344名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:22:09.36F+po9Mu60 (23/34)

ガチャッ……


マリ「やーやー、お待たせー」

アスカ「あ、いえ、大丈夫ですよ。別にそんなに待ってないですから」ニコッ

マリ「そう? それじゃ、お二人さん。次はこちらへどうぞ。そこらに寝そべって」

シンジ&アスカ「?」

マリ「ポテチ買ってあるしさ、みんなでゴロゴロしながら食べよーよ。普段、絶対出来ないでしょ? クセになるよー、これ♪」

シンジ&アスカ「…………」


顔を見合わせる二人…………


345名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:24:33.78F+po9Mu60 (24/34)

ー 洋室 ー


シンジ「」パリッ……パクッ

アスカ「」パクッ、モグモグ……

マリ「コンソメ味にのり塩味もあるよー。あと、コーラ♪」トポトポ


うつ伏せになって寝転がりながら食べる三人


シンジ「意外と…………」パクッ……

アスカ「解放感がある……。不思議ね……」ゴクッ……

マリ「ま、普段なら絶対に出来ない事だからねー♪ この行儀の悪さがハマるんだー」パリッ……パクッ


シンジ「それ、ちょっとわかる……。僕も前はミサトがいない時、リビングで大の字になって寝転がってたし」

アスカ「あ、そんな事してたんです?」

シンジ「うん。クッション殴るよりストレス解消になる時もあったから」

アスカ「ふーん……」

マリ「式ちゃんは何かストレス解消みたいな事してた?」パリッ……モグ

アスカ「アタシは……サルのぬいぐるみにハサミを突き刺したりとか……」

シンジ「」
マリ「」

アスカ「あっ、でも、最近は全然してないですよ! 昔の話です!」アセアセ

マリ「ああ……うん……。そういう時もあるよね……。あはははは…………。ね、ワンコ君? そうだよね?」アセアセ

シンジ「あ、え、うん。クッション殴るのとおんなじ様なものだよね、普通だよ、普通」アセアセ

アスカ「あ、あの、それより真希波さんは?」アセアセ

マリ「あ、うーんと…………私は射撃かにゃ? 訓練場に行ってひたすら撃ってたよ。私、軍事訓練までさせられてたからねー」

アスカ「あ、それはアタシもです。アタシ、ユーロ空軍にも入ってましたから」

マリ「あ、そうなの? じゃあ戦闘機の操縦とかはどうだった? あれ、結構ストレス解消にならなかったかにゃ?」

アスカ「あ、いえ、流石にそこまでは…………」ドンビキ
シンジ「」

マリ「え? え? それぐらい普通じゃないの?」アセアセ

アスカ「あ、いえ、でも、アタシ二等兵でしたし。だから、銃の分解とかそれぐらいまでしか」アセアセ

シンジ「その……真希波……そんな事までしてたの?」

マリ「え、あ、うん……。ま、ね……。何でも覚え込まされたよ。ひょっとしてエヴァが仮設機しかなかったから、その分なのかな……? 少し間違うとさんざん言われたし、叩かれもしたりさあ。ホント、ろくでもないとこだったけど」

アスカ「…………」


複雑な表情を見せるアスカ…………


346名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:26:57.82F+po9Mu60 (25/34)

マリ「ま、ベタニアベースはそんな感じだったかな。ネルフ本部はどんな感じなの?」

シンジ「覚え込まされる事はないけど、でも覚えなきゃこっちが危険って感じかな……。誰も教えてくれないし、教えようともしない分、ベタニアベースよりタチが悪いかもしれない……」

マリ「そっか……そう考えるとネルフ本部の方が腐ってるんだね」

シンジ「多分ね……。個人差がかなりあるみたいだけど、でも、上に行けば行くほど酷くなるって、綾波がそう言ってた」

マリ「綾波って……ファーストチルドレンの子だよね?」

シンジ「ああ、うん。綾波も……僕らと同じだから。もしかしたら一番酷いかもしれないけど……」

マリ「それ、どういう事?」

アスカ「それ……アタシも知りたいです。前に少し聞きましたけど、詳しく教えてもらってないので」

シンジ「そう……だね。……式波も、こっちの生活に慣れてきたみたいだし、もう話してもいいと思う」


347名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:28:19.20F+po9Mu60 (26/34)

ー レイの境遇説明後 ー


マリ「…………そっか」ポツリ……

アスカ「………………」

シンジ「うん…………。綾波は今、無口だけど……。多分、元は明るく元気なよく喋る子だったと思う……。時々、昔の話を聞く時があるんだけど、その中だとそんな印象だから……」

マリ「そっか…………。ちょっと前までは、こんなひどい目に遭っているのは私だけだと思ってたんだけどね……。悲しいなあ…………」

アスカ「……私たち、皆だなんて…………」

シンジ「……僕も……少し前まではそう思ってた……。僕だけなんでこんな酷い目にって…………。綾波ばかり優遇されてって…………。でも、結局、僕が一番マシな方だったんだ…………」


マリ「…………」

アスカ「…………」

シンジ「…………」


重い沈黙が流れる…………


348名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:29:45.95F+po9Mu60 (27/34)

マリ「……ワンコ君、今度さ…………レイちゃんも連れてきなよ。少しは気が楽になるかもしんないし」

シンジ「うん……。綾波は色々と忙しいから、あまり暇がないかもしれないけど……」

アスカ「…………」

シンジ「あ、そういえば、今度みんなで水族館に行かない? 抽選で当たったから見学が出来るんだ。色々、楽しいと思う」

アスカ&マリ「水族館?」

シンジ「うん。セカンドインパクト前の生き物がいるって。赤い海じゃなくて青い海も見れ」

アスカ&マリ「行くっ!//」

シンジ「あ、えと、うん……。じゃあ、綾波の都合がついたら皆で行こうか。本当はクラスの子も誘いたいんだけど、大人数になっちゃいそうだし……」

マリ「うん♪」
アスカ「はい!」

シンジ「楽しみだなあ」

マリ「だねー♪」

アスカ「ホント♪」


マリ「…………」

アスカ「…………」


アスカ「」チラッ……
マリ「」チラッ……


アスカ「……」

マリ「……」


何となく互いの顔を覗き見る二人…………


349名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:32:23.79F+po9Mu60 (28/34)

マリ「ところでさ……。さっきからずっと気になってたんだけど、何で式ちゃん、敬語使ってるの?」

アスカ「……。まあ……癖みたいなものです」

マリ「ふーん。でも、式ちゃん。少なくとも私に対して敬語はやめなよ。ワンコ君と違って、私は敬語使われるような人間じゃないよー」

アスカ「え、でも……」

マリ「それに、嫌なんだよね、敬語。昔を思い出すからさあ」

アスカ「あ……ごめんなさい……」

マリ「んにゃー……。かったいなー、式ちゃんは。もっとフレンドリーに行こー。楽にしてよ。でないと、私が淋しいよ」

アスカ「…………うん……そうよね……」

アスカ「わかったわ。これから普通に話す」

マリ「そうそう。ついでにワンコ君にも敬語話すのやめればいいのに。敬語は心の壁だよー。そんなんじゃいつまで経っても仲良くなれないよ?」

アスカ「え、あ、だけど……」チラッ……

シンジ「僕も式波には普通に話してほしいかな」

アスカ「う…………。だけど…………アタシ、お世話になりっぱなしだから…………」シュン……

マリ「私もお世話になりっぱなしだけど、敬語使ってないんだよね……。使った方がいいかい、ワンコ君?」

シンジ「ううん。普通に話して。そっちの方がいいよ」

マリ「だよね。ま、そんなわけだから、式ちゃんもそうしなよ」

アスカ「えっと……でも…………」モジモジ……

マリ「……ま、急には無理かな。その内にね」

アスカ「……うん」

シンジ「そうだね。その内」

アスカ「……はい…//」コクッ


マリ「……ふうん…………」ポツリ


350名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:34:18.23F+po9Mu60 (29/34)

ー 帰り際 ー


マリ「残念だね。もう帰っちゃうなんて」

シンジ「ごめん。でも、あんまり遅くなる訳にもいかないし。ミサト、急に帰ってくる時もあるから」

マリ「ま、しょうがないか。じゃね、ワンコ君、式ちゃん。二人とも、また来なよ」

シンジ「うん、そうする。今日はありがとう、真希波。久々にすごいゆっくり出来たよ」ニコッ

アスカ「……アタシもね。楽しかったわ」

マリ「そう言ってもらえると嬉しいね。ま、いつでも来なよ。今度はレイちゃんも誘ってさ」

シンジ「うん。そうする。多分、綾波も喜ぶと思うし」

アスカ「…………」

シンジ「それじゃあね、真希波。また今度」

マリ「うん。二人とも、バイバイ」

シンジ「うん。バイバイ」

アスカ「じゃあね」


シンジ&アスカ「」スタスタ……


並んで帰る二人




マリ「…………行っちゃった……」ポツリ


小さく呟くマリ…………


351名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:36:21.52F+po9Mu60 (30/34)

ー 二人が去った後 ー

ー リビング ー


マリ「」ゴロン…………

マリ「…………」ゴロゴロ…………


マリ「」ハァ…………


マリ「……式ちゃん、可愛い子だったなあ…………」

マリ「……付き合ってないって言ってたけどさ……。絶対、あの子、ワンコ君の事好きだよね…………」

マリ「……オマケにあの二人、一緒に暮らしてるって…………」

マリ「……ワンコ君に色々と気遣ってもらってさ…………」

マリ「……並んで二人帰ってさ…………」


マリ「………………」


マリ「……そりゃ、嫉妬しちゃうよ…………」ボソッ


マリ「………………」


マリ「……しちゃいけないんだろうけどさあ…………」


マリ「……私、一人だけ逃げ出して……こんな楽な生活送ってるんだから…………」


マリ「……全部、ワンコ君のおかげだから……ワンコ君困らす訳にはいかないし…………」


マリ「……それに、あの子はまだ逃げ出せないままネルフにいて……ひどい目に遭ってるのに…………」


マリ「……わかってるんだけどさあ…………」


マリ「……うー…………」ゴロゴロ……


マリ「………………」


マリ「……うー………………」ゴロゴロ……


マリ「………………」




マリ「……折角、ワンコ君、喜んでくれたのになあ…………泣きたいなあ、今…………」ポツリ……


352名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:38:36.60F+po9Mu60 (31/34)

ー 帰り道 ー


シンジ「……今日は楽しかった、式波?」

アスカ「あ、はい! すごく楽しかったです!」ニコッ

シンジ「そっか。それなら良かったけど」ニコッ

アスカ「はい!」

シンジ「真希波のおかげでご飯も作らなくて済んだし、助かったね。それに美味しかったなあ」

アスカ「はい。美味しかったですね」

シンジ「うん。真希波、謙遜してたけど料理上手だよ。今度レシピとか教えてもらおうかな」

アスカ「……そうですね」

シンジ「持ってった本とかも喜んでくれたし、良かった」

アスカ「……はい」

シンジ「それに、真希波も楽しそうだったし、また今度行きたいね」

アスカ「はい……」ツー、ポタッ……

アスカ「」ゴシゴシ

シンジ「……? どうしたの、式波?」

アスカ「あ、いえ、ちょっと目にゴミが入っちゃって。何でもないです」ニコッ

シンジ「……本当に?」

アスカ「はい。本当です」ソッ


無意識的に、猫耳帽子を胸に抱くアスカ


アスカ「本当に今日は楽しかったですから」ギュッ……

シンジ「そう? それならいいけど…………」

アスカ「はい。シンジさん、ありがとうございます」

シンジ「ううん。こっちこそ今日は付き合ってくれてありがとう」

アスカ「いえ……」

シンジ「また今度、どこか行きたいね。水族館は皆の都合が合わないと無理だから、少し遅くなりそうだし」

アスカ「あ、はい!」パアッ

シンジ「式波はどこか行きた……式波?」

アスカ「」ツー、ポタッ……ポタッ……

シンジ「本当にどうしたの、式波?」アセアセ

アスカ「あ、いえ……何だか嬉しくて……ちょっと気が緩んで……だから…………」グスッ……ヒック…………


シンジ「………………」


何も言えず、その場に立ち尽くすシンジ…………


353名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:40:44.00F+po9Mu60 (32/34)

ー 深夜 ー

ー 加持宅 ー


加持「それじゃあな。気をつけて帰れよ」

ミサト「ええ、わかってる。今日はご馳走さま、加持♪」

加持「あんな物で良ければいつでも作ってやるさ。お安いご用だ」

ミサト「うん、ありがとう…//」コクッ……

加持「それじゃあな」

ミサト「ええ」


ガチャッ……


ミサト「またね//」

加持「ああ」ニコッ


パタンッ…………














加持「葛城……すまないな…………」

加持「君からの愛情を受けれる様な男じゃないんだ、俺は……」

加持「だから、今だけはせめて幸せであってほしい……」



加持「……あと二体の使徒が来た時、俺はきっと君の前から姿を消すよ。その時は許してくれ」

加持「そして、あの子を利用しようとしている俺も許して欲しい……」

加持「葛城……。真実は君には必要ない。だから、必ず生き延びてくれ」

加持「俺の願いはそれだけだ……」クルッ

スタスタ……


部屋の奥へと消える加持…………


354名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:42:56.07F+po9Mu60 (33/34)

ー 同時刻、ミサト宅 ー

ー アスカの部屋 ー


アスカ「」ゴロン……
弐号機のぬいぐるみ「」


弐号機のぬいぐるみを抱きながらベッドに寝転がるアスカ…………


アスカ「……ママ……アタシ、どうすればいいんだろう…………」

弐号機のぬいぐるみ「…………」


アスカ「……こっちに来て……一杯楽しい事があったのに…………」

アスカ「……一杯……辛い事も多くなった…………」

弐号機のぬいぐるみ「…………」


アスカ「………………」


アスカ「……真希波……マリ…………」

アスカ「……綾波……レイ…………」


アスカ「………………」


アスカ「……好きに…なれないのに…………」

アスカ「……嫌いにもなれない…………」


アスカ「………………」


アスカ「……なれる訳ないわよね…………」

アスカ「……アタシと同じ様な目に遭ってるんだもの…………」


アスカ「………………」


アスカ「……嫌いになれたら…………」ボソッ……

アスカ「……楽だったのにな…………」ボソッ……


アスカ「………………」


アスカ「……アタシ、どうしたら…いいんだろう…………」

アスカ「……教えてよ……ママ…………」

弐号機のぬいぐるみ「………………」



アスカ「」グシュッ……

弐号機のぬいぐるみ「………………」


355名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/19(火) 23:47:20.47F+po9Mu60 (34/34)

ー 同時刻、月 ー

ー スペースシャトル内 ー


冬月「月面のタブハベースを目前にしながら、上陸許可を出さんとは……ゼーレもえげつない事をする」

ゲンドウ「mark6の建造方式が他とは違う。その確認で充分だ」


窓の外を眺める二人


冬月「ゼーレの切り札か……。やはり老人たちは建造作業を急がせているようだな……。予算の大半はあちらに流れているとも聞く」

ゲンドウ「例え完成したところで、今は向こうも何も出来まい。予算が流れているのは、我々の妨害に過ぎんよ。何かをしてくるとすれば第十使徒以降だろう」

冬月「それに備えてこちらもダミーシステムの完成を急がせているが……。こちらも一度試作機を破棄してしまったからな。予定が大幅に遅れている。本来ならばもう完成していたはずのものだ」

ゲンドウ「……仕方あるまい。あの時はそれ以外の手段がなかった。シンジたちには悪い事をしたが……」

冬月「…………仕方ない事が多すぎるな……。赤木レポートにしても……レイの事にしても……」ハァ……

ゲンドウ「全ては最後の計画を持って償えるだろう。いや、それより他に償う方法がない…………」

冬月「我々もまた……『仕方ない事』の内の一つという事か……やりきれんな」

ゲンドウ「ゼーレの計画が遂行されるよりはマシだ。今はそれ以外の手段がない」スッ……


窓から上を眺めるゲンドウ


カシウスの槍『』………………


そこには宙に浮かぶカシウスの槍


カヲル「……」


そして、mark6の指の上に座るカヲルの姿が……



冬月「変わらないな、あの少年も」

ゲンドウ「ああ、それでいい」



ー 月面 ー


カヲル「…………」


ゲンドウらの乗るスペースシャトルを冷たい眼差しで眺めるカヲル


カヲル「久しぶりだね、ゲンドウ君。……僕は、君の事も君の計画も認めるつもりはないよ」


静かにはっきりと語りかけるカヲル…………


356VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/20(水) 19:52:01.35hEAZlE7no (1/1)

うわーお、人間関係に潤いか出てきたと思ったら……
互いに嫉妬してるのに、境遇やらなんやらで辛く当たったり強く出る事も出来ない特殊な構図に……
このシンジさん男前だから仕方ないね、同じ境遇なら男でも惚れそうなレベルだもの


357VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/20(水) 20:21:59.93jPsn2tLZo (1/1)

TV版におけるカヲル君状態だもんな


358VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)2013/11/20(水) 20:31:02.64m2HrrcaO0 (1/1)

アスカ「女の娘にゲルマン臭いとかそんな事言っちゃダメなんだゾ☆」


359VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/20(水) 20:56:02.97VB0sLMS10 (1/1)

乙です



360名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:27:12.17N1w5pkKM0 (1/25)

ー 翌日、学校 ー


シンジ「…………」


窓の外をぼんやりと眺めるシンジ


シンジ「」ハァ……



トウジ「……ケンスケ。センセ、今日やけに元気ないけど、その理由知らへんか?」ヒソヒソ

ケンスケ「ううん……。知らない。また何か面倒事を抱えてるんじゃないかって事ぐらいしかわかんないよ……」ヒソヒソ

トウジ「んなもん、ワシでもわかるわ。それが何なのかを聞いとるんや。ワシが聞いても、何でもない言うて、教えてくれへんのや」ヒソヒソ

ケンスケ「だったら、僕が聞いても一緒だよ。大体、碇、そういう事はほとんど喋らないからさ。内向的っていうか、じっと溜めるタイプだし……」ヒソヒソ

トウジ「……ケンスケ……ワシら、まだそない信用ないんかな……」ヒソヒソ

ケンスケ「そうじゃないって信じたいな……。多分、そういう性格なんだと思う……。初めて会った時からずっとそこら辺は変わってないから、碇……」ヒソヒソ

トウジ「せやかてなあ…………。なんかワシらに出来る事あらへんやろか……?」ヒソヒソ

ケンスケ「聞いても教えてくれない場合は無理だよ。碇が話してくれない限りわからないんだから……。とにかく、僕らは普通にしてるのが一番だと思うよ。碇に変に気を使わせない方がいいと思う」ヒソヒソ

トウジ「歯がゆいこっちゃなあ……」ヒソヒソ


361名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:28:42.00N1w5pkKM0 (2/25)

アスカ「…………」


ぼんやりと教室の隅を見つめるアスカ


アスカ「」ハァ……


ヒカリ「アスカ」

アスカ「………………」

ヒカリ「アスカ!」

アスカ「え? あ、何、ヒカリ?」アセアセ

ヒカリ「……何って訳じゃないけど……。どうしたの? アスカ、何か今日変だよ?」

アスカ「そう……?」

ヒカリ「うん……」


ヒカリ「ねぇ、アスカ。昨日の碇君とのデート……ダメだったの?」ヒソヒソ

アスカ「……別に……そういう訳じゃないけど……ちょっと色々とあったの…………。ヒカリ、悪いけど、少し一人にしてくれないかな? お願い」

ヒカリ「…………」

ヒカリ「……うん……わかった。でも、アスカ。何かあったら何でも言ってね。溜め込んじゃダメだよ……」

アスカ「うん……。ありがとう、ヒカリ」


362名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:29:59.22N1w5pkKM0 (3/25)

ー 授業中 ー


先生「えー……ですから……」ボソボソ……



アスカ「…………」


ぼんやりと端末の画面を眺めるアスカ…………



アスカ(……アタシは…………)


アスカ(………………)


アスカ(……最初は…………)


アスカ(………………)


アスカ(……でも…………)


アスカ(……)ハァ……


アスカ(………………)


アスカ(……昨日、気付いちゃったのよね…………)


アスカ(………………)


アスカ(………………)


アスカ(……マシな訳ないって…………)


アスカ(………………)


アスカ(………………)


アスカ(……アタシは…………どうしても…………)


アスカ(………………)


アスカ(………………)


アスカ(……それなら…………)


アスカ(………………)


アスカ(……そうよね…………)


アスカ(……このままじゃ……ダメよね…………)


363名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:31:21.38N1w5pkKM0 (4/25)

ー ネルフ本部、エレベーター前 ー


マヤ「……」ハァ……


チンッ、ガコッ…………


エレベーターに乗り込むマヤ


マヤ「」スッ……


階数ボタンを押そうとする


加持「おーい、そのエレベーター、ちょっと待ってくれ」ダダダッ

マヤ「!?」

マヤ「」サッ、ポチッ、ポチッ!!


すぐに階数ボタンを押し、閉まるボタンを押すマヤ


ガコッ……

加持「」ダダダッ、サッ!!

ガシッ……


加持「ふぅ……ギリギリだな」


扉を手で押さえて、肩で息をする加持


マヤ「……近寄らないで下さい……」

加持「ま、そんな固い事は言うなよ。途中まで御一緒させてくれ」スッ……

ポチッ


エレベーターに乗り込み、階数ボタンを押す加持



マヤ「……」スッ……


加持から出来るだけ離れるマヤ


364名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:32:45.87N1w5pkKM0 (5/25)

ガコッ……ウィーン…………


加持「…………」





マヤ「…………」



加持「やれやれ、嫌われたものだな。そこまで離れなくても」

マヤ「…当たり前です」ボソッ

加持「そこまで警戒しなくとも、今日は何もしないさ。それと、この前の事は謝るよ。すまなかった」

マヤ「謝ってもらって…済む問題じゃありません……」

加持「ごもっともだな……。悪かったよ」


マヤ「…………」

加持「…………」


マヤ「どうして…………」ポツリ……

加持「?」

マヤ「どうして、あんな事したんですか。加持さんには葛城さんがいるのに」

加持「葛城、ね……」

マヤ「…………」

加持「……あいつとはただの腐れ縁さ。付き合ってると言えば付き合ってるが、それにも少し理由や事情があってね」

マヤ「……?」

加持「俺はあいつの事は好きじゃないって事さ」ツカツカ、スッ……

マヤ「!?」


マヤの側に寄り、壁に手を付いて、顔を近付ける加持


365名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:34:41.63N1w5pkKM0 (6/25)

ウィーン…………


マヤ「……今日は……何もしないんじゃなかったんですか……」フイッ……


顔を逸らすマヤ


加持「何もしないさ。こうして見てるだけだよ」

マヤ「迷惑です……。やめて下さい……」

加持「迷惑だと思うのなら、突き飛ばすなり逃げるなり出来るはずだろ?」

マヤ「……出来ないです、私、そんなの……。どれだけ迷惑でも…………」


加持「……そうかい? そうとは思えないけどな」

マヤ「…………」


目を伏せて、顔を逸らしたままのマヤ…………


マヤ「葛城さんと……好きでもないのに付き合ってるって最低です…………不潔です…………」

加持「言っただろ。事情があるのさ。俺だって好きでそんな事をしてる訳じゃないさ」

マヤ「……どんな事情なんですか」

加持「それは俺とのデートに付き合ってもらってからでないと教えられないな。今はまだ言えない」

マヤ「…………」


366名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:36:28.80N1w5pkKM0 (7/25)

ウィーン……ガコッ……


加持「おっと、着いちまったか」スッ……

マヤ「…………」


マヤから離れる加持……。そのままじっと動かないマヤ……


加持「そこら辺の事情が聞きたければ、今晩、駅前の居酒屋で待っててくれ。九時頃にそっちに行くよ」

マヤ「…………」


加持「それじゃあ、俺はこれで」スッ……


エレベーターから降りる加持


マヤ「……葛城さんの事。口止め、しないんですか」

加持「……必要とあればするさ。もっとも、君は誰にも喋らないと思うけどな」

マヤ「…………」

加持「それじゃあ…今晩また」クルッ、スタスタ……


ガコッ…………


そして、閉まる扉



マヤ「………………」ソッ……


そのまま、壁にもたれかかるマヤ…………


マヤ「……どうしよう…………。こんな事、先輩にも言えない…………」

マヤ「………………」



マヤ「……私、どうしよう…………」ボソッ……

マヤ「………………」


意味もなく階数表示を見つめるマヤ…………


367名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:37:42.73N1w5pkKM0 (8/25)

ー 学校 ー

ー 昼休み ー


シンジ「綾波、それじゃ先に屋上行ってるね」

レイ「…ええ」

シンジ「」トコトコ……


教室から去るシンジ…………




アスカ「」トコトコ……

レイ「……?」

アスカ「……綾波さん、少しいい?」

レイ「……何?」

アスカ「真希波・マリ・イラストリアスの事について、話したい事があるの」

レイ「……」

アスカ「ちょっとだけ時間をもらえるかしら?」

レイ「……ええ…。わかったわ」

レイ「」スッ……
スマホ「」スイッ、スイッ……


『少しだけ、そちらに行くのが遅くなると思う』


レイ「」ピッ……

アスカ「…………」


送信するレイ

それを複雑な表情で眺めるアスカ……


368名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:42:51.70N1w5pkKM0 (9/25)

ー 屋上 ー


シンジ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


スマホ「」ピピッ


シンジ「」スッ……

シンジ「……今度は式波からメールか。何だろ?」ピッ


『今日、家に帰るの少し遅くなってもいいですか? レイと一緒にマリの家に寄りたいので。もちろん、家事は帰ってからやります。残しておいて下さい。お願いします』


シンジ「……綾波と?」


驚きの表情を見せるシンジ……


シンジ「それに式波が綾波の事をレイって……」

シンジ「………………」


しばらくそのまま考え込むシンジ……


シンジ「……でも、会わせない訳にはいかないよね…………」ボソッ……


シンジ「………………」


シンジ「……今日はミサト……何にも言ってなかったからいつ帰ってくるかわからないけど…………」

シンジ「………………」


シンジ「………………」


シンジ「……式波一人なら誤魔化せるかな…………。もしも、先にミサトが帰ってきたらいるフリをして……」

シンジ「……買い物とか行くついでに合流すれば多分…………」

シンジ「……きっと大丈夫なはず…………」


シンジ「…………」スイッ、スイッ……
スマホ「」


返信するシンジ


369名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:49:00.73N1w5pkKM0 (10/25)

>>368
順番間違い
失礼。無視して下さい


370名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:49:58.18N1w5pkKM0 (11/25)

ー 裏庭 ー


レイ「……そう。生きてたのね……あの子」

アスカ「ええ。うまい事逃げられたそうよ。でも、おおっぴらには動けないって。死んだ事になってるから見つかるとまずい事になるって」

レイ「……そう」

アスカ「……それで……昨日、真希波に綾波さんの事を話したら、会いたいって言ってたから。……会ってみますか?」

レイ「ええ」コクッ……

アスカ「じゃあ、都合がついたら教えて下さい。それと……」

レイ「……それと?」

アスカ「……これからは、あなたに敬語を使わなくてもいい?」

レイ「」コクッ

レイ「…使ってほしいなんて、思ってない」

アスカ「……それならそうするわ、ありがと。呼び方もレイで構わない?」

レイ「…いいわ」

アスカ「わかった。じゃあ、レイ。これでアタシの話はおしまい。……手間とらせてごめん」

レイ「いいえ…」

アスカ「…………」フイッ……

レイ「……今日」

アスカ「?」

レイ「……今日でもいい? …少しなら、時間あるから」

アスカ「?」

レイ「…真希波・マリに会う日」

アスカ「ああ……。えっと……メールで聞いてみる。シンジさんにも聞かなきゃいけないし……」スッ……
ガラケー「」ピッ、ピッ、ピッ……



レイ「…………」


メールを打つアスカを眺めるレイ


371名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:51:19.68N1w5pkKM0 (12/25)

ー 屋上 ー


シンジ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


スマホ「」ピピッ


シンジ「」スッ……

シンジ「……今度は式波からメールか。何だろ?」ピッ


『今日、家に帰るの少し遅くなってもいいですか? レイと一緒にマリの家に寄りたいので。もちろん、家事は帰ってからやります。残しておいて下さい。お願いします』


シンジ「……綾波と?」


驚きの表情を見せるシンジ……


シンジ「それに式波が綾波の事をレイって……」

シンジ「………………」


しばらくそのまま考え込むシンジ……


シンジ「……でも、会わせない訳にはいかないよね…………」ボソッ……


シンジ「………………」


シンジ「……今日はミサト……何にも言ってなかったからいつ帰ってくるかわからないけど…………」

シンジ「………………」


シンジ「………………」


シンジ「……式波一人なら誤魔化せるかな…………。もしも、先にミサトが帰ってきたらいるフリをして……」

シンジ「……買い物とか行くついでに合流すれば多分…………」

シンジ「……きっと大丈夫なはず…………」


シンジ「…………」スイッ、スイッ……
スマホ「」


返信するシンジ


372名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:52:38.83N1w5pkKM0 (13/25)

ー 裏庭 ー


ガラケー「」ピピッ……

アスカ「」スッ……


『うん、わかった。家に帰ってくる時はその前に一応メールで連絡して。家事は洗濯を残しておくよ。それ以外は明日してもらうから。だからゆっくりしてきて』


アスカ「…………そう」

レイ「……」

アスカ「……じゃ、レイ、今日で。 真希波もいいって言ってたし」

レイ「…ええ」

アスカ「……」


レイ「それなら、もう行くから……」トタタタ……


走り去っていくレイ



アスカ「…………」


その後ろ姿をじっと眺めるアスカ


373名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:55:02.18N1w5pkKM0 (14/25)

ー 学校終わり ー

ー マリ宅、前 ー


アスカ「……ここよ」

レイ「ええ…」


ピンポーン……


マリ「はーい」

ガチャッ


マリ「や、式ちゃん。昨日ぶり。で、レイちゃんは初めましてだね」

綾波「」コクッ……

アスカ「悪いけど、学校帰りだから今日はお土産はないわよ」

マリ「いいよ、いいよ、そんなの。昨日、充分もらったし、それに来てくれただけでも嬉しいからね。私、暇だからさ」

アスカ「……こっちは毎日大忙しなんだけどね」

マリ「あはははは…………。ごめんよ、悪気はなかったんだ。もう言わないから、さ……」

アスカ「…………」

マリ「とりあえず、二人とも上がって。お茶ぐらい出すよ」

レイ「…ええ」コクッ

アスカ「お邪魔するわ」スッ……


374名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:56:19.24N1w5pkKM0 (15/25)

ー リビング ー


マリ「はい、お茶」トンッ

アスカ「ありがと」

レイ「……」コクッ……



マリ「…………」

アスカ「」ゴクゴク……

レイ「」ゴクゴク……



マリ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」



マリ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」



マリ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」



マリ(……会話がなくて…………)

アスカ(…………気まずいわね…………)

レイ(………………)


375名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:57:44.82N1w5pkKM0 (16/25)

アスカ「…………そういえば、昨日、あれから映画とか見たの?」

マリ「ああ、ううん、昨日はあの後すぐに寝ちゃってね。今日の昼頃から見て、今、一本目を見終わったとこかな」

アスカ「ふーん……。面白かった?」

マリ「うん。面白かったよ。最近の映画ってCGがすごいねー」

アスカ「ああ、そう……」

レイ「…………」

マリ「レイちゃんは映画とか、昔、見てた?」

レイ「」コクッ……

マリ「どんなの?」

レイ「…あまり、覚えてない」

マリ「ああ、うん……そっか…………」



アスカ「…………」

レイ「…………」

マリ「…………」


376名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 03:59:08.26N1w5pkKM0 (17/25)

マリ「……ところで、その手のケガはどうしたの?」

レイ「……これ…?」

マリ「うん。ナイフで切っちゃった?」

アスカ「ナイフって、アンタ…………。普通は包丁とかカッターでしょ」

マリ「ああ、まあ、そっか。そうだよね。で、どうしたの?」

レイ「……秘密」

マリ「あ、うん…………」



アスカ「…………」

マリ「…………」

レイ「…………」


377名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 04:02:12.02N1w5pkKM0 (18/25)

アスカ「……レイからは何かないの? 質問とか……」

レイ「……特に」

アスカ「……ああ、そう」

マリ「……? 式ちゃん、レイちゃんには普通に喋るんだね」

アスカ「……って言っても今日からだけどね」

マリ「ふーん……。ワンコ君は?」

レイ「?」

アスカ「ううん、シンジさんはまだよ。シンジさんだけは……本当に特別だから」

マリ「そっか…………」

レイ「…ワンコ君?」

マリ「ん? ああ、碇シンジ君の事だよ。ちょっとした事があってそう呼ぶようになってね」

レイ「……どんな?」

マリ「え、ああ、まあ……それはね。うん、まあ、内緒って事でー」

レイ「…………そう」

アスカ「…………」ムッ……



マリ「…………」

レイ「…………」

アスカ「…………」


378名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 04:04:48.65N1w5pkKM0 (19/25)

アスカ「……そういえば、今度シンジさんと一緒に演奏でもしようって話になったわ」

マリ「演奏?」

レイ「…………」

アスカ「ええ、そう。アタシがギターを弾けるって聞いたら、シンジさんもチェロを弾けるって言うから、流れでそんな話になったの」

マリ「ああ……そうなの」

アスカ「真希波は何か弾けたりするの?」

マリ「私は何にもかな。そんな暇なかったし。それと、私の事はマリでいいよ。名前で呼んで」

アスカ「ん……わかった。今度からそうする」

マリ「ちなみにレイちゃんは何か弾けるの?」

レイ「……昔、お母さんにフルートを教えてもらってた」

アスカ「フルート?」

レイ「…ええ」コクッ

マリ「じゃあ、私だけか、弾けないのは。……そっか。ちょいと残念だな……」

アスカ「…………」

アスカ「…………ごめん。今、言う事じゃなかったわね……」

マリ「別に式ちゃんが謝る事じゃないよ?」

アスカ「わかってるわよ。…………でも、ごめん。もう言わない……」

マリ「……うん。……別にいいよ」

レイ「…………?」


379名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 04:08:41.78N1w5pkKM0 (20/25)

マリ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」


マリ「……ああ、そうだ。そういや、レイちゃんも今度水族館行くんだよね?」

レイ「……?」

レイ「……私…も?」

マリ「あ、うん……。……あれ、ひょっとしてワンコ君から何も聞いてない?」

レイ「…………」

レイ「」フルフル……

レイ「……聞いてる」

マリ「あ、そう…? それならいいんだけどさ…………?」

アスカ「それ……いつになりそうかってわかる? レイの都合に合わすって、シンジさん言ってたから」

レイ「…もう少し、かかると思う」

アスカ「そっか……」

マリ「…………あのさ、レイちゃん。昨日と今日、ちょっと考えたんだけどさ。良かったら、私、レイちゃんの仕事手伝おうか? 外部端末さえ用意してくれりゃ大体の事は出来ると思うよ」

