がない湧にはそれを理解してはいなかった。
結果、ふつふつと湧き上がるそれを京太郎への不信感だと取られたくて彼女は黙りこんでしまう。



120 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 03:49:00.30OruhSbu3o (16/23)

流石に眠いので寝ます(´・ω・`)この支援絵とは実際無関係な小ネタは明日には終わる予定です


121以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/17(木) 04:09:29.56nAI8Tw5Zo (1/1)

なんだろう
なぜことごとく性癖が一致するんだイッチどんどんイこう


122以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/17(木) 05:41:15.58HlSRL4EB0 (1/2)

女性ホルモンの絶対量が少ないのもあるんだろうが、湧ちゃんの場合運動しすぎて胸の成長に必要な脂肪分まで燃焼されてるのが原因な気がする。


123 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 06:53:10.83OruhSbu3o (17/23)


京太郎「まぁ…そうじゃないならそうじゃないで良いんだけどさ」

京太郎「でも、その上で言わせて貰えれば、こんなもの本当は必要ないんだよ」

湧「え…?」

そんな湧を京太郎は問い詰めたりはしない。
彼女が一体、何を考えてこのバストアップマシーンを購入したかは今は問題ではないのだから。
それよりも大事なのは今、京太郎が何を考えているかという事。
自分の為に頑張ってバストアップしようとしてくれている恋人に何を言うかだった。

京太郎「確かに俺の好きな女の子のタイプはおっぱいの大きな子だけどさ」

京太郎「でも、俺の好きな女の子は今のわっきゅんなんだから」ナデナデ

湧「~~~っ♥」カァァ

その言葉は京太郎にとって本心だった。
確かに彼も男であり、理想の女性像と言うのは胸の内に存在する。
しかし、それは決して譲れないような絶対的なものではないのだ。
そうであるに越した事はないが、それ以外の女性に心奪われない訳じゃない。
事実、京太郎が好きになったのは巨乳の明星や小蒔ではなく、貧乳を超えてナイチチ呼ばわりされてもおかしくはない湧だった。


124 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 07:01:13.11OruhSbu3o (18/23)


京太郎「なのに、明星ちゃんとかにデレデレしちゃって…不安にさせてたからこんなものまで買わせちゃったんだよな」

京太郎「ごめんな。これからはそういう事がないようにするから」

湧「き、キョンキョン…♥」

その言葉は決して簡単な口約束ではなかった。
明星から自分の恋人が悩んでいる事を告げられてから、京太郎も心から猛省したのである。
おっぱいに対する情熱は簡単には捨てられないが、しかし、献身的で可愛らしい恋人は離れがたいものなのだ。
彼女に嫌われるとそう思っただけで軽く目眩を覚える京太郎にとって、どっちが大事かなど考えるまでもない。

湧「ほ、ほんのこて良かの…?」

無論、京太郎の言葉は湧にとって飛び上がりたくなるくらい嬉しいものだった。
事実、今の彼女の胸は初めて京太郎の事を意識した時のようにドキドキキュンキュンと激しく鳴り続けている。
また一つ自分が京太郎の事を好きになったのだと自覚するときめきに、しかし、湧は素直に身を委ねられなかった。
自他共に認めるおっぱいスキーの恋人に我慢させてしまうとなれば、どうしても二の足を踏んでしまう。



125 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 07:06:38.79OruhSbu3o (19/23)


京太郎「おう。良か良か」

京太郎「俺にとっておっぱいよりもわっきゅんの方がずっとずっと大事なんだからさ」ギュゥ

湧「ふあぁ…♪」

だが、そんな湧に京太郎は一切、容赦しなかった。
彼女に向かって一歩踏み込んだ京太郎は恋人の小さな身体をギュッと抱き寄せる。
有無を言わさず胸の中に閉じ込めようとするそれに湧は抗えない。
今の彼女に出来る事と言えば、身体全体から伝わってくる京太郎の熱と愛しさに、その口から甘い声を漏らすだけだ。

湧「キョンキョン…っ♥大好き…っ♥」スリスリ

京太郎「あぁ。俺もわっきゅんの事、愛してる」ギュゥ

湧「はぁ…ぁ♪」ブル

そのまま小型犬のように身体をすり寄せる湧に、京太郎の身体はさらに力を込めていく。
湧を取り込むように丸まったその身体に、彼女は胸の鼓動がその色を変えつつあるのを悟った。
さっきまでの嬉しさと愛しさがごちゃまぜになったものではなく、情欲混じりのドキドキ。
このまま京太郎と愛の営みを始められる事を心の何処かで期待してしまう淫らな自分に湧は小さく身体を震わせた。



126 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 07:13:09.44OruhSbu3o (20/23)


京太郎「ま、とりあえずわっきゅん監修の元、エロ本でも捨てるところから始めようと思ってるんだけど」

湧「ん…♪」ギュゥ

京太郎「…なんかちょっとスイッチ入っちゃった?」

湧「し、知たんもん…♪」

しかし、それをそのまま口にするのはいくらなんでも恥ずかしい。
既に湧は何度も京太郎と身体を重ねているとは言え、元々、恥ずかしがり屋なのだ。
素直に好意を伝えられても、自身の欲情は伝えられない。
あまりはしたなくなりすぎてしまえば京太郎に嫌われてしまうのではないかと思って、ついつい素直ではない言葉を口にしてしまう。

京太郎「ホント、わっきゅんは素直でエロい子だよな」

湧「…キョンキョンがそうしたんだよ?」

京太郎「分かってる。ちゃんと責任取るって」チュ

湧「んへぇ…♪」

少しだけ唇を尖らせる湧の額に京太郎は優しく口付けを落とした。
恋人同士がするものではなく、親から子にするような暖かなそれに湧は顔をトロリと蕩けさせる。
まるで今が幸せで幸せで仕方が無いと言う緩んだその笑みはとても無防備だ。
家族や親友相手にも決して見せない、恋人である京太郎にだけ見せるそれに彼自身も我慢出来なくなる。



127 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 07:20:37.84OruhSbu3o (21/23)


京太郎「…で、俺はわっきゅんを超えるエロい奴な訳でさ」

京太郎「折角だし、そこの吸引器使いながらエッチなんてどうだ?」

湧「え、えぇぇ…流石にそや変態過ぎるとおも…」

突然の京太郎の提案に、湧は恥ずかしげな声をあげる。
既に口での奉仕に抵抗がなくなりつつあるとは言え、まだ湧は初心者なのだ。
そんな風に器具を使った睦み合いなどやった事はないし、どうしても抵抗感を感じてしまう。
実際、始まれば本能に流されてそんな事まったく気になってしまうのだが、まだ今の彼女の中では理性の方が強いのだ。

京太郎「ダメか?」

湧「…じゃっどん、キョンキョンがしたいならやっみっ」

京太郎「理解のある恋人がいて、俺は幸せだよ」ナデナデ

湧「んー…♪」

しかし、それでもそうやって聞かれるとついつい京太郎の要求を鵜呑みにしてしまう。
無論、本気で嫌なら彼女も譲歩したりしないが、本当は湧自身も興味があったのだ。
日々、性欲抜群の恋人に開発されている幼い身体は心にも影響を与え始めているのである。
抵抗感を感じる以上に惹かれてしまう淫らなその成長は、しかし、恋人に適合した結果。
そう思うと恥ずかしい以上に誇らしく、京太郎の愛撫を受けながら、心地よさそうな声を漏らしてしまう。



128 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 07:24:35.57OruhSbu3o (22/23)


京太郎「さて、それじゃあ…」

湧「…脱がして欲しな♪」

京太郎「お安い御用ですよ、お姫様」

お互いの合意を得られた以上、二人を止めるものは何もない。
恥ずかし気にリクエストをする湧の瞳にさえも少なくない期待と欲情が浮かび上がっていた。
それは京太郎の手で一枚一枚、服を脱がされていく間にも強くなり、ゆっくりと口から吐息が漏れ始める。
情欲混じりの熱っぽいそれはまるで感染するように京太郎にも移って。

―― そして露出した恋人の胸が怪しげな軟膏によって艶を放っているところを見た瞬間、京太郎は完全に本能に負け、湧の身体を貪り始めるのだった。



129 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/17(木) 07:30:42.38OruhSbu3o (23/23)


Qやっぱりエロオチかよ!!!

Aハロウィン世界線と同じだから仕方ないだろ!!!!



まぁ、セクロス済みの恋人が貧乳気にしてバストアップマシーンとか買っちゃったら、私じゃなくてもこんなオチしかつけられないような気がします
後、湧ちゃんって穏乃と同じく一端、性欲に目覚めた後がヤバそうですし(偏見)
それに私の中での湧ちゃんって結構、恋人限定で押しに弱くなっちゃう子なんで、つい何でも言うこと聞いちゃうというか
一度、ダメ男に引っかかっちゃうと人生全部ぶっ壊れちゃいそうなイメージがあります(´・ω・`)あくまでもこのスレでの設定ですが



後、少し遅レスになりますが依子の設定はあくまでもスレで使いそうな分にしか設定してないので…(´・ω・`)ただ、プロットほぼ完成して、この辺、まるっとボツになりました
お風呂入った時は何処から洗うとか、動物は何が好きとか、オナニーの頻度や何処が弱いかとかそういうのまで設定してたら詳しくって言っても良いと思います



130以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/17(木) 07:46:43.214aSdSFHSO (1/1)

乙です
湧ちゃん可愛かった

>お風呂入った時は何処から洗うとか、動物は何が好きとか、[田島「チ○コ破裂するっ!」]の頻度や何処が弱いかとかそういうのまで設定してたら詳しくって言っても良いと思います

お、おう


131以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/17(木) 08:52:34.36HlSRL4EB0 (2/2)

乙でーす。
揉んでるだけじゃ逆にダイエット効果で胸が痩せちゃうから、京ちゃんもツボを刺激するような揉み方を覚えないとね。


132以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/17(木) 10:48:52.21QHob3mDDO (1/1)

乙ー、湧ちゃんかわいい!
約1ヶ月後はゆうたんイェイ~だし胸が厚くなるなぁ。
依子さんのその設定は重要だなー……重要?


133以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/17(木) 11:41:10.01cTGkzfomo (1/1)

乙です


134以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/17(木) 18:09:14.68o4Y25M1yO (1/1)

成る程ハロウィン世界線か
アレもすばらだったなあ
やはり素直な元気っ子はいい(といいながら明星ちゃんもすばらというダブスタ)




135以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 03:23:12.18c6kSa48V0 (1/1)

わっきゅんめっちゃかわいい……
デレデレわっきゅんはんぱないかわいい


136 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 05:59:31.41WDeLAh9mo (1/16)


京太郎「聞いてくれ、わっきゅん!」バーン

湧「きゃう!?」ビックリ

湧「び、びっくいしたぁ…。いきなり部屋の扉開けんでよ」

京太郎「悪い。でも、俺達の今後に関わるとても大事な話なんだ!!」

湧「こ、今後に関わるでしな話…」ゴクッ

湧「(はっ…そ、そいちかった…プロポーズ!?)」

湧「(そげな…早すぎっよ。あちきたっまだ学生じゃって)」

湧「(じゃっどん、キョンキョンがプロポーズしてくるっならあちきだって…)」

湧「(うん、あちきだってキョンキョンの事、運命の人だっておもてるし…)」

湧「(プロポーズしてくるっならわぜうれしけれど…)」

京太郎「あぁ…わっきゅん。落ち着いて聞いてくれ…」

湧「う、うん…」ドキドキ

京太郎「実は…ただ揉んでるだけじゃダイエット効果で胸が痩せてしまうらしいんだよ!!!!」

湧「…え?」


137 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:05:27.06WDeLAh9mo (2/16)


京太郎「それどころか運動しすぎも胸が大きくなるのには良くないらしいんだ!!」

湧「そ、そいなん…?」

湧「(プロポーズじゃねんだ…)」

湧「(ちっと…いや、じょじょい残念…かな)」フゥ

京太郎「だから、すまない…!わっきゅんの胸が大きくならなかったのはきっと俺の揉み方がダメだったんだ!!」

湧「いや、キョンキョンの所為じゃねよ」

湧「そいにキョンキョンが今のあちきでも愛してくるっってゆたから、もうあんまい気にしちょっ訳じゃ…」モジモジ

京太郎「ありがとう!」ガシッ

湧「きゃぅっ♪」ダキシメラレ

京太郎「…だけど、俺はやっぱり自分のミスは自分で償うべきだと思うんだ」

湧「…つまい?」

京太郎「今回はちゃんとツボを押す揉み方覚えてきたんで、揉ませて下さい」キリッ

湧「……キョンキョン?」ムニー

京太郎「い、いひゃいいひゃい。い、いにゃ、マジれ」

京太郎「しゅけべナシで真剣に言ってりゅよ」

湧「…むぅぅぅ」プクー



138 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:12:13.01WDeLAh9mo (3/16)


湧「…………まぁ、キョンキョンがしたいってゆなら、断るじゆはないけれど」パッ

湧「一応、もう何回もやってもろてるし…あんまい抵抗感もないし…」

湧「(…でも、プロポーズかとともたて、胸を揉ませてってゆのは…やっぱいとぜんねかなぁ)」

湧「(ていうかキョンキョン、ひとっも、ふてー胸の事諦めてないし…)」

湧「(…やっぱいすっぺ、エッチな本うっすいんじゃねじ…一部はのこせっあぐっべきじゃったのかも…?)」

湧「(でも…頭では分かっていてもちっと納得でけんあちきがいて…)」ムムム

京太郎「ありがとう、わっきゅん!!」

京太郎「俺、わっきゅんの為にも全力で揉むよ!!」キラキラ

湧「(…まぁ、やる気になってるみたいだし良っか)」

湧「そいじゃ、あちき、どげんすれば良い?」

京太郎「とりあえず立ってるままじゃ辛いだろうし、布団敷いて横になってくれ」

京太郎「その上から俺がマッサージするって形で」

湧「うん。わかった」




139 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:16:52.04WDeLAh9mo (4/16)


京太郎「さて、準備も出来たし、そろそろ行くぞ」

湧「う、うん…」ドキドキ

京太郎「…あの、そんな赤い顔しないで欲しいんだけど」

湧「だ、だ、だって…こん体勢ドキドキしちゃうよ」

湧「いっもエッチしちょっのとおんなし体勢だもん…」カァァ

京太郎「う…た、確かに同じだけどさ」

京太郎「でも、今回はそういうのなしでやるから」

京太郎「これはあくまでもトレーニングであって…今の俺に不埒な感情はまったくないんだ」

湧「…恋人ん胸ふてーしたかって言うのは?」

京太郎「男として当然の感情です」キリリ

湧「そ、そいなんだ…」

京太郎「だから、まぁ…あんまりそういう顔しないでくれると嬉しいかな」

京太郎「そんな可愛いわっきゅん見ると、俺も我慢出来なくなるし」

湧「はわぁ…」カァァ

京太郎「だから、そういうのがダメなんだって」

京太郎「…そんな顔を見せてるとマッサージの前に襲っちまうぞ?」




140 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:22:13.12WDeLAh9mo (5/16)


湧「だ、ダメだよ…まだおひいまえだもん…」

湧「流石にわっぜかげんね…」

京太郎「分かってる。流石に俺も昼前に盛るほどサルにはなりたくないしな」

京太郎「だから、お互い我慢。オーケー?」

湧「…うん。オッケー」

京太郎「よし。じゃあ…行くぞ」フニ

湧「ふあ…♪」

京太郎「…わっきゅん?」

湧「だ、だって…キョンキョンの手、きもっ良くて…」

湧「いっもあちきの事、いっぺ、イかせてくるっキョンキョンが触れてくれたってだけで…ごてが勝手に…」カァァ

京太郎「一体、どれだけ敏感になってるんだよ…」フニ

湧「き、キョンキョンがじょし過ぎる所為…んあぁっ♪」ピクン

京太郎「…わっきゅんで童貞卒業した男が上手な訳ないだろ」

京太郎「つーか…これ無理だから、ちょっと服の端噛んでてくれ」

京太郎「俺の理性が絶対保たない」

湧「ぅ、うん。わかった…」カミ

京太郎「よし。じゃあ改めて行くぞ」フニ

湧「ぅ…ん♪」



141 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:25:28.52WDeLAh9mo (6/16)


京太郎「」フニフニ

湧「ふ…うぅ…♪」

京太郎「」フニフニ

湧「ふあ…ぁ…♪」モゾ

京太郎「」フニフニ

湧「あふぁ……♪」ピクン

京太郎「」フニフニ

湧「くぅ…っ♪」ビビクン

京太郎「…」ピタ

湧「ふぅ…ふぅぅぅっ♪」

京太郎「」フニフニ

湧「んぅっ♪」ピン

京太郎「」フニフニ

湧「ふぁ♪ふぁぁ…っ♪」ブルブル

京太郎「」フニフニ

湧「んっくぅ♪きゅ…うぅぅぅぅうぅううっ♪」アシピーン



142 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:30:52.03WDeLAh9mo (7/16)


湧「ふぁぁ…♪んぁぁ…♪」トローン

湧「(…わっぜか…きもっ良かったぁ…ぁ♪)」

湧「(ツボを押す為のやり方なんに…何時もよりもきもっ良くて…♪)」

湧「(あ、あちき…も、もう一回…お、おっぱいでイっちゃってぇ…♥)」

湧「(こ、こげなマッサージ…絶対…ダメぇ…♪)」

湧「(癖に…癖に…なっちょ…♪)」

湧「(ただでさえ…キョンキョンにいっぺ、エッチな事教えてもろたあちきのごてがぁ…♪)」

湧「(もっともっと…エッチくなってぇ…♪)」

湧「(キョンキョンなしじゃ生きられんごてにされちゃうう…ぅ♥)」ハァハァ

湧「(じゃっどん…これはマッサージじゃっで…耐えんと…♪)」

湧「(少なくともキョンキョンはあちきん為にエッチな事我慢してくれてる訳だし…♥)」

湧「(せめてマッサージが終わるまでは…我慢…ぅ♪)」

湧「(あちきもまたイくん我慢したい…のに…ぃいっ♪♪)」

湧「ふきゅぅううっ♪♪」ビクンビクン



143 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:33:52.86WDeLAh9mo (8/16)


~五分後~

湧「はぁー…ふあぁぁ…♪」クテー

京太郎「えーっと…大丈夫か?」

湧「ひとっも、だいじょっじゃね…ぇ♪」

京太郎「…まぁ、六回はイッてたもんな」

湧「…」フルフル

京太郎「え?じゃあ、何回?」

湧「…」スッ

京太郎「八回だったかー…」

京太郎「まぁ、そんだけイったらクタクタになるのも当然だな」

京太郎「とりあえずマッサージは終わったし、とりあえず休憩を…」

湧「…」ガシ

京太郎「あ、あの…わっきゅん?」



144 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:41:37.09WDeLAh9mo (9/16)


湧「キョンキョン…せっね…せっねよぉ…♥」

湧「あちきずばっ、イきすぎて…もうダメなの…ぉ♪」

湧「ごてがキョンキョンの事欲しがってる…っ♪」

湧「おっぱいじゃねじ…ちんの部屋までキョンキョンに揉んでほすなったのぉ♥」

湧「じゃっで…お願い、キョンキョン」

湧「あちきとエッチ…ぃ♪エッチしてぇ♥」

湧「いっもみたいにグチョグチョドロドロになるよなアクメセックスしてぇ♪」トロォ

京太郎「…ッ」ゴクッ

京太郎「い、いや、でも、ほら、まだ昼前だし落ち着いて…」

湧「やだぁっ♪おちつくなんて無理ぃ♥」

湧「ほら…見てキョンキョンっ♪」クパァ

湧「あちきもぉこんなにトロトロになっちょっよぉ…♪」

湧「キョンキョン欲し過ぎて、ヒクヒクしちょぉアソコ見せるくらい発情してるぅぅ…♥」ゾクゾク

湧「じゃっで…無理ぃっ♪我慢なんてでけんもんぅっ♥」

湧「今すぐキョンキョンのオチンポ欲しくて欲しくて…♪」

湧「あちきもぉダメになっちょるぅぅっ♪♪」

京太郎「…わ、わっきゅん!」ガバッ

湧「ひゃうぅん♪」

湧「そ、そぉっ♪それが良いのぉ…っ♥」

湧「いっもみたか犯してぇ…♪」

湧「あちきの小さなアソコをキョンキョンのオチンポでグリグリして…あひぃいいぃいいっ♪♪♪」



145 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:45:55.21WDeLAh9mo (10/16)


~二時間後~

湧「は…あぁ…♪」ピクン

湧「ふあ…あ…ふおぉ…ぉお♥」ハァハァ

京太郎「えーと…とりあえず落ち着いたか?」

湧「んぁぁ…♪♪」トローン

京太郎「(…うん。まだ帰って来れないみたいだな)」

京太郎「(まぁ…流石に二時間ぶっ通しで抜かずに連戦はアレだったか…)」

京太郎「(わっきゅんの身体は小さいし、こっちでコントールしなきゃって毎回思ってるんだけどなぁ…)」

京太郎「(でも実際始まる度にその辺トんじゃって…こうしてアヘ顔晒して気絶するわっきゅん見る度に思い出して…)」

湧「ん…うぅぅ…♥」モゾ

京太郎「お、起きたか?」

湧「く…うぅ…ん…♪」コク

京太郎「そっか。良かった」

京太郎「とりあえずそのまままで休憩しようぜ」

京太郎「まだ身体も敏感で辛いだろうしさ」ギュゥ

湧「~~~っ♥♥」



146 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:48:57.10WDeLAh9mo (11/16)


湧「…はぁうぅん♪」スリスリ

京太郎「落ち着いたか?」

湧「うん。あいがと…♥」

湧「…じゃっどん、今日もキョンキョンのエッチ激しすぐっよ…ぉ♪」

京太郎「ごめんな。毎回…その」

湧「あ、あちきは良かよ♥」

湧「その…あちきもエッチなのは嫌いじゃねし…♪」

湧「それにあちきに思いっきり欲望ぶつけてくれるキョンキョンは好きじゃっで…♥」ニコ

京太郎「(…天使だ。天使がここにいる)」ナデナデ

湧「あふぅ…♥」フニャァ

湧「……あ、じゃっどん…」

京太郎「ん?」

湧「…あちきの胸ふてーするんなら、カロリー消費するエッチは禁物じゃ…」

京太郎「あっ…………」



147 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:52:21.43WDeLAh9mo (12/16)


京太郎「(し、しまった…!そこまで考えてなかった…!!)」

京太郎「(くそ…!って事は俺は選ばなきゃいけないのか…!!)」

京太郎「(わっきゅんの胸が大きくなるのか…わっきゅんとのセックスか…!!)」

京太郎「(ぐ…世界はなんて残酷な選択を俺に強いるんだ…!!)」

京太郎「(だが、これが運命ならば…俺は…!!)」

湧「…キョンキョン?」キョトン

京太郎「…わっきゅん、当分、エッチは我慢しよう」

湧「えっ!?」ビックリ

京太郎「勿論…俺もわっきゅんとエッチはしたい…!」

京太郎「正直、今もわっきゅんと密着してビンビンになってる!!」

湧「そ、そげな事言わんでも分かっちょるよぉっ♥」カァァ

京太郎「でも…ここで欲望に流されちゃ何時までたってもわっきゅんの悩みは根本的な部分で解決しないままなんだ…!」

湧「…キョンキョン」

京太郎「だから…俺はわっきゅんとのエッチを封印する!!」

京太郎「少なくともわっきゅんの豊胸に効果が現れるまでは…禁欲だ!!!」グググッ



148 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 06:58:16.83WDeLAh9mo (13/16)


湧「あ、あの、キョンキョン…?」

湧「気持ちはわっぜか嬉しいけど…じゃっどん…」

京太郎「大丈夫。俺の事は心配しなくて良い」サワヤカ

京太郎「俺は確かにスケベだが、恋人の為に自制心は持てる男だ」

京太郎「幾ら禁欲生活を続けても、絶対に他の女の子と浮気しないって約束する!!」キラキラ

湧「う、うん。あちきもそいは気になっちょったじゃっで…で、でも…」

京太郎「その分、代わりに一日二回さっきのマッサージな!!」

湧「に、二回も…!?」

京太郎「あぁ。朝と夜と分けてやった方が効果が高いらしい」

湧「じゃ、じゃっどん…あ、あちき、毎日二回もされてお預けなんて…」モジモジ

京太郎「よーし…!やるぞー!!」スクッ

京太郎「わっきゅんの豊胸作戦開始だ!!!」オー

湧「あうぅぅぅぅ」マッカ



―― 3日後、焦らされすぎて我慢できなくなった湧に襲われる事などこの時の京太郎は知るよしもなかった。





149以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 06:59:29.986GsMn6Rw0 (1/1)

あ、京太郎はなんとか我慢してたのね。


150 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 07:13:44.84WDeLAh9mo (14/16)

>>131を見て電波が突然やってきたからね、仕方ないね
尚、ここはKENZENなスレなので続きを書く予定はありません
と言うかこれもう一ヶ月後のゆうたんイェイ~前倒しで良いんじゃないかな…?

後、確かに依子のその辺りの設定は重要ですね…!!!
と言う訳で軽く考えて見ましたが、やっぱり依子はエルダーなんであんまりオナニーしたりはしないと思います
多分、週一くらいのペースなんじゃないでしょうか
ただし、一回のオナニーはかなり激しくて、声とか色々な汁が漏れてしまうと思います
だから、両親がいない時間などを見計らって、ベッドにバスタオルとか敷きながらやってるんじゃないでしょうか
で、羞恥心が強いので多分、仰向けじゃなくてうつ伏せでオナニーするタイプ
もし突然の乱入者が来た時に誤魔化せるよう布団をかぶりながら、まずはブラを外してマッサージを
気分が盛り上がってきたらゆっくりと乳輪の方へと移動して谷間を作ったりするんじゃないでしょうか
そうして吐息が荒くなってきた辺りでもう乳首がビンビンになってるので、ゆっくりと指で弄り始める
最初は指で摘む程度だったのが段々、強くなっていき、ベッドに押し付けたり、しごいたりすると思います
その辺りになってきたらもうアソコが濡れ剏めるので、胸は左手にまかせて、右手を秘所の方へ
とは言え、いきなり直接触れるのは怖く、閉じた大陰唇の上からスリスリと刺激する程度になるでしょう
その間に溜まった快楽で大陰唇から愛液が染み出すようになったら、もう我慢出来ません
快楽で小さく割れた陰唇の中に指を入れ、ピンク色の粘膜をいじり始めます
特にお気に入りなのは人並みよりも大きな淫核
小指の先くらいのサイズに育ったそれに愛液を塗りたくるようにしてクリクリを弄ります
その度に噛み締めたシーツの間から「ふー♪ふーっ♪」と声が出ますが、ここまで来るとエルダーもメスと変わりありません
頭の中にはイクことしかなくなり、クリトリスの皮を剥いてしまいます
瞬間、頭の中まで届くビリビリとした快感に身体が跳ねますが、依子の手は止まりません
まるで意識とは別のモノに支配されているように露出したクリトリスを摘み、イジリ始めます
自身の愛液でドロドロになったクリトリスは弄る度に奥からあふれた愛液が内股を滴り落ちていきます
それを拭うように腰をベッドに押し付け始めたら、もうフィニッシュは目前です
床オナする男のように身体を揺らし、ベッドをきしませながらクリと乳首をこすりつけます
発情したオス犬も裸足で逃げ出すようなその激しい動きは一分もした頃には全身の硬直と共に終わるでしょう
足をピーンと伸ばし、両手で性感帯を摘む依子はシーツを思いっきり噛み締めながら絶頂へと至るのです
その後、ベッドにくたりと落ちた身体は十分後、倦怠感を纏わせながら片付けに入り、また何事もなかったかのように『家鷹依子』に戻ります





151 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 07:16:49.47WDeLAh9mo (15/16)

あ、後、明日には本編投下出来れば良いなって思ってます
ダメだったら社畜ってるんだと思って下さい


152以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 07:18:44.390dgIgdaiO (1/1)

リクエストした者です!
わっきゅんありがとうございます!わっきゅんカワイイです!わっきゅんエロいです!!ありがとうございます!!
わっきゅんエロいです!!

