1 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 00:57:55.89LOsIIbRAO (1/14)

『この世界の誰一人、見たことがないものがある』

『それは優しくてとても甘い』

『多分、見ることができたなら、誰もがそれを欲しがるはずだ』

『だからこそ、誰もそれを見たことがない』

『そう簡単には手に入れないように、世界はそれを隠したのだ』

『だけどいつかは、誰かが見つける』

『手に入れるべきたった一人が、ちゃんとそれを見つけられる』

『そういうふうにできている』

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1364486275



2 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 00:59:15.34LOsIIbRAO (2/14)

亜美「ばっかじゃない!」バチンッ

竜児「いっ……てぇ!」

北村「おい!亜美、落ちつけ」

亜美「なんなのその腑抜けっぷり!大河が帰って来ない大河が居ないってさ!信じて待つんじゃないの?だったらしっかり待ってなよ!」

竜児「……だけどよ」

亜美「あーあ!最低のヘタレだわ!大河に同情するよッ!!高須くんがここまでだとは思わなかった」タッタッタッ

北村「亜美ッ!!」

櫛枝「正直、あーみんの言う通りだと思う。これじゃ大河が帰って来ても高須くんには任せられないよ」

竜児「……」


3 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 01:00:30.94LOsIIbRAO (3/14)

腹が立つし悲しいし虚しいしで、私はいっぱいになった。

何故だか涙が溢れてくる。殴った手もジンジン痛い。

私は前に進んでるのに、涙を堪えて手を伸ばしたのに、これじゃ意味がない。

亜美「ほんっと……馬鹿みたいじゃん……」ポロポロ

道端でも構わず泣いていた。

「擦らない方が良いぞ。赤くなるから」

亜美「……え?」ポロポロ

「……ハンカチ」

亜美「ありがと」

涙で滲んで良く見えなかったけど、うちの制服じゃなかった。

「じゃあな」

少し暖かい風が吹きはじめていた。


4 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 01:01:37.13LOsIIbRAO (4/14)

―― 翌日

竜児「……川嶋」

亜美「……」

北村「亜美、高須の言う事を訊いてやってくれ」

亜美「祐作、最近高須くんに過保護じゃない?」

北村「そんな事はないぞ?まぁ、同性として肩は持ってるがな」

竜児「……川嶋、確かに俺ちょっと腑抜けてたよ」

亜美「なに?謝るつもり?それは違うと思うんだけど」

竜児「……あぁ、そうだな」

亜美「だったらさっさとその辛気くさい顔やめなよ!心配して下さい……慰めて下さい……って言ってる様なもんなんだよ!」スタスタ

北村「まったく……亜美のヤツ」

竜児「正論過ぎて言葉もねぇわ……」


5 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 01:03:03.25LOsIIbRAO (5/14)

亜美「……ちょっと言い過ぎたかな」

亜美「一応、反省してるみたいだったし……」パサッ

亜美「あ、昨日のハンカチ……」

亜美「返さなきゃな……うちの制服じゃなかったし誰なんだろ」

亜美「刺繍?えっと……"Touya Kinomoto"」

亜美「"木之本桃矢"?」

櫛枝「あーみん!孤高のダイエット戦士!みのりんだぜ」シュパッ

亜美「名乗らなくてもわかるわ」

櫛枝「昨日はありがとう」

亜美「……なにが?」

櫛枝「あーみんがさ……大河の事も高須くんの事も怒ってくれて凄く嬉しかった」


6 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 01:04:28.77LOsIIbRAO (6/14)