アスカ「あ、それならアタシも! そんなに全部って訳じゃないけど、ある程度の事は教え込まれたから! ミサトがいる間はアタシ部屋から出れないし、丁度いいわ」

レイ「…………」

レイ「……いいの…?」

アスカ「あったり前じゃない」

マリ「モチのローン。当然、当然」


レイ「……………………」



レイ「ありがとう……//」コクン……


微かに嬉しそうな表情を見せるレイ


アスカ「…………」
マリ「…………」


それを見て一瞬顔を見合わせる二人……


アスカ「別に……お礼言われるような事じゃないわよ」

マリ「して当たり前の事だよ……。気にしない、気にしない」


レイ「……//」コクッ……


380名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 04:11:06.48N1w5pkKM0 (21/25)

ー 夜 ー

ー アスカの部屋 ー


アスカ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


アスカ「……ふう……。……疲れた…………」

アスカ「早速、今夜から引き受けたはいいけど、わからない事とかが多いから、ちょくちょく中断しちゃうし…………」

アスカ「レイにメールで聞きながらやってるから、全然進まない……」

アスカ「…………」

アスカ「……これ……アタシ、逆に足手まといになってるんじゃ…………」


アスカ「……」ハァ……


アスカ「……違うわよね」ボソッ

アスカ「……違うって信じるしかないわよね」ボソッ……

アスカ「アタシはクズじゃないって信じるしか……」ボソッ……

アスカ「でなきゃアタシは一生……」

アスカ「シンジさんの側に素直にいられない……。負い目ばかり感じちゃう……」

アスカ「このままだと、レイやマリに負けちゃう…………」ボソッ……

アスカ「負けないって決めたんだから……。張り合うって決めたんだから……」

アスカ「それに……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レイ『ありがとう……//』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



アスカ「……レイは悪い子じゃないんだから…………」

アスカ「……アタシより酷い事をされてたんだから…………」

アスカ「……なのにほったらかしなんて出来る訳ないじゃない…………」

アスカ「……アタシだけ親切にされっぱなしなんて出来ないわよ…………」

アスカ「……出来る訳ないじゃない…………」


381名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 04:12:46.58N1w5pkKM0 (22/25)

ー 同時刻 ー

ー マリのマンション ー


マリ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


マリ「……ふう…………。久々なんで疲れるなあ…………」

マリ「にしても、何だろね、このバカみたいな量はさ」

マリ「こんなんやってもやってもキリがないじゃん」

マリ「早速、今夜から引き受けたはいいけど、ちょいと安請け合いだったかなー。大変だよ、こりゃ」

マリ「………………」

マリ「こんなんさー……。一人でやる量じゃないよ、絶対…………」

マリ「……今まで一人でよくやってたよね。考えられないよ…………」

マリ「……違うか…………」

マリ「……一人でやらざるを得なかったんだよね…………。ホント、どうかしてるよ……ここ…………」

マリ「……やだなあ、やだなあ、やだなあ……」

マリ「私、また泣きそうになってるじゃん。ホント、やだなあ…………」

マリ「いっつもニコニコ、楽しく明るく…………。ワンコ君を元気づける為にそうなろうって決めたのにさ…………」

マリ「……やだなあ…………。こんな気持ちやだよ…………」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レイ『ありがとう……//』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



マリ「……レイちゃんだってさ……笑えるはずなんだよ……」

マリ「……笑おうよ…………。ワンコ君、一回も笑ってるとこ見た事ないって言ってたよ……」

マリ「……それってさ……悲しい事だよ…………」


マリ「……見てて……辛い…事だよ…………」


マリ「」グシュッ……

マリ「」ゴシゴシ……


マリ「あー、もう、やだ! さ、気にせずもう一頑張りするぞー!」


382名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 04:14:39.16N1w5pkKM0 (23/25)

ー 同時刻 ー

ー レイの家 ー


レイ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


レイ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


レイ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


レイ「」ピタッ……
ノート型外部端末「」


レイ「…………」



レイ「…………」



レイ「…………」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アスカ『あったり前じゃない!』

マリ『モチのローン。当然、当然』


アスカ『別に……お礼言われるような事じゃないわよ』

マリ『して当たり前の事。気にしない、気にしない』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



レイ「…………」



レイ「……今度、お母さんに言おう……」



レイ「…………//」


383名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 04:16:05.36N1w5pkKM0 (24/25)

ー 深夜 ー

ー シンジの部屋 ー


シンジ「…………」


布団に寝転がって天井を見上げるシンジ



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「……式波…………」ボソッ……



シンジ「……それに、真希波…………」ボソッ……



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「……寝よう…………」ボソッ……



シンジ「」ゴロン…………



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「」ゴロン……



シンジ「…………」



シンジ「……今日も……眠れないや…………」ボソッ……


384名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/24(日) 04:18:15.15N1w5pkKM0 (25/25)

ー 同時刻、宇宙 ー

ー スペースシャトル内 ー


冬月「これが母なる大地とはな……。痛ましくて見ておれんよ」


赤く染まった地球を眺める冬月


ゲンドウ「だが、しかし、こうならなければ世界は滅んでいた」

冬月「わかっている……やりきれんだけだ」

ゲンドウ「…………」

冬月「人は夢だけでは生きていけない。現実を見なければ何も始まらない。……セカンドインパクト前までは教え子によく言ったものだよ。今は到底言える言葉ではないがな……」

ゲンドウ「この惨状は我々には重すぎる。無理はない」

冬月「……結局、我々の中で唯一現実を見ていたのはユイ君だけかもしれんな」

ゲンドウ「そうだな。……ユイはいつも未来だけを見ていた」

冬月「私はもう過去しか見れんよ。未来を見るのは……お前に任せる」

ゲンドウ「……ええ。……必ず。ユイの代わりに……」


385VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/24(日) 14:16:43.58uEwbN5PA0 (1/1)

加持さん救世主パターン来たか!?


386VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/24(日) 17:18:59.07ACCMaNtSo (1/1)

むしろ状況を悪化させるようにしか思えない


387VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/24(日) 19:56:54.57W6NCTo8bo (1/1)

このゲンドウには死なないでほしい


388名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:14:09.54ulRQgt3u0 (1/20)

ー 後日 ー

ー ネルフ本部、発令所 ー


日向「わかりました。了解です。後はこちらでやっておきますので。くれぐれも余計な事はしないで下さいよ」ガチャッ

青葉「どうした? ひょっとして使徒か?」

日向「みたいだな。観測所から連絡だよ。相当、泡食ってたから他に余計な事はするなって一応言っといたけど」

青葉「ま、それが妥当だな。前みたいに勝手にしゃしゃり出て来られたら迷惑以外のなにものでもないからな」

日向「そういう事。とりあえず葛城さんに連絡しておくよ。あと赤木博士とマヤちゃんにも」

青葉「じゃあ俺は、久しぶりに警報でも鳴らすか。たまにやっておかないと忘れるし」カタカタ


ビーッ、ビーッ、ビーッ!!


389名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:17:56.62ulRQgt3u0 (2/20)

ー 20分後 ー


ウィーン……

ミサト「お待たせー。ちょっち取り込み中だったからねー、ごみんごみん」

青葉「ああ、いえ、大して待ってはいな……いので」ゴホン……

ミサト「ん? どったの、青葉君?」

青葉「服と髪、乱れてますよ」ボソッ

ミサト「え? あ、やだ、私ったら……//」ソソクサ

日向「」

ミサト「えっと……それで状況は?//」

日向「」

青葉「……第三監視衛星から捉えた映像があります。最大望遠で出します。どうぞ」カタカタ

ブンッ……


ミサト「ふーん……。真っ黒ね。どれぐらいデカイの、これ?」

青葉「さあ……。マヤちゃん、これどれぐらいの大きさ?」

マヤ「ええと……結構大きいですよ。詳しい数値必要ですか?」

ミサト「あ、ううん、いいわ。大した事じゃないし。で、これ、どこにいるの?」

青葉「大気圏外ですね。MAGIに計算させたところ、落下予測地点はここ、ネルフ本部です」

ミサト「ふーん……。まあ、それは予想通りだからいいんだけど」

リツコ「で、どうするの、ミサト。EVAで狙撃でもする? この前の陽電子砲、まだ残ってるけど」

ミサト「ううん、あれ、めんどいからパス。落ちてくるなら、手で受け止めてその後に殲滅すればいいわよ。レイは?」

青葉「上で待機中です。シンジ君とアスカも、出撃はしてませんがスタンバってはいますよ」

ミサト「じゃあ、そのまま待機させといて。落ちてきたら指示を出しに来るからまた呼んで」クルッ

青葉「了解です」

ミサト「じゃ、よろしくー」スタスタ……

マヤ「…………」カタカタ……


390名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:19:33.68ulRQgt3u0 (3/20)

ー ネルフ本部、廊下 ー


ミサト「お待たせ、加持君」

加持「いや、いいさ。それより使徒の方はどうだったんだい? 来てたんだろ?」

ミサト「ああ、うん。その内ここに落ちてくるみたいね」

加持「そうか。まだ来てなかったのか。……落ちてくるっていうのは?」

ミサト「あ、うん。大気圏外からここに降って来るみたいよ。結構デカイ使徒らしいけど」

加持「……で、どうするんだ?」

ミサト「受け止めればいいかなって。そのままよ」

加持「…………そうか」

ミサト「?」


加持「………………」


真剣な顔つきで考え込む加持


ミサト「……?」


391名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:21:23.59ulRQgt3u0 (4/20)

加持「なあ、葛城」

ミサト「何?」

加持「この前の避難の話、覚えているか?」

ミサト「そりゃ覚えているわよ。あれだけ真剣に言っていたんだもの」

加持「それなら、今回は避難してくれないか、葛城。今は司令も副司令も月に行っていていないから問題ないだろう。使徒は子供たちに任せておけばいいさ」

ミサト「でも……少し大袈裟じゃない?」


苦笑するミサト


加持「わかっているさ。だが、頼む。万が一の事を考えての事だ。俺は葛城が心配だからな」

ミサト「……そう……?//」

加持「ああ」キリッ

ミサト「…………うーん……そうね。……わかったわ。加持君の頼みだし、今回はレイやシンジ君に任せてみる事にする。少し心配だけど、レイがいるなら大丈夫でしょうし」

加持「すまないな」

ミサト「ううん、いいの。シンジ君たちも一人立ちするいい機会だし。それに……」

加持「…………」

ミサト「……加持君の心配が嬉しいからね」ニコッ……

加持「葛城」スッ……

ミサト「ダメよ、ここ廊下なんだから……//」

加持「そうだな……。残念だが、またの機会にするか」

ミサト「ええ……//」コクッ……


392名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:24:32.28ulRQgt3u0 (5/20)

ー ネルフ本部、司令室 ー


シンジ「いいっ……!? 使徒を手で受け止めるんですか!?」

ミサト「そうよー。今回はすごく楽でしょ? 銃とかそんな面倒なもの使わなくていいし」

シンジ「……っ!!」

レイ「…………」

ミサト「ね、レイ? 楽勝よね?」

レイ「…………はい」

ミサト「うんうん。流石レイね、頼もしいわー。じゃ、そういう訳だから後はよろしくね」

シンジ「……え?」

ミサト「私たちは今回、全員、松代に避難するから。後は全部あなた達に任せるって事」

シンジ「…………」

レイ「…………」

ミサト「じゃ、シンジ君、しっかりね。レイの言う事をよく聞いて、二人で仲良くやるのよ」

シンジ「………………」

ミサト「返事は?」

シンジ「はい…………頑張ります……」

ミサト「シンジ君の成長ぶり、私に見せてちょうだいね。期待してるわよ」ニコッ

シンジ「…………はい」


うつむきながら、か細い声で返事をするシンジ…………


ミサト「…………」


それを見て少し考えるミサト


393名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:27:45.75ulRQgt3u0 (6/20)

ミサト「……シンジ君」


急に低い声になるミサト


シンジ「」ビクッ

シンジ「は、はい!」

ミサト「……ひょっとして、私達がいなくて不安になってるの?」

シンジ「い、いえ、あの……!」アタフタ

ミサト「やっぱりね……。ま、仕方がないか……」

シンジ「違います! 大丈夫です!」

ミサト「隠さなくてもいいわよ。あなたが不安になるのはよくわかるから。それに責めてる訳じゃないの。まあ、態度はちょっち誉められたものじゃないけど、不安になる事自体はいい事だと思ってるし」

シンジ「…………?」

ミサト「不安になるっていうのはね、シンジ君。昔みたいにあなたがふざけている訳じゃないからよ。やり遂げなければいけないっていう責任感が芽生え始めてる証拠ね。決して悪い事じゃないわ」

シンジ「…………」

ミサト「特にシンジ君は前に失敗してるだけに、尚更そうだと思う。だって、私の出す指示に従ってる方がシンジ君としては遥かに楽だもの。そうでしょ?」

シンジ「………………はい」

ミサト「うん……。でもね、シンジ君。私達に頼りっぱなしでは、あなたはいつまで経っても自立出来ないの。それはわかるわよね? 大人になるってそういう事よ」

シンジ「…………」

ミサト「人はそれぞれ、頼るべきものを何個も心に持っている。でも、成長するにしたがって、それを一つずつ外していかなきゃいけない。やがて、自分が誰かから頼られる存在になるためにね」

シンジ「…………」

ミサト「それが出来ない内は、どれだけ体が大きくなってもシンジ君は子供よ。成長するってそういう事だと私は思う」

シンジ「…………」

ミサト「だから、今回みたいな、自分たちだけの力で何かを成し遂げるっていう機会は、今のシンジ君にとって良いきっかけになると思うの。例えそれがどんな些細な事であれ、それは自信へと繋がっていくはずなんだから」

シンジ「…………」

ミサト「……頑張りなさい、シンジ君。あなたは大人になれるわ。途中、辛い事や苦しい事もあるかもしれないけど、それをきっと乗り越えていけると思う。私はそう信じている」

シンジ「…………」

ミサト「あなたがここに来て以来、これまでずっと見てきた私が言うんだから間違いないわ。自信を持ちなさい」ニコッ

シンジ「…………はい。……激励、ありがとうございます、ミサトさん。すごい励みになりました。……僕、一生懸命、頑張ります」ペコリ……

ミサト「うん。きちんと無傷で倒してきたら、今度こそステーキ奢ってあげるわよ。しっかりね」ニコッ

シンジ「あ、はい。とても嬉しいです。やったあ」

ミサト「うんうん♪ 頑張りなさい」


394名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:29:21.89ulRQgt3u0 (7/20)

ミサト「さてと、それじゃ私達はもう行くわ。後はしっかりね」クルッ

レイ「……あの、葛城三佐」

ミサト「ん? 何?」


首だけ振りかえるミサト


レイ「……後はこちらの判断だけで動かしても大丈夫でしょうか? …許可をとる必要はありますか?」

ミサト「ううん。なし。好きにやっていいわよ。私達は完全にノータッチにするつもりだから」

レイ「……念の為に、周囲一帯に避難命令を出したいのですが…それもいいですか?」

ミサト「OKよん。好きにして。予算を使わない限りは何をしてもいいわ」

レイ「……ありがとうございます」ペコリ

ミサト「うん。じゃねー」トコトコ……


プシュン……


司令室から出ていくミサト…………


395名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:31:30.48ulRQgt3u0 (8/20)

シンジ「………………」

レイ「………………」


シンジ「……僕たち……今度こそ死ぬかもしれないね…………」

レイ「……そうね」


シンジ「……もし、使徒が落下して直撃した場合って、第三新東京市もネルフ本部もほとんど壊滅するんだよね……?」

レイ「……ええ。MAGIの計算ではそう出てる。…EVA全機の正しいデータと使徒のデータ補正を消して出したから…間違いないわ」

シンジ「……僕ら、逃げる事も出来ないのにね…………」

レイ「……そうね」


シンジ「………………」

レイ「………………」


シンジ「……とりあえず、避難命令だけは出しとこうか。……僕じゃ出来ないから、綾波お願いしていい?」

レイ「……ええ」

シンジ「……あと、式波にも伝えて来るよ。どうすればいいか、三人で話し合おう」

レイ「……ええ」コクッ

シンジ(それと……戦自にも連絡しておかないと……)


396名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:34:38.42ulRQgt3u0 (9/20)

ー ネルフ本部、トイレ ー


曽根『……そうか。無茶ぶりもいいとこだな……。遂にそこまで酷くなったか…………』

シンジ「……あの……何かいい方法ってありませんか?」

曽根『……この前みたいに陽電子砲を使えれば……いや、今回は時間がないな。あと三時間程なんだろう?』

シンジ「はい……」

曽根『……残念だが、使徒のATフィールドを突き破れる程の大出力を出せるのは、戦自ではあれぐらいしかないからな…………』

シンジ「……じゃあもう、エヴァでしか……」

曽根『必然的にそうなるな……。そして、落下の軌道ももう変えられないというなら、本当に手がない。向こうはトマホークミサイルと一緒で上から落ちてくるだけだ。こちらは受け止めるか、途中で破壊するしかないからな』

シンジ「……そうですか……。打つ手、ないんですね……」

曽根『だから、今回は何を言われようと君達も避難した方がいい。EVAとMAGI、それに地下のリリスを運び出して逃げてくれ。避難命令は出ているが、今ならまだ、ネルフから協力要請があれば、戦自は動ける』

曽根『今回は前と違って、君達にフリーハンドが与えられてるんだから、それが出来るはずだ。だから、そうしてくれ』

シンジ「…………」


397名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:36:41.27ulRQgt3u0 (10/20)

ー 関係各省に避難命令通達、全ネルフ職員避難後 ー

ー ネルフ本部、無人の発令所 ー


アスカ「……もういっその事、このまま逃げ出したいわね……」ポツリ……

シンジ「……そうだね……式波は逃げた方がいいと思う。逃げるあてもあるにはあるし……」

アスカ「……?」

シンジ「……どうする、式波? 弐号機持って逃げる?」

アスカ「アタシは…………」

レイ「……あなたは、そうした方がいいと思う」

アスカ「…………」


少し考えるアスカ……


アスカ「……シンジさんとレイは……?」

シンジ「……僕は無理だよ……。ここで逃げたらもうエヴァには間違いなく乗らせてもらえなくなるから……。二回目だし……ミサトが許すはずないもの……」

シンジ「……そうしたら、僕は親戚の家か父さんのところに行かなきゃいけなくなる。エヴァに乗れなくなったら……綾波も、式波も、真希波も、クラスのみんなも……僕はもう守る事が出来なくなるんだ」

シンジ「みんなが死ぬかもしれないのに、僕にはそんな事は出来ないよ……」

アスカ「…………」

レイ「…………」


398名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:39:11.59ulRQgt3u0 (11/20)

レイ「…………私も……逃げない」

アスカ「…………」

レイ「ここにはお母さんのお墓があるし……それに……」

レイ「碇君を一人にはさせない……」

シンジ「……そっか…………。ありがとう、綾波……」

レイ「…いいえ。お礼を言わなきゃいけないのは、私の方だから……」

シンジ「…………僕の方だよ」

アスカ「………………」


シンジ「……それで、式波は?」

アスカ「……残ります。シンジさんやレイを置いて、アタシ一人だけ逃げられないですし」

シンジ「…………本当に……いいの?」

アスカ「はい」

レイ「…………ごめんなさい……」

アスカ「……別にいいわ……。大事なものを失くすぐらないなら死んだ方がマシって気持ち、アタシもわかるもの……」

アスカ「……それに……レイやシンジさんを死なせるぐらいなら、みんなで死んだ方がいい……。そっちの方が百倍マシよ……」ボソッ……

シンジ「……ごめん、式波…………」

アスカ「……いいんです。謝らなくても……」ボソッ……


399名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:41:17.84ulRQgt3u0 (12/20)

シンジ「………………」

レイ「………………」

アスカ「………………」




シンジ「……それで、二人ともどうしたらいいと思う? もう時間もあまりないから、陽電子砲の準備も出来ないけど……」

レイ「…………三人で……受け止めるしかないわ」

アスカ「……やっぱりそうなるのね……。あんまり聞きたくないけど、それ、勝算はあるの……?」

レイ「…シミュレーションでは、99%強、失敗すると出てる。成功してもEVA三機を失うか大破。…MAGIは全会一致で撤退を推奨してる」

シンジ「……でも、それしかないんだよね…………」

レイ「……ええ」コクッ…

アスカ「成功確率1%以下なんて……これで成功したら正に奇跡じゃない……」ボソッ……

シンジ「……そうだね…………」ボソッ……

レイ「…………」


400名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:44:10.87ulRQgt3u0 (13/20)

レイ「……それと、他にも問題が……」

アスカ「……まだあるの?」

レイ「…ええ。使徒の落下軌道を追うために、外部端末を使わないといけないけど、EVAの操縦をしながらだと、それが出来ないから」

シンジ「つまり、一人はそっちに専念しないといけないって事?」

レイ「そう」コクッ……

アスカ「でも、それだと二機で受け止める事になるわよね? 大丈夫なの、それ?」

レイ「……いいえ。落下予測範囲のカバーが出来なくなるから、成功確率は更に落ちるわ。その半分以下に」

アスカ「1%以下が0.5%以下に変わったって、今更、大した事ないわね……」

シンジ「そうだね……僕もそう思う」

レイ「…………ええ。そうかもしれない」


シンジ「……」ハァ……

アスカ「……」ハァ……

レイ「…………」


シンジ「…………それじゃ、僕、準備にかかるよ」

アスカ「……そうですね。ちゃっちゃっと終わらせたいですし」

レイ「…私は……EVAの配置をMAGIにシミュレートさせておくわ」

シンジ「じゃあ僕はケーブルとかの用意をしてるよ……。エヴァ使っていいよね、綾波?」

レイ「ええ」コクン

アスカ「あ、アタシも手伝います」

シンジ「ううん、いいよ、僕一人で出来るし。式波は綾波の手伝いをお願い」

アスカ「あ、はい…………」


401名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:46:16.00ulRQgt3u0 (14/20)

シンジ「それじゃ先行ってるね」

スマホ「」ピピピッ

シンジ「電話?」

シンジ「」スッ……

シンジ(真希波からだ……。どうしたんだろ?)

シンジ「」ピッ

シンジ「もしもし、真希波?」


アスカ「」ピクッ……

レイ「……?」


マリ『やあやあ、ワンコ君、元気ー?』

シンジ「うん。元気……じゃないかもしれないけど……。どうしたの?」

マリ『どうしたもこうしたもないじゃん。曽根から聞いたよー。なんかそっちで面白そうな事やってるんだって?』

シンジ「……別に面白くはないと思うけど……。それより真希波、ちゃんと避難出来た?」

マリ『出来てるよー。もうすぐ着くとこかな』

シンジ「良かった。じゃあ、見つからないように気をつけてね」

マリ『うん。その点は抜かりないって。もう監視カメラの映像切り替えといたからね。ダミー映像流れてるはずだし』

シンジ「?」

マリ『あ、着いた。やっほー、みんなー』

プシュン……

< ヤッホー、ミンナー


アスカ「は!?」
シンジ「え!?」
レイ「……!」


402名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:51:36.08ulRQgt3u0 (15/20)

アスカ「マリ! どうしてアンタがここに!?」

マリ「私も仲間に入れてもらおうと思ってさ。ちょいとヤバイ事になってるって聞いたもんでね。それにしても、ここ、忍び込むの簡単だねー。いくら人が誰もいないからって、ちょっとチョロすぎだよ」

シンジ「そんな事はどうだっていいよ! どうして避難しなかったの!」

マリ「だって、私一人だけ仲間外れなんて淋しいじゃん?」

アスカ「アンタ、バカァ! 見つかったらヤバイんでしょ!?」

マリ「監視カメラに細工してあるから問題ないよ。諜報活動まで教え込まれてたからね、私は。これぐらいお茶の子さいさいだって」

シンジ「いや、でも、それより……!」

レイ「…あと三時間程で使徒が来るわ。まだ間に合うから避難して」

シンジ「そうだよ、真希波! 早く逃げて!」

マリ「冗談やめてよ、ワンコ君。みんなをほったらかしにしてさ、私一人だけ逃げれる訳ないじゃん? 逃げるのは一回だけで十分だって。二回も出来ないよ」

アスカ「バカッ! 一回でも二回でも、逃げられるならいくらでも逃げればいいのよ! さっさと逃げなさいよ!」

マリ「お断りだね。折角、ここまで来たんだから、何もせず帰る訳にはいかないしさ。だいたい、みんなが死ぬかもしれないっていうなら尚更だよ。そうなんでしょ?」

シンジ「だけど……! 真希波はもう逃げれたんだから!」

マリ「だからだって。私、一人だけ安全なのは嫌なんだよ。……死ぬ時はさ、みんなで死ねばいいじゃん。ここにいなきゃ、私、この使徒を倒し終わった後、みんなに会わせる顔ないよ。良かったね、助かったね、次も頑張ろうね、なんて言えないよ。みんなと一緒に笑えないよ。心配ぐらいさせなよ。手伝いぐらいさせなよ。それぐらいいいでしょ? 良くないの? ダメなの? 私はそれさえもしちゃいけないの!?」


アスカ「う…………」

シンジ「…………」

レイ「…………」


その言葉と剣幕に押され、何も言えなくなる三人…………


403名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:54:17.13ulRQgt3u0 (16/20)

マリ「……それでさ、何か私にも手伝える事ない? どうせ、人手、足りないんでしょ?」

レイ「…………あるわ」

シンジ「……綾波…………」

アスカ「…………」

マリ「サンキュー、レイちゃん。で、何?」

レイ「…ここでのオペレート。今、誰もいないからしてくれると助かる」

マリ「了解、了解。一応やり方軽く教えてくれる? ベタニアベースとは勝手が違うだろうからさ」

レイ「……ええ」コクッ

アスカ「待って」

マリ「?」

アスカ「……マリ、アンタ本当にそれでいいの? アタシ達が失敗したら、アンタ確実に死ぬわよ? オマケに成功する確率は1%以下よ。それでもいいの?」

シンジ「……僕たちは……エヴァの中にいるから、失敗してもまだ生きていられるかもしれない。だけど、真希波は確実に…………」

マリ「どうせ、どっちも似たようなもんだよ、きっと。それにさ……」

マリ「今の私の気持ち、みんなならわかってくれると思うんだけどね……。みんな、同じ様な境遇にいたんだからさ……。みんなをどうしても死なせたくないって気持ち……みんなしか、わからないと思うんだけどね……」


一人ずつ顔を見渡すマリ……


シンジ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」


その言葉に、それぞれ想いを馳せる三人…………


404名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:56:54.37ulRQgt3u0 (17/20)

アスカ(……そうね…………)

アスカ(……アタシが逆の立場でもきっと…………)

アスカ(……元々、アタシはママを守るために乗ってきたようなものだし…………)

アスカ(……それに今は…………)



レイ(……お母さんのお墓…………)

レイ(……私に残った最後の大切なもの…………)

レイ(……これだけを守る為に……お母さんの為に…………)

レイ(……他の事なんかどうでもよかった…………)

レイ(……でも、今は…………)



シンジ(……僕も…そうなんだよね…………)

シンジ(……綾波を助けようと思って、無理にエヴァに乗って…………)

シンジ(……その為に、色々我慢して…………)

シンジ(……辛い事や苦しい事……どれだけあったっけ…………)

シンジ(……でも、その度に他の誰かに救われて…………)

シンジ(……木田さんや曽根さん……綾波……トウジにケンスケ……クラスの皆…………)

シンジ(……母さんにも……助けられたような気がした…………)

シンジ(……それに、式波……真希波…………)

シンジ(……大切にしたい人が何人もいて…………)

シンジ(……でも、僕一人じゃどうしようもなくって…………)

シンジ(……みんなも、きっと一人じゃどうしようもなくって…………)

シンジ(……助けて……助けられて…………)

シンジ(……そうやって助け合っていかなきゃ…………僕らはもうダメなのかもしれない…………)


405名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 00:58:35.55ulRQgt3u0 (18/20)

マリ「……私たちさ」

マリ「ずっと一緒にいよ?」



マリ「一人じゃどうしようもない事もさ」

マリ「みんなでやればどうにかなるよ」



マリ「一人じゃ耐えられない痛みだってさ」

マリ「みんなで分けあえばきっと耐えれるよ」



マリ「だからさ」

マリ「ずっと一緒にいよう」



マリ「それでさ」

マリ「ここから逃げれる様になったら」

マリ「みんなで逃げ出そう」



マリ「その時はさ、きっと私、役に立てると思うよ」

マリ「だから、私にも手助けさせなよ」



マリ「でなきゃ、やだよ……」



マリ「みんな、いなくなっちゃいそうで嫌だよ…………」






アスカ「……やめてよ……マリ…………そんな事……言うのやめてよ…………」



レイ「………………」



シンジ「…………大丈夫だから…………」

シンジ「……きっと…………僕がどうにかするから………………」



レイ「……ええ…………」

レイ「……私も………………必ず………………」


406名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 01:00:44.63ulRQgt3u0 (19/20)










   


407名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 01:01:57.30ulRQgt3u0 (20/20)




EVANGELION

It a small world


You can not redo , but you can advance





408VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 05:30:09.21o5tUOZ930 (1/1)

やべぇ、すげぇ熱い展開!


409VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 06:58:42.81uVAXilxvo (1/1)

1スレ目を読んだ時はまさかこんな展開になるとは思いもしませんでした


410VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 09:09:00.64TWGVw9duO (1/1)

かなり面白くなってきた


411VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 11:52:19.38hr4RXXWDo (1/2)

はたしてハッピーへと向かっているのか?


412VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)2013/11/26(火) 12:01:17.78qKyNfack0 (1/1)

加持の目的がさっぱり分かんねー
ゼーレの味方かミサトの味方か真実の為か、それとも…


413VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 12:58:24.60hr4RXXWDo (2/2)

少なくとも加持も駄目な大人の一人だろうな。ゲンドウグループじゃなさそうだし。


414VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 13:20:42.17j7TDMCq/o (1/2)

それはマリへの態度見ればわかるだろ


415VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 19:29:01.84Dmern8Yf0 (1/2)

>>414
酷い大人のフリして
墓とか建ててくれる
いい人(味方)ですねわかります


416VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 19:31:04.10Dmern8Yf0 (2/2)

>>12がめちゃ引っかかってて禿げた


417VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 19:36:03.48EyjJUuIpo (1/1)

綾波だってシンジへの態度酷かったしな
洗脳済みとまで言われてた


418名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:34:20.11BgGk5x4l0 (1/15)

副題の邦訳


エヴァンゲリオン

この小さな世界


あなたはやり直す事が出来ない。しかし、進む事は出来る




419名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:35:23.23BgGk5x4l0 (2/15)










    


420名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:36:48.51BgGk5x4l0 (3/15)

ー 作戦開始前 ー

ー 初号機エントリープラグ内 ー


シンジ(……ケーブルとかのセッティング、ちょっと時間かかっちゃったな)

シンジ(……なんとか間に合ったからいいけど)

シンジ(……きっと、全部自分一人でやる事が段々当たり前になっていくってこういう事なんだろうな……)

シンジ(……どうにか間に合わせなきゃいけないから、無理矢理なんとか間に合わせて……)

シンジ(……それで、前に出来たから今回もやれるだろうって更に押し付けられて……)

シンジ(……積み重なってくばっかりで、減る事がないや)

シンジ(………………)

シンジ(……どうやったらこの生活から解放されるんだろう)

シンジ(……どこかで……早く終わらせないと…………)

シンジ(……でないと………………)

シンジ(………………)


421名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:38:15.25BgGk5x4l0 (4/15)

ー 松代 ー


加持「…………」


空を見上げながら、一人タバコをふかす加持……


加持(……さて、舞台はきっちりと整えたが…………)

加持(……どうなる事やら…………)

加持(……ここで全てが終わる可能性もあるが、それではまだ早い……)

加持(……特に碇シンジ……彼の役割はまだ終わってはいない……)

加持(……これが無事に終わったら、彼とも接触してみるか……)

加持(……無事に終わったらの話だが…………)


422名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:39:49.29BgGk5x4l0 (5/15)

ミサト「」トコトコ……

ミサト「……どうしたの、加持君?」


風で揺れる髪を軽く手で押さえながら近づくミサト


加持「……使徒を見ていた」

ミサト「そう」


ミサトも空を見上げる


加持「……もうすぐ落ちてくるな」

ミサト「ええ」


加持「…………」

ミサト「…………」


加持「自分の手で倒せないのが不満か、葛城?」

ミサト「そんな事はないわ……。復讐なんて愚かな行為だって、もう気がついたから」

加持「……そうか」

ミサト「私怨で使徒と戦うなんてバカらしい事よ……。負の螺旋的なパトスに飲まれるのはもう嫌なの」

加持「そうかもな……」

ミサト「あの子達を、私は信じて待つだけ……。それが今の私にとっては全てね」

加持「そうだな。子供達を信じよう。未来を作っていくのは彼らなんだから……」

ミサト「ええ……」ニコッ……


423名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:41:57.00BgGk5x4l0 (6/15)

ー ネルフ本部、発令所 ー


ビーッ、ビーッ、ビーッ!!


マリ「来たよ、みんな! 用意はいい?」


シンジ『うん。大丈夫』

アスカ『いけるわよ!』

レイ『ええ』


マリ「二次的データは当てになんないから、後はみんなからこちらに指示を出して。出来る限りの事はするから」

マリ「……頼んだよ、ワンコ君、式ちゃん、レイちゃん」


シンジ『わかってる』

アスカ『アンタは…絶対死なせないから』

レイ『……任せて』



マリ「…………任せたよ」


使徒との距離、およそ二万キロメートルに到達!


マリ「みんな! 作戦開始!!」

マリ「発進!!」


424名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:43:14.98BgGk5x4l0 (7/15)

ー 第三新東京市 ー


初号機「!」ダダッ!!

零号機「!」ダダッ!!

弐号機「!」ダダッ!!



アンビリカルケーブルを外して、一斉にスタートするエヴァ全機!!



初号機「」ダダダダダダッ!!

初号機「」ダンッ!!


道路の上を走り送電線を飛び越え、


零号機「」ダダダダダダッ!!

零号機「」ダンッ!!


山から飛び降り、


弐号機「」ズダッ!!

弐号機「」ダダダダダダッ!!


落ちてくる第八使徒めがけてひた走る!


425名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:44:56.46BgGk5x4l0 (8/15)

第八使徒「」バリンッ!!


途中、ATフィールドを変質させ、姿を現す第八使徒!


マリ『軌道が変わった!?』

マリ『みんな、落下予測地点が変わる!!』

マリ『修正データを送るよ!!』



アスカ『くっ……! ダメ! アタシじゃ間に合わない!』


レイ『私が間に合わせる……! マリ…!』


マリ『何!? レイちゃん!!』


レイ『緊急コース形成…! 521から597…!』


マリ『了解!』カタカタ!!


ズーン、ズーン、ズーン……!!


地面から壁がせりあがり、新たなルートが出来上がる!


零号機「」ダダダッ!!


その上を走ってコースを変える零号機!



レイ『次…! 821から834…!』


マリ『はいよっ!』カタカタ!!


ウィーン、ウィーン、ウィーン……!!


地面から昇ってくる足場!


零号機「」ピョンッ、ピョンッ、ピョーンッ!!


その上を飛び上がってショートカットする零号機!!


426名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:46:15.88BgGk5x4l0 (9/15)

零号機「」ダダダダッ!!


