403 ◆k.6bdeNTfg2013/01/22(火) 22:39:13.26z+vsJpBOo (11/18)

姉「お前がそう思うのと同じように、私もね、ずーっっっと思ってたわけ」

姉「なんでお前が、数ヶ月一緒になったクラスメートのために命を張る理由があるのよ?」

隊長「そりゃあ、隊長だからだ」

姉「ばぁーかっ」

隊長「……」

姉「……村から逃げ出した時のこと、覚えてる?」

隊長「いいや、大して」

姉「チッ、だからか」

隊長「何がだよ」

姉「お前、私を背負ってくれたのよ」

姉「自分ももう、傷だらけだったのに……私を、背負って、逃げたのよ、お前は」


404 ◆k.6bdeNTfg2013/01/22(火) 22:39:38.63z+vsJpBOo (12/18)

隊長「……」

姉「お前はね、そういうところがあるの」

姉「結局、最後は、自分が傷ついても、他人を助けようとするわけ」

姉「それなのに、孤児院に回されてから、お前が暗そうな顔をしているのを見て、私は……」

隊長「……」

姉「だから、私は多少の傷なら我慢するわ。お前が、私のために受けてくれた傷くらいは」

姉「それでお前が、私を選ばなかったとしても……ま、お前をそれなりに導いてこれたなら、満足、かしらね」

隊長「……」


405 ◆k.6bdeNTfg2013/01/22(火) 22:40:05.10z+vsJpBOo (13/18)

姉「……」クピ

隊長「……」 チョイチョイ

姉「ん?」

隊長「ん」

姉「んー……」 すくっ

隊長「……」

姉「ん」 どさっ

隊長「悪かった」ギュー

姉「んっふっふ。良きにはからえ」

隊長「そういうアホみたいなこと言わないでくれ」

姉「褒美にちゅーしてやろう」

隊長「……」


406 ◆k.6bdeNTfg2013/01/22(火) 22:40:32.63z+vsJpBOo (14/18)


――――――



407 ◆k.6bdeNTfg2013/01/22(火) 22:41:00.13z+vsJpBOo (15/18)

姉「……ん」

隊長「おう」

姉「本当にちゅーするとは思わなかったわ」

隊長「なんでだよ」

姉「どうせヘタれると思ってたから」

隊長「うるせぇ」

姉「それとも、あれ? 同情とか感じちゃった?」

隊長「同情で姉を襲うほどイカれてないつもりだ」

姉「じゃあさ……本気って取っていい?」

隊長「いいよ」

姉「よっしゃ!」

隊長「お、おう」ビクッ


408 ◆k.6bdeNTfg2013/01/22(火) 22:41:30.16z+vsJpBOo (16/18)

隊長「ただな、そのー、全部一足飛びには頭を切り替えられないぞ」

隊長「結婚するだの、そういうのは」

姉「いいわよ、そんなの」

隊長「そんなのって」

姉「これから、その気にさせるのは、こっちの仕事だもんね。お前はゆーっくり私のことを女として見れるようになりなさい」

隊長「ああ、そうだな」

姉「よしよし。こういうところで茶化さないのは褒めてあげるわ」

隊長「で、なんだ。さすがにこのまま宿舎で一晩明かすのは勘弁してくれ」

姉「じゃあ、明日は別の宿を取っておくわ。んで、私の分の部屋も用意しておくから」

隊長「出来るか! だから一足飛びは無理だっつってんだろうが」


409 ◆k.6bdeNTfg2013/01/22(火) 22:42:01.28z+vsJpBOo (17/18)

姉「……もたもたしてたらお前が死んじゃうかもしれないじゃない」

隊長「いや……分かったよ。ちゃんと死なずに帰ってくる」

姉「そしたら、二人きりで旅行とか有りよねー」

隊長「あのな」

姉「まあ、帰ってくるってんなら、安心して長期計画を練っておくわ」

隊長「ああそうかよ」

姉「ふひひ。嬉しくて顔がにやけるわ」

隊長「そんなにかよ」

姉「そんなになの」


――しばらく、ふたりでイチャイチャした!


410 ◆k.6bdeNTfg2013/01/22(火) 23:14:00.31z+vsJpBOo (18/18)

今夜はここまで!
次は「レコード」で情報収集だ。

おまけ。
他の人だったら、こんな感じかな、的な。

>剣士ルート?
剣士「俺はな、会長と決別しようと思ってるんだ」

剣士「冒険者に最強はない。俺はお前を見て、つくづく思うよ」


>工兵ルート?
工兵「なんだったら、僕と異世界へ冒険ってのはどうよ」

工兵「隊長が重苦しく生きたくても、そうはさせないからさ」


>術士ルート?
術士「……ただ二人で生きるんじゃないの」

術士「私、もっともっと成長するから。一緒に、行けるところまで行きたい」


>救護員ルート? 
救護員「夢じゃないですよね? うあぁ、嬉しいよぅ……」

救護員「えへへ、好きな人に好きって言ってもらえるっていいもんですよね、ね」


411VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/23(水) 01:15:26.606e/u6j2wo (1/1)

うへぇ全部見たかったなぁ・・・


412VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/23(水) 01:28:21.717YqZ5Vfko (1/2)

大丈夫、俺、>>1のこと信じてるから。


413VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/23(水) 02:07:35.28pN82+1zFo (1/1)

俺も信じてる


414VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/23(水) 09:52:42.05i5ZlppEm0 (1/1)

俺もだ

信じてるぞ



415VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/23(水) 11:02:34.14ciAYpkOQo (1/1)

ガチでルート選択だったのか
術師も報われてほしいんだが


416 ◆k.6bdeNTfg2013/01/23(水) 13:08:46.87q0FXlr0IO (1/1)

全部書いてたら死んじゃう( ;´Д`)
個別ルートに入るって書いたんですけど、うまく伝えられずにすみません
おまけ拡大版でも出します


417VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/23(水) 16:43:30.837YqZ5Vfko (2/2)

救護員が可愛いんだよおおおおお


418VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/23(水) 17:11:03.30NoPDEUYIO (1/1)

つまり剣士や工兵の個別ルートに入った後に出たであろう安価次第ではホモエンドの可能性もあったわけか…

惜しいことをしたな


419VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/24(木) 07:20:48.27ib1d1Vvdo (1/1)

ルート選択なら救護員選んでたのに・・・


420VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/24(木) 08:40:03.08qIUCwrnro (1/1)

ちゃんと個別ルートに行くって言ってたじゃないか。
くそ、術士ルート……


421VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/24(木) 17:38:31.36qj9GfTZAO (1/1)

まさか他の道筋が見えないくらい細い路地につっこむとは思わなかったのだよ…


422 ◆k.6bdeNTfg2013/01/24(木) 20:22:21.90oqNGLAzNo (1/9)

本編が書けないにゃー(´・ω・`) おまけ拡大版4連発。ただし、相当絞りました。
――
『剣士ルート』

剣士「……なんだ、起きていたのか」

隊長「そりゃこっちのセリフだ」

剣士「訓練が足りないと思ってな」

隊長「お前はいつもそればっかりだな」

剣士「ああ。憎悪を捨てろと言われて、真っ先に思い付いたのは、結局、俺は強くなることが好きだってことだった」

隊長「で、ハードルがなかなか越えられなくてイライラしたと」

剣士「その通りだ。ずいぶん、迷惑をかけたかもしれないが」

隊長「まさか。俺のほうこそ……」

剣士「女に言い寄られて、うらやましい限りだ」

隊長「本気で言ってるのか?」

剣士「もちろん」


剣士「で? 誰を取るんだ?」

隊長「取るも何も、俺が何かを選ぶような立場にはない」

剣士「と、思っていたかった」

隊長「……」

剣士「俺も決断には時間がかかったが、一度、自分の来た道を見直してみることは必要だろう」

隊長「本気なのかな」

剣士「冗談だと思うなら、冗談で返せばいい」

隊長「それはもうしにくいな」

隊長「そうだよ。剣士は好きな女とかいないの?」

剣士「俺か?」


剣士「思い当たらないな……」

隊長「呪術士とかさ。それとも、やっぱり会長が」

剣士「やめろ。確かに執心していたが、もうそのことには、きっぱりと決断することにしたんだ」

隊長「決断……」

剣士「ああ。俺はな、会長と決別しようと思っているんだ」

隊長「……そういえば、さっき何か言いかけていたな」

剣士「俺たちは特務機関で、最高の冒険者になるよう、育てられた」

剣士「互いに競い合ったが、やつとの差は離されていくばかりだった」

剣士「焦ったし、苦しかった。憎悪に燃えたのも無理からぬことだな」

隊長「……で、決別するってのは?」

剣士「やつを超えようとは思わないことにした」




423 ◆k.6bdeNTfg2013/01/24(木) 20:22:52.66oqNGLAzNo (2/9)


隊長「それはその、諦めるってことかい?」

剣士「ちょっと違う。やつとの手合わせは、腹立たしいが楽しかった」

剣士「剣の腕を競うことは続ける。もっとも、やつが竜退治から生きて還ってこれればな」

隊長「そういえば、そうだな」

剣士「だが、俺がすべきことは、やつを超えることではない。冒険者として大成することだ」

隊長「……大成」

剣士「そうだ。腕を壊せば竜は斬れる……だが、一頭一匹斬り伏せて、後は食われておしまいじゃあ、単なる間抜けなパワーバカでしかない」

隊長「なるほどね。それは分かる」

剣士「竜は斬る。斬れるように努力しよう。しかし、それを目標としない」

剣士「技や力を自慢しない、どんな状況でも最善が尽くせる」

剣士「それが俺の考える、最高の冒険者だ」


隊長「……そうか」

剣士「冒険者に最強はない。俺はお前を見て、つくづく思うよ」

隊長「まあ、確かに俺は強くはないがな」

剣士「だが、強かだ。ちょっと根暗が顔を見せることもあるがな」

隊長「うるせ」

剣士「もし、この冒険が終わったらどうするんだ? 本気で王国に就職するか、滅んだ村の墓守をするのか?」

隊長「さあな。正直、わからなくなってきたよ」

剣士「……」

隊長「姉の言う、選択肢に飛びつくか、それとも、年来の目標を持ち続けるのか……」

剣士「どんな生き方だろうと、俺はお前を蔑むことはない」


剣士「もし、この隊を解散することになっても、呼んでくれ」

隊長「……」

剣士「俺には目標やライバルはいても、友人はいなかった、と思う」

剣士「お前に、友達になってほしい」

隊長「バカ言うな。みんな友達だと思っているよ」

剣士「どうだかな。まあ、隊長が言うなら、そういうことにしておこう」

隊長「しておいてくれ」

剣士「……くくっ」

隊長「なんだよ」

剣士「こんなことを言ったのは生まれて初めてだ。顔が赤い」

隊長「なんだ、俺もだ。顔真っ赤だぜ」

隊長「お互い、めんどくせぇ性格だよな」

剣士「違いない」


424 ◆k.6bdeNTfg2013/01/24(木) 20:23:19.04oqNGLAzNo (3/9)

『工兵ルート』

工兵「隊長、ちょいと」

隊長「なんだよ、どうした?」

工兵「いやあ、モテモテですな~」

隊長「……お前、なんか言いふらしたりしないだろうな」

工兵「はっは。まあ、救護員もそっちに行ったし、僕としては肩の荷が降りたぜーって感じ」

隊長「ありゃ、冗談だよな?」

工兵「前から言ってたじゃん。救護員の本命は隊長に移ったって」

隊長(ううん、まさかなぁ……)

工兵「カワイソー。信じてもらえなくて」

隊長「お前もひどいよな」

工兵「なんで?」


隊長「工兵ってさ、今の性格が素で地なのか?」

工兵「素って、あ、ああ、会った時は随分ねぇ」

隊長「まあ、なんでもいいけどよ。こんなテンションが高いタイプだとは思わなかったよ」

工兵「救護員といるとさー、必然的に僕がツッコミ役に回らざるを得なくなるじゃん?」

隊長「あー」

工兵「まあ、なんのかんの言ってもね。僕は結構、救護員のこと好きだよ」

隊長「ウソくせぇ」

工兵「あはは。もし救護員と結婚したら、友人代表でスピーチしてあげるよ」

隊長(とことんむかつく)

工兵「で、実際のところ、どうするつもりなの?」


隊長「……今のところ、誰とも結婚するつもりもないし、村に戻って墓守で、いい、と思う」

隊長「ただな、みんな、善意で言ってるし、姉ちゃんの同居しろってのもな、断りにくい……」

工兵「あー、ダメダメ」

隊長「何が?」

工兵「消去法で決めるからダメなんだよ。断りにくいってことは、何か引っかかってるんじゃないの」

隊長「だから、そりゃな」

工兵「今すぐじゃなきゃ結婚していいの? 絶対に墓守じゃなきゃダメ?」

隊長「……」

工兵「自分を引っ張ってくれる人がいて、一緒に行こうって言ってくれて、そういう人を振り切るほどの決意があるの?」

隊長「そんなもの、お前にだってあるのか?」

工兵「あーるよ。僕は師匠の工房で働きたいんだ。勘当されても別にいいし」

隊長「ふうん」


425 ◆k.6bdeNTfg2013/01/24(木) 20:23:44.93oqNGLAzNo (4/9)

工兵「でも、こうして冒険するのもいいもんだね。腕がなくなった時はどうしようかと思ったけど」

隊長「……悪かった」

工兵「あーあー、いつもは偉そうなのに、こういう時はすぐ謝っちゃうのは僕、好きじゃないな」

隊長「じゃあ、なんて言えばいいんだ? 俺には、お前ほどの決意なんてないんだ」

工兵「いや、僕はね、隊長が来てくれって言ったら断らないけどね」

隊長「はぁ!?」

工兵「優先順位の問題さ。ほら、なんだったら、僕と異世界へ冒険ってのはどうよ」

隊長「異世界ね。俺が行くつったら、行くのかい?」

工兵「……隊長はさ、自分の魅力にあまり気づいてないよね」

隊長「俺のどこに魅力なんてあるんだ」

工兵「なかったら、女三人、言い寄ってきやしないよ」

隊長「だから、それはな」


隊長「……まあ、でも、なんだ、自分のことはともかく、俺はみんなのことはなんとか、うまく進路を進めるようにしたいと思っているよ」

工兵「ブッブー。重婚したら問題解決とか言っちゃうよ?」

隊長「ば、馬鹿言うな」

工兵「でしょ。僕らのことは、隊長のことでもあるんだから。まあ、じっくり考えてみなよ」

工兵「隊長が重苦しく生きたくても、そうはさせないからさ」

隊長「生意気言って」

工兵「結構、うちのメンバーって隊長に突っ込まれるタイプが多いじゃん。一人くらい、ツッコミ役でも良かろうと思ってな」

隊長「ふっ、はは」

工兵「あはははっ」

隊長「……ありがとうな」

工兵「で、いつ改造させてくれんの?」ガッショガッショ

隊長「するわけねーだろ」


426 ◆k.6bdeNTfg2013/01/24(木) 20:24:10.84oqNGLAzNo (5/9)

『術士』

隊長「術士、起きてる?」

術士「……ええ」

隊長「ちょい、外出ようか」

術士「いいの?」

隊長「みんなが起きる前に、ちょっと」

術士「……」


>外。

術士「ん」

隊長「ほい、飲み物」

術士「ありがとう」

隊長「……」

術士「……」


隊長「なあ、術士。ちゃんと受付の子と仲直りできたのか」

術士「な、何」

隊長「ひょっとしてさ、俺に結婚がどうの言い出したのって、相手が、もう謝らせてもくれないって、思ったからじゃないのか」

隊長「話に詰まって、だから言い出したのかなと思って」

術士「……どうして、そう思うの」

隊長「そう簡単に傷ついた心を切り替えることなんか出来ない」

術士「……」

隊長「少なくとも、俺は」

術士「……私も」

隊長「だったらさ」

術士「あの、でも、隊長と……したいというのは、嘘ではないわ」


隊長「あのな、繰り返すけど、俺は本心じゃみんなを馬鹿にしていて……」

術士「でも、変わったって言ったわ。私も変わったの。何度も、紆余曲折をしながら」

隊長「……」

術士「……結婚ってね」

隊長「うん?」

術士「……ただ二人で生きるんじゃないの」

術士「その人と暮らすだけじゃなくって、家柄とか、出自とか、そういうものを互いに背負いあうって言うか……」

術士「彼女が、それが出来たって聞いた時、私と関係ないところで、立ち上がって、そして歩いていたんだって……」

術士「そう、思った」

隊長「だから、関係ないんだって言ったのか」

術士「うん」


427 ◆k.6bdeNTfg2013/01/24(木) 20:24:37.64oqNGLAzNo (6/9)

術士「それでね、私も、関係ないところで、幸せになろうとしてもいいって、思って」

隊長「……それがプロポーズだって言うのか?」

術士「うん、断られちゃったけど」

隊長「今は、考えられないってだけだよ」

術士「じ、じゃあ、いつかちゃんと考えてくれる?」

隊長「……本当に、何も考えてないなら、呼んだりはしないよ」

術士「!」

隊長「俺も、その、なんだ。気になっているから」

術士「……たいちょうっ」だきっ

隊長「お、おい!」

術士「ん、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅーっ」

隊長「ん、お、ん、ふ……」


術士「ちゅ、ちゅ……」

隊長「ちゅっ、れろっ」

術士「……」

隊長「……」

術士「……ご、ごめんなさい」

隊長「いや、別に、嬉しくないわけじゃない」

術士「うっ」グスッ

隊長「な、泣かないでくれよ」

術士「ん、ううん。だって、隊長からもキス、もらったし」

隊長「……ああ」


術士「もうしばらくは、冒険者、続けるんでしょう」

隊長「そのつもりだ。宮仕えや墓守をする前に、しなくちゃいけないことは……あると思う」

術士「じゃあ、仮に、二十八番隊が解散になっても、私、連れて行ってくれる?」

隊長「あ、ああ」

術士「私、もっともっと成長するから。一緒に、いけるところまで行きたい」

隊長「……そうだな。もっと女として、見るようにするよ、俺も」

術士「……」カァー

隊長「なんだったら、術士が引っ張ってくれればいい。うん、そうだな、術士の故郷に行くってんでもいいかな」

術士(実家の挨拶……まさか隊長から言い出してくれるなんて)

隊長(……結婚ね。結婚か……)


428 ◆k.6bdeNTfg2013/01/24(木) 20:25:03.94oqNGLAzNo (7/9)

『救護員ルート』

隊長「ここにいたのか」

救護員「んあ? あ、隊長! ちょっと寝付けなくってですね、お茶飲んでました」

隊長「ああ」

救護員「それにしても、さっきはすごかったですねぇー」

隊長「そうだな。ん、もう一回言っておくけど、なんだかんだで助かったよ」

救護員「えっへん。もっと褒めてください」

隊長「えらいえらい」

救護員「へへ、でも、隊長はどうするんですか?」

隊長「救護員こそ、どうなんだ」

救護員「わ、私、今は、隊長が一番好きなんでっ、その……」

隊長「……人のこと、チビだの何だの言ってたじゃないか」

救護員「あ……はは」


救護員「ですよね~、まあ、そうなんですよ。でも、ほら、うん。隊長も成長しましたしね! あはは」

救護員「かっこ良く、なってきたし、術士ちゃんもお姉さんも、そりゃもう、真剣に狙うわけですよ、ね」

救護員「だから、ちゃんと、考えなきゃ、ダメです、うん」

隊長「……ごめん。一つ聞くんだけど……」

救護員「なぅ、なんですかぁ?」

隊長「真剣に狙うって、本当なのかね?」

救護員「そっ、そんなの当たり前ですよ! 女が冗談で結婚したいなんて言ったりしませんからっ」

隊長(妙に説得力があるな……だとしたら、本当なのか)

救護員「私は性格でアウトかもしれませんけど、お姉さんも術士ちゃんも、隊長のこと、ちゃんと考えているんですから……」

隊長「ちゃんと……か」

救護員「その、私も、応援しますよっ」

隊長「応援って、好きな男が他の女と結婚するのをってことになるよ?」

救護員「……うう」


救護員「だっでぇ、しょうがないじゃないですかぁ。私、選ばれないことくらい、もう分かってるから……」

隊長「お、おい、泣かないでくれ」

救護員「好きになっちゃったんだもん、隊長に笑ってて欲しいもん」

救護員「一人で、なくなった村に帰るだなんて、そんな寂しいこと、嫌です……」

隊長「……」

救護員「わ、私、馬鹿だけど、そういうことをするのは良くないって、思いますから」

隊長「……そうか」

救護員「だから、ね。ちゃんと、幸せになろうと、してください」

隊長「……」

救護員「ぐすっ、で、で、だ、誰が好きなんですか? 暫定一位とかなら、いるでしょ」ズッ

隊長「救護員かな」


429 ◆k.6bdeNTfg2013/01/24(木) 20:25:29.87oqNGLAzNo (8/9)

救護員「へっ?」

隊長「だから、真剣に、考えるなら、顔とか体はタイプだし」

救護員「だ、だって……性格がアウトとか言って……」

隊長「そりゃ、前から馬鹿にされてたからな。俺だってろくな性格じゃないんだし、お互い様かなって」

救護員「……」ボフッ

隊長「おうふっ」

救護員「……」

隊長「いやその、結婚したいとか、付き合いたいとかじゃないよ。ただ、自分を棚に上げて、好きな人を聞かれたら、救護員かなって言う」

救護員「……棚になんかあげなくていいです」

救護員「夢じゃないですよね? うあぁ、嬉しいよう……」

隊長(う、恥ずかしい……)


救護員「……よし、元気でた」

隊長「そ、そうか」

救護員「とにかく、隊長は、そういう風に、好きなものを好きって言っていけばいーんです」

救護員「そうしたら、きっと、幸せになれますよ」

隊長「……そうか」

救護員「……えへへ、好きな人に好きって言ってもらえるっていいもんですよね、ね」

隊長「……」

救護員「これは一生もののメモリーに取っておこう……」

隊長「救護員」

救護員「はい?」

隊長「ん」 ちゅっ

救護員「!」

隊長「ありがとうな」


430 ◆k.6bdeNTfg2013/01/24(木) 20:26:02.31oqNGLAzNo (9/9)

今夜はここまでだ!しばしまて!


431VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/24(木) 23:31:54.379v8ybN70o (1/1)

ひゃほーいありがとー!


432VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/25(金) 08:47:18.74iCUKfO5Bo (1/1)

サンクス!
やる気出た!


433VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/25(金) 19:58:38.673xZPM+RDO (1/1)





…あれ
天測士ちゃんどこ行った


434VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/25(金) 22:07:20.83DIP3TfxDO (1/1)

天測士なら俺の隣で寝てるよ


435VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/26(土) 13:38:13.724K7O6+Sv0 (1/2)

縺ゅj縺後◆繧??縺ゅj縺後◆繧??


436VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/26(土) 13:38:53.894K7O6+Sv0 (2/2)

文字化けした

ありがたや


437 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:47:36.12y1OBr08Fo (1/25)

>翌日。王立大図書館。

隊長「全員揃っているか?」

救護員「はーい」

剣士「ああ」

工兵「はいはい」

術士「はい」

隊長「……いるぞ」

姉「よろしい。じゃあ、説明はモノの前で行うわね」

姉「一応、極秘扱いだから、口外したら即首が飛ぶと思ってちょーだい」

救護員「えっ」

姉「それじゃ、図書館の地下に移動するわ。ほれ、付いて来なさい」

隊長(昨日の今日でその極秘扱いにオッケーを出させたのかよ)


438 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:48:15.01y1OBr08Fo (2/25)

救護員「ん、んー」

剣士「なんだ、唸って。腹でも下したか」

救護員「ち、違いますよ! あの、イマイチよくわかってないんですけど」

工兵「説明はモノの前でやるって言ってたじゃない」

救護員「そうなんですけどぉ、隊長」

隊長「ああ。『レコード』ってなんなのかってこと?」

救護員「そんなの、歴史の授業ではやりませんでしたよね?」

隊長「賢者は世界の境界線をあやふやにして異世界とのつながりをつけたり、摩訶不思議な魔物を呼び出したりしたらしいからな……」

術士「その全貌は、数十年経った今でも分かっていないわ」

姉「よく学んでいるみたいね」

救護員「……で、なんなんですかぁ?」

隊長「一言でいうなら、世界の全知識を記録する装置のことだ」


439 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:48:42.25y1OBr08Fo (3/25)

隊長「ただ、モノなのかなんなのかはよく知られていない、けど」

姉「見てもよくわからないわよ。それと、無駄口はちょっと控えておきなさい」

救護員「ケチケチ!」

姉「……」ふっ

救護員「な、なんですか、あの笑いは」

隊長(昨日ので随分ごきげんになってしまったようだな……)

姉「さあ、ここね。鍵を開けたら、処理室に入ってね」

姉「大丈夫だとは思うけど、念のため魔法による防護処理をかけるから」

工兵「へぇー、そっちの方が気になるけど」

隊長「こらこら」


440 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:49:09.93y1OBr08Fo (4/25)

>地下、『レコード』室。

術士「……すごい」

救護員「すごいんですか?」

隊長「ほー、でかいね」

姉「お前、これを見た第一声がそれかい」

工兵「そりゃ無理もないよ。なにこれ?」

剣士「魔力の球体だな。触手が延びているが……」


ぼんやりと紫色の物体が浮かんでいる。
その先から、剣士の言葉通り数十本の触手状の魔力体が地面に突き刺さっている。


術士「おそらく、あの触手体が、魔力の移動を感知して、それを記録しているのね」

術士「これ、魔法よ」

隊長「魔法か」

姉「よく学んでいるじゃない」


441 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:49:36.99y1OBr08Fo (5/25)

姉「簡単に言うと、これは賢者の魔法の……まあ、慣れの果てじゃないかと言われているわ」

姉「世界中の魔力の流れを記録しているみたいなんだけど……すべてを一人の人が引き出せるわけじゃないの」

姉「なんて言うのかしら、その個人の経験に応じて返答する答えが違うらしいの」

姉「使い方は、触手の一部を頭に乗せて、聞きたいことを頭の中で尋ねると、返事がある、という格好」

救護員「卑猥ですねぇ」

工兵「あー、それ思った」

剣士「緊張感がねぇな、お前らはよ……」

姉「……それでね? 記録係を準備させているから、終わったらそこで回答を話してもらうわ」

姉「それがこれを使用する条件。オッケー?」

隊長「副作用については?」

姉「私が使ったこともあるけど、もし異常が出たり、長時間の使用が続いたら危険と見なして引きはがすわ」

姉「下手に何でも知ろうとはしないことね」

隊長(まあ、そうだろうな)


442 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:50:06.55y1OBr08Fo (6/25)

隊長「分かった。それじゃあ、一人ずつ行こうか?」

術士「私から、行きましょうか」

隊長「いや、術士は召喚魔法との絡みもある。長時間がどのくらいになるかは見極めが必要だろうから――」

剣士「俺だろうな。効率よく竜を戮殺する方法など、回答は短いものになるだろう」

隊長「うん(戮殺……)。で、救護員」

救護員「は、はい!」

隊長「工兵、術士、そして最後にみんなの回答を聞きながら、俺、というのはどうだろう」

隊長「剣士とか救護員は、直接的な要素が強いんだろうけど、後の三人は質問内容も考えたほうがいい」

術士「それなら、妥当だと思うわ。最後にまとめが必要だと思うし」

隊長「よし、じゃあ、剣士から」

剣士「ああ」


443 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:50:32.92y1OBr08Fo (7/25)

隊長「頭に乗せるっていうか、なんか被っている感じだな」

工兵「すんごいシュール」

救護員「うう、これこそなんか洗脳される感じじゃないですかねぇ」

術士「これほどまでの魔法が、永続的に機能するなんて、ちょっと異常ね。何を目的に放たれたのかしら」

隊長「……英雄たちの考えることは分からないけど、普通に考えれば、竜の復活を阻止したり、対抗策を収集出来るようにしたんじゃないか」

術士「実際のところは、人の手で竜は育てられ、暴走しているし、性質上、竜に会って生き延びた人でないと、その真価が試せない術だわ」

隊長「確かにな……」

隊長(天測士のあの機械は、おそらく入力する経験を数字に置き換えることで、客観性を得ているんだな)

隊長(だからこそ、未来予測が可能だってわけだ)

隊長(うーむ、本来的にはそういう使い方が出来るように考えていたとか……それとも、慣れの果てと言うぐらいだから、本来の魔法とは違うものとか……)


444 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:51:00.10y1OBr08Fo (8/25)

剣士「ぐっ……」べしゃっ


救護員「……な、なんかすんごいイライラした顔してますけど!」

剣士「クソがっ」

隊長「記録係さんはあっちだよ」

剣士「ああ、行ってくる」

隊長「……何が見えたんだ?」

剣士「くっそむかつくおっさんが頭の中に登場して、受け答えをしてくれやがった」

救護員「お、おっさん?」

隊長「ああ、そういえば……」


記録係「それでは、質問の内容と回答を――」

剣士「竜の斬り方だ。通常、首や腹部を狙い、内臓などの柔らかい部分を切り裂く方法が考えられるが、実際に接近すると危険度が高く――」

記録係「ちょ、ちょっと待ってください。何ですって?」


445 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:52:23.35y1OBr08Fo (9/25)

隊長「剣士も常人じゃないからな……」

術士「プロの冒険者ってあんな感じなのかしらね」

工兵「剣士はプロの中でもおかしいレベルだと思うよ? アホみたいな体力、剣技、それからあの自信だもんねー」

救護員「うう、私もおっさんが語りかけてきたら、どうしよう……」

隊長「多分、そうはならないと思うけど」

救護員「と、とりあえず、行ってきますね」

隊長「……姉ちゃんや」

姉「なんだい?」

隊長「あの『レコード』ってのは、自分の記憶にある人物を呼び起こしたりするのかい?」

姉「んん~? 私が試した時は、そんなことなかったと思うけど」

隊長「……」

姉「ただ尋ねたら、返ってくる。そういうものではあったわ」


446 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:52:50.22y1OBr08Fo (10/25)

隊長「……工兵、術士、試してみる時に、どんな状況で受け答えをしたのかも頭に入れておいてくれ」

工兵「隊長、あらかじめ質問しておく内容はどうするの?」

隊長「ちょっと待って。剣士からも話を聞こう……」

剣士「……」

隊長「お、戻ってきたか」

剣士「チッ、面倒くさいんだよ、あの記録係」

姉「何かあった?」

剣士「いちいち話を遮ってもらっちゃあ困る。竜を人の身で斬れるはずがないとかなんとか」

姉「あー、それは悪かったわね。でも、普通の人は竜なんてもはや祖父祖母の世代の話だから」

剣士「昔話ってか。はっ! だったら、事前にこう伝えておくべきだったな。俺はすでに竜を斬り殺したこともある、と」

姉「まあ、記録がグチグチ言ってたら、記録にならないからね。ちょっと別の人間を呼びましょう」



447 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:53:35.46y1OBr08Fo (11/25)

隊長「……で、剣士」

剣士「さっき言ったおっさんってのは、あれだ、勇者のことだ」

隊長「ああ。お前に剣を教えたっていう?」

剣士「そうだ。そいつが出てきて、まあ、とにかく大笑いされたぞ。もっとマシな竜の倒し方を教えろ、と聞いたんだが」

剣士「『お前、剣の腕は戦士が一番だったからなぁ、俺に聞いてもアレ以上はわかんねぇよ』」

剣士「……だってよ! ふざけてやがる」

隊長「『レコード』の意味がないんじゃないのか」

剣士「ああ。だから、もっと有益な話はねーのかって聞いたよ」

剣士「とにかく、あの戦士だって、一人で斬り合って倒したりはしないかったって言われてなぁ」

剣士「巨体で、集団で行動されたら、とにかく引っ掻き回して動きを封じる、くらいしかない、と言っていた」

隊長「ううん。まあ、人間が竜になれるわけじゃないしな……」


448 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:54:04.35y1OBr08Fo (12/25)

隊長「他には、何か?」

剣士「発想を変えろと。何を斬るかを考えるべきだってな」

隊長「……質問を否定してるじゃねぇか」

剣士「だが……その後に、そうだな。確か、あのおっさん以外の人だったと思うんだが、いたような気がする」

隊長「ほう」

剣士「確か、竜のもっとも隙が出来る瞬間は、炎を吐き出す直前、大きく息を吸い込む時だと」

剣士「その瞬間を狙え、と言っていたな」

隊長「確かに、それは道理がある」

姉「……いやいや、普通は近付くのも精一杯でしょ」

隊長「まあ、剣士だから、出来そうだと思っちゃうんだけど……」

剣士「要は火炎を吐き出させるような状況に追い込めばいいということだろう」

姉「それって、命がけよね、多分」


449 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:54:30.77y1OBr08Fo (13/25)

救護員「お、終わったぁああ」ふらふら

隊長「お疲れ様。どうだった?」

救護員「どーもこーも。なんか綺麗なお姉さんが出てきて、竜の炎を回避する方法とかー、やけどの処置とかー」

隊長「そもそも、何を質問したんだ?」

救護員「んー、思いつかなかったんで、私に出来ることはなにかありますかーって聞いたんです」

救護員「そしたら、お姉さんが、竜の炎は魔力の火炎だから、魔法で防ぎやすくってどうのこうの」

救護員「私には関係ないですよね、それって言ったら、困ったような顔をして……」

隊長「ある意味、そのお姉さんに同情したいよ」

救護員「はあ?」

隊長「いやなんでも。それで、他には何か」

救護員「うーんと、大きくなりすぎると必然的に呼吸系が特殊でなくてはならないので、実は天気の変化に弱いとか!」

隊長「……雨雲に乗ってやってきているような気がするが」

隊長(待てよ……? 確か、一雨来たあと、晴れてから行動していたような気がするな)


450 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:54:57.86y1OBr08Fo (14/25)

隊長「で、救護員はさ、その女の人に心当たりはあるの?」

救護員「ありません!」

隊長「……だとよ?」

姉「その女性は、どんな格好をしていたか覚えている?」

救護員「えー、髪が長くってー、頭に変なながい帽子をかぶっててー」

姉「……」

隊長「何考えているか分かるよ」

術士「えっと、あれよね。勇者の討竜戦隊に加わっていた……」

姉「神官ね」

救護員「え? でも、全然若くて綺麗な……」

隊長「記憶と関わりなく出てきているからじゃないのか」

救護員「ふーん? なんでそんなすごい人が私に会いに来たんですか?」

隊長「会いに? そりゃ面白い考え方だね」


451 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:55:23.95y1OBr08Fo (15/25)

隊長「話を総合しよう。今、かなり重大な事態が起きている」

隊長「一つ目。勇者一行のソースを信じるとしたらだ、討竜戦隊であっても、竜をバッタバッタと斬り伏せてはいなかったらしいってことだ」

隊長「二つ目。どういう理屈か知らんが、勇者一行が直接後輩を指導しに来ているようだ」

工兵「へー」

剣士「……ちょっと待った」

隊長「なんだい?」

剣士「だとすると、あのおっさんの後に出てきた人は、もしや……!」

隊長「戦士じゃないかな。伝説の」

剣士「うがあああっ、俺はもういっぺんやる!」

隊長「どうどう! 次にまた出てくるとは限らないんだよ!」


452 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:55:51.26y1OBr08Fo (16/25)

工兵「えっとさー、そしたら隊長、僕は何を聞いたらいいかな?」

隊長「実際に竜を倒した方法……だと大きすぎるかな」

術士「自分自身の経験に基づくということは変わらないのでしょう」

術士「なら、やっぱり工兵が何を聞きたいのかに寄るほうがいいと思うわ」

工兵「僕の聞きたいこと、ねぇ?」

隊長「竜に関係することで頼むよ」

工兵「えっと、そうだなぁ。竜の改造の仕方、とか?」

隊長「……」

工兵「うーん、正直なところ、倒すことにあまり興味がないからなぁ」

隊長「なら、異世界からの技術知識で、竜退治に役立ちそうなものはあったのかどうか、とか」

工兵「そうだね。僕なら、有用か無用かは判断できると思うし、賢者が異世界の道を開いたんだしね」


453 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:56:18.51y1OBr08Fo (17/25)

隊長「それから、術士の質問は」

術士「……竜の火炎を防ぐ魔法ね。それ以外にも、防御を固めたりする術の強度に現実味があるのかどうか」

隊長「うん。それが妥当なところだろう」

姉「そんなに強力な魔法だったとしたら、誰もが倒せる方法にはならないと思うけど」

隊長「それなんだが、術士は元々、魔法を数字で再現する方陣術に長けているんだ」

術士「……竜クラスの魔炎に対抗できるかは分かりませんが、使いやすくは出来るかと」

姉「ふむ」

隊長「最後は俺か。俺は……」

隊長(竜を絶滅させる方法を、今度こそ知らなくてはならない)

隊長(おそらく、それを知らなければ、アレほどの暴力を止めるのは相当難しい)


454 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 20:56:44.68y1OBr08Fo (18/25)

――しばらくして。

工兵「ふひー」

術士「んっ……」

隊長「ご苦労様」

工兵「参ったよ。すんごい色んな知識を教えてもらっちゃった」

剣士「珍しいな。参った、とは」

工兵「……魔力抜きで、町一つを吹っ飛ばす爆薬が作れるなんて、想像できる?」

姉「……それ、記録させた?」

工兵「理解力が追いついてないから、省いたよ」

隊長「姉ちゃん」

姉「分かってるわ。存在を記録しない方がいい」

工兵「僕らごと吹っ飛ぶし、あまり意味が無いよね」

隊長「術士は?」

術士「……魔方陣を書くのに一昼夜かかるわ」


455 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 21:01:04.17y1OBr08Fo (19/25)

隊長「工兵、術士も、それを言ってきたのって、賢者……だった?」

工兵「んー、分からない」

術士「私、違うと思うわ。女性だったし」

姉「勇者一行の誰か、かもしれないわね。ああ、いいわね。貴重な体験よ、それ」

工兵「うーん、随分と話を聞かなそうな人だったんだけど」

術士「私は、ちょっと大人しくて、わたわたした人だった」

隊長「そっか……」

術士「隊長、私、これからすぐに、魔方陣を量産したいと思うわ」

隊長「そうだな……姉ちゃん」

姉「だと思ってたわ。すぐに、王立図書館の作業室を開けさせるから」

術士「ん」

隊長「工兵は、その、他になにか聞いた?」

工兵「うーん、いろいろ聞いたけど」


456 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 21:01:35.31y1OBr08Fo (20/25)

工兵「あっ、そうだ、竜というか、巨大な動物を眠らせる薬物があってね」

剣士「薬物……?」

工兵「それをバシューッて尖らせた筒を打ち込めば、かなり行動を鈍らせることが出来るよ」

工兵「問題は、僕は薬品の知識はあまりないってことなんだけど……」

隊長「確か学園長派は、餌と薬物によって、竜を飼い慣らしていたはずだ。連中の痕跡を調べさせれば、似たようなものは見つかるかもしれない」

隊長「姉ちゃん、悪いんだけど、あれの調査を早めに進めておいてくれないか?」

姉「ああ、竜の餌ね」

隊長「そうだ。あの固形物の中に、薬物が混入されている可能性は高いはずだ」

姉「ただ、睡眠薬とは限らないと思うけど……」

隊長「それもそうだが、念のためだ」

隊長「……さて、じゃあ、後は俺か」


457 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 21:02:03.49y1OBr08Fo (21/25)

隊長が紫色の触手に手を伸ばす。
じんわりと触れた先から暖かくなってくるそれを、頭に乗っけると、奥のほうで声が聞こえた。

その声を聞き分けようとした時に、不意に体が落ちていくような感覚に襲われる。
落下してはまずい、と思ったところで、目の前にはっきりと男の姿が見えた。

落下している。
落下しているのに、その男が目の前から離れない。
これが『レコード』か、と隊長はが思ったところで、目の前の男が声をかけてきた。


男『あー、そのままでいいよ』

隊長『……いや、これ、落ちているんじゃないのか』

男『精神描写みたいなものだから、気にしない気にしない』

隊長『いや、どういう態勢で聞いたらいいんだ?』

男『落ちっぱなしでいいとも』

隊長(どうしろってんだ……)


458 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 21:02:31.65y1OBr08Fo (22/25)

隊長『じゃあ、まず、質問だ』

男『ちょっと待った。その前にこちらから確認させてほしい』

隊長『……どういうこと? これはこっちから聞く装置じゃなかったのか』

男『いいから聞くぞ。竜にあったか?』

隊長『……あった』

男『何匹いた?』

隊長『最低でも十五匹はいるって話だよ。全部は見てないが、確かにそれ以上、いそうだった』

男『「学園」は何やってたんだ?』

隊長『何やったって……竜に破壊されちまったよ!』

男『ほほー、そいつは想定ミスだな』

隊長『お前、何者だ? 勇者の一行じゃないのか』

男『うん? そうそう、お前が見ている俺は、境界を有耶無耶にする魔法によって創りだされたパラレルな俺だ』

隊長『……何を言っているのか、さすがに分からん』

男『じゃあ、言い方を変えよう。俺は賢者だ』

隊長『!』


459 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 21:03:07.60y1OBr08Fo (23/25)

隊長『……衝撃すぎる。こんな軽そうな男が賢者とか』

賢者『あ? なに、俺ってば英雄視されちゃってんの? てか、チビに言われたくない』

隊長『うるせーよ!』

隊長『……まあ、いい。すまんが話を進めてくれ。何が何だって』

賢者『この魔法は、ある特定の条件で俺が未来の知恵者と対話が出来るように設定されている』

賢者『竜に出会った連中を指定しているはずだ。間違いないよな?』

隊長『……ああ』

賢者『状況は俺なりに理解した。人間は竜を制御することが出来なかったようだな』

隊長『ようだな、ということは、あんたはこの事態を想定していたのか』

賢者『つーか、悪い。竜を生き延びさせたのは俺だ』

隊長『……ああ?』


460 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 21:03:34.63y1OBr08Fo (24/25)

一旦休憩。


461 ◆k.6bdeNTfg2013/01/26(土) 21:54:53.14y1OBr08Fo (25/25)

すまぬ、今日はここまでじゃ。


462VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/27(日) 00:49:40.58Ejlu0ka4o (1/1)

なんと。乙です。


463VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/28(月) 01:30:42.66II2RLp6wo (1/1)




464 ◆k.6bdeNTfg2013/01/29(火) 22:15:58.540XSwwVVAo (1/1)

すみませんが、もう少しお待ちを…


465VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/29(火) 22:40:46.60mDB9UexRo (1/1)

待っとる


466 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:01:18.16nfKvVRV9o (1/17)

っしゃー! 全然うまく書けないからさくさく投下するぞ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
賢者『ふっふっふ、まずは聞きなさい。これが人類のためだと思ったわけだよ!』

隊長『……どういうことだよ?』

賢者『竜の伝説ってあるよね、魔族と覇権を争ったっていう、あれね』

賢者『強靭な体、鋭い爪牙、優れた知性、そしてブレス。どれもがたったの一振りで地面を引き裂くほどだったという』

隊長『……かつての竜は、今よりももっともっと強かった、と?』

賢者『その通り! 竜は弱体化していたんだよ』

賢者『なぜか? その理由を説明することもまた難しいが、要するにだな、強くなりすぎたのよ』

隊長『……』

賢者『竜は魔族との戦いに打ち勝ち、この世界の覇権を握った、ずっとずっと昔にな』


467 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:01:49.64nfKvVRV9o (2/17)

賢者『ところが、絶対強者となった竜はどうなったか。溢れる力、素晴らしい知性、それらをすべて衰えさせてしまったわけ』

賢者『敵がいないのなら、力も知恵も、使う必要がない』

賢者『それは繁栄していないって意味じゃない。ただ、力と知恵の代わりに、世界の隅々まで住処を広げることだけを優先した、と』

賢者『ここまではいい?』

隊長『ああ――で、そこに人間が現れた』

賢者『その通り、環境の激変ってやつだ。人間はとにかくポコポコ生まれて、知恵ばかりでなく、竜の使っていた魔法も盗みとった』

賢者『竜を退治するには、竜の魔法! しかもちょこまかと逃げまわっては不意打ちをかます人間に、次第に竜は押され始めた』

賢者『そして、竜を大陸の隅に追いやり――超大国の出来上がりだ』


468 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:02:16.58nfKvVRV9o (3/17)

賢者『そこで、俺達の時代の前、竜の王の登場だ』

賢者『世界を掌握したと思っていた人間は、記憶の片隅にも残っていなかった竜の登場にびっくりした』

賢者『そして、その時にはすでに、竜に対抗できるような魔法は忘れさられていたのだ』

隊長『……なんつーか、イタチごっこだな』

賢者『分かるか?』

隊長『どちらかが繁栄すれば、それをどちらかがひっくり返す。そしてまた、没落の道に入る……』

賢者『その通りだ。俺はこの事実を調べていくうちに、ちょっと考えたんだよね』

隊長『何を、だ?』

賢者『なんだと思う?』

隊長(くっそめんどくせぇ)

隊長『……』

隊長『竜を倒した後、人間がどうなるのか』

賢者『いいね、いいねー! 未来の知恵者は物分かりがいい』


469 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:03:02.70nfKvVRV9o (4/17)

賢者『弱肉強食と誰かは言う。だが、強者となって世界を支配したかと思うと、新しい現象が起きた時に対応できない』

賢者『例えば、魔法で一時代を築き上げた一族が、何かの拍子に魔法が使えなくなってしまったら?』

隊長『何か別の武器でも使えばいい』

賢者『だが、元のようには戻れない。少なくとも、肉体では勝てなくなっている可能性も高いよ』

賢者『人と竜がそれでも互いに生き残っていたのは、まさに柔軟な対応力に基づくものだったからだ』

隊長『……』

賢者『絶滅の危険性を減らすためには、多種多様な人間を育てるしかないでしょ』

賢者『魔法以外で戦えるやつ、戦いは得意じゃなくても、体力だけは有り余っている奴』

賢者『冒険者には色んな奴がいっぱいいた。だが、そんな連中を集めるだけじゃあダメ』

隊長『……育てる必要があるって考えたのか』

賢者『そう。それが、今準備している「学園」ってやつなわけ……いや、今は滅びたのか』

隊長『……まさか、竜を生き残らせたのは、その』

賢者『教育の一環だよ』


470 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:03:29.53nfKvVRV9o (5/17)

隊長『……ちょっと待て』

賢者『なんだね?』

隊長『あれのどこが教育だ! 俺たちは殺されかけたんだぞ!』

賢者『そうは言うけどさ。竜の王を倒した後、残っていたのは知性ある魔物ではなく、単に体のでかい動物だったぞ』

賢者『餌や飼い方も残してやったし、何よりこれで人竜が共存できれば、人類の未来の可能性を増やすことになるし』

隊長『あ、あのな……』

賢者『それに、安心しろ。万一暴走しても、「学園」には竜を退治するためのあるものが埋められている』

隊長『あるもの……?』

賢者『毒だ! これによって竜を弱らせればだな……』

隊長『……』

賢者『ん、どうした?』

隊長『ふざけんじゃねぇよ、この大アホがーっ!』

賢者『おおう』ビクッ


471 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:03:57.73nfKvVRV9o (6/17)

隊長『今、学園内の一部教師陣が、その毒と餌を握っているんだぞ!』

隊長『それを利用して、俺たち学生に牙を向けさせてるんだぞ!』

隊長『あんたの話を信じるなら、竜に対抗する切り札は、俺らの敵が握っていることになるじゃねぇか!!』

賢者『……お、おう』

隊長『仮に残っていたとしても、「学園」は破壊し尽くされて――』ハッ

隊長(そ、そういうことかよ……)

隊長(学園長派は、対竜の切り札を焼き尽くしたんだ……)

隊長(くそがっ……!)