亜美「別に……高須くんのうじうじした態度が気にいらなかっただけ……」

櫛枝「でも、あーみんが怒ってくれなかったら私が大噴火!だったよ」

亜美「……だったら、今度なんかおごりなさいよ」

櫛枝「任せといてよ!久しぶりに盛るぜぇ~超盛るぜぇ~」

亜美「そんなことばっかりやってるとクビになるよ?」

櫛枝「ちっちっち!そんなんじゃ世界で一番かも知れねぇが日本じゃ二番目だぜ?」

亜美「本当、実乃梨ちゃんって馬鹿だよね?」

櫛枝「な!?あ、あーみんそれはどういう意味かね?ズゴゴゴゴ」

亜美「まぁ、嫌いじゃないけどさ」スタスタ


7 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 01:05:39.24LOsIIbRAO (7/14)

竜児「川嶋……」

亜美「……高須くん」トンッ

竜児「川嶋?」

亜美「しっかりやらないと亜美ちゃんのよりキツイ一発もらっちゃうよ?」

竜児「え!?お、おう」

亜美「あ、そうだ……ここら辺でブレザーの学校ってどこがあったっけ」

竜児「ブレザーの学校?そんなん訊いてどうすんだ?」

亜美「亜美ちゃんにふさわしくて高須くんより良い男の子が待ってるんだよ♪」

竜児「あ……えっと……」

亜美「なに?どもっちゃって……もしかして妬いた?」

竜児「ち、ちげぇよ!星條高校!あそこがブレザーだよ」

亜美「さんきゅー」スタスタ


8 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 01:07:24.14LOsIIbRAO (8/14)

高須くんは、大丈夫な感じを装ってたけど、きっとまだまだ助けがいると思う。

だけど、私はもう彼に手を貸さない。私だって前に進んでいかないといけない。

それに、彼の傍にいると自分の思いがぶれてしまう様な気がした。

亜美「……亜美ちゃんだって余裕でいられないよ」

奈々子「亜美ちゃーん!」

亜美「どうしたの?」

奈々子「今から駅前の喫茶店行かない?そこのケーキがすっごく美味しいんだって!」

亜美「まぁ、別に良いけど」

奈々子「麻耶もあとから来るってさ」


9 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 01:09:02.90LOsIIbRAO (9/14)

木原「ごめん!遅れた」

亜美「別にいいよ?あたし達もいま来たところだし」

奈々子「早く頼もうよ~シフォンケーキがすごーく美味しいんだって!」

木原「わかったわかった!すいませーん」

店員「はーい、少々お待ちください」

「あ、俺が行きます」スタスタ

桃矢「お待たせいたしました」

奈々子「シフォンケーキと紅茶のセット!」

木原「私はシフォンケーキとコーヒーかな」

亜美「じゃあ、あたしもシフォンケーキと紅茶……で」

桃矢「かしこまりました。少々お待ちください」

亜美「あ、あの!」

桃矢「何か?」

亜美「いや、なんでも……」


10 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 01:10:03.32LOsIIbRAO (10/14)

奈々子「あの店員さんすごーくカッコイイね!」

木原「ホント!びっくりしたよ!背も高いしあんな人いるんだね~」

奈々子「そういえば、亜美ちゃん話しかけてたけど知り合い?」

亜美「あ、いや……知り合いに似てたと言うかなんと言うか」

亜美(ハンカチを貸してくれた"木之本桃矢"くんなのかな?雰囲気は似てたけど……)

奈々子「亜美ちゃんのモデル仲間かと思ったよ~何歳かな?」

木原「って言うか……さっきまでケーキケーキ言ってたのに……」

亜美「そういうとこ現金だよねぇ」

奈々子「ち、違うよ~!」


11 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 01:11:27.27LOsIIbRAO (11/14)

とりあえず今日はここまで。キャラの口調はうろ覚えなのでおかしかったらすいません。


12VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/29(金) 01:14:45.53y6Zho7fxo (1/1)

乙!
とらドラもさくらも好きだから続き楽しみにしてる


13VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/29(金) 01:15:03.05RS5ylBCTO (1/1)


まさかCCさくらとコラボとは…期待


14 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 22:43:07.10LOsIIbRAO (12/14)

奈々子「美味しかったねぇ~また来ようよ!」

木原「あの店員さん目当て?」

奈々子「違うよ!」

亜美(ハンカチ返しそびれたな……って言うか亜美ちゃんに気付いてなかった?)

