604 ◆phFWXDIq6U2013/09/03(火) 23:16:27.19JlgDRo1Ao (11/16)


まこ「雨も上がったみたいじゃな」
京太郎「みたいですね。これでようやく動けそうです」

まこの言葉に京太郎が意識を空へと向ければ、そこはもう大分、明るくなっていた。
雲が散り散りになっているその光景は、最早、晴れ間とは呼べないだろう。
赤く染まった空に微かに雲が残っているものへと変わったそれは何とも晴れやかなものだった。
ついさっきまでどしゃ降りであった事が信じられないほどのそれに京太郎はそっと肩を落としてから立ち上がる。

京太郎「んじゃ、とりあえずコンビニに行きましょうか」
まこ「そうじゃな。このままじゃと風邪を引くじゃろうし」

天気が一気に晴れへと傾いたとは言え、二人の身体はびしょ濡れのままだ。
多少、水気が落ちてきてはいるが、張り付いたそれは二人の体温を奪っている。
勿論、動けるようになった以上、急いで帰るつもりだが、まだまだまこの家には距離があった。
それならば先にコンビニに寄ってタオルの一つでも買いたいというのが二人の本音である。

まこ「(とは言え…それだけじゃなぁ…)」

勿論、まこはそんな応急処置でどうにかなるだろう。
しかし、京太郎の方もまたそれでどうにかなるというのはあまりにも楽観的だ。
ここから京太郎の家までは、彼女の家の二倍近い距離があるのだから。
幾ら応急処置をしたところで、家に帰る前に体温を奪われきって風邪を引きかねない。


605 ◆phFWXDIq6U2013/09/03(火) 23:21:26.42JlgDRo1Ao (12/16)


まこ「(大事な後輩に風邪を引かせる訳にはいかんし…)」

まこにとって京太郎は大事な後輩であり、実家の大事な労働力であるのだ。
その体調の是非は決して軽視出来るものではない。
ましてや、彼は今日、まこの為に数多くの骨を折ってくれたのである。
その気遣いの方向は決して正しい訳ではなかったが、さりとてそれに助かったのは事実だ。
そう思う彼女にとって、このまま彼を家へと帰す選択というのは決して出来るものじゃない。

まこ「(…よし)」

ならば、どうするかを吟味し続けたまこの中で、数分後、答えが出た。
それは決して容易いものではないが、背に腹は代えられない。
幾ら京太郎が頻繁に家へとあがる客人とは言え、そこは未だ招いた事のないものだったのだから。
しかし、どれだけ考えてもそれ以上の答えはない。
そう思ったまこがゆっくりとその口を開いて… ――

まこ「京太郎。うちに入ったら、まず風呂に入れ」
京太郎「…はい?」




………



……






606以下、新鯖からお送りいたします2013/09/03(火) 23:22:42.77YGAtVGJzo (1/1)

一瞬、増えるワカメ…と思ってしまった


607 ◆phFWXDIq6U2013/09/03(火) 23:27:43.04JlgDRo1Ao (13/16)


京太郎「(俺は何をやってるんだろ…)」

京太郎がそう思うのは、染谷邸の浴室の中だった。
薄紅色の上品なタイルで覆われたそこは決して綺麗にされている。
家の外観からは想像も出来ないくらいにしっかりとしているそれは、普段から掃除されている証だろう。
水垢一つ残っていないその空間の中で、京太郎は裸になりながら、身を縮こまらせていた。

京太郎「(いや…俺にだって分かってるんだ。これが一番だって事くらい)」

実家に帰れば着替えがあるまこと違い、彼に着替えはない。
その身体を多少拭いたところで服が吸い込んだ水分が体温を奪っていくだろう。
それを防ぐ為にもとっととそれを脱ぎ去って、風呂で身体を温めるべきなのは理解できていた。
しかし、異性である先輩が日常的に利用している浴室だと思うとどうにも場違い感は拭えない。
そうやって先を譲ってくれたまこに押し切られた事も含めて、どうしてこうなってしまったとついつい思ってしまうくらいに。

京太郎「(とりあえず…さっさと上がらないと)」

勿論、まこは既に身体を拭いて、着替えている事だろう。
だが、それで失った体温がすぐさま戻ってくるかというと決してそうではない。
彼女もまたびしょ濡れになっていた以上、出来るだけ早くシャワーを浴びたいだろう。
そう理解しながら京太郎はぎこちなく、シャワーコックをひねり、温水の雨を降らせた。


608 ◆phFWXDIq6U2013/09/03(火) 23:34:46.77JlgDRo1Ao (14/16)


京太郎「(あー…温かい…)」

それに身体がジュッと熱くなっていくのを感じながら、京太郎は筋肉を緩ませる。
どうやら自分の身体は思っていた以上に冷え込み、温かさを求めていたらしい。
それが一気に充足へと傾く感覚に、ついついため息を漏らしてしまう。
出来れば、ずっとこのままで居たいと思うほどの心地良さに、しかし、何時までも浸っている訳にはいかない。
そう自分を戒めた京太郎はシャワーを止め、シャンプーで髪を洗い始める。

京太郎「(まぁ…髪は良いんだけれどさ…)」

程よく泡だった髪を再び温水で洗い流した京太郎。
その前に現れるのは青とオレンジの2つのスポンジであった。
明らかに別の用途に使われているであろうそれに京太郎は逡巡を覚える。
勿論、それは彼がどちらを使って良いかが分からなかったからだ。

京太郎「(…このどちらかを先輩が使っているんだよな…)」

恐らくその二つは女性と男性とで使い分けされているものなのだろう。
しかし、その色からはどちらがどちらなのかまったく想像がつかない。
一般的に青と言えば男性用のイメージではあるが、決して女性が使わないという訳ではないのだから。
オレンジもまた中性的な色で、男女どちらが使っていても決しておかしくはない。


609 ◆phFWXDIq6U2013/09/03(火) 23:44:07.22JlgDRo1Ao (15/16)


京太郎「(い、いや…勿論、変な意味じゃない。意味じゃないんだけどさ!)」

しかし、普段はサバサバとした先輩に停留所でドキリとしてしまった所為だろうか。
そのどちらかをまこが日常的に使っていると思うと、妙にドキドキしてしまう。
それと同時に京太郎の脳裏に浮かんでくるのは、それで珠の肌を磨いているまこの姿だ。
まるで尊敬する先輩を自分で穢すようなその想像に自己嫌悪を浮かべながらも、京太郎の頭からそれが消える事はない。

まこ「湯加減はどうじゃ?」
京太郎「うわぁ!?」

だからこそ、唐突に扉越しに話しかけられたまこの言葉に、京太郎はオーバーなリアクションを返してしまう。
浴室内に響くそれはキンキンと京太郎の耳を慣らし、微かな不快感を沸き上がらせた。
しかし、それさえも気にならないくらい、今の京太郎は狼狽し、そして混乱している。
もしかして、自分の妄想のことがバレてしまったのではないだろうか。
そんなあり得ない想像すら沸き上がらせ、京太郎はその身を硬く強張らせる。

まこ「どうした?」
京太郎「い、いや、なんでもないです」

そんな京太郎の感情など露ほども知らないまこは曇りガラスがはめ込まれた扉の前でそっと首を傾げた。
幼い頃から雀荘にかようあけすけな年頃の男性 ―― 所謂、おっさんに接してきた彼女はある程度、シモネタに強い。
しかし、その半面、彼女は青少年と呼ばれる年頃の男性に対して、接した経験が殆どないのだ。
自然、思春期の男子特有のドキドキ感を理解する事は出来ず、その思考は虚しくから回る。


610 ◆phFWXDIq6U2013/09/03(火) 23:54:25.76JlgDRo1Ao (16/16)


まこ「(まぁ、他人の家の風呂って言うのは緊張するもんじゃしな)」

そう結論づけながら、まこはそっと扉の横にパネルに目を向けた。
そこには彼女の父好みの高めの温度が設定されている。
まこもまたそれに慣れているとは言え、もしかしたら京太郎には辛い熱さかもしれない。

まこ「もうちょっと温めの方がええか?」
京太郎「いや…実はまだ浸かってなくて…」
まこ「なんじゃ。遠慮しとるんか?」
京太郎「ま…まぁ…それもあると言いますか…」

そう思ったまこの疑問に、京太郎は要領を得ない言葉で返す。
まさか二つのスポンジのどちらかをまこが使っているか分からないから手が止まっているだなんて言えないのだ。
しかし、ここでまこが来てくれたのは、千載一遇の好機である。
湧き上がる羞恥心にヘタレそうになる自分にそう言い聞かせながら、京太郎はゆっくりと口を開いた。

京太郎「えっと、つかぬ事をお聞きしますが…」
まこ「ん?」
京太郎「俺はどっちのスポンジを使えば良いんでしょう…?」
まこ「あっ」

京太郎の言葉にようやくまこは彼の躊躇いの理由を知った。
そう言えば伝えていなかったと今更ながらに思いながら、まこは肩を落とす。
それは勿論、性差に関してあまりにも疎い自分に対して、自嘲を覚えたからである。
結果、京太郎にかかさなくても良い恥までかかせてしまった。
そんな後悔に浸ろうとする心を感じながら、まこはそっと首を振るう。


611 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 00:06:14.40cTLGLVxBo (1/13)


まこ「(そういうのが自信がないってゆわれる所以なんじゃ)」

勿論、後悔を忘れてはいけない。
しかし、失敗に一々、自嘲を覚えていればその分、歩みは遅くなってしまう。
折角、変わるように頑張ると言ったばかりなのに、こんな事ではいけない。
そう自分を戒めながら自嘲を振り払ったまこは、彼に応えるべく口を開いた。

まこ「オレンジの方を使えばええ」
京太郎「うっす。了解です」

そう応える京太郎の声には安堵が強く現れていた。
本格的に分からなければ最終手段として自分の手を使うつもりだったが、それはいい気分ではない。
正直、ヌルヌルした自分の手が身体を這いまわると想像しただけで、妙な吐き気を覚えるくらいだ。
そんな彼にとって、スポンジの使用許可が降りた事はかなり有難い。

まこ「後、ぼちぼち浸かってええぞ」
京太郎「いや、でも…」
まこ「風邪でも引かれたら大変じゃしな」

しかし、次いで放たれたまこの言葉に京太郎はありがたすぎて遠慮を覚えてしまう。
勿論、シャワー程度では冷えた身体は温まり切らず、湯船にゆっくりと浸かりたいと思っているのは事実だ。
だが、自分の後ろにはまだまこが身体を冷やして待っているのである。
それを知りながらも、一人だけじっくりと浴槽に使っている訳にはいかない。
元々、ここはまこの家の浴室だという事もあって早めに明け渡したいというのが京太郎の本音であた。


612 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 00:13:39.79cTLGLVxBo (2/13)


まこ「後、着替えここに置いとくぞ」
京太郎「あ…ちょ…っ!」

そんな彼の返事を聞かず、まこはそっと脱衣所のカゴに着替えを置いた。
父のパジャマから拝借したそれは比較的がっちりとしている京太郎の体格でも大丈夫だろう。
まぁ、大丈夫でなければ、また次のヤツを見繕って来れば良い。
そう判断しながら、まこはそっと京太郎の服を掴み、洗濯機へと放り込む。

まこ「元の服は乾燥に回すしもうちょい待っとれ」
京太郎「え……?」

そのまま手慣れた様子で脱水を選択するまこの言葉に、京太郎は驚きの声を返す。
何せ、それは自分の服を、まこが手にとった証なのだから。
勿論、そこにはさっきまで自分が履いていたトランクスも入っているだろう。
異性の先輩に下着を見られたというショックは、健全な男子高校生にとってはあまりにも大きすぎるものだった。

まこ「じゃ、ゆっくりな」

そう言って脱衣所から出て行く彼女には狼狽はない。
忙しい両親に変わって洗濯をする事も多い彼女にとって、それはただの布なのだ。
父親のものと何も変わらず、普通に洗濯槽へと入れる事が出来たのである。
勿論、まったく意識していない訳ではないが、それは京太郎のものよりも遥かに弱いものであった。


613 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 00:22:12.13cTLGLVxBo (3/13)


京太郎「うあー…」

そんな彼女とは対照的に、ショックから立ち直った京太郎の心は羞恥心で一杯だった。
一体、これからどんな顔をしてまこに会えば良いのか分からないくらいである。
勿論、まこが平常運転であった以上、変に意識してしまう方がおかしいのだろう。
だが、胸に湧き上がるそれらはどうしても彼の意識をかき乱し、顔を赤く染めるのだ。

京太郎「(とりあえず…とっとと身体を洗おう…)」

このまま上がってしまったら、折角、用意してくれた着替えまで汚してしまう事になる。
そちらへと京太郎は意識を動かしながら、ゆっくりとスポンジで身体を洗っていく。
しかし、その最中も、下着を見られた恥ずかしさが胸をつき、時々、腕が止まってしまう。
結果、彼が身体を洗い終え、浴槽に身を浸した頃には普段の数倍もの時間が経過していた。

京太郎「はぁ…あぁ…」

そんな彼にとって幸いだったのは、熱めに沸かされた風呂が身体に良く効いた事だろう。
シャワーのそれとは比べ物にならないほど身体があたたまるその感覚に彼は羞恥心を忘れる事が出来た。
そのまま浴槽に背を預けながら、天井を見上げた彼は、ほぅと熱いため息を吐く。
倦怠感混じりのそれお湯の熱さに身体から疲労が抜けている証だろう。
それにまこに一つ感謝の感情を抱きながら、京太郎は内心で100を数え始めた。


614 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 00:33:55.33cTLGLVxBo (4/13)

中途半端なところだけどそろそろ眠気がマッハなので終わりー
やっぱり2日も空くとペース堕ちるな…どうにかしないと

>>592
Janeインストールしなおした時に設定の仕方幾つか忘れちゃってた
コテハン記憶の位置もようやくわかったのでこれから酉外れはないと思います
お騒がせしました

>>594
あー咲キャラ全般ならまだやりたい人が出てくるかな
咲キャラ全般でやりたいorやれそうなキャラがいるなら立候補してくれると嬉しい
後、能力に関しては特にバランス取るつもりはないんで原作らしければ何でも良いです
今考えてる天照とか

照:自身が行う最初の判定を放棄(失敗)する事で発動。理論値を超える度に、判定値に+1ずつされていく。判定値が理論値を超えなければ元に戻る。

小蒔:セッション開始前に数字を一つ宣言する。自身の判定前にGMがサイコロを振り、その数字が出れば自動的に判定がクリティカルになる(1セッション二回まで)

淡:マスターの判定に五回まで-1の補正をかけ、また発動した次の自身の判定値に+1する。

衣:マスターの判定時、クリティカルを無効にする。自身が15/30/45回目の判定に参加する際、自動的にクリティカルになる。

とか調整する気欠片もないようなものばっかりだし。


615以下、新鯖からお送りいたします2013/09/04(水) 00:40:35.797lZVuATVo (1/1)

乙です 安価スレは>>1と読者が試行錯誤しながら進める面も
少しはあるしこれが終わったら是非やって欲しいです


616以下、新鯖からお送りいたします2013/09/04(水) 00:48:16.85qfBNg7LDo (1/1)


まあ取れる要素を絞らないといけない部分が目立つよね


617以下、新鯖からお送りいたします2013/09/04(水) 00:57:07.09bPYRi3yZ0 (1/1)

乙ー

衣はサイコロ回れぇ!と判定時いえる能力つけてください()


618以下、新鯖からお送りいたします2013/09/04(水) 03:29:04.975PcS25Kb0 (1/1)

チュートリアルの戦闘でGMのクリ連打で死んだ思い出
そしてお腹に花が咲いた


619 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 22:50:30.98cTLGLVxBo (5/13)


京太郎「はぁ…さっぱりした」

風呂から上がった頃には、京太郎の身体はもう十分温まっていた。
ポカポカと熱が肌の下で蠢き、心地よさがジィンと広がっている。
ついさっきまで震えそうなほど冷えていたとは思えない温まった身体を、京太郎は丁寧に拭いていく。
勿論、下手に時間を掛けた以上、今すぐ出て行ってまこと後退してやりたいが、彼は着替えを貸してもらう側なのだ。
下手に濡らして汚す訳にはいかないと逸る気持ちを抑えながら、京太郎は身体から水気をタオルへと移す。

京太郎「(で…着替えは…多分、これか)」

そうやって身体を拭き終わった京太郎の視界に映ったのは群青色の甚平であった。
これからの時期にはぴったりなそれは見るからに涼しげで、どことなく情緒のようなものを感じさせる。
腕を通してみたが、体格もそれほど違いはなく、鏡の中の自分は特に違和感のないものであった。
これからの時期だと意外と部屋着として甚平を使うのも良いかもしれない。
そんな事を思いながら、京太郎はそっと脱衣所の扉を開き、まこが待ってくれているであろうリビングへと足を踏み入れた。

京太郎「すみません。お待たせしました」
まこ「おう。あがったか」

京太郎がリビングに入った時、彼女はキッチンで鍋をかき回している最中だった。
しかし、まだ夕食を作るのには時間が早く、まことて今すぐ風呂に入りたい状況のはずである。
料理の準備ならばまだしも、そうやって鍋をかき回すほど本格的なものは作れないはずだ。
一体、何をしているのだろうと首を傾げながら、京太郎がそちらへと近づく。


620 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 22:59:18.54cTLGLVxBo (6/13)


まこ「ん?なんじゃ。気になるんか」
京太郎「えぇ…まぁ…」
まこ「ふふ…じゃあ、好きな方を選ばええ」
京太郎「…選ぶ?」

そう言いながらまこの手元を覗きこんだ彼の視界に二つのパックが目に入る。
ぐつぐつと煮えたぎるお湯の中で微かに動くそこにはキノコ雑炊という文字と、卵雑炊という商品名が書いてあった。
どうやら、まこは夕食を作っていた訳ではなく、お互いの身体を温める為の間食を用意してくれていたらしい。
気遣いの仕方に隙がない彼女に京太郎は感心とも感謝とも言い切れない感情を抱いた瞬間、まこがそっと彼の脇を通り過ぎる。

まこ「時間も時間じゃし、腹も減っとるじゃろ」
京太郎「あ…はい」

実際、京太郎の身体はそれなりに食べ物に飢えていた。
スイーツパラダイスでお腹一杯にはなったものの、冷えた身体を温めるには新しくカロリーが必要であったのである。
勿論、夕食もあるので本格的に食べる訳にはいかないが、ちょっとだけ口寂しい。
それを満たすには目の前の雑炊のレトルトはまさに最適と言っても良いものだった。

まこ「それじゃわしゃぁ風呂に入ってくるが…覗くなよ?」
京太郎「覗きませんよ」

さっきはドキドキしたものの、京太郎にとってまこは異性である以前に先輩だ。
その上、先に風呂を譲ってもらったり、食事まで準備してもらったりと良くしてもらっているのである。
そんな彼女の入浴を覗くだなんて、恩をアダで返すような真似は出来ない。
それこそ不遜であるという感情さえ抱きながら、京太郎は首を横へと振った。


621 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 23:07:51.55cTLGLVxBo (7/13)


まこ「なんじゃ残念」
京太郎「えっ?」

しかし、そんな京太郎に帰ってきたのはまこの意外な言葉であった。
まるで自分が覗いて欲しいと言うようなそれに彼の胸はドキリと跳ねる。
彼の意識がどうであれば、既にその身体はまこの事を異性として認識し始めているのだ。
その艶やかな髪に水気を乗せて、唇を尖らせるその姿に妙な期待と興奮を覚えてしまう。

まこ「それを弱みに一生こき使ってやれると思うたのに」
京太郎「俺は今、絶対に染谷先輩が入浴してる場所には近づかないと心に決めました」

だが、その期待はまこの言葉であっさりと霧散し、散り散りになってしまう。
それを肌で感じながら、京太郎はそっと肩を落とした。
勿論、それが冗談であるという事くらい、意識は理解していたのである。
だが、それでも根が青少年である彼はほんの少しだけ期待していたのだ。
そんな純情を弄ぶようなまこのそれに徒労感めいたものを感じてしまう。

まこ「(ま…まぁ…そうなるわなぁ…)」

そんな彼にクスリと笑いながら、彼女の内心は複雑なものだった。
勿論、京太郎に覗いて欲しくてそんな事を言った訳じゃない。
それは単純にいつも通りのやりとりがしたくて放った言葉なのだ。
しかし、それでもまったく狼狽を浮かべない彼に肩すかしめいたものを感じてしまう。
それは何だかんだ言いながらも、自分が女性として意識されている事をまこが望んでいたからだ。


622 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 23:17:05.68cTLGLVxBo (8/13)


まこ「(仕方ない。だって、わしゃあ…こんなんじゃしな)」

その感情はまだ決して大きなものではない。
寧ろ、それ本来が持つイメージとは裏腹に、まこの感情は小さく、まだ根を張り始めたばかりだ。
しかし、今日一日で、京太郎という後輩のイメージを見つめなおした彼女にとって、それは決して無視出来るものではない。
彼もまた自分と同じように意識してくれたら良いと、まこはそんな風に思い始めていたのだ。

まこ「とにかく…行ってくる。雑炊は好きな方を適当に皿に移して食べてええ」
京太郎「分かりました。ありがとうございます」

そんな感情から逃げるように、まこはそう言いながら背を向ける。
その背に御礼の言葉を放つ後輩に手を振りながら、彼女は脱衣所へと逃げ込んだ。
瞬間、そっと肩を落とす理由に、まこは未だ気づいては居ない。
さっきの自分が胸中に浮かべたそれもからかいがいのない後輩に対するものだと思い込んでいる。
しかし、彼女の心は明確に変化し、その色を変え始めていた。

まこ「(意外と…甚平似合っとったなぁ…)」

その手で自分のパジャマを脱ぎながら、まこが脳裏に京太郎の姿を真っ先に思い浮かべるのもそれが理由だ。
金髪で軽そうな外見をしているのに、群青色のそれは意外なくらい彼の顔立ちに合っている。
彼自身の体格が良く、また肉付きもしっかりしているという事も無関係ではないのだろう。
薄布から見える引き締まった身体は、彼には希薄な男性的雰囲気を強めていた。
その上、普段よりも少しは真面目そうに見えるのだから、見慣れているまこの目から見ても格好良く思える。


623 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 23:25:53.53cTLGLVxBo (9/13)


まこ「(それに比べてわしは…)」

パジャマを脱ぎ去ったまこはそっと洗面台の鏡と向き合った。
そこに居たのはすっきりとした顔立ちの美少女である。
そのスタイルも細身でありながら、意外と出るところは出ていた。
勿論、巨乳というほどではないにせよ、標準くらいはあるだろう。
普段から実家の手伝いをして動き回っているそのウェストはキュっと括れ、腰に向けて緩やかなカーブを描いていた。
決して女性的ではないにせよ、女性らしい身体つき。
けれど、まこはそれを認める事がどうしても出来なかった。

まこ「(なーんも面白味のない…)」

女性としては間違いなく及第点をつけられる自身の身体。
だが、それを素直に受け止める事が出来ないのは身近に久や和と言った魅力あふれる同性がいるからだろう。
久のように蠱惑的な足や、和のように豊満なバストを持っていない自分がまこはどうにも劣って見えるのだ。
勿論、そんなものなどなくてもまこの身体は高いレベルで完成されており、男に欲情を与える事だろう。
だが、そうやって裸を見せる相手などいない彼女にとって、それはまったく未知のものであるのだ。

まこ「(とりあえず…入るか)」

何時までも自分とにらめっこしている訳にはいかない。
そうやって見つめ合っている間に自分の身体が魅力的になるならまだしもそんな事はないのだから。
それに飄々としているものの、まこの身体は未だ冷えているままなのだ。
べたついた感覚もまだ肌に残っているし、さっさとシャワーを浴びたい。
そんな欲求に従って、まこは浴室の扉を開き、中へと一歩踏み出した。


624 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 23:34:51.36cTLGLVxBo (10/13)


京太郎「んー…旨ぇ…」

そんなまこの様子など欠片も知らない京太郎は一人リビングで座り、雑炊へと舌鼓を打つ。
丁度良い感じに出汁が効いたそれは、温まった身体をさらに温めてくれるものだった。
お陰でじっとりと肌に汗が浮かぶが、それは決して不愉快ではない。
実際、彼はその感覚に怯む事はなく、一皿分の雑炊をあっという間に完食して見せた。

京太郎「(まぁ…問題は…だな)」

それをシンクへと運び、手慣れた様子で洗いながら京太郎は考える。
既に雑炊を平らげてしまった以上、彼にはもうやる事がないのだ。
勿論、リビングにはテレビがあり、それをつけていても、きっとまこは許してくれるだろう。
だが、先輩の実家で一人テレビをつけてそれに没頭出来ないくらいには、京太郎はまこに敬愛の感情を抱いていた。

京太郎「(つっても…何をやるよ)」

京太郎たちが走って抱えてきた荷物は、既にまこの手によって水気を拭き取られ、大事そうに置いてある。
コンビニで買ったレインコートも玄関に干され、きちんと処理されていた。
自分が風呂でゆっくりとしている間に、するべき事を終えてくれたその手際の良さに京太郎は幾度となく助けられている。
しかし、今だけはそれが恨めしくなるくらい、彼にはやる事がなかった。


625 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 23:42:47.58cTLGLVxBo (11/13)


京太郎「(つか…今、先輩が風呂に入っているんだよな…)」

とは言え、そうやってやる事がなくなると、京太郎はそんな邪な考えを浮かべてしまう。
幾ら彼が彼女に敬意を抱いていると言っても、それはあくまでも意識レベルでの事だ。
若い本能に忠実な身体は既にまこの事を異性として認識しているのである。
自然、美少女と言っても過言ではない先輩がすぐそこで風呂に入っているというシチュエーションにドキドキしたものを感じてしまうのだ。

京太郎「(だぁ~!そういうの止めろよ…!節操ねぇんだから!!)」

そんな自分に自己嫌悪を感じるのは、京太郎には既に特別な女性がいるからだろう。
原村和というこれまた一流の美少女に、彼は懸想をし続けていた。
勿論、そういったものに疎い和にはまったく気付かれず、また部活仲間以上には意識されていない。
だが、それでも京太郎にとって和の存在は特別で、不可侵であったのだ。
そんな彼女ならばともかく、自分に良くしてくれている先輩に邪な想像を向ける自分が何とも愚かで節操なしに思えて仕方がないのである。

京太郎「(まぁ…確かに先輩は可愛いけれどさ)」

まこが思っているよりも京太郎は遥かに彼女の事を意識している。
可憐と言う訳でもなく美しいという訳でもないが、それでもまこは魅力的だ。
気心の知れた気安い関係の中、時折、恥じらいを浮かべるその姿にはギャップさえも感じる。
正直、それに庇護欲を擽られた事は、今日だけで何回もあった。
普段が頼り甲斐のある先輩であるだけに余計に顕著に感じられるそれに京太郎がどれだけドギマギしていたかまこは知らない。


626 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 23:50:45.74cTLGLVxBo (12/13)


京太郎「(それに…さっきのパジャマ姿も可愛かったな…)」

まこが身につけていたのは薄桃色に無地のパジャマであった。
殆ど飾り気のないそれは、サバサバしている彼女らしいと思えるものである。
だが、薄桃色という女の子らしいその色は、まこの姿を数割増しで可愛らしく見せていた。
普段は奥底に鎮めている女の子らしさを引き出すそのチョイスに、京太郎はつい可愛いと言ってしまいそうになったくらいである。

京太郎「(だー!違う!違うんだからな!!)」

再び自分の意識がおかしな方向へと流れつつあるのを悟った京太郎は言い聞かせるようにして胸中でそう叫ぶ。
しかし、それは虚しく彼の中で響き渡り、なんら変革のキッカケにはならない。
どれだけ彼が認めまいとしても、彼は少しずつまこの事を意識し始めているのだ。
それはまだ和に対するそれよりも遥かに小さいものだが、着実に京太郎はまこの事を異性として認識し始めている。

まこ「あがったぞー」
京太郎「うへぇあ!?」

瞬間、聞こえてきた声に京太郎はビクリと肩を跳ねさせた。
そのままバッと脱衣所へと入り口を見れば、そこにはさっきと同じまこの姿がある。
しかし、その顔は何処かさっぱりと気持ち良さそうなものへと変わっていた。
何より、その肌は急速に温まった所為か紅潮を浮かべ、何とも言えない艶やかさを演出している。


627 ◆phFWXDIq6U2013/09/04(水) 23:59:15.30cTLGLVxBo (13/13)


まこ「なんじゃ。人気投票一位になれそうな声をあげて」
京太郎「な、何でもないです!!」

そのまま首を傾げるまこの首元は何とも緩い状態であった。
風呂で温まった所為か、数段開いているそこはもう少しで谷間が見えてしまいそうである。
肌が紅潮し、髪が濡れる湯上がりの状態だけでも青少年にとっては目に毒なのに、何とも緩いその胸元。
そこから急いで目を背けながらも、京太郎の記憶にその光景は既に記録されてしまっていた。

京太郎「(そ、それに…なんでブラつけてないんだよ…!!)」

勿論、ついさっきまでまこも一応、ブラはしていた。
しかし、風呂あがりの熱い状況に一々、そんなものはしていたらすぐに痒みを覚え、汗疹が出来てしまう。
それを防ぐ為に、まこは普段から風呂から上がってすぐにはブラをつけないようにしていた。
そんな習慣そのままに出てきてしまった彼女のパジャマには今、微かにその突起が浮かび上がっている。

まこ「ん?」

そんな京太郎の様子にまこはそっと首を傾げた。
ついさっきまでまったく自分を意識していなかったはずの後輩の姿が何となく引っかかるのである。
しかし、まさか自分がブラを忘れて乳首を浮かばせている所為で、京太郎が恥ずかしがっているだなんて彼女は露ほどにも思わない。
これまで異性の前で風呂から上がってきた事のない彼女にとってそれはあくまで何時もの事であったのだ。


628 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 00:05:18.27l6brifzro (1/11)


京太郎「せ、先輩…その…」

まこが一体、どういう意図を持っているのか京太郎には分からなかった。
また自分をからかっているのかもしれないし、まったく意識されていないだけなのかもしれない。
しかし、それでも今の無防備すぎるまこの状態は決して看過して良いものではないだろう。
少なくとも自分にとってそれが刺激的過ぎる事くらいは伝えなければいけない。
そう思って京太郎は口を開くものの、そこから言葉が出てくる事は中々、なかった。

京太郎「う…あ…その…」
まこ「???」

そのまま口ごもる京太郎の前で、まこはそっと首を傾げた。
瞬間、京太郎の視界の端で、プルンと柔らかな何かが揺れるのが見える。
まこの細身な身体の胸元で自己主張をしたそれは、勿論、彼女の乳房だろう。
そう思っただけで顔を真っ赤に染めてしまう初心な京太郎は大きく深呼吸をしながら、ゆっくりと口を開いた。

京太郎「あ、あの…う、浮いてるんですけど…」
まこ「…え?」

その言葉に、まこがピシリと硬直するのは、彼女がそれを完全に誤解したからだ。
浮いているという言葉でまこが真っ先に連想するのは、自分の格好の事だったのである。
精一杯の少女趣味とオシャレを兼ねて、買ったそのパジャマが似合っていない。
恐らく京太郎はそう言いたいのだろうと判断したまこの顔が引きつり、気分が昏く落ち込んでいく。


629 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 00:13:54.46l6brifzro (2/11)


まこ「そ、そんなに浮いとるんか…?」
京太郎「い、いや…そこまではっきりしてる訳じゃないですけど…でも、見れば分かるなって…」

そして勿論、そんなまこの誤解を京太郎は知らない。
自分が主語を抜いてしまった所為で、勘違いをさせてしまった可能性など彼には考える余裕などないのだ。
見た目は遊んでいるように見えて、その実、京太郎は初心で、性的な経験も一切ないのだから。
そんな彼にとって異性の乳首が浮き上がっていると伝えるだけで頭が一杯になってしまうのである。

まこ「そ、そうか…大丈夫だと思うとったんじゃが…」
京太郎「え…い、いや、それは(俺が)きついっすよ」
まこ「ぐっ…」

そんな遠慮のない後輩の言葉がまこの言葉に突き刺さる。
精一杯の趣味を満たそうとしたその格好を根本から否定するそれに思わずよろめいてしまいそうになった。
それを歯を食いしばる事で堪えながら、まこは大きく深呼吸する。
いきなりの新事実にショックを受けているのは確かだが、それはこのままにはしておけない。
どうせならば問題解決の為にもう一歩踏み込もうと、まこはゆっくりと口を開いた。

まこ「じゃあ…どういうのがええんじゃ?」
京太郎「え?」
まこ「…どういうんだったらわしに似合うと思う?」

そう京太郎に尋ねるまこは既に冷静ではなかった。
何とか狼狽を表に出す事は堪えているものの、その内心はショックと恥ずかしさで滅茶苦茶だったのである。
だからこそ、彼女は普段であれば、絶対に聞かないであろう言葉を口にしてしまう。
ともすれば八つ当たりにも取られかねない詰問であり、また論理的ではないものだと言う事に動揺した彼女は気づいていなかった。


630 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 00:21:23.41l6brifzro (3/11)


京太郎「え、えぇっと…」

しかし、そんな彼女の問いを、京太郎はまた大きく取り違える。
頭の中がブラの有無で一杯になった彼にとって、彼女がブラの事を尋ねていると勘違いしたのだ。
とは言え、男である彼がまこに対して何かアドバイス出来るはずがない。
そう言ったものとは縁遠い人生を送ってきた彼にとって、オススメのブラなんて言えるはずがなかった。

京太郎「さ、サイズさえ合っていれば大丈夫なんじゃないですかね…?」
まこ「さ、サイズが合っとらんのか…?」
京太郎「合っていないどころか…無いっていうか…」
まこ「ぐふ…」

後輩のその言葉を自分のセンスを貶めている言葉だと理解したまこの口からついに苦悶の声が漏れる。
そのままガクリと崩れ落ちる膝が、彼女のダメージを何より如実に物語っている。
しかし、京太郎にはそれが一体、どういう事なのかまったく理解出来なかった。
彼からすれば、まこのブラがない事を指摘しただけなのだから。
恥ずかしがるならともかく、こんなにもショックを受ける姿を見るだなんて想像してもいなかったのである。

京太郎「だ、大丈夫ですか染谷先輩!?」
まこ「う、うん…大丈夫。大丈夫じゃ…」

そんな後輩の気遣うような言葉に、まこは何とか自分を取り繕う。
しかし、その内心は、最早、泣きそうなもので溢れていた。
もしかしたらさっきのワンピースも内心、似合っていないと思われていたのかもしれない。
いや、それ以前に久をはじめとする友人たちにも迷惑をかけ続けていたのではないだろうか。
過去に遡ってまで後悔を覚える彼女の目尻がじわっと滲み始めた。


631 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 00:29:52.81l6brifzro (4/11)


京太郎「(え…えぇぇぇぇ!?)」

勿論、それに一番の困惑を覚えるのは京太郎だ。
まさかブラがないという事が泣くほどショックを受けるだなんて一体、どういう事なのだろう。
それに違和感を感じながらも、彼の意識は目の前で瞳を潤ませるまこの方へと引きずられていった。
今にも泣き出しそうな彼女に一体、何を言えば良ってあげれば良いのか。
混乱する頭の中で必死でその答えを求めた京太郎はある言葉へと辿り着く。

京太郎「だ、大丈夫ですよ!そういう趣味もありますよね!!」
まこ「ふ…ふぇぇ…」

結果、それがまこへのトドメとなった。
ギリギリであった涙腺を一気に爆破するそれにまこは子どものような声をあげながら涙を漏らす。
それを手の甲でグジグジと拭う彼女に、京太郎はさらなる困惑を驚きを覚えた。
そうやって露出する趣味まで肯定したのに一体、どうすればよかったのか。
胸を突くような良心の痛みと後悔にそう思いながら、京太郎は再び言葉を探す。

まこ「う…うぅぅ…」
京太郎「(どうすりゃ良いんだよおおおぉぉ!)」

けれど、何を言ってもまこを追い詰める言葉にしか今の京太郎には思えない。
そもそも彼女がどうしてそこまでショックを受けているのかさえ彼には理解出来ていないままなのだ。
そんな彼に出来る事と言えば、泣きじゃくるまこが落ち着くのを狼狽しながら待つ事だけ。
それに無力感を感じながらも、下手をすればまた追い詰めるだけなのかもしれないと思うと何も出来なかった。


632 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 00:36:14.14l6brifzro (5/11)


まこ「ふ…ぅ…すまん…見苦しいところを見せた…」
京太郎「いえ…」

数分後、まこも落ち着きを取り戻し、そうやって言葉を紡ぐ事が出来た。
しかし、それで全てが元通りになるかと言えば、決してそうではない。
二人の間には気まずい雰囲気が流れ、何ともぎこちない状態になっている。
お互いに自分が悪いと思い込んでいる二人はチラチラと相手の事を伺いながらも何も言えない。
一体、どう話を切り出すべきなのか、それともさっきの事は完全に忘れてしまうべきなのか。
困惑の中、その選択さえ出来ない二人は、牽制するようにお互いに視線を贈り合う。

まこ「(う…ぅぅ…き、京太郎の前で泣いてしまうだなんて…)」

そんな中、まこが思い浮かべるのは、さっきの自分の失態の事だった。
自分のセンスを全否定されたとは言え、あそこで泣いてしまうのはあまりにも子どもっぽ過ぎる。
それは微かに芽生えた気になる異性としての意識がそうさせたのだが、彼女はまだそれには気づいていない。
それほど自分がショックを受けた理由に、余裕のない彼女が思い至る事は出来ないのだ。

まこ「(と、とりあえず…何とかリカバリーせんと…)」

勿論、泣き顔を見せた程度で、自分の事を舐めるような後輩ではないとまこは知っている。
こうして休日に時間を割いてまで尽くしてくれる彼の敬意はそんなものでは薄れないだろう。
だが、それは自分の中のプライドが無事であるという事は決して=ではないのだ。
このままでは自分はもう二度と先輩として京太郎に接する事が出来なくなってしまう。
それだけは防がなければいけないと、まこは必死に言葉を探した。


633 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 00:44:34.68l6brifzro (6/11)


まこ「そ、その…な。さっきの事なんじゃが…」
京太郎「え、えぇ…」
まこ「えっと…ごめんな。わしはええと思うとったんじゃが…迷惑かけてたみたいで」

ポツリポツリと漏らすその言葉に、京太郎はズキリと胸が傷んだ。
確かに狼狽したのは事実ではあるが、迷惑だなんて事はない。
精々、驚きと気まずさを覚えただけで、何か傷ついた訳でもないのだから。
それよりも過剰に反応し、まこを泣かせてしまった自分の方が遥かに迷惑だっただろう。
そう思いながら、京太郎は首を横に振り、口を開いた。

京太郎「いや…良いんですよ。俺も意識し過ぎていました」

そうやってまこが下着で出てきたのも、全ては自分を異性として意識していない証拠だ。
それを何だかんだと真っ赤になって指摘し、意識してしまった自分がこの騒動の元凶なのである。
全ては自分がまこの趣味を許容出来る程度の器か、意識しないくらい強固な理性があれば済む話だった。
そう結論づける京太郎は自嘲気味に肩を落とし、まこをじっと見据える。

京太郎「考えても見ればここは染谷先輩の実家ですし…下着身につけないのくらい普通ですよね」
まこ「へ…?」

ようやく京太郎から漏れでた事の核心を突く言葉。
それにまこが間抜けな声をあげて、再びその身体を硬直させる。
まるで身体を動かす力全てを思考へと回すようなその身体の中で、彼女の脳がフル稼働した。
麻雀をしている時と大差ないほどにニューロンを活性化させるそれは数秒後、視線を下へと向けさせる。


634 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 00:53:32.00l6brifzro (7/11)


まこ「~~~~~っ!!!!!」カァァァ

瞬間、首元から真っ赤に染まったまこはバッと自分の胸元を隠した。
今更、そんな事をしても遅いと理解しながらも、彼女の身体は反射的に動いていたのである。
しかし、それと同時に湧き上がる羞恥の波が、彼女の心へと打ち寄せ、ただでさえ少ない平静さを失わせた。
結果、理性という留め具を外した彼女を身悶えさせる羞恥心は誤解させた京太郎への怒りへと変わり、その左手を振り上げさせる。

まこ「さ…最初から…!」
京太郎「…え?」
まこ「最初からそう言わんか馬鹿ぁああっ!」
京太郎「たわばっ!」

そのままビタンと叩きつけられた一撃に京太郎の首がグルンと回る。
瞬間漏れ出す悲鳴のような声を聞いても、まこの心は収まらない。
怒りと羞恥心は未だ彼女の胸を突き、心を揺さぶり続けているままなのだ。

まこ「(あぁぁ!もう!もうっ!!)」

勿論、まことて分かっている。
確かに京太郎は言葉足らずではあったが、誤解した自分にも責任があるという事を。
寧ろ、事態をややこしくしたのが自分であるという認識も彼女の中にはあったのである。
だが、それでも泣き顔とパジャマから浮き上がる乳首を見られてしまったという羞恥心が、それらを全て遮っていた。


635 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 00:59:01.78l6brifzro (8/11)


まこ「う…うぅぅ…」

しかし、それだって何時までも続かない。
時間が経つ毎に少しずつ冷静さを取り戻したまこは、ゆっくりとその唇からうめき声をあげる。
そのままチラチラと京太郎を見つめる目には自責と自戒のものが強く浮かんでいた。
そして、それは彼の頬にピッタリと張り付いた真っ赤なモミジを見る度に、さらに強くなっていく。

京太郎「あー…なんか…すみません」
まこ「い、いや…京太郎は何も悪ぅないじゃろ…わ、悪いのはわしじゃ」

そんな彼女に謝罪の言葉を漏らす京太郎にまこはそっと首を振った。
ようやく口に出来たその言葉に、彼女はほんの少しだけ心が軽くなったのを感じる。
しかし、そうやって非を認めたところで、自分のやった事が帳消しになる訳ではない。
そう思う彼女の中では未だ、自責の感情が湧き上がり、その表情を落ち込ませていた。

まこ「勝手に誤解して…泣いて…張り手まで…本当にすまん…」
京太郎「あー…」

そのままシュンと肩を落とすまこは再びその顔に泣きそうなものを浮かべ始めていた。
どうやら、先輩は本気でさっきの事を後悔しているらしい。
それを感じさせる姿に京太郎は必死になって言葉を探した。
今度こそ、まこを元気づけられるような…そんなものがどこかにあるはず。
そう必死に脳細胞を活性化させる彼に、一つの答えが見つかった。


636 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 01:04:11.61l6brifzro (9/11)


京太郎「…それじゃお詫びとして麻雀教えてくれません?」
まこ「え?」

京太郎のその言葉に、まこがそっと顔をあげた。
それは勿論、この場には決して相応しくはない言葉だったからである。
そんなもの先輩として言われずともやるつもりだったのだから。
少なくともお詫びとして求められるそれは相応しくはない。
そう思う彼女の前で京太郎はそっとテーブルの上の袋を掴んだ。

京太郎「どうせ服が乾くまで暇ですし…それに丁度、教本もあるじゃないですか」
まこ「あ…」

そう言ってウィンクする彼に、まこはそれが気遣いである事を知った。
何とも不器用で遠回しなそれに彼女の表情も少しだけ綻ぶ。
勿論、気分そのものが上向いた訳ではないが、彼からお詫びを求められた事で幾らか気も楽になったのだろう。
そんな風に自己分析が出来た頃には、彼女は悩んでいた自分が馬鹿らしくなり、そっと笑みを浮かべた。

まこ「…はは。まったく…馬鹿」
京太郎「いやぁ…割りと常日頃から実感しております」

まこの言葉に後頭部を掻くのは、こうした失敗が初めてではないからだ。
幸いにもアルバイト中にやらかした事はないものの、日常から細かいケアレスミスと言うのは多い。
それが分かっているのに中々、直せない自分に自嘲を覚えながら、京太郎はそっと目を背ける。


637 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 01:14:48.58l6brifzro (10/11)


まこ「まぁ…折角のお詫びなんじゃし…ビシバシ行くぞ」
京太郎「お、お手柔らかにおねがいしますね…?」

まこは先輩としてほぼ理想的な要素を兼ね備えたタイプだ。
物事は順序立てて教えるし、後輩の質問には嫌な顔一つせずに答えてくれる。
失敗した時のフォローも上手く、ただ叱るだけの後処理はしない。
だが、それは決して、彼女がスパルタでない事を意味しないのだ。
本気になったまこがどれだけ厳しいかとバイト中に嫌というほど知っている彼は思わず表情を強張らせる。

まこ「それじゃ…着替えてくるからちょっと待っとれ」
京太郎「うっす」

そのまま自分に背を向けるまこに京太郎はそっと肩を落とした。
その仕草には特に違和感はなく、彼女がそれほど深く自分を責めている訳ではない事が分かる。
少なくともさっきのように泣き出すような事はないようだ。
それに一つ安堵した瞬間、まこの顔がそっと振り向き、その唇をゆっくりと動かす。

まこ「あ…後…あ、有難う…な」
京太郎「え…あ…」

そのままポツリと言葉を漏らしながら去っていく先輩に京太郎は何も言えなかった。
それは勿論、逃げ去るように脱衣所へと戻るまこの動きがあまりにも早かったからではない。
微かに振り向いたまこの顔が気恥ずかしさで紅潮するそれにドキリとし、そして見惚れていたからである。

京太郎「(…やっばいよなぁ…)」

停留所で雨宿りしていた時とは明らかに毛色を変えつつある自分の感情。
それをここで自覚した京太郎はそっと肩を落とした。
しかし、やばいと思いながらも、彼の頬は明らかににやけている。
実際、去り際の彼女は良い物を見れたと思うくらいに可愛らしく、そして魅力的だったのだ。
未だ彼の脳裏に焼き付くその姿は彼の表情筋を緩ませ続け… ――


―― 数十分後、それを与えたまこ自身の手によって、それは苦悶のものへと変えられたのだった。


638 ◆phFWXDIq6U2013/09/05(木) 01:19:46.53l6brifzro (11/11)

終わりー
この小ネタのまこが何処に行こうとしているのか
それは俺にも分かりません

>>615
次回作として予定してる京子ちゃんも阿知賀も安価スレなので安心して下さい
そもそもこのスレ自体が安価スレやりたくて勉強する為に作った奴だしな
TRPGの方は今、小ネタに割いてる時間を使ってポツポツ進めていくのを予定しております

>>616
実際にやるんだとしたら照と衣の能力はエラッタ必須ですよねー…
放棄なしでクリティカルをトリガーにした方が良いのかなー
でも、あんまり弱すぎると魔物っぽくないジレンマ

>>617
ついでにタコスに「誰にも賽は降らせない(キリッ」って言わせる能力もセットでどうぞ

>>618
さぁ早くキャラシートを書く作業に戻るんだ




後、エピローグ完成しました
明日明後日で推敲し、問題なければ金曜日の夜に投下します
本当にお待たせしました


639以下、新鯖からお送りいたします2013/09/05(木) 01:25:45.69sdUa5zX9o (1/1)

乙です


640以下、新鯖からお送りいたします2013/09/05(木) 01:32:25.60wwcCa77co (1/1)




641以下、新鯖からお送りいたします2013/09/05(木) 01:42:04.17AA6aNZNX0 (1/1)



京子ちゃん総受けか……


642以下、新鯖からお送りいたします2013/09/05(木) 02:02:40.78fWMpL7Fa0 (1/1)




643以下、新鯖からお送りいたします2013/09/05(木) 04:44:17.35RsHMeKa5o (1/1)

ワカメ最高や!


