1 ◆v5br7sG8sw2013/01/15(火) 23:56:05.84pu9PpQAQo (1/3)


澪「ん?」

唯「よーやく澪ちゃんの誕生日です! おめでとう!」

澪「あ、あぁ、ありがとう…?」


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2 ◆v5br7sG8sw2013/01/15(火) 23:57:13.95pu9PpQAQo (2/3)


唯「成人おめでとう!」

澪「う、うん。さっきまで皆に祝ってもらってたから、それも沢山言われたけど」

唯「というわけでよーやく、私の『予約』が意味を持つわけです!」

澪「うっ、やっぱりそれか……」


私の言葉に顔を赤らめ、視線を逸らす澪ちゃんはやっぱりとても可愛い。
でも、顔を赤らめるということはやっぱり覚えてくれているんだ、私のした『予約』のこと。

そんな可愛い澪ちゃんと、成人したら付き合いたい、って私が言ったことを。



3 ◆v5br7sG8sw2013/01/15(火) 23:58:53.23pu9PpQAQo (3/3)


嫌われたくないから、それくらい好きだったから、私はあの時に念を押して確認までしたんだ。
「そんなこと言ってたよね?」って。それに、それがなくても私自身、あの日はかなり眠かったから記憶がちょっと曖昧だったし…
と、とにかくその結果、澪ちゃんはそう言ったって認めた。から、私は予約したんだ。
「その時がきたら、一番に告白させて」って。誰を選ぶかは澪ちゃんの自由だから、付き合いたいけど、付き合うこと自体は予約しなかった。

……でも、言い換えればそれは、私がこの場で澪ちゃんにフラれる可能性もある、ってことになっちゃうんだよね。
……でもでも、別にいいよね、それでも。フラれてもいいって意味じゃなくて、告白って、恋愛って、きっとそういうものだよね、って。

私から見れば、あのときに出来なかった告白を今するだけだもん。緊張はするけど、このドキドキは普通のことだよね。


唯「澪ちゃん!」

澪「うぅっ……」

唯「………」

澪「……は、はい」


ようやくこっちに顔を向けてくれた。観念したね、澪ちゃん。
ううん、私に向き合う、って決めてくれたのかな。だったら次は、私が真ん前からぶつかる番。


唯「……澪ちゃん! 好きです! 付き合ってください!」


勢いよく頭を下げて、そのまますぐにまた勢いよく持ち上げて、澪ちゃんの返事を待つ。
目をあっちこっちに動かしながら、口をもごもごさせて、それでも澪ちゃんは、ちゃんと私に答えをくれた。


澪「……よ、よろしくお願いします……」

唯「~~っ!! やったー! 澪ちゃん大好きー!!」

澪「うわっ!? こ、こら唯っ!」

唯「えへー」


思わず抱きついちゃった、というか飛びついちゃったけど、別にいいよね。
だってこれで私たちは恋人同士なんだもん。これくらい許されないわけがないよ。他に人もいないんだし。



4 ◆v5br7sG8sw2013/01/16(水) 00:02:15.0226DIOs13o (1/9)


澪「……やれやれ」


澪ちゃんもまんざらじゃないのかな。言いながら私の頭を撫でてくれてる。
っていうか、こういうことをしてもらえるのはすごく珍しいことのような気がする。
澪ちゃんの中でも主にあずにゃんみたいな後輩にすることだろうし、私が抱きつくとだいたい照れて引き剥がそうとしちゃうしね。

でも、今はそんなことはないみたい。
もちろん二人きりだからっていうのが大きいと思うけど、そうじゃなくてもうちょっと幸せな考え方もできるはず。

恋人同士になったから、っていう風に。
澪ちゃんが私に心を全部許してくれてるんだ、って。そういう風に。

私は、そう思いたい。
だから、言ってみた。


唯「……澪ちゃん、ちゅー、しよっか」


ぴたり、と。澪ちゃんの手が止まった。
ちょっとだけ目をぱちくりさせて、でも私が予想してたよりは恥ずかしがったりとかせずに、澪ちゃんは頷いてくれた。

……ええと。頷いてくれたのはいいけど、どうすればいいのかな。
と、とりあえず聞いてみる…?


