509以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 06:24:24.95C+ujSg26O (3/12)

ーーーーーー


ことり (困ったなあ……)


ことりはことりで、タイミングの悪い穂乃果の欠席に困らされていた。

いつもの3人で、どうしても話さなければならない事があるのだ。


彼女は身に入らない授業を諦め、ファイルから封筒を取り出した。


ことり (…紹介状かぁ)


アイドル研究部で衣装製作を引き受けていることりは、あるデザイナー(確かイナバという名前だった)から海外留学を薦められている。

μ'sの一員としてやってきた事が評価されたのは嬉しい。しかし…


ことり (留学したら、μ'sもやめなきゃいけないよね…)


海外へ行くのだから当然だった。


510以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 06:25:15.41C+ujSg26O (4/12)

故に、まずは付き合いの長い穂乃果と海未に打ち明けようと思っていたのだ。

もし穂乃果の欠席が長引くようなら、いっそ海未にだけでも先に話してしまおうか。


ことり (あ、もう授業終わっちゃう)


部活の帰りに話そう。

とりあえずそう決定し、板書を大急ぎで写し始めた。


どっちみち、学校祭のライブの衣装作りに手を抜くつもりはない。

6時間目が終わったら、すぐさま部室に向かうつもりだ。

いずれ、他のメンバーにも話す時が来るだろう。







511以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 06:27:21.51C+ujSg26O (5/12)

ーーーーーー


海未と一緒にガンツに召還され、昨夜命を落としたのは穂乃果だ。


絵里は今日の部活で妙に元気のない海未を見て悟った。

これからの活動をどうするかとか、事件として問題になってしまうのかとか、色々と考えなければいけない事は多かったが、まず心配なのは……


絵里「海未の精神面よね…」


学校の帰り道、コーヒーショップで買ったやたらと甘い飲み物を啜りながら、絵里は溜息をついた。


海未の事だから、間違いなく100点を取って穂乃果を再生しようとするだろう。


それは構わないし、むしろ応援したいのだが、無茶をしたら海未までが星人の餌食となるだろう。


512以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 06:28:01.24C+ujSg26O (6/12)

二つの意味で先輩である絵里に出来ることは、正直一つしか思い浮かばなかった。


絵里「また、あの部屋に……」


それは恐ろしい考えだ。


まさか、死んだ人間全てがあの部屋に行く訳ではない。

ミッションを行う前後にしか募集しないだろうし、地理的な範囲も決まっているだろう。


いや、もしかしたらまだ家にアイテムが残っているかもしれない。

意外とガンツは適当なのだ。
探せば便利な物があるかもしれない。


そこまで考えたところで、後ろから肩を叩かれた。

振り返ると、長髪の青年が立っている。


513以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 06:28:37.70C+ujSg26O (7/12)

「絢瀬絵里だな?」


青年が言った。


絵里「貴方…」


この人間には見覚えがある。

最近の記憶でも、かすかに存在する昔の記憶でも。


「覚えているのか?
…まあそんな事はどうでもいい、これを見ろ」


青年が携帯を突き出す。
そこには、絵里の親友が映っていた。


ーーーロープで拘束され、気絶した状態で。



絵里「希っ…!?」


声を上げる彼女を、青年が指を口に当て制止する。


514以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 06:29:25.59C+ujSg26O (8/12)

絵里「どういうつもり!? 彼女を解放しなさい」

「なら、ここに行け」


彼は携帯の画面を操作し、地図を出した。

郊外の工場跡に印が付けられている。


絵里「……何が目的なの」


絵里の問いかけに、青年は一言で答えた。


「俺は、あの部屋に戻る」


そしてポケットから黒いボールを取り出した。

そこには、絵里の顔写真が映っている。


「ガンツは、俺達の復帰を望んでいるらしい」

絵里「ならいいわ。望むところよ」


絵里の言葉に、青年はやや驚いたような反応をした。


515以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 06:30:13.85C+ujSg26O (9/12)

「…意外だな。思い出したとしても、まさかもう一度やりたい人間が俺以外にいるとは思っていなかった」

絵里「こっちにも事情があるのよ」


青年が手招きする。

人気のない所に向かうらしい。


絵里「貴方の要求はこの通りのんだわ。早く希を解放して!」


彼に続きながら、絵里は強い口調で迫った。


「ああ、頼んだ相手に言っておくよ」

絵里「大丈夫なんでしょうね?」


この青年の言うことを聞かず、希を解放しないかもしれない。

もしかしたら、そのまま……


そう思うと、とても安心できない。


516以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 06:31:15.05C+ujSg26O (10/12)

「今電話をかける」


青年が携帯を耳に当てる。
相手はすぐに出た。

彼が口を開く前に、男の声が携帯から漏れた。


『てめッ! 和泉! 人こねーっての嘘じゃねーかよ!』


どうやら相当緊迫した状況のようだ。

絵里と青年は目を見合わせた。


『すげえ身長高いオールバックの奴が来て…、やべッ!
チクショウこっち来んな!
ぎゃああああっ!!?』


青年は通話を切った。


「どうやら、指示するまでもないみたいだな」


絵里は、ひとまず安心した。







517以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 06:32:04.23C+ujSg26O (11/12)

ーーーーーー


話があると言われ、片付けをしていたことりを待っていると、また首筋をあの寒気が襲いました。


ことり「ごめん、待った?」


ことりが部室から出てきましたが、とても付き合っている暇などありません。


海未「すみません。今日は急ぎの用事ができました」


そう告げて、私は走り出しました。


ことり「えっ、ちょっと海未ちゃん!?」


ことりが戸惑いますが、構っている訳にはいきません。

まさか二日連続とは、とてもーーー


好都合です!


