661 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:18:59.17JjeiV/ra0 (25/45)

京介「な、なんでこっち向いてんの?」

桐乃は俺に背中を向けず、見つめあう形で座ったのだ。 もう、なんか良く分からなくなってきた。

桐乃「だって、こうした方が京介見ていられるし? あったかいし」

桐乃「……嬉しくない?」

京介「ちょ、超嬉しいが……だけど、超恥ずかしいぞ」

桐乃「あたしだって一緒だって。 あ、てゆうか」

桐乃「明日になったら、今日のこれは無かったことにするから。 よろしく」


662 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:19:51.53JjeiV/ra0 (26/45)

……いやいや無理だろ! 一生忘れられねーって!

京介「ど、努力はする……」

桐乃「忘れなかったらマジ怒る」

京介「……分かった分かった。 忘れるから」

桐乃「……ありがと。 京介」

言うと、桐乃は俺に抱き着いてくる。 先ほどと違って正面からの所為か、密着する面積は多い。


663 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:20:20.15JjeiV/ra0 (27/45)

京介「……好きだぞ、桐乃」

俺も桐乃を優しく抱き締め、そう言う。 考えて言ったというよりかは、自然と出ていた言葉。

桐乃「……それは嬉しいんだケド。 でも、京介」

桐乃「そ、その……言おうかすっごく迷ったんだケド……言っていい?」

京介「な、なんだ?」


664 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:20:51.98JjeiV/ra0 (28/45)

桐乃「……さっきから抱き着く度に、その、当たってるんだケド」

桐乃は言いながら、俺の下腹部をちらっと見る。

京介「そ、それは言うんじゃねえよ!! 仕方ねえだろ!?」

い、今すぐ逃げ出したい気分だぜ……。 家から飛び出してしまいたい気分だ。

桐乃「あ、あたしは気にしないから良いっての! それに今始まったことじゃないし!?」

京介「お、おう……」


665 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:21:28.50JjeiV/ra0 (29/45)

桐乃「で、でもさ……それって、あたしの所為だよね?」

ん……? なんかこの展開、見覚えがあるぞ。 ええっと、なんだっけか。

確か、桐乃が貸してくれたエロゲーにこんな展開があった気がする。 うむ。 で、次はどうなるんだっけか。

桐乃「……その、あたし一応エロゲーとかやってるし? ち、知識はあるから……ね?」

こ、これはかなりぐらっとくる台詞だ。 もうマジで、頭がどうにかなっちまいそう。

桐乃「……だから、その」

京介「だ、駄目だ!」


666 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:22:03.86JjeiV/ra0 (30/45)

桐乃「……でも、付き合ってるのにそうゆうのゼロっておかしくない? あたしは、大事にしてもらってると思うから……嬉しいケド」

……そう言われると、ほんとなんも返せねえぞ。 マジで。

京介「……きょ、今日はとりあえず無し! な!?」

桐乃「う、うん! そ……そうしよう。 うん」

桐乃も大分慌てた様子で、俺のその提案に承諾する。 あ、危なかった。

……いや、危なかったというよりかは、そこまで言ってくれた桐乃に対して、俺がへたれただけなのだが。


667 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:22:46.30JjeiV/ra0 (31/45)

京介「……代わりって言ったら変だけど、さ」

京介「キス、しようぜ。 桐乃」

桐乃「……ひひ。 うん、いーよ」

多分、この時のキスという言葉の意味はお互いに分かっていたと思う。

普通のキスではなくて、そういうキスだということを。

桐乃は目を瞑り、俺の首に手を回す。

俺は桐乃の頭を片手で支え、もう片方の手は腰へと回して、体を支える。


668 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:23:22.83JjeiV/ra0 (32/45)

ゆっくりと桐乃に顔を近づけ、俺と桐乃はキスをする。

……何分だろうか。 そのまま数分間、ずっとお互いに唇をくっ付けたまま。

物凄い近い距離で、桐乃は俺の目をじっと見つめる。 俺もまた、一緒だ。

不思議とお互いに目を瞑ることは無く、見つめあう。 いつもは恥ずかしくて目を瞑るのだけど……今日はなんだか、いつまでも桐乃を見ていたかった。

そして、やがて、俺は桐乃の中へと舌を入れる。

桐乃もすぐに唇を少し開け、俺を受け入れる。 桐乃の中は暖かくて、甘くて。


669 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:23:59.05JjeiV/ra0 (33/45)

お互いがお互いを求めて、何分も何分もそれを続ける。 俺と桐乃は時間を忘れて、延々とそれを続けていた。

ひょっとしたら一時間近くそうしていたかもしれないし、数十分かもしれない。 やがて、どちらからともなく、唇を離す。

京介「……桐乃」

桐乃の目はとろんとしていて、目がゆらゆらと揺れている様にも見える。

桐乃「……ばか」

小さくそう言うと、桐乃は再度、俺に抱き着いてきた。 で、俺の耳元で桐乃は言う。

桐乃「……そんなされたら、あたしが我慢できなくなっちゃうんですケド」


670 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:24:27.27JjeiV/ra0 (34/45)

声は小さく、息は荒く。

京介「わ、悪い……」

桐乃「……良いよ。 ベツに。 でも、もーいっかいだけ、キスして」

桐乃「ふ、ふつーのね。 ふつーのキス」

京介「……はいよ。 分かった」

離れた桐乃の頭を再度支え、俺は桐乃に軽くキスをする。


671 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:24:54.33JjeiV/ra0 (35/45)

桐乃「えへへ。 ありがと、京介」

笑い、桐乃は立ち上がった。

京介「構わねえよ……って、どこ行くんだ?」

桐乃「……ちょ、ちょっとお風呂。 すぐ、戻る」

京介「……お、おう」

恥ずかしそうに言う桐乃を見て、大体の事情を察し、俺はそう答えるとその場に寝転がる。


672 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:25:21.40JjeiV/ra0 (36/45)

桐乃が風呂場に行く足音を聞いた後。

京介「はぁあああぁああああ……マジでやばかったな。 死ぬかと思った」

だけど、死ぬかと思っても案外大丈夫な辺り、もうちょっと行っても大丈夫だったんじゃねえか!? と、少し思う。

でもなぁ、未だに抱き着いたり抱き着かれたりするだけで緊張するというか、恥ずかしいというか、そんな気持ちになるしな。

つ、つうかだな。 あいつが「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ甘えてもいい?」とかいう言い方をする所為で、マジで不意を突かれた気分だ。


673 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:26:37.85JjeiV/ra0 (37/45)

あ、あれのどこがちょっとだっつーの! 桐乃さん本気出しすぎだって!

……くそ、なんだかやられっぱなしはあれだぜ。 気分が悪いというか、負けた気分だ。

今日桐乃が言っていた言葉、なんとなくだが分かったぜ。 やられっぱなしはあれだな。

よし、よーし! 桐乃が戻ってきたら、今度は俺が甘えてやろう。 あいつがドン引きするくらいに。

は、ははは。 今に見てろよ、桐乃め。


674 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:27:04.21JjeiV/ra0 (38/45)

それからしばらくの間、俺と桐乃は似たようなことを2、3度繰り返し、気付いたらお互い眠っていた。

……間違えても一線を越えることは無かったとだけ言っておく! お互いの体をなんか触った気がしなくもないが、多分そんなことは無かったと思う!

で、今は結局コタツの中で俺が目覚めたということだ。

すぐ目の前には桐乃。 幸せそうな顔で、だけどもどこか……なんか、疲れているような顔、だろうか? そんな顔をしていた。

つか、俺は桐乃に抱き着きながら寝ていた様で、桐乃も桐乃でそうだったらしい。 つまり、こいつが起きないと俺も動けない。

……ま、いっか。 こうしてこれだけ近くで寝息を立てる桐乃を見ていると、なんだか和んでくるしな。


675 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:27:32.13JjeiV/ra0 (39/45)

俺は桐乃を起こさないように、首だけをゆっくりと回し、時刻を確認。

おいおい、もう昼過ぎじゃねえかよ。 ……ま、無理もねえか。 昨日最後に時計を見た時点で、5時くらいだった気がするし。

しっかし、あれを忘れろね……。 どう考えても無理だろ。 桐乃にあれだけ甘えられたのって、初めてだと思うしな。

酒を飲んでいるわけでもなく、桐乃の具合が悪いわけでもなく、桐乃の本心で、そうしたいと言ってくれて、そうしてくれて。

俺が思っている以上に、桐乃はどうやら甘えたいと思っているのかもしれんな。


676 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:28:16.57JjeiV/ra0 (40/45)

桐乃「ん……」

やがて、桐乃が目をゆっくりと開ける。 すぐ目の前に居る俺を見て、こいつはひと言。

桐乃「な、なに抱き締めてんの! 変態っ!!」

……さすがにそれはねえだろ!? いくら忘れろと言っても、いきなりそれは酷いって!

桐乃「し、信じられない! 妹が寝ているところを抱き締めるとか!!」

京介「言っとくが、お前も俺のこと抱き締めてるからな!? つうか昨日のお前はどこ行ったんだよ!?」

桐乃「あ、あれは……うう。 忘れろっつったでしょ! もう今まで溜めてた分は消化したからいいの!! だからあれは無しッ!」


677 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:28:44.19JjeiV/ra0 (41/45)

す、すげえ理論だ……はは、納得せざるを得ない! だって俺はこいつの彼氏で、兄貴だし。 もう仕方の無いことだ。

京介「……別に、溜めなくても普段から甘えりゃいいのに」

桐乃「……いーの?」

京介「当たり前だろ。 つうか甘えろ!」

桐乃「じゃ、じゃあそーしよっかな……」

桐乃は小さく笑うと、口を開く。


678 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:29:19.21JjeiV/ra0 (42/45)

桐乃「……その、早速なんだケド」

京介「ん?」

桐乃「約束だったし、ゆうケド」

そして、桐乃はこう言った。

桐乃「……風邪、ぶり返したかもしれない」

京介「……マジかよ」


679 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:29:50.45JjeiV/ra0 (43/45)

コタツで寝た所為か。 夜遅く……というか、朝方近くまで桐乃と話していた所為か。

それとも、桐乃が上にシャツ一枚しか着ていない所為か。

間違えて無いぞ。 今、桐乃はシャツ一枚しか着ていない。 勿論、下着は着けているけど。

だから俺は朝から色々ヤバイんだよ! 今もこうやって桐乃と抱き合っているわけだが、俺は下に視線を向けない様に気を付けているからな。 偉い偉い。

で、まあ結局は色々重なった結果だろう。


680 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:30:19.44JjeiV/ra0 (44/45)

桐乃「……だ、だから看病して?」

よく見ると、ぼーっとした顔付きの桐乃。 嘘では無いことはすぐに分かる。

京介「分かった。 布団敷いてくるから、ちょっと待ってろ。 大人しくしとけよ?」

だったら俺は、そう言うしか無いだろう。


クリスマスの夜 終


681 ◆IWJezsAOw62013/08/13(火) 13:30:45.52JjeiV/ra0 (45/45)

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。


682VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 14:02:32.21u5Z79qcQo (1/1)

乙です‼


683VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 14:05:15.4422ikgrMZo (1/1)

乙です


684VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 14:50:51.30uB09TWUv0 (1/1)



生まれ変わったら京介になりたい


685VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 14:54:11.20KvjmA3nUo (1/1)

ここに至ってまだ我慢出来る京介の鋼の精神力ですよ

乙!


686VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 14:56:07.10ziHqkm59o (1/1)

乙!
今回のはマジで俺を殺しにきてるな


687VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 14:58:33.87RpMNKAwWo (1/1)


昨日の分と2つ続けて読んでもう死んでも何の悔いもないです


688VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 15:29:39.96IXX2eanAO (1/1)

乙です

熱くて甘いなぁ…ふひひひひ


689VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 18:07:36.160G5KOWRgo (1/1)

子供な俺にきりりんが風呂に行った理由を教えてほしい


690VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 18:36:34.12KZH843tm0 (2/2)


>>689
濡れたってことじゃないか


691VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 18:55:51.54Hh09XQt5o (1/1)

おつ


692VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 19:24:29.21EB66zYIjP (1/1)

>>689
とかく臭いを気にするんだよ年頃の娘ってのは。
だがそれがいい!とか言ってるからお前は童貞なんだ


693VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 19:26:10.77Eqm20t6F0 (1/1)

もう挿れれば?

って黒猫なら言うな。


694VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 21:45:43.22f/E0mEN50 (1/1)

悶死セレクション受賞のお知らせマダー?


695VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/13(火) 22:59:12.74I9hJfRZW0 (1/1)

>>694
先ほど発表がありました。最高金賞です


696VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 00:03:03.86aZggOmDr0 (1/1)

>>694
同時に審査員特別賞も受賞ですおめでとうございます。


697VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 07:42:29.82LMzjfRh10 (1/1)

これは良いものだ


698 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:34:06.46+HZlmNrm0 (1/43)

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

投下いたします。


699 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:34:33.05+HZlmNrm0 (2/43)

あれから数日。 桐乃は未だに体調を崩しており、現在は12月28日。

京介「……まだ具合悪いか?」

桐乃「うん……ごめんね。 毎日」

京介「何がだよ。 お前と毎日ずっと居れるんだから、これ程嬉しいことはねえっての。 馬鹿か」

桐乃「……シスコン」

京介「悪いか? シスコンで」

桐乃「……悪くはないケド」


700 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:34:59.94+HZlmNrm0 (3/43)

京介「へへ。 だろ」

布団に寝転ぶ桐乃を見て、俺は桐乃の頬に手を添える。

京介「まだ結構熱あるよな。 なんか飲みたい物とか、食いたい物あれば言ってくれよ」

桐乃「はいはい。 あたしは大丈夫だって……」

京介「仕事は休んどけよ? そんな状態で行くとか言ったらさすがに怒るからな?」

桐乃「……本当は超行きたいケドね。 京介がそうゆーなら、休む」


701 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:35:28.10+HZlmNrm0 (4/43)

京介「……おう。 さんきゅ」

桐乃「ひひ。 なんで京介がお礼言ってんの?」

京介「お前にそういう風にしつけられてるからだよ。 人使いが荒い妹だからなぁ」

桐乃「人が寝込んでるからって好き放題言っちゃって。 ふん……治ったら覚悟しといてね」

京介「……へいへい」

こんな感じで、ここ数日の間、俺はずっと桐乃の近くに居た。 そうするだけでも、桐乃は嬉しそうに笑ってくれたから。

それと、これはお返しでもあるのだ。 いつか、桐乃に看病してもらった時のお返し。


702 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:36:06.53+HZlmNrm0 (5/43)

……そういや、その時こいつはコスプレしてくれたんだっけか。 懐かしいなぁ。 またしてくれねえかな?

京介「へへ」

桐乃「……今絶っ対、ヘンなこと考えてたでしょ」

京介「そ、そんなことねーよ!」

桐乃「嘘吐かないで。 なに考えてたの?」

京介「……あやせ並みの鋭さだな。 くそ」

京介「昔、お前が俺の看病してくれたときの事、思い出してた」

京介「お前のおかげで……即、治ったからな」


703 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:36:42.38+HZlmNrm0 (6/43)

桐乃「ふん……そりゃ、こんだけ超美少女が看病してあげて治らなかったら、マジで許さないしね」

京介「いや、多分ネコミミとネコしっぽのおかげだろ?」

桐乃「……あれは忘れて欲しいんだケド」

京介「写真残ってるけど」

桐乃「ぶっ! ま、まだ持ってたの!?」


704 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:37:09.65+HZlmNrm0 (7/43)

叫び、咳き込む桐乃。 そんな桐乃の背中を叩き、落ち着かせる。

京介「当ったり前よ! あれは俺の家宝だからなぁ!」

桐乃「へ、へえ。 じゃあさ……今度、それでデートしてあげよっか?」

京介「ま、マジで!? いや、でも待てよ……お、お前」

京介「まさか……あの格好で外に出る気か……?」

桐乃「で、出るワケ無いって! 家で! 家でデートしようってハナシしてんの……」

京介「お、おう……そうか。 びっくりした」


705 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:37:44.41+HZlmNrm0 (8/43)

ここで桐乃が頷いたら、どうしようかと思ったぜ。 さすがの俺でもメイド服にネコミミとしっぽを付けた妹と外でデートはしたくねえからな……。 視線で死ねる。

京介「ま、そういうことなら是非お願いしたいな! 出来ればこの前の日くらい甘えてくれると俺は嬉しい!」

桐乃「……どーしよっかなぁ? 考えといてあげる。 ひひ」

京介「はは。 宜しく頼むぜ、桐乃さん」

桐乃「……はいはい。 あ、じゃあさ。 コンビニでゼリー買ってきて。 喉痛いし、そうゆうの食べたいカンジ」

京介「おう、任せろ!」


706 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:38:12.72+HZlmNrm0 (9/43)

俺は全く持って無防備で、何にも警戒していなかったんだ。

桐乃の目的は、そんな物では無く、もっとヤバイ物で。

京介「ただいまー。 桐乃ー、買ってきたぞー」

コンビニ袋を片手に、桐乃のところへと向かう。

布団の上でうつ伏せになりながら、桐乃は何やら本を眺めているようだった。

京介「おかえりくらい言えよ。 ほら、ゼリー今食うか?」

桐乃「……」


707 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:38:47.84+HZlmNrm0 (10/43)

しかとかよ! せめて頷くかしろって。

京介「……何読んでんの?」

なんとなく、その本には見覚えがあった。 ええっと。

……それ俺のノートじゃねえかよ!!!