奈々子「亜美ちゃんどうしたの?」

木原「まさか亜美ちゃんもあの店員さんの考えてたの?」

亜美「あ、いや……そういうわけじゃないけどさ(やっぱりちゃんと返しとこうかな)」

亜美「ちょっと忘れ物したから先に帰っていいよ?」

奈々子「忘れ物?私たちも着いていく?」

亜美「ううん、大丈夫だから」タッタッタッ


15 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 22:44:09.65LOsIIbRAO (13/14)

店員「いらっしゃいませー」

亜美「あの……木之本桃矢って言う店員さんがいると思うんですけど」

店員「木之本くんなら休憩に入ってますよ?多分、休憩室にいると思うけど呼びましょうか?」

亜美「お願いします」

―― 休憩室

店員「木之本くん!」

桃矢「なんすか?」

店員「君、川嶋亜美ちゃんと知り合いなの!?」

桃矢「は?誰ですか?」

店員「現役高校生モデルの川嶋亜美ちゃんだよ!俺すっげぇファンなんだけどさ!君を尋ねて来てるんだよ!?」

桃矢「……そんなモデルに知り合いはいないすけど」

店員「と、とにかく早く行きな!」


16 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/29(金) 22:45:11.45LOsIIbRAO (14/14)

亜美「……よっ」

桃矢「あー…なるほど」

店員「……」チラッチラッ

桃矢「ちょっと外行くか」ガチャ

亜美「え?あ、うん」

―― 外・自販機横のベンチ

亜美「ねぇ……亜美ちゃんのこと覚えてる?」

桃矢「……道端で泣いてたヤツだろ?」

亜美「あ、あれはちょっといろいろあって……たまたまだよ!?」

桃矢「んで、何か用か?」

亜美「たまたまこの店に入ったら君が居たからハンカチ返そうと思って……」ガサゴソ

桃矢「別にいいのに」

亜美「刺繍入ってたし"Touya Kinomoto"って……」ガサゴソ

桃矢「あー…あのハンカチか」


17 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/30(土) 00:18:36.896SVeQxDAO (1/7)

亜美「……あれ、おかしいな」ガサゴソ

桃矢「ないなら別にいいよ」

亜美「……ごめん、ちゃんとカバンに入れたはずなんだけど」

亜美「後でちゃんと返す!本当にごめん」

桃矢「別にいいって……それよりなんか飲む?」

亜美「遠慮しとく……ハンカチ返しに来ただけだもん」

桃矢「あっそ」ガコンッ

亜美「あのさ、なんでハンカチを?まさか亜美ちゃんに近づきたくて?」

桃矢「泣いてたから」

亜美「え?」

桃矢「道端で人が泣いてたから」

亜美「それだけ?」

桃矢「それ意外に何が?」


18 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/30(土) 00:19:41.726SVeQxDAO (2/7)

亜美「あ、いや……」

桃矢「アンタ自意識過剰だな」

亜美「う、うるさいな!普通こんなカワイイ娘が泣いてたら声かけるでしょ!?」

桃矢「誰が泣いてても声かけたよ」

亜美「嘘ッ……じゃあ、亜美ちゃんだから声かけたんじゃないの!?」

桃矢「やっぱり自意識過剰じゃねぇか……つーかアンタがモデルやってるなんて知らなかったし」

亜美「マジで?アンタどんだけ?亜美ちゃん知らないとかどんだけ遅れてんのよ!」

桃矢「いや、別にモデルとか興味ないから……つーか、来た時とテンションも態度も変わったな」


19 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/30(土) 00:20:53.076SVeQxDAO (3/7)