644 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 22:59:11.32DtkKb4Jxo (1/108)

ただいま戻りました
今から投下し始めます
全部で18万文字とか最初の漫編並の分量になったのでかなり長いです
気長にお付き合い下さい
では、始めます


645 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 22:59:40.30DtkKb4Jxo (2/108)


―― 上重漫が長野に降り立った時、そこは既に雪景色だった。

漫「(クリスマスまで後一ヶ月もちょっとやもんなぁ…)」

12月25日。
日本では恋人の為のイベントと化しているそれを目前にした時期に、日本有数の豪雪地帯である長野は既に雪を降らし始めていた。
その勢いは決して激しくはないものの、まだそんな気配を感じさせない大阪在住の漫にとっては不思議な光景に映る。
周りの景色が自分のよく知る日本のものであるが故に、まるで時間を飛び越えてしまったようにも思えるのだ。

漫「(まぁ、勿論、錯覚やねんけれど)」

ところ変われば、気候も変わる。
例え狭い島国である日本の中でもそれは同じなのだろう。
そう漫は判断しながら、タラップから降りきった。
瞬間、雪を含んだ冷たい風がスルリと漫の身体を撫でていく。
その殆どを防寒具が防いでくれたものの、寒いものはやっぱり寒い。
特に彼女の心は今、寂しさに凍え、飢えているのだから尚更だ。

京太郎「漫さん、こっちです」
漫「あ…っ♪」

そんな彼女の視界に入ってきたのは見慣れた顔だった。
漫が毎日、携帯に入れて夜中に一人で見つめているそれは決して整っている訳じゃない。
不細工と呼ばれるほどではないが、しかし、所謂、『イケメン』の部類に入るかと言えば、首を傾げるものもいるだろう。
だが、それでもその顔は漫にとって、世界で最高の男に思えて仕方がないのだ。


646以下、新鯖からお送りいたします2013/09/06(金) 23:00:01.51H5ORSQg/o (1/1)

すげーよホセ


647 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:00:05.51DtkKb4Jxo (3/108)


漫「えへへ…♪」

それは男の元へと向かう彼女の足取りを見れば分かる。
数センチ積もった雪の中をスキップでもしそうな軽い足取りで男 ―― 須賀京太郎の元へと近づいていくのだから。
まるで子どものような無邪気な歩みは、それだけ漫が京太郎と会える日を楽しみにしていたからだ。
そして、それを京太郎も分かっているからこそ、そんな漫を受け入れるように腕を開く。

漫「ん~っ♪」

そこに迷いなく飛び込んだ漫が最初に感じたのは固い胸板だった。
自分のそれとは比べ物にならないほど逞しいそれは広く、そして力強い。
そんな場所で自分の身体を受け止められ、抱きしめられる感覚に漫の喉がゴロリと鳴った。
まるで猫になったような自分の反応に、しかし、漫は自嘲さえも覚えない。
それよりもこうして数週間ぶりに恋人と触れ合えた事の方が遥かに大きかったのだ。

京太郎「まったく…悪い子ですね」

そんな漫に京太郎が言うのは、今回の長野行きが急に決まった事だからだ。
実際は、漫の中でとっくの昔に決定事項だったのだが、京太郎がそれを聞かされたのは一週間前だったのである。
お陰で漫の事を説得する暇もなく、なし崩し的に自分の本拠地へと乗り込まれてしまった。
それほどまでに自分の事を愛してくれているのは嬉しいけれど、あんまり無茶をして欲しくないというのが彼の本音である。


648 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:00:38.37DtkKb4Jxo (4/108)


漫「京太郎君がうちの事、こんなに悪い子にしたんやで…♪」

勿論、漫とてそんな京太郎の気持ちは分かっている。
その辺りの事は既に何度か彼と話し合った事なのだから。
誰より京太郎の事を理解する漫にとって、彼がそれを看過出来る訳がない分かっていた。
しかし、上重漫というのはされっぱなしを良しとする性格ではなく、また臆病な人間でもあるのである。
自分だけ大阪という遠距離にいて京太郎の事を待ち続ける生活に、彼女は少しずつ怯えを覚え始めていた。
さらには以前のデートで大恥をかかされた漫は、ついつい我慢出来ずに長野へと乗り込んできた訳である。

漫「(せめて家だけでも知っておきたい…って言うのは多分、重いやろうなぁ…)」

それがストーカー一歩手前の思考である事を漫はちゃんと理解している。
だが、それ以上に漫は自分が出遅れている事を理解しているのだ。
勿論、京太郎とのメールや電話で彼の家族構成などはおおまかに把握してはいるが、大阪にいる漫は一度も京太郎の両親に顔を合わせていない。
婚約者として受け入れ始めている神代小蒔たちとは違い、彼の家族に認識さえされていない自分。
未だスタートラインにさえ立てていないそれは、彼女にとって大きな壁として映ってしまうのだ。

漫「責任…取ってな?」

無論、漫とてこんな重い女になるつもりはなかった。
彼女の尊敬する末原恭子のように一人で自立する立派な女になるつもりだったのである。
しかし、その目標とする先輩像故に後輩を見捨てられなかった彼女は今や、京太郎の虜になっていた。
もう一人ではどうしようもないくらいの激情に飲まれ、独り立ちする事なんて不可能なくらいに。


649 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:01:18.70DtkKb4Jxo (5/108)


京太郎「分かってますよ。俺に出来る限り…漫さんの望む結果にしますから」

そんな彼女の頭をそっと撫でながら、京太郎は力強く頷く。
既にその為の覚悟は彼の中で固まっていた。
勿論、それは漫を娶るという正式な覚悟の固め方ではない。
漫と同じく自身の能力によっておかしくなった二人の女性もまた手放さないという歪で自分勝手な覚悟だ。

京太郎「(そして…その為の方策も俺の中で出来ている)」

漫が長野にやってくるというのは突然で驚いた事だった。
けれど、驚いたばかりではいられないと京太郎は漫に説得を始めたのである。
しかし、結果的に彼女に押し込まれ、長野にやって来た漫を迎えた今、彼にはそれが天運に思える。
三人がこうして一堂に会する機会なんて、高校生でいる限りはまずないのだから。
それがクリスマス前という比較的、早い時期に訪れた幸運を利用しない手はないと京太郎は考えていた。

漫「ふふ…っ♪楽しみやわぁ」
京太郎「そんなに…楽しみですか?」

その考えは既に漫に伝えている。
他の二人はともかく、彼女は学生にとって少なくない額を支払って長野に来てくれているのだから。
そんな彼女に長野を案内する事は出来ないと最初に伝えておくのが礼儀だと京太郎が判断した為である。
勿論、そこには彼女が長野行きを取りやめてくれないかという期待もあった。
しかし、漫はそんな京太郎の考えに賛同し、こうして長野行きが実現したのである。


650 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:01:48.16DtkKb4Jxo (6/108)


漫「そりゃそうやん。あの二人がどれだけショックを受けるか…楽しみ」

勿論、それは彼女なりのジョークである。
幾ら一人だけ仲間外れにされている時期が長かったと言っても、それほど漫は性格が悪くはない。
とは言え、その喜びが一片も心の中にないかと言えば、答えは否である。
漫はあくまで普通の人間であり、聖女でもなんでもないのだから。
嫉妬だってするし、不平等感だって覚える事は日常茶飯事だ。
そんな彼女にとって、京太郎の傍にいる二人が知らない事を、自分が知っているという事は自尊心を刺激される事だったのである。

漫「(それに何より…京太郎君はうちを頼ってくれた…♥)」

京太郎の企みを実現させる為に、漫には全てが話された。
そして京太郎は彼女の助力を求めたのである。
それが、漫にとっては堪らなく嬉しい事だった。
京太郎が一番、愛する原村和でもなく、一番、大事にしている神代小蒔でもなく。
一番、支えてきた上重漫を求めてくれた事が嬉しくてにやけてしまったのである。

京太郎「漫さんって意外とSだったんですね」
漫「んーそうかも」

とは言え、漫はそれを京太郎に素直に伝えるつもりはなかった。
自分が二人に対してこんなにも醜く嫉妬しているなんて大好きな人には思われたくなかったのである。
無論、その程度で京太郎が幻滅したり嫌いになったりしないという事はちゃんと漫も理解していた。
だが、それを知った京太郎が不出来だと彼自身を責めない訳ではない事を彼女はちゃんと知っているのである。


651 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:02:44.41DtkKb4Jxo (7/108)


漫「うちがマゾ奴隷になっちゃうんは…京太郎君の前だけかもね♪」
京太郎「ぅ…」

だからこそ、話題を逸らす為のその言葉に京太郎が小さく呻く。
それは漫がそっと足を伸ばし、首元で囁きかけたからだ。
ふっと首筋に吐息を吹きかけるようなその甘い言葉に、彼の身体がゾクゾクとした寒気を覚える。
こんな可愛い事を言う子を早く抱きたいと本能が訴えるようなそれを京太郎の理性は投げ捨てた。

京太郎「(勿論…したくない訳じゃないけどさ)」

しかし、そうやって漫にばかり構っていたら折角の計画がぱぁになってしまうのである。
わざわざ長野にまで来てくれた漫には悪いとは思うものの、今日は彼女にだけ構ってはいられないのだから。
既に計画は動き出している以上、ここでホテルに直行…という訳にはいかない。
それよりも出来るだけ早く家へと戻り、準備を進めるべきなのだ。

京太郎「じゃ…行きましょうか」
漫「ぅー…相変わらずつれないんやからぁ…」

そう言いながらも漫は嬉しそうにその頬をにやけさせていた。
何だかんだ言いながら、容易く欲望に流されない京太郎が漫は好きなのだ。
頑固と言っても良いくらいに抑圧的な人だって分かっているからこそ、心も身体も預けられるのだから。
それがつれないと、辛いと思う事はあれど、そんな京太郎の事を漫は誰よりも信頼しているのだった。


652 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:03:20.88DtkKb4Jxo (8/108)


京太郎「ちゃんと後で一杯、可愛がってあげますから…ね」
漫「うん…っ♥約束やで…♪」

それに何より…京太郎が自分を蔑ろにするつもりはない。
そう確信する漫の耳にそっと京太郎の言葉が吹きかけられる。
さっきのお返しだと言わんばかりに低く抑えられたそれに彼女の身体がブルリと震える。
そんな反応に合わせて絞り出されたその声は陶酔で甘く染まっていた。

漫「(本当は…今すぐセックスしたいけどぉ…♪)」

しかし、漫もまたそうしていられないという事は理解しているのだ。
今日という日は原村和や神代小蒔を含む四人の関係を一変させる記念日なのだから。
その為の仕掛け人に愛しい人が自分を選んでくれた以上、まずはそれを果たさなければいけない。
例え、もう既に愛液がショーツに染みだしそうになっていても…最優先はまず京太郎の依頼だ。
そう自分に言い聞かせながら、漫はそっと愛しい人から身体を離し、その腕に絡みつく。

京太郎「ふふ…」

そんな漫の様はまるで大好きな父親を迎えに来た子どものように愛らしかった。
それに思わず笑みを漏らした京太郎に、漫はその頬を微かに膨らませ、拗ねている事をアピールする。
勿論、それは漫が京太郎がどうして笑みを浮かべたのかを正確に感じ取ったが故だ。
自分がバカにされている訳ではないとは言え、子ども扱いされているのだと、彼女はそう理解したのである。


653 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:04:00.19DtkKb4Jxo (9/108)


漫「京太郎くぅーん?」
京太郎「す、すみません…」

その何とも言えない悔しさに漫は頬を膨らませながら、じっと京太郎の顔を見上げた。
それはさっきと同じく可愛らしいものではあるが、さりとて笑う訳にはいかない。
京太郎とて本気で漫が怒っている訳ではない事は理解しているものの、からかいが過ぎると意固地になるのも分かっているのだ。
上重漫という先輩は基本的には大らかだが、負けず嫌いな性格をしているのだから。

漫「まったく…そんなナマイキな後輩は…こうやで!」
京太郎「わっ!」

そう言って漫は抱きついた京太郎の腕を谷間に挟んだ。
そのままスリスリと身体を寄せる漫に京太郎の中の興奮が高まっていく。
幾ら厚着しているとは言え、それらは女の子の柔からさ全てを阻むものではないのだから。
分厚いセーター越しにもしっかりと伝わっている感触の真髄を理解しているのもあって、それはもどかしい感覚だった。

京太郎「と言うか、これ…漫さんがやりたかっただけじゃないですか?」
漫「さぁ、どやろうね?」

しかし、それが罰になるかと言えば、決して否である。
確かにそうやって密着されると性的欲求こそ覚えるが、それだけだ。
度重なる誘惑を乗り越え、性的経験を積み重ねてきた京太郎にとってそれを抑えこむのは決して難しい事じゃない。
寧ろ、そうやって柔らかな双丘を感じるのはご褒美と言っても良いくらいのものだった。


654 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:04:27.43DtkKb4Jxo (10/108)


漫「でも、虫よけはちゃんとしとかへんとあかんやろ?」
京太郎「俺そんなにモテないと思うんですけれど…」

そう悪戯っぽく言う漫にとって、それは決して嘘ではなかった。
それほど飛び抜けて優れているところがある訳ではないが、この須賀京太郎という少年は人に親しまれやすい性格をしているのである。
その上、婚姻関係によって家を維持し続けてきた家系に属する所為か、才能ある美少女たちに好かれやすい傾向にあるのだ。
それをよく知る漫にとって、虫よけは決して軽視出来るものじゃない。
京太郎は既に売約済みなのだと彼のホームである長野で主張する事は、寧ろ、大いに意味がある事だったのだ。

漫「…はぁ」
京太郎「えー…」

しかし、そんな漫の不安を京太郎がまったく分かっていない。
それに思わず彼女が吐いたため息に京太郎は不満そうな声を返した。
須賀京太郎という人間は三人の美少女に好かれるようになって尚、自己評価が低いままなのである。
まさか自分が能力絡み以外で人に好かれるはずがないと心の底から思い込んでいた。
恋する乙女というフィルターを介した上重漫と能力の発現によってさらに自己評価が落ち込んだ須賀京太郎。
そんな二人の認識をどれだけすりあわせたところで一致するはずがないだろう。

漫「まぁ…京太郎君はそのまんまでええと思うよ」
京太郎「どういう意味ですかそれ」

そう結論付ける漫の言葉は諦め混じりのものだった。
彼女はどれだけ言っても、京太郎の認識を変える事が出来ないと分かっていたのである。
漫自身、能力によって京太郎に絡め取られたのだから、何を言っても能力の所為と解釈されるだろう。
勿論、京太郎とてそんな二人のズレには何となく気づいているものの、しかし、呆れるように言われるのを聞いて、流せはしない。
流石に怒り出したりはしないものの、そんな言い方はないんじゃないかとそう思ってしまうのだ。


655 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:05:00.12DtkKb4Jxo (11/108)


漫「うちらだけ見といてくれたら…それでええって事」
京太郎「…む…ぅ」

しかし、その気持ちは輝かんばかりの漫の笑顔にかき消されてしまう。
ニコニコと上機嫌なそれに怒っているのがバカらしくなってしまうのだ。
それが彼女の思い通りだと理解していても、萎えていく気持ちは否定出来ない。
元々、本気で怒っている訳でもないのもあって、京太郎が肩を落とした頃にはもう拗ねる気も失せていた。

京太郎「漫さんには敵いませんよ、ホント」
漫「そりゃ先輩やからね♪」

そう自慢げに言う漫の魅力的な笑顔に、京太郎も笑みを返した。
何だかんだ言いながらも、こうして先輩ぶる彼女の事が京太郎も好きなのである。
それは決してオンリーワンのそれではないが、決して他の二人にも見劣りしない。
だからこそ、京太郎はそっと抱きしめられた手で漫の指を求め、そのまま指を絡ませあった。

京太郎「んじゃ、行きましょうか」
漫「うんっ♥」

所謂、恋人繋ぎで歩き出す二人は街の中に溶け込んでいく。
それはクリスマス間近ともあって街中にカップルが溢れかえっているからなのだろう。
そんな中で二人の姿は特に目立つものではなく、有象無象の一部でしかない。
しかし、そう理解しながらも二人はそれを気にする事はない。
数週間ぶりに顔を合わせて話し合う二人にはお互いの姿しか見えていないのだから。
寧ろ、そうやって数多くカップルの中に埋没する事を楽しみながら、二人は須賀邸へと足を運ぶのだった。


656 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:05:39.51DtkKb4Jxo (12/108)


………



……








―― かつの神代小蒔の部屋は基本的にものがなかった。

ぬいぐるみやクッションなど女の子らしい小物はあれど、あくまでそれだけだ。
私服の殆どを巫女服で済ます彼女にとって、収納棚すらあまり必要なものではない。
さらに彼女は何か目立った趣味を持つ事は出来ず、また本も自由に買う事を許されてはいなかった。
他の巫女が閲覧したものを借りるしかない彼女は、本棚もこじんまりとした小さなもので済んでいたのである。

小蒔「ふふ…っ♪」

けれど、今の彼女の部屋は大きく様変わりしていた。
ベッドの上のぬいぐるみとクッションはその数を膨れ上がらせ、本棚は壁際を埋め尽くすくらいに立ち並んでいる。
そこに並ぶのはレディコミや女性雑誌など霧島にいた頃には買う事も許されていなかったものばかりだ。
中には本来であれば小蒔がまだ買えないような本まで綺麗に整頓させられている。

―― また机の上には幾つもの写真立てが並んでいた。

そこに大事に収納されているのは清澄麻雀部の面々や京太郎と一緒に取ったプリクラの類である。
彼女はそれを写真として印刷し、一つ一つ写真立てに入れて大事にしていた。
それらは長野に来てから少しずつ増えていった友人たちとの大事な思い出の結晶なのだから。
宝物と言っても過言ではないそれに小さく笑みを浮かべながら、小蒔は手に持った木の棒を細かく動かす。


657 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:06:14.76DtkKb4Jxo (13/108)


小蒔「んー…こうでしょうか?」

そう言いながら小蒔が見つめているのはある雑誌の1ページだ。
クリスマス特集と銘打たれたそのページには手編みのマフラーの作り方が書いてある。
それと睨めっこしながら小蒔が作っているのは勿論、京太郎へのクリスマスプレゼントだ。
実家との縁を切り、生活の事を真剣に考えなければいけなくなった彼女に出来る精一杯の贈り物だったのである。

小蒔「(京太郎様…喜んでくれるでしょうか…?)」

勿論、京太郎は小蒔が贈ってくれるのであれば、何でも喜んで受け取るだろう。
どんなプレゼントだってそこに篭った思いを感じ取れるのが須賀京太郎という少年なのだから。
だからこそ、小蒔が何度もそうやって何度もその言葉を思い浮かべるのは不安の為ではない。
これを受け取り、喜んでくれるであろう愛しい婚約者の姿を想像する為だ。

―― コンコン

小蒔「あら?」

その瞬間、小さくなったノックの音に小蒔は真っ赤なマフラーからそっと顔をあげた。
そのまま小蒔はベッドの脇に編みかけのマフラーを大事そうに置く。
クリスマスという一大イベントを前にして初めて編み始めたそれを何かの片手間に完成させられるほど小蒔は器用なタイプではない。
また何か別の作業をしながら相手と会話するのを良しとするような性格でもなかった。


658 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:06:44.11DtkKb4Jxo (14/108)


小蒔「どうぞ」
霞「失礼します」

そんな彼女が告げる言葉に一つ断ってから入ってきたのは、小蒔に良く似た顔の女性であった。
少しだけ彼女を大人っぽくしたようなその顔立ちは姉妹と言っても十二分に通用するものであろう。
しかし、二人の間には直接的な血の繋がりはなく、少し遠い親戚程度でしかない。

小蒔「もう…そういうの良いって言うのに」

とは言え、彼女 ―― 石戸霞と小蒔の間に築かれた絆というものは決して遠い親戚という言葉で収まるものではない。
幼い頃から両親と別れ、小蒔の傍に支え続けていた霞にとって、小蒔は妹も同然なのだから。
それは会話した記憶も殆ど薄れた両親などよりもよほど身近で、大事なものである。
そして、それは小蒔にとっても同様だ。
物心ついてすぐからずっと自分の事を護ってきてくれた霞は、小蒔にとっては姉か母に近い存在だったのである。

霞「ごめんなさい。何か癖になっちゃって」

だからこその小蒔の訴えに霞は小さく笑みを浮かべた。
二人がどれだけ想い合っていたとしても、二人の関係は主従の枠を超える事はなかった。
その前提には家の格というものがあり、小蒔が主で霞が従者という関係は決して崩してはいけないものだったのである。
だからこそ、霞は時折、自分を戒めるように「姫様」と呼んでいたし、小蒔はそれに異を唱えたりはしなかった。
しかし、今の二人にはもうそんな堅苦しい主従は関係ない。
家から絶縁し、独り立ちを始めた二人は既に『家族』という新しい絆で結ばれるようになったのだ。


659 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:07:14.13DtkKb4Jxo (15/108)


霞「(ううん…それだけじゃないわよね…)」

誰よりも小蒔の身近にいた霞には分かる。
小蒔は昔とは比べ物にならないくらいに明るい少女になった。
勿論、昔から暗い少女ではなかったものの、その身に背負った重圧や力の所為か、暗い表情を見せる事も少なくなかったのである。
けれど、今の小蒔は心から笑い、そして、同時に心から日々を楽しんでいた。
麻雀だけではなく、人生さえも楽しむような小蒔のその表情に、霞は小さな嫉妬を覚える。

霞「(私じゃ…これは引き出せなかったでしょうし…)」

小蒔がそうやって変わったのは他でもない須賀京太郎のお陰だ。
何処にでもいるような男子高校生に小蒔が恋をした結果、彼女の人生は大きく様変わりしたのである。
勿論、小蒔の姉や母代わりを長年続けていた霞にとって、それは心から喜ばしいものだ。
そんな小蒔の笑顔を曇らせようとする神代本家に離縁状を叩きつけるくらいに霞はその変化を喜んでいる。
だが、その一方で霞は自分でそれを引き出してやる事が出来なかった事に気づいていた。

霞「(まったく…本当、ズルいんだから…)」

恋をすると女は変わるという言葉を、霞も知っている。
だが、ついこの前まで彼女はその言葉を理解していても、その本当の意味に気づく事はなかったのだ。
周りに異性というものを極力排除した環境で生活してきた彼女たちにとって恋というのは無縁の存在だったのだから。
しかし、今、こうして京太郎に恋をして、大きく花開いていくような小蒔を間近で見ているとその言葉の意味が良く分かる。
長年、築き上げてきた関係を一足飛びに乗り越えて…小蒔を変えていくそれに霞が思わず胸中でズルいと言ってしまうくらいに。


660 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:07:48.34DtkKb4Jxo (16/108)


小蒔「次やったら罰ゲームですからね」
霞「ば、罰ゲームって…」

とは言え、それは霞の中でとても小さなものだった。
彼女にとって重要なのは自分の中の小さな嫉妬よりも小蒔が良い方向へと変化していく事であったのだから。
何より、今の霞は実家の支援というものをまったく受けられない状態なのである。
そんな彼女の事情を知った周りは出来るだけの支援はしてくれているものの、霞はあまり迷惑を掛けるのを良しとするタイプではない。
結果、今の霞にとって日々の生活というものはとても重要で、あまり小さな心の動きに気を取られている訳にはいかなかったのだ。

小蒔「京太郎様と麻雀を打って貰うとか」
霞「それだけは止めて頂戴…」

勿論、霞とて須賀京太郎の事を嫌っている訳じゃない。
自分には出来なかった事を成し遂げた彼に嫉妬を感じるものの、それ以上に感謝している。
とは言え、京太郎の不思議な力を知っている霞にとって、それは恐怖を感じるものだった。
京太郎の事は憎からず思っているものの、それは決して異性に向けるそれではないし、何より小蒔のライバルになどなりたくはない。

小蒔「ふふ♪冗談ですよ。京太郎様は私だけのものなんですから」

そんな霞に小蒔は小さく笑いながら、ぎゅっとその大きな胸を抑えた。
その奥にある心臓の鼓動を確かめようとするような仕草に霞は小さく胸の痛みを覚える。
それは須賀京太郎という人物が決して小蒔だけのものではないと知っているからだ。
事情があるとは言え、京太郎は小蒔以外に二人の女性と身体を重ねている。
それを知って尚、小蒔の幸せを無条件に肯定出来るかと言えば答えは否だった。


661 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:08:16.34DtkKb4Jxo (17/108)


霞「…小蒔ちゃんは今、幸せ?」
小蒔「えぇ。勿論です」

断言するようなその言葉は、まったく疑いのないものだった。
自分が幸せである事を何ら疑問に思わないそれに霞は理解する事が出来ない。
霞は未だ恋を知らないとは言え、それを題材に書かれた少女漫画というものを幾つも読んでいる。
だが、そこに描かれていた少女たちの葛藤と今の小蒔はあまりにもかけ離れているのだ。

霞「…どうして?」
小蒔「え?」
霞「どうしてそこまで須賀君の事を信じられるの?」

京太郎の能力に因るものなのか、或いは小蒔が人を疑う事を知らない所為か。
そのどちらかなのか霞には分からないものの、しかし、どちらであっても納得がいかない。
そう思うのは霞が小蒔の事を誰よりも大事に思っているからだ。
勿論、京太郎が小蒔を預けるに足る男であると思っているが、その盲信はあまりにも危うい。
他の家族たちが京太郎の事を信頼している以上、自分がそれを指摘しなければと霞は思ったのだ。

小蒔「京太郎様が私に一杯、素敵なものをくれたからです」
霞「…」

そんな霞の言葉に小蒔は小さく微笑みながらそう応える。
自身が幸せである事をはっきりと表現するそれに霞は何を言えば良いのか分からなくなる。
今までの実績に裏打ちされたそれを揺らがせるには、霞はあまりにも京太郎の事を知らないのだ。
婚約者の家族としての距離感を保ってきた霞の言葉は、それまでに苦しみながらも確立してきた小蒔の信頼を揺るがせるのにはあまりにも弱いのである。


662 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:08:55.98DtkKb4Jxo (18/108)


霞「でも、須賀君の傍には一杯、女の子がいるのよ」
小蒔「知ってます。その人たちが私よりも素晴らしい人だって事も」

それでも、紡いだ言葉が負け惜しみなのか、霞自身にも分からなかった。
何せ、そんな事は小蒔自身が誰よりも良く分かっている話なのだから。
つい先日、その事実に死者が出てしまいそうな大騒ぎを起こした小蒔がそれを知らないはずがない。
それを今更、こうして指摘したところで小蒔の心の傷をほじくり返すだけなのは霞にもうっすらと理解出来ていたのだ。

小蒔「でも、京太郎様は私の事を愛してるって…幸せにしてくれるってそう言ってくれたんです」

だが、そんな言葉さえも小蒔にはもう届かない。
盲信と共に口にするそれははっきりと硬い意思を示している。
それに霞は小さな驚きを感じながらも、こうなって当然であると内心思っていた。
霞の知る小蒔はとても優しく、そして臆病で、何事にも真剣な少女なのである。
そんな子が躊躇いなく家を捨て、駆け落ちを選べるほど一人の男に入れ込んでいるのだ。
それほどまでに高まった信頼や愛情を、ただの言葉で崩せるほど小蒔という少女は容易くない。
最早、家族の言葉でさえ届かないほどに小蒔は京太郎に心酔しきっていた。

小蒔「京太郎様は約束を破るような人じゃありません。きっと私の事を選んでくれるはずですから」

それをさらに感じさせる小蒔の言葉に霞はそっと肩を落とす。
そこに何処か敗北感めいたものを感じるのは、誰よりも小蒔の傍にいた自負があるからだ。
つい半年までは小蒔に一番頼りにされるのは自分だったのに、あっという間に京太郎に追い抜かされている。
それに敗北感に似たものを感じるほど、霞は小蒔の事を大事にしてきたのだ。


663 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:09:32.16DtkKb4Jxo (19/108)


霞「…そう。ごめんなさい。変な事言ってしまったわね」
小蒔「良いんですよ。私だって…今の状況が異常だって分かってるんですから」

霞の言葉に、小蒔はその笑みを崩さずにそう返した。
小蒔自身、自分が世間知らずであり、また自分と京太郎を取り巻く環境が特殊だと理解しているのである。
少なくとも、小蒔を心配して霞が京太郎の危険性を訴えるのも当然だと思うくらいに。
だが、そう思いながらも、小蒔は自身が京太郎へと向ける信頼を決して揺るがせる事はない。

小蒔「でも…私はとっても幸せです」
霞「それは…須賀君がいるから?」
小蒔「いいえ。皆がいるからです」

それは今の彼女の幸せを、京太郎がくれたからだ。
半年前からは想像も出来ないくらいに充実した日々は全て京太郎が起因とするものなのである。
勿論、小蒔とてそれが京太郎だけの手によって作られたものではない事くらい理解出来ていた。
だが、それでも京太郎が自分の為に駆けずり回り、手を尽くそうとしてくれていたのは変わらない。

小蒔「京太郎様は私に友達を作ってくれました。私の居場所を作ってくれました。私を誰よりも受け入れてくれました」

そう言葉を続ける小蒔の胸に様々な像が浮かびあがる。
長野に来てから友人になれた仲間たちの事。
孤立しかけていたクラスに馴染めている自分の事。
そして、あんなに嫌っていた能力を受け入れ…真の力を発揮した時の事。


664 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:10:01.68DtkKb4Jxo (20/108)


小蒔「それに何より…私に霞ちゃんたちって言う…大事な家族を作ってくれたんです」

そして最後に浮かび上がってきたのは目の前の霞たちを筆頭とする家族の事だ。
土台こそ幼い頃から出来ていたとは言え、こうして家族と呼べるようになったのは最近である。
そしてその起因となり、小蒔にそう呼べるだけの勇気をくれたのも他でもない京太郎なのだ。
京太郎がいなければ、小蒔は今でも霞たちの事を何ら憚る事なく、家族と呼ぶ事は出来なかっただろう。

小蒔「だから…私は京太郎様と…この幸せを信じられるんです」
霞「そう…」

そう言葉を結ぶ小蒔に霞もまた笑みを返した。
それは諦観めいたものではなく、心から微笑ましげな優しいものである。
何だかんだ言いながらも、霞は心優しい少女であり、小蒔に甘いのだ。
小蒔がそう言うのであれば…出来るだけ望む結果を得られるようにサポートしよう。
微笑みの奥でそう決意を固めた瞬間、彼女はベッドに置かれたマフラーに気づいた。

霞「それは須賀君へのプレゼント?」
小蒔「はいっ」

尋ねる霞に小蒔はその顔を子ども染みたものへと変える。
まるで自分の宝物を褒められたようなその素直な反応に霞はクスリと笑みを漏らした。
けれど、小蒔がそれを自慢気に広げた時にその笑みはぎこちないものへと変わる。


665 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:10:31.45DtkKb4Jxo (21/108)


小蒔「ここに『LOVE♥』って入れるんですよー」
霞「そ、そう…?」

そう言って小蒔が見せる真っ赤なマフラーに霞はその頬を引き攣らせた。
ニコニコと嬉しそうな小蒔には言い難いが今時、そのセンスはどうなのかと微かに思う。
しかし、それをはっきりと口に出せるほど霞もまた恋に詳しい訳じゃない。
恋人のプレゼントってそういうものなのかしら、と自分を納得させながら、じっとそのマフラーを見つめた。

霞「あ、そこ失敗してるわよ」
小蒔「え…?ど、何処ですか!?」
霞「ほら、ここよここ」

指摘する霞の声に小蒔はじっとマフラーを見つめる。
そんな彼女の視線を指で誘導しながら、霞は編み違えになっているそこを指さした。
そこは微かに盛り上がり、周囲に違和感を放っている。
まだ完成には程遠い今の状況ではそれほど目立たないが、完成した頃には一目で分かるものになっているだろう。

小蒔「あ、本当です…ちゃんと直さないと…」
霞「編み物大変だものね…」

それが一目で分かったのは霞もまたそうやって四苦八苦した時期があったからだ。
一時期、編み物を趣味にしていた彼女もまたそれに悩まされたのである。
今では慣れた所為か殆どそんなミスはしなくなったものの、今でもその時の苦労は簡単に胸に浮かんだ。
大作を完成させた後にミスを見つけた時など、一日中落ち込んだくらいである。


666 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:11:00.09DtkKb4Jxo (22/108)


霞「(とは言え、手伝う訳にもいかないでしょうし…)」

そんな苦労も乗り越えてきた霞が手を貸せば、小蒔はきっとすぐさまそれを完成させる事が出来るだろう。
だが、そうやって手を貸せば、それは小蒔の望むものにならない事くらい霞にも良く分かっていた。
小蒔がプレゼントしたいのはあくまでも手作りマフラーであり、見栄えの良いマフラーなどではないのだから。

霞「…明日から一緒にやりましょうか?」
小蒔「え?」

だからこそ、それが霞に出来る最大限の小蒔のサポートだ。
手を貸せばそれが小蒔の望むものではなくなってしまうが、今のようにミスの指摘くらいは出来る。
近くに居れば小蒔だってわかりにくいところを霞に教えを乞う事だってしやすいだろう。
何よりここ最近は忙しくて出来なかった編み物がしたいという感情も霞の中にはあった。

霞「隣に居れば色々とアドバイスもしてあげられるでしょ?」
小蒔「はいっ!」

そう尋ねる霞に小蒔は輝かんばかりの笑みで頷いた。
実際、小蒔自身、本当は霞に色々と尋ねたかったのである。
彼女にとってはこれは初めての編み物で、そして霞が編み物上手なのを知っていたのだから。
しかし、それを簡単に口に出来なかったのは霞がバイトや進路の事などで忙しい事を小蒔も分かっていたからだ。
それでも、こうして霞から言い出してくれた今、小蒔は遠慮などしない。
最近、忙しくてあまりスキンシップを取れなかった妹に甘えられたいと、霞が思っているのが伝わってくるからだ。


667 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:11:47.46DtkKb4Jxo (23/108)


小蒔「それで…何か用ですか?」
霞「あ、そうそう。忘れるところだったわ」

小蒔の言葉に霞はそっと手を打って、そう返した。
こうして小蒔の部屋に足を踏み入れたのは何も小言を言う為でも、編み物を手伝う為でもない。
バイトや家事の合間に伝手を頼って調べた情報を、家族に伝える為だったのだ。

霞「あの時…ご当主様が言っていた事が気になって調べていたのだけれど…」
小蒔「分かったんですか?」
霞「えぇ。お祖母様が話してくれたわ」

霞の言葉に小蒔はそっとベッドのスペースを空けた。
それは霞の話が立ったまま出来るようなものではないと理解したからである。
何せ、それは神代の巫女にも伏せられていた神代家の陰とも言うべき歴史なのだから。
その真偽を確かめるのに神代家にも近い祖母に接触した霞を労う為にもそうするべきだと判断したのだ。

霞「500年前の巫女が暴走したキッカケには…確かに須賀という名前の人が関わっていたそうよ」
小蒔「そう…ですか…」

そんな小蒔の隣に腰を下ろしながら霞はそう切り出した。
それに小さく頷く小蒔の胸中には、「やっぱり」という言葉が真っ先に浮かんでくる。
それは勿論、あの時、あの場所で神代家のトップである小蒔の父が嘘を吐く理由がなかったからだ。
どれだけ激昂していたとしても、彼は無駄な嘘を吐くタイプではない。
疎まれ離されていたとは言え、その程度の理解が出来る程度には小蒔は父の事を大事に思っていたのだ。


668 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:12:15.89DtkKb4Jxo (24/108)


霞「当時の巫女は既に結婚していた。けれど、それは彼女にとって望まない結婚で…二人は駆け落ちしようとしていたみたい」
小蒔「駆け落ち…」

その言葉に小蒔はそっと胸を抑えた。
それは微かに胸の奥に走る同情と痛みを和らげる為である。
当時とは状況こそ違えども、小蒔もまた駆け落ち同然に家を飛び出しているのだから。
その二人の末路を知っているが故に、似た境遇の小蒔にとって、それは胸を痛めるものだったのだ。

霞「巫女を手助けしようとした人がいたのもあってそれは途中まで順調だった。けれど…結局、二人は捕まってしまって…」

そこで霞が言葉を濁すのは、そこから先の二人が悲惨であったからである。
巫女を連れ出した男は追手に殺され、巫女はそれを目の前で見せつけられた。
それは政略結婚とは言え、結婚したばかりの妻に逃げられた男の嫉妬もあったのだろう。
だが、結果として巫女はその身に怒りと絶望を満たし、降ろしてはいけないものを降ろしてしまった。

霞「その結果、起こった永禄噴火。そこで生き残った人々の中には…巫女の駆け落ちを手引きした人もいたの」
霞「その人は責任を追求されたわ。巫女を失う直接的な原因ではなかったとは言え、間違いなくその一因にはなっていたんだから」

続く霞の言葉も陰鬱なものだった。
今にもため息を漏らしてしまいそうなそれは仕えてきた家の暗部を知ってしまったからである。
勿論、霞とてもう子どもではなく、諸手を上げて称賛出来るほど神代家が素晴らしいものだと思っていた訳ではない。
しかし、小蒔の純朴さに少なからず助けられてきた彼女にとって、神代家とは護るべきものであったのだ。


669 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:12:43.36DtkKb4Jxo (25/108)


霞「でも…殺したりは出来なかった。それは…その人が生き残った中では尤も神代の本流に近い人だったから」

それを覆すような事実を小蒔に伝えるのは霞とて辛い。
ある程度、世間慣れしている自分ならともかく、小蒔がそれに耐えられるかという不安はどうしてもあった。
だが、それは小蒔直々に調べて欲しいと頼まれていた事だったのである。
それを黙っている事は出来ないし、何より、小蒔には霞以外に頼れる人が沢山いるのだ。
霞はまだ認めきれてはいないものの、須賀京太郎という恋人はきっと小蒔の苦しみと悲しみを受け止めてくれる。
そう思いながら、霞はゆっくりと口を開き、神代家のタブーを口にした。

霞「老人たちは考えたわ。何とか巫女を…神代家を復興させなければいけないと。そして…もう二度と巫女が失われない為に予備の血統を作らなければいけないと」
小蒔「まさか…」

その言葉の意味するところを小蒔もまた気づいた。
一度、途絶した血筋を取り戻す事なんて不可能である。
そもそも人間というものは数えきれないほど交配を繰り返し、その多様性を得てきた種なのだから。
だが、それに近い血筋のものさえ残っていれば、それに出来るだけ近づける方法はある。
それは ――

霞「…えぇ。神代家は…近親婚を繰り返し…巫女を取り戻そうとしたの。その結果…生まれたのが今の神代家と六女仙」

500年も前とは言え、近親婚を繰り返す事の禁忌は知れ渡っていた。
そんな中でかつての栄華を取り戻す為に近親婚を続ける狂気がどれほどのものだったのか霞には分からない。
だが、その結果、生まれたのが自分たちだと思うと暗く、陰鬱な気分になる。
六女仙のルーツであり、巫女を逃した『責任』を取らされたであろう彼女の末路を思えば、尚更だ。


670 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:13:16.58DtkKb4Jxo (26/108)


霞「六女仙が大事にされていたのも…有事の際には巫女になりうる存在だから。そして…神代家の男子に嫁ぎ、血を濃くする為の存在だったから」

そう自嘲気味に口にする霞の声は少しだけ疲れていた。
勿論、霞とて六女仙などと持ち上げられて、良い気になっていた訳ではない。
だが、誰よりも巫女の傍に居て、その心を導き、護る存在であると誇らしさを感じていたのである。
しかし、現実は巫女の予備や血を濃くする為の道具程度にしか思われていなかった。
その事実に霞はため息を吐きたくなるのを堪えながら、そっと小蒔の反応を待つ。