京介「あ、あー。 俺ちょっと用事あるから、旅立ってくるわ」

桐乃が反応しない今の内にと思い、俺はその場をそーっと離れる。 気付かれない様に。

ある程度距離を取り、居間に到着。 こ、怖かった。


708 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:39:25.89+HZlmNrm0 (11/43)

と思ったが、案の定桐乃から声が掛かる。

桐乃「へえ? あたしが風邪で寝込んでるのに、ほっといてどっか行くんだ?」

京介「……すんません」

俺が言うと、桐乃は指でくいくいと俺を呼びつける。 まるで召使いの気分だぜ。

桐乃「……これだよね? この前あんたが黒いのに見せたくなかったのって」

京介「あ、ああ。 そうです」


709 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:39:56.63+HZlmNrm0 (12/43)

桐乃「ふうん」

ぱらぱらとページを捲り、桐乃は言う。

京介「て、てか……どうやってそれ見つけたの?」

桐乃「この前の時になーんか怪しいなーって思ったから、さっき押し入れ探させてもらっただけ。 もうちょっとうまく隠せばいいのに。 ひひ」

京介「いやいや、だってそれ人生ゲームの箱の中に……あ」

そうだ。 前にそれで遊んだ時、箱から出してそのままだったのか。

桐乃「……だから前は探しても無かったんだ。 なるほどね」


710 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:40:27.70+HZlmNrm0 (13/43)

それでお前は定期的にそういうのを探しているってことか。 やめてください。

桐乃「で、何かゆうことは?」

京介「あ、あはは……えっと」

京介「そ、それに乗ってる奴、めっちゃ可愛くね?」

桐乃「ふーん。 ふう~ん」

京介「……なんだよ」

桐乃「べっつに~。 でも、このくらいじゃ驚かないし。 京介も隠すことないのに」


711 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:41:10.83+HZlmNrm0 (14/43)

京介「そう言って貰えるとすげえ助かるが……」

桐乃「だから、今度は一緒につくろ。 アルバム」

桐乃は笑顔を俺に向けながら、そう言うのだった。

なんというか、あれだけ必死に隠していた俺が馬鹿みたいで、笑えて来るぜ。

京介「……おう」

桐乃「だケド。 このキスしてる写真はちょっとヒドイかな。 これで何してたのかは聞かないであげるケドぉ」

……そういうことはマジで言わないで欲しい。 黙って触れずにいることができねえのか、こいつ!


712 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:42:17.89+HZlmNrm0 (15/43)

桐乃「……だから、あたし用に一枚写真とろ。 それで許したげる」

京介「そ、それって……お前がその写真で何かするってことか……?」

俺が言うと、桐乃は熱で赤くなっている顔を更に赤くさせ、言う。

桐乃「そ、そんなワケ無いでしょ! 変態!!」

京介「は、はは……だよな。 わり」

桐乃「……チッ。 いいから、早く写真とろ」


713 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:42:50.71+HZlmNrm0 (16/43)

京介「分かったよ……で、どんな写真撮ればいいの?」

桐乃「ヒミツ。 とりあえず準備してよ」

京介「……準備?」

桐乃「あたしとあんたで一緒に写るんだから、セットしてってこと」

京介「ああ、オッケー。 分かった」

言われるがまま、俺は桐乃のスマホをテーブルの上に置く。 カメラをこちらに固定して、タイマーをセットして。

京介「出来たけど、これで良いのか?」


714 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:43:18.61+HZlmNrm0 (17/43)

桐乃「うん。 じゃあ、ほら」

桐乃は言い、俺に向けて両手を差し出す。

……つまり、抱っこしろってことだよな。 普通に考えたら。

京介「……はいよ」

俺は桐乃の背中と足に腕を回し、桐乃は俺の首辺りに腕を回す。

そのまま桐乃を抱き上げ。


715 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:43:45.06+HZlmNrm0 (18/43)

京介「これで良いか?」

桐乃「ひひ。 おっけおっけ。 あんま時間無いから、ちゃんとカメラの方向いてね」

京介「へいへい」

その姿勢のまま数十秒。 やがて、その時が近づいていることを知らせる音が、桐乃のスマホから聞こえて来る。

桐乃「ね。 京介」

京介「ん?」


716 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:44:11.37+HZlmNrm0 (19/43)

桐乃「これが最後の指示ね。 はい」

そう言われ、桐乃の方に視線を移すと、目を瞑り、ほんの少し笑っている桐乃の顔が見える。

……ああ、はいはい。 そういうことかよ。

京介「……」

俺はそのまま、桐乃にキスをする。 桐乃は何も言わず、俺に回していた腕を少しだけきつく、ぎゅっとしていた。


717 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:44:37.51+HZlmNrm0 (20/43)

京介「……満足か?」

写真撮影が終わり、桐乃を布団に降ろしながら俺は聞いた。 桐乃は未だに目を瞑ったまま、口を開く。

桐乃「ぜんぜーん。 あたしが満足したと思う?」

京介「するわけねえよな。 俺の妹だもんな?」

桐乃「そーゆうこと。 でも、今日はちょっとだるいし、また今度ね」

京介「おう。 早く治しちまえよ? もうすぐ年越しだしよ」

桐乃「分かってるって。 大人しく寝てるっつーの」


718 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:45:44.61+HZlmNrm0 (21/43)

桐乃「……でも、冬コミいけないのは残念かなぁ」

京介「つっても三日間あるだろ? それまでに治せばいいだろ」

桐乃「そーじゃなくて。 黒いのが出るのって一日目っしょ。 それに行けないのがちょっと残念」

京介「……そっか。 はは」

桐乃「なに笑ってんの?」

京介「いや……仲良いなって思っただけだよ」

桐乃「……ふん」


719 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:46:15.65+HZlmNrm0 (22/43)

その日はそうして、桐乃と少しの話をしながら過ごした。

それが起きたのは次の日の朝早くで、俺が桐乃の分の朝飯を作っているときのことだ。

時刻は6時。 桐乃がいつ起きても良い様に、早めに起床したというわけ。

で、おかゆを作っていたところ、俺の携帯電話が居間で鳴っているのに気付いた。

桐乃を起こしたらまずいし、火を止めると急いで居間へと向かう。

発信者は……沙織? 何だ、こんな朝早くに。


720 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:47:03.34+HZlmNrm0 (23/43)

京介「もしもし?」

「良かった……起きてたでござるか。 京介氏」

どこか慌てた様子で、沙織らしからぬその様子に、少しだけ胸が騒ぐ。

京介「なんか用事か?」

俺がそう聞くと、沙織は少々間を置いた後に喋りだした。

「実は……少々困った事になりまして」


721 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:47:41.93+HZlmNrm0 (24/43)

「拙者は今日、黒猫氏と一緒にサークル参加だったのでござるが……」

「……サークルで参加の際は、サークル参加証という物が必要なのです。 それを忘れてしまいまして」

京介「おいおい……ってことは、参加できねえのか?」

「いえ、そういう訳では無いのですが……」

なんだ、随分と濁した言い方だな。

京介「……ええっと、つまり?」


722 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:48:11.96+HZlmNrm0 (25/43)

俺がそう聞くと、電話からはしばらく何も聞こえない。

京介「おい? 沙織?」

「……」

「……ごめんなさい。 忘れたのはわたしよ。 本当だったらあなたに言う必要も無いことなのだけど」

京介「黒猫、だよな? どういうことだよ」

「……こんなことを頼むのは非常識だと分かっているわ。 迷惑極まり無いことも分かっているわ」

「……参加証はわたしの家にあるの。 妹たちに先ほど聞いて、それは確実だわ。 無理なら無理と言って頂戴」

「それを……持ってきてくれないかしら?」


723 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:49:12.78+HZlmNrm0 (26/43)

京介「……そういうことか」

普段なら、絶対に持って行ってやるよ。 友達だもんな。

俺にとっちゃそれが当たり前だし、困ってる時に何もしないなんてことは出来ないだろうさ。

でも。

でも今、俺は。

京介「……悪い、黒猫。 今日はどうしても外せない用事があるんだ。 本当にすまん」


724 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:49:39.22+HZlmNrm0 (27/43)

あの状態の桐乃を放っておいて、いけるわけがねえ。 俺にとって大事なのは、そういうことなんだ。

「良いわよ。 構わないわ」

「それに、忘れたからと言って参加できないと言う訳でも無いのよ。 身分証があれば当日でも入場可能だから。 朝っぱらからごめんなさい」

京介「悪いな……頑張れよ、サークル」

「ふふ。 わたしを誰だと思っているの。 完売して、あのビッチに自慢しにいってあげるわ」

京介「はは……。 おう、期待してる」

そうして、通話を終える。


725 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:50:05.68+HZlmNrm0 (28/43)

桐乃「……電話、黒いのから?」

桐乃の声が聞こえ、そちらに視線を向けると、やはり顔色が悪い桐乃の姿。 ぶり返したのもあり、今日も体調は悪そうに見える。

京介「起きてたのか。 体調は……聞かない方が良さそうだな」

京介「電話は沙織から。 途中で黒猫に変わったけど」

桐乃「……あいつ、なんだって?」

桐乃の近くに行き、すぐ横に座る。 近くで改めてみると、辛そうなのは見て取れる状態。

京介「なんか、サークル参加証ってのを忘れちまったらしい。 でも、参加は出来るから心配いらねーって」


726 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:50:32.03+HZlmNrm0 (29/43)

桐乃は俺の言葉を聞くと、頭を押さえる。 数秒した内、口を開いた。

桐乃「それだけ? 黒いのが言ってたのって」

京介「おう。 それだけだが」

桐乃「……あの馬鹿」

体を起こし、俺の方に顔を向け、続ける。

桐乃「確かに入れるよ。 参加証を当日忘れても」

桐乃「でも、コミケはそういうのにすっごく厳しいの。 ペナルティが付くに決まってるよ」


727 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:50:57.14+HZlmNrm0 (30/43)

京介「……ペナルティ?」

桐乃「……うん。 入場時間を一般と一緒にされたり、最悪……次回参加不可とかになるかも」

京介「あいつ……それを言わなかったってことかよ」

桐乃「迷惑掛けたくなかったんじゃない? あの馬鹿。 ほんとに馬鹿」

桐乃「だから、京介」

桐乃が言おうとしていることなんて、分かっている。 こいつだったら、そう言うのだろう。


728 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:51:24.05+HZlmNrm0 (31/43)

桐乃「行ってあげて、黒猫のとこに」

それでも、俺の答えは決まっているんだ。 黒猫は大切な親友だけど、沙織も大切な親友だけど。

京介「……俺は、行けない。 お前を放って置くことなんて出来ねえよ」

桐乃「あんたも……ばか。 黒いのにとって、本を出すってことはとても大切なことなの。 分かるでしょ、あんたなら」

京介「……まあな。 それは、分かるけどよ」

桐乃「あたしがエロゲーとかを大事にしているのと一緒。 そのくらい、黒いのにとって大事なことだから。 だから、次に参加出来ないとかなったら、あいつすっごい落ち込むと思うの」


729 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:52:02.01+HZlmNrm0 (32/43)

桐乃「……馬鹿だから、口ではそんなこと言わないかもしれないケド」

桐乃「京介も、あたしが同じ様な時に助けてくれたじゃん? だから、黒いののことも助けてあげて。 あたしは大丈夫だから」

京介「……言ってることは分かった。 黒猫がどれ位、それを大切にしてるのかもな」

京介「でも、黒猫は黒猫で……お前はお前だ」

京介「俺は、お前の方が大切なんだよ。 桐乃」

黒猫には悪いが……俺は、そうなんだ。 それが本当の気持ちだ。 嘘を付くことは出来やしない。


730 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:52:28.69+HZlmNrm0 (33/43)

桐乃「……ありがと。 嬉しい」

桐乃「京介ならそうゆうと思ってたのかな。 あたし」

桐乃「……ね、京介」

京介「……どした?」

桐乃「温泉旅行行ったときのこと、覚えてる?」

京介「覚えてるよ。 それがどうした?」

桐乃「あの時、京介は三つだけ命令聞いてくれるって言ったよね。 あたしの命令を」

京介「……そう、だな」


731 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:52:56.69+HZlmNrm0 (34/43)

桐乃「まだ一個残ってるから、命令」

桐乃「黒猫のところに行ってあげて、今すぐに」

京介「……お前」

桐乃「あたしは大丈夫だから。 てゆうか、ただの風邪なんだしそんな心配いらないっつーの。 シスコン」

桐乃にとっては多分、俺には傍に居て欲しいと思っているのだろう。 なんとなく、分かる。 兄妹だからな、俺たちは。

でも、それでも桐乃は黒猫のことを想っているのだ。 大切な友人として、最初に趣味について全力で話せた相手として。


732 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:53:26.77+HZlmNrm0 (35/43)

京介「……はぁ」

京介「分かったよ。 そこまで言われたら、聞かないわけにはいかねーよな。 なんつっても、桐乃の命令と来ちゃあ聞く以外に選択肢はねえよ」

京介「……行ってくる。 桐乃」

桐乃「ひひ。 絶対届けること。 これも命令ね」

京介「おう。 任せとけ」


733 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:53:52.56+HZlmNrm0 (36/43)

京介「だけど、何かあったらすぐ連絡してくれ。 絶対に、な。 これだけは約束してくれ」

桐乃「だから大丈夫だって言ってるのに。 でも……うん。 分かった」

京介「ああ。 じゃあ、桐乃」

京介「行って来ます」

桐乃「うん。 行ってらっしゃい」


734 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:54:18.95+HZlmNrm0 (37/43)

それから、俺がまず向かったのは黒猫の家。

その道中にて、黒猫とは電話を済ませていた。

今から行くことと、絶対間に合わせるということだけを伝えて。

俺と桐乃が住んでいるアパートからはそれ程離れておらず、大して時間は食わずに到着。

黒猫が住んでいる社宅に到着すると、その入り口には俺の見知った奴が立っていた。


735 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:54:45.06+HZlmNrm0 (38/43)

日向「高坂くん! こっちこっち!」

京介「日向ちゃんか!? どうしたんだよ?」

日向「さっきルリ姉から電話があったんだよ。 「わたしの下僕がそちらに行くから、歓迎してあげなさい」って」

京介「……下僕ではねえけど」

どっちかというと、桐乃の下僕って感じだぜ。

日向「へっへっへ。 そういえば聞いたよ、高坂くん」

京介「ん? 何を?」


736 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:55:11.65+HZlmNrm0 (39/43)

日向「まだ彼女作って無いんだって?」

ああ、そっちの話ね。 はは。

京介「……えーっと、誰に聞いたの、それ」

日向「ルリ姉に決まってるじゃん。 別れたって聞いたときはどうなるのか心配だったけど、今だと高坂くんの話とかするとき、とっても幸せそうにしてるんだよね。 だから付き合ってる物だと思ってたんだけどねぇ」

京介「……そっか」

黒猫は多分、気を利かせてくれているのだろう。 そりゃあそうだ。 俺が妹と付き合っているなんて、認める奴の方が少ねえなんてことは分かりきっている。


737 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:55:39.21+HZlmNrm0 (40/43)

日向「で、それで物は相談なんだけど、あたしとかどう!?」

京介「はは。 わりいが、俺の恋愛対象は高校二年生限定なんだよ。 だからごめんな」

日向「ちぇっ。 じゃあ後四年間かぁ……」

京介「いいや、違うぜ。 後四年後は大学三年生限定だな」

日向「ええっ!? もしかして高坂くんって、相手の年齢と自分の年齢気にする感じ? ていうか、年齢にこだわる感じ?」

京介「そうだなぁ。 そういえばそうなるのかもな」


738 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:56:06.03+HZlmNrm0 (41/43)

日向「じゃあ、あたしもルリ姉もダメじゃん!! 今高校二年生の人って誰か居たっけ?」

京介「んー、どうだろうな?」

日向「あ、そういえばキリ姉っていくつだっけ?」

京介「……さぁ?」

日向「今度聞いておこーっと。 あ、てかこんな立ち話してる場合じゃなかった。 これ、持って行ってあげて」

言い、日向ちゃんは俺にサークル参加証を手渡す。

京介「ああ、ありがとうな。 今度お菓子でも買ってやるよ」


739 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:56:39.13+HZlmNrm0 (42/43)

日向「マジ? それってデートの誘い?」

デート、デート。 デートね……ふむ。

「あんた、なに年下の子供お菓子で釣ってんの? マジキモイんですケドぉ」

京介「いや、黒猫とか桐乃と一緒に遊んだときにでも。 はは」

日向「まー、あたしは楽しければ何でもいいけどね~。 それじゃほら」

日向「行ってこい! 高坂くん!」

京介「おう! またな」


740 ◆IWJezsAOw62013/08/14(水) 13:57:08.33+HZlmNrm0 (43/43)

最後にそう言い、手を振る日向ちゃんに手を振り返し、走る。

駅までは……バスを使うよりかは、走った方が良さそうだ。

今の時刻は6時30分。 こっから東京までは50分くらいか? やべえ、これで間に合わなかったら完全に立ち話の所為じゃね?

……いいや、間に合わなかったってのはありえない。 桐乃に絶対間に合わせろと命令されちまってるからな。

だったら俺はそれに答えるだけだ。 何としてでも間に合わせる。 ってな。

強くそう想い、俺は走り、駅へと向かって行った。


コミケ当日 前編 終


741VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 14:00:14.80C3fnl8/To (1/1)

おつ


742VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 14:03:32.54RP2xGazQo (1/1)

おつ
日向が誰か全くわからん


743名無しNIPPER2013/08/14(水) 14:12:16.37VSGCaEWAO (1/2)


久々に読んだけどやっぱ面白いな

原作未読の人達には二次創作で先入観を持たない事を祈る


744VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 16:32:43.207d8pk51J0 (1/1)

>>743
またおまえか。
レスが不自然だ。
そんな奴いないから。


745VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 17:04:39.52C/ACCTQU0 (1/1)



最後の命令は友達のためとかきりりんマジ天使
そしてそっと日向に兄妹カップルバレフラグがww


746VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 17:17:24.8555GshHE10 (1/1)

乙!
今日もありがとry

解決屋京介キター!
こういう『ピンチのときに頼りになる京介』が見たかった。

日向も元気そうで何よりだ!


