698 ◆e8lME0lo0A2012/08/23(木) 00:29:34.10gdkgz/iCo (11/18)

鳴上「よし、ここから……」

>さっきの悪魔に刃が立たなかった事を思い出す。

>もしかすると、一切ダメージが通らないかもしれない。

鳴上「だけど、やらなくちゃ。俺が」

>手すりを乗り越えて、屋上の縁に立つ。

>飛べば届く距離だ。

鳴上「ふぅ……」

>一度深呼吸して、召喚器をこめかみに当てる。

鳴上「イザナギ!」

>召喚したイザナギの力を、全て刀に込める。

鳴上「……刺さってくれ」

>二度、三度と深呼吸を繰り返し、心臓を落ち着ける。

>足に力を込め、飛ぶ。

鳴上「行っ……」

>地獄門に刀を突き立てる。

>……刺さった!

鳴上「けえええ!」



699 ◆e8lME0lo0A2012/08/23(木) 00:29:59.91gdkgz/iCo (12/18)

>落下の勢いと体重を全て刀にかける。

>刃は地獄門を切り裂き……

>途中で、止まった。

鳴上「駄目、か……!」

>もう一押しする力が足りない。

>まだ破壊には程遠い。

ダンテ「ネロ!!」

>眼下、まだ戦っているダンテが叫んだ。

ネロ「良くやった、ナルカミ。手伝ってやるよ」

>炎の悪魔の足元を抜け、ネロが真下に立っている。

鳴上「手伝うって、どう……!?」

>刀を誰かの手が掴んでいる。

>最初にネロに会った時、明らかに手の届かない距離で刀を奪われた事を思い出した。

ネロ「行くぜ」

鳴上「はい!」

ネロ「せェ……のぉっ!」

鳴上「うぉおおおおおおおおおおおお!」


700 ◆e8lME0lo0A2012/08/23(木) 00:30:26.37gdkgz/iCo (13/18)

>強烈な力で刀が引っ張られ、地獄門を裂いていく。

>地面スレスレで勢いは止まり、無事着地する事ができた。

鳴上「っはぁ、はぁ。助かりました。けど……」

>地獄門は変わらず立っている。

>あの二人の剣ならともかく、普通の刀では刃渡りが足りなかったようだ。

ネロ「大丈夫だ。後はアイツがやるさ」

>アイツ、と言われてダンテを見た。

>俺の視線に気付いたのか、ダンテは一瞬小さく笑うと一気に跳躍した。

ダンテ「悪いな!丁度良い踏み台だぜ!」

>追って飛んだ黒い悪魔を踏みつけ、更に加速し上昇する。

ベリアル『させるものか!』

>炎の悪魔が手を伸ばす。

ネロ「こっちのセリフだぜ!」

>ネロが例の伸びる手で悪魔を掴む。

>手を一気に縮ませて、悪魔の足元に移動する。

>一瞬、ネロの背後に青い悪魔の影が見えた。

ネロ「喰らっとけ!ウォオオオラァッ!」

>紅い腕に巨大な蒼い腕が重なり、炎の悪魔を殴り飛ばした。

>更に、あの黒い悪魔が使っていたような幻影の刀を飛ばし追撃する。


701 ◆e8lME0lo0A2012/08/23(木) 00:30:59.96gdkgz/iCo (14/18)

ベリアル『グオオオオオオオ!!』

>ネロが剣を握ると、エンジンの音がした。

ネロ「火傷の心配はいらねえか?炎獄の支配者さんよ」

>ネロの大剣が赤熱し、炎を噴く。

>圧倒的推進力で突撃し、その勢いのまま剣を振りぬく。

>その剣は炎の悪魔の体を深々と切り裂いた。

>タァン。

>一発の銃声で、視線をダンテに引き戻される。

>黒い悪魔は体に大穴を空けられ、落下していった。

>あの口径の銃であんな穴が空くものなのだろうか。

>ダンテを見ると、そこに見知った姿は無かった。

鳴上「……悪魔」

>まるで悪魔そのもののような姿に変わったダンテは背中の剣を抜く。

>俺がやったのと同じ事をするつもりのようだ。

>ただし、それよりも遥かに強い力で。

>俺の付けた傷の丁度反対側をなぞるように剣を走らせる。

>俺の時と違い、ブレーキ無しで地面まで一気に。

>巨大な剣によって切り裂かれた地獄門は、見事に真っ二つに別れた。

>ダンテの着地の衝撃で、校庭の砂が巻き上がり姿が見えなくなる。

鳴上「ダンテさん!」


702 ◆e8lME0lo0A2012/08/23(木) 00:31:39.98gdkgz/iCo (15/18)

>砂煙が晴れた時、ダンテは既にいつもの姿だった。

ダンテ「ヘイ、ネロ。こいつをぶっ壊すのに丁度いい物持ってるじゃないか」

ネロ「そうだな。こいつらには帰ってもらう事にするか」

>ネロは紅い腕で炎の悪魔を持ち上げ、地獄門に向かって放り投げた。

ダンテ「お前もだ。……もう、迷うなよ」

>ダンテがそれに合わせるように黒い悪魔をそっと投げる。

>地獄門に空いた異空間への入り口を通り、二体の悪魔がどこかへ消える。

>しかし、その巨大な質量を受け入れる事ができず、半壊した地獄門はそのまま崩壊を始めた。

ネロ「これでこれ以上悪魔が増える事は無い」

鳴上「でも、今までの悪魔は残ってるんですよね?」

ダンテ「その通り。だからこれから大掃除だ。悪魔死すべし(Devil Must Die)だぜ!」

>堰を切ったように校庭に押し寄せる悪魔の群れに向けて、ダンテとネロが弾丸を放った。

>……。


703 ◆e8lME0lo0A2012/08/23(木) 00:32:26.94gdkgz/iCo (16/18)

>バー『The Gates of Hell』。

>サングラスのマスターと眼鏡の女性が会話している。

マスター「ってなワケで、連中日本に飛んだそうだ」

女性「へぇ。楽しそうね」

マスター「なんだ、行きたかったのか?」

女性「まさか。だって悪魔退治でしょう?」

マスター「連中の仕事だからな」

女性「天使退治なら行ってたわ。悪魔には興味無いもの」

>女性はグラスを空けると席を立った。

マスター「おい!金!」

女性「エンツォにツケておいて。また来るわ」

マスター「エンツォは払わねえぞ……ったく」

>今女性が出て行った扉がもう一度揺れる。

マスター「……お前らか。今日はツケねえぞ」

>入ってきたのは紅いコートの銀髪、蒼いコートの銀髪、サングラスの金髪の三人。

ダンテ「心配すんなよ。今日はツケじゃねえ。ストロベリーサンデーを、人数分頼むぜ」

マスター「今日はツケじゃねえ、じゃなくて今までのツケを払えってんだ」

>今日も呆れながら、ストロベリーサンデーの用意をするのだった。

>……。


704 ◆e8lME0lo0A2012/08/23(木) 00:33:17.77gdkgz/iCo (17/18)

鳴上「悪魔と人間のハーフですか?」

美鶴「少なくともダンテ氏の方はそうらしい」

>ダンテとネロが去った後、美鶴から彼らに関しての話を少し聞いた。

美鶴「しかし、知っての通りかなり上級の悪魔でも無いと人間と生活を営む事など出来ない。そして上級の悪魔は人間など下等生物にすぎないと認識しているから、滅多にある事でも無いようだ」

>悪魔と人間の混血。

>でありながら、悪魔を狩る存在。

>彼の目には、どんな世界が映っているのだろうか。

鳴上「……でも、良い人でしたよね」

美鶴「それは間違いないな。少し不真面目に過ぎるが」

鳴上「報酬も受け取らなかったんでしょう?」

美鶴「ああ。私がどうしてもと押し付けたチケット代と、後は……なんだろうな、これは」

>美鶴が苦笑しながらメモ書きを見せる。

>メモには『ストロベリーサンデー代』と、金額が書いてあった。

鳴上「また、会えますかね」

美鶴「事件が終われば、どうだろうな。彼も言っていたよ。日本にはまた来るかもしれない、と」

>悪魔の血を引き、人間の心を持つ男。

>出来れば、そんな人ともう少し話をしてみたい。

>そんな風に思った。


705 ◆e8lME0lo0A2012/08/23(木) 00:39:31.42gdkgz/iCo (18/18)

インターミッションおしまい。これからまた事件に挑もう。

では、また明日。


706VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2012/08/23(木) 01:51:23.18uwMZ5Xjmo (1/1)

ベヨネッタもwww
スゲーな!


707 ◆e8lME0lo0A2012/08/24(金) 00:02:13.83YC55jPOXo (1/10)



【6/12 晴れ】


綾時「それでさー、その時に先生がね」

>屋上に出るのも暑い季節になってきた。

鳴上「ああ」

綾時「……聞いてる?」

>綾時とこうして話すのも久しぶりだ。

>だが、綾時は湊の半身で……そのせいで勝手に微妙な気まずさを感じてしまっている。

綾時「もう、酷いなぁ。悠が暇そうなのは久しぶりだから誘ったのに」

鳴上「悪かったよ。ちゃんと聞く」

綾時「……といっても改めて話したい事も無いんだよねぇ。強いて言えば、有里君の事かな?」

鳴上「お前、知ってたのか?」

綾時「うん。推測だけどね。君と彼両方を見てきたから、なんとなくわかるんだ」

鳴上「そうか……黙ってて悪かったな。何か言い難くて」

綾時「いいさ。君もようやく正直になれたみたいでよかった」


708 ◆e8lME0lo0A2012/08/24(金) 00:02:44.43YC55jPOXo (2/10)

鳴上「正直に?」

綾時「最初の頃からずっと無理してたみたいだったからさ。荷が降りたみたいで何よりだ」

鳴上「そう見えるか」

綾時「君、人の為に何かしてあげる事をどう思う?」

鳴上「ん?そりゃ……困ってる相手なら当たり前じゃないか?」

綾時「それはいい心がけだけど、その為に相手の人生まで背負う理由は無いんだよ。いつか重さで潰されちゃうよ」

鳴上「そこまで深く考えた事はなかったな」

綾時「きっと君の本質がそうなんだろうね。羨ましいよ」

鳴上「考えなしがか?」

綾時「そうじゃない。僕は誰かを滅ぼしに作られた存在で、君は誰かを救う為の存在なんだろう。それが羨ましい」

鳴上「……卵、食べるか?」

綾時「うん、頂戴」

>開けた口に卵焼きを放り込んでやる。

綾時「……やっぱり美味しいね」

鳴上「羨ましいのはお互い様だ」

綾時「ん?」

鳴上「なんでもない。さ、食べたら午後の授業だ」


709 ◆e8lME0lo0A2012/08/24(金) 00:03:11.88YC55jPOXo (3/10)

綾時「んー、眠いね。このままサボっちゃおうか」

ラビリス「こら。悠を不良にする気か」

綾時「おわ、ラビリスさん。いつからそこに?」

>屋上の入り口にはメティスも立っている。

ラビリス「悠探してたんや。そしたら綾時が悠を悪の道に引きずり込もうとしてたから」

綾時「悪の道って酷いなぁ」

鳴上「綾時は悪い奴だからな。ラビリスも気を付けた方がいい。油断すると落とされるぞ」

ラビリス「落とす……?どこからや?」

綾時「悠も酷いなぁ。ま、教室に帰ろう」

>次の新月は大体一週間後だ。

>それまで、日常を謳歌しよう。

>『No.13 死神 望月綾時』のランクが4になった。



710 ◆e8lME0lo0A2012/08/24(金) 00:03:38.11YC55jPOXo (4/10)



【6/15 晴れ】


メティス「鳴上君、ここの所なんだけど……」

鳴上「ああ、見せてみてくれ」

ラビリス「悠ー、この問題なー」

鳴上「ちょっと待っててくれ、今メティスを見てるから」

綾時「君達本当仲いいねぇ」

鳴上「勉強見てるだけだろ?」

綾時「まぁそうなんだけど」

メティス「鳴上君?」

ラビリス「悠ー」

鳴上「あぁはいはい」

>中間テスト後、二人は一層勉強の出来を気にするようになった。

>元々そういう目的でテストするのかもしれないが、とりあえずそれなりな成績を取った俺は二人に年中捕まっている。

綾時「悠は教えるの上手いしね。前の学校でも教えたりしてたんじゃないの?」

鳴上「まぁ、そうだな。そんな事もあった」


711 ◆e8lME0lo0A2012/08/24(金) 00:04:05.26YC55jPOXo (5/10)

綾時「でしょ。モテモテだ」

鳴上「何で女子だと思うんだ?」

綾時「違うの?」

鳴上「……半分正解」

ラビリス「ああ、それって里中さん?」

鳴上「と、たまにりせだな。天城と直斗は俺なんかが見なくても出来る」

綾時「あれ、ラビリスさんは悠の前の学校の事知ってるんだっけ?」

ラビリス「ええと、いろいろあってな。ちょっと行った事あるんよ」

綾時「へぇ。それじゃ知らないのは僕らだけか」

メティス「……」

>メティスが湿った視線を送ってくる。

鳴上「夏休みにはまた向こうに行こうと思ってるんだけど、良ければ一緒に行くか?」

メティス「いいの!?」

綾時「いいの!?」

鳴上「……メティスに言ったんだが」

綾時「いやぁ、だって僕暇じゃない?」

鳴上「まぁ、お前も連れていくって言ったしな。いつか誘おうとは思ってたよ」


712 ◆e8lME0lo0A2012/08/24(金) 00:04:33.34YC55jPOXo (6/10)

綾時「どんな所なの?」

ラビリス「ええ所やで。まったり出来るわ。もちろんウチも行ってええんやろ?」

鳴上「皆待ってると思うよ」

ラビリス「へへ……」

綾時「あれ、雨だ」

>綾時の言葉につられて外を見る。

>確かに雨が降りだしている。

鳴上「ああ……今年は梅雨入り遅いんだってな。今日かららしいぞ」

綾時「梅雨ってのも律儀だねぇ。わざわざ初日から降らさなくてもいいのに」

ラビリス「あっ……」

鳴上「ん?どうかしたか?」

ラビリス「いや、なんでも無いんよ。うん」

>梅雨か……。

>雨が頻繁に降るのは捜査にはもってこいだが、個人的には好きな時期じゃない。

>言っても仕方ないが……。

>……。


713 ◆e8lME0lo0A2012/08/24(金) 00:05:28.90YC55jPOXo (7/10)

綾時「それじゃまたねー。ああ、濡れる濡れる……」

鳴上「あ、おい。傘あるから良かったら……人の話を聞け」

>授業が終わっても雨は降り続いていた。

>梅雨入りを聞いて鞄の中に折り畳み傘を入れておいたのだが、どうやら役に立ちそうだ。

鳴上「あれ?おーい」

ラビリス「ああ、悠。どないしたん?」

鳴上「俺のセリフだ。帰らないのか?」

ラビリス「あー、うん。ちょっとな」

>ラビリスはどこか気恥ずかしそうにしている。

鳴上「あ、もしかして傘忘れたのか?」

ラビリス「あ、バレた?まぁそやねん。別に防水やから、構いはせんのやけどな。なんか、こう……ちょっとやってみたかったんよ、雨の日の、こういう風景ゆうんかな」

>走って帰る生徒、傘を差して帰る生徒。

>同じように傘を忘れたのか、校舎から出るに出られない生徒もいる。

ラビリス「ウチらはあんまり普通やないけど、こういう普通な生活出来てるわけやん?せやから、出来たらいろんなシーンを楽しみたいな、と」

>まるで今がとても特別な時間かのようにラビリスは言った。

ラビリス「あ、けど心配せんでええで。満足したら適当に走って帰るから。悠は先に……」

鳴上「せっかくだから、もうちょっと色々楽しんでみないか?」

>折り畳み傘を広げてラビリスの隣に立つ。


714 ◆e8lME0lo0A2012/08/24(金) 00:06:00.51YC55jPOXo (8/10)

ラビリス「え?何するん?」

鳴上「傘が無いなら一緒に帰ろう。大きい傘じゃないから、濡れないように気を付けてな」

ラビリス「え、ええ!?いや、ええて!ウチ帰れるから!」

鳴上「放って帰ったら俺のプライドに関わる。いいから、ほら」

>ラビリスは遠慮がちに傘の下に入る。

鳴上「だから、もっと寄って」

>肩をぐっと抱き寄せる。

ラビリス「ひゃ!?」

鳴上「肩出ちゃうだろ。さ、帰ろう」

ラビリス「う、うん……」

>ラビリスと並んで校門を出た。

鳴上「生徒会はどうだ?」

ラビリス「んー、思ったより甲斐無いもんやなぁ。皆ウチらが仕事してるなんて知らんみたいや」

鳴上「縁の下の力持ちってヤツだな。世の中そんなもんさ」

ラビリス「悠はそういうの平気なん?」

鳴上「逆にラビリスは感謝されたく雑務こなしてるのか?」

ラビリス「あんまり思った事無いけど、でもやっぱり感謝された方が嬉しいやん?」


715 ◆e8lME0lo0A2012/08/24(金) 00:21:36.27YC55jPOXo (9/10)

鳴上「まぁな。でも楽しいだろ」

ラビリス「それは……そうやな」

鳴上「苦じゃないって事は良い事だ。結構さ、何も言われなくても喜んでもらえるだけで十分だろ」

ラビリス「まぁ……うん。そうやな!」

鳴上「そうやってさ、人のためになっていったらいつか誰かがお返ししてくれるよ。結構そういうふうになってるらしい」

ラビリス「あ!それ知ってるで!えーと……情けは人のためならずや!」

鳴上「そうそう。そう思ったら何だって出来るもんだよ」

ラビリス「悩んだってしゃーないしなー」

>二人で笑いながら帰り道を歩いた。

風花「あ、鳴上君。ラビリス連れて帰ってくれたんだ」

鳴上「あれ?山岸さん……と、メティスか」

風花「ラビリス傘忘れてたみたいだから、迎えに行こうと思って」

ラビリス「ほんま?ありがとなー」

メティス「……姉さん、楽しそうね」

鳴上「なんで怒ってるんだ……」

メティス「別に」

>何だかわからないがメティスに睨まれてしまった。

>『No.08 正義 ラビリス』のランクが3になった。


716 ◆e8lME0lo0A2012/08/24(金) 00:22:21.79YC55jPOXo (10/10)

まったりタイム。

では、また明日。


717VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)2012/08/24(金) 00:26:03.56zEkr4Ikmo (1/1)

乙!


718VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県)2012/08/24(金) 04:12:09.80iorrfAnNo (1/1)

おつちん


719VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)2012/08/24(金) 04:15:46.21tJ+d6NTdo (1/1)




720 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:00:34.116Avme98Oo (1/14)



【6/17 雨】


>梅雨、梅雨。

>湿気とそれなりな熱気が肌に纏わりついて鬱陶しい。

>もう少し気温が低ければ、窓に当たる雨も良いBGMなのだが。

>出掛ける気は無いが、部屋にいても過ごし難いだけだ。

>ラウンジにでも行ってみるとしよう。

天田「あ、おはようございます」

鳴上「おはよう。天田だけか」

天田「誰がいた方が良かったんです?」

鳴上「いや、別にそういうわけじゃ無いが」

天田「今日はあれだそうです、女子会。皆出かけてますよ」

鳴上「じょ、女子会。実在してるんだな」

天田「まぁ、議題はわかってますけどね……」

>天田にじろりと見られた。


721 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:01:18.976Avme98Oo (2/14)

鳴上「何だ?」

天田「いいえ。ああ、そうだ。暇ならどうです、僕らも」

鳴上「俺達も?」

>天田が携帯を取り出して笑う。

天田「男子会」

>……。

順平「この雨ん中呼び出しやがって、いい度胸だな天田」

天田「いいじゃないですか。別に参加は自由ですよ?」

順平「ばーか。面白そうだから来たんだよ」

天田「だと思いました」

真田「なぁ、俺は何で呼ばれたんだ?」

藤堂「割りと俺のセリフだな」

綾時「いいじゃないですか。たまには皆でわいわい話すのも」

>天田が真田と順平を呼び、俺が綾時と藤堂を呼んだ。

>六人の男子?がここに集まったわけだが、実際何の目的で集まったのかは良くわかっていない。

鳴上「で、男子会って何するんだ?」

天田「さぁ。何かこう、うだうだ駄弁ったりするんじゃないですか?」

順平「はいはーい!俺、気になります!」


722 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:01:58.796Avme98Oo (3/14)

>順平が元気よく手を上げて言う。

真田「騒がしいぞ、順平」

順平「いいじゃないすか。いや、まぁワンパターンなんだけどさ。女方面。皆どうなのよ?」

鳴上「またその話ですか」

天田「多分こんな感じですよ向こうも。岳羽さん辺りが言ってると思います」

順平「ま、向こうはアレだけどな」

天田「二択でしょうね」

>二択?

順平「で、どうなんすか真田先輩」

真田「ん?俺か。いや、特に何も無いな」

順平「先輩って昔からモテる割に何も無いっすよね。なんすか、ホモなんすか」

藤堂「……そう言われれば、なんとなくそんな顔してるな」

真田「ちっ、違う!考えてみろ。高校まではお前たちと戦っていたし、大学に入ってからはシャドウワーカー参入で修行の旅だ。そんな余裕がどこにある」

順平「あー、それもそうか……でも、それこそ世界中のいろんな女の人に会ったんじゃないすか?何か良い人いなかったんですか」

真田「俺の旅はもっと荒れてたからな。……気になる女は、いる」

順平「おー!それそれ!そういうの欲しかったんすよ!」

天田「何か、意外ですね。どこの誰なんですか、真田さんに興味持たせた女の子って」

真田「鳴上には以前言ったな。ラビリスの件で、こいつの古巣に行った時に会った女だ。俺に先を示してくれた、いわば恩人だな」

順平「あー……そういうのっすか」


723 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:02:38.376Avme98Oo (4/14)

天田「そんな所でしょうね、真田さんは」

真田「な、何だ。何が悪い」

藤堂「悪かないさ。なぁ?」

綾時「そこから始まる恋もありますよ」

真田「いや、それはないな。美鶴と同じくらい御免被りたい」

>以前聞いた話と言えば、千枝の事だろう。

>気になるの意味が違うとはいえ、少し驚いた。

順平「あー、桐条先輩は俺も無理っすね」

藤堂「何でだ?美人じゃないか」

順平「いや、無理っすよ。俺には荷が重すぎる。あの顔であのスタイルであの家っしょ?……釣り合わねー!」

綾時「でも順平は確か……」

天田「そうですよ、チドリさんがいるじゃないですか」

順平「あー?いや、あいつとはそういうんじゃねーって」

真田「なんだ、仲良さそうだったが違うのか」

順平「先輩も天田も知ってるっしょ。特別は特別だけど、そういう……普通のじゃないっつーか」

>チドリと順平の間に何があったかは大体聞いている。

>だが、今の二人はそれに留まらないように思うのだが……。



724 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:03:47.966Avme98Oo (5/14)

天田「そんな所でしょうね、真田さんは」

真田「な、何だ。何が悪い」

藤堂「悪かないさ。なぁ?」

綾時「そこから始まる恋もありますよ」

真田「いや、それはないな。美鶴と同じくらい御免被りたい」

>以前聞いた話と言えば、千枝の事だろう。

>気になるの意味が違うとはいえ、少し驚いた。

順平「あー、桐条先輩は俺も無理っすね」

藤堂「何でだ?美人じゃないか」

順平「いや、無理っすよ。俺には荷が重すぎる。あの顔であのスタイルであの家っしょ?……釣り合わねー!」

綾時「でも順平は確か……」

天田「そうですよ、チドリさんがいるじゃないですか」

順平「あー?いや、あいつとはそういうんじゃねーって」

真田「なんだ、仲良さそうだったが違うのか」

順平「先輩も天田も知ってるっしょ。特別は特別だけど、そういう……普通のじゃないっつーか」

>チドリと順平の間に何があったかは大体聞いている。

>だが、今の二人はそれに留まらないように思うのだが……。



725 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:04:51.666Avme98Oo (6/14)

藤堂「不思議な関係なんだな。それも面白い」

順平「あ、藤堂さんはそういうの多そうっすね。オトナだし、その顔とテンションだし。モテたでしょ?」

藤堂「いや、そうでも無かったよ。ほら、真田君だっけ?も同じような事言ってたけど、俺高校で例の事件解決してさ。それからちょっと旅に出てたから」

真田「ほう、修行ですか」

藤堂「いんや。今風に言うと自分探しってヤツ?夢を、探してな」

天田「夢……?」

藤堂「人生の目標っつーか、生きる意味みたいなのを探しにうろうろしてみたんだ。戻ってきたのが三年後だったかな」

綾時「へぇー、なかなか変わった人生ですね」

順平「お前が言うな」

真田「お前が言うな」

天田「あなたも人の事言えないと思いますけど」

綾時「……まぁ、そうだけどさ。三人で突っ込まなくてもいいじゃない」

順平「で、結局今まで彼女関係はナシっすか」

藤堂「んー……俺のも普通じゃないから、ナシって事になるな。そう考えたら寂しい青春だなぁ、おい」

>藤堂は大袈裟に泣き真似をした。

藤堂「暇だったから来てみたけど、自分の話するのってちょっと恥ずかしいな。ほら、他のヤツに聞けよ」

綾時「天田君は?君もモテそうだけど。その身長にその顔でしょ」


726 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:05:31.526Avme98Oo (7/14)

順平「昔は昔で女ウケ良いキャラだったけど、方向性変わったよな。すげえんじゃねえの、今」

天田「いや、僕も別に何も無いですよ」

順平「お前もかよ。なんの集まりだこりゃ」

天田「失礼な、真田さんと一緒にしないでくださいよ」

真田「失礼なのはお前だ」

天田「僕は普通に女性が好きですから」

真田「おい、俺だって男が好きなわけじゃないと言ってるだろ」

綾時「じゃあ寮生活って結構天国じゃない?」

天田「そうですね。ぶっちゃけちゃいますと山岸さんとか割りと本気で好きですよ」

順平「おわ!突然はっちゃけたなお前!」

天田「ていうか昔から山岸さんは好きでしたよ」

真田「確かに、メンバーの中では山岸が一番お前と話してたな」

天田「あれ、ほとんど僕から行ってたんですよね。我ながら自分の位置というか、キャラクターを良く利用したなと思います」

綾時「あれ?でもこの前誰かに一目惚れしたって聞いたけど」

天田「あっ、えっと……」

>天田に睨まれたが、視線を逸らした。



727 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:06:13.656Avme98Oo (8/14)

順平「この寂しい空間に一瞬青春の香りが!なんだそれ、詳しく!」

綾時「え?確か前にこの寮に悠の友達が来て、その子に一目惚れしたって聞いたけど」

真田「そうなのか」

天田「まぁ……」

順平「どんな子よ?天田が気に入るってどんなタイプ?」

天田「えー……そうですね、顔は綺麗でした」

藤堂「天田君は面食いなのか」

天田「そうかもしれませんね。あと、声が……すごく綺麗というか、通る声してるんですよ。そこがちょっと」

順平「声フェチ?」

天田「いや、そういうんじゃないですよ?」

綾時「山岸さんも綺麗な声してるよね、そういえば」

順平「天田、アウトー。声フェチ確定ー」

天田「……まぁ、いいですよ。別に」

藤堂「ところで、ずっと黙ってるヤツがいるんだが」

綾時「ですねぇ。せっかく盛り上がってきたのに」

真田「そういえばそうだな。俺達だけ喋らされたんじゃ割に合わん」

順平「ちげーっすよ。こいつは最後って思ってたんす。だって凄そうじゃないっすか。な、鳴上?」

>順平に肩を叩かれる。


728 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:06:50.336Avme98Oo (9/14)

>上手く躱していたと思ったが、露骨すぎたか……。

鳴上「……俺も、特に」

順平「もうそれいいって。お前、向こうじゃ彼女いなかったの?」

鳴上「彼女はいませんでしたね。皆友達止まりで」

真田「そうなのか?俺はてっきり……」

鳴上「てっきり、何ですか?」

真田「いや、あの全員と付き合っているのかと」

鳴上「無理ですよ、それは。そもそも誰からも好きだって言われた事は……無いでもないですけど」

天田「こっちでも何人か引っ掛けてますよね」

鳴上「何?それは記憶にない」

順平「マジかよ。誰?」

天田「少なくともメティスさんとラビリスさんは既に陥落済みですね」

綾時「他の子はまだまだ有里君派みたいだけど、時間かけたらわかんないねぇ」

順平「やっぱ二択か」

真田「そういえばあいつ、今八十稲羽にいるんだが」

鳴上「あ、らしいですね。桐条さんに聞きました」

真田「内緒にしておいてやりたかったが、悪魔騒動のせいでそうもいかなくなってな。向こうで楽しくやってるらしいが」


729 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:07:23.506Avme98Oo (10/14)

天田「あー、となるとあれですね」

鳴上「あれ?」

順平「鳴上……お前の彼女候補、全員アイツに持ってかれるぞ」

鳴上「ええ!?」

藤堂「そんな凄い子がいるのか」

綾時「すごいですよー、一時期六股してましたからね」

天田「ほら、駅前に本の虫ってあるじゃないですか。あそこのおばあさんも守備範囲だったとか」

真田「俺が聞いた話じゃ小学生と婚約したって」

鳴上「湊……一体何してたんだ……」

順平「まぁそういうわけで、残念だったな鳴上。ナチュラルボーンスケコマシだからさ、あいつ」

鳴上「そうはならないと思いますけど」

天田「あれ、もしかして自信アリですか?」

鳴上「いや、湊がそんな風にいろんな相手に手を出すとは思えなくて」

綾時「いや、出すよ彼は。ノーと言えない男だからね」

順平「だな。しかもやる事成す事いちいちカッコつけやがるからな。いやコレが実際キマってんだわ。悔しいけどよ」

真田「スポーツは確か、あの一年で部のエースだろ?」

綾時「勉強は学年一位でしたね」

藤堂「……どんなヤツなんだ、一体」


730 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:07:54.726Avme98Oo (11/14)

順平「気が付いたら周りの女子がほとんど落ちてるんだよ……」

綾時「すごかったねぇ」

順平「いや、お前も大概だからな?軽薄すぎてちょっと引かれてたけど」

綾時「自分に正直なだけさ」

鳴上「……なんだろう、すごく不安になってきた」

順平「もう諦めろ!諦めて、こっちも奪い返してやれ!な!」

天田「それ、誰も幸せになりませんよね」

順平「いいんだよ、あいつもたまには痛い目にあうべきなんだよ多分」

真田「お前、私怨入ってないか?」

順平「そ、そんな事ないっすよ!?」

藤堂「順平はモテなそうだもんな」

順平「藤堂さん、フレンドリーなのはいいけど一気に踏み込みすぎっす……」

綾時「あははは」

>皆と楽しい一時を過ごした。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが4になった。

>『No.04 皇帝 藤堂尚也』のランクが2になった。

>『No.17 星 真田明彦』のランクが4になった。


731 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:08:53.456Avme98Oo (12/14)



【6/20】


>空が暗い。

>今日も雨だろうか。

>梅雨が早く明けてくれればいいのだが。

>制服に着替えて、違和感を覚える。

鳴上「……雨だからか?寒いな」

>本当に面倒な時期だ。

>疎ましく思いながら部屋を出て、ラウンジに行く。

>今日は誰もいなかった。

>玄関を開けようとノブに手をかけて押す。

>……?