レイ『まだ……! もっと早く……!』


零号機「」ダダダダダダダダッ!!

キュイーン……!!



スピードアップによってもうもうと舞い上がる土煙!


車「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!

車「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!
車「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!
車「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!


衝撃波で吹き飛ばされる車の山…………


427名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:47:24.94BgGk5x4l0 (10/15)

第八使徒「」ヒュイーン……

第八使徒「!」バサッ……!!


地面が近付き、姿を変形する第八使徒!



零号機「」ダダダダッ!!

零号機「」キキィッ!!



その真下に到達する零号機!


レイ『ATフィールド、全開…!!』


キュイーン……

ドシュッ……!!



家「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!
家「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!
家「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!
家「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!


吹き飛ばされる民家やビルや学校……!!


428名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:49:46.95BgGk5x4l0 (11/15)

第八使徒「!」ズーン……!!

零号機「!!!」ガシッ!!


ドシュッ!!


落ちてきた第八使徒を手で受け止める零号機!!


第八使徒「」ズズッ……

第八使徒「」ガシッ!!


本体が顔を出し、零号機の腕を掴むと……


第八使徒「!」ドシュッ!!


レイ『きゃあああああああああっ!!!』


槍状に手が変化し、零号機の腕を突き刺す!!


アスカ『レイッ!!』

弐号機「」ダダダダッ!!


レイ『っっ……!!! ……ま…だっ……!!!』


零号機「!」メキョッ……ブシュッ……!!


しかし、機体がもたず潰されそうになる零号機!!


429名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:51:35.49BgGk5x4l0 (12/15)

弐号機「」ダダダダッ!!


そこへ間一髪、飛び込む弐号機!


アスカ『お願い、ママ! レイを守って!!』

アスカ『ATフィールド、全開っ!!』


ドシュンッ!!!


広がるATフィールド!!


第八使徒「!?」ググッ……


押し戻される第八使徒!!


レイ『…碇君、早くっ!!』



シンジ『わかってる!! 綾波、あと少しだけ耐えてっ!!』


初号機「」ダダダダッ!!

初号機「」チャキッ!!


走りながらプログレッシブナイフを取り出すと……


初号機「」ダンッ!!

シンジ『うわぁああっっ!!!』


ズバッ!!
バシュッ!!


飛び上がって第八使徒のATフィールドを切り裂く!!


シンジ『やぁっ!!』

初号機「」ズガッ!!

キンッ!!


シンジ『そんな……!! 外した……!?』


コアが素早く動き、攻撃を外す初号機……!!


430名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:53:32.59BgGk5x4l0 (13/15)

アスカ『シンジさん! 急いで! もうレイがっ!!』

レイ『平気っ……!! まだ…大丈夫……だからっ!!』


シンジ『わかってる……! でもっ……!!』


活動限界まであと30秒……!!


アスカ『早くっ! 早くしないとレイがっ!!』

シンジ『くっ……!!』


動き回るコアに狙いが定まらないシンジ……!


弐号機「」ググッ……!!

弐号機「!」ガシッ!!


シンジ『アスカ!?』


ATフィールドを突き破って、コアを掴みとる弐号機!!


アスカ『シンジっ! コアをっ!! 今の内にっ!!』

シンジ『わかったっ!!!』

シンジ『うおあああああっ!!!』


初号機「」ズガッ!!

第八使徒「!!!」


プログレッシブナイフを使徒のコアに突き刺すシンジ!!


シンジ『これで……!! 終わってっ……!!!』

初号機「!」バキッ!!


ナイフを押し込む様に膝蹴りをくりだす初号機!!


コア「」バリンッ!!

第八使徒「」ドサッ…………


ドシュンッ!!!


破裂する使徒! 光る十字架!

使徒の体から赤い体液が一斉に溢れ、それが津波の様に街へと押し寄せる!





第八使徒、殲滅!!


431名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:55:15.59BgGk5x4l0 (14/15)

ー ネルフ本部、発令所 ー


マリ「……!!」

マリ「やったあっ……!! 倒したよ!! みんな、無事っ!?」


シンジ『……うん…………』ハァ……ハァ……

レイ『………………ええ…………』ハァ……ハァ……

アスカ『……っ…………マリ、急いで救急キットか何か持ってきて! エヴァの回収は後回しでいい! レイ、絶対怪我してるから!』

マリ『あ、ごめん! すぐ行く!』

レイ『……待って……! 来ちゃダメ……! あなた一人だと、きっと来れない……! 使徒の体液でこっちは高温の海になってるから……!』

マリ『だったら、ヘリでも何でも用意して行くよ! みんなもう内蔵電源切れて動けないんだから! 私が行かなきゃダ』

シンジ『あ……待って!』

マリ『?』

シンジ『真希波…………。僕……なんでか知らないけど動ける…………。内蔵電源もう切れてるのに…………』

マリ『へ……? 何で?』

シンジ『ううん……僕にもよくわからないけど…………? でも、何だか知らないけど動けるよ……??』

アスカ『……??』

レイ『…………』

シンジ『えっと……。とにかく……僕が弐号機と零号機を回収してそっちに向かうから、真希波は手当ての用意だけしといてくれる?』

マリ『え、うん……。わかった……けどさ…………??』


432名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/11/26(火) 20:57:35.12BgGk5x4l0 (15/15)

念のため


パトス

アリストテレス倫理学で、欲情・怒り・恐怖・喜び・憎しみ・哀しみなどの快楽や苦痛を伴う一時的な感情状態。情念。



ついでに、今日はここまで


433VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 20:59:01.72R/Trrz4Jo (1/1)


シンジさん常時覚醒か


434VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)2013/11/26(火) 21:16:19.72RFWAwXY50 (1/1)

乙です

>>422
それにしてもあれだけ虐待してるのにシンジさんたちの身を案じるミサトって…
もう人格が支離滅裂過ぎるわ、そんなに心配ならお前も残れよと!



435VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/26(火) 21:42:44.00j7TDMCq/o (2/2)


シンジのお母さんの支援…か?

>>434
恐らく奴に虐待するという発想はないし、
これでできることはやりきったとでも思ってるんだろう


436VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/27(水) 05:52:43.65Acfk8uoUo (1/1)

マリはよ逃げろよ、みんな帰ってくるぞ


437VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/27(水) 10:18:23.52CunU1h/0o (1/1)

こいつらだけの方が絶対楽だろうになあ


438VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)2013/11/27(水) 10:41:04.27+fEgZNh10 (1/1)


受け止める役とトドメ役が劇場版と違うとこに何かミソが…?
純粋に人の願いを叶える為にか?


439VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/11/28(木) 00:22:52.99dRw9VoV60 (1/1)

アスカが…シンジさんを呼び捨てにぃぃぃ!!!
熱くなってまいりましたぁぁぁぁぁ!!!


440名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:31:57.01sIHPUawr0 (1/21)

ー 六時間後(マリ帰宅済み) ー

ー ネルフ本部司令室 ー


ミサト「…………」


シンジ「……」
レイ「……」
アスカ「」ビクビク……


ミサト「……零号機、中破。弐号機、小破。街は使徒の血だらけ。壊れた道路や家屋がたんまり。……どういう事かしらね、これ?」


シンジ「……すみません……」ペコリ……

レイ「……申し訳ありません」ペコリ……

アスカ「許して下さい! お願いします!」ペコリ!!


ミサト「謝りゃ済むってもんじゃないわよ、バカッ! 被害総額、億じゃ済まないでしょうが、これ!」


シンジ「……すみませんでした……」ペコリ……

レイ「……反省しています」ペコリ……

アスカ「ごめんなさい! ごめんなさい!」ペコペコ


ミサト「あんた達に期待した私が情けないわ、ホント! つくづく人に迷惑しかかけないわね!」フンッ


シンジ「……次は絶対ミサトさんに迷惑をかけないので、許して下さい」ペコリ……

レイ「……申し訳ありません。力量不足でした」ペコリ……

アスカ「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」グシュッ……


ミサト「ああ、もう!」ガンッ!!


机を思いきり蹴るミサト


441名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:34:20.49sIHPUawr0 (2/21)

ミサト「大体、何でレイの零号機が一番壊れてるのよ! アスカの弐号機が壊れてるのはわかるにしても、おかしいでしょ、これ!」

シンジ「それは……!」

レイ「……すみません。私が途中、ミスをしました。……申し訳ありません。弐号機はそれに巻き込まれただけです」ペコリ……

アスカ「!?」

ミサト「……は? ……レイがミス?」

シンジ「あの、違います! 僕が二人の足を引っ張ったんです! そのせいで綾波と式波に迷惑をかけて!」

ミサト「…………」

アスカ「あ……いえ、あの……!」

ミサト「アスカ、あんたは黙ってて。喋らないで」ジロッ

アスカ「……!」

レイ「…葛城三佐。碇君は悪くありません。私がミスをしたからです」ペコリ……

シンジ「違います! 綾波は上手くやってました! 僕がモタモタしてたせいで零号機と弐号機が壊れたんです! すみません!」ペコリ!!

ミサト「…………ふーん」


442名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:36:50.22sIHPUawr0 (3/21)

ミサト「……ま、シンジ君の初号機が無傷な事を考えると、大方、そこの生ゴミのせいでしょうね。レイ、本当はそうなんでしょ? アスカが遊んでて迷惑をかけたのよね?」

レイ「…違います。式波は悪くありません」

ミサト「」チッ

ミサト「……な訳ないでしょうが」ボソッ

シンジ「あの、ミサトさん! 僕が悪」

ミサト「うるさい、シンジ君。喋らないで」ジロッ

シンジ「……!!」

ミサト「で、どうなの。レイ? あなた前にもアスカをかばったわよね? その優しさはレイのいいところだと思うけど、嘘をつかれるのは嫌いなのよ、私。怒らないから、正直に答えなさい」

レイ「…いえ。私のせ」

アスカ「ごめんなさい! アタシのせいです! レイさんはアタシをかばってくれてるんです! ごめんなさい!」ペコリ!!

ミサト「あ、そ。……やっぱりね。ホント、クズ過ぎて言葉もないわ、あんたには。さっさと死ねば?」

アスカ「あ…………!」グシュッ……

レイ「……葛城三佐。式波は」
シンジ「違います、ミサトさん! 式波は」

ミサト「」ダンッ!!

レイ「…………」
シンジ「」ビクッ!!


ミサト「もういいわよ。……三人とも、しばらく反省の為にそこに立ってなさい」クルッ

ミサト「」カツカツ……


そう言い残して、足音荒く去っていくミサト……


443名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:38:49.32sIHPUawr0 (4/21)

アスカ「」グシュッ、エグッ……

アスカ「ごめんなさい……アタシのせいで……」グスッ、ヒック……

アスカ「ごめん……レイ……」ポタポタ……

レイ「…いいえ。あなたは悪くない。……だから、泣かないで」

シンジ「……ごめん、綾波…………」

レイ「……いいえ」

アスカ「」グシュッ、ヒック……


泣き続けるアスカ…………


シンジ「式波。泣かないで。……多分、僕らは誰も悪くないから……」

アスカ「でも、でも……」エグッ、グシュッ……

シンジ「ミサト…………さんは機嫌が結構変わりやすいから……。僕が何とか後でなだめてみるから……。だから……」

アスカ「」グシュッ、エグッ……



レイ「…………」


二人をじっと眺めるレイ……


444名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:41:59.37sIHPUawr0 (5/21)

ー およそ30分後 ー


プシュン……

ミサト「」カツカツ……


冷たい表情のまま、再度、現れるミサト


シンジ「…………」

レイ「…………」

アスカ「」ゴシゴシ……



ミサト「…………」


三人の前に立ち、アスカ以外の顔を眺める


シンジ「…………」
レイ「…………」
アスカ「」ゴシゴシ……


ミサト「……碇司令と通信が繋がってるから。今から呼ぶわ」

ブンッ……


SOUNDONLY『……話は先に聞いた。使徒は殲滅したそうだな。ご苦労だった、葛城三佐』

ミサト「申し訳ありません。私の指示ミスで零号機と弐号機を破損、レイとアスカにも怪我を負わせてしまいました。責任は全て私にあります」

シンジ「!?」
レイ「…………!?」
アスカ「!??」

SOUNDONLY『構わん。人間である以上、ミスする時もあるだろう。二人には私からも謝っておく。君はよくやってくれた。責任を追求するつもりはない』

ミサト「ありがとうございます」

SOUNDONLY『ところで、パイロットは全員そこに揃っているか』

ミサト「はい」

SOUNDONLY『一人一人、話がしたい』

ミサト「わかりました」


シンジ「…………」
レイ「…………」
アスカ「…………」


445名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:43:42.24sIHPUawr0 (6/21)

SOUNDONLY『レイ』

レイ「…はい」

SOUNDONLY『怪我したそうだが、大丈夫か?』

レイ「…はい。軽傷です。問題ありません」

SOUNDONLY『そうか……。だが、無理はするな』

レイ「…………はい」

SOUNDONLY『……葛城三佐の責任は私の責任だ。許して欲しい。すまなかった』

レイ「…………はい」



SOUNDONLY『アスカ』

アスカ「は、はい!」

SOUNDONLY『この通り謝罪する。怪我をさせてすまなかった』

アスカ「…………いえ」

SOUNDONLY『これからも、その力を貸してくれ。宜しく頼む』

アスカ「…………はい」



SOUNDONLY『シンジ』

シンジ「……はい」


SOUNDONLY『…………』

シンジ「…………」


SOUNDONLY『…………』

シンジ「…………」


SOUNDONLY『……よくやったな』

シンジ「…………」


SOUNDONLY『…………』

シンジ「…………」


SOUNDONLY『…………』

シンジ「…………」


ミサト「シンジ君」ボソッ……


シンジ「…………はい。ありがとうございます……」ボソッ

SOUNDONLY『…………そうか』

シンジ「……はい」


446名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:47:24.54sIHPUawr0 (7/21)

SOUNDONLY『……それでは後の事は宜しく頼む』

ミサト「はい。お任せ下さい」


ブンッ……


消える画面…………


ミサト「…………」

ミサト「……レイ、シンジ君」


三人に背中を向けたままミサト


シンジ「…はい」

レイ「…はい」


ミサト「二度とこんな嘘の報告をさせないでちょうだいね」

シンジ「……はい。すみませんでした」

レイ「…はい。申し訳ありません」


ミサト「それと、そこの生ゴミは罰としてニ週間、夕食抜きで過ごす事。いいわね」

アスカ「……はい」

ミサト「シンジ君に言ってるのよ。耳が腐るから喋らないで」

アスカ「……」グスッ……

ミサト「シンジ君、いいわね?」

シンジ「はい……」

ミサト「もちろん、シンジ君もよ」

シンジ「……はい」

アスカ「!!」

ミサト「レイ。悪いけどそこの赤いやつについてはこれぐらいの罰で勘弁してやって。シンジ君も連帯責任になってるから、あんまり無茶な罰を与える訳にもいかないから」

レイ「……はい」

ミサト「じゃあ私はもう行くわ。後はレイに任せるから」

レイ「…はい。わかりました」

ミサト「シンジ君、それにレイ」

シンジ「はい……」

レイ「はい……」

ミサト「今回の件、一番辛いのは、期待を裏切られた私だっていう事をよく覚えておきなさい」

シンジ「…………はい。……すみませんでした」

レイ「…申し訳ありません」


ミサト「」カツカツ…………


無言で去っていくミサト…………


447名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:49:06.32sIHPUawr0 (8/21)

ー その夜 ー

ー ミサト宅、アスカの部屋 ー


アスカ「…………」


ベッドの上で月明かりを眺めるアスカ…………



アスカ「…………」



アスカ「…………」



アスカ「…………」



アスカ「…………」



アスカ「…………ごめん、ママ………………」ボソッ……



ゴミ箱に捨てられた弐号機のぬいぐるみ「…………」


ズタズタに切り裂かれたサルのぬいぐるみ「…………」



アスカ「……アタシ……現実を見るって決めたから…………」ボソッ……


アスカ「……過去より……未来を大事にするって決めたから…………」ボソッ……


アスカ「……ママより……大切な人が出来たから…………」ボソッ……


448名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:51:11.24sIHPUawr0 (9/21)

コンコン……


アスカ「」ビクッ……


『式波、僕』ボソボソ


アスカ「……はい」ボソボソ

『夕飯なくてお腹空いたでしょ? ミサト、さっき寝たから何か買ってくるよ。何がいい?』ボソボソ

アスカ「……それならアタシが行きます。シンジさんは家にいて下さい」ボソボソ

『式波はダメだよ。もし、ミサトに見つかったら間違いなく叩かれるよ。だから、僕が行くよ』ボソボソ

アスカ「シンジさんだって、ミサトに見つかったら怒られるに決まってます。だから、アタシが行きます」ボソボソ

『僕は大丈夫だよ。慣れてるから。それに式波の方が間違いなくミサトは怒るから僕が行くよ』ボソボソ

アスカ「……じゃあ要りません。シンジさんの分だけ買ってきて下さい。それならもし見つかっても、アタシが頼んだ事にすれば、多分、シンジさんはそんなに怒られないですから」ボソボソ

『そんな事出来る訳ないよ』ボソボソ

アスカ「だったら、アタシがシンジさんの分だけ買いに行きます。待ってて下さい」ボソボソ

『……ダメだよ』ボソボソ

アスカ「いいえ、行きます。アタシの責任ですから」ボソボソ

『………………じゃあ、もう行かないから……。式波もそこにいて。それでいい?』ボソボソ

アスカ「…………」

アスカ「はい……」


449名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:52:23.87sIHPUawr0 (10/21)

ー 深夜 ー

ー シンジの部屋 ー


シンジ「」zzZ……


布団に寝転がって眠るシンジ



ソッ……パタン……


アスカ「…………」


買い物袋を引っ提げたアスカがそっと部屋に訪れる


450名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:53:58.74sIHPUawr0 (11/21)

アスカ「……」ソッ……


買い物袋からお菓子や缶詰を取り出し、シンジの枕元に置いていく


アスカ「」カキカキ……

『遅くなってごめんなさい。沢山買ってきたので、ミサトに見つからない場所に隠しておいて下さい』


アスカ「……お休みなさい」ボソボソ

アスカ「」クルッ……


置き手紙を置いて帰ろうとするアスカ


アスカ「」ソッ……


襖に手をかける。



\ ガチャッ /


不意に、ミサトの部屋のドアが開く音


アスカ「!?」ビクッ!!


451名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:55:13.79sIHPUawr0 (12/21)

アスカ(……ヤバイ!!)

アスカ(……気づかないで!)アセアセ


その場で固まるアスカ


シンジ「んっ…………」


ふと起きるシンジ……


シンジ「…………」


シンジ「……!?」

アスカ「!?」


目が合う二人……


452名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 20:58:50.30sIHPUawr0 (13/21)

\ ガチャッ /


冷蔵庫を空ける音……


『……何よ、オレンジジュース切らしてるじゃないの、アイツ…………』

『……なに考えてるんだか…………』


微かに聞こえる不機嫌そうなミサトの声……


シンジ(まずい!!)
アスカ(まずい!!)

シンジ(こっちに来る!!)
アスカ(絶対こっちに来る!!)

シンジ(ここにアスカがいるのがわかったらミサト間違いなくキレる!!)
アスカ(ここにアタシがいるってわかったらシンジさんまで怒られる!!)


シンジ(アスカ!)


咄嗟に布団をめくるシンジ


アスカ(……!!)タタッ


慌ててそこに潜り込むアスカ


453名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 21:00:18.07sIHPUawr0 (14/21)

『…………』


シンジ「」ドキドキ……
アスカ「」ビクビク……


布団の中で震える二人……


『……ああ、そういえば美容の為にゴーヤ茶に変えたんだっけ…………』


\ コンッ、トポトポ…… /


\ カタン…… /


コップを流しに置く音……


\ ガチャッ、バタン…… /


やがて、ドアが閉まる音が聞こえる……



シンジ「」ハァ……
アスカ「」ハァ……


布団の中で息をつく二人……


454名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 21:01:31.99sIHPUawr0 (15/21)

シンジ「助かったね……」ヒソヒソ

アスカ「はい……」ヒソヒソ


小声で会話する二人…………


シンジ「でも、何で式波が僕の部屋に?」

アスカ「あ、その……」

シンジ「……その…?」

アスカ「……シンジさんの食べる物、買ってきたので……」ボソッ……

シンジ「え?」

アスカ「…………ごめんなさい……」シュン……

シンジ「…………」


455名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 21:02:58.47sIHPUawr0 (16/21)

アスカ「…………」

シンジ「…………」


布団の中で向き合ったまま、しばらく無言の二人…………



アスカ「……あの……アタシ、戻ります…………」シュン……

シンジ「待って」

アスカ「?」

シンジ「まだ……ミサト、寝てないと思うから。……もうしばらくしてからの方がいいと思う」

アスカ「…………」

アスカ「…はい。そうします」


456名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 21:04:12.12sIHPUawr0 (17/21)

アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「あの……シンジさん」

シンジ「…何?」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「……今日、アタシの事……名前で呼んでくれましたよね…?」

シンジ「…………ごめん」

アスカ「……ううん。……これから、名前で呼んで下さい」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「……うん」




アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…良かった」ニコッ……

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」


457名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 21:05:34.56sIHPUawr0 (18/21)

アスカ「……あの、アタシも……名前で呼んでいいですか?」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「……うん」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「……敬語……使わなくても嫌いになりませんか……?」

シンジ「……うん。使わないで……」

アスカ「…はい」ニコッ



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」





458名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 21:06:59.27sIHPUawr0 (19/21)

シンジ「……式波は……アスカは…どうしてエヴァに乗ってるの……?」

アスカ「…………」



シンジ「…………」

アスカ「その……言わなきゃ…ダメですか?」

シンジ「……ううん」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「その内……必ず言いますね」

シンジ「…………うん」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



シンジ「……敬語、なおらないね」

アスカ「…その内、なおします」

シンジ「……うん。ゆっくりでいいと思う……」

アスカ「」コクッ……



シンジ「…………」

アスカ「…………」



シンジ「…………」

アスカ「…………」



アスカ「……シンジ…//」

シンジ「……何?」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「ううん…// ……もう、アタシ行きますね」

シンジ「……うん」


459名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 21:08:42.65sIHPUawr0 (20/21)




アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…行きますね//」

シンジ「……うん」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「……」スクッ……


シンジ「アスカ……」

アスカ「?」

シンジ「ありがとう…」

アスカ「…………」


アスカ「いいえ…//」ニコッ……

シンジ「うん……」



アスカ「……」ソッ……


襖に手をかけるアスカ……


アスカ「…お休みなさい…//」

シンジ「お休み……」


スッ……ソーッ……

パタン……


そっと部屋から出ていくアスカ…………


460名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/01(日) 21:10:07.24sIHPUawr0 (21/21)

ー アスカが出ていった後 ー


シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「……どうしよう…………」ボソッ……



シンジ「……どうすればいいんだろう……僕…………」ボソッ……



一人呟くシンジ…………


461VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)2013/12/01(日) 21:56:41.36qyT8RcLA0 (1/1)

次は3号機が来るんだっけ?


462VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/12/01(日) 23:03:15.90xiqcw8OU0 (1/1)

冬月「止まったな…」

ゲンドウ「あぁ…」




463VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/12/02(月) 03:31:25.51ePVkzUj8o (1/1)

先が見えない


464VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sape] 2013/12/02(月) 18:00:56.36AF3L2U8k0 (1/1)

>>461
その前に水族館での加持救済話がまだじゃねぇか…


465VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/12/07(土) 21:41:03.46D4LlI9uE0 (1/1)

頼むから早くしてぇ!
毎日確認してんだけど泣きそうなんだけど!!!


466VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/12/09(月) 04:47:36.63d8ieO485o (1/1)

早くしてよぉ...


467VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)2013/12/09(月) 21:49:00.78kVvmaNz00 (1/1)

気持ちはわかるが落ち着け


468VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/12/10(火) 15:10:24.68cJ+2gG3p0 (1/1)

落ち着くからsageろ


469VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/12/17(火) 22:33:21.55qGdmhwdF0 (1/1)

まだかなー?


470VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/12/18(水) 08:05:44.818XpFfUBNo (1/1)

追いついた
面白いけどら抜きが気になってしまう


471VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)2013/12/18(水) 16:17:14.63rOlOyN1m0 (1/1)

急に停止したンゴ


472VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/12/26(木) 23:55:28.11UKJ9tu2x0 (1/1)

エタッたのかよ


473名無しのアスカ好き ◆tHwkIlYXTE2013/12/28(土) 11:46:11.26Fi59pSOs0 (1/2)

保守と生存報告
もう少し待って下さい

ついでに同じ酉を使ってる人がいたので酉を変えます


474名無しのアスカ好き ◆QgxJFrMrW31O2013/12/28(土) 11:47:27.57Fi59pSOs0 (2/2)

酉変更


475VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/12/28(土) 12:53:28.72RtoS+pwyo (1/1)

来てた
待ってるぞ


476VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/12/28(土) 21:42:38.87jjV7RJfHo (1/1)

待ってるさ


477第19使徒:アヤタカ ◆tHwkIlYXTE2013/12/29(日) 19:16:34.27Pt9dr8RG0 (1/1)

あぁ…それ俺ですわ
途中から使いだしたの俺の方なのに
すみませんでした…

面白いので楽しみにしていますね


478以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/10(金) 23:24:18.87QVzQq9hT0 (1/1)

生存報告くらいしてほしいな



479以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/15(水) 21:55:07.81Scf1Y2N3o (1/1)

追いついたー


480以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/19(日) 01:45:09.29cBoy7Nvw0 (1/1)

まだー?


481以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/19(日) 23:26:41.45ZKmN/8FJ0 (1/1)

バン はよ
バン(∩`・д・) バン はよ
バン/ ミつ/ ̄ ̄ ̄/
 ̄ ̄\/___/



バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン゙ン バンバン
バン(∩`・ω・) バンバンバンバン゙ン
バン/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
 ̄ ̄\/___/ ̄



; ' ;
\,,(' ⌒`;;)
(;; (´・:;⌒)/ ブボボ
(;. (´⌒` ,;) ) ’モワッ
( ;ω((´:,(’ ,; ;'),`
( ⊃ ⊃ / ̄ ̄ ̄/__
 ̄ ̄\/___/
.


482以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/20(月) 19:48:41.78+zs0G0z+0 (1/1)

生存報告だけでもしてー


483以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/21(火) 00:08:49.50seEr0DAW0 (1/1)

カヲルきゅんとの熱い共闘(意味深)待ってます!


484以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/21(火) 21:59:55.55pgt0AIPho (1/1)

こんな胸糞悪い展開読ませてでオチつけないまま逃亡とか許されんぞ


485以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/22(水) 22:21:32.29+cDwkC520 (1/1)

何上からモノ言ってんだ、馬鹿か?


486 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:01:57.91JsGr16m10 (1/14)

ー 三日後 ー

ー 学校、教室、昼休み ー


シンジ「え? 今日はやる事、何もないの?」

レイ「…ええ」

アスカ「マリとアタシとレイの三人で、昨日、頼まれてた仕事を一気に終わらせたの」

レイ「……」コクッ……

シンジ「そうなんだ……。いつの間に……」

アスカ「やっぱ三人だと早いわ。ね、レイ?」

レイ「ええ」コクッ……

シンジ「そっか……。ありがとう、式波」

アスカ「ううん♪」

レイ「…それで、碇君」

シンジ「うん」

レイ「明後日の日曜日……みんなで水族館に…//」

シンジ「あ、そっか。うん。わかったよ。じゃあ、10時ぐらいから行く? 午前中から行けば、家事も充分間に合うし」

レイ「ええ…//」コクッ

アスカ「じゃあ、アタシ、マリにもそう伝えときます。今日、ネルフからの帰りにちょっと寄る事になってるし」

シンジ「真希波のとこに?」

アスカ「ええ。ちょっと頼まれてる事があるんで」

シンジ「そう……」

レイ「……?」


487真冬のホッカイロ2014/01/23(木) 07:07:00.40JsGr16m10 (2/14)

ー 学校終了後 ー

ー ネルフ本部、廊下 ー


シンジ「シンクロテスト。今日も早く終わって良かったね」

アスカ「はい。それじゃ、シンジさん。アタシは先に行きますね」

シンジ「……うん」

アスカ「」タタタッ……


軽快に走り去るアスカ


シンジ「…………」


それを見送るシンジ



加持「よっ」


不意に後ろから声がかかる


シンジ「?」クルッ

加持「君が碇シンジ君かい? 葛城のところに住んでるサードチルドレンだろ?」

シンジ「はい……そうですけど…………?」

加持「俺の名前は加持リョウジ。特殊監査部に所属している。よろしくな。君の事は葛城からよく聞いているよ」

シンジ「ミサト……さんから?」

加持「そうさ。彼女の寝相の悪さを知ってるのは、君だけじゃあないぞ」

シンジ「……寝相の…………」

加持「まあ、そう警戒するなよ。ほら」スッ……


缶コーヒーを差し出す加持


加持「お互いの親睦を深める為に、これからデートでもどうだい?」

シンジ「……僕、男ですよ」

加持「ノープロブレム。……愛に性別は関係ないさ」スッ……

シンジ「やめて下さい」スッ……


近付いてきた顔を手でどけるシンジ


加持「おっと……。こりゃまた参ったね。からかいがない」

シンジ「……僕、その気はありませんから」

加持「怒るなよ。冗談さ。ま、軽く付き合ってくれ。それぐらい構わないだろ?」

シンジ「……いいですけど」


488 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:09:09.12JsGr16m10 (3/14)

ー 第三新東京市、郊外 ー

ー マリの墓 ー


シンジ「ここって……」

加持「俺の教え子の墓だよ。君も名前ぐらいは聞いた事があるだろう? 真希波・マリ・イラストリアス……フォースチルドレンだ」

シンジ「…………はい」

加持「司令に頼んで、墓を建てさせてもらった。時々、ここに来るんだ。……彼女を助けられなかったからな」

シンジ「…………そうですか」

加持「すまないが、先に挨拶させてもらうよ。花も取り替えないといけないしな」

シンジ「……どうぞ」

加持「……ああ」


墓の前まで行き、かがみこんで神妙な顔で手を合わせる加持……


シンジ「………………」


それを眉を寄せて眺めるシンジ


489 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:11:10.84JsGr16m10 (4/14)

加持「……すまなかったな、マリ…………」

シンジ「…………」


しばらくそのまま無言の二人……



加持「…………」

シンジ「…………」



加持「…………」

シンジ「……加持さん。どうして僕をここに?」


加持「特に意味はないさ。……一人で来るのが気まずかったからな。それだけだよ」

シンジ「…………そうですか」


加持「……シンジ君」

シンジ「……はい」


加持「……マリがどうして亡くなったかを君は知ってるかい?」

シンジ「…………」

加持「……ベタニアベースには使徒がいたんだ。南極の永久凍土から発見された使徒がな」

加持「その使徒が封印システムを破って、外に飛び出してしまった。マリはその迎撃に向かったんだ」

加持「だが、マリの乗った仮設五号機は暴走。使徒のせいで基地の自爆装置まで作動してしまった」

シンジ「…………」


490 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:13:36.12JsGr16m10 (5/14)

加持「俺達は必死でどうにか止めようとしたさ。暴走も、自爆装置も」

加持「だが、止められなかった」

シンジ「…………」

加持「カウントが残り200秒を切ったところで、俺は基地についてはもう諦めたよ。だが、せめてマリだけでも助けたかった。あいつは俺の教え子だったからな」

シンジ「…………」

加持「他の職員が次々と避難していく中、俺は最後まで残ってどうにかエントリープラグを緊急脱出させようとあがいたよ。そんな時、奇跡的にマリとの通信が繋がったんだ」

加持「あいつは、はっきりと俺にこう言ったよ」

加持「逃げて下さい、加持さん。そして、私の分まで生きて……ってな」

シンジ「………………」


491 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:15:46.91JsGr16m10 (6/14)

加持「その後の事は、ろくに覚えていない……」

加持「気がついたら、俺は救助用のヘリに乗せられていたよ。気を失っていたらしい。そして、不思議な事に体には傷一つなかった……」

加持「今でも俺は思うんだ。爆発の時にマリが俺の事をかばってくれたんじゃないか……。そんな風にな」

シンジ「………………」

加持「もちろん、真実がどうだったのかはもう誰にもわからない。基地はおろかエヴァまで蒸発しちまったからな……。確かめる術がないんだ」

シンジ「………………」グッ……


知らず知らずの内に拳を強く握り締めるシンジ……


加持「ただ、俺だけじゃなく、ベタニアベースの全職員はマリに命を助けられた。それだけは事実だ。だから俺を含めた全職員がこうして今も生きている……」

加持「俺なんかには本当にもったいない、よく出来た教え子だったよ。マリには感謝してもしきれないな……」

シンジ「………………」ググッ……


492 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:18:55.37JsGr16m10 (7/14)

加持「…………」

シンジ「…………」


またしばらく無言の二人……


加持「……シンジ君。君は今……幸せかい? 話を聞くと葛城にずいぶん厳しくされてるようだが……」

シンジ「…………」

シンジ「いえ……とても良くしてもらっていて幸せです」

加持「そうか……。それならいいさ。葛城はあれで本心を隠す事が結構多いからな」

シンジ「…………」

加持「ここだけの話だが、葛城は君の事をべた褒めしていたぜ。褒めると調子に乗りそうだから、面と向かっては褒めないとは言っていたけどな」

シンジ「……そうですか」

加持「君に厳しくするのも愛情の裏返しさ。結果的にそれが君の為になると思っての事だ」

シンジ「…………」

加持「もちろん、君にとっては少しぐらい辛い事もあるかもしれない。だけどな、シンジ君。辛い事を知っている方が、その分、人に優しく出来る。それは弱さとは違うからな」

シンジ「……そうですか」


493 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:20:35.17JsGr16m10 (8/14)

加持「人は強くなければ生きていけない。優しくなければ誰もついてこない。それは今の君にとって必要なものだ」

シンジ「…………」

加持「いつかその意味が君にもわかるさ……」

シンジ「…………」

加持「……葛城は好きかい?」

シンジ「…………好きです」

加持「そうか……。それならいいさ」

シンジ「…………」

加持「いざという時は……あいつを守ってくれ。それは俺には出来ない、君にしか出来ない事だからな。……頼んだぞ」

シンジ「…………」

シンジ「……わかりました」

加持「……すまないな」

シンジ「いえ……」


494 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:22:01.27JsGr16m10 (9/14)

加持「…………」

シンジ「…………」


シンジ「……もう、話は終わりですか?」

加持「ああ……。だけど、俺はもう少しここにいるよ。マリが淋しがるだろうからな……。君はどうする?」

シンジ「……帰ります」クルッ

加持「一人で帰れるのか?」

シンジ「はい。一人で帰れます」

加持「……そうか」

シンジ「さようなら、加持さん」テクテク……

加持「気をつけて帰るんだぞ」

シンジ「…………」テクテク……


加持「…………」


495 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:26:49.21JsGr16m10 (10/14)