747名無しNIPPER2013/08/14(水) 17:25:42.93VSGCaEWAO (2/2)

>>744
色々突っ込みたいけど俺は全くの他人だからな


748VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 18:14:55.40OsMMAD1oo (1/1)

乙です


749VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 20:35:08.97gPDQkdMdo (1/1)

おつ
日向ちゃん知らんのか。知られたら辛いだろうなあ

それはそうと秋葉原まで一本で行けるとか羨ましいわこいつら
御茶ノ水で乗り換えるの混んでて面倒くさいし


750VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 20:55:54.81PvDsmC6to (1/1)

コミケ参加するのに遠征しなくていいとか羨ましいわお前ら


751VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 22:32:54.18dmm+WD4O0 (1/1)

京介がしっかり桐乃を大切にしてるのが良く分かる話だなぁ


752VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/14(水) 23:18:27.38xUkq6ymeO (1/1)

確かに原作読んでなかったら、そもそも沙織とか赤城とかも知らないはずだから、
今ここで日向ちゃん知らないアピールはおかしかったな。
今まで沙織、赤城なんかをスルーしてたのにな。


753VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/15(木) 00:38:14.83H8CHcFgX0 (1/1)

おつ

広島の俺には夢物語…



754VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/15(木) 02:26:49.187RH479fio (1/1)




755VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/15(木) 14:30:25.27WGxkEGv+o (1/1)

コミケなんて20年くらい行ってねーな


756VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/15(木) 17:08:07.94Ajx2CP3ko (1/1)

あれ、もしかしてもうすぐここも終わり…
寂しくなるな


757VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/15(木) 17:08:30.32tEDZp78Yo (1/1)

一期に日向ちゃんっていたっけ?
俺は一期までは見たのよ


758VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/15(木) 17:32:02.937IrnVKsko (1/1)

いるよ
喋らないけど


759VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/15(木) 17:58:13.67qlSJRjyCo (1/1)

>>757今一期見返したw
一期9話「エロゲー三昧なわけが…」に出ているね、台詞はない。
Aパートでコタツで寝ていたり、メルルの絵を描いているお河童の小さい子が珠希(たまき)。

Bパート中盤で電波な電話をしている黒猫(瑠璃)を、珠希と一緒に残念そうな顔で見ているツインテが日向(ひなた)。

>>742
知らないって人の為に補足すると五更家の三姉妹は上から黒猫(瑠璃)、日向、珠希。
年齢は一期9話時点では、上から中三、小四、幼稚園年長組。

詳しくは原作8-9巻がお勧め。


760VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/15(木) 18:53:24.40YgP46oiW0 (1/1)

↑実にどうでもいいな。


761VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/15(木) 19:23:05.71yX41e+V5o (1/1)

黒猫の妹ね
それなら見たわ


762 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:45:39.88r3ehhr4X0 (1/29)

こんばんは。
乙、感想ありがとうございます。
一応ネット配信までですので、後三日ですかね?
とは言っても書きたいネタが最近ちょろちょろと出てきてるので、なんだかんだ言って続く可能性が。
仕事が少し忙しくなりそうなので、投下間隔は落ちそうですが。


それでは、夜中にこっそり投下します。


763 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:46:07.28r3ehhr4X0 (2/29)

京介「黒猫か? 今どこにいる?」

「……あなた、本当に来たの? 桐乃は?」

「外せない用事とは、桐乃のことでしょう? なのに来るなんて……」

京介「……知ってたのか?」

「桐乃とはしょっちゅう話しているから。 具合が悪そうなことくらい、分かるわよ」

「それで、あなたはそんな桐乃を放って来たの?」


764 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:46:33.49r3ehhr4X0 (3/29)

京介「……ああ、そうだよ」

「それは、あなたの意思?」

京介「……正直に言った方が良いよな? その質問には」

「……」

黒猫は答えず、俺はそれを肯定と受け取り、続ける。

京介「俺の意思じゃあない。 俺は、桐乃の傍に居てやりたかった」

京介「でも、命令されちまったんだよ。 生意気な妹にな。 行って来いって」


765 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:47:02.50r3ehhr4X0 (4/29)

「……ふふ。 そう」

京介「……俺が恩知らずでショックか?」

「いえ、そんな訳無いじゃない」

「あなたも本当のことを話してくれたから、わたしも本当のことを話すわ」

「それを聞いて、とても安心したの。 今、わたしはね」

京介「安心?」


766 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:47:30.33r3ehhr4X0 (5/29)

「そうよ。 多分……だけど。 あなたが桐乃のことを大切にしているのが分かって、安心したのかしら? 勿論、そんなことはずっと前から分かっていたことだけれど」

「自分でも良く分からないのよ。 良く分からないけれど、そんな感じ。 ごめんなさい、上手く伝えられなくて」

京介「いや……充分だよ。 それだけ言ってもらえりゃあ、充分だ」

京介「って、こんな電話してる場合じゃねえよな? お前、今どこにいんの?」

「あら。 あなたには見えないのかしら。 でもそれは仕方の無いこと。 魔界の波動を感じられないあなたには、わたしの姿を見ることが出来ない……」

……そうですか。


767 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:47:57.96r3ehhr4X0 (6/29)

京介「悪かったな。 で、どこだよ?」

「あなたの後ろよ。 先ほどからずっと、その間抜けな背中を眺めていたわ」

そう言われ、振り向く。

黒猫「おはようございます。 先輩」

そこには黒猫が居た。

……怖いな、こいつ。


768 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:48:25.43r3ehhr4X0 (7/29)

沙織「ありがとうございます! 京介氏!」

無事に間に合ったようで、入場時間を待つ沙織から頭を下げられる。

京介「構わないって。 それに、お礼は俺より桐乃に言ってくれ」

沙織「……分かっております。 きりりん氏には、京介氏のコスプレ写真を送ることでお礼をすることになっておりますので」

京介「へ、へえ……」

とりあえず、毎度のことだが水面下でその様な取引をするのはやめて頂きたい。 せめてひと声掛けてくれよな。


769 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:49:07.69r3ehhr4X0 (8/29)

京介「……でも、俺は桐乃に頼まれればいつでもコスプレくらいしてやるけど……何でだろうな?」

沙織「京介氏がきりりん氏の前だと、だらしない顔付きになるからでは?」

京介「……自覚無いけど」

沙織「はっはっは」

なんだその笑いで誤魔化した感じ。 俺ってそんななってるの? 納得いかないんだけど。


770 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:49:34.47r3ehhr4X0 (9/29)

黒猫「……迷惑掛けたわね。 ありがとう」

沙織と話していると、横から黒猫がそう言った。

京介「そう改まって言われるとなんか照れるな。 はは」

京介「……あ、そういやさ」

一つ思い出した。 俺も礼を言わなければならないことを。

京介「黒猫、ありがとな。 日向ちゃんに黙っててくれて」


771 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:50:01.91r3ehhr4X0 (10/29)

黒猫「……何を?」

京介「俺と桐乃のことだよ。 黙っててくれたんだろ?」

黒猫「……いえ? わたしは何もそんな配慮はしていないわ」

京介「……ん?」

黒猫「魔界からの魔女にあの男は攫われたとは言ったけれどね」

……魔女ってな。 つうか、それを日向ちゃんは適当に解釈したんだろうな。


772 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:50:28.79r3ehhr4X0 (11/29)

京介「……結果オーライって奴か。 はは」

先ほどのお礼の言葉をすぐに返して欲しいと思ったところで、着信音。

携帯を開くと、メールが一件届いていた。 差出人は桐乃。


From 桐乃
どう? 間に合った?


773 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:50:56.17r3ehhr4X0 (12/29)

京介「だってよ。 沙織、黒猫」

沙織「全く。 人の心配よりは自分の心配を……と言ったところですなぁ」

京介「そりゃあ、お前にも言える台詞だぜ。 ペナルティの件、黙ってた癖によ」

沙織「……はは、面目無いでござる」

黒猫「そういえば」

黒猫「桐乃が風邪をひいた原因って、結局何だったの? クリスマス前に一度ひいたとは、聞いていたけど」


774 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:51:22.57r3ehhr4X0 (13/29)

……シャツ一枚だけで寝てたからじゃね? とは言えん。 無理無理。

京介「あー。 えっと……コタツで寝てたからじゃね?」

と、俺は嘘とも言えないことを伝える。 ざっくり言えば、そうだろうし。

黒猫「なるほど。 なら自業自得ね」

黒猫「という訳で、写真を撮りましょう。 三人で撮って、あの女に送ってやりましょう」

京介「……ぶっちゃけると、俺は早く帰りたいんだけど」


775 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:51:52.79r3ehhr4X0 (14/29)

黒猫「まだバスが来るまでは時間があるわ。 それまでなら良いじゃない。 ね?」

沙織「そうですな。 きりりん氏にとっても、良いと思いますぞ」

沙織「……黒猫氏も、本当はそういうお考えなのでは?」

黒猫「……そんな訳無いでしょう。 勝手に推測しないで頂戴」

京介「はは、分かったよ。 一枚だけ撮って、送ってやるか」

京介「でもさ、あいつ内心では安心するだろうけど、表面的には絶対怒るぞ?」


776 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:52:19.53r3ehhr4X0 (15/29)

黒猫「分かっているわよ。 その為にあなたが居るのでしょう?」

……酷い扱いだな、おい。

要するに桐乃が表面的に出す怒りを俺が抑えろってことだろう? 体を張って。

……いやこの扱いはやっぱり酷いと思う。 マジで。

京介「へいへい……」

結局はそう答えるんだけどな。 いつものことだから。


777 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:52:47.04r3ehhr4X0 (16/29)

沙織「では、撮りましょう!」

そうして俺と沙織と黒猫は、三人で集まって写真を撮る。 間に合ったことを伝える為に。

俺はその撮った写真をメールに貼り付け、すぐに桐乃に送った。


To 桐乃
俺を誰だと思ってるんだ? 桐乃さんよ。


送信ボタンに指を置き、少し考える。

……ううむ。 ちょっと違うな。


778 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:53:13.86r3ehhr4X0 (17/29)

To 桐乃
妹との約束を俺が破る訳無いだろ。 シスコンだからな。


よし。 これで良い。

俺はそのまま、送信ボタンを押す。

黒猫「本当にシスコンね?」

京介「の、覗いてるんじゃねえよ! ほっとけ!」


779 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:53:40.17r3ehhr4X0 (18/29)

黒猫「あら? わたしはただ推測して言っただけよ。 当たったのかしら?」

京介「お、お前はなあ……くそ」

桐乃もよくこんな奴と言い合い出来るな。 あいつのメンタルには時々驚かされるぜ。

で、そんな会話をしている最中に着信。 開いてみると、今度は電話。

京介「もしもし、桐乃か」

「そだケド。 あんたあたし抜きで随分と楽しそうだね?」

……やっぱそうなるよなぁ!


780 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:54:06.74r3ehhr4X0 (19/29)

京介「あ、あー。 はは、いやいや、桐乃さんが居なくて滅茶苦茶寂しいっすよ。 マジで」

「ほんと? ふうん。 じゃあちょっと黒いのと変わって」

京介「黒猫か? 別にいいけど」

京介「黒猫、桐乃から電話」

黒猫「わたしに? まぁ、構わないわ」

そう言い、黒猫は電話を受け取り、耳に当てる。


781 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:54:32.80r3ehhr4X0 (20/29)

黒猫「もしもし、ご機嫌いかがかしら。 苦しんでいるの?」

……今までに聞いたことの無い心配の仕方だぜ、それ。

黒猫「あらそう。 苦しんでいるようで何よりだわ。 ふふ」

黒猫「……え? ええ。 ああ、そういうことね」

黒猫は俺の方をちらっと見ると、続ける。

黒猫「それはもうとても楽しんでいたわよ。 わたしと沙織に会えて。 会っていきなり抱き着いてきたもの」


782 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:54:59.71r3ehhr4X0 (21/29)

京介「おいおいおいおい、おい! 何の話だそれ!?」

俺は黒猫から携帯を奪い取り、耳に当て。

京介「桐乃か? 黒猫の言ってたこと全部でっち上げだからな!?」

「……はぁ、なにを心配してるワケ? 今更そんなの分かってるっての」

京介「お、おう……そうか。 なら良かった」

「でもぉ? あたしが具合悪くて寝てるのに、写真送りつけてくるなんて良い度胸だよね? そう思わない?」


783 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:55:26.31r3ehhr4X0 (22/29)

京介「……マッハで帰ります」

「うん。 よろしい」

通話終了。 末恐ろしい妹だぜ、全く。

黒猫「大変そうね。 兄さん」

京介「だ、誰の所為だと思ってるんだよ……」

黒猫「それについてはしっかりと感謝しているわよ。 ありがとう」


784 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:55:54.61r3ehhr4X0 (23/29)

黒猫「それと、桐乃にも伝えておいて頂戴。 ありがとうと」

京介「さっきの電話で言っとけば良いのによ……そのまま伝えちゃっていいのか? お前の言葉」

黒猫「たまには、ね。 打ち上げもやるつもりだから、とっとと治しなさいとも伝えておいてくれるかしら」

京介「へへ。 了解」

京介「それじゃ、沙織、黒猫。 頑張れよ」


785 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:56:24.50r3ehhr4X0 (24/29)

沙織「お任せください! 京介氏の最後の頼み……しかと聞き入れましたぞ!」

京介「……俺はまだ死なないからね?」

黒猫「そもそも、あなたが桐乃の元へ戻ったら、余計に熱が出るのじゃないかしら」

京介「お前の言っている意味は分かった。 それを踏まえた上で、少し黙れ」

と、こんな感じで愉快な仲間に見送られ、俺は桐乃の元へと帰るのだった。


786 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:56:50.39r3ehhr4X0 (25/29)

京介「桐乃、大丈夫か?」

部屋に入るやすぐ、俺は桐乃が寝ている布団の横に行き、話し掛ける。

桐乃「遅い。 あたしが死んでたらどーすんのよ」

京介「……一生後悔するだろうな?」

桐乃「ふん。 なら呑気に写真とか撮るんじゃないっての」

京介「悪い悪い。 反省してるよ」


787 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:57:43.69r3ehhr4X0 (26/29)

桐乃「ならいいケドぉ」

桐乃は口ではそう言いつつも、嬉しそうな表情をしている。 俺が間に合った事が、こいつにとっては嬉しいのだろう。

黒猫が無事、コミケに出られることが嬉しいのだろう。

京介「そういやさ、黒猫から伝言だ」

桐乃「……どーせくだらないことじゃないの?」

京介「ありがとう、早く治せ。 だってよ」

桐乃「……ふうん。 そか」


788 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:58:33.47r3ehhr4X0 (27/29)

更に嬉しそうな顔してやがるよ、こいつ。 面白いなあ。

京介「言っとくが、もうお前が治るまで俺は離れないからな。 命令も全部使ったろ?」

桐乃「はいはい。 今回は傍にいるの許してあげる。 感謝してね?」

京介「おう。 風呂入るときも一緒だぞ」

桐乃「……なんでそうなんの! 絶対イヤ」

京介「んだよ。 そんな嫌か?」

桐乃「……だ、だって」


789 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:59:12.03r3ehhr4X0 (28/29)

桐乃「……あんたとお風呂入ると、体余計に熱くなるし」

……聞いといてあれだけどな。

そういうことは頼むから心の中だけで思っていてくれ! 言われるとマジで意識しちゃうからさ!

京介「そ、そりゃ……俺も一緒だが」

桐乃「……変態」

京介「……でも、お前は俺のこと好きなんだよな? へへ」

桐乃「……チッ。 ばーか」


790 ◆IWJezsAOw62013/08/15(木) 23:59:41.90r3ehhr4X0 (29/29)

俺はそのまま、桐乃の頭をゆっくり撫でる。 桐乃の目は少しだけとろんとしていて、俺に向けられている。

桐乃「……一回しか言わない」

桐乃「……好きだよ、京介のこと」

お、おう! おうおう! やっべえ可愛い!

思わず俺は桐乃を抱き締め、布団の上に一緒に倒れた。

桐乃「ちょ……あんま近いと、風邪移っちゃうよ」

京介「構わねえ。 俺は今、こうしていたいんだよ」


791 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:00:47.97mtmAVoWE0 (1/70)

桐乃「……シスコン」

京介「そう言うお前はブラコンじゃねえか」

桐乃「……それがどうしたっつーの。 あたしは兄貴と付き合っちゃう程のブラコンだケドぉ。 文句ある?」

京介「ねーよ。 むしろめっちゃ嬉しいぜ」

桐乃「……ひひ。 だよね?」

京介「おう」

そのまま桐乃は目を瞑ると、気持ち良さそうな笑顔になっていた。


792 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:01:15.18mtmAVoWE0 (2/70)

京介「……顔、触ってもいいか?」

何聞いているんだろうな、俺。

だが俺がそう聞くと、桐乃は何も答えず、頭を少しだけ俺の方へと寄せる。

その行動の意味を理解した俺は、顔に掛かった髪を後ろに流し、桐乃の頬へと触れた。 撫でるように。

京介「……黙ってれば世界一可愛いな、やっぱ」


793 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:01:45.40mtmAVoWE0 (3/70)

俺が言うと、桐乃から返答。

桐乃「……一応聞こえてるからね、それ」

京介「……はは」

京介「でも、俺にとってはどんな桐乃も、世界一だぜ?」

桐乃「よくそんな寒い台詞出てくるよねえ。 ひひ」

未だに目を瞑りながら、桐乃は続ける。


794 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:02:12.23mtmAVoWE0 (4/70)

桐乃「でも、あたしにとっては嬉しい言葉だから」

京介「……そうかよ。 へへ」

桐乃「……うん」

それから数分、俺たちの間には心地よい沈黙が訪れていた。

やがて、桐乃は口を開く。

桐乃「……てか、顔触りすぎじゃん?」


795 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:02:41.25mtmAVoWE0 (5/70)

京介「だって仕方ねーじゃん。 お前の肌、触ってると超気持ち良いし」

桐乃「……そりゃ、モデル一応やってるし、そういうのチョー気を使ってるしね」

京介「だろうな。 で、触るのやめた方がいいか?」

桐乃「今日だけ、特別に許してあげる。 今日だけだからね、明日触ったら殺す」

迂闊に近づけないじゃねえかよ。 ていうか、寝てるときに間違えて触ったのもカウントされてしまうのだろうか。

そんなくだらないことを考えながら、俺は桐乃に。


796 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:03:06.54mtmAVoWE0 (6/70)

京介「そうか。 ありがとよ」

やったぜ! よっしゃ! 良い日だ、今日。

とりあえず今は触り放題だもんね! へっへっへ。

……それにしても、こいつってマル顔って言われると怒るけど、そんな気にすることなのかね。

俺としちゃあ、可愛い限りなんだが。

そんなことを思いながら、ほっぺをつまんでみた。


797 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:03:32.43mtmAVoWE0 (7/70)

桐乃「ひょっと、ひっぱんないれよ」

……手で払わない辺り、そんな嫌では無いってことか。 というか、そのまま喋るとか可愛いなこいつ。

桐乃「……」

俺がそれを続けていると、やがて桐乃も目を開け、俺の頬をつまむ。

京介「……」

桐乃「……」

何しているんだ、俺たちは!?