鳴上「あれ、開かない」

>ドアが重い。

>まるで外に何か積み上げられているようだ。

鳴上「このっ……んんっ!」

>全力で押すと、少しずつ動いてなんとか通れる隙間が開いた。

鳴上「よいしょ……っと……うわっ!?」

>玄関を出ると、そこは雪景色だった。


732 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 00:09:28.566Avme98Oo (13/14)

雪だー!

また謎の多重投稿・・・うぅ・・・
では、また明日。


733VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/25(土) 00:10:34.52hABnEbfY0 (1/1)




734VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2012/08/25(土) 00:23:23.79uYte5qpLo (1/1)

乙乙!


735VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県)2012/08/25(土) 02:13:37.83sgeAqDoIo (1/1)

乙ダイン


736VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)2012/08/25(土) 03:30:59.54wwpo0xYvo (1/1)




737VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/25(土) 06:30:08.41yyoMvDRuo (1/1)

雪子ルートでさえない番長か……このナナコンめ!


738蜷咲┌縺湧IPPER 2012/08/25(土) 09:11:57.29uYL933UW0 (1/1)

乙ダイン

番長は人妻と未亡人とバラエティは負けて無いな


739 ◆e8lME0lo0A2012/08/25(土) 15:26:23.086Avme98Oo (14/14)

諸事情あって今日明日はお休みにしたいと思います。
次回更新は月曜→火曜の影時間で・・・。
妙なタイミングでの宣言になってしまい申し訳ない。

では、また後日。


740 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:05:54.842zQDfKjCo (1/11)

綾時「異常気象だって。この間の避難騒動は君達の管轄だったんでしょ?」

鳴上「ああ。だけど今回はまだわからないぞ」

綾時「じゃあただの雪なのかな。そうは思えないけど」

鳴上「滅多にある話じゃない事は確かだな。タイミングも合う。そう考えてもおかしくないな」

綾時「今日サボっちゃおうか。これ、学校来てていい状況なの?」

鳴上「わからない。……だけど、俺この前休んじゃったから」

綾時「なんで急に出席気にしだしたのさ……」

鳴上「学校休んだら、翌日の空気が寂しいだろ」

綾時「あ、それなんとなくわかる。ところで、お連れさん方は?」

鳴上「あの二人は学校行ってる場合じゃないそうだ。今頃いろいろ走り回ってると思う。文字通り」

鳥海「ったーく、6月だぞ!!ってねー。えーと、雪が降っても授業はやるわよ。槍でも降ったら別だけど。ほらさっさと準備するー」

>雪が降った程度では人はそこまで取り乱さないようだ。

>あるいは、ちょっと面白いくらいに思っているのかもしれない。

>だが、俺は……いや、俺達はそう楽観的になれない。

>今夜は新月だ。

>事件の慣例に則るなら、事が起きるには早過ぎるが、ダンテ達が来た時の事もある。

>もしかすると、何か変化が起こっているのかもしれない。


741 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:06:45.422zQDfKjCo (2/11)

鳴上「もし事件が進行しているとしたら……この先、どうなるんだろう」

>湊の事件の時に、世界を巻き込んだ事件だと自覚した。

>一刻も早く解決しなくては……。

>……。

綾時「ねぇ、僕も寮に行った方がいいかな」

鳴上「そりゃ構わないだろうけど、どうするんだ?」

綾時「何かあるならあそこが一番安全かと思って。一応関係者だし、何か出来る事もあるかも」

鳴上「そうだな。藤堂さんも呼び出しておこう」

綾時「あの人って、ああ見えて面白いよねぇ」

鳴上「……そうだな」

>必要があれば、風花に美鶴を呼び出してもらう事にもなるだろう。

>とにかく、一度現状を整理しなければならない。

>綾時と二人で学校を出た。

綾時「まだ降ってるね。こりゃもっと積もるかな」

鳴上「これ以上となると流石に大変だぞ」

綾時「仕方ないよ、降るものは降る。そうだ、雪だるま作らない?」

鳴上「ふざけてる場合か。ほら、さっさと帰るぞ」

>……寮までの道中、何か違和感を覚えたが、その正体は掴めなかった。


742 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:09:16.742zQDfKjCo (3/11)

鳴上「ただいま」

綾時「おじゃまします」

藤堂「よう、帰ったか」

>藤堂は既に到着していた。

藤堂「参ったな。この前夏服出したのにまた冬服引っ張らなきゃならんとは」

綾時「いいじゃないですか。僕ら衣替え済ませちゃって夏服で授業受けたんですよ」

藤堂「最近の学校はエアコンとか入ってるんじゃないのか?」

鳴上「その話はまた後で……藤堂さん、何か気付いた事とかありませんか」

藤堂「気付いた事なぁ。実は何も無いんだよな。そもそもこれって例のテレビ関係なのか?」

鳴上「それもまだわからないんです。何ならテレビに入って調べようかと」

藤堂「悪魔に動きは?」

鳴上「今の所なんとも。今、仲間が動いてくれてるんでそれ次第でしょうか」

綾時「うわ、関東一円異常気象で積雪だってさ。ここだけじゃないみたいだね」

>ダンテ達がこの街を訪れた時、悪魔達は街の境界を越えなかった。

>となると、やはりあの時とは別で、事件は一切関係していないのだろうか……?

風花「桐条先輩、忙しいけど寄ってくれるって。この気象もシャドウ関連の事案として処理するから手が足りてないみたい」

鳴上「あ、山岸さん。ありがとうございます。あと、メティスとラビリスは……」

風花「一旦帰ってくるように言っておいたから、そろそろ戻ってくると思いますよ」


743 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:09:54.132zQDfKjCo (4/11)

鳴上「あの二人が何か良い報告を持って帰ってくれればいいんですけどね」

風花「それは……そうですね。期待してみましょう」

>実際の所、風花に何の連絡も入っていない時点で然程期待は出来ないだろう。

鳴上「山岸さんはどう見ますか?」

風花「さっぱり……でも、法則性はいろいろ変わって来てるけど、誰かの記憶を元に事件を再現するっていうのは変わってないみたいだから、これも昔あった事なのかも」

鳴上「異常気象がですか?だとすればどこかに記録があるかもしれませんね」

風花「そう思って一応調べたんだけど、季節外れの雪なんて記録はどこにも。大雪は過去に何度かあったみたいだけど、単純に冬が厳しかっただけみたい」

鳴上「となると、やっぱり無関係ですかね……」

綾時「ねぇ、さっきから気になってたんだけど」

>頭を悩ませていると、綾時が玄関を見ながら言う。

綾時「外、誰かいるよね?」

藤堂「音はしてたな」

鳴上「ああ、あの二人が帰って来たんじゃ……」

風花「……でも、それなら何で入って来ないんだろう?」

>!

>確かにそうだ。


744 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:10:21.012zQDfKjCo (5/11)

藤堂「さっきからここの前を何往復もしてるぞ。何かあるんじゃないか」

>一瞬身構えるが、すぐに考えなおす。

>受け身に回っちゃ駄目だ。

鳴上「確かめましょう。綾時と山岸さんは下がっててください」

>藤堂に目配せし、玄関に向かう。

>ノブに手をかけて、一気に開いた。

ラビリス「ああ、アカンアカン。そない大きいの乗らんて」

メティス「それじゃあ、こっちを胴体に……」

>……?

藤堂「ええと、おかえり」

ラビリス「あっ」

メティス「あぅ……」

風花「メティス、ラビリス、何してるの?」

ラビリス「い、いや?ちょっと雪の成分調査をやな……」

メティス「雪の質量・組成について検査していたであります。もし何らかの影響で降雪したならば通常の雪と違う結果が出る事もあるかと思ったのであります」

綾時「懐かしい喋り方だねぇ。お姉さんの方だけど。でも今は雪だるま作ってる場合じゃないと思わない?」

ラビリス「せ、せやんな……ちょっとはしゃぎすぎたわ」

メティス「ごめんなさい、雪って初めてで……」

>確かに、今はふざけている場合では無いのだが……。


745 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:10:57.332zQDfKjCo (6/11)

鳴上「てい」

>雪玉を作ってラビリスにぶつけた。

ラビリス「ひゃん!何すんの!?」

鳴上「いや、雪合戦っていうのもあるぞ、と」

藤堂「俺審判な。この歳で表ではしゃぐわけにもイカンだろ」

綾時「悠、僕の時と言ってることがへぶっ!」

メティス「……この、人に雪玉をぶつけた瞬間の感覚は……これが、愉悦!」

ラビリス「男女平等やろ?な?」

風花「ま、待ってラビリス。この服濡らしちゃ……」

ラビリス「えい」

風花「きゃっ!」

鳴上「……考えても仕方ない時は、こういうのもいいな」

>体中に雪玉を食らいながら、ちょっとだけそう思った。

>……。

綾時「へっくしっ!」

藤堂「後で風呂借りろよ」

鳴上「ラビリスもメティスも、お前たちがリミッター外したら俺達じゃ無理だろ」

ラビリス「ごめんな、つい……」

メティス「雪、いいね」


746 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:23:05.452zQDfKjCo (7/11)

鳴上「山岸さんが可哀想な事になってたな」

綾時「後半ちょっと涙目だったね」

>ちょっと可愛かった。

鳴上「さて、本題だ。二人共、街で何か気付いた事は?」

ラビリス「雪ってキラキラして綺麗やなぁ」

メティス「新雪の反射率は鏡と同じくらいだって聞いた事があるけど、本当にあんなに日光を反射するんだなぁって」

鳴上「雪はもういいから」

ラビリス「いうても、なぁ」

メティス「何も無かったし……」

鳴上「何もか……」

ラビリス「うん、ほんまに何も……あれ?」

>ラビリスが首を傾げて、メティスに何か耳打ちした。

メティス「えっ……あ、そういえば……」

鳴上「どうした?何かあったのか?」

ラビリス「うん、気のせいかと思っててんけどな」

メティス「悪魔がいなかったかも。もしかしたら偶然かもしれないけど」

鳴上「いなかった?……あ」

>学校帰りに感じた違和感の正体がわかった。

>道すがら、一体の悪魔も見なかったのだ。



747 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:23:34.452zQDfKjCo (8/11)

>例の件以降、悪魔の数は落ち着いた。

>しかし、いなくなったわけではないのだ。

>朝学校に行く途中でも、帰り道でも一体すら見ない。

>そんな日はこれまで無かった。

鳴上「俺も見てない。これ、どういう事だ?」

風花「ふぅ……お待たせしました。あれ、どうかしたの?」

>風花が着替えと入浴を済ませて帰ってくる。

綾時「ん、少し濡れた髪に上気した肌。なんだかセクシーだね」

風花「セクハラですよ、それ」

綾時「何か知らない間に辛辣になってない?」

鳴上「山岸さん、悪魔の反応どうなってますか?」

風花「え?悪魔……それは、普通に……あれ」

>風花の反応を見るに、どうやら確実なようだ。

風花「ちょっと集中してみます。……あ、いないわけじゃないみたい。けど、極端に少ないかも」

鳴上「また誰か来てるのか……?」

風花「可能性は無いでもないです。後は、桐条先輩が知ってるかどうかですね」

鳴上「前の時はそれでカタが付きましたしね。とりあえず桐条さんを待って……」

>ザ、ザザ……キュゥイ……キキュ……

鳴上「何の音だ?」


748 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:24:00.592zQDfKjCo (9/11)

風花「見て、テレビ!」

>テレビに白と黒の模様が映っている。

>あれは、テレビの中に入る時に通るゲートではないだろうか。

鳴上「どうして今……」

>あっけにとられていると、テレビから人の頭が出てきた。

鳴上「俺達以外にテレビに入れる人間がいるのか!?」

>考えられるのは、こっちにいる仲間達と、向こうにいる仲間達、それとその関係者。

>だが、この銀髪は少なくとも自分の知っている人物ではないような気がする。

>いつかホラー映画でこんな映像を見たが、自分たちもテレビから出る時はこんな感じなのだろうか。

「あれ」

>顔が半分ほど出た辺りで、聞き覚えのある声が聞こえる。

「いっててて……んだこりゃ引っかかって……ちょっと、そこ誰かいないか?」

>この声は……

鳴上「陽介?」

>いや、だが声は似ているが喋り方が少し違うような気もする。

>陽介より幾分落ち着いているような……

「陽介?誰だかわかんねーけどちょっと手伝ってくれねえか。手引っ張って、ほれ」


749 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:25:09.212zQDfKjCo (10/11)

>右手が差し出される。

>もしかすると、何かの罠かもしれない。

>皆を見回して、それから意を決して手を取った。

鳴上「行きますよ?」

「おう」

鳴上「せーの!」

>男が一人、テレビから引きずり出された。

「っぷぁ!ふぅ……ってどこだここ」

鳴上「あの……どなたですか?」

>銀髪の男は周囲を見回している。

「ん?ああ、そうだな。助かったよ。俺の名前は甲斐刹那。ところで、ここはどこなんだ?」


750 ◆e8lME0lo0A2012/08/28(火) 00:27:42.672zQDfKjCo (11/11)

せっちゃん・・・。

では、また明日。


751VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2012/08/28(火) 00:33:46.15qy5R9Pmbo (1/1)

デヒチルのせっちゃん!中の人が陽介と同じだもんねー
>>1ちゃん乙なのだよ!


752VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/28(火) 11:50:36.44b/WRjxon0 (1/1)

銀髪ってまさかとは思ったがマジでせっちゃんか

刹那表記で陽介だしゲーム版ベースなのか? 漫画版のバイオレンスさ(とかっこよさ)が今でも印象的


753VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/08/28(火) 12:59:28.1725sUyPAp0 (1/2)

ペルソナシリーズくらいしか詳しく知らないんだが
どの作品に出るキャラ?


754VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/28(火) 13:01:06.80RFz78PzRo (1/2)

>>753どのキャラの話よ


755VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/28(火) 14:19:59.35uq8AN6uNo (1/1)

流れてきにせっちゃんだろ
真女神転生デビルチルドレン


756VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/28(火) 14:21:49.88RFz78PzRo (2/2)

刹那「オレが…オレ達がデビルチルドレンだ!!」


757VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/28(火) 17:12:14.01w0HtZrINo (1/1)

クールくるーーーーー?


758VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)2012/08/28(火) 21:24:20.04PxX9mOQ5o (1/1)

漫画じゃどういうポジションなのかわからなかったデコ...じゃない未来さんクルー?


759VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/08/28(火) 23:01:57.6525sUyPAp0 (2/2)

>>755
ありがとう


760 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:03:36.29nZhfzp0/o (1/15)

>刹那に今までの経緯を説明した。

鳴上「それで、あなたもテレビに落とされたんだと思います。心当たりはありませんか?」

刹那「ようは過去にでかい事件に関わったかどうかって事だろ。関わったぞ」

鳴上「それは現状に関係ありますか?」

刹那「あの時も真夏なのに雪が降ってたな。それで、こっちに悪魔が出てきて」

藤堂「ビンゴだな」

刹那「そういや、あんたらはどうやって悪魔と戦ってんだ?」

鳴上「え?」

>予想外の質問だった。

鳴上「いやいや、どうやってって、甲斐さんもペルソナ使いでしょう?」

刹那「刹那でいいよ。そのペルソナっての?良くわかんねーな。もちろん俺は使えない」

風花「……これは、どういう事になるんでしょうか」

綾時「僕なんかは例外としても、今までは皆ペルソナ使いだったんだけどね。あ、そういえば聞いてませんでしたけど、刹那さんの関わった事件ってどういう物なんですか?」

刹那「あー、説明が難しいな。掻い摘んで言うとだな、世界が滅ぶからそれをなんとかしなきゃなんなかったんだけど……」

鳴上「悪魔は出てきたんですよね」

刹那「ペルソナはナシだ」

>今までは“ペルソナ関連”の事件を探っていたが、これでは前提が崩れる。

>彼……甲斐刹那は確かに何か大きな事件に関わっていたようだ。

>だが、それがどうにも要領を得ない。


761 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:04:02.96nZhfzp0/o (2/15)

風花「ええと、それじゃあちょっと詳しい話をお願いします。それでデータベースを照会するので」

刹那「わかった。どこから話したものやら……」

>PiPiPiPi……

>携帯の着信音が響く。

>これは俺のじゃない。

風花「あ、すみません。……もしもし?どうかしま……ええ?」

>風花が音量を上げてこちらにも聞こえるようにする。

美鶴『現在ポロニアンモールに巨大な悪魔が出現中!天田は学校から直接来てもらった!全員出撃だ!藤堂さんもいるのなら協力願います!』

>風花に携帯を渡される。

鳴上「了解しました。今すぐ向かいます」

美鶴『鳴上か。その場にラビリスとメティスもいるな?』

鳴上「はい。それから藤堂さんと、綾時はいますがどうしましょうか」

美鶴『非戦闘員を残して行く方が危険だ。一度こちらに来て、それから目の届く範囲で安全な場所にいてもらおう』

鳴上「わかりました。それじゃあ準備して向かいます」

美鶴『なるべく急げ。これは……危険だ』

鳴上「メティス、ラビリスはそのままいけるな?」

ラビリス「武器だけ握ったらすぐや!」

メティス「私もすぐ動ける!」


762 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:05:09.84nZhfzp0/o (3/15)

鳴上「急いでポロニアンモールに向かってくれ。お前達ならすぐ合流出来るだろう。山岸さん」

風花「はい。座標補足します!」

鳴上「お願いします。藤堂さんは……」

藤堂「一応、装備は持ってるよ」

鳴上「では、すみませんが協力をお願いします。綾時と……刹那さんは、俺達についてきて下さい。ここにいるのも危険かもしれません」

綾時「わかった。黙ってついていこう」

刹那「状況が飲み込めないけど、とりあえずは従うよ」

鳴上「それで構いません。それでは作戦を開始します。それぞれ行動に移ってください」

>巨大な悪魔……。

>ポロニアンモールの人々は避難できただろうか。

>急がなくてはならない。


763 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:06:54.80nZhfzp0/o (4/15)

風花『……もう、私のサポートが無くてもわかると思います』

>その通りだった。

>ポロニアンモールに近付くと、その存在は否が応にも目に入ってきた。

綾時「巨大な、ってさ」

藤堂「本当にでかいんだから困ったもんだな」

>氷で出来た怪物がポロニアンモールの真ん中にでんと立っている。

美鶴「来たか、鳴上!」

鳴上「すみません、遅くなりました。あれは……」

美鶴「さぁな、一切わからない。突然現れて、周囲に冷気と氷をばら撒き始めたんだ」

鳴上「ってことは」

美鶴「ああ……一般人に、悪魔の存在が知られた。どうやらアレは私達以外にもしっかり認識できるようだ」

>美鶴は悔しそうに言う。

鳴上「仕方ありません、とにかく今はあいつをどうにかしなくちゃ」

美鶴「そうだな……。だが、私達だけでは火力が足りない。見ろ」

>指さした先には……ラビリスだろうか。

>悪魔に纏わりついているが、ダメージは殆ど無いようだ。



764 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:08:02.43nZhfzp0/o (5/15)

美鶴「ところで、そこの男性は?」

>美鶴に言われて、刹那の事を説明していなかった事を思い出す。

鳴上「あ、ええと……今回テレビに落とされた人のようなんですが、自力でテレビから脱出したみたいで。それで……あ、刹那さん!」

>美鶴にどう説明したか迷っている間に、刹那がどんどん歩いて行く。

美鶴「危険です!近付いてはいけない!」

>刹那は警告を無視して悪魔に近寄っていく。

鳴上「刹那さん!くそっ、藤堂さん、桐条さん!」

藤堂「ああ。守らないとな」

美鶴「天田!そちらに一般人が行く!止めろ!」

>三人が追い掛けて走るのと、刹那が走り出すのとは同時だった。

天田「えっ!?うわっ、ちょっと!どう見ても危険でしょう!」

>止めようとした天田をすり抜けてさらに近付く。

>刹那は誰よりも速く悪魔の足元にたどり着くと、立ち止まって息を吸った。

刹那「久しぶりだなぁ!アイスランドのヘルさんよぉ!」



765 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:11:04.63nZhfzp0/o (6/15)

>とんでもない大声で叫ぶ。

>悪魔は初めて刹那に気付いたようで、足元を見た。

ヘル『……デビルチルドレン?』

刹那「なーんか変だな、お前。本当にヘルか?俺の仲魔みーんな持って行ってくれたあのヘルなのか?」

ヘル『コ……ロス!』

>音と共に地面が揺れ、刹那が立っていた位置に巨大な氷柱が聳え立つ。

鳴上「刹那さん!」

>刹那の姿は消えている。

美鶴「だから危険だと言ったのに……」

>美鶴が絶望的な表情で呟く。

>だが、俺が見ていたのは恐らく美鶴が見ている場所と違う場所だった。

鳴上「あの氷柱、何mくらいありますかね」

藤堂「……多分、7・8mくらいじゃないかな」

鳴上「人間って、何の補助も無しにそんなに垂直跳び出来ましたっけ」

藤堂「俺はそんなヤツを人間とは呼ばん」

>氷柱の上に、刹那が立っている。

>丁度ヘルと呼ばれた悪魔の顔と同じくらいの高さだ。


766 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:12:04.96nZhfzp0/o (7/15)

刹那「あの時のヘルじゃないな。だからって、俺がお前にムカついてるのは何も変わらないけどな」

ヘル『コロス……コロス……』

刹那「いいぜ、やれるもんならな」

>刹那は何をするつもりなのか、右腕をヘルに向けて構えた。

刹那「俺を殺してみろ!」

ヘル『コロォス!!!』

刹那「コール!!」

>刹那の右手から強烈な光が放たれる。

>そこから何か大型の物体がヘルに向かって飛び出し、その勢いのまま激突した。

ヘル『グォオ!?』

「いってぇ!」

>右手から放たれた物体が言葉を話す。

>あの姿は見たことがある。

鳴上「……ケルベロス?」

ケルベロス「おいコラ刹那!何てことすんだ!」

刹那「よう、久しぶりだなクール」

>刹那はケルベロスと親しげに会話している。

>携帯に入っている悪魔召喚プログラムの事を思い出す。

>刹那はペルソナによって悪魔と戦っていたのではない。

>悪魔を従える事で、悪魔を倒していたのだ。


767 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:12:31.60nZhfzp0/o (8/15)

クール「ったく……久しぶりだってのに、とんでもない呼び出し方だな。って、何だ?こいつは……ヘルか」

刹那「倒したはずなんだけどな。まぁいろいろあってまた会ったんだよ」

クール「それで?どうするんだ?」

刹那「俺とお前がやってきた事ってなんだ?」

クール「わかった。倒せばいいんだな」

>ケルベロスの口から炎が漏れる。

刹那「そういう事」

クール「マハラギ!」

>炎がヘルを取り囲む。

>氷で出来たその体がゆっくりと融解する。

刹那「何か火力上がってないか?」

クール「お前が呼ばないから、暇で暇でずっと特訓だったからな」

刹那「なんだよそれ」

ヘル『トける……体が……』

刹那「お、ちょっと意識戻ったか?」

ヘル『貴様は……また貴様に……』

刹那「もう戻ってくんなよ。じゃあな」

>ヘルの体は全て水に変わる。

>後には完全に置いていかれた俺達だけが残った。


768 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:13:13.48nZhfzp0/o (9/15)

美鶴「彼は……何者だ?」

鳴上「さっぱりですよ」

天田「あっつ!ちょっと、加減してくださいよ。近くに僕いるんですから」

刹那「悪い悪い。ところで君、誰だっけ?」

風花『桐条先輩、これから一度寮に来てもらえませんか?いろいろと話しておかなければならないことがあると思うんですが……』

美鶴「もとよりそのつもりだったが、これは是が非でも行かなくてはならないだろうな。今後の事も含めて、話す事が多すぎる」

>……。

鳴上「デビルチルドレン、ですか」

刹那「悪魔と人間の混血をそう言うらしい。俺は特に、当時の大魔王が親父だから」

鳴上「それであの強さと……」

刹那「いろいろあってかなり訓練もしたしな。この街に来た時も、悪魔を根こそぎ倒したりした」

鳴上「ああ、刹那さんがやったんですか」

刹那「なんだ、まずかったか?」

鳴上「いえ、そういうわけでは」

天田「で、このケルベロスが」

クール「クールだ。こいつ……刹那とはパートナーとして結構な付き合いになるな」


769 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:13:40.38nZhfzp0/o (10/15)

刹那「で、俺達が関わった事件だったよな」

風花「はい。データに無い事件みたいなので、良ければもっと詳しい情報を」

刹那「データねぇ。多分無いんじゃないか?」

風花「なぜですか?」

刹那「俺が一回世界作りなおしたからな」

>……?

藤堂「若者の会話についていけない」

刹那「難しく考えなくていいんだけどな。要するに、それを出来る装置があって、俺がそれを使った。それだけの話だ」

風花「……並行世界」

刹那「そうとも言うな。似てるけど全く別物の世界だ。そこで、新しい世界にゴーサインを出した。だから、俺の事件はどこにも記録が無い」

綾時「リセットボタンか……何か、凄い事になってきたね」

美鶴「だとすると、リプレイはこの世界ができてからでは無く、別の可能性世界での事件も再現する事が出来るという事か」

刹那「よくわかんねえけどそうなるんじゃないか?」

鳴上「ところで、どうやってテレビから出てきたんですか?確か、落とされた人はテレビの世界を構築するパーツになって……」

刹那「ああ、それは多分合ってる。俺も最初は意識しか無かった。けど知り合いの深淵の魔王がな……」

鳴上「し、深淵の魔王」

刹那「そいつが、こんな世界は気に入らないって言ってさ。俺に出口を教えてくれたんだよ。それで出てきたらここだったと」

美鶴「……頭が痛くなってきた」

>つまり……?

>事件の黒幕によって創りだされた世界で、作られたキャラクターが自由意志を持って世界を崩壊させた……?

鳴上「そんな事が可能なのか……」


770 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:14:35.37nZhfzp0/o (11/15)

刹那「まぁ、俺って言ってみればこの世界の親みたいな物だし。宗教によっては神様だからなぁ。何ができてもおかしくはないっつーか」

>開いた口が塞がらないとはこの事だろうか。

>人間、理解を超えた存在に出逢うとただただ呆れる他無いらしい。

鳴上「なら、犯人とかわからないんですか?」

刹那「んー……そりゃ無理だな。神様役ってだけで実際神様じゃないし。全能じゃないんだよ」

>結局、手掛かりは無しか。

ラビリス「それより、これまずいん違うん?」

美鶴「ああ、まずい事になったな」

風花「一般の人が悪魔を目撃してしまいましたしね」

美鶴「これから公安側と話をする必要がありそうだな。気のせいで済ませるレベルを大きく超えている」

天田「僕達、めちゃくちゃ見られちゃいましたけど?」

美鶴「個人レベルなら他人の空似で押し通せるかもしれないが、悪魔自体は隠せないだろう。となると、私や君達の処遇も変わるかもしれない。覚悟しておいてくれ」

>公安か。

>話には聞いていたが、ようやく実感が伴ってきた。

>自分がどんな組織に与しているのか……。

>もしかするとここでの会話がこの国の明日を変えるかもしれない事を、今はっきりと自覚した。

綾時「そもそも、今まではここまで大規模に影響無かったよね。どうしてかな?」

メティス「影時間の発生、悪魔の発生……それらが私達のような、特殊な存在にしか感知出来なかったからだと思います」



771 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:15:01.56nZhfzp0/o (12/15)

鳴上「それを抜きにして考えても、今回はイレギュラーが多すぎるように思うな。もしかすると、事件が形を変えてきているのかもしれない」

天田「その可能性はありますね。新月の日に即テレビに落とされた事もそうですし、どんどん状況が悪化してきている気が……」

美鶴「とにかく、私は一度帰らなくてはならない。何日かかるかわからないが、その間甲斐さんはここで暮らしていてもらえますか」

刹那「それはいいけど、こっちからも頼んでいいか?」

美鶴「あまり沢山は人員を割けませんが、何でしょう?」

刹那「ああ。人を探して欲しい。俺の……友達なんだ。名前は要未来。俺と同じ歳の女で、多分これから目立ってくると思う」

美鶴「目立ってくる……ですか。よくわかりませんが、手配しておきます。それでは、空いている部屋を使って頂いて構いませんので」

刹那「わかった。よろしく頼むよみんな」

>悪魔と人の混血児。

>戦う事には慣れてきた俺達の中でも、圧倒的実力を誇る刹那が寮で暮らす事になった。

>後でちゃんと挨拶でもしに行こう。

>……。


772 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:18:26.17nZhfzp0/o (13/15)

刹那「それで来てくれたのか。鳴上は律儀なヤツだな」

鳴上「そうですかね。一応、これから何日か一緒に暮らすわけですし」

刹那「ああ。よろしく頼むな。ところで……」

>刹那はちらりとクールの方を見る。

クール「お前から同族の匂いがするんだが、どういう事だ?」

鳴上「同族?……ああ、確かにそうかもしれません。これを」

>刹那に悪魔召喚プログラムを見せる。

刹那「ケルベロス……え、これで悪魔召喚出来るのか?」

鳴上「はぁ、まぁ」

刹那「時代は進歩したもんだね……俺らの時はこう、ノートパソコンみたいなのが必要だったのに」

鳴上「え、でも今は違いますよね?」

刹那「まぁ、体自体が変わったしな。空も飛べるんだぜ?」

鳴上「それは凄いですね……」

クール「ちょっとこのケルベロス、呼び出してもらってもいいか?」

鳴上「え?構いませんけど」

>悪魔召喚プログラムを操作し、ケルベロスを召喚する。

ケルベロス「どうした主」

鳴上「クールさんがお前に会ってみたいって言うんだ」


773 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:22:54.18nZhfzp0/o (14/15)

ケルベロス「クール?ああ……そこのケルベロスか」

クール「そうだ。……お前、名前は?」

ケルベロス「……かつては、パスカルと呼ばれていたよ」

クール「そうか。俺はクール。お前、純粋なケルベロスじゃないな?」

パスカル「ああ。元々は普通の犬だった。かつて仕えていた主の元、悪魔と合体し力を得て……この姿に」

クール「妙な匂いだったのはそのせいか。まぁ、同じケルベロスとしてよろしく頼むよ」

鳴上「そうか、だから以前の姿がハスキー犬だったのか」

刹那「なんだ、知らなかったのか?」

鳴上「ええ……そう考えたら俺、パスカルの事全然知らないですね」

刹那「駄目だぞ、それは」

鳴上「え?」

刹那「悪魔だって生き物だからな。一緒に戦う相手の事は良く知っておいた方がいい。人間だって一緒だろ?」

鳴上「それは……そうですね」

刹那「俺とこいつはそこまで仲良く無いけど、お前とそいつは仲良くしろよ。そうじゃなきゃ満足に戦えない」

クール「お前と仲良くしてもしょうがないだろ」

刹那「うるせえな、今かっこよくキメてんだろが」

>喧嘩する二人?は、十分仲良さそうに見える。

>俺はパスカルをちらりと眺めた。

>パスカルは、眠たそうにあくびを一つした。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.15 悪魔 甲斐刹那』を手に入れた!


