483シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/20(月) 00:32:44.77ODJI3QqA0 (2/10)



ガチャッ


見張り傭兵 「よっ、と」

見張り傭兵 「変わりないか?」


フォレ傭兵 「問題ない」


見張り傭兵 「よしよし」


ギギギ……


王子 (門が開く)


見張り傭兵 「……あの門番、ふっかけてきやがった。とんだ子悪党だ」

見張り傭兵 「さて、俺たちはこの町で補給をして南西に向かうが」

見張り傭兵 「あんたたちはどうするんだい。乗ってくかい?」


葉書エルフ 「いえ……私たちは南東に向かわなければならないので、ここで降りさせていただくつもりです」


見張り傭兵 「そうか。だが、それはちょっと難しいかもなあ」





484シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/20(月) 00:41:06.64ODJI3QqA0 (3/10)



葉書エルフ 「は、はあ。なぜでしょうか」


見張り傭兵 「あんた魔法商人にだいぶ気に入られたみたいだからな」

見張り傭兵 「このまますんなり手放すとは思えん。なあ?」


フォレ傭兵 「かもしれんな」


葉書エルフ 「まあ、そんな……」


王子 『ほれ見ろ、変な色目を使うからだ』


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 『こんなみっともない胸の年寄りが好きだなんて、人間は物好きだな』


王子 『恩人に言うのもあれだが』

王子 『かっ飛ばすぞお前』





485シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/20(月) 00:53:06.35ODJI3QqA0 (4/10)



葉書エルフ 『ああ、胸に当ててやれ。引っ込むかもしれん』

葉書エルフ 『大丈夫だよ、あの商人については心配するな』


王子 「…………」


見張り傭兵 「さてと、雇い主さまを起こしに……」


カチャッ ギイイ


魔法商人 「ふわーあ、良く寝たわい」

魔法商人 「さて、もう町には着いたかな」


見張り傭兵 「おはようございます。ちょうど着いたところだ」


魔法商人 「うむ。……おお、お前も元気そうだな」


葉書エルフ 「おはようございます魔法商人さま」

葉書エルフ 「魔法商人さまからいただいた良いお酒のおかげで、ぐっすり眠れました」


王子 (……くそ、本当に先生が言ってるみたいで苛立たしいな)





486シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/20(月) 01:05:57.24ODJI3QqA0 (5/10)



魔法商人 「うむ」

魔法商人 「……薬売りの奴め、わしにニセモノを掴ませおったな」


王子 (呟きを隠しきれてないぞ、魔法商人さん)


ハーピィ 「…………」


ギュッ


王子 (薬と聞いて、嫌な思い出でもよみがえったかな)

王子 (大丈夫だ、ハーピィ。君に悪い薬なんて使わない)


ハーピィ 「…………」


王子 (表情がちょっとやわらいだ……か?)

王子 (言葉がなくてもおれの心を読めるんじゃないかと思うときがあるが)

王子 (だとしたら変なことは考えられないぞ……)





487シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/20(月) 01:12:56.23ODJI3QqA0 (6/10)



葉書エルフ 「それどころか、こんな素敵な馬車までいただけるなんて」

葉書エルフ 「素敵な魔法商人さま」


魔法商人 「む?」


見張り傭兵 「!」


フォレ傭兵 「……!」


魔法商人 「…………おお!」

魔法商人 「その通りだ」

魔法商人 「わしはお前が気に入ったから、この魔法の馬車をお前にあげるぞ」


王子 「…………!」


ハーピィ 「…………」


王子 (おいおい……)





488シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/20(月) 01:26:27.88ODJI3QqA0 (7/10)



見張り傭兵 「おい、正気かあんた……!」


魔法商人 「うるさい! 黙っておれ!」

魔法商人 「わしは葉書エルフに馬車をあげるのだ!」


見張り傭兵 「……ああ、そうかい。あんたがそれで良いなら良いさ」


魔法商人 「ふんっ。傭兵ふぜいが意見をするな」


葉書エルフ 「まあ! ますます素敵な魔法商人さま」

葉書エルフ 「おまけに旅の資金と、私のために杖をくださるなんて」


魔法商人 「…………」

魔法商人 「そそぞぞぞ」

魔法商人 「そ、うだ! そうだ!」

魔法商人 「わしはお前が気に入ったから、お金も武器もあげるぞ!」

魔法商人 「お金はいっぱいあるし、武器など傭兵があればいらぬし、魔法の馬車などまた買えば良いのだ!」


葉書エルフ 「ああ、なんて素敵な魔法商人さま」


魔法商人 「わはははは! そうじゃ。わしはお前が気に入ったから、何でもしてあげるぞ!」

魔法商人 「わはははは!」


見張り傭兵 「…………」


フォレ傭兵 「…………」


王子 (……もしかしなくても、何かしたな)





489シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/20(月) 01:49:34.26ODJI3QqA0 (8/10)



葉書エルフ 『オレにしこたま変な薬飲ませやがって。このまま自分で頭をもぎ取って馬の口にでも詰めさせてやろうか』


王子 『エルフの冗談は怖いな。なんだ、けっこう薬きいてたのか?』


葉書エルフ 『……違う。今のは忘れろ』


王子 (暴発か。伝えるつもりがなくても、気を抜くとこうなるのかな。魔法での会話も大変だ)


ヒヒーン モオー


フォレ傭兵 「……着いたぞ」





490シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/20(月) 02:03:18.07ODJI3QqA0 (9/10)



葉書エルフ 「ああ、ここでお別れだなんて。お名残惜しいですわ、素敵な魔法商人さま」


魔法商人 「うむ。わしはお前が気に入ったから、ここでお別れだ」


葉書エルフ 「……できることならまたお会いしとうございます」


魔法商人 「う、うむ。また何かあれば頼りなさい。むほほほほ」


葉書エルフ 「おほほほほ……」


王子 (敵にまわすと厄介だな、このエルフ)





491シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/20(月) 02:18:48.07ODJI3QqA0 (10/10)



フォレ傭兵 「お前の武器だ」


王子 「ん。ああ、ありがとう」


フォレ傭兵 「それと」

フォレ傭兵 「……おせっかいかもしれないが、柄頭の家紋は消しておいた方が良い」


王子 「…………」

王子 「……いや、ありがとう」


ハーピィ 「…………」





492以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/20(月) 07:09:25.740BEd4oIA0 (1/1)



傭兵二人は渡りをつけて
おきたい人材だな


493シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 02:26:36.24cdW/naxw0 (1/37)



南の町 図書酒場



ワイワイ ガヤガヤ


ケットシー 「うにゃうにゃ、これもページが破けてるにゃ……」


クーシー 「情報が集まるからって本も置いてるそうだけど、失敗だよねえ」

クーシー 「それよりケットシー、見たかい? さっき入ってきたフードの三人組」


ケットシー 「にゃ。一人不思議なのがいたにゃ」

ケットシー 「知らない生き物のにおいだったにゃ。あやしいにおいがプンプンするにゃ」


クーシー 「わんわん。面倒なことになる前に、早く出ようか」


店員 「お待たせしました。魚汁と魚の骨です」


ケットシー 「にゃーにゃー」


クーシー 「わんわん」





494シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 03:05:47.15cdW/naxw0 (2/37)



ワイワイ ガヤガヤ


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………!」


王子 「どうしたハーピィ……ああ、ページが破れているのか」


葉書エルフ 「…………」

葉書エルフ 「よし、いいぞ。フードをとってみろ」


王子 「ん」


バサ


王子 「……どうだ」


ハーピィ 「…………」


王子 「驚かないな」


葉書エルフ 「髪と目の色を変えただけだからな」





495シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 03:35:07.73cdW/naxw0 (3/37)



葉書エルフ 「長続きしない術だが、目くらましにはなるだろうさ」


王子 「助かるよ」

王子 「親父の領地じゃ、もうおれはお尋ね者だろうから」


葉書エルフ 「だが油断するなよ。オレを泳がせとくような奴だ」

葉書エルフ 「いやらしい手を使ってくるかもしれない」


王子 「……ああ」





496シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 03:53:00.82cdW/naxw0 (4/37)



ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「それで、はっきりさせときたいんだが。こいつは何なんだ」


王子 「おれの命と同じくらい大事な人だ」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「……人間じゃない。オレたち側の魔物だろう」

葉書エルフ 「逃亡仲間なんだ、少しは教えてくれよ」


王子 「……この子を連れていた商人いわく」

王子 「とりついた人間の罪を囁く種族なんだそうだ。ハルピュイアという」

王子 「ふだんは話さないが、おれの嘘を言葉にする」

王子 「空も飛ぶ。かと思えば、落ちて死ぬようなときでも飛ばないことがあるが」


葉書エルフ 「聞いたことないな、そんな生き物」





497シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 04:12:37.50cdW/naxw0 (5/37)



ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「ずいぶんとなついていて寒気がするほど微笑ましいが」

葉書エルフ 「いったい何だって人間にとりつくんだ」


王子 「そういうものなんだろ」


葉書エルフ 「どうだか。お気に入りの食い物を傍に置いて楽しんでいるだけなのかもしれんぜ」

葉書エルフ 「口を開けばお前の嘘についてだけで、何を考えているか分からないんだろ」


王子 「それならそれで良いさ。時間をおれに割いてくれていることに変わりはない」

王子 「それに、相手がおしゃべりだろうが無口だろうが、本当のところ何を考えているかなんて分からない」

王子 「お前みたいに魔法でも使わない限り」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「へえ。これはこれは」


王子 「先生の顔でその笑顔はやめてくれ……」





498以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/26(日) 04:25:06.84/7EWZPgT0 (1/1)

葉書さんあんたも
大概な生き物?ですよ


499シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 04:29:29.69cdW/naxw0 (6/37)



南の町 南の宿



葉書エルフ 「失礼。空き部屋はないでしょうか」


宿の娘 「ありますよ、ちょうど掃除が終わったところです」


葉書エルフ 「ああ、よかった。では夜まで1部屋、素泊まりでお願いします」


宿の娘 「はい」


王子 「待て」





500シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 04:46:27.25cdW/naxw0 (7/37)



葉書エルフ 「いきなりどうしたのです」


王子 「男女1部屋じゃ、さすがにまずいだろう」

王子 (おれの心労が)


葉書エルフ 「あら、家族じゃありませんか」

葉書エルフ 『ハーピィはお前から離れないんだろ』


王子 「いやいや、それでも分けた方が良いんじゃないかな」

王子 『そういう問題じゃなくてだな』


葉書エルフ 「もう……しかたのない人」

葉書エルフ 『いや、そうか。今のオレと一緒じゃまずいのか』


王子 「…………」





501シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 05:02:15.30cdW/naxw0 (8/37)



宿の娘 「あのう……」


葉書エルフ 「ああ、すみません」

葉書エルフ 「1部屋でお願いします」


王子 「……おい」


葉書エルフ 「お金の無駄遣いは避けるべきです」


王子 (たしかに……)

王子 「それじゃあ……しかたないな」


葉書エルフ 「気遣いはとても嬉しく思いますよ」

葉書エルフ 「では、お願いします」


宿の娘 「はい。では少しお待ちください」


カチャカチャ ゴソゴソ


葉書エルフ 「……ふふ。一緒の部屋ですね、王子」


王子 「…………」

王子 (問題ないさ。中身は葉巻エルフだ)

王子 (……問題ないさ)


ハーピィ 「…………」





502シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 05:28:32.40cdW/naxw0 (9/37)



南の宿 部屋



王子 「…………」

王子 (なんてこった)


ハーピィ 「…………」


王子 (ベッドが1つしかない)


葉書エルフ 「夜には南東の町に向けて出発するから」

葉書エルフ 「昼まで休んで、それから買出しをするってことで良いか」


王子 「ああ」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「よし。じゃあ寝ようぜ」





503シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 05:43:05.99cdW/naxw0 (10/37)



王子 「…………」


ギシッ 


葉書エルフ 「んっ。ははは、なかなか柔らかいじゃないか」

葉書エルフ 「この町で買えないかな。馬車に積み込みたい」


王子 (先生が、裸足でベッドに……)


葉書エルフ 「うん? どうした、そんなとこに突っ立って」

葉書エルフ 「馬車の椅子で寝ただけじゃ疲れはとれないだろ。ただでさえあんなことがあった後だ」


王子 「いや、男でも女でも、同じベッドで寝るのはちょっとややこしい問題がな……」


葉書エルフ 「…………」

葉書エルフ 「はやく来てください……王子」


王子 「やめろ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ。素晴らしいことこの上ないが、やめてくれ」





504シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 06:02:39.68cdW/naxw0 (11/37)



葉書エルフ 「ふふふ……。おもしろいのにとりつかれたもんだな、人外好きの王子さま」

葉書エルフ 「そいつを引き取って以来、困難に見舞われっぱなしなんじゃないか?」

葉書エルフ 「オレが言うのもなんだが、災いを運んでくる生き物だったりしてな」


王子 「それがどうしたって話だ」

王子 「おれは床で寝るよ。お前と初めて会った日みたいに」

王子 「ハーピィ、君はベッドで寝るんだ」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「一緒が良いって感じだな」


王子 「…………」





505シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 06:42:42.51cdW/naxw0 (12/37)



王子 「分かった。ハーピィを挟んで寝るとしよう」


葉書エルフ 「気にするなよ、女々しい奴だな」


王子 「お前はその体になった以上、頼むから少しは警戒してくれ……」


ハーピィ 「…………」


ギシッ


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「お前も気に入ったのか、このベッド」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「こらこら、それじゃ髪がぐちゃぐちゃじゃないか。ほら、頭を上げて……」


王子 (葉巻エルフ。薄情というか人に興味が薄いように見せて、世話焼きなところもあるんだよな)

王子 (過剰に頼られるのは嫌だが、気ままに自分から世話を焼くのは好きだったりするんだろうか)


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「綺麗だが奴隷用の首輪だろ、それ。外してみようか」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「このままで良いのか? 変な奴だな」

葉書エルフ 「ま、何か変な呪いでもかかっていたら面倒だ。無理にはしないさ」


王子 (……良い眺めだ)

王子 (葉巻エルフとハーピィがくっついていると思うと複雑だが、そこは女同士だと思うことにしよう)

王子 (そうなると、また他の問題が出てくるが……)





506シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 07:10:45.87cdW/naxw0 (13/37)



ギシッ


王子 「…………」

王子 「うん、本当に柔らかい」


葉書エルフ 「もっと真ん中につめてはいかがですか、王子」


王子 「……ああ、ああ、分かったよ。お前もしっかり休めよ。おれよりだいぶ消耗しただろう」


葉書エルフ 「何ともないね」


王子 「……しっかり休めよ」


ハーピィ 「…………」



………………





507シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 07:20:02.13cdW/naxw0 (14/37)



………………



カラン コロン


王子 「…………」

王子 「鐘の音?」


カララン コロロン


王子 「どこから聞こえてるんだ」


カラン コロン


王子 「あれは……魔法商人から頂戴した杖か」


葉書エルフ 「…………スゥ」


王子 「昼前か……何か魔法をかけていたんだな」







508シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 07:30:18.69cdW/naxw0 (15/37)



ハーピィ 「…………ッ」


王子 「おはよう、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


王子 「これから買出しで町を見てまわるけど、君は休んでいるかい?」


ハーピィ 「…………」


王子 「まあ、ついてくるか……」

王子 「すまないね、あまり休ませられなくて」


ハーピィ 「…………」


カランコロン カランコロン 


葉書エルフ 「…………スゥ」


王子 「……よく寝ている」





509シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 07:44:42.24cdW/naxw0 (16/37)




葉書エルフ 「…………スゥ」


王子 「黙っているとどこからどう見ても先生だ」

王子 「困ったことに、喋っていてもときどき先生だが」


カララン コロロン カランコロン


葉書エルフ 「…………スゥ」


王子 「エルフの魔力がどうとかはよく知らないが、死ぬほどの痛みに死ぬ痛み。そこから遅くまで酒盛り」

王子 「疲れていないわけがないだろう」





510シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 07:50:18.80cdW/naxw0 (17/37)



ハーピィ 「…………」


王子 「寝かせておこう」


カランコロン カランコロン


王子 「……どうやったら止まるんだ、これ」


カラ……


王子 「へえ、杖の頭を押したら良いのか。便利だな」

王子 「さて、書置きをして行くとするか」


ハーピィ 「…………」





511シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 08:14:07.87cdW/naxw0 (18/37)



南の町 道具屋



ザワザワ


店主 「はい、粉薬草に毒消しにその他もろもろ」


王子 「ありがとう」


店主 「ところで都から珍しい商品が入ったんだが、どうだいお客さん」


王子 「へえ?」


店主 「これなんだが。またたびゼリーっていうんだ」

店主 「体力はもちろん気力もたちまち満タンになるぜ」


王子 「ほう」


店主 「先日も、国家憲兵さまが買っていかれたよ」


王子 (憲兵……)

王子 「ああ、欲しいけど遠慮するよ。教えてくれてありがとう」


ハーピィ 「…………」


店主 「そうかい。残念だ」





512シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 08:32:14.48cdW/naxw0 (19/37)



南の町 雑貨屋



ワイワイ


王子 「馬車馬用の餌。こんなものもあるのか、ここ。ちょうど良い」

王子 「蜂蜜味か……」


ハーピィ 「…………」


王子 「魔法の馬車に積み込む物」

王子 「魔法の馬車ってどのくらい入るんだ? というか、重さはどうなるんだ」

王子 「……魔法だからってことで、そのへんは考えない方が良いのか?」


ハーピィ 「…………」





513シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 09:14:43.27cdW/naxw0 (20/37)





王子 「携帯マットレス……折りたたみ式か。こんなとこに置いて売れるのかな」


ハーピィ 「…………」


王子 「ん?」


ハーピィ 「…………」


王子 「荷物がどうかしたかい?」


ハーピィ 「…………」


王子 「持ってくれるのか。悪いなあ、助かるけど」


ハーピィ 「…………」


王子 「……マットレス。安いのを買っておくか」


葉書エルフ 「いいや、これだ」


王子 「これか。ちょっと高くないか」


葉書エルフ 「睡眠には金をかけなきゃな。枕も良いやつを買おう。あっちだな」


王子 「やれやれ……」

王子 「いつの間に来たんだお前」





514シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 09:40:27.23cdW/naxw0 (21/37)



葉書エルフ 「ヒヤリとしたぜ。起きたらお前が剣と一緒にいなくなってたんだから」


王子 「気持ちよさそうに寝てたもんだからな」


葉書エルフ 「どれどれ……へえ、ちゃんと買ってるじゃないか」


王子 「普段無駄に町で遊んでいたわけじゃないのさ」


葉書エルフ 「感心感心。さて、どんな枕にしようか……」

葉書エルフ 「おや、面白そうなのがある。こっちの面にはマルで、こっちの面にはバツが書いてある」

葉書エルフ 「何の意味があるんだ、これは」


王子 「さあ。魔法的な意味があるんじゃないのか」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「そうか」

葉書エルフ 「……いや、そういうのは感じないな」

葉書エルフ 「ちょうど良い柔らかさだし、買ってみるとしよう」





515以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/26(日) 13:04:41.59rCT4uthAO (1/1)

YES/NO枕wwwwww


516以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/26(日) 13:39:40.57Px5NyqJNo (1/1)

何であるんだwwww


517シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 18:19:34.11cdW/naxw0 (22/37)



南の町 路上



ワイワイ


帽子少年 「おい、急げ」

帽子少年 「早くしないと終わっちまうぞ」


太っちょ少年 「待ってくれよぉ」


眼鏡少年 「ひぃ、ふぅ……急ぎましょう太っちょ君。勇者の喧嘩なんてなかなか見れませんよ」


薄着少女 「こらぁ、もっとゆっくり走れ帽子ー! あたしスカートなんだからね!」

薄着少女 「もう! 太っちょ、眼鏡、あたしを負んぶしなさい」


太っちょ・眼鏡 「ひええ」


ドタドタ バタバタ


王子 「……勇者?」

王子 (地下牢にいたあの子もここに来たのか。路上で喧嘩する風には見えなかったけど)


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「少し見てみるか」





518シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 19:01:49.73cdW/naxw0 (23/37)



ガヤガヤ ザワザワ




ならず者A 「ぐわあああああ!」


ドシャン ガラガラ


野次馬 「おお、すごい!」


野次馬 「子供が大人を吹っ飛ばしたわ!」


ならず者B 「くそっ。いい加減観念しやがれ、このガキ」


ならず者C 「仲間に手を出しやがった落とし前、しっかりつけさせてもらうからな!」


??? 「何が仲間だチンピラども!」

??? 「よってたかって一人の女の子を脅していたくせに!」

火打金の勇者 「この火打金の勇者が成敗してやるからな!」


ワーワー ピーピー


王子 「……あの勇者じゃないのか」





519シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 19:07:51.00cdW/naxw0 (24/37)



葉書エルフ 「昨今、勇者は一人だけじゃないらしい」


王子 「そうなのか」

王子 「勇者ってそんなにほいほい出てくるものなのか」


葉書エルフ 「極端な話、本人が勇者を名乗りゃ勇者さ」


王子 「何だそりゃ」


葉書エルフ 「大衆に認めさせる何かがあれば、そりゃもう立派な勇者だよ」

葉書エルフ 「あれは立派な勇者らしいが」


王子 「へえ。あんな小っこいのに、大したもんだ」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「見てろ。何かするぞ」





520シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 19:17:00.22cdW/naxw0 (25/37)




ならず者G 「はんっ、この人数相手にずいぶん威勢が良いじゃねえか」


ならず者L 「どう成敗するか見せてもらおうか、クソガキ!」


ならず者たち 「おらああああ!」


火打金の勇者 「ひっさぁつ!」


バチバチバチ


ならず者たち 「!?」


王子 (何だ、剣から弾けるように火花が飛び散った)





521シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 19:31:30.52cdW/naxw0 (26/37)



火打金の勇者 「どおおりゃああああ!!」


ボンッ ボカンッ バアンッ 


ならず者たち 「うぎゃっ」


ならず者たち 「ぐぎゃっ」


ならず者たち 「ひぎぃっ」


ドタンッ


ならず者たち 「ぐふうっ……ばかな……」


火打金の勇者 「どうだ! これがッ、必殺のッ、千ッ片ッ万ッ火だッッ!」


野次馬 「おお、何て強さだ!」


野次馬 「みんなを困らせるならず者を、あっという間に倒してしまった!」


野次馬 「勇者だ。勇者さまだ!」


ワアアアアア





522シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 19:42:01.76cdW/naxw0 (27/37)


王子 (剣を一振りしただけで、ならず者たちを倒した)

王子 (小さな爆発がいくつも起きて、その割りに建物や敷石に被害はないみたいだが……)

王子 「魔法か何かか」


葉書エルフ 「あんな恥ずかしい名前の魔法があってたまるか」

葉書エルフ 「必殺技とか奥義とか、そんなものさ。ちょっとばかり反則じみているが」

葉書エルフ 「最近の勇者は1つは持ってるものらしいぜ」


王子 「へえ。しかし、すごいものだな。勇者の看板に偽り無しってことか」


葉書エルフ 「はんッ、頑張って魔王でも倒してもらおう。さて、戻るか」


ハーピィ 「…………」





523以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/26(日) 19:50:03.23rh6XEArP0 (1/1)

葉書さんも今なら
魅惑の勇者を名乗れます


524シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 19:55:29.64cdW/naxw0 (28/37)



王子 (しかし、勇者に必殺技か)

王子 (派手すぎるような気もするが、見ばえがする方が)

王子 (人の目と心をひきつけられて良いのだろうか)









525シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 20:19:21.08cdW/naxw0 (29/37)



馬車置き場



ドスン バタンッ ドヤドヤ


葉書エルフ 「馬車の運転はできたよな」


王子 「2頭立ての馬車なら、なんとか。魔法の馬車は知らないが」


葉書エルフ 「よしよし。魔法の馬車の方が楽さ」

葉書エルフ 「さっさと荷を積み込もう」


王子 「家具に食料に服に……ずいぶん買い込んだなあ」

王子 「馬車で生活できちまうんじゃないか」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「魔法の馬車はつくったことないからな。ゆっくり改造していって、ゆくゆくはそうするつもりだ」


王子 「夢のある話だ」


葉書エルフ 「火の悪魔でも飼うか」


王子 「なぜだ」


葉書エルフ 「さあ。動く家では、暖炉で火の悪魔を飼うのが常識らしい」


王子 「変わった常識だな」


葉書エルフ 「そうだな」





526以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/26(日) 20:44:27.84wnsXibSoo (1/1)

ハウルか


527シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 21:15:59.26cdW/naxw0 (30/37)



…………


葉書エルフ 「……御者台の護符よし」


王子 「ランタンよし」


ハーピィ 「…………ッ」


王子 「手綱は準備できていない」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」

ハーピィ 「手綱は準備できていないと思っていないのに、手綱は準備できていないと言いました」


王子 「そうだ、手綱よしだ」


葉書エルフ 「では王子軍、いざ出発だ」


王子 「楽しそうだな」


葉書エルフ 「剣と魔法と火薬と生臭い鉄の道だ。逃避行、気楽にいこう」


王子 「元気が出るお言葉だこと」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ、吐き気がしてきたぜ」





528シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 21:30:19.54cdW/naxw0 (31/37)



ガラガラガラガラ

ガタンゴトン


王子 「へえ、夜も近いのに結構ほかの馬車もいるな」


葉書エルフ 「都の方じゃ辻馬車や乗合馬車も多く出ているらしいから」

葉書エルフ 「こんなもんじゃ無いだろう」


王子 「都への街道は夜の空を照らすくらい明るいと聞くけど、嘘でもないのかな」


葉書エルフ 「敵よけの強力な護符と魔法の火が広まれば、地方もそうなっていくだろうよ」

葉書エルフ 「南東の町への分かれ道を過ぎたら人通りも減る。少し足を早めるぞ」





529シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 21:48:30.67cdW/naxw0 (32/37)



カラカラカラカラ



王子 「…………」

王子 (分かれ道を過ぎると道が悪くなったが、揺れを感じない)


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ「そう、そうやって握ると疲れませんよ」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「上手ですよ、ハーピィ。馬の気持ちが分かっているようです」


王子 (ふむ。ハーピィと葉巻、どうしてなかなかうまくやっているな)

王子 (何で葉巻が先生の真似をしているのか分からんが)


葉書エルフ 「ふふふ……」


ハーピィ 「…………」


王子 (役にのめり込むタイプなのか?)





530シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 22:00:59.36cdW/naxw0 (33/37)



??? 「おーい、そこの馬車の人ー!」


王子 「ん?」

王子 「何人か前から走ってくるな」


??? 「魔物に追われているんだ、助けてくれー!」


王子 「魔物か。助けるか」


葉書エルフ 「野盗かもしれない」

葉書エルフ 「ああやって馬車を開けさせる手口が増えているらしい」


王子 「本当に魔物に襲われている者にとっちゃ迷惑な話だな」

王子 「さて、どうするか」


葉書エルフ 「どっちでも構わないさ」

葉書エルフ 「もしも助けて野盗だったら、身包みはいで魔物の巣にでも放り出してやろう」


王子 「よし」


ハーピィ 「…………」





531シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 22:13:12.29cdW/naxw0 (34/37)



葉書エルフ 「それは大変! 馬車の結界は解きましたので早く小さな方の扉からお乗りください!」


王子 (他の人間にはその話し方でいくんだな、葉巻よ……)


???A 「あ、ありがとう!」


???B 「それ、乗り込め!」


ガチャッ バタバタ


王子 「これだけかな?」


???C 「は、はい、全員乗り込みました」


葉書エルフ 「では、結界を強めましょう」


王子 (触れるだけで良いとは、便利な護符だ)





532シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 22:37:21.16cdW/naxw0 (35/37)



四足魔物たち 「グルルル……」


王子 「あれは……本当に魔物に追われていたみたいだな」


ハーピィ 「…………」


グルルル クウン


???A 「ああ、魔物があきらめてすごすごと去って行く」


???B 「助かったあ……」


王子 (小さな扉からは、御者台が見える小窓の部屋に入れるのか)


葉書エルフ 「危ないところでしたね」

葉書エルフ 「それにしても、まだどちらかというと幼い若者が魔物の出る道を歩くなんて」

葉書エルフ 「あなたたち、無謀すぎますよ」


???D 「……び」


???C 「美人のエルフだ……」


葉書エルフ 「……変なこと言ってないで、人の話を聞きなさい」

葉書エルフ 「ビスケット食べますか」


王子 「…………」





533シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 22:54:49.18cdW/naxw0 (36/37)



???B 「でも、最近は魔物が増えたなあ」


???D 「うん、おかげで盗賊の仕事もできやしない」


???A・B・C 「わあ、馬鹿野郎!」


王子 「……盗賊?」


???C 「い、いえ、これは言葉のあやといいますか何といいますか」


???A 「……くっ。こうなったら仕方ない」

盗賊少年A 「そうとも! おれたちこそが、かの有名な正義の少年盗賊団なのだ!」


王子 「……聞いたことないな」


葉書エルフ 「さっきの魔物の巣と丸呑みワームの巣、どちらで降ろしてほしいですか?」


盗賊少年たち 「ぎゃあ、お助けえ!」





534以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/26(日) 23:11:34.722+y7WyTs0 (1/1)

タイミングが分からない
乙しても大丈夫かな?


535シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/26(日) 23:17:39.91cdW/naxw0 (37/37)



盗賊少年A 「ええい、待て待て! おれたちは正義の少年盗賊団!」

盗賊少年A 「かの有名な義理と人情と正義と酒と遊びと覗きとやるせなさの大盗賊、灰髪盗賊さまに誓って」

盗賊少年A 「悪人以外に盗みを働くことはしないのだ!」

盗賊少年A 「よって、恩人であるお前たちに危害をくわえることはしない!」

盗賊少年A 「だから見逃してください!」


王子 「へえ」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「……人間のいったいは何かしらの悪である、と言います」

葉書エルフ 「灰髪盗賊というのも聞きませんし」


盗賊少年A 「なにい!? あの灰髪盗賊さまを知らないのかお前たち!」


王子 「すまないね、知らん」


葉書エルフ 「存じません」


ハーピィ 「…………」


盗賊少年A 「やったぜ、何てこった!」





536シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 00:02:04.27nM0NPdJv0 (1/33)

ありがとうございます。
空いた時間でのんびり書いているので区切りは無いようなものです、ごめんなさい。
掲示板で遊ばせてもらっといて偉そうに言うのもなんですが、
助言やら何やらもらえるなら、いつでも書き込んでもらえるとうれしいです。





537シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 00:11:59.41nM0NPdJv0 (2/33)



盗賊少年A 「ええい、へその穴かっぽじってようく聞きやがれ!」


王子 (へその穴?)