798 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:03:59.03mtmAVoWE0 (8/70)

冷静に考えてみると、すごく恥ずかしい状況になりつつあるが。

桐乃「……はらして」

桐乃も同じ事を思っていたのか、恥ずかしそうに言う。 それを聞かない訳には行かないので、俺はそっと桐乃のほっぺをつまんでいた手を離した。

桐乃「なんか、眠くなってきちゃった」

京介「……おう。 寝とけ」

桐乃「一つお願い。 良い?」

京介「命令じゃなくてか?」

桐乃「うん。 お願い」


799 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:04:26.11mtmAVoWE0 (9/70)

京介「……なんだ?」

桐乃「あたしが寝るまで、ぎゅってして」

京介「お安い御用だよ。 任せろ」

俺は再び目を瞑る桐乃の背中に手を回し、抱き寄せる。

桐乃「……えへへ」

こいつ、熱を出すとめちゃくちゃ甘えるんだな。 前もそうだったけど。

クリスマスのときは……。 あの時は確か「あんたの所為でああなった」とのことらしい。 ていうか忘れろって言ってたのに自分で覚えてるじゃねえか。


800 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:04:53.05mtmAVoWE0 (10/70)

俺としては、どっちの桐乃も桐乃で、妹で、可愛いことには変わりないけど。

それでもなんというか、このギャップはすげえぐっとくるな。 これがギャップ萌えとか言う奴なのか。 だとしたら恐ろしい物だぜ。

京介「桐乃、まだ起きてるか?」

桐乃「……ん」

京介「なんか、今更になっちまったけど」

小さく返事をした桐乃に、俺は言う。 言い忘れていた一つの言葉を。


801 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:05:25.09mtmAVoWE0 (11/70)

京介「ただいま」

俺が言うと、桐乃はすぐに返事をする。

桐乃「……おかえり」

桐乃は安心した様な顔をしていて、俺は桐乃の顔を一度撫でると、少しくすぐったそうにする。

自然と、俺は笑っていたと思う。 俺はお願いを叶える為に桐乃をゆっくりと抱き締め、目を瞑る。

それから数分経った頃には桐乃は静かに寝息を立てていた。


802 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:05:51.75mtmAVoWE0 (12/70)

寝ている桐乃に布団を掛け直し、俺は一度居間へと戻った。

喉が渇いたのもあり、冷蔵庫から麦茶を取り出したところで、携帯が鳴り響く。

発信者は沙織。 恐らく今日のコミケのことだろう。

京介「もしもし」

「京介氏。 沙織でござる」

「きりりん氏の体調はどうでござるか?」


803 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:06:18.16mtmAVoWE0 (13/70)

京介「ああ。 大分良くなってると思う。 今は寝てるけどな」

「そうでしたか。 それならば一安心……ですな」

京介「それより、そっちはどうだった? 同人誌は売れたか?」

「はっはっは。 勿論ですぞ。 今回も無事、完売したでござる」

京介「はは、良かった。 黒猫の奴、喜んでただろ?」

「それはもう。 興奮して拙者が何故か叩かれまくっておりました」


804 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:06:44.54mtmAVoWE0 (14/70)

京介「……どっかで似たようなことをされている気がするぜ。 俺の気持ちが分かったか?」

「はっはっ。 可愛いものですな。 拙者的にはきりりん氏の愛情表現を受けてみたいのですが……」

京介「あいつのは過剰すぎるんだって……まあ、可愛いけど」

「……しかし、京介氏も随分と素直になられましたなぁ」

京介「なんで俺が前は素直じゃなかった。 みたいな言い方してんだよ」


805 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:07:10.53mtmAVoWE0 (15/70)

「素直になったというより、気持ちに気付いたと言った方が正しかったですかな?」

京介「……さあな?」

「ははは。 何はともあれ、無事に終わりましたので、その報告でござるよ」

京介「おう。 お疲れ様。 打ち上げの予定とかは決まってるのか?」

「お。 さすがは京介氏。 遊ぶ事に関しては手が早い早い」

京介「遊び人みたいに言うんじゃねえ!」


806 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:07:39.44mtmAVoWE0 (16/70)

「まぁまぁ。 実は、昨年の夏の様にまたお泊りでもしようかと思っておりまして」

京介「泊まり? ああ……またあそこか?」

「いえ、今度は違うところでござるよ。 にん」

京介「……一応聞いてみるが、お前っていくつ別荘あんの?」

「……企業秘密で」

京介「……はいよ」


807 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:08:05.96mtmAVoWE0 (17/70)

「京介氏ときりりん氏が良ければ、なのですが」

「ご一緒に年越しなど、どうでしょうか?」

京介「おお、いいんじゃねえの? 桐乃も多分、喜ぶと思うけど」

京介「黒猫は?」

「是非、とのことです。 では打ち合わせも兼ねて、お時間ある時にでも一度全員でチャットでもしましょう。 勿論、きりりん氏の体調が優れないようでしたら、日程はずらしますので」


808 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:08:35.22mtmAVoWE0 (18/70)

京介「おう。 楽しみにしておくわ。 今日の夜か、明日にでも桐乃と話してみるよ」

「ええ。 では、また」

京介「またな」

こうして、俺たちの冬コミは終わる。

そして後日、打ち上げをすることが決まったのだった。


コミケ当日 後編 終


809 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 00:09:19.48mtmAVoWE0 (19/70)

以上で投下終わりです。
日付変わっちゃってますが、本日のお昼ごろ(夕方くらいかも)にも投下いたします。

乙、感想ありがとうございます。


810VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 00:10:25.84SGb5m4aKo (1/2)

おつ


811VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 00:13:40.131xg3L6zio (1/1)

乙です


812VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 00:22:53.70BT+tVJCto (1/1)

おつです
京介の誠実さが出ていて良いな


813VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 00:31:09.82hwNa7bPrP (1/1)

次は別荘編か。素晴らしい


814VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 01:27:57.82vHqVsH790 (1/2)


京介と2人っきりになれないで桐乃がはぶてそう



815VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 02:07:01.98TMi6TDSMo (1/2)


あまあまりんかわいいなあ
これだけ京介に大事にされててきりりんどれほど嬉しいだろうと考えると俺まで嬉しくなっちゃう

ネタがあるなら続けてくれた方がこちらとしても大歓喜ですので是非に


816VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 02:21:55.17HNzrTQAAO (1/1)


明日早いのに寝れなくなっちまったぜ…


817VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 02:32:14.19QySadce70 (1/1)


糖度が半端ないでござる
頬の摘まみ合いは想像するだけでほっこりする

配信後も続けて頂けるなら大歓迎です!しかしこれだけの更新頻度でネタ切れしない作者さんに驚愕


818VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 12:11:35.56DN2G5EVc0 (1/1)

投下に今気づいた、乙!

もうすぐこの神スレも終わってしまうと思うと悲しくなるな…

今の俺の体なら糖分摂取不足で死んでしまう


819VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 13:30:16.73l0aU+RtP0 (1/1)

乙!
今回もありがとです。

仕事の合間に読ませていただきました。

甘い…

甘甘甘い…

み な ぎ っ て き た !


820VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 14:31:06.82Aq1eUlZko (1/1)

乙っす!!

このスレのせいで糖尿病になってしまいそうです


更新するペースがちょうどよくて見やすいです
続けていただけることを切に願ってます


821 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:33:41.24mtmAVoWE0 (20/70)

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

投下致します。


822 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:35:13.90mtmAVoWE0 (21/70)

京介「たっだいまぁ」

今更だが、夕飯の材料の買い出しは順番制となっている。 俺が買いに行った次の日は桐乃で、桐乃が買いに行った次の日は俺で、と言った感じ。

まあでも、結局は俺の番のときは桐乃が「暇だしあたしも行ってあげよっかなぁ?」と言って来て、桐乃の番のときは「桐乃、一緒に行こうぜ!」と俺が言うから、結局は殆どの場合一緒に買い物をしているのだが。

だとすると、どうして今日に限って俺一人か。 という疑問にぶち当たるだろう。

答えは簡単。 今日、12月30日は桐乃に仕事が入っていたからだ。 勿論近くまで送っていった。 つい昨日まで体調を崩していたし、何より桐乃に変な奴が近寄らないように。 仕事に行くのも本当は反対なんだけどな。


823 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:35:40.49mtmAVoWE0 (22/70)

そして、俺は帰りに商店街に寄って来て、買い物を済ませたというわけだ。

で、だとしたらどうして「ただいま」と言ったかという疑問に次はぶち当たる。

それも答えは簡単だ。 単に俺にそういう癖がある。 というだけのこと。 大した意味なんて無い。

そろそろこんな無駄話を続けるのもどうかと思うので、本題に入るとしよう。

京介「……ふむ」

俺は料理の材料を冷蔵庫に入れると、最後に一つ残った物をコタツの上に置く。


824 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:36:06.91mtmAVoWE0 (23/70)

寒いのもあり、コタツの中に入り、その物を凝視。

「果汁100%! 寒い冬に、暖かい家の中で、冷えたチューハイ *お酒は20歳になってから」

京介「どうみても酒だよな……」

興味があったわけじゃないよ? 一応言っとくけど。 てか、別にあったとしても良いだろ。 俺だってもう20歳だしな。

正直に言うと、くじ引きで当たったんだよ。 当たったというか、今回ははずれの様な物だけど。 でもまあ、はずれにしては良い物だと思うぜ。

……で、だ。


825 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:36:34.02mtmAVoWE0 (24/70)

この酒をどうするかって問題が出てくるんだよなぁ。 以前なら、仮にもこういうのが当たった場合は親父に渡せば良かった。 それで全て解決。

だが、今はそれは出来ない。 かと言ってただ捨てるのも勿体無さすぎる。 ううむ……。

でもさ、俺はもう飲んでも問題無いわけだし、そこら辺は堂々としてても問題ねえよな?

よし……。 と、とりあえずひと口飲んでみるか。 桐乃が帰って来る前に、ちょろっと。

そんな考えに至り、俺はコタツの上に立つチューハイの缶を手に取る。

俺も飲んだことが無いと言えば嘘になるから、大体の味は知っている。 結構美味いよね、チューハイ。


826 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:37:01.26mtmAVoWE0 (25/70)

そして、俺は指を蓋に掛け。

「たっだいまあ」

誰だ!? いや一人しかいねえよ!! 桐乃だ桐乃!!

京介「お、おう! おかえり! はは」

桐乃は自身のカバンと、どこかで買い物でもしたのか、ビニール袋を床へと置く。

桐乃「……なんか隠したでしょ?」

京介「いや! そんなことは無いぞ!?」


827 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:37:28.10mtmAVoWE0 (26/70)

桐乃「怪しすぎ。 早く出して」

……なんでこいつはそんな鋭いんだよ!! ああ、考えてみればそうだ。 あのお袋の娘だぜ。 そりゃそうだ。

と、変に納得したところで状況に変わりがあるわけも無く、俺は相変わらずの乾いた笑いを桐乃に向ける。

京介「は……はは」

桐乃「……」

無言で片手を差し出す桐乃。 早くしろとのことらしい。

俺は泣く泣く、渋々、つい先ほど隠した酒を桐乃に手渡すのだった。


828 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:37:53.40mtmAVoWE0 (27/70)

そして、再び缶はコタツの上へ。

俺と桐乃はその缶を挟むように座っている。

桐乃「……京介ってお酒飲むっけ?」

危うくぶち殺されるのかとも思ったが、意外にも桐乃から怒りは感じられない。 というよりは、少しだけだが興味がありそうな顔付きをしている。

京介「いや、飲まないけど。 たまたまくじ引きで貰ったんだよ。 それ」

桐乃「へえ。 で、飲むの?」


829 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:38:20.13mtmAVoWE0 (28/70)

京介「と思ってたんだけど……桐乃が嫌って言うなら、飲まねえよ」

桐乃「あー。 実はさ」

桐乃は言い、先程置いたビニール袋を取り出す。

桐乃「これ、今日貰ってきたんだけど……」

中を見ると、数本の缶。 ふむ、どうみても酒だな。

京介「お前の仕事先はどういう考えなんだ……」


830 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:38:46.76mtmAVoWE0 (29/70)

桐乃「京介の思ってるのとはちょっと違うって。 あたしが無理矢理貰ってきたの。 お父さんにあげますって言って」

京介「……なんで?」

桐乃「だって~。 ひひ。 興味あるじゃん? 少し」

……やっぱそうかよ。 大体そんなところだろうとは思ったけど。

京介「お前まだ高校生じゃねえかよ! 駄目に決まってんだろ?」

桐乃「ふうん~。 じゃあ、昔あんたが隠れてお酒少し飲んでたのとか、全部あたしの気のせいだったってこと?」


831 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:39:13.65mtmAVoWE0 (30/70)

京介「……何故知っている」

桐乃「どうしてだろうねぇ~? ふひひ~」

恐ろしい奴だ。 絶対誰にもばれてないと思ったのに。

桐乃「で、なんて?」

京介「……でも駄目! 駄目な物は駄目だ!」

桐乃「ケチ。 じゃあもうあやせに言いつけるし」

京介「あやせを良い様に使ってるよな……? お前」


832 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:39:39.27mtmAVoWE0 (31/70)

桐乃「あたしはただ報告するだけだって。 問題無いっしょ?」

京介「一応、その報告する内容とやらを聞いても良いか?」

桐乃「京介がぁ、毎日毎日お酒飲んで、あたしに暴力振るってくるって相談する」

京介「それあやせじゃなくても問題になるじゃねえかよ!! やめて!?」

桐乃「じゃ、飲んで良いでしょ?」

……このヤローめ。


833 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:40:06.77mtmAVoWE0 (32/70)

ぶっちゃけた話、別に俺も真面目に生きろなんて言える立場じゃねえし、ある程度のことくらいなら良いんじゃねえの? とは思っている。

でもな、俺が恐れているのはそうじゃねえんだ。 こいつ、酒飲むとめっちゃ本性出すんだよ……。

普段当たりがキツイから……まあそれも、最近だと大分甘えてくるようにはなったけれど。 それもあり、酒を飲んだときのこいつはヤバイ。

俺が危険視しているのは、こいつがそうなることによって俺が死に掛けるということなのだ。 だが、ここで承諾しないとあやせに殺される。

比喩とかではなく、文字通り。


834 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:40:37.83mtmAVoWE0 (33/70)

京介「……よし」

京介「じゃあ言うぜ。 桐乃」

京介「お前、酒飲んだときどんな状態になってるか自分で分かってるの?」

桐乃「んー……」

桐乃「京介~、愛してるよぉ。 ふひひ~」

桐乃「とか、こんなカンジ?」


835 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:41:12.68mtmAVoWE0 (34/70)

冗談で言ったのは分かるが、それでも言われるとすげー恥ずかしいぞ。 嬉しいけどな。

京介「……もっと酷い」

桐乃「……マジ?」

京介「マジ」

桐乃「でも、京介はそれで「しめしめ」みたいにならないっしょ?」

……いやなりますけど?


