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707: ◆Hw7XKfELws:2012/07/15(日) 19:45:03.86:RwaEt+JLo (7/11)
>コロマルはアイギスだけでなく、アイギスに気をかける自分たちのことも心配してくれていたようだ。
>コロマルとの絆を感じる……
>『ⅩⅠ 剛毅 コロマル』のランクが6になった
>……空も赤く染まってきた。
>そろそろ帰ろう。
>……
学生寮前
ラビリス「……あれ?」
鳴上「!」
>学生寮の扉の前でちょこんと座っているメティスの姿が見えた。
メティス「あなたもひとりなんですか? ……え、違う?」
メティス「ええ、わかりますよ。あなたの言葉」
メティス「……? デビ……なんです? それは」
メティス「はあ。……いえ、すみません。そんな人は見かけていないですね」
鳴上(どうしたんだ……?)
>初めメティスは独り言を言っているのかと思った。
>しかし、彼女に近付くとその言葉はメティスが膝に抱えていた黒い生き物に向けて話しかけているのだという事にすぐ気付いた。
メティス「!」
メティス「なんだ、鳴上さんたちか……おかえりなさい」
>すごく残念そうな顔をされた……
ラビリス「メティス、こんなところでどうしたん? しかも、猫なんか抱えて」
メティス「本当は部屋でじっとしてたんですが、アイギス姉さんの帰りが待ちきれなくて……」
メティス「それで、通りかかった黒猫さんとちょっとお話をしていただけです」
鳴上「アイギスたちはまだ帰ってきていないのか?」
メティス「はい……」
>メティスは膝に乗せている黒猫を撫でていた手を止めて少し俯いた。
鳴上「メティス。心配なのはわかるけど、もうじき暗くなる。桐条さんもそれほど遅くならないようにするって言ってたし、中で待っていよう」
メティス「でも……、あ!?」
>メティスは黒猫を抱えたまま立ち上がった。
メティス「車の音です。今朝、姉さんたちが乗っていった」
メティス「こちらに近付いてきています」
鳴上「え?」
>コロマルはアイギスだけでなく、アイギスに気をかける自分たちのことも心配してくれていたようだ。
>コロマルとの絆を感じる……
>『ⅩⅠ 剛毅 コロマル』のランクが6になった
>……空も赤く染まってきた。
>そろそろ帰ろう。
>……
学生寮前
ラビリス「……あれ?」
鳴上「!」
>学生寮の扉の前でちょこんと座っているメティスの姿が見えた。
メティス「あなたもひとりなんですか? ……え、違う?」
メティス「ええ、わかりますよ。あなたの言葉」
メティス「……? デビ……なんです? それは」
メティス「はあ。……いえ、すみません。そんな人は見かけていないですね」
鳴上(どうしたんだ……?)
>初めメティスは独り言を言っているのかと思った。
>しかし、彼女に近付くとその言葉はメティスが膝に抱えていた黒い生き物に向けて話しかけているのだという事にすぐ気付いた。
メティス「!」
メティス「なんだ、鳴上さんたちか……おかえりなさい」
>すごく残念そうな顔をされた……
ラビリス「メティス、こんなところでどうしたん? しかも、猫なんか抱えて」
メティス「本当は部屋でじっとしてたんですが、アイギス姉さんの帰りが待ちきれなくて……」
メティス「それで、通りかかった黒猫さんとちょっとお話をしていただけです」
鳴上「アイギスたちはまだ帰ってきていないのか?」
メティス「はい……」
>メティスは膝に乗せている黒猫を撫でていた手を止めて少し俯いた。
鳴上「メティス。心配なのはわかるけど、もうじき暗くなる。桐条さんもそれほど遅くならないようにするって言ってたし、中で待っていよう」
メティス「でも……、あ!?」
>メティスは黒猫を抱えたまま立ち上がった。
メティス「車の音です。今朝、姉さんたちが乗っていった」
メティス「こちらに近付いてきています」
鳴上「え?」
モバP「泰葉からチョコもらった時の話?」
絵里「なんとかストロガノフ!」穂乃果「そう、カレーです」
タマ「ニャー」タラオ「タマ口臭いですぅ!」タマ「!!!!!!!」
玲音「風邪を引いてしまったようだ…」
苗木「霧切さん、この蝶ネクタイつけてみてよ」
708: ◆Hw7XKfELws:2012/07/15(日) 19:48:47.63:RwaEt+JLo (8/11)
>メティスは人間の耳では感じ取れない遠くにある僅かなその音を聞き分けているのかそう告げた。
>そしてその通り、1分もしない内に朝見たものと同じ車が寮の前へとやってきて停車したのだった。
>車の中から美鶴が出てくる。
鳴上「おかえりなさい」
美鶴「ただいま」
メティス「え……? あれ、姉さんは? 姉さんはどうしたんですか?」
>車は美鶴だけを下ろしてすぐに出発してしまった。
美鶴「アイギスは、これからしばらくラボに入ることになった」
メティス「!?」
美鶴「期間は未定だが、それほど長くなる訳ではないようだな」
ラビリス「えっ!」
鳴上「アイギス、そんなに調子が悪かったんですか!?」
美鶴「……」
メティス「美鶴さん、どうなんですか!?」
>美鶴は眉間に皺を寄せて黙っている。
美鶴「こんな場所で立ち話もあれだ。……中でゆっくりと話そう」
鳴上「それもそうですね」
メティス「……あ!」
>メティスの腕の中にいた黒猫は、そこから下に飛び降りて少し距離をとった。
メティス「もう行くんですか?」
黒猫「……」
メティス「お気をつけて、ゴウトさん。機会があれば、また」
>黒猫はメティスの方をじっと見てから走って去ってしまった。
鳴上「……」
鳴上「パスカルの時も思ったけど、メティスって動物好きなのか?」
メティス「そういう訳じゃ。ただ……」
メティス「ひとりぼっちで残されるのとか、誰かに置いていかれるのって辛いんじゃないかと思って」
メティス「……」
メティス「それよりも、今は姉さんのことです。美鶴さん、行きましょう」
美鶴「……ああ」
>……
>メティスは人間の耳では感じ取れない遠くにある僅かなその音を聞き分けているのかそう告げた。
>そしてその通り、1分もしない内に朝見たものと同じ車が寮の前へとやってきて停車したのだった。
>車の中から美鶴が出てくる。
鳴上「おかえりなさい」
美鶴「ただいま」
メティス「え……? あれ、姉さんは? 姉さんはどうしたんですか?」
>車は美鶴だけを下ろしてすぐに出発してしまった。
美鶴「アイギスは、これからしばらくラボに入ることになった」
メティス「!?」
美鶴「期間は未定だが、それほど長くなる訳ではないようだな」
ラビリス「えっ!」
鳴上「アイギス、そんなに調子が悪かったんですか!?」
美鶴「……」
メティス「美鶴さん、どうなんですか!?」
>美鶴は眉間に皺を寄せて黙っている。
美鶴「こんな場所で立ち話もあれだ。……中でゆっくりと話そう」
鳴上「それもそうですね」
メティス「……あ!」
>メティスの腕の中にいた黒猫は、そこから下に飛び降りて少し距離をとった。
メティス「もう行くんですか?」
黒猫「……」
メティス「お気をつけて、ゴウトさん。機会があれば、また」
>黒猫はメティスの方をじっと見てから走って去ってしまった。
鳴上「……」
鳴上「パスカルの時も思ったけど、メティスって動物好きなのか?」
メティス「そういう訳じゃ。ただ……」
メティス「ひとりぼっちで残されるのとか、誰かに置いていかれるのって辛いんじゃないかと思って」
メティス「……」
メティス「それよりも、今は姉さんのことです。美鶴さん、行きましょう」
美鶴「……ああ」
>……
709: ◆Hw7XKfELws:2012/07/15(日) 19:51:46.83:RwaEt+JLo (9/11)
学生寮 ラウンジ
>天田と諒を除いた特別課外活動部のメンバーがラウンジに揃った。
>それぞれ腰を落ち着け、美鶴が話を切り出すまでには少し間があった。
美鶴「……さて、みんなが気にしているアイギスの容態だが」
美鶴「所員の話だと、アイギスの体には損傷も何も起こっていないらしい」
鳴上「え?」
ラビリス「それってつまり、結局なんでもないって事?」
美鶴「そういう事だな」
メティス「じゃあなんでわざわざ数日かけてラボでメンテを?」
美鶴「どこも悪くないのにアイギス自身が不調を訴えてる詳しい原因を調べるつもりのようだ」
美鶴「アイギスは何処も悪くないと検査でわかったあとも具合がよくないとこぼしていた。これを放っておく訳にはいかないだろう?」
美鶴「顔色もあまりよくなかったしな……」
>やはり精神面に相当のダメージを負っているのだろうか。
>アイギスは機械の体を持っているのにも関わらず、それと同時に人間のような心を持っている。
>それは前から知っていたことだ。
>だがそれは、相当繊細なものだったのだと今回の件で理解した……
>もしかしたら、アイギスには人間よりも脆い部分があるのかもしれない。
美鶴「そういう訳でアイギスはしばらく寮に戻らない」
鳴上「……」
鳴上「アイギスがこうなった原因の心当たり、桐条さんは少なからず解っているんじゃないですか?」
美鶴「……」
美鶴「そうだな。君の言う通りだ」
メティス「そういえば、美鶴さんは昨日、アイギス姉さんとふたりっきりで何かを話していましたね?」
メティス「それももしかして関係があるんですか?」
メティス「それまでは、元気はなくとも体調不良だなんて言ってもいなかったし」
>たしかに昨夜、美鶴はアイギスに話があると呼び止めていた気がする。
>メティスが言っているのはその事だろう。
美鶴「……」
鳴上「いったい何の話をしていたんですか?」
鳴上「教えてください、俺たちにも」
>まるで美鶴を責めるような強い語調でそう聞いた。
学生寮 ラウンジ
>天田と諒を除いた特別課外活動部のメンバーがラウンジに揃った。
>それぞれ腰を落ち着け、美鶴が話を切り出すまでには少し間があった。
美鶴「……さて、みんなが気にしているアイギスの容態だが」
美鶴「所員の話だと、アイギスの体には損傷も何も起こっていないらしい」
鳴上「え?」
ラビリス「それってつまり、結局なんでもないって事?」
美鶴「そういう事だな」
メティス「じゃあなんでわざわざ数日かけてラボでメンテを?」
美鶴「どこも悪くないのにアイギス自身が不調を訴えてる詳しい原因を調べるつもりのようだ」
美鶴「アイギスは何処も悪くないと検査でわかったあとも具合がよくないとこぼしていた。これを放っておく訳にはいかないだろう?」
美鶴「顔色もあまりよくなかったしな……」
>やはり精神面に相当のダメージを負っているのだろうか。
>アイギスは機械の体を持っているのにも関わらず、それと同時に人間のような心を持っている。
>それは前から知っていたことだ。
>だがそれは、相当繊細なものだったのだと今回の件で理解した……
>もしかしたら、アイギスには人間よりも脆い部分があるのかもしれない。
美鶴「そういう訳でアイギスはしばらく寮に戻らない」
鳴上「……」
鳴上「アイギスがこうなった原因の心当たり、桐条さんは少なからず解っているんじゃないですか?」
美鶴「……」
美鶴「そうだな。君の言う通りだ」
メティス「そういえば、美鶴さんは昨日、アイギス姉さんとふたりっきりで何かを話していましたね?」
メティス「それももしかして関係があるんですか?」
メティス「それまでは、元気はなくとも体調不良だなんて言ってもいなかったし」
>たしかに昨夜、美鶴はアイギスに話があると呼び止めていた気がする。
>メティスが言っているのはその事だろう。
美鶴「……」
鳴上「いったい何の話をしていたんですか?」
鳴上「教えてください、俺たちにも」
>まるで美鶴を責めるような強い語調でそう聞いた。
710:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/07/15(日) 19:53:18.94:ukI5z0/00 (1/2)
ゴウトにゃん!
ゴウトにゃん!
711: ◆Hw7XKfELws:2012/07/15(日) 19:57:16.03:RwaEt+JLo (10/11)
美鶴「……。そうは言っても、君たちももう大体察しはついているんじゃないのか?」
美鶴「私が昨日アイギスに話したのは、君たちのクラスメートである望月綾時についての事だよ」
美鶴「アイギスの話だと、伊織や天田からも聞いたようだな? 私たちがかつて、望月綾時という名の少年と出会っていることについて」
鳴上「はい。ほんの少しだけですけれど」
鳴上「それで、望月がどうしたんですか? 俺の知る望月は、桐条さんたちの知っている望月綾時とはまったくの別人です」
鳴上「もう何度か言っていますが、それでも何度でも言います。桐条さんたちが貴女たちの知る望月綾時と何があったのかはわからないけど、でも」
鳴上「それは、俺のクラスにいる望月綾時とはまったく関係のない事です」
鳴上「望月の態度から見ても、それは断言出来ると思います」
美鶴「断言出来ると思う、か。……そうだな」
美鶴「私がアイギスに昨日話したのも、そういった事だった」
鳴上「……え?」
美鶴「君たちが旅行に行っている間に調べさせてもらったんだよ。君たちのクラスメートの望月綾時についてな」
美鶴「国籍、出身地、生年月日、血液型、今まで滞在していた場所、通っていた学校、両親の素性とその家系……」
美鶴「彼のパーソナルデータや彼を構成する環境など、調べられる範囲の事は調べに調べた」
美鶴「結果、現在月光館学園高等科3-Aに所属している望月綾時は、我らの知る望月綾時とはまったくの別人である事が明らかになった」
鳴上「……ほら。そうでしょう?」
美鶴「しかし、……それがアイギスを余計に混乱させてしまったようなんだ」
鳴上・メティス・ラビリス「!!」
美鶴「彼は違う人間だ。そう知識で理解は出来ても、心がおいつけない」
美鶴「彼が彼でないのならば何故あんなにも似た人間が、今になって私たちの目の前に? これは偶然なの?」
美鶴「きっと、そういった思考がアイギスの中で巡ってしまったのだろう」
美鶴「実際、私もまだ少し納得出来ていない部分がある。本来なら安心すべき筈なのに……」
鳴上「どうして。どうしてそこまでしておいて、信じられないんですか?」
鳴上「変ですよ、こんなの……」
美鶴「……私にもわからない。ただ」
美鶴「私たちにとって、望月綾時という存在は容認出来ない……してはいけないものなんだ」
美鶴「今、私に言えることはこのくらいだ。これ以上のことはアイギスに口止めされているし、それ以前に私自身が安易に話していい事ではないと考えている」
美鶴「それは、天田も伊織も同じことだろう。だから、聞いても無駄と理解して欲しい」
メティス「そんな……」
美鶴「……メティス。君ならもしくは、いずれ気付いてしまう日がくるかもしれない。だが、それでも……」
メティス「え? それはどういう……」
美鶴「……」
美鶴「すまない。私もまだ気持ちの整理がつかないんだ。今日のところはこれで失礼させてもらうよ」
>美鶴は辛そうに表情を歪めたまま寮から出ていった。
>……話を聞けば聞くほどに、大事になっている気がする。
>いくらなんでも、大袈裟になりすぎている……
>ふたりの望月綾時。
>彼らに関連性がないと、なぜここまで断言したくないのか。
>……断言したくてもできないのか。
>彼女たちの心を覆っている霧が、その底にある真実を教えてくれない。
美鶴「……。そうは言っても、君たちももう大体察しはついているんじゃないのか?」
美鶴「私が昨日アイギスに話したのは、君たちのクラスメートである望月綾時についての事だよ」
美鶴「アイギスの話だと、伊織や天田からも聞いたようだな? 私たちがかつて、望月綾時という名の少年と出会っていることについて」
鳴上「はい。ほんの少しだけですけれど」
鳴上「それで、望月がどうしたんですか? 俺の知る望月は、桐条さんたちの知っている望月綾時とはまったくの別人です」
鳴上「もう何度か言っていますが、それでも何度でも言います。桐条さんたちが貴女たちの知る望月綾時と何があったのかはわからないけど、でも」
鳴上「それは、俺のクラスにいる望月綾時とはまったく関係のない事です」
鳴上「望月の態度から見ても、それは断言出来ると思います」
美鶴「断言出来ると思う、か。……そうだな」
美鶴「私がアイギスに昨日話したのも、そういった事だった」
鳴上「……え?」
美鶴「君たちが旅行に行っている間に調べさせてもらったんだよ。君たちのクラスメートの望月綾時についてな」
美鶴「国籍、出身地、生年月日、血液型、今まで滞在していた場所、通っていた学校、両親の素性とその家系……」
美鶴「彼のパーソナルデータや彼を構成する環境など、調べられる範囲の事は調べに調べた」
美鶴「結果、現在月光館学園高等科3-Aに所属している望月綾時は、我らの知る望月綾時とはまったくの別人である事が明らかになった」
鳴上「……ほら。そうでしょう?」
美鶴「しかし、……それがアイギスを余計に混乱させてしまったようなんだ」
鳴上・メティス・ラビリス「!!」
美鶴「彼は違う人間だ。そう知識で理解は出来ても、心がおいつけない」
美鶴「彼が彼でないのならば何故あんなにも似た人間が、今になって私たちの目の前に? これは偶然なの?」
美鶴「きっと、そういった思考がアイギスの中で巡ってしまったのだろう」
美鶴「実際、私もまだ少し納得出来ていない部分がある。本来なら安心すべき筈なのに……」
鳴上「どうして。どうしてそこまでしておいて、信じられないんですか?」
鳴上「変ですよ、こんなの……」
美鶴「……私にもわからない。ただ」
美鶴「私たちにとって、望月綾時という存在は容認出来ない……してはいけないものなんだ」
美鶴「今、私に言えることはこのくらいだ。これ以上のことはアイギスに口止めされているし、それ以前に私自身が安易に話していい事ではないと考えている」
美鶴「それは、天田も伊織も同じことだろう。だから、聞いても無駄と理解して欲しい」
メティス「そんな……」
美鶴「……メティス。君ならもしくは、いずれ気付いてしまう日がくるかもしれない。だが、それでも……」
メティス「え? それはどういう……」
美鶴「……」
美鶴「すまない。私もまだ気持ちの整理がつかないんだ。今日のところはこれで失礼させてもらうよ」
>美鶴は辛そうに表情を歪めたまま寮から出ていった。
>……話を聞けば聞くほどに、大事になっている気がする。
>いくらなんでも、大袈裟になりすぎている……
>ふたりの望月綾時。
>彼らに関連性がないと、なぜここまで断言したくないのか。
>……断言したくてもできないのか。
>彼女たちの心を覆っている霧が、その底にある真実を教えてくれない。
712: ◆Hw7XKfELws:2012/07/15(日) 19:58:12.51:RwaEt+JLo (11/11)
終わります。また次回。
終わります。また次回。
713:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/07/15(日) 20:09:38.13:ukI5z0/00 (2/2)
乙!
乙!
714:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/07/15(日) 20:11:58.02:yEKaxh4AO (1/1)
乙
乙
715:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/15(日) 20:56:58.48:++YJXZh70 (2/2)
ライドウのゴウトにゃんまで出てきたか…。
そして、メティスちんがいずれ気付いてしまうかもってことは、
少なからずFESメティスとこのSSのメティスには繋がりはあるのかな。
なんやわからんくなってきた。
ライドウのゴウトにゃんまで出てきたか…。
そして、メティスちんがいずれ気付いてしまうかもってことは、
少なからずFESメティスとこのSSのメティスには繋がりはあるのかな。
なんやわからんくなってきた。
716:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/07/15(日) 21:05:04.36:5zvxU58r0 (1/1)
乙
乙
717:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県):2012/07/15(日) 21:34:24.19:FCJFJU/Po (1/1)
ゴウトにゃんってことは・・・
どういう風に絡んでくるか楽しみだ
乙
ゴウトにゃんってことは・・・
どういう風に絡んでくるか楽しみだ
乙
718:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/07/16(月) 01:37:38.97:/V5nf9sT0 (1/1)
ここにきて霧という表現がすごく好きだな。
乙
ここにきて霧という表現がすごく好きだな。
乙
719:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/16(月) 01:44:25.91:vQW3TNwwo (1/1)
アイギス…
乙
アイギス…
乙
720:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/16(月) 03:12:59.09:AIWTEi7t0 (1/1)
P3メンバーのマヨナカテレビふらぐ
か?
p3メンバーが番長を好きになる可能性も微レ存?
ってか、コミュランク今どうなってんだ?
P3メンバーのマヨナカテレビふらぐ
か?
p3メンバーが番長を好きになる可能性も微レ存?
ってか、コミュランク今どうなってんだ?
721:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/07/16(月) 08:46:18.33:JgDOz+Vso (1/1)
番長ハーレムは勘弁だわ
番長ハーレムは勘弁だわ
722:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/17(火) 02:50:20.98:a/eqACGd0 (1/1)
真女神転生のパスカルだと理解しているのに・・・
トロピカルヤッホーのパスカルで脳内再生されてしまうorz
首輪をしたパスカルが四つん這いでワンワン・・・
ごめん俺病んでるみたい・・・
真女神転生のパスカルだと理解しているのに・・・
トロピカルヤッホーのパスカルで脳内再生されてしまうorz
首輪をしたパスカルが四つん這いでワンワン・・・
ごめん俺病んでるみたい・・・
723:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/07/17(火) 23:54:07.01:8O60Q7+K0 (1/1)
ライドウ出てほしいけどポン刀腰にぶら下げて、懐にはリボルバーだからな。
違う意味でヤバすぎww
ライドウ出てほしいけどポン刀腰にぶら下げて、懐にはリボルバーだからな。
違う意味でヤバすぎww
724:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/07/19(木) 22:01:25.32:t4CMIJLTo (1/1)
現代のライドウが出るとするとその辺(装備とか)どうなるだろうね
楽しみだ
現代のライドウが出るとするとその辺(装備とか)どうなるだろうね
楽しみだ
725:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/20(金) 00:39:27.41:WcMGsRKD0 (1/1)
因みに、p4メンバーのコミュランクはどうなってんだ?
全員MAXなのか?
後、番長のステータスも
因みに、p4メンバーのコミュランクはどうなってんだ?
全員MAXなのか?
後、番長のステータスも
726:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/20(金) 01:48:52.14:cMUzS1730 (1/1)
>>725
トゥルーエンドじゃなかったっぽいし、今の今まで女性陣の好意に気付いてないから
少なくとも捜査隊メンバー女性陣のコミュMAXの可能性は低そうだ。
ステータスはソコソコありそうだが…。
>>725
トゥルーエンドじゃなかったっぽいし、今の今まで女性陣の好意に気付いてないから
少なくとも捜査隊メンバー女性陣のコミュMAXの可能性は低そうだ。
ステータスはソコソコありそうだが…。
727:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/20(金) 02:54:46.08:InqtJlVIO (1/1)
>>726
そうか?
コミュはマスターしたけど、真エンドにいってないだけとか。
りせのペルソナってカンゼオンじゃなかった?
>>726
そうか?
コミュはマスターしたけど、真エンドにいってないだけとか。
りせのペルソナってカンゼオンじゃなかった?
728:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/21(土) 00:37:35.83:ZmSvt8dM0 (1/1)
>>727
前スレによるとカンゼオンになってたね。
しかし、りせコミュMAXなら、友達ENDだったとしても、>>676の反応はない気がする。
そこも記憶が飛んだか?
>>727
前スレによるとカンゼオンになってたね。
しかし、りせコミュMAXなら、友達ENDだったとしても、>>676の反応はない気がする。
そこも記憶が飛んだか?
729:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/07/21(土) 06:38:21.28:m3CNlj+c0 (1/1)
完全にゲーム通りの道筋通ったとは限らないんじゃね?
完全にゲーム通りの道筋通ったとは限らないんじゃね?
730:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/21(土) 08:27:35.65:5yyl25BZ0 (1/1)
何か、急にじゃ無いけど展開がガラッと変わるのが面白い。
あと、やっぱりダンテさんと、人修羅が出て来て欲しい。
それと、さっきからやたらと、キタローにむけて、この字幕が頭をよぎる。
死の安らぎは 等しく訪れよう
人に非ずとも 悪魔に非ずとも
大いなる意思の導きにて
大いなる意思と大いなる封印って似てね?…導き? 何かある気が…
?
何か、急にじゃ無いけど展開がガラッと変わるのが面白い。
あと、やっぱりダンテさんと、人修羅が出て来て欲しい。
それと、さっきからやたらと、キタローにむけて、この字幕が頭をよぎる。
死の安らぎは 等しく訪れよう
人に非ずとも 悪魔に非ずとも
大いなる意思の導きにて
大いなる意思と大いなる封印って似てね?…導き? 何かある気が…
?
731:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/07/21(土) 10:17:30.62:UP27qZCV0 (1/1)
これってアニメの番長って設定でなかったっけ?
これってアニメの番長って設定でなかったっけ?
732: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:41:32.54:HRyJnwj6o (1/20)
【夜】
自室
>……
>今夜はいつもより早めにベッドへ横になったのにも関わらずなかなか眠る事が出来ない。
>蒸し暑く寝苦しいというのもあるが……
>だがそれ以上に、気がかりな事があるせいでそんな事になっているのは、自分でも理解しきっている事だった。
鳴上「……はぁ」
イヤホンの少年「眠れない? これでもう二十回目の溜息だけど」
鳴上「……。まあな」
イヤホンの少年「……」
イヤホンの少年「突然現れても、それほど驚かなくなったね」
鳴上「まあな」
鳴上「……はぁ」
イヤホンの少年「……」
>イヤホンの少年がいつの間にか現れてベッドに腰掛けながらこちらへと話しかけてくる。
>彼の言う通りこんな風にここで会話するのももう慣れてしまったのは確かに事実だが、今の状態は彼の事を気にしている余裕すらないからと言った方が正しいのかもしれない。
イヤホンの少年「……余計な詮索はしない方がいい」
鳴上「!」
イヤホンの少年「前に言っただろ。理解しなくていいって」
イヤホンの少年「知ってしまったら君もきっと、もっと混乱する」
鳴上「そんな事、聞いてみなきゃわからないだろ!」
>ベッドから起き上がり、思わず声を荒げてしまった。
鳴上「どうしてアイギスも桐条さんも話してくれないんだ……」
鳴上「俺たちは仲間なんじゃないのか? それとも……」
>そうだと思い込んでいたのは自分だけ、という事なのだろうか。
【夜】
自室
>……
>今夜はいつもより早めにベッドへ横になったのにも関わらずなかなか眠る事が出来ない。
>蒸し暑く寝苦しいというのもあるが……
>だがそれ以上に、気がかりな事があるせいでそんな事になっているのは、自分でも理解しきっている事だった。
鳴上「……はぁ」
イヤホンの少年「眠れない? これでもう二十回目の溜息だけど」
鳴上「……。まあな」
イヤホンの少年「……」
イヤホンの少年「突然現れても、それほど驚かなくなったね」
鳴上「まあな」
鳴上「……はぁ」
イヤホンの少年「……」
>イヤホンの少年がいつの間にか現れてベッドに腰掛けながらこちらへと話しかけてくる。
>彼の言う通りこんな風にここで会話するのももう慣れてしまったのは確かに事実だが、今の状態は彼の事を気にしている余裕すらないからと言った方が正しいのかもしれない。
イヤホンの少年「……余計な詮索はしない方がいい」
鳴上「!」
イヤホンの少年「前に言っただろ。理解しなくていいって」
イヤホンの少年「知ってしまったら君もきっと、もっと混乱する」
鳴上「そんな事、聞いてみなきゃわからないだろ!」
>ベッドから起き上がり、思わず声を荒げてしまった。
鳴上「どうしてアイギスも桐条さんも話してくれないんだ……」
鳴上「俺たちは仲間なんじゃないのか? それとも……」
>そうだと思い込んでいたのは自分だけ、という事なのだろうか。
733: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:42:18.75:HRyJnwj6o (2/20)
イヤホンの少年「仲間だからこそ話せない、話したくないって事もあるんだろう」
イヤホンの少年「きっと、彼女たちは事情を知らない君たちに、余計な気を使わせたくないんだろうね」
イヤホンの少年「それこそが君にとって気を揉む原因になっているのは俺の目から見てもわかるけど」
イヤホンの少年「……それでも」
イヤホンの少年「それでも君が彼女たちの事を仲間だと思っているのなら、今は彼女たちの気持ちを尊重してあげてほしい」
イヤホンの少年「……時間がね、必要なんだと思う」
鳴上「……」
イヤホンの少年「……ごめん」
鳴上「どうして……どうして、お前が謝るんだ?」
鳴上「どうして、お前がそこまでいう必要があるんだ?」
イヤホンの少年「……」
>イヤホンの少年は口を噤み視線を落として……それから、どこか悲しげな困ったような笑みを浮かべた。
>今まで無表情でいる事が多かった彼にしては珍しい表情の変化だと思った。
>……そして、その憂いに満ちた笑顔に同調するかのように、悲しい気分になったような気がした。
鳴上「……」
鳴上「わかった。俺だって納得できた訳じゃないけど、アイギスや桐条さんにとっても辛い事、なんだよな?」
鳴上「それに……」
>イヤホンの少年の方へ視線を向けた。
>……理由はわからないがなんとなく、彼にとってもこれは無視できない話なのだろうという事が薄々感じられる。
>それを口に出してもいいのかどうか、少し迷った。
イヤホンの少年「ごめん。……いや」
イヤホンの少年「ありがとう」
>彼は改めて謝罪の言葉とそれに続く礼の言葉を小さく口にして、自分の手を取ろうとした。
>しかし、透けた彼の体が触れる事を許す筈もなく……ただ素通りするだけだった。
>その様子にまた一瞬、悲しげな笑みを見せて、彼は姿を消した。
>『ⅩⅢ 死神 謎のイヤホンの少年』のランクが7になった
>……改めて思う。
>彼はいったい何者なのだろう、と。
>しかし、彼がどこの誰であろうとあの瞳に込められた色はおそらく……
>友人や家族、あるいは仲間に向けるようなそれと同じもののような、そんな気がしていた。
>……
イヤホンの少年「仲間だからこそ話せない、話したくないって事もあるんだろう」
イヤホンの少年「きっと、彼女たちは事情を知らない君たちに、余計な気を使わせたくないんだろうね」
イヤホンの少年「それこそが君にとって気を揉む原因になっているのは俺の目から見てもわかるけど」
イヤホンの少年「……それでも」
イヤホンの少年「それでも君が彼女たちの事を仲間だと思っているのなら、今は彼女たちの気持ちを尊重してあげてほしい」
イヤホンの少年「……時間がね、必要なんだと思う」
鳴上「……」
イヤホンの少年「……ごめん」
鳴上「どうして……どうして、お前が謝るんだ?」
鳴上「どうして、お前がそこまでいう必要があるんだ?」
イヤホンの少年「……」
>イヤホンの少年は口を噤み視線を落として……それから、どこか悲しげな困ったような笑みを浮かべた。
>今まで無表情でいる事が多かった彼にしては珍しい表情の変化だと思った。
>……そして、その憂いに満ちた笑顔に同調するかのように、悲しい気分になったような気がした。
鳴上「……」
鳴上「わかった。俺だって納得できた訳じゃないけど、アイギスや桐条さんにとっても辛い事、なんだよな?」
鳴上「それに……」
>イヤホンの少年の方へ視線を向けた。
>……理由はわからないがなんとなく、彼にとってもこれは無視できない話なのだろうという事が薄々感じられる。
>それを口に出してもいいのかどうか、少し迷った。
イヤホンの少年「ごめん。……いや」
イヤホンの少年「ありがとう」
>彼は改めて謝罪の言葉とそれに続く礼の言葉を小さく口にして、自分の手を取ろうとした。
>しかし、透けた彼の体が触れる事を許す筈もなく……ただ素通りするだけだった。
>その様子にまた一瞬、悲しげな笑みを見せて、彼は姿を消した。
>『ⅩⅢ 死神 謎のイヤホンの少年』のランクが7になった
>……改めて思う。
>彼はいったい何者なのだろう、と。
>しかし、彼がどこの誰であろうとあの瞳に込められた色はおそらく……
>友人や家族、あるいは仲間に向けるようなそれと同じもののような、そんな気がしていた。
>……
734: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:43:25.54:HRyJnwj6o (3/20)
07/25(水) 晴れ
【朝】
>……昨夜はあれからいつの間にか寝てしまったらしい。
>が、やはり暑さで目が覚めてしまったようだ。
>もう、起きることにしよう。
>とはいっても、今日は特に予定がある訳でもない。
>さて、どうしようか……
>……
学生寮 ラウンジ
>着替えを済ませ一階に下りるとラウンジのソファに腰をかけている美鶴の姿があった。
>テーブルの上にはティーポットとティーカップが置かれている。
>紅茶の馨しい香りが僅かに鼻をくすぐった。
美鶴「……ん。おはよう、鳴上」
鳴上「おはようございます」
>美鶴から声がかかるまでに少しの間があった。
>何か考え事でもしていたのか、こちらの事に気付くまで時間があったようだ。
美鶴「……」
鳴上「……」
>昨日の今日だ……なんだか気まずい。
>美鶴がなにも喋らないので自然とこちらも黙ってしまう。
>それからまた少しの間を置いてから、この空気に耐えられなくなって声をかける事にした。
鳴上「向かい側、いいですか?」
美鶴「……ああ」
>美鶴と反対側のソファに腰を下ろした。
美鶴「君もどうだ?」
鳴上「いただきます」
>美鶴はトレイに伏せてあった別のティーカップへポットに残っていた紅茶を注いでくれると目の前に置いてくれた。
鳴上「……ん、やっぱり美味しいですね」
美鶴「そうか、よかった」
美鶴「……」
鳴上「……。桐条さん」
美鶴「な、なんだ?」
鳴上「俺、例の件についてはもうこっちからは聞かないことに決めました」
美鶴「!」
07/25(水) 晴れ
【朝】
>……昨夜はあれからいつの間にか寝てしまったらしい。
>が、やはり暑さで目が覚めてしまったようだ。
>もう、起きることにしよう。
>とはいっても、今日は特に予定がある訳でもない。
>さて、どうしようか……
>……
学生寮 ラウンジ
>着替えを済ませ一階に下りるとラウンジのソファに腰をかけている美鶴の姿があった。
>テーブルの上にはティーポットとティーカップが置かれている。
>紅茶の馨しい香りが僅かに鼻をくすぐった。
美鶴「……ん。おはよう、鳴上」
鳴上「おはようございます」
>美鶴から声がかかるまでに少しの間があった。
>何か考え事でもしていたのか、こちらの事に気付くまで時間があったようだ。
美鶴「……」
鳴上「……」
>昨日の今日だ……なんだか気まずい。
>美鶴がなにも喋らないので自然とこちらも黙ってしまう。
>それからまた少しの間を置いてから、この空気に耐えられなくなって声をかける事にした。
鳴上「向かい側、いいですか?」
美鶴「……ああ」
>美鶴と反対側のソファに腰を下ろした。
美鶴「君もどうだ?」
鳴上「いただきます」
>美鶴はトレイに伏せてあった別のティーカップへポットに残っていた紅茶を注いでくれると目の前に置いてくれた。
鳴上「……ん、やっぱり美味しいですね」
美鶴「そうか、よかった」
美鶴「……」
鳴上「……。桐条さん」
美鶴「な、なんだ?」
鳴上「俺、例の件についてはもうこっちからは聞かないことに決めました」
美鶴「!」
735: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:44:44.63:HRyJnwj6o (4/20)
鳴上「気にならなくなった訳じゃないんですけどね。でも、桐条さんもアイギスもどうしても話したくない、聞かせたくないっていうのなら……それはもう、仕方ないです」
美鶴「鳴上……」
鳴上「……そうですよね。考えてみれば、誰にだってそういう事のひとつやふたつありますよね。俺だって……」
鳴上「……」
鳴上「だからいいんです。でももし、話してもいいと思える日がきたら、その時は聞かせてください」
鳴上「待ってますから」
美鶴「……」
美鶴「すまない。……ありがとう」
>美鶴は苦笑をこぼして短くそう呟いた。
美鶴「……」
美鶴「……そうだ、鳴上。屋久島の旅行はどうだった? 詳しい話を聞かせてくれないか」
>美鶴はこれ以上気まずい空気にしたくないのか、別の話題を切り出してきた。
>その気持ちを汲んで、美鶴に屋久島であった出来事をゆっくりと語り聞かせてひと時を過ごした。
>『Ⅲ 女帝 桐条美鶴』のランクが4になった
>……
美鶴「本当に楽しい旅行だったんだな。行けなかったのが残念になってきた」
鳴上「俺も出来れば桐条さんとも一緒に遊びたかったです」
鳴上(夏休みの間にもう一度くらい、遠出でなくてもいいからそういう機会があればいいんだけどな……)
鳴上「……あ、そういえば、行きの船で妙な写真が撮れたんですよ」
美鶴「妙な写真?」
鳴上「はい。ちょっと待っててください」
>部屋に例の写真をとりにいった。
>……
鳴上「これなんですけど」
美鶴「ふむ。……」
鳴上「俺の後ろにこの場にいなかった人の影が写って……」
美鶴「ん、どこにだ?」
鳴上「ここですよ、……って、あれ?」
鳴上「気にならなくなった訳じゃないんですけどね。でも、桐条さんもアイギスもどうしても話したくない、聞かせたくないっていうのなら……それはもう、仕方ないです」
美鶴「鳴上……」
鳴上「……そうですよね。考えてみれば、誰にだってそういう事のひとつやふたつありますよね。俺だって……」
鳴上「……」
鳴上「だからいいんです。でももし、話してもいいと思える日がきたら、その時は聞かせてください」
鳴上「待ってますから」
美鶴「……」
美鶴「すまない。……ありがとう」
>美鶴は苦笑をこぼして短くそう呟いた。
美鶴「……」
美鶴「……そうだ、鳴上。屋久島の旅行はどうだった? 詳しい話を聞かせてくれないか」
>美鶴はこれ以上気まずい空気にしたくないのか、別の話題を切り出してきた。
>その気持ちを汲んで、美鶴に屋久島であった出来事をゆっくりと語り聞かせてひと時を過ごした。
>『Ⅲ 女帝 桐条美鶴』のランクが4になった
>……
美鶴「本当に楽しい旅行だったんだな。行けなかったのが残念になってきた」
鳴上「俺も出来れば桐条さんとも一緒に遊びたかったです」
鳴上(夏休みの間にもう一度くらい、遠出でなくてもいいからそういう機会があればいいんだけどな……)
鳴上「……あ、そういえば、行きの船で妙な写真が撮れたんですよ」
美鶴「妙な写真?」
鳴上「はい。ちょっと待っててください」
>部屋に例の写真をとりにいった。
>……
鳴上「これなんですけど」
美鶴「ふむ。……」
鳴上「俺の後ろにこの場にいなかった人の影が写って……」
美鶴「ん、どこにだ?」
鳴上「ここですよ、……って、あれ?」
736: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:46:13.20:HRyJnwj6o (5/20)
>美鶴に渡した写真をよく見てみると、確かに一緒に写っていた筈のあのイヤホンの少年の影が消えている……
鳴上「う、嘘だろ……」
美鶴「何かの見間違いじゃないのか? それよりも、この金髪の少年は誰なんだ。こんな人物、君の仲間にいたか?」
鳴上「え? ああ、桐条さんもコイツのこの姿を見るのは初めてですよね。クマですよクマ」
美鶴「クマ……というと、あのもふもふの着ぐるみっぽい彼か!? なんと、こんな中身が隠れていたとは……」
美鶴「実にブリリアントだな!」
鳴上「ブリリアントですよね」
鳴上(にしても、写真にいたと思えば消えてるとか、アイツ器用だな。……そうだ)
鳴上「あの、桐条さん」
美鶴「なんだ?」
鳴上「この寮、幽霊が出るっていう噂を聞いた事があるんですけど……」
美鶴「ここに幽霊が?」
鳴上「はい。月光館学園の男子生徒の霊が、っていう。それで、そんな話が出るような心当たりがあるかどうかちょっと気になって」
美鶴「男子生徒、の……」
鳴上「桐条さんも学生時代はここに住んでいたんですよね? 当時からそういう話、ありましたか?」
美鶴「……」
鳴上「桐条さん?」
>美鶴は黙って何か考え込んでしまった。
>こちらの声はもう届いていないような、そんな感じだ。
鳴上「あの……」
メティス「おはようございます」
ラビリス「おはようー」
鳴上「あ、おはよう」
美鶴「……! ようやく出てきたか。おはよう」
>美鶴はハッとなって顔を上げ、二人の方へ視線を移した。
美鶴「メティス、ラビリス。君たちに少し話がある」
メティス「……。はい、なんでしょうか」
ラビリス「……」
>メティスもラビリスも昨日の事があったせいか、美鶴に対して態度が何処かぎこちないようだ。
美鶴「君たちもそろそろ一度メンテにいかないか?」
ラビリス「メンテ?」
美鶴「ああ、そうだ。昨日のアイギスの様子を見て、君たちの事も心配になってきてしまってな」
美鶴「まあ、二人はどこも不調そうな様子は見られないが……」
メティス「……」
美鶴「……いや、そうでもなかったか。すまない」
メティス「私は何処にも不調なんてありません」
美鶴「……」
>美鶴に渡した写真をよく見てみると、確かに一緒に写っていた筈のあのイヤホンの少年の影が消えている……
鳴上「う、嘘だろ……」
美鶴「何かの見間違いじゃないのか? それよりも、この金髪の少年は誰なんだ。こんな人物、君の仲間にいたか?」
鳴上「え? ああ、桐条さんもコイツのこの姿を見るのは初めてですよね。クマですよクマ」
美鶴「クマ……というと、あのもふもふの着ぐるみっぽい彼か!? なんと、こんな中身が隠れていたとは……」
美鶴「実にブリリアントだな!」
鳴上「ブリリアントですよね」
鳴上(にしても、写真にいたと思えば消えてるとか、アイツ器用だな。……そうだ)
鳴上「あの、桐条さん」
美鶴「なんだ?」
鳴上「この寮、幽霊が出るっていう噂を聞いた事があるんですけど……」
美鶴「ここに幽霊が?」
鳴上「はい。月光館学園の男子生徒の霊が、っていう。それで、そんな話が出るような心当たりがあるかどうかちょっと気になって」
美鶴「男子生徒、の……」
鳴上「桐条さんも学生時代はここに住んでいたんですよね? 当時からそういう話、ありましたか?」
美鶴「……」
鳴上「桐条さん?」
>美鶴は黙って何か考え込んでしまった。
>こちらの声はもう届いていないような、そんな感じだ。
鳴上「あの……」
メティス「おはようございます」
ラビリス「おはようー」
鳴上「あ、おはよう」
美鶴「……! ようやく出てきたか。おはよう」
>美鶴はハッとなって顔を上げ、二人の方へ視線を移した。
美鶴「メティス、ラビリス。君たちに少し話がある」
メティス「……。はい、なんでしょうか」
ラビリス「……」
>メティスもラビリスも昨日の事があったせいか、美鶴に対して態度が何処かぎこちないようだ。
美鶴「君たちもそろそろ一度メンテにいかないか?」
ラビリス「メンテ?」
美鶴「ああ、そうだ。昨日のアイギスの様子を見て、君たちの事も心配になってきてしまってな」
美鶴「まあ、二人はどこも不調そうな様子は見られないが……」
メティス「……」
美鶴「……いや、そうでもなかったか。すまない」
メティス「私は何処にも不調なんてありません」
美鶴「……」
737: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:47:26.79:HRyJnwj6o (6/20)
美鶴「とにかく、今日は少し変わった人物を招いてのメンテが行われる。君たちも是非一緒に受けてほしい」
メティス「姉さんも一緒、ですか?」
美鶴「ああ」
メティス「……。自分の事はともかく、この目でアイギス姉さんの今の様子をきちんと確認したいです」
メティス「行きましょう、ラビリス姉さん」
ラビリス「せやな。アイギスの顔が見たいのはウチも一緒や。行こう」
美鶴「よし、では車を呼ぼう。少し待っていてくれ」
鳴上「……あの。俺も一緒について行ったらダメですか?」
美鶴「君も何処か調子が優れないのか? あいにく今日は人間の医者は……」
鳴上「いえ、そうじゃなくて。俺もアイギスの様子を見たいんです。お願いします」
美鶴「……そういう事か。わかった、一緒にいこう」
>……
桐条のラボ
>病的なまでに白い長い廊下を抜けた先にある部屋の中にアイギスはいた。
アイギス「!」
アイギス「みんな、どうしてここに!?」
アイギス「悠さんまで……」
メティス「私たちも一度チェックをしてもらう事になりました」
ラビリス「だから今日はアイギスと一緒やで」
アイギス「そう、ですか……」
>アイギスはメンテのために機材やコードなどで繋がれているような様子はなく普通にしていたが、美鶴が言っていたように顔色が優れないのが一目でわかった。
>そんなアイギスにメティスもラビリスもいつもの何気ない態度で接しているが、内心では当然不安に思っているのだろう……それが僅かに表情に出ているような気がした。
美鶴「二人はまずボディのチェックとメンテからだ。こちらへ来てくれ」
メティス「そうなんですか……わかりました。それじゃあ姉さん、すぐに戻りますから」
ラビリス「またな」
アイギス「はい、またあとで」
>メティスとラビリスは名残惜しそうにしながらも美鶴に連れられて部屋から出ていった。
>アイギスとふたりきりになった。
アイギス「……」
アイギス「悠さん、あの、私……」
>アイギスは申し訳なさそうなそんな表情をしつつ、その顔を逸らした。
>見られたくないのか、見たくないのか……どちらかはわからない。
美鶴「とにかく、今日は少し変わった人物を招いてのメンテが行われる。君たちも是非一緒に受けてほしい」
メティス「姉さんも一緒、ですか?」
美鶴「ああ」
メティス「……。自分の事はともかく、この目でアイギス姉さんの今の様子をきちんと確認したいです」
メティス「行きましょう、ラビリス姉さん」
ラビリス「せやな。アイギスの顔が見たいのはウチも一緒や。行こう」
美鶴「よし、では車を呼ぼう。少し待っていてくれ」
鳴上「……あの。俺も一緒について行ったらダメですか?」
美鶴「君も何処か調子が優れないのか? あいにく今日は人間の医者は……」
鳴上「いえ、そうじゃなくて。俺もアイギスの様子を見たいんです。お願いします」
美鶴「……そういう事か。わかった、一緒にいこう」
>……
桐条のラボ
>病的なまでに白い長い廊下を抜けた先にある部屋の中にアイギスはいた。
アイギス「!」
アイギス「みんな、どうしてここに!?」
アイギス「悠さんまで……」
メティス「私たちも一度チェックをしてもらう事になりました」
ラビリス「だから今日はアイギスと一緒やで」
アイギス「そう、ですか……」
>アイギスはメンテのために機材やコードなどで繋がれているような様子はなく普通にしていたが、美鶴が言っていたように顔色が優れないのが一目でわかった。
>そんなアイギスにメティスもラビリスもいつもの何気ない態度で接しているが、内心では当然不安に思っているのだろう……それが僅かに表情に出ているような気がした。
美鶴「二人はまずボディのチェックとメンテからだ。こちらへ来てくれ」
メティス「そうなんですか……わかりました。それじゃあ姉さん、すぐに戻りますから」
ラビリス「またな」
アイギス「はい、またあとで」
>メティスとラビリスは名残惜しそうにしながらも美鶴に連れられて部屋から出ていった。
>アイギスとふたりきりになった。
アイギス「……」
アイギス「悠さん、あの、私……」
>アイギスは申し訳なさそうなそんな表情をしつつ、その顔を逸らした。
>見られたくないのか、見たくないのか……どちらかはわからない。
738: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:48:45.64:HRyJnwj6o (7/20)
鳴上「いいよ、何も言わなくて」
アイギス「!」
鳴上「今はただ、アイギスに早く寮に帰ってきてほしい。それだけだから」
鳴上「……それを言いたくて」
アイギス「悠さん……」
>アイギスは目元を拭うような仕草を見せ、漸く視線を合わせてくれた。
アイギス「ありがとうございます」
アイギス「まだ時間がかかりそうだけど、でも……私、一日でも早くあの場所に戻れるようにします」
鳴上「ああ」
美鶴「待たせたな、アイギス」
>美鶴が部屋に戻ってきた。
美鶴「ついさっき先生が到着された。そろそろ始めるぞ」
アイギス「はい。わかりました」
鳴上「先生って?」
美鶴「アイギスの診察をしてくれるカウンセラーの方だよ。しかも我々の事にも精通している、な」
鳴上「俺たちの事にもって……まさか」
美鶴「ペルソナ使いだよ。同じ力を持つ者同士にしかわからない事もあるのかもしれない。そう思って特別にお呼びしたんだ」
鳴上「なるほど。ペルソナ使いのカウンセラーか……凄い肩書だ」
美鶴「どうぞ、こちらへ」
?「失礼します」
>美鶴が声をかけると部屋の外から人が一人入ってきた。
>……女性だ。
>ショートカットの髪型に、口元のほくろが印象的な美人の女性。
鳴上「園村先生!?」
麻希「え? ……ああ、鳴上くんか。びっくりした。なんかまた意外なところで会っちゃったね」
鳴上「まさか園村先生が?」
美鶴「そうだ。彼女がアイギスを診て下さる先生だ。普段は月光館学園でも仕事をされているからもしかしたらと思ってはいたが、やはり知り合いだったようだな」
鳴上「はい。先生にはお世話になってます」
>しかし、こんなところで会うとは本当に驚きだ。
>その上、ペルソナ使いだったとは……
>対して麻希は、口ではびっくりしたとは言うものの、全くそういう風には見えずにこやかに笑っている。
麻希「きっと縁があったらね、何処かで『仲間』として会う日もくるんじゃないかなって思ってたから」
>麻希はこちらの考えを見透かしているかのようにそう答える。
鳴上「という事は、俺がペルソナ使いだって事を既に気付いていたんですか?」
麻希「うん。共鳴でね」
鳴上「いいよ、何も言わなくて」
アイギス「!」
鳴上「今はただ、アイギスに早く寮に帰ってきてほしい。それだけだから」
鳴上「……それを言いたくて」
アイギス「悠さん……」
>アイギスは目元を拭うような仕草を見せ、漸く視線を合わせてくれた。
アイギス「ありがとうございます」
アイギス「まだ時間がかかりそうだけど、でも……私、一日でも早くあの場所に戻れるようにします」
鳴上「ああ」
美鶴「待たせたな、アイギス」
>美鶴が部屋に戻ってきた。
美鶴「ついさっき先生が到着された。そろそろ始めるぞ」
アイギス「はい。わかりました」
鳴上「先生って?」
美鶴「アイギスの診察をしてくれるカウンセラーの方だよ。しかも我々の事にも精通している、な」
鳴上「俺たちの事にもって……まさか」
美鶴「ペルソナ使いだよ。同じ力を持つ者同士にしかわからない事もあるのかもしれない。そう思って特別にお呼びしたんだ」
鳴上「なるほど。ペルソナ使いのカウンセラーか……凄い肩書だ」
美鶴「どうぞ、こちらへ」
?「失礼します」
>美鶴が声をかけると部屋の外から人が一人入ってきた。
>……女性だ。