ー シンジがいなくなった後 ー


加持「」カチッ、シュボッ

加持「」フーッ……


タバコを吸う加持


加持「まあ、今はこんなものか……」

加持「あの年齢であそこまで我慢出来るのは立派だが、立派すぎるのも困りものだからな。あれぐらいは言っておいた方がいいだろう」

加持「……君はさ、我慢をし過ぎなんだよ、碇シンジ君。そこは少しだけマリを見習ってほしいところだな」


加持「」フーッ……

加持「…………」


そして、墓を眺める


加持「思わぬ誤算も出ちまったが、マリの存在は意外と役に立ってくれてるようだな……」

加持「アスカの保険としては充分使える、か…………」


墓にもたれかかり、シンジの消えた方角へと語りかける加持


加持「シンジ君、マリをよろしくな。あいつはいいやつだぞ」

加持「そして、これまで以上にレイやアスカと一緒に仲良くやってくれ」

加持「そうでないと、この世界は終わらない」

加持「……そして、始まらないんだ」


496 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:28:30.79JsGr16m10 (11/14)

ー 同時刻、マリのマンション ー


ピンポーン

ガチャッ


マリ「やあやあ、式ちゃん。わざわざ悪いねえ」

アスカ「いいわよ、別に。そんな大した事じゃないし。はい、これ」


受取書を渡すアスカ


マリ「ん。ありがと♪ 嬉しいにゃ」

アスカ「明日には届くって。……それにしても、よくこんな高い物を買う気になったわね」

マリ「んー……ま、ね。ちょっと羨ましくなっちゃったからさ」

アスカ「そう」

マリ「うん」

アスカ「…………」

マリ「ダメかにゃ……?」

アスカ「ダメって事はないわよ。……ただまあ……そういう事。アンタだってわかってるでしょ?」

マリ「ん……ごめん。でもね……」

アスカ「別にいいわよ……。アンタの事、嫌いじゃないし……。嫌いになんかなれないし……」

マリ「私は式ちゃんの事が好きだよ。ま、そうは言っても色々あるんだけどさ……」

アスカ「わかってる。……じゃないわね……わかってるつもり。わかってないかも知れないけど、わかってるつもり」

マリ「うん……。何となく言いたい事はわかるよ」

アスカ「そう……」

マリ「…………」

アスカ「…………」

マリ「式ちゃん。よかったら上がってく?」

アスカ「ううん。悪いけど、もう帰るわ。家事をシンジさんだけに任せる訳にはいかないし。シンジさん、そのままにしとくとアタシの分まで全部やっちゃうから」

マリ「そっか……。そうだよね、ワンコ君そんな感じだもんね」


497 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:30:17.85JsGr16m10 (12/14)

アスカ「ああ、それと、伝言。みんなから」

マリ「何?」

アスカ「明後日の日曜日、水族館行く事になったから。マリ、アンタは予定、大丈夫よね?」

マリ「おっと♪ ついに行けるんだね。もち大丈夫だよー」

アスカ「じゃあ十時に現地集合だから。場所はわかる?」

マリ「うん。地図にも載ってるし平気だよ」

アスカ「変装してきなさいよ、ちゃんと」

マリ「わかってる、わかってる」

アスカ「あと、アタシ達は尾行をまかなきゃいけないから、少し遅くなるかもしれないわ。もし遅くなっても電話はかけないでよ」

マリ「了解」

アスカ「ん……まあ、それぐらいかな。じゃあね。もう行くから」

マリ「あ、うん……。バイバイ」

アスカ「……。バイバイ」

マリ「また来てねー」

アスカ「ああ、もう! また今度来るわよ! だからそんな顔しないでよ!」

マリ「え? 私、どんな顔してたの?」アセアセ

アスカ「もういい! とにかくまたね!」

マリ「…………」



マリ「……うん。またね、式ちゃん」ニコッ

アスカ「ふんっ!」スタスタ


498 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:31:41.03JsGr16m10 (13/14)

ー 夜 ー

ー レイの家 ー



鍋「」コトコト……

レイ「……」


鍋の中の味噌汁をじっと眺めるレイ


レイ「……」スッ……


お玉で軽くお碗にすくう


レイ「」ゴクッ……

レイ「……」


レイ「……美味しい」






レイ「……お母さんの味…………」


レイ「……まごころの味…………//」





499 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/23(木) 07:35:20.91JsGr16m10 (14/14)

途中、名前欄誤爆しました
orz

まだ生きてます


500 ◆vd51byTX34c12014/01/23(木) 08:07:14.33KhLL+PhTo (1/1)

ホッカイロ暖かいよね


501以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/23(木) 08:20:47.11+JFQ5zIDO (1/1)




502以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/23(木) 09:09:47.14TfaDLi/0o (1/1)




503以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/23(木) 10:59:24.46RfD1dFmBo (1/1)

乙乙
加持さんもやっぱアカンのかと思ったが…


504以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/23(木) 13:19:08.02clOx96Hv0 (1/1)

綾波だって最初は向こう側だと思われてたんだから仕方がない


505以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/23(木) 13:52:23.34gQTyfpm8o (1/1)

事情があったら子供を虐待していいんですかね


506以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/23(木) 14:10:03.39d1iibPY4O (1/1)

事情を知ろうともしないゲンドウや知った上で関わろうとしない冬月も相当アレだがな


507以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/23(木) 19:22:54.59nb3xqVyeo (1/1)


冬月は何とかしたいけどできない立場なんだろう
ゼーレとかしかもはや手をつけられない


508以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/23(木) 23:39:41.91kqg3lyn4O (1/1)

火事さん...


509以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/24(金) 00:20:11.278oExLfKT0 (1/1)

ひゃっほぉぉぉぉ!!!!
加持さんやっぱり天使ですわ!!
マリの存在が分かっててあんなこと言うって、やっぱ謎の多い人物ですわ


510以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/24(金) 15:52:38.80uV1p3t83o (1/1)

それでもマリにした仕打ちは変わらんけどな・・・
屑ぞろいの中ではマシな方って感じかな?


511 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 07:35:10.81YjCUVg2P0 (1/17)

ー 日曜日、朝 ー

ー レイのマンション ー


レイ「……お弁当、全員分」

レイ「……それにレジャーシート」

レイ「あと……お味噌汁//」


レイ「なんだか……ドキドキする……//」


レイ「……お母さんとキャンプに行った時みたい……//」


レイ「みんな……食べてくれるといいけど……//」


レイ「服も……」

レイ「碇君に買ってもらった服……///」

レイ「碇君……覚えてくれているといいけど……///」


512 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 07:37:42.18YjCUVg2P0 (2/17)

ー マリのマンション ー


マリ「……んー。まあ、こんなもんかにゃ」クルッ

マリ「変装のために帽子被らなきゃいけないから、髪をいじれないのが残念だけど、ま、それはしょーがないよね」

マリ「この日の為にと買っておいた、背中の露出多目なタンクトップとミニスカート。ワンコ君、覚悟しなよ♪ 色気じゃ私は誰にも負けないんだから」

マリ「っと、もうそろそろ行かないと。えーと、お弁当、お弁当っと」ゴソゴソ

マリ「みんなの分も合わせて一杯作ったから、ワンコ君、きっと喜んでくれるにゃ♪」


時計をちらりと見るマリ


マリ「んー……ちょいと早いけどもう行こうかな。なんかもう待ちきれない感じだしさ。向こうで待ってればいいよね。うん、行こう」

マリ「水族館。水族館ー♪」ガチャッ


マリ「楽しみだなあ♪」タタッ


513 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 07:39:23.56YjCUVg2P0 (3/17)

ー 水族館近く ー


アスカ「ふーっ……ようやくまいたわね」

アスカ「時間はっと……うん、まだ10分近くある。これなら余裕ね」

アスカ「にしても、今日はなんかしつこかったわね、諜報部のやつ……。おかげでシンジさんと二手に別れてまく事になっちゃったし……」

アスカ「おまけに結構走っちゃったから、お弁当の中身が心配ね。今日はアタシが腕によりをかけてみんなの分を作ったっていうのに……」

アスカ「……アタシの初手料理……// シンジさん、気に入ってくれるといいけど……//」

アスカ「って、シンジさん、もう先に来てるかな? 急がないと」タタタッ


514 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 07:41:12.96YjCUVg2P0 (4/17)

ー 水族館前 ー


マリ「あっ、おっはよー、式ちゃん!」

アスカ「おはよ。朝から元気ね、アンタ」

レイ「…おはよう」

アスカ「おはよ。アンタも今日は何だか少しだけ元気ね。いい事よ」

レイ「そう……?」

アスカ「ええ、そうよ」

マリ「そういう式ちゃんも何だか少しハイテンションじゃない?」

アスカ「そりゃそうよ。こんな風に皆でどこか遊びに行くのってアタシ初めてなんだから// 仕方ないでしょ」

マリ「にゃ、私もだよー!」

レイ「……私も」

アスカ「……そっか…// アタシだけじゃないんだ」ニコッ

マリ「うん。楽しみだよねえ」ニコッ

レイ「……ええ」コクッ

マリ「で、式ちゃん、ワンコ君は?」

アスカ「え? ああ、まだ来てないんだ……。途中で尾行まく為に二手に別れたから、多分、すぐ来ると思うわよ」

マリ「そっか。じゃ、もう少し待ちだね」

レイ「そうね」


515 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 07:43:48.15YjCUVg2P0 (5/17)

アスカ「……ところでさ、マリ」

マリ「ん? 何?」

アスカ「アンタ、その格好、ちょっと派手すぎじゃない? 目立たないようにしてこないとまずいんじゃないの?」

マリ「んー……そうかにゃ? サングラスかけてきたし、帽子もかぶってきたから平気だと思うんだけど」

アスカ「じゃなくて、服よ服。その……胸とか背中とか脚とか……それ強調しすぎでしょ。嫌でも目立つわよ」

マリ「そんな事あるかなー? どう思う、レイちゃん?」ポヨン

レイ「……大きい」

アスカ「……むう」


マリ「そういう式ちゃんは、相変わらず今日も可愛い服だよね。ホント、お姫様みたいで羨ましい」

アスカ「な// そ、そんな事ないわよ!」

レイ「お姫様…?」

アスカ「ち、違うわよ// 別にアタシは、その……。ああ、もう、やめてよ、マリ! 変な事言わないで!//」

マリ「はいはい。照れ屋、照れ屋♪」

アスカ「違うのに……もう……//」


マリ「で、レイちゃんはお嬢様って感じかな? よく似合ってるよね、その服」

レイ「……ありがとう…//」

アスカ「スカートとお揃い? 一緒に買ったの?」

レイ「……//」コクッ

レイ「……碇君に、買ってもらったの///」

アスカ「は!?」
マリ「にゃ!?」


アスカ「あのさ……ちょっとレイ」ズイッ

マリ「……その話、かなり詳しく話してもらおうかにゃ」ズイッ

レイ「……?」


516以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/25(土) 07:47:51.4592FntS7x0 (1/1)

>>1くん!グーテンモーゲン!楽しみにしてます!


517 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 07:53:06.34YjCUVg2P0 (6/17)

アスカ「で、どういう経緯を辿ってそういう事になったの?」ズズイッ

マリ「どこをどうしたらその服を買ってもらうなんて事になるのかにゃ?」ズズイッ

レイ「……??」


レイ「これは……前に碇君がプレゼントをしたいって言ってくれたから……//」

アスカ「!!」
マリ「!!」


レイ「だから……二人で一緒に買い物に……//」

アスカ「…………そう……なの……」シュン……
マリ「…………そう……なんだ……」シュン……


レイ「きっと、私の持っている服が制服しかなかったから、だから……」

アスカ「ん?」
マリ「へ?」


レイ「その事を言ったら、前のお返しもしたいからって碇君が……」

アスカ「…………」
マリ「…………」


アスカ「……レイ、一つ聞いていい? アンタ、何で制服一着しか持ってなかったの?」

レイ「前に持っていたのは…全部捨てられてしまったの。服だけじゃなくて、他の物もほとんど」

マリ「あ…………」
アスカ「ごめん……辛い事聞いたわね……」

レイ「」フルフル……

レイ「今は、私にはみんながいるから…。だから、もういいの。平気…//」

マリ「…………」
アスカ「…………」

マリ「……うん。私にもレイちゃんと式ちゃんがいるし」ニコッ

アスカ「アタシにもよ」ニコッ

レイ「…//」コクッ……


518 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 07:56:38.84YjCUVg2P0 (7/17)

ー 数分後 ー


シンジ「ごめん、みんな、お待たせ」タタタッ

アスカ「シンジさん!」

マリ「ワンコ君!」

レイ「碇君……」

シンジ「ごめんね。少し尾行まくの手間取っちゃって。みんな、待った?」

マリ「ううん。それより早く行こ、ワンコ君♪」グイッ

シンジ「えっ/// あ、ちょっと、真希波。手……///」

アスカ「!?」

レイ「……?」

マリ「えー、いいじゃん、手ぐらい。ね?//」

シンジ「いや、でも、あの……///」

アスカ「」ムーッ!

レイ「…………」

アスカ「マリ。『シンジ』が嫌がってるじゃないの。離しなさいよ」グイッ

マリ「にゃっと……。ん? え? シンジ?」ピクッ

シンジ「別に嫌がってる訳じゃないよ。けど……ただその……少し恥ずかしかったから……//」

アスカ「だって、マリ。ほら、行くわよ」グイッグイッ

マリ「いや、式ちゃん、ちょっと待って。今、シンジって名前で呼ば」

アスカ「いいから、行くわよ。もう!//」スタスタ


レイ「…………」

シンジ「行っちゃったね……」

レイ「ええ」

シンジ「ところで、綾波……その服……」

レイ「……///」コクン……

シンジ「そっか……//」

レイ「うん…///」

シンジ「じゃあ、僕たちも行こうか」

レイ「ええ…//」コクッ……


519 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 07:58:37.15YjCUVg2P0 (8/17)

職員「それではまずはこちらへ……」

アスカ「はーい♪」

マリ「ワクワクするなあ♪」

シンジ「そうだね」ニコッ

レイ「……ええ」コクッ


ー 長波放射線射式滅菌処理室 ー

バシュッ
バシュッ
バシュッ
バシュッ

「…………」

「…………」


ー シャワー室 ー

「熱っ!!」

「にゃっ!! 熱ーっ!」


ー 有機物電離分解型浄化浴槽式滅菌処理室 ー

ブクブク……
ブクブク……
ブクブク……
ブクブク……


ー シャワー室 ー

「やあっ! 冷たいっ!!」ピョンピョン

「…………」


ー 有機物電離分解型再浄化浴槽式滅菌処理室 ー

ゴボゴボ……
ゴボゴボ……
ゴボゴボ……
ゴボゴボ……


ー エアーダクト室 ー

「いやああっー!!」

「うにゃあー!!」


ー 有機物電離分解型再々浄化浴槽式滅菌処理室 ー

ゴポゴポ……
ゴポゴポ……
ゴポゴポ……
ゴポゴポ……


ー 全滅菌処理工程完了 ー



アスカ「予想してたのと全然違ったわ……」ハァ……

シンジ「これ、本当に息抜きになるのかな……」ハァ……

マリ「久しぶりに、とんだ目にあったにゃ……」ハァ……

レイ「……?」


520 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 08:00:38.64YjCUVg2P0 (9/17)

ー 水族館、エレベーター内 ー

チーン……

ガコッ……


ドアが開くと……

目の前には巨大な水槽が……


シンジ「うわあっ……!」

アスカ「へえ……♪」

レイ「魚……」

マリ「すっごいじゃん♪」


521 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 08:03:00.26YjCUVg2P0 (10/17)

シンジ「これがセカンドインパクト前の生き物なんだ……」

マリ「見て見て、ワンコ君。向こうにでっかい魚がいるよー。あれ、クジラってやつじゃない!」

シンジ「すごい、本当に大きいや」

アスカ「ねえ、シンジ、シンジー。こっちこっちー。ペンペンっぽいのが沢山いるー!」

シンジ「ペンペン? 本当に、アスカ?」タタッ

マリ「アスカ? え、ちょっ、ワンコ君! なに、アスカって。どういう事ー!」タタッ


レイ「…………」


アスカ「なにしてんのよ、レイー。アンタもこっち来なさいよ。はぐれるわよー」

レイ「私…も……?」

アスカ「当ったり前じゃないの、早く来なさいよ。置いてっちゃうわよー」

シンジ「綾波も来なよー。こっちいにいるの、ペンギンっていう鳥だよ。可愛いからきっと気に入ると思うー」

マリ「レイちゃん、早く早くー」


レイ「……」


レイ「ええ…//」コクン……

レイ「」タタッ


522 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 08:04:56.69YjCUVg2P0 (11/17)

ー 一通り皆で楽しく見学した後 ー

ー 休憩所 ー


マリ「さあて、ご飯にしよーか♪ お弁当たっぷり作ってきたから遠慮なく食べてねー」ジャーン

アスカ「久しぶりだったけど、腕によりをかけて作ったわよ。皆、お腹空いたでしょ。食事にしましょ」ジャーン

レイ「……全員分、お弁当作ってきたから。……食べて」ソッ……


シンジ「」


マリ「え?」

アスカ「え?」

レイ「え……?」


マリ「みんな、作ってきちゃったの!?」

アスカ「だ、だって、お弁当持ってくるなんて誰も言ってなかったじゃない!」

レイ「だから……。誰も持ってくるって…言ってなかったから……」


シンジ「」


アスカ「どうすんのよ、こんなに一杯のお弁当ー!!」


523 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 08:08:24.86YjCUVg2P0 (12/17)

ー 10分後 ー


マリ「どう、ワンコ君、美味しい?」ニコニコ

シンジ「うん。真希波ってやっぱり料理上手だよね。味付けとか焼き加減とか見習いたいな」

マリ「にゃは♪ そう言ってもらえると嬉しいなあ。もし良かったら、今度、ワンコ君の作った料理も食べてみたいな、私」

シンジ「ああ……それなら今度何か持っていくよ。そんな大した物は作れないけど……」

マリ「ホント!? ありがとー、ワンコ君!// 嬉しいよー!」

アスカ「」ムーッ……

レイ「…………」



アスカ「シンジ、アタシのも食べてよ。美味しく出来たんだから。頑張って作ったのよ」

シンジ「うん。知ってる。朝早くから起きて作ってたの、見てるから。ありがとう、アスカ」

アスカ「ううん。いいの// それより、このロールキャベツ、自信作なの。食べてみて」

シンジ「じゃあ、もらうね。……あ、そういえばアスカが作った料理って、僕、初めて食べるんだよね」

アスカ「うん……。そう…//」コクッ……

シンジ「いただきます」パクッ

アスカ「……美味しい?」ドキドキ

シンジ「……うん。美味しいよ。アスカ、料理上手だね。僕が作るのより美味しい」ニコッ

アスカ「そ、そんな事ないわよ…/// その……シンジの料理の方が、絶対に美味しいから…///」ゴニョゴニョ

マリ「」ムーッ……

レイ「…………」



レイ「」トポトポ……

レイ「碇君。これ……お味噌汁……」スッ……

シンジ「ありがとう。飲んでもいい?」

レイ「ええ……//」コクッ

シンジ「」ゴクッ……

レイ「……」ジッ

シンジ「美味しい……。それに、なんだろう……懐かしい味がする……」

レイ「懐かしい……?」

シンジ「うん……。なんか……お母さんの味、って感じがする」

レイ「お母さんの……//」

シンジ「綾波って……きっと結婚したらいいお母さんになりそうだよね。家庭的な感じがするし……」ニコッ

レイ「////」カアッ

レイ「……バカな事、言わないで…////」フイッ……

シンジ「あ、ごめん……」

レイ「…////」ドキドキ……

マリ「」ムーッ

アスカ「」ムーッ


524 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 08:12:12.35YjCUVg2P0 (13/17)

ー 一時間後 ー


シンジ「」ウップ……

シンジ「もうダメ……。これ以上は食べられない……。無理……」


アスカ「ほら見なさい! アンタが無理して食べさせるからよ!」

マリ「式ちゃんだって、食べて食べてって散々ワンコ君に言ってたじゃない!」

レイ「…………」シュン……


シンジ「あ……えと……大丈夫だから……。ただ、ちょっと休ませて……。しばらく動きたくない……」ウップ……

マリ「あ……ごめん、ワンコ君……」

アスカ「ごめん、シンジ……」シュン

レイ「……ごめんなさい」シュン


マリ「んー……じゃあワンコ君、おわびにしばらく私が一緒にいるよ! だから、式ちゃんとレイちゃんは二人でもう少し見学していきなよ」

アスカ「マリ。アンタはダメ。なにどさくさ紛れに言ってるのよ、もう」グイッ

マリ「ちょっと式ちゃん、今日引っ張りすぎ」

アスカ「アンタが妙な事ばかりするからでしょうが。全くもう……」

レイ「…………」

シンジ「えっと、アスカ……それに真希波も綾波も。僕の事は大丈夫だからさ、みんなでまた見学していて。動けるようになったら合流するから」

アスカ「でも……」

レイ「……碇君は、そうしててほしいの?」

シンジ「…うん」

レイ「わかったわ……行きましょ」スクッ

マリ「……えー」

アスカ「……シンジは、それでいいの?」

シンジ「うん。頼むよ、アスカ」

アスカ「……わかった。ごめんね、シンジ……」

シンジ「謝らないでよ。みんなの料理、本当に美味しかったんだから」

マリ「……んー……ごめんよ、ワンコ君」

シンジ「大丈夫」ニコッ

レイ「それじゃ、二人とも、行きましょ。……碇君、また」

シンジ「うん。また……」


アスカ「…………」


525 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 08:14:08.88YjCUVg2P0 (14/17)

ー アスカ、マリ、レイがいなくなった後 ー


シンジ「…………」


シンジ「…………」


シンジ「…………」


シンジ「どうしよう……」ボソッ


シンジ「…………」


シンジ「それに……」


シンジ「一昨日の、あの人……」ボソッ……


シンジ「特殊監査部、加持リョウジだっけ……」


シンジ「真希波を見殺しにしようとした張本人だよね……」


シンジ「なのに、あれだけの嘘を平気でよくつけるよ……」


シンジ「……ミサトよりタチが悪いや、あの人……」


シンジ「……ここで、一番気をつけなきゃいけない人かも……」


シンジ「流石に今日は聞くわけにはいかないけど……。後で、真希波に詳しく聞いておいた方がいいかな……」


526 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 08:16:10.18YjCUVg2P0 (15/17)

ー 一方、アスカ、マリ、レイ ー


マリ「ところでさあ、式ちゃん」ズイッ

アスカ「な、何よ、急に」

レイ「……?」

マリ「なーんで、ワンコ君の事をいつのまにか名前で呼び捨てにしてるのかな? ワンコ君まで式ちゃんの事、名前で呼んでたしさ」

アスカ「べ、別に……。ただ、敬語を使うのをやめただけよ。前からそんな事、言ってたでしょ?」

マリ「だからってさあ、急に名前はおかしくないかにゃ? 式ちゃんは前からシンジさんって言ってたから、まだわかるとしてもさ。ワンコ君、前は式波って言ってたじゃん? それが何で急に『アスカ』になるのさ?」ズイッ

アスカ「し、知らないわよ、そんな事……// そんなに気になるならシンジに直接聞けばいいじゃない」

マリ「むー……」

アスカ「」フン

レイ「……理由を、聞いてくればいいの?」

アスカ「え?」

レイ「私も……気になるから」クルッ、スタスタ……

アスカ「ちょ、ちょっと待ってよ、レイ! お願いだからそれはやめてっ!!///」ダダッ


マリ「んー……レイちゃん、強いなあ……。流石というかなんというか……」


527 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 08:19:09.40YjCUVg2P0 (16/17)

ー 数時間後 ー

ー 帰り道 ー


マリ「いやー♪ 楽しかったあ!」

アスカ「本当ね♪ アタシ、こんなに楽しかったの生まれて初めて!」

シンジ「帰りはあの消毒もなかったしね。本当に楽しかったよね、今日は」

レイ「ええ…」コクッ


マリ「あー、でも、これからみんな帰らなきゃいけないんだよねえ……。折角だから、私の家でゆっくりしてってもらいたかったんだけどなあ……」

シンジ「ごめん、真希波。ミサトの事があるから今日は……。でも、また今度遊びに行くよ」

アスカ「悪いわね、マリ。また今度ね」

レイ「……ごめんなさい。私もこの後、ネルフに寄る必要があるから」

マリ「うん。しょうがないね。ただ、今度はみんなで来てよ。それで、ひたすらゴロゴロしていってね」

シンジ「うん。きっと」

アスカ「そうね。お菓子でも買って遊びに行くわ」

レイ「……私も、行くから」

マリ「うん♪ 特にレイちゃん。まだ家に来てゴロゴロしてないんだから、必ずだよー」

レイ「…ええ」コクッ


シンジ「それじゃ、真希波。僕らはもうここで。一緒にいるところを見つかると良くないだろうし」

アスカ「じゃあね、マリ」

レイ「また…」

マリ「うん。バイバーイ」


笑顔で手を振って見送るマリ


528 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/25(土) 08:21:53.18YjCUVg2P0 (17/17)

マリ「…………」



マリ「みんな、行っちゃった……」

マリ「やっぱりこういう時、少し淋しいんだよね……」

マリ「私のわがままなんだけどさ……」

マリ「そんな事言える立場じゃないし……」


マリ「…………」


マリ「でも、今日は楽しかったなあ……」


ふっと夕焼けの空を見上げるマリ……




マリ「ずっとこんな日が続けばいいんだけど……」


マリ「みんなと一緒に逃げ出す日まで、ずっと…………」




  


529以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/25(土) 15:55:32.92ThucdYGt0 (1/1)

このシンジ君は禿げる


530以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/25(土) 22:55:05.56pyEM34M/0 (1/1)

久々の投稿がほっこりで嬉しい
が、まだ一波乱も二波乱もあるんだろうな


531以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/26(日) 02:28:00.599YDYSIHk0 (1/1)

がんがれ


532 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 17:31:08.981HjX8viD0 (1/16)

ー 数日後 ー

ー 衛星軌道上からの映像 ー


キラッ……

ズズズズズズ……


地球の地表からゆっくりと浮かび上がる光の十字架……


ゴゴゴゴゴゴ……


それを中心にして、ゆっくりと広がっていく赤黒い光の輪……


533 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 17:33:14.051HjX8viD0 (2/16)

ー ミサト宅、風呂場 ー


Prrrrrr、Prrrrrr


ミサト「何よ、もう……」ピッ

ミサト「はい。葛城……」


ミサト「…………」


ミサト「消滅!?」

ミサト「エヴァ四号機と第二支部が消滅したの?」


534 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 17:37:09.091HjX8viD0 (3/16)

ー ネルフ本部、作戦会議室 ー


ミサト「これは……凄まじいわね……」

日向「ATフィールドの崩壊が衛星から確認出来ますが、詳細は不明です」

ミサト「きちんと調べたんでしょうね?」

青葉「もちろんです。EVAだけならともかく、支部まで消滅となれば、対岸の火事とは言ってられませんから」

ミサト「やはり四号機が爆心なのね……」

リツコ「…………」

ミサト「うちのエヴァ、大丈夫なんでしょうね?」

マヤ「四号機は……!」

リツコ「……EVA四号機は稼働時間問題を解決する新型内蔵式のテストベッドだった……らしいわ」

マヤ「北米ネルフの開発情報は、赤木先輩にも十分に開示されていないんです」

リツコ「元々、こちらで開発する予定だったものを向こうに押し付けたのよ。それを根に持ったんでしょうね」

ミサト「押し付けた?」

リツコ「ええ。そんな危ないものをこちらで開発したくはなかったからね。結果的に、その判断は正しかった訳だけど……」

ミサト「それならうちのエヴァは……」

リツコ「何も問題ないわ。これまで十分に運用されてきたものばかりだから」

ミサト「それ、嘘じゃないわよね? あんな危なっかしいものごめんよ」

リツコ「ええ。私だってそうよ」

ミサト「……わかったわ。信用する」


535 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 17:41:32.891HjX8viD0 (4/16)

ー ネルフ本部、隔壁裏 ー


加持「エヴァ四号機……次世代型開発データ取得の為の実験機……」

加持「何が起こったとしても不思議ではない……か」

加持「しかし、ゼーレも無茶をする……。まさかこんな荒業に出るとはね……」

加持「そこまでして、現ネルフを潰すつもりですか……あなた方は……」

加持「問題はこの後……。米国政府と日本政府がどう出るかだな……」

加持「穏やかに済むはずはないが……」


536 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 17:51:24.971HjX8viD0 (5/16)

ー ネルフ本部、??? ー


モノリスA『先に、エヴァンゲリオン五号機が失われ、今、同四号機も失われた』

ゲンドウ「……両機の喪失は、計画遂行に支障をきたしますが」

モノリスD『修正の範囲内だ。問題はなかろう』

ゲンドウ「しかし、弐号機及び零号機の追加修復予算は未だ承認されていません。初号機一機では不安が残ります」

モノリスE『それならば問題ない。直にエヴァ参号機が君のところへと向かうはずだ。米国政府が好意的に君のところへと差し出してくれた』

モノリスB『もっとも、日本政府か渋っているお陰で今一つ遅れてはいるがね。しかし、それも時間の問題だ』

モノリスF『あれは最新兵器だ。主戦力に足りるだろう』

ゲンドウ「試験前の機体は信用に足りません。両機の追加修復予算の承認をお願いします」

モノリスE『それだけの予算など、どこの国にもありはしないのだよ』

モノリスD『そもそも君達がこれまでどれだけ予算を無駄に消費してきたと思っているのかね。そのせいで、国が幾つも傾いてしまっているのだ』

モノリスC『左様。これ以上の予算を捻出するのは不可能なのだよ』

ゲンドウ「しかし、南米や中国では新しいエヴァシリーズを開発していると聞きましたが」

モノリスD『それは君が口を出すべき事ではない。我々には我々の計画がある。君は君の仕事だけをしたまえ』

モノリスA『我らの望む真のエヴァンゲリオン、その誕生とリリスの復活をもって契約の時となる。それまでに必要な儀式は執り行わねばならん。全てはその為だ』



ゲンドウ「…………」


537 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 17:56:32.531HjX8viD0 (6/16)

ー モノリスが消えた後 ー


冬月「……やはり、ゼーレはここを本格的に潰す気のようだな。この様子だと、今後、追加予算を一切認める気はあるまい」

ゲンドウ「ゼーレはここの本部を半ば形骸化しようとしているのだろう。その為に、露払いする戦力すら与えないつもりだ」

冬月「むしろ、ここの自爆を望んでいる、か……。しかし、ある意味これはゼーレに我々の計画が漏れていないという証拠でもある。もし、漏れていたとしたらそんな事を望むはずがない」

ゲンドウ「ああ、まだ我々にも時間は残されている。残された戦力で全ての使徒を倒す事が出来ればの話だが」

冬月「こうなってくると参号機が本当にこちらに来るかどうかも怪しいものだな……。米国政府がこちらへ押し付けたがっているというのは確かな様だが……」

ゲンドウ「しかし、来ない可能性も頭に入れておかねばなるまい。……冬月」

冬月「何だ?」

ゲンドウ「残りの予算全ては、弐号機の修復に回すよう手配させろ。先の使徒戦で大破してしまった零号機は事実上凍結させる」

冬月「直す金がない以上、そうするしかあるまいが……。しかし、パイロットはどうする?」

ゲンドウ「その件については葛城三佐に一任する。何にしろダミーシステムが完成するまでのわずかな期間だ。大した影響はあるまい」

冬月「ふむ……」

ゲンドウ「それと、レイを初号機に乗せて最後の仕事を行わせる」

冬月「それもまた、いざという時の保険か……。良かろう。手配しておく」


538 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 18:00:01.241HjX8viD0 (7/16)

ー 数時間後 ー

ー ネルフ本部、リツコの研究室 ー


リツコ「そう……。零号機を凍結させるの」

ミサト「ええ、そういう命令。ホント、予算予算ってしみったれた話よね。前も言ったけど、一度首都でも使徒に潰されればいいのよ、あいつら」

リツコ「そうね。でもまあ、いいんじゃないの。どうせ、一機あれば事足りるものですし」

ミサト「ずいぶんと冷静ね、リツコ。あんたは腹立たないの?」

リツコ「別に……。これで母さんが造ったポンコツともさよなら出来るかと思えば、何も腹立たしい事なんかありはしないわ」

ミサト「ああ、そっか……。メンテとか、あんたの苦労も減る訳だしね」

リツコ「そういう事ね。所詮は試作品なのだから、もう使う価値もないわ」

ミサト「……まあ、私もそうポジティブに捉えようかな。イライラはお肌の天敵だしー……」

リツコ「そうした方がいいわ。それで、ミサト。パイロットはどうするつもり?」

ミサト「決まってるでしょ、そんなの。聞く必要もない事よ」


539 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 18:06:31.171HjX8viD0 (8/16)

ー ネルフ本部、格納庫 ー


ガコッ……ウィーン…………

包帯に巻かれた状態のまま、凍結される零号機……


アスカ「ええっ!! アタシがパイロット登録抹消!?」

リツコ「正確には、抹消ではなく予備扱いね。登録自体は残しておくけど、ただ、シンクロテストだとか訓練だとか、そういった事には、あなたはもう参加しなくていいわ」

アスカ「……。じゃあ……弐号機は……」

マヤ「弐号機はこれからシンジ君が使うわ。レイには初号機に乗ってもらうから。前にやったEVAの相互互換テストの結果、そう決まったの」

リツコ「あなたはEVAの操縦者の中では一番シンクロ率が低い……つまり落ちこぼれなのだから、外されるのは当然の結果でしょ?」

マヤ「残念だろうけど、諦めてね。あなたの能力のなさが悪いんだから」

アスカ「っ…………」プルプル……


うつむき、震えるアスカ……


リツコ「アスカ、返事をしなさい。ふてくされるなんて、子供のやる事よ」

アスカ「……すみません……でした……」

リツコ「謝って済むなら警察はいらないわね……。とはいえ、今回だけは見逃してあげるけど。用済みを叱る気にもなれないし」

マヤ「ええ……それなら先輩」

リツコ「そうね。あなたはもう帰っていいわ。以後、こちらから呼び出しがあるまでは、本部の立ち入りを禁止します。いいわね?」

アスカ「はい……。わかり…ました……。失礼します……」ペコリ……


アスカ「」クルッ

アスカ「」タタタッ……


走ってその場から去っていくアスカ


リツコ「やれやれ……。本当に子供ね。自分の能力のなさが悪いというのに」フゥ……

マヤ「全部、自分の責任ですからね……。とはいえ少し可哀想な気もしますけど。多分、あの子、もうEVAには乗れないでしょうから」

リツコ「……そうね。実質、クビにしたのと同じ事だから。ミサトも嫌ってるし、恐らくもう二度と乗る事はないでしょうね」

マヤ「その内、ドイツに帰らせるとか言ってましたからね、葛城さん。でも、あの子にとってはその方がいいかもしれませんけど」

リツコ「……こちらにとってもね。使えない予備はいらないのよ。むしろ、迷惑でしかないわ」

マヤ「ですね」


540 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 18:08:17.561HjX8viD0 (9/16)