桃矢「休憩時間終わるから戻っても良いか?」

亜美「え、あ……うん」

桃矢「飲んでないからこれやるわ」

亜美「あ、ありがと」

桃矢「じゃあな」スタスタ

亜美「……なんっていうか……無愛想なヤツ」

亜美「まぁ、いっか……帰ろう」

―― 喫茶店内

店員「き、木之本くん!亜美ちゃんとはどういう関係なの!?」

桃矢「偶然知り合っただけっすけど」

店員「か、彼女とかじゃないんだね!?違うんだね!」

桃矢「違いますよ」

店員「良かった……あのさメアドとか知らないの?知ってたら聞けないかな?」

桃矢「客来ましたよ」


20 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/30(土) 00:21:57.906SVeQxDAO (4/7)

―― 翌日

亜美「あ、ハンカチあった……机に入ってたんだ」

竜児「よっす」

亜美「よっす」

竜児「……あのさ、春休みなんか用事あるか?」

亜美「なに?亜美ちゃんとデートでもしたいのー?」

竜児「ち、ちげぇよ!4月から受験やら進路関係で忙しくなっから最後にみんなで思いっきり遊ぼうって事になってよ」

亜美「ふーん……まぁ、大丈夫だと思うけど」

竜児「じゃあ、櫛枝に川嶋も参加するって伝えとくわ」

亜美「……あのさ高須くん」

竜児「なんだ?」

亜美「亜美ちゃんもう高須くんの面倒みてあげないから」

竜児「お、おう」


21 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/30(土) 23:00:34.656SVeQxDAO (5/7)

亜美「……馬鹿、本当にわかってんのかよ」

―― 放課後・駅前喫茶店

亜美「よっ!」

桃矢「いらっしゃいませ」

亜美「今日はお客さんじゃないよ?ほい」

桃矢「律義に返しに来たのか」

亜美「だって人の名前が入ったハンカチ持っとくとかなんか気持ち悪くない?それに亜美ちゃんの趣味じゃないしー」

桃矢「そうか」

亜美「って言うか……無愛想過ぎなんだけど?ははーん、もしかして亜美ちゃんの美少女っぷりに緊張してるとかー?」

桃矢「別に……というか用事が済んだんなら帰れよ」


22 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/30(土) 23:01:34.306SVeQxDAO (6/7)

亜美「……つまんないの」

桃矢「別にアンタの暇潰しのためにここで働いてねぇよ」

?「あれ?お兄ちゃん!?」

桃矢「……さくらか」

さくら「お兄ちゃんここでバイトしてたの!?」

知世「偶然ですわねー」

桃矢「馬鹿デカイ声を出すな」

さくら「馬鹿デカイ声出してないもん!」

亜美「……ねぇねぇ」ボソッ

桃矢「なんだよ」

亜美「……アンタの妹?」

桃矢「そうだ」

さくら「ん?お兄ちゃんのお友達ですか?」

亜美「え?……まぁ、そんな感じかな」

さくら「はじめまして!木之本桜です!お兄ちゃんがお世話になってます」


23 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/30(土) 23:02:34.906SVeQxDAO (7/7)

桃矢「だから怪獣がデカイ声を出したら店に迷惑だろ」

さくら「さくら怪獣じゃないもん!」

亜美「へぇ、アンタにこんなカワイイ妹さんがいたんだー…」ナデナデ

さくら「か、可愛くなんか……///」

知世「いいえ!さくらちゃんはカワイイですわよ」ジー

桃矢「あのな……用がないなら帰る。客として来たならさっさとどっかの席に行け」

さくら「あ、そうだ!お兄ちゃんケーキセットお願いします」

知世「私もさくらちゃんと同じ物を」

桃矢「はいよ……で、アンタはどうすんだ?ここでずっとニヤニヤしとくのか」


24 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/31(日) 00:35:27.22KWm66EuAO (1/3)

