447VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/29(日) 17:56:34.96L0+b2LK60 (6/13)



兄ちゃんが背負ってる物なんて、俺には分かんねえ


リナトの痛みも、俺には分かんねえ


でもな、俺のことも、分かんねえだろ?


そっちにはそっちの、俺には俺の都合があるんだから……


俺は、お前を連れて帰るって、一緒に帰るって言っちまったんだ。


お前が何で『そう』なっちまったのかは分かんねえけどよ


『どうにかしてやる』なんて言っておきながら、俺はお前を救えなかった。


一回破っちまったけど、やっぱ約束は守らねえと駄目だよな?


それによ、兄ちゃんは腹括ってるけど、お前は『まだ』だろう?


姿形が魔物だろうが、そんなもんは目を見りゃあ分かるんだよ。



お前は、馬鹿みてえに分かり易いからな……





448VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/29(日) 18:00:08.24L0+b2LK60 (7/13)



だから


「わりぃな。そりゃ無理だ」


『ブラッズ……』


「言った筈だぞ、お前に出来ることは無い」


「なめんじゃねえ……ほら、抜けよ」


一つでも可能性が在るなら


「……仕方無い。意識を断った後、向こう側へ運ばせよう」

「へっ、出来るもんならやってみろ。それとリナト、お前は『中に』戻れ。

 そんで、お前の身体に付いてる『右目』で見てろ」


『……ああ、分かった』


一つでも可能性が在るなら


いや、例え見出した可能性がそのものが……



「どうしたクレイズ? 掛かって来いよ?」




もしそうだとしても、俺は戦う。





449VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/29(日) 18:02:53.14L0+b2LK60 (8/13)



【繋がる心】


「やはり防ぐのがやっとか。

 傷が癒えたとは言え、まだ万全ではない。まして隻眼、無理もない」


「手ぇ抜いてると、痛い目見るぞ」


「お前に死んで貰うわけにはいかないからな」


「言ってろ」


早るな、待つんだ。


今防げてんのは、クレイズが防げるように攻めてるからに過ぎねえ。


巧く上下に打ち分けていように見えるが『遅い』


これも、今の速度に俺を慣れさせる為


速度を上げる時が、必ず来る。


その時、その気配を感じろ、それだけに集中しろ。



そして、防ぐのに手一杯な風を装え、悟られず、しっかりと丁寧に……




450VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/29(日) 18:05:25.64L0+b2LK60 (9/13)



後は


「っ…らぁッ!!」


「ブラッズ、何故分からない?」


「はッ…はぁっ、何言ってんのか分かんねえのに分かるわけねえだろう……が!!」


当たんなくて良いから反撃すんのを忘れんな。


クソッ…分かってても、やっぱキツいな。朝飯も大して食えなかったし。


ゼノはもう着いたよな?


それとも、もう向こう側に……


取り敢えず里には魔物は向かってねえのは分かったけどよ、人間の町や村はどうなる?


「やはり、そうするのか。ならば、数で分かって貰う他無い」


「一人でなに言ってんだ?」


「気にするな。それよりブラッズ、そろそろ……お終いだ」



「…ッ!?」




451VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/29(日) 18:07:30.67L0+b2LK60 (10/13)



来る!! 集中しろ!! 見えねえ所は感じるしかねえ!!


気を失わせる為とは言え


今のクレイズなら脚一本、腕一本くらいなら平気で斬る。


左手が消えた……右腕狙い、じゃねえ。


腕を広げただけだ。これは死角に意識を向ける為の、陽動。


左足が本命、これを、防ぐ。


「……随分、成長したな。迷いも無くなった」



隙が出来た!! 此処しか、ねえ!!



「なッ!?」




452VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/29(日) 18:11:59.22L0+b2LK60 (11/13)



まず太刀を手放し、そんで右腕掴んで半回転、背を預ける


後は右肘を俺の腹目掛けて曲げてやりゃあ……串刺しの完成だ。


「ぐッ…ブラッズ……お前、何を」


「いッてえ!! 分かってても、やっぱ、いてぇな」


「馬鹿な事を……こんな事、で…な、ん だ? ブラッ…ズ、お前、なにを」


「ははっ、これが外れてたらどうしようかと思ってたけどよ……『当たり』みてえだな」


「な、に?」


「はっ…はぁっはぁっ……リナト、お前、言ったよな?」


『えっ?』


「『クレイズさんと繋がってる』ってよ。

 けどよ、俺とお前も『目』を通して肉は繋がってる。でもそれじゃあ足りねえ……

 だか、ら。こうすりゃあ、『全部』が繋がるんじゃねえか、と、思ってよ」




453VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/29(日) 18:20:03.95L0+b2LK60 (12/13)



『……!!』


「馬…鹿な。止め ろ、ブラッ ズ」


「待っ てろ。今 から、『そっちに』迎え に行く から」


ブラッズは知らない


クレイズが奪った二刀に打ち込められた力を


ましてカティアが何を想い、何を願い槌を振ったかなど知る筈が無い。


酷く原始的な、馬鹿馬鹿しい程単純な方法


そもそもこんな繋がりなど想定して造られた刀では無い。


だが、それでも、そんな方法でも、刀はブラッズの想いを、願いを読み取り……




「今 行くぜ リナトォ!!!」





『三人の魂』を、繋いだのだ。





454 ◆LKFxTlgu0U2013/09/29(日) 18:23:45.16L0+b2LK60 (13/13)

今日はこの辺で終了します。このお話しも、もう少しで終わると思います。

見てる方、レスしてくれた方、本当にありがとうございます。


455VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/29(日) 21:36:59.01yd+rXdsLo (1/1)




456 ◆LKFxTlgu0U2013/09/30(月) 09:27:56.94eHWSOWmL0 (1/6)

投下します。


457VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/30(月) 09:28:58.11eHWSOWmL0 (2/6)



【途切れ途切れ】


何だろう? 遠くで、声が聞こえる。


ブラッズが来て、クレイズさんが怒って、僕は……どうなったんだ?


