1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:32:21.05:sJCRKhvx0 (1/96)
・「灰羽連盟」をモチーフにした咲SSです
・元ネタ知らなくても問題ありません
・書き溜めはほぼ終わってるので来週くらいには完結する予定
よろしければお付き合いください。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1360427540
・「灰羽連盟」をモチーフにした咲SSです
・元ネタ知らなくても問題ありません
・書き溜めはほぼ終わってるので来週くらいには完結する予定
よろしければお付き合いください。
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モバP「泰葉からチョコもらった時の話?」
絵里「なんとかストロガノフ!」穂乃果「そう、カレーです」
タマ「ニャー」タラオ「タマ口臭いですぅ!」タマ「!!!!!!!」
玲音「風邪を引いてしまったようだ…」
苗木「霧切さん、この蝶ネクタイつけてみてよ」
2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:33:33.19:sJCRKhvx0 (2/96)
咲「ここは……どこ?」
咲「温かくて、心地いい」
咲「……」
咲「声が…聞こえる」
咲「何だかとっても懐かしい声……」
咲「私のことを呼んでるの?」
咲「ねえ、あなたは誰なの?」
咲「私は……誰?」
――――
―――
――
咲「ここは……どこ?」
咲「温かくて、心地いい」
咲「……」
咲「声が…聞こえる」
咲「何だかとっても懐かしい声……」
咲「私のことを呼んでるの?」
咲「ねえ、あなたは誰なの?」
咲「私は……誰?」
――――
―――
――
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:35:14.24:sJCRKhvx0 (3/96)
咲「う……うーん」
照「目が覚めたみたいだね」
咲「あの……あなたは?」
照「私の名前はテル。ここで暮らしてる牌羽だ」
咲「牌……羽……?」
照「私や君みたいな存在のことをこの世界では牌羽と呼ぶんだ」
咲「ほんとだ。テルの背中に羽がある」
咲「すごく綺麗……」
照「ありがとう」
照「でも、君の羽だってすごく綺麗だよ」
咲「え?」
咲「うわっ!」
咲(何か背中がもぞもぞすると思ったら…)
咲「う……うーん」
照「目が覚めたみたいだね」
咲「あの……あなたは?」
照「私の名前はテル。ここで暮らしてる牌羽だ」
咲「牌……羽……?」
照「私や君みたいな存在のことをこの世界では牌羽と呼ぶんだ」
咲「ほんとだ。テルの背中に羽がある」
咲「すごく綺麗……」
照「ありがとう」
照「でも、君の羽だってすごく綺麗だよ」
咲「え?」
咲「うわっ!」
咲(何か背中がもぞもぞすると思ったら…)
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:36:40.58:sJCRKhvx0 (4/96)
咲「すごい、ほんとに私にも羽が生えてる」
照「ふふ、最初はみんなびっくりするんだよ」
照「ところで、君の名前を聞かせてくれる?」
咲「名前……」
咲「うっ!」ズキッ
咲「だめ……何も思い出せない……」
照「ごめんごめん、ちょっといじわるなことしたね」
照「その手に握っているものを開いてごらん」
咲「手?」
咲(あれ、いつの間に私こんなものを)
咲「これは……何?」
咲(四角くてツルツルしてて、何か書いてある……)
咲「すごい、ほんとに私にも羽が生えてる」
照「ふふ、最初はみんなびっくりするんだよ」
照「ところで、君の名前を聞かせてくれる?」
咲「名前……」
咲「うっ!」ズキッ
咲「だめ……何も思い出せない……」
照「ごめんごめん、ちょっといじわるなことしたね」
照「その手に握っているものを開いてごらん」
咲「手?」
咲(あれ、いつの間に私こんなものを)
咲「これは……何?」
咲(四角くてツルツルしてて、何か書いてある……)
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:37:54.30:sJCRKhvx0 (5/96)
咲「サ……キ……?」
照「そう、それが君の名前だ」
咲「どういうことなの? 何が何だか分からないよ……」
咲「ねえ、私は誰なの?」
照「残念だけどその質問には誰も答えられない」
照「誰も私たちが何者だったかなんて知らないし、思い出すこともできない」
照「私たちは牌羽と呼ばれる存在であること、分かってるのはそれだけだ」
咲「……」
咲「サ……キ……?」
照「そう、それが君の名前だ」
咲「どういうことなの? 何が何だか分からないよ……」
咲「ねえ、私は誰なの?」
照「残念だけどその質問には誰も答えられない」
照「誰も私たちが何者だったかなんて知らないし、思い出すこともできない」
照「私たちは牌羽と呼ばれる存在であること、分かってるのはそれだけだ」
咲「……」
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:39:39.61:sJCRKhvx0 (6/96)
照「牌羽には3つの大きな特徴がある」
照「一つは、白い大きな繭の中から生まれてくること」
咲「繭?」
照「部屋の向こうに大きな白い球体が見えるでしょ?」
照「サキはあの繭から生まれてきたんだよ」
咲(……何か虫になったみたいでちょっと嫌かも)
照「二つ、牌羽の背中には生まれつき灰色の羽が生えてること」
咲「もしかして、私たちってこれで空を飛べたりするの?」
照「ふふ、残念だけどそれはできないよ」
照「慣れればピクピクって動かすことぐらいはできるけど、あくまで飾りのようなものだ」
咲「そうなんだ……ちょっとがっかり」
照「くれぐれも夢見がちなことはしないでくれよ」
照「私たちの仲間に一人、羽があるから自分は飛べるんだと言って二階から飛び降りて怪我をした子がいる」
咲「あ、あはは……」
照「牌羽には3つの大きな特徴がある」
照「一つは、白い大きな繭の中から生まれてくること」
咲「繭?」
照「部屋の向こうに大きな白い球体が見えるでしょ?」
照「サキはあの繭から生まれてきたんだよ」
咲(……何か虫になったみたいでちょっと嫌かも)
照「二つ、牌羽の背中には生まれつき灰色の羽が生えてること」
咲「もしかして、私たちってこれで空を飛べたりするの?」
照「ふふ、残念だけどそれはできないよ」
照「慣れればピクピクって動かすことぐらいはできるけど、あくまで飾りのようなものだ」
咲「そうなんだ……ちょっとがっかり」
照「くれぐれも夢見がちなことはしないでくれよ」
照「私たちの仲間に一人、羽があるから自分は飛べるんだと言って二階から飛び降りて怪我をした子がいる」
咲「あ、あはは……」
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:40:59.82:sJCRKhvx0 (7/96)
照「そして3つ目、私たちは自分の名前が刻まれた牌をその手に握って生まれてくること」
咲「牌って四角いツルツルしたこれのこと?」
照「そう」
照「それが何なのか詳しいことは分からない」
照「でも、それが私たちのアイデンティティを表す唯一の物なんだ」
咲「そうなんだ」
咲「これに触れてると何だか安心するよ…」
照「サキもそう感じるんだ」
照「私の仲間たちもみんなそう言うよ」ニコ
咲「えへへ」
照「そして3つ目、私たちは自分の名前が刻まれた牌をその手に握って生まれてくること」
咲「牌って四角いツルツルしたこれのこと?」
照「そう」
照「それが何なのか詳しいことは分からない」
照「でも、それが私たちのアイデンティティを表す唯一の物なんだ」
咲「そうなんだ」
咲「これに触れてると何だか安心するよ…」
照「サキもそう感じるんだ」
照「私の仲間たちもみんなそう言うよ」ニコ
咲「えへへ」
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:41:47.64:sJCRKhvx0 (8/96)
咲「牌羽って私とテル以外にもたくさんいるの?」
照「いや、この世界のほとんどは普通の人間だよ」
照「と言っても、小さい小さい世界だけどね」
照「私と君の他にあと四人仲間がいる」
照「私たちはみんなオーラスホームで一緒に生活してるんだ」
咲「オーラスホーム?」
照「この家のことだよ」
照「昔は学校の寄宿舎として使われていたらしいけど、今では牌羽たちが暮らす家になってるんだ」
咲「そうなんだ」
照「かなり年季が入ってるからところどころ傷んではいるが良いところだよ」
照「部屋はたくさんあるから、後でサキも自分が気に入った部屋を探すといい」
咲「うん」
咲「牌羽って私とテル以外にもたくさんいるの?」
照「いや、この世界のほとんどは普通の人間だよ」
照「と言っても、小さい小さい世界だけどね」
照「私と君の他にあと四人仲間がいる」
照「私たちはみんなオーラスホームで一緒に生活してるんだ」
咲「オーラスホーム?」
照「この家のことだよ」
照「昔は学校の寄宿舎として使われていたらしいけど、今では牌羽たちが暮らす家になってるんだ」
咲「そうなんだ」
照「かなり年季が入ってるからところどころ傷んではいるが良いところだよ」
照「部屋はたくさんあるから、後でサキも自分が気に入った部屋を探すといい」
咲「うん」
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:43:32.55:sJCRKhvx0 (9/96)
ガチャッ
淡「あっ! テルー!!」
淡「あの子目を覚ましたんだ!!」
照「おかえりアワイ」
菫「こらアワイ! まだ混乱してるだろうしそんな大声で騒ぐな」
淡「ぶー、スミレってばすぐ怒るからきらーい」
菫「何か言ったか」ギロ
淡「何にも言ってませーん」
菫「はぁ、全くこいつは……」
和「体調のほうは大丈夫ですか?」
咲「えっ……あぁ、うん」
咲「もう平気だよ」
咲(うわー、すっごく綺麗な子だから思わず見惚れちゃったよ)
咲(羽が生えてるから本物の天使みたい……)ボー
和「顔の方が少し赤いようですけど本当に大丈夫ですか?」
咲「だ、大丈夫だからほんとに気にしないで」アタフタ
咲(そんなに顔を近づけられると照れちゃうよ//)
ガチャッ
淡「あっ! テルー!!」
淡「あの子目を覚ましたんだ!!」
照「おかえりアワイ」
菫「こらアワイ! まだ混乱してるだろうしそんな大声で騒ぐな」
淡「ぶー、スミレってばすぐ怒るからきらーい」
菫「何か言ったか」ギロ
淡「何にも言ってませーん」
菫「はぁ、全くこいつは……」
和「体調のほうは大丈夫ですか?」
咲「えっ……あぁ、うん」
咲「もう平気だよ」
咲(うわー、すっごく綺麗な子だから思わず見惚れちゃったよ)
咲(羽が生えてるから本物の天使みたい……)ボー
和「顔の方が少し赤いようですけど本当に大丈夫ですか?」
咲「だ、大丈夫だからほんとに気にしないで」アタフタ
咲(そんなに顔を近づけられると照れちゃうよ//)
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:44:37.41:sJCRKhvx0 (10/96)
照「それじゃあサキ、まずはみんなに自己紹介してあげて」
咲「うん」
咲「私の名前はサキです」
咲「まだこの世界に来たばかりで何も分からないですけど」
咲「どうかみなさんよろしくお願いします」ペコ
淡「固いよサキー、もっとゆる~い感じでいいんだよ」
菫「いちいち茶化すな」
淡「はーい」
菫「私はスミレだ」
菫「テルと一緒に一番古くからここで暮らしてる」
菫「分からないことがあったら何でも聞いてくれ」
咲「はい、スミレさん。ありがとうございます」
照「それじゃあサキ、まずはみんなに自己紹介してあげて」
咲「うん」
咲「私の名前はサキです」
咲「まだこの世界に来たばかりで何も分からないですけど」
咲「どうかみなさんよろしくお願いします」ペコ
淡「固いよサキー、もっとゆる~い感じでいいんだよ」
菫「いちいち茶化すな」
淡「はーい」
菫「私はスミレだ」
菫「テルと一緒に一番古くからここで暮らしてる」
菫「分からないことがあったら何でも聞いてくれ」
咲「はい、スミレさん。ありがとうございます」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:45:50.72:sJCRKhvx0 (11/96)
淡「私はアワイだよー」
淡「スミレに苛められたらいつでも私に言ってね」
淡「弱点とかいろいろ教えてあげるよー」
菫「はぁ、もう好きにしろ……」
咲「あはは……よろしくアワイちゃん」
和「私はノドカです」
和「私も生まれてまだそれほど間もないので気軽に接して下さい」
咲「うん。 よろしくねノドカちゃん」
淡「ノドカのおっぱいってすごいんだよー!」
淡「今度サキも触らせてもらいなよ」
和「ちょっ、何を言ってますかあなたは!?」
和「私は好きで誰かに胸を触らせたことなんてありません!」
咲(ノドカちゃんのおっぱい……)ゴク
淡「えー、でもおっぱい触られてるときのノドカって満更でもない顔してるよ」
和「してません」
和「でも、サキさんがどうしてもと言うなら……」ゴニョゴニョ
咲「え? 何か言った?」
和「い、いえ何も……」
淡「私はアワイだよー」
淡「スミレに苛められたらいつでも私に言ってね」
淡「弱点とかいろいろ教えてあげるよー」
菫「はぁ、もう好きにしろ……」
咲「あはは……よろしくアワイちゃん」
和「私はノドカです」
和「私も生まれてまだそれほど間もないので気軽に接して下さい」
咲「うん。 よろしくねノドカちゃん」
淡「ノドカのおっぱいってすごいんだよー!」
淡「今度サキも触らせてもらいなよ」
和「ちょっ、何を言ってますかあなたは!?」
和「私は好きで誰かに胸を触らせたことなんてありません!」
咲(ノドカちゃんのおっぱい……)ゴク
淡「えー、でもおっぱい触られてるときのノドカって満更でもない顔してるよ」
和「してません」
和「でも、サキさんがどうしてもと言うなら……」ゴニョゴニョ
咲「え? 何か言った?」
和「い、いえ何も……」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:47:37.72:sJCRKhvx0 (12/96)
照「一通りあいさつは済んだみたいだね」
咲「あれ? さっきテルは仲間はあと四人いるって」
照「もう一人いるんだけど、ちょっとわがままというか気難しい子でね」
照「あまりみんなで行動せずいっつも一人でぶらぶらしてるんだ」
咲「そうなんだ」
菫「せっかく新しい仲間が増えたっていうのに相変わらずだなあいつは」
和「でも、根は悪い人じゃありませんよ」
淡「ふん! あんな奴ほっといたらいいんだよ!」
照「アワイとあの子はいっつもケンカばかりしてるもんね」
淡「あっちが偉そうなこと言ってくるのが悪いんだよ!」
淡「全く、あんな生意気な子供は見たことないよ!!」
菫「どの口がそんなこと言うんだ」ギュイー
淡「いたたたっ」
照「一通りあいさつは済んだみたいだね」
咲「あれ? さっきテルは仲間はあと四人いるって」
照「もう一人いるんだけど、ちょっとわがままというか気難しい子でね」
照「あまりみんなで行動せずいっつも一人でぶらぶらしてるんだ」
咲「そうなんだ」
菫「せっかく新しい仲間が増えたっていうのに相変わらずだなあいつは」
和「でも、根は悪い人じゃありませんよ」
淡「ふん! あんな奴ほっといたらいいんだよ!」
照「アワイとあの子はいっつもケンカばかりしてるもんね」
淡「あっちが偉そうなこと言ってくるのが悪いんだよ!」
淡「全く、あんな生意気な子供は見たことないよ!!」
菫「どの口がそんなこと言うんだ」ギュイー
淡「いたたたっ」
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:48:50.23:sJCRKhvx0 (13/96)
照「まあまあスミレいいじゃない」
菫「テルはこいつを甘やかしすぎだ」
淡「そんなことないよ! テル―はスミレと違って優しいから大好き!」
照「ふふ」ナデナデ
菫「はぁ、勝手にしろ」
咲(スミレさんって苦労してそうだなぁ)
和「もうすっかり日も暮れましたしそろそろ夕食にしませんか?」
菫「そうだな。さっきテルに頼まれてサキでも簡単に食べられそうなものを街で買ってきたんだ」
咲「ありがとうございます」
照「この世界の詳しい説明はまた明日するから、食事が済んだら今日はもう寝るといい」
照「慣れないことばかりでまだ疲れもあるだろうし」
咲「うん、そうするよ」
照「まあまあスミレいいじゃない」
菫「テルはこいつを甘やかしすぎだ」
淡「そんなことないよ! テル―はスミレと違って優しいから大好き!」
照「ふふ」ナデナデ
菫「はぁ、勝手にしろ」
咲(スミレさんって苦労してそうだなぁ)
和「もうすっかり日も暮れましたしそろそろ夕食にしませんか?」
菫「そうだな。さっきテルに頼まれてサキでも簡単に食べられそうなものを街で買ってきたんだ」
咲「ありがとうございます」
照「この世界の詳しい説明はまた明日するから、食事が済んだら今日はもう寝るといい」
照「慣れないことばかりでまだ疲れもあるだろうし」
咲「うん、そうするよ」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:49:59.22:sJCRKhvx0 (14/96)
~真夜中~
咲「う、うーん……」パチ
咲「おトイレ行きたくなっちゃったよ//」モゾモゾ
咲「トイレは確かこっちだったよね」
咲「……」
咲「……」
咲「……」ブルッ
咲「ふぅ」
咲「あれ? 玄関の扉が少し開いてる」
咲「こんな夜中に誰だろう……?」ソォー
咲「!」
咲「うわぁ、綺麗なとこだなぁ」
~真夜中~
咲「う、うーん……」パチ
咲「おトイレ行きたくなっちゃったよ//」モゾモゾ
咲「トイレは確かこっちだったよね」
咲「……」
咲「……」
咲「……」ブルッ
咲「ふぅ」
咲「あれ? 玄関の扉が少し開いてる」
咲「こんな夜中に誰だろう……?」ソォー
咲「!」
咲「うわぁ、綺麗なとこだなぁ」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:51:24.34:sJCRKhvx0 (15/96)
咲(窓から少し覗いただけじゃ分からなかったよ)
咲(一面に広がる草原が、満月の光に照らされて淡く輝いてるみたい)
咲(向こうに見える建物が集まってる所が街なのかな)
咲(反対側のあの黒いぼんやりした塊は、森?)
咲(何だかロマンチックな場所だなぁ)
咲(ふふ、こういうの嫌いじゃないかも)
咲「あっ、向こうに誰かいる」
咲「こんな時間にどこに行くんだろう?」
咲(窓から少し覗いただけじゃ分からなかったよ)
咲(一面に広がる草原が、満月の光に照らされて淡く輝いてるみたい)
咲(向こうに見える建物が集まってる所が街なのかな)
咲(反対側のあの黒いぼんやりした塊は、森?)
咲(何だかロマンチックな場所だなぁ)
咲(ふふ、こういうの嫌いじゃないかも)
咲「あっ、向こうに誰かいる」
咲「こんな時間にどこに行くんだろう?」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:52:38.63:sJCRKhvx0 (16/96)
トコトコ
トコトコ
トコトコ
トコトコ
ピタ
咲(目的地に着いたのかな?)
咲(上を向いて満月を眺めてる)
咲(小さくてとっても可愛らしい子だなぁ)
咲(満月の光に金色の髪がきらきらしてすごく神秘的で)
咲(だけど、何だかちょっと悲しそう……)
トコトコ
トコトコ
トコトコ
トコトコ
ピタ
咲(目的地に着いたのかな?)
咲(上を向いて満月を眺めてる)
咲(小さくてとっても可愛らしい子だなぁ)
咲(満月の光に金色の髪がきらきらしてすごく神秘的で)
咲(だけど、何だかちょっと悲しそう……)
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:54:07.92:sJCRKhvx0 (17/96)
衣「さっきからこそこそコロモの跡をつけているお前」
衣「いつまでも隠れていないで出てきたらどうだ?」
咲「ひゃう!!」ビクン
咲「き、気付いてたの?」
衣「コロモを見縊るな」
衣「お前のような有象無象の企むことなどコロモには全てお見通しだ」
咲「ごめんなさい!」
咲「不快にさせるつもりはなかったんだけど……」
衣「まあよい」
衣「今宵の満月に免じて赦してやろう」
衣「コロモは気分が良いのだ」
咲「あ、ありがとう……」
衣「さっきからこそこそコロモの跡をつけているお前」
衣「いつまでも隠れていないで出てきたらどうだ?」
咲「ひゃう!!」ビクン
咲「き、気付いてたの?」
衣「コロモを見縊るな」
衣「お前のような有象無象の企むことなどコロモには全てお見通しだ」
咲「ごめんなさい!」
咲「不快にさせるつもりはなかったんだけど……」
衣「まあよい」
衣「今宵の満月に免じて赦してやろう」
衣「コロモは気分が良いのだ」
咲「あ、ありがとう……」
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:55:13.98:sJCRKhvx0 (18/96)
咲「あの、あなたも」
衣「コロモでよいぞ」
咲「う、うん」
咲「コロモちゃんもオーラスホームで暮らしてる牌羽なんだよね?」
衣「うむ。貴様が今日生まれたばかりという牌羽か?」
咲「うん。サキって言うんだ、よろしくね」
衣「……」
咲「……」
衣「……」
咲「あ、あの……」
衣「何だ? 言いたいことがあるならはっきり言え」
咲「あの、あなたも」
衣「コロモでよいぞ」
咲「う、うん」
咲「コロモちゃんもオーラスホームで暮らしてる牌羽なんだよね?」
衣「うむ。貴様が今日生まれたばかりという牌羽か?」
咲「うん。サキって言うんだ、よろしくね」
衣「……」
咲「……」
衣「……」
咲「あ、あの……」
衣「何だ? 言いたいことがあるならはっきり言え」
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:56:04.11:sJCRKhvx0 (19/96)
咲「コロモちゃんはどうしてこんな時間にここに?」
衣「今宵は満月だからな」
衣「満月の夜はこうしてこの丘にやってくるのだ」
咲「好きなんだね、満月が」
衣「……分からない」
咲「えっ?」
衣「満月を眺めていると気持ちが安らぐのは確かだ」
衣「だが、それ以上に何か大切なことを思い出せそうな気がするのだ」
咲「大切なこと?」
衣「忘れてはならないことをコロモは忘れてしまっている」
衣「そんな気がするのだ」
咲「……」
咲「コロモちゃんはどうしてこんな時間にここに?」
衣「今宵は満月だからな」
衣「満月の夜はこうしてこの丘にやってくるのだ」
咲「好きなんだね、満月が」
衣「……分からない」
咲「えっ?」
衣「満月を眺めていると気持ちが安らぐのは確かだ」
衣「だが、それ以上に何か大切なことを思い出せそうな気がするのだ」
咲「大切なこと?」
衣「忘れてはならないことをコロモは忘れてしまっている」
衣「そんな気がするのだ」
咲「……」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:57:19.18:sJCRKhvx0 (20/96)
衣「サキは繭の中で夢を見たか?」
咲「夢?」
咲「うーん、あんまり覚えてないや」
咲「白い壁に囲まれててすごく心地よかったのは何となく覚えてるんだけど」
衣「皆はそう言うな」
衣「だが、コロモは繭の中でずっと夢を見ていた」
衣「暗闇の中で誰かがコロモの名を必死に呼んでいた」
衣「優しい、だがひどく悲しげな声だった」
衣「コロモは思い出さなくてはならないのだ、その声の主を」
衣「コロモの名を呼び続けてくれたその人のことを」
咲「……」
衣「サキは繭の中で夢を見たか?」
咲「夢?」
咲「うーん、あんまり覚えてないや」
咲「白い壁に囲まれててすごく心地よかったのは何となく覚えてるんだけど」
衣「皆はそう言うな」
衣「だが、コロモは繭の中でずっと夢を見ていた」
衣「暗闇の中で誰かがコロモの名を必死に呼んでいた」
衣「優しい、だがひどく悲しげな声だった」
衣「コロモは思い出さなくてはならないのだ、その声の主を」
衣「コロモの名を呼び続けてくれたその人のことを」
咲「……」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:58:36.23:sJCRKhvx0 (21/96)
衣「すまない、つまらぬ話をしてしまったな」
咲「ううん、そんなことないよ」
咲「話してくれて嬉しかった」
咲「コロモちゃんはあんまりみんなと一緒に居たがらないって聞いてたし」
衣「……」
衣「サキはこの世界をどう思う?」
咲「そんなの来たばかりで全然分からないよ」
咲「でも、みんなすごく優しいし、こんなに綺麗な場所だし悪くないかなって思うよ」
衣「あの者達も恐らく同じように感じているのだろう」
衣「だが、コロモはそうは思えぬのだ」
咲「え?」
衣「すまない、つまらぬ話をしてしまったな」
咲「ううん、そんなことないよ」
咲「話してくれて嬉しかった」
咲「コロモちゃんはあんまりみんなと一緒に居たがらないって聞いてたし」
衣「……」
衣「サキはこの世界をどう思う?」
咲「そんなの来たばかりで全然分からないよ」
咲「でも、みんなすごく優しいし、こんなに綺麗な場所だし悪くないかなって思うよ」
衣「あの者達も恐らく同じように感じているのだろう」
衣「だが、コロモはそうは思えぬのだ」
咲「え?」
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 01:59:56.33:sJCRKhvx0 (22/96)
衣「先刻述べたようにコロモには思い出さなければならないことがある」
衣「そして、コロモはその場所へ帰らなければならない気がする」
衣「あの者達とのんびり此処の暮らしに満足しているわけにはいかぬのだ」
咲「うーん、私にはまだよく分かんないや」
衣「もちろんあの者達が気の良い奴らであることは分かっている」
衣「一人を除いてだが」
咲「それってもしかしてアワイちゃんのこと?」
衣「当然であろう」
衣「あんなに生意気な糞餓鬼は見たことがない」
咲「あはは……」
衣「この前など羽があるから自分は飛べるなどと抜かして二階から飛び降りたのだ」
衣「あの頭の脆弱っぷりには流石のコロモでも理解に苦しむ」
咲(やっぱりあれってアワイちゃんのことだったんだ……)
衣「先刻述べたようにコロモには思い出さなければならないことがある」
衣「そして、コロモはその場所へ帰らなければならない気がする」
衣「あの者達とのんびり此処の暮らしに満足しているわけにはいかぬのだ」
咲「うーん、私にはまだよく分かんないや」
衣「もちろんあの者達が気の良い奴らであることは分かっている」
衣「一人を除いてだが」
咲「それってもしかしてアワイちゃんのこと?」
衣「当然であろう」
衣「あんなに生意気な糞餓鬼は見たことがない」
咲「あはは……」
衣「この前など羽があるから自分は飛べるなどと抜かして二階から飛び降りたのだ」
衣「あの頭の脆弱っぷりには流石のコロモでも理解に苦しむ」
咲(やっぱりあれってアワイちゃんのことだったんだ……)
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:01:07.07:sJCRKhvx0 (23/96)
咲「ふぁ、ふぁ~」
衣「眠いのか? サキ」
咲「うん、ちょっとね」
咲「コロモちゃんは眠くないの?」
衣「コロモは夕方まで寝ていたから平気だ」
衣「サキはもうオーラスホームへ帰るといい」
衣「コロモはもう少し此処で月を見ている」
咲「私も隣に居ちゃだめかな?」
咲「もうちょっとだけコロモちゃんの側にいたいんだ」
衣「好きにしろ」
衣「なんなら此処で横になったらどうだ?」
咲「さすがにそれはちょっと……」
咲「ふぁ、ふぁ~」
衣「眠いのか? サキ」
咲「うん、ちょっとね」
咲「コロモちゃんは眠くないの?」
衣「コロモは夕方まで寝ていたから平気だ」
衣「サキはもうオーラスホームへ帰るといい」
衣「コロモはもう少し此処で月を見ている」
咲「私も隣に居ちゃだめかな?」
咲「もうちょっとだけコロモちゃんの側にいたいんだ」
衣「好きにしろ」
衣「なんなら此処で横になったらどうだ?」
咲「さすがにそれはちょっと……」
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:01:45.15:sJCRKhvx0 (24/96)
衣「心配せずともコロモがずっと見ててやるぞ」
衣「もう夏も近いし風邪を拗らすこともなかろう」
咲「うん、ありがとう」
咲「じゃあそうさせてもらうよ」
衣(心地良い風だな)
衣(寒くも暑くもなく、新緑が輝き、夏への期待が高まる)
衣(コロモはこの季節が好きだ)
咲「すー」zzz
衣「無邪気な奴め」
衣「よく眠るといい、サキ」
衣「心配せずともコロモがずっと見ててやるぞ」
衣「もう夏も近いし風邪を拗らすこともなかろう」
咲「うん、ありがとう」
咲「じゃあそうさせてもらうよ」
衣(心地良い風だな)
衣(寒くも暑くもなく、新緑が輝き、夏への期待が高まる)
衣(コロモはこの季節が好きだ)
咲「すー」zzz
衣「無邪気な奴め」
衣「よく眠るといい、サキ」
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:03:26.25:sJCRKhvx0 (25/96)
――
―――
――――
咲「うーん……」パチ
咲「ここは?」
咲「コロモちゃん……」
衣「……ん」zzz
咲「そうだ、昨日は結局ここでそのまま寝ちゃったんだ」
咲「寝ているコロモちゃん可愛いなぁ」プニプニ
衣「ふぁっ……」パチ
衣「んー……おはよう、サキ」
咲「あっ、起こしちゃってごめんね」
衣「構わん」
衣「……」グー
衣「腹も減ったしオーラスホームへ帰るぞ、サキ」
咲「うん!」
――
―――
――――
咲「うーん……」パチ
咲「ここは?」
咲「コロモちゃん……」
衣「……ん」zzz
咲「そうだ、昨日は結局ここでそのまま寝ちゃったんだ」
咲「寝ているコロモちゃん可愛いなぁ」プニプニ
衣「ふぁっ……」パチ
衣「んー……おはよう、サキ」
咲「あっ、起こしちゃってごめんね」
衣「構わん」
衣「……」グー
衣「腹も減ったしオーラスホームへ帰るぞ、サキ」
咲「うん!」
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:05:05.63:sJCRKhvx0 (26/96)
~オーラスホーム~
淡「あっ!サキが帰ってきたー!!!」
菫「何! ほんとか!!」
和「サキさん、良かった」
照「サキ! コロモと一緒だったのか!?」
咲「うん、一緒に満月を見てたんだ」
淡「ちょっとコロモ! まだ疲れてるサキを夜中に連れ回すなんてどういうつもり!」
衣「コロモは連れ回してなどいない。サキが望んでコロモと一緒にいたまでのことだ」
淡「嘘! 自分が友達いないからってサキを仲間に取り込もうとしたんでしょ!」
衣「ふん。相変わらず下等な生き物が考えることは愚かで醜いな」
淡「あんた人を馬鹿にするのもいい加減にしなよ!」
菫「やめないか二人とも!!」
衣&淡「」ビクッ
~オーラスホーム~
淡「あっ!サキが帰ってきたー!!!」
菫「何! ほんとか!!」
和「サキさん、良かった」
照「サキ! コロモと一緒だったのか!?」
咲「うん、一緒に満月を見てたんだ」
淡「ちょっとコロモ! まだ疲れてるサキを夜中に連れ回すなんてどういうつもり!」
衣「コロモは連れ回してなどいない。サキが望んでコロモと一緒にいたまでのことだ」
淡「嘘! 自分が友達いないからってサキを仲間に取り込もうとしたんでしょ!」
衣「ふん。相変わらず下等な生き物が考えることは愚かで醜いな」
淡「あんた人を馬鹿にするのもいい加減にしなよ!」
菫「やめないか二人とも!!」
衣&淡「」ビクッ
27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:07:32.29:sJCRKhvx0 (27/96)
照「サキ、コロモが言ったことは本当?」
咲「うん、だからコロモちゃんを責めないであげて」
咲「悪いのは私なの」
菫「生まれたばかりのサキが朝起きて突然居なくなってたら誰だって心配する」
菫「書き置きするなり今度からはちゃんと伝えてくれ」
咲「はい、ごめんなさい」シュン
衣「朝からこんな奴の顔を見せられて気分が悪い」
衣「コロモは寝るから誰も邪魔するなよ」
バタン
淡「誰がわざわざあんたの邪魔なんてするもんか」ベー
咲「うぅ……」
照「サキ、コロモが言ったことは本当?」
咲「うん、だからコロモちゃんを責めないであげて」
咲「悪いのは私なの」
菫「生まれたばかりのサキが朝起きて突然居なくなってたら誰だって心配する」
菫「書き置きするなり今度からはちゃんと伝えてくれ」
咲「はい、ごめんなさい」シュン
衣「朝からこんな奴の顔を見せられて気分が悪い」
衣「コロモは寝るから誰も邪魔するなよ」
バタン
淡「誰がわざわざあんたの邪魔なんてするもんか」ベー
咲「うぅ……」
28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:08:31.63:sJCRKhvx0 (28/96)
和「スミレさんは誰よりも皆のことを考えてるから叱ってくれるんです」
和「だからあまり落ち込まないで下さい」
咲「うん、分かってるよ」
咲「ありがとうノドカちゃん」
菫「やれやれ」
菫「朝からこんな騒がしいことになってしまって悪かったな、サキ」
咲「いえ、私のせいなんで」
菫「普段は滅多にこんなことないんだが、アワイとコロモが顔を合わせるといつもこうだ」
淡「ふん」
照「そんなことよりお腹すいたしさっさと食事にしよう、スミレ」
菫「はあ……」
菫「お前はどこまでマイペースな奴なんだ」
咲(スミレさんってほんとに大変そう……)
咲(あんまり迷惑掛けないようにしないと)
和「スミレさんは誰よりも皆のことを考えてるから叱ってくれるんです」
和「だからあまり落ち込まないで下さい」
咲「うん、分かってるよ」
咲「ありがとうノドカちゃん」
菫「やれやれ」
菫「朝からこんな騒がしいことになってしまって悪かったな、サキ」
咲「いえ、私のせいなんで」
菫「普段は滅多にこんなことないんだが、アワイとコロモが顔を合わせるといつもこうだ」
淡「ふん」
照「そんなことよりお腹すいたしさっさと食事にしよう、スミレ」
菫「はあ……」
菫「お前はどこまでマイペースな奴なんだ」
咲(スミレさんってほんとに大変そう……)
咲(あんまり迷惑掛けないようにしないと)
29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:10:01.21:sJCRKhvx0 (29/96)
咲「うわぁ、すごく美味しそう」
淡「でしょ? 全部スミレが作ったんだよ」
咲「へぇ、スミレさんって料理お上手なんですね」
菫「まあ、オーラスホームの家事をこなすのが私の仕事だからな」
咲「仕事?」
照「私たち牌羽はこの世界では特別な存在なんだ」
照「街で暮らす他の人とは違っていくつかの特権が認められてる」
照「その代わりとして、仲間や街の人たちのために無償で働くことが義務付けられてるんだ」
咲「ふーん、そうなんだ」
咲「じゃあ、他のみんなも何か仕事してるの?」
淡「もちろん! コロモの奴はまだ子供だからって働かないでぶらぶらしてるだけだけどね」
菫「お前の仕事とやらもただ遊んでるだけにしか見えないが」
淡「えー、そんなことないよー」
照「まあそこら辺のことは今日このあと街に行ったときにまた説明するよ」
咲「うん」
咲「うわぁ、すごく美味しそう」
淡「でしょ? 全部スミレが作ったんだよ」
咲「へぇ、スミレさんって料理お上手なんですね」
菫「まあ、オーラスホームの家事をこなすのが私の仕事だからな」
咲「仕事?」
照「私たち牌羽はこの世界では特別な存在なんだ」
照「街で暮らす他の人とは違っていくつかの特権が認められてる」
照「その代わりとして、仲間や街の人たちのために無償で働くことが義務付けられてるんだ」
咲「ふーん、そうなんだ」
咲「じゃあ、他のみんなも何か仕事してるの?」
淡「もちろん! コロモの奴はまだ子供だからって働かないでぶらぶらしてるだけだけどね」
菫「お前の仕事とやらもただ遊んでるだけにしか見えないが」
淡「えー、そんなことないよー」
照「まあそこら辺のことは今日このあと街に行ったときにまた説明するよ」
咲「うん」
30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:11:33.22:sJCRKhvx0 (30/96)
和「……」ジー
照「どうしたんだノドカ? さっきから私の顔をじっと見て」
和「いえ、こうして二人並んでるとこを見ると」
和「テルさんとサキさんってよく似てるなって思って」
咲「そ、そうかな?」テレ
菫「確かに言われてみれば、特にその頭の角なんてそっくりだ」
照「これは角じゃない」
淡「ねえねえサキ、一回テルのことお姉ちゃんって呼んでみてよ」
照「!!」
咲「えっ!?」
咲「うん……お、おねえ……」
照「……」ドキドキ
咲「ごめん、やっぱり何か恥ずかしいよー//」
照「……」
照(何でちょっとがっかりしてるんだ私は……)
菫「まあ、私たち牌羽に姉妹なんて概念があるとも思えんしな」
和「それもそうですね」
和「……」ジー
照「どうしたんだノドカ? さっきから私の顔をじっと見て」
和「いえ、こうして二人並んでるとこを見ると」
和「テルさんとサキさんってよく似てるなって思って」
咲「そ、そうかな?」テレ
菫「確かに言われてみれば、特にその頭の角なんてそっくりだ」
照「これは角じゃない」
淡「ねえねえサキ、一回テルのことお姉ちゃんって呼んでみてよ」
照「!!」
咲「えっ!?」
咲「うん……お、おねえ……」
照「……」ドキドキ
咲「ごめん、やっぱり何か恥ずかしいよー//」
照「……」
照(何でちょっとがっかりしてるんだ私は……)
菫「まあ、私たち牌羽に姉妹なんて概念があるとも思えんしな」
和「それもそうですね」
31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:13:08.33:sJCRKhvx0 (31/96)
~街~
咲「うわぁ、思ってたよりたくさん人がいるんだね」
淡「でしょ! ここで色んなものが買えるんだよ」
咲「それで、今日はどこに行くの?」
菫「うーん、そういえば何も考えてなかったな」
照「服屋なんてどうかな? サキもいつまでもその服じゃ可哀そうだし」
淡「そうしよう! 年頃の女の子がそんなみずぼらしい格好してちゃだめだよ!」
淡「もっとイケてる服にしないと!」
咲「そういえばみんなそれぞれ色んな格好してるね」
~街~
咲「うわぁ、思ってたよりたくさん人がいるんだね」
淡「でしょ! ここで色んなものが買えるんだよ」
咲「それで、今日はどこに行くの?」
菫「うーん、そういえば何も考えてなかったな」
照「服屋なんてどうかな? サキもいつまでもその服じゃ可哀そうだし」
淡「そうしよう! 年頃の女の子がそんなみずぼらしい格好してちゃだめだよ!」
淡「もっとイケてる服にしないと!」
咲「そういえばみんなそれぞれ色んな格好してるね」
32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:13:49.40:sJCRKhvx0 (32/96)
咲「ノドカちゃんのそのフリフリなんてすごく可愛い」
和「あ、ありがとうございます//」
咲「街ではそういうのが流行ってるの?」
和「いえ、これは私の趣味です」
和「それも非常にマイノリティーな」
咲「確かに他にそういう格好してる人いないね」キョロキョロ
和「サキさんもどうですか? とっても似合うと思いますけど」
咲「わ、私にそんな可愛い服似合わないよー」ブンブン
和「そうですか……」シュン
咲「ノドカちゃんのそのフリフリなんてすごく可愛い」
和「あ、ありがとうございます//」
咲「街ではそういうのが流行ってるの?」
和「いえ、これは私の趣味です」
和「それも非常にマイノリティーな」
咲「確かに他にそういう格好してる人いないね」キョロキョロ
和「サキさんもどうですか? とっても似合うと思いますけど」
咲「わ、私にそんな可愛い服似合わないよー」ブンブン
和「そうですか……」シュン
33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:15:33.02:sJCRKhvx0 (33/96)
~服屋~
カランカラン
店主「いらっしゃーい」
店主「お、牌羽ちゃんたちじゃないか」
店主「今日は一日良いことがありそうだ」
咲「良いこと?」
照「言ったでしょ? 牌羽はこの世界で特別な存在だって」
照「牌羽は幸せの象徴とされ、出会った人には良いことが訪れるって言い伝えがあるんだ」
咲「な、何か照れ臭いね//」
店主「こんな可愛い女の子たちを見れただけで幸せとも言えるけどね」
淡「ちょっとおじさんそれセクハラだよー」
店主「まあまあそう言うなって」
~服屋~
カランカラン
店主「いらっしゃーい」
店主「お、牌羽ちゃんたちじゃないか」
店主「今日は一日良いことがありそうだ」
咲「良いこと?」
照「言ったでしょ? 牌羽はこの世界で特別な存在だって」
照「牌羽は幸せの象徴とされ、出会った人には良いことが訪れるって言い伝えがあるんだ」
咲「な、何か照れ臭いね//」
店主「こんな可愛い女の子たちを見れただけで幸せとも言えるけどね」
淡「ちょっとおじさんそれセクハラだよー」
店主「まあまあそう言うなって」
34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:17:00.99:sJCRKhvx0 (34/96)
店主「ノドカちゃんは今日もフリフリしてて可愛いねー」
店主「その服をノドカちゃんに売って大正解だったよ」
和「あ、あの……//」
バンッ!
菫「おじさん、いい加減にしてもらおうか」
店主「はは……相変わらず怖いねースミレちゃんは……」
店主「で、今日はどういった用件だい?」
照「この子の新しい服を探しに来たんですが」
店主「お、君は新入りさんだね」
咲「はい、サキって言います」
咲「よろしくお願いします」ペコ
店主「うんうんよろしくねー」
店主「ノドカちゃんは今日もフリフリしてて可愛いねー」
店主「その服をノドカちゃんに売って大正解だったよ」
和「あ、あの……//」
バンッ!
