939 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:42:45.25Hp2Uke1jo (19/80)




        -第1アリーナ-
 “石鍵” vs “シュヴァルツェア・レーゲン”




岡部『黒い雨……名前通りだな』

紅莉栖『砲戦パッケージ“パンツァー・カノニーア”を装備している。本気よ……』

 “シュヴァルツェア・レーゲン”の両肩にはレールカノン“ブリッツ”が装備されている。
 なんとも仰々しいシルエットが岡部の目に飛び込んできた。

ラウラ『倫太郎。聞こえるか』

 オープンチャネルでラウラからの通信が入る。
 


940 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:43:12.36Hp2Uke1jo (20/80)


岡部『あぁ』

ラウラ『本気で行く。問題無いな』

岡部『無論だ』

 即答する。
 手加減を期待してもいないし、頼んだからといってしてくれる相手でもない。

 腹はとっくの昔に据えていた。

ラウア『良い返事だ』

 両肩に装備された“ブリッツ”がその砲口を傾ける。
 飛来している“石鍵”に照準を合わせた。

ラウラ『ルーキーだからと言って手は抜かん。覚悟しろ』
 


941 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:43:41.51Hp2Uke1jo (21/80)



          -警戒-
《敵IS射撃モードに移行。セーフティのロック解除を確認》

 センサーが感知し、警戒を画面一杯に表示される。


岡部『貴様こそ、その眼帯を取らなくて良いのか?』

ラウラ『ッフ。ならば──取らせて見るが良いッ!!』


     -警告-
 《敵IS 射撃体勢に移行》


 ブザー音と共に警告が鳴る。
 次の瞬間“シュヴァルツェア・レーゲン”はニ門の砲塔を開け放った。

 ──キゥゥゥン!!

 甲高い音が鳴った。
 


942 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:44:31.61Hp2Uke1jo (22/80)


紅莉栖『避けて!!』

 二本の閃光は猛スピードで正確に“石鍵”の頭部を狙い、走って来た。
 岡部はハイパーセンサーによる警告と、紅莉栖の声を受け回避行動を取る。

岡部『いきなりかっ……!! ぐうぅぅ!!』

 歯を食いしばり、急上昇を行う。
 間一髪、刹那のタイミングで攻撃を回避することに成功した。

 もし、直撃を受けていたら1撃で半分以上のシールドエネルギーを削られていただろう。

紅莉栖『ふう。何とか初撃は回避出来たわね。良い? あんなの直撃したら一瞬でゲームオーバーだからね!』

ラウラ『ほう……あの時より、回避行動はいくらかマシになったようだな』

 ラウラは一夏と岡部の初対戦を思い出していた。
 この一週間で行ってきた訓練は無駄ではないと安心する。

 自身が教官であるのならば、岡部は生徒である。
 生徒の成長を喜ばない教官などいない。
 


943 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:45:54.47Hp2Uke1jo (23/80)


ラウラ『もう少し、様子を見させて貰うぞ』

岡部『次から次へと……忙しない娘だ!』

 “シュヴァルツェア・レーゲン”から繰り出される4本のワイヤーブレード。
 赤黒く発光する4本のワイヤーが“石鍵”を捉えようと、縦横無尽に迫り来る。

紅莉栖『主力武器の1つ、ワイヤーブレードよ! 捕まったらフルボッコ間違いなし、避けろ!!』

岡部『えぇい! わかっている!!』

 縦横斜めと角度問わず飛来するソレを、飛行しながら避ける岡部。
 しかし機動力が元々低めな“石鍵”では限界が近かった。

ラウラ『そら、そのままでは捕まるぞ? どうする、倫太郎!』

岡部『ぐぬぅ……!』

 迫り来るワイヤーブレード。
 岡部はソレを、速度で回避するのではなく体を捻ったり急旋回することで避けていた。
 


944 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:46:53.10Hp2Uke1jo (24/80)



……。
…………。
………………。

 


945 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:47:35.49Hp2Uke1jo (25/80)


紅莉栖「良い? ラウラの攻撃で最高にヤバイのがコレ」

 見ていた動画を一時停止し、レーザーポインターでぐりぐりと強調する。
 静止画に映っているのはワイヤーブレードを繰り出している“シュヴァルツェア・レーゲン”だった。

紅莉栖「拘束されれば、引っ張られて殴る蹴るわの大暴行」

岡部「ガンガンと良いように殴られる訳か……」

 考えただけでも痛かった。
 ラウラの性格から言って、仕損じることはないだろう。

 捕まったらそこで終了の可能性が高い。

紅莉栖「瞬時加速が使えれば、回避しつつ懐に飛び込むことも出来るけど“石鍵”じゃ無理だし」

岡部「機動力は微妙のようだからな」

 何度かテスト飛行を試してみたは良いものの、最高速度の低さは専用機の中でも断トツ1位。
 下手をすれば訓練機である“打鉄”よりも低かった。
 


946 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:48:34.27Hp2Uke1jo (26/80)