『大丈夫だって、二人なら何とか抑え込める』


『拙いな、これでは三人共……』


『リナト、お前は行け。こりゃ流石に厳しい』


『ブラッズ……何故、何故来たんだ。お前には、未来』


『兄ちゃんは考え過ぎなんだよ。要は、コイツを』


『お前に背負わせたくは』


『へへっ、もう来ちまったんだ。今更』


『兄ちゃん!! 大丈夫か!?』


『ブラッズ!!』



『リナト、お前に』





458VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/30(月) 09:30:20.94eHWSOWmL0 (3/6)



駄目だ…巧く聞き取れない、声がぶつぶつ途切れてる。


『さあ、行くぞ』


『最初からこうすりゃあ良いのに、兄ちゃんは格好付けすぎなんだよ』


『そうかもな。準備は良いか? 来るぞ』


『ようやく此処まで来たんだ。生きて帰らねえとな』


得体の知れない何かと戦う二人の姿は、とても頼もしく見えた。


『 行けッ!! 』


ブラッズ、待ってよ。僕は君に謝ってもいない。


駄目だ……声が、出ない


二人の背中が、遠ざかって行く。


悔しい、力無い僕には一体何が出来るって言うんだ?



『 リナト、後は頼むぜ? 』





459VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/30(月) 09:34:11.45eHWSOWmL0 (4/6)



【顕現】


『あれが、あれが魔者本来の姿なのか!?』


『我々で何とかするしかない!!』


『皆、陣を組め!! 避難を優先するんじゃ!!』


魔族の前に居るのは一人の魔族


人の姿を保ってはいるが、決定的に違う。


前頭部から後頭部に掛けて生えた二本の角


皮膚は黒い甲冑、瞳は紅く輝き、発する気は禍々しく景色を歪める。


全ての魔を、一つの器に無理矢理収めたような……



憤怒と憎悪の化身





460VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/30(月) 09:36:15.44eHWSOWmL0 (5/6)



『族長!! 奴の側にブラッズ様が!!』


『……儂が往く、お主等は下がれ』


『オレも行きます』


『ゼノ……うむ、分かった。ブラッドリーを救出した後、すぐに離脱する。

 奴は儂が引き付ける、後ろに付け。決して、決して無理するでないぞ。

 お主はまだ若い、生きねばならんのだ』


『はい』


瞳の奥、其処には揺らがぬ決意、一人の若者を案ずる心が見えた。


彼が居るだけで皆は奮い立ち、


彼が居るからこそ、臆すること無く眼前の『魔』と相対する事が出来る。



『では、往くぞ』





461 ◆LKFxTlgu0U2013/09/30(月) 09:42:20.59eHWSOWmL0 (6/6)

また夜に投下するかも知れません。ありがとうございました。


462VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/30(月) 13:23:28.50X6TRjYMjo (1/1)

時間軸がさっぱりわからん


463 ◆LKFxTlgu0U2013/09/30(月) 18:57:01.20F5uo/R730 (1/6)



【生還】


「……ッドリー!! ブラッドリー!! 目を覚ませ!!」


「ぐッ…ぅ…此処は?」


「ようやく起きたか、此処は里だ。

 何故かは知らないが『奴』は里には手を出さない」


「奴?」


「魔の覚醒者。族長は『ラキ』と呼んでいた」


「それは確か英雄の……何でお前が知ってんだ?」


「族長が教えてくれた」


「そうか。で、そいつは今何処に居る?」


「お前を救出した際は暴れていたんだが、今は動きを止めている。

 皆は、この機に北の地へ移動を始めようとしている」



「リネットは? 後、俺が寝てる間に何があったのか教えてくれないか」




464VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/30(月) 19:05:20.39F5uo/R730 (2/6)



「リネット様は傷付いた魔族と人間達の手当てをしている。

 お前が城に居る間の状況だが、オレが里に戻ると各地に魔物が出没したとの報告を受けた。

 族長は魔族を率いて人間の町や村に向かい、魔物を殲滅しつつ、人間を里へ避難させた。

 その後城へ向かうと、奴が現れた。お前が気を失っていたのはその僅かな間だろう」


「……!! 城に居た人間達はどうなった!?」


「安心しろ、皆無事だ」


「そうか、良かった」


「……ブラッドリー」


「どうした?」


「心して聞いて欲しい。

 お前の祖父・魔族長ファーガス様は、亡くなられた」


「…ッ!! 説明、してくれるか」


「奴の側で気を失っているお前を救出し離脱する際、お前とオレを庇って、息絶えた」


「そん、な……何でこんな…カティア、シャズネイは…」


「シャズネイは眠っている。城で奴の姿を見た時、酷く動揺していた。

 どんな経緯があったのか分からないが、奴の身体はリナトのものらしい。

 正直、その辺の状況は全く把握していない」




465VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/30(月) 19:07:53.66F5uo/R730 (3/6)


「……俺、行かないと」


「何処へ」


「城に行く。奴はいずれ動き出し、里にも魔物を放つだろう。

 向こう側に逃げるとしても、人間も一緒となれば、まず無理だ。

 止まっている今が、アレを倒す唯一の時」


「リネット様はどうする?」


「大丈夫、リネットなら分かってくれる。それと……」


「何だ」


「『僕は大丈夫、必ず帰るから』


 リナトからの伝言だ。シャズネイが起きたらそう伝えて欲しい」


「了解した。会わずに行くのか?」


「ああ、今会っても意味が無いから」


「お前は…いや、いい。二人にはオレから伝えておく」



「……ありがとう」




466VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/30(月) 19:12:30.59F5uo/R730 (4/6)


【偽物】


ゼノさん、ありがとう。


僕が何者なのか察した筈だ……リネットさんも、気付いているだろう。


「彼等は…」


里を見渡すと多くの人間と、魔族が倒れていた。


リネットさんは先程聞いた通り、エルフと共に治療を行っている。


此処へ辿り着くまで、


これだけの人間を助ける為に、一体何人が犠牲になったのだろう?