ほんとありがとうございました
まさかここまでのクオリティのもの書いていただけるとは思ってなかったです
いつも以上のイチャラブド甘展開ほんと美味しくいただきました。
もちろん本編の方も楽しみにしてるんでこれからも無理せず頑張ってください!応援してます!


153 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/18(金) 07:32:33.97WDeLAh9mo (16/16)

寧ろ、こっちこそエロネタばっかりで申し訳ないです
貧乳の女の子ってなるとやっぱり豊胸ネタだろと条件反射的に書いたけど今から思い返すと他にもネタは思いついたりしたというか…(´・ω・`)
エロ苦手な人もいるでしょうし、もうちょっとライトなネタでいくべきだったと後悔していました
なので、少しでも気に入って頂けたのであれば、本当に幸いです

で、でも、上の小ネタは支援絵とはまったく関係ないわ!!
リクエストとか別にされてないし、>>152の為に書いた訳じゃないんだから!!
か、勝手に勘違いしないでよね!!!///////



154以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 09:35:10.39//6pY4e4O (1/1)

乙です


155以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 10:36:47.899lWt/nGhO (1/1)

投下とツンデレ乙でーす。


156以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 15:56:07.13WRCjN2Xfo (1/1)

相変わらず面白い


157以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 19:30:05.98E4ze8kpF0 (1/2)

乙。>>1のツンデレ……アリですね…

そもそもエロ苦手な人はイッチのスレ追わないと思うなーなんて。


158以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 20:06:14.725fJJxxaWO (1/1)

>>157
それがそうでもないんだわ
エロネタ嫌いってほどじゃないが自分は特に好きじゃないな
それでも>>1の話が面白いから読んでる


159以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 20:56:50.32E4ze8kpF0 (2/2)

>>158
そうか、それは失言だった。すまん。なんでもするから許しておくれ


160以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 02:27:57.85+q5BpUhCo (1/1)

ん?今


161以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 03:09:27.98DuXHXfFRo (1/2)

如何にもモブっぽい。


162以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 03:13:04.13DuXHXfFRo (2/2)

誤爆


163 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:36:50.94b5Z/x4Mto (1/51)

姉さん!明日って今さ!!!!(今から投下しますの意)



164 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:37:16.95b5Z/x4Mto (2/51)


………

……






―― 星誕女子の外観は永水女子とかなり似通っていた。

確か、今でこそ別の団体が経営しているけれど、元々、星誕女子と永水女子の経営者は同じだったらしいからな。
多分、創設者が永水女子の設計者と懇意で、星誕女子の設計にも似た雰囲気を求めたのだろう。
少なくとも、こうして駐車場から見た校舎の景色は、殆ど永水女子と変わりがなかった。

祭「んー…ここが星誕女子かー」

舞「思ったよりもずっと長い旅でしたわね」

明佳「そうですね。あんまり疲れてはいませんけれど…」

星誕女子まで俺達を運んでくれたバスはかなり快適なものだった。
座席同士の距離も適度にあり、狭さはまったく感じない。
フットレストやリクライニング機能は座席の柔らかさとの相乗効果を発揮し、俺達の身体に疲労をあまり溜め込ませなかった。
その上、車内にはトイレまで用意されているのだから、このバスを一日借り切るだけで一体、どれだけの費用が掛かっている事か。
少なくとも、俺は今まで学校行事でこんなに良いバスに乗った記憶なんてなかった。



165 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:37:53.06b5Z/x4Mto (3/51)


京子「まぁ、まだあくまでも移動してきただけだものね」

京子「本番はこれからなんだから、気を引き締めていかないと」

しかし、そんなバスによる快適な旅ももう終わり。
俺達は既に星誕女子の駐車場へと降り立っているんだ。
周りを見れば、同じようなバスから一年の子や三年のお姉さま方も降りているし…。
そろそろ星誕女子との挨拶をしに行かなければいけない。

明佳「…穏便に終われば良いんですけれど」

祭「まー…私もそう思いたいけど、まず無理じゃないかな」

舞「…そうですわね。少なくとも、去年からエルダーは変わっていないそうですし…」

明佳「…ですよね」フゥ

…まぁ、明佳ちゃんはあんまり人と競ったりするのが好きなタイプではないからなぁ。
どちらかと言えば、穏やかで引っ込み思案なところがあるから、やっぱり色々と憂鬱なのだろう。
新学期が始まってからこれまでの間、体育祭に関して沢山の人と話をしてきたけれど…その中には信じられないようなエピソードもあったしな。
流石にいくらか話は盛られているとは思うけれど、こうして彼女がため息を漏らすくらいに酷かったのは確実だろう。



166 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:38:19.59b5Z/x4Mto (4/51)


祭「あんまり不安にならなくても大丈夫だって」

祭「いざって時は京子ちゃんが護ってくれるでしょ」チラ

京子「えぇ。皆が変な事されないよう極力、側にいるつもりよ」

明佳「京子さん…」ジィン

勿論、そんな明佳ちゃんの事を放っておくつもりはない。
そもそも俺は今日まで体育祭の時には気をつけろとそう周りに声を掛けてきた側の人間だからな。
そんな俺の友人が害されるなんて間抜けも良いところだ。
こうして彼女が不安がっている事もあるし、今日は出来るだけ明佳ちゃんと一緒に行動した方が良いのかもしれない。

舞「…ちなみに春さん、今の点数は?」

春「…20点」

京子「き、厳しいわね」

春「…やっぱり皆とひとくくりで扱われるのは大幅な減点対象…」

春「女の子としては自分だけを見て欲しいし…」

春「それに側にいるじゃなくて護ると断言してあげるべきだったと思う…」

祭「つまり…?」

春「…口説き文句としては下の下。赤点確実で補修が必要なレベル」

べ、別に口説いてた訳じゃないんだけどなぁ。
しかし、さっきのセリフにそこまでひどい点数がつけられるとちょっと考えるところもあるというか…。
あくまでも冗談めかしているとは言っても、女の子の忌憚ない意見である事に間違いはない訳だし。
女の子を口説く機会が来た時に参考にさせてもらうとしよう。
…………まぁ、こうして女装して女子校に混ざっている今、そんな機会が来るとは正直、思えないけれども。



167 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:38:45.16b5Z/x4Mto (5/51)


春「…でも、私は京子が口説いてくれてるってだけで100点をあげちゃう」テレ

舞「おぉっと、これは熱い手のひら返しだー!」

祭「京子さんの贈賄疑惑が生まれるレベルですわね」クス

京子「…なんだか私のまったく関与していないところで風評被害が生まれたのを見た気がするわ」

…と言うか、冗談でもそういう事言うなよな。
ちょっと照れくさそうにしながらそんな事言われたら、幾ら俺でもドキっとしてしまうだろうが。
元々、俺にとって春はとても好みな女の子なんだし、ついつい口説き文句が口から漏れてしまいそうになる。
まぁ、流石に今は人目があるし…ましてや冗談だから本気で口説いたりはしないけれども。

明佳「わ、私は賄賂とかなくても、相手が京子さんってだけで100点つけちゃいます…よ?」ジィ

京子「…ありがとう、明佳ちゃん」

京子「私にとって貴女が一番の癒やしだわ」ナデナデ

明佳「えへぇ…♪」デレ

俺の周りには隙あらば、こっちを弄ってこようとする連中がうじゃうじゃいるからなぁ…。
そんな連中のように人をからかったりしない彼女の存在は俺にとって一種の清涼剤だ。
少なくとも、こうして下からこっちを伺ってくる彼女の言葉に嘘は一片たりとも混ざっていないだろうし。
何ら構える事なく、その言葉を素直に受け止める事が出来る。


168 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:39:17.11b5Z/x4Mto (6/51)


祭「あーぁ…明佳っちってば、京子に撫でられてるだけでメスの顔しちゃってさ」

明佳「し、してません!失礼な事言わないで下さい!!」

明佳「そ、そもそも私と京子さんは同性なんですから、そういうんじゃないんです!!!」

舞「あら、そういうのって何ですの?」ニヤ

明佳「あ…うぅ…」カァァァ

…ただ、それはあくまでも俺にとっては、の話なんだよなぁ。
祭ちゃんは誰に対してもフレンドリーである分、こうして結構、弄ってくるタイプだし。
舞ちゃんの方は外面は完璧だが、身内には結構、鬼畜なネタ振りをする傾向にある。
結果、その二人と一年の時からトリオを組んでいた明佳ちゃんは完全にいじられキャラが定着してしまっていた。
…まぁ、こうして自分から墓穴を掘ってしまうところも無関係ではないのだろうけれど。

春「…明佳ちゃんはむっつりスケベ」

明佳「うぅぅ…京子さぁんっ」ダキッ

祭「あら、奥様。あの子ってば自分の立場が悪くなった途端、京子に抱きつきましたわよ」

舞「アレは間違いなく計算出来る女の行動ですわね」

春「…きっと私達もこの流れにする為に利用されていたはず…」

明佳「ち、違いますよ。絶対、違いますからね!!」

京子「大丈夫よ。ちゃんと分かってるから」ナデナデ

俺と明佳ちゃんの付き合いはそう長い訳でも深い訳でもない。
きっと俺の知らない彼女というのは数えきれないほどいるんだろう。
それでも、こうして俺の胸の中で弁明する彼女にそんな計算が出来るとは思えない。
…つーか、そんな風に計算出来るならもっとスマートに俺へと甘える方法があっただろうしな。
普段から弄られまくっている彼女のことを思えば、ここで全てが計算だったという祭ちゃん達の冗談を信じる気には到底、なれない。


169 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:39:47.67b5Z/x4Mto (7/51)


京子「皆もそろそろ止めにしておかないと明佳ちゃんが本気で拗ねちゃうわよ?」

明佳「…と言うかもう拗ねてます」ムスー

舞「でも、少しは役得だって思ってるんでしょう?」

明佳「そ、それは…まぁ…って、な、何を言わせるんですか!?」カァァ

……うん、思ったよりも明佳ちゃんってちゃっかり者なのかもな。
舞ちゃんの言葉にうっかり乗せられたとは言え、まさかそんな言葉が出てくるなんて。
春を除いたクラスメイトの中でも特に好意的に思ってくれているのは分かってたけど…正直、ここまでとは思っていなかった。
だからと言って幻滅したりはしないけど…そんな風に思われてたって知ってしまうとちょっと恥ずかしくなってきたというか…。

依子「皆さん、そろそろクラスごとに整列して集まって下さい」

依子「これから星誕女子の皆様に挨拶に向かいますわ」

流石、依子さん…!
丁度、良いタイミングで皆に声掛けしてくれるなんて…!!
まぁ、エルダーであり生徒会長でもある彼女は生徒全員を見る必要があるし、俺の様子に気づいてたって訳でもないんだろうけれど。
しかし、ちょっと照れくさいこの気持ちを一掃するにはかなり良いキッカケになる。



170 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:40:13.50b5Z/x4Mto (8/51)


明佳「……」ギュゥ

春「…京子と抱きつけなくなって寂しい?」

明佳「そ、そんな事ないですよ」

明佳「ほ、ほら!こんな風にすぐ離れられますもん!!」パッ

明佳「………………」チラ

…ホント、明佳ちゃんは嘘が吐けない子だな。
そんな風にチラチラ見てたら、寂しいって思ってるって言ってるようなもんじゃないか。
まぁ、ただ寂しいってだけじゃなくて不安な気持ちも大きいんだろうけれどさ。
今から俺達が挨拶しに行く星誕女子は、決して友好的な人たちではない訳だし。
実際、去年、競技中に突き飛ばされた彼女からすれば、極力、安心できる人の側にいたいとそう思うのが普通だろう。

京子「…恥ずかしいからまた後で二人っきりの時にね」

明佳「あ…」マッカ

今はクラスごとの整列とかがあるから側にはいられないけれどな。
ただ、今日はほぼ明佳ちゃん達と一緒に行動する事になるんだ。
彼女と二人っきりになる機会はまた訪れるだろうし、そういう時に彼女の希望を叶えてあげれば良い。
まぁ、正直、女の子に抱きつかれるのはちょっと恥ずかしいけれど…でも、明佳ちゃんの不安はどうにかしてあげたい気持ちの方が強いし。
俺自身、美少女に抱きついて貰えるって役得もあるんだから、ここは口約束を交わしておくのが良いだろう。



171 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:40:39.44b5Z/x4Mto (9/51)


祭「…あぁいう事さらっと言うから卑怯だよねー」

舞「たまにわざとやっていると思う時がありますわ…」

春「…私も良くされるから分かるけど…アレは100%天然」

まるで俺が明佳ちゃんの事を口説いているようじゃないか。
……い、いや、まぁ、確かに思い返すと口説いてるみたいな事言っているけれど…。
で、でも、人前で抱きつかれるのは恥ずかしいってだけで、何も人に見られたら困るような事するつもりはないし。
同性同士でハグするくらいなら普通だよな、うん。
…………まぁ、実際、俺は男で明佳ちゃんとは異性になるんだけれど、それはさておき。

京子「そ、それよりも早く整列しないと皆の迷惑になっちゃうわ」

祭「…誤魔化したね」

舞「…誤魔化しましたわね」

春「…誤魔化した」

仕方ないだろおおおお!!!
このまま同じ話題を続けていたら、俺の立場がどんどんと悪くなる一方なんだし!!
ここは所謂、戦略的撤退を行うのが最善だと誰でも判断する場面だ。
一応、あんまりダラダラしてると依子さんを始め、他の皆にも迷惑を掛けるという大義名分もあるし、許して欲しい。



172 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:41:05.79b5Z/x4Mto (10/51)


舞「まぁ、でも、京子さんが言う事も一理ありますしね」

祭「だね。あんまりノンビリしてあっちに永水女子は纏まりがないって思われるのも癪な話だし」

春「…大丈夫。私達、京子親衛隊は鉄の絆で結ばれてるから」

明佳「……私、さっきその鉄の絆で結ばれてる人たちに悪女扱いされてたんですけど」

春「…皆の共有財産である京子に抱きついてたからしょうがない」

明佳「そう言う割には春さんも結構、抱きついたりしてるじゃないですか」

春「私は親衛隊長だから特別…」グッ

明佳「お、横暴です。職権乱用も良いところですよ!」

明佳「副隊長としてはそのような職権乱用を認める訳にはいきません!!」

いつの間にか俺が皆の共有財産になってたでござるの巻。
まぁ、美少女達に共有されるっていうのは正直、悪い気分じゃないけどさ。
ただ、鉄の絆で結ばれているはずの親衛隊に早くも不穏な空気が漂い始めているんですが。
…というか明佳ちゃん、知らない間に親衛隊の副隊長やってたんだな…初めて知った。


173 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:41:39.70b5Z/x4Mto (11/51)


明佳「私は京子さんを独占しようとする春さんに辞任を要求…」

祭「はい。皆、待ってるからそろそろ行くよー」ガシ

明佳「あぁっ!き、京子さん!!」ズルズル

京子「え、えぇっと…また後でね」

舞「はい。また後で」ニコ

…どうやら親衛隊分裂の危機は祭ちゃんの強引な介入によって去ったらしい。
まぁ、俺としては親衛隊そのものがどうなろうと構わないんだけれど…でも、その構成員は俺の友人たちな訳で。
冗談めかしたものであったとしても、喧嘩するような事にならなくてちょっと安心した。
ホント、今回に関しては祭ちゃんに感謝しないとな。

春「…愛は必ず勝つ」ドヤァ

京子「もう。またそんな風に巫山戯てたら、明佳ちゃんにリコールされるわよ」

春「…大丈夫。そもそも親衛隊に辞任やリコールなんて制度はないから」

京子「私の知らないところで親衛隊が独裁めいたものになっているんだけれど…」

まぁ、何はともあれ、今は整列が先だな。
永水女子はお嬢様校だけあって、もう大部分の二年生が整列をし終えているし。
バスの影になって他の学年は見えないが、恐らくそっちも同じだろう。
こうして春と馬鹿な話を続けるのは楽しいけれど、周りの足並みを乱す訳にはいかないよな。


174 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:42:06.01b5Z/x4Mto (12/51)


依子「皆様、整列ありがとうございます」

依子「では、これから星誕女子の皆様に挨拶しに向かいますわ」

依子「荷物を抱えて少し疲れているとは思いますが、今しばし我慢してくださいませ」

そうして整列した俺達の前に生徒会のメンバーが出てくる。
その中で俺達に声を掛けてくれるのは勿論、生徒会長兼エルダーの依子さんだ。
まさしく俺達の代表と言っても良い彼女に率いられながら、俺達は星誕女子の中を歩いて行く。
流石にパレードのように一糸乱れぬ行軍…と言う訳ではないが、その歩みはそれなりに揃っていて。
小声で話したりするような子さえ、俺達の中にはいなかった。

京子「(…やっぱり色々と対抗心を燃やしているんだろうな)」

星誕女子が生まれた時から永水女子との姉妹校の関係は続いている。
…けれど、今の俺達は姉妹校に向かう生徒と言うよりも敵地へと向かう軍人のような緊張感が漂っていた。
それは多分、今年の永誕祭が無事で終わる訳がないと皆が予想しているからだけじゃない。
あんな卑怯な真似をする連中に淑女として負けたくはないという気持ちが俺達の中で広がっているのを感じる。



175 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:42:39.16b5Z/x4Mto (13/51)


「永水女子の皆様、ごきげんよう」

「あまりにも遅いので、何かトラブルでもあったと心配しておりましたわ」

「まさか栄えある永水女子の皆様が談笑して時間に遅れるだなんて事ありませんものねぇ?」

…そんな俺達の前に現れたのは永水女子とよく似た制服を着た一人の女生徒だった。
長い黒髪に泣きぼくろを備えたその姿は、紛れも無く美少女とそう呼べるものだった。
ただ、その顔立ちはかなりキツく、目線にも人を見下したようなものがアリアリと浮かんでいる。
……自己紹介なんて必要ないよな。
遠路はるばるやってきた俺達に開口一番、嫌味をぶつけるこの人こそ… ――

「あぁ。そうそう。自己紹介がまだでしたわね」

「私は星誕女子生徒会会長兼エルダーの月極輝夜と申しますわ」ニコ

―― 日本の駐車場の七割を所有する月極(げっきょく)グループの一人娘…!!

焼け野原となり、土地の所有権すら有耶無耶となった戦後の日本。
その中で非合法な手段で土地を占領しようとした一つのグループがあった。
それは復興が進む中で会社となり、手に入れた土地で様々な商売を始めたのである。
その中でも戦後復興の中で大量に必要となった車を預かる駐車場業務が大成功し、その創業者は駐車場王として教科書に名前を残していた。


176 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:43:05.91b5Z/x4Mto (14/51)


輝夜「大体の方がお察しだとは思いますが、私はあの月極グループ会長の孫娘ですわ」

輝夜「つまり私に逆らうと言う事は…分かっていますわね?」

その影響力は今も根強く残っている。
急激に増えたコインパーキングに押されているものの、やはり今でも駐車場業界において月極グループは一強状態なのだから。
下手に彼女に逆らえば、その背後にいる月極グループの不興を買って、駐車場を貸して貰えなくなるかもしれない。
無論、個人程度であれば問題はないが…お嬢様校の永水女子や星誕女子には会社の経営者も多いんだ。
社用車を置く場所がなくなったとなれば、その負担はかなり大きいだろう。

京子「(…嫌なやり口だな)」

……恐らくこの人はこうして他人に圧力を掛ける事で周りを仕切ってきたのだろう。
こうして俺達に釘を刺すような言葉には一切の躊躇いがなかった。
いっそ清々しいまでに親の七光りに頼るその姿勢は、しかし、まったく好感を呼んだりはしない。
むしろ、その美しさからはかけ離れた内面の醜さに、反吐が出そうになる。


177 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:43:32.64b5Z/x4Mto (15/51)


依子「…月極さん」

輝夜「あら、どうかしましたの、家鷹さん」

輝夜「あぁ、そうそう。どうかしたかで思い出しましたが、今年の全国模試、風邪でも引いていたのですか?」

輝夜「私は34位でしたけれど…確か家鷹さんは全国102位でしたわね」

輝夜「あんなに簡単な問題だったのに三桁だなんて…永水女子のエルダーとしてはあり得ない成績でしょう?」

輝夜「貴女の成績を知ってから、私ずっと心配しておりましたのよ?」

…しかし、この人はその醜さとは裏腹に優秀な人ではあるらしい。
全国の高校生の中で102位の依子さんも十分すごいが、彼女はさらに上を行っているんだから。
ただ、それを凄いと欠片も思えないのは、その優秀さを他人を小馬鹿にする事にしか使っていないからだろう。
正直、どれだけ優秀であろうともこんな風に人を見下すような人と仲良くなりたいとは到底、思えない。

依子「ご心配ありがとうございます」

依子「ですが、私はこうして支えてくれる皆様のお陰で元気でやっていますから大丈夫ですわ」ペコ

輝夜「…ふん」

しかし、そんな人に対しても依子さんは卒なく対応してみせる。
やっぱりこういうところは流石、エルダーに選ばれるだけはあるって感じだよなぁ。
俺なんかは正直、嫌味を返したくなるけれど…こうして依子さんはそれをグっと堪えてあくまでも友好的に接している。
一見、それはヘタレているように見えるものの、しかし、こっちを挑発してきた彼女にはとても面白くないものだったんだろう。
小さく息を漏らすその姿は、目に見えるほどの肩透かし感を漂わせていた。



178 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:44:02.50b5Z/x4Mto (16/51)


依子「それよりもあまり我が校の生徒を萎縮させるような事を言わないで下さいませ」

依子「私達の中には新入生も居て、月極さんの優しさを理解出来る子は少ないのですから」

依子「あんな言葉遣いでは脅されているとそう思う子が出てくるかもしれません」

輝夜「…それは申し訳ありませんでしたわ」

輝夜「えぇ。この炎天下の中、ずっと待ちぼうけを食らって少し気が立っていましたの」

輝夜「許して下さいまし」

…許してください、なんて態度じゃないけどな。
頭一つ下げる様子もなければ、相変わらず人の事を小馬鹿にした目をし続けているし。
そもそも…待ちぼうけを喰らっていたと言っても、彼女の額には汗一つすら浮かんでいない訳で。
この人の性格上、本当に炎天下の中、待ちわびていたのならばこれみよがしに汗を浮かべていただろうし、到底、待っていたとは思えない。

輝夜「それより皆様が荷物を置く場所に案内しなければいけませんわね」

輝夜「どうぞこちらへ」

依子「…えぇ。では、皆様、行きましょう」

…正直な事を言えば、あんまり行きたくはない。
酷い酷いとは聞いていたが…まさか星誕女子のエルダーがここまで酷いとは思ってなかったからな。
淑女とは対極の位置にいるこの人が率いる学校と友好など不可能だと今の時点でさえ思う。
…しかし、学校同士のイベントともなれば、幾らエルダーである依子さんでも拒否権はない訳だし…ここはついていくしかない。



179 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:44:32.66b5Z/x4Mto (17/51)


輝夜「こちらになりますわ」

依子「ここは…」

輝夜「えぇ。見ての通り、物置ですの」

依子「……」

……ただ、ここまで徹底して嫌がらせをしてこられると流石に回れ右して帰りたくなるよな。
いや、まぁ…俺達の目の前にあるのは物置代わりに使っている空き教室だって言うのは良いんだ。
ただ、そこにはまだ机や椅子といった中身が丸ごと詰まったままになっていて。
しかも、ろくに掃除していないのか、扉近くの位置でさえもホコリが舞っているのが分かる。

輝夜「あら、ちょっとホコリっぽいですわね」

輝夜「一応、事前に掃除をするように言っていたのですけれど…どうやら手を抜いた子がいるみたいですわ」

輝夜「その子に関しては後でこちらから叱っておきますから、今回のところはこれで我慢して貰えません?」

依子「……他の教室を使わせて貰うと言う選択肢はないのですか?」

輝夜「他の教室は教室で、今日の体育祭の為に使用しておりますから」

輝夜「荷物を置いて着替えが終わったら、すぐに開会式を始めなければ時間的にも間に合いませんし」

輝夜「永水女子の皆様にはここを使ってもらうしかありませんわね」クス

…ここまであからさまだといっそ笑いたくなってくるレベルだな。
そもそも今回の不手際は掃除をしなかったあっちにあるのに、まったくこっちに対して譲歩しようとしないんだから。
普通なら他の教室にある荷物をどかしてでも、こっちの荷物を置くスペースを作るべきだろう。
にも関わらず、こうして俺達にここを使わせようとするって事は、最初から嫌がらせ目的で掃除をしなかったのだとしか考えられない。


180 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:45:03.74b5Z/x4Mto (18/51)


依子「…今回の件は星誕女子側の不手際として学校側に報告させて貰いますわ」

輝夜「えぇ。どうぞご勝手に」

輝夜「幾ら抗議したところで生徒一人が処分されるだけでしょうけれど」

つまりスケープゴートの準備は出来てるって事か。
どうやら、相手の性格は最悪に近いが…こういうやり方に関しては一枚上手らしい。
正直、色々と言いたい事はあるが、ここで何を言っても無駄な事くらい俺にだって分かる。
嫌がらせが目的だろうと彼女に言ったところで、ノラリクラリと躱されるだけなのは目に見えているし。
下手をすれば言いがかりをつけているとこっちの方が糾弾される可能性だってある。
こっちを迎え入れる準備を怠った相手に非があるのは確かだが、ここで何をしてもその主犯であろう彼女には何のダメージもない。

輝夜「では、また後ほど準備が出来たらお会いしましょう」

輝夜「ごきげんよう。永水女子の皆様」

依子「…えぇ。ごきげんよう。月極さん」グッ

……ただ、やっぱり依子さんとしては辛いよな。
彼女は勝ち誇ったように去っていく月極さんとは違って、生徒達からの信任を得てエルダーになった人だから。
星誕女子の嫌がらせにに対してろくに反撃できなかったときっと彼女は自分の事を責めている。
…そうでなければ彼女の手がギュっと握り締められたまま、小さく震えたりはしない。



181 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:45:32.25b5Z/x4Mto (19/51)


依子「…それでは」

京子「まずは掃除からですね」

依子「え…?」

そんな依子さんの言葉を遮ったのは、決して考えなしの事じゃない。
きっと誰よりも悔しく思っている彼女の心を何とか立ち直らせてあげたいと言うのがまず一つあったし。
あの他人を見下す事しか知らないような彼女に目に物を見せてやりたいと言う気持ちも強い。
そして、何よりも、俺達にはそれを実行に移せるだけの人数がいるんだ。
ここで汚い物置をそのままにしておく理由がないとそう言っても良いくらいだろう。