小蒔「きっと…その所為…なんですね」
霞「えっ」
小蒔「私達がそんな風に…家族を蔑ろにしてしまったから…だから、九面様たちは…あそこを男子禁制にしたんだと…そう思います」

数秒後、霞の耳に届いたのは漏らすような声だった。
それに驚きながらじっと見れば、そこには俯く彼女の顔がある。
悲しさとやるせなさを浮かべるそれは九面という神々に同情しているからだ。
『神代の巫女』の中でも、誰よりも九面という神々に近い彼女にとって、それは真っ先に浮かぶものだったのである。

霞「そう…ね」

500年前の一連の事件の中…一番、辛かったのは誰か霞には分からなかった。
あくまで霞は祖母から聞いただけであり、その時代に生きていた訳ではないのだから。
だが、身内を傷つけ、狂気に陥るような巫女の家系を見て、その家系へと加護を授け続けた神々が辛くなかったはずがない。


671 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:14:02.58DtkKb4Jxo (27/108)


霞「(でも…私は自分の事で頭が一杯で…)」

これまで少なからず尽くそうとしてきた家の知りたくなかった『真実』。
それに霞が最初に覚えたのは強いショックであり、誰かに対する気遣いではなかった。
勿論、それは人として当然の反応であり、彼女が自己中心的な人物である事を意味しない。
寧ろ、そうやって真っ先に主祭神の辛さに思い至る小蒔の方が異常だと言っても良いだろう。

霞「(何だかんだ言いながらも…やっぱり小蒔ちゃんは神代の巫女なのね)」

そうやって真っ先に主祭神の事を思う小蒔のそれは優しさだ。
霞にこの子だけは辛い思いをさせないように護ってあげようと心に決めさせた小蒔の美徳である。
しかし、それだけとは思えないのは、彼女の特殊性を彼女は何度も目にしているからだろう。
これまでの巫女と比べても一線を画するその力は、器としてではなく、側に並び立つ『神々の花嫁』としての面が強い。
そんな彼女が真っ先に主祭神への優しさを見せたという事に、霞は彼女が未だに根本的な部分では『神代の巫女』であり続けているのを感じた。

小蒔「でも…私…少しだけ嬉しいです」
霞「えっ…?」

けれど、その瞬間、聞こえてきた小蒔の声を霞は理解する事が出来なかった。
何せ、今語ったそれはあまりにも陰鬱で、知りたくなかった事実なのである。
恐らくこうして神代の外に出なければ祖母だって教えてくれなかったものなのだ。
そんな暗い事実を伝えて、嬉しくなれる要素が何処にあるのか。
そう思う霞の前で小蒔は恥ずかしそうにはにかみながら、ゆっくりと口を開いた。


672 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:14:32.90DtkKb4Jxo (28/108)


小蒔「だって…もし、本当にその須賀さんたちが京太郎様のご先祖様なら…私達は運命的な出会いをしたって事ですから」
霞「あ…」

一時は引き離され、無縁となったはずの二つの家系。
それが500年の時を経て、再び結ばれようとしている事に小蒔は運命を感じていた。
勿論、そうやって過去、災厄に見舞われた人たちに対する同情がない訳ではない。
だが、その一方で、小蒔は思うのだ。
そうまでして結ばれなかった二人の為にも、今度こそは結ばれなければいけないと。
愛する京太郎に選んで貰わなければいけないと、そう決意を新たにしたのである。

霞「まったく…小蒔ちゃんったら」
小蒔「えへへ…」

勿論、それが強がり混じりなのは霞も気づいていた。
小蒔は優しく、感受性の強いタイプなのだから。
そんな彼女がこんな苦しい話を聞いて、心から嬉しいと思えるはずがない。
だが、それを表に出さず、こうして前向きに捉えようとしている。
その成長が心から嬉しくなった霞はその髪を優しく撫でた。
まるで姉のような気安くも優しいそれに小蒔は嬉しそうな声をあげる。

―― ピリリリリ

小蒔「あっ」

そんな彼女の耳に届いたのは聞き慣れた時計のアラームだった。
それに小蒔が視線を机の上に向ければ、緑の光を放つ時計が目に入る。
そこに映しだされている数字はもうそろそろ家を出なければいけないものだった。
だからこそ、小蒔はそっとベッドから立ち上がり、霞に対して頭を下げる。


673 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:14:59.96DtkKb4Jxo (29/108)


小蒔「ごめんなさい。そろそろ京太郎様のお家に行かないと…」
霞「あぁ、そう言えば今日はお泊りだったものね」
小蒔「はいっ♪」

そう嬉しそうに小蒔が応えるのは、今日の須賀邸には彼の父母がいないからだ。
お陰で思いっきり愛しい婚約者に甘えられると思うと、ついつい頬が緩んでしまう。
勿論、暖かな京太郎の両親の事は実の親以上に大切に思ってはいるが、あくまでそれだけだ。
思う存分、能力の影響もあって心酔している相手に愛してもらえる魅力にはどうしても敵わない。

霞「じゃあ、須賀君によろしくね」
小蒔「分かりました!」

そして、それは自分たちもまた同様だ。
それを理解する霞は小蒔の邪魔をしないようにベッドから立ち上がり、そっと部屋を去っていく。
その後姿を見ながら、小蒔は小さく鼻歌を歌い、準備を始めた。
愛用の性玩具をカバンへとそっとしまい込み、鏡に向かって髪や肌の張りをチェックする。
そうしている内に約束の時間は近づき… ―― 


―― 結局、小蒔は慌てて家を飛び出す事になったのだった。






………



……






674 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:15:27.44DtkKb4Jxo (30/108)


―― 原村和という少女は努力家だ。

非の打ち所のない美少女のように言われている彼女だが、何も最初から全てを完璧にこなせた訳ではない。
今では得意と言える料理だって何度も失敗しているし、掃除や洗濯もまた同じだ。
特に麻雀という分野ではここ最近、負け続きで、あまり順調とは言えない。
しかし、それでも歩みを止めないのが、原村和が原村和たる所以だ。

和「(新妻作戦…順調ですね…)」

そんな彼女が今、最もその性質を強く発揮しているのが、親友たちから言い渡された『新妻作戦』だった。
子犬のように甘える小蒔に対抗する為に考えだされたそれは今のところそれなりの成果をあげている。
それは勿論、作戦司令本部でもある二人の親友が優秀なだけではない。
一度、失敗だと思ったところを書き出し、それを埋めるように行動する生真面目さと努力があってこそだ。

和「(ふふ…今日は何を作ってあげましょうか…♪)」

そう思いながら和が目を向けているのは、弁当を振る舞った時に京太郎が見せた反応を纏めたノートだ。
オカルトと呼ばれる領域にまで昇華したその集中力と記憶力を遺憾なく発揮して記録されたそれはいっそ病的にも映るかもしれない。
実際、和自身、そうやって全てを書き出す自分をストーカーのように思える時がある。
だが、そうやって京太郎との記録が増えていくのが嬉しくて、ついついそれらを書き出してしまうのだ。


675 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:15:57.26DtkKb4Jxo (31/108)


和「(これはそこそこ好評でしたし…あ、でも、味付けはこっちの方が好みなんでしたっけ…?)」

そんなデータと睨めっこしながら、頭の中で料理を組み立てていく時間。
それは決して楽なものではないものの、とても楽しいものだった。
こうして記録と向き合っていると、その瞬間の出来事が脳裏に浮かび上がるという事も勿論ある。
だが、それ以上に和の心を浮かれさせているのは、それを振る舞った時に京太郎がどんな反応をしてくれるか楽しみだからだ。

和「(きっと…一杯、喜んでくれますよね…♥)」

頑張れば頑張っただけ京太郎は褒めてくれる。
失敗したら京太郎は慰めてくれるだろう。
そして、どちらにせよ、自分が頑張った事に京太郎は喜んでくれるはずだ。
そう信じているからこそ、和は素直に気分を浮かれさせる事が出来たのである。

和「(ちゃんと美味しいご飯を作れば…ご褒美も貰えるでしょうし…♥)」

その浮かれた心に欲情が差し込む自分を和は少しだけ恥じた。
まるでご褒美という言葉に反応するような自分がケダモノのように思えたのである。
けれど、それを完全に厭う事が出来ないのは、それ以上に期待する和がいる所為だ。
初めて須賀邸にお邪魔して夕食を作るという一大イベントを和は待ちわびていたのである。


676 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:16:25.19DtkKb4Jxo (32/108)


和「(最近は…こういった事は少なかったですから…仕方ないですよね)」

龍門渕との練習試合も終わり、京太郎はまたバイトに精を出すようになった。
お陰で彼は原村邸で食事をする事がめっきり減ってしまったのである。
勿論、触れ合いの時間は今まで以上に確保して貰っているものの、やっぱり寂しい。
部活から終わった後、実家でそのまま特訓を続ける日々を懐かしく思う和にとって、今日のイベントは決して外せないものだった。

和「(勿論、学校でお弁当を食べさせてあげるのも楽しいんですけれど…♥)」

惚気のような言葉を紡ぐ和の脳裏に、昼休みの京太郎が浮かび上がる。
和が作った料理を美味しそうに頬張るその姿は、和にとってまるでハムスターのように愛らしく映った。
モグモグと精一杯咀嚼する様に笑みを浮かべそうになった回数は数え切れないほどである。
そんな和にとって昼休みでの逢瀬は決して軽視出来ないものであった。

和「(食べ終わった後には膝枕もありますし…♪)」

それが終わった後には自身の膝に京太郎を迎え入れての休憩である。
うららかな午後の日差しの中、愛しい男を膝に載せるその時間が和は大好きだ。
うとうとと眠そうにするその顔は子どもっぽく、そして愛らしいのだから。
それを引き出したのが自分だと思うと誇らしく、そして幸せな気分になる。


677 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:17:05.13DtkKb4Jxo (33/108)


和「(その所為か…最近は少しずつ京太郎君も甘えてくれるようになりました…♥)」

その他、大小様々なアピールの結果、京太郎は少しずつそのタガを緩ませ始めていた。
それまでは和や小蒔の前では頼れる男でいなければ、と彼なりに自分を戒めていたのである。
しかし、和の努力に寄ってその戒めを少しずつ緩ませた彼は、二人に対して甘えるようになり始めていた。
勿論、それは漫に対するそれと比べれば、まだまだ微弱で遠慮の残るものだ。
しかし、そんな事を知らない和にとって、その信頼が嬉しいのには変わらない。

和「(二人には…感謝しないといけませんね)」

和が二人の親友に対して、そう思うのは何もアピールの仕方を考えてくれているからだけではない。
和もまた、二人があの決意表明の場で分かっていたのである。
そもそも、和は小蒔とは違い、自分の感情を除けば、それほど鈍い訳ではないのだ。
小蒔に対する初期の反応を思い返せば、二人がどんな風に京太郎を見ていたか良く分かる。
しかし、譲ってくれた二人の親友に感謝する和は、それを追求したりする事はなかった。

和「(きっと…やきもきさせていたでしょう…)」

和と京太郎の関係に気づいた時、二人がどう思ったのかは和には分からない。
だが、公然と二人っきりにするその行為は、和の背中を押してくれるものだった。
それに感謝する一方で申し訳なくなるのは、一人だけ幸せになる為か、和自身にも判別がつかない。
しかし、ふとした時にその感情は顔を出し、和の胸を曇らせる。


678 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:17:38.89DtkKb4Jxo (34/108)


和「(もっと早くに素直になっていれば…もしかしたら…)」

小蒔が長野に転校してくる前に…和が二人に決意表明をしていればまだ話は違ったかもしれない。
二人は必要以上に和に遠慮する事はなく、きちんとした場で戦えたかもしれないのだ。
だが、それはあくまでIFの話であり、幾ら考えても意味のないものである。
和にもそれが分かっているものの、その仮定は根絶出来るものではなかった。

和「(私が二人に出来る一番の恩返しは…京太郎君に選んでもらう事です)」

その仮定を振り払うように頭を振りながら、和はそう考え直した。
二人が自分のサポートを決めた以上、落ち込んでいる暇などはない。
和と京太郎を奪い合う小蒔は強敵で、また遠方には上重漫というライバルも控えているのだから。
何より…和自身、もう京太郎の事に関して遠慮などしたくはない。
それほどまでに和は京太郎に惹かれ、そして支配されていた。

和「(その為にも…美味しい夕食を作ってあげないと…)」

そう決意を新たにしながら、和は再びノートと睨めっこを開始する。
その視線はさっきよりもさらに真剣で、空気も張り詰めたものになっていた。
話しかける事さえ躊躇うようなその真剣さは親友に対する後ろ暗さから逃避する為もあるのだろう。
だが、そんな自分を自覚する事がないくらい、今の和は集中していた。


679 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:18:11.68DtkKb4Jxo (35/108)


「…和」
和「ひゃぅ!?」

天性の才能とまで言って良い、並桁外れた集中力。
それをかき乱したのは後ろから投げかけられた男性の声だった。
京太郎のそれとは比べ物にならないくらい低く、そして落ち着いたトーンのそれに和がビクンと肩を跳ねさせる。
そのままそっと声のした方に目を向ければ、そこには苦虫を噛み潰したような父の姿があった。

和「お、お父さん…」
「何をしているんだ?」

そう和に話しかけながら近寄ってくる彼はスーツ姿であった。
ついさっきまで仕事であった彼はようやく自宅へと戻る事が出来たのである。
しかし、玄関で帰宅を告げても、愛する妻はおろか娘からの返事もない。
不審に思った彼がリビングへと入った瞬間、そこには真剣な表情でノートを睨めつける和の姿があったのだ。

和「え、えっと…」

そんな彼にあけすけに事実を話すのを和は躊躇う。
彼女は彼女なりに父の事を尊敬してはいるが、それはあくまでも男親に対してのものだ。
何もかもを話せるようなベタベタとした関係ではなく、適度な距離を取って付き合っている。
そんな相手に親友相手にさえ言いづらかった報告を出来るはずがなく、和は口篭ってしまった。


680 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:18:43.64DtkKb4Jxo (36/108)


和「(それに…お父さんは京太郎君の事を嫌っているみたいですし…)」

以前、京太郎が原村邸を尋ねた時、応対したのは彼だった。
その時から彼は口には出さないものの、京太郎の事を嫌っているのである。
そこに娘を渡したくはない男親独特の心理が働いているのだが、それに和は気づいてはいない。
彼女にとって事実なのは自身の父が京太郎の事を嫌っている事であり、そしてそれが自分の心情の吐露を阻んでいるという事だけだ。

和「き、今日の献立を考えていました」
「その割には大分、真剣だったようだが…」

和の言葉に彼はそう返しながらも、深く追求する事はなかった。
そもそも多少、不思議に思った程度で、愛する妻の仕事のように理論詰めて事実を求めるつもりなど最初からなかったのだから。
娘が何か自分に対して、心から後ろ暗い事をするような子ではないと彼は信頼しているのだ。

「(それでも…最近は色々とあるようだが…)」

勿論、それを和から聞いた事はない。
しかし、真実に携わる仕事をする彼にとって、娘の変化というものは容易く見て取れるものだった。
とは言え、それは深刻なものではなく、また男親である自分には話しづらい類のものだと理解もしていたのである。
だからこそ、彼は自分に対して隠し事をしている我が子の事を追求せず、これまであまり干渉しようとはしなかった。


681 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:19:23.79DtkKb4Jxo (37/108)


和「あの…今日は早いんですね」
「あぁ…少し顔を合わせるだけだったからな」

そんな娘の言葉に彼は小さく頷きながら、ネクタイを緩める。
そのままキッチンの中へと入っていく彼の背中を和はドキドキしながら見送った。
今日も仕事だと聞いていたので、てっきり夜中まで帰ってこないものだと思い込んでいたのである。
だからこそ、彼女は堂々とリビングでノートを広げ、京太郎へと振る舞う料理に悩む事が出来たのだ。

「ん?」
和「あっ…」

本来ならその目論見が崩れ去ったところで和は自室へと撤退するべきだったのだろう。
だが、急な親の帰宅という予期せぬアクシデントに和は冷静さを失っていたのだ。
結果、机の上に広げっぱなしであったノートを父に見られてしまう。
それに和が自分の迂闊さを呪った時にはもう遅い。
ジワジワと漏れだすような父の不機嫌さに和は肩を縮こまらせ、その顔をそっと俯かせてしまう。

「…和」
和「は、はい…」

そんな娘に彼は何を言えば良いのか分からなかった。
勿論、ノートに細かく書いてあった内容は娘が誰かに懸想している証なのだと分かっている。
その文面や踊るような文字など、見ているだけでも娘の歓喜が伝わってくるくらいなのだから。
だが、それに対して、自分がどんなアクションを取るべきなのか、彼は自分でも良く分からなかった。


682 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:19:53.48DtkKb4Jxo (38/108)


「(結局は…私も追求する事を恐れていただけなのかもしれないな)」

久方ぶりに感じる自分の狼狽に彼は自嘲気味にそう思った。
寛容で理解力のある父親…というポーズを取っていただけで、結局は自分に不都合な事実から逃げていただけなのだと。
実際、こうして予想もついていた事を目の当たりにして、彼はどう対応するべきか迷っていたのだから。
そんな自分が弁護士という仕事に就いている事に少なからず自嘲を覚えながらも、彼はゆっくりと口を開いた。

「…お前は母さんに似て、頭が良いのに思い込むと一直線なところがあるからな」

そう紡ぐ言葉には追求の意図はなかった。
しかし、それは彼が目の前の事実から逃げているという事を意味しない。
自身の弱さを自覚した今、それを是正する強さがこの男にはあるのだから。
その言葉は理解力のある父親を演じるものではなく、本心から紡がれるものだった。

「時には自分を思い返すクセをつけなさい」
和「え…」

それだけ言ってノートから自分から目を離す父親の姿が和は信じられなかった。
あれだけ京太郎に対して拒否反応を示していたのだから、てっきり深く追求されると思っていたのである。
しかし、彼は京太郎の名前すら出さず、アドバイス一つだけで済ませた。
そこにはかつて和と大喧嘩するほど京太郎を嫌っていた父の姿はなく…だからこそ、そう驚きの声を返してしまうのである。


683 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:20:38.97DtkKb4Jxo (39/108)


「何だ?もっと言われたかったのか?」
和「そういう訳じゃ…ないですけれど…」

そんな娘に返される彼の声は少しだけ浮かれたものになっていた。
それが冗談の類であると娘である和には十二分に伝わっている。
しかし、それに安堵する事が出来ないのは、目の前の父の姿が彼女にとって違和感そのものだからだろう。
何か企んでいると思う訳ではないが、本当にこれで良いのだろうか。
どうしてもそう思って内心、首を傾げてしまうのである。

「…私とて無闇矢鱈と反対している訳じゃない」

そう言えるのは彼が京太郎の誠実さを内心、認める事が出来ていたからだろう。
あの日、娘に会う為だけに待ち続け、頭を下げた京太郎の事をそれなりに評価していたのだ。
流石に交際相手として手放しに喜べる相手ではないにせよ、悪い人間ではない。
そう思える程度には彼は京太郎の事を信頼していた。

「それにお前は聡い子だからな。惚れて良い相手とそうでない相手の区別くらいは出来るだろう」

そして、それ以上に彼が信頼していたのは娘の事だ。
彼の愛する妻の血を引く和は聡明で、悪い男には騙されないと思っていたのである。
ならば、ここで下手に反対して、娘の態度を頑なにさせるべきではない。
前回、京太郎の事で大喧嘩してしまった事を彼も少なからず反省していたのだ。


684 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:21:12.08DtkKb4Jxo (40/108)


「そして…お前は私に似て頑固だからな。親に言われた程度で自分を曲げはしないのは…私が良く分かっている」

そう言いながら彼が自嘲気味に笑うのは、自身もまたそうやって親と衝突した経験が少なからずあったからだ。
特に恋愛関係では一度も譲った事はなく、今の妻との結婚も半ば強引に強行した経緯がある。
そんな彼の頑固さを受け継いでいるであろう娘の頑なさを言葉で変えられるはずがない。
ましてや、まだ相手のことを殆ど知らない自身の言葉で心変わりするような軽薄な人間に育てたようなつもりもないのだから、ここで論じても無駄である。

「以上の事から私はお前にとやかく言うつもりはない。好きにしなさい」

そう言葉を結ぶ彼に和はポカンとした表情を向ける。
その視線には納得と驚きが混じり、何とも言えない微妙な色を見せていた。
どうやら自分はよっぽど理解のない親だと思われていたらしい。
それに少しだけ悲しさを感じながら、彼はそっと口を開いた。

「…その代わり、今度、相手の男を連れて来い。じっくりと話をする必要がありそうだからな」
和「お、お手柔らかにお願いします…」

その言葉に和がぎこちなく返すのは、父の声が真剣そのものだったからだろう。
冗談の余地など欠片も許さないその鋭い声に和の表情が微かに引きつる。
とは言え、彼としてもそれは決して譲れないラインだ。
娘のことを信頼しているとは言え、相手の男を見極めるのは親の義務なのだから。
もし、自分の思い違いで信頼出来ない男だと思えば、すぐさま追い返してやろう。
そう心に決めながら、彼はそっと冷蔵庫を開き、中から牛乳を取り出した。


685 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:21:39.53DtkKb4Jxo (41/108)


和「あの…」
「ん?」
和「…有難うございます」
「…別に…感謝されるような事じゃない」

それをコップに淹れる父に和はそう感謝の言葉を放った。
しかし、彼がそれを素直に受け取れないのは、娘に窮屈を強いているからだろう。
両親ともに法関係の仕事をしている都合上、和は家に一人でいる事が多いのだから。
それだけならまだしも幼い頃から優秀な和に家事まで任せっきりになっている。
生きていく為にそれも仕方がないとは言え、申し訳ないと思う気持ちは彼の中にはあったのだ。

―― ボーン

和「あっ」

瞬間、リビングに鳴り響いたその音は夕方の4時を告げるものだった。
それに和が声をあげるのはそろそろ京太郎と約束していた時間だからである。
まだ献立もしっかり決まっている訳ではないが、道中でスーパーに寄る都合上、そろそろ出かけなければいけない。

和「あの…お父さん、今日は…」
「出かけるのか?」
和「…はい。帰りも遅くなると思います」

そう思った和の言葉はほんの少しだけ嘘が混じっていた。
そもそも両親が仕事だと聞いていた彼女は、最初から須賀邸へ泊まるつもりだったのである。
しかし、この話の流れで泊まると言えば、折角、寛容な反応を見せた父を怒らせるかもしれない。
歩み寄ってくれた父に嘘を吐くのは心苦しいが、そうなるとまた喧嘩になり、遅刻するのは必至だ。
それだけは避けなければいけないと思った和は反射的に嘘を吐いてしまったのである。


686 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:22:22.37DtkKb4Jxo (42/108)


「…そうか」

それを感じ取りながらも、父は何も言わなかった。
代わりにコップに入った牛乳を一気に口の中へと流し込む。
冷えた液体は身体の中をそっと通り抜け、娘に嘘を吐かせた男に対する小さな苛立ちを和らげてくれた。

「気をつけて行って来なさい」
和「はい」

そのまま娘から視線を外す父に和は小さく頷いてから歩き出す。
そのウキウキとした後ろ姿は久しく彼が見ていないものだった。
何処か子どもっぽくも見えるそれは目下、青春を謳歌している年頃としては当然のものだ。
しかし、彼が記憶を掘り返してもそうやって浮かれる和は十年以上前にしか出てこなかった。

「(いや…和もまだ子どもなんだな…)」

彼にとって和はとても物分かりの良い子であった。
最近は落ち着いてはいるものの、転勤ばかりでろくに友達が作れない事に文句を言われた事はない。
だが、それは決して彼女が何も感じていない事を意味してはいなかったのである。
きっと不満はあっただろうし、苦しませていた。
それを理解しながらも…成長する娘の姿と仕事を理由に意識の奥底へと追いやっていたのは事実である。


687 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:23:08.74DtkKb4Jxo (43/108)


「(結局…私はちゃんと娘の事を理解できていなかったのか)」

東京の進学校を勧めたのも、それが娘の為になると思ったからだ。
しかし、それは決して学歴というステータスを得る為だけではない。
寮制がしっかりしているそこならばいざ転勤となっても和を連れて行かなくて良いと思ったからである。
そこでならきっと和は友達を作って、普通の子どものように過ごす事が出来る。
そう思ったからこそ、多少、強引ではあれど、彼は和をそこに入れようとしていた。
しかし、それが親のエゴでしかない事を彼が今、ようやく心から理解したのである。

「(和にはもう本当の意味で親など必要ないかもしれないな)」

親よりももっと大事で、そして護ってくれる人が和の周りにはいる。
自分たちにはもう見せなくなったその姿から、それを悟った彼は一人になったリビングで小さくため息を吐いた。
庇護下から巣立とうとしている娘の姿に彼は寂しさを覚えるものの、それを引き止める術は、親にはない。
あったとしても、大人の都合に和を巻き込み続けた自分にそんな資格がない事を彼は良く理解していた。

「(…アイツが帰ってきたら…久しぶりに外食にでも行ってみようか)」

その寂しさを共有出来るたった一人の伴侶。
その姿を脳裏に浮かばせながら、彼はそっと懐から携帯を取り出した。
そのままメールを打つ手は普段と違って、とても鈍い。
まるで久方ぶりにデートを誘うようなそれに、敏腕弁護士と謳われる判断力を発揮出来ないのだ。
結果、たった一つのメールを作るのに数十分ほど悪戦苦闘を繰り返し… ――



―― その間に飛び出していた娘を見送る事も出来なかったのだった。






………



……






688 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:23:41.01DtkKb4Jxo (44/108)


―― 結局、和が須賀邸へとたどり着いたのは夕方の五時を過ぎた頃だった。

家を出た時刻こそ予定通りだったものの、思わぬアクシデントに献立は決まっていないままだったのだ。
結果、スーパーへと立ち寄った和は食材を前に悩み、中々、決める事が出来なかったのである。
普段なら即断即決出来るはずのそれを胸中で少しだけ楽しみながら、レジを通った頃には既に時間は危険域に達していた。
だが、両手いっぱいに買い物袋を掲げた和が走ったり出来る訳もなく、両手に掛かる重さに苦しみながら須賀邸へと到着したのである。

和「(こんな事ならもっと早く出ればよかったです…)」

父に見つかってテンパって居たとは言え、見通しの甘かった自分。
それに自嘲混じりの言葉を浮かばせながら、和はそっと肩を落とした。
既に肩にはコリと共に疲労感が浮かび上がり、冬の外気の中でもはっきりと分かるくらいの汗を見せている。
その不快感に大きく息を吐きながら、和はそっとインターフォンに手を伸ばし… ―― 

小蒔「あれ?」
和「えっ?」

瞬間、聞こえてきた声に和の指は固まった。
そのまま声の聞こえてきた方に視線を向ければ、そこには見慣れた黒髪の少女が目に入る。
紅白が目に映える巫女服を身に纏ったその少女は、和の部活仲間であり目下恋敵として対立中の神代小蒔だ。


689 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:24:21.19DtkKb4Jxo (45/108)


小蒔「…」
和「…」

固まった二人の間に微妙な空気が流れるのは、二人ともその手にスーパーの袋を下げているからだろう。
普通のものよりも幾分大きなそこには所狭しと食材が並べられていた。
そんなものを掲げてこうして須賀邸の近くにやってくる恋敵の目的に気付かないほど二人共鈍くはない。
だからこそ、二人はけん制をしあうように沈黙を続け、じっとお互いの顔を見続けるのだ。

小蒔「(ど…どうしましょう…)」
和「(どうすれば良いんですかぁ…)」

そんな二人の内心は奇しくもまったく同じものだった。
共に師匠であり弟子でもあるという特殊な関係上、普段の二人は良好な関係を保っている。
少なくとも修羅場を見せる事などはなく、恋焦がれる相手を譲ったりする事もあるのだ。
そんなフェアな戦いを心がけている二人とは言え、こうして休日に ―― しかも、親がいないと知らされている須賀邸の前で ―― 会うのは気まずくて仕方がない。

小蒔「(も、勿論…そういう…事…ですよね?)」
和「(神代さんもその…京太郎君に愛されに…)」

それは勿論、自分たちがただ食事を作りに来た訳ではない事を理解しているからである。
婚約者として、そして愛玩奴隷として愛される為に二人はこうして貴重な休日を潰してやって来ているのだ。
相手もまた食事の先を期待していると分かっているだけに二人は見つめ合い、沈黙を貫く。


690 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:24:59.85DtkKb4Jxo (46/108)


小蒔「あの…原村さんは…どうしてここに?」
和「そ、それは…」

それを破ったのは小蒔の方だった。
軽いジャブから入るその言葉に和は口篭る。
幾らか素直になり、感情をストレートに示すようになったとは言え、彼女の羞恥心は強いままなのだ。
恋のライバルに対して意中の相手に料理を作りに来たとは中々、言い難い。

和「き、京太郎君に…料理を作りに…」

それでもポツポツと言葉を漏らすのは、和が小蒔に負けたくないと思っているからだ。
今や二人の親友の期待までもその背に背負う和にとって、自身の敗北は親友の敗北でもあるのだから。
だからこそ、普段であれば中々口に出来ないであろうそれを戸惑いながらも口にし、小蒔の事を真正面から見返した。

小蒔「そう…ですか。私も…同じ…だったりして…」
和「そう…ですよね」

そんな和に返すのはその手に掲げたスーパーの袋を持つ小蒔の言葉だった。
彼女と同じ目的である事を告げるそれは途切れながらもはっきりとしている。
それは勿論、つい先ほど聞いた霞の話が彼女の背中を押しているからだ。
500年前に結ばれなかった先祖の為にも、ここは譲れない。
その覚悟で怯みそうになる心を支えながら、小蒔は和を見つめ続ける。


691 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:25:36.51DtkKb4Jxo (47/108)


小蒔「……」
和「……」

とは言え、二人は二の次の言葉を紡げない。
二人共、譲るつもりはないにせよ、相手のことを無視して押し通れるタイプでもないのだ。
出来れば納得して帰って欲しいと思っているし、穏便に済ませたいのである。
しかし、その為の方策が浮かぶはずもなく、ただただ無為に時間だけが流れていった。
その間に食材が傷んでいくという事を理解しながらも二人は達人同士の試合のように一歩も動けなかったのである。

和「(このままじゃ…時間が…)」
小蒔「(ち…遅刻しちゃいます…っ)」

しかし、そうしている間にも京太郎と約束していた時間が迫る。
それに焦りを覚え始めながらも、二人とも恋敵を遠ざける良い案が浮かびあがったりはしない。
勿論、二人共、今日は譲る代わりにまた後日…というのが一番、角の立たない方法だと理解している。
だが、京太郎と今日のこの時間に会うと約束しているという事実がそれを選びがたいものにしていた。
約束を違えて京太郎に嫌われたくはないと思う二人にとって、今日は決して譲れないものだったのである。

和「(妥協…するしかありません)」
小蒔「(このままじゃ…時間を無駄にするだけ。だから…)」

和・小蒔「「あ、あのっ」」

だが、このまま我を張り続けていても時間を無駄にするだけ。
そう同時に判断した二人はほぼ同時に口を開く。
その後に気まずい表情を浮かべるタイミングさえ一致する二人はまるでコントのようだろう。
だが、夕方の住宅地でそんな二人を見ているものは誰もいなかった。


692 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:26:08.39DtkKb4Jxo (48/108)


和「あ…じゃあ…神代さんから…」
小蒔「いえ…原村さんの方から…どうぞ」
和「いや…私はその…大したものじゃないので…」
小蒔「私も…あんまり重要な事じゃないですから…」

だからこそ、自分たちでギクシャクしている雰囲気を突破するしかない。
そう判断した二人は言葉の先制権を譲り合い、そしてお互いに辞退しあう。
それは妥協するのは相手の出方を見てからで良いという打算があったからである。
勿論、相手に遠慮する思考がない訳ではないが、それは打算に比べれば小さなものだった。

和「じゃあ…あの…い、一緒に…作りません…か?」
小蒔「え…」

そんなループを断ち切ったのは和の言葉だった。
それに小蒔が驚きの声を返すのは自分も同じ事を考えていたからである。
このままお互いにけん制を続けるよりは何かしらの方法で京太郎にジャッジを任せた方が良い。
能力によって自分たちを縛っている彼の言葉にはお互いに逆らえないだろうとそう思っていたのだ。

和「その後の事は…京太郎君に任せる…という事で」
小蒔「ふふ…そうですね」

そして、それは和もまた同じだった。
ただ、小蒔と違うのは京太郎が約束を違えたりはしないという打算があった事だろう。
ちゃんと前もって約束しているのだから、京太郎はきっと自分を選んでくれるはず。
そう判断を下す和の脳裏には京太郎が小蒔とも約束しているかもしれないという思考は欠片もない。
彼女にとって京太郎はそんな不誠実な事をするような相手ではなかったのだ。


693 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:26:34.68DtkKb4Jxo (49/108)


和「じゃあ、押しますね」
小蒔「はい」

―― ピンポーン

結局、和が須賀邸にたどり着いてから十数分。
その間、ずっと宙に浮き続けていた指が今度こそインターフォンへと辿り着く。
それに反応して人の気配が扉へと近づいてくるのを二人はじっと待った。
数秒後、ゆっくりと開いていく扉の向こうから彼女たちが恋焦がれる金色が現れる。

京太郎「いらっしゃ…ぃ…」

京太郎の言葉が小さく窄んでいくのは、目の前の状況が意外なものだったからだ。
勿論、二人に指定した時刻が一緒だっただけにまったく予想していなかった訳ではない。
しかし、こうして二人一緒に須賀邸に顕れる確率なんて本来ならばかなり低いはずなのだ。
それをピンポイントで引き当てる自分の運の悪さに彼は顔を引き攣らせてしまう。

小蒔「京太郎様…」
和「京太郎君」

そんな彼の名前を呼びながら二人は笑みを浮かべて近づいていく。
それは勿論、京太郎の事を責める為のものではなく、彼と会えたのが嬉しかったからだ。
骨身どころか魂までも能力に支配されている彼女たちにとって、数時間の別離でも久しく感じられるのだから。
しかし、後ろ暗い感情を抱く京太郎にとってそんな彼女たちのにこやかな笑みが妙に迫力あるものに感じられた。
分かっていてダブルブッキングを仕組んだ彼にとって、それは責められているものにしか見えなかったのである。


694 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:27:04.01DtkKb4Jxo (50/108)


小蒔「とりあえず…原村さんと一緒に料理を作りますね」
和「諸々の事は後で相談しましょう」
京太郎「あ、あぁ…それと袋持つよ」

しかし、彼の後ろ暗さなんて二人に分かる訳がない。
京太郎がぎこちないのも予期せぬイベントに驚いているだけだと思っていたのである。
だからこそ、二人はそう冗談めかして言いながら、玄関へと近づいていく。
そんな二人を招き入れながら微かに胃が痛くなるのを感じながら、京太郎はそっと二人に手を差し出した。

和「でも…」
小蒔「良いんですか?」

勿論、二人にとって、その優しさは嬉しい。
二人分とは言え、ご馳走を作ろうとしていたのだからその荷物はそれなりに重かったのである。
それを彼に預けてしまいたいという気持ちは二人の中にも間違いなくあった。
しかし、それを躊躇うのは京太郎の手が二つしかないからである。
お互いに2つずつ、合計4つの袋を彼に負担にならないか、二人は不安になっていたのだ。

和「(一つだけ渡して一緒に…って言うのが理想なんですけれど…)」
小蒔「(先にそれを選んだら…原村さんに同じことをされそうですし…)」

何より、自分の持つ袋を全て彼に渡したら相手にアピールさせる余地を作ってしまう。
さりとて、一つだけ手渡すのであれば、相手も同じ事をするだろう。
そうお互いに同じことを思った彼女たちは動く事が出来ない。
こうしてお互いの存在を認めるに至ったにせよ、二人は未だライバル同士なのだから。
普段は暗黙の了解で結ばれているものの、それを反故にしない領域では相手に先んじたいのが本音だったのである。


695 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:27:37.52DtkKb4Jxo (51/108)


京太郎「いいから。4つくらいリビングまで運ぶくらいなら余裕だし」
小蒔「あ…っ」
和「…じゃあ、お願いします」

しかし、根が鈍感な京太郎が二人の逡巡に気づくはずもない。
迷う二人がただ遠慮しているだけだと判断した彼は、少しばかり強引に二人から袋を受け取った。
そのままスタスタとリビングへと歩いていく彼の背中を追いかけながら、二人は開け放された扉を潜る。

京太郎「よっと…」

そんな二人の前で京太郎は4つの袋をテーブルへと置いた。
四人がけのそれはそれなりに大きなサイズではあるものの、4つも袋があると狭苦しく見える。
まずはそれを片付けるべきか、或いは京太郎を労うべきか。
それをお互いの瞳から確認した二人はほぼ同時に口を開く。

小蒔「お疲れ様です。お礼に私がお茶、淹れますね」
和「じゃあ私は冷蔵庫開けさせてもらって良いですか?もう冬とは言え、このままじゃ落ち着きませんし」
京太郎「いや、良いよ。二人はお客さんな訳だし、俺が動くって」

ある意味では同じ相手に恋する同志だからか、一瞬でお互いの意思を確認してみせた二人。
そんな彼女らに京太郎が口を開くものの、彼は二人の手でそっと椅子へと移動させられてしまう。
優しく、けれど、有無を言わさないそのコンビネーションに京太郎そのままストンを腰を下ろすしか無い。


696 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:28:10.33DtkKb4Jxo (52/108)


小蒔「いいから。座っててください」
和「そうですよ。京太郎君は主賓なんですから」

そのまま連れ立つようにキッチンの中へと入っていく二人の背中を京太郎は見送る事しか出来なかった。
そんな自分に小さく自嘲を浮かばせながらも、幸せを感じるのはキッチンの中で動く二人がとても魅力的だからだろう。
タイプこそ違えども、紛れも無く美少女と言っても良い二人が自宅のキッチンで、しかも、自分の為に動いてくれている。
それは世の男性諸君の顔に笑みを浮かばせるのには十分過ぎる光景だろう。

京太郎「(ホント…洒落にならない質の悪さだよなぁ…)」

だが、京太郎はそれに安易に浸る事が出来ない。
それは勿論、その光景を自分の手で作り出せたものではないからだ。
ある日突然、自分の身に宿った特殊な能力 ―― オカルトとも言われるそれを知らず知らずの内に振るってしまった結果なのだから。
勿論、自身の能力がなければ、どうであったかと仮定の未来は分からない。
だが、世の男性全てが羨むような目の前の光景を見る事が出来ない事くらいは彼にだって推測する事くらい出来た。

京太郎「(性的快感による相手への支配…或いは洗脳か…)」

鹿児島での神代家当主との話から、その能力の根源は分かっていた。
小蒔と同じく神から与えられたそれは零細神社が、霧島という他の神の支配下で生き残るには必要なものだったのだろう。
しかし、京太郎はその子孫であるとは言え、大国主を信仰していた訳でも、何か危機的状況にあった訳でもない。
それなのにこうして自分の中に能力が芽生えたのは一体、どういう事なのか。
それは彼にとってずっと悩みの種だったのである。


697 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:28:45.93DtkKb4Jxo (53/108)


京太郎「(俺が…そういうの欲しいって…そう思っていたからなのか?)」

清澄が全国優勝を果たした瞬間、誰よりも傍にいて、けれど、部外者だった京太郎。
彼にとって宮永咲や片岡優希が持つような能力は眩しく、そして羨ましいものだった。
それに嫉妬を覚えた事はないにせよ、能力さえあれば皆の練習相手くらいにはなれるのに。
そう思った回数は京太郎自身、覚えてはいなかった。

京太郎「(結局…俺も小蒔に偉そうに言えるほど自分の事ちゃんと分かってなかったって事かなぁ…)」

それを自分の血筋を守護する大国主が聞き届けてくれたのか彼には分からない。
小蒔のように神を相手に対話をするような能力など京太郎にはないのだから。
しかし、もし、そうなら自分はこうまでお節介を焼いてくれている相手に恐ろしいまでの不義理を続けている事になる。
それを思うと何となく申し訳なくなり、最近は部屋に小さいながらも神棚を作ったりした。
そんな迷走する自分に彼が一つ苦笑を浮かべた瞬間、二人はキッチンからそっと抜け出し京太郎へと近づいてくる。

小蒔「はい。どうぞ」
和「熱いですから気をつけてくださいね」
京太郎「おう。ありがとうな」

そう言いながら差し出されたお茶に京太郎はそっと口をつけた。
瞬間、芳醇な緑茶の香りがそっと広がり、口の中を楽しませてくれる。
スーパーでパック詰めになっている安い茶葉のはずなのに一体、どうしてここまで美味しく出来るのか。
そう思うほど豊かで優しい風味に京太郎はつい頬を綻ばせてしまう。


698 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:29:21.47DtkKb4Jxo (54/108)


京太郎「うん。美味しい。小蒔のお茶はやっぱり良いな」
小蒔「えへへ…」

そのまま口にした言葉に小蒔もまたその頬を緩ませた。
そう言われるのは初めてではないが、何度、言われても色褪せはしない。
京太郎から賛辞を貰う為に少なからず努力している彼女にとってそれは何時だって嬉しい言葉なのだから。
特に今はすぐそばに恋敵がいるのだから、尚更、嬉しいものである。

和「む…」

そして、逆にそれを見せつけられた和は面白く無い。
勿論、緑茶を淹れる技術や須賀邸に対する知識では劣っているという自覚はある。
だからこそ、お茶を淹れるのは譲った彼女にとって、それは仕方がないという思いはあった。
しかし、実際にこうして目の前でいちゃつかれると理不尽感は否めない。
自分だって不慣れな冷蔵庫と格闘していたのにどうして褒めて貰えないのか。
どうしてもそう思って頬を膨らませてしまうのだ。

京太郎「和もありがとな。お陰で助かったよ」
和「別に…お礼を言われるような事じゃありません」

勿論、京太郎はそんな和の気持ちも分かっている。
だからこそ、紡いだフォローの言葉に和は素っ気ない言葉を返した。
しかし、その表情が強張りから開放されたのは小蒔の目から見ても良く分かる。
何だかんだ言いながらもそうやってお礼を言われて、和もまた機嫌を直していたのだ。


699 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:29:52.72DtkKb4Jxo (55/108)


小蒔「それで…どうします?今から夕食の準備をしましょうか?」

それにほんの少しばかりの嫉妬を感じながら小蒔が口にした言葉はこの場に置いては必要不可欠なものだった。
既に時刻は夕方から夜にさしかかろうとしているのだから。
京太郎と二人っきりという事もあり、お互いがご馳走を作ろうとしているのだから時間的猶予はあまりない。
どちらが何を作るかという話し合いもしなければいけないし、このままのんびりしていられなかったのだ。

小蒔「(勿論…そうしたいと思う気持ちは私の中にもあるんですけれど…)」

小蒔は基本的に京太郎との何気ない触れ合いが好きだ。
本来の彼女は無言で傍にいるだけでついつい幸せになってしまうくらいに純朴なのである。
だが、そんな彼女にとって再優先にするべきは常に愛しい婚約者の事なのだ。
彼に空腹など感じさせたくはない彼女にとって、今の安寧は後の不幸を呼ぶものである。
だからこそ、彼女はこのままのんびりするという誘惑を断ち切って、そう口にする事が出来たのだ。