孫を助ける為に命を差し出した彼の祖父


『ブラッズ』の帰りを待っていたリネットさん


『リナト』を待っていたシャズネイ……




467VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/30(月) 19:14:44.39F5uo/R730 (5/6)



「……行こう。僕は此処に居るべき者じゃない」


視界が狭い、歩く度に身体中が軋む。


こんな状態でブラッズは戦っていたのか?


僕を助ける為に、約束を守る為に…


「ブラッズ、君は僕の想い描く英雄そのものだよ。

 でも、今だけは……」


ラキが動きを止めているのは、二人が内で戦っているからだろう。


『リナト、後は頼むぜ?』


あの時、戦闘が激化する中


ブラッズは、僕をブラッズの身体へ移し、繋がりを断った。


動きが止まっている今なら、『魔』その物に『ラキ』になったのなら



この刀で、斬り裂ける。




468 ◆LKFxTlgu0U2013/09/30(月) 19:37:36.25F5uo/R730 (6/6)

以前にも同じ指摘があったので、どうにかしようとは思っているんですが、

浮かんだ場面をすぐに書くのが癖になっているみたいです…もう少し考えて書きます。

書き方とか伝え方とか、何だかぐちゃぐちゃになってしまって申し訳無いです。

長々とすいません。読んでる方、本当にありがとうございます。


469VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/09/30(月) 21:15:52.34jB8YI1Vho (1/1)

乙、毎回楽しみにしてるよ

俺はそういう所が好きなんだけどなぁ…まぁ、人それぞれか


470 ◆LKFxTlgu0U2013/10/01(火) 00:11:40.48ttU6dpl30 (1/8)

投下します。


471VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/01(火) 00:13:52.96ttU6dpl30 (2/8)



【借り物】


里の皆は治療と向こう側へ往く準備で忙しく、


見つからずに里を抜け出すことが出来た。


ゼノさんの言う通り、里の周囲に魔物は居なかったが


もし城への道程で出会したらどうする?


「頼るな、甘えるな」


そうだ、甘えるな。


何を今更、もう僕を守ってくれる者は居ないのだから。


戦うしか無い、あの場所に辿り着くまで、僕は絶対に倒れるわけにはいかない。


先程まで魔物を操り、人間を殺した人でなしが英雄気取りか?


ああ、その通りだよ。


僕は許されぬ罪を犯した。


あれは決意なんかじゃない、放棄しただけだ。





472VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/01(火) 00:16:46.41ttU6dpl30 (3/8)



「はぁっ…はぁっ」


それでも、ブラッズは僕を見捨てなかった。


僕と入れ替わり、数多の怨念の渦に身を投じ、今尚戦っている。


間違いを犯し、道を違えたのに、僕に自身の身体を託したんだ……


僕はそれに、それだけには答えなくてはならない。


「……ッ!!」


『グォアアアアアアアッ!!』


僕が操っていた魔物が暴走しているのか?


それとも、あの二人でも抑え切れぬ程に……どちらにせよ、急がないと拙い。





473VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/01(火) 00:20:32.38ttU6dpl30 (4/8)


『ガァッ!!』


「腕が伸びるのか。それより、凄い」


反応速度が人間のそれじゃない……


もし、この身体でなかったら頭を割られて死んでいた。


それどころか


『カひッ?』


避けた直後に懐に踏み込み首を斬り落とした。


自分の身体じゃないみたいだ…いや、実際その通りなんだけど


判断はしている、でもそれより一瞬早く身体が動く。


身体に染み付いているのか、ブラッズは凄まじい修練を積んだのだろう。


英雄気取りか、確かにその通りだ。


僕は偽物で、弱くて、人でなしだけど



「今だけは、この姿で居る間だけは……英雄でいなきゃ駄目なんだ」





474VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/01(火) 00:25:45.86ttU6dpl30 (5/8)



【英雄と化け物】

「げほっ…はぁ…はぁ…はぁっ」


何体斬った? かなり辛いけど、泣き声を言ってる暇はない。


随分血を浴びたけど、奇跡的に傷は負うことは無かった。


この身体じゃなかったら、何回死んだことだろう……


限界など超えている筈なのに此処まで来れたのも、この身体のお陰だ。


見えた、もう少し、もう少しだ。


「待っててくれ、ブラッズ。今、終わらせる」


徐々に明らかになるラキの姿


あれが自分の身体だとは、到底信じられない。


二本の角に紅い瞳、漆黒に染まった皮膚は鎧のようだ。



背後の風景は陽炎のように揺らめいている。





475VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/01(火) 00:28:15.05ttU6dpl30 (6/8)