賢者『おかしいな、こんな予定では』

『……だから、言ったじゃねぇか』

賢者『勇者!』

隊長(勇者……?)


472 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:04:32.39nfKvVRV9o (7/17)

勇者『お前の未来予測は宛てにならねぇってな』

賢者『そうは言うがな、俺の未来予測ではこのまま竜を滅ぼせば、早晩人間同士の争いで世界は荒廃すると……』

勇者『あー、分かった分かった。運命ね』

隊長『……おっさんじゃないのか』

勇者『うん? 俺のことか』

隊長『しかし、勇者と賢者が揃っているならちょうどいい。今からでも遅くはない。あんたたちの時代に戻って、竜を絶滅させてくれ』

隊長『そうすれば、この話は一発でおしまいだ』

賢者『それは無理だな。ここにいるのはパラレルな俺だ。お前たちの世界にいた過去の俺たちに、フィードバックがあるわけじゃない』

隊長『あー、くそっ!』

勇者『まあ、落ち着けよ、少年』

隊長『……』


473 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:07:09.19nfKvVRV9o (8/17)

隊長『だが、毒が必勝の切り札って言うなら話が早い。今、餌に混入されていた薬物を調べさせている』

隊長『対竜毒を大量生産すれば、こちらにも勝機があるって訳だな』

勇者『お、いいね。その不屈っぷり』

隊長『お前らのせいだろうが!』

勇者『まあ、そういうなよ。賢者にその毒の精製法を聞けば話は早いだろ』

賢者『いやしかし、あれは言うほど必勝ってわけじゃ……』

隊長『ほんっとにふざけんなよ』

賢者『と、とにかく教えるよ。そんなに怖い顔をしないでクダサイ』

勇者『すまんな。これから、俺たちはこいつが穴を開けた異世界も閉じないといけない』

隊長『……ああ、そう』

勇者『未来の世界についていろいろ聞きたいところだが、フィードバックがあるわけじゃないしな』

隊長『だったら、もう少し聞かせてくれ』

勇者『いいぞ』


474 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:07:36.14nfKvVRV9o (9/17)

隊長『一つ目だ、あんたらはどうやって竜を倒したんだ?』

勇者『竜の王を追い詰めたのさ。絶対的な指導者によって竜が再興したことは間違いなかったからな』

隊長『……しかし、例え王を倒しても、大勢残っているだろう』

勇者『殲滅戦に関しちゃあ、賢者や戦士が力を発揮してくれたんだ』

勇者『指揮系統さえズタズタにすれば、後はただの動物の群れだと思って、うまい具合にこう、追い詰めたのさ』

勇者『特に、やつらは雨を吹き飛ばさなくては、うまく行動できない』

隊長『……そ、それは、どういうことだ?』

賢者『どうも呼吸構造の問題でね、雲に届く大きさだというのに、実際に雲に当たったりすると息がうまく出来なくなるらしいな』

賢者『随分、雨を降らせまくったもんだよ!』

隊長(なるほど……)


475 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:08:04.64nfKvVRV9o (10/17)

隊長『二つ目、学園の連中は、竜を操るかして国に脅しをかけようとしているぞ。そこまで考えなかったのか』

勇者『考えてはいなかったな。だが、何かしらまずいことは起きる、と思っていた』

賢者『いや、だけど……』

勇者『あー、こいつは知恵はあってもかなりのアホなんだ』

賢者『(´・ω・`)』

隊長(今、何かを彷彿とさせるような顔をしたな……)

勇者『保険的な意味はあるが、俺もいろいろと考えているよ。特務機関で、何人か稽古をつけてやるとか』

賢者『俺もだ。この地に、この記憶魔法を設置したのも、その一つなんだぞ!』

勇者『俺が提案したからだろ』

賢者『う、うるさいっ』

隊長『……』

隊長(彼らは、過去に竜の保険を考えて行動していたのだな。そしてその結果が、会長や剣士だったというわけか……)


476 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:08:31.56nfKvVRV9o (11/17)

隊長『……三つ目だ。竜とまともにやり合うのはとにかく厳しい。何か、もっと楽な策はないか』

勇者『ない』

隊長『ないって……』

勇者『ねぇって。あの時だって死に物狂いだったし、今は竜の王がいるわけでもないのに、脅威になりつつあるんだろ』

勇者『それになあ、何か竜に対するとびっきりの弱点でもあるなら、俺らだって大声で後世に残しているはずだし』

隊長『……毒薬が有効だというのは聞いたが』

勇者『あれも、しばらく痺れる程度にしか効かないからな。もちろん、常用させていれば別だが』

隊長『じゃあ、どうしろってんだよ!』

勇者『ヒントはいっぱい出しただろ。一つ、雨にあまり強くない。二つ、毒に効き目がある』

勇者『それから、三つ、お前は一人でここまで来たわけじゃないだろう』

隊長『……』



477 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:08:57.94nfKvVRV9o (12/17)

勇者『俺達は一人ひとりが優れた冒険者だっていうプライドは持ってる』

勇者『だが、それとともに、チームで集まったからこそ、この結果を作り出せたと知っているわけさ』

勇者『お前も冒険者なんだろ?』

隊長『……』

勇者『だったら、仲間を信じてやりな。俺に言えるのはそのくらいだ』

隊長『はぁ』

勇者『へっ、ため息をつくんじゃねぇよ』

隊長『そんなの、俺は、ちゃんと信じているからな』

勇者『ああ、そう?』

賢者『勇者……普段は俺のことをバカボケ扱いしていたのに……』

賢者『やっぱり心の底では俺のことを信頼して……!』

勇者『それとこれとは話が別なんだぞ』


478 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:09:24.52nfKvVRV9o (13/17)

隊長『……分かった。最後に一つ聞いてもいいか?』

勇者『何?』

隊長『あんたら、どうやってチームを組んだんだ? そこのところ、今の伝え話じゃ大して残ってないからさ』

勇者『……』チラッ

賢者『んっ、ふっ、大したことじゃない』

勇者『同じ学園の出身なんだ。仲良し五人組でな、学園戦隊とか名乗ってだな……』

賢者『あーっ、なんで言っちゃうんだよ』

勇者『それがいつの間にやら、竜を退治した討竜戦隊なんて呼ばれて……』

隊長『へぇ……』


――バンッ!


479 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:09:51.12nfKvVRV9o (14/17)

姉「大丈夫!?」

隊長「……は」

姉「ちょっと、医療班呼んで!」

救護員「わ、私が診ます! ちょっと見せて下さい!」

隊長「……」

姉「声聞こえる!? 聞こえるわね!」

隊長「ああ。うるさいから、少し静かにしてくれ」

姉「あ……」

救護員「た、隊長、起き上がらないでください。長時間接続して、ビクンってなったんですからっ」

隊長「……ああ、そう」

姉「ったく、だから、そんなに長話をするでないと言ったのに」

隊長「言ってたか?」


480 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:10:17.44nfKvVRV9o (15/17)

救護員「たいちょー! 安静に、安静に」

隊長「分かっているって。それより、記録をつけないと……」

姉「本当に大丈夫なのね?」

隊長「大丈夫だ。記録係を呼んでくれ」

姉「……分かったわ。でも、休み休みでいいからね!」

隊長「おう」

隊長「……」

救護員「はい、お水を上げますよー」

隊長「ん」ゴクッ

術士「……隊長、大丈夫?」

隊長「大丈夫だ」

剣士「青ざめているぞ。無理をするな」

工兵「さすがに無茶し過ぎだよー」


481 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:10:43.98nfKvVRV9o (16/17)

隊長「……」

隊長「ああ、ありがとう」

救護員「はい、息を整えてくださいねっ、深呼吸」

隊長「すーはー」

術士「あの、『レコード』から離れて、休憩室でしばらくしてからの方がいいわ」

隊長「ああ」

隊長「……」

隊長「よし、一息ついたら、作戦会議といこう」

剣士「何か分かったのか?」

隊長「あー、そうだな。ま、なんていうか……」

隊長「仲間を信じろって言われたよ」


482 ◆k.6bdeNTfg2013/01/30(水) 23:11:13.33nfKvVRV9o (17/17)

今夜はここまで。ばしばし更新していきたい


483VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/30(水) 23:30:11.80LpVMsmADO (1/1)





賢者は天測士ちゃんの何かだったりするんやろか…


484VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/01(金) 06:59:08.68eIj5ka5Z0 (1/1)




485 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:33:32.510aT2sgpso (1/21)

>>483
孫です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>>休憩室。

隊長「じゃあ、話を総合しよう。まず一点目、竜は賢者によって

生き延びさせられていた」

術士「えっ……」

姉「なるほど」

剣士「どういう意味だ?」

隊長「過去の記憶によるものかもしれんが、賢者自身の言葉によ

れば『教育のため』だそうだ」

工兵「引くわー」

救護員「えーっと、賢者ってどんだけ気狂いなんですか?」

隊長「俺に言うな、と言いたいところだが、これはおそらく勇者

たちの間でもかなり議論になったことみたいだ」

隊長「それに、おそらくだが、前提として『竜をここで生き延び

させなければ、人類は絶滅の危機に陥る』という未来を予測した

らしい」

術士「……」


486 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:34:44.620aT2sgpso (2/21)

隊長「ちょっと待った、なるほどって言った理由はなんだよ」

姉「ああ、いいわよ、続けて」

隊長「良くないって」

姉「いや、最近の情勢の話になるんだけど、今、帝国が軍隊を作ろうとしているじゃない?」

姉「その上、どうも周辺諸国に強圧的になって来たのよね、今の皇帝になってから」

姉「詳しくは分からないんだけど、どうやら、他国に対する切り札、を手に入れたらしい、と我が国の外務省は見ているわけ」

剣士「つまり、それは竜とつながりがあるってことじゃないのか



姉「そうとは限らないわ。竜は今まで巧妙に隠されてきて、こちら側としては、何かの新兵器でも創りだしたんじゃないかっていう」

工兵「新兵器ねぇ……」

隊長「つまり、国家間で戦争に突入して、滅びの危機に陥るって?」

姉「そ。王国だって、その点については負けてないし……」


487 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:35:24.090aT2sgpso (3/21)

救護員「はい」サッ

隊長「うん、もう少し話してから説明するから」

救護員「ごめんなさい、ついてけなくて……」

隊長「大丈夫だよ。救護員がいてくれれば心強いから」

救護員「そ、そーっすか、えへへ」

隊長(なんか少し心が痛むな……)

隊長「……直接の滅びになるかは分からないが、竜がいなければ人間同士の争いになる」

隊長「特に、竜をも克服したとなると、かえってそれ以上の力があるなら制圧出来ると考えてもおかしくはないだろう」

剣士「ちょっと待った! じゃあ、帝国には竜を制圧する何かを持ってる可能性もあるんじゃねぇか」

隊長「姉ちゃん」

姉「ありえるわね。確か、さっきも工兵くんが聞いていた異世界の技術、異様な技術も混じっていたわ」

工兵「うーん、でも、あれって数百年から数千年に渡って毒を撒き散らす技術って感じだったような……」

術士「それが本当なら、まさに滅びの危機、ね」


488 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:35:58.440aT2sgpso (4/21)

姉「何? マジでマジなら私達、国を上げてひっくり返る必要があるんだけど」

隊長「……いや、落ち着いてくれ。それは不確定な話題だから」

隊長「二つ目、竜の弱点について、だ」

剣士「弱点、ああ、炎を吐き出す直前が狙い目とかか」

隊長「そ、それはまあ、出来る人と出来ない人がいるからな」

隊長「そうじゃなくて! もう少し具体的な話題が聞けた」

隊長「一つは、雨に弱いんじゃないかってことだ。息がうまく出来なくなるらしい」

姉「……それは本当なの?」

隊長「嘘かどうかは知らんが、やつらが活動している時は、大体雲を風や咆哮で吹き飛ばしてからだった」

術士「うーん、だとしたら、雨を呼ぶ魔法、とか」

隊長「あるいは、天候を予測して、そこに誘い込む、とかだな」

工兵「天候予測……」

隊長「あー、分かる。誰を思い浮かべたのかは」


489 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:36:35.120aT2sgpso (5/21)

救護員「はい」サッ

隊長「……もう少し待って」

救護員「あ、いや違うんですけど!」

工兵「えっ、救護員が意見を……!?」

救護員「工兵くん、さすがに怒るよぅ」

隊長「何かあるのか?」

救護員「えーっと、なんか雨が弱点かもって話、私もしたような気がするんですがぁ」

隊長(……ああ、さっきの話か)

救護員「でもね、土砂降りとかだと、私達もあまり行動出来ないと思うんですけど!」

隊長「い、言われてみればそうだね」

剣士「雨天時の戦闘訓練は、あまりやっていなかったからな」

工兵「ヒィィ!? これからさらに訓練するの!?」

姉「いいえ。もし仮にそれが弱点だっていうなら、それを基本線に据えることは可能よ」

隊長「……そうだな、最初からその予定だったし」


490 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:40:09.560aT2sgpso (6/21)

隊長「竜の弱点の二つ目だ。竜を弱らせる毒物、の精製法を入手した」

隊長「例の餌の痕跡から調査をしろと言っていたが、大幅に短縮して、毒物を生産するように指示してほしい」

姉「分かったわ。というか、さっき移動中にメモを送っといた」

隊長(この指示の速度は驚きの速さだな……)

隊長「それで、だな。工兵、この毒物を保管する容器って作れないか?」

工兵「待ってました!」ガターン

隊長「お、おう」

工兵「ま、僕にかかればそんな……簡単だよね!」

工兵「というかだよ、考えたんだけどさ、武器の先端部分を射出して、薬をちゅーっと注入出来ればいいんじゃないかと思いまして」

術士「うん……」

工兵「隊長の武器を改造してました!」ジャキーン!

隊長「……は?」


491 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:40:56.280aT2sgpso (7/21)

工兵「はい、ただの鉄棒が、爆雷管付き鉄棒に変わり、いよいよこれで鎖付きの注射針打ち込み型鉄棒に」

隊長「訳が分からんのだけど」

工兵「まず鎖部分を相手に向けます」

隊長「うん」

工兵「留め金を外します。すると……鎖がバネの力で勢い良く飛び出して、注射針が突き刺さります!」

隊長「……うん」

工兵「そこに衝撃を与えることで、内袋が破れて圧力によって薬品が押し出されるような仕掛けになっております」

隊長「なんで作った」

工兵「いやあ」

隊長「いやあじゃねぇよ。何を予測してたらこんなものを作ることになるんだよ?」


492 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:41:32.170aT2sgpso (8/21)

工兵「だって、隊長が、手が痺れる~って言うからさー」

工兵「だったら、手から離れた所で爆雷管を爆発させればいいんじゃねって思ったわけ」

術士「……いいなぁ」

隊長「良くないよ?」

工兵「いろいろ付け替えを出来るようにしといて良かったー」

工兵「もちろん、鎖はワンタッチで取り外しオーケー。刺さったまま魔物に振り回されたりすることもありません!」

剣士「手間暇をかけたはいいが、実用に耐えうるかは疑問だな」

工兵「隊長が使うから。実験台」

隊長「お前、思ったことを何でも正直に言えばいいってもんじゃねぇんだぞ……」

姉「楽しそうね」

隊長「うるさいっ」


493 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:42:12.360aT2sgpso (9/21)

隊長「それで、だ」

隊長「なんだかんだいろいろ聞いたが、俺も最善の策が思い描けているわけじゃない」

隊長「もうすでに、色々と出し合ってもらっているが、なんだ、その……」

隊長「みんなの知恵と力を借りたい」ペコリ

剣士「……ふっ、アホらしい」

隊長「おう、何笑ってんだ」

剣士「お前らしくもない。俺達は言いたいように言う。お前がまとめる」

剣士「何も変わらないだろうが」

術士「……うん」

工兵「むしろ、こんだけ好き放題に言ってて、隊長は疲れないの?」

救護員「が、頑張ってついてってますよぉ」

隊長「……そっか」


494 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:43:10.660aT2sgpso (10/21)

姉「なに? それが竜退治に必要なことなの?」

隊長「そうだよ。勇者が言っていたんだ」

隊長「仲間を信じろってさ」

剣士「ははははっ!」

工兵「わ、笑ってる」

救護員「気持ち悪いです、ホントに」

剣士「こいつらぶん殴っていいか?」

隊長「正直、俺も……あっ」

剣士「……」

術士「何がおかしかったの?」

剣士「いや、あのおっさんが、そんなまともなことを、意味もなく言うはずがない」

剣士「さっきも聞いたが、要するにそれはからかわれたのさ」

隊長(そうかなぁ)


495 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:43:50.300aT2sgpso (11/21)

隊長「そうなのか?」

剣士「あのおっさんならあり得ることさ」

剣士「ま、まあ、なんだ、俺がお前を信頼していないってわけじゃない」

姉「……ちょっと聞いていい?」ヒソヒソ

隊長「なに?」

姉「お前、同性趣味はないでしょうね、姉ちゃん泣くわよ」ヒソヒソ

隊長「頭が痛くなりそうだからやめてくれ」ヒソヒソ

術士「あの、お姉さん。彼は会長さんっていう人が元々好みだったようで」ヒソヒソ

救護員「こないだ、隊長に乗り換える宣言を……」ヒソヒソ

工兵「パネェっすよねー」ヒソヒソ

剣士「おい、お前ら」


496 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:44:37.160aT2sgpso (12/21)

救護員「うっさいですね! 隊長はノーマルなんです!」

救護員「性的な目で隊長を『信頼してないってわけじゃねぇ』とか言わないでくださいー」

剣士「ああー?」

隊長「まあまあ、それは置いとくから、何かアイデアを出してよってことなんだけど」

工兵「はーい、提案!」

隊長「はい、工兵」

工兵「王国が公認して、竜退治作戦をバックアップしてくれるんでしょう?」

姉「正確には、王国から依頼をする、という形になるけどね」

工兵「なんでもいいけど、そしたらさ、王国で雨乞いしてもらったらいいんじゃないかな」

隊長「雨乞い、ねぇ」

剣士「あいつら、雲を飛び越えて来るぞ。下手に雨乞いをしても、別に竜にダメージを与えられるわけではない」

工兵「そっかー」


497 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:45:33.330aT2sgpso (13/21)

術士「戦闘時に、水を無理やり降らせる方陣術ならあるわ」

隊長「あるのか!?」

術士「多分……理論上は可能」

姉「それ、本当なら相当高度な術よね。悪いんだけど、それも含めて量産するために缶詰してもらうわよ」

術士「あ、あう……隊長……」

隊長「差し入れはするから」

術士「そ、そういうその……」

工兵「はーい、僕も一緒にもろもろ量産するから、一緒に頑張ろうよ」

術士「……はい」

姉「で、それは置いても、よ。具体的にはどうするわけ? 弱点はある、それを突くための武器はばら撒く、それは分かったわ」

姉「だけど、それだけじゃ竜を追い詰めることは出来ないでしょう」


498 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:47:53.420aT2sgpso (14/21)

剣士「……勝算はないわけじゃない」

姉「へぇ、どんな?」

剣士「隊長、これは前提として聞くんだが……竜は独自の意思で行動しているのか?」

剣士「それとも人間に操られているのか? つまり、学園長派ということだが」

隊長「……」

隊長(竜は、好き勝手に暴れまわっているように、見える。だが、今の状況を考えるなら――)

隊長「少なくとも、誘導されていることは間違いない」

隊長「根拠は二つ。学園を襲った時、竜は人間に目もくれずに何かを探していた」

工兵「そういえば、そうだったかな……」

隊長「もう一つ、天測士の予測だ。竜が帝国に現れる、という。もし仮にこれが当たっているとなると、ちょっと困る」

救護員「……」プシュー


499 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:48:34.610aT2sgpso (15/21)

隊長「ええとだな、学園長派が帝国と敵対している場合、一番やつらにとって巨大な敵は帝国だ」

隊長「だとすると、竜に国を攻めさせることで、帝国はズタボロになる」

姉「それは我が国にとって有利になるわね」

隊長「嘘つけ、帝国がこの近辺では最も強大な国だ、そこが落とされたら、もう降伏するよりほかはない」

救護員「そ、そうですか」

隊長「逆に学園長派と帝国がつながっていた場合、ひょっとしたら、これが一番最悪かもしれんが……」

隊長「下手をすれば、帝国に竜がつく、という可能性だってある」

救護員「な、なるほどー」

隊長「とにかく、竜は学園長派の思い通りに動かされている可能性が高いってこと」

救護員「なるほどー」

剣士「ということはな、竜とやりあわなくても、学園長派をぶっ潰せばそれで済むってわけだ」

剣士「頭を潰す! おっさんも言っていた最善手だ」


500 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:49:22.120aT2sgpso (16/21)

術士「はい、隊長」

隊長「何?」

術士「私も剣士に賛成。竜と戦ってうち下すのは、私達にはちょっと荷が重いわ」

術士「もちろん、対峙した時の対抗策はもっていていいと思うけど……」

隊長「そうだなぁ」

工兵「学園長ってどんな人だっけ?」

救護員「教頭よりは若くてイケメンでしたけどぉ」

隊長「ああ。じゃあ、倒してもなんら問題はないな」

工兵「どういう理屈で……?」

隊長「ブサイクでいじめられることがなかったのに、卑怯な手を使っているから」

姉「……言うほどブサイクじゃないわよ」ボソ

救護員「んだんだ」


501 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:50:00.520aT2sgpso (17/21)

術士「わ、私、隊長の顔も、割りとタイプ、だし……」

工兵「あー、なんだろうな~この気持ち。素直に祝ってあげられない感情」

剣士「嫉妬だな。早めに解消しないと憎悪に変わるぞ」

隊長「いやあの、俺は事実しか話してないんだが」

姉「そりゃお前が小さい頃は、表向き大人しくして抵抗しなかったからよ」

隊長「……」

姉「はい、とにかく、ここで王国からの提案よ」

隊長「あ、ああ。そういえば……(王国の代表者、だったか)」

姉「外務省から声明を出させるわ。今度の竜の襲来事件において、多くの学生が犠牲になったこと、誠に遺憾であると」

姉「それにも関わらず、学園長からの連絡が一切なく、学生自ら学園再建へ協力の要請があったと」


502 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:50:55.430aT2sgpso (18/21)

姉「ついては、学園代表者に再建の相談を受ける旨を伝えるとともに、学園長に対してはその責任を問う」

姉「……どうかしら?」

剣士「そりゃ最上級の協力と言っていい」

姉「実際に、連中は焦って連絡をこちらに寄越していない。我々としても、どういう形であれ動く口実がほしかったわ」

姉「いいこと、こちらは竜への具体的対抗手段の生産に入るわ。あんた達はそのサンプルを作って、信頼の出来る冒険者に配りなさい」

姉「一方で、学園長をふん捕まえて来なさい」

隊長「……そこまで宣言して、大丈夫か?」

姉「大丈夫よ。はっきり言って、王国には大義名分が足りなかったんだもの」

隊長「いや、根回しが大変だろ」

姉「弟に、あーいや、ま、何もしてやれないんじゃ示しがつかないからね!」

隊長「あ、ああ」


503 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:52:54.210aT2sgpso (19/21)

隊長「分かった、そこまで言うなら、乗っかってやろう」

隊長「では、俺からも作戦を言う。まずひとつ、飛び出していった他の学園戦隊に武器を配る」

工兵「毒、と、あれか、防火用の魔方陣」

隊長「そうだ。ただ、散らばっていった人たち全員を追いかけても仕方がない」

剣士「なら、七番隊だな。帝国へ、例の軍師を追いかけて一時的に向かったはずだ」

剣士「それ以外にも、天候が予測出来るってんなら、好都合だ」

工兵「……わざわざ竜が出そうだってところに行くのかー」

救護員「戦闘狂はこれだからぁ」

剣士「チッ!」

隊長「……一番隊にも接触できないかな」

隊長「彼らは竜と戦っているはずだし、プロと一緒にいたんだから」

術士「でも、戦っていたはずの竜が、学園に来ていたわ」

隊長「ううん……」

受付「――失礼します!」


504 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:53:36.940aT2sgpso (20/21)

受付「あ、術士ちゃん」

術士「どうしたの……?」

受付「ごめんね、今は課長に。課長……」ヒソヒソ

姉「うん。へぇ、ふーん」

受付「……あまり驚いてませんね」

姉「今、その話していたから」

隊長「何があったの?」

姉「帝国が、王国に併合の要求を出してきたわ」

剣士「ああ?」

姉「こちらには味方に、伝説の竜がついているんだぞって」

全員「……!!」


505 ◆k.6bdeNTfg2013/02/01(金) 22:57:02.150aT2sgpso (21/21)

今夜はここまで。

行け行け早く。


506VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/01(金) 23:27:37.83Fmqz7ckRo (1/1)

乙!
盛り上がってきたな!


507VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/02(土) 09:07:53.24eVkSbyIc0 (1/1)

良いね良いね




508VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/02(土) 22:36:03.04vYy7zMxDO (1/1)




孫かー
思ったより近い関係だった
解説ありがと


509 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:32:55.93I2uICRtIo (1/13)

救護員「ど、どどど、どうするんですか!?」

剣士「落ち着け。帝国を牽制するんじゃなくて、戦争するのに変わっただけだ」

救護員「大違いですよっ!?」

術士「隊長、その……」

隊長「うん、そうだな」

隊長「姉ちゃん、これは俺の方からは言い難いことなんだけど」

姉「何を考えているか分かるわ。徹底抗戦よね」

隊長「あ、ああ」

姉「お前に言われなくても、人類の敵を味方につけて、偉ぶってるような連中に腹を見せる気はないわ」

隊長「あまり、無茶をしても困るけど」

姉「あー……っていうかね。うちは姫が好戦的だから」

受付「あっ、課長」


510 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:33:32.88I2uICRtIo (2/13)

救護員「お、お姫様が……?」

受付「いやあ、なんでもないんですよ。ちょっと! ちょっと好奇心旺盛で」

姉「うーん、多分この状況を聞いたら……」


?「竜諸共、彼奴らを滅ぼし尽くしてくれるわ!」カッカッカッ

?「ひ、姫、関係者区域とはいえ、そのようなこと……」


隊長「……なかなか勇猛な姫様のようですね」

工兵「へー」

受付「ひぃ、き、聞かなかったことにしてくれませんかっ」

術士「え、ええ。もちろんよ」

姉「こっちの方に来ていたのか。よし、チャンスね」

隊長「何をする気だ?」

姉「捕まえて進言してくるわ」

受付「!?」


511 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:33:59.03I2uICRtIo (3/13)

受付「あ、あのー、課長、さすがにいくらなんでも王族に直接アピールはまずいんじゃ」

姉「大丈夫よ。別に入れ知恵とかするんじゃなくて、対竜の作戦に予算を回してもらうだけ」

受付「あああ、この人も大概だなぁ」

術士「が、頑張って」

受付「う、うん」

隊長「じゃあ、俺達も作戦に入るわ。術士と工兵、それぞれ活動に入って欲しいし」

剣士「待った。事態が展開したなら、もう一度……」

隊長「いや、竜が帝国についたとなれば、要は凄まじい機動力を確保したも同然だ。二人はもう行動に入ったほうがいい」

術士「ん、うん」

工兵「了解です、隊長」

姉「じゃあ、向こうの部屋を使ってね、それじゃ!」タッ

受付「あ、課長! あ、あ、そうだ!」


512 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:34:51.25I2uICRtIo (4/13)

受付「あの、隊長さん、でしたよね」

隊長「そうですが」

受付「こ、これ。あなた宛だと思うんですけど」サッ

隊長「……」

救護員「なんですかぁ? ラブレター?」

術士「え……そんな……」

受付「何言ってるのよぅ、これは外部から来た手紙なの」

術士「だ、だよね」

工兵「先に行ってるよー」

術士「ん、行きます。それじゃ隊長」

隊長「ああ」

隊長「……さて、そうしたら、帝国に行くルートを決めないと」

剣士「そうだな」


513 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:35:22.70I2uICRtIo (5/13)

剣士「この部屋は使い続けてもいいのか」

隊長「何も言われていないんだからいいんじゃないの」

救護員「隊長も結構適当ですよねー」

隊長「まあね」

剣士「しかし、なんだ、早すぎないか、仮に帝国が学園長一派とつながっていたとしても」

隊長(確かにそうだ。先手を打たれた感じだな……)

救護員「隊長、手紙はいいんですか? 手紙!」

隊長「ああ、それもあったな」

救護員「だ、誰からですか?」

隊長「……十七番。軍師からか」

剣士「ああ?」

隊長「ちょっと、隊長会議の時に会ってさ」

救護員「なんか、変な手紙ですね。封が剥がれそうな感じの」

隊長「ちょっと待ってくれよ……」ガサガサ


514 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:35:49.65I2uICRtIo (6/13)

『当地にてサプライズパーティー企画。近日中に、大パレードの開催予定』

『ただし、あぶり出しがうまく行かず。』

『貸切を行うため、酒場に連絡とのことかと。クラッカーが足りないことはご承知おきくだされば』

『先着一名さま、南の谷でサーカスにご招待済み。立ち見なら間に合います』

『なお、プレゼントの持ち寄りは不要のこと。さようなら、十七番より』


剣士「なんだぁ?」

救護員「……は?」

隊長「暗号、かな」

剣士「くっそ面倒くさいことをしやがって」

隊長「手紙が途中で覗かれたらって気にしたんじゃないか」

隊長(しかし、まじめに受け取ろうとすると、これって……)


515 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:36:19.63I2uICRtIo (7/13)

隊長「……最後のセリフが遺書みたいだね」

救護員「ふ、不吉な」

隊長「まあ、これの言っていることは、おそらくこんな感じだ」

隊長「『学園長派に対する工作を行った、近いうちになんらかのアクションが起きる』」

剣士「おい、それがこの戦争だってのか?」

隊長「だろうな」

救護員「何をしたんですかぁ?」

隊長「分からないけど、やつらに行動を決意させるようなことを行ったことは間違いないようだ」

隊長「で、続き。『ただし、学園長派は地下に潜伏し、表に引きずり出せなかった』」

隊長「『そのための手はうった』……? かな? だが『武器や戦力が足りない』」

隊長「あとが良く分からん。南の谷でサーカス……」

隊長「『返信不要』」

救護員「さっぱりわけが分かりませんけどぉ」


516 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:36:49.59I2uICRtIo (8/13)

剣士「南の谷……まさか、会長たちがそこで竜と戦っているということじゃないのか!」

救護員「な、なるほどぉ」

隊長「待ってくれ、だとすると、それこそ一週間以上戦い続けている計算になるよ?」

剣士「ありうる。やつらなら」

隊長「それに、学園長派が一番隊を犠牲にする理由がないだろう」

剣士「だが、学園を潰したんなら、利用価値は低くなる……いや」

剣士「最初からそのつもりだったのかもしれんな。勇者の指導を受けたのは俺たちぐらいなものだ」

剣士「竜の部隊を作るつもりだったなら、俺たち二人は邪魔になりかねない」

剣士「そのために、順位の低い俺のいる部隊を先行させて様子を見させて、しかる後に一番隊を送り込む……」

隊長「……」

救護員「はい!」

剣士「ちっ……なんだよ」

救護員「それって、私たちはかませだったってことですか?」

隊長「大当たりだ。冴えてるね」


517 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:37:17.64I2uICRtIo (9/13)

剣士「ふざけやがって!」

救護員「いや、剣士が言ったことなんですけど」

隊長(一番隊が南の谷に縛り付けられているとして……俺たちがそこに向かっても何か出来るのか?)

隊長(それに、なんというか、仮に合流したとして、だ。結局学園長一派を逃すことに……)

救護員「うーん」

剣士「とにかく、だ。知らんやつの言うことは気に食わないが、こうなったら南の谷を経由して、帝国を攻めよう」

剣士「武器をばら撒くにしても、使いこなせるやつがいるなら、そいつに渡した方がマシになる」

隊長「それはそうかもしれないけど、目標は別に帝国と戦うことじゃないんだよね」

剣士「だったらどうするんだ」

救護員「んー?」

隊長「……どうしたの?」

救護員「いや、なんか、ここ不自然に……」

隊長「あっ」


518 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:37:43.52I2uICRtIo (10/13)

隊長「なるほど、『あぶりだし』ね!」

剣士「はぁ?」

隊長「ここの部分だけ、変な句読点が打たれてるんだ……良く気がついたな、救護員」

救護員「へっ?」

隊長「……何に気がついたんだよ」

救護員「いや、なんか変な匂いがするなーって」

剣士「みかんの汁なんかで書いたからだろう。子どもっぽい仕掛けをしやがって」

救護員「あー! 道理で!」

隊長「……あぶってみるよ」


『ただし、あぶり出しがうまく行かず。迷路の出口は西の七番口』


救護員「……えーっと」

剣士「炙っても意味が分からん」

隊長「いや、おおよその検討はついた」


519 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:38:10.11I2uICRtIo (11/13)

隊長「……よし! 荷物をまとめよう」

剣士「おい、どういうことだ?」

隊長「南の谷を通って、帝国西部で七番隊と合流だ」

救護員「あっ、西の七番口ってそういうことですか」

隊長「そうだ。思い出したぞ。ちょうど、谷が続いていて、地形的に一本道になる場所だ」

隊長「要するに、そこまで黒幕共を追いやるから、パーティーをやってくれってことだ」

剣士「面倒くさいことを……」

隊長「いや、面倒なことをしないと出せない状況だったってわけさ」

隊長「おそらく、軍師は命がかかってるんじゃないだろうか」

救護員「えっと、その、どうして?」

隊長「封が剥がれかかっている。おそらくは一度開けられたんだ」

隊長「目をつけられていたか、郵便物を検閲されたか、どちらにしろロクな状態じゃないってことだ」

剣士「チッ、急ぐか」


520 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:38:52.74I2uICRtIo (12/13)

――宿屋。

御者「おー、お嬢さん……」

救護員「御者さん、急いで支度して!」

御者「えっ、まだここに来て数日も経ってないでしょ」

救護員「急ぐのよぅー!」

隊長「すみません、二人ほど作業をしていますが、それを終えたらさっさと飛び出す必要があります」

隊長「馬の状態にも寄りますが……」

御者「ううん。酷使酷使で来ているから、結構潰れそうっすね」

剣士「馬は変えられないのか」

御者「そう簡単には……」

隊長「王都に馬を買えるところはあったか」

御者「わ、分かりました! まあ、ここに来るまで、休み休みは出来たので、なんとか一日分はぶっ飛ばしましょう」

御者「ちなみに、どこまでで?」

隊長「竜の谷です」

御者「殺す気か」


521 ◆k.6bdeNTfg2013/02/12(火) 21:39:57.03I2uICRtIo (13/13)

更新が遅くてすみません(´・ω・`)
今夜はここまで。


522VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/12(火) 23:12:53.96JyHGv4zto (1/1)

[ピーーー]気かワロタ


523VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/12(火) 23:56:14.00A1p3PzPIO (1/1)


何気に御者さんも部隊の一員と化してきてるな


524VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/15(金) 21:25:59.96Eok/ERnI0 (1/1)

このコンビネーションが良い





525 ◆k.6bdeNTfg2013/02/17(日) 23:16:04.04/7A6o3PIO (1/1)

明日から頑張るから、もう少しお待ちを!


526VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/18(月) 12:01:59.32V5phqytvo (1/1)

待ってる


527 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:49:22.10HfakbSzio (1/35)

――宿屋裏。

剣士「……だから、注射針のある方を振り回すんじゃねぇ!」キィン

隊長「無理だろ!」カン

剣士「衝撃耐性があるとはいえ、針が折れたら意味がないだろうが!」

隊長「それだと、柔軟に使えないぞ!」

剣士「直線の動きを心がけろ! 相手はでかい、こちらの動きを最小にする方がベストだ!」

隊長「そんなこと言ったって……うわっ」


剣士がばしぃっ、と隊長の鉄棒を叩き落とす。
笑いながら、剣士が駆け寄ってくる。


救護員「お~」

御者「ほ~」

剣士「ふん、まだまだだな」

隊長「……これ、相当なポンコツ武器だな。最終的には針でブッスリやらないといけないのに」

剣士「なら、いっそのこと、針は取り外ししておいたらどうだ?」

隊長「何の意味があるんだよ……」


528 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:49:55.47HfakbSzio (2/35)

剣士「意味はある。元々、棒付きの機雷だったのが、射出型の武器になったんだから」

隊長「……ああ。バネ仕掛けで機雷を打ち出して、相手の手元で爆雷させればいいのか」

剣士「そういうことだ。例の薬品は、いざって時に使えばいい」

隊長「工兵のやつ、戻ってきたら文句言っておこ」

剣士「そう言ってやるな」

隊長「やけに優しいね」

剣士「やつもお前のためを思って行動しているからな」

隊長「それは知っているさ」

隊長(うーむ、戦闘技術の不足を補うのは、やっぱり道具だな)

隊長(いずれ冒険者になったら、この手の道具を売りさばくのもよさそうだな……)ニヤ

剣士「悪い顔してるぞ」

隊長「ん?」


529 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:50:22.04HfakbSzio (3/35)

隊長「救護員、術士たちの様子は?」

救護員「なんか汗だくになってました」

剣士「終わりそうかどうかってことだよ」

救護員「えっとぉ……分かりませんでした」

剣士「チッ」

救護員「だって! 私は術もあんな機械なのも得意じゃないですしー」

御者「まあ、時間がある内に、馬の調子を整えて置けるのはいいっすけどね」

隊長「……救護員、周りの人は何をやってた?」

救護員「えっと、バタバタしてました」

剣士「……」

隊長「なるほど。だったら、もう少しだね」

救護員「えぇ!? なんで分かるんですか?」

姉「……あー、いたいた」

救護員「あっ」


530 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:50:57.76HfakbSzio (4/35)

姉「お前たち、結局、どう移動するの?」

隊長「いきなり来てそれか……まず、南の谷へダッシュ、後に西の谷口を塞いで学園長一派をぶっ潰す」

姉「なに、そこまで分かったの?」

隊長「一応、連携を取る予定だ」

姉「……信頼できるの?」

隊長「ダメなら、王国がやればいい」

姉「はっ、そういうことか。なら、任せておきなさい」

隊長「報酬は?」

姉「ほい、王家直筆サイン入りの依頼証明書。今、お金持ってても邪魔なだけでしょ」

隊長「……憎いくらい手際がいいな」

姉「旦那のフォローすんのが妻の役目じゃん?」

隊長「うるせー」


531 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:51:36.47HfakbSzio (5/35)

救護員「……あのぉ、剣士さん」

剣士「なんだ?」

救護員「お姉さんと隊長、めっちゃくちゃ仲良くなってません?」

剣士「そうか? そうかもな」

御者「ありゃ、男と女の関係っすねー、間違いない」

救護員「ええっ!」

剣士「……なるほど」

救護員「えっ、えー……マジで、えー……」

剣士「くだらんことで落ち込むな」

救護員「だって、隊長、えー……」

剣士「チッ……おい」ガシッ

救護員「な、なにするんですかぁ!」


532 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:52:02.38HfakbSzio (6/35)

剣士「隊長といつも一緒にいられるのはどっちだ?」

救護員「わ、私の方ですけど」

剣士「だったら、そこでアピールでもなんでもすりゃいいだろう」

救護員「でも、それって術士さんがいるし」

剣士「うるさいやつだな、そこまで気兼ねするなら、最初から諦めていろ」

救護員「そ、そんなの、わ、わかってます、し……」

剣士「分かっているような面か。どんな時でも諦めないのが勇者の条件だ」

救護員「……わ、私はただの凡人ですし」

剣士「言い訳はしてもいいが、それでも最後までついてこいよ。何しろ、隊長が求めてるんだからな」

救護員「そ、そうですか」

剣士「……」

救護員「……。あ、あーはいはい! 剣士なんかに言われなくてもやりますってば!」


533 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:52:34.82HfakbSzio (7/35)

隊長「何の話をしているんだ」

剣士「こいつが、今更怖気づいてきたから」

救護員「ビビってないですし!」

隊長「そう。俺は少し怖いから、頑張ってもらおうかな」

救護員「へい、任せてくださいっ!」

姉「……ああ、来たわよ。あんたたちの」

工兵「ヒャッハー! 終わったぜー!」ボロボロ

術士「……は、早く、行きましょう」ボロッ

姉「随分、頑張ってもらっちゃって申し訳ないわね」

隊長「心にもないことを……」

姉「ん?」

隊長「お気遣い、ありがとうございますぅ」

姉「よろしい」


534 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:53:01.61HfakbSzio (8/35)

工兵「こ、これで、竜なんかメじゃないよね……」

術士「隊長……がんばった……」

隊長「お、おう。お疲れ様」

剣士「休んでいる暇はない。ないが、馬車の中で休憩していろ」

御者「ぶっ飛ばすっすけど」

隊長「……うん」

隊長(手は出揃った。駒も作戦も……)

隊長(後は貫き通す意志一つだな)

姉「ちょっと」

隊長「なんだ、まだ何かあるのか?」

姉「頑張んなさい」こつん

隊長「ん……ああ、ありがとう」


535 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:53:33.01HfakbSzio (9/35)


隊長「よーし、お前ら。学園戦隊出動だ」

隊長「二十八番隊の目標は、一番隊の回収、七番隊との合流、そして――」

工兵「学園長一派の殲滅!」

術士「物騒ね」

救護員「でも、こんだけボッコボコにされて、やりたいようにやられっぱなしじゃ、虫の居所が座らないって話ですよ!」

剣士「何いってんのか分からねぇぞ」

隊長「とにかく行くぞ! えいえい……」

全員『おー!』



536 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:54:02.76HfakbSzio (10/35)

――南の谷。一番隊。

盗賊「……ストップ」

会長「いるか?」

盗賊「いるよ、参ったなー、こりゃ」

魔術師「なんとかならないか?」

盗賊「とにかく、まだ動くなよ……」

会長「……」

魔術師「……」

ズ――……ン ズズ――……ンン――

盗賊「……行った」

会長「ほっ」

魔術師「まずいな」


537 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:54:28.51HfakbSzio (11/35)

会長「魔術師、格闘士と斧戦士の容態は?」

魔術師「良くもない、悪くもない」

斧戦士「……すまん」

会長「しゃべらなくていいからね」

格闘士「ごめんね、足手まといに……」

会長「いや、これは俺のミスだ」

盗賊「会長、それより、あそこ、休憩場所になるかも」

会長「む。よし、慎重に移動……」

魔術師「了解」

盗賊「俺が先行するよ」

会長「よろしく頼む」


538 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:54:57.35HfakbSzio (12/35)

>穴。

会長「なんとか休めるところまで来たか」

魔術師「結界を張る。と言っても、気休め程度だが……」

魔術師「西の頂点より――」

格闘士「はぁ、はぁ」

斧戦士「反対方向の出口に近づいているのか……?」

会長「さあ、どうだろう」

盗賊「ちきしょー、なんだってんだよな」

会長「すまない、みんな」

魔術師「もう、謝らないでくれ」

盗賊「そーそー。まさか、プロ部隊がさ、裏切るって想定外すぎるだろ?」

会長「しかし、学園側が何か異常な目的を持っているのではないか、という予想はあった」

会長「だから、何度も言うがやっぱりこれは俺のミスだ」

斧戦士「……それは違う」


539 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:55:41.40HfakbSzio (13/35)

会長「斧戦士」

斧戦士「……俺も何度も言うが、こんな非道を予想出来る方がおかしい」

斧戦士「……自分を責めるな。俺達は脱出する」

盗賊「とはいえ、もう何日だよ。食料も限度ってもんが……」

会長「……」

魔術師「ふう。結界終わり」

格闘士「ん、はぁ」

会長「よし、とにかく、もう一度計画を練り直そう」

盗賊「おう」

会長「いいか、まず、この竜の谷に、この辺りから突入した」

会長「そして、内部の……おそらく地図上だともう山になっている部分だ」

会長「この崖下の洞窟を探索して、序盤に、あの連中に閉じ込められた」

魔術師「……」


540 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:56:12.76HfakbSzio (14/35)

会長「それで何体かの竜を撃破、四日目におそらく戦士の竜と出くわして、これもなんとか……」

格闘士「け、怪我はしちゃったけどね」

会長「すまない」

格闘士「いいって」

会長「それから、さらに奥深くを通り越して、今はこの、川を超えた方にたどり着いていると思う」

盗賊「な、な~んだ。あと少しじゃねぇか」

会長「だが、長い。出口が見つからない」

会長「もうひとつは、竜の数が増えているということだ。つまり、俺達は……」

魔術師「出口のない方を探している、かも?」

会長「……その可能性もある」

斧戦士「……」


541 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 01:57:18.18HfakbSzio (15/35)

今夜はここまで


542VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/19(火) 01:57:57.20pIIF4je+o (1/1)

乙!


543 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:48:52.83HfakbSzio (16/35)

斧戦士「会長」

会長「駄目だ」

斧戦士「……まだ何も言っていない」

会長「全員で帰るんだ。こんなところで終わってたまるか」

格闘士「……こんな時まで善人ぶられてもねー」

魔術師「やめろやめろ、仲間割れを起こしてどうする?」

会長「どうせ怪我人の自分たちを置いて、一旦助けを求めに行けってところだろう。そんなことはしない」

会長「第一、怪我は魔術師が回復をかけている。体力は消耗しているが、戦力を減らしたら勝ち目が余計薄まるんだ」

斧戦士「……」

盗賊「あー、ちょっといい?」

会長「どうした?」

盗賊「だったら、俺が先行して様子見ってのはどうよ」

会長「それは……」


544 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:49:19.13HfakbSzio (17/35)

盗賊「ま、この間も俺がなるべく先頭していたけど、ここなら見つかりにくい」

盗賊「ちょっくらひとっ走り、出口が近くにないかを探索するってのは」

会長「……いや、駄目だ」

魔術師「しかし、会長、もう、ジリ貧ってやつだ」

会長「それで失敗したらどうする?」

盗賊「もう、そんなことを言ってる場合じゃないぜ。可能性の高い方にかけるのは、無意味じゃねーだろ」

会長「……」


会長(剣士がいたら、どうするかな)

会長(やつがいたら、まあ、主張するだろう。『竜を全員斬り伏せれば、それで終わりだ』)

会長(やれやれ、成績が良くても、肝心な点ではやつには負けるな)


会長「……ちょっと、考えさせてくれないか」

盗賊「……ま。今すぐじゃなくてもいいけどよ」


545 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:49:45.30HfakbSzio (18/35)

会長(隊長君。彼ならどう考えるだろう)

会長(意見が対立していて、良い案が思い浮かばない)

会長(……いや、違うな。そういう風に考えるんじゃない)

会長(盤面遊戯でのことだ。彼は、どう駒を動かしていた?)