518以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 06:33:04.93C+ujSg26O (12/12)

私は、自分がいつの間にか笑っている事に気付きました。

いえ、穂乃果が殺された以上、当然です。
ミッションは、多ければ多いほど助かります。


海未「穂乃果を再生ッ! 敵は全部私が殺りますッ!!」


ローファーを無造作に履き、学校を飛び出すと人気のない場所へ直行。

転送を待ちました。


海未「どんな相手だろうと、私なら…!」


体が硬直したと思うと、部屋への転送が始まりました。







519以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 07:38:47.19MShTezOeO (1/10)

ーーーーーー


鉄男は眠る赤子を見つめた。

台所では妻が洗い物をしている。


鉄男「ちょっと散歩してくるわ」


ミッションの開始を告げる『あの感覚』を感じると、鉄男は適当な言い訳をして靴を履いた。


「帰りまた牛乳頼むわよー」


その声を聞きながらドアを閉める。

妻は母乳が出なかった。


鉄男「もし俺が死んだら……誰が買ってくんだろうな、牛乳」


彼の脳裏に、あの千手観音が浮かんだ。

あんな奴を相手取って、毎回生きて帰れるとは当然思えなかった。







520以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 07:40:56.66MShTezOeO (2/10)

ーーーーーー


青年が選んだのは、通勤電車の音がけたたましく鳴り響く高架下だった。

驚くほど人気もない。


絵里「それで、私をどう殺す気?」

「こうするんだよ」


青年は懐から黒い物を取り出した。
銃だ。


絵里「もしかして日本って、治安悪いの?」

「少なくともロシアよりマシだ」


銃口を絵里の頭に向け、躊躇なく引き金を引いた。

乾いた音が響き渡ったが、上を走る電車が全てかき消す。


銃弾が絵里の脳を抉ると同時に、彼女の体が一瞬にして消失した。


521以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 07:43:05.85MShTezOeO (3/10)

「なるほど。本当にこれで行けるんだな」


予想よりもトントン拍子に進んでくれている。

ただ、廃工場に乱入して人質を助け出したのは誰なのだろう。
彼が話を持ちかけた先輩達のその後も気になる話ではあるが、それは後回しだ。


「さて…、自殺しろってコトか?」


黒いボールを見るが、何も変化はなかった。


「…仕方ないな」


次は自らのこめかみに銃口を当て、撃った。


二度目の銃声も、別の電車がしっかりと消してくれた。







522以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 07:44:26.28MShTezOeO (4/10)

ーーーーーー


東郷「…どうしたものか」

桜丘「本当ね」


またしても呼び出された東郷と桜丘が目にしたのは、妙に浮ついた感じでスーツを纏い、刀の刃をしきりと伸縮させている海未の姿だった。

黒球の後ろでは、新入りらしいスーツ姿の男性4人と、帽子を目深にかぶって顔の見えない少女がその様子を怯えた目で見つめている。

海未の呼吸は、相当荒かった。


「とりあえず、俺らもスーツ着ねえとな」


背後から声がした。

鉄男だ。


桜丘「新しく来た人にも説明しなきゃ…」


もっとも新人へのスーツ支給は、黒球が開いた後だが。


523以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 07:46:36.86MShTezOeO (5/10)

彼らからやや遅れて、北条とサダコ、そして岡崎も転送されて来る。

岡崎は、海未の姿を見た途端青ざめた。


北条「新しい参加者は5人か?」

東郷「いや、まだ来るな」


東郷が指を向ける。
2人来るようだ。

長髪の青年と、海未と同じ制服を着た金髪の少女が現れた。


北条「園田の知り合い…かもな」


北条が呟くと、案の定金髪の少女の目線は海未に釘付けになった。

しかし、その様子を見て声をかけるのは諦めたようだ。


これで参加者は集まったらしく、黒球がラジオ体操の歌を鳴らす。

男性4人と未だに顔の見えない少女は混乱しているが、後から来た2人は何故か冷静だった。


524以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 07:47:44.95MShTezOeO (6/10)

新しい命をどうこうというお決まりのメッセージが表示され、今回戦う敵が映し出される。


『ゴキブリ星人

・特徴
つよい、油っぽい、人間が嫌い

・好きなもの
むれること

・口ぐせ
じょうじ』


外見は、そのままゴキブリを人っぽくしたような感じだった。


鉄男「『むれること』って…、いっぱいいんのかよ」

桜丘「あり得るわね」

北条「それよりガンツが開いたな。あいつらにスーツを着せよう」


北条が新入り達に寄り、説明を始めた。

長髪と金髪は自らケースを手に取る。


525以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 07:48:37.69MShTezOeO (7/10)

東郷「そろそろまた転送だな」


画面が変わる。

カウントが始まるかと思ったが、違った。
また文章だ。


『きのうもやった方は15てん以上とらないと死でち』


東郷「!」

桜丘「これって…」


それが示すのは、ペナルティの継続だけではない。


前回の生存者は7人。

つまり最低でも105点分の敵が、今回のミッションでは出現するのだ。

そうなると、当然。


海未「ガンツ!」


海未が叫んだ。


526以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 07:49:50.64MShTezOeO (8/10)

海未「このルールは取り消しなさい!
私に全部やらせてくださいッ!」


東郷「…無茶をしないように、見ててやらないとな」


「いえ、その役回りは私が引き受けるわ」


すでにスーツに着替え終えた金髪の少女が東郷に言った。


東郷「やはり知り合いか?」

「ええ。私の後輩よ」

東郷「それにしてもやけに冷静だな」

「だって、前もやってたもの。同じこと」


さらりと言ったその台詞は、ミッションを経験しているメンバーの注目を集めるには十分すぎる威力を持っていた。


鉄男「おっ、おい!」


始めに口を開いたのは鉄男だ。


527以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 07:51:37.43MShTezOeO (9/10)