京子「依子お姉さま、お忘れですか?」

京子「ここにいるのはエルダーである依子お姉さまだけではないのですよ?」

京子「皆で掃除すればこんな空き教室くらいすぐにピカピカになります」

依子「でも、時間が…」

明星「星誕女子は永水女子と殆ど同じデザインで作られています」

明星「更衣室の数も殆ど同じでしょう」

明星「一度に着替えられる人数には限界がありますし、待ち時間の間に掃除していけば大丈夫だと思います」

…どうやら明星ちゃんも俺と同じ事を考えてくれていたらしい。
補足するように口を開いた彼女の言葉は、俺が考えていた事と殆ど同じだった。
ただ、それを俺が口にするのと明星ちゃんが口にするのとでは大きな違いがある。
彼女は一年生の中心人物であり、そして俺は裏エルダーなんて呼ばれる程度には影響力があるのだから。
その二人がこうして嫌がらせに対する抵抗を口にすれば、一気に趨勢はこっちへと傾く。



182 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:46:18.97b5Z/x4Mto (20/51)


「…やりましょう、お姉さま」

「そうですわ。このままだなんてあまりにも酷すぎます」

「星誕女子が唖然とするような掃除っぷりをみせてやりましょう」

依子「…皆様」

そんな俺の考え通り、俺達に同意する声が幾つもあがる。
そのどれもがやる気に満ちているのは、やっぱりさっきの彼女に怒りを覚えた人が多いからだろう。
あくまでも淑女として生徒代表同士の会話に口は挟まなかったものの、あまりにも酷すぎる対応に声をあげたかった。
そう思っていた人が一人や二人ではないのだとそう思わせる皆の反応を見渡した後、依子さんは小さく頷く。

依子「…分かりましたわ」

依子「確かにこのままではホコリが多すぎて荷物を置く事すら躊躇してしまいそうになりますもの」

依子「それを何とかする為にも…皆様の力、お貸しください」ペコ

京子「勿論です。依子お姉さま」ニコ

…さて、お許しが出たな。
なら、ここで長々と感動のシーンを続けている理由はない。
今回の件は相手の不手際なだけに多少、遅くなっても非にはならないだろうが…しかし、嫌味は間違いなく言われるだろうし。
その時に覚えるであろうイライラを思えば、ここから先はあまりノンビリはしていられない。



183 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:46:56.09b5Z/x4Mto (21/51)


京子「では、依子お姉さま」

依子「…えぇ。まず荷物を置くのは後回しです」

依子「着替えは一年生から、二年生は掃除器具を借りてきて下さい」

依子「三年生は今の間に机や椅子をひとまとめにしてスペースを作りましょう」

そう思う俺達に依子さんはガンガン指示を飛ばしてくれる。
無論、幾ら依子さんでもすぐさま詳細な指示を飛ばせるはずがなく、学年ごとに動きを指示するそれはかなり大雑把だ。
しかし、こうして周りを纏められる人材と言うのは別に彼女だけに限らないのである。
全体を見なければいけない依子さんでは手が届かない部分はこっちで何とかすれば良い。
そう判断しながら俺達は機敏に動いていって… ――


―― そして数十分後、俺達は物置の中を見間違えるほど綺麗にして見せたのだった。





………

……





184 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:47:24.73b5Z/x4Mto (22/51)


―― 永誕祭は永水女子と星誕女子が合同で行うものである。

長らく姉妹校として並び立ってきた二校の親交を深めるそれは、しかし、それだけではない。
他の学校と同じく生徒の連帯感を高めたり、生徒たちが努力する姿を関係者にアピールする事も目的としている。
故に幾ら星誕女子に悪意があろうと、表立って永水女子に対して嫌がらせを行う訳にはいかない。
そのような事をすれば今年の永水女子だけではなく、そのOG全てを敵に回してしまう事になる。
月極輝夜は傲慢ではあり、またその背後にいる月極グループは強大ではあるが、しかし、政経共に強大な影響力を誇る永水女子OG連と敵対するほど愚かではなかった。

依子「…京子さん、どう思いますか?」

京子「思った以上に穏やか、と言うのが正直なところですね」

しかし、それを差し引いても、星誕女子からの妨害はあまりにも少なかった。
無論、細々とした嫌がらせはあるが、最初に警戒していたような妨害は多くはない。
出来るだけ一人にならないよう、関係者の前にいるように周知していたとは言え、その少なさは多くの少女達にとって予想外だった。
だからこそ、永水女子を率いる依子はグラウンドに設置された仮設テントの中、疑問を漏らしてしまう。



185 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:47:57.63b5Z/x4Mto (23/51)


小蒔「でも、それは良い事なんじゃ…」

祭「それだけで終われば良い事だと私も思うんですけれどね」

春「…まず間違いなく何かを企んでる」

その仮設テントの中にいるのは依子と京子だけではない。
小蒔を中心とした神代の関係者や京子の友人たちも集まっている。
だが、その中でこの状況を素直に喜んでいるのは小蒔だけだった。
その他の生徒達は星誕女子の静けさに不気味なものを感じている。

小蒔「星誕女子の人達も改心したとか…」

依子「残念ながらそれはないと思いますわ」

依子「もし、そうでしたら、今頃、私達はもっと快適に永誕祭を行えているはずですし」

依子「何より…あの方は去年と殆ど変わっていませんでしたから」チラッ

そこで依子がチラリと視線を向けるのは、丁度、向かい合うように設置された仮設テントの方だった。
そこに設置された椅子に座りながら、星誕女子のエルダーである月極輝夜はニヤニヤとした笑みを浮かべている。
不気味な静けさに警戒心を強める依子達を楽しんでいるようなそれに改心の色はまったく見えない。
去年と同じく自分以外を見下す下卑た性格のままだと依子は思う。


186 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:48:36.08b5Z/x4Mto (24/51)


京子「…ただ、相手が何を考えているのかまったく分からないのが困りますね」

明星「えぇ…。出来ればその一端でも掴めれば、こちらも対策のしようがあるのですけれど…」

無論、こうして仮設テントに集まっている面々も星誕女子の企みがどういうものなのか考えていた。
しかし、未だ昼も迎えていない時間で集まる証拠と言うのはあまりにも少なすぎる。
今の京子達にとって確実なのは、星誕女子は去年からまったく変わっておらず、そして今も相手が何かを企んでいると言う事だけだった。

舞「そもそもこの点差自体、個人的には不気味ですわ」

そこで舞が口にするのは、すぐ目の前にあるスコアボードの点数だった。
もうすぐ競技も折り返しという時間に来ているものの、二校の点数はまったく差がない。
まるで計算されているように一進一退を繰り返し、競技の結果一つ一つで生徒達から声があがる。
ある意味、盛り上がっているとそう言える状況ではあるが、しかし、だからこそ、彼女には理解出来なかった。



187 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:49:07.24b5Z/x4Mto (25/51)


舞「…私はエルダーではなく一生徒ですからハッキリと言わせて貰いますが…あの月極輝夜は勝つ事が全て、と言うタイプですわ」

舞「いえ、勝って相手に屈辱を与える事を楽しむタイプ…と言った方が正しいかもしれません」

舞「そんな彼女からすれば…この状況は本来、苛立ってもおかしくはないもの…」

舞「ですが、今の月極輝夜はああやって余裕を持って構えて、笑みさえ浮かべています」

舞「私はこのギリギリの点差も相手の思い通り…としか思えません」

依子「…だとするなら少々、厄介な事になりそうですね」

舞のその言葉に依子が漏らすのは、今にもため息に変わりそうな声だった。
何せ、それは星誕女子が意図的に点数調整出来るほどの実力を持っている、と言う事なのだから。
永水女子は星誕女子憎しの一念で本気を出しているにも関わらず、相手にはまだまだ余裕がある。
それが生徒たちに知れ渡った場合、高い状態で維持出来ている士気が一気に下がる可能性が高い。

明佳「あえて希望を与えてから叩き潰す…確かにあの方のやりそうな事ではありますけど…」

舞「…明佳さん?」

明佳「…何となく…あくまで何となくですけれど…」

明佳「それだけじゃなくて…もっと酷い事を考えている気がします」

春「…同感」

明佳や春はあまり社交的な性格をしていない。
どちらかと言えば、人の集まりの中でも何処か一歩引いてしまうタイプだ。
しかし、だからこそ、他人がどういう事を考えているのかを察する力に優れている。
特に春の場合は家系からして《視る》力に特化しており、向かいに座る月極輝夜のどす黒い性根まで透けて見えていた。



188 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:49:34.79b5Z/x4Mto (26/51)


―― ピンポンパンポーン

「50m走参加者はグラウンド東側に集合してください」

「繰り返します。50m走参加者は~」

京子「…では、相手の出方を伺いに行きますね」スクッ

そこで京子が立ち上がるのは、次に始まる50m走に参加しているからだ。
午前に行われる競技の中でも、花形と言っても良いそれに集まるのは運動自慢ばかり。
その中には星誕女子のエルダーである月極輝夜も入っているのは既に確認していた。
しかも、丁度良い事に共に最終レースを走る事になるのだから、相手の腹を探るのにコレ以上の機会はないと京子は思う。

依子「…京子さん」

京子「大丈夫ですよ。私はそう簡単に負けるつもりはありません」

依子「負けるだなんて思ってはいませんわ」

依子「京子さんの身体能力には私だって何度も泣かされてますもの」

明星「な、鳴かされて…!?」カァァ

湧「明星ちゃ…」

冗談めかしながらも強い信頼を伝える依子の言葉に、明星はその顔を赤くする。
石戸霞の妹として、恥ずかしくない振る舞いを心がけている彼女はしっかり者として認識される事が多い。
しかし、その本質は耳年増で、尚且つ恋する乙女でもあるのだ。
常日頃から怪しんでいる二人から意味深な言葉が出て来れば、どうしてもその裏に何かあるのではないかと思ってしまう。
結果、隣にいる親友に呆れたような顔をされるが、しかし、明星の脳内に広がる淫らな妄想はそう簡単には止まらなかった。



189 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:50:15.89b5Z/x4Mto (27/51)


依子「…ですが、だからこそ心配なのです」

依子「京子さんが走るのは月極さんと同じ最終レース」

依子「そこで勝ってしまえば恐らく京子さんは…」

京子「…月極さんに目をつけられる…ですか?」

京子「それならば望むところですよ」

月極輝夜は明らかに自分以外の殆どを見下している。
事実、それだけ優秀ではあるが、しかし、だからこそ、敗北というものを許容出来ないだろうと京子は思う。
だからこそ、ここで自分が勝てば、輝夜からの敵意を一身に集める事が出来る。
結果、依子や他の皆が傷つけられる可能性が減るのであれば、京子にとって望むところであった。

京子「(…まぁ、これでも男の子な訳だしな)」

こうして女装して女言葉を使っているとは言え、心まで女になったつもりはない。
女の子を護れるのであれば、多少、身体を張るのが男の義務だと京子は思っている。
ましてや、自分の周りにいるのは京子にとって、とても大事な友人ばかりなのだ。
自身の正体こそ知らずとも、こうして仲良くしてくれている彼女達の事を護ってあげたいと京子は強く思っている。



190 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:50:49.34b5Z/x4Mto (28/51)


京子「それにそうやって揺さぶりを掛ければ、幾らかボロも出すかもしれません」

京子「点差的にも今は負けられませんから、やはり勝つしかないと思います」

依子「……分かりましたわ」

依子「でも、十分、注意してくださいね?」

京子「えぇ。分かっています」

だからと言って、京子は捨て石になるつもりはない。
自身が永水女子で重要なスコアラーであるという事を京子は強く意識しているのだから。
輝夜が何を考えているのかは分からないが、この永誕祭で星誕女子に勝つには自身と湧が重要になる。
だからこそ、ようやく前半も終わったと言う今の時期に怪我などする訳にはいかず、京子は力強く依子に向かって頷いた。

京子「さて、では、改めて行ってきます」

春「…気をつけて」

小蒔「あ、あんまり無茶はしないでくださいね…?」

明星「…京子さんなら大丈夫だろうと思いますが…怪我だけはないようにしてくださいね」

湧「ん。あち…私は…キョンキョンの事…信じ…てる」グッ

京子「ありがとう、皆」

そんな仲間たちの声に見送られながら、京子はグラウンドの東側に近づいていく。
放送を聞いてすぐに動き出したのか、そこには既に少なくない数の生徒が集まっていた。
その中には輝夜の姿もあり、星誕女子の生徒を背に控えさせるようにして永水女子と相対している。
まるで何処かの国の女王様のようなその立ち振舞は、永水女子を見下すその視線と相まって妙に似合うものだと京子は思った。



191 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:51:18.75b5Z/x4Mto (29/51)


京子「(…まぁ、似合うっつっても全然、良い意味じゃないんだけどさ)」

背後に兵隊を侍らせる輝夜の姿に永水女子の生徒は怯えの色を浮かべていた。
遠くからでもハッキリと分かるその色は、輝夜が彼女達の事を萎縮させようとしているが為。
まだ前の競技をやっている最中で、周囲には雑音が多く、この位置からでは輝夜が何をしているのかまでは分からないが、それは間違いなく褒められるものではない。
そう判断した京子は足早にその集団へと近づいていき。

京子「あら、一体、何をされているんですか?」

輝夜「…貴女は」

「き、京子さん…!」

そこで声を掛けた京子に輝夜は一瞬、興を削がれたような表情を浮かべた。
それと対照的に永水女子の中で安堵の色が広がるのは、彼女たちがそれだけ京子に強い信頼を向けているからである。
京子の身体能力に関しては既に生徒たち全員の知る所ではあるし、何より、京子はエルダー選挙の際に全校生徒の前で堂々とした立ち振舞を見せていたのだから。
エルダーの座を依子に譲ったものの、今でも裏エルダーと呼ばれ、支持者も多い京子の登場に永水女子の生徒たちは内心、胸を撫で下ろした。


192 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:52:00.20b5Z/x4Mto (30/51)


輝夜「貴女も50m走を走るんですの?」

京子「えぇ。光栄にも月極さんと同じ最終レースです」ニコ

輝夜「へぇ…なるほどなるほど」

輝夜「貴女が…ねぇ?」

そう言って京子を舐め回すその視線は決して性的な興奮混じりのものではなかった。
むしろ、嫁を見る姑のように悪意を持って値踏みするその視線に京子は嫌なものしか感じない。
視線でもって悪意を伝えてくるような彼女のそれを今すぐにでも止めさせたいが、しかし、相手は星誕女子のエルダー。
ここで自分が問題を起こしてはいけないと京子は笑顔を浮かべたまま、その視線を受け止めた。

輝夜「…どうやら随分と自信がおありのようですわね」

輝夜「まぁ、そのゴリラのような身体であれば、当然かもしれませんけれど」

「なっ…!?」

侮蔑を込めた輝夜の言葉に永水女子の中から怒りの声があがる。
彼女達にとって京子は既に半年、同じ学校に通っており、大体の人となりも分かっている大事な仲間なのだ。
その上、京子は依子と並び立つ永水女子の象徴であるだけに、そのような侮蔑は到底、我慢出来ない。
自身に向けられるのであればまだ怖いで済むが、京子や依子に対する侮辱はそれでは済まないのだ。



193 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:52:47.89b5Z/x4Mto (31/51)


京子「えぇ。おっしゃる通り、体格に恵まれたお陰で運動は得意です」

京子「それでも輝夜さんには勝てないかもしれませんが、一生懸命、頑張りますね」

しかし、その侮辱に対して京子は心揺れ動かされる事はない。
そもそも京子は男であり、周りの少女たちに比べれば、その体格がガッチリしているのは当然なのだから。
明らかにこっちを挑発してくる輝夜が不愉快ではあるが、それは自身の後ろに控える生徒達のように怒りには繋がらない。
寧ろ、よりにもよって身体の事を侮辱の対象に選んだ輝夜に哀れみさえ覚えるレベルだった。

輝夜「…どうやら頭の中までゴリラ並らしいですわね」

輝夜「貴女、言われている事の半分も理解出来ていないのではなくって?」

京子「いえ、勿論、ちゃんと理解していますよ」

京子「ただ…あんまり競技前に色々と言うのが好きではないだけです」

京子「だって、それって小物っぽいではありませんか」ニコ

輝夜「…」ヒク

だからと言って、京子の中に躊躇や手心などまったく生まれない。
京子は輝夜と直接会話したのはこれが初めてだが、だからと言って、相手が尊敬出来る相手ではない事くらい分かっているのだから。
大事な依子に対しても色々と嫌味を口にし、既に少なくない数の嫌がらせを行った彼女にあるのはただ敵意の感情のみ。
故に京子はにこやかな笑顔で輝夜の言葉に切り返し、彼女の頬をひくつかせた。


194 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:53:20.28b5Z/x4Mto (32/51)


輝夜「…私が、この月極輝夜が小物だと…そう仰りたいのですか?」

京子「あぁ、誤解させてしまいましたか」

京子「申し訳ございません。別にそういうつもりはないんです」

京子「だって、月極さんはエルダー選挙で皆さんに支持されてエルダーになった方ですものね」

京子「少なくとも星誕女子の75%の方が月極さんをエルダーに相応しいとそう思ったのですから、小物であるはずありません」

京子「…もし、そうでないのであれば私からは何とも申し上げられない訳ですけれど」

それは無論、輝夜が合法的な手段で、エルダーになった訳ではないと理解しての言葉だ。
そもそもエルダー ―― エルダーシスターとは全校生徒の模範となるべき、最高の淑女なのである。
その候補に選出される事でさえ名誉と呼ばれる座に、月極輝夜が相応しいと京子は到底、思えない。
寧ろ、彼女のような女性がエルダーの座に居座っている事こそ、輝夜が淑女ではない証だとさえ思えた。

輝夜「…貴女、確か須賀京子さん…でしたか?」

輝夜「中々、面白い方のようですね」

京子「ふふ。月極さんにそう言ってもらえると光栄です」

京子「でも、そんなに持ち上げないでくれると嬉しいです」

京子「だって、私よりも月極さんの方がとても面白い方ですから」

面白いと言う言葉の裏側を理解しての返答に、輝夜はそっと笑みを浮かべた。
一見、にこやかなその表情の裏側には、しかし、ドス黒いまでの敵意が渦巻いている。
その性根まで透けて見えるようなそれに、しかし、京子が怯む事はない。
輝夜の敵意を真正面から受け止めるように笑みを返し、無言で彼女と対峙し続ける。



195 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:53:49.38b5Z/x4Mto (33/51)


「あ、あの…そろそろ50m走が始まるので…」

輝夜「…貴女、私に意見するつもりなんですの?」キッ

「ひっ…」ビク

そのまま数十秒ほど一触即発の雰囲気で睨み合った二人の間に一人の女生徒が入り込んでくる。
体育祭の実行委員でもある彼女は、あくまでも職務の一貫として声を掛けたつもりであった。
だが、京子に挑発を返された輝夜は今、虫の居所が悪く、そのような雑音一つすら許せない。
もう少しであの憎らしい笑顔を凍らせてやれたはずなのに、とそんな怒りを込めて同じ星誕女子の女生徒を睨みつけた。

京子「あら、違いますよ、月極さん」

京子「今のは月極さんの事を心配して声を掛けてくれただけです」

京子「だって、今年の永誕祭実行委員は殆どが星誕女子の方々でしょう?」

京子「このままここで和やかにお話して進行に差し支える事になったら、運営にも携わる月極さんの素質が疑われてしまう」

京子「そう思って声を掛けて下さったのですよね?」

「は、はい…」

そんな女生徒に対して京子が助け舟を出すのは、ただ哀れだっただけではない。
無論、真面目そうな彼女が八つ当たりされている事に同情する気持ちはあったが、京子にとって彼女もまた敵なのだ。
どんな理由があろうとも輝夜に与して、永水女子の仲間に嫌がらせをしている彼女たちの事を好意的には見られない。
それでもこうして京子が彼女の事を庇ったのは、少しでも永水女子を好意的に見て欲しかったからだ。



196 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:54:28.26b5Z/x4Mto (34/51)


京子「(少なくとも、それで心が鈍ってくれれば儲けものだしな)」

星誕女子で月極輝夜が敷いているのは恐怖政治だ。
誰も彼も逆らえないように、輝夜はその権力で人を絡めとり、他者を抑えつけている。
そんな中、圧制者の不興を買った彼女を敵であるはずの京子が庇ったのだから、どちらが好意的に見えるかは自明の理だ。
無論、それだけでは何も変わらないだろうが、しかし、細かく積み重ねていけば、永水女子に対する彼女たちの心も鈍っていくかもしれない。
こうして助け舟を出して京子が損をする事は何一つとしてないし、ここは後々の布石の為にも彼女を庇うべきだと京子は思う。

輝夜「……まぁ、良いですわ」

輝夜「これから須賀さんとはじっくりとお話出来る時間があるでしょうし」

「え、えっと…」

輝夜「…何をしているんですの?早く整列しなさい」

「は、はい!」

そんな京子の考えを輝夜も見抜いていた訳ではない。
しかし、彼女はこれまで小・中と同じように自分以外の他者を抑えつけて、頂点に立ち続けてきたのだ。
その間に磨かれた彼女の嗅覚が、この状況はまずいとそう彼女に教える。
だからこそ、輝夜は面白くなさそうな顔をしながらも周りに指示を飛ばし、緩みかけた周囲の気持ちを引き締めさせた。



197 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:55:10.75b5Z/x4Mto (35/51)


京子「では、こちらも整列しましょうか」

「はい。京子さん」

これ以上、輝夜を不機嫌にはしたくない。
そんな一念で俊敏に動く星誕女子と比べれば、永水女子の動きは穏やかなものだった。
無論、無意味にのんびりとしている訳ではないが、かと言って急いでいる訳でもない。
何時も通りの自然体と言う動きで京子の指示に従う彼女達には、焦る気持ちなどまったくなかったのだから。

京子「(…少なくともさっきのような萎縮する雰囲気はなくなっている)」

長らく永水女子の価値観に浸った彼女たちにとってエルダーは自分たちよりも上位の存在なのだ。
その口から放たれる嫌味の数々に抵抗を覚えていても、中々、それを声にはし辛い。
しかし、京子はそんな彼女達の代わりに声をあげ、そして輝夜と互角以上に渡り合ったのである。
幾らか溜飲も下がった京子の仲間達の中には萎縮の色が去り、まるで早くも勝ったような雰囲気が流れていた。



198 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:55:36.54b5Z/x4Mto (36/51)


輝夜「相変わらず、永水女子はルーズですのね」

輝夜「そのように時間にルーズですと淑女らしからぬと思われてしまいますわよ?」

京子「あら、これは淑女の余裕と言うものですよ」

京子「時間には遅れていませんし、問題はないでしょう?」

京子「それにあんまり時間に追われてセカセカするのもなんだか貧乏くさくはありませんか?」

輝夜「…へぇ」ヒク

無論、そんな永水女子の変化を輝夜が面白く思うはずがない。
最初に彼女が心の中に思い浮かべていた予定では、今頃、萎縮させた生徒達に対して、思うがままに振る舞えていたはずなのだから。
しかし、その予定は京子によって粉々に砕かれ、完全に白紙に戻ってしまった。
その苛立ちを嫌味にした輝夜に、さっきと同じような京子のカウンターが返り、彼女は再びその頬をひくつかせてしまう。

京子「(さて、これで大分、イライラしてきてくれてはいるだろうけれど…)」

京子「(でも、まだこの人が何を考えているのか見えないままだな)」

京子がそうして挑発に挑発を返しているのは、何も輝夜の事が嫌いだからだけではない。
そうやって精神的に揺さぶりを掛ければ、星誕女子が一体、何を企んでいるかのを漏らしてくれるのではないかと期待していたからだ。
だが、既に苛立ちを隠し切れない様子の輝夜からは、そのヒントとなるような一言さえも出てこない。
京子への怒りはふつふつと煮えたぎっているのに、肝心なところは冷静なままだった。



199 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:56:06.35b5Z/x4Mto (37/51)


京子「(…だから、ここは)」

京子「それに点数もまだまだ拮抗している状態ですしね」

京子「ここで下手に焦った方が勝機を逃すでしょう」

輝夜「勝機…ねぇ」ニヤ

京子「(…食いついたか)」

瞬間、輝夜の顔に浮かんだのは粘ついた笑みだった。
さっきのように憎しみ混じりのものとは違い、相手を見下すだけの笑み。
互角と告げる京子を心から馬鹿にするようなそれに京子は内心、ガッツポーズを取った。

輝夜「…ねぇ、貴女、本当に互角のつもりですの?」

輝夜「だとしたら、本当にお間抜けですのね」

京子「どういう事ですか?」

輝夜「だって、普通に考えれば、こんなに点数が拮抗しているだなんておかしいでしょう?」

輝夜「ましてや、今回の運営側は殆ど私達が占めているのですから」

輝夜「その気になれば、永水女子など引き離せるとそう考えたことはありません?」

とは言え、輝夜もまた愚物ではない。
内心、強い苛立ちを感じていた京子を馬鹿に出来るチャンスに心が沸き立つのを感じながらも肝心な言葉を口にはしなかった。
代わりにクスクスとした笑みを京子に向けながら、『もしも』の話で揺さぶりを掛けてくる。
無論、それを予想していた京子は、輝夜の揺さぶりに全く驚きを感じたりはしない。
だが、京子は意図的に驚いたような表情を作りながら、ゆっくりとその唇を動かす。



200 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:56:38.02b5Z/x4Mto (38/51)


京子「まさか星誕女子の皆様は手を抜いていると仰りたいのですか?」

京子「…正直、信じられませんね」

京子「そのような事をする利点などあるようには思えませんし」

輝夜「まぁ、貴女程度の頭ではそうでしょうね」

京子「…では、月極さんにとってはこの拮抗状態に何か利点があると?」

輝夜「あるかもしれませんし、ないかもしれませんわ」ニコ

京子「(…流石にそこまで甘くないか)」

京子としては出来れば、ドラマの悪役のようにこのままベラベラと悪事の事を話して欲しかった。
だが、輝夜の目的はネタばらしではなく、京子に対して揺さぶりを掛ける事なのである。
敢えてモヤモヤとしたところで言葉を区切った方が効果も高い。
そう考えた輝夜の勝ち誇ったような笑みに、京子は内心で小さく肩を落とした。

京子「(…ただ、収穫がない訳じゃなかったな)」

間違いなく星誕女子は何かを企んでいる。
その疑惑は既に京子達の中で共通認識であったものの、やはり輝夜本人の言葉によって確定したのは大きい。
これで確定的な情報として、依子の周囲だけではなく、他の生徒達にも警戒を促す事が出来るのだから。
無論、そうやって右往左往する永水女子を楽しむためのデマである事は否定出来ないが、輝夜の性格上、それはないと京子は思う。



201 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:57:07.95b5Z/x4Mto (39/51)


京子「(…少なくとも自身にメリットがある事を否定しなかった)」

もし、それがまったく的はずれな意見であれば、輝夜は京子をさらにあげつらっていた事だろう。
少なくとも、今までの輝夜は他者を小馬鹿にするチャンスを見逃さなかったのだから。
そんな彼女がこうして煙に巻くような返答をしたと言う事から察するに、さっきの自分の言葉はそれほど的外れではなかった。
寧ろ、事実に近いところを突いていたからこそ、輝夜はあんな風に解答するしかなかったのだろう。
今まで積み重ねてきた輝夜の情報から、そう判断した京子は彼女から視線を反らし、思考に耽り始める。

京子「(…そう考えれば、少しはこの人の考えも見えてくるよな)」

この拮抗状態の果てに月極輝夜本人に発生するメリット。
その条件で真っ先に京子の中でヒットしたのは、ヒーロー願望だった。
この拮抗状態を自身の活躍で打ち破り、周囲からの賞賛を受け取りたい。
事実、輝夜は体育祭最後の競技であるリレー走のアンカーとしてエントリーしているのだ。
強引な手段でエルダーになった経歴からも承認欲求の高さが伺えるし、自身の活躍で星誕女子の勝利を決定的なものにしたいと思っていてもおかしくはない。



