1VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/25(月) 04:45:21.54t3o06s+R0 (1/5)

凄まじい熱気で満ち溢れた体育館。
多くの人々で埋め尽くされた観客席。
その中心のコートに、僕は確かに立っていた。

試合を見守る幾多の視線と、息を呑む声。
会場全体を照らす白炎の照明は、その瞬間僕だけを照らした。
そんな気がした。

天高く跳躍し、3つのブロックを打ち破った僕のスパイクは、相手のコートに突き刺さった。
その瞬間、時が止まった。
まるで洪水のような歓声と、目を見開いて喜び狂う仲間の顔が見えた。

白炎の舞台で、僕は一番に輝いて、燃え尽きた。

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2VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/25(月) 04:51:25.56t3o06s+R0 (2/5)

僕は、ずっとずっとバレーボールを続けてきた。
もう何年前になるだろう。
中学の時まで遡るから、ざっと10年近く前だろうか。

当時好きだった女の子がバレーをやっていた。そんな単純な理由で、僕は簡単にバレー部に入った。
隣のコートで、女子が黄色い声をあげて練習している。
その近くにいたら楽しそうだ、そんな不純な理由だったように思う。

今だから言えるのかもしれない。
僕はバレーを始めて良かったと。全て終わった今だからこそ、そんな事を言えるのかもしれない。
最初は、腕に青あざができて到底楽しいものではなかったし、練習もきつかった。
バレーを続けていく道のりは、決して楽しいものばかりではなかったからね。


3VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/25(月) 04:58:56.43t3o06s+R0 (3/5)

中学の頃の僕は冴えないものだった。
別に今が特段冴えている、というわけでもないのだが。

中学の頃の僕は眉毛が太くて分厚いメガネをかけていて、髪には思春期のフケだらけの少年だった。
典型的ないじられタイプで、クラスでもよくやり玉に上げられていた。
そんな僕は勉強しか見せ場がなくて、周りにはガリ勉だと思われていた。

実際、そうだったんだけどね。だって勉強しておいた方が得だし、将来の選択肢も増える。
外見がイケてるわけでもなく、何か特殊技能があるわけでもない僕は、ひたすら勉強に打ち込んだ。
勉強して、定期試験で良い順位を取る瞬間だけが、僕の見せ場だったわけさ。




4VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/25(月) 05:08:26.71t3o06s+R0 (4/5)

中学1年の二学期だったろうか。
中間試験の結果が廊下に貼りだされて、僕は意気揚々と結果を見に行った。
順位は4位だった。悪くない。200人中の4だ。これはかなり秀才じゃなかろうか、と自分なりに思った。

しかし、隣にいた女子が何やら声を上げて喜んでいる。
「やったやった、あたし3位!」
同じクラスの長原だった。

「あ、あたしガリ勉に勝った?やったね。」
彼女はそう言うと僕に向かってピースをして、にっこりと笑ってみせた。
「次も頑張ろうね。」
彼女は手を振って去って行く。僕は何も言い返せなかった。

同じクラスの、女子に負けるなんて。


5VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/25(月) 05:12:51.55t3o06s+R0 (5/5)

それから長原は、放課後事あるごとに僕に話しかけてくるようになった。
宿題でわからない所、理科のワークの分からないところ…
一通り僕が問題を教えると、彼女は大きく息をついてエナメルのバッグを背負う。
「ありがとう。本当助かるよ。じゃあ、あたしは部活行ってくるから」
そう言ってにこっと笑って彼女は教室を出て行くのだ。いつものことだ。

彼女は、部活でバレーをやりながら、勉強も頑張っていた。
本当に真面目な人だったんだ。


6VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/25(月) 15:22:28.20adICo+uwo (1/1)

進研ゼミのステマか