盗賊少年A 「いいか、灰髪盗賊さまはすごいんだぞ!」

盗賊少年A 「貧しい人々のために悪い貴族の屋敷から下着を盗んだりするんだぞ!」

盗賊少年A 「ひもじい子供たちに、悪い騎士の砦から食べ物を盗む技術とか教えてくれたりするんだぞ!」


王子 「だめな奴だな」


葉書エルフ 「だめな奴ですね」


ハーピィ 「…………」


盗賊少年A 「あれえッ!?」





538シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 00:34:43.84nM0NPdJv0 (3/33)



盗賊少年A 「お、お前たち……灰髪盗賊さまの正義っぷりが分からないのか……?」

盗賊少年A 「あたま大丈夫か!?」


王子 「いやいや」


葉書エルフ 「あなたこそ、魔物に追われて気でも狂ったのですか」


ハーピィ 「…………」


盗賊少年A 「どうしよう、こいつら駄目だ」

盗賊少年A 「救いようがない!」


盗賊少年C 「君の話じゃ、ああ思われてもしかたないよ……」


盗賊少年B 「と言っても、僕たち灰髪盗賊さんの話、人に話せるほど知らないんだよね」


盗賊少年D 「会ったことないもんね」


王子 (ないのに自信満々に話してたのか……)





539シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 01:15:24.14nM0NPdJv0 (4/33)



葉書エルフ 『武器を持ってるが、おもちゃみたいなもんだ。まあ大丈夫だろ』


王子 「……灰色盗賊のことは知らないが君の言葉は信じるよ、盗賊の少年」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「東南の町までなら運べます」

葉書エルフ 「ゆっくり休みなさい。中のものは壊さないようにするのですよ」


盗賊少年たち 「はーい」


盗賊少年A 「灰髪盗賊さまの話をしたら信用してもらえた! 灰髪盗賊さまの伝説が1つ増えたぞ!」


盗賊少年B 「灰髪盗賊さんの話、たぶん関係ないよね」


盗賊少年D 「本当に灰髪盗賊さんが好きだねえ」


盗賊少年A 「ああ、おれの忠誠心はすごいぞ! 灰髪盗賊さまのためなら女にだってなれる!」


盗賊少年C 「洒落にならないよ……」





540シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 01:36:05.80nM0NPdJv0 (5/33)




ハーピィ 「…………」


王子 (ハーピィ、何だか楽しそうだ)

王子 『ところで、灰まみれ盗賊とかいうのについて、本当に知らないのか』

王子 『お前はそっち方面には詳しそうだが』


葉書エルフ 『盗賊ギルドと付き合いはあったが、そんな奴と会ったことはないな』

葉書エルフ 『ちらっと聞いたことある気もするが……気のせいという気もする』


王子 『あんまり有名じゃないのかな』


葉書エルフ 『本当の大盗賊は名前すら広まらないって言うが……子供でも知ってるあたりどうだろうな』


盗賊少年C 「でも、こんな風にエルフに会うなんて」


盗賊少年D 「ずっと前にもエルフと会ったことあるよね。男の子だったけど」


盗賊少年A 「ああ。今頃どうしてるんだろうなあ、あいつ」


盗賊少年B 「……ここのエルフさんって大きいよね、いろいろ」


盗賊少年たち 「……うん」


盗賊少年D 「エルフの女の子って、みんなああなのかな……」


盗賊少年たち 「…………」





541シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 01:50:54.82nM0NPdJv0 (6/33)



カラカラカラカラ


ハーピィ 「…………」


髭男 「おーい、そこの馬車、乗せてくれ。私は旅の絵描きだ」

髭男 「魔物に追われているんだ!」


王子 「……今日は魔物が多いのかな」


葉書エルフ 「そのようですね」


盗賊少年A 「お乗りなさい、あわれな絵描きよ!」

盗賊少年A 「われわれ正義の少年盗賊団が助けてあげよう!」


ガチッ……


盗賊少年A 「あれっ!? 扉が開かない!」

盗賊少年A 「陰謀か!?」


葉書エルフ 「……こちらで結界を解くので待っていなさい」





542シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 02:04:05.57nM0NPdJv0 (7/33)



カラカラカラカラ

リーンリーン ジージー スイッチョン


ハーピィ 「…………」


痩せ男 「おーい、馬車よ乗せてくれ。私は旅の医者だ! 魔物が追ってくる!」


盗賊少年A 「乗りんさい乗りんさい!」


旅人 「おーい、私は旅人だ! 魔物だ!」


盗賊少年A 「どうぞどうぞ!」


バンシー 「おーい! 魔物ー!」


盗賊少年A 「うぇるかむごーほーむ!」


盗賊少年A 「さあさあ!」


盗賊少年A 「はいはい!」


盗賊少年A 「乗った乗ったあ!」


王子・葉書エルフ 『…………』


ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ





543シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 02:27:05.73nM0NPdJv0 (8/33)



ガヤガヤ


盗賊少年A 「あわれな旅人たち! おれたち少年盗賊団に感謝するんだぞ!」

盗賊少年たち 「するんだぞ!」


旅人たち 「ありがとう、少年盗賊団」


盗賊少年A 「そして、おれたちの大先生である正義の大盗賊、灰髪盗賊さまにも感謝するんだ!」


旅人たち 「ありがとう、正義の灰髪盗賊」


髭男 「それで、御者台のどの人が灰髪盗賊さんなんだい?」

髭男 「お父さんの方? お母さんの方?」


王子 (そんなに老けて見えるのか、おれは……)


ハーピィ 「…………」


盗賊少年A 「おれの親はバラバラにされて殺された! びっくりするほどバラバラだった!」

盗賊少年A 「バラバラにした奴をバラバラにしてやるのがおれの夢の1つだ!」

盗賊少年A 「あいつらはあれだ、まあまあの恩人だ」

盗賊少年A 「おれが灰髪盗賊さまの話をすると、協力を申し出てきた!」

盗賊少年A 「つまり灰髪盗賊さまがすごいんだ!」


インプ 「すごい」


バンシー 「すごい」


葉書エルフ 『あいつにハーピィをつけられないのか』


王子 『無理な話だし、意外と嘘じゃない気もする』


ハーピィ 「…………」





544以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/27(月) 02:32:31.05Fz2VQA8S0 (1/1)

どうしてこうなった
wwww
てか馬車すげぇな
何人はいるんだ


545シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 02:56:49.70nM0NPdJv0 (9/33)



カラカラカラカラ


ハーピィ 「…………」


ワイワイ ガヤガヤ


王子 (魔物か。たしかに南東の町のあるあたりは人が少ないというが、そんなに増えているとは)


葉書エルフ 「王子、面白いことを思いつきました」


王子 「ん?」


葉書エルフ 「魔法の馬車を改造して部屋を増やし、そこに食料や寝具を置いて旅人に有料で提供するのです」

葉書エルフ 「乗り合い馬車を発展させた、移動休憩所です」


王子 「…………」

王子 「道具や武器も置いてみたらどうかな」


葉書エルフ 「良いですね」

葉書エルフ 『娼館も置こうか』


王子 『そういうのは面倒くさそうだからやめよう』

王子 「しかし、そんなたいそうなものをつくるとなると大変だろう」


葉書エルフ 「20回ほど私の命をかけたら、すぐにできますよ」


王子 「却下だ」


ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ





546シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 03:19:35.29nM0NPdJv0 (10/33)



盗賊少年たち 「…………スゥ」


旅人たち 「…………グゥ」


カラカラカラカラ


葉書エルフ 「…………スゥ」


王子 「…………」

王子 「親父の剣。忌々しいが、手になじむな」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「そうか。少しはうれしいのかもしれない。複雑な感じだ」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………ッ」


王子 「空か。うん、今日も晴れたな。星がたくさん見える」

王子 「南東に進むとなると、しばらく海は見れなくなるかもな」


ハーピィ 「…………」


王子 「波の音だけじゃなくて、風に揺れる草とか、虫の音とか聞きながら寝るのもきっと良いものさ」

王子 「それにしても、本当に見事な御者だな君は……」


ハーピィ「…………」


カラカラカラカラ



…………





547シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 03:43:55.34nM0NPdJv0 (11/33)



…………


ピィピィ ヒョロロロ ヒヒン


盗賊少年A 「よし、われわれはここまでだ!」


盗賊少年C・D 「ありがとう!」


王子 「ん。夜と魔物には気をつけるんだぞ、少年たちよ」


盗賊少年B 「そっちのエルフの恋人さんにもありがとうって言っておいてね」


葉書エルフ 「…………スゥ」


王子 「うん、肩枕をしているからといって、恋人というわけではないのだぞ少年よ」


ハーピィ 「…………」


盗賊少年A 「われわれは灰髪盗賊さまに弟子入りするため正義の旅をしなくちゃならないが」

盗賊少年A 「今度会ったが100年目、たっぷりお礼をしてやろう!」

盗賊少年A 「このご恩は忘れません!」


王子 「……あー、うん。とりあえず強く生きろ少年よ」


盗賊少年A 「ではいくぞ、正義の少年盗賊団!」


盗賊少年たち 「やー!」


ダダダダダダダ


王子 「……大丈夫なのか、あの子たちは」





548シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 04:11:38.26nM0NPdJv0 (12/33)



南東の町



ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ

ザワザワ


王子 「……様子がおかしいな。町の方の空気が重々しいというか」


タタタタタ


御者 「ご主人様ー!」


商人淑女 「戻ったか、役立たずの御者め。何事か」


御者 「は、はい。どうやら、町に国家憲兵さまがたが来ているようでさあ」


王子 「…………」

王子 (憲兵か……)





549シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 04:24:25.33nM0NPdJv0 (13/33)



葉書エルフ 「思ったより早いな」


王子 「起きたか、おはよう」

王子 「憲兵のあの夜のことが知られていたら、見つかるとまずいな」


葉書エルフ 「おはよう。まだオレたちは眼中にないさ」

葉書エルフ 「馬車を東門の近くに隠そう。すぐにエルフの森へ出発できるようにして」

葉書エルフ 「町で2人ほど拾っていく。急いでやるぞ」


王子 「……分かった」


ハーピィ 「…………」





550シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 04:36:03.40nM0NPdJv0 (14/33)



南東の町



ザワザワ


猫憲兵たち 「…………」


町人A 「あんな数の憲兵、見たことがないな」


町人B 「ええ、恐ろしい純白の鎧。何も悪いことしてないのに、びくびくしちゃうわ」


猫憲兵A 「…………」


フワッ


猫憲兵A 「にゃ?」

猫憲兵A 「……いま、誰か通らなかったかしら?」


猫憲兵B 「そんなはずない」





551シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 04:53:29.38nM0NPdJv0 (15/33)




タタタタタタ


王子 「親父の夜に先生が使っていた魔法か。やるじゃないか」


葉書エルフ 「どうもまだうまく使えない上に消耗が激しい。体を捨てる前にオレのものにしときたいが」


王子 「……酒場にいたのよりだいぶ数が多いな。兵の雰囲気も何か違う」


葉書エルフ 「一隊丸ごと来ているんだろ。質はこっちの方が悪いかな」

葉書エルフ 「しかし狭い町だ。もたもたできないな」


ハーピィ 「…………」


王子 「くそ、樽やら何やらで走りにくい。どこに向かっているんだ」


葉書エルフ 「向こうも移動している」

葉書エルフ 「憲兵たちに見つかる前に合流したいが」

葉書エルフ 「こっちだ」


王子 「もしかするとまた憲兵と一戦まじえるのか……」


ハーピィ 「…………」





552シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 05:05:39.74nM0NPdJv0 (16/33)



タタタタタ


葉書エルフ 「……あ、ばか」


王子 「どうした」


葉書エルフ 「あいつ、盛大にこけやがった」

葉書エルフ 「それで路上の置き物やら巻き込んだもんだから、見つかった」


王子 「なんと」

王子 (よく分かるなそんなこと)


葉書エルフ 「角を3つ曲がってすぐだ。全部集まってくる前に片付けて逃げるぞ」





553シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 05:18:51.82nM0NPdJv0 (17/33)



??? 「ぐわにゃあああッ!」


ドシャッ ガラガラ


王子 「うお、曲がり角から兵士が吹っ飛んできた」


??? 「にゃー、いたた」

猫憲兵Z 「おのれ、仕返ししてや……」


葉書エルフ 「ていっ」


猫憲兵Z 「ぎにゃっ!?」

猫憲兵Z 「だ、誰だ、いつの間に……」


バタン


王子 (攻撃したら見つかるのか)


ハーピィ 「…………」


??? 「手荒なまねはしたくありません。通してください、憲兵さまがた!」


王子 (……この良い声は)





554シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 05:35:09.03nM0NPdJv0 (18/33)



猫憲兵Y 「そうはいかないわよ!」


猫憲兵X 「にゃ! あの宗教の手先は皇帝陛下の敵」


猫憲兵W 「処刑台に送ってやる!」



??? 「あなたたちは誤解しています!」

貝殻の勇者 「私は敵ではありません! ただ世界のために……」


猫憲兵Y 「うるさ……ぎにゃっ!?」


バタッ


骨仮面者 「おしゃべりは終わりだ。早く行くぞ、勇者さま」


ろうそく職人 「あわわ……」


貝殻の勇者 「何ということを!」

貝殻の勇者 「心から話せばきっと……」


猫憲兵X 「おのれ、反逆者! 成敗……」


葉書エルフ 「ていっ」


猫憲兵X 「ふぎゃっ!?」


王子 「とうっ」


猫憲兵W 「ほぎゃっ!?」


貝殻の勇者 「ああっ、何てこと……!」





555シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 05:45:42.54nM0NPdJv0 (19/33)



葉書エルフ 「ひとまず片付いたかな」


骨仮面者 「ああ、なんだ君か。いろんなとこ膨らませて、みっともない体になったな」


葉書エルフ 「よけいなお世話だ」


骨仮面者 「ふふん。よう王子さま、ご機嫌はいかがかな」


王子 「おかげさまで最悪な目にあったが、夢の放浪生活だ」


ギュッ


ハーピィ 「…………」


骨仮面者 「おや、役立たずの女も一緒か」


王子 「ハーピィだ」


葉書エルフ 「無駄口叩いてないで行くぞ。じゃあ姿を隠し……」


貝殻の勇者 「危ない!」





556シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 05:48:39.48nM0NPdJv0 (20/33)



ヒュルルル


??? 「死にゃああああああ!」


王子 「!」


グシャッ





557シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 05:59:20.71nM0NPdJv0 (21/33)



ボトッ モクモク


骨仮面者 「……やあ、危ない。私たちじゃなく勇者さまを狙われていたら死んでいた」

骨仮面者 「怪我はないか」


葉書エルフ 「ああ」


??? 「勇者は生け捕りが原則……うにゃうにゃ、護衛はやっつけたと思ったけど」

猫耳隊長 「しくじってしまったかにゃ」


骨仮面者 「いやいや、大した不意打ちだ」

骨仮面者 「私の利き腕を一本もっていくなんて」





558シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 06:11:17.14nM0NPdJv0 (22/33)



貝殻の勇者 「う、腕が……!」


ろうそく職人 「ひいいい……!!」


骨仮面者 「さて、早く行け。私はこの鉄爪の女を食い止めて、強さのほどを見ておこう」


王子 「無理だろう。逃げた方がいい。この人数なら……」


骨仮面者 「失礼、王子さま」

骨仮面者 「足手まといはさっさと消えろ、と言いなおそう」





559シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 06:34:32.55nM0NPdJv0 (23/33)



ろうそく職人 「え、王子さま……!? でも髪も目も……」


猫耳隊長 「にゃあっ!」


骨仮面者 「おっと」


ガキンッ


猫耳隊長 「にゃっ!?」


骨仮面者 「よく動く。1つうっては、攻撃の届かないところに飛びのくのか」


葉書エルフ 「…………」


ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ


猫耳隊長 「うにゃっ、にゃっ」


王子 (葉書エルフが杖から撃った矢のようなものを、打ち落とした)

王子 (前触れがなかったのに、よく反応できるもんだ)


猫耳隊長 「皇帝陛下の信頼あつき国家憲兵隊猫隊の隊長、猫耳」

猫耳隊長 「あんたらが束になった程度じゃ何ともないにゃ!」





560シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 06:55:08.58nM0NPdJv0 (24/33)



ニャーニャー


猫耳隊長 「む。みんな、やっと追いついてきたにゃね」


骨仮面者 「他の奴らが近づいてきている。全員でこいつに付き合っていたら駄目だ」


貝殻の勇者 「いけません! あなたも……」


葉書エルフ 「うるさい、行くぞ」


貝殻の勇者 「そんな」

貝殻の勇者 「……! あなたは領主さまの……」


王子 (先生のことも知っているか)


葉書エルフ 「下手するとみんな死ぬ。うまくいってもろうそく女くらいは死ぬかもな」


ろうそく職人 「ひぐっ……!?」


貝殻の勇者 「……! くっ……」


葉書エルフ 「じゃあ、行くぞ」


王子 「しかたないか」


ハーピィ 「…………」


タタタタタタ





561シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 07:19:04.91nM0NPdJv0 (25/33)



猫耳隊長 「逃がすかあ!」

猫耳隊長 「ジャーンプ……」


骨仮面者 「それ」


ヒュッ


猫耳隊長 「にゃっ!?」


ガキンッ


猫耳隊長 「うぬー、投げナイフなんてちょこざいな」


骨仮面者 「気をそらさないことだ」


ダダダダダ


猫憲兵V 「隊長ー!」


猫憲兵たち 「遅れてごめんなさいー!」


骨仮面者 「おや」


猫耳隊長 「よく来たにゃ、みんな。少数は残って、他は副隊長たちについて勇者たちを追いなさい」


猫憲兵たち 「にゃー!」


猫耳隊長 「うにゃうにゃ、これでお前は袋のネズミ」

猫耳隊長 「さあ、こいつをボコボコにして勇者を捕まえて」

猫耳隊長 「皇帝陛下によしよししてもらって、またたびゼリーで乾杯にゃ!」

猫耳隊長 「はにゃーん!」


猫憲兵たち 「はにゃーん!」


シュウウウ


猫憲兵たち 「うにゃっ、武器に錆びが!?」


猫耳隊長 「にゃんですと!?」


骨仮面者 「……効きが悪い。貰った魔力が尽きたか」

骨仮面者 「まあいい。強さを見ると言ったが」

骨仮面者 「隊長さんとあと2、3人くらいは道連れにするつもりでいくから」

骨仮面者 「覚悟してもらうぞ」


猫耳隊長 「うがー……あったま来たにゃあ!」


…………




562シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 07:58:48.07nM0NPdJv0 (26/33)



ニャーニャー


貝殻の勇者 「声が近づいてくる……」


葉書エルフ 「隊を分けたか。姿を隠しているから大丈夫だろうが、早く逃げるにこしたことはない」


貝殻の勇者 「このまま戻り、骨仮面者どのを助けるわけにはいきませんか」

貝殻の勇者 「気はすすみませんが、私の技をもってすれば……」


葉書エルフ 「敵味方いっしょに流される。相手は憲兵だし、うまくいくかも分からない」

葉書エルフ 「気にするな。あれは死なない」


貝殻の勇者 「は……?」


ろうそく職人 「ひぃ、ひぃ……ゼエ、ゼヒッ……」

ろうそく職人 「ご、ごめんなさい、王子さまにおんぶなんて……」


王子 「いや、おれも捕まりたくないから気にするな」


ろうそく職人 「うぐっ……ごめんなさい体力なくて……」


王子 「いやいや……」


ハーピィ 「…………」





563シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 08:31:12.62nM0NPdJv0 (27/33)



葉書エルフ 「急げ、南だ! 南の門から逃げるぞー! 南門を閉じろー!」


貝殻の勇者 「!」


ニャーニャー ワアアア


葉書エルフ 「さて、東門から出るぞ」


貝殻の勇者 「……記憶にある司書長エルフどのの性格と違うように思えるのですが、気のせいでしょうか」


王子 (中身は別人だからな)


ろうそく職人 「ぜえ、ぜえ。はあ、はあ……」





564シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 08:43:26.46nM0NPdJv0 (28/33)



東門番A 「勇者が見つかったらしい」


東門番B 「そうか……」


東門番A 「この門、閉めたほうがいいかな」


東門番B 「でも、人通りがあるからなあ。面倒くさいし……」


フワッ


東門番B 「ん? 何か通ったか?」


東門番A 「うんにゃ」

東門番A 「しかし、勇者か。そういえば、少し前に故郷の方で勇者の噂があったが、最近聞かないなあ」


東門番B 「捕まって殺されたんじゃないか。国があの宗教に厳しくなってから、勇者にも厳しくなったから」


東門番A 「終末に勇者がどうとか、ねえ」

東門番A 「嘘か本当かはともかく、勇者って呼ばれる奴を殺すなんて気がひけるなあ」


東門番B 「考えるのはよそう。おれたちゃ門を守ってりゃいいのさ」


東門番A 「だな」





565シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 09:12:12.16nM0NPdJv0 (29/33)



ガチャッ


葉書エルフ 「よし、乗れ」


ろうそく職人 「え、ここ家……?」


王子 「魔法の馬車だ」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「何も食べてないなら食べとけ。寝具もある」


貝殻の勇者 「ありがとうございます」

貝殻の勇者 「骨仮面者どのが来てから、いただきましょう」


葉書エルフ 「ろうそく女が飢え死にしてもいいならそうするがいいさ」

葉書エルフ 「少しは待つが、長くは待てない」





566シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 09:33:03.01nM0NPdJv0 (30/33)



王子 「さて、出発の準備でもするか」


ハーピィ 「…………」


王子 「ハーピィは中で休んでいた方が良いんじゃないかな」


ハーピィ 「…………」


王子 「そうか……」


貝殻の勇者 「…………」


葉書エルフ 「面倒くさい勇者さまだな。話し合いだとか余計な血を流すのは嫌だとか」

葉書エルフ 「奴隷の一歩手前にまでなったってのに」

葉書エルフ 「かわりに誰かが血を流さなきゃならない」


貝殻の勇者 「……三日三晩の合図」

貝殻の勇者 「そうですか、どういうわけか分かりませんが、あなたでしたか」





567シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 09:49:20.51nM0NPdJv0 (31/33)



…………


猫耳隊長 「フシュー、フシュー……」


骨仮面者 「…………」


猫耳隊長 「どうやらあのおかしな魔法は、この鉱石の爪には効かなかったようにゃね」

猫耳隊長 「まあ、この私を足止めできたことはあの世で誇ると良いにゃ……」


猫憲兵T 「猫耳隊長さま! 奴らは南門から南へ逃走したもようです!」


猫耳隊長 「にゃ、逃げられたか。すぐに追いかける! 準備をしなさい!」


猫憲兵たち 「にゃー!」


骨仮面者 「…………」


ヒラッ ヒラッ



…………




568シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 10:01:22.66nM0NPdJv0 (32/33)



葉書エルフ 「なあ、本当に勇者に会えただろう」


王子 「そうだな。合流するとは思わなかったけど」


ハーピィ 「…………」


ヒラッ ヒラッ


王子 「ん?」

王子 「何だ。黒い花びら?」


葉書エルフ 「よし、戻ったな」

葉書エルフ 「これで骨仮面者を作り直せる」





569シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/27(月) 10:07:10.05nM0NPdJv0 (33/33)



王子 「何を何だって?」


葉書エルフ 「あれは意思を持つ生き物に近い人形だ」

葉書エルフ 「ある人物の骨とオレのにおいの一部ずつを埋め込んでつくった」


王子 (何でもありか、こいつ)


葉書エルフ 「勇者は真似しちゃいけない術だ」


王子 「ああ。そんな感じだな」


葉書エルフ 「さて行くぞ、王子軍あらため貝殻の勇者軍」

葉書エルフ 「目指すは森のエルフの里だ」


王子 「やれやれ……」


ハーピィ 「…………」


ヒヒーン


カラカラカラカラ





570以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/27(月) 12:02:41.99DldA9kIOo (1/1)

面白いし読みやすいなぁ


571以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/27(月) 12:09:12.55umR65+p10 (1/1)


後は幼女になって復活だな


572シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 07:03:05.52wffnN8Zi0 (1/31)



カラカラカラカラ


看板 『これより南東ずっと先、エルフの森。体を清潔にして立ち入ること。 ――帝国北東地方領主』


ハーピィ 「…………」


王子 (このあたりは人通りが少ないな)

王子 (この先は小さな村がいくつかあるだけだし、わざわざエルフの森に行く人もいないものな)


葉書エルフ 「…………」





573シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 07:12:30.29wffnN8Zi0 (2/31)




王子 (エルフか。身近だけど、どんな種族かいまいち知らないんだよな)

王子 (自然を愛し、汚れた空気を嫌い清浄な場所から出ようとはしないという)

王子 (先生や葉巻エルフみたいに、里を抜けて人とまじわるのは珍しいそうだが……)


葉書エルフ 「…………ッ」


王子 (葉巻エルフ、深刻な顔をしている。口数も減った)

王子 (抜け出した場所に戻るのはつらいんだろうか)

王子 (かなり嫌っている風だったしな)

王子 「……大丈夫か」


葉書エルフ 「王子。ああ……」

葉書エルフ 「いや、かなりだめだ」


王子 (かなり弱気だ。死ぬときも笑ってるような奴なのに)





574シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 07:31:14.09wffnN8Zi0 (3/31)



王子 「どこか別の場所じゃ駄目なのか。わざわざお前が嫌いな……」


葉書エルフ 「オレの魔法じゃ、どうしてもこのでかい胸と尻を引っ込めることができん」

葉書エルフ 「何度ためしても効果がない」


王子 「でか……」


葉書エルフ 「森に入る前に何とかしたいが、無理かなこれは」

葉書エルフ 「肩はこるし座りにくいし、不便ったらない」


王子 「…………」


葉書エルフ 「なあ王子」

葉書エルフ 「悪いけど、手が空いたら揉んでくれないか」


王子 「…………」

王子 「……ああ」

王子 (恐ろしい魔法があるものだ。世界は広いな……)





575シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 08:03:52.14wffnN8Zi0 (4/31)



カラカラカラカラ


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「んっ……エルフの森じゃないと駄目なんだよ。ちょっと用事が……」

葉書エルフ 「あッ……そう、そこそこ、そこを強く……」


王子 「…………」


葉書エルフ 「はぅっ。んんンッ……」

葉書エルフ 「きくぅ~……ッ」

葉書エルフ 「……ふふっ。上手ですよ王子。あとでビスケットあげましょう」


王子 「……そりゃどうも」


葉書エルフ 「あ、ふぅ……」

葉書エルフ 「ははは。あー、良いもんだなあ、こった肩をほぐされるのも」

葉書エルフ 「この快感を味わえるなら、このみっともない体も悪くないかな」


王子 「もうほぐれたかな」


葉書エルフ 「やだ。あと少し」


王子 「まったく……」


ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ





576シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 08:39:17.95wffnN8Zi0 (5/31)



チリリン リン


王子 「おっ?」

王子 (御者台の伝声管のベルが鳴った)


葉書エルフ 「あふっ……大部屋からだな」

葉書エルフ 「パイプの蓋を開けて応答のベルを鳴らしてくれ」


王子 (ええと、大部屋は……この紐だな)

王子 「ああ」


パカッ


??? 「もし、もし……。聞こえますか」


王子 (綺麗な声。勇者どのか)





577シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 08:47:30.53wffnN8Zi0 (6/31)




葉書エルフ 「何だい勇者さま……んっ」

葉書エルフ 「食料が、あぅっ、足りなくなったのかい?」

葉書エルフ 「おおおッ。何だこれ、今ビリッときた」


??? 「私は大食いではありません」

貝殻の勇者の声 「というか、何をしているのですかあなたがたは」


葉書エルフ 「そりゃもう、ためつすがめつ、くんずほぐれつ……」


王子 「肩こりエルフの肩をもんでいる」

王子 「そんなことより、何かあったのかな勇者どの」


貝殻の勇者の声 「……はあ。いえ、そうですね」

貝殻の勇者の声 「いま、エルフの里に向かっているのですよね」


葉書エルフ 「ああ」


貝殻の勇者の声 「そのことでちょっと……」





578シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 09:06:34.60wffnN8Zi0 (7/31)



葉書エルフ 「何だ。嫌だってんなら無理な話だ」


貝殻の勇者の声 「いえ、そうではなく」

貝殻の勇者の声 「エルフは綺麗好きで、森に入ってきた人間が不潔だと追い払うと聞きます」

貝殻の勇者の声 「その……森に入る前に体を清めなくて良いのでしょうか」


葉書エルフ 「ああ……んっ」

葉書エルフ 「安心しろ勇者さま。森の近くの村に、それ用の宿がある」

葉書エルフ 「しっかり準備していくさ」


貝殻の勇者の声 「そうですか……」


葉書エルフ 「ああ。温泉の町には及ばないがなかなか……」

葉書エルフ 「だめだめだめ。そこだめ、すごい頭まっしろになる」


貝殻の勇者の声 「話すか揉まれるかどっちかになさい!」


葉書エルフ 「やだ」


王子 「すまないね、本当に」


ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ





579以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/31(金) 09:14:59.07ZxQc0YCA0 (1/1)

いいのかハーピーwwww


580シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 09:45:32.12wffnN8Zi0 (8/31)



南東の村



カラカラ……

ヒヒン ブルル


ハーピィ 「…………」


王子 (見事な停車だ)

王子 (ハーピィ、どこか自信に満ちているというか、誇らしげだな)

王子 「よしよし」


ハーピィ 「…………」


王子 (頭をなでるとより誇らしげになった。無表情だけど)


ろうそく職人 「おえっぷ……」


貝殻の勇者 「馬車酔いだそうです」


葉書エルフ 「魔法の馬車だから揺れはなかったはずだけどな」


ろうそく職人 「馬車に乗ってると思うだけで……」

ろうそく職人 「私、雰囲気に酔うみたいで……」






581シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 10:13:42.77wffnN8Zi0 (9/31)



南東の村 宿



主人 「エルフの森に行くのかい。だったらこの宿で正解だよ、あんたたち」


葉書エルフ 「1部屋でお願いします」


貝殻の勇者 「ちょ、ちょっと、男女が同室なのですか!?」


葉書エルフ 「節約のためです、勇者どの」


貝殻の勇者 「な、なりません!」

貝殻の勇者 「男のかたと同室なんて恥ずか……いえ、部屋は分けるべきです!」


葉書エルフ 「……しかたありませんね」

葉書エルフ 「どこかに飢えて泣いている子供がいるかもしれないこの世界で」

葉書エルフ 「私たちは泊まる部屋を男女で分けるというほんの少しの贅沢を……」


貝殻の勇者 「……1部屋にしましょう。1番安い部屋を1つ」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「うう。すみません王子さま、またおんぶを……」


王子 「いやいや。同じ城で暮らしていた仲だ。助け合わないと」

王子 「そんなにかたくならずに、気楽にしてくれ」


ろうそく職人 「ありがとうございます……」

ろうそく職人 「うう。暮らしていた。もう今は暮らしてない……グスン」


王子 「……まあ、笑っていこう」


ハーピィ 「…………」





582シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 10:38:41.53wffnN8Zi0 (10/31)



主人 「はいよ、これをしっかり読みなよ」


貝殻の勇者 「これは……?」


主人 「エルフの森に入るときの注意を書いたしおりだよ」

主人 「これさえあれば、エルフに気に入られること間違いなしさ」


王子 「へえ。なになに……」

王子 「その1。エルフは不潔なのが嫌い。人間のにおいはもっと嫌い」

王子 「……そうなのか」


ろうそく職人 「体を綺麗にするのはもちろん、何より妖精の香りのする草は必須」

ろうそく職人 「受付で売っています。毒消し効果もあり」

ろうそく職人 「と、大きく書かれていますね。値段まで……」


王子 「うーん……」


ハーピィ 「…………」





583シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 10:53:17.72wffnN8Zi0 (11/31)



貝殻の勇者 「いえ、料理も1番安いもので。くっ、いっそ無しに……」


葉書エルフ 「極端だな。別にそこまでしろとは……」


貝殻の勇者 「いえ。恵まれない子供たちのことを思えば、屋根の下で眠れるだけでも……」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「エルフまんじゅう、エルフスリッパ、エルフかつら、エルフ棒、エルフ耳かき……」


王子 「節操ないな」

王子 「と、これは……」





584以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/31(金) 11:02:19.54xPtacJXd0 (1/1)

エルフ饅頭wwww


585シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 11:02:34.02wffnN8Zi0 (12/31)



王子 (よく分からない受付の商品の中に)

王子 (葉巻エルフが売っていた巻き麻薬に似たものがある)

王子 「エルフの……タバコ?」


ろうそく職人 「エルフの嗜好品。火をつけて吸えば、疲れがたちまち吹き飛びます」

ろうそく職人 「エルフにプレゼントしましょう」

ろうそく職人 「人間にも効きますが、吸いすぎると意識が朦朧として幻覚を見るので注意」

ろうそく職人 「……ですか。何だか怖いですね」


王子 「……ああ」


ハーピィ 「…………」





586シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 11:33:59.01wffnN8Zi0 (13/31)



宿 部屋



葉書エルフ 「さて、明日にはエルフの森に入ります」

葉書エルフ 「今日はこの宿で十分に体を清め休めることにしましょう」

葉書エルフ 「それぞれ部屋でくつろぐも良し、村を散策するも良し」

葉書エルフ 「念のため、村からは出ないように気をつけてください」


王子 (どうしてこうちょくちょく先生の真似をするんだろうか)


貝殻の勇者 「では、私はさっそく湯浴みをすることにしましょう」


ろうそく職人 「おおお、お背中お流しします!」


貝殻の勇者 「ふふッ……。はい、では流しっこしましょう」


ろうそく職人 「は、はい!」


王子 「馬車酔いの上にのぼせて倒れたりしないようにな」


ろうそく職人 「は、はい……」


ハーピィ 「…………」





587以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/31(金) 17:23:28.22y2q0wqrr0 (1/1)

あれ?そういえば(身体的には)王子様ハーレムだ?


