392以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/15(日) 23:43:33.77bdKuRX91o (1/1)

乙です


393以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/16(月) 00:12:13.30vCbCYtqU0 (1/1)

乙でした


394以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/16(月) 12:02:03.34h1tR22HTo (1/1)

乙!不二咲乗り気すぎて笑ったし、苗木の実況と葉隠の目の付け所
ばれたらばれたで自分の管理不届のせいにするだろう石丸めんどい


395以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/16(月) 19:41:37.23LADVNtmvo (1/1)

テンションたけえw

>>388
リアルで覗きやったら犯罪だが、殺人未遂と流血沙汰が頻発する空間だし
軽いイタズラ程度の扱いなんだろう


396以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/16(月) 19:44:25.98KhBoQK5/0 (1/1)

乙wこういう小ネタも大好きだw
色々笑ったけど個人的にはちゃんと察した十神が妙にツボってしまった。
さんざん他人の心理を解さないって言われてても俗世の欲は理解できるんだなぁと思うと


397以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/16(月) 20:19:47.48M9irzLE2o (1/1)

十神が理解できないのは自己犠牲とか無償の奉仕とかそっち系だけだからね


398以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/16(月) 20:29:46.290tA+g9qOo (1/1)

十神君だって思春期の男の子なんやで
愚民が…!とか言いながら本当は朝日奈ちゃんの胸をチラチラ見てんやで
そんで女の子と仲良い苗木君を見るたびにイチャイチャすんなや!とか思ってるんやで


399以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/17(火) 08:07:36.09XZ6Butd2O (1/1)

いやー十神財閥の御曹司だから、適度にいい女あてがわれてそうだぞ。


400以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/17(火) 21:20:54.80Spc0aSxlo (1/1)

財閥の後継者になってからは嫁候補を何人か集めて一緒に暮らすというエロまんが的展開
もしくはそれで絶対手を出さない少年漫画的展開か


401以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/17(火) 22:42:25.21l3mqxpRI0 (1/1)

おおうw前も思ったけど十神君人気すぎワロタw
あとは大天使さくらちゃんの魅力を分かってる男子がけっこう居てちょっと嬉しいわ

ここからシリアス移行するんですよねー分かってます。心の準備しとくよ…


402 ◆takaJZRsBc2015/02/22(日) 23:16:53.72gqE68cTz0 (1/4)


               ◇     ◇     ◇


「先生! 西城先生!」


校内の見回りをするKAZUYAに、背後から声が掛けられた。駆け寄ってきたのは不二咲だ。


「ん? 何だ、不二咲?」

「あの、最近忙しそうだったから言い出せなかったけど倉庫の……」

「……ああ、そうだったな!」


KAZUYAは笑顔で不二咲と一緒に倉庫に行くと、二人で色々なガラクタを持ち出す。
不二咲では手が届かない場所の物も、大きくて重い物もKAZUYAなら楽々と取り出して運べる。


「わあ、やっぱり西城先生は力持ちだねぇ!」

「大神に連戦連敗の俺が唯一勝てるものが腕力だからな……」


と言ってもうっかり手加減などしようものならあっという間に負けてしまう。それほどに彼女は強いのだ。


(朝日奈だってそこらの男よりよっぽど体力があるし、男の自分より女性の方が
 強いという事実が、ますます不二咲のコンプレックスを刺激してしまったのかもな……)


しかし、生まれもった体格だけは努力ではどうにもならないのだ。それ以外の方法で自信を
つけていくしかない。幸いにも不二咲には武器がある。自分はただ見守っているだけでいいだろう。


― 不二咲の部屋 PM7:43 ―


「ちょっとゴチャゴチャしてるかもしれないけど……」

「なに、桑田の部屋より遥かに綺麗だよ」




403 ◆takaJZRsBc2015/02/22(日) 23:24:50.82gqE68cTz0 (2/4)


不二咲の部屋は、どこを向いてもとにかくメカメカメカ機械……
机の上のモニターを筆頭に至る所に機械が置かれていた。


「さあ、始めようか」


KAZUYAが不二咲から頼まれていたこと。それは倉庫の機械類を部屋まで運ぶことであった。
ついでに、多少は機械の知識もあるKAZUYAが修理を手伝うことである。


「機械をいじっている姿を見ると、やはり男の子だなと思うよ」

「えへへ、そうかなぁ?」


不二咲は嬉しそうに笑う。自分でも運べる細々とした部品類は既に箱にいれて
用意してあり、それらの部品を広げながら二人は床で機械を修理していく。


「……僕ね、ずっと夢だったんだ」

「何がだ?」

「お父さん以外の男の人と、こうやって機械やパソコンをいじったりするの」

「確か、不二咲はその歳でもう企業と契約しているのだろう? それこそ
 メカニックやプログラマーの知り合いなんてたくさんいるんじゃないのか?」

「えっと、その人達は仕事上の付き合いだからどうしても気を遣っちゃうし……
 ……あと、僕の外見が女みたいだから女の子だと勘違いする人が多くて」

「ああ……」

「実際性別を隠して女子校に通ってたから訂正したくても出来ないし……ただでさえ理系の女の人は
 少ないのに女子高生プログラマーってことで尚更目立っちゃって、凄く嫌だったんだぁ」


中には変な目で見る人もいたし、と不二咲が付け加えるとKAZUYAは何とも言えない気分になる。


「お父さんもプログラマーだったな。こうやって、よく一緒に機械を触っていたりしたのか?」

「うん!」




404 ◆takaJZRsBc2015/02/22(日) 23:38:11.21gqE68cTz0 (3/4)


「君のお父さんに比べたら俺など全く役に立たないだろうな」

「そんなことないですよぉ! うちのお父さんてさ、すっごいそそっかしいんだから。
 時々部品を間違えて買ってきたりするし、全然頼りにならないし」

「何かあるとすぐ困った顔で『千尋、どうしよう?』なんて子供の僕に頼るし。
 先生の方が強いし格好いいしずっとずっと頼もしいんだから!」


珍しく強気な発言をする不二咲の姿に、確かな親子の信頼と繋がりを見てKAZUYAは微笑む。


「ハハハ、手厳しいな。だが、凄く優しそうだ」

「うん、優しいよ! ……女装のことも学校のことも、お父さんだから相談出来たんだと思う」

「ご両親は反対したりしなかったんだな」

「うん。僕が話した時、お父さんはそれこそ腰を抜かして驚いてました。
 それで、少し考えさせてくれないかって言って……当然だよね……」

『ご、ごめん千尋……大事なことだし、すぐにはちょっと答えられそうにないんだ。
 お母さんと相談するから、少しだけ時間をくれないかな……明日には、必ず言うから』

「それで、お父さんは何て言ったんだ?」

「うん……」

『昨日一晩お母さんと話したんだけど……お父さんとお母さんは反対しないことにしたよ。
 千尋が生半可な気持ちで言い出した訳じゃないって言うのはお父さん達もよくわかってるし、
 それで千尋が前向きになれるって言うのなら、それも一つの手段だと思う』

『周りからあれやこれや言われて気にするな、と言っても限度があるだろうしね。
 ……ただ、何があってもこれだけは絶対に忘れないで欲しいんだ』


いつも困ったような顔をしている弱気な父が、その時ばかりは真剣な目で息子を見つめていた。


『千尋は男らしさよりもっと大切な、周りをいたわる優しさを持ってるし、言い出したら
 聞かない芯の強さもある。千尋はいつだってお父さんとお母さんの自慢の息子なんだ』

『これから何があっても、どんな状況になっても――』




――どうかそのことだけは、いつまでも忘れないでいて欲しい。






405 ◆takaJZRsBc2015/02/22(日) 23:53:30.57gqE68cTz0 (4/4)


「そうか……」


さぞかし葛藤があったろうな、とKAZUYAは会ったこともない不二咲の両親を慮った。


「同級生にイジメられても女子校で自分を偽っていても、何とか
 耐えられたのは多分お父さんとお母さんが味方でいてくれたからなんだ」

「……正直、何でこんなことしちゃったんだろうって自己嫌悪に陥ったことは
 しょっちゅうあったよ。でも自分で決めたことだし、何があってもお父さんと
 お母さんは味方でいてくれる、なら僕も頑張らなきゃって思って……」

「それが支えだったんだな」

「うん……今はお父さん達に会えなくて凄く心細い。……でも、ここには先生がいるから」

「……俺は君達の家族代わりになれているだろうか」

「大丈夫だよ! みんなみんな先生のこと大好きだもん!」


その力強い返答にKAZUYAの心が温まった次の言葉だった。

……突き落とされたかのように、心が凍りつく。


「西城先生はこれからもずっと僕達と一緒にいてくれるよね?」

「…………ああ、勿論」

「約束だよ?」


さほど難しい訳ではないはずのその約束が、今のKAZUYAの身にはズシリと重くのしかかったのだった。



不二咲の分析能力が上がった。弱気と病弱さが下がった。
アルターエゴの性能が上がった。イベントアイテムを手に入れた。




406 ◆takaJZRsBc2015/02/23(月) 00:00:23.14nIwnG3Xc0 (1/6)


― 食堂 PM8:59 ―


(食堂が閉じる前に色々補給しておくか)


一見医者とは縁のなさそうな食堂だが、実は厨房には色々と役立つものがある。塩、砂糖は生理食塩水や
経口補水液の材料になるし、酒はいざという時消毒液代わりに使える。保健室の消耗品は稀に生徒達が
モノモノマシーンで手に入れてくるが、基本的に補給出来ないので代用出来る物は代用してしまうのである。


「あら、ごきげんよう」

「珍しいな」


食堂ではセレスが一人で紅茶を飲んでいた。


「娯楽室を占領されてしまったので、私はこちらに避難していると言う訳です」

「成程」


そういえば朝日奈達が遊んでいたし、自分もつい先程までそれに付き合っていたのである。
それ以上は特に気に留めず、厨房から必要な物品を手にKAZUYAが去ろうとした時だった。


「もし、少しお喋りでもしませんこと?」

「……俺で良ければ付き合うが」

(思えば、俺が様子を窺いに行くことはあるが向こうから声を掛けてくることはほとんどなかったな。
 こうやって声を掛けてくるようになったということは、それなりに好かれていると思いたいが)


誘われるままKAZUYAはセレスの向かいに座った。


「以前朝日奈さん達から聞いたことがあるのですが、朝食会の前はいつも先生のお話をみんなで聞くとか?」




407 ◆takaJZRsBc2015/02/23(月) 00:12:26.04nIwnG3Xc0 (2/6)


「ああ。雑誌代わりというか情報番組みたいな扱いだよ。ここにはテレビがないからな。
 俺の昔話が少しでもみんなの退屈凌ぎになってくれているなら幸いだ」

「西城先生は話題が豊富でいらっしゃいますものね」

「俺自身の知識は偏っているが、知り合いは多いからな。幸いなことに話すことには困らない」


そう、スポーツ選手から今流行の芸能人までKAZUYAにはたくさんの知り合いがいる。政治家や有力者から
果ては過疎地の老人、子供まで幅広く市井の人々と出会い話しているからこそ、世間知らずにならなくて済んだ。


「折角ですから、わたくしにも何か面白い話を聞かせてもらえませんか?」

「それは構わないが……」

(ウーム、安広が興味を持つ話題か……)


十人十色と言う言葉があるが、人の趣味や嗜好はそれぞれ違う。


(石丸は病院関連の話や具体的な治療内容について聞きたがるし、不二咲や大神は強大な組織との
 戦いの話が好きだ。朝日奈は人間関係の……主に恋愛関連に対する食いつきがいい)

(……だが、これらの話は安広は好きじゃないだろうな。彼女は派手好きだ。もっとこう、規模が
 大きくて壮大な話が好きそうだ。それに、外国かぶれだから異国の話しの方が良さそうだし)


KAZUYAは頭の中にいくつか候補を出しながら話し始めた。


1.バグラン公国で恩師・柳川を助けた話
2.シルバラで麻薬組織と戦った話
3.レーゲンスとの手術勝負
4.クイーン・アカデミア号での事件
5.中東の大国レビークでの手術
6.その他スーパードクターK44巻までの話で

KAZUYAが話したのは? ↓2




408以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/23(月) 00:15:50.77VMP6+o4MO (1/1)

4
ドミノ移植する話だっけ?


409以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/23(月) 00:23:47.425mx8+yvto (1/1)

4


410 ◆takaJZRsBc2015/02/23(月) 00:54:05.64nIwnG3Xc0 (3/6)


「もう四年も前の作品だが、尾津明二郎監督の『愛と無情の円舞曲(ワルツ)』を知ってるか? その年の
 日本アカデミー賞を総嘗めし、海外の著名な映画賞も受賞したから名前くらいは知っていると思うが」

「ええ。知っております。わたくしも見ましたわ」


見たことがある、というセレスにKAZUYAは少しばかり驚いた。


「……意外だな。映画は洋画、それも少し古いものを好みそうだが」

「あら、先生はわたくしの好みを熟知していらっしゃいますのね」

「雰囲気で何となく、な」

「確かにわたくし、あまり日本の映画は好みませんがあの映画は参考のために見ましたの。
 主人公の女性は華族の生まれで非常に優美ですし、舞台が豪華客船というのも気に入りましたから」


成程、日本にもかつては上流階級によるめくるめく華やかな世界があった。
そう言った古い時代の社交界はセレスの感性にも合ったのだろう。


「なら話が早いな。実はあの映画の撮影現場に俺もいたんだ」

「まあ」


今度はセレスが驚く番だった。


「たまたま居合わせたんですの?」

「いや、俺は主治医として乗り込んだんだ。主演の尾津美奈子のな」


尾津美奈子は監督である尾津明二郎の娘だが、重度の心臓病を患っていた。そのために女優業を
やめていたのだが、尾津の最高傑作は間違いないだろうこの大作のため、病を押して撮影に臨んだのだ。




411 ◆takaJZRsBc2015/02/23(月) 01:52:32.20nIwnG3Xc0 (4/6)


「確か尾津美奈子は病気だったはず。そのために演技では再現出来ないような繊細な表情や
 儚さを出せたとのことですが……その背後には西城先生がいらっしゃったのですね」

「監督が、身贔屓ではなく純粋に彼女でなければこの役は出来ないと豪語していたよ」

「ですが先生らしくありませんわね。病人にそんな無理をさせるなんて」


もう一月も共に暮らし、KAZUYAが何に怒り何に悲しんできたかをまざまざと見てきた
セレスにとって当然の疑問だ。KAZUYAはそっと目を伏せて静かに答える。


「俺は反対したんだがな。……彼女の病、心臓弁膜症は非常に重度だった。いつ大きな発作が起こっても
 おかしくない、それくらい危険な状態だった。彼女の病名を告げた時、船医から怒られたし呆れられたよ」


心臓弁膜症:心臓には血液の逆流を防ぐため四つの弁があり、それらが必要に応じて
       開閉しているのだが、その弁が変形したり機能不全を起こす病気のことを言う。
       

「……なら、何故?」

「監督が娘に無理強いしているだけだったら俺は意地でも船に乗せなかったが、尾津美奈子本人の
 強い要望があってな。俺が止めてもこの子はきっと乗るだろう、と。……やむを得なかったんだ」

「そうですの。……確かその撮影の時に事故がありましたわよね?」

「そうだ。事故で尾津監督は亡くなり、息子の尾津慎一も重傷を負った。俺は監督の心肺を慎一に移植し、
 慎一の心臓を美奈子に移植した。その後、慎一が立派に跡を引き継いであの映画は完成したんだ」




412 ◆takaJZRsBc2015/02/23(月) 02:08:09.70nIwnG3Xc0 (5/6)


「俺は尾津監督の命は救えなかった。――だが、あの親子が命を懸けて
 臨んだ作品を無事完成させることで、監督の魂もきっと救えたと信じている」

「……あの華やかで美しい映画の裏に、そんな事情があったとは思いませんでしたわ」


それは純粋な感想だった。美しい映画の裏側に存在した熱い人間ドラマも
非常に興味深かったのである。だが、セレスはもう一つ別のことを考えてもいた。


(平然と言いましたが、今の話ですと先生は一度に二箇所も移植をしたということになりますわね……)


しかも、うち一つは心臓と肺を丸々である。如何にセレスが素人であれど、
それが異常なまでに高度な技術であることは流石に理解出来た。


(流石超国家級の医師。……本当に、話をすればするほど死なせるのが惜しくなってくる人ですこと)

「とても興味深い話をありがとうございます」

「楽しんでもらえたようで何よりだ」

「ちなみに、豪華客船での船旅は如何でした?」

「正直それどころではなかったからね。機会があったらまた乗ってみるのもいいかもしれないな」

「正装してくださるならわたくしが付いて行ってさしあげてもよろしくてよ?」

「……それは御免こうむる」


豪華客船で行われた映画撮影の話は、セレスにとても喜んでもらえたようだ。が、


「ちなみに、四年前ではなく二年前の話では?」

「!! そ……そうだったか? 俺も多忙なものでな」


慌てて誤魔化したが、KAZUYAは内心ヒヤリとしたのだった。




413 ◆takaJZRsBc2015/02/23(月) 02:13:25.69nIwnG3Xc0 (6/6)


ここまで。腐川さんの友情スレに浮気してたら投下遅れてスマソ

1に安価スレは絶対無理だな。ではまた次回




414以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/23(月) 11:18:38.48jCD4vsnYo (1/1)

乙です


415以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/25(水) 21:12:46.58S4fYUNMJO (1/1)

御免こうむらなくてもよいではないかK

ところで患者に関する守秘をこういう状況下だからあえて必要に応じて公開するKの臨機応変性はやっぱりスーパードクターなんだなと真面目にコメント


416以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/25(水) 21:32:01.55G+naOlBio (1/1)

一般人ならともかく有名人がこんな大事故に巻き込まれたら新聞やニュースで騒がれるから
守秘義務も何もないんじゃない?現にセレスも知ってたみたいだし、とマジレス


417以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/26(木) 19:00:09.07EiMXtIe+O (1/2)

いやでもKのスーパードミノ移植までは報道されていないのではとマジレス


418 ◆takaJZRsBc2015/02/26(木) 20:38:12.10u8tZdUE20 (1/1)

>>415-417
現在日本では脳死患者からの臓器移植は可能となっていますが、連載当時は禁止されていました。
クイーン・アカデミア号がイギリス船籍だったからこそ可能な手術であり、更に言えばKAZUYAがその場に
いたからこその奇跡です。そんな様々な幸運が重なって助かった訳だし、亡き父の遺志を継いで映画を
完成させるというドラマティックな状況をマスコミが黙っている訳はありません

……というか、このSSではそういう設定だとお思いください。尾津監督を偲ぶ特番が何度も流れたり、
映画の制作秘話のドキュメンタリーが作られたり、慎一君もテレビや雑誌に何度もインタビューされて、
その度に「父から貰った命です!」なんて熱く語ったり……そんな感じ。Kの名前は伏せてると思いますが

ちなみに、レビークの場合は国名は出さないで話しましたね。バグランも、陰謀関連は大幅に
カットして話す予定でした。一般人に話したらまずいことは基本的に話しません。



419以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/02/26(木) 21:17:36.86EiMXtIe+O (2/2)

ふむ


420 ◆takaJZRsBc2015/03/01(日) 22:48:17.797NENg7kD0 (1/10)


               ◇     ◇     ◇


夜時間に入って少し立った頃、KAZUYAは脱衣所の長椅子に一人腰掛けていた。
目的の人物がやって来たのを見ると、立ち上がって出迎える。


「わざわざ呼び出してすまなかったな」

「それはいいんだけどさ。こんなところに呼び出して一体なんの用よ?」


気だるげな顔をして脱衣所にやってきた彼女は、不信感を隠しもせず中に入った。


「大事な話があってな」

「そうだろうね。あえてカメラのない場所を選んだんだし。早く終わらせてよね?」

「わかった。俺も回りくどいのは苦手だしな。単刀直入に言わせて貰おう」

「――俺は君を疑っている。江ノ島」

「!!」


KAZUYAから直々に呼び出しがかかったのだ。何かある、と身構えていた江ノ島だが
それでもまさかここまでハッキリ言われるとは思わなくて、意図せず目付きが鋭くなる。


「ずっと君の行動を見ていて、些か不自然な点がいくつか見受けられた」

「…………」

(どうする? 今こっちは丸腰だけど、殺す? 殺すだけなら別に不可能じゃない。
 ……でも、あれだけ警戒心の強い西城が何の手も打たずに現れるかな?)

(誰かに私が怪しいって伝えていたら……それに、マントに武器を仕込んでる可能性もある。殺すだけなら
 問題ないけど、もし一発でも攻撃を受ければ私が犯人だってバレる。それは盾子ちゃんは望まない)


実際彼女の判断は正しかった。超高校級のボディーガード三人がかりの連携攻撃をいとも簡単に
いなした彼女なら、殺すこと自体はさほど難しくはない。以前のKAZUYAなら手も足も出なかっただろう。




421 ◆takaJZRsBc2015/03/01(日) 22:54:17.537NENg7kD0 (2/10)


だが江ノ島は知らないが、最近のKAZUYAは違っていた。護身というレベルではなく、真剣に相手を
打ち倒すことを目的とした手合わせを何度となく重ねてきた。それも世界最強の生物相手に、である。
ここにきて、KAZUYAの対人格闘能力は飛躍的な上昇を見せていたのだ。

江ノ島を倒すこと自体は無理でも、武器さえあれば一矢報いる程度は出来る。


(それに、前に一度西城を殺そうって言ったらやめろって言われた。指示も
 出てないのに勝手に殺すのは盾子ちゃんの計画から外れる気もする。だけど……)

(……目が素人のものではないぞ、江ノ島)


江ノ島の目は、完全に獣のそれと化していた。一般人がおよそ考えることのない、相手を殺すか否かの
次元で逡巡しているのがKAZUYAにもひしひしと伝わってくる。背中にゆっくり冷や汗が流れた。


「……と言っても別に君が内通者だと断言する訳じゃない」

「! 当たり前じゃん! 何を根拠にそんなこと言うワケ? 言い掛かりも甚だしいんですけど!」

「あくまで可能性の話をしただけだ。俺とて生徒を疑いたくないからな」

「……で? 何が言いたいの?」

「君を信じさせて欲しい。アルターエゴがみんなの希望だと言うことはさっきも言ったな?」

「…………」

「君が内通者でないなら、これを狙ったりはしないはずだ」

「……当たり前じゃん。話は終わりでいい?」

「ああ。こんな時間にすまなかったな。もう戻っていいぞ」

「…………」


江ノ島は即座に部屋に戻ると机から無線機を取り出す。モノクマを呼んでも良いのだが、
直接声を聞いて話したかった。そして、本日二度目の連絡を行う。


「盾子ちゃん!」

『あ? 何よ、突然。ウザいから急用の時以外連絡してくんなって言ったでしょ?』




422 ◆takaJZRsBc2015/03/01(日) 23:01:03.087NENg7kD0 (3/10)


「急用なんだよ。実は……」

『へぇ~、ふーん』


察しの悪い姉に対し、賢すぎる妹はすぐさま気が付いた。


(残念な姉はアルターエゴでシステムがハックされちゃう、どうしようとか騒いでるけど
 西城はクラッキングなんて最初から狙ってない。恐らく内通者を炙り出すつもりね)


KAZUYAにとって、生徒の安全こそが最優先事項である。そのKAZUYAが勝算もなく黒幕に攻撃を
仕掛けるという綱渡りをするはずがない。何よりそれが目的なら秘密裏に行えばいいだけの話で、
内通者がいるとわかっていて情報を漏らす訳がない。つまり、アルターエゴは餌だ。


(残姉の正体はとっくにわかっててアタシにこの話が行くことも織り込み済み。その上で
 あえてお姉ちゃんが動けないよう事前に釘を刺し、他の内通者が動くのを待つ)

(このまま黙認すればアルターエゴの性能が上がりアタシは不利に。
 こちらが動けば誰が内通者なのか向こうにバレる、と……)


黒幕自らなりふり構わずアルターエゴを奪いに来る可能性もある。
他の内通者をけしかけて直接邪魔なKAZUYAを排除に来る可能性もある。

――それら全てを考慮した上で、それでも勝ち目のない勝負に出ているのだ。


(何でそんなことをするかって? 正攻法では私様に勝てないと薄々わかっているからだろう。
 普通の人間ならまずしない、1%の選択肢をわざわざ選んで自身の限界に挑戦している)

『フフフ……面白い。面白いではないか、人間!』

「え、な、なに?」

『西城のことはほっといていいよ』

「え? でも……」




423 ◆takaJZRsBc2015/03/01(日) 23:09:17.487NENg7kD0 (4/10)


『余計なことすんなって言ってんの!』

「盾子ちゃん……」

(思えば、このためにアタシはずっと種を蒔いてきたんだからさ……)


江ノ島盾子には昔からある悪癖があった。いや、江ノ島が江ノ島たりえるため、或いは
より良い絶望を得るための手段であり、彼女自身がゲームを楽しめるようにするためであった。
……それは、あえて自分に不利で相手に有利な状況を作ることである。

振り返れば、不可解ではなかろうか。図書室に学園閉鎖の知らせや未来の新聞を置いたのは彼女だ。
不二咲千尋が修理しアルターエゴを作ることを想定しながらパソコンを放置したのも、生徒が記憶を
取り戻す危険性を知りながら、写真や有益な情報を残したのも全て彼女の仕業だった。

何故江ノ島はそんなことをするのか?


(何年もかけて綿密に立てた計画が、取るに足らないミスで瓦解する……
 それって最高に絶望的じゃない?! 計画が上手く行ったら行ったで絶望的だし)


ついでに言うと、彼女にとって最も致命的となる二階男子トイレの隠し部屋もわざと放置した。
この計画が成功するのかしないのか、もはや超高校級の分析力を持つ彼女にすら予想出来ない。

その予測不可能な命を懸けた“せめぎあい”こそ、江ノ島盾子が魂から求めていたものだった。


(いいじゃんいいじゃん! 本っ当ーにあんたって最高だよ、西城! いちいちアタシの予想から
 外れたことをしてくれる。愚かな賢者と知的ぶる馬鹿は嫌いだけど、賢い馬鹿は嫌いじゃないわよ?)


彼女の行動に理由など必要ない。面白ければそれでいい。

……つまるところ、江ノ島の頭脳は優秀過ぎたのだ。彼女がその気になれば、KAZUYA含めここにいる
人間を意のままに操ることも絶望させることも容易く出来る。しかし、それの何が面白いのだろうか。
勝ちの決まったゲームなど、ゲームではなくただの作業だ。飽きっぽい彼女は作業が何より嫌いだった。




424 ◆takaJZRsBc2015/03/01(日) 23:19:35.537NENg7kD0 (5/10)


余談だが、江ノ島は実生活でもゲームが好きである。コンピューターゲームはしばらくやると
アルゴリズムを分析してしまうため、ダイスを振るとかトランプとかそういった運の要素が強い
アナログのゲームが好きだった。如何に江ノ島といえど、純粋な運では普通に負けることもあるのだ。


(うぷぷ。某厨二病の先輩風に言うと特異点て奴かな? 先生はボクの特異点になってくれるのかな?)


超分析能力を持つ江ノ島が一目置いている才能は現在三つ。

一つは葉隠の持つ占い能力、二つ目はセレスの天運とも呼べるギャンブル能力、最後が苗木の幸運である。
特に、前二人と違い苗木は幸運どころか何をやらせても不運と呼べる部類なのだが、そんな苗木が何故か
ここぞという時には悪運を発揮して助かるのだ。苗木の幸運不運だけは江ノ島にも読めない。


(特に運が良い訳でも超常的な能力がある訳でもない、ただちょっとデカくて優秀なだけの医者。
 そいつが一体何を武器にこのアタシに立ち向かってくるのか――しかと見届けてやろうじゃない!)


江ノ島は薄暗いモニタールームの中、一人嗤う。だが、戦刃むくろに江ノ島の考えは難し過ぎた。


(なにを考えてるの、盾子ちゃん……私には、わからないよ……)


妹が気まぐれなのは重々承知しているが、端から見れば破滅願望のようにしか見えない。
いや、それは間違いではないのだ。江ノ島にとって勝ち負けはさほど重要ではないのだから。


(わからない。わからないけど……盾子ちゃんは私が守るからね……
 計画だって遂行してみせる。だって、盾子ちゃんの味方は私だけだから……)


双子の姉妹は未だすれ違う――。




425 ◆takaJZRsBc2015/03/01(日) 23:26:52.117NENg7kD0 (6/10)


― コロシアイ学園生活三十四日目 保健室 PM3:24 ―


何も問題が起きないまま、日々だけはただ風のように過ぎて行った。


K「とりあえず、苗木は仮免だな」

苗木「えっ?! 何がですか?」

K「もうお前は一人で注射してもいい」

苗木「えっ」

石丸「おめでとう、苗木君! 一足先に卒業だな!」

K「注射はとにかく数と経験が物を言う。誰でもいいから頼んでやらせてもらえ」

苗木「……本当に大丈夫なんですか?」

K「怖いのはわかるが、やらねばいつまで経っても上手くならんぞ? ほら、行ってこい」

苗木「は、はい。それじゃあ……」

K「何度も言っているが、同じ注射器を使い回すなよ。針の扱いには気をつけろ。あと……」

苗木「わかってます」


KAZUYAの注意を背に、苗木は道具を持って廊下に飛び出した。


苗木(仮免かぁ……とりあえず、仲の良い桑田君に頼もうかな。女の子の腕に
    傷をつけるのは気が引けるし、あとは大和田君とか石丸君とかを回して……)

舞園「なーえーぎーくん!」

苗木「うわっ、舞園さん!」

舞園「今の時間は実習の時間じゃないんですか?」

苗木「実はね、注射については一応仮免をもらって……外で練習してこいって言われたんだ」




426 ◆takaJZRsBc2015/03/01(日) 23:32:22.337NENg7kD0 (7/10)


舞園「凄いですね! じゃあ、記念すべき第一号は是非私にしてください!」

苗木「舞園さんに?! ……い、いやいやいや! 女子はまだ駄目だよ! うっかり傷になったらまずいし」

舞園「私は気にしませんよ?」

苗木「僕は気にするよ! と、とにかく今度ね! もう少し上手くなったらやるから!」

舞園「残念です……」プー

苗木(あ、その顔ちょっとかわいい)


・・・


ちょうど食堂に男子が集まっていたため、苗木の武者修業が始まる。


桑田「痛くすんなよ? 痛いのヤだからな?」

苗木「頑張るよ……あのさ、失敗しても怒らないでね?」

桑田「怒らないけどよ……あー、イヤだー。俺注射嫌いなんだよな。イヤだー」

大和田「ガタガタ言うな。男だろ」

桑田「それとこれとは別問題だっての!」

苗木(僕も素人にされるのは嫌だしな……)

葉隠「よし、上手く行くか占ってやろうか? 今なら特別料金で……」

桑田「殴るぞ!」


判定

このレスのコンマが奇数なら成功。偶数なら失敗




427以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/01(日) 23:35:17.449dXkv2ml0 (1/1)

おお、ゾロ目だ!完璧だ、苗木君!


428 ◆takaJZRsBc2015/03/01(日) 23:41:09.287NENg7kD0 (8/10)


ゾロ目クリティカルで次の大和田は自動成功


苗木「だ、大丈夫? 痛くない?」

桑田「いや、そりゃ多少は痛いけど……割りとすんなり出来たんじゃね?」

山田「手付きがちょっとプロっぽかったですね」

大和田「次は俺か。よし、やってくれや!」

不二咲「大和田君、格好良いよ!」

大和田(本当は結構ブルってんだけどな。センセイがやんならともかく苗木だし)

山田「実は内心ビクビクしてたりして」

大和田「う、うるせーよ!」

葉隠「声震えてんべ」


・・・


大和田「へっ、大したもんじゃねえな」

不二咲「次は僕だね!」

苗木「不二咲君は血管細そうだからなぁ。ちょっと自信ないんだけど……」


判定

このレスのコンマ末尾が7以上で成功




429 ◆takaJZRsBc2015/03/01(日) 23:47:34.437NENg7kD0 (9/10)


・・・


苗木(良かった……不二咲君のは本当に自信なかったんだけど、すぐに入った……)

不二咲「凄い凄い! 三連続成功だね!」

桑田「ちょ、マジかよ」

大和田「すげーな……」

山田「これは、苗木誠殿を苗木誠医師と呼ぶ日も近いか?」

苗木「や、やめてよ。たまたま運が良かっただけだからさ」

葉隠「じゃ、次は俺だな」


判定

難度の高い不二咲を成功したので少しボーナス
このレスのコンマ末尾3以上で成功




430以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/01(日) 23:54:06.90NxY6W55vO (1/1)

幸運すごい…


431 ◆takaJZRsBc2015/03/01(日) 23:54:34.217NENg7kD0 (10/10)


葉隠「お、行った行った」

苗木「不二咲君の後だから大分楽に思えるよ。先生も言ってたけど、
   やっぱり数をこなすが一番大事なんだな―と思う」

山田「次はいよいよ僕ですか」


ズーン!

山田の太い太い腕を差し出される。


苗木(うっ……凄いプレッシャーだ。血管が影すら見えない……)


ラスボス山田

判定

このレスのコンマ末尾8以上




432 ◆takaJZRsBc2015/03/02(月) 00:06:24.94Deguladp0 (1/2)


苗木「…………」ダラダラ

苗木「えっと、手を握ったり開いたりしてもらっていいかな?」

山田「こうですかな?」グーパーグーパー

苗木「ちょっとマッサージするね?」モミモミ

大和田(めっちゃ険しい顔してんな……)

葉隠(山田っちの腕は太いからやりづらいんだろうなぁ)


苗木はKAZUYAに教わった知識を総動員してみるが、一向に血管は浮き上がって来ない。


苗木(血管の位置が全くわからないよ! どうすればいいのさ、こういう場合?!)


うっかり神経に突き刺さないように、恐る恐る刺してみる。だが、当然針は当たらない。


山田「あのー、苗木誠殿?」

苗木「う゛っ! あ、あの、その……」

山田「一度刺し直してみるのがいいかもしれませんなぁ」

苗木「……うん」


その後、もう二回やらせてもらったが一向に血管は見つからなかった。


苗木「ごめん……三つも穴が出来ちゃった……」

山田「いえいえ。実は、毎年健康診断のたびにこんなことがあるので慣れっこですよ」

不二咲「次はきっと上手くいくよ!」

桑田「その前に、ブーデーは少しやせろ」


最終判定

このレスのコンマ末尾が苗木の現在の実力
四人成功したので+4する。MAXは10




433 ◆takaJZRsBc2015/03/02(月) 00:15:55.47Deguladp0 (2/2)


苗木君の現在の実力はレベル8(かなり器用な部類。実技は全体的に得意)
物凄く妥当な所ですね。実力的に山田君はヘマして欲しいなと思ってたらドンピシャ

あと、二章までのKAZUYAは愚かな賢者でした。今後どうなるかは乞うご期待

今日はここまで。




434以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/02(月) 00:21:47.83JbmLpdn9o (1/1)

乙です


435以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/02(月) 07:13:37.59Eej9l6iY0 (1/1)

ビックリするほど運が良くてウケる


436以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/02(月) 10:08:10.97JCsXOqv3O (1/1)

江ノ島盾子(妹)が範馬勇次郎に何をしても敵わなくて滅茶苦茶に犯されるエロ同人漫画が読みたい


437以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/02(月) 13:40:10.47onMI1MJco (1/1)

よし、じゃあ盾子ちゃんが軽視してる才能強化して一泡吹かせてやろうぜ!