>ショートカットの髪型に、口元のほくろが印象的な美人の女性。
鳴上「園村先生!?」
麻希「え? ……ああ、鳴上くんか。びっくりした。なんかまた意外なところで会っちゃったね」
鳴上「まさか園村先生が?」
美鶴「そうだ。彼女がアイギスを診て下さる先生だ。普段は月光館学園でも仕事をされているからもしかしたらと思ってはいたが、やはり知り合いだったようだな」
鳴上「はい。先生にはお世話になってます」
>しかし、こんなところで会うとは本当に驚きだ。
>その上、ペルソナ使いだったとは……
>対して麻希は、口ではびっくりしたとは言うものの、全くそういう風には見えずにこやかに笑っている。
麻希「きっと縁があったらね、何処かで『仲間』として会う日もくるんじゃないかなって思ってたから」
>麻希はこちらの考えを見透かしているかのようにそう答える。
鳴上「という事は、俺がペルソナ使いだって事を既に気付いていたんですか?」
麻希「うん。共鳴でね」
739: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:49:51.80:HRyJnwj6o (8/20)
>言われて気付いたが確かに麻希からじんわりとあたたかく優しいペルソナの共鳴を感じる。
>パオフゥの時に感じたものとはまた違った共鳴の仕方だ。
麻希「メティスさんとラビリスさんもそうでしょ?」
鳴上「はい。その通りです」
麻希「でもまさかロボットだっていうのは今回の話を聞くまで知らなかったな」
麻希「それで、今日お話するのは……そちらの?」
アイギス「アイギスです。今日はよろしくお願いします」
麻希「はい。よろしくお願いします」
麻希「じゃあ、向こうのお部屋に行きましょうか」
鳴上「先生、アイギスのこと……」
麻希「そんな顔しないで。大したことをする訳じゃない……大丈夫だから」
>麻希は肩にぽんと軽く手を置いて、こちらの不安まで消えてなくなってしまいそうに思えるくらいの柔らかくあたたかい笑みを向けた。
>麻希の優しい気持ちを感じる……
>『Ⅱ 女教皇 園村麻希』のランクが3になった
>麻希はアイギスと一緒に、隣の部屋へ続く扉を開いて中へと入っていった。
>そして二人の姿が消えると、今度は出入口の方から数人白衣を着た人間が現れる。
>彼らが部屋にあった機材を操作しイヤホンをつけると、麻希たちが入っていった方の部屋に面している壁が突然透明になった。
>まるでそこには壁などなかったかのように、机を挟んで向かい合って座る二人の様子がよく見えている。
鳴上「これは……!」
美鶴「あちら側からは見えていない。音声はマイクで拾ってイヤホンで聞きながら彼らも様子を窺ってくれている」
鳴上(刑事もののテレビドラマなんかで見る取調室のマジックミラーを覗いてるみたいな感じだな……)
>白衣の男たちもアイギスの不調の原因を探るためのラボにいる所員なのだろうか、彼らのしていることはあまり気持ちのいいものではないように感じた。
鳴上「……俺、帰りますね」
美鶴「もういいのか?」
鳴上「アイギスの顔を見れたから十分です。それに、これ以上ここにいても邪魔になるかもしれないし」
美鶴「そうか……。では、車で寮まで送らせよう」
>……
>言われて気付いたが確かに麻希からじんわりとあたたかく優しいペルソナの共鳴を感じる。
>パオフゥの時に感じたものとはまた違った共鳴の仕方だ。
麻希「メティスさんとラビリスさんもそうでしょ?」
鳴上「はい。その通りです」
麻希「でもまさかロボットだっていうのは今回の話を聞くまで知らなかったな」
麻希「それで、今日お話するのは……そちらの?」
アイギス「アイギスです。今日はよろしくお願いします」
麻希「はい。よろしくお願いします」
麻希「じゃあ、向こうのお部屋に行きましょうか」
鳴上「先生、アイギスのこと……」
麻希「そんな顔しないで。大したことをする訳じゃない……大丈夫だから」
>麻希は肩にぽんと軽く手を置いて、こちらの不安まで消えてなくなってしまいそうに思えるくらいの柔らかくあたたかい笑みを向けた。
>麻希の優しい気持ちを感じる……
>『Ⅱ 女教皇 園村麻希』のランクが3になった
>麻希はアイギスと一緒に、隣の部屋へ続く扉を開いて中へと入っていった。
>そして二人の姿が消えると、今度は出入口の方から数人白衣を着た人間が現れる。
>彼らが部屋にあった機材を操作しイヤホンをつけると、麻希たちが入っていった方の部屋に面している壁が突然透明になった。
>まるでそこには壁などなかったかのように、机を挟んで向かい合って座る二人の様子がよく見えている。
鳴上「これは……!」
美鶴「あちら側からは見えていない。音声はマイクで拾ってイヤホンで聞きながら彼らも様子を窺ってくれている」
鳴上(刑事もののテレビドラマなんかで見る取調室のマジックミラーを覗いてるみたいな感じだな……)
>白衣の男たちもアイギスの不調の原因を探るためのラボにいる所員なのだろうか、彼らのしていることはあまり気持ちのいいものではないように感じた。
鳴上「……俺、帰りますね」
美鶴「もういいのか?」
鳴上「アイギスの顔を見れたから十分です。それに、これ以上ここにいても邪魔になるかもしれないし」
美鶴「そうか……。では、車で寮まで送らせよう」
>……
740: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:51:21.64:HRyJnwj6o (9/20)
学生寮
天田「……あ!」
鳴上「ただいま、天田」
天田「鳴上さんか、よかった……おかえりなさい」
鳴上「どうかしたか?」
天田「いえ、その……」
>天田は両手にビニール袋をぶらさげている。
>その口からは食材や調味料などが見え隠れしていた。
鳴上「……ああ、また料理するのか」
天田「寮に誰もいないからチャンスかなって思って」
>天田は恥ずかしそうに笑っている。
鳴上「神郷さんは?」
天田「部屋に籠ってるのかなって思ったけど、出かけてるみたいですよ」
鳴上「コロマルもパスカルもいない。って事は、神郷さんが散歩に連れてってくれてるのか」
天田「あれ、そうなんですか? 僕はてっきり鳴上さんか誰かと一緒なのかと……」
天田「まあ、とにかく寮には僕たちしかいないし、よかったら一緒に昼食いかがですか?」
鳴上「そうだな。いただこうか」
>……
>天田の作る昼食の仕込みを軽く手伝う事になった。
>本当は分担して作った方が早く済むしいいかと思ったのだが、天田が一人で作りたいと思っているようだったので、少し準備を手伝ってからは天田の傍らでその様子を見守りながら待つ事にした。
>その間、さっきまでの事を簡単に天田に話した。
天田「そっか……アイギスさん、早く戻ってこれるといいですね」
鳴上「そうだな」
天田「……」
>天田もこうなった経緯に何か思うところがあるのか、手が止まり暫くの間何も言わなくなってしまった。
天田「鳴上さん、美鶴さんたちから綾時さんについての詳しいこと結局何も聞かされてないでしょ?」
鳴上「ん、まあな……」
天田「やっぱり。僕からしても、その判断は間違ってないと思ってます。鳴上さんには関係ない事、っていう言い方は横暴かもしれないけど……」
天田「だから、僕に聞かれても何も答えられないって事、先に謝っておきます。ごめんなさい」
鳴上「それも解ってる。桐条さんに言われたからな」
天田「そうですか。……でもね」
天田「ちょっと気にしすぎなんじゃって感じてもしています。こんな事、アイギスさんたちの前で言ったら怒られるかもしれないけど」
天田「あの綾時さんが僕たちの知る綾時さんじゃないって本人がそう言ってるなら、もうそれでいいじゃないですか」
天田「僕には綾時さんの言ってる事が嘘のようには見えませんでしたしね」
天田「多分、順平さんもそんな風に考えてるんじゃないかな」
天田「……僕としてはもうこれ以上この事について深く考えたくないっていうのが本音ですね」
学生寮
天田「……あ!」
鳴上「ただいま、天田」
天田「鳴上さんか、よかった……おかえりなさい」
鳴上「どうかしたか?」
天田「いえ、その……」
>天田は両手にビニール袋をぶらさげている。
>その口からは食材や調味料などが見え隠れしていた。
鳴上「……ああ、また料理するのか」
天田「寮に誰もいないからチャンスかなって思って」
>天田は恥ずかしそうに笑っている。
鳴上「神郷さんは?」
天田「部屋に籠ってるのかなって思ったけど、出かけてるみたいですよ」
鳴上「コロマルもパスカルもいない。って事は、神郷さんが散歩に連れてってくれてるのか」
天田「あれ、そうなんですか? 僕はてっきり鳴上さんか誰かと一緒なのかと……」
天田「まあ、とにかく寮には僕たちしかいないし、よかったら一緒に昼食いかがですか?」
鳴上「そうだな。いただこうか」
>……
>天田の作る昼食の仕込みを軽く手伝う事になった。
>本当は分担して作った方が早く済むしいいかと思ったのだが、天田が一人で作りたいと思っているようだったので、少し準備を手伝ってからは天田の傍らでその様子を見守りながら待つ事にした。
>その間、さっきまでの事を簡単に天田に話した。
天田「そっか……アイギスさん、早く戻ってこれるといいですね」
鳴上「そうだな」
天田「……」
>天田もこうなった経緯に何か思うところがあるのか、手が止まり暫くの間何も言わなくなってしまった。
天田「鳴上さん、美鶴さんたちから綾時さんについての詳しいこと結局何も聞かされてないでしょ?」
鳴上「ん、まあな……」
天田「やっぱり。僕からしても、その判断は間違ってないと思ってます。鳴上さんには関係ない事、っていう言い方は横暴かもしれないけど……」
天田「だから、僕に聞かれても何も答えられないって事、先に謝っておきます。ごめんなさい」
鳴上「それも解ってる。桐条さんに言われたからな」
天田「そうですか。……でもね」
天田「ちょっと気にしすぎなんじゃって感じてもしています。こんな事、アイギスさんたちの前で言ったら怒られるかもしれないけど」
天田「あの綾時さんが僕たちの知る綾時さんじゃないって本人がそう言ってるなら、もうそれでいいじゃないですか」
天田「僕には綾時さんの言ってる事が嘘のようには見えませんでしたしね」
天田「多分、順平さんもそんな風に考えてるんじゃないかな」
天田「……僕としてはもうこれ以上この事について深く考えたくないっていうのが本音ですね」
741: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:52:41.06:HRyJnwj6o (10/20)
>天田は料理を作る手を再度動かしだしてからぽつぽつと語った。
>どうやら天田はアイギスたちとは少し違って考える事を放棄することでどうにかしようとしている……そんな様子が感じ取れた。
天田「でも、本当に似てるんだよなあ。軽薄そうな感じとかそういう雰囲気も含めて」
鳴上「軽薄……まさか、アイギスは望月綾時に遊ばれた経験があるとか!?」
天田「えっ、それは流石に……いや、どうなのかな……?」
天田「っと、出来ましたよ」
天田「今日は暑いので、ジャージャー麺風冷やし中華なんてものを作ってみました」
>天田は出来上がった料理をテーブルに並べる。
>麺の上にきゅうりやハム、錦糸卵などがのっているのは普通の冷やし中華と変わらないが、肉味噌のたれが上に万遍なくかかっていて食べごたえがありそうだ。
鳴上「美味しそうだな。いただきます」
天田「いただきまーす」
>天田と肩を並べて昼食をとった。
>……
鳴上「ごちそうさま。美味しかったよ。以前のオムライスに続いて、上にのっていた玉子の焼き加減が絶妙だったな」
天田「ありがとうございます。でも、んー……僕としてはまずまずってところかな」
>天田はあまり自分の料理の腕前に納得していないようだ。
>でも、向上心があるのはいい事かもしれない。
>食後の片付けを手伝いながら、料理の知識を色々と教えたり教わったりしながら時間を過ごした。
>天田との距離が縮まったような気がする……
>『Ⅷ 正義 天田乾』のランクが6になった
>……
>それから数日、アイギスが戻る事はないまま時間が過ぎ、いつの間にか八月に入っていた……
>……
08/01(水) 晴れ
【朝】
>アイギスがラボに入ってもう一週間が過ぎている。
>時間が経てば経つほどに不安がじわじわと大きくなっているが、自分たちにできることは待つ事だけだ。
>それがとても悔しいが、どうしようもない……
>……
>気は晴れないままだが、今日は学校へ行かなければならない。
>他人を心配する前に、気持ちを切り替えてまずは自分の事を考えなければいけない……
>……
>天田は料理を作る手を再度動かしだしてからぽつぽつと語った。
>どうやら天田はアイギスたちとは少し違って考える事を放棄することでどうにかしようとしている……そんな様子が感じ取れた。
天田「でも、本当に似てるんだよなあ。軽薄そうな感じとかそういう雰囲気も含めて」
鳴上「軽薄……まさか、アイギスは望月綾時に遊ばれた経験があるとか!?」
天田「えっ、それは流石に……いや、どうなのかな……?」
天田「っと、出来ましたよ」
天田「今日は暑いので、ジャージャー麺風冷やし中華なんてものを作ってみました」
>天田は出来上がった料理をテーブルに並べる。
>麺の上にきゅうりやハム、錦糸卵などがのっているのは普通の冷やし中華と変わらないが、肉味噌のたれが上に万遍なくかかっていて食べごたえがありそうだ。
鳴上「美味しそうだな。いただきます」
天田「いただきまーす」
>天田と肩を並べて昼食をとった。
>……
鳴上「ごちそうさま。美味しかったよ。以前のオムライスに続いて、上にのっていた玉子の焼き加減が絶妙だったな」
天田「ありがとうございます。でも、んー……僕としてはまずまずってところかな」
>天田はあまり自分の料理の腕前に納得していないようだ。
>でも、向上心があるのはいい事かもしれない。
>食後の片付けを手伝いながら、料理の知識を色々と教えたり教わったりしながら時間を過ごした。
>天田との距離が縮まったような気がする……
>『Ⅷ 正義 天田乾』のランクが6になった
>……
>それから数日、アイギスが戻る事はないまま時間が過ぎ、いつの間にか八月に入っていた……
>……
08/01(水) 晴れ
【朝】
>アイギスがラボに入ってもう一週間が過ぎている。
>時間が経てば経つほどに不安がじわじわと大きくなっているが、自分たちにできることは待つ事だけだ。
>それがとても悔しいが、どうしようもない……
>……
>気は晴れないままだが、今日は学校へ行かなければならない。
>他人を心配する前に、気持ちを切り替えてまずは自分の事を考えなければいけない……
>……
742: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:54:05.03:HRyJnwj6o (11/20)
月光館学園 職員室
淳「……えっと、今月オープンキャンパスのある近場の大学短大専門学校の資料はこれで全部かな」
鳴上「ありがとうございます、先生」
淳「予約が必要なところもあるから注意してね。というか、結構量があるけど、全部目を通せそうかい?」
鳴上「ご心配なく。気合でどうにかします」
淳「そう。何かわからない事があったら遠慮なく聞いてね」
鳴上「はい」
>そろそろ自分の進路について本気で考えなければいけない。
>その為にも、様々な学校の資料に目を通し橿原に相談を重ねてた。
>……
淳「じゃあとりあえずこのメモに書きだした学校に見学にいくって事でいいんだね?」
鳴上「はい。まだ増えるかもしれませんけど、今のところはこんな感じで」
淳「わかったよ。で、鳴上くんはこのまま進学希望ってことで話を進めていいのかな?」
鳴上「いえ、それは……。就職の方もどんな仕事があるのか説明会なんかに足を運ぶ予定なので、まだはっきりそうと決めた訳では」
淳「そうなの?」
鳴上「……まだ、色々迷ってて」
鳴上「でも、夏休み中に出来る限りの行動はして、これから先の事をきちんと考えたいと思っています」
淳「なるほど、ね。わかった。鳴上くんのしたいようにするといいよ」
淳「ただ、その話を僕にもちゃんと教えてね?」
鳴上「はい」
>橿原はその答えを聞いて満足そうに笑み浮かべて頷いた。
淳「ちょっと安心したよ。まだ迷いながらも先に進もうとする姿が見られてね」
淳「鳴上くんの本当に進みたい道、きっとみつかるよ。このまま諦めなければ」
鳴上「そうだと、いいんですけど……」
淳「……。鳴上くんってしっかりしているように見えて急に弱気になったりする時があるね」
淳「もっと自信もって大丈夫だよ。ね?」
>ぽん、と軽く背中を押された。
>どうやら励ましてくれているようだ。
>橿原の優しさを感じる……
>『Ⅹ 運命 橿原淳』のランクが5になった
>この先どうしたらいいのだろうかという漠然とした不安は確かにまだ心の中にある。
>気を引き締めていかなければ……
月光館学園 職員室
淳「……えっと、今月オープンキャンパスのある近場の大学短大専門学校の資料はこれで全部かな」
鳴上「ありがとうございます、先生」
淳「予約が必要なところもあるから注意してね。というか、結構量があるけど、全部目を通せそうかい?」
鳴上「ご心配なく。気合でどうにかします」
淳「そう。何かわからない事があったら遠慮なく聞いてね」
鳴上「はい」
>そろそろ自分の進路について本気で考えなければいけない。
>その為にも、様々な学校の資料に目を通し橿原に相談を重ねてた。
>……
淳「じゃあとりあえずこのメモに書きだした学校に見学にいくって事でいいんだね?」
鳴上「はい。まだ増えるかもしれませんけど、今のところはこんな感じで」
淳「わかったよ。で、鳴上くんはこのまま進学希望ってことで話を進めていいのかな?」
鳴上「いえ、それは……。就職の方もどんな仕事があるのか説明会なんかに足を運ぶ予定なので、まだはっきりそうと決めた訳では」
淳「そうなの?」
鳴上「……まだ、色々迷ってて」
鳴上「でも、夏休み中に出来る限りの行動はして、これから先の事をきちんと考えたいと思っています」
淳「なるほど、ね。わかった。鳴上くんのしたいようにするといいよ」
淳「ただ、その話を僕にもちゃんと教えてね?」
鳴上「はい」
>橿原はその答えを聞いて満足そうに笑み浮かべて頷いた。
淳「ちょっと安心したよ。まだ迷いながらも先に進もうとする姿が見られてね」
淳「鳴上くんの本当に進みたい道、きっとみつかるよ。このまま諦めなければ」
鳴上「そうだと、いいんですけど……」
淳「……。鳴上くんってしっかりしているように見えて急に弱気になったりする時があるね」
淳「もっと自信もって大丈夫だよ。ね?」
>ぽん、と軽く背中を押された。
>どうやら励ましてくれているようだ。
>橿原の優しさを感じる……
>『Ⅹ 運命 橿原淳』のランクが5になった
>この先どうしたらいいのだろうかという漠然とした不安は確かにまだ心の中にある。
>気を引き締めていかなければ……
743: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:55:58.89:HRyJnwj6o (12/20)
鳴上「今日はこれで失礼します」
淳「このまま真っ直ぐ帰るのかい?」
鳴上「いえ、これから部活に行こうかと」
淳「ああ、確か美術部だったっけ? 頑張ってね」
>橿原と別れ、美術室へと向かった。
>……
美術室
>美術室では多くの部員がそれぞれ己の作業に没頭している。
>その中に、部長であるあかりの姿も当然あった。
あかり「……お。鳴上くん」
鳴上「よ。みんな頑張ってるみたいだな」
あかり「そりゃね。コンクールも近いし、特に三年生はこの夏で便宜上引退ってことになるからさ」
あかり「私も最後にいい作品残したいしね」
あかり「そうしたらきっと、その先自分の夢にも専念出来そうな気がする」
>あかりはキャンバスに気合を込めて絵を描いている。
鳴上「……あかりは結局進路の方は?」
あかり「美大に行くことに決めたよ。そこで色々学びながら漫画家を目指すつもり」
鳴上「そうか……」
>あかりはもうきちんと自分の中で目標を定めたようだ。
>それを羨ましく感じた。
あかり「この絵が上手い具合に評価へ繋がってくれるといいんだけどなー」
鳴上「それは……飛行船か?」
>キャンバスには海の上に浮かぶ飛行船が描かれている。
あかり「うん。よく夢に見るんだよね、この飛行船」
鳴上「夢?」
あかり「そう、夢。中学生の頃に住んでいた場所にね、空の科学館っていうところがあったんだけど……」
あかり「そこに大きな飛行船があってさ、なんだかそれとすごく似てるような気がするんだよね」
鳴上「その飛行船はこんな風に飛ぶのか?」
あかり「当時そういう噂が子供たちの間では流行ってたってのはあったね。でも、実際そうだったかっていうと」
あかり「……。んー……?」
鳴上「どうした?」
あかり「……いや、ちょっとね。私、その頃の事の記憶がなんだか曖昧みたいで。でも実際この船が飛んでるところを見たことがあるような」
あかり「ううん。飛んでいるこの船に乗ったことがあったような気がしてきて……」
鳴上「え?」
鳴上「今日はこれで失礼します」
淳「このまま真っ直ぐ帰るのかい?」
鳴上「いえ、これから部活に行こうかと」
淳「ああ、確か美術部だったっけ? 頑張ってね」
>橿原と別れ、美術室へと向かった。
>……
美術室
>美術室では多くの部員がそれぞれ己の作業に没頭している。
>その中に、部長であるあかりの姿も当然あった。
あかり「……お。鳴上くん」
鳴上「よ。みんな頑張ってるみたいだな」
あかり「そりゃね。コンクールも近いし、特に三年生はこの夏で便宜上引退ってことになるからさ」
あかり「私も最後にいい作品残したいしね」
あかり「そうしたらきっと、その先自分の夢にも専念出来そうな気がする」
>あかりはキャンバスに気合を込めて絵を描いている。
鳴上「……あかりは結局進路の方は?」
あかり「美大に行くことに決めたよ。そこで色々学びながら漫画家を目指すつもり」
鳴上「そうか……」
>あかりはもうきちんと自分の中で目標を定めたようだ。
>それを羨ましく感じた。
あかり「この絵が上手い具合に評価へ繋がってくれるといいんだけどなー」
鳴上「それは……飛行船か?」
>キャンバスには海の上に浮かぶ飛行船が描かれている。
あかり「うん。よく夢に見るんだよね、この飛行船」
鳴上「夢?」
あかり「そう、夢。中学生の頃に住んでいた場所にね、空の科学館っていうところがあったんだけど……」
あかり「そこに大きな飛行船があってさ、なんだかそれとすごく似てるような気がするんだよね」
鳴上「その飛行船はこんな風に飛ぶのか?」
あかり「当時そういう噂が子供たちの間では流行ってたってのはあったね。でも、実際そうだったかっていうと」
あかり「……。んー……?」
鳴上「どうした?」
あかり「……いや、ちょっとね。私、その頃の事の記憶がなんだか曖昧みたいで。でも実際この船が飛んでるところを見たことがあるような」
あかり「ううん。飛んでいるこの船に乗ったことがあったような気がしてきて……」
鳴上「え?」
744: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:57:31.95:HRyJnwj6o (13/20)
あかり「……。周りは火が燃え盛ってて、どこかから落ちそうになって、でも優しいお姉ちゃんに助けてもらって、それで……」
あかり「……」
あかり「あははっ、ごめん! なんでもないよ! 気のせいだよ、気のせい!」
あかり「それより、鳴上くんも部活にきたならちゃんと活動しなきゃ。ね!」
鳴上「……ん、ああ、そうだよな」
>話もそこそこに、自分も美術部の活動に取り掛かる事にした。
>あかりと美術部でひと時を過ごした。
>『ⅩⅦ 星 星あかり』のランクが5になった
>……
あかり「それじゃあ、戸締りお願いしちゃっていいかな?」
鳴上「ああ」
あかり「よろしく。じゃあね」
鳴上「気を付けて帰れよ」
あかり「鳴上くんもあまり遅くならないようにね」
>他の部員も帰りあかりが美術室から去ると、この場にひとりきりになった。
>周りが完全に静かになったところで、もう少しだけ絵を描いて過ごす事にした。
>……絵を描いてる時はその間だけ無心になれる。
>ごちゃごちゃと色々な考えでいっぱいになった頭をリセットするにはちょうどいいと思った。
>…
>……
>………
「……へえ、鳴上くんって美術部だったんだね」
鳴上「!!」
>集中しすぎていたのか後ろから唐突に声をかけられ人の気配がする事に気付くと、驚きのあまり体をびくっと大きく震わせてしまった。
麻希「わっ!? ……ごめん、驚かせちゃった?」
鳴上「そ、園村先生か……」
>そしてすぐにそこにいたのは見知った人物だとわかるとほっと溜息を吐いた。
>……が、すぐに別の事に気付いて麻希の方へと向き直る。
鳴上「あのっ、どうしてここに?」
麻希「ちょっと用事があってね。それはもう終わったんだけど、美術室の前を通ったら偶然鳴上くんの姿を見つけたから……」
鳴上「アイギスの方は……」
麻希「それは、これからまたラボの方に行って会うところ」
鳴上「様子の方はどうなんでしょうか?」
麻希「うん。心がとても不安定だったけど、もうだいぶ落ち着いてきたみたい。早ければ今日の夜にはもう帰せると思う」
鳴上「本当ですか!? よかった……」
あかり「……。周りは火が燃え盛ってて、どこかから落ちそうになって、でも優しいお姉ちゃんに助けてもらって、それで……」
あかり「……」
あかり「あははっ、ごめん! なんでもないよ! 気のせいだよ、気のせい!」
あかり「それより、鳴上くんも部活にきたならちゃんと活動しなきゃ。ね!」
鳴上「……ん、ああ、そうだよな」
>話もそこそこに、自分も美術部の活動に取り掛かる事にした。
>あかりと美術部でひと時を過ごした。
>『ⅩⅦ 星 星あかり』のランクが5になった
>……
あかり「それじゃあ、戸締りお願いしちゃっていいかな?」
鳴上「ああ」
あかり「よろしく。じゃあね」
鳴上「気を付けて帰れよ」
あかり「鳴上くんもあまり遅くならないようにね」
>他の部員も帰りあかりが美術室から去ると、この場にひとりきりになった。
>周りが完全に静かになったところで、もう少しだけ絵を描いて過ごす事にした。
>……絵を描いてる時はその間だけ無心になれる。
>ごちゃごちゃと色々な考えでいっぱいになった頭をリセットするにはちょうどいいと思った。
>…
>……
>………
「……へえ、鳴上くんって美術部だったんだね」
鳴上「!!」
>集中しすぎていたのか後ろから唐突に声をかけられ人の気配がする事に気付くと、驚きのあまり体をびくっと大きく震わせてしまった。
麻希「わっ!? ……ごめん、驚かせちゃった?」
鳴上「そ、園村先生か……」
>そしてすぐにそこにいたのは見知った人物だとわかるとほっと溜息を吐いた。
>……が、すぐに別の事に気付いて麻希の方へと向き直る。
鳴上「あのっ、どうしてここに?」
麻希「ちょっと用事があってね。それはもう終わったんだけど、美術室の前を通ったら偶然鳴上くんの姿を見つけたから……」
鳴上「アイギスの方は……」
麻希「それは、これからまたラボの方に行って会うところ」
鳴上「様子の方はどうなんでしょうか?」
麻希「うん。心がとても不安定だったけど、もうだいぶ落ち着いてきたみたい。早ければ今日の夜にはもう帰せると思う」
鳴上「本当ですか!? よかった……」
745: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 22:59:26.18:HRyJnwj6o (14/20)
>麻希の言葉を聞いて少し気が楽になった。
>早く、元気になったアイギスの姿をこの目で見たい……
麻希「アイギスさんのことで鳴上くんもだいぶ滅入っていたのね。ううん、鳴上くんだけじゃなくてメティスさんやラビリスさんも……」
麻希「桐条さんもアイギスさんと同じような感じで落ち込んでたしね」
鳴上「……」
麻希「……。ねえ、鳴上くん。まだ時間があるから少しお話しましょうか」
鳴上「? はい……」
>麻希は向かい側に椅子を置いてそこに座った。
麻希「それは鳴上くんが描いた絵?」
鳴上「そうです。鉛筆で描いただけで、あまり立派なものじゃないですけど……」
麻希「ちょっと見せてもらっていい?」
鳴上「どうぞ」
>麻希はスケッチブックを手に取るとじっと絵を見つめた。
麻希「ふふっ、なんだか懐かしいなあ。私も高校時代は美術部だったんだよ」
麻希「これでも賞をとった事もあるんだから」
鳴上「そうなんですか。凄いな、俺なんか俄かだからさっぱりで……最初に描いた絵も色々駄目出しくらったし」
麻希「一番初めのページにある絵のこと? 確かにこれって……でも、ダメっていうよりは……」
>麻希は何かを言いかけてすぐに口を閉ざした。
鳴上「不鮮明だとか定まってないとか言われました、その絵」
麻希「……うん。花瓶に活けられた花だって事はわかるけど……」
麻希「大袈裟に言ってみれば、ここに描かれた花は蕾が開いているのに生きているのか死んでいるのかすらわからないみたいな、そんな感じの絵だね。これって……」
鳴上「……」
麻希「……」
>麻希はスケッチブックを置いて暫く何か考えるようにしながら黙った。
麻希「ねえ。鳴上くんは今の学校生活、楽しんでる?」
鳴上「え? はい、楽しいと思ってますけど」
麻希「そっか……」
麻希「私、初めて会った時からずっと気になってたんだよね、君のこと」
鳴上「え……」
麻希「よく眠れないとか、悪い夢を見るとか、記憶が曖昧になるとか言ってたじゃない。だから心配で」
鳴上「あっ。……いえ、それはもう大丈夫です、けど」
麻希「でも、今は他に不安なことがある? アイギスさんのこと以外でも」
鳴上「……はい」
麻希「……」
>麻希の言葉を聞いて少し気が楽になった。
>早く、元気になったアイギスの姿をこの目で見たい……
麻希「アイギスさんのことで鳴上くんもだいぶ滅入っていたのね。ううん、鳴上くんだけじゃなくてメティスさんやラビリスさんも……」
麻希「桐条さんもアイギスさんと同じような感じで落ち込んでたしね」
鳴上「……」
麻希「……。ねえ、鳴上くん。まだ時間があるから少しお話しましょうか」
鳴上「? はい……」
>麻希は向かい側に椅子を置いてそこに座った。
麻希「それは鳴上くんが描いた絵?」
鳴上「そうです。鉛筆で描いただけで、あまり立派なものじゃないですけど……」
麻希「ちょっと見せてもらっていい?」
鳴上「どうぞ」
>麻希はスケッチブックを手に取るとじっと絵を見つめた。
麻希「ふふっ、なんだか懐かしいなあ。私も高校時代は美術部だったんだよ」
麻希「これでも賞をとった事もあるんだから」
鳴上「そうなんですか。凄いな、俺なんか俄かだからさっぱりで……最初に描いた絵も色々駄目出しくらったし」
麻希「一番初めのページにある絵のこと? 確かにこれって……でも、ダメっていうよりは……」
>麻希は何かを言いかけてすぐに口を閉ざした。
鳴上「不鮮明だとか定まってないとか言われました、その絵」
麻希「……うん。花瓶に活けられた花だって事はわかるけど……」
麻希「大袈裟に言ってみれば、ここに描かれた花は蕾が開いているのに生きているのか死んでいるのかすらわからないみたいな、そんな感じの絵だね。これって……」
鳴上「……」
麻希「……」
>麻希はスケッチブックを置いて暫く何か考えるようにしながら黙った。
麻希「ねえ。鳴上くんは今の学校生活、楽しんでる?」
鳴上「え? はい、楽しいと思ってますけど」
麻希「そっか……」
麻希「私、初めて会った時からずっと気になってたんだよね、君のこと」
鳴上「え……」
麻希「よく眠れないとか、悪い夢を見るとか、記憶が曖昧になるとか言ってたじゃない。だから心配で」
鳴上「あっ。……いえ、それはもう大丈夫です、けど」
麻希「でも、今は他に不安なことがある? アイギスさんのこと以外でも」
鳴上「……はい」
麻希「……」
746: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 23:01:08.77:HRyJnwj6o (15/20)
麻希「鳴上くん、三年生だって言ってたよね? だとすると、進路のこととか将来についてあれこれ考えることがある、って感じかな?」
鳴上「園村先生の言う通りです」
麻希「……うん、わかるよ。私にもそういう経験あるから」
麻希「私はね、高校のころ一年近く入院していた時期があったの。あの時は凄く卑屈になっていて、不安なこともいっぱいだった……」
麻希「なんで私はこうなんだろうって何度も思ったよ」
麻希「でもね、色々な事があったけど、周りには友達がいて支えてもらって、そんな過去の苦い経験があったからこそ今の私がある」
麻希「だから鳴上くんもこれから先もっと辛い思いをする事があっても、それが自分にとっての糧になることもあるかもしれないって覚えておいてほしいの。今は解らなくても、ね」
鳴上「でも……」
麻希「平気よ。だって、私にも支えて一緒にいてくれた人たちがいたように、君だってひとりじゃないんだもの」
麻希「同じ力を持った仲間が周りにはいる。学校にくれば友達もいるし先生だって。もちろん、私だってその一人」
麻希「辛くなったら迷惑だとか考えないでどんどん人に頼っちゃいなさい。大事なのはなんでも自分だけで抱えすぎないってことよ?」
麻希「貴方に心配してどうにかしてあげたいと思っている人がいるように、貴方を心配してどうにかしてあげたいと思う人もいるんだってことをどうか忘れないで」
>麻希はあたたかい笑顔で心を優しく包んで労わるようにそう告げた。
>麻希の思いやりを感じる……
>『Ⅱ 女教皇 園村麻希』のランクが5になった
麻希「……長話になっちゃったね。もういかないと」
麻希「何か話したいことがあったら次の機会に、ね」
鳴上「はい。……ありがとうございました」
>立ち上がって一度深く礼をし、麻希が出ていくのを見送った。
>……
>自分もそろそろ学校を出よう……
辰巳ポートアイランド駅周辺
>街をぶらつき適当に買い物に回ったあと寮に帰ろうと歩いていると、携帯ショップのショーウィンドウに張り付いてる帽子の男の姿を見つけた。
鳴上「順平さん?」
順平「……あ、鳴上。オッス」
順平「この間の旅行の時はどうもな」
順平「チドリに付きっきりみたいな感じになってたけど、スゲー楽しかったぜ」
鳴上「いえ。……そんなところにへばり付いて何やってるんですか?」
順平「んー? ……ちょっとな」
>順平はガラスの向こう側にある並んだ携帯に再び目線を移して唸り声を上げた。
順平「チドリにケータイをプレゼントしようかと考えてるんだけど、どう思う?」
鳴上「!」
鳴上「チドリにですか。いいんじゃないですか。持っていないならこっちからあげればいい、って事ですね」
麻希「鳴上くん、三年生だって言ってたよね? だとすると、進路のこととか将来についてあれこれ考えることがある、って感じかな?」
鳴上「園村先生の言う通りです」
麻希「……うん、わかるよ。私にもそういう経験あるから」
麻希「私はね、高校のころ一年近く入院していた時期があったの。あの時は凄く卑屈になっていて、不安なこともいっぱいだった……」
麻希「なんで私はこうなんだろうって何度も思ったよ」
麻希「でもね、色々な事があったけど、周りには友達がいて支えてもらって、そんな過去の苦い経験があったからこそ今の私がある」
麻希「だから鳴上くんもこれから先もっと辛い思いをする事があっても、それが自分にとっての糧になることもあるかもしれないって覚えておいてほしいの。今は解らなくても、ね」
鳴上「でも……」
麻希「平気よ。だって、私にも支えて一緒にいてくれた人たちがいたように、君だってひとりじゃないんだもの」
麻希「同じ力を持った仲間が周りにはいる。学校にくれば友達もいるし先生だって。もちろん、私だってその一人」
麻希「辛くなったら迷惑だとか考えないでどんどん人に頼っちゃいなさい。大事なのはなんでも自分だけで抱えすぎないってことよ?」
麻希「貴方に心配してどうにかしてあげたいと思っている人がいるように、貴方を心配してどうにかしてあげたいと思う人もいるんだってことをどうか忘れないで」
>麻希はあたたかい笑顔で心を優しく包んで労わるようにそう告げた。
>麻希の思いやりを感じる……
>『Ⅱ 女教皇 園村麻希』のランクが5になった
麻希「……長話になっちゃったね。もういかないと」
麻希「何か話したいことがあったら次の機会に、ね」
鳴上「はい。……ありがとうございました」
>立ち上がって一度深く礼をし、麻希が出ていくのを見送った。
>……
>自分もそろそろ学校を出よう……
辰巳ポートアイランド駅周辺
>街をぶらつき適当に買い物に回ったあと寮に帰ろうと歩いていると、携帯ショップのショーウィンドウに張り付いてる帽子の男の姿を見つけた。
鳴上「順平さん?」
順平「……あ、鳴上。オッス」
順平「この間の旅行の時はどうもな」
順平「チドリに付きっきりみたいな感じになってたけど、スゲー楽しかったぜ」
鳴上「いえ。……そんなところにへばり付いて何やってるんですか?」
順平「んー? ……ちょっとな」
>順平はガラスの向こう側にある並んだ携帯に再び目線を移して唸り声を上げた。
順平「チドリにケータイをプレゼントしようかと考えてるんだけど、どう思う?」
鳴上「!」
鳴上「チドリにですか。いいんじゃないですか。持っていないならこっちからあげればいい、って事ですね」
747: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 23:02:35.92:HRyJnwj6o (16/20)
順平「そうなんだけどさ、でもどんなのにすればいいかなって」
順平「あまり高性能なものにしても滅多に使わないかもしれないし、だからって安すぎるものもどうかと……」
順平「うーん……」
鳴上「本人を連れてきて選んでもらったらどうですか?」
順平「それも考えたけどさ、やっぱり嫌がりそうかなって」
順平「あれ以来たまに電話くれるようになったから便利だし持たせてやりたいんだけど、そう提案して改めて拒否されたら悲しいし」
順平「それなら、こっちが用意したものを無理やりって形でもいいから、一応預けとくだけ預けておくみたいな感じで渡せばいいかなって思ってさ」
鳴上「……。いや、そんなことないと思いますよ?」
順平「え!?」
鳴上「前にこの周辺でチドリと会った時に携帯ショップを気にしているような様子を見かけたんですよね」
鳴上「だから、昔はどうあれ今はちょっと考えも変わってるんじゃないかなって、そう思います」
順平「マ、マジで!? そっか、チドリが……」
>順平は顔を緩ませてニヤニヤしている。
順平「よっし! じゃあパンフレットもらってチドリに見せてみよう! でも、あんま高いの選ばれたらバイト増やさないとダメだなー、貯金は崩したくねえし」
鳴上「え、貯金してるんですか?」
順平「……今、なんだそれ意外すぎるとか思っただろ?」
鳴上「い、いえそうじゃなくて! 純粋に偉いなあと思っただけですよ!」
順平「ふーん? まあいいけどさ」
順平「俺だってそんくらいの事はしてんだよ。チドリと会う機会もバイトすると減るけど、これもチドリとの将来の為……」
順平「なんつって!」
>順平はだらしなく笑っている。
>彼の行動はどれもこれもチドリがあっての事のなのだろうと改めて感じた。
順平「あとは祭りの誘いにのってくれるかってトコだな」
鳴上「祭り?」
順平「あれ、知らねえ? 16日に長鳴神社であるんだよ。毎年やってんだぜ」
順平「今日は元々そのお誘いにやってきたんだ」
鳴上「へえ、そうなんですか」
順平「そのついでにさりげなーくケータイのこと聞いてみよっと」
順平「話聞いてくれてありがとな、鳴上!」
>順平に感謝されている。
>順平との仲が少し深まった気がした……
>『Ⅰ 魔術師 伊織順平』のランクが6になった
>順平と別れ、寮に戻ることにした。
>……
順平「そうなんだけどさ、でもどんなのにすればいいかなって」
順平「あまり高性能なものにしても滅多に使わないかもしれないし、だからって安すぎるものもどうかと……」
順平「うーん……」
鳴上「本人を連れてきて選んでもらったらどうですか?」
順平「それも考えたけどさ、やっぱり嫌がりそうかなって」
順平「あれ以来たまに電話くれるようになったから便利だし持たせてやりたいんだけど、そう提案して改めて拒否されたら悲しいし」
順平「それなら、こっちが用意したものを無理やりって形でもいいから、一応預けとくだけ預けておくみたいな感じで渡せばいいかなって思ってさ」
鳴上「……。いや、そんなことないと思いますよ?」
順平「え!?」
鳴上「前にこの周辺でチドリと会った時に携帯ショップを気にしているような様子を見かけたんですよね」
鳴上「だから、昔はどうあれ今はちょっと考えも変わってるんじゃないかなって、そう思います」
順平「マ、マジで!? そっか、チドリが……」
>順平は顔を緩ませてニヤニヤしている。
順平「よっし! じゃあパンフレットもらってチドリに見せてみよう! でも、あんま高いの選ばれたらバイト増やさないとダメだなー、貯金は崩したくねえし」
鳴上「え、貯金してるんですか?」
順平「……今、なんだそれ意外すぎるとか思っただろ?」
鳴上「い、いえそうじゃなくて! 純粋に偉いなあと思っただけですよ!」
順平「ふーん? まあいいけどさ」
順平「俺だってそんくらいの事はしてんだよ。チドリと会う機会もバイトすると減るけど、これもチドリとの将来の為……」
順平「なんつって!」
>順平はだらしなく笑っている。
>彼の行動はどれもこれもチドリがあっての事のなのだろうと改めて感じた。
順平「あとは祭りの誘いにのってくれるかってトコだな」
鳴上「祭り?」
順平「あれ、知らねえ? 16日に長鳴神社であるんだよ。毎年やってんだぜ」
順平「今日は元々そのお誘いにやってきたんだ」
鳴上「へえ、そうなんですか」
順平「そのついでにさりげなーくケータイのこと聞いてみよっと」
順平「話聞いてくれてありがとな、鳴上!」
>順平に感謝されている。
>順平との仲が少し深まった気がした……
>『Ⅰ 魔術師 伊織順平』のランクが6になった
>順平と別れ、寮に戻ることにした。
>……
748: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 23:03:55.95:HRyJnwj6o (17/20)
【夜】
学生寮 ラウンジ
鳴上「ただいま、……!」
鳴上「アイギス!」
アイギス「悠さん。おかえりなさい」
>……一瞬目を疑ってしまった。
>でも、紛れもなく本物のアイギスの姿が今ここにある。
>何度か瞬きをして、やっとそう認識できた。
鳴上「それはこっちのセリフだ。おかえり、アイギス」
アイギス「……」
>アイギスは少し恥ずかしげに笑い、頭を下げた。
アイギス「もう大丈夫ですから。みなさんにはご迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした」
鳴上「本当に本当にもう平気なんだな?」
アイギス「はい。この通りです」
>言葉の通り、アイギスの調子はとても良さそうだ。
>顔色も優れている。
>麻希のカウンセリングの賜物なのか……彼女には感謝しなくてはいけない。
美鶴「これでやっといつもの学生寮らしくなったな」
天田「そうですね。アイギスさんが戻ってきてくれて良かった」
ラビリス「なあなあ、こういう時って快気祝いっていうのするもんやないの?」
メティス「そうですよね。ぱーっとやりたいですね」
>みんなアイギスの復帰に嬉しそうにしている。
アイギス「そんな大袈裟な……」
美鶴「快気祝いか……いいかもしれないな」
美鶴「ただ、今日は神郷がいない。どうせやるなら皆が揃っていた方がいいだろう」
美鶴「ご馳走を用意して、な」
メティス「ごちそう……」
美鶴「神郷の入寮歓迎も含めてそのうちやろうか」
美鶴「あの男、こういう機会でも作らないとメンバーと顔を合わせるタイプじゃないからな」
>美鶴は苦笑をこぼしている。
アイギス「……」
アイギス「あの、悠さん」
鳴上「ん、なんだ?」
アイギス「帰ってきて早々不躾だとは思うんですが……」
【夜】
学生寮 ラウンジ
鳴上「ただいま、……!」
鳴上「アイギス!」
アイギス「悠さん。おかえりなさい」
>……一瞬目を疑ってしまった。
>でも、紛れもなく本物のアイギスの姿が今ここにある。
>何度か瞬きをして、やっとそう認識できた。
鳴上「それはこっちのセリフだ。おかえり、アイギス」
アイギス「……」
>アイギスは少し恥ずかしげに笑い、頭を下げた。
アイギス「もう大丈夫ですから。みなさんにはご迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした」
鳴上「本当に本当にもう平気なんだな?」
アイギス「はい。この通りです」
>言葉の通り、アイギスの調子はとても良さそうだ。
>顔色も優れている。
>麻希のカウンセリングの賜物なのか……彼女には感謝しなくてはいけない。
美鶴「これでやっといつもの学生寮らしくなったな」
天田「そうですね。アイギスさんが戻ってきてくれて良かった」
ラビリス「なあなあ、こういう時って快気祝いっていうのするもんやないの?」
メティス「そうですよね。ぱーっとやりたいですね」
>みんなアイギスの復帰に嬉しそうにしている。
アイギス「そんな大袈裟な……」
美鶴「快気祝いか……いいかもしれないな」
美鶴「ただ、今日は神郷がいない。どうせやるなら皆が揃っていた方がいいだろう」
美鶴「ご馳走を用意して、な」
メティス「ごちそう……」
美鶴「神郷の入寮歓迎も含めてそのうちやろうか」
美鶴「あの男、こういう機会でも作らないとメンバーと顔を合わせるタイプじゃないからな」
>美鶴は苦笑をこぼしている。
アイギス「……」
アイギス「あの、悠さん」
鳴上「ん、なんだ?」
アイギス「帰ってきて早々不躾だとは思うんですが……」
749: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 23:05:59.46:HRyJnwj6o (18/20)
>アイギスは何か言い淀んでいる。
鳴上「どうしたんだ? せっかくのめでたい日だ、遠慮なんかするな。今ならなんでも言うこと聞いてやるぞ?」
アイギス「それじゃあ……」
>アイギスは意を決したように口を固く結び頷くと顔を上げる。
アイギス「一度、改めて綾時さんと会う機会を作ってくれませんか?」
鳴上「!!」
>この場にいる全員がアイギスの言葉を聞いて一瞬で固まった……
美鶴「アイギス、それは……」
アイギス「大丈夫ですよ、美鶴さん。……大丈夫」
>アイギスは不安の色を見せる美鶴にそう微笑んだ。
アイギス「私も色々と考えてやっと気持ちの整理が出来ました。だから、綾時さんと改めてお話をしてみたくて」
鳴上「……。アイギスの本心なのか? それは」
アイギス「はい」
アイギス「あの綾時さんは、悠さんたちのクラスメートの綾時さん。やっとそう思えそうになったんです」
鳴上「……」
>ラボに行っている間にどういう心境の変化があったのだろう……
アイギス「だから、今までの非礼をお詫びしたいんです。ダメ、でしょうか……?」
鳴上「そう、か。……わかった」
アイギス「!」
鳴上「望月に言ってみるよ」
アイギス「ありがとうございます!」
>アイギスは何か言い淀んでいる。
鳴上「どうしたんだ? せっかくのめでたい日だ、遠慮なんかするな。今ならなんでも言うこと聞いてやるぞ?」
アイギス「それじゃあ……」
>アイギスは意を決したように口を固く結び頷くと顔を上げる。
アイギス「一度、改めて綾時さんと会う機会を作ってくれませんか?」
鳴上「!!」
>この場にいる全員がアイギスの言葉を聞いて一瞬で固まった……
美鶴「アイギス、それは……」
アイギス「大丈夫ですよ、美鶴さん。……大丈夫」
>アイギスは不安の色を見せる美鶴にそう微笑んだ。
アイギス「私も色々と考えてやっと気持ちの整理が出来ました。だから、綾時さんと改めてお話をしてみたくて」
鳴上「……。アイギスの本心なのか? それは」
アイギス「はい」
アイギス「あの綾時さんは、悠さんたちのクラスメートの綾時さん。やっとそう思えそうになったんです」
鳴上「……」
>ラボに行っている間にどういう心境の変化があったのだろう……
アイギス「だから、今までの非礼をお詫びしたいんです。ダメ、でしょうか……?」
鳴上「そう、か。……わかった」
アイギス「!」
鳴上「望月に言ってみるよ」
アイギス「ありがとうございます!」
750: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 23:07:45.74:HRyJnwj6o (19/20)
鳴上(随分な変わりようだな。それが気にもなるけど……でも、本人がそう言うのならば素直に信じよう)
鳴上(でも、望月と会う機会か。どうセッティングすれば、……そうだ!)
鳴上「みんな、聞いてくれ」
>全員が急にどうしたのかと不思議そうな表情を浮かべている。
鳴上「一緒に祭りへ行くぞ!」
美鶴「それはまた……唐突な提案だな」
メティス「祭り……?」
天田「それってもしかして、長鳴神社でやる夏祭りのことですか?」
鳴上「ああ、そうだ」
ラビリス「そんなんやるんかあ。へえ、楽しそうやな」
鳴上「だろ?」
鳴上「それに望月も誘ってみようと思う」
美鶴「ここにいる全員で行くのか?」
鳴上「そうです。あ、神郷さんも誘いますよ」
鳴上「桐条さんと作れなかった夏の思い出を作り、新しく入ったばかりの神郷さんとも親交を深め、かつ望月との距離も縮める……」
鳴上「いい提案だと思うんですけど」
美鶴「わ、私は別に……」
美鶴「……」
美鶴「だが、悪くはない話だな」
美鶴「……アイギスがそう言うのならば、私も彼との事を少し考え直さなければならないしな」
鳴上「決まりですね」
鳴上「そういうことだからみんな16日の予定は空けておいてくれ」
アイギス「わかりました。楽しみにしています」
メティス「ごちそうに……お祭り……予定がたくさんですね」
>みんなで神社の夏祭りに行くことが決まった。
>……
鳴上(随分な変わりようだな。それが気にもなるけど……でも、本人がそう言うのならば素直に信じよう)
鳴上(でも、望月と会う機会か。どうセッティングすれば、……そうだ!)
鳴上「みんな、聞いてくれ」
>全員が急にどうしたのかと不思議そうな表情を浮かべている。
鳴上「一緒に祭りへ行くぞ!」
美鶴「それはまた……唐突な提案だな」
メティス「祭り……?」
天田「それってもしかして、長鳴神社でやる夏祭りのことですか?」
鳴上「ああ、そうだ」
ラビリス「そんなんやるんかあ。へえ、楽しそうやな」
鳴上「だろ?」
鳴上「それに望月も誘ってみようと思う」
美鶴「ここにいる全員で行くのか?」
鳴上「そうです。あ、神郷さんも誘いますよ」
鳴上「桐条さんと作れなかった夏の思い出を作り、新しく入ったばかりの神郷さんとも親交を深め、かつ望月との距離も縮める……」
鳴上「いい提案だと思うんですけど」
美鶴「わ、私は別に……」
美鶴「……」
美鶴「だが、悪くはない話だな」
美鶴「……アイギスがそう言うのならば、私も彼との事を少し考え直さなければならないしな」
鳴上「決まりですね」
鳴上「そういうことだからみんな16日の予定は空けておいてくれ」
アイギス「わかりました。楽しみにしています」
メティス「ごちそうに……お祭り……予定がたくさんですね」
>みんなで神社の夏祭りに行くことが決まった。
>……
751: ◆Hw7XKfELws:2012/07/21(土) 23:09:47.88:HRyJnwj6o (20/20)
【ここまでの番長まとめ】
>名前はアニメと同じ『鳴上悠』
>八十稲羽でのコミュは、1スレ目の>>12を見てもらえればわかるけど、MAX時のアイテムをもらってる=特別捜査隊のメンバーとはMAX状態
>ただし、女子メンバーとは友達止まりで『みんなの鳴上くん』状態だった
>友人連中に別れの挨拶はしたが、らっしゃっせーはスルーしてそのまま八十稲羽を去ってしまった
>ステータスは八十稲羽にいた時点ではオールMAX……だけど、それが月光館学園での生活でも通用するのかどうかといえば、また別だと思う
>でも、少なくとも月光館学園のテストで一位になれるくらいの成績は維持している様子
こんな感じですかね。
現在のコミュランクは次回の最後に貼りたいと思います。
では、また次回。
【ここまでの番長まとめ】
>名前はアニメと同じ『鳴上悠』
>八十稲羽でのコミュは、1スレ目の>>12を見てもらえればわかるけど、MAX時のアイテムをもらってる=特別捜査隊のメンバーとはMAX状態
>ただし、女子メンバーとは友達止まりで『みんなの鳴上くん』状態だった
>友人連中に別れの挨拶はしたが、らっしゃっせーはスルーしてそのまま八十稲羽を去ってしまった
>ステータスは八十稲羽にいた時点ではオールMAX……だけど、それが月光館学園での生活でも通用するのかどうかといえば、また別だと思う
>でも、少なくとも月光館学園のテストで一位になれるくらいの成績は維持している様子
こんな感じですかね。
現在のコミュランクは次回の最後に貼りたいと思います。
では、また次回。
752:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/07/21(土) 23:11:48.01:I+n8HD/+0 (1/1)
乙
乙
753:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西):2012/07/21(土) 23:48:21.35:0/1lJXWl0 (1/1)
乙!