588以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/31(金) 18:38:51.647yjiOIVGo (1/1)

そもそも葉巻エルフは元は男なのか?女だと思ってた


589シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 19:14:41.83wffnN8Zi0 (14/31)



ツカツカツカ

ドテッ 

ツカツカツカ


王子 「……行ったか」


葉書エルフ 「ああ。じゃあ準備をするぞ」


王子 「買い出しか」


葉書エルフ 「お前……ばかだな」

葉書エルフ 「覗きだ」


王子 「ばかなのかお前」





590シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 19:31:02.00wffnN8Zi0 (15/31)



ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「男湯と女湯がある宿」

葉書エルフ 「温泉、女、背中流しっこ」

葉書エルフ 「健全な男だったら覗いてやるのが礼儀なんだろう?」


王子 「本性を出したかこのエロフ」

王子 「だいたいお前、その体なら堂々と入れば良いじゃないか」


葉書エルフ 「……お前、見たくないか。女勇者の、英雄になるかもしれない奴の裸だぞ」


王子 「興味なんか……」


ハーピィ 「…………」


王子 「無いと言えば嘘になるが、だからと言って覗くのは駄目だ」

王子 「第一、女性のいる前でそんな話をするのはどうなんだ」


ハーピィ 「…………」





591シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 19:48:20.03wffnN8Zi0 (16/31)



葉書エルフ 「見つかる心配をしているなら問題ない」

葉書エルフ 「オレの魔法なら完璧に隠れて覗き放題だ」

葉書エルフ 「さあ王子、女体を視線でなめまわすのです」


王子 「そんな都合の良い魔法……あったな。いやしかし……」

王子 (人の体を乗っ取ったり、姿を消したり生き返ったり、本当にこいつは)

王子 (……ん?)

王子 (人の体を乗っ取るってことは、おれが知っている葉巻エルフも別の体かもしれないのか)





592シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 20:01:10.46wffnN8Zi0 (17/31)



葉書エルフ 「女にだらしないように見えて慎重だなお前は」


王子 「気を遣っているだけだ」

王子 「おれは女性に嫌われやすい人間だから。妹もそんなこと言っていたしな」

王子 (葉巻エルフは世を忍ぶ仮の姿で、じつは絶世の美女エルフだった……とか)


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「ときには大胆になれよ。引きずってでも連れて行ってやろうか」


王子 「やめてくれ。いい加減にしようこの話は」

王子 (オークだったりしてな。町での素行を思い返せば、その方がしっくりくる)


葉書エルフ 「……ああ、肩もみ気持ちよかったなあ」

葉書エルフ 「腰ももんで気持ちよくしてくれたら、覗きなんて忘れるかもなあ」


王子 「……分かったよ」

王子 (深く考えるのはよそう)





593シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 21:14:25.74wffnN8Zi0 (18/31)



…………


ゴポゴポゴポ


貝殻の勇者 「ゴポゴポと……お湯が湧きだしている……」


ろうそく職人 「エルフの森の近くの山からきた聖なる温泉だそうです」

ろうそく職人 「毒や呪い、いろんな状態異常にも効くそうです」


貝殻の勇者 「そうなのですか」

貝殻の勇者 「しかしそれにしても、あなたは意外と……」


ろうそく職人 「?」


貝殻の勇者 「い、いえ」

貝殻の勇者 「しっかりつかって、体を清めましょう」


ろうそく職人 「はい」





594シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 21:23:02.99wffnN8Zi0 (19/31)



ガヤガヤ


貝殻の勇者 「む。男性の声……」


ろうそく職人 「男湯の方でしょうか」


貝殻の勇者 「……いえ」

貝殻の勇者 「ここに近づいてきます!」


ろうそく職人 「ええっ! どどど、どうして……」

ろうそく職人 「はぅあ!?」


貝殻の勇者 「どうしました、ろうそく職人さん!」


ろうそく職人 「たいへんです!」

ろうそく職人 「私たち、間違えて混浴に入っちゃったみたいです!」


貝殻の勇者 「なんと!」


ガヤガヤガヤ

バサッ ワイワイ


ろうそく職人 「あわわわわ……」


貝殻の勇者 「…………」

貝殻の勇者 「……神よ」


…………




595シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 21:37:54.97wffnN8Zi0 (20/31)



…………


宿 部屋



ハーピィ 「…………」


王子 (ハーピィ、ときどき馬車置き場の方を見ている。馬たちが気になるんだろうか)

王子 (あとで行ってみるか)


葉書エルフ 「あッ、ふぅ……極楽極楽。この絶妙な力加減……」


王子 「そうかい」


葉書エルフ 「ふふっ……肩についで腰のツボまで」

葉書エルフ 「また1つ、私の体をあなたに掌握されてしまいましたね」


王子 「満足したかな」


葉書エルフ 「次は足の裏と手のひら」


王子 「はいはい……」

王子 (実際、一番疲れたのはこいつだろうな)





596シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 21:47:51.75wffnN8Zi0 (21/31)



葉書エルフ 「ああ、そうだ」

葉書エルフ 「大事なことを言い忘れていた」


王子 「何だ」


葉書エルフ 「エルフの森では」

葉書エルフ 「領主の夜については絶対口にするな」

葉書エルフ 「殺しあったことはもちろん、とくにオークに会ったことは死んでも言うな」


王子 「理由を聞いても良いかな」


葉書エルフ 「殺される」




597シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 21:48:50.00wffnN8Zi0 (22/31)



王子 「……おいおい」


葉書エルフ 「話さないのが1番だ。エルフってのは気難しいから、人間の常識は通じない」

葉書エルフ 「なまじ言葉が通じるから厄介なんだよ」

葉書エルフ 「種もしかけもなしに死んだものを生き返らすなんて、オレもできないからな」


王子 「そうかい……」


ハーピィ 「…………」


王子 (たしかに、余計なことは話さない方が良いか)





598シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 22:02:18.14wffnN8Zi0 (23/31)



ガチャッ


貝殻の勇者 「…………」


ろうそく職人 「…………」


葉書エルフ 「おや、おかえり勇者さまご一行」


王子 「温泉はどうだったかな」


貝殻の勇者 「……ええ、たいへん良い」

貝殻の勇者 「老人たちでした」


ろうそく職人 「村に伝わるエルフのお話もたくさん聞けましたしね……」


王子 「? そうか」





599シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 22:16:32.06wffnN8Zi0 (24/31)



葉書エルフ 「オレたちも入るとするか」

葉書エルフ 「まあオレはこの体だから神経質になる必要はないけどな」


王子 「ああ」

王子 「……劣情に流されて変なことするなよ」


葉書エルフ 「破廉恥な勘繰りはおやめなさい、王子」


王子 「お前については、用心してしすぎるということはなさそうだからな」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「うれしいね。そんなに意識してもらえるなんて」





600シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 22:38:56.75wffnN8Zi0 (25/31)



…………


湯上りコボルト 「帝国はいまだ栄華の極みを知らないというのに、この地方は貧しいよなあ」


湯上り旅人 「領主の城に近い町でさえ治安は良くないそうだ」

湯上り旅人 「領主はかたぶつらしいが、報復を恐れて奴隷市場を黙認する臆病者という噂だ」


湯上りコボルト 「そのくせ、その隣の豊かな地方の領主は、北東地方の領主を高くかってたよな」


湯上り旅人 「そりゃそうさ。出来の悪い他地方の領主をかばえば、できた人間だと評判もあがる」


湯上りコボルト 「そんなもんかね。まあ、おいらたちにゃ関係ないか」

湯上りコボルト 「1月あとには別国の船の上だ。たっぷり稼ごう」


ペチャクチャ


王子 「ここか、浴場は」


葉書エルフ 「けっこう賑わっている。村人が多いが」


ハーピィ 「…………」


王子 「……さて」





601シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 22:51:56.95wffnN8Zi0 (26/31)



王子 「へえ、混浴もあるのか」

王子 「家族用ってところかな」


葉書エルフ 「主人は温泉の町まで行っていろいろ修行してきたらしい」


王子 「そりゃ熱心なことだ」


ハーピィ 「…………」


王子 「おれは……混浴だろうな」


葉書エルフ 「ハーピィなら、オレが一緒に女湯に入れとくぜ?」


王子 「……それで抜け出して、男湯にでも飛び込んでこられたらと思うとな」


葉書エルフ 「……ああ」


ハーピィ 「…………」


ギュッ


王子 「大丈夫だ、離れないよハーピィ」

王子 「目隠しした方が良いかな、おれ」


葉書エルフ 「大丈夫だろ」

葉書エルフ 「入り口に大きく書いてあるのに、混浴と知らずに入る馬鹿はいないだろ」


王子 「それもそうか」





602シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 22:59:14.56wffnN8Zi0 (27/31)



…………


貝殻の勇者 「へっくち!」

貝殻の勇者 「……体が冷えたのでしょうか」


ろうそく職人 「大丈夫ですか勇者さ……あッひゅいン!」


貝殻の勇者 (不思議なくしゃみですね……)


…………





603シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 23:12:08.13wffnN8Zi0 (28/31)



カポーン


王子 (何なんだ、浴場に響くこの音は)


ドワーフ爺 「何かを巻いて湯につかっている者が多いな。時代も変わったのう」


ドワーフ青年 「やあまったく、これだから最近の若者たちは」


ガヤガヤ


王子 (混浴にもけっこう人がいるな。人間は少ないみたいだけど)


ハーピィ 「…………」


王子 「タオル姿も綺麗だ、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


王子 「……あまりくっつくのはやめよう」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ、たしかに嬉しいけれども。人目もあるから」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


王子 「そんな悲しそうな顔をしなくても……」





604シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 23:18:18.72wffnN8Zi0 (29/31)



葉書エルフ 『なあ、王子。困ったことになった』


王子 「!」

王子 『葉巻か。どうした』


葉書エルフ 『まわりの視線が変な感じだ。厳しいような、ドロドロしているような』

葉書エルフ 『このみっともない体のせいかな』


王子 (体のせいではあるだろうが……)

王子 『気にしなくて良いんじゃないかな』


葉書エルフ 『なあ……やっぱりオレもそっちに行って良いかな』


王子 『平和な村に大砲ぶち込むような真似はやめろ』





605シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 23:42:33.51wffnN8Zi0 (30/31)



葉書エルフ 『くそ……何だよこれ、気分悪いな』

葉書エルフ 『全員ゆで上げて食ってやろうか』


王子 『やめたまえ』

王子 (本当にやりそうだ)


ハーピィ 「…………」


王子 『ハーピィ、だからあんまりくっつくと……』


葉書エルフ 『うん?』


王子 (しまった。間違えた)





606以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/31(金) 23:54:05.92Vm3yzD/10 (1/1)

間違えたのか?


607シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/01/31(金) 23:56:55.11wffnN8Zi0 (31/31)



王子 『何でもないさ』


葉書エルフ 『……ふうん』

葉書エルフ 『ずいぶん楽しそうじゃないか、そっちは』

葉書エルフ 『そうですか。私に来るなと言うのはそういうことですか、王子』


王子 『いやいや……』


葉書エルフ 『これはあれだな、肩でも揉んでもらわなきゃやってられない気分だ』


王子 『ははは……』

王子 (気が休まらん)


ハーピィ 「…………」


ギュッ


半魚人 「仲が良いね、あんたら」


王子 「どうも……」


…………




608シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 00:14:51.81Vq3lKXl80 (1/57)



宿 部屋



貝殻の勇者 「…………スゥ」


ろうそく職人 「…………フニャクラ」


王子 「まだまだ慣れないな、魔法の会話ってやつは」


葉書エルフ 「なに、お前はよくできているよ」

葉書エルフ 『自分からもこんな風に送話できるよう、勉強してみるか?』


王子 「そうだな……」

王子 (そうすれば、ハーピィとも話せるかな)

王子 (葉巻エルフをもってしても無理なようなことを言っていたが)


葉書エルフ 「まあ、人間が習得するのは難しいけどな」

葉書エルフ 「お前は少し筋が良いらしいから、剣を捨てて60年くらい頑張ればやれるかな」


王子 「気の長い話だなあ」


ハーピィ 「…………」





609シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 00:27:41.90Vq3lKXl80 (2/57)



…………


ピイピイ チチチ


主人 「おや、早いね。もう出るのかい」


葉書エルフ 「ええ、馬車の準備もしましたし。先を急ぎたいので」


主人 「何か買っていくかい。エルフの里へのみやげになるよ」


ろうそく職人 「じゃ、じゃあこのエルフ棒を……」


王子 「ただのろうそくに見えるけどな……」


貝殻の勇者 「エルフまんじゅうとエルフクッキーと、エルフビスケットと……」


王子 「食べ物ばかりだな……」


貝殻の勇者 「私は大食いではありません」


主人 「……仲間が欲出して森の妖精たちに食われちまわないよう、気をつけるこったね」


葉書エルフ 「ほほほ、ありがとうございます」





610シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 00:49:17.92Vq3lKXl80 (3/57)



ブルルル ヒヒン


貝殻の勇者 「ですから、お世話になってばかりも悪いので私も御者台に」


葉書エルフ 「変な気遣いは無用だ、勇者さま。ろうそく娘とクッキーでもかじりながらくつろいでろ」


貝殻の勇者 「ですが……」


葉書エルフ 「気が引けるってんなら、小さな扉の方から入れ」

葉書エルフ 「普通の10人乗り馬車になっているから」


ハーピィ 「…………」


ブルルル ヒヒン


王子 (ハーピィ、馬と向き合っていたと思ったらもう御者台に座って……)


ハーピィ 「…………」


王子 (何か期待に満ちた目でこちらを見ている)

王子 (ここでおれが何食わぬ顔で馬車の中に入っていったら、どんな顔をするだろうか)


ハーピィ 「…………」


王子 (そんなことはしないが)





611シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 01:03:57.67Vq3lKXl80 (4/57)



葉書エルフ 「やれやれ、扱いにくいもんだな勇者って種類は」

葉書エルフ 「なだめすかすのも一苦労だ」


王子 「いろいろと背負うものがあるんだろ」

王子 「世界のために戦うような人なんだから」


葉書エルフ 「本当は何のためになるのやら……」

葉書エルフ 「王子。言ったとおり、あのことは話すなよ」


王子 「あの夜のことは話さない。オークのことは間違っても口にしない」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「よし」

葉書エルフ 「森は人を惑わすから、気をつけろよ」

葉書エルフ 「じゃあ出発だ」





612シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 01:20:32.85Vq3lKXl80 (5/57)



…………


虹のかかった滝



ザアアア

カラカラカラカラ


ハーピィ 「…………」


王子 (滝の裏を通る道か)

王子 (道かどうかも分からないな)

王子 (……人どころか、魔物の姿もない)


葉書エルフ 「4つの滝をくぐり、人間の領域を離れ妖精の領域に入る」

葉書エルフ 「このあたりは、ちょうどその境だ」





613シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 01:33:27.10Vq3lKXl80 (6/57)



貝殻の勇者 「村を出てそんなにたっていませんが」

貝殻の勇者 「あたりは様変わりしましたね」

貝殻の勇者 「森が近いというか、もう森の中のようです」


ボリボリボリボリ


ろうそく職人 「空気も青く澄んできましたね」

ろうそく職人 「でも、どこか霧の中にいるような」


ボリボリボリボリ


貝殻の勇者 「ああ、緑が綺麗、空気がおいしい」


ろうそく職人 「はい。このエルフパンも美味しいです勇者さま」


ボリボリボリボリ

ボリボリボリボリ


葉書エルフ 「お前ら、食うか喋るかどっちかにしろ」


貝殻の勇者 「食べますか」


王子 (大きな扉から入ると、家の中のようにくつろげる部屋)

王子 (小さな扉から入ると、御者台と直接連絡がとれる部屋だが……)

王子 (小さな扉から入ってくつろぐとは、さすが勇者だな)


ハーピィ 「…………」


…………




614シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 02:00:57.16Vq3lKXl80 (7/57)



カラカラカラカラ


ハーピィ 「…………」


王子 「暗いな……」

王子 「2つ目の滝をこえると、一気に暗くなった」


葉書エルフ 「ここまではどちらかと言うと人間の領域に属していましたが、ここからは違います」

葉書エルフ 「いよいよここからがエルフの森。妖精たちのまほろま」

葉書エルフ 「気をつけるのですよ、王子」


王子 「……ああ」


貝殻の勇者 「見てください、草が淡く輝いています」


ろうそく職人 「わあ、綺麗……!」


貝殻の勇者 「ええ、本当に……」


ろうそく職人 「……ろうそく、意味ないですね」


貝殻の勇者 「…………」


ろうそく職人 「グスン……」


王子 (さっそく心を折られている……)





615シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 02:17:46.34Vq3lKXl80 (8/57)



カラカラカラカラ


王子 「もう明かりをつけないといけないな」

王子 「まるで夜だ」


葉書エルフ 「木々の幹が太くなってきましたね」

葉書エルフ 「城ほどに太い木が現れたらすぐに泉に出ます」

葉書エルフ 「馬や人を惑わすので、私の言うとおりに進んでください」


王子 「頼むよ」

王子 「……できれば先生の真似は無しで」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「…………」


ろうそく職人 「あはは、明るいなあ……魔法の火」


貝殻の勇者 「わ、私はろうそくの火が好きですよ」


カラカラカラカラ





616シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 02:32:00.73Vq3lKXl80 (9/57)



ハーピィ 「…………」


王子 (本当に城みたいに大きな木が増えてきた)

王子 (場所もひらけてきたし、だだっ広い洞窟の中にいる気分だ)

王子 (……今は、いったいどのくらいの時間なんだ)


キイン


王子 「? 何の音だろう」


葉書エルフ 「泉の音です」

葉書エルフ 「準備はいいかい王子さま、ハーピィ」


王子 「……ああ」


ハーピィ 「…………」





617シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 02:46:04.48Vq3lKXl80 (10/57)




エルフの森 泉



キイン


ろうそく職人 「これが泉。大きい……」


王子 「まるで湖だ」


貝殻の勇者 「あたりを小さな光が漂っていますね」


ウフフフフ……

アハハハハ……


ろうそく職人 「! な、なに、子供の笑い声?」


葉書エルフ 「この泉は妖精たちの揺りかご」

葉書エルフ 「妖精はこの泉で光として生まれ」

葉書エルフ 「まどろみながら、時間をかけて森の魔力を体を練ります」


貝殻の勇者 「光は妖精の赤ちゃんということですか」





618シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 02:54:16.90Vq3lKXl80 (11/57)



葉書エルフ 「ええ。ですが、近くを通る者があるとたまに目を覚まし」

葉書エルフ 「いたずらをしかけてくることがありますので、気をつけてくださ……」


王子 「…………」


葉書エルフ 「……気をつけるんだぜ」

葉書エルフ 「護符があるとは言え、油断してはいけないぜ」


ろうそく職人 「う、うえぇ……」


貝殻の勇者 「大丈夫、泣かないでろうそく職人さん」


王子 「……怖くはないかい、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


王子 「そうか、頼もしい」





619シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 03:00:54.78Vq3lKXl80 (12/57)



カラカラカラカラ


ハーピィ 「…………」


??? 「おーい、おおい」


王子 「ん?」


貝殻の勇者 「あ、あそこ! 湖のあのあたり」


??? 「おーい、たぁすけてくれー」


ろうそく職人 「だ、誰か溺れてる……?」


貝殻の勇者 「私たちより先に来て、いたずらに惑わされたのでしょうか」

貝殻の勇者 「旅人を水に落とす妖精の話はよく聞きます」





620シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 03:14:46.66Vq3lKXl80 (13/57)



??? 「おーい、たぁすけてくれー」


王子 「……あれもいたずらかもしれないが」

王子 「本当に溺れているんだとしたら大変だな」


??? 「おーい、おーい」


ろうそく職人 「とりあえず助けて……」


葉書エルフ 「なりません」


ろうそく職人 「ひっ……」


葉書エルフ 「あれは妖精のいたずらです」

葉書エルフ 「助ける必要はありませんぜ」


貝殻の勇者 「……信じてよろしいのですね」


葉書エルフ 「……あれが本当に溺れている者だとして」

葉書エルフ 「こんなところで立ち止まれば、我々も危ない目にあうでしょう」

葉書エルフ 「どうやって馬をからかうか。または」

葉書エルフ 「いかに楽しく人間を殺すか」

葉書エルフ 「妖精にとっては、大差のないいたずらなのです」


ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ





621シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 03:23:16.89Vq3lKXl80 (14/57)



??? 「おーい、おおい」

??? 「そこの馬車、たぁすけてくれー」


ろうそく職人 「こ、こっちに話しかけてきてる……」


??? 「もうだめだあ」

??? 「きついよー。つかれたよー。さむいよー」

??? 「いやだ、しにたくないよー!」


王子 「…………」


??? 「薄情者! 見捨てるのか!」

??? 「悪魔のような人たちだ、呪われてしまえ!」

??? 「あああ、ごめんなさいお父さん、お母さん」

??? 「僕はこの冷たい水の底で死んでいきます……」

??? 「ゴボゴボゴボゴボ」


貝殻の勇者 「ああっ、沈んだ……」


ハーピィ 「…………」





622以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/01(土) 03:24:01.02Vtr/na30o (1/1)

ありませんぜが耐えられなかったwwクッソwwwwww


623シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 03:30:11.72Vq3lKXl80 (15/57)



貝殻の勇者 「本当に、これで良かったのでしょうか」


葉書エルフ 「その優しさと迷いは捨ててはなりませんが」

葉書エルフ 「それが通じない生き物も多く存在するのです」

葉書エルフ 「勇者はそのようなものとも相対さなくてはならないのだぜ」


貝殻の勇者 「……気をつけます」





624シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 03:36:15.90Vq3lKXl80 (16/57)



王子 「…………」


馬車馬A 「人々をだます泉なんておそろしいですね、王子さま」


王子 「……まったくだ」


馬車馬A 「こんなところ、早く抜けてしまいましょう」


王子 「ああ、そうだな」


馬車馬A 「ああ、でも困ったぞ。おなかがすいて力が出ない」


王子 「それは困った」





625以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/01(土) 03:40:39.38Emq4IHzz0 (1/1)

この光景は結構きついな…


626シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 03:42:37.54Vq3lKXl80 (17/57)



馬車馬A 「そうだ、王子さま」


王子 「何だい」


馬車馬A 「あなたの隣に座っている女の目玉を私に食べさせてごらんなさい」

馬車馬A 「風より早く走ってごらんにいれますよ」


王子 「へえ、それは良いことを聞いた」

王子 「少し考えさせてくれ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ、悪いが君にやるものはない」

王子 「風よりも早く走って沼にでも飛び込まれたら大変だ」


馬車馬A 「それは残念」





627シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 03:52:32.79Vq3lKXl80 (18/57)



葉書エルフ 「妖精のいたずらには、心に余裕を持ってつきあうのです」

葉書エルフ 「ですが、親が子にするようにではありません」

葉書エルフ 「相手はこちらの命を狙う暗殺者の毒剣であると心得るのですぞ」


貝殻の勇者 「な、なるほど」


ろうそく職人 「ううう……」


王子 「ほう……」


ハーピィ 「…………」





628シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 04:02:54.07Vq3lKXl80 (19/57)



おサル 「ウキー」


ろうそく職人 「あ、おサル」


貝殻の勇者 「泉の水を飲もうとしていますね」


おサル 「ゴクゴク……ウギョッ!?」


貝殻の勇者 「ああっ、おサルが……!」


ろうそく職人 「湖から飛び出した何かに引きずりこまれた!」


貝殻の勇者 「あ、骨になって浮いてきましたよ!」


ろうそく職人 「本当だ。あはははは。あー、おかしい」


貝殻の勇者 「ええ、本当に。うふふふふ」


葉書エルフ 「その調子です」


王子 (ろうそく職人の顔は真っ青だけどな)





629シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 04:21:47.03Vq3lKXl80 (20/57)



貝殻の勇者 「泉の小島で何かが光っていますよ!」


ろうそく職人 「たくさんの宝石ですね!」


貝殻の勇者 「何かたくさん降ってきましたよ!」


ろうそく職人 「足がいっぱいの幼虫ですね!」


貝殻の勇者 「何かたくさん、馬車と併走していますよ!!」


ろうそく職人 「全身の骨を抜き取ったような、歯の生えた赤ちゃんですね!」


貝殻の勇者 「前方に何かたくさん、泉から投げられてきますよ!」


ろうそく職人 「いろんな生き物の生首ですね! 人間のもありますよ!」


貝殻の勇者 「何かわめいていますね!」


ろうそく職人 「轢かないで、止まってって言ってますね!」


ゴリッ グシャ グチャグチャ ゴリッ  

ボキボキボキ ギャアアアアア


貝殻の勇者 「轢いちゃいましたね!」


ろうそく職人 「この世のものとは思えない悲鳴がいくつも聞こえましたね!」

ろうそく職人 「あれが断末魔なんですね!」


貝殻の勇者 「うふふふふふ!」


ろうそく職人 「あははははは!」





630シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 04:24:36.91Vq3lKXl80 (21/57)



ろうそく職人 「うわあああああああん!」

ろうそく職人 「もう嫌だああ!」

ろうそく職人 「おぎゃああああ!」


貝殻の勇者 「ああっ、ろうそく職人さんが壊れた!」


王子 (哀れな……)





631シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 04:38:30.22Vq3lKXl80 (22/57)



ろうそく職人 「フヒー! フヒー!」

ろうそく職人 「おあー、なろー、ばっきゃろうちくしょう、妖精ばっきゃろう」

ろうそく職人 「よかたい、そっちがその気ならやってやるけんねばっきゃろう……!」


貝殻の勇者 「落ち着いてろうそく職人さん! 正気に戻って!」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「もうすぐ泉を抜けます!」

葉書エルフ 「あとは残りの滝を抜けるだけです!」

葉書エルフ 「皆さん、頑張ってくださ……らんば!」


王子 「…………」

王子 「……もしや、先生?」


葉書エルフ 「!」





632シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 04:52:45.79Vq3lKXl80 (23/57)



カラカラカラカラ


ろうそく職人 「がるるるる……」


貝殻の勇者 「どうどう、よしよし、もう大丈夫ですからね……」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「な、何を言ってんだい王子さん」

葉書エルフ 「この私が司書長エルフなわけないぜ……」


王子 「…………」

王子 「ふうん」

王子 (たしかに、ここまであからさまに動揺されると)

王子 (手の込んだ葉巻エルフの冗談かとも疑いたくなるな……)


葉書エルフ 「まったく、この王子さまには困ったもんだぜ」

葉書エルフ 「おほほほほ……」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」





633シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 05:00:59.97Vq3lKXl80 (24/57)



カラカラカラカラ


ハーピィ 「…………」


サアアアアアアア


貝殻の勇者 「3つ目の滝。人間の領域のものとはまったく違うのね」

貝殻の勇者 「月のように輝いて綺麗ですね、ろうそく職人さん」


ろうそく職人 「……違うんです。さっきまでの私は違うんです……」


貝殻の勇者 「わ、分かっていますからね……」


葉書エルフ 「…………」


王子 「…………」


葉書エルフ 「…………」


王子 「…………」


葉書エルフ 「…………」

司書長エルフ 「……よくぞ見抜きましたね、王子」


王子 「あ、やっぱり」

王子 (さては耐えられなくなったな)





634シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 05:11:14.36Vq3lKXl80 (25/57)



王子 (何がどうなったかは分からないが、とりあえず)

王子 「あー、先生。つもる話もあるだろうが、できればここでは仲良く……」


司書長エルフ 「分かっています」

司書長エルフ 「この森であなたと敵対するつもりはありません」


王子 「そ、そうか。よかった」


ハーピィ 「…………」


王子 「……で、葉巻エルフはどこに?」





635シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 05:32:59.99Vq3lKXl80 (26/57)



司書長エルフ 「……死に臨み、おのれの血と魂で他者を支配し転生する術」

司書長エルフ 「エルフの奥義の1つです」

司書長エルフ 「しかし魂は血とともに薄くなっていき、やがて消滅する……」


王子 「!」


司書長エルフ 「仮初めの命を得る魔法」

司書長エルフ 「たとえば、愛する者に最期の言葉を届ける時間をつくるために」

司書長エルフ 「遥か昔、戦争の時代に、あるエルフの大魔法使いが作り出したものと伝えられています」


王子 「……! じゃあ、葉巻エルフはもう」


司書長エルフ 「……その執念と才、今となっては最大級の賛辞を送るほかありません」





636シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 05:47:43.59Vq3lKXl80 (27/57)



王子 「馬鹿な……」


司書長エルフ 「というのは嘘ですよ」


王子 「なっ……」


司書長エルフ 「あの子はエルフの森に入るなり引っ込んでしまいました」

司書長エルフ 「よほど、この体で他のエルフに会うのが嫌なのでしょうね」


王子 「せ、先生……」


司書長エルフ 「私の受けた仕打ちに比べれば、こんなものは可愛い冗談です」

司書長エルフ 「まったくもう、人の体でやりたい放題……」


王子 「あ、意識はあったのか」

王子 (先生がすねている……)


ハーピィ 「…………」





637以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/01(土) 05:49:33.678E9y9hgu0 (1/1)

まさかの先生復活か!