202 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:57:34.18b5Z/x4Mto (40/51)


京子「(…ただ、何か見落としてるような気がしてならないんだけれど……)」

そう判断する一方で京子は何かズレのようなものを感じていた。
それはあまり大きなものではないものの、気のせいだと無視出来るほど小さなものでもない。
自身の考えが当たらずとも遠からずだとそう思いながらも、心から納得出来ない感覚に京子は内心、首を捻る。
自分が見落としているものは一体、何なのか。
それを京子が思考の中から見つけ出そうとしている間に、ドンドンと生徒達がゴールしていって。

京子「(…次が俺達の番か)」

その答えが出るよりも先に、京子達に順番が回ってくる。
出来れば、もう少し時間が欲しかったが、出番が来た以上は仕方が無い。
未だ答えの出しきれない思考をそう打ち切りながら、京子はゆっくりと立ち上がる。
瞬間、京子の目の前で走者が駆け出し、スタート台が空いた。


203 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:58:02.95b5Z/x4Mto (41/51)


京子「(さて、それじゃあ…)」スッ

そのまま京子はスタート台まで進み、ゆっくりとクラウチングスタートの姿勢を取った。
屈んだその身体にはさっき答えを見出せなかったモヤモヤは既に無い。
今の京子の頭には50m先にあるゴールテープだけ。
その他の事は今は考えなくても良いと身体にぐっと力を込めてその瞬間を待ち続ける。

「位置について」

輝夜「そうそう。さっきの話ですけれど」

「よーい」

輝夜「私の目的は…」

京子「ぇ」

だが、その臨戦態勢は長くは続かなかった。
京子の隣で同じようにクラウチングスタートの体勢を取った輝夜から聞こえてきた一言。
それは出走の準備を促す実行委員のものよりも大分、小さなものだった。
すぐ隣にいる京子にしか聞こえないであろうそれに、京子は意識を揺るがせ、一瞬、集中力を途切れさせてしまう。



204 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:58:34.59b5Z/x4Mto (42/51)


パーン

輝夜「ふっ!」ダッ

京子「あっ」

―― そして、その一瞬はあまりにも致命的だった。

時間にして一秒にも満たない僅かな時間。
しかし、その間に空に向かって引き金を引かれたスターターピストルに京子は完全に出遅れてしまう。
それは無論、出走前からずっと京子に揺さぶりを掛けていた輝夜が思い描いていた通りの展開だ。
最初から自身の目的を話すつもりなどなかった輝夜は、出遅れた京子の前で力強く息を吐きながら、身体を大きく動かして加速していく。

輝夜「(ふふ…やっぱり頭の中までゴリラでしたわね…!)」

短距離走はその短さとは裏腹に、機械のような正確さを要求する。
ただ、腕を振り、足をあげれば速度が出ると言う訳ではない。
身体を加速させる時の走り方と加速しきった身体を維持する走り方はまた別なのだ。
それを切り替えるタイミングを一歩でも間違えてしまえば、タイムが大幅に落ちてしまう。
50mと言う短い距離で優劣をつけるその競技は、人類がこれまで積み重ねてきた人間学の叡智が詰め込まれていると言っても過言ではない。


205 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 04:59:03.03b5Z/x4Mto (43/51)


輝夜「(完全に出遅れた状態でそんな事出来るはずありませんわ…!!)」

京子の反応が遅れたのは一瞬だった。
だが、その一瞬はゴールまでの間に大きな差となって現れる。
コンマ一秒でも早く最高速度にたどり着かなければいけない短距離走で、スタートの遅れは何倍にも膨れ上がるのだから。
ましてや、出遅れたと言う焦りは身体のコントロールを完全に狂わせ、要求されている正確さとは程遠い走り方になってしまう。
それはプロの短距離走者であっても、決して逃れられない呪いのようなものだ。

輝夜「(私の…勝ちです!!)」

そう輝夜が勝ち誇るのは、ただ傲慢さが原因ではない。
スタートして二秒が経過した今、彼女に並び立つ者は誰一人としていないのだから。
輝夜が学業だけではなく、スポーツに関しても一流なのだ。
輝夜と共に走る生徒達の中、彼女よりもタイムの早い者は京子しかいない。
そしてその京子がスタートで出遅れた今、輝夜の勝利は盤石になった。



206 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 05:01:22.22b5Z/x4Mto (44/51)


京子「っ!」ダッ

輝夜「(なぁ…!?)」

―― その隣にいるのが須賀京子でさえなければ。

それは本来ならばあり得ない光景だった。
短距離走において一度、決定した順位が入れ替わる事などほぼない。
あるとすれば、それは先頭走者が走り方に失敗し、減速してしまった時だけ。
だが、今の輝夜は勝ちを確信こそすれ、手を抜いたり失敗などしていない。
このままゴールまで全力で叩き潰すのだと身体に力を込めていた。

輝夜「(なのに…どうして!?)」

今の輝夜の前を走っているのは、さっきスタートで出遅れた京子だった。
その髪を風に流すようにして走る背中は輝夜を追い抜いて尚も加速し続けている。
一歩踏み出す毎に二人の距離が大きく離れ、身体能力においても一流である輝夜でさえ追いつく事が出来ない。
まるで時間の流れが異なるようにさえ錯覚するような京子の速度に輝夜は理不尽なものさえ感じる。



207 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 05:02:10.40b5Z/x4Mto (45/51)


輝夜「(ふざけるんじゃ…ないですわ…!!)」

その理不尽さに輝夜は必死で抗おうとする。
今まで以上に腕や足に力を込め、必死で京子を抜かし返そうとしていた。
だが、そうやってがむしゃらに手足を動かしたところで、逆に遅くなってしまうだけ。
奇しくも、京子に対して仕掛けたように自分の中の歯車をズラしてしまった輝夜は失速し始めていた。

京子「(…っ!)」

そんな輝夜を置き去りにしていまだ加速を続ける京子。
その中にあるのは、すぐ目の前に広がるゴールテープだけだった。
無論、幾らこの一年間で精神的にタフになった京子とは言え、スタートダッシュで出遅れるのは辛い。
本来ならば今の輝夜と同じように焦りに歯車を狂わせ、彼女に追いつく事すら出来なかっただろう。



208 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 05:06:25.25b5Z/x4Mto (46/51)


―― それを可能にしたのが京子の持つ能力だ。

京子は『制する者』と呼ばれる須賀家の最終血統であり、自身が敗北させた相手から能力を模倣する事が出来る。
そんな京子が今、発動させているのはかつて後輩であった夢野マホの能力、そしてそこから繋がる原村和の能力だった。
心理的状況に左右されず、機械的に最高のポテンシャルを発揮するその能力は、その他の異能に決して劣るものではない。
少なくとも、コンマの遅れを取り戻さなければいけない今の京子にとって、それは最適と言っても良いものだった。

京子「ふ…うぅ…!」

月極輝夜は一流と呼べるだけの身体能力を持っている。
だが、同年代の男性の中でもずば抜けた能力を誇る京子はまさに超一流の選手だった。
最高速度でも、一足毎の加速力でも、心肺能力でも、体幹でも、身体の柔らかさでも輝夜は京子に遠く及ばない。
輝夜は生まれてからずっと勝利こそ全てだと教えこまれて来たが、京子は生まれる遥か以前からその血に勝利を刻み込まれている。
外敵を制する為だけに特化し、その血を濃くしてきた一族が、たかだが20年にも満たない少女に負けるはずがない。
そのポテンシャルを全て発揮した京子は肺の中身を全て吐きりながら輝夜を大きく引き離し、誰よりも早くゴールテープを切った。



209 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 05:06:51.53b5Z/x4Mto (47/51)


輝夜「はぁ…はぁ…」

京子「あら、月極さん、大丈夫ですか?」

それから少しして輝夜がゴールラインを割った時、涼しい顔をした京子が待っていた。
輝夜がゴールするまでの僅かな間に呼吸を整えた京子はにこやかな笑顔で輝夜の事を心配してみせる。
まるでさっきの事など自分にとって大した事ではないのだとそう言うような表情。
ついさっき肺から全ての空気を吐ききったとは到底、思えないその姿に、彼女はグっと握り拳を作った。

輝夜「(この…ゴリラ女…!!)」

輝夜は事前に自分と戦う相手のデータはおおよそ頭の中に入れている。
その中には勿論、京子のデータもあり、強敵だと言う事くらいは予想していた。
だが、完全に術中にハマった状態から自身を追い抜き、そのまま涼しい顔でゴールするなど幾ら輝夜でも考慮していない。
今まで生きてきた常識がまったく通用しなかった京子を輝夜は荒く上下する胸中で口汚く罵った。



210 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 05:07:18.85b5Z/x4Mto (48/51)


輝夜「(いえ…きっとドーピングをやっているんですわ)」

輝夜「(そうに…そうに決まってます)」

輝夜「(でなければ、あんな加速出来るはずがありません…!)」

輝夜「(なんて卑怯な女…!恥を知りなさい…!!)」ギリィ

無論、京子はドーピングなどしてはいない。
いっそ暴力的と言っても良いその加速力は全て生まれ持った才能から生まれたモノだった。
だが、自身に敗北の二文字がのしかかった輝夜にはそれを信じる事など出来ない。
自分が負けたのは相手が卑怯な行いをした所為だと荒れる心にそう言い聞かせ、湧き上がる悔しさに歯噛みする。

京子「まさか風邪でも引いていたのですか?」

京子「短距離走で私程度に追い抜かれるなんて…とても心配です」

京子「星誕女子のエルダーとしてはあり得ない順位ですものね」

京子「走っている最中もずっと月極さんの事を心配していたんですよ?」

輝夜「(良くも…抜け抜けと…!!)」

それは到着後すぐに輝夜が依子に向けた嫌味への意趣返しだ。
依子の事を友人以上に思っている京子が輝夜の事を心配などするはずがないのだから。
それを輝夜もまた理解しているが、しかし、それに返事をする事が出来ない。
ついさっき呼吸を吐き切った彼女は未だ肺の中身が荒れており、そして何より胸中では感情が煮えたぎっているのだから。
ここで下手に口を開けば、関係者も見ている中で、汚い言葉を口走ってしまいかねない。
それだけは堪えなければと輝夜は荒く息を繰り返していた。


211 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 05:07:45.58b5Z/x4Mto (49/51)


京子「あぁ、でも、老婆心ながら一つ忠告させて頂きますと」

代わりに怒りを込めて自身を睨みつける輝夜に、しかし、京子は飄々とした様子を崩さない。
元々、京子はエルダーに対する思い入れも薄ければ、月極グループに対する恐れもないのだから。
もし、自分が一生、駐車場を借りられなくなったとしても、困るのはその身柄を預かっている神代家のみ。
これがキッカケで神代と月極の間で抗争が起きるのであれば、寧ろ、嫌がらせになって好都合だとさえ思っている。

京子「……そろそろ本気でやらなければ、月極さん、次もまた負けてしまいますよ」ニコ

輝夜「~~~っ!!!」カァァ

だからこそ、放たれた容赦のないその言葉に輝夜は自身の顔を真っ赤に染めた。
それは無論、好意や羞恥と言ったものではない。
心の底から湧き上がる悔しさに火をつけるような京子の言葉に、彼女の胸は怒りで爆発していたのだ。
全力疾走を経て疲れきっていなければ暴力に訴えてもおかしくはない強烈な衝動に、輝夜は言葉を失う。
あまりの怒りに何を言えば良いのかさえ分からなくなった彼女に出来る事と言えば、その感情を視線に込める事だけだった。



212 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 05:08:13.86b5Z/x4Mto (50/51)


京子「ふふ。では、また後ほど」

京子「ごきげんよう、月極さん」ペコリ

既に殺気の領域にすら達している強い敵意に、しかし、京子は笑みを返した。
輝夜がどれだけ怒りを覚えても、まったく恐ろしくとも何ともない。
そう輝夜に伝えるような明るい表情のまま、京子は一礼して去っていく。
まさしく淑女と呼ぶべきその背中を輝夜はずっと睨みつけて ――



―― 不穏な空気漂う体育祭は永水女子がリードした状態で午前の部を終えたのだった。





………

……






213 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/19(土) 05:09:49.61b5Z/x4Mto (51/51)


Qつきぎ月極(げっきょく)輝夜の敗因は?

Aテニヌ世界の住人じゃなかった事




と言うところで今日の投下はここで終わります(´・ω・`)
オリキャラ出張りまくりの体育祭は、もうちょっと続く予定です(´・ω・`)ゴメンネ


214以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 05:50:25.29gNxRiPeDO (1/1)

乙ー、まさか麻雀以外の時でも能力行使するなんて京子ちゃん能力有効活用しすぎww マホちゃんコピーすごい。
わっきゅんは後半戦で活躍するのかな? わっきゅん以外の皆は汗でおもちが服に張り付きそうだよね……健康的だなぁ。


215以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 07:33:34.099fbMSpUSO (1/1)

乙です
輝夜さんブチギレで全国の駐車場の料金爆上がりと聞いて

なんか京子ちゃんのファンがスゴイ増える予感しかしない・・・


216以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 08:46:44.00k1x2tMr/o (1/1)

おつだお

やっぱカミサマってすげーわ


217以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 09:35:45.9313ffVO+I0 (1/1)

これは鹿児島だけ謎の料金メーター変更フラグですわ・・・
これをチャンスにして須賀パーキング設立しよう おもちdayとか一部女性優遇が売りの新感覚駐車場

真面目な話、カグヤ姫こませば神代に匹敵する影響力持てるのでは? 京太郎は神代のスキャンダルも持っているわけだし 


218以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 11:18:48.21FjtTLHIIo (1/1)

乙です


219以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 12:10:41.52mLSse9YB0 (1/2)

京子「目障りだ、退がれ」
輝夜「京子お姉様...!」ゾクゾク

こうなるんですね。いえ、戯言です。

しかし麻雀以外でも能力使えるとなると、マホ経由で穏乃の錯覚現象とか使えるんじゃねーの?
そうなると無敵だな京子。


220以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 13:11:00.77mVFFVuOA0 (1/1)

……夢乃(ボソッ
月(極)だから名前が輝夜(かぐや)なのか


221以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 14:15:31.73heE/fYFJo (1/1)

乙です


222以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 20:44:30.84LBwl09uFO (1/1)

月極を会社の名前だと思ってた時期はみんなあるよね


223以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 21:17:16.07wo89/n0U0 (1/1)

駐車場にある月極のこと、会社の名前だと思ってた
……なんて歌がありましたね

まあ男子の中でも運動できる京子に勝てるわけないわなそら
メンタルも少なくとも勝負事においてはかなり強いし


224以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/19(土) 22:35:40.43mLSse9YB0 (2/2)

京子がいれば安心ということは、京子がいなくなったらキツイというのと同義なんだよな。
いや、真面目な話ラフプレーによる怪我で退場させられようものならどうすんだろう。怒りブーストかかった永水が圧倒するのも熱いかもしれないが。


225以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/20(日) 05:03:02.316UzLMEZ30 (1/1)

ラフプレーによる接触・・・ やだこの裏エルダーってたくましい ポッ///
次々とたらされる星誕女子・・・エンドレス


226以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/20(日) 06:15:39.68c8iIa/WdO (1/1)

ラブプレーになるわけですねわかります


227以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/20(日) 09:59:36.22Q3Bqyo8t0 (1/1)

>>223
バカテス1期のEDか、懐かしいな


228以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/20(日) 10:23:18.12DSPfoncGo (1/2)

あれ聞くまでガチでげっきょくだと思ってた


229以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/20(日) 12:15:59.52kBt0q8b5O (1/1)

あれでつきぎめなんて読めねーよな


230以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/20(日) 14:31:43.86S/8AKYBRO (1/1)

定礎のことを会社の名前だと思ってた人多そう。
ちなみに三、四年程前にゲームで初めて定礎の存在を知ったのが俺だ。


231 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/20(日) 21:11:13.70gkeKNF3ho (1/1)


イベント中主人公の姉でメインヒロインっぽい子がガチでひどい目に合う → くそがああああ!ぶっ倒してやんよおおおお!!!

→ 実は偽物だったから大丈夫^^ → 今までまったく気づかなかった主人公のアレっぷりとオチの酷さに引退を考える

→ 次のイベントで昔から好きだった子がイベント報酬になる → くそがあああああ!!やるしかねぇ!!!

→ 報酬ゲットするも燃え尽きる → 次のイベント次第で引退しようと考える → 次のイベントでメインヒロインっぽい姉が報酬になる

→ くそがああああああ!!!!とりにいくしかないだろおおおおおお!! → 取ってレベルマックスにする

→ 服普通だ!!セリフも変じゃない!!これはイチャラブクるか…!?(ワクワク) → エロシーンポチー

→ 汚いオッサンによる陵辱プレイでした^q^


うん。普段からクスリ貯めてたら課金しなくてもそこそこやれるゲームだったから惰性でやってたけど、もう辞めました(´・ω・`)愚痴ってゴメンネ
後、シルバーウィーク中はちょっと友達と旅行行ったりする予定なんで、更新速度ちょこっと堕ちるとおもいます(´・ω・`)
そして、マホちゃんお名前間違いも申し訳ないです…(´・ω・`)完全に見逃してました…




232以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/20(日) 21:14:47.34DSPfoncGo (2/2)

クスリ(意味深)
(DMMのゲームかな)


233以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/21(月) 00:20:10.98pDhdkogn0 (1/2)

偽者の姉だったからって酷いな。文字通り、紛いものなりにも一緒に過ごした時間があるキャラ(プレイヤーと主人公にとって
が悲惨な目にあってそんな理由で割り切れる訳ないよね。萎える感じが目に浮かぶ
 



234以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/21(月) 02:38:35.42gkS9Hz6/0 (1/1)

つまり京ちゃんがてるてるを(ラブラブ)レイプしてるシーンを咲が目撃してしまうのを>>1が書くって認識でよろしいか?


235以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/21(月) 09:41:46.94AROo8Jvmo (1/1)

>>234
ほう・・・


236以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/21(月) 20:17:25.21pDhdkogn0 (2/2)

多分1は今頃、旅行中に駐車料金払えなくなっててキップ切られてるな


237以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/22(火) 01:40:22.28A2xJiWVBO (1/1)

キャップに見えた


238以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/22(火) 03:58:38.60NnOOGift0 (1/1)

〉〉233
なぜかアビスのルーク思い出した…


239以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/23(水) 01:28:50.58gTxWFQgFO (1/1)

そういえば明日はキャップの誕生日か


240以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/23(水) 21:20:23.46SVKUKWJeo (1/1)

で、なんのゲームなんです?


241以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/24(木) 07:56:27.10FgAV+rvH0 (1/1)

そりゃ、ダルマ&串刺しなんてイベントやるしかなくなるよな 親方様


242 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/25(金) 06:57:38.56Kn9kF8hro (1/1)

>>233>>240
まぁ、ぶっちゃけ何処から偽物になっていたかは分からないままなんですけどね
一時、イベント(メインシナリオ)でまったく出てこなくなった時期があったので、その時に攫われたのかな、と思ったりするのですが確証はないですし
プレイヤーとして接していたかすら分からないのですが、だからと言って、>>241の光景描写させられた上での偽物バレはかなり萎えました…
それ以前からイベント報酬として手に入る子のエロシーンとイベントでの展開がまったく違う事にモヤモヤしてたりもしていましたし辞めどきかなーって(´・ω・`)若紫のは酷すぎて笑うしかなかったですしね…

ただ、一応、フォローのような事はしておくと課金ガチャを引けるチケットなどは割りとイベントで気前よく配布される事が多いです
毎日小まめにボスを倒してクスリの貯金しておけば無課金でもランカー報酬取るのは難しくないですし、エロシーンの出来が良い子も結構います
気になる人はDMMの対魔忍アサギ決戦アリーナを検索してください(ステマ)


そしてようやく昨日帰ってきたのでキャップの誕生日SSとかは書けませんでした…(´・ω・`)ゴメンネ
今日からまた更新に戻りますのでもうしばしお待ち下さい





243以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/25(金) 07:06:27.98pV9LeqF6o (1/1)

アサギでイチャラブはフラグ


244以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/25(金) 12:23:13.58K5LwwHEUO (1/1)

アサギとか凌辱ゲー代表作じゃないか
そりゃNTR展開やるよ


245以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/25(金) 12:48:28.41H60GJtpTO (1/1)

そういや、NTRは苦手だっけか>>1


246以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/25(金) 15:48:56.97qajvetJDo (1/1)

実際得意な人のほうが少ないしね
陵辱ゲーとかのNTRって口だけNTRってだけでただの陵辱ってパターンがほとんだし
寝取られる男の描写が全然なくて感情移入させてないから
寝取られじゃなくて寝取りになってるパターンがほとんど
だから数がそれなりになるんだけど


247以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/25(金) 18:05:11.45ale40HiQo (1/1)

アサギだったか
魔法少女物とアイドル物はNTR物が殆どだからしゃーない


248以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/25(金) 23:19:50.90MRtX+iviO (1/1)

むしろなぜそれでアサギをしたんです?
NTRは趣味じゃないな
ネトリならまだいいけど


249以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/25(金) 23:37:54.71FtdG45eC0 (1/1)

それはね京太郎が寝取る描写を書く参考にする為だったんだよ!
カツ丼とか


250以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 00:01:51.19pmA1xrIno (1/1)

リザべ組のどちらかを寝取ってから、絶望してるもう片方も寝取るんですね解ります


251以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 00:12:37.08vMsjIJbgO (1/7)

百合組から寝取るのとノーマルカプから寝取るのとは訳が違うと思うけど...。


252 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 00:16:08.390byIjlbwo (1/39)

流石に私もNTR展開やりまくってるゲームでそれに関して文句言ったりするほど馬鹿じゃないです
つーか、んな事言いだしたら件のゲーム、主人公がNTRまくってるしな!!!!!
なので、萎えたのはNTRそのものよりも、ひっどい詐欺みたいな展開連発されてる事に関してでして…(´・ω・`)
意外性出したかったのかもしれないですが、私はモチベーションがガクっと堕ちました…
元々、友人に誘われて始めたゲームで、その友人が既に引退してるので萎えた以上続ける理由はないかなーって
目標だった最初の若紫も取りましたしね…(´・ω・`)まさかエロシーンがふたなりレズレイプとは思ってませんでしたが



253 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 00:22:02.440byIjlbwo (2/39)


咲「ふんふふーん♪」

咲「(今日から待ちに待った連休…!)」

咲「(まぁ…麻雀部の活動なんかがあるから完全にお休みって訳じゃないけれど…)」

咲「(でも、溜まってた本をガッツリ読む時間が出来たのは確かだし)」

咲「(何より…昨日から京ちゃんのお義父さん達は旅行に出かけてるんだよね)」

咲「(…い、いや、まぁ、私は別に京ちゃんのお世話とかしたい訳じゃないけどさ)」

咲「(でも、お義父さん達が出かける前に京ちゃんの事、よろしくって頼まれたんだもん)」

咲「(折角の言い訳…ううん、頼みごとをお隣さんとしては断る事が出来ないし)」

咲「(せめてご飯と掃除と洗濯くらいはやってあげないといけないよね)」

咲「(後は…よ、夜のお世話…とか)」カァァ

咲「(わ、私は勿論、嫌だよ!?嫌だけど…)」

咲「(でも、京ちゃんスケベだし…お義父さん達がいなくなったってなったら絶対、我慢出来なくなると思うし…)」

咲「(も、もし…もしもだけど、京ちゃんがレイプなんてしちゃったら麻雀部そのものがなくなっちゃうもんね)」

咲「(だ、だから、京ちゃんがしたいっていうなら私だって…その…)」プシュゥ



254 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 00:26:44.880byIjlbwo (3/39)


咲「(と、ともかく!!!)」

咲「(ともかく…京ちゃんのお世話はしっかりしないとね)」

咲「(こういうところでアピールすれば普段、鈍感な京ちゃんも私の気持ちに気づいて…)」

咲「(じゃなくて、私の大事さに気づいて、もっと優しくしてくれるかもしれないし)」

咲「(まぁ、京ちゃん本人にアポは取ってないんだけど…京ちゃんが私以外にお世話してくれる人がいるとは思えないもん)

咲「(きっと飛び上がって喜んだ後、私の事を抱きしめて愛を囁いてくれたり…)」エヘヘヘ

ピンポーン

咲「………あれ?」

咲「(…インターフォン鳴らしたけど何の反応もないや)」

咲「(もしかして今、出かけてるのかな?)」

咲「(仕方が無い。今日のところは京ちゃんに出迎えて貰うのは諦めよう)」

咲「(代わりに…)」スッ

咲「(幼馴染特権として貰ったこの合鍵で勝手にお邪魔させて貰おうかな)」ガチャ




255 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 00:31:14.660byIjlbwo (4/39)


咲「お邪魔しまーす」

咲「(…やっぱり反応がない)」

咲「(これは京ちゃんがお出かけ中なのは確実かな)」

咲「(まぁ、それならそれでいいや)」

咲「(京ちゃんに出迎えてもらえなかったのは残念だけど…)」

咲「(でも、その分、帰ってきた京ちゃんがびっくりする顔を楽しみに出来るもんね)」

咲「(だから、とりあえず先に買ってきた食材を冷蔵庫の中にいれて…)」

咲「(どうせお腹空かしてるだろうし、晩ごはんの準備から始めてあげようかな)」

ドタドタ

咲「…ん?」

咲「(…アレ?上から何か物音がする…)」

咲「(でも、さっき京ちゃんの返事はなかったし…)」

咲「(も、もしかして…泥棒…!?)」ビックリ



256 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 00:35:02.000byIjlbwo (5/39)


咲「(ど、どどどどどどどどどどうしよう…!?)」

咲「(流石に幼馴染の家に遊びに来て泥棒が来るなんて想像してなかったよ!?)」

咲「(と、ともかく119番…い、いや、114番だっけ…?)」

咲「(だ、駄目だ、今の私って全然、冷静じゃない…!)」

咲「(とりあえず深呼吸…深呼吸…!!)」ヒッヒッフー

咲「(…よし。少し落ち着いた)」

咲「(とりあえず…通報するにしても確かめないと…だよね)」

咲「(もしかしたら何かの拍子で本が落ちただけって可能性もあるし)」

咲「(大騒ぎになったら旅行に出かけてるお義父さん達だって心配させるもん)」

咲「(下手したら、そのまま旅行を取りやめて返ってくるかもしれない)」

咲「(そうなったら私と京ちゃんのラブラブイチャイチャ計画が全部台無しになっちゃう…)」

咲「(だ、だから、ここは怖いけど…勇気を出して…)」グッ

咲「(に、二階に…行こう…!)」ソローリソローリ



257以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 00:35:42.30vMsjIJbgO (2/7)

何が始まるんです?


