292VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/29(日) 01:45:14.83hep8fQpSO (20/29)

 ――

さて、あの食事の場に『もう一人』いない者がいるのに気付いたろう。

その人は何をしていたか、少し時計を進めよう。


 同日、夕刻……


   バサバサ…


ムント「ハヒィー… 疲れましたわい」


そう、居なかったのは『ムント』である。


彼は今、対シケリペチムに向けた同盟國を探し
トゥスクル周辺國を飛び回っている。


ムント「先の『クッチャ・ケッチャ國』との交渉は上手くいきませんでした…」

   「ですが、世の中のため! このムント、
    なんとしても周辺國との交渉を成し遂げてみせましょう!!」


ムント「そろそろ次の國に行かなくては!」

   トゥ! バサバサ…

使命に燃えるムント。
この情熱を彼の教え子であるカミュにも見習って欲しいものだ。


そして、熱にあてられたのは彼だけではない。

その日から戦いの火種が本格的に紅く輝きはじめてしまった。


『憎しみ』という火が新たな戦の幕を開ける。




293VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/29(日) 01:47:06.76hep8fQpSO (21/29)

 ――

 ~ クッチャ・ケッチャ 移動式皇都 ~


「やはり… やはり生きていたのか『ラクシャイン』!!」

「わざわざ西のシケリペチムにまで出向いて正解であった!」

「我が義弟にして裏切り者! あやつの情報をあの皇が知らせてくれるとは!」

「おまけに頼もしいお方が我等の味方となって下さった!」

「いよいよだ! 待っておれ『ラクシャイン』!」


   シャッ

「『オリカカン殿』、今宵はもう遅い。ゆっくりお休み下さいませ。
 外は某(それがし)が見張っておきますゆえ」


「おお、『トウカ殿』。かたじけない」


「ところで… よろしかったのですか?
 今朝方来たオンカミヤリューの使者を門前払いになどして……」


「トウカ殿! これを見て下され!」バッ


「こ、これは…同盟を結ぶ地が……」


「そう! あの『ラクシャイン』の居る『トゥスクル』!
 彼の地で儀が執り行われるのです!」

「おそらく近い内に儀がありましょう!
 その時、我等は他の國に警告せねばなりません!」

「『ラクシャイン』率いるトゥスクルに組してはならぬ…と!」

「ひいてはこれが我が國だけでなく、他の國の『義』の為であります!」

「トウカ殿! どうか今少しそのお力をお貸し下され!」


トウカ「承知しました、オリカカン殿」ペコリ

   「この『エヴェンクルガのトウカ』、『義』に従い、
    悪漢『ラクシャイン』を討つ手助けをさせて頂きます!」



第十話「海藻の味噌汁と干し魚」

  続く!


294 ◆M6R0eWkIpk2012/07/29(日) 01:49:32.05hep8fQpSO (22/29)

投下完了。>>273から今回のスタート。

オマケは日曜日の夜に投下するので、お待ち下さいませ。



295VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/07/29(日) 07:41:58.76jKHP/ckq0 (1/1)




………そろそろか


296VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/29(日) 08:30:26.18nHofP1OSO (1/1)




297VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/29(日) 20:54:48.69hep8fQpSO (23/29)


   キィン! キィン! キィン! キィン!

エルルゥ・ハクオロ「「うたわれるものらじお in・SS速報VIP!」」


エルルゥ「皆さん今晩は。司会のエルルゥです♪」

ハクオロ「同じく司会のハクオロだ」


エルルゥ「この解説オマケも3回目ですね」

ハクオロ「このコーナーに皆さんついてこれているだろうか……」

エルルゥ「それは脇に置いて…… ようやくファミリーが揃ってきました!」

ハクオロ「ああ。それぞれ魅力に溢れた者たちが集まったな」

    「そうそう。今日もゲストが来てくれている」


エルルゥ「…………女の子ですか?
     男でもベナウィさんとクロウさんはイヤです」


ハクオロ「いや、違うぞ。今日は『2人』だ」

エルルゥ「……まさかっ!」


ドリィ・グラァ「「お邪魔しま~す!」」


エルルゥ「……2人の絆で頑張りますっ! 書くもの書くもの…」

ハクオロ「エルルゥ。本家らじおを聞いた方しか判らないネタだ……」

(※『ドリィとグラァに挑戦しようのコーナー』のこと)




298VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/29(日) 20:58:10.26hep8fQpSO (24/29)


ドリィ「あ、それなんですが……」

グラァ「実はお土産があるんです」ヨイショ

エルルゥ「こ、これは……」

ハクオロ「再び姿を見せたか!」


エル・ハク「「『忌まわしき黄金ボックス』!!」」


  バァーン!

ド・グ「「コーナーの尺が余ったらどうぞ」」

エルルゥ「『らじお』っぽくなりました!」

ハクオロ「尺、余るのかなあ……」


 《 第七話 》

●インカラ…再度紹介。言いたい事を喋り、ベナウィに首を斬られた。


エルルゥ「あのシーンはベナウィさんの見せ場でしたね」

ハクオロ「そうだな。ベナウィの人物像が丸々詰まったシーンだった」

ドリィ「若様の見せ場はいつ来るかな?」

グラァ「……そもそも来るのかな?」


●ディー…オンカミヤリュー族の哲学士。詳細不明。


エルルゥ「オンカミヤリューは背中に大きな翼を持った部族です」

ハクオロ「その部族は『法術』という、特殊な力を使える」

グラァ「以前紹介された『四属性』の法術を一般術兵は使います」

ドリィ「術兵ってズルいよ。飛んでるし」


エルルゥ「この『ディー』って人は【こどものこ~ろのゆめ~は~♪】」

ハクオロ「【いろあせない~ らくがきで~♪】」

ドリィ・グラァ「【おもう~まま~ かきすべ~らせて♪】」

ハクオロ「【えがく~ みらいへと~ つながる~♪】」


エルルゥ「な、なんかご免なさい……」シュン

ハクオロ「つい、のってしまったこっちも悪かった……」

ド・グ「「反省してます……」」



299VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/29(日) 21:00:50.24hep8fQpSO (25/29)


 《 第八話 》


●ウルトリィ…宗教國・オンカミヤムカイの第一皇女。
       元医学士志望。薬つながりでエルルゥと仲良くなった。


エルルゥ「私の部屋にウルトリィ様が来ていたのは
     おばあちゃんを知っていたのが理由です」

ドリィ「皇女様だとやっぱり……」

グラァ「普通の仕事に就くのは難しいよ」

ハクオロ「アイリ……あ、間違えた。ウルトだウルト!」

エルルゥ「……私のことは間違えないで下さいね♪」

ハクオロ(やけにウキウキしたな……)


●カミュ…オンカミヤムカイ第二皇女。自國に友達がいなかったが
     トゥスクルに来て、アルルゥ・ユズハと仲良くなる。


ハクオロ「アルルゥとの友情は、共にハチの幼虫を喰らうことから始まる」

ハクオロ「2人を仲良くさせる為、原作で言った台詞だ」

エルルゥ「三人とも無茶しないようにね!」

ドリィ「ユズハ様がいなくなると……」

グラァ「若様が『ユーズーハー!』って探し回ります」

ハクオロ「カミュは少し変わったコでな。私は【キィン!】れた」

エルルゥ「アニメだとホントにちょっとだけ出ましたね」

ハクオロ「最終的に皆にばれるが、それで関係が壊れる程弱い絆ではない」

エルルゥ「SS内でも多分描写がありますので隠させていただきました」


●ムント…僧正(ヤンクル)の地位を持つオンカミヤリューの老人。


グラァ「若様が『ユーズーハー!』なら」

ドリィ「僧正様は『ひーめーさーまー!』だね」

ハクオロ「あのカミュの教育係は大変だろう……」

エルルゥ「アルルゥにもそろそろ教養を覚えさせたほうがいいですか?」

ハクオロ「いや、子どもはのびのび育てよう」

ド・グ「「……お二人共、夫婦みたいで素敵です!」」

エルルゥ「すいませーん、この2人に最高級のお茶をお願いしまーす!」

ハクオロ「賢大僧正(オルヤンクル)のワーベ殿については後に紹介する」



300VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/29(日) 21:03:32.34hep8fQpSO (26/29)


  第九話

●ニウェ…シケリペチムの皇、戦闘狂。自ら『天子』と名乗る。
     もとは狩猟部族の出。知識・武双方に優れた皇でもある。


ハクオロ「あの笑い声は忘れられない……」

エルルゥ「一人だけ『中国?』でしたっけ。そんな國の武装みたいです」

ドリィ「声優はあの秋元羊介さん!」

グラァ「東方不敗!? 勝てる気しないよ!」


 《 第十話 》

●カルラ…ナ・トゥンクの奴隷船に捕まっていた女性。
     絶滅したとされる『ギリヤギナ族』。


エルルゥ「ハクオロさん、ギリヤギナって何ですか?」

ハクオロ「ベナウィから聞いた話だが… かつて大陸全土を支配しようとした
     大國の皇がその部族だったそうだ。
     力が異常に強く、戦において最強の部族らしい」


グラァ「カルラ様はやるときはやるよね」

ドリィ「いつもお酒飲んでるけどね」

ハクオロ「ちなみにギリヤギナの者はどれだけ飲み食いしても太らない。
     戦いに適した肉体になってしまうらしい」


エルルゥ「カルラさん…… 私を羨ましいって言ったのはそういう……」


ド・グ「「キャラクター紹介はここまで!」」

ハクオロ「次はこちらのコーナーだ」




301VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/29(日) 21:06:16.07hep8fQpSO (27/29)


エルルゥ「『うたわれるもの知りコーナー SS編』!」

ハクオロ「このコーナーでは『うたわれ』世界を解説する」

    「今日は『國』と『遺伝』について説明しよう」


 その① 『國』

ハクオロ「私が皇になってから様々な國の名が出てきたな」

エルルゥ「今日はそんな國を簡単にまとめますよ~」


トゥスクル…

皇は『ハクオロ』。
皇の叡知(+皇の莫大な仕事量)により急速に発展。
まだまだ中規模の國ではあるが、民は段々増えている。


シケリペチム…

皇は『ニウェ』。三大強國の一つで軍事國家。
多くの中小國や集落をその軍事力によってまとめる。


ナ・トゥンク…

奴隷國家。誘拐した人々を売って、國の財としている。
しかし、近々『何か』起こりそう。


オンカミヤムカイ…

宗教國家。民に根付いた『ウィツァルネミテア信仰』のもと、
國と國の争いを憎み、和平を求める。

『法術』を使えるオンカミヤリューが主な種族。
オンカミヤリューの戒律は厳しく、
その力を他國の侵略に使わない。
ちなみに自衛の為になら法術を使う。
皇(賢大僧正)は『ワーベ』。
ちなみにこの賢大僧正の位は女性が受け継ぐべきもの。


ドリィ「これらはゲーム・SS本編内でも説明があります」

グラァ「クッチャ・ケッチャについては次回分だそうです」




302VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/29(日) 21:07:50.02hep8fQpSO (28/29)


 その② 『遺伝』について


ハクオロ「うたわれ世界は『母系遺伝子優位』のルールがある」

ド・グ「「若様とユズハ様は良い例です」」

エルルゥ「オボロさんとユズハちゃん、耳の形が異なってますね」

ハクオロ「耳や尻尾は母親からの遺伝で決まる……
     つまり、産まれた子どもの耳・尾は必ず母親と同じになる」


ハクオロ「オボロとユズハは異母兄妹とわかるわけだ」

ハクオロ「かといって男性の遺伝も全くないわけではない。
     遺伝子はちゃんと子どもに受け継がれる」


エルルゥ「ゴローさんが九話で……したのもこれが理由です」

グラァ「村としては外の遺伝子も欲しかったって事」

ドリィ「濃くなり過ぎるのもダメだしね」


ハクオロ「……この遺伝で劣等感を抱えた男がいたな」

エルルゥ「クンネカムンの【キィン!】さんですね」

ハクオロ「トウカが旅を許可された理由もこれだったりする」

    「エヴェンクルガは閉鎖的な少数民族なので、
     外に出た女性は優秀な遺伝子を里に入れるよう期待されるらしい」


エルルゥ「……なんでそんな事を知ってるんですか?」

ハクオロ「ああ、ゲン……知り合いから聞いたんだ」

エルルゥ「ふーん……本当に?」ゴゴゴ

ド・グ((エルルゥ様がコワイ……))

  ……

ハクオロ「おっ、そろそろ終わりの時間だ」

ド・グ「「本日はありがとうございました!」」

エルルゥ「皆に『ハクオロさんとエルルゥは仲良しだった』って言っておいてね♪」

ド・グ「「は、はい……」」スタスタ…

ハクオロ「うわぁい(笑) もう、愛がね…なんか重い(笑)」

エルルゥ「ハクオロさん♪ やっと二人きり…」ギュッ

ハクオロ「ではまた次回にお会いしましょう!」

  ウワァァン! ムシサレター!

  ゴメンヨ エルルゥ

  続く?


303 ◆M6R0eWkIpk2012/07/29(日) 21:28:56.24hep8fQpSO (29/29)

オマケ終了、失礼します。


304VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/29(日) 22:32:23.17IPw+IyDLo (1/1)

おつ


305 ◆M6R0eWkIpk2012/07/31(火) 20:52:38.51XUxUnZXSO (1/22)


第十一話「永久の別離」


 俺は城に遣えている雇われの身ではあるが、
 他の者達と違ってトゥスクル中をウォプタルで走り回る事が多い。


ゴロー「ふう… よいしょっと……」ドッドッ


 今日は以前行ったことのある、あの南の集落に出向く。


村人「ゴローさぁ~ん、久しぶりだべぇ~」ブンブン

ゴロー「こんにちは。こっちの方、嵐の被害はどうでしたか?」

村人「北はひでかったらすいなぁ。ここはそれほどでもねえ」

ゴロー「それは良かった。今日はちょっと伝えたい事がありまして…
    村長さんはご自宅にいらっしゃいますか?」


村人「あー おらはわかんね。孫娘ちゃんが畑さ行っとるから」

ゴロー「そうですか。じゃあ畑に行きます」

村人「おー また都の話、聞かすてくんだせぇー」





306VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 20:55:46.34XUxUnZXSO (2/22)

  ……

 あの後、孫娘ちゃんに会い、村長の居場所を特定。
 そこで村長と商談をする事となった。
 売る側ではなく、買う立場としてである。


村長「うつの味噌を売ってほすい?」

ゴロー「はい。トゥスクルで今度、周辺國を集めた儀式が執り行われます」

   「各國の代表の方に土産としてお渡しする品に、こちらの味噌を…と」


村長「ほぇ~ ええんかのぅ? こんな村のモンで?」

ゴロー「他の集落と比べても、この村は味の良い味噌を作っております。
    ここで出来た味噌汁を飲んだ皇(オゥルォ)が『ぜひ』と」


 ……これは半分本当で、半分ウソだ。

 ハクオロが気に入ったのは事実だが、
 味噌って地域で味の違いがあるから、比較が難しい。

 ここの村の味噌、味は悪くない。それと桶樽の数が多い。
 ある程度条件を満たしていたので、交渉に来た……というわけ。


村長「いやぁ~ 皇(オゥルォ)様のお気に入りとは嬉しいべ~
   わがった! どんどん持っていぐがええ!」


ゴロー「ありがとうございます。代金を……」スッ
 
   「あと、こちらの味噌を城下、他の街・集落に宣伝しておきます」


村長「ホンドに助かっとるよぉ。評判、グングン上がっとるでな」

ゴロー「はい、では一度失礼します。荷馬車を連れて戻りますんで」

村長「ほうか、ほうか。いつでも来んさい」

 …………


307VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:00:41.16XUxUnZXSO (3/22)


  ドッドッドッドッ…

 ウォプタルに揺られ、村を後にする。


ゴロー「代表の皆さんは数日間滞在するそうだから……
    儀式の日に荷を入れて…… 帰る日に渡して……」


 そうすると…… あの村から都までどれくらいの道のりかな。
 馬車だと時間がかかるだろうか……


ゴロー「……あ、醤油を持って帰ってくるのを忘れていた」


 仕方ない。また直ぐ来るんだし、
 その時に一緒に持ってこよう。


ゴロー「買い付けの分も合わせて、瓶(かめ)が十個くらいあればいいかな…」


 ウルトリィさんかハクオロに参加國の数を聞いておこう。




308VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:04:24.94XUxUnZXSO (4/22)

 ――

 ~ 皇城・カルラの部屋 ~

 当初は牢屋にいたカルラさん。
 今は眺めのいい部屋を貰い、外を見ながら酒を飲んでいるそうだ。

 旅から帰って来たムントさんによると、
 ウルトリィさんは度々ここを訪れるらしい。


    トン トン


 「わたしのお酒の時間をジャマするのはどなた~?」


ゴロー「ゴローです。ウルトリィさんは居られますか?」


 「はい、よろしければ部屋へどうぞ」


 いたいた。カルラさんとは違う優しい声がしたぞ。


ゴロー「失礼します」ガラッ

カルラ「折角の一時を… 無粋な殿方ですわ」グイッ

ゴロー「……あの刀。あんな無造作に置いていいんですか?」


 床にごろりと横たわる鉄の塊。
 届いた彼女の武器は、力自慢が五人位で運ばないとならない重さだった。

 ……この人はそれを片手で振り回して、庭の大岩を真っ二つにしたが。


カルラ「あれがいいんですの。下手に置くと床が抜けますから」クゥー

ゴロー「そうですか… ウルトリィさん、お帰りなさい」ペコッ

ウルト「はい。戻りました」ニコッ

ゴロー「周辺國の説得は如何でしたか?」

ウルト「ええ。ムントが脈のある國をまとめてくれましたから。
    あとは此方の思いを伝えていくだけでした」ニコリ


 ……大変だったであろう事を苦もなかったように語る。
 『調停者』の名前は伊達じゃない。



309VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:07:04.49XUxUnZXSO (5/22)


ウルト「それで… わたくしに何か御用件がお有りになるのでしょう?」


 おっと、いかん。言い忘れたままだった。


ゴロー「……うん?」キョロキョロ


 この部屋、何か違和感が……


ゴロー「……もしかして、ハクオロが来てます?」


    「ギクッ!」


カルラ「……あるじ様ぁ~ バレましたわよ」

    ガタタッ…

ハクオロ「ふう… ベナウィには内緒にしてくださいよ」

ゴロー「また脱け出したのか。……気持ちはわかるがな」

ウルト「わたくし達に付き合って頂いてまして」

カルラ「怖~い侍大将に軟禁されるから、
    お酒は飲んで下さいませんけど」グイッ


ハクオロ「素面じゃないと、明日の朝までずっと仕事にされるからな……」


 ハクオロ、苦労しているなぁ。


ウルト「ところで御用件は……」

ゴロー「そうでした、儀式の日に集まる國は幾つでしたか?」

ウルト「えっと… ハマンテ、ヤパクク、ホンロロ、タイサイ、
    ヌシェシェ、マウタラン、シェワッカ、トゥスクル……」


ハクオロ「ここを外して七つですよ」

ゴロー「なら瓶(かめ)を十ほど用意すれば足りるな」

ハクオロ「ああ、そっちも交渉は成功したか。それだけあれば大丈夫」

ゴロー「はい、皇様」ペコリ

ハクオロ「よして下さい、貴方にまでそう言われるのは……」

ゴロー「冗談だ」ニッ

   ハハハッ…

カルラ「男の友情というのも良い肴ですわ…」グッ

ウルト「ええ。ハクオロ様も楽しそうです」ニコリ




310VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:09:24.97XUxUnZXSO (6/22)

  ――

ゴロー「今日は曇りか。月が見えない」フゥー


 煙管を吸うのが夜だけの日課になりつつある。
 國が変わって、毎日忙しいせいで
 夜しか落ち着ける時間がないからだ。


ゴロー(人も増えたし、豊かになった)


 集落も収穫が増えたから、國の収入も安定した。

 関所も税を減らしたが、他國から来る人が増えたから以前並の収入がある。

 嵐の復興に金を出せる國に変わった。

ゴロー(……この平穏な日々が続けばいいのに)フゥー


 シケリペチムは沈黙を続けている。
 ……そろそろ何か動きがあるかもしれん。


   スッ… ガサリ…

ゴロー「……あれ、ハクオロ?」


 こんな夜更けにどこへ行くんだ。


ゴロー(……ちょっと尾行(つ)けてみるか)スタッ




311VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:14:13.70XUxUnZXSO (7/22)

  ――

森の中を、男達は歩く。


ハクオロ「今日は随分と遠回りをしますね」ザッザッ

?①「何者かが尾行しておりました故」スッスッ


眼帯をした老人が答える。
その姿は歴戦の武士、鎧が既に身体の一部となっているようだった。

鳥の翼のような耳を持つ『エヴェンクルガ族』
この老人はその中でも生ける伝説とされる存在。

名は『ゲンジマル』。

彼はハクオロを『ある方』の所へ案内していた。

少しすると彼等は開けた場所に出る。

平べったい岩の上、白い外套(アペリュ)で顔を隠した人物が彼等を待っていた。


?②「どうしたゲンジマル。遅かったではないか!」プンプン


外套越しにその人物の声が伝わる。


ゲンジマル「申し訳ありませぬ、聖上」ザッ

ハクオロ「ああ、私のせいなんだ。すまない『クーヤ』」

クーヤ「む? 其方(そなた)のせい? 余にはわからんぞ」


『アムルリネウルカ・クーヤ』。それがこの人物の名である。

ハクオロは長いので、『クーヤ』とだけ呼んでいるが……

この人物、三大強國の一つ『クンネカムン』の皇(オゥルォ)である。


ハクオロ「私の家臣が後をつけていたようでな。それを撒いていたそうだ」

クーヤ「……それは仕方ないな。其方と余が会うのは秘密なのだから」


今はこの國、この皇について語りはしない。
まだ時は満ちていないのだ。
この二人の皇(オゥルォ)の他愛もない会話を妨げるのは止める。


 ~ 森の中 ~

ゴロー「……ここ、どこだ?」キョロキョロ


……この程度の被害なら、許してやろう。




312VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:18:24.64XUxUnZXSO (8/22)

  ――

 いよいよ『調印の儀』の当日となった。
 数名の兵と荷馬車を連れ、南の集落を訪れる。


ゴロー「積み込み完了……っと」パンパン


 荷物を馬車に載せていく。
 あとはこの荷を、城の倉に入れれば終わりだ。


ゴロー「……運動したからちょっと何か入れたいな」

(※ 孤独のグルメ語『入れる』=『腹減った』
 同じ意味で『腹がペコちゃん』『コバラベリー』がある)


ゴロー「そういえば…… 朝をあまり取ってなかったぞ」


 少し早いが、作って貰った弁当を食おう。

   ガサ ガサ


 【モロロまんじゅう】

挽いたモロロの粉を使い、饅頭状にした携帯食料。
お弁当サイズなので、持ち運びやすい。
ちなみにエルルゥお手製。二個入り・玉子焼き付。


    はぐっ むしゃ


ゴロー「ん、これは淡白な味だね」


    もぐ… むしゃり

 噛み続けると、モロロの持つ特有の甘味が広がる。


ゴロー「主食にはいいか」ゴクン


 玉子焼き、形はイマイチだけど…
 でも綺麗に整えようとしてくれたんだ。


    ひょい ぱく…


ゴロー「うん、いい焼き加減。醤油、ちょっと使おうかな」




313VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:23:10.82XUxUnZXSO (9/22)


 少し離れた所で、村の人が手を振っている。


村人「ゴローさぁーんー! お茶ありますけー! どうだすかぁー!」


ゴロー「お願いしまぁーす!」

   タッタッ… タッタッ…

村人「どーぞ」スッ

ゴロー「ありがとうございます」カチャ

村人「うんまそうなメシですなぁ~」

ゴロー「ちょっと食べます?」

村人「いやいや、大丈夫だす……」

村人の妻「あんたー! ちょっとー!!」

村人「ありゃ、母ちゃんだべ。んじゃあ、おら戻りますんで」


   タッタッタッタッ…

ゴロー(すっかりこの村にも慣れたぞ)


 お茶も来たし、もう一つの饅頭に手を出すか。

   ばくっ……

ゴロー(……こっち、肉入ってたか。しかも味噌漬け)


 何も入ってないほうを残しておくべきだった……
 お茶がなかったら、この濃さは辛かったかも。


ゴロー「この肉、キママゥかな」モグモグ


 農法を変えて収穫が増えたせいか、各地で出没しているらしい。


ゴロー「……なんだかヤマユラの飯が懐かしくなってきた」


 この村の雰囲気にあてられたかな。

 東に行く用事があったら…… 寄っていこう。




314VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:26:13.49XUxUnZXSO (10/22)

  ――


その日は生暖かい曇り空だった。

予定した國の数とは異なったが、近隣六國がここ『トゥスクル』に集う。


ウルトリィ「……」ペコリ


シケリペチムに対抗する、同盟の儀式が始まった。


 「クシャ アヌゥマヤ オン アビタウン ヌ・トゥスクル」


トゥスクルの國師(ヨモル)が祝詞を唱え、
各々の國の代表者や皇(オゥルォ)が頭を下げる。


ハクオロ(……少し足りないか)


 ……強く期待していたわけではない。

 『やはり調印に参加できない……』
 そんな國も出てくるのは承知していた。


ハクオロ(仮想敵國は『シケリペチム』。あの強國の力に怯える國もあろう)


 祝詞の文面は変わらないが、
 紙で造られた調印書は六つの印を捺せるよう、刷り直させた。


ハクオロ(……今はこれだけでも集まった事を感謝しよう)


 もうじき、祝詞も終わるようだ。


 「イオマカンオルヤナ…… 我ら奉りし、大神(オンカミ) ウィツァルネミテア」


 「「「…………」」」


朝堂にいる者達、全てが祈る。

   カツ カツ カツ…

ウルトリィ「では、この書に……印(しるし)を」


國の政(まつりごと)を決める印。
これを各國の人間が捺す事で同盟は成立する。


ウルトリィ「大神ウィツァルネミテアの下…… ここに調印の儀を……」




315VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:29:00.61XUxUnZXSO (11/22)


   ……筈だった。


   カン! カン! カン!

   ザワ… ザワ…

ハクオロ「この音は!?」


兵士「これ以上行かせるな!」

 「どおぉぉぉけえぇぇぇ!! それどころじゃねえんだ!!」ブン!

「ぐわっ!」「くそう!」

 「俺はアンちゃんに用があるんだよぉ!!」


ハクオロ「その声… おやっさんか!?」

テオロ「大変だ! アンちゃん!! 敵襲だ!」タタッ

オボロ「なんだと! シケリペチムかっ!」

テオロ「ドコのどいつか知んねえが、いきなり襲って来やがった!」

ベナウィ「儀の警備の為に防人を動かしましたが…
     その隙を突かれてしまったようですね」


テオロ「ヤツラ、すぐソコまで来てやがんだ! 急げアンちゃん!」

ハクオロ「皆は… 村の皆は無事なのかっ!」

テオロ「心配すんな」ニッ

   「皆、とっくに逃げおおせたさぁ」


テオロ「んな事より急げぇぃ!」

ハクオロ「出陣(で)るぞ!!」

オボロ「おうっ!」 ベナウィ「御意!」

  ダッダッダッダッダッ…

ハクオロ「エルルゥ、アルルゥ達を連れて奥に避難してくれ!」

エルルゥ「は、はい!」タッ…


兵士達が外へ駆け出していく。


ハクオロ「おやっさんも早く避難を!」

テオロ「ッ… ふぃー… ここまで突っ走ってきたから流石に疲れちまったぁ」

   「俺はちいっと休んでから行くぜぇ」ドスン


斧を降ろし、柱にもたれるテオロ。


ハクオロ「わかった! 私は行ってくる!」タッ


  「アンちゃん!」


ハクオロ「ん?」クルッ


テオロ「…負けんなよ!!」グッ

ハクオロ「…ああっ!」ダッ

  「…………」


316VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:35:17.76XUxUnZXSO (12/22)

戦の火蓋が切って落とされた。

敵騎兵達「「ヌェリャアアア!!」」ドドッ

敵はただひたすらトゥスクル皇城へと、森を駆け抜ける。


兵「敵、捕捉しました! 現在、正面の森!」

見張り台の兵士が大声で警戒を促した。


ベナウィ「聖上、門を閉じますか?」

ハクオロ「いや、『あれ』を使う。 ……準備はいいな」

クロウ「ういっす!」ダッ

兵「…森を抜けましたっ! 来ます!」


城へ続く橋を越え、雪崩れ込む敵騎兵。


クロウ「よぉし! 砦柵(さいさく)起こせぇ!」

   ガコン ガコン ガコン

 「ヌォォッ!」「げはっ!」「うおぃ!」


ウォプタルの機動力。
それは接近戦主体の世界にとって、脅威的な力の一つである。

ベナウィやクロウ達のような手練れの騎兵衆に攻め込まれる危険……
ハクオロはこれを警戒し、城内や城下町にカラクリ仕掛けの砦柵を設置。
この巨大な柵に邪魔され、敵騎兵は城の正面に足止めされた。


オボロ「今だっ! 弓衆(ペリエライ)前へ!」

ドリィ「蒼組、構えっ!」 グラァ「朱組、構えっ!」

  キリリリッ… キリリリッ…

トゥスクルの弓衆が停止した敵兵に狙いを定める。


オボロ「射てっ!!」


   ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

 「グアッ」「ナァッ!」「ごふっ…」「ぎゃあっ!」

   ドサッ バタッ…

そんな中でも、侍大将は冷静に敵の武装を見極める。


ベナウィ「……彼等はシケリペチムの兵ではありません」


これまで戦ってきたシケリペチム兵と異なる装い…
強襲者達は黒地の兵具を装着していた。


ハクオロ「……敵兵よ! これ以上は無駄だ!
     武器を捨て、投降せよ! 生命の保障はする!」


  「「「ワアアッ」」」ドドド…


ハクオロ「くっ… 奇襲に失敗したのに、何故止まらない……」

ドリィ・グラァ「「第二波! 構え!!」」キリリ…

オボロ「射てぇ!!」

   ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン…


317VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:40:20.68XUxUnZXSO (13/22)

  ――

 ~ 城内・朝堂 ~

   ワアァァァァ…


「や~れやれ、なんとか間に合ったみてぇだなぁ……」


柱にもたれたテオロの背中から少しずつ紅いものが滴り落ちていく…


「アンちゃん、すっかり皇(オゥルォ)の貫禄ってヤツが出てきたと思ったら…」


「ダハハハ… まだまだだなぁ…」


「やっぱ… アンちゃんは俺達が一緒じゃねぇとな……」


「ま、エルルゥとアルルゥ。それに…ゴローも一緒なんだ… 何とかなんだろ…」


   ズルリ… ポタポタッ…


血だまりが床につくられていく…

彼にもう立ち上がる力は残されていなかった。


「しかし今度ばかしは… さすがに疲れたぜぇ…」


「まったく…無茶なことばかりさせるからよぉ……」


   ダダダダ…


「だれでぇ… まだ中に残ってたヤツがいたのかよ…」



318VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:44:08.86XUxUnZXSO (14/22)


??「おやっさん!」ダッ

テオロ「なんでぇ… ゴローじゃねぇか……」

ゴロー「な、何があったっ! とにかく早く手当てを!」


 倉に荷を入れ終え、儀式の様子を見に来たら…
 これはいったいどういう事だ……


テオロ「敵がこの國に攻めてきたんだ…」

ゴロー「喋らないでくれ! さあ背中をこっちに!」

テオロ「……へっ このくれぇはかすり傷よ…」

ゴロー「いいから…」グイッ

   「な、なんで… こんなに……」


テオロ「なんか…眠くなって…きやがった……」

ゴロー「おやっさん! 眠るな! 気をしっかり持てよ!」

   「ソポクさんはどうするんだ! あんなイイ女、滅多にいないぞ!」


テオロ「見えねぇんか… カァちゃんは…そこに居るじゃねぇか…」

ゴロー「え……」


 ……居るわけがなかった。俺達以外、誰も……


テオロ「迎えに来てくれたのか……」

   「どうでぇ…… 約束は守ったぜぇ……」


ゴロー「……まさか、ヤマユラが」

テオロ「なんでぇ…おめぇ達も来てたのか……」

   「んじゃ…… 『還る』とすっか……」


ゴロー「おい、おい… おやっさん……」


テオロ「みんなでパアッとやろうぜ…………」

   「ゴローもたまには俺と一杯やろうや…」

   「あぁ? いいじゃねか…こんな時くらいケチケチすんなって……」


ゴロー「おやっさん! 俺、一緒に飲むぞ! だから…逝くな!!」


テオロ「じゃあな… アンちゃん…ゴロー……」

ゴロー「おやっさん!!」



テオロ『がんばれよ…… おめぇ達…………』



ゴロー「おやっさん…… おやっさん!!」




319VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:47:25.04XUxUnZXSO (15/22)

 ――

 ……静寂の中、嗚咽だけが漏れている。


エルルゥ「うッ…うぅぅぅ……」

    「えぐっ、うぅぅぅ……」



アルルゥ「おやじ~」ユサユサ…

    「おやじ~ おきる…」ユサユサ…


ハクオロ「………っ」


 おやっさんの背には、矢じりが複数刺さっていた。それもかなり深く……
 俺達に心配をかけまいと、箆の部分は折っていたようだ。

(※ 箆(の)…矢の棒の部分のこと)


ハクオロ「……何故、気付かなかった」

ウルト「ご自分を責めないで下さい。誰も…気付けなかったのですから……」

ゴロー「…………」

   タッタッ… スッ

クロウ「今戻りやした」


 集落に向かわせたクロウが帰る。


ベナウィ「ご苦労様です。現状の報告を……」

クロウ「ういっス。敵は撤退、一帯に敵影はありやせん」

ハクオロ「ヤマユラは…… あの集落はどうなっていた」

クロウ「……いいんですかい?」チラリ


 視線の先に、エルルゥとアルルゥ。ヤマユラの姉妹が映る。


ゴロー(聞かせたくない……か)

ハクオロ(だが、隠していてもいずれわかる)

ゴロー(それにもう…)



ハクオロ・ゴロー((……もう遅い))





320VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:49:54.70XUxUnZXSO (16/22)


ハクオロ「ああ」コクリ


クロウ「……わかりやした、報告しやす」

   「集落の周囲に防壁が積まれ、奴等と交戦したものと――」


ハクオロ「回りくどい事はいい。結果は――どうなった」

クロウ「……集落は炎上。生存者……ありやせん」


エルルゥ「――――!!」


一同「「「…………」」」


アルルゥ「おやじ… おやじぃ~…」ユサユサ


ゴロー(アルルゥ……)

ハクオロ「アルルゥ、もう…そっとしてあげるんだ」


アルルゥ「どうして?」

    「おやじ、ねてる」

    「ねてるだけ……」


ハクオロ「おやっさんはもう…目を覚まさないんだ」

アルルゥ「……おきないの?」

ゴロー「うん……」

ハクオロ「トゥスクルさんの所へ…行ったんだよ」

アルルゥ「おばあちゃんの…トコ?」

ハクオロ「ああ…… みんなと…一緒に」

アルルゥ「……」フルフル

ゴロー「アルルゥ……」


アルルゥ「ねてるだけ……」

    「おやじ、ねてるだけ……」

  ユサユサユサユサユサユサ…

アルルゥ「おやじ… おきる……」ユサユサ


カミュ「アルちゃん…」




321VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:52:58.03XUxUnZXSO (17/22)


ハクオロ「もういい… もうやめるんだ……」

アルルゥ「やだ…」


ゴロー「アルルゥ」


アルルゥ「やだ…やだ…やだ…やぁだ……」

    「やぁだぁ――――ッ!!」ビェェ!

    「ヒッ… おばぁちゃーん… おばぁちゃーん!」ビェェン


ハクオロ「アルルゥ!」ガシッ


 ハクオロの腕の中、泣きながら暴れだすアルルゥ。


アルルゥ「ヤァ―――ッ!ウッ ヤァ―――ッ!!」バタバタ


ゴロー「くっ… エルルゥさん! これを!」スッ

エルルゥ「それ…… はい」パッ

アルルゥ「ヤァダ! ヤァ――――ッ!!」


エルルゥ「……」スウッ

アルルゥ「う、う゛~~ッ! …………」ガクッ

ハクオロ「それは…」

エルルゥ「お薬で…眠らせたんです」


ゴロー(……睡眠薬。作っておいて良かったのか悪かったのか……)


 今、彼女に渡した白い布切れ。
 それに薬を染み込ませておいた。


エルルゥ「悲しみで心が… 潰されないように……」フラッ

ハクオロ「エルルゥ!」ガシ


 ハクオロが倒れそうなエルルゥさんを支える。


ハクオロ(エルルゥ… お前も…そんな青白い顔を……)

エルルゥ「私は大丈夫… だいじょうぶですから……」


ゴロー「……ハクオロ」

ハクオロ「……ああ。エルルゥ」スッ


 ハクオロが布切れをエルルゥさんの口にやる。


エルルゥ「…………」ガク


 この姉妹を… 神ってやつはどれだけ嫌っているんだ……




322VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:56:04.34XUxUnZXSO (18/22)

  ――

ハクオロの書斎に男衆が集う。


ハクオロ「ベナウィ。奴等が何者か、調べはついたか」

ベナウィ「はっ、遺品から『クッチャ・ケッチャ』の者かと」

オボロ「兄者! 俺に奴等の討伐命令をっ!」

クロウ「落ち着け、そう感情を表に出すんじゃねぇ」

オボロ「な! お前はそれでいいのか!」

クロウ「……俺も腹が煮えくりかえりそうなんだよ。フツフツとな」ギリリッ

ベナウィ「……真相が明らかになるまでは動くべきではありません」

    「戦は民を巻き込みます。事は単純ではない!」


ベナウィ「……貴方も一人の将なら、分別を付けなさい」

オボロ「チッ―― 反吐(へど)が出そうな正論だな」

ベナウィ「反吐を吐くだけでよいなら、いくらでも吐きなさい。
     その程度ですめば安いものです」


オボロ「クッ… 兄者! 命令を! みんなの仇を――!」

ハクオロ「……静まれ」

オボロ「兄者ぁ! みんな殺されたんだぞ!!」

ハクオロ「……黙れ」

オボロ「おやっさんを殺され、何とも思わないのか!!」



ハクオロ「黙れっ!!」

    「黙れ……」



一同「「「…………」」」


ベナウィ「クッチャ・ケッチャに使者を送りました。それまではこのまま…」

ハクオロ「わかった。私は仮眠を取る、一人にしてくれ……」




323VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 21:59:41.72XUxUnZXSO (19/22)

  ――

しかし皇が一人になる時間は訪れない。


ハクオロ「…………」

ゴロー「…………」


対峙する二人、禁裏の空気が冷たくなっていく。


ハクオロ「……ゴローさん、歯をくいしばって下さい」

ゴロー「…………」グッ


    ガッ!