638以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/01(土) 06:26:48.62bBi3POtOo (1/1)

王子と一緒のベットで寝たり頭真っ白発言とか色々させれられてたな


639シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 06:38:15.43Vq3lKXl80 (28/57)



司書長エルフ 「ええ。はじめは夢を見させていただいていましたが」

司書長エルフ 「夢を見ている間は心が無防備になり覗かれやすくなるのでいてもたっても……」


王子 「そ、そうなのか……」


司書長エルフ 「王子の様子も見ていましたよ」

司書長エルフ 「よくぞ……あ、あのようなことで、誘惑されませんでしたね」


王子 「まあ、それは」


司書長エルフ 「それに数日の間で、少し成長したようです」


王子 「いやあ、はたから見れば順調に転げ落ちている気もするが」


司書長エルフ 「女性にかける言葉から、不自然さが抜けたように思います」


王子 「そ、そうか……」


司書長エルフ 「城にいたころは本当に背伸びしたような言葉ばかり……」


王子 「今は余裕がないからかな」


司書長エルフ 「まあ、私は……」

司書長エルフ 「コホンッ……心を表す言葉は自然に美しく」

司書長エルフ 「そして何よりも、伝わりやすく。おぼえておいてください、王子」


王子 「ああ。先生」





640シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 06:53:22.26Vq3lKXl80 (29/57)



カラカラカラカラ


ろうそく職人 「……くぅん」


貝殻の勇者 「よしよし。怖くない怖くない」


ハーピィ 「…………」


司書長エルフ 「さて、そろそろあの子を表に引きずり出さなくてはなりませんね」


王子 「葉巻エルフを?」


司書長エルフ 「ええ。エルフの里には、あの子として行かなくてはなりません」


王子 「そうなのか……」


司書長エルフ 「……私では、あの子を演じることは難しそうですし」


王子 「たしかに」





641シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 07:01:24.03Vq3lKXl80 (30/57)



王子 「でも驚いたな」

王子 「葉巻エルフと先生、もっと険悪だと思っていたが」


司書長エルフ 「……王子」

司書長エルフ 「もしも、今の私が私を演じているあの子だとしたらどうしますか」


王子 「それは……」


司書長エルフ 「あの子が私の体を持ち、私の心を真似て」

司書長エルフ 「自分を殺し私として生きることを苦にしないとして」

司書長エルフ 「だとしたら、私は何なのでしょうか」


王子 「…………」





642シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 07:28:23.09Vq3lKXl80 (31/57)



司書長エルフ 「王子、私は未来を見通すことはできませんが」

司書長エルフ 「この先、あなたはあの子についていくことになるでしょう」


王子 「…………」


司書長エルフ 「あの子を信じてあげなさい」

司書長エルフ 「ですが、決して油断しないように」

司書長エルフ 「信じるあまり目を離してしまうことのないように、注意なさい」


王子 「…………」


司書長エルフ 「あの子の危うさは妖精のいたずらのようなもの」

司書長エルフ 「引きずられて、自分を見失わないようにしなさい」

司書長エルフ 「あなたならばできると信じていますが、もしも無理ならば」

司書長エルフ 「そのときは逃げなさい」


王子 「……ああ」


ハーピィ 「…………」





643シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 07:39:46.56Vq3lKXl80 (32/57)



司書長エルフ 「さて」

司書長エルフ 「4つ目の滝を抜けるまでにあの子を引き出します」


王子 「またしばらく会えないのかな」


司書長エルフ 「あの子が真似してくれますよ」


王子 「いや、それは……」


司書長エルフ 「ふふふ……」

司書長エルフ 「あ、あー……あー、困りました」


王子 「うん? どうしたんだい」


司書長エルフ 「堅苦しい話をしたせいでしょうか」

司書長エルフ 「な、何だか、その……ええ」

司書長エルフ 「……が……こってしまった、ような……」


王子 「…………」

王子 「肩はこっておられませんか、先生」


司書長エルフ 「え、ええ……」


ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ





644シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 07:57:57.36Vq3lKXl80 (33/57)



サアアアアア


貝殻の勇者 「まあ、これは花の香り?」


ろうそく職人 「何だか、あたりも明るくなっていくような」

ろうそく職人 「あ、ウサギ。あれも悪戯?」


貝殻の勇者 「本物のようですね。何と言うか、生き物の気配が増えたような」


王子 「4つ目の滝。いよいよエルフの里が近いんだな」


司書長エルフ 「…………スゥ」


王子 (先生、あれから少しあとに寝てしまった)

王子 (先生の中では今、葉巻エルフの魂と先生の魂がせめぎあい)

王子 (……をしていたりするのか? よく分からん)


司書長エルフ 「…………」


王子 (葉巻エルフ……そんなにこの森に帰りたくなかったのか?)

王子 (おかげで先生が無事だと分かったが)





645シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 08:09:15.39Vq3lKXl80 (34/57)




ハーピィ 「…………」


ヒヒン ブルルル


ハーピィ 「……?」


貝殻の勇者 「馬が止まった」


ろうそく職人 「まだ滝を抜けていないのに……」


王子 (妖精のいたずらでも、足を止めなかったのに)


ハーピィ 「……? ……?」


王子 (戸惑っているな、ハーピィ)






646シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 08:15:27.84Vq3lKXl80 (35/57)



チチチ ピイピイ

サアアアア


王子 「馬は怯えている様子じゃないな」


ろうそく職人 「あわわわわ。これは嵐の前の静けさでしょうか……」


王子 (怯えきっているな、ろうそく職人)


貝殻の勇者 「馬車を降りて歩くべきでしょうか」


王子 「いや。少し様子を見た方が良いと思う」


貝殻の勇者 「そうですね……」


司書長エルフ 「…………」





647シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 08:24:43.96Vq3lKXl80 (36/57)



カツン カツン カツン


花仮面者 「…………」


貝殻の勇者 「誰か歩いてきますね」


ろうそく職人 「じ、地獄からの使者が……!」


王子 「……うん、たぶん違うと思うが」

王子 「あれはむしろ……」


貝殻の勇者 「王子どのも気づきましたか」


王子 「同じことかは分からないけど、一応」


カツン


花仮面者 「…………」





648シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 08:50:10.61Vq3lKXl80 (37/57)



花仮面者 「お待ちしておりました。勇者さまがた」


王子 「あ、違った」


貝殻の勇者 「違うようですね」


ろうそく職人 「?」


花仮面者 「おお、あなたが勇者さまですか。なるほど、麗しい」


ハーピィ 「…………?」


王子 「違う。たしかに麗しいが、この子は勇者じゃない」


ハーピィ 「…………」


花仮面者 「存じております。ほんの冗談」

花仮面者 「歓迎のエルフジョークでございます」


王子 「あいつじゃない」


貝殻の勇者 「あのかたではありませんね」


ろうそく職人 「?」





649シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 08:59:27.49Vq3lKXl80 (38/57)



ろうそく職人 「あ、骨の仮面の人に似ていますねあの人」


貝殻の勇者 「ええ。本人かと思いましたが……」


王子 (本物は黒い花びらになって先生のポケットの中だからな)


花仮面者 「ですが、魔法の馬車とは予想外」

花仮面者 「サプライズ馬車ですね」


王子 「気を悪くしたなら、すまない」


花仮面者 「そんな、いえいえいえいえいえいえ」

花仮面者 「いえーい」


王子 「…………」


貝殻の勇者 「…………クスッ」


王子 「!」


花仮面者 「…………」

花仮面者 「本来なら馬の首を刎ねるところですが」

花仮面者 「気分が良いので大目に見ておきましょう」

花仮面者 「さながらエルフ目こぼしです」


王子 (やりにくいなこの人)





650シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 09:18:36.40Vq3lKXl80 (39/57)



花仮面者 「では、馬車を馬ごと谷底へ捨ててお進みください」


ハーピィ 「…………!?」


王子 「置いていくだけじゃ駄目かな」


花仮面者 「はははははははははは」

花仮面者 「面白い冗談ですね」


王子 「真面目なんだけどな」


花仮面者 「おやまあ」

花仮面者 「ということはあなた、何ですか。死にたいのですか」


ろうそく職人 「ひぃい……」


花仮面者 「ああ、それも冗談ですね」

花仮面者 「ははははははははは」

花仮面者 「では、馬車を馬ごと谷底へ捨ててお進みください」


王子 (とことんかみ合わない……)





651シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 09:33:56.43Vq3lKXl80 (40/57)



貝殻の勇者 「あきらめてはなりません」

貝殻の勇者 「根気よく話せばきっと分かってもらえます」


花仮面者 「どうしましたか」

花仮面者 「どういたしましたか」

花仮面者 「馬車を捨てるのを手伝ってさしあげましょうか」

花仮面者 「どういたしまして」


王子 「うーん。話すほどにズレていくんじゃないかって気もするんだけどな」


貝殻の勇者 「……とにかく、頑張ってみましょう」


司書長エルフ 「…………」





652以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/01(土) 16:59:30.05OHi3KcBIo (1/1)

乙乙…?

葉書エルフヘルプ!




653以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/01(土) 18:38:15.59xaHt2qF90 (1/1)

司書長エルフみたいなのが
レアなのかな


654シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 19:17:04.59Vq3lKXl80 (41/57)



ろうそく職人 「あ、そうだ!」


貝殻の勇者 「何か良い案が浮かんだのですか!?」


ろうそく職人 「ここは、賄賂を送ってみてはどうでしょう……!」


貝殻の勇者 「そ、それはまた何というか、俗な……」


王子 「だけど、何かを送ってみるのは良いかもしれない」


貝殻の勇者 「……なるほど、じつはあの者に通行証のようなものを渡さないと」

貝殻の勇者 「いつまでも難癖をつけられて通れないのかもしれませんね」





655シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 19:25:46.12Vq3lKXl80 (42/57)



ろうそく職人 「ここにちょうど、村で買ったエルフ棒があります」


貝殻の勇者 「おお。村で売っていた珍妙な物品の真価が発揮されるのでしょうか」


王子 「渡してみよう」


ろうそく職人 「えいやっ!」


ポイッ


貝殻の勇者 「ええっ!?」


王子 「投げるのか!?」


花仮面者 「…………」


ヒュウウ


王子 「エルフ棒が……」


貝殻の勇者 「見当違いの方向へ投げられて、森の中に消えていった……」





656シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 19:34:56.94Vq3lKXl80 (43/57)



ろうそく職人 「す、すみません。私、投擲とか苦手で……」


王子 (いろいろと予想外だな、この子は)


花仮面者 「……森に棒を捨てるとは」

花仮面者 「許せません」


キイイイ


王子 「魔法か……!」


貝殻の勇者 「だ、大丈夫です、馬車には護符が……」


ろうそく職人 「ぎゃあ!」

ろうそく職人 「頭から犬とも狼ともつかない動物の耳がはえてきた!」


貝殻の勇者 「大変です。ふわふわしています!」


王子 「護符が効かないのか……」





657シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 19:43:46.71Vq3lKXl80 (44/57)



ろうそく職人 「こ、こうなったら、このエルフ大福を……!」


ポイッ


貝殻の勇者 「ああっ、また見当違いの方向に!」


花仮面者 「許せません」


キイイイ


ろうそく職人 「ぎゃあ!」

ろうそく職人 「お尻から狐とも狸ともつかないけだものの尻尾がはえてきた!」


貝殻の勇者 「またもや大変です。ふかふかしています!」

貝殻の勇者 「良い気持ち!」


王子 「よし」

王子 「この方法はやめよう」


貝殻の勇者 「そうですね」


ハーピィ 「…………」





658シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 19:56:15.27Vq3lKXl80 (45/57)



花仮面者 「3度目はよくないことです」

花仮面者 「馬の首を刎ねます」


ハーピィ 「…………!」


貝殻の勇者 「馬が何をしたというのですか」


花仮面者 「ようこそいらっしゃいました勇者さま」

花仮面者 「馬車を馬ごと谷底に捨ててお進みください」


王子 「さて、どうしたもんかね」


司書長エルフ 「…………」


フワッ


貝殻の勇者 「……あら、花の香りが強くなりましたね」


花仮面者 「……!」


王子 (花仮面者が動揺した)





659シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 20:14:45.92Vq3lKXl80 (46/57)



ザアア


ろうそく職人 「滝の音を掻き消すような風が……」


貝殻の勇者 「たくさんの黒い花びらが渦を巻いて……何でしょう、これは」


王子 「…………」


司書長エルフ 「…………」

司書長エルフ 「使者よ、花の玉座の者たちにつたえなさい」

司書長エルフ 「貝殻の勇者の来訪と」

司書長エルフ 「黒花のエルフの帰還を」


王子 「起きたのか……」

王子 (先生の髪に、黒い花飾りがついている)


花仮面者 「…………」

花仮面者 「おかえりなさいませ」


王子 (花仮面者が、一礼すると赤い花びらになって消えた……)





660シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 21:09:04.93Vq3lKXl80 (47/57)



ハーピィ 「…………」


カラ……

カラカラカラカラ


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「おお、馬車が動きました」


司書長エルフ 「…………」

葉書エルフ 「4つ目の滝を抜けたら、穏やかなもんだ」

葉書エルフ 「楽にしていて良いぞ」

葉書エルフ 「やあ、お楽しみだったな肩揉み王子」


王子 「……おかえり、さぼりエルフ」





661シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 21:24:07.44Vq3lKXl80 (48/57)



葉書エルフ 「おかげで良い目を見れただろ」


王子 「大変な目にもあったけどな」


葉書エルフ 「無事に抜けられたんだから良いじゃないか」


王子 「…………」

王子 「まあ、そうか」


ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ





662シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 21:25:52.90Vq3lKXl80 (49/57)



ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「…………」


フカフカ

フワフワ

モフモフ


ろうそく職人 「……私は?」


ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ





663シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 21:46:13.87Vq3lKXl80 (50/57)



エルフの里



門番エルフ 「ようこそ、勇者たち」

門番エルフ 「ここは70本の大樹からなるエルフの里」

門番エルフ 「森の妖精たちが暮らしています」

門番エルフ 「大樹同士を結ぶ空中回廊からの眺めは、たいへん素晴らしいですよ」

門番エルフ 「馬車置き場のある大樹へは、この先の客人広場を西に抜けて行ってください」


ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ




664以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/01(土) 22:05:12.60GwX/mPxK0 (1/1)

ろうそく職人は
耳としっぽがはえたまんま?


665シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 22:11:43.94Vq3lKXl80 (51/57)

はえたまんま


666シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 22:24:40.91Vq3lKXl80 (52/57)



ろうそく職人 「あ、あんな高いところを人が行き来していますよ」


貝殻の勇者 「一定の高さごとに、大樹同士を結ぶ渡り廊下がかけられているのですね」

貝殻の勇者 「高い場所を見ると、わけもなくわくわくしますね」


モフモフ


ろうそく職人 「そ、そうですか?」


葉書エルフ 「生活の場は大樹の中だ」

葉書エルフ 「地上には中庭のような広場がいくつかある」


王子 「森の中の町か。かなり広そうなわりに、のどかなところだな」





667シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 22:34:26.26Vq3lKXl80 (53/57)



少年エルフA 「あ、人間だ」


少女エルフ 「エルフもいるわ」


王子 (広場で遊んでいたエルフが寄ってきた。子供のエルフなんてはじめて見るな)


少年エルフA 「わあ、みっともない」


少女エルフ 「胸が膨らんで、とてもみじめなエルフね」


幼女エルフ 「恥ずかちくないのかちら」


少年エルフB 「ばばーだ、ばばーだ」


葉書エルフ 「…………」


王子 (先生……)


葉書エルフ 「……だから嫌なんだ」


王子 「なるほど」





668シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 22:43:58.57Vq3lKXl80 (54/57)



エルフの里 馬車置き場



ザワザワ


貝殻の勇者 「あら、外とは打って変わって活気がありますね」


リュークロコッタ 「バルバル」


ケルピ 「ヒヒーン」


ハーピィ 「…………」


王子 「変わった馬車と馬が多いな」

王子 (ハーピィ、喜んでいるのか?)


葉書エルフ 「この大陸の妖精が立ち寄るからな。いろんなのがいるさ」





669シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 23:06:11.33Vq3lKXl80 (55/57)



王子 「そんなにいるのか」


葉書エルフ 「人間より多いかもしれない」

葉書エルフ 「さて、行くぞ。まずは休むところを確保する」

葉書エルフ 「かなり奥の方まで歩くからな」


ろうそく職人 「あ、歩くってまさか……」


葉書エルフ 「エルフの里名物、空中回廊だ」


貝殻の勇者 「まあっ」


ろうそく職人 「ひいぃッ。私、高いところ苦手なのに……」


葉書エルフ 「けけけ、そうかそうか、一番高いところを通ってやる……」


通りすがりエルフ 「わっ、なんて哀れな体のエルフだろう」


葉書エルフ 「…………」


王子 「……行こうか」


ハーピィ 「…………」





670シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 23:20:55.45Vq3lKXl80 (56/57)



エルフの里 空中回廊 5階



ヒュウウウ

ガタガタ ザワザワ


貝殻の勇者 「葉々の音がさざ波のように聞こえますね」

貝殻の勇者 「明るい森の美しい景色を眺めながら歩いていると、心が豊かになります」


ろうそく職人 「ひいいい、風が、風がぁあ……!」


王子 「ちょっと待って、苦し……」


ろうそく職人 「王子、私を負ぶっていること忘れて落とさないでくださいね王子ぃいい!」


王子 「わ、わかった、わかったから……!」


ハーピィ 「…………」





671シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/01(土) 23:35:09.09Vq3lKXl80 (57/57)




貝殻の勇者 「ここで、何をするのですか?」


葉書エルフ 「エルフの長老たちにいろいろと報告する」

葉書エルフ 「勇者さまのことやら、その他もろもろ」

葉書エルフ 「あとは後のことについて話し合ったり、準備したりだ」


貝殻の勇者 「時間をかけねばならなようですね」


葉書エルフ 「何日かは滞在することになるだろうさ」


貝殻の勇者 「そうですか……。この間にも、世界に災いがひろがっているというのに……」


葉書エルフ 「心に余裕を持ちなよ勇者さま。案外それが近道だったりするんだぜ。遊び心を忘れずに……」


ザワザワ


貧エルフ 「見てあのエルフ」


壁エルフ 「わ、だらしねー体。死にたくならないのかな」


無エルフ 「……胸がオーク」


負エルフ 「プフッ……」


プー クスクス


葉書エルフ 「さっさと用事を済ませて出て行こうぜ、こんな腐った森」


貝殻の勇者 「もっと心に余裕を持ってはいかがですか」






672シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 00:05:58.25bH0iFVCR0 (1/46)



大樹番エルフ 「我々エルフは人間のように赤ん坊として生まれますが」

大樹番エルフ 「若い内に体の成長はとまります」

大樹番エルフ 「老人のエルフは存在せず、子供のエルフは少ないのです」


ホーホー ワイワイ


ろうそく職人 「日が暮れてしまいましたね」


貝殻の勇者 「夜の森も良いものです。明かりがあたたかいですね」


王子 (目隠しをすると落ち着いたな、ろうそく職人。なんか獣くさいが)

王子 「まだまだ賑やかだな。ちょっと顔ぶれは変わったみたいだけど」


葉書エルフ 「夜行性の妖精も多いからな」

葉書エルフ 「もうすぐ、夜の妖精たちの時間だ」


ハーピィ 「…………」





673シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 00:25:11.49bH0iFVCR0 (2/46)



ヒュウウ サワワワ


王子 「……大樹の前に庭園がある」


貝殻の勇者 「空中庭園ですね。青い月の光を受けて、黒い花が咲いています」


ろうそく職人 「がるる、どこかでお肉が焼けていますね」


貝殻の勇者 「静かですね。他の大樹と比べて雰囲気が違います」

貝殻の勇者 「少し離れていて、繋がっている橋も少ないですし」

貝殻の勇者 「立派な門もありますし」


葉書エルフ 「あそこで休む」





674シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 01:10:54.02bH0iFVCR0 (3/46)



骨仮面 「はるか昔、エルフは人に化ける術を持っていた」

骨仮面 「しかしなぜか、どうしても獣の尻尾がついてしまう」

骨仮面 「そのせいで術は廃れ、やがてエルフの記憶から忘られていったが」

骨仮面 「あるエルフが、その失敗の術から新しい術を生みだした」

骨仮面 「こうしてエルフ最後の玉座は埋められた」

骨仮面 「おかえりなさいませ、長ろ……」


ガブッ


ろうそく職人 「がるる、骨うまうま」


葉書エルフ 「門あけるぞ」


ゴゴゴ


貝殻の勇者 「立派な屋敷のようですが、人がいませんね」


葉書エルフ 「滞在中に必要なものは揃っている。部屋は自由につかえ」


王子 「おおい、ろうそく職人、行くぞ」


ろうそく職人 「コーン」





675シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 01:24:49.85bH0iFVCR0 (4/46)



エルフの里 黒花エルフの館



ハーピィ 「…………」


王子 「エルフの絵画か。黒い花飾りをつけた女性のエルフと、錆びた剣と、これは鍛冶師か」

王子 「鍛冶場でエルフが剣を錆びさせて、鍛冶師が喜んでいる?」

王子 「……エルフの感性は分からんな」


ろうそく職人 「ワオーン」


貝殻の勇者 「どうどう、ろうそく職人さん。静かにしましょうね」


ろうそく職人 「タヌキ」


貝殻の勇者 「あらあら」





676シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 01:35:41.07bH0iFVCR0 (5/46)



葉書エルフ 「じきに迎えがくる。それまでここで好きにしていな」


王子 「ちょっと気になることがあるんだが、良いかな」


ろうそく職人 「がるる」


葉書エルフ 「どうした」


王子 「この館は何なんだ」


葉書エルフ 「オレの所有物だ」


王子 「そうか」





677シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 01:48:32.47bH0iFVCR0 (6/46)



ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「…………」


ハーピィ 「…………」


ナデナデ


ろうそく職人 「ペロペロ」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「迎えがくると言いましたが、これからどこかへ行くのでしょうか」


葉書エルフ 「エルフのお偉いさんがたのところだ」





678シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 01:54:29.41bH0iFVCR0 (7/46)



葉書エルフ 「……ちょっと待ってろ」

葉書エルフ 「…………」


キイイ


ろうそく職人 「ペロペロペ……」

ろうそく職人 「あれ? 私は何を……」


貝殻の勇者 「? ろうそく職人さんがどうかしたのですか?」


王子 「そうだった。変な呪いをかけられたらしくて耳と尻尾が生えたんだが、どうにかできないかな」


ハーピィ 「…………」





679シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 02:07:16.91bH0iFVCR0 (8/46)



葉書エルフ 「尻尾と耳は消せなかったか」


貝殻の勇者 「?」


葉書エルフ 「……昔、空腹で気が狂ったある遭難者が従者を食べたが」

葉書エルフ 「そのさいに悪魔から、人間を動物に変える魔法を教わった」


貝殻のエルフ 「なんと……」


葉書エルフ 「この魔法の便利なところは」

葉書エルフ 「かけられた人間は心まで動物となり」

葉書エルフ 「まわりの人間にも動物にしか思われなくなるところだ」

葉書エルフ 「家畜を殺して食べたくらいの罪悪感くらいしかわかない」


王子 「そりゃ、何とも恐ろしい魔法だな」


貝殻の勇者 「引っかからないように気をつけないといけませんね」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「……ゆっくり休め」





680シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 02:16:01.89bH0iFVCR0 (9/46)



…………


葉書エルフ 「あー、そこそこ。もっと下も」


王子 「いや、ここからはさすがに」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「…………」


貝殻の勇者 「…………」


フカフカ


ろうそく職人 「あ、あの……」


貝殻の勇者 「……あ、痛かったですか?」


フカフカ


ろうそく職人 「いえ、強く握られなければ大丈夫です……尻尾」


貝殻の勇者 「そうですか」

貝殻の勇者 「これは……良いものですね」





681シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 02:31:36.83bH0iFVCR0 (10/46)



貝殻の勇者 「しかし、あまり触っていては失礼ですね」


ろうそく職人 「い、いえ。私は役立たずなので」

ろうそく職人 「こういうことで勇者さまのお役にたてるなら……!」


貝殻の勇者 「ろうそく職人さん……!」


フカフカフカフカ


ハーピィ 「…………」


チリン チリリン


王子 「ん?」


葉書エルフ 「やっと迎えが来たな」





682シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 02:45:12.06bH0iFVCR0 (11/46)



ゴゴゴ


狐仮面者 「お迎えに上がりました。馬車を用意しましたのでお乗りください」


王子 (また仮面か)


貝殻の勇者 「馬車が二つありますが、どちらに乗れば良いのでしょうか」


狐仮面者 「エルフさまはこちらに。勇者さまがた人間はあちらに」


ハーピィ 「…………」


狐仮面者 「あなたも、勇者さまと同じ馬車にお乗りください」





683シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 02:58:18.86bH0iFVCR0 (12/46)



王子 「うーん」


葉書エルフ 「警戒しても始まらないよ、王子」

葉書エルフ 「オレも離れるのは寂しいが、ちょっとの間だから我慢するさ」


王子 「……あ、ああ」

王子 (何だ。やけに距離が近いがまた何か企んでいるのか、こいつは)


ハーピィ 「…………」


狐仮面者 「…………」


ろうそく職人 「わあ、この馬車ふっかふか」


貝殻の勇者 「ええ、ふかふかだらけですね」


フカフカ


葉書エルフ 「また後で会おう」


王子 「……ああ」


ハーピィ 「…………」


王子 (ハーピィの方からいやな熱気を感じる……)





684シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 03:02:18.86bH0iFVCR0 (13/46)



ガラガラガラガラ

ゴッ ゴトン ゴトゴト


ろうそく職人 「……けっこう揺れますね」


貝殻の勇者 「そうですね……」


フカフカ


ハーピィ 「…………」


王子 (残念そうだ、ハーピィ。御者台に乗りたかったのかな)





685シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 03:25:52.15bH0iFVCR0 (14/46)


フッ


貝殻の勇者 「!?」


ろうそく職人 「ぎゃあ、いきなり真っ暗に!」


王子 「何も見えない。かたまっていた方が良いかな」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「そ、そうですね……ひゃっ!?」

貝殻の勇者 「どこを触っているのですか、あなた!」


王子 「?」


ろうそく職人 「ああ、薄くて柔らかい……」


貝殻の勇者 「…………」


王子 「…………」


貝殻の勇者 「…………コホン」





686シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 03:31:36.91bH0iFVCR0 (15/46)



ゴトゴト

ゴトンッ


ろうそく職人 「……ううぅ」


貝殻の勇者 「止まった……?」


ガチャッ


王子 「ひとりでに扉が開いた……」


貝殻の勇者 「降りろということですね」





687シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 03:41:22.33bH0iFVCR0 (16/46)




王子 「……音ひとつ聞こえない。風もない」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「な、何も見えませんよ」


貝殻の勇者 「地面はありますね。森の中に違いなさそうですが」

貝殻の勇者 「肌がピリピリと痺れるようなこの緊張感はいったい……」


王子 「…………」

王子 (葉巻エルフはどこだ?)


??? 「あ~らあらあらあらあらあら!」


貝殻の勇者・王子 「!?」





688シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 03:52:01.45bH0iFVCR0 (17/46)



ヴァカッ


ろうそく職人 「ぬをわっ、まぶし!」


王子 (光の柱が、誰かを照らしている)

王子 (けっこう高いところにいるな……)


??? 「あらあらあらあらあらあら」

赤い花飾りのエルフ 「ら~ららあ!」

赤い花飾りのエルフ 「不思議ですわねえ、ろうそく臭い人間の娘のケモノ化が止まっていますわ!」

赤い花飾りのエルフ 「人間同士の共食いが見られると思ったのですけれど、残念!」


王子 (大きな赤い花の上に立つエルフの周りを、赤い花びらが舞っている……)






689シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 03:58:41.62bH0iFVCR0 (18/46)



ヴァカッ


ろうそく職人 「またぬをわっ」


貝殻の勇者 「また光の柱が」


王子 「また誰か立っているな」


黄色の花飾りのエルフ 「黒花エルフが何かをしたのね」

黄色の花飾りのエルフ 「森に悪さをする人間はけだものにするのが決まりなのにッ」


王子 (今度は黄色い花と花びらか)





690シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 04:07:07.53bH0iFVCR0 (19/46)



ヴァカッ


青い花飾りのエルフ 「じゃが、今回はとやかく言うこともあるまい」

青い花飾りのエルフ 「黒花は一仕事したのだし」


ヴァカッ


黒い花飾りのエルフ 「おいおい」

黒い花飾りのエルフ 「それじゃ、オレも悪いように聞こえるぜ?」


王子 「!」

王子 (葉巻エルフ……)





691シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 04:16:38.90bH0iFVCR0 (20/46)



ヴァカッ


緑の花飾りのエルフ 「まーまーあらあらうふふふふ。欲張ってはだーめよー黒花エルフちゃん」

緑の花飾りのエルフ 「青花エルフさんは、あなたをかばっているのだからー」


ろうそく職人 「え、エルフ娘が色とりどりでよりどりみどり……」


貝殻の勇者 「舞台か何かのようですね」


王子 (どうして葉巻エルフたちは、妙な姿勢をとっているんだろうか)





692シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 04:21:42.86bH0iFVCR0 (21/46)

※名前表記変更


○○い(○○の)花飾りのエルフ

○○花エルフ


693シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 04:32:43.62bH0iFVCR0 (22/46)



ヴァカカカカカカッ


ろうそく職人 「ああっ、光の柱が何本も降りて辺りが明るくなった!」


貝殻の勇者 「これは……本当に舞台のような場所だったのですね」

貝殻の勇者 「天然の舞台といったところでしょうか」


王子 (一番高いところにある花の上にも、誰か立っている)


白花エルフ 「…………」

白花エルフ 「エルフの里へようこそ、勇者たち人の子らよ」

白花エルフ 「この場に不在の者たちも含めて、エルフの長老たる私たちはあなたがたを歓迎します」





694シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 05:00:52.71bH0iFVCR0 (23/46)



白花エルフ 「これより、エルフ長老会議を開演いたします」

白花エルフ 「ですが、その前に……」


ボワンッ


貝殻の勇者 「あら、私たちの前に食器の乗った長テーブルが」


赤花エルフ 「らーららあ」


青花エルフ 「むぅッ」


黄色エルフ 「はァーッ」


緑花エルフ 「はーいー」


葉書エルフ 「ていっ」


ボワンッ


ろうそく職人 「わあっ、パンにお肉に野菜に魚に飲み物が出てきた!」

ろうそく職人 「ごーちそーうだーい!」





695シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 05:19:08.28bH0iFVCR0 (24/46)



白花エルフ 「里までの旅は、人の身には試練の道。さぞお疲れでしょう」

白花エルフ 「私たちの心からのもてなしです」


貝殻の勇者 「ありがとうございます、エルフの長老さまがた」


白花エルフ 「よく食べ、よく飲み、私たちの会議をお楽しみください」

白花エルフ 「客席のエルフ、妖精、異郷の妖精がた、大人も子供もみなさまどうぞご一緒に」


王子 「客席……?」





696シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 05:24:20.82bH0iFVCR0 (25/46)



パチパチパチパチ ワアアアアア


霧の妖精たち 「ワアアアア」


丘の妖精たち 「ピューピュー」


旅の妖精たち 「ピーピー」


その他妖精たち 「ワアアアア」


貝殻の勇者 「劇場をかこむ大樹から、たくさんの妖精たちが!」


ろうそく職人 「回廊にもいっぱいいます……!」

ろうそく職人 「あ、何人か落ちた」


王子 「お祭り騒ぎだな……」


ハーピィ 「…………」





697シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 05:39:03.92bH0iFVCR0 (26/46)



アー アー アー

バー バァーン バーバァーン 


ろうそく職人 「あ、どこからか何やら荘厳な音楽が」


王子 「何を始めようってんだ」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「空いたお皿はここで良いのでしょうか」





698シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 05:48:39.46bH0iFVCR0 (27/46)



ろうそく職人 「幻想的な光の森の劇場、妖精たちの宴、心あらわれるような音楽」

ろうそく職人 「まるで夢のようです」


王子 「ああ、夢のある話だ」


貝殻の勇者 「ああ、おいしい。夢のよう」


白花エルフ 「……では、歌いましょう」


王子 (白花エルフが動いた)

王子 (歌って、まさか歌で会議をするのか)

王子 (エルフの歌か……変な魔力なんかないよな?)