ゲーム本編後の番長ってイザナミの言動からすると普通の人間じゃなくなってるみたいだしね。
そう考えるとアニメの鳴上番長はなかなか良い所に落とし込んでるなやっぱ
乙!
ゲーム本編後の番長ってイザナミの言動からすると普通の人間じゃなくなってるみたいだしね。
そう考えるとアニメの鳴上番長はなかなか良い所に落とし込んでるなやっぱ
754:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/07/22(日) 00:29:57.52:kvgQ/Ioao (1/1)
乙、ようやくあかりちゃんが誰なのか思い出した
乙、ようやくあかりちゃんが誰なのか思い出した
755:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/22(日) 00:30:25.95:RlJBKUz3o (1/1)
乙
乙
756:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/07/22(日) 00:43:06.45:b+XLTq/d0 (1/1)
乙
乙
757:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/07/22(日) 01:59:32.10:jNdZajdAO (1/1)
乙
乙
758:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/22(日) 03:27:15.80:/ZBWob/IO (1/1)
毎度ながら乙ぅぅうううぅううぅううううぅぅぅぅぅ
毎度ながら乙ぅぅうううぅううぅううううぅぅぅぅぅ
759:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/07/22(日) 12:41:43.76:ix45I9h80 (1/1)
きたろーの写真に写ったり写らなかったりが無駄wwww
美鶴に見せないようわざとかwww
乙!
きたろーの写真に写ったり写らなかったりが無駄wwww
美鶴に見せないようわざとかwww
乙!
760:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/22(日) 15:15:36.80:5tFe2mE0o (1/1)
写ってたらSEES全員緊急召集レベルの事態だもんなぁ
写ってたらSEES全員緊急召集レベルの事態だもんなぁ
761: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:03:59.45:Gz/6mzWmo (1/19)
数日後……
08/05(日) 晴れ
>今日は昼から綾時と会う約束をしている。
>支度をして出かけよう。
>……
【昼】
ポロニアンモール
>そろそろ約束の時間だ。
>……
女の子A「じゃあね、綾時クン」
女の子B「また遊ぼうね~」
女の子C「バイバーイ」
綾時「うん、またね」
>少し遠くの方で数人の女の子たちと一緒にいた綾時の姿を見つけた。
>彼女たちと別れると、綾時はこちらの方へと向かってくる。
綾時「ごめん、待たせたかな」
鳴上「いや。こちらこそデートの邪魔する形になったみたいで悪かったな」
綾時「平気だよ。デートはいつでもできるし」
鳴上「……。そうか」
鳴上「とりあえず、ゆっくり話せるところに行こう」
>……
シャガール 辰巳店
鳴上「いつもあんな風に女の子と遊んでるのか?」
綾時「ん? まあね」
鳴上「相変わらずモテてるなお前」
綾時「またまた。鳴上くんには適わないよ」
>しばらく他愛のない談笑を続けた。
綾時「……それで、本題は何なのかな?」
鳴上「ああ。実はな」
鳴上「アイギスが一度改めてお前と会いたいって言っているんだ」
綾時「!」
>綾時の表情が一瞬のうちに変化を見せた。
>とても複雑そうにしている……
数日後……
08/05(日) 晴れ
>今日は昼から綾時と会う約束をしている。
>支度をして出かけよう。
>……
【昼】
ポロニアンモール
>そろそろ約束の時間だ。
>……
女の子A「じゃあね、綾時クン」
女の子B「また遊ぼうね~」
女の子C「バイバーイ」
綾時「うん、またね」
>少し遠くの方で数人の女の子たちと一緒にいた綾時の姿を見つけた。
>彼女たちと別れると、綾時はこちらの方へと向かってくる。
綾時「ごめん、待たせたかな」
鳴上「いや。こちらこそデートの邪魔する形になったみたいで悪かったな」
綾時「平気だよ。デートはいつでもできるし」
鳴上「……。そうか」
鳴上「とりあえず、ゆっくり話せるところに行こう」
>……
シャガール 辰巳店
鳴上「いつもあんな風に女の子と遊んでるのか?」
綾時「ん? まあね」
鳴上「相変わらずモテてるなお前」
綾時「またまた。鳴上くんには適わないよ」
>しばらく他愛のない談笑を続けた。
綾時「……それで、本題は何なのかな?」
鳴上「ああ。実はな」
鳴上「アイギスが一度改めてお前と会いたいって言っているんだ」
綾時「!」
>綾時の表情が一瞬のうちに変化を見せた。
>とても複雑そうにしている……
762: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:06:43.81:Gz/6mzWmo (2/19)
綾時「それはまた……どうして?」
綾時「何かお叱りでもあるのかな」
鳴上「いや、決して悪い意味じゃなくてな。アイギスが今までのお前への態度の事、謝りたいって」
綾時「え……? 本当、に?」
鳴上「本当だ。それで今月の16日、神社で祭りがあるんだけど、そこでアイギスと会ってくれないか?」
綾時「……」
綾時「神社の、お祭り……」
綾時「本当に、冗談じゃなくて、……メティスさんのお姉さんは僕のこともう怒ったりしていないんだね?」
鳴上「ああ」
>力強くそう頷くと、少し間を置いてから綾時も返事をするように頷き返す姿が見られた。
綾時「わかった。行くよ」
鳴上「そうか」
綾時「うん。……ああ、良かったあ」
綾時「この間の旅行の時、やっぱりあなたはダメです、ごめんなさい的なこと言われてたからすっごくヘコんでたんだよねー」
綾時「女の子にあんな態度取られることも滅多に無かったし、どうしたものかと……」
>綾時はいつもの調子に戻ったようだ。
綾時「メティスさんのお姉さん……アイギスさんに、会える日を楽しみにしてますって伝えておいてくれるかな?」
綾時「あ、メティスさんやラビリスさんも来るのかな?」
鳴上「もちろん」
綾時「そっか。じゃあ、みんなにそう言っておいて」
>綾時は嬉しそうにしている。
>祭りの日が待ち遠しくなってきた……
>それからまたしばらく、綾時と何気ない話をして過ごした。
>『Ⅵ 恋愛 望月綾時』のランクが5になった
綾時「そういえばさ、さっき一緒にいた女の子たちから聞いたんだけど、鳴上くんのいる寮に幽霊が出るって噂ホントなの?」
鳴上「え? あー……っと」
綾時「その様子だと見たことあるって感じだね!? いいなあ、カワイイ子なんだよね?」
鳴上「カワイイ子、って……は?」
綾時「え? 月光館学園の女子生徒の霊が出るって話じゃないの?」
綾時「ポニーテールにヘアピンのカワイイ子だって」
鳴上「なんだその具体的な内容は……」
鳴上「それに、俺が聞いた噂は男子生徒の霊って話だったぞ?」
綾時「えー? おっかしなあ」
綾時「その話聞いて、キミコさんみたいな子を想像してたんだけどなあ」
鳴上(キミコ、か……それならあり得る話かもしれないけど……)
鳴上(でも、キミコというかリリムのことについては俺しか知らない筈の話だよな……?)
綾時「それはまた……どうして?」
綾時「何かお叱りでもあるのかな」
鳴上「いや、決して悪い意味じゃなくてな。アイギスが今までのお前への態度の事、謝りたいって」
綾時「え……? 本当、に?」
鳴上「本当だ。それで今月の16日、神社で祭りがあるんだけど、そこでアイギスと会ってくれないか?」
綾時「……」
綾時「神社の、お祭り……」
綾時「本当に、冗談じゃなくて、……メティスさんのお姉さんは僕のこともう怒ったりしていないんだね?」
鳴上「ああ」
>力強くそう頷くと、少し間を置いてから綾時も返事をするように頷き返す姿が見られた。
綾時「わかった。行くよ」
鳴上「そうか」
綾時「うん。……ああ、良かったあ」
綾時「この間の旅行の時、やっぱりあなたはダメです、ごめんなさい的なこと言われてたからすっごくヘコんでたんだよねー」
綾時「女の子にあんな態度取られることも滅多に無かったし、どうしたものかと……」
>綾時はいつもの調子に戻ったようだ。
綾時「メティスさんのお姉さん……アイギスさんに、会える日を楽しみにしてますって伝えておいてくれるかな?」
綾時「あ、メティスさんやラビリスさんも来るのかな?」
鳴上「もちろん」
綾時「そっか。じゃあ、みんなにそう言っておいて」
>綾時は嬉しそうにしている。
>祭りの日が待ち遠しくなってきた……
>それからまたしばらく、綾時と何気ない話をして過ごした。
>『Ⅵ 恋愛 望月綾時』のランクが5になった
綾時「そういえばさ、さっき一緒にいた女の子たちから聞いたんだけど、鳴上くんのいる寮に幽霊が出るって噂ホントなの?」
鳴上「え? あー……っと」
綾時「その様子だと見たことあるって感じだね!? いいなあ、カワイイ子なんだよね?」
鳴上「カワイイ子、って……は?」
綾時「え? 月光館学園の女子生徒の霊が出るって話じゃないの?」
綾時「ポニーテールにヘアピンのカワイイ子だって」
鳴上「なんだその具体的な内容は……」
鳴上「それに、俺が聞いた噂は男子生徒の霊って話だったぞ?」
綾時「えー? おっかしなあ」
綾時「その話聞いて、キミコさんみたいな子を想像してたんだけどなあ」
鳴上(キミコ、か……それならあり得る話かもしれないけど……)
鳴上(でも、キミコというかリリムのことについては俺しか知らない筈の話だよな……?)
763: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:09:13.77:Gz/6mzWmo (3/19)
>……
ポロニアンモール
綾時「じゃあ、今日はこれで」
鳴上「16日だからな。忘れるなよ」
綾時「忘れないって!」
>シャガールの前で綾時と別れた。
鳴上(さて、今日の用事は済んだし寮へ帰るか……ん?)
鳴上(あれは……)
>噴水の前で仁王立ちしているスーツの男の後ろ姿が目に映った。
>その男はそこから一ミリも動く事なく、ただそこに突っ立っているように見える。
>いったい、何をしているのだろう……
>そっと近付いて様子を窺ってみると、その男は周防であった事に気付いた。
鳴上「周防さん? なにやって……」
達哉「……シッ!」
>周防は右手の人差し指を口元に当て、こちらの動きを制するかのように左腕を上げると、その場から一歩……いや、半歩ほどだけ前へ詰めた。
>しかし、視線だけはそのまま逸らす事はなく、ずっと一点を集中して見つめている。
>その先にあったのは……ベンチの上にいる黒猫だった。
>黒猫は黒猫で、尻尾を立てながら周防を警戒するような目つきをしており、まるで睨み合うような形になっている。
鳴上(本当に何をしているんだこの人は……)
鳴上(……!)
>周防は上げた左腕をそっと懐に忍ばせる。
>これは、まさか……
鳴上(手錠? いや、もしかしてこれは……じゅ、銃!? 嘘だろ、こんな場所でしかもあんな猫に……!?)
鳴上「ちょっ、ちょっと待ってください! どういう事ですか!?」
達哉「!?」
黒猫「……!」
>慌てて周防の前に飛び出し、黒猫を守るように抱きかかえる。
達哉「鳴上。そのまま動くな。……いいか、動くんじゃないぞ」
鳴上「えっ、な……!?」
>周防は……懐から取り出したものを容赦なくこちらに突きつけた。
鳴上(――!!)
>……
ポロニアンモール
綾時「じゃあ、今日はこれで」
鳴上「16日だからな。忘れるなよ」
綾時「忘れないって!」
>シャガールの前で綾時と別れた。
鳴上(さて、今日の用事は済んだし寮へ帰るか……ん?)
鳴上(あれは……)
>噴水の前で仁王立ちしているスーツの男の後ろ姿が目に映った。
>その男はそこから一ミリも動く事なく、ただそこに突っ立っているように見える。
>いったい、何をしているのだろう……
>そっと近付いて様子を窺ってみると、その男は周防であった事に気付いた。
鳴上「周防さん? なにやって……」
達哉「……シッ!」
>周防は右手の人差し指を口元に当て、こちらの動きを制するかのように左腕を上げると、その場から一歩……いや、半歩ほどだけ前へ詰めた。
>しかし、視線だけはそのまま逸らす事はなく、ずっと一点を集中して見つめている。
>その先にあったのは……ベンチの上にいる黒猫だった。
>黒猫は黒猫で、尻尾を立てながら周防を警戒するような目つきをしており、まるで睨み合うような形になっている。
鳴上(本当に何をしているんだこの人は……)
鳴上(……!)
>周防は上げた左腕をそっと懐に忍ばせる。
>これは、まさか……
鳴上(手錠? いや、もしかしてこれは……じゅ、銃!? 嘘だろ、こんな場所でしかもあんな猫に……!?)
鳴上「ちょっ、ちょっと待ってください! どういう事ですか!?」
達哉「!?」
黒猫「……!」
>慌てて周防の前に飛び出し、黒猫を守るように抱きかかえる。
達哉「鳴上。そのまま動くな。……いいか、動くんじゃないぞ」
鳴上「えっ、な……!?」
>周防は……懐から取り出したものを容赦なくこちらに突きつけた。
鳴上(――!!)
764: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:13:35.31:Gz/6mzWmo (4/19)
>その動きに合わせて反射的に身を強張らせ固く目を閉じてしまった。
>そんな、どうして……!
>そう思っていた矢先に聞こえてきたのは
>……銃声でもなんでもなく、軽快なピロンという電子音だった。
鳴上「……え?」
>恐る恐る目を開けてみると、周防がこちらに向けて構えていたのは
>……携帯電話だった。
>……
鳴上「こいつの写真を撮りたかっただけ、か……なんだ、びっくりした」
達哉「まったく、どういう勘違いをしてるんだ」
>周防は呆れて溜息を吐いている。
>黒猫は未だに自分の腕の中で大人しくしたまま、というより固まったような感じでこちらの様子を凝視していた。
鳴上「でも、周防さんが猫好きってなんか意外だな」
達哉「俺は別に。俺のアニキが好きなだけだ」
達哉「……今朝、アニキから手紙が届いてな」
>周防は懐から今度は口の開いた封筒を取り出し一瞬だけ見せてすぐにしまった。
達哉「月に一度はこういった手紙や荷物を送りつけてくるんだ。もう、ガキじゃないってのに世話焼いてきて……」
達哉「だから嫌がらせにアニキ好みの猫の写真でも送ってやろうと思ってな」
>周防は意地悪く笑いながら短くメールを打って送信したようだ。
鳴上「嫌がらせ? 猫好きなんですよね?」
達哉「ああ。でも極度の猫アレルギーでな。猫が好きなのに触れない……きっと今頃、画面を見ながらそのジレンマに悶え苦しんでいるに違いない」
鳴上(ただの画像なんだし、むしろ喜んでそうな気がするけどな……)
>黒猫の喉を転がしながらふっと息吐き……思わず呟いてしまう。
鳴上「平和だなあ……」
達哉「ん? ……まあ確かにな。以前のような怪奇事件は最近起こっていないみたいだ」
達哉「特別な力を持っているとはいえ、お前たちのような子供に事件を任せきりにするような事がなくなってほっとしている」
鳴上「……でも、まだ完全に解決しきっている訳ではないんです」
鳴上「いつ何が起こってもおかしくはない」
達哉「……そうなのか」
>二人の間に沈黙が訪れた瞬間を狙ったかのように、周防の携帯が鳴り響く。
達哉「アニキからか」
達哉「……」
>周防は携帯の画面をしばらくの間みつめた後、大きな溜息を吐いてうんざりしたような顔になった。
>その動きに合わせて反射的に身を強張らせ固く目を閉じてしまった。
>そんな、どうして……!
>そう思っていた矢先に聞こえてきたのは
>……銃声でもなんでもなく、軽快なピロンという電子音だった。
鳴上「……え?」
>恐る恐る目を開けてみると、周防がこちらに向けて構えていたのは
>……携帯電話だった。
>……
鳴上「こいつの写真を撮りたかっただけ、か……なんだ、びっくりした」
達哉「まったく、どういう勘違いをしてるんだ」
>周防は呆れて溜息を吐いている。
>黒猫は未だに自分の腕の中で大人しくしたまま、というより固まったような感じでこちらの様子を凝視していた。
鳴上「でも、周防さんが猫好きってなんか意外だな」
達哉「俺は別に。俺のアニキが好きなだけだ」
達哉「……今朝、アニキから手紙が届いてな」
>周防は懐から今度は口の開いた封筒を取り出し一瞬だけ見せてすぐにしまった。
達哉「月に一度はこういった手紙や荷物を送りつけてくるんだ。もう、ガキじゃないってのに世話焼いてきて……」
達哉「だから嫌がらせにアニキ好みの猫の写真でも送ってやろうと思ってな」
>周防は意地悪く笑いながら短くメールを打って送信したようだ。
鳴上「嫌がらせ? 猫好きなんですよね?」
達哉「ああ。でも極度の猫アレルギーでな。猫が好きなのに触れない……きっと今頃、画面を見ながらそのジレンマに悶え苦しんでいるに違いない」
鳴上(ただの画像なんだし、むしろ喜んでそうな気がするけどな……)
>黒猫の喉を転がしながらふっと息吐き……思わず呟いてしまう。
鳴上「平和だなあ……」
達哉「ん? ……まあ確かにな。以前のような怪奇事件は最近起こっていないみたいだ」
達哉「特別な力を持っているとはいえ、お前たちのような子供に事件を任せきりにするような事がなくなってほっとしている」
鳴上「……でも、まだ完全に解決しきっている訳ではないんです」
鳴上「いつ何が起こってもおかしくはない」
達哉「……そうなのか」
>二人の間に沈黙が訪れた瞬間を狙ったかのように、周防の携帯が鳴り響く。
達哉「アニキからか」
達哉「……」
>周防は携帯の画面をしばらくの間みつめた後、大きな溜息を吐いてうんざりしたような顔になった。
765: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:17:04.60:Gz/6mzWmo (5/19)
鳴上「どうしたんですか?」
達哉「……さっきの写メを絶賛する言葉と、今日届いた手紙とほぼ同じ内容が長文で書かれてる」
達哉「仕事は順調かとか、三食ちゃんと食べてるかとかな……」
達哉「これじゃあアニキっていうよりも母親だな……はあ」
達哉「お互いもういい年なんだ。いい加減にしてくれって……」
鳴上「ははっ、随分と心配性なんですね。……でも」
鳴上「どんなに年を重ねても、周防さんのお兄さんにとって周防さんが弟だっていうのに変わりはないって事なんじゃないですか?」
鳴上「良いじゃないですか。仲がいい兄弟で羨ましいです。俺一人っ子だからそういうのってなくて」
鳴上「でも、妹みたいな子がいるから周防さんのお兄さんの気持ちはなんとなく察しがつくような気はしますけどね」
達哉「……」
達哉「まあ、俺だってこの年になってようやくアニキの思ってた事が解るようにはなったけど」
達哉「特に鳴上と付き合いがあるようになってからは、な」
達哉「……そうか。アニキもきっとこんな気持ちだったんだな」
>周防は苦笑を浮かべひとりごちた。
達哉「たまにはきちんと手紙の返事くらい書いてやるか」
達哉「……鳴上」
鳴上「はい?」
達哉「お前はあまり周りが心配になるような事するんじゃないぞ? まあ、お前に限ってそんな事はそれほどないとは思うけどな」
>周防はそう笑ってから軽く手を振ってその場から去っていった。
>彼の優しさを一瞬垣間見たように思った。
>周防との絆が深まったような気がする……
>『ⅩⅨ 太陽 周防達哉』のランクが7になった
鳴上「……あ」
>腕の中で静かにしていた黒猫が、急に腕の中から抜け出した。
>こちらを振り返り少しの間また凝視するような視線を向けた後、素早く走っていってしまう。
鳴上「あの猫、どっかで見た覚えがあると思ったけど……もしかして、メティスが構ってた黒猫か?」
>黒い猫なんて何処にでもいるだろうが、なんとなくそういう雰囲気がしていたように思った。
>出来ればもう少し構っていたかった。
>縁があればまた何処かで会えるだろうか……
鳴上「……帰るか」
鳴上「どうしたんですか?」
達哉「……さっきの写メを絶賛する言葉と、今日届いた手紙とほぼ同じ内容が長文で書かれてる」
達哉「仕事は順調かとか、三食ちゃんと食べてるかとかな……」
達哉「これじゃあアニキっていうよりも母親だな……はあ」
達哉「お互いもういい年なんだ。いい加減にしてくれって……」
鳴上「ははっ、随分と心配性なんですね。……でも」
鳴上「どんなに年を重ねても、周防さんのお兄さんにとって周防さんが弟だっていうのに変わりはないって事なんじゃないですか?」
鳴上「良いじゃないですか。仲がいい兄弟で羨ましいです。俺一人っ子だからそういうのってなくて」
鳴上「でも、妹みたいな子がいるから周防さんのお兄さんの気持ちはなんとなく察しがつくような気はしますけどね」
達哉「……」
達哉「まあ、俺だってこの年になってようやくアニキの思ってた事が解るようにはなったけど」
達哉「特に鳴上と付き合いがあるようになってからは、な」
達哉「……そうか。アニキもきっとこんな気持ちだったんだな」
>周防は苦笑を浮かべひとりごちた。
達哉「たまにはきちんと手紙の返事くらい書いてやるか」
達哉「……鳴上」
鳴上「はい?」
達哉「お前はあまり周りが心配になるような事するんじゃないぞ? まあ、お前に限ってそんな事はそれほどないとは思うけどな」
>周防はそう笑ってから軽く手を振ってその場から去っていった。
>彼の優しさを一瞬垣間見たように思った。
>周防との絆が深まったような気がする……
>『ⅩⅨ 太陽 周防達哉』のランクが7になった
鳴上「……あ」
>腕の中で静かにしていた黒猫が、急に腕の中から抜け出した。
>こちらを振り返り少しの間また凝視するような視線を向けた後、素早く走っていってしまう。
鳴上「あの猫、どっかで見た覚えがあると思ったけど……もしかして、メティスが構ってた黒猫か?」
>黒い猫なんて何処にでもいるだろうが、なんとなくそういう雰囲気がしていたように思った。
>出来ればもう少し構っていたかった。
>縁があればまた何処かで会えるだろうか……
鳴上「……帰るか」
766: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:20:14.80:Gz/6mzWmo (6/19)
>……
>それから約束の日まで、やらなければならない事を一気に片付けた。
>学校見学や、就職の説明会、部活動や、出されていた夏休みの宿題まで……
>そんなこんなでまだ一か月ほどはあると思っていた夏休みもいつの間にか半分を過ぎてしまい、これでは八十稲羽の方へ遊びに行く事は出来そうにないと気付いたのは夏祭りの直前の事だった。
陽介『そっかあ、やっぱこっちに来るのは無理そうか』
鳴上「ああ。色々あってさ……」
陽介『ま、しょうがねえよな』
陽介『みんなにもそう伝えとくな』
鳴上「頼んだ」
――ブツッ
鳴上「……」
鳴上「もっと夏休みが長く続けばいいのに……」
>……
08/16(木) 晴れ
>約束の夏祭りの日がやってきた。
>始まるのは夕方からのようだ。
>それまでに、今日やらなければならない事を片付けておかなければ……
>……
【夕方】
長鳴神社
綾時「おーい、鳴上くん!」
>綾時が手を振って呼んでいる。
鳴上「早かったな、望月」
綾時「今日という日を本当に楽しみにしていたからね!」
>綾時は無邪気にはしゃいでいる。
>その様子を見るだけで、言葉に嘘偽りがない事はすぐに解った。
>……
>それから約束の日まで、やらなければならない事を一気に片付けた。
>学校見学や、就職の説明会、部活動や、出されていた夏休みの宿題まで……
>そんなこんなでまだ一か月ほどはあると思っていた夏休みもいつの間にか半分を過ぎてしまい、これでは八十稲羽の方へ遊びに行く事は出来そうにないと気付いたのは夏祭りの直前の事だった。
陽介『そっかあ、やっぱこっちに来るのは無理そうか』
鳴上「ああ。色々あってさ……」
陽介『ま、しょうがねえよな』
陽介『みんなにもそう伝えとくな』
鳴上「頼んだ」
――ブツッ
鳴上「……」
鳴上「もっと夏休みが長く続けばいいのに……」
>……
08/16(木) 晴れ
>約束の夏祭りの日がやってきた。
>始まるのは夕方からのようだ。
>それまでに、今日やらなければならない事を片付けておかなければ……
>……
【夕方】
長鳴神社
綾時「おーい、鳴上くん!」
>綾時が手を振って呼んでいる。
鳴上「早かったな、望月」
綾時「今日という日を本当に楽しみにしていたからね!」
>綾時は無邪気にはしゃいでいる。
>その様子を見るだけで、言葉に嘘偽りがない事はすぐに解った。
767: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:22:55.81:Gz/6mzWmo (7/19)
天田「綾時さん、こんにちは。……あ、もうすぐこんばんは、かな?」
綾時「天田くん、久しぶり」
綾時「……えっと、そちらの人は?」
鳴上「夏休みになってから俺たちと同じ寮に入った神郷諒さんだ」
鳴上「今日は寮にいるメンバー全員で祭りに参加って事になってる」
綾時「じゃあ、前に話していたワンコくんも?」
天田「ええ、コロマルもパスカルも一緒に連れてきてますよ。でも今日は流石に境内の方へは入れられないので、階段下の方で待機してもらってますけど」
綾時「後で触らせてもらってもいいかい?」
鳴上「存分にもふもふするといいぞ」
綾時「やった!」
諒「……」
>諒が、まじまじと綾時のことを見つめている……
諒「君が話に出ていた望月か」
綾時「あ、はい。望月綾時です。よろしくお願いします」
諒「……。よろしく」
諒「まあ、俺の事は気にしないで若い者同士で楽しむといい」
鳴上「神郷さんだってまだ若いじゃないですか……」
綾時「あはは。なんだか面白い人だなあ」
綾時「……ところで、肝心のアイギスさんたちはどうしたんだい? 姿が見えないけれど」
鳴上「準備があるから遅れてくるって。大丈夫、逃げたりする様子はなかったから」
綾時「そっか」
>綾時はさっきまでのはしゃいでいた様子から一転、面持ちに緊張の色が現れ始めていた。
>アイギスと話せる事は嬉しい反面、まだ僅かに不安もあるのだろう。
>女の子と遊び慣れていそうな綾時にしては珍しい反応のような気がして、いけないとは思いつつも少しだけ笑ってしまった。
美鶴「みんな待たせたな」
鳴上「!」
>美鶴の声に振り返る。
>そこには特別課外活動部女性陣たちが揃って並んでいた。
>浴衣姿で。
美鶴「思った以上に着付けに時間がかかってしまった」
ラビリス「たまにはこういうのもええな。動きにくいのがちょっと困るけど」
メティス「せっかくのお祭りだからと言われるままに着てみましたが、面白い恰好ですよね」
天田「わあ、浴衣姿いいですね」
鳴上「……随分と見違えたな」
綾時「うん。みんな綺麗だ」
>綾時が代表でストレートに思っている事を言葉にしてくれた。
天田「綾時さん、こんにちは。……あ、もうすぐこんばんは、かな?」
綾時「天田くん、久しぶり」
綾時「……えっと、そちらの人は?」
鳴上「夏休みになってから俺たちと同じ寮に入った神郷諒さんだ」
鳴上「今日は寮にいるメンバー全員で祭りに参加って事になってる」
綾時「じゃあ、前に話していたワンコくんも?」
天田「ええ、コロマルもパスカルも一緒に連れてきてますよ。でも今日は流石に境内の方へは入れられないので、階段下の方で待機してもらってますけど」
綾時「後で触らせてもらってもいいかい?」
鳴上「存分にもふもふするといいぞ」
綾時「やった!」
諒「……」
>諒が、まじまじと綾時のことを見つめている……
諒「君が話に出ていた望月か」
綾時「あ、はい。望月綾時です。よろしくお願いします」
諒「……。よろしく」
諒「まあ、俺の事は気にしないで若い者同士で楽しむといい」
鳴上「神郷さんだってまだ若いじゃないですか……」
綾時「あはは。なんだか面白い人だなあ」
綾時「……ところで、肝心のアイギスさんたちはどうしたんだい? 姿が見えないけれど」
鳴上「準備があるから遅れてくるって。大丈夫、逃げたりする様子はなかったから」
綾時「そっか」
>綾時はさっきまでのはしゃいでいた様子から一転、面持ちに緊張の色が現れ始めていた。
>アイギスと話せる事は嬉しい反面、まだ僅かに不安もあるのだろう。
>女の子と遊び慣れていそうな綾時にしては珍しい反応のような気がして、いけないとは思いつつも少しだけ笑ってしまった。
美鶴「みんな待たせたな」
鳴上「!」
>美鶴の声に振り返る。
>そこには特別課外活動部女性陣たちが揃って並んでいた。
>浴衣姿で。
美鶴「思った以上に着付けに時間がかかってしまった」
ラビリス「たまにはこういうのもええな。動きにくいのがちょっと困るけど」
メティス「せっかくのお祭りだからと言われるままに着てみましたが、面白い恰好ですよね」
天田「わあ、浴衣姿いいですね」
鳴上「……随分と見違えたな」
綾時「うん。みんな綺麗だ」
>綾時が代表でストレートに思っている事を言葉にしてくれた。
768: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:25:08.83:Gz/6mzWmo (8/19)
アイギス「……あの、綾時さん」
綾時「!」
綾時「アイギスさん……」
綾時「えっと、今日はお誘いありがとうございます」
アイギス「いえ。こちらこそ、来てくださってありがとうございます」
アイギス「……先日はどうも失礼をしました。綾時さんへの今までの態度、反省しています」
綾時「そんな。もう気にしていませんから」
アイギス「綾時さん……」
アイギス「……。あの、これからは姉さんや妹共々仲よくしていただけたら嬉しいです」
綾時「もちろんですよ」
アイギス「よかった……」
アイギス「今日は、よろしくお願いしますね」
綾時「はい。よろしくお願いします」
>二人の間の空気はまだどこかぎこちない。
>しかしそこには以前のような険悪さはなくて、知らない者が傍から見れば初デートのカップルの待ち合わせに見えなくもない……そんな微笑ましい雰囲気のような気がした。
>そんな二人に、事情を知る者たちはほっとしている。
鳴上「さて、みんな揃ったことだし出店を回ろうか」
>……
射的屋
メティス「……あっ、おしい」
ラビリス「もうちょい右いけばよかったのにな」
アイギス「この銃、癖が強すぎます。なれるまでもう少し時間がかかりそう」
綾時「でも上手いよね。僕なんか全然掠りもしないのに」
アイギス「綾時さんはもう少し肩の力を抜いた方がいいです」
綾時「肩の力、か……こんな感じ?」
アイギス「そうそう」
>綾時はすっかりあの三姉妹と馴染んでいる。
>アイギスも綾時に対する態度がすっかり自然になっていた。
>この分ならもう心配する必要はないだろう。
美鶴「なんだか不思議な気分だな」
鳴上「……?」
>少し離れてその様子を一緒に見守っていた美鶴がぽつりと呟いた。
アイギス「……あの、綾時さん」
綾時「!」
綾時「アイギスさん……」
綾時「えっと、今日はお誘いありがとうございます」
アイギス「いえ。こちらこそ、来てくださってありがとうございます」
アイギス「……先日はどうも失礼をしました。綾時さんへの今までの態度、反省しています」
綾時「そんな。もう気にしていませんから」
アイギス「綾時さん……」
アイギス「……。あの、これからは姉さんや妹共々仲よくしていただけたら嬉しいです」
綾時「もちろんですよ」
アイギス「よかった……」
アイギス「今日は、よろしくお願いしますね」
綾時「はい。よろしくお願いします」
>二人の間の空気はまだどこかぎこちない。
>しかしそこには以前のような険悪さはなくて、知らない者が傍から見れば初デートのカップルの待ち合わせに見えなくもない……そんな微笑ましい雰囲気のような気がした。
>そんな二人に、事情を知る者たちはほっとしている。
鳴上「さて、みんな揃ったことだし出店を回ろうか」
>……
射的屋
メティス「……あっ、おしい」
ラビリス「もうちょい右いけばよかったのにな」
アイギス「この銃、癖が強すぎます。なれるまでもう少し時間がかかりそう」
綾時「でも上手いよね。僕なんか全然掠りもしないのに」
アイギス「綾時さんはもう少し肩の力を抜いた方がいいです」
綾時「肩の力、か……こんな感じ?」
アイギス「そうそう」
>綾時はすっかりあの三姉妹と馴染んでいる。
>アイギスも綾時に対する態度がすっかり自然になっていた。
>この分ならもう心配する必要はないだろう。
美鶴「なんだか不思議な気分だな」
鳴上「……?」
>少し離れてその様子を一緒に見守っていた美鶴がぽつりと呟いた。
769: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:27:23.82:Gz/6mzWmo (9/19)
美鶴「アイギスと望月に似た少年がああやって仲良くしているのを見る日が来るとは……」
美鶴「本来こんな事、ありえる筈もなかったからな」
美鶴「まるで夢でも見ているようだ。……というのは、些か大袈裟か」
美鶴「どうなる事かと思っていたが、楽しそうでなによりだ。私ももう、この事に関してとやかく言うのはやめよう」
美鶴「二人にはこうして仲睦まじいままでいてほしいからな」
美鶴「私たちも少しこの辺りを見て回ろうか」
>美鶴はもうアイギスたちを見張る必要もないと判断したのかその場から離れていく。
>自分もそれについていった。
>……
鳴上「あ、桐条さん。あんず飴食べませんか?」
美鶴「あんず飴? ……」
美鶴「そうだな、いただこうか」
鳴上「すみません、二つください」
>……
鳴上「はい、どうぞ」
美鶴「ありがとう。代金は……」
鳴上「いいですよ。俺の奢りです」
美鶴「いいのか?」
鳴上「これくらいどうって事ないですよ」
美鶴「すまないな。いただくよ」
>美鶴と一緒にあんず飴を食べた。
>ひんやりとした水飴があんずに絡まって美味しい。
>美鶴はこういった物を食べなれていないのか、食べるのに少し苦戦しているようだ。
美鶴「べとべとするが……美味しいな」
鳴上「口に付いてますよ?」
美鶴「む……?」
鳴上「右口端のところ」
>まるで子供のようなその姿が普段の凛々しい雰囲気とのギャップもあって可愛らしく感じる。
>美鶴は慌ててハンカチを取り出すと上品に拭った。
美鶴「アイギスと望月に似た少年がああやって仲良くしているのを見る日が来るとは……」
美鶴「本来こんな事、ありえる筈もなかったからな」
美鶴「まるで夢でも見ているようだ。……というのは、些か大袈裟か」
美鶴「どうなる事かと思っていたが、楽しそうでなによりだ。私ももう、この事に関してとやかく言うのはやめよう」
美鶴「二人にはこうして仲睦まじいままでいてほしいからな」
美鶴「私たちも少しこの辺りを見て回ろうか」
>美鶴はもうアイギスたちを見張る必要もないと判断したのかその場から離れていく。
>自分もそれについていった。
>……
鳴上「あ、桐条さん。あんず飴食べませんか?」
美鶴「あんず飴? ……」
美鶴「そうだな、いただこうか」
鳴上「すみません、二つください」
>……
鳴上「はい、どうぞ」
美鶴「ありがとう。代金は……」
鳴上「いいですよ。俺の奢りです」
美鶴「いいのか?」
鳴上「これくらいどうって事ないですよ」
美鶴「すまないな。いただくよ」
>美鶴と一緒にあんず飴を食べた。
>ひんやりとした水飴があんずに絡まって美味しい。
>美鶴はこういった物を食べなれていないのか、食べるのに少し苦戦しているようだ。
美鶴「べとべとするが……美味しいな」
鳴上「口に付いてますよ?」
美鶴「む……?」
鳴上「右口端のところ」
>まるで子供のようなその姿が普段の凛々しい雰囲気とのギャップもあって可愛らしく感じる。
>美鶴は慌ててハンカチを取り出すと上品に拭った。
770: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:30:23.60:Gz/6mzWmo (10/19)
美鶴「……。こういうのもたまには悪くないな」
鳴上「というか、こういう機会でしか食べることもありませんよね」
美鶴「それもそうだな」
美鶴「しかし、賑やかだな。この祭りにくるのは三年前にアイギスと共に来て以来だが、毎年こんな感じだっただろうか……」
鳴上「三年ぶりですか? 結構間がありますね」
美鶴「卒業してからは日々に追われていたからな……今日も時間を作れそうか怪しかったが、どうにかなったよ」
鳴上「……あの、なんかすみません。急にあんな事言っちゃって、無理させたみたいで」
美鶴「何を謝っている。この前一緒に遊べなかった私にも気を使ってくれたんだろう?」
美鶴「君のそういう優しいところは嫌いじゃないぞ。今日は時間まで楽しもうじゃないか」
鳴上「……はい」
>それからしばらく、美鶴と一緒に出店を見て歩いた。
>美鶴との距離が縮まったような気がする……
>『Ⅲ 女帝 桐条美鶴』のランクが5になった
ラビリス「あ、美鶴さーん! ちょっと!」
>人の波の向こう側でラビリスが手を振って呼んでいる。
美鶴「どうした」
>美鶴は呼ばれるままにラビリスのいる方へと向かってしまった。
>自分もそれに続こうと思ったが、大勢の人で中々前に進めない。
>そんな時、ふと声をかけられた。
トリッシュ「Hi! 悠! こっちだよ、こっち!」
鳴上「!?」
鳴上「誰かと思えば……お前、こんな大勢の人の中で何やってるんだ?」
トリッシュ「ボクも便乗してShopを開いてるんだよ。夏は稼ぐChanceが多いからダイスキさ」
>トリッシュは綿飴の出店を出しているらしい。
>なんとも商売熱心な妖精だ。
>しかもそれなりに繁盛しているようである。
トリッシュ「というわけで悠もおひとつどう? っていうか、買え!」
鳴上「はいはい……じゃあ、ひとつだけ」
トリッシュ「Thank you!」
>800円支払ってトリッシュから綿飴を買った。
>祭りらしい価格設定だが、トリッシュにしては良心的な値段のように思える。
トリッシュ「See you!」
>トリッシュの出店を後にした。
>……
美鶴「……。こういうのもたまには悪くないな」
鳴上「というか、こういう機会でしか食べることもありませんよね」
美鶴「それもそうだな」
美鶴「しかし、賑やかだな。この祭りにくるのは三年前にアイギスと共に来て以来だが、毎年こんな感じだっただろうか……」
鳴上「三年ぶりですか? 結構間がありますね」
美鶴「卒業してからは日々に追われていたからな……今日も時間を作れそうか怪しかったが、どうにかなったよ」
鳴上「……あの、なんかすみません。急にあんな事言っちゃって、無理させたみたいで」
美鶴「何を謝っている。この前一緒に遊べなかった私にも気を使ってくれたんだろう?」
美鶴「君のそういう優しいところは嫌いじゃないぞ。今日は時間まで楽しもうじゃないか」
鳴上「……はい」
>それからしばらく、美鶴と一緒に出店を見て歩いた。
>美鶴との距離が縮まったような気がする……
>『Ⅲ 女帝 桐条美鶴』のランクが5になった
ラビリス「あ、美鶴さーん! ちょっと!」
>人の波の向こう側でラビリスが手を振って呼んでいる。
美鶴「どうした」
>美鶴は呼ばれるままにラビリスのいる方へと向かってしまった。
>自分もそれに続こうと思ったが、大勢の人で中々前に進めない。
>そんな時、ふと声をかけられた。
トリッシュ「Hi! 悠! こっちだよ、こっち!」
鳴上「!?」
鳴上「誰かと思えば……お前、こんな大勢の人の中で何やってるんだ?」
トリッシュ「ボクも便乗してShopを開いてるんだよ。夏は稼ぐChanceが多いからダイスキさ」
>トリッシュは綿飴の出店を出しているらしい。
>なんとも商売熱心な妖精だ。
>しかもそれなりに繁盛しているようである。
トリッシュ「というわけで悠もおひとつどう? っていうか、買え!」
鳴上「はいはい……じゃあ、ひとつだけ」
トリッシュ「Thank you!」
>800円支払ってトリッシュから綿飴を買った。
>祭りらしい価格設定だが、トリッシュにしては良心的な値段のように思える。
トリッシュ「See you!」
>トリッシュの出店を後にした。
>……
771: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:33:08.70:Gz/6mzWmo (11/19)
>ふと前方にあるお面の屋台で、天田と諒の姿を見つけた。
諒「……」
諒「買うのか?」
天田「か、買いませんよ! そこまで子供じゃないし……」
諒「フェザーマン、あるぞ?」
天田「だから買いませんってば!」
鳴上「天田」
天田「……あ、鳴上さん」
鳴上「別に恥ずかしがることないと思うぞ? カッコイイじゃないか、フェザーマン」
天田「そういう訳じゃ……」
天田「それよりも、僕お腹が空いてるんで何か買って食べよう」
>天田はお面の屋台から離れて別の出店を探し始めた。
天田「焼きそばと、お好み焼き……どっちも捨てがたいな。両方買っちゃおうかな」
諒「そんなに食べられるのか?」
天田「平気ですよ、これくらい」
鳴上「育ち盛りの男の子だもんな。それくらい余裕か」
天田「でも、今日そんなにお金持ってきてないんだよなあ」
>天田はどっちを買おうか悩んでいるようだ。
諒「……」
諒「どっちか俺が買おう」
天田「えっ、いいんですか?」
諒「分けて食べることになっていいならな」
天田「わあ、やった! ありがとうございます!」
天田「じゃあ、お好み焼きの方買ってきますね」
>天田と諒はそれぞれの出店に買いに行った。
諒「……ほら」
鳴上「え?」
諒「お前の分もついでだ」
>諒は手に持っていた焼きそばをひとつ差し出してきた。
鳴上「あ、どうもありがとうございます」
>邪魔にならない場所に移って、三人で食べることにした。
>……
>ふと前方にあるお面の屋台で、天田と諒の姿を見つけた。
諒「……」
諒「買うのか?」
天田「か、買いませんよ! そこまで子供じゃないし……」
諒「フェザーマン、あるぞ?」
天田「だから買いませんってば!」
鳴上「天田」
天田「……あ、鳴上さん」
鳴上「別に恥ずかしがることないと思うぞ? カッコイイじゃないか、フェザーマン」
天田「そういう訳じゃ……」
天田「それよりも、僕お腹が空いてるんで何か買って食べよう」
>天田はお面の屋台から離れて別の出店を探し始めた。
天田「焼きそばと、お好み焼き……どっちも捨てがたいな。両方買っちゃおうかな」
諒「そんなに食べられるのか?」
天田「平気ですよ、これくらい」
鳴上「育ち盛りの男の子だもんな。それくらい余裕か」
天田「でも、今日そんなにお金持ってきてないんだよなあ」
>天田はどっちを買おうか悩んでいるようだ。
諒「……」
諒「どっちか俺が買おう」
天田「えっ、いいんですか?」
諒「分けて食べることになっていいならな」
天田「わあ、やった! ありがとうございます!」
天田「じゃあ、お好み焼きの方買ってきますね」
>天田と諒はそれぞれの出店に買いに行った。
諒「……ほら」
鳴上「え?」
諒「お前の分もついでだ」
>諒は手に持っていた焼きそばをひとつ差し出してきた。
鳴上「あ、どうもありがとうございます」
>邪魔にならない場所に移って、三人で食べることにした。
>……
772: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:36:26.73:Gz/6mzWmo (12/19)
>ふたりは買ったものをそれぞれ分け合って食べている。
諒「天田、こぼれてるぞ」
天田「えっ?」
諒「それに、口にソースがついてる。……ほら」
天田「す、すみません。ありがとうございます」
>天田は諒が差し出したポケットティッシュを受け取って口を拭いた。
>先ほどから見て思ったが、諒の天田に対する世話の焼き方は手馴れているような感じだ。
>こうしているとまるで兄弟のような……
>もしかしたら諒は下に弟か妹を持っているのかもしれない、……そんな雰囲気だ。
諒「……? どうかしたか」
鳴上「いえ、なんでも」
鳴上「そういえば、神郷さんとこういう風に過ごすのは何気に初めてですね」
天田「そうですよね。神郷さん夏休みの間は部屋に籠ってることが多かったし、今まであまりお話する機会もなかったですよね」
諒「そうだったか」
天田「美鶴さんの話だと、神郷さんの使ってる部屋を防音強化したのって静かに勉強がする場所がほしいからって事でしたよね」
天田「やっぱり大学生ともなると色々大変になるんですね」
天田「部屋にいる事が多かったのもそういう理由からなんでしょ?」
諒「……まあな」
天田「やっぱり」
諒「そういうお前たちは、学校の宿題は大丈夫なのか?」
鳴上「俺はもう終わりましたよ」
天田「僕はまだあと少し残ってますけど、この調子ならなんとか」
諒「そうか」
>天田の言う通り、諒と接する機会は今まであまり持てなかった。
>加えて諒はあまり多くのことを語らないタイプのように感じる。
>そして、寮に住む自分たちに対して何処か一線を引いているような、そんな風にも思える。
>彼が特別課外活動部に加わって以降、これといった事件も起こってないため、同じ仲間として協力し合うような事も今のところはない。
>そういう事もあって、まだ彼自身この環境に慣れきっていないところもあるのかもしれない。
>部屋にばかりいて、他人とあまり接触をもたないのもそれが原因なのだろうか。
>今日の祭りの誘いも、内心もしかしたら断られるかもしれないと思っていたくらいだったのだが……
>しかし、これをきっかけにお互い少しずつ打ち解けられればいいと、そう思った。
>……
鳴上「そろそろアイギスたちとも合流しようか」
天田「そうですね。……って、もしかして今、綾時さんハーレム状態じゃないですか?」
鳴上「確かにそうなるな。ま、今日は少しくらい良い思いさせてやりたかったし、いいじゃないか」
天田「調子に乗ってみんなにちょっかい出しすぎてないといいですけどね」
天田「メティスさんなんか怒らせたら絶対締め上げられますよ」
鳴上「そうなってない事を祈ろう」
>ふたりは買ったものをそれぞれ分け合って食べている。
諒「天田、こぼれてるぞ」
天田「えっ?」
諒「それに、口にソースがついてる。……ほら」
天田「す、すみません。ありがとうございます」
>天田は諒が差し出したポケットティッシュを受け取って口を拭いた。
>先ほどから見て思ったが、諒の天田に対する世話の焼き方は手馴れているような感じだ。
>こうしているとまるで兄弟のような……
>もしかしたら諒は下に弟か妹を持っているのかもしれない、……そんな雰囲気だ。
諒「……? どうかしたか」
鳴上「いえ、なんでも」
鳴上「そういえば、神郷さんとこういう風に過ごすのは何気に初めてですね」
天田「そうですよね。神郷さん夏休みの間は部屋に籠ってることが多かったし、今まであまりお話する機会もなかったですよね」
諒「そうだったか」
天田「美鶴さんの話だと、神郷さんの使ってる部屋を防音強化したのって静かに勉強がする場所がほしいからって事でしたよね」
天田「やっぱり大学生ともなると色々大変になるんですね」
天田「部屋にいる事が多かったのもそういう理由からなんでしょ?」
諒「……まあな」
天田「やっぱり」
諒「そういうお前たちは、学校の宿題は大丈夫なのか?」
鳴上「俺はもう終わりましたよ」
天田「僕はまだあと少し残ってますけど、この調子ならなんとか」
諒「そうか」
>天田の言う通り、諒と接する機会は今まであまり持てなかった。
>加えて諒はあまり多くのことを語らないタイプのように感じる。
>そして、寮に住む自分たちに対して何処か一線を引いているような、そんな風にも思える。
>彼が特別課外活動部に加わって以降、これといった事件も起こってないため、同じ仲間として協力し合うような事も今のところはない。
>そういう事もあって、まだ彼自身この環境に慣れきっていないところもあるのかもしれない。
>部屋にばかりいて、他人とあまり接触をもたないのもそれが原因なのだろうか。
>今日の祭りの誘いも、内心もしかしたら断られるかもしれないと思っていたくらいだったのだが……
>しかし、これをきっかけにお互い少しずつ打ち解けられればいいと、そう思った。
>……
鳴上「そろそろアイギスたちとも合流しようか」
天田「そうですね。……って、もしかして今、綾時さんハーレム状態じゃないですか?」
鳴上「確かにそうなるな。ま、今日は少しくらい良い思いさせてやりたかったし、いいじゃないか」
天田「調子に乗ってみんなにちょっかい出しすぎてないといいですけどね」
天田「メティスさんなんか怒らせたら絶対締め上げられますよ」
鳴上「そうなってない事を祈ろう」
773: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:39:12.80:Gz/6mzWmo (13/19)
天田「じゃあ、アイギスさんたちを探しましょうか……ん?」
鳴上「もう見つかったのか?」
天田「あ、いえ……子供たちが集まってるから何かと思ったら、あそこで風船配ってるみたいですね」
>天田の指差した方向に風船をもらおうとする子供が群がっているのが見える。
天田「風船かあ……」
諒「……」
諒「欲しいのか?」
天田「え? っと……」
鳴上「ああいう風に配ってるところなんて久しぶりに見た気がするな。俺もちょっと欲しくなってきたかも」
男「お兄さんたちもいるかい? 何色がいい?」
>風船を配っていた男に話しかけられた。
天田「それじゃあ……」
鳴上「そうだな……」
鳴上・天田「水色」
天田「って、見事に被りましたね」
鳴上「そうみたいだな」
男「はいはい、水色ねー。じゃあはい、お兄さん渡してくれる?」
>男は一番近くにいた諒の両手に水色の風船に繋がった紐を預けた。
>諒はふたつの水色の風船をじっと見つめている。
諒「……」
諒「ほら」
>諒は預けられたその紐を自分と天田のそれぞれに差し出す。
>……その表情が、何故だかひどく寂しげで悲しげだったのは気のせいだったのだろうか。