ハクオロ「……何も言わないのか」

ゴロー「八つ当たりに何か言うことがあるか」


    ガッ!


ハクオロ「……すみません」


ゴロー「おやっさんを看取った俺に何か言いたいのはわかるさ。
    俺もあの時、何も出来なかった自分に腹が立って仕方なかった」

   「ちょっと頼みがある。外の見える場所に行かないか」


  ……


そんな様子を覗きみる女。


カルラ「まったく… 折角わたしが皇様の話し相手に……と思いましたのに」

   「今日はダメそうですわね… ゴロー… この貸しは大きいですわよ」

  スタ スタ…





324VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 22:02:56.03XUxUnZXSO (20/22)

  ……

 昼間の厚い雲はなくなり、星が瞬く夜空となっていた。

 俺は外の見える縁側に座り、酒を取り出す。


ゴロー「おやっさんとさ、『飲もう』って約束したんだ。最期の時に」トクトク

ハクオロ「……飲めない貴方が、か」

ゴロー「お前の事、心配してたぞ。 ……よし、次は俺の分を」

ハクオロ「……自分が注ぎます」

ゴロー「じゃあ頼む」

ハクオロ「…………」トクトク


ゴロー「こっちの猪口にも注いでくれ」スッ

   「そうしたら…… この斧の前に」ゴトン


 おやっさんの使っていた斧を手すりに立て掛ける。


ハクオロ「陰膳…いや、陰酒……か。 ……おやっさん」スッ


ゴロー「男三人だけなんてむさ苦しくて寂しい宴で悪いな」


 『いいってことよぉ! これはこれで楽しいモンだぜぇ!』


ハクオロ「おやっさん…… あっちで皆と仲良くやって下さい……」


 『ダーッハッハッハ! 当ったりめぇよ! 皆で楽しく騒いでるってぇの!』


ゴロー「じゃあ…」 ハクオロ「ああ」



  『「「いただきます」」』






325VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 22:07:41.79XUxUnZXSO (21/22)

  ――

――時間が少し経った。

城の朝堂で今後の同盟の儀について話をするハクオロ皇。


ハクオロ「もしや、奴等の狙いは同盟の破綻だったか……」

ウルト「襲撃で各國はだいぶ揺れております。
    同盟について考え直すという國も……」


ハクオロ「まんまと敵の思惑はめられたか……」

クロウ「総大将、使者が戻りやした!
    バカヤロウ! まだだ! くたばるんじゃねぇ!」


クロウに支えられながら、兵が御前に現れる。


クロウ「テメェはなんだ! 務めを果たさずにくたばる腰抜けか!
    漢(おとこ)なら見事務めを果たしてみやがれぇ!!」ズリズリ


使者「ク、クッチャ・ケッチャ… 我ら使者を襲撃……
   じ、自分を残し、みな…う、討ち死にぃ!」

  「ど、どうか…仇を…… あっ…」ガクッ


クロウ「……よく務めを果たしたな」スッ


ハクオロ「…………決裂だ。ベナウィ、文句はないな」

ベナウィ「はい、御心のままに」ペコリ

ハクオロ「全軍に知らせよ!! クッチャ・ケッチャに進軍する!!」


 「「「オオッ!!」」」

  ――


 城門の前、俺はハクオロに話しかけた。


ゴロー「悪い、俺は行けない。おやっさんを埋葬しに行くつもりだ」

ハクオロ「そうか」

ゴロー「今度の敵は騎兵が主力。俺では役に立たないだろう」

ハクオロ「……では、村の事を任せる。頼んだぞ」

ゴロー「畏まりました。皇(オゥルォ)様」ペコリ

ハクオロ「…………」ザッザッ…

アルルゥ「おとーさん… コワイ……」

エルルゥ「ハクオロさん、どうか御無事で……」

ゴロー(あいつ… 相当頭にきてるな。上手く隠したつもりだろうが)


 嫌な予感がするってのに……



第十一話「モロロまんじゅうと弔い酒」

  続く。


326 ◆M6R0eWkIpk2012/07/31(火) 22:14:33.05XUxUnZXSO (22/22)

投下完了。>>305から今回の始まり。

いよいよクッチャ・ケッチャ編に突入しました。

この話が終わってうたわれメインキャラが勢揃い。


原作ではクーヤとゲンジマル、結構早く出てます。
今回の登場はそのため。

ちなみに『還る』の字は誤字ではありません。
『土に還る』から来ています。
ゲームだとハクオロとの会話でこういうものがあるのです。




327VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2012/07/31(火) 23:09:23.43kDCAW9BSo (1/1)




328VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/31(火) 23:19:31.76rdan4IBSO (1/1)


家庭用は、中盤から地味にOPが替わってて好き


329VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/31(火) 23:41:51.71MVGzUMzWo (1/1)




330VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/01(水) 06:54:50.82HgQJ822a0 (1/1)

ついに来たか


331VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/01(水) 12:40:40.52HzIUDVS3o (1/1)

味皇(アジオロ)様の出番はまだですか


332VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 02:05:23.58zt5ehpdIO (1/1)

超面白いわホント
ゴローとうたわれ世界が違和感無く溶け込んでるのがすげぇ


それはそうと、この瀕死の伝令とクロウのシーン良いよね。なんかジワっとくる



333 ◆M6R0eWkIpk2012/08/02(木) 19:43:35.99SwZBsheSO (1/26)

投下予告です。21時過ぎたら開始予定。

>>331
ミスター味っ子の味皇ですよね?
あるキャラをその人に似せるので暫しお待ち下さい。
(具体的にはシケリペチム編最初の辺りまで)


>>332
ありがとうございます。

でも全体を見るとゴローちゃん、余り出てない気が……
中盤過ぎたら出番増えるはず!



334VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 20:47:29.98SwZBsheSO (2/26)


第十二話「アルルゥ監修・現地調達食事セット」



ゴロー「……」ザクザク


 ヤマユラの集落の惨状を目の当たりにする。
 村人は全滅、建物も大半は焼けて崩壊していた。



ゴロー「…………」


 かつて貧しいながらも賑わい、そして俺のような男を受け入れてくれた…

 そんな集落はこの世界に存在しない。


ゴロー「くうっ……」ポロ…


 泣いてもどうしようもない事はわかっている。
 だが、感情を抑えられない。


ゴロー「どうして… どうして抵抗なんてしたんだ……」

   「逃げたり…降伏してくれれば…… また会えたかもしれないのに」


 ほんの小さな可能性。
 『生きてさえいてくれれば……』と強く思う。


近隣の村人達「「……あのう」」

ゴロー「……ああ、手伝ってくれてありがとうございます」


 近くの村から手伝いに来てくれた人々。
 彼らがいなかったら、作業にならなかったろう。
 俺の手、止まってばかりだったから……


村人「墓を作り終えたそうですので…… 亡骸を埋葬してあげましょう……」


ゴロー「……はい」スクッ




335VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 20:51:32.21SwZBsheSO (3/26)

 …………

 ~ 集落・墓所 ~

 淡々と…… 村人だったモノを墓に埋めていく。


ゴロー「…………」ザックザック


 おやっさんはソポクさんの横に埋葬した。
 家族がわかる遺体は出来るだけ近くに。


ゴロー「…………っ」


 俺では家族構成がわからない遺体もあった。


ゴロー「この村…… こんなに人が居たんだな」


 以前の村を知る人を誰も連れて来なかった事を悔やむ。

 あの姉妹は駄目だ。今は落ち着いたが
 あの惨状を見せられる程、心は回復していない。

 オボロの率いる隠し砦の者も、それほど詳しくはないだろう。
 あいつ自身は仇討ちに熱くなっていたから呼べなかった。


村人「……終わりました」

ゴロー「そうか…… ありがとうございます」ペコリ


 ……他の仕事もせねばならない。


ゴロー「襲撃された集落は他にありますか?」

村人「……申し訳ありません。私達も詳しくなく……」

ゴロー「……いえ、今日はわざわざ手を貸して頂きありがとうございました」

村人「この村は…… 本当に良い村でした」

ゴロー「……はい。人の暖かみがある…優しい村だったと思います」


 ……ここでの仕事は終わった。

 墓参りを済ませたら、他の集落の被害状況も確認しなくてはいけない。


ゴロー「もう一度、村の跡を見なくてはな……」





336VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 20:55:20.42SwZBsheSO (4/26)

 ――

 ~ クッチャ・ケッチャ ~


ハクオロ「方円陣!!」

    (迂闊だった… クッチャ・ケッチャは平原の多い國。
     罠を張られているとわかっていながら……
     心の何処かで『罠など正面から打ち破る』と考えていたっ……)


トゥスクル軍は広い平原の中、クッチャ・ケッチャの軍隊に包囲されていた。


トゥスクルの東に位置する『クッチャ・ケッチャ國』。

この國は國土の大部分を平原が占めるという珍しい國である。
そして、陣や皇都も移動式の天幕で作られている。

いわば、國全体が『流浪の民』のよう。一般國とは全く異なるのだ。

そんな國の主戦力……クッチャ・ケッチャ騎兵衆(ラクシャライ)。

機動力を活かした怒濤の攻め。
それに対しどう対処するか――
戦の肝となるのはこの点であった。


 《 協撃!》

 《 騎兵 前へ 》


ベナウィ「クロウ!」ザッ

クロウ「待ってやしたぜ!」ザッ


ベナウィ・クロウ「「ぬおおおおおおッ!」」ダダダッ!!


ベナウィ「我らが心に曇り無し!」ズザッ

クロウ「我らが前に……敵も無しぃっ!」ザザッ

  ズドドドドドーン…





337VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 20:58:23.52SwZBsheSO (5/26)


――負けてはいられない。

トゥスクル騎兵最強と言える男達のの十字突進。

この二人の気迫に触発されたか……
トゥスクル兵も槍や弓矢で反撃に転じる。

しかし、敵総大将の言葉が戦場を大きな混迷へ誘う。


オリカカン「待っていたぞラクシャイン!! 我が義弟にして裏切り者よ!」

ハクオロ「な……なんだと……裏切り者とはどういう事だ!」

オリカカン「その罪、忘れたとは言わさん! この戦は貴様への断罪である!」

そして… 翼のような耳を持つ武人(もののふ)が更に事態を悪化させる。


トウカ「悪漢ラクシャイン! この『エヴェンクルガのトウカ』が
    お前を成敗してくれるっ!!」ヒュン


   カキッ キィーン!!

カルラ「……面白そうな相手ですわ」ギギッ

トウカ「邪魔をする気か!」ギギッ

オボロ「兄者!!」スパッ ザシュッ!

敵兵ら「「ぐわああっ!」」

罠に嵌めたとはいえ、クッチャ・ケッチャの兵も
トゥスクル兵の激しい抵抗に徐々に押されつつあった。


トウカ「地の利を持つ我々をここまで追い詰めるか! ……オリカカン殿!」

オリカカン「退くなど出来ぬ! 目前に我が宿敵がおるのだ!」

トウカ「今オリカカン殿を失うわけにはいきませぬ!
    先の敵騎兵の攻撃で手傷を負われたのでしょう!」


オリカカン「ムゥゥ…… 総員、撤退!!」

  ダッダッ…ダダダダ…

ハクオロ「待て! 貴様は…私の事を知っているのか!」


オリカカン「記憶喪失などと誤魔化してもこのオリカカンには通じんぞ!」

     「何度でも言ってやる! 貴様はラクシャイン!
      己が妻であった我が妹と同胞を手にかけた忌むべき裏切り者だ!」

   ダッダッ……


ハクオロ「……感情に流された報いか」


この戦は『痛み分け』に終わった。
トゥスクルに大きな『楔』を打ち込んで……



338VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:02:47.77SwZBsheSO (6/26)

※ 前レス訂正、『男達のの』× 『男達の』○

 ――――

 ~ 皇城・書斎 ~


ハクオロ「……」

ゴロー「……襲撃による被害報告は終わりだ」


 軍がクッチャ・ケッチャへの遠征から帰って来た。

 こちらの報告を終え、ハクオロの反応を伺う。


ハクオロ「……すまない、先に休む。ベナウィ、対処を任せた……」ガタッ

ベナウィ「はっ」

エルルゥ「……」スッ


 ハクオロとエルルゥさん、二人が出ていく。


ゴロー「……一体何があったんだ」

カルラ「敵将が… あるじ様が裏切り者だ。……とかおっしゃってましたわ」

ゴロー「! あいつの過去を知っている奴がいたと?」

ベナウィ「はい。それで聖上が取り乱しました」

    「……あの集落の責が御身にあると感じていらっしゃるのでしょう」


ゴロー「他には?」

カルラ「あの女ですわね。……エルルゥのお茶は美味ですわ~」グイッ

ゴロー「あの女?」

ベナウィ「エヴェンクルガ族の女性が敵軍に助太刀をしていました」


ゴロー「『義』を背負う部族…… 兵の士気に関わるな」

   「ん? エヴェンクルガの女…… 名前とかわかるか?」ズズウ


カルラ「大声で『エヴェンクルガのトウカ』と名乗ってましたわ」

ゴロー「 」ブーッ!

ベナウィ「……かかりました」フキフキ

ゴロー「……そいつ、知り合いだ」




339VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:05:59.34SwZBsheSO (7/26)

  ――

 月は出ていない。空の闇に吸い込まれそうな夜だ。

 少数精鋭の隊にクッチャ・ケッチャを調べさせると決まり、
 オボロ組とクロウが再び敵の國へ出発した。


ゴロー「報告待ちだと手持ちぶさた……」フゥー


 しかし、トウカ……
 あの頑固が服着て歩いてるような女が敵にいるとは。


ゴロー「……次向こうに行く時はついていくか」


 アイツには貸しがある。そろそろ返して貰わないと。


ゴロー「……あ、あれ」


 アルルゥとカミュちゃん。ムックルも一緒か。


アルルゥ・カミュ((……))ソローリソローリ


ゴロー「お嬢さん方、どちらへお出かけですか」


カミュ「……見えてます?」クルリ

ゴロー「姿を隠す法術を使ってたのか?」

カミュ「はい。やっぱり、姿を消す術は苦手だな……
    ゴローおじさま! お願いっ、黙って見逃して!」スゥッ


ゴロー「そうは言っても……何をする気だ?」

アルルゥ「カミュち、だいじょぶ。ペコちゃんも連れてく」


 ……だから目的を言ってほしい。




340VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:10:25.87SwZBsheSO (8/26)

 少し質問を変えてみる。


ゴロー「……どこに行くつもりかな?」

カミュ「この國から東に進むと綺麗な花の咲く場所があるみたいでして…」

アルルゥ「お花、みんなのとこに」


 ……アルルゥなりのやり方で村の皆を弔うってわけか。


ゴロー「はぁ… わかった。保護者として同伴しましょう」フゥ

カミュ「ホントっ? ありがとー ゴローおじさま♪」

アルルゥ「じゃあ乗る!!」

ムックル『ぐおっ!』スッ


 『ムックルタクシー』出発進行。


ゴロー「しかし國境だぞ。一日近くかかるだろうに」

アルルゥ「へーき。ムックル はやいから」


 ――

 ~ トゥスクル國外・花畑 ~


 は、速すぎる……

 バレると不味いから森の中を駆け抜けたのに…
 今、ちょうど昼くらいの太陽の高さだ。


ゴロー「腹減ったぞ……」

アルルゥ「ムックル~♪」ナデナデ

ムックル『ぶおぅ』グルグル

カミュ「ムックルってタフだよね~」ナデナデ


 流石は森の主。


ゴロー「成長したから乗り心地もよくなったな」


 でも腹が減った。

 二人が花を摘む間、この空腹に耐えなきゃいけないのか……




341VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:14:42.94SwZBsheSO (9/26)


 二人は花を摘み終えた様子だ。
 そして、アルルゥは服の中から袋を取り出す。


アルルゥ「う~んと…」ガサゴソ

    「ペコちゃん、あれ」スッ


 指の先には彼女の大好物である『蜂の巣』が木に垂れ下がっている。


ゴロー「……あの蜂の巣、俺に採れと?」

アルルゥ「うん」コクン

    「これ、道具」


ゴロー「布袋と薪か…」


 巣を燻して採ればいいのか。


ゴロー「よし……」ソローリ


   ブーン ブーンブーン ブーン


 ……無理です。


ゴロー「おおおぉぉぉぉ!!」ダッ!


   ブーン ブーンブーン…


アルルゥ「♪」スポッ

カミュ「アルちゃん、ゴローおじさまを囮にしたね……」

アルルゥ「ハチミツ、ハチミツ~♪」




342VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:17:28.00SwZBsheSO (10/26)

 …………

 【紅皇バチの巣(蜜)】

ハチミツの中でもとびきり質の良い甘さを持つ。


カルラ「ふふっ、ずいぶんと綺麗事を仰るのね。ハチミツのように甘いですわ」

   「特に紅皇バチの蜜のような(以下略)」


という原作ゲームにある言葉が由来。
人を惹き付ける何かがあるのだろう。


 【何かの幼虫】

甲虫系の生き物の幼虫。
アルルゥは生で食べられる。
結構ビックサイズ。


 【キノコ】

山育ちのアルルゥは食べられるキノコと
食べられないキノコを区別するのが得意。


アルルゥ「あ~ん」パクン

   モグ モグ


ゴロー(躊躇なく幼虫にいったぞ……)

カミュ「カ、カミュはちょっと幼虫は止めよっかな~」タラリ

アルルゥ「ん」ズイッ

ゴロー「…………いただきます」


 噛みきるよりは一口で含んだほうがいいだろうか…


   グッ…

 か、噛みたくない! 口の中で動いてる!


ゴロー(これなら蜂の幼虫のほうが遥かにマシじゃないか……)


   ぐにゅ もちゅ…


 ……土の味がほのかにするなぁ。

 生温い体液が口の中を侵食してくる。



 ……二度と幼虫なんて食わない。




343VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:21:27.79SwZBsheSO (11/26)


カミュ「キ、キノコは焼くと美味しいよ!『ヒム・トゥスカイ』!」

   ボッ

カミュ「よし! こっちは成功!」

ゴロー「法術か。ちゃんとしたのを見たのは初めてだ」

アルルゥ「カミュち~ かっこいい!」

カミュ「へへっ! ……でも『可愛い』にしてほしいなっ」


 どれ、キノコを一口…… うん。上等上等。


   むしゃり むぐ

ゴロー「何もつけないで食うのは単純だけど」


 でもさっきの幼虫に比べたら…食える食える。

 次に二人は蜂の巣に手を伸ばした。


アルルゥ「ハチミツ~ きゃっほぅ♪」モグモグ

カミュ「甘くておいし~!!」

ゴロー「俺にも少しくれないか?」

アルルゥ「ん」スッ

ゴロー「ありがとう」パクッ


 おお! このハチミツ、美味い。


ゴロー「どことなく気品があるようだ」ペロッ


 これを御菓子に使ったら美味いだろうな。
 カリンカ(果実のハチミツ漬け)とか……

 豆と合わせて食うのもいいぞ。

 そうだ…… 寒天でも作れないだろうか。




344VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:22:53.29SwZBsheSO (12/26)


アルルゥ「!」ピクン

カミュ「アルちゃん? どうしたの?」

アルルゥ「ひと……近い。 ウマ、いっぱい」

ゴロー「クッチャ・ケッチャかもな…… 静かに」シッ

カミュ「ちょっと待って……」

   『δξσθψλφ……』ブツブツ…


 法術の呪文……
 カミュちゃんが聞いた事のない発音で言葉を紡ぎだした。


 お、おお! 四肢の先から透き通っていく!


カミュ(透明)「やったっ!成功! 声も聴こえなくなるから大丈夫だよ♪」

アルルゥ(透明)「カミュち すごい!」

ムックル(透明)『ぐおおぉっ』

ゴロー(透明)「よし、このままやり過ごせば……」

アルルゥ「……ヤダ。ついてく」

ゴロー「駄目だ、危ない」


 このコ達が危険に近づく必要はない。


アルルゥ「……ムックル!」ヒラリ

ムックル『グオオオッ!』ズザッ

カミュ「え、あ、うあ!! アルちゃん!」ヒョイ

  ダッ ダダッ……


 ……まずいぞ。


ゴロー「……洒落にならん」ダッ!


 俺、あのムックルに追い付けるかな……




345VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:28:35.16SwZBsheSO (13/26)


彼女らが出掛けた翌日の夕方。

敵國から諜報活動組が戻ったので、軍議を開始。

現場に向かったオボロとクロウの報告が済み、皇の頭が動きだす。


ハクオロ「此方が向こうの敵陣を探そうとすると…
     あの『エヴェンクルガ』が邪魔をする」


オボロ「あの女…… 俺の攻撃を軽くあしらいやがって……」ギリッ

ベナウィ「敵にエヴェンクルガが居る事で兵の間に動揺が走っています」

クロウ「敵は細かく陣地を移動しているようっす」

ベナウィ「小規模の部隊が敵國境近くで我が軍の前線部隊と交戦……
     此方の別部隊が到着する前に撤退を済ませる……」


ハクオロ「騎兵の機動力を存分に生かした戦法……か」


打開策を考える男達。


エルルゥ「あのう……皆さん!」

ハクオロ「エルルゥ…」


何故か指で天を差しながら彼女が喋る。


エルルゥ「おばあちゃんが言ってました。『悩みで行き詰まった時、
     その事ばかり考えてたらかえって抜け出せないって』」

エルルゥ「『そんな時はお茶を飲んで寛ぐのが一番だ』って」ニコリ


ハクオロ「……そうだな。そうかもしれない」


ハクオロはエルルゥのお茶を飲みながら、情報を整理し始めた。




346VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:34:33.98SwZBsheSO (14/26)


ハクオロ「……一つ、腑に落ちない点がある」


そう言うと彼は地図を広げた。


ハクオロ「クッチャ・ケッチャはほとんどの國土が平原となっている」

    「その中を縦横無尽に駆け巡るが……」スッ


彼は地図の一点を指差し、違和感を提示する。


ハクオロ「ここだ。國の中央にある『渓谷』。これが國を両断している」

ベナウィ「下から回り道をせねば通れない深さのようです」

ハクオロ「なのに奴等は簡単に行き来可能…… 妙だと思わないか」


ドリィ・グラァ「「失礼します」」ガラッ


オボロ「ドリィ・グラァ、戻ったか。お前達の報告を頼む」

ドリィ「はい、僕達で敵の後をつけて移動路を調べたのですが……」


双子はもう一枚の地図……渓谷を少し詳しく描写したものを見せた。


グラァ「このあたりで何度か見失ってしまうんです」スッ


指し示されたのは朱で囲われた谷の広範囲。
霧が立ち込める事も多く、ハッキリと全貌を掴ませない地帯。


ドリィ「そしたら、いつの間にか敵の姿が谷の向こう側にあって……」


ハクオロ「橋か何かがあるのだろう。だが具体的な位置が掴めていないと…」


手当たり次第に襲撃する方法もあるが……
動きがばれては警備を厳重にされる。
逆に橋を囮として、策を請ずられる危険もあった。


――奇襲。それが行える最良の方法。
だがその為の情報が欠けていた。



347VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:38:24.16SwZBsheSO (15/26)


……偶然とは恐ろしい。

一人の子どもの行動がこの戦局を打破するキッカケとなるのだから。


アルルゥ「ここっ!!」グイッ


停滞した会議に乱入するアルルゥ。
少女の指は朱に囲われた部分……その中の一点を示していた。


ハクオロ「アルルゥ。どうした、そんなに土まみれになって」

エルルゥ「どこに行ってたの! 姿が見えないと思ってたら……」

ハクオロ「いや、待て。『ここ』とは?」


アルルゥ「ここに橋、ある! におい追ったらあった!」

ゴロー「ああ、俺も確認した。間違いないぞ」


オボロ「大兄者! 擦り傷だらけだ!」

ゴロー「仕方ないじゃないか……」


 ムックルに乗せて貰うのに時間がかかったんだよ…

(尾行を認めるまで、ムックルに乗せて貰えず森を進んだため)



カミュ「カミュも見たよ!」

ムックル『ぐごぉ~』


ウルト「……それで? 貴女達は城を抜け出して何処へ行ってたのかしら?」

エルルゥ「二人(+一匹)とも! そこに座りなさい!!」




348VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:42:30.62SwZBsheSO (16/26)


アルルゥ「う~…」  カミュ「ご、ごめんなさい…」  ムックル『……』


ゴロー「あ、このコ達は……」


 弁護をしてやろうとすると……


アルルゥ「おばーちゃんのトコ……」

ハクオロ「…………ヤマユラに」

ゴロー「國の外に綺麗な花が咲く場所があってな。
    そこまで墓前に供える花を摘みに行ったんだ」


ハクオロ「そうか…… きっと、皆も喜ぶ」ニコリ

アルルゥ「おとーさん」トコトコ

ハクオロ「なんだい?」

アルルゥ「お花、みんなで」スッ


 摘んできた花を差し出すアルルゥ。


ハクオロ「……」ギュッ

アルルゥ「ん~~…」ギュッ


ハクオロ「ありがとう…… ありがとう」

アルルゥ「ん~」スリスリ


 この場に居合わせた全員が優しい笑顔をした。


ゴロー(家族か。なんだか…………悪くない)


ハクオロ「召集をかけろ! 出陣(で)るぞ!!」


 「「「 応っ!!!」」」


 ――――



349VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:45:42.55SwZBsheSO (17/26)

 ――

 場所を匂いで追えるアルルゥが部隊を先導し、
 俺達はウォプタルに揺られて敵國の渓谷に到着した。

 この谷、霧が深いなぁ……



カルラ「ゴロー。あなた『トウカ』と顔見知りなんですの?」

ゴロー「ええ。旅をしていた時に偶然」


 カルラさんが話しかけてきた。


カルラ「その時もあんな感じだったのかしら」

ゴロー「『あんな感じ』がわかりませんが……多分そうです」

カルラ「ふーん…… でもイジりがいがありそうでしたわ」

ゴロー「あー確かに。刀の腕は強いんですが、こう…隙があるんです」

カルラ「フフッ…ちょっと楽しみになってきましたわね……」ニヤリ

ゴロー(この人、Sだ)


オボロ「見えたぞ! 橋だ!」

ベナウィ「ええ、戦いです。既に敵兵が橋に」


 俺達の前にいる侍大将コンビが危機を伝える。

 ……敵複数が橋の上で待機中。



350VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:52:00.84SwZBsheSO (18/26)

※前レス訂正、最初の部分。
『場所を知っていて、鼻の利くアルルゥ・ムックルが先導』にします。

 …………


トウカ「いつかは知られると思っていたが、予想より早かったな」


オボロ「キサマッ! 今日こそは!!」チャキッ

ベナウィ「……」カチャリ

クロウ「エヴェンクルガ… 手合わせしてみたかったぜ」スラッ

ハクオロ「ウチには鼻が利く仲間がいてな」

ムックル『グルルルッ……』

アルルゥ「む~…」


トウカ「子どもを戦場に出すとは…… やはり貴様は悪漢だ!」シャキン


ゴロー「おーい、トウカ~ 元気にしてたか~」ブンブン


トウカ「!? ゴロー殿!? 何故(なにゆえ)敵軍に!!」


ゴロー「いや…これが…」


トウカ「ハッ! そうかラクシャイン! 某の知人を人質に……
    なんて卑劣な! 暫し待たれよゴロー殿、某がお助け致しますゆえ!」


ハクオロ・ゴロー((駄目だこの人。全然話を聞かない))



 《 バトルパート 》

勝利条件…トウカの撃破。

敗北条件…ハクオロの撃破。




351VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 21:56:44.81SwZBsheSO (19/26)


オボロ「はぁぁぁっ!!」キィン ザシュッ

敵「ぐふぅッ!」


クロウ「ちっ、こう狭いとウマが使えねぇ」ブン

敵「ぐひぇ!!」


ベナウィ「嘆く暇はありませんよ」カッ スパッ

敵「ごでゃへっ!」


トウカ「ひとつ、ふたつ、みっつ!!」ザシュッ スパッ ビシュッ

トゥス兵ら「「「げはっ…」」」


カルラ「はぁ…… 人が多過ぎて邪魔ですわ」

ゴロー「行かないんですか?」

カルラ「……少しだけ貸しを返して貰いましょうか」ボソリ

ゴロー「え……」



 《 協撃?》

 《ここではカルラさんがおかずだ》


カルラ「さあ、お願いしますわ」ガシッ

ゴロー「あ、あのう… 俺を抱えて何を……」

カルラ「ハァァァッ!!」ブォン


ゴロー「投げられたァ―――!!!」ヒューン!!

トウカ「!!」


    ドカッ!! 


トウカ「」(☆ピヨピヨ)

ゴロー「」


カルラ「お疲れ様ですわ~」ザッ

ゴロー(下からの視点で胸を見るって素敵だな……)ガクリ

(※効果 敵一体を必ず『状態異常・気絶』にする。そしてゴローも気絶する)



敵兵「トウカ様が! 我等の同士を維持でも守れえええ!!」

敵兵達「「「ウオオオオ!」」」




352VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 22:02:01.04SwZBsheSO (20/26)


 俺とトウカ、ほぼ同じタイミングで目を覚ました。

トウカ「ぐうっ……な、同志たちが……」

ゴロー「痛てて… 酷い目にあった……」


ハクオロ「他の兵はもういない!
     エヴェンクルガの武人(もののふ)よ、降伏せよ!」

トウカ「……例え独りであろうと『義』のために戦う!」チャキン


トウカ「かくなる上は…… ラクシャイン! 貴様に一騎討ちを申し込む!!」


ゴロー「あ、それ 俺が受けた」ハイ


この場に居る皆「「「……はいぃ??」」」


トウカ「な… ゴロー殿は人質ではないのですか!」

ゴロー「俺、トゥスクルで仕事してるから雇い主にいなくなられると……」

トウカ「くっ…貴方とは戦いたくなかった……
    だが立ち塞がるなら斬るしかない!」チャキッ


ゴロー「待て、刀は使うな」

トウカ「は?」

ゴロー「ご覧のとおり、俺は素手。
    そんな相手を武器で斬るのか『エヴェンクルガ』は?」


トウカ「なるほど、ならば某も素手で戦いましょう!!」スッ

ゴロー「違う違う。これからは『言葉』で戦うんだ」

トウカ「平和的な話し合いの段階は過ぎ……」

ゴロー「昼メシの貸し、忘れたとは言わせないぞ。
    約束もしたのに借りを返さないのは『義』に反しないか?」


トウカ「……良いでしょう。某が勝ったらラクシャインと一騎討ちをさせて貰う!」


ゴロー「ハクオロ、その条件でいいかー?」

ハクオロ「あ、ああ。了承した」


一同(((何をする気だ……)))




353VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 22:04:39.06SwZBsheSO (21/26)


トウカ「して、何をもって勝利とする」

ゴロー「『あの男がラクシャインかどうか』話し合おう」

トウカ「な、何を馬鹿な!! あの男はラクシャイン!
    クッチャ・ケッチャの民草を幾人も殺した極悪人だ!!」


ゴロー「……それが違うんだ」

トウカ「な、何が違う!」






ゴロー「実はな…… あいつ、俺の弟なんだ」



   シーン……



一同(((ナ、ナンダッテーー!!!)))





354VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 22:07:02.56SwZBsheSO (22/26)


トウカ「そんな出鱈目を!!」


ゴロー「よく見ろ。あいつと俺、耳がそっくりだろ。毛がない」

   「まだ証拠はあるぞ、声だ。ハクオロ、ちょっと喋ってくれ」


ハクオロ「ああ、えーと…『こんにちは』」

ゴロー「『こんにちは』……どうだ? そっくりだろう」

トウカ「……た、確かに似ている。しかし、あの男は記憶を失っていたのでは!」

ゴロー「だから旅をして探していたんだ。○ヶ月前、急に居なくなったから」

トウカ「ほら! 居なくなった間にクッチャ・ケッチャに……」

ゴロー「いや行っていない。クッチャ・ケッチャの事件は△ヶ月前だ」

トウカ「え……」

ゴロー「旅をしていた時に商人から聞いた。
    その頃、ハクオロは『ヤマユラ』という集落に拾われていた」

   「証人もいる。エルルゥさん、アルルゥ。二人がそうだ」


エルルゥ「そ、そうです! ハクオロさんはその時ヤマユラに居ました!」

アルルゥ「うん」コクリ


トウカ「な、う、嘘だ! ほかの証人… ヤマユラの民をもっと……」アワアワ

ゴロー「……クッチャ・ケッチャの軍に襲われて皆、亡くなった」

トウカ「え……」ピタリ


ゴロー「……戦に『義』なんてない。勝っても負けても人は死ぬ」




355VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 22:10:16.34SwZBsheSO (23/26)


トウカ「…………そ、それがし」

   「いや、まだだ…… そちらの言う事には決定的な証がない!!」


ゴロー「……それ、此方も言えるんだよ。トウカ」

   「ハクオロを『ラクシャイン』と結び付ける事が、今この場で出来るか?」


トウカ「あ、オ、オリカカン殿に……」

ゴロー「その皇の話、真実か? 証があったか?」

トウカ「い、いいえ……証言だけ」


ゴロー「そもそも一体何処であの皇に会った?
    確か『シケリペチム』に行くと俺に話をしたよな」


一同(((!!)))


トウカ「……シケリペチムで野営していたオリカカン殿と話をして」


ゴロー「なるほど… 担がれたか」

トウカ「担がれた… そ、それはどういう……」

ゴロー「シケリペチムはトゥスクルを欲している。
    近隣の國と争わせ、國力が弱まった所を狙うつもりだろう。
    裏にあの國が絡んでいるとは……」


トウカ「な、だが今の話は……」

ゴロー「じゃあ話を戻そう。ハクオロがラクシャインである証は?」

トウカ「…………な、ない。証が……」




356VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 22:19:56.40SwZBsheSO (24/26)


ハクオロ(正直……ほとんどハッタリだよな)

ベナウィ(此方の出した証は身内の物でした。しかも向こうと同じ証言のみ)

エルルゥ(た、確かにハクオロさんは△ヶ月前、ヤマユラにいたけど…)

カルラ(他にも突っ込み所は多々ありますが…)

オボロ「ははっ! そうだ! 証を見せろー!」

クロウ「よっ! メシ大将! 男前!」

この二人以外(((……)))

ハクオロ(とにかく混乱させて情報を引き出したかった……ということか)


トウカ「な、ならば某は……」ヨロヨロ


 呆然として橋縄に寄り掛かるトウカ。


  ギシッ ギシッ ピン!

ゴロー「あ」


  ピン! ピン! ピン!

ゴロー「トウカ! 危ないっ!!」

トウカ「へっ!?」


  ブチッ ブチッ! バキン!!

トウカ(空中)「…………へ?」

トウカ(空中)「あわわわわわわ」ジタバタジタバタ!


  「ハあああああああァァァァァッ!?」ヒューン!



 橋が落ちた……


一同「「「……(呆然)」」」


ゴロー「……死にはしないだろう」

ハクオロ「と、とりあえず目的は達成したから引き上げ……」

  ガシッ ガシッ ガシッ…

  ガシッ ガシッ…

トウカ「くっ……」フラフラ


一同(((崖を登ってきたぁ――!!)))


トウカ「……ムギュウ」バタン

ハクオロ「……疲れたんだな、色々と」(主に精神的な意味で……)

ゴロー「連行するって事で命は助けてやってくれ……」

ハクオロ「あ、ああ。エルルゥ、移動しながら診てやってくれ」

エルルゥ「は、はい」


第十二話「舌戦?」  続く!


357 ◆M6R0eWkIpk2012/08/02(木) 22:26:02.17SwZBsheSO (25/26)

今回のトウカ、もとい投下は>>334から。

「情報を聞ければハッタリでOK!」とゴローちゃんは考えてました。

トウカを守ったクッチャ・ケッチャの兵、
きっと彼女の親衛隊だったのでしょう。

アニメだとカッコいいのに、ゲームだと『うっかり侍』。
そんなトウカは私も好きです!




358VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 22:33:25.65SwZBsheSO (26/26)

あと、ちょっと聞きたいことが。
ネタバレ単語は書かないでお聞きします。


①女性陣(+ハクオロ)と行く、白いお花観賞ツアー

②男性陣と行く、トゥスクル歓楽街ツアー


どっちにゴローちゃんを行かせます?

①はアニメ・ゲームのシナリオ。
②はPS2・PSPゲームの追加シナリオ。

第十四話の最後でちゃんとした形でまた聞きます。
今は参考程度に。


359VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/08/02(木) 22:39:58.905YShTr90o (1/1)

2がいいな


360VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/02(木) 22:55:18.79oUXSZBtD0 (1/1)

1


361VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2012/08/02(木) 23:03:40.80qleKFiay0 (1/1)

2


362VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2012/08/02(木) 23:03:53.54ovq/YTRIo (1/1)


2で


363VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/02(木) 23:05:16.50ByOvR6ISO (1/1)

1だと、下戸なゴローちゃんがまた孤独のグルメしちゃう…


364VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/03(金) 00:49:01.30KIcIRzjIO (1/1)

1かなぁ
2で『俺ってつくづく酒の飲めない日本人だなぁ…』をしたい気もするけど

両方書いても…いいのよ?