バァーン ジャラアン 





699シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 05:58:52.71bH0iFVCR0 (28/46)




白花エルフ 「♪それではー、これよりー、長老会議を始めるよー」


赤花エルフ 「♪分かったよー」


青花エルフ 「♪話そうよー」


黄花エルフ 「♪なに話そー」


緑花エルフ 「♪黒花エルフちゃんの報告からだよー」


葉書エルフ 「♪面倒くさいよー」


ラララララー


ろうそく職人 「わあ……!」

ろうそく職人 「みんなクソ音痴ですね!」


王子 「ああ、周りの雰囲気が良いだけに破壊力も抜群だ」





700シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 06:18:31.19bH0iFVCR0 (29/46)



王子 (いや、周りの妖精たちは楽しそうにしているな)

王子 (……もしかすると、エルフの歌は人間には歪んで聞こえるのかもしれない)

王子 (木々や風の声を聞くというエルフの歌だ。むしろこれが自然の……)


ハーピィ 「!? ……!?!?」

ハーピィ 「……!?」


通りすがりおサル 「ウギッ……」


通りすがり狐 「コーン……」


通りすがり狸 「タヌキッ……」


鳥獣たち 「ピーピー……ブオーン……」


ろうそく職人 「ああっ、言葉なき花々は悶え動物たちは逃げていく!」


王子 (大自然的にも駄目なのか)





701シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 06:50:01.56bH0iFVCR0 (30/46)



王子 (……集中しよう)

王子 (歌に惑わされず、エルフたちの会議を聞く)



葉書エルフ 「航路きわめてつつがなく、だ」

葉書エルフ 「人間に幻覚と魔力減退作用をもたらすエルフ第3の薬草は、麻薬として帝国の貴族たちに広まっている」

葉書エルフ 「これで、帝国内の魔法的な戦力は弱体化するだろう」


黄花エルフ 「そこの勇者の洗礼はちゃんとできたのかしら」

黄花エルフ 「でないと巡礼の旅にたえられないわよッ」


葉書エルフ 「ああ。聖別し、僥倖に入れる状態だよ。骨仮面者……人形の目を通して確認した」

葉書エルフ 「はじまりの従者はあのろうそく職人。北東地方領主の城のろうそく職人をしていた。

葉書エルフ 「これからどうなるかは勇者の頑張りしだいだ」





702シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 07:17:17.68bH0iFVCR0 (31/46)



青花エルフ 「うむ。あの領主どのの城にいたのなら問題なかろう」

青花エルフ 「幼き身でよくやり遂げた黒花エルフよ」

青花エルフ 「もはや立派な、黒花の玉座の主じゃな」


葉書エルフ 「子ども扱いはやめろ。何でもないね、これくらい」


緑花エルフ 「まーまー、照れちゃって。青花エルフさんは黒花エルフちゃんに甘いわーねー」

緑花エルフ 「それで、何だか懐かしい体に変わっちゃってるみたいだけど」

緑花エルフ 「つつがなくという言葉に嘘はないのね?」


葉書エルフ 「ああ。勇者が奴隷市に出ると、あんたらの人形から報告を受けたときは驚いたが」





703シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 07:39:50.86bH0iFVCR0 (32/46)



葉書エルフ 「帝国側では」

葉書エルフ 「今まで奴隷市を黙認していた領主は」

葉書エルフ 「さすがに勇者の売買は見過ごせず買い取り、正式に帝国に引き渡すため隠し牢にぶち込んでいたが」

葉書エルフ 「忍び込んだ賊にまぬけにもかっさらわれてしまった」

葉書エルフ 「その際に戦闘となり、なんとか賊の1人は討ち取ったが……」

葉書エルフ 「ということになっている」


青花エルフ 「うむ、予定通りじゃな」

青花エルフ 「ならばその幼き子らは」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「領主の息子と、その付き人だ」





704シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 08:16:37.20bH0iFVCR0 (33/46)



緑花エルフ 「まーまー、どおりで」

緑花エルフ 「まだまだまだまだ渋さが足りないけど、ちょっと憂いのある感じが似てるかしらー」


葉書エルフ 「このオレの今の体と王子……領主の息子は、領主からの餞別と」

葉書エルフ 「エルフと勇者への友好と信頼の証ってところさ」

葉書エルフ 「かなり手荒い見送りになったが、皇帝陛下殿の千里眼はあざむけただろうよ」

葉書エルフ 「まあ、千里眼の種やしかけは推測の域を出ないから手探りだけどな」


黄花エルフ 「悔しいけど、それについては私たち全体の落ち度ねッ」


青花エルフ 「領主どのはよくやっておる」

青花エルフ 「世に混沌を呼ぶ帝国を崩そうとする我らと通じながら、帝国に身を置き続けているのだから」

青花エルフ 「流れる星のごとく儚い人の時間の中で生かすには、おしい男じゃ」


赤花エルフ 「ららあら。それだけ、小ざかしくあなどれないということでしょう」


葉書エルフ 「で、こっちの女は奴隷市で王子が助けた珍しい魔物の娘だが、そうだな……」

葉書エルフ 「馬車の運転ができる」


ハーピィ 「…………」


王子 (少し胸をはったか、ハーピィ?)





705シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 08:31:45.66bH0iFVCR0 (34/46)



緑花エルフ 「じゃあ黒花エルフちゃん、その人間も勇者候補にするつもりなのかしーらー?」


黄花エルフ 「たしかに、ちょっと素質はあるようねッ」


王子 「……!」

王子 (おれが勇者に?)

王子 (……勇者って、エルフが絡むものなのか? 貝殻の勇者はあの宗教がらみみたいだが)

王子 (ということは、あの宗教とエルフと勇者は繋がりがあるのだろうか)

王子 (……親父も忘れちゃいけないか)





706シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 09:08:55.95bH0iFVCR0 (35/46)



葉書エルフ 「待てよ、そうは言ってないだろ。こいつはあくまで領主からの友好の……」


緑花エルフ 「でも、だからって勇者にしちゃいけないことにはならないでしょう?」


青花エルフ 「たしかに。ほとんどの将軍が出払っているとはいえ、いまだ帝国は強大」

青花エルフ 「戦力、とくに勇者級のものは、いていすぎるということはない」


葉書エルフ 「いや、駄目だ。こいつは領主からオレへの餞別でもあるからオレのもので……」


赤花エルフ 「思い上がるなよハーフエルフのガキが」


葉書エルフ 「……!」





707シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 09:24:05.79bH0iFVCR0 (36/46)



王子 (……たった一言であの葉巻を怯ませるとは)


赤花エルフ 「……ららあら。あなたよりも長く玉座に立つ長老たちがこう言っているのに」

赤花エルフ 「それに駄々っ子のような物言いで逆らうなんて、少し愚かに過ぎるのではなくて?」


葉書エルフ 「それは……分かってるさ……」


青花エルフ 「どうしたのじゃ。お前にしてはえらく歯切れが悪いが」


葉書エルフ 「…………」


黄花エルフ 「んっふっふ……」

黄花エルフ 「それについては隠しても無駄よ、黒花エルフ!」





708シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 09:39:29.29bH0iFVCR0 (37/46)



緑花エルフ 「あらまー。何か知っているの黄花エルフさん?」


黄花エルフ 「ええ」

黄花エルフ 「黒花エルフがその人間を勇者にしたくない理由よッ」


葉書エルフ 「…………」


青花エルフ 「……ほう」


赤花エルフ 「……興味ありますわね、すごく」

赤花エルフ 「話してくださるかしら黄花エルフ」





709シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 09:48:14.04bH0iFVCR0 (38/46)



黄花エルフ 「ええッ」

黄花エルフ 「何を隠そう黒花エルフは……」


観客妖精たち 「…………ゴクリ」


王子 (いっせいに黙り込んだ。のりが良いな、観客たち……)


貝殻の勇者 「黒花エルフとは誰のことでしょうか」


ろうそく職人 「たぶん葉書エルフさまのことじゃないですかね」


貝殻の勇者 「なるほど」


パクパクモグモグ

ゴクゴクムシャムシャ 


王子 (この図太さ、さすがは勇者か……)


黄花エルフ 「そう、黒花エルフは」

黄花エルフ 「どうしてもその人間を手放したくないのよ!」





710シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 10:01:05.57bH0iFVCR0 (39/46)



王子 「……うん?」


ハーピィ 「…………」


緑花エルフ 「……えーっとー」

緑花エルフ 「それだけ?」


青花エルフ 「つかいやすい人材なら手元に置きたいものじゃが」

青花エルフ 「あそこまで拒否する理由になるとは思えぬな」


葉書エルフ 「いや、じつはそうなんだ。たいへん優秀な人材だからどうしても……」


黄花エルフ 「それは違うわ!」


葉書エルフ 「!!」


黄花エルフ 「もちろん、手放したくない理由もちゃんとあるわよッ」





711以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 10:07:26.422SwpeyzW0 (1/1)

これが司書長が普通に
ここまでついてきた
理由か…



712シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 10:10:01.78bH0iFVCR0 (40/46)



赤花エルフ 「ららあら、何かしら」


黄花エルフ 「……長老のみんなはご存知のとおり」

黄花エルフ 「さきほど黒花エルフの館まで勇者たちを迎えに行ったのは」

黄花エルフ 「この私の人形よッ」


ボワンッ


狐仮面者 「…………」


観客妖精たち 「おおーっ」


ドヨドヨ ザワザワ


ろうそく職人 「あ、さっきの狐の仮面の人ですね」


貝殻の勇者 「人形……ゴーレムドライブの術でしょうか」





713シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 10:36:54.40bH0iFVCR0 (41/46)



黄花エルフ 「そしてそのとき、この人形の目を通して私は見てしまったのッ」


青花エルフ 「うむ。我々長老はみな、自我を持つ人形を操り」

青花エルフ 「その人形が見ているものを見ることができる」

青花エルフ 「うまくつかえば、離れた場所の出来事も知ることのできる便利な術じゃな」


緑花エルフ 「人形は特殊な魔法を1つ持っていて」

緑花エルフ 「持ち主の長老ごとに違うのよーねー」


観客妖精たち 「おおーっ」


王子 (観客向けに解説したのか。なれている感じが何とも……)


葉書エルフ 「……あっ」

葉書エルフ 「ち、ちがう……あのときのあれはただの冗談で……」


黄花エルフ 「んっふっふ、今さら取り繕うとしても無駄よッ」

黄花エルフ 「人間の世界に長く潜伏しすぎて鈍ったようね黒花エルフッ」


葉書エルフ 「……くっ!」


黄花エルフ 「さあ、みなさんに我が狐仮面者の力をお見せするわッ」


葉書エルフ 「やだ。や、やめ……!」


黄花エルフ 「録音再生魔法、発動!」





714シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 11:07:46.82bH0iFVCR0 (42/46)




狐仮面者 「…………」

狐仮面者 「うーん」


ろうそく職人 「あ、王子さまの声だ。劇場中に響いてますね」


貝殻の勇者 「そっくりですね。物真似の魔法でしょうか」


王子 (おれはこんな声なのか。気持ち悪いな)


ハーピィ 「? ……??」


王子 (ハーピィが、おろおろしている……)


狐仮面者 「警戒しても始まらないよ、王子」


ろうそく職人 「あ、今度は葉書エルフさまだ」


狐仮面者 「オレも離れるのは寂しいが、ちょっとの間だから我慢するさ」

狐仮面者 「……あ、ああ」


王子 (この劇場への馬車に乗り込むときの、おれと葉巻エルフの会話が流れているのか……)





715以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 12:00:49.71vLU+5wcpo (1/1)

乙かな?
葉巻もかわいいなあ


716以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 13:19:13.908MwGpNb80 (1/1)

領主は結局敵なのか味方なのか
オークについては話すなってことはエルフたちは味方と思ってるけど本当は敵?


717以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 15:46:45.75Y2jJBkuLo (1/1)

乙乙!


718以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 16:28:36.58Vd9Jeq7ao (1/1)


ずいぶん人外にモテる王子だなぁ


719以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 18:36:22.46kP+TJuWDO (1/1)

>>715
だが(元)男だ


720以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 19:44:23.55GUMSkwZV0 (1/1)

>>719
だが今は女ですよと


721以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 21:32:38.19XNtnyOFS0 (1/1)

いやもしかしたら葉巻の前は女だったのかもしれん
あれ、葉巻の前がないともあるとも言われてないよね?


722以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 22:03:55.55tWQhxQ7Xo (1/1)

そもそもオレっ娘だと言う可能性を何故挙げないのか


723以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 22:04:37.35ArHIKRF5o (1/2)

黒い花飾り付けてたっぽいし初めは女だったんじゃね


724以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 22:14:28.86+GIfPs83o (1/1)

>>448


725シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 23:01:26.84bH0iFVCR0 (43/46)




黄花エルフ 「……さて」

黄花エルフ 「今のは、とある男女の会話よ」

黄花エルフ 「どんな印象を受けたかしらッ?」


ザワザワ ドヨドヨ


青花エルフ 「……ふむ」

青花エルフ 「かなり短い会話じゃが」


緑花エルフ 「まるで別れを惜しむ恋人たちのようねー」


赤花エルフ 「ええ。でも何かしら、こう……とても聞きおぼえのある声ですわね」


葉書エルフ 「…………」


黄花エルフ 「んっふっふ」

黄花エルフ 「何を隠そうこれこそが……」

黄花エルフ 「ここへ来る少し前に黒花エルフとその人間の男の会話なのよ!」





726シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 23:15:58.25bH0iFVCR0 (44/46)

>>725 訂正

× 黄花エルフ 「ここへ来る少し前に~」

○ 黄花エルフ 「ここへ来る少し前の~」







727以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/02(日) 23:27:11.37ArHIKRF5o (2/2)

ん?


728シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 23:29:14.50bH0iFVCR0 (45/46)


観客妖精たち 「!!!」


ドザワッ


赤花エルフ 「……あら、まぁ」


緑花エルフ 「まーまーまーまー、あらあらあらぁ……!」


葉書エルフ 「…………」


青花エルフ 「……なるほど」

青花エルフ 「その幼き男が勇者になるならば、洗礼の旅に出ねばならん」

青花エルフ 「黒花エルフはその旅についていけぬさだめ」

青花エルフ 「星の瞬きほどの短い別れさえこのように惜しむのだから」

青花エルフ 「その苦しみは筆舌に尽くせぬじゃろうな」


黄花エルフ 「ええ」

黄花エルフ 「何を隠そうその通りよッ」





729シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/02(日) 23:50:31.99bH0iFVCR0 (46/46)



赤花エルフ 「あら……つまり、どういうことなのかしら」

赤花エルフ 「ぬふふふ。私って察しが悪いから、もっと分かりやすく言ってほしいわ」


黄花エルフ 「もちろん、ええッ……」


スウッ


ろうそく職人 「あたりがちょっと暗くなりましたね」


貝殻の勇者 「光の柱が黄花エルフどのを照らしていますね」


黄花エルフ 「……黒花エルフが、私たちに逆らってまでその人間の男を勇者にしたくないのは」

黄花エルフ 「ただ優秀な仲間を手放したくないから、というだけではない……」

黄花エルフ 「もっと深く、妖精の泉よりも深い理由……」


葉書エルフ 「や、やめ……」


黄花エルフ 「狂おしいほどに愛する男のそばからッ!」

黄花エルフ 「かたときも離れたくないのよッ!」





730シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 00:00:03.29uogKZH3Y0 (1/27)



のよッ! のよッ ノヨッ ニョッ…… 


観客妖精たち 「…………!」


エルフの長老たち 「…………!」


ろうそく職人 「…………!」


貝殻の勇者 「…………!」


フカフカ


ハーピィ 「…………」


王子 (あたりの音が死んだ……)


葉書エルフ 「…………」

葉書エルフ 「ふ……」

葉書エルフ 「ふふふ、ふふ……」

葉書エルフ 「はは……ははははははは!」





731シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 00:36:47.01uogKZH3Y0 (2/27)



葉書エルフ 「オレが、人間の男ひとりに心を奪われただって?」

葉書エルフ 「あいにくだが、そんな弱い心は体と一緒に脱ぎ捨てた」

葉書エルフ 「この玉座に立つずっと前に」

葉書エルフ 「オレは男でも女でも人間でもエルフでもない」

葉書エルフ 「だから、男にも女にも人間にもエルフにもなってやる」

葉書エルフ 「善悪なく無情に野を渡る風のようになってやる」

葉書エルフ 「この退廃と腐敗、エルフ黄昏の象徴たる黒花の玉座の主を」

葉書エルフ 「見くびってもらっては困る!」


ろうそく職人 「すごい、お顔が真っピンク!」

ろうそく職人 「ハート色に輝いています!」


貝殻の勇者 「夜空を照らさんばかりに照れていますね」





732以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/03(月) 00:40:21.52y5+a8JZco (1/1)

一番最初の体は女性だったのか


733以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/03(月) 00:45:19.38vtVGDiWVo (1/1)

男色を好む奴だった可能性


734シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 00:50:43.51uogKZH3Y0 (3/27)



黄花エルフ 「…………」


狐仮面者 「あいにくだが、そんな弱い心は体と一緒に脱ぎ捨てた」

狐仮面者 「オレも離れるのは寂しいが、ちょっとの間だから我慢するさ」

狐仮面者 「善悪なく無情に野を渡る風のようになってやる」

狐仮面者 「オレも離れるのは寂しいが、ちょっとの間だから我慢するさ」


葉書エルフ 「……んくぅっ!?」


ろうそく職人 「ああっ、勇ましい声と甘えるような声を交互に再生しています」


貝殻の勇者 「これは恥ずかしいですね」

貝殻の勇者 「しかし他者の声を記録し再生する魔法とは、恐ろしいものです」





735以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/03(月) 00:58:12.07ZZWbElx9o (1/1)

鬼かよwwwwwwww


736以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/03(月) 00:59:09.859q+88du8o (1/1)

可愛すぎワロス


737シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 01:08:58.47uogKZH3Y0 (4/27)



緑花エルフ 「変な意地はってないで、認めちゃったらどうかしーらー?」


葉書エルフ 「このくらいで……!」


黄花エルフ 「まだ足りないようねッ!」


狐仮面者 「この退廃と腐敗、エルフ黄昏の象徴たる黒花の玉座の主を」

狐仮面者 「オレも離れるのは寂しいが、ちょっとの間だから我慢するさ」


青花エルフ 「我慢は体に毒じゃぞ。悪いようにはせん、素直になったらどうじゃ」


葉書エルフ 「ぐぅう……ッ! オレはじゅうぶん素直に生きて……!」


黄花エルフ 「強情ねッ! えいッ!」


狐仮面者 「見くびってもらっては困る!」

狐仮面者 「オレも離れるのは寂しいが、ちょっとの間だから我慢するさ」

狐仮面者 「航路きわめてつつがなくさ」

狐仮面者 「オレも離れるのは寂しいが……」


葉書エルフ 「ぐわああああッ!!」





738シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 01:19:28.77uogKZH3Y0 (5/27)



赤花エルフ 「……自分の恋心を認める気になったかしら?」


葉書エルフ 「はあっ……はあっ……!」


赤花エルフ 「……黄花エルフ」


黄花エルフ 「ええっ」


葉書エルフ 「!」

葉書エルフ 「ま、待て、待ってくれ……!」


赤花エルフ 「……認めるのね?」


葉書エルフ 「ぐっ……み、認める」


赤花エルフ 「何を?」


葉書エルフ 「!」


赤花エルフ 「ごめんなさいねえ。私、察しが悪くて……」


葉書エルフ 「…………」

葉書エルフ 「オ、オレは王子が、す……好きだ……と、認める……」





739シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 01:26:35.50uogKZH3Y0 (6/27)



観客妖精たち 「…………ゴクリ」


シンッ


赤花エルフ 「……フッ」

赤花エルフ 「にょーっほほほほほ!」

赤花エルフ 「いまの黒花エルフの言葉、ちゃんと狐仮面者に記録しましたか黄色エルフ!?」


黄花エルフ 「ええ、それについてはばっちりよ!」

黄花エルフ 「これでいつでも脅せるわ!」


葉書エルフ 「…………!」


ろうそく職人 「エルフの長老さまたち……なんて……」


貝殻の勇者 「恐ろしい……」






740シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 01:33:45.67uogKZH3Y0 (7/27)



緑花エルフ 「うーふーふーふー。これーでー」


青花エルフ 「うむ。一件落着、じゃな……!」


観客妖精たち 「おお……」


パチ……

パチパチパチパチパチ


川の妖精たち 「ひゅーひゅー!」


キキーモラたち 「おめでとー!」


その他妖精たち 「ヤンヤヤンヤ!」


ワアアアアアア


葉書エルフ 「…………」


貝殻の勇者 「……これぞまさに」


ろうそく職人 「公開処刑ですね!」





741シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 01:36:30.28uogKZH3Y0 (8/27)



ワアアアアアア

パチパチパチパチパチ

ワアアアアアア


王子 「…………」

王子 (どえらいことになった……)


ハーピィ 「…………」





742シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 02:16:10.64uogKZH3Y0 (9/27)



ワアアアア


緑花エルフ 「色恋絡みじゃあ、しかたないわよねーえー」


青花エルフ 「うむ。我を通す理由として納得できる」

青花エルフ 「我らも、甘くならざるを得ん」


赤花エルフ 「そうですわね。本来なら馬の首を刎ねてさしあげるところですけれど」

赤花エルフ 「気分も良いことですし」


黄花エルフ 「これにこりたら生意気な言動はひかえることね、黒花エルフッ」


葉書エルフ 「く、くそ……」


白花エルフ 「……では」


シンッ


王子 (白花エルフの一言で、一気に空気が張り詰めた)

王子 (雪の日の朝がこんな感じだったな)





743以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/03(月) 02:23:13.56ILN205Xa0 (1/1)

告白されたってのに王子呑気だなwwwwww


744シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 02:34:39.24uogKZH3Y0 (10/27)



白花エルフ 「♪これにてエルフ会議は終わりだよー」


赤花エルフ 「♪分かったよー」


青花エルフ 「♪疲れたよー」


黄花エルフ 「♪みんな楽しんでくれたかよー」


緑花エルフ 「♪次の会議も頑張るよー」


葉書エルフ 「♪それではせーのでー」


エルフの長老たち 「♪さよーならー」


ジャ ジャ ジャ

ジャアーン


観客妖精たち 「ワアアアアア」


パチパチパチパチパチ


ろうそく職人 「最後の最後までクソ音痴でしたね!」


貝殻の勇者 「気を抜くと会議の内容が分からなくなりそうで、大変でした」

貝殻の勇者 「また、あたりが暗くなりましたね」


葉書エルフ 「……さっさと帰るぞ」


ろうそく職人 「って、何で葉書エルフさまが!?」


貝殻の勇者 「いつの間に」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


パチパチパチパチ

ワアアアアアアア


…………




745シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 02:46:59.31uogKZH3Y0 (11/27)



ガタガタ ゴトゴト


葉書エルフ 「…………」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「葉書エルフさま、帰りの馬車は同じなんですね」


貝殻の勇者 「行きとは違うのですね。つかいの者もつきませんでした」


葉書エルフ 「…………」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」





746シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 02:53:28.69uogKZH3Y0 (12/27)



葉書エルフ 「王子」

葉書エルフ 「……ん」


王子 「ん」


ろうそく職人 「王子さまが葉書エルフさまの肩に手をかけて……」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「揉みはじめましたね」





747シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 03:07:10.50uogKZH3Y0 (13/27)



王子 「……役者を目指すと良いんじゃないか、ジュリエルフ」


葉書エルフ 「お前にはかなわないよ、ロミ王子」


王子 「妙な喋りかたをすると思ったら……」

王子 「そういうことだったんだな」


葉書エルフ 「ああ、狐仮面者が迎えで良かったぜ」

葉書エルフ 「しかしエルフの長老がたを相手にするのは肩がこる」

葉書エルフ 「全員そろってたら、お前は今ごろ勇者の卵さまだ」





748以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/03(月) 03:08:56.53zvnOFNj80 (1/1)

このエルフ………できる!!


749シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 03:40:08.76uogKZH3Y0 (14/27)



王子 「狐仮面者の魔法を知らないふりして、嘘の秘密をつかませたんだな」


葉書エルフ 「よしよし、分かってる。町での付き合いが長いだけあるね」


王子 「相手の手札に毒をしこむような真似して」

王子 「そんなにおれを勇者にしたくないか、ひねくれエルフ」


葉書エルフ 「悩みやすいお前のためを思ってだよ」

葉書エルフ 「ただでさえ今夜の長老会議でややこしくなったってのに」

葉書エルフ 「そのうえ勇者を目指すなんてこの上なくしんどいことになってみろ」

葉書エルフ 「脳みそが過労死するぜ、お前」


王子 「……たしかに」


ハーピィ 「…………」





750シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 03:50:01.64uogKZH3Y0 (15/27)



王子 「しかし、そこまでする必要があったのかね」

王子 「どうも、おれは勇者なんてがらじゃないと思うが」


葉書エルフ 「たしかに。お前はオレと同類だから」

葉書エルフ 「でも万が一だよ」


ハーピィ 「…………」


王子 「やりたい放題だなお前は」


葉書エルフ 「万事航路つつがなく、さ」


ろうそく職人 「善悪なく無情に野を渡る風のようになってやる」


貝殻の勇者 「オレも離れるのは寂しいが、ちょっとの間だから我慢するさ」


葉書エルフ 「はっ倒すぞお前ら」


ガタガタ ゴトゴト





751シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 04:15:50.16uogKZH3Y0 (16/27)



エルフの里 黒花エルフの館



葉書エルフ 「とりあえず、今日の用事は済んだ」

葉書エルフ 「明日はこの里で自由に行動してくれて良い」


貝殻の勇者 「すぐには出発できないのですか?」


葉書エルフ 「あせりなさんな、勇者さま」

葉書エルフ 「今後の行動についていろいろと話し合う。あんたのことについてもだ」

葉書エルフ 「あんたはほかの勇者にくらべて少々優秀らしいからな」

葉書エルフ 「今夜は里にいなかった者にも報告しておかなくちゃならないしな」


ろうそく職人 「またあの恥ずかしい歌って踊ってをするんですか?」


葉書エルフ 「恥ずかっ……多くの妖精は基本的にお祭り騒ぎが好きだからな」


王子 (あれがさらに増えるのか……)

王子 (……地獄だな)


ハーピィ 「…………」






752シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 04:59:32.78uogKZH3Y0 (17/27)



葉書エルフ 「帝国は侵略戦争を重ね、今や大陸全土を覆わんばかりの災いを振りまいている」

葉書エルフ 「まるで国全体が悪魔にとりつかれて、気でも狂ったように」


貝殻の勇者 「嘆かわしいことです」


葉書エルフ 「妖精たちのほとんどは、人間たちの世界がどうなろうが構わない」

葉書エルフ 「また戦争か、こりない愚か者たちだと、むしろ笑って見ていた」

葉書エルフ 「が、やがてそれに飽きた」


王子 「飽きたのか」





753シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 05:13:46.01uogKZH3Y0 (18/27)



葉書エルフ 「思い上がった帝国軍の所業が鼻につくようになった」

葉書エルフ 「世界平和のため。しいたげられる人間を哀れんで」

葉書エルフ 「納得できる理由をでっち上げてくれて良い」

葉書エルフ 「とにかく」

葉書エルフ 「帝国を、まあ、ひとつこらしめてやることにした」


ろうそく職人 「…………グゥ」





754シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 05:39:40.96uogKZH3Y0 (19/27)



葉書エルフ 「妖精はお祭り好きだ」

葉書エルフ 「どうにか劇的にやれないかと考えた」


貝殻の勇者 「いたずらを考える子供のようですね」


葉書エルフ 「その通り。感覚としては、少々大規模な妖精のいたずらにすぎない」

葉書エルフ 「なお妖精は気まぐれで」

葉書エルフ 「ふざけたいたずらに何となく命をかけたりする」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「そこで妖精たちは、あるものに目をつけた」

葉書エルフ 「それが、あの宗教がひろめていた」

葉書エルフ 「世界の終末にあらわれるという勇者の伝説」






755シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 06:11:57.13uogKZH3Y0 (20/27)



葉書エルフ 「人間の領域では失われてしまった伝説を」

葉書エルフ 「なぜあの宗教が知っていたのかは知らないが」

葉書エルフ 「そんなことはどうでも良い」

葉書エルフ 「妖精たちはあの宗教と接触」

葉書エルフ 「妖精の領域に伝わっていた、素質ある人間を勇者に開眼させる術を伝えた」

葉書エルフ 「こうして、今が伝説のときなのか誰も分からないままに」

葉書エルフ 「人間と妖精による、妖精のいたずらもとい共同作戦」

葉書エルフ 「勇者たちの巡礼がはじまった」





756シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 06:27:43.95uogKZH3Y0 (21/27)



貝殻の勇者 「そ、それでは、勇者というのは妖精のでっちあげなのですか?」


葉書エルフ 「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

葉書エルフ 「勇者の伝説は、妖精の領域にもすべて残っているわけじゃないからな」

葉書エルフ 「妖精は面倒くさがりでうっかりやなんだ」

葉書エルフ 「かく言うオレも、こうやって働いてはいるが」

葉書エルフ 「できればふらふら暮らしていたい」

葉書エルフ 「働くか死ぬか、死ぬほど悩んだものさ」


王子 「胸をはって言うな」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「……ああ。ちょっと良かった」


貝殻の勇者 「破廉恥な」





757シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 07:16:51.10uogKZH3Y0 (22/27)



カチッ コチッ

ボーン ボーン クルッポー


王子 「そんなこと話して良いのか」


葉書エルフ 「隠しといて、あとでばれる方が厄介だろ」

葉書エルフ 「勇者はたくさんいた方が助かるが」

葉書エルフ 「真相を知って勇者をやめるならそれも良いさ」


貝殻の勇者 「…………」

貝殻の勇者 「……私は、帝国の悲しい行いを正したいだけです」

貝殻の勇者 「この程度で、歩みは止めません……!」


ポトッ パラッ


王子 (勇者の懐から何か包みが落ちた)

王子 「……さっきの長老会議で出た料理か」

王子 (持ち帰っていたのか……)


葉書エルフ 「……おめでとう、貝殻の勇者」

葉書エルフ 「これで本当の勇者さまだ」





758シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 07:56:17.59uogKZH3Y0 (23/27)