鉄男「本当に解放されんのかよ!?」

「100点を取れば、だけどね」

桜丘「でも残念ね。また死んでしまって」


桜丘の言葉に少女は首を振った。


「あいつに付き合ってやっただけよ」


少女の目線を追う。

そこには、彼女と同時に転送されてきた長髪の青年がいた。


鉄男「ん…? いずみ、か」


彼が持っているケースには、そう書かれていた。


「色々聞きたいことはあるだろうけど、とりあえずミッションをクリアしないとね」


そう言った少女の体が、頭から転送されていった。







528以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 07:52:48.57MShTezOeO (10/10)

終わります。レスされた星人はここで出すことにしました。

新メンバーのリーマン達はオニ星人のあいつらです


529以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 11:33:09.259WMqO1Hs0 (1/2)

個人的にゴキブリ星人の特徴に「かしこい」も入れたほうが良いと思った
あいつら銃の使い方簡単に理解してたし。ヤバイXショットガン担いだゴキブリが簡単に想像できる


530以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 13:46:19.83inMORaqeO (1/1)

>>529

確かに入れとくべきでしたね…
武器奪われる展開も当然書きたいものですよ(暗黒微笑


531以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 14:40:14.86JkpL9ch70 (1/1)

死んでくれ


532以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 15:13:19.829WMqO1Hs0 (2/2)

GANTZって百点メニューで1選んでも、結局はGANTZからは完全に離れられないよね
玄野がいい例


533以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 17:38:19.57ntFmx70u0 (1/1)

というより最終ミッションの先にカタストロフィがあるからな
運が悪いとGANTZから解放されてもあっさり死んでしまう


534以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/14(水) 18:15:22.83KvstehSfo (1/1)

乙乙
採用されてしまった


535以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/15(木) 02:06:38.92gtPbcWtjO (1/1)


ゴキブリ星人て強そうやね


536以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 18:55:23.05zxQWTy0EO (1/1)

今夜は投下したいなーとか考えてますが寝落ちの可能性は常に存在していますのでご了承ください


537以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 21:56:57.95haRTyVzW0 (1/1)

ゴキブリ星人に勝てる未来が見えねぇww


538以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:40:06.7227z2CLj00 (1/19)

ーーーーーー


青年ーー和泉は周辺を見回した。


ここは新宿だ。間違いない。

記憶があやふやな今でも、鮮明に浮かび上がるイメージ。


和泉 (俺は……昔もここで駆け回ったんだ)


行き交う群衆は、コスプレのような格好の和泉に気づきもしない。

これも前と同じだと思う。


さて、存分に暴れさせて貰おうか。


彼は端末(確かコントローラと言われていた)の液晶を見た。

近くにいる。


彼が選んだの武器は、長柄の銃と刀だった。

まずは感覚を取り戻す。

躊躇なく星人のいる側へと近づいた。


539以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:40:50.0927z2CLj00 (2/19)

少し進むと、彼は人混みの中に混ざる異物の存在を感知する。


ガンツ部屋で紹介されたゴキブリ星人そのものが、そこにいた。

なるほど、ゴキブリを擬人化すればあのようになるのか。

その星人は、見事にゴキブリの特徴を捉えていた。
触覚といい、体色といい、油の所為であろう光沢といい……。


和泉 (いや、そんな事はどうでもいいか)


和泉は刀の刃を1メートルほど伸ばした。

そして、待つ。

邪魔な群衆が去り、星人まで一直線に駆け抜けられる瞬間を。


その瞬間は、思ったよりも早く来た。


和泉「おおおおおおおおッ!!!」


雄叫びを上げて星人へと突っ込む。


540以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:41:27.3327z2CLj00 (3/19)

流石はゴキブリと言ったところか、敵はすぐさま和泉に気づいた。

横薙ぎに振るわれる刀を避けようと、リーチの外へとステップで退避する。


和泉「甘いッ!」


和泉は覚えている。

この刀の真骨頂は、リーチの操作にこそ発揮されるのだ。


星人の回避行動と同時に、彼は刃渡りを2メートルにまで延長した。

それを星人が認識した時にはもう遅い。

ゴキブリ星人の頭部は、何の抵抗も無く斬り飛ばされた。


和泉「よし!!」


まずは一体目だ。
どうやら自分の腕は一切なまってなどいないらしい。


541以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:42:09.6227z2CLj00 (4/19)

和泉「まだまだいるな。絢瀬に取られる前に倒してしまおう」


今回は相当数がいる。
素人ではまず捌ききれない。


和泉「生き残るのは俺と絢瀬か……いや、あいつはだいぶ弛んでそうだ。
俺1人かもな…」


和泉は倒れ伏すゴキブリ星人に背を向け、別の敵が存在するポイントへ移動を始めた。

他に実力のありそうな面子は、転送前に絢瀬と会話していた壮年の男と若い女くらいか。
絢瀬の知り合いらしい女子高生は危なっかしい。


ぼんやりと部屋にいた人間の事を思い浮かべていると、後ろから接近する足音に気が付いた。


和泉「おっと、俺の事は見えていないんだ。よけてやらないと…」


そう思って和泉が振り返った瞬間、黒い塊が彼の視界を覆い尽くす。


542以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:42:45.3427z2CLj00 (5/19)

和泉「なにッ!?」


防御する間も無く、彼はあっさりと吹き飛ばされた。
道路沿いの公衆電話に突っ込み、その壁を粉砕してしまう。

近くの通行人が悲鳴を上げて逃げ出した。


顔を上げた和泉の目に、頭部を丸々失ったゴキブリ星人が見えた。


和泉「…なるほど。確かに『ゴキブリ』だな」


どこかで聞いた事がある。

ゴキブリは、頭部を切断されたくらいでは死なない。


倒すにはーーー



和泉「こうしなきゃなッ!!」


和泉は、攻撃を食らった瞬間も決して手放さなかった長柄の銃を星人に向け、乱射した。


543以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:43:26.2827z2CLj00 (6/19)