365 ◆M6R0eWkIpk2012/08/04(土) 00:05:41.47xhDip7oSO (1/42)


第十三話「謀られた戦(いくさ)」

 ~ トゥスクル皇城・地下牢 ~


 アルルゥと共に、捕虜への食事を運ぶ。


アルルゥ「よいしょ、よいしょ」

ゴロー「アルルゥ、平気か?」

アルルゥ「ん、だいじょぶ」コクン


 アルルゥは兵の詰所や地下牢に食事を配りに行く事が多い。
 自分もハクオロの役に立ちたいと思っているのかもしれん。


アルルゥ「ごはんだよ~」スッ

トウカ「かたじけない」


 牢屋越しに見知った顔……『トウカ』に話しかける。


ゴロー「身体の調子はどうだ?」

トウカ「まだ本調子ではありませぬが…… 問題はないかと」


 今日はトウカと話す為、俺もついて来た。


ゴロー「……頭は冷えたか」

トウカ「……某(それがし)には判りませぬ。
    どちらが真実を語っているのか……」

   「いったい大義はどちらにあるというのですか!」


ゴロー「……『義』に関して考えが甘いな、お前」

トウカ「……エヴェンクルガの誇りを貶すのは許せませぬ」ジロッ

ゴロー「別に貶してはいない。お前の考えの浅薄さに呆れただけだ。
    俺は人を殺す戦いに、義があると思えない」


ゴロー「今まで『俺』は人を殺していない。
    けど、俺が気絶させた兵は他の者に殺される……」


ゴロー「……俺は弱い人間だ」


 自分は手を下していないと、そう思い込んで。
 命を奪う行為を黙認している。

 ……命を弄ぶ事に、慣れてはいけない。




366VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:09:37.42xhDip7oSO (2/42)


トウカ「……」

アルルゥ「……ん」スッ

トウカ「花…… ありがとうお嬢ちゃん」

アルルゥ「ん!」ピコピコ…


 牢から出ていくアルルゥ。


トウカ「良い娘さんですな。しかしこのような場所に入らせるのは……」

ゴロー「そう言ってはいるけど、本人がやりたいらしい……
    あと、アルルゥは俺の娘じゃないぞ。
    ハクオロの子になるのかな……」


 「んだとぉ!?」


 向かいの牢から男が叫ぶ。 声の主はクッチャ・ケッチャの捕虜だった。


捕虜「ちっ! あのガキ、ここの皇のガキか!
   だったら身代(ひとじち)にすりゃあよかったぜ!」


トウカ「なっ、お主! それでも誇り高きクッチャ・ケッチャの兵か!」

捕虜「うるせぇ! 俺には家族が居るんだ! くたばるワケにはいかねぇ!」

ゴロー「……でも森の母(ヤーナ・マゥナ)を相手にそれが出来るか?」

トウカ「森の母…… あんな子どもが!」

捕虜「なんだそりゃ?」


 『ガルルルッ……』


捕虜「へ? ……う、ウワアアアアア!!」

ムックル『グオルル…』ガシッ

  ペシッ メシッ…

捕虜「ヒィィ!! 牢が、牢が壊れるぅぅ!!」

ゴロー「流石に森の主を相手にしたら、無事ではすまないと思うぞ」

トウカ「あの者に代わり、謝罪する! だから…主を引かせてくれ!」

ゴロー「……ムックル、アルルゥはもう外に行ったから。お前も行きな」

ムックル『……ぐおっ!』ノシノシ

捕虜「……」ガクリ

トウカ「……恐怖のあまり気絶したか。ゴロー殿、恩に着る」ペコッ

ゴロー「この男が悪いわけじゃない、この事は黙っておく」

トウカ「かたじけない。 …以降、彼女を来させないようにして下さい」

ゴロー「……わかった。じゃあな」

   カツ… カツ……

 ムックルの食事が始まらないでよかった。
 アルルゥに注意しておこう。




367VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:12:03.15xhDip7oSO (3/42)

  ――

ハクオロの書斎。
皇と侍大将が戦の情勢について語り合う。


ハクオロ「あの橋を制圧してから、敵の動きをだいぶ制限できた」

ベナウィ「規模の小さな衝突で敵の力を削ぐ策、上手くいっているようです」

ハクオロ「うむ。オボロ達の歩兵衆・弓衆がよく働いてくれている」

ベナウィ「聖上、そろそろ我等も進行を」

ハクオロ「……そうだな。よし、兵に遠征の準備を。明後日に出発する」

ベナウィ「御意」スッ


    パタン…


ハクオロ「…っと、こんな時間か。湯(とう)に入るか」




368VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:15:14.87xhDip7oSO (4/42)

 ――

 ~ 城内・大浴場(男) ~

城の中に設置された男湯。
城に仕える者ならば、誰が入ってもよいこの場所に……

今は皇(オゥルォ)一人。


ハクオロ「ふぅ……」チャポン


外の景色も楽しめる癒しの空間だというのに、皇の顔は暗かった。


ハクオロ「……」ザブン


湯の中に潜るハクオロ、一体何を思うのか。

そこに現れる筋肉質な身体。


ゴロー「失礼します…… なんだハクオロか」

ハクオロ「プハアッ… なんだとは酷いな」


ゴロー「この風呂に皇が入っていいのかね……」

ハクオロ「皇専用の湯(とう)など、無駄だろう」

ゴロー「内勤組がこの時間に風呂を使わないのはコイツのせいか……」

ハクオロ「私としては構わんのだが」

ゴロー「ハァ…… 皇と一緒に風呂に入って落ち着く臣下はいないだろ」

ハクオロ「オボロ・ベナウィ・クロウ・ドリィ・グラァ……結構いる」


 そいつらは例外だろう……



369VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:20:10.64xhDip7oSO (5/42)


ゴロー「……」ザパッ

ハクオロ「……」ザプッ


 しばらく無言で浸かっていると、隣の女湯から声が聞こえてきた。


  『アルちゃん! 流しっこしよ~』

  『うん! ……カミュち~、おっきい』

  『わぁ… 本当ですね……』

  『キャ! ユズっち! 急に触らないでよ~』

  『ウルト、さっ一献どうぞ』

  『ありがとうカルラ…… 美味しいですね』

  『皆さん静かにしましょう! アルルゥもほら、体洗って!』

  『おねーちゃん…… ない』

  『……ア・ル・ル・ゥ? 今なんて言ったのかなぁ?』


ハクオロ「……騒がしくなったな」

ゴロー「出るか」ザパッ

ハクオロ「賛成だ」ザブァ

 ――

 夕食の後、皇の書斎でハクオロと今後について話す。

ゴロー「じゃあ俺は明朝、クッチャ・ケッチャに向かえばいい……と」

ハクオロ「そうだ。移動してオボロ達と合流してくれ」

ゴロー「ウォプタルなら一日あれば行けるな」

ハクオロ「任せたぞ、潜入用の服はこれだ。では私は休む」スタッ


ゴロー「人使いの荒い皇(オゥルォ)だ」


 さて、準備するか。
 服を仕舞って…… あ、弁当を頼まないと。


 「失礼します」スーッ

エルルゥ「あ、ゴローさん。ハクオロさんは……」

ゴロー「あいつはもう寝室に。酒ですか?」

エルルゥ「はい。それじゃあ、そっちに持って行きますね」

ゴロー「あ、すいません。明日の昼の弁当をお願いします」

エルルゥ「はい、わかりました。お仕事ですか?」

ゴロー「ええ、まぁ…」

エルルゥ「明日の朝、正門でお渡ししますね」

ゴロー「はい、了解しました」

   パタン…

 クッチャ・ケッチャか。
 どこかでメシを食いたいものだ。
 平原地帯だから放牧で家畜を育てているかもしれない。


ゴロー「何が食えるかな……」


370VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:24:51.12xhDip7oSO (6/42)

 ――

 ~ ハクオロの寝室 ~

普段以上に酒を飲むハクオロ。
だが、彼は酔わない。酔いたくとも酔えない。


エルルゥ「……飲み過ぎですよ。お身体が心配ですから止めましょう」

ハクオロ「……ふぅ」

ハクオロ「ここ毎日、エルルゥは同じように叱ってくれる……」

ハクオロ「母がいたら、同じ事を言うのだろうか」

    「父ならば…… 怒鳴り付けてくれるのだろうか」


エルルゥ「ハクオロさん……」


皇の寝室、そこでハクオロはエルルゥに己の苦悩を打ち明ける。


ハクオロ「自らの記憶を持たない私が… エルルゥ、君を母のように思う」

エルルゥ「あ……」

ハクオロ「自分が何者かわからぬ不安に怯えるなんて…… 滑稽じゃないか!」

    「私は……私は何者なのだ!」


   ……ギュッ

ハクオロの手を握るエルルゥ。
互いの体温がじわりと伝わる。


エルルゥ「ハクオロさんが誰かなんて、どうだっていいんです」

ハクオロ「どうだっていい……?」

エルルゥ「私にとってハクオロさんは…… ハクオロさんなんです」

ハクオロ「エルルゥ…」グイッ

エルルゥ「きゃっ!」


ハクオロは少し強引にエルルゥを引き寄せた。



371VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:27:43.76xhDip7oSO (7/42)


エルルゥ「え、あ……」

ハクオロ「君は私が怖くないのか……」

エルルゥ「……」

   タッ……

ハクオロ「……」


彼は強く目を閉じた。
自分は拒絶されたのだと思って。


   ギュゥ……

ハクオロ「!」


目を閉じてもわかる、暖かな薬草の香り。
それは彼の最も近くにいた人の香り――


エルルゥ「私がハクオロさんを怖いと思うなんて…… 絶対ありません」


ハクオロは後ろから抱き締められていた。


エルルゥ「大丈夫です、大丈夫……」

ハクオロ「私は……」

エルルゥ「……明日、私に付き合って下さいね」

    「森に薬草を摘みに行きましょう」ニコリ

   タッ タタッ……


ハクオロ「エルルゥ……」

    「ありがとう」





372VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:30:08.05xhDip7oSO (8/42)

 ――

 翌日の夕刻…


 ~ クッチャ・ケッチャ 西の外れ~


ゴロー「ふぅ、ようやく着いた」


 クッチャ・ケッチャはウォプタルで移動しやすくていい。


ゴロー「今日は遅いし、合流は明日にして宿をとるか」


 そう思いなんとなく進んでいると、ボンヤリとした灯りが見えて来た。


ゴロー「……牧場みたい。家畜がいるぞ」


 服装はこれで平気か?
 ここの服に着替えたほうがいいのかな……


 「あああ! 坊や!」


 ……叫び声が聞こえる。


 「薬がないわ!! ああどうしたら……」

 「ハァ… ハァ…」



ゴロー「!」ダッ!

   バサッ!!

ゴロー「どうしました!」


女「な、なんですかアナタ! 勝手に家に…」

ゴロー「私は旅の薬師です! 薬が必要でしたらお渡しできます!」


 向こうも必死だったらしく、
 すぐに返事が返ってきた。


女「わ、わかりました。私の子を助けてください!!」


 彼女の近くには酷く赤い顔をした子どもが寝ていた。


子「うーん… マーマ……」ハァハァ

ゴロー(詳しい病がわからんが……今は対処療法でなんとかする)


 どうしようも無いときは紫琥珀の霊薬を使うぞ。




373VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:32:16.29xhDip7oSO (9/42)

 ……

 幸い、大した病ではなかったらしく
 熱が落ち着くと、子どもは気持ち良さそうな寝息を立てた。


ゴロー「よし、大丈夫。直に良くなります」フー

女「ありがとう、ありがとうございます……」ボロボロ


 涙を流して感謝される。


ゴロー「では、これで。お代は結構ですから」スタッ

女「お待ち下さい! まだ何も礼をしておりません」

ゴロー「はぁ…」

女「辺りも暗くなって参りましたし、
  よろしければ今宵はコチラでお過ごし下さい」


ゴロー「…いいんですか?」

女「はい。アナタ様は恩人でございます!」

ゴロー「では今晩だけお世話になります」ペコリ


 これは運がいいぞ。


 ……


 【肉の腸詰め】

なんの肉かわからない。
串に刺してあるからかぶり付いて食べる。


 【 スープ 】

中には麺のようなモノが入っている。
スープの色は白。





374VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:35:21.63xhDip7oSO (10/42)


女「申し訳ありません、恩人にこのような粗末な食事で……」

ゴロー「いや、そんな。美味しそうな食事ではありませんか」


 どれ、最初に腸詰めからいただこう。


   かりっ! むしゃ


 いい肉汁! たまらん!


ゴロー(旨い、少ししょっぱい位がまた食欲をそそる)

女「お気に召したようで……」

ゴロー(『じゅわっ』と出てくる汁が、アツウマい)

   むしゃ もぐ…


女「私どもは人を雇って牧場・加工業をしておりまして」

ゴロー「なるほど、だから腸詰めが出せるわけか……」

女「ですが戦で働き手が皆徴兵され、仕事が進まず…… 私の夫も……」

ゴロー「……」


 気まずい……


女「申し訳ありません、湿っぽい話を。ささっ、どうぞ」


 次は汁物を食べよう。
 麺とスープ…… スープからだ。


   ずずっ!

ゴロー(! これ、骨でダシをとってる!?)

   「このスープ、骨を強く煮込んで味をつけてますか?」


女「ハイ、近くの屠畜場からウマの骨を」

ゴロー「ウマ…… ウォプタルの骨?」


女「ええ。腸詰めの肉もウォプタルでございます」

 「この牧場はウォプタルとネウを飼育してまして」


ゴロー(……ウォプタル、意外にウマイな)


(※ 食べるのは怪我して走れなくなったウォプタルが主です)




375VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:36:37.53xhDip7oSO (11/42)


   ずるずる…

ゴロー(麺はかなり太いな。細めのほうが汁が絡んで旨くなると思うけど)


女「オリカカン様、どうしてしまわれたのか…」

ゴロー「他國の者なので詳しく知りませんが、
    ラクシャインという男が関係しているそうですね」


女「死んだ筈の方が生き返るわけないですのに…」

ゴロー「え? その男は生死不明なのでは?」

女「いえ、主人の亡くなった父君が死体を見たと」

ゴロー「じゃあ… どうして言わないんですか?」


女「……私は元奴隷(ケナム)です。主人が身請けしたおかげで、
  こうして人並みに暮らせておりますが……
  そのせいで主人にも苦労をかけて……」


ゴロー(更に気まずい……)


 身分が低いから皇に謁見出来なかったのか。
 又聞きだから確実な情報ではないけど…


ゴロー(これは良い話を聞けたぞ)


 ――


376VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:39:13.57xhDip7oSO (12/42)


 翌日、部隊と合流する。

 オボロ・クロウが出迎えてくれた。


オボロ「大兄者! 遅かったな」

ゴロー「こっちに着いたの、昨日の夕方だぞ」ドスン


 ウォプタルの背から荷を下ろす。


クロウ「おっ! さすがメシ大将。しっかり食糧確保しちゃって」

ゴロー「道中で人助けをしてな。礼として貰ったんだ」


 ウォプタルの腸詰めを沢山いただいてしまった。


クロウ「俺達の昼はコイツにしやしょう」

  ……


ゴロー「ハクオロ達は今日出発する筈だ」


 貰った腸詰めを食べながら、今後の事を話し合う。


ドリィ・グラァ「「では、いよいよ」」

クロウ「正面衝突…ってワケですかい」ハグリ

オボロ「む、この肉ウマイ」ムシャムシャ

ゴロー「ウォプタルの肉らしい」

オボロ「……何?」ピタ

クロウ「あん? 知らなかったのか?」ゴクリ

オボロ「おい待て、クロウ。騎兵がウマの肉を食うのはいいのか?」


クロウ「なーに言ってやがる。ウマ乗りってのはな、
    事故やら戦やらでウマを失ったとき、肉をとってから埋葬すんだ」

   「そんで、皆でその肉を食う。大切な食糧って意味もあるけどよぉ」

クロウ「俺達の為に散った命を忘れないって意味もあんだよ」ムシャ ゴクン


ドリィ・グラァ「「クロウさんが真面目な事を言ってる……」」

ゴロー(……ホントだ)





377VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:43:15.68xhDip7oSO (13/42)

 ――

時は進み、皇(オゥルォ)率いるトゥスクル軍が合流。

クッチャ・ケッチャを落とす軍議が開かれた。


ハクオロ「敵は焦っている。この機を逃すわけにはいかない」

オボロ「兄者! なぜこの優位な状況でそんな策を!」

ハクオロ「私が餌となりあの男…… オリカカンを誘いだす事か」

オボロ「そうだっ!」

ベナウィ「私も承服しかねます…… ですが……」

ゴロー「ハクオロの過去を知る為には必要…か」

ベナウィ「はい。ゴローさんの情報の真偽を確かめる為にも」

ハクオロ「……まず、細工などせず真っ向から戦う。
     次に敵将オリカカンに私を追わせ、
     沼地に誘い込み、ウォプタルの機動力を失わせる」


クロウ「それで誰が総大将の護衛をするんで?」

ハクオロ「……護衛はいらん」

一同「「「はぃ???」」」


ハクオロ「正確にはお前達を使わないという意味だ」

ベナウィ「我らは敵の軍勢を引き付け、聖上は他の兵と行動する……と?」

ハクオロ「そうだ」コクリ

オボロ「――ッ! 何故だ!」

ハクオロ「お前達は戦場で目立つ。それを活かした策だ」

オボロ「……」  クロウ「総大将を信じようや」ポン


オボロ「……わかった。無事に戻ってくれよ」

ハクオロ「ああ」コクッ




378VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:47:30.21xhDip7oSO (14/42)

 ――

平原…… 空が青く、陽もやわらかい。洗濯日和だった。

こんな平和な場所で
トゥスクルとクッチャ・ケッチャ、
二國の意地が激突する。



ハクオロ「決着をつける!」バッ


ハクオロは自らの鉄扇を振り下ろす。



オリカカン「望むところぉ! 喰い破れぇぇ!!」


オリカカンは鉄棍を構え、兵と共に駆ける。


「「「うおおォォォォォォォォォォ!!!」」」


  ドドドドドドドドド……


最初に互いの騎兵同士がぶつかり合う。


オリカカン「ラクシャインっ!! どこだっ!」ブン!


鉄棍を振るい、兵を薙ぎ倒しながら彼は進む。


ク兵?「オリカカン様! あそこを!!」スッ

ハクオロ「……」ダッ!!


オリカカン「待ぁぁてぇぇ!!!」ダッ!



ク兵達「「お待ち下さい、オリカカン様!!」」ダッ!



ク兵?「……よし、次だ」ダッ…





379VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:50:20.14xhDip7oSO (15/42)

 ――

オリカカンの側近達は皇の行方を見失ってしまう。


ク兵A「オリカカン様はどちらに!」

ク兵B「わからない! ラクシャインはどこだ!」

ク兵C「おい! あの後ろ姿!」

ハクオロ?「……」ダッ!

ク兵D「待てぇ! オリカカン様はどうした!」ドド

ハクオロ?「……片付けた」ボソリ

ク兵E「な、ナニィ!! キサマァァ!!」ドドッ


追いかける騎兵達。
男は急にウォプタルから降り、自身の脚で駆け出した。


ク兵E「バカめ! 人の脚でウマに敵うか!」


たちまち追い付かれる男。


ハクオロ?「……もう君達には何も出来ない」

ク兵B「な、なんだ! 沼だとお!」ズボォ

ク兵C「し、しまった! 止まれ!!」ズザッ


一騎は沼にはまったが、他の騎兵は沼の前で動きを止める。


ハクオロ?「ついでに言うと俺は『ハクオロ』じゃない」クルリ

   パッ

ゴロー「あの二人は別の所に向かった」

ク兵達「「「な………」」」

ゴロー「おっと、動かないでくれ」


  ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


ク兵A「くそう!! 後ろから矢だ!」

 「ウマがっ!」 「ぎゃっ!」 「肩をッ!」


ゴロー「これでどうも出来ないだろう。投降してくれ」

ク兵達「「「……無念」」」




380VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:52:18.23xhDip7oSO (16/42)


 《 回想 》


ゴロー「囮は二人?」

ハクオロ「そうだ。オリカカンは私、他は貴方に」

ベナウィ「でなければ私が反対するに決まっています」

    「沼地に誘うのはゴローさんの役目。
     ゴローさんには弓衆朱組を、聖上には蒼組……」


   ガサッ ガサガサ……

エルルゥ「……ハクオロさん!」

アルルゥ「おとーさん」

ハクオロ「な、二人とも何故! 留守を任せたはず!」


   バサッ バサバサ……

ウルト「ハクオロ様、失礼いたします」スッ

カミュ「えへへ… 来ちゃった」テヘ

ハクオロ「な……」

ウルト「わたくし達は一方に加担する事は出来ませんが……
    オリカカン皇に停戦和平を求める為に参りました」


カミュ「だいじょーぶ! こう見えてカミュ達は強いから!」

ハクオロ「……」

ベナウィ「……」

エルルゥ「平気です! できるだけ戦場には近付きませんから…」

アルルゥ「おとーさん、いっしょがいい」スリスリ


ゴロー(あらら。男二人とも呆然としちゃって)

 《回想終わり》




381VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:54:31.61xhDip7oSO (17/42)

 ――


ハクオロ「ハァッ!」キィン

オリカカン「てりゃああっ!!」キィン


鉄扇と鉄棍、皇の持つ武器が火花を散らす。

ウォプタルで駆けながら、ハクオロは目的地までオリカカンを誘う。


オリカカン「待てぇっ!」ダダッ

ハクオロ「くっ……」ダダッ


そして彼は壁に囲われた場所に追い詰められる。


オリカカン「追い詰めたぞ! ラクシャイン!!」ブンッ

ハクオロ「くっ…ウマを……」 バッ スタッ!

オリカカン「この時を待っていた!」ビシッ

     「どうした、怯える心もとうに無くしたかぁ!」


ハクオロに対し、鉄棍を突き付けるオリカカン。


ハクオロ「ここに来たのも策のうちだ。
     こうでもしないと、貴様と話が出来ないと思ったのでな」


オリカカン「話だとぉ!! むっ! この音は!」


 バサッ バサッ バサッ バサッ…

二人の近くにゆっくりと天使が舞い降りる……
オンカミヤムカイ第一皇女『ウルトリィ』が。


ウルト「ハクオロ皇、オリカカン皇、これ以上の流血は無益です。
    どうか争いをお止め下さい」




382VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 00:59:03.03xhDip7oSO (18/42)

※追い詰められた部分の『壁』を『岩壁』に修正。



オリカカン「オンカミヤムカイといえど、この戦に口出しは無用!」


ウルト「ハクオロ皇は話し合いを望んでおられます」

   「どうか一度だけ寛大な御心を……」


オリカカン「今さら何を話し合うことがあろうか!!」

ウルト「オリカカン皇!」

オリカカン「くどいっ! 邪魔立てするなら姫君といえど容赦しませんぞ!」

ハクオロ「やめろっ!」サッ


オリカカン「貴様のおかげで多くを失った……」

ハクオロ「……」

オリカカン「貴様だけは地獄に連れていく… 必ずだ!」

ハクオロ「お相手しよう、オリカカン皇。だが、多くのものを失ったのは
     あなただけではないという事…… 覚えておけ!!」


オリカカン「わかったような口をォォォォ!!」ブオン!!

ハクオロ「てぇい!」ガシッ


ハクオロは振られた棍を寸前でかわし、
次の攻撃の為に一瞬停止した棒の部分を掴む。


ハクオロ「はっ!」グイッ


   ドシッ!


鉄で作られた先端部を地に落とし、
鉄扇を力点として棍を自身の体の方向に引っ張った。


オリカカン「ぬごぉっ!」


棍から手を離す暇もなく、ウォプタルから引き下ろされるオリカカン。


オリカカン「うぐっ……」ドサッ


背から落下し、痛みに顔をひきつらせた。


ハクオロ「……ここまでだ」チャキ


鉄扇をオリカカンの顔に構え、いつでも攻撃出来る状態を作る。



383VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 01:01:21.69xhDip7oSO (19/42)


オリカカン「フ、フフ…クハハハハ……」

     「どうだ今の気分は……」

オリカカン「己が妻を殺し、子を殺し… 余から全てを奪い、晒し者にする」

     「さぞ、最高の気分なのだろうな!!」

オリカカン「さぁ、どうした! 殺すがいい!
      我が妹にしたように貴様の手で殺すがいい、ラクシャイン!!」


ハクオロ「違う! 私はハクオロだ!! ラクシャインなどではない…」

オリカカン「戯言を……」

     「例え記憶を無くしてようと、貴様の罪は消えぬわ!!」



ハクオロ「違う…… ちがう… 違ウ……」



彼の心が業火で紅く染まっていく……



 「違います!!」


 ―― 声が聞こえた ――



エルルゥ「この人はハクオロさんです!
     ラクシャインなんて人じゃありません!」


ハクオロ「……ハッ! エルルゥ! 戦場には来ないと!」


正気を取り戻したハクオロ。


オリカカン「小娘が何をほざくかっ!!」

     「この男は卑怯で愚劣で非道な我が義弟よ!!」


エルルゥ「……たは……んですか?」ボソッ

オリカカン「何?」




384VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 01:03:34.24xhDip7oSO (20/42)



エルルゥ「あなたは…違うんですか……?」

    「それじゃあ、あなたは違うんですか!!」


オリカカン「ぬぐ――」


エルルゥ「何の罪もない人達を襲っておいて……」

    「あなたの言うその人と、あなたの何が違うって言うんですか!!」

エルルゥ「返してください……」

    「ソポク姉さんを… テオロさんを… みんなを……」

エルルゥ「私の家族を返してください!!!」ボロ…


それは気持ちを絞り出すような… 痛々しい叫びだった……


オリカカン「……う、ううっ な、な…にを…」

エルルゥ「ひどいのは… ひどいのは……」ポロポロ

ハクオロ「エルルゥ、もうよすんだ」

    「お前は憎しみに囚われてはいけない」


エルルゥ「……はい」ゴシゴシ

エルルゥ「私はハクオロさんを信じます」

    「ハクオロさんはラクシャインなんて人じゃありません」


   キィン……

オリカカン「まだぬかす……な、なんだ……?」

     「誰だ… 貴様は何者だ!?」


ハクオロ「何っ?」


オリカカン「違う、ラクシャインなどではない……」

     「これはどういう…… やつめ、影を使ったか!?」




385VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 01:07:19.20xhDip7oSO (21/42)


ウルト「惑わされましたね」

オリカカン「――――!?」

ハクオロ「惑わされる?」

ウルト「相手に強い暗示をかけ、偽りの記憶や映像を信じさせる事です」

   「かけられた相手が暗示を事実として望むほど、術は解けにくくなります」


オリカカン「ば、馬鹿な…… そんな事信じぬぞ!!」

     「いや……まさか、まさかあの男……」


  オーイ オーイ!


オリカカン「お、おのれェェェェ!! 余を謀ってくれたな!!」


  オーイ! アッ… ズデッ!!

  ヒュン!  ヒューン…

オリカカン「あれはすべて余を…… ぐげあっ!!」


   ぼかーん☆


ハクオロ「!?」

エルルゥ「え、えっと……ゴローさん?」

ゴロー「最近… 空を飛ぶなぁ……」キュウ…

オリカカン〈ピヨピヨ☆〉


ハクオロ「オリカカン皇? 口から泡を吹いて気絶している……」


?「ちっ!」ガサッ


ハクオロ「ドリィ! 何者かが居る! 追え!!」

ドリィ「ハッ!」ガサッ

エルルゥ「ハクオロさん! これ……」

ハクオロ「針! 吹き矢か」

エルルゥ「さっきまであの人が立ってた地面に……」

ハクオロ「エルルゥ、針に毒はあるか?」

エルルゥ「は、はい… 多分塗られてます」ジッ

ハクオロ「私も、この男も… 踊らされていた……」

エルルゥ「……そんな」

ハクオロ「何の… 何のために… ヤマユラのみんなは……」

エルルゥ「うっ… ううっ……」ポロポロ

ハクオロ「……」ギュウッ

エルルゥ「う、うゎぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ポロポロ


ゴロー「」ガクッ


第十三話「ウォプタル肉の腸詰めとウォプタル骨スープ」

 続く。


386 ◆M6R0eWkIpk2012/08/04(土) 01:11:26.33xhDip7oSO (22/42)

>>365から投下分。

クッチャ・ケッチャ編、駆け足だったが終了。
ハクオロ対オリカカンはアニメで見たほうがわかりやすい。


今日のゴロー、喰われるはずの捕虜を救う。
死ぬはずのオリカカンをウォプタルでずっこけて救う。

ではまた。


387VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/04(土) 01:18:16.67xCax8XpVo (1/1)

初めてリアルタイム遭遇した…
乙です、面白いこれ


388VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/04(土) 07:17:28.83Cu211/940 (1/1)

ゴローいるだけで大分変わるなwww


389VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県)2012/08/04(土) 10:05:18.52+T9x/VgHo (1/1)

ムックルの貴重な食事シーン


390 ◆M6R0eWkIpk2012/08/04(土) 19:59:03.93xhDip7oSO (23/42)


第十四話「カルラ手製のお茶」


エルルゥ「失礼します。オリカカン皇とトウカさんをお連れしました」


トゥスクル皇城・朝堂にて、さきの戦の処理が行われる。


ハクオロ「オリカカン殿、体は痛みませんか」


オリカカン「いえ、お気遣いは無用であります。
      この度の戦、誠に申し訳ありませぬ……」グリグリ


床に顔を押し付け、土下座をするオリカカン。


トウカ「某(それがし)も数多の無礼、謝罪いたします……」

   「事の次第、耳にしております。
    全ては誤解から始まった事であると……」


ハクオロ「……頭を上げてください」


オリカカン「ハクオロ殿、このオリカカン、死んでお詫びを!!
      かわりにどうか…… クッチャ・ケッチャの民はお救い下され!」

トウカ「某も武人として自らの命をもって償いをいたしまする!!」


ハクオロ「……駄目だ。あなた方には生きて罪を償っていただく」


オリ・トウカ「「!!」」


ハクオロ「オリカカン殿、まだ戦後の処理は残っている」

ベナウィ「まずは捕虜を解放いたします。処理が済みましたらお戻り下さい」


オリカカン「……ははっ!!」

トウカ「……某の処遇は! 如何なる罰も受けましょう!!」



ハクオロ「……少し待ってくれ、ゴローさん」

ゴロー「はい」スッ

ハクオロ「あの女、ここから連れ出して欲しい。
     話し合いの邪魔になりそうだ」ヒソヒソ

ゴロー「畏まりました」

   「トウカ様、別室へ」

トウカ「は? はぁ……」

  スタ… スタ…



391VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:06:45.66xhDip7oSO (24/42)


ハクオロ「よし、まずは國についてだが……」

オリカカン「ハクオロ皇、そなた様に一任いたします」


ハクオロ「判った。形式的にクッチャ・ケッチャはトゥスクルとする。
     民はそのまま、賠償は互いの國交という形でしようと思う」

ベナウィ「よろしいのですか? そのような軽い……」


ハクオロ「失った命は戻らない。今やるべきはこれからの事なのだ」

    「あそこは平原が多く、トゥスクルとは異なる産業を行える」

    「此方の國力を増やす為、様々な産業を推進していきたい」


ハクオロ「……問題は分裂だ。壊れた國は簡単に瓦解する」

    「これ以上の軋轢を生まない為にも、此方の軍を出さないほうがいい」


ハクオロ「オリカカン殿には、かの地の混乱を収めてもらう」



オリカカン「ははぁーっ!!」


ハクオロ「さて… 問題はあの女……『トウカ』だ」

    「領地を持つ者でもないし、あの者は放免という事で……」




392VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:11:10.77xhDip7oSO (25/42)


   ダダダッ!!

トウカ「不服にございます!!」

ゴロー「あっ、こら!!」

ハクオロ「な……聞いていたのか」

トウカ「エヴェンクルガとして、償いはせねばなりませぬ!!」タッ

兵士「お、俺の刀!」

ゴロー(刀を盗った!)


 自分で首を切るつもりか!


トウカ「ッ……」スッ

   カ キィン!!

 ハクオロの投げた鉄扇が、トウカの刀に命中。

 弾かれ、落ちる刀と鉄扇。


ハクオロ「死んで罪を償うな! 生きて償え!!」


 ……やるじゃないか。

 そもそも謝る気ならここで首を切らないよな。


ハクオロ「死ぬ事で罪の意識から逃げるな」

トウカ「……ならば、ならば某はどうすれば!」

ゴロー「……ここで雇ったらどうだろう」ボソリ


一同「「「……あ!」」」


 また、ヘンな事を言ってしまったのだろうか。


ベナウィ「……確かに、そうすれば此方の士気も上がります」

ハクオロ「な、なにぃ?」

オリカカン「おお、それは名案!」

ハクオロ「は、はぁ?」

トウカ「そうです、某を末席に加えて頂ければ! 厠の掃除でもなんでも…」

ハクオロ「エヴェンクルガに厠の掃除などさせたら
     私が『無能皇』と謗りを受ける!」

トウカ「う、うう……ならやはり某の首を……」スッ

ハクオロ「だーっ!! 待て待て! わかった、わかったから!」


ハクオロ「雇う、雇いますよ……」ガクリ

トウカ「あ、ありがたき御言葉!! では早速、厠を掃除して参ります!」タッ!

ハクオロ「ま、待て! それはやめてくれぇ!!」

ゴロー「……もう行ったみたい」

ハクオロ「時々自分が本当に皇(オゥルォ)なのか判らなくなる……」


 ……ハクオロって、押しに弱すぎるような気がする。


393VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:13:54.69xhDip7oSO (26/42)

 ――

 ~ トウカの部屋 ~


ハクオロ「部屋が出来たか」

トウカ「はっ このような御心遣い、感謝の言葉もございませぬ」ペコッ

ハクオロ「おいおい、そんなに堅苦しくしないでいいぞ」

    「ここでは誰も、そんな事は気にしない。私も苦手だしな」


ハクオロ「出来れば、皆を家族と思ってくれると嬉しいんだが」

トウカ「ですが……」

ハクオロ(生真面目だな。もう少し気楽にすればいいんだが)

    (……というか、他の者達がこの上なく気楽に居座ってる気が……)


 《同時刻、倉にて》


カルラ「♪~♪~~ ふふっ。肴、見つけましたわ」パシッ

オボロ「あまり持ち出すな。足が付く」ゴソゴソ

カミュ「ん~と、確か前のハチミツ漬けが…」ゴソゴソ

アルルゥ「ここ。たべごろ」スッ

クロウ「ん~ 美味ぇ。さすが姐さんだ、いい腕してる」ムシャ

ゴロー「急げ、そろそろ勘付かれる頃だぞ」ヨイショ


カルラ「肴肴肴~♪」

カミュ「フヤト~、ニュチプ~、チムチ~♪」

アルルゥ「ハチミツ、ハチミツ、ハチミツ~♪」

ムックル『う゛ぉ~♪』




394VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:16:45.41xhDip7oSO (27/42)


   ガチャッ!

エルルゥ「な、なにコレぇぇ!!」

ゴロー「バレた! やむを得ない、全員名乗りをあげろ!」



カルラ「お酒と肴はいただきましたわ! 『カルラレッド』!」シャキーン

オボロ「隠れたつまみを見つけ出す! 『オボロブラウン』!」シャキーン

カミュ「美味しいオヤツはカミュのモノ! 『カミュブラック』!」シャキーン

アルルゥ「う~? ハチミツ、すき~ 『アルブルゥー』!」シャキーン

クロウ「好き嫌いはねぇ! 『クロウイエロー』!」シャキーン

ゴロー「食事の邪魔は許さない。 『ゴローホワイト』!」シャキーン


ゴロー「そして、俺達の秘密兵器! 『ムックル』!!」

ムックル『ぐおおぉぉ!』



一同「「「我ら、『食事戦隊! タベルンジャー』!!」」」



エルルゥ「」ポカーン


カミュ「今だよアルちゃん! みんなも後ろについてきて!」

アルルゥ「うん!」コクリ


一同「「「応ッ!!」」」




395VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:19:29.95xhDip7oSO (28/42)


 《 協撃!》

 《ムックル悶絶爆炎弾!!》


アルルゥ「カミュちー、のる!」

カミュ「よぉ~し、行くよアルちゃん! 熱い友情の合体技!」

   「ひ~っさぁつ! ムックル・悶絶・爆炎弾!!」


ムックル『……ヴォ!?』


アルルゥ「どした? ムックル、いく!」


ムックル『ヴォォォ!?』


アルルゥ・カミュ「「たあぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


  ドゴゴォン!! ダダッ!!



エルルゥ「……ハッ、派手さに気をとられたぁ! 倉の壁が……」

    「他の人もいなくなってるぅ~!!」

    「もぉ――――――――!!!」


  …………

 コラー! マチナサーイ!!