ー ネルフ本部、エレベーター前 ー


アスカ「…………」


うつむいたまま、エレベーターを待つアスカ


チーン……

ガコッ……


アスカ「……!」

レイ「……?」


扉が開くと、そこにはレイが


アスカ「」タタッ、ポチッ


急いで中に入り、扉を閉めるアスカ


541 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 18:13:31.601HjX8viD0 (10/16)

ー エレベーター内 ー


アスカ「ねえねえ、聞いて、レイ!」

レイ「……どうしたの?」

アスカ「アタシ、もうエヴァには乗らなくて済むようになったの! もうここには来なくていいって言われたの!! もう嬉しくて嬉しくて!!」ピョンピョン♪

レイ「……本当に?」

アスカ「本当よ! まだパイロット登録抹消まではされないみたいなんだけど、でも、きっとその内抹消されると思うの! ミサト、アタシの事を嫌ってるし!」

レイ「……そう。良かったわね」

アスカ「うん、もう最高♪ おかげで顔がさっきから緩みっぱなしで!」

レイ「…………」

アスカ「でも、あいつらの前で喜んだらまずいかなって思って、ここに来るまでずっと我慢してて! でね、でね、ママも壊される事はないの! 弐号機にはシンジが乗るって言うから、きっと大事に乗ってくれると思うし! あ、それで、レイは初号機に乗る事になっ……」

レイ「そう。私は初号機に乗るのね」

アスカ「あ…………」

レイ「? ……どうしたの?」

アスカ「あ、あの……ご、ごめん…………アタシ、自分の事ばっかりでつい浮かれちゃって……」

レイ「?」

アスカ「……レイやシンジはまだエヴァに乗らなきゃいけないのに…………。なのに、アタシ一人だけこんな事になって……。一人減るって事はその分、二人に負担が回ってくるって事なのに…………」

レイ「……それはあなたが気にする事じゃないから」

アスカ「だけど……!」

レイ「それに、あなたがエヴァに乗らなくて済むようになって、私はきっと喜んでいると思う」

アスカ「えっ…………」

レイ「ごめんなさい、自分でも自分の感情がまだよくわからないの。でも、なんだか胸の奥がポカポカしてる」

レイ「多分、あなたがエヴァに乗らなくて済むようになって、ほっとしているんだと思う」

アスカ「でも、シンジも……」

レイ「碇君も」

アスカ「?」

レイ「きっとポカポカすると思う。あなたがエヴァに乗らなくて済むようになって」


微かに笑顔を見せるレイ


アスカ「レイ……」


542 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 18:15:12.851HjX8viD0 (11/16)

ー ほぼ同時刻、マリのマンション ー


ピンポーン

マリ「はーい!」ガチャッ

シンジ「こんにちは、真希波」

マリ「待ってたよー、ワンコ君♪ さ、上がって、上がって」

シンジ「うん…。それじゃお邪魔します」


543 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 18:17:06.611HjX8viD0 (12/16)

マリ「今、お茶いれるからさ♪ ワンコ君、紅茶でいい?」

シンジ「何でもいいよ、ありがとう。あ、あと、これ」ゴソゴソ

マリ「なになに?」

シンジ「オムレツとポークソテー。前に僕の料理を食べてみたいって言ってたから。今日の夕飯にでもどうかなって」

マリ「にゃは♪ ありがとー!」

シンジ「ううん。真希波の口に合うかどうかはわからないけど」

マリ「ワンコ君の作ったものなら合うに決まってるじゃん。わーい、楽しみだなあ♪」クルクル

シンジ「大袈裟だよ、真希波」クスッ


544 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 18:25:22.011HjX8viD0 (13/16)

マリ「じゃ、ワンコ君。そっちのテーブルにでも座ってて。今、お茶用意するからねー」トタタッ

シンジ「うん。ありがとう」トコトコ


椅子に座るシンジ


シンジ「……ん?」

マリ「♪」

シンジ「真希波、あれ、どうしたの? ピアノが置いてあるけど……。前はなかったよね?」

マリ「あー……うん。ちょっとねー……。にゃはは……//」

マリ「ついつい買っちゃったんだあ……// 欲しくなっちゃったからさ……」

シンジ「ピアノを?」

マリ「うん……。前に式ちゃんレイちゃんと一緒に話してた時、ギターとかチェロとかそんな話になってね……。ワンコ君チェロ弾けるんでしょ?」

シンジ「あ、うん……」

マリ「だからさ、私だけ何も演奏出来ないのって、なんかつまんなくてさあ。ピアノをね……買っちゃったんだよ…// 式ちゃんもちょっとだけなら弾けるって言ってたしさあ…」


少し照れくさそうに話すマリ


545 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 18:29:18.741HjX8viD0 (14/16)

シンジ「そうなんだ……。えっと……それでどう? 弾けるようになったの?」

マリ「流石にまだかなー。この前買ったばかりだしね。でも、暇な時はいっつも練習してるよ。楽しいね、音を出すのって」ニコッ

シンジ「うん……そうだね。今、弾いたらそうかもしれない」

マリ「その内、みんなでさ。演奏会しよ。レイちゃんもフルート出来るって言ってたからさ」

シンジ「へえ……。綾波、フルート出来るんだ……」

マリ「うん。なんか似合ってるよね。レイちゃんぽい」

シンジ「そうだね……なんか似合ってると思う」

マリ「さてさてっと。お待たせー。はい、ワンコ君、紅茶だよ。砂糖とミルクは入れる?」

シンジ「あ、うん。お願い」

マリ「はーい♪」


546 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 18:31:56.641HjX8viD0 (15/16)

マリ「で、ワンコ君。メールで言ってた、私に聞きたい事って何かな? ひょっとしてスリーサイズとか?」ニヤニヤ

シンジ「ち、違うよ//」

マリ「あれ? そうなの? ワンコ君だったら、直で計らせてあげても良かったんだけどなあ。……どうする? 計ってみる?」ニヤニヤ

マリ「こーんな感じでさあ。計ってみたくない?」ポヨン

シンジ「あ、あの……/// やめてよ、真希波。からかうのは……///」フイッ……

マリ「んー……結構、本気だったんだけどねえ……。ま、今回はやめとこっかな。ワンコ君に嫌われたくはないしさ」

シンジ「いや、その……/// 嫌いにはならないけど、でも……///」

マリ「わかってる、わかってる。オッケーオッケー。真面目に聞くよん。で、何?」

シンジ「あ、うん……。その……気分を悪くさせるかもしれないけど……」

マリ「?」

シンジ「加持って人の事について聞きたいんだ……」

マリ「……」

マリ「」チッ……

マリ「なるほどね……。そりゃ、気分悪くならない方が無理って話だね……。二度と思い出したくないやつなんだからさ」

シンジ「その……ごめん、真希波…………」


547 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/26(日) 18:35:26.621HjX8viD0 (16/16)

マリ「でもまあ……ワンコ君が聞きたいって言うなら話すよ。だけど、その前に何であいつの事を聞きたいのか教えてくれる。何かあったの?」

シンジ「うん……実は……」



ー 墓での事を軽く説明後 ー


マリ「へえ……。ホント、相変わらずクズだね、あいつ。……どさくさに紛れて殺しとけば良かったな」チッ

シンジ(……真希波。出会った時ぐらいの顔に戻ってる……)

マリ「いい、ワンコ君。加持には注意しなよ。頭が回るからタチが悪いよ、あいつは。裏でこそこそやるのが得意だしね。情報操作と諜報活動は特に優れてるから」

シンジ「……そう、なんだ」

マリ「あいつが何の目的でワンコ君に近づいたかはわからないけど、とにかく、金輪際、加持には関わらない方がいいよ。どうせ、ここでも何かやってるに決まってるからさ。あいつは死んだ方がいい人間なんだよ。正直、機会さえあれば、殺してやりたい」

シンジ「…………」

マリ「特にワンコ君は戦自との繋がりを隠してるから、それだけはバレないようにしなよ。バレると、きっと利用されて、ろくでもない目に遇うに決まってるから。……本当に注意してよ。絶対だよ」

シンジ「……………うん。……わかった」


548以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/26(日) 22:57:03.45wnwNw4Uv0 (1/1)

参号機到着→アスカテストパイロット→
破の流れ→ミサト、アスカをこれ以上にない位のクズ扱い→シンジブチギレ→ネルフ総員ブチ切れ
こんな展開しか見えない
当たったら土下座しますorz


549以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/27(月) 06:44:24.28gZVifMEjo (1/1)

シンジが本気で怒ったら、ネルフ全職員影すら留めないでしょうに


550以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/27(月) 08:42:13.73iDDKKFJ20 (1/1)

そうなったら擬似シン化どころか神化してしまうww
というかゼーレはネルフのクズ化を把握してるみたいだね
それだったら早くA-801を行使しちゃえばいいのに…


551以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/27(月) 09:07:16.21oct+8MDC0 (1/1)

シンジ「土下座しろ、ババァ!」


552 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/27(月) 21:54:19.20um4qV7kB0 (1/8)

ー ネルフ本部 休憩室 ー


ミサト「んっ///」チュッ……

加持「……葛城」

ミサト「ダメよ……もう少しだけ……ん///」チュッ、レロレロ……

加持「だけど……流石にもうそろそろ人が来るぞ……」

ミサト「でも、最近加持君、ずっと仕事ばっかりだったから……///」

加持「すまないな……。今度の休みは必ず開けておくから」

ミサト「……わかった。でも、もう少しだけ///」チュッ……


プシュン……


リツコ「あら……」

マヤ「!?」

加持「おっと……参ったね」

ミサト「や……!?」サッ!!


慌てて加持の体からどくミサト


リツコ「……あのね、ミサト。仲がいいのは結構な事だけど、少しは場所を考えてもらえないかしら? 中学生や高校生でもあるまいし、あなた、そんな歳じゃないでしょ」フゥ……

マヤ「……っ」クルッ

マヤ「」タタタッ

リツコ「……マヤったら……行っちゃったわね」

リツコ「……見た、ミサト? あの子の目。去り際、あなたの事をまるで汚物でも見るような目で見てたわよ。マヤは潔癖症だというのに……」ハァ……

ミサト「ち、違うの、あの、これはね!」オロオロ

加持「いやあ、すまないなあ、リッちゃん。あの子には、後で俺の方から謝っておくよ。ちょいと羽目を外しすぎたようだからな」

リツコ「そうしておいてちょうだい。もちろん、ミサトもね。これに懲りたら、少しは自重しなさいよ」

ミサト「う……わかったわよ……」シュン……


553 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/27(月) 21:55:48.47um4qV7kB0 (2/8)

ー 夜 ー

ー 高級レストラン、個室 ー


加持「今日はすまなかったな。これはそのお詫びさ」スッ……


ラッピングされた小箱を差し出す加持


マヤ「……別に、加持さんが謝る事じゃないですから」フイッ……

加持「ま、そう言わず受け取ってくれないか。心ばかりのプレゼントさ」

マヤ「……いりません」

加持「欲しいのはプレゼントじゃなく、キスの方かい?」

マヤ「……加持さん!」

加持「じゃあ、受け取ってくれ。わざわざ君の為に、第二東京まで行って買ってきたんだ。もらってくれないと、指輪が泣いちまう」スッ……

マヤ「…………」




マヤ「…………」ソッ


しばらくの間の後、無言で受けとるマヤ……


554 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/27(月) 21:57:29.72um4qV7kB0 (3/8)

マヤ「いつまで……」

加持「?」

マヤ「いつまであんな事を続ける気なんですか、加持さん。葛城さんが可哀想です……」

加持「前にも言っただろう? ……時期が来るまでさ。それまでは、俺は自分も彼女もだまし続けるよ。そうした方が彼女の為でもあるしな」

マヤ「……私には理解できません。そんな事……」

加持「彼女や俺、そして君が生き残る為さ。リッちゃんや他のみんなも含めてな」

マヤ「先輩も……ですか」

加持「そうさ。ネルフはもう後がないんだ。そして、残された時間も少ない。今までは、使徒を全部倒し終わるまでは大丈夫なはずだった。だが、今はそうも言ってられない状況になっちまってる」

マヤ「…………」

加持「君だって、もう調べてみたんだろう? 裏コードの1382を」

マヤ「……ええ。加持さんの言う通り、使徒とEVAの裏のデータ、その断片が幾つもありました……。それに、そのコードを使った改竄の痕跡も……」

加持「だろうな。なんせ、リッちゃんでさえ気づかないんだから誰も気づきはしないさ。恐らく開発者だけが知ってる専用の裏コードだ。それに、元々リッちゃんは……MAGIにはほとんど興味を持ってないからな」

マヤ「はい……。多分ですけど、先輩はお母さんとの事で……」

加持「そういう事だな……。それに、MAGIを使った仕事の半分以上はレイに任せているみたいだしな」

マヤ「でも、それは……!」

加持「レイが自主的に、だろ? 知ってるさ」

マヤ「…………」


555 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/27(月) 22:00:07.30um4qV7kB0 (4/8)

加持「なんにしろ、このままだとネルフは使徒によって壊滅するだろうな。そこは信じてもらえたかい?」

マヤ「……はい。少しは……」

加持「少しは、ね……。その危機感のなさが問題だな。真相を知ってなお、この有り様だ。ネルフ職員の中にだって、何人かはきっと気付いている人間がいるはずなんだが……」

マヤ「でも……これまで全部、問題なく片付いてましたし……。それに、使徒戦で手間取ったのはシンジ君が適当に動かしていたせいで……」

加持「やれやれ……この調子だからな……。根本的なところからして、認識が違うんだが……。ま、それはともかくとして」

加持「……今、ネルフが財政難だってのは君も知っているだろ?」

マヤ「それは……。はい……」

加持「が、その一方で南米や中国や中近東では、新しいエヴァシリーズが建造されている。完成は何年も先の話らしいがな。不自然だと思わないかい?」

マヤ「…………」

加持「結論から言えば、ここのネルフ本部は見捨てられてるんだよ。月面のタブハベースを新しいネルフ本部にしようと動いてる。だが、その為にはここが邪魔でね」

加持「出来る事ならここはなかったものにしようと向こうは思ってるのさ。大きな声じゃ言えないが、その為に戦略自衛隊がここを制圧しようと計画しているしな」

マヤ「……!」

加持「いや、あれは制圧なんてもんじゃないか……。どちらかと言えば、虐殺だな。今は毒ガスまで検討に入れているのだから」

マヤ「そんな……!」

加持「事実さ……。なんだったら証拠を見せてもいい。エンジェルゲームと呼ばれてる制圧作戦、これがその概要だ」スッ……バサッ……


分厚い資料の山をテーブルに広げる加持


マヤ「…………」ソッ、ペラ……ペラ……

マヤ「うそ…………」


それを見て、みるみる顔が青ざめていくマヤ…………


556 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/27(月) 22:03:05.85um4qV7kB0 (5/8)

加持「少しは信じてもらえたかい?」

マヤ「…………」

加持「そこまで心配しなくとも、今のところこれはまだ作戦段階さ。決定という訳じゃない。とはいえ、いずれはネルフは人によって制圧されるか、使徒によって破壊されるかのどちらかになるだろうな。それを見過ごす訳にはいかない。そうだろう?」

マヤ「……はい…………」

加持「その為に、俺は葛城を利用するしかないのさ。彼女に動いてもらう必要があるからな……」

マヤ「でも……それならこれを直接、葛城さんや先輩に打ち明けた方が……」

加持「打ち明ける、ね……。今更、打ち明けてそれからどうする? 君との付き合いはそういう事だったと、俺は君の事を愛してなんかいないんだと、そう言えると思うのかい?」

マヤ「…………」

加持「最終的には、打ち明けようと打ち明けまいと彼女を裏切る事になる。……それなら、このまま何も知らない方が彼女にとっても幸せだろう」

加持「幸いな事に俺には結構貯金があるからな。ここを離れて、どこか外国に行って、そこで慎ましやかに一生暮らせるぐらいの金はある。全てが終わったら、俺は消えるつもりだ」

マヤ「…………」

加持「それに、時間が経てば、葛城も俺の事は忘れるさ。新しい恋人だってすぐに見つかるだろう。消えた男を一生想うような、そんな一途な女じゃないからな、あいつは……」

マヤ「……やっぱり……加持さんって冷たいですね」

加持「全部、君の為さ……。男も女も、好きな人間の為なら鬼でも悪魔にでもなれる。俺が本当に想ってるのは君だけだよ」

マヤ「信じられません……」

加持「信じて欲しい。全部終わったら、君に来てほしいんだ。俺と一緒に海外に」

マヤ「え……」

加持「一生、君を困らせない。死ぬまで守り通すよ」

マヤ「あ、あの……。それって……///」

加持「プロポーズさ……」


557 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/27(月) 22:05:59.04um4qV7kB0 (6/8)

マヤ「え、でも、あの……/// 急にそんな事言われても、こ、困ります……///」

加持「返事はまたでいいさ。焦る事はない。じっくり考えてくれ」

マヤ「あの……でも……///」

加持「俺は本気だよ。君にだけは嘘をつかない。誓うよ」

マヤ「だけど……その……///」

加持「……嫌かい?」

マヤ「あ、いえ、あの……/// でも……///」フイッ……

加持「……ま、今日はお互い少しだが酒を飲んでるしな。また後日、改めて言うさ。君が望むなら、さっきの話はなかった事にしてもいい。その時にまた考えてくれればいいさ」

マヤ「……はい…/// その……そうしてもらえると……///」

加持「しかし、その指輪、実は婚約指輪のつもりで買ったんだけどな……。また買い直しか……」

マヤ「あ、いえ、あの……/// べ、別に、買い直さなくても……/// ……私は大丈夫ですから…///」

加持「ふうん……。それは脈ありと受け取っても構わないのかい?」

マヤ「そういう事じゃ……ないです…///」フイッ……

加持「それは残念」

マヤ「……そういう言い方……卑怯ですよ、加持さん…///」

加持「男はさ、ずるいぐらいが丁度いいのさ」

マヤ「……本当に……ずるいです……///」


558 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/27(月) 22:09:12.05um4qV7kB0 (7/8)

加持「さてと……」


資料を自分の鞄にしまう加持


加持「残念ながらもう時間だ。今日はこれで俺は帰らなきゃいけない。仕事がまだ残っていてね。会計は済ませておくから、君はゆっくり食事をしていってくれ」スッ

マヤ「……はい」

加持「それで、出来ればその間に色々と考えてほしい。ネルフの事、将来の事、そして……」

加持「俺の事をね」

マヤ「…………」


加持「それじゃあ、また……」クルッ

加持「」スタスタ……

ソッ、パタン……


去っていく加持……



マヤ「…………」

テーブルの上の小箱を見つめるマヤ……



マヤ「私……どこまで……あの人を信じればいいんだろう……」

マヤ「…………」

マヤ「でも……こんな大事な事を……口止めもせずに……」

マヤ「それに……この指輪……」スッ……パカッ……

マヤ「…………」

マヤ「本気だって……思ってもいいの……?//」


559 ◆QgxJFrMrW31O2014/01/27(月) 22:11:58.38um4qV7kB0 (8/8)

ー 同時刻、ターミナルドグマ ー


リリス「…………」


槍が刺さり、磔にされているリリス……




初号機「」ズシン、ズシン


初号機「」スッ……


初号機「」ガシッ……


槍を掴む初号機


初号機「」グッ……


初号機「」ググッ


初号機「」ズボッ!!


槍を引き抜く!



リリス「……」

リリス「」グニュッ、グニュグニュグニュ……!!


リリス「…………」


体の再生がされ、足が生えた状態に…………




レイ「…………」


それを初号機の中からじっと眺めるレイ……


560以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/29(水) 00:21:14.13RMy+AwfH0 (1/1)

戦自情報が加持経由で漏れているのかww
A-801までwwシンジもバレたらヤバいな


561以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/29(水) 06:37:24.62NaZClAqJo (1/1)

すでにばれてるだろ


562以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/01/29(水) 12:12:22.61/ToLccH1o (1/1)

いろいろ知られすぎだな・・・この加持さんは屑だがやはり有能


563以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/08(土) 18:26:37.81Uc/fuzH40 (1/1)

そろそろ続きが読みたい…


564以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/09(日) 21:20:10.54yyhTQxAi0 (1/1)

>>563
待とう…来るのは確実だし


565以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/02/14(金) 14:48:55.59bw+WbVwO0 (1/1)

まだ来ないのか…


566 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:13:38.44J8F1q/ji0 (1/11)

ー 後日、朝 ー

ー ミサト宅、玄関 ー


シンジ「えっ! 慰安旅行!?」

ミサト「そうよー。明後日から2泊3日でパリ、ローマに。年に一回しかないんですもの。この機会に疲れた体をきっちり癒さないとね♪」

シンジ「えと……それって……ひょっとして僕や綾波も……」

ミサト「ざーんねん。シンジ君たちはエヴァのパイロットなんだから。私たちの代わりはいても、シンジ君たちの代わりはいないんだもの。旅行なんてダーメ」

シンジ「あ……そうですよね……。そっかあ……」

ミサト「悪いわねー、シンジ君」ニッコリ

シンジ「いえ……。でも、残念だなあ」

ミサト「ま、そうよねー。代わりにお土産を買ってきてあげるから我慢して。特別大サービスよん♪」

シンジ「あ、はい。嬉しいなあ。ありがとうございます。でも、本音を言えば、行きたかったです……。ミサトさんが羨ましいです」

ミサト「でしょー? ま、普段のきつーいお仕事をこなしてこそのもんだからねー。これぐらいの特典がなきゃ割に合わないしー」

シンジ「……そうですね。いつも、お仕事お疲れ様です。……あ、そういえば、他には誰か行くんですか? その……リツコさんとか……」

ミサト「あー、うん。リツコも一緒よ。あとは、シンちゃんがよく知っているところだと、青葉君に諜報部のリカ、森川あたりかな? 日向君とマヤは、今回は留守番だけど」

シンジ「……そうなんですか。へー……」

ミサト「ま、そういう事だからその間は留守番よろしくね。特に、シンジ君はアスカの面倒をしっかり見ときなさいよ。何も問題起こさないようにね」

シンジ「はい! 大丈夫です。任せて下さい!」

ミサト「うん。元気があっていいわー。さあてと、それじゃ私はもう仕事に行くわね。じゃね」ガチャッ

シンジ「気をつけて下さいねー」

ミサト「わかってるー♪」


バタンッ……


567 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:17:35.72J8F1q/ji0 (2/11)

シンジ「…………」

シンジ「」トタトタ

シンジ「…………」ゴソゴソ


発信機の受信装置を取り出すシンジ


シンジ「…………」

シンジ「…………」

シンジ「よし……。行った……」


シンジ「っ……!!」

シンジ「やったああぁーーー!!!」

シンジ「ミサトがいなくなる!! 四日間だけど、その間は完全にミサトがいなくなるんだ!!」

シンジ「少しの間だけ、自由だーっ!!!」


ガチャッ!!

アスカ「シンジ!!」

シンジ「アスカ、ひょっとして聞いてた!!」

アスカ「もちろん!! アタシ達は自由よっ!!!」

シンジ「やったね、アスカ!!」

アスカ「うん!! もう最高!!」

シンジ「ホントだよ!! すごい嬉しい!!」


アスカ「シンジ!!」サッ

シンジ「アスカ!!」サッ


手を出し合う二人


シンジ&アスカ「よっしゃあ!!!」パシンッ!!

シンジ&アスカ「イエーイ!!」パンパン、パシンッ!!


568 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:19:48.13J8F1q/ji0 (3/11)

ー 学校 ー


ヒカリ「えっ!? 本当に!?」

アスカ「うん! もうだから嬉しくて嬉しくて!」ニコニコ

ヒカリ「良かったね、アスカ」ニコッ

アスカ「ありがとう、ヒカリ」ニコッ

ヒカリ「じゃあ……」キョロキョロ

アスカ「?」

ヒカリ「……明日から三日間は碇君と二人きりなんだ」ヒソヒソ

アスカ「え……」


アスカ「////」ボンッ

ヒカリ「…………」


ヒカリ「……アスカ。……ひょっとして気づいてなかったの?」ヒソヒソ

アスカ「え/// だって、そんな///」カアッ

アスカ「……その……それどころじゃなかったし……///」ゴニョゴニョ

ヒカリ「……えっと。気持ちはわかるけど……」

アスカ「ヒ……ヒカリ、アタシどうすればいい?/// なんか意識しちゃったら、すんごい心配になってきたんだけど……///」ゴニョゴニョ

ヒカリ「どうすればって……。こんな機会そうないんだから……。思いきって、アタックしちゃえば?」

アスカ「ムリ、ムリ、ムリ、ムリ、ムリ/// 出来ないわよ、そんな事///」

ヒカリ「そうだよね……。アスカだしね……」

アスカ「ヒカリ! アタシは真剣に困ってるのよ」

ヒカリ「わかってる。でも……無理なんでしょ?」

アスカ「う……。そうなんだけど……」

ヒカリ「とにかく、アスカ。こんな機会まずないんだから、少しは勇気出さなきゃ。告白まではいかなくても、いい雰囲気ぐらいまでは作っておこうよ」ヒソヒソ

アスカ「でも、やっぱり恥ずかしいし……///」

ヒカリ「いいの、そんなんで? ずっとそんな事してたら、先に綾波さんに取られちゃうかもしれないよ」チラッ


レイの方に目を向けるヒカリ……


569 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:23:09.05J8F1q/ji0 (4/11)

レイ「……そう。今回は葛城三佐と赤木博士が……」

シンジ「うん。あと、諜報部の森川さんと小林も。だから、ひょっとしたら僕たちへの監視も外れるかもしれない」

レイ「そう。良かったわね」

シンジ「うん」ニコッ

レイ「……//」


シンジ「あ、それで綾波。その三日の間はさ、僕も仕事手伝えるから、真希波の家に遊びに行かない? アスカのパイロット予備扱いのお祝いをまだしてないからしようかと思って。真希波もきっと喜ぶと思うし」

レイ「ええ、そうね。行くわ」コクッ

シンジ「良かった。じゃあ、後で真希波に伝えておくね。あと、アスカにも」

レイ「ええ」

シンジ「あ、あと綾波。一応言っておくけどお弁当は今回はいらないからね。美味しかったけど、この前みたいな事にはもうなりたくないからさ」

レイ「わかったわ」

シンジ「本当、この前は歩くのも苦しかったからなあ。楽しかったけど、大変だったよ」

レイ「そうね…」クスッ

シンジ「え……//」

レイ「……?」

レイ「どうしたの、碇君?」

シンジ「あ……ううん、何でもない」ニコッ

レイ「……?」


570 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:26:52.89J8F1q/ji0 (5/11)

ヒカリ「……ね? なんかいい雰囲気っぽいでしょ? このままだとまずいよ、アスカ、頑張らなきゃ」

アスカ「んー……/// わ、わかったわよ。頑張ってみる……///」コクッ……

ヒカリ「うん。この三日の内がチャンスだよ。頑張って!」

アスカ「わかった……///」

ヒカリ「」ニコッ




ヒカリ(……それにしても…………)

ヒカリ(……アスカ、ずいぶん明るくなったなあ。もうエヴァのパイロットでもなくなったみたいだし)

ヒカリ(……なんか最初の頃が嘘みたい。あんなにびくびくしてたのに……)

ヒカリ(私も……いつのまにか、普通に頑張ってって言えるようになってるし)

ヒカリ(……アスカも碇君も、もう病院にはほとんど行ってないって言ってたし)

ヒカリ(……これからは、色んな事が良くなってくんだよね。だから、もう大丈夫だよね……アスカ)

ヒカリ(…………私が転校していなくなっても……きっと大丈夫だよね…………?)グスッ……


アスカ「ヒカリ?」

ヒカリ「え? 何?」

アスカ「何って……何で泣いてるの?」

ヒカリ「え? ああ、うん、ごめん。目にほこりが入っちゃって……」ゴシゴシ

アスカ「おどかさないでよ、ヒカリ。びっくりしちゃったじゃないの」

ヒカリ「ごめんね、アスカ……ふふ」ニコッ


571 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:29:08.47J8F1q/ji0 (6/11)

ー 学校終了後 ー

ー ネルフ本部までの行き道 ー


シンジ「……そういえば、綾波と一緒にネルフへ行くのって初めてだよね?」テクテク

レイ「そうね……。これまでは私が仕事で先に行く事が多かったから」テクテク

シンジ「最近は、そうでもないの?」

レイ「ええ。やる事が減ってきてるの。多分、ネルフ本部全体で」

シンジ「そうなんだ……。それって……いい事、なのかな?」

レイ「……わからない。迎撃都市の復興も手付かずのままだし」

シンジ「今更だけど……あれってあっても実はそんなに役に立たないよね……」

レイ「元々、足止めを目的としているものだから……。でも今は、新しい装備品もろくに開発されていないみたいなの。使徒による被害を受けたところもかなり放置されているし」

シンジ「……クラスでも、田舎に転校してった人も結構多いしね。……学校なんて行ってる場合じゃないのかな、もう」

レイ「…………」


572 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:31:21.78J8F1q/ji0 (7/11)

ー 夕方、学校の屋上 ー


トウジ「さよか……やっぱりケンスケも……」

ケンスケ「うん……。もうすぐ田舎に引っ越すって……。ここはもう危ないからって……パパも今の仕事、辞めたがってたし……」

トウジ「せやな……。うちのおとんもそう言っとった。サクラが退院次第、田舎の家に引っ越す言うてな……」

ケンスケ「そっか……トウジも…………」

トウジ「まだ……シンジたちには言うてへんけどな……」

ケンスケ「僕もだよ……。言いづらくって……」

トウジ「もう、ここはあかんって色々噂になっとるみたいや……。ワシらの親、ネルフの詳しい事情、知ってもーてるしな……」

ケンスケ「……もう引っ越してったやつも結構いるからね。それに、街がいつまで経っても復興しないんじゃ、不安になるのも仕方がないよ……」


ところどころ瓦礫だらけの街を見下ろす二人……


トウジ「今は直す気配すらありゃせんからなあ……」

ケンスケ「少し前までは、復興作業してたからまだマシだったんだけどね……。今はブルドーザーやクレーン車まで、完全に放置状態だから……」

トウジ「直さんいう事は、ここを捨てる気や思うのもしゃーないわ……。まるで夜逃げ前の状態みたいやもんなあ……」


トウジ「…………」フゥ……

ケンスケ「…………」ハァ……


573 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:35:05.64J8F1q/ji0 (8/11)

トウジ「シンジや、綾波、式波は……」

ケンスケ「無理だよ……パイロットなんだから……。この街から引っ越すなんて……」

トウジ「わかっとる……。わかっとるけどな……」

ケンスケ「どうしようもないよ。僕らはまだ子供なんだ……。残りたいって言っても……残らせてくれないんだから……」

トウジ「ケンスケ……」

ケンスケ「…………」

トウジ「ワシな、言うたんや……。妹やおとんは引っ越してほしい。逃げてほしい。せやけど、ワシだけはここに残らせてくれんかってな……」

ケンスケ「…………」

トウジ「あかんかったわ……。当たり前の事かもしれへんけどな……」

ケンスケ「碇……悲しむよな……。もう僕らに出来る事が何もないって知ったら……」

トウジ「……それより、あいつの事がワシは心配やわ……。最近ようやく明るくなってきたいうのに……。これから大丈夫なんかいな……」

ケンスケ「わかんないよ……。大丈夫だって思うしか……僕らには出来ないんだから……」

トウジ「…………」

ケンスケ「なあ、トウジ……。どうして……僕らは子供なんだろうな……。今すぐ大人になりたいよ、僕……」グスッ……

トウジ「…………せやな……」


574 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:38:43.73J8F1q/ji0 (9/11)

ー ネルフ本部、隔壁裏 ー


加持「」カチッ、シュボッ

加持「」フーッ……


ピピピピ……


加持「……はい」ピッ

加持「……そうです。ええ、今しがたこちらでも確認しました。はい」

加持「そうですね。間違いなく」

加持「……はい」

加持「ええ。この本部ごと吹き飛ばせる程のものが設置されてます。ですが、その解除は不可能かと。下手をすると作動してしまいますから。そういうタイプの自爆装置です」

加持「わかっています。今は出過ぎた真似をしませんよ。今日はこれで撤収します」

加持「それではまた……」ピッ


加持「」フーッ……

加持「やれやれ……。ゼーレだけでなく、戦自までこんなこけおどしに右往左往とはね……」

加持「しかし、これもいつかは露見する日が来るだろうな……。その時までに、初号機をどうにかしなければならないが……」

加持「その為には、今の状況は良くないか……。やはり鍵を握るのはシンジ君と……」

加持「ダミーシステムだな……」フーッ……


575 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:40:25.33J8F1q/ji0 (10/11)

ー ネルフ本部、司令室 ー


冬月「そうか。わかった……。では、宜しく頼む」ガチャッ


冬月「碇、吉報だ。ダミーシステムが完成したそうだ」

ゲンドウ「……そうか」

冬月「近日中にはこちらに届くそうだ。これでパイロット全員をエヴァから解放出来るな」

ゲンドウ「ああ。……しかし」

冬月「……エヴァの呪縛は残る、か。しかし、そちらは今はどうにもならん。後で片付けるべき問題だ。時間はある。今はそれで良かろう」

ゲンドウ「そうだな……」

冬月「後はゼーレがどう出るか、だが……」


576 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/02(日) 15:41:36.29J8F1q/ji0 (11/11)

ー ??? ー


モノリスA『ダミーシステム、その完成。これは我らが待ち望んだ事でもある』

モノリスC『左様。魂のない人形は、人よりも信用に足るよ』

モノリスD『だが、新たなエヴァシリーズの完成にはまだ時間がかかる。その前にあの男が何か小細工をする可能性はある』

モノリスF『小細工をしたところで、こちらの優位性は一向に変わらない。問題はあるまい』

モノリスB『それよりも今は猫の鈴をどうにかすべきだろう。鳴らない鈴では意味がない』

モノリスE『むしろ、害悪の種だ。そろそろ消えてもらうべき時期ではないのかね』

モノリスC『すでに全ての用意は整いつつある。いても今後役に立つ事はまずないだろう』


モノリスA『よかろう……。加持リョウジ。彼には最後の仕事を終えた後で、舞台から退場願うとしよう』


577以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/02(日) 20:03:56.458ddHHdR/0 (1/1)

鯖復活おめでとう age


578 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/03(月) 12:21:27.24eb6u75Qe0 (1/9)

ー 後日 ー

ー マリのマンション ー


マリ「さーて、それじゃあ……」

シンジ「アスカのパイロット登録抹消を祝って……」

レイ「乾杯」

マリ&シンジ「かんぱーい!!」

カチンッ、カチンッ、カチンッ


アスカ「その……ありがとう。みんな」


マリ「良かったねー、式ちゃん。これでやっと地獄から解放されたよ!」ニコニコ

シンジ「本当だよ! おめでとう、アスカ」ニコニコ

レイ「……おめでとう」

アスカ「うん」ニコッ


579 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/03(月) 12:25:00.67eb6u75Qe0 (2/9)