今更遅いけれど、僕がもう少し強かったら


こうはならなかったのかも知れない。


クレイズさんが笑える未来も、在った筈なんだ。


牢獄で『俺は器として選ばれたのだろう』と言っていたけど


精神を蝕まれ、自分を犠牲にして、化け物を魂に宿し


怨みの対象である『ヒト』を犠牲にすることで、ブラッズ達を救おうとしていたのか。


その未来を壊したのが、ブラッズだ。


本当に、本当に君は凄いよ。


「はっ…はぁっ…やっと、着いた」


今、眼前の『魔』の内側で二人は戦ってる。



大丈夫、準備は出来てる。





476VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/01(火) 00:31:49.09ttU6dpl30 (7/8)



『ハァァァ……』


「我ながら醜いな。でも、英雄に倒されるなら本望だ」


この刀を突き立てれば、全てが終わる。


「さよなら、ブラッズ」


リナトは柔らかに微笑み


右手に携えた魔を断ち切る太刀を、胸に突き刺さす


『が…ぐッ…オァァアアアアア!!!』


憎悪と憤怒の化身は、大地を揺るがす咆哮と共に崩れて往く……


「ぐッ…凄まじいな。でも、まだ終わりじゃない」


咆哮の衝撃に押し戻されるが、しがみつき、身体を支える。


そして、もう一方、左手に携えた太刀を突き立てた……



「また会えたら、友達に   」



此処で、彼の意識は途切れた。





477 ◆LKFxTlgu0U2013/10/01(火) 00:36:28.03ttU6dpl30 (8/8)

この辺りで終了します。
読んでる方、レスしてくれた方、本当にありがとうございます。


478 ◆LKFxTlgu0U2013/10/02(水) 00:56:50.45BWVdYdeO0 (1/7)

短いですが投下します。


479VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/02(水) 00:59:38.09BWVdYdeO0 (2/7)



【受け継いだ物】


彼は液状の黒から練成した二刀を振り翳し、圧倒する。


その二刀、どうやらそれは血液のようだった。


しかし血液と呼ぶにはあまりに黒く、通常有り得ない程の熱を帯びている。


刀が掠った部位は焼け爛れ


彼の血を受け継ぐブラッズでさえ、回復には相当の時間が必要だった。


此処は彼そのものであり、魔の源泉。


数百年前のあの時、魔獣を率いた少女との戦闘


その際、もし彼が人を諦めていたら


彼の中の何かが完全に破綻していたら



或いはこんな姿になっていたのかも知れない。





480VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/02(水) 01:01:36.06BWVdYdeO0 (3/7)



怒りに染まり、復讐に走り、ヒトという種を憎む心。


彼が内に秘めていた力、その本質。


純然たる人の身で人を超え、遂には魔物をも超えた少年・ラキ。


始まりの魔者、魔族の祖


その力が遺憾なく発揮され躊躇い無く振るわれる。


『内側』で行われているこの戦いは、通常の、単なる肉の削り合いでは無い。


正に、魂を剥き出しにして斬り合っているのだ。


一太刀でもまともに浴びれば、一瞬で存在が消し飛ぶだろう。



これは、魂の闘争。





481VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/02(水) 01:03:15.48BWVdYdeO0 (4/7)



「何だよあの鎧みてえな身体、卑怯だろ……」


「ブラッズ、お前の攻撃は当たったか?」


「ん……いや、兄ちゃんのしか当たってねえ」


此処へ来て発覚した事が幾つか在る。


当然、此処へ来た当初は武器など無く、二人は無謀にも素手で挑んだ。


しかし現在、


クレイズは長刀を、ブラッズは細身の片手直剣を所持している。


それは、気付けばその手に在った。


何を意味するのか理解出来なかったが、その剣で戦うしかない。




482VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/02(水) 01:04:52.55BWVdYdeO0 (5/7)



だが、それより不可解な点が一つ


彼はブラッズの攻撃を、躱している。


如何なる攻撃をも通さぬであろう、鎧の如き皮膚を持っているのに、だ。


ブラッズの言う通り、クレイズの攻撃は当たっている。


だがそれは、躱す必要が無いから、なのではないか?


クレイズは其処から一つの仮説を立てる。


彼は、ブラッズの持つ片手直剣を怖れているのではないか?


それを確かめるべく、守備に徹した。


振るわれる二刀を弾き、無防備になった所をブラッズが攻撃する戦法。


すると、クレイズの攻撃を受けるのをお構いなしに、ブラッズの攻撃だけは避けた。


確信、あの片手直剣には彼が怖れる何かが在る。



「ブラッズ、聞いて欲しい事がある」





483VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/02(水) 01:07:23.78BWVdYdeO0 (6/7)


ーーーーーー

ーー


「本当に、本当にそれしか方法はねえのか?

 リナトが『外側』から壊すまで待った方が良いんじゃねえのか?」


「外側からだけでは『届かない』」


「でも


「ブラッズ」


「……っ」


「それに、本来なら此の世に居るべき者じゃない。分かってくれ」


ああ分かってる。でもさ、やっぱ納得行かねえよ……


こんなんじゃあ、まるで



「ブラッズ、終わりにしよう」



まるで、兄ちゃんは『この時の為に』生きてきたみてえじゃねえか。





484 ◆LKFxTlgu0U2013/10/02(水) 01:12:01.83BWVdYdeO0 (7/7)

この辺で終了します。読んでる方、ありがとうございます。


485VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/02(水) 01:12:46.81baZpB4TKo (1/1)

誰と戦ってんだっけか


486 ◆LKFxTlgu0U2013/10/02(水) 18:08:54.79vdXJ24L30 (1/2)


【今】


これで倒せるという確証は無い、もし当てが外れれば犬死にだ。

「ブラッズ、行くぞ」


この先を生きる気など毛頭無し、まして生きる資格など無い。


俺の命など、くれてやる。


「ぐッ…」


「兄ちゃん!!!」


「構うなッ!! やれッ!!」


だが、お前も道連れだ。


過去を生きた者が今を縛るなど、あってはならない。


俺もお前も、此処に居るべきじゃあない。




487VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/02(水) 18:10:10.90vdXJ24L30 (2/2)



【独り】


兄ちゃんも、英雄の怨みとやらも、消えちまった。


『構うなッ!! やれッ!!』


貫いた感触が、まだこの手に残ってる。


本当にこれしか無かったのか? そもそも何故こんな事になっちまったんだ?