やはり既視感を感じさせる間延びした発射音が響く。

星人も逃れようとするが、手数には敵わない。

まず右脚の先が爆ぜたかと思うと、次の瞬間には胸部が内容物をぶち撒ける。


和泉「はははッ! 見たかッ!」


今度こそ、星人は死んだようだ。

星人の死体のそばには、誤射したらしい通行人の死体もいくつかあったが、和泉は気にも留めずに再び歩き出した。


ーーー早速、楽しめそうなミッションじゃないか。


彼は、興奮を隠せなかった。







544以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:44:19.1527z2CLj00 (7/19)

ーーーーーー


初参加の男性4人は、ミッションについてある程度理解してくれたようだった。


東郷「いいか? とにかく自分達から離れないでくれ。それと、頭から音が聞こえたらそれ以上進むな」

桜丘「一応銃は持っててもらうけど、誤射しないよう気をつけて」


2回目の参加である東郷と桜丘が前回のミッション開始時に穂乃果から説明された内容を彼らに話していた。


一方北条は、少し離れた所に転送されてきた少女へと近づく。
案の定サダコも付いてきた。

少女の服装は部屋から変わっていないが、スーツは服の下に着てくれたらしい。
帽子はそのままだった。


北条「えーと、君。とりあえず俺達の指示に従ってくれ。
スーツがあれば、雑魚相手ならそう簡単に殺されないから安心……」


とりあえず不安をどうにかしてやろうと、小柄な彼女に目線を合わせて話したのだが、そこで帽子に隠された素顔が見えた。


545以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:45:14.8927z2CLj00 (8/19)

北条「えっ、綺羅先輩!?」


彼女は、見覚えのある人物だった。
北条の声に少女も目線を上げ、彼と同じように驚きの声をあげる。


「……北条くん!?」


北条は、彼女が顔を隠していた理由がわかった。

結構な有名人なのだ。


スクールアイドル『A-RISE』のリーダー、綺羅ツバサという少女は。


北条「いや、顔隠してたからわかんなかったよ…」

ツバサ「私もずっと伏せてたから…、一応はトップアイドルだものね」


ツバサは笑って話したが、北条の背後に陣取る女の姿を見て凍りついた。

それに気づかない北条は、構わず会話を続行する。


546以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:45:52.4327z2CLj00 (9/19)

北条「先輩はなんで死んだんだ?」

ツバサ「えっと、衣装の打ち合わせで稲葉さんと車で移動してたら急に…」


どうやら詳しくは思い出せないらしい。


北条「交通事故か…、災難だったな。でも、このミッションを生き残れば帰れるんだ。
…また何回も呼ばれるけど」


その時、東郷達の方から声がした。


鉄男「おい! そろそろやんねーとまたタイムオーバーだぞ!」


そうだ。北条達ら15点以上取る必要があるのだ。
まだ5分しか経過していないが、無駄にはできない。


東郷「討ち漏らしがあれば駄目だ。
二手に分かれ、早めに倒そう」


東郷、桜丘、岡崎に男性4人。
北条、サダコ、鉄男、ツバサといったように分かれた。


547以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:46:26.5427z2CLj00 (10/19)

桜丘「じゃあ気をつけてね」

北条「そっちもな」


北条は東郷から手渡された端末を確認する。
やはり、相当な数がいるようだ。


鉄男「ちっ、そりゃあ15点も取れるぜ。生き残れんならな」


鉄男が皮肉っぽく文句を言った。


北条「やるしかないさ。行くぞ」


近くの敵に向かうが、その光点は相当大きかった。

一体何体いるのだろう。


逃げの許されない緊張感に襲われながらも、北条は銃を握りしめた。







548以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:47:04.8627z2CLj00 (11/19)

ーーーーーー


海未「……なんのつもりですか」


私が転送されたのはビルの屋上でした。

下には他のメンバーがいて、何故かと思いましたが、理由はすぐにはっきりしました。


絵里「行かせないわよ。あんなの、私でも絶対死ぬわ」


私は道路を挟んで反対側のビルに、4体の星人を発見したのです。

下に何体か見えた『ゴキブリ星人』とは、やや異なった外観をしています。

そして、点数も。


海未「33点に、27点、そして24点が二体!
あいつらを倒せば穂乃果を再生できるんですよ!?」

絵里「あなたはボス級を4体もやれると思ってるの!?」


549以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:47:44.5027z2CLj00 (12/19)

海未「穂乃果はやったんです!
75点もある千手観音をッ!!」


向こうのビルへと飛び移ろうとする私を、絵里は強引に止めました。


絵里「穂乃果が死んで悲しいのは判るわ。でも落ち着きなさい。
海未まで死んだら、私が来た意味がないじゃないの!」


なんというか、絵里は奇妙なほど冷静で、それは余計私を苛立たせました。


海未「…慣れているんですね」

絵里「…!」


自分でも驚くほど、冷ややかな声が出ました。
私を引き止める力が弱まります。


海未「絵里にとって、周りの人間が死んでいくのは日常茶飯事だったんですよね?
通りでそんなに冷静に…」

絵里「違うわ! 私だって穂乃果の事を…!」


550以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:48:19.5827z2CLj00 (13/19)