774 ◆e8lME0lo0A2012/08/29(水) 00:23:45.61nZhfzp0/o (15/15)

ケルベロス同盟結成。

では、また明日。


775VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2012/08/29(水) 00:31:48.07vLjIwF0Eo (1/1)


やはり真Ⅰのケルベロスと言えばパスカルだな


776VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/29(水) 00:33:20.465LbjFrxio (1/1)


コロマルがハブられて泣いてる


777VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2012/08/29(水) 00:47:59.04vRThc6tco (1/1)

未来やナガヒサ、特にタカジョーゼット出てきてくだしゃあ!
>>1ちゃん乙なのだよ!


778 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:22:22.11xzx/HIRRo (1/14)

>その夜。

鳴上「……雪が雨に変わったか」

>そろそろ日付が変わる。

>が、マヨナカテレビはチェックする必要が無い。

>刹那は既に出てきているからだ。

>頭ではそう思っていながらも、何故かそわそわと落ち着かない。

鳴上「一応、な」

>ラウンジに行ってみる事にした。

天田「あ、先輩」

鳴上「天田もか」

天田「ええ、まぁ一応……」

鳴上「メティスとラビリスは?」

天田「いつものパトロールですよ。風花さんはここの所無理してたんで寝てます」

鳴上「そうか。じゃあ俺達だけでもチェックしておくか」

天田「そうですね。……そろそろですよ」

>時計の針が12時を指す。

>……何も映らない。

鳴上「やぱり、今回は刹那さんだったのかな」

天田「ええ。どうやらその……あれ」


779 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:22:58.70xzx/HIRRo (2/14)

>画面にノイズが走る。

>チューニングを合わせるような音がして、黄色い背景に一人の女性が映った。

天田「……映っちゃいましたね」

鳴上「……だな」

>今度の満月は刹那だと思っていたが、どうやら違ったらしい。

>今の女性、見覚えは無いが……

鳴上「何か、知ってる気がしないか?」

天田「見覚えは全く無いんですけどね。何でしょう、この既視感というか」

鳴上「誰かに似てるのかな。そんな感じだ」

天田「とにかく、また助けに行く事になりそうですね」

鳴上「ああ。次の雨まで様子見か」

天田「せっかく今回はテレビの中行かずに済んだのに。あの中、疲れません?」

鳴上「もう慣れたよ」

天田「流石、キャリアが違う。……先輩、昼の事なんですけど」

鳴上「ああ」

天田「どうなるんでしょうね、僕達。というか……世界」

鳴上「さぁな……桐条さんに任せるしかないだろ」

天田「僕達も公安所属ーとかになるんでしょうか。だとしたら公務員?うわ、期せずして就職決まっちゃった」

鳴上「あー、そうなったら困るな」


780 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:23:56.67xzx/HIRRo (3/14)

天田「何でです?」

鳴上「今一生懸命進路考えてたのに。無駄になるだろ」

天田「いいじゃないですか、公務員。このご時世ありがたいですよ」

鳴上「でも、他にやりたい事見つかったらどうする?」

天田「我儘言ってられないでしょう。僕達がやらないと」

鳴上「それはそうだけど。……この事件を解決したら、そんな心配もなくなるかもな」

天田「……ですね。がんばりますか」

鳴上「よし、今日はもう寝よう。おやすみ」

天田「おやすみなさい、先輩」

>天田は少し不安がっていたようだ。

>二人で決意を新たにした……。

>『No.05 法王 天田乾』のランクが5になった。


781 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:24:37.57xzx/HIRRo (4/14)



【6/24 晴れ】


陽介「で、どうするよこれから」

千枝「ニュース見たでしょ?とりあえず鳴上君に連絡してさ」

完二「つってもよぉ。センパイ、アレがマジなら今相当大変な事になってんじゃねえか?」

りせ「でもでも!心配だよ、やっぱり」

直斗「桐条さんにも連絡がつきません。恐らくは今頃忙殺されているんでしょうが」

雪子「鳴上君もそうだけど、私達もこれからどうするのか考えないとまずいよ、これ」

クマ「クマ的にはー、センセーに会いに行きたいなーって」

陽介「だーから、それがまずいんじゃねえかって話をしてたんだろうが!」

>……何故、自分はここにいるのだろうか。

>ライドウは隣で大学芋をひたすら食べている。

>結局、僕達が単独で悪魔と戦っていた事がバレてしまい、彼らに巻き込まれる形で自称『特別捜査隊』に組み込まれる事になった。

陽介「んでライドウ!お前もいつまでも芋喰ってねーで何か意見くれよ!専門家だろ?」

ライドウ「む?手を出さない事が一番かと」

有里「全面的に同意」

完二「そんじゃ鳴上先輩は見殺しっスか」



782 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:26:09.16xzx/HIRRo (5/14)

有里「向こうにいるのが誰の仲間だと思ってるの?」

完二「……うス」

直斗「勿論それは信用しています。けれど、それにしても事態が異常すぎる。有里さんの話の通り、現実世界でペルソナを召喚出来るとしても、いつ大怪我や、最悪……」

りせ「ちょ、ちょっとやめてよ!」

>ポートアイランドで、ついに悪魔の事件が一般の人にも認識されたらしく、全国区でニュースになっている。

>それを見たりせと直斗は仕事を半ば放り出して戻ってきてしまった。

>召喚器を持たず、現実世界でペルソナを呼ぶ事も出来ない彼らは、そのまま悪魔たちに手を出そうとしている。

>既に何度も止めたが、容易に説得出来る物でもなかった。

雪子「有里君や葛葉君が私達の事心配してくれてるのはわかるの。けど、出来る事があるならやりたいって思っちゃ駄目なのかな?」

陽介「そーだそーだ。その大学芋だってお前が欲しがるから俺が頼んでメニュー入れてやったんだぞ」

>ライドウが大学芋に楊枝を刺して一旦置く。

ライドウ「出来る事などありません。何の力も無しに悪魔に立ち向かう事は当然無謀ですし、そもそも貴方方の様な普通の学生に関わって欲しくない」

千枝「な、なんでよ」

ライドウ「邪魔だからでむぐ」

>大学芋を一つ放り込んでやると、ライドウは口を閉じた。

有里「ごめん、口が悪いんだ。ただ、概ね僕も同じ気持ちだよ」

陽介「お前も邪魔だってのかよ」

有里「そうじゃなくて、危ないから。向こうは装備もしっかりしてるし、サポートも完璧。こっちは……言いたくないけど普通の学生達、要は一般人だ」



783 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:27:08.91xzx/HIRRo (6/14)

>皆黙ってしまった。

>事実だから、だ。

>それでも何か出来る事を、彼のために出来る事を。

>その気持ちは理解できる。

>……僕も大人になったものだ、と思う。

>昔は考える前に体が動いた。

>今は、それを止める側だ。

有里「……君達には将来がある。僕の言う事もわかって欲しい」

>彼らも頭ではわかっている。

>だからこそ強い反論が無いのだ。

>それがわかって何度も言っている僕は、酷いヤツだと思う。

ライドウ「そういう事なので、自分らはこれで抜けても?」

完二「あァ?待てよ」

ライドウ「待ってどうするのか。自分は特殊な訓練を受け、悪魔と戦う為にある。有里君も同様に、戦う力を持っている。貴方方は違う。それで話は済んでいるでしょう」

完二「……チッ」

>ライドウが立ち上がろうとすると、着ぐるみが震えた。

クマ「でも、クマとセンセーは仲間クマ。ヨースケだってチエチャンだって、みんなみんな仲間クマ。大事な仲間クマ」

ライドウ「……それが?」

クマ「クマ、クマ良くわからんけど!仲間って助け合うもんクマ!誰かがしんどーい事してる時に、見てるだけなのは仲間と違うクマ!」

ライドウ「ですから、何度も言っている」



784 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:28:06.68xzx/HIRRo (7/14)

陽介「……あんがとよ、クマ。そうだな。理屈じゃねーよ」

>陽介が静かに言う。

陽介「正直言ってビビってたんだよ、俺。有里やライドウの言う事も最もだと思う。だから、止めてくれるなら止めて欲しかった」

完二「情けねぇなぁ。……まぁ、俺もだけどよ。コトがどんどんでかくなってって、俺なんかにゃ立ち入るスキねーんじゃねえかってよ」

千枝「私らに出来る事って、本当は何も無いんじゃないかなって、思っちゃってたね」

直斗「事実、限りなくそうでしょう。大人なら、ここで諦めるべきなんでしょうけどね」

りせ「無理!だって、だって先輩の事大好きだもん!先輩が辛い目にあってるなら、ちょっとでも助けてあげたい。励ましてあげたい!」

雪子「ライドウ君、有里君。二人の考えはすごくよく分かる。ライドウ君が、ちっとも思ってないのに邪魔だなんて言ってる理由も。だけど、ごめんなさい」

陽介「俺ら、やめらんねーよ。あいつに助けられたから。今度は俺達が助けてやんねーと」

>どうやら火がついてしまったようだ。

ライドウ「……買い被りです。自分は別に他意があって発言しているわけではない」

有里「心配だったくせに」

>ライドウは口の端をへにょりと曲げて、帽子のつばを下げた。

有里「良くわかったよ。君達は僕らが何を言っても止められない。だけど、その前にやらせて欲しい事があるんだ」

直斗「やらせて欲しい事?」

有里「君達が動く前に、先んじて僕らが動く。……帰るよ、ポートアイランドに」

ライドウ「……自分も、いずれ行かねばならないと思っていましたから。その提案には賛成です」

陽介「でも、今向こうどうなってるかわかんねーんだろ?」

有里「僕からなら、恐らく最優先で連絡が取れると思う。美鶴……桐条先輩に連絡が付き次第、ここを出るよ。向こうの様子は僕が報告する。それでいいかな?」



785 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:28:41.77xzx/HIRRo (8/14)

完二「そりゃ……止める理由は、ねぇけどよ」

りせ「あの、有里さんって……その。いろいろあって、居辛くなったからこっちに来たんですよね?帰って大丈夫なんですか?」

有里「さぁね。彼らが何も変わっていなければきっと面倒な事になるだろうけど、皆も……悠も、そんなに弱く無い。だよね?」

千枝「そりゃ折り紙付き。うん、そっか。じゃあ、任せる!」

雪子「ライドウ君も、気を付けてね。危ない事はなるべくしないで」

ライドル「自分は戦うのが仕事なんですが。まぁ、覚えておきます」

>あの場所に帰ろう。

>僕の逃避行も終わりだ。

>悠は、皆は、どう変わっただろうか。

>あるいは、何も変わっていないかもしれない。

>それでも……。


786 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:29:30.92xzx/HIRRo (9/14)



【6/27 雨】


>……今日、湊が帰ってくるらしい。

>寮には美鶴を除いた特別課外活動部メンバーが全員揃っている。

>美鶴は流石に忙しすぎて、来れるとしても夜になると言っていた。

天田「刹那さんが出ていってすぐ、ですか」

鳴上「今までに無い出入りの激しさだな」

真田「鳴上、平気なのか?」

鳴上「ええ、もう大丈夫です。一緒に待ちますよ」

>そう、もう大丈夫だ。

>話では湊ともう一人、美鶴がかつて八十稲羽に派遣したという男が一緒に来るらしいのだが、そちらの詳細は不明だった。

順平「そろそろじゃね?迎え行った方がいいんかね?」

ゆかり「ああ、私ら行くから、待ってていいよ」

順平「ああ、はいはい。そんじゃ俺らはここで待つとしましょーかね」

>大丈夫だ、うん。

>女性陣の張り切り方を見ると、何かちょっと悔しいけれど。

>皆と雑談しながら、湊の到着を待った。

順平「なんか遅くねえ?まだかよ」

天田「寄り道してるんじゃないですか?まぁ、面子が面子ですし」

真田「だとしたら、ついて来るもう一人が可哀想だな」


787 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:29:59.18xzx/HIRRo (10/14)

メティス「それとも、悪魔に……?」

ラビリス「アイギスもおるし、悪魔の方が可哀想やと思うけどな」

鳴上「様子見てみましょうか」

順平「ああ、じゃあ玄関からちらっと覗いてみ」

>順平に促されて、玄関から外に出る。

>確かめるまでもなく、女性に囲まれたあの人影は湊だろう。

鳴上「湊!」

>湊もこっちに気付いたようだ。

>周囲のメンバーは、以前俺が湊に対してどういう感情を抱いていたかを告白している。

>恐らくはそれで気を遣ったのだろう。

>一歩下がって黙っている。

有里「や。久しぶり」

鳴上「そうだな」

有里「……平気?」

鳴上「ああ。全然な」

>黙って右手を差し出す。

鳴上「おかえり」

>湊は手を取って言った。

有里「ただいま」

>……。


788 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:30:46.31xzx/HIRRo (11/14)

ライドウ「ほう、君も悪魔を」

鳴上「ああ、といっても俺の場合このプログラムが凄いんだけど」

ライドウ「なるほど、簡略化し一般人にも使えるようにすると。実に素晴らしい発想だ」

順平「有里よぉ、お前何やってたの?」

有里「……悪魔退治?」

天田「え、召喚器持ってましたっけ?」

有里「いや、いろいろあってさ」

>湊とライドウを迎え、寮内は久しく賑わっていた。

風花「あ、皆さんそろそろ桐条先輩も来るそうですよ!」

ゆかり「重役出勤ねー。ま、今は仕方ないか」

天田「そういえば、今日はテレビどうします?」

順平「なに、また映んの?」

ゆかり「あれ?確か今回もう片付いたんじゃなかったっけ?」

真田「おかわりが入ったらしい。そうだな、せっかくだし残って見ていくか」

ライドウ「自分は抜けても良いでしょうか?少し気になる事がありますので」

ラビリス「構わんのと違う?連絡は付くんやろ?」

有里「僕が知ってる。じゃあ、ライドウも気を付けて」

>ライドウを除く全員でマヨナカテレビを見る事になった。

>そういえば、全員揃って見るのはいつ以来だろうか。

>前は……湊の時か。

>そこまで考えて一つ引っ掛かる事があるのに気付いた。


789 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:31:12.45xzx/HIRRo (12/14)

>誰かに似ていると思ったあのシルエット……。

>今、答えが目の前にある気がする。

鳴上「あ、湊だ」

有里「ん?」

鳴上「湊だよ。誰に似てたのかずっと気になってたんだ。湊に似てるんだよ、あの人」

天田「前に映った人ですか?あー……あー!確かに!そうですよ!」

有里「え、何?」

鳴上「とにかく、今夜もう一度見てみればわかる。どういう事なのか」

>今は、夜を待とう。

鳴上「もうすぐか」

美鶴「有里似の女性……?確かに中性的な顔立ちではあるが」

天田「いや、顔とかじゃなくて空気ですよ。雰囲気が似てるっていうか。まぁとにかく見てくださいよ」

>遅れてきた美鶴も合流し、全員がテレビを食い入るように見る。

>もうすぐ日付が変わる……。

>いつもの音といつものノイズと共に、番組が始まった。

鳴上「もう落とされてるのか……」

>番組は湊の回をなぞるように進行していく。

順平「有里、いるよな?」

有里「いるよ。落とされたのは僕じゃない」

天田「でも、そっくりですよ……って、あれ?」

>視点になっている誰かは、例のガラの悪い男の部屋に入っていく。


790 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:31:38.80xzx/HIRRo (13/14)

真田「このシーンは見覚えが無いな」

ラビリス「なんや、この二人やたら近ない?」

>確かに、隣同士に座っているようだ。

>二人の距離が近付いていく……。

『止まんねぇぞ』

ゆかり「!!」

美鶴「!!」

風花「!!」

アイギス「!!」

有里「!?」

メティス「こ、これは見てはいけないのでは?」

順平「ちょ、ちょい待って。有里ぉ!?」

有里「ぼ、僕じゃない!知らない!」

真田「シンジ……」

天田「荒垣さん……」

鳴上「と、とにかく、どうやら有里とは別人のようですが、この寮が舞台って事は関係者だと思いますよ」

有里「けど、他の部分はまるで僕と同じみたいだった。どうなってるんだろう」

鳴上「わからない……けど、誰か落とされてるのは確かみたいだ。皆も一度落ち着いて、とりあえず今日は休みましょう。それからどうするか考えればいい」

美鶴「そ、そうだな……私はまた帰らせてもらう。鳴上、あとは頼んだぞ」

ゆかり「あ、先輩、私も送ってってください……うー、想像しちゃったよ」

風花「アリ……かも」

アイギス「私は残ります。もし救出作戦を行うなら是非」

鳴上「明日以降になるから、とにかく今は寝よう。どうも奇妙な事になってるみたいだ」

>皆がそれぞれ休息を取る中、湊だけがずっとテレビを眺めていた。


791 ◆e8lME0lo0A2012/08/30(木) 00:33:32.24xzx/HIRRo (14/14)

アッチ系まつり。

最近P4Uが楽しくて遅刻しがちです。
では、また明日。


792VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2012/08/30(木) 00:51:04.14Ksqpg80Uo (1/1)

せっちゃんもう終わりかー
>>1ちゃん乙なのだよ!


793VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/30(木) 02:49:14.46f+N03TVIO (1/1)

ハム子!ハム子なのか!?
そして風花ェ…


794VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/30(木) 03:18:03.77oQI4gWhy0 (1/1)

ハムちゃん!


795VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/30(木) 07:18:08.38o9B1w9hIO (1/1)

ハム子おおおおおおおお


796VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/30(木) 20:41:17.35zNlyw0hpo (1/1)

ハム子ォォォォ


797VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2012/08/30(木) 22:22:46.46xA+Y1HlMo (1/1)

荒ハムううううう



798VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/30(木) 23:29:44.69J+8KJGcpo (1/1)

ハム天はショタじゃないからアウト


799 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:05:40.50HYBH4ftlo (1/11)



【6/28 曇り】


>……暑い。

>今日は気温が高いのだろうか。

>……いや、暑いのは外に出ている顔じゃない。

>布団の中だ。

鳴上「誰かいる」

>明らかにもう一人分の膨らみがある。

>布団を一気に剥ぐと、見覚えの無い女性が丸まっていた。

「うぇ?」

鳴上「……えっ」

「……?」

鳴上「あの……」

「あ。ごめん。忘れてた」

>女性は寝ぼけ眼で頭を掻きながらベッドを降りた。

「顔洗ってくるねー」

鳴上「ああ、うん」

>女性が部屋を出て、ようやく頭が動き出す。


800 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:06:10.25HYBH4ftlo (2/11)

鳴上「だっ!誰だ今の!」

>大急ぎで着替えて部屋を飛び出す。

>眠そうな天田が部屋から出てきた。

天田「何ですか、大声出して……」

鳴上「天田!女の人を見なかったか!」

天田「へ?さぁ……」

鳴上「そ、そうか。悪かったな、起こして」

天田「何かあったんですか?」

鳴上「何か、ちょっと落ち着いたら気のせいだった気もしてきた。寝ぼけてたのかもしれな」

「おっはよー。ごめんねー、部屋間違えちゃって」

>いた。

>夢でも気のせいでもなかった。

天田「あ、おはようございま……どなたですか?」

「……ていうか、君が誰?」

天田「いや、だから……」

有里「ああ、ごめんごめん。説明するよ。とりあえず、皆を起こしてもらっていいかな」

>上がってきた有里は全てを理解しているようだった。

>……。


801 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:06:54.48HYBH4ftlo (3/11)

「えーと、初めまして。有里美奈子って言います。特別課外活動部の現場リーダーやってました」

>女性はそう名乗った。

鳴上「有里……?親戚か?」

有里「違うよ。確か、甲斐刹那さんだっけ?彼の時にわかった事があったんでしょ」

鳴上「……?」

風花「そっか、平行世界……別の可能性世界の事件も再現するって」

有里「そう。つまり、彼女は僕のオルタナティブ……いや、代替っていうわけじゃないか。とにかく、僕がいない世界で僕と同じような立場にいた人さ」

美奈子「なんかそうらしいです。良くわかんないんだけど」

有里「昨夜、皆が寝た後にテレビの中に入って助けだしてきた。それで、僕とラウンジで寝てたはずなんだけど……」

美奈子「トイレ行った後、ついふらふらと。勝手知ったるってもんだからさー」

鳴上「まぁ、それはいいんですけど。体に不調とか無いんですか?」

美奈子「敬語、いらないよ。湊と同じでいいから。体は全然平気。それより聞きたいんだけど」

>美奈子は天田を指差して言う。

美奈子「彼は何方様?」

天田「天田乾です。こっちとメンバーが同じなら知ってるはずなんですけど」

美奈子「嘘!?嘘だ!あの可愛かった乾はどこ行ったの!?」

天田「いや、知りませんけど……」


802 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:08:04.10HYBH4ftlo (4/11)

美奈子「あー、けど面影無いでもないなぁ。んー……方向性変わったけど可愛いっちゃ可愛いからよし!」

天田「は、はぁ?」

真田「またとんでもないヤツが出てきたもんだな」

美奈子「あ、失礼な。真田先輩の恥ずかしい話もきっちり知ってるんですからね!」

真田「なっ何!?何だ、言ってみろ!」

美奈子「内緒ですー」

順平「……なんつーの?小悪魔系?」

鳴上「さぁ……なんなんでしょうか……」

美奈子「とりあえず、皆とまた会えて嬉しいです!皆は私の知ってる皆と違うけど、それでも、ね」

>なんだか湊とは随分違うが……

>とにかく別の可能性世界における“有里湊”、有里美奈子が合流した。

>寮で暮らす事になるだろうから、もう少し話をしてもいいかもしれない。


803 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:08:36.73HYBH4ftlo (5/11)

美奈子「お、鳴上君……だっけ。どしたの?」

鳴上「普通にテレビ見てただけだよ……まぁ、美奈子を待ってたんだけど」

美奈子「おおう、呼び捨て」

鳴上「あ、駄目だったか?湊と同じでいいって言うからつい」

美奈子「あ、いいんだよ?ちょっとびっくりしただけ」

鳴上「そうか。ああ、俺の事も呼び捨てで良いよ」

美奈子「下の名前……悠だっけ。かっこいー名前だね」

鳴上「そうかな」

美奈子「うん。そう思う」

>美奈子は机を挟んで反対側に座ると、こちらをじっと観察している。

鳴上「……何か、気恥ずかしいんだが」

美奈子「ん?」

鳴上「いや、そう見られると少しむずむずする」

美奈子「ああ、ごめんごめん。なんかさ、あんまり見なかったタイプだからつい」

鳴上「まぁ、課外活動部にはいなかったしな」

美奈子「……誰とも違うよね。強いて言えば湊に似てる、かも。ってことは私似?」


804 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:09:25.40HYBH4ftlo (6/11)

鳴上「そう見えるか?」

美奈子「いや、流石にそれは微妙。でもいい男だよ」

鳴上「あ、ありがとうございます」

美奈子「あはは、からかい甲斐があるね。ま、これからよろしく。……事件が終わるまでだけど」

鳴上「……まだ、可能性は無い訳じゃない。諦めるのは最後の瞬間まで諦めなかった奴の特権だよ」

美奈子「ん。でも、本当にどうしようも無かったら……」

鳴上「その時考えよう。とりあえず、よろしく」

>美奈子は笑顔で応えた。

>彼女も湊達と同じく、恐らくは作られたキャラクターだ。

>事件が終わるまで……か……。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.09 隠者 有里美奈子』を手に入れた!

>朝が早かったから少しのんびり出来たが、流石に時間も近付いて来た。

>遅刻する前に学校に行こう。

>……。


805 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:11:25.75HYBH4ftlo (7/11)

綾時「おはよう、悠。何か良い事でもあったのかな?」

鳴上「ん?どうしてそう思う?」

綾時「君は何とも無くて、あの二人がちょっと不機嫌だからさ」

メティス「別に、不機嫌じゃない」

ラビリス「そやで。不機嫌になる理由がないもんな」

メティス「別に鳴上君が誰と仲良さそうでも私には関係無いし」

ラビリス「そやで。ウチと悠は別に何も関係無いしな」

綾時「ね?」

>朝の会話を見られていたらしい。

>しかし、この二人が不機嫌になるタイミングが毎度わからない。

鳴上「実は、新しい仲間が出来てな」

綾時「当ててみようか。女の子だ」

鳴上「正解。ただ、また一曲あるヤツだぞ」

綾時「あの寮ってそんな人ばっかりだね」

鳴上「まぁな」

鳥海「はーい黙ってー。悪魔騒動に便乗してまたしょーもない噂が流れてるみたいじゃない。っていうか悪魔ってなに?食べられるの?ま、いいわ」

>鳥海先生もまた不機嫌だ。

>今日は厄日のような気がする。


806 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:12:40.17HYBH4ftlo (8/11)

鳥海「えーと、それじゃ転校生!紹介します!何人目よこれで!私のクラスどうなっちゃってんの?ほら、入ってきて」

>あ、これもまた嫌な予感が。

ライドウ「……自分は、葛葉ライドウと云います。田舎暮らしが長いので、こちらの学校での生活に馴染めるか不安ですが皆様よろしくお願い致します」

>何故だ……。

>何故ライドウまで……。

綾時「……女の子、じゃないみたいだけど」

鳴上「そうだな」

綾時「やっぱり?」

鳴上「関係者です」

綾時「ですよねー」

>とにかく、後で事情を聞かねばならないだろう。

鳴上「ライドウ」

ライドウ「どうかしましたか?」

鳴上「いや、昼飯一緒にどうだ?こいつも一緒だけど」

綾時「や」

ライドウ「……ご一緒しましょう」

>三人で屋上に出た。

>今日は曇っているからか、生徒も少ない。


807 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:13:07.26HYBH4ftlo (9/11)

ライドウ「さてと」

鳴上「お、弁当か」

ライドウ「ええ」

綾時「中身拝見……ってうわっ!」

>ライドウの弁当箱の中にはぎっしりとサツマイモが入っている。

>あのテカり方は……

鳴上「だ、大学芋か……」

ライドウ「好物なもので。いただきます」

鳴上「……はっ。いや、違う。弁当を見に来たわけじゃないんだった」

>あまりの光景にいろいろと忘れてしまう所だった。

鳴上「なぁ、ライドウ。お前、どうしてわざわざ学校に?」

ライドウ「簡単に言えば、桐条さんのお節介です」

鳴上「それはそうだろうな。そんな操作出来るのあの人くらいなもんだろ」

ライドウ「ええ。しばらくこちらに滞在して調査を、という話をした所……」

>ライドウは突然立ち上がりポーズを取る。

ライドウ「なるほど。ならば君も学校に通えるようにしておこう。鳴上達と同じクラスだ。何、この程度の手回しなら負担にもならないよ」


808 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:14:32.95HYBH4ftlo (10/11)

綾時「あ、今のモノマネ?」

ライドウ「どうですか?」

鳴上「その指はなんだ?」

ライドウ「ほら、あの……髪のくるっとした部分を指で弄ぶ癖があるでしょう」

>言われてみれば、そうだ。

鳴上「よく見てるな」

ライドウ「まぁ、探偵ですから」

鳴上「理由はわかったよ。でも何の調査をするんだ?」

ライドウ「……いろいろと、です。そのうち協力をお願いするやもしれませんが」

鳴上「それは構わないけど……一人で大丈夫なのか?」

ライドウ「ご心配なく。一人では無い」

>ライドウの視線の先には一匹の黒猫がいた。

綾時「……ま、まぁ、頑張ってよ」

ライドウ「ええ。昼からの授業を受けたら早速捜査に出かけますよ」

>なんというか、掴み所の無い男だ。

>俺の周りはこんなのばっかりか……。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.11 剛毅 葛葉ライドウ』を手に入れた!


809 ◆e8lME0lo0A2012/08/31(金) 00:18:56.77HYBH4ftlo (11/11)

転校生てんこ盛り。

では、また明日。


810VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/31(金) 00:55:47.48uNO3ASL9o (1/1)

主人公子じゃないだと……


811VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/31(金) 02:59:32.70VvbZ0Xgio (1/1)

ゴウトにゃん!


812VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2012/08/31(金) 15:16:00.99FePxiDaVo (1/1)

P3P4クロス+アトラスオールスターSSを二つ並行で読んでるから
だんだんこんがらがってきた…


813VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/31(金) 19:25:31.03j46Lrsnlo (1/1)

>>812
よかった俺だけじゃなかった


814VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/31(金) 20:26:22.02mKjLfOlIO (1/1)

だいぶ前からわかんなくなってる俺もいる


815VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/31(金) 22:29:48.76DFFHNY1/0 (1/1)

>>813-814
スレチかも知れないがもう一個ってどれ?


816VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/08/31(金) 23:47:20.26h5jCiVUD0 (1/1)
817 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:04:31.28gNs8OxFeo (1/12)

鳴上「今日は一人か……」

>綾時はさっさと帰ってしまったし、ライドウは捜査に出た。

>メティスとラビリスは二人で何か企んでいるようだ。

鳴上「何も無いといいけど」

>……悪魔騒動があってから、街を歩く人が減った。

>中には引っ越す人もいるようだ。

鳴上「……見た目が少しさみしいな」

>うら寂しい気持ちになりながら駅まで行くと、見知った人が歩いていた。

鳴上「あ、チドリさん」

チドリ「ああ、悠……こんにちは」

鳴上「あ、はい」

>チドリから挨拶されたのは、これが初めてじゃないだろうか。

>少し驚いた。

チドリ「帰り?」

鳴上「ええ。チドリさんは……」

チドリ「……」

鳴上「待ち合わせ、ですか」

>チドリは頷く。


818 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:05:07.56gNs8OxFeo (2/12)

鳴上「怖く無いんですか?ここって、その……近いじゃないですか」

チドリ「何が?」

鳴上「何って、知らないわけじゃないでしょう。悪魔がどうこうって話」

チドリ「ああ……別に怖くは無いわ」

鳴上「どうしてです?」

チドリ「だって……」

順平「おっすチドリン!と、鳴上か。お前ともなんだかんだ良く会うな」

鳴上「そうですね。で、チドリさん何て言いました?」

チドリ「別に」

順平「お前ら結構仲いいよな。気が合うのかね」

チドリ「そうでもないわ」

鳴上「……だ、そうです」

順平「へへ。こいつはいっつもそう言うんだよ。素直じゃねーんだから」

チドリ「……うるさい」

順平「はいはい。待たせちまって悪かったな」

鳴上「それじゃ、俺はこれで」

順平「あー、待った。ちょっと頼みあるんだけど聞いてくんね?」


819 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:06:00.65gNs8OxFeo (3/12)

鳴上「はい?」

順平「……チドリをさ。どっか、なるべく安全なとこに逃してやれねーかな」

鳴上「いや、それは俺じゃなんとも……」

順平「だからさ、お前から桐条先輩に頼んでみてもらえないか?」

鳴上「でも、それなら順平さんが頼んでもいいんじゃないですか?」

順平「……身内だから特別扱いしてくれって、言い難いんだよ。あの人、いろいろ背負っちゃってるしさ。お前も言い難いだろうけど」

鳴上「……わかりました、とりあえず伝えて」

チドリ「いらない」

>チドリの声が震えている。

順平「何言ってんだよ。危ないんだって」

チドリ「私、悪魔なんて怖くない」

順平「おい、何だよそれ。お前まさかまた死ぬのが怖くないとか……」

チドリ「違う!私には順平がいるから。だから、悪魔なんて怖くない」

順平「……俺、自信ねーよ。それこそ、有里とか鳴上の方がよっぽど……」

チドリ「それに、会えなくなる」

順平「チドリ……」

チドリ「順平がいない所で生きていくなんて、私には出来ない。私に意味をくれるのは、順平なんだから……」

>順平の胸に、チドリが顔を埋める。


820 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:06:47.78gNs8OxFeo (4/12)

チドリ「……わかってよ」

順平「……鳴上。悪いけど頼みごと変更で」

鳴上「なんなりと」

順平「今週末、買い物付き合ってくれよ。ちょっと買いたいモンあるんだわ」

鳴上「いいですよ。俺で良ければですが」

順平「サンキュ。ほれチドリ。離れろ離れろ」

チドリ「……ぐす」

順平「あーあー顔ぐちゃぐちゃだ」

鳴上「ハンカチ使います?」

順平「用意がいいね。ほれ、貸してくれるってよ」

チドリ「……うぅ」

順平「あー、その、なんだ。悪かったよ。俺だって……側にいたい。なんつって。恥ずいっつの」

鳴上「駄目ですよ順平さん。そういう時はごまかさずに言わないと」

順平「……いや!恥ずいって!無理無理!」

チドリ「私は言ったのに」

鳴上「ね?」

順平「あーもうくっそ!チドリに会えないなんて嫌だよ!なんならずっと一緒にいたいくらいな!これで満足か!」

鳴上「ええ。俺はすごく満足しました」



821 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:07:20.58gNs8OxFeo (5/12)

チドリ「……ふふふ」

順平「何これ公開処刑!?ま、まぁ、とにかくそういう事で。週末よろしくな」

鳴上「はい。あ、ハンカチその時にでも返してください。まだ必要そうなんで」

>チドリはまだ涙を流している。

>……さっきとは、意味が違うようだが。

順平「おう。んじゃまたな」

鳴上「はい。お邪魔しちゃって申し訳ないです。それじゃ」

チドリ「悠!」

>立ち去りかけた所でチドリに呼ばれて振り返る。

チドリ「……ありがと」

>ハンカチを振って礼を言われた。

鳴上「いえいえ。チドリさんもまた」

>二人は並んで歩いて行く。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが5になった。


822 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:09:06.20gNs8OxFeo (6/12)

鳴上「ただい……ん?」

>ラウンジには寮の女性陣が集まっている。

>その中心には……。

鳴上「美奈子か」

>帰って来た俺にも気付かずに何事か話し込んでいるようだ。

ラビリス「そ、そんで!?そんでどうなったん!?」

風花「ラビリス、声大きい……」

メティス「でも、はっきり聞きたい所……」

>……そっとしておこう。

美奈子「えー、どうなったって……あ、悠ーお帰りー」

>こっそりと部屋に戻ろうとしていた所を美奈子に気付かれた。

鳴上「ただいま。楽しそうだな」

美奈子「うん、まぁねー」

>笑顔の裏側に何か別のメッセージを感じる。

>これは……



823 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:09:44.90gNs8OxFeo (7/12)

鳴上「美奈子、良かったらちょっと歩かないか。話したい事もあるし」

美奈子「え?うーん、でもなー」

メティス「あ、えっと……私達なら、いいから……」

ラビリス「うん、行って来たらええやん。続きは今度な」

風花「私も用事済ませちゃおうかな」

美奈子「じゃあ付き合っちゃうよ。すぐ?」

鳴上「そうだな、荷物置いてくるから」

美奈子「それじゃ待ってるねー」

>……。


824 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:10:59.77gNs8OxFeo (8/12)

鳴上「で、これで良かったのか?」

>長鳴神社……。

>美奈子と二人で歩いてきた。

>今日はコロマルもいないようだ。

美奈子「うん、バッチリ。いやー助かりました。もー困っちゃって……」

鳴上「一応聞いてもいいか?何の話をしてたんだ?」

美奈子「ほら、私って別世界?から来てるでしょ。そっちでの恋愛事情を少々……」

鳴上「それで皆あんな目がギラついてたのか」

美奈子「他人の恋話は美味しいからねぇ」

鳴上「災難だったな」

美奈子「別にいいんだけどねー。ていうか悠のせいなんだよ」

鳴上「俺の?何で?」

美奈子「今朝ちょっと話したでしょ?」

鳴上「ああ、したな」

美奈子「それがラビリスとメティスの気に食わなかったみたいで。モテるね、悠」

鳴上「……?」


825 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:13:17.40gNs8OxFeo (9/12)

美奈子「……え?」

鳴上「いや、ちょっと良くわかんなくて」

美奈子「いやいや、冗談でしょ?」

鳴上「冗談じゃなく」

美奈子「……わお」

鳴上「何だ、変か?」

美奈子「変だね。すごく」

鳴上「そ、そうか……」

美奈子「鈍いっていうか初心?いや、鈍いんだろうね」

鳴上「リバーブローみたいに効いてくるな」

美奈子「あのね、多分あの二人もはっきりわかってないんだろうけど……間違いなく、悠の事を特別な人として見てるよ」

鳴上「まぁ、ある意味恩人とは言われたけど」

美奈子「そうじゃなくて……お節介かなぁ」

>美奈子は何やら悩んでいるようだ。

鳴上「恋愛とか、良くわからないんだよ。別に好かれたいと思っていろいろしてるわけじゃないし」

美奈子「あー、そうなんだろうね。それはわかる」

鳴上「ただ、こうすれば喜んでくれるかな、とかさ。励ましてあげたいな、とか。そうやって動いてるだけなんだが……」

美奈子「悠さ、鏡見たことある?」


826 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:13:49.41gNs8OxFeo (10/12)

鳴上「いや、勿論あるけど」

美奈子「自分のことかっこいーって思った事は?」

鳴上「そこまでナルシストじゃない」

美奈子「……あ、そう。これは大変だなぁ、あの二人も」

鳴上「そんなに変か……?」

美奈子「まぁ、かっこ良くなくてもだよ?それなりな見た目の男の子が、自分の為に心を砕いて頑張ってくれる……そんなの見ちゃったら、ねぇ?」

鳴上「そういう物なのか?」

美奈子「逆に考えてみなよ。悠が女の子にすっごく嬉しい言葉とか言われる所想像して?」

>……むむむ。

鳴上「確かに、結構……」

美奈子「でしょ。自分の立ち振舞がどう影響与えるか、しっかり考えた方がいいよ」

鳴上「そうだなぁ。ありがとな、美奈子」

美奈子「べっつに、お礼言われるような事は無いんだけどさ。えへへ……」

鳴上「湊もそうだったし、美奈子もモテるんだろ?」

美奈子「ん?あー、うん、なんていうか……どうかなぁ」

鳴上「はは、まぁ言い辛いか」


827 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:14:41.27gNs8OxFeo (11/12)

美奈子「はい、モテます!とはね。とにかくだ!悠はその辺考えて接してあげたほうがいいかもね。お互いにとって、さ」

鳴上「……どうしたものかな」

美奈子「そこまでは。ま、今までどおりでいいと思うよ。ただ不機嫌な時にちょっと気をつかってあげればいいだけだから」

鳴上「うん……ちょっと頑張ってみるよ」

美奈子「ん!頑張りたまえ!」

鳴上「良かったらまた話聞いてもらえるか?俺、何かヘマしそうで……」

美奈子「気にしなくていいと思うけど……気になるなら聞くよ。大した事言えないけどね」

鳴上「ああ。……さて、そろそろ帰るか。あの二人に捕まらないようにな」

美奈子「そーだねー。保護者まで一緒になって聞きたがるんだからもー」

>二人で笑いながら寮に帰った……。

>『No.09 隠者 有里美奈子』のランクが2になった。


828 ◆e8lME0lo0A2012/09/01(土) 00:17:55.99gNs8OxFeo (12/12)

多感なお年ごろ。

他スレは・・・出来たら・・・
いや、読んでるし面白いんですけど・・・向こうに迷惑かかると困るので・・・ね?

では、また明日。


829VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/01(土) 01:05:07.67MGzx8nc60 (1/1)

ハム子はできる女 乙


830VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/01(土) 06:21:04.43f+EVsHNoo (1/1)

ハム子はかわいいなぁ!


8318152012/09/01(土) 10:24:16.9934pzaM+t0 (1/1)

>>816
感謝、これから読んでみる

>>1
俺が質問したばかりに申し訳ない
以後無くします


832VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/09/01(土) 14:20:03.79YfynYaIM0 (1/1)

>>1
気が細かいところまで回らずすいません
以後自重します


833 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 01:22:41.66f/WCEhsHo (1/11)



【7/1 晴れ】


>今日は日曜日だ……。

>そういえば今日は順平と約束をしている。

>そろそろ行かなくては……。

順平「よう、来たな」

鳴上「おはようございます」

順平「あ、忘れない内に返しとくわ。ほれ」

>ハンカチを返してもらった。

鳴上「あ、どうも」

順平「一応洗濯してあるからな。さて、それでは鳴上君。今日の作戦を説明しよう!」

鳴上「買い物ですよね?」

順平「……まぁ、そうなんだけどネ。買う物ってのが問題でさー」

鳴上「何買うんですか?」

順平「ぷ、ぷれぜんと……をですね……」

鳴上「あー……」

>まぁ、順平の言い方からすれば誰に贈るかは予想できる。


834 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 01:23:34.26f/WCEhsHo (2/11)

鳴上「でも、それなら順平さんが選んだ方がいいんじゃ……」

順平「そうなんだろうけどさぁ。アイツの趣味って、その……ゴシックというか、アレじゃん?」

鳴上「普段はそんな服着てますね」

順平「俺にゃ無いセンスだから、悩んじゃって。その点鳴上なら……」

鳴上「お、俺にだって無いですよ!」

順平「いーや!お前ならいける!少なくとも無難なアイテムを選んでくれるはずだ!」

鳴上「そうですかねぇ……」

順平「まずカテゴリから悩んでんだよ。プレゼントって何買うのが正解なんだ?」

鳴上「そうですね……ええと……いや、待った!そういう事なら俺じゃないんじゃないですか?」

順平「他に誰がいるっつーんだよ」

鳴上「いるじゃないですか、最強の助っ人が……」

>あいつなら……。

有里「で」

鳴上「話した通りだ」

順平「出来ればお前には頼りたくなかったぜ……」

有里「なら帰ろうか」


835 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 01:24:06.56f/WCEhsHo (3/11)

順平「待った!今は藁にも縋りたい!頼む、助けてくれ!」

有里「チドリってストレガの彼女でしょ?彼女の趣味とか僕知らないんだけど」

順平「見た目通りだ」

有里「うーん……」

鳴上「悪いな、俺が力になれればよかったんだけど……俺もあんまり得意じゃなくて……」

有里「君達二人は……まぁ、二人共行動で示すタイプだからねぇ……」

順平「なんかちょっとバカにされてねえか?」

鳴上「わざわざ来てくれたんだから、ちょっとくらいは我慢しましょう」

有里「アクセサリー類が無難かな?彼女のタイプからしてブランドに喜ぶ感じじゃないし、普段着に合うアクセサリーを選んであげるのがいいかもね」

順平「おお……戦闘より頼もしく見えるぜ……」

有里「……ほんと、帰っていい?」

鳴上「アクセサリー……確か、ポロニアンモールにアクセサリーの店があったような」

有里「Be blue Vだね。久しぶりだなぁ」

順平「よし!行こう!すぐ行こう!」

>張り切る順平に押されるようにポロニアンモールに向かった。



836 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 01:24:52.05f/WCEhsHo (4/11)

>アクセサリーショップ、『B blue V』。

>順平と湊が真剣な顔でアクセサリーを選んでいる。

有里「これなんかは?ちょっと値段はするけどあんな感じの服だったら似合いそうだけど」

順平「あー、でもそれだと色がさ……」

>……アクセサリーは、付加効果以外見たことがなかったので何となく新鮮だ。

>SP+装備はどこだろうか。

順平「鳴上、ちょっとコレ見てくれよ」

鳴上「あ、はい。どれですか?」

順平「これとこっちで悩んでんだよな。鳴上はどっちだと思うよ」

有里「ちなみに僕のおすすめはイヤリングの方ね」

>赤い石を使ったイヤリングと、シルバーのブレスレット……。

>確かに、どちらもチドリには良く似合いそうだ。

鳴上「うーん……なんとも悩ましいですね」

順平「どっちも似合いそうなんだよなぁ」

鳴上「……このブレスレット、男性が着けてもおかしくないデザインですよね」


837 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 01:25:18.97f/WCEhsHo (5/11)

有里「そうだね、いいと思う」

鳴上「ならこれを二つ買って二人で着けるのはどうですか?」

有里「なるほど」

順平「おお……いや、でもそれなんか恥ずかしくねえか?」

鳴上「なんとなくですけど、チドリさん喜びそうだなって思ったんですけど……」

有里「悪くないと思うよ。どうする?」

順平「おそろいね……うーん……」

有里「後はお好きに」

鳴上「俺達は邪魔しないように出とこうか」

>唸っている順平を置いて店を出た。

>湊は少し眠そうにしている。

有里「あ、そうだ。悠にも言っとくよ」

鳴上「ん?なんだ?」

有里「八十稲羽の皆、すごく心配してたよ」

鳴上「ああ、そうか……言うの遅くないか?」

有里「君の様子を向こうに伝えるって約束で帰って来たから、向こうにはもう報告してるんだけどね」


838 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 01:25:53.59f/WCEhsHo (6/11)

鳴上「そういえば連絡してなかったな……悪い、助かった」

有里「ついでだからいいよ。……彼ら、割りと無茶するね」

鳴上「そうかな?」

有里「そうだよ。僕とライドウが悪魔退治してたら、危ないからやめとけって言われた」

鳴上「心配だったんだろうな」

有里「でも自分たちはやろうとするんだ。召喚器が無いからペルソナも出せないのにね」

鳴上「何!?止めてくれたんだろうな!」

有里「勿論。というか収まりが付きそうになかったから僕がこうして出向いたわけで。一番の原動力は君のためだったみたいだよ」

鳴上「俺の……?」

有里「君が戦ってるなら、自分たちだけ見てるだけっていうのは出来ない。それが彼らの言い分だった」

鳴上「そうか……そうか」

有里「……嬉しそうだね」

鳴上「そんな事ないぞ。だって危ないだろ」

有里「……そうだね」

>湊は小さく笑った。

鳴上「今度連絡しないとな……」

有里「あんまり心配かけちゃ駄目だよ」

鳴上「ああ。気を付けるよ」


839 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 01:26:23.21f/WCEhsHo (7/11)

順平「っしゃー決めた決めた。助かったぜ二人共」

有里「結局どっちにしたの?」

鳴上「あの大きさだと……」

順平「結局ペアで買っちまったよ……これどんな顔して渡しゃいいんだろうな……」

有里「いつも通りでいいよ。あ、渡した後に喜んでくれたら一回ニコってしてあげれば尚良し」

鳴上「な、慣れてるな……」

有里「まぁ、ね」

順平「いや、でもマジありがたかったぜ。俺じゃ多分照れて買えなかったしな」

有里「なんともまぁ」

鳴上「情けない……」

順平「んだとぉ!?先輩だぞ先輩!」

鳴上「ははは……」

>順平と湊と買い物をした。

>八十稲羽か……皆は元気そうだ。

>後で連絡しておこう。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが6になった。

>『No.10 運命 有里湊』のランクが3になった。



840 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 01:26:56.49f/WCEhsHo (8/11)

鳴上「ただいま」

有里「ただいまー」

美奈子「おっかえりー。あれ、二人一緒だったんだ」

鳴上「ああ、来てもらったんだ」

美奈子「へぇー、なになに?何やったの?」

有里「別に?」

美奈子「内緒ー?なんかずるいなぁ」

鳴上「まぁ、俺達の用事じゃなかったからな」

有里「言い難いよね」

美奈子「ぐぬぬ……」

>……?

>視線を感じる……。

メティス「じー……」

ラビリス「じー……」

美奈子「……ほら」

鳴上「ん?あ、ああ。そうか」


841 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 01:28:17.08f/WCEhsHo (9/11)

>美奈子に言われた事を思い出す。

鳴上「や、やぁ。今帰ったよ」

ラビリス「何よ、それ」

鳴上「……間違ったか」

メティス「何か妙な勘違いをしている気がする」

鳴上「む、なんだ……えーと……グッジョブ!」

メティス「それも違うと思う」

鳴上「……そうか。ならいつも通りで」

ラビリス「せやな。いや、その前に何で急にそんなおかしなったん?」

鳴上「ん?……いや、なんでもないぞ」

メティス「……怪しい」

鳴上「なんでもないって……」

ラビリス「ほんまー?」

鳴上「ああ。別に美奈子に何か言われたとか、そんな事はない」

メティス「何言われたの?」

鳴上「なんでもないって……」

>二人の追求をなんとか躱して部屋に戻った。

鳴上「皆にメールしてみるか……」


842 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 01:30:58.12f/WCEhsHo (10/11)

接し方がわからないよ・・・。

遅刻遅刻ー。
あ、他スレは直接リンク貼ったりだけやめてくれれば・・・正直自分もおすすめなので。
こう、もっとオブラートに包んで教えてあげてね

では、また明日。


843VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/02(日) 16:38:56.222B07CY8c0 (1/1)

乙!
なんだこのリア充達は



844 ◆e8lME0lo0A2012/09/02(日) 21:08:41.92f/WCEhsHo (11/11)

ぐぬぬ・・・本日も申し訳ないがお休みで・・・
なんで日曜が一番忙しいんだろう・・・

では、また明日。


845 ◆e8lME0lo0A2012/09/04(火) 02:09:01.47TURrvskBo (1/7)



【7/2 晴れ】


>携帯の着信ランプが点いている。

>……メールだ。

>陽介、千枝、雪子、完二、りせ、直斗……。

>皆元気にしているようだ。

鳴上「りせと直斗も帰って来たんだな……」

>次に遊びに行くのは夏休みになるか。

>それまでに事件が片付くと良いが……。

鳴上「さて、学校だ」

>皆と気兼ねなく遊ぶためにも、早く事件を解決しないとな。

>……教室にも空席がいくつか出てきた。

>この時期に転校するのは厳しいだろうが、それでもこの街を出たいという家族が多いらしい。

>まぁ、あんな事があっては仕方ない事ではあるが。


846 ◆e8lME0lo0A2012/09/04(火) 02:09:29.15TURrvskBo (2/7)

綾時「おはよう。今日は元気だね」

鳴上「ああ。朝からちょっと嬉しい事があってな」

綾時「へぇ。そりゃいいね。どうしたの?」

鳴上「久しぶりに友達とメールしたんだ。皆元気そうだったから」

綾時「そっか。良かったね」

鳴上「ああ。……?」

>綾時は何故か俺じゃなく、メティスに向かって言っている。

メティス「何で私?」

綾時「え?気になってたんでしょ?」

メティス「ちょ、ちょっと来て……」

>メティスに連れられて綾時はどこかへ行ってしまった。

ラビリス「友達って、八十稲羽のやろ?」

鳴上「そうだよ」

ラビリス「そっか、皆元気なんや。夏休み、遊びに行くん楽しみやな」

鳴上「ああ。だけど、もしかしたら事件のせいで潰れるかもしれないって思うとな……」

ラビリス「あ、そうやな……もしウチらがもっと忙しくなったら、そうなるかもしれへんのよな……うーん」



847 ◆e8lME0lo0A2012/09/04(火) 02:09:55.82TURrvskBo (3/7)

鳴上「夏休みまであと半月も無いし、どうなるのかな……」

ラビリス「今桐条さんが公安の上の方と話し合ってるらしいわ。もっと権限を広げて貰えたらええんやって」

鳴上「そうだな。もっと戦力があればいいんだろうけど」

ラビリス「まぁ、難しい話やな……」

鳴上「こればっかりは俺達じゃどうにもな……」

ラビリス「せやけど、やっぱり会いに行きたいよなぁ」

鳴上「そうだなぁ。なんとかならないもんかな……」

綾時「あたたた……ひどい目にあった」

メティス「変なこと言うから……」

鳴上「お帰り……」

ライドウ「おはようございます。……何事ですか?」

>朝から皆とわいわい騒いだ。

>何となく、八十稲羽の頃を思い出した……。


848 ◆e8lME0lo0A2012/09/04(火) 02:10:22.86TURrvskBo (4/7)

>そして、放課後。

>ここ最近はすごく和やかに過ごせている。

>しかし、だからこそなのだろうか。

>極々小さい、しかし見過ごせないような奇妙な感覚が心の中にある。

>そう思った時、何故か俺はあの人を探していた。

神条「今日は会えそうな気がしていたよ」

鳴上「俺も、会いたかったです」

>神父、神条久鷹。

>この男の不思議な言葉がまた聞きたい。

>思えば、いつも何らかのヒントをくれているような気がする。

>自分の中の何かと、折り合いを付ける為の。

神条「今日はどうした?また何かあったのかな?」

鳴上「いえ、話がしたかっただけです。会えてよかった」

神条「いつか言っただろう。何かの運命だよ……きっと」



849 ◆e8lME0lo0A2012/09/04(火) 02:10:49.47TURrvskBo (5/7)

鳴上「そうかもしれませんね。あの……」

>いつものように、抱えている問題を当ててはくれないのだろうか。

神条「私が何も言わない事が不安か?」

鳴上「あ……はい、少し。今までは怖いくらいに言い当てられてきましたから」

神条「わからないわけじゃない。君はきっと何かを悩んでいるのだろう。だが、それはどうだっていい事だ」

鳴上「どうだっていい、ですか」

神条「ああ、どうだっていい。君の悩みは本来君が解決すべき事だ」

鳴上「それはそうですけど……」

神条「……と、言ってしまっては私の仕事が無い。聞こうか。心に思いがあるのなら」

鳴上「あ、はい。その、最近は忙しいけど、その中でも平和というか……少し、気が抜けてるんです」

神条「ふん。なるほど。それで?」

鳴上「えっと、それで……楽しいはずなのに、平和なはずなのにどこか落ち着かないというか」

神条「……一種のワーカーホリックだな」

鳴上「え?」


850 ◆e8lME0lo0A2012/09/04(火) 02:11:15.56TURrvskBo (6/7)

神条「要するに仕事が好きすぎるんだよ。君は多分、誰かに必要とされたくて仕方ないんだ」

鳴上「必要とされたい……ですか」

神条「役目を任されている間は特別な一人でいられるから、その他大勢として見られる事も無い。君はそこに執着してしまっている」

>そうなのだろうか。

神条「埋もれる事を恐れている。自分が価値を失うんじゃないかと。だから、何も無い事が怖い」

>何も無ければ力を使う事もない。

>それは、埋もれるという事なのだろうか。

>だとしたら……少し、怖いかもしれない。

神条「君は誰かにとっての特別でいたい。人のために働いているようで、その実自分の為に動いているようなものだ」

>……言い返す言葉が無い。

鳴上「あなたと話していると、自分がすごく小さい存在に思えますよ」

神条「よくわかっているじゃないか。人間は皆小さい。それが寄り集まって大きな力になる……」

鳴上「つまり、どういう事ですか?」

神条「取るに足らない人間などいない、ということだ。教科書的だがね」

>神条は立ち上がる。

鳴上「そろそろ連絡先くらい教えてくれてもいいんじゃないですか?」

神条「必要無い。君が探せば私はここにいる。きっとそうなる。じゃあ、また」

>また胸中を言い当てられた。

>彼は何者なのだろうか。

>……寮に帰ろう。

>『No.16 塔 神条久鷹』のランクが3になった。


851 ◆e8lME0lo0A2012/09/04(火) 02:12:13.68TURrvskBo (7/7)

まったりしてるけど、意味もなく不安。そろそろまた何かが・・・

遅刻・・・遅刻・・・明日からは通常営業に戻るので・・・勘弁して下さい・・・。
では、また明日。


852蜷咲┌縺湧IPPER 2012/09/04(火) 03:43:04.42cftNttuL0 (1/1)

乙ー


リアルが忙しいなら遅刻も仕方ない



853VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)2012/09/04(火) 06:14:44.46WljR+NqWo (1/1)




854 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:03:09.30PE5KNNQPo (1/11)

メティス「おかえりなさい」

鳴上「メティスか……ただいま」

>そう応えると、メティスが途端にむっとした表情になる。

メティス「私じゃ不満なの?」

鳴上「ん?ああ……悪い。別にそんなつもりじゃなかったんだが」

メティス「……本当に?」

鳴上「本当さ。……ちょっと話さないか」

メティス「わ、私と!?」

鳴上「他に誰もいないだろ。それとも用事でも……」

メティス「え、いや、そうじゃなくて……うん、私で良ければ」

鳴上「そうか……。メティスは俺のことどう思う?」

メティス「……ど、どうって?」

鳴上「どういう風に見てるかなって」

メティス「うん……えっと……言わないと駄目?」

鳴上「言い難いのか?……あ、もしかして嫌われてるのか俺」

メティス「そうじゃなくて……鳴上君は、私にとって凄く、特別で……」



855 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:03:50.49PE5KNNQPo (2/11)

鳴上「それってどういう事なんだ?」

メティス「え?」

鳴上「特別っていうのは、仲間だからか?」

メティス「え……うん、それも、そうだけど」

鳴上「じゃあもし事件が終わって、俺達が戦わなくて良くなって……そうしたら、もう俺は特別じゃないのか?」

メティス「何言ってるの?何のこと?」

鳴上「俺は特別なペルソナ使いだと思う。一応はリーダーも任されてる。特別なのは、それだけか?」

メティス「私、そんな事言ってない……!」

鳴上「……悪い」

メティス「どうしたの?何かあったの?」

鳴上「いや……」

メティス「私は、鳴上君に助けてもらったよ。私も鳴上君を助けたい。辛いなら……」

>俺はメティスをいつ助けた?

>メティスを励ましたのは、俺が特別でいたかったから……なのか?

>じゃあ、助かったのは誰なんだ?

>メティスか?

>それとも……俺なのか?