同人作家とか


438以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/02(月) 16:33:11.460rm2vNdCo (1/1)

エロが世界に希望をまき散らす


439以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/03(火) 09:11:59.35OTuc29UH0 (1/1)




440 ◆takaJZRsBc2015/03/08(日) 23:24:44.83z0nGNISB0 (1/7)

>>437
意外かもしれませんが、江ノ島さんは芸術系の才能を割りと高く評価してると思いますよ
綺麗な絵や売れ線の物語が必ずしもヒットする訳じゃありませんからね
山田君は二次創作なので腐川さんよりは少し評価落ちちゃうけど


さて、この間イベントアイテムを手に入れたので今回は番外編行きます
本当はもっと色々まったりしてたいけど、あんまり焦らす訳にもいかないし今回で最後だろうなぁ…



441 ◆takaJZRsBc2015/03/08(日) 23:30:27.63z0nGNISB0 (2/7)


― 番外編  腐川復帰 & 舞園快気祝いパーティー ―


朝日奈発案の元、腐川の復帰と舞園の快気を祝うドーナツパーティーが開かれることになった。
厨房から何やら良い匂いが漂ってくる。匂いにつられてKAZUYAは中を覗いてみた。


K「とても良い匂いがするな。どれ、俺が味見でもしてやろうか」

朝日奈「あー! 先生ダメー。まだみんなで作ってる最中なんだから!」

K「すまんすまん」フフ

舞園「出来たらちゃんと呼びに行きますよ」

霧切「不二咲君も手伝ってくれるって言ったけど、今日は女子だけで作業しているの」

K(安広はいないようだがな……まあ、あの子は仕方ないか)

江ノ島「お菓子作りとかあんまやんないけど、たまには悪くないかもねー」

腐川「ア、アタシも作っているのよ……! こんなことをするの、初めてだわ!」

K「それは良かったな」ニコ

腐川「はうっ(い、今アタシに笑いかけた?! 笑いかけたの?!)」

大神「という訳で、厨房はただいま男子禁制となっております。また後ほど」

K「わかった。楽しみにしているぞ」


・・・


不二咲「先生! 今日のパーティーでアレを……」

K「俺も同じことを考えていた。準備しておく。任せておけ」


KAZUYAはニヤリと笑うと荷物を取りに校舎へ向かったのだった。




442 ◆takaJZRsBc2015/03/08(日) 23:34:38.55z0nGNISB0 (3/7)


               ◇     ◇     ◇


朝日奈「という訳で、腐川ちゃんの復帰と舞園ちゃんの手の怪我が治った記念パーティーだよ!
     いろんな種類のドーナツ用意したから、じゃんじゃん食べちゃってね!」


机の上にはよりどりみどりのドーナツやお菓子類が山のように置かれている。


山田「おおおおお! まさしく僕のためのパーティーみたいですな!」

セレス「今、朝日奈さんが腐川さんと舞園さんのためと思い切り言っていましたが」

大神「お主、これ以上太ったら流石に不味いのではないか……?」

葉隠「こりゃすげー。ドーナツ屋みてえだべ」

江ノ島「おかわりもあるよ!」

大和田「舞園、手の怪我治ったんだってな。良かったじゃねえか」

舞園「ありがとうございます。綺麗に折れていたみたいで、上手くくっつきました」

桑田「そっか。……正直心配だったんだ。後遺症とか残ったらどうしようって」

舞園「仮に残ったとしても自業自得ですから、桑田君を恨んだりなんてしませんよ」

桑田「そうは言ってもなぁ……」

苗木「今日は楽しいパーティーなんだから、そういう話はなしにしよう。ね?」

石丸「そうだ! パーティーは楽しむのが義務だぞ! この企画をしてくれた朝日奈君に感謝だな!」

十神「…………」ムシャムシャ

十神(チッ、愚民共が作ったというが……味は思ったほど悪くない)

江ノ島「あ、それ腐川が作ったやつだよ」

十神「?! ゴホゴホッゴホッ!」

江ノ島「冗談だって。どんだけ嫌ってんのよ、あんた……」

霧切「どう、ドクター? お味のほどは」

K「俺はドーナツというのは甘いし脂っこいしで元々そこまで好きでもないんだが、
  不思議なことにみんなが作ったと聞くととても美味しく感じる。これもプラセボかな?」フッ


そんな風にしばらく談笑していたが、KAZUYAが手を叩いて全員の注目を集めた。




443 ◆takaJZRsBc2015/03/08(日) 23:39:19.80z0nGNISB0 (4/7)


K「今日は不二咲から何か連絡があるみたいだぞ」

不二咲「エヘヘ。実はねぇ、その前にまずアレを見てもらいたいんだけど」

苗木「そういえばテレビがあるね」

桑田「電源入れても砂嵐しか映んなかったけどな」

舞園「確か音楽室に置いてあった物のはずですが、何故食堂に?」

K「俺が運んだんだ。不二咲が倉庫で見つけたある機械のためにな」

葉隠「ある機械ってあれか。なんかどこかで見たことあるような」

不二咲「カラオケマシーンだよ! 最初は壊れてたんだけど、この間先生と一緒に直したんだぁ」

山田「おお! カラオケ、とな。いいですなぁ。是非みんなで歌いましょう!」

朝日奈「よーし! じゃあ今日は一日カラオケ大会ね!」

セレス「仕方ありませんわねぇ。そんなにわたくしの美声が聞きたいのですか」

十神「くだらん。俺は興味ない」

大和田「そんなこと言ってよ、自信ねえだけじゃねえの?」

十神「そもそも俺は音楽番組などという低俗な番組は見ない。だから曲も知らん。じゃあな」ガタン、スタスタ

腐川「あ、びゃ、白夜様! えーと、アタシも歌とかそういうのは……」

霧切「……私も人前で歌うのはちょっと」

大神「我もだ……」

舞園「大丈夫ですよ! 一人で恥ずかしいなら一緒に歌いますから!」

朝日奈「折角だし参加しようよ!」

苗木「うん! みんなで歌うからさ。きっと楽しいよ!」

葉隠「だべ。盛り上げ役は俺に任せろ!」

腐川「みんなで一緒に……これも初めてだわ」

霧切「私、日本の歌はあまり知らないのだけれど……」




444 ◆takaJZRsBc2015/03/08(日) 23:45:13.17z0nGNISB0 (5/7)


桑田「なにお前? 洋曲派? 気が合うじゃん」

苗木「霧切さんは帰国子女らしいよ」

霧切「正確にはちょっと違うけど……まあそれでいいわ」

不二咲「外国の有名な歌も入ってるから大丈夫だよぉ!」

霧切(断りづらい雰囲気ね……)

大神「諦めよ、霧切。我も腹を括った」ハァ

江ノ島「カラオケかぁ。久しぶりだな……」

江ノ島(昔、みんなにムリヤリ引きずられて行ったっけ。……懐かしいな)

石丸「せ、先生! 僕、生まれて初めてカラオケをします!」

腐川「ア、アタシもよ……う、うふふ」

K「二人共、良かったじゃないか」ニコッ

石丸「しかし、どうすれば……僕は歌なんて国歌と校歌と唱歌しか知らない!」

桑田「お前なぁ……」

舞園「唱歌も入ってるから大丈夫ですよ。年配の方と一緒にカラオケに行くと、
    母校の校歌を歌ったり唱歌を歌う方もよくいらっしゃいますから」

石丸「そ、そうか。それは良かった!」

大和田「これを機会に覚えろよ!」

山田「それでは、第一回希望ヶ峰学園カラオケ大会開幕~!!」

桑田「なーにお前が指揮ってんだよ、ブーデー」

K「まあ、いいじゃないか」

朝日奈「順番どうする?」

葉隠「時計回りでいいんじゃねえか?」

桑田「よーし! なら俺がトップバッター行くぜ!」

朝日奈「いけいけー! イェーイ!」




445 ◆takaJZRsBc2015/03/08(日) 23:50:39.48z0nGNISB0 (6/7)


The Damned[ LOVE SONG ]


桑田「Just for you, here's a love song~♪」

不二咲「やっぱり上手いねぇ」

腐川「ふ、ふん。あいつ、意外とやるじゃないの……」

石丸「そうか。腐川君はこの間のパーティーにいなかったから聞いていないのか。
    桑田君はとても歌が上手いんだぞ。この間は舞園君とデュエットしていた」

桑田「It's okay~♪ ……どうよどうよ? 俺の歌? デビルかっけーだろ?」

K「ウム、良かったぞ。意外と発音が良かった」

桑田「そこ?! 洋曲をかっこよく歌うために英語だけはちょっとだけ頑張ってるからな!」

K「頑張っているといっても、どうせギリギリ赤点回避とかそのくらいだろう」

桑田「ギク。なんでわかんだよ!」

葉隠「おーし、次は俺だべ!」


ゆず[ 夏色 ]


苗木「へぇ、意外と爽やかな曲歌うんだね」

葉隠「意外とは余計だべ。俺だってな、ちゃんと盛り上がる曲選ぶんだって」

大和田「葉隠のゆずか……まったくイメージに合わねえな」

葉隠「この長い長い下り坂を 君を自転車の後ろに乗せて
    ブレーキいっぱい握りしめて ゆっくりゆっくりくだってく~♪」

セレス「葉隠君にしては上手いですわね」

江ノ島「葉隠にしてはね」

葉隠「さっきから俺の扱い酷くねえ?!」

不二咲「上手だったよ!」

霧切「葉隠君が格好いいと反応に困るということがわかったわ」

葉隠「ひ、ひでえ。もう次行ってくれ……」




446 ◆takaJZRsBc2015/03/08(日) 23:56:27.31z0nGNISB0 (7/7)


朝日奈「じゃあ次は私! さくらちゃんも一緒に歌お!」

大神「ウ、ウム」ドキドキ


浜崎あゆみ[ SEASONS ]


山田(こ、この選曲は……?!)

葉隠(オーガが浜崎あゆみを歌うとは……)

大和田(ちょっとは曲の雰囲気考えろよ、朝日奈!)

桑田(ヤベェ、なんかヤベェって……)

朝日奈「今日がとても楽しいと 明日もきっと楽しくて~♪」

大神「そんな日々が続いてく そう思っていたあの頃~♪」

桑田「あ、あれ?」

苗木(意外と上手いぞ、大神さん?!)

江ノ島(大神さんは見かけによらず歌える人なんだよね。音程は外さないし発声もしっかりしてるし)

朝日奈「今日がとても悲しくて 明日もしも泣いていても~♪」

大神「そんな日々もあったねと 笑える日が来るだろう~♪」

大和田「良かったじゃねえか!」

腐川「お、思ったより下手ではなかったわよ」

朝日奈「あはは。ありがと」

大神「組み手より緊張するな……」

不二咲「素敵だったよぉ!」

K「ああ。自信を持ってもっと歌ってみろ」

苗木「うん。もっと色々歌ってみようよ!」

大神「ほ、誉め過ぎだお主ら……」カァァ

舞園「照れてる所が可愛いですね♪」




447 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 00:04:40.10YviZtWOH0 (1/12)


石丸「次はいよいよ僕だな……選曲はこれだ!」


滝廉太郎[ 荒城の月 ]


桑田「唱歌かよ!」

葉隠「またえらい渋いのを選んだもんだなぁ……」

苗木「仕方ないよ。今の曲は全然知らないんだから」

霧切「舞園さんの曲ならこの間散々聞いたのだから歌えるのではないかしら?」

セレス「やめて下さい。アイドルの曲を歌っている石丸君を想像するだけで寒気がしますわ」

桑田「ああ、うん……そうだな……」

腐川「ゾッとするわね」

大和田「お前ら少し黙れ!」

石丸「春高楼の 花の宴~♪」

山田「おお、音痴キャラかと思えば普通に上手い」

桑田「なにこいつめっちゃ上手いんですけど……。しかもやたら良い声してんのがなんかムカつく」

K「そこは素直に誉めてやったらどうだ……」


普通に音楽の授業の一幕のような空気になったが、本人が楽しげなのでみんなは見守ってあげた。


朝日奈「いい声してんじゃん。良かったよ」

石丸「ウム! 腹の底から声を出すというのはやはり気持ちがいいものだな!」

不二咲「石丸君ならマイクなしでも行けちゃうね」

大和田「っしゃあ! 次は俺だぞ!」

石丸「兄弟! 良い所を見せてくれ!」

腐川「選曲は……プッ、不良の定番ね」

大和田「好きなんだからいいだろ!」




448 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 00:11:49.82YviZtWOH0 (2/12)


尾崎豊[ 卒業 ]


大和田「夜の校舎 窓ガラス壊してまわった~♪」

石丸「?! な、なんという歌詞だ! 風紀を乱している!」

苗木「あ、あのさ! 歌だからね? 実際の話じゃないから」ハハ

大神「実際にはやれないからこそ激しい思いを歌に託しているのだ。芸術とはそういうものだろう」

石丸「……成程、それが表現と言うものなのだな。僕はまた一つ賢くなったぞ!」

大和田「この支配からの卒業 闘いからの卒業~♪」

K「良かったぞ」

不二咲「うん、男らしくて格好良かったぁ!」

石丸「ウム! 見事な歌いっぷりだ」

大和田「ま、まあな」テレテレ

桑田「…………」

桑田(こいつら元の曲知らないからわかってないだろうけど、ビミョーに音ズレてたぞ。
    あからさまな音痴じゃなくて、ホントに絶妙なズレ方だったけど……)

江ノ島「次はアタシね!」


舞園さやか[ モノクローム・アンサー ]


舞園「あ、私の曲を選んでくれたんですね」

葉隠「本人の前で歌うなんてすごい自信だべ!」

江ノ島「まあね~」

江ノ島(実はレパートリーがほとんどないから、一番最初に覚えた曲選んだだけなんだけど……)

江ノ島「モノクロームな視界 きっと私だけカラフル はっきりしない そこも好きよ~♪」

山田「……あれぇ?」

大和田(ヘタってほどじゃねえが、江ノ島はもっと上手いイメージあったんだけどな)

苗木(江ノ島さんには悪いけど、思ったより普通かな)




449 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 00:17:22.26YviZtWOH0 (3/12)


江ノ島「ど、どうだった?」

大神「良かったぞ」

K「ああ。少し緊張していたようだが」

江ノ島「緊張してたのわかっちゃった? アタシもまだまだだな~。アハハ」

セレス「次はわたくしですわね」

江ノ島「どうせアリプロとかいうヤツでしょ?」

セレス「勿論、わたくしに相応しい華やかで退廃的な……」


カチャカチャ。


山田「よしっ! フゥ」キラキラ☆

セレス「って何勝手に入れてるんだゴラァアアアアア!」

山田「ブヒィィィ! 是非セレス殿に歌って欲しい歌があったのです!」

セレス「しかもアニソンじゃねえか、トンカツにすんぞブタあああああ!」

朝日奈「あ! この曲知ってる! 昔凄い流行ったやつだよね。私、好きだな。歌ってよ!」

舞園「私も好きでした。ヒロインがセレスさんの声と近いですし、是非聞いてみたいです」

不二咲「女の子向けのアニメだったけど、ロボットとか出てきて
     アクション要素が多かったから僕も見てたなぁ。良い曲だよね」

山田「フフフ、アニソン界でも名曲に入る部類ですな」

セレス「…………。いいでしょう。そこまで言うなら特別に歌って差し上げますわ」

苗木「やった! セレスさんの声で聞きたかったんだよね」

桑田(つーか知ってんだな……)


田村 直美[ ゆずれない願い ]


セレス「止まらない未来を目指して ゆずれない願いを抱きしめて~♪」

腐川「なに、こいつ……上手い……?!」

霧切「いつ聞いても綺麗な声ね」




450 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 00:21:51.68YviZtWOH0 (4/12)


江ノ島「ムカつくけどセレスの歌はガチ。カラオケ行くと大体上位争いは
     舞園とセレスとじゅんk……アタシになりそうだよね! アハハ!」

朝日奈「いつかみんなで行きたいねー!」

苗木「次は僕だけど、僕のもいれちゃったの?」

山田「ご安心くだされ! この曲は絶対知っているはずです!」

苗木「……ああ、確かに。これなら歌えるや」

山田「主人公が苗木誠殿とそっくりの声なので是非歌って欲しかったのです!」ムフッ!


高橋 洋子[ 残酷な天使のテーゼ ]


苗木「残酷な天使のように 少年よ神話になれ~♪」

舞園「苗木君、上手ですね!」

桑田「ちょ、マジかよ……苗木のやつ、プロ級なんだけど」

葉隠「おお、本当にそっくりだな。……ハッ! 閃いた。苗木っちの歌を録音してファンに売れば……」

霧切「ねえ、葉隠君……わかってると思うけど、それはれっきとした詐欺だからね?」

K「……お前、一度警察の世話になるか? なんなら知り合いを紹介してやる。とびきり怖い奴をな」

葉隠「も、もちろんジョークに決まってんべ! は、ははは……!」

桑田「次はブーデーか」

大和田「どうせアニソンだろーけどな」

山田「チッチッチィッ! 最近のアニソンは一流のアーティストが歌っていることも
    ざらにあり、もはやアニソンだからと言って不当な差別を受ける謂われはない!」

不二咲「えぇっ! これを歌うの?!」

山田「拙者の本気を見よ!」


B'z[ ギリギリchop ]


山田「ギリギリ崖の上を行くように フラフラしたっていいじゃないかよ~♪」

苗木「こ、これが山田君の本気……!」

朝日奈「え、ウソ?! ちょっと見直したかも」




451 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 00:29:18.30YviZtWOH0 (5/12)


大神「フム、腹から声が出ているな」

舞園「この曲を歌いこなすのはとても難しいと思いますよ……」

山田「どうですどうです? 僕も喉にはちょっとばかり自信がありまして(イケメンボイス)」

K「人は見た目によらないとはこのことだな」

大和田「今までのお前はなんだったんだって思うくらい上手かったぜ!」

山田「まあ、それほどでもありますが」キラーン

苗木「いや、微妙にけなしてるよねソレ?!」

腐川「ちょっと……この流れでアタシに歌えって言うの?! や、やっぱり罠だったんだわ……
    アタシを祝うとか言って、本当はアタシを晒し者にするために……!!」グギギ!

苗木「ち、違うよ腐川さん! そんなことないって!」

K「別に下手でも笑ったりなんかしないさ」

朝日奈「そうそう、こういうのはノリが大事なんだから! なんなら私も一緒に歌う?」

腐川「じょ、冗談じゃないわ。何が楽しくて女同士でデュエットしなくちゃいけないのよ……」

石丸「腐川君! 僕も君と同じ初めてのカラオケだが、カラオケは楽しいぞ!」

腐川「唱歌を歌った奴に励まされてもね……わ、わかったわよ。歌えばいいんでしょ、歌えば?!」

大和田「で、なに歌うんだ?」

セレス「全く想像つきませんわね」

山田「こ、この曲は……!」


松任谷 由実[ 春よ来い ]


腐川「淡き光立つ にわか雨 いとし面影の沈丁花~♪」

桑田「まさかの春よ来い……」

葉隠「でも、結構いいんじゃねえか?」

霧切「そうね。初めて聞いたけど素敵な曲だわ」

腐川「春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに 愛をくれし君の なつかしき声がする~♪」

K「なかなか情感がこもっていたぞ」

腐川「あ、当たり前よ。アタシにも春が来て欲しいもの! 来い、アタシの元にも来い……!!」ハアハア

(……切実だ)




452 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 00:34:43.56YviZtWOH0 (6/12)


舞園「次は霧切さんですね!」

霧切「有名な曲だから多分知ってると思うわ」

石丸「英語の曲か」

江ノ島「これはアタシも知ってる(部隊の人がよく聞いてたから)」


Whitney Elizabeth Houston[ I Will Always Love You ]


山田「有名なんですか? 全然聞いたことありませんけど……ってこれは!」

霧切「And I will always love you Will always love you~♪」

葉隠「ああ、あれか! エンダアアアイヤアアアアで有名な」

朝日奈「霧切ちゃん、素敵ー!」

セレス「ボディガードという映画で有名になった曲ですわね」

霧切「緊張したわ……」

桑田「え、マジ? まったくわかんなかったぜ? つーかすげー上手いじゃん」

K「綺麗な声だったぞ」


誉められると、実は満更でもないのか少し赤い顔をしながら霧切は呟いた。


霧切「……たまにはカラオケも悪くないかもしれないわね」

苗木「次は舞園さんだね。何を歌うの?」

舞園「持ち歌でもいいんですけど、前回のパーティーでも歌ったのであえて違う人のものを」


RAMAR[ Wild Flowers ]


舞園「急に泣き出した空に声を上げ はしゃぐ無垢な子供達~♪」

苗木「いつもと雰囲気が違うね」

朝日奈「男の人の歌を歌う舞園ちゃんて新鮮かも」




453 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 00:44:26.10YviZtWOH0 (7/12)


舞園「信じること誰かに伝えたい この唄にのせて~♪」

大神「このような歌も歌えるのだな」

舞園「はい。アイドルだからっていつも同じような曲じゃ練習になりませんから。新天地を目指しました」

山田「次は不二咲千尋殿ですな。ちーたん! ちーたん!」

不二咲「わっ、期待しないで……声小さいかも……それに僕、あんまり上手くは……」

K「大丈夫だ。みんなちゃんと聞いているぞ」

石丸「みんなで応援するから頑張りたまえ!」

大和田「行ってこい」

不二咲「う、うん。じゃあ、頑張るね」


SMAP[ 世界に一つだけの花 ]


不二咲「花屋の店先に並んだ いろんな花を見ていた
     ひとそれぞれ好みはあるけど どれもみんなきれいだね~♪」

朝日奈「不二咲ちゃん、可愛いー!」

山田「かーわーいーいー!」

石丸「…………」

不二咲「小さい花や大きな花 一つとして同じものはないから
     NO.1にならなくてもいい もともと特別なOnly one~♪」


パチパチパチパチ! ヒューヒュー!


不二咲「ど、どうだったかなぁ?」

K「良い歌だな」

石丸「……うっ、ううっ、ううぅうぅうう!」ボロボロ

桑田「え、なに?! お前マジで泣いてんの?!」

大和田「どうした、兄弟?! 不二咲の歌に感動したのか?」

石丸「それもある。恥ずかしがりながらも一生懸命歌う不二咲君の姿は非常に感動的だった。
    だが一番の理由は歌詞だ! この間先生に言われた言葉を思い出して、つい涙腺に……」

苗木「凄く良い歌詞だよね」




454 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 00:48:24.10YviZtWOH0 (8/12)


朝日奈「私達みんな一人一人違ういいところがあるんだもんね!」

舞園「腐川さんもですよ?」

腐川「ア、アタシィ?! アタシなんて、小説書くしか能がないし……」

K「そんなことはない。想像力があるということは周りの人間の気持ちも
  考えられるということだろう? 辛い経験もいつかは肥やしになる」

腐川「あ、あんた達はアタシを買い被り過ぎよ! アタシなんて……」

江ノ島「はい、ウジウジはそれで終了~」

セレス「好意は素直に受け取っておくものですわ」

葉隠「ま、タダより高いもんはねえけどな!」

朝日奈「葉隠! あんたねぇ……」

大神「懲りぬ男だ……」

苗木「あ、みんな。まだ歌ってない人がいるよ」

山田「そうだ! 大トリが残っているではないですか!」

K「? もう二周目だろう?」

霧切「ドクターが歌ってないわ」


ガタ!


K「いや! その、俺は無理だ!」

桑田「曲知らねーなら石丸みたいに唱歌でいいじゃん」

K「俺は石丸と違って音楽の授業は真面目に受けていなかったんだ!」

石丸「自信がないなら僕が一緒に歌いますよ!」

K「お、俺の世代の人間は人前で歌とか歌わないんだよ……本当に……」

舞園「事務所の人やプロデューサーさんはカラオケ大好きですよ?」

朝日奈「先生の歌聞きたーい!」

大神「我も歌ったのです。諦めた方がよろしいかと」

葉隠「往生際が悪いべ」




455 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 01:00:04.18YviZtWOH0 (9/12)


K「だから無理なんだって……ほ、ほら! 監視カメラがあるだろう!
  お前達だけならいざ知らず、黒幕に見られるのは御免だ!」

山田「そんな逃げ方アリですかー?!」

腐川「ヒィィィ! アアアアタシ、カメラの前で全力で歌っちゃったじゃないのー!」バターン!

苗木「腐川さーん!」

不二咲「嫌がってるなら仕方ないよ。でも、ここから出たら一緒にカラオケ行こうねぇ!」

桑田「しょーがねーな。約束だからな! 次は歌わせるから、ぜってー忘れんなよ!」

石丸「楽しみにしています!」

K「わ、わかった。その時までには何とかするとしよう……」

K(参ったなァ。えらい約束をしてしまった……観念して、今度高品にでも相談するか)ポリポリ

ジェノ「はーい! 笑顔の素敵な殺人鬼でーす! なに? なになに?! みんなでカラオケしてたの?」

葉隠「うおっ、ジェノサイダーだべ!」

ジェノ「マイクパース! アタシも歌うわよーん!」

苗木「え? ジェノサイダーも歌うの?!」

山田「この曲は、また懐かしの……」


レベッカ[ フレンズ ]


ジェノ「口づけをかわした日は ママの顔さえも見れなかった~♪」

大神「また腐川とは正反対だな」

舞園「ノリノリですね」

ジェノ「マイフレンドがいつの間にかフレンドじゃなくなってる……それって最強の萌えじゃな~い?!」

江ノ島「わかるようなわからないような」

山田「ジェノサイダー殿とはいつかじっくり萌え語りをしてみたいものですな」

桑田「おーし! 二周目突入すっぞ!」


おー!!




456 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 01:02:37.79YviZtWOH0 (10/12)


               ◇     ◇     ◇


十神「…………」パラリ

十神(喉が渇いたな。紅茶でもいれてくるか)


スタスタスタスタ……


十神「……ん?」

「上を向ーいて、あーるこーーー♪ 涙がこぼれないよーーーに~♪」


階段を降りた辺りから食堂の歌声が微かに聞こえてくる。


十神「…………」

「幸せは 雲の上に~♪ 幸せは 空の上に~♪」


近付くと手拍子も聞こえてきた。


十神「…………」

「泣きながら歩く ひとーりぽっちの夜~♪」


食堂の入り口からこっそり覗いてみる。全員ゆったり体を左右に揺らし、笑顔で歌っていた。


「ひとーりぽっちの夜~♪」


ワーワー!! パチパチパチパチ!! イエイイエーイ!!




457 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 01:09:00.26YviZtWOH0 (11/12)


十神「…………」

十神「…………」

十神「…………」


バッ!


十神(くだらん! この俺のいない所で愚民共が調子に乗りおって!
    誰が真に一番か、わからせてやる必要があるみたいだな!)

十神(いいだろう。俺の実力を見せてやる! ……が、俺はカラオケに使われるような
    庶民的な歌なんぞ知らん。この俺が歌うなら完璧な選曲、完璧な歌でなければ!)

十神(クッ! 音楽室にCDが置いてあったな。練習だ!)


・・・


モノクマ「ヤッホー! ぼっちでカラオケの練習してる十神君の所に遊びに来ちゃいました☆」

十神「帰れ」

モノクマ「冷たいなぁ。全世界に十億人のファンがいるこのボクがデュエットしてあげるって
      言ってるんだよ?! こんなチャンスないよ~。今ならセクシーなモノクマダンス付き!」

モノクマ「ほら、ボクと一緒に銀恋でも歌おうよ! ボク達カップルじゃないけど」


※銀恋:銀座の恋の物語。一昔前のデュエット曲の定番。アベックで歌えば盛り上がること間違いなし。


十神「死ね!」

モノクマ「あぁ~ん!」




458 ◆takaJZRsBc2015/03/09(月) 01:16:38.49YviZtWOH0 (12/12)


ここまで。

KAZUYAが歌うならくちなしの花とか君恋しとか古い名曲だろうなぁ
フランク永井さんの曲は合いそう。泣かないでとかルビーの指輪もいいけど、
歌詞が甘いのとかテンポの早い歌は多分歌わないだろうなぁ、なんて




459以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/09(月) 01:27:13.448J6Td5L30 (1/1)


苗木はやっぱり声優ネタできたかw
緒方さん歌上手いしね


460以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/09(月) 06:45:49.94moP7oFodO (1/1)

モノクロームアンサーって希望ヶ峰入学前の歌だったのか
苗木と話したことないのにあの歌詞とは、舞園さんの妄想力パネェ……


461以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/09(月) 11:13:21.45zmFaDH/no (1/1)

乙です


462以下、名無しにかわりましてモノクマがお送りします2015/03/09(月) 11:35:35.53aC7D2fJ20 (1/2)

思うけど、もし十神がデレずにメンドクサイ十神のままだとどうなっていただろうか?
次に、最初の殺人で苗木が桑田の犯行トリック+桑田の工具セットを使って、舞園殺害の場合
ドクターKはどっちを信じるだろうか?


46312015/03/09(月) 12:45:23.15oBD0loCDO (1/1)

選曲がやたら古いのは1が最近の曲全然知らんせい。あと、初心者が多いからみんな気を遣って
アニソン組以外は超メジャー曲を歌ってる。あまりキャライメージとか歌詞とか考えず歌ってくれそうと
感じたものを適当に決めたけど、葉隠君のみ声がゆずに似てる気がするという理由だったり

洋楽なんてオシャレなものも全然わからんのでわざわざピストルズとダムドの代表曲を聞き漁りましたよ
それで一番気に入った奴にしました。GOD SAVE QEENやneat neat neat、MELODY LEEもいいね

>>460
SS的には前回のパーティーでネガイゴトをメインに持ってきたので今回はモノクロームを選んだのですが、
実際どうなんでしょうね?苗木君のことを歌っているのは間違いないでしょうが、トラブルに巻き込まれて
遅刻…ってどちらかと言うと苗木君のイメージなんですよ。はっきりしないと言うのも、すぐ顔に出す
苗木君のイメージと違うような。案外再会前の舞園さんの理想なのかもしれませんね

>>462
十神君はデレてもデレなくてもチャンスがあれば[ピーーー]男。二番目の質問ですが、苗木君はどうやって桑田君の
道具箱を手に入れるんでしょうか?Kは情に厚い男ですが、客観的な証拠があればそちらを優先するでしょうね


464以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/09(月) 16:09:47.13ApODZUj/o (1/1)

乙です
選曲が確実に同世代
山田司会はアニソンSSリスペクトかな?
次はシリアスか、覚悟しとかねばまた心が折られる


465以下、名無しにかわりましてモノクマがお送りします2015/03/09(月) 18:39:36.69aC7D2fJ20 (2/2)

 しかし、この作品や原作でも思うけど・・・第1章は仕方ないとして、第2章や第3章
は学級裁判分かっているし、大和田や山田は思いとどまらなかったのかな?
 この作品で思う事があるんだが、石丸も大和田とは兄弟の縁を切らなかった事や十神が
コンセントで不二咲の死体を翻弄した時に死んだ場合とか考えなかったのだろうか?


>>463
 あぁ、工具セットの入手経路は、桑田が舞園(苗木)の部屋に戻った時に、偶然にも苗木が
桑田に遭遇し、説得して思いとどまらせる→苗木が舞園に裏切られた事を知り絶望→苗木が
外に出る為に舞園殺害→苗木幸運パワー発揮で桑田の犯行トリックを使う


466以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/09(月) 18:57:52.96N7S1NXev0 (1/1)

>>465 原作の二章も三章もほぼ衝動的だったから…
三章は多分、セレスの話術が上手くて口車に乗せられまくったってところだと思う


467以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/09(月) 20:14:28.02K+uwGBdwo (1/1)

>>465
幸運パワーって…桑田は二回投げてるんだぞ?
一回は運良く当てられたとしても二度も的確に当てるのは無理だろ


468以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/09(月) 21:43:38.922DFAxHTeo (1/1)

江ノ島が芸術方面高く評価してたら、世界に絶望しなかっただろうなぁ……


469以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/12(木) 13:44:57.39bBn8dEPk0 (1/1)

いきなりなんだけどちょっと朝日奈が何してるか少し気になるんだよなあ…


470以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/12(木) 19:57:06.01ftIzzsarO (1/1)

朝日奈はログアウトしがちだけどムードメーカーだからっ!