私は絵里を振りほどくと、屋上の柵に飛び乗りました。

例のビルでは、腕の異様に発達した個体を残してボス級が散っていくところでした。

各個撃破の方が確実でしょうから、別に構いません。


まだ何か言おうとする絵里を無視し、跳躍。

かろうじて向こうまで届き、ボスの前に躍り出ました。


改めて星人の外観を見ると、本当にゴキブリの印象が強いものでした。

しかしこの個体の腕は、甲殻類か何かの物に見えます。


海未「これは……シャコ、ですか?」


私を見据えた星人は、笑っているように感じられました。







551以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:48:52.8227z2CLj00 (14/19)

ーーーーーー


東郷「なんだ……、この…数は…」


冷静沈着な東郷が目を見開いていた。

桜丘の頬を冷や汗が伝い、岡崎も震えている。

新入りの4人に至っては目の前の光景を信じる事すらできないだろう。


「お、おい! なんだよあれ!?」

「ちくしょう、悪い夢でも見てるみたいだ…」

「やばいって…」

「なんで誰も気づかねえんだよ!」


そこには、10体以上もの『ゴキブリ星人』がいた。

周囲の人々は、一切その存在に気づかない。
そういえば、海未が言っていた。


552以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:49:25.8127z2CLj00 (15/19)

桜丘「一般の人には本当に見えてないのね…」

東郷「いっそ見えていれば、逃げてくれたのだがな」


この状況では、銃を下手に撃つと関係ない者を巻き込みかねない。


「な、なあ……こいつらを撃てばいいのか?」


新入りの1人がおずおずと訊いてきた。
東郷は待てと制止する。


岡崎「お、おいお前! まさか撃つなって言う気じゃねーだろうな!?」


岡崎が目を剥いて東郷に噛み付く。


岡崎「15点取らねーとこっちが殺されんだ!
関係ない奴のコト構ってられるほど余裕ないだろ!」


彼の顔は恐怖に引きつっていた。

言い返せないでいる東郷から離れ、両手に持ったショットガンを星人達の方に向ける。


553以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:49:57.7527z2CLj00 (16/19)

岡崎「撃っちまえばいいじゃンかよ!
どーせ見えてねえんだろッ!」

東郷「馬鹿ッ…やめろ!」


岡崎は止まらなかった。

ロクに狙いもつけず、銃を乱射する。

その瞬間、ゴキブリ星人達も動いた。


「じょうじ」

「じょうじ」

「じょうじじじじょう」


ガンツが伝えた口癖と同じ声を発し、岡崎に飛びかかる。


岡崎「おおおおッ! 死ね死ね死ねぇッ!!」


その内の何体かは、岡崎に触れる事なく爆散した。
銃撃を食らっていたのだろう。

しかし同時に、流れ弾で通行人の何人かも絶命する。

群衆が悲鳴を上げて逃げ出し、パニックが起こった。


554以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:51:05.4727z2CLj00 (17/19)

桜丘「あいつ! 余計に被害を増やして…」


逃げ惑う人々にも、ゴキブリ星人は容赦なかった。

人間が嫌いだという特徴は本当だったのだ。

どこで拾ったのか、鉄パイプや金属バットを持った何体かが、無差別に殺戮を始める。


東郷「くっ、早く倒すぞ! このままじゃ手遅れになる!」

桜丘「あなた達は隠れてて!」


新入りが退避するのを見届けると、東郷と桜丘は星人に向かっていった。

ちょうど、何体ものゴキブリ星人に袋叩きにされていた岡崎のスーツが破壊されるところだった。


岡崎「あッ、あああッ!? ぶっ壊れた! ぶっ壊れちまった!」


腰が抜けてへたり込む岡崎を、ゴキブリ星人の拳が襲う。

岡崎の頭蓋骨が、水風船を破裂させたように弾け飛んだ。


555以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:51:53.2527z2CLj00 (18/19)

そのあまりにも凄惨な様に桜丘は目をそらすが、正直岡崎の行為は擁護できなかった。


東郷「おおおッ!」


東郷の銃撃が、岡崎を蹂躙していた星人達を正確に吹き飛ばす。

次は人々を襲う連中に向かった。

銃を持つ東郷と桜丘を見ると、すぐさま身構えてきた。


桜丘「こいつら、あたし達の方が危険だってわかってるの?」

東郷「そこそこ知能もあるみたいだな」


ミッション開始から約10分。

すでに、一名の死亡者が出てしまった。







556以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:52:54.0227z2CLj00 (19/19)

終了します。

次回は海未vsボス級で潰れそうですが格闘戦書くの辛いなー


557以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 23:22:58.84S2TicatS0 (1/3)

ゴキ強いなやっぱり
海未が暴走気味だから心配だわ


558以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 23:24:00.34S2TicatS0 (2/3)

ゴキ強いなやっぱり
海未が暴走気味だから心配だわ


559以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 23:24:31.66S2TicatS0 (3/3)

連投スマソ


560以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/21(水) 23:41:00.89RJNIgq99o (1/1)

遅くなったけど、乙!


561以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 09:58:13.867mU/RIdu0 (1/14)

なんとか今夜は投下したいと思っています


562以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:23:31.107mU/RIdu0 (2/14)

ーーーーーー


私が仕掛ける前に、ゴキブリ星人が動きました。



バンッ!!



弾丸のように打ち出される星人の拳。
私は咄嗟に刀で受けようとします。


それは、失策でした。



海未「うぐッ…!?」



巨大な仏像すら両断できるガンツの刀ですが、ゴキブリ星人の拳の強度はそれを上回っていたのです。

衝撃は刀を通って私の体に伝わりました。

足に力を入れ耐えようとしましたが、スーツのアシストをもってしても受け止め切れませんでした。


563以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:24:27.907mU/RIdu0 (3/14)




ドンッッ!!!!



私の体は宙を舞い、柵に激突します。

下手をすれば、柵を突き破って落下してしまっていたでしょう。


でも、このくらい!