紅莉栖「現状でアンタの一番の武器、それは……」

岡部「“サイリウム・セーバー”か?」

紅莉栖「違う! 機体制御よ」

 武器ではないことを強調する。
 下手に武器を過信すればそれこそ直ぐに試合は終了する。

 “石鍵”の武装において、他機のISに誇れるポイントなどない。

岡部「つまり、この俺のへぁんぱない操縦テクニックで避けろということか」

紅莉栖「へぁんぱないのは“石鍵”であってアンタじゃないけど……まぁそう言うこと」

岡部「しかし、避けきれるものなのか? コレを」

 動画では、ワイヤーブレードに捕まりボコボコに殴られている鈴音とセシリアが映っている。
 岡部は自分に重ね、ラウラに殴りつけられる姿を投影していた。

紅莉栖「何とかしなさい」

岡部「……」
 


947 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:49:01.69Hp2Uke1jo (27/80)



……。
…………。
………………。

 


948 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:49:29.87Hp2Uke1jo (28/80)


岡部『軽く言ってくれる……っ!』

 くねくねと体を捻り、急上昇急降下を繰り返しワイヤーを避け続ける岡部。
 アリーナを精一杯利用することで、ワイヤーの稼動域から離れ回避行動を続けていた。

ラウラ『ほう……ココまで回避行動が上達するとは』

岡部『良い上官に教えを請うたからな』

ラウラ『違い無い。では、次の手だ』

 軽口を叩き合う最中も攻撃は続いた。
 4本のワイヤーを動かしながらも、ラウラはニ門の砲塔。

 “ブリッツ”を再び“石鍵”に標準した。


949 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:49:55.67Hp2Uke1jo (29/80)


ラウラ『さぁ、踊れ!』

 ラウラの瞳が怪しく光る。
 4本のワイヤーを縫う様に、2本の閃光が“石鍵”に向けて走った。

岡部『(これは──避けられ────)』

紅莉栖『岡部!! 右手側にあるワイヤー群に突っ込め!!』

岡部『!!』

 逡巡する暇は無い。
 一瞬でも紅莉栖の言葉に疑いを持てば“ブリッツ”の直撃を受けていただろう。

 けれど、岡部は指示に従いワイヤーへと飛び込んだ。
 ギンッ、とブレード部分が被弾し少しばかりのシールドエネルギーが削られた。
 


950 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:50:27.49Hp2Uke1jo (30/80)


ラウラ『な──に……』

岡部『はぁ、はぁ……助かった……』

 岡部を捕らえようと動いていたかに見えたワイヤー。
 しかし“ブリッツ”を起動し、照準に集中を割いていたのでワイヤーのコントロールに捕縛は組み込まれていなかった。

 紅莉栖はソレを見破り、あえて被弾することにより空間を作り最小限の被害で無理矢理安全地帯を制作させた。
 瞬時に見破る紅莉栖も異常だが、その指示を全面的に信用し躊躇なくブレードに突っ込んだ岡部もまた異常と言えた。

岡部『ナイスだ、助手よ!』

紅莉栖『ふっ、ふん。良く避けたじゃない……』

 自分の言葉を何の躊躇いもなく信じてくれた岡部に赤面してしまう。
 岡部なら信用してくれるとわかっていても、いざ目の前でその事実を突きつけられてしまうとくすぐったいものがあった。
 


951 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:51:01.02Hp2Uke1jo (31/80)


ラウラ『クククッ、倫太郎。貴様を舐めていた……良かろう、ココからは戦争だ!』

岡部『眼帯娘よ。本気になるのが少々遅かったようだな』

ラウラ『なに……?』

岡部『周囲を良く見てみろ。設置は完了した』

ラウラ『これ──は』
 
 “シュヴァルツェア・レーゲン”を取り囲むように、浮遊する幾つもの黒い塊。
 その形状はラウラの見知ったものだった。

ラウラ『──クレイモア地雷』

岡部『ご名答。さすがに詳しいな……地雷と言うよりも空中機雷と言ったところか』

 落ち着き払った岡部の言葉。
 全ては相手を惑わす演技だった。
 


952 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:51:29.80Hp2Uke1jo (32/80)