京太郎「あー…その前にちょっと話があるんだけどさ」
小蒔「話…ですか?」
京太郎「あぁ。かなり重要な…これからの話」

そんな小蒔の決意を遮るような京太郎の真剣なに二人は緊張を走らせる。
そうやって重要な話と言われた二人の脳裏に、真っ先に出てくるのは京太郎の選択なのだから。
これから彼の隣に居続けられるたった一人を決めるそれを感じて、身体が強張らないはずがない。
これまで出来る事はやってきたものの、もし、自分が選ばれなかったらどうしよう、と思ってしまうのだ


700 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:30:30.22DtkKb4Jxo (56/108)


和「(でも…大丈夫です。そんな事はありません)」

和がそう思うのは、今の状況があまりにもそれに適さないからだ。
その選択を伝えるのであれば、正直に「決めた」と二人に言えば良いだけなのだから。
それが二人に、いや、三人にとって重要だと京太郎も分かっているが故にこんな騙し討のような真似はすまい。
根が誠実な彼ならば自分たちが覚悟出来るように、ちゃんと前もって言ってくれるだろう。
和はそう京太郎の事を信じていたのだ。

京太郎「とりあえず…そろそろ出てきて良いぞ」

―― ガチャ

小蒔「えっ」
和「……っ!」

京太郎の声に従うようにリビングの扉が開く。
初めて須賀邸を訪れる和は知らないものの、そこは脱衣所に連なる扉であった。
そこからひょっこりと顔を出すその顔を、二人は覚えてる。
小蒔は対戦相手として、そして和にとっては映像越しでしか知らない彼女の名前は… ―― 

和「どう…して…上重さんが…?」
漫「や。神代さんは久しぶり。原村さんは…初めましてかな?」

上重漫。
この場にいるはずのない三人目の犠牲者で、二人にとっては紛れもない恋敵。
そんな彼女の登場に二人は目を丸くし、茫然とする。
ついさっきまで今日は京太郎とイチャイチャ出来ると思っていた彼女たちにとってそれはあまりにも急展開だったのだ。
息継ぎも許さないようなそれに思考が追いつかず、どうしたら良いのか分からなくなるくらいに。


701 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:31:02.29DtkKb4Jxo (57/108)


京太郎「こうして皆を呼んだのは…他でもない。俺がこれからどうするかを伝える為だ」
和「え…?」

和にとって誤算だったのは、京太郎に覚悟をさせるつもりなどなかった事だろう。
つまり、彼にとっては二人が多少、混乱してくれていた方が有難い事だったのだ。
だからこそ、京太郎は二人を騙すような真似をして、こうして家へと呼び寄せた。
勢いのままに結論を口に出来るように、三人を間違いなく地獄へと引きずり込む言葉を紡ぐ為に。

和「(ど…どうする…べきなんですか…?)」
小蒔「(こ、心の準備がまだ…まだ出来ていないのに…)」

そしてそんな京太郎の目論見通り、二人は混乱していた。
最初から京太郎が自分たちを騙すつもりであった事さえ思い浮かばないくらいに。
それほどまでに冷静さを失った彼女たちは、半ば呆然と事の成り行きを見守った。。
それは勿論、彼女たち自身もまたその答えをずっと待ち続けたという事も無関係ではなかったのである。

京太郎「俺は…三人と一緒が良い。誰か一人なんて選べない」

そんな二人に告げられる言葉に部屋の中に沈黙の帳が降りた。
誰一人言葉を発さずに流れるそれは普段、彼女らの間にあるそれとは比べ物にならないほど息苦しい。
それはいきなり渦中へと落とされた二人が少しずつその顔を歪めていったからだろう。
一人は怒りに、そしてもう一人は悲しみに。
それぞれ心が命じるままに感情を浮かばせていったのである。


702 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:31:31.67DtkKb4Jxo (58/108)


和「…本気…なんですか?」
京太郎「…あぁ。俺は本気だ」

数分ほどの沈黙の後、その片方 ―― 怒りを浮かばせる和は静かにそう京太郎へと尋ねた。
低く抑えられたその声は平坦ではあるものの、しかし、だからこそ京太郎には恐ろしく思える。
その感情を向けられる京太郎には、それがまるで荒れ狂う前の海のような静けさにしか見えないのだから。

京太郎「(でも…怒られるのも当然だ)」

京太郎とて自分の選択がどれだけ最悪なものか理解しているのだ。
理解して尚、彼はそれを選ばずにはいられなかったのである。
そして、そんな自分の背中を漫は押してくれた。
だからこそ、ここでヘタレる訳にはいかないと彼は必死に自分を叱咤し続ける。

和「本気で…そんな自分勝手な考えが通用するって…そう思ってるんですか!?」

そう声を荒上げるのは、和が京太郎の事を心から信じていたが故だ。
どんな形になろうとも絶対に京太郎は答えを出してくれると、自分を選ばないにしても納得だけはさせてくれるとそう信じていたのである。
しかし、現実は最低とも最悪とも言ってもまだ足りないような答えを出されるだけであった。
それは和の信頼を裏切るのには十分過ぎるもので、だからこそ、彼女は騙された悲しみよりも先に怒りを滲ませたのである。


703 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:32:01.92DtkKb4Jxo (59/108)


和「分かってるんですか!?京太郎君は今、最低な事を言ってるんですよ!ただ答えを先延ばしにするよりも…酷い事を言っているんですよ!?」

それでもそうやって和が詰め寄るのは京太郎の事を信じたいという気持ちがまだ心の中にあるからだろう。
和が京太郎に恋い焦がれ、心まで任せるようになったのは何も彼の能力だけが原因ではない。
多少、性欲に弱い傾向こそあれど、京太郎が優しい人物だったから、和も心を許したのだ。
少なくとも…和にとって、京太郎はこんな全員を深く傷つけるような答えを出すような人物ではない。

京太郎「分かってる。その上で…俺は全員が欲しい。誰か一人を選ぶなんて出来ない」

だが、その信頼すらも京太郎は踏みにじる。
そんな自分の言葉に京太郎自身も傷ついていた。
そうなる覚悟はしていたとは言え、自分の言葉で目に見えて和が傷ついているのだから。
京太郎とて怒りを通り越して今にも泣きそうなその顔を見たくて、こんな答えを選んだ訳ではないのである。

和「ふざけないで…ふざけないでください!」
京太郎「ふざけてなんかいない。俺は本気だ」

しかし、それでも答えを揺るがせられない。
そう心に決めた芯を守るようにしながら、京太郎ははっきりとした言葉を返した。
それに和の目尻が一気に潤み、その頬に涙が零れていく。
しかし、和自身、そんな自身の涙が一体、どういうものなのかは分からなかった。
信頼を裏切られたが故の悲しみなのか、或いは一番だと言われていた事が嘘だったという痛みなのか。
もしくは…自分が捨てられなかった安堵の涙なのかさえも、今の和には判別つかなかった。


704 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:32:36.56DtkKb4Jxo (60/108)


小蒔「冗談…ですよね?」

そんな和とは裏腹に、小蒔の表情は未だ信じられないものが強かった。
まるで自分の目の前の光景が夢だと、嘘なのだと思いこむようなそれに京太郎の胸が張り裂けそうな痛みを発する。
和よりもさらに純真な小蒔にとって、その答えはあまりにも残酷過ぎたのだ。
潤むのではなく濁っていくその瞳に京太郎は良心に押しつぶされそうになる。

小蒔「だって…言ったじゃないですか。私の事愛してるって…そう何度も…」
京太郎「…ごめん」

そんな京太郎を追い詰めるような小蒔の言葉に、彼は思わず謝罪を返してしまう。
勿論、その言葉は嘘ではなく、京太郎の本心だ。
しかし、それが自己満足の類である事くらい彼にも理解できていた。
何せ、京太郎は謝罪こそすれども考えを曲げるつもりなどないのだから。

小蒔「指輪だってほら…これ…覚えていますか?京太郎様に貰った…こ、婚約…指輪で…」

そう言いながら小蒔はそっと京太郎に右手を伸ばす。
その薬指についた白銀の指輪を魅せつけるようなその仕草は微かに震えていた。
そしてその声もまた震えさせる小蒔に京太郎は何と言って良いか分からない。
これ以上、何を言っても小蒔を傷つけるだけだとそう理解した彼はただ沈黙を守る事しか出来なかった。


705 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:33:09.44DtkKb4Jxo (61/108)


小蒔「私のこと…婚約者だって…そう認めて…くれたんですよね?だから…これ…私に…」

それでも諦めず京太郎へと呼びかける小蒔の目尻からゆっくりと涙が流れ落ちていく。
つぅと一筋を描くように溢れるそれは止まる事がなかった。
まるで昂った感情が溢れ出るようなその涙を小蒔は拭わない。
そんな事をする時間すら惜しいとばかりに震える声を紡ぎ続ける。

小蒔「それなら…私が三人分…京太郎様の事を愛します…。絶対に満足させて見せますから…だから…」

その言葉に京太郎はそっと首を左右に振った。
勿論、小蒔の提案そのものに惹かれないと言えば嘘になる。
しかし、誰だって他の二人の代わりが出来る訳がないのだ。
既に三人は京太郎の心に深く突き刺さり、抜けないところにまで来ているのだから。
それを亡くした際に出来る隙間を埋めるのはどんな人だって不可能なのは目に見えていた。

小蒔「そんなの…そんなの酷いです…私…それなら…何の為に…」

勿論、小蒔とて自分が必ずしも選ばれると思っていた訳ではない。
彼女の知る和はとても素晴らしい女性で、そして漫もまた強敵であると理解していたのだから。
そのどちらを京太郎が選んでも、祝福しようと思うくらいには二人を認めていたのである。
しかし、京太郎の選択はそんな覚悟すら踏みにじる最低なものだった。
それに今まで尽くしていた日々を全て穢されたような気がした小蒔はそっと項垂れる。


706 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:33:44.21DtkKb4Jxo (62/108)


京太郎「あぁ。俺は…最低だ。どれだけ罵って貰っても良い。だけど…俺は…それでも…皆が欲しいんだ」
小蒔「……」

再び紡がれる京太郎の言葉に小蒔は何の反応も返さない。
まるで打ちひしがれたように顔を俯かせ、目尻から涙を零している。
それは彼女の服に降り注ぎ、大きなシミを作るが、小蒔はそれを相変わらず拭うことはなかった。
そんな気力すらないとばかりに悲壮感を漂わせるその姿は京太郎の胸に強い痛みを走らせ、ぎゅっとその歯を噛み締めさせる。

和「…上重さんは?」
漫「うち?」
和「えぇ。何か…ないんですか?」

そんな悲痛な小蒔の様子に和はそっと涙を拭い、扉前に立ち尽くす漫へと問いかける。
そこに縋るような響きがあったのは、もうこの場でそれに否と唱えられるのが漫だけだからだ。
後はもう漫が京太郎の考えを変えてくれる事を期待するしかない。
それが望み薄なのを様々な感情が溢れる頭で理解しながらも、彼女はもうそれに縋るしかなかったのだ。

漫「うちは別にそれでええかなーって」
和「え…?」

けれど、そんな期待は軽い漫の返事によって打ち砕かれる。
まるで今夜の夕食を決めるような軽いそれを和は最初、信じる事が出来なかった。
真剣を超えて悲壮ですらある場の雰囲気にはあまりにもそぐわないのだから。
しかし、それはある意味、この状況の元凶でもある漫にとって嘘偽りのない言葉だった。


707 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:34:12.36DtkKb4Jxo (63/108)


和「な、何を言っているんですか!京太郎君は最低な事を言ってるんですよ!!」
漫「うん。それくらい分かっとるよ」

そんな漫を責めるような強い語気に漫はそっと肩を落とす。
こうして落ち着き払っている漫も、一人の女性として和の怒りが分かるのだ。
誰も選べないから全員欲しいです、だなんて幾らなんでも相手を馬鹿にし過ぎている。
幾ら虜になるほど惚れているとは言え、そんな答えを聞かされたら激怒して当然だろう。

漫「でも、現実問題、二人とも京君無しで生きていけるん?」
和「それ…は…」

だけど、それはあくまでもこの状況が普通のものであれば、の話である。
実際、三人は三人とも京太郎の不可思議な能力の支配下にあるのだ。
物理的精神的問わず接触がなければ気が狂ってしまいそうになるその強力な力に和も小蒔も抗えない。
その心は既に京太郎に絡め取られ、彼以外の男に触れられる事すら嫌悪し始めていた。

漫「うちは京君から捨てられるくらいなら死ぬつもりやけど…二人はそうじゃないの?」
和「そんなの…詭弁です!」

まるで自分の愛の深さを見せつけるような言葉に、和は強い視線を返した。
勿論、彼女とて京太郎から選ばれなければ、生きていけるか分からないくらい彼の事を愛している。
しかし、だからと言って全員を選ぶという滅茶苦茶な彼の選択を肯定する気にはなれない。
こんな答えを出すくらいならずっと先送りか、或いは小蒔を選んで欲しかったと彼女の理性はそう告げる。


708 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:34:39.61DtkKb4Jxo (64/108)


漫「まぁ、うちは二人が何を選ぼうとまったく関係ないけどね」
和「っ!」

そう言いながら漫はそっとテーブルへと近寄ってくる。
そのまま京太郎の後ろへと回った彼女は二人の前でそっと京太郎を抱きしめた。
後ろからその背中を包み込むようなそれを京太郎は拒まない。
いや、寧ろ、隠しきれない自責を滲ませていた顔を少しだけ緩ませ、漫の事を受け入れるのだ。

漫「どっちかって言えば、二人が京君から失望してどっか行ってくれた方がうちとしては嬉しいし?」
小蒔「あ…」

そんな京太郎の頬を優しく撫でながら漫は二人にニコリと笑う。
まるで二人はそこで座っているのがお似合いだと告げるような底意地の悪いそれに小蒔が微かに声をあげた。
しかし、彼女の身体は微かに身動ぎした程度で、京太郎の元へと駆け出したりはしない。
まるで迷いが鎖になるように、何時もなら考えずに出来るはずのそれを出来なくさせているのだ。

和「(落ち着いて…落ち着くんですよ、原村和…)」

聡明な和は漫の言葉がただの挑発であるという事に気づいていた。
この場で唯一、京太郎の言葉を肯定した漫は明らかに自分たちと同じかそれ以上に京太郎によって支配されている。
そんな彼女が三人の事が欲しいと言った京太郎に逆らえるはずがない。
漫はそれを第一に行動し、その為に自分たちを挑発しに来ている。
だからこそ、ここで和がするべきはその挑発に乗って、京太郎から距離を取るべきなのだろう。


709 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:35:25.58DtkKb4Jxo (65/108)


和「(なのに…どうして…それが言えないんですか…)」

挑発に挑発で返すだけで良い。
そう思いながらも和はそれを選ぶ事が出来なかった。
まるで身体がそれを拒否するように、京太郎から離れたくないというように、言葉を紡ぐ事が出来ない。
理性で分かっているはずのそれに身体は従わず、ただただ沈黙だけが四人の中で流れていく。

小蒔「私…は…」

そんな中、ポツリと漏らされた小蒔の言葉に和は嫌な予感を感じた。
さっきまでの悲壮感は消えた代わりに諦観を強く感じさせるそれに和の背筋は冷ややかなものを感じ取ったのである。
しかし、その予感を言葉にする事が出来ないまま、小蒔の口は再び言葉を紡いでいった。

小蒔「どんな…どんな事でもします…エッチな事でも…恥ずかしい事でも…なんでもします…だから…だからぁ…」
和「(っ!いけません!神代さん…っ!)」

ポツリポツリと漏らされるそれがさっきの予感通りのものだと和は感じ取った。
けれど、彼女の口がそれを遮る言葉を放つ事さえ出来ないのは、それが一番、楽な道だと彼女も理解しているからだろう。
何もかもを受け入れて現状維持と割り切り、漫と共に京太郎の寵愛を求めるのが一番、安易なものだと分かっていたのだ。
しかし、それでは京太郎の意識なんて何も変わらず、彼にとって都合の良い関係だけが続いていくだけ。
それを良しとしない和は小蒔に釣られて漏らしそうになる言葉を堪え、ぎゅっと歯の根を噛み締めた。


710 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:36:01.43DtkKb4Jxo (66/108)


小蒔「お妾さんでも良いですから…側に…京太郎様のお側に置いてください…」
京太郎「そっか」

最後には涙と共に崩れ落ちるようになった敗北宣言。
それに京太郎は短い言葉で返しながら、その顔に微かな安堵を浮かべた。
けれど、その内心が微かでは済まない安堵があった事を漫だけは知っている。
こうして二人を追い詰める事にどれだけ京太郎が苦悩し、そして今も押しつぶされそうになっているのを彼女だけは分かっているのだ。
だからこそ、漫はそんな京太郎を励ますようにそっと撫で、彼の上で小さく笑みを浮かべる。

京太郎「…おいで、小蒔」
小蒔「う…ぅぅぅっ…っ」

そんな漫にもう小蒔も我慢出来なくなったのだろう。
その口から子どものような泣き声を漏らしながら、小蒔は椅子から立ち上がり、京太郎に抱きついた。
そのまま泣きじゃくる小蒔を京太郎は慰めるように優しく撫でる。
何度も何度も飽きる事がないそれに小蒔はさらに涙を溢れさせ、泣き顔を隠すように京太郎を抱きしめた。

和「(羨ましい…)」

そうして慰めて貰う小蒔の姿に一番、動揺していたのは勿論、和であった。
小蒔ほど目に見える訳ではなくても、和もまた深く傷つき、そして悲しんでいたのである。
未だ涙の跡が残る頬を彼に優しく慰撫して欲しいという気持ちは彼女の中にも少なからずあった。
しかし、それに簡単に従う事が出来ない和はぎゅっと握り拳を震えさせ、三人から目を背けるように顔を俯かせる。


711 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:36:44.86DtkKb4Jxo (67/108)


小蒔「あの…原村さん…」

そうして過ごす時間が一体、どれほどのものだったのか和には分からない。
確かな事はそれがきっと数分どころか数十分になりそうなものだったという事だけだ。
何せ、小蒔の声はまだ涙ぐんではいるものの、さっきのような諦観はまったくなかったのだから。
あれほど打ちひしがれていた小蒔が立ち直るまでにはかなりの時間が必要だろう。
しかし、心を閉ざしていた和には、その間にどれほどの時間が経過していたのか分からない。

小蒔「原村さんも…認めませんか?」
和「私…は…」

その言葉に和は言葉を濁らせる。
実際、和自身にも分かっていたのだ。
小蒔が屈してしまった時点で、京太郎の選択を受け入れるしかない事を。
彼に考えなおさせるには、自分たちが手を組んで、京太郎を拒み続けるしか道はなかったのだ。
しかし、二人がめまぐるしく変わる状況に混乱している間に、小蒔の陥落という形でその可能性は弾けて消えてしまったのである。
既に小蒔は京太郎の手先として和の説得に動いている以上、それを後悔してももう遅い。
後はただ押し切られるだけなのは和自身にも分かっていた。

小蒔「私達は…京太郎様に逆らえないんです。愛してしまったから…もう虜にされてしまったから…」

そう言う小蒔の言葉にはもう諦観すらなかった。
寧ろ、まるでそれほどまでに京太郎へと入れ込んでいる事を喜ぶように微かな喜悦すらある。
明らかに歪んだその喜びに、けれど、和は寒気を感じる事はない。
セックスの時には同じ事を思い浮かべる和にとって、彼女の気持ちはまったく理解出来ないものではなかったのだ。
何より、自分ももうすぐああなってしまうと思えば、寒気を感じるような余裕なんてまったくなかったのである。


712 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:37:23.32DtkKb4Jxo (68/108)


小蒔「それに…二人も三人も…同じでしょう?それなら…私、原村さんも一緒が良いです」
小蒔「一緒に頑張ってきた原村さんと…どれだけ京太郎様の事を愛しているか知っている原村さんと一緒が…良いんです…」
和「神代さん…」

説得を続ける小蒔の言葉は完全に良心からのものだった。
小蒔とて自分が屈した以上、和に勝ち目などない事くらい分かっているのだから。
それならば師匠であり弟子でもあり、そしてライバルでもある和が意地を張って苦しまないようにしたい。
勿論、そこにはここまで来たら京太郎の思い通りにしようという自暴自棄に近い考えがなかった訳ではないが、一番大きなものはそれだったのである。

小蒔「京太郎様なら…きっと皆…幸せにしてくれますよ」
和「…」

そんな小蒔に和が沈黙を返すのは、それは彼女自身にも分かっている事だからだ。
和が知る須賀京太郎という少年は責任感が強く、誠実で、そして優しいのだから。
ここで自分が頷けば、傷ついた分だけ幸せにしようとしてくれるのは分かっていた。
それに心が強く惹かれる心は、キッカケさえあれば一気に屈してしまう。
そう自覚するが故に、和は小蒔の優しさに言葉を返す事が出来なかったのである。

和「(私にだって…分かっているんです…)」

このまま意地を張り続けても、ジリ貧ですらない。
結論を先延ばしにしているだけで、妥協点すら探る余地はないのだから。
しかし、そうと分かっていても彼女はどうしても首を縦に振る事は出来ない。
そんな和の心に共感するようにリビングは再び沈痛な沈黙が支配す始めた。


713 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:38:01.27DtkKb4Jxo (69/108)


漫「よし。それじゃ麻雀しよう」
京太郎「いきなり何言ってるんですか」

その沈黙を破ったのは漫の明るい声だった。
相変わらず場の雰囲気にそぐわないそれに思わず京太郎がツッコミを入れてしまう。
こんな状況を作り出す主因である彼とは言え、追い詰めるような真似をして悪いとそう思っているのだ。
痛々しい沈黙が支配する中であくまでも遊戯でしかない麻雀をやろうだなんて、流石に失礼ではないだろうか。
漫の考えを見通す事など出来ない彼はそう思っていたのである。

漫「雀士が四人揃っとるんやで?そりゃやるのは麻雀しかないやろ」
京太郎「いや、だからって今のこの状況で…」
漫「能力全開のガチ麻雀や言うても?」
和「っ!」

その声は相変わらず明るいものだった。
けれど、そこに込められていた残酷な響きに和は思わず息を呑んでしまう。
この場にいる全員は一度は京太郎と対局し、その能力を受けているのだから。
その所為で京太郎の理不尽な選択に抗えない和にとって、それは死刑宣告にも近いものだったのである。

和「(もう一度…京太郎君からアレを受けてしまったら…)」

これまで自分の中に疼きを抑え、それと向き合ってきた和には多少の耐性がある。
しかし、京太郎が和了る時に受けたものは普段のそれとは比べ物にならないものだったのだ。
それまでただの部活仲間としか思っていなかった相手を求めてしまうほどのそれを支配されている状態で受ければどうなるのか。
今までそんな経験こそないので分からないものの、きっと自分の理性を打ち砕くのには十分過ぎるものだろう。
それに和はゴクリと生唾を飲み込み、その指先にぎゅっと力を込めた。


714 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:38:30.05DtkKb4Jxo (70/108)


漫「とは言え、勝った負けたは時の運やし、三人敵扱いなのは不利やろ」
漫「だから、ちょっとルールを変えて…東風戦で原村さんが一回も京太郎に振り込まへんかったら原村さんの勝ちって事にせえへん?」

それが期待によるものか、或いは恐怖によるものかすら分からない和の前で漫がそう説明を始める。
普段やっている麻雀よりも幾分、勝利条件の緩いそれは確かに和に対して有利にするものだった。
東風戦は対戦形式の中では最も短く、最短で四回しか行わないのだから。
その間、京太郎からだけ逃げまわるのは決して難しい事ではない。

漫「それが出来たら、うちも京君に考え直すように言ってあげる」
京太郎「…いや、実際、考えなおすよ。そうしないと流石にフェアじゃないだろ」

そう漫の言葉に合わせる京太郎は、彼女の意図を察した訳じゃない。
二人が来る前に多少の打ち合わせこそしていたものの、こんな事を言い出すだなんてまったく聞いていなかったのだから。
しかし、それでも漫が自分の為に動いてくれている事だけははっきりと伝わってくるのである。
それならば、ここで自分がするべきは確実に勝負の場へと和を引き入れる事。
そう思った京太郎の言葉に和は小さく頷いた。

和「(どの道…このままじゃ私の負けは確実ですし…)」

圧倒的に自分の方が有利なその条件。
それに罠を感じ取らないほど和はお人好しではない。
しかし、それでも虎口に飛び込む他に和には道がなかったのだ。
このままではジリ貧にもならない以上、和は罠だと分かっていても一発逆転に賭けるしかなかったのである。


715 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:39:03.36DtkKb4Jxo (71/108)


漫「じゃ、ちょっと待っててな」

和の首肯にニンマリと笑みを浮かべた漫はそっと京太郎の背から離れる。
そのまま再び洗面所へと戻った彼女は数秒後、小型のシートと箱を持って現れた。
小さなテーブルにも並べられそうなそれは勿論、麻雀の道具である。
暇潰しの道具としてバスへと持ち込みながらも、広げる場所がなくて断念したそれを漫は喜々としてテーブルへと広げていった。

小蒔「わぁ…可愛い」
漫「ええやろー?これ、ドン○で売っててん」
小蒔「ド○キ…ですか?」
京太郎「ドンキホーテって言う総合ディスカウントショップだな。長野にもあるし、今度、一緒に行ってみようか」
小蒔「はいっ。えへへ…デートですね」
和「…」

そう和やかな会話をする三人に対して、和は終始無言だった。
これから変則的なものであるとは言え、三人を相手にする事になるのだから、にこやかに会話をする気にはなれない。
しかし、それでも、どことなく疎外感めいたものを感じてしまうのは、和自身も其の中に入りたいと内心、思っているからだろう。
意地というごく一部の部分を除けば、和は既に負けを認め、一人仲間外れにされる事に寂しさを覚えていたのである。

漫「じゃ…そろそろやろうか」
小蒔「…はい」
京太郎「あぁ」

とは言え、そんな三人も麻雀の準備が終われば真剣な表情になる。
それはこの短い東風戦がお互いの未来を決めるものだと分かっているからだ。
この結果が一体、どうなるのかは分からない。
しかし、それでも後悔のないように一生懸命やろうと四人は簡易式の卓に着いた。


716 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:39:55.94DtkKb4Jxo (72/108)


漫「……」トン
小蒔「……」トン
京太郎「……」トン
和「……」トン

それからの数分は無言の時間が続いた。
そして、まるで話す時間さえも惜しいと言うように全員が早打ちを繰り返す。
けれども、それは決して全員が何も考えていない訳ではない。
特に京太郎は能力込みで打つという経験に感慨深いものを感じていた。

京太郎「(能力ありで打って良い…なんてかなり久しぶりだよな)」

これまで特訓と称し二人と打っていた時には常に能力を封じるように立ちまわってきた。
出来ない時はわざと和了を見逃した事も、口にはした事はないが何回かある。
そんな彼にとって能力とは厄介者で、小蒔に当てて以来、使う事はなかったのだ。
しかし、今はそれを和に当てる事を求められ、その為に全力を尽くさなければいけない。
厄介者であったそれに頼らざるをえない自分に胸中で苦笑を向けながら、京太郎はそっと顔を引き締める。

京太郎「(ま…難しいだろうけれどな)」

和の実力は彼女の親友である片岡優希に負けないくらい京太郎自身が良く知っている。
元々、優れていた思考力に洞察力を身につけた和から放銃を誘うのは正直、かなり難しい。
実際に、今までの対局の中で京太郎が和から和了れた回数なんて両手の指を少し超える程度なのだから。
正攻法でその数少ない回数を引き寄せるのは難しいだろうと京太郎自身も理解出来ていた。


717 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:40:22.87DtkKb4Jxo (73/108)


京太郎「(だからこそ…和をそのつもりにさせなきゃいけない)」

勿論、京太郎はツモ和了も狙っていくつもりではある。
しかし、それを東風四回の間に出来るかと言えば、正直、自信はなかった。
小蒔や漫は和了を半ば放棄しているとは言え、相手は牌効率を知り尽くしたデータ雀士、原村和なのだから。
速度という面で自分が真っ向から太刀打ち出来ない事を京太郎自身が良く知っている。
だからこそ、京太郎は和が自分から振り込んでも良いと、そう思えるような方法を脳裏で模索し始めていた。
そしてまた、彼を補助する彼女たちも普段以上に思考に耽り、特殊なルール内でどうやって勝つかを考えている。

漫「(恐らく京君の待ちは…)」
小蒔「(白か五筒周辺…が濃厚ですね)」

早和了を目指す為か、京太郎は最初から鳴いて小三元を作っていた。
けれど、その後、有効牌を引く事は出来ず、聴牌で固まっているのである。
そんな京太郎の河を見て、この場で誰よりも洞察力に優れている和が振り込むはずがない。
そしてまた他の二人が振り込んでも意味はなく、時間だけが流れていく。

小蒔「(でしたら…私が何とかしないといけません)」

小蒔の手牌の中には京太郎の本命である六筒が一つだけ入っていた。
このまま下手に抱えていても和了には繋がらない以上、それを打っても良いだろう。
どうせ京太郎は和了らないだろうが、和に対するブラフ程度にはなるかもしれないのだから。
勿論、一緒に特訓を続けた小蒔は其の程度で和の目を誤魔化せるとは思っていないが、しかし、何もしないよりはマシだろう。


718 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:40:51.55DtkKb4Jxo (74/108)


小蒔「(だって…このままじゃ…皆、辛いままなんですから…)」

小蒔には和の気持ちも京太郎の気持ちも良く分かっている。
彼女がもう意地を張るしかない事も、彼が好き好んでこうやって自分たちを追い詰めている訳ではない事も悔しいけれど理解しているのだ。
そして、小蒔はそんな二人のすれ違いを見過ごし、ライバルの脱落を喜ぶようなタイプではない。
寧ろ、大好きな二人に早く仲直りして欲しいが故に小蒔はそれをそっと打ち出したのだ。

京太郎「(小蒔…)」

そんな小蒔の気持ちを京太郎は汲んでいた。
自分が傷つけた心優しい婚約者がどんなつもりでそれを打ったのか理解していたのである。
今、この場で自分に出来る事を精一杯しようとする彼女の気持ちは彼にとってはとても嬉しいものだった。

京太郎「…ロン。小三元」
小蒔「えっ…?」

しかし、京太郎はそれを裏切るようにして和了を宣言する。
それを小蒔は最初、信じる事が出来なかった。
既に待ちを看破されていたと言っても、待ち続ければツモで和に能力を当てる事が出来る可能性はあったのだから。
しかし、京太郎はそれをわざと見逃すように自分から和了って見せた。
その意図が理解出来ない小蒔の身体に強い電流が走り抜け、その身体にドロリとした熱を染み込ませていく。


719 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:41:37.07DtkKb4Jxo (75/108)


小蒔「ん…っくぅ…♪」

その口から漏れる吐息はとても熱っぽいものだった。
まるで風邪にでもかかってしまったような熱いそれに力を込めるようにして小蒔の身体が縮こまっていく。
ぎゅっと身体を強張らせるその内側に一体、どんな感覚が走り抜けているのか隣の和には分からない。
しかし、見る見る内に目元を潤ませ、頬を緩ませるその顔は和も良く知るメスのものであった。

和「(神代さん…とってもエッチな顔をして…)」

何も知らない子どもでもエロティックなものを感じてしまうであろう小蒔の姿。
それは彼女が感じている感覚の一端を知る和にとって、羨ましく映るものだった。
何せ、そうやって発情した後には必ず京太郎が身体を鎮めてくれるのだから。
内心、それを期待しながら須賀邸を訪れた和にとって、それは羨望を向けるに足るものだったのだ。

漫「ええなぁ…神代さん」
和「…っ!」

そんな漫から漏らされた漫の言葉に、和が微かな反応を見せる。
それは勿論、彼女が和とまったく同じ事を考えていたからだ。
けれど、それを和が認める事が出来ないのは、彼女が漫の事をあまり好ましく思っていないからだろう。
自分たちの行く末を麻雀の結果に委ねるような提案をした漫と一緒の事なんて考えたくはないと彼女はそれを無理やり、思考から引き離したのだ。


720 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:42:25.47DtkKb4Jxo (76/108)


漫「ね、京君。今度はうちに配牌教えて、それ当ててくれへん?」
京太郎「一応、真剣勝負なんですから八百長っぽいのなしですよ。つか、小蒔、大丈夫か?」
小蒔「ひゃんぅっ♪」ビクッ

軽い漫の言葉に京太郎は返事をしながら、京太郎は気遣うように小蒔に触れる。
瞬間、小蒔の身体の中を駆け巡る熱い電撃が勢いを増し、彼女の神経を蹂躙した。
絶頂にも劣らないその激しい感覚に小蒔は肌を震わせ、ぎゅっと歯の根を噛みしめる。
しかし、それでも触れられている部分から走る快楽は止まらず、小蒔の思考を大きく揺さぶった。

小蒔「京太郎様…ぁ…♥私…もぉ…ダメです…ぅ♪欲しい…の…っ♥京太郎様のオチンポ欲しい…ぃぃ♥」

けれど、それらは小蒔を決して満足させるものではなかった。
それらは間違いなく気持ち良いものではあれど、疼きを強める気持ち良さだったのだから。
まるで全身を焦らすように優しく撫でられている感覚を何十倍にも高めたようなそれに小蒔はもう抗えない。
京太郎に触れられた瞬間、彼女の頭の中からは麻雀や友人の事など消し飛び、ただの発情したケダモノへと変わってしまったのである。

小蒔「身体熱くて…お腹の中までドロドロになってぇぇ…っ♪♪私…もう発情しちゃい…ましたぁ♥スイッチ入って…淫乱妻になったんです…ぅっ♥」

甘いその訴えは小蒔が他の二人の事なんてまったく考えていない証だ。
今の彼女にとって最優先はおかしくなってしまいそうなほど強く、そして熱い疼きをどうにかする事だったのだから。
他人に見られていようがいまいが、小蒔の目にはもう京太郎しか映ってはいない。
今にも燃えてしまいそうなほど熱い身体を鎮めてくれる唯一のオスしか、全身が求める愛しい男しか、小蒔の世界には存在していないのだ。


721 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:43:01.80DtkKb4Jxo (77/108)


小蒔「だから…っ♪京太郎様…ぁ♥セックス…ぅ♪責任とって蕩けるくらいあまぁいラブセックスください…っ♥」
和「ち、ちょっと…じ、神代さん!?」

そう言いながら何時もの巫女服に手を掛け、そっと脱いでいく小蒔。
それに和は声を掛けるものの、小蒔の行動は止まらない。
既に小蒔の耳も京太郎に向けられ、その他の音は雑音でしかないのだから。
誰かが何かを言っているという意識こそあれど、それは自身の行動を止める理由にはならない。
だからこそ、小蒔は同性である二人の前でその大きな胸をブルンと零し、京太郎へと擦り寄せるのである。

小蒔「京太郎様も大好きなおっぱいもこぉんなに疼いてぇ…♪♪だから…お情けを…ぉ♥♥お情けでも良いですから…小蒔にセックスしてください…っ♪♪」
京太郎「あ、あの…こ、小蒔…?」
和「神代さん!正気に戻って…」

勿論、京太郎にとってこうなる事を完全に予想していなかった訳ではない。
一応、それを目的として彼は小蒔を裏切るようにして和了ったのだから。
しかし、まさか麻雀すらまともに出来なくなるくらいにまで発情するとは思っていなかったのである。
これまで疼きに耐えてきた小蒔たちであれば東風戦くらいなら大丈夫。
そう思っていた自分の考えが甘かった事を知ったところで、もう遅い。
ブラすら身につけていないその豊満な胸をスリスリと腕にすり寄せてくる彼女を突き放せる訳がなかった。

漫「いやぁ…まさか神代さんがこんな風になるとはなぁ…」
和「っ!上重さんも止めてください!」

そんな小蒔を必死に正気に戻そうと呼びかける和の前でケラケラと漫が笑う。
何処か嬉しそうなそれに和は強い反発を覚えながら、そう語気を強めた。
明確な怒りすら見せるその声に、しかし、漫はその飄々とした態度を崩さない。
それどころか楽しむようなその笑みすら引っ込める事もないままにゆっくりと口を開いた


722 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:43:29.43DtkKb4Jxo (78/108)


漫「無理無理。ああなったら止まらないのはうちらが一番、良く知っとるやん」
和「それは…」

漫の言葉に和は言い返す事が出来ない。
京太郎の能力の凄さは体感した和自身が良く分かっているのだから。
全身が京太郎を求めてしまう感覚は少女を女にするのは十分過ぎるものだった。
それをきっかけにして自身を恋に陥れた能力は決して軽視出来るものではない。
こうして小蒔が一瞬でおかしくなってしまったのも当然だと内心、和も認めていたのだ。

漫「とにかく神代さんは脱落って事で。次の局行こうや」
和「でも…」
漫「このまんまやと神代さんが辛いだけやで?」
小蒔「は…ぁっ♪京太郎様ぁ…♥京太郎…様ぁぁ♥」

瞬間、和がチラリと小蒔を見れば、そこには物足りなさそうに身体を揺する彼女の姿がある。
欲情で濁った瞳に京太郎だけを映すその様は平常とは程遠いものだった。
普段の小蒔は多少、甘えん坊ではあるものの、良く知らない同性の前で肌を晒して平気でいるタイプではないのだから。
いっそ痛々しささえ感じるその発情っぷりに和はぎゅっと歯を噛み締め、残った山を崩し、再び積み上げていく。

京太郎「あの…」
漫「あ、京君は大丈夫やから、神代さんの事構ったげて」

しかし、小蒔に抱きつかれ、片手を奪われた京太郎はそれを手伝う事が出来ない。
その申し訳なさから声をあげた彼に漫は軽く言葉を返した。
実際、彼女自身、そうやってスイッチが入った小蒔に何も思うところがない訳じゃない。
この状況を作った原因の一人であるとは言え、彼女とて本当は京太郎を独占したいのだから。
だが、それ以上に漫は今はそれを顕にするような時ではない事を理解している。
だからこそ、申し訳なさそうな京太郎にそう返しながら、彼女は手慣れた様子で山を積み上げていくのだ。


723 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:43:56.55DtkKb4Jxo (79/108)


漫「(それに…まぁ、多分、京君のやっている事は間違いやない)」

漫は原村和の実力を知らない。
直接対局する機会は今まで恵まれず、伝聞や牌譜を見る事しかなかったのだから。
しかし、それだけでも彼女が全国でも有数の打ち手である事は伝わってくるのだ。
そんな和から和了るだけでも難しいのに、今回の彼女は和了を放棄して逃げるだけで良いのである。
普通よりもさらに難しさを跳ね上げさせるその勝利条件を満たす為に、和を揺さぶろうとした京太郎の選択。
それは決してベストではなくてもベターな選択であると漫は思った。

京太郎「…ごめんな」

返事をするように呟く京太郎の謝罪は一体、何に向けられているものか彼自身にも把握しきれていなかった。
彼にとってそうやって謝らなければいけない事はそれこそ両手の指では足りないくらいにあるのだから。
しかし、今はそれに押しつぶされたり、縛られたりしている場合ではない。
そう自分で自分の背中を押しながら、京太郎はそっと小蒔の肩を抱き、自分の足の上へと座らせる。
対面座位のような形で真正面から向き合うそれに小蒔の胸はトクンと跳ね、興奮だけでイッてしまいそうになった。

小蒔「京太郎様…ぁっ♥…私…これだけじゃ…ひぅぅっ♪♪」
京太郎「もうちょっとだけ我慢してくれよ」

瞬間、小蒔が声を跳ねさせるのは京太郎の指が彼女の乳房に触れたからだ。
巫女服からこぼれ出すようなそれは弾力に優れ、また張りも人並み以上にある。
けれど、それ以上に凄いのはその感度だ。
ただでさえ普段から京太郎に開発されてきたその肢体は、今、能力によってさらに鋭敏になっているのだから。
それこそそっと掴まれただけでイきそうになるくらい小蒔の身体は今、感じやすくなっている。


724 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:44:23.46DtkKb4Jxo (80/108)


小蒔「もっと…ぉ♪♪もっと触ってください…っ♥私…もうこんなんじゃダメです…っ♥全然…我慢なんて出来ません…っ♪」
京太郎「小蒔は欲張りさんだな」
小蒔「はい…ぃ♥小蒔はエッチな事大好きな欲張りさんなんです…っ♪♪京太郎様に触れられるだけでダメになる…淫乱妻なのぉ…♥」
和「神代さん…」

京太郎の言葉に嬉しそうに返す小蒔は和の見たことがないものだった。
理性を失い、ただただ淫欲に溺れるその姿ははしたないを通り越して軽蔑されてもおかしくはないくらいである。
しかし、そんな感情が和の胸中に一片足りとも浮かんでこないのは、京太郎に愛される心地よさを彼女もまた知っているからだ。
頭どころか魂まで蕩けてしまいそうな甘い感覚を知る彼女にとって、それは軽蔑どころか自分も良く知る状態だったのである。
そして、だからこそ、和は人目も憚らず京太郎に愛してもらえる小蒔に対して羨望の念を強めるしかなかったのだ。

漫「ほら、原村さんの番やで」
和「あ…はい」

しかし、和がそうしている間にも卓の準備は済んでしまう。
既に漫や京太郎は最初の配牌を揃え始めていたのだ。
それを漫の言葉から知った和はおずおずと手を伸ばし、自分の手牌を揃えていく。
だが、その視線はチラチラと伺うように小蒔へと向けられ、明らかに集中出来ていないのが目に見えていた。

漫「(まぁ、さっきも集中出来ていたとは言えへん訳やけれど)」

漫の知る原村和は超人的な集中力を持つ雀士だ。
それこそ顔が発熱するくらいに思考を深め、加速させる彼女は、彼女の友人である愛宕絹恵を苦しめていた。
しかし、今の和にはそんな気配はまったくなく、恐ろしいまでに精彩を欠いている。
今ならばチョンボやミスの一つで京太郎に振り込んでしまいそうなくらいに和は麻雀に集中出来ていなかった。


725 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:44:52.34DtkKb4Jxo (81/108)


漫「(さて…ここでうちがするべきは…果たしてどっちなんやろうなぁ)」

そんな和の前で牌を打ちながら、漫はそっと思考に耽る。
京太郎の揺さぶりのお陰で和はかなり追い詰められているのは事実だ。
しかし、今のままで京太郎に振り込んでしまう可能性というのはあまり高くない。
自然、京太郎が和了るのには漫の支援が必要ではあるが、それには二種類のものが考えられるのだ。

漫「(京君に振り込むべきか、或いは徹底的に支援に徹するべきか)」

さっきの小蒔のように京太郎に振り込む道とオーラスまで支援に徹する道。
そのどちらもそれなりに有効で、だからこそ漫は迷っていた。
こうして自分勝手に条件を設定して麻雀の場を設けた以上、失敗は許されない。
普段とは違ったそのプレッシャーに揺れ動きながら、漫は京太郎の当たり牌を掴んだ。

漫「(さて…正念場…やね)」

これを打てば、きっと京太郎は和了るだろう。
小蒔のように自分を発情させ、和を揺さぶる道具として扱うはずだ。
勿論、発案者である以上、勝つための道具になる事に何ら異論はない。
しかし、だからと言って、それが勝利の近道になるかどうか彼女には未だ判別がつかなかった。


726 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:45:22.41DtkKb4Jxo (82/108)