471 ◆takaJZRsBc2015/03/15(日) 22:39:13.48ylR7oE+80 (1/7)

>>464
山田君がやたら出張ってるのは彼がキャンペーン対象キャラだからですね

出番増やそうキャンペーン
対象キャラ:苗木(ブースト)、葉隠、山田、残姉、腐川(終了)、朝日奈(追加)

>>465
十神君については、あの時点で完全に息が止まっているので問題無いです
彼は冷静なので流石に完全に死んだか確認してから偽装してるでしょう

後半について、原作と全く同じ条件だとソデが焼け残っちゃうのでパーカーで即バレする気が

>>468
あくまで他の才能との比較であって、芸術が好きな訳ではないですからね
再現だけなら彼女も余裕ですし(サグラダ・ファミリアとか)。ちなみに一番
コケにしてる才能は間違いなく風紀だと思う。才能じゃなくてド根性だろ(笑)みたいな

>>470
葵ちゃんも出番増やさんと!(使命感)

逆に削らないとなぁと思うのはKAZUYA、石丸、桑田。ただKAZUYAは主人公兼狂言回しだし
石丸君は医者ルート突入だし、桑田君はツッコミが優秀すぎて使いやすいのが悩み所


再開



472 ◆takaJZRsBc2015/03/15(日) 22:43:03.81ylR7oE+80 (2/7)


               ◇     ◇     ◇


――巡る巡る。月日はただ淡々と巡っていく。


朝日奈「水泳大会しよう!」

山田「たまには僕だって活躍したいのです! 美術の授業は如何ですかな?」

葉隠「みんなで俺の紹介する講習会に参加してほしいべ!」

桑田「野球大会すっぞ!」

石丸「いいか! 今日から一週間は掃除週間とする!」

K「もう包帯も外していい。時々リハビリに来てもらうが、今日をもって完治とする」

舞園「ありがとうございます」

霧切「……ドクター、話が」

K「わかった」


・・・


「何か映っているかしら?」

「……また山田だけだな」

「全く……彼も困り者ね……」


脱衣所では、KAZUYAと霧切が落胆した顔で立っていた。アルターエゴの公開を全員にした後、
KAZUYAと霧切は二人である細工を施していたのだ。医療実習で使うからと言って事前に山田から
カメラを借り、毎晩それを使ってロッカーが開くとシャッターが落ちるように設置したのである。

……誰かがアルターエゴを盗めば、それで内通者を断定出来るはずなのだが、
ただ映るのは持ち主である山田のニヤケ顔ばかり。




473 ◆takaJZRsBc2015/03/15(日) 22:49:53.67ylR7oE+80 (3/7)


「アルターエゴには多角的に成長してもらいたいのに、山田君と話すと知識が偏って困るわ」

「その分君が話せばいい。山田とは対極の位置にいるだろう?」

「そうですが……」


未だにしかめっ面をしている霧切をKAZUYAは宥める。


「まあ、いいじゃないか。アルターエゴはあくまで内通者をおびき寄せるのがメインだ。
 今の所山田しか写っていないし、案外内通者は江ノ島一人なのかもしれんな」

「まだわからないわ。ドクターが罠を張っていることを見越して、
 慎重になっているだけかもしれないし、山田君が邪魔なのかもしれない……」

「では、あと三日様子を見よう。あまり長く置きすぎると今度は江ノ島が焦れる可能性がある」


いつも通り淡々と話すKAZUYAに対し、詰め寄るような表情で霧切が問い掛けた。


「――もし内通者がいなかったら、その時はどうしますか?」

「そうだな……」

「江ノ島さんを捕らえ、アルターエゴで学園のシステムを乗っ取るか――」

「…………」


今までの観察から、モノクマを操っている者すなわち監視者は一人の可能性が高いと
言うことはわかっている。交代要員を考えても、五人もいないだろうと考えられた。だが……


「……俺は反対だ。敵の人数はけして多くはない。だが、たとえたった
 一人だったとしても銃火器を持って突撃してこられたら凌げ切れるか不安だ」


玄関ホールに更衣室、情報処理室の扉の前には機関銃が設置されている。
つまり、敵が同等の装備を持っていても全くおかしくはないのだ。




474 ◆takaJZRsBc2015/03/15(日) 23:02:14.38ylR7oE+80 (4/7)


「慎重ね?」

「敵の規模は大体わかってきたが、構成員の実力や装備が全くわからないからな。
 江ノ島クラスのがもう二人いたらそれだけでもかなり不利になる」

「大神さん、ドクター、大和田君。そこに十神君、石丸君、桑田君を入れても厳しいかしら?」

「仮に両者が同じ実力だったとしても、人を殺す気のある人間とない人間では
 その実力は倍くらい開く。俺は……一応覚悟を決めているが、みんなはどうかな……」

「……それに、俺としても出来るだけ生徒に手は汚させたくない」


それが逃避だというのはKAZUYAが一番わかっている。敵の強大さを考えたら、
そんな悠長なことを言っている場合ではないのだ。その現実を霧切は痛いほど突きつける。


「そんなことを言っていられる状況ではないでしょう? 必要ならするだけよ。
 ドクターが毒を渡してくれれば、私だってそれを刃物に塗って敵を殺すことも……」

「……やめてくれ。あまり考えたくないんだ」

「でも、今がその時だわ。考えたくないなんて言ってはいられない……!」


霧切の目線は鋭い。それはまるでナイフのようで、今にもKAZUYAを刺し貫かん勢いだ。


「焦るな、霧切」

「……別に、焦っている訳ではありません」

「いや、君は焦っている。その証拠に、君は今俺を臆病者だと思っているだろう?」

「…………」


霧切はフイと無言で目を逸らす。だが、その行動が答えを示しているも同然だ。


「……俺一人だったら俺もきっと無茶をした。過去にも危ない橋は散々渡ってきたしな。
 だが、ここには十五人もの人間がいる。俺は誰一人として死なせるつもりはない」

(たとえ俺が盾になってでも、俺が生徒達を守らなければ……)

「その誰一人にあなたは入っているのかしら?」

「…………」


KAZUYAの沈黙に、霧切は溜め息をつく。イライラした時に髪をいじるのは彼女の癖だ。




475 ◆takaJZRsBc2015/03/15(日) 23:08:44.12ylR7oE+80 (5/7)


「とにかく、今はまだ動けない。不二咲とアルターエゴの性能を調整し、十分と判断したら二階の
 隠し部屋から学園のシステムや外の状況を探らせる。その情報を踏まえて新たに作戦を練りたい」

「……今はドクターの意見を優先します。でも、私がもっと
 良い案を思いついたら、その時は動かせてもらうわ」

「すまない」

「謝らないで頂戴。悪いと思っていないのに謝るのは大人の悪い癖よ。
 ……そういえば。もう一つ聞きたいことがあるのですが」

「何だ?」

「――私に何か隠し事をしていないかしら?」


一瞬、KAZUYAの心臓が跳ね上がった。その後も早鐘のように打っているのを自覚する。
彼女は探偵だ。如何にKAZUYAが取り繕ってもその僅かな表情の変化をきっと見抜いているだろう。


「……している」

「随分はっきり言うのね……」


呆れと驚きが半々といった表情で、彼女はKAZUYAを見つめた。


「言わなくてもきっとバレるからな。だったら正直に言うまでだ。別に
 君に対してだけじゃない。俺はみんなに言えない情報をいくつか持っている」

「…………」

「ただ、今まで嘘ばかりついてきた俺だがこれだけは信じて欲しい。みんなにとって有益な
 情報はちゃんと包み隠さず公開している。俺が言わないのは、言う必要がないからだ」

「相手がそれを知りたいと望んでいても?」

「こんな状況だからな。一つのミスが命取りになりかねん。だから、混乱したり疑心の元に
 なるようなことは言わん。どうしても知りたいなら、脱出してからゆっくり話そう」

「……その情報の中に、父のこともあるのかしら」




476 ◆takaJZRsBc2015/03/15(日) 23:14:21.56ylR7oE+80 (6/7)


「さあな。人間には、知らない方が良いこともたくさんあるとだけ言っておく」

「脱出した暁には、全て聞かせてもらいます」

「――約束しよう」


速足で去って行く霧切の背中を見ながら、KAZUYAも溜め息をついた。


(このメンバーの中では落ち着いている方だが、やはりまだ子供だな。……正直、危なかった)


脱出がすぐ目前に来ているのにストップをかけさせられた憤懣。
父の情報を相手が持っているのに知ることが出来ないという焦燥。


(……今回は何とか理性で抑えてくれたが、はっきり言って爆発してもおかしくはなかったな)


思えば、霧切はあまり問題を起こさず常に冷静で適切な行動が取れると何かと優等生扱いしてきた。
それ自体は彼女も嫌がってはいないだろうが、彼女に少し頼り過ぎではなかろうか。

今回の隠し撮り作戦だって、KAZUYAと霧切の二人しか知らないのだ。


(一人に寂しさを感じ、無意識に親を求めてしまうのは霧切も
 他の生徒達と同じだ。俺がもっと気にかけてやらんと。……ただ)


ここにきて、KAZUYAは複雑な胸中を隠せなかった。


(……あんな父親とは幼い頃に別れて正解だった、などと言うのは俺が当事者ではないからだろうか)


真実を知るKAZUYAは、やる瀬ない気持ちばかりが募る。




477 ◆takaJZRsBc2015/03/15(日) 23:20:22.05ylR7oE+80 (7/7)


ちょっち短いけどキリがいいのでここまで。

少し先の展開手間取っているので、もうしばらくスローペースで行かせて頂きます




478以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/15(日) 23:26:58.97dhHbwU19o (1/1)

乙です


479以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/16(月) 01:36:56.99yTui17rGO (1/1)

あーこれ、霧切かなり弱体化してるなぁ。

石丸の才能を「粘り強さ」とするなら、飽きっぽさ⇔粘り強さで対極になるから「超高校級の希望」並の扱いに……なるといいなッ!


480以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/16(月) 02:01:16.30oqiNozcqo (1/1)

でも霧切さんて割りと大人げないというか、目的のためには手段を選ばないとこあったり
自己中な行動取る時も結構あるからなぁ。基本単独行動だし。こんなもんじゃね?


481以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/16(月) 05:48:50.211W6UUrsso (1/1)

前に安価で選ばなすぎると弱体化するって言ってなかったっけ?
少なくとも今って叛逆ギリギリ一歩手前っぽいし……


482以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/16(月) 12:35:14.87HLk23DNN0 (1/2)

おっつおっつ
霧切さんの精神状態フォローまで中々手が回ってない現状だね……

そういや石田とのアルエゴの一悶着が無いから、山田がどんな切欠で動くか分からんよな
原作通りのアルエゴ盗難やらセレスを襲ったやらの話でいくなら石丸はもとよりKの仲間側の男性陣よりは孤立してる十神の方がまだありえそうだが、
いまいち決定打に欠けるし、内通者がアルエゴ持ち出したとかのが信憑性はあるだろうか。しかし女性陣強いからなぁ。


483以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/16(月) 13:20:17.19x2LfNwMDo (1/1)

石丸はアルターエゴへの執着がないだけだし、山田が夜更しやらアルターエゴ独占やらしてたら普通に揉める
ただ、3連続石丸の出番はキツイのでは


484以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/16(月) 13:44:56.83BOZQDPjjo (1/1)

作者が出番削るって言ってるから流石に次の事件は石丸は関わらないんじゃないか?
意外と霧切が危なかったりして。かなりご立腹っぽいし


485以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/16(月) 15:44:54.07MutQTvtRo (1/1)

全体的にキャラが病みやすくなってるよなこのスレ
おのれドクターK


486以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/16(月) 17:01:31.13HLk23DNN0 (2/2)

被害者枠が誰になるか全く読めないんだよなぁ。加害者側は三章関連メンバーなのかなって雰囲気だけれども。
霧切さん心配だわ、ちょっとK側からも浮きかけてる印象あるし……あ、葉隠忘れてた


48712015/03/16(月) 20:07:20.66vPd6PYMDO (1/1)

お察しの方も多いでしょうが、今回は霧切さん爆発ポイントでした。もし一度も自由行動で選択しないと
KAZUYAは隠し事なんてないと回答し、霧切さんブチ切れ→あなたなんて信用出来ない!と言われ離脱
選択してても好感度が低いと原作四章みたいにしばらく無視されてました。危なかったですね

爆発ポイントは事前に何章のどこで誰が~とかは決めておらず、全て話の流れです。1が○○はそろそろ
鬱憤溜まってるなと思ったり、××の前でこんな行動取ったらキレるやろ…と感じたらそこが爆発ポイント
誰でもキレたり病む可能性はあり、生徒一人一人の状況をよく見て弱ってる子は即フォローが大事


>>479-481
一応仲間化したらそこまで酷い弱体化はしないんですけどね。ゼロ読む限り、霧切さんは
父親が関わると割りと意地になるというか、子供っぽい一面が出て来るなーと思っているので

>>485
キャラが病みやすいのはジャンルの違いのせいでしょう。ダンガンロンパはサイコポップ
このSSは学園医療サスペンスアクションちょっとだけミステリー。謎解きより人間関係に重点があるので

……まあ一言で言うとドクターKのせいですが。




488以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/17(火) 00:17:23.560IuVh36Lo (1/1)

乙乙
やっぱりどれだけ人間離れしてようとまだ高校生だからねえ


489以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/17(火) 02:14:37.76RcBBG5xto (1/1)

ダンガンロンパ霧切読むと、この子中学の時の方が強かったんじゃないか感


490以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/17(火) 08:37:26.98+v0Asbqco (1/1)

ロン霧読んでないからイメージだけど、火傷事件の前だから人に深入りすることに抵抗がない
だから一人で無理しないで周りと協力するから強いんじゃないかな

正直、突発要素の強い前二つと違って三章の事件は防げたと思う。アルターエゴがなくなった時点で
誰かが動いてるから見回りとかすべきだったし、霧切が見れば山田の怪我が嘘だってのもわかったはず


491以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/19(木) 10:39:21.75y2XmNp2B0 (1/1)

 賞金100億円とは言っても、外は世紀末宜しく状態だから価値はないし、そもそもセレスさんは、
どう動くのだろうか・・・


>471
 パーカーは洗濯機で洗って、舞園の服を偽装して処分すればいけるのでは?


492以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/19(木) 10:48:39.60Uj6GLXyBo (1/1)

苗木に犯罪成功させるよりも
桑田が証拠隠滅に成功する方向で考えたほうがいいっていうか
結論もう出てんのに掘り下げる必要無いだろ


493以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/19(木) 10:56:03.884gTGBWv9o (1/1)

悪いことをしても結局バレる。それでいいじゃないか。現に原作では一度も逃げ切れてないんだし
大体Kは医者なんだから、傷口とか血痕とかなんか素人にはわからない方法で犯人見抜くよきっと


494以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/21(土) 01:40:24.90eir69kSK0 (1/2)

金に価値が無い訳でわないよ塔和グループは武器売って稼いでるし



495以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/21(土) 01:41:05.88eir69kSK0 (2/2)

金に価値が無い訳でわないよ塔和グループは武器売って稼いでるし



496以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/21(土) 06:11:21.52JKlcYxoAO (1/1)

勝手にageてまで間違った日本語で書かんでいい


497以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/21(土) 07:37:57.16OYUV50TgO (1/1)

でwwwわwwwなwwwいwwwよwww



498 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 21:02:13.66tFDRzsn80 (1/11)

やっと質問の意図がわかりました。要は、絶対桑田君が犯人という状況下で
KAZUYAが桑田君の味方をしてくれるか?という質問なのですね

ちょっと反則ですけど、相手が舞園さんやセレスさんならまだしも苗木君と桑田君なら
KAZUYAはわかると思います。二人共すぐ顔に出る人間なので。不審者のKAZUYAにもあれだけ
優しく前向きだった苗木君がダークな雰囲気出して桑田君ガチ泣きなら一発でしょう

ただ、いくらKAZUYAが真相をわかってても学級裁判はみんなを納得させないといけないので、
証拠もなしに誰かの味方をするかと言ったらしないかな。そこは霧切さんの出番で、
ガッツリ事前に証拠集めてくれて二人で華麗に論破する、ことになると思う
(霧切さんだけでも十分チートなのにKAZUYAが加われば鬼に金棒でしょう)



さて、感想読んでたら霧切さんの心理描写が不十分だった気がするので少し加筆して再開



499 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 21:09:38.72tFDRzsn80 (2/11)


               ◇     ◇     ◇


胸の中でパチパチと火が燃えるような苛立ちを感じながら、霧切は廊下を歩いていた。
食堂で何人かの生徒が騒いでいる。体育館で遊んでいる生徒達がいる。

だがそんなものは気に留めないで、霧切は足の向くままに校舎内をさまよった。


(……どうして、こんなに落ち着かないの)


無意識に思い出すのは、手の火傷をKAZUYAに診てもらった時のこと。


『……可哀相に。ずっと手袋で隠すのは辛かったろう』

『――仕方ないわ。自分の不始末の結果だもの』

『不始末?』

『霧切家には代々伝わる絶対の不文律がある。それは、他人に入れ込まず常に中立を貫くこと。
 探偵が個人的な感情で誰かに肩入れすることは絶対にあってはならないのよ』

『私達探偵は他人のプライベートを暴き、時に追い詰めることもする仕事。
 それ故周囲の人間に対し常に一線を引き、誰に対しても公平でなければならない』

『つまり、その火傷は誰かに深入りした結果ということか』

『そうね。この傷は私自身に対する戒めでもある。――本当は治さない方がいいのかもしれない』

『医者としては賛同出来んな。戒めは自分の心に深く刻み込めばいい。傷痕を
 隠すということは、本当はまだ自分の中で整理がついていないということだ。違うか?』

『…………』

『それに……こんな状況だ。周りと支え合わねば何も始まらない。
 もっと近寄って、仲良くしてもいいんじゃないか?』

『あら、ドクターが一番わかっていると思ったけど』

『俺が? 何を?』

『最近は以前程じゃないかもしれないけど、ドクターが一番距離を置いていたじゃない』

『…………』




500 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 21:21:39.50tFDRzsn80 (3/11)


『医者は患者全員に平等でなければ務まらない仕事でしょう? 違うかしら?』

『……それだけじゃないがな。俺の一族は代々、時の権利者達にこの技術を狙われてきた。
 だから俺の家は決まった家名を持たないんだ。必ず婿に入り相手の家の名を名乗る』

『西城は母方の名前なのね』


ふと思い出した。KAZUYAと初めて会った時、彼は何故か名字を名乗らなかった。
彼にとっての名前は西城カズヤではなくKAZUYAだけなのだ。


『特定の誰かと親しくなれば、その人間が狙われてしまう。……過去に何度も友人が襲われた』

『…………』

『ここでは既に巻き込まれているし、逃げ場もないから親しくしているが……もし脱出したら
 俺は君達の前から去るだろう。だから君も、ここにいる間くらいはいいじゃないか』

『……協力はするわ。でもそれ以上の関係になるつもりはない』

『そうか。まあ、協力してくれると言うのなら無理強いはしないがな』

『本当にドクターはお節介な人ね。それがみんなから信頼される理由なのでしょうけど』

『すまんな。俺と君はどこか似ている気がして、どうしても言わずにいられなかったんだ。だって……』


『――そんな生き方、寂しいじゃないか――』


KAZUYAの悲しげな眼が、言葉が、霧切の脳裏に強く響く。


(寂しくなんかない……! 私は一人でも大丈夫。お祖父様からだって、もう一人前だと言われている!)


しかしそう反駁しながらも、心の中にいるもう一人の自分がどこか冷静に分析していた。


(……馬鹿みたいね)


すっかり意地になってしまっている。KAZUYAが保護者のように接するから、
父親の代わりに不満をぶつけているだけだと、心の底ではわかっていた。




501 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 21:30:06.13tFDRzsn80 (4/11)


(子供っぽくて本当に嫌になる……)


心配されて嫌な訳がない。むしろ、もっと色々話をしたい。だが、彼はみんなの先生なのだ。
弱っている人間、手のかかる問題児により注意を割かれるのは仕方のないことだ。

自分は信頼されているからこそ、今回の作戦のパートナーに選ばれた。それでいいじゃないか……


(冷静に、ならないと……)


燃えるような焦燥や欲求を理性で抑えこむように、霧切はただただ歩き続けた。



― コロシアイ学園生活三十六日目 脱衣所 PM1:02 ―


石丸「本当ですか?」

K「ああ。まだまだ危なっかしいが、いつまでも止まっている訳にはいかん。石丸も今日から仮免だ」

石丸「ありがとうございます!」

K「そこで、いよいよ次の行程に入る」

苗木「一体、何を……」

K「縫合だ」

石丸「縫合ですか。布やスポンジを使っての訓練なら今まで散々やってきましたが、ここには
    人工皮膚もありませんし、何を縫うと言うのです? そもそも、何故脱衣所に?」


石丸はわからなかったが、苗木は即座に気付いた。KAZUYAの行き過ぎとも取れる
自己犠牲的行動は今までにも散々見てきたのだ。ならば、今回とて例外のはずがない。


苗木「まさか……まさかですよね、先生?」

K「苗木は気付いたようだな」

石丸「え? ま……まさかっ?!」

K「そのまさかだ。――俺の体を縫ってもらう」




502 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 21:39:30.42tFDRzsn80 (5/11)


サッと石丸の顔から血の気が引いた。


石丸「やめてください、先生! 何もそこまで……!」

K「薄皮一枚縫うだけだ。血管を傷付けなければすぐに塞がる」

石丸「ですが……怪我をしてる訳でもないのにわざわざ傷を付けて縫うなんて、人体実験と
    同じじゃないですか! いくら授業でも、そんなことは認められません!!」

K「……苗木。石丸はこう言っているが、お前はどうする?」

苗木「…………」


少し考えていた苗木だが、真っ向からKAZUYAの視線を返して答えた。


苗木「……僕は、やります」

石丸「苗木君……正気かね?!」

苗木「うん、だって――決めたんだ」

苗木(キッカケをくれたのは石丸君だった。でも……本当はもっと前から考えていたんだ)

苗木「ここから出られない以上はいつか必要になる技術だよ? いつもいつも先生に
    頼っている訳にはいかないし、きっと僕達がやらなきゃいけない時もくる」


あの日、顔色一つ変えず鮮やかな手つきで舞園を救うKAZUYAに苗木は魅せられていた。
自分もいつか同じように誰かを救えたらと、苗木は夢想し続けていた。


苗木(僕は、医者になるんだ。先生はいつも口癖のように言っている。医者になるのに
    特別な才能なんていらない。患者と真摯に向き合う気持ちが一番大事なんだって)

苗木「先生がここまで言ってくれているのに、断ったら先生の気持ちを無駄にすることになる。
    僕はみんなと違って特別な才能は何もないし、石丸君みたいに頭が良い訳でもない」

苗木「でも、だからこそ自分に出来ることは全部やりたいと思うんだ。
    それが自分にとってもみんなにとっても……きっと最善だと思うから」

石丸「苗木君……」

K「…………」

石丸「そうだな……僕は何を迷っていたんだ……」


顔をパンパンと叩いて気合いを入れ、石丸は笑った。




503 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 21:46:37.82tFDRzsn80 (6/11)


石丸「本当に……君はいつも大切なことを僕に教えてくれるよ、『苗木先生』」

苗木「ちょっ?! 何で今それが出るの?!」


石丸はたとえクラスメイトであろうと、自分が知らないことを教えてくれる人間を
先生扱いして有り難がる傾向がある。それはKAZUYAも知っているので特に何も思わないが、
本物の先生の前で先生呼ばわりされる苗木にとっては堪らないだろう。


苗木「は、恥ずかしいからやめてよ! 横にKAZUYA先生いるのに!」

石丸「何を恥ずかしがることがあろうか! 君という人間が友人で僕は誇りに思うぞ!」

K「そうだぞ。格好良かったじゃないか」

苗木「え、えっと……僕は別に、格好つけて言った訳じゃ……」

石丸「僕は君に勉強を教え、君は僕に勉強以外のことを教えてくれる。学友とは、そうやって研鑽し
    切磋琢磨し合うものだと思うのだ。迷っている僕の背中を押してくれたのは苗木君だからだよ」

苗木「いや、だから、そんな大したものじゃないというか。えっと……」

K「人より前向きなのがお前の取り柄なんだろう? そしてその前向きさは、
  時に周りの人間を励ましたり勇気を与えるということだ」

K「……良いことを教えてもらったな。俺も今度から苗木先生と呼ばせてもらおうか」

苗木「もうっ、絶対からかってるでしょ!」

石丸「僕は『マジ』だぞ!」

K「ウム、俺も大マジだ」

苗木「そんなことよりっ! 早く実習を始めましょうっ!!」


半分は本当なんだがな、とKAZUYAは笑いながら浴場を指した。


K「では、浴場に移ろうか」

苗木「えっ、大浴場の中でやるんですか?」

K「保健室の床を血まみれにしたくなかったからな。黒幕に見られているのも癪だ」

石丸「しかし、湿気があると細菌が繁殖しますし治療に向かないのでは?」




504 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 21:56:10.68tFDRzsn80 (7/11)


K「それは問題ない。早朝に湯を落としてずっと換気をかけていたからな」


確かに、浴場の入り口には清掃中の貼紙がされている。誰かが使用しないようにしたのだろう。
清掃中の貼紙をつけたまま、KAZUYAはガラス戸を開いて中へと入って行った。


K「ウム、適度に乾燥している。赤道直下のジャングルよりはずっといいさ」


ジャングルだとスコールもあるしと呟くKAZUYAに、そんな話もしていたなと二人は苦笑いで返す。


K「手順は……以前にも説明したからいちいち言わなくてもわかるな?
  今回はこれを――部分麻酔を使って縫ってもらう」

石丸「麻酔……!」


KAZUYAは床に6つほど濃度や成分の違うアンプルを並べていく。


K「そうだ。先に言っておくが、麻酔の効きを見たいから今回は針麻酔は使わない」

苗木「針麻酔なしで体を傷付けるんですか?!」

K「薄皮一枚だからな。そんなに痛くないさ。気にしなくていい」

苗木・石丸「…………」ゴクリ

K「俺は今回、基本的に見ているだけとする。お前達は過去の
  授業を思い出して、自分で判断してやって欲しい」

苗木「……わかりました」


必要な道具を取り出し、乾いた床に並べた。あくまで練習だが、実際の手術の緊張感を
味合わせるため、二人にはきちんと術着を着させ半透明のゴム手袋を装着させた。


苗木「僕が着れる手術着があって良かったよ」

石丸「うーむ、サイズ的には女性のものに見えるが。看護婦でもいたのだろうか?」

K「…………」


KAZUYAにはたった一人思い当たる人物がいた。




505 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 22:04:59.80tFDRzsn80 (8/11)


ざんばら髪でエプロン白衣を身にまとい、いつもおどおどしていた彼女。
有り得ないほどのドジだが、看護婦としての技術は確かだった彼女。

今苗木が着ている手術着は、間違いなく彼女のために用意されていたものだろう。


K(今は、どこで何をしているのだろうか……)


もしここがシェルターでそのために保健室に色々揃っていたのなら、彼女もここにいるべきだが……
KAZUYAとは縁が深い人間のため気にはなったものの、今は医療実習に集中しなければならない。

上着を脱ぐと、KAZUYAは躊躇うことなく自身の左上腕部をメスで切り裂く。バッと辺りに血が飛び散った。


「……ッ!」


二人は思わず目を閉じる。いくら覚悟をしているとはいえ、やはり師が
自分を傷付けたり血まみれになっているのを見るのは耐えがたいものがあるのだ。

だが、そんな二人にKAZUYAは容赦なかった。


K「二人共、よく見ろ」


二人がおずおずと傷口を見ているのを確認すると、KAZUYAは更に斬りつけ傷口をL字形にする。
そして、あろうことかメスの切っ先を皮膚の下に潜り込ませると、皮膚の一部をベロンと裏返した。


苗木「うわっ……!!」

石丸「……うぷっ」


この不意打ちに二人は気分が悪くなる。


K「バケツも袋も用意してあるから、吐きたいなら吐いてもいいぞ」

石丸「い、いえ……大丈夫です……」

K「無理をするな。縫合中に中断する訳には行かないんだぞ」

苗木「でも、すぐに縫わないと……」




506 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 22:11:44.23tFDRzsn80 (9/11)


K「……俺は傷口をよく見ろといったはずだが。主要な血管は一切傷ついていないだろう?
  こういう皮膚を切断した傷は出血が派手だから重傷に見えるが、実は放っておいても
  自然に塞がるんだ。だから、お前達は心配しないで吐きそうなら先に吐いてこい」

石丸「で、では、少しトイレに……!」


少しばかり放置しても問題ないと知るや、石丸はバケツを抱えたまま飛び出して行った。


K「苗木は大丈夫か?」

苗木「良くはないですけど、舞園さんの時にも一度見ているし……」

苗木(本当は、吐く気も起きないというか……ショックで何も考えられないだけなんだけどね……)

K「……無理だけはするなよ」


少しして石丸が戻ってきたのだが、もう一人騒がしい人間が付いてきてしまった。


葉隠「ちょ、ちょっとおめーら?! こんなところで一体なにやってんだ?!」

K「葉隠か。どうかしたのか?」

葉隠「どうしたもこうしたも、トイレに行ったら突然手術着を着て青い顔した石丸っちに遭遇して、
    医療実習で吐いたとかなんとか……で、気になって来てみたら先生が血まみれじゃねえか?!」

K「医療実習だからな」

葉隠「実習て……怪我だらけだぞ!!」


KAZUYAは普段傷口に包帯を巻いているが、今やその範囲は左腕の大半になろうとしていた。
関節付近は度重なる注射で出来た血腫がまだ直っていない。包帯を外した今、失敗した注射痕や
赤黒い血腫がいくつも出来ているのがまる見えだし、上腕部には今回の傷がある。


K「なに、大したことはない。かすり傷だ」

苗木「葉隠君、落ち着い……!」

葉隠「ウソつくな! どう見ても重傷じゃねえか!」




507 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 22:23:47.85tFDRzsn80 (10/11)


こうなることが予想出来たから、KAZUYAは実習で付いた傷痕をなるべく生徒達に見せないようにしてきた。
最近では包帯を隠すため、愛用のノースリーブのシャツではなく普通にワイシャツを着ていたくらいだ。

だから、まさかKAZUYAがここまで自身を犠牲にしていることも傷だらけなことも、関係者以外は
知らなかった。葉隠は未だに出血が止まらないKAZUYAの姿を見て、非常にショックを受ける。


葉隠「それ、まさか自分で傷つけたのか? 大体、なんでそんなに傷だらけなんだべ?!」

K「仕方なかろう。本来なら大勢の人間に少しずつ協力してもらうからここまでにはならないが、
  ここには俺しか被験体になれる人間がいないのだからな。一人で全部やればこうなる」

葉隠「……あ、あんたちょっとおかしいぞ! どうかしちまってるんじゃねえか?!」

K(まあ、これが普通の反応か……)


頭のおかしい人間でも見るような怯えた目の葉隠に、KAZUYAは溜め息をつく。確かに普通の生活で
同じことをしている人間を見たら、KAZUYAだってきっと常軌を逸していると思うだろう。


K(……だが、今は『普通の生活』ではないからな)

石丸「そういう言い方はよしてくれ! 先生は僕達のためにここまでしてくれているのだぞ!」

葉隠「だからって、自分で自分を傷つけるとかおかしい! 有り得ないべ!!」


――葉隠康比呂には自分を傷付けるという発想が元よりない。

身内を含めた自分自身と他人の間には大きな深い溝のようなものがあって、その二つは全くの
別物なのである。だから、自分のために他人を利用するのは構わないと思っているし、他人が傷ついても
そこまで気にならない。その反面、自分に対しては大きく守りに入っていて傷つくのを嫌がるのである。

KAZUYAは真逆だった。他人でも傷つくのは嫌だし、誰かのために自分を犠牲とすることに抵抗がなかった。


葉隠(なんなんだべ……一体なんなんだべ、このオッサン……?!)


今この時、葉隠にとってKAZUYAは理解出来ない超越的存在となった。

KAZUYAの大いなる慈愛も献身も自己犠牲も、残念なことに
彼にとっては得体の知れない不気味な何かにしか見えないのである。


葉隠(……人間てのは、どんな綺麗事を唱えていても最終的にはエゴイストなんだ。
    占い師の俺は、色んな人間の裏側を見てきたから知ってる。……正直、気味が悪いべ)


世間では評判の良い政治家だって不倫をしてたりするし、人格者で知られる経営者も
裏でアコギな商売をやっている。清純派のアイドルだって、陰では淫らな関係があるのだ。


葉隠(そうだ、俺は知っている。信用出来ない。他人なんて、信用できねえ……!)

葉隠「……何が狙いなんだ?」




508 ◆takaJZRsBc2015/03/22(日) 22:29:37.88tFDRzsn80 (11/11)


ここまで。




509以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/22(日) 22:47:21.56YjyLdryqo (1/1)



原作だとボロ出るまでは桑田ですら結構演技派だったよね


510以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/22(日) 22:55:07.75zUcZpwdko (1/1)

ゲームだとわからないがリアルだと結構顔に出てるんじゃないかな
さりげなく苗木が犯人だろって何度もアピってるし。霧切あたりは見抜いてそう


511以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/23(月) 01:07:14.75TD9L1fxso (1/1)

乙です


512以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/26(木) 08:48:49.36D0+++f0d0 (1/1)

しかし、葉隠は何の役に立つだろうか? 殺されてもいいくらいだし・・・


51312015/03/26(木) 18:46:05.28QFsKYNTDO (1/1)

葉隠君だって生きてんやで!

それに、ネタバレすると












葉隠君がいないと詰む




514以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/26(木) 19:58:44.91Zild1k00O (1/1)

葉隠全否定派を全否定っすかww


515以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/26(木) 20:17:49.90J2G+gpPIo (1/1)

あのクソチャラかった桑田だって今や反省して立派に更生したんだし、
葉隠だって反省して真面目に…ならなそうだから困る


516以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/26(木) 20:38:00.88EPEk3KZco (1/1)

葉隠だって原作最初はただのクズだったけど
最終的に自分の直感を信じるクズになっただろ!


517以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/26(木) 21:23:41.35F4OPYkZCO (1/1)

あれおかしいな

フォローがフォローになってない


518以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/27(金) 10:35:47.14Jw8oYIZR0 (1/1)

いいんだよ
葉隠はクズなのがとりえなんだから


519以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/28(土) 00:47:56.920ecON8BGO (1/1)

クズさんの原作でのクズじゃない成分を挙げておく。

・みんなが廃人を見捨てるなか、面倒をみようとする。
・年長者としてまとめようとする。
・犯人扱いされたけど誤解が解けたらOKだから怒ったり拗ねたりしない。
・命がかかってるのに、つつかれると結構早い段階で「俺がやりました」と自白する。(クロは大抵が、言い逃れ→MTBの流れだから、比較的いさぎよい)
・自分だけは確実に助かる道があったのに脱出することを決めた。


520以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/29(日) 17:41:13.27MEJJ9dEK0 (1/1)

あげ


521以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/29(日) 19:17:33.66s1bD/woYo (1/1)

>>519
裁判で潔かったのはメタ的に言うと、葉隠の後に腐川十神の推理朝日奈と
目白押しだったから最初の葉隠であんまり時間取る訳に行かなかったってのもありそう


522 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 21:25:06.89QWvhm2/h0 (1/11)

詰むというかとあるED条件に葉隠君が絡んでいるのでそのEDが見れなくなる
クリア自体は出来る。でも、仲間を切り捨てるやり方は推奨しない


再開



523 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 21:31:40.89QWvhm2/h0 (2/11)


唐突過ぎるその言葉に、KAZUYAは怪訝な顔で問い返した。


K「狙い?」

苗木「まさか葉隠君、まだ先生のことを内通者だなんて思ってるんじゃ……」

葉隠「違え。先生が内通者じゃねえってのは流石にわかってる」

石丸「では何を狙っているというのだね?」


その問いに答えることなくしばらく考えていた葉隠だったが、
ふと何かを思いつき下卑た薄ら笑いを浮かべる。


葉隠「……ハハーン、やっと読めてきたべ。そういうことか」

K「読めてきた? 何を?」

葉隠「そんなに必死に俺達を脱出させて、あんたにどんな得があるのか考えてみた。
    つまり、こうだべ! 俺達の家族から貰う“謝礼金”が狙いなんだ!!」

「…………は?」


予想外すぎる葉隠の言葉に、思わず彼等は黙り込んだ。
吐いた後で元々青かった石丸の顔がますます青くなっている。


K「謝礼? 一体何の謝礼だ?」

葉隠「しらばっくれんな! 一人百万なら1500、二百万なら3000万! ボロい商売だべ。
    そんなにもらえるなら、確かに少しくらいの怪我は目をつむれる……かもしれねえ!」

K「…………」

苗木「…………」

石丸「…………」


あまりに浅ましくさもしいその発想に、彼等は言葉を失ってしまった。


石丸「葉隠、君……き、君は……君という人は……!!!」ワナワナ…

K「石丸、よせ。言いたいことはわかるが黙れ」


怒りのあまり頬を紅潮させ目に涙を溜める石丸の口をKAZUYAは塞いだ。左手で掴んだ肩が
小刻みに震えているのを感じる。石丸を抑えるKAZUYAの代わりに、スッと苗木が一歩前に出た。




524 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 21:38:12.11QWvhm2/h0 (3/11)


苗木「葉隠君、あのね……もし、先生がいない時に誰かが怪我をしたらどうなるかな?」

葉隠「そりゃあ困るべ。応急処置の方法は習ったけど、あんなんじゃ一時しのぎにしかならねえしな」

苗木「うん、そうだよね。救急車を呼ぶ訳にもいかないし、ここにはお医者さんが
    一人しかいないもんね。でも、将来的にそうなることもあるかもしれないよ?
    例えば、モノクマが先生の妨害をしてすぐに来れなくするとか……」

葉隠「そうなったらまずいよなぁ」


どこか他人事のように話す葉隠に苛立ちを覚えながらも、苗木は冷静に続けた。


苗木「ここは僕達の住んでいた普通の世界じゃない。モノクマのせいで、どんな理不尽なことも
    起こりうるんだ。だから、先生は無理をしてでも僕達を医者にしようとしてくれてるんだよ」

葉隠「でも、それも結局は全部謝礼のためなんだろ? 他人のために無償でそこまでやれるヤツなんて
    いるワケないべ。石丸っちと苗木っちの家族からは授業料分多めにもらわないと割が合わないな!」

石丸「……!!」

K「暴れるんじゃない!」


出血が酷くなることも構わず、KAZUYAは両腕に力を込めて石丸を押さえつける。


K「葉隠……お前は物事を金で判断するようだから言ってやる。
  俺はその気になれば一回の手術で一千万以上簡単に稼げるぞ」

葉隠「おお! すげえな。流石は超国家級の医師だべ」

K「その俺が、何で庶民のお前達からちまちま金を巻き上げようとするんだ」

葉隠「そりゃあ、金はいくらあったって困らねえからな! 俺もすぐに使っちまうし」

苗木(も、もう呆れて何も言う気にならない……)

石丸「――! ――!!」バタバタ!ダン!