836 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:41:59.14mtmAVoWE0 (35/70)

京介「ま、まあな……はは」

桐乃「……そーいえば、前にあたしがそうなったときの詳細ってまだ聞いてないんだケド」

京介「へ!? あの時はお前すぐ寝ちゃったからな! 特になんもなかったぜ!」

桐乃「じゃあ問題無いよね?」

京介「……そうなっちゃうな」

嵌められたのか、これは。


837 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:42:55.91mtmAVoWE0 (36/70)

京介「でもなぁ……」

と俺が言うと、桐乃はすぐ近くまで来て、座り込む。

俺の方に顔を向け、手を合わせ。

桐乃「きょうすけぇ、おねがぁい」

落ちたな俺。 断るの無理だ。

京介「はぁあああぁああ……分かったよ。 けど飲みすぎるなよ?」


838 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:43:22.55mtmAVoWE0 (37/70)

桐乃「ひひ。 やったぁ!」

つうか、別に俺の許可が無くても飲めば良いのに。 わざわざ許可を求める辺り、可愛いぜ全く。

桐乃「じゃあ、コップ持ってくるね~」

と、桐乃は機嫌が良さそうな声で台所へと向かって行った。


839 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:44:27.78mtmAVoWE0 (38/70)

桐乃はそれからコップに氷を入れ、持ってきて、コタツの上へと置く。

さて今から飲むか……となったのだが、ちょっと待て。

京介「……突っ込んでいいのか?」

桐乃「なにが?」

京介「えっと、なんでコップ一つしか持ってきて無いの?」

桐乃「そ、それはあれ! コップもう一つ見当たらなかったしぃ~。 そっちの方が片付け楽だしぃ~。 それに、飲みすぎ無いように?」


840 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:45:08.02mtmAVoWE0 (39/70)

可愛いなあ! 目的忘れて抱き締めたくなるよ、ちくしょうめ。

ちなみに、一つどうでもいい話をここで挟もう。

俺は今、コタツに足を入れて座っている。 で、桐乃はそのすぐ横に座っているのだ。 対面じゃなくて、真横。

な? どうでもいい話だったろ。

京介「まあいっか……じゃあ」

桐乃「うん。 最初はこれどう?」


841 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:45:35.80mtmAVoWE0 (40/70)

……最初は? ええ、こいつもしかして、一本で満足しないつもりなのかよ。

京介「最初っていうか今日な? 明日は一応黒猫と沙織と泊まりだろ? なら前みたいに二日酔いにならないようにしろよ?」

桐乃「……仕方ないなぁ」

桐乃「じゃー、これが良いかな」

言い、桐乃は先ほど持って帰って来たビニール袋から缶を取り出す。

その缶には梅酒と書いてあった。 ふむ。


842 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:46:03.69mtmAVoWE0 (41/70)

京介「分かった。 じゃ、注いでくれよ」

桐乃「なんであたしがやらないといけないの。 京介がやって」

……普通お前が注いで「どーぞ」とか言うんじゃねえの!? い、いや……まあ、そうだな。 桐乃の場合はそれが逆だとしてもおかしくは無い。 俺の考えが甘かったってことだ。

京介「へいへい」

俺は結局そう返事をし、置かれているコップに桐乃が渡してきた梅酒を注ぐ。

桐乃「ひひ。 あたしからねー」

早速それを取り、桐乃は言い、コップに口を付ける。


843 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:46:32.28mtmAVoWE0 (42/70)

京介「あんま飲むなよ? さっきも言ったけどよ」

俺の言葉を聞くと、桐乃は一度コップから口を離し、若干不機嫌になりながら返答。

桐乃「分かってるっつーの。 しつこい」

怒られてしまった。 お前のことを心配して言ってるんだけど!

桐乃「……」

桐乃はコップに入っている液体をしばし見つめ、やがて、それを口に運んだ。


844 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:46:59.65mtmAVoWE0 (43/70)

桐乃「……ん」

ひと口含み、桐乃は飲み込む。

桐乃「……あ、おいし」

……こいつって意外と酒好きなのか? 前もなんだかんだ言って半分飲んでいたし。

桐乃「ほら、京介も飲んでみて」

言うと、桐乃は俺にコップを手渡す。

京介「……おう」

俺は受け取り、口を近づけ。


845 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:47:26.67mtmAVoWE0 (44/70)

桐乃「待ったぁ! なんであたしが飲んだところから飲もうとしてるワケ!? 違うとこから飲んでよ!!」

……別に良いじゃん! このケチが!!

京介「わ、分かったよ……」

返事をし、渋々違う場所から飲む。

京介「……お、本当だ。 美味いな」

桐乃「でしょ? ひひ。 次はあたし~」

俺の手からコップを奪い取り、再び桐乃は口に含む。

……お前が今飲んでる場所って、俺がさっき飲んでいた場所じゃねえかよ! このヤロー!


846 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:47:52.51mtmAVoWE0 (45/70)

で、今は俺と桐乃でひと口ずつ飲んだので、コップにはまだ結構な量が残っている。

こいつはその殆どを一気に飲みやがった。

京介「お、おま……」

桐乃「うひひ。 おいし~」

京介「……もう酔ってんの?」

桐乃「まだ大丈夫だって。 ほら、次京介の番」

言うと、桐乃は俺にコップを手渡す。


847 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:48:18.61mtmAVoWE0 (46/70)

いやまあ、確かに美味いけど……こいつどうなっても知らないぞ。

京介「……はいよ」

渡されたコップに口を付け、残りを飲み干す。

……ふむ。 なんか顔が熱くなっているのは分かるけど、そんな変な気分にはならねえな。 さすがに。

桐乃「よし! じゃあ次ね~」

京介「まだ飲むのか?」

桐乃「当たり前でしょ! たった缶一本じゃん」

最終的にこうなっちまうんだよな。


848 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:49:01.51mtmAVoWE0 (47/70)

いやまあ、確かに美味いけど……こいつどうなっても知らないぞ。

京介「……はいよ」

渡されたコップに口を付け、残りを飲み干す。

……ふむ。 なんか顔が熱くなっているのは分かるけど、そんな変な気分にはならねえな。 さすがに。

桐乃「よし! じゃあ次ね~」

京介「まだ飲むのか?」

桐乃「当たり前でしょ! たった缶一本じゃん」

最終的にこうなっちまうんだよな。


849 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:49:32.74mtmAVoWE0 (48/70)

てか……こいつ本当に大丈夫かな?

まだ口調とかは割といつも通りだし、この酒自体もそんなに強くない奴だから、平気なのかもしれんか。

京介「わーったよ。 今持ってくるから待ってろ」

俺はそのまま冷蔵庫に行き、中から缶を一本取り出す。 こっちは俺が貰ってきたチューハイだ。

京介「ほら、今度はこっちでいいだろ?」

桐乃に渡すと、なんだかすげー嬉しそうな顔をする。

……俺の妹がこんなに酒好きなわけがない!


850 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:49:59.04mtmAVoWE0 (49/70)

桐乃「おっけ! ほら、じゃあ早く座って座って」

京介「へいへい……」

俺は再度、桐乃の隣へと腰を掛けた。

桐乃「ひひ。 んしょっと」

桐乃は言うと、俺の膝の上へと腰を掛けた。

……ちょっと待て! やっぱお前酔ってるじゃねえかよ!!


851 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:50:25.37mtmAVoWE0 (50/70)

京介「き、桐乃……?」

桐乃「なに? 文句あんの?」

京介「……ねえけど」

うう。 いきなりのこれは結構びびるんだよ。 何回かやられているけどよ。

まあ嬉しいけども! 超嬉しいけどな!

桐乃「じゃあ問題なーし。 注ぐよ?」

言うと、桐乃は缶を開け、コップに注ぐ。


852 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:51:11.71mtmAVoWE0 (51/70)

桐乃「えへへ。 おいしそー」

なんか、俺めっちゃ悪いことをしている気分になってきたぜ。 女子高生に酒飲ませて膝の上に座られてるってかなりヤバイんじゃないか? しかも妹だし。

……まあいっか!

京介「さっきは桐乃からだったし、次は俺からな? 良いだろ?」

桐乃「え~。 まぁ、いっか。 どーぞ」

桐乃はコップを手に取り、後ろに居る俺の方を見ると、そのコップを俺に手渡す。

俺は軽く桐乃の頭を撫でた後、コップを受け取り、ひと口。


853 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:51:58.40mtmAVoWE0 (52/70)

京介「お……結構美味しいな、これも。 ほら」

桐乃の体を抱き締める様に、俺は目の前にコップを差し出す。

桐乃「ほんと? ひひ。 いただきまーす」

言うと、コップを両手で持ち、桐乃はそれを飲む。 その仕草がなんだか可愛らしく、ついつい横から覗き込んでしまう。

桐乃「なにみてんの?」

京介「別に? 可愛いなって思って見てただけだ」

桐乃「……ふうん」


854 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:52:29.77mtmAVoWE0 (53/70)

桐乃は俺から顔を逸らし、コップに入っているチューハイをちびちびと飲む。 多分、恥ずかしがっているのだろう。

俺はそんな桐乃の髪をとかすように触り、もう片方の手で抱き締める。

桐乃「……ほら、京介の番」

京介「ん、ああ。 サンキュー」

俺は桐乃の髪を触るのをやめ、コップを受け取った。

桐乃「ちょっと離してくれない?」

京介「えー。 なんで?」


855 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:54:31.25mtmAVoWE0 (54/70)

桐乃「いいから。 早く」

言われ、不満に思いつつ、桐乃を抱き締めている手を離す。 ちくしょうめ。

桐乃「よいしょっと」

言うと、桐乃は俺の膝の上で体を半回転。 分かりやすく言うと、向き合う形にする。

京介「……ど、どした?」

桐乃「ベツに? こうした方が、あたしのこと見れるでしょ?」

京介「お、おう……へへ。 だな」

桐乃「えへへ」


856 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:55:06.22mtmAVoWE0 (55/70)

桐乃は言いながら、俺のことをじっと見つめる。 普段なら逸らしそうな物だが、今日は全くその気配が見られない。

京介「……」

桐乃「……」

京介「……っ」

ついには恥ずかしくなり、俺は顔を逸らす。 そうしながらも、桐乃の目って綺麗だなぁ、とか思っちまうが。

桐乃「ひひ。 あたしの勝ちね」

京介「勝負だったのかよ。 はは」


857 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:55:33.38mtmAVoWE0 (56/70)

桐乃「ふひひ~。 京介!」

桐乃は唐突に笑い出すと、俺に抱き着いてきた。 抱き着いたというよりかは、しがみつくの方が正しいかもしれない。

京介「あ、あぶねえよ。 コップ持ってるんだし」

桐乃「……イヤなの?」

京介「嫌じゃねえって。 馬鹿。 ちょっとコップ置くからさ」

桐乃はそれを聞くと、一旦俺に回していた腕を解く。 超不満そうな顔をしながら。

俺はそんな桐乃の頭を一度撫で、コタツの上へとコップを置いた。


858 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:56:00.75mtmAVoWE0 (57/70)

桐乃「もういい?」

京介「おう」

桐乃「……京介から抱き締めてよ」

京介「へいへい」

俺は言われた通りに桐乃を抱き締め、そのまま後ろへと倒れる。

桐乃は俺の胸に頭を置きながら、嬉しそうな表情を作っていた。

桐乃「……あ、そーだ」

京介「んー?」


859 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:56:26.13mtmAVoWE0 (58/70)

桐乃「ちょっと待っててね」

桐乃は起き上がり、先ほど置いたばかりのコップを手に取る。 二杯目のチューハイも、もう残り少なくなっていた。

桐乃「あのさ、エロゲーとかやってると、時々こんなのあるんだけどぉ」

若干呂律が回っていないような、そんな口調で桐乃は言う。

桐乃「こういう風に、飲み物を口に入れてぇ」

そのまま、自分の言った通りに残ったチューハイを口に入れる。

桐乃「んー」


860 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:56:53.62mtmAVoWE0 (59/70)

俺に顔を近づけ、桐乃は何かを言おうとするが、飲み物が入っている所為で口を開けない。

……ドジだなおい! いやぁ。 ていうか、こいつは何をしようとしてんだ?

顔がスゲー近いし。 恥ずかしいんだけどよ。

京介「……なんだ?」

俺が聞くと、桐乃は自分の顔を指した後、俺の顔を指す。

……キスってこと? そのまま? それってつまりあれか?

京介「……えっと、それって、口移しするってことか?」


861 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:57:19.68mtmAVoWE0 (60/70)

俺が聞くと、桐乃はコクコクと首を縦に振る。

京介「そ、それはまだ早いっつうか! 恥ずかしいっつうか!! も、もうちょっと仲良くなってからとか!?」

京介「だ、だから桐乃。 俺は別に嫌って訳じゃねえんだよ? お前可愛いし、俺はお前のこと、超好きだしよ」

俺がそう答えると、桐乃は口に含んでいたのを飲み込み、言った。

桐乃「ひひひ。 さすがに冗談だってのぉ。 まさかぁ、本気にしちゃったワケ?」

京介「お、お前絶対本気だったじゃねえか! そんな感じしたんだけど!」


862 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:57:47.92mtmAVoWE0 (61/70)

桐乃「どうだろね~? それとも無理矢理して欲しかった? ふひひ」

京介「……うっせ。 アホ」

桐乃「ふうん。 そうゆうこと言っちゃうんだ。 折角ちゅーしてあげようかと思ったけどぉ。 やーめた」

ま、まじで? 桐乃からしてくれるはずだったの!?

京介「……マジ?」

桐乃「うん。 でも京介素直じゃないしなぁ~」

京介「く……くそ。 分かったよ! ぶっちゃけして欲しかった! これでいいか!?」


863 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:58:15.66mtmAVoWE0 (62/70)

桐乃「キモっ! 襲われるぅ~」

京介「こ、このヤロー」

桐乃「ひぃ。 あはは」

桐乃はケタケタと笑い、俺の顔をじっと見る。

桐乃「まぁ、でもぉ」

急に真面目な顔付きになり、桐乃はそのまま俺に顔を近づけ、キスをして。

桐乃「約束だし。 感謝してよね?」

俺から離れ、桐乃はそう言った。


864 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 16:59:24.72mtmAVoWE0 (63/70)

京介「……ああくそ! お前卑怯だぞ!!」

桐乃「なにが? うひひ」

京介「良いぜ良いぜ。 今日はぶっちゃけてやる。 俺はお前ともっとキスしたいんだよ! 桐乃はどうだ!?」

桐乃「京介がそうしたいってゆうなら、付き合ってあげてもいいよ?」

京介「い、言っとくが、普通のキスだけじゃないからな!?」

桐乃「へんたーい」


865 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 17:00:15.15mtmAVoWE0 (64/70)

京介「うっせ! じゃあ、ほら、桐乃」

京介「……ここじゃあれだし、布団行こうぜ」

俺が桐乃に言うと、桐乃は俺にしがみつく。

桐乃「はいはい。 早くしてね」

俺はそのまま桐乃を抱きかかえ、布団へと向かっていった。


866 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 17:00:43.67mtmAVoWE0 (65/70)

次の日。

京介「……な、なあ、桐乃」

目が覚めて、俺は桐乃に話しかける。

桐乃「……なによ」

京介「……昨日の夜、あまり記憶が残って無いんだが」

桐乃「……あたしも一緒だケド」

京介「そ、そうか。 それで、俺たちって今こうして布団で一緒に寝てるよな?」

桐乃「う、うん」


867 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 17:01:18.97mtmAVoWE0 (66/70)

京介「……正直に言うと、今下着しか着てる感覚が------」

桐乃「ゆうなぁああああ!!!」

京介「お、お前もか? もしかして」

桐乃「ど、どっちでも良いでしょ!!」

京介「……一線越えてねーよな?」

桐乃「それは大丈夫だと思うケド……」

京介「な、なら良いか……」

桐乃「……一つ気になること」

京介「なんだ?」


868 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 17:01:49.33mtmAVoWE0 (67/70)

桐乃「……口の周りがなんかべたべたする」

……うわ、俺も一緒だぞそれ。 でもなんか大体想像付いてきた。 敢えて口に出すことはしないが。

京介「よし……こうしようぜ、桐乃」

京介「昨日はめちゃくちゃ暑くて、暑さの所為で俺と桐乃の記憶が若干飛んでて、それで俺も桐乃も今こんな格好ってことだ」

桐乃「今、冬だケド?」

京介「すっげー異常気象だったんだよ。 昨日は。 だからこれは自然な流れであって、おかしくなんてない!」

桐乃「……口の周りがべたべたしてるのは?」


869 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 17:02:19.53mtmAVoWE0 (68/70)

京介「あ、汗じゃね?」

桐乃「……キスしてたよね?」

京介「い、言うんじゃねえ! 言われたらなんだか若干思い出してきたから! 今になってすっげえ恥ずかしいからやめろ!!」

桐乃「う、あ、あたしも一緒だっての……」

桐乃「てか、京介」


870 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 17:02:46.66mtmAVoWE0 (69/70)

京介「……今度は何だよ?」

桐乃「……そろそろ着替えたいから、目一回瞑ってよ」

京介「あ、あはは。 だな」

その後、少し話し合い、俺と桐乃の間ではその日のことは無かったこととなるのだった。


アルコール 終


871 ◆IWJezsAOw62013/08/16(金) 17:03:52.12mtmAVoWE0 (70/70)

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

一応、この前ネタ頂いていた京介が酒を飲んだら云々のが元となってます。
期待と大分違う感じに仕上がってそうですが……


872VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 17:07:26.09SGb5m4aKo (2/2)

おつしんだ


873VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 17:08:09.78zK5FRoZE0 (1/1)


今回はまずいな
何人やられたかわからんぞ


874VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 17:16:53.17vHqVsH790 (2/2)


体が爆発した


875VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 17:39:59.10FnSNRmiDO (1/1)

昨日のゲリラ豪雨のせいで今日のデートがキャンセルになったせいで
このスレの俺に対する破壊力が上がってる


876VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 18:00:57.20TMi6TDSMo (2/2)

おつ
もう越えててもいいっすよもう


877VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 18:52:27.81NhfoCteQo (1/2)

乙です


878VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 20:14:44.31fqLv7JoA0 (1/1)


お赤飯はいつ炊けばいいんですか?教えて下さい!!


879VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 20:27:09.80NhfoCteQo (2/2)

今でしょ!


880VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 22:12:16.61knMYue3Co (1/1)

アバババババババババ


881VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 22:30:12.54xUoL/W99o (1/1)

いっそひと思いに一線越えてくれ!!