菫「おじさん、いい加減にしてもらおうか」
店主「はは……相変わらず怖いねースミレちゃんは……」
店主「で、今日はどういった用件だい?」
照「この子の新しい服を探しに来たんですが」
店主「お、君は新入りさんだね」
咲「はい、サキって言います」
咲「よろしくお願いします」ペコ
店主「うんうんよろしくねー」
35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:19:13.25:sJCRKhvx0 (35/96)
店主「その棚に置いてる中からどれでも好きなの選んでいいよ」
咲「はい、ありがとうございます」
和「サキさんサキさん! この服なんてどうでしょう!?」
咲「うーん、やっぱりフリフリしたのはちょっと……」
和「そうですか……」シュン
淡「サキー! これはこれは!」
咲「それも私にはちょっと派手かな」
淡「そう? 似合うと思うんだけどなー」
菫「仕方ないな、ここは私が」
照「スミレは下がってて」
淡「スミレはダメ!」
和「スミレさんは失礼ですがちょっと……」
菫「……」ズーン
咲(スミレさんって何か可哀そうな人だな……)
店主「その棚に置いてる中からどれでも好きなの選んでいいよ」
咲「はい、ありがとうございます」
和「サキさんサキさん! この服なんてどうでしょう!?」
咲「うーん、やっぱりフリフリしたのはちょっと……」
和「そうですか……」シュン
淡「サキー! これはこれは!」
咲「それも私にはちょっと派手かな」
淡「そう? 似合うと思うんだけどなー」
菫「仕方ないな、ここは私が」
照「スミレは下がってて」
淡「スミレはダメ!」
和「スミレさんは失礼ですがちょっと……」
菫「……」ズーン
咲(スミレさんって何か可哀そうな人だな……)
36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:20:09.20:sJCRKhvx0 (36/96)
照「これなんてどうかな?」
咲「あ、いいかも」
和「おしとやかで可愛らしいサキさんにぴったりですね」
淡「さすがテルー! 似てるだけあって好みもバッチリだね!」
淡「ねえ? スミレもそう思うでしょ?」
菫「私の意見なんてどうせ当てにならないんだろ」
咲(いじけてる)
照(いじけてるな)
和(いじけてますね)
咲「うん、私これにするよ」
店主「オッケー。了解だ」
咲「あっ! でも私お金なんて持ってませんよ」
照「これなんてどうかな?」
咲「あ、いいかも」
和「おしとやかで可愛らしいサキさんにぴったりですね」
淡「さすがテルー! 似てるだけあって好みもバッチリだね!」
淡「ねえ? スミレもそう思うでしょ?」
菫「私の意見なんてどうせ当てにならないんだろ」
咲(いじけてる)
照(いじけてるな)
和(いじけてますね)
咲「うん、私これにするよ」
店主「オッケー。了解だ」
咲「あっ! でも私お金なんて持ってませんよ」
37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:21:32.75:sJCRKhvx0 (37/96)
照「大丈夫。牌羽はお金を扱ってはいけないっていう掟があるんだよ」
照「その代わりに私たちが使うのがこれだ」ジャラ
咲「何ですかそれ?」
照「点棒っていう牌羽にとってのお金の代わりみたいなものだ」
照「私たちはこれを支払うことでこの街で色んなものを買うことができるんだよ」
咲「へぇー」
照「サキにはまだ支給されてないからここは私が払っておくよ」
咲「うん、ありがとう」
店主「毎度ありー。またいつでも来てね」
店主「用なんてなくたって顔見せに来てくれるだけでもいいから」
菫「」ギロ
店主「うっ……」
咲「あはは……ありがとうございました」
照「大丈夫。牌羽はお金を扱ってはいけないっていう掟があるんだよ」
照「その代わりに私たちが使うのがこれだ」ジャラ
咲「何ですかそれ?」
照「点棒っていう牌羽にとってのお金の代わりみたいなものだ」
照「私たちはこれを支払うことでこの街で色んなものを買うことができるんだよ」
咲「へぇー」
照「サキにはまだ支給されてないからここは私が払っておくよ」
咲「うん、ありがとう」
店主「毎度ありー。またいつでも来てね」
店主「用なんてなくたって顔見せに来てくれるだけでもいいから」
菫「」ギロ
店主「うっ……」
咲「あはは……ありがとうございました」
38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:22:30.69:sJCRKhvx0 (38/96)
菫「さて、次はどこに行こうか?」
淡「特に用事もないし適当にぶらぶらすればいーんじゃない」
照「サキはそれでいいの?」
咲「うん、見たことない景色ばかりだから歩いてるだけで楽しいよ」
照「サキがそう言うなら」
咲「あの、ずっと気になってたんだけど」
照「何?」
咲「周りをぐるっと囲んでるあの大きな壁は何なの?」
照「あれはここと外の世界を隔てる壁だよ」
咲「外の世界? あの壁の向こうにも人がいるの?」
照「分からない」
咲「え?」
菫「さて、次はどこに行こうか?」
淡「特に用事もないし適当にぶらぶらすればいーんじゃない」
照「サキはそれでいいの?」
咲「うん、見たことない景色ばかりだから歩いてるだけで楽しいよ」
照「サキがそう言うなら」
咲「あの、ずっと気になってたんだけど」
照「何?」
咲「周りをぐるっと囲んでるあの大きな壁は何なの?」
照「あれはここと外の世界を隔てる壁だよ」
咲「外の世界? あの壁の向こうにも人がいるの?」
照「分からない」
咲「え?」
39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:24:15.23:sJCRKhvx0 (39/96)
照「あの壁を越えることは人も牌羽も禁じられてるんだ」
照「と言っても、壁を越える方法なんてないんだけど」
照「だから、私たちにとってあの壁の内側だけが世界の全て」
照「外側に何があるかなんて誰も知らないし調べることもできない」
咲「そうなんだ」
和「でも、唯一壁を越えることを許された存在もいるんですよ」
咲「そうなの?」
和「鳥ですよ。サキさんもここに来るまでに見かけたでしょう」
咲「そういえば道の途中で」
淡「鳥っていってもカラスしかいないけどね」
淡「私あいつら大嫌い!」
淡「ゴミは荒らすし不気味だし」
照「あの壁を越えることは人も牌羽も禁じられてるんだ」
照「と言っても、壁を越える方法なんてないんだけど」
照「だから、私たちにとってあの壁の内側だけが世界の全て」
照「外側に何があるかなんて誰も知らないし調べることもできない」
咲「そうなんだ」
和「でも、唯一壁を越えることを許された存在もいるんですよ」
咲「そうなの?」
和「鳥ですよ。サキさんもここに来るまでに見かけたでしょう」
咲「そういえば道の途中で」
淡「鳥っていってもカラスしかいないけどね」
淡「私あいつら大嫌い!」
淡「ゴミは荒らすし不気味だし」
40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:25:06.17:sJCRKhvx0 (40/96)
菫「そういえばコロモの奴は何故かカラスのことをやたら気に留めてたな」
菫「自分も鳥みたいにあの壁を越えて行けたらいいのにって」
淡「そんなこと言って、あいつってほんとお子様なんだから」
菫「羽があるから飛べるんだとか意気込んで窓から飛び降りたのは誰だったかな?」
淡「あー! それサキには内緒ねって言ったのにー!」
咲「あはは、コロモちゃんから聞いて知ってたよ」
淡「きー! あいつ絶対許さない!」
和「軽傷で済んだから良かったものの本当に冷や冷やしましたよ」
淡「何事もやってみなくちゃ分かんないじゃん」
淡「それに私は完全に諦めたわけじゃないよ」
菫「やめてくれ、こっちの心臓がいくつあってももたない」
咲「ふふ」
菫「そういえばコロモの奴は何故かカラスのことをやたら気に留めてたな」
菫「自分も鳥みたいにあの壁を越えて行けたらいいのにって」
淡「そんなこと言って、あいつってほんとお子様なんだから」
菫「羽があるから飛べるんだとか意気込んで窓から飛び降りたのは誰だったかな?」
淡「あー! それサキには内緒ねって言ったのにー!」
咲「あはは、コロモちゃんから聞いて知ってたよ」
淡「きー! あいつ絶対許さない!」
和「軽傷で済んだから良かったものの本当に冷や冷やしましたよ」
淡「何事もやってみなくちゃ分かんないじゃん」
淡「それに私は完全に諦めたわけじゃないよ」
菫「やめてくれ、こっちの心臓がいくつあってももたない」
咲「ふふ」
41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:26:11.96:sJCRKhvx0 (41/96)
和「……!!!」
咲「急に立ち止ってどうかしたの? ノドカちゃん」
和「あそこの露店で売ってるぬいぐるみ……」
咲「ぬいぐるみ? ほんとだ、色んなの売ってるね」
和「……」ジー
エトペン「……」ジー
商人「お、牌羽の嬢ちゃん。こいつが気になるのかい?」
和「……はい」
商人「こいつはエトペンって言ってな、ある絵本の主人公なんだ」
商人「丸っこくて可愛いだろ?」
淡「えー、何かぶよぶよしててあんまり可愛くなーい」
和「……!!!」
咲「急に立ち止ってどうかしたの? ノドカちゃん」
和「あそこの露店で売ってるぬいぐるみ……」
咲「ぬいぐるみ? ほんとだ、色んなの売ってるね」
和「……」ジー
エトペン「……」ジー
商人「お、牌羽の嬢ちゃん。こいつが気になるのかい?」
和「……はい」
商人「こいつはエトペンって言ってな、ある絵本の主人公なんだ」
商人「丸っこくて可愛いだろ?」
淡「えー、何かぶよぶよしててあんまり可愛くなーい」
42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:27:30.37:sJCRKhvx0 (42/96)
和「これ下さい、おじさん」ジャラ
淡「えっ! ノドカほんとに買うの?」
商人「即断即決いいね~。商売冥利に尽きるってもんだ」
商人「毎度あり~。大事にしてやってくれよ」
和「はい、ありがとうございました」ペコ
咲「よっぽど気に入ったんだね、その子」
和「はい、あまりこういう言葉は好きではありませんが」
和「運命的な何かをびびっと感じたんです」ギュッ
咲「ふふ、何だかエトペンもノドカちゃんに抱かれて嬉しそう」
淡「ノドカってほんと可愛いらしいもの好きだよね」
淡「そのペンギンは可愛くないけど」
和「可愛いですよ」キリッ
照「ノドカは一度これって決めたら何言っても聞かないからな」
咲「へぇ、私は優柔不断だからかっこよくて憧れるなぁ」
和「そ、そうですか//」
菫「もうすぐ日も暮れるしそろそろ帰るか」
照「そうだね」
和「これ下さい、おじさん」ジャラ
淡「えっ! ノドカほんとに買うの?」
商人「即断即決いいね~。商売冥利に尽きるってもんだ」
商人「毎度あり~。大事にしてやってくれよ」
和「はい、ありがとうございました」ペコ
咲「よっぽど気に入ったんだね、その子」
和「はい、あまりこういう言葉は好きではありませんが」
和「運命的な何かをびびっと感じたんです」ギュッ
咲「ふふ、何だかエトペンもノドカちゃんに抱かれて嬉しそう」
淡「ノドカってほんと可愛いらしいもの好きだよね」
淡「そのペンギンは可愛くないけど」
和「可愛いですよ」キリッ
照「ノドカは一度これって決めたら何言っても聞かないからな」
咲「へぇ、私は優柔不断だからかっこよくて憧れるなぁ」
和「そ、そうですか//」
菫「もうすぐ日も暮れるしそろそろ帰るか」
照「そうだね」
43:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:31:26.34:sJCRKhvx0 (43/96)
~オーラスホーム~
淡「たっだいまー!」
咲「あれ? 扉に張り紙が貼ってある」
『同志サキよ 明日正午に寺院まで来たれし 牌羽連盟』
咲「牌羽……連盟……?」
照「そういえばその説明がまだだったね」
照「牌羽連盟っていうのは私たち牌羽の生活を支援してくれるところだ」
照「連盟といっても雀師と呼ばれる長とその付き人が一人いるだけだけどね」
咲「呼び出しって、私何かまずいことしたのかな……」オロオロ
照「心配することはないよ、生まれたばかりの牌羽はみんな最初に呼ばれるんだ」
照「そこで私たちはしばらく生活する分の点棒を雀師から支給されるんだよ」
咲「そうなんだ、よかった」
~オーラスホーム~
淡「たっだいまー!」
咲「あれ? 扉に張り紙が貼ってある」
『同志サキよ 明日正午に寺院まで来たれし 牌羽連盟』
咲「牌羽……連盟……?」
照「そういえばその説明がまだだったね」
照「牌羽連盟っていうのは私たち牌羽の生活を支援してくれるところだ」
照「連盟といっても雀師と呼ばれる長とその付き人が一人いるだけだけどね」
咲「呼び出しって、私何かまずいことしたのかな……」オロオロ
照「心配することはないよ、生まれたばかりの牌羽はみんな最初に呼ばれるんだ」
照「そこで私たちはしばらく生活する分の点棒を雀師から支給されるんだよ」
咲「そうなんだ、よかった」
44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:32:33.48:sJCRKhvx0 (44/96)
淡「でもサキ、口の聞き方には気をつけた方がいいよ」
咲「えっ、雀師って怖い人なの?」
菫「そんなことはない、お面をつけていて顔は分からないがすごく優しそうな人だぞ」
淡「でも私が初めて会ったときはものすっごく邪悪なオーラ出してたよ」
菫「それはお前がいきなりおばさんだなんて言うからだ」
淡「だってほんとのことじゃーん」
咲「あはは……気をつけるよ」
咲「ところで、この寺院っていうのは?」
照「街の外れにある雀師の暮らしてるところだよ」
照「明日は私が一緒に付いていってあげる」
咲「分かった。ありがとうテル」
菫「それじゃあ私は夕食の準備をするから皆は部屋で待っていてくれ」
淡「わーい! よろしくねスミレー!」
淡「でもサキ、口の聞き方には気をつけた方がいいよ」
咲「えっ、雀師って怖い人なの?」
菫「そんなことはない、お面をつけていて顔は分からないがすごく優しそうな人だぞ」
淡「でも私が初めて会ったときはものすっごく邪悪なオーラ出してたよ」
菫「それはお前がいきなりおばさんだなんて言うからだ」
淡「だってほんとのことじゃーん」
咲「あはは……気をつけるよ」
咲「ところで、この寺院っていうのは?」
照「街の外れにある雀師の暮らしてるところだよ」
照「明日は私が一緒に付いていってあげる」
咲「分かった。ありがとうテル」
菫「それじゃあ私は夕食の準備をするから皆は部屋で待っていてくれ」
淡「わーい! よろしくねスミレー!」
45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:34:51.29:sJCRKhvx0 (45/96)
咲「あの、スミレさん」
菫「どうしたんだサキ? 今日は街に出て疲れただろうし部屋で休んでてくれていいんだぞ」
咲「いえ、それは大丈夫です」
咲「もしお邪魔でなければ、夕食の用意のお手伝いをさせてもらっていいですか?」
菫「それはもちろん有難いが私に遠慮する必要はないぞ」
菫「これが私の仕事なんだから」
咲「そういうつもりじゃないんです」
咲「まだここの暮らしについて分からないことばかりなのでみんなのお仕事の様子とか見てみたくて」
菫「そういうことならお言葉に甘えさせてもらおうか」
菫「じゃあサキはそこの野菜を切っておいてくれる?」
咲「はい」
咲「あの、スミレさん」
菫「どうしたんだサキ? 今日は街に出て疲れただろうし部屋で休んでてくれていいんだぞ」
咲「いえ、それは大丈夫です」
咲「もしお邪魔でなければ、夕食の用意のお手伝いをさせてもらっていいですか?」
菫「それはもちろん有難いが私に遠慮する必要はないぞ」
菫「これが私の仕事なんだから」
咲「そういうつもりじゃないんです」
咲「まだここの暮らしについて分からないことばかりなのでみんなのお仕事の様子とか見てみたくて」
菫「そういうことならお言葉に甘えさせてもらおうか」
菫「じゃあサキはそこの野菜を切っておいてくれる?」
咲「はい」
46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:36:12.95:sJCRKhvx0 (46/96)
咲「」トントントントン
菫「へー、サキは料理が上手なんだな」
咲「えへへ、ありがとうございます」
菫「不思議だね」
咲「え?」
菫「サキは自分が料理を得意だって分かってたんだろ?」
菫「アワイに初めて包丁持たせたときなんて危なっかしくてすぐ止めさせたのに」
咲「……」
菫「自分がどういう人間だったかなんてまるで覚えてないはずなのに」
菫「サキは自分が料理できることを覚えてた」
咲「そう言われれば、そうですね……」
咲「」トントントントン
菫「へー、サキは料理が上手なんだな」
咲「えへへ、ありがとうございます」
菫「不思議だね」
咲「え?」
菫「サキは自分が料理を得意だって分かってたんだろ?」
菫「アワイに初めて包丁持たせたときなんて危なっかしくてすぐ止めさせたのに」
咲「……」
菫「自分がどういう人間だったかなんてまるで覚えてないはずなのに」
菫「サキは自分が料理できることを覚えてた」
咲「そう言われれば、そうですね……」
47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:37:37.93:sJCRKhvx0 (47/96)
菫「この体には確かに昔の記憶が刻まれてるんだ」
菫「私たちって一体何なんだろうな」
菫「皆どこかでそのことについて考えずにいられないんだ」
咲「……」
咲「最初この世界に来たとき、スミレさんはテルと二人っきりだったんですよね?」
菫「ああ」
咲「どんな感じだったんですか?」
菫「そりゃ最初は大変だったさ」
菫「テルは今でこそしっかりしてるが、生まれたばかりのころは本当に何もできない奴だった」
菫「状況が呑み込めず右往左往するだけのあいつを必死に宥めて」
菫「その辺に生えてる草で食えそうなやつをテルの口に無理矢理押し込んでやったりもした」
咲「うわぁ、想像以上に壮絶だったんですね」
菫「この体には確かに昔の記憶が刻まれてるんだ」
菫「私たちって一体何なんだろうな」
菫「皆どこかでそのことについて考えずにいられないんだ」
咲「……」
咲「最初この世界に来たとき、スミレさんはテルと二人っきりだったんですよね?」
菫「ああ」
咲「どんな感じだったんですか?」
菫「そりゃ最初は大変だったさ」
菫「テルは今でこそしっかりしてるが、生まれたばかりのころは本当に何もできない奴だった」
菫「状況が呑み込めず右往左往するだけのあいつを必死に宥めて」
菫「その辺に生えてる草で食えそうなやつをテルの口に無理矢理押し込んでやったりもした」
咲「うわぁ、想像以上に壮絶だったんですね」
48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:39:18.12:sJCRKhvx0 (48/96)
菫「5日ほどそんな暮らしを続けたころ、ある日いきなり牌羽連盟と名乗る雀師が現れてな」
菫「牌羽の存在についてやこの世界の生き方について教えてもらった」
咲「そこから今みたいな暮らしが始まったんですね」
菫「まあな」
菫「と言っても相変わらずテルはぼーっとしてて動かないから私があれもこれも一人でやってたんだけど」
咲「そうなんですか。今のテルからは想像もできないや」
菫「ふふ、そうだろう」
菫「今でもたまにあいつのマイペースっぷりには呆れさせられることもあるが」
菫「あの頃に比べれば本当に立派になったよ」
咲「昔のポンコツの頃のテルも少し見てみたいです」
菫「やめておいたほうがいいと思うぞ。あれはすごい疲れる」
菫「それでもどこか憎めなくて、ずっと一緒にいても飽きない奴ではあったが」
菫「5日ほどそんな暮らしを続けたころ、ある日いきなり牌羽連盟と名乗る雀師が現れてな」
菫「牌羽の存在についてやこの世界の生き方について教えてもらった」
咲「そこから今みたいな暮らしが始まったんですね」
菫「まあな」
菫「と言っても相変わらずテルはぼーっとしてて動かないから私があれもこれも一人でやってたんだけど」
咲「そうなんですか。今のテルからは想像もできないや」
菫「ふふ、そうだろう」
菫「今でもたまにあいつのマイペースっぷりには呆れさせられることもあるが」
菫「あの頃に比べれば本当に立派になったよ」
咲「昔のポンコツの頃のテルも少し見てみたいです」
菫「やめておいたほうがいいと思うぞ。あれはすごい疲れる」
菫「それでもどこか憎めなくて、ずっと一緒にいても飽きない奴ではあったが」
49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:40:44.32:sJCRKhvx0 (49/96)
菫「二人で過ごした季節が一巡りしたころコロモが生まれて」
菫「またもう一年経ってアワイと、ノドカと、そしてサキ、お前が生まれた」
菫「ここも随分にぎやかになったものだよ」
咲「何だか、スミレさんってみんなのお母さんみたいですね」
菫「やめてくれ、皆とそんな年は変わらないだろうに」
咲「ふふ、ごめんなさい」
咲「でも、スミレさんが居るとみんなすっごく安心できます」
菫「そう言ってもらえると嬉しいよ」
菫「こうして一つ屋根の下で暮らしてるんだ。皆で支え合って楽しくやっていきたいじゃないか」
菫「コロモのことが気掛かりではあるがな」
咲「……」
菫「二人で過ごした季節が一巡りしたころコロモが生まれて」
菫「またもう一年経ってアワイと、ノドカと、そしてサキ、お前が生まれた」
菫「ここも随分にぎやかになったものだよ」
咲「何だか、スミレさんってみんなのお母さんみたいですね」
菫「やめてくれ、皆とそんな年は変わらないだろうに」
咲「ふふ、ごめんなさい」
咲「でも、スミレさんが居るとみんなすっごく安心できます」
菫「そう言ってもらえると嬉しいよ」
菫「こうして一つ屋根の下で暮らしてるんだ。皆で支え合って楽しくやっていきたいじゃないか」
菫「コロモのことが気掛かりではあるがな」
咲「……」
50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:42:41.43:sJCRKhvx0 (50/96)
咲「コロモちゃんはみんなと一緒に食事をしないんですか?」
菫「全くないことはないがほとんど同卓しないな」
菫「何でもあいつは街を歩いてるだけで周りが食べ物をくれたりご馳走したりしてくれるらしい」
咲「あはは、確かにあの可愛らしさをみればその気持ちも分からなくはないですね」
菫「私としてはもっとコロモに皆と仲良くなってほしいんだが」
菫「私たちは同じ家で暮らしてる家族なんだから」
咲「……スミレさんって素敵な人ですね」
菫「そんなことはないさ」
菫「いまだにコロモの心を理解ってあげることもできない」
菫「自分が情けなくて仕方ないよ」
咲「……」
菫「さてと」
菫「もうすぐ夕食もできるしサキは皆を呼んできてくれるか」
咲「……はい、分かりました」
咲「コロモちゃんはみんなと一緒に食事をしないんですか?」
菫「全くないことはないがほとんど同卓しないな」
菫「何でもあいつは街を歩いてるだけで周りが食べ物をくれたりご馳走したりしてくれるらしい」
咲「あはは、確かにあの可愛らしさをみればその気持ちも分からなくはないですね」
菫「私としてはもっとコロモに皆と仲良くなってほしいんだが」
菫「私たちは同じ家で暮らしてる家族なんだから」
咲「……スミレさんって素敵な人ですね」
菫「そんなことはないさ」
菫「いまだにコロモの心を理解ってあげることもできない」
菫「自分が情けなくて仕方ないよ」
咲「……」
菫「さてと」
菫「もうすぐ夕食もできるしサキは皆を呼んできてくれるか」
咲「……はい、分かりました」
51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:43:59.40:sJCRKhvx0 (51/96)
とりあえず一旦区切ります。多分今日中にまた投下します。
とりあえず一旦区切ります。多分今日中にまた投下します。
52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 02:53:25.20:5ZwqBL2fo (1/1)
なんかかわいい。続き楽しみ
なんかかわいい。続き楽しみ
53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 07:49:06.68:RKAy9mxuo (1/1)
灰羽連盟は名作
灰羽連盟は名作
54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 08:13:09.50:S8EJdJMSO (1/1)
灰羽懐かしい
期待してるぞ
灰羽懐かしい
期待してるぞ
55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 08:44:06.49:fNsmJ+oAO (1/1)
灰羽連盟とは!!懐かしい素晴らしい!!
…オーラスホームて…(笑)
灰羽連盟とは!!懐かしい素晴らしい!!
…オーラスホームて…(笑)
56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 10:18:39.55:GF/yCNyso (1/3)
何だかワクワクするな
期待している
何だかワクワクするな
期待している
57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 10:45:03.59:A9d27w6Mo (1/1)
いいなぁ、これ
支援します
いいなぁ、これ
支援します
58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 12:54:22.51:7TAlgQEE0 (1/1)
オーラスホームとか、灰羽手帳が点棒とかww
gj
オーラスホームとか、灰羽手帳が点棒とかww
gj
59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 14:50:11.63:ihC36W950 (1/1)
願わくばエンディングがほのぼのであってほしい
灰羽のエンディングは切なすぎるからなぁ
願わくばエンディングがほのぼのであってほしい
灰羽のエンディングは切なすぎるからなぁ
60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 15:27:50.92:gqD9SVzXo (1/1)
灰羽のほうしかよくしらないけど面白い!乙です。
灰羽のほうしかよくしらないけど面白い!乙です。
61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:03:37.95:sJCRKhvx0 (52/96)
読んで下さってる方ありがとうございます。
灰羽連盟を好きな人がこんなにいて嬉しいです。
ただ、始めに断っておきますと咲キャラが灰羽の世界にいるのではなく
多少展開は本編と異なりますが咲の原作があった上でこの物語を書いているので
後半は咲を知らないと分かりづらいところがあると思いますのでご了承下さい。
それでは今から投下します。
読んで下さってる方ありがとうございます。
灰羽連盟を好きな人がこんなにいて嬉しいです。
ただ、始めに断っておきますと咲キャラが灰羽の世界にいるのではなく
多少展開は本編と異なりますが咲の原作があった上でこの物語を書いているので
後半は咲を知らないと分かりづらいところがあると思いますのでご了承下さい。
それでは今から投下します。
62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:06:15.30:sJCRKhvx0 (53/96)
~翌日~
咲「うー、私なんか緊張してきちゃったよ」
照「ふふ、サキは怖がりだな」
咲「だって、牌羽連盟ってすごく偉い人なんでしょ?」
照「大丈夫だって、昨日も言ったでしょ」
照「簡単なあいさつだけですぐに終わるし、雀師も優しそうな人だよ」
咲「でも、アワイちゃんが……」
照「それはアワイが悪かっただけだよ」
照「口のきき方さえ気をつければ何も問題はない」
照「サキは礼儀正しい子だから心配することはないさ」
咲「うん、分かった」
咲「テルが一緒に居てくれると何だかすごく安心するよ」
照「どういたしまして」
~翌日~
咲「うー、私なんか緊張してきちゃったよ」
照「ふふ、サキは怖がりだな」
咲「だって、牌羽連盟ってすごく偉い人なんでしょ?」
照「大丈夫だって、昨日も言ったでしょ」
照「簡単なあいさつだけですぐに終わるし、雀師も優しそうな人だよ」
咲「でも、アワイちゃんが……」
照「それはアワイが悪かっただけだよ」
照「口のきき方さえ気をつければ何も問題はない」
照「サキは礼儀正しい子だから心配することはないさ」
咲「うん、分かった」
咲「テルが一緒に居てくれると何だかすごく安心するよ」
照「どういたしまして」
63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:07:59.13:sJCRKhvx0 (54/96)
咲「やっぱりスミレさんから聞いた昔のテルなんて想像できないな」
照「え!?」
照「スミレから昔の話を聞いたの!?」
咲「うん、昨日夕食の準備を手伝ってたときに」
照「忘れてくれ」
咲「え?」
照「頼むから忘れてくれ」
咲「どうして?」
照「昔の私は本当にダメダメだったんだ」
照「思い出すだけで死ぬほど恥ずかしい……」
咲「えー」
咲「今のテルはとっても頼りになるけど、昔のテルも可愛くていいと思うよ」
照「そんなレベルの話じゃないんだ」
照「スミレにはどれほどの迷惑を掛けたか分からない……」
咲「やっぱりスミレさんから聞いた昔のテルなんて想像できないな」
照「え!?」
照「スミレから昔の話を聞いたの!?」
咲「うん、昨日夕食の準備を手伝ってたときに」
照「忘れてくれ」
咲「え?」
照「頼むから忘れてくれ」
咲「どうして?」
照「昔の私は本当にダメダメだったんだ」
照「思い出すだけで死ぬほど恥ずかしい……」
咲「えー」
咲「今のテルはとっても頼りになるけど、昔のテルも可愛くていいと思うよ」
照「そんなレベルの話じゃないんだ」
照「スミレにはどれほどの迷惑を掛けたか分からない……」
64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:08:33.56:sJCRKhvx0 (55/96)
咲「でも、テルの話をしてるスミレさんすごく楽しそうだった」
照「スミレにはいくら感謝しても足りないよ」
咲「テルとスミレさんの関係って何か良いなー」
照「そ、そうか?」
咲「うん、何だか夫婦みたい」
照「ちょっ、いきなり何を言って……!」
咲「スミレさんが頼りになる旦那さんでテルがそれに寄り添う奥さんって感じ」
咲「いや、テルがマイペースな旦那さんでそれに献身的に尽くすスミレさんってのもありかな」
照「おい! もうその話はやめてくれ//」
咲「あはは、テルが照れてる」
照「ほら、寺院に着いたぞ。しゃんとしろしゃんと」
咲「はーい」
咲「でも、テルの話をしてるスミレさんすごく楽しそうだった」
照「スミレにはいくら感謝しても足りないよ」
咲「テルとスミレさんの関係って何か良いなー」
照「そ、そうか?」
咲「うん、何だか夫婦みたい」
照「ちょっ、いきなり何を言って……!」
咲「スミレさんが頼りになる旦那さんでテルがそれに寄り添う奥さんって感じ」
咲「いや、テルがマイペースな旦那さんでそれに献身的に尽くすスミレさんってのもありかな」
照「おい! もうその話はやめてくれ//」
咲「あはは、テルが照れてる」
照「ほら、寺院に着いたぞ。しゃんとしろしゃんと」
咲「はーい」
65:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:09:43.64:sJCRKhvx0 (56/96)
~寺院~
咲「あそこにお面を付けて立ってるのが雀師って人?」
照「いや、あれは雀師の付き人だ」
照「雀師の身の回りの世話などをしているらしいが詳しいことは知らない」
照「どうやら喋ることは禁じられてるらしい」
咲「ふーん、そうなんだ」
付き人「」ペコ
咲「ど、どうも」ペコ
付き人「」スッ
咲「ん?」
照「ついてこいって意味だよ」
~寺院~
咲「あそこにお面を付けて立ってるのが雀師って人?」
照「いや、あれは雀師の付き人だ」
照「雀師の身の回りの世話などをしているらしいが詳しいことは知らない」
照「どうやら喋ることは禁じられてるらしい」
咲「ふーん、そうなんだ」
付き人「」ペコ
咲「ど、どうも」ペコ
付き人「」スッ
咲「ん?」
照「ついてこいって意味だよ」
66:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:10:32.09:sJCRKhvx0 (57/96)
雀師「……」
咲「あ、あの……こんにちわ」
咲「私はサキと言います」
雀師「……」
雀師「……」ジー
咲「あのぅ…私の顔に何かついてますか?」
雀師「いえ、何でもありません」
雀師「同志サキよ、貴方を牌羽連盟の同志として迎えます」
咲「は、はい! ありがとうございます!」
雀師「まずは貴方にこれを渡しておきます」
咲「あ、点棒だ」
雀師「それは牌羽にとってお金の代わりとなる大切なものです」
雀師「無駄な振り込みはしないよう心掛けなさい」
咲「はい」
雀師「……」
咲「あ、あの……こんにちわ」
咲「私はサキと言います」
雀師「……」
雀師「……」ジー
咲「あのぅ…私の顔に何かついてますか?」
雀師「いえ、何でもありません」
雀師「同志サキよ、貴方を牌羽連盟の同志として迎えます」
咲「は、はい! ありがとうございます!」
雀師「まずは貴方にこれを渡しておきます」
咲「あ、点棒だ」
雀師「それは牌羽にとってお金の代わりとなる大切なものです」
雀師「無駄な振り込みはしないよう心掛けなさい」
咲「はい」
67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:11:32.15:sJCRKhvx0 (58/96)
雀師「そして、貴方に一つ忠告をしておきましょう」
雀師「貴方は西の森に入ったことはありますか?」
咲「いえ、近くまで行ったことはありますが中には」
雀師「西の森の奥には小さな小屋があります」
雀師「その小屋は牌羽にとって神聖ゆえ危険な場所です」
雀師「鍵が掛かっていて中には入れないようにはなっていますが無闇に近づかないようにして下さい」
咲「分かりました」
雀師「それではもう帰ってよろしいですよ」
咲「失礼します」ペコ
雀師「そして、貴方に一つ忠告をしておきましょう」
雀師「貴方は西の森に入ったことはありますか?」
咲「いえ、近くまで行ったことはありますが中には」
雀師「西の森の奥には小さな小屋があります」
雀師「その小屋は牌羽にとって神聖ゆえ危険な場所です」
雀師「鍵が掛かっていて中には入れないようにはなっていますが無闇に近づかないようにして下さい」
咲「分かりました」
雀師「それではもう帰ってよろしいですよ」
咲「失礼します」ペコ
68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:12:34.47:sJCRKhvx0 (59/96)
咲「ふー、すっごく緊張したよ」
照「でも優しそうな人だったでしょ?」
咲「うん、顔を見つめられたときは少しゾクっとしたけど」
照「まあ、得体のしれない人であるのは確かだ」
照「このあとサキはどうするの?」
咲「今日はノドカちゃんの働いてるパン屋に行く約束してるんだ」
照「そうか、私も仕事があるから街まで一緒に行こうか」
咲「うん」
咲「ふー、すっごく緊張したよ」
照「でも優しそうな人だったでしょ?」
咲「うん、顔を見つめられたときは少しゾクっとしたけど」
照「まあ、得体のしれない人であるのは確かだ」
照「このあとサキはどうするの?」
咲「今日はノドカちゃんの働いてるパン屋に行く約束してるんだ」
照「そうか、私も仕事があるから街まで一緒に行こうか」
咲「うん」
69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:14:06.76:sJCRKhvx0 (60/96)
~パン屋~
カランカラン
和「いらっしゃいませ」
咲「来たよ、ノドカちゃん!」
和「サキさん! 待ってましたよ」ニコ
咲「うわー、ノドカちゃんその制服すっごく可愛いね」
和「そう言ってもらえると嬉しいです//」
主人「ノドカの友達かい?」
咲「はい、サキって言います」
主人「狭い店だけどゆっくりくつろいでってくれよ」
~パン屋~
カランカラン
和「いらっしゃいませ」
咲「来たよ、ノドカちゃん!」
和「サキさん! 待ってましたよ」ニコ
咲「うわー、ノドカちゃんその制服すっごく可愛いね」
和「そう言ってもらえると嬉しいです//」
主人「ノドカの友達かい?」
咲「はい、サキって言います」
主人「狭い店だけどゆっくりくつろいでってくれよ」
70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:14:55.86:sJCRKhvx0 (61/96)
咲「あの、お仕事のお邪魔ではないでしょうか?」
主人「はは、そんなこと気にしなくていいよ」
主人「むしろ商売が繁盛するってもんだ」
主人「実際ノドカが働き始めてから売り上げはぐんと伸びてるしな」
和「いえ、それは私の力では……」
主人「そんなことねえさ」
主人「まあ増えたのはもっぱら野郎どもばかりだけどな」
主人「どこにそんな元気あんだってじいさん達まで虜にしちまうんだから大したもんだよ」
咲「さすがノドカちゃんだね!」
和「や、やめて下さい//」
咲「あの、お仕事のお邪魔ではないでしょうか?」
主人「はは、そんなこと気にしなくていいよ」
主人「むしろ商売が繁盛するってもんだ」
主人「実際ノドカが働き始めてから売り上げはぐんと伸びてるしな」
和「いえ、それは私の力では……」
主人「そんなことねえさ」
主人「まあ増えたのはもっぱら野郎どもばかりだけどな」
主人「どこにそんな元気あんだってじいさん達まで虜にしちまうんだから大したもんだよ」
咲「さすがノドカちゃんだね!」
和「や、やめて下さい//」
71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:18:15.21:sJCRKhvx0 (62/96)
職人「おっ、君が新しい牌羽ちゃんかい?」
咲「はい、そうですけど」
職人「ふふん、君は非常にグッドなタイミングで訪れたね」
咲「え?」
職人「たった今俺が職人人生の全てを賭けて焼き上げた新作のパンが完成したんだ!」
咲「そうなんですか! すっごい興味あります!」
職人「その新作がこれだ!!!」バーン
咲「何だか不思議な形ですね? こんもりしたお山が二つ」
和「………」
職人「この山の中には甘~い極上の練乳クリームと男の夢がぎっしり詰まってるのさ!」
職人「その名も『ノド…』」
主人「ふん!」ドゴォ
職人「ぐはっ」
ドサッ
職人「おっ、君が新しい牌羽ちゃんかい?」
咲「はい、そうですけど」
職人「ふふん、君は非常にグッドなタイミングで訪れたね」
咲「え?」
職人「たった今俺が職人人生の全てを賭けて焼き上げた新作のパンが完成したんだ!」
咲「そうなんですか! すっごい興味あります!」
職人「その新作がこれだ!!!」バーン
咲「何だか不思議な形ですね? こんもりしたお山が二つ」
和「………」
職人「この山の中には甘~い極上の練乳クリームと男の夢がぎっしり詰まってるのさ!」
職人「その名も『ノド…』」
主人「ふん!」ドゴォ
職人「ぐはっ」
ドサッ
72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:18:59.26:sJCRKhvx0 (63/96)
主人「てめえ職人人生の全てを賭けたって言ったよな」
主人「それが失敗しからにはもう職人に未練はないってことでいいんだな?」
職人「ごほっごほっ……すいやせん……ほんの出来心だったんです」
主人「出来心? 下心の間違いじゃねえのかい?」
咲(ノドカちゃんってどこでもセクハラ受けるんだな……)
咲「ノドカちゃんも大変だね」
和「もう慣れました」
咲「あはは……」
主人「嫌な気分にさしちまって悪かったな」
咲「いえ、そんなことは……」
主人「ノドカも今日はもうあがっていいぞ」
主人「お友達とどれでも好きなパン持ってけ」
和「分かりました。ありがとうございます」
咲「ありがとうございます」ペコ
主人「てめえ職人人生の全てを賭けたって言ったよな」
主人「それが失敗しからにはもう職人に未練はないってことでいいんだな?」
職人「ごほっごほっ……すいやせん……ほんの出来心だったんです」
主人「出来心? 下心の間違いじゃねえのかい?」
咲(ノドカちゃんってどこでもセクハラ受けるんだな……)
咲「ノドカちゃんも大変だね」
和「もう慣れました」
咲「あはは……」
主人「嫌な気分にさしちまって悪かったな」
咲「いえ、そんなことは……」
主人「ノドカも今日はもうあがっていいぞ」
主人「お友達とどれでも好きなパン持ってけ」
和「分かりました。ありがとうございます」
咲「ありがとうございます」ペコ
73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:21:05.15:sJCRKhvx0 (64/96)
咲「このパン美味しいね」
和「はい、私も大好きなんです」
咲「ノドカちゃんはどうしてあそこで働き始めたの?」
和「私も最初はあのお店の客として通ってたんですが」
和「お店の雰囲気も良いですし、何よりあそこの制服をどうしても着てみたかったのでここで働かせて下さいとお願いしたんですよ」
咲「あの制服すっごく似合ってたもんね」
和「ありがとうございます//」
和「サキさんは何かやりたいことが見つかりましたか?」
咲「うーん……まだ分かんないや」
咲「どんな仕事が私に合ってるんだろ」
和「焦らなくてもいいですよ。義務とはいっても誰も急かす人はいませんしゆっくり探せばいいんです」
咲「このパン美味しいね」
和「はい、私も大好きなんです」
咲「ノドカちゃんはどうしてあそこで働き始めたの?」
和「私も最初はあのお店の客として通ってたんですが」
和「お店の雰囲気も良いですし、何よりあそこの制服をどうしても着てみたかったのでここで働かせて下さいとお願いしたんですよ」
咲「あの制服すっごく似合ってたもんね」
和「ありがとうございます//」
和「サキさんは何かやりたいことが見つかりましたか?」
咲「うーん……まだ分かんないや」
咲「どんな仕事が私に合ってるんだろ」
和「焦らなくてもいいですよ。義務とはいっても誰も急かす人はいませんしゆっくり探せばいいんです」
74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:23:25.80:sJCRKhvx0 (65/96)
咲「そういえばコロモちゃんも働いてないんだよね?」
和「ええ」
和「コロモさんはテルさんとスミレさんの次にお姉さんですし何度か仕事を探したこともあるようですけど」
和「いつも街の人に『コロモちゃんみたいな子供は働かなくてもいいんだよ』って相手にしてもらえないそうです」
和「その度に拗ねてすごいふくれっ面で帰ってくるので宥めるのが大変だったとスミレさんが」
咲「そうだったんだ、コロモちゃんしっかりしてるとこもあるのにな」
和「コロモさんは良い人ですよ」
和「私がまだここの生活に慣れてない頃、夜あまり寝付けずによく一人でリビングでお茶を飲んでたんです」
和「そしたらあるときコロモさんが散歩に行くのに通りかかって、『一緒に来るか』って誘って頂いたんです」
咲「へぇ、じゃあノドカちゃんもあの丘に行ったの?」
和「いえ、私は夜道を出歩くのがほんの少しだけ怖かったものですからお断りしたら」
和「月が見える側の窓を開けてずっと隣に居てくれました」
和「『眠れない夜は月を眺めるといいぞ』って」
咲「優しいよね、コロモちゃんって」
咲「そういえばコロモちゃんも働いてないんだよね?」
和「ええ」
和「コロモさんはテルさんとスミレさんの次にお姉さんですし何度か仕事を探したこともあるようですけど」
和「いつも街の人に『コロモちゃんみたいな子供は働かなくてもいいんだよ』って相手にしてもらえないそうです」
和「その度に拗ねてすごいふくれっ面で帰ってくるので宥めるのが大変だったとスミレさんが」
咲「そうだったんだ、コロモちゃんしっかりしてるとこもあるのにな」
和「コロモさんは良い人ですよ」
和「私がまだここの生活に慣れてない頃、夜あまり寝付けずによく一人でリビングでお茶を飲んでたんです」
和「そしたらあるときコロモさんが散歩に行くのに通りかかって、『一緒に来るか』って誘って頂いたんです」
咲「へぇ、じゃあノドカちゃんもあの丘に行ったの?」
和「いえ、私は夜道を出歩くのがほんの少しだけ怖かったものですからお断りしたら」
和「月が見える側の窓を開けてずっと隣に居てくれました」
和「『眠れない夜は月を眺めるといいぞ』って」
咲「優しいよね、コロモちゃんって」
75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:24:55.87:sJCRKhvx0 (66/96)
和「普段は確かに子供っぽい所もありますが、月が綺麗な夜の彼女はとても大人びてみえます」
和「あの日以来安心して寝られるようになりましたし」
咲「よかったね」
和「はい」
咲「そういえば今日はエトペンは一緒じゃないの?」
和「さ、さすがに外出するときまで持っていくわけにはいきませんよ」
咲「食事中でもあんなに大事そうに抱きしめてたのに」
和「抱いてると落ち着くのは確かですけど」
咲「そうだ! エトペンを抱いて寝たらもっとぐっすり眠れるんじゃないかな!?」
和「………とても寝心地がよかったです//」
咲「あはは、さっそく試してたんだね」
和「た、たまたま抱いて寝てみたですよ……//」
咲(可愛いなぁノドカちゃん)
和「普段は確かに子供っぽい所もありますが、月が綺麗な夜の彼女はとても大人びてみえます」
和「あの日以来安心して寝られるようになりましたし」
咲「よかったね」
和「はい」
咲「そういえば今日はエトペンは一緒じゃないの?」
和「さ、さすがに外出するときまで持っていくわけにはいきませんよ」
咲「食事中でもあんなに大事そうに抱きしめてたのに」
和「抱いてると落ち着くのは確かですけど」
咲「そうだ! エトペンを抱いて寝たらもっとぐっすり眠れるんじゃないかな!?」
和「………とても寝心地がよかったです//」
咲「あはは、さっそく試してたんだね」
和「た、たまたま抱いて寝てみたですよ……//」
咲(可愛いなぁノドカちゃん)
76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:25:39.87:sJCRKhvx0 (67/96)
和「ところで、次はどのお仕事を見にいくつもりなんですか?」
咲「テルのところだよ。明後日一緒に付いて行くことになってるの」
和「そうですか。テルさんの職場はサキさんに合うかもしれませんね」
咲「うん、私も楽しみなんだ!」
和「良いお仕事が見つかるといいですね」
咲「そうだね、ありがとうノドカちゃん」
和「それではそろそろ帰りましょうか、サキさん」
咲「うん!」
和「ところで、次はどのお仕事を見にいくつもりなんですか?」
咲「テルのところだよ。明後日一緒に付いて行くことになってるの」
和「そうですか。テルさんの職場はサキさんに合うかもしれませんね」
咲「うん、私も楽しみなんだ!」
和「良いお仕事が見つかるといいですね」
咲「そうだね、ありがとうノドカちゃん」
和「それではそろそろ帰りましょうか、サキさん」
咲「うん!」
77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:27:02.28:sJCRKhvx0 (68/96)
~図書館~
咲「ここがテルの働いてる図書館なんだ」
咲「けっこう広いんだね」
照「この時間は人もあまりいないしゆっくりしてるといいよ」
照「私はちょっとやることがあるから本でも読んで待っててね」
咲「うん」
咲「うわー、本がたくさんだー」
咲「図書館なんだから当たり前か」
咲「うーん、どの本にしようかな」キョロキョロ
咲「あっ、これなんて面白そう」
――――
―――
――
~図書館~
咲「ここがテルの働いてる図書館なんだ」
咲「けっこう広いんだね」
照「この時間は人もあまりいないしゆっくりしてるといいよ」
照「私はちょっとやることがあるから本でも読んで待っててね」
咲「うん」
咲「うわー、本がたくさんだー」
咲「図書館なんだから当たり前か」
咲「うーん、どの本にしようかな」キョロキョロ
咲「あっ、これなんて面白そう」
――――
―――
――
78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:28:28.74:sJCRKhvx0 (69/96)
照「……キ」
照「サキ」
咲「ひゃ!」
照「ごめん、びっくりさせちゃったね」
咲「ううん、つい本に夢中になっちゃって」
照「どんな本を読んでたの?」
咲「うーんとね、仲の良いウサギの姉妹が山のてっぺんまでピクニックに行くお話」
咲「二人はそこで一輪の花を見つけるんだ」
咲「普通は山のてっぺんに花なんて咲かないはずなのに」
咲「その花は可憐に、だけど力強く咲いていた」
咲「それでね、お姉ちゃんウサギが妹ウサギにその花をプレゼントするの」
咲「これはお前みたいな花だねって」
咲「その後二人は離ればなれになっちゃうんだけど」
咲「妹ウサギはいつまでも枯れないその花とお姉ちゃんウサギの言葉を大切に抱きしめて」
咲「別れたお姉ちゃんウサギを探す旅に出るんだよ」
照「へぇ、綺麗だけど何だか切ない物話だね」
咲「……うん」
照「……キ」
照「サキ」
咲「ひゃ!」
照「ごめん、びっくりさせちゃったね」
咲「ううん、つい本に夢中になっちゃって」
照「どんな本を読んでたの?」
咲「うーんとね、仲の良いウサギの姉妹が山のてっぺんまでピクニックに行くお話」
咲「二人はそこで一輪の花を見つけるんだ」
咲「普通は山のてっぺんに花なんて咲かないはずなのに」
咲「その花は可憐に、だけど力強く咲いていた」
咲「それでね、お姉ちゃんウサギが妹ウサギにその花をプレゼントするの」
咲「これはお前みたいな花だねって」
咲「その後二人は離ればなれになっちゃうんだけど」
咲「妹ウサギはいつまでも枯れないその花とお姉ちゃんウサギの言葉を大切に抱きしめて」
咲「別れたお姉ちゃんウサギを探す旅に出るんだよ」
照「へぇ、綺麗だけど何だか切ない物話だね」
咲「……うん」
79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:30:32.57:sJCRKhvx0 (70/96)
照「その話はそこでお終いなの?」
咲「ううん、まだ続きがあるよ」
照「それなら借りて帰るといいよ、私が手続きしてあげるから」
咲「うん、ありがとう」
照「サキは本が好きなんだね」
咲「そうみたい、本に囲まれてるとすっごく落ち着くよ」
照「ふふ、私もだ」
咲「テルはここでどんな仕事をしてるの?」
照「カウンターで本の貸し借りの受け付けをしたり、蔵書の整理をしたり」
照「街の人が寄贈してくれたお下がりの本をきれいにして新しく棚に並べたりしてるんだよ」
咲「へぇ」
照「といっても大抵は暇だから私もいっつも本を読んで過ごしてるよ」
咲「いいなぁ」
照「その話はそこでお終いなの?」
咲「ううん、まだ続きがあるよ」
照「それなら借りて帰るといいよ、私が手続きしてあげるから」
咲「うん、ありがとう」
照「サキは本が好きなんだね」
咲「そうみたい、本に囲まれてるとすっごく落ち着くよ」
照「ふふ、私もだ」
咲「テルはここでどんな仕事をしてるの?」
照「カウンターで本の貸し借りの受け付けをしたり、蔵書の整理をしたり」
照「街の人が寄贈してくれたお下がりの本をきれいにして新しく棚に並べたりしてるんだよ」
咲「へぇ」
照「といっても大抵は暇だから私もいっつも本を読んで過ごしてるよ」
咲「いいなぁ」
80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:31:34.78:sJCRKhvx0 (71/96)
照「サキもここで働けるよう館長にお願いしてあげようか?」
照「サキだったら大丈夫だと思うよ」
咲「私だったら?」
照「実はアワイもよく私にくっついてたからここで働きたいって言ってたんだけど」
照「何しろ静かにしてられないあの子だからね、館長に追い出されちゃったんだよ」
咲「あはは……」
咲「そういえばアワイちゃんって何のお仕事してるの?」
照「アワイは白糸園ってところで先生をしてるんだ」
咲「えっ! アワイちゃんが先生!?」
照「ふふ、そんなにびっくりしたらアワイが可哀そうだぞ」
咲「だ、だって……」
照「サキもここで働けるよう館長にお願いしてあげようか?」
照「サキだったら大丈夫だと思うよ」
咲「私だったら?」
照「実はアワイもよく私にくっついてたからここで働きたいって言ってたんだけど」
照「何しろ静かにしてられないあの子だからね、館長に追い出されちゃったんだよ」
咲「あはは……」
咲「そういえばアワイちゃんって何のお仕事してるの?」
照「アワイは白糸園ってところで先生をしてるんだ」
咲「えっ! アワイちゃんが先生!?」
照「ふふ、そんなにびっくりしたらアワイが可哀そうだぞ」
咲「だ、だって……」
81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:32:36.67:sJCRKhvx0 (72/96)
照「先生といっても名ばかりだけどね」
照「白糸園っていうのは近所の小さい子供たちが集まって勉強したり遊んだりするところなんだけど」
照「アワイは子供たちが外で遊ぶ時間に一緒に遊んであげてるんだよ」
咲「なーんだ、それなら納得だよ」
照「何でも外でたまたま会った子供たちと遊んでたところを園長さんにスカウトされたんだとか」
照「肉体労働が減って助かるって園長さん喜んでたよ」
咲「アワイちゃん元気いっぱいだもんね」
照「スミレが『子供たちと一緒に授業を受けさせてもらえ』なんて言ってたな」
照「勉強は嫌いだって絶対聞かないけど」
咲「ふふ、その光景が目に浮かぶよ」
照「それで、ここで働くって話だけどどうする?」
咲「そうだな、もうちょっと自分で考えてみるよ」
咲「誘ってくれてありがと」
照「分かった」
照「時間はたっぷりあるんだからゆっくり考えるといいよ」
照「先生といっても名ばかりだけどね」
照「白糸園っていうのは近所の小さい子供たちが集まって勉強したり遊んだりするところなんだけど」
照「アワイは子供たちが外で遊ぶ時間に一緒に遊んであげてるんだよ」
咲「なーんだ、それなら納得だよ」
照「何でも外でたまたま会った子供たちと遊んでたところを園長さんにスカウトされたんだとか」
照「肉体労働が減って助かるって園長さん喜んでたよ」
咲「アワイちゃん元気いっぱいだもんね」
照「スミレが『子供たちと一緒に授業を受けさせてもらえ』なんて言ってたな」
照「勉強は嫌いだって絶対聞かないけど」
咲「ふふ、その光景が目に浮かぶよ」
照「それで、ここで働くって話だけどどうする?」
咲「そうだな、もうちょっと自分で考えてみるよ」
咲「誘ってくれてありがと」
照「分かった」
照「時間はたっぷりあるんだからゆっくり考えるといいよ」
82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:34:16.26:sJCRKhvx0 (73/96)
咲「ねえテル?」
照「ん?」
咲「あそこの古そうな本がずらっと並んでる棚は何?」
照「あそこにはね、外の世界について昔の人が考察した本が置かれてるんだ」
咲「あんなにたくさん?」
照「そうだよ」
照「知ることができないからこそ、人は色んな想像を外の世界に巡らせてきたんだよ」
咲「……」
照「楽園のような世界が広がってると信じるもの」
照「ここと同じようなものだと主張するもの」
照「荒れ果てた大地がただただ続いてるだけだと考えるもの」
照「そもそも外の世界なんてないんだと言うものもいる」
咲「ねえテル?」
照「ん?」
咲「あそこの古そうな本がずらっと並んでる棚は何?」
照「あそこにはね、外の世界について昔の人が考察した本が置かれてるんだ」
咲「あんなにたくさん?」
照「そうだよ」
照「知ることができないからこそ、人は色んな想像を外の世界に巡らせてきたんだよ」
咲「……」
照「楽園のような世界が広がってると信じるもの」
照「ここと同じようなものだと主張するもの」
照「荒れ果てた大地がただただ続いてるだけだと考えるもの」
照「そもそも外の世界なんてないんだと言うものもいる」
83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:35:30.63:sJCRKhvx0 (74/96)
咲「テルは、どう思う?」
照「分からないな。読むのは楽しいけどあまり深く考えたことはない」
咲「私たちって外の世界から来たのかな?」
照「どうだろうね」
照「でも、外の世界がここよりずっと辛い場所なら」
照「知らないままでいいと私は思う」
咲「……」
照「そろそろ帰ろうか、サキ」
照「スミレがごはんをつくって待ってる」
咲「うん」
咲「テルは、どう思う?」
照「分からないな。読むのは楽しいけどあまり深く考えたことはない」
咲「私たちって外の世界から来たのかな?」
照「どうだろうね」
照「でも、外の世界がここよりずっと辛い場所なら」
照「知らないままでいいと私は思う」
咲「……」
照「そろそろ帰ろうか、サキ」
照「スミレがごはんをつくって待ってる」
咲「うん」
84:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:36:59.75:sJCRKhvx0 (75/96)
~オーラスホーム~
咲&照「ただいまー」
菫「おう、おかえり二人とも」
咲「良い匂いがするよ」
咲「今日のごはんもすっごく美味しそう」
菫「ふふ、ありがとうサキ」
照「スミレはいいおよ…」
菫「何か言ったか、テル?」
照「……いや」
照(『スミレはいいお嫁さんになるね』って言おうとしたけど)
咲「」ニコニコ
照(サキにからかわれそうだから止めておこう)
~オーラスホーム~
咲&照「ただいまー」
菫「おう、おかえり二人とも」
咲「良い匂いがするよ」
咲「今日のごはんもすっごく美味しそう」
菫「ふふ、ありがとうサキ」
照「スミレはいいおよ…」
菫「何か言ったか、テル?」
照「……いや」
照(『スミレはいいお嫁さんになるね』って言おうとしたけど)
咲「」ニコニコ
照(サキにからかわれそうだから止めておこう)
85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:38:34.02:sJCRKhvx0 (76/96)
和「……」キョロキョロ
咲「どうしたのノドカちゃん?」
咲「何か探しもの?」
和「はい……エトペンが見当たらないんです」
咲「え!?」
和「仕事がある日はいつもは部屋に置いていくんですけど」
和「今日はどうやら朝食を食べたあとそのままリビングに置き忘れて行ってしまったみたいで」
和「さっき帰ってきてからずっと探してるんですがどこにもいないんです」シュン
菫「そう落ち込むなノドカ。たかがぬいぐるみで」
和「私にとっては大事な友達なんです」キッ
菫「お、おう……すまん……」
咲(あのスミレさんを怯ませるなんて……)
和「……」キョロキョロ
咲「どうしたのノドカちゃん?」
咲「何か探しもの?」
和「はい……エトペンが見当たらないんです」
咲「え!?」
和「仕事がある日はいつもは部屋に置いていくんですけど」
和「今日はどうやら朝食を食べたあとそのままリビングに置き忘れて行ってしまったみたいで」
和「さっき帰ってきてからずっと探してるんですがどこにもいないんです」シュン
菫「そう落ち込むなノドカ。たかがぬいぐるみで」
和「私にとっては大事な友達なんです」キッ
菫「お、おう……すまん……」
咲(あのスミレさんを怯ませるなんて……)
86:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:39:14.54:sJCRKhvx0 (77/96)
淡「お腹すいたし先にごはんにしようよー」
淡「後でみんなで探してあげるからさ」
和「そうですね……分かりました」
淡「どうせコロモの馬鹿がどっか持ってったんじゃないの?」
淡「昼からずっと部屋にいないし」
和「それならいいんですが」
咲(うーん……)
咲(コロモちゃんがノドカちゃんに無断でずっと持ち出したりするかな?)