ラウラ『優秀だな……』

岡部『少尉殿がワイヤーでの追いかけっこに夢中であらせられたからな……』

ラウラ『っふ、言ってくれる』

 気丈に振舞うラウラだったが、内心は穏やかではない。
 完全に格下だと思っていた岡部に一杯食わされた。

 ハイパーセンサーの表示に注意していれば、見抜けたものを疎かにしてこの体たらく。
 自分を恥じてさえいた。

ラウラ『(威力は充分に見込めそうだな……どうする。“AIC”で防御をするにしても……』

 1つ爆発すれば、誘爆し全てが弾けるだろう。
 “AIC”で防げるのは一面のみ。

 嫌な汗が、額から流れた。
 


953 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:51:56.33Hp2Uke1jo (33/80)


ラウラ『(物理シールドを装備しない事が、裏目に出たか……)』

 ラウラの構想は砲撃とワイヤーにより、懐に呼び寄せプラズマ手刀で首を取ると言うものだった。
 シャルロット相手に付け焼刃の物理シールドは役に立たない。

 “AIC”で捌ききる自信も彼女にはあった。
 が、今はソレが裏目に出ている。

ラウラ『(どうする、どうする……)』

岡部『武装展開』

 《ピット粒子砲》

 左腕に“ピット粒子砲”を呼び出す岡部。
 可視光式のレーザーポインターが照準を合わせたのは“シュヴァルツェア・レーゲン”ではなく、“モアッド・スネーク”だった。
 


954 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:52:23.01Hp2Uke1jo (34/80)


ラウラ『(正しい判断だ。私でもそうする)』

 岡部の狙いを読み取り関心する。
 よくぞここまで成長したものだと。

岡部『眼帯……いや、ラウラ・ボーデヴィッヒよ。ギブアップを推奨するが、どうする』

ラウラ『断る。貴様とて、同じ状況下で降りはすまい』

岡部『残念だ(本当に、残念だ)』

紅莉栖『だから言ったのよ。そう言うの通じる相手じゃないって……』

 ここでギブアップをしてくれたのであれば大勝利。
 けれど、それを飲み込む相手ではない。

ラウラ『さぁ、何を躊躇う。トリガーを引け』

岡部『ぐっ……』

 ニヤリと笑い、言葉を続けるラウラ。
 


955 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:52:53.49Hp2Uke1jo (35/80)


ラウラ『引けば解る。お前の負けだ、倫太郎』

 ラウラは左腕のプラズマ手刀を起動させた。
 動けるはずも無いのに、近接武器を起動する意味が岡部には理解出来ない。

岡部『(なんだ、あの自信は……)』

紅莉栖『動揺すんな! やる事は変わらないんだから、自分を信じて……撃ちなさい!!』

 左手に力を入れて、トリガーに指を掛ける。
 フェザータッチ。

 羽のように軽く引くだけで、バチュン。と実弾が1発発射された。
 放れた弾丸は“モアッド・スネーク”に着弾し、爆ぜる。

ラウラ『──ココだ!!』

 弾着寸前、ラウラは眼帯を解き放ち金色に輝く左目。
 “ヴォーダン・オージェ”-越界の瞳- を発動させていた。
 


956 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:53:26.41Hp2Uke1jo (36/80)


ラウラ『──見えるッ』

 
 切り札とも言うべき“ヴォーダン・オージェ”を発動する。
 金色に輝く瞳は動体視力を数倍にまで跳ね上げた。

 ──カキンッ。
 
 実弾が“モアッド・スネーク”に当る着弾音を、ラウラは聞き漏らさない。
 一瞬にして広がる霧状の煙。
 
 曇る視界。
 けれども、怯むことなく作戦を実行する。
 


957 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:54:02.94Hp2Uke1jo (37/80)


ラウラ『レールカノン“ブリッツ”パージッ!!』

 両肩に装備された、大型のレールカノンが左右へ大きく放たれた。
 それと同時に前方へ“AIC”を作動させる。

ラウラ『──熱反応が無い!? ダミーか!? 小癪な……っ!!』

 予期していた衝撃が一切襲ってこない。
 しかし、作戦を変える必要は皆無。

 後はただただ直進し、切り捨てるのみだった。

ラウラ『スラスター出力、全開っっ!!』

 着弾から装備の切り離し。
 “AIC”の起動と、前方へ向けての超加速。

 ここまでの動作を、流れるようにこなし直進する“シュヴァルツェア・レーゲン”。
 ゆえに、クレイモア地雷がダミーであろうと無かろうと関係が無かった。

 視界は超高濃度の霧で覆われ、ハイパーセンサーの感度を最大に上げても“石鍵”を補足することが出来ない。

 ──が。
 


958 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:54:29.51Hp2Uke1jo (38/80)


ラウラ『貴様の居た場所は把握しているっ! 私より先にアクションを起こしていなければ……貴様の負けだ!!』

 攻撃する側である、岡部より一手早い行動。

ラウラ『うォォォォォォオオオ!!』

 瞬時にクレイモアがダミーであり、衝撃が来ないと判断したラウラは“AIC”を切り、突進しながら右腕のプラズマ手刀を展開していた。
 戦いの申し子とも言える瞬時の行動。