暑くては死にそう


882VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/16(金) 23:32:54.03U7wIcyNh0 (1/1)

糖度が高過ぎて困ります(歓喜)


883VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 00:50:40.27mzMBNOru0 (1/1)

配信まで耐えねばならんのに
俺はもうだめだ


884VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 01:10:00.42xLYTCAc90 (1/1)

文章読んだだけで[ピーーー]る気がするってすごいな…
ガムシロップでできた三途の川を渡った気分


885VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 03:04:19.17yq3KN3C0P (1/2)

すまん、違和感を素直に書かせてほしい。

ここの京介なら「母体にかかわる」とか色々でっち上げて非行だけは阻止するもんだと思ってた。
そして桐乃も「変態」と罵りながらもなんだかんだで納得するもんだと思っていた。


886VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 03:08:28.62yq3KN3C0P (2/2)

誤解されそうな書き方だったので。
あくまで個人的な感想であって、現実の価値観にリンクさせて氏の作品を貶めるつもりは毛頭ありません。
仮に今後、タバコなりハーブなりバイクを扱う展開があったとしても、それはそれで楽しみに読めると思いますので気になさらないでください。


887VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 03:13:22.99wxLeMMgFP (1/1)

お前は余計な事しか言えないのか


888VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 03:26:47.81XaezeFzH0 (1/1)

【高坂桐乃DQN行動集】
普段から兄を見下し、キモイウザイと暴言ばかり。そのくせ、いざというときだけ兄を利用する。
それでも献身してくれる兄にねぎらいの言葉もかけない。

桐乃の事を思って説教してくれているお父さんを灰皿で撲殺しようとする

友達にオタクという事がバレかけた時、自分のオタク友達を「知らない、あんなキモイ連中」と言って誤魔化そうとする。
上の誤魔化しも無駄に終わり、結果オタクがバレてその友達に絶交され、兄貴のキンタマを蹴り飛ばし物を投げつけ八つ当たり。

貯金が500万ある超売れっ子読者モデルにも関わらず、買い物の際には兄の財布をカツアゲ。
兄貴に「轢かれてくんね?」と無茶を要求し、拒否されると「使えねー」と罵声をあびせる。

急に小説が描きたいと言い出して、ネタの為に兄とラブホに入りたいとか言い出す。
嫌だと答えると、真冬の街角の中水を被り無理やり口実を作り、兄と一緒にラブホに入る。

兄と仲のいい近所の優しいお姉さんに嫉妬から陰湿な嫌がらせをする。
自分が父親や友人にオタバレして苦しんだとき兄に助けてもらったのに、近所の優しいお姉さんが来たときに
エロゲーやエロ本トラップを仕掛けて兄をオタクと思わせ、兄を地獄に落す。

最後の相談と言いながら、兄を深夜にエロゲーを買いに行かせる。 (普段から兄をパシリに使うが、自分は兄のために何もしない)

兄を苦しめる為に、好きでもない男を偽彼氏にしたてて周囲を振り回す。揚句に最後は泣いて逃げる
兄を散々な目にあわせておきながら、兄に恋人ができると「兄貴に彼女ができるのはイヤ」などと言い出す。

言うとおりに兄が彼女と別れると、別れさせたと自慢して情報拡散させる しかも兄貴が「夜這いした」と嘘を吐いて兄の汚名を広げる。



889VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 04:22:43.22FqODFea10 (1/1)

乙です!
以前リクした者ですがまさかの両方酔っぱらいとは…この兄妹反則すぎて溶けてしまうかと思った
そして京介さんあっちのキス好きすぎww
良い意味で期待を裏切られました!感謝です!




890VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 07:46:54.13Q40ZpFeB0 (1/1)

>>885
わかる。
俺の言おうと思ったけど、
めんどくさくなりそうで言わなかったことを言ってくれたな。


891VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 09:08:33.452s8tOLD4o (1/2)

母体って言っても妊娠中じゃないんだし、常習的でない飲酒は影響ないんじゃないか?
喫煙は後々影響ありそうだけど…


892VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 09:10:44.272s8tOLD4o (2/2)

もちろんたとえ話だってのは分かるけど、その辺の線引きは京介でも杓子定規にはならないんじゃないかなあ。


893VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 11:48:07.67UP22TkSYo (1/1)

とりあえず黙って見ようぜ


894VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 13:31:30.60q9exBHfQo (1/1)

せやな


895VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 14:39:59.58tplTV89j0 (1/1)

親父達との家族旅行はやって欲しいな


896VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 15:07:04.86g2+6IZqNo (1/1)

>>895
俺もこれみたい ただこれは時系列一番後になるんだよな


897VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 15:21:48.97E1Bh6lSk0 (1/1)

スレの残量的に最後の一話からアニメ最終配信できれいに終われそうだな



898VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 15:23:25.162yRnJPNAO (1/1)



前彼女とほぼ同じことやったわ、簡単に一線越えちまったが



899VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 16:47:43.15qCisZ+gj0 (1/1)

俺だったら普通に一線こえるわ、彼女いないけど。


900 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:01:28.58ASt53XOW0 (1/40)

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

その辺りはイメージと違っていたらすいません。
タバコは想像が付かないので、書く予定は無いです。

それでは、投下致します。


901 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:02:21.54ASt53XOW0 (2/40)

京介「沙織、お前って本当にすげえな……」

俺は言いながら、山からの景色を見下ろす。

こいつ、海の近くだけでなく、山にも別荘を持っていたのかよ。

沙織「景色はかなりの物ですわ。 冬だからこそ、こういうのも趣があって良いかと思いまして」

黒猫「……ここって旅館では無いのよね? 沙織」

沙織「一応……個人で所有している物となっていますが。 どうかなさいましたか? 黒猫さん」


902 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:02:47.85ASt53XOW0 (3/40)

黒猫「……さっき、ちらっと見たわ。 禍々しいオーラを放っている浴場を。 なんてこと……これは」

桐乃「チョーでっかいお風呂あったよね! うちもあれだけ大きければなぁ」

沙織「ふふ。 京介さんと一緒に広々と入れるのに、ですか? きりりんさん」

桐乃「そうそう!」

そうそうじゃねえよアホ! 馬鹿!!

黒猫がすっげえ冷めた目で俺のことを見ながら、冷ややかに笑っているじゃねえか!


903 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:03:14.30ASt53XOW0 (4/40)

京介「は、はは……」

沙織「仲が良くて羨ましいですわ」

うっさい。 ほっとけや。

ていうか、沙織のこの状態もなんだか随分久し振りな気がするな。 こっちの方が可愛いし、普段からこうしてりゃ良いのに。

桐乃「とりゃ!」

京介「いってぇ! なんだよ!?」

急に桐乃にケツを蹴られ、俺は後ろを振り向きながら言う。


904 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:03:45.33ASt53XOW0 (5/40)

桐乃「なんかムカついただけ」

……相変わらずだが、勘でやってるとしたら恐ろしい的中率だぜ。 やれやれ。

黒猫「いちゃつくのもその辺にして頂戴。 こんな山奥で干からびたく無いわ。 しかも冬に」

黒猫「あなた達の熱波はもはや公害レベルなのよ。 この公害カップル」

京介「悪かったな公害で!」

沙織「うふふ。 では、夕飯でも作りましょうか。 先ほど、材料も買いましたし」

沙織「きりりんさんも、黒猫さんも、手伝ってくださいますか?」

そういや、もうそんな時間か。 時刻は18時、年越しまでもう少しと言ったところ。


905 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:04:13.08ASt53XOW0 (6/40)

桐乃「もっちろん。 当たり前じゃん?」

黒猫「ええ、良いわよ。 むしろ、手伝わせて貰いたいくらいよ」

桐乃と黒猫はすぐにそう答える。 あー、てか、俺は?

京介「俺もなんか手伝うか?」

桐乃「いい。 あんた来たら逆に邪魔だしぃ~」


906 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:04:40.03ASt53XOW0 (7/40)

京介「……へいへい」

相変わらず酷い言い方だぜ。 はは。

沙織「京介さん、きりりんさんは恐らく……京介さんに食べて頂きたいのかと思いますよ。 毎日食べていると思いますけどね」

京介「……知ってるよ。 ありがとな、沙織」

沙織「ふふ。 余計なお世話でしたね。 京介さん」


907 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:05:06.88ASt53XOW0 (8/40)

それから数十分待ち、やがて沙織達が料理を運んでくる。 なんか、俺すっげー良い気分なんだけど! 階級が上がった気がするぜ。 へへ。

桐乃「なにボーっと座ってんの。 運ぶのくらい手伝えっての」

……お前いっつも家じゃ「京介は座ってて良いよ。 あたし持ってくるから」って言うじゃねえかよ! なんで友達の前だとそんな当たりキツイわけ!?

京介「……へいへい」

照れ隠しにしても酷い言い方だぜ。 まあそんなところも好きだけどよ。

俺は思い、にやにやしながら桐乃を見ると、こいつはこう返す。

桐乃「なに笑ってんの。 チッ……」

そして俺の足を踏みつける。


908 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:06:47.22ASt53XOW0 (9/40)

京介「いって! 足踏むんじゃねえよ!」

桐乃「え~? だってぇ、京介踏んで欲しそうな顔してたしぃ」

京介「どんな顔だ!?」

言いたい放題だな、桐乃め。

黒猫「本当に気持ち悪いわね。 この変態」

……うわー。 超帰りてえ。 なんで俺はこんな暴言吐かれながら、必死に料理が乗った皿を運んでいるのだろう。

気分はあれだ、性格の悪い奴に雇われた執事って感じ。 だって黒猫も桐乃も既に座って料理を運ぶ俺を眺めてるし。


909 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:07:20.55ASt53XOW0 (10/40)

そんな光景にため息をつきながら、キッチンに置かれている料理を運ぶ。 ひたすら。

沙織「ごめんなさい、京介さん。 わたくしたちだけでは運びきれなかったので」

そこに居た沙織は、先程から忙しなく料理を運ぶ俺に向けて言う。 一番のお嬢様が一番の優しさだよ、ほんと。

京介「良いって良いって。 俺もただ座ってるだけじゃ、わりいしな。 何か他にもあったら気軽に言ってくれよ」

沙織「はい……あ、それでしたら京介さん」

京介「お、早速か? 何だ?」


910 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:07:48.20ASt53XOW0 (11/40)

沙織「わたくし、自宅に本を忘れてきてしまいましたの。 急に読みたくなったので、取ってきてください」

京介「……外、雪降ってるけど」

沙織「ええ」

京介「……ここ山の中だけど」

沙織「ええ」

京介「……ここには悪魔しかいねえ!!」

沙織「ふふ。 冗談ですよ。 ごめんなさい」

京介「お前が一番まともなんだから、頼むからおかしくならないでくれよ……」

ほんと、心の底からのお願い。


911 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:08:17.03ASt53XOW0 (12/40)

京介「いただきます」

ようやく運び終わり、待ちに待った食事。

さすがに四人ともなると賑やかで、なんだか少し、懐かしかった。

黒猫「……それ、どうかしら?」

黒猫は言いながら、俺が食べていた茶碗蒸しを見る。

京介「すっげえ美味いけど……これ、お前が作ったのか?」

黒猫「え、ええ……まあ」

ちょっとだけ嬉しそうな顔をする黒猫。 あれだよな、料理って作る側からすると、ひと言美味いと言われるだけで、すっげー嬉しいんだよな。

俺自身、あんま作ったことは無いけどさ。


912 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:09:50.38ASt53XOW0 (13/40)

桐乃「そーいえば、黒猫って和食系得意だったよね。 よくそんなの作れるね?」

黒猫「難しい料理では無いわよ。 手間は確かにかかるけれど……火加減さえ気を付ければ、誰でも作れるわ」

桐乃「へぇ~。 んじゃさ、今度教えてよ。 あたしも作ってみたい」

黒猫「ええ、良いわよ。 愛する旦那様の為だものね」

桐乃「ち、違うっての! 自分で食べる用だしっ!!」

今日はそんな衝突も無さそうで何よりだな。 それにしても桐乃が作ってくれる茶碗蒸しか……早く食べたい! 今度黒猫に早く教えるよう言っておこう。

最早、桐乃の言葉は頭の中で自動変換だぜ。 今のは「京介と一緒に食べたいな!」ってところだ。 やべ、顔がにやけてしまうぞ。

そんなことを思いながら、皿に乗った肉じゃがを口の中にいれる。


913 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:10:20.23ASt53XOW0 (14/40)

京介「……あ」

京介「これって、お前が作ったのか?」

俺は言いながら、桐乃の方に顔を向ける。

桐乃「え? そうだケド。 なんで分かったの? 見てた?」

京介「いや……見て無いけど、味が桐乃の作った奴と同じだからさ」

桐乃「ふ、ふうん。 そか」

沙織「良かったですね。 きりりんさん」

桐乃「は、はぁ? なにが?」

沙織「うふふ」

桐乃「……ふん」


914 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:10:55.26ASt53XOW0 (15/40)

そんな一連の流れを見ていた黒猫が口を開く。

黒猫「前から思っていたのだけど、あなた達は定期的にイチャイチャしないと死ぬ呪いにでもかかっているのかしら?」

桐乃「どこがよっ! ベツにイチャイチャなんてしてないでしょ!」

京介「俺も同じ意見だが……」

黒猫「……やれやれ。 仕方無いわね。 それならあなた達がどの程度イチャイチャしているのか、説明してあげるわ」

なんだってんだ。 俺と桐乃なんて一般的に見れば、至って普通なのだと思うけど。

そりゃあ、家で二人っきりの時とかはある程度自覚も無くはねえが……それでも、普通のカップルとかだってやってることじゃねえの? って思うよな。


915 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:11:21.62ASt53XOW0 (16/40)

黒猫「まず一つ目。 あなた達、全体的に距離が近すぎるのよ」

京介「……そうか?」

俺は言いながら、すぐ隣に座る桐乃に顔を向ける。

桐乃「……そうでもないっしょ」

桐乃も俺の方を見て、そう言う。

ふむ、問題無いじゃん。

沙織「うふふ。 ここに来る時も、手を繋いでおられましたね」

京介「そりゃそうだけど……」

桐乃「だ、だってそれは仕方ないでしょ? 京介がどうしても手を繋ぎたいって土下座してくるんだもん」


916 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:11:47.56ASt53XOW0 (17/40)

京介「いやしてねーけど!?」

自然と嘘を付くのはやめてもらいたい。 ていうかどっちかと言ったら、お前の方から手繋いできたじゃねえか。

黒猫「……ああ、分かったわ!」

黒猫は突然大きな声を挙げ、何かに納得したような表情をする。 一体なんだってんだ。

京介「な、なんだ……?」

黒猫「ふふ。 あなた、桐乃に飽きたのね」

桐乃「はぁ!? あんた舐めてんの!?」

そこで何で俺の胸倉を掴むんだよ! 言ったのは俺じゃなくて黒猫だ!


917 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:12:19.86ASt53XOW0 (18/40)

京介「な、なわけないだろ! 俺は今でも桐乃のことが超好きだ!」

桐乃「そ、そう? ……良かった」

くぅ、心配そうな顔しやがって。 俺がそんな風になることなんて、絶対ねえっての!

黒猫「では、どうしてわたしと付き合っていたときは手を繋ぐだけでドギマギとしていたの?」

京介「そ、そりゃあ……当たり前だろ?」

桐乃「チッ……」

うわ、超不機嫌顔。 つうか黒猫の奴は一体何が目的なんだ!? くそ……。

黒猫「それで、今桐乃と手を繋ぐのに緊張はしないのかしら? ふふ」

京介「……もうしっかりと付き合って一年は経つしな」


918 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:12:45.89ASt53XOW0 (19/40)

思えばそうか。

もうあれから一年経ったのか。

俺と桐乃が家を出てから、もう一年。

黒猫「それを飽きたというのよ。 分かる?」

京介「……わかんねーな。 お前が何を思ってそう言ってるのかも、わかんねえよ」

俺が若干苛立ちを覚えながら答えると、黒猫は顔を上にあげ、口を開く。 雰囲気から、ふざけた様子は感じ取れなかった。

黒猫「理由を知りたいのよ。 どうして桐乃のことをそこまで好きになれるのか」

京介「どうして? 好きになるのに理由なんかいらないだろ」

黒猫「……そうね、その通りよ」


919 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:13:11.39ASt53XOW0 (20/40)

俺と黒猫の会話を沙織と桐乃は黙って聞いている。 何かに気付いてか、その空気に圧されたのか、それは分からない。

黒猫「でもそれは、普通の恋人の場合。 そうでしょう?」

普通の恋人、ね。

京介「それは俺と桐乃が兄妹だからか?」

黒猫「ええ、そうよ」

俺が聞くのとほぼ同時に黒猫は答えた。 そして、続ける。

黒猫「わたしや沙織、それにあやせやあのメルルもどき。 その人達は分かっているわ。 あなたと桐乃の関係も。 分かった上で、友達でいたい……仲間でいたいと思っているわ」

黒猫「それでも、それを認めない人たちも出てくる。 当然のことよ」

黒猫「あなた達の両親だってそう。 田村先輩だってそう」


920 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:14:01.55ASt53XOW0 (21/40)

黒猫「これから、もう何年もしない内に社会に出て……普通に行けるとは到底思えないわ」

黒猫「必ず問題にぶつかる。 それでも、あなたは今と変わらずに同じ事を言えるかしら?」

黒猫の問いに、俺は答える。 決まっている答えを口に出す。

京介「言えるさ」

黒猫「桐乃がそれで泣いたとしたら、あなたはどうするの?」

京介「その時は話を聞いてやるよ。 桐乃が泣き止むまで」

黒猫「それでもどうしようも無かったら?」

京介「その時は一緒に泣くさ。 どうしようもねえからな」

黒猫「そう。 今、この場ではそう言って置けばいいかもしれないわね。 でも、それはあなたも分かっているでしょう?」


921 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:15:57.85ASt53XOW0 (22/40)

京介「まあな。 だけど、俺にも一応考えって物があるんだよ」

黒猫「……それは、何?」

それを聞くとき、黒猫は不安そうになりながら聞く。 見てすぐに分かるさ、そのくらいなら。

そして黒猫の考えは、何となくだが分かった。

こいつは、俺たちのことを心配しているのだろう。 今は楽しくやってるが、それが何年経っても続く物なのかと、心配しているんだ。

不器用な聞き方だけどな。

京介「俺と桐乃が問題にぶつかって、どうしようも無くなっても」

京介「俺たちには、お前らが居るからよ。 黒猫も沙織も、あやせも加奈子も。 御鏡も瀬菜も」

京介「その時は遠慮無く頼らせてもらうさ。 良いだろ?」


922 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:16:24.63ASt53XOW0 (23/40)

俺の言葉に、黒猫は頬を緩ませ、笑った。

黒猫「良い答えだわ。 前に言ったこと、忘れていなかったのね」

京介「当たり前だろ。 お前には本当に、返しきれないくらいの恩があるしな」

黒猫「ごめんなさい、こんな話を急に……年が明ける前に、確かめておきたくて」

京介「そうかい。 で、その結果は?」

黒猫「聞くまでも無いことでしょう? それは」

黒猫「ふふ。 それで、今……恩があると言ったわね? その恩、一発で返す方法があるのだけど……どう? 試してみる?」


923 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:16:50.59ASt53XOW0 (24/40)

京介「無理なことじゃなきゃ、試したいけど」

黒猫「簡単なことよ……」

黒猫は言うと、俺の左隣に腰を掛ける。 ちなみに右隣には桐乃が座っている。

黒猫「……か、体で払えばいいのよ」

何言ってんだこいつ!? つうかめっちゃ恥ずかしそうに言うんじゃねえよ! 俺が変なことしてるみたいな構図になってるじゃねえか!