K「……ハァ。わかった。もういい。実習の邪魔だから帰ってくれないか?」

葉隠「言っとくけど、俺はビタ一文払わねえからな!」

K「わかったわかった。じゃあな」


葉隠を脱衣所に追い返し、ガラス戸をピシャリと閉める。




525 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 21:44:06.79QWvhm2/h0 (4/11)


K「全く、とんでもない闖入者だった……」

苗木「ですね……」ハァ


悪意はあるが己の信念に基づき動く十神とは全く違う。悪意は全くなく、単純に思想と
価値観の違いによる相容れない平行線な会話は、彼等の気力を大いに削いでくれた。


石丸「何で……!」ワナワナ…

苗木「あ、石丸君……」

K「…………」


石丸は既に泣いていた。それが悔し涙であろうことは、二人も察していた。


石丸「何で! 僕に何も言わせてくれなかったんですか?! 彼の考えは正すべきだったっ!!」

K「無駄だ。ああいった手合いを反省させるのは骨が折れるぞ」

石丸「でも、でも! 何故反論しなかったのですか!! 先生はお金のためなんかで動く人じゃない!
    彼だっていい加減わかるべきなのにっ! わかっていないとおかしいはずなのにっ!!」

K「今は実習が先だ。もっと言うなら、俺達が最優先にしなければならないのは『脱出』だろう?」

石丸「それでもっ……!!」

K「今は小さな不和も起こしたくないんだ。だから敢えて言われっぱなしにした。みんなで
  ここを脱出したら、その時は多少痛い目に遭わせてでも矯正してやればいい。違うか?」

石丸「そうかも、しれないですけど……けど……!」

苗木「石丸君、悔しいのはわかるけど……でも、あんなことを言われて一番悲しいのは先生じゃないかな」

石丸「…………」

苗木「僕達は僕達のやれることをしようよ。それが結果的に先生にとっても一番良い。そうですよね?」

K「そうだ。お前が俺の代わりに涙を流して怒ってくれた。……それだけで俺は十分なんだ」

K(まさか生徒の中にあんな悲しい人間性の者がいたというのは、俺にとってもショックだったが……)


思わぬアクシデントだったが彼等はここで止まるわけには行かない。余分に持ってきていた
タオルを渡して顔を拭かせる。だが石丸がポツリと呟いた言葉が、KAZUYAの耳に残って離れなかった。




526 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 21:57:34.23QWvhm2/h0 (5/11)


石丸「葉隠君には……僕の顔の傷もお金のために見えるのだろうか……」

K「…………」


・・・


しばらくして、ようやく実習が再開となる。


K「いつもは苗木からだが、縫合に関しては石丸の方が前から練習している。石丸からやってくれ」

石丸「わ、わかりました……」

K「まずは縫合糸と薬品選択だ。どれを使う?」


KAZUYAはずらりと並べたアンプルと糸を手で指し示した。
石丸は一通り薬品の名前を確認すると、そのうち一つを手に取る。


石丸「縫合糸は5-0ナイロン糸、薬品はこの0.5プロ キシロカインEありを使います」


プロ:%のこと。ドイツ語ではプロツェントと呼ぶのでそこから由来している。


K「理由を聞きたいがその前に……苗木、Eは何の略かわかるか?」

苗木「えっ、えっと……すみません。効果が長く続くような薬だと思うんですけど……」

K「間違ってはいない。石丸、Eの説明をしながら理由を述べろ」

石丸「はい。Eはエピネフリン添加を示します。エピネフリンは別名アドレナリンで、周囲の
    血管収縮を促し麻酔の流出を防ぎます。それにより麻酔持続時間を延ばすことが出来る。
    今回は傷口が大きいのと僕達の腕が未熟なので、麻酔時間は長い方が良いと判断しました」

K「0.5プロの根拠は?」

石丸「傷口が大きいので、注射回数や注入する薬液も多くなることが予想されます。部分麻酔で
    最も気を付けなければいけないのは規定量以上を投与することによる局所麻酔中毒です。
    今回は、より大量に投与出来るように最も薄いものを選択しました」


局所麻酔中毒:局所麻酔を体内に大量投与することによって発生する中毒症状。舌・口のうずき、
         眩暈、耳鳴り等が起こる。酷い時には痙攣、呼吸停止等も起こるため注意が必要。




527 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 22:23:23.53QWvhm2/h0 (6/11)


キシロカイン:キシロカインは商品名であり薬品名は「塩酸リドカイン」。局所麻酔、抗不整脈薬として
         幅広く使われている。体重によって極量(限界量)が変わるので都度計算が必要である。


K「……良いだろう。まあ、簡単な皮膚縫合は絶対こうしなければいけないという
  定説はあまりなくて、使う薬剤も糸の太さも医者の好みが大きいからな。俺は体が
  大きいから、このくらいの傷なら1プロEなしでも特に問題ない」

K「今回は傷が浅いから0.5プロでもいいが、これ以上傷が深く神経に近い場合は1プロの方が
  いいかもな。こればかりは経験でわかっていくものだ。手術の度に、吟味し学んでいってくれ」

石丸「はい」

K「更にいくつか質問しておく。ここでは関係ないが、浸潤麻酔でキシロカインは何%まで希釈可能だ?」

石丸「0.3%までです」

K「キシロカイン以外のアミド型局所麻酔を二つ挙げろ」

石丸「塩酸メピバカイン商品名はカルボカイン、塩酸ブピバカイン商品名はマーカインがあります」

K「では、それらの特徴を――」

石丸「――。――」

苗木(す、凄い……)


これが実技演習だと言うことを忘れるくらい、KAZUYAはしつこく口頭問答を繰り返した。石丸も
よく勉強していて全て的確に淀みなく答えていく。苗木はただ必死にメモを取ることしか出来なかった。


苗木(うう、医者になるならこれ全部覚えなきゃいけないんだよな。僕は本当になれるんだろうか……)

K「エピネフリン添加のキシロカインを使ってはいけない禁忌の場所がある。どこだ?」

石丸「……耳、指先、体の末端部です。理由は血行を阻害するため細胞が壊死する可能性があるからです」

苗木「末端? 末端てどこ?」

石丸「その、だな……」


口ごもる石丸に対し、慣れているのかKAZUYAはサラリと答えを言う。


K「男性器のことだ。壊死したら大変だろう?」


大変どころの話ではない。




528以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/29(日) 22:26:02.42c9WsJXZkO (1/1)

(両手で一点を抑えながら)キュッ


529 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 22:33:27.32QWvhm2/h0 (7/11)


苗木「……あ、はい」

苗木(これは覚えたぞ。今完璧に覚えた……!)


壊死という言葉の恐ろしい響きに思わず苗木の末端部もキュッと縮む。


石丸「あの、それでは……」

K「オーケーだ。理論は問題ないようだな。早速実技に取り掛かれ」

苗木(もう血が止まっちゃってるよ……いや、血が出てると焦るからそのために喋ってたのかな)

石丸(まずは消毒……いや、皮下細胞を殺してしまうから昨今は消毒しないのが主流。
    なら先生が用意したこの生理食塩水で傷口を軽く洗い、細菌を流すべきだろう)

K「…………」

石丸(いよいよ麻酔か……)

石丸「…………」


石丸は震える手でアンプルを持ち上げ割ろうとするが、手が滑って落としてしまう。
幸いアンプルは割れなかったので、苗木が拾って渡した。


石丸(……そういえば、アンプルの割り方なんて本に載っていなかったぞ。どうすればいいのだ?)

K「アンプルの割り方がわからないのか? まず軽く振るか指で頭の部分を弾いて、薬液を下に落とせ。
  昔はヤスリで傷を付けて割ったりもしたが、今は大体カット用の傷があらかじめ入っている」

K「右手で持ってカット部分に力がかかるように上部を親指で押して折る。
  または、心配なら左手に持ち右手で上部を包みこむように握って折ってもいい」


石丸は言われた通り右手に握り、親指で思い切り上部を押す。……が、

パキーン!


石丸「あっ!」

K「……当たり前だが折れた上部が吹っ飛ぶので、左手でしっかり受け止めるように」

石丸「す、すみません……」




530 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 22:50:34.34QWvhm2/h0 (8/11)


苗木「僕が拾っておくから、構わず続けて。いつも通りやれば大丈夫だよ」

石丸「ありがとう、苗木君……」

石丸(落ち着け。注射はもう何度もやっている。薬液を入れて刺すだけだ……!)

K「局所麻酔中毒の知識があるから分量は心配していないが、刺す場所はわかるな? 頼むから血管に
  注入だけはしてくれるなよ。少しくらい時間がかかってもいいから、着実に麻酔をかけていけ」

石丸「はいっ!」

石丸(えっと、針を入れたら逆血がないか確認して……)


逆血:点滴などの際、管に血が逆流すること。血管に針が入っているか確認する指針になる。
    上述した通りキシロカインは抗不整脈薬でもあるので、健常者の血管にいれるのはとても危険。

石丸はKAZUYAの傷口の周りに麻酔を注入していく。ちなみに、今回のような患部の周辺に
直接刺したり塗ったりする方法を「局所浸潤麻酔」と呼び、簡易縫合では専らこの方法を用いる。


石丸「…………」

K「…………」

K(流石にいい加減慣れてきたのか、手つきも安定してきたな。……大した努力だ)


その努力のためにKAZUYAの体は大いに犠牲になってきたのだが、それには目をつむる。


石丸(麻酔を打ち終わった。次は、いよいよ縫合を……)カチャカチャ

石丸(しまった! 針に糸を付けるのを忘れていた! うっ……糸がセット出来ない!)アセッアセッ

苗木「……僕が付けようか?」

K「駄目だ。自分でやらねば意味がない」

苗木「でも、さっきから大分血が出てますよ……」


模擬手術なら苗木も手を貸そうなどとは思わないが、すっかり床を汚している
KAZUYAの血やパックリ開いている傷口を見ているとどうしても気が急いてしまう。


K「この程度、後でリンゲルでも入れておけばどうとでもなる。焦るな。焦るから出来ないんだ」

石丸(落ち着け、落ち着くんだ……深呼吸して……)




531 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 23:04:22.75QWvhm2/h0 (9/11)


石丸「……よし、セット出来た! じゃあ……」

K「縫う前に麻酔の効きを確認しろ。麻酔が効いていない患者に針を刺すつもりか?」

石丸「すみません! ……えっと、感覚はありますか?」

K「触れただけでは問題ないが、浅い気がする。試しに刺してみてくれ」

石丸「はい……」

石丸(いよいよ、西城先生の体に針を……!)


ドクン、ドクン……

石丸は持針器を持ち、震える手で針を刺した。


K「……駄目だ。やはり麻酔が足りなかったようだ。追加だな」


その後、麻酔を追加しとうとう縫合が始まったのだが……


石丸「…………」ブルブル

K「……選手交代だ」


何度深呼吸をしても、左手で右手を押さえても一向に震えが止まらず、まともに
縫い進めることが出来ない。やむなく四分の一ほど来た所でKAZUYAは交代を宣言する。


石丸「あの、期待に応えられなくて申し訳ありません……」


石丸らしくない、消え入りそうな小さい声だった。先程の精神的ショックも相まって、
かなり落ち込んでいるようだった。KAZUYAは肩を叩いて励ましてやる。


K「大丈夫だ。みんな初めはこんな感じだ。……苗木、やってみてくれ」

苗木「……はい」


苗木の手も多少震えていたのだが石丸程ではなく、時間をかけて慎重に縫い上げていく。




532 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 23:16:59.49QWvhm2/h0 (10/11)


K「創縁(傷口)をもっと合わせろ。ただ縫っただけでは皮膚はくっつかないぞ。
  今のままでは抜糸した時にそのまま傷が開いてしまう」

苗木「は、はい……」

K「なんなら既に縫った所もピンセットを使っていいから合わせるといい」


苗木は何とか最後まで縫えたのだが、結局及第点は貰えずKAZUYAが一から縫い直した。
そのスピードたるや、まさしく二人の倍以上は裕にある。その後、部位を少しずらして
もう一度傷を作り、石丸に縫わせた。今度は一応最後まで縫い上げることが出来た。


「疲れた……」


同時にへたりこむ弟子二人をやれやれと見下ろしながらも、KAZUYAは労うことを忘れない。


K「お疲れさん。まあ、初めてで身内を縫うのは精神的に厳しいかもしれんな」

石丸「……ですが、先生は五歳でお父さんを縫われたとか」

苗木「ブッ?! お父さんを五歳の時に?!」

K「同じように震えていたな。しかも、親父の場合は麻酔なしだったから尚更だ」

苗木(五歳でそれが出来るって……やっぱり先生は普通じゃないんだな……)


幼い時から徹底的に訓練を積んでいるから誤解しがちだが、やはりKAZUYAには
確かな才能があるのである。今更ながらそれを痛感する苗木だった。


K「さて、片付けをして引き上げるか」


そう言ってシャツを手に取る。先述した通り、最近のKAZUYAは包帯を隠すためにワイシャツを着ていた。

ちなみに、女子からはそちらの方が遥かに好評でありKAZUYAが内心で憤慨するという出来事が
あったのだが今はそれは割愛する。掴んだシャツをKAZUYAが着ようとした時、それは聞こえてきた。


「いい加減にしてくれないかしら……!」


――いつも冷静な彼女の、今までに聞いたこともない怒鳴り声だった。




533 ◆takaJZRsBc2015/03/29(日) 23:23:57.88QWvhm2/h0 (11/11)


ここまで。




534以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/29(日) 23:33:24.587HzNvqxg0 (1/1)


相変わらずいいとこで引くなあ


535以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/29(日) 23:40:56.22RqvJ+68fo (1/1)

乙です


536以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/30(月) 01:42:58.20NywW8A68O (1/1)

まぁ縮むのは末端部の付属品なわけだが。


537以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/30(月) 02:02:27.68H4GblSQKo (1/1)

付属品も広義では男性器に含まれるからセーフ


538以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/30(月) 08:36:18.75UZl/W+E80 (1/1)

葉隠にも問題が現れて(まあクズが表に出てきたとも言う)次は霧切か…
葉隠は4章まで引っ張れそうだから今は置いといていいとしても霧切が不安なんだよ。


539以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/30(月) 10:38:23.1790xRjdC3o (1/1)

葉隠は絶望葉隠でも謝礼金云々言ってたから果てしなく平常運転。付き合いが長くなって露見しただけ

霧切はむしろ葉隠並みにスルーしてたのによく仲間になったって感じだからなぁ
我慢して…は言い過ぎだが、脱出のために色々妥協してたんだろう


540以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/30(月) 13:43:12.79+ShceKd1O (1/1)

ヒス切さん…


541以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/30(月) 14:11:54.44vK7sbkVEo (1/1)

中立を貫こうとして言いたいことも我慢してたら爆発もするわ。

葉隠はまだ面と向かって本音言ってるからいいよな。
価値観の違いってのは現実問題なかなか解決できないわ。本人の生き方を否定することにもなるんだし。


542以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/03/30(月) 17:04:44.43Ep9ZtlK/0 (1/1)

山田を叱っているのかな?


543名無しNIPPER2015/03/31(火) 22:49:03.77CDoUPFXSO (1/1)

まだかな~ワクワク


544名無し2015/04/05(日) 05:38:53.64MG+JypVSO (1/1)

過疎(´・ω・`)?


545 ◆takaJZRsBc2015/04/05(日) 22:09:25.95qZKV7UoL0 (1/9)


「?!」


バッと三人は後ろのガラス戸を振り返る。唐突に聞こえた霧切の怒声に、体が強張った。


「た、大変だよ! 私、先生呼んでくる!」

「どうした?」


間髪入れずに、KAZUYA達はガラス戸を開けて脱衣所に飛び込んだ。


朝日奈「え、先生?! って……きゃっ! なんで裸なの?!」


思わず朝日奈は赤面するが、他のメンバーは意外と冷静に後ろの二人を見て状況を理解した。


舞園「あ、苗木君達手術着を着てますよ!」

桑田「おおっ、マジだ。かっけー!」

大和田「……手術してたのか?」

不二咲「西城先生、怪我しちゃったのぉ?」

K「医療実習をしてたんだ。こちらはいい。それより、何があった?」

山田「西城カズヤ医師~! 後生です! どうかお助けください~!」


……何となく察しがついた。


霧切「山田君……私は再三アルターエゴの長時間使用をやめるよう警告したわ。なのにあなたは何度も
    深夜にここに来た上、今もまた脱衣所に来た。これがどのような意味を持つかわかっているの?」

桑田「おいおい、勘弁してくれよな……なんのために風呂大会とかしたんだよ」

大神「アルターエゴは我等の希望。それが黒幕に見つかればどうなるのかわからないのか?」

山田「だって、だって初めてだったんですよ……僕の話を嫌がらずに聞いてくれる女の子……」

江ノ島「機械に男とか女とかあるワケ? ていうか、不二咲がモデルなんだから男じゃね?」

朝日奈「私もそう思う」


江ノ島と朝日奈が冷静に突っ込みを入れるが、山田はまるで聞いていない。




546 ◆takaJZRsBc2015/04/05(日) 22:17:25.13qZKV7UoL0 (2/9)


山田「今まで、ママンだけだったんです……でも彼女は僕の話をとても楽しそうに聞いてくれて……」

石丸「……彼が何を言っているのか、僕にはさっぱり理解出来ないのだが……」

セレス「アルターエゴに自分の意志などありません。ただ知識を求めるようプログラミングされて
     いるだけです。山田君に興味があるのではなく、山田君の知識に興味が有るのですわ」

山田「そんなことはわかってますよ! でもしょうがないじゃないですか。
    だって、恋しちゃったんだもん。彼女の顔も声もキーボードまで」

K「キ、キーボードもか……」


余りの重傷ぶりにKAZUYAは、いやその場にいた全員が凍り付いた。


葉隠「……昔よぉ、俺の客でマネキンと恋してとうとう結婚までしちゃった
    社長がいるんだべ。山田っちは今その社長と同じ目をしているぞ!」

苗木「うわあ……」


苗木がその場の全員の心の声を代弁する。この奇人変人揃いの学園で、なるべく
相手の個性を受け入れることを心掛けている苗木の反応こそが全てだった。


K(長期間の拘束によるストレスで頭がおかしくなってしまった?
  それで逃避のため、アルターエゴを自分の理想の女性に見立てている??)


必死に分析を試みるが、正解などわかるはずもない。石丸の時に痛い程思い知らされたが、心の病は
彼にとっても専門外なのだ。そもそも、人脈の多様さには自信のあるKAZUYAだったが、無機物を真剣に
愛する人間などついぞ見たことがなかった。途方に暮れるとはまさしくこういうことを言うのだろう。


桑田「つーか自分がなにやってるかわかってんのか、ブーデー? 俺達は現在進行形で
    閉じ込められてて、これが脱出の鍵になるかもしれねーんだぞ!」

山田「アルたんを物みたいにこれなんて言うなぁっ!」

江ノ島「いや、物じゃん……」

石丸「よくわからないが、そんなに好きなら脱出した後に好きなだけ話せばいいだろう! これは
    君だけの問題ではなく、みんなの命運もかかっているのだ。迷惑をかけるのはやめたまえ!」

山田「迷惑? 自分だって一時期散々迷惑をかけてたくせに、あなたがそれを言うんですか……」

石丸「そ、それは……」




547 ◆takaJZRsBc2015/04/05(日) 22:32:38.87qZKV7UoL0 (3/9)


若干の悪意が篭った鋭い指摘に後ろ暗い所を突かれ、石丸はたじろいだ。
自身の弱さを認め乗り越えることを決意したが、開き直れる程にはまだ強くない。


大神「……よさぬか、山田」

霧切「過ぎたことを責めても仕方がないわ。私達は今の問題に向かっているの」

大和田「兄弟を悪く言うんじゃねえ! キッカケを作ったのは俺で、おかしくなったのは
     モノクマやコロシアイのせいだろ! 兄弟はなにも悪くねえ!」

山田「じゃあ僕がおかしくなってもいいじゃないですか! あなた達に僕を糾弾する権利なんてないんだ!
    お前も、お前も、お前も、お前も! みんな過去に問題起こしてるんだろうがよぉ!」

「……………………」


指を指された舞園、桑田、大和田、石丸は反論できずに俯く。


苗木「それは違うよ! アルターエゴの意志はどうなの?」

舞園「そ、そうです。彼女は私達の脱出を望んでいるはずです。自分のせいで
    山田君がみんなに嫌われたりしたら、きっと悲しむはずですよ」

山田「……あぁ、そうでしょうなぁ。アルたんは優しくて、いつも僕の心配をしてくれますから」

セレス「あなたの心配ではなく皆さんの心配では?」

葉隠「これは、かなりキてるべ……」

「…………」

K「ゴホン! とりあえず、女性と付き合いたいならまず必要な手順があるんじゃないのか?」

山田「手順? まさか、キスとか……?! でも、この場合どこにすれば……」

江ノ島「なにこいつ……マジでキモいんだけど……」

江ノ島(……おかしいな。確かに山田君は学園生活の時もアルターエゴに興味を
     持っていたけど、流石に恋愛感情まではなかったはず。とうとうおかしくなった?)


彼女が知る学園時代との違いに、江ノ島は困惑を覚えていた。


石丸「女性と交際するなら、相手方のご両親に挨拶ではないか?」

桑田「付き合うだけで挨拶なんてしねーよ、フツー」





548 ◆takaJZRsBc2015/04/05(日) 22:40:54.37qZKV7UoL0 (4/9)


KAZUYAは桑田を目で制すと続ける。


K「そう、挨拶だ。アルターエゴの親は不二咲だから、まずは不二咲の許可を取るべきだろう」

不二咲「ふぇえっ?! ぼ、僕?!」

山田「不二咲千尋殿ぉぉぉ! 是非、是非僕にアルたんと付き合う許可を!」

不二咲「えっと、その……まだ知り合ったばかりでお互いのことがわかってないから少し
     早いというか、もうちょっとお友達のままの方がいいんじゃないかな……?」

桑田「もっとはっきり言ってやれよ!」

大和田「ああ。迷惑だって言ってやるのも優しさだろ」

山田「ふざけるな! 僕の愛がアルたんにとって迷惑なワケがない!」

江ノ島「それ、ストーカーがよく言う発言なんだけど……」

大神「深夜に相手の元に押しかけるのは誉められた行動ではないと思うぞ……」

朝日奈「周りが見えなくなってるって!」

不二咲「えっと、えっと……」チラ

大和田「不二咲!」

石丸「不二咲君!」

K「…………」コクリ

不二咲「ごめんね……アルターエゴは今大事なお仕事の最中だから……
     それを邪魔されるのは、アルターエゴにとってもきっと迷惑だと思うんだ……」

山田「ガアアアアン!!」

桑田「ほれみろ! ざまぁ!」

苗木「まあまあ」

霧切「今後しばらく、山田君がアルターエゴに会うのを禁止するわ」

山田「そ、そんな殺生な! 僕にとってアルたんと話すことだけが生きがいなのに!」

霧切「……ハァ。今の調子だと会うなと言ってもこっそり会いそうね」

舞園「それも問題ですが、短期間に何度も脱衣所に集まったのは不味くないですか?」




549 ◆takaJZRsBc2015/04/05(日) 22:50:30.69qZKV7UoL0 (5/9)


霧切「そうね。かなり問題だわ……」

苗木「そういえば、最初からこんなに集まってたけど何かあったの?」

朝日奈「あ、それは私達のせいだ……」

大神「我等はトレーニングの汗を流そうと脱衣所にやって来たのだ。そこに、先客として山田がいた」

朝日奈「前に霧切ちゃんが、山田が何度も脱衣所に通ってて黒幕にバレないか心配……って
     言ってたから注意したんだよ。でもなかなかやめないから霧切ちゃんを呼びに行って……」

桑田「俺達はフツーに食堂でダベってたんだけどよ、二人から話を聞いた
    霧切が血相変えて飛び出てったから、心配になって見に来たっつーワケ」

K「その結果、十神と腐川以外の全員が集まってしまったということだな」

大和田「まさかセンセイ達がこんな所にいるとは思わなかったしよ……」

朝日奈「ご、ごめん。オオゴトにする気はなかったんだ」

K「いや、仕方ない。今騒ぎにならなくてもいつかは問題になっていたはずだ」

石丸「しかし、どうする? 今回の件で黒幕が感付いてしまったら……」

K「そうだな……」チラリ

霧切「…………」


KAZUYAからの視線を受け、霧切は顎に手を当て考える。


霧切(本当は内通者を特定したいけど、このままここに置いておけばトラブルの元になる……)

霧切「アルターエゴは、一時的にどこかへ避難させましょう」

セレス「わたくしも同感ですわ。これ以上ここに置いておくのは危険です」

桑田「それが無難かもなー」

江ノ島「でもさ、どこに置くワケ?」

江ノ島(どうしよう……盾子ちゃんには止められてるけど、やっぱり壊しておくべきだったかな)

葉隠「アルターエゴは元々不二咲っちの物なんだし、不二咲っちでいいんじゃねえか?」

大神「我も賛成だ」

朝日奈「うん、さんせーい」




550 ◆takaJZRsBc2015/04/05(日) 23:02:02.17qZKV7UoL0 (6/9)


不二咲「ま、待って……! 確かに僕が持っているのが一番だけど、今回の件で黒幕に
     知られたかもしれないし、僕が持っててもいざという時に守れる自信がないんだ……」

大和田「また不審者が襲ってきてもまずいしな」

不二咲「……僕は、西城先生が持っているのがいいと思うなぁ」

K「俺か?」

石丸「ウム。保健室なら常に僕達もいるし、万が一のことがあっても大丈夫だな」

霧切「そうね。当面アルターエゴの管理はドクターに任せるわ。私達の
    誰かが持つよりも、教員のドクターが管理するのが公平でしょうし」

苗木「そうだね。先生だし大人だし、KAZUYA先生が一番信頼出来るよ」

朝日奈「じゃあ先生よろしくねー!」

K「俺は構わないが……」


横目で山田の様子を伺った。山田はアルターエゴのことを女子だと思っている。ということは、


山田「で、では西城カズヤ殿が服の下に仕込んで持って帰るんですか?!
    寝る時は肌身離さずアルたんと一緒に添い寝したり……!!」

K「俺にそんな趣味はない……」

K(霧切の方が良かったんじゃないかな……)


今後のことを考えると頭が痛い。


霧切「とにかく、これ以上ここにいたら怪しまれるだけだわ。今日はもう解散しましょう」

山田「ああ、アルたん。アルたん……」

大神「……山田よ、お主は少し冷静になった方が良い。あれは機械だ」

朝日奈「そうだよ。二、三日すれば目もさめるって」

葉隠「もうちょい現実見た方がいいぞ?」

桑田「あんまメンドーかけるなっての」


ぞろぞろと生徒が退出する中、入れ替わりに十神と腐川が入って来た。


腐川「あぁっ?! せ、先生が逞しい上半身を晒している?! ふふ、腹筋が……!」


顔を紅潮させて慌てる腐川と対照的に、十神は小馬鹿にしたように顎でKAZUYAの包帯を指す。




551 ◆takaJZRsBc2015/04/05(日) 23:13:30.17qZKV7UoL0 (7/9)


十神「何だ、お前達。いよいよ手術の真似事でも始めたのか?」

石丸「縫合実習だ! 今日はまるで駄目だったがな。……だが次こそは上手くやるぞ!」

十神「フン、大したものだな。凄いじゃないか」


あからさまな皮肉に、いつも冷静なKAZUYAも少しばかりカチンと来た。


K「……舐めない方がいいぞ。石丸は知識だけならそこらの医学生並みにあるし、
  苗木は静脈注射程度なら一人でもほぼ出来ると言っていい」

十神「たかだかその程度の技術のために自分の体を実験体にしていると言う訳か。ご苦労なことだ」

十神「何の可能性も見えない凡人のために何故そこまでやる? 高尚な自己犠牲心という奴か? それとも、
    医者というのは頭のネジが飛んでいる酔狂者のことなのか? なら確かに石丸は向いているかもな」

舞園「十神君、やめてください」

苗木「いくらなんでもそういう言い方は酷いよ!」

十神「フン、事実だろう?」


二人の抗議など意に介さず十神はKAZUYAを睨む。


十神「それで、何があった? わざわざ俺を外して集まっていた訳だからな。余程のことがあったんだろ?」

霧切「集まっていた訳じゃないわ。たまたま騒ぎになってしまっただけよ」

葉隠「山田っちがおかしくなったんだべ!」

十神「次から次へと……今度は何だ? これだから愚民は……」

腐川「そ、そうよ! 何があっても動じない白夜様の落ち着きを見習いなさい!」

K「……今回ばかりはその通りかもな」


いつもなら軽く流される言葉に同意され、腐川も事態の異常性を感じ取った。


腐川「え、な、何……?! 一体何が起こった訳?!」

苗木「山田君、アルターエゴを好きになっちゃったんだって……」

十神「…………」




552 ◆takaJZRsBc2015/04/05(日) 23:27:04.63qZKV7UoL0 (8/9)



いつも険しい十神の表情が、未だかつてなかったほど引きつったのをKAZUYA達は目撃した。


腐川「ハ、ハァァア?! アルターエゴって……機械じゃないの!」

K「だから、その機械を好きになってしまったそうだ。恋は盲目というが、かなり危険な領域だな」

霧切「山田君が何度も脱衣所に足を運ぶから、黒幕に感付かれたかもしれない。
    だから、しばらくアルターエゴはドクターに管理してもらうことにしたわ」

十神「……妥当だな」


流石に山田の件は予想外過ぎたのか、珍しく十神が疲れた顔を見せている。


十神「それにしても……ここにはおかしな奴しかいないのか? まったく……」


呆れたように十神は呟くが、お前にだけは言われたくないと一同は思っていた。



― ??? 時刻不明 ―


「うぷぷ。うぷぷぷぷ……」

「絶望の種が芽吹いてますなぁ。もうにょきにょきにょきにょきと生えてきてますなぁ」

「元々猶予は一週間て決めてたしね」

「果たして西城先生は、今までの行動で事件を食い止めることが出来たのかな?」

「ではでは、結果をご開帳~!」






Chapter.3 世紀末医療伝説再び! 医に生きる者よ、メスを執れ!!  非日常編  ― 完 ―





553 ◆takaJZRsBc2015/04/05(日) 23:36:34.44qZKV7UoL0 (9/9)


ここまで。

前回Eありの禁忌に指先と書きましたが正しくは指ですね。多分付け根に使っても
指の血行止まるので良くないとおもいます。あと>>537のつもりだった


……おかしいな。三章は三編で終わるつもりだったんだけどな




554以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/05(日) 23:50:14.791UoKSLuIo (1/1)

乙です


555以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/06(月) 00:40:59.43ADAqx34v0 (1/1)

乙です
十神の予想を上回るとは……
山田クン、恐ろしい子……!


556以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/06(月) 02:58:25.51XU8FyJbOo (1/1)

山田「十神白夜殿……感情を軽視しているといつか足元を掬われますぞ」

山田の姉は結局なんなんだろうな


557以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/08(水) 00:44:36.56QAdR1AZyo (1/1)

後付けキャラだし…

あと姉は本職の漫画家だから忙しいんじゃない?
一緒に住んでるかもわかんないし


558以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/08(水) 07:42:56.37MogjvcYAO (1/1)

姉は同人誌を馬鹿にしてたんじゃね


559 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 20:36:00.32jsMfb4eS0 (1/16)


今日は安価あります。三章最後の大事な大事な自由行動です。

再開




560 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 20:39:18.86jsMfb4eS0 (2/16)






Chapter.3 世紀末医療伝説再び! 医に生きる者よ、メスを執れ!!  ○○編







561以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 20:40:08.91aEQZxBVQ0 (1/4)

自由行動か…霧切さんは行っておきたい所だけど


562 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 20:43:36.09jsMfb4eS0 (3/16)


ピンポンパンポーン♪


「!!」


和やかに朝食を食べ、食後の会話を楽しんでいた彼等が一斉に顔を上げた。
この音が示すものは何か、彼等はもう知っている。


モノクマ『もう猶予期間終わりでいいよね? と言う訳で、全員体育館に集合ー!』


モニターに映る呑気な顔と声が、計り知れない悪意を秘めて彼等を呼び出した。


「…………」


嫌な沈黙が辺りを支配する。


葉隠「お、おいおい……マジかいな……」

十神「また始まるようだな。“コロシアイ”が」

江ノ島「あんたねぇ! まだそんなこと言ってんの?!」

石丸「もう二度とコロシアイなんて起きない! いや、起こさせない!」

セレス「提示される動機に揺らがなければいいのです。いい加減皆さんも適応したのでしょう?」

「…………」


俯く者、鼻で笑う者、困惑し怯える者。そこには様々な顔があった。


不二咲「西城先生……」

朝日奈「……大丈夫、だよね?」

K「ああ」


怯える生徒達の手を、KAZUYAはギュッと掴む。




563 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 20:52:50.28jsMfb4eS0 (4/16)


苗木(大丈夫……僕達はこれだけ強い絆を築いてきたんだ。内通者とか十神君とか
    不安要素はあるけど、みんなで手を取り合って警戒すれば……)

桑田「かったりーな。今度はどんなセコい手使ってくるんだか」

山田「僕達の絆を舐めないで頂きたいですね」

霧切「行きましょう」

大神「ああ」


― コロシアイ学園生活三十七日目 体育館 AM8:28 ―


モノクマ「ヤッホー。おひさー! 元気だった?」

腐川「で、出たわね! もう二度とあんたの顔なんて見たくなかったのに……!」

モノクマ「何言ってんの? この物語の主役はボクでしょ? まさか主人公不在のまま
      話を進めるとか? そんな馬鹿げた話あったもんじゃないよ!」

山田「何が主人公だ! 僕の物語にお前なんて出てこないんだ!」

モノクマ「あらあら、モブどころか画面に映ることすら叶わないデブオタが、この完璧なフォルムと
      愛らしさを持ち、かわいいキャラ及び抱きしめたいキャラランキング堂々一位のボクに
      勝負を挑むだって? アリが戦車に喧嘩売ってるみたいだね! プークスクス!」

山田「なっ?! ぬなぁっ?!」

K「相手にするな。こいつと話をするだけ無駄だ。要件を言え」

モノクマ「うぷぷ。わかってるくせにぃ~」

大和田「っるせぇ! どんな動機が来ようと俺はもう絶対に誰かを襲ったりなんてしねえぞ!」

舞園「私もです! 二度と過ちを繰り返したりしません」

苗木「どうするんだ、モノクマ! これでもまだ動機を出すのか?」

モノクマ「うぷぷ。うぷぷぷぷ。そんなに気になる? 気になっちゃう?」

モノクマ「本当は心が弱いくせに、不安で不安で堪らないから大きな声を出して必死に鼓舞してるくせに、
      早く内容を聞いて、自分は関係ない大丈夫だって思いたいだけのくせにぃ!!」


血のように赤いモノクマの左目が、爛々と怪しい光を放って生徒達の心を射抜く。




564 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 20:58:26.92jsMfb4eS0 (5/16)


「……!!」

モノクマ「ではご期待にお応えして、今回の動機を発表しまーす。今回はね、基本に立ち返ってみたんだ」

K「基本?」

モノクマ「ジャジャーン!」


モノクマが両手を掲げると、舞台の上から大量の札束が降ってきた。


「なっ?!」

モノクマ「今回の動機はこれ! ひゃっくおっくえーん! コロシアイをして脱出するクロには
      もれなくこの百億円をプレゼントしちゃいます! なんと、贈与税はかかりません!」

葉隠「う、うおおおお! 金だ! 見たこともねえ量の金だぞ!」

朝日奈「葉隠、あんた!」

桑田「てめーなぁ……!」

モノクマ「そうそう、それでいいんだよ。世間では保険金だの遺産相続だのくだらない動機で
      簡単に殺人が起こっているじゃない。今回もつまりはそういうことって訳です!」

石丸「ふざけたことをッ! 会って間もないうちならいざ知らず、
    僕達は共に何度も苦難を乗り越えてきた仲間だぞ!」

大和田「そうだ! よりによって金なんかで殺すかよ!」

腐川「で、でも……動機にならない動機をこいつが出してくるなんて不自然じゃない?」

霧切「もしかしたら、この中にお金が必要な人間がいるのかもしれないわね……」

K「今までのパターンから言うと十中八九そうだろう」

K(現に、石丸は実家が借金を持っている。隠しているだけで、今回の動機が動機になり得る
  人間が潜んでいる可能性があるはずだ。いや、必ずいるからこそ奴はこれを動機にした――)

K(……しかし、誰だ? 今の段階では全くわからない……)

セレス「お金なら問題ありませんわ。わたくし、年に億を稼いでいるので見飽きております」

十神「たった百億ぽっちか? この俺を動かすなら最低でも一兆はなければな」

腐川「ア、アタシは印税あるし……」





565 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 21:21:42.71jsMfb4eS0 (6/16)


山田「僕だって、こう見えて結構稼いでますよ!」

桑田「俺はまだ稼いでねーけどプロになれば億で契約余裕だし」

江ノ島「アタシは売れっ子モデルで舞園はアイドルだしね」

苗木「ここにいるのはみんな普通の人よりお金を稼いでいる人ばかりだぞ!」


しかし、ふと朝日奈が不安げに呟いた。


朝日奈「……でもさあ、当てになるのかな?」

不二咲「どういうこと?」

朝日奈「だって、そこの葉隠だって結構稼いでるはずでしょ? でもお金に汚いし」

葉隠「き、汚いとはなんだ! 金が好きで悪いんか!」

大神「……お主は少し度を超えているのだ」

十神「そういえば石丸、確かお前の家には莫大な借金があったな」


ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら、十神が争いの種を蒔く。


石丸「うっ! それは……」

セレス「あらあなた、貧乏臭いとは思っていましたが借金まであったのですか?」

葉隠「ほ、ほら! 俺じゃねえ! きっと石丸っちを狙った動機なんだべ!」

石丸「葉隠君……!」

大和田「ふざけんな! 兄弟が金で人を殺すと、本気で思ってんのか?!」

葉隠「金の力をナメんじゃねえ! 金ってのはなぁ、簡単に人を狂わせちまうんだぞ!
    俺は今までそんなヤツらを大勢見てきた! 石丸っちが例外なんてなんで言えるんだ!」

舞園「皆さん、落ち着いてください。大丈夫ですよ。だって、石丸君ですよ?」

江ノ島「こっちだってないと思いたいけどさー、家族のためって言われたらねぇ?」

セレス「彼のような生真面目な方は、逆に家族や友人のため必要以上に身を犠牲にする傾向がありますし」

苗木「それは、そうだけど……」





566 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 21:46:03.66jsMfb4eS0 (7/16)


霧切「みんな忘れていないかしら。誰かを殺せばここにいる人間は全員死んでしまうのよ?」

K「そうだ。自分一人の命なら喜んで差し出すかもしれんが、俺達全員を見殺しにする男ではないだろう?」

大神「石丸は不二咲を殺したと思った時、迷わず自首をした。信頼しても良いのではないか?」

朝日奈「そ、そうだよ! ナイフを持った不審者から私を助けてくれたんだよ?!」

江ノ島「うーん……」

石丸「……もし僕が疑わしいと言うのなら、僕を縛って拘束してくれ」

腐川「あんた、本気で言ってんの……?!」

桑田「おい……!」

石丸「僕は本気だ。それでみんなが安心出来るというのならそうすればいい。
    だが、よもや金で人を殺す人間だと思われるなんて……僕は悲しいぞッ!!」

K「……葉隠、お前本気で言っているのか? 石丸が金で動くような男だと」

葉隠「いや……」


流石に気まずくなったのか、葉隠は黙り込んだ。


十神「フン、つまらん」

苗木「……ねえ、何がつまらないの?」

十神「お前達の頭の悪さにだ。今までの傾向から考えて、動機は不特定多数ではなく
    特定の誰かを狙い撃ちしているものだというのは流石にわかっているな?」

霧切「ええ」

十神「なのに、よりによってこの段階で石丸一人を狙い撃ちする意味があるか?」

K「元々生真面目で犯罪に強い抵抗を持つ男が仲間と絆を深めれば、まず事件は起こさないだろう」

山田「つまり十神白夜殿は、他にもこの動機に当たる人間がいると考えている訳ですな」

十神「当然だ。動機と銘打っておいて何も事件が起こらなかったでは、あまりにもお粗末だからな」

大和田「ちょっと待てよ。テメエが兄弟の家の借金について言い出したんじゃねえか!」

十神「お前等の言う友情や絆とやらを試しただけだ。結果は火を見るより明らかだった訳だが」




567 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 21:58:37.45jsMfb4eS0 (8/16)


モノクマ「絆だ仲間だと声高に言っていても、ちょっと疑惑の種を埋め込んでしまえばあっという間に
      疑心暗鬼の芽が芽吹いて崩壊してしまう。十神君はそう言いたいのでしょう」ウンウン

「…………」

K(また、崩壊してしまうのか? 俺達は、また……)

苗木(絶対に崩壊なんてさせない! 僕はみんなを信じる!!)