 岡部1人が考え、戦っていたのなら、この一手で全てが決まっていた。
 だが、岡部は1人では無い。

岡部『驚いた……ラウラ・ボーデヴィッヒ。貴様はなるほど、天才のようだ』



 天 才 で あ る 我 が 助 手 の 考 え た 通 り の 行 動 を と る と は。
 


ラウラ『っく! 居ないっっ!?』
 


959 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:54:57.55Hp2Uke1jo (39/80)


 霧を切り裂き、左右のブレードを振った空間に“石鍵”の姿は無い。
 つまり、一手先を行っていたラウラのさらに一手先の行動を取られていた。


   -警告-
《敵IS 急接近》


ラウラ『この霧……ハイパーセンサージャマーか……!!』

 ハイパーセンサーで捕らえた情報が、ワンテンポ遅れてやってくる。
 背後から、赤い刃が迫っていた。
 


960 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:55:29.62Hp2Uke1jo (40/80)


 ◇

紅莉栖『“モアッド・スネーク”作動! 突っ込んでくるわよ!!』

 着弾と共に響く紅莉栖の指示。
 にわかには信じがたいが、紅莉栖の読みだとラウラは両肩の武器を切り離し爆発の攻撃力をカット。
 
 そのまま直進してくるだろうと、直前に岡部へと通達していた。
 岡部に出来ることはただ1つ。

 信じて、動くことだけだった。

岡部『エネルギー供給開始。“サイリウム・セーバー”最大出力……』

 ほぼ全てのエネルギーを“サイリウム・セーバー”への攻撃力へと転換する。
 
 現在、岡部の居る地点は“モアッド・スネーク”を狙撃した地点から右斜め前方。
 たった数メートル移動した地点だった。
 


961 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:55:59.96Hp2Uke1jo (41/80)


ラウラ『うォォォォォォオオオ!!』

 2秒としない内に、響くラウラの雄たけび。
 数秒前まで自分が居た空間がプラズマ手刀によって切り裂かれた。

岡部『背中ががら空きだ! ラウラ・ボーデヴィッヒ!!』

 赤い高濃度のエネルギーが、刀身を纏うように発せられている。
 刃が装備されている右腕に力がみなぎった。 

ラウラ『後ろっ……!?』

 ギリッ、と歯軋りが聞こえてきそうなほどに強く噛み締めるラウラ。
 その表情に余裕の色は無かった。
 


962 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:56:50.33Hp2Uke1jo (42/80)


岡部『ココだぁぁぁあああああアアアア!!』

紅莉栖『いけええええええええ!!』

 重なる2人の声。

 右腕に装備された“サイリウム・セーバー”を薙ぎ払うかのように、内側から外側へと剣を走らせる。
 その赤い剣閃は“シュヴァルツェア・レーゲン”左腕部に直撃した。

 高エネルギーを纏った刃は一撃で“シールドバリアー”を切り裂き、試合を終わらせる。
 
 ──はずだった。
 


963 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:57:16.49Hp2Uke1jo (43/80)


岡部『な──に────』

 振り切ったはずの腕は振り切れず、中ほどでその衝突力は消え失せ止まってしまう。
 “シュヴァルツェア・レーゲン”の右腕に装備された、プラズマ手刀によって止められていた。

ラウラ『危なかった……“ヴォーダン・オージェ”-越界の瞳-を起動していなければ、間に合いようも無かっただろう』

紅莉栖『背後からの攻撃を、あの状態で防ぐだなんて……』

 神速のパルス。
 “ヴォーダン・オージェ”-越界の瞳-。極限まで引き上げられた動体反射によって捉えられた岡部の刃は止められていた。

ラウラ『狙うのなら、頭だ。倫太郎……』

岡部『くっ……ウォォオオオオ!!!』

 止まった刃を振り切ろうと力を入れる。
 パワーアシストを最大限に稼動させるも、その刃がそれ以上“シュヴァルツェア・レーゲン”の腕部を切り裂く事は無かった。

 ワイヤーブレードが射出される。
 4本のワイヤーが“石鍵”の足を捕縛した。
 


964 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:57:43.25Hp2Uke1jo (44/80)


ラウラ『……』

 ラウラはそのまま、ワイヤーブレードを振り回し“石鍵”を地表へと叩き付けた。
 土埃を挙げて地面に突き刺さる。

岡部『ぐぬうぅぅぅぅ!!』

紅莉栖『岡部ぇぇぇ!!』

 揺れる視界。
 何時の間にか“モアッド・スネーク”が作り出した高濃度の霧は晴れていた。

 地表へ降り立つ、黒き雨。
 ドイツの冷氷。ラウラ・ボーデヴィッヒの口が開く。
 


965 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:58:09.98Hp2Uke1jo (45/80)