沙織「あらあら。 京介さん、ハーレムですわね」

京介「なんで携帯構えてるんだ!」

ていうか、ていうかだな。 これは敢えて言わなかったことなのだが……と言うよりかは、敢えて触れなかったことなのだが。

……右隣から、殺気を感じる。


924 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:17:23.52ASt53XOW0 (25/40)

京介「ま、まあとりあえず食器片付けるか! はは」

手をポンと叩き、俺は言う。 あからさまに怪しすぎるぜ、今の俺。

桐乃「……」

チラ見したところ、八重歯剥き出しで俺の事を睨んでいる桐乃が見えた。

京介「あ、あー美味かった。 さ、風呂でも入るかなぁ」

立ち上がろうとしたところで、肩を掴まれる。 やっぱりそうなるよね。

桐乃「さっき黒いのと話してたときはあんな格好良いこと言ってたのに、なんで今デレデレしてたの? ん?」

京介「し、してねーよ? 俺はいつも通りだよ?」

桐乃「へええ。 へえ。 ふうん」

こういう風な反応する時って、かなり怒ってるんだよねぇ、こいつ。


925 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:17:50.49ASt53XOW0 (26/40)

桐乃「……まぁ、今日は良いや。 もうすぐ年越しだし、トクベツ」

京介「さっすが桐乃さん! 優しいなあ! 天使みたいだ!」

ここぞとばかりに持ち上げる俺。 だけど生憎、それが逆に怒らせることになったらしい。

桐乃「言っとくケド……今日は、だからね。 明日になって家帰ったら覚えとけ」

京介「……はい」

こうは言うが、意外とノリノリだぜ、俺。 だって桐乃の怒ってるところとかも可愛いしな。 うん。

黒猫「どうでも良いことだけれど、そろそろお風呂に入りましょう?」

京介「え? 一緒にか?」

桐乃「あんたねぇ……」


926 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:18:48.85ASt53XOW0 (27/40)

京介「いやいや、冗談だっての! 桐乃としか入らねーよ!」

黒猫「前に言っていたのは本当だったのね……二人で毎日お風呂に入っているとか、なんとか」

京介「毎日は入ってねえよ!! 何勝手に解釈してんだ!」

黒猫「なら、何日に一回かしら?」

京介「……しゅ、週一くらい」

最初は一ヶ月に一回だったんだけどな。 気づいたら週一回になってたんだ。 今でも不思議なんだよね、これ。

黒猫「今度あやせに報告しておかないと」

京介「お前、良いのかよ。 そんなこと言ってただで済むと思うのか」


927 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:19:20.32ASt53XOW0 (28/40)

黒猫「な、何よ……?」

いつもと違う答えに、黒猫の表情が険しくなる。 へへへ、俺にも考えがあるんだよ。

京介「お前な。 俺がぼっこぼこにされて、最悪包丁で刺されるかもしれないんだぞ! それで良いのか!? そうなったら捕まるのはあやせだぞ! お前は友達を一人失うことになるんだぞ!」

黒猫「……お風呂に行ってくるわ」

無視されたなぁ! 最近、黒猫がどんどん酷くなってる気がするぜ。 誰の影響だろう。

……桐乃とあやせだな。 間違いない。


928 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:19:57.92ASt53XOW0 (29/40)

こうして、黒猫と沙織と桐乃はそのまま風呂に行き、俺もまた風呂へと向かう。

ちなみに、この俺たちが来ている沙織の別荘なのだが、なんと風呂が男女別になっている。 何でも昔は本当に旅館だったらしく、それを買い取ったとのことだ。

こんなところに桐乃と一緒に住んでみたいなぁ。 なんて考えながら、一人風呂。

京介「……ふう」

黒猫にも先ほど言われたが、大変なのはこれからだろう。

そんなのは分かっている。 桐乃も分かっているはずだ。 俺たちが歩こうとしている道は、とてつもなく険しい物だろうと。

ゲームみたいにはいかねえよ、さすがに。 いや、あのゲームの主人公達も、裏ではすっげえ頑張ってるのかもしれないけどさ。

だけど俺は、あの妹の為になら何でも出来る気さえするんだ。


929 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:20:25.51ASt53XOW0 (30/40)

桐乃。

今だからこう思えるのかもしれないけど、俺にとって何より大切な奴で、何より好きな奴で、世界でたった一人の妹だ。

……桐乃はどういう風に思っていたのかな。 今までのことや、これからのこと。

あいつは多分、あいつの性格なら、多分。

ずっと、気持ちを抑えて影で泣いていたのかもしれない。 俺には何となく分かる。

どう言えばいいんだろうな。 こんな気持ちは。


930 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:20:56.05ASt53XOW0 (31/40)

守ってやりたいだとか、抱き締めたいとか、一緒に居たいとか。 それよりも、もっとこう……大切にしてやりたい。

今、あいつは俺に「幸せ」と、良く言ってくれる様になった。 でも、俺はもっとあいつを幸せにしてやりたい。 今よりも。

これから多分、そんな道を模索し続けることになるのだろう。 そして、それも黒猫が言っていた「問題」とやらに含まれているのだろう。

ならば良いさ。 やってやる。 俺は俺が思うように、あいつを今よりももっと、幸せにしてやる。

それが、兄である俺の役目で、桐乃を好きになった俺の役目で、桐乃に好きになってもらえた俺の役目だ。


931 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:21:21.59ASt53XOW0 (32/40)

その後、風呂から出て再びリビングへ。

入ると沙織と桐乃と黒猫が揃って髪を乾かしている。 中々に面白い光景だ。

京介「なあなあ、桐乃」

そんな桐乃の背中に、俺は声を掛ける。

桐乃「なに? なんか用?」

京介「桐乃のこと、俺めっちゃ愛してるからな」

桐乃「ぶっ!」

桐乃は勢いよく立ち上がり、俺の方にずんずんと詰め寄ってきた。 可愛いな! はは。


932 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:21:51.50ASt53XOW0 (33/40)

京介「本当のことじゃん」

桐乃「こ、このバカっ!!」

黒猫「沙織、見なさい。 あれがバカップルの良い例えよ」

沙織「羨ましいですわね。 うふふ」

桐乃「ちょっと来いッ!!」

黒猫と沙織の冷やかしに耐え切れなくなったのか、桐乃は叫ぶように言うと、俺を引っ張り廊下まで連れて行く。


933 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:22:45.22ASt53XOW0 (34/40)

京介「な、なんだよ?」

桐乃「なんだよじゃないでしょ! な、なにあいつらの前であんな恥ずかしいこと言ってんの!?」

京介「はは。 悪かったって」

桐乃「……笑いながら謝ってもムカつくだけなんですケド」

ったく、一々可愛い奴だ。

俺はそんなムスッとした顔付きの桐乃に、キスをした。

桐乃「っ!? な……なっ! あんたッ!」

ここではしないとでも思ったか! 馬鹿め、俺はどこにいてもお前にキスするんだよ。


934 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:23:12.56ASt53XOW0 (35/40)

京介「あいつらにばれなきゃいいだろ?」

言いながら、笑う。

桐乃「……そ、そうゆう問題じゃないし」

京介「もう一回してもいいか?」

桐乃「だ、ダメ! それはダメ……」

京介「どして?」

桐乃「ど、どうしても。 その……帰ってから、家で二人の時に、すればいいじゃん……?」

俺が優位に立っていたと思ったら、このひと言ですっげえ来る物があるんだよな。 てか、こいつがもしおねだりとか覚えたら、俺は何でも聞いてしまいそうだ。

昨日のアレだって、こいつが「おねがぁい」とか言った瞬間、全部吹っ飛んで行ったしな。 全部だぜ、全部。


935 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:24:00.05ASt53XOW0 (36/40)

京介「お、おう……そ、そうだな。 はは」

桐乃「……か、帰ってからなら何回でもいいから」

すげえ台詞だな……。

いや、てか。 ううむ。 恥ずかしいぞ、くそ。 やはりこいつの破壊力はヤバイ。 今から家に帰ってでも布団の中でゆっくりしたい! 二人っきりで! マジで!

沙織「お二人とも、もうすぐ年越しですよ?」

と、廊下で話していた俺達に声が掛かる。

京介「あ、ああ。 もうそんな時間か」

京介「ほら、行こうぜ。 桐乃」

桐乃「う、うん」


936 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:24:35.07ASt53XOW0 (37/40)

未だに桐乃は顔を赤くしていて、恥ずかしさを我慢している様な顔をしていた。

……写真に収めてぇ!! 携帯を寝室に置きっぱなしってのがすっげえ悔やまれる!!

黒猫「ほら、もう年を越すわよ。 沙織、桐乃」

京介「あのー、俺も一応居るんですけど……」

黒猫「あら、そうだったの。 ふふ。 気付かなかったわ、ごめんなさい」

京介「……はぁ」

溜息を付きながら、時計に目を移す。 時刻は23時50分程。

京介「そだ、テレビでなんかやってんじゃねえの? この時間なら」

沙織「あ、そうですわね。 付けて見ましょう」

そう言うと、沙織はリモコンを手に取り、テレビの電源を入れる。


937 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:25:45.47ASt53XOW0 (38/40)

『新年あけましておめでとうございます!』

とのこと。 テレビに表示されている時間は既に日付が変わってから5分ほど経っている様だ。

京介「……沙織?」

沙織「ええっと……時計がずれていたみたいですね。 うふふ」

黒猫「気付かぬ内に新年を迎えていたというの? それは不味いわ。 非常に不味いわよ……現世と魔界に歪みが生じてしまうわ」

桐乃「……あんた、まだ厨二病抜けてなかったの?」

……まぁ、この方が俺たちらしいと言えばそうなのかもしれない。


938 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:26:15.25ASt53XOW0 (39/40)

桐乃「あれ……ちょっと待って。 だとすると、あたしの新年最初の言葉って」

桐乃は言うと、俺の方を睨む。

京介「は、はは。 続きは家に帰ってから聞くからよ」

京介「とりあえず、あれだ」

四人、顔を見合わせ。

「あけましておめでとう」

そして、新しい年は始まる。


年越し 終


939 ◆IWJezsAOw62013/08/17(土) 18:27:29.13ASt53XOW0 (40/40)

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

いよいよ明日、配信ですね!
この待っている時間が一番楽しかったりそうじゃなかったり。
アニメ終わってしまうのが寂しい。


940VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 18:29:21.54S42YKrb00 (1/1)

おつんこ


941VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 18:56:49.60Thzv04pqo (1/1)

おつ


942VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 18:58:49.759DErwl6+o (1/1)

おつだよ!

たまにシリアスなのが入ると映えるな


943VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 20:28:08.765L5N5tTx0 (1/1)

ただそのシリアス分を軽く超越するぐらい甘いんだけどね。なんせ俺の手元のラスクが角砂糖になっちゃったもん。


944VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 21:59:23.09GBT/hZcFo (1/1)

乙です


945VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 01:37:12.580qNDL0cc0 (1/1)



ブラックコーヒーが砂糖水になったぞ


946 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:26:09.41px5GbtGY0 (1/42)

こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

配信前に投下ぁ!


947 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:26:35.80px5GbtGY0 (2/42)

新年になってから、まだそんな日が経っていない頃。

夜で外が真っ暗で。

気温は雪でも降りそうな寒さの日。

って言っても、その日は晴れていたんだケド。

そんなある日。 あいつはあたしに声を掛けた。

「桐乃、ちょっと付いてきてくれ」って言って。

あたしは不審に思いながらも、渋々と付いていった日の話をしよう。


948 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:27:02.54px5GbtGY0 (3/42)

桐乃「なんかさぁ、あんた最近どこ行ってるの?」

京介「え、えと。 俺? どこって?」

桐乃「あんたしか居ないでしょ。 最近、夜になる度にどっか行ってない?」

京介「あ、ああ。 そうだな……運転の練習だよ、練習」

ふむ。 京介が免許を取って、一緒に貯めてた貯金で車を買って、それでその練習ってことか。

怪しいっつの!


949 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:27:29.28px5GbtGY0 (4/42)

桐乃「じゃ、なんで夜?」

京介「はは……そっちの方が練習になるかなーって思って」

桐乃「……ふうん?」

京介「そんなことよりエロゲーやろうぜ! 新作買ったって言ってたじゃねえか。 な?」

どう見てもウソだケド……。 何か、隠しておきたいことでもあるのかな。

あたしも言いたく無いこともあるにはあるから、人のことを言えた義理じゃない。 でも、やっぱり気になるよねぇ。


950 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:28:03.59px5GbtGY0 (5/42)

桐乃「京介も相当エロゲ好きだよね?」

京介「……誰の所為だと思ってるんだよ」

桐乃「所為って言わないで。 おかげでしょ?」

京介「へいへい……」

……よし。 明日、少し調べてみよう。 京介が何をしているか。


951 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:28:50.85px5GbtGY0 (6/42)

次の日。 今日もあいつはどこかへと出掛けて行った。 一人残されるあたしの身にもなって欲しいよ。

思い出されるのは、あたしが小さかった頃のこと。 あいつは遊びに行って、あたしは追いつけなくて。 そんな超悔しかった日のこと。

……ま、今日はそっちの方が都合が良い。 京介の前じゃ堂々と調べられないし。

一応言っておくケド、この時間以外殆どべったり一緒に居るワケじゃないからね? 今の言い方だとそう聞こえるかもしれないから、一応。

だってほら、あたしが学校とか仕事のときは別々なんだし。

……それ以外だと、いつも一緒だけど。

ってそうじゃないそうじゃない! あいつのことを考えてぼーっとしてしまった。 ムカつく!


952 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:29:26.86px5GbtGY0 (7/42)

これもあれも、全てはあたしに何も言わないで変なことをしてるあいつが悪い! うん。

桐乃「……ほんと、どこ行ってるんだろ?」

そう呟き、窓から外を眺める。 空は曇っていて、いつもは綺麗に見える星は見えなかった。

桐乃「ダメダメ! 落ち込んだらダメだ!」

若干落ち込みそうになった気持ちに活を入れ、電話を手に取る。

まずは、黒いののところで良いかな。


953 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:29:52.14px5GbtGY0 (8/42)

桐乃「もしもし、夜遅くにごめんね」

「構わないわ。 丁度、妹たちとお風呂が終わったから」

桐乃「え!? あんた妹と一緒にお風呂入ってんの!?」

「邪悪な気配を感じるわよ。 食い付き方が怖いわ……」

桐乃「そ、そんなことないって……ふひっ」

あ、よだれが。

「……はぁ。 それで、用件は何だったの?」

桐乃「お、おっと。 忘れるところだった。 えーっとね」


954 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:30:20.42px5GbtGY0 (9/42)

そっちが本題だったのに。 黒猫が妹たちとCG回収シーンを迎えていたなんて。 伏兵すぎる。

桐乃「京介ってさ、最近なんかヘンなところなかった?」

「……ちょっと待ちなさい。 もしかしてそれは」

あれ。 もしやいきなり当たり?

「…………惚気話かしら?」

桐乃「ちっがうっての!!! てゆうかあんたに惚気たことなんて無いっつーの!!」


955 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:30:52.86px5GbtGY0 (10/42)

「今までのが惚気じゃないとして、あなたの惚気の基準が恐ろしくなってくるわよ?」

桐乃「あーもう! で、あいつヘンなところなかった? さっさと答えてよ」

「ふふ。 そうね」

「わたしが知る限り、先輩におかしなところは無かった筈よ」

「もっとも、普段の先輩も変と言えば変だけどね」


956 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:31:21.14px5GbtGY0 (11/42)

桐乃「だーめーだー。 全然分かんないし」

その後……あやせに加奈子、沙織にもせなちーにも電話して聞いたんだけど、全員が何も知らなかった。

てかね、ちょっとこの一連の電話で不満な点があるの。 みんな、あたしが「京介のことなんだケド」と言った瞬間に惚気かどうか聞いてくる。

どうしてだー! あたしってそんなキャラなの!?

……ま、まあ。 そりゃあ、京介はいざというときに物凄く頼りになって、超格好良くて、それにいつも助けてくれるし。 優しいし。 気配りできるし。 あたしのこと見てくれてるし。 あたしのこと大好きだし。

不意にキスしてくるのは許せないケド! あれ、ほんとこっちの身にもなって欲しいんだよね。 てか、未だにあいつとキスするのに全然慣れないんだよねぇ。


957 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:31:49.60px5GbtGY0 (12/42)

心臓とか張り裂けそうになるし、顔は赤くなってるのが分かるくらいだしさ。

でも、不思議と近くに居ると落ち着くんだよね。 夜、寝るときだってそう。

あいつと一緒に布団の中で目を瞑るだけで、ゆっくり休めるから。

あ、でも! これもまた許せないことがある!

……最近だと寒いのか知らないケド、朝起きるとほぼ確実に抱き締められてるんだよね。 あたしは抱き枕じゃないっての。

抱き枕かぁ……。

そういえば、新しい抱き枕出るんだっけ? 今度京介と一緒に買いに行こうかな。

通販で買っちゃってもいいんだケド……どうせなら一緒に行きたいし。 あいつ車あるしね。

よし、そうと決まったら早速デートの予定を。


958 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:32:15.76px5GbtGY0 (13/42)

桐乃「……あれ。 なんか忘れてる気がする」

……なんだっけ?