唯「私から…して、いい?」

澪「う、うん……」


澪ちゃんが目をつぶる。よかった、なんとかそれっぽい雰囲気になった。
……しょうがないよ、この歳になるまでずっと「澪ちゃんと付き合えたらいいな」って考えているばかりで、そこから先なんて考える余裕なかったんだし。
あずにゃんをして「古風ですね」って言わせるような澪ちゃんも、きっとそうだろうし。

とりあえず、ここからは普通に唇を重ねればいいんだよね…?

……鼻がぶつかりそうだなぁ。ちょっと顔を傾けたほうがいいかな……

……よしっ。ん……


唯「っ、ちゅっ……」

澪「んっ……んちゅ、っ、は……」

唯「っは、ぁ、んぅ……」


……すごく、幸せ。




5 ◆v5br7sG8sw2013/01/16(水) 00:03:36.1826DIOs13o (2/9)



唯「――えへへ。ちゅー、しちゃったね」

澪「……うん……」

唯「…変じゃなかったかな?」

澪「わかんない……けど」

唯「けど?」

澪「……幸せ、だった……」


……私もだよ、澪ちゃん!
ちゅーってすごいんだね!
っていうかその表情、可愛いよ!

なんか言いたいことが一気に出てきて困るなぁ…どれから言おうかなぁ……


唯「……澪ちゃん、もう一回しよう!」


ありゃ、悩んでる間に素直な気持ちが勝手に……
でもいいよね、澪ちゃんも同じ気持ちだったんだし、私たちは恋人同士なんだし、何も悪いことなんて――


澪「っ、だっ、ダメ! キスは一日一回まで!」


唯「…………え、えええええええ!?」




6 ◆v5br7sG8sw2013/01/16(水) 00:16:48.5826DIOs13o (3/9)


【---日付変更線---】



唯「――聞いてるのりっちゃん!?」

律「……うるさい、聞いてるっての」


……深夜にいきなり叩き起こされた人の身にもなってくれませんかね唯さん。
こちとら超絶眠いんですけどねぇ……?


律「……っていうか今日も大学あるだろ……」

唯「サボる!」

律「一人でやってくれ……なんで私の部屋に来るんだ……」

唯「澪ちゃんに対するあてつけに決まってるよ! 澪ちゃんがりっちゃんに助けを求める前に先回りだよ!」

律「おーおー、澪のことよくわかってるじゃないの」

唯「……わかってたつもりだったんだよぉ~……」


あ、しまった、めんどくさいとこ踏んだ……


唯「キスは一日一回って何さ! そんなルール聞いたことないよ! むしろ何をどう考えればそうなるの!?」

律「いや、ほら、お付き合いは成人してから、とか言い出す奴ならガード固くてもおかしくはないだろ」



7 ◆v5br7sG8sw2013/01/16(水) 00:21:52.6426DIOs13o (4/9)



私はあの時その場にいたわけじゃないけど、一部始終はムギから聞いてるし澪のことだからそう言い出す可能性もあるよなぁ、ってのはわかる。
あんなメルヘンな歌詞を書き、恋に恋して憧れながらも、自分は「今は軽音が友達」とか言って距離を取ったり、私がそういうことをしてそうだと勘違いすると暴走する。
そんな澪だから、正直、その場の勢いで言ったに過ぎないんだ、あれは。私に彼氏が出来たんじゃないか?ってなって、それを認めたくないがために。
置いていかれたくないがために、勢いで私と私の恋愛を同時に否定しようとした。ただの意地で。
馬鹿だよなぁ、仮に彼氏が出来ても澪とはずっとずっと親友なんだから変な意地張らなくていいのに。

ただ……そこから先が問題なわけだ、今現在の。
これはきっと唯には言わないほうがいいんだろうけど、こうなったのはぶっちゃけ唯のせいなんだよな。
唯が澪と付き合う予約をした時に、唯が念を入れて澪にそれをもう一度聞いたから、意地っ張りな面がある澪は認めざるを得なくなった。
認めてしまったから、そのキャラを貫き通さなくちゃいけなくなった。
皮肉にも、澪も唯のことを好きだったからこそ。澪のことを汲んでくれた唯に応えるために、澪はそのキャラを作り上げてしまったんだよなぁ……
『古風で貞操観念がしっかりしている』みたいなキャラを。この数年で、みっちりと組み上げてしまった。