亜美「ニヤニヤしてた?」

桃矢「してた」

亜美「まぁ、しょうがないよねぇ?こんな無愛想なヤツにあんなにカワイイ妹がいるなんて思わないもん」

桃矢「失礼なヤツだな」

亜美「アンタもあれだけ愛想良かったらねぇ……」

桃矢「うるさいな……んで、アンタはどうすんだよ」

亜美「客として来たわけじゃないし帰るよ?」

桃矢「そうか」

亜美「じゃあねー」

桃矢「ちょっと待て」

亜美「ん?なによ?もしかして亜美ちゃんが恋しくなったー?」

桃矢「髪にゴミ着けてるヤツを恋しくは思わねぇよ」

亜美「……な!?」


25 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/31(日) 00:36:31.79KWm66EuAO (2/3)

亜美「早く言ってよ!」

桃矢「いま気付いた」

亜美「間抜けみたいじゃん!早くとってよ」

桃矢「別にそんなに騒ぐことじゃねぇだろう」

亜美「亜美ちゃんはモデルだからいつも可愛くなくちゃいけないの!良いから早く」

桃矢「それくらい自分でとれよ……ったく」

店員「いらっしゃいませー(くそぅ……亜美ちゃんとイチャイチャしやがって……付き合ってないって言ったじゃねぇかよぅ)」

竜児「あれ?川嶋?」

亜美「……あ、高須くん」

桃矢「ん、とれたぞ」

亜美「こ、これはちがくて……そのっ」

北村「高須どうした?……ん?亜美か」


26 ◆aHGz2Nt3qM2013/03/31(日) 00:37:58.94KWm66EuAO (3/3)

亜美「ど、どうしてここに」

北村「櫛枝企画の春休み大いに遊ぼう作戦の打ち合わせにな」

竜児「お、おう」

北村「亜美はなんで?」

亜美「あ、あたしは……」

桃矢「お客様、申し訳ございませんでした……つい御髪にゴミがついてたのが気になり差し出がましい真似を」

亜美「え?あ、えっと」

北村「アハハ!お前は肝心な所で抜けてるな」

亜美「ううん、気にしないで。祐作、高須くんじゃあね」

北村「じゃあな亜美」

竜児「またな川嶋」

亜美「……ありがと」ボソッ

桃矢「……ありがとうございました」


27 ◆aHGz2Nt3qM2013/04/03(水) 00:18:11.19C/S3goMAO (1/8)

なんで動揺したんだろう。ただ、髪についてたゴミを彼にとって貰っていたのを見られただけなのに、私らしくもなく動揺してしまった。

それじゃあ私が、まだ高須くんに未練を持っているみたい。

亜美「……なんか調子狂う」

屈託とでも言うのか、私は帰り道に意味もなくあの光景を見た高須くんの表情を思い出していた。

失望したようにも見えたし、驚いたようにも見えた。

そんな訳はない。高須くんの思いは、全部大河に向いている。

認めたくない私の思いが浮き彫りにされたようで、良い気にはなれなかった。


28 ◆aHGz2Nt3qM2013/04/03(水) 00:19:17.26C/S3goMAO (2/8)

―― 翌日

亜美「おはよー」

実乃梨「あーみんあーみん!」

亜美「朝からうるさいな……何よ」

実乃梨「聞いたぜぇ!駅前の喫茶店のイケメン店員と何やらランデブーらしいじゃないですか!?」

竜児「ちょ、櫛枝!」

亜美「……喋ったの?」

竜児「俺じゃなくて北村が……そ、それに!櫛枝が勘違いしてるだけで……」

亜美「……ふーん」

竜児「な?違うって言っただろ?櫛枝の勘違いだってば」

実乃梨「そうなのかなー?なんか匂ったんだがよぅ……」

亜美「……そうだよ」

竜児「……え!?」


29 ◆aHGz2Nt3qM2013/04/03(水) 00:20:06.93C/S3goMAO (3/8)