海未「ああああああぁぁ!!!」



いちいち考えている余裕なんてありません!

絵里だけでなく、他のメンバーもいます。
早くこの個体を倒し、次のボスに向かわなければ、誰かが先に仕留めてしまうかもしれないのです。



海未「…穂乃果ッ! 私はッ、絶対!」



刀を振りかぶって突っ込む私に、ゴキブリ星人はまたパンチを叩き込もうとします。


564以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:25:22.497mU/RIdu0 (4/14)

海未「同じ手などッ!」



その瞬間、私は突進の勢いをそのままに体を後ろに倒します。

スライディングの要領で滑り、真上に見える星人の右腕に刀を突き立てました。



海未「…やあッ!!」



渾身の力を込めて切断します。


飛び起きた私に、星人は残った左腕で再び攻撃してきました。

星人のパンチは、音速に近いのではないかと思わせるスピードです。

しかし……



海未「見えますッ!!」



私は、その軌道をしっかりと捉えていました。




565以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:26:00.327mU/RIdu0 (5/14)

狙いは頭部。

私は頭を最小限逸らして回避し、今度は左腕を切断しました。

その流れで回し蹴りに移行し、星人の胸板を蹴り飛ばします。


吹っ飛ぶ事はありませんでしたが、星人は体勢を崩しました。



海未「……とどめッ!!」



星人の首は、なんなく斬れました。

自慢の拳と、頭を失った星人が膝をつきます。



海未「…終わりですか。あっけないものですね」



狩られた星人に用はありません。
この個体の点数は、確か27点。

穂乃果の再生には、まだまだ届かないのです。


566以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:26:41.047mU/RIdu0 (6/14)

一度下に降りましょう。

雑魚の星人でも、倒さないよりはマシです。


私は屋上の端へ向かいました。

さっきまで私がいたビルの屋上に、絵里が見えます。

口を開き、何か言葉を発しているようです。



海未「絵里?」



妙に焦っているようでした。

私は彼女の口の動きに注目します。



海未「ええと…、う…し…ろ?」



私は振り返りました。
そこには、星人の死体しか……



ないはず、でした。


567以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:27:18.567mU/RIdu0 (7/14)

海未「…ッ! なぜ……」



頭はそのままです。しかし、腕が完全に再生していました。

勢いよく踏み切った星人は、私にタックルを仕掛けてきました。


防御も回避も、間に合いません。


私と星人は、一緒にビルの屋上から落下しました。



海未「こんッ、のぉッ!」



車の行き交う道路が猛スピード迫る中、私はせめてもの抵抗として星人を殴りつけます。

しかし、びくともしませんでした。


私は道路横に停車しているタクシーに背中から激突します。
走行中の車両でなかったぶん、まだ良い結果でしょう。

車外で煙草を吸っていた運転手が悲鳴を上げて走り去ります。
やはり見えてないようです。


星人は街路樹に突っ込んでいました。
すぐにボクシングのファイティングポーズの様な姿勢を取ります。


568以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:27:51.507mU/RIdu0 (8/14)

海未「不気味ですね。それ、見えてるんですか?」



口もないのに答えるはずがありませんでした。
そういえば、まだ口癖の『じょうじ』を聞いてませんね。

とにかく星人には、頭のない事で支障をきたしている様子がありません。



海未「なるほど。ゴキブリ…ですか」



全身が感覚器官。

そして、頭を切ろうが平気で生きる程の生命力。


それでも。



海未「何度だって……殺してやりますよ」



私と星人は、同時に飛びかかりました。


569以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:29:15.677mU/RIdu0 (9/14)

私の突き技と、星人の右ストレートが激突します。

勝ったのは星人でした。

刀にヒビが入ったかと思うと、刀身がばらばらになります。



海未「くっ…」



再び刃を伸ばして立て直そうとしますが、星人の攻撃は止んでくれません。

右、左と交互に拳を繰り出し、執拗に狙ってきます。

私は何度も跳躍を繰り返し、狂ったように放たれるパンチから逃れようとしました。



バゴンッッ!!



運の悪い車が星人の餌食になりました。

凹んだ車体があっさりと吹き飛び、走行中の別の車両と衝突します。

そこそこ交通量もあったため、次々とクラッシュが起こっていきました。


570以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:29:49.197mU/RIdu0 (10/14)

そして、爆発。


恐らく車のどれかからガソリンが漏れていたのでしょう。

火だるまになった人々がそこら中で転げ回ります。


私と星人は、炎の壁で分断されました。

こちらに向かってくる気配はありません。



海未「そういえばゴキブリなら……火に弱いですよね?」



私の脳裏に、ある考えが浮かびます。

私は近くにあった軽自動車を持ち上げました。



海未「このスーツの力なら…!」



そしてそれを、星人のいる方向に投擲します。

軽自動車も炎にまかれ、爆発しました。


571以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:30:20.497mU/RIdu0 (11/14)

スーツがあれば、車だろうと簡単に投げられました。

さらに何台か投げ込み、火を広げます。

星人の動きは鈍っているようでした。



海未「やれる!」



私は刀を伸ばし、炎に構わず星人へと駆けました。

パチパチと火花が散り、数ヶ所でまた爆発が起こります。


星人は、私が接近するとまたパンチを繰り出してきました。

さっきほどの勢いがありません。


海未「今度こそ、終わりですね」


私は刀を振りかざします。

胴体を縦に両断すれば、流石に死ぬはずでしょう。


572以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:31:06.177mU/RIdu0 (12/14)