漫「(まぁ…どうにかなるやろ)」トン

最終的にそう思考を投げたのは決して思考するのが面倒くさくなった訳ではない。
漫はあの合宿の際、自分がおかしくなるまでにタイムラグがあるのを思い出したのだ。
その時とは比べ物にならないほど開発されている身体が一体、どんな反応をするかは分からない。
しかし、小蒔のようにすぐさま我を忘れる事はないだろうと漫はそれを打ち出したのだ。

京太郎「ロン。三色同順」
漫「くぅ…ん…っ♪」

しかし、瞬間、走る激しい電流は合宿の時の比ではなかった。
あの日も微かに違和感めいたものを感じていたが、今のそれははっきりと快感だと分かる。
流石に小蒔のようにすぐさまスイッチが入るものではないにせよ、頬が紅潮するほどのそれに漫が声を漏らす。
艶めいたそれに和がじっと視線を向けるのが恥ずかしいが、漫はそれを抑える事が出来ない。
オナニーしている時の何倍にもなるような快感と興奮が身体の中を駆け巡って平静であり続けられるほど漫の理性は強固ではないのだ。

京太郎「…漫さん、大丈夫ですか?」
漫「ん…まだ…いけるよ…♪」

けれど、それは決して絶頂には至らない。
まるでイク寸前で寸止めされたようなそれに漫は強いもどかしさを感じる。
今すぐ京太郎に触れて欲しい、愛して欲しいと脳裏に言葉が浮かぶほどだ。
とは言え、それは理性を失うほど激しいものではなく、漫はそう頷いて見せる。


727 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:46:00.23DtkKb4Jxo (83/108)


漫「(まだ爆発しとらんのに…こんな凄いなんて…ぇ♥)」

しかし、その胸中が余裕あるものかと言えば決してそうではない。
寧ろ、気を抜けばそのまま劣情に身を任せてしまいそうな感覚に彼女は身悶えしていた。
自分は効果が出るまでタイムラグがあるはずなのに、前兆だけでこんなに凄いなら本格的に効果が現れたらどうなってしまうのか。
何時、自分に襲いかかって来るか分からない発情の波に少しだけ後悔しながら、彼女はさっきと同じように卓を整え始める。

和「(上重さんまで…)」

そんな漫の様子は和の心を強く揺さぶった。
小蒔が一瞬で我を忘れてしまうほどの発情に漫は耐え、こうして麻雀を続けようとしているのだから。
実際は能力が発揮する効果は人それぞれ違うのだが、そんなもの和だけではなく京太郎さえ知らない事実である。
だからこそ、彼女は漫の姿から彼女が並々ならぬ決意を持ってこの場にいる事を感じさせ、その肩をそっと落とさせるのだ。

和「(私…誤解していたのかもしれません…)」

和にとって上重漫と言うのはあまり良い思い出のない相手であった。
京太郎からその名前が出る事は少なかったものの、彼が漫の事を頼りにしているのは強く伝わってくるのだから。
顔と名前しか知らない彼女に対抗心を抱いたのは一度や二度ではない。
そんな彼女が初顔合わせの時から妙に達観して飄々としているのを見て、好印象など抱けるはずがなかった。
つい数瞬前の和にとって漫は不真面目な人間で、京太郎にとって相応しくはない相手だったのだ。


728 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:46:30.65DtkKb4Jxo (84/108)


和「(実際は…こんなにも京太郎君に尽くそうとする人だったのですね…)」

それにまた一つ意地を張る理由が消えていくのを感じた和はズキリと胸の痛みを感じる。
胸の奥に鋭い針が突き刺さるようなそれは不快で仕方のないものだった。
けれど、それを取り除く術を今の和は知らず、ただただ心を強く揺さぶられる。
京太郎に触れられて嬌声を漏らす小蒔と劣らないその激しい揺れに和は小さくため息を漏らしながら、山を積み上げていった。

和「(私…どうしたら良いんでしょう…)」

その言葉はさっきよりも弱々しいものになっていた。
勿論、和は京太郎の選択なんて認めたくはない。
出来れば、自分か小蒔のどちらかを選んで欲しいというのが本音だ。
しかし、それを誰よりも共感してくれた小蒔は堕ち、そして唯一、敵愾心を向けていた漫も悪い訳ではない。
そうした状況の変化に意地を張る理由が薄れ、和の迷いは本格的なものと化していく。

漫「あ、ちなみにうち…これからずっと京君に振り込むから」
和「え…?」

そんな和に告げられた漫の言葉を彼女は最初、信じる事が出来なかった。
最初に設定した勝利条件を反故にするものなのだから当然だろう。
勿論、次が京太郎の親である以上、それは決して勝ちを放棄するものではない。
しかし、一回早和了すれば勝利条件をほぼ満たせるその宣言は和を有利にするものだろう。


729 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:46:57.26DtkKb4Jxo (85/108)


漫「その間に直撃かツモ和了してくれれば一番なんやけれどね」
京太郎「はは。まぁ、頑張…ってこら、小蒔…キスはダメだって」
小蒔「ふゅぅ…ん…っ♪ふあぁぁ…♪」

そうしている間に小蒔は本格的に我慢出来なくなってきたのだろう。
胸を優しく揉む京太郎の頬に幾つものキスを落とし、甘えた声をあげる。
そんな小蒔に注意こそすれど京太郎は彼女を突き放したりはしない。
寧ろ、下から大きな胸を持ち上げるようにしながらぎゅっと根本から力を込めるのだ。
それに彼女の身体はブルリと震え、その背筋に強い快楽を流し込む。

小蒔「ふくぅっ♪♪イきます…ぅ♥おっぱい絞られただけで…私もぉ…♥」
京太郎「まったく…小蒔は本当に可愛いな」

限界以上に感度が高まった小蒔にとって、それはもう耐えられないほどの快楽だった。
昂った身体が一気に絶頂へと押し上げられる感覚に彼女はあっさりとイッてしまう。
しかし、それでも小蒔はその目に宿る欲情を薄れさせず、寧ろ、ドロドロとした熱を強くしていた。
まるでこのままではろくに満足出来ないとそういうような瞳の輝きに嗜虐心と庇護欲を擽られた京太郎はそう言葉を漏らす。

漫「うちも能力受けたんやけどー?」
京太郎「後で一杯、可愛がってあげますからそれで許して下さい」

そんな京太郎に漫がジト目を向けるのは、いちゃつく二人が羨ましかったからだ。
発情期のメスもかくやと言うような小蒔の様子に、京太郎もまた引きこまれ、二人の世界を形成し始めている。
それを見過ごしてやるほど今の漫は理性的にも優しくもなれない。
その頬を微かに膨らませながらのそれは牽制であると同時に自分を忘れないでという自己主張でもあったのだ。


730 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:47:23.95DtkKb4Jxo (86/108)


漫「しゃあないなぁ…その代わり…うちの奥で濃いぃの頼むで…♥」
京太郎「…あれ?実は結構、漫さんもやばい感じです?」
漫「ふふ…どうやろ…♪でも…あんまり神代さんばっかり構ってると…後で怖いかもやで♥」

そう言いながら漫がクスリと笑った瞬間、卓の準備が終わる。
それを察知した京太郎が積み上げられた山に手を伸ばし、手牌を作っていく。
そんな京太郎に小蒔が不満気な視線を向けるが、彼女は何も言わなかった。
代わりの自分の手を京太郎の手に沿わせ、ぎゅっと自分の胸へと押し付けさせる。
まるで自分だけを見て欲しいと言うような可愛らしい自己主張を見ながら、和は深呼吸を繰り返した。

和「(とりあえず…一回…一回だけ私が和了れば…それで良いんです)」

それで自分はこの卓から抜けられる。
その先で何をしたいのか分からないものの、麻雀を続けるには和はそう考えるしかなかった。
気を抜いた瞬間、自分の心が誘惑に負け、漫や小蒔のようになってしまうのは目に見えていたのだから。
これからどうするにせよ、せめて初志だけは貫こう。
欲情する二人にあてられてその吐息を微かに荒くした彼女がそう思った瞬間 ――

小蒔「いひぃっ♪♪」
和「あ…」
漫「あーあー…」

それは不幸な事故だった。
押し付けられる柔肉についつい反応してしまった京太郎の手が小蒔を再びイかせてしまったのだ。
結果、まるで脳天まで快楽が貫いたように背筋を反り返らせた小蒔に並べられた京太郎の手牌がバタバタと倒れていく。
普段の麻雀ならばチョンボとして罰符を取られかねないそれに和の目が惹きつけられる。


731 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:47:51.91DtkKb4Jxo (87/108)


和「(この形なら…)」

観察力と集中力。
思考を支えるその二柱を強固にしつつある彼女にとって、それは一瞬で記憶出来るものだった。
そして同時にそこから派生するであろう和了の最終形まで計算した彼女はそっと小さく勝利の予感を感じる。
和のそれは典型的なタンピン型で待ちも広く、手を進めやすい。
けれど、京太郎のそれは待ちは狭く、また回避も容易だ。
その分、点数こそ高いものの、今回に限ってはそれは決して脅威ではない。
今回の麻雀は点数をやりとりするようなものではなく、あくまで和了るか和了らないかを目的としたものなのだから。

京太郎「よいしょっと…」

そう思う和の前で京太郎は見られたその手牌を元へと戻していく。
小蒔を愛撫している関係上、片手しか使えないその仕草は決して素早いものではない。
再びそれらが卓の上に直立したのは一分ちょっとが経った頃である。
その間にも欲情を強める小蒔は京太郎に抱きつき、その身体を揺すっていた。
手持ち無沙汰の間、その様を見せつけられた和の頬が紅潮し、身体の中に宿る興奮が強まっていくのを感じる。

京太郎「待たせて悪い。それじゃやろうか」

それを京太郎ははっきりと感じ取っていた。
入部した当初から和の事を見続け、そして幾度となく能力の餌食にした彼にとってそれは明白なものだったのだから。
きっと和もまた小蒔たちと同じように発情し始め、自分を求めてくれいる。
何時もの彼女であれば、きっと何ら遠慮する事なくその身体をすり寄せ、京太郎を誘惑した事だろう。
しかし、小蒔と漫がいる状態でそんな気にはどうしてもなれず、和はそれをぐっと押さえ込んでいた。


732 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:48:33.61DtkKb4Jxo (88/108)


京太郎「……」

そんな和を横目に見ながら京太郎はそっと最初の牌を打ち出した。
勿論、その胸中には申し訳なさを感じるものの、それはもう今更である。
こうして小蒔を泣かせて引きずり込み、発情までさせた以上、後戻りは出来ない。
それならばせめて普段以上に可愛がり、その欲情をおもいっきり発散させてやろう。
そう思いながら無言で進む局は、和が想定した通りの流れになっていた。

和「(…よし。これで聴牌です)」

普段ならば和はそこでリーチの宣言をしていただろう。
典型的なタンピンを完成させた彼女の待ちは広く、ツモもロンも両方とも狙えるような形だったのだから。
しかし、今は点数ではなく和了を重視する場面であり、普段のセオリーは通用しない。
何よりリーチした後に京太郎の当たり牌を掴まされる事を思えば、リーチなど出来るはずもなかった。

和「(ただ…京太郎君も…そろそろ聴牌なんですよね)」

重い手ながらも集中出来ていなかったのが良かったのだろうか。
和が見ている限り、京太郎の手牌は頻繁に入れ替えられ、そろそろ聴牌が見え始めている。
欲情と迷いで鈍った集中力が能力の発動こそ阻害しているが、さっきのチョンボもあって当たり牌を察するのは和にとって容易い。
後はそれを手元に来なければ、この異常な状況から抜け出す事が出来る。


733 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:49:08.36DtkKb4Jxo (89/108)


小蒔「きゅぅぅぅ…ん…っ♥京太郎様ぁ♪♪切ない…切ないですよぉ…♥」
和「っ…!」

そう思って和が気を抜いた瞬間、小蒔の甘い声が耳孔へと届く。
必死になってオスに媚を売るようなそれは彼女の背筋に微かに震わせた。
それは其の瞬間に、和の子宮もまたまったく同じ事を考えたからである。
何せ、今の和は小蒔や漫の痴態に発情しているのに、ろくに言葉を向けて貰えないのだから。
京太郎の事が好きで好きで堪らない彼女にとって、それは切ないと思うに十分過ぎるものだったのだ。

小蒔「京太郎様のオスチンポ…ぉ♥おっきくて硬いのでお情け下さい…っ♥♥京太郎様が好きすぎてドロドロになったメスマンコぐちょぐちょにかき回してぇぇ…っ♪♪」

そんな和の前で小蒔のオネダリが始まる。
さっきよりも幾分、切羽詰まったそれはハァハァと荒い吐息と共に紡がれた。
まるで興奮しきったメス犬のようなそれと合わせて、小蒔がカクカクと京太郎の上で腰を振るう。
その度に染みだした愛液がクチュクチュという音をかき鳴らし、小蒔に強い興奮と快楽を与えた。

京太郎「もう…我慢出来ないのか?」
小蒔「はい…ぃ…♪私…もう本当にダメなんです…っ♥このままじゃ京太郎様を襲っちゃいそうなくらい…エッチな事大好きになって…♪♪」
小蒔「もぉ…馬鹿なんです…ぅ♪♪セックス馬鹿ぁ…♥ラブラブセックスしたくて…私、馬鹿になっちゃったのぉ…♥♥」

しかし、そうやって女性器の表面を撫でるような刺激で、小蒔が満足出来るはずがない。
勿論、それは胸の愛撫と相まって、すぐさまイきそうになるほど気持ちの良いものだった。
だが、今の小蒔が求めているのはそんなものではなかったのである。
愛される喜びに心も身体も満たされるような甘い交わりでなければ、今の小蒔は癒せないのだ。


734 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:49:35.99DtkKb4Jxo (90/108)


京太郎「…仕方ないな。じゃ…これで終わりにするか」
和「え…?」

その言葉に本格的に小蒔が限界に達している事を感じ取った京太郎はそう言葉を漏らした。
けれど、それは和にとって予想外も良いところだったのである。
何せ、京太郎は一度チョンボによって手牌を晒し、和がそれに振り込む事はほぼないと分かっているはずなのだから。
彼からすれば次こそがラストチャンスだったはずなのである。
しかし、京太郎はそんなチャンスを自分から潰すような言葉を放った。
それがどうしても理解出来ない和の前で京太郎はそっと小蒔の頭を撫でる。

京太郎「漫さんもそろそろやばそうだし…あんまり長引かせても二人が辛いだけだろうしな」
小蒔「ふぁぁ…ぁ…♥♥」

労るようなその手つきに小蒔が幸せそうな声をあげる。
まるで愛しさに身体が声さえも蕩けてしまったようなそれに和はゴクリと生唾を飲み込んだ。
それは勿論、小蒔のその声が和は何度も聞いた覚えがあるからである。
欲情で理性が緩み、感情をむき出しにする時にだけ聞こえるそれは記憶の中にある和自身の声と殆ど一致していたのだ。

漫「うちの事も可愛がってくれるん…?」
京太郎「そりゃ漫さんだって頑張ってくれたし、それに能力使った責任取らないとな」
漫「えへへ…嬉しい…♪」

それに小蒔の歓喜を知り、そして羨望を強める和の前で漫もまた綻んだ笑みを浮かべる。
目に見えて強くなっていく欲情の中ではっきりと浮かぶそれは朗らかなものだった。
彼女の持つ魅力をはっきりと見せつけるようなそれはそれだけ漫が嬉しいからだろう。
実際、彼女は自分を忘れないでいてくれた京太郎に愛しさを沸き上がらせ、欲情と興奮を数段飛ばしで強めた。


735 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:50:21.37DtkKb4Jxo (91/108)


和「(私…は…私は……)」

それを見た和の胸の中は既に羨望を超えて、嫉妬の感情を沸き上がらせ始めていた。
しかし、それでも和はどうするか決めかねたのは、こうして終わりを宣告されると本当にこのままで良いのかと思ってしまうからだろう。
勿論、さっきまでの和はなんとかこの状況を打破する為に和了を目指していた。
しかし、この後に待ち受けている淫蕩の宴に自分だけ参加する事が出来ないと思うと、その手がどうしても鈍ってしまうのである。

和「(私だって本当は…京太郎君に愛して欲しいのに…)」

そう思う和の下着にはもう愛液が染みだしていた。
京太郎とセックスする為に買った勝負下着はぴっちりと濡れた肌に貼り付き、独特の不快感を与えている。
しかし、それ以上に和にとって不快なのは、その欲求不満を癒やす術が今の自分にはないという事だった。
既にスイッチが入ってしまった身体はオモチャを使った自慰でも発散する事が出来ず、京太郎に愛してもらう他ない。

和「あ…」

そう思った瞬間、和が引いたのは自身の和了牌だった。
普段であれば、そのまま和了をする事に何ら躊躇いを感じる事はなかっただろう。
和がやっているのは麻雀であり、そういった手心を加えるのは彼女の主義に反するのだから。
寧ろ、そうやって意図的に勝ちを見逃すような戦い方は和が最も嫌うものだった。


736 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:50:48.43DtkKb4Jxo (92/108)


和「(これを宣言すれば…私は…開放されるんです)」

だからこそ、それで和了るべきだ。
これで開放されるべきだと和の理性は訴える。
しかし、彼女の腕は牌を倒す事はなく、その口もまた動き出す気配がなかった。
そんな自分をらしくないと思いながらも、和にはどうする事も出来ず、雁字搦めになった身体を動かす事が出来ない。

京太郎「和…大丈夫か??」
和「あ…」

それに京太郎が心配そうな声を紡ぐのは、和が普段とはかけ離れた様子を見せていたからだ。
彼の知る原村和という少女は麻雀という分野に対しては決断力に溢れた少女なのだから。
こうして躊躇いを見せる姿だなんて、殆ど見たことがないと言っても良いくらいだ。
勿論、そうやって躊躇わせる原因が自分にあると理解していても、京太郎にとってその言葉は止める事が出来ないものだったのである。

和「(嬉しい…)」

ともすれば「お前が言うな」と返されてしまいそうな京太郎の感情。
それを正確に感じ取った和が最初に浮かべたのは強い歓喜の波だった。
これまでの流れの中で京太郎と殆ど会話出来ていなかった彼女にとって、そうやって気にかけて貰えるのは嬉しくて堪らない事だったのである。


737 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:51:24.11DtkKb4Jxo (93/108)


和「…いえ…なんでもありません」スッ

そんな和が選んだのは自分の和了牌を打ち出す事だった。
勿論、それは半ば反射的なものだったという事もある。
京太郎に仲間外れにされていなかったという事が嬉しくて、つい感情的に選んでしまった茨の道なのだ。
しかし、それが後悔を呼び起こしたりしないのは、和がもう京太郎の虜になっているからだろう。
どれだけ失望してもそれ以上に和は京太郎の事を愛しており、どれだけ最低でも軽蔑する事なんて出来なかったのだ。

和「(それに…まだ負けたと決まった訳ではありませんし…)」

その思考が詭弁であるという事に和自身気づいていた。
しかし、それは和自身愚かしいと思う選択を擁護する為にはどうしても必要な事だったのである。
決して負けたと決まった訳ではないのだから、自分は勝ちを放棄した訳じゃない。
主義を曲げた訳ではなく、ただ運を完全に天に任せただけ。
そう自分に言い聞かせながら進んだ局は… ――

京太郎「…流局…だな」

結局、京太郎はそれを和了る事が出来なかった。
聴牌にまでは手が届いていたものの、京太郎もそして和も和了牌を引く事が出来なかったのである。
それでも普段の麻雀であれば、親番を続ける事が出来ただろう。
しかし、これで終わりと宣言した以上、続きは出来ない。
何より、もどかしさに涙ぐみ始めている小蒔の事をこれ以上放置するなんて彼には選べなかった。


738 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:51:52.96DtkKb4Jxo (94/108)


京太郎「…仕方ない。約束通り…さっきの宣言はなしにしてくれ」
和「…はい…」

その言葉に和はどんな感情を胸に浮かばせているのか自分でも良く分からなかった。
胸に沸き上がってくるのは自分でも判別がつかない複雑な感情ばかりで、どうとも定義する事が出来ない。
安堵と落胆が入り混じるそれは和の反応をどこかぎこちないものにしていた。

京太郎「ただ…今は小蒔や漫さんに責任取らなきゃいけないからさ」
小蒔「はぅぅ…ん…っ♪♪」

それに心配する気持ちは京太郎の中にはある。
しかし、これまで放置してきた小蒔や漫はそれ以上に切羽詰まった状況なのだ。
和に声を掛けるよりも先にまずは二人の事をどうにかしてやらなければいけない。
そう思った京太郎は和からそっと視線を外し、目の前に座る小蒔の身体をぎゅっと抱きしめる。

京太郎「ごめん、小蒔。待たせたな」
小蒔「は…ぁ…ぁっ♪オチンポ…くれるんですか…っ♥オチンポ…オチンポぉ…♪♪」

謝罪する京太郎に嬉しそうに答える小蒔の声には最早、理性の色など欠片もなかった。
淫語を嬉しそうに呟くその顔は欲求不満と喜色に彩られ、唇からは唾液がこぼれ落ちている。
まさにケダモノそのものと言ったその顔になっても、しかし、小蒔は京太郎の邪魔をする事はなかった。
それも全て小蒔が京太郎の事を愛しているからだと知っている彼は申し訳なさそうにその顔を歪める。


739 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:52:22.99DtkKb4Jxo (95/108)


京太郎「あぁ。今、小蒔の大好きな奴をやるからな」
和「あ…」

そう言って自分でズボンのファスナーを下ろし、間から男根を取り出す京太郎。
その姿に和が声をあげるのはそこはもうガチガチになるまで張っていたからだ。
勃起という言葉を何より体現するようなその肉棒の姿に和の胸がトクンと跳ねる。
小蒔だけではなく和自身も大好きなそれに今すぐむしゃぶりつきたくなって仕方がなくなるのだ。

和「ぅ…」

しかし、それは出来ない。
そう理性が邪魔するのは、自身が能力の影響を受けていないからだ。
今にも壊れてしまいそうなほど昂った小蒔に比べれば、自分の状態が幾分マシなものだと彼女は理解していたのである。
それでも尚、京太郎の事を求められるほど原村和という少女は自分勝手にはなれない。
結果、彼女は小さく声をあげるだけで、その胸に抱いた嫉妬を行動に反映させられなかった。

小蒔「あぁ…っ♪♪嬉しい…ぃ♪オチンポ嬉しい…っ♥♥オチンポ早く…早くぅぅぅ…♪♪」
京太郎「分かってる。今、脱がすから…ちょっと待ってな」

そう言いながら小蒔の服を脱がしていく京太郎の手つきはとても手慣れたものだった。
甘えん坊な小蒔や和が求めるのに答えている内に他者の服を脱がせるという事に京太郎は慣れてしまったのである。
しかし、それを見た和が胸を苦しくさせるのは、それが今、自分に向けられているものではないからだろう。
胸焦がすほど愛している男が今から別の人間とセックスする為にそれを使っている。
そう思うだけで和の目尻から涙が浮かびそうになり、ぎゅっとその手を握りしめるのだ。


740 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:52:59.84DtkKb4Jxo (96/108)


京太郎「ほら、足を広げて…そう良い子だな」
小蒔「くぅ…ん…っ♪♪良い子…ぉ♥私…良い子…ぉ♥」
京太郎「あぁ。だから、すぐにご褒美をやるからな」

そんな和を尻目に京太郎は小蒔の袴をそっと脱がせた。
瞬間、露出した飾り気のない下着はもうぐっしょり濡れて、肌に張り付いている。
お陰で向こうにある肌が透けるその姿は京太郎の興奮を擽るものだった。
淫靡という言葉を体現するようなそれに反り返った肉棒の切っ先がピクピクと揺れる。
それをぐっと握りしめた京太郎は小蒔の下着をズラしながらそっと入り口に矛先を向けた。

小蒔「(オチンポオチンポオチンポオチンポオチンポ…っ♪♪)」

もうすぐにまで迫ったセックスの瞬間。
そこで小蒔が思い浮かべるのは逞しい肉棒の感触だった。
喜悦と期待混じりのその言葉以外には何者も小蒔の胸に存在しない。
京太郎の邪魔をしないように必死に淫欲を押しとどめていた理性すらそこにはなく、ただ愛欲の虜となった一匹のメスがいるだけだ。

小蒔「ひぐぅぅ…ぅぅうううぅうっ♥♥♥」

そのメスの身体に京太郎の肉棒が埋め込まれた瞬間、叫び声をあげる。
何処か遠吠えにも聞こえるそれは陶酔と欲情混じりの甘いものだった。
周囲のライバルにセックスを知らしめようとしているようなそれに和と漫の胸が強い疼きを発する。
其の目に嫉妬と羨望を強める二人の前で、小蒔は身体を痙攣させ、ようやく与えられた肉棒の快楽に善がっていた。


741 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:53:38.79DtkKb4Jxo (97/108)


小蒔「はんんんっ♪♪ひあぁ…っ♥♥あ゛ぁぁぁっぁっっ♪♪♪」

普段の小蒔の身体は能力の影響もあって、京太郎相手には信じられないほど敏感だ。
その手で撫でられるだけ、触れられるだけで身体が反応し、興奮と快楽を得てしまうくらいに。
勿論、その肉棒に貫かれれば、何度だってイキ狂い、何もかもを押し流すような快楽に失神と覚醒を繰り返すくらいだ。

小蒔「いぐぅうっ♪♪いくいくいくいくぅぅぅっ♥♥いひゅぅぅっっんんっ♪♪♪」

しかし、そんな何時もと比べても、今の小蒔の絶頂は凄まじいものだった。
硬く張り詰めた肉棒の先端が粘膜をこじ開けただけで幾つもの絶頂が連なり、小蒔に襲いかかるのだから。
まるでその肉襞一つ一つまでがイッているような感覚に小蒔の意識がふっと揺らぐ。
まだ入り口を擦られた程度で失神寸前にまで追い詰められる感覚に身体が戦慄き、その口からは激しい絶頂が伝えられた。

漫「ごくっ…」

それに一番の反応を示したのは和ではなく、漫だった。
小蒔と同じく京太郎の能力を受けた彼女にとって、それは決して他人事ではなかったのだから。
今はまだ平静を装えてはいるものの、数分後にはどうなるなるか分からない。
そんな彼女にとって今の小蒔の姿は未来の自分でもあり、興奮と嫉妬を強めるものだったのだから。


742 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:54:14.25DtkKb4Jxo (98/108)


漫「(神代さん…あんな風に喘ぐんや…♪♪)」

そして同時に強い背徳感を覚えるのは、決して良く知っているとは言えない同性の乱れる姿を見せつけられているからだろう。
普通に生活していれば決してあり得ないであろうそれに漫はトクンと胸を疼かせ、暗い興奮を体中に広げた。
嫉妬混じりのそれに漫の身体は突き動かされ、そっと京太郎に近づいていく。

漫「ね…京君…♥うちのこと忘れとらへん…?」
京太郎「いや…別に忘れてる訳じゃ…」

そのままそっと京太郎に抱きつく漫の事を京太郎は忘れていた訳ではない。
しかし、今の小蒔をそのままにしていたら日常生活に復帰する事すら難しそうだったのだ。
まずはその欲情を解消してやらなければと思って、小蒔を優先しただけである。
結果、乱れる小蒔の姿に興奮を覚え、そっちに引きこまれはしたものの、決して忘れていた訳じゃない。

漫「じゃ…うちともキスしてくれるよね…♥」
京太郎「それ…ふくっ!?」

そんな京太郎の返事を待たずに漫はその唇を奪い去る。
ちゅっと言う音と共に自身の唇を押し付けた彼女は彼の唇をねっとりと舐め始めた。
京太郎の事を貪ろうとする意思をまるで隠そうとしないそのキスに彼の身体が興奮を強める。
結果、漫のキスを拒めなくなった京太郎は自分からそっと顔を押し付け、恋人との甘いキスに興じた。


743 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:54:42.80DtkKb4Jxo (99/108)


小蒔「あ゛ぁ…っ♪♪あ…あぁぁぁぁっ♥♥」

そんな光景を目の前で見せつけられた小蒔の口から抗議するような声が漏れる。
その胸を欲情で満たし、ケダモノになったとは言え、小蒔は決して京太郎への愛情を忘れた訳ではないのだ。
寧ろ、欲情の源泉となっているそれは堅持されるどころか、大きく膨れ上がってさえいる。
そんな彼女の目の前で愛しいオスが別のメスとキスに興じているのだから、面白いはずがない。
身体が充足している感覚の中で不満を覚えた彼女は自分からそっと腰を下ろしていく。

小蒔「くぅ…ん…っ♪♪うあ…ぁ…あぁぁっ♥♥♥」

しかし、それが順調かと言えば、決してそうではなかった。
普段以上に敏感になった身体はほんの僅かに男根と擦れるだけで激しくイッてしまうのだから。
身動ぎ一つする度に身体の中で筋肉が跳ね、作業を中断せざる得ないのだから順調なはずがない。
それでも小蒔は愛しいオスを取り戻そうとゆっくり腰を下ろし、その肉棒を飲み込んでいく。

小蒔「んひぃい゛い゛ぃぃぃぃぃぃぃっ♥♥♥」

瞬間、小蒔の口から悲鳴のような声が漏れたのは京太郎の肉棒が一気に奥まで貫いたからだ。
それは勿論、小蒔の意思で行われたものではない。
ほんの数センチ動くだけで身体がイキ狂いそうになる彼女がそんな事出来るはずがないのだから。
そしてその足は震えながらも未だ椅子を踏みしめているのだから、足を踏み外したという事もない。


744 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:55:09.61DtkKb4Jxo (100/108)


小蒔「あ゛…ーっ♪♪あ゛ぁぁぁ…あぁ…♥♥♥」

そんな彼女の腰にはいつの間にか京太郎の手が添えられていた。
震える小蒔の身体を支えるようなそれは、しかし、つい数瞬ほど前に小蒔の身体を引きずりおろしたものである。
まるでその程度の挿入では物足りないとばかりに一気に自身の奥まで貫いたそれに小蒔が震える声をあげた。
その瞬間、ちょろちょろという音と共に小蒔の身体から黄色い液体が漏れだし、下の京太郎へと振りかかる。

漫「(うわ…ぁ…エゲツないぃ…♥♥)」

キスしながらもその一部始終を見ていた漫にとって、それは微かに同情を覚えるものだった。
今の小蒔がどれだけ敏感で、そして気が狂いそうになるくらい善がっている事くらい漫にも理解出来ているのだから。
その上、一気に奥まで愛しい夫の肉棒で貫かれたら、失禁してもおかしくはない。
寧ろ、その意識がなんとか飛ばずにいられている事を僥倖と思うべきなのだろう。

漫「(本当…意地悪なんやからぁ…ぁ♥)」

勿論、それを京太郎が分かっていないはずがない。
少なくとも、自分とキスをする彼の手は引きずり落とした瞬間とは裏腹に、小蒔の身体を優しく支えているのだから。
挿入から間髪入れず脱力した小蒔の身体を支えるそれは分かっていなければ不可能だろう。
その上、椅子やズボンを穢す小蒔の失禁に何も驚きも覚えずにキスを続けているのだから、分かっていてやったに違いない。


745 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:55:36.61DtkKb4Jxo (101/108)


漫「(でも…その意地悪さが…ゾクゾクするぅ…♪♪)」

それは勿論、自分に向けられたものではない。
あくまで自分はサブであり、メインは寵愛を受けているのは小蒔の方なのだから。
しかし、そうと分かっていても、漫の身体は興奮を覚え、子宮をドロリと蕩けさせてしまう。
幾度となくその意地悪さにいじめられ、昂らされていた彼女にとって、それは羨ましささえ覚えるものだった。

小蒔「あひ…ぃ…ぅ♪♪あきゅ…ぅぅ…♥♥」

そして、それは吐息にさえ甘い響きを見せ始めた小蒔にとっても同様である。
嗜虐的なその一撃に小蒔は身体を痙攣させながら悦び、そして喜んでいた。
その証拠に彼女の両腕は京太郎の背中へと周り、その豊満な胸を押し付けている。
痙攣の度にプルプルと震えるそれはまるでもっといじめて欲しいと京太郎に訴えているようだった。

京太郎「ちゅ…漫…」
漫「ん…♥しゃあないなぁ…♪」

お互いの唇を舐め合うようなねっとりとしたキス。
その合間に漏らされた言葉の意味を漫は正確に読み取った。
それに仕方がないと言葉を漏らすのは、京太郎が望んでいる事が漫にとって利敵行為に等しいものだからである。
とは言え、このままろくに動けない状態では京太郎もろくにイけない上に、自分にだって構っては貰えない。
そう判断した漫はそっと彼から離れ、テーブルの上のシートを上に並んだ牌ごとそっとどかした。


746 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:56:03.25DtkKb4Jxo (102/108)


京太郎「よいしょっと…」
小蒔「ひゃぅん…っ♪♪♪」

そうして出来たスペースに京太郎は小蒔の身体を横たえた。
脱力した人の身体はかなり重たいものの、小蒔自身が小柄な為にそれほど負担にはならない。
寧ろ、頼られているという事を感じるその重さにもう少し持っていたくなるくらいだ。
しかし、漫にまで手伝ってもらった以上、そうやって小蒔とだけいちゃつく訳にはいかない。
何より、小蒔自身がそれを望んでいないという事が、彼には十分、伝わってくるのだから。

和「(神代さんは…まだ…満足していない…)」

それは和もまた同じだった。
いきなり目の前に小蒔の身体を横たえられた彼女にはその顔が良く見えてしまうのだから。
もう目尻からポロポロと涙を零し、半開きになった口から唾液を漏らしながらも、小蒔はまだ満足していない。
その瞳には欲情が激しく燃え盛り、ピンと尖った桃色の乳首が我慢出来ないと言わんばかりにピクピクと揺れている。
何より、もぞもぞと動くその腰は奥に留まったままの肉棒に動いて欲しいと訴えるものだったのだ。

京太郎「本当に小蒔は可愛くて仕方がない…淫乱妻だな…っ!」
小蒔「あ゛ひぃぃぃぃい゛いいぃいっ♪♪♪」

そんな小蒔の膣肉を京太郎の肉棒がゴリゴリと引きずる。
何時もよりも興奮している所為で張ったカリ首は小蒔の肉襞をこれでもかとばかりに虐めてくるのだ。
その上、興奮した京太郎のピストンは最初から遠慮がなく、小蒔好みの激しいものである。
ズッチュズッチュと愛液を掻き出すようなそれに小蒔はケダモノじみた叫び声をあげ、全身を痙攣させた。


747 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:56:42.82DtkKb4Jxo (103/108)


漫「ふふ…♪こうして見ると…凄いエッチやね…♥」

さっきとは違い、テーブルの上、しかも、正常位で犯されている小蒔に隠せるところなど殆どなかった。
局所だけを晒すようにズラされた下着も透けて、殆どその意味を成していない。
勿論、一突き毎に愛液を吹き出し、悶えるほどに喜ぶ肉穴の反応もまた漫には丸わかりだ。
その身体の中に駆け巡っている快楽をまるで隠そうとしないその反応に、漫は再び京太郎へと絡みつく。

漫「ね…神代さんの欲情盛りはどう?美味しい?」
京太郎「美味しすぎて…すぐ出ちゃいそうなくらいだ…」

そのまま耳元で囁く漫の声に京太郎は素直にそう返した。
他の二人の前で犯しているというシチュエーションの所為か、京太郎は何時もより興奮しているのである。
流石に小蒔ほどではなくとも、その感度は普段のそれよりも遥かに高くなっていた。
そんな肉棒で手加減なしでピストンを繰り返しているのだから、それほど遠くない内に射精してしまう。
そうは思いながらも抽送を緩める気が起こらないくらい、小蒔の中は気持ちの良いものだった。

漫「ふふ…♪じゃあ…うちもそのお手伝い…してあげるね…♥」
京太郎「うあ…っ」

そう言いながら漫が手を伸ばしたのは京太郎の胸だった。
未だ上着を羽織ったままのそこに漫はそっと手を差し込み、そのまま優しく肌を撫でる。
サワサワとしたそれは京太郎に独特のくすぐったさを与えた。
けれど、それだけで済まなかったのは興奮した京太郎の肌が普段よりも敏感になっていた所為だろう。


748 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:57:22.05DtkKb4Jxo (104/108)


漫「京君、女の子みたい…♪可愛えぇよぉ…♥♥」
京太郎「ちょ…す、漫さん!?」

そのまま胸板を撫でる漫の手はとても滑らかだった。
まるで上質なシルクのような心地良い肌さわりに微かな快感を覚える。
しかし、それを容易く受け入れられないのが男という生き物だ。
自分が胸で感じている事に尊厳を穢されるような気がして京太郎はそう抗議の声をあげる

漫「だって、しゃあないやん…♥うち…手持ち無沙汰なんやもん…♪」

そう拗ねるように言うのは京太郎が本格的にセックスを開始した所為だ。
小蒔ではなく自分で動くそれにキスをするような余裕はあまりない。
故に再び京太郎にキスを強請ったら彼の邪魔になりかねない事を漫は理解しているのだ。
そんな彼女が自分勝手にキスを強請れるはずもなく、こうして拗ねるようにして京太郎を責めるしかない。

漫「それとも…うちの事も可愛がってくれる…?うちはそれでも構わへんよ…♪♪」

そう挑発するように言う漫の言葉は決して嘘ではなかった。
京太郎にされるのであれば何でも喜ばしく思える彼女にとって、彼の愛撫は堪らないものなのだから。
興奮で張り始めている乳首を少し抓られるだけで今の漫は容易くイく事が出来るだろう。
それを内心、求める漫にとって、それはどちらに転んでも構わない言葉だったのだ。


749 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:57:50.75DtkKb4Jxo (105/108)


京太郎「く…ぅ…」

しかし、京太郎はその挑発に乗る事が出来ない。
それは何時も以上にきつく締まり、ジュルジュルと纏わりつく小蒔の肉襞が気持ち良いからだけではなかった。
横から京太郎へと寄り添う漫を愛撫しようとすれば、その手は彼女の方へと向けなければいけない。
だが、こうして正常位で小蒔を犯している今、そうやって手を横に伸ばす余地というものが京太郎にはないのだ。
身体の構造上仕方のないその問題に京太郎は悔しそうに歯噛みしながらも、ピストンを続ける。

小蒔「あひぃっ♪♪ひぅぅっ♥♥ふぁっ♥♥あ゛あぁぁぁっ♪♪♪」

まるで漫に対して反撃できない悔しさを発散するような激しいピストン。
それに小蒔が断続的な鳴き声をあげながらその背筋を浮かせた。
微かに弓なりになったその背筋をブルブルと震わせるその身体からぷしゃあと激しい勢いで透明な液体が漏れ出す。
俗に潮と呼ばれるそれは抽送を繰り返す京太郎の腰へと当たり、周囲へと飛び散っていった。

小蒔「あ゛ぅあぁぁ…っ♪♪ひぃ…ぃぃいぃぃぃっ♥♥」

しかし、小蒔はもう自分が潮吹きをした事さえも認識できていなかった。
彼女の中にあったのは途方も無い気持ち良さだけで、他は全て薄れさってしまっていたのである。
まるで他の何も要らないと言わんばかりに悦楽だけで満たされるその感覚に多幸感すら浮かび上がらない。
意識すら蕩けていくような凄まじい快楽の中で、彼女の中にあったのは自身の肉穴の感覚だけだったのだ。


750 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:58:26.62DtkKb4Jxo (106/108)


小蒔「(あっひもこっちもぉ…グチョグチョに…ドロドロにしゃれへぇ…♥♥)」

容赦の無い京太郎のピストンは漫の介入によって時折、不規則な動きを見せた。
最短でボルチオを目指すのではなく、あちらこちらに擦れながら奥へと雪崩れ込んでくるその軌道を小蒔はまったく予測出来ない。
自然、それは快楽に対するガードを下げさせ、絶頂の波を幾つも起こさせる。
最早、休みなく小蒔の身体を揺さぶるほどになったそれに彼女は耐える事が出来ない。

小蒔「(ひもちよしゅぎるぅ…っ♥♥こんにゃの…しんらうぅ…♪♪こまき…ひんじゃいますよぉぉ…♥)」

文字通り頭がおかしくなってしまうほどの快楽の波。
一瞬たりとも途切れる事なくイき続けるその感覚に小蒔は息も絶え絶えになっていた。
このままでは頭の中が焼き切れて死んでしまうのではないかと本気で思ってしまうくらいである。
しかし、それでも小蒔の心にそれに対する拒絶は浮かびあがる事はない。
寧ろ、もっとして欲しいとばかりに痙攣する腰を動かし、京太郎の抽送を補助してしまうのだ。

漫「ふふ…神代さんの腰もカクカクって…これも京君の事好きやからやで…♥♥」

そんな小蒔を見ながら、漫はニンマリとした笑みを浮かべてしまう。
意地の悪いそれは京太郎を責める新しい材料を見つけたからだ。
勿論、普段であればそんな真似はしないが、今の漫は小蒔とのセックスを見せつけられている立場なのである。
少しくらい虐めても構わないと自分の良心を納得させながら、京太郎の耳元でそっと口を開いた。


751 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:58:56.50DtkKb4Jxo (107/108)


漫「神代さんみたいな美少女にこんなに好かれてるなんて…京君は本当に果報者やなぁ…♥♥」
京太郎「っ…!」

そのまま吐息と共に甘く囁く漫の声に、京太郎が微かに歯を食いしばった。
それは漫の言葉に嫌な予感がしたというよりも、良心が咎めたからである。
実際、京太郎にだって自分が小蒔に釣り合っているだなんて欠片も思っていないのだから。
そんな小蒔を能力で無理やり従えているだけではなく、こうして二人の前で晒し者にしているのだから胸が傷んで当然だろう。

漫「で…そんな彼女の前で…おっぱい弄られて感じる気分は…どぉ…♪♪興奮する…ぅ♥♥」
京太郎「うくぅ…」

そんな京太郎を追い詰めるように漫は小さく爪を立て、彼の胸を引っ掻いた。
丁度、乳輪と呼ばれる位置への愛撫に噛み締めた歯の奥から声が漏れてしまう。
それに漫が嗜虐的な笑みを強めるものの、京太郎には何も出来ない。
それを悔しく思うだけで今の彼に小蒔を満足させながら反撃する手段なんて思いつかなかったのだ。

和「(あぁ…♥ご主人様…とっても気持ち良さそう…♪♪)」

その姿を見て、一番、胸をときめかせていたのは和だった。
淫蕩に耽るようにして絡み合う三人を唯一、外から見つめるその目はもう漫に負けないくらいトロンとしている。
胸中で京太郎の事を『ご主人様』とセックスの時限定の呼び方をするその心もまたその瞳に負けないほどに蕩けていた。


752 ◆phFWXDIq6U2013/09/06(金) 23:59:36.54DtkKb4Jxo (108/108)


和「(ご奉仕したい…っ♥♥私も…ご主人様に…一杯、ご奉仕して…気持ち良くなって欲しい…っ♥♥)」

それをいけないと思いながらも和は自分の欲情をもう止める事が出来ない。
目の前で京太郎の寵愛を受ける二人が羨ましいを超えて、自分も混ざりたいと和はそう思い始めていたのだ。
理性はそちらを食い止めるので精一杯で、その身に宿る欲情を抑えるまで手が回らない。
結果、野放しになった淫欲は和の中で甘い言葉となって、その心を震わせるのだ。