ラウラ『降れ、倫太郎。貴様の負けだ』

岡部『……』

 大地に叩き付けられた際に“シールドバリアー”が作動し、多量のエネルギーが削られてしまった。
 “サイリウム・セーバー”に供給されたエネルギーを併せて、“石鍵”には殆どエネルギーが残されてはいない。

 しゅるしゅると、足を拘束していたワイヤーブレードの捕縛が解かれる。

ラウラ『頭部を狙わなかったその甘さが敗因だ。さぁ、降れ。エネルギーは残されていまい』

紅莉栖『岡部……もう……』

岡部『“断る。貴様とて、同じ状況下で降りはすまい”……だったな』

 一瞬の沈黙の後、ラウラが口を開いた。
 


966 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:58:38.99Hp2Uke1jo (46/80)


ラウラ『相済まなかった。私は貴様を侮っていた。最後まで、全力で叩き伏せよう……!!』

 攻撃態勢に移る“シュヴァルツェア・レーゲン”。
 レールカノンを失った今、攻撃手段はワイヤーブレードとプラズマ手刀。

 ラウラはワイヤーブレードを四方向に射出し“石鍵”に狙いを定めた。
 そして自身もスラスターを唸らせ、突進する。

 先制するワイヤーブレードに気を取られれば、後追いのプラズマ手刀に切り裂かれる。
 かと言って、前者を蔑ろにすれば捕縛され切り裂かれる。


岡部『どうする、どうする──このままでは終わる』


岡部『くそっ────あの攻撃さえ────』
 


   


 ──あの攻撃の軌道さえ、読めれば。
 





 


967 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:59:23.41Hp2Uke1jo (47/80)

 
 ワイヤーブレードを無視する事は出来ない。
 蛇の様に複雑に動くワイヤー郡。

 空中なら兎も角、地上でソレを避けきる事は今の岡部には出来なかった。

紅莉栖『岡部、逃げてぇぇぇ!!』

 悲痛を伴う紅莉栖の叫び。
 けれど、今の岡部には届かなかった。

岡部『軌道さえ、読めれば……』

 棒立ちになる“石鍵”。
 ハイパーセンサーをフル稼働して、軌道を読む。
 


968 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 04:59:49.79Hp2Uke1jo (48/80)


岡部『無……理だ……』

 縦横無尽に迫り来るワイヤーブレード。
 安全地帯など、ありはしなかった。

 残りエネルギー残量も無く、悪あがきも出来ない。

 岡部は静かに目を瞑った。

 諦めかけ目を閉じたその時、ジャキッ。と言う聞き慣れない音が岡部の耳に届く。
 “石鍵”の両肩部のユニットが音を立ててスライドした。

 両肩部から円柱状の何かが一対、射出された。
 


969 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:00:17.15Hp2Uke1jo (49/80)


岡部『な、んだ……』

ラウラ『……っ!?』

 突然表れたパネルに、情報が表示されていく。


《戦闘経験値が一定量に達しました。新ガジェットを構築完了しました。伴い、第1ゲートを開錠します》

 
 新ガジェット。
 ゲートの開錠。

 理解できない単語が並ぶ。
 ゲート開錠の表示と共に、“石鍵”のエネルギー残量が回復──。

 もとい、“総エネルギー量が大幅に増えた”。
 
ラウラ『今更何が起きても、遅いっっ!!』

 お構いなしに突進を慣行するラウラ。
 絶体絶命。考える時間などないと言うのに、岡部には酷くゆっくりと時間が流れるように感じられた。
 


970 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:00:43.78Hp2Uke1jo (50/80)



───────────────────────

《“刻司ル十二ノ盟約”-パラダイム・シフト- 》

───────────────────────


岡部『パラダ……』

紅莉栖『嘘……“無段階移行”……』

 紅莉栖が信じられないと呟く。

 装備をISが精製する。
 つまり、それは“無段階移行”と言う観測自体が稀な現象だった。


《全知観測型ビット兵器。“刻司ル十二ノ盟約”全ての事象を観測し操縦者に──》
 
 


971 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:01:10.30Hp2Uke1jo (51/80)


岡部『なっ、何でも良い! 時間が無い!! 起動だ!!!』

 説明をスキップし強引に起動させる。
 円柱状のビットに亀裂が入り、分離しアリーナへと拡散した。

 その数、12機。

ラウラ『ビット兵器……、使う暇など与えんっ!!』

 “石鍵”から放たれたそれはセシリアが得意とする“ビット兵器”の形状をしている。
 どんなに素早く射撃をされたところでラウラの衝突力を止めることは出来ない。
 


972 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:01:39.66Hp2Uke1jo (52/80)