258以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 00:37:50.64rKA4SlGk0 (1/1)

幼馴染…NTR…いやよそう、俺の勝手な(ry


259 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 00:40:37.490byIjlbwo (6/39)


ン…アッ

咲「(…やっぱり誰かいる)」

咲「(こうしてゆっくりと階段あがっていくと…声が聞こえるようになるし…)」

咲「(しかも…それ京ちゃんの部屋から聞こえてくる…)」

咲「(ただ…それが一人なのか二人なのか分からない)」

咲「(京ちゃんの家ってかなり立派で部屋ごとの防音性がかなり高いんだよね…)」

咲「(流石にインターフォンは聞こえるけど、玄関の扉が開いた音とかは届かないくらいに)」

咲「(だから、こうして二階の廊下にあがって聞き耳を立てても…)」

咲「(京ちゃんの部屋にいるのが誰なのか分からなくて…)」

咲「(で、でも、ここで棒立ちしてたら…きっと何時か相手と鉢合わせしちゃう…)」

咲「(相手が京ちゃんなら良いけど…も、もし本当に泥棒だったら酷い事されちゃうかも…)」

咲「(い、嫌だよ…わ、私の初めては京ちゃんのものなのに…)」ブル

咲「(だ、だから…だから…お願い…京ちゃん…)」

咲「(私にもうちょっと…もうちょっとだけ勇気を頂戴…!)」

咲「(京ちゃんの部屋の扉を開けて…中を覗く勇気を…)」

咲「(私に…ください…!!)」ギュッ



260以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 00:44:14.78vMsjIJbgO (3/7)

あっ(察し)


261 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 00:45:41.170byIjlbwo (7/39)


咲「……」ゴクッ

ガチャ

照「な、何するの…京ちゃん…!?」

京太郎「照さんが…照さんが悪いんですよ」

咲「(…え?)」

咲「(いや、ちょっと待って)」

咲「(京ちゃんがいるのは良いよ)」

咲「(だって、ここ京ちゃんの部屋だし…いるのは普通だもん)」

咲「(でも、なんで京ちゃんの部屋にお姉ちゃんがいるの!?)」

咲「(しかも、縄で完全にベッドの上に縛られて…両手両足とも動けなくなってる…)」

咲「(あ、あれってもしかして…)」

京太郎「親がいないから男の家に遊びに来るだなんて襲ってくれって言ってるようなものじゃないですか」

咲「(い、いやいやいやいや、違うよ!?ぜ、全然違うよ!?)」

咲「(た、確かにそういう展開ちょこっと期待したけど、でも、初めてはやっぱり優しいのが良いし!!)」

咲「(こ、こんな風に無理やり、エッチされるなんて流石に怖いっていうか…京ちゃんがしたいなら我慢するけど最初は優しくが…)」

咲「(って、そ、そうじゃなくって…!!)」


262以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 00:45:49.83PxAUL8FSO (1/2)

アカン・・・
咲ちゃんが咲さんになってまう・・・


263以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 00:46:32.45TjfvCbzWo (1/1)

これはプレイですね(確信)


264以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 00:48:40.27vMsjIJbgO (4/7)

哩姫「「縛るゆーなら私らやけん!」」


265お前らもうちょっと騙されろよwwwwww ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 00:50:28.150byIjlbwo (8/39)


照「ち、違う…わ、私は別に…」

京太郎「…そう言いながらも照さんのこっちは…」ピラ

照「きゃあ」カァァ

京太郎「ほら、やっぱりピンク色のやらしい下着つけてるじゃないですか」

京太郎「これ、勝負下着って奴ですよね?」

京太郎「やっぱり本当はこういうの期待してたんでしょ?」

照「そ、そんな事ない…っ」モゾモゾ

咲「(わ、わぁ…お姉ちゃん凄い…)」

咲「(普段、キャラものパンツなのに…あんな下着も持ってたんだ…)」

咲「(シースルーで大事なところの手前までスケスケ…)」

咲「(私も、今日のために下ろした下着履いてきたけど…流石に負けちゃうかも…)」ゴク

咲「(って見とれてる場合じゃない…!!)」

咲「(こ、これ、絶対、レイプの現場だよ!!)」

咲「(幸い京ちゃんはまだお姉ちゃんに何もしてなくて未遂止まりみたいだし…)」

咲「(ここは幼馴染である私が止めないと…!!)」

咲「な、何してるの京ちゃん!」バーン

京太郎「え?」

照「…ん?」



266 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 00:55:26.230byIjlbwo (9/39)


京太郎「さ、咲!?こ、これはえっと…」

咲「ダメだよ、京ちゃん!!」

咲「幾らお義父さん達がいなくてムラムラしてても、お姉ちゃんの事レイプするなんて人として絶対にやっちゃいけない行為なんだから!!」

咲「と言うか、お姉ちゃんみたいに貧乳で将来性のない身体の人よりも私の方が良いと思うな!!!」

咲「私だったらお姉ちゃんよりも若いし、ちゃんと育ててくれば大きくなる可能性があるよ!!!!」

照「…へぇ」ギュルル

咲「…あ、あれ、お姉ちゃん…?」

咲「な、なんで…?さっきまで縛られてたんじゃ…」

照「縛られてたよ」

照「…ただ、それは私でも簡単に解けるような縛り方だったってだけで」

咲「え、えっと…つまり…?」

照「…全部、同意の上のプレイ」

咲「はぃ?」

照「…ちゃんと言わなきゃ分からない?」

照「京ちゃんと私は…貧乳で将来性のない扱いされた私は付き合ってるって事」ニコ

咲「ええええええええええええええ!?」




267以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 00:58:41.31vMsjIJbgO (5/7)

ちなみに女性の胸の成長は何もしなければ15歳で終わるらしい。


268 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:02:47.290byIjlbwo (10/39)


咲「な、なんで!?って言うか何時から!?」

照「…付き合ったのは一年くらい前から」

照「告白したのは私で、キッカケは咲と仲直りしたインハイ」

照「あの後、京ちゃんとも再会して…まぁ、色々と連絡取ってる間に初恋を完全に思い出したから」

照「それで玉砕覚悟で告白したら…京ちゃんからオッケー貰って今に至る」

咲「わ、私、全然、聞いてないんだけど!?」

照「…私は別に咲に言っても良かったんだけど」

京太郎「さ、流石に俺が無理かなって…」

京太郎「お前のお姉さんと付き合ってます…なんてシラフじゃ恥ずかしくて言えねぇよ」

咲「そ、それは…そうかもしれないけど…で、でも…」

照「…つまり今の咲はおじゃま虫」ニッコリ

咲「うっ…」

照「私と京ちゃんのエッチ邪魔した上に…酷い事も言ってくれたよね?」

咲「そ、それは…え、えぇっと…」メソラシ

照「…これはオシオキが必要」

咲「お、オシオキって…え、ちょ、お、お姉ちゃん待っ…!?」



269 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:09:40.650byIjlbwo (11/39)


咲「な、なんで私まで縛られてるの!?」

照「…咲が邪魔してくれた所為で最初からやり直しになったし」

照「ついでだから大幅にシナリオを書きなおそうかなって」

咲「し、シナリオって…」

照「最初は京ちゃんのお世話しに来た私が京ちゃんの事を無意識に誘惑してしまって」

照「そのままレイプされちゃうんだけどその最中に自分の気持ちを伝えて、恋人同士になるって言う筋書きだったんだけど」

咲「(私と考えてた事が殆ど一緒だ…!)」ガーン

照「…でも、折角だから咲にもエキストラになって貰おうかなと」

咲「わ、私も…!?」

照「ん。主な筋書きはこう」

照「まず京ちゃんは近所でも美人な私を目当てに押し入った強盗で、まずどんくさい咲を人質にとる」

咲「ど、どんくさくないもん!」

照「で、そこに私が帰ってきて、どんくさい妹を護る為、強盗の京ちゃんにエッチな事されちゃう」

照「最初は嫌がってるんだけど、後の方はドンドン感じちゃって、妹の前でトロトロアヘアヘになってく」

咲「…え、えっと…つまり私は…舞台装置って事?」

照「ん」ニッコリ



270 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:16:18.270byIjlbwo (12/39)


京太郎「って、本気ですか…?」

京太郎「幾ら何でもそりゃやりすぎだと思うんですけど…」

照「…大丈夫。咲だし、お菓子をあげればすぐ忘れる」

咲「それはお姉ちゃんでしょ!?」

照「それに…京ちゃんのココはそうは言ってない…♪」ススス

京太郎「う…」

照「ふふ…♪今日の為に一杯、溜め込んでくれてたんだよね…♥」

照「ズボン越しなのに…京ちゃんがもうしたくてしたくて堪らないのが分かるよ…♪」

照「咲の前だって言うのに…こんなにギンギンにしちゃって…いけないオチンポ…♪」ペロ

照「でも、今日の私は京ちゃんにレイプされちゃう方なんだから…エッチな事はしてあげられないよ…♥」ナデナデ

照「精々、こうして京ちゃんのオチンポをナデナデしてあげる事だけ…♪」スリスリ

京太郎「て、照さん…っ」ゴク

照「だから…エッチな事したかったら…京ちゃんからするしかないんだよ…♪」

照「咲に見せつけるように…私の事、レイプするしかないの…♥」


271 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:20:40.890byIjlbwo (13/39)


京太郎「お、俺は…」

咲「京ちゃん、気持ちを強く持って!!」

咲「お姉ちゃんの誘惑になんか負けちゃダメだよ!!」

咲「そ、それに…ほ、ほら、お姉ちゃんは胸小さいし、京ちゃんの好みじゃないでしょ!!」

咲「ちゃんと良く考えれば、すぐに冷静に…」

照「咲は何も分かってない…」

咲「…どういう事?」

照「…京ちゃんはね、私に一杯、エッチな事してくれたよ…?」

照「咲が素直にならなかった間、一杯一杯、仲良くなって…♥」

照「二人で気持ちよくなってたんだから…♪」

咲「…っ!」グッ

照「…私と京ちゃんの身体の相性は最高…♥」

照「それを京ちゃんも良く分かってくれてるんだよ…♪」

照「だから…そんな事言っても、まったくの無意味…♪」

照「京ちゃんは…私の事を絶対にレイプしてくれる…♥」

照「咲はそこで…それを見てれば良い…♪」チュゥ

京太郎「ん!?」





272 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:24:36.930byIjlbwo (14/39)


咲「(う、うわ…お、お姉ちゃん、京ちゃんの頭を抱き寄せてキスしてる…)」

咲「(結構、身長差あるのに…あぁすれば自分から京ちゃんとキスできるんだ…)」

咲「(というか…し、舌使いがすっごいよ…)」

咲「(ここからでも分かるくらい舌が大きく…そしてねっとりと動いて…)」

咲「(二人の間で…絡みついてる…)」

咲「(お、お姉ちゃん…本気だ…)」

咲「(クチュクチュペロペロって…そんな音まで聞こえてきそうな…ほ、本気のチューしてる…)」

京太郎「…っ」ギュゥ

照「ふ…ぅぅ…♪」

咲「(あぁ…!だ、ダメだよ、京ちゃん…!!)」

咲「(幾らお姉ちゃんにすっごくエッチなキスされてても…そ、そんな風にお尻揉んだりしちゃったら…)」

咲「(絶対にエッチな気分…止められなく…なる…)」

咲「(お姉ちゃんの目論見通り…レイプしちゃう事になるよぉ…)」ゴクッ



273 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:29:46.900byIjlbwo (15/39)


照「んぅ…♥」チラッ

咲「(ぐぬぬぬぬ…お、お姉ちゃんってば思いっきり勝ち誇った顔をして…!!)」

咲「(べ、別に私、そんなの羨ましくないし…悔しい訳じゃないもん…!!)」

咲「(そもそも…悪いのは京ちゃんがスケベな事にあるんだから…!)」

咲「(女の子からあんな事されちゃ止まれなくなっちゃうのも当然だよ)」

咲「(…お姉ちゃんが特別って訳じゃない)」

咲「(私だって…私だってあんなキスすれば…京ちゃんにお尻揉んで貰えるもん)」

咲「(モミモミグニグニって…スカートの上から味わうような手つきで…)」

咲「(お尻の間に指入れて…隅から隅まで弄ばれて…)」

照「ふあ…っ♪」ビクン

咲「(お、お姉ちゃん…気持ちよさそう…)」

咲「(あんなエッチな声まであげて…腰ぴくんって揺らしてるし…)」

咲「(お尻なのに…そんなに感じちゃうの…?)」

咲「(ただ揉まれてるだけなのに…そんなにエッチになっちゃうの…?)」



274 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:34:16.250byIjlbwo (16/39)


京太郎「…照さん」

照「ふぁぁ…♪京ちゃ…ぁん…♥」トローン

照「お願い…♪咲には…手を出さない…でぇ…♥」

照「私には…何をしても…良いからぁ…♪」

照「エッチな事…何でもしてあげるから…♪」

照「だから…妹だけは…妹だけは見逃してあげて…ぇ♥」

京太郎「…………分かりましたよ」

京太郎「まったく…完全に根負けしました」

京太郎「照さんが…いや、照がそう言うなら望み通り…」

京太郎「咲の分まで、犯してやるよ」グッ

照「ひぃ…んっ♪」

京太郎「あれ?おかしいな?」

京太郎「…妹の為に…なんて言ってる割にはもう乳首はビンビンになってるじゃないか」クニ

照「くふゅぅっ♪」ビクン

京太郎「小さい胸だってのに…乳首だけは一丁前に育てやがって」

京太郎「これは間違いなく淫乱女の乳首だな」



275 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:39:52.500byIjlbwo (17/39)


照「ち、違…うぅ♪私…淫乱なんかじゃ…っ♪」

京太郎「違うって言うなら、この乳首は何なんだよ?」スッ

京太郎「ほらみろ、もう服の上でも浮かびあがるくらい大きくなってるじゃねぇか」

京太郎「これからレイプされるってのにこんなにエロ乳首勃起させてて何が淫乱じゃないだよ」

京太郎「ドラフト一位に指名された若手ナンバーワンプロとして脚光を浴びてる中でも、本当はこういうの期待してたんだろ?」

京太郎「誰もが賞賛する自分を犯して、穢して欲しくて堪らなかったんだろ?」

照「ち、違…うきゅぅっ♪」

京太郎「まぁ、いいさ」

京太郎「照の大事な妹は俺の手の中なんだ」

京太郎「これからその淫乱な本性をむき出しにしてやる時間はたっぷりある」

京太郎「終わった後、さっきと同じセリフが吐けるかどうか楽しみにしてるよ」

照「あ…あぁぁぁ…っ♪」ブルル

咲「(…京ちゃんもお姉ちゃんもキャラ変わりすぎだよ…)」

咲「(って言うか…もう殆ど二人の世界に入っちゃってるし…)」

咲「(さっきお姉ちゃんが言ってたように…私なんてほぼ舞台装置なのだね…)」

咲「(正直…かなり腹立たしいし…悔しいけど…でも…)」



276 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:46:41.550byIjlbwo (18/39)


京太郎「ほらほらほらほらっ」グチュグチュ

照「や、やめっ♪もぉやめてえっ♥」

照「アソコグチュグチュしないでっ♪そこダメなのおっ♪」

照「またすぐイっちゃううっ♪イきすぎちゃうううっ♪」

照「Gスポゴリゴリされるとダメになるのぉおっ♥」

京太郎「はは。何がダメになるだよ」

京太郎「大股開きで俺の指受け入れてる時点でダメもクソもあるか」

京太郎「もうとっくの昔に照の身体は堕ちてるんだよ」

照「お、堕ちてないいっ♪れ、レイプされて堕ちるはず…ないぃいっ♪」

京太郎「本当に強情な奴だな」

京太郎「じゃあ…ハッキリと身にしみて分かるまでイかせてやるよっ」ジュポジュポ

照「ひうぅううぅううううっ♪」

京太郎「ほら!イけ!!またイっちまえ!!」

照「だ、ダメえええっ♪ま、また出るうううっ♪♪」

照「そんな激しくされたら、お潮出るぅううっ♪潮吹きアクメしちゃっ…♪♪」ビクンビクン

照「ああぁああぁああああああ」プッシャアァ



277 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:53:07.470byIjlbwo (19/39)


咲「(…目をそらせない)」

咲「(二人はもう完全に二人の世界に入ってて…私の事なんてまったく意識してないのに…)」

咲「(完全にエッチな事しか頭にない二人を見ている理由なんてないのに…)」

咲「(でも、二人の事を意識から切り離すどころか、目を閉じる事すら出来なくて)」

咲「(まるで魅入られたように…レイプされるお姉ちゃんを見続けている…)」

咲「(こんなの…こんなのおかしい)」

咲「(幾らそういうプレイでも…妹の前でこんな事するなんて普通じゃない)」

咲「(そう思う気持ちは私の中にも確かにあるのに…でも、私は声すらあげられかった)」

咲「(勿論…さっき一回、邪魔したとは言え、私に二人のプレイを尊重する理由なんてないし)」

咲「(悔しい気持ちは間違いなくあるから…幾ら邪魔しても問題ないはずなのに…)」

咲「(ここで自分が声をあげてしまったら、二人のエッチが終わってしまうかもしれない)」

咲「(そう思ったら…私の唇は動く事をやめてしまって)」

咲「(ただただ…姉と幼馴染のセックスを見ている事しか出来なかった)」



278 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 01:57:43.760byIjlbwo (20/39)


照「はー…♪はぁ…あぁぁ…♪」ピクン

京太郎「どうだ?少しは自分の淫乱さ加減が分かったか?」

照「く…うぅぅ…ん…っ♥」フルフル

京太郎「そうか。じゃあ…やっぱりコレが必要みたいだな」ボロン

照「あぁ…っ♥♥」

咲「ひあ…っ」ビク

咲「(え、ちょ…な、何あの大きいの!?)」

咲「(京ちゃんのへそに届くくらい大きい上に、私の手首くらい太いんだけれど…!!)」

咲「(あ、あんなの本当に女の子の中に入るの…!?)」

咲「(あんなの挿入れようとしたら絶対に避けちゃうよ…!!!)」ビクビク

照「や…止めて…ぇ♪そ、そんな大きいの…絶対に…入らない…♥」チラッ

照「私…き、きっと壊れちゃう…から…♪」ドキドキ

京太郎「そう言う割りにはさっきからチンポチラチラ見てるじゃないか」

京太郎「…本当はもう待ちきれないんだろ?」

京太郎「指じゃもう物足りなくなって、チンポが欲しくなってたんじゃないのか?」

照「そんな事…な、ない…ぃ♪」フルフル




279 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 02:02:26.020byIjlbwo (21/39)


京太郎「じゃあ、仕方ないな」

照「…え?」

京太郎「照が要らないって言ってるのに押し売りするのも可哀想だからな」

京太郎「コイツは妹の方に慰めてもらうとするよ」

咲「…ふぇ!?」ビックリ

咲「(こ、ここここここで私に話がクるの…!?)」

咲「(い、いや…べ、別に嫌って訳じゃないけれど…や、やっぱり怖いというか…)」

咲「(私と殆ど体格変わらないお姉ちゃんでも、京ちゃんと何度もエッチしてるらしいし…)」

咲「(それに何だかんだで私も結構濡れちゃってるから…挿入出来なくはないと思うけど…)」トロォ

咲「(で、でも、もう少し心の準備が欲しいって言うか…わ、私、キスもまだだし…)」

咲「(出来れば、エッチする前にファーストキスだけでも奪って貰えれば…そ、その抵抗する理由はなくなるんだけれど…)」モジモジ

照「だ、ダメ…!い、妹には手を出さない約束…っ!!」

京太郎「…だったら分かるよな?」

照「あ…うぅぅぅ…♥」カァァ

咲「(…ですよねー)」

咲「(まぁ…分かってたけど…予想の範疇だったけれども…)」

咲「(でも、一瞬、期待させてのそれは酷いと思うな…)」



280 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 02:07:49.180byIjlbwo (22/39)


咲「(というか…さっきお姉ちゃん一瞬、マジで焦ってたし…)」

咲「(本気で私と京ちゃんをエッチさせたくないんだ…)」

咲「(まぁ…そりゃお姉ちゃんは京ちゃんと付き合ってる訳だし…こんなイメージプレイするくらい惚れ込んでるんだろうけれども…)」

咲「(…でも、完全に巻き込まれてる私の気持ちも考えて欲しい)」

咲「(さっきからあんなに激しいエッチ見せられて…私だって興奮してるんだもん…)」

咲「(ちょっとくらいおこぼれくれても良いと思うな…)」ムスー

照「く…くだ…さい…♪」フルフル

京太郎「何をだ?」

照「お、オチンポ…ぉ♪京ちゃんの…オチンポです…っ♪」

照「京ちゃんの指で連続アクメさせられて…潮吹きまでしちゃった私のトロトロオマンコにぃ♥」

照「京ちゃんのオチンポ待ちきれなくて、キュンキュン疼いてる私の子宮にっ♪」

照「私の大好きな京ちゃんチンポねじこんでくださいいっ♥♥」クパァ

京太郎「…いや、素に戻りすぎじゃないっすかね?」

照「だ、だって…もう…我慢出来なかった…♥」

照「京ちゃんに手マンされてる最中も、ずっとオチンポの事考えてたんだもん…♥」

照「我慢できるはず…ないぃ…♪♪」フルフル



281 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 02:11:52.210byIjlbwo (23/39)


京太郎「…まったく、本当に照さんはエロいんですから」

照「…エッチなお姉さんは嫌い?」

京太郎「勿論、大好きですよ」

京太郎「だから…」グッ

照「あ…ぁ…っ♪」ドキッ

京太郎「お望み通り…奥まで一気にチンポくれてやります…よ!!」ジュプゥ

照「ひぃい゛いいいいいいいいいっ♪♪♪」ビククン

京太郎「すっげ…マジトロトロですね…」

京太郎「何時もは挿入れた時、キツイって感じなのに、もう滑るように奥まで入りましたし」

京太郎「よっぽど俺のチンポ欲しかったんですね、照さん」

照「ほ…お゛おぉおおっ♪♪お゛おぉおぉおおっ♪♪♪」

京太郎「って、イきすぎて聞こえてないか」

京太郎「相変わらずホント、チンポに弱い身体してますよね」

京太郎「でも…そんなところ見せられると…男としては我慢出来なくなるんです…よ!」グチュゥ

照「~~~~~~~~っ♥♥♥」



282 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 02:18:39.230byIjlbwo (24/39)


照「あ゛っ♪あ゛っ♪♪あ゛ぁぁぁあっ♪♪♪」

京太郎「ほら、妹の前でレイプされる気分はどうだ…!?」

照「や、やめええっ♪い、今、イってりゅうぅううっ♥♥」

照「イっへるのおおっ♪♪オマンコがチンポアクメしてりゅかりゃあっ♪♪♪」

照「てかへ…っ♪手加減しへえっ♪♪」

照「しょんな激しくジュポジュポしにゃいでえええっ♥♥」

京太郎「だったら、今、どういう気分か言えるよな…!?」

照「は…はひぃっ♪♪」

照「は、恥ずかしい…けど…っ♪気持ち良ひれすうううっ♪♪」

照「妹の前でチンポハメハメしゃれるの興奮すりゅうううっ♥♥」

照「チン負けしてアクメ顔しゃらすの良いのぉおっ♪♪」

照「わ、わらひ…い、淫乱女りゃからぁあっ♥♥」

照「京ちゃんのオチンポに絶対勝てにゃいチン弱女にゃのおおっ♪♪♪」

照「オチンポ奥ちゅかれる度にイッてるううううっ♥♥」

照「もう子宮堕ちひゃったああっ♪♪♪」

照「レイプチンポで一突きしゃれただけで…私、ダメににゃったのぉっ♥♥♥」

咲「…っ」ゴクッ



283 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 02:22:37.040byIjlbwo (25/39)


咲「(…す、凄い…)」

咲「(お、お姉ちゃんの顔…一瞬で変わっちゃった…)」

咲「(京ちゃんがあ、アレを挿入れた瞬間、顔がもうドロォってなって…)」

咲「(一目で分かるくらいエッチな顔に…発情した顔に…染まっていっちゃった)」

咲「(お姉ちゃん…あんまり表情が豊かな方じゃなかったのに…)」

咲「(でも、今はそんな事何処かに置き忘れたように…思いっきり気持ちよくなって…)」

咲「(恥ずかしい事も…一杯…一杯言ってる…)」

咲「(あんなの…もう人間の姿じゃないよ)」

咲「(これ…もう…メスになってる…)」

咲「(理性も何もなくして…本能だけが残った…ホモサピエンスのメスだよ…)」ハァハァ

京太郎「はは。やっぱり照は淫乱女だったんだな」

京太郎「しかも、妹にアクメ顔見られて喜ぶ露出狂だった訳だ」

京太郎「だったら…こういうのはどうだ…!?」グイッ

照「ひああああっ♪♪」

咲「ふあ…っ!?」ビックリ



284 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 02:31:54.330byIjlbwo (26/39)


咲「(こ、ここここここれは流石にやり過ぎじゃない…!?)」

咲「(お姉ちゃんのエッチな顔とか…ビンビンになった乳首とかメじゃないレベルで過激なんだけど…!!)」

咲「(あの大きな京ちゃんのオチ……ンチンがジュポジュポってお姉ちゃんの中に入っていくのが至近距離で見えて…っ)」

咲「(時々、お姉ちゃんのエッチなお汁が飛んできちゃってるよ…!?)」

照「や…らああっ♪これ咲の上ぇえっ♥上…えぇええっ♥♥」

照「見えりゅうぅっ♥♥これ…私の恥ずかしひとこりょ見られひゃうううっ♪♪♪」

照「ジュポジュポしゃれてイくところ全部…っ♪♪全部…ぅぅううっ♥♥」

京太郎「遠慮すんなよ。本当はそういうのが好きなんだろ?」

京太郎「実際…さっきから照のここはキュンキュン締まって、気持ち良いって言ってるぞ」

京太郎「それに…ほら…っ」グリィ

照「はお゛おぉおぉおおおぉおおおっ♪♪♪」

京太郎「もうポルチオじゃなくて、普通に膣壁にチンポ押し当てられるだけでもアクメしてるじゃねぇか」

京太郎「本当はあっちもこっちもイきまくりでもう理性なんて吹っ飛んでるんだろ?」

京太郎「ちょっとチンポで強めに擦っただけでこんなアクメ声出すのに、人間ぶっても滑稽なだけだ」

京太郎「淫乱女は淫乱女らしく淫語漏らしてアヘってりゃ良いんだよ!!」グッチュゥゥゥ

照「ひぐううぅううぅうううううっ♪♪♪」



285 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 02:41:30.560byIjlbwo (27/39)


照「い゛ひぃいっ♪♪ひぃ…あ゛あぁあ゛っ♥♥」ビチャビチャ

咲「はぁ…はぁ…っ」ゴク

京太郎「ほら、妹に自前のアクメ汁がぶっ掛かってんぞ?」

京太郎「人間振るなら何か言う事があるんじゃないか?」

照「あぁ…あぁあっ♪♪ごめ…ごめんね…咲ぃっ♥♥」

照「お、お姉ちゃんの愛液…ぃっ♪本気汁…垂らしちゃって…ぇえ♥♥」

照「で、でも…もぉ…もう無理…ぃい♪無理にゃの…おぉおっ♥♥」

照「アクメ汁止めらんにゃいいっ♪♪オチンポしゃま強すぎるのぉおっ♥♥」

照「オマンコがもぉ何処でもイっへるうぅうっ♪♪オチンポこしゅれるとすぐオマンコがアヘりゅのおおっ♥♥♥」

照「わらひのご主人様は京ちゃんれ…もぉ身体が言う事聞いてくれにゃ…ひからぁあっ♪♪」

照「だから…っ♪だか…りゃぁあ♥♥」グリィ

京太郎「はは。おい、どうしたよ?」

京太郎「あの宮永照がレイプされてるってのに自分から腰動かすなんてさぁ」

照「も、もっとぉおっ♪♪もっとオチンポくだしゃいいいっ♥♥♥」

照「わらひは淫乱にゃんですううっ♪♪京ちゃんとのエッチらいしゅきなのおおっ♥♥♥」

照「らから…ぁ♪オチンポぉっ♪♪オチンポもっとぉ♪♪♪」

照「壊れりゅくらいジュポジュポ欲しいのぉおっ♪♪」

照「妹の上とか関係にゃいいいっ♪♪♪」

照「妹よりもオチンポの方が大好きなんですううっ♥♥♥」

咲「お、お姉ちゃん…っ」



286 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 02:45:49.210byIjlbwo (28/39)