会長(そう、こっちをじーっと見るんだ。気持ちが悪いくらいにこちらを観察する)

会長(そして、奇妙なところでストップする。相手の動きを想定するのか、情報を収集するのか)

会長(そうだな、たとえば)ジーッ


斧戦士「……こっちを見ているな」

格闘士「会長も壊れたのかしらー」

盗賊「まあ、疲れてるからでしょ」

魔術師「お前らも随分と楽天的だな。食料だって……」


546 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:50:21.52HfakbSzio (19/35)

盗賊「くっく、実は隠し食料を持ってるんだよ~ん」

魔術師「おい、お前」

格闘士「ずっる! こっそり一人で食べてたんじゃないわよねー」

斧戦士「……ふう」

盗賊「あとさ、竜の肉ってうまいのかな?」

斧戦士「……お前、ひょっとして切り分けていたのか」

魔術師「ハラ壊すぞ」

盗賊「意外と伝説あるじゃん? 不死になるとか」

格闘士「天国に行ける、じゃなかったっけ?」

魔術師「ちょっと食ってみろ。毒見役だ」

盗賊「いやいやいや! ここは精力をつけてほしいなってことで、二人にね」

斧戦士「毒見は必要だな」

格闘士「うん」

盗賊「アレレー?」


547 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:50:48.02HfakbSzio (20/35)

会長「よし、決めたぞ」

盗賊「あ、会長! ここはひとつ、リーダーとして毒見を先導……」

魔術師「バカ言うな。頭を潰してどうする」

会長「何の話だ?」

魔術師「こいつが竜の肉を持ってきたって言うんだ」

会長「へぇ……」

魔術師「いやちょ、興味持たなくていいからね」

盗賊「とりあえず、生肉はまずいと思うんだけどさ~」

会長「ううん。火を起こすとなると、竜に気づかれる恐れがあるからな……」

盗賊「それもそうかぁ」

魔術師「いや、会長、何を決めたの」

会長「ああ。竜に斬り込む」

四人『……はあ?』


548 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:51:31.32HfakbSzio (21/35)

会長「俺達と共に、竜も出入り口の一つを塞がれたわけだ。だが、そこに殺到するでもなく、活動している」

会長「つまり、やつらには別の出入り口がある」

会長「そして、それを知っているというわけだ」

斧戦士「……脅しつけて、逃げ道へと案内させる、と?」

盗賊「いやいや、もしそれが、バッサバッサ飛んで行けるところだったらどうするのよ?」

会長「少なくとも、出口は出口だ」

魔術師「いや、まあ、飛行魔法とかも、ないではないけど」

格闘士「えーっと、その場合、誰が斬り込むわけー?」

会長「もちろん、俺だ」ドンッ

四人(あかんわ、この人……)


549 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:51:58.11HfakbSzio (22/35)

会長「俺が全力で暴れ回り、竜を追い立てる。すると、竜に動きの流れが生まれるはずだ」

会長「みんなはそれを確認して、隠れながら、出口へとついていく」

格闘士「バカなの?」

会長「言い方は悪いが、この中で一番強いのは俺だ。剣の腕しかり、体力しかり、戦術しかり」

魔術師「どんなナルシストだよ」

会長「みんなも、俺より優れているところがあるのは認めるけど、この役回りを果たすには力不足だ」

斧戦士「……」

盗賊「おい、眉間にシワを寄せるなって」

格闘士「本気なの?」

会長「検討した結果だ」


550 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:52:23.80HfakbSzio (23/35)

盗賊「みんなで生き残るんじゃなかったんかい」

会長「……? だから、そのための方策で、一番現実的な案なんだが」

斧戦士「……すまないが、会長。強力な竜に、五人で立ち向かって、俺達も怪我をして、やっと倒せたんだ」

斧戦士「それでどうして、一人でも戦えると?」

会長「俺は怪我をしていないし、目的が戦闘を避けるような姿勢で振舞っていたからだ」

会長「あのクラスの竜なら、まあ、三匹ならなんとかなる」

盗賊「嘘つけ!」

会長「五人の連携も取る必要があった」

格闘士「いやあの、そう露骨に足手まとい扱いされるとピキッときちゃうかなーって」

会長「一人なら一人の戦い方があるというだけだ」

会長「それに、引き際をわきまえられない人間に見えるか?」

格闘士「一人で戦える相手じゃないと思うって言ってるんだけどさー」


551 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:53:00.07HfakbSzio (24/35)

魔術師「……まあ、体力的にも今が分水嶺、かもしれんが」

格闘士「ちょっと、本気なの?」

魔術師「格闘士も、斧戦士も、戦闘はともかく行動は素早く取れるくらいには回復しただろう」

魔術師「食料の話もあったが、こちらからアクションを起こすなら、今くらいがちょうどいい」

斧戦士「……む」

盗賊「だからって、一人で戦わせるつもりか!?」

魔術師「ただ送り出すわけには行かない。肉体強化の魔法を使わせてもらう」

会長「それはありがたい。もう一つ、魔術師には、合図に合わせて、洞窟を崩落させてほしいと思っている」

盗賊「おいおいおい、崩落って」

会長「竜を追い詰めるには、この狭い場所に留まっていられない、と思わせる何かが要る」

会長「俺が暴れて引き付ける、そこに崩落、少なくとも自分たちが有利な状況に出るためには、ここから出たほうが戦いやすいはず」

会長「もちろん、みんなはそれに巻き込まれないように、出来る限り計算して魔法を撃ってもらう」


552 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:53:35.64HfakbSzio (25/35)

会長「どうだろうか?」

盗賊「……」

魔術師「やろう」

格闘士「あのねー……」

盗賊「俺も賛成~、自分の危険度が減るなら、そっちの方がいいや」

格闘士「こいつっ」

斧戦士「死ぬつもりでやる、わけじゃないんだな?」

会長「当然」

斧戦士「……なら、俺も最善を尽くそう」

魔術師「格闘士は?」

格闘士「はー、反対できるわけないでしょうに」

会長「なら、決まりだ。各人、準備をしてくれ」


553 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:54:13.37HfakbSzio (26/35)

――――


554 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:54:56.51HfakbSzio (27/35)

……竜は、警戒を強めている。
谷の洞窟を出た先発隊が戻ってきていない、それどころか、こちらに侵入してきた者がいる。
何か、狂ってきているのは確かなのだが、彼らはそれに気づけないでいる。

一頭、ずし、ずし、と地面を踏み鳴らしながら、同じ通路を行ったり来たりする。
それは警備ではあったが、必ずしも効率的で効果的なものではなかった。

漫然とした歩調で、その竜は曲がり角に差し掛かり――


竜「!?!?」どずっ!


強烈な衝撃が、喉に襲いかかり、警備竜はそのまま後ろに倒れ伏した。
背の低い、見えない位置からの攻撃! 油断していた上に、尋常ではない威力が、うち加えられる!

竜にとって悪いことに、倒れても、その喉に数回の攻撃が加えられる。
めちゃくちゃな突撃によって破けた喉から、液体が吹きだしたところで、抵抗すべく腕を振るう、が、当たらない。
影は飛び退り、足を鳴らして着地した。


555 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:55:23.16HfakbSzio (28/35)

竜「ぐっ、ぐっ、があああああああっ!」


ごぼごぼという血と息の漏れる音、しかし、それに被せるように、目の前の敵が叫び声を上げた。


会長「あああああああああああああ、トカゲ共、出てきやがれ――――ッ!!」


倒れ伏した竜が、仲間に助けを求めるより先に、その男は次の獲物に向かって走りだした。
顔をのぞかせた別の竜の目に石を投げつける。
怯んだ隙に、手にしていた武器を高々と振り上げる!


魔術師「壊れろ!」 ブワッ。


合図だ。
発声に伴う衝撃が、数匹の竜たちの頭上に打ち当たった。
音と煙と、そして洞窟の天井が破けた欠片が降り注ぐ――


盗賊「おい、威力足りてねぇぞ」

魔術師「……吹き飛べ、吹き飛べ!」ずどん! グバッ!


今度は黒の衝撃ではない、赤々と激しい爆発が、洞窟に広がった!


556 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:55:55.22HfakbSzio (29/35)

竜たちは動揺した。

天井からの攻撃を防ごうと腕で頭を庇う、すると一頭の足に鋭い痛みが走った。
それは巨大な針を踏んづけたような、いや、果たして、何度も何度も加えられていく攻撃は、折れた釘を踏み抜いたような痛みに変わっていく。


竜「ぐぎゃああああああっ!!」


怒号と土煙の間を、うろちょろと、何かが駆け抜けていく。

怒りのあまり、竜たちがそれを踏み抜こうとした。だが、逆に強烈な力で押し返されてしまう。
一頭がバランスを崩せば、次の一頭が重みに耐え切れない。
数匹が倒れそうになったところに、再びの爆発が襲った!


魔術師「豪炎、業火、破滅の門から現れろ!」 どぶむぅっ!!

「ぐるぅああああああああああっ!」


洞窟が、激しく震動する!


557 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:56:21.39HfakbSzio (30/35)

……

盗賊「……いいぞ、あとは会長に引きつけてもらって、俺達はこそこそ移動だ」

格闘士「だ、大丈夫なの、これー。すんごい揺れてるけど」

魔術師「しっ、叫んでなんだが、静かに素早く!」

斧戦士「……奥を見ろ、こちらに近づいてくる連中と、別の連中がいる」

盗賊「っしゃ!」


558 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:57:15.30HfakbSzio (31/35)

タッタッタッ……

格闘士「しっかし、いくら先制攻撃をしたからって……」

斧戦士「……ああ、異常だな」

盗賊「完全に、最初の一匹は力で押し切ってたよな?」

魔術師「俺の魔法のおかげだな」

格闘士「……。あー、すごいすごいー」

魔術師「チッ、俺は会長の位置を把握するから、後方に下がるぞ」

盗賊「おっけ、おら、お前ら、速度を緩めるなよ!」

斧戦士「ああ。大丈夫だ」


ずしゃっ。


格闘士「あぶなっ」


格闘士が、落下してきた岩をとっさに蹴り飛ばす。


盗賊「お、おお。さんきゅ」

格闘士「……回復率は四半ってところか」ワキワキ


559 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:58:55.36HfakbSzio (32/35)

盗賊「! おい、見ろ、あそこ出口じゃないか」

格闘士「ナイス、一気に駆け抜けよーよ」

斧戦士「……ちょっと待った!」

盗賊「ど、どうしたんだよ」

斧戦士「誰かいるぞ、影がちらついている」

盗賊「……」ジーッ


斧戦士の言う通りだった。
竜が飛び出していった、強い光の方角に、何か覗きこむような動きを見せる者がいる。


格闘士「もしかしてさ、あの、プロの連中じゃない?」

盗賊「あ、そうか。一個を閉めたなら……」

斧戦士「もう一つを抑えてもおかしくはない、というわけか」

魔術師「……おい、何をしている!」


560 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:59:22.46HfakbSzio (33/35)

魔術師「まずいぞ、ここでもたついていると――」

盗賊「あそこに敵影発見なの! どうするんだ!?」

魔術師「吹き飛ばすか!?」

斧戦士「バカ言うな、出入り口が埋まってしまう」

格闘士「ぶっ飛ばすしかないでしょ!」

盗賊「くそっ、出たところを狙い撃ちされたら、ひとたまりもないぞ」


会長「うおおおおおおおっ、こっちだ、こっち!」 ダダダダッ

「GYAAAAAAAA!!!!」 ずしん、ずしん、どしん――


斧戦士「……竜の一頭、あの竜だ、あいつが出入り口に向かおうとしている」

盗賊「だから!?」

斧戦士「タイミングを合わせて、同時に脱出するんだ。俺が盾代わりに斧を持つ」

斧戦士「格闘士、俺の背を飛び越して攻撃……いけるな?」

格闘士「行けなくても、ここで行くしかないでしょ!」

魔術師「俺は会長をフォローする!」

盗賊「よっしゃ、行くぞ……」


561 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 21:59:49.50HfakbSzio (34/35)

――十三番隊。

召喚士「……」

商人「あ、あの、リーダー」

召喚士「どうしたのだ? 我々の任務は一先ず決着がついたはずだ」

魔法使い「ええ、まあ……帝国が戦争をふっかけてきたんなら、否応なしにどっちにつくかを決めなくちゃならないしね」

召喚士「そして、共和国は議論の末、といっても、大統領が決定権を行使したのだが……」

召喚士「戦うことを決めた、と」

魔法使い「ま、リーダーの謎の話術のおかげじゃないかしら」

商人「それはいいんだけど、どうして、私達、こんなところで野営しているの?」

召喚士「うむ……」

魔法使い「竜と戦うからでしょ。あるいは、学園長派の逃げ道を防ぐ」

商人「だからぁっ! なんで、竜と、戦うの!?」


562 ◆k.6bdeNTfg2013/02/19(火) 22:01:05.81HfakbSzio (35/35)

今夜はここまで。ここまでなんだ、すまぬ。


563VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/19(火) 23:41:17.88HF6dpr+AO (1/1)




564 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:36:06.08qnnKyhS+o (1/18)

商人「私たちの任務は、その、一先ず決着が着いたんじゃないの!?」

召喚士「その通り。ここから先は、いわばアフターサービスのようなものだな」

商人「あ、アフターサービスが一番大変そうなんですけど!」

魔法使い「うるさいわねー。共和国が、準備が整っていないんだからしょうがないでしょ?」

魔法使い「大体、あんただって喜んで報酬を受け取ってじゃない」

商人「えっと、あれ?」

魔法使い「元から共和国に要請を行うのはボランティア。あそこでもらった報酬は、帝国軍、および竜の監視に対する前払金」

商人「……」

召喚士「まさか商の道を司る者が、そのような有様とは」

商人「う、う、うるさい!」


565 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:36:38.81qnnKyhS+o (2/18)


商人「あんたたちも、言いたいことはないの!?」

重装兵「ないな」

騎士「同じく」

商人「まあ、そうでしょうね、そう言うと思ったわよ」

召喚士「商人。考えて見給え」

商人「な、何を」

召喚士「元はといえば、我々に取っての今回の任務、君が発端だった」

商人「う……」

召喚士「責めているのではない。さらに底根をたどるならば、学園こそが元凶であり、いわばそこに入学した事自体が発端とも言える」

商人「いや、回りくどいのはいいんですけど」

召喚士「我々にとって、これは真実に近付く発端だった」

召喚士「あらゆる運命は、学園の崩壊に向かって勢い良く走りだしていた。もし竜に近づかなければ、無知のまま命を落としていたかもしれない」

商人「……」


566 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:37:04.72qnnKyhS+o (3/18)

召喚士「何らかの分岐を経たにせよ、学園の存立と歪みは、それぞれ成長してここに至った」

召喚士「それは結局をつけなければならないほど、崩壊する運命であった。だが、崩壊に際して、我々は真実に近づこうとした」

召喚士「だからこそ、いち早く……我々は他のどんな学生たちよりも、行動し、対抗しようとしている」

召喚士「そう、学園の本来の種である、冒険者を育てるという目的が、いまや芽を吹いて、歪みと滅びに巨大な綱を張っている」

魔法使い「……王国はともかく、共和国の情報不足は目に見えていたものね」

魔法使い「はっきり言って、私達が国を動かしたって言っても、まあホラ吹きにはならないわよ」

商人「……」

召喚士「ならばこそ、最後まで見届ける必要がある」

召喚士「真実を前にして、それを食すこともしないのでは、まったく不愉快という飢えは満たせないだろう?」

商人「……いやその、それとこれとは話が別っていうか」


567 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:37:30.63qnnKyhS+o (4/18)

商人「大体! もし共和国が有り難みを感じているなら、そこで報酬もらって当然じゃないの!」

魔法使い「あー、そうね、そういや」

商人「こ、こ、このっ」

召喚士「ドラゴン・ウォッチングは商売にならないかね」

商人「むきぃーっ! ウォッチしている間に逃げ遅れるわよ!」

重装兵「諦めろ、動きがあったぞ」

商人「ひっ」

騎士「さて……手入れはしておくか」

召喚士「ふむ。では、各人、襲来する対象を観察しつつ、仕掛けを作動させる準備に入れ」

魔法使い「了解、了解」

商人「あああっ、納得出来ないっ!」


568 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:38:02.13qnnKyhS+o (5/18)

重装兵「むっ、リーダー、あれは竜ではないぞ」

召喚士「ほう……人間の、軍隊か」

騎士「どうする? 人道に反するのでは」

召喚士「では、到達する一歩手前で作動させよう」

魔法使い「おっけい、対竜型破壊兵器、第一段階作動!」


――魔法使いの言葉に応じて、装置が反応する。
仕掛けは至ってシンプルだ、巨大な投石兵器、ただし竜への攻撃を行うために、魔法が施してある。

投じられる岩に、火が灯る。そう、火炎岩を発射させるのだ。

支えに張られたロープを、重装兵が持つ。
上空にいる敵への攻撃だけに、距離と高度が求められるため、固定式の大型の投石器を持ってきたのである。(なお、商人が用立てた)


商人「ね、ねえ、もしかしてデモンストレーションでこれを使うつもりなの?」

魔法使い「そうでないと、実際、竜に効くかわからないでしょ」

商人「これすっごくお高いんだからね!?」

召喚士「よし、では、これより十一を数えて行動を開始する」


569 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:38:27.84qnnKyhS+o (6/18)

召喚士「風向きは良し。どうやら竜の動きはこちらには流れてきていないようだ」

魔法使い「そりゃそうでしょう。共和国なんて与し易しと見て、人間の兵隊をまず向かわせたんだから」

召喚士「なるほど。では、召喚魔法を使うのも、まだと見て良いだろう」

商人「つ、使うつもりなの?」

召喚士「おそらく、人生の中で、これほど力を振り絞る時は他にないだろう」

召喚士「我々は幸福だ。自らの命を賭ける時が、こうもはっきりと分かるのだから」

商人「全然幸福じゃないわよね!?」

召喚士「五」

商人「うおい!」

召喚士「四」


570 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:38:53.86qnnKyhS+o (7/18)

召喚士の視線が、重装兵に伝わる。

行軍は止まらない、何らの不安も感じていないようだ……。

召喚士が腕を振り下ろす。
グイッと引っ張られたロープが、巨大な錘を引きずり下ろし、それに引っ張られるようにして燃える岩が打ち出される。

ぐぅぉおんっ!!


召喚士「爆砕!」

魔法使い「はじけろっ!!」


召喚士の合図と同時に、魔法使いが発声する。
その掛け声にしたがって、空中に大きく放り出された岩が、その、上空で――爆発した。


ずっどぉんんん――!!!


燃え立つ破片が、速度を増した火炎が、八方に降り注ぐ!


571 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:39:20.88qnnKyhS+o (8/18)

間一髪、だろうか。
爆砕した岩の欠片は、地面に次々と突き刺さり、さらに岩場で赤々と燃え盛った。
ここが草地であれば、一挙に燃え広がっていたことだろう。

人の群れは、その足を止めていた、いや、逆方向に動きまわるものもいる。
それを、指揮者たちが必死になって食い止めようとする。
誰が想像できようか、本気で殺す気の――


召喚士「……よし」

商人「……」パクパク

魔法使い「自分でやっといてなんだけど、すっごいエグい」

召喚士「これならば、あの竜を相手にもなるだろう。ただ、距離と発見の速度が求められる」

召喚士「投石機を再度準備し直そう。あわせて第二弾、第三弾の装置を、使用出来る状態にしておく」

重装兵「了解」

騎士「了解、了解」

商人「……了解」

召喚士「……ふむ」

召喚士(高速で接近された時には、これらの装置は無力となる)

召喚士(そうなれば、私の召喚術が必ず必要になってくる)

召喚士(今度こそ失敗はしない、魔王の力でも借りて、竜の足止めを行ってやろう)

召喚士(……二度も三度も居場所を奪われては、たまらん)


572 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:39:46.81qnnKyhS+o (9/18)

――七番隊。隊長到着まで、後一日。

斧使い「はっ、はあーっ、あの、り、だー!」

天測士「なに!?」

斧使い「ほんっとに、大丈夫、なのか!?」

天測士「なにがよ!」

斧使い「こんなに駆けずり回っていて!」

天測士「大丈夫よ! 隊長たちが来るのは、あと一日のはず!」

狩人「わか、分かったからさー」ハーハー

占い師「き、休憩、ぷひ~」

忍者「リーダー、さすがに少し急ぎすぎですな」

天測士「し、仕方ない、わね」ハァハァ

斧使い「はぁー、あ、占い師ちゃん、大丈夫?」

占い師「大丈夫、なわけが……」バタン

斧使い「うわー、倒れたー!」


573 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:40:12.35qnnKyhS+o (10/18)

>木陰。

占い師「……はっ」

狩人「あ、気がついたよ」

占い師「あ、わ、私」

天測士「……ごめんね」パタパタ

占い師「あ、リーダー……」

斧使い「全く、チームの体力を考えろっての」

忍者「いやはや、皆、ひところに比べれば随分と上がりましたぞ」

狩人「そうだーね。森に住んでた頃よりも体力ついたかも」

斧使い「そりゃあ、な?」

天測士「……いいえ。まだまだ足りないわ」

占い師「あ、うう」

天測士「あーいや、私がね、私の話」


574 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:40:38.44qnnKyhS+o (11/18)

斧使い「とりあえず、街の有力者とやらには大方声を掛けただろ」

天測士「うーん。まさか、あの、救護員、だっけ? の父親がその一人だとは思わなかったけど……」

斧使い「やたらとキレてたけどな」

狩人「それから、例の軍師さんに言われてたやつだーね」

天測士「ええ……」

~~~~~~~~~~~~
軍師『うーん、怪しいって言われましてもネ』

天測士『そうよ、怪しいのよっ!』ダンッ

軍師『と言われましても。帝国で、学園長派の行動を制限させる、それが目的デスよね?』

天測士『その方法が怪しいのよっ! 私達を嵌めようとしてない?』

軍師『……そのつもりはないデスが、結果的にそうなるかもしれないですネ』

天測士『やぁっぱり隠しているんじゃない!』


575 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:41:08.85qnnKyhS+o (12/18)

軍師『隠していると言いますか、お宅の隊の忍者サンに聞いた方が良いと思いますケド』

軍師『帝国に、学園長がいるのではないかと』

天測士『なにっ!?』

軍師『なので、表舞台に引きずりだそうかなぁーとネ』

天測士『……えーっと』

軍師『「学園長一派が竜を操り、帝国に叛旗を翻そうとしている」……こんな噂をまき散らしながら』

天測士『……なるほど』

軍師『それで、天則士さんにはお願いがあるんデスけど』

天測士『……ちょっと待った!』

軍師『はい?』

天測士(結局、結局よ、学園長をぶっ倒せばそれで済むってわけじゃないわ)

天測士(学園と、各国は根深くつながっている。学生が犠牲になる流れを断ち切る必要はある)


576 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:41:39.26qnnKyhS+o (13/18)

天測士(そのために、こいつの作戦が役に立つの?)

天測士『……あんた、なんでそれを知っているわけ?』

軍師『情報網がね、ちょーっと他の人より広いんデス』

天測士『……ふん』

天測士『少なくとも、そのやり口がしっかり効果を発揮するためには、相当潜り込まないといけないでしょ?』

軍師『まあ、大丈夫デス、大丈夫』

天測士『本当に大丈夫、なの?』

軍師『ま、それでですね、お願いすることがあるんですケドね』

天測士『何よ』

軍師『多分、抑えどころは西になるのではないかと』

天測士『はぁー?』

軍師『……。学園長派を、西に逃げるんじゃないかと』

天測士『西に?』


577 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:42:32.46qnnKyhS+o (14/18)

軍師『西には、各国に属さない、商人達の街が広がってマス』

軍師『もちろん、天測士さんが奮闘されても、金次第でどうともなりますカラ……』

軍師『なので、王国、特務機関本部、共和国、帝国、それから学園の人たちが追い詰めたとしても……』

天測士『つまり、私たちの作戦には穴があるってわけね』

軍師『そうですね』

天測士『分かったわ』

軍師『察しのいい』

天測士『ちょっと待って』ピッ ダララララ……

軍師『……なんスカそれ』

天測士『……』ピーッ

「セッショクテン、ニチジ、オシラセシマス」

天測士『なるほど、四日後』

軍師『……』


578 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:43:02.22qnnKyhS+o (15/18)

天測士『いいわ、やって上げる』

天測士『その代わり、死ぬんじゃないわよ』

軍師『……大丈夫デスよ』

天測士『それで!? 隊長にはちゃんとそういうの伝達しないとダメでしょ!』

軍師『あ、は、はい。いや、他の隊長さん方にもお知らせするつもりでして』

天測士『よし、いいわよ!』
~~~~~~~~~~~~~~~~
天測士「まあ、多分、へらへらしているけど、やることはやったみたいだしね」

斧使い「やり過ぎだぜ。まさか、帝国が戦争ふっかけてくるとは思わないじゃん?」

狩人「ああ、なんかどんどん大事になってくるね」

忍者「まったく」

天測士「……。ほら、あんた達は、休憩! 占い師が元気になったら、移動するわよ!」

三人『は~い』


579 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:43:28.82qnnKyhS+o (16/18)

占い師「ごめんなさい……リーダー」

天測士「いや、こっちの方こそ」

占い師「私、おかしいな~って思ってたんですよ」

天測士「え、何が?」

占い師「このチームで、私だけあまり役に立ってないというか……」

天測士「ど、どこがよ」

占い師「斧使いさん、は、武器を持ってて強いし~、狩人さんは遠距離攻撃……」

占い師「それに、忍者さんには誰も、追いつけない……」

占い師「か、肝心な、情報収集でも、リーダーの天測には敵わない……」

天測士「……」


580 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:44:20.12qnnKyhS+o (17/18)

占い師「私、追いつきたいです」

天測士「あのね」

占い師「……はい」

天測士「私の天測は、ちゃんと情報入れないと回答がないわけ」

天測士「占い師が読みだしたものがきっかけになったこと、一度や二度じゃないでしょ」

占い師「それは、その……」

天測士「……ふふん、もちろん、この私にかかれば、運命など簡単なことよ!」

天測士「だ、け、ど! 七番隊の運命は、それこそ私だけにかかっているわけじゃないもの」

天測士「全員が、もっと強くならなくっちゃ、私たちはただ助けられるだけの人だっけ?」

占い師「ううん」

天測士「でしょ!」


581 ◆k.6bdeNTfg2013/02/20(水) 22:46:24.30qnnKyhS+o (18/18)

今夜はここまで。許せ。


582VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/21(木) 12:16:48.80J8b0pRyio (1/1)

乙乙。


583VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/02(土) 23:04:26.45E8HUANmUo (1/1)




584VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/18(月) 21:17:46.75awnCT9tTO (1/1)

どうした。


585 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 16:59:27.97fJiWpOIYO (1/1)

絶賛不調中で、開けてしまってすみません…
とりあえず間に合えば今夜から!