ハクオロ「…………」

トウカ「そ、某もあのように気楽に……」


ハクオロ「いや、トウカはそのままでいいぞ。うん」


(※ 壁の修理代はゴロー・オボロ・クロウ・ハクオロに請求されました)



396VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:23:08.88xhDip7oSO (29/42)

 ――

数日後……


ハクオロ「国境付近の賊の討伐でおかしな物を見た?」

ベナウィ「はい、一つだけ壊さずに持ち帰る事が出来ましたのでご覧下さい」

ハクオロ「外にあるのか、よし」ガタッ

 …………

ゴロー「なんだ、これは?」


 よくわからない代物が、調練場に置かれていた。


ハクオロ「ゴローさんも来たか」

ベナウィ「聖上、あまり近づかないで下さい。火を噴きます」

ハクオロ「あ、ああ。これは一体?」

クロウ「なんか、敵さんは『デグカパ』とか言ってやした」


 デグカパ、ムティカパみたいな名前だ。


ハクオロ「ふむ…… 仕組みはどうなっている?」

オボロ「前に立つと火を噴く。破壊すると、爆破・炎上して調べられん」

ゴロー「面倒な置物だ」

ハクオロ「とりあえず、他の兵は近寄らせないように」

ベナウィ「はっ。今後はどういたしますか」

ハクオロ「出来ればでいい。出所を知りたい」

ゴロー「チキナロを呼ぶか?」

ハクオロ「それも手だが… 次に賊が出たら、誰かに足取りを追わせてくれ」

オボロ「わかった。ドリィとグラァにやらせよう」




397VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:26:14.75xhDip7oSO (30/42)


ハクオロ「本当は上手く解体出来れば良いのだが……」

ゴロー「特殊な法術がかかってるかもな」

ハクオロ「こういった物の造りや法術に詳しい存在……」

    「やはりチキナロを呼んでくれ。あの男なら、
     そういった人物に心当たりがあるかもしれん」


クロウ「ういっす! あ、総大将。ナ・トゥンクの叛乱、ご存知ですかい?」

ハクオロ「ナ・トゥンクで?」

ベナウィ「初耳です。何故早く報告しなかったのですか」

クロウ「今さっき聞いた話なんすよ。奴隷(ケナム)が起こしたらしいっす」


  スタ スタ スタ スタ…

カルラ「へぇ…… 詳しいお話、聞きたいですわ……」グビッ


 おっ、カルラさん。調練場に来るなんて珍しい。
 この人、どこに行くのにも一升瓶持ってるな。


クロウ「いえ、スンマセン。詳しい事はまだ……」

カルラ「そうでしたか……」スタスタ


 ……行っちゃった。


ハクオロ「ナ・トゥンクは比較的近い國だ。情報が入り次第、報告を頼む」

ベナウィ「ははっ」  クロウ「ういっす!」


ゴロー(皇(オゥルォ)って忙しいもんだな)

ハクオロ「……カルラには秘密にしておくか」





398VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:29:18.35xhDip7oSO (31/42)

  ――

 ~ ゴローの部屋 ~


 『週刊トゥスクル』本日創刊!


 ―― 女官は見た! オボロ侍大将、人体実験に使われる? ――


 ―― 水飲み場の怪! 怪しげな女の子の声! ――


 ―― 恐怖! 森の主に食べられる少女! ――


 ―― 好色皇の夜、お相手はだれ? ――


 ―― いたずらっ子にご用心。被害者は語る ――


 ―― 昨日の組手結果、ベナウィ侍大将○…オボロ侍大将× ――



ゴロー「こんな所かな」フゥ…


 トゥス日(この國の瓦版)の編集長から、
 頼まれて作って見たけど……


ゴロー「予想外にちゃんとした週刊誌になりそうだ」


 というか、これ本当に出していいんだろうか。


ゴロー「ま、いいか。給料引かれたしな」フゥー


 しかし、ネタの多い城だこと。


ゴロー「く…… ちょっと疲れたな……」


 「どうぞ、お茶です」


ゴロー「どうも……」ズズッ

   「……ゲフッ! ガッハ、ペッ! ペッ!」


ゴロー「ナメッとさてヌルッとして苦しょっぱくて甘酸っぱい!!」


カルラ「非道いですわ、せっかく煎れましたのに」


ゴロー「カルラさん! これ、なんですか!!」

カルラ「お茶ですわ。闘士に伝わる元気の出るお茶……ね」

   「お茶の葉とモッチョモ、ホッコモッコで作られてますの」




399VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:32:53.35xhDip7oSO (32/42)


 【お茶(カルラ特製)】

よくわからない物が入ったお茶。
ハクオロに煎れたお茶は+愛の隠し味。
ツーンとした香りがする。


ゴロー「……全部飲めと?」

カルラ「いえ、ちょっとあるじ様に『また』煎れる前に試しただけですわ」ニコッ

ゴロー(……この人、一度飲ませたのか。コレを)

カルラ「あら、『トゥス日』ですの?」スッ

ゴロー「ええ、それ以外にも最近の報告を」


カルラ「……ナ・トゥンク叛乱、叛軍劣勢。……物資不足」

   「叛軍の将、『デリホウライ』……」


ゴロー「あ、ハクオロに言われて……しまった!」ハッ

カルラ「皆さんがこの事を話さなかったの。あるじ様のせいでしたのね」

ゴロー「こ、この事は内密に……」

カルラ「ちょっと頼みを聞いて頂けたら取材源は秘匿いたしますわ」ニヤッ

ゴロー(拒否権、無し。終わった……)


カルラ「……服を直して欲しいのです。大急ぎで」ニコッ

ゴロー「そ、そんな事でよろしいんですか?」

カルラ「ええ、それで十分。この服を明日以内に」スッ

ゴロー「わかりました、やらせます……」


 とほほ、せっかくの原稿料が女官さん達への依頼でパーだ……

 この人、最初から俺にこの事を頼む気で来たのか。


ゴロー(カルラさんとは相性悪いなァ……)


 ――


400VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:36:52.95xhDip7oSO (33/42)


 ~翌日・ハクオロの寝室にて~


カルラ「お願いがあり、参りました」パサッ


そこに居たのは、一見すると『カルラ』のようではなかった。

束ねた髪を下ろし、着物も普段の物と違う。
白地の布の上、目立たない程度に金色の紋を入れた服。
ただ、首の鉄輪で彼女がカルラである事がわかった。


ハクオロは酒や八珍を楽しみながら話を切り出す。


ハクオロ「着物一つで、随分と変わるものだな」グイ

カルラ「お願いに来たのですから、正装は礼儀ですわ」


……本題の話を始めたのはハクオロからだった。


ハクオロ「……ナ・トゥンクだな。物資の支援か」

カルラ「……あるじ様はいけずですわ。わたしに黙っているなんて」


ハクオロ「出来る事ならなんとかしてやりたい。
     だが、その為にこの國を戦禍に巻き込むわけにはいかない」


他國と同盟和議を再び行おうと、幾度交渉をしても良い返事が得られない。

故に、今為すべきはシケリペチムとの戦に備え、國を磐石にする事。

物資の援助…… 簡単な事に思えるが、それは民の生活を圧迫する。
國の体制を揺るがす危険があるのだ。

そして叛軍に援助をする事は、ナ・トゥンクや周辺國に良い印象を与えない。
最悪、ナ・トゥンクとの戦になりうる……

皇の言はそれらを危惧してのものであった。



401VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:39:31.92xhDip7oSO (34/42)


カルラ「……勿論、只で『支援を』なんて蟲のいい事は言いませんわ」

ハクオロ「では、どうすると?」


カルラ「わたしの全てを差し上げます」ニコリ


ハクオロ「全て……とは?」



カルラ「髪一本から血の一滴にいたるまで。そして、この魂を……」


   「そう、『ウィツァルネミテアの契約』を……」



大神ウィツァルネミテアの名を冠す契約。それは……


―― ある者の願いを叶える代わり、未来永劫その者の全てを拘束する ――


……と言われる『違えてはならない契約』であった。



402VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:42:20.23xhDip7oSO (35/42)


ハクオロ「……何を言っているか、わかっているのか」

カルラ「ええ」ニコリ

ハクオロ「馬鹿な。私が死ねと命じたら死ぬのか」

カルラ「それがあるじ様のお望み?」ニコッ

ハクオロ(――ッ、カルラは本気だ。何か訳があるな)

ハクオロ「いいだろう。そこまでの覚悟があるのなら、望みを叶えよう」

    「物資だけだぞ。それ以上は支援しない」


カルラ「契約成立ですわね」

ハクオロ「ん、いやそうではなく… そこまで覚悟があるなら…叶えると」

カルラ「ですから契約成立ですわ」ニヤリ

ハクオロ「いやだから、契約は関係なくだな……」

カルラ「それはいけませんわ。代償を支払わなくては、契約と言えませんもの」

   スルリ パサッ…

ハクオロ「ま、ま、待て!! 何故脱ぐ!!」


カルラ「恵んで貰おうと思ってはいませんわ」スタスタ

   「あるじ様のおつもりはなんであれ、
    代償を支払わない限り、わたしにとっては恵んで貰うのと同じ……」


カルラ「これ以上、恥をかかせないで下さいな」ペロリ

ハクオロ「ね、狙ってますよね!」

カルラ「ふふっ……」スウッ

ハクオロ「なあっ!!」

   パタッ……


カルラに押し倒されるハクオロ。


カルラ「わたしは『カルラゥアツゥレイ』。
    大神ウィツァルネミテアの名において、
    貴方様にこの名を献上いたします」


カルラ「この身体は御身に寄り添い、この魂は御心に付き従う。
    それこそ我が最上の喜びであり、永久(とこしえ)の誓い――」


ハクオロ「なぁぁぁ… 耳元で囁くなぁぁ……」

カルラ「うふふっ…… さあ最上の膳を味わって下さいませ……」スッ


 『ここから先は見せられないよ!』




403VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:46:55.94xhDip7oSO (36/42)


……なんて事にはならないのでご安心。

もしここがカルラの部屋ならば美味しくいただかれていたであろう。

しかし、この場はハクオロの寝室。


   トコ トコ…

エルルゥ「ハクオロさ…………」

ハクオロ(上衣脱がされ)「……」  カルラ(下着姿)「……」


 「「「…………」」」


見つめあう三人。エルルゥの瞳は何を映したか……


エルルゥ「……」トコトコ…

ハクオロ(何も言わず、去っていった……)

カルラ「さあ続きを……」


   タッ タッ…

ゴロー「おい! エルルゥさんが……」

ハクオロ「……」  カルラ「……」


ゴロー(……差し替えだな。『関係者は語る。 好色皇を巡る三角関係!』)

ハクオロ「た、助けて……」

カルラ「二度目は興が覚めましたわ……」スッ

   「あるじ様、次はわたしの部屋で……」

  サッ バサッ! スタスタ…

ゴロー「あ、すまん。邪魔したな」

ハクオロ「エルルゥより早く来て下さいよ……」

ゴロー「 ? 」

 ――

ハクオロ「エルルゥ、おかわりを……」

エルルゥ「……」カチャカチャ

 ………

ハクオロ「エルルゥ、洗濯の途中ですまんがちょっと……」

エルルゥ「……」パサッ

 ………

ハクオロ「エル……」

エルルゥ「……」スタスタ

 ………

ハクオロ(通路の真ん中ならば無視できまい)


ハクオロ「や、やあ」

エルルゥ「……」スッ スタスタ…

ハクオロ(駄目か……)ガクッ



404VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:50:00.35xhDip7oSO (37/42)

 …………

 《ウルトリィの部屋》


ウルト「皆様、こんばんは。本日のお悩み相談を始めます」

ウルト「最初はゴローさまからですね。相談事はなんでしょう」ニコリ

ゴロー「先日、戦隊を結成したのですが……
    どうしても足りないものがあり、困っています」

ウルト「戦隊…がよく判りませんが、『足りないもの』とは?」

ゴロー「……巨大ロボットが足りないのです」

ウルト「申し訳ありません、仰ることの意味が判り難く……」

ゴロー「あ、そうでした。そうか… 知らないか……」

ウルト「諦めなければ、いつかきっと何とかなると思いますわ」ニコリ

ゴロー(いやいや。多分無理だろう……)

  パタン スタスタ…


ウルト「次の相談者の方はこちらです。あら、ハクオロ様」

ハクオロ「最近、エルルゥに避けられています……」

ウルト「まぁ… 何かお心当たりでも?」

ハクオロ「ない…… とは言えません……」

ウルト「ですが、いい機会かもしれませんね」ニコッ

ハクオロ「は?」


ウルト「もっと他の女性に目を向けるのも良いと思われます」

   「例えば…… わたくしなど如何でしょうか」ニコッ


ハクオロ「あー… うー…」

ウルト「あらあら、困らせてしまいましたか」フフッ

ハクオロ「……なんだ冗談か」ホッ

ウルト「冗談ではありませんけど」ボソッ

ハクオロ「ん?」


ウルト「なんでもありません。それでは皆様、ご機嫌よう~」フリフリ





405VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:50:58.65DlBgx9NSO (1/2)

いいぞ


406VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:54:51.38xhDip7oSO (38/42)

 ――

 《別の日、朝堂》


クロウ「総大将、戻りやした」


物資の援助の為、ナ・トゥンクに向かわせたクロウが帰る。


ハクオロ「ご苦労。様子はどうだ?」

クロウ「正直、旗色が悪いですぜ。初めは良かったんでしょうが、
    今はほとんど敗走状態。森の奥に立て籠ってやす」


ハクオロ「潰されるのも時間の問題か」チラリ

カルラ「……」グイッ

ハクオロ「下がっていいぞ。ゆっくり休んでくれ」

クロウ「ウイッス!」


ハクオロ「聴いてのとおり。私に出来るのはここまでだ。……わかっているな」

カルラ「わかっていますわ」グイッ

ハクオロ(……やけに素直だ)


カルラという女を測りそこなった事に
彼が気付くのはその日の夜であった。


407VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 20:57:02.66xhDip7oSO (39/42)

 ――

 さーて… 今日も何かオヤツを……


ベナウィ「……」


 なんて厄介な番人を。


ベナウィ「やはりありませんね」


 あ、違うのか。よかったよかった。


ゴロー「何を探しているんだ?」

ベナウィ「ゴローさん。最近、倉で怪しい者を見たことがありませんか」

ゴロー「……ごめんなさい」

ベナウィ「いえ、食糧の事ではありません」

    「豪族達の倉から宝や武器が盗まれる事件を知っていますか」


ゴロー「その話は聞いた事があるぞ。痕跡がないそうだな」

ベナウィ「……この城もやられたようなのです」

ゴロー「……本当か」


 俺達で考案した錠前を破った賊がいるなんて。


ベナウィ「あの錠前を開けた跡がない…… というのが不可解でして」

ゴロー「犯人が法術を使ったとか? 透明になって侵入したり」


 透明になったりすれば……
 これは駄目か。透明でも錠を破らないといけない。


ベナウィ「法術…… その線は当たってみる価値がありそうです」

    「ご協力、感謝します」ペコリ

   ザッザッ…

ゴロー「……ベナウィって、色々仕事してるんだな」

 俺は…『薬師』『農政担当者』『ハクオロの影武者』
 『雑誌の記者兼編集』『諜報』

 ……結構仕事してるぞ。



408VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 21:01:32.05xhDip7oSO (40/42)

 ――

 《その日の夜》

ハクオロ「……おい、これはどういう事だ」

カルラ「あるじ様を簀巻きにして運ぶところですわ」ニコッ

カルラ「この前の夜の続きを、邪魔の入らない地でしようと思いまして」

ハクオロ「まさか…… ナ・トゥンクか! モガッ!!」

カルラ「夜は静かにするものですわ」ニッ


布団で簀巻き、口に猿ぐつわ。
パッと見て誘拐以外の何物でもない。


ハクオロ「もがっ、モガガッ!」

カルラ「♪~♪~」


  「お待ちなさい」


夜の黒い帳に一点、白い輝きが舞い降りる。


ウルト「やはり、行くのですか」

カルラ「ウルトリィ…」

ハクオロ(よし! ウルト、得意の術でこの女を止めてくれ!)

ウルト「わたくしはこの國の國師(ヨモル)です。わかって下さい」

カルラ「……仕方ありませんわ」フゥ

ハクオロ(やった! 流石ウルト! そこにシビれる! 憧れるゥ!!)

ウルト「では、旅支度をしてまいります」ニコッ

   バサッ バサッ…

ハクオロ「……モガ!?」

カルラ「二人きりではなくなりましたわ~」


ウルト「お待たせしました」

エルルゥ「え、え!?」

アルルゥ「アルルゥも~」

ムックル『ぶおぉ~』

カミュ「どこ行くのかな~ 楽しみ♪」

ユズハ「ハイ……」

トウカ「僭越ながら、御供させていただきます」ペコリ


カルラ「人数が多いのも楽しそうで良いですわね」

ハクオロ「ムガーッ!!」

カルラ「ふふっ……お休みなさい……」スッ

ハクオロ「!?」

   (なんだ… 意識が…… 薬か…… ああ……)


カルラ「さあ、行きますわよ~!」



409VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 21:03:50.09xhDip7oSO (41/42)


皇、誘拐。

しかし他の女性陣も同時にいなくなったので、城の中では


 『皇様、いないな』

 『ねぇさん達もいないから物見遊山にでも行ったんじゃないか?』

 『そういやベナウィ様も、そんな事言ってたな』


……などと、軽い扱いだった。


そして、物語は分岐する。

女性陣が出ていく様子を、煙管を吸いながら眺める男……


ゴロー「面白そうな事になっているぞ」



 さて、俺はどうするかな……


 ①…女性陣についていく。
  《ナ・トゥンク(アニメ・ゲームの)ルート》


 ②…男性陣と城に残る。
  《ゲーム限定・第六話にちょっと出たあの人のルート》


第十四話「拉致」


  続く!


410 ◆M6R0eWkIpk2012/08/04(土) 21:08:19.03xhDip7oSO (42/42)

今日の投下は>>390から

この一週間で五話分投下した事に今日気がついた。

では①・②、お好きなほうをお選び下さい。
〆切は今度の水曜日までの予定。

失礼します。


411VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/04(土) 21:13:52.72DlBgx9NSO (2/2)




412VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2012/08/04(土) 23:14:28.40l6BpQbii0 (1/1)

乙でした

ここは敢えての





413VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2012/08/05(日) 00:38:44.12ny3UNcxAo (1/1)


お前のせいでアニメDVD全部レンタルして見ちゃったぞ
次はPSP版をプレイすることになりそう

あ、②でお願いします


414VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 02:14:03.55kJAmwYCIO (1/1)

YOU、両方書いちゃえYO

むしろ書いてくださいお願いします


415VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 02:55:45.89Ob4MnhHDO (1/1)

1で!


416VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 04:38:58.511iDvIqRIO (1/1)

ここは両方期待するしかあるまい


417VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/05(日) 08:47:15.83ivZGERb00 (1/1)

1


418VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2012/08/05(日) 08:59:53.38C1kaiwTqo (1/1)


②でお願いします


419VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 09:10:05.21g9rKsB1ao (1/1)

②でお願いします。


420VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2012/08/05(日) 14:23:38.24IjJYxUFAO (1/1)

3.両方書かなければいけない。現実は非情である


421VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/05(日) 15:14:11.374Cf4qUWlo (1/1)

①かな


422 ◆M6R0eWkIpk2012/08/05(日) 23:12:09.19/zl683aSO (1/8)


 キィン! キィン! キィン! キィン!


ハクオロ「うたわれるものらじお in・SS速報VIP!」

ハクオロ「今晩は。司会のハクオロだ」

    「男だけですまない。今日はエルルゥが休みなんだ」

ハクオロ「『もっと薬師の腕を磨いてくる』だそうで……」


ハクオロ「そのかわり、ゲストは呼んでくれたらしい」

    「それではお呼びしよう。……どうぞ~」


トウカ「聖上、失礼いたしまする」


ハクオロ「お、今日のゲストはトウカだったか。まぁ妥当だな」

トウカ「本家らじおではエルルゥ殿と共に語らせて頂きました」ペコリ

ハクオロ「確か……私がいなかった時だったよな」

トウカ「はい。あの時は……」

ハクオロ「『二次元が初恋じゃ…』」


トウカ「…………ク」

ハクオロ「く?」




トウカ「クケェェェェェ――ッ!!!」




ハクオロ「ぬああっ!」



 《暫くお待ち下さい》



ハクオロ「と、というわけで今日も始める……」ボロッ

トウカ「まずは十一話から十四話の登場人物を紹介いたしまする」



423VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 23:14:36.16/zl683aSO (2/8)


《十一話》

●テオロ達、ヤマユラの民

クッチャ・ケッチャの襲撃を受け、全滅。
アニメなどのニウェの発言から、シケリペチムが襲わせたようだ。


ハクオロ「親っさん……」

トウカ「……某が語れる事ではありませぬ」

ハクオロ「いや、私も語れない……」


●アムルリネウルカ・クーヤ

三大強國『クンネカムン』の皇。
クンネカムンは大陸に住む民族で最弱と言われる、
『シャクコポル族』のみで形成された國家。


ハクオロ「クーヤの名は呼びにくいな、しかし」

トウカ「外套を被っておられるので素顔はまだわかりませぬ」

ハクオロ「後に詳しい紹介をしよう」


●ゲンジマル

クンネカムンに仕えるエヴェンクルガの武人。
かなりの巨体で、ゲームだと身体が一部見れない。


トウカ「ゲンジマル殿!!」

ハクオロ「エヴェンクルガでは『生きる伝説』とされる武人(もののふ)だ」

トウカ「ああ… あのギリヤギナの皇との七度に渡る戦いのお話……」

   「いつ聞いても心踊りまする」ウットリ


ハクオロ「これ、ネタバレじゃないの? あ、そう。平気なんだ」




424VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 23:17:46.33/zl683aSO (3/8)


《第十二話》

●オリカカン(クッチャ・ケッチャ皇)

本編物語内では矢や毒針で死んでいる。
憎しみに囚われると、こうなるという見本。


トウカ「オリカカン殿でありますか」

ハクオロ「おそらくラクシャインという男が事件を起こしたのは真実だろう」

    「始末もつけたのに、心の中で仇を求めてそれに付け入られた」


トウカ「某がもっと事実関係を調べていたら…」

ハクオロ「暑苦しい男だが、なぜか放っておけない人間だ」

トウカ「オリカカン殿の武器は鉄棍…… としたが厳密には違う」

ハクオロ「本当は木製の棍の両端に、棘のついた円柱状の鉄塊がつけられている」

トウカ「この物語では判りやすく『鉄棍』としたそうだ」


●トウカ

エヴェンクルガの女戦士。
アニメだとカッコいいのにゲームだとカッコ悪い。


ハクオロ「比較してみよう。橋が落ちるシーンだ」



《ゲーム》

トウカ「ハあああああああッ!?」

《アニメ》

トウカ「ラクシャイ――ン!!」



ハクオロ「橋の部分は他にも異なっているぞ」

    「ゲームなら『うっかり侍』と呼ばれるのも無理なかった」


トウカ「くっ……」

ハクオロ「ちなみにこの後、私の側付(護衛)になる」


ハクオロ「おっと、新しい人物はもういないのか」

トウカ「名無しの方々を紹介いたしますか?」


ハクオロ「いや、名無しは名無しの良さがある」

    「今日もあのコーナーをやるとしよう」



425VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 23:21:10.09/zl683aSO (4/8)


ハクオロ「『うたわれるもの知りコーナー SS編』!」

トウカ「今回は我らの住む大陸にいる『部族』についてであります」



『うたわれ世界の部族について』


ハクオロ「有名所は『エヴェンクルガ』『ギリヤギナ』『オンカミヤリュー』」


トウカ「こちらで細かく説明された部族ですな」

ハクオロ「この三つは武才や術に秀でているという特徴がある」

    「……残念ながら『ある部族』は違う。負の特徴を持ってしまっている」


トウカ「『シャクコポル族』の者達でありますか」

ハクオロ「そうだ。この部族は『ウサギ』のような長耳をしている」

トウカ「垂れている方とピンとしている方がいて…… 可愛いにゃ~~」


ハクオロ「……トウカ? どうした?」

トウカ「ハッ! いえ、何でもありませぬ」

ハクオロ「話を続けよう。彼らシャクコポル族は身体的にも最弱らしい」

ハクオロ「そんな彼らがどうして國を作れた、
     しかも三大強國と言われる國となったのか……」

    「それは本編のお楽しみということで」


トウカ「ず、ずるいです! 聖上! 某に教えて下さい!」

ハクオロ「駄目だ」


トウカ「良いのですか、聖上。エルルゥ殿に某と湯に入った事をお伝えしますよ」


ハクオロ「…………やめろ」

トウカ「あの時の聖上は……ぽっ」


ハクオロ「含みを持たせるな! 何もなかった!」

    「ええい! こうなったらこのコーナーだ!!」バン



426VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 23:23:37.18/zl683aSO (5/8)


《SS版・ドリィとグラァに挑戦しようのコーナー》


ハクオロ「よし! 前回貰ったこれをやろう!」

トウカ「おや、懐かしい響きでありますな」

ハクオロ「このコーナーは本家らじおのコーナーそのままだ」

トウカ「知らない方の為に某が説明いたす」



① 人数が二人必要。

② 紙と書く物を用意。

③ 忌まわしき黄金ボックスからお題となる紙を引く。

④ そのお題で思い浮かぶ事を個人個人で紙に書く。

⑤ 見事二人が同じ答だとポイントゲット!

⑥ ポイントが貯まると……何が起こるんでしょう?



ハクオロ「ポイントは…… 何に使おう?」

トウカ「お食事などは如何ですか?」

ハクオロ「ほお、それはいい。しかしよく考えたらオマケの話数があまりない」

トウカ「でしたら、当たったら何かしらのオマケをやるというのは」

ハクオロ「まぁ、それもいいだろう。じゃあお題を……」



427VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 23:26:57.69/zl683aSO (6/8)


   ガサゴソ…


ハクオロ「お題は『一人の食事』……」ペラッ

トウカ「おお! これはなかなか!」

ハクオロ「うむ。面白いお題だな」

トウカ「それでは書きましょう」


 《書いております、暫くお待ち下さい…》


ハクオロ「これ、考えると難しいぞ」

トウカ「はい、某達で考えたらよいのか… クロス先で考えるか……」

ハクオロ「トウカは自分の場合を考えたらどうだ?」

トウカ「良いのですか?」

ハクオロ「構わないさ」

トウカ「でしたら…」サラサラ

ハクオロ「私は……」サラサラ


ハクオロ「終わったぞ」

トウカ「某もです」


ハクオロ「同時に見せよう」

トウカ「せーの!」


   バン!


ハクオロ[ 魚 ]


トウカ[ 釣った魚 ]



  ピンポンピンポンピンポン♪


ハクオロ「よし! 当たりだ」

トウカ「聖上! 覚えていて下さったのですね!」

ハクオロ「部下の趣味くらい把握しておかんとな」

トウカ「聖上……」ウルッ





428VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 23:29:01.09/zl683aSO (7/8)


ハクオロ「さて、当たったので今回のオマケを」

    「これもボックスから引くのか」ゴソゴソ


ハクオロ「今回のオマケは『先取り・十七話の没シーン』だそうだ」ペラッ


トウカ「おお! それは凄い!」

ハクオロ「では…… スタート!」


 《 開始 》

ハクオロ「ハッ、トウカァー! 抜刀術にその名前はマズイ!!」

トウカ「な、何がでござる?」オロー

ハクオロ「それだよ! その終わりの! 語尾のヤツ!」

トウカ「しかし……某の憧れなのです!!」バーン

ハクオロ「だからってシリアスでそれは駄目ぇー!!」

 《 終了 》


ハクオロ「うん、これは没だな」

トウカ「…………」

ハクオロ「トウカ?」



トウカ「……結局それかァァァ!!!」

   「クケェェェェェェェェェ!! キィィィィィィィィィ!!!」



ハクオロ「ぎゃあああっ!!」


(※ 十七話のどこに入るかはSSをお楽しみに)



 《暫くお待ち下さい…》


ハクオロ「と、というわけで、本日はこれで終了だ…」ボロボロ

トウカ「も、申し訳ありませぬ……」

ハクオロ「それでは皆さん、また次回~」

トウカ「ゴロー殿がどちらに行くかも募集中であります~」


 続く?


429VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/05(日) 23:32:42.56/zl683aSO (8/8)

sage進行でオマケはひっそりと。

ネタがわからない方は『うたわれるものらじお』『名言』で検索を。

ちなみに現在(>>421まで)のルート票数

①のルート・4票

②のルート・8票

両方・3票




430VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/06(月) 03:07:11.92vPFybc4IO (1/1)

両方以外に有るまい


431名無しNIPPER2012/08/06(月) 07:50:57.964oyIPZpt0 (1/1)

両方


432VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/06(月) 21:45:06.29/qYZqFZc0 (1/1)

両方


433VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 06:13:07.92GNtHelzbo (1/1)

集計されると両方って言いたくなるじゃないですか

両方


434VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 14:41:40.27uo7fIAjIO (1/1)

両方で


435名無しNIPPER2012/08/07(火) 19:40:38.49rF+uwyjw0 (1/2)




436名無しNIPPER2012/08/07(火) 19:41:04.78rF+uwyjw0 (2/2)

ミスった……

両方


437 ◆M6R0eWkIpk2012/08/07(火) 20:36:49.55dBhh41fSO (1/32)


 『汝ラノ望ミ、叶エヨウ……』


そんなワケなんでちょっと早いけど締めましょうか。
両方投下、了解!ただし、正規ルートは②とします。
①にあった事は十六話以降に引き継がれないという事で。


438VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 20:45:33.09dBhh41fSO (2/32)


第十五話「過去と現在 ~滅びし國の皇女①~」


 馬車に揺られて旅する俺たち。
 目的地はトゥスクルの南方にある、
 大陸南の海岸に接した國……『ナ・トゥンク』だ。


ハクオロ「……なんでこんな事に」


 俺とハクオロは横に並んで手綱を持ち、ウマを操っていた。


ゴロー「ナ・トゥンクかあ…… 何が食えるかな」

ハクオロ「……叛軍につく事になるでしょうからマトモな食事は出来ませんよ」


 え…………


ゴロー「……じゃあ帰ります」


   ガシッ!

ハクオロ「今更逃がすものかァァァ!!」

ゴロー「く、放せ!」


カルラ「手綱を握る者がそんな事をしないで頂けません?」ギロッ

ハクオロ・ゴロー「「す、すいません……」」


 それから暫くして、エルルゥさんが話しかけてきた。


エルルゥ「ゴローさん、交代しましょうか」

ゴロー「……」


 ハクオロと喧嘩してたエルルゥさんが…
 仲直り、したかったのかな。


ゴロー「わかりました」スッ

エルルゥ「よいしょ…… きゃっ!」ガタッ

ハクオロ「エルルゥ!」ダキッ

エルルゥ「あ……」

ハクオロ「平気か?」ニコリ

エルルゥ「///」カアッ



カルラ「なんだか暑くなってきましたわ~」

ゴロー「まったくです」




439VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 20:48:40.38dBhh41fSO (3/32)

 ――

 馬車内に引っ込んだ俺は、子供たちと遊ぶことにする。


ゴロー「なるほど、そういう決まりなんだ」スッ

カミュ「そうそう… ユズっち、ゴローおじさまは《六の二》だよ」

アルルゥ「《二の五》」スッ

カミュ「《五の五》で重(かさね)!」スッ

ユズハ「《五の四》と《五の六》……二重(ふたがさね)です」スッ

ゴロー「よし、なら二重返しだ」スッ


アルルゥ「う~…ない」

カミュ「こっちも……」


ユズハ「…………」

ウルト「ユズハ様。そう、それを出せば……」

カミュ「お姉様! ユズっちの後ろで物騒なこと言わないで~!」

ウルト「遠慮はいけません。勝負で手を抜く事は相手に失礼ですから」ニコリ

ユズハ「《零》… 四重返しです……」

ゴロー「……え」

アルルゥ「これ、ペコちゃんいき~」


   ジャラジャラ…

ゴロー「う~ん、初心者に厳しい」


 トランプのような…ウノのような… 変わった遊びだ。


ユズハ「ごめんなさい……」

ウルト「勝者が敗者にかける言葉はいりませんよ」ニコッ

カミュ「お姉様、ひどいぃ~」

ゴロー「これでコッチの組は三連敗か。すまない、カミュちゃん」

カミュ「いいよいいよ、遊びだもん。でもユズっちは初めてなのに強いね~」

ユズハ「ありがとう……」

ゴロー「歳には勝てないな」

ユズハ「こんなに楽しいの……こんなに嬉しいの…初めて」ニコッ


ゴロー(今頃、オボロは……)




440VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 20:51:04.22dBhh41fSO (4/32)

 ――――

 ~ そのころのトゥスクル皇城 ~

城内を駆け回る二人。


オボロ「ユ―――ズ―――ハぁぁぁ――!!」

ムント「ひ―――め―――さ―――まぁぁぁ――!!」


あまりの衝撃に放心する侍大将。


ベナウィ「ニゲラレタ… ニゲラレタ… ニゲラレタ……」ブツブツ


今日のトゥスクルは平和であった。


 ――――

ハクオロ「そろそろ國境だ。何があるか判らないから気を付けて行くぞ」


 どうやらナ・トゥンクに入るようだ。


ゴロー・ユズハ「「あ……」」

カミュ「どうしたの?」

ユズハ「人の……」  ゴロー「悲鳴か?」


カルラ「……見てきますわ」スタッ

ハクオロ「待て、カルラ! お前達は馬車に!」タタッ


 カルラさんとハクオロが馬車から降りる。


エルルゥ「は、はいっ!!」

ゴロー「悲鳴はこっちの方だ!」タタッ


 ついでに俺も降りる。


ハクオロ「判った!」タタッ



441VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 20:55:35.65dBhh41fSO (5/32)

 …………


女の子「ハァッ… ハァッ……」タタタ

男A「ヒャッハー!! 足がふらついてるぜぇ!」


少女が逃走している。


男B「久しぶりの獲物だぁ。もっと楽しませろぉ」

男C「ホラホラ~ 早くしないと捕まっちゃうぞ~」


それを下品な笑いを浮かべながら追う男達。


女の子「あっ!」コケッ!

   「あうッ!!」


男C「あーあ、終わっちまった~」

男A「じゃあ仕方ねぇな」スラッ

男B「なんだよ、やんねぇのかよ」ニヤニヤ



カルラ「…………」ザザッ


そこに現れたカルラ。表情を一切変えず、男どもを眺めていた。


男A「なんだテメェ?」


女の子「た、たすけ、助けて下さいっ!」


男B「コイツ、はぐれだぜ。首輪ついてやがる」

男C「だけど…いい身体だぜぇ」ギラギラ


男達の視線を気にせず、カルラは少女に


カルラ「お行きなさいな」ニコリ


優しい笑顔で語りかけた。


女の子「あ……」グッ

   タタタタタタ…

男A「極上もんが来てくれたしなぁ」ニヤニヤ

男C「あんなガキはどうでもいいやな」ニヤニヤ


男達は下卑た笑いをカルラに浴びせる。


ハクオロ・ゴロー((知らないという事は、ある意味幸せかもしれん))


二人の男はこれからの惨状を脳裏に描いた……




442VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 20:59:25.12dBhh41fSO (6/32)


カルラ「聞いてもよろしいかしら?」

   「その刀の血糊、先程までに何人殺しまして?」


男B「さぁなぁ、わざわざ数えねぇよぉ」

  「女子供を殺るのが好きなもんでね。さっきは結構……」


  ブオン!!

 男 | B「」バタ…



カルラ「わたしも……よく覚えていませんわね」

   「これまで殺してきたあなた方みたいな下衆の数なんて」

   「はああああああああああああああっ!!」



ハクオロ・ゴロー「「しばらくお待ち下さい」」

 ――――

無惨な姿になり果てる男達、ただ一人の生き残りは失禁しながら命乞いをする。


男A「た、助けて…… 命ばかりは……」

カルラ「……そうですわね。今までに見逃した人達がいたなら
    わたしは手を下しませんわよ」ニコッ


男A「は、はい! 何人も見逃しました!」


 ……そうか、カルラさんの意図、読めたぞ。


ゴロー「ふーん、なるほどそういう事……」

ハクオロ「ああ。どうしようもない」


 ハクオロもわかっていたようだ。


男A「本当だ! だから……」

カルラ「そう…… じゃあお行きなさい」


男A「ひ、ヒィィィィ!!」ダダッ!



カルラ「あなたの言う事が本当なら、茂みの中の方々も見逃してくれるでしょう」


  ブスッ! ブス! ギャアアア…





443VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:03:00.59dBhh41fSO (7/32)


ゴロー(例の叛軍か)  ハクオロ(おそらく)


 男達が此方を包囲するように姿を見せる。

 その中から先程の女の子を連れ、一人の男が前に出てきた。


ゴロー(あのコ、俺達に頭を何度も下げてる)


 前に出てきた男、誰かに似ている……


??「これをやったのは貴様等か。これだけの輩を、たった三人でとは…」

ゴロー「あ、あの耳。ギリヤギナの……」

??「無礼な男だな。だが同胞を救った者だ。名乗ってやろう」

デリ「俺の名は『デリホウライ』。叛軍『カルラゥアツゥレイ』を率いる者だ」

ハクオロ(成る程…そういう

ゴロー「あ、そうか。似てるなぁ、カルラさんに」


ハクオロ・カルラ「「……」」

ハクオロ(この人は……なぜ雰囲気を壊せるんだ……)


デリ「? 何を言ったか判らんが次はこちらの質問に答えてもらう。貴様等何者だ」

ハクオロ「(ホッ、聞こえてなかった)我々は旅の雇兵でしてね。
     戦いがあると聞き、貴方等にこの腕を買って貰おうと思いまして」


デリ「雇兵(アンクアム)か。我等には必要ない」

ゴロー「どうしてです? 兵はいらないんですか?」

デリ「離れた所にいる馬車、あれに乗っているのもお前達の連れだろう」

  「女子供を引き連れている者など、邪魔なだけだ」


女の子「……」ギュ


 自分は違うのか? あのコ、お前の服にしがみついてるぞ。




444VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:04:53.27dBhh41fSO (8/32)


ゴロー「なぜ馬車の事を?」

デリ「悪いが囲ませて貰った。敵かも知れなかったからな」

ハクオロ「な……なんてことを!」

デリ「安心しろ、危害は加えん」

ハクオロ「違う! あなた方が危ないのだ!!」

デリ「何?」



  グォォォ! ウワァァ!  ギャアアア! グヘェ!