鳴上「辛くは無いよ。ただ……わからなくなってきた。俺はどうしたいのか」


856 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:04:22.98PE5KNNQPo (3/11)

メティス「それは……」

鳴上「誰かに相談してどうにかなることじゃないんだ。それはわかってる。だけど……」

メティス「私、鳴上君が好き」

>一瞬、思考が止まった。

メティス「こんな気持ち初めてで、姉さんの記憶にあったどの気持ちとも違うからわからなくて……」

鳴上「メティス……?」

メティス「でも、だから私の気持ちだって自信持って言えるの。私は、鳴上君が好き。鳴上君と一緒にいたい。ずっと、いっしょに」

鳴上「待った、待てメティス。突然何だ」

メティス「突然じゃない。ずっと、私の中にあった気持ち……言わずにいようと思ったけど、無理」

鳴上「……けど、何で今なんだ?」

メティス「私にとっての鳴上君は、事件の事が無くたって特別だって伝えたくて。でも、それだけだから。それ以上は望まない」

>メティスは少し視線を下げた。

メティス「私は……消えるべきだから。本当はここにいない存在だから」

鳴上「……」

メティス「急にこんな事言っちゃってごめんなさい。あの……それじゃ」

>メティスは走って階段を上る。

鳴上「メティ……何で俺は……」

>追いかけるべきなのだろう。

>だけど、何故か体は動かなかった。

>ここで追いかける事も、自分の立場を守る為のような気がして……。


857 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:05:34.59PE5KNNQPo (4/11)

美奈子「……見ちゃった」

ゆかり「……だねー」

鳴上「っふ、二人共、いつの間にそんなとこに!?」

>一頻り自己嫌悪して顔を上げると、美奈子とゆかりが苦い顔でこっちを見ていた。

美奈子「大体俺のことどう思う?辺りからかな」

鳴上「めちゃくちゃ最初からじゃないか」

ゆかり「ちょっと遊びに来てみれば……何か大変ねー」

美奈子「ほんと、男ってどうしてこう……」

ゆかり「よし、今日は私に任せなさい!美奈子もいいよね?」

美奈子「あー、うん。びしっとお願いします隊長」

鳴上「あの、何を……」

ゆかり「鳴上君……表出よっか」

>笑顔が、怖かった。


858 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:06:09.05PE5KNNQPo (5/11)

ゆかり「バカじゃないの?てかバカじゃないの?」

鳴上「……はい」

ゆかり「あのねぇ……あの子がどんな気持ちで打ち明けたかとかさ……ちょっとは汲んであげなさいよ」

鳴上「それは、わかってるんですけど……」

ゆかり「じゃあ何?何か考える事でもあったわけ?」

鳴上「その、ええと……」

ゆかり「まぁ、考える事はあると思う。急にあんな事言われたらね。だけど、納得する前に動くって事も大事なのよ」

鳴上「納得する前にですか」

ゆかり「あの子、本意じゃなかったと思う。本当は、内緒にして……どうしても我慢できなくなった頃に言おう、それまではって思ってたんだと思う」

ゆかり「でも、何か悩んでる鳴上君を見て、この人のためならって、それで言ったんだよ。それはわかる?」

鳴上「……わかります」

ゆかり「そこまでさせといて、あんな顔させといて、フォローも無しってのはそりゃ……駄目でしょ」

>目を逸らして、自嘲気味に笑ったメティスの顔。

>何かが張り裂けそうな、あの表情。

>俺が……させた。

鳴上「俺、メティスに……」

ゆかり「何言うつもり?」


859 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:06:38.21PE5KNNQPo (6/11)

鳴上「ありがとうと、ごめんなさいを。それから……消えるなんて言わないでくれって、そう言いたいです」

ゆかり「……ん。上出来。ほんとは私に言われる前に気付いて欲しいんだけどね」

鳴上「わざわざすみません」

ゆかり「いいのいいの。鳴上君の為じゃないから」

鳴上「え?」

ゆかり「メティスの為。私ねぇ、見たく無いのよ。どうせ叶わないって我慢する所」

>ゆかりは笑って言う。

ゆかり「ほら、行ってこい色男!しっかりねー」

鳴上「はい。あの……ありがとうございました!」

>寮に戻って、メティスの部屋の前に立った。

鳴上「メティス、いるか?」

メティス『……鳴上君?』

鳴上「いるならいい。そのまま聞いてくれ」

メティス『う、うん』

鳴上「……ありがとう。好きだって言ってくれて、凄く嬉しかった」

メティス『……』

鳴上「それから、すぐに追いかけなくて悪かった。本当に自分の事だけ考えてしまってた。お前がどんな気持ちかも考えずに」

メティス『そんな……いい、別に……』


860 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:07:05.40PE5KNNQPo (7/11)

鳴上「あとな。消えるなんて、言わないでくれよ。前にも言ったけど、俺はお前も湊も、綾時だって諦めるつもりはない。皆で先に進む道があるはずだ」

メティス『……まだ、そこにいて』

>メティスがドアを開けた。

メティス「ありがとう。だから、好き」

鳴上「……けど、好きだって言われても俺は、今はそういうのは」

メティス「わかってる。ずっと見てたから。だけど、忘れないで。私が持ってた気持ち……」

鳴上「ああ、絶対忘れない」

メティス「……ふふ」

鳴上「どうした?」

メティス「嬉しかっただけ。……ありがと」

鳴上「……ああ」

>メティスの想いに応える事は出来ないが、それでも正面から向き合う事は出来る。

>……これも自分の為なのだろうか?

>違うと思う。いや、違うと思いたい。

美奈子「世話焼けるよねぇ」

ゆかり「まったく」

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のランクが3になった。

>『No.12 刑死者 メティス』のランクが6になった。


861 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:08:15.17PE5KNNQPo (8/11)



【7/4 晴れ】


>満月が空に大きく見える。

>今夜は悪魔が興奮し、暴れる夜……

>今日ばかりは、総出で悪魔退治に挑まなければならない。

パスカル「主、気をつけろよ」

鳴上「そっちもな。今日は多分楽だとは思うけど」

>寮の面々に加えて藤堂と刹那、そしてライドウが協力してくれている。

>これなら個々の負担はかなり減るだろう。

風花『それじゃ作戦開始します。皆さん十分に気を付けて戦ってください』

>風花から告げられると同時に悪魔が一体飛びかかってくる。

>俺は刀を構えると、撃ち落とすように振りぬいた。

>……。

鳴上「粗方片付いたか。パスカル」

パスカル「ああ、ほとんどな」

鳴上「……悪魔ってのは、どこから来てるんだろうな」

パスカル「ん?ああ、大体の悪魔は……」



862 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:08:43.74PE5KNNQPo (9/11)

ライドウ「魔界ですよ」

鳴上「ああ、ライドウ。お疲れ」

ライドウ「然程疲れはありません。これでもプロですから」

鳴上「頼もしいな。けどここらはほとんど終わったよ」

ライドウ「でしょうね。他の所もほとんど終わっています」

鳴上「何?やたら早いな。何かあったのかな」

ライドウ「甲斐さんが大暴れしているようで」

鳴上「ああ……そう……」

>ライドウがベンチに座る。

>俺も隣に座った。

ライドウ「……あの人は不思議な人ですね」

鳴上「そうだな……妙な人だ」

ライドウ「知っていますか?今日はあの人と一緒にもう一人デビルチルドレンが来ている事を」


863 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:09:42.54PE5KNNQPo (10/11)

鳴上「いや、初耳だ。あ、もしかして……」

ライドウ「甲斐さんが探していた、要未来という人物。どうやら彼女もまたデビルチルドレンだったようです。戦闘力は甲斐さんに及びませんが」

鳴上「悪魔と人間の間に生まれる……か。どんな気分なんだろうな」

ライドウ「悪魔は人と変わりません。見ていればわかるでしょう」

>ライドウはパスカルを指さして言った。

鳴上「そうだな。物も考えるし、感情だってある。それはわかってる」

ライドウ「少しいいですか」

鳴上「ん?」

ライドウ「甲斐さん達と話がしたいんです。良ければ仲介していただきたい」

鳴上「仲介って……別に普通に話しかければいいだろ」

ライドウ「ですが、自分は悪魔を狩る側。彼らは人間側とはいえ悪魔の因子が強い。……警戒されるやもしれないので」

鳴上「そういうもんなのか?」

ライドウ「取り越し苦労かもしれませんが、万全を期したいので」

鳴上「わかったよ。じゃあ行くか」

>風花に刹那達の居場所を聞いて、ライドウと一緒に行く事になった。


864 ◆e8lME0lo0A2012/09/05(水) 00:10:09.51PE5KNNQPo (11/11)

言っちゃった・・・。

では、また明日。


865VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/09/05(水) 00:10:40.80UnE1OUKN0 (1/1)




866VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)2012/09/05(水) 00:26:32.52QzGRJ/Ejo (1/1)





867VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2012/09/05(水) 00:45:40.43CldKgX/po (1/1)

楽しみにしてるよ、乙


868 ◆e8lME0lo0A2012/09/06(木) 00:01:21.80ITd5tUiio (1/9)

パスカル「クール!」

クール「ん?なんだ、お前らか」

刹那「よう、鳴上。そっちは……」

ライドウ「こんばんわ。自分は葛葉ライドウ……デビルサマナーです」

刹那「デビルサマナー……」

「悪魔退治の専門家が何の用なのかしら」

>頭上から声がする。

刹那「俺達だって似たようなもんだろ、未来」

未来「まぁそうなんだけど。よっと。君が鳴上君?初めまして、私は要未来。デビルチルドレンよ」

>大きな鳥?獣?のような悪魔から降りて地面に立つ。

>彼女が刹那の探していた人……。

>同じデビルチルドレンで、刹那の友達。

>しかし、なんだ。

鳴上「おでこ……」

未来「なっ……!刹那!この子失礼じゃない!?」

>思わずこぼした一言に刹那が腹を抱えて爆笑する。


869 ◆e8lME0lo0A2012/09/06(木) 00:02:13.85ITd5tUiio (2/9)

刹那「っし、っしゃーねーだろ!お前がいつまで経ってもそんな……髪型……ぶはっははははは!」

未来「どいつもこいつも……」

「落ち着きなさいよ未来」

未来「私は落ち着いてるっての!」

鳴上「そっちの悪魔は未来さんのパートナーなんですか?」

未来「え?ああ、そうそう。グリフォンのベール」

ベール「よろしくね」

鳴上「あ、よろしく……」

ライドウ「……何だか、気が抜けました」

刹那「ひっひひ……あー腹痛い。なんだよ、何か警戒してたのか?」

ライドウ「いえ、自分は貴方の同胞を何体も何十体も、何百体も屠ってきましたので。警戒されているのではと思っていた」

刹那「気にすんなよ。悪魔っつっても悪事働くヤツだけだろ。そいつらは俺達の敵だ。半分悪魔でも、半分は人間なんだから」

>刹那は事も無げに言った。

ライドウ「そうですか。無用な心配だったようで。さて……本題に入りましょう」

鳴上「本題?」

ライドウ「もしかするとこの地に住んでいる人間にはわからない事なのかもしれません。なので、この地に住むわけでなく、半分人ではない彼らと話す必要があった」

刹那「……マジな話か」

ライドウ「特にあなた……甲斐さんに聞きたい。この街は、何か異常な空気に包まれている」


870 ◆e8lME0lo0A2012/09/06(木) 00:03:02.62ITd5tUiio (3/9)

未来「それは私も思った……来た途端、何か気持ちの悪い空気だなって」

刹那「悪魔がいるせいじゃ無いな。もっとデカい何かがこの街を覆ってる感覚だ」

ライドウ「同様の違和感を自分も感じました。そして事件のあらましを聞くにつれ、ある確信が心中に生まれた」

鳴上「俺は何も感じないな……外から来てないからか?」

ライドウ「それもあるでしょうが……自分の得た確信についてお話します。自分が感じたのは、事件はまるで誰かを中心に動いているような気がする、そういう感覚です」

鳴上「誰か?」

ライドウ「貴方ですよ、鳴上悠。貴方が訪れて街は狂い始め、貴方のいる所で事件が起こる」

鳴上「なっ……」

刹那「おいおい、そりゃちょっと飛躍しすぎ……」

ライドウ「犯人だとは言いませんが、貴方が特別すぎる部品である事は疑いようがありません」

鳴上「けど、最初にマヨナカテレビが映ったのは俺が来る前だったはずだぞ」

ライドウ「なら言い方を変えましょうか。貴方は選ばれている。この事件の元凶、奇怪な力の源に……事件を回す歯車として」

鳴上「俺がここに来る事もそいつに決められてたってことか?」

ライドウ「恐らくは。しかしこれは悲観する事ではない。貴方は事件の謎を解く鍵です。良く考えて行動すれば、必ずどこか接点に行き当たる」

未来「……鳴上君の選択が、これから先を大きく変えるかもしれないって事?」

ライドウ「そういう事です」

鳴上「俺が……」



871 ◆e8lME0lo0A2012/09/06(木) 00:03:32.49ITd5tUiio (4/9)

ライドウ「自分は鳴上君の事を良く知りません。だが八十稲羽で、貴方の友達には出会った。彼らを見ていれば……貴方が信用に足る人物だとはわかる」

ライドウ「自分が伝えたかったのはそれだけです。それでは、自分は悪魔退治の続きに戻る事とします。後は……お任せします」

>ライドウは刹那に目配せするとこの場を立ち去った。

刹那「任せるったってな……」

未来「先輩としてビシっとキメなさいよ」

刹那「俺そういうの得意じゃないんだよ」

未来「知ってるけど」

刹那「……ったく。おい、鳴上」

鳴上「あ、は、はい」

>動転してしまっていた俺に刹那が呼びかける。

刹那「気にすんなとは言わねえよ。けど気にすんな」

鳴上「……は?」

未来「すごいバカみたい」

クール「バカなんだよ」

ベール「体は大きくなっても変わんないのね」

刹那「う、うっせえ!あー、その、なんだ。俺も昔、世界を左右する選択ってのを任された事がある」



872 ◆e8lME0lo0A2012/09/06(木) 00:04:17.89ITd5tUiio (5/9)

鳴上「そういえばそんな事言ってましたね……」

刹那「お前の今の状況も、多分それに近いと思う。あの時、俺は一人で……どうしようか、すげえ悩んだ。今でも後悔する事がある」

刹那「だけど、お前や、その周り……もっと言えば人間皆を見る度に、これで良かったなって思えるんだ。それでだ。お前の周りには誰がいる?」

>俺の周り……。

>八十稲羽の仲間たち。

>そして、こちらにも。

鳴上「仲間が……友達が、います」

刹那「そいつらは、お前が間違った方に進もうとしたらどうすると思う?お前が困ってる時、どうすると思う?」

>湊が言っていた。

>彼らのモチベーションは、“君の為”だと。

>陽介達は俺の為に心を砕いて考えてくれるだろう。

>桐条さん達は、陽介達とは違う観点から俺に助言をくれるだろう。

鳴上「きっと、助けてくれます。……仲間だから」

刹那「だろ。だったら心配すんな。お前は大丈夫だ。俺だって助けてやるから」

未来「……一人で悩んだって、私は?」

刹那「最後は俺一人だったろ?」

未来「なんか納得行かないわ……」

>信じられる仲間がいる。

>最近、一人で考えこむ事が多かったから不覚にも忘れていた。

>俺は一人じゃない。

ライドウ「……任せて良かった。自分ではああは言えないから」

>『No.11 剛毅 葛葉ライドウ』のランクが2になった。

>『No.15 悪魔 甲斐刹那』のランクが2になった。


873 ◆e8lME0lo0A2012/09/06(木) 00:04:45.55ITd5tUiio (6/9)

>一度、考えてみよう。

>八十稲羽で、俺はイザナミに選ばれてテレビに入る力を得た。

>しかし、事件の中心には自分から望んで近付いて行ったはずだ。

>以前の事件の中心は、選ばれた他の二人。

>蚊帳の外にいるはずだった俺は、ある切欠からそこに近付いて行った。

>だが、今回は違う。

>俺は最初から巻き込まれていた。

>それが犯人の思惑通りだとするなら、やはり事件が起こったきっかけは……俺自身?

>鍵は俺……と言われても、全く心当たりが無い。

>どこかで黒幕と接触しているのか?

>……わからない。

鳴上「ああ、どうなってるんだ……」

エリザベス「全くでございます」

パスカル「主、そう思いつめる……な……」

鳴上「……またか」


874 ◆e8lME0lo0A2012/09/06(木) 00:05:13.23ITd5tUiio (7/9)

エリザベス「今宵は良い月夜で。エリザベス、でございます」

鳴上「知ってるよ。久しぶりだな」

エリザベス「はい。と言いましても、私、常にあなたを監視しておりました」

パスカル「監視……敵か?」

鳴上「いや、敵じゃないよ」

エリザベス「どうやら少しずつ事件は進展している様子……私、いたく感動いたしました」

鳴上「ああ、ありがとうな」

エリザベス「……事件の全容は、全ての人に関わる大きな物、でございます」

鳴上「全ての人に……?」

エリザベス「全人類の集合的無意識、そこから生まれる人類の無意識下の願望……それが、普段と違う形になっているのです」

エリザベス「あなたはその中心……いわば、囚われた存在。人の望みを託され、その為に生きる事を余儀なくされる人……」

鳴上「どういうことなんだ」

エリザベス「私にも全てはわかりません。しかし、あなたはそうした存在。それだけはわかるのです」

鳴上「俺が全人類の望みを背負ってるって……大袈裟な話じゃ、無いんだよな」

エリザベス「自覚はないかもしれませんが、そういう状態にあるのです。もしかすれば、自覚する事で何か変化があればと、助言に参りました」

鳴上「そうか……わざわざありがとう」

エリザベス「私の望みは人のそれと別にありますので、そちらの為だと思っていただければ。あなたの成長は私の喜びでもあるのです」

鳴上「それなんだけど、エリザベスの望みって……」



875 ◆e8lME0lo0A2012/09/06(木) 00:05:43.68ITd5tUiio (8/9)

パスカル「……いないな」

鳴上「全くわからないな、あの人は……」

有里「や」

鳴上「ん?湊、いつから居たんだ?」

有里「いや、ついさっきから。誰と話してたの?」

鳴上「エリザベスって人なんだけど……」

有里「……へぇ」

鳴上「そういえば、アイギスとは知り合いだったみたいだし湊も知ってるんじゃないか?」

有里「一応ね。さて、それじゃ続きだ」

>湊は何故かエリザベスの話題を避けようとしているようだ。

>過去になにかあったのだろうか。

鳴上「なぁ、エリザベスと昔何か……」

有里「……仲が、良かったんだ。でもそれは僕の話だけど僕じゃない。僕は、僕の欠片でしかないから」

鳴上「それって、どういうことだ?」

有里「僕は作り物、まがい物って事。さ、まだ夜は長い。次に行こう」

>……湊も何か、心に想いがありそうだ。

>人類の望み……一体何のことだろうか。

>『No.14 節制 エリザベス』のランクが2になった。


876 ◆e8lME0lo0A2012/09/06(木) 00:07:04.07ITd5tUiio (9/9)

まぁ、見てる人は皆知ってたけどね。

では、また明日。


877VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/06(木) 01:47:13.03QkEKo9d00 (1/1)




878 ◆e8lME0lo0A2012/09/07(金) 00:00:57.12xRMc2pwWo (1/10)



【7/5 晴れ】


>学校から帰ると、何故か寮内が騒がしかった。

鳴上「なんだろうな」

メティス「この周波数は……知らない人の声。女の人みたい」

鳴上「客かな……」

>突然、玄関が開いて風花が出てきた。

風花「とにかく、お引取り願います!」

「ちょ、ちょっと!本当に記事にするとかじゃないから!信じてってば!」

鳴上「おっと。どうしたんですか?」

風花「あ、鳴上君。それにメティスも、おかえりなさい」

「あ、君達もここの生徒さん?良かったら、ちょっとお話聞きたいなーとか思ってるんだけど……」

風花「もう!困ります!」

鳴上「ええと……マスコミの方ですか?」

「まぁ、一応ね。といっても今はプライベートっていうか……事情があるみたいだから、記事にはしないって言ってるのにそこのお姉さんに追い出されそうなのよ」

風花「だから、何度も言ってますけど話す事なんて何も……」


879 ◆e8lME0lo0A2012/09/07(金) 00:02:02.62xRMc2pwWo (2/10)

「嘘ね」

風花「……ごめんなさい、鳴上君にまかせてもいい?」

鳴上「はぁ、まぁ……ええと、俺達普通の学生で、別に記事になるような事無いと思うんですけど」

「あなた達が、ポートアイランドで悪魔と戦ってるのを見たって人がたっくさんいるんだけどなー」

鳴上「人違いでは?一介の高校生にできる事じゃないですよ」

「……あなた、若いのにヤルわねぇ。大物政治家並に嘘吐くの上手いわ」

鳴上「ですから嘘とかじゃなく……」

「ペルソナ、使えるんでしょ?」

>……!?

風花「あのっ、今、何て……」

「もう隠しても仕方ないから言うけど、私もペルソナ使い。昔悪魔と戦ったりしてね」

風花「すみません!あの、私、確認しないで……」

「いや、こっちこそごめんなさいね。最初にマスコミ名乗っちゃったから緊張しちゃったのよね、多分。ちょっとは興味持ってもらえたかしら?」

風花「それなら、少しお話してもいいかもしれません。あの、お名前は……」

「私は天野舞耶。それじゃ、いろいろ聞いてもいいかしら」

>……。


880 ◆e8lME0lo0A2012/09/07(金) 00:02:31.68xRMc2pwWo (3/10)

舞耶「はぁーすごいわねー。本当に機械なんだ」

メティス「やっ、そんなところ……あんっ!」

鳴上「あんまりいじらないでやってください。精密機械なんで」

舞耶「あ、ごめんごめん。メティスちゃん、ごめんね?」

メティス「……いえ」

風花「確かにペルソナ使いですね……どうして気付かなかったんだろう」

舞耶「あ、私、ペルソナ入れたり切ったりできるのよ。テレビのスイッチみたいに」

鳴上「そんな事が?」

舞耶「逆に君達は出来ないのね。環境の違いかしら」

風花「隠す必要もありませんでしたから……それで、舞耶さんはどうしてここを?」

舞耶「メディア関係はやっぱり現場が一番早いのよ。悪魔が出たって話もすぐ届いたわ。ほとんどの人は興味持たなかったけど、私は違った」

鳴上「悪魔を知ってるんですもんね」

舞耶「そう、昔の事があったから、多分事実だろうって思ってた。で、取材にかこつけて現地に入って、そこで聞き込みして……」

風花「やっぱり、戦ってるの見られてたんだ……」

舞耶「そうでもないわよ。あなたやそこの彼は誰も見てなかった。ただ、空飛ぶ人がいたっていうのが凄く話に上がってね」

>ラビリスだ。

>認識制御できるならここで使うべきなんじゃないのか……?


881 ◆e8lME0lo0A2012/09/07(金) 00:03:04.15xRMc2pwWo (4/10)

舞耶「その子がここに住んでるってわかったから来てみたわけ。勿論、記事にするとかネタにするとかじゃなく、助けに来たつもりだったんだけどね」

風花「本当、すみません……」

舞耶「わかってもらえたらいいのいいの。それで、状況はどうなってるの?というか、あなた達は何で戦ってるわけ?」

鳴上「ええ、実は……」

>事件の事をひと通り説明した。

>……昨夜言われた事は省いて、だが。

舞耶「シャドウね……悪魔とはまた違うのよね?」

鳴上「ええ。今はシャドウの方は落ち着いてますが、悪魔が街に……昨夜も一晩がかりで戦ってました」

舞耶「お疲れ様。でもそっか……まだ事件の元凶はわかってないんだ」

鳴上「正直、何がしたいのかもさっぱりで。昔の話をもう一度やってどうするつもりなのか」

舞耶「確かにわからないわね。そこが不気味。私達の時みたいに、手掛かりになるような話も無しか……」

鳴上「正直、目前の敵を倒していくしか出来なくて、何も起こらない時は手詰まりに近い状態です」

舞耶「……よっしわかった!私しばらくここに留まる事にする!」

風花「えっ、でもお仕事は……」

舞耶「悪魔騒動の取材に来てるだけだから、ちゃんとした仕事よ?」


882 ◆e8lME0lo0A2012/09/07(金) 00:03:37.15xRMc2pwWo (5/10)

鳴上「でも、危険かもしれませんよ」

舞耶「子供が大人に言う事じゃないわねー。まぁ心配しなくても大丈夫。私、結構強いのよ」

風花「それじゃ、一応連絡先を……」

舞耶「はいはーい。改めてよろしくね、皆。さーて調べるぞー」

>やたらと元気のいい記者、天野舞耶と知り合いになった。

>事件について調べてくれるらしいが、大丈夫だろうか。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.18 月 天野舞耶』を手に入れた!

>そして、数時間後、その日の夜。

風花「鳴上君、ちょっと」

鳴上「はい?」

風花「夕方の……天野さんから連絡があって、取材行くけど付き合わないかって」


883 ◆e8lME0lo0A2012/09/07(金) 00:04:04.02xRMc2pwWo (6/10)

鳴上「何で俺なんですか?」

風花「あ、いや……私でもいいんだけど、私その……すごい失礼な初対面だったから。ちょっと、ね」

鳴上「あー……わかりました、それなら行ってきますよ」

風花「ほんと、ごめんなさい……。ポロニアンモールまで来て欲しいって言ってたから、天野さん、そこにいると思う」

鳴上「はい。それじゃちょっと行ってきます」

風花「はい、お願いします。何かあったらすぐ連絡してね」

>取材……一体どこを取材するのだろうか。

>とにかく、ポロニアンモールまで行ってみよう。

舞耶「あ、来た来た。おーい、こっちこっち」

鳴上「こんばんわ。流石に行動が早いですね」

舞耶「ネタは鮮度が命!ってね。えーと、鳴上君で良かったっけ」

鳴上「はい。それで、取材ってのはどこに?」

舞耶「うん。一応電話したらオッケーしてくれたからね。事件と言えばここでしょう」

>……交番?

鳴上「ええと……オッケーしてくれた、んですよね」

舞耶「普通は門前払いなんだけど、何故か二つ返事で許可してくれたのよねぇ。不思議だわ」


884 ◆e8lME0lo0A2012/09/07(金) 00:04:55.79xRMc2pwWo (7/10)

>確か、ここの交番は……。

>未だ息がかかっているのだろうか。

舞耶「さ、行ってみよー!」

鳴上「あ、舞耶さん……」

>舞耶はマイペースに突撃していく。

舞耶「すみませーん、お電話した者……なん……ですが……」

>舞耶が中にいる警官を見て固まる。

「ああ……電話受けた先輩が今警らしてる途中なんで、俺で良ければ話聞きますよ。……あの、何か?」

>見た目は普通の警官のように見える。

>知り合いだったのかと思ったが、それにしては相手側の反応が薄い。

舞耶「あ、ああ、そうですか。それじゃお伺いしたいんですけど……はっきり言ってしまうと、以前起きた悪魔事件についてです」

「この前のですか。……実は、俺が配属されたのは例の事件の後、増員にって理由なんで、良く知らないんです」

>警官は申し訳なさそうに頬を掻いた。

舞耶「なるほど、そうだったんですね。ではわかる事だけで良いので聞いても?」

「さっきも言った通り、詳しくは知りませんが……実際巨大な怪物が目撃されて、かなりの物的被害が出た事は間違いありません」



885 ◆e8lME0lo0A2012/09/07(金) 00:05:21.91xRMc2pwWo (8/10)

舞耶「物的被害……人的被害は?」

「それは確認されていません。話によればある団体が早期に解決したためだとか」

舞耶「そうですか……すみません、わざわざ」

「いえ……それだけでいいんですか?」

舞耶「え、ええ。ごめんなさいね、大したことじゃないの」

「はぁ……ええと、これからも何か御用がありましたらいつでもどうぞ」

舞耶「はい、ありがとうございました。あの、それじゃまた聞きたい事があったら来ますんで」

「はい。それでは」

鳴上「あーあのー……一応、名前くらい聞いておいた方がいいんじゃ……」

「あ、俺は……周防達哉って言います。先輩がいない時は大体俺がいるんで」

鳴上「わかりました。また何かあったらお世話になります」

達哉「いつでもどうぞ」

舞耶「行こう、鳴上君」

>二人で交番を出た……。

鳴上「あの、どうかしたんですか?」

舞耶「あ、ううん。なんでもないの。ちょっと知り合いに似てたものだから」


886 ◆e8lME0lo0A2012/09/07(金) 00:06:29.07xRMc2pwWo (9/10)

鳴上「知り合いに……?」

舞耶「けど、気のせいだった。うん、そうそう。ごめんね、大した事無いのに呼びだしちゃって」

鳴上「ああ、いえ……本当に気のせいだったんですか?」

舞耶「あら、疑うわねー。びっくりするくらいそっくりだったけど、知り合いだったらさ、向こうからも何か反応あるでしょ?」

鳴上「まぁ……そう、ですよね」

舞耶「うんうん。さて、それじゃ私帰るわ。……あのね、あの警官、あんまり関わらない方がいいかも」

鳴上「え?何でですか?」

舞耶「記者のカン!じゃあね!」

鳴上「あ!舞耶さん……行っちゃったか」

>あの警官、知り合いでは無いと言っていたが……

>やはり何かあるんじゃないだろうか。

>ペルソナ使いの記者、天野舞耶……

>新任の警官、周防達哉……

>また何かありそうな二人だ……。


887 ◆e8lME0lo0A2012/09/07(金) 00:09:42.62xRMc2pwWo (10/10)

ついに主人公勢揃い。

ここからコミュニティを伸ばす相手によって事件がどう進展するかが変わるマルチエンディングシステムに!
いや、冗談ですけど。

では、また明日。


888VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県)2012/09/07(金) 00:14:24.90fi34q90U0 (1/1)

乙乙


889VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/09/07(金) 07:06:38.62Z2tpsROq0 (1/1)

今まで周防出てなかったのか…


890VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)2012/09/07(金) 15:01:08.36CZFx0Akno (1/1)





891 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:01:00.94NiUXowcfo (1/13)



【7/9 曇り】


>いよいよ、街に人が少なくなってきた。

>悪魔はあれ以降目撃されていないが、俺達の手を逃れた悪魔が人を襲う事件は時たま発生してしまっている。

>今までは事故、あるいは原因不明として内密に処理されていたそれが、あの件以降は悪魔の仕業と囁かれるようになった。

>一層、街から出る人が増えているのはそのせいだ。

ラビリス「なんや、寒々しい言うんかな。やーな感じやなぁ」

メティス「今までも、あんまりいい印象は無かったけど……それでも、人がいるのといないのとじゃここまで印象が違うんだ……」

鳴上「早く何とかしないとな……」

>三人で学校に向かっていたのだが、途中で妙な事に気付く。

鳴上「なんか、逆に行く生徒多くないか」

ラビリス「ほんまやな。忘れ物……ってワケやないんやろうけど」

メティス「学校で何かあったんじゃ……?」

鳴上「ん。あれ、天田じゃないか」

天田「先輩、おはようございます」

>部活の為に俺達より早く出たはずの天田に出会った。


892 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:02:08.75NiUXowcfo (2/13)

鳴上「学校、何かあったのか?」

天田「僕も良くはわからないんですよ。朝練してたら急に悲鳴が上がって、警察まで来ちゃって……今日、休校になるんだそうです」

ラビリス「あらら、ほな真面目に朝はようから登校した子らは無駄足踏むわけや。可哀想になぁ」

鳴上「ちょっと待て、それどころじゃないんじゃないか?とにかく俺は学校見てくる。皆は……」

天田「寮に帰って桐条さんに連絡を。もし僕らの出番だったら恐らくは向こうにも事情は通ってるでしょうから」

鳴上「ああ、頼む。それじゃあな」

メティス「あ、私も……」

鳴上「いや、一人で十分だ。行ってくる」

>少し駆け足で学校に近付く。

>校門前に鳥海先生が立っている。

鳥海「あら、鳴上君。おはよう」

鳴上「あ、おはようございます」

鳥海「今日休校よー」

鳴上「えっと、何かあったんですか」

鳥海「言えないんだけどね。……まさか、中入りたいなんて言うんじゃないでしょうね」

>ものすごく不機嫌そうに睨まれる。

鳴上「……あー、えっと、その」

鳥海「ただでさえ変な噂のせいで気遣うってのに、こんなもん生徒に見せられるわけないでしょ……」


893 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:02:38.02NiUXowcfo (3/13)