しかしその時、私の目に何か飛ぶものが見えました。



海未「あれは……?」



サイズは人間位で、羽根が生えています。
そして、その体は黒光りしていました。


ゴキブリ星人の、別のボスです。



海未「まさかっ!?」



私がそいつの目的に気づき、目の前の個体にとどめを刺そうとした時には手遅れでした。

高速で飛行する個体は、こちらに近づいてきたかと思うと仲間を掴み、離脱していきます。


仲間を助けに来たようです。



海未「厄介な…!」


573以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:31:45.807mU/RIdu0 (13/14)

私は2体を追いました。

せっかくあそこまでダメージを与えたのに、逃げられた挙句取られてしまっては元も子もありません。

炎上している場所から少し離れた路上に、2体とも発見しました。



「じょうじ じょじょうじじじ」



私を見て、大きな4枚の羽根が生えた方の個体が何かを発します。

意味などわかりませんが、少なくとも私と戦う気はあるようです。


私は今まで戦っていた個体に目を向けました。

多少回復してしまっているでしょうが、大した事ではありません。



海未「2体……同時ですか」



危険は百も承知ですが、やめる気はありません。


50点は固い勝負です。






574以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/25(日) 23:32:56.617mU/RIdu0 (14/14)

驚くほど筆が進まない…


にしても民間人死にまくるようになってからインフレ激しい気がする


575以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/29(木) 11:09:57.812zuXsgsUo (1/1)

がむばれ


576以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/01(日) 20:41:05.87LF6yBNJU0 (1/1)

今日か明日にはなんとか投下を…

遅筆で申し訳ない


577以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/02(月) 00:56:38.91otmtfVRsO (1/1)

来たか!
くれぐれも無理はしないようにね


578以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:16:29.380epSc/Jw0 (1/16)

もうそろそろ30レスくらいまとめて投下したいけど無理でした


579以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:17:03.410epSc/Jw0 (2/16)

ーーーーーー


ーーーまさかこんな事にっ…!


眼下に広がる光景に、絵里は息を飲んだ。

関係の無い人々に攻撃し出す星人は前にも相当いたとは思うが、こんなハリウッド映画さながらの大爆発にまではなっただろうか?



絵里「海未…あなたは何も思わないの!?」



すぐにでも飛び出したいが、流石にこの高さは危険がすぎるか。
しかし長い方の銃は持ってきていないので狙撃もできない。

躊躇っていると、近接戦を繰り広げる海未と星人に近づく、飛行する何かが目に入る。

別のボスだった。



絵里「戻ってきた…」


580以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:17:47.640epSc/Jw0 (3/16)

こうなれば仕方がない。

乱戦は避けたいと思っていたが、強引に介入させてもらう。


しかしそう決断したものの、結局叶わなかった。

なぜなら。



「じょうじじ」


「じょうじ」


「じじょうじじじじ」



いつの間に接近を許したのだろうか。

彼女の背後に10体近くの星人が集まっていた。
バットやバールを振り回し威嚇してくる。

やるしかないようだ。







581以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:18:31.340epSc/Jw0 (4/16)

絵里「まったく……早いとこ片付けるしかないようね」



海未への加勢はひとまず諦めるしかない。

いくら冷静さを失っていようと、そう簡単に殺られるとは思っていなかった。


絵里は両手に刀を持ち、刃を伸ばす。

日本刀より少し短いくらいに調節した。



絵里「うーん…。1分くらいはかかるかしら」



記憶は曖昧でも、何故か体ははっきりと覚えていてくれた。

そして、自分がかつて戦っていた時のイメージが鮮明に蘇る。


彼女は、星人の群れへと突撃した。










582以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:19:18.570epSc/Jw0 (5/16)

ーーーーーー


鉄男「なんだ、お前ら同じ高校なのかよ」

北条「ああ。まあ先輩は芸能科だからあまり接点はないけどな」



すでに彼らは、合わせて10数体の星人を倒していた。
耐久力は馬鹿にできないが、ある程度の距離を維持して戦えばそこまで危険でもない。



鉄男「UTXだっけか? 共学だったのかよ」

ツバサ「女子校って思われがちですよね」

北条「まあ男女比的に仕方ないけどな」



ちなみにサダコは会話こそしないものの、しっかりと北条の横にくっついている。


583以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:20:23.720epSc/Jw0 (6/16)

北条「それにしても……、さっきの爆発が気掛かりだな」



どこかからサイレンも聞こえてくる。
大事になってしまったのだろう。



鉄男「星人じゃねえの?」

北条「そうだろーけど、結構な人数が巻き込まれてそうだ。
さっきも見ただろ?」



先ほど人間の撲殺死体をいくつか見かけた。
ゴキブリ星人は鈍器を好んで使用するので、恐らく連中にやられたのだ。

ツバサが顔をしかめる。



ツバサ「ね、ねえ北条くん…。今までも関係ない人が巻き込まれていたの?」

北条「いや、2回ミッションをやったけど初めてだ。
そもそも、こんな大規模な戦い自体が」



584以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:20:58.970epSc/Jw0 (7/16)

田中星人や仏像の時より、圧倒的に数が多かった。

千手観音のような異常に強い個体が今のところ出てきていないのが救いだ。

だが、ボスはいるのだろう。



鉄男「なあ、あそこ見えるか?」



ふいに鉄男が険しい声で言った。
北条とサダコが彼の目線を追う。


ビルに取り付けられた看板の上に、一体のゴキブリ星人が見える。

微妙に形状が違った。



北条「おい…あいつ…」

鉄男「ボス、だな」



その個体は、彼ら4人をじっと見下ろしている。
多数いる個体より脚部が発達していた。


585以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:21:34.580epSc/Jw0 (8/16)

北条「サダコ……綺羅先輩を頼む」

ツバサ「え…、北条くん?」



北条が一歩前に出る。

点数は渡さないとばかりに鉄男も続いた。



鉄男「どっちが仕留めても文句ナシだぜ」

北条「…わかってるっつの」



星人が看板から飛び降りる。

着地した箇所のアスファルトに亀裂が走った。



「じょうじ」



星人が2人を指差し声を上げた。

やる気十分なようだ。







586以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:22:10.790epSc/Jw0 (9/16)