訳の分かんねえ内に始まって、終わった。


「後は、リナトが外側からぶっ壊せば……」


ん? つーか、そうなりゃ俺は死ぬのか…何だか実感ねえな。


後先考えずに此処に来ちまったし、出口なんざ在るわけねえし。


リネット、ごめんな? 流石に、帰れそうにねえや……


『『が…ぐッ…オァァアアアアア!!!』』



「終わったな……リナト、ありがとよ」





488VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/03(木) 01:25:53.31N4mWKMkno (1/1)

乙~


489VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/04(金) 10:27:49.337MOr/won0 (1/1)

まだ終わりじゃないよね?


490 ◆LKFxTlgu0U2013/10/07(月) 18:25:41.19+SWygQw70 (1/11)

投下します


491VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 18:27:00.45+SWygQw70 (2/11)



【想う人】


ゼノ「伝言はこれだけだ」


シャズネイ「……必ず帰る、ですか」


布団から身を起こし、ゼノの言葉に耳を傾ける彼女の顔は、


城でリナトの姿を目撃した時とは違っていた。


僅かに憔悴している感はあるが、瞳は前を見据え、迷いや困惑は感じられない。


ただ、彼の言葉を信じる。


例えそれが他者から伝えられたものだとしても、彼女には十分だった。


また会えるのなら、彼がくれた『此の場所』に彼が帰って来ると言うのなら、それを待つ。


ゼノ「シャズネイ、四種族は先程言ったように北の地へ向かう。お前達はどうする」



シャズネイ「残ります。リナト殿の帰る場所は、此処ですから」





492VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 18:28:03.52+SWygQw70 (3/11)



ゼノ「そうか。ならば、オレも残る」


シャズネイ「えっ? 何故」


なにが、『ならば』なのか彼女には分からなかった。


感じ入る部分でもあるのだろうか……


世辞にも、情に厚い男では無い。まして自分の為に残ると言ったわけでは無いだろう。


ゼノ「俺も奴を……『ブラッズ』を待つ」


シャズネイ「……!!」



たかだか一週間そこらの付き合いに過ぎないが、彼女は自分が誤っていたと知る。




493VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 18:30:13.64+SWygQw70 (4/11)



暗殺者として教育され、何人もの人間を葬った男。


しかし、まだ少年と言っても差し支えない年齢、表情こそ変わらないが心は動いているのだ。


ブラッズやリネット、カティアと触れ合い、少しずつ変化していたのだろう。


その中で、暗殺者の頃には無かった他者を想う心が芽生えても何ら可笑しくは無い。


シャズネイ「ですが、貴方にはリネットさんの護衛が」


ゼノ「それも含めて…だ。里の裏山から北の地へ向かう手筈になっている。

   当然、誰かが残り、里を死守しなければならない」


シャズネイ「それは、やはり魔族の方々が?」


ゼノ「魔族含め戦える者達全て……いや、女子供以外か。

   これは、魔族長が人間を救うと決めた際に下した命令」



シャズネイ「……!! それではまるで『生かす為に死ね』と言っているようなものではないですか!!」




494VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 18:31:47.09+SWygQw70 (5/11)



ゼノ「救うとはそう言うことだ。何事も、そうと決めたら最期まで通す……半端は無し」


ゼノ「その場限りの行為など糞の役にも立たん。救うと決めたなら、己の身を賭して守る」


シャズネイ「それは、族長殿が?」


ゼノ「そうだ。皆、死ぬつもりなど無いがな」


シャズネイ「……!? あのっ、リネットさんは何処に? 少し話しがしたいのですが」


ゼノ「そうか、治療も一段落着いたことだろうし、オレが呼んで来る。お前は此処に居ろ」


シャズネイ「ありがとうございます」


襖を開け出て行く背中を見送った後、先程の表情を思い出す。



『皆、死ぬつもりなど無いがな』



そう言った時、彼は笑っていた。楽しいとか、嬉しいとかではなく。




何かに抗うような、不敵で子供らしい、そんな笑顔……





495VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 18:33:35.82+SWygQw70 (6/11)



【二人が待つ男】


リネット「もう、大丈夫なの?」


シャズネイ「はい。私は、私がやるべき事を見付けましたから」


リネット「そっか……」


シャズネイ「リネットさんは、本当に行かれるのですか?」


彼女自身、最低な質問だと分かっている。しかし、これだけは聞いておきたかった。


リネットが、同じ『待つ者』として何を想うのかを


リネット「うん、私は行くよ。ブラッズがいつ来ても大丈夫なように、皆が笑えるようにしたいから……」


シャズネイ「貴女は、強いですね」


リネット「ううん、そんなことないよ? 最初は救世主とか言われて、それで守らなきゃって思って……」



シャズネイ「………………」




496VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 18:34:35.97+SWygQw70 (7/11)