鳴上「え?今何て……」

鳥海「うっさい!いいからさっさと帰んなさい!」

鳴上「でも……」

>校舎から制服の警官が出てくる。

>本当に警察沙汰になっているのか……。

鳴上「って、周防さん!」

達哉「ん?お前、確か……」

鳥海「お疲れ様です」

達哉「あ、どうも。そちらもお疲れ様です。どうかしましたか?」

鳥海「いえね、生徒が中に入ろうって言うんで、なんとか帰らせようとしてた所でして」

達哉「……彼、関係者ですよ。多分、見てもらう必要があると思います」

鳥海「へ?」

達哉「いわば重要参考人ってヤツですね。刺激が強いが、いいか?」

鳴上「あ、はい!構いません。鳥海先生、これならいいですよね?」

鳥海「……何か、なーんか胡散臭いっていうか。いえいえなんでもありませんよ。オホホホホホ。それじゃ鳴上君、くれぐれも粗相無いようにね!!」

鳴上「う、はい……それじゃ周防さん、よろしくお願いします」

達哉「ああ。ついてきてくれ」

>達哉に付き従うように校舎に入る。


894 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:03:07.11NiUXowcfo (4/13)

>校舎内は何か奇妙な雰囲気に包まれているようだ。

達哉「鳴上、だったな」

鳴上「はい」

達哉「今日はあの……記者の人は別なのか」

鳴上「天野さんですか?あの時はたまたま一緒だっただけで、別にチームだとかそういうわけではないですよ」

達哉「そうか……」

鳴上「天野さんが気になるんですか?」

達哉「少しな。初めて会ったはずなんだが、どこかで会った事があるような……」

鳴上「天野さんも同じような事言ってましたよ」

達哉「そうか。それなら本当にどこかで会ったのかもしれないな。……夢を、見るんだ」

鳴上「はい?」

達哉「いや、夢というか……フラッシュバックっていうのか。見たことも無い景色とかがばっと目の前に広がって、そこには知らない奴らとあの人が」

鳴上「……何か、奇妙な話ですね」

達哉「そうだな。俺もそう思う。……気にしないでくれ。この教室だ」

>二年のクラスか……。

達哉「先に言っておく。中にあるのはホトケだ」

鳴上「ホトケ……って、ええ!?」

達哉「今朝、一番に登校してきた先生が即刻通報した。自殺……かどうかは見ればわかる。かなりキツイけど、見るか?」



895 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:03:36.72NiUXowcfo (5/13)

鳴上「……み、見ます。何となく、見ておかなきゃいけない気がする」

達哉「そうか。幸いというか、トイレは近い。現場だけは汚してくれるなよ」

>がらりとドアを開ける。

>目に入ったのは、赤。

>俺はこの色を良く知っている。

>場合によっては戦闘中に目にする事もある、自分の中を流れる液体の色だ。

>匂いも、口を切った時口中に広がるあの味がさらに濃厚になったような、むせるような……。

>その光景の出元である、女生徒だったであろう物体に目線を移した時、胃が痙攣した。

鳴上「うぉ……えっ……」

達哉「落ち着け。トイレなら……知ってるよな」

>達哉の声がやたら遠くで聞こえる。

>俺は男子トイレに駆け込み便器に胃の中身をぶち撒けた。

>胃酸が鼻孔を刺激し、涙が溢れる。

鳴上「……っは、はぁ。うぇっ……くそっ」

>今まで俺は、どれだけ非現実的な世界を見てもきちんと受け止めてきた。

>しかしそれは気のせいで、現実と非現実を勝手に線引していたに過ぎなかったようだ。


896 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:04:18.52NiUXowcfo (6/13)

>夜、戦っている俺は非現実の側。

>テレビの中で戦う俺は非現実の側。

>学校は、現実の側。

>だけど、そこに……

達哉「俺はただ現場を見て、応援を呼ぶだけだ。巡査にどうこう出来るもんでもない」

>いつの間にか達哉が背後に立って背中をさすってくれていた。

達哉「だが、自殺じゃないのは見ればわかる。それとも、侍よろしく自分でかっさばいたのか?まず無いな」

鳴上「あれは……」

達哉「知り合いか?」

>首を横に振る。

>知らない生徒だった。

達哉「最初に発見された時、まだ血が流れてきていた。つまり、その直前に死んだ事になる。……腹を裂かれ、喉を開かれて」

鳴上「すみません、わざわざ見せてもらったのに……」

達哉「見せた俺が悪いんだ。もしかしたら、と思ったけど……お前に関係あるはず無かったな。あれはただの殺人事件だ」

鳴上「例えば、変質者の仕業だったりするんでしょうか」

達哉「そうかもしれん。それか、彼女に恨みがある……まぁ、あの若さであれだけの事をされるような恨みは持たれてないだろうが……とにかくその辺りを中心に調べる事になるだろう」

>もう一つ、わかった事がある。


897 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:04:47.04NiUXowcfo (7/13)

>今まで、シャドウは人の一部だと言っておきながら、どこか別に考えていた所があった。

>悪魔なんて完全に別だから気にもしなかった。

>しかし、今日のコレは違う。

>あの犯行……死体からは……

>確かに、人間の匂いがした。

>犯人は、人間だ。

>……。

>巌戸台分寮のラウンジは、今までに無い程重い空気に包まれていた。

>原因はわかっている。

>……俺だ。

メティス「……あの」

>メティスが何か話しかけようとしてくれるが、すぐに困ったように座り直す。

>風花はそれを見ておろおろし、ラビリスがつまらなそうにしている。

>湊はぼんやりテレビを眺め、美奈子は何故か歯痒そうにしていた。

>そして、天田が黙ってコーヒーをいれてくれた。


898 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:05:15.87NiUXowcfo (8/13)

>……まだ、瞼の裏にあの教室が浮かぶ。

>俺一人で見に行って良かった。

>メティスやラビリスには見せたくない光景だった。

>結局皆黙ったままでいると、表に車の止まる音がした。

風花「あ……」

>寮の玄関が開いた。

順平「うぃーっす!……って、アレ。どったの、これ」

真田「何だかわからんが沈んでるようだな」

アイギス「一応、報告は来ていますが……」

ゆかり「風花、何かあったの?」

風花「うん、実は……」

>美鶴がジェラルミンケースをテーブルにどかっと乗せた。

美鶴「とにかく揃っているようだな。皆、頭を切り替えろ。今日は重要な話がある」

鳴上「……重要な話?」

真田「ああ。面白い事になってきたぞ。きっと驚く」

美鶴「明彦、面白がるな。先に合流したメンバーには少し話したが、正式に発表する。我々シャドウワーカーが、より強い権限を持つことが許可された」

>ジェラルミンケースを開けると、人数分のバッジと召喚器が仰々しく収められていた。



899 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:05:46.52NiUXowcfo (9/13)

美鶴「今の所はこの街限定の話だが、シャドウワーカーに所属している者は警察の更に上位の権限を持つ事ができる。何かあった時に真っ先に、かつ的確に行動する為の措置だ」

美鶴「これ以後、対応地域は増えていく事だろう。しかし権限が増すというのは同時に、より重い責任を負うという事になる」

美鶴「これを受け取れば、強大な権限に付随する重い責任も君達の物となる。今まで通り、有志として協力してもらう事も勿論可能だ。良く考えて選んでくれ」

>そういえば、美鶴は以前から権限の向上を訴えていたようだった。

>それがついに結実したのだろう。

>しかし、警察権力よりも上に立つとなると……

>言うとおり、責任も重い。

>住民の安全がより一層自身にかかってくるという事だからだ。

>少し、躊躇してしまう。

>最初に動いたのは真田だった。

真田「俺が自分自身の道に進む為の……いわばけじめだ。この事件、なんとしても終わらせよう」

>バッジを掴み、召喚器をホルスターに収める。

真田「だが、お前たちもそうであれとは言わない。俺に釣られて動く必要はどこにも……」

>言い終わる前に、順平が動いた。

ゆかり「ちょ、順平?」

順平「あんだよ。俺だってな、人任せにしたくない事くらいあんの」

真田「見直したぞ」

順平「……どもっす」


900 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:06:13.24NiUXowcfo (10/13)

美鶴「受け取ってもらえるのは純粋に嬉しいんだが、別に受け取らないのも自由だ。そこは理解しておいてくれ」

>次に動いたのはアイギスだった。

アイギス「私は、この街を守りたいです。その為の力なら……」

ラビリス「ま、ウチらその為にあるようなもんやし?」

メティス「……私も、守りたい」

>三人が受け取る。

天田「逃げたらどやされそうですしねぇ。頂きます」

>天田も苦笑しながら受け取った。

ゆかり「あの……私は、やめておきます」

美鶴「……そうか。理由を聞いても構わないか?」

ゆかり「あ、その。私、今お母さんと暮らしてて……無茶、出来ないから。だから、すみませんけど」

順平「んな申し訳なさそうにすんなって。責めるヤツなんかいねーよ」

天田「そうですよ。家族のため……立派な事です」

ゆかり「でも、皆は戦うって決めたのに」

風花「ううん、いいの。だってゆかりちゃんの分も……」

>風花がバッジを取った。

風花「私、頑張るから」


901 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:06:53.99NiUXowcfo (11/13)

ゆかり「風花……」

美奈子「……ま、私は失くす物も無いし」

>美奈子は小さく呟いた。

美奈子「付き合いますよ。地獄の果てまで悪魔と相乗りってねー」

>そして、残るは……

有里「……ふむ」

鳴上「参ったな」

美鶴「しつこいようだが、強制はしない。ゆかりのように身を引く事もこの場においては重要だ。君達には……今までも、少々無理をさせてきた。ここで引いたとして、誰も文句はあるまい」

有里「じゃあ、僕は遠慮します」

鳴上「何?」

>湊がもし受け取れば、自分も……そう思っていたのだが。

有里「忘れてるかもしれないけど、僕はあんまり中心にいたくないって言ったでしょ?それに……僕がいなくても、きっと大丈夫さ」

>湊はゆかりに目をやった。

>気まずそうにしていたゆかりは、少しだけ笑った。

>……なるほど、そういう理由もあってか。

鳴上「……俺は」

>受け取らずとも、今までどおり戦う事はできる。

>しかし。

鳴上「頂いておきます。何かあった時に、すぐに動けるように。……改めて、よろしくお願いします」

>美鶴は満足そうに頷いた。

美鶴「正直、ここまでの人数に受け取ってもらえると思っていなかった。だが、だからと言ってゆかりや有里の判断が間違っているとも思わない」

美鶴「彼らには彼らなりに守る物があり、それを優先するが故の決断なのだろう。私は……君達全員が仲間である事を誇りに思う」

真田「……新生シャドウワーカー、活動開始だな!」

>それぞれがそれぞれを鼓舞しあう。

>今までと大きく変わる事は、現状では無い。

>しかし、以前より仲間として……絆が深まった事をはっきりと感じる。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが3になった。


902 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 00:13:27.86NiUXowcfo (12/13)

デジャヴのしょうね・・・しょうじょ・・・?お、おばさん・・・?

では、また明日。


903VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/09/08(土) 00:15:26.191XrQoI390 (1/1)




904VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/08(土) 00:23:03.49SvqrOYgLo (1/1)

美奈子はフィリップだったのか……


905 ◆e8lME0lo0A2012/09/08(土) 23:53:23.81NiUXowcfo (13/13)

えー今日明日もお休みで。
月~金更新にしようかと悩み中です。
来週様子見て決めまする・・・申し訳ない。

では、また月曜日。


906VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/09(日) 02:18:55.30cxuG9o2O0 (1/1)

了解


907VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/10(月) 02:32:34.678EnvE3P60 (1/1)

やりたいようにすればいいさ


908VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2012/09/11(火) 01:21:23.43TtGyDqeDo (1/1)

今日は無し?


909 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:18:00.251CRpv4tco (1/12)

美鶴「しかし、殺人か……どうしたものか」

鳴上「勘ですけど、あの手口は悪魔やシャドウのそれじゃありません。人がはっきりと殺意を持って殺したそれに見えました」

順平「マジかよ……悪魔よりよっぽどこえーってそれ」

ゆかり「でも、それって私達が関わっていい事なの?」

風花「本当なら警察に任せる事ですよね……」

アイギス「姉さんとメティスは見なかったのよね?」

メティス「私も行こうとしたんだけど、鳴上君が一人でいいって言うから」

ラビリス「今となっては行かんで良かったと思うわ。……想像するだけで嫌や」

真田「だが、もし悪魔やシャドウが関与しているとしたら警察の手には負えんな」

天田「はっきりするまで調査するしかありませんかね」

美奈子「はいはーい、私行きたいです」

美鶴「何?どこにだ」

美奈子「だから、殺人事件の捜査。どうせ退屈だから、行ってもいいですよね?」

美鶴「遊び気分は困るぞ?」

美奈子「わかってますって。湊もどう?」

有里「ん?僕も?」

鳴上「あ、俺も引き続き調べてもいいですか」

美鶴「そうだな。君は今の所一番入り込みやすいようだし、頼む。しばらくはそちらの事件を中心に動く事になりそうだな」

鳴上「わかりました。それから……聞いてますか?天野さんの事」

美鶴「一応報告は受けているが……信用できるのか?」

鳴上「悪い人ではなさそうです。ただいくつか妙な所が……」

美鶴「そうか。そちらも君達の判断に任せる。手に負えないようならいつでも連絡してくれ」

>何の因果かまた殺人事件の捜査をする事になった。

>去年とは違い、正式に警察と協力する事ができる分、話は早いかもしれない。

>とりあえず、達哉に話を聞きに行った方がいいだろう。


910 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:19:13.681CRpv4tco (2/12)



【7/10 晴れ】


>今日は通常通りに授業があるらしい。

>例の教室は暫く閉鎖され、そのクラスの生徒は別のクラスで授業を受ける事になった。

>確か事件の詳細は伏せられていたはずだが、やはりというか学内は噂でもちきりだった。

鳴上「噂っていうのはどうしてこう尾ヒレが付くんだろうな」

綾時「まぁ、とんでもない人数で伝言ゲームしてるわけだからね。仕方ないんじゃない?」

ライドウ「中にはわざと歪曲して伝える者もいる。そうなれば元の姿などわからなくなって当然でしょうね」

鳴上「噂するのってそんなに楽しいかな。俺は余り好きじゃないんだが」

綾時「聞くのは好きでもぺらぺら喋るのはねー。ほら、男は無口の方がかっこいいじゃない?」

ライドウ「……綾時君が言うと何かの冗句にしか聞こえないのが何とも」

綾時「嘘?僕結構寡黙なキャラだと思ってたんだけど」

鳴上「無いだろ」

ライドウ「無いですね」

>いつものように屋上で昼食をとりながら駄弁っていると、これまたいつものようにラビリスとメティスがやってきた。



911 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:20:26.111CRpv4tco (3/12)

綾時「今日も来たね二人共」

鳴上「今日はどうした?何の用……」

>ラビリスとメティスは黙って俺の両側に回り、手を握った。

鳴上「……何だ?」

綾時「さぁ……」

ライドウ「何やら怯えている様子だが?」

>ライドウの言葉にラビリスが反応する。

ラビリス「おび、おびびえてへんわぁ!べっ、別に何や怖い噂聞いたからってび、びびびびびってへんからな!」

>怖い噂……?

メティス「JOKER呪い……って、言うんだって」

綾時「あ、名前聞いたことある。あれだよね、頼んだ相手を殺してくれるっていう」

ラビリス「ちょ、綾時!やめぇや!」

綾時「え?ご、ごめん」

鳴上「頼んだ相手を殺す?」

>普段なら気にもとめない話だが、何か引っかかる。

>殺人事件の直後に、殺しの噂……もしかすると、何か関係あるのかもしれない。

鳴上「メティス、良ければ詳しく教えてくれないか」

ラビリス「なんでや!」

鳴上「昨日の事件に関係あるかもしれないだろ」


912 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:21:33.751CRpv4tco (4/12)

メティス「……」

ライドウ「どうやらメティスさんも怯えているようですね」

鳴上「……ロボットなのにな」

ラビリス「かんっけーあらへんから!そんなん一切全く一つも関係あらへんから!」

メティス「心は人と同じなんだから、たまには怖い事も……あるよ」

鳴上「ん、そうか。悪かった。しかしこうなると……誰に聞けばいいんだろう」

綾時「二人が聞いた相手に聞けばいいじゃない」

鳴上「ああ、それはそうか。なぁ、二人は誰にその噂を聞いたんだ?」

ラビリス「誰って……皆知ってるで」

メティス「うん。多分もうほとんどの人が知ってると思う。綾時君も知ってたみたいだし」

綾時「詳しくは知らないよ?JOKER呪いっていう呪いの掛け方があって、自分の携帯から自分の携帯に電話をかけて、それから殺したい相手の名前を言うとJOKER様が殺してくれるんだって」

ラビリス「詳しく知らんってそれ全文やろ」

綾時「あ、そうなの?」

メティス「私達が聞いたのもそれと同じで、昨日殺された生徒はJOKER様に殺されたんだって……」

鳴上「……JOKER様、か」

>何者なんだろうか。

ライドウ「……この場合、気になる事がいくつかありますね」

鳴上「そうだな」


913 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:22:29.121CRpv4tco (5/12)

ライドウ「まずは当然噂の実態。普段ならまず間違いなく無視していい類です。しかし今は通常時ではない」

鳴上「悪魔やシャドウがいるなら怪人JOKERだっていてもおかしくないってことだな」

ラビリス「やめてぇ~……」

ライドウ「第二に、噂の出処。急速な拡散の原因は間違いなく昨日の事件でしょう。しかし、噂自体はもともとあった可能性がある」

鳴上「俺達が知らなかっただけで、実は既にそういう噂があって、事件を機に急に流行った可能性があるな」

ライドウ「ええ。もしそうではなく、事件を素に想像し、作り上げられた噂なら根本を辿るのは比較的容易でしょう。まだ日の浅い今ならですが」

鳴上「ただ、そうじゃなかった場合は噂の大本にたどり着くのはかなり難しいだろうな。最悪広めた本人も忘れてるかもしれない」

ライドウ「そうなると厄介ですが、それなら逆に今回の事件とは関係無いと言えるかもしれない。まずその辺りを明確にする事が必要でしょうね」

鳴上「調べる事が増えてきたな。ああ、そうだ。今日の放課後、事件の話を聞きに警察に行くんだが、ライドウはどうする?」

ライドウ「自分は別ルートから追ってみたいと思っているので。そちらは任せる事になるがよろしいか?」

鳴上「わかった、任される。さて、午後の授業だ。そろそろ離してくれないか」

>ラビリスとメティスは首をぶんぶんと横に振った。


914 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:23:00.761CRpv4tco (6/12)

>放課後、ポロニアンモール。

>一度寮に戻り、美奈子と湊と合流してから交番に向かった。

>が。

鳴上「……なぁ」

美奈子「ん?」

鳴上「そのかっこ、どうしたんだ?」

美奈子「いやぁ、事件の捜査っていうからさ」

鳴上「探偵か」

美奈子「うん。可愛いでしょ?」

鳴上「どう見る、湊」

有里「……ノーコメントで」

>楽しそうにくるくる回って見せる美奈子は、何故かラブリーンのコスプレをしている。

美奈子「~♪」

鳴上「恋する名探偵だ……」

有里「悠もなんでちょっと詳しいの……」

鳴上「一緒に暮らしてた親戚の子がハマっててな……」

有里「歳は?」

鳴上「小学生」

有里「……」

鳴上「……」

有里「着替えさせよう」

鳴上「もっと早くそうすべきだったな」

>……。


915 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:23:34.021CRpv4tco (7/12)

美奈子「もー、仕方ないなー」

鳴上「あの格好じゃ真面目な話なんて出来ないだろ。……あれ?」

有里「やぁ、ゆかりッチ」

>何故か大荷物を抱えたゆかりが薬局から出てきた。

ゆかり「それやめて。三人揃ってどうしたの?」

鳴上「昨日言ってた事件についてそこの交番で話聞こうと思って」

ゆかり「あー、そっかそっか。ご苦労様。栄養ドリンクいる?」

>薬局の紙袋からマッスルドリンコを手渡された。

鳴上「……ありがとうございます」

ゆかり「でも三人揃って行かなくてもさ、手分けしていろんな事やった方がいいんじゃない?」

有里「……それはそうだね」

鳴上「といっても別に手掛かりが他にあるわけじゃ……あ、そうだ。岳羽さんって月光館のOGですよね」

ゆかり「え、うん。知ってるでしょ。それが?」

鳴上「ちょっと気になる噂聞いたんですけど、在学中に聞いたことあるかどうか教えて欲しいんです」

>ゆかりにJOKER呪いの事を説明した。

鳴上「っていう噂が……あの?」

>ゆかりの顔色が酷く悪い。


916 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:24:00.291CRpv4tco (8/12)

美奈子「あー、そういえばそうだっけ」

有里「忘れてたね」

鳴上「お前たちだけで納得するなよ。何かまずかったのか?」

ゆかり「別にまずくないけどね?私はそういうの馬鹿らしいって思うなー。そもそもそこに元月光館生いるじゃない?何で私にわざわざ聞くのかなー?」

有里「僕一年間だけだったし」

ゆかり「あーそーですか。……ね、さっきも言ったけど話し聞くなら三人もいらないよね?」

鳴上「え?はぁ、まぁ」

ゆかり「じゃあ有里君借りてもいいかな?いや別に一人で帰るのも平気なんだけどね?今ちょっと物騒だから、ほら。ね?」

有里「……わかった。行くよ。ごめん、悠、美奈子。後任せた」

美奈子「はいはい。いってらっしゃい」

鳴上「ちょ、お、おい」

>ゆかりは湊の襟を掴むとずるずると引きずっていった。

鳴上「……なんだったんだ」

美奈子「ゆかりねー、ああ見えてそういう怪談じみた話って凄く苦手なのよ。何年経っても直んないもんなのね」

鳴上「何か、悪いことしちゃったかもな」

美奈子「いいんじゃない?湊と二人になれる口実になったし。多分必死すぎて言ってる時は気付いて無かったと思うけど」

鳴上「……ま、まぁ、俺達はしっかり話聞いておこう」

>交番を覗くと、また達哉しかいなかった。

>ある意味好都合だ。


917 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:24:30.681CRpv4tco (9/12)

鳴上「あの、すみません」

達哉「はい……なんだ、お前か。そっちは?」

美奈子「お仲間です」

達哉「事件の話なら、もう俺の手元離れたからな。ろくな話は出来ないぞ」

鳴上「一介の巡査には……って言ってましたもんね」

達哉「その通りだ。もう一般人に開示出来る領域じゃなくなったって事だ」

鳴上「あ、それなんですが……その。事情があって、俺達も一般人じゃなくなっちゃいまして」

>ポケットに入れておいたバッジを取り出して見せる。

鳴上「多分、話は通ってると思います」

達哉「何のバッ……ジ……?」

>達哉は机の上にあった書類に目をやった。

達哉「あー……お前らがそうか」

鳴上「はい。これで問題ないんじゃないですか?」

達哉「そうだな。何が聞きたい?知ってる範囲でなら答えよう」

美奈子「犯人の目星はついてますか?」

達哉「いや、全く。遺体の状況は鳴上もちょっとは見ただろうが、鋭利な刃物で腹と喉を裂かれて殺されていた。多少残虐趣味だが、それ以外は普通の殺人だ」

鳴上「恨みや変質者の線で行くって言ってましたよね?」

達哉「被害者に恨みを抱いているような人間はまだ上がってない。そもそも、人が出来過ぎているわけでもなく、かと言って人に悪意を持つようなタイプでも無かったらしいからな」



918 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:24:56.521CRpv4tco (10/12)

美奈子「狙われるような理由は無いと……」

達哉「一人、前日に喧嘩したって子がいたが、それだけだ。たかが喧嘩で女子高生があんな犯行に及ぶかどうかっていうと……な」

鳴上「変質者の方は?」

達哉「ここ一ヶ月、ここらで変質者や不審者の目撃は無い。突発的な犯行だとしたら……地道に行くしかないって事になる」

鳴上「そうですか……」

>手掛かりとしては、その喧嘩した生徒が有力だろうか。

美奈子「大した情報は無……あ、もしかして」

>美奈子が何かに気付いたように手を打つ。

美奈子「あの、えっと……」

達哉「周防達哉だ。君は?」

美奈子「私、有里美奈子って言います。周防さん、少し調べて欲しい事があるんですけど」

達哉「遠慮しなくても、俺達はお前達には逆らえないようになってる。何でも言っていい」

美奈子「それなら、ある噂について捜査を。JOKER呪いっていうんですけど、もしかするとさっき言ってた喧嘩相手の女生徒が知ってるかもしれません」

達哉「JOKER呪い?流行ってるのか」

>そうか。

>もしJOKER呪いが本当で、かつ事件の前から語られていた噂なのだとしたら。

>仲の良い友達と喧嘩して、その勢いでつい……というパターンも考えられるのではないか。


919 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:25:45.851CRpv4tco (11/12)

美奈子「自分の携帯に自分の携帯から掛けるとJOKER様っていうのに繋がって、そいつに殺したい相手を言うと代わりに殺してくれる……んだそうですよ」

達哉「……物騒な噂だなっ!?」

>呆れたように呟いた達哉が突然頭を抱えた。

鳴上「周防さん!?」

美奈子「ちょっと、大丈夫ですか!?」

達哉「JOKER……」

鳴上「っと、美奈子、誰か人を!」

美奈子「任せて!」

>美奈子が交番を飛び出す。

>達哉は小さく何か呟いた後、その場に倒れこんだ。


920 ◆e8lME0lo0A2012/09/11(火) 10:27:30.031CRpv4tco (12/12)

たっちゃん、混乱中。

停電による更新妨害にあってしまった為こんな時間になりまして、なんとも申し訳ない。
今夜こそ普通通りに更新します。

では、また夜に。


921VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/09/11(火) 12:00:20.44MhrEdpRP0 (1/1)




922VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/11(火) 16:01:12.99mnN5uxhY0 (1/1)

乙!


923 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:03:19.07SZuRIpQno (1/12)

鳴上「周防さん!周防さん!」

達哉「……う、ぐ……」

>何度か呼びかけると、達哉は首を振って目を開けた。

達哉「……大丈夫だ、なんとも無い。例のフラッシュバックが……」

鳴上「それって、倒れるような物なんですか?」

達哉「今ままではそんな事無かったんだがな。JOKER……何か、聞き覚えがある気がする。それに、天野舞耶」

鳴上「天野さんの事、何か思い出したんですか?」

達哉「はっきりとはわからない。だが俺はあの人に会ったことがある。良く知っている相手のような気がする」

>本当にそうだとしたら、舞耶は何故隠すのだろうか?

達哉「鳴上、頼みがある」

鳴上「何ですか?」

達哉「俺を、あの人に会わせてくれないか。あの人は、俺も知らない俺の事を知っている気がするんだ」

鳴上「それは……」

>どうすべきだろうか。

>達哉はそれを知りたがっているが、舞耶はそれを隠そうとしている。

>俺と達哉の接触を牽制するような言葉を残してもいる。

>もし、達哉に、あるいは舞耶に悪影響を及ぼす事になるのだとしたら許すべきではないのではないか。



924 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:03:54.88SZuRIpQno (2/12)

達哉「……頼む」

>達哉の目は真剣そのものだった。

鳴上「わかりました。個人的な連絡先を教えてもらえますか」

>もう一度会わせてみよう。

>今回の事件のキーワードに反応を示した達哉が何か変わるなら、捜査も進展するかもしれない。

>それに、勘でしか無いが……二人の関係は悪い物ではないような気がする。

達哉「ありがとう。俺の携帯教えとく」

鳴上「それじゃ、天野さんと連絡とって都合が付けば」

達哉「ああ、連絡をくれ。妙な頼みごとをしてすまないな」

鳴上「いえ。……ただ、天野さんが少し嫌がっていたようなのでどうなるか……」

達哉「やっぱり、何かあるのかな。無理なら無理でいい、頼んでみるだけ頼んでくれ」

鳴上「わかりました。あ、そういえば美奈子は……」

美奈子「早く、早く!大変なんだって!」

「おい、何なんだ。ていうか誰なんだ、お前」

>人を呼びに行った美奈子は、冴えない男を連れて戻ってきた。

鳴上「えーと……どうも」

「あ、はい……」

美奈子「この人、クラブの前うろうろしてたから連れてきた!」


925 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:04:22.42SZuRIpQno (3/12)

達哉「人選間違ってるだろ」

美奈子「あ、周防さん!大丈夫なんですか?」

達哉「何とかな。すみません、お騒がせして……」

「ああ、いや、それは構わないよ。……正直、人に関わってる場合じゃないんだが。ふぁあ」

>男は心底眠そうにあくびをすると交番を出て行った。

鳴上「知り合いだったのか?」

美奈子「あ、こっちじゃ知らない人。って言っても向こうでも一回喋っただけなんだけど……」

鳴上「それを良く連れてきたな……」

美奈子「いや、本当に非常事態だと思ったから……知らない顔より知った顔かと思って」

鳴上「一回喋っただけはほとんど知らない顔だろう」

美奈子「まぁ、何事も無かったなら良かったって事で」

達哉「心配かけたな。……話はそれで全部か?」

鳴上「とりあえずは聞きたい事は聞けました」

美奈子「体には気を付けてくださいね?」

達哉「ありがとう。もう帰るのか」

鳴上「そうですね、そろそろ。頼みごとはしっかりやりますから、安心してください」

達哉「……頼んだぞ」

鳴上「はい」

美奈子「ん?何の話?」

鳴上「こっちの話だ。帰ろう」

美奈子「また内緒ぉ?もー……」

>……。


926 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:04:50.27SZuRIpQno (4/12)

風花「天野さんに連絡を?それはいいけど……どうして?」

鳴上「気になる事があるんです。多分、事件と無関係じゃありません」

風花「それって、天野さんが何か関係してるって事?」

鳴上「それはまだ何とも。ただ、どこかで繋がってる気がするんです」

風花「……わかりました。連絡してみます」

鳴上「お願いします」

風花「ちょっと待ってね」

>風花は携帯を取り出して電話を掛ける。

>同時に、俺の携帯も鳴った。

>知らない番号だ……。

鳴上「一応、出てみるか」

>通話ボタンを押す。

>……何も、聞こえない。

>いや、がさがさと音が……悪戯か?