大神「しかし、それでは一体誰を狙っているというのだ?」

セレス「先程苗木君が言ったように、ここにいる方々のほとんどはそれなりに稼いでいますものね」

霧切「収入がアテになるのかしら? 葉隠君の言葉ではないけれど、確かに人間の欲は深いわよ?」

江ノ島「いくら収入あってもそれ以上に使ってたら意味ないしねー」

大和田「じゃ、じゃあ結局全員の動機になるってことか?!」

霧切「全員は言い過ぎだけど、収入があるからは必ずしも免罪符にならないということね」

十神「貴様ら庶民程度の稼ぎならそうだろうな。俺は生まれついた時から金には困らん」

舞園「……十神君は元々動機なんて関係ありませんものね?」

十神「ククッ、そういうことだ。とにかく用件は終わりだろう? 俺は戻るぞ」

K「そうだな。解散するとしよう」


保健室に戻り、KAZUYAは考えた。


K(今この学園には三種類の人間がいる。元々コロシアイに乗る気のない者、
  元々コロシアイに乗っている者、そして今回の動機の対象となる者……)

K(苗木、石丸、不二咲、朝日奈、霧切は元々問題ない。舞園、桑田、大和田はもう二度と
  過ちを起こさない決心をしている。腐川は自分から人を殺したいとは考えていない)


ここまではいい。次にKAZUYAは危険人物を考えた。


K(江ノ島、十神――恐らくこの二人が最も危ない。もういつ動いてもおかしくないだろう。
  次が内通者疑惑のある大神、安弘か。最後は葉隠、山田。……特に葉隠は先程のあれだ)

K(腐川は信じたいが、翔は少し行動が読めない所があるからな。ということは、
  警戒すべきは七人ということか。前よりは減ったが、まだまだ多いな……)




568 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 22:06:26.20jsMfb4eS0 (9/16)


万が一江ノ島と大神が同時に動いたらと考えるとゾッとする。


K(楽観的かもしれないが、今回の動機が誰かを狙ったものなら内通者は
  まだ動かないと思いたい。……というか、正直動かれると対処しきれん)


コンコン、ガチャッ。


苗木「先生」

霧切「脱衣所に来て頂戴」

K「わかった」


・・・


脱衣所には苗木、霧切、舞園、桑田にKAZUYAを加えた五人が集まっている。


霧切「悪いけど、今回は全員じゃなくこちらでメンバーを選別させてもらったわ。理由は……」

K「朝日奈と大神だな」

霧切「ええ。大神さんを外すような真似をしたら彼女が黙っていないでしょうから」

舞園「大神さん……怪しいでしょうか? 確かに何か隠しているなと
    思う時はありますが、人を傷付けるような方にはとても……」

K「俺もそう思う。杞憂なのが一番だが……」

桑田「お前と同じで、真面目なヤツほど背負ってるものは大きいモンだろ?
    本人の希望じゃなくても何か事情がありゃ話は違ってくるじゃん」

舞園「そうですね……」

苗木「大神さん、実家に道場があるし。それにケンイチロウさんて言ったっけ。
    確か大神さんのライバルで、とても大切な人が病気なんだ……」

K(……どこかで聞いた気がするな)

霧切「警戒するに越したことはないわ。とりあえず、作戦を練りましょう」

K「警戒すべきは十神、江ノ島、大神、安弘、山田、葉隠、翔の七人だと俺は考える」




569 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 22:14:49.47jsMfb4eS0 (10/16)


霧切「私も同意見よ」

苗木「し、七人……」

桑田「えっと俺達が、ひーふーみーよー……九人か」

苗木「そんな……サッカーじゃあるまいし、一人につき一人を付けて警戒するなんて無理だよ!」

舞園「一斉に動かれたら、どうしようもないですね……」

桑田「しかもよぉ、江ノ島はせんせーでも倒せないくらい
    めちゃくちゃつえーんだろ? あれ? 俺達詰んでね?」

霧切「……確証はないけど、彼女は動かないと思うわ」

K「何故そう思う?」

霧切「彼女を動かすなら動機なんて必要ないもの。むしろ、動機を提示する前の
    みんなが油断している状態で不意打ちすべきだと思わない?」

K「確かにな。黒幕はどうやら、何が何でも俺達に同士討ちをしてもらいたいらしい。
  それが奴の目的であり、俺達を絶望に陥れることに最も近い方法だからだ」

舞園「……何で、そんなことをしたがるんでしょう? そんなことをして楽しいんでしょうか?」

桑田「頭イカれてんだよ。そんなヤツに正論言っても仕方がねえ」

苗木「うん。残念だけど桑田君の言う通りだよ。黒幕は話の通じる相手じゃないんだ」

K「では、内通者は基本的には除外と言うことでいいな?」

霧切「ただし、けして隙は見せないことよ。私達はあくまで狩られる側なのだから」

K「大神は……仮に借金があったとしても金で人を殺したりはしないだろう。
  生活態度も極めて質素だ。今回の動機の対象ではないと思う」

舞園「それに、朝日奈さんがずっと一緒にいれば大丈夫です!」

桑田「やっぱ葉隠怪しくね? さっきも目の色変えてたしよ」

苗木「セレスさんてあの性格だし、派手な生活してそうだよね。山田君も
    コレクター気質だから、意外とお金使ってるかもしれないし」

K「その三人に十神を加えたら四人……これなら何とかなりそうだな」


次に誰が誰を見張るか割り当てようとした時、中断が入った。




570 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 22:23:22.99jsMfb4eS0 (11/16)


「お、こんな所にいたのかよ」

「探しましたよ!」


石丸、大和田、不二咲の三人が脱衣所に入って来た。


石丸「西城先生! 今回の事件を防ぐための画期的な策を考えました!」

不二咲「僕達三人でね、どうすれば効率的に事件を食い止められるか話し合ってたんだ」

大和田「でよ、その結果お互いに見張り合うのが一番じゃねえかってことになったんだよ」

K「互いに見張り合う?」

不二咲「つまりね……」

石丸「お泊り会です! 男女別に別れ、一晩寝ずに語り合うのです!」

K「フム、考えたな。それなら人数を分散させずに済むし牽制にもなる」

霧切「……そうね。悪くないかもしれない」

桑田「でもよ、男子はいいぜ? でも、女子は危なくねーか? だって……」


江ノ島、大神、セレス、腐川と、目下危険とされている四人もの人物と
一晩過ごすのはある意味ギャンブルとも言える。普通の人間ならまず拒否するだろう。


舞園「……大丈夫だと思います。黒幕の目的が私達の仲間割れや学級裁判での犯人探しなら、
    一度に大勢殺すような真似はしないはずです。犯人がすぐに分かってしまいますから」

K(大神も仲良くしている女子達は殺さないだろう。なら、いざという時は守ってくれるはず……)

K「しかし、本当にいいんだな? 怖いなら保健室に全員詰め込んでもいいんだぞ?」

石丸「先生、何を言っているんですか?! いくら教師同伴と言えど、
    男女が同じ部屋で一晩過ごすなど不健全です! 風紀が乱れます!」

「…………」




571 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 22:32:35.23jsMfb4eS0 (12/16)


流石の石丸も女子組の危険人物率を知っていればそんなことは言わないだろうが、
この男はKAZUYA達が江ノ島や大神、セレスを怪しんでいることなど微塵も知らない。


K(石丸に言った方がいいか? だが、人一倍顔に出る男だしアドリブがまるで効かん……
  迂闊なことを言って変に江ノ島を刺激でもしたら一巻の終わりだ)

霧切「私達は大丈夫よ。……大神さんもいるし」


KAZUYAの考えを読んだのか、霧切は微かに首を振りながら釘を刺す。


舞園「単独行動は避けて、霧切さんとずっと一緒にいます」

K(クロが一度に殺せるのは二人までだ。朝日奈や腐川が加われば人数オーバーで手は出せない)

K「わかった。ではそうしよう。何かあったら全員で固まってすぐに俺の所に来い」


そして会議はお開きとなるが、夜までまだ時間はある。


K(俺は俺に出来ることをするまでだ)

苗木「先生!」

K「どうした、苗木?」

苗木「先生はいつもみんなの所を見回っているでしょ? 僕も手伝います」

K「本当か。それは助かる。なら十神を見に行ってくれないか? 俺が行っても
  追い出されてしまって話にならんだろうからな。苗木なら大丈夫だろう」


今回、KAZUYAの自由行動は人物安価三人+場所選択二つ

プラス苗木行動二回(二回のうち一回は十神確定)である。
苗木行動は仲間を選んだ場合一度に複数選択可能。


KAZUYAの一人目

↓3(迷ったり相談したい場合は安価下を使おう!)



572以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 22:34:11.16LsYVwAAc0 (1/2)

霧切


573以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 22:36:34.36aEQZxBVQ0 (2/4)




574以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 22:44:11.29vFh+tjCG0 (1/2)

霧切


575 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 22:46:13.63jsMfb4eS0 (13/16)


二人目


↓2



576以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 22:49:58.88vkYxpRR3O (1/2)

山田かな


577以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 22:51:38.77nGDFhT+4o (1/1)

葉隠


578 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 22:53:32.23jsMfb4eS0 (14/16)


三人目(KAZUYAの指名安価ラスト)


↓2



579以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 22:54:13.22aEQZxBVQ0 (3/4)

セレス


580以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 22:54:52.47LsYVwAAc0 (2/2)

苗木選択は仲間を選んだほういいかしらね


581以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 22:56:38.49vFh+tjCG0 (2/2)

山田かセレスだよな……
セレスは娯楽室で会えるとして、山田か?
安価下


582以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 23:02:01.76dm5dPidRo (1/2)

セレスじゃね?原作クロだし
山田は美術室に行けば会えるし

st


583以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 23:04:43.363v85oGIbo (1/1)

セレス


584 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 23:11:22.91jsMfb4eS0 (15/16)


場所選択一つ目

現在行ける仲間の部屋は苗木、桑田、舞園、石丸、朝日奈、腐川


↓2



585以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 23:19:15.32vkYxpRR3O (2/2)

桑田の部屋


586以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 23:24:36.81dm5dPidRo (2/2)

美術室


587 ◆takaJZRsBc2015/04/12(日) 23:27:11.16jsMfb4eS0 (16/16)


場所選択二つ目

現在行ける仲間の部屋は苗木、桑田、舞園、石丸、朝日奈、腐川


↓2



588以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/12(日) 23:37:49.98aEQZxBVQ0 (4/4)




589以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/13(月) 00:10:09.96C9EQmB7x0 (1/1)

桑田の部屋


590 ◆takaJZRsBc2015/04/13(月) 00:13:11.018UXjkTIZ0 (1/4)


よくよく見たら仲間結構多いし、動機発表後というタイミングなのでもう一個サービス

場所選択三つ目
現在行ける仲間の部屋は苗木、舞園、石丸、朝日奈、腐川


↓1



591以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/13(月) 00:16:12.974UJ+c4Ch0 (1/2)

腐川


592 ◆takaJZRsBc2015/04/13(月) 00:24:50.328UXjkTIZ0 (2/4)


では最後に苗木行動の安価

苗木君はコミュ力が高いので全員選べます。十神君は既に選んでいます。
仲間は一度に複数選択も可


↓2



593以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/13(月) 00:33:33.394UJ+c4Ch0 (2/2)

ksk


594以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/13(月) 00:34:15.832F4/KdhIO (1/1)

山田 朝日奈


595 ◆takaJZRsBc2015/04/13(月) 00:40:11.688UXjkTIZ0 (3/4)


すみません。複数選択の時は仲間キャラのみでお願いします。

仲間は現在KAZUYA、苗木、桑田、舞園、石丸、不二咲、大和田、霧切、朝日奈、腐川です。




596以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/13(月) 00:41:47.01tgBvzMo+O (1/1)

山田


597 ◆takaJZRsBc2015/04/13(月) 00:49:56.588UXjkTIZ0 (4/4)


了解しました。

KAZUYAが霧切、葉隠、セレス、美術室、桑田の部屋、腐川の部屋
苗木君が十神君、山田君ですね

本日はここまで。


話は変わりますが、このスレ1と同年代が多そうなので宣伝
現在、ダンガンロンパと笑う犬のクロス書いてます。興味のある方はどうぞ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428751475/


ではまた来週。



598以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/13(月) 00:56:53.49KjtHPgeGo (1/1)

乙です


599以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/13(月) 14:08:27.487eMGqbVNO (1/1)


あれ1がやってたのか
完成度高いから期待
一人葵三代とか好きだったわ


600以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/14(火) 10:07:04.908Kgp1gLtO (1/1)


同年代です
Doctor Kも電子書籍化されてこれでシリーズ全部電子化ですね
このスレの影響だったりして


601以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/14(火) 15:33:27.49Y0wuxHm4o (1/1)

doctor.Kってなんで電子書籍遅れてたんだろうね
KEIを黒歴史にしたいのかと思ったがK2ではバリバリ出てきてるもんなぁ


602以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/14(火) 17:47:53.45e9T1eBkCO (1/1)

テロとか大統領暗殺ネタでいろいろむずかしかったとか


603以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/14(火) 20:12:49.80u8iLcxLP0 (1/1)

安価あったんだー乙
中々リアタイで安価巡り会えないな…いや日曜夜更新ついつい忘れちゃうからだけど
安価ある時は事前に予告あったら嬉しいかなー。マメにチェックできなくてごめんね


604以下、名無しにかわりましてモノクマがお送りします2015/04/16(木) 23:06:17.92EwgPiASz0 (1/1)

セレスがクロだとしても、原作だと後々だよな。葉隠か十神あたりだと思う・・・。
変な話しだけど、ドクターKのスキルってなんだろうな・・・。後、声優とか・・・
スクールモードとかはするのですか?


605 ◆takaJZRsBc2015/04/19(日) 00:05:01.01lFj+uHRZ0 (1/1)

ふと過去にアップしたものを見ていたら、絶望少女発売記念のコラ漫画だけ
異常にDL数伸びてることに気が付いた。どこかに転載されたのかな


>>603
いえいえ、追って頂いているだけ有難いです。次からは事前告知するようにしますね
ちなみに今回は1自身安価のことを忘れていました。投下直前に投下分を見て気がついたという

>>604
声ですか。最初は医者繋がりでBJの大塚明夫さんとかいいなと思ったし合いそうだけど
やっぱりBJのイメージが強いですよね。あまり低すぎないイメージなので堀内賢雄さんかなぁ
各自のイメージでいいと思いますよ。あ、でもTETSUは大塚芳忠さん一択。これは譲れない

スクールは番外編とかおまけ短編でやるかもしれませんね。スキルは次回までに考えておきます



606以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/19(日) 06:23:08.11qsse+U+9O (1/1)

そういえば最初の方は仲間にスキルとかあったよねww


607名無しNIPPER2015/04/19(日) 12:35:54.962iXONHhSO (1/1)

次いつ再開するか書いていただけたらありがたいです!


608以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/19(日) 13:21:21.02/QWxB89Po (1/1)

最近はずっと日曜夜更新で固定だよ


609 ◆takaJZRsBc2015/04/19(日) 23:04:20.63GtY0GB450 (1/5)


― 自由行動 ―


(ムゥ、葉隠の奴どこにもいないな? どこに消えた?)

「いや、こういう時は案外……」


ピンポーン。……ガチャ。


「ヒイッ、K先生か……な、なんの用だべ?」

(やはり部屋にいたか。葉隠は誰とでも上手く付き合っているように見えてその実、誰とも
 仲良くしていない。こういう時はきっと自室に篭っているだろうと思ったが、正解だったか)

「少し話でもしないか?」

「話ってさっきの? まさか俺を誘い出して痛めつけるつもりじゃ……?!」

「…………」


呆れたような怒ったような目で軽く睨めつけると、葉隠は慌てて言い直す。


「……あ、いや、今のはナシで」

(裁判の時の十神を除けば、俺が生徒に手を挙げたことなんて一度もないんだけどな……)

「で、どうする? 来るのか、来ないのか? 嫌なら無理強いはしない」

「わかった。行くって……」


KAZUYAの申し出に、葉隠はあからさまに嫌そうな顔をしたが最終的には黙ってついてきた。


「どこがいいかな?」


保健室や脱衣所では他のメンバーと鉢合わせする可能性がある。あまり人の来ない場所がいいだろう。


(俺もあまり行かないし、あそこがいいか)




610 ◆takaJZRsBc2015/04/19(日) 23:14:39.26GtY0GB450 (2/5)


― 職員室 AM10:24 ―


KAZUYAが選んだのは職員室。ガーベラの花が咲き乱れる職員室で、二人は向かい合うように座る。
奇しくも、職員室に呼び出した教師と呼び出された生徒のような格好となった。


「…………」


先程の一件のせいか、葉隠は落ち着きなくチラチラとKAZUYAの様子を伺っている。
持ってきた茶を葉隠に勧めると、自分も一口喉に通した。


「どうした?」

「いや、その……」

「俺に叱られると思っているのか?」

「違うのか? だってよ……」

「俺は叱るために呼んだんじゃない。話をするために呼んだんだ」


かつて、体育館で暴走した桑田を諭した時と同じようにKAZUYAは落ち着いた声音で語りかける。


「…………」

「そう身構えるな。別に取って食ったりはしないさ。何故、叱られると思った?」

「それは、さっき石丸っちを悪く言ったから……」

「そうだな。モノクマや十神の前であんなことを言えば奴等は間違いなく掻き回してくる。
 それは良くなかった。お前はもう成人しているのだから、発言には気をつけなければ駄目だ」

「……え、それだけか?」

「俺は特定の生徒を贔屓するつもりはない。金で人を殺すという考え方は残念だが、
 絶対にないとまでは言わん。俺にお前の考えを制限する権利はないしな」

「そっか……」


やっと、少しだけ葉隠の緊張が解けたようだった。




611 ◆takaJZRsBc2015/04/19(日) 23:27:55.95GtY0GB450 (3/5)


「葉隠、お前は……」

「あん?」

「今までに、さぞかし人間の汚い面を見てきたのだろうな」

「そうさな……人間の業ってヤツは本当に深いべ」


俺も含めてな、とKAZUYAにはわからないよう心の中で葉隠は付け加える。


「誰でもいい。誰か信じられる人間はいないのか?」

「……K先生は、一応信じてるぞ」


ついさっきまで殴られると怯えていたのはどこのどいつだ、とKAZUYAは思わず失笑した。


「謝礼金目当てだと言っていたのに?」


半笑いのまま少し意地悪な問いをしてみるが、意外にも葉隠は真っ直ぐに返した。


「あんたは正当な報酬以外は受け取らないタイプだ。じゃなきゃ自分の体を傷つけるなんて出来ねえ」

「……そうか。ありがとう。そう言って貰えて嬉しいぞ」

「わからねえなぁ……」

「何がだ?」


葉隠は椅子に深くもたれかかり、ぼんやりと天井の蛍光灯を眺める。


「あんたのことだ。まるで宇宙人みたいだべ」

「変わっているとは時々言われるが、宇宙人扱いされたのは流石に初めてだな……」


あまりに予想外過ぎて、今度はつい真顔になってしまった。


「俺にはあんたが理解出来ねえ。多分それはこれからもだ」




612 ◆takaJZRsBc2015/04/19(日) 23:39:34.34GtY0GB450 (4/5)


「そんなことは言わないでくれ。すぐに理解することは出来なくても、時間をかければ……」

「――いんや、無理だな」


そう言った葉隠の目は澄んでいた。曲がった所も歪んだ所もない、
ただあるがままの瞳だった。しかし、その目ははっきりと他人を拒絶している。


「人間はすぐ他人を理解した気になるが、所詮根っこの部分はなんもわかってねえんだ。お互いな」

「…………」

「自分と同類なら思考が似てるから何となく予想は付くが、あんたみたいな全然別の生き物は全く
 理解出来ねえ。それは仕方のないことなんだべ。ネズミにライオンの考えが理解出来ると思うか?」

「……理解は出来なくとも、想像は出来るんじゃないか?」

「そんなん結局は独りよがりだべ。俺にはわかる」

「…………」

「あんたに死なれたら困るから言っとくけど、他人を信じ過ぎない方が身のためだぞ?」

「……占いで何か見えたのか?」

「はっきりとはわかんねえ。ただ、俺にとって良くねえことが起こるってのは確かだ。
 あと、誰かが誰かを裏切る所が見えた。……俺の勘じゃ裏切られるのは先生だな」

(俺の影も見えたけど、俺は裏切るってほど親しくしてないもんな……黙っとこ)

「そうか……気をつけよう」

「ほんじゃま、頑張って俺らを守ってくれ」

「……任せろ」


その後、軽く雑談を交わして二人は別れた。


(葉隠……想像以上に難しい男だな……)


この男と今後親しくなれる機会は来るのだろうか。KAZUYAにすら確信が持てなかった。




613 ◆takaJZRsBc2015/04/19(日) 23:53:23.81GtY0GB450 (5/5)


― 美術室 AM11:15 ―


職員室から戻る途中、KAZUYAは美術室に立ち寄った。


(アルターエゴの一件から山田とは少し疎遠になってしまっている。一応、一日一回なら
 面会してもいいと言ったのだが、俺が側にいるのが嫌なのか一度も言い出さなかったしな)

(……少し、様子を見ておいた方がいいか)


ガラッ。


「山田」

「西城カズヤ医師ですか……」


KAZUYAが何か言うよりも早く、山田は聞こえるか聞こえないかわからないくらいの
小声で囁く。研ぎ澄まされた聴覚を持つKAZUYAは、それを一言も聞き漏らさずに頷いた。


「彼女はお元気ですか?」

「……問題ない」コクリ

「そうですか。僕がいないから、さぞかし寂しがっているでしょうなぁ」

「…………」


機械に寂しいという感情などあるはずがない。よしんばあったとしても、友人と数日
話さないくらいでいちいち悲しみにくれたりはしないだろう。相手が機械だということも
問題だが、既に恋人気取りの山田に対して……KAZUYAは薄ら寒い感情を覚えていた。


(……俺がアルターエゴを預かったのは正解だったかもしれない。今の山田も流石に……人殺しまでは
 しないと思いたいが、アルターエゴを使って何か吹き込めば簡単に行動を操ることが出来るだろう)


頭の良い十神やセレスなら、それを利用して何か企むことも可能だ。いや、頭が悪くても
モノクマが一言囁きさえすれば簡単に思いつく。これを利用しない手があるだろうか。




614 ◆takaJZRsBc2015/04/20(月) 00:05:13.21siWxuuvC0 (1/6)


「…………」

「用事はそれだけですかな?」

「あ、いや……ん? これは例の作品の続きか?」


KAZUYAは置いてあった山田の原稿を手に取る。


「最近はすっかり放置していますが、読んでもいいですよ。ハァ……
 恋をすると他のことに手がつけられなくなるというのは本当でしたな」


どこかうっとりとした目で恍惚と語る山田を、KAZUYAはどこまでも冷めた目で一瞥した。


(――無機物相手に恋も愛もなかろう)

「…………」ペラ


気まずさを誤魔化すように、KAZUYAは出来上がった原稿を読み始める。
物語は、新たな仲間も加えいよいよ佳境に入って来たようだ。


モンド『俺は兄貴と仲間の仇を討たないとならねえ! もっと強くなるんだ!』

マコト『気持ちはわかるけど、あんまり自分を追い詰めない方がいいよ』

ハガクレ『そうだべ。次の王国では一悶着あるって俺の占いで出てる』

ジュン『喋ってないで戦ってほしいんですけど。敵はまだまだたくさんいるよ』

モンド『全部俺が片付けてやる! うおおおおおおっ!』

レオン『バカ! 一人で突っ込むなって!』

マコト『危ない!』


ドガガガガガガガガッ! キィンッ!


『なんだっ?!』

『君達、大丈夫だったかね?』

モンド『誰だ!』




615 ◆takaJZRsBc2015/04/20(月) 00:15:22.31siWxuuvC0 (2/6)


キヨタカ『正義のためにこの身を投げ打つ! ジャスティスホワイト・キヨタカ!』

アオイ『悪い子にはオシオキしちゃうよ! ジャスティスブルー・アオイ!』

チヒロ『えっと、弱い人達を守るんだ! ジャスティスグリーン・チヒロ』

サクラ『強者の横暴を許す訳にはいかん。ジャスティスピンク・サクラ!』

キヨタカ『我等! 正義の名の元に集いし四人の戦士! ジャスティス・フォー参上!』


ビシィ!

ポーズを取って崖の上に並ぶその姿は、さながら戦隊ヒーローそのものである。


「……おい。山田、おい」

「あ、やっぱりそんな反応?」

「当たり前だ。色々おかしいぞ。この間のシリアスで重い空気はどうした」

「まあまあ。それは先を読んでから答えます」


如何にKAZUYAがサブカルチャーに疎くてもこの流れが急展開なのはわかる。
しかし、山田に促されたので微妙な気持ちになりつつも再び続きを読み始めた。


マコト『へぇー、君達はこのホープ王国を守る戦士なんだね』

キヨタカ『魔王軍の侵攻を瀬戸際で防いでいるのがホープ王国だ。我々の責務は非常に大きい!』

チヒロ『警察署長のキヨタカ君が、署内の精鋭を集めて更に特殊な訓練を積んだのが僕達なんだぁ』

アオイ『どんな強い敵が現れたって私達がやっつけちゃうんだから! ねー、サクラちゃん!』

サクラ『ウム』

キヨタカ『君達が正義のために魔王軍と戦うというのなら僕達も力を貸そう! 悪は滅ぶべきなのだ!』

マコト『う、うん。ぜひお願いするよ(なんか苦手だな……)』

・・・

キョーコ『久しぶりね』

マコト『あ、キョーコさん。どうしたんですか?』




616 ◆takaJZRsBc2015/04/20(月) 00:25:45.34siWxuuvC0 (3/6)


キョーコ『忠告に来たのよ。……彼女の裏切りに気をつけて』

マコト『……え?』

・・・

セレス『フフフ、あなたがギガント族の姫だとも知らずに能天気ですこと』

サクラ『……セレスと言ったか。約束は果たすだろうな?』

セレス『ええ。ホープ王国を内部から崩壊させれば、約束通りあなたの一族は解放いたしましょう』

サクラ『アオイ……』


所変わって魔王城。


ビャクヤ『フン。セレスの奴、またつまらぬ策を弄しているようだな。くだらん』

トウコ『そ、そうですね。ビャクヤ様のおっしゃる通りで……』

ビャクヤ『黙れ。俺は貴様の発言を許可した覚えはないぞ』

トウコ『ヒッ! お許しを……』

トウコ『ああ、ああ……何でもいい。もしアタシが少しでも、あのお方の
     役に立てるならば、今よりもう少しお側にいられるかもしれないのに』

『その言葉、本当? 彼のためなら何でも出来る?』

トウコ『あ、当たり前でしょ……! アタシはビャクヤ様のためなら何だって……』

『そんな君にピッタリのお仕事があるよ! 上手く行けばビャクヤ様のお気に入りになれちゃうかも?』

トウコ『ほ、本当?! なによ、それ!』

『……ついて来なよ。きっと新しい自分に出会えちゃうよ!』ニヤリ




617 ◆takaJZRsBc2015/04/20(月) 00:39:55.09siWxuuvC0 (4/6)


・・・

キヨタカ『門が破られた?! 馬鹿な! この国は強固な結界で守られているのだぞ!』

チヒロ『誰かが内部から結界石を破壊したみたいだよぉ!』

ハガクレ『お、おい見ろ! あれ!』

アオイ『サクラちゃん……?』


アオイとサクラが対峙する。サクラは真の姿を開放し黙って戦うが、
マコト達の総力の前についに倒れ、人質の件を口にした。


サクラ『もはや、これまで……止めを刺すが良い』

アオイ『待って! もういいでしょ! サクラちゃんは仲間のために仕方なかったんだよ! 殺さないで!』

キヨタカ『アオイ君、どきたまえ! たとえ以前は仲間だったとしても彼女は裏切ったのだ!
      ……大勢犠牲を出してしまった。正義のために彼女を斬らなければならない!』

サクラ『そうだ。あやつの言う通り、我はケジメをつけねばならぬ』

アオイ『イヤだイヤだイヤだよ! そんなのイヤだぁ!!』ポロポロ

レオン『お、おい。どうすんだよ、マコト?』

マコト(僕はどうすればいいんだ……キヨタカ君の言う通り、正義を貫くべきか。
     アオイさんのために、サクラさんの裏切りを許すべきか、それとも……)


ドガァアアァァアアアアァァアアァアアンッ!!!


モンド『今度はなんだっ?!』

セレス『ご機嫌よう、皆さん』

モンド『テメエエエ! 全部お前の陰謀だったんだな!!』

セレス『やっぱり負けましたのね。情に厚いあなたならそうなると思いましたわ』

サクラ『ぐ……』

セレス『最後のチャンスですわ。存分に暴れなさい』ポゥ




618 ◆takaJZRsBc2015/04/20(月) 00:57:14.41siWxuuvC0 (5/6)


サクラ『ぬおおおおおおおおおおおお?!!』ゴキッボキッ!

アオイ『サクラちゃん?! いやああああああ!』

ジュン『……面白いことになってきたじゃん。さあて、アタシはどうしますかね』


呪いで狂戦士と化したサクラと真の力を発揮するセレス、二人を相手に死闘が始まった。
果たして彼等は無事勝つことが出来るのか。そして、怪しげな動きを見せるジュンの正体とは?

――魔王城突入前の、最後の決戦が始まる。


「最初はどうなるかと思ったが、意外と上手くまとめてきたな」

「前回は目先のインパクト重視でとりあえずグロやシリアス入れてみたって感じで
 物語に厚みがなかったので、今回は『それぞれの正義』をテーマにして描いてみました」

「フム……」

「戦隊ヒーロー物っぽいのはウケ狙いも当然ありますが、苗木殿達とは根本的に
 文化が違う。思想や考え方も全然違うというのを強調したかったからです」

「確かに、至る所に混乱する苗木達の描写が入れられているな」

「これを期に苗木誠殿は、常に正義とは何か。何のために戦うかを模索しながら前に進むのです」


今回の作品はあくまで習作だが、山田の作家としての能力は着実に上がっているようだ。
生徒の成長を目の当たりにし、KAZUYAも自分のことのように嬉しくなる。


「成程、その方が人間的に深みが出るし前より魅力も増すかもしれないな。いいんじゃないか?
 展開もクライマックスが近付いてきて非常に緊張感が高まっている。続きが気になる所だ」

「そうでしょうそうでしょう? フフフ、感動と衝撃のラストをご期待あれ!」

「ああ、楽しみにしている」

(……ただ何というか、かなり際どい内容があったな。現実とは違うと良いのだが)


山田が作った架空の話に違いないのだが、大神や江ノ島の裏切りをまざまざと見せつけられて、
非常に複雑な心持ちである。何より、作家の人間観察力というものにKAZUYAは驚嘆しきりであった。



山田の同人誌完成率…………現在80%。




619 ◆takaJZRsBc2015/04/20(月) 01:17:28.69siWxuuvC0 (6/6)


ここまで。


>>607
昔は水土、木日とかの週二連載だったのですが、今は掛け持ちしたり色々忙しくて
日曜夜固定という感じですね。また週二に戻したいけど原作クリアするまではムリかなぁ


あとスキルを考えてみた(TETSUと摩耗もオマケで)。大人で教員だから全体的にチート気味

KAZUYA(通信簿三、五、七ページ目)
応急処置     :各フェイズ終了時に発言力と集中力を少し回復する。
オペレーション :発言力がゼロになってもゲームオーバーにならず半分まで回復する。
野獣の肉体    :精神集中時、ミスをしてもダメージを受けない。

TETSU
ドーピング :MTB時、一回のリロードで二発補給しかつ二つ同時にロックオン出来る。
人体改造  :コトダマの記憶する時間と発射速度が早くなる。

摩耗
開  発   :発言力と集中力の最大値が増える。
M.A.R.S :コトダマを一つに絞ることが出来る。




620以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/20(月) 02:52:49.17dgcH4Q/So (1/1)

乙!
>>619
確かにこれはチートだなwwwww


621以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/20(月) 11:11:05.13kBfe2COBo (1/1)

乙です


622以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/20(月) 17:52:05.66q76mdbHAo (1/1)

Kのスキルと磨耗のMARSがあればノンストップ議論は完封出来るな
尚、リズム感がないとMTBで詰む模様


62312015/04/22(水) 12:43:29.16wS3Cb/VDO (1/1)

書き忘れてた。

霧切さんとやりたいこと、話したい内容など募集。期限は霧切編投下まで
前回も書きましたが、候補の中から1が適当にチョイスする形式で
ムリめなものはこちらで弾くので好き放題書いちゃってもおk




624以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/22(水) 19:19:02.68fpw/vGxiO (1/1)

片方だけ三つ編みとかしちゃって、制服の着方も個性的だし、お洒落だよね?という話がしたいです。


625以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/23(木) 09:12:02.50TcLG+KXP0 (1/1)

可能なら、霧切から観察眼と右脳解放を獲得する


626以下、名無しにかわりましてモノクマがお送りします2015/04/23(木) 14:01:43.01QcXduhsx0 (1/1)

霧切に父親の事を聞くか、探偵にこだわる理由とは?