淡「お腹すいたし先にごはんにしようよー」
淡「後でみんなで探してあげるからさ」
和「そうですね……分かりました」
淡「どうせコロモの馬鹿がどっか持ってったんじゃないの?」
淡「昼からずっと部屋にいないし」
和「それならいいんですが」
咲(うーん……)
咲(コロモちゃんがノドカちゃんに無断でずっと持ち出したりするかな?)
87:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:40:29.87:sJCRKhvx0 (78/96)
時間は少し遡り、同日、昼
衣「ふぁ~、よく寝た」
ガチャッ
衣「誰もいないな」
衣「皆はもう仕事に行ったのか」
衣「コロモだって立派に働けるというのに、みんな衣を子供扱いするのだ」プンプン
衣「ん? 何かソファーに転がってるぞ」ヒョイ
衣「これは……ノノカが大事にしているぬいぐるみか」
衣「こんなものを寵愛するとはノノカのほうがよっぽど子供ではないか」
エトペン「……」
衣「だがお主…」
エトペン「……」
衣「なかなか面白い風貌をしているな」
衣「よし!」
衣「お前の御主人様が帰ってくるまで今日はコロモが一緒に遊んでやろう!」
時間は少し遡り、同日、昼
衣「ふぁ~、よく寝た」
ガチャッ
衣「誰もいないな」
衣「皆はもう仕事に行ったのか」
衣「コロモだって立派に働けるというのに、みんな衣を子供扱いするのだ」プンプン
衣「ん? 何かソファーに転がってるぞ」ヒョイ
衣「これは……ノノカが大事にしているぬいぐるみか」
衣「こんなものを寵愛するとはノノカのほうがよっぽど子供ではないか」
エトペン「……」
衣「だがお主…」
エトペン「……」
衣「なかなか面白い風貌をしているな」
衣「よし!」
衣「お前の御主人様が帰ってくるまで今日はコロモが一緒に遊んでやろう!」
88:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:42:30.77:sJCRKhvx0 (79/96)
衣「ふっふふーんふっふふーん♪」
衣「しかし最近暑くなってきたな」
衣「ちょっと散歩するだけで汗でべとべとになってしまう」
カラス「カァー、カァー」
衣「……鳥」
衣(壁を越えられる唯一の存在、か……)
衣(結局コロモは何も思い出すことができぬままだ)
衣「鳥よ」
衣「もしお前が本当に外の世界と行き来できるというなら」
衣「繭の夢でコロモの名を呼び続けてくれたその人の声をもう一度届けてはくれぬか?」
カラス「カァー、カァー」
衣「……ふん」
衣「たかが鳥なんぞに自分は何を願っているのだ」
衣「ふっふふーんふっふふーん♪」
衣「しかし最近暑くなってきたな」
衣「ちょっと散歩するだけで汗でべとべとになってしまう」
カラス「カァー、カァー」
衣「……鳥」
衣(壁を越えられる唯一の存在、か……)
衣(結局コロモは何も思い出すことができぬままだ)
衣「鳥よ」
衣「もしお前が本当に外の世界と行き来できるというなら」
衣「繭の夢でコロモの名を呼び続けてくれたその人の声をもう一度届けてはくれぬか?」
カラス「カァー、カァー」
衣「……ふん」
衣「たかが鳥なんぞに自分は何を願っているのだ」
89:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:43:31.31:sJCRKhvx0 (80/96)
カラス「」クル
衣「え?」
カラス「カァー!」
ひゅおおおおおおおおーっ
衣「う、うわああ!」
カラス「カァ!カァ!」
衣「や、やめろ! 何をするのだ貴様!」ゲシッ ゲシッ
カラス「カァ!カァ!」
衣「コロモを突くな~」ゲシッ ゲシッ
カラス「カァー、カァー」
バサッバサッ
バサッ
バサッ
カラス「」クル
衣「え?」
カラス「カァー!」
ひゅおおおおおおおおーっ
衣「う、うわああ!」
カラス「カァ!カァ!」
衣「や、やめろ! 何をするのだ貴様!」ゲシッ ゲシッ
カラス「カァ!カァ!」
衣「コロモを突くな~」ゲシッ ゲシッ
カラス「カァー、カァー」
バサッバサッ
バサッ
バサッ
90:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:44:44.48:sJCRKhvx0 (81/96)
衣「はぁ……はぁ……」
衣「何だったのだ一体……」
衣「!」
衣「あぁ……ど、どうしよう……」
エトペン「……」ボロッ
衣「ノノカのペンギンが……」ウルッ
衣「うぅ……うわああああん」ポロポロ
――――
―――
―
衣「はぁ……はぁ……」
衣「何だったのだ一体……」
衣「!」
衣「あぁ……ど、どうしよう……」
エトペン「……」ボロッ
衣「ノノカのペンギンが……」ウルッ
衣「うぅ……うわああああん」ポロポロ
――――
―――
―
91:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:46:27.99:sJCRKhvx0 (82/96)
~オーラスホーム~
淡「ペンギン見つかんないねー」
菫「やっぱりコロモがどこかに持っていったのかな」
菫「まだ帰ってきてないようだし」
和「こんな時間まで付き合って下さってありがとうございます」
和「私は大丈夫ですのでみなさんお休みになってください」
菫「まあ見つからなければまた似たようなぬいぐるみを買えばいいさ」
和「……」
照「スミレって変なとこで鈍感だよね」
菫「え? 何のことだ?」
照「やれやれだよ」
淡「ノドカ、 寂しかったら私が添い寝してあげようか?」
和「けっこうです」
淡「遠慮しなくていいのにー」
和「遠慮じゃありません」
~オーラスホーム~
淡「ペンギン見つかんないねー」
菫「やっぱりコロモがどこかに持っていったのかな」
菫「まだ帰ってきてないようだし」
和「こんな時間まで付き合って下さってありがとうございます」
和「私は大丈夫ですのでみなさんお休みになってください」
菫「まあ見つからなければまた似たようなぬいぐるみを買えばいいさ」
和「……」
照「スミレって変なとこで鈍感だよね」
菫「え? 何のことだ?」
照「やれやれだよ」
淡「ノドカ、 寂しかったら私が添い寝してあげようか?」
和「けっこうです」
淡「遠慮しなくていいのにー」
和「遠慮じゃありません」
92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:47:14.09:sJCRKhvx0 (83/96)
咲「本当にコロモちゃんが持っていっちゃたのかな?」
和「そうだとしてもきっと事情があるんです」
和「私のことは気にせずサキさんも部屋に戻ってください」
咲「でも、エトペンが居ないと寝られないんじゃ」
和「そんな人を子供みたいに言わないでください」
和「今まで普通に眠れていましたよ」
咲「あはは……だよね」
和「でも、寝付きが悪いようでしたら月でも眺めて過ごします」
和「今夜の月はとても綺麗ですから」
咲「………うん」
咲(やっぱりコロモちゃんに何かあったんじゃ……)
咲「本当にコロモちゃんが持っていっちゃたのかな?」
和「そうだとしてもきっと事情があるんです」
和「私のことは気にせずサキさんも部屋に戻ってください」
咲「でも、エトペンが居ないと寝られないんじゃ」
和「そんな人を子供みたいに言わないでください」
和「今まで普通に眠れていましたよ」
咲「あはは……だよね」
和「でも、寝付きが悪いようでしたら月でも眺めて過ごします」
和「今夜の月はとても綺麗ですから」
咲「………うん」
咲(やっぱりコロモちゃんに何かあったんじゃ……)
93:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:48:06.76:sJCRKhvx0 (84/96)
~真夜中~
咲「コロモちゃん」
衣「ひゃあ!」ビクン
衣「サ、サキ……どうしてここに?」
咲「今日は月が綺麗だから、ここに来てるんじゃないかなって思って」
衣「……サキ」ワナワナ
咲「ん?」
衣「…ぅぐ……どうしよう……」
エトペン「……」ボロッ
衣「ノノカの大切なぬいぐるみが……コロモのせいで……」
衣「うわあああああああん」ポロポロ
~真夜中~
咲「コロモちゃん」
衣「ひゃあ!」ビクン
衣「サ、サキ……どうしてここに?」
咲「今日は月が綺麗だから、ここに来てるんじゃないかなって思って」
衣「……サキ」ワナワナ
咲「ん?」
衣「…ぅぐ……どうしよう……」
エトペン「……」ボロッ
衣「ノノカの大切なぬいぐるみが……コロモのせいで……」
衣「うわあああああああん」ポロポロ
94:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:49:36.49:sJCRKhvx0 (85/96)
咲「何があったの?」
衣「悪気があったわけではないのだ……ちょっと遊んでやろうと外に連れ出したら……」
衣「いきなりカラスに襲われて……ひっぐ……」
衣「どうしよう……このままじゃノノカに嫌われてしまう……」
咲「和ちゃんはそんな子じゃないってコロモちゃんも知ってるでしょ?」
咲「だからそんなに泣かないで」ナデナデ
衣「でも……ノノカはきっと悲しむ……」
咲「このぐらいなら縫えばすぐ直るから大丈夫」
咲「確かオーラスホームに裁縫道具があったはずだから」
衣「そ、それは本当か……?」
咲「もちろん」ニコ
衣「でも、コロモ裁縫なんてやったことない……」
咲「私も手伝うからいっしょにがんばろうよ」
衣「……うん」グス
咲「何があったの?」
衣「悪気があったわけではないのだ……ちょっと遊んでやろうと外に連れ出したら……」
衣「いきなりカラスに襲われて……ひっぐ……」
衣「どうしよう……このままじゃノノカに嫌われてしまう……」
咲「和ちゃんはそんな子じゃないってコロモちゃんも知ってるでしょ?」
咲「だからそんなに泣かないで」ナデナデ
衣「でも……ノノカはきっと悲しむ……」
咲「このぐらいなら縫えばすぐ直るから大丈夫」
咲「確かオーラスホームに裁縫道具があったはずだから」
衣「そ、それは本当か……?」
咲「もちろん」ニコ
衣「でも、コロモ裁縫なんてやったことない……」
咲「私も手伝うからいっしょにがんばろうよ」
衣「……うん」グス
95:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:51:00.70:sJCRKhvx0 (86/96)
~オーラスホーム~
咲「確かこの辺にあったはず」ガサゴソ
咲「あったあった、これだ」
衣「灯りは点けなくていいのか?」
咲「光が漏れてみんなを起こしちゃうかもしれないし、今夜は月が明るいからこのままで平気だよ」
咲「それに、窓から差す月明かりって何だか素敵なんだもん」
衣「サキは意外とロマンチストだな」
咲「えへへ、そうかな」
衣「で、裁縫とはどうやるのだ?」
咲「簡単だよ。ほつれたところの綿を詰め込んで、糸で縫い合わせるだけだから」
衣「ほうほう」
咲「それと、破れた箇所によって糸の色も合わせれば全然目立たなくなるよ」
衣「なるほど! サキはすごいな!」
咲「うふふ、どういたしまして」
~オーラスホーム~
咲「確かこの辺にあったはず」ガサゴソ
咲「あったあった、これだ」
衣「灯りは点けなくていいのか?」
咲「光が漏れてみんなを起こしちゃうかもしれないし、今夜は月が明るいからこのままで平気だよ」
咲「それに、窓から差す月明かりって何だか素敵なんだもん」
衣「サキは意外とロマンチストだな」
咲「えへへ、そうかな」
衣「で、裁縫とはどうやるのだ?」
咲「簡単だよ。ほつれたところの綿を詰め込んで、糸で縫い合わせるだけだから」
衣「ほうほう」
咲「それと、破れた箇所によって糸の色も合わせれば全然目立たなくなるよ」
衣「なるほど! サキはすごいな!」
咲「うふふ、どういたしまして」
96:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:52:11.39:sJCRKhvx0 (87/96)
衣「よし、後はコロモに任せておけ!」
衣「……」
衣「んー………」
衣「………いたっ!」チクリ
咲「大丈夫? コロモちゃん」
衣「このぐらい平気だ」
衣「絶対に朝までに直してノノカに返すんだ」
咲「……」
咲「ねえ、コロモちゃん」
衣「何だ?」
咲「どうしてそんなに一人でいようとするの?」
衣「……」
衣「よし、後はコロモに任せておけ!」
衣「……」
衣「んー………」
衣「………いたっ!」チクリ
咲「大丈夫? コロモちゃん」
衣「このぐらい平気だ」
衣「絶対に朝までに直してノノカに返すんだ」
咲「……」
咲「ねえ、コロモちゃん」
衣「何だ?」
咲「どうしてそんなに一人でいようとするの?」
衣「……」
97:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:54:05.05:H9EPzSFwo (1/1)
優しく儚い世界だね
優しく儚い世界だね
98:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:54:40.69:sJCRKhvx0 (88/96)
衣「前にも言っただろう、コロモには思い出さなければならぬことがあると」
衣「お前達とのんびり暮らしてるわけにはいかぬのだ」
咲「たとえそうだとしても」
咲「私たちにはそれぞれ帰らなきゃいけない場所があるとしても」
咲「この世界にいる間は、そこで出会った人たちと支え合って生きていてもいいんじゃないかな」
衣「……」
咲「コロモちゃんを待ってる人だって、コロモちゃんが一人で悩み続けることなんて望んでないはずだよ」
衣「……でももう遅いのだ」
衣「コロモは今まで散々わがままや酷いことを言ってきた」
衣「今さら仲間に入れてくれだなんて都合の良いこと、誰も聞いてくれないに決まってる」
衣「前にも言っただろう、コロモには思い出さなければならぬことがあると」
衣「お前達とのんびり暮らしてるわけにはいかぬのだ」
咲「たとえそうだとしても」
咲「私たちにはそれぞれ帰らなきゃいけない場所があるとしても」
咲「この世界にいる間は、そこで出会った人たちと支え合って生きていてもいいんじゃないかな」
衣「……」
咲「コロモちゃんを待ってる人だって、コロモちゃんが一人で悩み続けることなんて望んでないはずだよ」
衣「……でももう遅いのだ」
衣「コロモは今まで散々わがままや酷いことを言ってきた」
衣「今さら仲間に入れてくれだなんて都合の良いこと、誰も聞いてくれないに決まってる」
99:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:56:09.30:sJCRKhvx0 (89/96)
咲「そんなことないよ」
咲「スミレさん言ってた、私たちは同じ家で暮らす家族だって」
咲「それなのにコロモちゃんの心を理解ってあげられない自分が情けないって」
咲「みんな、コロモちゃんともっと一緒に過ごしたいって思ってるんだよ」
衣「……そんなことないのだ」
衣「コロモが居なくたってみんな平気なのだ」
咲「私は寂しいよ。コロモちゃんがいてくれなかったらすごく寂しい」
咲「だって、コロモちゃんは友達だもん」
衣「コロモに友達なんて必要ないのだ……」
咲「じゃあどうしてノドカちゃんに嫌われたくないって思うの?」
衣「それは……」
咲「ノドカちゃんともっと仲良くなりたいって思ってるからじゃないかな」
咲「何とも思ってない人のためにこんなに一生懸命になることなんてできないよ」
衣「……」
咲「そんなことないよ」
咲「スミレさん言ってた、私たちは同じ家で暮らす家族だって」
咲「それなのにコロモちゃんの心を理解ってあげられない自分が情けないって」
咲「みんな、コロモちゃんともっと一緒に過ごしたいって思ってるんだよ」
衣「……そんなことないのだ」
衣「コロモが居なくたってみんな平気なのだ」
咲「私は寂しいよ。コロモちゃんがいてくれなかったらすごく寂しい」
咲「だって、コロモちゃんは友達だもん」
衣「コロモに友達なんて必要ないのだ……」
咲「じゃあどうしてノドカちゃんに嫌われたくないって思うの?」
衣「それは……」
咲「ノドカちゃんともっと仲良くなりたいって思ってるからじゃないかな」
咲「何とも思ってない人のためにこんなに一生懸命になることなんてできないよ」
衣「……」
100:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:57:36.21:sJCRKhvx0 (90/96)
咲「だからさ、ぬいぐるみを渡すときコロモちゃんの気持ちをみんなに伝えてみようよ、ね?」
衣「……」
衣「………許してもらえるかな」
衣「今からでも、コロモと友達になってくれるかな……」
衣「みんなと本当の家族になることができるかな……」グス
咲「なれるよ、絶対」
咲「コロモちゃんが思ってることをみんなに伝える、それだけでいいんだよ」
咲「私も側にいるから」
衣「分かった、やってみる」グシグシ
衣「ありがとう、サキ」
咲「がんばろうね、コロモちゃん」ニコ
――――
―――
――
咲「だからさ、ぬいぐるみを渡すときコロモちゃんの気持ちをみんなに伝えてみようよ、ね?」
衣「……」
衣「………許してもらえるかな」
衣「今からでも、コロモと友達になってくれるかな……」
衣「みんなと本当の家族になることができるかな……」グス
咲「なれるよ、絶対」
咲「コロモちゃんが思ってることをみんなに伝える、それだけでいいんだよ」
咲「私も側にいるから」
衣「分かった、やってみる」グシグシ
衣「ありがとう、サキ」
咲「がんばろうね、コロモちゃん」ニコ
――――
―――
――
101:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 16:58:54.49:sJCRKhvx0 (91/96)
ガチャッ
淡「ふぁ~、よく寝た~」
淡「うわっ!!」
咲&衣「……」zzz
淡「何でリビングのソファーでサキとコロモがいっしょに寝てるの!?」
菫「どうしたんだアワイ、朝から騒がしい」
照「おはようみんな」
和「みなさんおはようございます」
和「あっ! エトペン!」
咲「んー……」パチ
咲「あ、みんなおはよう」ムニャムニャ
照「サキ、これは一体どういう状況だ?」
咲「あー、これはえっとね」アタフタ
咲「ほら、コロモちゃん起きて」ユサユサ
ガチャッ
淡「ふぁ~、よく寝た~」
淡「うわっ!!」
咲&衣「……」zzz
淡「何でリビングのソファーでサキとコロモがいっしょに寝てるの!?」
菫「どうしたんだアワイ、朝から騒がしい」
照「おはようみんな」
和「みなさんおはようございます」
和「あっ! エトペン!」
咲「んー……」パチ
咲「あ、みんなおはよう」ムニャムニャ
照「サキ、これは一体どういう状況だ?」
咲「あー、これはえっとね」アタフタ
咲「ほら、コロモちゃん起きて」ユサユサ
102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 17:00:28.85:sJCRKhvx0 (92/96)
衣「うーん……うるさいぞサキ」パチ
バッ!
衣「お、おまえたち……」
淡「ちょっとコロモ! どういうことか説明しなさいよ!」
衣「これはだな、その……」
咲「がんばって、コロモちゃん」ボソ
衣「……」コクリ
衣「ノノカ、ごめん!」
衣「ノノカのぬいぐるみを散歩に連れていったら、急にカラスに襲われてぬいぐるみが破れてしまったのだ……」
衣「それで昨日ここに帰れなくて泣いていたら、サキが助けてくれて……」
衣「裁縫なんて初めてだったから上手くできなくて、元通りにはならなかったけど……」
衣「でも、コロモなりに精一杯やったから……」
衣「本当にごめんなさい!」
エトペン「……」スッ
衣「うーん……うるさいぞサキ」パチ
バッ!
衣「お、おまえたち……」
淡「ちょっとコロモ! どういうことか説明しなさいよ!」
衣「これはだな、その……」
咲「がんばって、コロモちゃん」ボソ
衣「……」コクリ
衣「ノノカ、ごめん!」
衣「ノノカのぬいぐるみを散歩に連れていったら、急にカラスに襲われてぬいぐるみが破れてしまったのだ……」
衣「それで昨日ここに帰れなくて泣いていたら、サキが助けてくれて……」
衣「裁縫なんて初めてだったから上手くできなくて、元通りにはならなかったけど……」
衣「でも、コロモなりに精一杯やったから……」
衣「本当にごめんなさい!」
エトペン「……」スッ
103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 17:01:30.93:sJCRKhvx0 (93/96)
和「いえ、これはかなり綺麗に縫えてありますよ」
和「それに気持ちは十分伝わりました」
和「ありがとうございます、コロモさん」ニコ
衣「……ノノカ」パァ
菫「とりあえず一件落着でよかったじゃないか」
衣「そ、それと! みんなに伝えねばならぬことがあるのだ!」
「……」
衣「今までの態度やわがままな振舞い、散々酷いことを言ったのも全て謝る」
衣「だから……」グッ
衣「コロモもみんなの家族にしてほしい!」
衣「みんなともっと仲良くなりたいのだ!」
菫「……!」
和「いえ、これはかなり綺麗に縫えてありますよ」
和「それに気持ちは十分伝わりました」
和「ありがとうございます、コロモさん」ニコ
衣「……ノノカ」パァ
菫「とりあえず一件落着でよかったじゃないか」
衣「そ、それと! みんなに伝えねばならぬことがあるのだ!」
「……」
衣「今までの態度やわがままな振舞い、散々酷いことを言ったのも全て謝る」
衣「だから……」グッ
衣「コロモもみんなの家族にしてほしい!」
衣「みんなともっと仲良くなりたいのだ!」
菫「……!」
104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 17:02:39.81:sJCRKhvx0 (94/96)
和「ええ、もちろんです」
淡「ふん、いきなりそんなこと言われても調子狂うじゃん」
淡「とりあえず私の妹になるってんなら認めてあげてもいいよ」
衣「コロモのほうが先に生まれたからコロモがお姉さんだぞ!」
淡「家族になったのは一番最後だから末っ子だよ!」
衣「お前の妹なんて死んでもごめんだ!」
淡「あんたさっきの言葉はどこにいったのよ!」
衣&淡「ぐぬぬ」
照「よかったね、スミレ」
菫「………ああ」グス
照「ふふ、スミレ可愛い」
菫「………からかうな、バカ」
照「ごめんごめん」
和「ええ、もちろんです」
淡「ふん、いきなりそんなこと言われても調子狂うじゃん」
淡「とりあえず私の妹になるってんなら認めてあげてもいいよ」
衣「コロモのほうが先に生まれたからコロモがお姉さんだぞ!」
淡「家族になったのは一番最後だから末っ子だよ!」
衣「お前の妹なんて死んでもごめんだ!」
淡「あんたさっきの言葉はどこにいったのよ!」
衣&淡「ぐぬぬ」
照「よかったね、スミレ」
菫「………ああ」グス
照「ふふ、スミレ可愛い」
菫「………からかうな、バカ」
照「ごめんごめん」
105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 17:03:31.93:sJCRKhvx0 (95/96)
淡「ねえスミレ―! ごはんまだー」
淡「朝からケンカしたらお腹すいちゃったよー」
菫「すぐ用意するからちょっと待ってろ」
菫「その前にコロモは風呂に入ってこい。昨日から体洗ってないんだろ」
衣「分かった! すぐ入ってくるぞ!」
菫「そんなに慌てなくていいぞ。みんな待ってるからさ」
衣「うん!」
トテトテ
咲(よかったね、コロモちゃん)
淡「ねえスミレ―! ごはんまだー」
淡「朝からケンカしたらお腹すいちゃったよー」
菫「すぐ用意するからちょっと待ってろ」
菫「その前にコロモは風呂に入ってこい。昨日から体洗ってないんだろ」
衣「分かった! すぐ入ってくるぞ!」
菫「そんなに慌てなくていいぞ。みんな待ってるからさ」
衣「うん!」
トテトテ
咲(よかったね、コロモちゃん)
106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 17:05:04.97:GF/yCNyso (2/3)
安心の衣咲
本編上にあるなら衣を救ったのは咲だろうし?
安心の衣咲
本編上にあるなら衣を救ったのは咲だろうし?
107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 17:05:30.66:sJCRKhvx0 (96/96)
今日はここまでにします。次はまた明日にでも
今日はここまでにします。次はまた明日にでも
108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 17:08:55.63:GF/yCNyso (3/3)
乙
人間関係が良い案配だ
乙
人間関係が良い案配だ
109:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 19:52:48.00:f2z6CXCDO (1/1)
乙!
乙!
110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/10(日) 23:11:01.30:e0Wvii2co (1/1)
凄い懐かしい作品やな
乙
凄い懐かしい作品やな
乙
111:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 08:33:00.18:KZGfrVGd0 (1/1)
おつ
ええな
名前の由来とか勘ぐってしまうわww
おつ
ええな
名前の由来とか勘ぐってしまうわww
112:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 11:52:24.23:TqXBLrnO0 (1/2)
二ヶ月ぶりに来たら良作あった
支援
二ヶ月ぶりに来たら良作あった
支援
113:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:30:57.54:GFxyl3LI0 (1/70)
~オーラスホーム~
淡「サキー!」
淡「準備できたー? そろそろ行くよー」
咲「うん! 今行くよアワイちゃん」
衣「二人ともどこへ行くのだ?」
淡「白糸園だよ」
咲「今日はアワイちゃんが働いてるところに連れて行ってもらうんだ」
衣「コ、コロモも一緒に行ってもいいか?」
淡「えっ、遊びにいくんじゃないんだよ?」
衣「そんなことは分かっている」
~オーラスホーム~
淡「サキー!」
淡「準備できたー? そろそろ行くよー」
咲「うん! 今行くよアワイちゃん」
衣「二人ともどこへ行くのだ?」
淡「白糸園だよ」
咲「今日はアワイちゃんが働いてるところに連れて行ってもらうんだ」
衣「コ、コロモも一緒に行ってもいいか?」
淡「えっ、遊びにいくんじゃないんだよ?」
衣「そんなことは分かっている」
114:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:31:37.24:GFxyl3LI0 (2/70)
衣「コロモもいつまでもフラフラしてるわけにもいかないし」
衣「仕事というものを体験してみたいのだ」
咲「コロモちゃん……」
咲「もちろんいいよね?」
淡「仕方ないなー」
淡「私が先輩としてビシバシしごいてあげるから覚悟しなさいよ!」
淡「ほら、まず先輩に対する挨拶は!?」
衣「ぐぬぬ……」
衣「よ、よろしくお願いします」
淡「ふふん、それでよし」
衣「コロモもいつまでもフラフラしてるわけにもいかないし」
衣「仕事というものを体験してみたいのだ」
咲「コロモちゃん……」
咲「もちろんいいよね?」
淡「仕方ないなー」
淡「私が先輩としてビシバシしごいてあげるから覚悟しなさいよ!」
淡「ほら、まず先輩に対する挨拶は!?」
衣「ぐぬぬ……」
衣「よ、よろしくお願いします」
淡「ふふん、それでよし」
115:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:32:37.99:GFxyl3LI0 (3/70)
~白糸園~
ガヤガヤ
ギャーギャーワーワー
淡「おっはよーみんな!」
淡「アワイ先生が来てあげたよー!」
子供A「あっ! アワイねえちゃんだー」
子供B「おはようアワアワ!」
子供C「知らない牌羽のおねえちゃんが二人もいる!」
咲「みんな元気だねー」
衣「うぅ……」タジタジ
咲「どうしたのコロモちゃん?」
衣「コロモはあまり小さい子供は得意ではないのだ」
衣「奴らは何を考えてるか分からんからな」
~白糸園~
ガヤガヤ
ギャーギャーワーワー
淡「おっはよーみんな!」
淡「アワイ先生が来てあげたよー!」
子供A「あっ! アワイねえちゃんだー」
子供B「おはようアワアワ!」
子供C「知らない牌羽のおねえちゃんが二人もいる!」
咲「みんな元気だねー」
衣「うぅ……」タジタジ
咲「どうしたのコロモちゃん?」
衣「コロモはあまり小さい子供は得意ではないのだ」
衣「奴らは何を考えてるか分からんからな」
116:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:33:08.86:GFxyl3LI0 (4/70)
淡「あんた何言ってんの? どうみても自分もお子様じゃん」
衣「うるさい! コロモは子供じゃない!」
淡「そんな口きいてると私の可愛い下僕たちが襲っちゃうぞ~」
ギャーギャーワーワー
衣「ぐっ……」
咲「あんまりいじめちゃだめだよアワイちゃん」
淡「あは、冗談だよ冗談」
淡(やばい! ちょー気分良い!)
淡「あんた何言ってんの? どうみても自分もお子様じゃん」
衣「うるさい! コロモは子供じゃない!」
淡「そんな口きいてると私の可愛い下僕たちが襲っちゃうぞ~」
ギャーギャーワーワー
衣「ぐっ……」
咲「あんまりいじめちゃだめだよアワイちゃん」
淡「あは、冗談だよ冗談」
淡(やばい! ちょー気分良い!)
117:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:34:28.71:GFxyl3LI0 (5/70)
園長「おはようアワイちゃん」
淡「おはようー園長せんせー!」
園長「お友達もよく来てくれたね」
咲「いえ、今日は一日よろしくお願いします」ペコ
衣「よ、よろしくお願いします」ペコ
園長「ふふ、そんなに固くならなくていいよ」
園長「子供たちの遊び相手になってくれるだけでいいんだから」
咲「園長さんはずっとここで子供たちの面倒を見てるんですか?」
園長「まあね、もうかれこれ40年になるかねぇ」
咲「へぇ、すごいですね」
園長「そんなことないさ。私があの子たちから元気をもらってるんだよ」
園長「おはようアワイちゃん」
淡「おはようー園長せんせー!」
園長「お友達もよく来てくれたね」
咲「いえ、今日は一日よろしくお願いします」ペコ
衣「よ、よろしくお願いします」ペコ
園長「ふふ、そんなに固くならなくていいよ」
園長「子供たちの遊び相手になってくれるだけでいいんだから」
咲「園長さんはずっとここで子供たちの面倒を見てるんですか?」
園長「まあね、もうかれこれ40年になるかねぇ」
咲「へぇ、すごいですね」
園長「そんなことないさ。私があの子たちから元気をもらってるんだよ」
118:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:35:04.22:GFxyl3LI0 (6/70)
園長「といっても最近は年で外で遊ぶのに付き合ってあげられなくなったからね」
園長「アワイちゃんみたいな良い子が来てくれてすっごく助かってるよ」
咲「アワイちゃんって本当にちゃんと役に立ってるんだ」
淡「へへーん」ドヤ
衣「今のは素直に喜んでいいのか」
子供A「ねーねー早く外で遊ぼうよ」グイグイ
淡「オッケー! 今行くよ!」
子供B「ほらほら早く早く」グイグイ
咲「うわわ、そんな引っ張らないで」
D子「お、おねえちゃんも遊んでくれるの……?」ギュッ
衣「あ、あぁ……」ドキッ
衣(こ、子供もなかなか可愛いではないか)
園長「といっても最近は年で外で遊ぶのに付き合ってあげられなくなったからね」
園長「アワイちゃんみたいな良い子が来てくれてすっごく助かってるよ」
咲「アワイちゃんって本当にちゃんと役に立ってるんだ」
淡「へへーん」ドヤ
衣「今のは素直に喜んでいいのか」
子供A「ねーねー早く外で遊ぼうよ」グイグイ
淡「オッケー! 今行くよ!」
子供B「ほらほら早く早く」グイグイ
咲「うわわ、そんな引っ張らないで」
D子「お、おねえちゃんも遊んでくれるの……?」ギュッ
衣「あ、あぁ……」ドキッ
衣(こ、子供もなかなか可愛いではないか)
119:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:35:55.95:GFxyl3LI0 (7/70)
子供B「おねえちゃん名前なんてーの?」
咲「私はサキだよ、みんなよろしくね」
子供C「サキは何で頭に角生やしてんの?」
咲「こ、これは角じゃないよ! れっきとした髪の毛だよ!」
子供E「これ知ってるー! 図書館にいる牌羽のおねえちゃんも同じの生やしてた!」
子供B「引っ張ったら抜けそう」グイー
咲「イタイイタイっ! 抜けないから! 私の髪で遊ばないで!」
淡「あはははははは」
淡「サキは人気者だね!」
咲「もう! アワイちゃんも笑ってないで助けてよ」
淡「ほらみんな、そのぐらいにしといてあげな」
淡「さもないとアレで攻撃しちゃうよー」
子供B「ひぃ! あれはいやだー」
咲「はぁ……はぁ……」
咲(助かったけど、アレって何だろう?)
子供B「おねえちゃん名前なんてーの?」
咲「私はサキだよ、みんなよろしくね」
子供C「サキは何で頭に角生やしてんの?」
咲「こ、これは角じゃないよ! れっきとした髪の毛だよ!」
子供E「これ知ってるー! 図書館にいる牌羽のおねえちゃんも同じの生やしてた!」
子供B「引っ張ったら抜けそう」グイー
咲「イタイイタイっ! 抜けないから! 私の髪で遊ばないで!」
淡「あはははははは」
淡「サキは人気者だね!」
咲「もう! アワイちゃんも笑ってないで助けてよ」
淡「ほらみんな、そのぐらいにしといてあげな」
淡「さもないとアレで攻撃しちゃうよー」
子供B「ひぃ! あれはいやだー」
咲「はぁ……はぁ……」
咲(助かったけど、アレって何だろう?)
120:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:36:28.50:GFxyl3LI0 (8/70)
淡「よーし、今日は何して遊ぶ?」
子供A「鬼ごっこやろうぜ鬼ごっこ!」
子供B「最初はいつもどおりアワイねえちゃんが鬼な!」
淡「いいよ! すぐ捕まえてやるから覚悟しな!」
子供たち「わー逃げろー」
ギャーギャー
淡「よーし、今日は何して遊ぶ?」
子供A「鬼ごっこやろうぜ鬼ごっこ!」
子供B「最初はいつもどおりアワイねえちゃんが鬼な!」
淡「いいよ! すぐ捕まえてやるから覚悟しな!」
子供たち「わー逃げろー」
ギャーギャー
121:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:37:21.20:GFxyl3LI0 (9/70)
衣「お前はみんなと一緒に遊ばないのか?」
D子「あっちは男の子ばっかりだし、わたし運動苦手だから……」モジモジ
衣「それじゃあいつも一人で遊んでるのか?」
D子「ううん。いつもはF子ちゃんと遊でるんだけど、今日はママがお家にいるからってお休みなの」シュン
衣「そうなのか」
衣「よし! 今日はコロモが一緒に遊んでやるからそんなメソメソするな」
D子「……うん」パァ
衣「普段はどんなことしてるのだ?」
D子「んーとね、お砂場できれいなお団子つくるの」
D子「F子ちゃんとどっちがきれいにできたかって見せ合いっこするんだ」
衣「ほうほう」
衣「お前はみんなと一緒に遊ばないのか?」
D子「あっちは男の子ばっかりだし、わたし運動苦手だから……」モジモジ
衣「それじゃあいつも一人で遊んでるのか?」
D子「ううん。いつもはF子ちゃんと遊でるんだけど、今日はママがお家にいるからってお休みなの」シュン
衣「そうなのか」
衣「よし! 今日はコロモが一緒に遊んでやるからそんなメソメソするな」
D子「……うん」パァ
衣「普段はどんなことしてるのだ?」
D子「んーとね、お砂場できれいなお団子つくるの」
D子「F子ちゃんとどっちがきれいにできたかって見せ合いっこするんだ」
衣「ほうほう」
122:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:38:09.34:GFxyl3LI0 (10/70)
D子「ほら、これが前につくったやつ」
泥団子「」ドヤ
衣「な、何と! こんなに綺麗に作れるものなのか!?」
D子「うん。ていねいに何回も優しくこすってあげればピカピカになるんだよ」
衣「コロモにも作り方を教えてくれないか!?」ワクワク
D子「いいよ」ニコ
D子「まずね、水で濡らした手でお砂場の土をこねこねするの」
衣「ふんふむ」
D子「大きくなったら形をまぁるくして、さらさらした砂を上からかけてあげればできあがりだよ」
衣「おおー」
D子「それを時間をかけて何度も何度もやればさっきみたいなのができるんだ」
衣「よし、コロモもさっそくやってみるぞ!」
D子「うん!」
D子「ほら、これが前につくったやつ」
泥団子「」ドヤ
衣「な、何と! こんなに綺麗に作れるものなのか!?」
D子「うん。ていねいに何回も優しくこすってあげればピカピカになるんだよ」
衣「コロモにも作り方を教えてくれないか!?」ワクワク
D子「いいよ」ニコ
D子「まずね、水で濡らした手でお砂場の土をこねこねするの」
衣「ふんふむ」
D子「大きくなったら形をまぁるくして、さらさらした砂を上からかけてあげればできあがりだよ」
衣「おおー」
D子「それを時間をかけて何度も何度もやればさっきみたいなのができるんだ」
衣「よし、コロモもさっそくやってみるぞ!」
D子「うん!」
123:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:39:15.49:GFxyl3LI0 (11/70)
衣「んー……」コネコネ
D子「……」
衣「段々コツが掴めてきたぞ」コネコネ
D子「あ、あの……」
衣「何だ?」
D子「おねえちゃんの髪ってすごくきれいだね」
衣「そうか?」
D子「長くて金色でキラキラしてて、すごく憧れる」
D子「ほら、私って癖っ毛だからあんまり可愛くないもん」
衣「んー……」コネコネ
D子「……」
衣「段々コツが掴めてきたぞ」コネコネ
D子「あ、あの……」
衣「何だ?」
D子「おねえちゃんの髪ってすごくきれいだね」
衣「そうか?」
D子「長くて金色でキラキラしてて、すごく憧れる」
D子「ほら、私って癖っ毛だからあんまり可愛くないもん」
124:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:39:45.31:GFxyl3LI0 (12/70)
衣「そんなことないぞ」
衣「優しいD子の雰囲気にぴったりでコロモは大好きだ!」
D子「そ、そうかな//」
衣「うむ! コロモが言うのだから間違いない!」
D子「あ、ありがとうおねえちゃん……//」カァー
衣「できた!」
D子「わー、おねえちゃん上手」
衣「砂場で遊ぶのもなかなか楽しいものだな」
衣「そうだ! せっかくならもっとスケールの大きいことをやらないか?」
D子「え? どうゆうこと?」
衣「まあまあ黙って見ていろ」
衣「そんなことないぞ」
衣「優しいD子の雰囲気にぴったりでコロモは大好きだ!」
D子「そ、そうかな//」
衣「うむ! コロモが言うのだから間違いない!」
D子「あ、ありがとうおねえちゃん……//」カァー
衣「できた!」
D子「わー、おねえちゃん上手」
衣「砂場で遊ぶのもなかなか楽しいものだな」
衣「そうだ! せっかくならもっとスケールの大きいことをやらないか?」
D子「え? どうゆうこと?」
衣「まあまあ黙って見ていろ」
125:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:40:33.72:GFxyl3LI0 (13/70)
咲「ふあ~~疲れた~~~」バタン
子供A「サキはだらしないなー」
子供B「そんなんじゃここでは生きていけないぞ」
咲「はぁ……はぁ……みんなが元気すぎるんだよ……」
淡「私が鍛えてやった戦士たちだからね」フフン
咲「そういえば……はぁ……コロモちゃんたちはどうしてるのかな?」
子供C「ちっこい牌羽のねえちゃんならD子といっしょに向こうの砂場で遊んでるぞ」
子供E「おお、 何やってんだあれ!?」
咲「ふあ~~疲れた~~~」バタン
子供A「サキはだらしないなー」
子供B「そんなんじゃここでは生きていけないぞ」
咲「はぁ……はぁ……みんなが元気すぎるんだよ……」
淡「私が鍛えてやった戦士たちだからね」フフン
咲「そういえば……はぁ……コロモちゃんたちはどうしてるのかな?」
子供C「ちっこい牌羽のねえちゃんならD子といっしょに向こうの砂場で遊んでるぞ」
子供E「おお、 何やってんだあれ!?」
126:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:41:23.01:GFxyl3LI0 (14/70)
砂の山「」デデーン
子供A「すげえ!」
子供B「うわーおっきい!」
衣「どうだ! お前たちと同じぐらいの高さだぞ!」
子供C「D子もこれつくったのか!?」
D子「う、うん……」モジモジ
子供A「なあ、俺たちもいっしょにつくっていいか!?」
D子「えっ」
子供B「俺もやりてー!」
D子「ど、どうしようおねえちゃん……」ビクビク
衣「協力してやればもっと大きいのがつくれるし、きっともっと楽しいぞ」
衣「みんなと一緒にやろうではないか」
D子「……うん!」
D子「みんな、よろしくね」
ギャーギャーワーワー
砂の山「」デデーン
子供A「すげえ!」
子供B「うわーおっきい!」
衣「どうだ! お前たちと同じぐらいの高さだぞ!」
子供C「D子もこれつくったのか!?」
D子「う、うん……」モジモジ
子供A「なあ、俺たちもいっしょにつくっていいか!?」
D子「えっ」
子供B「俺もやりてー!」
D子「ど、どうしようおねえちゃん……」ビクビク
衣「協力してやればもっと大きいのがつくれるし、きっともっと楽しいぞ」
衣「みんなと一緒にやろうではないか」
D子「……うん!」
D子「みんな、よろしくね」
ギャーギャーワーワー
127:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:42:41.37:GFxyl3LI0 (15/70)
淡「へー、やるじゃんコロモ」
衣「こ、これぐらいコロモにとっては何でもないのだ」プイ
咲「うふふ」
子供A「うわああああああああ」
ドシーン!
子供B「あー! Aが倒れて山を崩したぞ!」
子供A「ご、ごめんD子」
D子「ううん、気にしないで。またみんなでつくればいいから」
子供C「処刑の時間だあああああああああああ!」
子供E「アワイねえちゃんのアレが出るぞおおおおおおおおお!」
咲「えっ? みんな何を言って……」
淡「へー、やるじゃんコロモ」
衣「こ、これぐらいコロモにとっては何でもないのだ」プイ
咲「うふふ」
子供A「うわああああああああ」
ドシーン!
子供B「あー! Aが倒れて山を崩したぞ!」
子供A「ご、ごめんD子」
D子「ううん、気にしないで。またみんなでつくればいいから」
子供C「処刑の時間だあああああああああああ!」
子供E「アワイねえちゃんのアレが出るぞおおおおおおおおお!」
咲「えっ? みんな何を言って……」
128:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:43:31.83:GFxyl3LI0 (16/70)
淡「」スー
淡「ハッ!」ブワッ
咲「うわっ! 何あれ!?」
咲「髪の毛が生きてるみたいに動いてる……」
子供E「出たあああああああああああああ!」
子供B「ミミズみたいで気持ちわりいいいいいいい」
子供C「いけええええええおねえちゃん!」
淡「悪い子はお仕置きだよーーー!」ウニョウニョ
子供A「ひええええええええごめんなさあああああああい」
淡「そりゃ!」ゴォッ
子供A「うわっはっはhっはhっははっはっはh」ゴロゴロ
咲「髪の毛でくすぐってる……」
咲「アワイちゃんあんな特技もってたんだ……」
淡「」スー
淡「ハッ!」ブワッ
咲「うわっ! 何あれ!?」
咲「髪の毛が生きてるみたいに動いてる……」
子供E「出たあああああああああああああ!」
子供B「ミミズみたいで気持ちわりいいいいいいい」
子供C「いけええええええおねえちゃん!」
淡「悪い子はお仕置きだよーーー!」ウニョウニョ
子供A「ひええええええええごめんなさあああああああい」
淡「そりゃ!」ゴォッ
子供A「うわっはっはhっはhっははっはっはh」ゴロゴロ
咲「髪の毛でくすぐってる……」
咲「アワイちゃんあんな特技もってたんだ……」
129:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:44:46.20:GFxyl3LI0 (17/70)
咲「コロモちゃんは知ってた?」
衣「あぁ、何度か見たことある」
衣「ちなみにコロモも似たようなことできるぞ」
咲「え?」
衣「」スー
衣「ふん!」カッ
子供B「うわー! ちっこいおねえちゃんが光った!」
子供C「ほんとだ! 蛍みたいできれー!」
D子「お、おねえちゃん……」ビクビク
咲「何で二人ともそんなことできるの!?」
子供E「牌羽のおねえちゃんってみんなあんなことできんの?」
子供B「ねーねーサキも何かやってよ!」
咲「わ、私は無理だよー」ブンブン
咲「コロモちゃんは知ってた?」
衣「あぁ、何度か見たことある」
衣「ちなみにコロモも似たようなことできるぞ」
咲「え?」
衣「」スー
衣「ふん!」カッ
子供B「うわー! ちっこいおねえちゃんが光った!」
子供C「ほんとだ! 蛍みたいできれー!」
D子「お、おねえちゃん……」ビクビク
咲「何で二人ともそんなことできるの!?」
子供E「牌羽のおねえちゃんってみんなあんなことできんの?」
子供B「ねーねーサキも何かやってよ!」
咲「わ、私は無理だよー」ブンブン
130:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:45:31.39:GFxyl3LI0 (18/70)
淡「サキもやってみなよ!」
淡「目の前の敵を全力で倒すイメージでやるんだよ!」
咲「急にそんなこと言われても……」
衣「己の内なる声に耳を傾けるのだ、サキ」
咲「じゃ、じゃあ一回だけやってみるね」
咲「」スー
咲「えい!」ポン
子供C「うわっ! いきなり地面から花が咲いたっ!」
子供E「地味だけどすげええええ」
子供B「牌羽のおねえちゃんってみんなすごいんだな!」
咲「あはは……」
咲(何この力……)
咲(私たちってほんとに普通の人間だったの……?)
淡「サキもやってみなよ!」
淡「目の前の敵を全力で倒すイメージでやるんだよ!」
咲「急にそんなこと言われても……」
衣「己の内なる声に耳を傾けるのだ、サキ」
咲「じゃ、じゃあ一回だけやってみるね」
咲「」スー
咲「えい!」ポン
子供C「うわっ! いきなり地面から花が咲いたっ!」
子供E「地味だけどすげええええ」
子供B「牌羽のおねえちゃんってみんなすごいんだな!」
咲「あはは……」
咲(何この力……)
咲(私たちってほんとに普通の人間だったの……?)
131:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:46:44.08:GFxyl3LI0 (19/70)
菫「よし。今日の夕食に必要なものはこれで揃ったな」
菫「そういえばこの辺は白糸園の近くだったか」
菫「今日は確かサキがアワイについて行ってるはずだしちょっと様子を覗いてみるか」
スタスタ
スタスタ
菫「相変わらず賑やかだな、ここまで声が響いてくる」
菫「ん? あれは?」
菫「コロモも一緒だったのか」
菫「……ふむ、仲良くやれてるみたいじゃないか」
菫「よかったな、コロモ」
菫「……」ジワ
菫「よし。今日の夕食に必要なものはこれで揃ったな」
菫「そういえばこの辺は白糸園の近くだったか」
菫「今日は確かサキがアワイについて行ってるはずだしちょっと様子を覗いてみるか」
スタスタ
スタスタ
菫「相変わらず賑やかだな、ここまで声が響いてくる」
菫「ん? あれは?」
菫「コロモも一緒だったのか」
菫「……ふむ、仲良くやれてるみたいじゃないか」
菫「よかったな、コロモ」
菫「……」ジワ
132:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:47:17.12:GFxyl3LI0 (20/70)
菫「いかんいかん、最近はどうも涙もろくて困るな」
菫「これじゃサキの言うように本当にお母さんみたいじゃないか」
菫「それにしても」
ギャーギャーワーワー
アハハハハ
菫「随分とまあ楽しそうな仕事だなまったく」
菫「三人ともお腹すかせて帰ってくるだろうし、特別に今日はもう一品おかず増やしといてやるか」
菫「いかんいかん、最近はどうも涙もろくて困るな」
菫「これじゃサキの言うように本当にお母さんみたいじゃないか」
菫「それにしても」
ギャーギャーワーワー
アハハハハ
菫「随分とまあ楽しそうな仕事だなまったく」
菫「三人ともお腹すかせて帰ってくるだろうし、特別に今日はもう一品おかず増やしといてやるか」
133:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:47:57.81:GFxyl3LI0 (21/70)
園長「今日は本当にありがとうね」
咲「いえ、こちらこそお世話になりました」ペコ
園長「あの子たちの相手は大変だったでしょ」
咲「それはまあ……普段運動しないもので……」
園長「体動かしたくなったらまたいつでも来てちょうだい」
咲「はい、ありがとうございます」
子供A「また遊びにこいよサキ!」
子供B「今度は砂場でお城つくろうよ!」
咲「うん、また来るからみんな元気でね」ニコ
園長「今日は本当にありがとうね」
咲「いえ、こちらこそお世話になりました」ペコ
園長「あの子たちの相手は大変だったでしょ」
咲「それはまあ……普段運動しないもので……」
園長「体動かしたくなったらまたいつでも来てちょうだい」
咲「はい、ありがとうございます」
子供A「また遊びにこいよサキ!」
子供B「今度は砂場でお城つくろうよ!」
咲「うん、また来るからみんな元気でね」ニコ
134:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:48:27.09:GFxyl3LI0 (22/70)
D子「おねえちゃんもまた来てくれるの……?」ギュッ
衣「もちろんだ!」
衣「またお前に会いに遊びに来るぞ」
衣「コロモたちは友達だからな!」
D子「うん、待ってる!」パァ
D子「おねえちゃんもまた来てくれるの……?」ギュッ
衣「もちろんだ!」
衣「またお前に会いに遊びに来るぞ」
衣「コロモたちは友達だからな!」
D子「うん、待ってる!」パァ
135:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:49:20.00:GFxyl3LI0 (23/70)
~帰り道~
咲「すっかり日が暮れちゃったね」
淡「うーん、今日はいつもの100倍遊んだ気分だよ」
咲「疲れたけど楽しかったね」
咲「アワイちゃんも立派にお仕事してるってこともよく分かったし」
衣「適材適所というやつだな」
衣「す、少しだけ見直したぞ、ほんの少しだけな」
淡「もー、素直じゃないなーコロモは」ナデナデ
衣「う、うるさい! コロモを撫でるなー!」
咲「うふふ」
~帰り道~
咲「すっかり日が暮れちゃったね」
淡「うーん、今日はいつもの100倍遊んだ気分だよ」
咲「疲れたけど楽しかったね」
咲「アワイちゃんも立派にお仕事してるってこともよく分かったし」
衣「適材適所というやつだな」
衣「す、少しだけ見直したぞ、ほんの少しだけな」
淡「もー、素直じゃないなーコロモは」ナデナデ
衣「う、うるさい! コロモを撫でるなー!」
咲「うふふ」
136:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:50:02.18:GFxyl3LI0 (24/70)
衣「しかしもうお腹がぺこぺこだ」
咲「オーラスホームに帰ればスミレさんがごはん用意して待っててくれてるよ」
淡「働いたあとのスミレのごはんってすっごくおいしく感じるんだよー!」
衣「ほお、それは楽しみだな」
淡「それにね、私がお仕事の日はいつもよりちょっとだけご飯多めに盛ってくれるんだ」
咲「へぇ、スミレさんって優しいね」
淡「まぁ、普段口うるさいのと合わせてチャラってとこだけどね」
咲「ふふ、アワイちゃんも素直じゃないなー」
淡「そ、そんなことないよ!」
「「ただいまー!」」
衣「しかしもうお腹がぺこぺこだ」
咲「オーラスホームに帰ればスミレさんがごはん用意して待っててくれてるよ」
淡「働いたあとのスミレのごはんってすっごくおいしく感じるんだよー!」
衣「ほお、それは楽しみだな」
淡「それにね、私がお仕事の日はいつもよりちょっとだけご飯多めに盛ってくれるんだ」
咲「へぇ、スミレさんって優しいね」
淡「まぁ、普段口うるさいのと合わせてチャラってとこだけどね」
咲「ふふ、アワイちゃんも素直じゃないなー」
淡「そ、そんなことないよ!」
「「ただいまー!」」
137:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 12:51:20.94:GFxyl3LI0 (25/70)
ちょっと休憩します。次で前半の終りまで一気に投下する予定。
ちょっと休憩します。次で前半の終りまで一気に投下する予定。
138:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 13:06:02.76:Jh0AMaaYo (1/1)
咲さんが何だか酷い目にww
だか面白いから良い!
咲さんが何だか酷い目にww
だか面白いから良い!
139:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 13:16:50.56:QDy2sc9Io (1/1)
元ネタを教えてくれ
元ネタを教えてくれ
140:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 13:20:28.32:18O2pbn3o (1/2)
映画化決定
映画化決定
141:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 14:46:39.51:TqXBLrnO0 (2/2)
灰羽連盟っていうアニメが元ネタだろ
灰羽連盟っていうアニメが元ネタだろ
142:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:06:15.95:GFxyl3LI0 (26/70)
すみません投下する前に一曲だけ紹介させて下さい。
元ネタの「灰羽連盟」の本編で使われてるBGMです。
これを書いてる間何百回もループして聴き続けた曲です。
綺麗で切ないとても良い曲なので、原作やこのssの世界観をイメージする手助けになればと思います。
それでは残りもよろしくお願いします。
すみません投下する前に一曲だけ紹介させて下さい。
元ネタの「灰羽連盟」の本編で使われてるBGMです。
これを書いてる間何百回もループして聴き続けた曲です。
綺麗で切ないとても良い曲なので、原作やこのssの世界観をイメージする手助けになればと思います。
それでは残りもよろしくお願いします。
143:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:07:35.49:GFxyl3LI0 (27/70)
~オーラスホーム~
衣「ふぁ~、おはようスミレ」
菫「おはよう。といってももう昼だがな」
衣「すまない。できるだけ朝もみんなと食事をしようとは思うのだが朝はどうにも苦手でな」
菫「まあいいさ。昨日はだいぶ疲れてたみたいだし」
衣「うむ、昨日は初めて一人で白糸園に行ってコロモも立派に働いてきたのだ」
菫「ああ、偉い偉い」ナデナデ
衣「ふえぇ……コロモを子供扱いするな~」
菫「ふふ、悪かったな」
菫「でもよかったじゃないか、仕事が見つかりそうで」
衣「アワイの後輩になるというが何とも屈辱ではあるが」
菫「まあまあ」
~オーラスホーム~
衣「ふぁ~、おはようスミレ」
菫「おはよう。といってももう昼だがな」
衣「すまない。できるだけ朝もみんなと食事をしようとは思うのだが朝はどうにも苦手でな」
菫「まあいいさ。昨日はだいぶ疲れてたみたいだし」
衣「うむ、昨日は初めて一人で白糸園に行ってコロモも立派に働いてきたのだ」
菫「ああ、偉い偉い」ナデナデ
衣「ふえぇ……コロモを子供扱いするな~」
菫「ふふ、悪かったな」
菫「でもよかったじゃないか、仕事が見つかりそうで」
衣「アワイの後輩になるというが何とも屈辱ではあるが」
菫「まあまあ」
144:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:08:46.61:GFxyl3LI0 (28/70)
衣「だが、もしよければ子供たちに授業をしてみないかと昨日園長に誘われたのだ」
衣「コロモは難しい言葉や諺をよく知ってるから、それを子供たちに教えてやってくれないかということらしい」
菫「ほお、それはすごいじゃないか」
衣「ふふん、そうだろう」ドヤッ
衣「これでアワイの奴より偉くなってあいつを見下してやるのだ」
菫「子供たちの前で醜い罵り合いをするようなマネはよしてくれよ。教育に悪い」
衣「心配するな。コロモはそんな子供ではない」
菫「どうだか」
衣「だが、もしよければ子供たちに授業をしてみないかと昨日園長に誘われたのだ」
衣「コロモは難しい言葉や諺をよく知ってるから、それを子供たちに教えてやってくれないかということらしい」
菫「ほお、それはすごいじゃないか」
衣「ふふん、そうだろう」ドヤッ
衣「これでアワイの奴より偉くなってあいつを見下してやるのだ」
菫「子供たちの前で醜い罵り合いをするようなマネはよしてくれよ。教育に悪い」
衣「心配するな。コロモはそんな子供ではない」
菫「どうだか」
145:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:09:18.44:GFxyl3LI0 (29/70)
衣「今日はみんないないのか?」
菫「ああ。三人は仕事でサキはお前が起きないから一人で街を回ってくると言っていた」
衣「ふむ、そうか」
衣「ではコロモも久しぶりに一人でぶらぶらしてこよう」
菫「夕食までには帰ってこいよ」
衣「分かってる!」
菫「あと、あまり食べ物をほいほい貰っちゃだめだぞ」
衣「もちろんだ! みんなで食べるごはんが一番おいしいからな!」
菫「ふふ、いってらっしゃい」ニコッ
衣「ああ、行ってくる!」
衣「今日はみんないないのか?」
菫「ああ。三人は仕事でサキはお前が起きないから一人で街を回ってくると言っていた」
衣「ふむ、そうか」
衣「ではコロモも久しぶりに一人でぶらぶらしてこよう」
菫「夕食までには帰ってこいよ」
衣「分かってる!」
菫「あと、あまり食べ物をほいほい貰っちゃだめだぞ」
衣「もちろんだ! みんなで食べるごはんが一番おいしいからな!」
菫「ふふ、いってらっしゃい」ニコッ
衣「ああ、行ってくる!」
146:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:10:07.05:GFxyl3LI0 (30/70)
衣「ふんふふーん♪」
スタスタ
衣「……」
不思議なものだ。
今まであれほどくすんで映っていた世界が、今では丸っきり違ってみえる。
壁に閉ざされたこの狭い世界のせいだと思っていた。
コロモが孤独で誰とも分かり合えないのは、のうのうと生きている周りの者たちのせいにしていた。
だが、そうではなかった。
コロモが一人だったのは自分のせいだった。コロモの心を閉じ込めていたのは自分自身だった。
本当の壁はずっとこの心の中にあったのだ。
それを、サキたちは壊してくれた。
もう壁はない――
天に地に希望があふれているみたいだ。
衣「ふんふふーん♪」
スタスタ
衣「……」
不思議なものだ。
今まであれほどくすんで映っていた世界が、今では丸っきり違ってみえる。
壁に閉ざされたこの狭い世界のせいだと思っていた。
コロモが孤独で誰とも分かり合えないのは、のうのうと生きている周りの者たちのせいにしていた。
だが、そうではなかった。
コロモが一人だったのは自分のせいだった。コロモの心を閉じ込めていたのは自分自身だった。
本当の壁はずっとこの心の中にあったのだ。
それを、サキたちは壊してくれた。
もう壁はない――
天に地に希望があふれているみたいだ。
147:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:10:50.22:18O2pbn3o (2/2)
>>142
ちょっと…涙がとまらなくなったんだけど…
よしてくれないかな…
>>142
ちょっと…涙がとまらなくなったんだけど…
よしてくれないかな…
148:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:11:13.39:GFxyl3LI0 (31/70)
カラス「カァー、カァー」
衣「ひぃ!」
カラス「カァー、カァー」
衣「しっし、あっち行け!」
どうもあれ以来カラスの声を聞くと過剰に反応してしまって困る。
こんなことではアワイの奴に馬鹿にされてしまうではないか。
……だが、それも無理もないのだ。
結果的に上手く収まったからよかったものの、取り返しのつかないことになるところだった。
カラスは賢い鳥だとよく言うが、コロモに突然襲い掛かってくるなど知性の欠片も無いではないか。
カラス「カァー、カァー」
衣「ひぃ!」
カラス「カァー、カァー」
衣「しっし、あっち行け!」
どうもあれ以来カラスの声を聞くと過剰に反応してしまって困る。
こんなことではアワイの奴に馬鹿にされてしまうではないか。
……だが、それも無理もないのだ。
結果的に上手く収まったからよかったものの、取り返しのつかないことになるところだった。
カラスは賢い鳥だとよく言うが、コロモに突然襲い掛かってくるなど知性の欠片も無いではないか。
149:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:12:17.03:GFxyl3LI0 (32/70)
カラス「カァー、カァー」
衣「……」
だが、もしあの事件がなければ今頃コロモはどうなっていただろう。
もしかすると今でも一人ぼっちのままだったかもしれない。
……いや、間違いなくそうだったであろう。
あの事件がきっかけでコロモが皆と仲良くなれたのは紛れもない事実なのだ。
カラス「カァー、カァー」
衣「……」
だが、もしあの事件がなければ今頃コロモはどうなっていただろう。
もしかすると今でも一人ぼっちのままだったかもしれない。
……いや、間違いなくそうだったであろう。
あの事件がきっかけでコロモが皆と仲良くなれたのは紛れもない事実なのだ。
150:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:13:53.66:GFxyl3LI0 (33/70)
カラス「……」ジー
衣「……」
何を馬鹿げたことをコロモは考えているのだ。
自分を襲ったカラスに恩を感じるなど荒唐無稽にもほどがある。
………。
だが、その想いがどうしても心から離れぬのは何故なのだ。
何かを縋りたくなるようなこの感情は何なのだ。
鳥。
壁を越える唯一の存在。
何かを忘れているという感覚が消えたわけではない。
コロモには帰らなければならない場所があるのではないかという気持ちもまだこの胸に残っている。
………しかし、もうやめるのだ。
コロモにも居場所ができたじゃないか。
あの者たちとこの世界で生きていくことにしたではないか。
それ以上、何を望むというのだ………。
カラス「……」ジー
衣「……」
何を馬鹿げたことをコロモは考えているのだ。
自分を襲ったカラスに恩を感じるなど荒唐無稽にもほどがある。
………。
だが、その想いがどうしても心から離れぬのは何故なのだ。
何かを縋りたくなるようなこの感情は何なのだ。
鳥。
壁を越える唯一の存在。
何かを忘れているという感覚が消えたわけではない。
コロモには帰らなければならない場所があるのではないかという気持ちもまだこの胸に残っている。
………しかし、もうやめるのだ。
コロモにも居場所ができたじゃないか。
あの者たちとこの世界で生きていくことにしたではないか。
それ以上、何を望むというのだ………。
151:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:15:01.37:GFxyl3LI0 (34/70)
衣「……」ペコ
カラス「……」
一応の礼だけはしておいてやろう。
だからもう………。
カラス「カァ!!!」
衣「!」バッ
カラス「……」ジー
衣「……」
名を呼ばれた気がした。
『行かないで』と、鳥が叫んだような気がした。
繭の中で見た夢を思い出す。
暗闇の中でコロモの名を呼び続けていた声が重なる。
衣「……」ペコ
カラス「……」
一応の礼だけはしておいてやろう。
だからもう………。
カラス「カァ!!!」
衣「!」バッ
カラス「……」ジー
衣「……」
名を呼ばれた気がした。
『行かないで』と、鳥が叫んだような気がした。
繭の中で見た夢を思い出す。
暗闇の中でコロモの名を呼び続けていた声が重なる。
152:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:16:22.10:GFxyl3LI0 (35/70)
カラス「……」
衣「お前はコロモのことを知っているのか………?」
衣「コロモにあの人の声を届けにきてくれたのか………?」
カラス「……」
いつの間にか近くに降り立っていたカラスと目と目が合う。
カラスの眼をしかと見つめたことなどなかったが、カラスとはこれほど美しい眼をしていただろうか。
凛とした目つき、透きとおるような金色の瞳、その奥にのぞく優しい眼差し。
その眼に吸い込まれそうになりながら確信する。
この眼差しはコロモにだけ向けられたものなのだと。
コロモはこの者を知っているのだと………
カラス「……」
衣「お前はコロモのことを知っているのか………?」
衣「コロモにあの人の声を届けにきてくれたのか………?」
カラス「……」
いつの間にか近くに降り立っていたカラスと目と目が合う。
カラスの眼をしかと見つめたことなどなかったが、カラスとはこれほど美しい眼をしていただろうか。
凛とした目つき、透きとおるような金色の瞳、その奥にのぞく優しい眼差し。
その眼に吸い込まれそうになりながら確信する。
この眼差しはコロモにだけ向けられたものなのだと。
コロモはこの者を知っているのだと………
153:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:17:48.72:GFxyl3LI0 (36/70)
カラス「カァー、カァー」
バサッ バサッ
誘うようにゆっくりと飛び立ったカラスの後を追っていく。
引き返すべきなのかもしれない。
この先にあるのは知らないままのほうがいいことなのかもしれない。
それでも歩みを止めようとは思わなかった。
どうしてもこの者の気持ちに応えてやりたかった。
衣「ここは……西の森……」
カラス「カァー、カァー、」
カラス「カァ」
衣「おい待て、どこへ行く!」
衣「確かこっちの方向に……」
カラス「カァー、カァー」
バサッ バサッ
誘うようにゆっくりと飛び立ったカラスの後を追っていく。
引き返すべきなのかもしれない。
この先にあるのは知らないままのほうがいいことなのかもしれない。
それでも歩みを止めようとは思わなかった。
どうしてもこの者の気持ちに応えてやりたかった。
衣「ここは……西の森……」
カラス「カァー、カァー、」
カラス「カァ」
衣「おい待て、どこへ行く!」
衣「確かこっちの方向に……」
154:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:18:54.73:GFxyl3LI0 (37/70)
普段ほとんど立ち入ることのない森の中を掻き分けて進む。
森について知ってることといえば、その奥に牌羽にとって神聖とされる小屋があることぐらいだ。
昼でも薄暗い森の中は静寂と少し不気味な雰囲気に包まれいた。
衣「はぁ……はぁ……」
好き放題に生い茂った雑草や小枝がチクチクと手足を刺した。
表出した根や凸凹した足場に何度も足を取られては転び、膝からは血が滴り落ちていた。
それでも、この心にはもう迷いも恐れもなかった。
衣「はぁ……はぁ……!」
衣「これは……井戸……?」
使われなくなってからどれほどの時が過ぎたのか、その井戸はすっかり廃れていた。
中を覗き込んで見ると当然水は枯れ果てていて、壁には下まで降りられるように鉄でできた足場が打ちつけられていた。
試しに石を落してみるとあまり間を置くことなくコツンと渇いた音が返ってきた。それほど深くはないらしい。
普段ほとんど立ち入ることのない森の中を掻き分けて進む。
森について知ってることといえば、その奥に牌羽にとって神聖とされる小屋があることぐらいだ。
昼でも薄暗い森の中は静寂と少し不気味な雰囲気に包まれいた。
衣「はぁ……はぁ……」
好き放題に生い茂った雑草や小枝がチクチクと手足を刺した。
表出した根や凸凹した足場に何度も足を取られては転び、膝からは血が滴り落ちていた。
それでも、この心にはもう迷いも恐れもなかった。
衣「はぁ……はぁ……!」
衣「これは……井戸……?」
使われなくなってからどれほどの時が過ぎたのか、その井戸はすっかり廃れていた。
中を覗き込んで見ると当然水は枯れ果てていて、壁には下まで降りられるように鉄でできた足場が打ちつけられていた。
試しに石を落してみるとあまり間を置くことなくコツンと渇いた音が返ってきた。それほど深くはないらしい。
155:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:19:51.20:GFxyl3LI0 (38/70)
カラス「カァー、カァー」
カラス「カァー、カァー」
上を見上げると、木々の隙間から数羽のカラスがクルクルと空を舞っているのが見えた。
追いかけてきたカラスとは違うようだ。
再び井戸の底を覗き込む。
意を決して、そろりそろりと底に向かって降り始めた。
衣「……」ゴクリ
底に近づくほど空気が冷えていくのを感じる。
さっきまで全身にかいていた汗はすっかり引いていた。
カラス「カァー、カァー」
カラス「カァー、カァー」
上を見上げると、木々の隙間から数羽のカラスがクルクルと空を舞っているのが見えた。
追いかけてきたカラスとは違うようだ。
再び井戸の底を覗き込む。
意を決して、そろりそろりと底に向かって降り始めた。
衣「……」ゴクリ
底に近づくほど空気が冷えていくのを感じる。
さっきまで全身にかいていた汗はすっかり引いていた。
156:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:20:55.85:GFxyl3LI0 (39/70)
衣「……もうすぐだ」
衣「はぁ……はぁ……」
バキッ
衣「うわ!!」
ドシーン
衣「いたた……」
衣「足場が崩れてしまったのか……」
衣「でも一段折れたぐらいなら簡単に戻れる」ガシ
ボロッ
衣「えっ?」
上のほうはともかく、過去に長い間水に浸かっていた下の足場はすっかり錆びて脆くなっていた。
掴めばすぐに崩れてしまい、とても人一人の体重を支えられる状態ではなかった。
衣「ど、どうしよう……」グス
衣「これじゃあ帰れない……」
衣「うっ……ぅぐ……」
衣「うわあああああああああああん」ポロポロ
衣「……もうすぐだ」
衣「はぁ……はぁ……」
バキッ
衣「うわ!!」
ドシーン
衣「いたた……」
衣「足場が崩れてしまったのか……」
衣「でも一段折れたぐらいなら簡単に戻れる」ガシ
ボロッ
衣「えっ?」
上のほうはともかく、過去に長い間水に浸かっていた下の足場はすっかり錆びて脆くなっていた。
掴めばすぐに崩れてしまい、とても人一人の体重を支えられる状態ではなかった。
衣「ど、どうしよう……」グス
衣「これじゃあ帰れない……」
衣「うっ……ぅぐ……」
衣「うわあああああああああああん」ポロポロ
157:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:21:55.99:GFxyl3LI0 (40/70)
~オーラスホーム~
咲「ただいまー!」
菫「おかえり、サキ」
咲「色んなところ回ってたら遅くなっちゃいました」
菫「まだみんな帰ってきてないから大丈夫だよ」
菫「ところで、コロモは見かけなかったか?」
咲「コロモちゃん?」
咲「さあ、私はずっと一人でしたけど」
菫「昼ごろに散歩に行ったきり帰ってこなくてな。街のほうには行ってないのかな」
咲「もしあれでしたら私が探してきましょうか?」
菫「いいよ。もう少しすれば戻ってくるだろ」
咲「そうですね」
――――
―――
――
~オーラスホーム~
咲「ただいまー!」
菫「おかえり、サキ」
咲「色んなところ回ってたら遅くなっちゃいました」
菫「まだみんな帰ってきてないから大丈夫だよ」
菫「ところで、コロモは見かけなかったか?」
咲「コロモちゃん?」
咲「さあ、私はずっと一人でしたけど」
菫「昼ごろに散歩に行ったきり帰ってこなくてな。街のほうには行ってないのかな」
咲「もしあれでしたら私が探してきましょうか?」
菫「いいよ。もう少しすれば戻ってくるだろ」
咲「そうですね」
――――
―――
――
158:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:22:58.23:GFxyl3LI0 (41/70)
~井戸~
衣「………」スン
衣「どうしよう、このままではみんなに心配をかけてしまう」
衣「コロモの力ではとてもよじ登れそうにもないし、こんな所にまで誰も探しには来ないだろう」
衣「うぅ……」
衣「……ん? あれは何だ……?」
暗くて今まで気付かなかったが、隅のほうに何か白いものが転がっていた。
井戸の底に取り残された不安ですっかり忘れていたが、そういえばコロモはカラスの後を追ってここまでやって来たのだった。
~井戸~
衣「………」スン
衣「どうしよう、このままではみんなに心配をかけてしまう」
衣「コロモの力ではとてもよじ登れそうにもないし、こんな所にまで誰も探しには来ないだろう」
衣「うぅ……」
衣「……ん? あれは何だ……?」
暗くて今まで気付かなかったが、隅のほうに何か白いものが転がっていた。
井戸の底に取り残された不安ですっかり忘れていたが、そういえばコロモはカラスの後を追ってここまでやって来たのだった。
159:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:24:14.81:GFxyl3LI0 (42/70)
衣「……」ソォー
衣「うわっ!!」
カランカラン
衣「はぁ……はぁ……」
衣「これは……鳥の、骨か……?」
衣「どうしてこんな所に……」
衣「……」
衣「カラスよ、お前がコロモに見せたかったのはこれなのか……?」
衣「それとも、これがお前自身なのか……?」
もう一度、恐る恐るその骨に手を伸ばす。
すっかり朽ちて脆くなったその形を崩さぬよう、そっと頭の部分を持ち上げた。
そして、できるだけ優しくそれを胸に抱きしめて目を瞑る。
衣「……」ソォー
衣「うわっ!!」
カランカラン
衣「はぁ……はぁ……」
衣「これは……鳥の、骨か……?」
衣「どうしてこんな所に……」
衣「……」
衣「カラスよ、お前がコロモに見せたかったのはこれなのか……?」
衣「それとも、これがお前自身なのか……?」
もう一度、恐る恐るその骨に手を伸ばす。
すっかり朽ちて脆くなったその形を崩さぬよう、そっと頭の部分を持ち上げた。
そして、できるだけ優しくそれを胸に抱きしめて目を瞑る。
160:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:25:03.54:GFxyl3LI0 (43/70)
衣「……」
衣「……」
衣「……」
衣「……うぅ」
衣「…………うぐ……」ジワ
記憶の波がすぐそこまで打ち寄せていた。
この世界に来てからずっと感じていた、何か大切なことを忘れてしまっているいるような胸の焦がれ。
その答えは間違いなく今この腕の中にあった。
衣「……」
衣「……」
衣「……」
衣「……うぅ」
衣「…………うぐ……」ジワ
記憶の波がすぐそこまで打ち寄せていた。
この世界に来てからずっと感じていた、何か大切なことを忘れてしまっているいるような胸の焦がれ。
その答えは間違いなく今この腕の中にあった。
161:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:26:40.58:GFxyl3LI0 (44/70)
衣「繭の中でコロモを呼び続けてくれたのはお前なのか……?」
衣「ずっとコロモを見守っていてくれたのか……?」
衣「コロモは、一人などではなかったのだな……」
衣「コロモはそれに……気付いてやることができなかったんだ……」
衣「……」ギュッ
衣「だが……すまない……」ポロポロ
衣「コロモはお前が誰だか思い出せぬ……」
衣「あんなに呼んでくれたのに……呼び返すこともできなくてごめん……」
衣「こんな遠くまで飛んできてくれたのに……何にもしてやれなくてごめん……」
そして、その一言を呟く。
衣「繭の中でコロモを呼び続けてくれたのはお前なのか……?」
衣「ずっとコロモを見守っていてくれたのか……?」
衣「コロモは、一人などではなかったのだな……」
衣「コロモはそれに……気付いてやることができなかったんだ……」
衣「……」ギュッ
衣「だが……すまない……」ポロポロ
衣「コロモはお前が誰だか思い出せぬ……」
衣「あんなに呼んでくれたのに……呼び返すこともできなくてごめん……」
衣「こんな遠くまで飛んできてくれたのに……何にもしてやれなくてごめん……」
そして、その一言を呟く。
162:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:27:26.13:GFxyl3LI0 (45/70)
衣「……帰りたい」
衣「お前のところへ帰りたい……」
衣「帰って謝りたいのだ……」
衣「『ありがとう』って言いたいのだ……」
衣「ぅぐ……」
衣「うわああああああああああああああああああ」
抑えていた感情が溢れ出す。
胸が張り裂けそうな想いを、どうすることもできないもどかしさをぶつけるように泣き叫ぶ。
届いてほしかった、その人に。
伝えたかった、この気持ちを全て。
衣「……帰りたい」
衣「お前のところへ帰りたい……」
衣「帰って謝りたいのだ……」
衣「『ありがとう』って言いたいのだ……」
衣「ぅぐ……」
衣「うわああああああああああああああああああ」
抑えていた感情が溢れ出す。
胸が張り裂けそうな想いを、どうすることもできないもどかしさをぶつけるように泣き叫ぶ。
届いてほしかった、その人に。
伝えたかった、この気持ちを全て。
163:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:28:22.30:GFxyl3LI0 (46/70)
「そこに居るのは誰ですか!?」
衣「!」
衣「誰かいるのか!?」
衣「助けてくれ! コロモは帰らなくてはならないのだ!」
衣「帰って謝らなくてはならないのだ!」
雀師「落ち着きなさい」
雀師「貴方はオーラスホームのコロモですね?」
衣「そうだ! お前は雀師か!?」
雀師「はい。助けを呼んでくるので少し待っていなさい」
衣「はぁ……はぁ……助かった……」
衣「……そうだ」
「そこに居るのは誰ですか!?」
衣「!」
衣「誰かいるのか!?」
衣「助けてくれ! コロモは帰らなくてはならないのだ!」
衣「帰って謝らなくてはならないのだ!」
雀師「落ち着きなさい」
雀師「貴方はオーラスホームのコロモですね?」
衣「そうだ! お前は雀師か!?」
雀師「はい。助けを呼んでくるので少し待っていなさい」
衣「はぁ……はぁ……助かった……」
衣「……そうだ」
164:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:29:38.05:GFxyl3LI0 (47/70)
固い地面を小さい手で必死に掻き毟る。爪は剥がれ、指先からは血が滲み出した。
だが、そんなこと一切気にも留めず無心で穴を掘り起こした。
鳥の骸をそっと抱えてその穴に埋めてやる。髪を一本引っこ抜いて隣に添えておいた。
これからはずっと側にいるからと想いを込めて。
衣「待っていてくれ。必ず、必ずお前の心のもとに帰るから……」
ロープ「」スルスル
衣「……!」
雀師「そのロープにつかまりなさい。私とこの子で引き上げます」
付き人「……」ペコ
衣「うむ、承知した!」
衣「……」
衣「さらばだ、鳥よ」
衣「ありがとう……安らかに眠れ……」
固い地面を小さい手で必死に掻き毟る。爪は剥がれ、指先からは血が滲み出した。
だが、そんなこと一切気にも留めず無心で穴を掘り起こした。
鳥の骸をそっと抱えてその穴に埋めてやる。髪を一本引っこ抜いて隣に添えておいた。
これからはずっと側にいるからと想いを込めて。
衣「待っていてくれ。必ず、必ずお前の心のもとに帰るから……」
ロープ「」スルスル
衣「……!」
雀師「そのロープにつかまりなさい。私とこの子で引き上げます」
付き人「……」ペコ
衣「うむ、承知した!」
衣「……」
衣「さらばだ、鳥よ」
衣「ありがとう……安らかに眠れ……」
165:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:30:57.84:GFxyl3LI0 (48/70)
衣「はぁ……はぁ……」
衣「助かった……礼を言うぞ」
雀師「いえ、それには及びません」
雀師「それよりもコロモ、貴方はさっき言いましたね?」
衣「え?」
雀師「『帰りたい』と、『帰って謝りたい』と」
衣「……ああ」
雀師「記憶が戻ったのですか?」
衣「いや……全ては思い出せぬ……」
衣「だが、コロモがどのような存在であったかは理解した」
雀師「……」
衣「はぁ……はぁ……」
衣「助かった……礼を言うぞ」
雀師「いえ、それには及びません」
雀師「それよりもコロモ、貴方はさっき言いましたね?」
衣「え?」
雀師「『帰りたい』と、『帰って謝りたい』と」
衣「……ああ」
雀師「記憶が戻ったのですか?」
衣「いや……全ては思い出せぬ……」
衣「だが、コロモがどのような存在であったかは理解した」
雀師「……」
166:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:32:11.07:GFxyl3LI0 (49/70)
衣「畢竟するに、この世界でも前にいた世界でもコロモは同じだったのだ」
衣「コロモを大切に思ってくれてる人の存在に気付こうとせず、自分は孤独なのだと嘯いていた」
衣「その結果、コロモは大事な人たちの心を傷つけてしまった……」
衣「そのことをサキが、ここにいるみんなが気付かせてくれたのだ」
雀師「感謝してるんですね、この世界で出会った仲間に」
衣「うむ、もちろんだ」
雀師「ならば本当に帰る必要があるのですか?」
衣「……」
雀師「前の世界で起きたことはもう覆せません。それならここで皆と仲良く暮らしていけばいいではないですか」
衣「そういう訳にはいかぬ。コロモをずっと待ってる人がいるのだ」
衣「帰ってこの気持ちを伝えなければならないのだ」
衣「畢竟するに、この世界でも前にいた世界でもコロモは同じだったのだ」
衣「コロモを大切に思ってくれてる人の存在に気付こうとせず、自分は孤独なのだと嘯いていた」
衣「その結果、コロモは大事な人たちの心を傷つけてしまった……」
衣「そのことをサキが、ここにいるみんなが気付かせてくれたのだ」
雀師「感謝してるんですね、この世界で出会った仲間に」
衣「うむ、もちろんだ」
雀師「ならば本当に帰る必要があるのですか?」
衣「……」
雀師「前の世界で起きたことはもう覆せません。それならここで皆と仲良く暮らしていけばいいではないですか」
衣「そういう訳にはいかぬ。コロモをずっと待ってる人がいるのだ」
衣「帰ってこの気持ちを伝えなければならないのだ」
167:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:33:22.12:GFxyl3LI0 (50/70)
雀師「この世界を旅立った先に何があるのか私にも分かりません」
雀師「貴方を待ってる人たちのもとに行けるとは限らないんですよ」
衣「構わぬ。もしそうなら今度はコロモが探しにいく」
衣「鳥になろうと、獣になろうと、世界すら違おうと、必ず見つけてみせる」
衣「そして言うのだ、『ただいま』って」
衣「きっと笑って迎えてくれる、それだけははっきり分かるのだ」
衣「コロモはその笑顔に会いたいのだ」
雀師「この世界を旅立った先に何があるのか私にも分かりません」
雀師「貴方を待ってる人たちのもとに行けるとは限らないんですよ」
衣「構わぬ。もしそうなら今度はコロモが探しにいく」
衣「鳥になろうと、獣になろうと、世界すら違おうと、必ず見つけてみせる」
衣「そして言うのだ、『ただいま』って」
衣「きっと笑って迎えてくれる、それだけははっきり分かるのだ」
衣「コロモはその笑顔に会いたいのだ」
168:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:34:33.10:GFxyl3LI0 (51/70)
雀師「この世界で出会った大切な仲間たちを置いていくことになるとしてもですか?」
衣「………お前はコロモたちのことをどこまで知っているのだ?」
雀師「………」
衣「まあよい」
衣「恐らく他の者達もそれぞれの意味があってこの世界に辿り着いたのだろう」
衣「ここで暮らしていくことが悪いことだとは言わぬ」
衣「それでも、やはりコロモたちはいつまでもここに居るべきではないのだ」
衣「残してきた者たちのところへ帰って伝えねばならぬことがあるはずなのだ」
雀師「……」
雀師「この世界で出会った大切な仲間たちを置いていくことになるとしてもですか?」
衣「………お前はコロモたちのことをどこまで知っているのだ?」
雀師「………」
衣「まあよい」
衣「恐らく他の者達もそれぞれの意味があってこの世界に辿り着いたのだろう」
衣「ここで暮らしていくことが悪いことだとは言わぬ」
衣「それでも、やはりコロモたちはいつまでもここに居るべきではないのだ」
衣「残してきた者たちのところへ帰って伝えねばならぬことがあるはずなのだ」
雀師「……」
169:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:35:05.00:GFxyl3LI0 (52/70)
衣「コロモはあの者達の導きとなりたい」
衣「コロモを救ってくれたみんなの為に、今度はコロモがみんなを救う助けになりたい」
衣「みんなと別れるのは寂しいが、もう迷いはない」
雀師「……そこまで強く思えたなら、もう何も言うことはありません」
雀師「それでは、今日の真夜中にこの森の奥の小屋まで来なさい」
雀師「それまでが、貴方がこの世界にいられる最後の時間です」
衣「……うむ」
衣「コロモはあの者達の導きとなりたい」
衣「コロモを救ってくれたみんなの為に、今度はコロモがみんなを救う助けになりたい」
衣「みんなと別れるのは寂しいが、もう迷いはない」
雀師「……そこまで強く思えたなら、もう何も言うことはありません」
雀師「それでは、今日の真夜中にこの森の奥の小屋まで来なさい」
雀師「それまでが、貴方がこの世界にいられる最後の時間です」
衣「……うむ」
170:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:36:07.42:GFxyl3LI0 (53/70)
~オーラスホーム~
ガチャッ
衣「ただいま」
菫「やっと帰ってきたか、っておい!」
菫「何だその格好は! 服もボロボロだし傷だらけじゃないか!?」
衣「ああ、ちょっと森の中で迷ってしまってな」
照「大丈夫? 救急箱とってくるからちょっと待ってて」
菫「その前に風呂で全身の傷口を洗ってこい。しみるだろうが泣くなよ」
衣「誰がそれぐらいで泣くか! コロモは子供じゃないんだぞ!」
菫「ああ、そうだったな」
咲「よかった、心配したんだよ」
和「ちょうどみんなで探しに行こうかと話してたところなんです」
衣「遅くなってすまなかったな。大丈夫だから安心しろ」
~オーラスホーム~
ガチャッ
衣「ただいま」
菫「やっと帰ってきたか、っておい!」
菫「何だその格好は! 服もボロボロだし傷だらけじゃないか!?」
衣「ああ、ちょっと森の中で迷ってしまってな」
照「大丈夫? 救急箱とってくるからちょっと待ってて」
菫「その前に風呂で全身の傷口を洗ってこい。しみるだろうが泣くなよ」
衣「誰がそれぐらいで泣くか! コロモは子供じゃないんだぞ!」
菫「ああ、そうだったな」
咲「よかった、心配したんだよ」
和「ちょうどみんなで探しに行こうかと話してたところなんです」
衣「遅くなってすまなかったな。大丈夫だから安心しろ」
171:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:36:52.73:GFxyl3LI0 (54/70)
淡「さっさとしてよコロモー。もうお腹すいて死にそうだよー」
衣「えっ、まだみんな食事を済ませてないのか!?」
菫「もちろんだ。何をそんなに驚いてるんだ?」
衣「……」
菫「コロモも言ってたじゃないか、みんなで食べるごはんが一番おいしいって」
衣「そうか……ありがとう……」
菫「何を改まって」
衣「遅くなったので諦めていたのだが、今日はどうしてもみんなと一緒に食べたい気分だったのだ……」グス
衣「す、すぐ風呂に入ってくる」ダッ
照「コロモ、何か変だったね」
咲「うん……」
咲(コロモちゃん……)
淡「さっさとしてよコロモー。もうお腹すいて死にそうだよー」
衣「えっ、まだみんな食事を済ませてないのか!?」
菫「もちろんだ。何をそんなに驚いてるんだ?」
衣「……」
菫「コロモも言ってたじゃないか、みんなで食べるごはんが一番おいしいって」
衣「そうか……ありがとう……」
菫「何を改まって」
衣「遅くなったので諦めていたのだが、今日はどうしてもみんなと一緒に食べたい気分だったのだ……」グス
衣「す、すぐ風呂に入ってくる」ダッ
照「コロモ、何か変だったね」
咲「うん……」
咲(コロモちゃん……)
172:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:38:06.41:GFxyl3LI0 (55/70)
~真夜中~
衣「……」
トコトコ
衣「……」
ギー
咲「どこ行くの? コロモちゃん」
衣「……サキか」
衣「いつもの丘に月を眺めに行くだけだ」
咲「……私も一緒に行っていいかな?」
衣「すまない……今日は何だか一人で見ていたい気分なのだ……」
衣「また今度一緒に行こう」
~真夜中~
衣「……」
トコトコ
衣「……」
ギー
咲「どこ行くの? コロモちゃん」
衣「……サキか」
衣「いつもの丘に月を眺めに行くだけだ」
咲「……私も一緒に行っていいかな?」
衣「すまない……今日は何だか一人で見ていたい気分なのだ……」
衣「また今度一緒に行こう」
173:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:38:46.58:GFxyl3LI0 (56/70)
咲「待って!」
衣「……」
咲「帰ってくるよね……ここに……」
衣「……当たり前ではないか」
衣「ここがコロモの家で、お前たちは家族なのだから」
咲「そう、だよね……」
衣「それじゃあ行ってくる」
バタン
衣(嘘をついてすまない、サキ)
衣(今までありがとう、みんな……)
咲「待って!」
衣「……」
咲「帰ってくるよね……ここに……」
衣「……当たり前ではないか」
衣「ここがコロモの家で、お前たちは家族なのだから」
咲「そう、だよね……」
衣「それじゃあ行ってくる」
バタン
衣(嘘をついてすまない、サキ)
衣(今までありがとう、みんな……)
174:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:39:44.32:GFxyl3LI0 (57/70)
咲「大変!! みんな起きて!!!」ドンドン
照「んー、どうしたんだこんな夜中に」
和「どうかしましたか? サキさん」
淡「んもー、うるさいよサキー」
菫「何かあったのか?」
咲「コロモちゃんがいないの!?」
菫「えっ!?」
和「いつもの丘に行ってるんではないですか?」
咲「コロモちゃんが出かける前に声を掛けたんだ、何だか帰ってきてから様子がおかしかったから」
咲「それで一人で丘に行くって言ってたんだけど、後で見にいってもいなくて……」
咲「大変!! みんな起きて!!!」ドンドン
照「んー、どうしたんだこんな夜中に」
和「どうかしましたか? サキさん」
淡「んもー、うるさいよサキー」
菫「何かあったのか?」
咲「コロモちゃんがいないの!?」
菫「えっ!?」
和「いつもの丘に行ってるんではないですか?」
咲「コロモちゃんが出かける前に声を掛けたんだ、何だか帰ってきてから様子がおかしかったから」
咲「それで一人で丘に行くって言ってたんだけど、後で見にいってもいなくて……」
175:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:40:26.86:GFxyl3LI0 (58/70)
淡「単にふらふらしてるだけじゃ」
咲「何だかすごく……嫌な予感がするの……」
照「みんなで手分けして探そう」
照「思い過ごしでもいいじゃないか」
和「そうですね」
淡「しょーがないなー」
咲「……ありがとう、テル」
照「行こう、サキ」
淡「単にふらふらしてるだけじゃ」
咲「何だかすごく……嫌な予感がするの……」
照「みんなで手分けして探そう」
照「思い過ごしでもいいじゃないか」
和「そうですね」
淡「しょーがないなー」
咲「……ありがとう、テル」
照「行こう、サキ」
176:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:41:52.04:GFxyl3LI0 (59/70)
菫「コロモー!」
和「コロモさーん!」
咲「コロモちゃーーん!」
淡「コロモのバカヤローーーーーーーー!!」
照「はぁ……はぁ……いないね」
菫「どこに行ったか見当はつかないのか?」
咲「いえ、コロモちゃんのお気に入りの場所といえばあの丘ぐらいしか……」
和「この辺りは見晴らしもいいですしそれでも見つからないなら、あとは街のほうか西の森でしょうか」
照「こんな夜中に森に入るなんて考えづらい」
菫「だが今夜は月も明るいし目さえ慣れれば歩けないことはないだろう」
菫「何よりあの森の奥には―――」
パアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「!!!」
菫「コロモー!」
和「コロモさーん!」
咲「コロモちゃーーん!」
淡「コロモのバカヤローーーーーーーー!!」
照「はぁ……はぁ……いないね」
菫「どこに行ったか見当はつかないのか?」
咲「いえ、コロモちゃんのお気に入りの場所といえばあの丘ぐらいしか……」
和「この辺りは見晴らしもいいですしそれでも見つからないなら、あとは街のほうか西の森でしょうか」
照「こんな夜中に森に入るなんて考えづらい」
菫「だが今夜は月も明るいし目さえ慣れれば歩けないことはないだろう」
菫「何よりあの森の奥には―――」
パアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「!!!」
177:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:42:25.53:GFxyl3LI0 (60/70)
照「何だあの光は!?」
咲「空に向かって真っ直ぐ伸びて……」
菫「あれは……間違いない」
菫「西の森の小屋のある方角だ!」
咲「」ダッ
照「サキ!」
和「待って下さい、サキさん!」
咲(待って、コロモちゃん……!)
咲(行かないで……お願い……)
咲(コロモちゃん……!)
照「何だあの光は!?」
咲「空に向かって真っ直ぐ伸びて……」
菫「あれは……間違いない」
菫「西の森の小屋のある方角だ!」
咲「」ダッ
照「サキ!」
和「待って下さい、サキさん!」
咲(待って、コロモちゃん……!)
咲(行かないで……お願い……)
咲(コロモちゃん……!)
178:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:43:33.10:GFxyl3LI0 (61/70)
~時間は少し遡り、西の森の小屋~
雀師「本当にいいんですね?」
衣「無意味な問答はやめるのだ」
衣「答えは既に決まっている」
雀師「分かりました。この小屋に入れば間もなくこの世界から旅立てるはずです」
カチリ
ギー
雀師「どうぞ」
衣「うむ」
衣「おっと、忘れるところであった」
衣「何か重しになるようなものは……」ガサゴソ
衣「これでよいか」
衣「結局、これが何なのか分からずじまいであったな」コト
雀師「……」
~時間は少し遡り、西の森の小屋~
雀師「本当にいいんですね?」
衣「無意味な問答はやめるのだ」
衣「答えは既に決まっている」
雀師「分かりました。この小屋に入れば間もなくこの世界から旅立てるはずです」
カチリ
ギー
雀師「どうぞ」
衣「うむ」
衣「おっと、忘れるところであった」
衣「何か重しになるようなものは……」ガサゴソ
衣「これでよいか」
衣「結局、これが何なのか分からずじまいであったな」コト
雀師「……」
179:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:44:30.23:GFxyl3LI0 (62/70)
衣「では、扉を閉めてくれ」
雀師「元気でね、衣ちゃん」
雀師「あの子たちのもとへ帰れるのを心から祈ってるよ」
衣「…………」
衣「お前が誰だか知らぬが、みんなのことを頼んだぞ」
雀師「うん」
衣「さらばだ」
バタン
衣「では、扉を閉めてくれ」
雀師「元気でね、衣ちゃん」
雀師「あの子たちのもとへ帰れるのを心から祈ってるよ」
衣「…………」
衣「お前が誰だか知らぬが、みんなのことを頼んだぞ」
雀師「うん」
衣「さらばだ」
バタン
180:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:45:30.75:GFxyl3LI0 (63/70)
衣「うーん……」
衣「何だここは、埃っぽいただの部屋ではないか」
衣「ん?」
衣「真ん中に置いてあるあれは何だ?」
衣「」スッ
ピト
衣「!!!」
衣「…………………」
衣「…………」
衣「うーん……」
衣「何だここは、埃っぽいただの部屋ではないか」
衣「ん?」
衣「真ん中に置いてあるあれは何だ?」
衣「」スッ
ピト
衣「!!!」
衣「…………………」
衣「…………」
181:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:46:40.62:GFxyl3LI0 (64/70)
衣「そうか……全て、思い出したぞ……」
衣「そう……だったのだ……」
衣「衣はずっと……愛されていたのだ……」
衣「衣の居場所は……いつもすぐ側にあったのだ……」
衣「ようやく気付くことができたのだ……」ポロポロ
衣「長い間待たせてすまなかった………」
衣「純、智紀、一、ハギヨシ」
衣「透華………」
衣「衣も今そっちに行くから」
衣「今度こそ本当の友達に、家族になろう…………」
衣「そうか……全て、思い出したぞ……」
衣「そう……だったのだ……」
衣「衣はずっと……愛されていたのだ……」
衣「衣の居場所は……いつもすぐ側にあったのだ……」
衣「ようやく気付くことができたのだ……」ポロポロ
衣「長い間待たせてすまなかった………」
衣「純、智紀、一、ハギヨシ」
衣「透華………」
衣「衣も今そっちに行くから」
衣「今度こそ本当の友達に、家族になろう…………」
182:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:48:01.44:GFxyl3LI0 (65/70)
パアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
衣(光に包まれる……)
衣(ずっと一人ぼっちだと思っていたはずのに、思い出すのは楽しいことばかりだ)
衣(サキ、ノドカ、アワイ、テル、スミレ)
衣(お前たちと仲良くなれた刹那の中で、衣は本当に幸せだった……)
衣(お前たちがどのような業を背負ってこの世界に辿り着いたのか衣は知らぬ)
衣(だが、衣の心を照らしてくれたお前たちならきっと真実と向き合える)
衣(きっと過去を乗り越えることができる)
衣(そして、もしもまたどこかで出会えることがあるならそのときは………)
衣「みんなでまた一緒に遊ぼう」
衣(ありがとう、咲………)
――――
―――
――
パアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
衣(光に包まれる……)
衣(ずっと一人ぼっちだと思っていたはずのに、思い出すのは楽しいことばかりだ)
衣(サキ、ノドカ、アワイ、テル、スミレ)
衣(お前たちと仲良くなれた刹那の中で、衣は本当に幸せだった……)
衣(お前たちがどのような業を背負ってこの世界に辿り着いたのか衣は知らぬ)
衣(だが、衣の心を照らしてくれたお前たちならきっと真実と向き合える)
衣(きっと過去を乗り越えることができる)
衣(そして、もしもまたどこかで出会えることがあるならそのときは………)
衣「みんなでまた一緒に遊ぼう」
衣(ありがとう、咲………)
――――
―――
――
183:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:49:05.85:GFxyl3LI0 (66/70)
~西の森の小屋~
咲「はぁ……はぁ……」
和「はぁ……サキさん、早すぎます……はぁ……」
淡「ノドカが運動不足なだけだよ」
和「そ、そんなことは……」
菫「そんなことよりさっきの光は……!?」
照「森を抜けてる間に消えちゃったみたいだね」
ガシガシ
ドンドン
咲「ここを開けて! コロモちゃん!」
和「どこか他に入れるとこはないんですか?」
菫「この小屋には窓もないし入口はこの扉だけだ」
咲「コロモちゃん! コロモちゃん!!」
ドンドン ドンドン
~西の森の小屋~
咲「はぁ……はぁ……」
和「はぁ……サキさん、早すぎます……はぁ……」
淡「ノドカが運動不足なだけだよ」
和「そ、そんなことは……」
菫「そんなことよりさっきの光は……!?」
照「森を抜けてる間に消えちゃったみたいだね」
ガシガシ
ドンドン
咲「ここを開けて! コロモちゃん!」
和「どこか他に入れるとこはないんですか?」
菫「この小屋には窓もないし入口はこの扉だけだ」
咲「コロモちゃん! コロモちゃん!!」
ドンドン ドンドン
184:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:50:12.73:GFxyl3LI0 (67/70)
照「もうやめるんだ、サキ!」
咲「でも、コロモちゃんが……!」
淡「あれ? 何か紙が落ちてる」ヒョイ
『コロモは先に行くことにする。
コロモと友達になってくれてありがとう。コロモと家族になってくれてありがとう。
さらばだ、お前たちと出会えてコロモは本当に幸せだった。』
ドサッ
咲「……」
淡「嘘……ほんとに……?」
和「そんな……コロモさん……」
菫「コロ、モ……」
照「くっ……」ギリ
照「もうやめるんだ、サキ!」
咲「でも、コロモちゃんが……!」
淡「あれ? 何か紙が落ちてる」ヒョイ
『コロモは先に行くことにする。
コロモと友達になってくれてありがとう。コロモと家族になってくれてありがとう。
さらばだ、お前たちと出会えてコロモは本当に幸せだった。』
ドサッ
咲「……」
淡「嘘……ほんとに……?」
和「そんな……コロモさん……」
菫「コロ、モ……」
照「くっ……」ギリ
185:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:51:18.96:GFxyl3LI0 (68/70)
咲「紙の上に置いてあった……これは……」スッ
咲「コロモちゃんの、牌……?」
咲「!!!」ポロッ
コトン
咲「うっ……」ズキッ
咲「頭が……いたっ……」
照「大丈夫か!? サキ!」
菫「この牌がどうかしたのか……?」スッ
菫「衣……?」
菫「これがコロモの本当の名前なのか……?」
咲「紙の上に置いてあった……これは……」スッ
咲「コロモちゃんの、牌……?」
咲「!!!」ポロッ
コトン
咲「うっ……」ズキッ
咲「頭が……いたっ……」
照「大丈夫か!? サキ!」
菫「この牌がどうかしたのか……?」スッ
菫「衣……?」
菫「これがコロモの本当の名前なのか……?」
186:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:52:25.85:GFxyl3LI0 (69/70)
咲「うぅ……うあぁ……」
和「サキさん!」
咲「私……コロモちゃんに言わなきゃいけないことが………」
咲「行っちゃダメだよ……コロモちゃん……」ポロポロ
咲「コロモちゃん………」
咲「うぅ……」
咲「うわああああああああああああああああ」
そして、コロモちゃんはこの世界から永遠にいなくなってしまった。
それは、夏の最後の満月の夜のことだった。
咲「うぅ……うあぁ……」
和「サキさん!」
咲「私……コロモちゃんに言わなきゃいけないことが………」
咲「行っちゃダメだよ……コロモちゃん……」ポロポロ
咲「コロモちゃん………」
咲「うぅ……」
咲「うわああああああああああああああああ」
そして、コロモちゃんはこの世界から永遠にいなくなってしまった。
それは、夏の最後の満月の夜のことだった。
187:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/11(月) 15:54:17.44:GFxyl3LI0 (70/70)
ここまでで前半終了です。ここからが本番みたいなものですね。
それではまた今度よろしくお願いします。
ここまでで前半終了です。ここからが本番みたいなものですね。
それではまた今度よろしくお願いします。
188:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 01:59:02.06:xJgbnnnP0 (1/1)
BGMと文章で灰羽の内容が少しずつ浮かんできて目頭が熱くなった、乙
BGMと文章で灰羽の内容が少しずつ浮かんできて目頭が熱くなった、乙
189:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 03:09:54.92:VIHW86Gn0 (1/1)
コロモをこうもってくるのか
原作のアレンジの仕方うまいな
乙です
コロモをこうもってくるのか
原作のアレンジの仕方うまいな
乙です
190:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:12:53.29:EYl4OFod0 (1/43)
~オーラスホーム~
ガチャッ
照「ふぅ」
菫「サキの様子はどうだ?」
照「熱は引いたみたいだけどとても元気とは言えないな」
菫「そうか……」
和「コロモさんが居なくなってからずっとこの調子ですね……」
照「急に涼しくなってきたからね」
照「季節の変わり目で体調を崩しやすいとこに精神的なショックが重なったんだと思う」
淡「ふん。あんな奴いなくなったからってどうってことないよ」
淡「あんな奴……」
「……」
~オーラスホーム~
ガチャッ
照「ふぅ」
菫「サキの様子はどうだ?」
照「熱は引いたみたいだけどとても元気とは言えないな」
菫「そうか……」
和「コロモさんが居なくなってからずっとこの調子ですね……」
照「急に涼しくなってきたからね」
照「季節の変わり目で体調を崩しやすいとこに精神的なショックが重なったんだと思う」
淡「ふん。あんな奴いなくなったからってどうってことないよ」
淡「あんな奴……」
「……」
191:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:13:28.10:EYl4OFod0 (2/43)
菫「アワイは今日は仕事だろ? そろそろ出かけないとまずいんじゃないか」
淡「分かってるよ」
淡「それじゃあ……行ってきます」
バタン
和「アワイさんも元気がありませんね」
菫「そりゃあな」
菫「あれだけ張り合ってた相手が急に居なくなったんだ、無理もないさ」
照「ノドカは今日は休みだったよね?」
和「はい」
照「私とスミレは用事があって出かけるからサキのことお願いね」
和「分かりました、任せて下さい」
菫「それじゃあちょっと行ってくる」
和「お気をつけて」
菫「アワイは今日は仕事だろ? そろそろ出かけないとまずいんじゃないか」
淡「分かってるよ」
淡「それじゃあ……行ってきます」
バタン
和「アワイさんも元気がありませんね」
菫「そりゃあな」
菫「あれだけ張り合ってた相手が急に居なくなったんだ、無理もないさ」
照「ノドカは今日は休みだったよね?」
和「はい」
照「私とスミレは用事があって出かけるからサキのことお願いね」
和「分かりました、任せて下さい」
菫「それじゃあちょっと行ってくる」
和「お気をつけて」
192:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:14:05.20:EYl4OFod0 (3/43)
~寺院~
雀師「話とは何ですか?」
照「わざわざ言わなくても分かってるでしょう」
雀師「……」
照「コロモのことを説明してください」
雀師「彼女のことで私から貴方達に伝えるべきことは何もありません」
菫「そんな言い草はないでしょう」
菫「コロモは私たちの大切な家族なんです」
菫「突然いなくなってそれを受け入れろって言うんですか?」
雀師「もちろん貴方達の気持ちは分かります」
雀師「けれど何もお答えするつもりはありません」
雀師「他に用がないのならもう帰りなさい」
~寺院~
雀師「話とは何ですか?」
照「わざわざ言わなくても分かってるでしょう」
雀師「……」
照「コロモのことを説明してください」
雀師「彼女のことで私から貴方達に伝えるべきことは何もありません」
菫「そんな言い草はないでしょう」
菫「コロモは私たちの大切な家族なんです」
菫「突然いなくなってそれを受け入れろって言うんですか?」
雀師「もちろん貴方達の気持ちは分かります」
雀師「けれど何もお答えするつもりはありません」
雀師「他に用がないのならもう帰りなさい」
193:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:14:41.53:EYl4OFod0 (4/43)
照「だからそんなので納得なんてできません!」
照「あの小屋を管理してるのあなたでしょう!」
照「あなたがコロモをどこかに連れていったんじゃないですか!?」
雀師「それは違います」
照「何が違うって言うんですか!?」
雀師「彼女は望んでこの世界から旅立っていったのです」
雀師「私はその願いが叶うよう役目を果たしたにすぎません」
菫「役目とはどういうことですか?」
菫「私たちもいずれコロモのようにこの世界からいなくなるってことですか……?」
雀師「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれません」
菫「……」
雀師「全ては貴方達次第です」
照「だからそんなので納得なんてできません!」
照「あの小屋を管理してるのあなたでしょう!」
照「あなたがコロモをどこかに連れていったんじゃないですか!?」
雀師「それは違います」
照「何が違うって言うんですか!?」
雀師「彼女は望んでこの世界から旅立っていったのです」
雀師「私はその願いが叶うよう役目を果たしたにすぎません」
菫「役目とはどういうことですか?」
菫「私たちもいずれコロモのようにこの世界からいなくなるってことですか……?」
雀師「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれません」
菫「……」
雀師「全ては貴方達次第です」
194:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:15:36.63:EYl4OFod0 (5/43)
照「あなたの言ってることは意味が分かりません!」
照「もっと私たちに分かるようにちゃんと説明してください!」
雀師「もうこれ以上話すことはないようですね」
雀師「それでは」スッ
照「待ってください……!」
菫「もういい、テル」
菫「いくら聞いても無駄なようだ」
照「ぐっ……」
付き人「」ペコ
菫「いつもお疲れ様。声を荒げてしまってすまなかったな」
付き人「」フルフル
菫(そういえば、この子はいつからここにいたっけな?)
菫(私とテルが生まれたときには雀師に付き人なんていなかった気がするが……)
照「あなたの言ってることは意味が分かりません!」
照「もっと私たちに分かるようにちゃんと説明してください!」
雀師「もうこれ以上話すことはないようですね」
雀師「それでは」スッ
照「待ってください……!」
菫「もういい、テル」
菫「いくら聞いても無駄なようだ」
照「ぐっ……」
付き人「」ペコ
菫「いつもお疲れ様。声を荒げてしまってすまなかったな」
付き人「」フルフル
菫(そういえば、この子はいつからここにいたっけな?)
菫(私とテルが生まれたときには雀師に付き人なんていなかった気がするが……)
195:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:16:24.26:EYl4OFod0 (6/43)
照「どうしたのスミレ? やけに物分かりがよかったみたいだけど」
照「スミレならもっと怒ると思ってた」
菫「……」
菫「もちろん最初はそのつもりだったんさ」
菫「だが、雀師の言葉が少し引っかかってな」
照「どういうこと?」
菫「コロモが望んでいなくなったってことや、役目を果たしただけって言ったことがさ」
照「……」
菫「私だけじゃない、みんなずっと気にしてたはずだろう? 私たちは何者なんだろうって」
菫「自分はどんな世界でどう生きていたんだろうって」
照「……」
照「どうしたのスミレ? やけに物分かりがよかったみたいだけど」
照「スミレならもっと怒ると思ってた」
菫「……」
菫「もちろん最初はそのつもりだったんさ」
菫「だが、雀師の言葉が少し引っかかってな」
照「どういうこと?」
菫「コロモが望んでいなくなったってことや、役目を果たしただけって言ったことがさ」
照「……」
菫「私だけじゃない、みんなずっと気にしてたはずだろう? 私たちは何者なんだろうって」
菫「自分はどんな世界でどう生きていたんだろうって」
照「……」
196:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:16:58.97:EYl4OFod0 (7/43)
菫「一生知ることはできないんじゃないかとも思ってたけど、どうやらそうでもないらしい」
菫「雀師の口ぶりから察するに、私たちにはこの世界に来た意味があるのかもしれない」
菫「コロモはきっとそのことに気付いたんだ」
照「でも、だからって家族がいきなりいなくなるなんて……」
菫「もちろん私だってその気持ちは変わらないさ」
菫「でも、本当にこれがコロモの望んだ結果なら私たちがとやかく言うことはできない」
照「……」
菫「私も少し意外だったな」
照「え?」
菫「テルがあんなに突っかかるなんて」
照「……」
菫「一生知ることはできないんじゃないかとも思ってたけど、どうやらそうでもないらしい」
菫「雀師の口ぶりから察するに、私たちにはこの世界に来た意味があるのかもしれない」
菫「コロモはきっとそのことに気付いたんだ」
照「でも、だからって家族がいきなりいなくなるなんて……」
菫「もちろん私だってその気持ちは変わらないさ」
菫「でも、本当にこれがコロモの望んだ結果なら私たちがとやかく言うことはできない」
照「……」
菫「私も少し意外だったな」
照「え?」
菫「テルがあんなに突っかかるなんて」
照「……」
197:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:17:42.29:EYl4OFod0 (8/43)
照「私はこの世界が好きなんだ」
照「スミレが言ったことももちろん気になるけど、それ以上に私は今のこの暮らしがなくなるのが怖い……」
照「今のこの幸せがずっと続いてほしいと思うから」
菫「……」
照「それに……」
菫「それに?」
照「……サキだってすごく悲しんでる」
菫「……」
照「サキのあんな姿を見たくないんだ……」
照「だからもう、誰かがいなくなるなんて……」
菫「……」
照「何もしてあげられない自分が情けなくてしょうがない」
照「変かな……? こんな気持ちになるなんて……」
照「私はこの世界が好きなんだ」
照「スミレが言ったことももちろん気になるけど、それ以上に私は今のこの暮らしがなくなるのが怖い……」
照「今のこの幸せがずっと続いてほしいと思うから」
菫「……」
照「それに……」
菫「それに?」
照「……サキだってすごく悲しんでる」
菫「……」
照「サキのあんな姿を見たくないんだ……」
照「だからもう、誰かがいなくなるなんて……」
菫「……」
照「何もしてあげられない自分が情けなくてしょうがない」
照「変かな……? こんな気持ちになるなんて……」
198:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:18:31.51:EYl4OFod0 (9/43)
菫「そんなことないさ」
菫「サキはテルの初めての相手だもんな」
照「ちょっ、何言って……!?」
菫「コロモのときも、アワイのときも、ノドカのときも最初の面倒は私が見てたからな」
菫「ふふ、コロモが生まれたときのお前のテンパりっぷりは今思い出しても笑いそうになる」
照「う、うるさい//」
菫「なぜか淡にめちゃくちゃ懐かれたときも最初はオロオロしっぱなしだったな」
照「わ、私はその、あまり知らない人とは……」
菫「分かってるさ、お前は本当に成長したよ」
照「……」
菫「繭を初めて自分で見つけて、この子の面倒は自分が見たいって言い出したとき何だか嬉しかった」
菫「今のテルなら任せても大丈夫だろうって心からそう思った」
照「……」
菫「だから、サキが辛いときはお前が側にいてやれ」
照「……うん」
菫「そんなことないさ」
菫「サキはテルの初めての相手だもんな」
照「ちょっ、何言って……!?」
菫「コロモのときも、アワイのときも、ノドカのときも最初の面倒は私が見てたからな」
菫「ふふ、コロモが生まれたときのお前のテンパりっぷりは今思い出しても笑いそうになる」
照「う、うるさい//」
菫「なぜか淡にめちゃくちゃ懐かれたときも最初はオロオロしっぱなしだったな」
照「わ、私はその、あまり知らない人とは……」
菫「分かってるさ、お前は本当に成長したよ」
照「……」
菫「繭を初めて自分で見つけて、この子の面倒は自分が見たいって言い出したとき何だか嬉しかった」
菫「今のテルなら任せても大丈夫だろうって心からそう思った」
照「……」
菫「だから、サキが辛いときはお前が側にいてやれ」
照「……うん」
199:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:19:16.88:EYl4OFod0 (10/43)
~オーラスホーム~
ガチャッ
和「具合はどうですか、サキさん」
咲「……ノドカちゃん」
咲「頭が痛いのもなくなったしもう大丈夫だよ」
和「そうですか。それは安心しました」
和「これはスミレさんが作っておいてくれた食事です」
和「食欲はまだないかもしれませんが少しでも食べておいたほうがいいですよ」
咲「ううん、熱が引いたら急にお腹が減ってきちゃった。ありがたくいただくよ」
和「他に何かしてほしいことがあったら何でも言ってくださいね」
和「そうだ、温かい紅茶でも淹れてきましょうか?」
咲「そ、そこまでしてもらわなくて平気だよ」
和「サキさんは病人なんですからこんなときぐらいちゃんと私たちに甘えてください」
~オーラスホーム~
ガチャッ
和「具合はどうですか、サキさん」
咲「……ノドカちゃん」
咲「頭が痛いのもなくなったしもう大丈夫だよ」
和「そうですか。それは安心しました」
和「これはスミレさんが作っておいてくれた食事です」
和「食欲はまだないかもしれませんが少しでも食べておいたほうがいいですよ」
咲「ううん、熱が引いたら急にお腹が減ってきちゃった。ありがたくいただくよ」
和「他に何かしてほしいことがあったら何でも言ってくださいね」
和「そうだ、温かい紅茶でも淹れてきましょうか?」
咲「そ、そこまでしてもらわなくて平気だよ」
和「サキさんは病人なんですからこんなときぐらいちゃんと私たちに甘えてください」
200:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:20:29.96:EYl4OFod0 (11/43)
咲「……ごめんね、みんなにいっぱい迷惑かけちゃって」
和「そんな、迷惑だなんて……」
咲「私っていっつもみんなに甘えてばかりなのに……」
咲「ノドカちゃんもアワイちゃんもいつだって私と仲良くしてくれて」
咲「スミレさんは毎日私たちのために食事の準備やここの掃除をしてくれて」
咲「テルは何も知らなかった私をずっと優しく導いてくれた」
咲「コロモちゃんだって……素敵な思い出を……たくさん私にくれた」
咲「コロモ、ちゃん………」ジワ
和「落ち着いてください、サキさん」ギュッ
和「私はサキさんと一緒にいると楽しいです」
和「私たちがコロモさんと家族になれたのもサキさんのおかげなんです」
和「サキさんは甘えてばかりなんかじゃありません」
和「だから、今はどうか私たちを頼ってください」
咲「……ごめんね、みんなにいっぱい迷惑かけちゃって」
和「そんな、迷惑だなんて……」
咲「私っていっつもみんなに甘えてばかりなのに……」
咲「ノドカちゃんもアワイちゃんもいつだって私と仲良くしてくれて」
咲「スミレさんは毎日私たちのために食事の準備やここの掃除をしてくれて」
咲「テルは何も知らなかった私をずっと優しく導いてくれた」
咲「コロモちゃんだって……素敵な思い出を……たくさん私にくれた」
咲「コロモ、ちゃん………」ジワ
和「落ち着いてください、サキさん」ギュッ
和「私はサキさんと一緒にいると楽しいです」
和「私たちがコロモさんと家族になれたのもサキさんのおかげなんです」
和「サキさんは甘えてばかりなんかじゃありません」
和「だから、今はどうか私たちを頼ってください」
201:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:21:09.91:EYl4OFod0 (12/43)
咲「でも、コロモちゃんは……もう……」
和「辛いのはみんな同じです」
和「この先どうなるかなんて誰も分かりません」
和「でも、これだけは約束します」
咲「……?」
和「私はずっとサキさんの側にいます」
和「黙ってサキさんの元から離れたりしません」
和「だから、私を信じてください」
咲「……うぅ」
咲「うわああああああああああ」ポロポロ
和「どうしましたかサキさん!?」
和「私が何か変なこと言ったでしょうか!?」
咲「でも、コロモちゃんは……もう……」
和「辛いのはみんな同じです」
和「この先どうなるかなんて誰も分かりません」
和「でも、これだけは約束します」
咲「……?」
和「私はずっとサキさんの側にいます」
和「黙ってサキさんの元から離れたりしません」
和「だから、私を信じてください」
咲「……うぅ」
咲「うわああああああああああ」ポロポロ
和「どうしましたかサキさん!?」
和「私が何か変なこと言ったでしょうか!?」
202:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:21:52.57:EYl4OFod0 (13/43)
咲「ううん、違うの」
咲「嬉しくてつい……ありがとう、ノドカちゃん……」ニコ
和「いえ、そんな……//」
咲「それじゃあお言葉に甘えて紅茶でも淹れてもらおうかな」
和「分かりました! すぐにご用意しますね!」
咲「そ、そんな慌てなくていいよ」
バタン
咲「………」
咲「……うぐ……ひっぐ」
咲(違うんだ、違うんだよノドカちゃん……)
咲(本当に、ごめんね……)
咲「ううん、違うの」
咲「嬉しくてつい……ありがとう、ノドカちゃん……」ニコ
和「いえ、そんな……//」
咲「それじゃあお言葉に甘えて紅茶でも淹れてもらおうかな」
和「分かりました! すぐにご用意しますね!」
咲「そ、そんな慌てなくていいよ」
バタン
咲「………」
咲「……うぐ……ひっぐ」
咲(違うんだ、違うんだよノドカちゃん……)
咲(本当に、ごめんね……)
203:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:22:40.08:EYl4OFod0 (14/43)
~オーラスホーム~
咲「おはようございます、スミレさん」
菫「おはようサキ」
菫「もう体調は大丈夫なのか?」
咲「はい、みんなのおかげでもうすっかり良くなりました」
咲「たくさん迷惑かけて本当にすみませんでした」ペコ
菫「そんなの気にするな、困ったときはお互い様だ」
~オーラスホーム~
咲「おはようございます、スミレさん」
菫「おはようサキ」
菫「もう体調は大丈夫なのか?」
咲「はい、みんなのおかげでもうすっかり良くなりました」
咲「たくさん迷惑かけて本当にすみませんでした」ペコ
菫「そんなの気にするな、困ったときはお互い様だ」
204:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:23:08.46:EYl4OFod0 (15/43)
淡「あっ! サキだ!」
淡「もう元気になったの!?」
咲「うん、心配かけてごめんね」
淡「よかったー」
淡「元気になったんならまた白糸園においでよ! みんなサキに会いたがってるよ」
菫「こらアワイ、病み上がりであそこの子供たちと遊ぶのはさすがにきついだろ」
淡「そっかー、それもそうだね」
咲「もう少ししたらまた遊びに行くよ」
淡「うん! 待ってる!」
菫「もうすぐ朝食もできるから二人とも料理運ぶの手伝ってもらっていいか?」
咲「はい、分かりました」
淡「あっ! サキだ!」
淡「もう元気になったの!?」
咲「うん、心配かけてごめんね」
淡「よかったー」
淡「元気になったんならまた白糸園においでよ! みんなサキに会いたがってるよ」
菫「こらアワイ、病み上がりであそこの子供たちと遊ぶのはさすがにきついだろ」
淡「そっかー、それもそうだね」
咲「もう少ししたらまた遊びに行くよ」
淡「うん! 待ってる!」
菫「もうすぐ朝食もできるから二人とも料理運ぶの手伝ってもらっていいか?」
咲「はい、分かりました」
205:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:24:26.04:EYl4OFod0 (16/43)
「いただきます」
咲「やっぱり食事はみんなと食べるほうがおいしく感じるよ」
菫「こうして全員揃うのも久しぶりだもんな」
菫「といっても一つ席が空いたままなのは寂しくはあるが……」
「………」
照「スミレ、せっかくサキが元気になったのにそんなこと言うのはどうかと」
菫「わ、悪いサキ! 今のは忘れてくれ!」
咲「いいんです。もう大丈夫なんでそんな気にしないでください」
和「スミレさんってすごく気遣いができる人なのにたまに鈍感なところがありますよね」
菫「ノドカにまでそんな風に思われていたのか……」
淡「あはは! スミレが本気で凹んでるー」
咲「ほ、ほんとに気にしてませんからそんな落ち込まないでください」アタフタ
菫「………」ズーン
照「ふふ」
咲「もう! テルも笑っちゃだめ!」
照(スミレかわいい)
「いただきます」
咲「やっぱり食事はみんなと食べるほうがおいしく感じるよ」
菫「こうして全員揃うのも久しぶりだもんな」
菫「といっても一つ席が空いたままなのは寂しくはあるが……」
「………」
照「スミレ、せっかくサキが元気になったのにそんなこと言うのはどうかと」
菫「わ、悪いサキ! 今のは忘れてくれ!」
咲「いいんです。もう大丈夫なんでそんな気にしないでください」
和「スミレさんってすごく気遣いができる人なのにたまに鈍感なところがありますよね」
菫「ノドカにまでそんな風に思われていたのか……」
淡「あはは! スミレが本気で凹んでるー」
咲「ほ、ほんとに気にしてませんからそんな落ち込まないでください」アタフタ
菫「………」ズーン
照「ふふ」
咲「もう! テルも笑っちゃだめ!」
照(スミレかわいい)
206:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:25:33.67:EYl4OFod0 (17/43)
和「ところで、サキさんは今日は何かご予定はあるんですか?」
咲「うん。図書館に行こうかと思ってるんだ」
照「図書館に用があるの?」
咲「ほら、この前借りた本ずっと借りっぱなしにしちゃってたから返しにいかなきゃって思って」
照「それなら私が返しとこうか? 今日は仕事があるし」
咲「ううん、いいよ」
咲「ずっと寝込んでたから久しぶりに街にも行きたいし、読みたい本もあるから」
照「分かった。それじゃあ図書館まで一緒に行こうか」
咲「うん」
和「ところで、サキさんは今日は何かご予定はあるんですか?」
咲「うん。図書館に行こうかと思ってるんだ」
照「図書館に用があるの?」
咲「ほら、この前借りた本ずっと借りっぱなしにしちゃってたから返しにいかなきゃって思って」
照「それなら私が返しとこうか? 今日は仕事があるし」
咲「ううん、いいよ」
咲「ずっと寝込んでたから久しぶりに街にも行きたいし、読みたい本もあるから」
照「分かった。それじゃあ図書館まで一緒に行こうか」
咲「うん」
207:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:26:13.64:EYl4OFod0 (18/43)
~街~
照「久しぶりの街はどう?」
咲「10日ぐらい寝込んでただけなのに何だか雰囲気変わったね」
照「あの日以来急に暑さが引いて秋らしくなってきたからね」
照「人の装いも売り物も少しずつ変わってきたんだろう」
咲「でも、街全体から感じる空気はそのままだよ」
咲「これだけ人がいるのに穏やかで落ち着いてて、歩いてるだけで幸せな気分になってくる」
照「そうだね。それがこの街の、この世界の良いところだ」
咲「うん……ほんとに素敵な場所……」
~街~
照「久しぶりの街はどう?」
咲「10日ぐらい寝込んでただけなのに何だか雰囲気変わったね」
照「あの日以来急に暑さが引いて秋らしくなってきたからね」
照「人の装いも売り物も少しずつ変わってきたんだろう」
咲「でも、街全体から感じる空気はそのままだよ」
咲「これだけ人がいるのに穏やかで落ち着いてて、歩いてるだけで幸せな気分になってくる」
照「そうだね。それがこの街の、この世界の良いところだ」
咲「うん……ほんとに素敵な場所……」
208:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:26:59.36:EYl4OFod0 (19/43)
咲「……ありがとう、テル」
照「何のこと?」
咲「私が倒れたとき、一晩中側にいてくれたよね」
咲「頭痛がひどくてはっきり覚えてないけど、ずっとテルの声は聴こえてた」
咲「すごく……心強かった」
照「私は当然のことをしただけだよ」
照「咲が元気になって本当によかった」
咲「テルはいつも私を見守っててくれるね」
照「サキは妹みたいなものだからね」
照「私たちは同じ家で暮らす家族なんだから」
咲「………」
咲「……ありがとう、テル」
照「何のこと?」
咲「私が倒れたとき、一晩中側にいてくれたよね」
咲「頭痛がひどくてはっきり覚えてないけど、ずっとテルの声は聴こえてた」
咲「すごく……心強かった」
照「私は当然のことをしただけだよ」
照「咲が元気になって本当によかった」
咲「テルはいつも私を見守っててくれるね」
照「サキは妹みたいなものだからね」
照「私たちは同じ家で暮らす家族なんだから」
咲「………」
209:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:27:58.23:EYl4OFod0 (20/43)
~図書館~
咲「借りてた本は元あった場所に戻しとけばいいの?」
照「うん。手続きはこっちでしておくから」
咲「分かった」
照「読みたい本があるって言ってたけどいっしょに探してあげようか?」
咲「大丈夫だよ。私が読みたいのはここの棚の本のことだから」
照「外の世界について書かれた本……?」
咲「うん」
照「サキは物語とかが好きであまりこういうのは興味無さそうと思ってたけど」
咲「そうだったんだけどね。コロモちゃんがいなくなってから何だか気になっちゃって」
咲「ここの世界の人たちは外の世界のことをどういう風に想像してたんだろうって……」
照(ん? 何か今……)
咲「テルは私のこと気にしないでお仕事がんばってね」
照「あ、ああ」
~図書館~
咲「借りてた本は元あった場所に戻しとけばいいの?」
照「うん。手続きはこっちでしておくから」
咲「分かった」
照「読みたい本があるって言ってたけどいっしょに探してあげようか?」
咲「大丈夫だよ。私が読みたいのはここの棚の本のことだから」
照「外の世界について書かれた本……?」
咲「うん」
照「サキは物語とかが好きであまりこういうのは興味無さそうと思ってたけど」
咲「そうだったんだけどね。コロモちゃんがいなくなってから何だか気になっちゃって」
咲「ここの世界の人たちは外の世界のことをどういう風に想像してたんだろうって……」
照(ん? 何か今……)
咲「テルは私のこと気にしないでお仕事がんばってね」
照「あ、ああ」
210:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:28:34.47:EYl4OFod0 (21/43)
――
―――
――――
照「サキ、仕事終わったし一緒に帰ろうか?」
咲「もうそんな時間経ってたんだ」
照「すごく夢中になってたね」
咲「難しい考察みたいなのばかりかなと思ってたけど、知らない世界を想像するのって物語を紡いでるみたいで面白くて」
照「何か気になることはあった?」
咲「外の世界はこの世界よりもっとたくさんの人や物で溢れてるだろう、って考えかな」
咲「そういう世界では人の心はもっと複雑になって、世界は豊かにもなるしときに醜くもなるだろう、だってさ」
――
―――
――――
照「サキ、仕事終わったし一緒に帰ろうか?」
咲「もうそんな時間経ってたんだ」
照「すごく夢中になってたね」
咲「難しい考察みたいなのばかりかなと思ってたけど、知らない世界を想像するのって物語を紡いでるみたいで面白くて」
照「何か気になることはあった?」
咲「外の世界はこの世界よりもっとたくさんの人や物で溢れてるだろう、って考えかな」
咲「そういう世界では人の心はもっと複雑になって、世界は豊かにもなるしときに醜くもなるだろう、だってさ」
211:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:29:12.39:EYl4OFod0 (22/43)
照「もしそうなら生きていくのはここより大変そうだね」
照「この世界より良い場所なんて私には想像できないや」
咲「テルはほんとにここが好きなんだね」
照「もちろん」
照「サキは違う世界に行ってみたいって思うの?」
咲「分かんないや………」
咲「でも、どれだけ辛いことがあったとしても、その世界でしか得られなかったものってきっとあると思うんだ」
照「サキ……?」
照「もしそうなら生きていくのはここより大変そうだね」
照「この世界より良い場所なんて私には想像できないや」
咲「テルはほんとにここが好きなんだね」
照「もちろん」
照「サキは違う世界に行ってみたいって思うの?」
咲「分かんないや………」
咲「でも、どれだけ辛いことがあったとしても、その世界でしか得られなかったものってきっとあると思うんだ」
照「サキ……?」
212:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:29:53.36:EYl4OFod0 (23/43)
ギーーーーー
ヒュウウウウウウウウ
咲「今日は風が強いね」ブルッ
照「日が暮れたらもう肌寒いくらいだね」
照「そういえばサキはまだ冬服って持ってなかったよね?」
咲「うん、まだだけど」
照「アワイとノドカはサキが寝込んでる間にもう買ったみたいだからサキも今から行こうよ」
照「夕食までまだ時間あるし」
咲「分かった、そうするよ」
ギーーーーー
ヒュウウウウウウウウ
咲「今日は風が強いね」ブルッ
照「日が暮れたらもう肌寒いくらいだね」
照「そういえばサキはまだ冬服って持ってなかったよね?」
咲「うん、まだだけど」
照「アワイとノドカはサキが寝込んでる間にもう買ったみたいだからサキも今から行こうよ」
照「夕食までまだ時間あるし」
咲「分かった、そうするよ」
213:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:30:32.81:EYl4OFod0 (24/43)
~服屋~
カランカラン
店主「いらっしゃーい」
店主「おっ、牌羽の嬢ちゃんたちじゃないか」
照「こんにちわ」
咲「お久しぶりです」ペコ
店主「今日は冬服を探しに来たのかい?」
咲「はい」
店主「最近急に冷え込んできたからね。そこの列から好きなの選んでくれ」
咲「はい、ありがとうございます」
~服屋~
カランカラン
店主「いらっしゃーい」
店主「おっ、牌羽の嬢ちゃんたちじゃないか」
照「こんにちわ」
咲「お久しぶりです」ペコ
店主「今日は冬服を探しに来たのかい?」
咲「はい」
店主「最近急に冷え込んできたからね。そこの列から好きなの選んでくれ」
咲「はい、ありがとうございます」
214:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:32:11.16:EYl4OFod0 (25/43)
照「どれにするの?」
咲「うーん、私って優柔不断だから」
咲「前みたいにテルが選んでほしいな。この服もすっごく気に入ったし」
照「責任重大だな。ほんとにいいの?」
咲「うん!」
照「うーん……どれにしようかな……」ガサゴソ
店主「こうして見てるとテルちゃんはサキちゃんのお姉さんみたいだねぇ」
咲「……」
照「まあそんなもんです。私たちはみんな家族ですから」
照「どれにするの?」
咲「うーん、私って優柔不断だから」
咲「前みたいにテルが選んでほしいな。この服もすっごく気に入ったし」
照「責任重大だな。ほんとにいいの?」
咲「うん!」
照「うーん……どれにしようかな……」ガサゴソ
店主「こうして見てるとテルちゃんはサキちゃんのお姉さんみたいだねぇ」
咲「……」
照「まあそんなもんです。私たちはみんな家族ですから」
215:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:32:48.30:EYl4OFod0 (26/43)
店主「サキちゃんはこんな優しいお姉ちゃんがいて幸せ者だな」
咲「……はい、そうですね」ニコ
照「これなんてどうかな? サキに似合うと思うんだけど」
咲「うわぁ可愛い! 私これにするよ」
照「気に入ってくれてよかった」
咲「おじさん、これお願いします」ジャラ
店主「はいよ、毎度ありー」
店主「サキちゃんはこんな優しいお姉ちゃんがいて幸せ者だな」
咲「……はい、そうですね」ニコ
照「これなんてどうかな? サキに似合うと思うんだけど」
咲「うわぁ可愛い! 私これにするよ」
照「気に入ってくれてよかった」
咲「おじさん、これお願いします」ジャラ
店主「はいよ、毎度ありー」
216:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:33:41.28:EYl4OFod0 (27/43)
店主「んー……」ジロジロ
咲「ど、どうしたんですか? 私の脚をそんな見つめて……」
照「おじさん、スミレがいないからってそういうのは困ります」
店主「違う違う! その靴じゃ冬に雪でも降ったら足が冷たいだろうと思ってさ」
咲「そうですか?」
照「言われてみれば確かに。けっこう積ることもあるし」
店主「そうだ、 このブーツも持っていきな!」
店主「サキちゃんに似合うと思うよ」
咲「分かりました。それじゃあそれもお願いします」ジャラ
店主「んー……」ジロジロ
咲「ど、どうしたんですか? 私の脚をそんな見つめて……」
照「おじさん、スミレがいないからってそういうのは困ります」
店主「違う違う! その靴じゃ冬に雪でも降ったら足が冷たいだろうと思ってさ」
咲「そうですか?」
照「言われてみれば確かに。けっこう積ることもあるし」
店主「そうだ、 このブーツも持っていきな!」
店主「サキちゃんに似合うと思うよ」
咲「分かりました。それじゃあそれもお願いします」ジャラ
217:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:34:24.71:EYl4OFod0 (28/43)
店主「ああ、点棒はいいよ。それは俺からのサービスだ」
咲「えっ! でもそんなの悪いです……」
店主「アワイちゃんとノドカちゃんから聞いたよ。サキちゃんずっと寝込んでたんだろ?」
店主「それは回復祝いだと思って快く貰ってくれよ」
咲「本当にいいんですか?」
店主「もちろん!」
店主「だからさ、コロモちゃんがいなくなって辛いだろうけどまた元気な姿を街のみんなに見せてやってくれよ」
店主「牌羽はこの街の幸せの象徴なんだからさ」
咲「……分かりました。本当にありがとうございます」ペコ
店主「どういたしまして、また来てくれよ」
店主「ああ、点棒はいいよ。それは俺からのサービスだ」
咲「えっ! でもそんなの悪いです……」
店主「アワイちゃんとノドカちゃんから聞いたよ。サキちゃんずっと寝込んでたんだろ?」
店主「それは回復祝いだと思って快く貰ってくれよ」
咲「本当にいいんですか?」
店主「もちろん!」
店主「だからさ、コロモちゃんがいなくなって辛いだろうけどまた元気な姿を街のみんなに見せてやってくれよ」
店主「牌羽はこの街の幸せの象徴なんだからさ」
咲「……分かりました。本当にありがとうございます」ペコ
店主「どういたしまして、また来てくれよ」
218:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:35:26.66:EYl4OFod0 (29/43)
~帰り道~
照「よかったね、サキ」
咲「うん」
咲「………私たちって幸せものだね」
照「そうだね」
咲(ここの人たちはみんな温かくて)
咲(ほんとに泣きたくなるほど優しいから)
咲(辛いことや悲しいことなんて全部忘れてしまいたくなる)
咲(だけど………)
~帰り道~
照「よかったね、サキ」
咲「うん」
咲「………私たちって幸せものだね」
照「そうだね」
咲(ここの人たちはみんな温かくて)
咲(ほんとに泣きたくなるほど優しいから)
咲(辛いことや悲しいことなんて全部忘れてしまいたくなる)
咲(だけど………)
219:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:36:13.52:EYl4OFod0 (30/43)
照「あれ、オーラスホームの扉に何か張ってある」
咲「え?」
『同志サキよ 明日正午に寺院まで来たれし 牌羽連盟』
咲「………」
照「こんな時期に一体何の用だろう?」
照「私も明日付いていってあげようか?」
咲「ううん」
咲「私一人で行くよ」
照「あれ、オーラスホームの扉に何か張ってある」
咲「え?」
『同志サキよ 明日正午に寺院まで来たれし 牌羽連盟』
咲「………」
照「こんな時期に一体何の用だろう?」
照「私も明日付いていってあげようか?」
咲「ううん」
咲「私一人で行くよ」
220:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:37:12.99:EYl4OFod0 (31/43)
~オーラスホーム~
菫「サキはまだ帰ってきてないのか?」
照「うん、昼に寺院へ出かけたままそれっきりだ」
照「この前の雀師の態度もおかしかったし、やっぱり私が付いていけばよかったな」
菫「まあまあ、サキだってしっかりしてるんだからそう不安になることはないさ」
照「そうだといいんだけど」
ガチャッ
咲「ただいまー」
菫「おお、おかえりサキ」
照「サキ! 雀師と何を話してたんだ!?」
照「何か変なこと言われなかったか!?」
咲「お、落ち着いてテル」
咲「お腹もすいちゃったし夕食のときに話すよ」
菫「そうだな、みんな呼んでくるから先に食事にしよう」
~オーラスホーム~
菫「サキはまだ帰ってきてないのか?」
照「うん、昼に寺院へ出かけたままそれっきりだ」
照「この前の雀師の態度もおかしかったし、やっぱり私が付いていけばよかったな」
菫「まあまあ、サキだってしっかりしてるんだからそう不安になることはないさ」
照「そうだといいんだけど」
ガチャッ
咲「ただいまー」
菫「おお、おかえりサキ」
照「サキ! 雀師と何を話してたんだ!?」
照「何か変なこと言われなかったか!?」
咲「お、落ち着いてテル」
咲「お腹もすいちゃったし夕食のときに話すよ」
菫「そうだな、みんな呼んでくるから先に食事にしよう」
221:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:38:04.94:EYl4OFod0 (32/43)
「「いただきます!」」
照「それで、牌羽連盟は何の用だったんだ?」
咲「うーんとね、私もお仕事することになったんだ」
照「仕事? 雀師から直接言い渡されたのか?」
咲「うん」
和「どんなお仕事なんですか?」
咲「西の森の奥に小屋があるでしょ? あそこを定期的に掃除して綺麗にしておくようにだってさ」
菫「小屋だと?」
淡「じゃあサキはあの小屋の中に入ったの!?」
咲「うん。鍵を雀師が持ってて入れてもらったよ」
淡「何それずっこい!」
「「いただきます!」」
照「それで、牌羽連盟は何の用だったんだ?」
咲「うーんとね、私もお仕事することになったんだ」
照「仕事? 雀師から直接言い渡されたのか?」
咲「うん」
和「どんなお仕事なんですか?」
咲「西の森の奥に小屋があるでしょ? あそこを定期的に掃除して綺麗にしておくようにだってさ」
菫「小屋だと?」
淡「じゃあサキはあの小屋の中に入ったの!?」
咲「うん。鍵を雀師が持ってて入れてもらったよ」
淡「何それずっこい!」
222:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:39:04.94:EYl4OFod0 (33/43)
照「……あの小屋の中には何があるんだ?」
咲「うーん……特に変わったことはなかったよ」
咲「がらんとしてて、長いこと使われてないただの部屋って感じだった」
淡「そうなんだー。何か拍子抜けだよー」
菫「牌羽にとって神聖な場所だと雀師は言っていたが、あの人が何かしない限り特に何もないのかな?」
咲「そこまでは分かりませんでしたが」
照「……サキはそれでいいの?」
咲「え?」
照「あんな森の奥で一人で掃除していろだなんて、ちょっとひどいんじゃないかな?」
照「……あの小屋の中には何があるんだ?」
咲「うーん……特に変わったことはなかったよ」
咲「がらんとしてて、長いこと使われてないただの部屋って感じだった」
淡「そうなんだー。何か拍子抜けだよー」
菫「牌羽にとって神聖な場所だと雀師は言っていたが、あの人が何かしない限り特に何もないのかな?」
咲「そこまでは分かりませんでしたが」
照「……サキはそれでいいの?」
咲「え?」
照「あんな森の奥で一人で掃除していろだなんて、ちょっとひどいんじゃないかな?」
223:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:39:57.72:EYl4OFod0 (34/43)
咲「私は平気だよ」
咲「この世界に来てけっこう経つのに、まだ一人だけ仕事してないのも何だかみんなに悪い気がしてたし」
咲「私って優柔不断だから自分に合った仕事なんて中々見つけられそうもないし」
咲「こうして誰かに決めてもらえてちょっとほっとしてるぐらいだよ」
淡「ねーねー、今度その小屋に遊びに行ってもいい!?」
咲「ごめんねアワイちゃん、他の人は入れちゃいけないって言われてるの」
淡「えー、つまんなーい」
照「………」
咲「私は平気だよ」
咲「この世界に来てけっこう経つのに、まだ一人だけ仕事してないのも何だかみんなに悪い気がしてたし」
咲「私って優柔不断だから自分に合った仕事なんて中々見つけられそうもないし」
咲「こうして誰かに決めてもらえてちょっとほっとしてるぐらいだよ」
淡「ねーねー、今度その小屋に遊びに行ってもいい!?」
咲「ごめんねアワイちゃん、他の人は入れちゃいけないって言われてるの」
淡「えー、つまんなーい」
照「………」
224:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:40:50.19:EYl4OFod0 (35/43)
~寺院~
雀師「また貴方ですか」
雀師「今度は一体何の用ですか? テル」
照「どうしてサキにあんな仕事を押し付けたりしたんですか?」
雀師「西の森の小屋の掃除のことですか?」
照「そうです」
雀師「サキはまだ仕事が決まってませんでしたし、マメな彼女には適任だと思ったからです」
照「あんな場所をわざわざ綺麗にしておく必要があるんですか?」
照「そもそもあの小屋は何なんです?」
~寺院~
雀師「また貴方ですか」
雀師「今度は一体何の用ですか? テル」
照「どうしてサキにあんな仕事を押し付けたりしたんですか?」
雀師「西の森の小屋の掃除のことですか?」
照「そうです」
雀師「サキはまだ仕事が決まってませんでしたし、マメな彼女には適任だと思ったからです」
照「あんな場所をわざわざ綺麗にしておく必要があるんですか?」
照「そもそもあの小屋は何なんです?」
225:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:42:32.68:EYl4OFod0 (36/43)
雀師「牌羽にとって神聖な場所であるとしかお答えできません」
照「またそれですか」
雀師「貴方達があの小屋のことを今は何とも思っていなくても、その事実が変わることはありません」
雀師「コロモには少々申し訳ないことをしましたが、だからこそこれからは綺麗に保っておくべきだと判断したのです」
照「それならあなたかあなたの付き人にでもやらせておけばいいじゃないですか!?」
照「どうしてサキをあの小屋に閉じ込めるようなことをするんですか!?」
雀師「頭を冷やしなさい、テル」
雀師「貴方は何も分かっていないのです」
照「分かってないのはあなたのほうです!」
照「サキはコロモがいなくなったショックでつい最近までずっと寝込んでたんですよ!」
照「それなのにコロモが消えたあの小屋で一人で過ごせだなんてひどすぎます!」
雀師「……」
雀師「牌羽にとって神聖な場所であるとしかお答えできません」
照「またそれですか」
雀師「貴方達があの小屋のことを今は何とも思っていなくても、その事実が変わることはありません」
雀師「コロモには少々申し訳ないことをしましたが、だからこそこれからは綺麗に保っておくべきだと判断したのです」
照「それならあなたかあなたの付き人にでもやらせておけばいいじゃないですか!?」
照「どうしてサキをあの小屋に閉じ込めるようなことをするんですか!?」
雀師「頭を冷やしなさい、テル」
雀師「貴方は何も分かっていないのです」
照「分かってないのはあなたのほうです!」
照「サキはコロモがいなくなったショックでつい最近までずっと寝込んでたんですよ!」
照「それなのにコロモが消えたあの小屋で一人で過ごせだなんてひどすぎます!」
雀師「……」
226:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:44:02.24:EYl4OFod0 (37/43)
照「今は元気になって笑顔を見せるようにもなりましたが、それでも時折すごく悲しそうな表情をするんです」
照「まだコロモのことを完全に吹っ切れたわけじゃないんです」
照「誰かが側にいて見守っててやらないと、きっとあの子はまた考え込んでしまう……」
照「サキのあんな顔を私はもう見たくないんです……」
雀師「サキは貴方が思ってるほど弱くありません」
雀師「彼女は一人でも大丈夫です。そう判断したから私はサキにこの仕事を命じたのです」
照「あなたに何が分かるんですか!?」
照「私は誰よりも近くでずっとサキを見てきました!」
照「今は元気になって笑顔を見せるようにもなりましたが、それでも時折すごく悲しそうな表情をするんです」
照「まだコロモのことを完全に吹っ切れたわけじゃないんです」
照「誰かが側にいて見守っててやらないと、きっとあの子はまた考え込んでしまう……」
照「サキのあんな顔を私はもう見たくないんです……」
雀師「サキは貴方が思ってるほど弱くありません」
雀師「彼女は一人でも大丈夫です。そう判断したから私はサキにこの仕事を命じたのです」
照「あなたに何が分かるんですか!?」
照「私は誰よりも近くでずっとサキを見てきました!」
227:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:45:06.88:EYl4OFod0 (38/43)
雀師「本当にそうですか?」
雀師「本当にあの子から目を背けたことはありませんか?」
雀師「本当にあの子の心と向き合い続けてきましたか?」
照「なっ………」
雀師「はっきり言います、サキは貴方の助けなんて必要としていません」
照「うるさい!!」
雀師「……」
照「はぁ……はぁ……」
照「……私はずっとサキの側にいてやるって決めたんです」
照「あの子の笑顔は私が守ります」
照「もうあなたには何も望みません、失礼します」
ダッ
雀師「本当にそうですか?」
雀師「本当にあの子から目を背けたことはありませんか?」
雀師「本当にあの子の心と向き合い続けてきましたか?」
照「なっ………」
雀師「はっきり言います、サキは貴方の助けなんて必要としていません」
照「うるさい!!」
雀師「……」
照「はぁ……はぁ……」
照「……私はずっとサキの側にいてやるって決めたんです」
照「あの子の笑顔は私が守ります」
照「もうあなたには何も望みません、失礼します」
ダッ
228:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:46:15.94:EYl4OFod0 (39/43)
雀師「………」
雀師「まだ気付かないの? 照ちゃん」
雀師「強かったのは誰で」
雀師「本当に弱かったのは誰か」
雀師「………」
雀師「まだ気付かないの? 照ちゃん」
雀師「強かったのは誰で」
雀師「本当に弱かったのは誰か」
229:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:47:16.90:EYl4OFod0 (40/43)
照「はぁ……はぁ……」
咲「あれ、テル。こんなところでどうしたの?」
照「……サキ」
照「今日は街に行ってたのか?」
咲「うん、今帰るとこだよ」
咲「少し顔色が悪いみたいだけど大丈夫?」
照「……ふふ、サキに心配されるなんて情けないな」
咲「えー、私ってそんな頼りないかな」
照「冗談だよ」
照「心配してくれてありがと。私は大丈夫だから」
咲「ならいいんだけど」
照「はぁ……はぁ……」
咲「あれ、テル。こんなところでどうしたの?」
照「……サキ」
照「今日は街に行ってたのか?」
咲「うん、今帰るとこだよ」
咲「少し顔色が悪いみたいだけど大丈夫?」
照「……ふふ、サキに心配されるなんて情けないな」
咲「えー、私ってそんな頼りないかな」
照「冗談だよ」
照「心配してくれてありがと。私は大丈夫だから」
咲「ならいいんだけど」
230:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:48:09.38:EYl4OFod0 (41/43)
照「……サキは本当にあの仕事を続けてもいいの?」
咲「前も言った通りだよ。いつまでも働かないわけにもいかないし」
照「サキさえよければ図書館で一緒に働けるよう館長にお願いしてあげるよ」
照「だってあの小屋は、その、コロモが………」
咲「ありがとう、でも……」
咲「私は大丈夫だから」
照「………そう」
咲「テルはいつも私のことを心配してくれるね……」
咲「本当に感謝してるんだ」
照「当然のことをしてるだけだよ」
照「……サキは本当にあの仕事を続けてもいいの?」
咲「前も言った通りだよ。いつまでも働かないわけにもいかないし」
照「サキさえよければ図書館で一緒に働けるよう館長にお願いしてあげるよ」
照「だってあの小屋は、その、コロモが………」
咲「ありがとう、でも……」
咲「私は大丈夫だから」
照「………そう」
咲「テルはいつも私のことを心配してくれるね……」
咲「本当に感謝してるんだ」
照「当然のことをしてるだけだよ」
231:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:49:12.21:EYl4OFod0 (42/43)
咲「……あのね、テル」
照「ん?」
咲「私ね、テルに謝らなきゃいけないことがあるんだ」
照「何のこと?」
咲「うふふ、今はまだ内緒」
照「え?」
咲「でも、いつか気付いて私のことを叱ってくれたら嬉しいな」
咲「それはテルにしかできないことだから……」
照「どういうこと、なの……?」
咲「えへへ」
咲「それにしても、最近すっかり寒くなっちゃったなー」
照「…………サキ?」
いたずらっぽく、だけどどこか悲し気に笑うサキが私に何を伝えたかったのか、その時の私に理解することなんてできなかったんだ。
そして季節は冬へと移ろう。
それは、私がこの世界に来て迎える三度目の冬だった。
咲「……あのね、テル」
照「ん?」
咲「私ね、テルに謝らなきゃいけないことがあるんだ」
照「何のこと?」
咲「うふふ、今はまだ内緒」
照「え?」
咲「でも、いつか気付いて私のことを叱ってくれたら嬉しいな」
咲「それはテルにしかできないことだから……」
照「どういうこと、なの……?」
咲「えへへ」
咲「それにしても、最近すっかり寒くなっちゃったなー」
照「…………サキ?」
いたずらっぽく、だけどどこか悲し気に笑うサキが私に何を伝えたかったのか、その時の私に理解することなんてできなかったんだ。
そして季節は冬へと移ろう。
それは、私がこの世界に来て迎える三度目の冬だった。
232:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/12(火) 21:50:26.22:EYl4OFod0 (43/43)
今日はここまでです。また今度よろしくお願いします。
今日はここまでです。また今度よろしくお願いします。
233:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 00:05:56.70:ZDOVSUtSO (1/1)
乙
舞ってる
乙
舞ってる
234:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:23:07.20:fRXJt0DW0 (1/43)
~街~
咲「みんなで揃ってお出かけなんて久しぶりだね」
和「そうですね。みなさんお休みの日がばらばらですし、全員で出かける用なんてほとんどありませんから」
淡「スミレー、それで今日は街に何しに来たのー?」
菫「今日は街に鈴の実の市が立つ日なんだよ」
咲「鈴の実って?」
照「過ぎ越しの祭りに必要なものだよ」
照「今年最後の日に過ぎ越しの祭りっていうのが開かれるんだけど」
照「そのときに仲間同士や気持ちを伝えたい相手に鈴の実を贈って一年の区切りをつけるのがこの街のしきたりなんだ」
咲「へー、何かいいね」
菫「ほら、あそこで売ってるのがそうだ」
咲「うわー、綺麗でかわいい」
和「いろんな色があるんですね」
~街~
咲「みんなで揃ってお出かけなんて久しぶりだね」
和「そうですね。みなさんお休みの日がばらばらですし、全員で出かける用なんてほとんどありませんから」
淡「スミレー、それで今日は街に何しに来たのー?」
菫「今日は街に鈴の実の市が立つ日なんだよ」
咲「鈴の実って?」
照「過ぎ越しの祭りに必要なものだよ」
照「今年最後の日に過ぎ越しの祭りっていうのが開かれるんだけど」
照「そのときに仲間同士や気持ちを伝えたい相手に鈴の実を贈って一年の区切りをつけるのがこの街のしきたりなんだ」
咲「へー、何かいいね」
菫「ほら、あそこで売ってるのがそうだ」
咲「うわー、綺麗でかわいい」
和「いろんな色があるんですね」
235:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:23:42.89:fRXJt0DW0 (2/43)
菫「色によってそれぞれ相手に伝える言葉の意味が違うんだ」
菫「よく使われるのがこの赤い色をした鈴の実だな」
咲「赤はどんな意味なんですか?」
菫「『ありがとう』っていう感謝を表す実だ。お世話になった人に贈るんだよ」
咲「そうなんだ」
照「殻が厚くて、振ると固い音がするのが良い実なんだよ」
照「ほら、サキもやってごらん」
咲「うん」
鈴の実「」カランカラン
咲「何だか気持ちの良い音だね」
照「そうだね」ニコ
菫「色によってそれぞれ相手に伝える言葉の意味が違うんだ」
菫「よく使われるのがこの赤い色をした鈴の実だな」
咲「赤はどんな意味なんですか?」
菫「『ありがとう』っていう感謝を表す実だ。お世話になった人に贈るんだよ」
咲「そうなんだ」
照「殻が厚くて、振ると固い音がするのが良い実なんだよ」
照「ほら、サキもやってごらん」
咲「うん」
鈴の実「」カランカラン
咲「何だか気持ちの良い音だね」
照「そうだね」ニコ
236:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:25:12.01:fRXJt0DW0 (3/43)
和「この黄色い実はどんな意味なんですか?」
菫「それは好意や愛情を表す実だ。『あなたのことが好きです』ってね」
和「そ、そんなの告白と同じじゃないですか!?」
菫「まあ言ってしまえばそういうことになるな」
和「……ふむ」
菫「それを渡したい相手でもいるのか?」
和「ス、スミレさんには関係ありません!」
菫「勇気を出してぶつかっていけばいいさ。ノドカから貰って嬉しくない奴なんていないと思うぞ」
和「そ、そうでしょうか//」
淡「そーゆースミレこそテルに渡さなくていいの?」ニヤニヤ
菫「な、何を言ってるんだお前! 意味が分からん!」
淡「テルってそういうのには鈍そうだしちゃんと言ったほうがいいと思うけどなー」
和「この黄色い実はどんな意味なんですか?」
菫「それは好意や愛情を表す実だ。『あなたのことが好きです』ってね」
和「そ、そんなの告白と同じじゃないですか!?」
菫「まあ言ってしまえばそういうことになるな」
和「……ふむ」
菫「それを渡したい相手でもいるのか?」
和「ス、スミレさんには関係ありません!」
菫「勇気を出してぶつかっていけばいいさ。ノドカから貰って嬉しくない奴なんていないと思うぞ」
和「そ、そうでしょうか//」
淡「そーゆースミレこそテルに渡さなくていいの?」ニヤニヤ
菫「な、何を言ってるんだお前! 意味が分からん!」
淡「テルってそういうのには鈍そうだしちゃんと言ったほうがいいと思うけどなー」
237:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:26:26.90:fRXJt0DW0 (4/43)
菫「アワイこそテルにあげるんじゃないのか?」
淡「私のテルへの好きはそういうのとは違うもん」
菫「そ、そうなのか?」
淡「だからスミレも勇気振り絞っちゃいなよー」
菫「うるさい、私もそういうのとは違うんだ!」
淡「えー、ほんとかなー?」
和「あの、スミレさん。こっちの白い実はどんな意味なんですか?」
菫「……それは『さようなら』って意味だよ。別れを告げる実さ」
菫「狭いこの世界じゃあまり使われることはないけどね」
和「そう、ですね……」
淡「…………」
菫「アワイこそテルにあげるんじゃないのか?」
淡「私のテルへの好きはそういうのとは違うもん」
菫「そ、そうなのか?」
淡「だからスミレも勇気振り絞っちゃいなよー」
菫「うるさい、私もそういうのとは違うんだ!」
淡「えー、ほんとかなー?」
和「あの、スミレさん。こっちの白い実はどんな意味なんですか?」
菫「……それは『さようなら』って意味だよ。別れを告げる実さ」
菫「狭いこの世界じゃあまり使われることはないけどね」
和「そう、ですね……」
淡「…………」
238:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:27:39.46:fRXJt0DW0 (5/43)
~真夜中~
咲「……」
トコトコ
咲「綺麗な月だなぁ」
咲「でも……」ブルッ
咲「やっぱりちょっと寒いや……」
トコトコ
咲「あれ、誰かいる……」
咲(月の光に金色の髪がきらきら反射して……)
咲(まさか……衣ちゃん!?)