586 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:05:33.57QnHyln6jo (1/18)

天測士「よっし、それじゃ、元気になったら……」

占い師「でも、リーダー」

天測士「な、なに」

占い師「なんだか、嫌な予感がするんですよ、私」

天測士「嫌な予感……?」

占い師「本当に隊長さんたちが来れるのかどうかとか……」

天測士「……」

占い師「ね、リーダー、もう一度、天測をしませんか?」

天測士「えっ、いや、でもさ、私の予測じゃああと一日で来るのよ」

占い師「そうですけど、私も手伝いますから~」

天測士「……」

天測士「分かったわ。でも……忍者!」

忍者「ここに」シュタッ


587 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:07:11.81QnHyln6jo (2/18)

天測士「あんた、これまでの情報で、何か欠けているものを知らないかしら?」

忍者「ふむ。欠けているもの、ですか」

天測士「竜のことや、学園の裏のつながりは知ってたでしょ?」

天測士「他になにか……あるんじゃないの?」

忍者「ふむ。あると申されましても、どの程度をご存知なのかが知りませんので」

天測士「ああ、もう! 例えばあんたが気になっていることとかはないの!」

忍者「そうですな。あの軍師とかいう男、非常に気になります」

天測士「いや、あいつはさ」

忍者「我々は強行軍で町を駆けずり回りましたな」

天測士「……そーだけど」

忍者「それはなぜですか?」

天測士「そりゃ、帝国の西に学園長を追い込むから時間が……あ」

忍者「我々はこれしかない、という道を選ばされているのでは?」

天測士「ちょ、ちょっと待った!」


588 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:08:03.39QnHyln6jo (3/18)

天測士「……マジ?」

忍者「彼奴の出身は大陸を離れた海向こうの国です。まあ、旧大国領土がどれほど荒れようと、痛くも痒くもありますまい」

天測士「まっずいじゃないのー!」

天測士「も、もしあいつの思惑通りに動いているとしたら……」

忍者「一網打尽の策に巻き込まれるでしょうなぁ」

天測士(ぐう~、隊長に見張っとけって言われてたのに、見事に引っかかったと来たら……)


隊長『……はぁ、使えない女だな』

天測士『ち、違うわい!(´;ω;`) ちょっと騙されたフリをしていただけで……』

隊長『がっかりだよね』


天測士「……全員集合!」

占い師「え? え?」

狩人「なーにー?」

斧使い「おー、どうした?」


589 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:08:31.67QnHyln6jo (4/18)

天測士「これから天測を開始する!」

斧使い「……は?」

狩人「いやいや、リーダー、そんなことやってる暇が……」

天測士「私を信じて!」

斧使い「……」

狩人「あーのさ」

占い師「やりましょう」

忍者「同意ですな」

天測士「よしっ!」

斧使い「せめて経緯くらい説明してくれよ」

天測士「だからっ、私達がハメられている可能性がひとつ!」

天測士「そして本当に隊長たちが来るのか、学園長一派が来るのかが分からないのがひとつ!」

天測士「私たちは、誰かに操られて動いているわっ!」

狩人「ええー?」


590 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:09:17.08QnHyln6jo (5/18)

天測士「本格的な天測を行うわ、斧使い、機材はちゃんと持ち合わせているわよね」

斧使い「いや、それは一応、持ってるけど」

狩人「そんなあやふやな理由でやるってのもねぇ」

占い師「いいえ、私も感じるわ」

占い師「モヤモヤした不安が、はっきりと形を取り始めているっていうか、そんな感じの」

斧使い「よっしゃ、占い師ちゃんが言うなら間違いねぇや!」ドン

狩人「ええええ」

天測士「狩人、忍者、あんた達は、目的のポイントを偵察してくれないかしら」

狩人「えっと……先行しろってこと?」

天測士「ええ。放置は出来ないから」

忍者「承知」スッ

狩人「仕方ないなぁ……」

天測士「よろしく!」


591 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:11:17.03QnHyln6jo (6/18)

びゅぉおおおおおお……

斧使い「ひぃー、なんか変な風が吹いてきやがったな」

占い師「リーダー、これもしかして……」

天測士「竜が動いているのかもしれないわ」

斧使い「げっ、俺達にゃ、竜を相手に出来るような力はないぞ」

天測士「……」

天測士「上等じゃない」

斧使い「いやいや、そういうやる気は要らないって」

天測士「ふっふっふ、全力で逃げ回ってくれるわ」

斧使い「そっちかい」

天測士「私達をコケにしてくれたこと、後悔するくらい追い込んでやるわ!」

占い師「おー!」


592 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:11:50.24QnHyln6jo (7/18)

――二十八番隊。『竜の谷』、クレーター付近。

御者「……おおーい!」

隊長「はーい!」

御者「停まるすよ! 前方、敵影あり!」


   ぐぅぅぅォォォォォ……


隊長「……竜だ」

剣士「よし」

救護員「よしじゃないでしょ」

剣士「交戦準備はしておくべきだ」

術士「……わざわざ竜と戦うの?」

隊長「いや、準備はしておいてね。準備は」

隊長「……御者さん! 様子は」

御者「いやぁ、それが何がなんだか。とにかく、次から次へと出てきているみたいなんすが」

隊長「次から次へ?」


593 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:12:25.27QnHyln6jo (8/18)

言葉どおりだった。
竜が崖っぷちから飛び出たかと思うと、次々と空へ飛び立っていく。
その様子は、まるで洪水から逃げ出そうとするネズミの様である。


隊長「……」

御者「どちらにしろ、これ以上は馬じゃあ近づけませんよ」

隊長「了解、この付近に一番隊も向かったはずですんで」

御者「無茶はなさらないでくださいね」

隊長「当然」

隊長「……全員、出てきてくれ。術士、いつでも耐火結界を張れる準備を」

術士「分かったわ」

隊長「剣士が先頭、なるべく向こうに気づかれないように」

剣士「ああ」

隊長(――だが、こんな状態で間に合うか、一番隊は)


594 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:13:00.79QnHyln6jo (9/18)

救護員「はーいはい! 隊長、私は?」

隊長「……手当の準備、一番隊をいつでもサポート出来るように」

救護員「くぅ~、了解!」

隊長「工兵、薬剤のカートリッジを。二人は後方にいてね」

工兵「おっけーよ。楽でいいなぁ」

隊長「よし、駆け足!」


ザッ、と駆けだす間にも、空に巨大な影が放たれていく。
だが、影はその場に留まるでもなく、ふらふらと飛び立っては消えていく。


隊長(竜たちには一貫性がないぞ。リーダーがいないのか?)

救護員「……あっ、隊長!」

隊長「静かに!」

救護員「うぇぇ? でも、あそこに人影が……」

隊長「なんだって?」

剣士「……隊長、ありゃあ、一番隊じゃないぜ」

隊長「……なんだって?」


595 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:13:48.96QnHyln6jo (10/18)

剣士「ひ、ふ、み、十人か」

隊長「素直に考えれば、一番隊と一緒に行動しているプロの冒険者隊だな」

救護員「じゃ、じゃあ、一番隊を助けようとしているんじゃないんですかぁ?」

工兵「そうなの?」

剣士「待て。ストップだ」

隊長「どうしたの」

剣士「連中、武器を構えてやがる、それだけじゃない……」

剣士「……あれは、見覚えがあるな。竜の、餌だ!」

隊長「……!」

救護員「え? え?」

術士「どうしてあの人達が、対竜の道具を持っているのってこと?」

隊長「……武器を構えろ」

剣士「おう」グッ

術士「……準備します」


596 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:14:42.40QnHyln6jo (11/18)

救護員「たいちょー! どういうことなんですか?」ヒソヒソ

隊長「やつらは学園長派に雇われた冒険者だ。つまり、俺達の敵になる」ヒソヒソ

救護員「……おお!」ポン

剣士「ごちゃごちゃ言ってないで斬り込むぞ! このままじゃ一番隊は絶望的だ」

隊長「待て、連中は竜に気を取られている」

隊長「……工兵!」

工兵「あいはい」

隊長「爆雷管をありったけ打ち込んでくれ」

工兵「死んじゃうと思います」

隊長「いいんだよ。剣士が先行して斬りこんだら態勢を整えられる」

隊長「そんなことより、混乱させてまとめてぶっ飛ばそう」

工兵「死んじゃうのはいいのかなーって僕は思うよ」

工兵「ま、やるんだけどね」

隊長「術士、方陣術で一足飛びにやつらに近づこう」

術士「了解」


597 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:15:33.22QnHyln6jo (12/18)

隊長「竜がこちらに構う前に、まず連中を制圧する!」


隊長が言うと、全員が体に緊張を漲らせた。

早速、工兵が背負いカバンから爆雷管を取り出して、人の塊に狙いを定める。
術士が方陣符を地面に投げつけて、速度を上昇させる『台』を設置する。

けたたましい竜たちの叫び声の中で、工兵が爆発を起こそうとしたその時、剣士が制するように言った。


剣士「待て! あの崖の端から誰か出てくる!」

工兵「え、ちょ、間に合わないよ!」


がしゅっ、がしゅっ、ずどどど……!!

音を立てて雷筒が弾け飛ぶ!
一直線に煙を上げて、爆雷管が飛び出していったのだ。


剣士「くそっ、行くしかねぇ!」


598 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:16:06.95QnHyln6jo (13/18)

隊長「剣士!」

剣士「ああ! 後から来い、お前ら!」

術士「展開、1-7-5-3」


術士が封を切るようにして方陣を踏みつけにすると、『台』に駆け寄った二人が吹き飛んだ。
まるでジャンプ台を強く踏んだようだった。
前方に向かって異常跳躍した二人は、さらに次のステップで早くも煙の中に飛び込んだ。

何かが打ち込まれ、さらに何かが飛び込んで来た。
影達は、動けないでいた。

晴れる間もなく、剣士が剣をさっくりと振るう。
「ぎゃあああっ」と悲鳴、そして風で吹き飛びかけた煙の影に向かって、もう一度斬りつける!


隊長「右を頼む!」

剣士「ああ!」


隊長は鎖付きの撃ち出し槍を、迷うことなく左手に発射した!
びゅうっと風切り音が煙を切り裂き、「ぐげっ」という潰れたような声が鳴った。
手応えを感じ、鎖ごと引っ張って鉄槍を取り戻す。
ぐるりと回して目の前の人物を殴りつける――


冒険者A「お、お、お前ら……!」

隊長「ちゃんとしたセリフで頼む」ゴスッ!


599 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:16:35.79QnHyln6jo (14/18)

――

剣士がさらに斬り上げる。するとその斬撃が、カチッという音でナイフを弾き飛ばした。
構わず振り下ろそうとした時、目の前の影が大声を上げた。


盗賊「うおおおおおい! お前、剣士だろ! 俺だよ、俺!」

剣士「誰だ?」

盗賊「盗賊さんですよ!」

剣士「……」

盗賊「ゆ、幽霊じゃないよな?」

剣士「どいてろ、殲滅の邪魔だ」

盗賊「殲滅!? いやいや、竜がいっぱいいてね、っていうか、冒険者さんたちを倒してどうする! あっ、そういや、こいつら俺らを閉じ込めたんだった!?」

剣士「……」

格闘士「出れた! 盗賊!」

剣士「チッ、うるさい連中だ。黙って見ていろ」

盗賊「あっ、格闘士、か、会長は!?」

格闘士「まだ中! 魔術師がフォローしてるけど……!」

剣士「……会長がいるのか」


600 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:17:02.29QnHyln6jo (15/18)

隊長「剣士!」

剣士「ああ、先に連中を片付けるのが先だ」

隊長「ちゃうちゃう、さっさと穴に突入しろ」

剣士「いや、しかし……」

隊長「間に合わなくなったらどうする!」

剣士「……恩に着る」ダッ


隊長「あと三人……!」

冒険者B「くっ、なんなんだ! 竜が暴れるわ、ガキどもが襲いかかってくるわ!」

冒険者C「こんなことになるなんて、聞いてないわよ!」

隊長「そりゃおめでとう」

冒険者D「おっと、待てや!」ガシッ

格闘士「あうっ」

隊長「……ふー」


601 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:17:28.66QnHyln6jo (16/18)


盗賊「くそ、格闘士!」

冒険者D「動くな、お仲間をやられたくなければ……」

隊長「ああ、いいよ、別に。やっちゃってくれ」

盗賊「うおい!?」

冒険者B「仲間意識の欠片もないな……」

格闘士「はっ、はっ、か、構わないっての」

冒険者D「生意気なことを抜かしてるんじゃねーよ!」

隊長「いや、お前らに言ったんじゃないんだ」

工兵「はい」

『!?』


その場にいるほとんどが絶句、した。
まさか、人間の腕がカチリと外れて、しかも発光しているだなんて――


工兵「サンダービーム!」バババババババッ

『――! ――!』


602 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:17:56.98QnHyln6jo (17/18)

工兵「おー、なかなかの威力」ズバババババッ

工兵「もうちょっと延長しよう」

隊長「もう気絶しているぞ」

工兵「あ、そうかな?」パチッ


冒険者D プスプス

冒険者C ピクピク

格闘士 ガクガク


盗賊「お……お前……ら……」

救護員「……大丈夫ですかぁ! うわあ、ひでぇ!」

盗賊「誰のせいだと思ってんだー!!」


603 ◆k.6bdeNTfg2013/03/19(火) 23:18:28.94QnHyln6jo (18/18)

今夜はここまで。最後までやります、頑張ります。


604VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/19(火) 23:28:12.13WaNhsTh1o (1/1)

乙です


605VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/20(水) 00:09:08.82dmqmZVB/o (1/1)

乙だ! 頑張って!


606VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/20(水) 01:53:59.89245DGQgpo (1/1)

最大級の乙!


607VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/20(水) 03:27:30.43iVgJ+vLAO (1/1)

乙!待ってた!


608VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/20(水) 07:50:16.16YuWoi5eHO (1/1)

なんという工兵の安心感…大変乙で御座います


609 ◆k.6bdeNTfg2013/03/22(金) 23:11:46.21PLLEMlqlo (1/10)

――洞窟内。

一体、いくつ斬り捨てたのか。それとも、ただぐるぐると回っていただけなのか。

会長が剣を杖代わりに寄りかかって息を吐く。
暴風雨のように、幾つもの巨大な影が飛び去り、打ち当たり、そして消えていった。

いつの間にか、目の前に巨大な影があった。
怒りに満ちた瞳、そして岩石のような皮膚が迫ってくる。

荒い息と鼓動を胸に、会長が剣を再び構える。
気づけば、体を包んでいた高揚感――魔法のことだ――は途切れていた。
魔術師が逃げてしまったのか、単に魔法が時間切れたか、それとも――

みんなは逃げ出せたのだろうか。


会長(俺はリーダー失格だな)


自嘲は心の中にのみ留め、息をすうーと思い切り吸い上げた。
睨み返す。

まるで最後を悟った人間のように、正対して剣を立てる。


610 ◆k.6bdeNTfg2013/03/22(金) 23:12:22.38PLLEMlqlo (2/10)

正面から突っ込もうとした時、口顎に赤い筋が見えた。
男はそれを構わずに飛び込むようなフリをして、洞窟の壁を蹴って横っ飛びする。

地面に吹きつけるようにして吐き出された火炎が床を浚う間に、懸命に取っ掛かりに手をかける。
上方から、せめて後ろに、後ろにさえ回れれば。
壁面を這うようにして登ると、わずかに足のかかる穴が見つかった。

すると、竜が腕を振り上げ、会長をつかみにかかる。

会長は穴を蹴って勢いをつけると、その腕に飛びかかった。
剣を突き立てるが、しかし、腕の振りに押し飛ばされて、壁にたたきつけられる。


会長「ぐっ!」

「ぐぎゃああああああああああっ!!」

会長「げほっ、ふっ、わ、わかってるよ……」

会長「焦るな。これで、終わりだから」


剣先から、光が走る。
「奥の手」を使うなら今しかない。


611 ◆k.6bdeNTfg2013/03/22(金) 23:13:08.77PLLEMlqlo (3/10)

一瞬、竜がうろたえた、その時だった。

竜の背を何者かが駆け上がってくる。
速い、というより、軽い。
軽快に跳ね上がってくるそれが、あっという間に首元まで到達したところで、竜がようやく異常に気づいた。

身じろぎして追い払おうとした、その首筋に刃が当てられる。


会長「け……」

剣士「どうした、早く斬れ」

会長「言われなくても!」


剣を静かに抜いた。
剣に纏った光のためか、するりと滑るようにして抜けた。
竜はそれに気づくこともない。
竜の腕を段々と二度踏んだ時、叫びを上げて巨体が揺すぶられた。しかし、もう遅い。

血を吐きながらも肩口まで到達すると、剣士と反対に刃を当てた。

剣士は、首を固定するように力を込める。
会長は、輝く剣でさっくりと――竜の首を薙いだ。


612 ◆k.6bdeNTfg2013/03/22(金) 23:13:36.88PLLEMlqlo (4/10)

――――――


613 ◆k.6bdeNTfg2013/03/22(金) 23:15:12.49PLLEMlqlo (5/10)

盗賊「……あっ!」

斧戦士「……ふうー」

盗賊「おい、会長はどうしたんだよ!」

魔術師「来る来る。もう、生きている竜はこの中にはいないよ」

盗賊「うおお……やっぱすげーな、うちの会長は」

魔術師「瀕死だがな」

盗賊「手当早く!」

救護員「はいはい、出てきてから手当しますよ」

隊長「そう焦らないで」

盗賊「誰のせいだと思ってんだよー!」

隊長「いや、おたくの会長が自分でやったことだし」

盗賊「格闘士は……」

工兵「手元が狂った。反省している」


614 ◆k.6bdeNTfg2013/03/22(金) 23:16:26.12PLLEMlqlo (6/10)

隊長「……おっ」

剣士「……」ずるずる

隊長「お疲れ様」

剣士「早く手当してやれ」ドサッ

会長「う……」

救護員「ひぃー、忙しいけど役に立って嬉しいけど忙しいですよぅ」バタバタ

隊長「大丈夫なのか?」

剣士「ボロボロになるまで剣を振るってたんだ。大丈夫じゃないに決まってんだろ」

魔術師「手当に入ろう。回復の魔法をかける」

救護員「ああー、お水も用意してくださいねっ!」ドタバタバタ

隊長「術士、方陣術に回復するような陣はなかったっけ?」

術士「張ります。準備してくるわ」


615 ◆k.6bdeNTfg2013/03/22(金) 23:17:15.70PLLEMlqlo (7/10)

剣士「……疲れた。俺も座らせてもらう」ドカッ

隊長「洞窟の中はどうなっていた?」

剣士「ところどころ崩れかかっている」

斧戦士「……会長が暴れたからな。竜も大挙して逃げ出していったし、無理もない」

隊長「じゃあ、これでこの谷も竜が住めなくなったわけか……」

盗賊「何か問題でもあるのかよ?」

隊長「いや、追い詰められたら、何をするかわからないっしょ?」

盗賊「おっそろしいこと言わないで欲しいよなぁ」

魔術師「それよりも、あんた、なぜここにいる」

魔術師「死んだんじゃあなかったのか」

隊長「勝手に殺さないでくれよ」

工兵「それを言うなら、そっちこそよく生きていたね。竜の巣のどまんなかに入ってたってことでしょ?」

工兵「何なの? ドッキリでも食らったわけ?」

盗賊「正解!」


616 ◆k.6bdeNTfg2013/03/22(金) 23:18:38.33PLLEMlqlo (8/10)

工兵「へー、こっちが死ぬような目に会っている間にねー」

盗賊「誰が好き好んで命がけの遊びにチャレンジするんだよ! あいつらだ、あいつら」

工兵「あの焦げてる人達がどうしたの」

盗賊「だから、あいつらに嵌められたんだよ」

隊長「なるほど……」

魔術師「……ちょっと情報を整理しないか?」

斧戦士「ああ。その必要がありそうだ……」

隊長「そうしたけど、こちらも急いでいるんでね」

剣士「……隊長」

隊長「なんだい?」

剣士「俺が言うことじゃないかもしれんが、会長達は外のことを知らない」

剣士「俺は、やつが目覚めるまで待ったほうがいいと思う」

隊長「けどさ、学園長たちを逃してもいいのか?」


617 ◆k.6bdeNTfg2013/03/22(金) 23:19:08.01PLLEMlqlo (9/10)