デリ「な、何の音だ!」


ハクオロ「……猛獣使いに、一流薬師」

ゴロー「オンカミヤリューの高位術士やエヴェンクルガの武人まで」


ハクオロ・ゴロー「「如何です。これでも役に立たない女子供ですか?」」


 むしろ、トゥスクルの最強パーティーだろう。


デリ「…………」

カトゥマウ「デリホウライ様、囲んでいた兵が皆負傷を……むむっ!?」

デリ「……他の者の力は借りぬ! これは我等の戦だ。とっとと消え失せろ!」ザッ


 行っちゃった。


ゴロー「ところで、この爺さんはどちらさま?」

カトゥマウ「……おお、あなた様は」


カルラ「久しぶりですわね、カトゥマウ」




445VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:13:01.78dBhh41fSO (9/32)

 ――――

 ~ 夜 ナ・トゥンク ~

 あの爺さん、カルラさんの知り合いだった。

 彼の話によると、あの『デリホウライ』って奴、
 生き別れになったカルラさんの弟らしい。


ゴロー「あんな姉さん、俺なら嫌だな」フゥー


 怖いんだもの。


トウカ「ゴロー殿、こんな所に」ガサッ

ゴロー「わっ!! ……カルラさんかと思ったぞ」

トウカ「おわあっ! 大声をあげないで下さい! 某(それがし)が驚きました!」

ゴロー「すまない、何か用か?」

トウカ「はい、食事が出来たそうです」

ゴロー「そうか」

トウカ「今日は活きの良いヘビが大量に取れましたよ」

ゴロー「……え」


 …………


 【ヘビの白焼き】

ヘビを開いて串に刺しただけの料理。
人数分あるので一人一本。


 【ヘビのスープ】

ヘビ肉・ヘビの血を少々入れて煮込んだ汁物。
味を変えたくなったら用意された葉(苦い)を使う。



446VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:16:24.23dBhh41fSO (10/32)


ゴロー(今日の食事は精力がつきそう)スッ


一同「「「……」」」ブツブツ


 感謝の祝詞もなんとなく覚えてきた。


ゴロー「いただきます」ガブリ


 ……なんだ、うまいじゃないか。


ゴロー(身の少ない鶏肉みたいで、これは悪くない)

   あぐっ むしゃむしゃ

ゴロー(骨ごと食えるから歯応えも楽しめる)

   こりっ… ぽりぽり


 この味が いいぞと俺が 言ったから


ゴロー「今からこの日、ヘビ記念日」


 字数が合わない。


カミュ「?」モグモグ

ウルト「この汁は何かを入れて、味を変えたほうがよろしいかと」ズッ

エルルゥ「あ、少し苦いんですがこの葉を使って下さい」

ハクオロ「普通の味噌汁が食べたいなあ」ズズッ

ゴロー(どれ、汁は……)ズズウ


 うん、ウルトリィさんの言うように何かで血の味を薄めたいかも。

 味を変える為に入れる葉っぱも苦いけど…
 これはこれで好きな人はいるかもしれない。


カミュ「カミュはこの汁好きだな~ そのままでも」グッ

ユズハ「私は葉を入れたほうが……」

アルルゥ「草、ニガイ……」ウェー

ゴロー「ユズハちゃんは苦い食べ物が好きなのか」

ユズハ「はい……」コクン

ハクオロ「トウカ~ こんな所に来てまで毒味しないでくれぇ」

トウカ「いえ、聖上の口に入る物はしっかり調べねばなりませぬ」ジッ パクッ

   「よいヘビであります。身の付き方、締まり、脂も程よい」モグモグ


カルラ「…………」

エルルゥ「カルラさん?」

カルラ「何でもありませんわ」ムシャリ



447VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:18:48.12dBhh41fSO (11/32)


そんな食事の時は長く続かなかった。



 「カルラゥアツゥレイ様!!」



カルラ「この声は……カトゥマウ!? ちょっと失礼!」タタッ!

ハクオロ「カルラ!」


 先程の爺さんがこっちにやって来る。


カトゥマウ「し、失礼いたします! デリホウライ様が進軍を!」

カルラ「奇襲ですのね?」

ハクオロ「あなた達の人数は?」

カトゥマウ「それが…………」

ハクオロ「少数で……か」

カルラ「……あるじ様、ちょっと散歩に行きません?」ガシリ


   ズリズリ…


ハクオロ「引っ張っているくせに……」

エルルゥ「わ、私も――」

ゴロー「エルルゥさん達はユズハちゃんを。俺が行きます」

トウカ「某も御供します!」シュタ




448VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:22:42.12dBhh41fSO (12/32)

 ――――

ナ・トゥンクの陣に攻め込もうとするデリホウライ。
しかしその途中の森で彼を待っていたのは他ならぬナ・トゥンク兵達だった。


デリ「ぬぅっ!? 待ち伏せだと! 何故わかった?」


ナ・トゥンク兵「ククク…… 馬鹿な奴よ」


一人、叛軍側からナ・トゥンクの兵士達に駆け寄る者がいた。


 「こ、これでいいだろう。約束通り、妻と子に合わせてくれ!」


デリ「タムァ! 女子供を人質にとられた程度で裏切ったか!!」


部下の裏切り。脇の甘さを敵に突かれたデリホウライ。


タムァ「よ、弱い者の気持ちなど、ギリヤギナのアンタに判りはしないだろう!」

   「お、俺には家族が――」


デリホウライに向き直り、自身の思いを叫ぶタムァ。


   ズパッ!!


彼の言葉は、刃が身を斬る音により遮られる。


タムァ「あ……な、何故……」

ナ兵「ククク… 約束を守るだけさ」ニヤリ

  「常世で待ってる妻と子に会ってきな」


タムァ「な…う、うあああああ!」


  ズパッ! ブスッ!


タムァ「」ドサリ…


部下「デリホウライ様! ここは不利です! 急ぎ撤退を!」

デリ「断る! ギリヤギナに、敵に向ける背など無い!!」

ナ兵「ならばここで散れぇぇ!」



  「ええ、あなた達がね」





449VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:26:49.85dBhh41fSO (13/32)


……そこから先は惨劇の幕開け。

飛び散る肉片、赤い雨。
ナ・トゥンク兵は次々とその命を消し飛ばされていく。


「ギャア!」「ひ、ひやあああ!」「ば、ばけもんだ!」

カルラ「こんな美人を化け物なんて…心外ですの」ニヤ

縦横真っ二つ、斜めに袈裟斬り。
首だけ無くなる身体や両足を同時に潰される者。
投擲された石ころでその身に風穴を空けられる兵。

カルラの目についた敵兵達は、もの言わぬ死体となって積み重なっていった。


ゴロー(……目を瞑っておいてよかった)

ハクオロ「間に合ったようですね」

デリ「余計な真似をしてくれたな……」


デリホウライは傲慢な態度のままハクオロ達を、
そして裏切り者・タムァの死体を見た。


デリ「愚かな男だ。どのような理由であれ、裏切り者には相応の末路しかない」

弱き者を気にも止めない、強き立場からの発言。
その場の皆が憤りを感じる……そんな中、

我慢できない『二人』から教育的指導が行われた。


ゴロー「燃えろや~ 燃えろ~」キラン

デリ「ホアチャァァァッ!?」ボオオッ


カルラ「指導と言う名の体罰!!」ドゴッ

デリ「ひでぶっ!?」




450VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:32:27.10dBhh41fSO (14/32)


  ズガッ! ズザザ…

デリ「き、キサマら……」

ゴロー「最近やってないから今日はやるか」コキコキ


 さっきのヘビで精力有り余ってるぞ。


デリ「ふざけた真似をぉぉ!!」ブン

ゴロー「直情型って、ラクでいい。攻撃が読みやすい」スッ

  ガシリ… グイイッ!

デリ「ぐああああっ!?」

ゴロー「力は利用出来るけど…… 身体が頑丈だから余り効かないか」

デリ「お、おのれ……」

カルラ「では次はわたしが……」ズイッ

デリ「ギリヤギナの俺があんな男に……」ギリリ

カルラ「ギリヤギナね……」フゥ

   「その強さ故に高慢で、弱い者の痛みを知ろうともしなかった一族」


カルラ「……だからこそ、滅んだ者達」

デリ「貴様もその末席であろう! それ以上の侮辱は許さん!」

カルラ「……だったら教えてあげますわ」

  「ギリヤギナのこと、そして…弱い者の気持ちというものを」


デリ「ふん、いいだろう。この俺様と戦うというのだな」

カルラ「ふふっ……」クスクス

デリ「何が可笑しい!」


カルラ「貴方、自分が『弄ばれる』ことを『戦う』と言いますの?」


デリ「……構えろ」チャキッ

カルラ「…………避けなさい」


  ズゴォンッ!! ゴロゴロゴロゴロ……


ゴロー「……人が空中に吹き飛ばされるのは知ってるけど」

ハクオロ「空中で『縦回転』しながら転がるのは初めて見た」


カルラ「はぁ…… 知らないですのね」

   「ギリヤギナに『構え』などありませんのに」


カルラ「じゃあたっぷりと教えてあげますわ。
    自分が如何にちっぽけな存在かということを……」


デリ「ひ、ヒイイイイ――――!!」


「テリャテリャテリャテリャテリャテリャテリャテリャテリャテリャァァァ!!」


「…………」バタッ



451VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:42:37.48dBhh41fSO (15/32)


《デリホウライが殴られてから数日後の夜》


ナ・トゥンク皇城、玉座の間。

一人の男が静かに、それでいて熱く『とある女』を思い続けていた……


「やっと……やっと帰ってきてくれたのね」

「ああ……私のカルラ……」


赤い帯を頭に巻き、紺の装束を身に付ける彼の名は……



「カルラ! カルラ! カルラ! カルラぁぁああああああああああああん!!
 あぁあ…ああ…あっあっー! あぁあ!! カルラカルラカルラぁぁあああ!!!
 あぁ貴女を思い切りクンカクンカしたいよぉぉ! クンカクンカ!
 スーハースーハー! スーハースーハー! 貴女と見たこの花、いい匂いだわぁ…
 んはぁっ! カルラゥアツゥレイたんの青みがかった髪をクンカクンカしたいわぁ!
 クンカクンカ! あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいわ!
 モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ! …きゅんきゅんきゅい!!(以下略)」



……失礼した、彼の名は『スオンカス』。

こんなのでも歴としたこのナ・トゥンクの皇である。


スオンカス「ああ…失ったはずの【キィン】が甦るよう……」

     「早く会いたいわ、カルラ!! 私の日天之神(ラヤナソムカミ)!」



452VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:46:23.18dBhh41fSO (16/32)


スオンカス「あまりにも貴女を想い過ぎて絵画を始めちゃったわよ!」

     「そこのアンタ、私の絵はどう?」ピラッ


ナ兵「は、ははっ! 非常に個性的であります!」

  ヒュン!! グサッ!!


スオンカスの放った暗器が兵士の首を突き、彼の命を刈り取る。


ナ兵「な、なぜに……」バタリ


スオンカス「暗に『下手』って言う奴が一番嫌いなのよ!!!」

    「ああ、待っていてね。カルラ…… 貴女に相応しいもてなしの準備を……」


諜報兵「失礼いたします!」タタッ

スオンカス「戻ったわね! さぁ! 早く見せなさい!」バッ

諜報兵「ハッ! 先日叛軍に入った雇兵らの似顔絵です!」スッ

スオンカス「やはりこれはカルラよぉ。美しいわぁ……」ウットリ

諜報兵(……この技能のおかげで俺、生きてるんだよな)

スオンカス「死体は片付けておいて。あとこの玉座の間、模様替えをするから」

諜報兵「ははっ! 人手を用意いたします!」

スオンカス「違うわ。誰も入れないように人払いをするのよ」

諜報兵「し、失礼いたしました!」

スオンカス「うふ、貴方だから生かしているの。さぁ、早く出ていきなさい!」

諜報兵「ははぁー!(もうヤダ、この仕事……)」

スオンカス「カルラカルラカルラ…………」ブツブツ




453VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:49:06.89dBhh41fSO (17/32)

 ――――

  ゾクッ…

カルラ「な、なんだか寒気がしますわ……」ブルッ


ハクオロ「ええ。このように陣を敷けば……」

デリ「ふむ、なるほど……」


ゴロー(何だかんだあったけど、叛軍は俺達と組む事になった)


トウカ「では締めに素振り千本!!」


叛軍達「「「……」」」


ゴロー「トウカ、無理がある」

トウカ「そ、そうでしたか。では五百……」

ゴロー「明日、別の敵部隊と交戦に行くんだからもっと軽く……」

トウカ「では百本で!」ニコッ


叛軍達「「「……ハイ」」」


ゴロー(訓練はいいと思うけど、こいつに教官をやらせちゃ駄目だろう……)


 ……それにしても、叛軍の武器や防具、
 なんだか見たことある武装のような……


ゴロー(うーん……どこで目にしたんだっけ)




454VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:52:07.64dBhh41fSO (18/32)

 ――――

この出来事から少しだけ時が経過した。

陣から離れるハクオロとデリホウライ。


デリ「あの女……カルラを俺に譲ってくれ!!」

ハクオロ「は、はいぃぃ?」


デリホウライの話に驚くハクオロ。


デリ「この戦が終わったら何でも譲る! この通りだ!」ズザッ

ハクオロ「そこまで言うならどう――」

  ヒューン… ボカッ☆

ハクオロ「あ、痛っ!!」

    (カルラ、隠れて聞いているな…… 石が飛んできたぞ)


ハクオロ「そ、そういう訳にはいきませんので…」

デリ「……あの女は生き別れの姉上に似ている気がするのだ」

  「美しく、しとやかで、優しくて、可憐な……」

デリ「そうだ、生き物の世話が好きだった優しい姉上様に……」

ハクオロ「嘘はいかんぞ――」

  ヒューン… ボクッ☆

ハクオロ「ガッ! ……ッッ」

デリ「俺の理想、ああ姉上…… 姉上以上の女性など見たことがない……」

  「今、何処におられるのですか……」


ハクオロ(語りに入り込んで帰ってこない……)

 …………

 ~ 近くの茂み ~

ゴロー「敵は大きいな。頑張れ」

女の子「はい……」コクン

カルラ「大丈夫、貴女はとっても強い子」ナデナデ

   「もっと大きくなったらあんな男はイチコロですわ」


女の子「が、頑張ります!」

ゴロー(恋する乙女はこんな所にも)



455VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:55:27.14dBhh41fSO (19/32)

 ――――

別の日の昼……


ハクオロ「やはり戦力差が大きすぎる」

ウルト「兵の皆さんも随分と疲れています」

ゴロー「いつものように何かの作戦はないのか?」

ハクオロ「うーん、こういう時は直接敵の親玉を首を狙うのが一番なんだが」


カルラ「じゃあ、そういたしましょうか」ニコッ


一同「「「……なんだって?」」」


デリ「正面から攻めるのか!」

カルラ「貴方、馬鹿ですわね。わたしが城の抜け道を知っているだけですの」

ゴロー「それ、どうして言わないんですか……」

カルラ「女は秘密を持つほど美しくなるものですわ~」

エルルゥ・トウカ「「おお! ふ、深い……」」

ハクオロ「それで、その抜け道はどこにある」


カルラ「地下湖、あの城はそこから城の水を汲み上げますの」

   「そこにある水路を使えば潜入できますわ」


カルラ「ただその路が狭いから少人数でしか行けませんし、
    抜け出る場所は敵の真ん中。これをどうにかしませんとね」



456VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 21:57:42.50dBhh41fSO (20/32)


デリ「ならば総攻撃を仕掛け、これを囮として精鋭が敵将の首を取ればいい」

ハクオロ「それは一度しか使えない策です」


ゴロー(確かに。被害は大きいだろうし、下手をすればそのまま総崩れだ)


ハクオロ「自棄になっての玉砕覚悟なら考え直しを……」

デリ「違う。皆の体力はもう限界に近い。おそらくこれ以上長丁場の戦はできん」

  「しかし今、勝機のある策がここにある。逃すわけにはいかん!」


デリ「辛く、苦しい戦いになる」

  「だが、これが最後だ!」


デリ「これに勝利し、我等は皆の望む自由を手に入れる!!」


ハクオロ「フッ……いいか


ゴロー「いい顔付きになったじゃないか」

   「だったら何も言う事はない。その道を貫くのが漢ってヤツだ」


デリ「ゴロー… 貴様は一体……」

ゴロー「通りすがりの……只の旅人さ」



エルルゥ「ハクオロさん、落ち込まないで下さい」ナデナデ

ハクオロ「…………いい所を取られた」ズーン




457VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:00:09.64dBhh41fSO (21/32)

 ――――

エルルゥ・ユズハを除き、湖を抜け、水路の入口に到着した一行。
その水路から、白い蓮のような花が流れ続けていた。


ゴロー「お、風情がある。花が城から流れてきてるぞ」

カルラ「……懐かしい花ですわ」ボソッ

デリ「この路で良いのだな」

カルラ「ええ、穴キママゥに気をつければ城の下に……」

ハクオロ「それを先に言えぇぇ!!」キィン

穴キマ達『『『ゲゲッゲゲッ!!』』』

トウカ「容赦は無用、立ち塞がるなら斬るのみ!」チャキッ

カミュ「待ってトウカ姉様! お姉様、あれやろうよ あれ!」

ウルト「ではわたくし達がなんとかしましょうか」ニコリ


 そう言うと前に出るウルトリィさんとカミュちゃん。


ゴロー「お二人が戦うところ、初めて見ます」

ウルト「うふふ、目を細めて下さいね。眩しいですから」

カミュ「じゃあやりま~すっ!」


 《 協撃!》

 《 究極術法 》

カミュ「我等はオンカミヤリュー」キュイイン

ウルト「我等は架け橋」

   「人々を安息に導く者なり」キュイイン

    カッ!!

カミュB・ウルトB「「均衡を乱す者よ」」

カミュA・ウルトA「「大神ウィツァルネミテアの名において……」」

      「「「「調停せん」」」」キィィン…


    ゴオオオオオオッ!!


黒紫の鈍い輝きと純白の鋭い輝き。
分身した二人を含めた四本の光線がキママゥに直撃した。


ゴロー(……ビーム攻撃じゃないか)

ハクオロ「す、凄いな。分身までして……」

ウルト「高位の術者しかできない術です」ニコッ

カミュ「よし、今日は成功っと♪」

ゴロー「ところで……あの力技のどこが調停なんです?」


キママゥ達「「「 」」」チーン


ウルト「言って聞かない方々には大神の裁きが下るのですよ」ニコリ

ゴロー(怖い人がもう一人……)



458VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:04:57.17dBhh41fSO (22/32)

 ――――

 ~ ナ・トゥンク皇城 ~

   ガタッ…

トウカ「大丈夫、敵は居りませぬ」パッ


隠し通路から出てくる一行。


アルルゥ「……ムックル、つまった」

ムックル『ヴォォォォォ!?』


 予想出来た事だなぁ…


ハクオロ「一番最後でよかったというべきか……」

カルラ「引っ張りますわ」ガシッ

デリ「俺も手を貸そう!」ガシッ

カルラ・デリ「「はああああああああああああ!!」」

  ベキィ!

ムックル(+床板)『…………』


 ムックルの真ん中位で止まる床板。


ゴロー「く、くくっ……」

ハクオロ「ゴローさん、そんなに笑っ…ふふっ」

トウカ「か、可愛いにゃ~」フニャ

アルルゥ「ムックル」(・ω・)d グッ

ムックル『ぐお……』

カミュ「……って、和んでる場合じゃないよ!」

ウルト「ですが、あの大きな音でも気づいていないなんて……」

ハクオロ「ああ、本当に兵がいないか……」

カルラ「罠……かもしれませんわね」

トウカ「ハッ! そ、某が先行いたしますゆえ、皆様は後から!」タタッ




459VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:12:24.17dBhh41fSO (23/32)

 …………

トウカ「ここが玉座に繋がる扉ですな」

ハクオロ「鍵はかかっていないようだ」

デリ「よし、行くぞ」ズイッ

トウカ「いえ、ここは某が行きます」スッ

   「敵の罠があるやも知れませぬ。デリホウライ殿はお下がりください」


ゴロー「今日はしっかりしてくれよ……」

トウカ「む! ゴロー殿、某を侮辱しているのですか!」

ゴロー「してないしてない」

アルルゥ「トウカお姉ちゃん、がんば」(・ω・)d グッ

トウカ「……お姉ちゃん、一人っ子の某にとって良い響きでございまする」ジーン

   「エヴェンクルガのトウカ! 参る!!」タタッ

  ギギッ… バーン!


 『のわあああああぁぁぁぁ!?』


ハクオロ「トウカァ―!!」タタッ

ゴロー(やっぱり……)


 急いで駆けつけると……


ハクオロ「トウカ! 無事か!?」

トウカ「せ、聖上……、あれらは……」ガタガタ

カルラ「こ、これは…………」

ゴロー(な、なんだこの水墨画は……)


 それは…『圧巻』としか言い表せない光景だった。

 大・中・小、様々な大きさの紙に人の姿?をした『ナニか』が描かれていたのだ。



460VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:16:05.99dBhh41fSO (24/32)


「如何かしら? 私の描いた『カルラゥアツゥレイ』は?」


 中央にある階段の上から女言葉をした男の声が聞こえる……


スオンカス「素晴らしいでしょう? カルラ、貴女を迎える為に必死で描いたのよ」

カルラ「スオンカス…… 貴方、懲りてませんでしたの」ハァ…

ハクオロ「ちょっと待て、この見るからに禍々しいモノがカルラなのか!?」

スオンカス「凡人は天才の気持ちが判らないというのは本当ね」フゥ

ゴロー「へえ…… これはピカソ的な絵だな。よく見ると味がある」ジッ

スオンカス「あら、貴方。判ってるわね。それは二番目にお気に入りよ」コツコツ

ゴロー「誉められてもな……」


 俺の知識はこういう方面にはない。


デリ「いや、これなんか非常に良く描けている」ジィー

スオンカス「驚いたわ… 私の最高傑作を一目で見抜くなんて!!」コツコツ

デリ「この女性的なしなやかさを『剛』の線で表すとは……」

スオンカス「認識を誤ったかしら『餌』から昇格させてあげるわ」

デリ「何ぃ?」

スオンカス「そう、そこのお坊っちゃんは餌なのよ」

     「そこにいるカルラの為のね!!」


カルラ「……性根が腐ってますわ。
    イチモツを潰してから少しはマシになったかと思いましたけど」


男性陣「「「おう!?」」」キュッ

スオン「カルラ…… 貴女には感謝してるわ、
    おかげで不浄な雄の呪縛から解き放たれたんですから!」


ゴロー「なんて人だ……」



461VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:20:08.10dBhh41fSO (25/32)


スオンカス「さあ、お話はここまでよ。カルラ、私の下に帰ってきて!」


カルラ「お断りですの」


スオン「な、何故! かつての大國『ラルマニオヌ』の皇宮……
    いいえ、それ以上の贅沢をしたくないというの!」


カルラ「ふふふ……判ってませんのね。あんな生活、退屈なだけですわ」

   「人はその日生きていけるだけの糧と、虫達の子守唄(ユカウラ)を
    聞きながら大地の寝床に横たわれれば、それで十分」


カルラ「そして、戦場を駆け、猛者と戦い、気心の知れた友と酒を交わし、
    愛しい漢に身を委ねる…… 本当の贅沢とはそういうものではなくて?」


スオン「そう言うと思ってたわ。何者にも縛られない、貴女らしい言葉ね」

   「だからこそ……手に入らないからこそ、貴女は美しい」


スオン「でも甘いのよカルラ。そこの僕ちゃんを助けに来たのだから」

   「貴女は自分の苦痛には耐えられても、近い者の苦しみには耐えられないの」

スオン「そこにいる他の者達の命は保障してあげる。だから……」


デリ「……」ソーット…


カルラ「でもお断りですわ」ニコリ

スオンカス「な、何故!!」


カルラ「だって……わたしはもう……」

   「この御方のものですから」グイッ

ハクオロ「は?」ズルズル


ゴロー(やっぱりそういう関係か)



462VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:22:50.18dBhh41fSO (26/32)


カルラ「イヤですわ~ あるじ様ったら、こんな所で……」グググッ

ハクオロ「痛たたた! 手を引っ張るな!!」

カルラ「わたしのあんな所に指をなんて……あるじ様ったら」ポッ

ハクオロ「ぬぐあああっ!! ゆ、指があらぬ方向にっ!」ギギ


トウカ「……ハッ! そ、そんな破廉恥な!」ジッ

ゴロー(なら目を閉じるか止めるべきだろう……)

カミュ「わ、わぁー わぁー…… あんな事しちゃうんだぁ」チラチラ

ゴロー「子供は見ちゃいけません」サッ

ウルト「カルラ~ 腕が逆ですよ~」

ゴロー「ウルトリィさんってボケ側だったんですか……」

アルルゥ「おとーさん、アルルゥも撫でる……」

ゴロー「はいはい、代わりに撫でるから」ナデナデ

アルルゥ「ん~…イマイチ」

ゴロー「」ガーン

 …………

エルルゥ「むむっ! 何か感じるっ! 浮気の気配!」ピーン

ユズハ「エルルゥさま? どうかされましたか?」

エルルゥ「な、なんでもないから! む~ん……」

 …………



463VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:26:16.42dBhh41fSO (27/32)


ハクオロ(な、なんだ? ここに居ないはずのエルルゥの気配を感じる……)


エルルゥ(生き霊)『ハ~ク~オ~ロ~さ~ん~』ドロドロ


カミュ「あ、何か見える」

ゴロー「なんとなくエルルゥさんっぽい」

トウカ「某にはサッパリ見えませぬ…… まだ未熟なのでしょうか……」




スオンカス「アンタ達! 無視しないでよ!!」

デリ「そうだそうだ!!」


トゥスクル勢「「「あっ……」」」


スオンカス「ちょっとあの人達、本気で私達の事忘れてたわよ」ヒソヒソ

デリ「俺様を放置して勝手にあんな……」ワナワナ


 すっかり忘れてた。
 何故かあの二人仲良く並んでるんだけど。


カルラ「デリ! 何をしているの!! 隣の男をぶん殴りなさい!!」


スオンカス・デリホウライ「「あ」」


スオンカス「……」

デリ「……と、とりあえず」ゴホン


 《デリホウライ・必殺連撃!》

デリホウライ「ギリヤギナの拳、喰ろうてみるか?」

デリ「タァァァァリャリャアアラララライッ!!」

  ズガバキボコベキ!!

デリホウライ「ふん、他愛もない」スチャ


ゴロー(今さらカッコつけてもな……)




464VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:29:30.99dBhh41fSO (28/32)


スオンカス「ぐあはっ!!!」ズザザ

スオン「ま、まだよ…… まだ倒れるワケには……」

   「兵士達!! コイツらを殺…… いいえ!」


スオンカス「あの白い花の苗床にしてやるわ!! 半殺しにしなさい!!」

白い花(やっと名前がでたよ……)

兵士達「「「ハハッ!!」」」ズラズラ


カルラ「ウルト、行きますわよ」

ウルト「判りました」


 《 協撃!》

 《 美しき野獣 》


ウルト「チェカイメラ、ヤムイウンカミ…… カルラ……」キィィィン

カルラ「ええ、よくってよ」スウッ!

   「さあ、とくとご覧あそばせ。常世(コトゥアハムル)へ誘う花の舞を……」


ウルト「はっ!」パアッ!


ウルトリィの水の法術がカルラの刀に集約する。


カルラ「たああああああ!!!」ブオン!

  バチバチバチバチ…!!

術によって更に強められた一撃が衝撃波となり兵士達を襲う。


兵達「「「グアアアアアッ!!」」」


ゴロー「……凄いと言うより、怖い」

ハクオロ「あ、ああ……」


トウカ「聖上!」スパッ

ハクオロ「呆けている場合ではないな」キィン! バシッ!

兵「アグッ!」ドサ…


アルルゥ「ムックル!」  ムックル『グオオオォォォ!!』

兵「ば、バケモンだぁぁぁ!」



465VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:32:05.73dBhh41fSO (29/32)


スオンカス「な、なんですって……」

カルラ「覚悟はよろしくて?」ニコリ

スオン「……あんな者達はどうでもいいわ。だって貴女が私の目の前にいる」

   「貴女をこんなに近くで感じられる喜び! 命のやりとりをする至福!」

   「どんな富にも替えがたい一時…… そう、まるで夢のようだわ」ウットリ


カルラ「貴方の夢に付き合うつもりはなくてよ」

スオンカス「貴女のそういう態度…… 愛してるわァァァァ!!」チャキッ

     「むぅん! 踊りなさい!!!」シャッシャッ!


カルラ(暗器!)

デリ「姉上様!」ザザッ

  キィッン! グサ

デリ「く、脚に…… な、身体がうごか……」

スオンカス「暗器に毒を塗るのは当然よ。命を奪う類いじゃないけれど」

カルラ「本当、意地の悪い男」

スオンカス「ああ! もっと罵って! 見下して!! 蔑んで!!!」ハァハァ

カルラ「……やる気が削がれますわね」

スオンカス「もっと! 私に貴女の感情をぶつけて!!」

ハクオロ・ゴロー「「うるさい」」バシッ! ボカッ!

スオンカス「あふんッ!!」


カルラ「ケウトゥアマンを飲んで……」サラサラ

(※ケウトゥアマン……気力を最大まで回復する薬。一種の興奮剤)



466VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:34:45.84dBhh41fSO (30/32)


カルラ「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

   ブン! ブオッ! ゴオッ!!

スオンカス「くう……なんとか、かわす……」ドカッ

     「か、壁ですって!!」


 《カルラ・必殺連撃!》

カルラ「わたしの胸でお眠りなさい――――」


  ブオン!!!

スオンカス「ギャアアアアアアアアア!!!」


スオンカスの身体に赤く、太い刀傷の線が入る。
浅い一撃だったが、その攻撃は十分致命傷の域であった。


スオンカス「……」

カルラ「……」

デリ「おのれ… まだ倒れぬかぁ……」クラクラ

ゴロー「デリホウライ、治療するから待つんだ」

デリ「ゴロー、何故止める……」

ゴロー「あの男は……もう……」


スオンカス「か、カ……ルラ……」フラフラ

     「わ、た……の……日天之神(ラヤナソムカミ)……」ガクリ


カルラ「……今、この時だけ。貴方を誰よりも愛してあげる」

   「お眠りなさい、スオンカス。貴方の事、嫌いではありませんでしたわ」


スオンカス「…………」スウッ




467VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:36:59.62dBhh41fSO (31/32)


ナ・トゥンク皇城の決戦は終わった。

デリホウライは泣きそうになりながらカルラに言葉をかける。


デリ「姉上様だったのですね……」

カルラ「違います」

デリ「え、でもさっき僕を昔みたいに『デリ』って呼んでくれました!」

カルラ「……あんなワケの判らない絵を上手いと言う弟なんて知りませんの」


デリ「」


ゴロー「あーあ。放心しちゃった」ペシペシ

カルラ「直に気がつくでしょう。あるじ様、帰りましょう」ニコッ

ハクオロ「いいのか? アレ(デリホウライ)を放置して?」

カルラ「いいんですの」ツカツカ

ウルト「では私達も」スタスタ

カミュ「……ねぇねぇ、アルちゃん」ニヤリ スッ

アルルゥ「んっ」コクリ スッ

ゴロー「筆? まさか…………」

 ――――

ナ・トゥンクと叛軍の激突地点。
漢がスオンカスの首をかかげ、叫んだ。


「ギリヤギナのデリホウライ、ううっ…怨敵スオンカスを討取ったりぃ……」

「俺達は自由だ。ずずっ…もはや何人も俺達を縛り付けることは出来ん……」

「今ここに『カルラゥアツゥレイ』の樹立を宣言する……」グスン


デリホウライの名前を聞いて活気づく叛軍兵士達。


「「「おおおおおおお……お?」」」


「「「お前は誰だぁぁ!?」」」


デリ(顔に落書き済)「ううっ…… 姉上様……」グスリ



第十五話「ナ・トゥンクのヘビの白焼きとヘビのスープ」

 続く。


468 ◆M6R0eWkIpk2012/08/07(火) 22:43:12.41dBhh41fSO (32/32)

投下終了。>>438から開始。


スオンカス→絵を見ていた時に階段中程まで降りる。

デリホウライ→カルラとスオンカスの会話の間に背後を取ろうと階段に行く。

そしたらあんな事になり、お互い頭に血が昇って
近くに敵がいるのを一瞬忘れた。

明日は②のルートをやります。


469VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/07(火) 22:47:21.53iHeXnF9vo (1/1)

ふむ


470VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 01:17:08.84J7RYxyBSO (1/1)




471 ◆M6R0eWkIpk2012/08/08(水) 20:11:16.95lWrVOwoSO (1/34)


「いらっしゃ~い、可愛いコと楽しい一時を……」

「そこのダンナさま、如何~……」



ゴロー「華やかな街、そしてべっぴんさん……」


 赤・青・緑やその他の着物が店の灯りや街灯に照らされる。

 俺の少し前の男、他國の商人だろう。
 可愛い女の子の客引きに迫られ、
 『よーし、今日はパーっとやるか!』
 なんて感じに顔が綻んでいた。


ゴロー「本当に人が多いなぁ」

  カツ… カツ… カツ…


♪推奨BGM『Jiro's Title』
  (ドラマ・孤独のグルメ サントラより)


時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき

つかの間、彼は自分勝手になり「自由」になる

誰にも邪魔されず、気を使わずものを食べるという孤高の行為

この行為こそが現代人に平等に与えられた最高の「癒し」といえるのである………



うたわれるゴロー ~ 孤独な男のグルメ旅 ~


第十五話「過去と現在 ~滅びし國の皇女②~」




472VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:14:28.39lWrVOwoSO (2/34)


 ここはトゥスクル歓楽街、この國の中でも多くの人々が集う地の一つだ。


ゴロー「賑わってるな……」


 この歓楽街、実は少し他國と異なる。
 普通に見て歩くだけだと違いはわからないと思う。

 通路や橋、特定の場所を注視すると子供でも謎が解けるだろう。


兵士「……」

ゴロー(兵士が立ってるんだよ)カツカツ


 そう、この歓楽街は『國営』なのだ。

 これは皇…… つまりハクオロの案なのだが…

 人の欲は一つ満たしたから満足、というものではなく
 あれもやりたい・これもやりたいと高まってしまう。

 それを満たそうと様々な事・ものが産み出される。

 歓楽街のようなものは代表格と言える。
 厳しく風紀を取り締まったところで黒い部分が無くなるわけじゃない。


ゴロー(それならいっそ、國で管理して闇を潰す……だそうで)カツカツ


 実際、この案は大正解だった。

 ベナウィ達の働きにより、此方に取り入ろうとする悪徳業者は大半逮捕。

 國を挙げて造られた歓楽街という話を聞き、
 他國から商人や金を持った者達が次々と集まる。

 集まった金が國の益になるし、そこから歓楽街を発展させる事もできる。


ゴロー(人や金のサイクルが上手いよな……ハクオロって)カツカツ


 さて……なぜ飲めない俺がこんな所に居るかというと……




473VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:16:44.42lWrVOwoSO (3/34)


 《 回想 》


ゴロー「歓楽街の調査……ねぇ」

ベナウィ「はい。ゴローさんならば顔を割れていないでしょうから」

ゴロー「顔が割れてちゃ不味い事があるのか?」

ベナウィ「先日話した倉泥棒の話、覚えておられますか」

ゴロー「ああ、痕跡がないのに盗まれたっていう」

ベナウィ「貴方の意見を聞いて『法術』の線で調査をしたところ……」

ベナウィ「ある店に『オンカミヤリュー』が出入りしている事が判明しました」

ゴロー「オンカミヤリュー……」

ベナウィ「いずれ我等も行くつもりですが……」

     「聖上に…… ニゲラレタ、ニゲラレタ、ニゲラレタ……」


ゴロー(昨日の事なのにまだ吹っ切れてなかったのか……)

ベナウィ「……ともかく聖上が『物見遊山』に出かけて、仕事がたまっていまして」

ゴロー「それでまずは俺か……」

ベナウィ「様子見程度で構いませんのでお願いします」

ゴロー「わかった。経費、落ちるよな?」

ベナウィ「……一飯分なら」

ゴロー「充分だ。じゃあ今日の夜にでも行ってくる」

 《回想終了》




474VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:21:41.38lWrVOwoSO (4/34)


ゴロー「このへんだよな……」ザッ


店の娘①「いらっしゃーい! 可愛いコがいっぱいいますよ~」

店の娘②「美味しいお食事とお酒もございます~」

店の娘③「常世のような時間ヲ過ごしマせんカ~」


 目当ての店の前に来ると、女の子達が元気に客引きをしていた。


ゴロー(上から、並み・巨・貧か)


 予想より顔のレベルが高いぞ……
 でもここの潜入先の店、キャバクラみたいなもんで
 下の意味では楽しめないんだったか。


ゴロー(ちょっと残念)フゥ

店の娘①「そこの素敵なお方! 如何ですか?」

ゴロー「うーん… どうしようかな……」

店の娘②「まぁまぁ、そう言わずに~」ムギュン

ゴロー(おお! 胸が腕に!)

店の娘③「楽しいヨ~」スリスリ

ゴロー(このコは胸がないや……)

  ワイワイ キャッキャッ!!


?①「おまえたち、何を騒いでおるの?」


(※イントネーション注意。綺麗な京都弁ぽく?)