>『ⅩⅧ 月 神郷諒』のランクが3になった
>……
メティス「鳴上さんたちを発見です」
美鶴「急に君の姿が見えなくなったからどうしたのかと思ったら、神郷と天田と一緒だったのか」
ラビリス「もう祭りも終わりみたいやで」
>神社にきてからもう随分と時間が経っていたようだ。
天田「じゃあ、アイギスさんたちを探しましょうか……ん?」
鳴上「もう見つかったのか?」
天田「あ、いえ……子供たちが集まってるから何かと思ったら、あそこで風船配ってるみたいですね」
>天田の指差した方向に風船をもらおうとする子供が群がっているのが見える。
天田「風船かあ……」
諒「……」
諒「欲しいのか?」
天田「え? っと……」
鳴上「ああいう風に配ってるところなんて久しぶりに見た気がするな。俺もちょっと欲しくなってきたかも」
男「お兄さんたちもいるかい? 何色がいい?」
>風船を配っていた男に話しかけられた。
天田「それじゃあ……」
鳴上「そうだな……」
鳴上・天田「水色」
天田「って、見事に被りましたね」
鳴上「そうみたいだな」
男「はいはい、水色ねー。じゃあはい、お兄さん渡してくれる?」
>男は一番近くにいた諒の両手に水色の風船に繋がった紐を預けた。
>諒はふたつの水色の風船をじっと見つめている。
諒「……」
諒「ほら」
>諒は預けられたその紐を自分と天田のそれぞれに差し出す。
>……その表情が、何故だかひどく寂しげで悲しげだったのは気のせいだったのだろうか。
>『ⅩⅧ 月 神郷諒』のランクが3になった
>……
メティス「鳴上さんたちを発見です」
美鶴「急に君の姿が見えなくなったからどうしたのかと思ったら、神郷と天田と一緒だったのか」
ラビリス「もう祭りも終わりみたいやで」
>神社にきてからもう随分と時間が経っていたようだ。
774: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:41:47.89:Gz/6mzWmo (14/19)
アイギス「あっという間でしたね。でも、楽しかったです」
綾時「僕もだよ。いい思い出が作れてよかった」
綾時「でも、もうこんな時間なんだね。ワンコくんたちをもふもふ出来る時間がなくなっちゃったな」
アイギス「今度時間がある時にでも寮の方へ遊びに来てください。いつでも待ってますから」
アイギス「コロマルさんたちもきっと歓迎してくれますよ」
綾時「ホント!? その言葉、忘れないでよ?」
アイギス「はい」
>楽しい時間があっという間に過ぎてしまった……
>綾時と別れ、名残惜しい気持ちを引きずったままみんなで寮へと帰った。
>……
08/17(金) 晴れ
>夏休みはまだ続いている。
>今日から月末まで駅前の映画館で映画祭というのが行われるらしい。
>人手がいるようで急遽アルバイトに呼ばれ、メティスと一緒に手伝いに行く事になった。
>……
映画館 スクリーンショット
>映画館は普段よりも大勢の人で賑わっている。
>上映が始まるまでは、売店の業務が忙しくなりそうだ。
>……
メティス「えっ、ちょっと、鳴上さん。あれって……」
鳴上「?」
鳴上「あ……」
トリッシュ「ハーイ、並んで並んで! 映画祭期間限定の、砂糖味噌味のポップコーン売り場はココだよー」
>何故かトリッシュが映画館の一角でポップコーンを売っている。
>人がそこそこ並んでいるが、何故か他の映画館の社員はその事に気付いていない様子だ……
>……
>客が劇場に入り上映が始まると周りは一気に静かになった。
鳴上「トリッシュ……こんなところに来てまで商売してるのか」
トリッシュ「Of course! 今月は映画祭で人も多いからネ。いつもは月一での販売だけど、大serviceだよ」
メティス「今までも月に一度はここで売っていたんですか? 知らなかった……」
トリッシュ「でも、最近は泉の方の営業する機会がないから困ってるよ。あれが一番儲かるのにさ」
>トリッシュはなんだか不満そうだ。
>しかし、トリッシュにあの回復の泉の仕事がないというのは、世間は平和だという証拠だ。
>実際、この夏休み中は特に変わった事は起きていない。
アイギス「あっという間でしたね。でも、楽しかったです」
綾時「僕もだよ。いい思い出が作れてよかった」
綾時「でも、もうこんな時間なんだね。ワンコくんたちをもふもふ出来る時間がなくなっちゃったな」
アイギス「今度時間がある時にでも寮の方へ遊びに来てください。いつでも待ってますから」
アイギス「コロマルさんたちもきっと歓迎してくれますよ」
綾時「ホント!? その言葉、忘れないでよ?」
アイギス「はい」
>楽しい時間があっという間に過ぎてしまった……
>綾時と別れ、名残惜しい気持ちを引きずったままみんなで寮へと帰った。
>……
08/17(金) 晴れ
>夏休みはまだ続いている。
>今日から月末まで駅前の映画館で映画祭というのが行われるらしい。
>人手がいるようで急遽アルバイトに呼ばれ、メティスと一緒に手伝いに行く事になった。
>……
映画館 スクリーンショット
>映画館は普段よりも大勢の人で賑わっている。
>上映が始まるまでは、売店の業務が忙しくなりそうだ。
>……
メティス「えっ、ちょっと、鳴上さん。あれって……」
鳴上「?」
鳴上「あ……」
トリッシュ「ハーイ、並んで並んで! 映画祭期間限定の、砂糖味噌味のポップコーン売り場はココだよー」
>何故かトリッシュが映画館の一角でポップコーンを売っている。
>人がそこそこ並んでいるが、何故か他の映画館の社員はその事に気付いていない様子だ……
>……
>客が劇場に入り上映が始まると周りは一気に静かになった。
鳴上「トリッシュ……こんなところに来てまで商売してるのか」
トリッシュ「Of course! 今月は映画祭で人も多いからネ。いつもは月一での販売だけど、大serviceだよ」
メティス「今までも月に一度はここで売っていたんですか? 知らなかった……」
トリッシュ「でも、最近は泉の方の営業する機会がないから困ってるよ。あれが一番儲かるのにさ」
>トリッシュはなんだか不満そうだ。
>しかし、トリッシュにあの回復の泉の仕事がないというのは、世間は平和だという証拠だ。
>実際、この夏休み中は特に変わった事は起きていない。
775: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:44:24.93:Gz/6mzWmo (15/19)
トリッシュ「ねえねえ、キミたちもどう?」
メティス「砂糖味噌味……ちょっと、気になりますね。おいくらですか?」
トリッシュ「\1000」
鳴上「高いな……」
トリッシュ「でもよく出るんだよ? 売るのに忙しくなったらキミたちも手伝ってよね!」
>こうして、映画祭の期間中はトリッシュも一緒に加わって働くことになった。
>『ⅩⅣ 節制 トリッシュ』のランクが5になった
>……
>こうして、あっという間に月末がやってきた……
08/31(金) 晴れ
>今日は映画祭の最終日だ。
>しかし夏休みの最終日ということもあって、アルバイトの方は休みになっている。
>最後のこの日、どう過ごそうか……
コンコン
メティス「鳴上さん、いますか?」
鳴上「いるぞ。どうした?」
メティス「今日お暇でしたら、ちょっと付き合っていただいてもいいでしょうか?」
鳴上「いいけど、どこに行くんだ?」
メティス「それが……」
メティス「コロマルさんとパスカルさんが映画を見に行きたいと言っていて……」
鳴上「……」
鳴上「え?」
>……
映画館 スクリーンショット
>仕事ではないが、結局映画館にくる事になってしまった。
>しかし……
メティス「どうしたらいいでしょうね。動物は持ち込み禁止なのは解ってるんですけど」
コロマル「ワン!」
パスカル「バウ!」
>メティスの話によると、コロマルとパスカルは『漢たちの戦い リターン』という映画をどうしても見たがっているという事らしい。
>とりあえずここまで連れてきたはいいのだが、果たして上手く中に入る事が出来るのだろうか。
トリッシュ「ねえねえ、キミたちもどう?」
メティス「砂糖味噌味……ちょっと、気になりますね。おいくらですか?」
トリッシュ「\1000」
鳴上「高いな……」
トリッシュ「でもよく出るんだよ? 売るのに忙しくなったらキミたちも手伝ってよね!」
>こうして、映画祭の期間中はトリッシュも一緒に加わって働くことになった。
>『ⅩⅣ 節制 トリッシュ』のランクが5になった
>……
>こうして、あっという間に月末がやってきた……
08/31(金) 晴れ
>今日は映画祭の最終日だ。
>しかし夏休みの最終日ということもあって、アルバイトの方は休みになっている。
>最後のこの日、どう過ごそうか……
コンコン
メティス「鳴上さん、いますか?」
鳴上「いるぞ。どうした?」
メティス「今日お暇でしたら、ちょっと付き合っていただいてもいいでしょうか?」
鳴上「いいけど、どこに行くんだ?」
メティス「それが……」
メティス「コロマルさんとパスカルさんが映画を見に行きたいと言っていて……」
鳴上「……」
鳴上「え?」
>……
映画館 スクリーンショット
>仕事ではないが、結局映画館にくる事になってしまった。
>しかし……
メティス「どうしたらいいでしょうね。動物は持ち込み禁止なのは解ってるんですけど」
コロマル「ワン!」
パスカル「バウ!」
>メティスの話によると、コロマルとパスカルは『漢たちの戦い リターン』という映画をどうしても見たがっているという事らしい。
>とりあえずここまで連れてきたはいいのだが、果たして上手く中に入る事が出来るのだろうか。
776: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:47:50.20:Gz/6mzWmo (16/19)
鳴上「ぬいぐるみを持っているフリをして入ろう」
メティス「……。そんな事でうまくいくんでしょうか?」
鳴上「やってみなきゃわからない! メティスはパスカルの方を頼んだ」
メティス「……了解しました」
>……
女性社員「もう、誰かと思ったら鳴上くんとメティスさんじゃない。ダメよ、こんな事しちゃあ」
女性社員「ペットの持ち込みは禁止って知ってるでしょう?」
女性社員「前にもこんな事してた子がいたけど、まさか二度目があるとはね……とにかく、連れて帰りなさい」
>……どうやらダメだったようだ。
>追い返されてしまった……
メティス「やっぱり無理でしたね」
鳴上「ごめんな。またDVDが出たら、その時一緒に見よう」
コロマル・パスカル「クゥーン……」
メティス「夏休みも今日でおしまいだから、最後にコロマルさんたちとも普段行かないところに行きたかったのに……」
鳴上「……」
>……そうだ。
>夏休みはもう終わるのだ。
>……
【夕方】
自室
>結局、あの後はコロマルたちを散歩に連れていって寮に戻ってきた。
>部屋の扉を開いて中に入ると、部屋の隅にあるガスが抜けて下に落ちた水色の風船に視線がいった。
>あの夏祭りの夜が、もう二週間以上も前の事だとは思えない。
>それくらい、時間の流れが早かったような気がする。
>机の上にあるPCの電源を点けた。
>メールをチェックし、ニュースサイトを巡り、辰巳ちゃんねるに目を通す……
>そうやって、この街に何か奇妙な出来事は起こっていないかいつも気にかけてはいるものの、これといった事はない日々がずっと続いている。
>きっと今日もそうだろう。
>そんな風に考えていると、一件だけ気になるニュースを見つけてしまった。
>今日未明、港区の某所で獣に食い荒らされたような死体が別々の場所で一つずつ見つかったというものだ。
>辰巳ちゃんねるの方も、その話題でそこそこ盛り上がっている様子だ。
>どうやら何年か前に全く別の街でこれと似たような事件があったらしく、その話の詳細を追った。
>……そしてわかったのは、以前起こった事件では『JOKER』なる殺人鬼が、連続猟奇事件を起こしていたらしいという事。
>その当時にJOKER様の噂話というのが流行っていたという事だった。
鳴上「ぬいぐるみを持っているフリをして入ろう」
メティス「……。そんな事でうまくいくんでしょうか?」
鳴上「やってみなきゃわからない! メティスはパスカルの方を頼んだ」
メティス「……了解しました」
>……
女性社員「もう、誰かと思ったら鳴上くんとメティスさんじゃない。ダメよ、こんな事しちゃあ」
女性社員「ペットの持ち込みは禁止って知ってるでしょう?」
女性社員「前にもこんな事してた子がいたけど、まさか二度目があるとはね……とにかく、連れて帰りなさい」
>……どうやらダメだったようだ。
>追い返されてしまった……
メティス「やっぱり無理でしたね」
鳴上「ごめんな。またDVDが出たら、その時一緒に見よう」
コロマル・パスカル「クゥーン……」
メティス「夏休みも今日でおしまいだから、最後にコロマルさんたちとも普段行かないところに行きたかったのに……」
鳴上「……」
>……そうだ。
>夏休みはもう終わるのだ。
>……
【夕方】
自室
>結局、あの後はコロマルたちを散歩に連れていって寮に戻ってきた。
>部屋の扉を開いて中に入ると、部屋の隅にあるガスが抜けて下に落ちた水色の風船に視線がいった。
>あの夏祭りの夜が、もう二週間以上も前の事だとは思えない。
>それくらい、時間の流れが早かったような気がする。
>机の上にあるPCの電源を点けた。
>メールをチェックし、ニュースサイトを巡り、辰巳ちゃんねるに目を通す……
>そうやって、この街に何か奇妙な出来事は起こっていないかいつも気にかけてはいるものの、これといった事はない日々がずっと続いている。
>きっと今日もそうだろう。
>そんな風に考えていると、一件だけ気になるニュースを見つけてしまった。
>今日未明、港区の某所で獣に食い荒らされたような死体が別々の場所で一つずつ見つかったというものだ。
>辰巳ちゃんねるの方も、その話題でそこそこ盛り上がっている様子だ。
>どうやら何年か前に全く別の街でこれと似たような事件があったらしく、その話の詳細を追った。
>……そしてわかったのは、以前起こった事件では『JOKER』なる殺人鬼が、連続猟奇事件を起こしていたらしいという事。
>その当時にJOKER様の噂話というのが流行っていたという事だった。
777: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:51:28.36:Gz/6mzWmo (17/19)
鳴上「自分の携帯電話から自分の携帯番号に電話して邪魔な人間の名前を言うと、”JOKER様”が殺してくれる……か」
鳴上「自分の携帯から……JOKER様……」
鳴上「噂話……?」
>その話に出てくるいくつかの単語が何故か頭の中で引っかかっている。
>どうしてだろう、これと似たような話を知っているような気がする……
鳴上「そうだ……! 学校で聞いた噂だ!」
>以前ラビリスからもらった学校中の生徒から聞いた噂話をまとめてあるノート引っ張り出してページをめくった。
『携帯電話を使った願いが叶うおまじないみたいなのとか……』
>あの時、ラビリスも一瞬口にしていたような気がする。
鳴上「あった、これだ」
鳴上「自分の携帯電話から自分の携帯番号へかけると……夢を叶えてくれる怪人・ジョーカーが背後に現れる?」
>どうやらさっきネットで見た噂話とは内容が少し違っているようだ。
鳴上「でも、邪魔な人間を殺してくれるっていうのも、ある意味自分の夢を叶えてくれるってのと一緒だよな」
鳴上「……夢を叶えてくれる怪人、か」
>自分の携帯電話を手に取る。
>……なんとなく自分の携帯番号をポチポチと打ち込んでみてしまった。
鳴上「まさか、いくらなんでも……な」
鳴上「……あ」
>しまった、うっかり通話ボタンを押してしまったようだ。
鳴上「……」
鳴上「出るわけないだろ。ないよな」
>少なからず好奇心があったのか、そのまますぐ切らずに携帯を耳に当てて反応を窺ってみてしまった。
鳴上「……」
>……
>少ししてから聞こえてきたのは、留守番サービスセンターへ繋ぐアナウンスだった。
>ピーっという発信音を耳にした後、息を短く吸う。
鳴上「今、どちらですか?」
>そしてすぐに電源ボタンを短く押す。
>待ち受け画面に戻ると、数秒しないうちに着信ありと表示されると共に留守番電話のメッセージがある事を示すマークが点灯した。
>そのマークを選びボタンを押すと再び携帯を耳に当てた。
『今、どちらですか?』
>……間違いない、自分の声だ。
鳴上「自分の携帯電話から自分の携帯番号に電話して邪魔な人間の名前を言うと、”JOKER様”が殺してくれる……か」
鳴上「自分の携帯から……JOKER様……」
鳴上「噂話……?」
>その話に出てくるいくつかの単語が何故か頭の中で引っかかっている。
>どうしてだろう、これと似たような話を知っているような気がする……
鳴上「そうだ……! 学校で聞いた噂だ!」
>以前ラビリスからもらった学校中の生徒から聞いた噂話をまとめてあるノート引っ張り出してページをめくった。
『携帯電話を使った願いが叶うおまじないみたいなのとか……』
>あの時、ラビリスも一瞬口にしていたような気がする。
鳴上「あった、これだ」
鳴上「自分の携帯電話から自分の携帯番号へかけると……夢を叶えてくれる怪人・ジョーカーが背後に現れる?」
>どうやらさっきネットで見た噂話とは内容が少し違っているようだ。
鳴上「でも、邪魔な人間を殺してくれるっていうのも、ある意味自分の夢を叶えてくれるってのと一緒だよな」
鳴上「……夢を叶えてくれる怪人、か」
>自分の携帯電話を手に取る。
>……なんとなく自分の携帯番号をポチポチと打ち込んでみてしまった。
鳴上「まさか、いくらなんでも……な」
鳴上「……あ」
>しまった、うっかり通話ボタンを押してしまったようだ。
鳴上「……」
鳴上「出るわけないだろ。ないよな」
>少なからず好奇心があったのか、そのまますぐ切らずに携帯を耳に当てて反応を窺ってみてしまった。
鳴上「……」
>……
>少ししてから聞こえてきたのは、留守番サービスセンターへ繋ぐアナウンスだった。
>ピーっという発信音を耳にした後、息を短く吸う。
鳴上「今、どちらですか?」
>そしてすぐに電源ボタンを短く押す。
>待ち受け画面に戻ると、数秒しないうちに着信ありと表示されると共に留守番電話のメッセージがある事を示すマークが点灯した。
>そのマークを選びボタンを押すと再び携帯を耳に当てた。
『今、どちらですか?』
>……間違いない、自分の声だ。
778: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:54:37.51:Gz/6mzWmo (18/19)
鳴上「ほら、やっぱり」
鳴上「……」
>そんな馬鹿らしい行動をしていると、扉からノックが聞こえてきた。
天田「鳴上さん。ちょっとラウンジまできてもらってもいいですか?」
鳴上「わかった。すぐ行く」
>携帯を机に置いて、部屋を出る事にした。
学生寮 ラウンジ
>一階には寮にいるメンバーが全員集合している。
>皆、ソファに腰を落ち着かせ、テーブルの上には何故か大きな寿司桶が置かれているのが見えた。
鳴上「これ、どうしたんですか?」
美鶴「アイギスの快気祝いと神郷の入寮歓迎のごちそうの話、覚えているか?」
鳴上「ああ。そういえばそんな事言ってましたね」
美鶴「ずっと先延ばしになっていてタイミングを逃してしまっていたが、君たちが新学期に入る前に済ませてしまおうと思ってな」
美鶴「今日は皆が揃っているようだったし、急遽こうして用意したんだ」
天田「明日からはもう学校なんですよねー……はあ、憂鬱だなあ」
天田「これはさしずめ、夏休み最後の晩餐って事でもあるのか」
ラビリス「明日行ったら次は日曜なんやし、どうせやったら3日からでもええのにな」
鳴上「でもどうして寿司? 俺は好きですけど」
美鶴「アイギスのリクエストでこうなった」
アイギス「この間メティスが、テレビに映っていた回転寿司を興味深そうに見ていたのを思い出したので」
メティス「でもこれ回転してないじゃないですか」
メティス「べ、別にお寿司がくるくる回ってるところをこの目で見たかったとか、そういう訳ではありませんけど……!」
諒「……どうでもいいが、早くしないとネタが乾くぞ」
美鶴「それもそうだ。鳴上も早く座りなさい」
>どうやら特上寿司のようだ。
>ジュネスで売っているパックの寿司とは全然違う味がする……!
>よく味わって食べる事にした。
>……
鳴上「ごちそうさまでした」
美鶴「……さて、食事も済んだことだ。明日寝坊しないように、今夜は早いうちに休むといい」
天田「そうですね。学校の準備の確認もしとかないと」
メティス「それではこれで解散ですね」
>皆、自分の部屋へと引き上げていった。
>明日からはもう二学期だ。
>言われた通り早く寝る事にしよう……
鳴上「ほら、やっぱり」
鳴上「……」
>そんな馬鹿らしい行動をしていると、扉からノックが聞こえてきた。
天田「鳴上さん。ちょっとラウンジまできてもらってもいいですか?」
鳴上「わかった。すぐ行く」
>携帯を机に置いて、部屋を出る事にした。
学生寮 ラウンジ
>一階には寮にいるメンバーが全員集合している。
>皆、ソファに腰を落ち着かせ、テーブルの上には何故か大きな寿司桶が置かれているのが見えた。
鳴上「これ、どうしたんですか?」
美鶴「アイギスの快気祝いと神郷の入寮歓迎のごちそうの話、覚えているか?」
鳴上「ああ。そういえばそんな事言ってましたね」
美鶴「ずっと先延ばしになっていてタイミングを逃してしまっていたが、君たちが新学期に入る前に済ませてしまおうと思ってな」
美鶴「今日は皆が揃っているようだったし、急遽こうして用意したんだ」
天田「明日からはもう学校なんですよねー……はあ、憂鬱だなあ」
天田「これはさしずめ、夏休み最後の晩餐って事でもあるのか」
ラビリス「明日行ったら次は日曜なんやし、どうせやったら3日からでもええのにな」
鳴上「でもどうして寿司? 俺は好きですけど」
美鶴「アイギスのリクエストでこうなった」
アイギス「この間メティスが、テレビに映っていた回転寿司を興味深そうに見ていたのを思い出したので」
メティス「でもこれ回転してないじゃないですか」
メティス「べ、別にお寿司がくるくる回ってるところをこの目で見たかったとか、そういう訳ではありませんけど……!」
諒「……どうでもいいが、早くしないとネタが乾くぞ」
美鶴「それもそうだ。鳴上も早く座りなさい」
>どうやら特上寿司のようだ。
>ジュネスで売っているパックの寿司とは全然違う味がする……!
>よく味わって食べる事にした。
>……
鳴上「ごちそうさまでした」
美鶴「……さて、食事も済んだことだ。明日寝坊しないように、今夜は早いうちに休むといい」
天田「そうですね。学校の準備の確認もしとかないと」
メティス「それではこれで解散ですね」
>皆、自分の部屋へと引き上げていった。
>明日からはもう二学期だ。
>言われた通り早く寝る事にしよう……
779: ◆Hw7XKfELws:2012/07/22(日) 23:56:54.84:Gz/6mzWmo (19/19)
>…
>……
>………
自室
鳴上「……ん」
>カーテンの隙間から太陽の光が細く差し込んでいる。
>朝だ。
>清々しい一日の始まり……と言いたいところだが
>9月になったとはいえ、気温は夏と変わらぬままで蒸し暑い。
>長袖の季節はまだ遠いようだ。
>あまりのんびりしていないで、学校に行く支度をしよう
>……
天田「あ、おはようございます」
鳴上「おはよう」
メティス「鳴上さん、天田さん、おはようございます」
ラビリス「おはよー」
>部屋から出て階段をおりるタイミングが皆ほぼ同じだったようだ。
>挨拶もそこそこに、揃って一階へとおりた。
ラウンジ
美鶴「諸君、おはよう」
アイギス「おはようございます」
>アイギスと美鶴が並んで座っている。
鳴上「あれ、桐条さんがこんな朝早くから寮にいるなんてどうかしたんですか?」
美鶴「昨日はここで少し片付けたい仕事があってな。泊まらせてもらっていたんだよ」
鳴上「そうだったんですか」
美鶴「君たちは寝坊せずに済んだようだな。気を付けていってきなさい」
メティス「はい。いってきます」
ラビリス「いってきまー……うわっ!?」
>ラビリスが寮の扉を開けようとしたその時、それは先に勢いよく開いた。
>外から諒の姿が現れる。
美鶴「どうした、神郷。忘れものか?」
諒「っ……」
>諒は走ってここまで戻ってきたようで、肩で息をし呼吸を荒げている様子だった。
>その顔面は蒼白で額には汗が滲んでいる。
>……とても尋常には見えなかった。
>…
>……
>………
自室
鳴上「……ん」
>カーテンの隙間から太陽の光が細く差し込んでいる。
>朝だ。
>清々しい一日の始まり……と言いたいところだが
>9月になったとはいえ、気温は夏と変わらぬままで蒸し暑い。
>長袖の季節はまだ遠いようだ。
>あまりのんびりしていないで、学校に行く支度をしよう
>……
天田「あ、おはようございます」
鳴上「おはよう」
メティス「鳴上さん、天田さん、おはようございます」
ラビリス「おはよー」
>部屋から出て階段をおりるタイミングが皆ほぼ同じだったようだ。
>挨拶もそこそこに、揃って一階へとおりた。
ラウンジ
美鶴「諸君、おはよう」
アイギス「おはようございます」
>アイギスと美鶴が並んで座っている。
鳴上「あれ、桐条さんがこんな朝早くから寮にいるなんてどうかしたんですか?」
美鶴「昨日はここで少し片付けたい仕事があってな。泊まらせてもらっていたんだよ」
鳴上「そうだったんですか」
美鶴「君たちは寝坊せずに済んだようだな。気を付けていってきなさい」
メティス「はい。いってきます」
ラビリス「いってきまー……うわっ!?」
>ラビリスが寮の扉を開けようとしたその時、それは先に勢いよく開いた。
>外から諒の姿が現れる。
美鶴「どうした、神郷。忘れものか?」
諒「っ……」
>諒は走ってここまで戻ってきたようで、肩で息をし呼吸を荒げている様子だった。
>その顔面は蒼白で額には汗が滲んでいる。
>……とても尋常には見えなかった。
780: ◆Hw7XKfELws:2012/07/23(月) 00:00:03.80:Vq4OcfPJo (1/3)
天田「ちょっ、大丈夫ですか!?」
美鶴「……本当にどうしたんだ?」
諒「……と……ッ」
鳴上「……?」
諒「外……みんな外を見てくれ……!」
>そう告げると、諒は再びそこから外へと駆け出していってしまった。
>普段の落ち着いた諒からは想像出来ない慌てぶりだ……
>外で何があったのだろう。
鳴上「みんな、神郷さんを追いかけよう!」
>誰よりも早く、寮を飛び出した。
>……
>学生寮を出て少し走ったところに諒は佇んでいた。
>近付くとその傍らに彼と同じくらいの高さの柱が二本立っているのが一緒に目に飛び込んできた。
>……しかし、こんな場所にこんな柱などあっただろうか?
鳴上「神郷さん。それ、何なんですか?」
諒「……鳴上には何に見える?」
鳴上「何って……え?」
鳴上「これって、棺桶……ですか?」
>最初、柱だと思っていたそれは、よく目を凝らして見てみると西洋風の棺のような物体が縦に二つ立っているという事が確認できた。
>まるで地面から生えているような、そんな感じだ。
鳴上「なんでこんな場所に……?」
諒「ここだけじゃない。この近辺一帯にこれと同じものがいくつもあった」
諒「これは……」
美鶴「神郷! ……急にどうしたんだ」
>少し遅れて皆もここまで追いついたようだ。
天田「ちょっ、大丈夫ですか!?」
美鶴「……本当にどうしたんだ?」
諒「……と……ッ」
鳴上「……?」
諒「外……みんな外を見てくれ……!」
>そう告げると、諒は再びそこから外へと駆け出していってしまった。
>普段の落ち着いた諒からは想像出来ない慌てぶりだ……
>外で何があったのだろう。
鳴上「みんな、神郷さんを追いかけよう!」
>誰よりも早く、寮を飛び出した。
>……
>学生寮を出て少し走ったところに諒は佇んでいた。
>近付くとその傍らに彼と同じくらいの高さの柱が二本立っているのが一緒に目に飛び込んできた。
>……しかし、こんな場所にこんな柱などあっただろうか?
鳴上「神郷さん。それ、何なんですか?」
諒「……鳴上には何に見える?」
鳴上「何って……え?」
鳴上「これって、棺桶……ですか?」
>最初、柱だと思っていたそれは、よく目を凝らして見てみると西洋風の棺のような物体が縦に二つ立っているという事が確認できた。
>まるで地面から生えているような、そんな感じだ。
鳴上「なんでこんな場所に……?」
諒「ここだけじゃない。この近辺一帯にこれと同じものがいくつもあった」
諒「これは……」
美鶴「神郷! ……急にどうしたんだ」
>少し遅れて皆もここまで追いついたようだ。
781: ◆Hw7XKfELws:2012/07/23(月) 00:02:10.85:Vq4OcfPJo (2/3)
アイギス「!?」
アイギス「美鶴さん、あれを見てください……!」
美鶴「なッ……これは……!?」
天田「そ、そんな、まさか……嘘、でしょ……?」
>アイギス、美鶴、天田の表情がさっきの諒と同じように一瞬にして青白く変わる。
メティス「この棺はなんですか?」
ラビリス「誰かの忘れ物?」
メティス「忘れるようなものなんしょうか、こういうのって……」
>対して、メティスとラビリスはこの棺はどうしたのかとただ不思議がっているだけだった。
天田「そ、そうだ……!」
>茫然としていた天田がハッと我にかえる。
>そして慌てて携帯を取り出して画面を確認したかと思うと、小さく悲鳴を上げたのだった。
天田「な、鳴上さん……携帯……携帯を見てください!」
鳴上「携帯……?」
>言われるままに携帯を開く。
>時刻はAM7:40
>急がなければいつものモノレールに乗り遅れてしまうかもしれない……そんな頃合いだ。
>しかし、天田が言いたかった事はそんな事などではないとすぐに気が付いた。
鳴上「なっ……」
鳴上「なんだよ、この日付ッ……」
>昨日が08/31だったから今日は09/01の筈……なのに
>表示が9月に変わっていない……
>8月のままになっているのだ。
>……それだけならまだしも
>そこに映っている日数すらも、おかしい。
>何かの見間違いなのではないのかと、その数字を何度も目で追う。
>しかし、いくらそうしたところで表示されている日付が変わる事は……ない。
>ぜろ、はち、さん、 に
>0、8、3、2
鳴上「08/32……!?」
アイギス「!?」
アイギス「美鶴さん、あれを見てください……!」
美鶴「なッ……これは……!?」
天田「そ、そんな、まさか……嘘、でしょ……?」
>アイギス、美鶴、天田の表情がさっきの諒と同じように一瞬にして青白く変わる。
メティス「この棺はなんですか?」
ラビリス「誰かの忘れ物?」
メティス「忘れるようなものなんしょうか、こういうのって……」
>対して、メティスとラビリスはこの棺はどうしたのかとただ不思議がっているだけだった。
天田「そ、そうだ……!」
>茫然としていた天田がハッと我にかえる。
>そして慌てて携帯を取り出して画面を確認したかと思うと、小さく悲鳴を上げたのだった。
天田「な、鳴上さん……携帯……携帯を見てください!」
鳴上「携帯……?」
>言われるままに携帯を開く。
>時刻はAM7:40
>急がなければいつものモノレールに乗り遅れてしまうかもしれない……そんな頃合いだ。
>しかし、天田が言いたかった事はそんな事などではないとすぐに気が付いた。
鳴上「なっ……」
鳴上「なんだよ、この日付ッ……」
>昨日が08/31だったから今日は09/01の筈……なのに
>表示が9月に変わっていない……
>8月のままになっているのだ。
>……それだけならまだしも
>そこに映っている日数すらも、おかしい。
>何かの見間違いなのではないのかと、その数字を何度も目で追う。
>しかし、いくらそうしたところで表示されている日付が変わる事は……ない。
>ぜろ、はち、さん、 に
>0、8、3、2
鳴上「08/32……!?」
782: ◆Hw7XKfELws:2012/07/23(月) 00:07:08.11:Vq4OcfPJo (3/3)
【現在のコミュランク】
0 愚者 特別課外活動部 Rank 6
Ⅰ 魔術師 伊織順平 Rank 6
Ⅱ 女教皇 園村麻希 Rank 5
Ⅲ 女帝 桐条美鶴 Rank 5
Ⅳ 皇帝 藤堂尚也 Rank 5
Ⅴ 法王 メティス Rank 6
Ⅵ 恋愛 望月綾時 Rank 5
Ⅶ 戦車 アイギス Rank 5
Ⅷ 正義 天田乾 Rank 6
Ⅸ 隠者 パオフゥ Rank 7
Ⅹ 運命 橿原淳 Rank 5
ⅩⅠ 剛毅 コロマル Rank 6
ⅩⅡ 刑死者 チドリ Rank 6
ⅩⅢ 死神 謎のイヤホンの少年 Rank 7
ⅩⅣ 節制 トリッシュ Rank 5
ⅩⅤ 悪魔 ヴィンセント Rank MAX
ⅩⅥ 塔 ラビリス Rank 5
ⅩⅦ 星 星あかり Rank 5
ⅩⅧ 月 神郷諒 Rank 3
ⅩⅨ 太陽 周防達哉 Rank 7
こんな感じで次回に続きます。ではまた
【現在のコミュランク】
0 愚者 特別課外活動部 Rank 6
Ⅰ 魔術師 伊織順平 Rank 6
Ⅱ 女教皇 園村麻希 Rank 5
Ⅲ 女帝 桐条美鶴 Rank 5
Ⅳ 皇帝 藤堂尚也 Rank 5
Ⅴ 法王 メティス Rank 6
Ⅵ 恋愛 望月綾時 Rank 5
Ⅶ 戦車 アイギス Rank 5
Ⅷ 正義 天田乾 Rank 6
Ⅸ 隠者 パオフゥ Rank 7
Ⅹ 運命 橿原淳 Rank 5
ⅩⅠ 剛毅 コロマル Rank 6
ⅩⅡ 刑死者 チドリ Rank 6
ⅩⅢ 死神 謎のイヤホンの少年 Rank 7
ⅩⅣ 節制 トリッシュ Rank 5
ⅩⅤ 悪魔 ヴィンセント Rank MAX
ⅩⅥ 塔 ラビリス Rank 5
ⅩⅦ 星 星あかり Rank 5
ⅩⅧ 月 神郷諒 Rank 3
ⅩⅨ 太陽 周防達哉 Rank 7
こんな感じで次回に続きます。ではまた
783:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/07/23(月) 00:08:35.63:qFaXOq24o (1/1)
おつ
エンドレスエイト(影時間)ですねぇ
おつ
エンドレスエイト(影時間)ですねぇ
784:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/07/23(月) 00:11:05.88:bFtZhmRg0 (1/1)
乙、夏休み延長はいりましたー
乙、夏休み延長はいりましたー
785:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/23(月) 00:18:14.56:uuMbiUDyo (1/1)
審判世界以外は全部揃ったのね
謎のイヤホン少年は一体何ローなんだ・・・
審判世界以外は全部揃ったのね
謎のイヤホン少年は一体何ローなんだ・・・
786:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空):2012/07/23(月) 00:18:45.76:RWGyroDlo (1/1)
乙
俺にも8月32日を下さい
乙
俺にも8月32日を下さい
787:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/23(月) 00:19:57.72:xJ81Y04A0 (1/1)
これ、なんていう僕の夏休み?
.∧__,∧
( ^ω^ )
きょう夏休み明けたんですか!
もう休みないんですか!
n. ∧__,∧n
ゝ( ^ω^ )ノ
やった──!
.∧_,,_∧
( ゙'ω゙` )
夏休み明けてないじゃないすか!
n.∧_,,_∧n
ヽ( ;ω; )ソ
〉 |
√r─‐ァ.)
ー'' 一
やだ───!
これ、なんていう僕の夏休み?
.∧__,∧
( ^ω^ )
きょう夏休み明けたんですか!
もう休みないんですか!
n. ∧__,∧n
ゝ( ^ω^ )ノ
やった──!
.∧_,,_∧
( ゙'ω゙` )
夏休み明けてないじゃないすか!
n.∧_,,_∧n
ヽ( ;ω; )ソ
〉 |
√r─‐ァ.)
ー'' 一
やだ───!
788:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/07/23(月) 00:30:55.07:geBm0YNzo (1/1)
ペルソナらしくなってまいりました。
そうか、真実を見つけられなかったからフサフサを見れなかったのか
>>786
まだ始まったばかりだ、さっさと宿題片付けちまえ
ペルソナらしくなってまいりました。
そうか、真実を見つけられなかったからフサフサを見れなかったのか
>>786
まだ始まったばかりだ、さっさと宿題片付けちまえ
789:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/07/23(月) 01:21:27.47:rukdpnhAO (1/1)
連日更新嬉しいぜ乙
夏休み延長やったね!でも影時間だから嬉しくねー!
連日更新嬉しいぜ乙
夏休み延長やったね!でも影時間だから嬉しくねー!
790:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/07/24(火) 00:01:32.00:LlXG4JyA0 (1/1)
乙!!
>>786
この影時間は多分お前のせいだろwwww
俺も多分当事者だけどwww夏休み終わらなければいいよねwww
もっと続けばいいのにwwww
乙!!
>>786
この影時間は多分お前のせいだろwwww
俺も多分当事者だけどwww夏休み終わらなければいいよねwww
もっと続けばいいのにwwww
791:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県):2012/07/25(水) 10:19:56.15:4DLaqXZIo (1/2)
ぼく夏のバグ思い出した
ぼく夏のバグ思い出した
792:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県):2012/07/25(水) 10:20:22.21:4DLaqXZIo (2/2)
上げてしまったしにたい
上げてしまったしにたい
793: ◆Hw7XKfELws:2012/07/25(水) 22:44:55.04:BOSvu0PMo (1/1)
どうもこんばんは。P4U発売前夜で楽しみすぎてはげそうな>>1です。
そんな感じなんで明日からまた投下間隔が遅くなりそうな気配がしてます。
今回は格ゲーでアーケードでやってはいたものの難易度がどんなもんか予測がつかないので、いつ帰ってこれるかも不明です。
とりあえずラビリスがどういうキャラなのか今一度改めてよく確認したいので、それがかなうまで少々お待ちください。
では、また次回まで。
どうもこんばんは。P4U発売前夜で楽しみすぎてはげそうな>>1です。
そんな感じなんで明日からまた投下間隔が遅くなりそうな気配がしてます。
今回は格ゲーでアーケードでやってはいたものの難易度がどんなもんか予測がつかないので、いつ帰ってこれるかも不明です。
とりあえずラビリスがどういうキャラなのか今一度改めてよく確認したいので、それがかなうまで少々お待ちください。
では、また次回まで。
794:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/25(水) 22:55:10.92:QvnJU4dZo (1/1)
ついに発売か
二年経って成長したP3のキャラ見れそうで楽しみ
更新も気長に待ってます
ついに発売か
二年経って成長したP3のキャラ見れそうで楽しみ
更新も気長に待ってます
795:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/07/27(金) 09:43:40.81:IQnuApoVo (1/1)
ゲーセンでP4Uやってる時はクーラ効かせ過ぎだろと思ったもんだが、
自宅でプレイしてるとアレくらい涼しくしても良いかとも思ってしまう。
2罰のエリー達の百物語でも聞いて涼むか。でもアレ百種全部聞けた人っているのかね
ゲーセンでP4Uやってる時はクーラ効かせ過ぎだろと思ったもんだが、
自宅でプレイしてるとアレくらい涼しくしても良いかとも思ってしまう。
2罰のエリー達の百物語でも聞いて涼むか。でもアレ百種全部聞けた人っているのかね
796:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/28(土) 02:27:00.25:dnTZn22IO (1/1)
マヨナカアリーナなんか所々涙腺ヤバいわぁ……
マヨナカアリーナなんか所々涙腺ヤバいわぁ……
797:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2012/07/28(土) 22:49:59.68:WdzWEbHj0 (1/1)
PS3も箱も持ってない俺はゲーセンまで毎日出張ですわ
PS3も箱も持ってない俺はゲーセンまで毎日出張ですわ
798:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/29(日) 01:53:43.13:TkJtdmCIO (1/1)
>>797
つストーリーモード
>>797
つストーリーモード
799:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/07/29(日) 10:20:53.10:v4momqc60 (1/1)
P4Uのストーリーモードの話準拠でそれ以降の話をやってくれんかなぁ
P4Uのストーリーモードの話準拠でそれ以降の話をやってくれんかなぁ
800:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/30(月) 04:20:12.60:sVJnCE3e0 (1/1)
p4u裏山
PS3ないから出来ないわ
ってかこのSSの番長ってラストは最強になってんじゃね?
p4メンバーのコミュMAX&ステータスMAX
p3メンバーを始めとしたアトラスオールスターともコミュMAXそしてステータスもMAXに
イザナミ瞬殺されるんじゃね?
p4u裏山
PS3ないから出来ないわ
ってかこのSSの番長ってラストは最強になってんじゃね?
p4メンバーのコミュMAX&ステータスMAX
p3メンバーを始めとしたアトラスオールスターともコミュMAXそしてステータスもMAXに
イザナミ瞬殺されるんじゃね?
801:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/30(月) 04:27:41.35:dGc39syIO (1/1)
>>799
このSSで?公式で?
>>799
このSSで?公式で?
802:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/07/30(月) 20:58:57.73:hFNELhux0 (1/1)
追いついてしまったー
追いついてしまったー
803:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/07/31(火) 02:28:40.02:FnYeuXXY0 (1/2)
ペルソナ5がどうなるかなー
3,4の感じでライト層向けか1,2みたいないかにもアトラスって感じか
あるいはまた新しい路線にするのか
まあどっちであっても買うから変わりないけど
ペルソナ5がどうなるかなー
3,4の感じでライト層向けか1,2みたいないかにもアトラスって感じか
あるいはまた新しい路線にするのか
まあどっちであっても買うから変わりないけど
804:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/07/31(火) 03:14:15.27:Ch8iTbibo (1/1)
>>803
ペルソナ5ってでるの?
女神転生4は発表されたけど
>>803
ペルソナ5ってでるの?
女神転生4は発表されたけど
805:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/07/31(火) 06:53:42.49:FnYeuXXY0 (2/2)
>>804
どっかでちらっと話が出ただけなんだ
どうなるかなーってのはそういう意味も含んでる
>>804
どっかでちらっと話が出ただけなんだ
どうなるかなーってのはそういう意味も含んでる
806:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/31(火) 08:30:57.94:GUj44jvSO (1/1)
きっと鳴上達が食った寿司はがってん寿司に違いない
きっと鳴上達が食った寿司はがってん寿司に違いない
807:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/07/31(火) 17:03:58.40:46U4r5c3o (1/1)
良く要望は聞くが、5が作られると言うなら教育実習生でという意見は良いと思う。
大人と子供、両方の視点で描ける悩みとか先生として見れる視点の話とか想像すると面白そうだな。
良く要望は聞くが、5が作られると言うなら教育実習生でという意見は良いと思う。
大人と子供、両方の視点で描ける悩みとか先生として見れる視点の話とか想像すると面白そうだな。
808:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/01(水) 00:18:51.54:foSqX67eo (1/1)
出るかどうか公式の発表もないのにそんな話なんざここでする必要ないだろ。
どーでもいいわ。
それより1はまだか?
ストーリー満喫中か、番長とジュネスは面白かったぞあぁん?
出るかどうか公式の発表もないのにそんな話なんざここでする必要ないだろ。
どーでもいいわ。
それより1はまだか?
ストーリー満喫中か、番長とジュネスは面白かったぞあぁん?
809:鳴上:2012/08/01(水) 03:02:12.80:jDZZHcEDO (1/1)
早くペルソナ出さないといけないのに…
何度やってもスペルマしか出ない……
/ ̄ ̄ ̄ ̄\
/;;:: ::;ヽ
|;;:: ィ●ァ ィ●ァ::;;|
|;;:: ::;;|
|;;:: c{ っ ::;;|
|;;:: __ ::;;;|
ヽ;;:: ー ::;;/
\;;:: ::;;/
/´ ̄`ヽ`ヽ
l l l _, -、
ヽ ノヽく / (_ノノ
i `ー、 )―- 、// ,-/ ノ//
ヽ、ヽ_ //  ̄  ̄`}///
\ ̄ ― -----/―‐ァ'//
`ヽ、 / `'// / / //
l \
ヽ_ \
` - 、 \
> )
, -  ̄ _ ,-
l⌒`ー ''' ~ _ ―
) r―--- ''''
人_っ
早くペルソナ出さないといけないのに…
何度やってもスペルマしか出ない……
/ ̄ ̄ ̄ ̄\
/;;:: ::;ヽ
|;;:: ィ●ァ ィ●ァ::;;|
|;;:: ::;;|
|;;:: c{ っ ::;;|
|;;:: __ ::;;;|
ヽ;;:: ー ::;;/
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l l l _, -、
ヽ ノヽく / (_ノノ
i `ー、 )―- 、// ,-/ ノ//
ヽ、ヽ_ //  ̄  ̄`}///
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ヽ_ \
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l⌒`ー ''' ~ _ ―
) r―--- ''''
人_っ
810:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/08/01(水) 06:32:20.20:YWPXOiWt0 (1/1)
>>809
>>809
811:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/08/01(水) 06:33:28.89:HgQJ822a0 (1/1)
>>809
死ね全力で死ね
マジで死ね
お願いだから死ね
>>809
死ね全力で死ね
マジで死ね
お願いだから死ね
812:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/08/01(水) 09:41:33.24:4jQ592Bho (1/1)
触れんなよお前ら……
触れんなよお前ら……
813:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/01(水) 10:11:02.93:GVYNGHmyo (1/1)
なんでAA程度にこんな反応してるの?
なんでAA程度にこんな反応してるの?
814:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/01(水) 10:11:24.37:j7Uy/c6m0 (1/1)
なつだからな
なつだからな
815:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県):2012/08/02(木) 07:51:47.47:vdvUOnTMo (1/1)
上げてるからだろ・・・
夏すぎる
上げてるからだろ・・・
夏すぎる
816:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県):2012/08/04(土) 14:54:37.32:+p86+ER/o (1/1)
_, -─ - 、
, '´ `ヽ
/ ',
i .人 `、 i
{イ\\r. _ i 、 ノ
从● `ヽ`ヽ ノ ハ' とどめだ!コンセントレイト!
