781ぱるぷん手2014/06/08(日) 15:42:09.45yCz6151q0 (10/20)

これでも駄目だというの?
流石にこの世界を形作った際の歪みそのものを正すには、この程度では足りないということなのかしら。
髪を結ったリボンも解け、髪の毛も少し伸びてきたような気がする。

私は三度目の手を叩いた


782VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2014/06/08(日) 15:42:36.32nA2sLD+co (1/1)

面白いww


783ぱるぷん手2014/06/08(日) 15:42:49.34yCz6151q0 (11/20)

…***…

同じ頃、百江なぎさは同級生たちと一輪車に乗る練習をしていた。

しばらく病院通いだったなぎさは運動ができる方ではなく、友人たちの中で一人だけ一輪車に乗ることができないのだった。
コツを教えてもらいながら、少しずつ進めるようになってきたのだった。

「だからね!体は前に出しすぎちゃダメなんだよ!」
「分かってるのです!でもやっぱり難しい……」
「なぎさちゃんファイト!」
「今度こそやってやるのです!」

目指すは体育館の壁から壁への大移動だ。

恐る恐るペダルを踏み込む。

瞬間、泥になった床に車輪を取られ顔面ダイブをした。

―――――
―――




784ぱるぷん手2014/06/08(日) 15:43:43.55yCz6151q0 (12/20)

三度叩いても全く効果はなく、まどかは順調に世界の法則に飲み込まれていく。

こんなちゃちな叩き方では駄目なようだ。
恐らくどこかで不思議な事象が起こっているのかもしれないが、そんなことを気にしてはいられない。

何に対しての賞賛か、まるで拍手の如く両手を打ち鳴らし続けた。


785ぱるぷん手2014/06/08(日) 15:44:38.81yCz6151q0 (13/20)

…***…

同じ頃、見滝原の小高い丘で一匹の白い獣が街を見下ろしていた。
猫のような耳から垂れる毛には、原理は分からないが金輪がくっついており、チェリーのように赤い瞳は、歪みと瘴気に溢れる空を映している。

「魔獣が現れたけれど、魔法少女たちは学校という教育機関に軟禁されている。しばらくは放置するしかないみたいだ」

この獣の名は通称キュゥべえ、真名をインキュベーターという。

彼らは地球の生命体にあらず、人類の技術では届かない彼方から訪れた、いわゆる宇宙人である。
人類のような感情を持たず、かつて魔法少女を生み出し希望と絶望の相転移から得られるエネルギーを収集していた彼らも、今では暁美ほむらにより細々と魔獣の持つ少量のエネルギーにすがるだけである。

そんなキュゥべえが今、足元から湧き上がった源泉によって吹き飛ばされた。
浮き上がったところを巨大なハンマーで打ち込まれクレーターを作り忍者に撒菱を投げつけられたかと思うと現代に蘇った始祖鳥(ジェラ期に生息した最古の鳥)に捕まり川へ放り出された途端竜巻が発生し風に身を引きちぎられそうになった瞬間マヨネーズを塗られグミとなった鉄橋に不時着する寸前で近くを通りかかった軽トラックの荷台に乗りキャベツと赤ん坊とギタリストに囲まれながら市場へと出荷されたのと同時刻に、どこかで何かが壊れる音がした。

その様子を新たなキュゥべえが見送ったところで、キュゥべえの背中にカブトムシの羽が生えた。

―――――
―――




786ぱるぷん手2014/06/08(日) 15:46:15.24yCz6151q0 (14/20)

「ちょ、ちょっとほむらちゃん!?」

気が付けば、私はまどかに抱き付いていた。
私の力ではもはやどうしようもないと思うと、咄嗟に体が動いてしまったのだ。

絶対に、二度と放さない。

まどかの怯える声が遠くに聞こえる。

駄目よまどか。

そちら側に言っては駄目なのよ!