娘達「「「お姉様!」」」


?①「店では女将と呼べと何度言うたら判るん」ハァッ

娘達「「「ご、ゴメンナサイ」」」



475VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:26:41.36lWrVOwoSO (5/34)


女将「まぁ、ええ。お客様、うちの妹らが失礼いたしましてぇ」ペコリ

ゴロー「いや、特に何もなかったので」

女将「おおきになぁ。そちら様もよい男でありますぇ……」

ゴロー(お、この女将。わりと好み)


 桃色の着物、頭はお団子ヘアー。
 六角形のボルトみたいな髪留めで維持している。
 目の形は狐的で『綺麗』なタイプの顔付きだ。

 見た目から年齢が高いように思うヤツもいるだろうが……
 そこまで他の娘達と差があるようでもない、よく見ると化粧が薄めだぞ。


女将「お騒がせしたお詫びに是非寄っていって下されや」

  「タダでとは言えまへんが、目一杯おもてなしさせて頂きますに」


ゴロー「そうだな… じゃあ寄らせて貰うか」

女将「おおきになぁ。それではこちらへ」ニコリ

  「ご案内いたしますぇ」


ゴロー「腹ペコだ…」


   ザッザッザッ…


娘①「この方法、お客様いっぱい入るね」ヒソヒソ

娘②「みんなで騒いでお客を集めて、お姉様で釣り上げる」ヒソヒソ

娘③「でもウソは言っテないヨ~。みんな可愛イし、料理おいシーね」ヒソヒソ


   キャッキャッ…




476VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:31:09.06lWrVOwoSO (6/34)

 ――

 案内されて、店に入る。
 わざわざ個室を用意してくれた。


娘③「ドウゾ、お寛ぎ下さイ」

ゴロー「いい感じの店内じゃないか」

娘①「んふ~ そう思いますよね」

娘②「ウチと同じくらいのお店は、この界隈ではちょっとありませんよ~」

ゴロー「へえ……」


 女の子達と世間話をしていると、女将が部屋に入ってきた。


女将「お待たせいたしましたぁ。まずは、一献」スッ

ゴロー「私、酒飲めませんので」

女将「あらぁ… でしたらお食事だけで?」

ゴロー「はい」

女将「畏まりましたぁ。みな、こちらに膳を」


娘達「「「はーい!」」」


ゴロー「元気な娘さん達ですね」

女将「はい。ほんにええ妹達ですぇ……」

ゴロー(……)


 ――――


 【尾頭付き】

鯛のような魚の尾頭付き。わりと大きい。


 【煮モロロ】

醤油などで味付け。
他の國から調味料を輸入しているようだ。


 【まんじゅう】

再度登場。この形にしたモロロは店などでよく出される。




477VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:38:28.71lWrVOwoSO (7/34)


ゴロー(品数は少ないが、なかなかに豪勢)

   「いただきます」


 あれ、醤油があるぞ。


ゴロー「これは?」

女将「醤油で御座います。魚の身を食す時におつけ下さいませ」

ゴロー「見たことない調味料だ(嘘)」

女将「他の國では一般的なものですぇ」


 なんだ… 醤油はもともと有ったんだ。


ゴロー「どれ……」スッ パクリ


 うんうん。いい刺身。


   もぐ ぱく…


 身に脂がのっていて…
 白身魚なのに舌の上で溶けるようだ。


ゴロー「…………」モグ

   むしゃ はぐ

女将「惚れ惚れする食べっぷりやわぁ」

ゴロー「美味しいです。ホントに……」

  もぐもぐ… がつがつ…

 こういう雰囲気で酒を頼まないのは、ちょっと迷惑かな。

 酒が飲めない人や子供も来れるような店があるといいのに。

 あと……『あの店』がないな。


娘①「お姉様、私達は……」

女将「そうさねぇ、おまえたちは呼び込みをやっておいで」


娘達「「「は~い」」」タタッ


ゴロー(女将と二人きりになった)



478VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:41:35.65lWrVOwoSO (8/34)


ゴロー「…………」ムシャリ

女将「お客様、確かお城に勤めておられる方でありましたよねぇ」

ゴロー「へえ…ただの文官をよくご存知で」

女将「……最近変わった事なぞありますかいやぁ?」

ゴロー「変わったこと…… 皇がある女性に無視され続けてるとか…」

女将「まぁ…皇様はその女(ひと)に何をしたんです?」

ゴロー「……浮気現場を目撃されてました」


 あいつも皇なんだし、室を作っちゃえばいいのに。


女将「それはいけませんなぁ。女は…怖いものですから……」

ゴロー「男は女に勝てません」ズズッ

女将「あらぁ、そんなことは…ありまへん」

   「恋の戦は惚れたもんの負けで御座いますぇ」


ゴロー「女将さんも誰かに恋を?」

女将「にゃもっ! ……い、いいえ~そんなことは~」


 にゃも? 変わった口癖だ。


ゴロー「そうですか。さてと……本題に入りましょう」


女将「……本題とは?」


ゴロー「『ノポン』というオンカミヤリューに覚えは?」

女将「さぁて… 翼をお持ちの方は知りまへんなぁ……」

ゴロー「そうでしたか。チキナロが言うにはここに出入りしていると…」


女将「……城の用ではないみたいやなぁ」


ゴロー「今は城勤務ってだけでして」パクッ




479VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:44:12.23lWrVOwoSO (9/34)


女将「あちしを担ごうって輩かぃ?」

ゴロー「違います。単純に法術に詳しい『天才』に用があるだけで…」


   ピシャッ!!

?②「ぬふふふ~ ボクちんの事を天才と認めてくれるとはいい人です~!」

?③『ギゲッ!』


 オンカミヤムカイの青の僧服に赤い鼻、
 ピンと張ったヒゲを生やした男と
 赤い腰巻きをつけたキママゥが姿を見せた。


女将「出てくるなというに!!」ピシッ!

?②「あでべしゃ! 鞭は痛いですぅ~ お嬢様~」

女将「ちょっと持ち上げられたからってイイ気になるんじゃないよ『ノポン』」

ノポン「ハヒィ~~」

?③『ギャッ! ギャッ!』ムシャムシャ

ゴロー「あ、こら! それは俺のだ! キママゥが食うな!」

?③『ヴギャーッ!!』

ゴロー「キママゥって呼んだら怒ったぞ」

女将「『ゴムタ』! 客のものに手を出すんやない!!」ピシッ

ゴムタ『ギャッ! グゲェ……』

ゴロー「皇城に負けず劣らず個性の強い方々で…」


 事前に情報を仕入れてなかったらもっと驚いたろう。


女将「あんさん、あちし達の事を知ってますなぁ」


ゴロー「……この『トゥスクル』の前身、『ケナシコウルペ』」

    「その皇『インカラ』の息女、『カムチャタール』さん……ですね」


ゴロー「初めまして。ゴローと申します」ペコリ

女将改め カムチャタール「……」


 インカラの首は見たことあるけど、
 あんなのからこんな綺麗な娘さんが……


カムチャ「……悪いけど、そのまま帰すわけにはいかなくなりましたなぁ」

ノポン「にゅふふ~」

ゴムタ『ギギッ!』

ゴロー「……お茶がうまい」ズズ


 ――――――――

 ―――――

 ―――


480VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:54:02.05lWrVOwoSO (10/34)


二日後の昼、トゥスクル皇城にて、
いつもの騎兵コンビが何やら話していた。


クロウ「メシ大将がいなくなった?」

ベナウィ「……失策でした」

クロウ「そういやここんとこ見てねぇな」

ベナウィ「二日前に倉泥棒の調査を頼んでから姿を見ていないのです」

クロウ「あのオンカミヤリューが出入りしてるって店に行かせたんですかい?」

ベナウィ「私やクロウと違い、顔を知られていないと思っていましたが…」


『何かあった』…そうとしか考えられない。


クロウ「……今晩、潜入しやす」

ベナウィ「わかりました。他の者…オボロ達も連れて行きなさい」

クロウ「……デカいヤマになりそうですぜ」

ベナウィ「私も政(まつりごと)が終わったらそちらに合流します」バッ


クロウ「ういっす!!」ドスドス…




481VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:57:01.54lWrVOwoSO (11/34)

 ――

 ~ 歓楽街 ~


オボロ「ちょっと待て! 何故飲みにいく為にこんな場所へ!」

ドリィ「クロウさん…」

グラァ「不潔です…」

クロウ「なんかオメーらに言われると妙にグサッとくるな…」

    「いいじゃねぇか、たまにはパーッとよう!!」


店の娘①「いらっしゃー… あーっ!!」タタタッ

オボロ「お、お?」

娘①「ひょっとして侍大将のオボロ様じゃありませんか!」

オボロ「あ、あ

ドリィ「違います」  グラァ「人違いです」


クロウ「いやー バレちまったら仕方ねぇな~」

ドリィ・グラァ「「!!」」

娘①「やっぱり~ みんな~ オボロ様だよ~!」

娘②「次はベナウィ様に勝ってくださーい」

娘③「オ薬の後遺症ハ大丈夫デスカ~」

オボロ「え、あ、なんのこと?」キョド


この娘達、『週刊トゥスクル』の読者のようである。


娘②「オボロ様の追っかけなんです~」ムギュ

オボロ「お、あ、む、ムネ……」


ドリィ「若様……」  グラァ「不潔……」


カムチャ「おまえたち、何を………にゃも!?」

クロウ「あん?」

カムチャ「い、いえ、何でもありまへん。ウチの娘が迷惑を……」

     「お詫びと言ってはなんですが…… よろしかったら
      ウチで飲んでいって下さいまし。奉仕いたしますに」

クロウ「おっ、いいねぇ。んじゃそうさせて貰おうかい」

カムチャ「さ、おまえたち。ご案内差し上げなさいなぁ」


娘達「「「四名様ご案内~!」」」




482VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 20:59:48.19lWrVOwoSO (12/34)

  …………

娘①「どうぞ、オボロさまっ♪」トクトク

オボロ「お、おう…」グイッ

ドリィ「若様っ♪」トクトク

オボロ「は、はぁ…」グイッ

娘②「盃が空ですよ~」トクトク

オボロ「へ、へい…」グイッ

グラァ「僕達が酌をしますから」トクトク

オボロ「……」グイッ

娘③「オボロサマ~」トクトク

オボロ「ひ、ひっく…」グイッ


娘達「「「……」」」VSドリィ・グラァ「「……」」

   バチバチバチバチ…


クロウ「おうおう。人気だねぇ、さすが侍大将」

カムチャ「またまたご謙遜を… 貴方様も
      戦場を駆ける騎兵衆副長・クロウ様ではありまへんか」

クロウ「へぇ、よく知ってるじゃねぇか」グイッ

カムチャ「あげた武勲は数知れず、皇(オゥルォ)にも信頼が厚いと……」

クロウ「こそばゆい事を言ってくれるねぇ」

カムチャ「貴方様ほどの武人とあれば戦の他にも
      過酷な命を申し付けられるのでありましょう?」


クロウ「さぁてねぇ。楽じゃねぇが、大変とも感じねぇな」グイッ

    「己の腕を買われたって事もあるが、戦やらに行けば強い奴等がごまんといる」

クロウ「そんな奴等と戦えるんだ。心踊って大変なんて感じる暇も無いねぇ」

    「武人(もののふ)ってのは、そんなもんさ」グイッ


カムチャ「武人の生き様、というものかいや。漢(おとこ)やなぁ」

クロウ「ま、ここ最近は別の意味で大変ってヤツかねぇ」

カムチャ「おや? それは?」

クロウ「退屈な見回りばかりで腕をふるう機会がねぇのさ」

   「情勢が安定したからなぁ。いいこったが、身体が鈍るぜ」




483VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 21:02:42.69lWrVOwoSO (13/34)


カムチャ「ふふっ、何かと思えば…… さあさ、どうぞ…」トクトク


クロウ「おっと……」グッ

    「しかもワケの判らん賊が出没してるみてぇでな」


カムチャ「……面白そうな話やなぁ。その話、是非聞かせて貰えまへんかえ?」

クロウ「うぃ~…いや、ソイツは極秘で…… 酔っちまったなぁ…」ヒック

カムチャ「さあさ、盃が乾いてしまいますぇ……」トクトク

クロウ「ぷはぁ~うめぇ……」

カムチャ「まぁまぁちょっとだけでも聞きたいわぁ」トクトク

     「ウチには若い娘が多いし、心配やわぁ」


カムチャ「誰にも喋ったりせんに、お願いしますぇ」
     「クロウ様でないとこんな事、お願いできへんわぁ」


クロウ「そ、そうかい? だったら……」ヒック


 「最近、富豪や豪族の、ヒック! 倉のモンがいつの間に盗まれ、ヒック!」

 「ついに、ヒックウィ… 城の倉もやられてなぁ」

 「寝ずの番がいるし、総大将が考え ヒック! 頑丈な錠前もある……」

 「そんな状況だって、ヒック! のに痕跡一つねぇ」

 「まぁ、とりあえずは…ウィック! ここの娘さんに危険はねぇから…」

 「それに…もうすぐ解決する……」ヒック!




484VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 21:05:53.26lWrVOwoSO (14/34)


カムチャ「……解決?」ピタリ


クロウ「おお、賊の中に術を使うヤツがいる…」ウィ…


 「ヒック! オンカミヤムカイの高位術者並のな…」

 「だから今度、こっちも術で結界を張る……」ヒック

 「さすがにオンカミヤムカイの巫(カムナギ)、ウルトの姐さんにゃあ歯が立たねぇだろ」


カムチャ「…へ、へぇ」タラリ

クロウ「姐さんも早けりゃ明日には帰る…ヒック!」

   「そうすりゃ…一網打尽……ヒックウィ~」

   「な、んか今日は……酔いが早ええ……」



カムチャ「おやぁ もしもし?」

クロウ「…………ぐお~ ぐお~」ZZZ…


ドリィ・グラァ「「クロウさん?」」

オボロ「アッハハハ、オレが飲めにゃいとか
     いうくへに、先に潰れウとは情けないニャー」

ドリィ・グラァ((この語尾は……いいっ!!))キラン

オボロ「ニャハハハ…ハ…………」バタンキュー


カムチャ「お二人とも潰れてしまいましたなぁ」

     「店の奥は宿も兼ねてますぇ、休んでらしては如何ですぅ?」


ドリィ・グラァ「「……」」

娘達「「「あ、じゃあオボロ様は私達が世話を……」」」

ドリィ・グラァ「「お邪魔しました」」

 ――――


485VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 21:29:48.00lWrVOwoSO (15/34)


 ~ 歓楽街・入口付近 ~

グラァ「クロウさんが重いよ~」

ドリィ「ジャンケンで決めただろう、我慢してよ」

グラァ「僕だって若様をおんぶしたいよ! こんなムサいのはヤダよ~」

クロウ「……ムサくて悪かったな」ムクリ

ドリィ「わわっ!!」

クロウ「ここまで運んでくれてありがとよ」

グラァ「酔い潰れてたんじゃ?」

クロウ「フリだよ。潰れたフリ。ちっとばかりヤバかったがねぇ」

    「なにしろ、一服盛られてたからよ」


ドリィ・グラァ「「えっ?」」

クロウ「オメェさん達は何も飲み食いしてねぇから判らねぇさ。
     酒か料理に舌を軽くする類いの薬が入ってやがった」


クロウ「姐さんに解毒薬を作って貰っておいて正解だったぜ」

ドリィ・グラァ「「じゃあ若様も…」」

クロウ「ありゃただの飲ませ過ぎだ。若大将が酒に弱ええの知ってるだろうよ」

ドリィ・グラァ「「だって……」」

クロウ「よし、この姐さん特製酔いざましを……」

ドリィ・グラァ「「飲ませるんですね!!」」

クロウ「お、おう。ほら」スッ


ドリィ「いいですよね」ジュルリ   グラァ「緊急事態ですもんね」ジュルリ


クロウ「あ、ああ……」


グラァ「ングッ……」   ぐいっ、ぶちゅ~


オボロ「オゴ…」


ドリィ「ムグ……」   ぐいっ、ちゅ~


オボロ「グム…」


ドリィ・グラァ「「ふぅ…………」」

クロウ(……この二人、ヤベぇ)

オボロ「ぐぉエエ! 頭、ガンガン… うぐぇ!」

   「な、なんだ?」キョロキョロ


クロウ「ほれ、行くぞ」

オボロ「ま、待て。状況を説明しろ!」

ドリィ・グラァ「「そうですよ」」

クロウ「歩きながら話してやる」スタスタ



486VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 21:33:48.70lWrVOwoSO (16/34)


 《歩きながら状況説明中……》

ドリィ「つまり、今までの事は泥棒への偵察で…」

グラァ「揺さぶりをかける為に結界を張るなんて嘘を…」

ドリィ・グラァ「「クロウさんが凄いです!」」

クロウ「オメェ達の俺の評価はどんだけ低いんだよ……」

オボロ「待て! そんな話、俺は聞いてないぞ」



 「貴方に言ったらバレるでしょうに」



クロウ「大将! 上手くいきやしたぜ!」

オボロ組「「「ベナウィ(さま)!?」」」

ベナウィ「蟲は付けましたか?」

クロウ「ういっす! ツガイ蟲、しかと付けやした」

ベナウィ「これまでの策は私が考えた事です」

ドリィ・グラァ「「なーんだ、クロウさんの案じゃないんだ」」

クロウ「地味に凹むじゃねぇか……」

ベナウィ「ゴローさんも偵察に行かせましたが、行方知れず」

    「我々で本腰を入れて追跡をします」


オボロ「大兄者が! ベナウィ!」

ベナウィ「お静かに。おそらく命は無事でしょう」

    「行方が判らなくなって二日。その間にあの店を張らせましたが、
     特に変わった動きはありませんでしたから」

ベナウィ「兎に角、動きます」キュポン

    ブーン…

※ツガイ蟲(トゥスクル民明書房刊、『不思議な動物図鑑』より抜粋)……

その名の通り、一度ツガイとなると生涯ずっと同じ相手と過ごす蟲。
雄と雌を引き離すと、雄が必ず雌のもとに向かう。
どんなに距離が遠くとも、雄はツガイの雌の元に帰るため、
この蟲を夫婦の絆の象徴とする地方もある。



487VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 21:38:50.83lWrVOwoSO (17/34)

 ――――

開けた山中に出る五人。

話し声が聞こえたので、茂みに隠れて様子を伺う事にする。


ノポン「ハァ、ハァ… 休ませて下さい~」

カムチャ「黙りや、ノポン。明日からは城から頂戴出来なくなるんだよ」

     「喋る暇があるなら、はよせいや」


ノポン「お嬢様ってば、人使いが荒いんだからもぉ~」

ゴムタ『ウマ、ウマ』モシャモシャ

カムチャ「ゴムタ! 勝手に食べるな!」

ゴムタ『ウギャ~…』



オボロ「やはり、あの女将が敵か」

クロウ「そうみてえだな」



ノポン「それでは… 行きますよぉ~」

    『ζμξρ…』

    『τψδθηκλ………』

彼が呪文を唱えると、何もなかった空間から箱が現れた。


ベナウィ「……転移術! 成程」

ドリィ「凄い……」  グラァ「初めて見たよ…」



ノポン「ハヒィー…これで終わりです~」

カムチャ「それじゃあ、あちしは先にあそこに戻るからねぇ」

     「あの場所まで荷物を持ってくるんだよ」

   カツ カツ カツ…


ノポン「お嬢様は厳しいなぁ~」

ゴムタ『ヴキッ』コクリ

ノポン「でもお嬢様は優しいお方、行く宛のないボクちん達を……」

ゴムタ『ギッギッ』コクコク


様子を見ていた五人も立ち上がる。


オボロ「よし、あの二人組の後を……」

クロウ「おう……んっ、葉が…顔に…」

    コショコショ…

ドリィ・グラァ「「まさか……」」

クロウ 「ぶえッくしょイ!!!!」

オボロ「なっ――!?」


ノポン・ゴムタ「『!!』」



488VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 21:41:49.93lWrVOwoSO (18/34)


ノポン「おやおや~ そこに誰かいるんですかぁ?」


クロウ「あ」

ベナウィ「何をしているのです……」

クロウ「いや、ちとムズッと……」

ベナウィ「仕方ありません。出ます!」


   ザザザッ!!


ノポン「どこの誰かは知りませんが、見てしまいましたねぇ~」

ゴムタ『ウギッ! ウギッ!!』


 《バトルパート?》


ノポン「あれ? どこかで見たような~」

クロウ「……そういやあ」

ノポン「気のせいだ~ね~」  クロウ「気のせいだな」


ゴムタ『ウギャ―――!!』バッ プゥ…

オボロ「ぐあっ! 俺の顔面に屁をッ!」

ドリィ・グラァ「「若様っ!!」」タタッ


ゴムタ『!!』ピピーン!!

   『グギャッ! グギャッ!』


ドリィ「なんか血走った目でこっちを見てる……」

ゴムタ『フンハ! フンハ!』カクカク

グラァ「別の意味で身の危険を感じるよぉ~!」



ノポン「ん~ こっちの人は誰だったかな~」

ベナウィ「まさか……なら」ヒュッ


ノポン「まぁいいや! コテンパンに~…」ピタッ

    「あれ? そういえばぁ~ 戦闘員の皆さんは?」

    シーン…


ノポン「……あ」

   「そうだったぁぁぁぁ~!! ちょっと別の仕事してもらってたぁぁぁ~!!」



489VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 21:44:42.79lWrVOwoSO (19/34)


ベナウィ「……さて、色々吐いていただきますよ」

オボロ「囲んでいる。逃げ場はない」スチャ!

クロウ「そういうワケでな。捕まってくれや」チャキ

ドリィ・グラァ「「お覚悟を」」キリリ…


ベナウィとクロウはノポンの正面を、
オボロ・ドリィ・グラァはゴムタと呼ばれるキママゥの前に立つ。


ノポン「う、ううう~~」

ゴムタ『ギィー…』


  キランッ ボオオオオッ!!


突如、ベナウィとクロウ、二人の前に炎があがった。


クロウ「あんだぁっ!?」

ベナウィ「……」


ゴムタ『ギャーッ!!』ブリッ!

   ベチャ……

オボロ「あ? ……うぐあ!?」

ゴムタ『ギィーッ!!』

  ベチャ ブチュ ビチュ…

ドリィ「若様が…」  グラァ「汚物まみれに…」

   ヒュン!

オボロ「うばァッ!? め、目にィィ――ッ!!」


クロウ「今日の若大将、光ってんな…… あの姉ちゃんの身になんかあったか?」

 ―――

 ~ ナ・トゥンク ~


トウカ「クシュン! うぅ? 風邪ではないはず……」

   クシュン!!

 ―――


490VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 21:47:30.11lWrVOwoSO (20/34)

 ―――

ノポン「今です~!!」パアアッ!!

ゴムタ『ウギッギィ!』スッ

   キューン… フッ…


転移術を使い、消失する一人と一匹。


クロウ「しまった! 逃げられやしたぜ!」

ベナウィ「……クロウ、これを」スッ

クロウ「コイツは…ツガイ蟲!」

先の戦い(?)でもう一対のツガイ蟲を付けたベナウィ。
トゥスクルの知将としての一面を見せる。


ベナウィ「貴方は後を追いなさい。私もすぐに追いつきます」

クロウ「ういっス!!」ダダッ!

オボロ「目がぁ! 目がぁっ!!」タタタタ…

ドリィ・グラァ「「僕達は若様をなんとかしてから行きます!」」

ベナウィ「……なら、これを」カチャ

ドリィ「これ……」  グラァ「地図ですか?」

ベナウィ「推測ですけれど、この地点が賊の根城でしょう」

ドリィ・グラァ「「わかりました!」」タッ!



ベナウィ「……さて、どういう事ですか。『ゴローさん』」


   ガサガサ… ザッ


ゴロー「あ、やっぱりベナウィにばれてたか」


ベナウィ「一度受けた攻撃ですから。ヒムカミの指輪のね……」

ゴロー「チキナロに情報を聞いたら余計な事まで教えてくれてな……」


 ――――――――

 ―――――

 ―――



491VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 21:57:07.13lWrVOwoSO (21/34)


ツガイ蟲の導きに従い、とある邸宅に到着したクロウ。


クロウ「ここは……」


そう、この場所は彼等にとっての因縁の地。



 「『ケナシコウルペ別邸』。懐かしの場所やろぅ?」



故インカラ皇の邸宅だった。


クロウ「何者だ!」ザッ


カムチャ「久しいなぁ、クロウ。ここで遊んで貰ろうたこと、
      ずいぶんと昔のことに思えてくるわぁ……」


クロウ「へっ、糸を引いてた女将が直々に相手をするのかい」

カムチャ「……もしかして、忘れとるん?」


クロウ「へ?」


カムチャ「ここで! 毎日!! あちしの遊び相手になってくれたやないの!!!」


クロウ「……えっと」

カムチャ「『カムチャタール』! インカラの娘の『カムチャタール』や!」


クロウ「え、えええええええ!!!」

    「あんなちっこくて可愛かった姫さんが、こんな老けて――」


カムチャ「ふ、老けて――――」グサッ!




492VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:02:45.41lWrVOwoSO (22/34)


クロウ「あ、いや、その」

カムチャ「……他の娘と大して歳の差がないのに」ブツブツ

    「みんなから『お姉様』、歳上の娘からも『お姉様』……」ブツブツ


カムチャ「あちしの… あちしのことを老けたやてぇ……」プルプル


クロウ(ヤベ、墓穴掘っちまったかな)


カムチャ「許さない…… 許さないぇ!!!」ゴゴゴ


ドリィ「うわ、なんか」  グラァ「大変なことに」

オボロ「ソイツはいい! あのキママゥ!! ドコだぁ!!!」


ゴムタ『ヴギ――ッ!!!』タッ

オボロ「待てぇぇぇぇ!!!」

ドリィ・グラァ「「若様っ!!」」

   バサバサ…

ノポン「おおっとお嬢さん方。ここから先は行かせませんよ」キリッ

   「貴女方のような美しい花を傷つけたくありませんから」キリッ


ドリィ・グラァ「「僕達、男ですよ」」


ノポン「…………えっ? ホントにぃ?」

ドリィ・グラァ「「ハイ」」コクリ


ノポン「…………」プツン

    「だぁぁぁまぁぁぁさぁぁぁれぇぇぇたぁぁぁ!!!」

ノポン「チクショ~!! ボクちんの純情を弄ぶなんてぇぇぇ!!!」


ドリィ・グラァ「「ええー……」」




493VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:09:50.59lWrVOwoSO (23/34)


カムチャ「クロウのアホ! トンマ! 女心を大切にせえや!!」ビシッ


クロウ「おわっ、鞭捌きが見事なことで」ヒラリ


カムチャ「ムキィ~~~!! ノポン! あれを出しなさい!!」

ノポン「は、ハイィ!」スッ

   「ポチッとな」ポチッ


    キューイイ… ズシン!


クロウ「コイツぁ…」


デグカパ「……」

ノポン「ぬふふ~! ボクちんが改造したデグカパ!
    『自走デグカパ(某青タヌキ風に言う)』だよ~ん」

    「ボクちん天才なんだも~ん! コレを動くように出来ちゃったもんね~」


ドリィ・グラァ「「ホントにスゴい……」」



 「成る程、ではその力は國の為に役立て貰いましょう」



ノポン「へ?」


  スパッ ザシュッ! ドカッ!

デ|グ/カ\パ「」


   ドゴォォン…

ベナウィ「ちょうどアレを解体出来る者を探していました」スタッ

クロウ「大将!!」


カムチャ「ベナウィ……」



494VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:13:29.31lWrVOwoSO (24/34)


ベナウィ「カムチャタール様、お久しぶりです」ペコリ

カムチャ「ふんっ」プイッ

ベナウィ「諦めて投降して下さい」スチャ


カムチャ「……そうしなければ父のようにあちしも送ると?」

ベナウィ「知っていましたか」

カムチャ「あのゴローという男に聞いてねぇ」


ベナウィ「……それだけではありません」

     「この國には未だに叛意を持つ不穏分子が残っています」


ベナウィ「才もなく、努力もせず、没落した後も
      過去の栄華に囚われ、幻想を追い求める者達が」

ベナウィ「貴女はそんな者達にとっての旗印になりえるのです」

     「……言わば、貴女の存在自体がトゥスクルにとっての争いの種」


ベナウィ「故に、私の心は揺れています」

     「貴女を捕らえるべきか…… 存在そのものを闇に葬るべきか」


カムチャ「――っ」ギリッ

ベナウィ「私には後戻りなど出来ません」

     「貴女の父君、インカラ皇をお送りしたその時から……」


カムチャ「……正直な話、父とは袂を分かってたからなぁ」

     「あの男が下克上で滅んだ事も盛者必衰、しょうがないさぇ」


クロウ「んじゃ――」

カムチャ「……だけど、愉快な話ではないねぇ」

ベナウィ「……」



495VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:17:13.11lWrVOwoSO (25/34)


クロウ「……姫さん、この先は命の奪い合いになる」

   「姫さんとは戦いたくねぇ。ですから――」


カムチャ「『武人は戦いに生き様を感じる』。そう言うてたあんさんがなぁ…」

     「……あんさんがそう言うなら」



クロウ「姫さん!」



カムチャ「……尚更引けないさね!」ビシッ

ベナウィ「……その首、頂戴します」ダッ!


交錯する過去と現在。
滅びし國の皇女と、その滅亡を見届けた侍大将。

結末はすぐに訪れた……


   スパッ!!


カムチャ「鞭が……!」

ベナウィ「はぁっ!」ドガッ!

カムチャ「くはっ……」ズザッ

ノポン「お嬢様ぁ!」  ゴムタ『グギギッ!』


ベナウィ「ここまでです」チャキッ


ウマでの体当たりの後、ベナウィは倒れたカムチャタールに槍先を突きつけた。


ベナウィ「カムチャタール様、私のこの顔をお忘れなきように」

     「これが貴女の父君を… そして、貴女を送った者の顔です」


ベナウィ「お覚悟を」スッ


カムチャ「――ッ!」



彼は槍を振り、過去の亡霊を消す――



  ヒュンヒュン… カキィン!!



496VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:22:04.91lWrVOwoSO (26/34)


ベナウィ「…………やはり」

カムチャ「…………え?」



槍は……『大刀』によって阻まれ、命を穿つことなく停止した。



クロウ「――っ、ふ~ぅ。間一髪ってな」ニコリ

カムチャ「……クロウ?」

ベナウィ「クロウ、何故止めるのです」


クロウ「いえね、姫さんにはちいっと借りがあるんで」

   「姫さんにとっちゃ、自分らは裏切り者で親の仇。狙われて当然っす」


クロウ「なのに姫さんはそうしなかった。
     あの時、毒を盛れば簡単に逝けたってのにねぇ」

クロウ「そいつは、十分に借りがあるって事なんじゃないですかい?」ニッ


カムチャ「べ、別に、そういうわけじゃないさぇ」ツンツン

     「そ、そう! これからもクロウに密告させてやろうと思っただけ!」


説明を忘れていた。
この娘、うたわれ世界で極少数しかいない『ツンデレ』なのである。


カムチャ「だ、誰がクロウなんかっ///」

クロウ「そういう事にしておきやすか」ニッ

カムチャ「……///」カアッ

クロウ「ってなわけで、見逃してやって貰えやせんか?」



ベナウィ「…………一言、よいですか」



    ゴクリ……

周りが息を呑む。
この場における最強の存在が何を語るかと――――



497VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:24:35.17lWrVOwoSO (27/34)








ベナウィ「…………実はここに来てからの事、半分は芝居です」










498VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:28:37.37lWrVOwoSO (28/34)


一同「「「ハアぁぁぁぁッ???」」」


   ガサガサ……

ゴロー「くっくっ… ベナウィは演技が上手い」スッ


オボロ組「「「大兄者(様)!」」」

クロウ「ど、どういう……」



  「「「お姉様ぁ~!!」」」タッタッ



ゴローの後ろから、店にいた娘達が飛び出してくる。


カムチャ「おまえたち! 何故ここに!」

娘①「お姉様がこんな事をしてたのは私達の為なんです!」

クロウ「と、とりあえず話してみな」

娘②「私達や店の者は皆、奴隷(ケナム)だったんです」

娘③「それヲ、お姉様が身請けシテくれて」

娘②「その為には大金が必要です。最初は私財を売って
    お金を捻出していましたが、でもすぐに尽きて…」

クロウ「だから倉を…… ってそれと大将の演技に何の関係が…」

ゴロー「さっき俺がベナウィにこの人達の情報を教えたんだ」

   「他にもこのカムチャタールさん、インカラの死後に
     働き口を失った人の世話もしててな」

オボロ組・クロウ「「「!?」」」

カムチャ「ふ、ふん! 男どもが頼りないからあちしがまとめてるだけさね」


ゴロー「この人がそういう奴等を束ねてたおかげで
     トゥスクルも平和になったんじゃないか?」

ゴロー「そういう事をベナウィに話したら……」


『これは〈面倒事が大好きなあの人〉にお任せしましょう……と』


  ――

 ~ 再びナ・トゥンク ~

ハクオロ「へぇっきしょい!」


エルルゥ「風邪ですか?」

ハクオロ「うーん、冷えたかな……」

エルルゥ「でしたら風邪薬を!」ズイッ

ハクオロ「やけに苦そうな…薬だね」

エルルゥ「ハチミツをいれましょうか?」

ハクオロ「……そのまま飲むよ」




499VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:32:36.24lWrVOwoSO (29/34)

 ――――


一同「「「……」」」


ベナウィ「城の倉から品を盗み出したのですから、少しお灸をすえました」


ゴロー「その為の演技って事だ。騙して悪い」

    「俺は俺でやりたい事があってな。さっき帰って来たんだ」


カムチャ「うちの男は役に立てそうでしたかぃ?」

ゴロー「ああ、オリカカンさん達『クッチャ・ケッチャ』に預けてきました」


オボロ「大兄者、旧クッチャ・ケッチャに行っていたのか?」

ドリィ・グラァ「「あそこで何を?」」


ゴロー「歓楽街を見廻って気がついたが…」

    「あそこには足りない物がある……」




500VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:35:26.94lWrVOwoSO (30/34)


 《回想・ゴローの二日間》


 ~ 旧クッチャ・ケッチャ ~


オリカカン「ゴロー殿! 我が命の恩人! よくぞ参られた!」

ゴロー「お久しぶりです。オリカカン様」ペコリ

オリカカン「そのような他人行儀、我らの間には要りませぬ」ハッハッハ

ゴロー「実はお願いがごさいまして」

オリカカン「このオリカカンに成せる事ならば!」

ゴロー「牧場を経営させていただけませんか?」

オリカカン「牧場?」

ゴロー「はい。西の牧場、あそこの拡大を考えております」

オリカカン「何かと思えばそのような事でしたか! どうぞお使い下され!」


 ――

 ~ 西の牧場 ~


女「貴方様は…!」

男「ゲッ! あの時の!!」

ゴロー「あ、ムックルに喰われそうになった捕虜じゃないか」

男「い、いったい何の用だ! 俺の家族に手を出したら…」

女「あなた、こちらの方に子どもの薬をいただいたのよ!」

男「は?」

ゴロー「実はここの経営をさせて頂く事になりまして…」

男・女「「えっ?」」

ゴロー「といっても、経営は形だけになるでしょう。
     ネウやウマを優先的に卸して頂ければ結構ですので」


男「は、はいぃ?」

ゴロー「あと… 人手不足との事でしたから、人員を連れて来ました」


戦闘員(だった)皆さん「「「よろしくお願いします!!」」」


男・女「「えええええ!!」」

 《回想終了》




501VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:39:32.36lWrVOwoSO (31/34)

 ――――

ゴロー「牧場の準備はした、歓楽街の一角も確保した……」

   「そう、俺は歓楽街に『焼肉屋』を建てるつもりなんだ」



一同「「「……な、ナニィィィィ!!」」」



ゴロー「カムチャタールさん、店の運営お願いします」

カムチャ「は、はぁ……」

ゴロー「ゴムタには色々な果物を探して貰い、肉に合うタレを作る」

ゴムタ『ウギッ!』

ゴロー「ノポンは頭を活かして空調設備を作ってくれ。協力はする」

ノポン「ぬふふ~ 頭脳労働ならまっかせなさ~い!」


ゴロー「それで彼等を捕まえさせるわけにいかなくてな」


オボロ「大兄者……」

ドリィ「どおりで…」  グラァ「お城にいなかったわけだ…」


ベナウィ「我々を心配させて……」ゴゴゴ


ゴロー「じゃあ、ちょっと申請書類を書かなきゃいけないから… 失礼」タッ

サユキ『グワァァァ!』ザッ

ゴロー「よっと…… はっ!」

   ダダダダッ…


ベナウィ「……逃がしません!」

   ダダダダ…




502VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:43:19.23lWrVOwoSO (32/34)


クロウ「……メシ大将、ある意味すげぇや」

カムチャ「クロウ、一つ聞いても… いいかえ」

クロウ「なんです?」


カムチャ「……あちしが城を出るとき、どうして一緒に来てくれんかったのや」

     「あちしはずっと… あんさんが来るのを……」


クロウ「俺は武人なんすよ、姫さん。戦場でしか自分の生き様を見出だせない」

    「そんな俺なんかが、一緒にいるわけにはいきやせんから」

クロウ「だけど……正直、俺を必要としてくれたのは嬉しかったですよ」


カムチャ「クロウ……」ウルッ

クロウ「そんじゃ」クルリ

   ダッ…

カムチャ「ク、クロウ様… あ、ありがと……///」モジモジ


クロウ「ん? なんか言いやした?」ピタッ

カムチャ「――ッ! クロウの……アホ――ッ!」

  タッ! タタタタタ…


ノポン「お、お嬢様~」  ゴムタ『ギッギィ~!』

   タタタタタ…


オボロ「一体何がどうなってる?」

   「わからん、サッパリわからん……」


ドリィ「クロウさんは格好良かったけど」

グラァ「若様はいつも通りだね」

ドリィ・グラァ「「でもそんなところが…………」」


 ――――――――

 ―――――

 ―――




503VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 22:46:53.95lWrVOwoSO (33/34)


 ~ トゥスクル皇城・書斎 ~


ハクオロ「ハハハッ、そうか。そんな結末になったか」

ベナウィ「帳簿を確認しましたところ、戦具は他の國、
     宝物は豪族の所と確認が取れました」


ハクオロ「うむ、ご苦労。ちなみに戦具はどこに卸していた?」

ベナウィ「ナ・トゥンク叛軍……いえ、『カルラゥアツゥレイ』にです」

ハクオロ「そうか、ハハハッ。ならばこの件は咎なしだな」

    「いずれ金は返して貰うとしよう」


ベナウィ「その件ですが…… これをゴローさんから預かっています」スッ


ベナウィが出したのは、美しい光沢を放つ紫の……


ハクオロ「紫琥珀…、そうかまだ持っていたかゴローさん」

ベナウィ「……全く、お人好しばかりの國です」


ハクオロ「そうだな。だが、この國は……良いだろう」


ベナウィ「……はい」ニコリ

ハクオロ「しかし、ベナウィ。そんな事をしてまで私の仕事を増やすのは…」

ベナウィ「気のせいです」

ハクオロ「もっと私に優しく……」

ベナウィ「では追加の書類を」ガチャン!