レ⊃、_,、_, ⊂| /`' 人
>ゝ._) イレ. /ノ )
く ン大ヒ ̄フ///ヽ
. </三.\/( く ミ ゝ
i―――、 i――--、 / // ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
`ー―, / `二二二_ .〔/ / /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::゙、
// .`ーl l―' / /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::、:::::::::゙、
</ .ノ | / ,ィ /::::::::::::::::::::ヽ、::::::::::::::::::::::::`ヽ::::::`、
n `ー" 7_//:::;:、:::::::::::::::::::::`ヽ::::::::::::::::::::::ヾ、\::ゞ
ll | ̄| /l /:::::!ヘ、 ヽ、:::::r 、::::`ヽ、:::::::`、::::',::::..!
ll `-" / / / l:::::i! \:::..\ `、ヽ、::::`、:::::::`、::/::::`、
ll (`ー' / ./ i::ト i!ー、\:::::\゙、::::ヽ、`、::::::::!::::r 、::`、
l| `ー''" {! /::r;:! r...ヾ \::::::ヾ:::::::::\、:::::/:::::i! ,::::::::゙,
|l /`ー--、  ̄フヘ、ゞ゚.:ノ`ヽ`ヽ;::::!\::::::::ヽ、::::::::!/::::::::::゙,
ll ./_/`二) | /.:::ヾ `::.... \::::::::゙:::::::::::::::::::::::゙,
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817:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/04(土) 19:38:14.37:pJaDRylvo (1/1)
もう許してやれよ
もう許してやれよ
818:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/08/05(日) 19:18:47.23:uzeGIbrK0 (1/1)
>>816
なつかしいなぁ
あのころは任意操作ができなかったもんなぁ
>>816
なつかしいなぁ
あのころは任意操作ができなかったもんなぁ
819: ◆Hw7XKfELws:2012/08/06(月) 01:56:18.31:W5oxj6+Po (1/10)
>08/32
>そう口にしてみて、改めてその異常さを思い知らされる。
>こんな日付、今までみたこともない。
>本来ある筈のない日。
アイギス「ッ……」
鳴上「! ……アイギス!?」
>携帯の表示に気を取られている隙に、アイギスが急にこの場から走り飛び出していく。
アイギス「近辺の確認に向かいます! 姉さんとメティスも協力を!」
ラビリス「なっ、ちょっ、どういうコト!?」
アイギス「説明は後でちゃんとします! だから、今は急いで!」
メティス「えっ……わ、わかりました!」
>アイギスに急かされ、彼女の後を追ってメティスとラビリスも猛スピードで走りだして行ってしまった。
>この場に残された諒と天田、そして美鶴は信じられないという表情でただじっと道中にある棺をみつめている。
鳴上「……」
鳴上「ただの携帯の故障、って訳でもなさそうですね」
鳴上「この現象に何か心当たりが?」
美鶴「……。心当たりというよりは、こんな現象を以前体験した事があると言った方がいいだろうか」
鳴上「えっ!?」
美鶴「だが……」
>美鶴は言い淀んでいる。
>この状況を受け入れ切れていないのだろうか。
>それは自分も同じだが……
鳴上「アイギスは話を聞かずに行ってしまったけど、神郷さんの話によるとこの周辺にこれと同じものがいくつもあるって……そうでしたよね?」
諒「……ああ」
鳴上「仮にこの現象が桐条さんの知っているものだとするなら、何が起こっているっていうんですか?」
鳴上「この棺は一体……」
美鶴「……」
美鶴「以前、君にも少し話をした事があっただろう」
鳴上「?」
美鶴「……影時間」
美鶴「通常では体感することの出来ない"普通でない時間帯"。この状況は、それと酷似している……ように思える」
>08/32
>そう口にしてみて、改めてその異常さを思い知らされる。
>こんな日付、今までみたこともない。
>本来ある筈のない日。
アイギス「ッ……」
鳴上「! ……アイギス!?」
>携帯の表示に気を取られている隙に、アイギスが急にこの場から走り飛び出していく。
アイギス「近辺の確認に向かいます! 姉さんとメティスも協力を!」
ラビリス「なっ、ちょっ、どういうコト!?」
アイギス「説明は後でちゃんとします! だから、今は急いで!」
メティス「えっ……わ、わかりました!」
>アイギスに急かされ、彼女の後を追ってメティスとラビリスも猛スピードで走りだして行ってしまった。
>この場に残された諒と天田、そして美鶴は信じられないという表情でただじっと道中にある棺をみつめている。
鳴上「……」
鳴上「ただの携帯の故障、って訳でもなさそうですね」
鳴上「この現象に何か心当たりが?」
美鶴「……。心当たりというよりは、こんな現象を以前体験した事があると言った方がいいだろうか」
鳴上「えっ!?」
美鶴「だが……」
>美鶴は言い淀んでいる。
>この状況を受け入れ切れていないのだろうか。
>それは自分も同じだが……
鳴上「アイギスは話を聞かずに行ってしまったけど、神郷さんの話によるとこの周辺にこれと同じものがいくつもあるって……そうでしたよね?」
諒「……ああ」
鳴上「仮にこの現象が桐条さんの知っているものだとするなら、何が起こっているっていうんですか?」
鳴上「この棺は一体……」
美鶴「……」
美鶴「以前、君にも少し話をした事があっただろう」
鳴上「?」
美鶴「……影時間」
美鶴「通常では体感することの出来ない"普通でない時間帯"。この状況は、それと酷似している……ように思える」
820: ◆Hw7XKfELws:2012/08/06(月) 01:58:55.93:W5oxj6+Po (2/10)
鳴上「影時間って、確か三年前の戦いでその存在は消えたって話だったんじゃ」
美鶴「その通りだ」
美鶴「実際、今の今まで私はその時間を再び認知していなかった。天田はどうだ?」
天田「僕もですよ。あれ以来体感したことはなかったし、その象徴化を見るまで今が影時間になっているだなんてまったく気付きもしませんでした」
鳴上「象徴化?」
美鶴「私たちのようなペルソナ使いは影時間においても活動が可能だが、影時間に適性をもたない者はこんな風に棺のような形になってしまう。それを象徴化と呼ぶんだ」
鳴上「つまりこれって元は人間ってことですか!?」
諒「……」
>美鶴は静かに頷いた。
美鶴「とは言ったものの、これは私たちの知っている影時間とはどうも何か違っているように感じてならないんだ」
天田「……。そうですね、それも美鶴さんと同意見です」
鳴上「それはどういう……?」
美鶴「……」
美鶴「いや、そうだと決めつけるにはまだ情報が少なすぎる。今は、アイギスたちが確認から戻ってくるのを待とう」
>……
アイギス「近辺の確認をしてきました。……やはり、これと同じ象徴化だと思われるものがいくつも点在していました」
アイギス「そして、人影らしき人影はどこにも……」
美鶴「……そうか。ご苦労だった」
>アイギスは首を横に振って俯く。
>それに合わせるように美鶴の眉間の皺がより深くなったような気がした。
ラビリス「まさか、今更こんな事が起こるやなんて……」
メティス「象徴化、影時間……私も今になってこの目で直に確認する日がくるなんて思いもしませんでした」
>メティスもラビリスもアイギスから話を聞いたようだ。
>二人も信じられないというような表情をしている。
美鶴「……。鳴上、今は何時だ?」
>美鶴が空を仰いだ。
>太陽の光に目を細めている。
鳴上「時間ですか? えっと、8時を過ぎたところですね」
>携帯に表示されている時刻を確認する。
>普段通りならもう完全に遅刻だ。
天田「8時……」
アイギス「……」
鳴上「影時間って、確か三年前の戦いでその存在は消えたって話だったんじゃ」
美鶴「その通りだ」
美鶴「実際、今の今まで私はその時間を再び認知していなかった。天田はどうだ?」
天田「僕もですよ。あれ以来体感したことはなかったし、その象徴化を見るまで今が影時間になっているだなんてまったく気付きもしませんでした」
鳴上「象徴化?」
美鶴「私たちのようなペルソナ使いは影時間においても活動が可能だが、影時間に適性をもたない者はこんな風に棺のような形になってしまう。それを象徴化と呼ぶんだ」
鳴上「つまりこれって元は人間ってことですか!?」
諒「……」
>美鶴は静かに頷いた。
美鶴「とは言ったものの、これは私たちの知っている影時間とはどうも何か違っているように感じてならないんだ」
天田「……。そうですね、それも美鶴さんと同意見です」
鳴上「それはどういう……?」
美鶴「……」
美鶴「いや、そうだと決めつけるにはまだ情報が少なすぎる。今は、アイギスたちが確認から戻ってくるのを待とう」
>……
アイギス「近辺の確認をしてきました。……やはり、これと同じ象徴化だと思われるものがいくつも点在していました」
アイギス「そして、人影らしき人影はどこにも……」
美鶴「……そうか。ご苦労だった」
>アイギスは首を横に振って俯く。
>それに合わせるように美鶴の眉間の皺がより深くなったような気がした。
ラビリス「まさか、今更こんな事が起こるやなんて……」
メティス「象徴化、影時間……私も今になってこの目で直に確認する日がくるなんて思いもしませんでした」
>メティスもラビリスもアイギスから話を聞いたようだ。
>二人も信じられないというような表情をしている。
美鶴「……。鳴上、今は何時だ?」
>美鶴が空を仰いだ。
>太陽の光に目を細めている。
鳴上「時間ですか? えっと、8時を過ぎたところですね」
>携帯に表示されている時刻を確認する。
>普段通りならもう完全に遅刻だ。
天田「8時……」
アイギス「……」
821: ◆Hw7XKfELws:2012/08/06(月) 02:02:19.67:W5oxj6+Po (3/10)
メティス「これからどうしましょうか。一度寮へ戻りますか?」
ラビリス「コロやパスカル置いてけぼりやもんなあ。あの子らの安否も確認せんと」
メティス「コロマルさんはペルソナ使いだから大丈夫でしょうけど、パスカルさんはおそらく象徴化してしまっているでしょうね……」
ラビリス「パスカル……」
鳴上「……ん? ちょっと待て」
ラビリス「どうかしたん?」
メティス「何か気になることでも?」
鳴上「さっきこの周辺に人らしい人はいなかったって言ってたよな?」
メティス「はい。ここにある棺と同じものがあるだけで人も動物の気配もまったくありませんでした」
鳴上「でも、俺たち……ペルソナ使いは普通にこうして身動きがとれる訳だろ」
鳴上「俺たちが知ってるペルソナ使いって、寮にいるメンバーだけじゃないよな?」
ラビリス「そういえば!」
鳴上「なら、その人たちは……」
Pipipipipipipi……
鳴上「!」
美鶴「!?」
>突然、携帯の着信音が鳴り響いた。
>急いで画面を確認する。
>『藤堂尚也』
>そう表示されていた。
鳴上「やっぱり! ……もしもし!」
藤堂『ああ良かった、君のところには通じた。おはよう』
藤堂『なんて呑気に挨拶している場合じゃないか。なんだか外が面白い事になってるみたいなんだが』
鳴上「はい。それはこちらでも既に確認済みです」
鳴上「あの、藤堂さんは今どこに?」
藤堂『それがさ、ポロニアンモールにいるんだよ』
鳴上「ポロニアンモールって……こんな朝からですか?」
藤堂『ん……ちょっとややこしい事情があってさ』
藤堂『俺の他にパオフゥとヴィンセント、それから周防って刑事さんも一緒にいるんだけど……』
鳴上「えっ!?」
>藤堂の言葉に思わず驚いた声を上げてしまった。
>自分たちと同じペルソナ使いである藤堂とパオフゥが象徴化していないのはわかる。
>だが何故ヴィンセントと周防も無事なのだろう。
>それに、どうしてそんな面子がこんな時間にポロニアンモールに集合しているのか……
メティス「これからどうしましょうか。一度寮へ戻りますか?」
ラビリス「コロやパスカル置いてけぼりやもんなあ。あの子らの安否も確認せんと」
メティス「コロマルさんはペルソナ使いだから大丈夫でしょうけど、パスカルさんはおそらく象徴化してしまっているでしょうね……」
ラビリス「パスカル……」
鳴上「……ん? ちょっと待て」
ラビリス「どうかしたん?」
メティス「何か気になることでも?」
鳴上「さっきこの周辺に人らしい人はいなかったって言ってたよな?」
メティス「はい。ここにある棺と同じものがあるだけで人も動物の気配もまったくありませんでした」
鳴上「でも、俺たち……ペルソナ使いは普通にこうして身動きがとれる訳だろ」
鳴上「俺たちが知ってるペルソナ使いって、寮にいるメンバーだけじゃないよな?」
ラビリス「そういえば!」
鳴上「なら、その人たちは……」
Pipipipipipipi……
鳴上「!」
美鶴「!?」
>突然、携帯の着信音が鳴り響いた。
>急いで画面を確認する。
>『藤堂尚也』
>そう表示されていた。
鳴上「やっぱり! ……もしもし!」
藤堂『ああ良かった、君のところには通じた。おはよう』
藤堂『なんて呑気に挨拶している場合じゃないか。なんだか外が面白い事になってるみたいなんだが』
鳴上「はい。それはこちらでも既に確認済みです」
鳴上「あの、藤堂さんは今どこに?」
藤堂『それがさ、ポロニアンモールにいるんだよ』
鳴上「ポロニアンモールって……こんな朝からですか?」
藤堂『ん……ちょっとややこしい事情があってさ』
藤堂『俺の他にパオフゥとヴィンセント、それから周防って刑事さんも一緒にいるんだけど……』
鳴上「えっ!?」
>藤堂の言葉に思わず驚いた声を上げてしまった。
>自分たちと同じペルソナ使いである藤堂とパオフゥが象徴化していないのはわかる。
>だが何故ヴィンセントと周防も無事なのだろう。
>それに、どうしてそんな面子がこんな時間にポロニアンモールに集合しているのか……
822: ◆Hw7XKfELws:2012/08/06(月) 02:05:34.78:W5oxj6+Po (4/10)
美鶴「鳴上、電話をかわってくれないか」
鳴上「え? ……あ、はい」
美鶴「もしもし、桐条です。先日はどうも」
美鶴「はい。ええ……おそらく、そうではないかと」
>しばらく美鶴の電話が続いた。
>……
美鶴「……はい。ではまた、後ほど」
>通話が終了し、携帯を返された。
美鶴「鳴上とメティスとラビリス、それから天田。四人には今からポロニアンモールの方へと向かいそこにいる彼らと合流して寮まで連れてきて欲しい」
天田「今からですか!? でも、そこまで行くには……」
美鶴「いや……今電話が繋がった事を考えれば、もしかしたら、という事もあるかもしれない」
鳴上「……?」
美鶴「巌戸台の駅の様子を見て、鳴上や天田も行けそうならそのまま移動してくれ」
美鶴「無理なようなら、大変ではあるだろうがメティスとラビリスだけで頼む。君たちなら電車よりも早く移動出来るだろうしな」
メティス「了解しました」
ラビリス「学校の様子も気になるな」
美鶴「そうだな。そこまで行くのならば、出来る事なら学校の方も確認して貰いたい」
美鶴「特に、天田の目から見てどうだったか後で詳しく聞かせて欲しいところだな」
天田「そうか……! 今が影時間なら……」
天田「学校もまたタルタロスになっているかもしれない……!?」
鳴上「タルタロス……」
>これも以前美鶴から聞いた単語のひとつだ。
>影時間での月光館学園の姿……シャドウが現れる場所だと、確かそう言っていた気がする。
美鶴「私と神郷とアイギスは一度寮に戻りコロマルと合流してから長鳴神社の方面を探ってみようと思う」
美鶴「……っと、その前に。鳴上、私の携帯に一度コールしてみてくれないか?」
鳴上「電話ですか? ちょっと待ってください」
>美鶴の番号を呼び出し通話ボタンを押す。
>ほどなくして、美鶴の携帯から音が鳴った。
美鶴「やはり、電話は繋がるのか」
美鶴「それならそれで都合はいいが……」
美鶴「……」
美鶴「鳴上、電話をかわってくれないか」
鳴上「え? ……あ、はい」
美鶴「もしもし、桐条です。先日はどうも」
美鶴「はい。ええ……おそらく、そうではないかと」
>しばらく美鶴の電話が続いた。
>……
美鶴「……はい。ではまた、後ほど」
>通話が終了し、携帯を返された。
美鶴「鳴上とメティスとラビリス、それから天田。四人には今からポロニアンモールの方へと向かいそこにいる彼らと合流して寮まで連れてきて欲しい」
天田「今からですか!? でも、そこまで行くには……」
美鶴「いや……今電話が繋がった事を考えれば、もしかしたら、という事もあるかもしれない」
鳴上「……?」
美鶴「巌戸台の駅の様子を見て、鳴上や天田も行けそうならそのまま移動してくれ」
美鶴「無理なようなら、大変ではあるだろうがメティスとラビリスだけで頼む。君たちなら電車よりも早く移動出来るだろうしな」
メティス「了解しました」
ラビリス「学校の様子も気になるな」
美鶴「そうだな。そこまで行くのならば、出来る事なら学校の方も確認して貰いたい」
美鶴「特に、天田の目から見てどうだったか後で詳しく聞かせて欲しいところだな」
天田「そうか……! 今が影時間なら……」
天田「学校もまたタルタロスになっているかもしれない……!?」
鳴上「タルタロス……」
>これも以前美鶴から聞いた単語のひとつだ。
>影時間での月光館学園の姿……シャドウが現れる場所だと、確かそう言っていた気がする。
美鶴「私と神郷とアイギスは一度寮に戻りコロマルと合流してから長鳴神社の方面を探ってみようと思う」
美鶴「……っと、その前に。鳴上、私の携帯に一度コールしてみてくれないか?」
鳴上「電話ですか? ちょっと待ってください」
>美鶴の番号を呼び出し通話ボタンを押す。
>ほどなくして、美鶴の携帯から音が鳴った。
美鶴「やはり、電話は繋がるのか」
美鶴「それならそれで都合はいいが……」
美鶴「……」
823: ◆Hw7XKfELws:2012/08/06(月) 02:08:43.79:W5oxj6+Po (5/10)
鳴上「あの……桐条さん?」
美鶴「……すまない。今はここで色々考えるより先に、行動に移ろう」
美鶴「ポロニアンモールにいる彼らには、何かあったら鳴上の携帯に電話するように言ってある。頼んだぞ」
鳴上「解りました」
美鶴「それから、もし他に人の姿をみつけたら保護して一緒に連れて帰ってきてくれ」
美鶴「まあ、そうもいないとは思うのだがな……」
美鶴「では、各自行動を開始だ!」
>……
巌戸台駅周辺
>駆け足で駅の近くまでやってきたが、その間にすれ違ったのはやはりあの西洋風の棺だけだった。
>車が走っている様子もまるでない。
>いつかの劇場の中の世界にも似たような空気を感じる……
>景色は見慣れたものの筈なのに、人の営みというものがここには全く存在していなかった。
天田「……」
天田「ここまで来ておいてなんですけど、やっぱりモノレールは使えないと思います」
鳴上「どういう事だ?」
天田「影時間の間って機械とか電気とか全部止まっちゃうんですよ」
天田「例外として、黄昏の羽根っていうのが組み込まれているものについては別みたいなんですけど」
天田「アイギスさんたち姉妹とか、あと僕らが持っている召喚器なんかがそうだった筈です。詳しい事はよく知らないんですけどね」
メティス「そうですね」
ラビリス「確かに、ウチらん中にはあるよ。黄昏の羽根」
鳴上「そんな原理があったのか」
鳴上(あれ? でもさっき……)
天田「だから交通機関も全部ストップしていると……え?」
天田「この音は……!?」
>ガタンガタンという音が遠くからこちらに近付いてきているのがわかる。
メティス「電車の音、ですね」
ラビリス「……うん。それに、モノレールの音もしてる。まだここから少し遠いけど、間違いなくこっちに向かってきてるわ」
天田「そ、そんな!?」
鳴上「動く筈のない電車とモノレールが動いてる、か」
鳴上「……」
鳴上「さっきの天田の話だと、黄昏の羽根ってのがなければ携帯だって通じない筈だよな?」
鳴上「でも俺の携帯はここに来る以前から使用しているものだし、改造してもらったりなんかもしていないんだぞ?」
天田「……そうなんですよね。僕もさっきの電話は気になっていたんですけど」
天田「どういう事なんだろう……」
メティス「ちょっと、駅の中を見てきます」
鳴上「あっ、おい!」
鳴上「あの……桐条さん?」
美鶴「……すまない。今はここで色々考えるより先に、行動に移ろう」
美鶴「ポロニアンモールにいる彼らには、何かあったら鳴上の携帯に電話するように言ってある。頼んだぞ」
鳴上「解りました」
美鶴「それから、もし他に人の姿をみつけたら保護して一緒に連れて帰ってきてくれ」
美鶴「まあ、そうもいないとは思うのだがな……」
美鶴「では、各自行動を開始だ!」
>……
巌戸台駅周辺
>駆け足で駅の近くまでやってきたが、その間にすれ違ったのはやはりあの西洋風の棺だけだった。
>車が走っている様子もまるでない。
>いつかの劇場の中の世界にも似たような空気を感じる……
>景色は見慣れたものの筈なのに、人の営みというものがここには全く存在していなかった。
天田「……」
天田「ここまで来ておいてなんですけど、やっぱりモノレールは使えないと思います」
鳴上「どういう事だ?」
天田「影時間の間って機械とか電気とか全部止まっちゃうんですよ」
天田「例外として、黄昏の羽根っていうのが組み込まれているものについては別みたいなんですけど」
天田「アイギスさんたち姉妹とか、あと僕らが持っている召喚器なんかがそうだった筈です。詳しい事はよく知らないんですけどね」
メティス「そうですね」
ラビリス「確かに、ウチらん中にはあるよ。黄昏の羽根」
鳴上「そんな原理があったのか」
鳴上(あれ? でもさっき……)
天田「だから交通機関も全部ストップしていると……え?」
天田「この音は……!?」
>ガタンガタンという音が遠くからこちらに近付いてきているのがわかる。
メティス「電車の音、ですね」
ラビリス「……うん。それに、モノレールの音もしてる。まだここから少し遠いけど、間違いなくこっちに向かってきてるわ」
天田「そ、そんな!?」
鳴上「動く筈のない電車とモノレールが動いてる、か」
鳴上「……」
鳴上「さっきの天田の話だと、黄昏の羽根ってのがなければ携帯だって通じない筈だよな?」
鳴上「でも俺の携帯はここに来る以前から使用しているものだし、改造してもらったりなんかもしていないんだぞ?」
天田「……そうなんですよね。僕もさっきの電話は気になっていたんですけど」
天田「どういう事なんだろう……」
メティス「ちょっと、駅の中を見てきます」
鳴上「あっ、おい!」
824: ◆Hw7XKfELws:2012/08/06(月) 02:11:27.76:W5oxj6+Po (6/10)
>メティスは駅の階段を素早くのぼっていってしまった。
>……
>再び電車が走り出す音が聞こえ、それからさほど時間も経たないうちにメティスが戻ってきた。
メティス「駅は象徴化の棺を除けば完全に無人でした」
メティス「たった今ここから出ていった電車の中もそうです。……でも、運転手すらいないのに勝手に動いていた」
天田「っ……」
>天田は絶句している。
鳴上「なんだか気持ち悪いな……」
ラビリス「あと一分弱でモノレールが着くで。どうする? 乗ってく?」
鳴上「そりゃ、乗れればあっちまで行くのは楽だろうけど」
メティス「迂闊に乗り込むのは非常に危険だと思います」
鳴上「なにせ無人だもんな」
鳴上「でも、それ以外に行く手段が……」
メティス「ありますよ」
鳴上「え?」
メティス「ムーンライトブリッジです。あそこを通ればポロニアンモールのある人工島へ行けます」
鳴上「ああ、あそこか」
鳴上「……いやいや。あっちから行ったら時間がかかりすぎだろ。歩いて行くしかなくなるじゃないか」
ラビリス「悠。さっきの美鶴さんの言葉、聞いてへんかったの?」
ラビリス「ウチらの足なら電車より早いんやで?」
鳴上「ラビリスとメティスはな。でも、俺と天田は……」
ラビリス「だーかーらー、こうすればええんよ!」
天田「え、……うわぁっ!?」
>ラビリスは唐突に天田の体を持ち上げた。
>その形はいわゆるお姫様抱っこと呼ばれるものだった。
天田「ちょっ、ちょっと! ラビリスさん!?」
メティス「……ああ!」
>メティスが何かを理解したかのようにぽんと手を打って頷く。
ラビリス「メティス。悠の事は任せたで!」
メティス「わかりました。お気をつけて」
ラビリス「乾! ウチにしっかりつかまっとき!」
天田「へ? う、……わああああああああああ!?」
>ラビリスが地面を蹴ると巻き起こった風を残して瞬く間にその姿は消えてなくなってしまった。
>天田の叫び声も遠のいていく……
>そして、……身体が宙を浮くような感覚を覚えた。
>メティスは駅の階段を素早くのぼっていってしまった。
>……
>再び電車が走り出す音が聞こえ、それからさほど時間も経たないうちにメティスが戻ってきた。
メティス「駅は象徴化の棺を除けば完全に無人でした」
メティス「たった今ここから出ていった電車の中もそうです。……でも、運転手すらいないのに勝手に動いていた」
天田「っ……」
>天田は絶句している。
鳴上「なんだか気持ち悪いな……」
ラビリス「あと一分弱でモノレールが着くで。どうする? 乗ってく?」
鳴上「そりゃ、乗れればあっちまで行くのは楽だろうけど」
メティス「迂闊に乗り込むのは非常に危険だと思います」
鳴上「なにせ無人だもんな」
鳴上「でも、それ以外に行く手段が……」
メティス「ありますよ」
鳴上「え?」
メティス「ムーンライトブリッジです。あそこを通ればポロニアンモールのある人工島へ行けます」
鳴上「ああ、あそこか」
鳴上「……いやいや。あっちから行ったら時間がかかりすぎだろ。歩いて行くしかなくなるじゃないか」
ラビリス「悠。さっきの美鶴さんの言葉、聞いてへんかったの?」
ラビリス「ウチらの足なら電車より早いんやで?」
鳴上「ラビリスとメティスはな。でも、俺と天田は……」
ラビリス「だーかーらー、こうすればええんよ!」
天田「え、……うわぁっ!?」
>ラビリスは唐突に天田の体を持ち上げた。
>その形はいわゆるお姫様抱っこと呼ばれるものだった。
天田「ちょっ、ちょっと! ラビリスさん!?」
メティス「……ああ!」
>メティスが何かを理解したかのようにぽんと手を打って頷く。
ラビリス「メティス。悠の事は任せたで!」
メティス「わかりました。お気をつけて」
ラビリス「乾! ウチにしっかりつかまっとき!」
天田「へ? う、……わああああああああああ!?」
>ラビリスが地面を蹴ると巻き起こった風を残して瞬く間にその姿は消えてなくなってしまった。
>天田の叫び声も遠のいていく……
>そして、……身体が宙を浮くような感覚を覚えた。
825: ◆Hw7XKfELws:2012/08/06(月) 02:14:12.85:W5oxj6+Po (7/10)
鳴上「ッ!? なっ、メティス!?」
>気付いた時にはもうメティスに背負われるような形になっていた。
メティス「振り落とされないように首にしっかり腕を回しておいて下さいね」
鳴上「い、いや! これはちょっと……!」
メティス「いいですか、行きますよ!」
鳴上「話を聞っ……わああぁぁぁぁッ!?」
>……
ポロニアンモール
ラビリス「なあ、二人とも大丈夫?」
天田「よ、酔った……」
メティス「あれでも人体に大きな負担がかからないようにしたつもりだったんですけど」
鳴上「人間ってな、そんなに丈夫に出来た生き物じゃないんだよ……」
>しかし、彼女たちのおかげで想定したよりも大分早くここまで辿り着けたのはいい事だった。
>すぐに藤堂たちと合流しなければ……
>……
藤堂「鳴上!」
>噴水の前で藤堂が手を振っているのが見えた。
藤堂「随分と早かったな。もっと時間がかかるかと思っていたけど」
鳴上「ええ、まあ。それは俺もです」
藤堂「ん? なんだか顔色が悪いな。大丈夫か?」
鳴上「……それは気にしないでください」
鳴上「って、あれ? 他の人は?」
>この場にいるのは藤堂だけだった。
>電話で聞いていたその他の人物たちの姿は何処にも見当たらない。
藤堂「ヴィンセントはエスカペイドの中で待機してもらってる」
藤堂「パオフゥはおまわりさんと一緒にこの辺をもう少し詳しく見て回ってくるって」
鳴上「そんな! 何が起こるかわからないのに……!」
藤堂「そう遠くまでは行かないって言ってたし、パオフゥだって立派な大人でペルソナ使いの一人だ。いざという時の対処くらい心得てるさ」
藤堂「それよりも、あのおまわりさん……肝が据わってたな。この異様な状況でそれほど狼狽えているようには見えなかったし、結構冷静だった」
藤堂「まったく、ヴィンセントも見習って欲しいもんだ」
>藤堂は笑っている。
>そんな事を言っている彼こそこの状況で大した余裕だと、そう思った。
鳴上「ッ!? なっ、メティス!?」
>気付いた時にはもうメティスに背負われるような形になっていた。
メティス「振り落とされないように首にしっかり腕を回しておいて下さいね」
鳴上「い、いや! これはちょっと……!」
メティス「いいですか、行きますよ!」
鳴上「話を聞っ……わああぁぁぁぁッ!?」
>……
ポロニアンモール
ラビリス「なあ、二人とも大丈夫?」
天田「よ、酔った……」
メティス「あれでも人体に大きな負担がかからないようにしたつもりだったんですけど」
鳴上「人間ってな、そんなに丈夫に出来た生き物じゃないんだよ……」
>しかし、彼女たちのおかげで想定したよりも大分早くここまで辿り着けたのはいい事だった。
>すぐに藤堂たちと合流しなければ……
>……
藤堂「鳴上!」
>噴水の前で藤堂が手を振っているのが見えた。
藤堂「随分と早かったな。もっと時間がかかるかと思っていたけど」
鳴上「ええ、まあ。それは俺もです」
藤堂「ん? なんだか顔色が悪いな。大丈夫か?」
鳴上「……それは気にしないでください」
鳴上「って、あれ? 他の人は?」
>この場にいるのは藤堂だけだった。
>電話で聞いていたその他の人物たちの姿は何処にも見当たらない。
藤堂「ヴィンセントはエスカペイドの中で待機してもらってる」
藤堂「パオフゥはおまわりさんと一緒にこの辺をもう少し詳しく見て回ってくるって」
鳴上「そんな! 何が起こるかわからないのに……!」
藤堂「そう遠くまでは行かないって言ってたし、パオフゥだって立派な大人でペルソナ使いの一人だ。いざという時の対処くらい心得てるさ」
藤堂「それよりも、あのおまわりさん……肝が据わってたな。この異様な状況でそれほど狼狽えているようには見えなかったし、結構冷静だった」
藤堂「まったく、ヴィンセントも見習って欲しいもんだ」
>藤堂は笑っている。
>そんな事を言っている彼こそこの状況で大した余裕だと、そう思った。
826: ◆Hw7XKfELws:2012/08/06(月) 02:17:21.65:W5oxj6+Po (8/10)
藤堂「えーと……そっちの少年とお嬢さん二人もペルソナ使いか」
藤堂「あ、黒髪の彼女は一度会った事があったか」
メティス「はい。その節はどうも。お久しぶりです」
メティス「そういえばきちんと自己紹介をしていませんでした。メティスと言います」
ラビリス「あっ、ウチはそのメティスの姉のラビリス言います。よろしゅう」
天田「えと、天田乾です」
>皆、つられるように簡単に自己紹介をする。
メティス「……。話には聞いていましたが、藤堂さんも本当にペルソナ使いだったんですね」
藤堂「まあな」
メティス「それからパオフゥさんという方もペルソナ使いで……クラブの方にいるのは?」
鳴上「あの人は違うよ」
メティス「そうですか。周防さんは私たちの事情は知っていてもペルソナ使いではないという話だった筈。そうですね?」
鳴上「そうだな。……どうした? 改まってそんな事聞くなんて」
メティス「いえ……」
藤堂「へえ。あのおまわりさん、鳴上たちと繋がりがあったのか。どうりで……」
藤堂「っと、鳴上たちも来たんだし、パオフゥに連絡しないとな」
藤堂「そっちの三人はここにいない連中が来るまでちょっとクラブにいるオッサンの相手してやってくれないか。少し錯乱気味だけど」
鳴上(そうだよな、そりゃあ錯乱もするって……それが普通の反応だよな)
鳴上「頼んでいいか?」
メティス「ええ、わかりました」
>メティスとラビリスと天田はクラブの方へと向かって行った。
>藤堂はパオフゥへと電話をかけている。
藤堂「……ああ、そうだ。すぐ戻れそうか? ……え?」
藤堂「本当か? そうか……わかった。鳴上にも伝えとく」
藤堂「ああ。じゃあ、また後で」
鳴上「どうかしましたか?」
藤堂「ああ、それがさ。パオフゥたちが若い男女を保護したって」
鳴上「!」
藤堂「しかもそのうちの一人にペルソナの共鳴を感じたそうだ」
鳴上「ペルソナ使い!?」
>ここにきてまたペルソナ使い……
>その心当たりはまだいるにはいるが……
藤堂「えーと……そっちの少年とお嬢さん二人もペルソナ使いか」
藤堂「あ、黒髪の彼女は一度会った事があったか」
メティス「はい。その節はどうも。お久しぶりです」
メティス「そういえばきちんと自己紹介をしていませんでした。メティスと言います」
ラビリス「あっ、ウチはそのメティスの姉のラビリス言います。よろしゅう」
天田「えと、天田乾です」
>皆、つられるように簡単に自己紹介をする。
メティス「……。話には聞いていましたが、藤堂さんも本当にペルソナ使いだったんですね」
藤堂「まあな」
メティス「それからパオフゥさんという方もペルソナ使いで……クラブの方にいるのは?」
鳴上「あの人は違うよ」
メティス「そうですか。周防さんは私たちの事情は知っていてもペルソナ使いではないという話だった筈。そうですね?」
鳴上「そうだな。……どうした? 改まってそんな事聞くなんて」
メティス「いえ……」
藤堂「へえ。あのおまわりさん、鳴上たちと繋がりがあったのか。どうりで……」
藤堂「っと、鳴上たちも来たんだし、パオフゥに連絡しないとな」
藤堂「そっちの三人はここにいない連中が来るまでちょっとクラブにいるオッサンの相手してやってくれないか。少し錯乱気味だけど」
鳴上(そうだよな、そりゃあ錯乱もするって……それが普通の反応だよな)
鳴上「頼んでいいか?」
メティス「ええ、わかりました」
>メティスとラビリスと天田はクラブの方へと向かって行った。
>藤堂はパオフゥへと電話をかけている。
藤堂「……ああ、そうだ。すぐ戻れそうか? ……え?」
藤堂「本当か? そうか……わかった。鳴上にも伝えとく」
藤堂「ああ。じゃあ、また後で」
鳴上「どうかしましたか?」
藤堂「ああ、それがさ。パオフゥたちが若い男女を保護したって」
鳴上「!」
藤堂「しかもそのうちの一人にペルソナの共鳴を感じたそうだ」
鳴上「ペルソナ使い!?」
>ここにきてまたペルソナ使い……
>その心当たりはまだいるにはいるが……
827: ◆Hw7XKfELws:2012/08/06(月) 02:19:37.82:W5oxj6+Po (9/10)
藤堂「一緒に連れてくるってさ。大丈夫だよな?」
鳴上「はい。それは平気です」
藤堂「そうか。……じゃあ、鳴上。パオフゥたちが帰ってくる前に少し確かめて欲しい事があるんだが」
藤堂「こっちへ来てもらえるか」
>そう言って、藤堂は交番脇にある路地の方へと歩き始める。
>あっちは……
>……
鳴上「……え」
鳴上「な、これは、何で……!?」
藤堂「……」
藤堂「やっぱり君もか」
>藤堂は溜息を一つ吐く。
>今まで余裕を見せていた彼の表情が一瞬翳った。
藤堂「ここにあったベルベットルームの扉……見えなくなってる、よな?」
鳴上「は、はい。確かにここに青い扉があったはず、なのに……!」
>この路地の最奥にあった扉が跡形もなく消え去っている。
>……道は続かない、ただの行き止まりだ。
藤堂「有事の際はきっと世話になると思ったのに、まずったな……」
藤堂「……こんな時に使えないでどうすんだよ」
鳴上「……」
鳴上(イゴール、マーガレット……)
>壁を叩く拳の虚しい音が鈍く響いた……
藤堂「一緒に連れてくるってさ。大丈夫だよな?」
鳴上「はい。それは平気です」
藤堂「そうか。……じゃあ、鳴上。パオフゥたちが帰ってくる前に少し確かめて欲しい事があるんだが」
藤堂「こっちへ来てもらえるか」
>そう言って、藤堂は交番脇にある路地の方へと歩き始める。
>あっちは……
>……
鳴上「……え」
鳴上「な、これは、何で……!?」
藤堂「……」
藤堂「やっぱり君もか」
>藤堂は溜息を一つ吐く。
>今まで余裕を見せていた彼の表情が一瞬翳った。
藤堂「ここにあったベルベットルームの扉……見えなくなってる、よな?」
鳴上「は、はい。確かにここに青い扉があったはず、なのに……!」
>この路地の最奥にあった扉が跡形もなく消え去っている。
>……道は続かない、ただの行き止まりだ。
藤堂「有事の際はきっと世話になると思ったのに、まずったな……」
藤堂「……こんな時に使えないでどうすんだよ」
鳴上「……」
鳴上(イゴール、マーガレット……)
>壁を叩く拳の虚しい音が鈍く響いた……
828: ◆Hw7XKfELws:2012/08/06(月) 02:20:30.04:W5oxj6+Po (10/10)
久しぶりでしかも短いですが終わります。
また次回。
久しぶりでしかも短いですが終わります。
また次回。
829:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2012/08/06(月) 02:42:00.93:YS9smbaEo (1/1)
乙
歴代ペルソナ使い集合とか胸熱
乙
歴代ペルソナ使い集合とか胸熱
830:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/08/06(月) 03:00:50.60:6PvsZp+do (1/1)
ベルベットルーム使えないとかやばいな
ベルベットルーム使えないとかやばいな
831:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/06(月) 18:48:52.51:U5JI4j4IO (1/1)
中の人いないもんな…
中の人いないもんな…
832:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/08/06(月) 18:55:47.15:KT6PLlpAO (1/1)
いつの間にか来てた乙
いつの間にか来てた乙
833:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/08/07(火) 00:37:58.05:T640zwelo (1/1)
いないのはキタローだけか。
ハム子は特殊な条件だけど、いないわけじゃないさ。
いないのはキタローだけか。
ハム子は特殊な条件だけど、いないわけじゃないさ。
834:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/07(火) 00:42:06.90:vNABy+GUo (1/1)
ハムタロー「コンゴトモ ヨロシクナノダ」
ハムタロー「コンゴトモ ヨロシクナノダ」
835:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/08/07(火) 17:23:56.35:BMA2mKp6o (1/1)
ハム子とキタローを悪魔合体させんなww
ハム子とキタローを悪魔合体させんなww
836:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県):2012/08/07(火) 17:24:39.28:t0d1WRaxo (1/1)
>>835
むしろノーマルスプレッドかと
>>835
むしろノーマルスプレッドかと
837:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/08/07(火) 18:07:11.81:7g5Vqpt5o (1/1)
キタローとハム子合体なんてコミュ力超絶高い爽やかイケメンか青髪カリスマクールビューティーの二択しかないだろうが。
キタローとハム子合体なんてコミュ力超絶高い爽やかイケメンか青髪カリスマクールビューティーの二択しかないだろうが。
838:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/08/07(火) 23:31:54.30:S1GMjRgy0 (1/1)
合体事故が起きて根暗系コミュ力絶無が出来るかもしれない
合体事故が起きて根暗系コミュ力絶無が出来るかもしれない
839:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/08/08(水) 08:34:25.05:A5d3ioaAO (1/1)
ふたなr・・・おっと配達屋が来たようだ
ふたなr・・・おっと配達屋が来たようだ
840:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/09(木) 00:45:58.76:Rdot2Soz0 (1/1)
胸は熱くなるし、扉消えて少し怖いし、面白いなほんとに。
胸は熱くなるし、扉消えて少し怖いし、面白いなほんとに。
841:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/09(木) 12:15:09.88:6E+87cGIO (1/2)
番長終盤で召喚機投げ捨てて大神召喚しそう
番長終盤で召喚機投げ捨てて大神召喚しそう
842:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/09(木) 12:17:43.52:6E+87cGIO (2/2)
番長最後召喚器投げ捨てて大神召喚しそう
番長最後召喚器投げ捨てて大神召喚しそう
843:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/08/09(木) 13:30:12.24:fEC5S7Qx0 (1/1)
そういえばノーマルエンドなんだもんなぁ
そういえばノーマルエンドなんだもんなぁ
844:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/09(木) 14:26:40.42:tttvYW4IO (1/2)
やっぱり、いつかはイザナミとの決戦に臨むのかね?
やっぱり、いつかはイザナミとの決戦に臨むのかね?
845:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/09(木) 14:33:52.79:ZbqeXyPmo (1/2)
考察厨うぜぇ
考察厨うぜぇ
846:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/09(木) 16:25:33.78:tttvYW4IO (2/2)
考察……?
考察……?
847:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/09(木) 16:39:24.66:ZbqeXyPmo (2/2)
正しくは予想厨だったねごめんね
正しくは予想厨だったねごめんね
848: ◆Hw7XKfELws:2012/08/10(金) 23:54:45.65:BqcfWy3vo (1/4)
鳴上「……! そうだ、俺たちアレも持ってるじゃないですか!」
鳴上「悪魔召喚プログラム!」
藤堂「……。それは俺もすぐに気付いたよ」
藤堂「でも、俺のは……」
>藤堂は首を横に振る。
鳴上「え? ま、まさか……!?」
>急いで携帯を取り出し、悪魔召喚プログラムのアプリを選択する。
>しかし、画面自体は開くものの、リリムを選択しても彼女は姿を現してはくれなかった……
鳴上「リリム! おい、リリム!」
藤堂「やっぱり呼び出せなかったか……」
藤堂「俺のもまったく操作が出来なくなっている。昨日まではそんな事なかったのに」
鳴上「くそっ、なんでだよ!」
>消えたベルベットルーム、操作不能の悪魔召喚プログラム。
>これでは、今以上の非常事態が起こった場合どうすればいいのか、不安が大きい……
藤堂「ま、こうなった以上は仕方ない。今のところは悪魔なんかが姿を現していないのが不幸中の幸いだな」
鳴上「……」
藤堂「そんな顔するなって。君はリーダーなんだろう? 上に立つ人間が今から弱気になってたらダメだぜ」
藤堂「それに、今回は俺やパオフゥもいる。君たちの力になれるって事だ」
藤堂「だから案外すぐどうにかなるかもしれないぜ?」
>藤堂は肩を軽く叩き笑みを浮かべる。
>その言葉に心強さを感じた。
鳴上「藤堂さん……」
藤堂「……大丈夫。な?」
>彼のおかげで少し落ち着きを取り戻せたような気がした。
>藤堂との絆が深まったような気がする……
>『Ⅳ 皇帝 藤堂尚也』のランクが6になった
藤堂「さて、俺たちもエスカペイドの方でパオフゥたちがくるのを待とうか」
藤堂「ヴィンセントに早くお前の顔も見せてやれよ。そうすれば少しは落ち着くかも」
鳴上「はは……そうですね、行きましょう」
>……
鳴上「……! そうだ、俺たちアレも持ってるじゃないですか!」
鳴上「悪魔召喚プログラム!」
藤堂「……。それは俺もすぐに気付いたよ」
藤堂「でも、俺のは……」
>藤堂は首を横に振る。
鳴上「え? ま、まさか……!?」
>急いで携帯を取り出し、悪魔召喚プログラムのアプリを選択する。
>しかし、画面自体は開くものの、リリムを選択しても彼女は姿を現してはくれなかった……
鳴上「リリム! おい、リリム!」
藤堂「やっぱり呼び出せなかったか……」
藤堂「俺のもまったく操作が出来なくなっている。昨日まではそんな事なかったのに」
鳴上「くそっ、なんでだよ!」
>消えたベルベットルーム、操作不能の悪魔召喚プログラム。
>これでは、今以上の非常事態が起こった場合どうすればいいのか、不安が大きい……
藤堂「ま、こうなった以上は仕方ない。今のところは悪魔なんかが姿を現していないのが不幸中の幸いだな」
鳴上「……」
藤堂「そんな顔するなって。君はリーダーなんだろう? 上に立つ人間が今から弱気になってたらダメだぜ」
藤堂「それに、今回は俺やパオフゥもいる。君たちの力になれるって事だ」
藤堂「だから案外すぐどうにかなるかもしれないぜ?」
>藤堂は肩を軽く叩き笑みを浮かべる。
>その言葉に心強さを感じた。
鳴上「藤堂さん……」
藤堂「……大丈夫。な?」
>彼のおかげで少し落ち着きを取り戻せたような気がした。
>藤堂との絆が深まったような気がする……
>『Ⅳ 皇帝 藤堂尚也』のランクが6になった
藤堂「さて、俺たちもエスカペイドの方でパオフゥたちがくるのを待とうか」
藤堂「ヴィンセントに早くお前の顔も見せてやれよ。そうすれば少しは落ち着くかも」
鳴上「はは……そうですね、行きましょう」
>……
849: ◆Hw7XKfELws:2012/08/10(金) 23:56:04.04:BqcfWy3vo (2/4)
クラブ エスカペイド
ヴィンセント「な……鳴上ぃー!」
鳴上「うわっ! ヴィンセントさん!?」
>こちらの姿に気付いたヴィンセントが情けない声を上げながら飛びついてきた。
ヴィンセント「今度は一体何が起こってんだよ!? 外は変な棺だらけだし、何時の間にかこんな場所にいるし、家に電話は繋がらねえし……一瞬俺の頭がまたおかしくなったのかと思ったじゃねえか!」
ヴィンセント「これも悪魔か!? 悪魔の仕業なのか!?」
鳴上「ちょ……く、苦し……」
>ヴィンセントは襟首を掴みながらガクガクと揺さぶってくる。
>相当な取り乱し様だ。
ラビリス「このオッサン、さっきからずっとこの調子やねん」
天田「まあ、無理もないですけどね」
メティス「……。どうしますか?」
鳴上「……」
>『どうしますか?』
>メティスのこの言葉の意味はおそらく、一般の人間にこの影時間についての説明をしてもいいのかという事だろう。
鳴上「……ヴィンセントさん、一回腰を落ち着けてください」
ヴィンセント「お、おう。ワリィ……」
>ヴィンセントは離れると、椅子に腰を下ろして一度深呼吸をした。
鳴上「こちらから話をする前に少し聞きたい事があります」
鳴上「さっき、何時の間にかこんな場所にいたって言ってましたよね? それって……」
ヴィンセント「あ、ああ! それなんだけどさ」
パオフゥ「このポロニアンモールにいた連中皆そうだぜ」
鳴上「!」
>入口の扉が開く音を耳にし、声がする方を振り返る。
>そこには、パオフゥの姿があった。
鳴上「みんな?」
藤堂「……そ、みんな。一か所に集合してたって訳でもないんだけどさ」
パオフゥ「俺とヴィンセントはこのクラブの中」
藤堂「俺は辰巳東交番前で」
達哉「……俺はその交番の中にいた」
クラブ エスカペイド
ヴィンセント「な……鳴上ぃー!」
鳴上「うわっ! ヴィンセントさん!?」
>こちらの姿に気付いたヴィンセントが情けない声を上げながら飛びついてきた。
ヴィンセント「今度は一体何が起こってんだよ!? 外は変な棺だらけだし、何時の間にかこんな場所にいるし、家に電話は繋がらねえし……一瞬俺の頭がまたおかしくなったのかと思ったじゃねえか!」
ヴィンセント「これも悪魔か!? 悪魔の仕業なのか!?」
鳴上「ちょ……く、苦し……」
>ヴィンセントは襟首を掴みながらガクガクと揺さぶってくる。
>相当な取り乱し様だ。
ラビリス「このオッサン、さっきからずっとこの調子やねん」
天田「まあ、無理もないですけどね」
メティス「……。どうしますか?」
鳴上「……」
>『どうしますか?』
>メティスのこの言葉の意味はおそらく、一般の人間にこの影時間についての説明をしてもいいのかという事だろう。
鳴上「……ヴィンセントさん、一回腰を落ち着けてください」
ヴィンセント「お、おう。ワリィ……」
>ヴィンセントは離れると、椅子に腰を下ろして一度深呼吸をした。
鳴上「こちらから話をする前に少し聞きたい事があります」
鳴上「さっき、何時の間にかこんな場所にいたって言ってましたよね? それって……」
ヴィンセント「あ、ああ! それなんだけどさ」
パオフゥ「このポロニアンモールにいた連中皆そうだぜ」
鳴上「!」
>入口の扉が開く音を耳にし、声がする方を振り返る。
>そこには、パオフゥの姿があった。
鳴上「みんな?」
藤堂「……そ、みんな。一か所に集合してたって訳でもないんだけどさ」
パオフゥ「俺とヴィンセントはこのクラブの中」
藤堂「俺は辰巳東交番前で」
達哉「……俺はその交番の中にいた」
850: ◆Hw7XKfELws:2012/08/10(金) 23:57:23.03:BqcfWy3vo (3/4)
>パオフゥの後ろから続くようにして周防が姿を現した。
達哉「こっちの二人も、話を聞く限り似たような状況だったみたいだな」
>周防に中に入るように促され、さらにその後ろから二つの人影が現れる。
天田「えっ、順平さん!? それに……」
メティス「チドリさんじゃないですか!」
順平「あ? え、なんでお前らがここにいんの?」
チドリ「悠……?」
>どうやらパオフゥたちが保護した若い男女というのが彼らの事だったらしい。
>お互いの姿にお互いが驚いている。
藤堂「君たちの知り合いだったか。なら、色々と都合が良さそうだ」
鳴上「そうですね。これで人も揃ったみたいだし、一度落ち着いて皆さんの話を改めて初めから聞かせてもらってもいいですか?」
>皆にそれぞれ腰を落ち着けるように促し、これまでの経緯を聞く事にした。
>……
鳴上「……じゃあ、皆どうしてその場所にいたのかさっぱり理由がわからないんですね?」
パオフゥ「ああ。こんな場所まで来た覚えもねえ」
ヴィンセント「昨夜は家で寝ていた筈なのに、ふと目開いたらあのカウンターの席に座っててさ。最初は夢でも見てんのかとも思ったけど……」
順平「俺なんか港区自体にいた覚えもないんだぜ?」
鳴上「順平さんとチドリはポートアイランド駅前付近にいたって言ってましたよね。その近辺の様子はどうでした?」
順平「ここと一緒だよ。俺たち以外に人の姿がまるっきりなくてさ」
チドリ「代わりに棺がいっぱい」
>チドリは持っていたスケッチブックを捲って見せてきた。
>駅前の風景だと思われる絵が描かれている。
順平「まったく大したヤツだよ、チドリは……明らかに異様な空間の中、平然とした顔でずっとその絵描いてたんだぜ?」
チドリ「だって、なんか面白かったし。順平は騒ぎすぎ」
順平「そりゃ騒ぐだろ。だってあれは……なあ天田、そうだよな?」
天田「……」
天田「あの、順平さん。ポートアイランドの駅のモノレールってどうでしたか?」
順平「……モノレール! そうだよ、そうそう! 動いてたんだよ、モノレール!」
順平「だから、俺も最初は夢見てるのかと思っててさ。あれ一体どういう事なんだ?」
天田「やっぱりそうなのか……」
>順平も天田も怪訝な顔をしている。
順平「それにさ、おかしいだろ。なんでこんな時間まで続いてる訳?」
チドリ「? 続いてるって、何が?」
順平「あっ! えっ、と……」
>パオフゥの後ろから続くようにして周防が姿を現した。
達哉「こっちの二人も、話を聞く限り似たような状況だったみたいだな」
>周防に中に入るように促され、さらにその後ろから二つの人影が現れる。
天田「えっ、順平さん!? それに……」
メティス「チドリさんじゃないですか!」
順平「あ? え、なんでお前らがここにいんの?」
チドリ「悠……?」
>どうやらパオフゥたちが保護した若い男女というのが彼らの事だったらしい。
>お互いの姿にお互いが驚いている。
藤堂「君たちの知り合いだったか。なら、色々と都合が良さそうだ」
鳴上「そうですね。これで人も揃ったみたいだし、一度落ち着いて皆さんの話を改めて初めから聞かせてもらってもいいですか?」
>皆にそれぞれ腰を落ち着けるように促し、これまでの経緯を聞く事にした。
>……
鳴上「……じゃあ、皆どうしてその場所にいたのかさっぱり理由がわからないんですね?」
パオフゥ「ああ。こんな場所まで来た覚えもねえ」
ヴィンセント「昨夜は家で寝ていた筈なのに、ふと目開いたらあのカウンターの席に座っててさ。最初は夢でも見てんのかとも思ったけど……」
順平「俺なんか港区自体にいた覚えもないんだぜ?」
鳴上「順平さんとチドリはポートアイランド駅前付近にいたって言ってましたよね。その近辺の様子はどうでした?」
順平「ここと一緒だよ。俺たち以外に人の姿がまるっきりなくてさ」
チドリ「代わりに棺がいっぱい」
>チドリは持っていたスケッチブックを捲って見せてきた。
>駅前の風景だと思われる絵が描かれている。
順平「まったく大したヤツだよ、チドリは……明らかに異様な空間の中、平然とした顔でずっとその絵描いてたんだぜ?」
チドリ「だって、なんか面白かったし。順平は騒ぎすぎ」
順平「そりゃ騒ぐだろ。だってあれは……なあ天田、そうだよな?」
天田「……」
天田「あの、順平さん。ポートアイランドの駅のモノレールってどうでしたか?」
順平「……モノレール! そうだよ、そうそう! 動いてたんだよ、モノレール!」
順平「だから、俺も最初は夢見てるのかと思っててさ。あれ一体どういう事なんだ?」
天田「やっぱりそうなのか……」
>順平も天田も怪訝な顔をしている。
順平「それにさ、おかしいだろ。なんでこんな時間まで続いてる訳?」
チドリ「? 続いてるって、何が?」
順平「あっ! えっ、と……」
851: ◆Hw7XKfELws:2012/08/10(金) 23:59:31.65:BqcfWy3vo (4/4)
>順平は、はっとなって口を閉ざし困っていた。
>その様子だとチドリに影時間についての事を詳しく聞かれたくないのかもしれない。
>しかし、順平の言葉には自分も引っかかるものを感じていた。
鳴上(なるほど。本来なら『影時間がこんな時間まで続いてるのはおかしい事』、なのか)
鳴上(どういう事なのかはよくわからないけど。……一度、桐条さんに影時間についての基本的な情報をもう少し詳しく聞いてみる必要があるか)
鳴上「皆さん、情報をありがとうございます。結局、現段階ではどうしてこんな状況に追い込まれたのか何もわからないってのがわかっただけって事ですね」
メティス「鳴上さん。これ以上話せる事もなさそうなら、そろそろ移動した方がいいのでは」
鳴上「ああ、そうだな」
達哉「移動? 何処にだ?」
鳴上「これから先、何が起こるのか何も起こらないのか……それすらもわからない状況です。だから、ここより安全な場所に避難してもらおうかと」
藤堂「桐条さんが電話で言ってたな。無事な人間は一度君たちの学生寮へ集まろうって話だったか」
鳴上「はい。少なくとも、ここにずっといるよりはマシだと思うので」
達哉「そうか。わかった」
達哉「幸い近くに捜査車両と俺のバイクが停めてあった。一度に全員を連れて行くのは無理だろうが、それを使えば移動出来るだろ」
天田「その車、使えるんですか?」
達哉「ああ。さっき確認したが、エンジンは普通にかかる」
天田「……。そうですか」
鳴上「俺たちはこれから月光館学園の方を見てこようと思いますので……」
ラビリス「刑事さん、みんなの事よろしゅうな」
メティス「信号は機能していないようですが、他に車が走っている様子も道路に変わったところも見られませんでしたので、移動に差し支えはない筈ですから」
達哉「ちょっと待て。お前たちだけで行くのか? いくら人数がいるとはいえ、この非常時にこれ以上未成年だけで好き勝手に行動するのは……」
藤堂「じゃあ、俺が鳴上たちについていこう。それならいいだろ?」
達哉「そういう事なら俺の方が」
藤堂「いや、おまわりさんはパオフゥと一緒にヴィンセントとそっちの帽子の少年とゴスロリのお嬢さんの護送を頼むよ」
達哉「しかし……」
パオフゥ「うだうだ言ってねえで行くぞ、達哉。そいつらにはそいつらのやる事があんだろうよ。ガキ共の事は、今は藤堂に任せとけ」
達哉「……」
パオフゥ「ったく、テメェも頭が固くなったな。面影から何までどんどん兄貴みたいになりやがって……」
達哉「アニキの事は関係な……、?」
達哉「アンタ、俺のアニキの知り合いだったのか?」
パオフゥ「……。まあな」
パオフゥ「いいから行くぞ」
>パオフゥは一足先にクラブから出ていってしまった。
達哉「お、おい!」
達哉「……はぁ。仕方ない、ここは藤堂さんに頼むとしよう」
藤堂「ああ。こいつらは責任もって預かるよ」
達哉「くれぐれも無茶な事だけはしないようにお願いします。鳴上たちもだぞ」
鳴上「はい、わかっています」
>順平は、はっとなって口を閉ざし困っていた。
>その様子だとチドリに影時間についての事を詳しく聞かれたくないのかもしれない。
>しかし、順平の言葉には自分も引っかかるものを感じていた。
鳴上(なるほど。本来なら『影時間がこんな時間まで続いてるのはおかしい事』、なのか)
鳴上(どういう事なのかはよくわからないけど。……一度、桐条さんに影時間についての基本的な情報をもう少し詳しく聞いてみる必要があるか)
鳴上「皆さん、情報をありがとうございます。結局、現段階ではどうしてこんな状況に追い込まれたのか何もわからないってのがわかっただけって事ですね」
メティス「鳴上さん。これ以上話せる事もなさそうなら、そろそろ移動した方がいいのでは」
鳴上「ああ、そうだな」
達哉「移動? 何処にだ?」
鳴上「これから先、何が起こるのか何も起こらないのか……それすらもわからない状況です。だから、ここより安全な場所に避難してもらおうかと」
藤堂「桐条さんが電話で言ってたな。無事な人間は一度君たちの学生寮へ集まろうって話だったか」
鳴上「はい。少なくとも、ここにずっといるよりはマシだと思うので」
達哉「そうか。わかった」
達哉「幸い近くに捜査車両と俺のバイクが停めてあった。一度に全員を連れて行くのは無理だろうが、それを使えば移動出来るだろ」
天田「その車、使えるんですか?」
達哉「ああ。さっき確認したが、エンジンは普通にかかる」
天田「……。そうですか」
鳴上「俺たちはこれから月光館学園の方を見てこようと思いますので……」
ラビリス「刑事さん、みんなの事よろしゅうな」
メティス「信号は機能していないようですが、他に車が走っている様子も道路に変わったところも見られませんでしたので、移動に差し支えはない筈ですから」
達哉「ちょっと待て。お前たちだけで行くのか? いくら人数がいるとはいえ、この非常時にこれ以上未成年だけで好き勝手に行動するのは……」
藤堂「じゃあ、俺が鳴上たちについていこう。それならいいだろ?」
達哉「そういう事なら俺の方が」
藤堂「いや、おまわりさんはパオフゥと一緒にヴィンセントとそっちの帽子の少年とゴスロリのお嬢さんの護送を頼むよ」
達哉「しかし……」
パオフゥ「うだうだ言ってねえで行くぞ、達哉。そいつらにはそいつらのやる事があんだろうよ。ガキ共の事は、今は藤堂に任せとけ」
達哉「……」
パオフゥ「ったく、テメェも頭が固くなったな。面影から何までどんどん兄貴みたいになりやがって……」
達哉「アニキの事は関係な……、?」
達哉「アンタ、俺のアニキの知り合いだったのか?」
パオフゥ「……。まあな」
パオフゥ「いいから行くぞ」
>パオフゥは一足先にクラブから出ていってしまった。
達哉「お、おい!」
達哉「……はぁ。仕方ない、ここは藤堂さんに頼むとしよう」
藤堂「ああ。こいつらは責任もって預かるよ」
達哉「くれぐれも無茶な事だけはしないようにお願いします。鳴上たちもだぞ」
鳴上「はい、わかっています」
852: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:01:33.01:Wuetnu05o (1/11)
達哉「……よし。じゃあ行こうか」
順平「へーい。ごめんな、鳴上。先にチドリとあっちに行かせてもらうわ」
チドリ「……また後で」
ヴィンセント「何するか知らねえが、早く帰って来いよな」
ヴィンセント「……あ。そうだ、刑事さん。ちょっと頼みたい事があんだけど……」
>4人も続いて外へと出て行った。
鳴上「藤堂さん、いいんですか? 一緒に寮の方へ行かなくて」
藤堂「ああ。俺もお前たちだけで行動させたくなかったからな」
ラビリス「そこまで心配せんでもええのになあ」
藤堂「いくらペルソナ使いだからって言っても、子供を守るのは大人の義務だって事にかわりはないんだよ」
藤堂「それに、こういった不思議な事に理解ある大人が一緒にいるのって凄く良い事だと思わないか?」
>藤堂はおどけたようにそう言って笑った。
>まったくもって彼の言う通りだと思う。
鳴上「ありがとうございます。助かります」
鳴上「じゃあ、俺たちも早く行こう」
>この場に残ったメンバーで月光館学園を目指した。
>……
月光館学園 校門前
天田「これは……」
鳴上「どうだ、天田。何か気になるところは?」
天田「……。いえ、特に見当たりません」
天田「皆さんも見ての通りです。外観は普通に学校のままですね」
天田「とりあえず、少し安心しました」
>天田はほっと息を吐いた。
>どうやら、タルタロスに変貌しているというような事はないらしい。
>だが……
メティス「あくまで見かけは普通の学校ってだけですよね?」
藤堂「中に入ってみたら一面氷漬けになってて異界と繋がってたりとかはもう勘弁だなー」
ラビリス「え? 何それ」
藤堂「本当にあった学校の怖い話」
藤堂「お前たちは人の忠告を無視するような子になるんじゃないぞ」
鳴上(……昔何があったんだろう)
天田「まだ油断はしない方がいいか。……そうですよね。慎重にいきましょう」
鳴上「ああ。みんな、離れないようにな」
>周りに十分注意を払いつつ、学校の中へと入った。
達哉「……よし。じゃあ行こうか」
順平「へーい。ごめんな、鳴上。先にチドリとあっちに行かせてもらうわ」
チドリ「……また後で」
ヴィンセント「何するか知らねえが、早く帰って来いよな」
ヴィンセント「……あ。そうだ、刑事さん。ちょっと頼みたい事があんだけど……」
>4人も続いて外へと出て行った。
鳴上「藤堂さん、いいんですか? 一緒に寮の方へ行かなくて」
藤堂「ああ。俺もお前たちだけで行動させたくなかったからな」
ラビリス「そこまで心配せんでもええのになあ」
藤堂「いくらペルソナ使いだからって言っても、子供を守るのは大人の義務だって事にかわりはないんだよ」
藤堂「それに、こういった不思議な事に理解ある大人が一緒にいるのって凄く良い事だと思わないか?」
>藤堂はおどけたようにそう言って笑った。
>まったくもって彼の言う通りだと思う。
鳴上「ありがとうございます。助かります」
鳴上「じゃあ、俺たちも早く行こう」
>この場に残ったメンバーで月光館学園を目指した。
>……
月光館学園 校門前
天田「これは……」
鳴上「どうだ、天田。何か気になるところは?」
天田「……。いえ、特に見当たりません」
天田「皆さんも見ての通りです。外観は普通に学校のままですね」
天田「とりあえず、少し安心しました」
>天田はほっと息を吐いた。
>どうやら、タルタロスに変貌しているというような事はないらしい。
>だが……
メティス「あくまで見かけは普通の学校ってだけですよね?」
藤堂「中に入ってみたら一面氷漬けになってて異界と繋がってたりとかはもう勘弁だなー」
ラビリス「え? 何それ」
藤堂「本当にあった学校の怖い話」
藤堂「お前たちは人の忠告を無視するような子になるんじゃないぞ」
鳴上(……昔何があったんだろう)
天田「まだ油断はしない方がいいか。……そうですよね。慎重にいきましょう」
鳴上「ああ。みんな、離れないようにな」
>周りに十分注意を払いつつ、学校の中へと入った。
853: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:03:13.45:Wuetnu05o (2/11)
>……
月光館学園 玄関
>足音を立てないようにしながら歩みを進める。
>どうやら今のところ目に見える範囲も普段の学校にかわりないようだ。
>するとそこで、購買付近に何かの気配を感じた。
>初めは考えられる可能性として象徴化の棺かと思ったが……どうやら違うようだ。
>1、2、3、……全部で4人。間違いなく人の姿が確認出来る。
>そのうちの一人が、こちらが声をかける前に手を大きく振って呼びかけてきた。
麻希「鳴上くん!」
鳴上「園村先生!? と……」
綾時「あ……」
淳「君たち、無事だったかい!?」
あかり「メティスちゃん! ラビリスちゃん!」
>4人のうちのひとり、あかりがメティスとラビリスの方へ駆け寄ってきて飛びついた。
メティス「あかりさん!? まさか貴女までこんな空間にいるなんて……」
ラビリス「怪我とかしてへんか?」
あかり「うん、それは大丈夫。でも……学校がなんか変なんだよ!」
綾時「僕たち以外に人らしい人がいなくてね。建物自体に異常はないみたいなんだけど」
淳「教室も体育館も職員室も妙な棺みたいな物があるだけなんだ」
>綾時もあかりも橿原もすっかり憔悴してしまっている。
麻希「でもさっき桐条さんから電話をもらってね。学校にいるって言ったら、鳴上くんたちがここに向かっている筈だから待っていてくれって言われたからここに待機していたの」
鳴上「そうだったんですか」
鳴上「あの、先生たちは今日普通に学校へ出勤してきたら既にこんな事になっていたんですか?」
鳴上「望月やあかりも、登校してくるまで何も気付かなかったのか?」
綾時「それが……」
>その場にいた4人は顔を見合わせている。
麻希「みんな気付いたら学校にいたみたいなの。どうやってここまで来たのかっていう記憶がなくて……」
綾時「そう。僕は何故か学校の校門付近にいて」
あかり「私は美術室」
淳「僕は渡り廊下の花壇の前だね」
麻希「私がいたのは保健室だった」
>どうやら彼女たちもポロニアンモールにいた藤堂たちと同じような状況だった事がわかった。
>……
月光館学園 玄関
>足音を立てないようにしながら歩みを進める。
>どうやら今のところ目に見える範囲も普段の学校にかわりないようだ。
>するとそこで、購買付近に何かの気配を感じた。
>初めは考えられる可能性として象徴化の棺かと思ったが……どうやら違うようだ。
>1、2、3、……全部で4人。間違いなく人の姿が確認出来る。
>そのうちの一人が、こちらが声をかける前に手を大きく振って呼びかけてきた。
麻希「鳴上くん!」
鳴上「園村先生!? と……」
綾時「あ……」
淳「君たち、無事だったかい!?」
あかり「メティスちゃん! ラビリスちゃん!」
>4人のうちのひとり、あかりがメティスとラビリスの方へ駆け寄ってきて飛びついた。
メティス「あかりさん!? まさか貴女までこんな空間にいるなんて……」
ラビリス「怪我とかしてへんか?」
あかり「うん、それは大丈夫。でも……学校がなんか変なんだよ!」
綾時「僕たち以外に人らしい人がいなくてね。建物自体に異常はないみたいなんだけど」
淳「教室も体育館も職員室も妙な棺みたいな物があるだけなんだ」
>綾時もあかりも橿原もすっかり憔悴してしまっている。
麻希「でもさっき桐条さんから電話をもらってね。学校にいるって言ったら、鳴上くんたちがここに向かっている筈だから待っていてくれって言われたからここに待機していたの」
鳴上「そうだったんですか」
鳴上「あの、先生たちは今日普通に学校へ出勤してきたら既にこんな事になっていたんですか?」
鳴上「望月やあかりも、登校してくるまで何も気付かなかったのか?」
綾時「それが……」
>その場にいた4人は顔を見合わせている。
麻希「みんな気付いたら学校にいたみたいなの。どうやってここまで来たのかっていう記憶がなくて……」
綾時「そう。僕は何故か学校の校門付近にいて」
あかり「私は美術室」
淳「僕は渡り廊下の花壇の前だね」
麻希「私がいたのは保健室だった」
>どうやら彼女たちもポロニアンモールにいた藤堂たちと同じような状況だった事がわかった。
854: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:05:00.37:Wuetnu05o (3/11)
鳴上「……これ、どういう事なんでしょうね」
藤堂「……」
鳴上「藤堂さん?」
>さっきからずっと黙っている藤堂に声をかけてみたのだが返事がない。
>じっと何かを見つめているようだが……その視線の先にいたのは麻希だった。
>それに麻希も気が付いたのか、彼と視線を合わせる。
麻希「……え? 藤堂、ってまさか」
藤堂「園村……園村だよな?」
麻希「えっ! うそ! やっぱり藤堂くん!?」
麻希「やだ私、今まで気付かなかった……なんで鳴上くんたちと一緒にいるの!?」
藤堂「まあちょっとした知り合いでさ。本当に久しぶりだな、園村」
麻希「うん、久しぶり。まさかこんな時にこんな形で再会しちゃうなんてね」
鳴上「二人は知り合いだったのか」
綾時「へえ、なんだか運命の再会って感じじゃない?」
あかり「ね。こんな状況下で昔から知り合った男女が再び巡り合うなんてね」
ラビリス「ちょっと素敵やわあ」
>綾時たちはなんだか面白そうに小声で囁きあっている。……呑気なものだ。
藤堂「俺たち高校時代の同級生なんだよ」
鳴上「なるほど、それじゃあ……」
>麻希が以前言っていた彼女を支えてくれた友達のひとりがおそらく藤堂なのだろう。
>彼らの間にもきっとかけがえのない絆があるに違いない。
>懐かしそうに話をしている二人の様子を見ただけでもそれが感じられた。
Pipipipipi……
>その僅かに和やかになった雰囲気に割って入るように突然携帯が鳴り響いた。
>どうやら自分の携帯に着信がきているようだ。
>画面には『桐条美鶴』と表示されている。
>急いで通話ボタンを押した。
鳴上「もしもし」
美鶴『鳴上か。そちらの首尾はどうだ。学校の方へは着いたのか? どうやら園村先生と他数名の人間がいるらしいんだが』
鳴上「はい。それなんですが……」
>美鶴に麻希たちと合流した事と学校自体に異常はなさそうな事を伝えた。
美鶴『……そうか。ご苦労だった』
美鶴『こちらはもう寮の方へ戻っている。周防さんを始めとした5人の無事も確認できた』
鳴上「桐条さんたちの方は誰か人を発見したりはしなかったんですか?」
美鶴『ああ。人の姿は見つからなかったな。近くにいる可能性のある私が知る我々以外のペルソナ使い達の何人かにも連絡を取ろうとしてみたが……無駄だった」
美鶴『だがかわりに、長鳴神社で以前世話になった妖精に出会ったよ』
鳴上「……これ、どういう事なんでしょうね」
藤堂「……」
鳴上「藤堂さん?」
>さっきからずっと黙っている藤堂に声をかけてみたのだが返事がない。
>じっと何かを見つめているようだが……その視線の先にいたのは麻希だった。
>それに麻希も気が付いたのか、彼と視線を合わせる。
麻希「……え? 藤堂、ってまさか」
藤堂「園村……園村だよな?」
麻希「えっ! うそ! やっぱり藤堂くん!?」
麻希「やだ私、今まで気付かなかった……なんで鳴上くんたちと一緒にいるの!?」
藤堂「まあちょっとした知り合いでさ。本当に久しぶりだな、園村」
麻希「うん、久しぶり。まさかこんな時にこんな形で再会しちゃうなんてね」
鳴上「二人は知り合いだったのか」
綾時「へえ、なんだか運命の再会って感じじゃない?」
あかり「ね。こんな状況下で昔から知り合った男女が再び巡り合うなんてね」
ラビリス「ちょっと素敵やわあ」
>綾時たちはなんだか面白そうに小声で囁きあっている。……呑気なものだ。
藤堂「俺たち高校時代の同級生なんだよ」
鳴上「なるほど、それじゃあ……」
>麻希が以前言っていた彼女を支えてくれた友達のひとりがおそらく藤堂なのだろう。
>彼らの間にもきっとかけがえのない絆があるに違いない。
>懐かしそうに話をしている二人の様子を見ただけでもそれが感じられた。
Pipipipipi……
>その僅かに和やかになった雰囲気に割って入るように突然携帯が鳴り響いた。
>どうやら自分の携帯に着信がきているようだ。
>画面には『桐条美鶴』と表示されている。
>急いで通話ボタンを押した。
鳴上「もしもし」
美鶴『鳴上か。そちらの首尾はどうだ。学校の方へは着いたのか? どうやら園村先生と他数名の人間がいるらしいんだが』
鳴上「はい。それなんですが……」
>美鶴に麻希たちと合流した事と学校自体に異常はなさそうな事を伝えた。
美鶴『……そうか。ご苦労だった』
美鶴『こちらはもう寮の方へ戻っている。周防さんを始めとした5人の無事も確認できた』
鳴上「桐条さんたちの方は誰か人を発見したりはしなかったんですか?」
美鶴『ああ。人の姿は見つからなかったな。近くにいる可能性のある私が知る我々以外のペルソナ使い達の何人かにも連絡を取ろうとしてみたが……無駄だった」
美鶴『だがかわりに、長鳴神社で以前世話になった妖精に出会ったよ』
855: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:06:24.67:Wuetnu05o (4/11)
鳴上「トリッシュですか?」
美鶴『そうだ。何かあった時のためにあの回復の泉へ寮から直接行けるようにして欲しいと頼んだら快く引き受けてくれたよ』
鳴上「そうですか……」
>でもおそらく何時ものようにタダで回復はしてくれないのだろう……
>しかしそれでも、トリッシュの協力が得られた事は良い事だった。
>多少金はかかるとしても治療に困るような事はなくなった訳だ。
美鶴『今、そちらに周防さんが車で向かっている。もう特に何も無いようならば、彼と一緒にこちらへ戻ってくるといい』
鳴上「わかりました。それじゃあ、また後で」
>美鶴との通話を終了し、携帯をしまった。
>そして、この場にいる全員に迎えがくる事を伝える。
淳「鳴上くんたちのいる学生寮へ行くのかい?」
鳴上「はい。この学校よりは安全な場所の筈ですよ。他に見つかった人たちもいますし」
綾時「じゃあ、これからの事はそこでみんなと決めるって事に?」
鳴上「そうなるだろうな」
あかり「寮ってどんな感じなの?」
ラビリス「ちょっと古いけどそれなりに快適やで」
メティス「この人数でも生活に困るという事もないと思います。空いてる部屋はまだあるし、寮というよりもホテルっぽい感じもしますからね、あの場所」
>周防が着くまでの間、大人しくその場で固まって待つ事にした。
>……とその時、視界の端に一瞬白い影を見たような気がした。
鳴上「……?」
>玄関の方から曲がって職員室へ続く廊下の方へ何かが横切ったような気がしたのだが……
>購買の前から離れ、そちらへ行ってみる事にした。
鳴上「あれ?」
>しかし職員室前の廊下にはさっき見たような影らしきものは何もない。
>ただ、何故か図書室前の廊下に一冊の本が落ちているのが確認出来た。
>拾い上げ表紙を見てみる。
>タイトルらしきものは見当たらないのだが、筆者の名なのか『ハインリヒ・ハイネ』とだけ書かれてある。
>ぱらりと捲ってみたものの中身は真っ白い頁が続いてるだけのようだ。
>と思いきや、真ん中あたりにしおりが挟まっていたようで、開いてみるとその頁だけ何か文章が書かれているようだった。
>ざっと見たところ詩のように思える文なのだが……
淳「どうしたの、鳴上くん。あまりみんなから離れたらダメだよ」
鳴上「……あ。すみません」
>背後から聞こえてきた声に驚いて本を閉じた。
鳴上「トリッシュですか?」
美鶴『そうだ。何かあった時のためにあの回復の泉へ寮から直接行けるようにして欲しいと頼んだら快く引き受けてくれたよ』
鳴上「そうですか……」
>でもおそらく何時ものようにタダで回復はしてくれないのだろう……
>しかしそれでも、トリッシュの協力が得られた事は良い事だった。
>多少金はかかるとしても治療に困るような事はなくなった訳だ。
美鶴『今、そちらに周防さんが車で向かっている。もう特に何も無いようならば、彼と一緒にこちらへ戻ってくるといい』
鳴上「わかりました。それじゃあ、また後で」
>美鶴との通話を終了し、携帯をしまった。
>そして、この場にいる全員に迎えがくる事を伝える。
淳「鳴上くんたちのいる学生寮へ行くのかい?」
鳴上「はい。この学校よりは安全な場所の筈ですよ。他に見つかった人たちもいますし」
綾時「じゃあ、これからの事はそこでみんなと決めるって事に?」
鳴上「そうなるだろうな」
あかり「寮ってどんな感じなの?」
ラビリス「ちょっと古いけどそれなりに快適やで」
メティス「この人数でも生活に困るという事もないと思います。空いてる部屋はまだあるし、寮というよりもホテルっぽい感じもしますからね、あの場所」
>周防が着くまでの間、大人しくその場で固まって待つ事にした。
>……とその時、視界の端に一瞬白い影を見たような気がした。
鳴上「……?」
>玄関の方から曲がって職員室へ続く廊下の方へ何かが横切ったような気がしたのだが……
>購買の前から離れ、そちらへ行ってみる事にした。
鳴上「あれ?」
>しかし職員室前の廊下にはさっき見たような影らしきものは何もない。
>ただ、何故か図書室前の廊下に一冊の本が落ちているのが確認出来た。
>拾い上げ表紙を見てみる。
>タイトルらしきものは見当たらないのだが、筆者の名なのか『ハインリヒ・ハイネ』とだけ書かれてある。
>ぱらりと捲ってみたものの中身は真っ白い頁が続いてるだけのようだ。
>と思いきや、真ん中あたりにしおりが挟まっていたようで、開いてみるとその頁だけ何か文章が書かれているようだった。
>ざっと見たところ詩のように思える文なのだが……
淳「どうしたの、鳴上くん。あまりみんなから離れたらダメだよ」
鳴上「……あ。すみません」
>背後から聞こえてきた声に驚いて本を閉じた。
856: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:08:22.81:Wuetnu05o (5/11)
淳「その本は?」
鳴上「ここに落ちていたんですけど」
淳「え? さっきそんな物ここにあったかな……」
淳「とにかく、迎えが来るまでみんなと一緒にいよう」
鳴上「はい」
鳴上「……」
>結局、さっき見たものは何かの勘違いだったのだろうか。
>疑問も残るが、本を持ったまま皆のいる場所へ戻る事にした。
>……
学生寮
>周防に二度車を往復してもらい、学校にいた人間も全員学生寮に集まる事となった。
>周防はその二度目の時に交番から武器と防具もあるだけ回収してきたようで中へ運び込むのを手伝った。
>一階のラウンジには先に寮へ集まった者たちが勢揃いしている。
>普段この場で見慣れない人間がこうも大勢集まっているのを見るのはなんだか不思議な気分だ。
>そして他に変わった事といえば、学生寮入口のカウンター奥にある扉が何時もと違いうっすらと青白く光っているという事だった。
>今朝寮から出た時はこうではなかったのだが……
>その扉がガチャリと半分開く。
>急な事で一瞬驚いたが、内側から顔を出したのは……トリッシュだった。
>ひらひらとこちらに手を振るとすぐに顔を引っ込めてしまったが、どうやらトリッシュの泉が繋がっているのがあの扉という訳のようだ。
『ジュネスは毎日がお客様感謝デー! 来て、見て、触れてください!』
『エブリデイ ヤングライフ ジュ・ネ・ス~♪』
鳴上「!?」
>突然聞き覚えのあるフレーズが流れ始めた。
>誰かがラウンジにあるテレビを点けたようだ。
藤堂「ふーん、テレビも映るのか」
『ジュネスは毎日がお客様感謝デー! 来て、見て、触れてください!』
『エブリデイ ヤングライフ ジュ・ネ・ス~♪』
『ジュネスは毎日がお客様感謝デー! 来て、見て、触れてください!』
『エブリデイ ヤングライフ ジュ・ネ・ス~♪』
『ジュネスは毎日がお客様感謝デー! ……』
>しかし、ただ延々と狂ったようにジュネスのCMが流れ続けているだけのようだ……
藤堂「……」
『ジュネスは毎日がお客様感謝デー! 来て、見て、触れてください!』
藤堂「エブリデイ ヤングライフ ジュ・ネ・ス~♪」
>藤堂のなんともいえない歌声がテレビの音と重なった……
淳「その本は?」
鳴上「ここに落ちていたんですけど」
淳「え? さっきそんな物ここにあったかな……」
淳「とにかく、迎えが来るまでみんなと一緒にいよう」
鳴上「はい」
鳴上「……」
>結局、さっき見たものは何かの勘違いだったのだろうか。
>疑問も残るが、本を持ったまま皆のいる場所へ戻る事にした。
>……
学生寮
>周防に二度車を往復してもらい、学校にいた人間も全員学生寮に集まる事となった。
>周防はその二度目の時に交番から武器と防具もあるだけ回収してきたようで中へ運び込むのを手伝った。
>一階のラウンジには先に寮へ集まった者たちが勢揃いしている。
>普段この場で見慣れない人間がこうも大勢集まっているのを見るのはなんだか不思議な気分だ。
>そして他に変わった事といえば、学生寮入口のカウンター奥にある扉が何時もと違いうっすらと青白く光っているという事だった。
>今朝寮から出た時はこうではなかったのだが……
>その扉がガチャリと半分開く。
>急な事で一瞬驚いたが、内側から顔を出したのは……トリッシュだった。
>ひらひらとこちらに手を振るとすぐに顔を引っ込めてしまったが、どうやらトリッシュの泉が繋がっているのがあの扉という訳のようだ。
『ジュネスは毎日がお客様感謝デー! 来て、見て、触れてください!』
『エブリデイ ヤングライフ ジュ・ネ・ス~♪』
鳴上「!?」
>突然聞き覚えのあるフレーズが流れ始めた。
>誰かがラウンジにあるテレビを点けたようだ。
藤堂「ふーん、テレビも映るのか」
『ジュネスは毎日がお客様感謝デー! 来て、見て、触れてください!』
『エブリデイ ヤングライフ ジュ・ネ・ス~♪』
『ジュネスは毎日がお客様感謝デー! 来て、見て、触れてください!』
『エブリデイ ヤングライフ ジュ・ネ・ス~♪』
『ジュネスは毎日がお客様感謝デー! ……』
>しかし、ただ延々と狂ったようにジュネスのCMが流れ続けているだけのようだ……
藤堂「……」
『ジュネスは毎日がお客様感謝デー! 来て、見て、触れてください!』
藤堂「エブリデイ ヤングライフ ジュ・ネ・ス~♪」
>藤堂のなんともいえない歌声がテレビの音と重なった……
857: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:10:11.37:Wuetnu05o (6/11)
麻希「……。藤堂くん、なんていうかその、……相変わらずだね」
鳴上(……やっぱり菜々子の歌が一番だな)
藤堂「?」
>ジュネスのCMを眺めている藤堂はさて置き、改めてこの寮にいる人間の様子を確認してみる事にした。
>こんな異様な状況下に置かれながらも、今は皆それほど慌てている様子もないようだったが……
>ただその中で、ヴィンセントとコロマルが際立って大人しすぎるように思えた。
>意気消沈、とでも言った方がいいのか。
>周防から聞いた話だと、ヴィンセントを寮へ連れてくる際その前に一度彼の頼みでヴィンセントの自宅に寄ってみたらしいのだが、概ねそれが原因らしい。
>家族の安否をその目で確認したかったようだが、彼の家には彼の奥さんも娘もおらず棺が二つあっただけなのだという……
>ラウンジ奥にあるカウンター席に腰をかけてため息を吐く姿がなんとも痛々しく見えた。
>そして、コロマルはというと……
ラビリス「パスカルの姿がどこにも見当たらないんやて」
鳴上「やっぱり象徴化していたのか」
メティス「いえ、それすらも見当たらないようなんです」
鳴上「なんだって?」
ラビリス「あちこち探したけどそれっぽいのがなくて。それでコロのヤツ、あんなに落ち込んでしもうて……」
コロマル「クゥーン……」
>コロマルは身を丸めるようにして伏せ、弱々しく鳴いている。
>パスカルは何処へ行ってしまったのだろう……
美鶴「みんな、少しいいか」
>美鶴に声をかけられ、階段下に特別課外活動部のメンバーだけが集められた。
美鶴「とりあえず今出来る限りの事はした状態だ。今日はこのまま全員寮に待機してもらって、0時を迎えるのを待とうと思うのだが異論はないだろうか」
鳴上「俺はそれでいいと思います」
アイギス「今、闇雲に動くのは得策ではないでしょうからね」
メティス「これ以上何も出来そうにないなら、……今は仕方ないですね」
ラビリス「でもなんで0時やの?」
美鶴「このまま0時になればもしかしたら影時間から抜け出せるという事もあるかもしれないと思ったからだ」
天田「そうか! 08/32の意味は08/31と09/01の間の時間……一日と一日の間にある存在しない筈の時間」
天田「つまり、この丸一日が今までの影時間と同意義なのかもって事ですね」
美鶴「そうだ。もしそうなら、なんとも長い影時間だな」
鳴上「どういう事ですか?」
美鶴「簡単に言えば今まで体験した我々が知っている影時間は、0時を迎えた後に数時間ほどだけあるようなごく限られた間だけのものだったという事だ」
美鶴「その間に陽が昇ってしまうというような事も今まではなかったんだよ」
天田「こんなに長いのは初めてですよね」
鳴上「そうだったのか……」
>これも美鶴たちがこの影時間に不審な様子を見せていた原因のひとつなのだろう。
麻希「……。藤堂くん、なんていうかその、……相変わらずだね」
鳴上(……やっぱり菜々子の歌が一番だな)
藤堂「?」
>ジュネスのCMを眺めている藤堂はさて置き、改めてこの寮にいる人間の様子を確認してみる事にした。
>こんな異様な状況下に置かれながらも、今は皆それほど慌てている様子もないようだったが……
>ただその中で、ヴィンセントとコロマルが際立って大人しすぎるように思えた。
>意気消沈、とでも言った方がいいのか。
>周防から聞いた話だと、ヴィンセントを寮へ連れてくる際その前に一度彼の頼みでヴィンセントの自宅に寄ってみたらしいのだが、概ねそれが原因らしい。
>家族の安否をその目で確認したかったようだが、彼の家には彼の奥さんも娘もおらず棺が二つあっただけなのだという……
>ラウンジ奥にあるカウンター席に腰をかけてため息を吐く姿がなんとも痛々しく見えた。
>そして、コロマルはというと……
ラビリス「パスカルの姿がどこにも見当たらないんやて」
鳴上「やっぱり象徴化していたのか」
メティス「いえ、それすらも見当たらないようなんです」
鳴上「なんだって?」
ラビリス「あちこち探したけどそれっぽいのがなくて。それでコロのヤツ、あんなに落ち込んでしもうて……」
コロマル「クゥーン……」
>コロマルは身を丸めるようにして伏せ、弱々しく鳴いている。
>パスカルは何処へ行ってしまったのだろう……
美鶴「みんな、少しいいか」
>美鶴に声をかけられ、階段下に特別課外活動部のメンバーだけが集められた。
美鶴「とりあえず今出来る限りの事はした状態だ。今日はこのまま全員寮に待機してもらって、0時を迎えるのを待とうと思うのだが異論はないだろうか」
鳴上「俺はそれでいいと思います」
アイギス「今、闇雲に動くのは得策ではないでしょうからね」
メティス「これ以上何も出来そうにないなら、……今は仕方ないですね」
ラビリス「でもなんで0時やの?」
美鶴「このまま0時になればもしかしたら影時間から抜け出せるという事もあるかもしれないと思ったからだ」
天田「そうか! 08/32の意味は08/31と09/01の間の時間……一日と一日の間にある存在しない筈の時間」
天田「つまり、この丸一日が今までの影時間と同意義なのかもって事ですね」
美鶴「そうだ。もしそうなら、なんとも長い影時間だな」
鳴上「どういう事ですか?」
美鶴「簡単に言えば今まで体験した我々が知っている影時間は、0時を迎えた後に数時間ほどだけあるようなごく限られた間だけのものだったという事だ」
美鶴「その間に陽が昇ってしまうというような事も今まではなかったんだよ」
天田「こんなに長いのは初めてですよね」
鳴上「そうだったのか……」
>これも美鶴たちがこの影時間に不審な様子を見せていた原因のひとつなのだろう。
858: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:13:16.33:Wuetnu05o (7/11)
アイギス「悠さんは体調を崩したりはしていませんか?」
鳴上「え? いや、特には」
天田「あっちにいるみなさんも、とりあえず大丈夫そうだけど……影時間がこれ以上長く続くのは不安ですね。美鶴さんの予想通りになって欲しいんですけど」
美鶴「私たちでも影時間の中で活動を続けていたら堪えるというのに、一般の彼らからしたら体力の消耗も一段と激しいだろうからな」
鳴上「そういえば、ここには結構ペルソナ使いじゃない人たちが揃っていますよね」
鳴上「影時間の間はペルソナ使いじゃないと活動出来ないって話は一体……」
美鶴「ペルソナを扱えずとも影時間に適応出来る人間も少なくはあるがいるにはいるようだ。あるいは、ペルソナ使いとしての資質はあるがまだ目覚めていないだけという可能性も……」
美鶴「君の同級生の星あかりくんなんかも、そうなのではないかというような話をした事があったじゃないか」
鳴上「ああ……そんな事もありましたね」
メティス「……じゃあ、やっぱり」
鳴上「ん、なんだ?」
メティス「鳴上さん、覚えていますか? 私達が初めて辰巳東交番を訪れた時に、私が言った事」
メティス「周防さんに私達と近い何かを感じとった、っていう話です」
鳴上「! メティスはあの時から既にそうじゃないかと思ってたって訳か?」
鳴上「周防さんも、もしかしたらペルソナを使えるのかもって」
メティス「はい。美鶴さんの今の話を聞いてやっぱり私が感じた事は間違いじゃなかったのかもって、そう思いました」
鳴上「……」
>またとんでもない仮説が出てきたものだ。
諒「だがそれは可能性の話であって、今あそこにいる彼らが一般人である事に変わりはない訳だろう? その一般人に今の事をどう説明するつもりだ」
美鶴「……影時間の事については公表出来ないな。あくまで非常事態に放り込まれた者同士協力していくという事でなんとか話を合わせていくしかない」
美鶴「しかし表面上はそうでも、彼らの命を預かっているのは私たちも同然という事だ。心して欲しい」
美鶴「これから何が起こったとしても、彼らは私たちが守り抜くぞ」
>美鶴の言葉に皆が静かに強く頷いた。
>『0 愚者 特別課外活動部』のランクが7になった
>美鶴の言葉に従って、このまま0時になるまで様子見をする事になった。
>……
学生寮 ラウンジ
>外は陽が落ちて、真っ暗になってからもう大分経っている。
>寮に用意出来るもので簡単に食事を済ませた後は、一階から離れない事を条件に各自で自由な時間を過ごすような形となった。
>……あれから気になるような事は特に何も起こっていない。
>そういう事もあり、緊張感もすっかりなくなってしまったようだった。
>メティス、ラビリス、あかり、綾時に加えてアイギスなんかは一緒にトランプで遊んでいるし、雑談している者もいれば仮眠をとっている者もいる。
>パオフゥなどはいつ用意したのか彼の物と思わしきノートPCのキーボードにずっと指を叩き込んでいた。
>ネットも繋がっているのだろうか……?
>……
>0時までまだ少し時間があるが、さてどうしよう。
アイギス「悠さんは体調を崩したりはしていませんか?」
鳴上「え? いや、特には」
天田「あっちにいるみなさんも、とりあえず大丈夫そうだけど……影時間がこれ以上長く続くのは不安ですね。美鶴さんの予想通りになって欲しいんですけど」
美鶴「私たちでも影時間の中で活動を続けていたら堪えるというのに、一般の彼らからしたら体力の消耗も一段と激しいだろうからな」
鳴上「そういえば、ここには結構ペルソナ使いじゃない人たちが揃っていますよね」
鳴上「影時間の間はペルソナ使いじゃないと活動出来ないって話は一体……」
美鶴「ペルソナを扱えずとも影時間に適応出来る人間も少なくはあるがいるにはいるようだ。あるいは、ペルソナ使いとしての資質はあるがまだ目覚めていないだけという可能性も……」
美鶴「君の同級生の星あかりくんなんかも、そうなのではないかというような話をした事があったじゃないか」
鳴上「ああ……そんな事もありましたね」
メティス「……じゃあ、やっぱり」
鳴上「ん、なんだ?」
メティス「鳴上さん、覚えていますか? 私達が初めて辰巳東交番を訪れた時に、私が言った事」
メティス「周防さんに私達と近い何かを感じとった、っていう話です」
鳴上「! メティスはあの時から既にそうじゃないかと思ってたって訳か?」
鳴上「周防さんも、もしかしたらペルソナを使えるのかもって」
メティス「はい。美鶴さんの今の話を聞いてやっぱり私が感じた事は間違いじゃなかったのかもって、そう思いました」
鳴上「……」
>またとんでもない仮説が出てきたものだ。
諒「だがそれは可能性の話であって、今あそこにいる彼らが一般人である事に変わりはない訳だろう? その一般人に今の事をどう説明するつもりだ」
美鶴「……影時間の事については公表出来ないな。あくまで非常事態に放り込まれた者同士協力していくという事でなんとか話を合わせていくしかない」
美鶴「しかし表面上はそうでも、彼らの命を預かっているのは私たちも同然という事だ。心して欲しい」
美鶴「これから何が起こったとしても、彼らは私たちが守り抜くぞ」
>美鶴の言葉に皆が静かに強く頷いた。
>『0 愚者 特別課外活動部』のランクが7になった
>美鶴の言葉に従って、このまま0時になるまで様子見をする事になった。
>……
学生寮 ラウンジ
>外は陽が落ちて、真っ暗になってからもう大分経っている。
>寮に用意出来るもので簡単に食事を済ませた後は、一階から離れない事を条件に各自で自由な時間を過ごすような形となった。
>……あれから気になるような事は特に何も起こっていない。
>そういう事もあり、緊張感もすっかりなくなってしまったようだった。
>メティス、ラビリス、あかり、綾時に加えてアイギスなんかは一緒にトランプで遊んでいるし、雑談している者もいれば仮眠をとっている者もいる。
>パオフゥなどはいつ用意したのか彼の物と思わしきノートPCのキーボードにずっと指を叩き込んでいた。
>ネットも繋がっているのだろうか……?
>……
>0時までまだ少し時間があるが、さてどうしよう。
859: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:14:46.34:Wuetnu05o (8/11)
>そういえば、学校で拾ってきた本が気になっていた。
>改めて目を通してみる事にしようか。
>手に取って、しおりが挟まっていた頁を開いてみた。
>……そこにはこう記されている。
静けき夜 巷は眠る
この家に 我が恋人は かつて
住み居たりし
彼の人はこの街すでに去りませど
そが家はいまもここに残りたり
一人の男 そこに立ち
高きを見やり
手は大いなる苦悩と闘うと見ゆ
その姿見て 我が心おののきたり
月影の照らすは
我が 己の姿
汝 我が分身よ 青ざめし男よ
などて 汝 去りし日の
幾夜をここに 悩み過ごせし
我が悩み まねびかえすや
達哉「その詩は……」
>近くにいた周防がその頁を目にしたのか、ふと呟いた。
鳴上「この詩、知ってるんですか? タイトルは書いてないみたいなんですけど」
達哉「……」
達哉「ハイネのドッペルゲンガー、だったか。確かそんなだったような気がする」
達哉「こういうのは先生の方が詳しいんじゃないのか?」
>周防は隣にいた橿原にそう投げかける。
淳「うーん、僕は世界史が専門教科だからなあ」
淳「でも周防くんはなんでその詩、知ってたの? 昔読んだ事があったとか?」
達哉「……なんでだろうな」
>周防と橿原はこんな調子でさっきからずっと雑談をしている。
>どうやら彼らは同い年な上に話をしているうちに昔住んでいた場所が近かった事がわかったようで、すっかり意気投合している様子だった。
鳴上(ドッペルゲンガー、か。なんだかこの詩……)
美鶴「……」
美鶴「もうすぐ時間、か」
>そういえば、学校で拾ってきた本が気になっていた。
>改めて目を通してみる事にしようか。
>手に取って、しおりが挟まっていた頁を開いてみた。
>……そこにはこう記されている。
静けき夜 巷は眠る
この家に 我が恋人は かつて
住み居たりし
彼の人はこの街すでに去りませど
そが家はいまもここに残りたり
一人の男 そこに立ち
高きを見やり
手は大いなる苦悩と闘うと見ゆ
その姿見て 我が心おののきたり
月影の照らすは
我が 己の姿
汝 我が分身よ 青ざめし男よ
などて 汝 去りし日の
幾夜をここに 悩み過ごせし
我が悩み まねびかえすや
達哉「その詩は……」
>近くにいた周防がその頁を目にしたのか、ふと呟いた。
鳴上「この詩、知ってるんですか? タイトルは書いてないみたいなんですけど」
達哉「……」
達哉「ハイネのドッペルゲンガー、だったか。確かそんなだったような気がする」
達哉「こういうのは先生の方が詳しいんじゃないのか?」
>周防は隣にいた橿原にそう投げかける。
淳「うーん、僕は世界史が専門教科だからなあ」
淳「でも周防くんはなんでその詩、知ってたの? 昔読んだ事があったとか?」
達哉「……なんでだろうな」
>周防と橿原はこんな調子でさっきからずっと雑談をしている。
>どうやら彼らは同い年な上に話をしているうちに昔住んでいた場所が近かった事がわかったようで、すっかり意気投合している様子だった。
鳴上(ドッペルゲンガー、か。なんだかこの詩……)
美鶴「……」
美鶴「もうすぐ時間、か」
860: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:16:29.02:Wuetnu05o (9/11)
>窓辺に立ち、外の様子をずっと眺めていた美鶴が小さく呟いた。
>時刻はまもなく0時になろうとしている……
23:59→0:00
>…
>……
>………
>……おそるおそる、携帯のディスプレイを覗き込む。
鳴上「……!」
鳴上「08/32のまま……!?」
美鶴「そんな、馬鹿な!」
>時刻は確かに0時を過ぎているのに、日付は変わらず08/32……
>それはまたおかしな一日が繰り返し始まったという事を意味しているも同然だった。
――ドクンッ
鳴上「ッ……!?」
パオフゥ「!!」
麻希「えっ……!?」
藤堂「なんだ、今の感じは……!」
>今一瞬……身体の中で大きく鼓動が波打つのを感じたような気がする。
>藤堂と麻希、それからパオフゥもそれを感じ取った様子だったが、他の人間は何も気付いていないようだった。
>この感覚は……?
メティス「鳴上さん?」
メティス「……、ッ!?」
メティス「鳴上さん、後ろっ……!」
鳴上「え……?」
>妙な苦しさに胸元を掴み、額に脂汗が浮いているのを感じながらメティスの言葉を聞いて反射的に振り返る。
鳴上「なっ……」
鳴上「誰だ、お前は……!!」
>何時の間にか……自分の背後に全く見知らぬ人物がぬらりと不気味に佇んでいる。
>気配などさっきまで微塵にも感じなかったのに、これは一体……!?
?「……」
>窓辺に立ち、外の様子をずっと眺めていた美鶴が小さく呟いた。
>時刻はまもなく0時になろうとしている……
23:59→0:00
>…
>……
>………
>……おそるおそる、携帯のディスプレイを覗き込む。
鳴上「……!」
鳴上「08/32のまま……!?」
美鶴「そんな、馬鹿な!」
>時刻は確かに0時を過ぎているのに、日付は変わらず08/32……
>それはまたおかしな一日が繰り返し始まったという事を意味しているも同然だった。
――ドクンッ
鳴上「ッ……!?」
パオフゥ「!!」
麻希「えっ……!?」
藤堂「なんだ、今の感じは……!」
>今一瞬……身体の中で大きく鼓動が波打つのを感じたような気がする。
>藤堂と麻希、それからパオフゥもそれを感じ取った様子だったが、他の人間は何も気付いていないようだった。
>この感覚は……?
メティス「鳴上さん?」
メティス「……、ッ!?」
メティス「鳴上さん、後ろっ……!」
鳴上「え……?」
>妙な苦しさに胸元を掴み、額に脂汗が浮いているのを感じながらメティスの言葉を聞いて反射的に振り返る。
鳴上「なっ……」
鳴上「誰だ、お前は……!!」
>何時の間にか……自分の背後に全く見知らぬ人物がぬらりと不気味に佇んでいる。
>気配などさっきまで微塵にも感じなかったのに、これは一体……!?
?「……」
861: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:18:04.42:Wuetnu05o (10/11)
>不気味な人物は佇んだまま一言も喋らない。
>……その出で立ちはあまりにも面妖だった。
>男なのか、女なのか、若者なのか、老人なのかすらもわからない。
>何故ならその人物の顔は、紙袋を被っていてその下に隠れていたからだ。
>そしてその紙袋には顔を隠す変わりなのかふざけたような表情が描かれている。
>それが一層不気味さを醸し出している……
>まだ暑さ残る季節にはそぐわない、トレンチコートにがっちり包まれているその身体が……わずかに揺れた。
?「……フ、ヒヒッ」
?「ハハッ……ヒャアハハハハハハッ!!」
>狂ったような笑い声が紙袋の下から溢れ出している。
>そうしてひとしきり笑い終えた後、その怪人物は人差し指を自分の眼前に突きつけてくるのだった。
>……その動きに何故か咄嗟の反応が出来ず、体は固まったまま動く事もままならなかった。
?「会いたかったぜェ、鳴上悠……」
鳴上「ッ……」
メティス「鳴上さん!」
達哉「くッ……! 鳴上ッ、伏せろ!」
>一番近くにいた周防が手近にあった椅子を持ち上げて紙袋の人物に叩きつけようとする。
>しかし紙袋はひらりとそれをかわし、人間とは思えない跳躍を見せてから再び地へと降り立った。
鳴上「なんだよお前は……一体誰だッ!」
?「俺か? 俺はなあ……」
?「邪魔者を消しにやってきたんだよ」
>不気味な人物は佇んだまま一言も喋らない。
>……その出で立ちはあまりにも面妖だった。
>男なのか、女なのか、若者なのか、老人なのかすらもわからない。
>何故ならその人物の顔は、紙袋を被っていてその下に隠れていたからだ。
>そしてその紙袋には顔を隠す変わりなのかふざけたような表情が描かれている。
>それが一層不気味さを醸し出している……
>まだ暑さ残る季節にはそぐわない、トレンチコートにがっちり包まれているその身体が……わずかに揺れた。
?「……フ、ヒヒッ」
?「ハハッ……ヒャアハハハハハハッ!!」
>狂ったような笑い声が紙袋の下から溢れ出している。
>そうしてひとしきり笑い終えた後、その怪人物は人差し指を自分の眼前に突きつけてくるのだった。
>……その動きに何故か咄嗟の反応が出来ず、体は固まったまま動く事もままならなかった。
?「会いたかったぜェ、鳴上悠……」
鳴上「ッ……」
メティス「鳴上さん!」
達哉「くッ……! 鳴上ッ、伏せろ!」
>一番近くにいた周防が手近にあった椅子を持ち上げて紙袋の人物に叩きつけようとする。
>しかし紙袋はひらりとそれをかわし、人間とは思えない跳躍を見せてから再び地へと降り立った。
鳴上「なんだよお前は……一体誰だッ!」
?「俺か? 俺はなあ……」
?「邪魔者を消しにやってきたんだよ」
862: ◆Hw7XKfELws:2012/08/11(土) 00:18:38.77:Wuetnu05o (11/11)
終わります。
また次回。
終わります。
また次回。
863:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/08/11(土) 00:50:37.63:Q5hcFmpAO (1/1)
乙
乙
864:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空):2012/08/11(土) 00:52:54.98:nelrXT9ko (1/1)
乙
一体何者なんだ…
乙
一体何者なんだ…
865:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/11(土) 01:35:22.63:ycgIQ/po0 (1/1)
ほんとに誰だよ!!??
この>>1なら伏線は貼ってありそうだな・・
ほんとに誰だよ!!??
この>>1なら伏線は貼ってありそうだな・・
866:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/08/11(土) 07:58:37.02:/KoXiHewo (1/1)
乙、一気にペルソナらしくなってきた
乙、一気にペルソナらしくなってきた
867:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/08/11(土) 08:01:59.06:Psp84InSo (1/1)
まさか電波専門なのか?
次回も待ち遠しいぜ
まさか電波専門なのか?
次回も待ち遠しいぜ
868:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/11(土) 14:24:00.14:ooKoe+Fto (1/1)
まさかのファウスト先生の参戦かー
まさかのファウスト先生の参戦かー
869:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/08/11(土) 15:29:31.29:3MqSXaaio (1/1)
>>868
ゲームが違うwwwwww
確かに戦い方がクマに似てるけど
>>868
ゲームが違うwwwwww
確かに戦い方がクマに似てるけど
870:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/08/11(土) 16:57:39.23:VqigpA8B0 (1/1)
もしやついに来てしまったのか…?
そういえばフィレモンもにゃる様も3.4の世界にいるみたいやね P3倶楽部見ると
もしやついに来てしまったのか…?
そういえばフィレモンもにゃる様も3.4の世界にいるみたいやね P3倶楽部見ると
871:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2012/08/11(土) 17:41:42.56:JHxZIi4Ko (1/1)
電波ァ!が来たか
電波ァ!が来たか
872:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/08/11(土) 19:06:40.85:i+0Bnb0Uo (1/1)
>>868
アトラス作品だけに留まらずアトラスと関わった会社のキャラまで出すのかー(棒
>>868
アトラス作品だけに留まらずアトラスと関わった会社のキャラまで出すのかー(棒
873: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:04:26.38:NoS3mQR4o (1/14)
アイギス「皆さん一ヶ所に固まって!」
>アイギスの言葉を合図に全員が紙袋から距離を取るように同じ場所へと集まる。
>特別課外活動部の皆はそれの盾となるように一歩前へと出てそれぞれ構えを取った。
?「……」
>紙袋は、一階をぐるりと見渡すかのように顔動かしそれから天井に向けて首を上へ傾ける。
>そしてまた、ヒヒッという不気味な笑い声が微かに聞こえた。
?「役者は揃った! 舞台も整った! こんなチャンス、見過ごせる訳ねえよなあ、ええ?」
鳴上「何を言ってるんだ……?」
>役者? 舞台?