『バカ、そうじゃない。こっちを……そう、その向きだ』

>知らない男の声がして、直後によく知っている声が聞こえた。

『あーあー、聞こえていますか?』

鳴上「この声……ライドウか?聞こえてるぞ」


927 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:05:23.84SZuRIpQno (5/12)

ライドウ『良かった。どうも自分はこの手の機械に疎くて……ごほん。鳴上君、今日、時間はあるだろうか』

鳴上「今の所は。何かわかったのか」

ライドウ『自分と同じく葛葉の者が探偵事務所を開いていて、そこで少し調べ物をしてもらったんです。興味深い事がわかったので、それについて話し合いたい』

鳴上「電話じゃダメなのか?」

ライドウ『人を連れて来て欲しい。君が話していた雑誌記者の天野舞耶と、警官周防達哉を。それで初めて部品が揃う』

鳴上「天野さんと周防さん?何であの二人が……」

『いいから呼べ。葛葉探偵事務所の轟って名前を出せば、少なくとも天野は応じるはずだ』

鳴上「あなたは……?」

『俺がその轟だ。その二人とも知らない仲じゃない。いいな、必ずだぞ』

鳴上「必ずって……」

ライドウ『……すまないが、よろしくお願いする。今夜、ポロニアンモールにて待ちます。後はお任せした』

鳴上「あ、おい!」

>通話が切れた。

鳴上「急になんだって……そうだ、山岸さん」

風花「あ、すみません少し待ってください。なに、鳴上君」

>電話中の風花が一度受話器を耳から外し、聞く。


928 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:05:50.98SZuRIpQno (6/12)

鳴上「天野さん、都合がつくなら今夜ポロニアンモールまで出てくるように言ってください。葛葉探偵事務所の轟って人の指定だと」

風花「……?よくわからないけど、そう言えばいいのね。わかりました。……失礼しました。その、出来れば今夜……はい、葛葉探偵事務所の轟さんが指定したと……」

>これで上手く行くんだろうか……。

風花「はい、はい。はい、それではポロニアンモールに……はい。お願いします。突然すみません。はい……それでは失礼します」

>風花が通話を切る。

鳴上「どうです?」

風花「最初は渋ってたけど、鳴上君に言われた通りに言ったらすんなり。ところで轟って誰なの?」

鳴上「さぁ……俺も良く知らないんですが、天野さんや周防さんと関係ある人らしいです」

風花「そうなんだ……とにかく、今夜八時にポロニアンモール。鳴上君も行ってください」

鳴上「わかってます。わざわざありがとうございました」

風花「ううん、事件の為でしょ?人が……死んじゃうような事件は、早く解決しないと」

鳴上「そう……ですね。一刻も早く解決しましょう」

>風花は人の生き死に……いや、誰かに被害が及ぶ事を強く嫌っているらしい。

>普段優しげな風花の瞳に、強い決意を見たような気がした。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが4になった。

>……。


929 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:07:55.52SZuRIpQno (7/12)

>ポロニアンモール。

>指定の時刻より幾分早く到着した。

鳴上「まだ誰も来てないか……な?」

>いや、既に一人到着しているようだ。

鳴上「周防さん、早いですね」

達哉「鳴上か。いや、やっぱり気になって……」

鳴上「周防さんは、葛葉探偵事務所と轟って名前に聞き覚えは?」

達哉「葛葉……轟……今はこっちの寮に住んでるんだが、俺が以前住んでいた街にそういう名前の所長がいる探偵事務所があった……ような気がするな」

鳴上「あ、そうなんですか?」

達哉「ああ。俺も何度か世話に……?いや、世話になった事なんてないな。変な思い違いをしてたみたいだ」

>達哉は首を振って何かを振り払うような仕草をした。

鳴上「大丈夫ですか?」

達哉「今の所はな。……なんだか、人生を三度くらいループした気分だ。俺の知らない記憶が俺の中にあるような……何なんだ、一体」

舞耶「やっほー。来てあげたわよん」

>達哉がそうこぼすのとほとんど同時に、舞耶がやってきた。

鳴上「こんばんは、天野さん。これで二人は揃ったんですが……もう少し待ってもらえますか。まだ一人来てないヤツが……」

達哉「天野舞耶……舞耶姉……?」

舞耶「……何のことかしら」

>俺を他所に、二人の間には何か緊張した空気が走った。


930 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:09:18.12SZuRIpQno (8/12)

>やはり、達哉と舞耶には何か関係がある。

>にも関わらず、舞耶はそれを隠そうとしている。

鳴上「天野さん、何か隠し事があるんじゃないですか?」

舞耶「無いわ」

鳴上「でも……」

達哉「……俺が、間違ってるのかもしれない」

鳴上「周防さん?」

達哉「俺が、何か妙な病気だとかで……記憶が混濁してて、そのせいで会ったこともない人を知ってるような気になったのかも」

舞耶「……私は、あなたを知らないわ」

ライドウ「嘘ですね」

>突然現れたライドウはそう断言した。

鳴上「ライドウ、来たのか」

ライドウ「全員が揃うのを待っていました。天野さん、少なくとも貴女は彼を知っているはずだ」

舞耶「あなた、誰?何者なの?」

ライドウ「申し遅れましたが、自分は葛葉ライドウ。探偵です」

舞耶「葛葉……探偵……そうか、あなたが轟所長を?」

ライドウ「ええ。彼とは同じ流派ですから、事情を話して話を聞いてきました。十三年前……の話も、しっかりと」

舞耶「まだ現役なのね、所長」


931 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:22:20.75SZuRIpQno (9/12)

ライドウ「後任が育たないんだそうです。ぼやいてましたよ」

舞耶「そっか……もう、バレちゃってるのね」

鳴上「どういう事なんですか?俺にはさっぱり」

舞耶「……もう随分前になるのね。私もおばさんになるわけだわ。ライドウ君も言ったけど、十三年前、私は悪魔と戦っていた」

鳴上「以前戦った事があるって言ってたのはその時の事ですか」

舞耶「そうよ。その戦いの中心にいたのが周防達哉……君だった」

達哉「俺が悪魔と……?」

舞耶「正確には君じゃなくて、別世界の君だったんだけど。もしかするとその時の事を思い出しちゃわないかって、距離を取ろうとしたの」

達哉「思い出しちゃいけない事なのか」

舞耶「……今の君には今の君の人生がある。邪魔したくなかったのよ」

鳴上「……すみません、そんな事情とは知らずに」

舞耶「いいのよ、それで苦しめちゃってたみたいだし。すっきりした方がいいんなら、それで」

達哉「悪魔……ペルソナ……?」

ライドウ「そうです。俄には信じられないかもしれませんが、実際に実物がいるわけですから見てもらった方が早い」

>ライドウはそう言うと手招きした。

ライドウ「人目に付きたくない。路地裏に入りましょう」

>俺達は頷くとついていく。

ライドウ「ここまで来れば良いでしょう。いいですか、この管の中に悪魔が入っています」


932 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:22:46.87SZuRIpQno (10/12)

達哉「この中にか」

舞耶「へー。あ、って事はこれも君の仲間?」

ライドウ「いや、まだ何も……!?」

鳴上「天野さん、離れて!」

>路地裏には既に大型の悪魔が潜んでいた!

舞耶「ちょ、キャー!」

達哉「舞耶姉!」

ライドウ「しまっ……間に合え!」

>ライドウが管の蓋を開ける。

>俺が召喚器を取り出す。

>声が聞こえる。

『我が手を取れ……恐れるな……』

>時間の進みがゆるやかになるのを感じる。

>俺やライドウがスローモーションで振り向く間、達哉だけが通常のスピードで動いている。


933 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:23:14.15SZuRIpQno (11/12)

達哉「ペル……」

>片手で顔を覆うようにし、目を閉じている。

達哉「ソナッ!」

>発声と同時に目を見開き、手を大きく振るう。

『我は汝……汝は我……我は汝の心の海より出でし者……』

>真紅のペルソナが達哉の背後に現れ立つ。

『一切の不浄薙ぎ払う、業火の運び手ヴォルカヌスなり!!』

達哉「ヴォルカヌス!」

>達哉が命じると、ヴォルカヌスが悪魔に向かい腕を振った。

>業火が舞い、悪魔を薙ぎ払う。

鳴上「これが……周防さんのペルソナ……」

舞耶「このペルソナ……もしかして」

達哉「……思い出した、全部。舞耶姉、久しぶり」

舞耶「あなた……こっちの達哉君じゃなくて……」

達哉「そうみたいだ。俺は、あちら側の周防達哉だよ」


934 ◆e8lME0lo0A2012/09/12(水) 00:24:06.18SZuRIpQno (12/12)

達哉(こちら側)か達哉(あちら側)かの二択

では、また明日。


935VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2012/09/12(水) 00:39:29.32N0FKqHpAO (1/1)


楽しみすぎる


936VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2012/09/12(水) 01:17:25.92eQNegrcl0 (1/1)

乙です


937VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県)2012/09/12(水) 01:20:30.21xxb0XIrm0 (1/1)

乙乙


938 ◆e8lME0lo0A2012/09/13(木) 00:02:06.53pPK0dMSYo (1/8)

舞耶「やっぱり……でもどうして?あの時……」

ライドウ「積もる話もあるでしょう。お二人でどうぞごゆっくり。自分は彼に話しがありますので」

>ライドウは俺を指さして言った。

舞耶「あ、そうなのね。ええと……それじゃあどうしようかしら」

達哉「少しだけ、舞耶姉と話をさせてくれ。その後、お前たちにも詳しい話をする。それでいいだろ」

ライドウ「結構です。鳴上君、お話が。一度外しましょう」

>達哉、舞耶と別れてライドウと歩きながら話をする事になった。

>ライドウは何度も口を開きかけては閉じるを繰り返している。

鳴上「何か難しい話か」

ライドウ「……はい、正直な所、どうしたら良いか皆目見当も付きません」

鳴上「お前が?珍しいな」

ライドウ「以前話したことを覚えていますか」

鳴上「ああ、事件の中心は俺なんじゃないかって話だろ」

ライドウ「ええ。今もその考えは変わっていません。ですが……」

>ライドウはまた迷うような仕草をした。

>言葉を探しているのだろうか?


939 ◆e8lME0lo0A2012/09/13(木) 00:04:00.66pPK0dMSYo (2/8)

ライドウ「……ですが。事件の黒幕について少しわかってきた今、その意味がわからなくなってきているんです」

鳴上「意味?いや、それよりも黒幕についてって……」

ライドウ「現在起きている事件と最も近しいと言える性質を持つ事件、それが天野さんや周防さんの関わっていた戦いです」

鳴上「近しい性質……?結局どういう事なんだ」

ライドウ「JOKER呪いですよ。十三年前、ある街でその噂が氾濫した事がありました。その際、JOKERと戦ったのが天野さん達です」

鳴上「何!?ってことは今回の事件の犯人も同じってことか」

ライドウ「そういうワケではありません。そもそもそれを知る人物は様々な事情でもう殆ど残っていません」

鳴上「なら模倣犯の可能性は?」

ライドウ「無いでもありませんが……どうでしょう。まだ犠牲者が一人しか出ていない事、本当にJOKER呪いが行われたのか等わからない事も多い。そこは保留してください」

鳴上「本題は別ってことか」

ライドウ「はい。忘れ去られたJOKER呪いの噂を蘇らせた存在がいる事が問題なのです。先の事件には、JOKERという実行犯の他に、それを操る存在がいました」

鳴上「操る……待て、天野さんは悪魔と戦ってたんだよな?悪魔を使役できるような人間がそうそういるのか?」

ライドウ「それに関してははっきり否定できます。自分らのように使役する技術を持っている者、鳴上君のように機械によって行う者。そのどちらも、悪魔を従えるにはある手順を踏む必要がある」

鳴上「……ケルベロスは最初から登録されていたからな。本当はどうするものなんだ」

ライドウ「交渉ですよ。力尽くで捩じ伏せるにせよ、懐柔するにせよ。対面して交渉する必要がある。街に溢れる程の量の悪魔を使役する事など不可能です」

鳴上「一体一体交渉していったんじゃ無理だってことか。じゃあ、黒幕ってのは何者なんだ?」

ライドウ「事件を終えた天野さんや、その仲間だった人から聞いた話だそうです。それは……人の普遍的無意識に存在する者」

>何だかどこかで聞いたような気がする……。


940 ◆e8lME0lo0A2012/09/13(木) 00:04:33.29pPK0dMSYo (3/8)

ライドウ「名を、ニャルラトホテプ、と。悪魔より高次の存在であり、事件の際、因果を捻じ曲げるという事まで行ったそうです」

鳴上「ニャルラトホテプ……」

ライドウ「天野さんや周防さんによって、一度は滅ぼされたそうですが……人が存在する以上、それもまた存在するはずです」

鳴上「人間の意識の中にいるのなら、そうなんだろうな」

ライドウ「そして、この街で起こっている事件。とても人に起こせるような物では無いと思いませんか」

鳴上「そりゃ、最初からそうだと……え?」

ライドウ「自分の推測です。根拠はどこにもない。しかし間違っているとも思えない。それはこの説にたどり着いてからの奇怪な不快感が証明してくれています」

鳴上「大丈夫か?」

ライドウ「ええ、何とか。ただ……何だか自身の正気を疑いたくなります。現実と非現実の境界が曖昧になるような。足元がすっぽりと消失してしまったような気持ちですよ」

鳴上「……あ」

>黒幕がそのニャルラトホテプだと仮定しよう。

>俺はそれに似た存在と戦った事がある。

>こっちに来てすぐに、アイギスを助ける為にテレビの中で戦った存在。

>エレボスと呼ばれるそれは、人の普遍的無意識に存在するのでは無かったか。

>そして、それが望むのはNyx……。

>マヨナカテレビは人の望みを映し出す物……。

>何だ?

>何かが繋がりそうで繋がらない。

>大事なピースが抜け落ちている感覚が……。


941 ◆e8lME0lo0A2012/09/13(木) 00:04:59.94pPK0dMSYo (4/8)

ライドウ「とにかく、自分の説が正しいと仮定して。それなら、なぜ鳴上君が事件の只中にいるのかという部分です」

鳴上「確かにな。俺はそんなヤツ知らないし、関わった覚えも無い」

ライドウ「どこかに繋がりがあると思っていたのですが……どうにも見えない。意図が切れてしまった」

鳴上「まだたどり着くには道が長そうだな……」

>二人共口を噤んでしまった。

>ライドウの感じた不快感は俺にも伝播してきている。

>経験は無いが、泥酔したらこんな感じなのだろうか?

>自分の立っている場所がわからなくなるというか……。

>不意に、視線を感じた。

>鳥肌が立って振り向くと、空に月が浮かんでいるだけだった。

達哉「……話、終わったか」

ライドウ「ああ、すみません。お待たせしました」

達哉「お前がいろいろ画策したんだってな」

ライドウ「ええ。貴方はどうやら事件解決に必要な人物だったようなので」

達哉「そうか……ありがとう。何もわからないまま巻き込まれる所だった」

ライドウ「礼を言われるとは思ってもみませんでした。……自分は、これで帰ります。どうにも気分が悪い」



942 ◆e8lME0lo0A2012/09/13(木) 00:05:58.43pPK0dMSYo (5/8)

舞耶「え?大丈夫なの?送ろうか?」

ライドウ「結構。貴女の運転については聞き及んでいます」

達哉「……賢明だ」

鳴上「気をつけろよ」

ライドウ「……鳴上君も」

舞耶「何に気をつけろってのよ。失礼しちゃうわねえ」

達哉「舞耶姉はちょっと黙っててくれ」

>舞耶は一瞬むっとしたが、おとなしく黙っている事にしたようだ。

達哉「鳴上」

鳴上「はい」

達哉「今、JOKER呪いが流行ってるっていうのは本当か」

鳴上「本当です。学校ではほとんどの生徒が知っているようでした。勿論教師もそうだと思います」

達哉「……舞耶姉が戦ったJOKERっていうのは、本当のJOKERとは別なんだ」

鳴上「……詳しく、お願いできますか」

達哉「それにはまず俺の事を説明する必要がある。俺はこの世界の周防達哉とは少し違う人格だ」

鳴上「この世界の……まさか、平行世界ですか」

達哉「そういうらしいな。便宜上、お前たちが生きてきたこの世界をこちら側、俺がいた世界をあちら側と呼ぶとだな……もともと、世界っていうのはあちら側の事だった」



943 ◆e8lME0lo0A2012/09/13(木) 00:06:35.31pPK0dMSYo (6/8)

鳴上「あの、よく意味が」

達哉「元々あったのはあちら側の世界だったんだ。けど、アイツのせいで色々あって……舞耶姉が、死んだ。俺達はそれを取り戻す為に世界をやり直した」

>世界もよくリセットされるものだなぁ、と思ったが、流石にそれを言う勇気は無かった。

達哉「その時……俺は、皆との出会いを忘れたくなくて。記憶を持ったままこちら側に来てしまった。そのせいで、俺が二つの世界の接点、特異点になってしまった」

鳴上「それが原因で天野さん達も……」

達哉「そういう事だ。俺から言えるのはこんな所だ。それで、お前に聞きたい。今何が起こっている?」

鳴上「何が起こっているんでしょう。わかっていると思っていた事が全部無意味に思えてきました」

達哉「そういうのはいい。事実だけ教えてくれ」

>達哉に事件のあらましを話した。

>ライドウの説もいくらか交えての説明になったが、問題なく伝わったようだ。

達哉「……間違いないだろうな。ライドウって言ったか。あいつは良い勘してる」

鳴上「やっぱり、そうなんですか」

達哉「ニャルラトホテプが最初にやったのは、噂を現実にする事だった。そして、理想を叶える事。要するに、人の望みを反映するなんてのは、あいつにとっちゃ朝飯前ってことだ」

鳴上「……良かったです、犯人がわかって」

達哉「俺達が来なけりゃわからなかったかもしれないな。だが……まだ油断は出来ない。俺達がこの街に来たのもきっと偶然じゃない。何かが手引きをしてるはずだ」

鳴上「そうか、天野さんは自分の意思でここへ来たけど、周防さんは仕事で……」

達哉「そういうことだ。何よりも相手の目的が一切わからないのが気味が悪い所だな。……しばらく、様子を見るしかないか」

鳴上「殺人の方から何かつかめるかもしれませんしね。周防さんが全部理解した上で協力してくれるなら、こんなに力強い味方もいませんよ」

達哉「……公的にも、個人的にもお前達に協力する。本当にあいつがまた現れたんなら、決着をつけなきゃならない。……鳴上」



944 ◆e8lME0lo0A2012/09/13(木) 00:07:41.92pPK0dMSYo (7/8)

鳴上「はい」

>今まで険しい表情だった達哉が、少し優しい顔をする。

達哉「無理はするな」

鳴上「……はい」

舞耶「私達の持ってる情報なら全部あげるわ。人手がいるなら手伝うし。私達が出会ったのが誰の策略でも、きっとこの出会いは良い方向に向かってるはず」

達哉「レッツ・ポジティブシンキング……ってな」

鳴上「そうですね……そうですよね」

>未だわからない事も数多くある。

>しかし、一つ筋道はつながった気がする。

>あとはこの道を太く確かな物にしていくだけだ……。

>頭の中に声が囁く……。

『我は汝、汝は我……
 汝、新たなる絆を見出したり……
 絆はすなわち、答えを知る一歩なり』

>新たなるコミュニティ、『No.19 太陽 周防達哉』を手に入れた!



945 ◆e8lME0lo0A2012/09/13(木) 00:20:22.42pPK0dMSYo (8/8)

もしかしてあいつじゃね?(知ってた)

では、また明日。


946VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/13(木) 01:35:52.77uLMHMSvLo (1/1)

知ってた

乙!


947VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/13(木) 06:48:39.00IiME/YLUo (1/1)

ライドウさんのSAN値が……


948VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/13(木) 09:25:27.82NmxIMzcIO (1/1)

ニャル子さん…


949 ◆e8lME0lo0A2012/09/14(金) 00:02:46.83wc9W8BGLo (1/10)



【7/11 晴れ】


鳥海「嘆け学生達。私も辛い。えーと、皆知ってると思うけどちょっとした事件がありまして……期末試験の日程がずれ込みました。夏休み、ちょっとだけお預けです」

>クラス中からブーイングが飛んだ。

鳥海「うるさい!私だってねぇ、余分に学校来なきゃいけないのよ!まー仕方ないから諦めなさい。えー、本当は昨日から土曜日までの予定だったんだけど、明日から来週水曜までになったから」

綾時「あちゃあ……これってさ、振替休日とかあるのかな?」

ライドウ「さぁ……まぁ、勉学に励むのが我々の仕事ですから」

ラビリス「ライドウは本職ちゃうやろ」

ライドウ「どちらも自分の本職ですよ」

メティス「夏休み……そうだ、夏休みだよ鳴上君」

鳴上「ん?ああ、そうだな」

メティス「あの……覚えてない?」

>メティスが不安そうな顔をした。

>……もう少しからかってもいいが、ここは素直に答えておこう。

鳴上「覚えてるよ。一緒に八十稲羽行くんだよな」



950 ◆e8lME0lo0A2012/09/14(金) 00:03:16.65wc9W8BGLo (2/10)

ラビリス「……せやった!すっかり忘れてたわ!」

綾時「僕も忘れてた」

鳴上「……置いていくぞ」

ラビリス「ああん、いけず言わんといてぇ」

ライドウ「向こうの皆さんはどうしているでしょうかね」

鳴上「元気にやってると思うよ。この前メールした感じだと忙しそうではあったけど」

綾時「あ、有里君はどうするんだろうね」

鳴上「そうか、そういえばあいつもあっちに居たんだったな」

ライドウ「仲睦まじく過ごしていたようだが、どうでしょうね」

鳴上「……というか、今の状態で抜けても大丈夫なんだろうか。綾時はともかくラビリスやメティスがいなくなったら……」

メティス「そっか……人手足りないかも……」

鳴上「そんな顔するな。一応、桐条さんにでも相談してみるから」

綾時「こりゃ駄目だ。きっと駄目だね。あー駄目だ」

メティス「そ……うかも、知れないけど……」

鳴上「こらこら、いじめるんじゃない」

綾時「きっと君達は忙しいから僕と悠と有里君の三人で行くことになるんだよ。それで友情と愛情を深め合って……」

ラビリス「愛情もなん?」

綾時「あのね、世の中にはボーイズ……」

鳴上「やめろ!背筋がぞくっとした!」

鳥海「毎度毎度そこうるさい!黙んなさい!」



951 ◆e8lME0lo0A2012/09/14(金) 00:03:46.37wc9W8BGLo (3/10)

>……。

有里「里帰り?」

鳴上「里じゃないんだがな。お前も良かったらどうかなって」

有里「ああ……いいねぇ」

>湊が皆とどんな仲なのか、その表情でわかった気がした。

鳴上「行くか?」

有里「うーん、行きたいのは山々なんだけど。状況が状況だからね」

鳴上「それなんだが……綾時から一つ策をもらってな」

有里「?」

鳴上「湊に協力してもらえばできるって言うんだがな……」

有里「詳しく」

鳴上「まず桐条さんにだな……」

>……。


952 ◆e8lME0lo0A2012/09/14(金) 00:04:17.03wc9W8BGLo (4/10)

風花「桐条先輩ですか?お忙しい所すみません。あの、実は有里君から……」

>電話している風花に向かって手を合わせて頭を下げた。

>困ったような笑顔で大丈夫とジェスチャーを返してくれる。

風花「ええ、プライベートではなく業務連絡だそうで。はい、替わりますね。有里君」

>湊の顔が白く固まっている。

>恐らく、自分の意に沿わずこの策を取るのが嫌なのだろう。

>気持ちはわかる……が、俺達の夏休みのためだ。

>なんとか頼む……。

有里「あ、替わりました。はい、すみませんわざわざ……どうしても聞いてもらわないといけない話なので」

>ため息を挟む。

有里「夏休み、なんですよ。いや、勿論僕でなく……はい。彼が、ですね、あの、八十稲羽に……」

風花「ねぇ」

>風花が小声で話しかけてくる。

鳴上「なんですか?」

風花「有里君を使うって、誰が思いついたの?鳴上君?」


953 ◆e8lME0lo0A2012/09/14(金) 00:04:58.70wc9W8BGLo (5/10)

鳴上「綾時ですよ。湊なら大丈夫だろうって。ほら、今一生懸命……本当に一生懸命俺達の旅行を勝ち取ろうと……」

>湊は時折こちらを見てくるが、その目線はまるでその昔CMに出ていたチワワのような……

有里「そこをなんとか……え?ええ……あの、今、あ、はい……桐条せんぱ……美鶴なら、わかってくれると思って」

風花「……呼び方変えた」

鳴上「頑張れ……!頑張れ……!」

有里「うん、うん……そうだね、約束する。帰って来たらね。ん?……ええ!?」

風花「何か言われたみたい」

鳴上「湊、お前ならいける……!」

有里「あー……了解しました。それじゃ伝えておきます。はい、お疲れ様です。……ありがとう、美鶴」

風花「しれっと言って……」

鳴上「切ったぞ……」

>湊は何の反応もしない。

>……数秒の沈黙の後、黙って親指を立てた。

鳴上「湊!」

有里「何か騙してるみたいですごく気が引けた……媚びるのは得意じゃないんだよね」


954 ◆e8lME0lo0A2012/09/14(金) 00:05:29.87wc9W8BGLo (6/10)

鳴上「悪かったな。けどよくやってくれた」

有里「夏休みを有意義に過ごす為の一大ミッションだからね。僕のミスで君達の夏休みを棒に振るわけにもいかないし」

風花「おめでとう、二人共。いつから行くの?」

鳴上「向こうの皆と連絡取って決めますよ。あ、何日取れた……?」

有里「まるまる一週間。流石にこれ以上はいろいろまずいみたい」

鳴上「一週間か……いや、十分だ。ありがとう」

有里「半分は僕の為だし、お礼なんていいよ。その前に期末テストでしょ?」

鳴上「もう乗り越えたようなもんだ。いや、良かった……」

>湊のおかげで夏休みに八十稲羽に行く約束は守れそうだ。

>期末テストを滞り無く終わらせたら八十稲羽だ……。

>皆と相談して予定を決めなければ。

>……。


955 ◆e8lME0lo0A2012/09/14(金) 00:07:02.81wc9W8BGLo (7/10)

>翌日、八十稲羽。

陽介「期末テストは確かにダルい。だが終われば夏休みだ!」

完二「っるせーなー。真面目に勉強してんだから邪魔すんなよ」

りせ「そうだそうだー!」

直斗「巽君はともかく、久慈川さんは手が進んでませんよ。ほらこっちの問題」

千枝「鳴上君もいないし、有里君も帰っちゃったし、勉強見てもらうのも心苦しいねぇ」

雪子「私なら平気だから、ちゃんと問題解こう?それに……二人共、そろそろまた会えるかも」

>雪子が携帯を取り出す。

千枝「へ?何で……ええー!?」

雪子「さっきジュース買いに行った時にメールチェックしてたらこんなの来てたの。ふふっ」

『差出人:鳴上君
 件名:夏休みだな
 本文:そっちはどうしてる?やっぱり忙しいか?
    こっちはなんとか都合がついたから、湊と一緒に一週間は滞在できる事になった。
    そっちの皆がなるべく余裕のある時に行きたいから、良ければ予定を教えて欲しい。
    楽しみにしてる。』

千枝「ちょ、ちょっと待った!私には!?」

>千枝も携帯を取り出して、画面を見る。

>新着メール一件。

千枝「来てんじゃん!うわー、一番に気付きたかったー!」

陽介「マジ?相棒帰って来れるって?」

直斗「あちらは今大変らしいから、もしかしたら無理かもしれないと思っていたんですがね」

りせ「あれれー?嬉しくないの?」

直斗「……嬉しいです」

完二「こうしちゃいられねえ!テスト悪くて補習なんてなったらよぉ……」

陽介「うっわ!そうじゃん!やべえんじゃねえの俺ら!」

雪子「そうならない為にもがんばろー!」

>……。


956 ◆e8lME0lo0A2012/09/14(金) 00:08:06.05wc9W8BGLo (8/10)



【7/12→7/18 晴れ】


綾時「終わったねぇ」

鳴上「終わったなぁ」

ラビリス「……」

メティス「……」

ライドウ「あの二人は何故煙を?」

綾時「テスト、駄目だったんじゃないの?」

鳴上「勉強してる時間無いくらい忙しかったからなぁ」

鳥海「はーいお疲れー。楽しみにしてた夏休みが遠ざかっちゃって残念だったわねぇ。でももうすぐに夏休みだから安心しなさい!」

>歓声が沸き上がる。

鳥海「ったく調子いいんだから。一応夏期講習もあるから、進学組は受けといた方がいいわよー。そんじゃ、結果発表をお待ちください、と。じゃあねー」

綾時「さて、悠。予定はどうなった?」

鳴上「8月6日から一週間向こうだ。綾時は他に予定無いんだろ?」

綾時「失礼な。無いけど」

ラビリス「ウチも平気やで!」

メティス「私も!」


957 ◆e8lME0lo0A2012/09/14(金) 00:08:49.59wc9W8BGLo (9/10)

ライドウ「復活した……」

鳴上「一応、テストの結果次第だぞ。悪かったら講習受けないと」

ラビリス「それは酷ってもんやで……」

メティス「私、大丈夫かな……」

鳴上「明後日だったか、発表は。それが一学期最後の日だな」

綾時「まぁ僕らは心配無いでしょ」

ライドウ「……実は、英語は余り得意では無いんですが」

鳴上「教えただろ、文法」

ライドウ「響きがどうも……」

ラビリス「ま、とにかく週末までのお楽しみやな!」

メティス「ドキドキして2日も……私、壊れないかな」

>一学期末テストが終わった。

>発表がすぎれば夏休みだ。

>八十稲羽に行くまでの間に、事件が起きなければいいのだが……。

>今だけは、ただ祈るしかない。


958 ◆e8lME0lo0A2012/09/14(金) 00:11:44.98wc9W8BGLo (10/10)

わーい夏体みだ

では、また明日。


959VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2012/09/14(金) 09:53:06.273Rg4sBlE0 (1/1)

乙休み

リアルじゃ終わったトコだけどww


960VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2012/09/14(金) 23:31:16.75N5yTCDGFo (1/1)

ハム子出た意味あるの?