ハクオロ「ベナウィ~!!」


第十五話「トゥスクル歓楽街の尾頭付き」


 続く!


504 ◆M6R0eWkIpk2012/08/08(水) 22:52:16.14lWrVOwoSO (34/34)

投下終了、>>471から今日の分。


この十五話のゴロー的正解ルートは②だったのです。

こっちを先に書いたら予想よりコメディになって…
そのままナ・トゥンク編もコメディになってしまった……

デリホウライとスオンカスファンの方々、申し訳ありません。
デリホウライはまた出すから許して下さい。
失礼します。


505VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2012/08/08(水) 23:12:04.4080Wx4JuAO (1/1)

うぉぉん うぉぉん


506VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 23:19:10.29Ite0KjgIO (1/1)

ゴローちゃんがシリアスなうたわれに清涼剤になっているな。
ここでは腹ペコがオカズだ。


507VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 23:39:43.25paFo3B4IO (1/1)

スオンカスの荒ぶりにクソ吹いたwww

なんかカムチャタールが原作より可愛く見えてくるのはなんでだろう。


508VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2012/08/08(水) 23:41:16.66LxEZILBo0 (1/1)

焼肉屋ならしかたないなww


509VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2012/08/08(水) 23:48:11.718hMmAY+go (1/1)

乙でした


510VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/08(水) 23:52:52.044BSIgrA90 (1/1)

投下早いね乙


511VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 22:17:42.09NYpBC/kSO (1/21)


第十六話「茹で豆とスルメイカ」


 《週刊トゥスクル・第二号》

 ―― 『ナ・トゥンク』、『カルラゥアツゥレイ』に ――

新興國の皇、ハクオロ皇と謁見。(最初の記事)

会談は和やかな雰囲気で行われた。
本誌記者の独占会見は二枚目以降。


 ― 二枚目 ―

『國の名は愛する姉上様から頂いた』

デリホウライ皇、心中を語る。

『この國には世話になった。民の皆にも礼を言わせてくれ――』



 ―― アトゥ族とヤタム族、未だ続く確執 ――

 ―― 侍大将、来店! 今週のオススメ店舗 ――

 ―― 奇行? 深夜に度々いなくなる○○○○皇 ――

 ―― 公告 お子様への贈り物に木彫り人形はいかが? ――

 ―― 求人公告 乳母を募集中。詳しくは皇城まで ――

 ―― 満月の怪! 血をすする女! × ――



ゴロー「最後は枠が足りない。オカルトは評判も良くなかったし、没だな」


 創刊した『週トゥス』、なかなか好評だったらしい。

 ただ… あまり売れ過ぎるとハクオロやベナウィにバレるから……


ゴロー「今回のは少し大人しめにして……」


 よし、原稿完成。


ゴロー「じゃあ、トゥス日の人に渡すか」スクッ



512VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 22:24:28.96NYpBC/kSO (2/21)

 ――

ナ・トゥンクから帰ったハクオロ皇。
今日も旅の間にたまった仕事を片付ける為、
侍大将・ベナウィに軟禁されてしまっていた。


ハクオロ「ハァ…… 仕事が多い……」ペタン

ベナウィ「聖上は『物見遊山』に行って……」

ハクオロ「ハイハイ…… やりますよ……」サラサラ

    「そうだ、ベナウィ。『デグカパ』の件、何か掴めたか?」ピタッ


ベナウィ「……西の方から入って来たと報告を」

ハクオロ「シケリペチムか」

ベナウィ「確証はありません」

ハクオロ「どちらにせよ、クッチャ・ケッチャとの戦い、
     糸を引いていたのはあの國だ。……『ニウェ』のな」


ベナウィ「オリカカン殿の証言を信じた場合です。
     一度 暗殺されそうになった彼が、以後狙われずに生きている……」

ベナウィ「彼の証言が『偽り』故、放置されていると考えられるのでは」


ハクオロ「うむ。ベナウィ、お前の冷静さは心強い」

    「しかし、まだは磨ける。基本を見直すんだ」


ベナウィ「基本……ですか?」


ハクオロ「ああ、今回は『敵を知る』事とも言えるな」

    「『ニウェ』は一代であれほどの大國を造り上げた男。
     武力だけではなく、知力にも長けている」



513VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 22:29:31.39NYpBC/kSO (3/21)

前レス、後ろ5行目。「まだ戦術は磨ける」に訂正。



ハクオロ「先程のような考えでは奴の掌の上だ」

     「当初は情報を封じる為、暗殺するつもりだったのだろう」


ハクオロ「だか運よく此方に保護され、口を塞ぐ事が出来なかった」

     「ベナウィ。お前が暗殺者ならば、オリカカンを再び暗殺するか?」


ベナウィ「……いえ、今更口を封じても…… 成程」

ハクオロ「そうだ、そんな余計な事はしない。逆に生かしておく事で、
      容易く彼のした話の信憑性を弱める事ができる」


ハクオロ「これも机上の空論だから、正解とは限らんがな」コキッコキッ

ベナウィ「シケリペチムの目的さえ、掴めたならば……」

ハクオロ「そうだな、未だに奴の目的がわからん。
      戦の後なのに攻め込んで来てはいない……」パラッ


ベナウィ「……そうでした。デグカパの件ですが、
      とある『オンカミヤリュー』の協力の下、解体作業中です」


ハクオロ「ほう。誰がその者についている?」

ベナウィ「クロウが監視をしております」

ハクオロ「判った、ならば心配ないな」




514VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 22:32:44.35NYpBC/kSO (4/21)

 ――

調練場の片隅で工具をいじる音がする。
翼を持つヒゲの男が『デグカパ』の解体作業をしていた。


ノポン「ハヒィ~… ベナウィしゃんは人使いが荒いです~」カチャカチャ

クロウ「すまねぇな、わざわざ呼び出してよ」

ノポン「まぁ、構わないですぅ~ ボクちん、『天才』ですから~
     デグカパを動けるように改造出来たワケですし~」カチャカチャ

ノポン「これで報酬も頂けるんですから~」カチッ


しばらく時間が過ぎ、ゴローが盆を持って二人に近づいてきた。


ゴロー「おーい、お茶持ってきたぞー」コトン

クロウ「メシ大将、わざわざすいやせん」ズズッ

ノポン「ゴローしゃんは優しい方です~」ズズ…

ゴロー「ノポン、解体はどの位進行した?」

ノポン「なかなか面白いですねぇ~ 法術がかかっているのは
     人を探知する『目』と対象に向かって火を噴く『口』でした~」


クロウ「はぁーん、それで誰も近くに居なくてもボゥッといくワケかい」

ノポン「ハイ~ あと…… 熱を発するのはこの石みたいで~」スッ


 発光石みたいなモノか。


ゴロー「これ、危険はないのか?」

ノポン「今はボクちんが術で抑えてますから~
     同じ術でデグカパの口内でも制御されてます~」


ゴロー「……口内で制御?」

ノポン「この石、ちょっと危ないんでし~
    ちょっと術に綻びが入ると、ボカーン!・ボボゥッ! ……ですね~」


クロウ「あ、木偶の中にあるこの印みてぇのがその術かい?」ジッ

ノポン「ハイ~ さっすがクロウしゃん!」

    「……そんな風にお嬢様のお気持ちにも気付いて欲しいですね~」ボソッ


クロウ「なんか言ったか~?」

ゴロー「……苦労するなぁ。クロウ相手だけに」ポン

ノポン「ハイ……」



515VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 22:37:04.19NYpBC/kSO (5/21)

 ――

 ~ ウルトリィの部屋 ~

 荷物を届けに、ウルトリィさんの部屋を訪れる。


ウルト「ほ~ら『フミルィル』~、高い高~い」


赤子「きゃっ、きゃ!」バタバタ


 ……世話、してるなぁ。


ゴロー「失礼します… よいしょ……」ストン

ウルト「あら、ゴローさま。ごきげんよう」ニコッ

ゴロー「こんにちは。えっと…… 赤ちゃんの着替えと替えのオシメです」

ウルト「はい。ありがとうございます」ニッコリ


 状況を思い出してみよう。

 数日前、ハクオロがウルトリィさんと城下町の様子を見に行った。
 その後、少し経って戻ってきたら赤ん坊が一緒だった。


ゴロー(最初は驚いたぞ。間を省いたわけだからな)


 まあ、母親が子どもを預けていなくなったというだけだが。


ゴロー(……その気になれば何時でも親と連絡取れる)


 今回の記事にした地方豪族の『アトゥ族とヤタム族』。

 あの『フミルィル』という赤ん坊、
 その両家の息子と娘の間にできた子どもらしい。


ゴロー(対立関係にある家だから子どもが危ないって事)


 当人達には悪いが陳腐な話だ。


赤子「ふぇ、ふぇぇん!」

ウルト「あら、オシメが濡れてまちゅね~」スッ


ゴロー(……手慣れたもんだ)


 正直、彼女は深入りし過ぎていると思う。
 エルルゥさんもカルラさんも、彼女の入れ込み様を止められない。


ゴロー(心配だ……)



516VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 22:44:58.96NYpBC/kSO (6/21)

 ――

 気苦労の絶えない夜は、お気に入りの場所に行く。

 ~ 湖 ~

 スー… フゥー…

ゴロー「湖に映る月を眺めて一服……」


 まったりと独りの時間を味わう。


ゴロー(朝・夜は全員一緒に食べるからなぁ)


 この開放された感覚が独り飯の良さだ。


ゴロー「さて、夜食でも食うか」ゴソ…


 厨房や倉から適当に取ってきたのは……


 【 茹で豆 】

オツマミその1。
枝豆に近い種類と思われる。


 【スルメイカ】

オツマミその2。
一匹の半分だが、ちょっとデカイ。


ゴロー(酒を飲まないのに…… これ、持ってきてしまった)ヒョイッ

   ぱく ぱく 


 うん、豆は悪くないや。
 時間を置いたせいで豆が冷めたこと以外は。


ゴロー「スルメはなァ…… 単体だとちょっと……」
 だが食べる。


   くちゃ はむ…


 音、聞こえてないよな?

 スルメの味は良い。
 干されて旨味がギュッとされてて……

 ……でも、豆と塩系の味でかぶってしまっている。

 おまけにちと固い。


ゴロー(アゴが疲れてきた。食ってるんだか、処理してるんだか)


 モロロでも食うか。


  ガササッ! 


ゴロー「誰だ!」



517VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 22:50:03.56NYpBC/kSO (7/21)


 ガサガサ… ヒョコ


動物『クルルル…』


 ヘンな動物を発見。


ゴロー(リスのような… それにしては大きい)


動物『クルルル?』チョコチョコ…


 何故か寄ってきたぞ。


ゴロー「ちょっと食うか?」スッ


 スルメを動物に差し出す。


動物『クル?』


 反応がない。


ゴロー「豆なら食うかな……」ジャプン


 水につけて塩をおとしてやった。


動物『クルルッ♪』ムシャムシャ


 これは食えるらしい。


ゴロー「スルメは片付けないとな……」ハムハム


 結局、独りで食ってないや。




518VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 22:53:36.10NYpBC/kSO (8/21)

 ――

翌朝、凶報がトゥスクルに舞い込む。


ハクオロ「シケリペチム軍が進行を!?」

ドリィ・グラァ「「はい!!」」

オボロ「まだ規模が小さい部隊のようだが……」

ベナウィ「それでも我らの軍とほぼ同規模……ですか」

ハクオロ「……遂に来たか。敵の進行状況は?」

ベナウィ「はっ、このまま東に真っ直ぐ我が國に向かい進行しているようです」

ハクオロ「……ならば手がある」

    「この國の西は広く樹海に覆われている」


ハクオロ「奴らは危険な森を越える前、樹海近くに陣を形成するはずだ」

     「我々は樹海を抜けて敵を奇襲、最初の敵部隊を殲滅する」


ハクオロ「トウカ、先鋒はお前に任せる」

トウカ「はっ!」

ハクオロ「……危険な樹海を通る。正面から戦い多量の死者をだすか……
      それとも少数の犠牲を覚悟で敵を討つか……」


ハクオロ「命を数で計る事は出来ない。お前達の意見を聞きたい」

オボロ「何を聞く必要がある。兄者は一言『行け』と命じればいい」

クロウ「ま、そういうこってす」グッ

トウカ「この命、果てるまで――」

ドリィ・グラァ「「どこまでも、お供いたします」」

ベナウィ「どちらを選ぶかと問われるのなら、迷う事はありません」

カルラ「この程度の事、何も尋ねる程のものでもありませんわ」

エルルゥ「また置いていくなんて言いませんよね」

アルルゥ「いっしょ」


ハクオロ「皆…すまない……」

    スウッ…

  「出陣(で)るぞ!!」


ゴロー「ZZZZ……」(非戦闘員)


519VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:01:52.25NYpBC/kSO (9/21)

 ――

トゥスクル西の國境付近。
ここにシケリペチムの一番部隊が駐留をしていた。


見張り兵「ふぁ~… 立ち番かったりぃな。こんな所に敵が来るはずねえのによ」


数の余裕だろう。兵力十倍という、圧倒的な差。

敵國が近いのに、見張りは一人ということから部隊の油断が見てとれる。


見張り兵「いい気なもんだ。自分らだけで酒盛りして熟睡なんてな~」


彼等は判っていない。
戦において全兵力の差が物を言うのは……

『総力戦』だけなのだという事を。

小さな競り合いでは…… 兵量よりも兵質・策が――――


 「それは気の毒だ」


兵の背後から女の声がした。


兵士「うわ!?」

トウカ「ならば皆平等に与えてやらねばならないな」

    「貴様等によって謀られ、散っていった者達の無念を」


兵士「おっ、おま… 敵し――」


   ズパッ!!  ドサリ……


一太刀。見張りは役目を果たさず、散った。


ハクオロ「……行けぇ!」ブン


 「て、敵襲! 敵襲ぅ―!!」

 「うわああっ!」




520VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:07:33.61NYpBC/kSO (10/21)

 ――

シケ兵「ご報告します! 先陣が敵襲を受け全滅! 増援を……」

ニウェ「その必要はない。下がれ」

シケ兵「は? ははっ」サッ

ニウェ「クククッ……」ニヤリ


ディー「煮え湯を飲まされたというのに嬉しそうだな」


その笑いを眺めるのは、『ディー』と名乗るオンカミヤリュー。


ニウェ「貴様にはわかるまい。この喜びを」

    「礼を言うぞ。又とない獲物を与えてくれた事にな」


ディー「ふむ… 狩猟部族の血が騒ぐか」

    「だが、狩人は時に獲物に喰い殺される。侮らない事だ……」


ニウェ「くくく… それも一興よ」

    「クククッ…カーッカッカッカッ…… カーッカッカッカッカッ……」

 ――

最初の部隊を退けたトゥスクル軍。
だが、その後もシケリペチムの侵攻は続く。

トゥスクル軍は戦の度に皇の策や兵の働きにより、連勝を続けた。

だが長い戦によって兵士は傷付き、幾つか國境の集落が焼かれてしまう。

犠牲も増え続けていく。

親がいなくなった子ども、子が殺された親、
共に戦場を駆けた友を失った兵士、伴侶の命を奪われた人……

皇(オゥルォ)は夜空を眺め、『夢』を思い出す。



彼の『夢』。……現実の世界、彼が目指すべき争いのない平和な日々を。

彼の『夢』。……夢の世界、彼の命令や自身の手で死んでいった多くの骸を。



 「…………」


自らの手に視線をやる皇。

ほんの一瞬、その手が血にまみれた……

 ――


521VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:12:33.36NYpBC/kSO (11/21)


ハクオロ「……うっ」

エルルゥ「ハクオロさん? どうかしましたか?」

ハクオロ「なんでもな……」

     「……いや、君には話そう」フゥ


ハクオロ「私の言葉一つでこの國の明日が決まる。
      多くの苦難を強いる事がわかっているのに皆は私を信じてくれる……」


エルルゥ「…………」


ハクオロ「エルルゥ。私はこれまで好きな人達を、
      皆の暮らしを守りたくて戦い続けてきた」

    「なのに戦は終わらない。そればかりか… 
      この國を新たな戦雲に包もうとしている」


ハクオロ「守りたかった人を失って…… その屍を越えて進む……」

    「私のしている事は何なのだ……
      私の足は本当に平和へ向かっているのか……」


エルルゥ「……私には判りません」

     「でも私はハクオロさんを信じています。皆もそうです」


エルルゥ「どんな時でも、何があっても…… 絶対に」ニコリ

ハクオロ「エルルゥ…… 私は…不安なんだ」


エルルゥ「足が間違った方に進むなら、皆でそれを正します……」

     「だから…… ハクオロさんは安心して下さい」ギュ



522VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:26:34.98NYpBC/kSO (12/21)

  ――

 ~ シケリペチム皇城・闘技場 ~


ニウェ「かっかっかっ…… よい素材が揃ったようだな」


様々な地域から選りすぐりの武人を闘わせるニウェ。

椅子に腰掛け、煌々とした眼(まなこ)で闘技場を眺めていた。


ニウェ「あやつを迎えるには、今の駒だけでは足らぬ……」

    「貴様もそう思うだろう?」


彼は振り返る事もせず、後ろの『翼を持つ者』に語りかける。


ディー「…………」

女官「皇様、食事で御座います」スッ

ニウェ「ほう…… これは……」


ディー「私が用意させた品だ。『冷やし担々麺』という」


ニウェ「クカカッ…貴様の考案した料理、全て余の好みぞ」

   ズルズッ…



ニウェ「……お、おおおおおおお!!」ゴゴゴ


    「う―――ま――ぁ―――い―――ぞ――ぉ―――!!!!!」




523VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:28:40.71NYpBC/kSO (13/21)


  カッ!! ピキューン!!

彼の口から数多の光線が溢れだす。
その光線は、瞬く間に城を貫いた。


 「なんだ!」「お、おいなんか足下が…」



  コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛…………



「「「城が浮いてるぅぅぅ!!!」」」



ニウェ「おおおお!! 見よ!! この『躍・動・感』!!!」ババッ

   「老いたこの身が真っ赤に燃えるようではないかァ!!!」ブン!


兵士「ニウェ様!? ぐへぇぃあ!」バタッ

兵士「うわああああっ! あ……」シュルン… ズパッ!


ニウェ「ははは! 只の布切れで人を切り刻めるぞぉ!!」

    「どれ、もう一口……」パクッ


  ピカッ ゴロゴロ…

ニウェ「麺は冷たいというのに辛さで身体が熱い!!
     この味はぁ! 肉味噌のせいなのカァ―!!」


ディー「否、『山椒』の力だ」ズズル

ニウェ「一癖も二癖もあるこの油ぁ!! 実にうまいぞぉ!!!」

    「山椒がこれほど合うとは!! カーッカッカッカッ!!!」


ディー「喜ぶのは良いが、少し静かにして貰おう。
    暴れたせいで食事が台無しではないか」ズルズル

ニウェ「ぬうっ……」ストン

    「ぬあっ! 余の城がぁ!! 穴だらけにぃ!!」


ディー「汝の責だ。私は関与せん」スッ

   「……ご馳走さまでした」


ニウェ「復旧をせねばならぬ。あの男に相応しいもてなしの為にも……な」ニヤリ




524VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:38:42.46NYpBC/kSO (14/21)

 ――

 ~ トゥスクル皇城 ~


ハクオロ「敵軍の侵攻は止まらない……」

ベナウィ「此方の兵は消耗。敵は小部隊を編成して戦闘を仕掛ける……」

ゴロー「ちょっと面倒な状況だな」

ハクオロ「ドリィ・グラァ。敵兵の陣地は掴めたか」

ドリィ「はい。此方をご覧下さい」パサッ

グラァ「シケリペチム領内『ハンサナ』と呼ばれる地域です」


ゴロー「ここを爆薬で一発やるか?」

ハクオロ「……駄目だ。その手は警戒されているだろう」

ベナウィ「では直接攻め込みますか?」

ハクオロ「……結局その手が良いかもしれん」

     「オボロ・クロウ・ドリィ・グラァは國に留まらせる」


ハクオロ「他の者は私とハンサナを落としに向かう」

ベナウィ「聖上! それは危険です」

ハクオロ「少数でここを落とすしかない。ベナウィ、お前が私を護衛せよ」

ベナウィ「……わかりました」ハァ

ゴロー「俺はどうする?」

ハクオロ「ゴローさん、機が来たら貴方にはシケリペチムの都に行って貰う」


ゴロー「……戦場には出さないか」

ハクオロ「緊急時を除いてはな」コクリ

     「今は負傷者の手当てを任せる。頼んだぞ」


ゴロー「畏まりました」


 『緊急時』の判断は俺がしよう。
 例えば皇の不在時に敵が攻めてきたら『緊急時』だよな。




525VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:42:42.49NYpBC/kSO (15/21)

 ――

 ~ シケリペチム皇城・地下牢 ~

この『ディー』と呼ばれるオンカミヤリューは
城の地下牢を使い、『駒』を造り続けていた。

牢に入れられた人間達は既に正気を失わされ、
ただひたすら『死人』に変わっていく。


ディー「…………」



「あ……う、あああ………」
  「おおおお… おお…………」
    「コロス、コロスコロスコロス――!」


ディー「活きがよいな」


 「ヌガアアアッ!!」バキッ


ディー「ほう。檻を自力で破るか」


 「ニクニクニクゥゥゥ――!!」ダッ


    ザシュッ!


 「ア…… ア……」バタッ


仮面兵「…………」

ディー「その肉の塊を片付けておけ」

仮面兵「…………」ガシッ

ディー「あれを迎えるには良い頃合いだ」

    「お前にも闘って貰うぞ。その牙を研いておけ」


仮面兵「……」コクリ



ディー「さて、『空蝉』よ。再び我等の争いの始まりだ」

    「この戦、まだ前菜に過ぎぬ。これを食せぬようなら……」




526VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:45:34.33NYpBC/kSO (16/21)

 ――

 ~ シケリペチム・ハンサナ ~

雨が続くなか、川は穏やかに流れている。
ハクオロ達は敵の攻撃と長雨により、動きを止められていた。


  ザァァァァァァァ……


ハクオロ「……厄介な地に陣を布いてくれたものだ。」

    「かれこれ六日、足止めされている。ズルズルと引き延ばすのは不味い…」


 まさかこれほど雨の降る地とは思わなかった。


エルルゥ「ハクオロさん。風邪を引いちゃいますから、中に……」ピタッ

ハクオロ「どうした?」

エルルゥ「いえ、何かヘンな感じがして……」

ハクオロ「ヘンな感じ?」

エルルゥ「よく…判らないですけど、違和感が」

     「雨の日って、こんな感じだったかなって……」


  キリリッ… ヒュン!


ハクオロ「!」バシッ!

エルルゥ「きゃっ!?」




527VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:48:42.45NYpBC/kSO (17/21)


  カン! カン! カン!


戦を告げる鐘が響く。


ハクオロ「敵襲だ!」

カルラ「さぁ~て、お仕事ですわ」ザッ

トウカ「いざ、参る!」スラッ

ベナウィ「弓衆は敵部隊に攻撃! 歩兵は我らと共に!」

アルルゥ「ムックル?」

ムックル『ヴォ~…』イヤイヤ

アルルゥ「水、がまんする」


向こう岸に、敵の部隊が並ぶ。


敵将「ハクオロ皇! その首、貰い受ける!!」

   「いけえ!!!」

 「「「うおおおおっ!!」」」 ドドド…



ハクオロ「こちらも……」

     「……いや、待て!!」ピタリ


ベナウィ「!? 聖上、敵が!」

ハクオロ「弓衆は攻撃を続けよ! 歩兵は待機だ!!」


 何日も雨が続いたのに、何故これほど川の流れが穏やかで低い……


ハクオロ(普通ならもっと流れが速く、水かさも増しているはず……)


 だったら増えるはずの水は…… 鉄砲水!


ハクオロ(我々が知らないのは当然だ。では足止めに使った兵は?
      あの皇ならば……ここの特徴を知らない訳がない!!)


 ニウェ!! あの男! 知っていて兵を見殺しにする気か!!




528VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:51:28.44NYpBC/kSO (18/21)


 ドゴォン!! グラグラ…


トウカ「地震か!」

ハクオロ「違う! 両軍、退け―――ッ!!」

    「全力で岸まで撤退だ、大水が来るぞ!!!」

一同「「「!!!」」」


  ダダダダ…



  ドドドドドドドド……



敵兵ら「なんだこの音?」 「あ、あれ……」



 ザパッゴアアアアアオオオオオオオオオ!!!



敵兵「うわあああっ!」

ハクオロ「何をしている!上がれ! 私に掴まれ――っ!!」

敵兵「た……す…



 ゴオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ…………



ハクオロ「な………」

エルルゥ「み、みんな流され……」

ベナウィ「……間一髪でした。もう少し遅れていたら……」


ハクオロ「あの男、自分の臣下まで犠牲に……」

    「その代償は高くつくぞ……」


ハクオロ「……我々の目的は達成した! 撤収する!」




529VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:54:21.10NYpBC/kSO (19/21)

 ――

 ~ トゥスクル國境付近の集落 ~


満月が昇る夜、トゥスクルの集落が炎で朱に染まった。


オボロ「ハァァァァ!!」スパッ

クロウ「ウリャアッ!」ザクッ

兵士達「「「ウオオオオ!!!」」」



敵将「奴等は少数! 厄介な者はいない! 攻めろォォォ!!」

敵兵達「「「オオオオオオ―ッ!!」」」


オボロ「おのれ! 兄者達の不在を狙って夜襲とはっ!」

クロウ「ガタガタ吐かす暇があんなら手を動かせや!!」ズバッ


オボロ「それもそうだ!」ザシュ!

クロウ「いくぜ!!」

オボロ「応ッ!!」


 《 協撃!》

 《 漢(おとこ)の花道 》


オボロ「やるぞ! 脳筋(のうきん)!」

クロウ「失敗すんなよ、脳筋(のうすじ)!」

オボロ「誰に言ってるんだぁ?」

クロウ「へっ、テメェこそなぁ」


クロウ・オボロ「「はぁああああっ!!」」


  ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ!


クロウ・オボロ「「てりゃあああああ!!」」


   ズバァァッ!!


クロウ「まっ、こんなものだな」ザザッ

オボロ「こんなとこだな」スタッ



敵兵ら「「が……」」バタ…




530VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:56:54.04NYpBC/kSO (20/21)


ドリィ「グラァ! 僕達も!!」

グラァ「ドリィ! やろう!!」


 《 協撃!》

 《 双子技その壱!》

ドリィ「例え一人の想いは小さくとも!」

グラァ「二人合わされば無限大!」


ドリィ「届け…」  グラァ「届け…」

ドリィ・グラァ「「若様の胸にっ!!」」

  ピシュッ ピシュッ ピシュッ

ドリィ・グラァ「「そう! 愛は無限大っ!!」」


  ザクッ! ザクッ! ザクッ! ザクッ! ザクッ! ザクッ! ザクッ! ザクッ! ザクッ!


ドリィ・グラァ「「よし、練習終わりっ♪」」



敵兵「ほ、ほとんど告白やん……」バタ

敵兵達「「言われてみてぇ……」」バタバタ



ゴロー「オボロ! 隙はできたか!」

オボロ「ああ、大兄者は早く集落の者を避難させてくれ!」

ゴロー「了解! さあ皆さん、こっちです!」タッ


 村人達を急いで避難させる。


カミュ「ゴローおじさま! こっち!」パタパタ


 集落の近く、森と接するところにカミュちゃんがいた。


ゴロー「カミュちゃん! 何故ここに!?」

カミュ「だって! 皆の仲間だもん! 心配なんだよ!!」

ゴロー「危なくなったら飛んで逃げろよ!」

カミュ「うん! 村の皆さん、ここを真っ直ぐいけば……」バサッ


敵兵達「「逃がすかぁ!!」」ダダッ


  ヒュン ヒュン ヒュン


ゴロー「危ないっ!!」ドン!


  グサ! グサ! グサ!




531VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/11(土) 23:59:25.19NYpBC/kSO (21/21)


カミュ「おじさまっ!」

ゴロー「ぐっ… 早く、逃、げろ……」ガクッ


村人達「「「ウ……アアアアアッ!!」」」ダッ!!


カミュ「――――ッ!! 『みんな』! 助けて!!」


 ウォォン… ウォォン… ウォォン…


敵兵達「「な、なんだ!?」」


 《カミュ・必殺連撃》


カミュ『ヌグィ・ヤクァ・イャソムクル……』


カミュ『いっしょに遊ぼう……』スゥ

  ウォォン… ウォォン…


 黒い小さな塊や白い小さな塊がカミュちゃんの上げた手に集まる……


カミュ『フフフッ… いっしょに遊ぼうよ……』


 それは禍々しい巨大な黒の球体となった。


敵兵達「「あ、ああ、ああああああああ!!」」


 黒い球体に包まれる敵兵達。

 そして… 彼等は『消えた』。


  ズズズ…… スゥ…


ゴロー「ぐっ…カミュちゃん…… あれは一体……」

カミュ「皆が禍日神(ヌグィソムカミ)って呼んでるもの……」

   「お姉様は神様が見える巫(カムナギ)なのに……」


カミュ「カミュには神様なんて見えない…… 見えるのはこの子達だけ…」

    「って言っても、おじさまには見えないよね」


  ● フヨ…  ○ フヨ…


ゴロー「なんか黒かったり光ったりしてる球状の物体なら見えるぞ…」

カミュ「へっ!? おじさま! 見えるの!!」

ゴロー「あ、コイツらがそうなの。ふーん… イテッ!」


カミュ「あ、ゴメンね。手当てしなきゃ!」

    「あ、怪我………… 血が…………」ピタリ



532VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 00:01:26.14bzZjA88SO (1/17)






 ドクン
        ドクン
                ドクン








533VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 00:04:18.79bzZjA88SO (2/17)


ゴロー「どうした?」


……この場にハクオロ皇が居たのならば、
『あの出来事はやはり夢じゃなかった』と言ったであろう。


……それは満月の夜にのみ、起こる出来事だった。



カミュ『いただきます……』

ゴロー「なに?」


  カリッ ペロッ


ゴロー「がっ………!?」

 矢傷を抉られる。
 目の前の少女に――


カミュ『……ゴローおじさまの血。おじさまの血より不味いけど……』

    『なんだか後をひく味だね……』ペロリ


ゴロー(な、何が起こった…… これはカミュちゃんなのか?)


 蒼の瞳はいつの間にか紅玉のような朱に。
 犬歯が尖り、その姿は……まるで……


ゴロー「き、吸血鬼…………」

カミュ『……あ』フラッ


  パタッ…


ゴロー「おい、カミュちゃん? どうした!?」


 アニジャー!! メシダイショウー!!


ゴロー「二人とも! 早くこっちに! 俺も怪我人…… く……」


  バタ……


第十六話「進展」


 続く。


534 ◆M6R0eWkIpk2012/08/12(日) 00:06:31.98bzZjA88SO (3/17)

投下完了 >>511から投下分。

味皇さま本人は出せませんが、
これでリクエストは達成したと思って頂けたら……
失礼します。


535VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2012/08/12(日) 00:16:13.65k4C52RmAO (1/1)

ニウェ似合いすぎワロタwwwwww

あとカミュが「翌日温めなおしたスキヤキのようだ」とか言い出さなくてよかったわー


536VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 02:15:44.27cngbzlyIO (1/1)

おいふざけんなニウェのリアクション見たら辛いモノ苦手なのにどうしても冷やし担々麺食いたくなってチャリで近くのコンビニ駆けずり回ってどこにも無くて仕方なく普通の担々麺で妥協したらやっぱり辛くてキツかった上に普段食べ慣れない唐辛子で腹が痛くて仕方ないぞ



でも冷やし担々麺食ってみてえええええええええ!


537VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県)2012/08/12(日) 16:26:37.84e5IqNrbYo (1/1)

あー腹が減るなぁもう


538VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 17:02:37.58bzZjA88SO (4/17)

 キィン! キィン! キィン! キィン!



エルルゥ「うたわれるものらじお in SS速報VIP!」


エルルゥ「皆さん今日は♪ 司会のエルルゥです」


エルルゥ「前回はごめんなさい! 本当は間に合う予定だったんですけど…」

     「ちょっと方薬に手間取ってしまいまして……」


エルルゥ「オボロさんにハチミツを入れた二日酔いの薬を飲ませたら……」



(※ オボロ「一瞬、大きな川が見えた。トゥスクル様に会えた気がする」)



エルルゥ「やっぱりまだまだなのかなぁ……」シュン


ウルトリィ「そんな事はありませんよ」ニコリ

      「エルルゥ様は良い薬師だと思います」


エルルゥ「ありがとうございます。ウルトリィ様」

     「そんな訳で! 本日のゲストは『ウルトリィ』様です」




539VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 17:04:13.85bzZjA88SO (5/17)


エルルゥ「前回、司会をしてくれましたハクオロさんですが、ナ・トゥンクに
      行っていた間の仕事が貯まっている為、今日はお休みです」


ウルト「……本当はハクオロ様に会いたかったのですが」

エルルゥ「また二人きりになるつもりですか! 本家らじおの時みたいに!」


ウルト「あらあら、そんな気はありません」ニコニコ


エルルゥ「く……(やはり強敵!)」

ウルト「さぁ、そろそろ始めましょう」

エルルゥ「そ、そうですね。ではいつもの人物紹介から!」




540VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 18:18:12.18bzZjA88SO (6/17)


 《第十五話①》


●デリホウライ

ナ・トゥンクの叛軍を率いるギリヤギナの男。カルラの弟である。


エルルゥ「本当は選ばれなかったルートの方がゲストになる予定だったんですよ」

ウルト「結局どちらも投下されてしまいましたね」

エルルゥ「武器は旋棍(トンファー)に近いものみたいです」

ウルト「ああ! それを持って蹴撃を繰り出したりする……」

エルルゥ「……ちょっと違うんじゃないですか?」

ウルト「そうそう。少し気になる事があるのですが……」

エルルゥ「はい。どうぞ」

ウルト「どうしてあの方はギリヤギナの戦い方を知らなかったのですか?」

エルルゥ「追われる身になったのがまだ幼い子供の時だった所為ですね」

     「自分の身は自分で守れるようにカトゥマウさんが体術を教えたそうです」


ウルト「あと……彼はお姉様が大好きなのでしたね」

    「『姉上様、僕だよ! デリだよ!』……一人称が『僕』になるほどに」

エルルゥ「オボロさんほど突き抜けてはいないですけどね」



●カトゥマウ

デリホウライの付き人みたいな初老の男。


エルルゥ「カルラさんにデリホウライさんを任された方です」

ウルト「昔のカルラ達を知る数少ない人物なのでしょう」



541VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 18:21:04.82bzZjA88SO (7/17)


●スオンカス

ナ・トゥンク皇。武器は暗器など。
カルラを愛するド変態さん。
【キィン】を潰されても想いは止まらない。


エルルゥ「……ある意味最強でした」

ウルト「……愛は狂気と紙一重なのかもしれません」

エルルゥ「説得力がありますね……(貴女が言うと特に)」

ウルト「…………」

エルルゥ「玉座の間にある『白い花』は動物の亡骸を苗床に育ちます」

ウルト「彼いわく、『特に人間、それも生きながらにして
     花の苗床にすると美しい花が咲く……』らしいです」

エルルゥ「嫌な話です……」


●カルラ(カルラゥアツゥレイ)

滅んだ大國『ラルマニオヌ』の皇女だった。
崩壊する國の中、デリホウライをカトゥマウに託し、
自らは囮となって捕まるが、後に逃亡。


エルルゥ「カルラさんって本当に捕まってたんですか?」

ウルト「一応そうだったんでしょうが……」

エルルゥ・ウルト「「…………」」

ウルト「ああ、皆様が想像しているような事はなかったでしょう」

エルルゥ「潰されますもんね……」

ウルト「わたくし、カルラに会ったのはラルマニオヌがあった時なんですよ」

エルルゥ「カルラさんが皇女だった時ですか?」

ウルト「ええ。とても強かったです」

エルルゥ(た、闘ったんですかね……)


●女の子

ナ・トゥンクの兵から逃げていた少女。
ゲームではちゃんと立ち絵がある。


エルルゥ「デリホウライさんに尽くす女の子です」

ウルト「そんな気持ちを知らないで、デリホウライ様は
     彼女の淹れたお茶をカルラにすすめます」

エルルゥ「……あの人はもげていいです」



542VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 18:23:01.67bzZjA88SO (8/17)


 《第十五話②》

●カムチャタール

ケナシコウルペ皇・インカラの息女。
本人は度々『楽して生きたい』と言う。
その割には奴隷を引き取ったりするツンデレ娘。
クロウに淡い恋心を持つ。


エルルゥ「彼女のほうが父親より皇に向いてますね」

ウルト「行動に人を惹き付ける魅力があるのでしょう」

エルルゥ「自分が年齢より上に見られるのが最近の悩みだそうです」


●ノポン

オンカミヤムカイの破戒僧。
常に十徳工具を持ち歩くほどカラクリに詳しい。
得意な法術は変わったモノばかり。
ちなみに彼も『分身の術』が使える。


ウルト「我等オンカミヤムカイの厳しい戒律を守れなかった僧ですか……」

エルルゥ「……というより、自分の術を認めて貰えないから飛び出したのでは?」

ウルト「モロロに命を吹き込み動かす事のできる方らしいです」


(※ 普通は人形に命を吹き込みます)


エルルゥ「金を塩に変えるって…… 逆なら凄いはずですけど……」




543VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 18:24:05.13bzZjA88SO (9/17)


●ゴムタ

カムチャタール一味のキママゥ。
何故か自分を人間と思い込む。
爪を使って器用に絵を描く。しかも上手い。


エルルゥ「人に慣れるキママゥって珍しいんですよ」

ウルト「近くのキママゥを招集する事も出来るそうです」

エルルゥ「OVAではアルルゥと相互理解に成功」

     「ムックルだって私達の言葉が完全に判るわけじゃないのに…」


ウルト「こちらの言葉がわかるキママゥなら、対話できますね」


●店の娘達(三人)

娘①は赤め茶色の髪に並みの胸。娘②は巨乳黄系茶髪のシャクコポル族。

娘③は黒髪貧乳の女の子。喋り方はちょっとたどたどしい。けどそれが可愛い。
振る舞いが少し幼く、子供っぽいかも。


エルルゥ「あーあ、これ作者の好みダダ漏れですよ」

ウルト「ラブプ○スでリンカレさんらしいですから」

エルルゥ「この三人も立ち絵がありますよ」

ウルト「PS2・PSPのイベントCGにも脇役でいます」


エルルゥ「こんな所ですか?」

ウルト「はい。少し早いですが、このあたりでお仕舞いです」ペコリ

エルルゥ「ドリグラはやらないんですかね?」

ウルト「今日は時間がとれなかったようでして」

エルルゥ「そうですか、それではこのへんで~」

ウルト「ルート選択に協力して頂き、ありがとうございました~」

 続く?