627以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/23(木) 19:07:11.462KOsc5B1o (1/1)

コーヒー談義しよう


628以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/24(金) 18:07:31.76KgVwdugvo (1/1)

葉隠は、原作最後の学級裁判とか絶対絶望葉隠とか見ると、たまに熱いところはあるんだよな。
あのモードになる原因が全く分からんが。

霧切さんはあれだ、オトそう(どっちの意味でもいいんだよ)


629以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/24(金) 18:25:15.3097ZTgOAKo (1/1)

葉隠は親の愛情とかまるで受けてないからあんな他人に淡白な性格になったのかと思ってたが、
まさかの甘やかされタイプだったからな。罪悪感がMAXになったら感情的になるんじゃね


630以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/25(土) 04:21:19.41qHjdhhHJo (1/1)

ドクターK野獣先輩説


631以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/25(土) 20:46:16.46JJzfVeX9o (1/1)

霧切は意外とロマンチックというかムーディーなのが好きそうだよな
しかし学校でムードを作るにはどうすればいいのか全く浮かばん


632名無しNIPPER2015/04/26(日) 21:12:15.73V2XBM5JSO (1/1)

霧切は頭撫でたら顔真っ赤にしそう(笑)


633 ◆takaJZRsBc2015/04/27(月) 01:45:57.64/kD//flA0 (1/1)


すみません。今日はちょっと間に合いませんでした。火曜日に来ます

あと申し訳ないのですが、誰かご親切な方…校舎の2~5階のMAPをスクショか何かで
うpして頂けないでしょうか。攻略サイトのMAPだとちょっとわからない所があって
場合によっては伏線貼り直さなきゃいけないのでよろしくお願いします



634以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/27(月) 10:15:10.63E3fjimTZo (1/1)

待ってる


635以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/28(火) 01:50:59.00RplhcVm5o (1/1)

何故かたった今ジェノサイダーがスレタイにいることに気づいた


636以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/29(水) 14:14:35.064S8Gv5KAO (1/1)

MAP無いと書けない?


637 ◆takaJZRsBc2015/04/29(水) 14:28:35.49GWMv256k0 (1/8)


               ◇     ◇     ◇


(次は、腐川かな。腐川自体は心配していないが、翔が心配だ。余計なことをしないといいが)


ピンポーン。ガチャ。


「……誰?」

「俺だ」

「ハッ! さ、さささ西城……先生」モゴモゴ

(……何だろうな? 俺と話す時だけいつも以上に挙動不審な気がするが……
 その場の流れとはいえデートの約束までしたのだから、嫌われてはいないはずだが……?)


KAZUYAはとにかく女心に鈍かった。


「な、何の用なの……?」

「君と少し話がしたいな、と」

「!」

「いや、無理なら構わないが……」

「入って……!」

「え? ああ」


何度か中に入った腐川の部屋にまた足を踏み入れる。換気をするようしつこく言ったからか、
以前のような埃くさい篭った空気や異臭はない。それに、相変わらず本や原稿に溢れてはいるものの、
前に見た時よりは大分片付いているのが一目でわかる。


「掃除したのか?」

「えっ?! まあ……」カァァ




638 ◆takaJZRsBc2015/04/29(水) 14:34:47.28GWMv256k0 (2/8)


「最近は前より身綺麗にしているみたいだし、偉いじゃないか」フッ

「!!」

『綺麗になったな。偉いじゃないか。とても素敵だぞ』キラキラ ←腐川視点ではこう見えている

「エ、エヘッエヘッデヘヘヘ……それほどでもぉ……」

「ウ、ウム……」


腐川の不気味な笑いに若干引きながら、KAZUYAは椅子を引いて適当に座る。


「え、そっちに座る訳? あ、そう……」

「? どうかしたか?」

「な、何でもないわよぉっ!」

「…………」

(女性の相手は難しい……)

「それで、何を話す訳?」

「そうだな。最近の調子はどうだ? みんなとは仲良くやれているか?」

「ま、まあまあってとこね。問題は起こしてないから安心していいわよ。時々誘ってくれるし。うふふ」

「それは良かった。もし言いづらいことや要望があれば何でも言ってくれ」

「……ええ」

「特に不満はないか?」

「不満……ひ、一つだけあるわ……」

「何だ?」

「アタシの小説がアタシの妄想力で出来ているのは知っているわね? さ、最近先生が
 優しいから、アタシの妄想力がなくなってきて小説が書けなくなってきてるのよ!」

(……喜ぶべきか困るべきか微妙な報告だ)




639 ◆takaJZRsBc2015/04/29(水) 14:42:44.20GWMv256k0 (3/8)


「そうか、それは大変だな」

「本当にわかってんの?! アタシは作家なのに小説が書けなくなったら商売あがったりじゃない!」


腐川の著作は既に百冊近くあり、その全てが例外なくヒット作である。
一生遊んで暮らせるくらいの印税は入っているはずだが、やはり書くことは生き甲斐らしい。


「今までは君の妄想の恋愛を作品に込めてきたのだろう? ならば今度は他のことを込めたらどうだ?」

「他のことって……?」

「友達が出来て楽しい思い出も出来たはずだ。今度は妄想ではなく実体験を元に書いてみたらいい」

「実体験……自分をモデルにした私小説ってことね。確かに、妄想じゃない
 リアルな自分のことを書いたことはないわね……いいわ。書いてみる」

「出来たら是非読ませてくれ。俺に出来ることがあれば協力もしよう」

「嫌だって言っても、一番に読んでもらうわよ……」

「それは楽しみだ」ニコリ

「はうっ! ……じゃ、じゃあ早速ネタを提供して頂戴!」

「ネタ? 俺は何をすればいいんだ?」

「自室に男が来た時にする会話って言うのを披露してほしいのよ……」

「? 普段話している内容と同じだろう?」

「同じな訳ないじゃない……! 女の部屋にいるのよ! もっと、こう、こう……」

「こう?」

「緊張するな、とか……」

「(うっかりセクハラにならないよう気をつけるから)緊張するな」

「近くに座ってもいいか、とか……」

「ここで十分だろう?」

「…………」

(あ、不味い。機嫌損ねた)




640 ◆takaJZRsBc2015/04/29(水) 14:53:14.15GWMv256k0 (4/8)


「ほ、他には……! 外で出来ないディープな話をしたり!」

「ディープな話ならあるにはあるが……女性が楽しめるような話ではないと思うぞ?」

「そ、そういうのでいいのよ! 話しなさいよ! それともアタシには話したくないって言うの?!」

「いや……わかった。じゃあ俺の一族について話そうかな。なかなか長いぞ」

「……え?」


こうして腐川はKAZUYAの身の上話を延々と聞くことになったのだった。


「なあ、つまらなかったら言ってもいいぞ? 君の期待していたものとは違う気がするんだが……」

「い、いいのよ! 先生の生い立ちはアタシも興味があったし……」

(そこらの小説なんかよりよっぽど波瀾万丈な人生じゃない! アタシの私小説よりも
 西城のノンフィクションをアタシが書き下ろした方がずっと面白いんじゃ……)

「腐川?」

「聞いてるわよ……!」


腐川のコミュニケーション力が上がった。ネガティブ思考が減った。
ストレスがグッと下がった。落ち着きが上がった。


― 苗木行動 ―


KAZUYAが腐川と話し込んでいる頃、苗木も行動を開始する。


(先生も頑張ってるんだし、そろそろ僕も動こう!)


苗木は山田を探し、美術室へと辿り着いた。

ガララッ。


「おやぁ、今日はお客さんの多い日ですねぇ」




641 ◆takaJZRsBc2015/04/29(水) 15:06:16.36GWMv256k0 (5/8)


「やあ、山田君。調子はどう?」

「ボチボチという所ですかな」

「また持ってきたよ」


苗木は彼の大好物であるコラコーラと油芋を手に持ちプラプラと振って見せる。


「おおっ! いつもすみませんなぁ」

「いいんだよ。僕一人じゃ食べ切れないし」


超高校級の幸運という割りにいつもツイていない苗木だが、モノモノマシーンの当たりだけは
そこまで悪くない。大好物を前に眼の色を変える山田を見ながら、苗木は向かいに座った。


「はぁ~」ポリポリ

「…………」


山田はいつもに比べると少し元気がない。油芋を食べる手もそこまで進んでいなかった。


「どうかしたの?」

「苗木誠殿は恋をしたことがありますか?」

「……えっ?」


ドキリと、大きく心臓が跳ねる。一瞬脳裏に掠めたのは舞園の姿だが、
苗木にはそれが恋か憧れかの判断がつかなかった。


「恋、か。そうだね……したことない、かも」

「ふふふ、恋はいいですぞ? 全てがバラ色に見えてくるのです。代わり映えしない
 この閉ざされた狭い世界ですら、彼女がいれば二人だけの楽園となりましょう!」

「や、山田君! 声が大きいよ……」




642 ◆takaJZRsBc2015/04/29(水) 15:18:07.36GWMv256k0 (6/8)


「おっと、失礼」

「…………」

(相変わらず重傷だ……僕はどうすればいいんだろう?)

「ねえ、山田君。まさか彼女のために馬鹿なことをしたりはしないよね?」

「勿論! ……まさか苗木誠殿は、僕を疑ってここに?」

「いや、そんなことはないよ! 全く心配してないと言ったら嘘になるけど……」

「……まあ、いいでしょう。過去にも平気平気と高を括って事件が起こったこともありましたしな」

「うん。今は先生と一緒に順番にみんなを回ってる最中なんだ」

「随分信頼されていますな」

「そういう訳じゃないよ。僕から言い出したんだ。どんな小さなことでも、何か手伝えればって」

「…………」


また、山田の中にチクリと苦い感情が広まっていく。苗木は抽選で選ばれた平凡な人間のはずだ。
言い方は悪いが、正当な実績によって選ばれた自分達真の超高校級の人間よりも劣っているはずなのだ。

しかし苗木の目は、表情は力強かった。――それこそ、山田が今描いている漫画の主人公のように。


(……なんか、格好いいですな。苗木殿は身長は低いですが顔は今風で結構整ってますし……
 僕が同じことを言って同じことをしてもこんな風には決まらないだろうしなぁ……やっぱり顔か)

(でも、いいんだ。僕にはアルたんがいる。アルたんはそのままの僕を見て、好きでいてくれる……)

(アルたんだけが僕を理解して、僕の……)




『アルターエゴに自分の意志などありません。ただ知識を求めるようプログラミングされているだけ』




643 ◆takaJZRsBc2015/04/29(水) 15:29:56.80GWMv256k0 (7/8)


この言葉が呪いのように山田の心を圧迫し、耳の奥で今も響いていた。


(――違うッ! あいつらはアルたんのことを何もわかってないんだ! 彼女は確かに
 機械かもしれない。でも、僕と話しているうちに人間の心を手に入れたんだ!!)

(僕だけが彼女の味方なんだ。僕が彼女を守ってあげないと……)

「あ、これ何だろう。漫画の原稿?」


苗木の言葉で山田はハッと我に返る。


「……えっ! ええ、そうです。僕が描いた初めてのオリジナル作品で……」

「これ、僕に似てない? と言うか、サヤカ姫にヒフミン王、それにマコトって……」

「そうです。ここにいるみんなをモデルに描いた、よくある中世風ファンタジー漫画です」

「へぇ~。僕を主人公にしてくれたんだ。……嬉しいな。僕なんて全然凄いって
 言えるような所もないし、他のみんなに比べたらずっと平凡なのに」

「でも常識とコミュ力は僕達の中で恐らく一番だと思いますぞ」

(それにいざという時の勇気や行動力、仲間思いな所とかも……)

「アハハ。ありがとう。読んでもいいかな?」

「どうぞどうぞ」


楽しそうに漫画を読む苗木を見ながら、山田は思う。


(僕だって、僕だって本当は……)



――いつかヒーローになりたい。





644 ◆takaJZRsBc2015/04/29(水) 15:40:57.80GWMv256k0 (8/8)


ここまで。

>>636
かなり不味い状況ですね。場合によっては凄い勘違いしてたっぽいので大幅に
書き直す可能性もありです。リロードは持ってるので自分でプレイすれば
いいだけの話なんですけど、何せスーダンもまだクリアしてない遅さで…

自分でやってたらヘタしたら一ヶ月くらい更新停止になりかねないかと




645以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/29(水) 15:51:40.477sTEyWvBO (1/1)

乙だべ!


646以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/29(水) 16:11:45.16oARptngAO (1/1)

MAPならwikiaに全部載ってたべ


647以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/29(水) 22:59:50.81toDvhRVso (1/1)

乙!
山田の闇が深くなっていく…


648 ◆takaJZRsBc2015/04/30(木) 01:22:17.52vVzR7COj0 (1/1)

>>646
おおおおおおお! ありがとうございますありがとうございます!
海外のサイトは盲点でした。そして、幸いにも勘違いはしていなかった

お陰で最終調整に入れそうです。何とか今のペースを維持できるように頑張ります



649以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/30(木) 19:15:25.49OIV8ZSAJO (1/1)

アルターエゴたんにとってのヒーローに僕はなるんだ!→原作

うっ……


650以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/04/30(木) 20:01:05.23TuCV3uLGO (1/1)

乙です


651 ◆takaJZRsBc2015/05/06(水) 22:24:01.11a20dGwkM0 (1/4)


― 図書室 PM1:21 ―


「…………」


美術室を去った苗木は次に図書室へと入ると、医学書を取って十神の斜め前の席に座った。


「…………」

「…………」

「……何の真似だ」

「ん? 何が?」

「貴様程度の浅はかな小細工が通用すると思うか? はっきり言え。俺を見張りに来たと」

「十神君に用があるのは確かだけど、見張りに来た訳じゃないよ。……話がしたくて」

「俺は話すことなどない」

「……そうだね」


苗木は苦笑して少し肩を竦めると、再び本を読み始める。


「…………」

「…………」


しばらくそうしていたら、唐突に十神が声をかけた。


「……お前は何だ?」

「え?」




652 ◆takaJZRsBc2015/05/06(水) 22:50:00.67a20dGwkM0 (2/4)


「ここにいる愚民達の中でも、更に何の才能も可能性もなくどうしようもないお前が何を足掻く?」


今まで本から顔を上げなかった十神が、初めて顔を上げて苗木を見た。
その瞳は氷のように冷たく、何者をも寄せつけない圧倒的な王者のオーラを放っている。
ただ崖の上から谷底を眺めるように、十神はごくごく自然に見下しているのだ。


「ドクターKになりたいのか? ハッ、身の程知らずとはまさにこのこと……」

「それは違うよ!!」

「…………」


苗木はいつもの穏やかな顔から一転、断固とした口調で否定し鋭い眼差しで十神を見据える。


「――僕は僕だよ。KAZUYA先生にも十神君にもなれないし、別になりたいとも思ってない」

「なら、何故無駄な努力をする。医師になりたいと思ったのは石丸の影響だけではあるまい?」


十神の視線は今にも苗木を刺し殺さんばかりに鋭いが、苗木も負けじと言い返した。


「今自分に出来ることがしたいんだ。十神君が脱出のためにコロシアイに乗るように、
 僕達は僕達の意志でコロシアイを止める。そのためにも医学が必要なんだ」

「お前は普通の医者が一人前になるのに何年かかるか知っているか? 海外の医大にでも
 行けば別だが、日本では通常六年。更にその後は研修医として数年修業する」

「…………」

「貴様はここに六年もいるつもりなのか? 俺は御免だな。そもそも、いくら超一流の医者が
 教えた所で、解剖用の献体も必要な機材も何もないこんな場所で、医者になどなれる訳がない!」

「じゃあ指をくわえて見ていろってこと?」

「そうだな。愚民は愚民らしく……」

「それは違う。そんなのおかしいよ!」

「…………」


普段はさほど自己主張しない苗木に明確に反駁され、この時だけは十神も僅かに怯んだ。




653 ◆takaJZRsBc2015/05/06(水) 23:06:46.51a20dGwkM0 (3/4)


その隙を突くように、苗木は毅然とした態度で滔々と反論する。


「確かに僕には才能がない。石丸君は努力をすれば何とかなるって言うけど、
 僕に石丸君並の努力が出来るとは到底思えないし、今だって知識は大分遅れてる」

「十神君の言う成功が、お金とか社会的な地位って意味ならきっと僕は永遠に成功出来ないと思う。
 でも、だからと言って僕達普通の人間が何もしなかったらどうなるの? この世界は僕みたいな
 平凡な人間が大半で、十神君達選ばれた人だって僕達の上に生活してる訳でしょ?」

「…………」

「十神君にとっては僕達はアリみたいな存在なのかもしれない。たとえアリが
 一匹いなくなっても群れには何の影響もない……。でも、僕達は人間なんだ」

「一人一人違う顔と名前があって、得意な物や苦手な物がある。僕が消えても社会に
 大きな変化はないかもしれないけれど、誰かには必ず影響があるはずなんだ」

「……黙れ」

「特に、この学園には僕達16人しかいない。なら、一人一人の影響力は
 普段よりもずっと大きくなるし、求められる義務や責任も大きいはずだよ!」

「黙れ……!」

「僕は才能がないことを言い訳に逃げたくないんだ。きちんと自分に与えられた
 義務や責任を果たしたい。それが僕にとって医学を学ぶ意味なんだ」

「黙れと言っている!」

「…………」


言いたいことを言い終えた苗木はやっと黙った。しかし、その目は黙ってなどいない。
言葉より雄弁に語り、未だに熱く激しく十神の心に訴えかけているのだ。

その目にKAZUYAの姿を垣間見た十神は、内臓に嫌な薄ら寒さを覚えた。


「説教くさいのはあの医者の影響か。全く……奴といい石丸といい貴様といい、うるさくて敵わん」




654 ◆takaJZRsBc2015/05/06(水) 23:34:54.60a20dGwkM0 (4/4)


頭にまとわりつく蝿を払うように、心底うっとうしそうな顔で十神は手を振る。

KAZUYAの知識や技術以外の部分、謂わば精神的な面を全く評価しない十神にとって、彼の人間性を
慕う苗木達は異教徒の信者同然だった。いもしない神を崇める偶像崇拝のようで、ただただ不快なのだ。


(噂に聞く宗教の勧誘というのもこんな感じなのか? 全く、気味の悪い……)

「もう言いたいことは言っただろう。さっさと帰れ。この俺にこれ以上説教するつもりか」

「僕は別にお説教に来た訳じゃないよ。先生や石丸君の言葉でさえ届かないなら、
 今更僕が何か言った程度じゃ十神君は変わらないでしょう? 僕が言いたいのは……」

「――“十神君がいなくなったら寂しい”ってことだよ」

(……は?)


心底寂しそうな顔をする苗木に、思わず十神も沈黙した。


「…………」

「言ったじゃない。ここには16人しかいないんだから、一人一人の存在感が大きいって……
 だから、僕は十神君がいなくなったらきっと寂しいと思うんだ」

「……馬鹿馬鹿しい。寂しいならさっさと誰か殺して外に出ればいいだろ。
 俺はお前達などいなくとも少しも寂しくないがな」

「ハハ、十神君ならそう言うと思ったよ。……十神君はさ、さっき六年もこんな所にいるのは
 御免だって言ったけど、僕は16人みんな揃っているならそれでも別に構わないかな」

「正気か? いくら影響力のない凡人でも、六年もいなくなれば本当に存在が消えるぞ」

「それでもいいよ。誰かを、自分にとって大切な人達を殺すくらいならさ――」

「……お前達と話していると俺の頭がおかしくなる」


十神はスッと立ち上がると、鋭い瞳で苗木を見下ろす。
それは今までの小馬鹿にしたものではなく、見定めるような挑戦的な目だった。


「――いいだろう。凡人にも意地があると言うのなら、最後まで足掻いてみせろ」

「言われなくてもそうするよ。僕は絶対に諦めない……!」




655 ◆takaJZRsBc2015/05/07(木) 00:04:50.55AKT+7By70 (1/2)


十神が去った後も、苗木は熱心に自習をしていた。しかしふと先程の会話が脳裏に蘇り、思う。


(どうしてだろう)

(僕の言葉なんかで十神君は変わったりなんてしない)

(コロシアイを思いとどめることは勿論、仲間になんて到底なってくれない)

(でも、さっきのあの一瞬だけ……)

(十神君と心が通じたんじゃないかって、そんな気がするんだ)

(……僕の思い上がりかもしれないけどね)


十神の目つきはいつもと何ら変わらない厳しいものだったが、それでもどこか穏やかに見えた。
それは、十神がKAZUYAと真剣にぶつかり合っている時の目に少し近いかもしれない。


(一緒に何かすることじゃなくて、たとえ敵対してでも正面から向き合うことが)

(十神君と仲間になる、ということなのかもしれない――)


ほんの僅かかもしれないが、あの一瞬十神は苗木を認めた。

その事実に、苗木は確かな手応えを感じたのだった。






656 ◆takaJZRsBc2015/05/07(木) 00:09:08.13AKT+7By70 (2/2)


少ないけどここまで。

最近掛け持ちと体調不良で筆が遅れがち……すみません




657以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/07(木) 00:13:02.73kCpKVeqx0 (1/1)




658以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/07(木) 00:19:07.04c4+fnlSGO (1/1)

乙です


659以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/12(火) 23:09:41.4032cVJqgP0 (1/1)

>>「エ、エヘッエヘッデヘヘヘ……それほどでもぉ……」
腐川ちゃんかわいいな…


660以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/13(水) 07:41:31.56NDA3FeaAO (1/1)

>>659

無駄に書き込むな


661以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/13(水) 08:41:54.55FoT090MEo (1/1)

感想のどこが無駄なんだ


662 ◆takaJZRsBc2015/05/18(月) 01:06:15.81QY5ga3ih0 (1/1)


すみません。今日はムリです。火曜日に来ます。




663以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/18(月) 01:35:42.34Z+/9OM0jO (1/1)

了解


664以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/18(月) 01:48:40.672X2IVR9YO (1/1)

了解だべ!


665以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/19(火) 19:19:40.797dMDWBaf0 (1/1)

面白すぎて一日で追いついてしまった…
休みが丸々つぶれたがこれだけ面白い作品に出合えたのなら後悔はないな。

>>1のせいでドクターKが欲しくなったじゃないかどうしてくれる


666今回は特殊イベント回でっせ ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 20:59:33.75PZa+1bm70 (1/11)


               ◇     ◇     ◇


「少しよろしくて?」


珍しくセレスがKAZUYAを呼び止める。いや、最近は以前に比べたら少しずつ
話すようになってきたからそう珍しくもないか、等と思ってKAZUYAは立ち止まる。


「構わないが」

「ここでは話しづらいので、わたくしの部屋に来てください」

「?!」


前言撤回。もはや珍しいどころか異常事態である。


(まさか、この女……俺を殺す気か?!)


元々疑いを持っていた相手にいきなり部屋に招待されたことも驚きだが、何より
それが動機を配られた日という驚異のタイミングである。警戒せずにはいられない。


(しかし俺を狙うとは……大胆と言うか、早とちりだといいが……)


違うなら違うで天変地異の前触れではないかと心配しつつ、KAZUYAはセレスについて行った。



― セレスの部屋 PM1:44 ―


部屋に入ると女性の部屋特有の何とも言えないほのかな甘い良い香りがしたのだが、
KAZUYAにそんなものを楽しむ余裕はない。悪い意味で心臓の鼓動が高まる。


(安広が華奢なのは間違いないはずだ。江ノ島のような鍛えた体でないのは見ればわかる)


そうなると、考えられるのは待ち伏せだ。




667 ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 21:09:57.15PZa+1bm70 (2/11)


(……大の大人が隠れられるとしたら、ベッドの下かシャワールーム)


特にベッドの下に刺客がいたら不味い。くるぶしを銃で
撃ち抜かれでもしたら、戦うどころか逃げることすら危うくなる。


「君の部屋は随分色々物があるな。全てモノモノマシーンで手に入れたのか?」


KAZUYAはおもむろにチェストの近くに近寄ると、置いてある小物を手に取った。


「あのマシーンは本当に便利ですわ。大きい物から小さい物まで何でも出てきますし」


チェストの上にはジャネル、アナスィなど名だたるブランドの化粧品が
置かれているが、男のKAZUYAにその価値がわかるはずもない。


「しかし、これだけ揃えるならかなりのハズレもあったろう?」

「あら、超高校級のギャンブラーを舐めてもらっては困りますわ。最小限のリスクで
 最大のリターンを得るのがわたくし。欲しいものくらい簡単に引き当ててみせます」

「それは凄いな。……おっと」


KAZUYAはマニキュアの瓶を戻す振りをして床に弾く。丸い瓶は狙い通りベッドの下に入った。


「失敬」


すぐに拾う振りをしてKAZUYAはベッドの下を覗き込む。


(ベッドの下には何もなし……あとはシャワールームか……)


KAZUYAはすぐに瓶をチェストに戻す。しかし、シャワールームは難関だ。
大の男が女性の部屋のシャワールームを覗いたりしたら変態のそしりは免れないだろう。


「そういえば、女性の部屋のシャワールームは鍵が付いているそうだが、ちゃんと鍵はかかるか?」


苦し紛れに浮かんだ言葉を言ってみる。




668 ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 21:20:06.51PZa+1bm70 (3/11)


「鍵ですか? かかりますが、それが何か……?」

「いや、もし暴漢でも押し入ったらと思ってな」

(……やはり苦しかったか)


仕方ない、もし襲って来られたらそこのテーブルを蹴り上げてぶつけ、相手の武器を奪い……と
KAZUYAはどう考えても医者ではなく特殊部隊の隊員のようなシミュレーションをし始める。

……が、意外にもセレスは自分からツカツカとシャワールームの方に行き、ドアを開けて見せた。


「ほら、ちゃんと動きますでしょう?」ニコッ、カチャカチャ

「……そのようだな」

「女性の部屋のシャワールームが気になるなんて、見かけによらずウブなのですね」ウフフ

「そういうつもりはない……!」

「まあ、こちらに注意が行っていると落ち着いて話せないでしょうしね?」


苦い顔のKAZUYAを見て、セレスはクスクスと笑う。


(どうも彼女と話すとペースを崩される。苦手だな……)

「とりあえず座ってくださいな」


KAZUYAは椅子の背に手を掛けるが、セレスは何とベッドに座って横を手でポンポンと叩く。


(横に座れと言うことか?)


筋力のない彼女がKAZUYAを[ピーーー]なら、銃は必須だろう。セレスに付いて行く際、KAZUYAは
彼女のジャケットが不自然に膨らんでいたりしていないか注意深く観察していた。


(上着の下には何もなかった。だが、スカートの下はわからんな……)


もし武器を取り出そうとしても自分が取り押さえる方が早い。
そう判断して、KAZUYAは少し離れた所に座る。




669以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/19(火) 21:26:42.51OQoaQr9ZO (1/1)

めっちゃ警戒してるwww


670あれ?sageになってる。変だな… ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 21:29:14.55PZa+1bm70 (4/11)


筋力のない彼女がKAZUYAを殺すなら、銃は必須だろう。セレスに付いて行く際、KAZUYAは
彼女のジャケットが不自然に膨らんでいたりしていないか注意深く観察していた。


(上着の下には何もなかった。だが、スカートの下はわからんな……)


もし武器を取り出そうとしても自分が取り押さえる方が早い。
そう判断して、KAZUYAは少し離れた所に座る。


「何でそんなに離れて座るんですの?」

「女生徒の隣に座るのは少し、な」

「舞園さんや朝日奈さん相手にもそんなに離れて座ります?」

「…………」

「……呆れましたわ。まさかそこまで警戒されているなんて。ボディチェックでもします?」


セレスがスカートのあたりをヒラヒラさせる。確かに何かを仕込んでいるようには見えなかった。


(ここまで言うのなら本当に大丈夫なんだろう。が……狙いがわからんな)


もしかして、腕力では敵わないから篭絡でもする気なんじゃ……とKAZUYAは心配になってきた。
元々マークしていたセレスにこのタイミングで呼ばれ、とにかく疑惑でいっぱいなのである。


「それで、部屋でないと話せないこととは何だ?」

(脱出についてか? ならば部屋ではなく脱衣所で話すのが妥当だが)


他に部屋でなければ話せない話題などあるだろうかとKAZUYAは頭を悩ませるが、
そんなKAZUYAの悩みなど吹っ飛ばすようにセレスはその上を行った。


「わたくし、実は出来てしまいましたの……」

「出来た? 何がだ?」

「先生の子供です」

「」




671 ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 21:38:53.77PZa+1bm70 (5/11)


一瞬己の耳を疑う。そして、ワンテンポ遅れて叫んだ。


「……ハァアッ?!」


ギョッとし、その勢いのまま思わず立ち上がる。


「な、何を言っているんだ君は……?!」

「ほんの冗談ですわ」

「冗談だとっ?!」


二度目の衝撃で思わず声が裏返りかける。しかし、KAZUYAの
そんな顔を眺めながらセレスは楽しげに笑っていた。


「冗談に決まっていますわ。それとも先生、まさか心当たりがおありで?」

「……ある訳ないだろう!!」


やっぱり苦手だ、この女……! と心の中で酷く毒づく。


「西城先生もそんな面白い顔をするのですね。良い収穫を得られました。
 こんなことなら写真に撮っておけば良かったですわ。ほら、こっちを向いて」


アルターエゴをKAZUYAが管理することになり、不要になったカメラは山田に返していた。
それを非情にもセレスが徴収したらしく、パシャパシャと不機嫌そうなKAZUYAを撮っている。


「……帰るぞ」

「まあ、お待ちになって。まだ何も話していないではありませんか」

「これ以上何を話すんだ……」

「素晴らしいお知らせです」

「知らせ?」


ろくなものではないだろうなと直感する。事実、彼にとっては心の底からどうでもいいことだった。




672以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/19(火) 21:41:20.88ocgVfo1e0 (1/1)

色々やったから仕方ないとはいえ、セレスに対してちょっと警戒しすぎじゃないか?
なんかこの警戒を逆手にとられそうで不安


673あれ?sageになってる。変だな… ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 21:45:36.77PZa+1bm70 (6/11)


「おめでとうございます。西城先生は本日を持ってCランクに昇格しました」

「Cランク?」

「はい。Cランクです」


ニコニコと語るセレスの顔を見ながら、彼女が他人をランク付けする癖があるのを思い出した。


「元々西城先生は素質だけなら十分Cランクに上がる資格はあったのです。
 超国家級の医師で地位も名誉もあり、頭も良くわたくしを守れる強さもあります」

「……ああ、うん」


言葉には出さないが、外見も悪くないしと付け足す。むしろ面食いのセレスにとっては
これが一番大事だ。他がどんなに良くても外見が標準以下なら眼中にも入らない。


「先生があのセンスを疑うダサくてボロボロの赤シャツをやめてくれて本当に
 良かったですわ。マントは今度わたくしが綺麗なのを買って差し上げます」

「?!」


確かに今のKAZUYAは両腕の包帯を隠すためにワイシャツを着ているが、世間的に
一番問題なのはあの仰々しい黒マントであろう。が、メルヘンな雰囲気を好み耽美好きな
彼女は例に漏れずヴァンパイアが大好きなので、黒いマントは問題ないらしかった。

しかし愛用の赤シャツを悪く言われたKAZUYAも黙ってはいない。


「ボロボロなのは確かに良くないとは思うが、赤いのはちゃんと理由があるんだ。
 返り血がついた時に目立たないようにだな……」

「いくら医師とはいえ、日本にいたらそんなにしょっちゅう返り血なんて浴びないでしょう?
 手術中は手術着を着ていますのに。大体ボロボロなのは衛生的によろしいのですか?」

「……洗濯はしている」


新人の看護婦が自分を見たら決まって服装についてヒソヒソしているのはKAZUYAも
重々承知しているので、ここを突かれると痛かった。適当に咳ばらいをして話を逸らす。




674あれ?sageになってる。変だな… ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 21:55:34.71PZa+1bm70 (7/11)


「ウオッホン……それで? ランクが上がると何かあるのか?」

「Cランクになるとわたくしのナイトになる権利を得られます」

「ナイト?」


あまりにセレスの発言が突飛過ぎて、思わず夜を意味するNightを最初に浮かべる。
男女で夜に関連するものは……とここまで考えて、そんなことを思いつく自分に自己嫌悪した。


(いや、ここは普通にKnightか。何を考えているんだ、俺は……)


しかし、ナイトはナイトで意味がわからん。彼女の騎士って何のことだと
KAZUYAが思っていると、セレスは満面の笑みで言い放ったのだった。


「わたくしのナイトになれば、いつでもわたくしの側にいてわたくしを守る栄誉を得られるのです」

「…………」


く、くだらなすぎる……

KAZUYAはもはや隠しもせず盛大に頭を抱えた。


(……わざわざ部屋にまで招待して一体何を話すのかと思えば、まさかままごとの相手を
 頼まれるとは……俺を信頼してくれたのか? それともこれはブラフで他に何かあるのか?)


いっそブラフであってほしい。これは演技で言っているのだと思いたい。
しかし、残念ながらセレスはどこまでも本気だった。彼女はそういう人間なのだ。


「あら、嬉しくありませんの? Cランクの人間は現在西城先生一人。
 つまり世界中でたった一人のCランクなのですよ?」

「あぁ、そう……」

「しかも、先生にはまだまだ可能性を感じます。もしかすると史上初のBランク、いえ
 最高位のAランクにすら到達するかもしれません。これは本当に凄いことなのですよ?」

「……そーだな」




675 ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 22:03:52.78PZa+1bm70 (8/11)


珍しく興奮気味に話すセレスとは対照的に、KAZUYAは冷めていた。それはもう、冷蔵庫に
入れたコーヒー並に冷めていた。子供の遊びに付き合うには彼は大人過ぎたのだ。


「拒否権はありません。先生にはわたくしのナイトになって貰いますから」

「……付き合い切れん。帰る」


立ち上がろうとしたKAZUYAの手をセレスが掴む。そのまま彼女は間髪入れず真横に詰めてきた。


「安広?」

「……わたくし、怖いんですの」


セレスは見たこともない弱々しい表情でKAZUYAを見上げる。
その意外さに、思わずKAZUYAは立ち上がりそびれてしまった。


「また動機が配られて、今度こそ死人が出てしまうのではないかと、恐ろしいのです」

「…………」


KAZUYAは男である。それも一般的な男よりもずっと男らしかった。
故に、女のこのような表情にはやはり弱いのである。


「出すものか。俺が絶対に防いでみせる!」

「ですが、既に三回も事件は起こってしまっていますわ。モノクマは
 人間の心理を読むことに長けている気がします。きっと今回も……」

「霧切か舞園あたりに聞いているだろう? 今日の夜時間に男子は男子、女子は女子で
 一箇所に集まり互いに見張り合うことになった。だから事件など起こしようがない」

「そう、ですわね……」


セレスはKAZUYAの手をギュッと掴む。その手は日焼けしてゴツゴツしているKAZUYAの
大きな手とは違い、小さくて白く繊細だった。少しだけ、握り返してやる。




676 ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 22:15:44.69PZa+1bm70 (9/11)


「…………」

「…………」


無言のまま、二人の視線が交錯した。その時――


「タってますね! それはもうビンビンにタってますよ!」

「!!」


いつの間にかモノクマが部屋に入って来てニヤニヤと笑っていた。


「ハッ?! 立っているだと? ……何がだ?」

「もう、先生ったらイヤらしい想像しちゃって~。立つって言えばフラグに決まってるでしょ?」

「フラグ? ……ああ、Flagのことか。それで、一体何の旗が立ったんだ?」

「わかってるクセにとぼけちゃってぇ~。『セレス、シャワーに入って来いよ』。
『……二人きりの時は多恵子と呼んでください』。なーんちゃってなーんちゃって!」ブンブンッ!