ま、そんなことより今はデートの予定だ! 行く場所はアキバだとして……どんなコースにしよっかな。

朝から出掛けて、お昼は喫茶店でも行こう。 で、お昼過ぎからは渋谷に行くのもありかな?

そだ。 どうせなら渋谷か新宿辺りであいつの服も見てあげようかな。 最近、新しい服欲しいとか言ってたし。

んで、それでぇ……夜はどうしよっかなぁ。

たまには落ち着いたところでも良いかな? でもそれだとこの家になっちゃうんだよね。

それは京介と話して決めることにしよう。 早く帰ってこないかな、あいつ。


959 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:32:43.63px5GbtGY0 (14/42)

次の日。

桐乃「デートの予定とか考えてる場合じゃなかったじゃん!! あいつが出掛けている原因を調べてたのに!!」

またこのパターン! あああもう! ムカつく!! 家に居ないときまであたしの頭の中を占領するなんて、許せないんですケドぉ!

今日もまた京介はどっか出掛けてるし。 あいつがこんな行動をしなければ、あたしも頭を抱えることなんて無いってのに。

あいつが行きそうな場所……今日はそこを考えるとしよう。

とにかく、まずは電話~。


960 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:33:11.07px5GbtGY0 (15/42)

桐乃「もしもし、あやせ?」

「桐乃? どうしたの? こんな夜遅くに」

桐乃「あはは、ごめんね。 昨日に引き続き、ちょっと聞きたいことがあってさ」

「お兄さんのことだね。 うん、良いよ」

桐乃「ありがと。 それで」

桐乃「もし、あやせが京介だったとしてさ……その」

う……いざ聞くとなると、言い辛い。


961 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:34:04.63px5GbtGY0 (16/42)

桐乃「…………エロいお店とか行きたくなる?」

「ぶっ! ちょ、ちょっと桐乃!」

電話越しであやせが咳き込んでいる。 無理もないケド。

桐乃「だ、だから例えばのハナシだって! お、男の人ってそうなるのかなぁ……って」

「なんでそれを私に聞くの! そ、そういうのって男の人に聞いた方が早いと思うよ」

桐乃「言えるワケ無いじゃん! 御鏡さんならフッツーに答えそうだケドさ……でも、やっぱイヤじゃん?」

「それで私……ってこと?」

桐乃「うん、まあ……そう」

「分かった。 桐乃が真面目なのは分かったけど……でも、やっぱ私じゃ分からないよ」


962 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:34:31.27px5GbtGY0 (17/42)

「……だけど、仮にお兄さんがそういうお店に行ってたとしたら、桐乃はどうするの?」

桐乃「あ、あたし?」

あたしは……。

良いかな、あやせにだったら。

桐乃「チョームカつくケド。 ムカつくし、悔しいケド。 でも、京介がそれで悩んでいるとしたら……許しちゃうかもしれない」

「そっか。 やっぱり、優しいんだね。 桐乃」

桐乃「そんなことないって! もしそうだったら一発か二発は殴ってやるつもりだし!」

「あはは。 その時は私も手伝うよ」

……その台詞はちょっと怖い。


963 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:34:58.10px5GbtGY0 (18/42)

桐乃「やっぱあやせは分からないかぁ。 あ、加奈子ならそうゆうの詳しいかな?」

「……それは止めた方が良いよ。 加奈子、余計なことを言いそうだから。 例えば」

「京介? ああ、行ってるに決まってんだろ~? 男ってエロいし」

「とかね?」

桐乃「あ、あー。 確かに。 なんか言いそう」

「ふふ。 まぁ、もしも桐乃にそんなことを言ったら……」


964 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:35:24.94px5GbtGY0 (19/42)

桐乃「あ! あたしやらなきゃいけないことあったんだ! ごめんあやせ! ありがとね!」

それ以上先は聞かないほうが良いと思い、あたしは慌てて電話を切る。

結局、今日も収穫無しか。

もう、こうなったら直接本人に聞くしかないよね。 あいつは言いたく無さそうだけど、気になって仕方ないんだもん。

……明日、出掛ける前に聞いてみよう。


965 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:35:50.78px5GbtGY0 (20/42)

桐乃「京介、ちょっと来て」

京介「ん? 別に構わんが」

桐乃「そこ、座って」

京介「出来ればコタツに入りたいんだけど……」

桐乃「ダメ。 良いから早く座れ」

京介「へいへい……」

そう返事をすると、京介は床に正座する。 正座までしろとは言ってないのに。


966 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:36:17.14px5GbtGY0 (21/42)

京介「で、何だよ?」

桐乃「……あんた、何隠してるの?」

あたしが言うと、京介は分かりやすい程に慌て、答える。

京介「べ、別になんも隠してねえよ? マジ」

桐乃「へえ。 ほんとに?」

京介「お、おう……毎日出掛けてるのは、運転の練習だし」

桐乃「……ひひ」

京介「き、桐乃? どした?」


967 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:36:43.00px5GbtGY0 (22/42)

桐乃「ねえ、京介。 あたしは何を隠しているのか聞いただけなのに、なんで運転の練習が出てくるの?」

ここまで見事にぼろを出すとは思って無かった。 妹としても、こいつの彼女としても少し心配になってしまう。

京介「そ、それは……なんて言うか」

桐乃「早く言った方が楽だよ? ほら」

京介「……あーくそ! まぁ、良いか。 元々そろそろだったし」

京介は言うと、立ち上がり、あたしに手を差し伸ばしながら続ける。

京介「今日は一緒に出掛けようぜ。 桐乃、ちょっと付いてきてくれ」


968 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:37:17.34px5GbtGY0 (23/42)

俺は渋々ながらも言った。 もう、隠すのにも限界は近そうだし、何よりこいつに悩んで欲しくは無いから。

桐乃「……良いの? あたしも一緒に行って」

京介「当たり前だろ。 つうか、元々その予定だったし」

最終的には桐乃の為だしな。 こいつが喜ぶかどうかは置いといて、だが。

桐乃「分かった。 行く」

桐乃は言い、立ち上がる。

京介「じゃ、俺は外で待ってるから、準備出来たら来てくれ」

俺は最後にそう言うと、部屋を後にした。


969 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:37:43.99px5GbtGY0 (24/42)

桐乃「で、これどこに向かってるワケ?」

京介「まーまー。 もうすぐだからよ」

助手席に座る桐乃に言い、俺は目的地へと向かう。

場所はそこまで遠くは無い、近くの山を少し入ったところだ。

桐乃は暇潰しの為か、ラジオのチャンネルをカチカチと回す。 いつもは桐乃がCDやらを持って来てくれるのだが、今日はそうではないらしい。

てか、こいつたまにエロゲーソング持ってくるんだよ。 あれマジで恥ずかしいからやめて欲しいぜ。 この前なんて、赤城を乗せた時にそれが入ったままで若干気まずかったし。

しっかし、最初の頃はわざわざ後部座席に乗っていたのに、今となっちゃ普通に助手席に乗ってくれるようになって、若干嬉しいぜ。

いいね、車デート!


970 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:38:09.13px5GbtGY0 (25/42)

そんなことを考えている内に、目的地へと到着。

少し開けた場所にある駐車場に車を止め、桐乃に降りるよう伝える。

京介「着いたぜ、桐乃」

桐乃「こんな山の中? あんた、こんなとこで何してたの?」

京介「良いから良いから、ほら」

桐乃「チッ……はいはい」

俺と桐乃はそのまま外に出る。 そして、俺はカバンからひとつの物を取り出し、それを桐乃に手渡した。

桐乃「なに? これ」

京介「それ、付けといてくれ」


971 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:38:38.43px5GbtGY0 (26/42)

桐乃「……目隠し?」

京介「おう」

桐乃「ま、まさかあんた……あたしにエロいことする気!? こんな山奥で!?」

京介「ちっげーよ!! エロゲーのしすぎだッ!!」

いやまあ、俺だってこの状況でそれを渡したらそう勘違いされるのは無理も無いとは思ったが。 でも、そうしないとなぁ。

桐乃「ほんっと変態。 ふん」

言いつつも、素直に付けてくれるんだなぁ。 全く、俺が悪い奴だったら間違いなくヤバイことになってるだろうに。 どれだけ信用しているんだか。

京介「ほら、手繋ぐぞ。 それだと歩けないし」

桐乃「……うん」


972 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:39:15.95px5GbtGY0 (27/42)

桐乃の声は先ほどよりも小さく、視界が塞がれているのが恐らくは怖いのだろう。

俺は心の中で桐乃に謝り、手を引いて歩き出す。 桐乃が転ばないように気を使いながら。

そして歩くこと数分。 その場所へと到着した。

京介「着いたぜ、桐乃」

桐乃「もう? じゃ、これ取っていい?」

京介「おう」

俺が答えると、桐乃はすぐに目隠しを取る。

桐乃「……なにここ? 完全森の中じゃん。 少しは見晴らし良いみたいだケド」

ま、そりゃあそうだろうな。 夜景を見る場所じゃあ無いから。


973 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:39:41.91px5GbtGY0 (28/42)

桐乃「ちょっと、京介?」

聞いてくる桐乃に向け、俺は上を指差した。

桐乃「……?」

桐乃の顔は疑問でいっぱいになっていたが、俺はそんな桐乃を少しの笑みを浮かべながら眺める。

やがて、桐乃は上を向いて。

桐乃「……これ」

そうだ。

ここは夜景を見る場所じゃない。

ここから見れるのは、星空だけだ。


974 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:40:08.00px5GbtGY0 (29/42)

京介「ずっと良い場所探しててさ、心配掛けてたら悪かったな。 付き合ってからもう一年になるし、その記念でお前に見せたかったんだ」

桐乃「……ばか。 心配なんてしてないっつの」

京介「へへ。 そうかい」

桐乃は膝を抱え、その場に座り込む。 俺は黙って、その隣に腰を掛けた。

京介「家を出た日も、こうして星を見てたっけか」

桐乃「……うん。 覚えてるよ、あの日のことは。 多分、一生忘れない」

京介「俺も一緒だよ。 思いっきり殴られた痛さが今でも思い出せるぜ……」

桐乃「ひひ。 あたしの為に殴られたんだから、幸せっしょ?」

京介「へいへい。 そうだな。 お前の為になら、俺はいくら殴られたって構いやしないさ」


975 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:40:34.67px5GbtGY0 (30/42)

桐乃は笑顔で星空を眺める。 その横顔は、とても綺麗な物だった。

桐乃「長かったね」

京介「この一年が、か?」

桐乃「ううん。 そうじゃなくて、一緒になれるまで」

京介「だなぁ。 十年以上だもんな。 はは」

桐乃「でも、この一年はあっという間だった」

京介「……そうだな」

桐乃「だけどね、京介」

桐乃は俺の方に顔を向け、言う。


976 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:41:01.12px5GbtGY0 (31/42)

桐乃「今まで生きてきた中でさ、この一年が一番楽しかったよ。 あたしは」

笑顔でそれは反則だぜ。 今度、やってはいけないことを取り決めた方が良さそうだ。 じゃないと俺が死ぬ。

京介「ありがとよ、桐乃。 夏にも来ような」

桐乃「ひひ。 いーよ。 てか、チョー寒い」

厚着をするよう言ってあったから、格好は問題ないと思うが……それでもまあ、寒い物は寒いよな。

京介「桐乃、俺を舐めたら駄目だぞ。 こんなこともあろうかと」

俺は言いながら、カバンから水筒を取り出す。 予め予想していたので、中には暖かいお茶を入れてある。


977 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:41:27.41px5GbtGY0 (32/42)

桐乃「ちょっと期待してたケド、本当にそんなの持ってきてたんだ」

言いながらも、何故か不満そうな顔付きをしているな、こいつ。

京介「なんか怒ってるか? お前」

桐乃「……ベツに」

明らか怒ってるじゃん。 お茶は飲んでいるけどさ。

京介「んだよ。 まだなんかあるのか?」

桐乃「無いっての。 もう良いし」

京介「……へいへい」

こうして、俺と桐乃は一緒に星空を眺めた。


978 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:42:00.59px5GbtGY0 (33/42)

なんてな。 こいつが不満そうな顔をしている原因も、少し不機嫌になっている原因も分かっているさ。

ただちょっと、意地悪をしたくなっただけで。 ただちょっと、桐乃の反応が可愛かっただけだ。

そして、俺は隣に座る桐乃を抱き締めた。

桐乃「……チッ」

京介「へへ、寒いんじゃなかったのか?」

桐乃「べっつに。 ふん」

京介「んじゃあ、離れるか?」

桐乃「……寒い」

京介「そうかい。 気が合うのか俺もさみーんだよ。 だから、もう少しこうしてるか」

俺が言うと、桐乃はこくんと頷く。


979 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:42:35.33px5GbtGY0 (34/42)

桐乃「……ありがと」

京介「え? 今なんつった?」

桐乃「なんでもなーい」

桐乃「てか、まだ寒いんですケドぉ。 もうちょっと近くよって抱き締めてくんない?」

京介「りょーかい」

俺は一度立ち上がり、空を眺め続ける桐乃を抱きかかえ、膝の上に座らせる。

桐乃「……そこまでは頼んで無いんだケド」

京介「良いじゃん。 俺がこうしていたいんだよ」

桐乃「……あっそ」


980 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:43:01.25px5GbtGY0 (35/42)

とは言いつつも、桐乃は前に回している俺の腕を抱く様に、しっかりと掴んでいた。

京介「今年もよろしく。 また沢山遊ぼうぜ」

桐乃「だね。 沙織とか黒猫とか。 たまにはあやせとか加奈子とかとも良いかもね」

京介「おう。 暇しそうにはねえな、はは」

桐乃「あたしが居るのに暇とか言ったら、許さないし?」

京介「へいへい」

桐乃「……そだ。 今度さ、新しい抱き枕が欲しいんだケドぉ」

桐乃はどこから持ってきたのか、手帳を取り出し、俺に何かのコースを説明し始める。 恐らく、デートコース。

俺は楽しそうに話す桐乃に耳を傾け、ゆっくりと頭を撫でる。

そして桐乃は、それを当然のことのように、笑顔のまま受け入れた。


星降る夜に 終


981VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 11:44:37.45PrPjN9FAo (1/1)

次スレの準備いるかな?



982 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:44:43.68px5GbtGY0 (36/42)

以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

待ちに待った配信日ですね。
後一時間ちょっと!
お風呂で体を清めてきます。


983VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 11:47:40.852QYW9XNvo (1/2)

おつ


984 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:50:57.43px5GbtGY0 (37/42)

>>982
お話のストックが今全部切れていますので、ある程度書け次第スレ立てようかと思っています。
一週間後くらいには……

スレタイは分かりやすいのにする予定なので、大丈夫かと。


985 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 11:51:24.65px5GbtGY0 (38/42)

自分にレスしてましたすいません。

>>981さんです


986VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 11:56:53.13DXm9U4lDO (1/1)

乙乙
今日の話の後日談読みたいな

桐乃が聞いて回った人の桐乃や京介に対するアクションを


987VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 12:42:02.28mQH6+/cmo (1/1)

乙です


988VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 14:45:42.30zxobSmBtP (1/2)

不謹慎ながら京桐が駆け落ちして樹海だか山中で発見される同人誌を思い出した



989VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 15:49:36.28Qubvi+kJ0 (1/1)

まぁ実際は金ならあるカップルだからそうはならんだろうなぁ
桐乃が既に一生食ってくくらいは稼いでる感じだし


990 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 16:31:09.75px5GbtGY0 (39/42)

>>988
ちょっと興味が……
良かったらタイトル教えて頂けないでしょうか。

アニメ良かったですね。
最後のキスはずっと口だと思ってたのに、頬だったとは。
書く意欲が物凄く沸いたので、一話書いて今日中に投下します。


991VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 16:35:59.85izGVwW680 (1/1)


結婚式のシーン良かったよね
何回も泣いてしまったわw
もう一話全裸待機して待ってる


992VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 16:44:52.80zxobSmBtP (2/2)

>>990
ドギツイよ?「18近」でgoogle検索。正確にはpixivで公開している漫画。
まとめて圧縮した奴も挙がってるが、多分作者の許可取ってないので判断は任せる。


993VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 17:04:05.162QYW9XNvo (2/2)

>>990
作者的には最後は口だったみたいだよ


994VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 18:36:02.63EZuKns8s0 (1/1)

乙です。

俺妹終わっちゃったんだな。アニメが終わった事によりまた原作が終わったときのような虚しさが…

続編出ないんだろうな


995VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 19:56:23.50WqUEVnYv0 (1/1)

>>994
お前は俺か。

原作読み終えた時も喪失感に見舞われたが、アニメ観終わった今回はこのスレの存在に救わてるわ。

スレ主さんが想いをたっぷり込めてSSを書いてくれて本当によかった。

心からそう思う。


996VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 20:20:15.21872lfiejo (1/1)

たった今見終わりました・・・

いやぁ、のっけの黒猫でボロ泣きするとは思わなかった

公開処刑を二回も執行された京介君の未来が心配だけど


997VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/18(日) 21:02:33.70wUso3an0o (1/1)

乙です。作者が口っつってるのに何でほっぺなんだとか、アニメには正直不満も色々あったけど
このスレでお腹一杯になってるから何か許せるわ
原作終わってからの寂しさも作者さんの糖度物凄いSSのおかげで何とかなったよ。ホントありがとう



998 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 22:28:07.95px5GbtGY0 (40/42)

次スレのご案内。

桐乃「行ってきます」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376832426/

こっちのスレは埋めちゃいます。


999 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 22:30:50.65px5GbtGY0 (41/42)

うめ


1000 ◆IWJezsAOw62013/08/18(日) 22:31:16.90px5GbtGY0 (42/42)

             /. . .          . . . . ミ. . .\、.. .    ヽ
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          f\:. :∨ ., :/ : ,      '        ノ.イ:/く
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             フ} :..`ト.\     rァ     ソ     ノ:. :i!:.:.`ト--一 ´
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