544 ◆M6R0eWkIpk2012/08/12(日) 18:26:15.64bzZjA88SO (10/17)

今日書けたらこの二人でオマケ料理教室やりたい……
一時的に投下終了。


545VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 22:35:47.33bzZjA88SO (11/17)


「エルルゥ!」  「ウルトの~」

エルルゥ・ウルト 「「お料理教室~!!」」



エルルゥ「さぁ、何故か始まったこのコーナー!」

ウルト「わたくし達は厨房に立ちますので、配役は完璧ですね」

エルルゥ「毎日欠食児童並みに食べるお城のみんなの為、
      新しいメニューを作ってみましょ~う!!」



エルルゥ「このコーナーは『うたわれるもの』の設定を『無視』してお送りします」


 ~ CM開始 ~


546VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 22:37:59.49bzZjA88SO (12/17)


 ~CM開け~


エルルゥ「はい、今日は『ころっけ』という食べ物を作るそうで~す」

ウルト「>>1がオマケ投下の途中でいなくなったのは
     夕食を作っていたからなんですって」


エルルゥ「材料となるのは……」



『ころっけ』(五人分)


●ジャガイモ…『キタアカリ』中型のサイズ約十個。

●牛豚合挽き肉… 牛だけでも豚だけでも良いけどね。300グラム位?

●玉葱…大きめのものを一つ。

●卵…二つ。

●小麦粉…適量。

●パン粉…適量。

●植物油…適量。

●塩コショウ…適量。



エルルゥ「ほとんど適量ですね」

ウルト「目分量とも言えますよ。足りなければ足せばよいのです」ニコリ

エルルゥ「料理はほどよく適当にやりましょう」

ウルト「味を小まめに調べていけば大丈夫です」

(※ 皆で食べるようなので三倍量にします)



547VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 22:40:29.24bzZjA88SO (13/17)


エルルゥ「最初は二人で皮を剥きます」

エルルゥ・ウルト「「…………」」


 ペリ… ムキムキ ムキムキ…


エルルゥ「次に、この『ジャガイモ』を茹でやすい大きさに切ります」


  ザク ザク ザク…


ウルト「わたくしは『玉葱』をみじん切りにしますね」


  ザク ザク ザク…


エルルゥ「あれ、ウルトリィ様は目が痛くならないんですか?」

ウルト「涙が出ないように目を守る術をかけていますから」フフッ

エルルゥ(……ちょっとズルいような?)


ウルト「切り終えましたら、玉葱はこの『ふらいぱん』という器具で炒めます」


  ……ジュー


エルルゥ「私はお鍋でおイモを茹でておきます」


  グツグツ…


ウルト「玉葱がヘタってきたら挽き肉を投入しますよ」


  ザッ ジュージュー…


エルルゥ「赤い部分が無くなるまで、よ~く炒めて下さいねっ」

ウルト「エルルゥ様、そちらはどうですか?」

エルルゥ「あ、そうですね。おイモは菜箸が簡単に刺さる位まで茹でます」

     「こっちは…… 茹で上がりました」ツンプスッ



548VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 22:42:59.67bzZjA88SO (14/17)


エルルゥ「お鍋の湯を捨てて、おイモを入れたまま再び火にかけます」

ウルト「ジャガイモの水分を飛ばす為です。
     ちゃんとしないとベチャっとした仕上がりになるかもしれません」


エルルゥ「あっ、そろそろ塩コショウを振らないと!!」

ウルト「そうですね。お肉がなんとなく炒まったら塩コショウを入れましょう」


  パッ パッ パパパッ


ウルト「目分量ですけど…この位ですか?」

エルルゥ「いいんじゃないでしょうか」

     「おイモの水が飛んだら、形が判らなくなるよう潰します」


ウルト「炒めて炒めて……」ジュジュゥ

エルルゥ「潰して潰して……」グッグッ


エルルゥ・ウルト「「終わりましたぁ~」」フィー


エルルゥ「じゃあ、お肉・玉葱とおイモを混ぜますよ~」


  チャチャッ…


ウルト「これも混ぜ混ぜ~ 楽しいですね」ニコニコ

エルルゥ「……うーん」

ウルト「どうしましたか?」

エルルゥ「お肉とおイモ、熱そうだなーって……」


(※ 素手で成形する場合、冷ましたほうがよいでしょう)



549VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 22:45:31.74bzZjA88SO (15/17)


ウルト「では、形を作りますね」

エルルゥ「まだちょっと熱いけど…… 平気そうです」


ウルト「今日は基本的な俵や丸型にしましょう」ペタペタ

エルルゥ「ぺったんぺったん~ ……はっ!!」ペタペタ


ウルト「エルルゥ様?」ボイン

エルルゥ「…………」ペターン

     (墓穴掘った…………)


 …………


エルルゥ「形を作り終えたら、これに小麦粉をまぶします」パッパッ

ウルト「お化粧のようですね」パッパッ

エルルゥ「全てにまぶし終えてからが早さとの戦いです……」

ウルト「卵を割っておきました~」

エルルゥ・ウルト「「ではっ!」」

エルルゥ「タネを卵液にパッと浸けて!」パッ

ウルト「直ぐにパン粉をまぶすのです!」パパッ


エルルゥ・ウルト「「…………」」モクモクモクモク…


ウルト「はい、終わりました」フゥ



550VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 22:47:10.80bzZjA88SO (16/17)


エルルゥ「油の準備はできましたっ!」

ウルト「大きな戦になります……」ゴクリ

エルルゥ「いえいえ、油で揚げるだけですからね?」


ウルト「…………」ソーット

  ポチャン… ポチャン…

ウルト「やりました~! 油が跳ねませんでしたよ!」

エルルゥ「ゆっくりやれば油も怖くないですよ」


  ジュジュジュジュジュジュジュジュ……


エルルゥ「暑いと思いますけど……」

ウルト「目を離さないように……」

(※ 色をよく見てひっくり返したりしましょうね)


  ジュジュジュジュジュジュジュジュ…


エルルゥ「わぁ……綺麗なきつね色に……」

ウルト「食欲をそそられる色ですね~」

エルルゥ「油を何か(キッチンペーパーなど)できったら…」

ウルト「手の空いた時間で千切りキャベツも~」


   「「出来たっ!」」


エルルゥ・ウルト「「『ころっけ』の完成で~す!!」」

  パチパチパチパチ…


エルルゥ「それでは、試食を……」

ウルト「……」ブツブツ

 ~ 感謝の祈り中 ~

エルルゥ「いただきま~す」

ウルト「いただきます」ペコリ

  パクン!

エルルゥ「うわぁ…ほっくほっく! 衣もサクサクぅ~!!」

ウルト「はぁ… できたての『ころっけ』、美味しいものですね……」

エルルゥ「このおイモから出る湯気、くぅ~! おいしいっ!」サクッ

ウルト「この音も良い響きでございます。五感で味わうお料理とは……」

 …………

エルルゥ「おっとっと、皆さんの所に持っていかなくちゃ!」

ウルト「そうでした。今日は一人何個にします?」

エルルゥ「一人三つまでにしましょうか」

ウルト「制限が守られると良いですね」


 オマケおしまい!


551VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/12(日) 22:47:59.89bzZjA88SO (17/17)

ではまた次回に。


552VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/08/12(日) 23:33:25.05WjfOpLC40 (1/1)

乙!
腹減った


553スタープラチナ2012/08/13(月) 22:56:48.68vRcal16h0 (1/1)

激しく乙!
うォおん、俺はまるで超級覇王電影弾のようだ


554VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/14(火) 02:04:56.54cC2s5jtIO (1/2)

糞コテが湧くとは……夏か


555名無しNIPPER2012/08/14(火) 02:49:18.193sRjgOwAO (1/1)

あ…あうあうあ…

アウトォォーー!!!←褒め言葉

しまった、夜中に1から550まで読むんじゃなかった! お腹減った!
待ってます


556世界2012/08/14(火) 13:24:15.58zQR+wk6AO (1/1)

>>553
乙るのはいいがsageような。


557スタープラチナ2012/08/14(火) 16:06:52.805yvdH5Em0 (1/1)

>>556
む、すまんかった。


558VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/14(火) 23:47:28.86cC2s5jtIO (2/2)

二匹共臭い


559VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2012/08/15(水) 00:23:32.95YODF4jUEo (1/1)

どうせ自演だろ
片方携帯だし


560 ◆M6R0eWkIpk2012/08/15(水) 23:14:18.39dbNwfybSO (1/8)


第十七話「遠い記憶」




 空腹で意識が覚醒する。


ゴロー「う、うーん…… 腹減った……」



  『オジサマ……』



 あのコの声が――――




「あ、ゴローおじさま。気がついた?」


 ゆっくり目蓋を上げると……
 カミュちゃんが俺を覗きこんでいた。


ゴロー「……やぁ。調子はどうだい?」

カミュ「うん、元気! この前は勝手に危ない事してごめんなさい!」ペコッ

ゴロー「あれは……覚えてないのか……」


 あの血のように朱く染まった眼……
 あの瞳を……見たことがあるような――


カミュ「? 何のこと? あのコ達に助けて貰ったのは覚えてるけど…」

ゴロー「それは覚えてるのか……」


   グウ~~…


カミュ「おじさま、お腹ペコペコだね♪ エルルゥ姉様呼んでくる!」


   タタタタッ…


ゴロー「あれは何だったんだ……」


 そして、あの声は一体……




561VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/15(水) 23:18:28.51dbNwfybSO (2/8)

 ――

 飯を食べ終え、ハクオロの書斎へ出向く。


ハクオロ「ゴローさん! 身体は……」

ゴロー「平気だ。自分でも見たが大した傷じゃない」

ベナウィ「では貴方も並んで下さい。今、二人を叱っていた所ですから」

オボロ「なっ! 一刻も説教してまだだと!」

クロウ「大将、勘弁して下さいよ…」


ベナウィ「……」ギラリ


オボロ・クロウ「「うっ……」」

ゴロー(黙って座ろう……)ストン


 《一刻(一時間)後…》


ハクオロ「ベナウィ、そこまでにしておけ」

ベナウィ「御心のままに」


三人「「「 」」」チーン


ハクオロ「さて、軍議を始めよう」

ベナウィ「はっ、此方がここ数日の情勢をまとめた書類です」スッ


 木簡を見ながら、考え込むハクオロ。


ハクオロ「……ハンサナでの一件以来、敵軍に乱れが生じたか」カチャ

ベナウィ「元々シケリペチムは小國を集め、創られた大國。
     皇の求心力がそれを可能としていました」


ハクオロ「離反、寝返り…… 國土はほぼ同じ規模まで分裂したか」

ベナウィ「旧クッチャ・ケッチャからの兵達も良い動きをしてくれています」

ハクオロ「うむ、騎兵衆は味方にすると心強い」




562VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/15(水) 23:25:52.39dbNwfybSO (3/8)


ベナウィ「ですが……兵力はまだ敵軍が有利」


 確か最初は十倍だった。今はわからないが。


ハクオロ「……此方が勝利する策はある」


 多分、アレだろう。


オボロ「なんだと!」ガバッ


ハクオロ「……お前達に苦難を歩ませる策ではあるぞ」


クロウ「なーに、もう慣れましたぜ」ニッ

ベナウィ「聖上、その策とは」


ハクオロ「……ゴローさん!」

ゴロー「お、おう」ガバ

ハクオロ「シケリペチム皇都への潜入を。総攻撃を察知したら知らせて欲しい」

ゴロー「畏まりました」スサッ


ハクオロ「我等の策…… それは敵の総攻撃で生じた隙を突くことだ」

    「此方も全兵力で敵軍を迎え撃つ間に、
     精鋭がニウェの居る城に直接攻撃を加える」


ハクオロ「奴がこれまでの戦で一度も出陣していないのが気になるが…」


一同「「「…………」」」


ハクオロ「おそらく勝機はこの策でしかない」


オボロ「ふっ、兄者の策なら俺は信じるさ」

クロウ「そうそう」コクン

ベナウィ「囮となる此方の全軍。この指揮は私が執りましょう」


ハクオロ「お前達……」

ゴロー「全く… いい臣下に恵まれた皇様だ」

ハクオロ「ああ!」

ゴロー「よし、それじゃあ出発するか」ガタ

オボロ「大兄者、もっとゆっくり休んでから……」


ゴロー「いや、先に行きたい所があるんだ」

    「ハクオロ、お前も来るか? 墓参り」


ハクオロ「そうだな。エルルゥとアルルゥも連れて行くか……」




563VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/15(水) 23:29:13.93dbNwfybSO (4/8)

 ――

 ~ 元ヤマユラの集落・墓地 ~


ハクオロ「……」  エルルゥ「……」
アルルゥ「……」  ゴロー「……」


 四人で墓の前に立つ。


ゴロー「……」

ハクオロ「さあ、二人とも」

エルルゥ「そうですね……」  アルルゥ「ペコちゃんは?」

ハクオロ「ちょっと皆とお話したい事があるそうだ。私達は待っていよう」

アルルゥ「ん……」コクッ

ハクオロ「いい子だ」ナデナデ

エルルゥ「……」

ハクオロ「エルルゥ、大丈夫だ」ナデナデ

エルルゥ「……はい」



ゴロー(……あの男はあのような手法で他の女もたらしこんでいます)


 こんな冗談はさておき。


ゴロー(行ってきます。村の皆さん)


 見守っていて下さい……

 ん?  視線を感じる……


 気のせいか。


ゴロー「…………」ザッザッ…





ディー「……そうか。『空蝉』の下に行けたのだな」

    「ならば…… そうだ『約束』であったか」


ディー「果たしてやらねばなるまい……」

  スゥッ… フッ……




564VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/15(水) 23:33:55.17dbNwfybSO (5/8)

 ――

 ~ シケリペチム皇都 ~


 碁盤の目状の町並みが美しい。
 トゥスクルもこういう造りではあるけど…


ゴロー「こっちのほうが規模が大きいから綺麗」キョロキョロ


 この皇都のど真ん中に敵の城がある。
 町を眺めながら、そこまで歩く。

 道を守るようにトラの置物が並べられていた。


 少しして俺は城の正門に到着する。

 人足達の話声が聞こえてきた。


 「城門が二つあるから移動がめんどくせ~」

 「だよな、二重堀とかもうちの國なら必要ねぇ」

 「なんてったって最強の國だしな」


ゴロー(攻め難い城だ。堀が二つあるなんて)


 普通の戦ならば難攻不落って城だ。


ゴロー(奇襲だし、少数だから関係ないが)


 見たところ、城は改修工事中のよう。
 やけに人の出入りが激しかった。


ゴロー(なんか… 所々に穴や亀裂が……)


 何かあったのかもしれない。
 修繕しているのだから、皇は無事なんだろうけど。


人足「どいたどいた~!!」ドン!

ゴロー「おわっ!」

人足「悪い! 急いでんだ!」ダダッ

ゴロー「慌ただしい町だこと」


 気をつけて歩こう。




565VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/15(水) 23:37:00.57dbNwfybSO (6/8)

 …………

ゴロー「そろそろ腹が減ってきたな」


 大通りを避け、脇の道に入る。


ゴロー(良さそうな店は……)キョロキョロ


 俺がメシを入れるような店はないか……


  ザッ ザッ ザッ…


ゴロー(……少し広い通りに出たぞ)


 よく考えたら、こういう町並みでは
 飯屋って広い通りに多いんだっけ。


ゴロー(無駄足だった……)


 仕方なく、その通りをブラブラ歩き回る。

 すると…………


ゴロー「??? なんだこの店は……」


 通りの終わりに気になる店があった。

 これまでの飯屋とは何か異なる雰囲気を発している…


 暖簾があるのは普通だ。

 建物だって隣近所と変わらない。

 ただ、その暖簾に『中華料理』と國々の共通文字で書かれている。


ゴロー「これ…… 共通文字だけど…… こんな言葉は」


 ……違う、俺はこの響きを知っている。


ゴロー「……入ってみるか」

  ガラララッ…




566VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/15(水) 23:43:06.35dbNwfybSO (7/8)


店員「いらっしゃーい!」

 木で出来た戸を開けると、店員の威勢のいい挨拶が耳に入る。

 店主と店員は耳が『ウサギ』みたいに白くて長かった。


店員「お客さん、こちらに……」



 「すまん、彼は私の客だ。店主よ、ここに通してくれるか」



店主「へーい。お客さん、アッチの方がお待ちですよ」クイッ


 店主の指の先には、オンカミヤリュー族の男がいた。
 金の紋を入れられた濃紺で染められた長い服。
 髪の毛は白くなっているが、肌ツヤは若い。


ディー「ここへ。どうした、座らないか」

ゴロー「……」ガタン

店員「どーぞ、お冷やです」

ゴロー「あ、すいません」


 一口、水を含む。

 ふー……ウマイ。
 歩き回った後の冷えた水って、最高だよ。


ゴロー「あな……」

ディー「今は汝の問いに答えられぬ」グイッ

    「一つだけならば答えてやれる事はあるが……判るかな?」


ゴロー「……その答えられる事ってのは、この店のオススメか?」


ディー「うむ、正解だ」ニッ

    「店主、彼に『麻婆豆腐』を」


店主「はいよ! 辛さはどうします?」

ゴロー「あ、辛さは普通くらいで」

ディー「私は追加で包子(パオズ)を頼む」


店主「へいよ~」ジャアアッ!!

 油の旨そうな香りが鼻を刺激する……




567VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/15(水) 23:54:15.59dbNwfybSO (8/8)

 ――――

 【 麻婆豆腐 】

この世界に『存在しない』はずの一品。
どうしてあるのかはまだ語られない。
使う材料は探せば見つかる。
前回の『冷やし担々麺』もこの店の品。


 【包子(パオズ)】

中身は甘い餡。これは普通にオヤツとして多くの人々に食べられている。
大きめのモノ、二個入り。



ゴロー・ディー「「いただきます」」

ゴロー「!!」

ディー「驚く事もあるまい。食物に感謝をするのは至極当然」

ゴロー(まるで意図が読めない……)


 とりあえずメシにしよう。

 レンゲを手にとり、麻婆豆腐を掬う。


  ふー… はふっ


ゴロー(新鮮な味だぁ…… 口の中、辛さでお祭りみたいだ)


  はむっ むしゃ…


 どうしてこの食べ物がこんな場所にあるか…
 その不思議をスッカリ忘れてしまいそう。


ゴロー(うん… 旨い、旨いぞ)


  かちゃ もぐもぐ…


 だが…… 主食がない。
 この辛さで口直しがないのはツラい。


ゴロー「すいません、お冷やおかわり。あと、ライスを…」

店主「うちはライスないんだ。そもそもライスってなんだい?」

ゴロー「あ、そうでしたか……」


 麻婆豆腐はあるのに、ご飯はやっぱりないんだな。


ディー「……」ムシャ…


 向かいのあの人は一心不乱にパオズを食べてるし……


店員「お冷やです」コトン

ゴロー「ありがとう」グイッ


 うん、口の中がサッパリした。



568VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 00:00:03.83EKmdGUxSO (1/32)


ディー「……」ニヤリ

ゴロー「!!」


 あ、あああっ! しまった!

 か、か、辛い!?

 この店の辛さ! 水を飲むと酷く感じるタイプだ!


ゴロー(く、くう~… 涙が出そうだ……)

ディー「ふっふっふ……」ニヤリ

ゴロー「お、お前…… 知ってて」

ディー「何、汝が来る前に私も同じものを食べたのでな」

    「それを食べ終えたら、このパオズを食せ。少しは和らぐ」スッ

ゴロー「はぁ……ありがとうございます」


 …………

ゴロー「ふぅ、ごちそうさん」

ディー「勘定だ。私が払おう」

ゴロー「いえ、そうは……」

ディー「いや、汝では払えぬのだ」スッ チャリン

店員「ありがとうございましたー」

  ガラララッ…

ゴロー「……さて、あんたは一体?」

ディー「問いには答えられぬ。これからもな」

    「次に我と汝がまみえる時はなかろう」


ディー「三日後、この國の軍が侵攻を始める。あの男に伝えるがいい」

ゴロー「……何故わかる」

ディー「後ろを見れば判る」スッ

ゴロー「後ろ? さっきの店が……」クルッ

    「…………『なくなった』?」


ゴロー「おい、こ…… あの男もいない」


 俺は夢でも見ていたのか……

 ……いや、それはない。


ゴロー(この満腹感が何よりの証拠だ)


 旨かったなぁ、麻婆豆腐。じゃあ食後の煙管を……


ゴロー「……あっちゃぁ。羅宇(らう)にヒビが入ってるよ」


 さっきぶつかったせいだろう。
 近くに羅宇屋があるといいけど……



569VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 00:03:56.73EKmdGUxSO (2/32)

 …………

 幸い羅宇屋はすぐに見つかり、店の中に入る。
 玄関にある小さなトラの置物以外はいたって普通の羅宇屋だった。


店の人「いらっしゃいませ」ペコリ

ゴロー「羅宇が壊れたようなので、修理を頼みます。あと掃除も」

店の人「はい、お預りいたします…… おい、コッチに」クイクイ


 店員に呼ばれ、『ウサギ』みたいな耳のコが出てきた。


兎耳「いらっしゃ……キャッ」コケッ

店の人「おい! 気をつけろ。たく……これだから『シャクコポル』は…」

兎耳「は、はい。スミマセン……」

店の人「この吸口と雁首を掃除しておけ」

兎耳「はい……」トボトボ

ゴロー「…………」

店の人「はい、確かにヒビがありますね。
     お客様、羅宇を替えられてはどうでしょうか」


ゴロー「……そうだな。見せて貰おう」

店の人「では…こちらの羅宇は如何でしょう?」スッ


 店の男が羅宇を見せる。

 コイツ…… ちょっと聞くか。


ゴロー「材質は?」ジッ


店の人「白檀で御座います」

兎耳「あ、それ……」

店の人「……」キッ

兎耳「あう……」


ゴロー「おい、ぼったくろうったってそうはいかないぞ」

    「その羅宇、何処から見たって竹製じゃないか」



570VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 00:10:16.49EKmdGUxSO (3/32)


店の人「……いやはや御目が高い! こちらはどうですか?
     これは店一番の品で正真正銘、黒檀で御座います」


 ……腹が立った。


ゴロー「……掃除の金は払う。吸口と雁首を返して貰うぞ」

    「二回も騙すような店で買い物をしたいとは思わないんでね」

店の人「……チッ、おい! お帰りだ! さっきのを持って来い!」

兎耳「ハ、ハイ! …どうぞ」スッ

ゴロー「どうも……」

店の人「たく、てめえがあそこで変な声ださなけりゃあ! この役立たず!」

兎耳「ひっ!」ビクン


ゴロー「……仮にも客の前でそんなことを言うな!」


  ガシッ! グイッ!

店の人「がああああ!!!」

   「痛いィ~ 折れるゥ~~」

兎耳「やめて!」

ゴロー「……」ピタ

兎耳「それ以上いけない」

ゴロー「……邪魔したな」スタスタ

 …………

ゴロー「はぁ…… あのコ、あの目……」


 どうしよう。羅宇がないんじゃ、煙管を吸えないぞ……


 「ま、待ってくださーい!」タタッ!


ゴロー「キミ、さっきの店の……」

兎耳「ハァ… ハァ…ありがとうございました」

ゴロー「え?」

兎耳「私の為に怒って下さって……」

ゴロー「いや、気にしないでいいから」

兎耳「あ、あの! 良ければコレ……」スッ

ゴロー「これは… 羅宇じゃないか」

兎耳「わ、私が作った羅宇なんで… シャクコポルの物ですいませんが…」

ゴロー「竹製だけど…… 造りが丁寧だ。朱に塗られているのもいい」

   「くれるのかい? ありがたくいただくよ」ニコッ


兎耳「あ……ううっ……」ポロリ

ゴロー「ど、どうした!?」

兎耳「いえ、嬉しくて…… 涙が…」ポロポロ



571VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 00:13:30.43EKmdGUxSO (4/32)

 …………

 大きな通りに戻り、変わったトラの置物に腰掛ける。


ゴロー「『シャクコポル族』か…」ムシャ

兎耳「はい。私達は他の部族から迫害されてきた部族なんです」ムシャ


 焼きモロロを食べながら、彼女の話に耳を傾けた。


兎耳「力も弱いし、法術だって使えない。
    だから生きる為に手に職をつけないとならないんです」グスッ


ゴロー「…………」

兎耳「ご免なさい、こんな話。湿っぽくなっちゃいましたね」テヘヘ


ゴロー「……ちょっと待っててくれるか?」


兎耳「えっ?」

ゴロー「俺の仕事が終わったら、君をもっと生きやすい場所に連れていく」

    「だからそれまで……」

兎耳「ふふっ、期待しちゃいますよ……」フィ

ゴロー(こんな女の子が諦める目を……)

兎耳「ありがとうございました! また会えるといいですね!」ピョコン

   「では…えっと……お名前は……」


ゴロー「……ゴローだ」

兎耳「ゴローさん、また会えたら私の名前を言います!」

   「そしたら…… 連れて行って下さいね」


ゴロー「ああ」ニコッ

  タッ! タタタタタ…



 トクン…
       トクン…
             ズキンッ!!



572VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 00:15:00.67EKmdGUxSO (5/32)








 『どうして………』

 『どうして…… あのこを連れていったの……』






ゴロー「がっ!?」ズキッ





573VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 00:17:43.46EKmdGUxSO (6/32)





 『ダレ……』



 『……驚いた。まさかそんな状態でコンピュータに強制介入出来るとは』



 『……』



 『安心しろ、ミズシマや他の者にバレはしない』

 『……というより、俺は君とは違う場所に居るから大丈夫なんだ』

 『君は……63号。だったか……』



 『違う』



 『うん?』



 『違う…… “ムツミ”…』



 『ムツミ…… そうか君が。それは“アイスマン”が着けた名前か』




574VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 00:19:39.37EKmdGUxSO (7/32)





 『トウサマ……』



 『君は……彼に会いたいのかい?』



 『……』



 『今は無理だと思う。だからそれまで……』

 『……俺の事をアイツの代わりにしないか?』



 『……アナタは』



 『俺の名前は――――』



ゴロー「ぐっ… なんだ、これは……」


 頭が混乱する……





575VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 00:22:32.22EKmdGUxSO (8/32)





 『トウサマから聞いたことがある名前……』



 『俺みたいなおじさんがアイツの代わりってのもヘンだけど……』



 『“オジサマ”』



 『え?』



 『トウサマとは呼べないけど… オジサマとは呼んであげる』



 『……まぁ、いいか』

 『通信回線は開いたままにしておく。寝るときは閉じるから』

 『それ以外は話しかけていいぞ。最近は暇で暇で仕方ない』

 『持っていたコレクションもアイツと見直したばかりだしな』



 『……わかった』



 『それじゃあ…これからよろしく、“ムツミ”』



 『―――オジサマ……』




ゴロー「ハァ…ハァ…ハァ……」

町人「あんた、大丈夫か?」

ゴロー「え、ええ。平気です……」


 今のはいったい……

 俺の…… 無くした過去なのか?




576VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 00:25:05.25EKmdGUxSO (9/32)

 ――

 ~ トゥスクル皇城・禁裏 ~


  バサバサ… バサバサ…


ハクオロ「来たか……」ガタッ


ハクオロ「『三日後、総攻撃』… 伝書鳥の移動時間も含めて実質二日後か」

     「ん、追伸がある『“ノポン”を急いでこっちに寄越せ』」


ハクオロ「『居場所はクロウに聞けばわかる、なるべく早く』…」

ハクオロ「全く、皇使いの荒い臣下なこって」

     「クロウ! クロウはどこだ!?」

 ――――

 ~ シケリペチム皇都 ~

ゴロー「……ノポン、早く来い」

 まさかあんなシロモノが町中に堂々とあるとは。


ゴロー(アイツがいないと…… この都が危ない)


 羅宇屋の玄関、大通り。
 この事に気がついたのは手紙を書き終えた後だ。

 すぐに宿、他の通り、開いていた店を調べた。


ゴロー「ムティカパを模した兵器……『デグカパ』」


 小型化した物は店や家に、大きな物は通りに。


ゴロー「敵の撃退用なら、店や家に設置する必要はない……」


 詳しい事は『ノポン』が来ないとわからない。


ゴロー「ただこれだけは言える……」


 早く手を打たないと、この都が大変な事になる……




577VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 00:26:53.78EKmdGUxSO (10/32)

 ――

トゥスクル國境。河を挟んで両軍が対立する。

霧の中で浮かぶ、トゥスクル全軍とシケリペチムの全軍。
戦いの全貌はまだ見えない。


アルルゥ「霧、はれる……」


うっすらと陽の光が両軍を照らす。


クロウ「……一万ってとこか」

オボロ「いや…… 三万だ」


オボロが発した言葉の後、霧は完全に消失した。

規則正しく並ぶシケリペチム軍。

分裂があったにも関わらず、
その数はトゥスクル軍を大きく上回る。


ベナウィ「安心しました。敵の主力を引き付けるという目的は果たしましたね」


この戦の目的は『敵の皇を討つまで、敵を引き付け戦線を保つこと』。

今の段階で目的の大部分は達成していた。


クロウ「よっしゃあ、心置き無く暴れまわってやりやすか!!」スチャ

オボロ「応っ!!」チャキン

ベナウィ「ええ」カチャッ

ドリィ・グラァ「「はいっ!!」」

アルルゥ「む~~」  ムックル『ヴオオオオォォ!!』


これまでで最も大きな規模、そして最も困難な戦が始まろうとしていた。




578 ◆M6R0eWkIpk2012/08/16(木) 00:33:20.20EKmdGUxSO (11/32)

VSシケリペチム編・前編を投下。

羅宇(らう)と言うのはキセルの管の部分の事。
主に竹製で高級品は黒檀らしい。
ゴローの持ってた以前のキセルは黒塗り・竹製の羅宇です。


羅宇屋が出たのはきっと四月一日君のせいです。
可愛いよね、兎の羅宇屋さん。
狐のおでんも食べたいなぁ……

では失礼します。


579VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 21:02:03.42bFHtBbrIO (1/1)




580VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 21:58:53.61DB/EyQZSO (1/1)




581VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 22:15:36.93EKmdGUxSO (12/32)


 ~ シケリペチム皇都 ~


ハクオロ「目指すはニウェの首のみ!! 突破するぞ!!」


 「「「おおおおおぉぉぉ!!!」」」


トゥスクルの皇・ハクオロ。
彼の声に兵達は吼える。


カルラ「テリャァァァァ!!!」ブオン

  ドゴォォォン!!


亡國の皇女、そして元奴隷・カルラ。
彼女の一振りは道を切り拓く。


トウカ「エヴェンクルガのトウカ! 参る!!」

  スパッ スパッ スパッ!!


少数部族エヴェンクルガの女・トウカ。
彼女の抜刀術は一瞬のうちに敵を切り刻む。


エルルゥ「えいっ!」フワッ


失われた辺境の薬師・エルルゥ。
ハクオロの背を守る彼女の薬術は敵を狂わせる…かな?


敵兵達「「逃がすかぁっ!!」」


エルルゥ「む、向かって来ないでくださーい!!」バサバサ


敵兵達「「ぐわあああ! ……☆*※◎???」」


薬師の撒いた香煙が兵士達を混乱させていった。


ハクオロ「流石大國、道が広いからウマで走りやすい!」


  ダダダダ……


ハクオロ(しかしどういう事だ? 都の守りがほとんどない)

    (本当に全軍をあちらに送ったのか? それとも……)


ハクオロ(それにゴローさん、貴方はどこに行ったんですか……)


この場にいない者、ゴロー。
彼は彼でやらねばならない事がある……



582VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 22:21:07.60EKmdGUxSO (13/32)


……暫くして彼等はたどり着いた。

シケリペチムの皇城、第一城門。

あの皇、ニウェのいる本拠地に……


ハクオロ「門がかなり固そうだ」

     (弓兵などによる妨害もなくここまで…… やはり罠か?)


カルラ「ちょっと失礼……」スゥ

    「ハアアアアアアアアアッ!!!」ズンッ!


   ブオォォォン!!!!

  バキッ!! ズウゥゥン…


カルラ「ふぅ……あら、殿方がたくさん」


敵兵達「「……」」カチャッ


扉を壊すと、刀や槍を構えた兵達が彼等を待ち受けていた。


敵将①「おや、誰かと思えば腰抜け皇ではないか」


ハクオロ「……確か使者の方々だったな」


敵将②「ふふ、あの男達がいないのは残念だが」

敵将③「すぐ片付けてやる」


カルラ「あるじ様、ここはわたしが引き受けますわ」

ハクオロ「しかし!」

カルラ「平気ですわよ。名もない敵に負けるわたしではありませんわ」


敵①「な、ナニィ!」

敵②「俺達にも名前はある!」

敵③「ころしてやる…」


カルラ「あるじ様!」



ハクオロ「く…… 皆の衆! 突っ込めぇ!!」


 「「「ウオオオオ!!!」」」


  ズドドドド…



583VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 22:29:35.47EKmdGUxSO (14/32)


カルラ「さて……弄んであげますわ。名無しの三人さん」ニヤッ


敵将①「おのれぇぇ!!」

敵将②「なんだとぉぉ!!」

敵将③改めイコル「俺はイコルだ」キリッ

敵将①・②((先に言いやがった!!))


カルラ「そうでしたか」 ブン!!


敵将①「お……」 ガキッ ベキッ!


敵 | 将①「 」ブシュー…


カルラの一刀を受けきれず、大男の敵将が縦に真っ二つにされる。


敵②・イコル「エムロォォ――――!!」


カルラ「あら、そんなお名前でしたの」

   ブオオン!!


敵将②「は……」

敵/将②「」ブシュー…


肩から脇にかけて切断される細男。


イコル「イナウシぃぃぃ!!」


カルラ「最初に名乗ってよかったですわね」ニコリ

    「あのお二人より長くこの世にいられましたわ」

  ブン! ブォッ!!


イコル「へ……」

イ/コ|ル「さ、三分割……」ブシュゥー

   ドサリ…


最後の小柄な男は首・上半身・下半身にぶった斬りにされた……


カルラ「三人揃うと厄介……だったかしら?」グビッ

    「おっと、まだ終わってませんわね」タッ…



※カルラVS三人組(エムロ・イナウシ・イコル)はアニメを見ましょう!




584VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/08/16(木) 22:33:53.99EKmdGUxSO (15/32)

 ――

弓兵、歩兵、騎兵。敵の攻撃をなんとか掻い潜り、
ハクオロ達は第二城門を抜けて本丸に突入した。


 ~ 皇城内部 ~


ハクオロ「止まれ!」

     「何かいるぞ!! 気を付けろ!」



 「「「…………」」」 ユラリユラリ…


ソコに居たのは『人』であった。

死人兵達「「「アー…アー……」」」


白目が充血し、どんよりとした朱色の眼。
その足取りに意思を感じない存在を『人』と言えるのならばだが……


死人兵達「「「アー…アー…」」」


エルルゥ「な、なにこの人達……」

トウカ「エルルゥ殿、お下がりください!」スパッッ!!


死人兵「アー… アー…」ブシュッ

    「アー…… アー…」ズリズリ


トウカ「何!? 斬りつけたはず!」

ハクオロ「コイツら痛みを感じていないのか!」



  「だったら……」


  ブオン!! グシャッ!!


カルラ「叩き潰せばいいんですの」ニコリ

ハクオロ「カルラ! 簡単に言うなよ……」

トウカ「某達は関節を狙って攻撃しましょう」

兵士達「「「ハハッ!」」」