京太郎「仕方ないな」

京太郎「そんなにオネダリされちゃ…俺としても本気にならざるを得ない…し!」パンパン

照「あ゛あ゛ぁぁあああああっ♪♪♪」

照「う、嬉ひいいいっ♪♪オチンポ嬉ひいですうううっ♥♥♥」

照「京ちゃんの本気ピストンぅううっ♪♪種付けエッチぃいいっ♪♪♪」

照「らいしゅきいいっ♥♥これホントらいしゅきなのぉおっ♥♥♥」

照「お菓子よりもずっとずっと甘くて気持ち良ひいぃっ♪♪♪」

照「これしゃえあればお菓子要らにゃいのぉおっ♥♥」

照「京ちゃんらけで良いっ♪♪」

照「京ちゃんらけでわらひ幸しぇええっ♥♥♥」

京太郎「…俺も照さんがいてくれるだけで幸せですよ」

咲「…っ」ズキ

照「あぁああっ♪京ちゃんっ♥♥京ひゃあぁああんっ♥♥♥」

照「今、しょんな事言ったららめえっ♪♪♪」

照「幸せイキしゅるううっ♥♥」

照「レイプしゃれてるのにラブラブアクメしひゃうのぉおおっ♪♪♪」



287 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 02:50:20.260byIjlbwo (29/39)


京太郎「もう完全、素じゃないっすか」

京太郎「そもそもこれ合意の上の偽レイプなんで、ラブラブアクメして良いんです…よ!」

照「良い…のぉっ♪♪本当に良いのぉおっ♥♥♥」

照「わらひ…しゅるよぉおっ♪♪京ちゃんの事らいしゅきだからしひゃううっ♥♥」

照「しゅきって言われるらけでラブラブアクメぇっ♪♪幸せアクメになりゅうぅう♪♪♪」

京太郎「えぇ。良いですよ」

京太郎「俺は大好きな照さんに一杯、幸せになってもらいたいですから」

京太郎「幾らでも好きって言います」

照「~~~~~~っ♥♥♥」キュゥゥゥン

京太郎「ちょ、て、照さん…締めすぎ…」

照「む、無…りいぃいいっ♪♪♪」

照「京ちゃんが好きって言う前かりゃ、わらひアクメ漬けなんらよおおおっ♥♥」

照「い、イキっぱにゃしいいっ♪♪アクメ天国うぅううっ♥♥♥」

照「にゃのに好きなんて言われたら…か、身体が止まりゅはずないぃっ♪♪♪」

照「子宮が京ちゃんのザーメン欲しがってりゅぅうう♥♥♥」

照「京ちゃんの赤ひゃん欲しくて、オマンコがラブラブモードににゃったのぉおっ♪♪♪」



288 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 02:57:26.180byIjlbwo (30/39)


京太郎「で、でも、照さん、このままじゃ俺、本当に…!」

照「らいじょうぶぅうっ♪らひてええっ♥♥」

照「このままわらひに種付けひてええっ♪♪♪」

照「良いのぉっ♥♥京ひゃんなら何時でも何処でもらいじょうぶぅうっ♪♪♪」

照「わらひの子宮はいちゅだって京ちゃんの赤ちゃん孕み頃だかりゃあっ♥♥」

照「らからぁっ♪射精ぃいっ♥♥膣内射精ひてええっ♪♪♪」

照「京ちゃんのザーメンで…私をママにして欲しいのぉおっ♥♥♥」

京太郎「…っ!照…さん…!」パンパン

照「ほお゛お゛おぉっ♪♪♪」

照「らしゅとおおっ♪♪ラストスパートぉおっ♥♥♥」

照「分かりゅうぅっ♪♪お、オチンポ大きくにゃって…射精したいひたいって言ってりゅぅうっ♥♥♥」

照「わらひの事はらませたがってりゅのが京ちゃんの身体じぇんぶから伝わってくりゅのぉおっ♪♪♪」

照「しあわ…しぇえっ♥♥わらひ…今、とっても幸へええっ♥♥♥」

照「幸せしゅぎて…まらアクメすりゅうううっ♪♪♪」

照「幸せアクメぇえっ♥♥オマンコとは違う絶頂ぉおおっ♪♪♪」

照「京ちゃんのオチンポで心も身体もイくぅううっ♪♪」

照「イくイくイくイくイくイくイっぐううぅううううぅうううううううう♥♥♥」

京太郎「う…あぁ」ドッピュゥゥウ




289 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 03:02:47.100byIjlbwo (31/39)


照「~~~~~~~~~~~~~っっっ♥♥♥」ブルルルルル

咲「(…あぁぁ…本当に…京ちゃんイっちゃったんだ…)」

咲「(多分、お姉ちゃん危険日なのに…お、思いっきり射精して…)」

咲「(おくまでねじ込んだオチンチンをビクビク…ううん、ドックンドックンってさせながら射精してるのが分かる…)」

咲「(こ、こんなの…本当に…お姉ちゃん妊娠しちゃうよ…)」

咲「(まだプロになって一年目で…周りの期待も大きいのに…)」

咲「(赤ちゃん産む為に…休暇とらなくちゃいけなくなる…)」

咲「(…でも…)」

照「ふぁ…あぁぁぁ…♪♪♪あ゛あぁ゛あ゛あ゛っ♥♥♥」プシャアア

咲「(…お姉ちゃん、とても幸せそう…)」

咲「(今、自分の人生が大きく狂ってしまったかもしれないのに…)」

咲「(あんなに大好きな麻雀を止めなきゃいけなくなるかもしれないのに…)」

咲「(心の底から幸せそうで…そして気持ちよさそう…)」

咲「(まるで今が人生の絶頂期なんだってそう言うような…蕩けた顔をしてる…)」

咲「(…まぁ、蕩けすぎて私の顔の上でまた潮吹きなんてしてるわけだけど…でも…)」

咲「(…羨まし……い…)」ゴク



290 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 03:06:37.920byIjlbwo (32/39)


咲「(…なんで?なんで…お姉ちゃんなの…?)」

咲「(私は…京ちゃんの側にずっといたのに…)」

咲「(お姉ちゃんは…ついこの間、京ちゃんと再会したばっかりなのに…)」

咲「(なんで…今、京ちゃんにエッチして貰ってるのが私じゃないの…?)」

咲「(私は…どうして京ちゃんに種付けされて貰ってないの…?)」

咲「(…変…こんなの…変だよ…)」

咲「(絶対に…絶対に…おかしい)」

咲「(こんなの夢に…夢に決まってる…)」

咲「(なのに…)」キュゥゥゥン

咲「(この夢は…全然…覚める気配がない…)」

咲「(私のアソコ…もうおかしくなりそうに疼いてるのに…)」

咲「(両手が自由になっていたら…今すぐオナニーしちゃいそうなくらいウズウズしてるのに…)」

咲「(私はずっと夢の中にい続けていて…)」

咲「(でも、これは現実な訳なくって…でも…私は…っ)」



291 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 03:09:26.180byIjlbwo (33/39)


照「は…ぁ゛ぁ…♪」フラ

京太郎「っと」ガシ

照「き、京ひゃ…あぁ…♥♥」クタァ

京太郎「大丈夫。分かってますよ」

京太郎「また腰抜けたんだしょう?」

京太郎「ちゃんと照さんが回復するまで一緒にいますから安心してください」ナデナデ

照「ん…ぅ…♥♥」トローン

照「ありがと…京ちゃ…ん…♪」

照「でも…ちが…違う…の…♥」

京太郎「違う?」

照「わらひ…まだ当分…エッチ無理りゃからぁ…♪」

照「らから…今度はしゃきに…ひてあげて…♥」

照「エッチにゃ事ぉ…♪わらひにしれくれたみたいにゃ…事ぉ…♪♪」

京太郎「え?」

咲「えっ!?」



292 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 03:13:37.870byIjlbwo (34/39)


京太郎「ちょ、な、何を言ってるんですか」

照「らって…しゃきは…京ちゃんの事…しゅきなんらよぉ…♥♥」

咲「ちょっ!?お、お姉ちゃん…!?」

照「らからね…♪わらひ、一回諦めらのぉ…♪♪」

照「しゃきに悪いって思って…京ひゃんに告白しにゃかっらぁ…♪」

京太郎「照さん…」

照「れもね…♪わらひ…もう我慢出来にゃくなってぇ…♪♪」

照「京ちゃんに告白して…恋人ににゃれてぇ…♥」

照「一杯エッチもひて貰へて…種付けされて…幸せらけどぉ…♪」

照「れも…やっぱりしゃきに悪いって気持ちは…にゃくなら…ないの…ぉ♥」

京太郎「で、でも、だからって、それは浮気でしょ」

京太郎「俺が照さんの事好きだって言うのは決して軽い気持ちじゃないですよ」

京太郎「それに咲は幼馴染ですし…エッチしろって言われてはいそうですかなんて言えません」

咲「……」



293 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 03:17:09.770byIjlbwo (35/39)


咲「…ダメなの?」

京太郎「え?」

咲「お姉ちゃんでは興奮しても…私では興奮出来ない?」

咲「そんなに…私、魅力ないかな…?」

京太郎「い、いや、そういうんじゃないって」

京太郎「てか、お前、この状況、どういう事か分かってるのか?」

咲「分かってるよ。分かってるに決まってる」

咲「私は京ちゃんとお姉ちゃんがエッチする為の道具にさせられて」

咲「目の前でお姉ちゃんが犯されるところを魅せつけられちゃって」

咲「あまつさえ膣内射精してるところまでハッキリと見せられたんだよ」

京太郎「そ、その件に関しては本当に申し訳なく思っています」ダラダラ

咲「本当に悪いと思ってる?」

京太郎「はい。最中の俺は冷静じゃありませんでした」

京太郎「何でもするのでどうか許してください…」

咲「ふ、ふーん…何でもしてくれるんだ…」ゴクッ

咲「だ、だったら………その…ね」モジ



294 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 03:21:13.320byIjlbwo (36/39)


咲「(お、落ち着いて、私)」

咲「(これは間違いなく私にとって一生を左右する選択肢…)」

咲「(ここで私がどう応えるかによって…きっと京ちゃんとの関係性も変わる)」

咲「(だから、ここは一時の感情に流されたりしちゃダメ)」

咲「(折角、最高の形で京ちゃんの弱みを握ったんだから、ここは冷静に考えなきゃ…)」チラッ

京太郎「…」ビンビン

咲「…わ、私ともエッチして欲しいな」

京太郎「さ、咲…?」

咲「(ハッ…し、しまったあああああああああ!!!)」

咲「(京ちゃんのおちんちんがいまだガチガチなのを見てたらつい…)」

咲「(私もお姉ちゃんみたいに幸せにして貰えるかもってそう思っちゃって…)」

咲「(うぅぅ…こ、これも全部、お姉ちゃんが悪いんだよ…!)」

咲「(お姉ちゃんが私の目の前であんなに気持ちよさそうにするから…私も完全にスイッチ入っちゃって…)」

咲「(もう…もうこんなの絶対に我慢できるはず…ないもん…)」グッ

咲「(だから…!)」



295以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 03:23:21.11vMsjIJbgO (6/7)

京ちゃんはいつだって迂闊なこと言って墓穴掘るよね


296 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 03:26:47.560byIjlbwo (37/39)


咲「…あんな激しいエッチ見せられて我慢できるはず…ないよ」

咲「そ、それに…わ、私…私…」グッ

京太郎「…咲?」

咲「き、き…京ちゃんの事す…す………」カァァァァ

咲「スケベだって知ってるから!!!!!!!」

京太郎「……え?」

咲「(私の馬鹿ーーーーー!!!意気地なしいいいいいぃいい!!!!)」

咲「(で、でもでも…一度、言っちゃった以上は取り消せないし…)」

咲「(こ、このまま押し通すしかない…!!!)」

咲「お、お姉ちゃんもう腰砕けなのに、京ちゃんまだまだエッチしたいんでしょ?」

咲「そ、そんな状態で放っといたら…お姉ちゃん以外の人を本当にレイプしちゃうかもしれないじゃない?」

咲「そうなったら…ほ、ほら、未来の義妹としては色々と体面も悪いし…」

咲「そ、それに、もし、これでお姉ちゃんが妊娠したら京ちゃんはずっと我慢し続けなきゃいけなくなるもんね」

咲「でも、この状況でもガチガチになってる京ちゃんが我慢できるはずないし…浮気とか絶対するに決まってる」

咲「だから…わ、私がその分を受け止めてあげる」

咲「お姉ちゃん公認の浮気相手として…き、京ちゃんとエッチ…する…よ」カァァァァ


297 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 03:34:57.380byIjlbwo (38/39)


照「…咲の意気地なし」ポソ

咲「う…うぅぅう!お姉ちゃんは黙ってて!!」

京太郎「い、いや…つか…え?…いや、えぇ…!?」

咲「…もう。まだそんなに狼狽えてる…」ムスー

咲「……じゃあ、シナリオ変更で良いよ」

京太郎「シナリオ変更って…?」

咲「さっき京ちゃんとお姉ちゃんがやってた奴の続き」

咲「…お姉ちゃんをレイプしても飽きたらなかった京ちゃんは今度はお姉ちゃんの前で私をレイプするの」

咲「そもそも京ちゃんは見境ない強姦魔なんだから、縄で縛り付けてる美人な妹を放っておけるはずないし」

京太郎「酷い言われようなんだけど」

咲「…私の前でお姉ちゃんとエッチしてた時点で反論の余地はないと思うな」ジト

京太郎「お、おっしゃるとおりで…」ダラダラ

咲「…まぁ、別にその程度で私は京ちゃんの事嫌いになったりしないけどさ」

咲「ならないけど…でも、その…私だって女の子…なんだよ?」カァァ

咲「こういう事言うのがどれだけ恥ずかしいかくらい…分かってくれるでしょ?」プイ

京太郎「…咲」

咲「………だから、私もお姉ちゃんみたいに…して?」

咲「お姉ちゃんみたいに…京ちゃんのおちんちんに逆らえない…女に…して欲しいな」モジモジ




298 ◆R5j2Ndo0Hc2015/09/26(土) 03:35:30.410byIjlbwo (39/39)







































(省略されました。続きを読むにはワッフルワッフルと書き込んで下さい)




299以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 03:41:33.96vMsjIJbgO (7/7)

全然イメージが浮かばないのは俺の妄想力が足らないからだろうか。


300以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 04:01:32.01yepo9K5Vo (1/1)

更新に戻るって書いてたから本編かと思って楽しみにしてたら全然違ったでござる


301以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 04:42:15.89PxAUL8FSO (2/2)

続きは見たいけどそれによって本編の更新が遅れたりするなら無しでもいいかなぁ

ワッフルワッフル


302以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 05:54:06.29Ky9eCnp20 (1/1)

なんだよ本編じゃねえのかよワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフル仕方ねえなあワッフルワッフルワッフルワッフル


303以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 06:51:41.842wSLy+wFO (1/1)

さっさと本編書けよワッフルワッフル


304以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 07:21:34.2504AKc/yQo (1/1)

わっふるわっふる


305以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 09:15:43.35nvMVDpMNo (1/1)

ワッフルワッフル


306以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 10:57:16.45uNxrv0l/0 (1/1)

続き?べ、別に読みたい訳ないんだけどな…まったく…

ワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフル
ワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフル


307以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 12:29:03.62IOJshab5o (1/1)

テルテルいいわー
続きワッフル!


308以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 14:01:13.88uEFz2TYjo (1/1)

テルさん可愛すぎる


309以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 16:08:34.90/pzkjyHXo (1/1)

やっと追いついた
ワッフルワッフル


310以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/26(土) 16:24:49.32RC8flXUXO (1/1)

ったくよぉワッフルワッフル本編来たかと思っワッフルワッフルたらなんだよワッフルワッフルこれ

もっとください(切実)


311以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/27(日) 01:32:16.05ZYKjHuT7o (1/1)

ワッフルワッフル


312以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/27(日) 16:22:28.61Qkm/ei8xO (1/1)

お前ら本編読みたいのか続き読みたいのかどっちだよ。


313以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/27(日) 17:48:04.74Z0hAS2Z+o (1/1)

ワッフどっちルも読みたワッいだフけだよル


314以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/28(月) 16:39:32.23tHu/Jcxao (1/1)

ワッフルワッフル


315以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/30(水) 01:35:24.95GzUdBbQ3o (1/1)

度し難い連中だワッフルワッフル


316以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/01(木) 01:03:30.44TARH/dcfO (1/1)

どうせ書くなら本編で登場したキャラで置き換えてif形式で書いて欲しかったな
脈絡無く照が出てきてストーリー始まったからファッ!?てなったわ

あ、それはそれとしてエロはすごく良かったです(小並感)
ホモサピエンスのメスとかいう表現を思いつく>>1はやっぱりどこかおかしい(誉め言葉)

ところでなんで誰も咲のお義父さん呼びに突っ込まないんですかねェ…


317 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 01:58:46.71iSFKJmaDo (1/15)

>>299
正直、ワッフルオチにすると決めて、一回の投下で最後までいかなきゃ(使命感)と思った所為で、色々と描写が薄い部分があるなーとは私も思います
エロ部分も大分端折っちゃって大分、想像力に任せる形になっちゃってるのは申し訳ありませぬ(´・ω・`)ゴメンナサイ

>>316
そんな事言われたら、このスレで
以前付き合っていた怜と同窓会で再会して、竜華と結婚したのを知りつつも一夜の過ちを犯してしまい、
完全に当時の気持ちを思い出した怜から竜華の事を調教するように頼まれる京ちゃんとか
ふたなりなんだけど色々あって京ちゃんと付き合ったのどっちが初めてのセクロスでマジカル☆チンポに堕とされてしまい、
もう射精出来なくなるくらいオマンコでアヘらされ、本当の男の逞しさを子宮に叩きこまれたのどっちが自分はふたなりじゃなくて女の子だったんだと思い知らされるところとか
仕事に疲れて帰ってきた京ちゃんをほぼ通い妻状態のキャップが出迎えて、食事からマッサージから甲斐甲斐しく世話を焼いてくれて、
気持ち良くて身体がリラックスした京ちゃんの上にまたがって優しく性欲処理までしてくれるところとか
シルバーウィークと言う事で思いっきり食材や消耗品を買い込み、完全に引きこもりの準備を整えた後、
同棲中の憧と一緒に全裸になって食事中もお風呂も寝る時もずっとセクロスしっぱなしの爛れた休日を過ごす大学生京ちゃんとか
ミーハーな豊音と一緒にラブホテルに行ったら、まるでお城のような内装が気に入って週末のデートの終わりは大抵、ラブホに行く事になり、
その大きくて豊満な身体に精一杯のご奉仕をされながら、イチャイチャセックスする京ちゃんとか書けないじゃないか!!!

まぁ、そういうファッ!?って言う反応を期待したんですが、確かに咲を出した以上、ややこしかったですね(´・ω・`)ゴメンナサイ
次からは本編関係ない小ネタの時はちゃんと告知するようにします


そして多分、明日には投下出来れば良いかなって…(´・ω・`)正直、ちょっと展開的に迷ってるので伸びる可能性も少なからずありますが




318QDK(急に電波が来たので小ネタやります) ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:09:37.00iSFKJmaDo (2/15)


京太郎「ふぁぁぁ…ねっみ…」

京太郎「(昨日、殆ど眠れなかったからなぁ)」

京太郎「(このままだと授業中にちょっと眠っちゃいそうだ…)」

京太郎「(でも、流石にそれは…なぁ)」

京太郎「(別に成績なんてどうでも良いけど…でも、俺は昨日、ユキに告白してOKを貰えた訳で)」

京太郎「(折角、彼氏彼女の関係になれたユキの前で情けない姿を見せたくはない)」

京太郎「(幾らテンション上がりすぎて眠れなくなってたって言っても、やっぱり幾らか幻滅されちゃうだろうしなぁ)」

京太郎「(だから、せめて昼まではこの眠気に抗わないと…ってアレは…)」

由暉子「…」スタスタ

京太郎「(あそこにいるのはラブリーマイエンジェルユキたんじゃないか)」

京太郎「(特に約束なんてしてないのに通学路で出会えるなんて…これはやはり運命だな!!)」

京太郎「(…ってそれはさておき、何か真剣な顔で雑誌読んでるけど…何を読んでるんだろ?)」

京太郎「(まぁ、いいや。とりあえず話しかけて聞いてみよう)」

京太郎「おっす、ユキ。おはよう」

由暉子「あ、京太郎君、おはようございます」



319QDK(急に電波が来たので小ネタやります) ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:12:20.03iSFKJmaDo (3/15)


京太郎「まさかこんなところで会えるなんて奇遇だな」

由暉子「そうですね。運命を感じます」ニコ

京太郎「お、おう」カァ

京太郎「(…こういう事、真顔で言ってみせるんだから卑怯だよなぁ)」

京太郎「(いや、まぁ、俺も同じこと思ってたけどさ)」

京太郎「(でも、やっぱり彼女から運命だなんて聞かされるとやっぱり照れくさいし恥ずかしくなる)」

京太郎「でも、そんな風に本を読みながら歩いてると危ないぞ」

由暉子「ごめんなさい。興味深い本だったのでつい…」

京太郎「へぇ。そんなに面白いのか」

由暉子「面白い…と言うよりも勉強になります」

由暉子「京太郎君も読みますか?」スッ

京太郎「えーっと…なになに…」

つ【ゼクシィ】

京太郎「…………え?」


320QDK(急に電波が来たので小ネタやります) ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:18:37.18iSFKJmaDo (4/15)


京太郎「(…あれ?おかしいな)」

京太郎「(俺とユキってつい昨日、付き合ったばかりじゃなかったっけ?)」

京太郎「(それなのに、なんでゼクシィなんて読んでるんだ…!?)」

京太郎「(い、いや、まぁ、俺もユキとの結婚は嫌じゃないけど、流石に早すぎるって言うか…)」

京太郎「(一足飛びどころかロケットレベルでかっ飛んでいる気がするんだけど!!?)」

由暉子「やっぱりキリスト系の学校に通っている以上、やっぱり結婚式は教会がいいと思いますが…」

由暉子「こうして見ていると白無垢姿にも惹かれます」

京太郎「ゆ、ユキならどっちも似合うと思うぞ」

由暉子「ありがとうございます」テレ

由暉子「でも…それならどっちにするか余計に迷ってしまいますね…」

由暉子「あ、そうだ。この辺りにもオススメの結婚式場があるみたいなんで週末一緒にいきませんか?」

京太郎「お、おう。大丈夫だぞ」

由暉子「ふふ。では、楽しみにしていますね」ニコ

京太郎「(…何故か初デートが結婚式場見学になった件について)」

京太郎「(いや、もうなんでこんな事になったのか不思議で不思議で仕方ないけど…)」

京太郎「(まぁ、ユキが喜んでくれてるなら良いか)」






321QDK(急に電波が来たので小ネタやります) ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:22:46.66iSFKJmaDo (5/15)


~また別の日~

由暉子「…」ヨミヨミ

京太郎「ちーっす。ってアレ?」

由暉子「あ、京太郎君。こんにちは」

京太郎「おう。今日はまだユキだけか?」

由暉子「はい。皆さん、今日はちょっと遅れるみたいです」

京太郎「そっか。…なんか気を遣わせちゃったかな?」

由暉子「そんな事ないと思いますよ」

由暉子「きっとたまたまだと思います」

京太郎「(…たまたまで俺達以外の部員皆が遅刻したりなんかするかなぁ…)」

京太郎「(まぁ…若干、天然入ってるユキにその辺、言ってもきっと理解はして貰えないだろうし)」

京太郎「(最近、部活動で忙しくて中々二人っきりになれなかった俺達へのご褒美だって思うようにしよう)」

京太郎「ところでまた真剣な顔で本を読んでたけれど、何を読んでたんだ?」

由暉子「はい。これです」スッ

つ【リプラン】:北海道の住宅情報誌

京太郎「……え?」



322QDK(急に電波が来たので小ネタやります) ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:29:40.56iSFKJmaDo (6/15)


由暉子「やはり北海道でも一軒家を建てると言うのはかなりの金額が必要みたいですね」

由暉子「この辺りは下手に安く済ませようとすると隙間風で文字通り凍えてしまいますし…」

由暉子「断熱材その他には手を抜けません」

京太郎「お、おう」

由暉子「それに建てるならやっぱり子ども部屋なんかもあった方が良いでしょうしね」

由暉子「出来れば二人は欲しいので、後々の為に三部屋…欲を言えば四部屋欲しいです」

由暉子「京太郎君との寝室は一つで良いにせよ、子宝に恵まれるかもしれませんし」

由暉子「なので、最低でもこのクラス…欲を言えばこれくらいの家は建てたいですね」

京太郎「(…ユキが指差してるの数千万とか言う俺の知らない桁の家なんだけれどな)」

京太郎「(いや、まぁ、いずれ俺も自分の家は持ちたいし、ローンで支払っていく事になるんだろうけれども…)」

京太郎「(しかし、目の前で結婚を前提とした家の話をされるとは思ってなかった…)」

由暉子「あ、でも、京太郎君も書斎とかあった方が良いですよね」

由暉子「となると…もう一つクラスが上がってしまいそうですが…」ムムム

京太郎「…とりあえず子どもが出来るまで子ども部屋を書斎にすれば良いんじゃないか?」

由暉子「なるほど。京太郎君は賢いですね」ニコ

京太郎「お、おう」



323ちょい修正ー ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:31:13.67iSFKJmaDo (7/15)

由暉子「やはり北海道でも一軒家を建てると言うのはかなりの金額が必要みたいですね」

由暉子「この辺りは下手に安く済ませようとすると隙間風で文字通り凍えてしまいますし…」

由暉子「断熱材その他には手を抜けません」

京太郎「お、おう」

由暉子「それに建てるならやっぱり子ども部屋なんかもあった方が良いでしょうしね」

由暉子「出来れば二人は欲しいので、後々の為に三部屋…欲を言えば四部屋欲しいです」

由暉子「京太郎君との寝室は一つで良いにせよ、子宝に恵まれるかもしれませんし」

由暉子「なので、最低でもこのクラス…欲を言えばこれくらいの家は建てたいですね」

京太郎「(…ユキが指差してるの数千万とか言う俺の知らない桁の家なんだけれどな)」

京太郎「(いや、まぁ、いずれ俺も自分の家は持ちたいし、ローンで支払っていく事になるんだろうけれども…)」

京太郎「(しかし、付き合って一ヶ月で結婚を前提とした家の話をされるとは思ってなかった…)」

由暉子「あ、でも、京太郎君も書斎とかあった方が良いですよね」

由暉子「となると…もう一つクラスが上がってしまいそうですが…」ムムム

京太郎「…とりあえず子どもが出来るまで子ども部屋を書斎にすれば良いんじゃないか?」

由暉子「なるほど。京太郎君は賢いですね」ニコ

京太郎「お、おう」


324ちょい修正ー ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:39:14.79iSFKJmaDo (8/15)