唯「「ちゅーしたとき幸せだったよね!?」って聞いたらさ、「幸せすぎたから、これ以上はダメ」って! いいじゃん幸せなんだからさー! もー!」


幸せいっぱい毎日ハッピーの唯が相手だから、澪はそこを律しようとしてるんだろうな。
澪はこんな私と付き合いが長いだけあって、しっかりしてるようで流される時は流される奴だから。
さっき聞いた、澪の唯とのキスに対する言葉はすごく澪の心境が現れてるんだ。「幸せすぎるから、幸せに流されてダメになりそうだから、これ以上はダメ」という心境が。
澪は自分の性格の分析くらいはちゃんと出来る奴のはずだから、キャラを作ることで自分を、そして唯をも律しようとしてるんだ。

……ところで、私が「律しよう」って言うのもなかなか面白くね?



8 ◆v5br7sG8sw2013/01/16(水) 00:23:38.7026DIOs13o (5/9)



唯「聞いてますかーーーーーー!?」

律「聞いてるよ! うるせー!」

唯「いーや、今ぜったい聞いてなかったよりっちゃんは。何かすっごくくだらないこと考えてた顔してた」


相変わらず変なところが鋭い奴だな……
肝心の澪とのことに気づけないのは、ま、幼馴染の私から見ればまだまだ修行が足りないな、って感じだけど。

……でも、だからこそこれくらいの問題は二人で乗り越えていってもらわないと。
澪の幼馴染として、唯の親友として、私は心から二人の幸せを願ってるんだから。


律「……で、どうしたいんだ? 唯は。一日一回しかキスさせてくれないケチな澪と別れたい?」

唯「バカなこと言わないでよりっちゃん! 大好きな澪ちゃんと別れたいわけないじゃん!」


……だよな。


律「じゃあ何なんだ?」

唯「……もっとちゅーしたい」

律「……あんまりがっつくなよ。身体目当てみたいで気持ち悪いぞ」

唯「ひどっ!? りっちゃんは彼女さんとちゅーしないの?」

律「そりゃするけど…しない日もあるし……」

唯「……信じらんない。あんなに幸せになれるのに、しない日があるなんて」

律「いや、わりと慣れてくるんだよ、キスも。何度もやってると」

唯「うわー、先輩目線だー」

律「実際付き合ってる期間とか付き合い初めとかから見たら先輩だし」


あの頃、澪に猛烈アタック(という名の予約)をかける唯を見て、なんかいいなぁって思えたから、私は気になってた奴にアタックした。
そしたらそいつも私と同じ理由で意外にも私を意識していたらしい。というわけで、と付き合い始めた。
そういう経緯だから、私のほうが先に彼女を作ったことになる。一応は。
ぶっちゃけ両想いだった期間では唯と澪に負けてるかもしれないんだけどな。


唯「はっ、そうか! 澪ちゃんは私たちがこんな倦怠期婦妻にならないようにって考えて!?」

律「誰が倦怠期じゃ! ラブラブだよずっと!」

唯「えー、じゃあなんで今りっちゃんは一人ぼっちなの?」

律「……今が深夜だからだよ! 早く帰れ!!」


そして、いい加減澪と向き合え!



9 ◆v5br7sG8sw2013/01/16(水) 00:26:29.6226DIOs13o (6/9)

*


――そんな風にりっちゃんの部屋を追い出されて、朝。
一応、澪ちゃんの考えが「倦怠期防止」だということにして、ちょっとそれに乗っかってみようと思う。
ちゅーしたい時にできないのは不満だけど、澪ちゃんも何か考えてるのは確かなんだし。

っと、そうだ、その前に澪ちゃんに謝らないと……。部屋を飛び出してりっちゃんのところに行っちゃったしね。


唯「……澪ちゃーん、いるー?」

澪「ぁ……ゅ、ゅぃ……」

唯「わあああっ!?」


澪ちゃんの部屋のドアを開けたら、目を真っ赤にして髪の毛を振り乱した澪ちゃんがいて、思わず大声を上げちゃった。
……けど、ちょっとだけ考えて、さすがの私でもそんな姿をしている理由に気づいた。
私のせいだ。


唯「ごめん、澪ちゃん! 勝手に出て行ってごめん!」ギュッ

澪「ゆい……私こそ昨日はごめん、そんなに怒るなんて思ってなかった……」

唯「怒ってないよ! いや、うーん、あの時はちょっとは怒ったかもしれないけど……ちょっとだよ! ちょこーっと!」

澪「……ごめん」


ああああ、違う、こうじゃなくって!
どうしよう、どうすればいいんだろ。
もう怒ってなんていなくて、澪ちゃんに謝りたいのは私のほうで澪ちゃんに謝らせたいわけじゃなくて、
そもそも付き合った初日からこんなケンカなんてしたくなくて、もちろん澪ちゃんと気まずくなんてなりたくないし仲良くイチャイチャしたい!
そういう気持ちを、どうにかして上手く伝えたいのに……!