「……は?」


抱き着く仕草をして唇を尖らせているモノクマが何とも憎たらしい。


「何のためにシャワールームにはカメラが付いてないと思ってるの?! 人目を気にせず
 好きなだけキャッキャウフフしてアンアンちゅっちゅするためでしょっ!!」

「…………」

「アウトですわね」

「あぁ……」


もはや呆れ果ててKAZUYAは言葉も出ない。逆にセレスはつまらなそうに髪をいじっている。




677 ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 22:29:55.13PZa+1bm70 (10/11)


「…………」

「…………」

「……あれ? もしかして、ボクっておジャマ虫?」

「あなたがかつて邪魔でなかったことなどあったでしょうか?」

「今すぐ出て行け。出て行かないなら俺が出て行く」

「ショボーン。ボク、空気読めてなかったね。どこかの風紀委員並にKYだったね……ではではごゆっくり」


モノクマは掻き乱すだけ掻き乱すと、早々にその場を去って行った。
二人は気まずい空気の中取り残される。


(しかし、モノクマに邪推されても仕方ない。確かに女生徒の部屋に長居するのは良くなかった)

「では俺もこの辺で……」


だがセレスは掴んだ手を放してくれない。


「記念ですし、もう少しだけ……」

「昇格記念か?」

「…………」


そう聞くと、セレスは何も言わずに微笑んだ。

その笑みにいつもの妖艶で怪しげな雰囲気はなく、――どこか寂しそうに見えた。


「……少しだけだぞ」


KAZUYAは小さくため息をつくと、しばらくの間そのまま黙って付き合ったのだった。




678 ◆takaJZRsBc2015/05/19(火) 22:43:35.36PZa+1bm70 (11/11)


ここまで。

途中機械の方でエラー連発し見苦しくなってしまったことをお詫びします


>>665
いらっしゃいませ! 一度に5スレも読んで頂きありがとうございます
スーパードクターKは名作ですので、もし良かったら一度古本で読んでみて
気に入ったら続編のK2を読んでみる、なんていうのはどうでしょう?(宣伝)




679以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/19(火) 22:47:49.79XEEtHSsFo (1/1)

乙です


680以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/20(水) 15:04:20.269xkCPRv+o (1/1)


セレスはどこまでも本心が読めないな


681以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/20(水) 17:56:41.87kkUYlS+to (1/1)

というか、モノクマのフラグが立ってる云々の台詞て原作一章にあるよな
ヒロインが主人公にすがりつく、フラグが立つ。あっ…(察し)


682以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/22(金) 23:50:28.20QBIZMVgc0 (1/1)

セレスは計算高いからな
こういっておけばKAZUYAが自分を守ってくれると踏んでの行動だろう


683以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/24(日) 02:07:09.696OmYbaBXo (1/1)

やっぱりセレスは事件起こすのかな?


684以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/30(土) 17:06:15.24Xb9yDBrs0 (1/1)


セレスはどれだけ好感度上げても事件は起こしそうだしなぁ


685 ◆takaJZRsBc2015/05/31(日) 01:27:50.32iCwha6G60 (1/9)


ただいま! 遅ればせながら帰って参りました。

掛け持ちしていた笑う犬のクロスが無事に終わったので、
しばらくこちらに専念します。目指せ、週二更新!




686 ◆takaJZRsBc2015/05/31(日) 01:32:48.96iCwha6G60 (2/9)


               ◇     ◇     ◇


(少し疲れたが、まだまだ休んではいられん。次は……)

「あら、ドクター。そんな所に突っ立ってどうかしたのかしら?」


振り向くと、やや険のある表情をした霧切が立っていた。


(霧切か。この間の件もあるし、最近少しピリピリしているようだ)

「なに、今は生徒一人一人と出来る限り話すようにしていてな」

「お疲れ様ね。私は調査をしていたわ」

「何か発見が?」

「残念ながら……」

「……そうか。では休憩ついでに茶でも飲むか? お互い疲れているようだしな」

「そうさせてもらうわ」


食堂に入りKAZUYAと霧切はコーヒーを飲む。


「君は本当にコーヒーが好きだな」

「ドクターはどちらかというとお茶が多いですね」

「特にこだわっている訳じゃないんだがな。人が淹れてくれた物は何でも飲むよ。
 ……そう言えば、昔ある人からコーヒーは胃に悪いからやめろと言われたことがあった」


KAZUYAが入り浸っていた寺沢病院の名物患者であるその人物は、素人でありながら医者顔負けの
豊富な知識を持ち、通称死神博士と呼ばれ医師と看護婦達からは大いに恐れられていた。


「確かに、ブラックでたくさん飲むのはあまり良くないかもしれん」

「あら、コーヒーはこの香りと苦みが良いのに。全てを飲み込むような
 この黒い色に、白を入れて台無しにするのは勿体ないわ」

「やはりこだわりが?」




687 ◆takaJZRsBc2015/05/31(日) 01:43:43.06iCwha6G60 (3/9)


「そうね。コーヒーは品種以外にも色々違いがあるから……ドリップだけでも
 通常の紙、布、水出しと三種類あるし、焙煎度だって日本では八段階も存在します」

「ほう。そうなのか」

「600年以上の歴史があるんだもの。品種も飲み方も国の数だけあるに決まってるわ」


ただ、と霧切は続ける。


「これはトルコの諺だけど『コーヒーは地獄のように黒く、死のように濃く、
 恋のように甘くなければならない』。私も同じように考えています」


どこかミステリアスな雰囲気を持つ探偵の霧切が言うと、その言葉はより深みを感じられた。


「成程な。俺はちっとも知らなかった。……コーヒーだけじゃないな。服装も……ハァ」

「どうかされました?」

「みんな普通にワイシャツを着ていた方が良いという。そんなに普段の俺は酷い格好なのか?」

「…………」フッ


霧切は何も言わず、優しい微笑みを浮かべながらそっと目を逸らす。


「……そういう反応はこてんぱんに言われるより傷付くぞ」

「ファッションは個人の好みですから、私から何か言うことはありません。ただ一つだけ
 アドバイスをさせてもらうと、……裾が破れているのは問題外だと思います」

「そうだな……」


流石のKAZUYAもその点だけは素直に認めざるを得なかった。珍しく項垂れて落ち込む。


「……何と言うか、今時の子はみんなオシャレだな。君もこう、服の着崩し方とか
 片側だけの三つ編みが……えーと、シャレているというか」ポリポリ

「あら、無理に誉めなくてもいいのよ?」




688 ◆takaJZRsBc2015/05/31(日) 01:58:25.35iCwha6G60 (4/9)


「嘘は言ってないさ。俺の素直な気持ちだ」

「なら、私も素直に喜びますが」クスリ

「学園長が見せてくれた昔の写真でも三つ編みだったな。その時は確か両側だったが」

「片方だけにしたのは、あの事件からね。手袋と同じ、全てはあの事件を忘れないために……」

「……すまない。余計なことを言った」


希望ヶ峰の生徒はそのアクの強さを示すかのように奇抜なファッションが多いため、てっきり
霧切もオシャレの一環かと思ったが、予想外にシリアスな返答だったためKAZUYAも慌てる。


「気にしないで。そういう生き方を選んだのは私自身だもの」

「……もしかして、君が探偵にこだわる理由は一族の使命以外にもあるんじゃないか?」

「…………」


踏み込むかどうか逡巡するKAZUYAだったが、思い切って聞いてみた。


「父親との、繋がりでは――」

「馬鹿馬鹿しい。あの男は一族の誇りを捨てたのよ。私が探偵でいることとあの男に何の関係が?」

「いや……父親に見せたかったんじゃないかと。立派になった自分の姿を」

「…………」

「君が探偵として立派に一族の跡を継いでいれば、学園長が負い目を感じることはない。だから……」

「フゥ……何故私がこの学園に来たか。ドクターには特別に教えます」

「スカウトが来たからでは……?」

「ドクター、私は探偵よ? どんなにたくさん事件を解いて業界で有名人だったとしても、世間的な
 名声は皆無だわ。でも探偵としてはそれが正しい。探偵は表に出るべきではないと思います」


かつては探偵図書館なるものが存在し、その得意ジャンルや実績ごとにランク付けもされていたが、
霧切にとって忘れられないあの事件と共に闇に埋もれた。何より、図書館が閉鎖されなかったとしても
霧切は登録を抹消するつもりだった。だから、どの道一般人に彼女の名が知られることはないのだ。




689 ◆takaJZRsBc2015/05/31(日) 02:05:18.25iCwha6G60 (5/9)


「……だから、私は自ら希望ヶ峰に自分の実績を売り込んでこの学園に入学した」

「何のために? 探偵は目立ってはいけないのだろう?」

「――父に絶縁を言い渡すためです」

「…………」

「まあ、会う前にこんな事態に巻き込まれてそれどころではなくなってしまったのだけれど」

(霧切は気付いているのだろうか……)


本当に顔も見たくない程嫌悪しているのなら、探偵の矜持を捨てわざわざ自分を売り込んでまで
希望ヶ峰になど来るはずもない。そもそも、そんな面倒なことをしなくても電話一本すれば仁は呼び出しに
応じるはずだ。彼が娘に強い未練を持っているのは、付き合いの浅いKAZUYAにもわかる程なのだから。

第一、一度入学してしまえば折角絶縁を言い渡したのに最低三年間は顔を会わすことになる。


(……聡明な彼女がそれに気付かなかったとは思えないが)


気付かなかったのではなく、気付かない振りをしているのだろう。つまり霧切の本心は……


(――これ以上は野暮と言うものだ。彼女が自分で気付くべきだろう)

「疲れていたが、君と話せて良かった。そろそろ見回りに戻らなければならん」

「力になれたのなら何よりだわ。いつでも話しに来てください」

「ああ、君と話すのは楽しい。また話そう」


霧切と別れた。彼女と少し親しくなれたようだ。

……彼女が心を開いてくれるのもそう遠くない、とKAZUYAはぼんやり感じていた。




690 ◆takaJZRsBc2015/05/31(日) 02:10:26.19iCwha6G60 (6/9)


               ◇     ◇     ◇


(一通り回ってきたが、特に異常はないな……)

「ウーッス。せんせー!」

「桑田か」


廊下をぼんやり歩いていたKAZUYAに桑田が話し掛けた。


「見回り終わったか?」

「ほぼ、な。今のところは特に問題ないようだが」

「じゃあさ、少し息抜きしね?」

「?」


・・・


カキーン!

小気味の良い男が体育館に響く。


「そーそー! この音だよ、この音! 久しぶりに聞いてスッキリしたわー」

「……お前、俺をピッチングマシーン代わりにしたかっただけじゃないか?」

「そんなことねーって! 普段は大和田に頼んでるんだけどよ。やっぱパワーはせんせーが一番だな!」ヘラヘラ

「まったく……調子の良い奴め」

「お礼に後で茶でも出すから! な? な?」

「わかったよ。気が済むまで付き合ってやる!」ビュッ!




691 ◆takaJZRsBc2015/05/31(日) 02:19:10.06iCwha6G60 (7/9)


― 桑田の部屋 PM5:12 ―


「あー、久しぶりにがっつり打ってスッキリしたぜ!」

「別に俺でなくとも、例えば大神でも務まるんじゃないか?」

「大神かぁ。パワーは文句なしなんだけどさ、球技はイマイチとかでちょっとコントロール甘くて。
 その点、せんせーはストライクゾーンにしっかりバッチリ投げ込んでくるからな!」

「緊急時にメスを投げたりするから、コントロール力はそれなりに自信がある」

「へー、やっぱ医者ってメス投げたりするんだ?」

「いや、メスは本来投げる物ではないが……」


この話をすると大概の人間は驚いたり呆れたり場合によっては怒られることすらあるのだが、
漫画の影響なのか桑田にすんなり納得されてしまったため、自分でこっそり訂正する。


「ま、いいや。ほら、付き合ってもらった礼に茶でもどーぞ、と」

「お前が煎れた訳でもなかろうに」フフ


ペットボトルの緑茶をコップに注いで、二人は色々積もる話をする。


「舞園とは最近どうだ?」

「特に問題なくやってるぜ? パーティーの後も、時々ボイトレ付き合ってくれるし」

「フム、随分打ち解けたんだな」


前より会話が増えていたのはKAZUYAも知っていたが、パーティーの後も
自主的に会って練習しているというのは予想外だった。


「正直まだぎこちない時もあるけどよ。話さないともっと気まずくなるっしょ。
 ま、時間が解決してくれるってヤツ? 俺流にゆるーくかるーくやってこうっつーワケ」

「頼もしい限りだな」

(……良かった。実は心配していたんだ。舞園も無理をしがちだからな)


ほとんど顔に出さない舞園だが、今でも時折桑田の顔色を窺っている節があるのを
KAZUYAは知っている。だから、桑田の方から舞園に歩み寄ってくれて非常に助かったのだ。




692 ◆takaJZRsBc2015/05/31(日) 02:25:24.79iCwha6G60 (8/9)


「俺達のことは心配すんなって。苗木先生も間に入ってくれるしな」

「それ、流行っているのか?」

「たまたまさ、イインチョの真似して呼んでみたら苗木のヤツめっちゃおもしれー顔するからよー。
 それからハマっちまってさ。せんせーも今度やってみ? マジウケっから」ケラケラ

「程々にしとけよ?」

「でもさぁ、石丸ほど専門的なことは言わねーけど、ビタミンが偏るとどうなるとかストレスは
 脳のどこそかに悪いとか、なんか医者っぽくなってきたぜ? 二人も後継者できて良かったじゃん」

「フフ、そうだな」


意図せずに自然と笑みがこぼれる。肩に力が入りがちなKAZUYAにとって、桑田の緩さは時に薬となった。


「あ、そうだ。折角だし新曲披露しよっかな。最近の俺チョー絶好調でよ、舞園にも
 ここを出る頃には桑田君の方が上手くなってるんじゃないですかなーんて言われちゃって!
 マジで、LEONフューチャリングSAYAKAが実現しちゃうかもしれねー!」

「ほう、お前が舞園より上手くなるならあと二十年は脱出出来んな?」

「ひでー。そこはせめて十年にしてくれって」


ギターを担いで桑田は歌を披露し始める。


(まだまだ荒削りだが、それでも最初に比べたら随分と上手くなった。
 才能も大事かもしれないが、やはり一番重要なのは継続だな)

「前より更に上手くなった。良くなったよ」パチパチ

「それ、暗に前はヘタだって言ってね?!」

「そんなことないさ。また今度聞かせてくれよ」

「おう! ……あ、今日の夜は全員で保健室だっけ? 色々遊ぶ物持ってかねーとなぁ」ジャカジャカ♪

「詳しい話は夕食の時にするつもりだ。時間もちょうどいいし、そろそろ行くか?」

「そーだな」


桑田を伴い、KAZUYAは食堂へ向かった。




693 ◆takaJZRsBc2015/05/31(日) 02:35:43.86iCwha6G60 (9/9)


桑田の球速が上がった。 身体能力と動体視力が上がった。
ここに来て音楽センスがグッと上がった。

今日はここまで。




694以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/31(日) 05:26:52.66apT/oN8TO (1/1)

乙です


695以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/31(日) 07:20:24.74yKwtHvXH0 (1/1)


ダイジョーブ博士はどこだ


696以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/31(日) 11:36:45.82cJaEggzMO (1/1)

乙ー


697以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/31(日) 14:34:48.03z+YotRYZo (1/1)

ダイジョーブ博士に任せるくらいならテツに頼みたい
いい感じに魔改造してくれるはず


698以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/31(日) 17:52:58.15AOpcOyy5O (1/1)

小気味の良い男、でちょっと笑ったww


699 ◆takaJZRsBc2015/05/31(日) 20:36:10.32T+HVMW870 (1/1)


うわああああああああ。やっちまったぜ…
深夜に投下するもんじゃないな


>>698
小気味の良い音、ですね。ご指摘ありがとうございます!




700以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/31(日) 21:08:34.98Ib5D49Axo (1/1)

唐突な誤字……嫌いじゃないぜ

特にシリアス展開で偶然酷い(褒め言葉)誤字になった時とか、笑顔にしてくれて好き


701以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/05/31(日) 23:42:50.19/yGSj+dAO (1/1)

>>695

あげてまで書くことか?


702以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/01(月) 00:49:09.69wH2Bn7Ilo (1/1)

そういうキツい言い方しなくても…
メール欄にsageっていれてと言えばいい


703以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/01(月) 01:54:29.01mqknM43E0 (1/1)

>>LEONフューチャリングSAYAKA
舞台論破ネタ…!!


704以下、名無しにかわりましてモノクマがお送りします2015/06/04(木) 20:46:16.72lUdempun0 (1/1)

3年間じゃなく、5年生です・・・


705以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/04(木) 23:05:10.16ULQmYd2ko (1/1)

希望ヶ峰学園五年制て確定だっけ?
5A5Bの教室は単に五階の教室だからって聞いたことあるけど。五階だけ教室三つあるし


706以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/05(金) 07:35:43.69i3qXKlPAO (1/1)

一年に入学出来る数が16人で全員がクラスメイトだからAとBの2クラスある事が謎


707以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/05(金) 08:18:50.17h0gl79eFo (1/2)

いや流石に別のクラスもあるだろ


708以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/05(金) 08:40:53.21B4F2qwoTo (1/1)

77期は2の14人+サトウ松田神代村雨斑井がいるし、他に生徒会メンバーがいる可能性もあるから
大体一学年で一、二クラスあたりではないかとよく言われている


709以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/05(金) 17:24:45.11/Yfa0nwO0 (1/1)

よく考えると、そんなに【超高校級】の生徒いるのか
あの世界の高校生頑張りすぎてるだろ


710以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/05(金) 19:56:30.43z6XYGVDlO (1/1)

毎年じゃなく、2~3年毎に入学は行われてるんじゃないかな?
そんなポンポンと天才クラスが現れる訳がないし
豊作の時は連続で入学があるかもだけど、不作の時は五年くらいは間が開きそう


711以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/05(金) 22:28:15.95h0gl79eFo (2/2)

超高校級と言っても差があるんじゃね?
さくらちゃんやちーたんみたいに超人類級の逸材もあれば
左右田みたいにまさに高校生にしては大人顔負けの技術者っていう人もいるっていう


712以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/06(土) 00:13:37.16bCMfVae0o (1/1)

毎年取る人数決まってるって設定あったっけ?
多い年もあるなら教室余分にあってもおかしくはないだろう


713以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/06(土) 10:56:50.88VWF94WlAO (1/1)

DVD一巻に特典で小説が付いてたんだが、それには貴重な入学者枠に幸運を入れる事に学校の偉い人が反対してたな


714以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/06(土) 22:30:45.864uEwQNJHO (1/1)

希望ヶ峰は五年制とか、石丸は左利きとか、ファンの予想でしかないことをあたかも公式設定かのように他の人に押し付けるのはやめた方が良い


715以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/07(日) 21:47:10.62sQ1trrY5O (1/1)

公式でもない設定を長々と議論しててもレスの無駄でしかない
その辺はそれぞれ勝手に想像してればいいだろ


716 ◆takaJZRsBc2015/06/07(日) 23:24:43.40YcxeSJJD0 (1/5)


希望ヶ峰学園の在学期間について

上でも書かれているように、三年制説と五年制説があるようです。そしてすみません。
実は、まだ未発表のエピソード0Ⅲで言及しているのですが、1は折衷案として
基本は三年だが本人の希望で五年まで延長できる(大学院的な)という設定を出していて
ついあのように書いてしまいました。このSSではこの設定で行くつもりです

また、雑談は荒れないレベルなら好きにしてもらっていいです。感想が一番嬉しいけど、
書き込みが全くない方が寂しいので。あと、ニュービーにはシンセツ重点でよろしく


では、投下




717 ◆takaJZRsBc2015/06/07(日) 23:29:00.61YcxeSJJD0 (2/5)


               ◇     ◇     ◇


十神と腐川が遅れてきたことを除けば、生徒達はほぼ同じ時間に食堂に現れ食事を取った。
ほとんどの生徒が食べ終わり落ち着いた頃、KAZUYAは生徒達と目を合わせおもむろに立ち上がる。


K「……食べながらでいいが、みんなに聞いてもらいたいことがある」

葉隠「なんだぁ?」

江ノ島「なにさ。なんかやるの?」

K「今日の夜時間についてだ。知っての通り、今朝モノクマから動機が言い渡されたな」

山田「……!」

十神「フン」

K「金なんかで人を殺す奴はいない。俺自身心の底ではそう思っているが、
  わざわざこの段階で出してきた動機だ。何の手だてもしないのは愚かだろう」

K「よって、今日の夜時間は全員に一堂に集まって過ごしてもらう。といっても
  男女は別で、男子は保健室、女子は舞園の部屋に集まってもらうことにした」

朝日奈「あ、さっき舞園ちゃんが言ってたお泊り会だね! 楽しそう!」

山田「楽しそうって……要はお互いの監視じゃないですか」

大神「そういうことであろうな」

K「否定はしない。だが、一人でいるとモノクマにたきつけられる可能性もあるし、
  そもそも百億円はフェイクで別に動機を配られている人間もいるかもしれん」

葉隠「あー、それはあるかもなぁ」

江ノ島「…………」

江ノ島(流石、西城……鋭い。内通者の存在はある意味別の動機に当たるからね……)

舞園「見張りだなんて堅く考えず、親睦を深めるパジャマパーティーのつもりでやりましょうよ」

腐川「パジャマパーティー? ……ア、アタシも行っていいの?」

舞園「勿論ですよ!」

腐川「うふふ……お泊り会なんて初めてだわ!」




718 ◆takaJZRsBc2015/06/07(日) 23:36:54.18YcxeSJJD0 (3/5)


石丸「僕も初めてだ! そう、お互いを見張るは口実でこれは立派な親睦会なのだよ!」

朝日奈「倉庫にトランプとかボードゲームとか色々置いてあったよね?!
     ジュースにお菓子も用意して、それから……みんなの恋バナ聞きたい!」

舞園「いいですね! 是非ともここはミステリアスな霧切さんの秘密を聞き出したい所です」

霧切「あら、私の話が聞きたいの? パーティーで話すにはディープ過ぎるかもしれないわよ?」

セレス「わたくしは大神さんと江ノ島さんの話が聞きたいですわ」

大神「ヌォッ?! わ、我か……」

江ノ島「アタシはこう見えて身持ち固いし、そんなたいした話はないんだけどなー……」

腐川「フ、フン! 汚ギャルの分際で清楚アピールなんて見苦しいわよ……!」

江ノ島「あんたにだけは言われたくない!」

桑田「ヒュー、女子は盛り上がってんなぁ」

葉隠「正直羨ましいべ。なにが楽しくてこっちはこんなムサいメンバーで集まんなきゃなんねえんだ……」

苗木「気持ちは痛いほどわかるけどそう言わずに……」

大和田「まあムサいのは否定できねえからな」

葉隠「そうだべ! マッチョのK先生と大和田っち、声が熱苦しい石丸っち、
    横幅の大きい山田っちの四人でその名もムサ男四天王だ!」

石丸「声が熱苦しいだと?! 声は生まれ持ったものだというのは僕はどうすればいいんだ?!」

苗木「もう少し静かに話せばいいんじゃないかな……」

桑田「うるせーってことだよ」

不二咲「僕は大きな声ではっきり話す石丸君の話し方は嫌いじゃないけどなぁ。自信があって男らしいし」

山田「横幅が大きいとは失敬な! あなたの髪だってだいぶ幅取ってるでしょうが!」

大和田「ヒゲと服装もムサいしな」

葉隠「そんなこたねえ。これが占い師の正装ってやつだ」エッヘン

朝日奈「……絶対ウソだ」ジト目




719 ◆takaJZRsBc2015/06/07(日) 23:45:19.96YcxeSJJD0 (4/5)


K「とにかく、夜時間が始まる十時には各部屋に集合するように。単独行動もなるべく控えろよ」

「はーい!」

十神「俺は行かんぞ」

桑田「ハァ?! お前まーだ飽きずに一匹狼気取ってんの?」


もはやこの流れはお約束である。


十神「貴様等みたいな、愚民の中でも更にふるいにかけてよりすぐったような
    馬鹿共と一緒にいたら、この俺の優れた頭脳が汚染されるからな」

葉隠「バカなのは否定しないけどそれは流石に言い過ぎだべ!」

大和田「まずバカを否定しろよ……」

苗木「十神君……」

K「まあ、想定内だ。十神はいつも通り単独行動だが、他のメンバーが全員集まればそれで良い」

セレス「西城先生がこれだけ目を光らせていますし、十神君もまさか
     このタイミングで行動を起こしたりはしないでしょう」

江ノ島「どうだか。逆に裏をかいて来るかもよ?」

石丸「正式な集合は夜時間からだが、なるべく早く集まろうではないか」

苗木「一晩一緒な訳だし、色々準備もしなきゃいけないからね」

不二咲「楽しみだなぁ。たくさん遊ぼうね!」

石丸「ウム! いつもなら夕食後も勉強しているが、今日は早めに入浴を済ませて保健室に行くぞ!」

桑田「じゃあ8時に集合な。人生ゲームやろーぜ」

大和田「よし、とりあえず風呂行くか」

苗木「じゃあ僕は飲み物持って行くね」

不二咲「僕もゲーム用意しなきゃ」

葉隠「俺は盛り上がる話を用意しとくべ!」

K(やれやれ、遊びではないのだがな。……だがこういう空気が大事かもしれん)




720以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/07(日) 23:48:48.80MXkQ7aZcO (1/1)

キターリアルタイム遭遇!


721 ◆takaJZRsBc2015/06/07(日) 23:54:18.15YcxeSJJD0 (5/5)


生徒同士がいがみ合い疑い合い、校内に殺伐とした不穏な空気が流れればまた
一気に崩れる。それでは黒幕の思うつぼだろう。和やかなことは良いことなのだ。


朝日奈「私達だって男子に負けないよ! かわいいパジャマ用意しようねー!」

舞園「はい!」

セレス「たくさん写真も撮りましょう」

腐川「い、いいわよね。外見に自信のあるヤツらは……!」

大神「…………」コクリ


のどかな光景だ。だからこそ誰も知らない。

この時点で既に、運命の歯車が回り始めていたことに――



― 保健室 PM8:00 ―


苗木「これで全員だね」

石丸「ム! 山田君と葉隠君がまだだぞ」

苗木「葉隠君なら少し遅れるって言ってたよ」

K「そもそもお前が勝手に時間を早めただけで本来の集合時間は夜時間からだ。山田はただでさえ
  むさ苦しいメンバーなのにあまり早く来たくない、夜時間から来ると言っていた」

石丸「そうでしたか。十神君は来ないし、なら男子はこれで全員だな」

桑田「待ってたら時間の無駄だし、先に始めちまおーぜ」

不二咲「うん! 僕、今日一日ずっと楽しみにしてたんだぁ」

石丸「僕もだぞ!!」

K(前の泊まり会は石丸も不二咲も病み上がりだったからな。徹夜で遊ぶのは
  初めてで興奮しているようだ。……最も、俺自身もこういう経験は初めてだが)

大和田「じゃあ、まずは乾杯するか」

不二咲「倉庫から紙コップ持って来たよぉ。ガラスだと割れたら大変だから」

大和田「お、気が利くな」




722 ◆takaJZRsBc2015/06/08(月) 00:00:53.26QexTG3tE0 (1/7)


苗木「僕がジュースいれるから回しちゃって」


KAZUYAが烏龍茶、残りのメンバーはジュースを注いだコップを手にする。


石丸「そうだ! 西城先生、乾杯の挨拶を!」

K「えっ、挨拶ゥ?!」

桑田「そういう堅いのいらねーだろ」

大和田「そうだぜ? もっと気楽に行けよ」

石丸「いや、折角のお泊り会なのだ! ここは是非先生に開会の挨拶をして頂きたい!」

K「えーっと……」

苗木「してあげたらどうですか? なんか、凄い気合い入ってるし」

大和田「短めにな」

K「いきなり言われてもな……それこそ、石丸がやった方がいいんじゃないか?」

桑田「ジョーダンきついぜ! こいつにやらせたらぜってー長えぞ?」

石丸「ムッ、失敬な。僕だってTPOは弁えているぞ!」

桑田「わきまえてないからKYって言われてたんだろ……」

K「二人共わかった、わかったから……やればいいんだろう? では、そうだな……」


KAZUYAはコップを手に持ち立ち上がった。


大和田「いよっ、センセイ!」

不二咲「頑張ってぇ~!」


パチパチパチと四人が拍手する。


K「えー、ゴホン……本日は日柄も良く……」

桑田「うわ、長そうな予感……」




723 ◆takaJZRsBc2015/06/08(月) 00:06:27.47QexTG3tE0 (2/7)


石丸「挨拶の最中だぞ! 静かにしたまえ!」

桑田・大和田(……お前が一番うるさいよ)

苗木「ハハ……」

K「……気楽に行くか。今日は集まってくれてありがとう。まあ発起人は俺じゃない訳だが。
  話すことが思い浮かばないから、今日は俺からお前達に――感謝の言葉を伝えたい」

「え?」

K「いつも、俺に協力してくれてありがとう。今だから言うが、この生活が始まった時は
  本当に苦しかったんだ。何せ、その時はまだ自分一人しか頼れなかったからな」

「…………」

K「初めてお前達に会った時、とても未熟だと思った。最近の高校生は本当に子供っぽいなと
  呆れたことも何度かある。……だが、そんなお前達もこの生活を経て変わった。本当に成長した」

K「俺が抱えているものは重すぎて、それをお前達に背負わせることは出来ん。
  だが、今のように少し肩を借りるだけでも俺はとても楽になるんだ」

K「今は、ただ守るだけの存在ではなく――この生活を共に生きる仲間として見ている」

苗木「先生……」

不二咲「…………」グスン

K「はっきり言ってまだ脱出の見通しは立っていない。全員揃ってここから出られるかと言えば、
  正直俺は五分五分だと思う。……だが、だからといって諦める訳にはいかないのだ」

K「これからも手を取り合ってお互い頑張ろう。乾杯!」

「かんぱーい!!」


全員が、グラスの代わりにコップを掲げ乾杯をした。


石丸「先生! 僕は先生の挨拶に心から感動しましたっ!! これからも粉骨砕身のつもりで
    お手伝いしていきます! 願わくば全員揃って脱出することを……!」

桑田「だからおめーは長いんだって。せんせーらしい挨拶だったけどさ」

K「挨拶した俺が言うのもなんだが、湿っぽいのはやめよう。今日は一晩遊ぶのだろう?」




724 ◆takaJZRsBc2015/06/08(月) 00:14:02.57QexTG3tE0 (3/7)


と言っても、KAZUYAは一人途中で抜けて何度か見回りに行くつもりである。彼等を仲間として
認めたKAZUYAだが、出来る時に好きなだけ遊ばせてやりたいという親心は未だ健在だ。


苗木「じゃあ早速ゲームしようか。人生ゲーム持ってきたし」

石丸「これがボードゲームというものか。トランプならやったことはあるが……」

大和田「マジでやったことねえのか。ルールとかわかるか?」

石丸「双六ならやったことがあるから、多分大丈夫だ!」

桑田「スゴロクって……」

苗木「勿論先生もやるんですよね?」

K「え? 俺は……」

不二咲「やりましょうよ!」

桑田「ちょうど六人まで出来るし、せんせーも参加な!」

K(実は俺もやったことないんだが……まあいいか)


・・・


不二咲「先生が就職一番乗りだね!」

K「えーっと、どうすればいいんだ……?」

苗木「このマスなら高収入な職業になれますよ。医者とか弁護士とか政治家とか」

大和田「やっぱ医者か?」

K「……いや。現実で医者なんだからゲームくらい違うものを選ぼうかな。弁護士にしよう」

桑田「弁護士かぁ。なんか討論するより殴って説得しそうだなぁ」

苗木「桑田君、それは失礼だって……!」ププ


そう言いながらも苗木は少し笑いをこらえている。


K「…………」ムスッ




725 ◆takaJZRsBc2015/06/08(月) 00:24:25.75QexTG3tE0 (4/7)


石丸「次は僕だな。……ムッ、西城先生と同じマスに止まったぞ!」

苗木「残りは医者か政治家だね。どっちを選んでも高収入で安定してるよ」

不二咲「石丸君ならやっぱり政治家?」

石丸「ウーム……よし、決めた! 政治家もいずれなるがとりあえず直近の目標である医者になるぞ!」

大和田「現実でも両方選べちまえるところがすげえよな……」

桑田「はいはい、エリートエリートっと」


・・・


大和田「うお、センセイまた子供出来たぜ。そろそろ車に乗りきらないだろ」

K「現実だと独身なんだがな」

大和田「でも実はモテるんだろ? なにせ天下の医者だもんな」

苗木「職業であれこれ言うのは良くないけど、やっぱり人気あるだろうしね」

不二咲「西城先生ってかっこいいもんねぇ。凄く頼りになるし」

K「……ノーコメントだ」

石丸「おや、僕の所も子供が出来たようだぞ。先生とは気が合うな!」

桑田「っかあー、俺も早く結婚してー!」

石丸「桑田君はその前に金遣いの荒さを直した方が良い!」

桑田「俺じゃねーっての! ……次のマスは、ゲッ! またアイドルのコンサートに出費かよ!」

不二咲「ご、ごめん」

苗木(不二咲君て現実でもアイドルいけそうだよな。主にネット系の……)


・・・


桑田「だあああ、チクショー! ぶっちぎりのビリじゃねーか!」

苗木「一位不二咲君、二位石丸君、三位KAZUYA先生、四位大和田君、五位が僕で桑田君がビリかぁ」

大和田「やっぱアイドルはつええな」




726 ◆takaJZRsBc2015/06/08(月) 00:32:02.37QexTG3tE0 (5/7)


不二咲「エヘヘ。何度もみんなからお金もらっちゃって申し訳なかったよぉ」

苗木「石丸君とKAZUYA先生は特に投資とかしないでコツコツ貯めてたからトラブルも
    ほとんどなかったし、浮気イベントもなくて堅実な家庭だったね」

石丸「当然だ! 僕がそのような不誠実なことをする訳がない!」ビシッ!

K「これはゲームなのだが……」

大和田「なんつーか、現実みたいな結果になったよなぁ」シミジミ

桑田「俺がフリーターでふらふらしてんのが?!」

石丸「桑田君はアイドルを狙って他の仕事につかなかったから転落したのだ!
    現実でも派手なことばかりしていると転落するぞ!」

桑田「うっせー! 余計なお世話だっつーの! ……こんなことなら野球選手なっときゃ良かった」

K「逆に、大和田がサラリーマンを選んだのは意外だったな」

大和田「まあそこそこ安定してるし無職よりはマシだからな。俺は仕事を選べる人間じゃねえし、
     現実でも土方だろうがコンビニだろうがやれる仕事はなんでもやるぜ?」

苗木(げ、現実的だ……大和田君て根は意外と真面目なんだよな)

K(フム……たかがゲームだが、みんなの性格が垣間見えて面白い)

K「苗木は惜しかったな。途中まではいい調子だったのに」

苗木「アハハ、僕ってツイてないから」


苗木は教師を選び、特に大きな問題もなく当初は四位だった。
……が、最後の最後で桑田の借金を肩代わりするイベントに巻き込まれ一気に転落。

しかし、そんな不運なところもどこか苗木らしいと思えてしまう。


K(子供の遊びだと思っていたが……人生ゲーム、恐るべし!)