>まさか……
鳴上「まさか、お前がこんな空間を作り出した犯人なのか!?」
>その言葉に一同が驚き、紙袋の方へと視線を集める。
>奴の不気味な笑い声は止まらない。
鳴上「お前の目的はなんだ! 俺達をどうするつもりだ!?」
>……その刹那、ぴたりと声が聞こえなくなる。
?「さっきからガタガタうるせえな。なんでも質問すれば望む答えが返ってくると思ってんじゃねえよ」
?「……まあでも、そうだな。俺だってこれからゲームをしようっていうのにルールの説明もしないほどの鬼じゃねえ」
鳴上「何がゲームだ……ふざけるな!」
?「ふざけてなんかねえよ。これでも大真面目なんだぜ? それに」
?「お前にも真面目に考えて貰わなきゃなあ」
>そう言って紙袋は腕を一振りする。
>その手には何時の間にか日本刀が握られていて、切っ先をこちらへと向けてくるのだった。
?「全部で……19、か」
?「こうして改めて数えてみると結構いるんだな」
鳴上「……?」
?「俺がこれから狩るものの数だよ」
鳴上「なッ……」
?「そうだよ。……ここにいる連中、残らず俺が消してやるって言ってんだ」
?「俺はその為にやって来たんだ」
?「とは言っても、一気に片付けられるほどの力は持ってないんでな。じわじわと一つずつ狩っていってやるよ」
>ここにいるみんなを……消す……!?
アイギス「皆さん一ヶ所に固まって!」
>アイギスの言葉を合図に全員が紙袋から距離を取るように同じ場所へと集まる。
>特別課外活動部の皆はそれの盾となるように一歩前へと出てそれぞれ構えを取った。
?「……」
>紙袋は、一階をぐるりと見渡すかのように顔動かしそれから天井に向けて首を上へ傾ける。
>そしてまた、ヒヒッという不気味な笑い声が微かに聞こえた。
?「役者は揃った! 舞台も整った! こんなチャンス、見過ごせる訳ねえよなあ、ええ?」
鳴上「何を言ってるんだ……?」
>役者? 舞台?
>まさか……
鳴上「まさか、お前がこんな空間を作り出した犯人なのか!?」
>その言葉に一同が驚き、紙袋の方へと視線を集める。
>奴の不気味な笑い声は止まらない。
鳴上「お前の目的はなんだ! 俺達をどうするつもりだ!?」
>……その刹那、ぴたりと声が聞こえなくなる。
?「さっきからガタガタうるせえな。なんでも質問すれば望む答えが返ってくると思ってんじゃねえよ」
?「……まあでも、そうだな。俺だってこれからゲームをしようっていうのにルールの説明もしないほどの鬼じゃねえ」
鳴上「何がゲームだ……ふざけるな!」
?「ふざけてなんかねえよ。これでも大真面目なんだぜ? それに」
?「お前にも真面目に考えて貰わなきゃなあ」
>そう言って紙袋は腕を一振りする。
>その手には何時の間にか日本刀が握られていて、切っ先をこちらへと向けてくるのだった。
?「全部で……19、か」
?「こうして改めて数えてみると結構いるんだな」
鳴上「……?」
?「俺がこれから狩るものの数だよ」
鳴上「なッ……」
?「そうだよ。……ここにいる連中、残らず俺が消してやるって言ってんだ」
?「俺はその為にやって来たんだ」
?「とは言っても、一気に片付けられるほどの力は持ってないんでな。じわじわと一つずつ狩っていってやるよ」
>ここにいるみんなを……消す……!?
874: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:07:49.95:NoS3mQR4o (2/14)
鳴上「そんな事はさせない!」
鳴上「ここにいる人達に危害は加えさせない……!」
?「ククッ、言ってくれるねえ。ま、そう答えるっていうのなら……」
?「俺に示してみろよ! 証明してみせろ! その言葉に偽りがないって事を!」
?「お前じゃ無理だろうけどなあッ!」
>紙袋は刀を真上へ振りかざす。
?「……要するに、これは俺が全てを狩り終えるかその前にテメエが俺と決着をつけるかっていう、そういうゲームだ」
?「時間は無制限だ。永遠に繰り返される8/32、か……まったく面白い事をしてくれやがるぜ。俺にとっても好都合だから大いに利用させてもらうがな」
?「……おい、テメエも聞いてやがんだろ! いい加減黙ってねえで、出てきて何か言ったらどうだ!」
?「テメエともそろそろ勝負をつけないとなあッ!」
>紙袋が何もない宙に向けて叫ぶ。
>これは一体、誰に向けての言葉だ……?
?「……」
?「チッ、無視かよ。……まあいい。それならそれで、こっちはやるべき事を思う存分するだけだからな」
?「さあ、お待ちかねの……」
?「……ッ!?」
>喋りたいだけ喋り続けていた紙袋の動きが不意に止まった。
>それと同時に振り上げていた刀も下ろしてしまう。
?「……」
?「なるほどそういう事か。道理で出てこない訳だ」
鳴上「さっきから何を一人でぶつぶつと……」
?「この世界に何時の間にか異物が混じってやがるな」
>……異物?
?「……ったく、興醒めだぜ。折角盛り上がってたところだったのによ」
?「まあいい。今回のところは顔見せって事だけにしとくか」
鳴上「なら、そのふざけた紙袋を取ったらどうだ」
鳴上「それに俺の質問にまだ答えてもらっていない。……お前は誰だ」
?「テメエもしつこいな。でも、そこまで言うなら……名乗るくらいはしておくか」
?「そうだなあ、何がいいかね。……ああ、これなんか丁度いいかもな」
>紙袋はテーブルの上に散乱しているさっきまでメティス達が遊んでいたトランプの中から一枚のカードを抜くと、それをこちらに投げつけた。
>正面に飛んできたそれを、すかさず指で挟むようにして掴む。
>そのカードの表にはピエロの絵が描かれていた。
鳴上「そんな事はさせない!」
鳴上「ここにいる人達に危害は加えさせない……!」
?「ククッ、言ってくれるねえ。ま、そう答えるっていうのなら……」
?「俺に示してみろよ! 証明してみせろ! その言葉に偽りがないって事を!」
?「お前じゃ無理だろうけどなあッ!」
>紙袋は刀を真上へ振りかざす。
?「……要するに、これは俺が全てを狩り終えるかその前にテメエが俺と決着をつけるかっていう、そういうゲームだ」
?「時間は無制限だ。永遠に繰り返される8/32、か……まったく面白い事をしてくれやがるぜ。俺にとっても好都合だから大いに利用させてもらうがな」
?「……おい、テメエも聞いてやがんだろ! いい加減黙ってねえで、出てきて何か言ったらどうだ!」
?「テメエともそろそろ勝負をつけないとなあッ!」
>紙袋が何もない宙に向けて叫ぶ。
>これは一体、誰に向けての言葉だ……?
?「……」
?「チッ、無視かよ。……まあいい。それならそれで、こっちはやるべき事を思う存分するだけだからな」
?「さあ、お待ちかねの……」
?「……ッ!?」
>喋りたいだけ喋り続けていた紙袋の動きが不意に止まった。
>それと同時に振り上げていた刀も下ろしてしまう。
?「……」
?「なるほどそういう事か。道理で出てこない訳だ」
鳴上「さっきから何を一人でぶつぶつと……」
?「この世界に何時の間にか異物が混じってやがるな」
>……異物?
?「……ったく、興醒めだぜ。折角盛り上がってたところだったのによ」
?「まあいい。今回のところは顔見せって事だけにしとくか」
鳴上「なら、そのふざけた紙袋を取ったらどうだ」
鳴上「それに俺の質問にまだ答えてもらっていない。……お前は誰だ」
?「テメエもしつこいな。でも、そこまで言うなら……名乗るくらいはしておくか」
?「そうだなあ、何がいいかね。……ああ、これなんか丁度いいかもな」
>紙袋はテーブルの上に散乱しているさっきまでメティス達が遊んでいたトランプの中から一枚のカードを抜くと、それをこちらに投げつけた。
>正面に飛んできたそれを、すかさず指で挟むようにして掴む。
>そのカードの表にはピエロの絵が描かれていた。
875: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:10:20.78:NoS3mQR4o (3/14)
?「JOKER」
?「片仮名じゃないぜ、英語でJOKERだ。なかなか洒落てるだろ?」
>本名でもなんでもない、今この場のノリで決めた名なのは一目瞭然だ。
>……何から何までふざけている。
JOKER「今後ともよろしく」
JOKER「……じゃあな」
>そう呟くと同時に、紙袋……JOKERの周りに突風が吹き荒れた。
鳴上「くっ……!?」
JOKER「ああ、そうだ。まだ言い忘れていた事があったな」
JOKER「折角だから街中にゲストを招待させてもらったぜ。お前たちが今まで散々気にしてたから、この機会にその目で見て貰おうかと思って」
JOKER「……悪魔だよ、本物の悪魔だ」
鳴上「!?」
JOKER「俺に狩られる前に無様にやられたりしないよう精々気を付けるんだな。ククッ……ヒャハハハハハ!」
>一際甲高い笑い声を残して、JOKERは風の渦の中で姿を消した……
>……
>一時の静寂が訪れる。
>誰もが絶句したままだ。
>だがそのうち、一気に張り詰めた緊張が一気に解け、誰という訳でもなく深い吐息が零れた。
綾時「なんなんだ、今のは……僕は夢でも見ていたのか?」
あかり「今の人、は……」
順平「だ、大丈夫か、チドリ!」
チドリ「っ……平気」
>そうは言いつつも、チドリは順平の腕の中でぐったりとしている。
>さっきまでの空気がよほど堪えたようだ。
諒「……JOKER、か」
美鶴「何者なんだ。あんなに体が震えるほどの殺気を感じたのは久しぶりだった……」
>美鶴は拳を握り締めている。
>その言葉通り、体が僅かに震えているがそれは何も美鶴だけに限った事ではなかったようだ。
アイギス「それになんて凄まじい憎悪……」
メティス「私たちを消してやる、と言っていましたね」
天田「僕たちあんなヤツに恨まれるような事しましたか? まったく覚えがないんですが……」
コロマル「グルルル……」
ラビリス「……」
アイギス「姉さん?」
ラビリス「……」
?「JOKER」
?「片仮名じゃないぜ、英語でJOKERだ。なかなか洒落てるだろ?」
>本名でもなんでもない、今この場のノリで決めた名なのは一目瞭然だ。
>……何から何までふざけている。
JOKER「今後ともよろしく」
JOKER「……じゃあな」
>そう呟くと同時に、紙袋……JOKERの周りに突風が吹き荒れた。
鳴上「くっ……!?」
JOKER「ああ、そうだ。まだ言い忘れていた事があったな」
JOKER「折角だから街中にゲストを招待させてもらったぜ。お前たちが今まで散々気にしてたから、この機会にその目で見て貰おうかと思って」
JOKER「……悪魔だよ、本物の悪魔だ」
鳴上「!?」
JOKER「俺に狩られる前に無様にやられたりしないよう精々気を付けるんだな。ククッ……ヒャハハハハハ!」
>一際甲高い笑い声を残して、JOKERは風の渦の中で姿を消した……
>……
>一時の静寂が訪れる。
>誰もが絶句したままだ。
>だがそのうち、一気に張り詰めた緊張が一気に解け、誰という訳でもなく深い吐息が零れた。
綾時「なんなんだ、今のは……僕は夢でも見ていたのか?」
あかり「今の人、は……」
順平「だ、大丈夫か、チドリ!」
チドリ「っ……平気」
>そうは言いつつも、チドリは順平の腕の中でぐったりとしている。
>さっきまでの空気がよほど堪えたようだ。
諒「……JOKER、か」
美鶴「何者なんだ。あんなに体が震えるほどの殺気を感じたのは久しぶりだった……」
>美鶴は拳を握り締めている。
>その言葉通り、体が僅かに震えているがそれは何も美鶴だけに限った事ではなかったようだ。
アイギス「それになんて凄まじい憎悪……」
メティス「私たちを消してやる、と言っていましたね」
天田「僕たちあんなヤツに恨まれるような事しましたか? まったく覚えがないんですが……」
コロマル「グルルル……」
ラビリス「……」
アイギス「姉さん?」
ラビリス「……」
876: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:12:34.96:NoS3mQR4o (4/14)
アイギス「ラビリス姉さん」
ラビリス「……え? なんか言うたか?」
アイギス「いえ、その……どうかしました?」
ラビリス「ん……」
ラビリス「……。いや、なんでもあらへん」
パオフゥ「あの姿、それにJOKERという名前」
パオフゥ「……いや、まさか。そんな筈はねえ」
淳「JOKER……ジョー……カー……?」
淳「くっ……」
鳴上「先生!?」
達哉「オイ、どうした。しっかりしろ!」
淳「急に、頭が……痛っ……」
>橿原が頭を抱えて唸り声を上げている。
>とても苦しそうだ。
>周防がそんな彼を支えてソファに座るようにと促している。
麻希「……」
藤堂「園村、大丈夫か?」
麻希「……あ、うん。私は平気」
麻希「鳴上くん」
鳴上「はい?」
麻希「貴方、さっきのJOKERという人物に誰か心当たりはある?」
鳴上「……」
鳴上「いえ、わかりません……」
麻希「そう……」
藤堂「でも、向こうの方はそうでもないみたいだったな」
藤堂「会いたかったぜ、鳴上悠。そう言っていた」
藤堂「本当に誰だか見当もつかないのか?」
鳴上「……」
>藤堂の言っているその言葉は自分にも引っかかっていた。
>奴は明らかに自分の事を知っているような様子だった。
>しかし、友好的な態度ではなかった事も明らかで、その声色からは敵意が滲み出ていた。
>向けられた殺気と、憎悪。
>そして……
アイギス「ラビリス姉さん」
ラビリス「……え? なんか言うたか?」
アイギス「いえ、その……どうかしました?」
ラビリス「ん……」
ラビリス「……。いや、なんでもあらへん」
パオフゥ「あの姿、それにJOKERという名前」
パオフゥ「……いや、まさか。そんな筈はねえ」
淳「JOKER……ジョー……カー……?」
淳「くっ……」
鳴上「先生!?」
達哉「オイ、どうした。しっかりしろ!」
淳「急に、頭が……痛っ……」
>橿原が頭を抱えて唸り声を上げている。
>とても苦しそうだ。
>周防がそんな彼を支えてソファに座るようにと促している。
麻希「……」
藤堂「園村、大丈夫か?」
麻希「……あ、うん。私は平気」
麻希「鳴上くん」
鳴上「はい?」
麻希「貴方、さっきのJOKERという人物に誰か心当たりはある?」
鳴上「……」
鳴上「いえ、わかりません……」
麻希「そう……」
藤堂「でも、向こうの方はそうでもないみたいだったな」
藤堂「会いたかったぜ、鳴上悠。そう言っていた」
藤堂「本当に誰だか見当もつかないのか?」
鳴上「……」
>藤堂の言っているその言葉は自分にも引っかかっていた。
>奴は明らかに自分の事を知っているような様子だった。
>しかし、友好的な態度ではなかった事も明らかで、その声色からは敵意が滲み出ていた。
>向けられた殺気と、憎悪。
>そして……
877: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:17:02.61:NoS3mQR4o (5/14)
麻希「ねえ藤堂くん。JOKERがここに現れた直前に感じた共鳴の感じ、覚えてる?」
藤堂「……ん、ああ。あれは、なんというか……」
麻希「JOKERの何かに対する強い拒絶。その意思が一瞬だけど私たちにもはっきりと伝わってきた。そうだよね?」
藤堂「ああ」
麻希「あの人、鳴上くんだけじゃなくてここにいる私たち全員に、敵意という一言だけでは表せないマイナスの感情を抱いていたように思うの」
麻希「これ以上はなんて言ったらいいのかわからないけど、でも……」
>麻希はそれ以降口を閉ざして、深く考え込んでしまう。
>……
>JOKERはここにいる皆を消すと言った。
>そんな事をしようとする詳しい理由は今のところ不明だが……
>その数は全部で19
>順平、麻希、美鶴、藤堂、メティス、綾時、アイギス、天田、パオフゥ、橿原、コロマル、チドリ、ヴィンセント、ラビリス、あかり、諒、周防
>この場にいるというそのままの意味を考えれば、もしかしたらトリッシュもその内に含まれるかもしれない。
>……そして自分。
>これで合計19になる筈だ。
>だが、もう一人。奴は、見えない20人目の存在を示唆する言葉を言っていた気がする。
>奴は一瞬だけ、ここにはいない誰かに向けて何か叫んでいた。
>そう、確か……勝負をつけないと、とかなんとか。
>それは一体誰でどういった勝負なのか。
>そんな事を気にしたところで、自分には何も関係はないのかもしれないが……
ヴィンセント「なあ、さっきのアイツ街中に悪魔がどうとか言ってたよな?」
ヴィンセント「今度こそ、本当に出てきちまうのか……?」
>ヴィンセントが小声で不安そうに呟く。
藤堂「……」
藤堂「鳴上、一つ提案があるんだけど」
鳴上「……? なんでしょうか」
藤堂「これから少し、この近辺の様子を探りにいかないか?」
藤堂「なんだか、外がざわついている気がするんだ」
>確かに、奴の言葉通り悪魔が街中にいるのかどうか気になるところではあるが……
美鶴「出来るだけ早く現状把握をした方が良いのは事実かもしれないな」
美鶴「もし行くというのならば私も行こう。あまり遠くまで行くのは流石に許可出来ないが」
鳴上「……そうですね。近辺の安全確認だけでも今改めてした方がいいかもしれません」
鳴上「行きましょう」
達哉「なら俺も一緒だ」
鳴上「周防さん?」
>橿原の介抱をしていた筈の周防が何時の間にかこの話を耳にしていたようだ。
麻希「ねえ藤堂くん。JOKERがここに現れた直前に感じた共鳴の感じ、覚えてる?」
藤堂「……ん、ああ。あれは、なんというか……」
麻希「JOKERの何かに対する強い拒絶。その意思が一瞬だけど私たちにもはっきりと伝わってきた。そうだよね?」
藤堂「ああ」
麻希「あの人、鳴上くんだけじゃなくてここにいる私たち全員に、敵意という一言だけでは表せないマイナスの感情を抱いていたように思うの」
麻希「これ以上はなんて言ったらいいのかわからないけど、でも……」
>麻希はそれ以降口を閉ざして、深く考え込んでしまう。
>……
>JOKERはここにいる皆を消すと言った。
>そんな事をしようとする詳しい理由は今のところ不明だが……
>その数は全部で19
>順平、麻希、美鶴、藤堂、メティス、綾時、アイギス、天田、パオフゥ、橿原、コロマル、チドリ、ヴィンセント、ラビリス、あかり、諒、周防
>この場にいるというそのままの意味を考えれば、もしかしたらトリッシュもその内に含まれるかもしれない。
>……そして自分。
>これで合計19になる筈だ。
>だが、もう一人。奴は、見えない20人目の存在を示唆する言葉を言っていた気がする。
>奴は一瞬だけ、ここにはいない誰かに向けて何か叫んでいた。
>そう、確か……勝負をつけないと、とかなんとか。
>それは一体誰でどういった勝負なのか。
>そんな事を気にしたところで、自分には何も関係はないのかもしれないが……
ヴィンセント「なあ、さっきのアイツ街中に悪魔がどうとか言ってたよな?」
ヴィンセント「今度こそ、本当に出てきちまうのか……?」
>ヴィンセントが小声で不安そうに呟く。
藤堂「……」
藤堂「鳴上、一つ提案があるんだけど」
鳴上「……? なんでしょうか」
藤堂「これから少し、この近辺の様子を探りにいかないか?」
藤堂「なんだか、外がざわついている気がするんだ」
>確かに、奴の言葉通り悪魔が街中にいるのかどうか気になるところではあるが……
美鶴「出来るだけ早く現状把握をした方が良いのは事実かもしれないな」
美鶴「もし行くというのならば私も行こう。あまり遠くまで行くのは流石に許可出来ないが」
鳴上「……そうですね。近辺の安全確認だけでも今改めてした方がいいかもしれません」
鳴上「行きましょう」
達哉「なら俺も一緒だ」
鳴上「周防さん?」
>橿原の介抱をしていた筈の周防が何時の間にかこの話を耳にしていたようだ。
878: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:20:08.39:NoS3mQR4o (6/14)
達哉「悪魔だかなんだか知らないが、危険なところにお前たちだけで行かせられない」
鳴上「それは周防さんが警察だから、ですか? でも……」
藤堂「いいじゃないか。一緒についていってもらおう」
鳴上「えっ……」
藤堂「あくまで確認に行くだけだ。仮に悪魔と本当に遭遇してしまったとしても、戦う事のないようにすればいいさ」
藤堂「出来る事ならその為の方法を、戦う力の持たない人はもちろん鳴上たちにも教えられたら好都合なんだけど」
鳴上「どういう事ですか?」
藤堂「まあそれは実際悪魔と対峙する時があったらって事で」
美鶴「アイギス。私たちは少し外の様子を見て回ってくる。寮にいる人たちの事は頼んだぞ」
アイギス「見回りですか?」
ラビリス「それならウチらも一緒に行った方がええんとちゃう?」
美鶴「いや、すぐ戻ってくるからその心配はない。それにあまり考えたくはないが、万が一の時の為にも一般人の集まっている寮の方に戦力を置いておきたい」
メティス「そうですか。了解しました。皆さんの事は私たちに任せてください」
メティス「鳴上さんたちも気をつけて」
鳴上「ああ」
達哉「先生の事も頼む。まだ具合が落ち着いていないみたいだ」
ラビリス「うん。橿原先生の事はウチらがみとくで」
鳴上「じゃあ、行きましょう」
>……
学生寮周辺
>最低限の武器と防具は装備して外へ出た。
>相変わらず、そこかしこに点々と棺があるのが目に映る。
>見た目にはそれ以外に変わった事がないように思えるが、周りの空気が昼間と比べて何か違うようにも感じる……
鳴上「ん……?」
>藤堂と美鶴と周防、それに自分を含めた四人でなるべく離れないようにして周りに注意を向けながら歩いていると、ふと前方に何かきらきらしたものが空中に浮いているのを目にした。
美鶴「もしや……」
達哉「まさかアレが?」
藤堂「ああ。どうやらいきなり当たりを引いたみたいだ」
鳴上「……悪魔か」
>皆、一斉に身構える。
>きらきらして見えたもの……それはどうやら何かの羽だったようだ。
>暗闇に浮かぶそれを、目を凝らして更によく観察する。
>だから何の羽だったのかはすぐに解った。
>この悪魔は以前、見た覚えがある。
>藤堂の所持していたピクシー……それとまったく同じ姿だ。
達哉「悪魔だかなんだか知らないが、危険なところにお前たちだけで行かせられない」
鳴上「それは周防さんが警察だから、ですか? でも……」
藤堂「いいじゃないか。一緒についていってもらおう」
鳴上「えっ……」
藤堂「あくまで確認に行くだけだ。仮に悪魔と本当に遭遇してしまったとしても、戦う事のないようにすればいいさ」
藤堂「出来る事ならその為の方法を、戦う力の持たない人はもちろん鳴上たちにも教えられたら好都合なんだけど」
鳴上「どういう事ですか?」
藤堂「まあそれは実際悪魔と対峙する時があったらって事で」
美鶴「アイギス。私たちは少し外の様子を見て回ってくる。寮にいる人たちの事は頼んだぞ」
アイギス「見回りですか?」
ラビリス「それならウチらも一緒に行った方がええんとちゃう?」
美鶴「いや、すぐ戻ってくるからその心配はない。それにあまり考えたくはないが、万が一の時の為にも一般人の集まっている寮の方に戦力を置いておきたい」
メティス「そうですか。了解しました。皆さんの事は私たちに任せてください」
メティス「鳴上さんたちも気をつけて」
鳴上「ああ」
達哉「先生の事も頼む。まだ具合が落ち着いていないみたいだ」
ラビリス「うん。橿原先生の事はウチらがみとくで」
鳴上「じゃあ、行きましょう」
>……
学生寮周辺
>最低限の武器と防具は装備して外へ出た。
>相変わらず、そこかしこに点々と棺があるのが目に映る。
>見た目にはそれ以外に変わった事がないように思えるが、周りの空気が昼間と比べて何か違うようにも感じる……
鳴上「ん……?」
>藤堂と美鶴と周防、それに自分を含めた四人でなるべく離れないようにして周りに注意を向けながら歩いていると、ふと前方に何かきらきらしたものが空中に浮いているのを目にした。
美鶴「もしや……」
達哉「まさかアレが?」
藤堂「ああ。どうやらいきなり当たりを引いたみたいだ」
鳴上「……悪魔か」
>皆、一斉に身構える。
>きらきらして見えたもの……それはどうやら何かの羽だったようだ。
>暗闇に浮かぶそれを、目を凝らして更によく観察する。
>だから何の羽だったのかはすぐに解った。
>この悪魔は以前、見た覚えがある。
>藤堂の所持していたピクシー……それとまったく同じ姿だ。
879: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:22:26.09:NoS3mQR4o (7/14)
ピクシー「ねえ、ねえ」
鳴上「!」
>どうしようかと考えていると、先に悪魔の方から話しかけられてしまった。
>その悪魔の反応に、周防は咄嗟に装備していた刀を構える。
ピクシー「……。なあに、いきなりその態度」
ピクシー「あくまを ころして へいきなの?」
>ピクシーはなんだか少し興奮状態のようだった。
>見た目は妖精のようで愛らしくとも、悪魔である以上はこちらに何をしてくるかわかったものではない。
>身を守る準備はしてあるが、どうしたものか。
>藤堂は悪魔と戦わずに済む方法を何か知っているようだったが……
藤堂「まあ、落ち着けって。ここはひとつ、俺に任せろ」
鳴上「どうするつもりですか?」
藤堂「交渉を試みる」
美鶴「交渉……?」
鳴上「悪魔相手に、ですか?」
藤堂「ああ」
>藤堂は大真面目な顔をして頷いている。
藤堂「悪魔だって人間と同じく喜びや、怒りや、恐怖……そういった感情を持っているんだ」
藤堂「今のピクシーの様子を見てなんとなくわかるだろ?」
鳴上「言われてみれば……」
藤堂「だから無駄な争いを生まない為にも、会話で悪魔の興味をひきつけ穏便に事を済ませるという方法がある」
達哉「……話が通じる相手なのか?」
藤堂「まあ見てろって」
鳴上「興味をひくって、どうやってですか?」
藤堂「うーん、そうだなあ」
>藤堂はしばしの間考え込む。
藤堂「おい、ピクシー」
ピクシー「なあに?」
藤堂「俺の歌を聴け」
鳴上・美鶴・達哉「!?」
>藤堂は突然、どこから出したのかマイクを手にして歌を歌い始めた。
>興味をひくにしても、もっとやり方があると思うのだが……
>それに、オチももうなんとなく想像はついている。
ピクシー「なにそれ、ヘタッピ! そんなんでピクシーのこと満足させられると思ってんの!?」
藤堂「いたたっ」
ピクシー「ねえ、ねえ」
鳴上「!」
>どうしようかと考えていると、先に悪魔の方から話しかけられてしまった。
>その悪魔の反応に、周防は咄嗟に装備していた刀を構える。
ピクシー「……。なあに、いきなりその態度」
ピクシー「あくまを ころして へいきなの?」
>ピクシーはなんだか少し興奮状態のようだった。
>見た目は妖精のようで愛らしくとも、悪魔である以上はこちらに何をしてくるかわかったものではない。
>身を守る準備はしてあるが、どうしたものか。
>藤堂は悪魔と戦わずに済む方法を何か知っているようだったが……
藤堂「まあ、落ち着けって。ここはひとつ、俺に任せろ」
鳴上「どうするつもりですか?」
藤堂「交渉を試みる」
美鶴「交渉……?」
鳴上「悪魔相手に、ですか?」
藤堂「ああ」
>藤堂は大真面目な顔をして頷いている。
藤堂「悪魔だって人間と同じく喜びや、怒りや、恐怖……そういった感情を持っているんだ」
藤堂「今のピクシーの様子を見てなんとなくわかるだろ?」
鳴上「言われてみれば……」
藤堂「だから無駄な争いを生まない為にも、会話で悪魔の興味をひきつけ穏便に事を済ませるという方法がある」
達哉「……話が通じる相手なのか?」
藤堂「まあ見てろって」
鳴上「興味をひくって、どうやってですか?」
藤堂「うーん、そうだなあ」
>藤堂はしばしの間考え込む。
藤堂「おい、ピクシー」
ピクシー「なあに?」
藤堂「俺の歌を聴け」
鳴上・美鶴・達哉「!?」
>藤堂は突然、どこから出したのかマイクを手にして歌を歌い始めた。
>興味をひくにしても、もっとやり方があると思うのだが……
>それに、オチももうなんとなく想像はついている。
ピクシー「なにそれ、ヘタッピ! そんなんでピクシーのこと満足させられると思ってんの!?」
藤堂「いたたっ」
880: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:25:24.44:NoS3mQR4o (8/14)
>藤堂の歌にピクシーはご立腹のようだ。
>ぽかぽかと藤堂を殴ると、マイクが地面に落ちてしまい周防の足元へと転がっていってしまった。
>藤堂はそんなピクシーをなんとかなだめると、今度はこちらへと問いかけてくる。
藤堂「みんなも何かないか? 悪魔の興味をひけそうな芸とか技とか、あるいは物を持っていたりとか」
達哉「悪魔の興味をひくような……」
達哉「……」
>その言葉に、今度は周防がしばしの間考え込んだ。
>そして彼は……足元のマイクを拾った。
鳴上(まさか、周防さんも歌声披露!?)
達哉「目を閉じてな」
>周防は息を長く吸った。
>そして聞こえてきたのは……
>歌でも、声でもなく、機械のような音だった。
鳴上「!?」
>エンジンのような音が一帯に響いているのだが、それは驚く事に紛れもなく周防の口から発せられているようだ。
>言われた通り目を閉じればバイクに乗って颯爽と駆ける周防の姿が浮かんできそうなくらいよく出来た声帯模写だ……!
美鶴「ブリリアントだ!」
>周防のそれに、美鶴も思わず感動しているようだ。
>まさか彼がこんな技持ちだったとは……人は見かけによらないものだ。
>……さて、肝心の悪魔の反応はどうだろう?
ピクシー「ちょっと、アンタ。本当に人間?」
達哉「……ん? あ、ああ」
ピクシー「えっ、うそ、きもちわる……」
>その巧みな芸は、巧みすぎるあまり悪魔もドン引きしてしまうくらいだったようだ。
>ピクシーは周防に対し恐怖している……
達哉「……」
藤堂「ダメだったかー。はい、じゃあ次は桐条さん」
美鶴「わ、私もですか!?」
鳴上(もはやただの隠し芸大会になってないか……?)
美鶴「興味をひくもの、か」
美鶴「……、!」
>美鶴は突然思い出したようにポケットの中から財布を取り出す。
>まさか、金の力で解決!?
>藤堂の歌にピクシーはご立腹のようだ。
>ぽかぽかと藤堂を殴ると、マイクが地面に落ちてしまい周防の足元へと転がっていってしまった。
>藤堂はそんなピクシーをなんとかなだめると、今度はこちらへと問いかけてくる。
藤堂「みんなも何かないか? 悪魔の興味をひけそうな芸とか技とか、あるいは物を持っていたりとか」
達哉「悪魔の興味をひくような……」
達哉「……」
>その言葉に、今度は周防がしばしの間考え込んだ。
>そして彼は……足元のマイクを拾った。
鳴上(まさか、周防さんも歌声披露!?)
達哉「目を閉じてな」
>周防は息を長く吸った。
>そして聞こえてきたのは……
>歌でも、声でもなく、機械のような音だった。
鳴上「!?」
>エンジンのような音が一帯に響いているのだが、それは驚く事に紛れもなく周防の口から発せられているようだ。
>言われた通り目を閉じればバイクに乗って颯爽と駆ける周防の姿が浮かんできそうなくらいよく出来た声帯模写だ……!
美鶴「ブリリアントだ!」
>周防のそれに、美鶴も思わず感動しているようだ。
>まさか彼がこんな技持ちだったとは……人は見かけによらないものだ。
>……さて、肝心の悪魔の反応はどうだろう?
ピクシー「ちょっと、アンタ。本当に人間?」
達哉「……ん? あ、ああ」
ピクシー「えっ、うそ、きもちわる……」
>その巧みな芸は、巧みすぎるあまり悪魔もドン引きしてしまうくらいだったようだ。
>ピクシーは周防に対し恐怖している……
達哉「……」
藤堂「ダメだったかー。はい、じゃあ次は桐条さん」
美鶴「わ、私もですか!?」
鳴上(もはやただの隠し芸大会になってないか……?)
美鶴「興味をひくもの、か」
美鶴「……、!」
>美鶴は突然思い出したようにポケットの中から財布を取り出す。
>まさか、金の力で解決!?
881: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:27:42.92:NoS3mQR4o (9/14)
美鶴「ピクシー」
ピクシ「んん?」
美鶴「ここに裏と表が逆の10円玉がある。どうだ、珍しいだろ? よければこれで手を打たないか」
鳴上・藤堂・達哉「……」
ピクシー「……」
ピクシー「そんなもんでピクシーがつられると思ってんの? アンタ、ピクシーの事馬鹿にしてる!?」
>ピクシーはまたも怒り出してしまったようだ。
美鶴「む……こういった手合いには下手に大金を積むより、ささやかでも貴重なものの方がうけるかと思ったんだが……失敗だったか」
鳴上(桐条さんも小銭なんて持ってたんだな)
藤堂「物でつるにしても、桐条さんの場合サイン付きのブロマイドとかの方が良かったんじゃないか?」
美鶴「何を言ってるんですか……」
達哉「男相手ならともかく、相手も女?だぞ」
>いよいよ後がなくなってきたが、このパターンだともしや……
藤堂「最後は鳴上だな」
鳴上「……やっぱり」
鳴上(さて、どうしようか)
鳴上(悪魔に見せられるような技なんて……アレくらいしか思い当たらないけど)
鳴上「桐条さん、ちょっとそれ借りますね」
>美鶴の手から先ほどの裏と表が逆の10円玉を拝借した。
鳴上「ピクシー、これをよく見ていろ」
ピクシー「今度はなにー?」
>10円玉をピクシーによく見えるように掲げる。
>そして、一度手首をくるりと捻るようにしてからもう一度10円玉を持っていた指先をピクシーに見せた。
藤堂「……ん?」
美鶴「10円玉が、消えた?」
>その様子を見ていた藤堂たちが小さく驚きの声を上げた。
鳴上「周防さん、背広の胸ポケットの中を確認してみてください」
達哉「ポケット……?」
達哉「!」
達哉「裏と表が逆の10円玉!? いつの間に!?」
鳴上「どうだ、手品だ。地味に凄いだろ?」
>ピクシーも驚いてくれただろうか。
美鶴「ピクシー」
ピクシ「んん?」
美鶴「ここに裏と表が逆の10円玉がある。どうだ、珍しいだろ? よければこれで手を打たないか」
鳴上・藤堂・達哉「……」
ピクシー「……」
ピクシー「そんなもんでピクシーがつられると思ってんの? アンタ、ピクシーの事馬鹿にしてる!?」
>ピクシーはまたも怒り出してしまったようだ。
美鶴「む……こういった手合いには下手に大金を積むより、ささやかでも貴重なものの方がうけるかと思ったんだが……失敗だったか」
鳴上(桐条さんも小銭なんて持ってたんだな)
藤堂「物でつるにしても、桐条さんの場合サイン付きのブロマイドとかの方が良かったんじゃないか?」
美鶴「何を言ってるんですか……」
達哉「男相手ならともかく、相手も女?だぞ」
>いよいよ後がなくなってきたが、このパターンだともしや……
藤堂「最後は鳴上だな」
鳴上「……やっぱり」
鳴上(さて、どうしようか)
鳴上(悪魔に見せられるような技なんて……アレくらいしか思い当たらないけど)
鳴上「桐条さん、ちょっとそれ借りますね」
>美鶴の手から先ほどの裏と表が逆の10円玉を拝借した。
鳴上「ピクシー、これをよく見ていろ」
ピクシー「今度はなにー?」
>10円玉をピクシーによく見えるように掲げる。
>そして、一度手首をくるりと捻るようにしてからもう一度10円玉を持っていた指先をピクシーに見せた。
藤堂「……ん?」
美鶴「10円玉が、消えた?」
>その様子を見ていた藤堂たちが小さく驚きの声を上げた。
鳴上「周防さん、背広の胸ポケットの中を確認してみてください」
達哉「ポケット……?」
達哉「!」
達哉「裏と表が逆の10円玉!? いつの間に!?」
鳴上「どうだ、手品だ。地味に凄いだろ?」
>ピクシーも驚いてくれただろうか。
882: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:29:46.90:NoS3mQR4o (10/14)
ピクシー「……」
ピクシー「それで?」
鳴上「え」
ピクシー「結局なにがしたいの? ちょーつまんないよ!」
>ピクシーの怒りのボルテージは更に高まってしまったようだ。
ピクシー「もう本気で怒った! しんじゃえ!」
ピクシー「ガル!」
藤堂「まずっ……逃げるぞ!」
>藤堂の掛け声と共に、一目散にその場から走り去った。
>……
藤堂「結局逆効果だったなあ」
鳴上「俺たちが体を張った意味って一体……」
達哉「……」
藤堂「そういうなって。たまたま運が悪かっただけさ。慣れれば上手い具合にいくって」
藤堂「それにしても面白いものが見れた」
>藤堂は呑気に笑っている。
藤堂「そういえば、さっきの鳴上を見てひとつ思い出した事があったよ」
鳴上「?」
藤堂「見てな」
>藤堂は袖を少し捲ると手の平と甲を交互に見せた。
>その手には何もない。
>そして何もない手の中指と親指でパチンと音を立てた。
>すると……
鳴上「!」
藤堂「指を鳴らせば花が出る。綺麗だろ?」
藤堂「っていう手品を悪魔相手にやってる仲間が昔いてさ」
藤堂「しかもそいつ、伝説の裸番長なんて異名があったりするのにそのギャップがおかしくって」
>藤堂はどこからともなく出した一輪の花を見つめながら懐かしそうにして呟いている。
鳴上「今のもう一回見せてください」
藤堂「タネが気になるか? なら後でゆっくり教えてやるよ」
藤堂「今回はこんなところで悪魔との交渉術については終わりにしておこう」
>藤堂から悪魔との会話についてのいろはを教えてもらった。
>『Ⅳ 皇帝 藤堂尚也』のランクが7になった
ピクシー「……」
ピクシー「それで?」
鳴上「え」
ピクシー「結局なにがしたいの? ちょーつまんないよ!」
>ピクシーの怒りのボルテージは更に高まってしまったようだ。
ピクシー「もう本気で怒った! しんじゃえ!」
ピクシー「ガル!」
藤堂「まずっ……逃げるぞ!」
>藤堂の掛け声と共に、一目散にその場から走り去った。
>……
藤堂「結局逆効果だったなあ」
鳴上「俺たちが体を張った意味って一体……」
達哉「……」
藤堂「そういうなって。たまたま運が悪かっただけさ。慣れれば上手い具合にいくって」
藤堂「それにしても面白いものが見れた」
>藤堂は呑気に笑っている。
藤堂「そういえば、さっきの鳴上を見てひとつ思い出した事があったよ」
鳴上「?」
藤堂「見てな」
>藤堂は袖を少し捲ると手の平と甲を交互に見せた。
>その手には何もない。
>そして何もない手の中指と親指でパチンと音を立てた。
>すると……
鳴上「!」
藤堂「指を鳴らせば花が出る。綺麗だろ?」
藤堂「っていう手品を悪魔相手にやってる仲間が昔いてさ」
藤堂「しかもそいつ、伝説の裸番長なんて異名があったりするのにそのギャップがおかしくって」
>藤堂はどこからともなく出した一輪の花を見つめながら懐かしそうにして呟いている。
鳴上「今のもう一回見せてください」
藤堂「タネが気になるか? なら後でゆっくり教えてやるよ」
藤堂「今回はこんなところで悪魔との交渉術については終わりにしておこう」
>藤堂から悪魔との会話についてのいろはを教えてもらった。
>『Ⅳ 皇帝 藤堂尚也』のランクが7になった
883: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:32:46.65:NoS3mQR4o (11/14)
ガシャアアアアン!
>その時、唐突にガラスが砕け散るような音が響いた。
鳴上「一体なんだ?」
美鶴「っ、あそこだ!」
>美鶴が指をさしながら叫ぶ。
>その先には一軒のスーパーがあり、そこのガラスが割られているのが一目で解った。
>そしてそんな事をしでかしたのが悪魔である事も、だ。
>二、三匹の悪魔と思わしき生き物がスーパーの中を荒らし食べ物を食い散らかしている。
>しかし連中はすぐにこちらの事に気付いたらしく、手に入れた食べ物を持ってその場から逃げ出していった。
鳴上「あっ、コラ!」
達哉「鳴上!?」
>……
路地裏
>つい反射的に悪魔の後を追って走ってしまった。
>が、よく考えなくてもまずかったかもしれない。
>そう気付いたのは薄暗い路地の裏手までやってきた頃だった。
>追っていた悪魔の姿も何処かに見失ってしまっていた。
鳴上「逃げられたか……」
鳴上「ま、追いかけてどうにかなるもんでもなかったよな。まったく、俺も何やってるんだか」
鳴上「それにしても、酷いな」
>路地裏には先ほどの悪魔が食い荒らした食べ物の残りかすようなものが汚らしく散らかっている。
>その中にあったバナナの皮をうっかり踏みそうになって思わずその場に止まった。
鳴上「……ん。これは?」
>靴の先に何かが当たった。
>初めはここに広がるゴミのひとつかと思ったが、……どうやら違うらしい。
>長い棒のような何かが転がっている。
>思わずそれを手に取って拾ってしまった。
鳴上「!」
鳴上「これは、刀!?」
>こんな場所に何故か、鞘に収まった刀が落ちていたのだ。
>これも悪魔が何処かから持ち去ったものなのだろうか?
鳴上「物騒だな……とりあえず回収しておくか」
鳴上「さて、もう行こう」
ガシャアアアアン!
>その時、唐突にガラスが砕け散るような音が響いた。
鳴上「一体なんだ?」
美鶴「っ、あそこだ!」
>美鶴が指をさしながら叫ぶ。
>その先には一軒のスーパーがあり、そこのガラスが割られているのが一目で解った。
>そしてそんな事をしでかしたのが悪魔である事も、だ。
>二、三匹の悪魔と思わしき生き物がスーパーの中を荒らし食べ物を食い散らかしている。
>しかし連中はすぐにこちらの事に気付いたらしく、手に入れた食べ物を持ってその場から逃げ出していった。
鳴上「あっ、コラ!」
達哉「鳴上!?」
>……
路地裏
>つい反射的に悪魔の後を追って走ってしまった。
>が、よく考えなくてもまずかったかもしれない。
>そう気付いたのは薄暗い路地の裏手までやってきた頃だった。
>追っていた悪魔の姿も何処かに見失ってしまっていた。
鳴上「逃げられたか……」
鳴上「ま、追いかけてどうにかなるもんでもなかったよな。まったく、俺も何やってるんだか」
鳴上「それにしても、酷いな」
>路地裏には先ほどの悪魔が食い荒らした食べ物の残りかすようなものが汚らしく散らかっている。
>その中にあったバナナの皮をうっかり踏みそうになって思わずその場に止まった。
鳴上「……ん。これは?」
>靴の先に何かが当たった。
>初めはここに広がるゴミのひとつかと思ったが、……どうやら違うらしい。
>長い棒のような何かが転がっている。
>思わずそれを手に取って拾ってしまった。
鳴上「!」
鳴上「これは、刀!?」
>こんな場所に何故か、鞘に収まった刀が落ちていたのだ。
>これも悪魔が何処かから持ち去ったものなのだろうか?
鳴上「物騒だな……とりあえず回収しておくか」
鳴上「さて、もう行こう」
884: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:34:52.93:NoS3mQR4o (12/14)
>これ以上この場にいる必要もないだろう。
>早いところ、藤堂たちのところへ戻らないと……
>きっと美鶴や周防は怒っている事だろう。
「グルルルルル……」
鳴上「?」
>今、犬のような鳴き声が聞こえたような気がした。
>細い路地の辺りをゆっくり見回してみる。
>……すると、その奥でギラリと光る二つのものを見た。
>みつけて、しまった。
>これは……眼だ。
>ギラギラと光る、獣の眼。
>獣は眼を光らせ、牙を剥き出しにしながらこちらへ寄ってくる。
>さっき見たピクシーなんかとは格が違う事がその姿だけでわかる。
>一見ライオン思わせる獣の身体についたサソリのような針の尻尾。
>背に生えた大きな翼。
>異形の生物。
>……これこそ悪魔と呼ぶに相応しい風貌だろう。
「グアアアアアッ!」
鳴上「ッ……!」
>そして咆哮が轟く。
>逃げなければ。
>そう思うのに……足が動かない!
>何故だか身体が痺れている。
>この鳴き声の力によるものなのか……!?
鳴上(まずい、今度こそやられる……!)
「ガアアアアアアアアアッ!」
>興奮状態の悪魔がこちらへと突進してる……!
鳴上(くそっ……!)
>この身体にあと数秒で訪れるであろう痛みを覚悟し身を強張らせた。
>……と同時に聞こえてきた破裂音のようなものに、反射的に閉じかけていた瞳が逆に大きく開く事となった。
鳴上「!?」
鳴上(この音は……まさか銃声か!?)
>バンッバンッという音に、悪魔もまた足を止め後ろを振り返った。
>銃声は悪魔がやって来た路地の更に奥の方から聞こえてくる。
>これ以上この場にいる必要もないだろう。
>早いところ、藤堂たちのところへ戻らないと……
>きっと美鶴や周防は怒っている事だろう。
「グルルルルル……」
鳴上「?」
>今、犬のような鳴き声が聞こえたような気がした。
>細い路地の辺りをゆっくり見回してみる。
>……すると、その奥でギラリと光る二つのものを見た。
>みつけて、しまった。
>これは……眼だ。
>ギラギラと光る、獣の眼。
>獣は眼を光らせ、牙を剥き出しにしながらこちらへ寄ってくる。
>さっき見たピクシーなんかとは格が違う事がその姿だけでわかる。
>一見ライオン思わせる獣の身体についたサソリのような針の尻尾。
>背に生えた大きな翼。
>異形の生物。
>……これこそ悪魔と呼ぶに相応しい風貌だろう。
「グアアアアアッ!」
鳴上「ッ……!」
>そして咆哮が轟く。
>逃げなければ。
>そう思うのに……足が動かない!
>何故だか身体が痺れている。
>この鳴き声の力によるものなのか……!?
鳴上(まずい、今度こそやられる……!)
「ガアアアアアアアアアッ!」
>興奮状態の悪魔がこちらへと突進してる……!
鳴上(くそっ……!)
>この身体にあと数秒で訪れるであろう痛みを覚悟し身を強張らせた。
>……と同時に聞こえてきた破裂音のようなものに、反射的に閉じかけていた瞳が逆に大きく開く事となった。
鳴上「!?」
鳴上(この音は……まさか銃声か!?)
>バンッバンッという音に、悪魔もまた足を止め後ろを振り返った。
>銃声は悪魔がやって来た路地の更に奥の方から聞こえてくる。
885: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:37:58.23:NoS3mQR4o (13/14)
「それをこちらへ!」
鳴上「えっ……?」
「その刀を、早く!」
>銃声と共に男の声が響く。
>刀というのはおそらくも何もさっき拾った今も手に持っているそれの事だろう。
鳴上「くっ……!」
>言われるままに痺れた身体で力を振り絞り、刀を宙へ放った。
>それとほぼ同時に路地奥から現れた人影が地を蹴る。
>そして空に舞った二つが重なった。
鳴上「っ、ダメだ、危ない!!」
「グルアアアアアアア!!」
>悪魔が空から降りてくる人影を下で待ち構えるように口を大きく開けている。
>だがその人物は、それをものともせず受け取った刀の鞘を抜いた。
「魔を祓え」
「赤口葛葉」
>男は悪魔のその脳天に目掛けて串刺しにするように刀を突き立てた。
>悪魔の断末魔が響き、そしてその姿が消える……
>あっという間の出来事だった。
鳴上「……」
鳴上「貴方は、一体……」
「……」
>その場には既に自分とその男の姿だけしかなかった。
>未だ動かぬ足でその場に立ち尽くしたまま、ただ呆ける。
>驚く事に助けてくれたその人物は、見てくれは自分とそれほど歳も変わらぬ男子学生だったのだ。
>何故学生だと思ったのかと言えば、理由は彼のその恰好にある。
>詰襟に学帽というアイテム。
>それが揃うだけで、その姿は学生以外の何者にも見えなかった。
>ただ詰襟の上から羽織っている外套が学帽と相俟って現代というよりは大正期のそれを思わせる事と、腰に下げている銃を除けば……という話だったが。
>そして男は手に持っていた刀を鞘へ納め、さも当然というように銃と同じく腰にそれを携える。
「貴方こそ、何故この様な場所に?」
>お互いがお互いを値踏みするかの如く視線を向けあったまましばし沈黙が訪れた。
>どこからともなく現れどうという事もなく悪魔を倒したこの男は、何者なのだろう……?
「それをこちらへ!」
鳴上「えっ……?」
「その刀を、早く!」
>銃声と共に男の声が響く。
>刀というのはおそらくも何もさっき拾った今も手に持っているそれの事だろう。
鳴上「くっ……!」
>言われるままに痺れた身体で力を振り絞り、刀を宙へ放った。
>それとほぼ同時に路地奥から現れた人影が地を蹴る。
>そして空に舞った二つが重なった。
鳴上「っ、ダメだ、危ない!!」
「グルアアアアアアア!!」
>悪魔が空から降りてくる人影を下で待ち構えるように口を大きく開けている。
>だがその人物は、それをものともせず受け取った刀の鞘を抜いた。
「魔を祓え」
「赤口葛葉」
>男は悪魔のその脳天に目掛けて串刺しにするように刀を突き立てた。
>悪魔の断末魔が響き、そしてその姿が消える……
>あっという間の出来事だった。
鳴上「……」
鳴上「貴方は、一体……」
「……」
>その場には既に自分とその男の姿だけしかなかった。
>未だ動かぬ足でその場に立ち尽くしたまま、ただ呆ける。
>驚く事に助けてくれたその人物は、見てくれは自分とそれほど歳も変わらぬ男子学生だったのだ。
>何故学生だと思ったのかと言えば、理由は彼のその恰好にある。
>詰襟に学帽というアイテム。
>それが揃うだけで、その姿は学生以外の何者にも見えなかった。
>ただ詰襟の上から羽織っている外套が学帽と相俟って現代というよりは大正期のそれを思わせる事と、腰に下げている銃を除けば……という話だったが。
>そして男は手に持っていた刀を鞘へ納め、さも当然というように銃と同じく腰にそれを携える。
「貴方こそ、何故この様な場所に?」
>お互いがお互いを値踏みするかの如く視線を向けあったまましばし沈黙が訪れた。
>どこからともなく現れどうという事もなく悪魔を倒したこの男は、何者なのだろう……?
886: ◆Hw7XKfELws:2012/08/15(水) 18:38:31.38:NoS3mQR4o (14/14)
終わります。
また次回。
終わります。
また次回。
887:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空):2012/08/15(水) 18:40:11.90:5yII2cH6o (1/1)
乙!
今回も色んな要素満載だなw
乙!
今回も色んな要素満載だなw
888:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/08/15(水) 19:02:12.18:+E9os7gfo (1/1)
雷堂キタアアアアア!
切られたのはパスカルじゃないよね?
乙、貴方が最近の生きる楽しみです。
雷堂キタアアアアア!
切られたのはパスカルじゃないよね?