岡部『間に合わな──』

 眼前に迫る4本のワイヤーブレード。
 その鋭利な牙は容赦なく“石鍵”に襲い掛かってきた。

 巻き上がる土埃。
 岡部に逃げ場など無い。

ラウラ『…………ッッ』

 けれど、ラウラの表情は曇っている。
 苦虫をすり潰したような、そんな顔だった。

 スラスターでの突進をやめ、停止する。
 ハイパーセンサーで状況は掴めていたが、視認して愕然とした。
 


973 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:02:06.01Hp2Uke1jo (53/80)


岡部『……』

 ワイヤーブレードは全てが大地に突き刺さっている。
 岡部は半歩前に進み、唯一と言って良いほどの安全地帯へと歩を進めていた。

 “観測”した結果、その場所だけが唯一のセーフティーゾーンとわかったから、その場所へ移動した。
 
 ただ、どうしても4本目のワイヤーブレードだけは避けられ得ない。
 それもわかっていた岡部は、右腕の“サイリウム・セーバー”で、ブレードの軌道を少しだけ変えることにより、全ての攻撃を回避していた。

ラウラ『……』

 状況が掴めないラウラはプラズマ手刀での追撃を止め、岡部を睨んだ。

 例え熟練のIS操縦者と言えど、あの極限の状況下で全てのワイヤーを避けることなど不可能。
 それこそ、千冬クラスの操縦者でなければ出来ない芸当だった。
 


974 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:02:36.61Hp2Uke1jo (54/80)


岡部『う……あ、あ……』

 睨まれた岡部。
 けれども、その視点はラウラを見てはいなかった。

紅莉栖『──かべっ!? 岡部!? 岡部!!』

 先ほどから紅莉栖が何度も呼びかけているが応答がない。
 返事をする余裕がなかった。

岡部『くっ……ぁ……』
 
 片膝を付き、頭を抱えてうなだれている。
 


975 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:03:03.30Hp2Uke1jo (55/80)


岡部『あ、あ……』

紅莉栖『ちょっと! どうしたの!? 聞こえてるっ!?』

岡部『──ダ、めだ……情……報量が……多す、ぎて……頭が……』

 “石鍵”の展開がとかれ、岡部はそのままアリーナへと倒れんだ。
 操縦者保護プログラムが作動し、操縦者である岡部の意識を寸断させていた。

紅莉栖『岡部!? 岡部っ!?』

岡部『…………』

 岡部は完全に意識を失い、勝負の続行は不可能となっていた。

ラウラ『……』

 第1アリーナには、勝者であるラウラ・ボーデヴィッヒのみがISを纏っていた。
 


976 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:03:34.85Hp2Uke1jo (56/80)




       -第1アリーナ-


 “石鍵” vs “シュヴァルツェア・レーゲン”
 
   勝者“シュヴァルツェア・レーゲン”


 


977 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:04:20.47Hp2Uke1jo (57/80)


 初日の日程が終了し、電光掲示板は煌々と結果を発表していた。



      1年1組-専用機持ち初戦

第1アリーナ 岡部倫太郎 vs ラウラ・ボーデヴィッヒ

    勝者 ラウラ・ボーデヴィッヒ


第2アリーナ 篠ノ之 箒 vs シャルロット・デュノア

    勝者 シャルロット・デユノア


第3アリーナ 織斑一夏 vs セシリア・オルコット

    勝者 セシリア・オルコット



 映し出されている勝者名。
 皮肉にも、勝者の名前に日本人の名前は1つも無かった。


978 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:04:50.05Hp2Uke1jo (58/80)



……。
…………。
………………。

 


979 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:05:18.08Hp2Uke1jo (59/80)


箒『くそっ! 何故だ、何故当らない!!』

 “雨月”と“空裂”によるエネルギー状の刺突と斬撃。
 それは虚しくアリーナの床に傷を付けるだけだった。

シャル『それじゃぁ、当らないよ!』

 大地をホバリングするように疾走する“ラファール・リヴァイヴ・カスタムII”
 攻撃を避けては、連装ショットガン“レイン・オブ・サタデイ”を“紅椿”にお見舞いしていた。

 シャルロットがトリガーを引くたびにガリガリと“シールドエネルギー”が削られていく。
 自分の攻撃は当らず、シャルロットの攻撃だけが当っていた。

 次第に箒の心へ焦りが灯り始めている。

箒『ならば……これならどうだ!』

 肩部ユニットがスライドし“穿千”が姿を現す。
 箒は出力可変型ブラスターライフルの出力を最大にした。
 


980 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:05:45.05Hp2Uke1jo (60/80)