竜児「ど、どういう事だ!?」

亜美「だから……実乃梨ちゃんが思ってる通りだよ。あの時は咄嗟に誤魔化したけど本当は高須くんも実乃梨ちゃんも想像した通り」

実乃梨「やっぱりね?孤高のダイエット探偵みのりんの推理は外れないのだよッ!分かったかね?高須助手!!」

竜児「……お、おい!櫛枝に合わせてふざけてるだけだろ?」

亜美「……ふざけてない。ふざけてるのは高須くんなんじゃない?」

竜児「川嶋……まだ俺に怒ってんのか?」

亜美「別に?それより亜美ちゃんが彼氏作ったら高須くんに不都合があんの?」


30 ◆aHGz2Nt3qM2013/04/03(水) 00:21:08.12C/S3goMAO (4/8)

竜児「そうじゃなくて……昨日とは明らかに態度が違うっつーか何か悩み事なのか俺への当て付けなのかはわかんねぇけど偽る事になれたらダメになるっつーか」

亜美「ご心配なく。偽る事なんて何にもないし亜美ちゃんはちゃんと未来に向けて進んでるから……それより高須くんこそちゃんと進んでるの?ちゃんと大河を迎い入れる覚悟を固めたの?ごっこにしない自信はあるの?」

竜児「……少しずつだけど……がんばってるつもりだよ」

亜美「前にも言ったけど亜美ちゃんはもうお節介焼いてあげないから」


31 ◆aHGz2Nt3qM2013/04/03(水) 00:22:02.59C/S3goMAO (5/8)

竜児「あのさ……」

亜美「……なに?」

竜児「いや、なんでもねぇわ」

高須くんの言う通りだと思う。偽る事になれてしまったら囚われてしまうんだろう。

だけど、私は"未練"に振り回されたくはなかった。

戦うには偽るしかなかった。すれ違いも、勘違いも、思い違いも、全部を振りかざして抵抗するしか未練に対抗する方法が分からない。

その後にやって来る屈託との上手い付き合い方を考える方が、ずっとずっと楽な気がした。


32 ◆aHGz2Nt3qM2013/04/03(水) 00:23:06.64C/S3goMAO (6/8)

もうすぐ桜の花が咲くんじゃないだろうか。

そう思うほど、良い天気と暖かい陽射しが春を感じさせる。

亜美「……桜がもう咲いてる」

春に近付く度に私の思いは薄ぼんやりと霧がかかるようだった。だけど、花は綺麗に色づきはじめている。

桃矢「それは桃の花だよ」

亜美「……へぇ、そうなんだ」

桃矢「桜が咲くにはもうちょいかかるだろ」

亜美「意外に物知りじゃん?花が好きなの?」

桃矢「……死んだ母親が好きだった」

亜美「あ……なんか、ごめん」

桃矢「なんで謝るんだ?」


33 ◆aHGz2Nt3qM2013/04/03(水) 00:24:14.83C/S3goMAO (7/8)

亜美「……だって」

桃矢「もう随分経つ……未だにベソベソするほど弱くねぇよ」

亜美「……これからバイト?」

桃矢「いや」

亜美「じゃあ、ちょっと話しない?時間あるんでしょ?」

桃矢「ちょっとなら構わねぇよ」

亜美「じゃあ、あそこのベンチ行こうか」

桃矢「ああ」

―― ベンチ

亜美「……」

桃矢「……」

亜美「……」

桃矢「……なんか話せよ」

亜美「アンタが話してよ」

桃矢「何を?」

亜美「……適当に」

桃矢「……うーん……母さんは藤と桃と桜が好きだったんだ」


34VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/04/03(水) 04:32:26.70VGlwqMkwo (1/1)

ほう 続けて続けて


35VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/04/03(水) 13:39:34.61SyPXgNiBo (1/1)

ベソをかくとメソメソをかけたとかやるな


36 ◆aHGz2Nt3qM2013/04/03(水) 23:42:24.98C/S3goMAO (8/8)

すいません。諸事情により続けられなくなりました。


37VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/04/07(日) 21:23:36.48HnCYbuWdo (1/1)

どうでもいいけど桃より桜のがはやくさかね?