貝殻の勇者 「なるほど、食べ物を大事にする心が……」


葉書エルフ 「あんたなら勇者の力に溺れることもないだろう」

葉書エルフ 「少なくとも、今の話を聞いて怒って暴れるようなことはなかった」


貝殻の勇者 「……当たり前です。そんなことはしません」


王子 (誤魔化したな)


葉書エルフ 「勇者の伝説を聞いて立ち上がった者」

葉書エルフ 「その中でも素質のある者に勇者の力をあたえる」

葉書エルフ 「これが、人間の領域での洗礼」

葉書エルフ 「その後に間抜けな真相を知らせて心を試す」

葉書エルフ 「折れるようならば、勇者の力を没収する」

葉書エルフ 「これが、妖精の領域での洗礼」

葉書エルフ 「この2つを、勇者の洗礼とする」





759シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 08:34:35.82uogKZH3Y0 (24/27)



貝殻の勇者 「ということは……」


葉書エルフ 「あんたは一応、人間と妖精から認められたってことだ」

葉書エルフ 「今回の妖精側の代表は、エルフの長老の1人。つまりオレだ」

葉書エルフ 「食い意地は少々はっていたが、ここまでの行い、従者のあつかいもろもろ」

葉書エルフ 「悪くはなかったんじゃないか」


貝殻の勇者 「あ、ありがとうございます」


葉書エルフ 「ところで、オレは洗礼という言葉の意味を知らないんだが」

葉書エルフ 「どんな意味なんだ?」


王子 「おいおい……」





760シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 09:08:52.23uogKZH3Y0 (25/27)



葉書エルフ 「別に伝説と違うからといって、勇者でないというわけじゃない」

葉書エルフ 「勇者に魔王はいらない」

葉書エルフ 「称号だっていらない」

葉書エルフ 「むしろ勇者なんていない」

葉書エルフ 「だが、お前の生き様が勇者たれば、人は自然とお前を勇者と呼ぶだろう」

葉書エルフ 「お前を必要とするだろう」

葉書エルフ 「ときに皇帝が、ときに飢えが、魔王としてお前の前に立ちはだかるのだろう」

葉書エルフ 「そうやって、新しく勇者の伝説は生まれていくのだろう」

葉書エルフ 「古い伝説にとらわれず、お前なりの勇者の道を進むがいいさ」

葉書エルフ 「オレがエルフの長老として言えることはこのくらいだ」


貝殻の勇者 「…………」

貝殻の勇者 「ありがとう、ございました」





761シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 09:16:50.74uogKZH3Y0 (26/27)



ろうそく職人 「ムニャムニャ……無情に野を渡る風のようになってやる」

ろうそく職人 「どぅへ、どぅへへへへ……グゥ」


葉書エルフ 「エルフの長老としてあの無礼者を呪い殺そう」


王子 「エルフの長老として我慢してくれ」


ハーピィ 「…………」





762シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/03(月) 09:50:35.46uogKZH3Y0 (27/27)



葉書エルフ 「と、めでたく新たに勇者が誕生したところで」

葉書エルフ 「何度も言うように帝国は強大だ」

葉書エルフ 「名だたる将軍たちが侵略戦争で外に散っている今も、大臣連中やら国家憲兵隊やら厄介なのは残っている」

葉書エルフ 「そして、皇帝の謎の千里眼。悪魔的な地獄耳」

葉書エルフ 「これのせいで、反乱は起こる前に潰される」

葉書エルフ 「妖精側もうかつには動けない。対策もなかなかうまくいっていない」

葉書エルフ 「だから、話し合いに時間をかけるってわけだ」


王子 「……なるほどね」


貝殻の勇者 「焦るべきではないのですね……」


葉書エルフ 「ただでさえ笑えないご時勢だ」

葉書エルフ 「せめて笑っていこう」

葉書エルフ 「では諸君、おやすみ」





763以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/03(月) 12:10:46.86a5YJgA3XO (1/1)


面白いな


764以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/03(月) 18:37:36.74nXNw9L/wo (1/1)

更新速いしハーピィ可愛いし最高だな


765以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/03(月) 21:21:02.00FqkfoQSG0 (1/2)

色々わからないことも多いし今一番気になるのがこれだ


766以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/03(月) 21:21:50.80FqkfoQSG0 (2/2)

色々わからないことも多いし今一番気になるのがこれだ


767シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 02:46:12.908IjllYvg0 (1/31)



…………


エルフの里 川のそば



チチチ ピィピィ

サアアア


貝殻の勇者 「ふっ!」

貝殻の勇者 「はっ!」

貝殻の勇者 「せぇい!」


王子 「ふっ!」

王子 「でやっ!」

王子 「とう!」


ヒュッ ヒュン ブオン  


ハーピィ 「…………」





768シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 03:06:17.898IjllYvg0 (2/31)



見回りエルフ 「帝国の皇帝には2人の娘がいたが」

見回りエルフ 「ずいぶん前に2人とも死んでしまったという」

見回りエルフ 「思えば今の帝国の暴走は、そのときから始まっていたのかもしれない」


チチチチ サラサラサラ


貝殻の勇者 「ふう……」

貝殻の勇者 「王子どのから借りた剣、軽くて丈夫で振りやすいですね」

貝殻の勇者 「朝の澄んだ空気の中、このような場所で訓練をするのも気持ち良いものです」


王子 「ふう……」

王子 「勇者どのの槍、なかなか扱いやすい」

王子 「おかげでたくさん魚がとれたな、ハーピィ」


ピチピチピチピチ


ハーピィ 「…………」


コクン





769シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 03:21:59.788IjllYvg0 (3/31)



黒花エルフの館 



ろうそく職人 「…………」


葉書エルフ 「…………」


ろうそく職人 「ぬ、ぬ、ぬ、ぬ、ぬ……」


葉書エルフ 「…………」


ろうそく職人 「無情に野を渡る風に吹かれていでよ、地獄の炎!」


ポワッ


ろうそく 「ユラユラ」


ろうそく職人 「や、やった!」

ろうそく職人 「言われたとおりにやったら、初めて成功した!」


葉書エルフ 「…………」


ろうそく 「ユラユラ」


葉書エルフ 「……地獄の炎?」






770シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 03:28:41.968IjllYvg0 (4/31)



ガチャ


貝殻の勇者 「戻りました」


フッ


ろうそく職人 「ああっ、入ってきたそよ風でろうそくの炎が!」

ろうそく職人 「地獄の炎が消えてしまった!」


王子 「魚とれたぞ」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「朝食にしよう」





771シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 03:58:50.198IjllYvg0 (5/31)



カチャカチャ パクパク


貝殻の勇者 「……なんと」

貝殻の勇者 「ついに火の魔法が成功したのですか」


ろうそく職人 「は、はい……」

ろうそく職人 「だけど、風で消えるくらい弱くて」

ろうそく職人 「この大樹を焼き尽くすつもりでやったんですが……」


葉書エルフ 「おい」


貝殻の勇者 「いいえ、すごい進歩だわろうそく職人さん」

貝殻の勇者 「少しずつ、一緒に前に進んでいきましょう」


ろうそく職人 「はい!」

ろうそく職人 「早く勇者さまのお力になれるよう頑張ります!」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「ろうそくの芯から噴水みたいに水が出たときは、どうしたもんかと思ったけどな」


王子 「それ、けっこうすごいんじゃないのか」





772シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 04:12:00.678IjllYvg0 (6/31)



ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「なんだ、もう食べないのか?」


ハーピィ 「……?」


王子 「食べても食べなくても大丈夫らしい」


葉書エルフ 「ゴースト系にも物を食うやつらがいるってのに」

葉書エルフ 「不思議なやつだな」


カチャカチャ 





773以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/04(火) 04:16:27.883i0FZ4TW0 (1/1)

ろうそく職人さん
かちかち山にならんで
よかったねと


774シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 04:32:49.628IjllYvg0 (7/31)



ろうそく職人 「す、すごい。この食器、食べられます!」

ろうそく職人 「甘い!」


貝殻の勇者 「食器をデザートにするとは、エルフ……」

貝殻の勇者 「のぞむところです」


バリバリ ホッコリ


葉書エルフ 「それにしても」


王子 「ん?」


葉書エルフ 「やけに落ち着いているじゃないか」

葉書エルフ 「領主の真実を知って緊張の糸が切れ」

葉書エルフ 「オレの胸に泣きついてでもくるかと思っていたが」


王子 「頭が追いつかん」

王子 「流されるにまかせて今を生きるので精一杯だよ」


葉書エルフ 「それが生き物のあるべき姿ってもんだ」





775シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 04:49:37.768IjllYvg0 (8/31)



王子 「……お前と親父は繋がっていたんだな」


葉書エルフ 「ああ。このみっともない体の持ち主もだ」

葉書エルフ 「本来お前には平和的に事実をうちあけ丸め込み」

葉書エルフ 「あの領主と一緒に動いてもらうはずだったが」

葉書エルフ 「旅に憧れているお前のことを思った領主どのの遊び心で」

葉書エルフ 「皇帝の目くらましもかねて芝居をうったと言うわけだ」


王子 「なんてこった」

王子 「じゃあ、お前が死ぬのも予定通りだったのか?」


葉書エルフ 「ああ。まあ、けじめってやつさ」


王子 「あの体にも、持ち主はいたのだろ」


葉書エルフ 「行き倒れのエルフの体をいただいた」


王子 「そうかい」

王子 (町の葉巻エルフは、こいつの本当の姿じゃないんだな)





776シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 04:58:10.878IjllYvg0 (9/31)



王子 「いったい何者だよ、お前は」


葉書エルフ 「安心しろ」

葉書エルフ 「じつは領主の実の子じゃなかったお前の親なんてオチはないから」


王子 「なるほど」

王子 (それは考えなかったな)

王子 「で、あのことを口止めした理由は何かな?」


葉書エルフ 「…………!」


王子 (動揺した。やはりオーク兵のことについても、何かあるか)





777シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 05:04:56.688IjllYvg0 (10/31)



葉書エルフ 「…………」

葉書エルフ 「たとえば」

葉書エルフ 「楽しい食事中にジャイアントヘドロゴキブリの話をしたら」

葉書エルフ 「人間は愉快な気持ちになるか?」


王子 「…………」

王子 「……ふむ」


ハーピィ 「…………」





778シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 05:37:28.848IjllYvg0 (11/31)



チリリン リリン


王子 「誰か来たみたいだ」


葉書エルフ 「……どうぞ」


ガチャ


無顔仮面童子 「…………」


無顔仮面童女 「…………」


王子 (また仮面……エルフの長老の誰かの人形かな)

王子 (しかし平らな白い仮面の双子とは、また妙な)


無顔仮面童子 「朝もはよから失礼します、黒花のエルフさま」


無顔仮面童女 「青花のエルフさまの言葉を伝えにまいりました」





779シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 05:58:52.828IjllYvg0 (12/31)



王子 (青花エルフのつかいか……)


葉書エルフ 「何だい。お小言なら聞かないぜ」


無顔仮面童子 「恐れ多い。我々の口から黒花のエルフさまにそのようなこと」


無顔仮面童女 「日のあるうちに、王子どのを」

無顔仮面童女 「青花のエルフさまの大樹にお招きいたしたいのです」





780シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 06:11:27.658IjllYvg0 (13/31)



王子 「…………」


葉書エルフ 「やだ。王子は今日一日、オレの体を揉みほぐして過ごすんだ」


王子 「なにっ」


無顔仮面童子 「恋人を離したくないのは分かりますが、そこを何とか」


王子 「なにっ」


葉書エルフ 「やだ」


無顔仮面童子 「切り餅あげますから」


葉書エルフ 「やだ」


無顔仮面童女 「……かくなる上は、昨晩のあれをばら撒くしか」


葉書エルフ 「……しかたないな」


王子 (どっちが子供だ)





781以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/04(火) 06:18:19.07irQ5hfuy0 (1/1)

どっちもどっちwwww


782以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/04(火) 06:19:43.51SBFjbdwr0 (1/1)

縺九o縺?>wwwwww


783シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 06:36:20.118IjllYvg0 (14/31)



トッ トッ トッ


ろうそく職人 「ふんふんふーん、私は不運なろうそく職人~」


葉書エルフ 「ちぇっ、今日はろうそく娘を脳みそがシチューになるまでしごくとしよう」

葉書エルフ 「晩飯はシチューだ」


ろうそく職人 「えっ!?」


無顔仮面童子 「……では、参りましょう」


王子 「今からなのか」


ハーピィ 「…………」


王子 「この子も連れていって良いかな。駄目なら行けない」


無顔仮面童女 「…………」

無顔仮面童女 「良いとのことです」





784シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 07:07:07.528IjllYvg0 (15/31)



…………


ドヤドヤ


ケットシー 「よかったよかった、これで材料が揃ったよ」


クーシー 「はやく帰って準備しよう。武術大会まであと少しだもの」


ザワザワ


王子 「大樹の中は本当に賑やかだな」


ハーピィ 「…………」


無顔仮面童子 「ドワーフの塔などと並び、ここはもっとも妖精たちの集まる地です」

無顔仮面童子 「人間の領域では珍しい食べ物や薬、魔法の道具も手に入りますよ」


王子 「へえ。あとで見てみようかな」





785シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 07:19:30.148IjllYvg0 (16/31)



王子 (それにしても、やけに人通りの多いところを通るな)

王子 (他の長老の大樹も、離れた場所にあると思っていたけど)


無顔仮面童女 「……ときに、王子どの」


王子 「なにかな」


無顔仮面童女 「餅、という食べ物をご存知ですか」


王子 「ああ。親父が好きだったな」


無顔仮面童女 「美味しいですよね」


王子 「うん。もとは帝国になかった食べ物だそうだが」


無顔仮面童子 「青花のエルフさまも、お好きなのですよ」


王子 「へえ、エルフにも好かれているのか」


無顔仮面童子 「ええ」


無顔仮面童女 「…………」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」





786シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 07:25:10.368IjllYvg0 (17/31)



無顔仮面童子 「おや、あんなところに」


王子 「ん?」


看板 『餅屋』


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


無顔仮面童子 「…………」


無顔仮面童女 「美味しいですよね」





787シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 07:53:49.348IjllYvg0 (18/31)



…………


無顔仮面 「黒花エルフはどこから来たのか」

無顔仮面 「この里に現れたときにはすでに、優秀な魔法使いだった」

無顔仮面 「エルフなのか人なのか、男なのか女なのか、大人なのか子供なのか」

無顔仮面 「つれてきた青花エルフにも分からない」


王子 (青い花のある庭園に、門の仮面……他の大樹とは離れたところにあるのも)

王子 (葉巻エルフの大樹と似ているな。長老のはみんな似たようなものなのかな)

王子 (……すごい遠回りをした気がする)


無顔仮面童子 「では、お入りください」


ゴゴゴゴ





788シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 08:27:38.028IjllYvg0 (19/31)



ガチャッ


王子 「……おや」

王子 (暗い。昨日の劇場みたいだ)

王子 「なあ……」


ハーピィ 「…………」


王子 「仮面の双子が……消えた」


ヴァカッ


王子 「!」

王子 (館の奥に光の柱が……)

王子 (誰かを照らしている。あれは……)


青花エルフ 「…………」


王子 (青花エルフ)





789シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 08:56:05.358IjllYvg0 (20/31)



青花エルフ 「…………」


王子 (なんで正座しているんだ……)


ヒラ ヒラ ヒラ ヒラ

テフ テフ テフ テフ


王子 (青い花びらが……)


青花エルフ 「…………」

青花エルフ 「500、700、900と」

青花エルフ 「私の人生、旅じゃった……」


王子 「……!」




790シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 09:04:04.968IjllYvg0 (21/31)



青花エルフ 「旅から旅への旅エルフ」

青花エルフ 「おきらく道中まんじゅしゃげ」

青花エルフ 「あえて語らぬじんちょうげ」

青花エルフ 「刀1本おみなえし」

青花エルフ 「くずふじばかま青花エルフ」

青花エルフ 「たゆとう私は青花エルフ」

青花エルフ 「あ、オーレイ!」


王子 「…………」

王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」

王子 (これは、へたしたら……)

王子 (やられる……!)





791以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/04(火) 09:22:27.74Em9waU/n0 (1/1)

乙?
やられる…ワロタ


792以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/04(火) 14:43:45.48cbX8tC2Yo (1/1)

ここ最近ほんと面白い
おつやでー


793以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/04(火) 17:39:51.55PTPwdE6Io (1/1)

おっつおっつ
(精神的な意味と、笑ったら物理的な意味で)やられる…!


794シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 19:54:35.738IjllYvg0 (22/31)



青花エルフ 「我が大樹へようこそ、幼き人間の男よ」

青花エルフ 「私は……む、その手に持っておるのは」


王子 「あ、ああ……餅屋の餅だ」

王子 「あなたが好きだと聞いたので……」


青花エルフ 「ほう。手ぶらで来ぬとは、なかなかよくできた子供じゃ」

青花エルフ 「私はエルフの長老の1人、青花エルフ」


王子 「おれは帝国北東地方領主の息子、王子」


ハーピィ 「…………」


王子 「こちらは、ハーピィ」

王子 「わけあって、普段はほとんど話すことができない」


青花エルフ 「うむ。黒花から聞いておる」





795シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 20:42:37.528IjllYvg0 (23/31)



青花エルフ 「……大きくなったな、領主どのの子よ」


王子 「おれのことを知っているのかい。おれはあなたのことを知らないのに」


青花エルフ 「あえて語らぬ」

青花エルフ 「が、領主どのにはかつて世話になったことがある」

青花エルフ 「今こうしてお前を迎えておるのは、その恩を返すためじゃ」


王子 (餅を買わせて変なのを見せつけただけじゃないか、とは言えないな)

王子 (まさか、さっきの変なのが恩返し……?)


青花エルフ 「あえて語らぬが、黒花もいろいろと世話になっておるようじゃしな」


王子 (そうか。そういうことになっているんだった)





796シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 21:29:30.888IjllYvg0 (24/31)



青花エルフ 「……剣は腰にあるな」


王子 「ああ」


青花エルフ 「よろしい」

青花エルフ 「では」


ヴァカカカカカ


王子 「……!」

王子 (あたりが明るくなって)

王子 (舞っていた青い花びらが、ぜんぶ武器に変わった。これも魔法か?)


青花エルフ 「さっそく稽古をつけてやろう」





797以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/04(火) 21:33:43.00ZSmxUGReo (1/1)

よくわからんが下手な歌聞かされたでおk?


798シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 22:11:17.048IjllYvg0 (25/31)



青花エルフ 「無情に野を渡る風のように世界を旅し、剣の腕を磨き」

青花エルフ 「私なりに答えを見た。あー若かったなあ、私」

青花エルフ 「剣には3つの道があり、人は1つを極められる」


ヒュン ヒュン ヒュン


青花エルフ 「お前がこの里におる間に極めることは無理な話だが」

青花エルフ 「どの道に向いておるのかくらいは知らせることができよう」


王子 (剣、槍、棍棒……羽虫みたいに飛びまわっている)





799シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 22:26:56.138IjllYvg0 (26/31)

789~790のことなら、その通りでございます。
歌というか演歌の前口上というか、そんな感じでどうか1つ。



800シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 22:38:06.978IjllYvg0 (27/31)



青花エルフ 「これより、私が旅の中で集めた古今東西の武器がお前を襲う」


王子 「殺す気か」


青花エルフ 「殺しはせん。術により、一撃の威力は蚊が刺すよりも弱くおさえておる」

青花エルフ 「証拠に」


ブンッ

ポヘッ


王子 「!」

王子 (鉄の槌が青花エルフの頭を思い切り殴ったが……)


青花エルフ 「……のう?」


王子 (気の抜ける音が鳴っただけで、何ともなっていない)





801シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 22:57:21.928IjllYvg0 (28/31)



王子 「いや、しかし……本当におれにも痛くないとは……」


青花エルフ 「あ、お前の肩に皇帝がとまっておる」


王子 「!」


ヒュッ

ポヘッ


王子 (剣できられた……)

王子 「……なるほど。あまり痛くない」

王子 「しいてたとえるなら、蛇腹状に折りたたんだ紙で殴られたみたいだ」


青花エルフ 「お前はできるだけ攻撃をくらわんようにすれば良い」

青花エルフ 「もちろん、その幼き女は狙わぬ」

青花エルフ 「どうじゃ、やるか?」


王子 「……ハーピィ。少し離れていられるかい?」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


コクン


王子 「すまないね」

王子 「稽古をつけていただけるかな、青花のエルフどの」


青花エルフ 「よろしい」

青花エルフ 「では、お前が剣をかまえたら始める」





802シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 23:20:20.268IjllYvg0 (29/31)



王子 「…………」


シュラッ


青花エルフ 「……始め」


ヒュン


王子 「む!」


ガキンッ


王子 (剣を剣で受けたら、普通の音が鳴った)

王子 (しかし、何だ。くらったときは軽かったのに、怪力の男でも相手にしてるみたいだ)


ヒュッ

ピコッ


王子 「!」

王子 「なあ、2つ一緒は卑怯じゃないかな……」


青花エルフ 「敵が卑怯でないとは限らん」





803シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 23:31:53.918IjllYvg0 (30/31)



ヒュッ ヒュッ ヒュッ ヒュッ 

ヒュッ ヒュッ ヒュッ ヒュッ


王子 「…………!」


ガキッ カキッ ポヘッ ポコッ

ブニッ ガキッ ホワッ ポヘッ


王子 「いつまで続くんだ、これは……」


青花エルフ 「一撃は軽いが、積み重なれば馬鹿にならんぞ」

青花エルフ 「そうじゃな……」

青花エルフ 「私がお前の持ってきた餅を食い終わるまでにしようか」


王子 (いつの間に……)


ポヘッ ホヒッ カキンッ


…………





804シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/04(火) 23:57:19.518IjllYvg0 (31/31)



…………


青花エルフ 「……ふぅ」

青花エルフ 「ごちそうさま。やはり餅は餅屋にかぎる」

青花エルフ 「これを半日かけてゆるゆると食べるのがまた良い」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


青花エルフ 「最後まで立っていられなかったか」

青花エルフ 「馬鹿にならぬと言ったじゃろうに」


王子 「…………」


青花エルフ 「さて、長老会議の時間じゃ。私は行かねばならん」

青花エルフ 「お前も黒花の館へ戻るがよい。童たちに送らせよう」


王子 「…………」


青花エルフ 「明日もまた、同じころに来るがよい。餅を持って」

青花エルフ 「来る前には、自然の声に耳をかたむけて心を清めておくこと」

青花エルフ 「これは時間があればいつでもやるように」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


…………





805シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 00:06:07.66mGXVMFup0 (1/26)



ホー ホー 

サワサワ


黒花エルフの館



貝殻の勇者 「おや、ろうそく職人さんに王子どの」

貝殻の勇者 「こんな時間までいったい……」


ろうそく職人 「…………」


ヨレヨレ


王子 「…………」


ボロボロ


ろうそく職人 「…………」


王子 「…………」


ろうそく職人・王子 「…………ぅ」

ろうそく職人・王子 「おえーっ!」


貝殻の勇者 「おおおおおおお!?」


…………





806シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 00:44:00.97mGXVMFup0 (2/26)



ろうそく職人 (それから私と王子さまは)


黒花エルフ 「……じゃ、長老会議に行ってくる。今日は勇者さまも一緒だ」

黒花エルフ 「晩飯はそこに置いておくから、ちゃんと食っとけよ」


ろうそく職人 「…………」


王子 「…………」


貝殻の勇者 「どっぷり瞑想していますね」


ろうそく職人 (働きもせずにそれぞれ修行にはげみました)

ろうそく職人 (私は魔法。王子さまは剣)

ろうそく職人 (そんな日々が続いたある日……)


王子 「…………」

王子 「……見えた」


ろうそく職人 (王子さまは、何かをつかんだようです)


王子 「おれには……才能がない」






807シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 00:53:53.99mGXVMFup0 (3/26)

>>806 訂正。ごめんなさい。

×黒花エルフ

○葉書エルフ

同じ人だけども……。


808シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 01:12:52.68mGXVMFup0 (4/26)



青花エルフの館



青花エルフ 「…………」

青花エルフ 「そろそろ来るころか。餅……もとい黒花エルフの恋人」

青花エルフ 「今日はどんな趣向で迎えようか……」


ガチャ


無顔仮面童子 「青花エルフさま」


青花エルフ 「む」

青花エルフ 「……王子がおらぬな?」


無顔仮面童子 「それが……」




809シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 01:24:01.42mGXVMFup0 (5/26)



???



ガチャガチャ ジュージュー


牛人 「飯! たけたぁ!」


馬人 「ソース! できたわ!」


王子 「海老! ゆで上がった!」


火の妖精 「かま! あったまったよ!」


料理長 「よっし、ドリアいくぞ!」


一同 「おう!」


ワーワー ガチャガチャ


無顔仮面童子 「海老をゆでています」


青花エルフ 「…………」

青花エルフ 「この男……」


王子 「次のえび! ゆでに入る!」


青花エルフ 「見事に、どんづまっておる……!」


無顔仮面童女 「おかわり」





810シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 01:41:11.14mGXVMFup0 (6/26)



ハーピィ 「…………」


キュッ キュッ


熟練皿洗い 「おおっ、すじが良いぞ無口な嬢ちゃん」

熟練皿荒い 「皿が真っ白だ!」


ハーピィ 「…………」


キュキュッ キュキュッ





811シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 01:47:07.26mGXVMFup0 (7/26)



青花エルフ 「……何をやっとるか、お前は」


王子 「おお、青花エルフ」

王子 「自然の声を聞いていたら、川のせせらぎがおれに囁いたんだ」

王子 「海老をゆでろと」

王子 「おれは、えびゆで師だったのかもしれん」

王子 「見てくれ。ぷりっぷりにゆで上がったぞ」


ハーピィ 「…………」


青花エルフ 「……すぐに館に来い。剣の修行に戻るぞ」


王子 「ま、待ってくれ、まずはこの海老を食べてくれ……!」


青花エルフ 「童子、童女。連れてゆけ」


無顔仮面童子 「はい」


無顔仮面童女 「はい。ケプッ……」





812シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 01:58:10.07mGXVMFup0 (8/26)



無顔仮面童子 「こちらに」


無顔仮面童女 「こちらに」


王子 「あ、おい、何をする。やめてくれ、おれは海老を……!」


ズルズルズルズル


ハーピィ 「…………」


タッ タッ タッ タッ


青花エルフ 「まったく……」

青花エルフ 「さすがは領主どのの息子というか、何というか」

青花エルフ 「……海老か」


パクッ


青花エルフ 「…………」

青花エルフ 「……私は」

青花エルフ 「一人のえびゆで師の命を、たってしまったのかもしれん」


ガチャガチャ ザワザワ


…………





813シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 02:10:23.91mGXVMFup0 (9/26)



…………


ろうそく職人 「……分かりました!」

ろうそく職人 「私は腐ったゴミクズだったんですね!」


葉書エルフ 「その通りだ」


…………





814シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 02:39:28.93mGXVMFup0 (10/26)



青花エルフの館



青花エルフ 「もうだめだ、と思ってからが本番じゃ」


王子 「面目無い」

王子 「だけど、なかなかに面白いんだ、海老ゆでは」


青花エルフ 「……言ってみろ」


王子 「ゆで上がるまでの時間はだいたい同じだが」

王子 「海老ごとに微妙に違う」

王子 「だから、みんなこの時間だけゆでれば良い、というのは通じない」

王子 「そんなことを考えていると、何かしみじみと感慨深い」





815シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 03:01:43.29mGXVMFup0 (11/26)



青花エルフ 「…………」

青花エルフ 「知るを知らず、知るを知り、知るを捨てる」

青花エルフ 「まさか、進むべき道が海老で分かるとは……」


王子 「やはり、おれはえびゆで師なのかな」


ハーピィ 「…………」


青花エルフ 「正気に戻れ」





816以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/05(水) 03:03:27.05Q69q5RZto (1/1)

一体何が起こっているんだ


817シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 03:47:07.83mGXVMFup0 (12/26)



…………


青花エルフ 「生き物は知ることができる」


ヒュッ ヒュッ ヒュッ ヒュッ


王子 「……っ! ッ!」


カキッ ポヘッ パフッ ガキンッ


青花エルフ 「1つ。考えたら負け。無知の剣」

青花エルフ 「これを極めるならば、山を砕く力をつけねばならん」


パホッ カキッ マホッ カキッ


青花エルフ 「1つ。考えなかったら負け。知の剣」

青花エルフ 「これを極めるならば、万の言語を解読する知をつけねばならん」


ドラッ カキッ オラッ ショオッ


青花エルフ 「そして1つ」

青花エルフ 「あえてすべてを捨てて戦う」

青花エルフ 「捨知の剣」


マンマミーア





818シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 04:29:45.91mGXVMFup0 (13/26)



青花エルフ 「何も得ないことと、得たものを捨てることとは違う」

青花エルフ 「得たものを捨てるのは思いのほか難しい」

青花エルフ 「ある方法でうまくいったら、人はその方法に固執する」

青花エルフ 「りんごが売れたら町はりんご屋であふれる」

青花エルフ 「しかしそれは安定ではなく、滅びに等しい停滞と心得よ」


ハーピィ 「…………」


青花エルフ 「お前は捨知の剣の道に向いている」

青花エルフ 「あえて多くは語らぬ」

青花エルフ 「この道を進めばいずれ」

青花エルフ 「お前は戦う気なくして戦い、勝つ気なくして勝てるようになる」


王子 「……! ッ!」


ブルスコッ カキッ ガキッ ポヘッ


青花エルフ 「かたを捨てよ。相手の呼吸と自然の声を聞け。そしてまた捨てよ」

青花エルフ 「敵は敵であることに違いないが、すべて同じ敵ではない」

青花エルフ 「海老がすべて同じ海老ではないように!」

青花エルフ 「変幻自在の風となれ。そう……」

青花エルフ 「無情に野を渡る風のように!」

青花エルフ 「あ、オーレイ!!」





819シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 04:43:00.23mGXVMFup0 (14/26)



…………


葉書エルフ 「あふっ……」

葉書エルフ 「くしゅんっ! バーロォ……」

葉書エルフ 「風邪ひいちゃったかな」


ろうそく職人 「あの、師匠」

ろうそく職人 「このブリッジ横飛びはいつまで続けたら良いのでしょうか!」


葉書エルフ 「揺れなくなるまでだ」

葉書エルフ 「オレもこれで魔法のコツを掴んだものさ」


ろうそく職人 「はい!」


シャカシャカシャカシャカ


…………





820以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/05(水) 04:44:42.94WxLYCaPyO (1/1)

オーレイ!


821シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 05:44:44.11mGXVMFup0 (15/26)



青花エルフ 「エルフの長老は、みな魔法の扱いに優れている」

青花エルフ 「とくにさきの晩の長老たちはある種の天才じゃ」

青花エルフ 「まあそれゆえに、人に教えを施すには向いておらぬが。とくに黒花は若すぎるし」


王子 「…………」


青花エルフ 「私は他の長老と比べ魔法の扱いに劣っている」

青花エルフ 「魔法を学ぶのは、それはもう面倒くさくてしかたなかったからな」

青花エルフ 「だが自分なりの道を模索し、長老の座を得た」

青花エルフ 「それまで、武器に頼るエルフは鼻で笑われていたものよ。若かったなあ、私」


王子 「…………」


青花エルフ 「お前はもう飛び込んでしまった」

青花エルフ 「剣と魔法、妖精や勇者の駆ける世界じゃ」

青花エルフ 「のほほんと笑って歩くのは、強くなければ難しい」

青花エルフ 「お前をなるだけ長く生かすのが、私の領主どのへの恩返しじゃ」

青花エルフ 「道の1つ、少しは見えただろうか」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


青花エルフ 「まあ私も天才じゃから、教えるのには向いとらんがな」


…………





822シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 06:14:55.89mGXVMFup0 (16/26)



黒花エルフの館



オエーッ


王子 「……そのあと青花エルフは、剣の一振りで全部の武器を叩き落としたのさ」

王子 「まったく、何をやったんだよ親父どのは」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「こっちも似たようなもんです。恐ろしいですね、エルフの長老……」


王子 「ああ。それにしても」


ろうそく 「ユラユラ」


ピロン


王子 「見ていると体力が回復する炎とは、すごいじゃないか」


ろうそく職人 「地獄の炎です」


王子 「へ、へえ……」

王子 (地獄の炎?)





823シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 07:07:14.44mGXVMFup0 (17/26)




ろうそく職人 「心は火のように揺れていろいろな形になるが、心のままなのだ」

ろうそく職人 「という葉書エルフさまの教えを受けていて」

ろうそく職人 「何かひらめいて」

ろうそく職人 「やってみたら、こうなりました」


王子 (葉巻エルフ、言っちゃったか。風に次いで火まで……)


ろうそく職人 「効果は薄いですけど……」


王子 「いや、よく分からんが、これはすごいんじゃないのか?」


ハーピィ 「…………」





824シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 07:22:20.16mGXVMFup0 (18/26)



ろうそく職人 「そ、そうですかね?」


王子 「ああ。回復する魔法って貴重だというし」


ろうそく職人 「え、えへへへへ……」


葉書エルフ 「あー、今日も勇者を交えて長老会議だ。歌って踊りますかね」

葉書エルフ 「ん、なんだ王子、今日は特にボロボロだな」

葉書エルフ 「ほれ」


ピロリロピロリロ


ろうそく職人 「…………」


王子 「……一瞬で全快して服まで綺麗になった」


ろうそく職人 「……王子さま、私の服をむいてゆでてください」


王子 「すまない。おれがゆでるのは海老だけだ」


ハーピィ 「…………」





825シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 10:43:18.57mGXVMFup0 (19/26)



葉書エルフ 「早まるな、ろうそく娘」

葉書エルフ 「お前はゆでてもうまくない。生の方が脳みそはうまそうだ」


ろうそく職人 「ひぐっ! でも、葉書エルフさまがいれば」

ろうそく職人 「私みたいな腐ったゴミクズ魔法使いろうそく職人なんていても意味が……」


葉書エルフ 「誰かが誰かに劣っているからいらないとか言っていたら」

葉書エルフ 「きりが無いだろ。最後には世の中にたった1人だけになっちまう」


ろうそく職人 「でも……」





826シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 11:25:44.94mGXVMFup0 (20/26)



葉書エルフ 「毎日修行のときに言っているだろう。いかにみじめな自分を許せるか、だ」

葉書エルフ 「誰かに勝ったから偉いとか、弱いゴミクズだから悪いとか、そんなものは忘れろ」

葉書エルフ 「もしも自分がみじめに思えるなら、思い切ってそんな自分を許してみろ」

葉書エルフ 「みじめな自分を許して、笑ってみろ」


ろうそく職人 「し、師匠……」


葉書エルフ 「何もないんだ。この世には何もない。ただ腐っているだけだ」

葉書エルフ 「だからお前が何もできない役立たずのゴミクズでも、お前は悪くない」

葉書エルフ 「勇者なんざ育てる気はない。師たるオレは、ゴミクズのお前を愛そう」

葉書エルフ 「だから止まることがあっても終わるな。役立たずのゴミクズとして、胸を張って進め」


ろうそく職人 「師匠……私、頑張ります!」


葉書エルフ 「ああ。頑張って、あわよくばあの勇者の役にでも立っちまえ」


王子 (おお。いつのまにか2人の間に師弟愛が芽生えていた)


葉書エルフ 「まあ、オレがお前だったら生まれる前に死を選ぶけどな」


ろうそく職人 「師匠!?」


…………





827シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 20:42:03.46mGXVMFup0 (21/26)




エルフの里 地上広場



チチチチチ ピュイピュイ


フード者たち 「…………」


淫魔幼女 「…………」


軽装フード者 「…………」


ゾロゾロ


長耳妖精 「おーおー。人間に、よその亜人に、みなさんどこから来たんだか」


長牙妖精 「どこから来たのか分からん者もおれば」

長牙妖精 「どこへ行ったかも分からん者もおる」


長耳妖精 「あー、里抜けの抜けエルフだねえ」

長耳妖精 「かつての黒花さまに緑花候補なんかが抜けたときは、ちょっとした騒ぎになったもんだ」

長耳妖精 「そういや前に、あるハーフエルフの少女が空中回廊怖さに里を抜けたが」

長耳妖精 「風の噂によれば、西だか東だかで小さな幸せを手にしたという」


長牙妖精 「それはそれは。今はどうしているんだか……」





828シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 21:16:04.15mGXVMFup0 (22/26)



…………


ザアアア

キャッキャッ ワイワイ


王子 (1、2……5層あるな空中回廊)

王子 (耳をすませば、にぎわいも聞こえてくる)

王子 (エルフの里の地上には、こんな風に森に囲まれた広場がいくつもあるが)

王子 「いやあ、のどかで落ち着くじゃないか。連日の修行での疲れがとれていくよ」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「いや~、あれ以来なにか掴んじゃったっていうか」

ろうそく職人 「調子が良いんですよねー」


王子 「やったじゃないか。コツが分かると一気に成長するというけど、そうなのかもしれない」

王子 「あっち側に帰るときには、期待の新米魔法使いになっているかもな」


ろうそく職人 「いやいや~、それほどでも……ありますよ」

ろうそく職人 「なんつって」

ろうそく職人 「えへらえへら」


ハーピィ 「…………」





829シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 21:27:35.66mGXVMFup0 (23/26)



ろうそく職人 「あれですかね。とうとう私、恥ずかしながら波に乗っちゃいましたかね?」

ろうそく職人 「時代がもう? 私をただのろうそく職人にしておいてはくれない、みたいな?」


王子 「獣耳と尻尾の回復術師かな。何と言うか、おれも城の同居人として誇らしいよ」


ろうそく職人 「勇者に忠実なる地獄の番犬、犬耳職人!」

ろうそく職人 「地獄の炎でご奉仕します! みたいな?」

ろうそく職人 「いやー、こりゃどうなっちゃうんですかねー、私」


王子 「さあなあ。皇帝と戦うころには、ろうそく職人って名前は出てこないらしいから」

王子 「案外、ころっと死んじゃったりしてな」


ろうそく職人 「えっ!?」


王子 「……あ、すまない。今ちょっと自然の声を聞いていた」

王子 「何か言ったかな、おれ」


ハーピィ 「…………」





830シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 22:06:51.37mGXVMFup0 (24/26)



タタタッ


軽装フード者 「…………」


王子 「ん」


ろうそく職人 「フードで顔を隠した軽装の人が走ってくる……」

ろうそく職人 「まま、まさか敵でしょうか」


王子 「用意はしておいた方が良いだろう。こんなところで戦いたくはないが」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「尻尾巻いて逃げましょう」


王子 「よどみないな、地獄の番人」

王子 「しかし、逃げよう。さあ行く……」


軽装フード者 「お待ちください、王子さま!」


王子 「ん?」





831以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/05(水) 22:43:59.320GQcodiR0 (1/1)

軽装ってお前まさか!


832シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 23:20:20.36mGXVMFup0 (25/26)



王子 「おれを知っているのか。いや、その声は……」


軽装フード者 「ああ、やはり王子さまでしたか」

軽装フード者 「少々髪の色が違うので別人かとも思ったのですが」

軽装メイド 「そばにハーピィを見て……」


王子 「君は……」


ろうそく職人 「ああっ、あなたさまは!」

ろうそく職人 「王子さまのお父様だけど王子さまを騙して殺そうとした」

ろうそく職人 「と見せかけて実は皇帝陛下の目をあざむいて王子さまを旅に出すための芝居をしていた」

ろうそく職人 「帝国の北東地方をおさめる領主さま」

ろうそく職人 「のご息女で王子さまの妹君で男装趣味のある王女であらせられる王子姫さま」

ろうそく職人 「の付き人をしていらっしゃる軽装メイドさま!」

ろうそく職人 「軽装メイドさまではありませんか!」


軽装メイド 「え、ええ……たしかに私は軽装メイドですが……」


王子 (葉巻エルフ。ろうそく職人にどんな修行を……)





833以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/05(水) 23:26:40.320IcKaYZZ0 (1/1)

この速さなら言える
ろうそく職人はネタ枠


834シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/05(水) 23:44:57.95mGXVMFup0 (26/26)



軽装メイド 「あなたはたしか……」


ろうそく職人 「はい! 燃え尽きる寸前に一瞬輝きを増すろうそくの火のように」

ろうそく職人 「ただいま絶好調の……」


軽装メイド 「獣の耳……ああ、あなたは」

軽装メイド 「王子姫さまが幼いころ拾ってこっそり大事に養っていたけれど」

軽装メイド 「ある日、妖精クーシーとして生きると人の言葉で感謝と別れを告げて」

軽装メイド 「どこかへ消えてしまった行き倒れの子犬さまですね」

軽装メイド 「よかった……、妖精として元気に生きてらしたのですね」


ろうそく職人 「かすりもしない!」


王子 (何か1つの物語でもできそうな話じゃないか。これは正体を明かしづらいぞ)

王子 (……城では影が薄かったものな、ろうそく職人)





835シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 00:25:08.98I9S26Tod0 (1/12)



軽装メイド 「そんなことよりも」


ザッ


軽装メイド 「申し訳ありません、王子さま」


王子 「どうした。王子姫の頼みならおれを城の下着泥棒にまでしたてあげる君が」

王子 「ひざまずいて、こうべを垂れるなど」


ハーピィ 「…………」


軽装メイド 「演技とはいえ王子さまに剣を向けておきながらおめおめと生きていること、どうかお許しください」





836シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 00:27:48.19I9S26Tod0 (2/12)



王子 (やっぱり軽装メイドも絡んでいたか)

王子 「……よしてくれ」

王子 「今のおれは王子さまじゃない。そんな風に他人の頭を重くするようなものは捨てた」


軽装メイド 「王子さま……王子……」


王子 「そう、ただの王子」

王子 「しがない旅のえびゆで師さ」


軽装メイド 「海老……はい?」


王子 「少しばかり剣の腕がたつ、な」


ハーピィ 「…………」


軽装メイド 「おつらい旅を、なさっていたのですね……」





837以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/06(木) 01:48:52.8352/TeLJ+o (1/1)

えびゆで師と本気で思ってるんだなwww


838以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/06(木) 01:56:42.76w+XkK+lW0 (1/1)

軽装メイドは罰として
重装メイド化すべき


839シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 02:28:30.74I9S26Tod0 (3/12)



王子 「君は、どうしてこんなところに」


軽装メイド 「領主さまの代理です」

軽装メイド 「いよいよ会議も大詰め、今後の動きについて人間と妖精が一緒に話し合うのです」


王子 「へえ」

王子 (親父が城をあけるわけにもいかないか)


軽装メイド 「領主さまから、王子さまへの言葉も預かっておりますよ」





840シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 02:45:05.81I9S26Tod0 (4/12)



王子 「それは……ぜひ聞かせてもらいたいな」


ハーピィ 「…………」


軽装メイド 「はい。では失礼して」


チャッ


王子 「! 指の股4対に」

王子 「……化粧道具?」


軽装メイド 「ふっ……!」


シャシャシャシャシャッ


軽装メイド 「…………」

重装メイド 「…………」


王子 「一瞬にして、姿が変わった……」

王子 「しかし、なぜそんな姿に」


ろうそく職人 「自然の声が聞こえたんじゃないですか」





841シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 02:48:50.80I9S26Tod0 (5/12)


重装メイド 「……失礼」


シャシャシャシャシャッ


重装メイド 「…………」

領主メイド 「…………」


王子 「おおっ!?」


ろうそく職人 「領主さま!?」


領主メイド 「私が代理として参ったのも、こういうわけなのです」





842以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/06(木) 03:25:19.25F0Umewbu0 (1/1)

なにこのメイドwwww

おっさん顔のメイドは…


843シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 03:29:23.92I9S26Tod0 (6/12)



王子 (ただ者じゃないんじゃないかなあとは思っていたが、何者だこの人は)


領主メイド 「では、領主さまのお言葉を……コホン」

領主メイド 「やっほー王子、お元気ですか? ゴブリン風邪などひいておりませんか?」

領主メイド 「領主の剣は司書長エルフから習った初歩的な魔法を使うのにも向いているので」

領主メイド 「うまく使え。印は消しておくように」

領主メイド 「近く、どこかで会えると良いですね」

領主メイド 「追伸。青い花飾りのエルフに捕まりそうになったら」

領主メイド 「餅を3つ投げつけて死ぬ気で逃げろ」


王子 「……ああ」

王子 「ははは……なつかしいなあ、まるで親父の手紙を読んでいるみたいだ」

王子 「しかし何だ、この親父のものとも軽装メイドのものともつかない声は」


ハーピィ 「…………」


領主メイド 「王子姫さまのお言葉も届ける予定でしたが、次の冬を越えそうでしたので」





844シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 04:06:47.08I9S26Tod0 (7/12)



王子 「元気かな、我が妹は」


領主メイド 「あの晩のことを知っても、気丈でございました」

領主メイド 「怒る相手を失って、少し張り合いがなさそうですが」


王子 「ろくでもない兄のわがままで、迷惑をかけてしまうな」

王子 「城の様子はどうかな?」


領主メイド 「司書長エルフさまがいなくなって、少し、図書館に華がなくなったように思います」


王子 「ははは。厳しそうで、柔らかいからな」


ろうそく職人 「ろうそくを届けに行ったときよく聞いたんですが」

ろうそく職人 「意外とちょろそうだと、学者や兵士さんたちが言っていました」


ハーピィ 「…………」


領主メイド 「…………」


王子 「…………」


ろうそく職人 「……で?」


領主メイド 「あと先日、炊き出しをしましたね」


王子・ろうそく職人 「……あ、そう」


ハーピィ 「…………?」





845シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 04:44:29.35I9S26Tod0 (8/12)



領主メイド 「ああ、そろそろ行かなくては」

軽装メイド 「その前に、王子」


王子 「うん?」


軽装メイド 「少し、気になる話を聞いたのですが」


王子 「あの晩のような目をする。何かな?」


軽装メイド 「王子がこのエルフの里で」

軽装メイド 「若きエルフの長老という恋人がありながら別の魔物の女性を連れて歩き」

軽装メイド 「さらには別の美しいエルフの長老のもとを毎日のように出入りしている」

軽装メイド 「という話なのですが」


王子 「…………」





846シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 04:52:55.92I9S26Tod0 (9/12)



軽装メイド 「本当なのでしょうか」


王子 「それはちが……」


ハーピィ 「…………」


王子 「……うと言い切ることはできない」

王子 「まったくの本当というわけではないが、まったくの嘘というわけでもない」


軽装メイド 「……分かりました」


王子 「くれぐれも王子姫には……」


軽装メイド 「善処いたしますが、約束はできかねます」

軽装メイド 「噂は……ウフッ……無情に野を渡る……ッ…風のようなもの、なのでッ……」


ろうそく職人 「…………ウフッ」


王子 「…………」

王子 (葉巻エルフ)

王子 (お前の暗黒の歴史は、思いのほかひろがっているようだ……)





847以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/06(木) 04:56:37.68vaIYnWcVo (1/1)

策士、策に溺れたな葉巻エルフwwwwww


848シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 05:32:10.40I9S26Tod0 (10/12)



軽装メイド 「では、そろそろ失礼します」


王子 「ああ。ありがとう、いろいろと驚かせてもらったよ」


軽装メイド 「……私が何者なのかは、いずれ語ることになるかもしれません」

軽装メイド 「ですがそれまでは、たとえ王子や王子姫さまにも語ることはできぬ定め」

軽装メイド 「どうか、お許しください」


王子 「誰だって秘密はあるものだ」

王子 「だが君が敵のスパイで、君のことを姉のように慕う王子姫をひどく害するようなことがあれば」

王子 「おれは何としても君を道連れに死ななければならないから、そのときは許してくれ」


軽装メイド 「…………!」

軽装メイド 「私のような者に命を預けていただき、ありがとうございます」

軽装メイド 「王子の命にかけて、必ずや王子姫を守り抜きます……!」

軽装メイド 「さらばっ!」

軽装メイド 「にんにんっ!」


シャッ


ろうそく職人 「ああっ、何やらすごく正体に関係するような言葉を残して!」


王子 「ひと飛びで空中回廊に消えて行ったな」


ハーピィ 「…………」





849シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 06:40:32.77I9S26Tod0 (11/12)




王子 「死んだと思えば生きていたり、敵かと思えば味方だったり」

王子 「役者が多いなあ。疲れてかなわん」

王子 「どこかに分かりやすい単純な奴はいないのか」


ろうそく職人 「スライムはスライムを呼ぶってやつですね」

ろうそく職人 「だけど、女を連れまわすだなんて……そんな風に見えたんですかねー、私」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「これはいよいよ、女としても波に乗っちゃいましたかね!」

ろうそく職人 「なんつって!」


ハーピィ 「…………」


王子 「うん」


ろうそく職人 「おうっ……!?」





850シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/06(木) 06:45:44.39I9S26Tod0 (12/12)



王子 「全員にハルピュイアをつけてみたらどうなるんだ、まったく」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「ハーピィさまって、王子さまが町で拾ってきたんですよね」


王子 「そんな捨て猫みたいに……」


ハーピィ 「…………」


ザワザワ


淫魔幼女 「…………」


ザワザワ


ハーピィ 「…………」





851以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/06(木) 07:44:22.526xUdv/Nc0 (1/1)

この淫魔翌幼女はまさか…




852シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 04:22:28.74a9B/FkKG0 (1/25)



黒花エルフの館



ホー ホー


ろうそく職人 「わあ、今日は里がいっそう明るいですよ」


貝殻の勇者 「あさって、帝国に対抗する者たち全体の大会議があるので」

貝殻の勇者 「大勢集まっているのですね。妖精だけでなく、人間もいるようです」


ろうそく職人 「面白いお店なんかも出るんでしょうか」


貝殻の勇者 「そうですね。商人もたくさん入ってきているかもしれませんし」


ハーピィ 「…………」


ペラ サシャッ

トン トン カララ


葉書エルフ 「大会議はお前たちも見にこい」

葉書エルフ 「ここに薬草園も置きたいな」


王子 「ああ、そうさせてもらおう。エルフ以外の種族の長老も見られるらしいし」

王子 「厩舎を置いてみるのもどうかな」


葉書エルフ 「というわけで、明日ちょっとおつかいを頼まれてくれないか」


王子 「ん?」





853シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 04:43:06.73a9B/FkKG0 (2/25)



葉書エルフ 「大会議というだけあって、見物人もこれまでより多くなるだろう」


王子 「だろうね」


葉書エルフ 「今日の里の賑わいを見るに、どうやらオレの予想を大きくこえて集まりそうなんだ」


王子 「活気があるのは良いことだ。それとおつかいと、何か関係あるのかい?」


葉書エルフ 「さすがにオレも、こんな恥ずかしい体のままじゃまずいかなと思ってさ」


王子 「お前……」


葉書エルフ 「大会議に出席するのにふさわしい、新しい体を見つけてきてくれ」





854シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 05:07:01.85a9B/FkKG0 (3/25)



葉書エルフ 「金は渡す。場所も教える」


王子 「おれはそういうことは何も分からないぞ」

王子 「というか、体なんてそんなもの手に入るのか」


葉書エルフ 「オレが自分で行っちゃうと恥ずかしいだろう」

葉書エルフ 「いろんな奴が集まる里だ。いろんなものがあるのさ」


王子 「でもなあ……」


葉書エルフ 「まあ、駄目だった駄目で良いんだ」


王子 「良いのか」


葉書エルフ 「ああ。この体よりはましだろう」

葉書エルフ 「ハーピィの体でも頂戴するさ」





855シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 05:11:33.50a9B/FkKG0 (4/25)



王子 「…………」


葉書エルフ 「なあ、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


葉書エルフ 「お前の体を手に入れたら」

葉書エルフ 「オレはいろんなものを手に入れられるんじゃないかな」


ハーピィ 「…………」


王子 「……分かった。明日、探してみよう」


葉書エルフ 「ああ、ありがとう。頼む」

葉書エルフ 「お前に体を買ってもらえるなんてうれしいよ」





856シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 05:13:37.42a9B/FkKG0 (5/25)

>>854 訂正

×葉書エルフ 「まあ、駄目だった駄目で良いんだ」

○葉書エルフ 「駄目だったら駄目で良いんだ」


857シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 05:23:12.37a9B/FkKG0 (6/25)



…………


エルフの里 枯れ大樹



汚れ水精 「ああ、何だかよくない感じがするね」


ヘドロ娘 「うんうん、里によくないものがいるね」


ウヒヒヒヒ ヒソヒソ


王子 「……ほかの大樹と雰囲気がずいぶん違うな」

王子 「暗いというか、陰湿な感じがするというか」

王子 「地下牢みたいだ」


ハーピィ 「…………」





858シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 05:30:02.30a9B/FkKG0 (7/25)



王子 「こんなところに本当にあるんだろうか」


ハーピィ 「…………」


王子 (……葉書エルフにもらったメモの確認をしておこう)


メモ 『人間かエルフに近い人型。男でも、女でも、平らなやつ』


王子 「……字が丸い」





859シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 05:35:33.99a9B/FkKG0 (8/25)



ハーピィ 「…………」


王子 「しかし、死体屋とはまた不吉な名前の……」

王子 「お」


看板 『冷やし死体、はじめました』


王子 「…………」

王子 「あれ……かな?」


ハーピィ 「…………」





860シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 05:46:47.24a9B/FkKG0 (9/25)



王子 「失礼」


腐った店主 「おう、いらっしゃい!」


王子 「死体を買うのは初めてで、よく分からないんだ」

王子 「ちょっと、教えてもらえるかな」


腐った店主 「がっはっは! 誰だってはじめてはあるもんさ」

腐った店主 「何だって聞いてくんなァ!」


王子 「人間かエルフの死体を売ってほしいんだ」

王子 「できれば、死にたてのやつ」





861シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 05:56:18.36a9B/FkKG0 (10/25)



腐った店主 「おおっと、あんたゴーレム師の卵か何かかい」


王子 「いや、えびゆで師だ。これは人からの頼まれものなんだ」


腐った店主 「そうかい」

腐った店主 「しかし、悪いなあ、いま人間もエルフも置いてないんだよ」


王子 「なに」


腐った店主 「つい最近、売り切れちまったい」

腐った店主 「大量に買ってったのがいてねえ」





862シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 06:01:58.05a9B/FkKG0 (11/25)



王子 「そうなのか。困ったな……」


腐った店主 「それより、ほかの死体はどうだい?」

腐った店主 「クリの死体、ニンジンの死体、サンマの死体にヒツジの死体」

腐った店主 「何でもあるぜい! 妖精の料理長もよく来るんだ!」


王子 「……あ」

王子 「ここ、そういう店か」


ハーピィ 「…………」





863シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 06:08:21.47a9B/FkKG0 (12/25)



腐った店主 「おっと、あんたはえびゆで師だったな」

腐った店主 「だったら、ヤリエビの死体なんてどうだい!」

腐った店主 「焼いてもゆでてもうまいぜ!」


王子 「…………」

王子 「いただこう」


腐った店主 「まいどありィ!」


王子 「だがおれは海老を焼いたりなどしない」

王子 「なぜなら、えびゆで師だから」


腐った店主 「どうでも良いが、えびゆで師って何だ?」


ハーピィ 「…………」





864シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 06:17:45.88a9B/FkKG0 (13/25)



黒花エルフの館



葉書エルフ 「…………」


ヤリエビ 「ピチピチ」


王子 「さあ、お前の新しい体だ」

王子 「うまく使え」


葉書エルフ 「…………」

葉書エルフ 「……よし」

葉書エルフ 「ハーピィ、合体だ」


ハーピィ 「…………」


コクン


王子 「別の死体屋を探してみよう」





865シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 06:28:09.13a9B/FkKG0 (14/25)



枯れ大樹



店主A 「死にたての海老はあるけど、人間とエルフはないよ」


王子 「そうかい」


…………


店主B 「ピチピチの海老はあるけど、人間とエルフはないよ」


王子 「そうかい」


…………


店主C 「うちは死にたてピチピチの海老しか置いてないよ」


王子 「そうか」


ハーピィ 「…………」


…………





866シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 06:55:11.42a9B/FkKG0 (15/25)



ヒソヒソ ウヒヒヒ


王子 「まいったな、どこにもないぞ」

王子 「海老ばかりが増えていく」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………?」


王子 「? どうしたんだい、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


看板 『今日の昼食 森の木の実の料理』


ハーピィ 「…………」


王子 「……少し休もうか」





867シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 07:09:40.64a9B/FkKG0 (16/25)



酒場



腐ったトレント 「うちは昼間は定食屋、夜は酒場なんだ」

腐ったトレント 「おかげさまで昼も夜も、繁盛しているよ」

腐ったトレント 「肉に野菜に魚に木の実、食材には困らない」

腐ったトレント 「ここは死体屋が多いから」


カチャカチャ ペチャクチャ


王子 「おや」


淫魔幼女 「む」


王子 「あんたは……」


淫魔幼女 「久しぶりだな、お客様」

淫魔幼女 「ハルピュイアは元気かな」


ハーピィ 「…………」


汚れ水精 「ああ、やな感じが増えてくよ」


ヘドロ娘 「私たちが嫌なんだから、そうとうやなモンだね」


ワイワイ ガチャガチャ





868シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 07:32:41.34a9B/FkKG0 (17/25)



王子 「ああ、おかげさまで楽しくやっている」

王子 「面倒くさいことに巻き込んでしまったけど」


ハーピィ 「…………」


淫魔幼女 「……嫌がってはいないようだ」


王子 「だと良いけど」

王子 「あんたも大会議見物に来たのかい?」

王子 「それとも商売かな」


淫魔幼女 「どちらもだ」

淫魔幼女 「……少しの間でずいぶん変わった。ハルピュイアも、お前も」


王子 「そうかな」


ハーピィ 「…………」





869シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 07:41:29.52a9B/FkKG0 (18/25)



王子 「まあ、ハーピィはそうだな」

王子 「何というか、表情がゆたかになった」

王子 「あんたは心がないと言ってたが、ずいぶん話が違うぞ」


ハーピィ 「…………」


淫魔幼女 「そうか。興味深い話だ」

淫魔幼女 「もしかしたら心がある種なのかもしれないな」

淫魔幼女 「それを知っていたところで、おれはハルピュイアたちを奴隷として売り続けただろうが」


王子 「…………」

王子 (奴隷か……)





870シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 07:54:41.87a9B/FkKG0 (19/25)



淫魔幼女 「しかし、そうなると厄介だな」


王子 「うん?」


淫魔幼女 「ハルピュイアがもともと心を持っていたか、人間につくことで心を得るか」

淫魔幼女 「それとも、心があるように見えるだけなのかは分からないが」

淫魔幼女 「心のある生き物は、そのほとんどが必ずと言って良いほど」

淫魔幼女 「嘘をつく」


ハーピィ 「…………」


王子 「……ああ。それは、最近とくに感じる」


淫魔幼女 「罪を囁くハルピュイアが嘘をおぼえたら」

淫魔幼女 「どうなってしまうのだろうな」


ハーピィ 「…………」


王子 「さあ。おれたちみたいになるのかな」


淫魔幼女 「良い答えだ」





871シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 08:13:26.28a9B/FkKG0 (20/25)



淫魔幼女 「ところで、奴隷市でも言った通り、お前は本当に女にモテる男だったようだな」


王子 「いや、妹にさえ好かれないよ」


淫魔幼女 「妹がいるのか」

淫魔幼女 「しかし……フフフ、本当に変わったな」

淫魔幼女 「奴隷市で見たうそ臭い軽薄さが抜けている」

淫魔幼女 「まるで領主の息子か何かみたいだ」


王子 「ははは」

王子 (目つきと同じように鋭いな。それとも知っているのか)


淫魔幼女 「お前はそう思っていなくても、事実はそうでもない」

淫魔幼女 「ここでうわさを聞く限りは」


王子 「まさか……」





872シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 08:26:59.91a9B/FkKG0 (21/25)



淫魔幼女 「エルフの長老2人を恋の奴隷にし、魔物の娘に首輪をつけて連れ歩き」

淫魔幼女 「幼い女を海老で餌付けし、さらに獣耳の魔物の娘までくどきおとした人間の男とは」

淫魔幼女 「お前のことだろう?」


王子 「違う」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「おれなのか。おれだ」

王子 (……妖精にも魔物として認識されているのか、ろうそく職人)


淫魔幼女 「ふふふ。おれが男で良かったな」


王子 「いや、あんたは……」


舌妖精 「なあ、またあの人間の男の話だ」

舌妖精 「青花エルフさまのとこの無顔仮面童子も、軽くおとしちまったんだってさ」


唇妖精 「男にも手を出すのかよ。人間は寿命が短いから、必死なのかねえ」


ヒソヒソ クスクス


王子 「…………」





873シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 08:36:46.74a9B/FkKG0 (22/25)



淫魔幼女 「エルフの長老につながりがあるとは、うらやましいことだ」


王子 「そのせいで吐くような目にあってるけどな」

王子 「いや……おかげで本当のおれを知ることもできたんだ。感謝している」


淫魔幼女 「その袋いっぱいの海老がどうかしたのか」


王子 「おとされちまったのさ。おれが、海老にな」


淫魔幼女 「?」


ハーピィ 「…………」





874シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 09:11:24.71a9B/FkKG0 (23/25)



王子 「そうだ。商人のあんたに聞きたいことがあるんだが」

王子 「教えてもらっても良いかな」


淫魔幼女 「こうして会うのも何かの縁だ。聞いてみよう」


王子 「人間かエルフか、それに近い生き物の死体を探しているんだ」

王子 「このへんの死体屋じゃ見つからなかったんだが、この里にはもう無いのかな」


淫魔幼女 「……人間にしては、とんでもないことを言う」


ハーピィ 「…………」


王子 「見つけないと、ややこしいことになりそうなんだよ」





875シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 09:32:11.66a9B/FkKG0 (24/25)



淫魔幼女 「……このエルフの里には」

淫魔幼女 「他者の体を乗っ取る魔法があったそうだな」


王子 「…………」


淫魔幼女 「難しい上に危険がともない、古くに失われたそうだが」

淫魔幼女 「最近になってその魔法を使えるエルフが現れ、今は長老になっているとか」


ハーピィ 「…………」


淫魔幼女 「この里の女性は、体の起伏がゆるやかであるほど美しいとされるらしい」

淫魔幼女 「ところが最近、エルフの長老の1人がとても醜い姿になってしまって」

淫魔幼女 「それは困っているという」


王子 (先生……)


淫魔幼女 「お前の行動は、それと何か関係あるのだろうか」





876シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/07(金) 09:43:47.02a9B/FkKG0 (25/25)



王子 「ご想像におまかせしたい」


淫魔幼女 「……やめておこう。面倒に巻き込まれると困る」

淫魔幼女 「人間やエルフのような人型の死体だったか。残念ながらこの里にはもう無いようだが」

淫魔幼女 「よければ、おれが譲ってやらないこともない」


王子 「それは、助かるけど……」

王子 (この子とやり取りするのは何か良くない気がするんだよなあ)

王子 (……この里の人間やエルフの死体を買い占めたのって、まさか)


淫魔幼女 「さすがにここではまずいだろう」

淫魔幼女 「ついて来い」





877以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/07(金) 09:56:16.98Xq0CoAZFo (1/1)

起伏が緩やかって事は多少は起伏が有った方が良いのか?