由暉子「でも、こうやって見取り図だけでは中々、イメージが湧きませんね…」

京太郎「……じゃあ、今週末、ショールームでも見に行くか?」

由暉子「良いんですか?」

京太郎「あぁ。今週は俺も特にやる事ないしな」

京太郎「(…このままほっとくと逆にエスカレートしそうだしな)」

京太郎「(それにまぁ…俺との事をユキが真剣に考えてくれているのは事実なんだ)」

京太郎「(ちょっと早い…というか早すぎるけれど、でも、嫌な気はしない)」

京太郎「(学生という事で白い目で見られそうだけど、ここは一つ冷やかしにでもいってみよう)」

由暉子「ありがとうございます、京太郎君」ニコ

由暉子「私、精一杯、おめかししていきますね」

京太郎「あんまり張り切り過ぎないでくれよ」

京太郎「ユキが張り切って可愛くなりすぎると周りの男どもの視線が怖くなる」

由暉子「…でも、京太郎君が護ってくれるんでしょう?」

京太郎「まぁ、これでも一応、彼氏だからな」

由暉子「…これでも、じゃないです」

由暉子「京太郎君は私にとって自慢の…いえ、最高の恋人なんですから」ニコ

京太郎「お、おう」テレ



325ちょい修正ー ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:41:56.09iSFKJmaDo (9/15)


~また別の日~

由暉子「…」ヨミヨミ

京太郎「(…また部室でユキが本を読んでる…)」

京太郎「(しかも、今まで見たことがないくらい真剣な表情だ)」

京太郎「(…もうこの時点で何となく予想はつくけれど…)」

京太郎「(でも、こんなに真剣なユキを放っておく事は出来ないよなぁ…)」

京太郎「ユキ」

由暉子「あ、京太郎君」

京太郎「何読んでるんだ?」

由暉子「…えっと…これです」スッ

つ【たまごクラブ】

京太郎「(…ついに来ちゃったかー…)」




326ちょい修正ー ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:46:15.00iSFKJmaDo (10/15)


由暉子「…京太郎君、私は愚かでした」

京太郎「え?急にどうしたんだ?」

由暉子「だって…まだ生まれてもいない赤ちゃんの事を考えて家の方を真っ先に考えていたなんて…」

由暉子「こんなの京太郎君の恋人失格です…」

京太郎「いや、別にそこまで重く考えなくても…」

由暉子「…いいえ。これは重く考えなきゃいけない問題です」

由暉子「だって、これは私達の未来だけじゃなくて、赤ちゃんにも関わってくるものなんですから」

京太郎「(…ユキの中では俺と結婚して子どもを産むのは既定路線なのか)」

京太郎「(いや、俺も決して嫌って訳じゃないけど…嫌じゃないんだけどさ)」

京太郎「(ただ、俺達、まだ二ヶ月しか付き合ってなくて、最近、キスしたばっかりなんだけど…)」

由暉子「…ですから、私は深く反省し、まずは赤ちゃんと向き合う事にしました」

京太郎「…そ、そうだな。とりあえず改善しようとするその姿勢はとっても良いと思うぞ」

由暉子「ありがとうございます」テレ

由暉子「あ、それで、京太郎君に聞きたい事があるんですが…」

京太郎「(…嫌な予感しかシないけれど)」

京太郎「なんだ…?」




327ちょい修正ー ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:51:39.34iSFKJmaDo (11/15)


由暉子「京太郎君は男の子の名前は何が良いと思いますか?」

京太郎「え、えっと…ま、まぁ、そうだな」

京太郎「とりあえず元気そうな名前が良いと思うな、うん」

由暉子「元気…なるほど…」

由暉子「では、これなんてどうでしょう?」スッ

京太郎「…照太郎?」

由暉子「はい。私にとっての京太郎君がそうであるように、周りを照らす暖かで優しい人になって欲しいと思って考えました」

京太郎「お、俺が?」

由暉子「はい。京太郎君は何時も私の心を優しく照らしてくれています」ニコ

京太郎「そ、そうか。それは嬉しいな」

京太郎「でも、ユキだって、俺の心を何時だって明るくしてくれてるんだぞ」

由暉子「…本当ですか?」

京太郎「あぁ。少なくとも、俺はユキといると退屈しないよ」

京太郎「(…色んな意味でな、うん)」



328ちょい修正ー ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:54:50.84iSFKJmaDo (12/15)


由暉子「嬉しいです…京太郎君…」ギュゥ

京太郎「お、おぉ…」ドキドキ

京太郎「(む、胸が…おもちなユキっぱいがぁああ!!)」

京太郎「(こ、これは…良いのか?)」

京太郎「(雰囲気的にキスしちゃってオッケーな奴か…!?)」

京太郎「(いや…良いに決まってる!!)」

京太郎「(ユキもきっとそれを期待してこうして俺に抱きついてくれたんだ…!)」

京太郎「(行け!行くんだ京太郎…!!)」

京太郎「…ユキ」スッ

由暉子「ぁ…♪」ウワムキ      ドサ

京太郎「ん?」

由暉子「あ…ごめんなさい…メモを落としちゃいました」

京太郎「(…いや、メモが落ちたって音じゃなかったんだけど…)」

京太郎「…メモ?」

由暉子「はい。京太郎君との子どもの名前を考えたメモです」

京太郎「…え?」



329ちょい修正ー ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 02:59:11.64iSFKJmaDo (13/15)


由暉子「とりあえず男の子100の女の子100で200パターンほど考えてみました」

由暉子「それぞれ由来や思いを書き込んだので大分、かさばってしまって…」

京太郎「…200?…20の間違いじゃなくって?」

由暉子「流石に20ぽっちじゃ赤ちゃんが可哀想だと思います」

京太郎「(…いや、20でも十分多いと思うんだけど)」

由暉子「あ、後で京太郎君も見てくださいね」

由暉子「二人の子どもなんですから京太郎くんの意見も聞かせて欲しいです」

京太郎「お、おう…」

京太郎「(…まぁ、ユキが真剣に考えてくれた名前だしな)」

京太郎「(ちょっと早すぎるとは思うけど、でも、家を見に行くよりはマシだし)」

京太郎「(いずれ来る事になるかもしれないものなんだから、真剣に考えるとしよう)」

由暉子「それで…今週末なんですが…」モジ

京太郎「ん?」

京太郎「(…珍しいな、ユキがこんなに恥ずかしそうにするなんて)」



330ちょい修正ー ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 03:04:32.17iSFKJmaDo (14/15)


京太郎「(ユキは天然だけれど、あんまり恥ずかしがったりしないイメージがあったんだけどな)」

京太郎「(初めてキスした時も頬こそ赤くなってたけど、あんまり気恥ずかしそうにはしていなかったし)」

京太郎「(寧ろ、すかさず二回目をオネダリされた時はそのまま押し倒してやろうかと…ってそうじゃなくて…)」

由暉子「…実は今週末、両親が旅行していないんです」

京太郎「え?」

由暉子「なので…京太郎君さえ良ければ、泊まりに来ませんか?」

由暉子「私、京太郎君と色々とお話したいです」

由暉子「いえ、ただお話するだけじゃなくって…」

由暉子「今よりももっと仲良くなりたいとそう思っているんですけれど…」モジモジ

京太郎「い、良いのか?」

由暉子「…ダメならこんな事、女の子から言ったりしませんよ」

由暉子「私だって、これがどういう事を意味するのか分かっています」

由暉子「分かってこうしてお誘いしているんですから…その…」

京太郎「お、おう。行くよ!絶対行く!!」コクコク

由暉子「…はい。お待ちしていますね」ニコ



331 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/01(木) 03:05:02.68iSFKJmaDo (15/15)

ユキは私の中で何となく愛が重い系天然なイメージがあります(´・ω・`)ネムイ寝る


332以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/01(木) 03:09:23.95SICVnFNZo (1/1)

乙ー
……まぁお墓のカタログに行く前に止まって良かったじゃん


333以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/01(木) 03:55:32.43bKQT53Jf0 (1/1)

多分 新築の書斎には来世の予言書(自作 が 何世代分も蔵書になってるんだろうな (果てしなくトオイメ


334以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/01(木) 07:46:21.557fnpTyTGO (1/1)

おつー

アイサレテルッテノハイイコトダヨ...


335以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/01(木) 09:16:53.12M962f+tf0 (1/1)

気が早すぎるよ由暉子


336以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/01(木) 10:41:03.80t5wW+Mh90 (1/2)

両親が結婚に反対するかもしれない
婚姻届けの保証人欄は両親じゃなくてもいい
両親が旅行へ行く

……あっ


337以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/01(木) 10:42:16.80t5wW+Mh90 (2/2)

ごめん、sage忘れた


338以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/01(木) 11:22:20.12s5XmB/OZo (1/1)

や京ユキNo1!


339以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/01(木) 12:48:47.54dH4Z6tBLo (1/1)

乙です


340 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:25:38.93ga3Tv5+/o (1/94)

姉さん!明日って今さ!!!(今から投下しますの意)



341 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:26:49.94ga3Tv5+/o (2/94)


………

……





―― その姿はあまりにも印象的過ぎた。

50mと言うあまりにも短い距離の中、他の走者を抜き去って一位でゴールしたのだから。
その上、スタート時に一瞬、反応が遅れていたともなれば、その身体能力がどうしても浮き彫りになってしまう。
いっそ場違いにも思えるその身体能力に会場が沈黙したのは数秒の事。
すぐさま永水女子より歓声が湧き上がり、星誕女子からはどよめきの声があがった。

「凄いです、京子さん!」

「ビュンって全員抜いてゴールなんて格好良いです!」

「あ、あの…さっきの見惚れちゃいました…」ポー

京子「えぇ。皆、ありがとう」ニコ

そうして会場が沸き立っている間にも、京子は星誕女子のエルダーである月極輝夜と対等に話していたのである。
相手がエルダーである事をまったく意にも介していない堂々とした立ち振舞は、永水女子の生徒たちが感嘆するには十分過ぎた。
元々、女子校育ちで夢見がちな子が多い事も相まって、熱っぽい視線を向ける子まで現れている。
まるでファンがアイドルに向けるようなその視線に、京子は笑みを浮かべながら、応えていった。


342 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:27:29.67ga3Tv5+/o (3/94)


京子「(…しかし、これ、どうしようか)」

今の京子は輝夜の元から去った瞬間、永水女子の仲間達に囲まれてしまっていた。
まるでアイドルのようなその扱いはこそばゆいものを感じるが、内心、嬉しく思う。
だが、京子と輝夜は決して対等な条件で戦っていた訳ではないのだ。
自分が男であるという事を今も強く意識してしまう京子にとって、詰めかけるような仲間たちの姿に内心、戸惑いを覚えてしまう。

京子「(み、皆、結構、汗だくだから服が…)」

9月も中旬の今、夜は大分、涼しくなってきてはいる。
しかし、昼はまだ太陽の勢いは強く、日向にいればジリジリと照らされているのを感じるのだ。
そんな状況で体育祭を行っている彼女達は一様に汗を流し、そしてその服を身体に張り付かせている。
運動する為の服であるが故に透けたりはしていないが、しかし、身体の線が浮き彫りになった少女達の姿を真正面から見据えるのは抵抗感があった。


343 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:29:41.17ga3Tv5+/o (4/94)


京子「(何より…匂いが…)」

汗を流す少女たちの弊害は決してその姿だけではない。
開いた汗腺からは汗だけではなく、鼻の奥をくすぐるようなフェロモンの匂いも出ているのだから。
もう熟れているのだとオスに伝えるような甘い香りは、周りに女性ばかりの環境で過ごしている京子でさえたじろがせるものだった。
嗅いでいるだけで胸の底から淫らな考えが浮かび上がってくるようなそれに、しかし、京子は逃げる訳にはいかない。
エルダーとスールの契を結んでいる京子は、その立ち振舞一つ一つが義理の姉である依子の評価にも繋がってしまうのだから。
自分の不用意な行動で依子の顔に泥を塗るような事態を避けたいと思う京子にとって、どれだけ辛い状況でも、逃げる事など出来なかった。

「京子さんがいれば、星誕女子なんて怖くありませんね!」

京子「ふふ。そう言ってくれると嬉しいです」

京子「でも、私は所詮、一人でしかありません」

京子「永水女子がこのまま勝つには、皆さんの力が必要です」

京子「どうか午後も皆さんの力をお貸し下さい」ペコ

「えぇ。勿論です!」エイオー

「このまま一気に引き離してやりましょう!!」オー

元々、星誕女子に到着してからずっと嫌がらせを続けられてきた少女達の士気は高い。
だが、こうして京子がハッキリと目に見える形で輝夜を打ち破った今、その士気はさらに高まっている。
まるで格の違いを見せつけるようにして一位を奪い取った京子がいれば、輝夜でさえ恐れる必要はない。
そんな気持ちと共に高まった士気を表現するように、少女達は拳をあげて応えた。



344 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:31:05.26ga3Tv5+/o (5/94)


依子「皆さん、少し良いかしら…?」

「あ、お姉さまがいらっしゃいましたわ」ササ

「皆さん、道をお開けしてあげて」ササ

依子「ありがとうございますわ」ニコ

そうして士気を高めている最中でも、依子の存在感というのは大きかった。
無論、それは彼女が輝夜のように周囲を抑えつけて生きてきたからではない。
依子は幼い頃、母から聞かせてもらったエルダーに憧れ、それに相応しい淑女になる為にずっと努力し続けてきたのだ。
エルダーになった後も自身の才覚を今も磨き続けている彼女は、選挙後もジリジリと支持者を増やしている。
今や全校生徒にエルダーに相応しいとそう認められるようになった依子に、彼女達はそっと道を開けた。

依子「京子さん」

京子「依子お姉さま、どうしました?」

依子「どうしたもこうしたもないですわ…もう」

生徒達に作ってもらった道を歩く依子に、京子は疑問の声を向けた。
元々、京子は一段落した後、依子達の元に戻るつもりだったのだから。
伝える事は色々とあるし、何より50m走が終わった後は昼休みだ。
親しい友人たちは大体、一纏めになっているのだから、そのまま昼食に入る為にも仮設テントに戻った方が良い。
そう考えていた京子の前で依子が浮かべるのは、若干、頬を膨らませた顔だった。


345 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:31:44.58ga3Tv5+/o (6/94)


依子「スタートした瞬間、出遅れているのを見て、やっぱり何かされたのではないかと不安になってみれば…」

依子「そんな不安を吹き飛ばすようにして圧倒的な差でゴールしてみせるし…人をやきもきさせるのが上手過ぎますわ」

京子「ご、ごめんなさい…」

そのまま拗ねたような表情で依子が漏らすのは、率直な言葉だった。
無論、彼女とて京子が好きでそんな事をした訳ではない事くらい分かっている。
京子はとても真面目で、勝負事で自分から手を抜く事はまずない。
スタートダッシュに遅れた事も、何か事情があったのだと外から見ていた依子には分かる。

依子「…でも、無事で良かったです」ギュ

京子「依子お姉さま…」

依子「…何処か怪我などしてはいませんか?」

依子「何か違和感を感じる部分があれば、無理せず言うんですのよ?」

依子「…いえ、やっぱり何かなくても、まず保健室に行って異常を調べてもらいましょう」

依子「えぇ。それが良いですわ」

それでもそうして拗ねた表情を作ってしまうのは、彼女が京子の事をとても心配していたからだ。
意図的に拗ねたような顔をしなければ、生徒達の前でオロオロとみっともない姿を晒してしまう。
そう思って必死に堪えていた感情は、しかし、京子の手を握った瞬間、溢れだしてしまった。
流石にオロオロとはしていないものの、矢継ぎ早に告げられる言葉は普段の彼女らしくはないものだった。



346 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:32:27.68ga3Tv5+/o (7/94)


京子「もう。依子お姉さまったら過保護過ぎですよ」

依子「…過保護になるような事をしたのは京子さんですわ」プイ

京子「その事に関して反省はしていますけれど…でも、大丈夫ですよ」ギュゥ

京子「私は怪我もなく無事に依子お姉さまのところに戻ってきましたから…ね?」ニコ

依子「…京子さん」

そんな依子を安心させるように手を握りながら、京子は優しく微笑んだ。
明るく屈託のないその笑みに依子の中で膨れ上がった心配がゆっくりと溶けていく。
まるで春を迎えた雪のように不安が消え、胸中で安堵が広がる心地よさ。
それに依子が京子の名前を呼んだ時にはもう京子達の周りから永水女子の生徒はいなくなっていた。

依子「(…や、やってしまいましたわ…)」

代わりに二人に向けられているのは、何処か微笑ましそうな視線だった。
まるで往来でイチャつく恋人に向けられるようなそれは、誤解を多く含んでいる。
確かに依子は京子の事を大事に思っているものの、それは性的なものとは無関係だ。
強いて言えば家族愛のようなものであり、異性愛のようなものはまったく混じってはいないと依子は断言出来る。



347 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:33:09.80ga3Tv5+/o (8/94)


依子「(…でも、ここでそれを主張しても逆効果ですわね)」

依子の周りにいるのは女子校かつお嬢様育ちの少女達だ。
異性との接点など殆どない彼女達にとって、スールの契とは擬似恋愛の始まりに近い。
そんな彼女たちに今の自分の気持ちを訴えても、ただ意地を張っていると思われるだけ。
それを覆す証拠もない以上、ここで潔白を訴えても、疑惑を深めるだけだと依子は思う。

依子「(まぁ…確かに殿方であれば、身も心も預けられる人ではありますけれども…)」

依子にとって京子は自身の窮地を何度も救ってくれた恩人だ。
尊敬出来る部分も多く、京子の事を格好良いと思ったことは一度や二度ではない。
その上、普段、話している時間も楽しく、心からの笑みを浮かべる事が出来るのだから、相性も良いだろう。
もし、京子が男性であったのであれば、好きになっていたかもしれない。


348 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:33:51.89ga3Tv5+/o (9/94)


依子「(でも、私と京子さんはあくまでも同性で…)」

依子「(そして二人とも同性愛のような嗜好は持っていませんわ)」

依子「(だから、どう転んでもそういう風にはなったりしませんし…それに)」チラ

春「…」ムムム

明星「…」スネー

何より、京子にはそういった愛を向けられる人がいる。
それはまだ京子達との付き合いが短い依子にも感じ取る事が出来た。
依子の遥か後方、仮説テントの中に座る二人は依子と京子が仲良くする度に嫉妬の表情を浮かべるのだから。
こうしてまるで公認カップルのように扱われる二人に不機嫌そうになる春と明星に、依子は内心、申し訳無さを覚えた。

京子「どうかしましたか?」

依子「…本当、京子さんは鈍いですのね」フゥ

京子「え…?」

今も強い嫉妬の視線を送る二人にまるで気づいていない京子。
それに依子が思わずため息を漏らしてしまうのは、彼女もまた少女だからだ。
同性であるが故に致し方無い事だとしても、好きだと言う気持ちに気づいて貰えないのは辛い。
未だ恋を知らないものの、読書が趣味である彼女にとって、それは容易く共感出来るものだった。


349 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:35:37.44ga3Tv5+/o (10/94)


依子「何でもありませんわ」

依子「それよりも早く皆さんのところに戻りましょう?」

依子「もうお昼休みに入っていますし、午後に備えなければいけませんもの」

京子「そうですね」

元々、依子がやってきたのは、ただ京子の事が心配だったからだけではない。
無論、それも大きいが、しかし、それだけならば、春や明星と共に京子の事を迎えに来ただろう。
故に、依子が一人でやってきたのは、京子が永水女子の生徒達に囲まれているからこそ。
その活躍でまたファンを増やした京子のところへ大人数で押しかければ、上がった士気に水を掛ける事になると分かっているからだ。

依子「(まぁ、私であればあまり角も立ちませんし)」

元々のキッカケは依子の強引な宣言であったとは言え、二人はスールの契を結んだ関係だ。
多くの生徒にとって擬似恋愛に近い関係となった二人の逢瀬を邪魔するほど彼女達は野暮ではない。
無論、もっと話したいとそう思う生徒は少なからずいたが、同じ学校に通う以上、話すチャンスは幾らでもある。
そう思って道を開けてくれる生徒が多い事を、依子もまた予想していたのだ。



350 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:36:14.21ga3Tv5+/o (11/94)


依子「(…ただ)」ムゥ

それを面白くない、と思う依子も心の何処かに存在していた。
無論、京子の活躍は飛び上がるほど嬉しいし、格好良かったと思う。
事を荒立てられない自分に変わって、輝夜に対して強気に出たその姿には胸が震えた。
しかし、依子もまた一人の少女である以上、それだけでは終わらない。
胸の奥で芽生え始めた独占欲がジリジリと刺激され、一瞬、表情が曇ってしまう。

京子「…依子お姉さま?」

依子「…いえ、何でもないですわ」

独占欲とは言っても、それは決して恋人に対するものではない。
それは自分が贔屓にしていたアイドルににわかファンが増えた古参ファンのものに近かった。
自分の方がもっと早くに目をつけていたのに、と何処か子ども染みたそれを依子は口にする事が出来ない。
流石にそれは幼稚過ぎると心の奥底へと仕舞いこみながら、依子は仮設テントの元へと戻って。



351 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:37:18.43ga3Tv5+/o (12/94)


京子「ただいま、皆」

春「…おかえりなさい、京子」ポソ

明星「随分と人気者でしたね」ジト

京子「え、えっと…」

依子「(…うん。やっぱり表に出さなくて正解でしたわね)」

瞬間、京子を迎えた二人から漏れるのはとても不機嫌そうな声だった。
明星の方はそれに加えて、ジト目まで向けている。
自身が不機嫌である事をこれでもかとアピールしているその姿に京子はタジタジになっていた。
どうして不機嫌そうに出迎えられるのかまるで分かっておらず、ただ戸惑いを覚える京子に、依子は自身の選択が間違っていなかった事を悟る。

依子「(京子さんって鈍感ですし…独占欲なんて口に出しても困らせるだけですもの)」

依子「(まぁ…それは二人も分かっているんでしょうけれども…)」

しかし、頭では分かっていても、心はどうしても納得する事が出来ない。
そんな後輩二人の様子に依子は微笑ましいものを感じた。
同性同士、と言う事を除けば、京子を含んだこの三人はまるで漫画の中のような恋愛をやっているのだから。
それに憧れる一人の少女としては、二人を手助けをしてあげたい気持ちもあった。


352 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:38:53.95ga3Tv5+/o (13/94)


依子「(…でも、ここで手助けして、京子さんと恋人になってしまうと困りますし…)」

無論、依子は京子だけじゃなく、春や明星の事も好ましく思っている。
世間の目は未だ同性愛には厳しいが、二人の愛が成就すれば良いと思う気持ちは嘘ではない。
だが、京子に対する独占欲の方が、彼女の中ではずっと大きかった。
せめて自分が卒業するまでは誰かと恋仲にならないで欲しい。
そう願う自分をワガママだと思いながらも、独占欲はそう簡単に消せるものではなかった。

祭「嫉妬するのも良いけど、先にお昼にしない?」

祭「私もうお腹ペコペコでさ」

舞「はしたないですわよ。…まぁ、同感ですけれど」

明佳「午後の事考えれば、食休みは長めに欲しいですもんね」

小蒔「私もお腹空いちゃったから、賛成です!」バッ

湧「あち…私も」ハーイ

そんな相反する気持ちに傍観を決めた依子に代わって、祭が京子への助け舟を出す。
勿論、祭も京子を取り巻く三角関係に興味津々ではあるが、今はもう昼休み。
未だ星誕女子との戦いは終わってはいない以上、午後の部の為にも早めに昼食を取っておいた方が良い。
そう考えた祭の言葉に舞と明佳が同意し、小蒔と湧が大きく手をあげた。


353 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:39:40.63ga3Tv5+/o (14/94)


明星「べ、別に嫉妬してる訳じゃないですけれど…確かにそうですね」

春「…私も賛成」

そんな小蒔達に明星と春も同意を返す。
無論、まだ感情が納得した訳ではないが、今は昼食を優先するべきなのは彼女達も分かっているのだ。
何より、彼女達の気持ちを知らない京子に不機嫌さをぶつけても、状況が改善される訳ではない。
悪いのは気持ちを素直に伝えられない自分たちの方だと分かっているだけに、明星や春も頷いた。

依子「じゃあ、人数が人数ですし、ちょっとここから移動しましょうか」

京子「そうですね。それじゃあ…」ハッ

初美「ヒャッハー!もう我慢出来ねぇ!突撃ですよー!」バッ

京子「っと!?」

初美「ひあ!?」

その訪れは全員の同意を見て、移動を促す依子に京子が頷いた瞬間だった。
ジリジリと京子達のテントへと近づいていた初美は一気に加速し、京子の背中から飛びかかる。
完全な死角から襲いかかろうとした初美は、しかし、京子の能力を侮りすぎていた。
京子に飛びかかる為のほんの僅かな加速を気取られ、その場を飛び退かれてしまう。
結果、勝利を確信していた初美はそのバランスを若干、崩し、口から小さな悲鳴を漏らした。


354 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:40:27.23ga3Tv5+/o (15/94)


初美「ちょっと…どうして避けるですかー?」

初美「折角、私が京子ちゃんに愛の篭ったハグをしてあげようとしているのに!!」

京子「お断りします」キッパリ

拗ねるような声をあげる初美に京子がキッパリと断り文句を返すのは、何も彼女の事を警戒している訳ではない。
ひとつ屋根の下でほぼ毎日一緒に暮らしている初美は、京子にとって大事な家族なのだから。
冗談めかしながらも常に周りを見て気配りをしている彼女の事を京子はとても信頼している。
しかし、だからと言って、初美の悪戯に付き合う道理はなく、京子は初美に対して身体を身構えさせた。

初美「うわーん、霞ちゃーん!」

初美「京子ちゃんが私の愛を要らないって言うのですよー」ダキッ

霞「…ぶっちゃけ要らなくて当然じゃないかしら?」

初美「ちょ、それ酷くないですか―!?」

巴「普段から京子ちゃんにイタズラばっかりしてるものね」

そんな京子に対して初美が取ったのは後ろについてきた霞に泣きつく事だった。
その豊満な胸の下から飛び込むような初美を、霞は決して拒んだりしない。
代わりにその美しい唇から漏れ出る言葉は容赦なく、初美は思わず抗議の声をあげた。
しかし、そんな彼女に同意するものはなく、隣にいた巴からも容赦のないツッコミを受けてしまう。


355 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:41:16.95ga3Tv5+/o (16/94)


明星「か、霞お姉さま!?」

霞「ふふ。今朝ぶりね、明星ちゃん」

明星「はいっ。霞お姉さまは今朝と変わらずお美しいですっ!」パァァ

そんな三人の姿に誰よりも早く声をあげたのは明星だった。
霞の事を誰よりも心酔している明星は、その顔に嬉しさを浮かばせながら、霞の元へと近寄っていく。
トテトテとまるで子犬のように近寄るその姿には、普段のしっかりした石戸明星はまったく感じられない。
その精神年齢が一気に小学校低学年まで引き下がったかのように、幼い喜びを顔一杯に浮かべていた。

小蒔「もうお仕事は終わったんですか?」

巴「はい。皆で応援したくて早めに終わらせて来ました」

巴を含んだ三人は既に永水女子を卒業しており、今の職業は巫女となっている。
だが、彼女たちの仕事は神事だけではなく、小蒔達が暮らす屋敷の雑事まで含まれているのだ。
幾ら開会式から応援に駆けつけたくても、洗濯や掃除、夕食の準備などを放り出す訳にはいかない。
しかし、小蒔達の晴れ舞台に駆け付けない訳にもいかないと、急いで家事を終わらせ、こうして昼休み前に到着したのだ。



356 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:42:01.21ga3Tv5+/o (17/94)