和「(私の指で…口で…アソコで…ご主人様が喘ぐところが見たいのに…ぃ…♪♪)」

けれど、それだけはいけないと食い止める和の理性はその場から逃げる事を強く叫んでいた。
このままこの淫らな光景を見ていたら自分が我慢できなくなる事を彼女も理解していたのである。
しかし、その足が動くどころか、その目すら和は逸らす事が出来ない。
まるでそれを見ていない方が嫉妬で狂いそうになると言わんばかりに、彼女の熱視線はずっと三人に注がれ続けていた。

京太郎「くっそ…!漫…覚えてろよ…!」

そんな和の前で京太郎は悔しそうに言葉を漏らす。
さっきまでの敬語とは違い、はっきりと彼女を同列に扱うのは勿論、悔しいからだ。
一方的にされるがままになりながらも反撃の糸口すらつかめない状況が腹立たしいからである。
勿論、そんな事を言ったところで漫が怯えて手を緩める訳がない事くらい京太郎にだって分かっていた。
しかし、それでも言わないといけないくらいに、彼の心は恥辱を覚えていたのである。


753 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:00:13.82YJUSyvGCo (1/195)


漫「ふふ…♪って事は…うちも神代さんと同じくらいにおかしくなるくらいにレイプしてくれるんやね…♥楽しみやわぁ…♥♥」

そして京太郎の予想通り、漫はそれに怯える事はなかった。
寧ろ、その声に興奮と喜悦を強めるのは、本来の彼女が被虐的な性格をしているからだろう。
京太郎によって開発されたその性質は、中々、変わるものではない。
こうして京太郎を責めている今も尚、本当は嗜虐的に責められたくて仕方がなかったのだ。

漫「子宮の奥までオチンポ突っ込んでボルチオ責めにされて訳分からんくらいイかされるのもええし…子宮壊れそうなくらいピストンされまくるのも堪らへんなぁ…♥♥」
京太郎「ぅ…」
小蒔「んひゃうぅっ♪♪♪」

その期待をそのまま口にする漫に京太郎の興奮は高まってしまう。
そうやって期待混じりの淫語を囁かれるとついつい小蒔の中で肉棒が跳ねてしまうのだ。
自然、それに反応してしまう小蒔の膣穴がギュッと締まり、動き続けるカリ首を掴む。
興奮したところに注ぎ込まれるその快楽に思わず声をあげながらも、京太郎はその動きを緩める事はなかった。

小蒔「あ゛あぁぁっ♥♥ひあぁぁっ…♪♪ひ…ぃぃぃい゛っ♪♪♪」

その動きに小蒔はそろそろ限界を迎えつつあった。
脳が処理出来る限界一杯に達した快楽がオーバーフローを起こし始めていたのである。
お陰でチカチカと点滅し始めた意識を保てているのかそれとも気を失っているのかさえ分からなくなっていく。
ただ確かなのは気を失いそうになっている時も身体は信じられないほど気持ち良く、止めどなく昂っていく事だけ。


754 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:00:50.20YJUSyvGCo (2/195)


小蒔「お゛ふぉお゛ぉぉぉぉぉぉっっっ♥♥♥」

そんな小蒔のトドメになったのはズンッとボルチオを貫くような京太郎の一撃だった。
小蒔の腰を軽く持ち上げながら叩きつけるそれは彼女を一瞬で絶頂の彼方へと置き去りにする。
アレだけ激しかった悦楽の波さえも胡乱になる中で小蒔が感じていたのはうっとりとするような心地良さだけ。
苦痛と受け取られてもおかしくはない絶頂の果てにあるそれに小蒔の身体は眠気を覚えた瞬間、ブツリと意識が途切れた。

漫「あちゃぁ…♪小蒔ちゃん…これ失神しとるで…♪♪」
小蒔「あ゛…♪♪あ゛ぁぁ~ぁ……♥♥」

それでも快楽に反応する身体から、喘ぎ声は漏れ出している。
しかし、それはさっきまでとは比べ物にならないくらい弱々しいものだった。
そんな小蒔を見ながら、漫はブルリと背筋を震わせる。
漫とて失神するまで京太郎に犯された経験が少なからずあるのだから。
勿論、その間の自分の状態がどんなものなのか、把握する事は出来ない。
そして、今、彼女の眼の前にいるのは、自分と同じく京太郎に開発された小蒔が失神する姿なのだ。
そこに過去と未来の自分の姿を見て、興奮を覚えるのは当然の事だろう。

漫「ふふ…っ♪失神するまでレイプするなんて…ほんま京君は酷い人やね…ぇ♥」
京太郎「くぁ…」

その興奮を原動力にしながら漫はそっと京太郎の下腹部を撫でる。
そのまま愛液とカウパーで濡れた付け根の周りをスリスリと撫でる手はとても扇情的だった。
興奮した身体から思わず声が漏れてしまうほどのそれに小蒔の中で肉棒がビクンと跳ねる。
それに合わせてまたイッた肉穴がきつく締め付けてくるのを感じながら、京太郎はそっと口を開いた。


755 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:01:20.09YJUSyvGCo (3/195)


京太郎「し、仕方ないじゃないか。まだ俺だってイけてないんだからさ」
漫「ふふ…♪そうやね…♥」

勿論、失神するまで犯し続ける事に京太郎は申し訳ないと思っている。
しかし、自らの手によって開発され、能力の支配下にある彼女たちは信じられないほど敏感で貪欲なのだ。
京太郎が満足するまでの間に三桁を下らない絶頂を繰り返し、それでも、さらなるセックスをせがむ。
そうやってイき続ける恋人たちの姿が好きな京太郎も止まらず、ついつい気を失うまで責め続けてしまうのだ。
特に今回は小蒔が能力の影響もあって信じられないほど敏感になっており、まだ京太郎は一度も射精していない。
そんな状況で小蒔が気を失うだなんて京太郎もそして漫も予想外だったのだ。

漫「…マグロ状態の小蒔ちゃんレイプ出来る…?」
京太郎「それは…」

漫の言葉に逡巡を覚えるのは、漫の欲情がそろそろ限界近いのを感じ取ったからだ。
普段のセックスならば、恋人たちの意識が戻るまで適当にその身体を弄んで楽しむ事が出来る。
しかし、今、京太郎を待ち望んでいるのは決して小蒔だけではないのだ。
こうして彼女が失神してしまった以上、次は漫の身体を満足させてやるべきなのかもしれない。

京太郎「いや…やっぱり一度、小蒔で射精するよ」

そう思いながらも京太郎がそれに従えなかったのは、さっきの悪戯を忘れていなかった所為だ。
仕返しの出来ない状況で横槍を入れてきた漫に、多少は意地悪を仕返してやりたかったのである。
勿論、普段、それ以上の事をしている自覚はあれど、こればっかりはどうにもならない。
傷ついた彼のプライドと嗜虐心は漫にもまた同じだけの恥辱を味合わせる事を望んでいたのである。


756 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:01:49.87YJUSyvGCo (4/195)


漫「失神してからもレイプするなんて鬼畜…ぅ…♥」

しかし、それは漫にとって予想通りと言っても良いものだった。
京太郎がどんな風に考えるかをこの場で誰よりも把握しているのは漫なのだから。
触れ合った時間こそ短いけれども、その基本的な性質が似通っている彼女にとって、それは容易く想像出来るものだったのである。
それがもどかしくないかと言えば嘘にはなるが、けれど、嬉しくない訳じゃない。
そう思うのは漫もまたそうやって焦らされるのが好きだからだろう。

漫「ほら…神代さんの事もっとレイプして…寝てる間にどぴゅどぷしながら孕ませられたって思うくらい射精してあげて…ぇ♥♥」
京太郎「あ…あぁ」

その喜びを興奮へと繋げながら、漫はそうやって京太郎の背中を押す。
それに肩透かしめいたものを感じながら、京太郎は再びその腰を動かした。
気を失っているとは言え、オルガズムが続いている所為か、その中はきつく、そして熱い。
ドロドロとした熱に肉棒の芯まで暖められる感覚は心地よく、そして気持ちの良いものだった。
一片足りとも汚れは許さないと言わんばかりに絡みついてくる肉襞も相変わらずで一突き毎に射精へと近づくのが分かる。

和「あ…ぁ…♥」

そしてその光景を未だ部外者という立場で見せつけられている和にとって、それは胸が疼くものだった。
失神しながらも犯して貰える小蒔が、和にとっては羨ましく思えて仕方がないのである。
何せ、それは一生、京太郎とセックスし続けたいと言う和の夢を叶えるような淫らな光景なのだから。
それに和はついつい熱い吐息を漏らし、その内股を擦れ合わせる。
瞬間、クチュリとなった小さな音を聞いていなかった振りをしながらも、和の喉は小さく生唾を飲み込んだ。


757 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:02:16.80YJUSyvGCo (5/195)


和「(私も…私も欲しいです…っ♥ご主人様のオチンポ欲しい…っ♥愛玩奴隷の発情マンコに奥まで突っ込んで欲しいんです…ぅ♥♥)」

瞬間、湧き上がる言葉はもう喉元まで出かかったものだった。
気を抜けばそのまま言葉になってしまいそうなそれは勿論、和の欲情が限界近くにまで達しているからである。
目の前で繰り広げられる淫らな饗宴に一人だけ参加出来ないその身体はもう疼きを強めて子宮もキュンキュンと唸っているのだ。
普段であれば恥も外聞もなく京太郎へと飛びついてセックスを強請っているだろうその欲求不満に和は何とか踏みとどまっているのが現状である。

京太郎「うーん…」

そんな和の前で京太郎が何とも言えない声を漏らすのはあまり興が乗らないからだ。
流石に死体を犯しているというほどではないが、眠っている相手を強引に犯しているような気がしてならない。
勿論、気持ち良いのは気持ち良いのだが、さっきまでの内側から燃え上がるような興奮はまるで感じなかった。

漫「もう…手間のかかる子やねぇ…♥」

そう言いながらも漫の顔には嬉しそうなものが浮かんでいる。
それは勿論、恋敵の身体で恋人が満足出来ていないのが伝わってくるからだ。
幾ら二人をなし崩し的に京太郎のハーレムへと引きずり込む事を提案した漫とは言え、その内心は恋する乙女なのである。
ライバルとのセックスで満足出来ていないというそれは、例え錯覚であろうとも強いアドバンテージに思えて仕方がないのだ。


758 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:02:48.68YJUSyvGCo (6/195)


漫「(その上…それをうちが助けてあげるんやから…最高のシチュエーションやん…♥)」

自分だけが京太郎を興奮させてあげる事が出来る。
どんな形でも射精に導いてあげる事が出来る。
その独占欲めいた喜びを漫は拒む事が出来なかった。
胸の中に宿ったそれが錯覚であり、歪んでいると理解しながらも、その胸中は喜悦に満たされるのである。
そして、それに突き動かされた彼女はそっと京太郎から離れ、自らの椅子にそっと足を掛けた。

京太郎「…漫?」
漫「よいしょっと…♥」

そんな漫の姿に疑問を声にする京太郎。
それに答えないまま漫はテーブルへとあがった。
勿論、普段であれば漫だってそんなはしたない真似はしない。
ましてや、ここは彼女の実家ではなく、後に嫁ぐかもしれない須賀の家なのだから出来るはずがなかった。
しかし、彼女にとって独占欲混じりのその喜びはそんなものでは釣り合いが取れないのである。

漫「えへへ…♪」

そのまま四つん這いになって移動する漫は、小蒔の下腹部に膝立ちでまたがるような姿勢になった。
自然、真正面から京太郎へと向き直るその顔は心から嬉しそうな笑みを浮かべる。
それはそうやって京太郎と見つめ合うのが彼女にとって心地良く、そして嬉しいからだ。
愛しい夫の視線を自分一人が独占していると思うとそれだけで胸が蕩けてしまいそうになる。
その上、キスだって出来そうな距離まで近づいているのだから、我慢出来ずに顔を蕩けさせてしまうのも当然だ。


759 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:03:15.54YJUSyvGCo (7/195)


漫「ね…京君…♥見て…ぇ♪」

しかし、そんな距離にまで近づきながら漫が選んだのはキスではなくストリップだった。
その服にそっと手を掛けた彼女はそのまま京太郎の前でゆっくりとそれを脱ぎ去っていくのである。
焦らすように、けれど、勿体ぶる事はない絶妙なタイミングでゆっくりと脱ぎ去られていくそれに京太郎は思わず生唾を飲み込んでしまう。
さっきとはまた違った興奮ではあるが、身体にも強い熱が籠もり、肉棒から伝わってくる快感が強くなるのを感じた。

漫「(んふ…♪うちのストリップ…そんなにギラついた目で見て…ぇ♥)」

勿論、快楽を求めるその腰は未だに小蒔の事を犯し続けている。
けれど、愛しい夫の視線は今、小蒔ではなく、漫にだけ注がれているのだ。
しかも、その視線はギラギラと輝き、まるで視線で肌を穢されているようにも感じる。
他の男であれば今すぐ張り倒したくなる視線も、愛しい相手であれば気にならない。
寧ろ、もっと見て欲しいと欲望を沸き上がらせながら、漫はそっと最後の一枚を脱ぎ去った。

漫「ねぇ…どう…♪うちのエロ下着…ぃ…♪」

瞬間、顕になったのは黒く染まった下着だった。
アクセントにところどころ青のレースが混じっているそれは殆ど裸と言っても差支えがないものだろう。
その殆どをレースで構成されたそれはその向こうにある漫の豊満なバストをまるで隠してはいないのだから。
頂点でピンと張る乳首やその周りの乳輪などは、寧ろ、亀裂のように入ったレースの切れ目からちょこんと顔を出している。
人並みのものよりも大きいそれはまるで刺激を求めるようにピクピクと震え、何とも言えない淫靡さを演出していた。


760 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:03:48.87YJUSyvGCo (8/195)


京太郎「この前とは違う奴なんだな…」
漫「今日はお泊り出来るって聞いたから…また新しいの買ったんやで…♥♥」

京太郎の放った言葉そのものは冷静そうに聞こえるかもしれない。
しかし、さっきよりも強くなった視線は露出した漫の胸にじっと向けられ、その口からは興奮の吐息が漏れる。
肌をチリチリと焦がすようにも感じるそれに漫は笑みをさらに蕩けさせながら、そっとバストを下から持ち上げた。
自然、ワイヤーなど殆ど入っていないブラが歪み、彼女の大きな谷間をさらに強調する。

和「(な…なんて…淫らな…♪)」

そんな漫の様子に和は羨望の思いを強める。
バストを支えるのでも矯正するのでもなく、ただ異性を興奮させる為のそれは同性である和すら興奮させるものだった。
まさかそんな下着があるだなんて想像もしていなかった彼女にとって、それは衝撃的と言っても良い光景だったのである。
セックスで興奮し、オスへと変わりつつある京太郎にとって、それがどれだけ淫らでそして魅力的に映るのか和には想像も出来ない。
しかも、見せつけるように谷間を寄せたらどうなるのかなんて、想像したくもないくらいだった。

漫「どう…?うち…エロい?それとも…綺麗…かな…?」

何処か不安げにそう聞くのは、本来の彼女があまり自信のあるタイプではないからだ。
こうして興奮と勢いに任せて迫っているものの、内心は小蒔や和に対する劣等感で一杯なのである。
それはこうして京太郎の視線を独占している今も決して消え去りはしない。
いや、寧ろ、今も犯し続けている小蒔と比較され、失望さえないか不安で仕方なかったのだ。


761 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:04:22.00YJUSyvGCo (9/195)


京太郎「何時だって漫は俺にとってエロくて綺麗な恋人だよ」
漫「んふぅ…♥♥」

そんな不安を消し飛ばす言葉を京太郎は躊躇いなくくれる。
その喜びに声をあげながら、漫のその肩をブルリと震わせた。
そう言ってくれると分かっていたものの、やっぱりはっきり言われると嬉しくて堪らない。
何度、言われても色褪せないその喜びに漫はニコリと微笑んだ。

漫「まったく…本当に女殺しな言葉を言うのが得意なんやからぁ…♥」

悔しそうに言いながらもふにゃりと緩んだ微笑み。
誰が見ても漫が喜んでいる事が分かるそれに京太郎もまた笑みを浮かべた。
欲情に負けないそれは彼女の喜悦を我が事のように受け止めている事を漫に知らせる。
それがまた嬉しくなった漫は自身の両手をそっと下腹部へと下ろし、スカートのホックをそっと解いた。

漫「だから…こっちも京君にだけ…見せてあげるね…♥」

そう言って漫が晒したショーツはブラと対になっているものだった。
本来であればクロッチがあるはずの部分は勿論、大きく開いている。
ひくひくと蠢く大陰唇を見せつけるようなその隙間からは透明な愛液が滴り落ちている。
ねっとりと糸を引くようなそれが失神し続ける小蒔へと滴るその光景は京太郎の目に堪らなく淫靡に映った。


762 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:05:01.02YJUSyvGCo (10/195)


漫「ふふ…♪そんなにじっと見られたら…うちのオマンコまたトロトロになるやんかぁ…♥」

そう言いながら、漫はそっと自身の胸に手を当てる。
童顔な彼女からはアンバランスなくらい大きく膨らんだそこを漫はねっとりと撫で回す。
そこには未だブラで覆われているとは言え、殆どワイヤーが入ってお陰で簡単にその形を変える事が出来た。
そして、その奥にあるバストもまた自身の柔らかさを伝えるように歪み、京太郎の興奮を擽る。

漫「だから…オナニーする…ぅ♪京君に見られながらオナニー…ぃ♥京君の為に…うち一杯エロエロになるん…っ♪♪」

その言葉が少しずつ理性の響きを失うものになっていた。
自分の身体をいじり始めた所為か、或いは能力の影響が本格的に現れ始めたのか。
彼女の言葉は微かに震え、欲情の色を強めていった。
ハァハァとその熱い吐息の感覚を短くしながらのそれに京太郎の興奮は一気に弾ける。

漫「うちの事使って…ぇ♪京君も…うちでオナニーしてね…っ♥♥神代さんのオナホマンコで一杯オナニーぃ…ぃ♪♪」
京太郎「漫…っ!」

勿論、漫とて本当は自分とセックスして欲しい。
失神した小蒔の事なんて放っておいて、思う存分、さっきの仕返しをして欲しいのだ。
しかし、それが望めない以上、全力で京太郎が射精出来るようにサポートするしかない。
そう思っての淫らなオナニーショーに京太郎が我慢出来るはずなどなかった。
彼女の思惑通りにその視線を漫へと向けながら、腰を跳ねさせ、小蒔を激しく犯し始める。


763 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:05:38.86YJUSyvGCo (11/195)


小蒔「んん…っ♪♪ふあ…ぁぁ…♥♥」

ガクガクとテーブルが揺れてしまいそうなほど激しいピストン。
それに小蒔の声音が艶っぽさを増したように京太郎が思った瞬間、彼女の意識が覚醒する。
しかし、その意識はまるで眠気に満ちているように鈍いものであった。
自然、自分が置かれている状況など分かるはずもなく、彼女はその瞳でそっと周囲を見渡す。

小蒔「(あ…れ…私…何を…)」

だが、そうやって見渡したところで、彼女は今の状態が理解できなかった。
自分の目の前にあるのが天井である事くらい分かるのだが、ぼやけた視界はろくに情報をくれない。
少なくとも自分の上で踊るように揺れる黒と肌色の塊が何なのか彼女にはまったく判別がつかなかった。
それどころか、記憶が混濁した彼女はついさっきまでの出来事すら思い返す事が出来なかったのである。
目覚める前まで眠っていたのか、或いは気絶していなかったのかさえ定かではない彼女は数秒後、自身の下腹部でドロドロとした熱が弾けるのを感じた。

小蒔「ひあ…あぁぁっ♪♪♪」

それは決してさっきまでと比べられるものではなかった。
未だどんよりと濁った意識は身体としっかり結びついている訳ではないのだから。
今の小蒔が感じているのはその何十分の一かのもので、余波と言っても良いものだった。
しかし、それでも胡乱な意識が覚醒するのは、元の悦楽が信じられないほど高いからである。
一度、失神した後も休まず犯され続けた身体は一切、収まらず、敏感になったままだったのだ。


764 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:06:05.87YJUSyvGCo (12/195)


小蒔「にゃ…にゃにがぁぁ…♥♥♥」

それに困惑を覚えるのは、小蒔が未だそれがどういうものなのか分かっていないからだ。
勿論、感じ慣れたその気持ち良さから京太郎に犯して貰っているからなのだとなんとなく推測はついている。
意識を肉穴の方へと集中させれば硬くて熱くて大好きな肉棒が、激しく出し入れされる感覚が伝わってくるのだから。
しかし、それだけでは目の前にいる壁のようなものが説明が出来ず、小蒔は困惑を胸中に広げた。

漫「あ…神代さん…っ♪♪起きたみたい…やぁ…♥」
小蒔「ふぇ…ぇ…♪♪」

そんな小蒔の声に真っ先に気づいたのは漫だった。
三人の吐息の音や愛液が書き出される音、そして、嬌声が響く中でそれに気づけたのはまさに奇跡と言っても良いものだろう。
起きたばかりの小蒔の声は小さく掠れて、それらの雑音の中であっという間に紛れてしまいそうだったのだから。
漫がそれに気づけたのも真下にある小蒔の身体が身動ぎとは違う動きを見せたからで、決して声だけ分かった訳ではない。

小蒔「なんれ…上重しゃんが…ぁ…♪♪♪」」

その声で小蒔は目の前にのしかかっている壁のようなものが漫だと気づいた。
しかし、どうして漫がそんなところにいるのかまったく理解出来ない。
そもそも記憶が混濁し続けている小蒔にとって、漫は未だ大阪に居るのだから。
ついさっき顔を合わせた事さえも忘却の彼方に投げさってしまった彼女にとって、それは理解出来ないものだったのだ。


765 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:06:32.19YJUSyvGCo (13/195)


漫「ふふ…なんでもええやん♥♥それより今は…気持ち良く…なろ…♪♪」
小蒔「ひぐぅぅう゛ぅっ♥♥」

そう言いながら漫がそっと触れたのは小蒔のクリトリスだった。
グチュグチュと音をかき鳴らすくらいに激しく犯されている秘所から、ぷっくり膨れ上がった部分はとても敏感である。
しかも、今の小蒔の身体は燃え上がりそうなくらいに発情し続けているのだから、それだけでイッてしまう。
そのオルガズムでさらに意識の覚醒が進む小蒔の口から大きな嬌声が漏れた。
さっきまでとは違い、明らかに意思の篭った大きなそれに漫の心も興奮で燃え上がり、嗜虐心が再び顔を出す。

小蒔「ら、らめれすぅっ♪♪しょこは…しょこは京太郎しゃまのぉっ♥♥京太郎しゃまのものにゃのぉおっ♪♪♪」
漫「へぇ…そうなんやぁ…♪♪」

その上、そんな健気な事を言うのだから、我慢出来るはずがない。
勿論、漫とて起きてばかりでまだ状況も分からない小蒔にあまり意地悪をしては可哀想だと思っていない訳ではないのだ。
しかし、恋敵である小蒔のあまりにも可愛らしいセリフに、嗜虐心が止まらない。
結果、漫は左手で自分の胸を揉みしだきながら、右手でそのまま小蒔のクリトリスを剥いていくのだ。

小蒔「やっあ゛あぁぁぁぁぁっ♥♥♥」

それにケダモノ染みた叫び声をあげるのは、さらに刺激が強まったからだ。
元々、クリトリスは包皮に包まれていても尚、敏感で剥くのを嫌がる女性もいるくらいである。
そんな場所を同性の手で遠慮無く剥かれ、其の上、クリクリと指で転がされたらどうなるのかなんて想像に難くない。
幾ら、弄っているのが愛しい京太郎の手ではないとは言え、イかないはずがないだろう。


766 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:07:07.10YJUSyvGCo (14/195)


小蒔「やめへぇ…っ♪♪イきらくにゃいぃ…っ♥♥きょぉたろぉ様以外でイきたくにゃんかないのぉっ♪♪♪」

勿論、今も小蒔の中を京太郎の肉棒は激しく出入りを繰り返している。
そこから沸き上がる気持ち良さはクリトリスのそれとは比べ物にならないほど大きなものだった。
それが愛しい婚約者のものであるというだけで、小蒔の身体は過敏と言ってもいいくらいに反応してしまうのだから。
しかし、それは大きなものではあれど、クリトリスの快楽全てをかき消してくれるほど莫大な訳ではない。
結果、どうしても漫に陰核を弄られるのを意識してしまう小蒔にとって、それは拒絶の言葉を放つに足るものだったのだ。

小蒔「助けへぇっ♪♪京太郎様たしゅけてぇぇ…♥♥わらひイかしゃれるぅぅ…♪♪上重しゃんの指でイくぅぅっ♥♥まらイくぅぅぅん♥♥♥」

小蒔にとって自分の身体は京太郎のものだった。
あの日、京太郎に恋している事を自覚してから、自分の全ては彼に捧げる為のものだったのである。
そんな身体に京太郎以外の誰かが触れるだけでは飽きたらず、アクメにまで追い込むだなんて怖気しか覚えない。
例え、それが同性の手であっても一度、イく度に自分の身体が穢されているように思えるのだ。

小蒔「嫌いににゃらないで…ぇ♪♪こんにゃの…うしょらからぁ…♥♥わらひ…京太郎様らけぇ…京太郎しゃまだけ愛してるのにぃ…ぃ♥♥♥」

けれど、昂った身体はどれだけ快楽を拒絶しようとしてもイッてしまう。
その悲しさに小蒔は大粒の涙を零しながら、そう漏らした。
それに一番、良心の呵責を感じたのは京太郎である。
小蒔の反応があまりにも可愛かったので漫がするのを傍観しているだけだったのだから。
そんな自分に愛していると嫌いにならないでと告げる小蒔にズキリと胸が痛んだ。


767 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:07:37.85YJUSyvGCo (15/195)


京太郎「…漫」
漫「ぅ…分かっとる…ごめんな」

京太郎の短い言葉に漫は小さく呻きながらも頷いた。
そのままそっと小蒔から手を離した彼女はするすると小蒔の上から移動する。
最後に一つ謝罪する漫もまた良心の痛みを少なからず覚えていた。
京太郎が興奮すると思って小蒔に手を出したのだが、まさか本気で泣かれるとは思っていなかったのである。
まだ良く知りもしないのに調子に乗った自分を悔いながら、漫はテーブルの上から降りた。

京太郎「小蒔…」
小蒔「あ…あぁぁ…っ♪♪みにゃ…見にゃいでぇ…ぇ♥♥上重しゃんにイかしゃれた顔…見にゃいでっぇ…♪♪♪」

二人の間を遮っていた漫の身体がなくなれば、自然、京太郎と小蒔は顔を合わせる事が出来る。
しかし、小蒔はそれを心から喜ぶ事が出来なかった。
勿論、そうやって京太郎が自分を見てくれるのは嬉しいし、それだけで笑みが浮かびそうになる。
だが、今の小蒔は漫によってイかされ、そして穢された後なのだ。
そんな状況で顔を見合わせても申し訳なさと悲しさに押しつぶされそうになるだけ。
そう思った小蒔は快楽で震える手を何とか動かしながら、その顔をそっと覆い隠した。

京太郎「…小蒔の顔は何時だって可愛いから安心しろ」
小蒔「ふぇ…ぇ…♪♪」

そう言いながら京太郎の手がそっと伸びるのは小蒔の頭だった。
快楽と興奮で汗を浮かべるそこをゆっくりと撫でるその手つきはとても優しいものである。
まるで自身の言葉が本当なのだとそう言っているような仕草に不安で強張った小蒔の心が蕩けていく。
それに思わず甘い声をあげてしまいながら、小蒔は心でオルガズムを沸き上がらせ、その背筋をブルリを震わせた。


768 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:08:04.94YJUSyvGCo (16/195)


京太郎「ほら、もっと俺に小蒔の…可愛い婚約者の顔を見せてくれよ」

そんな小蒔の手を京太郎はそっと握る。
指と指を絡ませ合うようなそれは俗に恋人繋ぎと言われるものだ。
恋人でも滅多にやらないようなその握り方に小蒔は抗えない。
ついつい自分からもその指を絡ませ、そして開かれていく手に顔を見られてしまうのだ。

京太郎「うん。やっぱり俺の婚約者はとっても可愛い。何処も穢されてなんかいないよ」
小蒔「きょぉ…たろお様…ぁ♥♥♥」

そのままハッキリと断言するような京太郎の言葉に小蒔がその名を呼んだ。
それはさっきと同じく快楽に震え、そして微かに掠れたものである。
しかし、それを聞く三人にはそこに混じる喜悦の大きさがさっきと比べ物にならない事がはっきりと伝わってきていたのだ。
心から喜んでいる事を何より如実に示すそれに和だけではなく、漫もまた羨ましくなってしまう。

漫「(はぁ…♪♪もう…本当にタラシやねんから…ぁ♥♥)」

けれど、今の二人に手を出せない。
漫がそう思うのは、彼女なりにさっきの事を反省しているからだ。
ちょっと恥ずかしがってくれるだけで良かった彼女には泣かせるつもりなんてなかったのである。
それに少なからず後悔している彼女は二人の世界を作り出す彼らに介入する事が出来ず、そのまま指を銜えて見ているしかない。


769 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:08:30.73YJUSyvGCo (17/195)


京太郎「だから…そろそろ小蒔に射精したいんだけど、良いかな?」
小蒔「ひゃい…ぃ♪♪来れください…っ♥♥京太郎様のおせぇし…ぃ♪♪小蒔はじゅっと…待っれますからぁ…♥♥♥」
漫「(あー…あんなに嬉しそうにしちゃって…ぇ…♪♪)」

さっきまでの泣き顔は何処に言ったのかと言わんばかりの笑みで京太郎を求める小蒔。
その顔が再開されたピストンで快楽に歪むのを見ながら、漫はそう悔しそうに言葉を漏らす。
それは完全にスイッチが入ってしまった漫も京太郎の精液を求めているという事が無関係ではないのだろう。
子宮から全てを溶かすような熱くも粘ついたその液体は、小蒔だけではなく、漫もずっと待ち望んでいたものなのだから。

和「(あぁ…ぁ…♥あんなにジュポジュポされて…神代さん…とっても幸せそう…っ♥)」

そして、それは和も同じだ。
二人の痴態に完全にあてられてしまった和もまた発情しているのだから。
それを行動には移さないだけで、妬みと羨望混じりの視線はずっと小蒔へと向けられ続けている。
それは勿論、暴風のような快楽に晒されているのに幸せで蕩けてしまいそうになっている小蒔が魅力的というのもあるのだろう。
だが、和にとってそれ以上に重要だったのはそうやって乱れる小蒔の姿に容易く感情移入出来るという事だった。

小蒔「んひぃぃっ♪♪♪ジュポジュポいひぃぃっ♪♪♪射精しゅる為のぴしゅとんしゅごいですううぅぅっ♥♥♥」

京太郎のストロークは今やとても長いものになっていた。
小蒔の入り口近くから奥までをゴリゴリと行き来するそれは小蒔を感じさせる為のものではない。
自身が射精し、目の前のメスに種付けする事しか考えていないオスの抽送なのだ。
しかし、それが小蒔にとって気持ち良くないかという事は決してない。
寧ろ、そうやって必死で射精しようとする姿だけでもイッてしまいそうになるくらいに小蒔は昂っていた。


770 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:08:58.18YJUSyvGCo (18/195)


小蒔「(わらひ幸しぇ…ぇ…♥♥皆の前れ京太郎しゃまに種付けしゃれるの幸へで…蕩けりゅ…ぅんっ♪♪♪)」

ここまで来ると流石に小蒔も記憶の混濁から立ち直りつつあった。
勿論、この状況の全てを思い出した訳ではないにせよ、和と漫が周りにいる事を認識していたのである。
普段の彼女であれば、それは恥ずかしくて固まってしまうような状況だっただろう。
だが、能力の影響で尋常ならざる劣情を与えられた小蒔には二人がもう興奮剤にしか思えない。
対立する恋敵たちに見られながら愛しい婚約者に射精されると言う事に小蒔は堪らない興奮と多幸感を覚えていたのだ。

小蒔「愛してましゅぅっ♥♥京太郎しゃま愛してりゅぅっ♪♪♪しぇかいれ一番しゅきぃいっ♥♥らいしゅきぃぃ♥♥♥」

勿論、そうやって意識を覚醒へと近づければ近づけるほど小蒔の快楽は膨れ上がる。
一度、失神に追い込まれてしまったほどのそれが再び彼女へと近づいてきているのだ。
しかし、それ以上の感情で胸中を埋め尽くされた今の小蒔はそれに意識を失う事はなく、甘い告白を繰り返す。

京太郎「小蒔…っ!そろそろ…射精るぞ…!」

それに答えてやりたいという気持ちは京太郎の中にもあった。
しかし、それよりも遥かに射精への欲求の方が強かったのである。
今までの二人の痴態を見て興奮しているのは別に和だけではないのだ。
三人の中では最も膣肉の締め付けがきつい小蒔を犯しながらそれを見続けた彼はもう限界に達している。


771 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:09:28.16YJUSyvGCo (19/195)


小蒔「はいぃぃっ♪♪来てぇぇっ♥♥京太郎しゃまのお精子じゅっと待ってましゅからぁぁ♪♪♪何時でもどっぴゅんしへぇ…っ♥♥わらひに種付けしれくらしゃいぃいっ♥♥♥」

そして、それを厭う気持ちなど小蒔の中にはあろうはずもなかった。
元々、思い込みが激しい少女ではあった上に、小蒔は完全に能力の支配下にあるのだから。
何時いかなる時でも小蒔が京太郎の精液を拒むはずがなく、種付けされる喜びが身体に満ち溢れている。
あまりにも強いそれは再び彼女の目尻から涙となって溢れ、艶やかな黒髪へと落ちていく。
さっきの悲しみの涙とも快楽による涙とも違うそれに京太郎の目は惹きつけられてしまう。

京太郎「ぐ…ぅう」

瞬間、根本からビクンと肉棒を震わせた京太郎は自身の限界が近い事を悟った。
しかし、そのピストンはまだ半ばで小蒔の奥にはたどり着いてはいない。
それにぐっと歯を噛み締めた京太郎は歯茎をむき出しにしながらズルズルと腰を離す。
ケダモノ染みたその顔に小蒔が胸を疼かせた瞬間、跳ねるように帰ってきた腰がスパンと小蒔に打ち据えられた。
結果、硬く張った男根はボルチオを強く叩き、そしてその先端から射精を開始する。

小蒔「い゛ひゅぅぅぅううぅぅぅう゛うぅぅう゛ぅぅう♥♥♥」

後の事を考えず、メスの最奥をただ強く打ち据えるだけのピストン。
それだけでも意識がグラグラになってしまいそうになるのに、射精まで始めるのだ。
京太郎の中で熟成された燃えるように熱い精液が流し込まれる感覚。
それに小蒔の喉がブルブルと震え、ケダモノ染みた叫び声を放った。
だが、それはさっきまでのものに負けないくらい艷やかであり、彼女が今、射精され、そしてそれが堪らなく幸せなのだと恋敵たちに教える。


772 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:09:59.51YJUSyvGCo (20/195)


和「(あ…あんなに腰ビクビクって跳ねさせて…ぇ…♪)」

射精される小蒔の腰は今や痙攣していると言っても良いくらいにビクビクとしていた。
浮かせた背筋までブルブルと震えるそれは、気持ち良さに満たされているからだろう。
実際、小蒔の膣穴からぷしゃりと再び潮が吹き出し、テーブルの上をさらに穢しているのだから。
思わず潮吹きしてしまうくらい気持ち良い状態が和にも良く分かる。
彼女もまた京太郎に責められている時に潮を吹いてしまった経験がもう数え切れないくらいにあるのだ。

漫「(うわぁ…♪♪)」

それに対して漫が注目していたのは京太郎の腰の律動だった。
小蒔に密着した状態でブルブルと震えるそれは時折、ビクンと跳ねるのである。
恐らくその瞬間に精液を吐き出しているであろうその光景に漫の子宮がキュンと疼く。
こうして外側から見ているだけでも、それは逞しく、そして激しいものだった。
その射精をもうすぐ自分も受け止める事が出来ると思ったら、疼きが限度を突破していますぐ京太郎を押し倒したくなるくらいである。

小蒔「あちゅいぃぃっ♪♪おにゃか焼けるぅぅっ♥♥きょうたろうしゃまの精液で子宮燃える…ぅぅっ♥♥♥ドロドロになりゅぅぅぅ♪♪♪」

そんな二人の前で絶頂を続ける小蒔の口から甘い声が放たれる。
しかし、それは決して苦痛に満ちた感覚ではないのはその場に居る誰もが分かっていた。
京太郎の中で熟成されたその精液は能力の支配下にある三人にとっては麻薬も良いところなのだから。
身体の内側から甘さを広げ、脳を揺さぶる感覚を彼女たちが厭えるはずがない。
とっくの昔にその虜になっている三人にとって、それは最高に幸せな瞬間だと言っても差し付けないくらいだ。


773 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:10:28.39YJUSyvGCo (21/195)


小蒔「(れも…何時もよりこれしゅごいいぃぃっ♪♪♪いちゅもよりドロドロで…わらしの子宮ぅぅ…っ♥♥♥)」

しかし、それが小蒔にとっていつも通りのものかと言えば、決してそうではない。
調教によって敏感になった身体をさらに能力で補強された彼女にとって、それは普段以上に強く感じられるものだった。
奥で叩きつけられる勢いも、粘液に溢れた媚肉に絡みつく濃度も、触れた部分が爛れてしまいそうな熱さも、何もかもが何時もの二倍近くに感じられるのである。
その上、彼女を多幸感へと突き落とす独特の甘さまでも強まるのだから、我慢出来るはずがない。
小蒔の身体は何時しかふっと糸が切れたように脱力し、その感覚を味わうだけの受信機となっていた。

小蒔「あへ…ぇ…♥♥ふ…わ…あぁぁぁ…♪♪♪」

それが終わった頃には小蒔の口は半開きになったまま閉じる事はなかった。
その瞳にも理性の色は欠片もなく、陶酔と快楽で昏く濁っている。
時折、幸せそうな声を漏らす辺り、意識はまだあるのかもしれないが、当分、動けるような状態じゃない。
そう判断した京太郎はそっと小蒔の身体を抱きとめ、その頭をそっと撫でてやった。

京太郎「…良く頑張ったな」
小蒔「ひゃ…ぅ…ぅ…♥♥♥」

労うような京太郎の仕草を小蒔は意識の奥底で何とか感じる事が出来ていた。
しかし、それに対する感謝を示すような余裕は小蒔にはなかったのである。
完全に意識という糸が切れてしまった身体は動かず、ただ横たわるだけの肉の塊となっているのだから。
ましてや、今もそこから伝わってくる快楽は何もかもを押し流してしまいそうなくらいに激しく、堪えるだけで必死であったのだ。


774 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:10:54.50YJUSyvGCo (22/195)


小蒔「んああぁ…♪♪♪」

そんな小蒔を優しく抱きかかえながら、京太郎はそっと肉棒を引き抜いた。
瞬間、小蒔が不満そうな声をあげるが、それに構ってはやれない。
勿論、普段であればそんな小蒔に挿入れたままにするのは吝かじゃないが、今は周りに和と漫がいるのだ。
特に京太郎を見る漫の視線は熱に浮かされたようなドロドロとしたものに変わりつつある。
目の前で睦み合う二人を見てさらに強まった劣情を隠そうともしないそれは彼女がそろそろ限界である事を彼に知らせた。

京太郎「(でも…このままテーブルの上ってのはあまりにも可哀想だな…)」

勿論、京太郎とてそんな彼女に報いてやりたい気持ちはある。
少なくとも、こうして二人を追い詰めるのには漫の助けがかなりあったのだから。
その上、自身の能力で平静を失っているとなれば、本当は今すぐにでもその疼きを晴らしてやりたい。
しかし、痙攣するだけで意識があるのかさえも怪しい小蒔を見世物のようにしてテーブルの上に置いておくのはあまりにも偲びない。
そう思った京太郎はそっと小蒔の身体に手を伸ばし、お姫様抱っこのような形で抱き上げた。

京太郎「よいしょっと…」

そのまま京太郎が向かうのはリビングに置いてある大きめのソファーだ。
家族団らんに使われているそこに小蒔の身体をそっと横たえる。
それと同時に様々な体液でぐしょぐしょになった衣服を剥ぎ取れば、少しだけ小蒔の顔が安らいだような気がした。
それに小さな満足感を得た京太郎はそっとその顔を緩ませ… ――


775 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:11:33.75YJUSyvGCo (23/195)


漫「きょーぉくん…っ♥♥」
京太郎「うわっ!」

瞬間、後ろから襲いかかってきた衝撃に彼は驚きの声をあげる。
そのままぐっと足に力を入れて踏みとどまれば、胸の中に見慣れた漫の顔があった。
どうやら自分は我慢出来ずに漫に飛びかかられてしまったらしい。
そう判断しながら、京太郎はそっと彼女の背中に手を回し、その柔らかな肢体を抱きしめる。

漫「ふあ…あぁぁ…♥♥」

それだけで蕩けそうな声をあげてしまうくらいに、漫の身体は発情していた。
タガが外れた思考は能力の影響を本格的に受け始め、普段以上の敏感さで京太郎の事を感じている。
その素晴らしさについつい頬を緩ませてしまうものの、あまりそれに浸っていられないのは子宮が蠢いているからだ。
小蒔との激しくも甘いセックスを見て、嫉妬を覚えた漫の子宮はそれ以上の交わりを京太郎に対して求めているのである。

漫「ね…♪次は京君が横になって…♥♥うちが動いたげるから…♥♥」
京太郎「…良いのか?」

勿論、京太郎自身、騎乗位はかなり好きな方だ。
肉棒を銜え込みながらも嬉しそうに腰を振るう姿を見ると、それだけで支配欲が満たされるのだから。
しかし、それでもそう尋ねてしまうのは、それが決して長続きしないからだ。
能力と調教の影響もあって人並み以上に敏感になった彼女らはあっさりと腰砕けになり、それを持続させる事が出来ないのである。


776 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:12:08.19YJUSyvGCo (24/195)


漫「ダメやったら…京君がしたから突き上げて…うちの事壊して欲しいな…♪♪」
京太郎「ったく…この淫乱め」
漫「きゅぅん…♪♪」

とは言え、漫はそれもきちんと考えているらしい。
それを感じ取った京太郎は漫が言うままにそっと膝を折り曲げ、絨毯の上にそっと腰を下ろす。
そんな彼に抱かれながら同じように座る漫の口から甘い鳴き声が漏れだした。
何処か可愛らしいそれに京太郎がクスリと笑えば、漫は少しだけ頬を膨らませる。

漫「えへへ…♪これ…凄いドキドキするね…♥♥」
京太郎「今更、そんな殊勝な事言わなくても良いぞ」

しかし、それが長続きしないのは抱き合う身体が蕩けているからだ。
既に発情のスイッチが入っている彼女にとって、そうやって抱き合うのは物足りない。
とは言え、そこから感じる興奮やドキドキ感というものは決して和らいだりしないのだ。
結果、彼女は笑われた不機嫌ささえ維持する事が出来ず、そうやって嬉しそうな笑みを浮かべてしまうのだ。

漫「もう…っ♪うちがこういう純情な事言ったらあかんの…?」
京太郎「それ以上に発情してるのが目に見えてるし…な」
漫「ふぅ…うっ♪♪」

そんな漫をからかうように言いながら、京太郎の手はそっと彼女の臀部を撫でた。
むっちりとした安産型のそこは汗を浮かべ、微かに濡れている。
しかし、それだけではないのは、京太郎の指にニチャリとした感覚が絡みついてくるからだろう。
汗よりもずっと粘っこく、そしてドロドロのそれは間違いなく漫の愛液なのだ。