リネット「だけどね? 自分がどうしたいかって沢山考えた。短い間だけど、沢山沢山考えて決めたんだ」


リネット「カティアも、色々手伝ってくれた……『アタシはリネットの話しを聞いただけだ』って言ったけど、それで決心着いた」


シャズネイ「怖くは、無いのですか?」


リネット「すっごく怖い。早くブラッズに会いたい……でも、ブラッズも頑張ってるから」


弱々しくもあり、力強くもある笑みだった。


戸惑いもあるのだろうが、何よりブラッズの安否が気掛かりなのだろう。


シャズネイ「ゼノ殿に聞きました。ブラッズ殿は一人で向かわれたと……」



リネット「うん、そうみたい。なんで、何も言わずに行っちゃったのかな……なんで………」




497VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 18:37:42.19+SWygQw70 (8/11)


此処へ来て初めての涙


愛する男が傷を負いながら魔物が溢れる『外』へ出たと言うだけで、気が気でない。


まして単身で向かうなど……最早、彼女には迷うことすら出来なかった。


深い傷を負い、多量の血を流し倒れる者多数


その中でも、半死半生の者の治療に当たっていたのだから『心配』などしている時では無かった。


『心配』その理由は至極簡単な事……あの時、ブラッズの身体を借りたリナトは、


ゼノと同じく、リネットも自身の正体に気付いているだろうと感じていたが、そうでは無かった。


彼女は『何も知らなかった』



偽物であるが故にどちらにも会えなかった事も、彼が何をしたのかも、勿論知らない。




498VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 18:38:40.67+SWygQw70 (9/11)



リネット「シャズネイさんは、どうするの?」


シャズネイ「私は生き残った人々を説得し、此の地に残ります」


リネット「説得って……どうするの? 私達に着いて来るって言う人も居るんだよ?」


シャズネイ「ゼノ殿によると、魔族含め数多くの方々が此の里に残り、魔物の進行を防ぐとのこと」


シャズネイ「ならば残っても問題は無い……とは言い切れませんが、我々人間は自らの足で歩んで行かなければならないと、そう思うのです」


リネット「……………」


シャズネイ「着いて往く者を無理に止めはしませんが、残された同志達は此処に留まり『戦う』でしょう」


シャズネイ「戦争に湧いていた人間が里の方々に救われ、其処に何を想うのか……それを問うだけです」


情けなくはないのか、そこまでして生きたいのか、今こそ己の生き様を決める時なのだ。


それを彼女は『人間』に問うと言う。


都合良く生き残り、強者に取り入り、依存するのか?


死を厭わず救ってくれた里の者達に顔向け出来るのか?



それが皆の求める『生』なのか、と。




499VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 18:40:22.34+SWygQw70 (10/11)



リネット「私には何も言えない…けど、それはきっと私達も同じだよ」


シャズネイ「えっ?」


リネット「何でも人間の所為にして、愚かだとか醜いとかばっかり……他にも沢山。私も、その一人」


リネット「乱暴で怖い種族、無ければ奪えば良い。

     ヒトは皆、そんな風だと思ってたけど、治療を通して少しだけ触れ合って……違うんだなって思った」


リネット「勿論今でも怖いけど……何だろうね? うぅん、上手く言えないや」


シャズネイ「……大丈夫です。ちゃんと伝わります」


リネット「そっか……」


シャズネイ「リネットさん、ありがとうございます。貴女と話せて本当に良かった」


リネット「ううん。私も、話せて良かった」


目指す場所は違えど、これから一歩を踏み出そうとする意志は同じ。


リネット「……そろそろ、行かなきゃ」


シャズネイ「………そうですね。私も同志の下へ行きます」



何より女性として、帰りを待つ身として




共有する想いを持つ者同士で言葉を交わせたことが、彼女達に力を与えた。





500 ◆LKFxTlgu0U2013/10/07(月) 18:45:24.49+SWygQw70 (11/11)

今日は此処で終了します


501VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 19:52:54.28SPukmyk1o (1/1)

乙、次も待ってる


502VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 21:29:37.14peU09w6Oo (1/1)




503 ◆LKFxTlgu0U2013/10/07(月) 23:54:48.53A8uTJtIA0 (1/2)

少し投下します


504VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/07(月) 23:56:32.06A8uTJtIA0 (2/2)



【集い】


カティア「なあリネット、ホントに魔物が来るのか? 男連中は皆残るとか言うし」


その中には、カティアの父も含まれている。


里に魔物が来ると言っても確実では無い。しかし、里が襲われないと言う確証も無い。


普段勝ち気な彼女も、今は憂いと僅かな怒りの表情を見せている。


もし来るなら百・二百ではない魔物の大群が現れる……


それを考えると、年老いた父を置いて往くのは当然の如く辛い。


それは皆も同じ、勿論リネットも辛いだろう。


しかしカティアの場合、物事を誰かに押し付けて自分達は安全な場所へ……と言うのが気に入らないようだった。


リネット「万一の為に残るって言ってたけど、人間の人達は残るから守らなきゃならないって……」



カティア「一緒に来れば良いだろう。その方が手っ取り早い」




505VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/08(火) 00:00:07.19uoXL2WQQ0 (1/7)



リネット「四種族を造った『人間』など居ない。貴方達は、初めからそうだった」


カティア「なんだ急に? 人間の言い訳か?」


露骨に顔を顰め、問う。


それも当然。大戦の最中に造られた事実は、数百年経った今でも風化していないのだ。


カティアに限ったことでなく、今の言葉を聞けば誰もが同じ表情になるだろう。


リネット「違う違う!! 四種族は造られた存在なんかじゃない、みんな人間なんだ……って」


カティア「ああ…なる程。で、それが残る理由になるのか?」


リネット「何か言ってることが難しかったからよく分からなかったけど、『我々が人間として生きる為』とか何とか」


カティア「へぇ…そんな奴も居るのか」



リネット「例のリナトさん。その同志の人達が、そう言ってた」




506VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/08(火) 00:01:28.73uoXL2WQQ0 (2/7)