湧「…って言う事は…午後から…皆の応援ある…?」

初美「えぇ。力一杯応援するですよー!」

湧「…ん」ニコー

星誕女子に来る為に仕事や移動を急いだ結果、初美達も少し疲れてはいる。
しかし、今日はインターハイほどではなくても小蒔達の晴れ舞台なのだ。
ましてや、その相手が仇敵である星誕女子ともなれば、体力を惜しむつもりはない。
体力を使い果たす勢いで応援するのだとそうアピールするような初美に、湧は明るい笑みを浮かべた。

巴「でも、さっきの50m走凄かったわね」

霞「そうね。本当にビュンって感じで駆け抜けていっちゃったし」

初美「個人的にはあの月極輝夜の顔がさいっこうでしたよー」

初美「もうあの顔を直接、見られただけでも今日、来た甲斐があるってなもんですー」

たった今、到着したばかりの巴達が見られたのはついさっきの50m走だけだ。
しかし、それだけでも十分、元は取れたと初美が口にするのは、それだけ輝夜の事を憎く思っているからこそ。
普段、冗談めかしてからかう事が多いものの、初美は霞達の事をとても大事に想っているのだ。
昨年、永水女子の柱である霞の事を害そうとした輝夜の事を許せるはずなどない。
京子に完全敗北し、屈辱と怒りに顔を赤く染めたその姿を見ても、彼女はいい気味だとそう思っていた。



357 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:43:10.17ga3Tv5+/o (18/94)


小蒔「あんまりそういう事言っちゃダメですよ?」メッ

初美「はーい、です」

そんな初美に小蒔からの注意が飛ぶが、彼女は軽く返事をしただけだった。
それは勿論、初美が小蒔の事を軽んじているからではない。
彼女は小蒔の事も大事に思っているが、しかし、それ以上に自分の気持ちに嘘がつけないのだ。
幾ら姫様と仰ぐ小蒔に注意されても、輝夜への同情心は浮かび上がっては来ない。
流石にいい気味だと口にする事は控えるつもりだが、それ以上に何かを改善するつもりはなかった。

京子「でも、凄かったのは私だけじゃないですよ」

京子「わっきゅんは勿論、他の皆も頑張ってくれていましたし」

巴「やっぱり湧ちゃんも活躍してたのね」

湧「えへへ♪」テレテレ

京子の言葉に気恥ずかしそうにする姿とは裏腹に、湧の活躍は凄まじいものだった。
人見知りの彼女は集団競技を苦手とするが、個人競技に関しては京子にも並ぶのだから。
九州赤山との合宿でも京子と死闘を演じた湧を止めるのは普通の生徒ではほぼ不可能に近い。
事実、彼女は出場競技全てで一位をもぎ取り、永水女子の点数に大きく貢献していた。


358 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:44:10.33ga3Tv5+/o (19/94)


霞「まぁ、その辺りは先に到着してる山田さんがカメラで録画してくれているでしょう」

初美「帰ったら鑑賞会しなきゃいけませんね」

春「…正直、ちょっと恥ずかしい」

小蒔「わ、私もちょっと…」

そんな湧達の活躍は山田が全て記録している。
雑事のある霞達と違って、小蒔達の護衛兼京子の監視役である彼は、開会式からずっと関係者席でカメラを回していたのだから。
最新鋭の機材と追加報酬を渡され、黙々と仕事をこなしていた山田が、春や小蒔が出場する競技を撮り忘れると言うミスをするはずがない。
きっと自分たちが良い成績を残せなかったところまで録画されてしまっている。
そんな風に思う二人にとって、体育祭の鑑賞会は恥ずかしいものだった。

祭「ちなみに私、一回、一位になりましたよ!!」

明佳「パン食い競走ですけどね」

祭「いいじゃん、パン食い競争でも!!」

祭達にとって、目の前にいる霞は、どんな有名人よりも憧れを覚える相手だった。
たった一度、エルダーに選ばれるだけでも称賛に足るものなのに、霞は三年連続エルダーに選ばれているのだから。
前人未到であるその記録は、祭達をはしゃがせるには十分過ぎる。
何処か子どものように自身の活躍をアピールする祭に霞は微笑ましそうな笑みを浮かべた。


359 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:45:31.16ga3Tv5+/o (20/94)


霞「ふふ。では、その活躍のお話は昼食を食べながら聞かせて貰えませんか?」

舞「え?宜しいんですの?」

巴「寧ろ、こっちの方がお願いしなきゃいけない立場ですよ」

初美「京子ちゃん達とのお食事タイムにお邪魔させて欲しいって言ってる訳ですからねー」

まさしくレジェンドとそう呼ぶに足る人物からのお昼のお誘い。
それに思わず聞き返してしまった舞に巴と初美が声を重ねた。
幾ら卒業して一年しか経っておらず、舞達とも多少は面識があるとは言え、自分たちは部外者。
友人との楽しい昼食に割って入っては、お邪魔するになるかもしれないとそう思う。

祭「はいはい!私は是非とも霞さん達と一緒したいです!」

舞「はしゃぎすぎですわよ、祭さん」

舞「…まぁ、私も気持ちが分からないでもないですけれども」

明佳「せ、折角ですし、私もご一緒して良いでしょうか?」

霞「えぇ。勿論」ニコ

しかし、そんな巴達を邪魔者だと思う者などこの場には存在しない。
つい一年前には霞たちとお近づきになる事すら出来なかった彼女たちにとって、そのお誘いは振って湧いた幸運のようなものなのだから。
生ける伝説と言っても良い最高の淑女と一緒に食事が出来る。
そんなチャンスに興奮するのは祭だけではなかった。
舞は勿論の事、若干、人見知りの気がある明佳でさえ興奮の浮かんだ声をあげ、霞達の事を受け入れる。


360 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:47:01.16ga3Tv5+/o (21/94)


小蒔「お姉さまはどうですか?」

依子「えぇ。私も色々とお話を聞いてみたくはありますし、喜んでお受けしたいです」チラッ

そして、それは依子にとっても同じ事だった。
彼女にとって霞は昨年、エルダーの座を賭けて戦ったライバルではあるが、それに対して思うところはまったくない。
元々、依子はそういうのを引きずるタイプではないし、何より、彼女は人並み以上にエルダーと言うものに対して思い入れを持っているのだから。
永水女子そのものを背負う象徴の名はそれに相応しい淑女の元になければいけない。
そんな思いを他の生徒よりも強く抱く依子にとって、霞はまさしく理想の淑女と言っても良い相手だった。

依子「(…今もなお、石戸さんに勝てる気がしませんもの)」

無論、依子とてこの一年間、遊んで過ごしていた訳ではない。
エルダー選挙に敗れてからずっと理想の淑女になる為の努力を続けてきていた。
しかし、そうやって一年が経過して尚、自分が霞に追いつけたとは到底、思えない。
縁に恵まれ、こうしてエルダーの座に就く事が出来たが、それは京子の手助けがあってこそ。
少なくとも、京子がいない自分をエルダーとして相応しい淑女であるだなどと依子は決して言えなかった。



361 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:47:48.78ga3Tv5+/o (22/94)


霞「家鷹さんは良くやっているわ」ニコ

依子「え?」

そんな依子がチラリと流す視線に、霞は微笑みと共に応える。
それは勿論、依子の中に混ざる小さな劣等感を霞が見抜いたからだった。
一年の頃からエルダーに選ばれ続け、上級生にまでお姉さまと呼ばれていた霞の洞察力は並大抵のものではない。
何より、依子は三年間エルダーに選ばれ続け、生ける伝説のように扱われていた霞の後継者なのだ。
例え、周りが気にしなくても、依子自身が見比べて劣等感を感じてしまう事くらい容易く想像が出来る。

霞「私がこうして永水女子に顔を出したのは久しぶりだけれど…」

霞「それでも皆が一つの目標に向かって力を合わせて、頑張っている事が伝わってくるわ」

霞「それは勿論、家鷹さんがエルダーとして周りをしっかり纏めている証拠よ」

依子「…石戸さん」

しかし、そうして劣等感を感じる必要などないと霞は思う。
彼女自身、自分が卒業した後の永水女子がどうなるか心配であったが、グラウンドに来た瞬間に杞憂だったとそう悟ったのだから。
最早、姉妹校ではなくライバルと言っても良い星誕女子との勝負に勝とうと全校生徒が燃え、努力しようとしている。
依子がエルダー兼生徒会長として生徒の隅々まで統率出来ていなければ、それは実現不可能な一体感だ。



362 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:49:01.23ga3Tv5+/o (23/94)


霞「だから、家鷹さんはもっと自信を持って良いと思うわ」

依子「そう…でしょうか?」

霞「えぇ。貴女は私の後を立派に継いでくれている」

霞「先代エルダーである私が保証するわ」ニコ

依子「……ありがとうございます」ペコ

依子にとって石戸霞と言うのは特別な相手だ。
自身の理想を体現したその姿に、並々ならぬ憧れを抱いている。
劣等感を覚えた回数も少なくはない依子は、ある意味では明星に負けないほど霞の事を意識していた。
それほどまでに特別な相手からの保証に、依子が心動かされないはずがない。
その言葉に霞の優しさが混じっているとそう分かっていても、心の中で凝り固まった劣等感が軽くなっていくのが分かる。
それと表現しようと依子は軽く頭を下げながら、霞へと感謝の気持ちを伝えた。

初美「さーて。それじゃあ、話も決まりましたし、昼食の準備をするですよー」

巴「こっちも追加で色々と持ってきたから、遠慮無く摘んでね」

祭「やった!ゴチになります!!」バンザーイ

舞「まったくもう…祭さんったら」

明佳「ふふ。でも、私もちょこっと楽しみです」

そう言って巴が取り出したのは重箱と言っても良いサイズのお弁当なのだ。
その中に何が入っているかは分からないが、間違いなく彼女達の手作り。
霞は元より他の三人も料理上手だと聞いていただけに、どうしても期待を覚えてしまう。
それは両手をあげて喜びを表現する祭も、そして祭に対して呆れた表情を向ける舞も同じだった。


363 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:49:48.07ga3Tv5+/o (24/94)


春「…黒糖は?」

初美「勿論、準備してるですよー」

春「…やった」グッ

巴「他にも皆の好物一杯作ってきたから遠慮なく食べてね」

明星「えぇ。頂きます」

湧「…楽しみ」

京子「ふふ。でも、午後もあるんだから食べ過ぎないようにね」

小蒔「霞ちゃん達の料理は美味しいですし、頑張って我慢しなきゃいけませんね」グッ

無論、昼に合流出来るか分からなかったが故に、京子達はそれぞれ昼食を持たせて貰っている。
しかし、それはあくまでも弁当であり、炎天下の中で劣化しないように作られたものなのだ。
それに対して巴が取り出した重箱にはそのような縛りはなく、小蒔達の好物が沢山、詰められている。
午後からまた頑張れるように、と霞達が準備してくれたその重箱に、京子達は笑みを浮かべて。

輝夜「(あのドーピング女め…!!)」ギリィ

「…」ブルブル

そんな風に和やかな食事を楽しもうとする京子達とは違い、輝夜の周りの雰囲気は暗かった。
無論、その原因は星誕女子の中心人物である輝夜が完膚なきまでに敗れてしまったからである。
しかも、その敗北は必勝と言っても良い策を完全に打ち破られてのもの。
後ほんの少しで掴む事が出来た勝利を文字通り力づく奪われてしまった輝夜からは周囲が怯えるほどの怒気が漏れていた。


364 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:50:58.60ga3Tv5+/o (25/94)


輝夜「(私を負けさせただけでも腹立たしくて仕方が無いのに…馬鹿にするなんて…!!)」

無論、輝夜はそれ以上に他者を貶めているのだが、それは彼女にとって重要なものではなかった。
月極家は巨大企業の経営者一族であり、生まれた時から人の上に立つ事を宿命づけられているのだから。
物心つく前から勝つために手段を選ばない月極のやり方を教えこまれてきた彼女にとって、自分以外の他人は全て駒。
自分自身を引き立てる舞台装置にしか過ぎず、幾ら侮蔑を口にしても心など痛みはしない。
寧ろ、月極に生まれた自分は、他者を見下して当然なのだと彼女は本気で思っている。

輝夜「(許しません…絶対に許しませんわ…!!)」

そんな舞台装置に負けてしまったままなど輝夜のプライドが許さない。
例え、どんな手段を使ってでも、必ず京子に敗北を与えてやる。
胸中をそんな怨嗟で埋め尽くしている最中も、輝夜の脳は動き続けていた。
その性根はさておいても、輝夜は星誕女子で最も優秀な生徒である事に間違いはない。
特に嫌がらせをする事に関して超一流と言っても良い能力を誇っている輝夜は、その心が憎しみに捕らわれていても、思考を止まらせる事はなかった。


365 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:51:54.85ga3Tv5+/o (26/94)


「あ、あの…お姉さま…」

輝夜「なんですの?」ギロッ

「ひっ…」ビクッ

勝利する為以外に自分の心を抑えこむなど力の足りない弱者がやる事だ。
そう教えこまれた輝夜が、胸の底から休みなく湧き続ける憎しみを隠すはずがない。
おずおずと話しかけてきた星誕女子の生徒に、憎しみをぶつけるような強い視線を向ける。
瞬間、その小さい肩を跳ねさせるようにして怯える少女に、しかし、八つ当たりした輝夜の溜飲が下がったりしない。
寧ろ、そうやって怯えている間に自分の貴重な時間を無駄にされたと輝夜は思いっきり怒鳴りつけてやりたかった。

輝夜「…おかしいですわね」

輝夜「幾らブスの貴女でも、口がないくらい奇形ではないでしょう?」

輝夜「私が何だと尋ねたのですから、早く答えなさい」

「ご、ごめんなさい…」ジワ

しかし、今は体育祭の真っ最中であり、星誕女子以外の目も多い。
特についさっき衆人環視の前で印象的な負け方をした輝夜は注目を集めやすい立場にあるのだ。
ここで怒鳴ったりしてしまえば、恥の上塗りになってしまうだけ。
そう自分を戒めようとする一方で、京子によって荒れた心がさらにイライラとするのは抑えられない。
結果、嫌味に塗れた言葉で問い詰める輝夜に、少女は目尻に小さな涙粒を浮かべた。



366 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:52:31.14ga3Tv5+/o (27/94)


「い、言われた通り、あの方の情報を集めてきました…」

輝夜「話しなさい」

「は、はい…」

「どうやらあの方…須賀さんは元々、永水女子の生徒ではなかったようです」

それでも少女がその場から逃げる事が出来ないのは、輝夜から直々に『頼まれ事』をしているからだ。
星誕女子において絶対的な権力を誇る輝夜のそれを一生徒である彼女が断れるはずがない。
ここで逃げてしまっては自身が孤立し、輝夜の指示を受けた他の生徒にいじめられてしまうだけ。
泣きそうになる心にそう言い聞かせながら、少女は集めてきた情報を口にする。

輝夜「…私は馬鹿にされているのかしら?」

輝夜「貴女は私が去年の事さえ思い出せないほど間抜けだと言いたいの?」

「い、いえ、そういう訳では…」フルフル

しかし、それは輝夜にとって決して望んでいる情報ではなかった。
今年、二年生となった輝夜は、昨年もエルダーとして永誕祭に参加しているのだから。
つい一年前、石戸霞率いる永水女子に敗北を喫したその日の事を彼女は良く覚えている。
自分と同い年である京子が去年いなかった事から、この一年の間に京子が転校してきた事くらい言われずとも分かっていた。



367 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:53:13.13ga3Tv5+/o (28/94)


輝夜「馬鹿な貴女には理解出来ていないかもしれませんが…私が欲しいのはもっと核心に迫る情報です」

輝夜「どうすればあのゴリラ女に…ドーピングなんて卑怯な真似をした女に吠え面を掻かせられるかと言う事なのですよ」

「わ、分かっています」

「だ、だから、あの方と仲良くしている人たちの情報を集めて来ました」

輝夜「…へぇ」

無論、そんな事は少女の方も良く分かっている。
彼女がこうして便利屋のように働かされるのは今回だけではないのだから。
寧ろ、輝夜が他人を陥れる為に今まで何度も情報を集めさせられていた。
その度に輝夜が満足するような情報を持ち帰ってきているからこそ、輝夜の『友人』として側にいる事を許されている。
それに不本意なものを感じながらも、しかし、逆らう事の出来ない彼女はおずおずと集めてきた情報を口にした。

「ま、まずエルダーである家鷹依子です」

「どうやら彼女とはスールの契を結んでいるようで、ほぼ学校公認のカップルのような扱いだとか…」

「流石に幾らか話を盛られているとは思いますが、少なくとも親友以上に仲が良いのは確実でしょう」

そうやって輝夜の企みに加担する良心の呵責は彼女にも存在する。
しかし、父親が中小企業の社長をしている彼女に、輝夜から逃げる術は存在しなかった。
ここで自分が逆らっては父の迷惑になり、社員達全てが露頭に迷う可能性だってある。
それを防ぐ為には仕方ない事なのだとそう言い聞かせながら、彼女は依子と京子の仲の良さを輝夜へ伝えた。



368 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:53:50.03ga3Tv5+/o (29/94)


輝夜「ふん。仮にもエルダーがスールだなどと…生ぬるい事ですわね」

それに輝夜が面白くなさそうに声をあげるのは、彼女にとってそれが弱さとしか思えないからだ。
輝夜はエルダーシスターと言うものを、絶対的な王冠として捉えている。
事実、実効的な権力はなくても、エルダーの言葉は大きな影響力を持つのだから。
生徒会長などよりも遥かに生徒たちの心を揺れ動かすその称号は、まさしく女王と呼ぶに相応しいと輝夜は思う。

輝夜「(そして私は生まれながらにして女王になる事を約束された女)」

輝夜「(勉学においても運動においても、私に並ぶものはなく、また私以上に孤高の存在はいませんでしたもの)」

輝夜「(私がエルダーになるのも当然の事だったのですわ)」

月極という一族に生まれ、将来、経営者としてグループを引っ張る事を約束された輝夜は幼い頃から帝王学を学んでいる。
そんな彼女にとって、そのように配下と慣れ合いを演じる王など唾棄すべき存在だった。
王に必要なのは優秀さだけであり、情や想いは何一つとして必要ない。
心の底からそう信じこむ輝夜にとって、他者と思いを通わせるエルダーなど到底、認められるはずがなかった。



369 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:54:23.97ga3Tv5+/o (30/94)


「つ…次に出てくるのは、神代小蒔、滝見春、石戸明星に十曽湧と言った人々ですね…」

輝夜「ちょっと待ちなさい。それは…」

「はい。昨年、永水女子でエルダーを務めた石戸霞の関係者達です」

石戸霞の名前は輝夜にとっても特別なものだった。
何せ、去年、彼女が永誕祭で苦渋を舐めさせられたのは、霞の力によるところが大きいのだから。
度重なる星誕女子の妨害にバラバラになりそうだった永水女子を纏め上げ、生徒たちの実力以上を引き出した稀代のエルダー。
京子と並んで輝夜の復讐リスト上位に書き込まれている彼女の名前に、輝夜は暗い笑みを浮かべた。

輝夜「…………ふふふふ」

「お、お姉さま…?」

輝夜「これは中々、面白い展開ですわね」

思いもよらぬ京子と霞の繋がりに、輝夜が思うのは一石二鳥という言葉だった。
二人に強い復讐の念を抱く輝夜にとって、それは到底、見逃せるものではない。
一度の復讐で二人に深い傷を負わせられると言う暗い喜悦に、輝夜は顔を歪ませる。
彼女の端正な顔に独特の迫力を浮かばせるその歪みに、周囲にいる少女達は嫌な予感を感じた。



370 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:54:57.29ga3Tv5+/o (31/94)


輝夜「…そう言えば、丁度、うってつけの競技が午後一番にありましたわね」

「もしかして…」

輝夜「えぇ。今まで手を抜いていましたが…そろそろ鬱陶しくなって来ましたから」

輝夜「午後からは手加減抜きで潰しなさい」

「っ…!」

そんな予感を的中させるような輝夜の言葉に、何人かの少女達は息を呑んだ。
こうして輝夜の周りにいる彼女達も決してサイコパスと言う訳ではない。
色々と理由をつけて誤魔化しているだけで良心と言うものは持ち合わせている。
そんな彼女たちは去年よりも生ぬるい午前の嫌がらせに内心、胸を撫で下ろしていたのだ。
だが、京子によって敗北を味わった輝夜には、もう憎しみの感情しかない。
まず何よりも京子に復讐するのが先だと少女達に無慈悲な命令を下した。

輝夜「…何ですの?」

輝夜「まさか私の指示に従えない…などと腑抜けた事は言わないでしょね?」

「い、いえ…」

しかし、どれだけ抵抗感を覚えても、輝夜の指示に従わないという選択肢はなかった。
昼食時にこうして輝夜の側にいる少女達は、謂わば彼女の側近である。
保身の為、既に何度もその手を汚した彼女たちにとって、胸中の抵抗感はさほど問題ではなかった。
普段からそれを乗り越え、輝夜の命令に従い続けている少女達は周囲を睨めつけるような輝夜の視線に首を振る。



371 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 01:56:54.88ga3Tv5+/o (32/94)


輝夜「…では、皆さん、午後は特に張り切って行きましょう」ニコ

そんな少女たちの様子に輝夜が浮かべるのは明るい笑顔だった。
さっきのように暗く歪んだものではなく底抜けに明るい表情。
まるでお気に入りの玩具を買ってもらった子どものようなそこには不機嫌さなどまったくない。
しかし、周囲に居る彼女達は知っている。
輝夜が上機嫌になったのは、京子と霞に復讐するのを楽しみにしているからなのだと。
もし、それが失敗すれば、さっき以上に不機嫌になった輝夜が自分たちへと牙を剥く。
その恐ろしさに背筋を冷たくする少女達の中、輝夜は上機嫌に自分の弁当箱を取り出して ――

―― 復讐を果たした時、京子や霞がどんな顔を見せてくれるのか楽しみにしながら昼食を摂り始めたのだった。


………

……








372 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 02:00:46.12ga3Tv5+/o (33/94)


明星「まったくもう…京子さんったら…」

小蒔「ふふ。でも、京子ちゃんらしいですけどね」

初美「ただ、あんまりワンパターンだとマンネリ化しちゃうですよー」

巴「ま、マンネリって…は、初美ちゃんは何を言っているのよ…」カァァ

霞「うふふ。まぁ、皆、そういう京子ちゃんが好きなんでしょうしね」

春「…はい。大好きです」ニコ

湧「あち…私も」ニコッ

霞達OGを加えた食事会はとても和やかなものだった。
総勢12人にもなる集団はかなり大きいが、しかし、殆どが顔見知りなのである。
永水女子関係者という分かりやすい話題もあって、彼女達から話が途切れる事はなかった。
人見知りな湧や明佳でさえも積極的に話へと参加し、楽しそうな雰囲気がずっと彼女たちの間で流れている。

ピンポンパンポーン

「ただいまより午後の部が始まります」

「二人三脚参加者はグラウンド東側に集まって下さい。繰り返します」

京子「っと、そろそろ時間ね」

春「ん…」

しかし、そんな時間もあまり長くは続かない。
昼食が終わって数十分もすれば、そろそろ次の競技の準備が始まるのだから。
午後一番目となる二人三脚には京子と春もエントリーしているだけにあまりノンビリとはしていられない。
まるでピクニックさながらの和やかな雰囲気には心惹かれるものがあるが、そろそろ集合場所に向かわなければ。



373 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 02:01:51.06ga3Tv5+/o (34/94)


京子「それではお先に戻りますね」

初美「今度もまたあいつらの事を思いっきり、ぶっ飛ばして来るのですよー」グッ

巴「初美ちゃんったら…あんまりそういう事言うと角が立つでしょ?」

巴「…あ、私は京子ちゃん達なら大丈夫だって信じてるから」

そう思って中庭のベンチから立ち上がった京子に初美と巴が声を掛ける。
若干、過激なものが混じっていながらも、心から応援するその声は、京子の勝利をまったく疑ってはいなかった。
彼女たちは日頃から京子と一緒に生活し、その身体能力がどれ程のものかも良く分かっている。
ましてや、京子と共に二人三脚を走るのは、この場にいる誰よりも京子の事を理解している春なのだ。
負けるところなど想像すら出来ず、その声に強い信頼を浮かべている。

霞「…」

京子「…霞さん?」

霞「いえ…ごめんなさい」

しかし、霞は二人ほど楽観的にはなれなかった。
無論、彼女も同世代の中でもズバ抜けた京子の身体能力は良く分かっている。
特に今の京子はインターハイを経て自身の力を自覚し、そのポテンシャルを常に最大まで引き上げる事が出来るのだ。
真っ向勝負で今の京子に勝てる女子など両校合わせてもいないとさえ思う。


374 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 02:02:33.52ga3Tv5+/o (35/94)


霞「(…でも、相手が得意なのはそういうクリーンな勝負じゃないもの)」

これが和やかにお互いの健闘を讃え合う例年通りの永誕祭ならば、霞も不安を覚えたりはしない。
しかし、今の星誕女子を率いるエルダーは月極輝夜であるのだ。
昨年、彼女の卑怯なやり口に幾度となく怒りを覚えた霞は、このまま輝夜が傍観し続けるなど到底、思えない。
寧ろ、先ほど敗北の味を教えた京子に復讐を誓っていると断言出来る。

霞「……京子ちゃん、春ちゃん」

霞「きっと相手はここから本気になってくると思うわ」

霞「二人なら大丈夫だと思うけれど…念のため、警戒しておいて」

春「…分かりました」

だからこそ、霞が口にする忠告に、春はコクリと頷いた。
京子はほぼ無敵に近いが、それはあくまでも一人の話。
二人三脚は二人で走る競技であり、どうしてもパートナーと協力する必要がある。
だが、今回、京子のパートナーを務める春はあまり運動が得意ではないのだ。
自分が足を引っ張り過ぎた場合、幾ら京子でも負けてしまう事だってあり得る。
そう思う春に慢心はなく、京子の足手まといにならないよう尽くすつもりであった。



375 ◆R5j2Ndo0Hc2015/10/02(金) 02:03:31.11ga3Tv5+/o (36/94)


京子「大丈夫ですよ」

京子「星誕女子の実力はおおよそ把握していますし」

京子「何より、私のパートナーは春ちゃんなんですから負ける気がしません」

無論、京子は星誕女子の事を見くびってなどいない。
幾らダーティなやり方をしているとは言え、京子と湧がいる永水女子と未だ互角に戦っているのだから。
ここからさらにダーティさを増して来る事を思えば、決して慢心など出来ない。
それでもこうして力強く応えたのは霞や依子達の中で微かに蠢く不安を見過ごせなかったからこそ。
輝夜の事を良く知るが故に陰りを浮かべる彼女達が少しでも明るさを取り戻せるようにと、京子は強気な言葉を口にした。

春「…ん」テレ

明星「むぅ」スネー

霞「ふふ」

そんな京子の言葉に強く反応したのは、霞でも依子でもなかった。
強気な言葉の中に自分への確かな信頼を感じ取った春は気恥ずかしそうに唇を釣り上げ、明星は不機嫌そうに眉を引き下げる。
対照的と言う言葉が相応しい二人の変化に、霞は微笑ましそうな笑みを浮かべた。
霞と血の繋がりがあるのは明星の方ではあるが、彼女は春の方もまた家族同然に思っているのだから。
可愛い妹二人が京子の言葉一つに分かりやすく心動かす光景は、とても微笑ましいものだった。