箒『一気に決める……!! はぁぁぁ!!』

シャル『一夏も箒も一緒だね。焦ると直ぐに大技を使っちゃうんだからさ!』

 “穿千”から放たれる高出力の弾丸。
 シャルロットはソレをホバリングで回避した後、すぐさま“瞬時加速”を発動させていた。

 宙に浮いていた“紅椿”と地に居た“ラファール・リヴァイヴ”。
 その間合いは一瞬の内に無くなっていた。

箒『イグニッションブースト……!』

シャル『“疾風”の名前は伊達じゃないよっ!』

 シャルロットが“瞬時加速”を行った時点で試合は決していた。
 既に回避、防御、全ての動作が間に合わない。

シャル『“絢爛舞踏”で回復されると厄介だからね。高攻撃力の武器を使うのを待っていたんだ』

 零距離。
 “紅椿”の腹部に“灰色の鱗殻”が突き刺さった。
 


981 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:06:11.88Hp2Uke1jo (61/80)


箒『────っっ!!』

 69口径のパイルバンカーが火を噴いた。
 ガン、ガン、と腹部を貫くように衝撃が続く。

 たった2発で“紅椿”の“シールドエネルギー”は底を尽き、敗者が決まる。

箒「……」

 敗因は幾らでもあった。
 挙げれば限が無いほどに。

 シャルロットの戦法に惑わされ、自分の戦いが出来なかった。
 “砂漠の逃げ水”とは良く言ったもので、苛立ちが積もりらしくない遠距離戦を選択してしまった。

 “絢爛舞踏”があるからと後先を考えずエネルギーを多用してしまい、そこをシャルロットに突かれた。

箒「一夏……お前は、勝てたか?」

 ロッカールームで1人呟く。
 箒の声は震えていた。
 


982 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:06:39.24Hp2Uke1jo (62/80)



……。
…………。
………………。
 
 


983 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:07:06.24Hp2Uke1jo (63/80)


一夏『強い……!!』

 上下左右から放たれるビット兵器からの攻撃。
 それを回避し、時には“零落白夜”のシールドで凌いでいる。

 ここまでは何時もの“ブルー・ティアーズ”だった。
 けれど、セシリアも成長している。

 何時までも停滞しているイギリス代表候補生ではなかった。

一夏『なっ────ぐぁぁっっ!! ……っ、またか!?』

 背後から襲いくるBT射撃。
 これで3度目の被弾だった。
 


984 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:07:32.62Hp2Uke1jo (64/80)


セシリア『…………』

 セシリアの目は真剣その物だった。
 4機のビット兵器操作に加え“BT偏光制御射撃”を織り交ぜているのだから、集中を切らす余裕は無い。

一夏『以前のような隙が無い……』

 以前のセシリアであれば、ビット操作時は他の行動が出来なく、そこに隙があった。
 しかし、今では“BT偏光制御射撃”により以前のような隙は見当たらない。

 無理矢理にでも攻略の糸口を見つけねばならない一夏は、切り札を使用した。

一夏『この攻撃を掻い潜って“瞬時加速”……決めるっ!!』

セシリア『甘いですわ』

 セシリアはあえて、ビット兵器から逃げられる道筋を1つだけ用意していた。
 一夏は思惑通りその道筋を見つけ、ターゲットである“ブルー・ティアーズ”に向け“瞬時加速”を行おうとしている。

セシリア『────ばん』

 “スターライトmkIII”。
 “ブルー・ティアーズ”の主力武装である巨大な特殊レーザーライフルが“白式”を貫いた。
 


985 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:07:59.20Hp2Uke1jo (65/80)


一夏『なっ……ビット兵器を動かしている間、セシリアは……』

セシリア『えぇ。ですから“動かすのを止めて”おりましてよ』

 一夏が“スターライトmkIII”の射撃斜線上に躍り出た瞬間、セシリアはビット兵器の操作を辞めた。
 操縦を失った4機のビットは地上へと力なく落ちていく。

一夏『マ……ジ、かよ』

 ビットが地上に激突し、破壊される前に勝負は付いた。

一夏『くそっ……』

 全ての“シールドエネルギー”が消失し、地上へ落下する“白式”。
 勝利を得たセシリアは直ぐに集中をし直し、ビット兵器を呼び戻した。

セシリア『これが、わたくし。セシリア・オルコットの実力ですわ!』

 こうしてセシリアは、勝利と共に失われた自信を取り戻した。
 


986 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:08:38.39Hp2Uke1jo (66/80)

一先ず、おわーり。
次スレを立ててきます。


987 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:26:35.38Hp2Uke1jo (67/80)

Steins;Stratos -Refine- Ⅱ 
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1350591118/

次スレです。


988 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:29:10.71Hp2Uke1jo (68/80)


……。
…………。
………………。
 


989 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:29:39.44Hp2Uke1jo (69/80)