ーーーーーー


東郷「スーツは大丈夫か?」

桜丘「ええ。攻撃はあまり受けてないわ」



彼らの前には星人の亡骸が20体分は転がっている。

そして、ほぼ同数の通行人達の死体も。



東郷「…犠牲は避けられなかったか」



そう呟いた時、初参加の男性4人が戻ってきた。



「うおっ!? なんだこれ!」

「しっ…死んでるぞおい!」



当然と言えば当然だが、相当ショッキングな光景だ。
普通に暮らしていればまず、この数の死体を目にする事などない。


587以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:22:49.210epSc/Jw0 (10/16)

桜丘「もう……このあたりにはいないわよね?」

東郷「ああ、移動しよう。40分残っているが油断できん」


「どうなってんだよチクショウ…、あっちこっちから悲鳴聞こえてくるし、ほんとにここ日本かよ!?」

「向こうの通りがなんか燃えてるぞ!」



爆発音が散発的に聞こえてきたのは、最も人通りの多い所からだった。

下手をすると、3桁近くの人間がミッションの巻き添えを食らっている可能性もある。



桜丘「行ってみる…?」

東郷「無論だ。これ以上犠牲者を出したくはない」



彼らは移動を始めた。







588以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:23:27.370epSc/Jw0 (11/16)

ーーーーーー


和泉「なかなかやるじゃないか……絢瀬」



彼の前には、星人の体液でずぶ濡れになった絵里がいた。

足下にはバラバラになったゴキブリ星人達が転がっている。



和泉「コレを1人でやったのか?
…なんだ、鈍ってなどいなかったな」


絵里「ふん…あなたに加勢を期待した私が馬鹿だったわ」



絵里の背後で、辛うじて生き残っていた星人の一体が音もなく立ち上がる。
和泉には見えていたが、何も言わない。

その星人が金属バットを拾い絵里に殴りかかった瞬間、彼女は振り向きもせずに刀を伸ばし、星人の胸を貫く。

今度こそ絶命したようだ。


589以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:24:03.510epSc/Jw0 (12/16)

和泉「これ、借りたぞ」



和泉は銃が接続されたパソコンを絵里に投げて寄越した。

海未が置いて行ったのを回収したらしい。



絵里「こいつら、1体何点?」

和泉「3点だ。馬鹿にできんな」



この数で1体あたり3点なのは破格だ。
もっとも、ミッションの難易度そのものが高いのだが。



絵里「ミッションのランク的には……そうね。上の下ってとこかしら」

和泉「興味無いな。どんな相手だろうと殺すだけだ」


和泉が回れ右をして去っていく。
絵里の戦いを見に来ただけらしい。


590以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:24:34.990epSc/Jw0 (13/16)

絵里「さてと……海未の様子を見に行かないとね」


隣のビルはここより低い。
少しずつ下に降りよう。

その気になれば一気に飛び降りられるが、スーツの耐久力を無駄にするのは絶対駄目だ。
その心掛けはガンツのミッションを生き残る上で基本中の基本である。

軽く助走をつけ、隣のビルの屋上へ飛び移る。


そこにも星人がいた。数は3体。



絵里「邪魔よ」



星人が動くより、絵里の刀が早かった。
すれ違いざまに1体目の胴を水平に分断し、残る2体の間に入り、両手の刀をそれぞれの胸板に差し込み、そのまま頭部まで斬り上げる。

音も無く屠ってみせた。


591以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:25:03.970epSc/Jw0 (14/16)

絵里「これが3点ね…」



今のガンツはサービスがいいのだろうか?


…いやまさか。
自分達を苦しませる事に愉悦を感じているようにしか見えない。

あのふざけた文章に従わされて殺し合いをしているこっちの身にもなって欲しい。


そして和泉の例がある。


彼が持っていた手の平サイズのガンツ。
100点メニューで1番を選んでも、結局戻ってくる羽目になるのだ。

解放など、メンバーのモチベーションを上げる為の方便に違い無い。


そう考えながら、彼女はまた別のビルへと移動する。

このビルは5階建てで、ここからならスーツに大した負荷を掛けずに下に降りられるだろう。


592以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:25:38.850epSc/Jw0 (15/16)

絵里「いた…」



海未とボス2体が立ち回っていた。
意外な事に海未が押している。



絵里「ちょっとは懲りてくれると思ったのだけどね…」



ビルから飛び降り、海未のもとへと進む。

両手の刀はジョイントに戻して銃を持った。



絵里「…先輩の実力、見せてあげる」



彼女は、不敵に笑った。







593以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 22:26:18.140epSc/Jw0 (16/16)

次回、再び海未視点


594以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/10(火) 19:41:37.35QfwGLRTU0 (1/1)

いい加減投下したいですが時間取れません……


595以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/10(火) 20:27:47.83CEZs8ItMO (1/1)

待ってます


596以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/15(日) 09:05:31.45gerhjqwBO (1/1)

今夜は投下できそうですね


597以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/25(水) 18:17:55.02spqkkzTIO (1/1)

訳あってネットに触れられない状態でした
もうそろそろ復帰できると思います


598以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/12/17(木) 14:50:36.5658iXpGSfO (1/1)

わたし待つわ


599以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/12/27(日) 22:47:21.40CL+6Tty3o (1/1)

続き、お待ちしてます!


600以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします2016/01/17(日) 02:46:22.10J706P1POO (1/1)

もう書かないの? 続き読みたい


601以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2016/01/30(土) 18:56:10.42kiRxTMez0 (1/1)

頼む