マリ「にしても、式ちゃん、まだミサトのところにいなきゃいけないのだけは残念だね」

アスカ「うん……。正式な登録抹消じゃないからね。予備扱いだから、そこら辺はそのまま。ミサトも不満たらたら言ってたみたいだけど」

レイ「…………」

マリ「出ていけるようなら私のところに来てほしかったんだけどなあ……。あ、でも、それはちょいとまずいか……」

アスカ「ん……そうね。パイロットをやめても監視はつくみたいだから、アンタと一緒に住むのはちょっとね。それに……」チラッ

シンジ「?」

マリ「あ、そっかー。お姫様としては、ワンコ君と一緒にいたいよねー」ニヤニヤ

アスカ「なっ!/// ち、違うの! シンジをほっとけないからよ。アタシ一人だけ楽なんて出来ないもん!///」

マリ「はは……。そう……だよね。ごめんよ……」シュン……

アスカ「あ……ち、違うのよ。マリを責めてる訳じゃないの。マリは逃げられたんだから、もう……」

シンジ「そうだよ、真希波。それに真希波だって……楽なんてしてないし……」

レイ「マリ、気にしないで。いい事は喜ばないとダメ……。昔、お母さんがそう言ってたから……」

マリ「お母さん、かあ……。……うん……そうだね。今日はいい事があった日だし、辛気くさい顔してちゃダメだよね」

アスカ「そうよ。ってアタシが言うのもあれだけど……」

シンジ「アスカ。これからはアスカの弐号機、僕が乗る事になったから。大事に乗らせてもらうね」

レイ「碇君の初号機も……」

アスカ「うん……。ママもシンジならきっと大丈夫だと思う。見守ってくれると思う……」

シンジ「?」

アスカ「あ、ううん。こっちの話。今はママよりも大事な人たちがいるからいいの」ニコッ

レイ「お母さんより……」


マリ「じゃ、改めてもう一回乾杯しよ! ね?」

シンジ「そうだね」

レイ「」スッ……

マリ「姫。おめでとー!」

一同「かんぱーい!!」

カチンッ、カチンッ、カチンッ


580 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/03(月) 12:30:04.71eb6u75Qe0 (3/9)

マリ「あっ、そういえばさあ……」ゴソゴソ

アスカ「ん? 何?」

マリ「じゃーん♪」ドサッ

シンジ「あれ、これって……」

レイ「ビール……」

マリ「知り合いの人にパーティーやるって話したら、景気付けにって、ちょいともらってね。折角だから、今日は羽目を外しちゃおうかなと♪」

シンジ(……知り合いって……木田さん? じゃないよね。こんな事するのは、きっと曽根さんの方だ……)

アスカ「アンタねえ……未成年の飲酒は法律違反よ」

マリ「まあまあ、固い事は言いっこなしだってば。二人とも、今日はミサトが泊まりで仕事なんでしょ? 飲んじゃおーよ」

シンジ(多分、デートなんだろうけど……。あんなにウキウキ仕事に行くわけないから……)

アスカ(男よねえ、絶対……。気持ち悪い……)

マリ「レイちゃんも今日はもうネルフに行かなくていいんでしょ? 仕事は明日まとめてやればいいよ。私も式ちゃんも手伝えるからすぐに終わるって。だから飲も」

レイ「お酒……」ジッ……

シンジ(……あれ? なんか綾波は興味ありそう)

マリ「ささ、蓋を開けてぐいっと♪」

レイ「」プシュッ……

レイ「」ゴクッ……

アスカ「あーあ、飲んじゃった……」

レイ「……? ダメ……なの?」

アスカ「ダメって……あー、もう、わかった。こうなったらアタシも飲む!」プシュッ

アスカ「」ゴクッ、ゴクッ

マリ「ほんじゃま、私もっと」プシュッ

マリ「」ゴキュゴキュ

マリ「はい。これ、ワンコ君の分。もうみんな飲んじゃってるし、飲んじゃいなよ」

シンジ「……だね。……じゃあ僕も」プシュッ

シンジ「」ゴクッ……


シンジ「……苦いや。美味しくない……」

アスカ「同感……。何が美味しいのかしら、これ……」

マリ「私は別にそうでもないけどなあ……レイちゃんは?」ゴクゴク

レイ「……昔、お母さんが飲んでたから、時々もらってた。……なんだか懐かしい味」ゴクッ……

アスカ「ふーん……。懐かしいね……」

シンジ「僕たちには、まだ味がよくわからないみたい……」

アスカ「そうね」ゴクッ……


581 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/03(月) 12:32:09.58eb6u75Qe0 (4/9)

ー 一時間後 ー


マリ「うっ……ううっ……」グシュッ、ヒック……

アスカ「あー……眠いー……」トロン……

シンジ「あははははっ。はははっ」ケタケタ


レイ「…………」


マリ「お母さん……どうしていなくなっちゃったのさあ……」グシュッ、ポロポロ……

アスカ「あれ……? シンジ、どこー……? 見えないー……」トロン……

シンジ「あははははははははっ! 僕、目の前にいるのに。あはははははっ! や、やめてよ、アスカ! 笑い死ぬよ、もう! あはははははっ!」


レイ「……こんな時、どういう顔をすればいいのかわからないの…………」


582 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/03(月) 12:34:34.73eb6u75Qe0 (5/9)

アスカ「シンジー……眠いー……。だっこー……。膝枕ー……」フラフラ

マリ「お母さん……行っちゃダメだよお……やめてよ……」ギュッ……

アスカ「え? ……進まないー……何でー……??」ヨロヨロ

シンジ「あははっ! 笑いすぎて苦しい! あはははははっ! あはははははっ!」


レイ「もう、そのままにしておいた方がいいのかもしれない……」


583 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/03(月) 12:38:45.57eb6u75Qe0 (6/9)

ー 更に一時間後 ー


マリ「」スースー……スースー……

アスカ「」スースー……スースー……

シンジ「」スースー……スースー……


レイ「碇君……起きて……」ユサユサ

レイ「私一人だと……何故か心がズキズキするの……」ユサユサ

レイ「お母さんが亡くなってから……ずっと一人だった……。でも今は……」ユサユサ

レイ「碇君……起きて……」ユサユサ

レイ「碇君がいないと……淋しいの……」ユサユサ

レイ「碇君……」グシュッ……


レイ「碇……君…………」ギュッ……


シンジに抱きついて目を閉じるレイ






レイ「」スースー……スースー……


584 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/03(月) 12:40:40.98eb6u75Qe0 (7/9)

ー 更にニ時間後 ー


シンジ「ん……」ムクッ……

シンジ「……いつのまにか寝ちゃったんだ……」

シンジ「みんなは……」コシコシ……


レイ「」スースー……スースー

マリ「」スースー……スースー……

アスカ「」スースー……スースー……


シンジ「……みんな寝てるや……。綾波、僕の服を掴んで寝てるし……」クイッ


引っ張って手を離させようとするシンジ


レイ「…ダメ……」ボソッ

シンジ「……?」

シンジ「綾波、起きてるの?」

レイ「」スースー……スースー……

シンジ「……寝言……?」


レイ「行か……ないで……」ボソッ……

レイ「もう……一人は…嫌な…の……」ボソッ……



シンジ「……綾波…………」


585 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/03(月) 12:42:03.97eb6u75Qe0 (8/9)

レイ「」スースー……スースー……

シンジ「…………」


シンジ「大丈夫だよ……いるよ」

シンジ「僕はずっといるから……」

シンジ「だから、安心して……」

レイ「」スースー……スースー……


シンジ「綾波を……絶対に一人にしないから……」


シンジ「だから……」


シンジ「普通に……笑ったり泣いたりして。綾波……」


シンジ「」ソッ……

シンジ「」ナデナデ……

レイ「」スースー……スースー……


ふっとシンジの服から手を離すレイ…………



シンジ「……大丈夫だよ、綾波…………」


悲しげな表情を見せるシンジ…………


586 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/03(月) 12:44:08.41eb6u75Qe0 (9/9)

ー ネルフ本部、格納庫 ー


冬月「……遂に来たか」

ゲンドウ「ああ……間に合って良かった」


ガコッ……

ウィーン……


初号機に登載されるダミーシステム


冬月「直に、参号機もこちらに来るそうだ。結局、日本政府が折れたようだな」

ゲンドウ「こちらとしても助かる。起動実験が終わり次第、参号機にもダミーシステムを取り付ける予定だ」

冬月「弐号機はその後か……。まだ一機分しか完成していないのが悔やまれるな」

ゲンドウ「時間の問題だ。それに初号機さえ稼働出来れば問題ない」

冬月「……そうだな」


587以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/04(火) 08:01:56.57A64Hk1Lz0 (1/1)

復帰乙!
ん?『起動実験が終わり次第』?
………!?


588 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:25:12.07sA2e76lp0 (1/21)

ー 夜 ー

ー マリのマンション ー


シンジ「もうずいぶん遅くなっちゃったね」

マリ「みんな寝てたからねえ。おかげで夕食もこんな遅い時間になっちゃったし」

アスカ「全部、アンタのせいでしょうが」

レイ「あなたも飲んでたし、酔っぱらってたわ」

アスカ「うぐっ……」

マリ「まあまあ。いいじゃん、いいじゃん。どうせならさ、今日はみんな泊まってきなよ。このまま帰るのも面倒でしょ」

アスカ「泊まるって……用意も何にもしてきてないわよ」

マリ「パジャマぐらいなら貸すよー。ベッド広いから三人でも寝れるし。どう? 泊まってかない?」

レイ「いいわ。そうする」

アスカ「うーん……じゃあアタシも……」

シンジ「あ、じゃあ僕だけ帰るね。流石に一緒に泊まる訳にはいかないし」

アスカ「え……!?」

マリ「あー、うん。そうだね。でも、また明日遊びに来てね」

シンジ「うん。そうするよ」ニコッ

アスカ「え……ちょっ……」アタフタ

レイ「碇君、また明日……」

シンジ「うん。じゃあまた」


589 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:28:06.56sA2e76lp0 (2/21)

アスカ「あ、あの……シン……もがっ!?」

マリ「おっとと……」


アスカの口を塞ぐマリ


アスカ「ひょっと……マリ……アンハ何す……」

マリ「姫ー。余計な事は喋らない方がいいよー」ヒソヒソ

マリ「でないと、姫がワンコ君の事、好きだってバラすから」ヒソヒソ

アスカ「っ……!?」


レイ「……?」

シンジ「?」


590 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:29:39.06sA2e76lp0 (3/21)

シンジ「二人とも、どうしたの?」

マリ「あー……うん。なんでもない。気にしない、気にしない」

シンジ「??」

マリ「悪いけどワンコ君、ちょーっと向こうで待っててくれないかな? 大事な話があるから」

シンジ「え……? あ……うん……」


レイ「……?」


591 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:32:35.95sA2e76lp0 (4/21)

ー シンジだけ玄関前に移動した後 ー


アスカ「マリ、アンタ卑怯じゃないの、それ……!」ヒソヒソ

マリ「それはこっちのセリフだよ。姫、ワンコ君と二人きりで一夜を共にする気だったでしょ……!」ヒソヒソ

アスカ「なっ……/// そんな事ないわよ……!//」ヒソヒソ

マリ「しゃらーっぷ。ひょっとしたら、寝込みを襲う気だったかもしんないじゃん? いくら何でもそれは許さないよ」ヒソヒソ

アスカ「する訳ないじゃないの……!/// アンタ、バカァ!//」ヒソヒソ

マリ「とにかくダメったらダメだよ……! ミサトが留守の間は姫はここで泊まるの……! 抜け駆けはなし……!」ヒソヒソ

アスカ「抜け駆けって……別にアタシはそんな……//」ヒソヒソ

マリ「顔赤くして言っても説得力ないよ。とにかくこれは決定……!」ヒソヒソ

アスカ「横暴よ、そんなのっ……!」ヒソヒソ

マリ「別に式ちゃんがワンコ君の事を好きじゃないなら、嫌がる理由なんかないでしょ。好きなら止めるからどっちにしろ一緒だけどさ」ヒソヒソ

アスカ「うっ……!」


レイ「……??」


592 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:34:44.30sA2e76lp0 (5/21)

マリ「レイちゃんだってそうでしょ? ワンコ君と式ちゃんが二人で一緒に寝るの嫌じゃない?」ヒソヒソ

アスカ「一緒には寝ないわよ……!// なに紛らわしい言い方してるのよっ……!」ヒソヒソ

レイ「よくわからない……」

マリ「嫌かそうでないかだけだよ。ワンコ君が式ちゃんと抱き合って二人でキスしてるの想像してみてよ。それでも平気?」ヒソヒソ

レイ「…………」

レイ「……やっぱりわからない。けど……」

マリ「けど?」

レイ「何だかズキズキする……。今まで感じた事のない痛み……」

レイ「こんな痛みは初めて……」

レイ「どうしたらいいのか……自分でもよくわからない……」

マリ「……だよね」チラッ

アスカ「う…………」フイッ……


593 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:36:59.04sA2e76lp0 (6/21)

マリ「という事で式ちゃん。ワンコ君と一緒にお泊まりは禁止」

アスカ「だけどっ…………」


悔しそうな、悲しそうな表情を見せるアスカ……


マリ「……そんな顔しないでよ、式ちゃん。私だってさ…………」

アスカ「……私だって……何よ……?」

マリ「…………ごめん。何でもない……」

アスカ「何でもないって……そんな訳ないでしょ。最後まで言いなさいよ」

マリ「ごめん……」フイッ……

アスカ「…………」


マリ(色々……我慢してるんだよ…………なんて言える訳ないじゃん……?)

アスカ(……もうっ! そっちこそそんな顔しないでよ! ……やめてよ、もうっ!!)フイッ……

レイ「…………」


594 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:38:24.14sA2e76lp0 (7/21)

「……真希波ー? そろそろ話、終わったー?」


マリ「あ……うん……まあ……」チラッ……

アスカ「……終わったわよ。……もう大丈夫だから」

マリ「……ごめん、姫」ボソリ

アスカ「いいわよ……別に。アタシが逆の立場なら同じ事してたかもしれないから……」ボソリ

レイ「…………」


595 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:40:04.10sA2e76lp0 (8/21)

「じゃあ僕もうそろそろ行くけどー……」


マリ「あ、うん。見送りに行くからちょっと待ってて」トタトタ

アスカ「…………」

マリ「あれ?」

マリ「式ちゃん、行かないの?」

アスカ「行くわよ。……でも、先にパジャマを貸して。どこにあるの?」

マリ「……? パジャマなんて今着ないじゃん」

アスカ「アタシは今確認したいのよ。……だから、アンタは先に行きなさいよ。なんか……キリのいいところで呼んで」

マリ「…………」

アスカ「レイ。悪いけど、アンタも探すの手伝ってくれない?」

レイ「でも、もうすぐ碇君が帰るから」

アスカ「わかってるわよ。だから、その後はアンタの番……。アンタならアタシが言ってる事わかるでしょ、マリ……?」ボソッ

マリ「……やっぱり式ちゃん、優しいね」

アスカ「んな事ないわよっ……! だから、早くして!」フイッ

マリ「りょーかい」トタトタ


596 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:42:57.01sA2e76lp0 (9/21)

ー 玄関 ー


マリ「やあやあ、お待たせ。ワンコ君。ごめんよ」

シンジ「ううん、別にそれはいいけど……」チラッ

マリ「ああ、式ちゃんとレイちゃんなら今パジャマ探してるから」

シンジ「パジャマ?」

マリ「そう、パジャマ」

シンジ「あ、うん……?」

マリ「それよりさ、ワンコ君。ちょっとこっち来て」

シンジ「?」

マリ「んー……。やっぱ前向きだと流石に照れるかにゃ……」

シンジ「何の話?」

マリ「こっちの事。そうだねえ、やっぱ後ろ向いてもらえるかにゃ?」

シンジ「よくわからないけど……こう?」クルッ

マリ「ん。そう」

マリ「」スッ……


シンジの肩あたりに手を伸ばすマリ


マリ「//」ギュッ……

シンジ「!?///」


そっと抱きつく……


597 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:45:04.40sA2e76lp0 (10/21)

シンジ「あの…/// 真希波……///」アセアセ

マリ「いいからじっとしてなよ、ワンコ君//」

シンジ「え、でも……///」

マリ「だってさあ、式ちゃんの事アスカって呼んだり、レイちゃんの事いいお母さんになるとか言ったりさあ。 私だけ、なんかおいてけぼりな感じじゃん?//」

シンジ「あの、でも、それは…///」アセアセ

マリ「わかってるってば。ワンコ君はそんな事を意識してないんだよね。でも、なんか悔しいじゃん? だからさ…//」ギュッ……

シンジ「いや、でも、その……///」アセアセ

マリ「いいから少しじっとしてて、ワンコ君// ちょっとの間だけだから//」

シンジ「…///」ドキドキ


598 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:48:36.14sA2e76lp0 (11/21)

マリ「……///」ギュッ……

シンジ「……///」



マリ「……ねえ、ワンコ君」

シンジ「あ、な、何?///」ドキドキ

マリ「……流石にさ、ワンコ君も気づいてるよね?」

シンジ「あ……えと……何に?///」

マリ「私やさ、姫……あと多分、レイちゃんも」

シンジ「……?//」

マリ「ワンコ君の事……好きだって事にさ……//」

シンジ「……!」

マリ「その様子だと、図星かな……?」

シンジ「………………」


599 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:51:20.48sA2e76lp0 (12/21)

マリ「どうなの、ワンコ君……?」

シンジ「…………」

マリ「姫なんか、あれだけあからさまだもんね……。隠してるつもりなのは、多分本人だけだと思うんだけどなあ……」

マリ「いくら鈍くても気づくよね、あれは……。私の事はどんな感じだったか流石にわからないけどさ……」

シンジ「…………」

マリ「それで……どうなの、ワンコ君?」


シンジ「…………」

シンジ「……綾波は……多分違うと思うけど」

シンジ「アスカはひょっとしたらって思ってた……」

マリ「だよね……」

シンジ「……うん」


600 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:54:00.71sA2e76lp0 (13/21)

マリ「でさ、ワンコ君……」

シンジ「……うん」

マリ「ワンコ君はさ、どう思ってるの?」

シンジ「…………」



マリ「…………」ギュッ……

シンジ「……よく、わからない」

マリ「……ずるいよね、ワンコ君は」

シンジ「…………」


マリ「……違うか。ずるいのは私だね……。勝手に人の気持ちバラしてさ、こんな質問してさ、最低だよね……」

シンジ「…………」

マリ「……でもさ、ワンコ君。さっきみんなと話しててさ、これだけはどうしても言っておかなきゃって思っちゃったんだよ……」


マリ「こんな状態……長く続く訳ないよってさ……」

シンジ「…………」


601 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:57:00.85sA2e76lp0 (14/21)

マリ「……今は余裕がないもんね、ワンコ君」

マリ「自分の事で手一杯だもんね……」

マリ「だからさ……仕方ないとも思うんだ……」

シンジ「…………」


マリ「姫もさ……今は余裕があるように見えるけど、もしもワンコ君にフラれたらどうなるかわかんないし……」

マリ「レイちゃんだって……最近少し楽になってきたってだけで辛い事には変わりないから……。心配だよね……」

シンジ「…………」

マリ「私だってさ……わかってるんだよ。ワンコ君はきっと今は答えを出さないだろうなって……」

マリ「出したら今の関係が跡形もなく壊れそうだもんね……。今、みんなの関係が壊れたら、この先やっていけないんじゃないかって、私でも思うよ……」

シンジ「…………」

マリ「みんな散り散りになってさ……。助け合ってどうにか上手くやれそうになってきたところだっていうのに……。またバラバラになりそうだもんね……」


シンジ「………………」


602 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 20:59:03.80sA2e76lp0 (15/21)

シンジ「……ごめん。でも、僕も本当にどうしていいかわからなくて……」

マリ「…………」

シンジ「……だから、あまり考えないようにしてるんだ。真希波もアスカも綾波も……それにトウジやケンスケ……クラスのみんなも……。僕にとって、全員大切な人だから……」

マリ「…………そっか」





603 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 21:02:05.10sA2e76lp0 (16/21)

マリ「仕方ないにゃあ……今はもう、その言葉だけで許してあげるよ、ワンコ君」ギュッ……

シンジ「……ごめん……真希波」

マリ「でもさ……」

シンジ「…………うん」

マリ「色々と片付いたら、その時は必ず答えを出すんだよ、ワンコ君」

マリ「全員と、虫良く付き合おうなんて考えてたら殴るよ」

シンジ「……うん」

マリ「ワンコ君がさ、そんな事を考えてたら全員が悲しい思いをする事になるんだから……」

マリ「今だって……みんなやりきれない想いをどこかに抱えてるんだよ……」

シンジ「…………ごめん」

マリ「だけど、ワンコ君が誰か一人に絞れば……」

マリ「その二人は幸せになれるんだから……」

マリ「もしも、選んだ答えが三人の内の誰でもなかったとしても……」

マリ「少なくともワンコ君、君だけは幸せになれるんだよ」

シンジ「…………」

マリ「……そういうのはワンコ君は嫌かもしれないけどさ。でも……全員が不幸になるよりは、他の三人が不幸になった方がいいんだよ。私も姫もレイちゃんもきっとそれを望むよ」

マリ「だから、ワンコ君……。ネルフから解放されるような事があれば、その時には必ず答えを出しなよ……」

マリ「……絶対だからね」ギュッ……

シンジ「うん……。約束する……」コクッ……


604 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 21:06:47.14sA2e76lp0 (17/21)

ー 数分後 ー

ー 寝室 ー


ガチャッ……

マリ「」トコトコ……


アスカ「……遅かったわね」ムッ

マリ「ちょっとね。少し話し込んじゃってさ……」ハァ……

アスカ「?」

アスカ「……なんか元気ないわね?」

マリ「そっかな? あ、それよりレイちゃん、ワンコ君今一人だからさ。少し話をしてきたら。誰かの前だと言いにくい事とか話すチャンスかもしれないよー」

レイ「…………」

マリ「ま、レイちゃんにはそういうのないかもだけど。ま、とにかく話をしてきたら」

レイ「……そうね。そうする」トコトコ


アスカ「…………んー……」ムスッ

マリ「姫ー。自分から言い出した事じゃないの?」

アスカ「わかってる! わかってるわよ、でもっ!」

マリ「無理するぐらいなら言わなきゃいいのに……。でも、ありがとう、姫。話したい事全部話す事が出来てすっきりしたよ」

アスカ「……そうは見えないけどね」

マリ「ま、色々あるんだよ。こっちにもさ」

アスカ「あっそう。ふんっ」プイッ

マリ「……ホント、素直なのか素直じゃないのかよくわからないよね、姫って」

アスカ「うるさい。アタシの勝手よ!」

マリ「はいはい。わかってるから、お姫様」

アスカ「その言い方もやめてよ、もう!」


605 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 21:09:37.07sA2e76lp0 (18/21)

ー 玄関 ー


レイ「」トコトコ

シンジ「綾波……。一人?」

レイ「ええ」コクッ……

レイ「マリから、少し話をしてきたらって言われたの」

シンジ「そっか……」


レイ「…………」

シンジ「…………」


シンジ「……なんか、綾波とこうして二人で話すのって服買いに行った時以来だね」

レイ「そうね」

シンジ「その時は、僕、クレープ食べられなかったっけ……」

レイ「……ええ」

シンジ「……今度は一緒に食べられるといいなって思ってるけど……」

レイ「……//」ドキッ……


シンジ「……また誘ってもいいかな、綾波?」

レイ「ええ…///」コクッ……

シンジ「良かった……」

レイ「…///」コクッ……


606 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 21:21:49.25sA2e76lp0 (19/21)

シンジ「…………//」

レイ「…………//」


レイ「……碇君」

シンジ「……何?」


レイ「私、お母さんのお墓……。もう守らなくてもいいのかもしれない……」

シンジ「え……」

レイ「お母さんもきっとわかってくれると思うから」

シンジ「…………」

レイ「アスカが言っていたわ。……お母さんよりも大事な人がいるって」

シンジ「…………」

レイ「私もきっとそう。……お母さんのお墓を守るより、大事な事があるんだと思う」

レイ「今の私を見ても、お母さんはきっと笑ってくれないと思うから……」

レイ「だから……もういいの。私がネルフを守る必要はもうないの」

レイ「私は、今は碇君やみんなを守る為にここにいるんだと思う……」

レイ「だから……碇君がもうEVAに乗らなくていいようにしたい」

レイ「その事を、碇君には知っておいてほしい」

レイ「……それだけ」


シンジ「………………」


607 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 21:24:03.62sA2e76lp0 (20/21)

ー また数分後 ー


アスカ「最後はアタシね……」

シンジ「うん……」

アスカ「……みんなから、何か言われたの? シンジも元気ないけど……」

シンジ「ちょっとね……。色々と」

アスカ「マリみたいな事言うのね……。でも、しょうがないか……。みんなそれぞれ人に言いにくい事を抱えてるんだから……」

シンジ「そうだね……。仕方がないんだと思う」

アスカ「……シンジも、よ」

シンジ「え?」

アスカ「アタシだって、わかるから……。シンジが人に言えない様な事とか……何か色々と難しい事を沢山抱えてるのはわかるから……」

シンジ「……そうでもないよ。僕なんか、そんな……」

アスカ「そうやって……心配かけさせないように気遣ってるってのもわかってるから……」

シンジ「…………」


608 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/04(火) 21:29:11.61sA2e76lp0 (21/21)

アスカ「アタシは……ずっとシンジに迷惑かけっぱなしで……」

アスカ「会った時から今までずっと……シンジがかばったり守ってくれたりしていて……」

アスカ「なのにお返しなんて、アタシ、何一つ出来なくて……」

アスカ「自分の事だけで精一杯で、どうしようもなくて……」グスッ……

シンジ「アスカ……」

アスカ「だから……だから……」ヒック……

アスカ「エヴァのパイロットじゃなくなった今……これからずっとお返ししていこうって……」グシュッ……

アスカ「何か困った事とかあったら……悩み事とかあったら言って欲しいのに…………。アタシで力になれる事は何でもするのに…………」グスッ……

アスカ「一人で色々抱え込まないでよ、シンジ……。今度はアタシが助ける番なんだから…………」グシュッ……

シンジ「うん……。ありがとう……アスカ」

アスカ「ううん……。お礼はアタシが言わなきゃいけないから……」コシコシ……

シンジ「何かあったら……アスカに頼るよ。きっと」

アスカ「うん……。いつでも何でも言って……。絶対、力になってみせるからね、アタシ……」ニコッ……

シンジ「……うん」ニコッ……


609以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/04(火) 23:32:24.33L+is634M0 (1/1)

シンジ君爆発して!!
お願い300円あげるから!!


610以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/05(水) 17:15:13.09Y+U55wmv0 (1/1)

今回だけ見れば「人間苦労したらその分いい事がある」という話に見えなくもない


今回だけ見れば


611 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:28:27.34xwkHPveg0 (1/11)

ー 慰安旅行が終わった翌日 ー

ー ネルフ本部、格納庫 ー


ミサト「ふーん……あれがダミーシステム」

リツコ「ええ……。私も初めて見るわ」

マヤ「今のところ、取り付けは初号機だけですが、その内、弐号機と参号機にも取り付ける予定だそうです」

日向「元々はパイロット補助の名目で開発されてたものですが、単独での自律制御だけでなく、無人状態でのATフィールド発生も可能らしいですからね。司令は今のパイロットに代わってダミーシステムで運用していくつもりみたいですよ」

リツコ「ミサト、これであなたの肩の荷も降りたんじゃないの? アスカは名目共々パイロットとしての意味がなくなった訳だから、もうあなたが引き取っておく必要もないでしょうし」

青葉「面倒な子供のお守りもついになくなったって訳ですね。葛城さんとしては、そっちの方が楽でしょう」

日向「元々、EVAは兵器ですからね。子供の玩具としての期間もここでお仕舞いですね」

マヤ「…………」


ミサト「まーねー……。私としては確かにそっちの方が楽だし嬉しいんだけど……」

ミサト「ちょっちね……。思う事もあって……」

ミサト「…………」


612 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:32:16.20xwkHPveg0 (2/11)

ー 夜、居酒屋 ー


ミサト「あの新型のダミーシステムってやつ、どうにかなんないかしらねえ……」

加持「ゴルゴナベースからの厳封直送品のか? 確かに得体の知れないものだけどな……」

ミサト「別にそんなのはいいのよ。リツコがどうせ調整やらテストやらするから、そこら辺は信用してるわ」

加持「……なら、どうしてだ?」

ミサト「問題は、これでシンジ君やレイがエヴァに乗れなくなったって事。レイは聞き分けがいいから我慢してくれるでしょうけど、シンジ君はねえ……」

加持「あのシンジ君が文句を言うとは思えないけどな」

ミサト「そりゃあ文句はきっと言わないわよ。でも、露骨に悲しそうな顔をしそうでさあ……。伝え辛くてねえ……。まだ誰にも言ってないのよ……」

加持「ダミーシステムの事をか?」

ミサト「違うわ。今日、司令から言われたの。パイロット全員はこれからみんな予備扱い、余程の事態が起きない限り招集する事もエバーに乗せる事もさせないってね……」

加持「……へえ。そいつはちょいと……面倒だな」

ミサト「でしょー? シンジ君やレイになんて言えばいいかわかならくてねえ……。あーあ、弱ったなあ……」


加持「…………」


613 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:36:22.15xwkHPveg0 (3/11)

ミサト「でも、もう決まっちゃった事だから伝えなきゃいけないし……辛いわー……」

加持「…………」

ミサト「まあ、もうどうしようもないんだけどね……。単なる愚痴よ、愚痴」

加持「…………」

ミサト「どうしたの、加持君? 急に黙っちゃって」

加持「ああ……いや、何でもないさ。少し考え事をな」

ミサト「ふーん……。まあいいわ。それよりさ、加持君……。私達、結構長い付き合いよね……。それなのに、こうも仕事仕事ばかりで最近ろくすっぽ会えてないんだけど……」

加持「すまないとは思ってるよ。ただ、今はどうしても休みがとれなくてな」

ミサト「いっつもそればっかり……。私だって、いつまでも放っておかれたら、誰か別の人に目移りしちゃうかもしれないわよ」

加持「そいつは怖いな……。肝に命じておくさ」

ミサト「わかってないわよ、バカ……。そういう事を言ってるんじゃないのに」

加持「……結婚したい、って事か?」

ミサト「//」ドキッ

加持「俺だって何も考えてない訳じゃないからな。お互い、もういい歳だし……」

ミサト「それは余計よ!//」

加持「ただ、もう少し待ってくれないか、葛城。こっちにも心の準備ってものがあるし、不安だってあるからな」

ミサト「……私はないのに」ボソリ

加持「わかっているさ。選ぶとしたら俺も葛城だけだ。だから、それを信じてもう少しだけ待っていてくれないか」

ミサト「…………本当に?」

加持「ああ、俺は葛城に対して嘘なんかつかない。本当にだよ」

ミサト「…………それ……約束したわよ、加持君」

加持「ああ……信用してくれ」

ミサト「……わかったわ。もう少しだけ…待つから……//」


614 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:37:43.55xwkHPveg0 (4/11)

Prrrrrr Prrrrrr


ミサト「あ、電話……ちょっとだけごめんね、加持君」

加持「…………」


ミサト「」ピッ

ミサト「もしもし」

ミサト「あー、リツコ……」

ミサト「うん……。うん……」

ミサト「わかってる……明日中には結論出すわよ」

ミサト「うん……。じゃあね……」ピッ……


615 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:39:36.94xwkHPveg0 (5/11)

加持「電話……リッちゃんからか?」

ミサト「ええ、そう。参号機のテストパイロットの件で催促よ。まだ決めてないから……」

加持「参号機か……」

ミサト「そう。参るのよねえ……。なにせこれがあの子たちにとっては、エバーに乗る最後の機会でしょ。レイを乗せるべきか、シンジ君を乗せるべきかで悩んでてね……」

加持「……アスカはないのか?」

ミサト「あいつを乗せる訳ないじゃない」キッ

加持「ま、そりゃそうだな……」

ミサト「で、二人の内、どっちを乗せるかで悩んでるのよ。順当に行けばレイなんだけど……」

加持「そうだろうな」

ミサト「レイはこれまで私達に色々よくしてくれてたからさあ……。物分かりのいい子だったし、私達とは付き合いが一番長いからね……。だから迷わずあの子を乗せるべきなんだけど……」

加持「出来る事なら、シンジ君を乗せたいって事か……」

ミサト「うん……そう。贔屓になっちゃうんだけど、シンジ君とはこれまでずっと一緒に暮らしていたからさあ……。やっぱりあの子の喜ぶところを見たいのよね……。これが最後かと思うと尚更……」

加持「そうか…………」


616 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:41:58.41xwkHPveg0 (6/11)

ミサト「加持君はどう思う? どっちを乗せた方がいいかな?」

加持「…………」

ミサト「加持君?」

加持「……そうだな。やっぱりレイじゃないか? 普通に考えればそうだし、シンジ君もきちんと説明すればわかってくれるだろうからな」

ミサト「そうよね……。だけど……なかなか踏ん切りがつかなくてね……」

加持「それが駄目なら、いっその事二人とも乗せないって事でアスカでもいいが、それは葛城が嫌なんだろう? だったらレイしかないと俺は思うけどな」

ミサト「うん……。そうなのよね……」

ミサト「頭ではわかってるんだけどね……」

加持「…………」


ミサト「やっぱりレイを乗せるべきなのかしら……」

加持「俺はそう思うけどな」

ミサト「うん……」

加持「……ま、何にしろ最後に決めるのは葛城だ。後悔の残らないようにすればいいさ……」

ミサト「そうね……そうするわ」


617 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:44:35.44xwkHPveg0 (7/11)

ー 翌日 ー

ー ネルフ本部、作戦会議室 ー


シンジ「えっ!?」

レイ「……!」


ミサト「」ハァ……

ミサト「やっぱそうよね……。エバーに乗れるのが今日で終わりだなんて、驚くわよね……」


シンジ「あ、あのっ! それ……本当なんですか!?」

ミサト「ええ……。残念ながらね。でもこれは碇司令の決定なの。悪く思わないでね」

シンジ「父さんが……」

レイ「…………」


ミサト「ただまあ、一応は予備って事になってるからひょっとしたら呼び出される事もあるかもしれないわ。可能性はかなり低そうだけど……」

シンジ「そ……そうなんですか……」ウズウズ

レイ「残念です……」ウズウズ

ミサト「」フゥ……

ミサト「……いいのよ、二人とも無理しないで。私に気を遣わなくてもいいわ。内心では落ち込んでるってのはよくわかってるから」

シンジ「あ……えと……」

レイ「申し訳ありません……」

ミサト「ま、使徒を全部片付けたら、こっそり一回ぐらいは乗せてあげられると思う。悪いけど、気長に待っていて」

シンジ「はい!」

レイ「はい」


618 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:46:45.84xwkHPveg0 (8/11)

ミサト「で、まあ、その代わりって訳じゃないけど、もうすぐ新しいエヴァ……参号機がこちらに来る事になってるわ」

ミサト「そのテストパイロットをあなたたちのどちらかにさせてあげる事になってるから」

ミサト「って言っても、単なる起動実験だから大した事は出来ないんだけどね。一日乗って、少し動かして、それでおしまい」

ミサト「でも、これが多分エバーに乗るラストチャンスだから、二人ともやっぱり乗りたいでしょ?」

シンジ「…………そうですね」

レイ「…………ええ」

ミサト「でも、残念な事に乗せられるのは一人だけなのよね。だから……」


シンジ(これが最後なんだから、綾波にはもう辛い思いをさせたくない)