10 ◆v5br7sG8sw2013/01/16(水) 00:29:33.6426DIOs13o (7/9)



唯「……ちゅ」

澪「んっ!?」


悩んだ結果、ちゅーしていました。
あ、あれっ…? なんで…?
……まぁいっか。幸せだし。それに、今更止まれないし……


唯「んちゅ、ぅん……ぷはっ」

澪「ぷはぁっ。ゆ、唯…?」

唯「……えへへ。ごめんね?」

澪「……何に対して…?」

唯「……何かなぁ。いろいろだけど……とりあえず、一日一回のちゅーをここで使っちゃったこと、かな?」


伝えたいことをいろいろ考えてたら身体が勝手にちゅーしちゃってたから、謝るべきだよね。
でも、澪ちゃんの顔を見た限りだと、私が考えてたこと自体は今のちゅーで通じてくれたのかな、と思う。
っていうか、私の考えてたこと全部ひっくるめて「澪ちゃんが好き」って気持ちだったんだから、身体が勝手に動いちゃったとはいえそれが一番伝わると思うちゅーをしたのは結果オーライなんじゃないかな?


澪「あっ、そ、それは、あの、唯、そのことだけど……」

唯「……ごめんね澪ちゃん、昨日は怒っちゃって」

澪「う、ううん、あれは私が……」

唯「いいんだよ澪ちゃん、しばらくはそれで続けてみよ? 澪ちゃんなりに考えがあったんだよね?」

澪「ん、ま、まぁ、一応は……」

唯「よかった。じゃあ、我慢できなくなるまで我慢するから」

澪「……ぷっ。なんだそれ……」


なんていうか、結局はりっちゃんに言われた「がっつくなよ」に尽きる気がしたんだ。
澪ちゃんと別れる気なんてぜんぜんまったくさらさら無いんだから、急ぐ必要もそんなにないかなぁ、って。
それに、ちゅーだけじゃなくてこれからは堂々と澪ちゃんに抱きついてくっついてベタベタしていいんだから、多分そっちでなんとか補える……と思う。たぶん。きっと……



11 ◆v5br7sG8sw2013/01/16(水) 00:31:32.6726DIOs13o (8/9)

*


律「――で?」

唯『いやぁ、最初はあんなこと言ってたけど一日一ちゅーもなかなかいいものかも、って思い始めてきちゃって』

律「あーそうですか」

唯『なんていうか、一回しかできないって考えるとどこでちゅーするか見極めないと!ってなるし、しかもそのぶんその一回の幸せさが大きいような気がして!』

律「はいはい……」


まだあれから数日しか経ってないのに、唯は意外と順応してきてるらしい。
たしかに、どんな状況でも楽しみ方を見つけ出せそうな感じはあるしな、唯のやつは。


律「で、そんな報告のために電話してきたのか? それより澪と遊んでやれよ」

唯『あ、んーん、そうじゃなくて。そういえば言ってなかったなぁ、って』

律「なにを?」

唯『りっちゃんありがと、これからもよろしくね!』

律「……ん」

唯『あと澪ちゃんとはさっきまで一緒にいたもんね! おやすみ!』ピッ

律「……はぁ」


ま、悪い気はしない。
しないけど、どうもあの二人に振り回されると、無駄に苦労させられてる感があるんだよなぁ。


律「そもそもの始まりからして、無駄に遠回りしすぎなんだよな、二人とも――っと、また電話?」


今度は誰だ……って。はぁ……


律「……どーした、澪」

澪『……どうしよう、律』

律「なにが」

澪『唯ともっとキスしたい』

律「………知るかぁぁぁぁぁあ!」


12 ◆v5br7sG8sw2013/01/16(水) 00:32:26.9526DIOs13o (9/9)

おわり

どうせなら>>5までを日付変わる前に投下すればよかったね


13VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/16(水) 01:42:24.95kKFRhzaZ0 (1/1)

乙乙
これはかわいい