「大丈夫……あなたは間違いなく本当のあなたのままよ」

どうやら正気に戻ったらしいまどかを恐る恐る見つめ、肩に置いた自分の手が震えていることに気が付いた。

でも、やはりまどかはこの世界のことを考えて、秩序を尊ぶのでしょう。
それでも構わない。
まどかが幸せになれるのなら、例え敵対することになろうとも……。

リボンが解けたまどかは少しだけ大人びた気がする。

あぁ、そうだ。

それならば―――

「ほ、ほむらちゃん?」
「やっぱり、あなたの方が似合うわね」

この赤いリボンを返さなければ。

私なんかが決して持つことのないように、返さなければ。


787ぱるぷん手2014/06/08(日) 15:47:24.75yCz6151q0 (15/20)

月明かりの夜。
クレーターが出来て大騒ぎになったという丘で、私は一人世界を見守る。
見守る、という言い方は語弊があるけれど。
歪んだものは直さなければならないから、こうして誰もいない見通しのいい場所でまどかが愛したこの街を眺めることにしている。

プーン。

「…………」

いや、誰もいないというのもまた語弊のある言い方だ。
特に夏場なものだから、蚊の一匹くらいいるのも仕方がない。

パン、と挟み撃ちにしてやった。

プーン。

「…………」

なるほど。

私に潰されない蚊というのもまた、この世界の歪みなのかもしれないわね。

「――っ!」

今度こそ仕留めた。
悪魔である私から逃れようなんて、愚かにもほどが――

プーン。

「…………」


788ぱるぷん手2014/06/08(日) 15:48:00.09yCz6151q0 (16/20)




             だぁぁまあああありぃぃなぁぁぁぁさあああぁぁぁぁあぁぁあぁぁいぃぃいいいぃぃぃぃぃ!!!!!!!




789ぱるぷん手2014/06/08(日) 15:49:04.20yCz6151q0 (17/20)

翌日、美樹さやかのスマートフォンがたまごっちになり、佐倉杏子が歩くたびにスココロロンという音がし、巴マミに求愛する鹿が奈良公園の如く現れ、百江なぎさを乗せた台車が高速道路を爆走したという話を聞いたが、どうでもいいことだった。

まどかが幸せならば、それで構わない。

「おはようまどうわぁっ!」
「まどか! お前どうしたんだその髪!?」
「わかんないよぉ! 今朝起きたら、髪の毛が針金みたいに固くなっちゃってたの!!」

私は、なんて馬鹿な間違いを……!

通学路で膝から崩れ落ち、自らの失態を悔やんだ。

まどかのためを思い世界を矯正しているというのに、不用意にまどかさえ巻き込んでしまうとは思ってもいなかった。
金輪際むやみに手を鳴らしたりはしない。
蚊を殺そうともしない。

確実に生じた歪みだけを直すと、心に誓った。


790ぱるぷん手2014/06/08(日) 15:51:46.29yCz6151q0 (18/20)

「今日は皆さんに、大事なお知らせがあります」

先日不審物が爆発したらしい教室も、何事もなかったかのように元に戻っている。
歪みを直したついでだろうか。

「私、結婚することになりました」

…………なんということだろう。

確実に私のせいだ。

そうでなければ早乙女先生の口からそんな言葉が出てくるはずがないじゃない。

魔法など使っていないのに時が止まっていた生徒たちが、次第に冗談の類でないことを受け入れ始めたのか、一人、また一人と拍手を始めた。
「オメデトウ」という言葉がなぜか抑揚なく聞こえたが、気のせいでしょう。

そうだ、なにも私のせいだと決まったわけではない。
彼女も知らないところで努力をしていたということに違いない。
一応お世話になってきた身でもある。
ここは素直に、担任の些細な幸せくらいならば祈ってあげてもいいわね。

「おめでとうございます」

私は溢れんばかりの拍手を浴びせた。

「…………あ」


791ぱるぷん手2014/06/08(日) 15:52:22.45yCz6151q0 (19/20)


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~~終演~~


792VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)2014/06/08(日) 15:54:52.67yCz6151q0 (20/20)

蚊がうるさいなと思ったら閃いた
しばらく忙しくて書いてなくてごめんなさい


793VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)2014/06/08(日) 17:54:32.12hnqVkelI0 (1/1)




794VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2014/07/01(火) 18:38:08.40dZUOJ/mVo (1/1)




795VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)2014/07/16(水) 21:04:14.78ORadKs7C0 (1/1)

今週末更新めざします