~真夜中~
咲「……」
トコトコ
咲「綺麗な月だなぁ」
咲「でも……」ブルッ
咲「やっぱりちょっと寒いや……」
トコトコ
咲「あれ、誰かいる……」
咲(月の光に金色の髪がきらきら反射して……)
咲(まさか……衣ちゃん!?)
239:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:33:53.51:fRXJt0DW0 (6/43)
淡「うわっ! 何でサキがここにいんの!?」ササッ
咲「なーんだ、アワイちゃんか」
淡「えー、何かひどーい」
咲「あはは、ごめんごめん」
淡「こんな時間にどうしたの?」
咲「アワイちゃんといっしょだよ」
淡「……」
咲「コロモちゃんに会いに来たんだ」
咲「今夜は今年最後の満月だから」
淡「わ、私はたまたま散歩して通りかかっただけだよ!」アワアワ
淡「うわっ! 何でサキがここにいんの!?」ササッ
咲「なーんだ、アワイちゃんか」
淡「えー、何かひどーい」
咲「あはは、ごめんごめん」
淡「こんな時間にどうしたの?」
咲「アワイちゃんといっしょだよ」
淡「……」
咲「コロモちゃんに会いに来たんだ」
咲「今夜は今年最後の満月だから」
淡「わ、私はたまたま散歩して通りかかっただけだよ!」アワアワ
240:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:35:24.77:fRXJt0DW0 (7/43)
咲「その手に持ってるの、鈴の実だよね」
咲「白い、鈴の実」
淡「………」
淡「みんなには絶対内緒だからね」
咲「うん」
淡「……急にいなくなったせいでお別れも何も言えなかったからさ」
淡「年が変わる前にちゃんとこの気持ちに区切りをつけたかったんだ」
淡「過ぎ越しの日にここに来られるかどうか分かんなかったし」
鈴の実「」カラン
咲「きっと、コロモちゃんも嬉しいと思うよ」
咲「その手に持ってるの、鈴の実だよね」
咲「白い、鈴の実」
淡「………」
淡「みんなには絶対内緒だからね」
咲「うん」
淡「……急にいなくなったせいでお別れも何も言えなかったからさ」
淡「年が変わる前にちゃんとこの気持ちに区切りをつけたかったんだ」
淡「過ぎ越しの日にここに来られるかどうか分かんなかったし」
鈴の実「」カラン
咲「きっと、コロモちゃんも嬉しいと思うよ」
241:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:36:47.38:fRXJt0DW0 (8/43)
淡「あいつほんと馬鹿だよ」
淡「家族になれたと思った途端にどっか行っちゃうなんて」
淡「やっと仲良くなれたんだよ!」
淡「楽しいことだってこれからだったんだよ! 」
淡「それなのに……」
咲「アワイちゃん……」
淡「園長せんせー悲しんでた」
淡「D子だってすっごい泣いてた」
淡「勝手すぎるよ……」
淡「コロモにとって……この世界で出会ったことなんてどうでもよかったのかな……」
咲「そんなこと絶対にないよ」
淡「……サキ」
淡「あいつほんと馬鹿だよ」
淡「家族になれたと思った途端にどっか行っちゃうなんて」
淡「やっと仲良くなれたんだよ!」
淡「楽しいことだってこれからだったんだよ! 」
淡「それなのに……」
咲「アワイちゃん……」
淡「園長せんせー悲しんでた」
淡「D子だってすっごい泣いてた」
淡「勝手すぎるよ……」
淡「コロモにとって……この世界で出会ったことなんてどうでもよかったのかな……」
咲「そんなこと絶対にないよ」
淡「……サキ」
242:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:37:56.94:fRXJt0DW0 (9/43)
咲「コロモちゃんはこの世界で出会った人たちのことを本当に好きになれたから旅立っていけたんだよ」
咲「アワイちゃんも分かってるんでしょ?」
咲「コロモちゃんが私たちのことを本当の家族だと思っててくれたこと」
淡「でも……すっごく寂しいよ……」ウルッ
淡「ずっと張り合ってた相手が突然消えちゃって……」
淡「心にぽっかり穴が開いたみたいで……」
淡「だから、今日できっぱりけじめをつけようって……」
淡「ぅぐ……」
咲「大丈夫だから」ギュッ
咲「信じようよ、いつかまた必ず会えるって」
淡「……うん」
咲(ごめんね、アワイちゃん)
咲(このままさよならなんて絶対にさせないから)
咲「コロモちゃんはこの世界で出会った人たちのことを本当に好きになれたから旅立っていけたんだよ」
咲「アワイちゃんも分かってるんでしょ?」
咲「コロモちゃんが私たちのことを本当の家族だと思っててくれたこと」
淡「でも……すっごく寂しいよ……」ウルッ
淡「ずっと張り合ってた相手が突然消えちゃって……」
淡「心にぽっかり穴が開いたみたいで……」
淡「だから、今日できっぱりけじめをつけようって……」
淡「ぅぐ……」
咲「大丈夫だから」ギュッ
咲「信じようよ、いつかまた必ず会えるって」
淡「……うん」
咲(ごめんね、アワイちゃん)
咲(このままさよならなんて絶対にさせないから)
243:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:42:57.27:fRXJt0DW0 (10/43)
~街~
咲「うわぁ、いつもの落ち着いた雰囲気とは違って今日は賑やかですね」
菫「一年の最後だからな。たまにはこういうのもいいだろ?」
咲「はい!」
照「でも、もうすぐ最初の鐘が鳴り始めたら静かになるよ」
照「過ぎ越しのときは静かに過ごすのが決まりだからね」
咲「そうなの?」
照「ああ、そのときのために想いを伝える鈴の実があるんだよ」
咲「へー、何だか素敵だね」
菫「そして、鐘の音が鳴り止んで最後に―――」
照「スミレ」
菫「おっと、そうだな」
和「最後に何かあるんですか?」
菫「それはそのときまでお楽しみだ」
淡「えー、気になるじゃーん」
~街~
咲「うわぁ、いつもの落ち着いた雰囲気とは違って今日は賑やかですね」
菫「一年の最後だからな。たまにはこういうのもいいだろ?」
咲「はい!」
照「でも、もうすぐ最初の鐘が鳴り始めたら静かになるよ」
照「過ぎ越しのときは静かに過ごすのが決まりだからね」
咲「そうなの?」
照「ああ、そのときのために想いを伝える鈴の実があるんだよ」
咲「へー、何だか素敵だね」
菫「そして、鐘の音が鳴り止んで最後に―――」
照「スミレ」
菫「おっと、そうだな」
和「最後に何かあるんですか?」
菫「それはそのときまでお楽しみだ」
淡「えー、気になるじゃーん」
244:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:43:56.44:fRXJt0DW0 (11/43)
照「みんな、ちょっといい?」
菫「どうしたんだ?」
照「今年は鈴の実の代わりにみんなにはケーキを焼いてきたんだけど、よかったらそこで食べない?」
淡「テルの手作りケーキ!? わーい食べる食べるー!」
和「いいですね」
菫「お前ケーキなんて作れたのか?」
照「図書館にたくさん資料はあるからね。こっそり練習してたんだ」
菫「今日のためにわざわざ?」
照「ま、まあね……」
菫「へー意外だな。有難くいただくよ」
照「みんな、ちょっといい?」
菫「どうしたんだ?」
照「今年は鈴の実の代わりにみんなにはケーキを焼いてきたんだけど、よかったらそこで食べない?」
淡「テルの手作りケーキ!? わーい食べる食べるー!」
和「いいですね」
菫「お前ケーキなんて作れたのか?」
照「図書館にたくさん資料はあるからね。こっそり練習してたんだ」
菫「今日のためにわざわざ?」
照「ま、まあね……」
菫「へー意外だな。有難くいただくよ」
245:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:45:27.94:fRXJt0DW0 (12/43)
パカッ
咲「うわぁ美味しそう」
和「色んな種類がありますね」
照「スミレはどれがいい?」
菫「ああ、私は選ぶのは最後でいいよ」
照「そ、そう………」
淡「私これにするー!」
和「私はこっちを頂きます」
咲「じゃあ私はこれにしようかな」
照「それはダメ!」
咲「えっ?」
照「ほ、ほら、それはあまり上手に作れなかったやつだからサキに悪いかなー、って……」アセアセ
咲「そう? ならこっちにするよ」
パカッ
咲「うわぁ美味しそう」
和「色んな種類がありますね」
照「スミレはどれがいい?」
菫「ああ、私は選ぶのは最後でいいよ」
照「そ、そう………」
淡「私これにするー!」
和「私はこっちを頂きます」
咲「じゃあ私はこれにしようかな」
照「それはダメ!」
咲「えっ?」
照「ほ、ほら、それはあまり上手に作れなかったやつだからサキに悪いかなー、って……」アセアセ
咲「そう? ならこっちにするよ」
246:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:46:57.07:fRXJt0DW0 (13/43)
照「はい。スミレはこの余ったやつね」
菫「さっきの会話聞こえてたぞ。まあ全然いいけど」
菫「でも、そう言ってた割には綺麗にできてるじゃないか?」ヒョイ
照「あ、ありがと」
菫「レモンのスフレか。甘いのは苦手だしちょうどよかったな」
咲「」ニコニコ
照(うっ……)ドキッ
咲「スミレさんの食べてるケーキ綺麗な色してますね」
菫「ああ、レモンの黄色だな」
咲「テルは鈴の実の代わりにこれを作ったんだよね?」ニコニコ
照「ま、まあ一応そういうことになるっちゃなるのかもしれないな……」タジタジ
和「さっき自分で言ってたじゃないですか」
菫「それがどうかしたのか?」
和「はぁ……この人はほんとにもう……」
照「はい。スミレはこの余ったやつね」
菫「さっきの会話聞こえてたぞ。まあ全然いいけど」
菫「でも、そう言ってた割には綺麗にできてるじゃないか?」ヒョイ
照「あ、ありがと」
菫「レモンのスフレか。甘いのは苦手だしちょうどよかったな」
咲「」ニコニコ
照(うっ……)ドキッ
咲「スミレさんの食べてるケーキ綺麗な色してますね」
菫「ああ、レモンの黄色だな」
咲「テルは鈴の実の代わりにこれを作ったんだよね?」ニコニコ
照「ま、まあ一応そういうことになるっちゃなるのかもしれないな……」タジタジ
和「さっき自分で言ってたじゃないですか」
菫「それがどうかしたのか?」
和「はぁ……この人はほんとにもう……」
247:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:48:19.90:fRXJt0DW0 (14/43)
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
照「鐘の音が始まったね」
菫「ここからはしばらく別れて行動しようか」
菫「それぞれお世話になった人のところへ回らないといけないし」
和「そうですね」
菫「私は買い出しで色んなお店に世話になってるから先に行っておくよ」
照「うん。後でまたここで」
菫「……アワイ、ちょっとこっちに来い」
淡「なにー?」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
照「鐘の音が始まったね」
菫「ここからはしばらく別れて行動しようか」
菫「それぞれお世話になった人のところへ回らないといけないし」
和「そうですね」
菫「私は買い出しで色んなお店に世話になってるから先に行っておくよ」
照「うん。後でまたここで」
菫「……アワイ、ちょっとこっちに来い」
淡「なにー?」
248:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:49:19.65:fRXJt0DW0 (15/43)
菫「 」
淡「はぁ!? 意味分かんないよ!!」
菫「 」
淡「そんなの自分でやればいいじゃん!」
菫「 」
淡「ちょっ!! イタイイタイやめてってば!!!」
咲「あれ何してるんだろう?」
和「さぁ」
菫「 」
淡「はぁ!? 意味分かんないよ!!」
菫「 」
淡「そんなの自分でやればいいじゃん!」
菫「 」
淡「ちょっ!! イタイイタイやめてってば!!!」
咲「あれ何してるんだろう?」
和「さぁ」
249:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:51:22.17:fRXJt0DW0 (16/43)
淡「うわーんテルー! スミレにいじめられたー!」
照「よしよし。何をしてたの?」
淡「何かね、自分の代わりにみんなに鈴の実を渡してくれだってさ」
和「直接渡せばいいじゃないですか」
淡「だよねー、ほんと意味分かんない!」プンプン
淡「ってわけではいこれ」
鈴の実「」カラン
照(赤色、か……)
咲「でも、一つはアワイちゃんの分だとして一つ足りなくない?」
淡「何かね、テルの分はこれだってさ」クルッ
照「どういうこと?」
淡「隠れてて見えないかな?」ファサッ
照「……!」
淡「うわーんテルー! スミレにいじめられたー!」
照「よしよし。何をしてたの?」
淡「何かね、自分の代わりにみんなに鈴の実を渡してくれだってさ」
和「直接渡せばいいじゃないですか」
淡「だよねー、ほんと意味分かんない!」プンプン
淡「ってわけではいこれ」
鈴の実「」カラン
照(赤色、か……)
咲「でも、一つはアワイちゃんの分だとして一つ足りなくない?」
淡「何かね、テルの分はこれだってさ」クルッ
照「どういうこと?」
淡「隠れてて見えないかな?」ファサッ
照「……!」
250:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:52:44.06:fRXJt0DW0 (17/43)
咲「アワイちゃんの髪に赤い鈴の実がくくりつけてある!?」
淡「痛いって言ってんのにスミレってば無理やりやるんだよ!」
淡「ねーテル取ってー?」
照「分かった。ちょっと髪の毛引っ張っちゃうかもしれないけど我慢してね」
淡「はーい」
照「淡の髪って綺麗だね」
淡「えへへー」
照「………綺麗な黄色だ」
淡「黄色? 普通髪には金色って言わない?」
照「ふふ、そうだね」
咲「アワイちゃんの髪に赤い鈴の実がくくりつけてある!?」
淡「痛いって言ってんのにスミレってば無理やりやるんだよ!」
淡「ねーテル取ってー?」
照「分かった。ちょっと髪の毛引っ張っちゃうかもしれないけど我慢してね」
淡「はーい」
照「淡の髪って綺麗だね」
淡「えへへー」
照「………綺麗な黄色だ」
淡「黄色? 普通髪には金色って言わない?」
照「ふふ、そうだね」
251:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:54:20.76:fRXJt0DW0 (18/43)
和「どれだけ回りくどいんですかあの人は」
和「テルさんも大概ですが」
咲「でも、何だかあの二人らしいや」
和「テルさんがスミレさんほど鈍くなかったのがせめてもの救いですね」
和「私ならあんな面倒なことはしません。非効率です」
咲「あはは」
和「というわけでサキさん……その、これを……//」
鈴の実「」カラン
咲「黄色い鈴の実……」
和「いきなりでサキさんを困らせてしまうかもとも思ったのですが、どうしてもきちんとこの気持ちを伝えたかったんです……」
和「受け取ってくれますか……?」
和「どれだけ回りくどいんですかあの人は」
和「テルさんも大概ですが」
咲「でも、何だかあの二人らしいや」
和「テルさんがスミレさんほど鈍くなかったのがせめてもの救いですね」
和「私ならあんな面倒なことはしません。非効率です」
咲「あはは」
和「というわけでサキさん……その、これを……//」
鈴の実「」カラン
咲「黄色い鈴の実……」
和「いきなりでサキさんを困らせてしまうかもとも思ったのですが、どうしてもきちんとこの気持ちを伝えたかったんです……」
和「受け取ってくれますか……?」
252:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:56:01.57:fRXJt0DW0 (19/43)
咲「もちろんだよ!」
咲「あの、私もこれをノドカちゃんに……//」
鈴の実「」カラン
和「!!!」
和「いいんですか…? 私がこれを頂いて……」
咲「うん。喜んでくれると嬉しいな」
和「嬉しいに決まってるじゃないですか//」
和「ありがとうございます、サキさん」
咲「お礼を言うのは私のほうだよ」
咲「今だってノドカちゃんから渡してくれなきゃ、私は勇気を出して自分から渡すこともできなかったと思う」
咲「本当にありがとう、ノドカちゃん」
和「いえ、そんな……//」
咲「もちろんだよ!」
咲「あの、私もこれをノドカちゃんに……//」
鈴の実「」カラン
和「!!!」
和「いいんですか…? 私がこれを頂いて……」
咲「うん。喜んでくれると嬉しいな」
和「嬉しいに決まってるじゃないですか//」
和「ありがとうございます、サキさん」
咲「お礼を言うのは私のほうだよ」
咲「今だってノドカちゃんから渡してくれなきゃ、私は勇気を出して自分から渡すこともできなかったと思う」
咲「本当にありがとう、ノドカちゃん」
和「いえ、そんな……//」
253:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:57:22.98:fRXJt0DW0 (20/43)
咲「ノドカちゃんはいつだって私に真っ直ぐ想いを伝えてくれた」
咲「ずっとずっと、私の手を引っ張ってくれたね」
和「お言葉は嬉しいですが、テルさんに比べれば私なんて全然サキさんのお役に立ってません」
和「それに、私たちは出会ってまだ半年ほどしか経ってませんよ」
咲「………確かにそうかもしれないけど、それだけじゃないんだよ」
和「え?」
咲「たとえ数ヶ月ほどの短い間でも、ノドカちゃんたちと過ごした日々は本当に大切だから」
咲(何よりかけがえのない思い出だから……)
和「………サキ、さん?」
咲「ノドカちゃんはいつだって私に真っ直ぐ想いを伝えてくれた」
咲「ずっとずっと、私の手を引っ張ってくれたね」
和「お言葉は嬉しいですが、テルさんに比べれば私なんて全然サキさんのお役に立ってません」
和「それに、私たちは出会ってまだ半年ほどしか経ってませんよ」
咲「………確かにそうかもしれないけど、それだけじゃないんだよ」
和「え?」
咲「たとえ数ヶ月ほどの短い間でも、ノドカちゃんたちと過ごした日々は本当に大切だから」
咲(何よりかけがえのない思い出だから……)
和「………サキ、さん?」
254:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 21:58:51.71:fRXJt0DW0 (21/43)
咲「私たちもそろそろ行こうか」
咲「じゃないと待ち合わせに遅れちゃうよ」
和「え、ええ……」
咲「私は服屋のおじさんのところへ行ってくるよ」
咲「ブーツをもらったお礼を言わなきゃ」
和「分かりました。では私はパン屋のほうへ行ってきます」
咲「また後でね」
和「はい」
――
―――
――――
咲「私たちもそろそろ行こうか」
咲「じゃないと待ち合わせに遅れちゃうよ」
和「え、ええ……」
咲「私は服屋のおじさんのところへ行ってくるよ」
咲「ブーツをもらったお礼を言わなきゃ」
和「分かりました。では私はパン屋のほうへ行ってきます」
咲「また後でね」
和「はい」
――
―――
――――
255:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:00:17.70:fRXJt0DW0 (22/43)
菫「みんな集まったみたいだな」
菫「それじゃあそろそろオーラスーホームに帰るか?」
咲「え? 最後に何かあるんじゃ」
照「大丈夫だよ。どこからだって見えるから」
咲「?」
淡「ねーねー、そろそろ教えてくれてもいいじゃーん」
菫「もう少しだから我慢しろ」
淡「スミレのケチー」
菫「ほら、さっさと行くぞ」
淡「はーい」
菫「みんな集まったみたいだな」
菫「それじゃあそろそろオーラスーホームに帰るか?」
咲「え? 最後に何かあるんじゃ」
照「大丈夫だよ。どこからだって見えるから」
咲「?」
淡「ねーねー、そろそろ教えてくれてもいいじゃーん」
菫「もう少しだから我慢しろ」
淡「スミレのケチー」
菫「ほら、さっさと行くぞ」
淡「はーい」
256:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:01:57.67:fRXJt0DW0 (23/43)
~オーラスホーム~
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオン
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオン
咲「今年も本当にもう終わりなんだね」
和「そうですね、。何だか少し寂しいです」
淡「色んなことがあったもんねー」
ゴオオオオオオオオオオオオオオン
ゴオオオオオオン
ゴオン
…
照「鐘の音が鳴り止んだね」
菫「そろそろだな」
咲「いったい何が……?」
~オーラスホーム~
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオン
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオン
咲「今年も本当にもう終わりなんだね」
和「そうですね、。何だか少し寂しいです」
淡「色んなことがあったもんねー」
ゴオオオオオオオオオオオオオオン
ゴオオオオオオン
ゴオン
…
照「鐘の音が鳴り止んだね」
菫「そろそろだな」
咲「いったい何が……?」
257:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:04:01.72:fRXJt0DW0 (24/43)
パアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
咲「………!」
咲「うわぁ…………」ボー
咲(この世界を囲む壁が淡く輝いて……)
咲(光が空に吸い込まれてく……)
咲「ずごく……綺麗……」
咲(こんな幻想的な光景があるなんて……)
咲(まるで物語の中にいるみたい……)
咲「テル、これは………」
照「壁が、この一年受け止めてきた全ての人の想いを空に還すんだって言われてる」
咲「人の……想い……?」
照「耳を澄ましてごらん」
咲「………」
パアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
咲「………!」
咲「うわぁ…………」ボー
咲(この世界を囲む壁が淡く輝いて……)
咲(光が空に吸い込まれてく……)
咲「ずごく……綺麗……」
咲(こんな幻想的な光景があるなんて……)
咲(まるで物語の中にいるみたい……)
咲「テル、これは………」
照「壁が、この一年受け止めてきた全ての人の想いを空に還すんだって言われてる」
咲「人の……想い……?」
照「耳を澄ましてごらん」
咲「………」
258:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:06:24.50:fRXJt0DW0 (25/43)
咲(たくさんの人の声が重なり合って、こだましてる……)
咲(楽しそうに笑ってる声……泣いてる声……)
『サキ』
咲「コロモちゃん……!」
淡「サキも聞こえたの……? 私も今……」
和「私も、コロモさんが名前を呼んでくれた気がしました」
菫「………コロモはもうこの世界にはいない」
菫「でも、コロモの想いはきっとこの街のどこかに残ってたんだ」
菫「たとえ空に還ったって、私たちが忘れない限りずっとこの心に生き続けるさ」
淡「コロモ……」ウルッ
咲「………」
咲(……分かってる)
咲(分かってるよコロモちゃん)
咲(コロモちゃんのことを忘れたりなんかしない)
咲(私たちを導いてくれようとしたコロモちゃんの想いを無駄になんかしない)
咲(………もう、終わりにしなきゃね)
咲(たくさんの人の声が重なり合って、こだましてる……)
咲(楽しそうに笑ってる声……泣いてる声……)
『サキ』
咲「コロモちゃん……!」
淡「サキも聞こえたの……? 私も今……」
和「私も、コロモさんが名前を呼んでくれた気がしました」
菫「………コロモはもうこの世界にはいない」
菫「でも、コロモの想いはきっとこの街のどこかに残ってたんだ」
菫「たとえ空に還ったって、私たちが忘れない限りずっとこの心に生き続けるさ」
淡「コロモ……」ウルッ
咲「………」
咲(……分かってる)
咲(分かってるよコロモちゃん)
咲(コロモちゃんのことを忘れたりなんかしない)
咲(私たちを導いてくれようとしたコロモちゃんの想いを無駄になんかしない)
咲(………もう、終わりにしなきゃね)
259:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:10:21.26:fRXJt0DW0 (26/43)
~オーラスホーム~
照「」ズズー
照「……ふぅ」
ガチャッ
照「……」
照「どうしたんだサキ、眠れないのか?」
咲「………うん」
咲「何だかさっき見た光景が忘れられなくて」
照「サキも紅茶飲む?」
咲「ううん、私はいいや」
咲「テルのほうこそまだ寝ないの?」
照「私もいっしょだよ」
照「過ぎ越しの日の後はいつもこうしてぼんやりしてるんだ」
~オーラスホーム~
照「」ズズー
照「……ふぅ」
ガチャッ
照「……」
照「どうしたんだサキ、眠れないのか?」
咲「………うん」
咲「何だかさっき見た光景が忘れられなくて」
照「サキも紅茶飲む?」
咲「ううん、私はいいや」
咲「テルのほうこそまだ寝ないの?」
照「私もいっしょだよ」
照「過ぎ越しの日の後はいつもこうしてぼんやりしてるんだ」
260:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:12:26.67:fRXJt0DW0 (27/43)
咲「すごく、綺麗だったね……」
咲「あんなの一生忘れられないよ」
照「そうでしょ」
照「私も初めてあの光景を見たとき自分の眼が信じられなかったよ」
照「こんなに美しいものが存在するのかって」
咲「……」
照「私は本当に何もできない牌羽だったから、最初の一年は失敗ばかりでずっと不安なまま過ごしてた」
照「でも二年前の今日、ここであの光に包まれたとき何だかすごく安心した」
照「私もこの世界で暮らしていけそうだって不思議とそう思えた」
照「そう思ったらちょっぴり泣いちゃってね、スミレには散々からかわれたよ」
咲「…………」
咲「すごく、綺麗だったね……」
咲「あんなの一生忘れられないよ」
照「そうでしょ」
照「私も初めてあの光景を見たとき自分の眼が信じられなかったよ」
照「こんなに美しいものが存在するのかって」
咲「……」
照「私は本当に何もできない牌羽だったから、最初の一年は失敗ばかりでずっと不安なまま過ごしてた」
照「でも二年前の今日、ここであの光に包まれたとき何だかすごく安心した」
照「私もこの世界で暮らしていけそうだって不思議とそう思えた」
照「そう思ったらちょっぴり泣いちゃってね、スミレには散々からかわれたよ」
咲「…………」
261:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:14:24.71:fRXJt0DW0 (28/43)
照「コロモはいなくなっちゃったけどさ、来年もまたみんなであの景色を見れるといいね」
咲「テルは本当にこの世界が大好きなんだね」
照「もちろん」
咲「………次の春がくれば、テルとスミレさんはこの世界でちょうど三年間過ごしたことになるんだよね?」
照「そうだけど、それがどうかしたの?」
咲「………来年もまたみんなであの景色を見れるかどうかは分からないよ」
照「コロモみたいにまた誰かがいなくなるってこと……?」
咲「そうかもしれないし、コロモちゃんのときとは違うかもしれない」
咲「私にそこまでは分からないけど」
照「サキ……いったい何を言って……」
照「コロモはいなくなっちゃったけどさ、来年もまたみんなであの景色を見れるといいね」
咲「テルは本当にこの世界が大好きなんだね」
照「もちろん」
咲「………次の春がくれば、テルとスミレさんはこの世界でちょうど三年間過ごしたことになるんだよね?」
照「そうだけど、それがどうかしたの?」
咲「………来年もまたみんなであの景色を見れるかどうかは分からないよ」
照「コロモみたいにまた誰かがいなくなるってこと……?」
咲「そうかもしれないし、コロモちゃんのときとは違うかもしれない」
咲「私にそこまでは分からないけど」
照「サキ……いったい何を言って……」
262:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:15:35.82:fRXJt0DW0 (29/43)
咲「テルは本当にこの世界にずっといたままでいいの?」
照「そ、そんなの当たり前じゃないか……」
照「だってこの世界より良い場所なんてきっとどこにも……」
咲「だからって、全てを忘れたまま暮らしていくの?」
咲「どれだけ辛いことがあった世界だって、きっとそれだけじゃなかったはずだよ」
咲「大切なものだって、傷つけたまま置いてきたものだってまだそこにはあるんだよ」
照「サキ……?」
咲「………」
咲「テルは本当にこの世界にずっといたままでいいの?」
照「そ、そんなの当たり前じゃないか……」
照「だってこの世界より良い場所なんてきっとどこにも……」
咲「だからって、全てを忘れたまま暮らしていくの?」
咲「どれだけ辛いことがあった世界だって、きっとそれだけじゃなかったはずだよ」
咲「大切なものだって、傷つけたまま置いてきたものだってまだそこにはあるんだよ」
照「サキ……?」
咲「………」
263:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:17:41.93:fRXJt0DW0 (30/43)
どうして……どうして私をそんな眼で見るんだ………。
こんなに強い眼差しをしているサキを見るのは初めてだった。
照「うっ……!」ズキッ
頭が割れるように痛い。
耳鳴りが響いて止まない。
咲「………」
………違う。
私は知っている。
サキのこの瞳を見たことがある。
いつ? どこで?
どうして……どうして私をそんな眼で見るんだ………。
こんなに強い眼差しをしているサキを見るのは初めてだった。
照「うっ……!」ズキッ
頭が割れるように痛い。
耳鳴りが響いて止まない。
咲「………」
………違う。
私は知っている。
サキのこの瞳を見たことがある。
いつ? どこで?
264:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:19:07.99:fRXJt0DW0 (31/43)
照「私はサキを知ってるの……?」
照「サキは、私を知ってるの………?」
咲「………」
照「どうして何も言ってくれないんだ……」
咲「………」
照「やめてくれ……」
照「そんな瞳で私を見ないで……」
照「うわあああああああああああああああ」ダッ
照「私はサキを知ってるの……?」
照「サキは、私を知ってるの………?」
咲「………」
照「どうして何も言ってくれないんだ……」
咲「………」
照「やめてくれ……」
照「そんな瞳で私を見ないで……」
照「うわあああああああああああああああ」ダッ
265:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:21:14.66:fRXJt0DW0 (32/43)
気付けば私はオーラスホームを飛び出していた。
新たな年が明けるのを待っていたかのように降り始めた雪が辺りの草原に白く積っていた。
照「はぁ……はぁ……!」
夜明け前の暗い道を私はただ闇雲に走り続ける。
真実を求めてもがくように。
迫りくる真実から逃げるように。
照「はぁ……はぁ……」ドサッ
力尽きて倒れ込んだ私の火照った体を雪がひんやりと包み込む。
冷えてすっきりした頭に、さっきのサキの眼差しがこびりついて剥がれない。
私とサキはどこか違う世界で出会っていたの……?
あの瞳で私はサキに見つめられたことがあるの……?
気付けば私はオーラスホームを飛び出していた。
新たな年が明けるのを待っていたかのように降り始めた雪が辺りの草原に白く積っていた。
照「はぁ……はぁ……!」
夜明け前の暗い道を私はただ闇雲に走り続ける。
真実を求めてもがくように。
迫りくる真実から逃げるように。
照「はぁ……はぁ……」ドサッ
力尽きて倒れ込んだ私の火照った体を雪がひんやりと包み込む。
冷えてすっきりした頭に、さっきのサキの眼差しがこびりついて剥がれない。
私とサキはどこか違う世界で出会っていたの……?
あの瞳で私はサキに見つめられたことがあるの……?
266:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:22:53.93:fRXJt0DW0 (33/43)
照「だめ………思い出せないよ、サキ……」
照「サキは私に、何を伝えたいの……?」
もう一人の私が、記憶の扉を必死で開けまいとしているような感覚。
もう引き返すことなんてできないのに、前に踏み出すしかないのは分かってるのに、
この世界を信じ続けてきた私には、そいつをどかす力も勇気もないみたいだった。
照「いいじゃないか……」
照「全てを忘れたままこの世界で暮らしていけば」
照「私はこの世界が好きなんだから……」
照「牌羽である今の自分が好きなんだ……」
照「だめ………思い出せないよ、サキ……」
照「サキは私に、何を伝えたいの……?」
もう一人の私が、記憶の扉を必死で開けまいとしているような感覚。
もう引き返すことなんてできないのに、前に踏み出すしかないのは分かってるのに、
この世界を信じ続けてきた私には、そいつをどかす力も勇気もないみたいだった。
照「いいじゃないか……」
照「全てを忘れたままこの世界で暮らしていけば」
照「私はこの世界が好きなんだから……」
照「牌羽である今の自分が好きなんだ……」
267:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:24:19.08:fRXJt0DW0 (34/43)
この世界に来てからのことを思い返す。
生まれたばかりの頃の何もできなかった私。
隣にはいつもスミレがいて、ずっと私に寄り添っててくれた。
図書館で働き始めたとき、最初はミスばかりでよく落ち込んでたっけ。
そんなときもスミレは私を優しく励ましてくれた。
春になってコロモが生まれた。
初めてできた妹みたいな存在に戸惑うばかりで何もしてあげられなかった。
自分のだめっぷりをまた思い知らされて凹んだことも多かったな。
でも、顔馴染みになった街の人とも段々上手く話せるようになって楽しいことも増えていった。
この世界に来てからのことを思い返す。
生まれたばかりの頃の何もできなかった私。
隣にはいつもスミレがいて、ずっと私に寄り添っててくれた。
図書館で働き始めたとき、最初はミスばかりでよく落ち込んでたっけ。
そんなときもスミレは私を優しく励ましてくれた。
春になってコロモが生まれた。
初めてできた妹みたいな存在に戸惑うばかりで何もしてあげられなかった。
自分のだめっぷりをまた思い知らされて凹んだことも多かったな。
でも、顔馴染みになった街の人とも段々上手く話せるようになって楽しいことも増えていった。
268:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:26:00.33:fRXJt0DW0 (35/43)
また次の春、アワイとノドカが生まれた。
コロモのときよりお姉さんらしく振舞えるようになった自分の成長が嬉しかった。
そして季節が夏に近づいた頃、私はサキと出会った。
初めて自分で繭を見つけて、何だかすごく感動して、いつもスミレに任せていた世話係を申し出た。
うんと優しくしてあげようって思った。
この子が辛いときはずっと隣にいてあげようって思った。
サキは本当に良い子で、あの子が笑うたびにたくさんの幸せを私はもらった。
照「そうだ……私は誓ったんだ……」
照「サキの笑顔は私が守るって」
照「サキが心から笑えない世界なんて、私は好きになれない……」
照「あの子の側にいてやれない自分なんて、いらない……!」
また次の春、アワイとノドカが生まれた。
コロモのときよりお姉さんらしく振舞えるようになった自分の成長が嬉しかった。
そして季節が夏に近づいた頃、私はサキと出会った。
初めて自分で繭を見つけて、何だかすごく感動して、いつもスミレに任せていた世話係を申し出た。
うんと優しくしてあげようって思った。
この子が辛いときはずっと隣にいてあげようって思った。
サキは本当に良い子で、あの子が笑うたびにたくさんの幸せを私はもらった。
照「そうだ……私は誓ったんだ……」
照「サキの笑顔は私が守るって」
照「サキが心から笑えない世界なんて、私は好きになれない……」
照「あの子の側にいてやれない自分なんて、いらない……!」
269:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:28:07.68:fRXJt0DW0 (36/43)
いつしか夜は明けて、今年最初の朝を迎えていた。
だけど、そんなことに心を遣る余裕なんて今の私には微塵もなかった。
思い出せ、サキは私に何かを伝えようとしてた。
サキが全てを知っていて、私に何かを望んでいるのなら、
今の私にだって気付けるような何かを残してくれていたはずだ。
思い出せ、思い出せ……!
『咲「私ね、テルに謝らなきゃいけないことがあるんだ」』
『咲「うふふ、今はまだ内緒」』
『咲「でも、いつか気付いて私のことを叱ってくれたら嬉しいな」』
『咲「それはテルにしかできないことだから……」』
照「………!」
照「もしかして………!」
いつしか夜は明けて、今年最初の朝を迎えていた。
だけど、そんなことに心を遣る余裕なんて今の私には微塵もなかった。
思い出せ、サキは私に何かを伝えようとしてた。
サキが全てを知っていて、私に何かを望んでいるのなら、
今の私にだって気付けるような何かを残してくれていたはずだ。
思い出せ、思い出せ……!
『咲「私ね、テルに謝らなきゃいけないことがあるんだ」』
『咲「うふふ、今はまだ内緒」』
『咲「でも、いつか気付いて私のことを叱ってくれたら嬉しいな」』
『咲「それはテルにしかできないことだから……」』
照「………!」
照「もしかして………!」
270:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:30:38.47:fRXJt0DW0 (37/43)
照「はぁ……はぁ……!」
雪の降りしきる道を私は走った。
吐く息は白く、手足は真っ赤にかじかんでいた。
途中何度も転んで、
膝から滴り落ちる血が、白い道を点々と赤く染める。
それでも私は走り続けた。
そこに、知りたくない真実が、
知らなければならない真実があると信じて。
怖かった、逃げ出したいと何度も思った。
でも、サキと二度と分かり合えなくなることのほうがずっとずっと怖かった。
そして私は辿り着いた。
この世界の私が、三年間働いてきた図書館に。
照「はぁ……はぁ……!」
雪の降りしきる道を私は走った。
吐く息は白く、手足は真っ赤にかじかんでいた。
途中何度も転んで、
膝から滴り落ちる血が、白い道を点々と赤く染める。
それでも私は走り続けた。
そこに、知りたくない真実が、
知らなければならない真実があると信じて。
怖かった、逃げ出したいと何度も思った。
でも、サキと二度と分かり合えなくなることのほうがずっとずっと怖かった。
そして私は辿り着いた。
この世界の私が、三年間働いてきた図書館に。
271:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:33:16.44:fRXJt0DW0 (38/43)
バンッ!