術士「隊長、この場を収めないままでいるのはまずいと思うわ」

術士「そう、七番隊が向かっているのよね?」

隊長「あの作戦がうまく行ってるなら」

術士「だったら、追跡は彼らに任せて、私たちは態勢を整えてもいいんじゃないかしら」

隊長「……」

盗賊「何の話だよ」

魔術師「学園長が、どうしたって?」

隊長「あー、分かった分かった。一から説明するよ」

隊長「それに、そうだな。この黒焦げをそのままにしておくわけにもいかないだろう」

隊長「剣士、お疲れのところ悪いんだけど……」

剣士「ああ。縛り上げておくか」

隊長「終わったら、竜が戻ってこないか見てくれないか」

剣士「……チッ」


618 ◆k.6bdeNTfg2013/03/22(金) 23:19:34.88PLLEMlqlo (10/10)

短いですが、今夜はここまで。


619VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/25(月) 10:41:42.2052D1HlY2o (1/1)




620VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/26(火) 23:45:58.60CwqVTNdDO (1/1)

乙。


621 ◆k.6bdeNTfg2013/03/27(水) 21:39:53.011X+Y/1RXo (1/9)

――――

盗賊「……ちょっと待ってくれ。学園が竜を飼ってた?」

格闘士「学園長派が裏で糸を引いていた?」

斧使い「……学園が竜に襲われてぶっ壊されたと」

魔術師「帝国が各国に宣戦布告……」

会長「ちょっと荒唐無稽にも程があるな。俺達が竜の巣に潜ってから、確かに長い時間が経ったような気もするが」

隊長「そうは言うけどなぁ?」

剣士「事実だ、実際にお前らが学園を出発してから、竜が押し寄せてきた」

剣士「その時、ちょうどうちの隊長が帰ってきたんだ」

盗賊「ってぇことは、学園でバッタバッタと竜を斬ってきたのか」

剣士「そんなわけあるか。逃げまわるだけで精一杯だった」

会長「……。ふーん」

剣士「何笑ってやがる!」

会長「いいや、昔のお前なら、そんなことを冷静に言ったりはしなかっただろう、と思ってな」

剣士「チッ!」

救護員「なにか、ホモホモしい空気を感じたんですが」

隊長「救護員は黙っててもらえるかな?」


622 ◆k.6bdeNTfg2013/03/27(水) 21:47:32.871X+Y/1RXo (2/9)

隊長「その……焦げてる連中が、一番隊を閉じ込めたことからも分かるだろう」

隊長「今度の件、学園内に敵はいたんだ」

会長「……」

盗賊「はぁー……まあ、そんなこともあるかとは思っていたけどな」

魔術師「しかし、どうする? さっき術士に教わった方陣術を応用すれば、竜の火炎には耐えられる」

術士「……あれだけ苦労して覚えた術を……」

魔術師「よく練られた魔法陣だったから。ものすごくわかり易かったぞ」

術士「なら、いいけど」

魔術師「いずれにせよ、薬物なり、術なり、竜への強力な対抗手段は手に入ったわけだ」

斧使い「……正面は無理でも、張り合うことくらいは出来るかもしれんな」

会長「それなんだがな、ちょっと隊長同士で相談できないかな?」

隊長「ん?」

会長「まだ分からないことがある。二人だけで話をさせてほしいんだ」

隊長「分かった。じゃ、ちょっと肩を貸そう」

剣士「おい」

会長「ああ、いい。少し頭でっかち同士で話すべきことがあるってだけだ」

剣士「ああ、そうかよ……」


623 ◆k.6bdeNTfg2013/03/27(水) 21:56:06.851X+Y/1RXo (3/9)

会長「……よし、みんな遠ざかったな」

隊長「何かあるのか?」

会長「単刀直入に聞きたい。君、学園長って見たことある?」

隊長「いきなり何を言い出すんだよ」

会長「だからさ、俺、こんな役職に付いているのに、大体集会挨拶だのなんだのは、教頭だろ?」

会長「一度もお目にかかったことがないんだよね」

隊長「……なんとなく言いたいことは分かった」

会長「話が早くて助かる」

隊長「けど、存在してないわけじゃないだろう。教頭も含め、教師陣はいるって言ってんだから」

会長「そりゃ確かにそうだ。だけど、ここで問題なのはそういうことじゃない」

隊長「……」

会長「どうも気になる。君の想定だと、学園長は学園のためを思って行動しているんだろ。生徒を犠牲にしてはいるけど」

隊長「そうだな」

会長「そんな人が、生徒はともかく、学園そのものをぶっ壊すような真似を認めるかな?」

隊長「つまり、どこかで入れ替わりでもあったとか?」

隊長「いや、違うな。得するやつがいないんだ。今のままだと」

会長「そういうことだ。俺らは盤面遊戯上で言えば、対戦プレイヤー不在で駒を進めている」


624 ◆k.6bdeNTfg2013/03/27(水) 22:06:20.991X+Y/1RXo (4/9)

隊長「……」

会長「つまり、攻略法以前に、対戦相手を見定め切れていないからうまく動けていないんだ」

会長「……この作戦の目標はなんだ? 竜の正体を探り、その行動の目的を見つけることだ」

隊長「それは、もう会長の仕事だろう」

会長「そうかもしれない。けど、俺には竜がなぜこんな手に乗っかったのかが見えない」

会長「薬と餌で追いやられている。まあ、それもあるかもね」

隊長「竜自身が人間を利用している可能性もあるってこと?」

会長「その可能性だってある」

隊長「……いや。やっぱり、それでもおかしいぜ」

隊長「竜にとっちゃ、利益が少ない。行動だってデタラメだ」

会長「そうだな」

隊長「単に、全員把握できてないって可能性もあるけど」


625 ◆k.6bdeNTfg2013/03/27(水) 22:19:51.141X+Y/1RXo (5/9)

隊長「だけど、人間と竜が共倒れしたとして、一番喜ぶやつっているか?」

会長「分からない」

会長「けど、見たこともない人間を悪人と決めつけるより、竜が本丸の敵、と考えたほうが、すっきりするんじゃないか?」

隊長「いやそれは……」


『……海を超えるんデスよ』


隊長「――」


『踊り子、がいる部隊って言ったら――』


隊長「……」

会長「とにかく、俺としては竜を討伐する役に回りたいわけで――」

隊長「待った!」

会長「え?」

隊長「俺こそ、会長に聞いておきたいことがあった」


626 ◆k.6bdeNTfg2013/03/27(水) 22:45:58.541X+Y/1RXo (6/9)

会長「な、何を?」

隊長「会長、十七番隊の軍師って記憶にある?」

会長「軍師……? いや、そうだな。盤面試験で当たったくらいか」

隊長「やつがどこ出身だか知っている?」

会長「海の向こうの国、だろう。そのくらいは聞いたことがあるよ」

会長「……ちょっと待ってくれ。隊長、まさかその彼が、この事件の裏の首謀者だ、とか言い始めるんじゃないだろうね」

隊長「旧大国の領地が混乱すれば、得するのはそうでない国だ」

隊長「そういう意味では条件にひとつ当てはまる」

会長「竜が暴れた原因は? 彼にそんな力はないだろう」

隊長「もちろん、それは竜を生かしておいた『学園』内部の人間によるものだ」

隊長「けど元々、学園側が竜を利用した『挑戦』に出ようとしたのは、帝国が軍隊を正式に作ると言い出したから、と言われている」

会長「……」

隊長「学園と関係の深い帝国がそれに踏み切ったわけは何か。学生の成績ランキングの流出だ」

隊長「そしてそのランキングを作ったのが……十七番隊の踊り子、だ」


627 ◆k.6bdeNTfg2013/03/27(水) 22:57:12.501X+Y/1RXo (7/9)

会長「さすがに突拍子がないぜ。一学生が、学園を動かすように仕向けたって?」

隊長「火種を作るだけなら子どもでも可能だ」

隊長「ましてや、学生といえど、俺達は冒険者の卵だぜ?」

隊長「各国の情報に気を配りながら、最悪のタイミングで様々なものを暴露することは、十分に可能なことだ」

会長「……」

隊長「何か、会長でも気づいたことはないのか」

隊長「俺は確証がほしい」

会長「……彼が、試験の時から多少『調整』をしていることは目に取れたよ」

会長「なんていうのかな、動きやすい立ち位置を見計らっているのは知っていた」

会長「だが、それとこれとは話が別だ」

隊長「他になにか」

会長「……そうだな。一つある」

隊長「どんな?」

会長「その、ランキングがどうのって話だ」


628 ◆k.6bdeNTfg2013/03/27(水) 23:12:29.261X+Y/1RXo (8/9)

会長「あれの出処をめぐって処分があったというのは少し聞いている」

会長「ただ、その首謀者ってのは判然としなかった」

隊長(あいつも大概怪しいんだよなぁ……)

会長「そこに軍師が絡んでいるというのは聞いているよ」

隊長「それは知っている。やつ自身が、踊り子をかばうために云々、と口にしていたから」

会長「そう? 学園が調査した時の、証言者になったって話なんだけど」

隊長「……わざわざそんな役まで買ってでたのか」

会長「俺はてっきり、彼が犯人で、自首でもしたのかと思っていたんだ」

会長「ところが、十七番隊に何かお咎めなり、事実関係の調査なりが入ったという話は入ってこなかった」

隊長「……」

隊長(学園長に接触する機会はあったわけか)


629 ◆k.6bdeNTfg2013/03/27(水) 23:12:56.951X+Y/1RXo (9/9)

今夜はここまで。
頑張って更新するぞ(願望


630 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 22:14:56.97ozZ8Z15xo (1/13)

会長「しかしな、俺には同級生や先生を疑うなんてことは……」

隊長「会長……」

隊長「あんた閉じ込められてたじゃん」

会長「……そういえば」

隊長「あのな、はっきり言うけど、この件に関しちゃ俺らは被害者よ」

隊長「会長は聖人ぶりたいのかもしれないが、こちとら殺されかけて頭に来ているんだ」

隊長「学園長だろうと、軍師だろうと、敵対するならぶっ潰す」

会長「荒っぽいな」

隊長「正直な話、自分ひとりならまだいいんだぜ」

隊長「だけど、うちのメンバーは軒並み傷ついた。工兵なんか腕がふっ飛ばされてるんだ」

会長「……」


631 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 22:21:51.38ozZ8Z15xo (2/13)

隊長「俺は会長とは違って、お人好しじゃないよ」

会長「そりゃ、俺だってそうだ」

隊長「なら、先生や同級生が相手でも容赦なくぶん殴れるかい?」

会長「ううん、しかしなぁ」

隊長「いや、別に一番隊が竜の足止めをしてくれるなら、それはそれでいいんだけど」

会長「……よし」

隊長「どうするんだ?」

会長「分かった。君にかけてみよう」

隊長「へ?」

会長「一番隊は君の指揮に従うよ。命を助けてもらったわけだしね」

隊長「……そりゃ心強いが」

隊長(ううっ、この人はキラキラ系でやりづらい!)


632 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 22:26:32.40ozZ8Z15xo (3/13)

救護員「……た、隊長ーっ!」ダカダカダカッ

隊長「どうした。まだ話し合い中だよ」

救護員「あのっ、あのっ!」

会長「落ち着いて、深呼吸」

救護員「すーはー」

会長「すーはー。で、どうしたの?」

救護員「天測士がっ! で、竜が! わーって!」

隊長「落ち着いて言おうな。まず天測士がどうしたんだ?」

救護員「こっちに来てるんです! で、竜も一緒に近づいてきているんです!」

隊長「いや、竜はついさっき、追い出したじゃない……」


天測士「隊長はいるの!?」


633 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 22:32:08.15ozZ8Z15xo (4/13)

隊長「……ここにいる」

天測士「いよっしゃー! 逃げるわよー!」

隊長「説明をしてくれないか」

天測士「竜に! 追われて! いるから!」

会長「分かりやすい説明をありがとう」

天測士「……会長!? なんでこんなとこにいるの!?」

会長「ええっと、竜を討伐に、行ったわけだよね。俺は」

天測士「あーそう! おっけ、分かった!」

天測士「とりあえず、急いで!」

隊長「――」


隊長が目を凝らす。


634 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 22:37:43.25ozZ8Z15xo (5/13)

吹き付ける風に髪を抑えると、遠くから大群が、まばらに、しかし確実にこちらを目指しているのが見て取れた。
竜。

忌々しい、強大な魔物。
人間と相容れない存在。


隊長「天測士」

天測士「なに!? 早くしないとこっちに追いついちゃうわよ!」

隊長「分かった、走りながらで聞く」

隊長「救護員!」

救護員「はいはい!」

隊長「負傷者を馬車に乗せて、出発の準備」

救護員「了解ですよぉ!」

隊長「会長、急ごう」

会長「ああ」

隊長「悪いが、ここで置き去りにして戦っててくれ、なーんて指揮は取らないぞ」

会長「分かってるって!」


635 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 22:43:11.62ozZ8Z15xo (6/13)

隊長「天測士」

天測士「何!」

隊長「なんでここにいる? 竜がどうして追っている?」

天測士「あーもー、察して!」

隊長「説明を怠るんじゃありません」

天測士「……私たち、あいつの作戦に乗ってたわけよね!?」

隊長「軍師の」

天測士「うん! で、やっぱり怪しいじゃない!」

隊長(しかし、乗るしかなかった。遅れていれば、一番隊は壊滅していたし)

天測士「だから、もう一度、動きを予測しようと思ったわけ! 学園長のね!」

隊長「……それで?」

天測士「それで――あー、斧使い、遅い!」

斧使い「む、無茶言うんじゃねぇ、占い師ちゃんを抱えて、お前らに、ついてけとかっ……!」

隊長「抱えて走ってきたのか」

斧使い「おっ、隊長!」


636 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 22:49:40.51ozZ8Z15xo (7/13)

隊長「おお。無事だったか?」

斧使い「まあな、今は瀬戸際だけどな、はははっ!」

天測士「笑ってないで、早く!」

斧使い「ま、まだ走るのかよ……」

占い師「あのぉ~、リーダー、私、もう……」

天測士「諦めちゃダメよっ!」

隊長「馬車に放り込んでくれ。怪我人がいるから手当も必要だし」

占い師「ううう、すみません~」

天測士「サンキュー!」

隊長「それで、学園長の動きを予測して、どうなったんだ?」

天測士「ええ――」カチッ


637 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 22:50:07.95ozZ8Z15xo (8/13)

――

『ガクエンチョウノ イキサキ ハレ。ヒガシノ ホウガクヘ チョウキョリ。リュウノ イドウニヨル クズレル オソレ ナシ』


638 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 22:56:53.32ozZ8Z15xo (9/13)

天測士「――っていうわけなのよ!」

隊長「……」

天測士「西に追い込むつってんのに、このザマとかね!?」

隊長「そういうことじゃあないと思うよ」

天測士「そりゃ当たり前よ! それで、次に、竜の移動についても天測をしたわけ!」

天測士「何しろ、天候を変えちゃう要因になるわけだし、こっちの方が容易ってものよ!」

隊長「その結果が、これか」


  ぐぅぅぅぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおおお……――――


天測士「私のせいだっての?」

隊長「そうは言わない。つまるところ、俺達は西の谷間のところで竜に嬲り殺されるところだったってわけだな」

天測士「まあ、ちょっと、ねー……!」

隊長「……?」

天測士「そ、そういうわけよ!」

隊長「天測士、もしかして……」


639 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 23:05:12.06ozZ8Z15xo (10/13)

天測士「別に、見に行ったうちのアホが、待機していた竜に気づかれたとか……」

天測士「そういう、そういう……!」

隊長「はぁ……」

天測士「ため息をつくなー!」

隊長「七番隊って、忍者がいたよね? 彼は偵察行動が得意だったような気がするけど」

天測士「……狩人よ」

隊長「獲物に気づかれる狩人もいるもんなんだな」

天測士「むっきー! だったら隊長はどうだって言うのよー!」

天測士「ここに来てたってことは、二十八番隊も軍師のやつに乗せられたわけじゃない!」

隊長「実際、一番隊が心配だったから、乗らざるを得なかったのさ」

隊長「学園長が来てれば御の字だったんだがな……」

天測士「屁理屈! 前髪!」

隊長「一体なんの罵倒なの?」


640 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 23:33:57.55ozZ8Z15xo (11/13)

――

軍師「さ、学園長サン、もうすぐ特務機関本部ですヨ」

学園長「うむ……」

学園長「今、こっちの方面なら、手薄になっているはずだ」

学園長「それに私としては、特務機関の方がつながりはあるからな」

軍師「ええ、ええ。ただ、どこも長居はしないほうがいいでしょうネ」

軍師「少なくとも、旧大国は全域的に危険な土地になりマスし」

学園長「そうだな……」

軍師「それで、正式に我が国への招待を受けてくださるのデスよね」

学園長「ああ」

軍師「それは良かった」

軍師「学園の、教育指導技術は、なかなか他に代えがたいものですカラ」

学園長「……そうだ。教育の力とは偉大なものなのだ」

学園長「今の学園の生徒にも、まさに勇者の素質を持った者はいる」

学園長「しかし、それだけではダメだ」


641 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 23:37:27.09ozZ8Z15xo (12/13)

学園長「困難を乗り越えなくては人は成長できない」

学園長「君も知っているだろう、竜を、残したのは――」

軍師「はい、存じてマスよ」

学園長「これは試練なのだ。人間に与えられた」

学園長「これを乗り越えるべき人間は、若い世代でなくては」

軍師(同じ事の繰り返し……)

軍師(申し訳ないスけど、技術知識体系を絞ったら用済みですネ)

学園長「君、それで、知っているかね……」

軍師(……ま、言われたことをやるだけデスね、こっちは)

軍師「さ、ほら、着きますよ――」


――――


642 ◆k.6bdeNTfg2013/03/29(金) 23:38:02.00ozZ8Z15xo (13/13)

ここまで。


643VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/03/31(日) 10:39:50.50C6wFdLODO (1/1)

乙。


644VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/04/13(土) 17:19:35.10DceaoBUAO (1/1)

待つ


645VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/04/14(日) 03:17:14.77cy2/n6Lso (1/1)




646VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/04/14(日) 22:31:19.37DgLEwWbBO (1/1)

すまぬ…必ず書く…


647VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/04/15(月) 06:39:08.524hfU2iQoo (1/1)

頑張れ、待ってる


648VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/04/27(土) 10:26:07.57hZmgeSHIO (1/1)

ま、まだか。。。


649 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:31:26.94M8MAPbVAo (1/14)

/(^o^)\ スランプに出張がドハマリして親父が入院した件。gdgd言ってても始まらないから、少しだけでもアップしていくよ~


650 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:32:22.07M8MAPbVAo (2/14)

……過去。

戦士「……おい! 本気で言ってるのか?」

賢者「本気さ、これでも先読みに関しちゃ一家言あるってもんよ」

戦士「無理に決まっているぞ、共存なんて」

戦士「何人死んだと思ってんだ!」

賢者「大丈夫さ。人間はそうヤワじゃない」

勇者「絶滅まで追い込まれただろ、馬鹿」

戦士「そうだ!」

賢者「いやさ、そうは言うがな。万一暴走しても大丈夫なように――」

戦士「おい、勇者、なんとか言ってやってくれ」

勇者「……」

賢者「勇者、お前だって思うだろう、弱者は強くならねば」

勇者「弱いから弱者なんだろ」

賢者「……しかしな」

戦士「俺だって、竜を倒したところで、新たな脅威が生まれるかもとは思うさ」

戦士「だが、お前の言っていることはめちゃくちゃだ!」

勇者「そうとも限らねぇよ」

戦士「なに?」

賢者「だ、だろ!」

勇者「別に肯定したいわけじゃないんだけど」

賢者「(´・ω・`)」


651 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:33:07.93M8MAPbVAo (3/14)

勇者「簡単な話だ。大国家、今は旧大国か。竜の繁栄の隙を突いて生まれた国だった」

勇者「人間が天下を取ったこの代表国が、一体何をやったのかね?」

戦士「そ、そりゃ……」

賢者「同じ人間を支配し、抑圧した」

勇者「だろー?」

戦士「しかし、そりゃ暇を持て余していたから……」

勇者「故郷がある戦士にゃ分からんだろうが、村を焼き払うのは竜よりも人間の方が多かったぞ」

勇者「竜にしちゃ人間なんか取るに足りない存在だけど、人間同士は違うもんな」

戦士「……お前ら、孤児だってことを気にしているのか」

勇者「気にしているのは周りじゃん」

賢者「そうそう、何かにつけて文句言うよな。貴族とか王様って」

戦士「だからか? だから人間はなんとか、みたいなことを言い出すのか?」

賢者「ち、違うわい! そういう予測が出ているんだ」


652 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:33:58.84M8MAPbVAo (4/14)

勇者「俺が言いたいのは簡単な話よ。竜王は殺す。確実に」

勇者「そして、それ以外の連中をどうするのか、虐殺するつもりはねぇってこと」

戦士「……」

賢者「そ、そうか!」

勇者「だからって共存しようとも思わないな。逆らう連中はガチで対抗する」

賢者「えぇぇ~?」

勇者「ええ、じゃなくってさ。で、提案はある」

戦士「提案?」

勇者「ああ。賢者が言う共存を探ろうとは思わないけど、後世の連中が強くなるのは大賛成だ」

勇者「だから、それぞれ人材を育成するってのはどうだ?」

戦士「じんざい」

賢者「いくせい」

戦士「……お前も相変わらず突拍子もねぇな」


653 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:34:27.83M8MAPbVAo (5/14)



勇者「俺ら、同じ学園だったろ。そんだから、一緒に集まれたじゃん」

戦士「それは……そうだが」

賢者「まーねー。勇者が友達に入れてくれなかったら、女との付き合いもなかったかもしれんし」

戦士「だからって身内できゃっきゃすんじゃねぇ」

賢者「してないもん!」

勇者「うるせぇよ、馬鹿」

賢者「あれれ? 嫉妬? 嫉妬ですか?」

勇者「よーし、殴っちゃうぞー、嫉妬に任せて殴っちゃうぞー」

賢者「タンマ! 人材のね、育成ね!」

勇者「あー、そうよ」

戦士「要は、竜を倒せる人間をたくさん作ろうってことか?」

勇者「そういうこと」


654 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:35:07.60M8MAPbVAo (6/14)

勇者「なんつーか、俺らだって不死身のヒーローじゃないだろ」

勇者「ましてや竜相手に何度か戦ってきて、結構自信も傷ついているしな」

戦士「お前にもメンタルが傷つくことがあるとは驚きだ」

勇者「うるせ」

賢者「ふっ、まあ、所詮は勇者ちゃんってところだな」

勇者「何いってんだ」

賢者「そんなら、学園みたいなのをもう一回つくろーぜよ!」

戦士「そりゃお前一人でやれ」

賢者「えっ」

勇者「そーだな。それぞれ教育機関を作って、どこが一番優秀なやつが出来るか勝負ってのも面白そうだ」

賢者「ちょ、それ、その」


655 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:35:36.06M8MAPbVAo (7/14)

勇者「ま、とにかくは竜の王だ」

戦士「そうだ、目の前のことにもう少し集中しろ」

賢者「ちぇー、しょうがない。行動予測を立てるからちょっと待ってておくれ」

勇者「おう、早く頼む」

賢者「ふふん、俺にかかれば運命など簡単なことよ」

勇者「そうかい」

賢者「なんか勇者冷たくねぇ!?」

戦士「いいから早くしろよ」

賢者「天国の父さん母さん、仲間が今日も冷たいです……」

勇者「……」

勇者(竜との共存、ね)


――


656 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:36:17.25M8MAPbVAo (8/14)