カティア「リナト、か……結局会うことは無かったけどさ、きっと『二人共』帰って来るよ」


そう言って優しく笑いかけると、リネットの頭にぽんと手を置き、撫でる。


彼女達は『こんな時』無意識に互いを励まし、支える術を持っている。


リネット「……!! うん!! だから私も頑張らないと」


カティア「だからって、あんまり気負うなよ? そういう時は力を抜いた方が上手く行く」


リネット「そうなの?」


カティア「こうしよう、ああしよう。もっともっと……ってなると、大抵ダメになる」


リネット「鍛冶の話し?」


カティア「まあそうだけど、どんな事でも頑張り過ぎは良くない。アイツが帰って来たら言ってやれ」



リネット「うん、そうする。二度と無理しないように、絶対言う」





507VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/08(火) 00:03:26.68uoXL2WQQ0 (3/7)




『『が…ぐッ…オァァアアアアア!!!』』



リネット「……!! 今の、なんだろう?」


カティア「悲鳴に近いな。ブラッズの奴、大元を倒したのか?」


リネット「そう…なのかな……」


相当の距離が在るにも拘わらず里に轟いた咆哮は何を告げるのか…


それは、直後に起こった。



『魔物だ!! 魔物が向かって来た!!!』



リネット「……!? カティア!! 行こう!!」


カティア「…ッ!! 分かった!! 皆は集会所だったよな!?」



リネット「うん!!」





508VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/08(火) 00:05:33.58uoXL2WQQ0 (4/7)


ーーーーーー

ーー

ゼノ「本当に良いのか? 後戻りは出来ないぞ」


シャズネイ「私も同志達も……『皆』覚悟は出来ています」


ゼノ「そうか、作戦も何も無いが、オレ達が殺し損ねた魔物に留めを刺せ。

   それだけでいい、無理に前に出るな。いいな?」


シャズネイ「了解」


『『了解しました!!!』』


彼等はドワーフが造り上げた武器を手に、覚悟を決めた。


魔者、獣人、エルフ、ドワーフ、そして人間


真に生きようとする者、気付いた者、目覚めた者、帰りを待つ者………


異なる種族、異なる意志が、迫り来る魔物を倒す為に、今、一つになる。



そして……



先程まで遠方に見えていた『黒い点』は急激に距離を縮め、遂には其処まで迫っていた。





509 ◆LKFxTlgu0U2013/10/08(火) 00:07:22.36uoXL2WQQ0 (5/7)

この辺で終了します。


510 ◆LKFxTlgu0U2013/10/08(火) 02:16:23.84uoXL2WQQ0 (6/7)

>>508 訂正します。


511VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/08(火) 02:22:58.22uoXL2WQQ0 (7/7)


ーーーーーー

ーー


ゼノ「本当に良いのか? 魔物が来たら後戻りは出来ないぞ」


シャズネイ「はい。私も同志達も……『皆』覚悟は出来ています」


ゼノ「分かった。作戦も何も無いが、里に侵入する魔物を殲滅する。お前達はオレ達が殺し損ねた魔物に止めを刺せ。

   それだけでいい、無理に前に出る必要は無い。いいな」


シャズネイ「了解」


『『了解しました!!!』』


彼等はドワーフが造り上げた武器を手に、覚悟を決めた。


魔者、獣人、エルフ、ドワーフ、人間


真に生きようとする者、気付いた者、目覚めた者、帰りを待つ者………


異なる種族、異なる意志が、迫り来る魔物を倒す為に、今、一つになる。



そして……




先程まで遠方に見えていた『黒い点』は急激に距離を縮め、遂には其処まで迫っていた。





512 ◆LKFxTlgu0U2013/10/09(水) 00:49:23.96/8+B/CQZ0 (1/9)

投下します。


513VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/09(水) 00:51:07.14/8+B/CQZ0 (2/9)



【居場所】


ブラッズ「……ったく、起きて早々これかよ。どうしろってんだ」


外側からの刃により内側も崩壊、一時は死を覚悟したが、そうはならなかった。


今現在、ブラッズの身体の中に居るのは、紛れもなくブラッズ自身。


リナトが『ラキ』に突き刺したのは二刀。一つはブラッズの物、もう一つはカティアが造り上げた物。


先の一刀を以てラキを滅し、後の一刀を以てブラッズに『返した』のだ。


それは成功したのだが、放たれた魔物が消えたわけではない。


ブラッズが目覚めた時、


周囲は既に魔物によって囲まれていたが、彼にとってそんなことは問題では無かった。




ブラッズ「退けッ!! 『俺達』は、帰らなきゃならねえんだ!!!」





514VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/09(水) 00:53:26.69/8+B/CQZ0 (3/9)



それは、リナトの遺体が残っていたからである。


ラキの崩壊と共に崩れ去る筈の身体が負傷もなく、だ。


理屈は分からないが、友の遺体が残っている……


これは死者を弔うとかでなく、


彼の友として、彼を待つ者の為にも、遺体を瓦礫の山に捨て置くなど出来る筈が無かった。


ブラッズ「こんな事態だ。引き摺ってくけど許してくれよ?」


背負って行きたいのは山々だが、魔物がそれを許さない。


文字通り、道を塞がれている。


その数、数千。走り抜ける隙間を見付けることすら困難、圧倒的な数。



まして人一人を背負って抜け出す事など、不可能だろう。





515VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/09(水) 00:55:26.70/8+B/CQZ0 (4/9)



ブラッズ「…ッの野郎ッ!!!」


『ゲゃッ!!』


斬っては走り、囲まれては止まり、また斬る。この繰り返し……


リナトの遺体を守りながら、進んで行く。


襲い来る魔物が狙うのはブラッズだけではなく、リナトをも狙う。


単純、それは『肉』を喰らう為。


ブラッズ「はぁっ…はぁっ……畜生、里の方にも向かってやがる」


道を塞ぐ魔物を斬り、すぐさま走り抜ける。


其処を抜けても、また次の敵。



斬っても斬っても、払っても払っても纏わりつく、魔物の群れ……





516VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/09(水) 00:57:20.79/8+B/CQZ0 (5/9)



ブラッズ「早く……行かねえと」


里はどうなっているのだろうか?