照「どこだ、どこだ!」
いつも自分が整理している本棚を引っ掻き回しながら私は探す。
照「どこだ!どこにある!?」
それは、この世界で出会った私とサキが見つけた本。
照「はぁ……はぁ……」
私とサキしか知らない物語。
バンッ!
照「どこだ、どこだ!」
いつも自分が整理している本棚を引っ掻き回しながら私は探す。
照「どこだ!どこにある!?」
それは、この世界で出会った私とサキが見つけた本。
照「はぁ……はぁ……」
私とサキしか知らない物語。
272:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:34:27.75:fRXJt0DW0 (39/43)
照「………あった」
あの夏の日、サキが初めて図書館を訪れたときに借りていったその本を私は開く。
それは、どこにでもある優しい物語だった。
離ればなれになった仲の良いウサギの姉妹が、冒険の末に再び出会い、喜びの涙を流す。
ただそれだけの、本当にありふれたストーリー。
姉妹が仲良く暮らすことなんて当たり前だと言わんばかりのハッピーエンド。
私は震える手で最後のページをめくる。
『見ちゃだめだ、見ちゃだめだ!』
私の中のもう一人の私が力強く叫ぶ。
私は、そんな彼女の声なんて聞こえないふりをして最後のページを開いた。
照「………あった」
あの夏の日、サキが初めて図書館を訪れたときに借りていったその本を私は開く。
それは、どこにでもある優しい物語だった。
離ればなれになった仲の良いウサギの姉妹が、冒険の末に再び出会い、喜びの涙を流す。
ただそれだけの、本当にありふれたストーリー。
姉妹が仲良く暮らすことなんて当たり前だと言わんばかりのハッピーエンド。
私は震える手で最後のページをめくる。
『見ちゃだめだ、見ちゃだめだ!』
私の中のもう一人の私が力強く叫ぶ。
私は、そんな彼女の声なんて聞こえないふりをして最後のページを開いた。
273:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:37:18.44:fRXJt0DW0 (40/43)
………。
そこには、サキの字が書いてあった。
ページの片隅に小さく、だけど綺麗で読みやすいサキの文字。
それは、あの良い子のサキが借り物の本に残した落書き。
『私とお姉ちゃんも、また仲の良い姉妹になれますように。』
………。
そこには、サキの字が書いてあった。
ページの片隅に小さく、だけど綺麗で読みやすいサキの文字。
それは、あの良い子のサキが借り物の本に残した落書き。
『私とお姉ちゃんも、また仲の良い姉妹になれますように。』
274:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:38:33.86:fRXJt0DW0 (41/43)
私はその場に崩れ落ちた。
全身からすっかり力が抜けていた。
私は全てを思い出した。
照「そうだ………」
照「そうだった………」
照「咲は私の妹で……」
照「私は咲から……逃げたんだ……」
照「強かったのは咲で……」
照「本当に弱かったのは………私だ………」
私はその場に崩れ落ちた。
全身からすっかり力が抜けていた。
私は全てを思い出した。
照「そうだ………」
照「そうだった………」
照「咲は私の妹で……」
照「私は咲から……逃げたんだ……」
照「強かったのは咲で……」
照「本当に弱かったのは………私だ………」
275:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:41:27.99:fRXJt0DW0 (42/43)
今日はここまでです。次がラストです。
まだ最後まで書き切れてませんが金曜にはあげられると思います。
もし読んで下さってる方がいれば最後までお付き合いして頂ければ嬉しいです。
今日はここまでです。次がラストです。
まだ最後まで書き切れてませんが金曜にはあげられると思います。
もし読んで下さってる方がいれば最後までお付き合いして頂ければ嬉しいです。
276:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 22:49:09.77:k3KxCIJwo (1/1)
乙
乙
277:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 23:02:11.36:hoIwGde/o (1/1)
乙!
なんか涙腺が緩んで仕方がない
乙!
なんか涙腺が緩んで仕方がない
278:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 23:17:25.91:nP/9KzsDO (1/1)
乙!
ぶっちゃけ咲知らないけど面白い
乙!
ぶっちゃけ咲知らないけど面白い
279:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 23:50:07.34:fRXJt0DW0 (43/43)
コメントありがとうございます。
>>278
ラストは咲世界の話が多くなって少し分かりづらいかもしれませんが
最後まで読んで感想を聞かせて頂けたら幸いです
コメントありがとうございます。
>>278
ラストは咲世界の話が多くなって少し分かりづらいかもしれませんが
最後まで読んで感想を聞かせて頂けたら幸いです
280:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/13(水) 23:57:55.70:F4W9yqARo (1/1)
乙!
咲しか知らないけど楽しませてもらってます
乙!
咲しか知らないけど楽しませてもらってます
281:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/14(木) 01:22:05.08:Gk2z+8hp0 (1/1)
乙、なんか知らんが鳥肌たったよ
テルをレキのポジションで認識してたのもあるけど
「私に妹はいない」がこういうかたちで反映されるとは
乙、なんか知らんが鳥肌たったよ
テルをレキのポジションで認識してたのもあるけど
「私に妹はいない」がこういうかたちで反映されるとは
282:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:37:02.59:QQE52b/s0 (1/62)
~寺院~
「お待ちしていました」
照「……そうか、付き人は君だったのか」
照「神代小蒔」
小蒔「お久しぶりです、照さん」
小蒔「あまり驚かないんですね」
照「今なら、君がここにいる意味も何となく分かる……」
照「君には初めから記憶があったのか?」
小蒔「はい。だから照さんたちと関わることを禁止されてたんです」
小蒔「寂しかったです。皆さん本当に幸せそうに暮らしてましたから」
照「………」
小蒔「行きましょう、照さん」
小蒔「健夜さんが中で待ってます」
~寺院~
「お待ちしていました」
照「……そうか、付き人は君だったのか」
照「神代小蒔」
小蒔「お久しぶりです、照さん」
小蒔「あまり驚かないんですね」
照「今なら、君がここにいる意味も何となく分かる……」
照「君には初めから記憶があったのか?」
小蒔「はい。だから照さんたちと関わることを禁止されてたんです」
小蒔「寂しかったです。皆さん本当に幸せそうに暮らしてましたから」
照「………」
小蒔「行きましょう、照さん」
小蒔「健夜さんが中で待ってます」
283:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:38:25.94:QQE52b/s0 (2/62)
健夜「記憶が戻ったんだね、照ちゃん」
照「……はい」
照「一つ、聞いてもいいですか?」
健夜「何でしょう?」
照「この世界はいったい何なんですか?」
健夜「申し訳ないけどそれは私にも分かりません」
健夜「この世界に来た時間は照ちゃんや菫ちゃんとそれほど差はないと思います」
健夜「気付いたら昔の記憶と、この世界での自分の役割と使命だけを認識して私は此処に立っていました」
照「……そうですか」
照「思い出しはしましたが、私の記憶だけでは分からないこともあります……」
照「教えて下さい、小鍛治プロ」
照「あの夏のインターハイで起こったことを全て」
健夜「いいでしょう」
健夜「だけどその前に場所を変えようか」
健夜「私たちにふさわしい場所に」
健夜「記憶が戻ったんだね、照ちゃん」
照「……はい」
照「一つ、聞いてもいいですか?」
健夜「何でしょう?」
照「この世界はいったい何なんですか?」
健夜「申し訳ないけどそれは私にも分かりません」
健夜「この世界に来た時間は照ちゃんや菫ちゃんとそれほど差はないと思います」
健夜「気付いたら昔の記憶と、この世界での自分の役割と使命だけを認識して私は此処に立っていました」
照「……そうですか」
照「思い出しはしましたが、私の記憶だけでは分からないこともあります……」
照「教えて下さい、小鍛治プロ」
照「あの夏のインターハイで起こったことを全て」
健夜「いいでしょう」
健夜「だけどその前に場所を変えようか」
健夜「私たちにふさわしい場所に」
284:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:39:57.70:QQE52b/s0 (3/62)
~西の森の小屋~
カチリ
ギー
照「……!」
照「これは……雀卓……」
健夜「その雀卓と牌には、あの夏のインターハイを戦ったたくさんの選手たちの想いが詰まってるんだよ」
照「………」
健夜「それじゃあ話そうか、あの夏のことを」
~西の森の小屋~
カチリ
ギー
照「……!」
照「これは……雀卓……」
健夜「その雀卓と牌には、あの夏のインターハイを戦ったたくさんの選手たちの想いが詰まってるんだよ」
照「………」
健夜「それじゃあ話そうか、あの夏のことを」
285:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:42:09.65:QQE52b/s0 (4/62)
健夜「『悪夢のインターハイ』、あの夏のインターハイは向こうの世界で後にそう呼ばれています。
『牌に愛されし者』と称された、類稀なる才能に恵まれた打ち手が大会期間中に四人も命を落としました」
健夜「一人目は天江衣」
健夜「インターハイ長野予選団体戦決勝、龍門渕高校の大将である彼女は後半戦の東ニ局に風越女子をトバして優勝を決めます。
ですが、自分と麻雀で楽しく遊べる相手がいないこと、自分が生涯孤独であることに希望を失った彼女は、
優勝決定直後に会場を抜けだし、放心状態でふらふらと夜道を歩いていたところを車に轢かれて絶命。
結果、龍門渕高校は代表を辞退しその時点で二位だった清澄高校が全国出場することになります」
健夜「『悪夢のインターハイ』、あの夏のインターハイは向こうの世界で後にそう呼ばれています。
『牌に愛されし者』と称された、類稀なる才能に恵まれた打ち手が大会期間中に四人も命を落としました」
健夜「一人目は天江衣」
健夜「インターハイ長野予選団体戦決勝、龍門渕高校の大将である彼女は後半戦の東ニ局に風越女子をトバして優勝を決めます。
ですが、自分と麻雀で楽しく遊べる相手がいないこと、自分が生涯孤独であることに希望を失った彼女は、
優勝決定直後に会場を抜けだし、放心状態でふらふらと夜道を歩いていたところを車に轢かれて絶命。
結果、龍門渕高校は代表を辞退しその時点で二位だった清澄高校が全国出場することになります」
286:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:43:19.96:QQE52b/s0 (5/62)
健夜「二人目は神代小蒔」
健夜「インターハイ団体戦決勝、永水女子の先鋒だった彼女は前年度チャンピオンである宮永照と激突。
劣勢に立たされた彼女は仲間のために絶対禁忌とされる凶悪な神をその身に降ろします。
そして、宮永照にあと一歩まで迫る活躍を魅せましたが、先鋒戦終了とともに意識不明の重体に陥り病院に運ばれます。
仲間が全身全霊で彼女のことを呼び続けましたが、そのまま意識が戻ることはありませんでした」
健夜「二人目は神代小蒔」
健夜「インターハイ団体戦決勝、永水女子の先鋒だった彼女は前年度チャンピオンである宮永照と激突。
劣勢に立たされた彼女は仲間のために絶対禁忌とされる凶悪な神をその身に降ろします。
そして、宮永照にあと一歩まで迫る活躍を魅せましたが、先鋒戦終了とともに意識不明の重体に陥り病院に運ばれます。
仲間が全身全霊で彼女のことを呼び続けましたが、そのまま意識が戻ることはありませんでした」
287:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:44:14.11:QQE52b/s0 (6/62)
健夜「三人目は宮永照」
健夜「インターハイ個人戦決勝で、彼女は実の妹である清澄高校の宮永咲と対決します。
決裂した姉への想い、天江衣の死、深い悲しみを乗り越えて本物の強さと覚悟をもって臨んだ妹と、
妹の強さから逃げ続けて目を背けることしかできなかった姉。
勝負は圧倒的な差をもって決着。
翌日、彼女は自宅で首を吊っているところを発見されました」
照「…………」
健夜「三人目は宮永照」
健夜「インターハイ個人戦決勝で、彼女は実の妹である清澄高校の宮永咲と対決します。
決裂した姉への想い、天江衣の死、深い悲しみを乗り越えて本物の強さと覚悟をもって臨んだ妹と、
妹の強さから逃げ続けて目を背けることしかできなかった姉。
勝負は圧倒的な差をもって決着。
翌日、彼女は自宅で首を吊っているところを発見されました」
照「…………」
288:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:45:10.43:QQE52b/s0 (7/62)
健夜「最後は宮永咲」
「一年生ながらインターハイの団体戦と個人戦でダブル優勝の快挙を果たした彼女。
その心には確かに本物の強さが宿っていました。
しかし、姉と仲直りしたいという彼女の追い続けた願いは無残にも砕け散り、彼女は絶望します。
姉の死から2日後、同じく自宅で首を吊って自らその命を絶ちました」
健夜「最後は宮永咲」
「一年生ながらインターハイの団体戦と個人戦でダブル優勝の快挙を果たした彼女。
その心には確かに本物の強さが宿っていました。
しかし、姉と仲直りしたいという彼女の追い続けた願いは無残にも砕け散り、彼女は絶望します。
姉の死から2日後、同じく自宅で首を吊って自らその命を絶ちました」
289:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:46:30.30:QQE52b/s0 (8/62)
照「やっぱり……咲は私の後を追って……」
照「私のせいで……」
健夜「そうです」
健夜「貴方の弱さのせいで咲ちゃんは死んだんです」
照「それじゃあまさか……菫たちも……」
健夜「安心してください」
健夜「彼女たちはその後も強く生きていきました」
健夜「元の世界とこの世界の時間軸がどうなってるかは分かりませんが」
健夜「彼女たちにも私のように自分の生涯の記憶が眠っているはずです」
照「やっぱり……咲は私の後を追って……」
照「私のせいで……」
健夜「そうです」
健夜「貴方の弱さのせいで咲ちゃんは死んだんです」
照「それじゃあまさか……菫たちも……」
健夜「安心してください」
健夜「彼女たちはその後も強く生きていきました」
健夜「元の世界とこの世界の時間軸がどうなってるかは分かりませんが」
健夜「彼女たちにも私のように自分の生涯の記憶が眠っているはずです」
290:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:47:26.47:QQE52b/s0 (9/62)
照「じゃあ、菫たちはどうしてここに……?」
健夜「貴方達と最も親しい存在だったからでしょう」
健夜「この世界が呼び寄せたのか」
健夜「貴方達の魂が彼女達を求めたのか」
健夜「あるいは、彼女達の心が望んでここにやってきたのかは分かりません」
健夜「いずれにせよ、彼女達はこんな世界まで貴方達の為についてきてくれた」
健夜「貴方達の心が救われるようにずっと側にいてくれた」
健夜「貴方達の死に誰より傷つき、悲しんだはずなのに」
照「…………うぅ」
照「うわあああああああああああああ」
照「じゃあ、菫たちはどうしてここに……?」
健夜「貴方達と最も親しい存在だったからでしょう」
健夜「この世界が呼び寄せたのか」
健夜「貴方達の魂が彼女達を求めたのか」
健夜「あるいは、彼女達の心が望んでここにやってきたのかは分かりません」
健夜「いずれにせよ、彼女達はこんな世界まで貴方達の為についてきてくれた」
健夜「貴方達の心が救われるようにずっと側にいてくれた」
健夜「貴方達の死に誰より傷つき、悲しんだはずなのに」
照「…………うぅ」
照「うわあああああああああああああ」
291:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:48:34.02:QQE52b/s0 (10/62)
健夜「もちろん彼女達だけじゃありません」
健夜「あの夏のインターハイは、参加していた全ての選手の心に一生癒えることのない傷痕を残した」
健夜「………皮肉なものだね」
健夜「あの夏を経験した子達からは、後にトッププロとなる打ち手や優秀な指導者がたくさん誕生した」
健夜「まるであの悪夢を必死に振り払うかのように」
健夜「もう二度と一緒に打つことすら叶わない貴方達の強さを越えようとするかのように」
健夜「みんな、本当に強くなっていった」
健夜「菫ちゃんとも、淡ちゃんとも、和ちゃんとも、タイトル戦で何度も顔を合わせたよ」
健夜「照ちゃんにもあの子たちが戦う姿を見せてあげたかった」
照「ぅぐ……ひっぐ……」ポロポロ
照「私には……みんなに合わせる顔なんてない……」
照「私は……誰よりも弱いから……」
健夜「………」
健夜「もちろん彼女達だけじゃありません」
健夜「あの夏のインターハイは、参加していた全ての選手の心に一生癒えることのない傷痕を残した」
健夜「………皮肉なものだね」
健夜「あの夏を経験した子達からは、後にトッププロとなる打ち手や優秀な指導者がたくさん誕生した」
健夜「まるであの悪夢を必死に振り払うかのように」
健夜「もう二度と一緒に打つことすら叶わない貴方達の強さを越えようとするかのように」
健夜「みんな、本当に強くなっていった」
健夜「菫ちゃんとも、淡ちゃんとも、和ちゃんとも、タイトル戦で何度も顔を合わせたよ」
健夜「照ちゃんにもあの子たちが戦う姿を見せてあげたかった」
照「ぅぐ……ひっぐ……」ポロポロ
照「私には……みんなに合わせる顔なんてない……」
照「私は……誰よりも弱いから……」
健夜「………」
292:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:50:26.88:QQE52b/s0 (11/62)
健夜「さっきは厳しい言い方したね」
健夜「照ちゃんに本当の自分と向き合ってもらうためには仕方なかったんだ」
健夜「でも、私は知ってるよ」
健夜「全国の頂点に立つのがどれほど凄いことか」
健夜「照ちゃんの麻雀がどれほど素晴らしいか」
健夜「どうしてそんなに咲ちゃんの麻雀を恐れるの?」
照「……」
照「咲の強さは、私の弱さそのものだから……」
照「最初はただ、妹に大好きな麻雀で負けて悔しいって気持ちだった……」
照「でも、その想いは少しずつ積み重なっていって……」
照「あるとき、咲の麻雀が原因で親が喧嘩して……結局両親は別居することになった」
照「咲の麻雀なんてほんのきっかけにすぎなかったのに、私はそれを全て咲のせいにした」
照「誰に責任があったかなんて本当はどうでもよかったんだ……」
照「私はただ……咲に麻雀をやめさせたかっただけだった………」
健夜「………」
健夜「さっきは厳しい言い方したね」
健夜「照ちゃんに本当の自分と向き合ってもらうためには仕方なかったんだ」
健夜「でも、私は知ってるよ」
健夜「全国の頂点に立つのがどれほど凄いことか」
健夜「照ちゃんの麻雀がどれほど素晴らしいか」
健夜「どうしてそんなに咲ちゃんの麻雀を恐れるの?」
照「……」
照「咲の強さは、私の弱さそのものだから……」
照「最初はただ、妹に大好きな麻雀で負けて悔しいって気持ちだった……」
照「でも、その想いは少しずつ積み重なっていって……」
照「あるとき、咲の麻雀が原因で親が喧嘩して……結局両親は別居することになった」
照「咲の麻雀なんてほんのきっかけにすぎなかったのに、私はそれを全て咲のせいにした」
照「誰に責任があったかなんて本当はどうでもよかったんだ……」
照「私はただ……咲に麻雀をやめさせたかっただけだった………」
健夜「………」
293:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:51:55.23:QQE52b/s0 (12/62)
照「咲の性格なら、散々罵ってやればもう牌を握らなくなるだろうって思った……」
照「そして、それはまんまと成功した……」
照「白糸台に入った私は、自分でもどんどん強くなるのが分かって、麻雀が楽しくて仕方なくて」
照「私が咲にした最低なことをいつしか自分で正当化していた」
照「咲がいたから悪いんだって、咲さえいなければ私はどこまでも強くなれるって……」
健夜「……」
照「でも……咲はまた麻雀を始めた」
照「昔よりもっと強くなって私に会いにきた」
照「私なんかと仲直りしたいって、それだけのために……」
照「咲の強さが怖かった、また麻雀で負けるのが怖かった……」
照「自分の弱さや醜さを思い知らされてるみたいで、どうしようもなく怖かった……」
照「そしてインターハイの決勝で咲に負けて、私は自分の弱さにもう耐えられなくなったんだ…………」
健夜「……」
照「咲の性格なら、散々罵ってやればもう牌を握らなくなるだろうって思った……」
照「そして、それはまんまと成功した……」
照「白糸台に入った私は、自分でもどんどん強くなるのが分かって、麻雀が楽しくて仕方なくて」
照「私が咲にした最低なことをいつしか自分で正当化していた」
照「咲がいたから悪いんだって、咲さえいなければ私はどこまでも強くなれるって……」
健夜「……」
照「でも……咲はまた麻雀を始めた」
照「昔よりもっと強くなって私に会いにきた」
照「私なんかと仲直りしたいって、それだけのために……」
照「咲の強さが怖かった、また麻雀で負けるのが怖かった……」
照「自分の弱さや醜さを思い知らされてるみたいで、どうしようもなく怖かった……」
照「そしてインターハイの決勝で咲に負けて、私は自分の弱さにもう耐えられなくなったんだ…………」
健夜「……」
294:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:53:27.32:QQE52b/s0 (13/62)
照「咲には、きっともう全て見抜かれてる………」
照「こんなに弱い私に幻滅してるに決まってる………」
健夜「咲ちゃんは貴方の強さを今でも信じてる」
照「どうしてそんなことが言えるんですか……?」
照「現に咲は私に何も話してくれなかった……」
照「きっと、事実を知ると私がまた耐えられなくなると思ったから……」
健夜「咲ちゃんから貴方に真実を伝えれば、また同じ過ちを繰り返すだけだと彼女も分かってた」
健夜「だから、貴方が自分で気付いてくれるのを信じてずっと待ってたんだよ」
――
―――
――――
照「咲には、きっともう全て見抜かれてる………」
照「こんなに弱い私に幻滅してるに決まってる………」
健夜「咲ちゃんは貴方の強さを今でも信じてる」
照「どうしてそんなことが言えるんですか……?」
照「現に咲は私に何も話してくれなかった……」
照「きっと、事実を知ると私がまた耐えられなくなると思ったから……」
健夜「咲ちゃんから貴方に真実を伝えれば、また同じ過ちを繰り返すだけだと彼女も分かってた」
健夜「だから、貴方が自分で気付いてくれるのを信じてずっと待ってたんだよ」
――
―――
――――
295:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:54:54.31:QQE52b/s0 (14/62)
咲「どうして私にだけ記憶が戻ったんでしょうか……?」
健夜「それは多分、衣ちゃんの喪失が元の世界の咲ちゃんにとって決して忘れることのできない出来事だったから」
咲「………」
健夜「衣ちゃんがいなくなったショックが咲ちゃんの中に眠っていた記憶を呼び覚ましたんだと思う」
咲「私……衣ちゃんに謝らなきゃいけなかったのに……」
咲「私が弱かったから……衣ちゃんの遊び相手になってあげることができなかった……」
咲「そのせいで衣ちゃんは……」ポロポロ
健夜「咲ちゃんのせいじゃないよ」
健夜「ずっと自分を愛してくれていた存在に気付けなかったのが衣ちゃんの弱さだったんだ」
咲「でも、透華さんたちすごく泣いてた……あんなに人が悲しむところを見たのは初めてだった……」
咲「なのに、透華さんは言ってくれたんです……真っ赤に腫らした瞳で私をまっすぐ見つめて……」
咲「『我が県の代表として胸を張って戦ってきて下さい』って」
咲「どうして私にだけ記憶が戻ったんでしょうか……?」
健夜「それは多分、衣ちゃんの喪失が元の世界の咲ちゃんにとって決して忘れることのできない出来事だったから」
咲「………」
健夜「衣ちゃんがいなくなったショックが咲ちゃんの中に眠っていた記憶を呼び覚ましたんだと思う」
咲「私……衣ちゃんに謝らなきゃいけなかったのに……」
咲「私が弱かったから……衣ちゃんの遊び相手になってあげることができなかった……」
咲「そのせいで衣ちゃんは……」ポロポロ
健夜「咲ちゃんのせいじゃないよ」
健夜「ずっと自分を愛してくれていた存在に気付けなかったのが衣ちゃんの弱さだったんだ」
咲「でも、透華さんたちすごく泣いてた……あんなに人が悲しむところを見たのは初めてだった……」
咲「なのに、透華さんは言ってくれたんです……真っ赤に腫らした瞳で私をまっすぐ見つめて……」
咲「『我が県の代表として胸を張って戦ってきて下さい』って」
296:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:56:01.21:QQE52b/s0 (15/62)
咲「……だから私は誓ったんです」
咲「この人たちの分まで強くならなきゃって、もう二度とくよくよするのはやめようって」
健夜「全国での咲ちゃんは間違いなく誰よりも強かったよ、高校時代の私よりもずっと」
健夜「それに、すごく堂々としてた」
咲「でも、結局私は最低なことをしてしまいました……」
咲「私を愛してくれる人の気持ちも考えないで、私は自分で……」
咲「知ってたはずなのに」
咲「残された人がどれだけ悲しむか、私は知ってたはずなのに……」
咲「和ちゃんたちも、きっと……」
咲「ぅぐ……ひっぐ……」ポロポロ
健夜「誰も咲ちゃんを責めることなんてできないよ」
健夜「一人の女の子が背負うには、あまりにも辛すぎる運命だった」
咲「……だから私は誓ったんです」
咲「この人たちの分まで強くならなきゃって、もう二度とくよくよするのはやめようって」
健夜「全国での咲ちゃんは間違いなく誰よりも強かったよ、高校時代の私よりもずっと」
健夜「それに、すごく堂々としてた」
咲「でも、結局私は最低なことをしてしまいました……」
咲「私を愛してくれる人の気持ちも考えないで、私は自分で……」
咲「知ってたはずなのに」
咲「残された人がどれだけ悲しむか、私は知ってたはずなのに……」
咲「和ちゃんたちも、きっと……」
咲「ぅぐ……ひっぐ……」ポロポロ
健夜「誰も咲ちゃんを責めることなんてできないよ」
健夜「一人の女の子が背負うには、あまりにも辛すぎる運命だった」
297:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:57:55.70:QQE52b/s0 (16/62)
咲「………私はこれから、どうすればいいんでしょうか」
健夜「どうすればいいかじゃないよ、咲ちゃん」
健夜「大事なのは咲ちゃんがどうしたいかなんだよ」
咲「……」
健夜「みんなに全てを話すのか」
健夜「このまま知らないふりしてこの世界で暮らしていくのか」
健夜「咲ちゃんはどうしたいの?」
咲「………私は」
咲「お姉ちゃんと仲直りしたい……」
咲「お姉ちゃんに私と向き合ってほしい……」
咲「やっぱり私は……お姉ちゃんが大好きだから……」
健夜「それなら照ちゃんに全てを伝える?」
咲「……きっとそれじゃあダメなんです」
咲「そうしたら、きっと私たちは同じ失敗を繰り返す」
健夜「………」
咲「私はお姉ちゃんが気付いてくれるのを待ちます」
咲「私の気持ちは全部あの夏のインターハイで伝えたから」
咲「………私はこれから、どうすればいいんでしょうか」
健夜「どうすればいいかじゃないよ、咲ちゃん」
健夜「大事なのは咲ちゃんがどうしたいかなんだよ」
咲「……」
健夜「みんなに全てを話すのか」
健夜「このまま知らないふりしてこの世界で暮らしていくのか」
健夜「咲ちゃんはどうしたいの?」
咲「………私は」
咲「お姉ちゃんと仲直りしたい……」
咲「お姉ちゃんに私と向き合ってほしい……」
咲「やっぱり私は……お姉ちゃんが大好きだから……」
健夜「それなら照ちゃんに全てを伝える?」
咲「……きっとそれじゃあダメなんです」
咲「そうしたら、きっと私たちは同じ失敗を繰り返す」
健夜「………」
咲「私はお姉ちゃんが気付いてくれるのを待ちます」
咲「私の気持ちは全部あの夏のインターハイで伝えたから」
298:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 22:58:40.68:QQE52b/s0 (17/62)
健夜「もし照ちゃんが自分で気付いたとしても、それを受け止められるかどうかは分からないよ」
咲「……この世界で出会ったテルは、私が知ってるお姉ちゃんとは違ってました」
咲「昔のお姉ちゃんは麻雀をするときはすごく真剣で、ひたむきで、少し意地になるところがあって」
咲「でも、普段はマイペースでどこか抜けてるようなところがある人でした」
咲「だけど、この世界のテルは本当に頼りになって、かっこよくて、優しくて、いつも私を見守っててくれた」
健夜「………」
咲「私が清澄のみんなや衣ちゃんと出会って強くなれたように」
咲「お姉ちゃんもきっと白糸台やこの世界で暮らした時間を過ごして変わったと思うんです」
咲「私は信じてます、今のお姉ちゃんの強さを」
咲(それに、最後の希望はあの物語に託したから……)
健夜「………」
健夜「分かった、それが咲ちゃんの選択なら」
――――
―――
――
健夜「もし照ちゃんが自分で気付いたとしても、それを受け止められるかどうかは分からないよ」
咲「……この世界で出会ったテルは、私が知ってるお姉ちゃんとは違ってました」
咲「昔のお姉ちゃんは麻雀をするときはすごく真剣で、ひたむきで、少し意地になるところがあって」
咲「でも、普段はマイペースでどこか抜けてるようなところがある人でした」
咲「だけど、この世界のテルは本当に頼りになって、かっこよくて、優しくて、いつも私を見守っててくれた」
健夜「………」
咲「私が清澄のみんなや衣ちゃんと出会って強くなれたように」
咲「お姉ちゃんもきっと白糸台やこの世界で暮らした時間を過ごして変わったと思うんです」
咲「私は信じてます、今のお姉ちゃんの強さを」
咲(それに、最後の希望はあの物語に託したから……)
健夜「………」
健夜「分かった、それが咲ちゃんの選択なら」
――――
―――
――
299:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:00:16.05:QQE52b/s0 (18/62)
照「………」
健夜「私は咲ちゃんにこの小屋を掃除して、雀卓と牌を磨き続けるよう命じた」
健夜「彼女には一人になる時間が必要だったから」
健夜「一人記憶が戻った苦しみと、自分たち姉妹が犯した過ちに彼女はここで向き合い続けた」
健夜「貴方の強さをひたすら信じながら」
照「………」
健夜「次は照ちゃんの番だよ」
健夜「彼女は貴方の答えを待ってる」
照「………私は」
照「もう咲から逃げません」
照「咲の強さと向き合います」
照「だから協力して下さい、小鍛治プロ」
照「私を咲と戦わせて下さい……!」
照「………」
健夜「私は咲ちゃんにこの小屋を掃除して、雀卓と牌を磨き続けるよう命じた」
健夜「彼女には一人になる時間が必要だったから」
健夜「一人記憶が戻った苦しみと、自分たち姉妹が犯した過ちに彼女はここで向き合い続けた」
健夜「貴方の強さをひたすら信じながら」
照「………」
健夜「次は照ちゃんの番だよ」
健夜「彼女は貴方の答えを待ってる」
照「………私は」
照「もう咲から逃げません」
照「咲の強さと向き合います」
照「だから協力して下さい、小鍛治プロ」
照「私を咲と戦わせて下さい……!」
300:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:01:09.84:QQE52b/s0 (19/62)
健夜「そう言ってくれるのを待ってたよ」
健夜「入ってきていいよ、小蒔ちゃん、咲ちゃん」
照「……!」
ギー
小蒔「失礼します」
咲「お姉ちゃん……」
照「咲……」
照「麻雀をしよう」
健夜「そう言ってくれるのを待ってたよ」
健夜「入ってきていいよ、小蒔ちゃん、咲ちゃん」
照「……!」
ギー
小蒔「失礼します」
咲「お姉ちゃん……」
照「咲……」
照「麻雀をしよう」
301:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:02:30.08:QQE52b/s0 (20/62)
健夜「ルールはインターハイ個人戦といっしょでいいよね」
照「はい」
健夜「これは貴方達二人の勝負。私は第三者に徹するから心配しなくていいよ」
小蒔「あ、あの!」
小蒔「私の素の麻雀の実力では御二人に到底及びません」
小蒔「ですが、私はもう麻雀で神様の力に頼りたくはありません」
小蒔「私のわがままに快く付き合ってくれて」
小蒔「負けたっていつでも笑顔で迎えてくれた霞ちゃんたちの優しさを裏切るようなことはもうしたくないんです」
小蒔「私なりに誠意を込めて全力で打ちます」
小蒔「なので、私の打牌が御二人の勝負に水を差すかもしれないことをどうかお許し下さい!」ペコ
照「真剣に麻雀を打っている者を誰も咎めたりしないよ」
咲「よろしくね、小蒔ちゃん」
小蒔「はい! ありがとうございます!」
健夜「それじゃあ始めようか」
健夜「ルールはインターハイ個人戦といっしょでいいよね」
照「はい」
健夜「これは貴方達二人の勝負。私は第三者に徹するから心配しなくていいよ」
小蒔「あ、あの!」
小蒔「私の素の麻雀の実力では御二人に到底及びません」
小蒔「ですが、私はもう麻雀で神様の力に頼りたくはありません」
小蒔「私のわがままに快く付き合ってくれて」
小蒔「負けたっていつでも笑顔で迎えてくれた霞ちゃんたちの優しさを裏切るようなことはもうしたくないんです」
小蒔「私なりに誠意を込めて全力で打ちます」
小蒔「なので、私の打牌が御二人の勝負に水を差すかもしれないことをどうかお許し下さい!」ペコ
照「真剣に麻雀を打っている者を誰も咎めたりしないよ」
咲「よろしくね、小蒔ちゃん」
小蒔「はい! ありがとうございます!」
健夜「それじゃあ始めようか」
302:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:03:44.62:QQE52b/s0 (21/62)
ああ、何て懐かしい感触だろう。
私が死んでからどれほどの時が過ぎたのかは分からない。
でも、この世界で過ごした三年の月日は確かにあって、
麻雀なんてものの存在を知らずに暮らした穏やかな日常は確かにあって、
それなのに、この体は麻雀のことをずっと忘れずにいたんだ。
ドラをめくり、山から配牌を取り、理牌するまでの流れるような動き。
その全てをこの指は淀みなく実行してくれた。
………。
でも、いつまでもそんな感傷に浸ってる場合じゃない。
私は乗り越えなきゃならない、自分の弱さを。
そして、目の前に居る咲の強さを。
ああ、何て懐かしい感触だろう。
私が死んでからどれほどの時が過ぎたのかは分からない。
でも、この世界で過ごした三年の月日は確かにあって、
麻雀なんてものの存在を知らずに暮らした穏やかな日常は確かにあって、
それなのに、この体は麻雀のことをずっと忘れずにいたんだ。
ドラをめくり、山から配牌を取り、理牌するまでの流れるような動き。
その全てをこの指は淀みなく実行してくれた。
………。
でも、いつまでもそんな感傷に浸ってる場合じゃない。
私は乗り越えなきゃならない、自分の弱さを。
そして、目の前に居る咲の強さを。
303:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:04:33.95:QQE52b/s0 (22/62)
咲「ツモ。2000、4000です」
照「ぐっ……」
健夜「咲ちゃんのトップで終了だね」
照「………もう一回、お願いします」
咲「……うん」
咲「ツモ。2000、4000です」
照「ぐっ……」
健夜「咲ちゃんのトップで終了だね」
照「………もう一回、お願いします」
咲「……うん」
304:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:05:45.68:QQE52b/s0 (23/62)
記憶を取り戻してからもその衝撃で忘れていた感情を徐々に思い出す。
私は麻雀が大好きだって気持ち。
今だって抑えるのがやっとなほど悔しくてたまらないのに、
それとは無関係に麻雀が楽しいって気持ちが体の奥底からどんどん溢れ出す。
麻雀は昔から咲のほうが強かった。
だけど、麻雀を好きだって気持ちだけは咲に負けたことはないって自信がある。
誰よりも牌を愛し続けてきたっていう想いがある。
でも、勝負の前じゃそんな気持ちなんて何の役にも立たない。
記憶を取り戻してからもその衝撃で忘れていた感情を徐々に思い出す。
私は麻雀が大好きだって気持ち。
今だって抑えるのがやっとなほど悔しくてたまらないのに、
それとは無関係に麻雀が楽しいって気持ちが体の奥底からどんどん溢れ出す。
麻雀は昔から咲のほうが強かった。
だけど、麻雀を好きだって気持ちだけは咲に負けたことはないって自信がある。
誰よりも牌を愛し続けてきたっていう想いがある。
でも、勝負の前じゃそんな気持ちなんて何の役にも立たない。
305:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:06:32.07:QQE52b/s0 (24/62)
咲「ロン。1600です」
健夜「また咲ちゃんの勝ちだね」
照「…………もう一回……お願いします」ギリッ
咲「………」
咲「ロン。1600です」
健夜「また咲ちゃんの勝ちだね」
照「…………もう一回……お願いします」ギリッ
咲「………」
306:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:08:54.63:QQE52b/s0 (25/62)
むしろ、誰よりも麻雀を愛してしまったのがそもそも間違いだったのかもしれない。
麻雀をこれほど好きにならなければ、咲の強さを笑って褒めてやることができたんだろう。
全国優勝した咲を抱きしめて、一緒に喜びを分かち合うなんて未来もあったのかもしれない。
………でも、最後までこの感情だけは捨てることができなかった。
どれだけ咲に負けても、麻雀を嫌いになることだけはできなかった。
―――その結果、私は道を踏み外した。
咲を拒絶して手に入れた偽物の強さと、
咲から逃げて辿りついた空虚な山の頂きで、
いつしか私は引き返す道を完全に見失っていた。
むしろ、誰よりも麻雀を愛してしまったのがそもそも間違いだったのかもしれない。
麻雀をこれほど好きにならなければ、咲の強さを笑って褒めてやることができたんだろう。
全国優勝した咲を抱きしめて、一緒に喜びを分かち合うなんて未来もあったのかもしれない。
………でも、最後までこの感情だけは捨てることができなかった。
どれだけ咲に負けても、麻雀を嫌いになることだけはできなかった。
―――その結果、私は道を踏み外した。
咲を拒絶して手に入れた偽物の強さと、
咲から逃げて辿りついた空虚な山の頂きで、
いつしか私は引き返す道を完全に見失っていた。
307:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:11:05.56:QQE52b/s0 (26/62)
咲「ツモ。500、1000です」
照「くそっ!!」
ガシャン!
照「はぁ………はぁ………」
咲「………」
照「…………もう一回だ」
小蒔「ちょっと待って下さい」
照「………何だ?」
小蒔「これが本当に、照さんの麻雀ですか?」
バンッ!
照「君に何が分かる!!」
小蒔「分かります」
小蒔「インターハイ団体戦決勝、私が命を賭して勝負を挑んだ貴方はこんなものじゃありませんでした」
小蒔「あのときの照さんはとても、とても強かったです」
照「………」
咲「ツモ。500、1000です」
照「くそっ!!」
ガシャン!
照「はぁ………はぁ………」
咲「………」
照「…………もう一回だ」
小蒔「ちょっと待って下さい」
照「………何だ?」
小蒔「これが本当に、照さんの麻雀ですか?」
バンッ!