召喚士「おかしい」

商人「リーダーの頭が?」

召喚士「そうではない。時間が近づいてきているのに、竜の動きが見えない」

魔法使い「そりゃ……まだ時間になってないからじゃないかしら?」

召喚士「空を見よ。竜とは破滅、極端な変動、それらを意味している」

召喚士「つまりは、天候が大荒れになってしかるべきなのだ」

商人「……風は強いようだけど」バタバタ

召喚士「ということは動いているということだ」

召喚士「しかし――」


召喚士は言葉を切った。
敵の行軍は止まっている、何しろ、対竜用の兵器の威力を目の当たりにしたのだから。
しかし、それらは退却はしたものの、攻撃範囲の外に出たところで、じっと動かない……。

伝令が走っている、しかし、それらは彼ら全体を動かすものになっていないのだ。

はっと顔を上げた。


召喚士「――魔法使い」

魔法使い「何?」

召喚士「進軍しよう」

魔法使い「は!?」


657 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:37:25.40M8MAPbVAo (9/14)

商人「ちょちょっと、リーダー! いきなりなんなの?」

召喚士「見誤っていた。ここには重点が割かれていない」

魔法使い「あの……説明してもらわないと分かんないわ」

召喚士「分からないか? ここに竜は来ない」

召喚士「竜は、大戦力だとばかり思っていた」

騎士「それは事実ではないのか」

召喚士「事実だ。だが、当てられる箇所が違うのだ!」

商人「だから、どういう意味?」

召喚士「……遠視鏡を用意してくれ、早く」

商人「な、なんなのよ、もう」タタッ

魔法使い「リーダー、当てられる箇所ってどういうこと?」

召喚士「いいか、竜という戦力は誰が操っているのだろうか?」

魔法使い「そ、そりゃ、学園長……じゃないの?」

召喚士「そのとおりだ。だとすると、彼の目的は一体何になると思う?」

魔法使い「えっと……帝国で財をなす、じゃないわよね」


658 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:38:19.37M8MAPbVAo (10/14)

召喚士「だとしたら、各国に戦争を吹っかけるはずがないだろう」

魔法使い「……」

召喚士「争いを起こすことが目的か? だとしたら、学園に竜を放ったままにしておけばよい」

召喚士「彼は、やはり、帝国からも逃げ切ろうとしているのが目的だろう」

魔法使い「だから、そのためにこうして私達が」

召喚士「しかし、だ。そのためにどうするのか、なのだ」

召喚士「協力を申し出ておいて、帝国から逃げ出そうとする時、そう簡単に逃げさせてくれるものでもないだろう」

召喚士「協力には強力が働く、一度結びついたものを振りほどくには――」

商人「はいはいっ、双眼だけど!」ダダダッ

召喚士「む。ありがとう」チャッ

召喚士「……」

魔法使い「な、何が見えたの?」

召喚士「予想通りだ……!」


見えたのは、赤く燃える空。

帝国帝都が、真っ赤に燃えている――。


659 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:41:16.45M8MAPbVAo (11/14)

召喚士「これが決定打だ。共和国の人に伝えてくれ、これから帝国に攻め入ると!」

魔法使い・商人『はぁぁああ!?』

召喚士「幸いにして、我々はもっとも竜に対向する武器を取り揃えている部隊だ」

召喚士「戦うなら、今」

騎士「了解」

重装兵「了解」

商人「了解じゃねぇよ! それは冒険者がやることではないでしょー!?」

召喚士「だから、此処から先は私が行こう」

魔法使い「そ、それはもっと無茶ですって」

召喚士「近づきつつ、方陣を展開する」

召喚士「こちらに気づく前に、対竜兵器を召喚すれば、五分に持ち込める」

騎士「一人では無理だろう。最後までお供する」

重装兵「当然だな」

召喚士「得がたいことだ」

商人「アホかッ!」


660 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:41:48.50M8MAPbVAo (12/14)

召喚士「なんと言おうと構わない。ここで、十三番隊は解散ということにしよう」

魔法使い「そういう問題じゃないでしょ?」

商人「そ、そうよ!」

魔法使い「まさか、ここまで来て、置いていくつもりがあったなんて思ってなかったわ」

商人「そっち!?」

召喚士「無論、兵器の移動や行動は、共和国の警備隊達にお願いする」

召喚士「我々がすべきことは、これらを呼び寄せることだ」

魔法使い「だから、私がいらないっての?」

召喚士「そういう意味で言ったのではない」

魔法使い「似たようなものでしょ」

召喚士「違う!」

魔法使い「……」

召喚士「……」

商人「ちょっと待ちなさい! 大体、アレ、『レンタル』なのよ!?」

召喚士「なんだと?」


661 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:43:00.36M8MAPbVAo (13/14)

商人「もしかして、レンタル代どころか、補償費まで私にけじめツケさせる気!?」

召喚士「そうか……」

商人「だ、だから、こういった兵器は、どちらかと言えば待ちのタイプであって――」

召喚士「すまないが、その点は泣いてくれ」

商人「もう泣きそうよ!」

召喚士「よし、では、魔法使いも、来るなら来てくれ」

魔法使い「はいはい」

召喚士「急ぐぞ、出来れば帝国軍も巻き込んでしまいたい」

商人「おい!!!!!」

騎士「諦めることだな」

重装兵「運がなかったな」

商人「お前ら!!!!!」


662 ◆k.6bdeNTfg2013/04/27(土) 23:43:51.81M8MAPbVAo (14/14)

今夜はここまで。明日もできれば。


663VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/04/28(日) 02:50:19.759T++iIGAO (1/1)

乙。


664VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/05/07(火) 17:57:48.69X/tkxU1ko (1/1)




665VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/05/17(金) 09:49:30.38ahQfFGsAO (1/1)

待つぞ


666 ◆k.6bdeNTfg2013/05/26(日) 21:05:26.60HjC2Nr0Fo (1/1)

がんばりたい、あと少し、構想はできてきているので……


667VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/05/26(日) 21:50:29.93pRHS10kFo (1/1)

待ってる


668VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/05/27(月) 15:09:31.34evoIA3lOo (1/1)

期待してる


669VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/06/04(火) 15:43:20.03XHQk6F4AO (1/1)

パンッ
学園戦隊を知るもの来たれ!


670VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/06/21(金) 12:46:33.855nOBRF7io (1/1)

そしてまだか


671 ◆k.6bdeNTfg2013/06/26(水) 23:30:46.61DcgRtKMEo (1/3)

test


672 ◆k.6bdeNTfg2013/06/26(水) 23:48:10.79DcgRtKMEo (2/3)

隊長「列を乱すな! 目標まで走りぬけ!」

剣士「追い込まれているぞ!」

隊長「一直線だ! 風上まで、とにかくできるだけ高い方へ!」

天測士「ちょっとちょっと! 飛べる、連中に、高さで勝負しても無駄でしょ!?」

隊長「保険だよ、保険」

隊長「……工兵!」

工兵「あいさーい」

隊長「準備してくれ」

工兵「いつでもオッケーだろ。注射用の竜毒のストック」

隊長「いや! 何か一つにまとめられないか、爆雷管と」


  ぐぅぃぃぃぉぉおおおぉぉぉぉ……


工兵「うわっぷ……なんだって?」

隊長「ひとまとめにしてくれ。まとめてブッかける」

工兵「いやあの」

剣士「おい、体内に注射しなけりゃあ、効きが薄いだろう!」

隊長「この際、一匹、一体を葬っても意味がないんだ! 幸いにして、連中はこっちを追い詰める気でいる!」

会長「……追い詰めるなら、相手も自然とまとまるものだからな」

隊長「その通り――術士!」

術士「いるわ」

会長「魔術師」

魔術師「俺も?」

会長「タイミングを測って反転して結界を張るんだ」

隊長「竜の火炎に耐えられる、アレ」

術士「……分かったわ」

魔術師「走りながら術式を構成すると結構たいへんなんだぞ……」


673 ◆k.6bdeNTfg2013/06/26(水) 23:53:02.00DcgRtKMEo (3/3)

隊長「工兵、準備出来たか!?」

工兵「さすがに、この短時間でこれ」

工兵「あーもう! 御者さん、もうちょい揺れないで!」

御者「無理っすよ!」

工兵「……隊長……」

天測士「ちょっと待った! 全部、使うんじゃないわ!」

隊長「出し惜しみしている場合か!?」

天測士「ノーノー、うちには射撃部隊がいるから」

狩人「独りだけど……」

隊長「工兵、一瓶」

工兵「無理ばっかり言うね!」ぽいっ


怒号、足音、息遣い――
すべてすべて風に孕ませながら、人の群れは崖を駆け上がっていた。

そして、それを追う、竜たちも。


674 ◆k.6bdeNTfg2013/06/27(木) 00:06:13.66OBM4l3/Oo (1/3)

ズズん!

「GUGYAAAAAAAAAAA!!!!」


御者「まずいっすよ、アタマ飛び越えられました!」

隊長「チッ、やはり機動力はあちらが上だな」

剣士「タイミングは」

隊長「ま、まだだ……」

剣士「なら押し通るぞ、速度を緩めるんじゃねぇえ!」ダダッ

斧戦士「なら前衛の仕事だ」

斧使い「うっしゃあ、ヤルシカネー!」


剣士が迷わず飛び出たのに続いて、負傷したものも前に出る。
何か策があるわけではない、正面から竜の腿に飛びつくと、剣を突き立てて反動で伸び上がった。

一瞬、竜が怯む。

まさか、距離をとるでもなく、そのまま飛びかかってくるとは――遅れた判断の直後、足元に斧が打ち込まれた。ちょうど大木を切り倒すような打ち下ろし。
慌てて前肢と、尾で振り払おうとしたその時、目の前に剣が迫っていた。


剣士「ふんッ!」 ズブッ

「GYAAAAAAAAAAA!!!!!!!」


振り払おうとした顎に、二撃目。


675 ◆k.6bdeNTfg2013/06/27(木) 00:16:23.09OBM4l3/Oo (2/3)

隊長「すぐ横だ! すぐ脇を通れ!」

御者「あいっさー!!」ビシッ

隊長「足元をすり抜けろ! 避けることだけ考えろ!」

天測士「みんな、体を低くすんのよー!」

会長「落ち着いてかわせ、向こうは闇雲に暴れているだけだ!」


斧使い「あと一撃!」

斧戦士「欲をかくな、時間が足りん」

斧使い「ちぇっ、動きを止めるんじゃあなかったか」

剣士「十分過ぎる」

斧使い「え?」

斧戦士「……早く行くぞ」

斧使い「な、なに、褒められたのか?」

剣士「……」ダダダッ


痛みと視界を奪われた苦しみから、先んじていた竜が狂ったように暴れだした。
尾撃も当たらない――むしろ、後から押し寄せてきた仲間に――ぶつかった。


676 ◆k.6bdeNTfg2013/06/27(木) 00:17:08.88OBM4l3/Oo (3/3)

よし、まだ書けるな…


677VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/06/27(木) 03:04:25.29txcaf/CAO (1/2)

乙。頑張れー


678VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/06/27(木) 03:05:59.79txcaf/CAO (2/2)

乙。頑張れー


679VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/06/27(木) 11:46:51.61xRDjUuPso (1/1)

まだまだ書けるとも!
頑張れ


680 ◆k.6bdeNTfg2013/07/02(火) 22:44:38.25jqz2YmkQo (1/5)

会長「はっ、はっ、おい」

隊長「なんだ?」

会長「気づいた、か? 追い込まれているぞ……」

隊長「ああ、包み込むようにして迫ってきている」

隊長「前方をいくら突破しても、この先は崖だ」

天測士「は、羽でも生えてなきゃあ、落っこちるしかないものね!」

隊長「なんだ? 落ちたいのか?」

天測士「冗談、やめてよ!」

隊長「冗談じゃなくって、ひとつの案だ」

天測士「……はっ、はっ、マジ?」

会長「怪我人を抱えて跳躍するのは無理だ」

隊長「だろうね」

天測士「おい……」

隊長「……もうそろそろだ」

会長「それは、いい。だけど、やつら、このまま、文字通り追い落とすつもりじゃあないかな」

隊長「火炎を防ぐどころじゃないって?」

会長「ああ」

    御者「隊長さァ――ん! 道の奥は切れてますよぅ――!」

隊長「ギリギリで止まってくれ!!」


681 ◆k.6bdeNTfg2013/07/02(火) 22:55:39.23jqz2YmkQo (2/5)

隊長「術士!」

術士「いつでも」

隊長「攻撃を織り交ぜることは!?」

術士「無理です」

魔術師「俺がやるわ」

会長「格闘士、魔術師を支えておいてくれ」

格闘士「いいよ」

剣士「――怪我人にさせるような真似か?」

会長「最後尾にいたんじゃなかったかな、お前」

剣士「はっ、隊長、それで?」

隊長「合図をする、三度目のタイミングで暴れてくれ!」

剣士「分かった、ボスクラスでいいんだな?」

隊長「出来るものなら!」

剣士「じゃあな……」ダッ

天測士「あんたの、とこ、大概、化け物、ね」

会長「羨ましいな、ここに来て自由に剣を振れて」

天測士「大人しく指揮してなさい!」


足音が激しさを増す。
誰もが崖の向こう側すら飛び越える勢いで、走り続けていた。

誰が、何の指示を得たのか、次々と張り上げて、我はと叫ぶ。
頂点にたどり着くまでの一瞬の間、三名の隊長達が声を張り上げた。




682 ◆k.6bdeNTfg2013/07/02(火) 23:09:20.28jqz2YmkQo (3/5)

走る一団には、ある行動が確かに見えた。
一つは頬にマスクを括りつけ、全身に羽織れるものを手繰り寄せた。
一つは武器を縦に持ち、振り下ろす練習を始めた。

竜たちには、それが足掻きに見えた。
大方、奴らは崖の手前で急ブレーキをかけて、最後の抵抗を見せるに違いない――
――しかし、その抵抗とは?
声を低くして疑問を呈するものは、しかし、先頭集団には間に合わない。

先頭のうち、三頭が大きく息を吸い込んだ。
追いかける竜たちが、慌てて炎の通り道を作らんと、左右に割れて空へ逃げる。
灼熱が口内に膨らんで、ぎらりと目が光る。

人間たちの駆け上がる道が、いよいよと幅を狭くした瞬間に、炎と、そして声が放たれた。


隊長「反転ッ!!」


轟、とも、応、とも付かぬ返答は、噴出した竜の火炎と同時に湧いた。


683 ◆k.6bdeNTfg2013/07/02(火) 23:25:49.84jqz2YmkQo (4/5)

地面に突き立てられた武器たちにしがみつきながら、冒険者達が急ブレーキをかける。
そのうちの二人は、別の戦士達に抱きかかえられながら、吠えた。


術士「展開――」

魔術師「展開!!」


ビシィッ! という、音が、火炎を跳ね返した音だったのだ。

ばら撒かれた魔方陣は、予めそこに位置していた地の魔力を噴出させ、ドーム状のシェルターを作り出す。
……はずが、二重に展開された魔法によって、シェルターどころか、まるで刺の付いたウニのように、火炎が突き破られた。

思わぬ効果は次にも現れた。
左右に散ったはずの竜たちを追って、火炎が彼らに飛びついたのだ!


  「GYYYYYYYAAAAAAAAAA!!!!!!」


喚く竜たちの元へ、魔術師が声を張った。


魔術師「炎よ、取り憑け!」

術士「……なるほど」


一度、熱に当てるだけでは足らない、彼ら自身が作り出す炎を、まとわりつかせる魔法。
術士は見よう見まねで魔法を解析し、数字を書き込んでいく。
無論、間に合わない。

シェルターが効力を失っていく。

竜が飛び込んでくる。

誰かが叫ぶ。


684 ◆k.6bdeNTfg2013/07/02(火) 23:26:16.31jqz2YmkQo (5/5)

明日も書きたい。


685VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/07/03(水) 03:18:23.10kXbP9xuAO (1/1)

乙 熱いな!


686VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/07/25(木) 03:22:58.47ggBFdyqAO (1/1)

待つぞ


687VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/10(土) 15:54:47.25J44A6mYAO (1/1)

待つ


688!ninja2013/08/15(木) 10:24:44.46uzEsPwPuo (1/1)

待ってる


689 ◆k.6bdeNTfg2013/08/16(金) 18:28:11.441EZCpldfO (1/1)

もうちょい待ってくれ


690VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 11:00:25.216xAn+CkAO (1/1)

よっしゃ 待つぞ


691VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/17(土) 11:55:26.12jEY6Dt0Go (1/1)

舞っている


692VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/22(木) 05:51:17.02QWwngWRXo (1/1)

わたしま~つ~わ♪


693VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/22(木) 06:41:11.63nnRJBoxD0 (1/1)

いつまでもま?つ?
わ♪


694 ◆k.6bdeNTfg2013/08/22(木) 23:46:09.14tw74KoRso (1/2)

反転した勢いで、頂点に向かっていた空気が逆転した。
群れる竜に向かって炎と空気が流れ込み、彼らは翼を、閉じてしまった。


天測士「天候十分! 風向き良し!」

隊長「投げつけろ!」


応、と掛け声が上がると、男性陣が勢い良く『毒』を投げつけた。
そこに向かって、矢が放たれる。

破裂音につづいて、『毒』が吹き散らされる――


絶叫が弾けた。



斧使い「ど、どうだっ!?」

剣士「口を抑えろ」

会長「みんな、何か布を。口元を覆って、毒を吸い込まないように」

隊長「前衛は攻めるぞ! 武器を取って――」


言いかけた隊長の前に、一際巨大な影が突進してくる。
その前肢を鉄棒で受け止めようとして、とても受け止めきれないと悟る。


隊長「ぐぅっ……!」

救護員「隊長ォ!」


695 ◆k.6bdeNTfg2013/08/22(木) 23:53:17.46tw74KoRso (2/2)

隊長「……大丈夫だ! 武器を持って」

救護員「鼻血出てるよ、めっちゃ!」

隊長「大丈夫だって」

剣士「言ってる場合か!」


竜『ぐぅるるるるぅぅぅ……――ぎゅボッ!!』  ビチャビチャビチャッ


斧使い「うおっ、き、キタネ!」

工兵「毒の効果だよ、触れるとヤバイと思うから近づかないでね」

術士「私見だけど、使ったほうが危険なんじゃないかしら」

天測士「今更そういうこと言うの!? ってか、あんた、前、前!」

隊長「くっ」


体液を吐き出した竜が、顎を上げ、隊長の前に立ちはだかる。


会長「隊長、距離を取れ!」

隊長「後ろは崖だよ……!」


隊長が鉄棒を構えた後ろで、竜達がもだえ苦しんでいるのが見える。
攻めるチャンスは今しかない、という時だった。


696 ◆k.6bdeNTfg2013/08/23(金) 00:05:39.00btXMzqZJo (1/5)

竜『――無念だぞ……』


隊長「!」

天測士「し、しゃべっ」

会長「構えを解くな!」


一同に衝撃が走った。

化け物のような巨体から、確かに低く声が漏れている。
知能のある生物だとは知っていたが、まさか人語を操るとは思いも寄らない。


剣士「おい……隊長、命令だ」

隊長「……ああ!」

隊長「左方向へ攻撃を集中し、そのまま回りこんで谷側に叩きこむ!」

斧使い「お、おい、いいのかよ」

隊長「ここまできていいも悪いもあるか」


ズゥン!

竜が、一歩、踏み出した。


697 ◆k.6bdeNTfg2013/08/23(金) 00:18:35.84btXMzqZJo (2/5)

だが、呻く竜の後ろから、別の竜が殺到する様子が、ない。
なおも爪を立てて、胸を張っている竜も、前に出てこようとしない。
「毒」にのたうちまわり、苦しみもだえている叫びが、連鎖的に広まっている。
直接浴びた者の中には、反っくり返って後続に倒れこんだ者もいる。
吐き捨てた内容物を後ろの竜が浴び、さらに「毒」が拡大している。

目の前の竜もまた、直に浴びた竜鱗からは、しゅうしゅうと音を立てて煙さえ上がっている。


占い師「うっ……」


数名が目を背けた。
暗い中で竜の肉が、外気に晒されているのが見えたような気がした。


天測士「ち、ちょっと、効き過ぎじゃない……?」


ズン、と音を立てて、竜が踏み出す。いや、膝をついた。


竜『この命、貴様らを屠るには、足りる、が……』

竜『その、悪意を……完成させたのなら、もう……』

工兵「……完成?」

会長「工兵くん、耳を貸しちゃダメだ……!」


698 ◆k.6bdeNTfg2013/08/23(金) 00:36:45.14btXMzqZJo (3/5)

竜『王を殺し、我らを……追い詰めた者』

竜『ふ、復活の、悲願……飼われ、毒に蝕まれながら……』

竜『痛みに耐え、待っていたッ!』

竜『し、しかし、叶わぬか。ど、毒は――掘り尽くし、灰にしたはずが――』


隊長「……」


竜『より、強力な、悪意を、作り上げていたとは!』


工兵「なるほど」


隊長が手を上げた。
攻撃を、制止する合図だった。


隊長「あんたら、人間に従っていたんじゃないのか」


竜が鼻を鳴らす。


竜『バカな! ……だが、だが、引き離された群れを、探していた……』

会長「……竜の群れは二つあったのか」


699 ◆k.6bdeNTfg2013/08/23(金) 00:49:57.08btXMzqZJo (4/5)

竜『……ぐぅるるるる……』

隊長「……提案がある」

天測士「ちょっと、本気で言ってんの!?」

会長「やめておいたほうがいい」

隊長「いいから言わせてくれ」

隊長「――俺達に敵対する意思はない。いいか? お前らを封じ込めた連中は別にいる」

竜『……GUUUUUUUU――!』

隊長「俺達は、襲われたから戦っただけだ。お前たちに悪意を込めた相手を」

竜『グギャアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

ボタボタっ!

隊長「うっ……」

竜『生命は……』

竜『どちらかが上に、立たねば。命じるものと、命じられるものがいなければ』

竜『我らには王がいた。王を戴いていた』

隊長「……」


700 ◆k.6bdeNTfg2013/08/23(金) 01:01:23.10btXMzqZJo (5/5)

竜『対等など、ない』

隊長「……」

竜『奪われたならば、奪い返さなくては』

隊長「そうかよ」

竜『王を失い、隊の長も失ったならば……自分が、立たねば』

隊長「……」


遠吠えがする。
風がこちらに向かって吹いてくる。
暗い空の向こうから、群れに追いついたらしき竜の一団が、翼を広げている。

まだ、奥の方に残っていたのだ。竜の一軍が。


竜『――悪意持つ者よ!』

隊長「……そりゃお前らの方だろ」

竜『その、毒あるならば、いずれ、わ、われ、らは、滅ぶ。滅ぶが、せめて』

竜『せめて、貴様らだけでも道連れにせねば!』

隊長「……ああ、そうかい!」


隊長が、上げていた腕を振り下ろした瞬間、狩人が矢を放った。
「毒」を塗った矢を。


701VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/08/23(金) 01:55:30.419FBwyRcAO (1/1)




702以下、新鯖からお送りいたします2013/09/02(月) 16:44:15.4737+3xSwAO (1/1)

乙 ままならんな…


703VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/02(水) 00:10:18.26v/IYOT/G0 (1/1)

保守


704VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/15(火) 02:52:52.21x+trw6rAO (1/1)

あと1週間…

最近同時期に始まったSSが次々落ちてるから寂しい


705VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/20(日) 17:18:02.30+iCUVUVX0 (1/1)

せめて生存報告だけでもしてくれ


706VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/26(土) 16:13:58.63EBaHDbSAO (1/1)

仕方ない
暇になったらまた何か書いてくれ


707VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/10/26(土) 18:37:35.18OwGDpDMZo (1/1)

無念だ