紅莉栖「以上。午前の部でした まる」

岡部「……」

 目を覚ますと、そこはベッドの上。
 体に痛みは無いが、頭痛だけが未だに岡部の頭に響いていた。

 空中投影ディスプレイを操作しながら、戦闘動画を岡部に見せる紅莉栖。
 岡部はそれをベッドで寝ながら見ていた。

岡部「なぁ、助手よ……」

紅莉栖「ん?」

 視線を紅莉栖の手元へ移す。
 どうにも空中投影ディスプレイが気になっていた。

岡部「お前は以前から、その投影ディスプレイを使っていたか……?」

紅莉栖「? 何言ってんの? んー……微妙ね、今ほど多用する機会無かったし」

岡部「そうか……」

紅莉栖「急にどうしたの?」

 紅莉栖が首を傾げる。
 クラス内対抗戦の話題も他所に、いきなりディスプレイの話を振ってきたのだから当然の疑問だった。
 


990 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:30:05.78Hp2Uke1jo (70/80)


岡部「いや、少し寝ぼけているようだ。まだ頭がぼやけている」

 そう言って掌を頭に押し付ける。
 ズキンズキンと、頭痛が響く。

紅莉栖「あぁ、うん。結構ハデな倒れかた下からビックリしたわ」

岡部「……」

紅莉栖「──で、新しいガジェットだけど」

 本題へと話題をシフトする。
 話したいことが山積していた。

岡部「あぁ……」

 そんな紅莉栖の心情とは裏腹にそっけない返事をする。
 気分がどうにも乗らなかった。

紅莉栖「見て」

 投影ディスプレイを指でなぞり、岡部の前へと引き寄せる。
 


991 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:30:36.58Hp2Uke1jo (71/80)

 

───────────────────────

   《“刻司ル十二ノ盟約”-パラダイム・シフト- 》

───────────────────────

 


992 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:31:03.52Hp2Uke1jo (72/80)


紅莉栖「なんつー厨ニなネーミングセンスよ……」

 一瞬、時が止まる。
 そのネーミングに岡部が硬直した。

岡部「……お、俺が考えた訳じゃない」

紅莉栖「束博士の言う限りじゃ、アンタが全て起因になっている訳だが?」

岡部「…………」

 ぐうの音もでなかった。
 中ニ的だとは理解しつつも、どこかでカッコ良さを感じてしまう辺りそうなのだろうと納得してしまう。
 


993 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:31:29.91Hp2Uke1jo (73/80)


紅莉栖「まぁ。良いわ──で、そのパラダイムなんだけど……」

 紅莉栖の説明は端的でわかりやすかった。
 全知観測型ビット兵器。12のビットが事象を観測し操縦者にリアルタイムで状況を伝達。

 最大稼働時にはどこまで観測されるのか、検討も付かないと言う。
 現状の稼働率は30%。

 それでも、人間の脳では処理しきれない情報量で脳がパニックを起こす。
 今のままでは使い物にならない。

紅莉栖「──って訳」

 なるほど、と岡部が頭を傾ける。
 情報量が多すぎて自身の脳がパニックを起こしたのだと理解した。
 


994 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:31:59.92Hp2Uke1jo (74/80)


岡部「しかし、またしても微妙な……」

紅莉栖「そうでも無いわ。出力を10……いや、7.8%ほどに落せば使えると思う。それで充分戦いになる」

岡部「そうか……」

紅莉栖「多分、100%で稼動することを前提にエネルギーが別途用意されていたんでしょうね。
   “石鍵”の“総エネルギー量”結構凄いことになってるわよ。
    これを、他に流用すればもっとマシな戦いが出来るわね」

岡部「ビット兵器はオマケだな、扱いきれない物に割くエネルギーなどない」

紅莉栖「違いない」

 軽口を叩き合う2人。
 紅莉栖が無理矢理にでも明るく振舞おうとしているのが岡部にはわかった。
 


995 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:32:27.05Hp2Uke1jo (75/80)


岡部「助手よ……」

紅莉栖「ん?」

岡部「済まなかったな。負けてしまった」

紅莉栖「……相手はラウラよ? 実際、良くやったわよ」

岡部「あぁ……」

 IS学園1年1組 クラス内対抗戦。
 午前の部が終了した。
 


996 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 05:32:54.70Hp2Uke1jo (76/80)

おわーり。
次スレに移行します。


997 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 06:43:07.22Hp2Uke1jo (77/80)

埋めます。


998 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 06:43:33.64Hp2Uke1jo (78/80)

埋め。


999 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 06:43:59.58Hp2Uke1jo (79/80)

埋め。


1000 ◆3R1.cwV0LI2012/10/19(金) 06:44:26.68Hp2Uke1jo (80/80)

終了。