照「君に何が分かる!!」
小蒔「分かります」
小蒔「インターハイ団体戦決勝、私が命を賭して勝負を挑んだ貴方はこんなものじゃありませんでした」
小蒔「あのときの照さんはとても、とても強かったです」
照「………」
308:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:12:44.08:QQE52b/s0 (27/62)
健夜「照ちゃん、牌の声が聞こえる?」
照「声………?」
健夜「最初に言ったよね、ここにはあの夏のインターハイを戦った選手達の想いが詰まってるって」
健夜「感じてごらん」
照「………」
健夜「貴方が倒してきた彼女達に」
健夜「貴方が共に戦ってきた仲間達に」
健夜「今のが貴方の麻雀だって胸を張って言える?」
照「…………」グッ
健夜「照ちゃん、牌の声が聞こえる?」
照「声………?」
健夜「最初に言ったよね、ここにはあの夏のインターハイを戦った選手達の想いが詰まってるって」
健夜「感じてごらん」
照「………」
健夜「貴方が倒してきた彼女達に」
健夜「貴方が共に戦ってきた仲間達に」
健夜「今のが貴方の麻雀だって胸を張って言える?」
照「…………」グッ
309:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:13:55.30:QQE52b/s0 (28/62)
健夜「照ちゃん、貴方がどうして個人戦決勝で咲ちゃんにあれほど惨敗したのか分かる?」
照「それは、私が咲よりはるかに弱かったから………」
照「それだけです……」
健夜「それは違うよ」
健夜「照ちゃんの麻雀は本物だよ」
健夜「だけど、貴方は咲ちゃんと対決するとき心の中ではひどく動揺していた」
健夜「自分が咲ちゃんにしてしまったことをずっとずっと後悔し続けていた」
健夜「その結果、貴方は咲ちゃんから逃げ出した場所で手にした強さを自分自身で全て否定してしまった」
照「………」
健夜「確かに貴方は道を間違えたかもしれない」
健夜「でも、だからといって絶対に引き返さなきゃならない必要はないんだよ」
健夜「そこで出会ったことを誇っちゃいけないことにはならないんだよ」
照「………!」
健夜「私にも見せてほしいな、チャンピオン宮永照の麻雀を」
照「………はい!」
健夜「照ちゃん、貴方がどうして個人戦決勝で咲ちゃんにあれほど惨敗したのか分かる?」
照「それは、私が咲よりはるかに弱かったから………」
照「それだけです……」
健夜「それは違うよ」
健夜「照ちゃんの麻雀は本物だよ」
健夜「だけど、貴方は咲ちゃんと対決するとき心の中ではひどく動揺していた」
健夜「自分が咲ちゃんにしてしまったことをずっとずっと後悔し続けていた」
健夜「その結果、貴方は咲ちゃんから逃げ出した場所で手にした強さを自分自身で全て否定してしまった」
照「………」
健夜「確かに貴方は道を間違えたかもしれない」
健夜「でも、だからといって絶対に引き返さなきゃならない必要はないんだよ」
健夜「そこで出会ったことを誇っちゃいけないことにはならないんだよ」
照「………!」
健夜「私にも見せてほしいな、チャンピオン宮永照の麻雀を」
照「………はい!」
310:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:15:28.78:QQE52b/s0 (29/62)
私が手にしたものは偽物なんだと思っていた。
いや、そう自分を貶めることで私は咲に贖罪した気になっていたんだ。
でも、白糸台高校で過ごした時間は私にとって何よりもかけがえのない宝物で、
卑屈ばかりだった私の人生をきらきら照らしてくれた。
嬉しかった。
あの日々が決して偽物なんかじゃないと言ってもらえたことが、
あの思い出を大切に抱きしめていてもいいんだと思えたことが、
本当に、本当に嬉しかった。
一年生のインターハイで全国優勝したときのことを思い出す。
初めて自分の強さを誰かに認めてもらえた気がして流れたあの涙も、全部、全部、嘘なんかじゃないんだ。
私が手にしたものは偽物なんだと思っていた。
いや、そう自分を貶めることで私は咲に贖罪した気になっていたんだ。
でも、白糸台高校で過ごした時間は私にとって何よりもかけがえのない宝物で、
卑屈ばかりだった私の人生をきらきら照らしてくれた。
嬉しかった。
あの日々が決して偽物なんかじゃないと言ってもらえたことが、
あの思い出を大切に抱きしめていてもいいんだと思えたことが、
本当に、本当に嬉しかった。
一年生のインターハイで全国優勝したときのことを思い出す。
初めて自分の強さを誰かに認めてもらえた気がして流れたあの涙も、全部、全部、嘘なんかじゃないんだ。
311:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:17:03.27:QQE52b/s0 (30/62)
自信が湧き上がってくるのを感じる。
それは、散々間違った私が白糸台高校で手にした本物の強さ。
牌に耳を澄ます。
――――感じる。
あの夏に賭けたみんなの笑ってる声、泣いてる声。
汗と涙が染み込んだ一つ一つの牌にそれぞれの想いが込められれてるんだ。
思えば、麻雀を通して私はたくさんの人たちと出会ってきたんだな。
辻垣内智葉、同じ東京ということもあって彼女とは何度も対戦した。
真面目そうな外見とは裏腹にすごく強気な人で、どんな苦境にも彼女は逃げずに立ち向かってきた。
白水哩と鶴田姫子、最初に彼女たちの麻雀を照魔境で覗いたときは驚かされたものだ。
縛りをかけてお互いの麻雀をリンクさせるなんてどうすればあんな能力に目覚めたんだろう。
気になるけど知らないままのほうがいい気がする。
自信が湧き上がってくるのを感じる。
それは、散々間違った私が白糸台高校で手にした本物の強さ。
牌に耳を澄ます。
――――感じる。
あの夏に賭けたみんなの笑ってる声、泣いてる声。
汗と涙が染み込んだ一つ一つの牌にそれぞれの想いが込められれてるんだ。
思えば、麻雀を通して私はたくさんの人たちと出会ってきたんだな。
辻垣内智葉、同じ東京ということもあって彼女とは何度も対戦した。
真面目そうな外見とは裏腹にすごく強気な人で、どんな苦境にも彼女は逃げずに立ち向かってきた。
白水哩と鶴田姫子、最初に彼女たちの麻雀を照魔境で覗いたときは驚かされたものだ。
縛りをかけてお互いの麻雀をリンクさせるなんてどうすればあんな能力に目覚めたんだろう。
気になるけど知らないままのほうがいい気がする。
312:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:18:15.25:QQE52b/s0 (31/62)
最後の夏の準決勝で戦った三人はみんな面白い打ち手だった。
園城寺怜、未来が視えるなんて羨ましい力だ。
誰よりも強い想いをもった打ち手だった。先鋒戦が終わって倒れたときはすっごく心配させられたけど。
花田煌、あまり雀力は高くないのにトバされたことがないっていう不思議な人。
あの変な口癖の意味が気になってたけど聞きそびれちゃったな。私って人見知りだから。
松実玄、ある意味最強の支配力を持った打ち手。
ドラが全くこない麻雀なんてさすがに初体験だった。
彼女の覚悟と能力を越えた打ち筋に最後はやられちゃったっけ。
対局中は三人の包囲網を突破するのに必死だったけど、今思い返してみればあんなに愉快な卓はそうそう無かった。
本当にたくさんの人と戦ってきた。
私は彼女たちを倒してチャンピオンになったんだ。
誇りに思わなきゃ、彼女たちに顔向けできない。
最後の夏の準決勝で戦った三人はみんな面白い打ち手だった。
園城寺怜、未来が視えるなんて羨ましい力だ。
誰よりも強い想いをもった打ち手だった。先鋒戦が終わって倒れたときはすっごく心配させられたけど。
花田煌、あまり雀力は高くないのにトバされたことがないっていう不思議な人。
あの変な口癖の意味が気になってたけど聞きそびれちゃったな。私って人見知りだから。
松実玄、ある意味最強の支配力を持った打ち手。
ドラが全くこない麻雀なんてさすがに初体験だった。
彼女の覚悟と能力を越えた打ち筋に最後はやられちゃったっけ。
対局中は三人の包囲網を突破するのに必死だったけど、今思い返してみればあんなに愉快な卓はそうそう無かった。
本当にたくさんの人と戦ってきた。
私は彼女たちを倒してチャンピオンになったんだ。
誇りに思わなきゃ、彼女たちに顔向けできない。
313:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:19:42.42:QQE52b/s0 (32/62)
そして、白糸台高校のみんな。
尭深と誠子は二人とも謙虚で良い後輩だった。
ただ、麻雀では能力に頼り過ぎてるところがあったからもっとちゃんと指導してあげればよかったな。
淡が入部してきたときはびっくりした。
だって、あんなに私に懐いてくる子なんて初めてだったから。
団体戦決勝で咲に負けて泣いてたあの子に私は何も言葉をかけてあげることができなかった。
先輩らしく「仇は私がとってあげる」とか言ってみたかったんだけど。
ごめんね、淡。可愛い可愛い私の後輩。
そして、菫。
白糸台にいたときもこの世界に来てからも菫には迷惑をかけっぱなしだ。
菫はずっと側にいてくれて、菫の隣はすごく居心地がよくて……。
誰よりも感謝してる。ありがとう、菫。
そして、白糸台高校のみんな。
尭深と誠子は二人とも謙虚で良い後輩だった。
ただ、麻雀では能力に頼り過ぎてるところがあったからもっとちゃんと指導してあげればよかったな。
淡が入部してきたときはびっくりした。
だって、あんなに私に懐いてくる子なんて初めてだったから。
団体戦決勝で咲に負けて泣いてたあの子に私は何も言葉をかけてあげることができなかった。
先輩らしく「仇は私がとってあげる」とか言ってみたかったんだけど。
ごめんね、淡。可愛い可愛い私の後輩。
そして、菫。
白糸台にいたときもこの世界に来てからも菫には迷惑をかけっぱなしだ。
菫はずっと側にいてくれて、菫の隣はすごく居心地がよくて……。
誰よりも感謝してる。ありがとう、菫。
314:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:20:32.73:QQE52b/s0 (33/62)
白糸台のみんなが私を応援してくれる声が、私に向けてくれる期待の眼差しが、
私の背中をいつも押してくれた。
私を前へ前へと歩かせてくれた。
重圧が力へと変わるその瞬間、私は誰が相手だって負けることはないとそう思えた。
白糸台のみんなが私を応援してくれる声が、私に向けてくれる期待の眼差しが、
私の背中をいつも押してくれた。
私を前へ前へと歩かせてくれた。
重圧が力へと変わるその瞬間、私は誰が相手だって負けることはないとそう思えた。
315:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:21:48.92:QQE52b/s0 (34/62)
咲、私は強くなったよ。
咲を傷つけて手にした強さだけど、それでも私はこの強さが愛しくてたまらないんだ。
偽物だなんて思いたくないんだ。
………。
咲は強いね、誰よりも。
でも、今なら咲の強さと向き合える。
咲の覚悟に応えてあげられる。
だから、もう一度――――
咲、私は強くなったよ。
咲を傷つけて手にした強さだけど、それでも私はこの強さが愛しくてたまらないんだ。
偽物だなんて思いたくないんだ。
………。
咲は強いね、誰よりも。
でも、今なら咲の強さと向き合える。
咲の覚悟に応えてあげられる。
だから、もう一度――――
316:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:22:53.48:QQE52b/s0 (35/62)
照「………ツモ」
照「私の勝ちだ、咲」
咲「…………」
咲「お姉ちゃんは強いね……」
咲「でも、負けるとやっぱり悔しいや……」
照「………ツモ」
照「私の勝ちだ、咲」
咲「…………」
咲「お姉ちゃんは強いね……」
咲「でも、負けるとやっぱり悔しいや……」
317:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:24:27.54:QQE52b/s0 (36/62)
照「……」
照「最初から……こうすればよかったんだ………」
照「咲に勝てなくて悔しいなら、逃げずに何度でも挑めばよかったんだ……」
照「いつまでも勝てないなら、いつまでも挑み続ければよかったんだ……」
照「私にはそれができたんだ………」
照「私と咲は、世界で二人きりの姉妹なんだから……」ポロポロ
咲「…ぅぐ……おねえ…ちゃん…」ウルッ
照「ごめんね、咲……長いこと待たせて……」
照「会いに来てくれてありがとう………」
照「こんなだめなお姉ちゃんだけど……もし咲がいいのなら……」
照「また一緒に……仲良く暮らそう、咲」
咲「……うん!」ポロポロ
咲「ずっと大好きだよ……お姉ちゃん……」
照「……」
照「最初から……こうすればよかったんだ………」
照「咲に勝てなくて悔しいなら、逃げずに何度でも挑めばよかったんだ……」
照「いつまでも勝てないなら、いつまでも挑み続ければよかったんだ……」
照「私にはそれができたんだ………」
照「私と咲は、世界で二人きりの姉妹なんだから……」ポロポロ
咲「…ぅぐ……おねえ…ちゃん…」ウルッ
照「ごめんね、咲……長いこと待たせて……」
照「会いに来てくれてありがとう………」
照「こんなだめなお姉ちゃんだけど……もし咲がいいのなら……」
照「また一緒に……仲良く暮らそう、咲」
咲「……うん!」ポロポロ
咲「ずっと大好きだよ……お姉ちゃん……」
318:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:25:35.50:QQE52b/s0 (37/62)
私は咲を抱きしめて子供みたいに泣き続けた。
失敗を越え、弱さを越え、世界すら越えて、
私たちはようやく仲直りすることができたんだ。
長い、長い道のりだった。
その道の途中で、私は何度選択を間違えてきただろう。
別れた道の向こう側で、咲はどれだけの涙を流してきただろう。
振り返ることは辛く、引き返すこともできない。
それでも、やっと繋がった二人の道をこれから一緒に歩いていくことならできる。
私は咲を抱きしめて子供みたいに泣き続けた。
失敗を越え、弱さを越え、世界すら越えて、
私たちはようやく仲直りすることができたんだ。
長い、長い道のりだった。
その道の途中で、私は何度選択を間違えてきただろう。
別れた道の向こう側で、咲はどれだけの涙を流してきただろう。
振り返ることは辛く、引き返すこともできない。
それでも、やっと繋がった二人の道をこれから一緒に歩いていくことならできる。
319:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:26:22.96:QQE52b/s0 (38/62)
あの物語をふと思い出す。
離ればなれになった仲の良いウサギの姉妹が、冒険の末に再び出会い、喜びの涙を流す。
よくあるストーリー。
ありふれたハッピーエンド。
でも、そんな当たり前がこんなにも愛おしくて嬉しかった。
照「………そうだ咲、お前に言わなきゃならないことがある」
咲「え?」
照「図書館の本に落書きしちゃだめだぞ」
咲「えへへ//」
咲「ごめんねお姉ちゃん」
あの物語をふと思い出す。
離ればなれになった仲の良いウサギの姉妹が、冒険の末に再び出会い、喜びの涙を流す。
よくあるストーリー。
ありふれたハッピーエンド。
でも、そんな当たり前がこんなにも愛おしくて嬉しかった。
照「………そうだ咲、お前に言わなきゃならないことがある」
咲「え?」
照「図書館の本に落書きしちゃだめだぞ」
咲「えへへ//」
咲「ごめんねお姉ちゃん」
320:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:27:51.08:QQE52b/s0 (39/62)
照「ありがとうございました、小鍛治プロ」
照「神代もありがとう」
小蒔「……ぅぐ……ひっぐ……」ポロポロ
照「ど、どうしてそんなに泣いてるんだ!?」
小蒔「す、すいません……ひぐ………感動してしまいまして」
咲「ふふ。ありがとう、小蒔ちゃん」
健夜「ようやく仲直りできたんだね」
照「はい」
健夜「よかった」
照「………」
照「ありがとうございました、小鍛治プロ」
照「神代もありがとう」
小蒔「……ぅぐ……ひっぐ……」ポロポロ
照「ど、どうしてそんなに泣いてるんだ!?」
小蒔「す、すいません……ひぐ………感動してしまいまして」
咲「ふふ。ありがとう、小蒔ちゃん」
健夜「ようやく仲直りできたんだね」
照「はい」
健夜「よかった」
照「………」
321:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:28:43.23:QQE52b/s0 (40/62)
健夜「貴方達がこの世界にいられる時間はもうそれほど長くないと思う」
健夜「でも、その前に貴方達にはやらなきゃならないことがある」
照&咲「………」
健夜「オーラスホームにいる三人の記憶ももう戻ってることでしょう」
健夜「行きなさい」
健夜「貴方達は彼女達に伝えなければいけない言葉があるはずです」
照&咲「はい!」
健夜「貴方達がこの世界にいられる時間はもうそれほど長くないと思う」
健夜「でも、その前に貴方達にはやらなきゃならないことがある」
照&咲「………」
健夜「オーラスホームにいる三人の記憶ももう戻ってることでしょう」
健夜「行きなさい」
健夜「貴方達は彼女達に伝えなければいけない言葉があるはずです」
照&咲「はい!」
322:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:30:06.02:QQE52b/s0 (41/62)
小蒔「お疲れ様です、健夜さん」
健夜「うん。まだ全て終わったわけじゃないけど」
健夜「ごめんね、小蒔ちゃん」
小蒔「え?」
健夜「あの子たちの仲間に入れてあげられなくて」
小蒔「いえ、気にしないで下さい」
小蒔「寂しくなかったといえば嘘になりますが、健夜さんのような方にお仕え出来て私は光栄でした」
健夜「わ、私はそんな大層な人間じゃないよ」アタフタ
小蒔「そんな事ないです! すごく素敵でした!」フン
健夜「あ、ありがと//」
小蒔「お疲れ様です、健夜さん」
健夜「うん。まだ全て終わったわけじゃないけど」
健夜「ごめんね、小蒔ちゃん」
小蒔「え?」
健夜「あの子たちの仲間に入れてあげられなくて」
小蒔「いえ、気にしないで下さい」
小蒔「寂しくなかったといえば嘘になりますが、健夜さんのような方にお仕え出来て私は光栄でした」
健夜「わ、私はそんな大層な人間じゃないよ」アタフタ
小蒔「そんな事ないです! すごく素敵でした!」フン
健夜「あ、ありがと//」
323:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:30:54.61:QQE52b/s0 (42/62)
健夜「小蒔ちゃんに一つ聞いてもいいかな?」
小蒔「何でしょう?」
健夜「小蒔ちゃんに憑依する神様の中に、麻雀の神様っていたの?」
小蒔「いえ、私はそのような神様は存じ上げません」
小蒔「私が力をお借りさせて頂いていたのは、霧島神宮に伝わる伝説で語り継がれる由緒ある神様ばかりですよ」
健夜「そうなんだ」
小蒔「どうしてそのようなことを?」
健夜「ううん……大したことじゃないんだ」
健夜「小蒔ちゃんに一つ聞いてもいいかな?」
小蒔「何でしょう?」
健夜「小蒔ちゃんに憑依する神様の中に、麻雀の神様っていたの?」
小蒔「いえ、私はそのような神様は存じ上げません」
小蒔「私が力をお借りさせて頂いていたのは、霧島神宮に伝わる伝説で語り継がれる由緒ある神様ばかりですよ」
健夜「そうなんだ」
小蒔「どうしてそのようなことを?」
健夜「ううん……大したことじゃないんだ」
324:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:32:14.97:QQE52b/s0 (43/62)
健夜(それぞれに事情があったとはいえ、あの夏で起きたことはいくら何でも異常過ぎる)
健夜(それも、才能に恵まれた強い力を持つ子ばかりがまるで呪われたかのように)
健夜(『牌に愛されし者』、か……)
健夜(それが、麻雀に宿る神か悪魔かに魅入られた存在でしかないのなら)
健夜(その子たちの運命を彼らが弄んで面白がっているのだとしたら)
健夜(私はそんなもの神とは認めない)
健夜(そんなの絶対に許さない)
健夜(…………)
健夜(私が此処にやってきたとき、牌羽は照ちゃんと菫ちゃんしかいなかったけど)
健夜(街の風習や言い伝えにあるように、以前にもこの世界には確かに牌羽は存在していた)
健夜(………私が戦ってきた相手の中にもこの世界に行き着いた子がいたのかな)
健夜(此処に来てからずっとそのことが頭を離れないんだ)
健夜(もしそうなら、どうか彼女達にも救いがあったことを………)
健夜(それぞれに事情があったとはいえ、あの夏で起きたことはいくら何でも異常過ぎる)
健夜(それも、才能に恵まれた強い力を持つ子ばかりがまるで呪われたかのように)
健夜(『牌に愛されし者』、か……)
健夜(それが、麻雀に宿る神か悪魔かに魅入られた存在でしかないのなら)
健夜(その子たちの運命を彼らが弄んで面白がっているのだとしたら)
健夜(私はそんなもの神とは認めない)
健夜(そんなの絶対に許さない)
健夜(…………)
健夜(私が此処にやってきたとき、牌羽は照ちゃんと菫ちゃんしかいなかったけど)
健夜(街の風習や言い伝えにあるように、以前にもこの世界には確かに牌羽は存在していた)
健夜(………私が戦ってきた相手の中にもこの世界に行き着いた子がいたのかな)
健夜(此処に来てからずっとそのことが頭を離れないんだ)
健夜(もしそうなら、どうか彼女達にも救いがあったことを………)
325:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:34:10.12:QQE52b/s0 (44/62)
~オーラスホーム~
照「はぁ……はぁ……」
咲「はぁ……はぁ……」
菫「おかえり、二人とも」
淡「………」
照「菫………淡………」
咲「あ、あの……!」
咲「和ちゃんは……!?」
菫「和なら部屋にいるよ」
菫「行ってやれ、咲」
咲「はい……!」ダッ
~オーラスホーム~
照「はぁ……はぁ……」
咲「はぁ……はぁ……」
菫「おかえり、二人とも」
淡「………」
照「菫………淡………」
咲「あ、あの……!」
咲「和ちゃんは……!?」
菫「和なら部屋にいるよ」
菫「行ってやれ、咲」
咲「はい……!」ダッ
326:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:35:51.19:QQE52b/s0 (45/62)
「………」
照「あの……その……」
淡「テルー!!」ダキッ
照「淡…………」
淡「ダメだよ………」
淡「死んじゃったらダメだよ………」ポロポロ
照「うん………」ギュッ
淡「私ね………何回も麻雀やめそうになったよ………」
淡「ずっと目標にしてたテルがいなくなっちゃって………心が空っぽになったみたいで………」
淡「でも………やめなかったよ………」
淡「麻雀を続けてれば………どこかでテルが見ててくれるかもって思って………」
淡「私がもっと強くなれば………いつかテルに会えるかもってバカみたいなこと考えて………」
淡「うわああああああああああああああん」
照「ごめん………ごめんね、淡………」ポロポロ
「………」
照「あの……その……」
淡「テルー!!」ダキッ
照「淡…………」
淡「ダメだよ………」
淡「死んじゃったらダメだよ………」ポロポロ
照「うん………」ギュッ
淡「私ね………何回も麻雀やめそうになったよ………」
淡「ずっと目標にしてたテルがいなくなっちゃって………心が空っぽになったみたいで………」
淡「でも………やめなかったよ………」
淡「麻雀を続けてれば………どこかでテルが見ててくれるかもって思って………」
淡「私がもっと強くなれば………いつかテルに会えるかもってバカみたいなこと考えて………」
淡「うわああああああああああああああん」
照「ごめん………ごめんね、淡………」ポロポロ
327:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:37:26.26:QQE52b/s0 (46/62)
菫「咲とは仲直りできたんだな……?」
照「………うん」
菫「お前がどれだけ辛いものを抱えてたのかは知らない」
菫「でも、話してほしかった………」
菫「みんなに言えないのなら、せめて私には話してほしかった………」
菫「だって、ずっと一緒にやってきたじゃないか………」ポロポロ
照「ごめん………菫………」
照「白糸台で過ごした時間は本当に楽しくて………」
照「菫が隣にいてくれると私は本当に幸せで………」
照「あそこにいるときだけ私は過去を忘れることができたから………」
照「自分の過ちも後悔も忘れて………前を向くことができたから………」
照「だから………言えなかった………」
照「あの場所だけはどうしても壊れてほしくなかったから………」
照「本当に………ごめん………」ポロポロ
菫「照………」
菫「咲とは仲直りできたんだな……?」
照「………うん」
菫「お前がどれだけ辛いものを抱えてたのかは知らない」
菫「でも、話してほしかった………」
菫「みんなに言えないのなら、せめて私には話してほしかった………」
菫「だって、ずっと一緒にやってきたじゃないか………」ポロポロ
照「ごめん………菫………」
照「白糸台で過ごした時間は本当に楽しくて………」
照「菫が隣にいてくれると私は本当に幸せで………」
照「あそこにいるときだけ私は過去を忘れることができたから………」
照「自分の過ちも後悔も忘れて………前を向くことができたから………」
照「だから………言えなかった………」
照「あの場所だけはどうしても壊れてほしくなかったから………」
照「本当に………ごめん………」ポロポロ
菫「照………」
328:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:38:12.45:QQE52b/s0 (47/62)
照「ありがとう………菫………淡………」
照「こんな遠くまで私のためについてきてくれてありがとう………」
照「ずっと私の側にいてくれてありがとう………」
照「二人とも……大好きだよ………」
――――
―――
――
照「ありがとう………菫………淡………」
照「こんな遠くまで私のためについてきてくれてありがとう………」
照「ずっと私の側にいてくれてありがとう………」
照「二人とも……大好きだよ………」
――――
―――
――
329:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:39:13.50:QQE52b/s0 (48/62)
咲「………」
ガチャッ
和「ぅぐ………ひっぐ………」
咲「…………和ちゃん」
和「………咲、さん」
咲「ごめんね………和ちゃん………」
咲「本当にごめん………」
和「私、思い出してたんです……咲さんが死んでしまったときのことを………」
和「世界が突然終わってしまったみたいで………」
和「苦しくて………苦しくて………」
和「これからどうやって生きていけばいいのか分からなくなって………」
咲「和ちゃん………」ウルッ
和「死ぬまで悩んでました………」
和「私と咲さんが出会ったのは間違いだったのかなって………」
和「咲さんを麻雀部に誘っていなければ………咲さんは死なずに済んだんじゃないかって………」ポロポロ
咲「………」
ガチャッ
和「ぅぐ………ひっぐ………」
咲「…………和ちゃん」
和「………咲、さん」
咲「ごめんね………和ちゃん………」
咲「本当にごめん………」
和「私、思い出してたんです……咲さんが死んでしまったときのことを………」
和「世界が突然終わってしまったみたいで………」
和「苦しくて………苦しくて………」
和「これからどうやって生きていけばいいのか分からなくなって………」
咲「和ちゃん………」ウルッ
和「死ぬまで悩んでました………」
和「私と咲さんが出会ったのは間違いだったのかなって………」
和「咲さんを麻雀部に誘っていなければ………咲さんは死なずに済んだんじゃないかって………」ポロポロ
330:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:41:06.53:QQE52b/s0 (49/62)
咲「そんなことないよ!」
咲「私は和ちゃんと出会えて嬉しかった………」
咲「部長と、染谷先輩と、優希ちゃんと、京ちゃんと」
咲「清澄のみんなと麻雀しているときが本当に幸せだった………」
咲「だから………そんなこと言わないで………」ポロポロ
咲「私と和ちゃんが出会えたことが間違いだったなんて言わないで………」
和「咲さん……!」ギュッ
和「私だってそうです………」
和「咲さんと出会えて嬉しかったです………」
和「咲さんと一緒にいるのが幸せでした………」
咲「和ちゃん………」
和「私は咲さんのことが好きです……」
和「咲さんとはもう永遠に会えないと思ったときでも………記憶がなかったときでも………」
和「この気持ちだけはずっと変わりません………」
咲「私も大好きだよ、和ちゃん………」ギュッ
咲「ずっとずっと……ありがとう………」
――――
―――
――
咲「そんなことないよ!」
咲「私は和ちゃんと出会えて嬉しかった………」
咲「部長と、染谷先輩と、優希ちゃんと、京ちゃんと」
咲「清澄のみんなと麻雀しているときが本当に幸せだった………」
咲「だから………そんなこと言わないで………」ポロポロ
咲「私と和ちゃんが出会えたことが間違いだったなんて言わないで………」
和「咲さん……!」ギュッ
和「私だってそうです………」
和「咲さんと出会えて嬉しかったです………」
和「咲さんと一緒にいるのが幸せでした………」
咲「和ちゃん………」
和「私は咲さんのことが好きです……」
和「咲さんとはもう永遠に会えないと思ったときでも………記憶がなかったときでも………」
和「この気持ちだけはずっと変わりません………」
咲「私も大好きだよ、和ちゃん………」ギュッ
咲「ずっとずっと……ありがとう………」
――――
―――
――
331:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:42:16.58:QQE52b/s0 (50/62)
淡「あっ! 二人ともきたよー!」
菫「話は終わったみたいだな」
咲「はい」
咲「菫さんも淡ちゃんも、ずっとお姉ちゃんの側にいてくれてありがとうございました」ペコ
咲「私たちが仲直りできたのは二人のおかげです」
淡「そんなのいいよー。自分で勝手にやったことだもん」
菫「ふふ、よくできた妹じゃないか」
菫「これからは仲良くするんだぞ」ナデナデ
咲「はい!」
淡「あっ! 二人ともきたよー!」
菫「話は終わったみたいだな」
咲「はい」
咲「菫さんも淡ちゃんも、ずっとお姉ちゃんの側にいてくれてありがとうございました」ペコ
咲「私たちが仲直りできたのは二人のおかげです」
淡「そんなのいいよー。自分で勝手にやったことだもん」
菫「ふふ、よくできた妹じゃないか」
菫「これからは仲良くするんだぞ」ナデナデ
咲「はい!」
332:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:43:13.91:QQE52b/s0 (51/62)
照「眼が真っ赤だぞ、和」
和「それは照さんだって同じじゃないですか」
照「私がこんなこと言う資格はないかもしれないが……」
照「咲がまた麻雀を好きになってくれたのは和のおかげだ、本当にありがとう………」
和「………」
照「これからもあの子の側にいてやってくれ」
和「照さんに言われなくても私は絶対に咲さんから離れたりしませんよ」
照「ふふ、頼もしいよまったく」
和「また咲さんを泣かせるようなことがあれば許しませんからね」
和「そのときは私が咲さんを引き取ります」
照「ああ、肝に銘じておくよ」
咲「ちょっと! 二人とも私のいないとこで勝手な約束しないでよ!」
照「眼が真っ赤だぞ、和」
和「それは照さんだって同じじゃないですか」
照「私がこんなこと言う資格はないかもしれないが……」
照「咲がまた麻雀を好きになってくれたのは和のおかげだ、本当にありがとう………」
和「………」
照「これからもあの子の側にいてやってくれ」
和「照さんに言われなくても私は絶対に咲さんから離れたりしませんよ」
照「ふふ、頼もしいよまったく」
和「また咲さんを泣かせるようなことがあれば許しませんからね」
和「そのときは私が咲さんを引き取ります」
照「ああ、肝に銘じておくよ」
咲「ちょっと! 二人とも私のいないとこで勝手な約束しないでよ!」
333:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:44:52.46:QQE52b/s0 (52/62)
菫「それじゃあ、そろそろ行こうか」
菫「いつまでもここにいても名残り惜しくなるだけだ」
照「………そうだね」
雪がやさしく舞い降りる中、真っ白い道を私たちは歩き始めた。
凛とした足取りで先頭を進んでいく菫の後ろで、
淡の金色の髪が白い景色の中できらきらと輝き、
咲と和の繋いだ手が幸せそうに前後に揺れていた。
一番後ろにいた私は最後にもう一度オーラスホームを振り返る。
この世界で暮らした日々は本当に楽しいことばかりだった。
たくさんの幸せでいつも私を包み込んでくれた。
記憶が戻ったって、ここが私たちの本当の居場所じゃなくたって、
私はこの世界が大好きだって気持ちに変わりはない。
たとえ間違った末に辿り着いた場所だったとしても、
この世界でみんなと過ごした思い出は大切な宝物だって、心からそう思える。
みんなには聞こえないように私はそっと呟いた。
照「ありがとう、そしてさようなら」
菫「それじゃあ、そろそろ行こうか」
菫「いつまでもここにいても名残り惜しくなるだけだ」
照「………そうだね」
雪がやさしく舞い降りる中、真っ白い道を私たちは歩き始めた。
凛とした足取りで先頭を進んでいく菫の後ろで、
淡の金色の髪が白い景色の中できらきらと輝き、
咲と和の繋いだ手が幸せそうに前後に揺れていた。
一番後ろにいた私は最後にもう一度オーラスホームを振り返る。
この世界で暮らした日々は本当に楽しいことばかりだった。
たくさんの幸せでいつも私を包み込んでくれた。
記憶が戻ったって、ここが私たちの本当の居場所じゃなくたって、
私はこの世界が大好きだって気持ちに変わりはない。
たとえ間違った末に辿り着いた場所だったとしても、
この世界でみんなと過ごした思い出は大切な宝物だって、心からそう思える。
みんなには聞こえないように私はそっと呟いた。
照「ありがとう、そしてさようなら」
334:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:46:41.95:QQE52b/s0 (53/62)
~西の森の小屋~
ガチャッ
菫「失礼します」
淡「あっ!? あの子知ってるー!」
淡「団体戦の決勝ででテルと戦ってた神代小蒔だー!」
小蒔「みなさんお久しぶりです」ペコ
菫「そうか……君もあの夏悲運に見舞われた選手の一人だったな……」
小蒔「あのときはみなさんに多大なご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません」
小蒔「嫌な思いをさせてしまったことでしょう」
菫「気にするな。私たちが言えた義理じゃないさ」
照「………」
咲「………」
~西の森の小屋~
ガチャッ
菫「失礼します」
淡「あっ!? あの子知ってるー!」
淡「団体戦の決勝ででテルと戦ってた神代小蒔だー!」
小蒔「みなさんお久しぶりです」ペコ
菫「そうか……君もあの夏悲運に見舞われた選手の一人だったな……」
小蒔「あのときはみなさんに多大なご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません」
小蒔「嫌な思いをさせてしまったことでしょう」
菫「気にするな。私たちが言えた義理じゃないさ」
照「………」
咲「………」
335:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:47:55.78:QQE52b/s0 (54/62)
健夜「あ、あの………」
和「どうかしましたか、小鍛治プロ?」
健夜「私には誰も驚いてくれないのかなー、なんちゃって……」
菫「麻雀をしていた者ならあなたのオーラを忘れることなんてできませんよ」
菫「記憶が戻った瞬間に気付きました」
和「私もです」
淡「あはは、だねー」
健夜「そ、そうなんだ……」
淡「でも思い出しただけでも悔しいなー」
淡「結局小鍛治プロから誰もタイトル奪うことできなかったんだもん」
和「そうですね。といっても第一線に復帰してからまた5年ほどで退かれてしまいましたが」
健夜「いつまでも私がいたんじゃ麻雀界のためにならないと思ったから……」
淡「あー! 出たよ小鍛治プロの辛口トーク!!」
健夜「わ、私はそんなつもりじゃ……」アタフタ
淡「テルがいたら絶対やっつけてくれたのにー」
照「そんな、私なんてまだまだだよ」
健夜「あ、あの………」
和「どうかしましたか、小鍛治プロ?」
健夜「私には誰も驚いてくれないのかなー、なんちゃって……」
菫「麻雀をしていた者ならあなたのオーラを忘れることなんてできませんよ」
菫「記憶が戻った瞬間に気付きました」
和「私もです」
淡「あはは、だねー」
健夜「そ、そうなんだ……」
淡「でも思い出しただけでも悔しいなー」
淡「結局小鍛治プロから誰もタイトル奪うことできなかったんだもん」
和「そうですね。といっても第一線に復帰してからまた5年ほどで退かれてしまいましたが」
健夜「いつまでも私がいたんじゃ麻雀界のためにならないと思ったから……」
淡「あー! 出たよ小鍛治プロの辛口トーク!!」
健夜「わ、私はそんなつもりじゃ……」アタフタ
淡「テルがいたら絶対やっつけてくれたのにー」
照「そんな、私なんてまだまだだよ」
336:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:49:24.39:QQE52b/s0 (55/62)
健夜「………ほんとはね、復帰するつもりなんてなかったんだ」
菫「えっ、そうなんですか?」
健夜「正しくはその気持ちを一旦失ったって言ったほうがいいかな」
健夜「あの夏のインターハイの解説をしながら皆の戦いを見ていて、本当はすぐにでも復帰するつもりでいた」
健夜「照ちゃんや咲ちゃんがプロの世界に来れば、すぐに一番上の舞台まで駆け上がってくるのは分かってたから」
健夜「この子達と勝負したいって純粋にそう思ったから」
照「………」
咲「………」
健夜「でも、貴方達は可憐な高校生のままで、麻雀の真髄をまだ見ぬままにその生涯を終えてしまった」
健夜「それで、私が表舞台に戻る理由はなくなっちゃったんだ」
照「………」
咲「………」
健夜「………ほんとはね、復帰するつもりなんてなかったんだ」
菫「えっ、そうなんですか?」
健夜「正しくはその気持ちを一旦失ったって言ったほうがいいかな」
健夜「あの夏のインターハイの解説をしながら皆の戦いを見ていて、本当はすぐにでも復帰するつもりでいた」
健夜「照ちゃんや咲ちゃんがプロの世界に来れば、すぐに一番上の舞台まで駆け上がってくるのは分かってたから」
健夜「この子達と勝負したいって純粋にそう思ったから」
照「………」
咲「………」
健夜「でも、貴方達は可憐な高校生のままで、麻雀の真髄をまだ見ぬままにその生涯を終えてしまった」
健夜「それで、私が表舞台に戻る理由はなくなっちゃったんだ」
照「………」
咲「………」
337:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:51:23.52:QQE52b/s0 (56/62)
健夜「………でも、その考えはすぐに覆された」
健夜「高校時代は照ちゃんや咲ちゃんに勝てなかった何万人もの選手達」
健夜「貴方達への想いを胸にプロの世界でどんどん強くなる彼女達の姿に私は強く惹かれた」
健夜「あれだけ辛いことがあって、それでも前を向いて麻雀を打ち続けた彼女達のありったけの想いを」
健夜「タイトル戦という最高の舞台で受け止めてあげたいって、そう思わされた」
菫「………」
淡「………」
和「………」
健夜「結果的に私は負けずにいられたけど」
健夜「三人とも本当に強かったよ、素晴らしい打ち手だったよ」
健夜「これはお世辞なんかじゃない」
健夜「感謝してるんだ、あんなに胸が熱くなるような時間を私にくれたこと」
健夜「ありがとう、菫ちゃん、淡ちゃん、和ちゃん」
菫「身に余るお言葉をいただき、大変恐縮です」
菫「ありがとう……ございます……!」バッ
和「ありがとうございます」フカブカ
淡「………」ペコ
健夜「………でも、その考えはすぐに覆された」
健夜「高校時代は照ちゃんや咲ちゃんに勝てなかった何万人もの選手達」
健夜「貴方達への想いを胸にプロの世界でどんどん強くなる彼女達の姿に私は強く惹かれた」
健夜「あれだけ辛いことがあって、それでも前を向いて麻雀を打ち続けた彼女達のありったけの想いを」
健夜「タイトル戦という最高の舞台で受け止めてあげたいって、そう思わされた」
菫「………」
淡「………」
和「………」
健夜「結果的に私は負けずにいられたけど」
健夜「三人とも本当に強かったよ、素晴らしい打ち手だったよ」
健夜「これはお世辞なんかじゃない」
健夜「感謝してるんだ、あんなに胸が熱くなるような時間を私にくれたこと」
健夜「ありがとう、菫ちゃん、淡ちゃん、和ちゃん」
菫「身に余るお言葉をいただき、大変恐縮です」
菫「ありがとう……ございます……!」バッ
和「ありがとうございます」フカブカ
淡「………」ペコ
338:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:52:03.38:QQE52b/s0 (57/62)
照(ちょっと悔しいな……)
照(ううん………すごく、悔しい………)
照(自分が最後まで麻雀の道を歩めなかったこと……)
照(もし麻雀を続けていれば、私はこの人を倒すために全てを麻雀に捧げていたんだろうな)
照(私は越えることができただろうか、この偉大な存在を)
照(私は辿り着くことができただろうか、麻雀の真髄に)
照(この胸を締めつける未練こそが、犯した罪への私に対する最大の罰なのかもしれない………)
照(ちょっと悔しいな……)
照(ううん………すごく、悔しい………)
照(自分が最後まで麻雀の道を歩めなかったこと……)
照(もし麻雀を続けていれば、私はこの人を倒すために全てを麻雀に捧げていたんだろうな)
照(私は越えることができただろうか、この偉大な存在を)
照(私は辿り着くことができただろうか、麻雀の真髄に)
照(この胸を締めつける未練こそが、犯した罪への私に対する最大の罰なのかもしれない………)
339:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:54:48.09:QQE52b/s0 (58/62)
健夜「それじゃあ、そろそろ行こうか?」
照「………そうですね」
淡「………」
健夜「皆輪になって、この雀卓に触れて目を瞑って」
淡「………」ワナワナ
健夜「そうすれば、直にこの世界から旅立てるはずだよ」
「…………」
淡「ちょぉーっと待ったーーーー!!!」
「!!!」
健夜「それじゃあ、そろそろ行こうか?」
照「………そうですね」
淡「………」
健夜「皆輪になって、この雀卓に触れて目を瞑って」
淡「………」ワナワナ
健夜「そうすれば、直にこの世界から旅立てるはずだよ」
「…………」
淡「ちょぉーっと待ったーーーー!!!」
「!!!」
340:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:56:05.56:QQE52b/s0 (59/62)
菫「ど、どうしたんだ淡!? いきなり大声上げて」
淡「こんなの絶対おかしいよ!!!」
咲「おかしいって、何が……?」
淡「これだけの面子が集まってるんだよ!?」
淡「雀卓も牌もそこにあるんだよ!?」
淡「これで麻雀しないなんて怒られちゃうよ!!!」
菫「怒られるって一体誰になんだ……」
淡「うーんと、ほら、麻雀の神様とか!?」
菫「はぁ………本当にお前は呆れた奴だな」
菫「馬鹿こと言ってないでさっさと行くぞ」
淡「ねえ!? みんなもそう思うよね!?」
菫「ど、どうしたんだ淡!? いきなり大声上げて」
淡「こんなの絶対おかしいよ!!!」
咲「おかしいって、何が……?」
淡「これだけの面子が集まってるんだよ!?」
淡「雀卓も牌もそこにあるんだよ!?」
淡「これで麻雀しないなんて怒られちゃうよ!!!」
菫「怒られるって一体誰になんだ……」
淡「うーんと、ほら、麻雀の神様とか!?」
菫「はぁ………本当にお前は呆れた奴だな」
菫「馬鹿こと言ってないでさっさと行くぞ」
淡「ねえ!? みんなもそう思うよね!?」
341:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:56:58.53:QQE52b/s0 (60/62)
菫「ほら、照からも何か言ってやれ」
照「私は望むところだよ」
菫「おい! おま……!」
咲「私もみんなと打ちたいな」
和「私も……久しぶりに咲さんと……」
菫「咲と和まで……」
小蒔「私もみなさんと麻雀したいです!」フンス
菫「まったく……小鍛治プロからも注意してやって下さい」
健夜「………」ゴォッ!
菫(あ、これはダメだ)
健夜「ま、まあ……少しぐらい遅くなったって別に問題ないんじゃないかな……」
淡「わーい! 麻雀だ―!!」
淡「小鍛治プロにはタイトル戦で勝てなかった分、テルには部活で負けっぱなしだった分、咲にはインターハイの団体戦で優勝持ってかれちゃった分」
淡「全部まとめてリベンジしてやるから覚悟してね!!!」
健夜「ふふ」
照「淡がどれだけ成長したか見せてもらうよ」
咲「私だって負けないよ、淡ちゃん!」
菫「ほら、照からも何か言ってやれ」
照「私は望むところだよ」
菫「おい! おま……!」
咲「私もみんなと打ちたいな」
和「私も……久しぶりに咲さんと……」
菫「咲と和まで……」
小蒔「私もみなさんと麻雀したいです!」フンス
菫「まったく……小鍛治プロからも注意してやって下さい」
健夜「………」ゴォッ!
菫(あ、これはダメだ)
健夜「ま、まあ……少しぐらい遅くなったって別に問題ないんじゃないかな……」
淡「わーい! 麻雀だ―!!」
淡「小鍛治プロにはタイトル戦で勝てなかった分、テルには部活で負けっぱなしだった分、咲にはインターハイの団体戦で優勝持ってかれちゃった分」
淡「全部まとめてリベンジしてやるから覚悟してね!!!」
健夜「ふふ」
照「淡がどれだけ成長したか見せてもらうよ」
咲「私だって負けないよ、淡ちゃん!」
342:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:58:26.39:QQE52b/s0 (61/62)
そうして、結局私たちは二日間もひたすら麻雀を打ち続けた。
雀卓は一つしかないから毎回三人は余るのに、誰一人休もうともせず目の前の対局を観戦していた。
懐かしさに目を輝かせながら、打ち筋を見極めて次の勝負に生かそうと目を光らせながら。
まったく、私たちはどれだけ麻雀バカなんだろう。自分でも呆れるばかりだ。
みんな本当に強くなっていた。
菫のシャープシュートも、淡の絶対安全圏とダブリーも、和のデジタルも、
私が知ってた頃よりずっとずっと磨きがかかっていて何だか感慨深かった。
その中でも、咲の嶺上開花はやっぱり私にとって何より特別で…………
そうして、結局私たちは二日間もひたすら麻雀を打ち続けた。
雀卓は一つしかないから毎回三人は余るのに、誰一人休もうともせず目の前の対局を観戦していた。
懐かしさに目を輝かせながら、打ち筋を見極めて次の勝負に生かそうと目を光らせながら。
まったく、私たちはどれだけ麻雀バカなんだろう。自分でも呆れるばかりだ。
みんな本当に強くなっていた。
菫のシャープシュートも、淡の絶対安全圏とダブリーも、和のデジタルも、
私が知ってた頃よりずっとずっと磨きがかかっていて何だか感慨深かった。
その中でも、咲の嶺上開花はやっぱり私にとって何より特別で…………
343:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/15(金) 23:59:37.35:QQE52b/s0 (62/62)
ずっと、後悔し続けていた日がある。
まだ幼い咲を連れて出かけたある晴れた初夏の日。
長野の荘厳な連山を見渡せるその場所で、私は咲に語った。
――
―――
――――
咲「リンシャンカイホー?」
照「麻雀の役の名前だよ」
照「『山の上で花が咲く』って意味なんだ」
咲「咲く?」
咲「おんなじだ!!私の名前と!!」
照「そうだね、咲」
照「森林限界を超えた高い山の上」
照「そこに花が咲くこともある」
照「お前もその花のように、強く――」
――――
―――
――
ずっと、後悔し続けていた日がある。
まだ幼い咲を連れて出かけたある晴れた初夏の日。
長野の荘厳な連山を見渡せるその場所で、私は咲に語った。
――
―――
――――
咲「リンシャンカイホー?」
照「麻雀の役の名前だよ」
照「『山の上で花が咲く』って意味なんだ」
咲「咲く?」
咲「おんなじだ!!私の名前と!!」
照「そうだね、咲」
照「森林限界を超えた高い山の上」
照「そこに花が咲くこともある」
照「お前もその花のように、強く――」
――――
―――
――
344:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 00:01:47.36:2U+LBZ9T0 (1/8)
小さい頃の咲は甘えん坊のお姉ちゃんっ子だったから、私があげたその言葉をとても嬉しそうに抱きしめていた。
初めて咲が嶺上開花で和了ったときのはじけるような笑顔を、私は今でも鮮明に思い出すことができる。
ずっと後悔していた。
あの日私が咲にその役の意味を教えなければ、咲はこれほどの力に目覚めることはなかったんじゃないかって。
私は妹より麻雀が強いお姉ちゃんでいられたんじゃないかって。
………だけど、そのしがらみからもようやく解放された。
咲だけが咲かせる、可憐で力強い嶺の花。
その花はかつて私に弱さと強さを、挫折と栄光を、涙と笑顔をくれた。
そして今、目の前で凛として咲くその花を、私はただただ愛おしく感じた。
私はこの花に出会えてよかった………。
私の存在が咲を照らして、咲がその花を咲かせることができたのなら、今はそれを誇りに思える。
小さい頃の咲は甘えん坊のお姉ちゃんっ子だったから、私があげたその言葉をとても嬉しそうに抱きしめていた。
初めて咲が嶺上開花で和了ったときのはじけるような笑顔を、私は今でも鮮明に思い出すことができる。
ずっと後悔していた。
あの日私が咲にその役の意味を教えなければ、咲はこれほどの力に目覚めることはなかったんじゃないかって。
私は妹より麻雀が強いお姉ちゃんでいられたんじゃないかって。
………だけど、そのしがらみからもようやく解放された。
咲だけが咲かせる、可憐で力強い嶺の花。
その花はかつて私に弱さと強さを、挫折と栄光を、涙と笑顔をくれた。
そして今、目の前で凛として咲くその花を、私はただただ愛おしく感じた。
私はこの花に出会えてよかった………。
私の存在が咲を照らして、咲がその花を咲かせることができたのなら、今はそれを誇りに思える。
345:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 00:03:29.75:2U+LBZ9T0 (2/8)
淡「あー楽しかったー!」
照「強くなったね、淡」
淡「でしょでしょ!?」
淡「小鍛治プロには勝てなかったけどその他じゃ私がトップだね!」
健夜「後半は照ちゃんと咲ちゃんにだいぶ追い上げられてたけどね」
淡「もー、一言多いですよ小鍛治プロはー」
淡「次は絶対倒してみせますから!!」
健夜「うん、楽しみにしてるよ」
淡「あー楽しかったー!」
照「強くなったね、淡」
淡「でしょでしょ!?」
淡「小鍛治プロには勝てなかったけどその他じゃ私がトップだね!」
健夜「後半は照ちゃんと咲ちゃんにだいぶ追い上げられてたけどね」
淡「もー、一言多いですよ小鍛治プロはー」
淡「次は絶対倒してみせますから!!」
健夜「うん、楽しみにしてるよ」
346:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 00:04:09.74:2U+LBZ9T0 (3/8)
菫「ふぅ……こんなに勝てないのは記憶にないな」
菫「プロのトップリーグよりきついぞこの面子」
小蒔「うぅ……やっぱり私も全然だめでした……」
咲「麻雀を続けてれば小蒔ちゃんだってもっともっと強くなるよ」
咲「これからも一緒にいっぱい打とうよ!」
小蒔「はい! よろしくお願いします!」
和「まったく、今日はやけに偶然が重なる日ですね」
淡「和ってばまだそんなこと言ってんのー?」
淡「いい加減能力の存在を認めちゃいなよー?」
和「そんなオカルトありえません」キリッ
咲「あはは、久しぶりに聞いたな和ちゃんのそのセリフ」
菫「ふぅ……こんなに勝てないのは記憶にないな」
菫「プロのトップリーグよりきついぞこの面子」
小蒔「うぅ……やっぱり私も全然だめでした……」
咲「麻雀を続けてれば小蒔ちゃんだってもっともっと強くなるよ」
咲「これからも一緒にいっぱい打とうよ!」
小蒔「はい! よろしくお願いします!」
和「まったく、今日はやけに偶然が重なる日ですね」
淡「和ってばまだそんなこと言ってんのー?」
淡「いい加減能力の存在を認めちゃいなよー?」
和「そんなオカルトありえません」キリッ
咲「あはは、久しぶりに聞いたな和ちゃんのそのセリフ」
347:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 00:06:38.08:2U+LBZ9T0 (4/8)
健夜「さてと」
健夜「みんなもう思い残すことはないよね」
「……………」
健夜「行こうか、この先に何が待ってるのか誰にも分からないけれど………」
淡「ねえ、咲?」
咲「ん?」
淡「衣にもまた会えるかな?」
咲「うん、きっと会えるよ」
淡「衣ともいつか麻雀で遊びたいな」
咲「衣ちゃんすっごく強いよ」
淡「あは、それは楽しみだね」
淡「衣なんかに絶対負けないんだから!」
健夜「さてと」
健夜「みんなもう思い残すことはないよね」
「……………」
健夜「行こうか、この先に何が待ってるのか誰にも分からないけれど………」
淡「ねえ、咲?」
咲「ん?」
淡「衣にもまた会えるかな?」
咲「うん、きっと会えるよ」
淡「衣ともいつか麻雀で遊びたいな」
咲「衣ちゃんすっごく強いよ」
淡「あは、それは楽しみだね」
淡「衣なんかに絶対負けないんだから!」
348:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 00:08:25.31:2U+LBZ9T0 (5/8)
健夜「それじゃあみんな、輪になって―――」
和「一緒に、清澄のみんなのところへ帰れるといいですね」
咲「そうだね……」
咲「みんなに『ごめんなさい』と『ありがとう』って伝えなくっちゃ………」
健夜「雀卓に手を触れて―――」
菫「なぁ照、どれだけ迷惑かけてくれても今さら私は気にしないからな」
照「うん………」
照「また菫が隣にいてくれたら嬉しいな………」
健夜「目を―――閉じてください―――」
健夜「それじゃあみんな、輪になって―――」
和「一緒に、清澄のみんなのところへ帰れるといいですね」
咲「そうだね……」
咲「みんなに『ごめんなさい』と『ありがとう』って伝えなくっちゃ………」
健夜「雀卓に手を触れて―――」
菫「なぁ照、どれだけ迷惑かけてくれても今さら私は気にしないからな」
照「うん………」
照「また菫が隣にいてくれたら嬉しいな………」
健夜「目を―――閉じてください―――」
349:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 00:10:58.06:2U+LBZ9T0 (6/8)
光が私たちの体を包み込む。
この世界そのもののような、やさしくて儚い光。
これからどうなるのか誰にも分からない。
でも、不思議と不安は感じなかった。
二年前の過ぎ越しの日、初めてあの壁の光に包まれたときの感覚と少し似ていた。
隣にいる咲の手をそっと握りしめる。
咲はその手をきゅっと握り返して、少し照れ臭そうに私に微笑んだ。
もしも生まれ変わることができるなら、私はまた咲と一緒にいたい。
また麻雀を好きになりたい。
咲が咲かせる可憐で力強いその花に、私はもう一度出会いたい。
繋いだ手はもう離さない。
私はずっと咲の側にいる。
「これからはずっと一緒だよ、咲」
「うん。大好きだよ、お姉ちゃん」
~おしまい~
光が私たちの体を包み込む。
この世界そのもののような、やさしくて儚い光。
これからどうなるのか誰にも分からない。
でも、不思議と不安は感じなかった。
二年前の過ぎ越しの日、初めてあの壁の光に包まれたときの感覚と少し似ていた。
隣にいる咲の手をそっと握りしめる。
咲はその手をきゅっと握り返して、少し照れ臭そうに私に微笑んだ。
もしも生まれ変わることができるなら、私はまた咲と一緒にいたい。
また麻雀を好きになりたい。
咲が咲かせる可憐で力強いその花に、私はもう一度出会いたい。
繋いだ手はもう離さない。
私はずっと咲の側にいる。
「これからはずっと一緒だよ、咲」
「うん。大好きだよ、お姉ちゃん」
~おしまい~
350:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 00:12:28.78:2U+LBZ9T0 (7/8)
というわけでこれで終わりです。
読んで下さった方は本当にありがとうございました。
というわけでこれで終わりです。
読んで下さった方は本当にありがとうございました。
351:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 00:46:48.40:w5jejorCo (1/1)
乙
本当に面白かったよ
乙
本当に面白かったよ
352:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 00:47:29.30:4/vVDo13o (1/1)
乙
原作でもこんな風に仲直りしてほしいな
乙
原作でもこんな風に仲直りしてほしいな
353:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 01:04:37.73:zTc/Bt7t0 (1/1)
乙
すごいよかった
何回もジワッときたよ
ただ、小蒔ちゃんは死なせなくてもよかったんじゃないかとは思ってしまう
乙
すごいよかった
何回もジワッときたよ
ただ、小蒔ちゃんは死なせなくてもよかったんじゃないかとは思ってしまう
354:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 01:34:19.15:3GBcWRPOo (1/1)
泣いた…
素晴らしい作品をありがとうございました!
泣いた…
素晴らしい作品をありがとうございました!
355:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 01:45:15.75:2U+LBZ9T0 (8/8)
コメントありがとうございます。
この話は初めてss書く前からずっと頭にあったことなのでようやく形にできてよかったです。
灰羽連盟は「もし自分が物書きになっていたらこんな話を書きたかったんだろうな」って思ったほど感動した作品です。
とても良い物語なのでまだ観たこと無くて少しでも興味を持ってくれた方がいれば幸いです。
>>353
後で小蒔ちゃんには謝っておきます。
コメントありがとうございます。
この話は初めてss書く前からずっと頭にあったことなのでようやく形にできてよかったです。
灰羽連盟は「もし自分が物書きになっていたらこんな話を書きたかったんだろうな」って思ったほど感動した作品です。
とても良い物語なのでまだ観たこと無くて少しでも興味を持ってくれた方がいれば幸いです。
>>353
後で小蒔ちゃんには謝っておきます。
356:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 03:29:10.30:SSzGTc+Co (1/1)
乙
すごくよかった
乙
すごくよかった
357:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/16(土) 03:50:51.92:KulOO+rVo (1/1)
良かった!
…番外でホームでの皆の日常小話なんかも見てみたいものですが、
とにかく乙でした
良かった!
…番外でホームでの皆の日常小話なんかも見てみたいものですが、
とにかく乙でした
358:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/17(日) 17:26:46.64:vmFXDu8DO (1/1)
乙です!
灰羽思い出して泣きそうになった
咲知らなくても十分楽しめました
灰羽キャラのエピソードが上手いこと振り分けられてて凄いなぁと
乙です!
灰羽思い出して泣きそうになった
咲知らなくても十分楽しめました
灰羽キャラのエピソードが上手いこと振り分けられてて凄いなぁと
359:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/19(火) 20:15:05.37:I4LYPo3SO (1/1)
乙
乙
360:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/02/20(水) 22:34:14.21:eh2ZC91z0 (1/1)
乙! オマケを書いてくれたら嬉しいな
乙! オマケを書いてくれたら嬉しいな
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