レイ(これで最後だから、せめて碇君には休んでてほしい)


シンジ「……じゃあ僕が乗ります! 僕を乗せて下さい!」

レイ「……私が乗ります。葛城三佐、お願いします」


ミサト「やっぱりこうなるのよねー……」ハァ……


619 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:52:11.79xwkHPveg0 (9/11)

ミサト「まあ……多分そうなるだろうと思って、予めこんな物を用意しておいたから」スッ

シンジ「これって……」

レイ「くじ引き……」

ミサト「そ。色々考えたんだけど、やっぱりここは公平にかつ平等にいかないとって思ってね。これならケンカにならないし、外れても仕方なかったってお互い諦めがつくでしょ?」

シンジ「……そうですけど、でも……」

レイ「……葛城三佐、お願いします」

ミサト「ダーメ。わがままはなし。恨みっこなしの一発勝負で決めるわよ。後から文句はなし。いいわね?」

シンジ「…………わかりました」

レイ「…………はい」

ミサト「それじゃ、二人とも、くじを引いて。引く時、ケンカしちゃあダメよ」

シンジ「えと……じゃあ僕はこっちで……」スッ

シンジ「いい? 綾波」

レイ「ええ……。私はこっちを引くわ」スッ

ミサト「じゃあ、いっせーので引いて。赤い印がついている方がアタリ。参号機のテストパイロットよ」

シンジ「はい」

レイ「わかりました」

ミサト「いくわよー。いっせーのでっ……!」

シンジ「」スッ
レイ「」スッ


シンジ「僕だ……!」

レイ「…………」


ミサト「じゃあもう参号機のテストパイロットはシンジ君に決定。レイ、公平に決めた結果だから、残念だとは思うけど諦めるのよ、いい?」

レイ「…………はい」


620 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:54:14.56xwkHPveg0 (10/11)

ミサト「それじゃ、シンジ君だけこっちに来て。起動実験は松代でするから軽くその事について説明するわ」

シンジ「はい」

ミサト「レイはもう今日は帰っていいわよ。お疲れ様」

レイ「……はい」

ミサト「じゃ、シンジ君、行きましょ」

シンジ「はい」


ミサト「」トコトコ……
シンジ「」トコトコ……

プシュン……


部屋から出ていく二人



レイ「碇君……」

レイ「私が代われなかった……」シュン……


レイ「だけど……これでもう二人ともEVAに乗らなくてすむようになる」

レイ「碇君も、私も、パイロット登録が予備扱いになる……」


レイ「……伝えないと。二人に」

レイ「これで全員、ネルフから解放されたって……」タタッ


少しだけ嬉しそうな表情を見せて、急いで部屋から出ていくレイ


621 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/05(水) 20:56:09.64xwkHPveg0 (11/11)

ー マリのマンション ー


マリ「やったじゃん!! おめでとう、レイちゃん!!」

アスカ「ホンとよねっ!! おめでとう、レイ!!」

レイ「ありがとう……//」


レイ「でも……碇君だけもう一回乗る事になって……」シュン

マリ「そんなの、あと一回だけじゃん! それさえ我慢すればもうみんな自由だよ! ネルフから離れられるんだよっ!」

アスカ「そうよ、レイ! シンジの事は残念だったけど、でも、どうせあと一回だけなんだから! おめでたい事には変わりはないわよ!」

マリ「ワンコ君だって絶対気にしてないって! それよりさ、またお祝いしようよ! ワンコ君が帰ってきたらさ!」

レイ「……そうね」コクッ……

アスカ「そうだ! 三人で料理を作らない? それでシンジにご馳走するの! クラッカーとか買ってきてさ!」

マリ「いいね、いいね! 本当のパーティーみたい! やろうよ! それやろうよ!」

アスカ「レイ。アンタはどう? やったら楽しそうじゃない?」

レイ「ええ……。してみたい」

マリ「じゃ、決定! ワンコ君が松代から帰ってきたらみんなでパーティーだよー♪」

アスカ「何作る? あ、マリ、アンタはケーキ担当でいい? お菓子作れるのってマリだけでしょ?」

マリ「だねー。とびっきり豪華なのを作っちゃうよー♪」

アスカ「今からすっごい楽しみ。早く時間が経てばいいのに♪」



レイ(何だろう……。ドキドキする……)

レイ(きっとこれが……楽しみ)

レイ(今までずっと……忘れていたのに)


レイ(碇君……)

レイ(今なら私……ひょっとしたら笑えるかもしれない)


レイ(碇君が帰ってきたら……。きっと私……笑って出迎えられると思う……//)

レイ(みんなと一緒に……嬉しそうに……//)


微かに笑みを見せるレイ


622以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/05(水) 23:31:48.25yD3/yHJI0 (1/1)

やばい、いかん、まずい

シンジがどえらいことになる予感が…


623以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/06(木) 08:11:26.23YitTMYMo0 (1/1)

ずいぶん前のユイブチ切れの際とレイの暴走時に使われた
DSSボックスって参号機にも当然搭載されますよね…

あっ…(察し)


624 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 05:46:24.58ms9g91iL0 (1/16)

ー 翌日、参号機起動実験の日 ー

ー 学校 ー


ヒカリ「ホントに!?」

アスカ「ホント、ホント♪シンジもレイも、アタシと同じでパイロット予備扱い。もうネルフに行かなくてもよくなったの♪」ニコニコ

ヒカリ「……そうなんだ」

ヒカリ「良かった……。本当に良かったね、アスカ」グスッ

アスカ「うん……ありがとう、ヒカリ」ニコッ……


625 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 05:47:40.18ms9g91iL0 (2/16)

ヒカリ「」グスッ、ゴシゴシ……



ヒカリ「じゃあ……。もうみんな酷い事されないんだね」

アスカ「あ、うん……。多分……」

ヒカリ「?」

アスカ「ミサトの家に……いつまで居るかまだわからないから」

ヒカリ「あ…………」

アスカ「でも、大丈夫よ。今までよりずいぶん楽になるんだから」

アスカ「アタシはひょっとしたら家から追い出されるかもしれないけど、その時は私と一緒に住めばいいってレイが言ってくれてるし……」

アスカ「とにかく、いい事なの。だから、大丈夫」ニコッ

ヒカリ「そっか……うん」ニコッ……


626 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 05:49:10.43ms9g91iL0 (3/16)

ガラッ……


ケンスケ「おはよー、委員長。それに式波」

ヒカリ「あ、おはよう、相田君」

アスカ「おはよ」

ケンスケ「うん……」

ヒカリ「? なんか元気ないね……。それに鈴原は? いつも一緒なのに」

ケンスケ「ああ、トウジは今日は小田原の病院。妹さんが退院するとかでさ。……それより、碇は?」キョロキョロ

アスカ「シンジは、三号機のテストで今日は松代まで行っててお休みよ。何か用でもあったの?」

ケンスケ「ああ、うん……まあ、そんなところかな。……いつ頃戻ってくるかわかる?」

アスカ「明日か遅くても明後日には戻ってくるはずよ。起動実験をするだけだから」

ケンスケ「そっか……。ありがとう」

アスカ「?」

ケンスケ「式波にもその時伝えるから」

アスカ「何の話よ?」

ケンスケ「いや、何でもないよ。邪魔したね。じゃあ……」

ケンスケ「」クルッ、スタスタ……


どことなく淋しそうに自分の席へと着くケンスケ


アスカ「何だったのかしら、一体……。ね、ヒカリ」

ヒカリ「ん? あ、ああ、そうね……。うん……」シュン……

アスカ「……?」


627 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 05:50:29.54ms9g91iL0 (4/16)

ヒカリ(……ケンスケ君も引っ越すって言ってたから、多分、その事なんだろうな……)

ヒカリ(淋しいけど仕方ないもんね……)

ヒカリ(私もまだアスカにその事を伝えてないし……)

ヒカリ(碇君が戻ってきたら、私も伝えないといけないから……)

ヒカリ(折角、みんなネルフから解放されたっていうのに……。もうお別れだなんて淋しいな……)

ヒカリ(辛いなあ……)

ヒカリ「」ハァ……


アスカ「……ヒカリ、どうしたの? 大丈夫?」

ヒカリ「あ、うん。大丈夫。今、ちょっと感傷的になっちゃってるから……」

アスカ「そうなの?」

ヒカリ「うん、そう。それだけ……」シュン

アスカ「…………」


怪訝な顔を見せるアスカ……


628 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 05:52:13.49ms9g91iL0 (5/16)

ー 松代 ー


ババババババ


ヘリから降りるリツコとミサト

それを出迎えるネルフ職員


リツコ「……まさかここに二回も来る事になるとは思わなかったわね」

ミサト「まあ、お仕事ですもの。しょうがないわね」

リツコ「で、作業はもう終わってるんでしょうね?」

ネルフ職員A「ええ、滞りなく」

ネルフ職員B「後はパイロットを乗せるだけです」

リツコ「そう。ご苦労様」

ミサト「…………」

リツコ「どうしたの、ミサト? 急に難しい顔をして」

ミサト「ん……ちょっちね。悪いけどリツコ、先に行っててくれる。私は後から行くから」

リツコ「……そう。わかったわ。でも、あまり遅くならないようにね」

ミサト「わかってる」

リツコ「それじゃあ先に行くわ。あなたたち、案内してちょうだい」

ネルフ職員AB「はい」


去っていくリツコ達……


ミサト「…………」

ミサト「」スッ


鞄から携帯を取り出すミサト……


629 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 05:53:47.08ms9g91iL0 (6/16)

ー リフト内 ー


シンジ「」ゴソゴソ


テスト用プラグスーツに着替えるシンジ


シンジ「……なんかこのプラグスーツって」

シンジ「ちょっと見えすぎだよね//」

シンジ「何でこんなデザインにしたんだろ……//」


Prrrrrr Prrrrrr


シンジ「電話?」

シンジ「」スッ

シンジ「しかも、守秘回線だ……。誰からだろ?」

シンジ「もしもし」ピッ


630 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 05:56:03.64ms9g91iL0 (7/16)

ミサト『もしもし、シンジ君?』

シンジ「あ、ミサトさん……。えと……どうしました、本番前に。また僕、何かミスしました?」ドキドキ……

ミサト『そうじゃないわ。ただ、シンジ君と少し話をしたくなってね』

シンジ「そうですか……」

ミサト『ねえ、シンジ君……。最初に私と会った時の事、覚えてる?』

シンジ「あ、はい! あの時から僕、ずっとミサトさんに迷惑ばっかりかけて……。本当にすみません……」

ミサト『いいのよ、もう、そんな事。確かにあの頃のシンジ君は酷い問題児だったけど、今ではそんな事はないんだから』

シンジ「…………」

ミサト『あれからよく頑張ったと思うわ。ひょっとしたら調子に乗るかもと思って今までずっと言わなかったけど、今ならはっきりと言えるから』

ミサト『本当に、前とは見違えるぐらい立派になったわよ、シンジ君。よく努力したと思う。頑張ったわね』

シンジ「…………ありがとうございます」


631 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 06:00:16.44ms9g91iL0 (8/16)

ミサト『本当はね、シンジ君。私はもう少し早く、この事をあなたに伝えても良かったんじゃないかと思う』

シンジ「…………」

ミサト『でも、それを躊躇ったのは、シンジ君がまだ心配だったから……』

ミサト『ううん、違うわね。立派に成長していくシンジ君を、もう少し側で見ていたかったから……』

シンジ「…………」

ミサト『ひょっとしたらそれさえも言い訳で、ただ単にシンジ君と離れたくなかっただけなのかもしれない。一緒にあれだけの時間を過ごしたのだから……。やっぱり淋しいわ……』

シンジ「……?」

ミサト『シンジ君、最初の頃にあなたに言ったわね。今のままではエバーのパイロットとしてダメダメだから私が教育するって……。もうその意味もなくなっちゃったのよ』

シンジ「え…………」

ミサト『あなたはこれからエバーの正式パイロットではなくなるし、もう十分成長して立派になっているのだから、私が引き取る理由は全部なくなってしまったの』

ミサト『だから、最初の予定通り、これからはお父さんの家に行ってそこで一緒に住みなさい。いつまでも司令に淋しい思いをさせる訳にもいかないしね』

シンジ「あの……でも」

ミサト『わかってる……。正直、あなたと離れるのは私も辛いわ。シンジ君の事をいつのまにか家族の様に思っていたからね……。まるで出来の悪い弟を持ったようなそんな感覚ね……』

シンジ「…………」

ミサト『でも、これで永遠にお別れって訳でもないし、会おうと思えば私達はいつでもまた会えるわ。シンジ君がいなくなったら、きっと私の今の生活は火が消えた様に淋しくなるけど……でも我慢しなくちゃいけない事なのよね、それも……』

シンジ「…………」


632 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 06:04:58.11ms9g91iL0 (9/16)

ミサト『』グスッ、コシコシ……

ミサト『ごめん。少し湿っぽい話になっちゃったわね。でも、これがシンジ君にとって一番だろうから、私のわがままな希望に付き合わせちゃダメなのよね……』

シンジ「…………」

ミサト『シンジ君。この起動実験が終わって第三新東京市に帰ったら、引っ越しの準備をするのよ。それで二人で最後に食事でもしてお別れ』

シンジ「あの……。でも……アスカがいるから、僕はまだミサトさんの家に……」

ミサト『ダメよ、シンジ君。辛いのはお互い様なんだから。そう言ってくれる気持ちは嬉しいけど、やっぱり子供は家族と一緒に過ごすのが一番なの。私は小さい頃にお父さんを亡くしたから、それがよくわかるわ。お父さんの所に行きなさい』

シンジ「でも……!」

ミサト『それに、あいつの事なら平気よ。この前、私が本部で不満を溢していたら、レイが司令に内緒で引き取ってもいいって言ってくれたから』

シンジ「え……? でも、アスカにも監視がついてるからすぐに父さんにバレるんじゃ……。そうなったら……えと、その……ミサトさんの立場が……」

ミサト『そこら辺はぬかりないわー。私とレイの二人で諜報部にこっそりお願いしとけば、向こうも言う事を聞いてくれるに決まってるんだから』

ミサト『これまではそうもいかなかったけど、でもアスカはもうパイロット予備扱いになっているんだし、監視して報告する意味も機会もあまりないんだから、それぐらいどって事ないわよ』

シンジ「そうなんですか。良かった……!」

ミサト『ありがとね、シンジ君。私の心配をしてくれて。でも、とにかくそういう事だからシンジ君は何も気にしなくていいわ。堂々と胸を張ってお父さんの所に戻りなさい』

シンジ「はい!」

ミサト『うん……。でも、たまには私の家にも遊びに来なさいよ。私の家はね、シンジ君。いつだってあなたの家でもあるんだから』

シンジ「…………わかりました。……たまには行きます」

ミサト『そうね……そうして』ニコッ


633 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 06:06:33.48ms9g91iL0 (10/16)

ミサト『それじゃあ、シンジ君。もうそろそろ電話を切るわね。早くしないとリツコに怒られちゃうから』

シンジ「はい」

ミサト『全部終わったら、お父さんの所に行って、色々と甘えてきなさい。ただし迷惑はかけないようにね』

シンジ「はい。大丈夫です」

ミサト『うん……。これからも頑張っていくのよ、シンジ君。こうして生きていると色々と辛い事もあるけど、楽しい事や面白い事もそれ以上に一杯あるんだから。……この世界にはまだまだあなたの知らない事で満ち溢れているわ』

シンジ「はい!」

ミサト『』クスッ

ミサト『それじゃあね。この実験が終わったら一緒にご飯を食べに行きましょ。美味しいもの、いーっぱい御馳走してあげるから』

シンジ「ありがとうございます、ミサトさん」

ミサト『ええ。じゃあね』ピッ……


ツー、ツー、ツー……




634 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 06:07:39.06ms9g91iL0 (11/16)

シンジ「……良かった」

シンジ「本当に良かった……」グスッ……

シンジ「これでみんな助かるんだ……」ポロポロ……

シンジ「綾波も、アスカも、それに真希波も……もう酷い事されずに済むよ……」グシュッ……

シンジ「良かった……。本当に良かった……」ヒック、グシュッ……


涙が零れるシンジ……


635 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 06:08:42.10ms9g91iL0 (12/16)

ー 数分後、松代実験場 ー


ミサト「」トコトコ……

ミサト「お待たせ、リツコ。悪いわね、結構待たせちゃったみたいで」


リツコ「いいわよ、別に。丁度今、コーヒーを飲み終えたところだったから」

ミサト「ん。ありがと、リツコ。愛してるわよー」

リツコ「馬鹿な事を言ってないで、早く席について。さっきパイロットもエントリーしたところだし、もう起動実験を開始するわよ」

ミサト「了解。ごみんねー」


636 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 06:09:48.96ms9g91iL0 (13/16)

ー 起動実験開始 ー

ー エントリープラグ内 ー


『エントリースタート』

『圧力正常、プラグセンサー問題なし』

『数値は誤差範囲内』

『了解。作業をフェイズ2へ移行。第二次接続開始』




シンジ(早くこれを終わらせて、みんなにこの事を伝えなきゃ)

シンジ(きっとみんな喜ぶだろうなあ)

シンジ(今から楽しみで仕方がないよ)ニコニコ


637 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 06:10:52.87ms9g91iL0 (14/16)

バシュッ!!


シンジ「え?」


急に外の景色が消えるエントリープラグ内


バシュッ!!

バシュッ!!

バシュッ!!


一転して次々と変わり、奇妙な空間に移り変わる


シンジ「何これ、一体、何が……!」


???『』アハハハッ、アハハッ、アハハハッ……


シンジ「え……? え!!」




638 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 06:13:19.26ms9g91iL0 (15/16)

ー 実験場 ー


オペレーターA「プラグ深度、100をオーバー!」

オペレーターB「精神汚染濃度も危険域に突入!」


ミサト「はあ? 何で急に?」

リツコ「さあ……。何が原因かしら……」


オペレーターC「パイロット、安全深度を越えます!」


リツコ「仕方ないわね」ハァ……

ミサト「実験は中止。回路を切断して。いいわよね、リツ」

オペレーターC「駄目です! 体内に高エネルギー反応!!」

リツコ「高エネルギー反応……ひょっとして」

ミサト「使徒?」


639 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/07(金) 06:14:19.39ms9g91iL0 (16/16)

ー 外 ー

EVA参号機『グオオォォッ!!!』



咆哮と共に、派手な音と光を立てて爆発する松代支部……


640以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/07(金) 07:39:16.24c5TWoeAb0 (1/1)

あーあ


641以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/07(金) 09:28:54.52F97KXNmU0 (1/1)

それでもシンジさんなら…!


642以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/07(金) 10:08:56.92M0dI0M5m0 (1/2)

よかった…使徒の乗っ取りが悪ふざけと思われる事が無くて…
あれ?良かったのか?これで?ww


643以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/07(金) 10:09:30.01M0dI0M5m0 (2/2)

よかった…使徒の乗っ取りが悪ふざけと思われる事が無くて…
あれ?良かったのか?これで?ww


644以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/07(金) 11:08:55.78qz8vdI39o (1/1)

>>643
俺の代弁で2回言ったんですよね分かります


645以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/07(金) 11:46:38.57v6TmVTsCo (1/1)

とりあえず使途さん松代支部やっちゃってください。
オペレーターABCさん、その他作業員さんは逃げてください


646以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/07(金) 14:36:12.40SAmzR+kno (1/1)

戦自もこれを元に早く介入してきてくれ


647以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/07(金) 16:50:02.60DN6XuTcg0 (1/1)

くそっ・・・こんなにかなしい感じになるなんて・・・彩画堂の同人誌を読むしかないじゃないか


648以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/12(水) 03:28:02.68L5JRQTCAO (1/1)

面白いけどマリが真剣にシンジに恋人を選べとか言うのに違和感を感じた。
中学2年生で必死に生きてるシンジがなんで重い感じて恋人を選べとか言われないといけないの?
普通に仲間で良いだろうに中学生なんだから。
マリが私達ずっと一緒にいようと言うあたりは好きだったけど女の独占欲が強くなったあたりから女キャラ達がうざくなった。
レイはそうでも無いけど中学2年で結婚前提みたいな彼女選びを助けた女から強要されるのとか重すぎるわww


649 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:17:28.10kY+ogfT50 (1/11)

ー 授業後、マリのマンション ー


マリ「で、隠し味に醤油を少しだけ入れると……」チョイチョイ

マリ「ほら、姫。特製シチュー、食べてみて♪」

アスカ「」パクッ……

アスカ「美味しい♪」

マリ「でしょー。お肉の代わりにマッシュルームとか色々入れてるし、コクが出てて美味しいんだよねー。レイちゃんも一口食べてみてよ」

レイ「」パクッ……

レイ「……美味しい//」

マリ「よしっ。これならワンコ君にも自信を持って出せるね。このまま煮込んだ後、一日寝かせれば味が出るし丁度いいや」

アスカ「後は当日に作ればいいわよね♪ で、何作る? やっぱお肉もないと寂しいし」


ピピピピッ


マリ「ん? 電話? レイちゃんじゃない?」

レイ「ええ……そうみたい」スッ

レイ「」ピッ

レイ「はい。レイです」


650 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:19:26.10kY+ogfT50 (2/11)

アスカ「やっぱ、唐揚げとかフライドポテトとか、その辺かしら? ハンバーグ……はなんかパーティーって感じがしないし……」

マリ「メインはあるから、軽くつまめるものがいいよね。サラダも作っておか」


レイ「!!」

レイ「それで状況は……!」

レイ「はい……! はい……!」

レイ「………………」


呆然とした表情を見せるレイ


アスカ「……レイ?」

マリ「……レイちゃん?」


異変に気付く二人……


651 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:20:54.63kY+ogfT50 (3/11)

レイ「……わか…りました。……情報…ありがとうご…ざいます……」


上ずる声……


レイ「」ピッ……


震えながら電話を切るレイ……


アスカ「ちょっとレイ……。どうしたの、何があったの」

マリ「顔色悪いよ、レイちゃん……。どうしちゃったの」

レイ「…………松代で……爆発事故が………………」

アスカ「!」
マリ「!」

レイ「…………」

アスカ「ちょっと!!」

マリ「それでワンコ君は!!」


レイ「わからない……。全員の安否が…確認されてないから……」

アスカ「……なに…よ……それ…………」

マリ「……嘘……だよね……………」


レイ「嘘じゃ……ないの…………」


アスカ「………………」

マリ「………………」



グツグツ……

シチューの鍋から焦げ付いた匂いが広がる…………


652 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:22:24.24kY+ogfT50 (4/11)

ー ネルフ本部、発令所 ー


ゲンドウ「被害状況を報告しろ。シンジや葛城君、赤木博士の無事は確認出来たのか」

青葉「依然、不明のままです! 松代の仮設ケージが爆心地の模様。地上管理施設の倒壊を確認してます」

ゲンドウ「救助部隊を直ちに派遣しろ。急げ!」

青葉「了解! くそっ、何でこんな事に!」ガチャッ

冬月「碇。第三部隊もだ。戦自が介入する前に手を打つ必要がある」

ゲンドウ「そちらは全て冬月に一任する。頼んだ」

冬月「…………」

ゲンドウ「シンジ……。無事でいてくれ……」

冬月「碇……少し落ち着け」

マヤ「司令! 事故現場南西に未確認移動物体を発見しました。パターンはオレンジです。使徒とは確認されてません! ですが」

ゲンドウ「…………」

冬月「」フゥ……

冬月「総員、第一種戦闘配置だ。修復中の零号機はどうせ使えん。初号機をダミープラグに換装して出撃の準備を。……構わんな、碇?」

ゲンドウ「ああ……」

マヤ「了解です!」

冬月「…………」


マヤ「……先輩……どうか無事でいて下さい……!」


冬月「」フゥ……


冬月「……そういえば、日向君の姿が見かけんが……」

青葉「あいつは事故が起こったって聞いたら、加持さんと一緒に松代にすっ飛んでいきました」

冬月「そうか……」フゥ……


冬月「……君やマヤ君は行かんのかね?」

青葉「マヤちゃんは理由はわかりませんが、ここに残ると言い張ったので……。僕はこっちの方が状況が入ると思いましたから……。それに、また爆発するかもしれませんし」

冬月「…………そうかね」ハァ……


653 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:23:36.79kY+ogfT50 (5/11)

ー 三十分後 ー

ー マリのマンション ー


Prrrrrr Prrrrrr

レイ「もしもし。綾波です。度々で申し訳ありませんが、松代の今の詳しい状況を教えて下さい」

レイ「……ええ。はい」

レイ「……はい。……はい」



Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr

マリ「あー、もう! こんな肝心な時に、曽根のやつ何で出ないんだよ! ふざけんなっ!!」ガンッ!!

アスカ「ちょっとマリ、落ち着きなさいよ!」

マリ「落ち着く!? 落ち着いてられる訳ないでしょうが!! ワンコ君が無事かどうかわかんないんだよっ!! 姫はそれでも平気なの!?」

アスカ「平気な訳ないでしょうが! いい加減にしなさいよ! アタシだって心配で心配でどうしようもないわよっ!!」

マリ「だったら!!」


レイ「やめて! 聞こえないから黙って!」ガンッ!!


マリ「!?」

アスカ「レイ……」


654 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:26:52.71kY+ogfT50 (6/11)

ー 電話終了後 ー


マリ「それで、レイちゃん。ワンコ君は!?」

アスカ「シンジは無事かわかった!?」


レイ「……まだ、わからない。救助部隊が向かった事ぐらいしか……。それ以外の情報が入ってこないから……」


マリ「っ……。こうなったら私もう松代に行く!」

レイ「……駄目、マリ。今、向こうは封鎖されてる。行っても入れないし、無理矢理入れば、救助の邪魔になるだけ」

マリ「だけど……!」

アスカ「……それにアンタ、ネルフのそんな所に飛び込んだらまずいでしょうが。電車だって松代行きは今は動いてないはずよ……。車でもない限り、無理よ……」

マリ「っ……!」

レイ「我慢……して」

アスカ「……気持ちはわかるけど、ここで待つしかないわ……」

マリ「……悔しいよ……くそっ……!」ガンッ!!


レイ「……」シュン……

アスカ「……」シュン……


655 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:29:36.38kY+ogfT50 (7/11)

Prrrrrr Prrrrrr


マリ「え……!?」

マリ「曽根から!?」サッ!

マリ「」ピッ!


マリ「もしもし、曽根! 松代の状況を教えて! 早くっ!! そっちだってもう何か掴んでるんでしょっ!?」


アスカ(さっきからマリが電話してる曽根って誰よ……?)

レイ(…………)


656 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:31:27.00kY+ogfT50 (8/11)

曽根『落ち着け。と言いたいところだが、そうもいかないか……』

マリ「当ったり前じゃん! グダグタ抜かすな!! 早く教えなよ!!」

曽根『』ハァ

マリ「早くっ!!」

曽根『……こちらもさっきまで情報収集で手一杯だったんだ。だから、大した事はわかっていない。それよりこの電話、大丈夫なんだろうな? 周りに人は?』

マリ「人? いないよ! 私のマンションから電話してるんだから! いる訳ないでしょ!」

レイ「…………」

アスカ「…………」

曽根『そうか……。それなら話すが……どうも起動実験中に参号機が暴走したようだ……』

マリ「暴走!?」

レイ「!?」

アスカ「!?」

曽根『それ以上の詳しい事はこちらもよくわかっていない。事態に介入しようとしたが、先にネルフに牽制されてしまった。どうにか戦自も関われる様に上層部で交渉しているが、使徒やエヴァに関する権限はネルフの方が上だ。まず無理だろうな……』

マリ「……そんな…………」

曽根『ただ、参号機と思われる機体が移動しているというのは長野の戦自から連絡が入っている。ヘリから望遠で撮った映像も確認したが、まず参号機で間違いない。恐らく、シンジ君もその中に……』

マリ「……じゃあワンコ君は……とにかく無事は無事……なんだよね……?」

曽根『…………わからない』

マリ「…………は?」


657 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:33:46.99kY+ogfT50 (9/11)

マリ「どういう事。わからないっておかしいでしょ、そんな! 参号機が動いてるって事はワンコ君がそこにいるって事でしょ。何でわかんないの、ふざけんなっ!!」

曽根『…………』


曽根『……アンビリカルケーブルが繋がってないんだ』

マリ「え…………」


曽根『参号機にS2機関は搭載されていないという情報はこちらにも入っている。そして、内蔵電源は本来ならもう切れてる時間だ』

曽根『なのに今も参号機が動いているというのは有り得ない。エヴァは電力がなければ暴走状態だろうとなんだろうと、止まるはずなんだ』

マリ「…………だ、だけど、前にワンコ君は動かしてたよ。内蔵電源が切れてたけど、動かしてたから今回も……!」

曽根『それは恐らく初号機だろう? 初号機は以前に使徒を捕食してS2機関を取り込んでるんだ。これは君達からではなく別口からの情報だがな』

マリ「S2機関を取り込んでるって……何……?」

曽根『電源がなくても自由に動けるって事だ』

マリ「…………」

曽根『だからこそ、初号機パイロットのシンジ君が一番危険視されていたんだ。そのシンジ君がこちら側につくメリットが大きかった』

曽根『そうでなければ、そこのマンション含め、あれほどの優遇はされなかっただろう。シンジ君がパイロットでなくなった今でも、待遇が全く変わっていないのがその証拠だ』

マリ「…………どういう事、それ……」

曽根『それはまた別の話なんだが……とにかくだ』

マリ「…………」

曽根『松代で何があったのかはわからないが、参号機が今、普通の暴走状態でないのだけは確かだ。……だから、これは推測でしかないが、恐らく……』

マリ「…………まさか……」

曽根「多分……だがな」

マリ「……使徒……なの…………?」

アスカ「!?」

レイ「!?」

曽根『……そう。エヴァごと使徒に乗っ取られた可能性が高い。恐らく、ネルフもそうと見て迎撃の準備にあたっているはず……』

マリ「…………じゃあ…………ワンコ……君は……? 中に乗ってるワンコ君は……どうなるの……? もちろん助けるん……だよね……?」

曽根『………………』


マリ「曽根……?」

曽根『…………普通なら……そうするはずだ。……全うな組織なら人命を優先させるだろう。……全うな組織ならな……』


マリ「や……だ…………やめて……よ…………」カタカタ……


震え出すマリ……


658 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:35:17.77kY+ogfT50 (10/11)

ー 電話終了後 ー


アスカ「じゃあ、何……。参号機にはシンジが乗っていて……それで使徒に乗っ取られているって事……? それで……ネルフがその殲滅に向かってるってアンタ言うの……?」

レイ「マリ、答えて……」

マリ「………………」ポツリ

アスカ「聞こえないわよ!! どうなのよ、マリ!!」

マリ「…………多分……そう……」ポツリ

アスカ「多分って何よ!! いい加減な事言うんじゃないわよ!! ふざけないでっ!!」グイッ!!

レイ「マリ、きちんと答えて」ズイッ

マリ「…………わかんない、ごめん……」ポツリ

アスカ「謝って済む事じゃないわよ!! はっきりしなさいよ!! シンジは今どうなってるのよっ!! これからどうなるのよっ!!」

マリ「……だって……わかんないから…………。私だって……わかんないよ……。わかんないんだもん…………」ウッ、グシュッ、ポロポロ……

アスカ「っ…………!」

レイ「…………」


アスカ「……何……でよっ……」ウッ、グシュッ……

アスカ「……何でシンジがこんな事にならなきゃいけないのよ……」グスッ、ポロポロ……

アスカ「何で……」ポタポタ……


レイ「…………」ツー……

レイ「……涙…………」ポトッ……ポトッ……


659 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/12(水) 16:37:06.33kY+ogfT50 (11/11)

ー 同時刻 ー

ー ネルフ本部、司令室 ー


冬月「そうか、やはりか……。ああ、了解した。また何かわかり次第報告を頼む……。では……」ガチャリ……

ゲンドウ「…………」

冬月「碇……。やはり、例の未確認移動物体は参号機のようだな。現場へと向かわせた偵察機も、松代の職員からも同様の報告が上がっている。まず間違いあるまい」

ゲンドウ「……そうか」

冬月「それと……参号機は使徒に乗っ取られている可能性が高いとも言っていた。現場にいたオペレーターの一人からの報告だ。状況を考えるに、暴走よりは真実味がある」

ゲンドウ「…………」

冬月「監視対象物は依然進行中だ。方向からすると、こちらへと向かっている様だな。移動速度から計算して、東御付近で待ち受ける事が出来るだろう。そこに初号機を配置して迎撃させるつもりだが……」

冬月「しかし……」

ゲンドウ「…………」

冬月「……パイロットは、恐らく参号機に乗ったままだ」

ゲンドウ「…………」

冬月「もしも参号機が活動停止信号とエントリープラグの排出コードを受け付けなかった場合は、使徒を参号機と共に殲滅せねばならん事になる。そして、乗っ取られている以上、その可能性はかなり高い」

冬月「まだダミーシステムがどれ程のものかは未知数だが、しかし、これまでの実験データからすれば、恐らくは……」


ゲンドウ「冬月……初号機の出撃は一時取り止めさせろ。少し……時間をくれ」

冬月「わかった……。仕方あるまいな。幸い時間はまだあるが……」フゥ……

ゲンドウ「…………」


机に座り、俯いたままのゲンドウ……


冬月「……だが、碇。酷な事を言うようだが、相手が最新鋭のエヴァである以上、無傷でのパイロット救出は難しいと見るべきだぞ」

冬月「下手な決断をして、パイロット救出どころか、このネルフ全てを失う様な決断だけはしてくれるなよ……」


ゲンドウ「………………」


660以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/13(木) 01:51:31.22zyL3jKHR0 (1/1)

(アメリカ製だから参号機じゃなくて3号機だった気がする)


661 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:24:00.69eMc4nUh80 (1/11)

ー 松代での爆発事故より二時間後 ー

ー マリのマンション ー




アスカ「…………」

マリ「…………」

レイ「…………」


暗い表情でずっと俯いたままの二人……




662 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:27:07.93eMc4nUh80 (2/11)

アスカ「…………ねえ、マリ」ポツリ

マリ「…………何……?」ポツリ

レイ「…………」


アスカ「……もし……参号機が使徒に乗っ取られた状態で……シンジがそこにまだ乗っていたとしたら……」ポツリ

マリ「…………」

アスカ「…………シンジは……どうなるの……?」ポツリ

マリ「…………」

アスカ「…………助けないなんて事……ないわよね……?」ポツリ

マリ「…………」

アスカ「……ねえ、マリ…………」ポツリ

レイ「…………」


マリ「…………私にそれを言わせるの、式ちゃん……」ポツリ

アスカ「…………」

マリ「…………あいつら……自分の為なら、人の命なんかどうとも思ってないじゃん……」ポツリ

アスカ「…………」ウッ、グシュッ……

レイ「…………」


うつむき顔を背けるレイ…………


663 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:28:29.94eMc4nUh80 (3/11)

Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr


レイ「!!」
アスカ「!!」
マリ「!!」

レイ「ネルフの人から……!」

レイ「」ピッ

レイ「……はい、綾波です」

レイ「はい……。はい。ええ……」

レイ「……!?」

レイ「本当ですか? ……はい。……わかりました。ありがとうございます」

レイ「」ピッ



マリ「どうしたの、レイちゃん!?」

アスカ「何かいい知らせ!?」


664 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:29:36.33eMc4nUh80 (4/11)

レイ「……まだ、初号機は出撃していないわ。格納庫にある。作業員の人が教えてくれたから」

マリ「って、事は……」

アスカ「シンジはまだ無事……」

レイ「ええ、そう」コクッ

アスカ「良かった……!」ホッ……!