777 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:12:39.18YJUSyvGCo (25/195)


京太郎「ほら、漫が動いてくれるんだろ?」
漫「ん…ぅ…♪♪もう…本当に意地悪なんやから…ぁ♥♥」

それを既に全身を小蒔の体液で穢した京太郎が厭うはずがない。
寧ろ、指に絡むその感覚を楽しむようにして、谷間にぐっと指を突き入れる。
そのまま臀部を開いていくその指に、漫は拗ねるようにそう言った。
しかし、その身体は京太郎が言うように動き、彼の男根の根本をそっと摘む。

漫「ふふ…♪相変わらず大っきくて硬くて…そんで全然萎えへん子やね…♥♥」

それだけで抱き合った時以上に胸がドキドキしてしまうのは今までの漫が、その肉棒に責められ続けていたからだろう。
その逞しさから大きさまでを頭の中で思い描く事が出来る彼女にとって、それは興奮剤にも近いものだった。
触れただけで今までのセックスが脳裏に浮かび、今すぐ奥まで貫いて欲しいとばかりに粘膜がひくついてしまう。
そして理性などとうに投げ捨てた漫はそれに抗う気も起きない。
寧ろ、進んでその切っ先を補正した彼女は、穴の開いた下着に亀頭を通し、そして自分から美味しそうに飲み込んでいくのだ。

漫「んんっふぁああぁぁぁああぁっ♪♪♪」

ジュブリと言う独特の音と共に漫の中に入っていく肉棒。
その感覚は今まで彼女が知っていたものとは一線を画するものだった。
勿論、彼女自身、肉棒そのものが今までとはまったく変わっていない事は理解している。
その熱い滾りも、張り詰めた硬さも、そして容易く奥まで届きそうな大きさも、全て彼女が知る水準に収まっているのだ。


778 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:13:08.47YJUSyvGCo (26/195)


漫「(それなのに…これ…これ凄いぃぃぃぃっ♪♪♪)」

だが、それを受け止める彼女の身体は決していつも通りとは言えなかった。
普段よりも膣肉が敏感になっているだけではなく、その一つ一つまではっきりと意識出来るのだから。
膣肉に生える肉襞一つ一つがまるでクリトリスのように思えるその感覚は慣れていない者だと即失神してもおかしくはない。
能力によって人並み以上に快楽に耐性があるはずの漫でさえ、その背筋をそっと反らし、頭まで震えさせるのだから。

漫「(こんなん味わったら…そりゃ…おかしくなる…ぅぅ…♥♥」

まだ一突きも終わっていないのに脳天まで突き上げるような激しい絶頂。
それにもう息も絶え絶えになりながら、漫は胸中の中で小蒔に同情する。
こんなものを味わってしまったら、確かにあんな風に乱れてもおかしくはない。
気持ち良いのは確かではあるが、それ以上に正気を失いそうなくらいにその感覚は激しいのだから。

漫「(ダメ…これ…ちゃんと支えとかへんと本当におかしくなりそぉ…♪♪♪)」

勿論、それを望む気持ちは漫の中にもあった。
日常生活すら出来ないくらいのセックス狂いになって一生を彼と繋がりながら過ごすという退廃的な未来を内心、望んでいたのである。
しかし、漫はついさっき自分から動くと言って、京太郎の事を誘惑したのだ。
それなのにまだ挿入すら終わりきっていない状態でギブアップなどしたくはない。
流石にイかせるまでは無理でも、京太郎が次の射精の準備をし始めるまでは気持ち良くしてあげるべきだ。
意地混じりにそう思いながら漫はぐっと腰に力を入れて、少しずつ飲み込んでいく。


779 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:14:00.11YJUSyvGCo (27/195)


漫「くひゅぅぅっ♪♪♪」

だが、それだけそう思っても、漫の身体は快楽には抗えない。
まるでそんな意地など容易く打ち砕いてみせると言うように絶頂の奔流が漫の身体を駆け抜けるのだから。
今や膣肉全体ではなく、肉襞の一つ一つが独立した性感帯になった彼女にとって、それは決して抗えるものではない。
一つ一つだけでも決して小さい訳でもない絶頂がまるで怒涛のように押し寄せてくるのだから、身体を固めて耐えるのが精一杯なのだ。

漫「(足を立てて…しっかり踏ん張って…それで…それで…ぇぇ…♥♥)」

ともすれば、一種で脱力してしまいそうになる快楽の波。
しかし、騎乗位の形で挿入している今、それに押し流されてしまったら、完全に体重が腰へとかかってしまうのだ。
その瞬間、どうなってしまうのかなんて今の漫には想像も出来ない。
ただ、さっきの小蒔のように失神してもおかしくはないだろう。
そう思う彼女は必死に自分の足が崩れないように力を込めながら、少しずつ確かめるように挿入しようとし… ――

漫「ひぐぅう゛うぅぅううぅう゛ぅぅううう♥♥♥」

瞬間、まるで粘液でぐしょぐしょになったウレタンを思いっきり突き刺したような音が漫には聞こえたような気がした。
けれど、その感覚は一瞬で悦楽へと上書きされ、漫の口から悲鳴のような喘ぎ声が漏れだす。
全身を痙攣させながらのその声は京太郎の手が一気に漫の腰を引きずりおろしたからだ。
掴んだ場所こそ違えども、さっきの小蒔のように一気に奥まで貫くその感覚に漫の意識は一瞬で真っ白に染まる。


780 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:14:38.06YJUSyvGCo (28/195)


京太郎「あぁ、悪い悪い。あんまりのんびりしてるから手伝ってやろうと思ったんだけど手が滑った」

何が起こったのかさえ理解出来ず、ただ、全身を強張らせるしかない漫の耳にそんな白白しい声が届いた。
しかし、意識はそれを認識する事はなく、子宮口を叩かれた快楽を処理するので精一杯になっている。
その上、今も尚、痙攣を続ける肉襞が奥まで埋め尽くした男根と触れ合い、絶頂を続けるのだから堪らない。
正直、漫からすれば失神しなかったのが奇跡のように思えるくらいに、その身体は善がっていた。

漫「はひぃ…♪♪はふぅ…ぅぅ…♥♥」

そんな漫が意識の混濁から復帰したのは数分ほど経ってからの事だった。
とは言え、未だ絶頂を続けている身体は昂ぶり、気を抜けばまた意識が真っ白になってしまいそうになる。
それでも何とか彼女が踏み留まれたのは回復に専念する漫に京太郎が手を出さなかったからだろう。
彼が何か漫に対して悪戯をしていれば、彼女の快楽は意識の許容量を超え、挿入だけで失神に追い込まれていたはずだ。

漫「きひくぅ…♪♪あきゅまぁぁ…♥♥ど…どえしゅぅぅ…♪♪♪」
京太郎「そんな嬉しそうな顔で言っても説得力なんかないって」

敏感になっているのが分かっているのにいきなり奥まで突っ込んだ京太郎。
そんな彼を罵るように言いながらも漫の顔はドロドロに蕩けていた。
目元からは涙を零し、半開きになった口から唾液を漏らすその顔の表情筋はまったく機能していない。
だらりとだらしなく垂れ下がり、紅潮した頬は先ほどの小蒔に負けず劣らず淫らで、そして京太郎にとって魅力的なものだった。


781 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:15:07.05YJUSyvGCo (29/195)


京太郎「それよりほら…このままじゃ射精なんか出来ないぞ」
漫「このままじゅっとうちの中で閉じ込めりゅって手も…ぉぉ…♪♪」

拗ねるように言う漫の心にあったのはほんのちょっとの復讐心だった。
あまりにも酷すぎるさっきの仕打ちに復讐したいという感情は少なからず漫の中にもあったのである。
しかし、それ以上に大きいのはそうやって自分の事を嗜虐的に責める恋人への愛しさだ。
他人と共有する事を認めながらも内心、独占したいと思い続けている彼を自分の中に閉じ込めたくもあったのである。

京太郎「魅力的ではあるけれど、んな事されたら流石に我慢出来ないからな」
漫「ひゃぅぅ…♪♪♪」

そんな漫の感情を勿論、京太郎も知っている。
しかし、それを受け入れてやる訳にはいかないのは既に小蒔や和を巻き込んでしまったからである。
彼女たちに自身の我儘を押し付けてしまった以上、もう後戻りする事は出来ない。
その代わり出来るだけ気持ち良くしてやろうと思った彼の手はゆっくりと漫の臀部を撫で、ジリジリとした快感を彼女に注ぎ込む。

漫「らったら…退治しゅる…ぅ♪♪うちのオマンコで…意地悪チンポお仕置き…しゅるの…っ♥♥」

そう言いながら漫の腰はゆっくりと動き出す。
瞬間、ニチャアと糸を引く音がするのは密着した二人の腰に愛液が溜まっていたからだろう。
突然の挿入で失神する事はなかったものの、感じすぎた漫の身体は壊れたように愛液を漏らしていたのだ。
限界一杯まで広げられる膣穴に収まりきらなかったそれは肉棒を伝って外へと漏れだし、二人の間に小さな池を作っていたのである。


782 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:15:39.28YJUSyvGCo (30/195)


漫「ふぅ…ぅぅぅんっ♥♥」

その音をBGMに動き出す漫の腰は決して早いものではなかった。
たった一突きでボロボロになってしまったそこは中々、意識の声に従ってくれない場所だったのである。
そのもどかしさに声をあげながらも漫はその動きを止める事はない。
勿論、それが京太郎にとって物足りないものだと理解していても、自分からギブアップなんてしたくなかったのだ。

漫「(あぁぁ…っ♪♪でも…すぐに腰が砕けそぉぉ…♥♥)」

その弱音は何とか口に出さずに済んだものの、決して軽視出来るものじゃなかった。
何せ、彼女の身体は一突きでどうにかなってしまいそうなくらいに昂っているのだから。
騎乗位という事もあって、ある程度、自分で快楽をコントロール出来るものの、そんなアドバンテージ程度ではどうにもならない。
こうして動いている間にも幾度となくイき続け、子宮が燃え上がっていくのだから。

漫「(こんな状態で突かれたら…うちもう一突きで負ける…ぅ♥♥意地悪チンポにアヘらされちゃう…ぅ♪♪♪)」

そんな彼女にとって、それは京太郎に対するお仕置きというよりも苦行であった。
被虐的な彼女の本性は京太郎に敗北する事を望み、今もこうして胸中に嬉しそうな言葉を浮かべるのだから。
魅力的なその未来をまだ漫は拒む余裕こそあったものの、それだって何時まで続くか分かったものではない。
実際、一往復毎にその動きは鈍くなっていき、少しずつ腰も引けたものになっていったのだから。


783 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:16:10.89YJUSyvGCo (31/195)


漫「(こんなんじゃうち…京君の事全然、気持ち良く出来てへん…っ♪♪♪)」

勿論、漫とて一生懸命に動いている。
快楽を堪えるようにぎゅっと歯を食いしばって腰を動かしているのだ。
しかし、それではどうにもならないくらいに京太郎の肉棒というのは気持ち良いのである。
普段の数倍近いその快楽にどうしても身体は負けていってしまう。
お陰で京太郎をろくに感じさせる事が出来ないそのもどかしさに漫の心はゆっくりと被虐的な未来に傾き始めていた。

京太郎「(さて…どうしたものかな…)」

そんな漫を見ながら、京太郎は胸中で独りごちる。
早くも袋小路に追い詰められつつある漫とは違い、京太郎はさっきイッたばかりなのだから、まだまだ精神的には余裕があった。
今すぐイキたいという訳でもなく、また例えそうだとしても今の漫の腰使いでは当分、イく事が出来ない。
そんな彼にとって今は漫に仕返しをする絶好の機会であるのは確かなのだ。

京太郎「(でも…なぁ…)」

ここで嗜虐的に責めれば漫はすぐさま屈服する。
それくらいの事は彼女と何度も肌を重ねた京太郎には分かりきっている事だった。
しかし、それをすぐさま選ぶ事が出来ないのは、イき続けながらも何とか動こうとする漫の姿があまりにも健気だからである。
彼女の努力を摘み取るのは容易いが、それを躊躇いなしに選べないほど、彼女は健気にこの瞬間を待ち続け、そして京太郎は焦らし続けていたのだ。


784 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:16:50.23YJUSyvGCo (32/195)


和「(上重さんも…あんなに気持良さそうにして…っ♥)」

その感情が雁字搦めとなって京太郎は絨毯の上へと縛り付けられる。
そんな彼の上で腰を振るう漫の表情はテーブルに座ったままの和からは見えにくい。
妙な角度がついている上に、漫の髪は汗で横顔に張り付いてしまっているのだから。
しかし、それでもはっきりと分かるくらいに漫の表情は気持ち良さそうなものだった。
欲求不満が一気に充足へと変わっていくのがありありと分かるその表情に和はもう我慢出来なくなってしまう。

和「(逃げなきゃ…私…こんなところにいちゃ…おかしくなっちゃいます…♪)」

この場に留まっていたら、自分の欲求に負けてしまう。
勿論、そうなった和に待っているのは堪らない快楽であると彼女自身にも分かっていた。
だが、この期に及んでもまだ理性を残す彼女は、なし崩し的に淫蕩へと加わる事を善しとはしなかったのである。
結果、限界に達した身体を冷やす為についに和の足が椅子から離れ、ふらふらと歩き出す。
その歩みは決してしっかりとしたものではなかったものの、彼女の足は確かにリビングの入口へと向かっていった。
しかし、絡み合う二人の脇を通り過ぎる瞬間、その足はピタリと止まり、視線が二人へと引き寄せられていくのである。

和「(あ…あんなに美味しそうに…ご主人様のオチンポを銜えこんで…っ♪♪)」

彼女が最初、目を惹かれたのは結合する二人の陰部だった。
愛液でドロドロになり、テラテラとした妖しい光を放つそこは時折、ビクビクと震えているのである。
けれど、その2つが見せる震えが決して同じではない事が和にはすぐさま分かった。
口いっぱいになるまで広がった女陰は満足感と快楽に、そしてそこに押し込んだ肉棒は湧き上がった欲求不満に震えていたのである。


785 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:17:18.14YJUSyvGCo (33/195)


和「(あぁ…♥ご主人様…とても…我慢して…♪♪)」

それは二人の表情を見ればより顕著に分かる。
まるでここが天国だと言わんばかりに甘く蕩けた漫とは違い、京太郎のそれは逡巡するようなものを強く見せているのだから。
時折、ぐっと歯を噛みしめるのは、漫の肉穴を犯したいという自分の欲求をかみ殺しているからだろう。
そう思った瞬間、和の胸はトクンと高鳴り、心の中がざわめくのを感じた。

和「(和は…和…は…ぁ…♥♥)」

日頃は決して浮かべない子ども染みた一人称。
それを自覚しながらも正す事が出来ないのは彼女の心がもう完全に屈してしまったからだ。
愛しい人が歯を食いしばるほど欲情を我慢するのを見て、自分を律し続けられるほど和はもう冷静にはなれない。
微かに残った理性をその表情で消し飛ばされてしまった彼女はふらふらと京太郎へと近づき、彼の頭の近くでそっと膝を折った。

京太郎「ん…和?」

そんな彼女の姿を見て取った京太郎から疑問の声が漏れる。
勿論、彼とて何時かは和が我慢出来なくなって参戦すると分かっていた。
普段の知的な姿からは考えられないくらいに彼女は負けず嫌いで、そして嫉妬深いのだから。
そんな彼女の前で他の二人と絡み合っていれば、何時かは我慢出来なくなると思っていたものの、まさかこんなに早いとは思っていなかったのである。


786 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:17:44.87YJUSyvGCo (34/195)


和「は…あぁぁ…♪♪」

京太郎にとって一番の誤算は、彼が自覚している以上に和が彼の事を愛している事だろう。
京太郎の選択に一番の拒否反応を示したのも、和がそれだけ彼の事を愛しているが故のものだったのだ。
そんな彼女にとって、そうやって愛しい人から語りかけられる感覚というのは何時だって素晴らしいものである。
特にセックスの最中は自分を無視するように和以外の女性とみ合っていたのだから尚更だ。

和「ご主人…様…ぁ…♥♥」

思わずその口から吐息を漏らし、最後に残った心のタガを外してしまうくらいの喜悦。
それをもたらしてくれた愛しい人の名前を和は甘えるように呼んだ。
普段の彼女からは想像も出来ないくらい甘い声に京太郎の顔はついつい緩みそうになる。
それは自分の望む関係になるのに一番の強敵だと思っていた和が陥落した証なのだから、それも仕方のない事だろう。

和「和も…和も混ぜて下さい…♪♪一人ぼっちは…仲間外れは寂しいです…ぅ♪♪」

そう言う彼女の胸に浮かぶのは少なからずあった転校の記憶だった。
まったく新しい環境からのスタートを余儀なくされるそれは彼女に強い寂しさを覚えさせるものだったのである。
その上、両親は忙しく、一人で家にいる事も珍しくなかったのだから、まだ幼い彼女がそれをトラウマにするのも無理はない。
そんな彼女にとって愛しい京太郎が自分を放っておいて他の二人とだけ睦み合っているその光景は、彼女の暗い記憶を呼び覚ますには十分過ぎるものだった。


787 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:18:17.81YJUSyvGCo (35/195)


京太郎「当たり前だろ…ほら、こっち来いよ」

そんな彼女が一体、何を思い浮かべているのかは京太郎は知らない。
彼はずっと長野に住んでいた身であり、転校など経験した事はないのだから。
しかし、それでも今の和は心から寂しがり、そして傷ついている事が伝わってくる。
だからこそ、京太郎は半ば強引にその手を取り、自分の寝そべった自分の方へとぐっと引き寄せるのだ。

和「はふ…ぅぅ…♪♪」

それは決して優しいものではなく、寧ろ、強引と言えるようなものだった。
彼女の身体が自分へと倒れこむのも厭わないくらいに強いものだったのだから。
けれど、それに和が愛されている実感を覚えるのは、それが内心、求めていたものだったからだろう。
彼女の心を推し量り、望んだ反応を返してくれる愛しい主に、彼女の心は慰撫され、甘い吐息を漏らしてしまうのだ。

漫「(あぁ…っ♪♪ずる…いぃ…♥♥ずるい…よぉぉ…♥♥)」

そんな二人を見ながら、漫は強い嫉妬を覚えた。
勿論、京太郎にとって原村和という少女が飛び抜けて特別なのは彼女にも分かっている。
総合で見た時に三人に優越はないにせよ、彼が一番、愛しているのは間違いなく和なのだから。
だからこそ、そんな彼女が陥落したら、自分が脇に追いやられてしまうのを恐れながらも理解していたのである。


788 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:18:50.53YJUSyvGCo (36/195)


漫「(だけど…やっぱり嫌やぁぁ…♥♥そんなん…嫌…あぁぁっ♪♪)」

しかし、そう理解しても収まりがつかないのが女心というものだ。
特に、今の二人はまるで世界が自分たちだけになってしまったように見つめ合っているのだから。
自分を放っておいて幸せそうな二人の姿に漫の心はどうしてもざわつき、強い嫉妬を覚えてしまう。
小蒔の時よりも数段、強いそれは彼女の腰を動かす原動力となり、その動きを激しいものにしていった。

漫「(ど…ぉ…♪♪うち…頑張っとるよ…♥♥京君の為に…すっごい頑張ってるぅぅ…♥♥♥)」

カクカクと揺れる彼女の腰の動きは決してスムーズなものではない。
しかし、数センチ動くだけでも数秒掛けていた頃からは比べものにならないくらいに彼女は激しく腰を揺すっていた。
クチュクチュと絡んだ水音が休みなく鳴り響くその動きは本格的に京太郎へと快楽を与え始める。
その顔に浮かぶ興奮は一気に強まり、口から漏れる吐息はその熱っぽさを増した。
だが、そんな京太郎以上に漫の中の快楽はぐっとその勢いを強めたのである。

漫「(あかん…っ♪♪これ頭の中、真っ白になるぅ…ぅ♥♥オチンポの事しか分からへん…メスになるよぉぉ…♥♥♥)」

既に漫の身体はさっきの小蒔に負けないほどに敏感になっている
そんな中で愛しい夫の肉棒がゴリゴリと動けば、頭の中が一気に白く染まり、思考が振り落とされていくのも当然だ。
まるで無駄なものをそぎ落とすような激しい快楽の中で彼女に残るのは愛しさと肉棒の感覚だけ。
しかし、それでも嫉妬に突き動かされた漫は腰を止める訳にはいかず、ギリギリのところで踏みとどまりながら円を描くようにその腰を動かす。


789 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:19:28.26YJUSyvGCo (37/195)


漫「(いひゅぅぅ…っ♪♪♪これいひゅよぉぉ…っ♥♥オマンコのヒダヒダ全部ゴリゴリ来て…イくぅぅ…っ♥♥♥)」

まるで鉄の棒にも思えるような逞しい肉棒を周囲の肉襞へと押し付けるような抽送。
それに漫は思わずその顎をくっと上げ、絶頂に悶えそうになる。
今や肉襞一つ一つでイッてしまえるまでに昂った彼女の身体にとって、それはあまりにも気持ち良すぎるものだった。
ブツリと言う音と共に力が抜けた身体が、京太郎へと倒れこみそうになるくらいに。

漫「はう…ぅぅ…♪♪ひあ…ぅぅ…ぅぅ♪♪♪」

それを何とか堪える事が出来たのは反射的に両腕が京太郎の腹筋へと伸びたからだ。
微かに割れたその硬い部分でバランスを取らなければ、漫は京太郎へと寄りかかる和の背中に飛び込んでいただろう。
勿論、そうやって二人の邪魔をする事に心惹かれないかと言えば嘘になるが、それで勝ち誇るのはあまりにも情けない。
それよりも自分が京太郎とセックスをしているというアドバンテージを活かすべきだと漫はぐっと腰に力を込め、その激しさを増していく。

和「(上重さん…凄い…です…っ♪♪)」

そんな漫の様子を京太郎に横から覆いかぶさるようになった和からは見えない。
しかし、聞こえてくる水音の激しさや京太郎の身体の揺れから十分、その激しさが伝わってくるのだ。
そして、それが自身に対する嫉妬から繰り出されるものなのだと言う事もまた和には伝わってきている。


790 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:19:55.05YJUSyvGCo (38/195)


和「(でも…それは和も同じ…なんですよ…っ♥♥)」

彼女にとって愛しい主人は世界の全てだ。
彼の為であれば死んでも良いと半ば本気で思っている。
けれど、漫と同じ事が自分にも出来るかと言えば、彼女はすぐさま肯定する事が出来ない。
能力を受けて普段以上に敏感になった身体で騎乗位を続けられる自信が和にはどうしてもなかったのだ。

和「(それに…和にはきっと…あんな風に…ご主人様の背中を押す事なんて出来ません…)」

そう感情を濁らせるのは、彼の選択を全肯定した漫の姿が脳裏に浮かんできたからだ。
彼の全てを受け入れ、そしてその背中を押す彼女の強さは和には決してない。
少なくとも、逆の立場であった時、同じような選択が出来るとはどうしても思えなかったのだ。
勿論、漫がそこに至るまでに並々ならぬ苦しみや妥協があった事くらい和にも分かる。
だが、それでも尚、それを選べないであろう彼女にとって、それは羨ましく映るものだったのだ。

和「(だから…和は…容赦なんてしませんから…っ♪♪)」

勿論、不利なのは自分の方だ。
京太郎の身体で最も敏感な箇所は既に漫に握られているのだから。
彼女が京太郎のオカルトを受けて、本調子ではない事を差し引いても、勝ち目なんて殆どない。
ましてや、和自身、こうして三人で交わる事に対する抵抗感を捨てられなかった。
しかし、だからと言って尻込みしていたら、何もかもを漫に奪われてしまうかもしれない。
そう思った彼女はそっと自分のシャツに手をかけ、胸元のボタンを器用に外していくのだ。


791 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:20:30.19YJUSyvGCo (39/195)


和「ほら…ご主人様…ぁ♥♥和のおっぱいですよぉ…♥♥」

瞬間、和の胸からこぼれ落ちるのは大きな膨らみだった。
上品な象牙色のブラに包まれたそれはふるふると揺れて、その柔らかさを訴えている。
人並み以上にバストが大きい三人の中でも頭一つ抜けているそのサイズに京太郎は思わず生唾を飲み込んでしまった。
彼が一番、性的興奮を覚える部位がブラ越しとは言え、胸板に押し当てられているのだからそれも仕方のない事だろう。

和「脱がせて…下さいますか…?」

そう甘く囁く和に京太郎は反射的に頷いた。
そのまま和の胸元へと伸びるその手には一切の遠慮がない。
自身の愛玩奴隷がそれを望んでいるという事に疑いのないそれは器用に彼女のブラを外した。
瞬間、重力に惹かれるブラから離れるように和は少しだけその背筋を反らせる。
自然、彼女の上向きになった乳首や乳輪がブラから溢れだし、彼の視界に晒された。

和「ひゃぅん…っ♪♪」

彼が何か考えるよりも先にその手は和のバストをぐっと掴んでいた。
本能的と言っても良いそれは強い力で彼女の柔肉を歪める。
絞ると言っても良いほど激しいそれに和は真っ赤な唇から声を漏らした。
陶酔混じりの甘い声は彼女がそれを嫌がっていないという何よりの証である。
日頃から彼に強引な愛撫をされている彼女にとって、それは強い快楽として受け止められるものだった。


792 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:20:56.98YJUSyvGCo (40/195)


和「もう…♥♥ご主人様ったら…そんなに和のおっぱいが大好きなんですね…♥♥♥」

そんな彼に嬉しそうに言いながら、和はその頬を緩ませた。
愛しい人が激しく動き出す漫ではなく自分のバストに対して夢中になっているのだからそれも当然だろう。
その程度で勝っただなどと思いはしないが、優越感めいたものを感じるのは否定出来ない。
それに突き動かされるようにして和の手はそっと京太郎の首筋へと伸び、そのまま優しく抱き上げた。

和「もっと一杯…ご主人様の思うがままに…和の事を愛して下さい…♥♥」

そう言いながら和は再び京太郎へと身を寄せる。
そして、そのまま自身の柔らかさを教えるように胸板に身体を押し付けた。
まるで密着するようなそれに京太郎の手が動きづらくなったのは事実ではある。
だが、グニグニと柔肉を弄ぶ彼の動きは止まる事はない。
寧ろ、その窮屈さの中で和の肢体を出来る限り、味わおうとするようにその指先は激しく、そしてバラバラに動く。

漫「く…ぅぅ…♪♪京君…っ♥♥v京君…ぅぅっ♥♥♥」

二人が一体、どんな風に絡んでいるのかは漫には見えない。
しかし、京太郎の意識が和に向けられている事は悲しいくらいに分かってしまうのだ。
漫の膣肉で微かに震えるその反応もまた和の身体で興奮しているからだろう。
そう思った瞬間、湧き上がるもどかしさに漫は京太郎の名前を呼んでしまった。


793 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:21:32.10YJUSyvGCo (41/195)


京太郎「漫…」

その声に意識を漫へと戻しながらも、京太郎は彼女に何を言えば良いのか分からなかった。
彼女が嫉妬しているのも分かるし、自分の事を見て欲しがっているのも伝わってくる。
しかし、それは和の方もまた同じなのだ。
これまでずっと自分を律し続けていた和もまた漫に負けないくらいに京太郎にアピールしている。
そうやって見目麗しい美少女二人から求められる気分は決して悪いものじゃない。
けれど、公平性の為にそのどちらにも応えすぎる訳にはいかない彼にとって、彼女への返事はとても悩ましいものだった。

漫「好き…ぃ♥♥らいしゅきぃ…♥♥らから…もっと…もっとうちの事…感じへぇ…♪♪♪」
和「和もご主人様の事…愛していますよ…♥♥だから…ほら…もっと和のおっぱいに…溺れて下さい…♪♪」

そうやって悩んでいる間に二人の少女は京太郎への愛を囁く。
それぞれ別の場所から京太郎の意識だけでも独り占めしようとするそれに彼の気持ちがクラクラと揺れた。
間違いなく美少女と言っても良い二人が自分の事を取り合っているのだから、それも仕方のない事だろう。
しかし、だからと言って、その興奮に溺れて、何もしない訳にはいかない。
そう思った京太郎の左手がそっと和の胸から離れ、前屈気味になった漫のバストへと向けられた。

漫「きゅぅぅ…っ♪♪♪」
和「んあぁぁ…っあぁっ♪♪」

それに嬉しそうな声をあげる漫と、不満そうな甘い声を漏らす和。
それぞれの反応を見ながらも、京太郎にはこれ以上の答えを見つける事が出来なかった。
向ける感情こそ違えども京太郎は三人の事を平等に、そして大事に想っているのだから。
その扱いに出来るだけ二人が不平等感を覚えないようにする為には、自分から二人を求める事しか思いつかなかったのだ


794 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:22:00.07YJUSyvGCo (42/195)


和「ずるいです…っ♪上重さんはご主人様のオチンポ貰っているのに…ぃ…♥♥」

とは言え、そんな京太郎の選択に和が不満を覚えない訳ではない。
何せ、漫は既に京太郎から一本しかない肉棒を与えられているのだから。
欲情に屈し、京太郎を求め始めた和にとって、それは決して軽視出来るものではない。
その上で平等に扱われる事に思わず不満を口にしてしまうくらいに、彼の肉棒は和にとって大きなものだった。

京太郎「じゃあ、俺が早くイけるように和が手伝ってくれよ」
和「ぅ…ぅぅ…っ♪♪」

京太郎の言葉に和は子ども染みた声を漏らしながら、ぎゅっとその手を握りしめた。
正直な事を言えば、和は京太郎に射精して欲しくはない。
漫に射精するくらいならば、より多く自分の中で精液を放って欲しいと思っているのだ。
そんな彼女にとって京太郎がイケるように手伝う言うのは利敵行為にも等しい。
後々、自分を愛してもらえると分かっていても、どうしても逡巡を浮かべてしまうくらいに。

和「今回だけですからね…♥♥」

独占欲と欲情。
その2つがせめぎ合う和の中で、結局、後者が軍配を上げた。
何だかんだ言いながらも和はこうして3Pに混じるくらいに欲情しているのである。
タイトスカートを身につけた太ももはもうグショグショでその奥はひくつきながら強い疼きを訴えていた。
そんな彼女が愛する主人からの命令に逆らえるはずがなく、渋々と首肯を見せる。


795 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:22:31.64YJUSyvGCo (43/195)


和「(でも…どうすれば良いんでしょう…?)」

和は基本的に受け身なタイプだ。
勿論、フェラなどは進んでするものの、それ以外のやり方など知らない。
愛玩奴隷として育てられた和は肉棒以外で主人を気持ち良くするところなんて想像もしなかったのである。
結果、彼女が悩みながら選んだのは、さっき漫がやっていた事を模倣する事だった。

和「(こう…でしょうか…?)」
京太郎「ぅ…」

そう思いながら和の手は優しく京太郎の胸板を撫でる。
擽るような絶妙な距離でスルスルと撫でられるそれは彼にとって間違いなく快感であった。
興奮していない時であればただ擽ったいだけであろうが、今の京太郎は二人から求められるという状況にかなりの興奮を覚えているのだから。
例え、それが不慣れな和の手であっても思わず声を漏らしてしまうくらいに京太郎は昂っていた。

和「(あぁ…♪♪やっぱりここ…気持ち良いんですね…♥♥)」

それに和が一つ笑みを漏らすのは、愛しい主人を感じさせられた実感が湧き上がって来るからだ。
まだ不慣れな自分の手で愛しい人を感じさせられるその喜悦は決して薄いものではない。
自分は今、大好きな人に求められている事を返す事が出来ている、と思うだけで胸がドキドキしてしまう。


796 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:23:07.57YJUSyvGCo (44/195)


和「(なるほど…♪確かにこれは…可愛いです…♥♥)」

その興奮のままに和が見つめるのは快楽で歪んだ京太郎の顔だった。
微かに夢見心地になっているような気配を見せるその顔は和の胸をときめかせる。
そこにいるのは何時も自分を責めている時の格好良い『ご主人様』ではなく、可愛らしい『京太郎』なのだから。
そのどちらにも恋焦がれる和にとって、それを引き出したのが自分だと思うだけで胸の中が誇らしさで一杯になる。

和「ちゅ…れろぉ…っ♪」

その感情に背を押されるようにして和が選んだのは京太郎の首筋を舐める事だった。
まるで子犬が親愛の情を示すようにペロペロと舐めるそれは信じられないほど熱く、そして粘っこい。
一つ往復するだけで数秒ほどの時間をかけるそれは、京太郎に『味わわれている』と思わせるくらいだ。
しかし、それが決して不快ではないのは、和の仕草に収まりきらないほどの愛情が見えているからだろう。

京太郎「のど…か」

どんな形ではあれど必死になって自分に奉仕してくれている愛しい奴隷。
その名前を呼ぶ京太郎の声はさっきより大分、熱っぽいものになっていた。
自身の興奮を欠片も隠そうとしていないその声に和の胸はトクンと甘い鼓動を覚える。
ときめきほど激しくはないが、それとは比べ物にならないほど甘いそれに彼女はその笑みを強めた。
そのまま再び首筋にキスを落とし舐め始めるその顔は自信と愛しさに蕩け、幸せそうにも映りかねないものである


797 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:23:45.03YJUSyvGCo (45/195)


漫「んあぁ…ぁ♪♪ずる…ぃ…♥♥じゅるいぃぃ…っ♥♥」

勿論、そんな二人を見て、漫が我慢出来るはずがない。
その口からずるいと言葉を漏らしながら、彼女は必死に自分の腰を動かした。
一回毎にニチャニチャと鳴るその動きは普段、漫が受けている京太郎の抽送と比べても大差ないものになっている。
そうやって彼に与えられる快楽は決して小さいものではなかったが、京太郎の意識は漫へと独占される事はなかった。

漫「(うちがセックスしとるのにぃ…っ♪♪うちが京君とラブラブセックスするはずやったのにぃぃ…♥♥)」

それなのに、彼の意識の半分は原村和に向けられている。
いや、下手をしたら半分どころではないかもしれない。
そのもどかしさに彼女が腰を強めようとするが、それ以上、ギアは上がらなかった。
元々、今の速度でさえ、漫の身体は快楽の悲鳴をあげて、今にも崩れ落ちてしまいそうなのである。
そんな状態でさらに腰の動きを早めるなんて出来るはずがない。
そうと分かっていても、理性を飛ばした彼女の意識は納得などするはずがなく、もどかしさだけが募っていく。

漫「きゃんんんっ♪♪♪」

そんな彼女に応えたのはバストを掴んだ京太郎の手であった。
ぐっとそこを鷲掴みにした彼の指がブラの隙間からそっと中へと入り込んできたのである。
そのままクリクリと乳輪と引っ掻くその動きは普段であれば擽ったさが強いものだっただろう。
しかし、京太郎以上に発情した漫にはそれはビリリと乳腺に流れこむ甘い快楽でしかなかったのだ。


798 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:24:11.28YJUSyvGCo (46/195)


漫「あぁ…♪♪もっろぉぉ…♥♥もっとおっぱい虐めて…ぇ♥♥うちのエロちきゅび…ぃ♪♪ビクビクしゅるまで虐めてぇぇ…っ♪♪♪」

とは言え、それで満足出来るほど漫の身体は初心ではない。
既にそのような領域なんて一足飛びで飛び越えた彼女はさらなる快楽を求めて口を開く。
勿論、その身体は今もイき続けているものの、それは彼に愛されるものとはやっぱり別なのだ。
自分だけが腰を振るって奉仕する感覚は楽しいものの、和という乱入者のお陰でそれに浸る事が出来ない。
そんなもどかしさを解消する事が出来るのは京太郎から与えられる快楽だけだったのだ。

京太郎「仕方ないな…」
漫「ひぃぃぃんっっ♪♪♪」

そう言いながら、京太郎の指はぎゅっと漫の乳首を摘んだ。
親指と人差指が密着してしまいそうなそこには最初から遠慮などない。
漫が望んだ通り、乳首を虐めようとするような嗜虐的な愛撫に彼女の口から嬌声が吐き出される。
自身が京太郎の愛撫で被虐的な快感を得ている事を隠そうともしないそれと共に漫の意識がブツリと何かが途切れる音を感じた。

漫「ふあ…あぁぁ…あぁ…♪♪♪」

今まで張っていた糸が切れたようにその身体から力が抜ける。
激しく動き回っていたその腰はクタリと崩れ、一向に動く気配を見せない。
代わりにピクピクと痙攣を見せるものの、それは動き出す予兆ではなく、快楽の反応でしかなかった。
漫の身体はもう完全に意識から切り離され、彼女へと快楽の受信する肉の檻に成り下がってしまったのだ。


799 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:24:42.21YJUSyvGCo (47/195)


漫「んやぁ…♥♥動かにゃあかんのにぃ…♪♪動かにゃ…負けひゃうのにぃ…ぃぃ♥♥」

そうやって腰砕けになった漫の身体はある種の限界を突破し、今も昂ぶり続けている。
抽送していない今でさえ微かな身動ぎだけで肉襞がイッてしまうのだから。
最早、失神するまで降りる事は出来ない快楽の高みが嫌だと言えば、嘘になるだろう。
しかし、それでも彼女がそれを拒絶しようとするのは、その間に和にイニシアチブを取られかねないからだ。
セックスしているというアドバンテージくらい簡単にひっくり返すであろう強敵の前に休んでいる暇などはない。
一気呵成に責め続けなければ、自分の存在が京太郎から消えていってしまうのは目に見えていたのだ。

漫「(にゃのに…どうしてぇ…ぇ♪♪どうして動けへんのぉぉ…ぉ♥♥)」

しかし、そう思いながらも漫の身体は意識の声に従わない。
元々、三桁を超える数を絶頂した彼女の身体は既に限界だったのだ。
その腰を動かしていたのも意地と言うよりは貪欲な本能が顕れたと言った方が正しい。
そんな彼女の腰がここまで持った事の方が奇跡と言っても良いくらいだったのである。

小蒔「ふふ…♪じゃあ…もっと負けちゃいましょう…ね♥」
漫「ふぇ…ぇ♪♪♪」

瞬間、背後から聞こえてきた声に漫はマヌケな声を返した。
それはその声の主が、彼女の意識にまったくなかった相手だからである。
しかし、それを確かめようにも漫の身体は動けない。
ただの快楽の受信機となった彼女の身体は後ろへと向ける事さえも出来なかったのだ。


800 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:25:11.75YJUSyvGCo (48/195)


小蒔「えい…っ♪♪」
漫「ひあ゛ああぁっぁああぁぁっっ♥♥♥」

そんな彼女にとって後ろから近づけられた黒塗りのアナルプラグが見えなかったのか幸運だったのか不運だったのか。
ただ、漫にとって確かだったのは、それがまったく遠慮のないものだったという事だ。
ぐっしょりとローションで濡れていたとは言え、警告もなしに菊門へと差し込まれたそれに漫は悲鳴めいた嬌声をあげる。
しかし、脱力しきった身体はその悲鳴の源であるアナルプラグを抜く事が出来ず、その全身をピクピクと痙攣させた。

小蒔「気分はどうですか…?」
漫「じ、じんらい…しゃん…ぅぅ…♪♪」

顎を上げるようにして快楽に身悶えする漫の耳元で小蒔がそっと囁く。
それに答える漫の声はまさに息も絶え絶えと言ったものであった。
ただでさえ限界だった身体に新しくアナルプラグが埋め込まれたのだからそれも当然だろう。

小蒔「私のお気に入りのプラグなんです…♥♥とっても気持ち良いでしょう…?」

クスリと笑う小蒔の声は誇らしそうなものだった。
それは彼女が埋め込んだそのアナルプラグが京太郎にプレゼントして貰った愛用の一品だからだろう。
肛虐にハマった彼女の為に京太郎が選んだ黒塗りのそれは慣れた小蒔でも圧迫感を感じるほど太く、大きい。
その上、表面に細かい粒が浮かんでおり、決して抜けないようにくびれがいくつも出来ているのだ。
強く差し込まれただけでアナルでイッてしまうほどの小蒔はそれを気に入っている。


801 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:25:40.41YJUSyvGCo (49/195)


漫「も…もしかして…怒っへりゅ…ぅ…♪♪」
小蒔「怒ってなんていませんよ…♥♥えぇ…怒ってなんていないです…♪♪」

とは言え、それが漫相手にも同じ効果を発揮するだなんて小蒔は思っていない。
そもそも小蒔が最初、京太郎から与えられたのはもっと小ぶりで表面に何も浮かんでいないものだったのだから。
幾つものセックスを経てようやく受け入れられるようになったそれが漫にとっては大きすぎるくらい小蒔にも分かっていた。
しかし、それでもそれを漫のアナルへと遠慮無く押し込んだのは、京太郎が射精するまでにされた事を小蒔が覚えているからである。

小蒔「でも…私の時には上重さんが一杯、お節介してくれたみたいなので…その分はお返ししないといけませんよね♪♪」

ニコリという音が聞こえてきそうなくらい明るい声。
しかし、漫はその声に背筋を冷たくさせ、怖気を胸に纏わせる。
溺れそうなくらいの快楽の中でもはっきりと感じるそれは、漫の表情を強張らせた。
自分はもしかしたら一番、怒らせてはいけない相手を怒らせてしまったのかもしれない。
それに後悔を覚えてももう遅く、小蒔の手は再びアナルプラグへと伸びていた。

小蒔「ほら…一杯、出し入れしてあげますね…♥♥」
漫「や…やめっ…ひぃぃいいぃいぃいぃっ♪♪♪」

瞬間、グチュリという音と共にアナルプラグが引き抜かれる。
それに漫が再び悲鳴をあげるのは、彼女がアナルに対してまだ不慣れだからだ。
京太郎との逢瀬の時間が他の二人よりも少なかった彼女のそこはまだ殆ど開発されていない。
そんな部分で上級者向けのアナルプラグを出し入れされるのだから、彼女が悲鳴をあげるのも当然の事だろう。
その圧迫感だけでも呼吸が苦しくなってしまいそうなのに、ゴリゴリと中を抉られる感覚は激しく、漫の頭を焼くように感じるのだ。


802 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:26:12.83YJUSyvGCo (50/195)


小蒔「止めてって言いながら…上重さんのアナルピクピクして…悦んでるのが伝わってきますよ…♥♥」

勿論、漫のアナルはまだ拡張前で上級者向けのアナルプラグに悦べるはずがない。
しかし、彼女の身体は動けないほどに弛緩し、そして敏感になっているのだ。
グチュグチュと腸液を掻き出すようなプラグに、ドロリとした快楽を背筋へと押し上げる。
漫の知らないその被虐的な快楽は、まるで乾いた砂に水を落としたように発情した身体へと染みこんでいった。

小蒔「私が手を離してもそのままズルズルって飲み込んでしまいそう…♪♪本当にエッチな身体ですね…♥♥」
漫「ひぅぅ…ぅぅぅっ♪♪♪」

嫉妬混じりのその言葉と共に、小蒔が一気に奥までプラグを差し込む。
そのままグリグリと切っ先を周囲へと押し付けるように動かす小蒔に漫は嬌声で答えた。
勿論、ライバルでもある小蒔にそう言われるのは悪い気はしない。
しかし、賞賛めいた言葉と共に漫へと与えられるのは無慈悲とも言える快楽の波なのだ。
意識を踏みとどまらせるので精一杯な彼女を奈落の底へと突き落とそうとするようなそれに彼女は必死に耐えようとする。