878以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/07(金) 10:10:25.49TgOXuED/O (1/1)

つるぺたょぅι ゙ょが至高に決まってるだろ!


879以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/07(金) 10:37:15.58iDv4EW2DO (1/1)

細いドラム缶みたいな方がいいのか?


880以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/07(金) 11:00:57.44obmw1OyqO (1/1)

文字通りドラム缶を買って行ってあげれば或いは…!!


881以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/07(金) 11:12:37.63ivAKktWl0 (1/1)

お前らだってドン・ドン・ドン!よりはスッ・シュッ・スラッの方が良いだろう?


882以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/07(金) 13:25:10.032nMVfBsyO (1/1)

>>881
ドン×3で旧アルビダ思い出した


883以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/07(金) 14:18:50.47i1ERRPRK0 (1/1)

醜い醜い言われる先生かわいそう


884以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/07(金) 23:46:46.66kEn25pQ90 (1/1)

葉巻が幼女になるのか…



885シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 08:03:22.10Mszlptb60 (1/46)



枯れ大樹 隠れ宿 部屋



淫魔幼女 「おれの借りている部屋だ」

淫魔幼女 「死体のやりとりを人に見られるのは、お前にとってあまり良いことではないだろう?」


王子 「まあ、たしかに」

王子 (宿か)

王子 (……宿かあ。変な噂がたたないことを祈ろう)


淫魔幼女 「さて、死体だったな……」


ゾワゾワゾワ


王子 「!」

王子 (頭以外を隠す黒い外套が、生き物みたいにうねっている)


淫魔幼女 「あ、手が滑った」


ゴトンッ


王子 (何か飛び出して落ちたぞ)


幼女魔王 「…………」


王子 (桃色髪の子供の死体……か?)





886シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 08:46:32.34Mszlptb60 (2/46)



淫魔幼女 「尻が少し大きいが、ここのエルフの美的感覚からすれば美しい部類に入るはずだ」


王子 「ふむ」


淫魔幼女 「この里のエルフが幼児体系を好むのは」

淫魔幼女 「その方が体の中の魔力が流れやすく」

淫魔幼女 「魔法を練りやすいと考えているからだ」


王子 「なるほど。それならこの子は好まれそうだ」

王子 「腰まわりが妙になまめかしすぎる気もするが」


幼女魔王 「…………」


王子 「まるで眠っているみたいだ」

王子 「死んでいるようには見えない」


ハーピィ 「…………」


淫魔幼女 「……それもしかたあるまい」

淫魔幼女 「体は生きているのだから」





887シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 09:20:43.81Mszlptb60 (3/46)



王子 「何だって。それは、どういうことかな」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「お前は、空を見たことがあるか」


王子 「あ、ああ。あるけど……」


淫魔幼女 「もしその空の向こうに、気が遠くなるほど大きな世界がひろがっていて」

淫魔幼女 「さらにその向こうに、果てしなく大きな世界がひろがっていて」

淫魔幼女 「そこにはお前たちの暮らす小さな世界と似たような世界がいくつもあるとしたら、どうする?」


王子 「そうだな。夢のある話だが、おれにはどうにもできないな」

王子 「空の高さもよく分からないっていうのに」


ハーピィ 「…………」


淫魔幼女 「その、お前にはどうにもできない世界での話だ」





888シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 09:54:41.01Mszlptb60 (4/46)



淫魔幼女 「夜が深く美しいある小さな国に、心優しい姫がいた」

淫魔幼女 「だが、くらい野心を持つものたちにとらわれ」

淫魔幼女 「呪いによる拷問によって、生きたまま幼い心を引きちぎられ、すり潰された」

淫魔幼女 「空っぽになった体にはうらみつらみを詰め込まれて、姫はつくられた魔王となった」


王子 「魔王……」


淫魔幼女 「やがて大きな戦いが起こった。その中で、ある者たちが姫を取り戻そうとした」

淫魔幼女 「両親をはじめ多くの者たちが自ら命を投げ出し、彼女を取り戻すことはできたが」

淫魔幼女 「魔王としての心も壊された彼女は、もう元には戻せなかった」

淫魔幼女 「体は何一つ変わらず清らかなまま、姫はもう何者でもなくなっていた」


幼女魔王 「…………」





889以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 10:00:09.09V6jku/RpO (1/2)

シャルロッ亭きゅっぷいの過去作まとめみたいなのはないんかえ


890以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 10:02:16.06tm9gEDpc0 (1/1)

ぐぐれ


891以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 10:03:59.10V6jku/RpO (2/2)

出てこねえから言ってんだよ


892以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 10:04:52.97UCf8gXBy0 (1/1)

この体を手に入れたら
葉巻がチート化しそうなんだが


893シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 10:33:13.98Mszlptb60 (5/46)



王子 「この子がそうだっていうのかい」


淫魔幼女 「信じられなければそれで良い」

淫魔幼女 「商品を高く売るための作り話とでも思ってもらえたら」

淫魔幼女 「他者に体を乗っ取られることが、姫を目覚めさせる何かのきっかけになれば……」

淫魔幼女 「というこちらの思惑も話さずに済むからな」


王子 「なるほど……」

王子 「だが正直なところ、この子をおれに売ってしまうと」

王子 「たぶんあんたのところには戻ってこないぞ」


ハーピィ 「…………」


淫魔幼女 「気づかいはありがたいが」

淫魔幼女 「それは大丈夫だ」


王子 「そうなのか」


淫魔幼女 「ああ。絶対に」






894シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 10:48:38.89Mszlptb60 (6/46)



王子 「うーん」

王子 「あんたのおかげでハーピィに会えたのは事実だが」

王子 「こればっかりは不吉な感じがするんだよなあ……」


淫魔幼女 「…………」


王子 「なあ、あんた」


淫魔幼女 「何だ」


王子 「もしもさっきの話が本当で、この子がうまいことあんたの手元に戻って」

王子 「いつか目を覚ましたら、どうするつもりだ?」


淫魔幼女 「もうまったくの別人だ。過去を知る者がそばにいては、お互いに不自由だろう」

淫魔幼女 「1人で生きていけるくらいに育つまで見届けたら、おれは姿を消すさ」


王子 「そうか」

王子 「……わかった」

王子 「おれの責任で、この子を預からせてもらおう」


ハーピィ 「…………」





895シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 11:00:26.90Mszlptb60 (7/46)



淫魔幼女 「良いのか。そんなに簡単に」


王子 「人生は大なり小なりもれなく賭けだと思う。考えるにこしたことはないだろうが」

王子 「何が何だか分からんが、勇者だの魔王だの海老だの何が何だか分からんことが起きている今」

王子 「思い切って何が何だか分からんものも信じなきゃならないのだろう」


淫魔幼女 「……勇者や魔王と並列する海老がお前の何なのかいまいち分からんが」

淫魔幼女 「まあ良いか」

淫魔幼女 「では、どうか頼む」


王子 「ああ」

王子 「で、いくらだい?」


淫魔幼女 「お前は預かると言い、おれは頼むと言った」

淫魔幼女 「金はいらんよ」





896シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 11:07:31.95Mszlptb60 (8/46)



淫魔幼女 「その体で何か不都合があれば、返しにくるといい」

淫魔幼女 「おれはしばらくここにいるから」


王子 「分かった。……と、この子を背負うのを手伝ってくれるかい、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


幼女魔王 「…………」


王子 「良し。ありがとう」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「女2人をつれて宿を出る男、か……」


王子 「…………」






897以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 11:10:06.97//SduJR70 (1/1)

お巡りさんこっちです


898シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 11:17:24.05Mszlptb60 (9/46)



淫魔幼女 「ああ、そうだ」

淫魔幼女 「餞別だ。受け取れ、ハーピィ」


ハーピィ 「…………?」

ハーピィ 「…………!」


王子 「赤い羽根と、白い羽根……と、黒い羽根」


淫魔幼女 「ハルピュイアの羽根だ」

淫魔幼女 「その3枚はすべて」

淫魔幼女 「一体のハルピュイアから抜け落ちた」





899シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 12:03:16.47Mszlptb60 (10/46)



…………


黒花エルフの館



葉書エルフ 「…………」


幼女魔王 「…………」


王子 「どうだろうか。桃色の髪がよく光を通すんだ」


葉書エルフ 「…………」

葉書エルフ 「……へえ」

葉書エルフ 「お前も良い女ってやつが分かってきたじゃないか」


王子 「そうかな」


葉書エルフ 「……純潔か。よしよし、この薄くて柔らかい胸板……」


王子 (ほめているのか、それは)


葉書エルフ 「尻が丸すぎる気がするが、まあ、つなぎとしては上出来だろう」


王子 「つなぎか……。いや、それは良かった」

王子 (いろいろと)


ハーピィ 「…………」





900シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 12:13:35.58Mszlptb60 (11/46)



葉書エルフ 「……何かあったのか?」


王子 「あー……」


ハーピィ 「…………」


王子 「あった。いや、それをくれた人がな」

王子 「用が済んだら、できれば返してほしいということを言っていて」


葉書エルフ 「そういうことか」

葉書エルフ 「この体もそろそろ領主のやつに返してやる頃だろうから、しばらくは無理だが」

葉書エルフ 「いつか返せるさ」

葉書エルフ 「そいつとまた会えればな」


王子 「そうか。それは良かった」


葉書エルフ 「それだけか?」


王子 「…………」


葉書エルフ 「……ふふ」

葉書エルフ 「良いさ。お前がオレにくれた体だ。嫌なことは聞きたくない」

葉書エルフ 「ありがたくいただくよ」


王子 「……ああ」

王子 「ありがとう」


ハーピィ 「…………」





901シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 12:19:58.44Mszlptb60 (12/46)



葉書エルフ 「それじゃあ、さっそく使い心地を試してみよう」


王子 「ああ」


葉書エルフ 「…………」


王子 「…………」


葉書エルフ 「おい」


王子 「うん?」


葉書エルフ 「いつまでそこにいる気だよ」

葉書エルフ 「あの夜はしかたなくやったが」

葉書エルフ 「体を乗り換えるのを見られるのは、本当はちょっと恥ずかしいんだぞ」


王子 「そ、そうか。出ているよ」


ハーピィ 「…………」





902シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 12:31:56.14Mszlptb60 (13/46)



…………


王子 「うーん。エルフの感性はやっぱりよく分からんな」


ハーピィ 「…………」


王子 「しかし、これでハーピィの体を乗っ取られずにすんだわけだ」

王子 (ハーピィは乗り気のようだったのは意外だが)

王子 「肩もみの日々も終わりか。少しさびしい気もするのは、不思議なことだ」


ガチャッ


幼女魔王(葉巻エルフ) 「…………」


王子 「出てきたか」

王子 「ははは、可愛い可愛い」


幼女魔王(葉巻エルフ) 「……まずいことになった」


王子 「うん?」


幼女魔王(葉巻エルフ) 「すべての能力が少し下がっちゃったような気がする」


王子 「なっ……」





903シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 12:43:32.88Mszlptb60 (14/46)



ガチャッ


ろうそく職人 「ふふふ~ん。帰ってきた私はろうそく職人~」

ろうそく職人 「おわっ、王子さまが今度は半裸の女の子を……!」


貝殻の勇者 「いえ、あの雰囲気は……きっと葉巻エルフどのの新しい姿でしょう」


幼女魔王(葉巻エルフ) 「……だめだ。とにかく才能がないんだ、この体。クソなんだ」

幼女魔王(葉巻エルフ) 「あらゆる面で負のベクトルに突き抜けているんだ」


王子 「そ、そんなことがあるのか……」


幼女魔王(葉巻エルフ) 「さっきまでなら一瞬でろうそく娘を1万人消せる自信があったが」

幼女魔王(葉巻エルフ) 「いまは1千人が良いとこだろう」


ろうそく職人 「えっ!?」


王子 「それはまずい……のか?」





904以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 12:47:25.43nT9ajFGpo (1/2)

単位がおかしいけど単純計算1/10だから十分まずいよな…


905シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 12:53:13.67Mszlptb60 (15/46)



幼女魔王(葉巻エルフ) 「良いさ。お前のくれた体だ、大事にするさ……」


王子 「すまなかったな……」


幼女魔王(葉巻エルフ) 「うれしいよ。バラ色だ」

幼女魔王(葉巻エルフ) 「……良かったな」


ハーピィ 「…………」


王子 「ああ。この子は何としても……」


幼女魔王(葉巻エルフ) 「おれが男の体になっていたら」

幼女魔王(葉巻エルフ) 「ものすごく厄介なことになっていたぞ、お前」


ろうそく職人 「恋人ですもんね」


貝殻の勇者 「今の姿でも、問題がありそうですけどね」


王子 「……ああ。そういえば、そういうことになっていたな」


幼女魔王(葉巻エルフ) 「けけけ」


ハーピィ 「…………」


…………





906シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 12:57:06.20Mszlptb60 (16/46)




黒花エルフ的 体の評価

http://i.imgur.com/FbijvRv.jpg




名前表記変更(仮)

幼女魔王(葉巻エルフ)

幼葉エルフ



>>889

無いんすわあ。




907以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 13:01:48.40nT9ajFGpo (2/2)

>>906
ドラム缶は超OKなのかよwwwwwwwwwwwwwwwwww


908以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 13:24:06.13m0A4xPJ0o (1/1)

ドラム缶は起伏が緩やかなんじゃなくて
起伏が皆無なんじゃ


909以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 13:39:39.69E2pB/MNOo (1/1)

司書長メガネっ娘だったんか


910以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 15:07:18.81uI7O4SFD0 (1/1)

>>906
ろうそく職人ネタ過ぎるだろwwwwwwww
あと司書長が>>377からカリスマがこそぎ落ちてるwwwwww



ところで前回の乗り換えは血をほぼ全部使って、だったんだが
司書長大丈夫・・・だよな?


911以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 15:10:21.80YdiRYGBGo (1/1)

ろうそく職人胸でかいなそして可愛い

もっと素朴で野暮ったい村人A的なイメージだった


912以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 15:14:57.99pyEVl82V0 (1/1)

なぜ海老があるwwww



913シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 16:31:27.52Mszlptb60 (17/46)



…………


貝殻の勇者 「大丈夫ですか、司書長エルフどの。水をどうぞ」


司書長エルフ 「……ええ、ありがとうございます」


王子 「血を失っているんだから、無理しちゃいけない」

王子 「ほら、海老だ。骨を丈夫にしたり貧血に効いたりするぞ、たぶん」


司書長エルフ 「え、ええ……ありがとうございます」

司書長エルフ 「ですが、大丈夫ですよ。失われた血は多くありません」

司書長エルフ 「葉巻エルフがあの晩につかった血の魔法は、目くらましの効果もあったのでしょう」

司書長エルフ 「基本的に魔法使いはその弟子にさえ、秘術を伝えたがらないものですから」


王子 (恥ずかしいって、そういうことだったのか?)


司書長エルフ 「私が今こうして寝ているのは、体を乗り換える魔法の後遺症のようなもの」

司書長エルフ 「今夜の大会議には出席できないでしょうが、明日の朝には動けるようになると思います」


王子 「そうか……よかった」


ハーピィ 「…………」





914シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 16:49:22.16Mszlptb60 (18/46)



貝殻の勇者 「恐ろしい魔法もあったものです。まるで悪魔のような」


司書長エルフ 「人と妖精の価値観は違うものですが」

司書長エルフ 「あの子は人とエルフ双方の中にあっても、特異な価値観を持っています」

司書長エルフ 「そして困ったことに、きわめて正常なのです」


王子 「異常が正常か……」


司書長エルフ 「あの子は今なにを?」


貝殻の勇者 「ろうそく職人さんに魔法使いの修行をつけています」





915シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 17:05:26.23Mszlptb60 (19/46)



…………


幼葉エルフ 「はじめは猫背のさえない村人Aかと思っていたが」

幼葉エルフ 「なかなかお前は骨があるようだ」


ろうそく職人 「ありがとうございます、師匠のおかげです!」

ろうそく職人 「胸の重さに負けず、貝殻の勇者さまを支えられるよう頑張ります!」


幼葉エルフ 「その意気や良し。ではこれより、腐敗の魔法の基礎を教える」


ろうそく職人 「は、はいっ!」

ろうそく職人 「武器をボロボロにする、あの魔法でしょうか!」


幼葉エルフ 「ああ、それも腐敗に属しているな」

幼葉エルフ 「ではまず目をつむり、お前なりの美男を2人思い浮かべろ」


ろうそく職人 「はい!」

ろうそく職人 「……思い浮かべました!」


幼葉エルフ 「では次に、その2人を抱き合わせろ」


ろうそく職人 「はい!」

ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「ふおぉお……!」


…………





916以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 17:08:46.66O9fF2KjBo (1/1)

腐ってそういう…


917以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 17:18:24.662PAwD/iDO (1/1)

まあイメージは大切ですよね…


918以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 17:21:08.65i26FkzYb0 (1/1)

ふおぉお……!じゃねーよwwww


919以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 17:25:18.79JtXzIztaO (1/1)

黒花の黒花はきっと黒薔薇なんだろうな…


920以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 17:32:40.38JKr4X/T0o (1/1)

極めるとあらゆる物に応用がきくようになるんだね


921シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 17:34:24.70Mszlptb60 (20/46)



司書長エルフ 「たしかにあの子は、私たちの側にいます」

司書長エルフ 「ですが目指すものが同じでも、その過程は大きく異なる」

司書長エルフ 「我々の忌避することが、あの子にとって手段となりえるのです」


王子 「……こちらを裏切ることはないのかな」


司書長エルフ 「絶対にないとは言えませんが」

司書長エルフ 「それは我々がそうすることと同じ程度の可能性と思って問題ありません」

司書長エルフ 「だからこそ、困っているのです」


貝殻の勇者 「子供のまま、知恵と力をつけたようなものなのですね……」


王子 「面倒くさいことを抜きにすれば、わりと面白いやつなんだけどなあ」


司書長エルフ 「……子供は成長するもの。正式でないとはいえ」

司書長エルフ 「弟子をとったことがあの子に良い影響をおよぼすと良いのですが」


ハーピィ 「…………」





922シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 17:47:33.80Mszlptb60 (21/46)



ガチャッ


幼葉エルフ 「ああ、ここにいたか」


ろうそく職人 「た、たらいま戻りまひた……ふへへ……」


貝殻の勇者 「ろ、ろうそく職人さん。足がガクガクしていますが大丈夫なのですか!?」


ろうそく職人 「腐敗の道は……1日にしてならずです」


貝殻の勇者 「ろうそく職人さん!?」


幼葉エルフ 「ああ、良いなあこの体。能力はゴミみたいなものだが」

幼葉エルフ 「周りの奴らの反応はこれまでと正反対だ」


司書長エルフ 「くっ……」


幼葉エルフ 「さすが、お前の見つけてくれた体だ」

幼葉エルフ 「よっ、と」


王子 「こらこら、そんな当たり前に膝に座ってくれるな」


幼葉エルフ 「やだ」


王子 「ははは、やれやれ」


ろうそく職人 「体が司書長エルフさんのときと比べて余裕がありますね、王子さま」


王子 「子供の体だ。間違いは起こるまい」


ハーピィ 「…………」





923以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 18:08:03.78Idu0Rt+o0 (1/1)

間違いは起こらなくても
正解はおこるわけで


924シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 18:08:16.98Mszlptb60 (22/46)



…………


エルフの里 大会議劇場



ワイワイ ガヤガヤ


汚れ水精 「ああ、もうすぐ始まるねえ」


ヘドロ娘 「楽しみだねえ」


ワイワイ ガヤガヤ


ろうそく職人 「うわあ、すごく明るいですねえ」


王子 「人もたくさん集まっているな。出店まである」

王子 「と、あれは……」





925シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 18:22:38.06Mszlptb60 (23/46)




看板 『えび抜きドリア屋』


料理長 「えびゆで師が抜けたのは痛いが、それがどうした」

料理長 「いくぞ、野郎ども!」


料理妖精たち 「おう!」


ろうそく職人 「普通のドリア屋じゃ駄目なんでしょうか」


ハーピィ 「…………」


王子 「あいつら……」

王子 「しかたないな。おれも……」


フッ


ろうそく職人 「あ、暗くなりました」


王子 「……始まるか、妖精と人間の大会議が」


ろうそく職人 「いよいよ、勇者さまと師匠の晴れ姿を見られますね!」





926シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 19:02:53.63Mszlptb60 (24/46)



シン


観客たち 「…………」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「…………」


ヴァカッ


白花エルフ 「…………」


王子 (光の柱が……今日は最初に白花エルフを照らした)

王子 (白花エルフだよな。仮面をしているが)

王子 (……いったいこの光はどうやって出しているんだろうか)


白花エルフ 「こんばんは、人間と妖精のみなさま」

白花エルフ 「大陸が混迷をきわめる今日このごろ」

白花エルフ 「いかがお過ごしでしょうか」

白花エルフ 「今日は良き日です」

白花エルフ 「長きに渡り分かたれていた人と妖精が領域をこえて交わる」

白花エルフ 「記念すべき日」





927シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 19:14:46.56Mszlptb60 (25/46)



ヴァカカカカカッ 


幼葉エルフ 「…………」


エルフの長老たち 「…………」


他妖精の長老たち 「…………」


貝殻の勇者 「…………」


領主メイド 「…………」


人間の代表者たち 「…………」


ろうそく職人 「すごい」

ろうそく職人 「偉そうに腕組みした人々がたくさんいますね」


王子 「偉いんだろう。みんな仮面をしているな……」


白花エルフ 「この場にいるのは、仮面の者ばかり」

白花エルフ 「仮面の元にみな平等。人も妖精もありません」

白花エルフ 「あるべきではないのです」





928シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 19:51:17.09Mszlptb60 (26/46)



白花エルフ 「この大陸の未来のために。人と妖精たちの未来のために」

白花エルフ 「盛大に語り合いましょう」

白花エルフ 「♪それではみなさん、大会議を始めるよー」


王子 (やっぱり歌うのか)


エルフの長老たち 「♪分かったよー」


他妖精の長老たち 「♪やったるよー」


貝殻の勇者 「♪のぞむところだよー」


ろうそく職人 「ああっ、勇者さま」

ろうそく職人 「めぐまれた美声から繰り出されるゴミみたいな歌声!」


人間の代表者たち 「!? ……ッ?? ……!?」


領主メイド 「くぅっ……!?」

軽装メイド 「あ、いけない、変装が……」


ハーピィ 「……ッ……ッッ」


王子 (そうなるよな。みんなやっぱりそうなるよな。おれはまともな人間だったんだな……)


ワアアアア





929sage2014/02/08(土) 19:56:23.01HnW7aoL40 (1/1)

いいぞ


930シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 20:08:39.28Mszlptb60 (27/46)



??? 「いやあ、たいへん面白いことをやっておられるようで」

??? 「どこの身分とも知れぬ皆様がた!」


ヴァカッ


谷の妖精たち 「な、なんだあ!?」


坂の妖精たち 「長老さまがたが立つ舞台の真ん中に……」


王子 「光の柱……血のように赤い」


ろうそく職人 「あ、新しい趣向にしては気味が悪いですね」

ろうそく職人 「誰か立っていますよ」


ザワザワ ヒソヒソ


??? 「ひどいではありませんか」

仮面インプ 「ご近所ですのに、我々を呼んでいただけないなんて」

仮面インプ 「この意地悪!」


王子 「どこかで見た気がするな」

王子 「かなり嫌な場所で」


ハーピィ 「…………」


王子 「……見たことあるな」





931シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 20:25:44.28Mszlptb60 (28/46)



鎧の妖精 「おいおい、ありゃインプじゃねえか?」


太った妖精 「まーた何かいたずらしてんのか?」


インプたち 「ま、待ってくれよ」

インプたち 「あいつ、何かあっしたちと雰囲気が違う」


ザワザワ


汚れ水精 「ああ、良くないのが出たねえ」


ヘドロ娘 「ああ、ありゃあ良くない。まだまだいるねえ」


ろうそく職人 「な、何だか様子が変ですよ王子さま」


王子 「ああ……準備をしておいた方が良いな」


ろうそく職人 「準備って……」


フワフワ妖精 「きゃあああ!!」





932シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 20:32:59.93Mszlptb60 (29/46)




黒い魔物 「…………」


犬商人 「く、黒い……人間? 妖精?」


フワフワ妖精 「離せ! 離せえ!!」


クルクル妖精 「な、何だあお前!」

クルクル妖精 「この真っ黒やろう! フワフワを離せ!」


黒い魔物 「……ぐば」


フワフワ妖精 「うわあああ!?」

フワフワ妖精 「やめろ、真っ赤な口で近づいてくるなあ!」


ザシュ ザシュ ザシュ


黒い魔物 「……ぎゃ」


ドサッ


剣の妖精 「…………」


槍の妖精 「…………」


王子 「……戦いの準備だ」


ハーピィ 「…………」





933シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 20:40:45.50Mszlptb60 (30/46)



ワーワー キャーキャー


仮面インプ 「いやあ、申し訳ない」

仮面インプ 「しつけのなっていない者たちばかりで」

仮面インプ 「私の口上が終わるまで待てなかったみたいでございます」


白花エルフ 「何者ですか、我々の舞台に飛び込んできたあなたは」


仮面インプ 「ケチなインプでございますよ」

仮面インプ 「奴隷市場なんぞで花形の口上師として働かせてもらっておりますが」

仮面インプ 「本当のところ」

魔インプ 「情けないことに、魔王軍の使いっぱしりでございまして」





934シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 20:48:42.05Mszlptb60 (31/46)



黒い魔物 「がば」


黒い魔物 「ぐるる」


王子 「劇場のあちこちでわいているのか。明るくて良かった」

王子 「4本足に2本足……いろんなのがいる」

王子 「ハーピィ、大丈夫かい」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「ひいいい」

ろうそく職人 「お助け、お助けえ!」


王子 「君、地獄の炎はどうした」


ろうそく職人 「回復しかできません!」


王子 「頼もしいじゃないか」





935シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 20:53:19.97Mszlptb60 (32/46)



貝殻の勇者 「くっ……」


幼葉エルフ 『動くな、勇者さま』


貝殻の勇者 「!!」


幼葉エルフ 『我慢だ。あんたの出番はまだだ』





936シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 21:12:40.29Mszlptb60 (33/46)



仮面インプ 「こんなところに集まって隠れてこそこそと」

仮面インプ 「いやしかし、一網打尽とはこのことでございますかな」


ズズズ


黒い魔物たち 「きゅう」


黒い魔物たち 「がるる」


仮面インプ 「おお、出てきた出てきた。この分では舞台が黒く染まってしまいますな」


白花エルフ 「……この異形のものたちを指揮しているのは、あなたですか?」


仮面インプ 「まさか。使いっぱしりと言ったじゃありませんか」

仮面インプ 「このお馬鹿さん!」

仮面インプ 「私にできることと言えば、場をあたためておくことくらい」





937シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 21:18:15.40Mszlptb60 (34/46)



ウウゥゥウウ


王子 「…………!?」


ろうそく職人 「な、何ですかこの地の底から這い上がってくるうめき声のようなものは」

ろうそく職人 「まさか、地獄の炎!?」


杖の妖精 「不吉な声だ……」


拳の妖精 「客席じゃないな。舞台の方だ」


ウウゥウウウゥウウゥウ


仮面インプ 「さあ、出さらしませ!」

仮面インプ 「魔王軍の頼もしき隊長さま!」





938シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 21:24:18.95Mszlptb60 (35/46)



ウウゥウウウウ


ろうそく職人 「どどどどど、どんどん大きくなってきますよ!」


王子 「し、しがみつかないでくれ。今いちおう戦っているんだから……」


ハーピィ 「…………」


ウウウゥゥゥウウウウウ


耳の妖精 「………来る!」


ウウゥゥゥウウ

ウウゥウウゥウウウウ

ウウゥウウウウウゥゥゥウーーー

ドカンッ


魔ンボウ 「魔ンボウ!」


王子 「劇場の底を突き破って何か出てきたぞ」


ろうそく職人 「これぞ出オチですね!」





939以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 21:33:07.50gRypkxLYo (1/1)

床を突き破った反動で死にそうな隊長だ


940シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 21:34:47.81Mszlptb60 (36/46)



魔ンボウ 「わはははは!」

魔ンボウ 「我こそは魔王軍の隊長が1人」

魔ンボウ 「魔王さまにあだなす人間に妖精たちよ」

魔ンボウ 「今日が貴様らの命日だ!」


仮面インプ 「キャーッ! ステキ! 半魚人の魔ンボウさま!」

魔インプ 「もうこんな仮面捨てちゃう!」

魔インプ 「ポーイッ」


魔ンボウ 「わはははははは!」


王子 「…………」


ろうそく職人 「……ど、どうするんですか、これ」


王子 「……今わかった」

王子 「青花エルフとの修行は、このためにあったのだな」


青花エルフ 『……ちゃうわい』


王子 「!?」





941シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 21:53:33.25Mszlptb60 (37/46)



白花エルフ 「……あなたが、この異形の一団を指揮しているのですか」


魔ンボウ 「さよう!」

魔ンボウ 「勇者などというふざけた者を節操なくつくっているという」

魔ンボウ 「不届き者たちが集まると聞いてやってきたのだ」


白花エルフ 「魔王軍……。唐突に現れたものですね」

白花エルフ 「この場所は、味方以外の誰にも知られていないはずですが」

白花エルフ 「どうも……勇者が存在すると困る、ある勢力がちらつきます」


魔ンボウ 「……考えても無駄なこと」

魔ンボウ 「貴様らはここで全滅するのだからな」

魔ンボウ 「かかれ、黒い魔物たちよ。魔王さまの敵をすべて討ち滅ぼすのだ!」

魔ンボウ 「無情に野をかける風のごとく!」


妖精の長老たち 「ブフッ」


観客妖精たち 「プークスクス」


ドッ ワハハハハハハ


魔王軍 「!?」





942シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR2014/02/08(土) 21:59:44.01Mszlptb60 (38/46)



ゲラゲラゲラ ヒーヒー


淫魔幼女 「…………」


黒い魔物1~10 「がるるる」


淫魔幼女 「…………」


ズパッ


黒い魔物1~10 「ぎゃっ」


淫魔幼女 「……この世界の妖精たちの笑いどころは分からんな」


ワハハハハハ


幼葉エルフ 『……計画通りだ』


王子 『うそつけ』


ハーピィ 「…………」