961 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:42:45.21+0vm6ijHo (1/15)



【7/20 晴れ】


>午前の授業が終わった。

男子「おい、試験結果出たってよ!」

>教室に飛び込んできた男子生徒がそう言ったのを皮切りに、生徒たちは職員室前に向かった。

綾時「来たねぇ」

鳴上「俺達も見に行くか?」

綾時「んー、正直あんまり興味無いかも」

ライドウ「いつ見に行っても結果は同じですからね」

鳴上「まぁそうだな。メティス……あれ」

ライドウ「ラビリスさんとメティスさんならさっき既に走って行きましたよ」

綾時「ありゃ、行動早い」

ライドウ「なんでも、『ウチにそんな余裕あらへん!あんたらとは違うんや!』だそうです」

鳴上「相変わらず細かい仕草が妙に上手いな」

ライドウ「探偵ですから」

綾時「探偵ってすごいんだねぇ。あ、帰って来たんじゃない?」



962 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:43:12.07+0vm6ijHo (2/15)

>ラビリスとメティスが浮かない顔で戻ってきた。

鳴上「おかえり。どうだった?」

綾時「その顔からすると、駄目だったのかな?」

ラビリス「いや、うーん……なぁ?」

メティス「え?うーん……」

ライドウ「一概に駄目だった訳ではなさそうですね」

ラビリス「順位としてはな、補習はいらん順位やってん」

メティス「ただ、丁度平均くらいだから……夏期講習は受けた方がいいのかなって」

鳴上「そうか。でも二人共進学するわけじゃないんだろ?」

メティス「それはそうだけど?」

鳴上「だったら本人の意思次第じゃないか?別に強制ってわけじゃないんだし」

>二人の顔がぱっと輝いた。

ラビリス「せやんな!いやー良かった!あ……この事、美鶴さんには内緒にしといてな?」

鳴上「何でだ?」

ラビリス「いや、普段から任務で学業を疎かにさせてしまって申し訳ない、せめて夏期講習は出られるようにしておこう!とか言いそうやし」

>確かに言いそうだった。



963 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:43:42.63+0vm6ijHo (3/15)

綾時「これで心置きなく夏休み迎えられるね」

メティス「良かった……あ、三人の名前も見つけたよ」

ライドウ「ほう。何位でしたか?」

ラビリス「下から綾時、ライドウ、悠やな。綾時は上から三分の一くらい、ライドウはトップ10入りやで」

綾時「あれ?思ったより低い」

ライドウ「勉強した甲斐のある位置ですね、良かった」

鳴上「それで、俺は?」

メティス「……一番上」

鳴上「……そうか」

>良かった。

>前回のテストは不本意な結果に終わったから、今回さり気なく勉強していたのだが、どうやら実ったようだ。

綾時「とりあえず学力に関しては心配無く夏休みだね」

鳴上「だな。午後が終わったら旅行の準備しないと」

ライドウ「確かまだ二週間ほど先では?」

綾時「気が逸ってる感じがすごいね。そんなに楽しみ?」

ラビリス「あ、ウチも!ウチも一緒に行く!」

メティス「買い物だったら私も行きたいな」

鳴上「それじゃ、一旦帰ってから買い物に出るとしようか。最後までちゃんと出てからな」

>放課後、三人で買い物に回る事になった。

>今日で、いろいろあった一学期が終わった。

>……。


964 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:44:09.52+0vm6ijHo (4/15)

ラビリス「とは言え、別に持っていくもんとか無いんよなぁ」

メティス「私たちは身一つでもどこへでもいけるしね」

鳴上「羨ましいな、そういう所は。って言っても、俺も結構物置いてきてるからあんまりいらないんだけど」

ラビリス「ほな気合い入れて来る事も無かったんやなぁ。なんや拍子抜けやわ」

メティス「あ、でも私は買いたい物もあるし」

鳴上「そういえば、お前達はどこからお金出てるんだ?やっぱり桐条さんか?」

ラビリス「せやで」

メティス「お小遣い制なの」

鳴上「こ、小遣い制……」

ラビリス「あ、けど月額ちゃうねんで?歩合制やねん」

鳴上「歩合?何のだ?」

メティス「悪魔一体につき100円」

鳴上「悪魔一体って……それで毎晩走り回ってるのか」

ラビリス「一晩で平均5000円くらいやなぁ」

鳴上「それ、かなりの額になってるんじゃないか」

ラビリス「どのくらいからかなりなんかわからんけど、まぁ月30万くらいは……」

鳴上「バイトじゃ済まない額だな……」


965 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:44:41.38+0vm6ijHo (5/15)

メティス「それで、使う事も無いからどんどん貯まっちゃって。今大体ひゃく……」

鳴上「待て、それ以上言わないでくれ。何か辛くなってきた」

ラビリス「悠も美鶴さんに言うてみたらええやん?」

鳴上「いや、俺は普通にバイトとかするし……」

メティス「最初は私達もいらないって言ったんだけど、君達が友達と遊ぶ時に手持ちが無いでは辛いだろう、って」

鳴上「……そっか」

ラビリス「ありがたいけど、使わんかった分はその内返そ思てんねん。見返りほしさに働いてるわけちゃうしな」

鳴上「立派だな」

ラビリス「そうしてみぃ言うたんは悠やで?もう忘れてるかもしれんけど」

>そういえば、以前ラビリスにそんな事を言ったような気がする……。

ラビリス「うわ、ホンマに忘れてたんかいな!もー、あれで結構考え方変わったりしたんやけど?」

鳴上「い、いやちゃんと思い出したぞ。大丈夫だって」

メティス「何の話?」

ラビリス「内緒ーや。な?」

鳴上「ん?あ、ああ……」

メティス「むぅ……」



966 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:45:21.09+0vm6ijHo (6/15)

ラビリス「あー……そや。日用品は別にいらんけど、服とか買いたいかも」

メティス「服?どうして?」

ラビリス「いや、メティスも一緒やろ?ウチら制服以外持ってへんやん」

メティス「あ……そういえば、そうかも」

鳴上「寮じゃ何も着てないもんな。慣れたけど……」

ラビリス「せっかくお出かけするんやったら、おしゃれして行きたいやん!」

メティス「おしゃれ……私もしたい」

鳴上「それなら二人で見てきたらどうだ?ラビリスも一緒なら例の……なんだったか」

ラビリス「ああ、ちゃんと人肌に見せられるで。着替えても安心やな」

メティス「あの、良かったら鳴上君も……」

鳴上「俺?俺は服はいいよ。買い足したい日用品と、ちょっとしたおみやげくらいかな。見終わったらまた集まろう」

ラビリス「……へいへい」

メティス「……はぁ」

鳴上「?」

>ラビリスとメティスと二手に別れて買い物をする事になった。


967 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:46:02.98+0vm6ijHo (7/15)

鳴上「ええと……あと陽介に……ナースか」

>さて、どうやって購入したものか。

>堂々としていればバレないだろうか?

刹那「おお?鳴上か。どうした、本屋の前で」

>やたら聞き覚えのある声がした。

鳴上「あ、刹那さん。……刹那さんならいいかな」

刹那「なんだよ、何か隠し事か?」

鳴上「ええと……まず説明しますと、刹那さんに声がそっくりな友人がいてですね」

刹那「声ぇ?なんだそりゃ」

鳴上「今度そいつに久しぶりに会うんで、土産でも渡そうかと」

刹那「本屋って……そいつんとこの本屋でも買えんだろ」

鳴上「まあそうなんですが……実は、その……健全な男の子ならきっと持っているであろう類の本でして」

刹那「あぁ?……あぁ。いや、お前買えないだろ」

鳴上「ええ、ギリギリで。それでどうしようかなと」

刹那「そうか、頑張れよ。じゃ!」

鳴上「ちょっと待ってください」

>刹那の襟を引っ掴んで止めた。

刹那「ぐぇ!なんだよ、俺関係ないだろ?」

鳴上「似た声のよしみでお願いしたいんです、代理購入を!」

刹那「お前だったら大丈夫だって、堂々としてればさ!」

鳴上「ナース物を買う男だと思われたくないんです……」


968 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:46:37.73+0vm6ijHo (8/15)

刹那「……そいつ、ナース物が好きなのか」

鳴上「らしいです……」

刹那「そうか……仕方ねえな!」

>刹那の目が欄と輝く。

刹那「ナース好きと聞いちゃ黙ってられねえよ。俺に、任せとけ……!」

鳴上「刹那さん……!」

>刹那はずんずんと本屋の奥に入っていく。

鳴上「頼りになる人がいて良かった……陽介も満足するだろう」

>レジを通過し、無事に帰って来た。

鳴上「すみません、手間かけさせて。あの、お金は……」

>本屋の袋に包まれた、数冊の本を手渡される。

刹那「いらねえよ。その友達に言っといてくれ。お前は良い趣味してるぜ、ってな」

鳴上「は、はい。ありがとうございました!」

>刹那は手を振って去っていく。

>あれが、男の背中か……。

>『No.15 悪魔 甲斐刹那』のランクが3になった。

>そろそろあの二人も買い物を終えただろう。

>合流するか。

>……。


969 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:47:04.98+0vm6ijHo (9/15)

メティス「何買ったの?」

鳴上「ん、本をな」

ラビリス「悠、おみやげ買うんちゃうかったん?」

鳴上「立派なおみやげさ。服は買ったのか?」

ラビリス「何着か可愛いのあったで!」

メティス「ちょっと買いすぎちゃった」

鳴上「そりゃ良かった」

ラビリス「どうや?楽しみ?」

鳴上「何がだ?」

メティス「姉さん、鳴上君は……」

ラビリス「いいや!ここは引かへん!どんだけにぶちんでも気付くようにはっきり言うたる!ウチらが可愛い服着てるの見るの、楽しみかって聞いてんねん!」

>ラビリスはすごい剣幕でそうまくし立てた。

鳴上「そ、そりゃ楽しみだよ。楽しみにしてる」

メティス「本当?」

鳴上「本当だって。可愛い子が可愛い服着るんならそりゃ楽しみだろ」

>思わず本音を口走ってしまった。

>まずい、と思って二人の顔色を窺うと、何故か二人共にやけていた。

ラビリス「えへへ、しゃあないなぁ。そない言うんやったらちゃんと見せたるわ」

メティス「可愛い……ふふふ。あのね、こういうの買ったんだけど……」

鳴上「いや、別に今見せなくていい!大丈夫だから!」

>それからしばらく、メティスとラビリスに洋服を自慢され続けた……。

>『No.08 正義 ラビリス』のランクが4になった。

>『No.12 刑死者 メティス』のランクが7になった。

>……。


970 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:47:49.34+0vm6ijHo (10/15)

ラビリス「あの襟んとこにフリルがあるん可愛かったよなぁ」

鳴上「買えば良かったのに」

メティス「姉さん、自分には似合わないって結局買わなかったの」

鳴上「そんな事無いと思うけどなぁ」

ラビリス「んもう!褒めたってなんもでぇへんよ!」

鳴上「思ったままを言って……あれ?」

>寮の前に天田が立っている。

天田「あ、先輩。おかえりなさい」

鳴上「ただいま。どうした、そんな所に立って」

天田「いえ、一番にお知らせしようと思ったんですけど……」

>天田はため息をついた。

鳴上「お知らせって、何を……?」

>視線を感じる。

>寮の窓からだ。

>あれは……美奈子?

天田「……手遅れみたいですね。入ったら、多分わかると思いますよ」

>不思議に思いながら寮に入る。


971 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:48:46.60+0vm6ijHo (11/15)

鳴上「別に何もないけど」

天田「あれ、見てください」

>あれ……?

>天田が指差した先には旅行カバンが一つ置いてある。

鳴上「誰か来てるのか?」

美奈子「来てるんじゃない、行くんだよ!」

>二階から美奈子が降りてきた。

>やはり、さっき覗いていたのは美奈子だったようだ。

鳴上「これ、美奈子のか。行くってどこへ行くんだ?」

美奈子「八十稲羽」

鳴上「……へ?」

美奈子「だから、私も一緒に行く!」

>……ええと。

>俺、綾時、メティス、ラビリス、湊。

>さらに美奈子……?

>随分と大所帯だ。

鳴上「いや、行くはいいんだが。こっち大丈夫なのか?流石にそれだけ抜けたら……」

美奈子「美鶴先輩に聞いたら鳴上がいいって言ったらいいって」

鳴上「あー……」


972 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:49:22.33+0vm6ijHo (12/15)

>天田が袖を引っ張る。

天田「本当はまずいんですよ、流石に。一応皆さんいない時は真田先輩達が帰って来てくれる事になってるんですけど……人手が」

鳴上「凄く断りづらいんだが」

天田「なんだか旅行とか大好きみたいで。桐条先輩も勢いに押されて断りきれなくて。なんで、先輩が最後の望みなんですよ」

美奈子「ちょっと、何コソコソお話してるの?ねえ悠、行ってもいいでしょ?」

鳴上「……えーと」

>既に準備を済ませている事から考えても、本当に楽しみなのだろう。

鳴上「ちょっと、大所帯すぎるというか……」

美奈子「私ひとりくらい大丈夫!」

鳴上「……あの、悪いけど今回は」

美奈子「行ってもオッケー?」

>駄目だ、止められそうにない。

>どうしたものかと頭をひねっていると、湊も降りてきた。

有里「美奈子、あんまり無茶言っちゃ駄目だよ」

美奈子「えー、湊は行くんでしょ?そんなのずるい!」

有里「仕方ないなぁ。だから、僕らといけない代わりに……」

>湊が何か耳打ちしている。

>最初不満気だった美奈子も、最後には満面の笑みに変わっていた。


973 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:50:22.11+0vm6ijHo (13/15)

美奈子「さっすが湊!やるじゃん!」

有里「どーも。悠、話ついたから」

鳴上「あ、ああ。ありがとうな。どうしたもんかと思ったよ」

有里「あ、その代わり……アイギスも連れて行く事になったから」

鳴上「何?」

有里「後ろの二人の保護者だって」

ラビリス「なんや、ウチの方がお姉ちゃんやのに」

メティス「アイギス姉さんも一緒……そのほうがいいよ、うん」

鳴上「まぁ、いいか……」

>友達に会いに八十稲羽に行くだけのはずだったのに、気付けば大所帯での旅行になってしまった。

>何となく不安なのは何故だろうか……。

>やらかさないと良いが。


974 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 00:52:13.88+0vm6ijHo (14/15)

男の友情はしょーもない事で上がる。

では、また明日。


975VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2012/09/15(土) 02:40:26.23SQTU+rhno (1/1)

乙ーせっちゃん…あんた漢だぜ!


976VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/15(土) 07:02:13.06DqPWnhLco (1/1)

ハムラビティスはかわいいなぁ


977 ◆e8lME0lo0A2012/09/15(土) 22:20:39.51+0vm6ijHo (15/15)

今週から土日お休みを制度にしたいと思います。
昨日言っておこうと思ってたのに忘れてた……。
投下は月~金になります。

では、また来週。


978VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/16(日) 01:06:16.02oQSSfh2Z0 (1/1)

了解


979 ◆e8lME0lo0A2012/09/18(火) 00:02:04.26KDJLN0lgo (1/7)



【7/21 晴れ】


>買い物も終わったし、後は出発まで特にやる事は無い。

>ただ、かなり大人数を連れて行く事になったから、それまでに出来るだけの事はやっておきたい。

鳴上「とはいえ昼間はやる事も無いな……ああ、そうだ」

>不在の間世話になるだろう人達に挨拶に行っておこうか。

鳴上「山岸さんと天田はいつでも会えるから、週末の方が会いやすい人からだな」

>携帯を取り出して、電話をかけた。

>……。

鳴上「えーと……あ、いたいた」

>クラブ、『エスカペイド』。

>開店前の店内で藤堂は待っていた。

藤堂「よう。挨拶周りか」

鳴上「ええ、一週間程こっちにいないんで……」

藤堂「聞いてるよ。まぁお前がいない間の事は任せろよ」

鳴上「すみません、俺のために」


980 ◆e8lME0lo0A2012/09/18(火) 00:02:33.32KDJLN0lgo (2/7)

藤堂「いや、お前のためってわけでもない。ほっとくわけにもいかんだろ?」

鳴上「でも、俺が休みたい為に大きい穴開ける事になったんで、やっぱり」

藤堂「んー、俺らは違うけど、お前らは学生だろ?学生はちゃんと休みも取らないとな。社会に出たら無いぞ夏休み」

鳴上「あ、日本は特に無いっていいますよね」

藤堂「んだなぁ。俺は普通の会社勤めじゃないから仕方ないけど、しっかりした会社でも夏休み3日とかザラだろ」

鳴上「そう考えると、学生って楽ですよね」

藤堂「楽かどうかは考えようだ。今日日、夏休みだって勉強漬けだったりするしな」

鳴上「それはそうですけど」

藤堂「それに、仕事はやればやった分見返りがあるからな。そういう風に考えたら報われるかどうかもわからない事に時間費やす方が辛くないか?」

鳴上「ああ……それもそうかもしれませんね。藤堂さんって何か、視野が広いっていうか。いろんな目線から喋りますよね」

藤堂「お前の周りにはそういう大人はいなかったか?」

鳴上「俺の周り……?」

>……両親、堂島さん……。

鳴上「あまり、いなかったかもしれません。皆尊敬できる人ですけど、タイプが違うというか」

藤堂「なるほどな。先輩方は自分の事で必死だしなぁ。俺はそういう時期過ぎたからちょっと変わって見えるのかもしれないな」

鳴上「やっぱり旅をしたりすると性格も変わりますか」

藤堂「いろいろやったからなぁ。人生って何だ?みたいな、今考えると答えなんて無い事を探してたし」



981 ◆e8lME0lo0A2012/09/18(火) 00:03:18.60KDJLN0lgo (3/7)

鳴上「哲学的ですね」

藤堂「もっと哲学的な事を言うとだな、人は皆俺と同じ旅をしてる。それを人生って呼ぶんだ。意味を探すことを」

>以前、テレビの中で同じような事を言ったのを思い出した。

>人生の意味を知る為に生きる……。

藤堂「……何か飲みながら話すか。店長、冷蔵庫開けますよ」

>奥に居た男性、あの人が店長なのだろう。

>こちらを見ると一言「払えよ」、とだけ言った。

藤堂「コーラでいいか?」

鳴上「あ、はい。店長さんとは……?」

>炭酸の弾ける音がする……。

藤堂「常連なんだ、俺。なんか気に入られちゃって」

鳴上「なるほど。藤堂さんって、そういうところありそうですもんね。誰にでも気に入られるというか、いろんなところに入り込めるというか」

藤堂「それも一種の処世術だな。人と仲良くするコツは、心に仮面を被せる事だ。俺達風に言うならペルソナか?」

鳴上「心に仮面を……?」

藤堂「簡単に言えば自分を偽る事だな。相手に合わせていろんなやり方をすればいい」

鳴上「でも、それじゃ本当に仲間とは言えないんじゃないでしょうか」

藤堂「そうだな、そうかもしれない。けど、世の中の全ての人と仲良くなる事って可能か?」

鳴上「それは……」


982 ◆e8lME0lo0A2012/09/18(火) 00:03:46.86KDJLN0lgo (4/7)

藤堂「俺は不可能だと思う。だからこそ、心を覆わずに接する事のできる相手っていうのが本当の仲間で、大事な友達なんだと思うよ」

鳴上「そうですね、確かにそうです」

藤堂「俺にとってはお前もそのひとりなんだがな」

鳴上「え?」

藤堂「はは、前に言っただろ。お前のことは気に入ってるんだ。……そんなお前に、人生の先輩から忠告だ」

>藤堂は軽く笑った後真顔になった。

藤堂「お前はこれから、自分の人生について考えろ。他人は後回しでいい」

鳴上「よく、意味がわかりませんが」

藤堂「人の事を考える前に自分の事を考えろって言ってるんだ。お前はきっと誰かの幸せの為に身を滅ぼす事になる。それも遠くない将来だ」

鳴上「……それは、いけない事なんでしょうか」

藤堂「いけなかないさ。ただ、それでお前がどうにかなっちまうのが嫌なんだよ、俺は」

鳴上「以前も別の誰かにそんな事を言われたような覚えがあります」

藤堂「お前がそれに抵抗を持ってるってのもわかる。俺達は、人の役に立ちなさいって教えられて生きてきた。けど、それも限度がある。……度を越した献身は、他の誰かにしわ寄せが行くんだ」

>藤堂は苦い顔をしている。


983 ◆e8lME0lo0A2012/09/18(火) 00:04:25.44KDJLN0lgo (5/7)

>多分、言いたくないのだろう。

>自分がそんな事を言う人間だと思われたくないのか、あるいは……本当はもっと上手く言えたはずだ、と悔いているのか。

鳴上「忠告、ありがとうございます。ちゃんと覚えておきます」

藤堂「そうしろ。いや、忘れててもいい。瀬戸際で思い出して、お前がお前の為に生きる道を見つけてくれればいい。余計なお節介だろうけどな」

鳴上「藤堂さんの言う事は、不思議と反発せずに聞けるんです。よければこれからもお節介をよろしくお願いします」

>藤堂は驚いたような顔をして、それから笑った。

藤堂「おう、任せとけ」

>『No.04 皇帝 藤堂尚也』のランクが3になった。

>……。

>まだ挨拶する相手は残っているが、今日は他には都合がつかなかった。

>明日か、あるいはそれ以降に挨拶に行く事にしよう。

>そう思って寮に戻ってきたら、寮の前に美鶴がいた。

鳴上「あれ、桐条さん。いらしてたんですか」

美鶴「ああ、鳴上か。お帰り。丁度良かった、直接話しておくぞ」

>俺はつい身構えてしまった。

>また何か事件が起こったのかと思ったのだ。


984 ◆e8lME0lo0A2012/09/18(火) 00:04:53.53KDJLN0lgo (6/7)

美鶴「そう構えるな。何か事が起こったわけではない」

>美鶴はくすくすと笑った。

美鶴「君も旅行に行くそうだが、それとは別枠に我々も旅行に出る事にした。普段の慰安も兼ねて、寮の面々や元課外活動部員で行くつもりなんだが……」

鳴上「なんだが?」

美鶴「君も呼ぶべきだと美奈子に強く推薦されてな。良ければ一緒にどうだ」

鳴上「え、俺もですか。その間街は……」

美鶴「……君達に休暇を許した事を聞いて美奈子が拗ねてな。課外活動部外の人達に任せる事にした。とはいえ長い間空けるわけにもいかないから、二泊三日が限度だが」

鳴上「あ、そうですか。……ちなみにどちらへ」

美鶴「屋久島に私の別荘がある」

鳴上「屋久島……良いなら行きたいです」

美鶴「そうか。なら急いで準備しろ。出発は月曜だ」

鳴上「月曜?明後日ですか。えらく急ですね」

美鶴「美奈子が余りに騒ぐからつい……どうも私はあの子には弱いようだ」

>湊にもな、と思ったが、勿論口には出さない。

鳴上「わかりました、それじゃお供します。今日はその話で?」

美鶴「ああ。それと……いや、なんでもない。では明後日迎えをよこす。またな」

>……多分、湊に会いに来たんだろうな。

>いろいろと理由をつけて。

>なんだか知らないが少し悔しかった。


985 ◆e8lME0lo0A2012/09/18(火) 00:07:19.82KDJLN0lgo (7/7)

美奈子ちゃんのゴネ得作戦大成功。

ちょいと短めの更新。
そろそろこのスレも終わるので次スレに行きたいと思います。
こっちのスレでは本編投下は以後ありません。おまけくらい。
明日の投下前に次スレ貼るので待っててね。

では、また明日。


986VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/18(火) 03:09:18.69Q9gxLz5L0 (1/1)


そろそろ次スレの季節かな


987 ◆e8lME0lo0A2012/09/19(水) 00:02:05.99qWwLXxcho (1/8)

鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」ゴールデン 2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347980481/

新スレが立ちました。良かったら次もお付き合いください。


988 ◆e8lME0lo0A2012/09/19(水) 00:02:40.24qWwLXxcho (2/8)

おまけ。

有里「なんだか不思議な縁を感じるので皆さんに集まってもらいました」

藤堂「おー」

美奈子「いぇーい」

舞耶「ひゅー」

達哉「……?」

鳴上「集まったのは良いが、何を……?」

有里「いや、ほら。せっかく勢揃いなわけだからさ」

達哉「な、何が勢揃いなんだ?」

美奈子「そりゃ歴代主人公でしょ」

舞耶「皆まだ気付いていないのね?ここがメタ空間だという事に……」

藤堂「め、メタ空間!」

有里「要するになんでもアリって事だね」

鳴上「そうなのか……え、ええと。その、よろしくお願いします先輩方」


989 ◆e8lME0lo0A2012/09/19(水) 00:03:31.57qWwLXxcho (3/8)

達哉「そうか、それで俺も高校の時の体なんだな」

舞耶「私も十年は若返った気がしてたけど本当に若返ってたのね」

有里「僕らはあんまり変化無いね」

美奈子「まぁ、体はね」

藤堂「俺なんか15年は若返った気分だ」

鳴上「……一年じゃ何も変わったように思えないな」

有里「とにかく、そういうわけなんでそれぞれ思ってた事を語ってください。以上」

美奈子「ああ、湊がぐったりしてる……」

鳴上「一瞬とはいえあいつに仕切りは無理だったか……」

有里「基本的には無感動でどうでもいいが口癖のダルい系主人公だからね……」

藤堂「えー、じゃあ一個言っていいか」

達哉「先輩か。どうぞ」

藤堂「あのさ……鳴上幸せ過ぎじゃないか」

有里「確かに」

美奈子「確かに」

達哉「確かに」

舞耶「そ、そんな事ないでしょ?」

鳴上「何で即答なんだ、皆……」


990 ◆e8lME0lo0A2012/09/19(水) 00:04:08.58qWwLXxcho (4/8)

藤堂「いや、俺は別にそこまで酷い事にはなってないんだけど」

有里「死にます」

美奈子「死にますね」

舞耶(私は別に何とも無いから流石に何も言えないわね……)

鳴上「それは……それはお前達が自分で選んだ道だろ?納得してるんじゃなかったのか」

有里「そりゃ納得してるけどさ。後輩が君だからね」

美奈子「なんというリア充生活……」

鳴上「生活に関してはお前達だって同じようなもんだろう!」

有里「……何の事かわからないな」

藤堂「周りの女次々落としてったって聞いたぞ」

美奈子「うわ……湊怖い……」

鳴上「いや、美奈子も周りの男子次次落としてたんだろ」

美奈子「それは仕方ないよ、だってあっちからくるし……」

舞耶「待って皆、タッちゃんが変」

鳴上「うわ……罪リメイクのポスターみたいな顔してる……」

藤堂「ど、どうした周防。何かあったのか」


991 ◆e8lME0lo0A2012/09/19(水) 00:05:30.33qWwLXxcho (5/8)

達哉「俺……最終的に誰もいない世界で生きていかなきゃならないんだけど……しかも別にリア充もしてない……」

舞耶「だけど、リサちゃんがいるじゃない!」

達哉「罰じゃ覚えてるのは俺だけだし!会えない!」

舞耶「ルートによっては会えるでしょ!」

鳴上「……俺、恵まれてたんだな」

達哉「ああ……俺だって彼女何人も作ったり友達と放課後集まったりしたかったよ」

藤堂「俺もだ……」

舞耶「え、鳴上君って彼女何人も作ってたの?」

鳴上「いや、ルートによっては……」

美奈子「ひどーい、さいてー」

有里「君は彼氏何人もいたよね」

藤堂「お前も彼女何人もいただろ」

達哉「藤堂さんも何人にも慕われてたじゃないですか」

藤堂「そうなのか!?」

舞耶「あ、あの人っていうのが藤堂さんなのね。だったらかなり……」


992 ◆e8lME0lo0A2012/09/19(水) 00:06:04.02qWwLXxcho (6/8)

藤堂「……時間って、戻らないかな」

達哉「あれ、そう考えると何も無いのって俺だけ……」

舞耶「私がいるじゃない。駄目?」

達哉「舞耶姉は……女子高生じゃない……」

舞耶「ちょっと、それ聞き捨てならないわよ」

鳴上「何だか申し訳なくなってきた」

有里「まぁ心配しなくても、悠はきっとひどい目に遭うよ」

美奈子「あ、それ私も思った。流れがそんな感じだよね」

鳴上「待て、なんだそれは」

藤堂「確かにそんな電波を受信したぞ」

舞耶「電波はやめて」

達哉「青春したかった……」

鳴上「結局何だったんだこの集まり」

有里「さぁ……とにかく君が恵まれてるって事じゃない?」

美奈子「そーねー」

鳴上「それでどうしろっていうんだ。地獄めぐりでもすればいいのか」

藤堂「お、いいなそれ」

達哉「俺と同じかそれ以上な目にあってほしい」

舞耶「それはちょっと難しくない?」


993 ◆e8lME0lo0A2012/09/19(水) 00:12:49.36qWwLXxcho (7/8)

有里「でも多分痛い目見るよ」

美奈子「理不尽に耐えてこそアトラス主人公って誰かも言ってたしね!」

鳴上「何なんだその酷い話は!」

舞耶「世の中には東京が死んでから生まれる人だっているのよ!」

鳴上「と、東京が死ぬ!?」

有里「とにかくそういうわけだから。君はきっと酷い目に遭う。遭わされる。間違いない」

鳴上「何で俺ばっかり!」

>……?

鳴上「あれ、ここ……」

>ベッドの上だ。

天田『ちょっと、どうかしたんですか』

>天田が扉を叩きながら言う。

鳴上「あ、いや……夢見が悪くてな」

天田『……大丈夫ですか?まぁ、いいですけど……心配になるんで、なるべく静かに寝てください』

鳴上「悪かったな、起こしちゃって」

天田『いえ。それじゃ失礼します』

鳴上「……変な夢だったな」

>最早おぼろげにしか覚えていないが、理不尽なことを言われた気がする。

鳴上「っと、早く寝直そう。睡眠時間は……大事だ……」

>……。


994 ◆e8lME0lo0A2012/09/19(水) 00:13:49.60qWwLXxcho (8/8)

鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」ゴールデン 2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347980481/

もっかい宣伝。
次はこちらになりまーす。
鳴上君は本当に恵まれてると思うから、これから酷い目に遭えばバランスが取れますね。

では、また明日……次スレで。


995VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2012/09/19(水) 01:14:22.29NyK6rQXQo (1/1)

乙ーうめてやるー


996VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/19(水) 01:25:32.59Di/rMo/1o (1/1)

そしてそれを乗り越えるのも番長。


997VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/19(水) 10:22:30.28T9Y5XE5Q0 (1/1)


確かに番長は恵まれてるよなあ


998VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2012/09/19(水) 14:57:30.82+rRO4tYAO (1/1)

歴代主人公…あれ?アイギスは(ry


999VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/19(水) 16:27:13.26sQYTvEMIO (1/2)

うめー


1000VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/09/19(水) 16:28:08.76sQYTvEMIO (2/2)

1000