マリ「…………」


黙ったまま、何かを考える様なマリ


レイ「……?」

アスカ「マリ……?」

マリ「……ねえ、レイちゃん。それに、姫。よく聞いて」

レイ「…………」

アスカ「どうしたの、マリ……。急に」

マリ「初号機、まだネルフにあるんだよね……。でさ、レイちゃんは知ってるだろうけど、姫はダミーシステムの事については聞いてる?」

アスカ「ええ……一応は聞いてる……」

マリ「あれ使われたら、多分ワンコ君助けらんないよね……。前にベタニアベースにいた頃、ちょろっとだけできかけのデータ見たけど、アレ、見事に戦闘プログラムしかなかったもん……」

レイ「……そうね…………」

アスカ「…………」

マリ「だったらさ……アレ、使わせない様にするしかないじゃん? 私達でどうにかするしかないよね?」

アスカ「…………ああ、そういう事ね……」

レイ「……そう。理解したわ」

マリ「オーケー。じゃあやる事は決まったけど、それでみんないい? 構わない?」

アスカ「当ったり前じゃない! どうなろうと、シンジは絶対に助けるわよ!」

レイ「私も、それでいい」コクッ


マリ「じゃあ……やろっか。だよね?」

アスカ「そうね……」

レイ「ええ……」


うなずきあう三人……


665 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:31:02.58eMc4nUh80 (5/11)

ー 夕方近く ー

ー ネルフ本部、司令室 ー


青葉「……松代は……どうなったんだろうな」

マヤ「……救助部隊からの情報もこちらにはあまり来ないし……私、心配で……」グスッ……

青葉「……大丈夫さ。きっと赤木博士も葛城さんも無事だよ」

マヤ「……そうだといいんだけど…………」


プシュン……


アスカ「」トコトコ……


青葉「ん?」

マヤ「アスカ……? 何でここに……?」

青葉「あいつ……何やってんだよ、こんなとこに来て。命令があるまで、こっちに来るなって言われてたはずなのに」

マヤ「……私、ちょっと注意してきますね」スクッ

青葉「ああ、うん。頼んだ。命令違反の上、こんな時に来るなんて不謹慎にも程があるからな」

マヤ「そうですよね。先輩だってまだ無事かどうかわからないのに……」

マヤ「」タタタッ


青葉「ったく。どんな教育を受けたらあんな風に育つんだか。ホン」


\ きゃあっ!!  /


青葉「!?」


アスカ「ヘロー、マヤ。動くとどうなるか、言わなくてもわかるわよね?」チャキッ


拳銃をマヤに突きつけるアスカ


マヤ「な、何……するの!? やめて! アスカ!」

アスカ「うるさい、黙れ」グッ


拳銃を押し付けるアスカ


マヤ「や、やめて!! 落ち着いて!!」

アスカ「喋るなって言ってるでしょ! 妙な真似したら容赦なく撃つから、覚えときなさい。少なからずアンタらには恨みがあるし、脅しだと思わない事ね」グイッ

マヤ「!!」ビクッ!!


666 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:32:15.70eMc4nUh80 (6/11)

青葉「おい、ちょっとお前!! 何してるんだよ!!」


アスカ「…………」スッ


バンッ!!


青葉「っ!!」ビクッ!!


アスカ「今のは脅しだけど、次は間違いなく狙うから。喋らないで、耳障りだし」


青葉「…………」


アスカ「……何かしようとしたら撃つわよ。アタシの命令に従わなかった場合は、こいつを撃つから。いいわね?」

マヤ「や、やめて……。みんな従って……」ガタガタ……


青葉「……っ。わかった……」


アスカ「オーケー。お喋りもそこまでだから。これからは口を開くのも禁止よ。もしも、許可なく開いたら撃つから。本当なら、むしろ開いて欲しいぐらいだけどね」グイッ

マヤ「」ガタガタ……



青葉「…………」


667 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:33:39.73eMc4nUh80 (7/11)

ウィーン……


昇降機に乗って、発令所に姿を現す冬月とゲンドウ


冬月「……何の騒ぎだ、これは」

ゲンドウ「……どういう事だ」


アスカ「やっとおいでなすったわね。二人とも、妙な真似はしないでアタシの命令に従ってもらうわ。副司令はそこの壁に背中をつけて立っていて。司令はそっちに座っていなさい。もしも従わない場合は、こいつの命は保証しないから」

マヤ「し、司令……!」ガタガタ……


アスカ「喋るな」バンッ!!


マヤ「ひっ!!」


床に向けて発砲するアスカ


アスカ「見ての通りよ。従いなさい」


冬月「」トッ……

ゲンドウ「」ストッ……


冬月「…………何が目的だね」

ゲンドウ「…………」

アスカ「特に何も。アンタ達がしばらく何もしないでくれたらそれでいいわ」


冬月(…………?)

ゲンドウ「…………」


668 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:35:38.56eMc4nUh80 (8/11)

ー 格納庫 ー


レイ「」カタカタ
ノート型外部端末「」


レイ「ダミーシステム、解除。ハッチのロック、解除」カタカタ
ノート型外部端末「」


レイ「パーソナルデータまで書き換えられてなくて良かった……。これならすぐに発進出来る……」カタカタ……
ノート型外部端末「」


ガコッ……

初号機のエントリープラグが開く


レイ「……碇君、今、助けに行くから」


669 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:36:57.72eMc4nUh80 (9/11)

ー 地上、発着場 ー


ネルフ職員A「おい、どうなってる! あの輸送機の発進許可は出てないぞ!?」

ネルフ職員B「本部からの命令も連絡もこちらには来てない! すぐに本部に確認をとれ!」

ネルフ職員C「駄目です! 繋がりません! さっきから何度もコールしてるんですが!」

ネルフ職員D「繋がらないなんて事があるか! 連絡を取り続けろ!」

ネルフ職員E「 誰か直接本部に確認に迎え! 急げ!」




ー エヴァ専用輸送機内 ー


マリ「ちょろいもんだね。ネルフの警備のザルさは、ホントどこも筋金入りだよ」クルクルッ


拳銃を指で回すマリ


マリ「にしても、まさかベタニアベースの時させられていた事と、脱出する時に持ってきた拳銃がこんな所で役に立つとは思ってもなかったけどさ……」


Prrrrrr Prrrrrr


マリ「ん? レイちゃんからか」ピッ

マリ「もしもーし」

レイ『マリ。初号機は確保したわ。こちらはいつでも発進出来るから』

マリ「オッケー。こっちも足は確保したよ。んじゃ、これ以上めんどくさい事になる前にさっさと行きますか」

レイ『ええ……。初号機を地上へと射出させるわ』

マリ「ん、すぐ拾いに行くよ。もしも妨害とかあったらそっちで排除しといてね。よろぴくー」ピッ


670 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:38:06.58eMc4nUh80 (10/11)

ー ネルフ本部、発令所 ー


Prrrrrr Prrrrrr


アスカ「」ピッ

アスカ「もしもし」

マリ『姫。こっちの準備は終わったよ。パーソナルデータはそのままだったから、書き換えの必要はなかったみたい。そっちはどう?』

アスカ「オーケーよ。予定通り。発令所は押さえたから」

マリ『ん。さっすが、姫。じゃあ、こっちはもう行くね。そっちの事、頼んだよ。ワンコ君を助けるまで、あいつらに何もさせないでね』

アスカ「ええ。わかってる。……頼んだわよ、マリ」

マリ『……うん』

アスカ「……二人とも。シンジの事、必ず助けてね。信用してるから」

マリ『……わかってる。絶対助けるから』

アスカ「頼んだわよ」

マリ『……姫も無事でね。必ず後で迎えに行くから、それまで耐えててよ。四人揃ってなきゃ……意味ないんだからね。逃げる時、誰か一人欠けてても意味ないんだからね』

アスカ「大丈夫……。任せておいて。ヘマはしないわよ」

マリ『うん……。じゃあ本当にもう行くよ』

アスカ「ええ。……お願いよ、マリ、レイ」ピッ……


671 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/13(木) 08:39:17.45eMc4nUh80 (11/11)

>>660
後から気付いたんで、もうこのまま進めます
ついでに今日はここで投下終わり


672以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/13(木) 12:11:29.23fN8Pm1f+o (1/1)

青葉くらいなら手が滑ったくらいで打ってもいいんやで


673以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/13(木) 12:15:19.51AisbIIiu0 (1/1)

一発なら誤射ゆうこともあるしな


674以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/13(木) 15:38:17.17yE4qe0hW0 (1/1)

ア ス カ 覚 醒


675以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/13(木) 19:06:35.84jqFtJOUzo (1/1)

加治はベタニア時代、こんな時のために、マリに厳しくしていたと思いたい


676 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:32:56.796sC9/dYR0 (1/17)

ー 夕方遅く ー

ー ネルフ本部、発令所 ー


アスカ「……参号機の今の移動方向は?」チャキッ

マヤ「」ブルブル……



青葉「…………」カチャカチャ……

青葉「……今は少し方向を変えて、南へと進んでる。……野辺山辺りだ」



アスカ「そう」ピッ

アスカ「もしもし、レイ。マリに伝えて。野辺山付近に方向を変えるようにって」

レイ『ええ……わかったわ。そう伝えておく』

アスカ「また十五分後に連絡するわ。それじゃ」

レイ『気をつけて……』

アスカ「大丈夫よ。心配ないわ」ピッ……


677 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:36:42.556sC9/dYR0 (2/17)

冬月「…………」

ゲンドウ「…………」



アスカ「…………」

マヤ「」ガタガタ……



青葉「…………」



その他の職員は、全員、外に強制退去

発令所へと通じるドアにはロックがかけられ、その周辺の通路も完全封鎖された状態


678 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:37:48.236sC9/dYR0 (3/17)

冬月「……一つ聞かせてもらえんかね」


アスカ「お断りよ」チャキッ


冬月「…………」


アスカ「あと、勝手に喋らないで。黙ってなさい」


冬月「わかった……」フゥ……


ゲンドウ「…………」


679 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:38:56.216sC9/dYR0 (4/17)

ー 野辺山付近 ー




参号機「」ズシンッ……ズシンッ……



夕暮れの中、移動する参号機……


680 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:40:07.766sC9/dYR0 (5/17)

ー エヴァ専用輸送機内 ー


マリ「いた! ドンピシャ!」

レイ『見つけたの?』

マリ「うん。ようやく! 一旦旋回して、参号機の後ろ、そこから少し離れた場所に降下させるよ! 準備しといて!」

レイ『了解……』

マリ「レイちゃん、初号機はコードレスらしいから、時間は気にしないで。焦らず、確実にワンコ君を助けてよ!」

レイ『大丈夫、わかっているわ』

マリ「参号機の背中さえ取れれば、そこからナイフで無理矢理こじ開けてエントリープラグを出せるはず。私はその間に、どこか着地出来そうな場所を探しておくよ。だから、後は頼んだ、レイちゃん!」

レイ『ええ』コクッ

マリ「よしっ! 旋回終了! 降下までカウントダウン開始するよ! 切り離しまで、5、4、3、2、1……」

マリ「0!!」カチッ!!


681 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:41:28.466sC9/dYR0 (6/17)

ー ネルフ本部、発令所 ー


アスカ「青葉、映像がないんだから、アンタが逐一エヴァの状況を報告しなさい! 早く!」カチャッ

マヤ「あ、青葉君……お願い……」ガタガタ


青葉「了解……」

青葉「……さっき、初号機が内蔵電源に切り替わった。だから、恐らく輸送機から切り離されたと思われる」


アスカ「音声は?」チャキッ


青葉「今……繋ぐ」カチャカチャ


682 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:43:10.926sC9/dYR0 (7/17)

ー 野辺山付近 ー


初号機「」ズシャッ!!


地上へと降り立つエヴァ初号機


レイ『……!』


初号機「」ダダダダダッ!!


そして、参号機に向かって急速ダッシュ!


683 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:44:26.816sC9/dYR0 (8/17)

参号機「」ズシン、ズシン……

参号機「」ピクッ……

参号機「」クルッ……


それに気付き振り向く参号機


参号機「」ググッ……


体を屈めて戦闘態勢をとり……


参号機「」ダンッ!!


上空へと飛び上がる!!


684 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:45:45.216sC9/dYR0 (9/17)

レイ「……上!」


初号機「」チャキッ!!


ナイフを装備して待ち構えるレイ


飛び降りてくる参号機!


参号機「」ズシンッ!!

初号機「」ガキンッ!!


参号機の蹴りを受け止めるも……


レイ「……っ!!」


初号機「」ズシャッ……!!


衝撃に耐えきれず、後ろへと大きく態勢を崩す!


685 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:46:57.146sC9/dYR0 (10/17)

参号機「」ブンッ!!


その隙に、初号機めがけて腕を伸ばす参号機!


初号機「」メキョッ……!!

レイ「ぐっ……!!」


喉元を掴まれ……


参号機「」グイッ……

参号機「」ブンッ!!

初号機「」ズガッ……!!

レイ「あっ……!!!」


山へと押し付けられる……!


686 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:51:03.546sC9/dYR0 (11/17)

ー ネルフ本部、発令所 ー


アスカ「レイっ!? ちょっとレイ!! どうしたの!? 大丈夫!?」


レイ『大…丈夫……! まだ……やれ……きゃあっ!!』


アスカ「レイっ!? レイっ!!」


青葉「装甲部、頸椎付近に侵食発生……!」

青葉「神経接続が次々と断線していく……!」

青葉「……汚染も広がって……! まずい! 生命維持に支障発生! このままだとレイちゃんが!!」


アスカ「そんなっ!?」


冬月「いかん! 神経接続を28%までカットしろ! パイロットが死ぬぞ!」


アスカ「急いでっ!! 早くっ!!」チャキッ!!


青葉「わかっている! 今それをやってい!」カチャカチャ!!


ドンッ!!


レイ『っ……!! きゃあああっ!!』


アスカ「レイっ!? 何があったの!?」


青葉「」

青葉「……シ、シンクログラフ反転! パルス逆流! モニター反応なし!」ダラダラ


ゲンドウ「回路を遮断しろ! !」


青葉「はいっ!」カチャカチャ!!

青葉「!?」

青葉「信号拒絶! 受信しませんっ!」


ゲンドウ「レイの様子は!」


青葉「パイロットの生死不明! 依然として反応なし!!」


アスカ「ダメ! エントリープラグを強制射出して! このままだとレイが!!」


青葉「了解!」カチャカチャ!!


ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!!


青葉「!?」

青葉「ダメだっ! 受け付けないっ!…… 完全に制御不能!!」


アスカ「そんな! レイっ!! レイっ!!」


687 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:53:07.686sC9/dYR0 (12/17)

ー 野辺山 ー


参号機「」グググググッ……!!


初号機の首を締め続ける参号機……!!


初号機「」


沈黙したまま、何も反応がない初号機…………





























『……シンジを……返して!!!』


初号機「!」キラーンッ!!


初号機、再起動!!


688 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:54:30.896sC9/dYR0 (13/17)

ー ネルフ本部、発令所 ー


『……シンジを……返して!!!』



アスカ「……レイ……!?」


ゲンドウ「」ガタッ!!

ゲンドウ「ユイっっ!!!!」


思わず立ち上がるゲンドウ


アスカ「……ユイ…………?」


ぽつりと呟くアスカ


689 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:55:40.786sC9/dYR0 (14/17)

ー 野辺山 ー


初号機「グオオオオォォッ!!」


咆哮する初号機!


初号機「」グググッ……!!


参号機の腕を掴み……


バキッ!!


へし折る……!!


参号機「!?」


初号機「」ガシッ……!!

初号機「」ダンッ!!!


更に、参号機の胴体を掴み上げ、地面へと叩きつける!



初号機「」スッ……


腕を上げ……


初号機「」ズガッ!!!

初号機「」グググッ……バリッ、バキッ!!


エントリープラグを無理矢理引きずり出す! !


690 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:56:56.946sC9/dYR0 (15/17)

ー 数分後 ー

ー 野辺山付近 ー


マリ「」タタタタッ!!


輸送機を近くに着陸させ、走って現場へと辿り着いたマリ


マリ「ワンコ君はどうなったの!? レイちゃんは!?」タタタタッ

マリ「!?」

マリ「……うっ!!」


思わずその場で足を止めるマリ……




ズズーン!!!


飛び散るエヴァの装甲……

辺り周辺に撒き散らされるLCL……

無惨に破壊されていく参号機……


691 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 07:58:08.426sC9/dYR0 (16/17)

マリ「なに……これ…………」

マリ「レイ……ちゃん…………?」


マリ「……ワンコ君は…………?」


怯えながらも、辺りを見回すマリ……


マリ「……!?」

マリ「あれ、エントリープラグ!?」


少し離れた場所に転がっているエントリープラグを発見


マリ「……あれ、ワンコ君のだよね!? ワンコ君の…だよね!!」

マリ「」ダダダダダッ!!


急いで駆け出すマリ


692 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/14(金) 08:02:45.066sC9/dYR0 (17/17)

ー エントリープラグ近く ー


マリ「ワンコ君!! ワンコ君っ!!」ガンッ、ガンッ

マリ「今、助けるから!!」ガシッ!! バキッ!!


持っていたナイフで使徒の残骸と思われるものを切り離し、急いでハッチに手をかけるマリ


マリ「っ!!!」


ある程度冷えてはいたものの、熱さに顔を歪めるマリ


マリ「ぐっ!! ぎっっ!ぐぐっ!」グググッ


マリ「こんなの、平気だよ! 全然熱くなんか……ないっ!!」ガコッ!!


無理矢理ねじ開けるマリ


マリ「無事っ!! ワンコ君!!」ダッ!!


慌ててエントリープラグの中に飛び込む


シンジ「…………」


そこには気を失っているシンジの姿が



マリ「良かった! 無事だね、ワンコ君! 傷一つな……」

マリ「!!!」

マリ「……ワンコ君! ……その左目っ…………!!」


思わずその場で立ちすくむマリ…………


693以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/15(土) 02:00:16.58RSjt+G24o (1/1)

ああ...


694以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/15(土) 08:32:23.97StaQWYgI0 (1/1)

一体、ここからどうすればハッピーエンドになるんだ…


695以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/15(土) 14:00:43.14D7FA5vkAO (1/1)

一度LCLに溶けてリバースすればオケ



696 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 17:41:31.59oNsFZIW30 (1/12)

ー 数十分後 ー

ー ネルフ本部、発令所 ー


アスカ「レイ! 返事をして、レイ!! そっちの状況は!! アンタは無事なの!!」


『…………』


アスカ「レイ!! レイ!!」


Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr


アスカ「!?」

アスカ「マリ……!?」

アスカ「」ピッ!

アスカ「もしもし、マリ! アンタ、今どこにいるの!? レイは!? シンジは!?」

マリ『……レイちゃんは無事……。エントリープラグの中で気を失ってたから、今、背負って輸送機まで運んでるところ……』

アスカ「良かった……! それで、シンジは!? シンジは無事なの!?」

マリ『無事……と言えば、無事……。先に輸送機の中まで運んだからそこにいる……』

アスカ「無事と言えばって……。怪我でも……していたの……?」

マリ『………………』

アスカ「マリ……?」

マリ『もうすぐ輸送機に私も着くから……。また連絡する……。ちょっと……予定変わるかもしんない……』

アスカ「なにそれ、どうい」ブツッ


ツー、ツー、ツー……


アスカ「マリ…………?」


697 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 17:50:01.70oNsFZIW30 (2/12)

ー 輸送機内 ー


レイ「ん…………」

マリ「あっ、気が付いた、レイちゃん? ちょっと待って。はい、お水」サッ

レイ「ここ……は……?」

マリ「輸送機の中だよ。もうすぐ飛ぼうかと思ってたから、先に気がついてくれて良かった」

レイ「碇…君は……? あれから……どうなったの……?」

マリ「ワンコ君も中に乗ってる……。体に傷はない…………」

レイ「良かっ……た」ホッ……

マリ「でも……」

レイ「……?」

マリ「使徒に……侵食された痕が……」

レイ「!?」

マリ「左目が……。レイちゃんは見ない方がいい。かなり………………な状態になってるから……。まさかと思って、悪いと思ったけど、水もかけてみた。でも、意識を取り戻す気配がさっきから全くない……。精神汚染……されてる可能性が高いと思う……」

レイ「……そん……な……」

マリ「本当はこのまま四人で逃げるつもりだったけど、少し考えを変えなきゃいけない……。ワンコ君の今の状態は普通の病院じゃ治せないだろうから……悔しいけどネルフの医療班に頼るしかない……」

レイ「……だけど…………それじゃ碇君が…………」

マリ「うん……。どうされるか……わかんない…………。下手したら……処理……される可能性も…………」

レイ「!!」


698 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 17:51:37.38oNsFZIW30 (3/12)

ー ネルフ本部、発令所 ー


アスカ「…………」チャキッ……

マヤ「」ブルブル……


青葉「…………」


冬月「…………」

ゲンドウ「…………」


699 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 17:54:02.65oNsFZIW30 (4/12)

Prrrrrr Prrrrrr

ゲンドウ「…………」


アスカ「…………」

アスカ「わかってるでしょうけど、出ないでよ。切りなさい」チャキッ


ゲンドウ「」スッ……

ゲンドウ「」ピッ


アスカ「……どこからの電話?」


ゲンドウ「……内務省からだ」


アスカ「……そう」


ゲンドウ「…………」

ゲンドウ「式波・アスカ・ラングレー」


アスカ「勝手に口を開くんじゃないわよ!」チャキッ

ゲンドウ「……もうここらでやめておけ」

アスカ「はあ? アンタ、バカァ? 状況がわかってんの? 私に命令しないで!」

ゲンドウ「……内務省から直に私に電話が来るという事は、既に今の状況が外部にも漏れているという事だ。私からの返答がない今、ネルフの力だけでは問題解決がされないと見て、直接、事態に乗り込んでくる可能性が高い」

アスカ「……だから何なのよ?」チャキッ

ゲンドウ「……内務省を通じて戦略自衛隊に命令が行き、ここの制圧が決定されるという事だ。命令次第では、恐らく私や他の職員も含め、人質の安全など優先しない事も十分に有り得る。内務省やゼーレにとってはその方が都合がいいからな。この場にいる全員がどさくさに紛れて殺される可能性が高い」

アスカ「……!?」

ゲンドウ「……今ならまだ間に合うだろう。投降するか
、この場を放棄して逃げ出せ。無論、投降する場合は、そちらの命の保証はする」

アスカ「アタシを脅そうってえの、アンタは! 撃つわよ!」チャキッ!

ゲンドウ「……事実を述べたまでだ。下手に逃げれば、職員によって射殺される可能性もある。だが、投降すればその心配はない。それだけの事だ」

アスカ「っ……」


700 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 17:55:55.72oNsFZIW30 (5/12)

ー 輸送機内 ー


マリ「レイちゃん、よく聞いて。時間もあまりないから、今、この場で決断しなきゃいけない。姫も心配だけど、ワンコ君はもっと心配だよ。こうしている間にも精神汚染が進んで、人として戻れなくなる可能性だってあるんだから!」

レイ「……!」

マリ「ネルフの医療班はお金で動いてくれるって言ってたよね? 私の全財産を使ってもいいから、とにかくワンコ君の命の保証だけはしてもらって、それで向こうに託すか、それとも戦自にお願いして治療してくれるのを祈るかのどっちかだよ!」

マリ「レイちゃんには言ってなかったけど、私やワンコ君には戦自との繋がりがある。だから、頼めば何とかしてくれるかもしれない。でも、それで治せる保証は何もない。使徒に関しては、治せる可能性が一番高いのはやっぱりネルフしかないんだから」

マリ「レイちゃん、意見を聞かせて。私はワンコ君をネルフに預けるべきだと思ってる。他の病院に預けたってきっと無駄だし、そうこうしている間に取り返しのつかない事になるかもしんない! だから!」


レイ「…………私……は……」


701 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 17:57:44.71oNsFZIW30 (6/12)

ー ネルフ本部、発令所 ー


Prrrrrr Prrrrrr

アスカ「」サッ!

アスカ「もしもし、マリ! もしもし!!」

マリ『式ちゃん、そっちはまだ大丈夫!?』

アスカ「…………平気。あと何時間でも持ちこたえられるわよ。それより、シンジは!?」

マリ『……式ちゃん、悪いけど今から言う事をよく聞いて。私が何を言っても落ち着いて聞いてよ』

アスカ「…………え」

マリ『時間もないから手短に話すよ。そして、すぐに決断して。いいね』

アスカ「…………わかったわ。……何?」


702 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 18:06:16.46oNsFZIW30 (7/12)

ー 状況説明後 ー


アスカ「……使徒に」

マリ『そう。だから、さっき話したどっちかを選ばなきゃいけない。私とレイちゃんは、ネルフに預ける事で一致した。ワンコ君の事を考えたら、それしかないと思ったから。だから、式ちゃん!』

アスカ「…………」


アスカ「わかった……。それでいい。……あと、こっちにはもう来なくていいから。……アンタ達はそのまま逃げて」

マリ『ちょっと式ちゃん、何で!?』

アスカ「……実はもうこっちも手詰まりだったの。ここに来たらアンタ達まできっと捕まる。下手したら殺される。そうなる前にアタシは投降するから……。だから、もういいの……」

マリ『式ちゃん!!』

アスカ「シンジが助かったんなら、もうそれでいい。アンタ達まで捕まる事なんてない。……わかるでしょ、マリ……?」

マリ『良くないよ、式ちゃん!! 行く前に言ったじゃんか!! 全員揃ってなきゃ意味ないって!!』

アスカ「いいの。これでもういいの……。前にシンジに言った通り、シンジの事、アタシが守る事が出来た……。それだけで嬉しいから……」

マリ『良くないっ!! 諦めんなっ!!』

アスカ「マリ……。それに、レイ。アタシね……。今、笑えるんだ。辛かった事、これまで一杯あったけど……。これまでずっと泣いてばっかりだったけど……。それでも今、笑えるんだ……。だから……いいの」

マリ『姫っ!! ふざけんなっ!! これからでしょ!! 今までの分、全部、全部、取り戻すのはこれからっ!!』

アスカ「……じゃあね、マリ。上手く逃げてよ……。レイにもありがとうって伝えておいて。シンジを連れ戻してくれて、ありがとうって……」

マリ『姫っ!! そんなのダ』ブツッ……


ツー、ツー、ツー……





703 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 18:09:04.92oNsFZIW30 (8/12)

アスカ「…………」

アスカ「……ごめん、マリ、レイ」ポツリ


アスカ「」クルッ……

アスカ「……聞いてたでしょ。投降する……」

アスカ「銃も捨てる……」ポイッ……ガシャ……

アスカ「だから……」

アスカ「シンジの事を……助けて……」

アスカ「お願いだから……」ポロポロ……

アスカ「シンジだけは助けて……」エグッ、ポロポロ……



ゲンドウ「……わかった。約束する…………」

冬月「…………確かに、請け負った」


704 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 18:10:44.95oNsFZIW30 (9/12)

アスカ「」グシュッ、ヒック、ポロポロ……


冬月「……青葉君、彼女を捕まえてくれ。その後はここのロックを解除して彼女を独房に」

冬月「丁重に、傷つけないように頼む。私は内務省へと報告してくる」クルッ、スタスタ……


青葉「…………わかりました。強制ロック解除します」カチャカチャ……


マヤ「っ!!」キッ

マヤ「副司令、私はずっと脅されていたんですよ! なのにそれだけなんて!!」


ゲンドウ「……彼女は既に投降済みだ。反抗の意思もない。……気持ちはわかるが、堪えてくれ。伊吹二尉」


マヤ「……っ!!」

マヤ「……覚えていなさい、アスカ」キッ!!



アスカ「」グシュッ、エグッ……


青葉「ほら、行くぞ。……歩け」

アスカ「」ウッ、エグッ、ポロポロ……


705 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 18:11:54.36oNsFZIW30 (10/12)

ー 少し時間を遡って、輸送機内 ー


マリ「もしもし、姫っ!! 姫っ!!」


ツー、ツー、ツー……


マリ「くそっ!! 電源まで切ってるじゃんか!!」ガンッ!!


マリ「行くよ、レイちゃん!! とにかくネルフまですっ飛ばすから!! 初号機は救出の時に使えるから、悪いけど急いで出して!!」

レイ「ええ……!」タタタッ


Prrrrrr Prrrrrr


マリ「なにこんな時に!?」サッ!!

マリ「……曽根!?」

マリ「もしもし、何!! 何かあったの!?」


706 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 18:35:26.08oNsFZIW30 (11/12)

曽根『バカ野郎!! 何かあったのはこっちの台詞だ! お前、なにやってるんだ!! どうにも様子が変だと思ったら、何でお前がそこにいる!?』

マリ「ああ、そっちでも監視はしてたっけ……。その事は後で話すよ。今は時間がな」

曽根『バカ言え! とにかく輸送機を置いてその場からすぐに逃げろ! 今、戦自の航空部隊が動いていて、その輸送機が飛び次第、撃墜するよう命令が出ている! 殺されるぞ!!』

マリ「い!?」

曽根『自分達が何をしたかわかってるのか!? エヴァを強奪したんだぞ! それについてのネルフからの公式回答はまだ来ていないが、とはいえ、こちらに報告のないフライトを行って、当のネルフからは沈黙とくればその輸送機がエヴァ強奪の所属不明機と判断されるのは当然だろ!!』

マリ「うっ…………」

曽根『無論、エヴァは無理だが、こちらだって輸送機ぐらい墜とすのは訳ない! だから輸送機は絶対に飛ばすなっ! 包囲網はもう出来ているから、お前らは山の中にでも逃げ込んで隠れてろ! 後で俺が迎えに行ってやる!』

マリ「でも、それをしたら姫が!!」

曽根『何がしたいのかは知らんが、命の方が大事だろ!! それとも、死ぬのを覚悟で飛び出すのか!! 状況を考えろ、ガキ!!』

マリ「っ……!」

曽根『お前たちがいないとわかれば山狩りも多分行われるだろうが、エヴァがそこにある以上、下手に近づく事もしないだろうから、少しは時間が稼げる! いいから黙って言う通りにするんだ!! 急げっ!!』

マリ「…………わかっ……た。……そうする」

曽根『携帯は電源を切っておけよ。ないとは思うが居場所を割り出される可能性もある。一時間後にもう一度だけ電源を入れて、俺に電話しろ。その後の事はこちらでどうにかしてやる』

マリ「……その言葉……信用して、いいんだよね……?」

曽根『ああ。シンジ君と戦自との繋がりを知っているのはこちらでもごく一部の人間だけだから、それが公に露見したらこっちもまずいんだ。仮に、どんなにお前達を助けたくないと思っていても、助けざるを得ない』

マリ「……わかった。その言い方、嫌いじゃないよ。信用する」

曽根『そうしてくれ。じゃあな』ブツッ


ツー、ツー、ツー……


マリ「…………」


マリ「……姫、ごめん。ちょっとだけ……遅くなる……」

マリ「でも、後で必ず助けに行くからね……! 絶対に……!!」


707 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/15(土) 18:38:59.75oNsFZIW30 (12/12)

ー レイに連絡して呼び戻し、状況を説明した後 ー


レイ「……そう。逃げるしかないのね」

マリ「うん。だから、ワンコ君は私が背負ってくから、レイちゃんは先に立って道案内を……」

レイ「……マリ」

マリ「何? 曽根の話だと、本当に時間がないみたいだから急がないと」

レイ「あなただけ……逃げて」

マリ「は!?」

レイ「碇君は、ネルフに預ける事が決まったから、私から連絡を取って直接医療班に頼んでおいた方がいい。松代の救助部隊がまだ近くにいるはずだから、ここで私はその人達が来るのを待つわ。そちらの方が確実だから」

レイ「それに、それまでの間、碇君の事が心配だから私はここに残る。初号機の中に入れば、碇君も私も安全だし」

マリ「そりゃそうかもしれないけど、でも……それだとレイちゃんが捕まっちゃうじゃない!」

レイ「碇君を助ける方が大事……。それに私が捕まっても、きっとそこまで酷い事はされないと思う」

マリ「そんなのわかんないよ! レイちゃんだって、何されるか!」

レイ「……あなたは逃げて。それで……後からアスカと私を助けて……。それが出来るのはあなたしかいないの。だから」

マリ「…………」


マリ「何なんだろうね……。こんなんばっかじゃん……ずっと……」ポツリ……

マリ「……辛い事から……ようやく逃げられたと思ったら……またこんな風になってさ……」ポツリ……

マリ「みんなでさ……これからは楽しくやれるって思ってたのに……まただよ……」ポロポロ……

マリ「何でっ……!」グシュッ、ポロポロ……


レイ「……マリ。時間が……ないから」


マリ「わかってる……!」ゴシゴシ……

マリ「レイちゃんの言う通り、私は一旦逃げるから。だから、ワンコ君の事を頼んだよ。後から二人は絶対に助けるから……!」

レイ「ええ。……お願い」コクッ……


708以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/16(日) 16:30:41.302b/TZakg0 (1/1)

今後の展開が予想できない



709 ◆QgxJFrMrW31O2014/03/20(木) 10:13:46.76BKOVi0yp0 (1/1)

しばらく諸事情により更新遅れます
気長にお待ちください


710以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/20(木) 17:39:50.42XuipLOJl0 (1/1)

ゆっくり待ちます!


711以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/21(金) 02:50:44.889GFZHfhJ0 (1/3)

60日以内に更新が無かったら許さないからな!


712以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/21(金) 02:51:38.099GFZHfhJ0 (2/3)

60日以内に更新が無かったら許さないからな!


713以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/21(金) 02:52:08.589GFZHfhJ0 (3/3)

60日以内に更新が無かったら許さないからな!


714以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/21(金) 21:44:55.43ZqlhfKUd0 (1/1)

>>711~>>713
珍しい3連投いただきました!!!


715以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/22(土) 00:26:01.17mtP19oi00 (1/1)

更新!更新!


716以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/23(日) 13:49:47.66z19Ufmsp0 (1/1)

一時間以上PCでこれ見てた気がするわwwwwww
こっからのハッピーエンドは全く想像できない・・・


717以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/24(月) 01:49:14.70FE6f+40R0 (1/1)

sageろよksども


718以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/26(水) 10:12:32.67UPjAnASS0 (1/1)

今更だけどageごめん


719以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/29(土) 04:38:21.62FxfA1f/B0 (1/1)

初めから全部みてます
面白いので頑張ってください


720以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/30(日) 00:33:42.46PftlYgbl0 (1/1)

>>719
暇ならBADエンド版をループ見しよう


721以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします2014/03/31(月) 19:33:35.77FmNERV5l0 (1/1)

IDがNERVなので