桑田「もう一回! もう一回やろうぜ!」

石丸「桑田君! 人生に二度目はないのだー!!」

桑田「うるせーよ! 今度こそアイドルになってモテモテになってやる!」

K「まあまあ。また今度な」




727 ◆takaJZRsBc2015/06/08(月) 00:42:09.10QexTG3tE0 (6/7)









































― 学園廊下 ??? ―


「…………」

「…………」


コツコツコツ……

薄暗く人の気配が感じられない静かな廊下に、誰かの足音が響いていた。
まるで強い決意を示すかのように、その人物は不穏な空気を切り裂きながら歩く。


闇に蠢くその影の正体は――!





728 ◆takaJZRsBc2015/06/08(月) 00:50:13.55QexTG3tE0 (7/7)


ここまで。

小ネタですが、KAZUYAの乾杯の台詞は集まったメンバーの数によって変わる
もしこの時点で全員集まっていたら、五分五分ではなく脱出は可能と断言してる

では、また来週~




729以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/08(月) 00:53:56.52KThqMAFFO (1/1)

乙ー


730以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/08(月) 00:58:00.74vQVTFN33O (1/1)

乙です


731以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/08(月) 08:31:17.22D2K0eQXPO (1/1)

一番怖いのは十神か...?
セレスも最悪退屈でやりたくなっちゃったでやりかねんが


732以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/08(月) 20:40:12.29tukZpfZJO (1/1)

全員が集まるルートもあったのか……


733以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/09(火) 15:07:28.17KMBECa4hO (1/1)

スペシャルゲストで野爆川島きぼうぬ


734 ◆takaJZRsBc2015/06/09(火) 19:56:14.85WGAUitEm0 (1/1)

>>732
そのへんはいつか解説したいですね。鍵は十神君

…ちなみに、人数が少ないとしんみりした感じになり
死人が出ているとかなり悲惨な感じになる



735以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/09(火) 22:45:18.65JJn7X1R00 (1/3)

乙様です。遂に追い付けた!

ルートによっては十神君が意気揚々と女風呂を覗く未来もあったのだろうか……


736以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/09(火) 22:45:18.65JJn7X1R00 (2/3)

乙様です。遂に追い付けた!

ルートによっては十神君が意気揚々と女風呂を覗く未来もあったのだろうか……


737以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/09(火) 22:48:23.55JJn7X1R00 (3/3)

すみません連投した……


738暴言一筋3x年2015/06/10(水) 15:27:16.22TeV6qqRAO (1/1)

>>734

お前の匙加減だろ


739以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/10(水) 16:22:27.52aZykNi8FO (1/1)

そんなことはみんな分かってるし段々人が減った原因でもあるがどうすることも出来ないのだよ


740以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/10(水) 17:47:28.356Eko70o0o (1/1)

人が減ったのは一時期ひたすら鬱展開だったからじゃないの?
石丸とかリアルに三ヶ月くらい壊れてた気がするし、シャレにならない仲違いや
修羅場の連発で、あれで脱落した人は結構いそう


741以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/10(水) 20:05:03.778ygiIC8wo (1/1)

まあ鬱展開は長期作品ではよくあることだし。。。



742以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/11(木) 09:11:46.596W50852Qo (1/1)

実際ジェットコースターが続くと心が折れる
自分も俺新訳途中でやめてしまったし。そろそろ続き読まないとな…


743暴言一筋3X年2015/06/14(日) 12:41:57.59G6aRoFdAO (1/1)

>>736

連投してんじゃねぇよ


744以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/14(日) 20:02:45.04B1iVRGi1O (1/1)

>>743さん最近暴言の切れ酷いっすね
全然不快になれねーんすけど
匙加減もろもろ俺ら不快にも恍惚にもさせてくれる>>1さんチィーーーーーース



745 ◆takaJZRsBc2015/06/14(日) 21:47:43.03ZbVEUgcY0 (1/10)


               ◇     ◇     ◇


――その奇妙で都合の良い発見をしたのは、苗木誠が【超高校級の幸運】だったからだろうか。

或いはこれから起こる惨劇の予兆だったのだろうか……

かつて希望ヶ峰学園の入学を引き当てたように、苗木誠は日頃の不運を引き換えにして
またも驚異的な幸運を何万分の一、もしくは何億分の一の確率で発揮したのだった。


苗木「あ」


人生ゲームの小物を片付けている際に、手が滑ってベッドの下に入ってしまった。
ベッドの下にはKAZUYAが過去にモノモノマシーンで当てた凶器もといガラクタ類が
ダンボール詰めにされて仕舞われていた。ちょうどその間に入ってしまったのだ。


K「どうした?」

苗木「小物がこの中に入っちゃって……うーん。届かない」

K「どれ、ダンボールをどけよう」


KAZUYAがダンボールを引き抜き、苗木がベッドの下に体を突っ込む。


苗木「あったあった」

不二咲「なくさないで良かったねぇ」

苗木「うん。……あれ?」

K「どうかしたのか?」

苗木「先生、これ何だと思いますか?」

大和田「なんかあったのか?」

苗木「何だか、壁に変なカバーみたいなものがある」

桑田「はぁ?」




746 ◆takaJZRsBc2015/06/14(日) 21:58:04.46ZbVEUgcY0 (2/10)


石丸「きっとコンセントの蓋だろう」

苗木「コンセントに蓋なんて付けるかな……?」


何気なく、苗木はそのカバーを開けてみた。


苗木「あれ、スイッチ?」

K「……見せてみろ」


苗木は体をベッドの下から引き抜くと、KAZUYAに代わる。


桑田「電気のスイッチじゃねーの?」

不二咲「でも、そんな所に作るかなぁ?」

大和田「こんなとこにスイッチ作っても誰も気付かねえだろ」


彼等が口々に話している中、KAZUYAの頭に強烈にフラッシュバックする“ある記憶”があった。


(これは……! そうか、そういうことだったのか……こんな重要なことも忘れているとは)


最近は順調に記憶が戻ってきていると思っていたKAZUYAだったが、
それは大きな思い違いであることを予想外の所から知らされたのである。



              ◇     ◇     ◇


「…………」~♪


スタスタスタ……

その頃、保健室の前を誰かが通り過ぎる――。




747 ◆takaJZRsBc2015/06/14(日) 22:05:11.47ZbVEUgcY0 (3/10)


               ◇     ◇     ◇


朝日奈「見て見てー! このパジャマかわいくない?!」

舞園「かわいいです♪ 似合ってますよ」

朝日奈「舞園ちゃんのもかわいいー!」


コンコン。


霧切「飲み物を持ってきたわ」

朝日奈「あれ? 霧切ちゃんはパジャマじゃないの?」

霧切「寝る直前に着替えるわ。夜は長いし……いざという時のためにね」

朝日奈「霧切ちゃんは慎重だよね。みんな一緒にいるし、先生が防いでくれるからきっと大丈夫だって!」

霧切「……私もそう信じているけど」

舞園「さあ! 夜は長いです。今から何を話すか考えないといけませんね」

朝日奈「早くさくらちゃん達来ないかなー」


               ◇     ◇     ◇


大神「江ノ島」

江ノ島「! な、なに……?」

大神「……先に行っているぞ」

江ノ島「わかった。アタシはもうちょっとかかるかも」

大神「伝えておく」

江ノ島「…………」




748 ◆takaJZRsBc2015/06/14(日) 22:13:50.44ZbVEUgcY0 (4/10)


               ◇     ◇     ◇


不二咲「あ、僕携帯ゲーム機持ってきたよ!」

石丸「おお! これが噂に聞く『ぷれすて』というものか!」

大和田「……それは据え置き型の方だ」

K「ム、ゲームボーイではないのか? 入院してる子供達がよくやっていたな」

桑田「何年前の人?!」

不二咲「えっと、三世代くらい前の話じゃないかな……」

苗木「流石KAZUYA先生、昭和の人だ……」

石丸「それで、これはどう使うのかね!」ワクワク!

不二咲「じゃあまず石丸君にやり方を教えるね。みんな出来るようになったら通信で対戦も出来るよ!」

石丸「これ一台でか?!」

桑田「いや、俺達みんな自分の持ってるから」

大和田「兄弟、勉強ばっかであんまガチャ引いてないだろ。閉じこめられた最初の頃、あの機械に
     ゲームがあるってわかってみんな死ぬ気でメダル探して購買通ってた時期があったんだよ」

石丸「……そういえばあったな。その頃の僕はまだ融通が効かなくて、ゲームのために
    メダルを探す時間があるならもっと勉強するべきだとよく怒っていた……」


監禁当初から娯楽室は開いていたが、当時はまだメンバー同士が
あまり仲良くなかったので、遊ぶ気になれずほとんど使われていなかった。

そんな時、最初にゲームを引き当てたのはセレスだ。本来なら最もゲームと無縁の彼女だが、
流石に退屈過ぎて暇潰し道具を探していたようである。彼女からゲームの存在を知った生徒達は
学園中から目を皿のようにしてメダルを探し回り、購買に殺到したのであった。


K(生徒達と仲良くなれるかと思って、俺も密かに狙っていたが……結果は散々だったな……)




749 ◆takaJZRsBc2015/06/14(日) 22:17:24.54ZbVEUgcY0 (5/10)


ちなみに、最初は興味を持っていなかった朝日奈、大神、江ノ島も
あまりにゲームが流行っていたので気になったらしく、こっそり手に入れていた。

あの霧切でさえ携帯音楽プレーヤー代わりに愛用しており、今も持っていないのは
生徒では石丸、十神、腐川の三人だけであった。そのくらい浸透しているのだ。


石丸「僕は想像力がなかった。この過酷な環境下で、コロシアイなどせず楽しく生活出来るように
    みんななりの努力をしていたと言うのに、それを安易に否定して……思いやりがなかったな」

不二咲「そんなことないよぉ……!」

K「お前がいなければみんなゲーム三昧で勉強しようなどとは思わなかったろう。
  外に出てからどうするかのビジョンを常に考えさせてくれたのはお前だ」

大和田「要はバランスだっつーの、バランス!」

苗木「もし今度モノモノマシーンでダブったら石丸君にあげるね」

石丸「ありがとう、みんな! ……それで、早速だがこれはどうするのだ?」

桑田「おま、上下逆だ! 右手で十字キー触るヤツとか初めて見たぞ」

大和田「……いや、向きより指だろこれは。親指後ろで他の指で押すとかいろいろと斬新すぎだろ」

不二咲「あのね、こう持って指はこう。それで、これが電源スイッチだよ」


小さく柔らかそうな手で優しく石丸の手を取って教える不二咲の姿を見て苗木は思う。


苗木(不二咲君、男なんだよなぁ。……ちょっと羨ましいと思ってしまった。
    ダ、ダメだ僕! 戻ってこないと山田君の二の舞だぞ……!)

K(微笑ましいな)フフ

不二咲「これが決定ボタン、こっちがキャンセル。十字キーでキャラクターを
     動かしたり選択肢を選ぶんだぁ。とりあえず、スタートしてみるね」ピロリロリン♪

石丸「ほうほう」カチャカチャ


ピチューン! タラッタタタタタン♪




750 ◆takaJZRsBc2015/06/14(日) 22:29:50.95ZbVEUgcY0 (6/10)


石丸「ム? 最初からやり直しになったぞ?」

桑田「敵に突っ込んだからだよ!」

大和田「死んだらやり直しだ。左上のこれが残機で、ゼロになったらゲームオーバーだぜ」

K「フーム、成程な……」

石丸「敵を避けて進むのか?」

苗木「それでもいいけど、上から踏み付けて倒すんだよ」

石丸「踏んだら大怪我をしてしまうぞ。最悪死んでしまうのではないか?」

桑田「それでいーんだよ。敵なんだから」

石丸「敵なら無用に命を奪っていいとでも?!」

大和田「ゲームになに言ってんだ……」

不二咲「あ、あのね……そういうゲームだから……」

石丸「こうやって残虐な心を育て子供を犯罪に導く……これがゲーム脳というものなのだな!」

K「それは、多分違うと思うぞ……」

桑田「ちげーよ、バカ! ゲームと現実の区別がつかねーのがゲーム脳だろ!
    ある意味今のお前がゲーム脳だっつーの!」

石丸「そ、そうか……! あくまで架空の世界であるゲームの中で、
    現実では出来ないことをやって楽しむものなのだな!」

大和田「考えるまでもなくわかるだろ、フツー……」

苗木「ま、まあまあ。初めてなんだし仕方ないよ」

石丸「しかし、たとえ架空の世界だとしても暴力は嫌いだ。なるべく戦わないで進めることにしよう」

不二咲「初プレイでいきなり不殺縛りなんて……流石、石丸君だね! 男らしいよ!」

大和田「不二咲、落ち着け。ぜってえ違うからそれ」

K「お前は男らしさを勘違いしている……」


やいのやいの!




751 ◆takaJZRsBc2015/06/14(日) 22:38:33.01ZbVEUgcY0 (7/10)


石丸「先生もやってみますか?!」

K「え、俺は……」

桑田「そもそさ、せんせーってもゲームとかやったことあんの?」

K「旅館に筐体が置いてあって暇潰しに少しだけやったことはある。
  確か、宇宙人が攻めてくる作品と上からブロックが降ってくるパズルだったな」

苗木「それってもしかして……」

不二咲「インベーダーにテトリス?」

K「そうそう、そんな名前だった」

桑田「古いって!」

K「あとボールをぶつけてブロックを崩すヤツは知っている」

大和田「アルカノイドか……」

桑田「昭和かよ!」

K「仕方ないだろう。俺は昭和生まれなんだから!」

苗木「…………」

苗木(あれ、KAZUYA先生ってまだ三十代前半だよな? 僕の両親が四十代だけど、明らかに先生の方が
    年代が上のような……い、いや、考えても無駄だ。この件はもう考えないようにしよう……)


何だか触れてはいけないことのような気がする。


石丸「ほら、先生もやりましょう!」

K「こういうのは苦手なんだが……」タラッタッタタッタッタン♪


しかし、石丸のプレイを一度横で見ていたためかKAZUYAは意外と上手かった。


大和田「うめえじゃねえか」

K「先に見てたからな」




752 ◆takaJZRsBc2015/06/14(日) 22:47:54.55ZbVEUgcY0 (8/10)


不二咲「反射神経がいいんだろうねぇ」

K「うおっと!」

苗木「凄い、ギリギリでかわした……」

桑田「操作方法わかってきただろ? じゃあそろそろ対戦しよーぜ」

不二咲「対戦は四人までだから順番に回そうね」

K「俺はいいからお前達でやるといい」

桑田「ダメだっつの。俺がボコボコにすっからせんせーも参加な!」

K「おい」

苗木「僕は後でいいよ」

K「すまんな、苗木」

苗木「見てるのも好きだから」

不二咲「じゃあ苗木君は僕と交換でやろうよぉ」

石丸「美しい譲り合いだ。ありがとう、二人共!」

大和田「よーし、やるぜ!」

K「…………」

K(全く、俺は友達じゃないんだぞ? ……まあ、たまにはこういうのもいいか)


夜時間になればKAZUYAは何度か見回りで抜ける予定なので、逆に今は相手をしようという気になった。
KAZUYAのそういう優しさすら逆手に取られていたとも知らずに……



               ◇     ◇     ◇


「――――」

「――――!」

「――――?!」

「――! ――!!」




753 ◆takaJZRsBc2015/06/14(日) 23:01:08.88ZbVEUgcY0 (9/10)


「ッ!!」

「あッ?!!」


ゴッ!!

ガシャーン!


……ポタッポタッ。


「やっちまった……」


ガタッ!


「ッ?!」










― 学園廊下 PM9:52 ―


夜時間であろうと、廊下の電灯はついているはずなのに、こうも暗いのは何故だろう。
気持ちの問題か、或いは出血のせいで強烈な眩暈を感じているからだろうか。

ポタッポタッと赤い液体の床に落ちる音が定期的に彼女の耳に届く。元々白かった顔が
今まで以上に白くなり、端正な顔が今は酷く歪んでいる。執念を持って彼女は進んでいた。

……たとえ這ってでも目的の場所に辿り着くことが出来れば、少なくとも彼女の勝ちだ。


「こんな所で……死んで、たまるものですか……」

「このわたくしが……!!」


血の流れる腹部を抑えながら、鬼の形相で這うように廊下を突き進むその人物は――


何を隠そう、今回の動機で最も心を揺さぶられた人物であり実質モノクマのターゲットと言っても良い。

――セレスティア・ルーデンベルクその人だったのである。




754以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/14(日) 23:04:41.59P6cKEXuj0 (1/2)

台詞的に遂に葉隠の乱きたか?


755 ◆takaJZRsBc2015/06/14(日) 23:09:34.30ZbVEUgcY0 (10/10)


ここまで。

wikiによるとKAZUYAは昭和37年生まれらしい


>>735
いらっしゃいませ! 最近はとろとろ更新ですが、今年中には
なんとか四章終わらせるつもりなのでこれからもよろしくお願いします




756以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/14(日) 23:16:30.33P6cKEXuj0 (2/2)


>>754でも書いたが「やっちまった」の人は葉隠かな?
さて、セレスが死にかけか。石丸や不二咲と違い皆からの好感度も高くないからな。もし患者に
なって動けないような状態になっても本気で動いてくれる人がいるのかという不安。


757以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/14(日) 23:18:05.40W6jV7s1eO (1/1)

乙です


758以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/14(日) 23:18:15.13NlKq1CGdO (1/1)

乙だべ!


759以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/15(月) 00:34:07.85BZYaWPwbo (1/1)

セレスやられたああああああああ


760以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/16(火) 18:09:58.660AQbFyvG0 (1/1)

乙です
山田もありうるか?最近不安定だし意外と口悪いとこある


761以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/16(火) 22:38:24.59Yx4fbAfFo (1/1)

あー、確かに。なんか会話してたっぽいよな
利用しようとして逆にやられたか


762以下、名無しにかわりましてモノクマがお送りします2015/06/18(木) 20:14:06.354gLs3xMg0 (1/1)

しかし、セレスなんとかさんは誰を殺そうとしたんだろうな? 江ノ島あたりを殺そうとして失敗した可能
性が高いよな・・・チラチラ


763エレンJジョースター2015/06/18(木) 20:57:05.971Un8T9XAO (1/1)

>>762

ねぇよ


764以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/18(木) 21:46:10.089X5I1pTxO (1/1)

事件は別、セレスのは自作自演っぽいな


765以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/18(木) 22:57:14.13DlUKmUXWO (1/1)

ガシャーンって効果音とセレスの傷が噛み合ってないような気がするんだよな…
腹部から血が出てるってことは多分刺し傷だろうし、セレス以外にも怪我人がいる可能性はあるな


766 ◆takaJZRsBc2015/06/22(月) 00:35:49.78ZPyaFQeN0 (1/1)


すみません。今週は間に合いませんでした。
なんとか週の真ん中あたりに来るよう頑張ります。

あと、安価しなければいけないことがあるので、
投下があってもなくても木曜10:00くらいに来ると思ってください




767以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/22(月) 01:01:00.53zzxngEjbO (1/1)

待ってる


768以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/22(月) 01:48:42.07Wor2lm76O (1/1)

いつでもいいですぞ


769以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/22(月) 15:30:44.91Zv62Lvdn0 (1/1)

わかったよー


770 ◆takaJZRsBc2015/06/25(木) 22:25:49.88eZ59r5BI0 (1/3)


間に合わなかったので、安価だけ取ります。

KAZUYAが例によって手術後は身動き取れなくなるので、その間に生徒達に動いてもらうのですが
その生徒の組み合わせを安価します。遥か昔、スキル表のメモでちらっと書きましたが、
生徒達にはそれぞれ相性があり、良い組み合わせなら生徒同士の親密度が上がります。


〈指定できる生徒〉

苗木、桑田、舞園、石丸、不二咲、大和田、霧切、腐川
※朝日奈も選択可能だが、まだ仲間でない大神も強制的についてきてしまう


ヒントとしては、原作で仲の良い組み合わせはもう十分親密度が高いので、
あえて違う組み合わせを模索するのが吉。また、このSSでよく組むキャラもあり

……まあぶっちゃけ単なる会話イベントのようなものなので、深く考えずに
自分が見たい組み合わせを書いてもいいと思います。3グループくらい作りたい


生徒を二名か三名指定(朝日奈の場合のみ、二名まで)

↓3



771以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/25(木) 22:34:07.944spFaRh10 (1/2)

桑田、不二咲、霧切


772以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/25(木) 22:39:09.745CRSyeoHo (1/2)

舞園 霧切 腐川


773以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/25(木) 22:58:15.59+S4Szlis0 (1/1)

苗木、桑田、不二咲


774 ◆takaJZRsBc2015/06/25(木) 23:04:24.20eZ59r5BI0 (2/3)


フーム、面白いですね


〈指定できる生徒〉

舞園、石丸、大和田、霧切、腐川
※朝日奈も選択可能だが、まだ仲間でない大神も強制的についてきてしまう


生徒を二名か三名指定(朝日奈の場合のみ、二名まで)

↓2



775以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/25(木) 23:04:26.75ken0oL/FO (1/1)

朝日奈、大神、大和田


776以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/25(木) 23:07:02.314spFaRh10 (2/2)

石丸、霧切、腐川


777 ◆takaJZRsBc2015/06/25(木) 23:15:34.61eZ59r5BI0 (3/3)


では、残りは四名になってしまうので半分にして舞園・大和田と朝日奈・大神ですね

1班 苗木、桑田、不二咲
2班 石丸、霧切、腐川
3班 舞園、大和田
番外 朝日奈、大神


かなり予想外の組み合わせとなりました。特に2班がなかなかにカオスですねw
それでは、書き溜めしておきます。また週末にお会いしましょう




778以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/25(木) 23:23:06.885CRSyeoHo (2/2)

親密度上がらなそうな組み合わせだなww


779以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/25(木) 23:49:10.79cK8+9xpMo (1/1)

むしろ下がりそうwwwそして行動も失敗しそうw


780以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/26(金) 16:08:31.42KcUbIVpu0 (1/2)

1班と3班はなんとかなりそうだけど、2班大丈夫か…?
霧切さん頑張れwwwwww


781以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/26(金) 16:13:33.28KcUbIVpu0 (2/2)

1班と3班はなんとかなりそうだけど、2班は激しく不安。石丸くんと腐川ちゃんって…。
霧切さん頑張れ超頑張れwwwwww


782以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/26(金) 22:50:12.83sI1rkcVAO (1/1)

霧切さんストレスたまりそうやな


783以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/27(土) 08:17:16.41o15pJrsAO (1/1)

>>782

わざわざ書き込む必要あるのか?


784以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/27(土) 08:33:42.79LBm0KjfAO (1/1)

>>783

わざわざageる必要があるのか?


785 ◆takaJZRsBc2015/06/28(日) 23:27:35.17yd0pPOmZ0 (1/4)


               ◇     ◇     ◇


人間がいくら血を流せば生命の存続が危うくなるか、以前KAZUYAの授業で習っていた。

血を流すこと、それは則ち命が流れていくということだ。少しでも血が体外に流れないように、
セレスは腹部に刺さったナイフを固定するように掴み、ゆっくり着実に前へと進む。


―あと、少し……あと少し……!


廊下には保健室から漏れる談笑が聞こえる。辿り着けば、生き残れば、とりあえずは自分の勝ちだ。
このいい加減なコロシアイ空間において、唯一絶対と言える勝利条件はひとえに生き残ることなのだから。


―届いた……!!


ガチャッ!


「何だ?」

「えっ」


乱暴に扉を開け放つと、セレスは滑り込むように中に入る。

……そして、そのまま崩れ落ちた。


苗木「えっ、セレスさん……?」


何で……と誰かが呟くよりも早く、KAZUYAが飛び出していた。


K「何があった?! 誰にやられた?!」


KAZUYAはセレスを横抱きに抱え上げながら、口元に耳を近付ける。


セレス「――――」

K「何だとッ……?!」




786 ◆takaJZRsBc2015/06/28(日) 23:36:53.72yd0pPOmZ0 (2/4)


青ざめるKAZUYAの周りに、囲むように生徒達が集まった。


石丸「せ、先生?!」

桑田「一体なんなんだよ……なんでこんな……?!」

大和田「また起こっちまったってワケか……!」

不二咲「しっかりして、セレスさん!」

K「石丸、苗木! 手術の準備を!」

石丸「はい!」


だが、セレスはまだ何か言おうとしていた。


セレス「山田君が……まだ、娯楽室に……」

不二咲「ええっ?! まさか山田君も怪我を……?!」

石丸「何だとッ?!」

K「……!!」


血の気が引く。KAZUYAは即座に決断しなければいけなかった。


K「大和田、石丸! 担架を持って娯楽室に行くぞ! 苗木と不二咲は手術の準備!」

桑田「俺は他のヤツらを呼んでくる!」

K「桑田……お前にはもう一つ頼みがある」


KAZUYAは素早く桑田に耳打ちする。


桑田「……わかった! こっちは任せろ!」

K「苗木、安広にリンゲルを打っておいてくれ!」

苗木「は、はいっ」




787 ◆takaJZRsBc2015/06/28(日) 23:45:38.95yd0pPOmZ0 (3/4)


K「行くぞ!」


日頃の訓練の賜物か、生徒達は実にキビキビと的確に動いて頼もしかった。
KAZUYAは医療カバンと共に、棚から取り出したある箱を手に取り廊下に駆け出す。


K(安広は問題ない……問題は山田だ……)


強烈な胸騒ぎを感じながら、一足飛びに階段を駆け上がる。
娯楽室は階段の目の前だったため、すぐに到着した。

バァーンッ!


K「山田ァーッ!」


扉を壊さんばかりに開くと、KAZUYAは中の状況を確認する。
床に飛び散るガラスの破片、そして血痕――

山田は部屋の奥に仰向けに倒れていた。

……額から血を流しながら。





『ピンポンパンポーン! 死体が発見されました。一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』


再び、学園にあの忌ま忌ましいアナウンスが流れた。




788以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/28(日) 23:51:05.98KUcC16ed0 (1/1)

死んだか…


789 ◆takaJZRsBc2015/06/28(日) 23:54:18.96yd0pPOmZ0 (4/4)


石丸「山田君! しっかりしたまえ!」

K「動かすな!!」


KAZUYAはガラス片を飛び越えて山田の側に屈み込む。


大和田「お、おい……ウソだよな……死んでないよな?!」

モノクマ「残念ながら死んでまーす! 今度はバッチリしっかり死んでるから! 残念っ!」


現れたモノクマを無視し、KAZUYAは慣れた手つきで動かない山田の脈と呼吸を確認する。


K「まずい……心肺が停止している……」

モノクマ「ちょっと! 無視しないでよ!」

大和田「なっ?!」

石丸「早く蘇生処置を! 気管挿管しましょう!」

モノクマ「だから無駄だってのー」


しかし、存在そのものを認めないように彼等は頑なにモノクマを無視し続けた。


K「…………」

K(……無理だ!)


折角訓練してきたのだ。フォーメーションとしては気道の確保を石丸に任せ、
KAZUYAが蘇生処置に回るのが最も効率的なはずである。

……が、再三KAZUYAが言っていた通り、気管挿管は非常に難度の高い手技だ。まだ数える程しか
経験のない石丸に全てを任せるのは不安が残る。何より問題なのは、山田の体型だった。
彼は太りすぎていたのだ。肥満体型の人間は首の周りに多量の脂肪が付いているので、倒れると
気管が圧迫される。そこに素早くカテーテルを通すのは、熟練の経験者でなければ至難だ。


K「挿管はしなくていい! まずは二人でCPR(心肺蘇生法)を二分! 確実に酸素を入れろ!」




790以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/28(日) 23:57:11.62USjHmDD2o (1/1)

今回はもう無理だ……大人しく学級裁判に備えよう……


791 ◆takaJZRsBc2015/06/29(月) 00:02:49.23CxK3RacY0 (1/4)


石丸「ハイ!!」

大和田「わかったぜ!」


石丸が人工呼吸、大和田に心臓マッサージを任せると、KAZUYAは注射器を準備する。


K「大和田、どいてくれ!」


KAZUYAは山田のシャツを力ずくで引き裂くと、開胸すらせずに胸の上から直接針を突き刺して、
心臓に強心剤を打ち込んだ。ほんの0.1ミリでも位置や深さを間違えれば心臓に穴が空く、
超国家級の医師KAZUYAだからこそ許される荒業である。

その後、KAZUYAは持ってきた箱からある機械を取り出した。


大和田「おい! 胸に手を突っ込む心臓マッサージは?! 不二咲の時にやっただろ?!」


てっきり以前のようにメスで胸を開くのかと思ったが、
KAZUYAが全くその素振りを見せなかったので大和田は混乱する。


K「もっと良い手がある!」

石丸「それは……!」

K「そうだ! AEDだ!」

モノクマ「フーン。なんか隠し持ってるなーと思ってたらそれか……」


倉庫の中に、壊れたAEDがあるのをKAZUYAは知っていた。前々から直したかったが、
専門家でないKAZUYA一人ではどうしても手が足りず、不二咲の力を借りて二人で一緒に直したのだ。


K「このAEDは特別製だ。不二咲に頼んで俺用にカスタマイズしてもらったからな」


通常のAEDより更に高い電圧を誇り、手動でショックの電圧やタイミングを変えることも出来る。
KAZUYAはパッドを山田の体に取り付けると、液晶画面の心電図を注視した。




792 ◆takaJZRsBc2015/06/29(月) 00:13:46.43CxK3RacY0 (2/4)


K(……心電図を見るにVF(心室細動)。適応だ!)


ここで説明を入れるが、心停止と一言で言っても実際には四つの種類がある。


①無脈性心室頻拍(pulseless ventricular tachycardia,無脈性VT)
 心拍数が多くなり過ぎると血液が十分に送れなくなり、結果的に脈がなくなってしまう状態。

②心室細動(Ventricular Fibrillation, VF):
 心室が小刻みに震えて全身に血液を送ることができない状態。

③無脈性電気活動 (pulseless electrical activity,PEA)
 心電図のモニターに波形を示しているにもかかわらず、脈拍や心拍を確認できない状態。

④心静止(asystole):
 心電図が平坦となる。つまり心臓が完全に静止している状態。


このように、心停止という言葉を聞くと完全に心臓が停止しているイメージがあるが、
実際には脈が無くなるだけで心臓自体はまだ動いていることもあるのである。

そしてカウンターショックとは、心臓の拍動異常の原因となる心室細動・心房細動等を強力な
電気ショックで一時的に遮断し、正常な心拍を再開させる治療法である。つまり、心臓に電気が通い
尚且つ動いている①と②のみが適応対象であり、電気は通っているが心臓が動いていない③、
電気が通っておらず心臓も完全に止まっている④は電気ショックをかけても何の意味もないのだ。

今回は適応対象であったため、KAZUYAは手早く手動で電気ショックをかけた。


K「カウンターショックだ!」


ドンッ!

山田の巨体がのけ反るように跳ねる。


大和田「お、おおっ! これなら……!」

K「まだだ! ショックをかけている時以外はCPRを止めるな!」


AEDの適応内でも必ず蘇生出来るとは限らない。KAZUYAは二人にCPRを続行させ、心電図を睨み続けた。


K(頼む……効いてくれ……!!)




793 ◆takaJZRsBc2015/06/29(月) 00:22:18.39CxK3RacY0 (3/4)


ドンッドンッとKAZUYAは何度もショックを与える。


モノクマ「だから無駄だって……」

K「戻ってこい……山田、戻れ!」

石丸「山田君ッ!!」

大和田「山田あああああ!!」

山田「…………」ピクッ

K「!」

K(今、微かに動いた!)


KAZUYAはバッと山田の胸に耳を当てる。


K「よしッ! まだ弱いが脈が戻ったぞッ!」

石丸「山田君……! スゥッ!」


石丸は変わらず息を吹き込む。普段なら強すぎると注意している所だが、
気道の狭い山田にはこれくらいでちょうどいい。


山田「…………ゴホッ!」

K「呼吸も戻ったな! 直ちに保健室に搬送する!!」

大和田「任せろ!」


KAZUYAと大和田で山田の上半身と下半身を支え担架に乗せる。そのまま彼等は部屋から駆け出した。
ほのかに血の臭いが残る娯楽室に、残されたのはモノクマただ一人。


モノクマ「ハァ~。まさか二回も蘇生を成功させるとはねぇ。ドクターKの名は伊達じゃない訳だ?」

モノクマ「でも、ここまではボクの計算通りなんだよねぇ!」

モノクマ「うぷぷ。うぷぷぷぷ!」


笑いを堪えきれないと言うように、モノクマは大きく肩を揺らす。


モノクマ「え? この陳腐でつまらなすぎる展開にどうしてボクが笑っているかって? 視聴者の
      みんなにヒントをあげようかなぁ。ほら、ボクってサファリパーク一優しいから」

モノクマ「ヒントは山田君の傷の位置です。ではまた来週~」




794以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/29(月) 00:28:32.93W9px0OuBO (1/1)

頭はまぁ……やばいよね


795 ◆takaJZRsBc2015/06/29(月) 00:29:58.48CxK3RacY0 (4/4)


ここまで。




796以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/29(月) 00:31:11.61KAASFW3XO (1/1)

乙です


797以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/29(月) 06:51:37.44DB3jI/pu0 (1/1)




798エレンJジョースター2015/06/29(月) 07:49:42.67e9QaZfOAO (1/1)

セレスが自分で腹を刺したのかな


799以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/29(月) 09:46:21.95zYlqvbMeO (1/1)

自分で刺すのはKの話であったな


800以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/29(月) 10:39:24.06plpXznnCo (1/1)

でもあれは麻酔使ってるからなぁ
化学室の薬品で悪用出来そうなヤツはKが鍵かけて管理してなかったっけ?
Kやさくらちゃんなら麻酔なしでぶっ刺しそうだけど


801以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/06/29(月) 20:04:59.98iNQNqWqfO (1/1)

セレス舐めすぎやろww
確かに原作ではあんまりいいとこなかったけど、設定的には精神力No.1なはず


802以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/01(水) 12:19:34.13Vi7FlE60O (1/2)

まあ俺の女だからな
セレスって別称は俺がつけてやったのさ


803以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/01(水) 14:40:41.53jJtLC9MAO (1/1)

どっちにしろ犯人はほぼセレスか葉隠の2択だよな
セレスが犯人だとしたら葉隠に罪を着せるつもりだと思うけど……その場合桑田のとこで話が出てた、コンマで信じるかどうかってことになるかもな


804以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/01(水) 15:03:13.91Vi7FlE60O (2/2)

だからこの章の前から安価で葉隠に会っとけと俺は言ったのに…
葉隠大ピンチです
Kが何とかしてもこれ以上はKが壊れちゃうお


805以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/01(水) 17:53:55.03UaKHOF9Go (1/1)

やっちまったって台詞から考えたら葉隠じゃないか
セレスは自傷はしない気がする。危ないからとか痛いからじゃなくて体に傷がつくから
Kなら跡形もなく治せるだろうけど脱出するなら[ピーーー]ってことだし


806以下、名無しにかわりましてモノクマがお送りします2015/07/02(木) 20:13:45.23r9Pmirmf0 (1/1)

変な話しだけど、山田の体系でAEDって効果あるのか・・・


807以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/02(木) 22:03:39.35fCVxl5oNo (1/1)

変な話ではなァァァァァい!!