小蒔「ほら…京太郎様も動いてあげて下さい…♥♥じゃないと…上重さんは何時までも辛いままですよ…♪♪」
漫「ふぇ…あ゛ぁぁ…っ♪♪♪」

しかし、それすらも打ち砕こうと小蒔はそっと京太郎に抽送を誘う。
それに漫が抗議するような声をあげるのは今の彼女が本当にギリギリだからだ。
身動ぎだけでイきそうなくらいに昂った身体のアナルまで責められているのだから。
その上、京太郎に下から突き上げられてしまったらあっという間に失神してもおかしくはない。


803 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:26:43.17YJUSyvGCo (51/195)


漫「ら、らめ…っ♪♪ひま…動いひゃ…らぁぁあ゛あ゛あぁぁぁぁぁっ♥♥♥」」

それを何とか思い止まって貰おうと必死になって漫が紡いだ言葉。
しかし、それは次の瞬間、始まった京太郎のピストンによって嬌声へと変えられてしまう。
勿論、その動きは漫の腰が砕けた所為で密着しているが故に、それほど激しい訳ではない。
精々、数センチの距離を動くのが精一杯なそれはピストンではなく揺さぶりと言っても良いくらいだろう。
だが、そんな僅かな動きでも、イき続けた彼女にとっては劇薬だ。
まるで快楽が津波となって押し寄せてくるように思える気持ち良さに彼女の意識は一気にホワイトアウトしていく。

漫「(あ…あぁぁ…っ♪♪今…いっひゃぁ…ぁ♥♥うち…意識トんじゃっらぁぁ…♥♥♥)」

それはほんの数秒程度の事だったのだろう。
だが、その間、漫の意識は確実に身体から離れ、完全に白く染まっていた。
何もかもを切り離し、ただ快楽だけで満たされるその感覚はいっそ幸せだと言っても良いくらいである。
しかし、それが長続きしないのはアナルに埋め込まれたプラグの存在感があまりにも大きかった所為だ。
不慣れな彼女の身体を変わらずにグチュグチュと出し入れされるそれは飛びそうになる漫の意識を縛り付け、肉の檻へと引き戻したのである。

漫「ひぐぅぅう゛ぅうぅぅ♥♥おかしふなりゅぅぅ…♪♪♪こんにゃんらめえぇぇぇ…♥♥♥」

意識が白く染まるほどの快楽の中で失神すら許されない。
しかも、その中で身体だけが際限なく敏感になっていくのだから、漫が悲鳴と共に訴えるのも無理はない事だろう。
幾ら調教され、快楽に慣れた漫とは言っても、それは今まで経験したことのない領域なのだ。
まるで魂さえも削りとり、自身を変質させていくような快楽に彼女は子どものように首を振りながら悶えている。


804 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:27:10.85YJUSyvGCo (52/195)


小蒔「ふふ…♪何を言ってるんですか…♪♪私達はもう…とっくの昔に京太郎様におかしくされているんですよ…♥♥」

そして、漫が感じているそれは既に小蒔が通ったものだった。
一番に能力を受け、最後の扉を開いた彼女の胸にはもう自身が正常であるという感覚は何処にもない。
少なくともこうして四人でセックスする状況を楽しみ、興奮しているだなんて普通ではあり得ないだろう。
勿論、彼女自身、未だに嫉妬を感じているのは事実だ。
しかし、それすらも自身の興奮剤として肯定的に受け止められるくらいに、小蒔の意識は変貌している。

小蒔「(まるで…頭の中にかかっていたモヤが晴れたように…すっきりしていて…♪♪)」

京太郎の選択を受け入れる事を表明したとは言え、小蒔はそれを肯定的に受け止める事は出来なかった。
やっぱり裏切られたという意識はどうしても彼女の中に残り続けていたのである。
しかし、今の小蒔にはそんな感情は一切なく、迷いさえも見えない。
寧ろ、こうして新しい興奮を知る切っ掛けになった京太郎の選択を肯定的に感じられるくらいに、彼女はもう完全に彼へ溺れていた。

小蒔「そんな私達を受け入れてくれるなんて…京太郎様しか居ません…♥♥だから…ほら…皆でもっとおかしくなっちゃいましょう…♥♥♥」
漫「んひぃぃぃい゛ぃぃぃぃい♪♪♪」

もう完全に後戻り出来ない領域にまで踏み込んでしまった自分。
そんな自分が世間で言う『変態』である事を小蒔は自覚していた。
そして、それを受け入れてくれる人が極少数である事もまた理解していたのである。
そんな彼女にとって、自分を開発し、そして受け止めてくれる京太郎とは唯一無二の存在であった。
最早、信仰の対象と言っても過言ではないほどのその愛情を燃え上がらせながら、小蒔は再びアナルプラグの抽送を再開する。


805 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:27:44.60YJUSyvGCo (53/195)


京太郎「う…くぅ…っ!」

その存在を漫の次に感じているのは、他でもない京太郎だった。
硬く大きなそのプラグは肉の壁越しでもはっきりとその存在を感じ取れるのだから。
それだけならまだしもリズミカルに動くそれが膣肉を押し上げて、微かとは言えその形を変形させるのだ。
それを敏感な肉棒で感じ取った京太郎は小さくうめき声をあげながら、その両手を漫の腰へと向かわせる。

和「あぁ…っ♪♪ご主人様ぁぁ…♥♥」

それに不満を訴えるのは勿論、和だ。
唯一、自分を求めてくれた京太郎の右手さえも漫へと向けられたのだからそれも当然だろう。
片手だけでも不満だったのに、何もなしだなんてあまりにも寂しすぎる。
しかし、それを声にしても京太郎の手が和に返ってくる事はなく、その両手で漫の腰をがっちりと掴んだ。

京太郎「っくぅぅ!」
漫「あ゛あぁぁぁぁ゛っっ♥♥♥」

瞬間、始めるピストンはさっきよりも遥かに強いものだった。
ゴンゴンと奥を叩くその動きに漫の口からケダモノ染みた嬌声が飛び出す。
子宮を微かに震わせるその突き上げに漫の身体に衝撃めいた快楽が駆け抜けていた。
まるで意識をひっぱたかれるようなそれに彼女の意識がグジュリと音を立てて崩れていく。


806 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:28:21.58YJUSyvGCo (54/195)


漫「あ゛…うあ…あぁぁ…あぁっ♪♪♪」

それは決して外れてはいけないタガが崩れていく音だ。
薄らいでいく意識の中で漫がそう思うものの、最早、それは元には戻らない。
また一歩奈落へと踏み出した漫の意識はもう堕ちていくしかないのだから。
その証拠だと言わんばかりに漫の身体はちょろちょろと尿を漏らし始めた。

和「きゃんっ!?」

それに驚きの声をあげるのは勿論、和だった。
京太郎に覆いかぶさるようになっている和の身体にも漫の尿は掛かっているのである。
それを不快だと言う気持ちはあるものの、和はそこから逃げ出したりはしない。
自分は何も束縛されていない故に逃げられるが、未だ漫を突き上げ続けている京太郎には逃げ場がないのだ。
それなのにここで自分だけ逃げてしまうと我が身可愛さで愛しい人を見捨てた事になるだろう。
そんな恥知らずな女にはなりたくないはないし、ましてやそれを許容出来るほど京太郎への愛情が薄いものではなかった。

和「(それに…ご主人様と一緒に汚れるのは…ちょっぴりドキドキします…♥♥)」

愛する主人と同じもので穢され、汚れを共有する感覚。
それは決して世間一般で共感されるものではない。
しかし、そう思いながらも和の胸中は興奮と陶酔で満たされていた。
まるでさらに深く京太郎と繋がれる感覚が良いと言わんばかりにその胸はときめいている。


807 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:28:48.62YJUSyvGCo (55/195)


和「ふふ…っ♪♪ご主人様…和はやっぱりご主人様の事とっても愛しているみたいです…♥♥」

本来なら忌避するものに塗れる事すら悦べるほどの自分。
それを愛する主人の耳元で囁きながら、和はそっと自身の腰に手をのばす。
そのままタイトスカートのホックを外し、脱ぎ去るのは和の興奮もまたかなりの昂ぶりを見せているからだ。
最早、自分で自分を慰めなければ、どうにかなってしまいそうな興奮に彼女の指はスルリと動き、白い勝負下着を脱ぎ去る。

京太郎「あ…くぅ…ぅっ」

今や一糸纏わない生まれたままの姿へと変わった和。
そんな彼女がまるで女豹のようなポーズでにじり寄ってくる事に京太郎はかなりの興奮を覚えた。
思わず漫の中で肉棒を跳ねさせてしまうほどのそれに和は嬉しそうな笑みを浮かべる。
一瞬ではあれど自身の裸は愛しい主人の意識を引き寄せるのに十分な働きをしてくれた。
その喜びに頬を緩ませた彼女はそっと自身の秘所に手を伸ばし、濡れそぼった粘膜をクチュクチュと弄り始める。

小蒔「あぁ…♪♪原村さんもあんなに乱れて嬉しそう…♥♥」

小蒔にとって和は恋敵でもあり、師匠でもあり、友人でもあり、そして何より仲間でもあるのだ。
そんな彼女に向ける感情は色々と複雑なものではあったものの、基本的には好意的なものである。
普段はクールでしっかり者な彼女には内心、憧れていたと言っても良いくらいだろう。
けれど、そうやって憧れていた彼女が今、子どものように顔を蕩けさせながら、自慰をしていた。
しかも、それはただ自分を慰める為のものではなく、愛しい婚約者に見せつける為。
そんな恥ずべき行為すら厭わない彼女の姿に小蒔の胸は強い興奮を覚える。


808 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:29:40.00YJUSyvGCo (56/195)


小蒔「ふふ…♪だから…上重さんも原村さんに負けないくらい…アヘアヘになっちゃいましょうねぇ…♪♪」
漫「お゛ほぉぉぉぉっ♪♪♪」

その興奮を胸に小蒔の手は一気にアナルプラグを奥へと差し込んだ。
ギリギリ抜けてしまいそうな距離から強引に押し込まれるその感覚に漫はマヌケな嬌声をあげる。
それにドキドキを強めながら、小蒔の両手はそっと漫のバストへと向けられた。
未だにブラを身につけたままのそこを小蒔の手は乱暴に掴み、そのままグニグニと弄び始める。

小蒔「ん…♪柔らかくて大っきくて…良い感じです…♪♪これで京太郎様の事を誘惑したんですね…♪♪」

始めて触る同性のバスト。
それは汗でグショグショになったブラ越しではあれど、小蒔に柔らかな感触を与える。
自分のものよりも幾分、柔らかなそれに嫉妬を覚えるのは、内心、自分のそれに自信があったからだろう。
京太郎と結ばれるキッカケになったそれは普段から念入りに手入れをするくらいに小蒔の中で誇らしい部位だ。
そんな自身のバストが一部とは言え、負けていると思うのはやっぱり悔しい。

小蒔「張りでは勝っていると思いますけれど…ここはどうでしょうか…っ♪♪」
漫「っくぅぅう゛ぅぅぅっ♪♪♪」

悔しさ混じりに小蒔が手を伸ばしたのは漫の乳首だった。
ピンと張ったその場所をぎゅっと閉じ込めるような彼女の指に漫の背筋がビクビクと跳ねる。
勿論、そうやって乳首を責められるのは京太郎の時とは比べ物にならないほど鈍い。
あの時のように乳腺に突き刺さるほどの強烈な快感を得られないのだ。
しかし、それでも今の漫にとって気持ち良いのは変わらない。
既にタガが幾つも外れるくらいに昂った漫はそれだけであっさりとイッてしまうくらいに敏感になっている。


809 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:30:14.04YJUSyvGCo (57/195)


漫「あ゛あぁぁ…♪♪ボルチオ良ひぃぃ…♥♥あにゃるも…グニグニしゅごいぃぃ…♥♥♥」

そんな漫から漏れだす声はさっきとは違い、快楽を肯定的に受け止めるものだった。
それは彼女の意識が完全に崩れ、許容出来る悦楽の範囲が跳ね上がったからである。
意識すら薄れ本能だけになった漫にとって、それらの快楽はとても気持ち良い事でしかないのだ。
頭の中がおかしくなりそうな激しささえも悦べる今の彼女にとって、それはとても幸せで堪らない事である。
自然、その口から漏れる声もまた甘く蕩けたもので、漫の陶酔を皆に伝えるものだった。

漫「もっろ突いてぇぇっ♥♥うひの弱いトコじぇんぶ虐めへぇっ♪♪うちの事壊ひてぇぇっ♥♥♥」
京太郎「っ!」

瞬間、漏れだす漫のオネダリに京太郎の腰にぐっと力が篭もる。
そのまま一気に突き上げるその仕草はさっきよりも幾分、力が入っているものだ。
漫の身体がガクガクと揺れる事にも構わずに繰り返されるそのピストンはまったく容赦がない。
彼女が倒れそうになるのも構わずに繰り返されるそれは京太郎が射精する為だけのものだった。

漫「ひぐぅぅうっ♪♪良いぃぃっ♪♪ゴンゴンしゃれるの好きぃぃっ♥♥♥子宮虐められるのらいしゅきぃぃっ♥♥♥」

そんなピストンを受ける漫の身体がガクガクと揺れる。
元々、既にその身体には殆ど力が入っていないに近い状態だったのだ。
唯一の例外と言えば、京太郎の男根を締め付けている肉穴くらいである。
その他はぐったりと緩んでいるのだから、不安定になるのも仕方のない事だ。


810 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:30:48.91YJUSyvGCo (58/195)


小蒔「んふ…♪♪上重さんは子宮のお口叩かれるのがそんなに好きなんですね…♥♥」

だからこそ、小蒔はそう言って漫の乳首を摘みながら、そっと彼女の背中を支える。
漫が決して京太郎の上から崩れ落ちたりしないようにしてから、小蒔は京太郎へと目配せした。
これで大丈夫だと彼に告げる為のその視線に、京太郎はそっと頷く。
彼女の意図を正確に理解した京太郎は、胸中でだけ小蒔への感謝を浮かべながら、漫の腰をズンズンと突き上げるのだ。

漫「あはぁっ♪♪あひぃっ♥♥あぁっ♥♥あぁぁぁぁっ♪♪♪」
和「あふぅ…っ♪♪くぅぅ…んっ♪♪あ…はぁぁ…っ♥♥あんんっっ♪♪」

そのリズムに合わせて嬌声を漏らす漫と、オナニーを続ける和の声がシンクロする。
それは勿論、和自身が秘所をイジる動きを京太郎のピストンと合わせているからだ。
少しでも自分の欲望を発散する為に、京太郎とのセックスを妄想しながら指を動かす和。
しかし、どれだけ秘所を指で激しくかき回しても、その欲求不満が和らぐ事はあっても消える事はなかった。

和「(やっぱり和は…ぁっ♥♥和はご主人様じゃないとダメです…ぅぅ♥♥♥)」

これが京太郎の指であれば話は別であったのかもしれない。
彼の指はどんな場所でも素晴らしい感覚をくれるのだから。
きっと今の昂った和であればすぐさまイく事が出来ただろう。
しかし、どれだけそう思っても和の女陰をかき回しているのは自分の指でしかない。
それがもどかしくて愛液が飛び散るくらいに激しくそこをかき回すが、彼女は自分一人でイく事すら出来なかった。


811 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:31:28.95YJUSyvGCo (59/195)


和「(あぁ…っ♪♪もう…っ♪♪もどかしい…っ♪もどかしいですよぉぉっ♥♥)」

まるで快楽に蓋をされてしまったように一定以上、昂ぶる事が出来ない自分の身体。
それに胸中で不満が強まるが、さりとて、京太郎の邪魔は出来ない。
今の京太郎は既に射精へと向けて、スパートをかけ始めているのだから。
そんな状態で愛撫を強請ったところで邪魔になるだけなのは目に見えている。
だからこそ、和はぐっと歯を噛みしめるようにしてそれを堪え、オナニーに集中しようとしていた。

京太郎「…俺の顔の上においで、和」
和「ふぇぇ…ぇ♪♪」

けれど、京太郎はそんな和の姿を見て、何もしないなんて選べない。
そうやって彼女を発情させたのは紛れも無く京太郎自身なのだから。
どれだけ欲望に流されたとしても、その責任だけは取らなければいけない。
射精一色に染まりそうになる思考にそう歯止めをかけながら、京太郎はそう和を誘った。

和「ご主人様…ぁ♥♥♥」

本来であれば、それを断るべきなのだと和は分かっていた。
そうやって2つも3つも別の事をしていては、京太郎は射精には集中出来ないのだから。
しかし、そうは思いながらも和の身体は甘く彼の事を呼び、いそいそと立ち上がる。
そのまま京太郎の顔の上に跨った彼女の陰唇からポトリと愛液が零れ落ち、京太郎の顔の上へと落ちた。


812 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:31:55.24YJUSyvGCo (60/195)


和「い…良いんですか…っ♪♪和のオマンコ…もうこんなにグショグショで…ぇ♥♥」
京太郎「良いから来い」
和「は…ぁい…ぅ♥♥♥」

自分の愛液で愛しい主人の顔を穢してしまう感覚。
それに思わず躊躇いの言葉を口にした和を京太郎は強引に誘う。
力強いその言葉に和が背筋にゾクゾクとしたものを走らせるのは、それが嬉しくて堪らないからだ。
躊躇いを覚える和の為に命令という形を持って齎されたそれは間違いなく彼女を慮ってのものだと分かるのだから。

和「(こんな状況でも…ご主人様はやっぱりご主人様なんですね…♥♥)」

射精するギリギリまで自分の事を気遣い、そして出来るだけ気持ち良くしようとしてくれる愛しい主人。
そんな彼が自分以外の女性と睦み合いながらも変わっていない事を再確認した和の胸がトクンと甘いモノを広げる。
陶酔とも愛情とも幸福感とも言えないそれは愛玩奴隷である彼女の胸を蕩けさせ、そして肉襞にまた強い疼きを走らせた。
まるで今すぐこの優しくも意地悪なご主人様の肉棒を咥え込みたいと訴えるようなそこを和はそっと京太郎の顔の上に置く。

京太郎「ぢゅるるるぅぅぅっ」
和「ひああぁぁっ♪♪♪」

瞬間、彼女に齎されたのは遠慮なく吸い付く京太郎の唇だった。
愛液で濡れそぼったそこをまるごとしゃぶるようなそれに和の口からつい嬌声が漏れだす。
それは彼女が自分自身で秘所を弄っていた時とは比べ物にならないほど甘いものだった。
自然、和の中を駆け巡るそれはまるで電流のように激しく、彼女の意識をゴリゴリと削っていくのである。


813 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:32:38.00YJUSyvGCo (61/195)


和「イくぅっ♪♪和イキますぅぅっ♥♥ご主人様に吸い付かれてイくぅぅんんっ♥♥♥」

ようやく絶頂へと至るメスの身体。
それを反射的に言葉にして彼に伝えるのは、ここ最近のセックスがそういったものばかりだったからだ。
あの日から痴態を撮影されるセックスにハマった和は、画面の向こうにいるまだ見ぬ誰かを誘惑するようにオルガズムを躊躇いなく口にするようになったのである。
勿論、それは彼女を責めている京太郎にも強い興奮を齎し、和とのセックスを甘く激しいものに彩るのだ。

京太郎「(そろそろ…やばい…!)」

しかし、今は何時もとは違い、和だけを愛している訳ではない。
そうやって耳から入ってくる甘い嬌声は、彼女だけではなく漫のものも混じっているのだ。
お互いに遠慮無く声を漏らし、ケダモノへと堕ちるような二人の声が頭の中で交じり合う。
共に京太郎へと甘えるような可愛らしいその嬌声に京太郎の胸はトクンと跳ね、全身へ強い興奮を広げた。
それに自身の限界を悟った彼はそれが来る前に何とか二人の事を満足させようと、大きく胸を膨らませ、全身の筋肉へ酸素を送り出した。

漫「うあ゛あぁっ♪♪♪あぁぁぁぁぁっ♥♥♥」

その意思が真っ先に顕れたのは漫を貫く腰の動きであった。
今までのものよりもさらに一段強いそれは、力尽きた漫の身体を押し上げるほどに強い。
最早、小蒔が押さえていなければ今すぐにでも崩れ落ちてしまいそうなその激しさに漫がケダモノ染みた嬌声をあげる。
それに合わせてビュシュウと潮が吹き出すが、京太郎は容赦しない。
まるで漫を壊そうとしているようにぐっと力を込め、その腰を力強く跳ねさせるのだ。


814 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:33:10.19YJUSyvGCo (62/195)


小蒔「あぁ…♪♪凄い…♥♥京太郎様のオチンポが…上重さんに種付けしたいって…♪♪動いているのが分かっちゃいます…ぅ♥♥」

そう言いながら小蒔は自身の胸が甘くときめいているのを感じる。
見ているだけの小蒔でさえドキドキとしてしまうほど、そのピストンは力強いものなのだ。
あんな勢いで自分も犯されてみたいと思わせるそれに小蒔はつい自分の腰を揺らしてしまう。
フリフリとオスを誘うその動きは、しかし、一番、見て欲しい人には見てもらえない。
その何とも言えないもどかしさに小蒔の指が秘所へと伸びそうになるが、彼女はそれをぐっと堪えた。

小蒔「ふふ…♪♪上重さん…とっても綺麗で…羨ましいです…♪♪」

興奮で理性を飛ばし、意識を書き換えられた小蒔にとっても、そこは未だに京太郎の為のものなのだ。
彼から与えられたオモチャで感じるならともかく、自身の指で自慰をするような場所ではない。
ましてや、今の小蒔には今にも崩れそうな漫の身体を支えるという大事な役目がある。
どれだけ漫が羨ましくてもそれだけは忘れてはいけないと、小蒔は自身を律した。

小蒔「だから…もっと綺麗にしてさしあげますね…♥♥」
漫「ひぐう゛う゛ぅぅぅぅううぅう♥♥♥」

とは言っても、やはり羨ましさというものはなくならない。
それを解消するように小蒔の指がギュッと漫の乳首を押しつぶす。
京太郎のそれと比べても何処か嗜虐的に思えるその愛撫は漫の口から悲鳴を漏らすのに十分過ぎるものだった。
嫉妬と羨望混じりの遠慮のないそれは最早、一線を飛び越えた彼女には強すぎるものである。
まるで乳首が快楽のスイッチになってしまったようにそこだけで連続して絶頂する感覚に、漫は全身を震わせた。


815 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:33:56.08YJUSyvGCo (63/195)


漫「(気持ち良い気持ち良い気持ち良いっ♪♪♪オチンポオチンポオチンポオマンコオマンコぉぉっ♥♥♥)」

その胸中に浮かんでいるのは完全にタガが外れた思考だった。
最早、理性らしいものは一欠片も見当たらないその心には快楽と多幸感だけで満たされている。
さっきの小蒔と大差ない状態にまで追い込まれた漫の意識はドロリと変容していく。
まるで無駄な理性や感情というものだけを洗い流し、本性を剥き出しにする感覚が今の漫にとってはとても心地良いものだった。
それはそうやってむき出しになっていく自分がより強く、そして激しく快楽を受け止められると本能的に分かっているからである。
だからこそ、彼女はその生まれ変わるような感覚を肯定的に受け止め、その口から唾液を垂れ流しにしながら悦びに浸る事が出来たのだ。

和「くぅぅぅぅぅぅんっ♥♥」

そんな漫の変質を知りようもない和は京太郎の上で甘えた子犬のような声をあげる。
それは彼女の膣肉の中に京太郎の舌が一気に入り込んできたからだ。
まるで前戯など必要ないとばかりに突き入れられたドロドロとした粘膜に和の身体が再びオルガズムへと堕ちていく。
しかし、彼の舌はそれでも容赦せず、和の膣肉をかき回すようにグチョグチョとそこを舐めまわすのだ。

和「良い…ですぅぅっ♪♪和のオマンコ舐められるの良いぃぃっ♪♪すぐイッちゃうくらい気持ち良い…ですうぅ♥♥」

その絶頂を愛しい主人に伝えながら、和の足はぎゅっと閉じる。
膝立ちになった足で京太郎の顔を閉じ込めようとするようなそれに和は胸を締め付けられた。
勿論、彼女とてそんな風に京太郎を束縛してはいけない事くらい分かっている。
何時もとは違い、今の自分は三人いる彼の恋人の一人でしかない事を自覚しているのだから。
しかし、後ろから聞こえてくる漫と小蒔の声に、やはり対抗心を感じるのは否定出来ない。
結果、二人ではなく少しは自分の事を気にして欲しいと訴えるようなその生理反応を和は抑える事が出来なかったのだ。


816 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:34:30.97YJUSyvGCo (64/195)


和「和…愛玩奴隷なのにっ♪♪ご主人様にオマンコ舐められてイッちゃうぅぅっ♥♥ご主人様に奉仕されて…イくっイクイクイクぅぅぅっ♥♥♥」

そう言いながらも和の腰はカクカクと前後に動く。
まるで本当に挿入されているように腰を揺するそれは彼の顔にべったりと愛液を広げた。
しかし、京太郎にとって、それは決して不快なものではない。
どんな形であれ、自分の身体で愛しい子が感じているのだから厭うはずもなかった。

京太郎「(寧ろ…甘くて熱くて…やばいよな…これ…)」

元々、愛液そのものは無味無臭だ。
秘所の匂いが混じる事はあれど、基本的にそれは変わらない。
しかし、そう分かっているはずなのに京太郎の舌に絡みつくその味はうっすらと甘いものだった。
何処か上品な甘さはねっとりと舌に絡みつき、彼の味覚を楽しませてくれている。
その上、口にした部分からじっとりと熱くなるようなそれは媚薬とも興奮剤とも思えるものだった。

京太郎「く…ぅぅうぅ!」

そんなものを大量に口の中に流し込まれれば、幾ら京太郎とてタガも緩む。
彼がそう苦悶の声をあげた時には肉棒はビクンと根本から震えた。
それと共に流し込まれる血液が海綿体を膨れ上がらせ、さらに凶悪な姿へと変貌させる。
まさしく魔羅という言葉が相応しいそれは漫の中をゴリゴリと引っかき、そして奥にズシンと重い衝撃を齎すのだ。


817 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:35:06.81YJUSyvGCo (65/195)


漫「おっきぃぃぃ♪♪♪大っきふなっらぁぁ♥♥♥オチンポビクンれぇぇぇ♪♪♪」

膨れ上がるその肉棒の蠢きを敏感な漫はすぐさま感じ取る。
肉襞一つ一つでイけるくらいに昂って久しい彼女にとって、それは目を瞑っていてもはっきりと分かる変化だ。
思わず嬌声を吐き出してしまうほどのそれに漫の背筋に氷のような冷たい塊が生まれる。
ゾクゾクとした快感を集めて作ったそれは彼女の肌をブルブルと震わせ、快楽神経を酷使するのだ。

漫「しゅごいぃぃっ♪♪♪しゅごいしゅごい凄い良いひぃいいぃぃいっ♥♥♥」

今にも神経がぶつりと途切れてしまいそうな激しい悦楽。
それに満たされる身体に漫は凄いと言う言葉を連呼する。
まるでそれ以外の言葉を失ってしまったようなその姿はまさにケダモノだ。
しかし、そんな漫を突き上げる京太郎にとっては、それは堪らなく魅力的に思えるものである。

京太郎「う…っぐぅぅう!」

それは漫の膣肉が京太郎へと貪欲に絡みついている事と無関係ではないのだろう。
三人の内で誰よりも情熱的なその膣内は、限界まで張った肉棒をしゃぶるように締め付けているのだ。
ねっとりじっくりと芯まで蕩けさすその貪欲さは、気を抜けば意識を持って行かれそうになるくらいである。
そんな中を激しく突き上げているのだから、和の秘所を舐めるその口からうめき声が漏れだすのも無理はない。


818 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:35:38.58YJUSyvGCo (66/195)


漫「射精してぇぇっ♪♪射精して射精してらしてらしてらひてぇぇ…っ♥♥♥」
京太郎「あぁぁっ!」

そんな京太郎に射精を強請りながら、漫の腰が動き出す。
さっきまで砕けていた腰が見せたいきなりのその動きは、漫の欲求が悦楽すら上回ったからだろう。
ケダモノになって尚、愛しい夫の射精を感じたいという漫の愛欲が、快楽の鎖を引きちぎり、自ら腰を動かすに至ったのだ。
それは勿論、激しいものではないものの、漫が動き出すなんてまったく予想していなかった京太郎は反応出来ない。
完全に不意打ちとなったそれは射精をギリギリまで堪えようとする彼の我慢を完全に砕き、京太郎の腰を大きく跳ねさせる。

漫「ひっぐぅううぅぅううううぅぅ゛っ♪♪♪」

そのまま奥へと突きこまれた魔羅に漫が何百回目かの絶頂を覚えた瞬間、彼女の中に熱いものが吐き出される。
まるで熱湯のように熱く、けれど、触れる部分を優しく蕩けさせてくれるそれを漫が間違うはずがない。
愛しい夫が快感を極めた証でもあるその精液を、彼女は子宮口をひくつかせながら飲み込む。
まるで砂漠を征く旅人がようやくオアシスに出会えた時のように彼女の身体はその精液を貪欲にすすり上げていた。

漫「あ゛ぁぁっ♪♪♪あ゛ぁ…♥♥♥あ゛あぁぁぁあ゛あぁぁ…♥♥♥」

その快楽は漫が今までに感じていたものとは一線を画するものだった。
精液をずっと求め、疼いていた子宮にそれを流し込まれる熱い感覚は『満たされる』という表現が最も相応しい。
今までのように快楽で身体が埋め尽くされ、それを意識へと伝えるだけの発信機とは違い、彼女の身体は愛しさと暖かさと多幸感で満たされていた。
おおよそ、心地良いと思えるその全てで身体が一杯になる感覚に漫の目尻からポロリと涙が溢れる。
それは今までのものとは違い、収まりきらない快楽を流し出すものではなく、満たされているその感覚につい漏らしてしまうものだった。


819 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:36:04.45YJUSyvGCo (67/195)


漫「あ゛ふぅぅ…っっ♪♪♪ん゛ひぅぅぅうぅっ♥♥♥」

しかも、その感覚は中々、終わらない。
京太郎の射精を元にするその感覚は、彼の精液が止まるまでずっとずっと続くのだから。
そして、彼の血筋に連なる加護の影響か、人並み外れた精力を誇る彼の射精は数分は止まらない。
その濃度もまた薄れる事はなく、最初に小蒔に対して放ったものとまったく変わらない濃さと勢いで、漫の最奥を叩いていた。

小蒔「(は…あぁ…♪♪上重さん…とっても美味しそう…♥♥)」

それに身悶えしながらも蕩ける彼女の顔に小蒔はうっとりとしながらそう言葉を浮かばせる。
何せ、それはついさっき小蒔自身も受け止めた気持良さなのだから。
自分の何もかもを書き換え、魂まで愛しい婚約者の奴隷にしたそれを彼女は羨ましいと思う。
しかし、それと同時に嬉しいのは、また一人、愛しい人の奴隷が、そして小蒔からすれば運命を共にする仲間が増えたからだろう。

小蒔「ふふ…♪分かりますよ…♥上重さんも…京太郎様に愛される事が世界の全てに変わるくらい…気持ち良くなっているんですね…♥」

そんな彼女を祝福するように小蒔の手が漫の身体をそっと撫でる。
未だ射精を受け止め続け、絶頂から降りて来られないその身体を慰撫するようなそれに漫がビクンと肩を震わせた。
性感帯でも何でもないただの肌を撫でられるだけで、漫はもう軽いオルガズムを覚えるほどに高まっているのである。
それは精液を叩きつけられるボルチオのそれとは比べ物にならないほど弱々しいものだ。
しかし、快楽に飢える漫の身体には高い効果を発揮し、ピンと上向きに張った乳首を震えさせてしまう。


820 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:36:43.09YJUSyvGCo (68/195)


小蒔「ここにびゅるびゅるって出されると…もう逆らえなくて…♥♥心まで奴隷に変えられちゃうんですよね…♥♥」
漫「くひゅぅぅう゛ぅぅ♪♪♪」

そう言いながら小蒔の手は、漫の下腹部をそっと押さえる。
蠢く子宮を上から確かめるようなその手に漫は甘い声をあげた。
そこは愛しい夫の精液に飢えた漫の中で今、最も敏感で熱い部分だったのだから。
幾らその間には肉の壁があるとは言っても、その遠慮のない刺激は漫の身体を揺さぶるのだ。

小蒔「さぁ…上重さんも…一緒に堕ちましょう…♥♥京太郎様の奴隷になって…何もかも…むしゃぶり尽くしてもらいましょう…♪♪♪」
漫「あ…ぁあ゛あぁぁぁ……っ♪♪♪」

小蒔のその言葉を皮切りに京太郎の射精は弱まっていく。
まるでもう漫が堕ちきってしまったのだと言うようなそれに漫の口から不満そうな声が漏れた。
しかし、精液の勢いはもう戻っては来ず、もう亀頭から漏れる程度でしかない。
流石に人外染みた精力をしている京太郎とは言え、次の射精までには時間が掛かるだろう。
それを認識した瞬間、漫の意識はブツリと言う音を鳴らし、ゆっくりとブラックアウトしていった。

漫「ふにゃ…あぁ…あぁぁぁ……ん…っ♪♪♪」

まるで今まで無茶をしたツケを払うかのように意識を混濁させる漫。
その口から漏れる甘い声は、とても幸せで満ち足りたものであった。
射精が弱まった時には幾らか不満を覚えたものの、射精そのものはとても心地良いものだったのだから。
平常時であればどれだけ失神していたか分からないほどイき続けた彼女は総括としてそれなりに満足していたのである。


821 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:37:27.05YJUSyvGCo (69/195)


小蒔「これで上重さんも…京太郎様のモノになっちゃいましたね…♥♥」

そんな漫の身体を支えながら、小蒔は嬉しそうにそう声を漏らした。
それは失神している今も蕩けたまま戻らない漫の表情を見ているからである。
今も尚、快楽で身体が一杯になっているようなその顔はもう京太郎なしでは生きていけないだろう。
ライバルは彼の寵愛を受ける為ならば、何でもするようなケダモノに堕ちた事に小蒔はそっと笑みを浮かべた。

小蒔「さ…次は原村さんの番ですよ…♪♪」
漫「はん…ぅぅ…♥♥」

そう言いながら、小蒔はそっと漫の身体を後ろへと倒す。
そのままズルリと彼女の膣肉から反り返った肉棒が引き出された。
漫の愛液でふやけてしまいそうなくらいにベトベトになったそれはまったく衰えてはいない。
寧ろ、射精したままの硬さと大きさを維持するその肉棒はまだ足りないとばかりにビクビクと震えていた。

和「は…あぁぁ…っ♪♪」

勿論、その蠢きを京太郎の顔に秘所を押し付けている和は分からない。
しかし、小蒔の言葉にようやく自分の番が回ってきた事を知った彼女の女陰がキュっと締まる。
まるで早くここにオチンポを咥え込みたいとそう訴えるようなそれに膣肉を泳ぐ京太郎の舌が窮屈さを訴えた。
だが、キュンキュンと唸るような彼女の締め付けはまったく収まる事がなく、柔らかな彼の舌を締め上げていく。


822 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:37:55.43YJUSyvGCo (70/195)


和「良い…ですか…?」
京太郎「ぷぁ…っ当たり前…だろ」

その気持ち良さにうっとりしながらも和がそう尋ねてしまうのは彼女だけが能力を受けていないからだ。
結局、アレから逃げ切ってしまえた彼女の欲情はもう激しく燃え盛っているものの、それはあくまでも普段の領域を超えないものである。
そんな自分よりも明らかに様子がおかしい小蒔の方を構ってあげた方が良いのではないだろうか。
遠慮しがちな彼女は理性を薄れさせる強い淫欲を沸き上がらせながらも、そう思ってしまうのだ。

京太郎「俺は三人とも幸せにするって決めたんだ。和だけ仲間外れになんてしないって」
和「んっくぅ…♪♪」

そんな和に答える京太郎の言葉はしっかりとしたものだった。
心から彼がそう思っている事を感じさせるその声に和の肩がブルリと震える。
胸中に収まりきらない喜悦を見せる和の姿に京太郎は小さく笑みを浮かべた。
そうやって喜ぶ和を好ましく思ってくれているのを伝えるその笑みに和の胸はジィンと感動を覚える。

和「じゃあ…あの…ぉ…♥♥」

モジモジと身じろぎをしながら和はそっと京太郎の上から腰をあげた。
瞬間、ニチャアと濡れた音が鳴りながら、透明な糸が二人の間で伸びる。
その淫靡な光景に肉襞がさらに疼くのを感じた和はもう我慢出来なかった。
そのまま京太郎へと臀部を向けるように四つん這いになり、頭をそっと倒す。


823 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:38:32.41YJUSyvGCo (71/195)


和「後ろからぁ…♪♪ご主人様に…後ろからレイプして欲しいんです…♥♥」
京太郎「ぅ…」

そう言って安産型のむっちりとしたお尻を和はフリフリと揺らす。
それだけでクチュクチュと音が鳴るのは彼女の太ももから膝までがもう愛液でぐっしょりと濡れていたからだろう。
普通ではあり得ないその濡れ方に愛液同士が触れ合って淫らな音をかき鳴らす。
その音だけでも興奮を掻き立てられているのに、クールな和が顔を劣情で赤く染めながら腰を揺すっているのだ。
それを見て一瞬で冷静さを投げ捨てた京太郎は体液でベトベトになった身体を起こし、後ろから和に近づいていく。

和「あぁ…あぁぁ…♪♪」

ニチャニチャと様々な体液がこすれ合う音をさせながら近づいてくる愛しい主人。
その存在に和は胸をときめかせ、震える声をあげてしまう。
それは勿論、彼女が自らの主人の事を内心、怖がっているからなどではない。
寧ろ、二人が犯されている姿をずっと見せつけられていた和の胸には期待と興奮で満ちていたのだ。

和「ひぐぅぅぅぅううぅぅう♥♥」

そんな彼女の期待に応えるように、京太郎の肉棒は一気に和の中へと埋め込まれる。
何時もよりも一回り大きく感じられるその大きさに和が甘い声をあげた。
普段のサイズでも、彼女の肉穴には少し大きく、押し広げられているのをはっきりと感じるくらいなのである。
その上、さらに一回り大きくなられてしまったら、強い圧迫感を感じてもおかしくはない。


824 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:38:59.02YJUSyvGCo (72/195)


和「はぁぁ…っ♪♪良い…ですぅっ♥♥オチンポ良ひぃぃ♪♪♪」

けれど、和がそれを厭う要素など欠片もなかった。
既に彼女の身体は発情し、その膣肉は愛液でドロドロになっているのだから。
その上、和はもうかなり調教され、膣内で幾度となくイく事が出来るようになっている。
そんな和にとって、普段よりも大きなその肉の塊はほんの小さな苦しさとそれとは比べ物にならない快楽を齎してくれる素晴らしいものだった。

和「イっくぅ…っ♪♪もうイきますぅうっ♥♥ゴリゴリオチンポで…っ♪♪ご主人様でイくぅぅぅ♪♪♪」

そして、その快楽に和は抗う事が出来ない。
苦しさがアクセントに思えるほどの莫大な快楽は和の身体をあっさりと絶頂へと突き上げるのだ。
まるで意識が快楽という激流に押し流される小枝になってしまったような感覚に彼女の身体が震える。
しかし、その間も容赦なく京太郎の挿入は続き、奥へ奥へとその亀頭が入ってくるのだ。

和「はぁ…あぁっ♪♪堪んない…ぃ♥♥オチンポセックスでまたイッちゃいますぅぅぅ♪♪♪」

普段よりも大きいサイズなのにも関わらず、強引にねじ込むようなその挿入。
それに被虐感を強めた和の胸で絶頂の波が沸き起こる。
二人のセックスを間近で見せられ、その熱気にあてられた身体はもうこれ以上なく準備出来ている状態だったのだ。
変則的4Pに何時もとは違う興奮を覚えていたのもあって、彼女の心はあっさりとイッてしまったのである。


825 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:39:25.87YJUSyvGCo (73/195)


和「メリメリってオマンコのお肉広げられるの好き…ぃぃ…♪♪神代さんに見られながらご主人様にレイプされるの…大好きですぅ…♥♥」

その上、彼女は愛する主人とのセックスをビデオにおさめて以来、そういう趣向にどんどんハマりつつあった。
そんな和にとって、こうして二人の前で魅せつけるように行うそれは、堪らなく興奮する事でもあったのである。
理性や道徳心などが邪魔しなければ、今のこの状況を最も楽しんでいたのは実は和だったのだ。
痴態を見られる気持ち良さを三人の中で最も深く刻み込まれた彼女の口から躊躇いなく好きだと漏れるのもそれが一つの理由である。

和「あぐぅぅぅう゛うぅぅぅ♪♪♪」

そんな和の口から苦悶にも似た声が絞り出される。
ぐっと歯を食いしばりながらのそれは、しかし、苦しみなど一切、宿してはいなかった。
寧ろ、彼女の身体は強い快楽を走らせ、その視界をバチバチと白く弾けさせている。
挿入された時よりも数段、強いそのオルガズムは京太郎の肉棒が和の最奥へとたどり着いたからだ。

和「奥…ぅぅ…♪♪やっぱり子宮口良い…ぃっ♥♥ご主人様のオチンポに…和のボルチオぴったりぃ…ぃぃ♥♥」
小蒔「あ…ぁ…♪♪」

そのままうっとりとしながら呟く声は快楽に震えていた。
今にも掠れてしまいそうなのに、快楽に満たされるそれに漫の身体を介抱する小蒔が羨ましさを覚える。
特に目立った性感帯を持たない小蒔にはドロリと蕩けるような和の言葉に共感出来ないのだ。
しかし、その気持ち良さだけははっきりと伝わってくるのだから、今すぐ愛しい婚約者にセックスして貰いたくて堪らなくなる。


826 ◆phFWXDIq6U2013/09/07(土) 00:39:53.63YJUSyvGCo (74/195)


小蒔「(でも…今は原村さんの番ですしね…♥♥)」

小蒔が漫に対して手を出したのは、小蒔が犯されている時に漫が色々と邪魔をしてくれたからだ。
勿論、その邪魔は決して二人の仲を引き裂こうとするものではなかった事は分かっているし、小蒔自身も幾らか気持ち良かったのは事実である。
しかし、だからと言って納得出来るほど、小蒔の中で京太郎という存在は決して弱いものではない。
二人っきりで愛し愛される時間に別の誰かの手でイかされたと言うのは彼女の中で耐え難い屈辱だったのだ。
それこそ意識の深層で結ばれた邪神と共に本気で怒るくらいに、それは小蒔の中では許しがたいものだったのである。

小蒔「(でも、原村さんはそうではありませんし…♪♪)」

勿論、小蒔が犯されている間、和が必死になって自分を律しようとしていた事を小蒔はうっすらとではあるが覚えている。
そんな彼女が睦み合っている時にわざわざ邪魔をするほど小蒔とて野暮は女ではない。
どうにも複雑な関係でありながらも大事な仲間である事に違いはない和の痴態を今は微笑ましく見ていられるのだ。

小蒔「(勿論…何時かは我慢出来なくなってしまうんでしょうけれど…ぉ♥♥)」

そうは思いながらも、小蒔の本能はそろそろ思考を上回るほどになりつつあった。
京太郎を求める愛情と結びつくそれはライバルなど押しのけてしまえとそう言い始めているのである。
勿論、人にされて嫌な事は絶対にするなと教えこまれた小蒔はそれに容易く屈したりはしない。
だが、それが何時までも続くかと言えば、正直、小蒔には保証しかねる事だった。