祖父は、愛する女は無事だろうか? 友を待つ女は?


そればかりが頭を過ぎる。


こんな時の為に、守る為に力を求めたと言うのに、守るべき者・リネットの側に居られない自分に腹が立つ。


彼女の笑顔に何度救われただろうか、彼女の心に何度癒されただろうか、


彼女が居るだけで、何度立ち上がれただろうか……


彼女の存在そのものが、彼の心に強い力を与える。


無意識、ぽつりと呟く




ブラッズ「リネットに……リネットに会いてえ」





517VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/09(水) 00:59:41.08/8+B/CQZ0 (6/9)



ブラッズ「死んでられっかよ、なあ?」


穏やかな笑顔を湛えたリナトに、笑いながら問い掛ける。


ブラッズ「会いてえなら、何が何でも生きねえと」


此処で死んでしまっては、友が命を引き換えに身体を返してくれた……


その想い、意味が無くなるのだから。


ブラッズ「はぁっ…はっ…もう一踏ん張りだ。つーかよ、本当に死んでんのか、お前」


眠っているようにしか見えない友に声を掛けるが、勿論応答はない。


しかしブラッズには、何度見ても、今にも目覚めそうな……


そんな風に見えてならなかった。



リナトの帰りを待つ女・シャズネイ



彼女を想うと申し訳ない気持ちになるが、何故か『何とかなりそう』だと感じている。


『眼』を分けたからか、ただの妄想夢想の類かも知れないが、




リナトはまだ終わっていない、目を覚ますのだと、信じている。





518VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/09(水) 01:03:01.96/8+B/CQZ0 (7/9)



ブラッズ「もう直ぐだ。里に着いたら、直ぐに会わせてやる……だから、早く起きろ」


何処を見ても魔物、魔物、魔物……だが、瞳に諦めは無い。


寧ろ、ここぞと瞳は輝きを増し、疲弊の色など一切見せずに刀を振り続ける。



ブラッズ「お前等魔物に、帰る場所はあるか?」



笑う。挑発や嘲笑では無く、純粋に、ただただ、嬉しそうに……


『ガアァッ!!』


その言葉に苛立ったかのように魔物は吼え、ブラッズの腕を切り裂いた。


ブラッズ「ぐッ……ってえな!! このクソ馬鹿野郎が!!!」


『アぎゃッ!!』


ブラッズ「はぁっ…はぁ……俺には、俺達にはあるぜ?」


尚も笑い、告げる。不敵に、誇り高く、笑う。


傷は消えるが痛みは感じる。本来なら、満足に身体を動かす事など出来はしないだろう。


だが動いている、それでも生きている、生きようとしている。


誇りか、気力か、足掻きか、魔者特有の生命力の強さか……


或いは、それだけではないのかも知れない。





ブラッズ「俺の帰る場所……俺達の帰る場所。其処に、帰りを待ってる奴が居るんだ」





519 ◆LKFxTlgu0U2013/10/09(水) 01:05:50.86/8+B/CQZ0 (8/9)

これで、このお話しは終わりです。

見てくれた方、レスくれた方、本当にありがとうございました。



520 ◆LKFxTlgu0U2013/10/09(水) 01:35:36.08/8+B/CQZ0 (9/9)

こんな風に終わるとは思っていなかったので変なかんじですが、感想や指摘などあればお願いします。


521VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/09(水) 08:58:59.89c+0mRHCyO (1/1)

ちょっとした打ち切り感


522VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/09(水) 15:58:13.22al6qDrBpo (1/1)

結構好きなラスト
ガメラ3とか、この手のはかっこいい
完結おめでとうございます


523 ◆LKFxTlgu0U2013/10/09(水) 20:24:28.62jWB6VX0g0 (1/1)

一応あげます。


>>521 ですよね……自分でも少しそう思います。

>>522 あまり良い終わり方ではないと思ってたので不安でしたが、そう言って貰えると凄く嬉しいです。ありがとうございます。


【リネットが北の地へ】とか【残った者達】とか【リナト復活・共闘】とか色々書こうとは思っていたのですが、

それを書いてしまうのは長くなるばかりで何か違うなと思い、こういう終わりになりました。

なので、打ち切りっぽいのかなと思います。

後、青年「ああ、認めるよ」と青年「俺の帰る場所」は、以前書いた「そうだ、俺の名は…」というお話しの過去になります。

見てくれた方、レスくれた方、応援してくれた方、本当に嬉しかったです。

長々とすいません。ありがとうございました。




524VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/09(水) 22:19:52.23MoWuyfLyo (1/1)

前に打ち切ったやついつ再開すんだよ


525VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/10(木) 08:59:35.14O48rv73po (1/1)

変なのに延々と粘着されたのは気の毒だったけど完走してくれてよかった
また新作を書いて欲しい


526 ◆LKFxTlgu0U2013/10/11(金) 10:51:06.26+sfF7N/I0 (1/1)

少年「それが、僕の名前……」というの書いています。見て貰えると嬉しいです。

完結出来て良かったです、本当にありがとうございました。