乙、貴方が最近の生きる楽しみです。
889:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/15(水) 19:22:44.80:5XZedTKIO (1/1)
2の途中と3、4しかやってないから名前と顔くらいは分かるけど踏み込んだネタについていけなくなってきた…
2の途中と3、4しかやってないから名前と顔くらいは分かるけど踏み込んだネタについていけなくなってきた…
890:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/15(水) 21:43:42.46:Bmh4nODL0 (1/1)
キタァァァァ!
待ってたよ!
キタァァァァ!
待ってたよ!
891:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/08/15(水) 22:04:36.69:i9td49Goo (1/1)
ケルベロスだからパスカルかと思ったんだが違ったのか?
ケルベロスだからパスカルかと思ったんだが違ったのか?
892:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/08/15(水) 23:58:47.51:cje9787/o (1/1)
やはり南条とは血縁関係あり、美鶴さんの考える事もなんじょうくんと同じか
それにしても17代目キョウジじゃなくて初代ライドウさんが出張るとは、
これは厄介そうな事件だな。是非とも御立派様の力を借りて欲しいぜ
やはり南条とは血縁関係あり、美鶴さんの考える事もなんじょうくんと同じか
それにしても17代目キョウジじゃなくて初代ライドウさんが出張るとは、
これは厄介そうな事件だな。是非とも御立派様の力を借りて欲しいぜ
893:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/08/16(木) 00:02:05.14:9Zn8rdhAO (1/1)
乙
ライドウさんキターーーー!!!
乙
ライドウさんキターーーー!!!
894:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/16(木) 01:28:11.72:hyAW1Taqo (1/1)
一体何者なんだ…
一体何者なんだ…
895:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/08/16(木) 07:43:18.14:gO9QwF9/o (1/1)
赤口葛葉ってことは超力ライドウなのか、それともマレビトライドウなのか
赤口葛葉ってことは超力ライドウなのか、それともマレビトライドウなのか
896:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/08/21(火) 01:48:20.63:8JOV7Y+o0 (1/2)
キタローってよく3の本編後だと不思議な力持ってるような感じだけどそんな設定あったっけ?
結局人柱になってただけで他のアトラス作品の主人公と大差ないような気がするけど
キタローってよく3の本編後だと不思議な力持ってるような感じだけどそんな設定あったっけ?
結局人柱になってただけで他のアトラス作品の主人公と大差ないような気がするけど
897:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/08/21(火) 02:00:26.76:PX0VaAszo (1/1)
いやいや、不可能を可能にするユニバースに覚醒しましたやん
いやいや、不可能を可能にするユニバースに覚醒しましたやん
898:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/08/21(火) 02:10:57.48:8JOV7Y+o0 (2/2)
>>897
自分の表現が間違えてたみたいですまない
自分の言いたいことは
ペルソナ系の二次創作でキタローだけが何でもできるみたいに扱われてること
人の総意を越えたみたいなのは他の主人公も同じなのになーって思って
スレ違だし退散するよ すんません
>>897
自分の表現が間違えてたみたいですまない
自分の言いたいことは
ペルソナ系の二次創作でキタローだけが何でもできるみたいに扱われてること
人の総意を越えたみたいなのは他の主人公も同じなのになーって思って
スレ違だし退散するよ すんません
899:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/08/21(火) 03:02:03.06:dt83U1l7o (1/1)
>>898
ペルソナ3以降にアトラス作品やった奴は他のを知らない奴が多いからだろ
だからキタローすげーって言ってるだけ
>>898
ペルソナ3以降にアトラス作品やった奴は他のを知らない奴が多いからだろ
だからキタローすげーって言ってるだけ
900:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/21(火) 07:07:25.44:F3NXTEDyP (1/1)
スレ違いだと思うなら最初から聞くなよ
スレ違いだと思うなら最初から聞くなよ
901:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/21(火) 14:10:34.86:SGiLeFBg0 (1/1)
>>899
それは間違いないな。
ほかの人たちはさらにとんでもない奴、勝てるはずのないものに勝ったりしてるのにキタローしか褒めないし。
>>900
それを言いだしたらお前もわざわざいうのは不必要だろ?
俺はやりたいようにやるぜ!
カオスルートへ→
>>899
それは間違いないな。
ほかの人たちはさらにとんでもない奴、勝てるはずのないものに勝ったりしてるのにキタローしか褒めないし。
>>900
それを言いだしたらお前もわざわざいうのは不必要だろ?
俺はやりたいようにやるぜ!
カオスルートへ→
902:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/21(火) 16:31:34.35:N3J6+3gSo (1/1)
他の2次創作なんて知りませんし
文句があるなら直接その製作者に言えばいいだろ
他の2次創作なんて知りませんし
文句があるなら直接その製作者に言えばいいだろ
903:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/21(火) 18:19:57.42:aOAtY1Ay0 (1/2)
>落ち着け
>落ち着け
904:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/08/21(火) 21:28:21.23:iCQjY1W0o (1/1)
>>901
ニュクスと他ボスじゃ性質が違うだろ。一概に上下優劣なんて決められない
アレフは唯一神ぶっ殺したけどニュクスに対抗できるのか、逆にキタローは唯一神に対抗できるのかって堂々巡りになる
>>901
ニュクスと他ボスじゃ性質が違うだろ。一概に上下優劣なんて決められない
アレフは唯一神ぶっ殺したけどニュクスに対抗できるのか、逆にキタローは唯一神に対抗できるのかって堂々巡りになる
905:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/21(火) 23:31:01.39:aOAtY1Ay0 (2/2)
もう美鶴とたっちゃんは一緒にツーリングにでも行けよと言いたい
もう美鶴とたっちゃんは一緒にツーリングにでも行けよと言いたい
906:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/22(水) 09:54:41.86:UXq+VFCCo (1/1)
ペルソナシリーズの中だけなら結構異質だと思うけどなぁ~
他のメガテンやらをいれるなら霞むかもしれんけど
ペルソナシリーズの中だけなら結構異質だと思うけどなぁ~
他のメガテンやらをいれるなら霞むかもしれんけど
907:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/24(金) 03:05:14.86:7zVMenuj0 (1/1)
番長だって世界のアルカナ持ってるだろ
番長だって世界のアルカナ持ってるだろ
908:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/08/24(金) 03:20:47.17:6n3VEoeWo (1/1)
ここの番長は真エンド行ってないから世界のアルカナはまだな筈
ここの番長は真エンド行ってないから世界のアルカナはまだな筈
909:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/08/24(金) 03:37:07.61:xpnONz4fo (1/1)
>>908
だな。
しかし、キタローの世界入手後の異質っぷりもとんでもないけど、番長の世界入手後もガッツリ人間卒業だよな
>>908
だな。
しかし、キタローの世界入手後の異質っぷりもとんでもないけど、番長の世界入手後もガッツリ人間卒業だよな
910:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/24(金) 05:32:17.55:kjz/SmJPP (1/1)
でもこのスレの番長は世界未習得
でもこのスレの番長は世界未習得
911:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/08/26(日) 09:49:36.52:su1jNyla0 (1/2)
話が進めば世界習得するのか?
話が進めば世界習得するのか?
912:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/08/26(日) 09:54:42.21:GMSpTEeho (1/1)
>>911
世界入手=最終決戦勝利フラグ
仮に入手するなら、このSSが終わる時になるだろうよ
>>911
世界入手=最終決戦勝利フラグ
仮に入手するなら、このSSが終わる時になるだろうよ
913:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/08/26(日) 20:04:34.46:su1jNyla0 (2/2)
>>912
まぁ確かにそうだな
とにかく続きを待つ
>>912
まぁ確かにそうだな
とにかく続きを待つ
914:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/08/28(火) 13:01:47.94:25sUyPAp0 (1/4)
まだか
まだか
915:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/08/28(火) 17:25:56.30:Bm3fKwG50 (1/1)
まだなのか
まだなのか
916: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:01:02.41:aZjyJnVQo (1/14)
『その少年を保護しこの場からすぐに立ち去るぞ、ライドウ』
鳴上「え?」
>続いて声が聞こえてくる。
>だが、目の前の男の口は動いていなかったし、彼の声でもない。
>という事は。
鳴上(今度は誰だ……)
>男の後ろから気配が近付いてくる。
>暗闇の中からやってきたその新たな来訪者とは……
>闇と同化する程に真っ黒な猫だった。
>黒猫がニャアと鳴き声を上げると、それに重なるようにまた声が聞こえてくる。
黒猫『こ奴には聞きたい事もあるだろうが、また後だ』
鳴上「!?」
鳴上「今の、……え?」
鳴上「猫が喋った!?」
>例えるならそれはテレビの音声多重放送。
>信じ難い事だったが、今の様子からして声の主は男の足元にいる黒猫だとしか考えられなかった。
>悪魔なんてものが本当に出現しているのだから、猫が喋るくらい今更どうという事もないのかもしれないが……
鳴上(それとも、この猫も悪魔なのか?)
>そんな風に彼らに対して警戒を強めていると、男と黒猫は顔を見合わせた。
>そしてまたこちらへと向き直ると学帽の男が口を開いた。
「とにかく今はここから離れましょう。歩けそうですか?」
鳴上「あ、ああ……なんとか」
>まだ身体の痺れは完全に抜け切っていないが、移動する事くらいは出来そうになってきた。
>男は小さく頷くと外套を翻し路地を歩いていく。
>その後を追った。
>……
『その少年を保護しこの場からすぐに立ち去るぞ、ライドウ』
鳴上「え?」
>続いて声が聞こえてくる。
>だが、目の前の男の口は動いていなかったし、彼の声でもない。
>という事は。
鳴上(今度は誰だ……)
>男の後ろから気配が近付いてくる。
>暗闇の中からやってきたその新たな来訪者とは……
>闇と同化する程に真っ黒な猫だった。
>黒猫がニャアと鳴き声を上げると、それに重なるようにまた声が聞こえてくる。
黒猫『こ奴には聞きたい事もあるだろうが、また後だ』
鳴上「!?」
鳴上「今の、……え?」
鳴上「猫が喋った!?」
>例えるならそれはテレビの音声多重放送。
>信じ難い事だったが、今の様子からして声の主は男の足元にいる黒猫だとしか考えられなかった。
>悪魔なんてものが本当に出現しているのだから、猫が喋るくらい今更どうという事もないのかもしれないが……
鳴上(それとも、この猫も悪魔なのか?)
>そんな風に彼らに対して警戒を強めていると、男と黒猫は顔を見合わせた。
>そしてまたこちらへと向き直ると学帽の男が口を開いた。
「とにかく今はここから離れましょう。歩けそうですか?」
鳴上「あ、ああ……なんとか」
>まだ身体の痺れは完全に抜け切っていないが、移動する事くらいは出来そうになってきた。
>男は小さく頷くと外套を翻し路地を歩いていく。
>その後を追った。
>……
917: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:02:37.41:aZjyJnVQo (2/14)
鳴上「あの……」
「はい、なんでしょうか」
鳴上「さっきはありがとうございました」
「いえ。あれが自分の仕事ですから」
鳴上(仕事……)
鳴上「悪魔を退治するのが、ですか?」
「貴方はあれが悪魔だと理解出来ているのですね」
鳴上「野生の悪魔をこの目で見たのは今日が初めてではあるけど」
「成程」
鳴上「それで、その……一体何者なんだ?」
鳴上「貴方……と、そっちの猫も」
>大通りまで出ると男と猫は足を止め、振り返る。
>そして黒猫が一歩こちらへと近寄った。
黒猫『うぬと会ったのはこれで三度目か、少年』
鳴上「え? ……ああっ!!」
鳴上「まさか寮の前でメティスが構っていた、あの黒猫か!?」
>これが三度目という事は、やはりポロニアンモールで周防と一緒にいたのも目の前の黒猫だったのだろうか。
黒猫『……ふむ。あの娘もそうだったが、これではっきりとしたな』
鳴上「何がだ?」
黒猫『うぬに我の声が聞こえているという事が、だ』
黒猫『本来ならば我の声は奴のようなデビルサマナーにしか聞く事が出来ぬのだが』
>そう言って黒猫は学帽の男を見上げる。
鳴上「デビルサマナー……?」
>聞き慣れない単語にしばし困惑していると、こちらに複数の足音が近付いてくるのを耳にした。
美鶴「鳴上!」
鳴上「!」
藤堂「良かった、無事だったか」
達哉「まったく……勝手に一人で行動するんじゃない」
鳴上「す、すみません。でも……」
美鶴「ん? 我々以外に無事な人間がまだいたのか!?」
鳴上「はい、そうです。えっと……」
「自分の名はライドウ。葛葉ライドウと言います。ライドウで結構ですので」
>学帽の男、ライドウは小さく頭を下げる。
鳴上「あの……」
「はい、なんでしょうか」
鳴上「さっきはありがとうございました」
「いえ。あれが自分の仕事ですから」
鳴上(仕事……)
鳴上「悪魔を退治するのが、ですか?」
「貴方はあれが悪魔だと理解出来ているのですね」
鳴上「野生の悪魔をこの目で見たのは今日が初めてではあるけど」
「成程」
鳴上「それで、その……一体何者なんだ?」
鳴上「貴方……と、そっちの猫も」
>大通りまで出ると男と猫は足を止め、振り返る。
>そして黒猫が一歩こちらへと近寄った。
黒猫『うぬと会ったのはこれで三度目か、少年』
鳴上「え? ……ああっ!!」
鳴上「まさか寮の前でメティスが構っていた、あの黒猫か!?」
>これが三度目という事は、やはりポロニアンモールで周防と一緒にいたのも目の前の黒猫だったのだろうか。
黒猫『……ふむ。あの娘もそうだったが、これではっきりとしたな』
鳴上「何がだ?」
黒猫『うぬに我の声が聞こえているという事が、だ』
黒猫『本来ならば我の声は奴のようなデビルサマナーにしか聞く事が出来ぬのだが』
>そう言って黒猫は学帽の男を見上げる。
鳴上「デビルサマナー……?」
>聞き慣れない単語にしばし困惑していると、こちらに複数の足音が近付いてくるのを耳にした。
美鶴「鳴上!」
鳴上「!」
藤堂「良かった、無事だったか」
達哉「まったく……勝手に一人で行動するんじゃない」
鳴上「す、すみません。でも……」
美鶴「ん? 我々以外に無事な人間がまだいたのか!?」
鳴上「はい、そうです。えっと……」
「自分の名はライドウ。葛葉ライドウと言います。ライドウで結構ですので」
>学帽の男、ライドウは小さく頭を下げる。
918:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/08/28(火) 23:03:40.82:25sUyPAp0 (2/4)
待ってた
待ってた
919: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:04:19.95:aZjyJnVQo (3/14)
鳴上・藤堂「葛葉!?」
鳴上「って、あれですよね。藤堂さんの名刺に書いてあった探偵事務所と同じ名前……」
藤堂「ああ。別に俺の探偵事務所って訳じゃないけどさ」
ライドウ「……!」
ライドウ「葛葉探偵事務所の方、ですか」
藤堂「どうも、藤堂です。君、もしかして事務所からの応援とか?」
ライドウ「……いえ。自分はまったく別口からの依頼でここにやってきました」
藤堂「へえ? でもその様子だと俺と似たような依頼を受けてるっぽいと見ていいのかな」
藤堂「君は多分……デビルサマナーってヤツなんだろう?」
ライドウ「……ええ」
鳴上「さっきも聞いたけどそのデビルサマナーってどういうものなんですか?」
藤堂「言葉通りのものだよ。悪魔召喚師……悪魔を使役し悪魔を討つ者の事だ」
藤堂「俺のとこの所長やこの間あのプログラムが入った機械を貸してくれた友人なんかもそうだな」
ライドウ「自分の事について事情を知っているようですが、貴方がたはデビルサマナーではないのですか?」
藤堂「あー、俺たちはそういうのとはまたちょっと違うんだ」
黒猫『詳しい事情を聞いた方がよさそうだな、ライドウ』
美鶴「……? 今の声は……」
藤堂「え、桐条さんも聞こえた? って事はもしかして、そこの……」
達哉「この黒猫がどうかしたのか?」
>美鶴や藤堂にも黒猫の声が聞こえているようだが周防は違うようだ。
黒猫『む!? こ奴はあの時の!』
>黒猫は周防を睨みながら毛を逆立てている。
>この間の事がよほど気に障っているのだろうか。
>そんな様子の黒猫をライドウは抱き上げる。
ライドウ「これは業斗童子、ゴウトです」
ゴウト『これなどと言うな!』
藤堂「あ、やっぱり」
美鶴「なんと……!」
達哉「?」
ライドウ「それは一先ず置いておくとして」
ゴウト『それでも無いわ!』
ライドウ「貴方がたの事と、今この街で起こっている現象について。詳しい事を聞かせて頂いても良いでしょうか」
>ゴウトと言う名らしい黒猫の声を無視しながらライドウは尋ねてきた。
>美鶴たちと視線を合わせる。
>そして無言のまま目だけで会話し、頷いた。
鳴上・藤堂「葛葉!?」
鳴上「って、あれですよね。藤堂さんの名刺に書いてあった探偵事務所と同じ名前……」
藤堂「ああ。別に俺の探偵事務所って訳じゃないけどさ」
ライドウ「……!」
ライドウ「葛葉探偵事務所の方、ですか」
藤堂「どうも、藤堂です。君、もしかして事務所からの応援とか?」
ライドウ「……いえ。自分はまったく別口からの依頼でここにやってきました」
藤堂「へえ? でもその様子だと俺と似たような依頼を受けてるっぽいと見ていいのかな」
藤堂「君は多分……デビルサマナーってヤツなんだろう?」
ライドウ「……ええ」
鳴上「さっきも聞いたけどそのデビルサマナーってどういうものなんですか?」
藤堂「言葉通りのものだよ。悪魔召喚師……悪魔を使役し悪魔を討つ者の事だ」
藤堂「俺のとこの所長やこの間あのプログラムが入った機械を貸してくれた友人なんかもそうだな」
ライドウ「自分の事について事情を知っているようですが、貴方がたはデビルサマナーではないのですか?」
藤堂「あー、俺たちはそういうのとはまたちょっと違うんだ」
黒猫『詳しい事情を聞いた方がよさそうだな、ライドウ』
美鶴「……? 今の声は……」
藤堂「え、桐条さんも聞こえた? って事はもしかして、そこの……」
達哉「この黒猫がどうかしたのか?」
>美鶴や藤堂にも黒猫の声が聞こえているようだが周防は違うようだ。
黒猫『む!? こ奴はあの時の!』
>黒猫は周防を睨みながら毛を逆立てている。
>この間の事がよほど気に障っているのだろうか。
>そんな様子の黒猫をライドウは抱き上げる。
ライドウ「これは業斗童子、ゴウトです」
ゴウト『これなどと言うな!』
藤堂「あ、やっぱり」
美鶴「なんと……!」
達哉「?」
ライドウ「それは一先ず置いておくとして」
ゴウト『それでも無いわ!』
ライドウ「貴方がたの事と、今この街で起こっている現象について。詳しい事を聞かせて頂いても良いでしょうか」
>ゴウトと言う名らしい黒猫の声を無視しながらライドウは尋ねてきた。
>美鶴たちと視線を合わせる。
>そして無言のまま目だけで会話し、頷いた。
920: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:06:31.67:aZjyJnVQo (4/14)
美鶴「ライドウと言ったか。君も我々の寮に来るといい」
ライドウ「寮、ですか?」
美鶴「我らのような力を持つ者が集まり無事な一般人をそこで保護している」
美鶴「行く途中で私たちと事のあらましについて説明しよう。とは言っても、我々にも解らない事だらけなんだがな」
ライドウ「そうですか。……」
ゴウト『……ライドウ』
ライドウ「解りました。行きましょう」
ゴウト『ライドウ! お前……むぐっ!?』
ライドウ「案内を宜しくお願いします」
鳴上「ゴウトが苦しそうだけど……」
ライドウ「気にしないで下さい」
鳴上「……」
>何か言いかけていたゴウトの口を掌で塞いだままライドウは涼しげに告げる。
>……ともかく、彼らを連れて寮に戻る事にした。
>……
ライドウ「ペルソナ能力……ですか。確かに自分とは異なる力のようですね」
>ライドウにおおまかな説明をする間、彼は興味深そうな面持ちでそれを聞いていた。
>デビルサマナーの彼であっても、初めて聞く力だったらしい。
達哉「ペルソナ……」
美鶴「そういえば周防さんにも私たちの力について詳しい話をするのは初めてでしたね」
達哉「ん……そうだった、か?」
鳴上「驚きましたか?」
達哉「……」
達哉「いや、確かに不思議な能力だとは思うが、そういう事じゃなくて……」
鳴上「?」
達哉「何処かで聞き覚えのある単語だと思って」
鳴上「確か心理学用語でペルソナっていうのがあると聞いた覚えが俺にもありますけど」
達哉「そういうのでもなくて……ああ、そうだ!」
達哉「子供の頃に兄貴とした遊びだ。ペルソナ様っていう」
鳴上「ペルソナ様?」
藤堂「!」
達哉「確か未来の自分が見えるとかどうとか……」
藤堂「……そっか、おまわりさんもやった事があるのか」
鳴上「もしかして藤堂さんも?」
藤堂「まあね。俺が学生時代に流行ってたまじない遊びだけど、鳴上は聞いた事ないか?」
鳴上「いえ、俺はそういうのはちょっと。桐条さんは?」
美鶴「私もないな。そんな遊びがあったなんて初耳だ」
藤堂「ふうん……」
美鶴「ライドウと言ったか。君も我々の寮に来るといい」
ライドウ「寮、ですか?」
美鶴「我らのような力を持つ者が集まり無事な一般人をそこで保護している」
美鶴「行く途中で私たちと事のあらましについて説明しよう。とは言っても、我々にも解らない事だらけなんだがな」
ライドウ「そうですか。……」
ゴウト『……ライドウ』
ライドウ「解りました。行きましょう」
ゴウト『ライドウ! お前……むぐっ!?』
ライドウ「案内を宜しくお願いします」
鳴上「ゴウトが苦しそうだけど……」
ライドウ「気にしないで下さい」
鳴上「……」
>何か言いかけていたゴウトの口を掌で塞いだままライドウは涼しげに告げる。
>……ともかく、彼らを連れて寮に戻る事にした。
>……
ライドウ「ペルソナ能力……ですか。確かに自分とは異なる力のようですね」
>ライドウにおおまかな説明をする間、彼は興味深そうな面持ちでそれを聞いていた。
>デビルサマナーの彼であっても、初めて聞く力だったらしい。
達哉「ペルソナ……」
美鶴「そういえば周防さんにも私たちの力について詳しい話をするのは初めてでしたね」
達哉「ん……そうだった、か?」
鳴上「驚きましたか?」
達哉「……」
達哉「いや、確かに不思議な能力だとは思うが、そういう事じゃなくて……」
鳴上「?」
達哉「何処かで聞き覚えのある単語だと思って」
鳴上「確か心理学用語でペルソナっていうのがあると聞いた覚えが俺にもありますけど」
達哉「そういうのでもなくて……ああ、そうだ!」
達哉「子供の頃に兄貴とした遊びだ。ペルソナ様っていう」
鳴上「ペルソナ様?」
藤堂「!」
達哉「確か未来の自分が見えるとかどうとか……」
藤堂「……そっか、おまわりさんもやった事があるのか」
鳴上「もしかして藤堂さんも?」
藤堂「まあね。俺が学生時代に流行ってたまじない遊びだけど、鳴上は聞いた事ないか?」
鳴上「いえ、俺はそういうのはちょっと。桐条さんは?」
美鶴「私もないな。そんな遊びがあったなんて初耳だ」
藤堂「ふうん……」
921: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:08:45.86:aZjyJnVQo (5/14)
藤堂「なあ、おまわりさんはその遊びをやった後に不思議体験したりとか変な夢を見たりしなかったのか?」
達哉「え? ……どうだったかな。記憶に残って無いって事はそんなのは無かったんだと思うが」
藤堂「……」
ライドウ「貴方がたの持つ不思議な力の事は大体理解出来ました」
ライドウ「それで、今起きている怪現象についてはJOKERなる人物が鍵を握っている可能性が高いという事でしたが……」
ライドウ「もしかしたら自分もそれらしき人物の姿を見たかもしれません」
美鶴「それは本当か!?」
ライドウ「はい。鳴上君を発見する少し前に人影を見つけたので追ったのですが、その……」
ゴウト『……』
>ライドウは何故か気まずそうに言い淀んでいる。
鳴上「俺と会う少し前っていうと……」
ライドウ「正確な時間は解りませんが、急に街中で悪魔が現れ始めた直後くらいでしょうか」
ライドウ「暗かった上に後ろ姿しか確認していませんが、白い詰襟のような服装をしていたと思います」
鳴上「白い詰襟?」
>ライドウの言う人物の服装と、先程寮に現れたJOKERを名乗る人物の服装は全く異なっている。
>これはつまり……
鳴上「ここにきてまた登場人物が増えた、って事か?」
美鶴「そういえば、JOKERはあの場にいた人間以外にも他に誰かいるような事を匂わせる発言をしていたな」
藤堂「そろそろ勝負を着けなきゃとかってアレか」
達哉「あとは異物が混じってる……だったか? どちらにしても意味はよく解らなかったが」
ライドウ「……」
美鶴「もしかしたらJOKERの言う勝負をしなければならない相手というのは君の事だったのかと一瞬思ったが、違うのか?」
鳴上「コート姿に紙袋を被って刀を持った男なんですけど」
>ライドウは少しの間思案するが、すぐに首を横に振った。
ライドウ「JOKERという名前にもその様な姿の人物にも心当たりはまるでありませんね」
ライドウ「皆さんもそうなのですか?」
美鶴「そういう事だ」
藤堂「まあな」
鳴上「ん……」
>確かにあんなおかしな人物の事など知りもしない。
>そうではあるのだが。
>……
>『JOKER』という名前自体は、つい最近目にした記憶はあった。
藤堂「なあ、おまわりさんはその遊びをやった後に不思議体験したりとか変な夢を見たりしなかったのか?」
達哉「え? ……どうだったかな。記憶に残って無いって事はそんなのは無かったんだと思うが」
藤堂「……」
ライドウ「貴方がたの持つ不思議な力の事は大体理解出来ました」
ライドウ「それで、今起きている怪現象についてはJOKERなる人物が鍵を握っている可能性が高いという事でしたが……」
ライドウ「もしかしたら自分もそれらしき人物の姿を見たかもしれません」
美鶴「それは本当か!?」
ライドウ「はい。鳴上君を発見する少し前に人影を見つけたので追ったのですが、その……」
ゴウト『……』
>ライドウは何故か気まずそうに言い淀んでいる。
鳴上「俺と会う少し前っていうと……」
ライドウ「正確な時間は解りませんが、急に街中で悪魔が現れ始めた直後くらいでしょうか」
ライドウ「暗かった上に後ろ姿しか確認していませんが、白い詰襟のような服装をしていたと思います」
鳴上「白い詰襟?」
>ライドウの言う人物の服装と、先程寮に現れたJOKERを名乗る人物の服装は全く異なっている。
>これはつまり……
鳴上「ここにきてまた登場人物が増えた、って事か?」
美鶴「そういえば、JOKERはあの場にいた人間以外にも他に誰かいるような事を匂わせる発言をしていたな」
藤堂「そろそろ勝負を着けなきゃとかってアレか」
達哉「あとは異物が混じってる……だったか? どちらにしても意味はよく解らなかったが」
ライドウ「……」
美鶴「もしかしたらJOKERの言う勝負をしなければならない相手というのは君の事だったのかと一瞬思ったが、違うのか?」
鳴上「コート姿に紙袋を被って刀を持った男なんですけど」
>ライドウは少しの間思案するが、すぐに首を横に振った。
ライドウ「JOKERという名前にもその様な姿の人物にも心当たりはまるでありませんね」
ライドウ「皆さんもそうなのですか?」
美鶴「そういう事だ」
藤堂「まあな」
鳴上「ん……」
>確かにあんなおかしな人物の事など知りもしない。
>そうではあるのだが。
>……
>『JOKER』という名前自体は、つい最近目にした記憶はあった。
922: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:11:46.61:aZjyJnVQo (6/14)
達哉「……」
達哉「これはあくまで昔の話だが」
達哉「俺がかつて住んでいた地域にJOKERと呼ばれる殺人鬼が出没していた……っていう話はあるな」
鳴上「!」
ライドウ「それは何時頃の話で?」
達哉「俺がまだ高校生の頃の話だから、十年は前だな」
達哉「その殺人の仕方がかなり猟奇的で、どういう風にそうしたのかは不明だがどれも何かの獣に食い荒らされたような感じだったらしい」
達哉「こんな惨たらしい殺し方をするなんて人間じゃない、そいつは悪魔か何かだって言ってる連中もいたな」
ライドウ「では、その悪魔の如き殺人鬼がまた今頃になって……?」
達哉「いや、それはない。そいつは結局、何かの事故だかに巻き込まれて死んでしまったという話だ」
達哉「ただ……」
ライドウ「ただ?」
達哉「つい最近になって、この時と同じような殺され方をしてる遺体が見つかったという事件が起こった」
藤堂「あー、最近ニュースで見たな、それ」
達哉「ネットでもJOKER事件の時の話と関連付けるような話題で一部盛り上がっていたようだ」
鳴上(周防さんも知っていたのか、この話。警察だから当然か……)
鳴上(でも、まさか周防さんの住んでいたところで起きていた事だったとはな)
達哉「……。もし仮にあの事件の模倣犯が現れているのだとしたら」
達哉「それがさっき現れたJOKERだったとしたら、という可能性はないだろうか」
ライドウ「JOKERは皆さんの事を残らず消してやると言っていたんでしたね」
美鶴「殺人鬼による無差別殺人予告と言ったところか……」
藤堂「うーん……」
鳴上「……」
達哉「これは今考え付いたちっぽけな仮説の一つに過ぎない。しかもかなり無理矢理なものだ。あまり深くは考えないで欲しい」
>周防は自分で言った意見であるにも関わらず、それに対して腑に落ちない部分も持っている様子だった。
藤堂「さっき悪魔の如き殺人鬼って言ったけど、あのJOKER本当に悪魔だったりしてな」
藤堂「あいつが言ってた通り、街中にも本当に悪魔が現れ始めた訳だし」
鳴上「少なくともあれで普通の人間っていうのはまずありえないでしょうね」
藤堂「だよな」
藤堂「それにしてもその悪魔だけどさ、やたらと落ち着きがないというか……大物では無いにせよ、凶暴なのが多い気がする」
藤堂「さっき鳴上を追う途中にも何回か出くわしたけど、どいつも話の通じないヤツばっかだった」
ライドウ「それは恐らく、今宵が満月だからでしょうね」
美鶴「満月……?」
藤堂「え、……ああッ!?」
>空を見上げた藤堂が声を上げる。
>そこにはうっすらとした雲に隠れてはいるものの、確かに丸い月のシルエットが浮かんでいる。
>しかし、その雲間からちらつく輝きは今まで見た事もない不気味な光のような気がした……
達哉「……」
達哉「これはあくまで昔の話だが」
達哉「俺がかつて住んでいた地域にJOKERと呼ばれる殺人鬼が出没していた……っていう話はあるな」
鳴上「!」
ライドウ「それは何時頃の話で?」
達哉「俺がまだ高校生の頃の話だから、十年は前だな」
達哉「その殺人の仕方がかなり猟奇的で、どういう風にそうしたのかは不明だがどれも何かの獣に食い荒らされたような感じだったらしい」
達哉「こんな惨たらしい殺し方をするなんて人間じゃない、そいつは悪魔か何かだって言ってる連中もいたな」
ライドウ「では、その悪魔の如き殺人鬼がまた今頃になって……?」
達哉「いや、それはない。そいつは結局、何かの事故だかに巻き込まれて死んでしまったという話だ」
達哉「ただ……」
ライドウ「ただ?」
達哉「つい最近になって、この時と同じような殺され方をしてる遺体が見つかったという事件が起こった」
藤堂「あー、最近ニュースで見たな、それ」
達哉「ネットでもJOKER事件の時の話と関連付けるような話題で一部盛り上がっていたようだ」
鳴上(周防さんも知っていたのか、この話。警察だから当然か……)
鳴上(でも、まさか周防さんの住んでいたところで起きていた事だったとはな)
達哉「……。もし仮にあの事件の模倣犯が現れているのだとしたら」
達哉「それがさっき現れたJOKERだったとしたら、という可能性はないだろうか」
ライドウ「JOKERは皆さんの事を残らず消してやると言っていたんでしたね」
美鶴「殺人鬼による無差別殺人予告と言ったところか……」
藤堂「うーん……」
鳴上「……」
達哉「これは今考え付いたちっぽけな仮説の一つに過ぎない。しかもかなり無理矢理なものだ。あまり深くは考えないで欲しい」
>周防は自分で言った意見であるにも関わらず、それに対して腑に落ちない部分も持っている様子だった。
藤堂「さっき悪魔の如き殺人鬼って言ったけど、あのJOKER本当に悪魔だったりしてな」
藤堂「あいつが言ってた通り、街中にも本当に悪魔が現れ始めた訳だし」
鳴上「少なくともあれで普通の人間っていうのはまずありえないでしょうね」
藤堂「だよな」
藤堂「それにしてもその悪魔だけどさ、やたらと落ち着きがないというか……大物では無いにせよ、凶暴なのが多い気がする」
藤堂「さっき鳴上を追う途中にも何回か出くわしたけど、どいつも話の通じないヤツばっかだった」
ライドウ「それは恐らく、今宵が満月だからでしょうね」
美鶴「満月……?」
藤堂「え、……ああッ!?」
>空を見上げた藤堂が声を上げる。
>そこにはうっすらとした雲に隠れてはいるものの、確かに丸い月のシルエットが浮かんでいる。
>しかし、その雲間からちらつく輝きは今まで見た事もない不気味な光のような気がした……
923: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:14:52.69:aZjyJnVQo (7/14)
藤堂「俺とした事が今まで気付かなかった……なるほど、そういう事か」
鳴上「満月だと何か問題が?」
藤堂「月の満ち欠けは悪魔に強い影響を及ぼすんだよ。満月の場合悪魔は好戦的になったり、さっきも言ったように基本的に話が通じなくなったりする」
藤堂「それを考えると最初に会ったピクシーなんかはまだ会話できる方だった訳だ」
藤堂「でもいくら満月だって言っても、ここまで会話が出来なくなるなんてことは今まで経験無かったけどな……」
藤堂「……ん? ちょっと待てよ。確か満月って8月の頭にならなかったっけ?」
美鶴「……。8月の満月の時期は2日に一度ありましたが、月末にももう一度ありました」
美鶴「31日です」
鳴上「……!」
鳴上「もしかして、今は31日と1日の間な訳だからまだ満月のまま……って事ですか!?」
美鶴「多分そういう事なのだろうな」
達哉「つまり、さっきやろうとした交渉で乗り切るという手段はこの先使えなくなるという事か?」
藤堂「……」
>皆、沈黙してしまう。
>これは悪魔への対抗手段が力押ししかなくなってしまったという事だ。
>悪魔召喚プログラムでの仲魔の召喚も出来ない今、この場にいる悪魔を会話で味方につけた後マグネタイトを惜しまずにそのまま戦力としてずっと出ていて貰う事にすればいいかとも考えていたのも無理になってしまった。
>……ペルソナという力がある自分たちはまだいい。
>だが、そうでない一般人も多数いるのだ。
>彼らはこの先悪魔とどう折り合っていけばいいというのか……
ライドウ「ご安心を」
ライドウ「自分がいるからには、悪魔達の好きにはさせません」
ライドウ「事件の解決に向けて自分も全力で協力します」
>不安が募る一方で、ライドウが静かにだが心強い言葉を発した。
美鶴「……すまない、助かるよ。こんなところで君のような悪魔の専門家と出会えた事は不幸中の幸いだったな」
藤堂「よろしく頼むよ、ライドウ」
ライドウ「此方こそ。ところで、皆さんの寮というのはあの建物の事でしょうか」
>ライドウが暗闇の中でひとつだけ灯りの照るその場所を見つめながら尋ねる。
美鶴「ああ、そうだ。こちらでは特に問題は起こっていないようだ」
達哉「帰り道でも悪魔には会わなかったな」
ライドウ「あの一帯の悪魔はおおよそ自分が始末しましたので。また何時何処で何が出てくるとも解りませんが」
藤堂「さっすが」
鳴上「凄いな……」
美鶴「みんなにも早く君の事を紹介せねばな。さ、早くこちらへ」
>寮全体を観察するように見上げているライドウに美鶴が声をかける。
>藤堂と周防と美鶴が先に中へと入り、ライドウとゴウトと続いて自分が最後になる。
>と、そこでバチッという何かが弾けるような音と共にライドウの足の動きが止まった。
藤堂「俺とした事が今まで気付かなかった……なるほど、そういう事か」
鳴上「満月だと何か問題が?」
藤堂「月の満ち欠けは悪魔に強い影響を及ぼすんだよ。満月の場合悪魔は好戦的になったり、さっきも言ったように基本的に話が通じなくなったりする」
藤堂「それを考えると最初に会ったピクシーなんかはまだ会話できる方だった訳だ」
藤堂「でもいくら満月だって言っても、ここまで会話が出来なくなるなんてことは今まで経験無かったけどな……」
藤堂「……ん? ちょっと待てよ。確か満月って8月の頭にならなかったっけ?」
美鶴「……。8月の満月の時期は2日に一度ありましたが、月末にももう一度ありました」
美鶴「31日です」
鳴上「……!」
鳴上「もしかして、今は31日と1日の間な訳だからまだ満月のまま……って事ですか!?」
美鶴「多分そういう事なのだろうな」
達哉「つまり、さっきやろうとした交渉で乗り切るという手段はこの先使えなくなるという事か?」
藤堂「……」
>皆、沈黙してしまう。
>これは悪魔への対抗手段が力押ししかなくなってしまったという事だ。
>悪魔召喚プログラムでの仲魔の召喚も出来ない今、この場にいる悪魔を会話で味方につけた後マグネタイトを惜しまずにそのまま戦力としてずっと出ていて貰う事にすればいいかとも考えていたのも無理になってしまった。
>……ペルソナという力がある自分たちはまだいい。
>だが、そうでない一般人も多数いるのだ。
>彼らはこの先悪魔とどう折り合っていけばいいというのか……
ライドウ「ご安心を」
ライドウ「自分がいるからには、悪魔達の好きにはさせません」
ライドウ「事件の解決に向けて自分も全力で協力します」
>不安が募る一方で、ライドウが静かにだが心強い言葉を発した。
美鶴「……すまない、助かるよ。こんなところで君のような悪魔の専門家と出会えた事は不幸中の幸いだったな」
藤堂「よろしく頼むよ、ライドウ」
ライドウ「此方こそ。ところで、皆さんの寮というのはあの建物の事でしょうか」
>ライドウが暗闇の中でひとつだけ灯りの照るその場所を見つめながら尋ねる。
美鶴「ああ、そうだ。こちらでは特に問題は起こっていないようだ」
達哉「帰り道でも悪魔には会わなかったな」
ライドウ「あの一帯の悪魔はおおよそ自分が始末しましたので。また何時何処で何が出てくるとも解りませんが」
藤堂「さっすが」
鳴上「凄いな……」
美鶴「みんなにも早く君の事を紹介せねばな。さ、早くこちらへ」
>寮全体を観察するように見上げているライドウに美鶴が声をかける。
>藤堂と周防と美鶴が先に中へと入り、ライドウとゴウトと続いて自分が最後になる。
>と、そこでバチッという何かが弾けるような音と共にライドウの足の動きが止まった。
924: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:17:26.33:aZjyJnVQo (8/14)
ライドウ「!!」
鳴上「どうしましたか?」
ゴウト『これは……!?』
>ゴウトが前足を出し、寮の中へと入ろうと試みる。
>するとまたバチッという音がしてゴウトの体が跳ね返されたのが見えた。
鳴上「なっ……大丈夫か!?」
ゴウト『……。心配には及ばない。だが、どうやらこの建物に結界のようなものが張られているとみた』
鳴上「結界? でも、さっき桐条さんたちは普通に中へ入って……」
>恐る恐る、自分も手だけ外から寮の中へ向けて伸ばしてみた。
鳴上「……」
鳴上「やっぱり、別になんともないぞ?」
ライドウ「……」
>自分の手はゴウトが弾かれた場所よりも進んでいる。
>そこでもう一度、ライドウが同じように手を伸ばした。
ライドウ「……ッ!!」
鳴上「!?」
>ライドウもゴウトと同じように見えない何かに先へ進むのを阻まれていた。
>何が起こっているというのだろう……
美鶴「どうした。何時までそんな場所にいるつもりなんだ?」
鳴上「桐条さん! 実は……」
ライドウ「どうやら自分達は歓迎されていないようです」
美鶴「なんだって? どういう事だ、鳴上」
鳴上「入れないんですよ、ライドウさんとゴウトだけ寮の中に! 結界みたいなものがあるって……」
美鶴「結界……? じゃあ、何故我々は平気だったんだ?」
鳴上「それはわかりませんけど……」
ライドウ「……」
>ライドウが外套を翻し背を向けた。
美鶴「ライドウ?」
ライドウ「仕方ありません。自分達は外にいる事にします。ここから遠くへ離れたりはしませんので」
美鶴「待て! 君がある程度退治したとはいってもまだ悪魔が出る可能性はあるんだろう? 危険すぎる!」
ライドウ「ご心配無く。この程度の事は慣れています」
美鶴「……。ならば、これを」
>美鶴はポケットの中から小さな機械とイヤホンを取り出した。
ライドウ「!!」
鳴上「どうしましたか?」
ゴウト『これは……!?』
>ゴウトが前足を出し、寮の中へと入ろうと試みる。
>するとまたバチッという音がしてゴウトの体が跳ね返されたのが見えた。
鳴上「なっ……大丈夫か!?」
ゴウト『……。心配には及ばない。だが、どうやらこの建物に結界のようなものが張られているとみた』
鳴上「結界? でも、さっき桐条さんたちは普通に中へ入って……」
>恐る恐る、自分も手だけ外から寮の中へ向けて伸ばしてみた。
鳴上「……」
鳴上「やっぱり、別になんともないぞ?」
ライドウ「……」
>自分の手はゴウトが弾かれた場所よりも進んでいる。
>そこでもう一度、ライドウが同じように手を伸ばした。
ライドウ「……ッ!!」
鳴上「!?」
>ライドウもゴウトと同じように見えない何かに先へ進むのを阻まれていた。
>何が起こっているというのだろう……
美鶴「どうした。何時までそんな場所にいるつもりなんだ?」
鳴上「桐条さん! 実は……」
ライドウ「どうやら自分達は歓迎されていないようです」
美鶴「なんだって? どういう事だ、鳴上」
鳴上「入れないんですよ、ライドウさんとゴウトだけ寮の中に! 結界みたいなものがあるって……」
美鶴「結界……? じゃあ、何故我々は平気だったんだ?」
鳴上「それはわかりませんけど……」
ライドウ「……」
>ライドウが外套を翻し背を向けた。
美鶴「ライドウ?」
ライドウ「仕方ありません。自分達は外にいる事にします。ここから遠くへ離れたりはしませんので」
美鶴「待て! 君がある程度退治したとはいってもまだ悪魔が出る可能性はあるんだろう? 危険すぎる!」
ライドウ「ご心配無く。この程度の事は慣れています」
美鶴「……。ならば、これを」
>美鶴はポケットの中から小さな機械とイヤホンを取り出した。
925:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/08/28(火) 23:19:41.22:25sUyPAp0 (3/4)
本当オールスターだな
個人的にはデビサバの主人公とかも出して欲しい
本当オールスターだな
個人的にはデビサバの主人公とかも出して欲しい
926: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:20:58.36:aZjyJnVQo (9/14)
美鶴「我々に繋がる通信機だ。何かあったらすぐにこれで連絡をしてくれ」
美鶴「こちらから呼びかける事もあると思う。常時着けておくように」
ライドウ「通信機……」
>掌に乗せられたそれをまじまじと見つめ、ライドウは頷く。
ライドウ「では、その様に」
>一礼して、ライドウは歩いていってしまった。
>……
学生寮 ラウンジ
メティス「えっ、ゴウトさんがいるんですか!?」
鳴上「ああ。訳あって連れの人と外での見張り状態になってるけど」
メティス「連れの方、というと……もしかして詰襟と学帽に黒いコートを羽織ったモミアゲの?」
鳴上「そうだけど……なんでメティスが知っているんだ?」
メティス「以前ゴウトさんがこの寮の前にいた時、そのような人物を探していると言っていたので」
メティス「どうやらその人とはぐれてしまっていたようなんですが、見つかったんですね。良かった」
>メティスはほっと息を吐いている。
諒「まだ無事な人間がいたのか」
ラビリス「それもやけど、外の様子は結局どうだったん?」
>ペルソナの能力を持っていない、綾時、橿原、チドリ、ヴィンセント、あかり、それから一緒に外へ出ていた周防にも今はもう既に休んでもらっている。
>色々と突っ込んだ話をするならば今しか無いだろう。
>ライドウたちの事も含め、外であった事と少なくはあるが解った事をみんなに話した。
>……
天田「やっぱり悪魔が出現し始めたんだ……」
アイギス「しかも、満月。本来ならばある程度の意思疎通が出来る筈の悪魔たちとの交渉はほぼ不可能、と」
順平「これじゃあ迂闊に外出ない方がいいんじゃねえの? 特にチドリたちはさ」
麻希「でも籠城しっぱなしっていうのも身体に毒よね」
藤堂「そうだな。ここにある食料も無限な訳じゃないし、何の解決にもならない」
美鶴「しかし、JOKERの宣戦布告もある。やはり同じ場所に皆が固まって何もしないでいるのが一番の安全だと私は思う」
鳴上「黙っていてもこちらに仕掛けてきそうな雰囲気でしたからね、奴は」
メティス「その時はその時、迎え討ってやるってところですか」
諒「相手も馬鹿じゃないだろう。その辺の事は考えてそうだが」
ラビリス「でもデビルサマナーの葛葉さん、やったっけ? そういうお人が仲間になってくれたのは収穫やったよね」
パオフゥ「葛葉ライドウ、か……轟のおっさんのとこと同業者なんだろ。お前さんはその事について何か聞いてなかったのか? 藤堂」
藤堂「いや、全然」
パオフゥ「……」
美鶴「我々に繋がる通信機だ。何かあったらすぐにこれで連絡をしてくれ」
美鶴「こちらから呼びかける事もあると思う。常時着けておくように」
ライドウ「通信機……」
>掌に乗せられたそれをまじまじと見つめ、ライドウは頷く。
ライドウ「では、その様に」
>一礼して、ライドウは歩いていってしまった。
>……
学生寮 ラウンジ
メティス「えっ、ゴウトさんがいるんですか!?」
鳴上「ああ。訳あって連れの人と外での見張り状態になってるけど」
メティス「連れの方、というと……もしかして詰襟と学帽に黒いコートを羽織ったモミアゲの?」
鳴上「そうだけど……なんでメティスが知っているんだ?」
メティス「以前ゴウトさんがこの寮の前にいた時、そのような人物を探していると言っていたので」
メティス「どうやらその人とはぐれてしまっていたようなんですが、見つかったんですね。良かった」
>メティスはほっと息を吐いている。
諒「まだ無事な人間がいたのか」
ラビリス「それもやけど、外の様子は結局どうだったん?」
>ペルソナの能力を持っていない、綾時、橿原、チドリ、ヴィンセント、あかり、それから一緒に外へ出ていた周防にも今はもう既に休んでもらっている。
>色々と突っ込んだ話をするならば今しか無いだろう。
>ライドウたちの事も含め、外であった事と少なくはあるが解った事をみんなに話した。
>……
天田「やっぱり悪魔が出現し始めたんだ……」
アイギス「しかも、満月。本来ならばある程度の意思疎通が出来る筈の悪魔たちとの交渉はほぼ不可能、と」
順平「これじゃあ迂闊に外出ない方がいいんじゃねえの? 特にチドリたちはさ」
麻希「でも籠城しっぱなしっていうのも身体に毒よね」
藤堂「そうだな。ここにある食料も無限な訳じゃないし、何の解決にもならない」
美鶴「しかし、JOKERの宣戦布告もある。やはり同じ場所に皆が固まって何もしないでいるのが一番の安全だと私は思う」
鳴上「黙っていてもこちらに仕掛けてきそうな雰囲気でしたからね、奴は」
メティス「その時はその時、迎え討ってやるってところですか」
諒「相手も馬鹿じゃないだろう。その辺の事は考えてそうだが」
ラビリス「でもデビルサマナーの葛葉さん、やったっけ? そういうお人が仲間になってくれたのは収穫やったよね」
パオフゥ「葛葉ライドウ、か……轟のおっさんのとこと同業者なんだろ。お前さんはその事について何か聞いてなかったのか? 藤堂」
藤堂「いや、全然」
パオフゥ「……」
927: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:23:40.63:aZjyJnVQo (10/14)
ラビリス「……気になるわ」
鳴上「ん?」
ラビリス「その葛葉さんとゴウトってにゃんこや。どうして寮の中に入れんかったのやろ」
鳴上「……そうだな」
>ラビリスは心配そうな表情を浮かべている。
美鶴「気になると言えばライドウの見たという人影の事もだな。白い詰襟のような服装の人間だったか」
鳴上(白い……)
>その人物が敵か味方かもまだ解らない以上、この事も気に留めておく必要があるだろう。
>だが今のところは……
鳴上「今のところ出来る話はこれくらいだと思います。いい加減、俺達も交代で休む事にしましょう。これじゃあ、みんな体が保ちません」
美鶴「そうだな。順番を決めてそれぞれ休息をとる事にしよう」
>皆で話し合い、順に休む事にした。
>……
ラビリス「なあ、悠。葛葉さんたち、お腹とか空いてへんのかな」
鳴上「あ……そうだよな。あの人たち今までずっと街中にいて、おまけに悪魔と戦ったりしてたんだから食事する暇も……というか、食べる物すら持ってないんじゃないのか」
メティス「それにいくら悪魔退治の専門家の方とはいえ、外で一人で見張りというのは……。私か姉さんたちのいずれかでも一緒にいるべきかと」
アイギス「メティスの言う通りね。私たちは機械の体です、生身の人間と違って眠る時間も多くなくて平気ですから」
鳴上「そっか……桐条さん、さっきの通信機を貸してもらってもいいですか?」
美鶴「ああ」
>美鶴から通信機を受け取った。
鳴上「ライドウさん。聞こえますか、ライドウさん」
>ザザ、というノイズが聞こえてくる。
『……これは……ん……?』
鳴上「ライドウさん?」
>しばらくしてライドウらしき声は聞こえてきたが遠いように感じる。
『……ええい、何をしている! まどろっこしい! 貸せ!』
『あー、あー』
鳴上「あのー?」
『コホン。その声は鳴上か? 我だ、ゴウトだ』
鳴上「え、ゴウト?」
ラビリス「……気になるわ」
鳴上「ん?」
ラビリス「その葛葉さんとゴウトってにゃんこや。どうして寮の中に入れんかったのやろ」
鳴上「……そうだな」
>ラビリスは心配そうな表情を浮かべている。
美鶴「気になると言えばライドウの見たという人影の事もだな。白い詰襟のような服装の人間だったか」
鳴上(白い……)
>その人物が敵か味方かもまだ解らない以上、この事も気に留めておく必要があるだろう。
>だが今のところは……
鳴上「今のところ出来る話はこれくらいだと思います。いい加減、俺達も交代で休む事にしましょう。これじゃあ、みんな体が保ちません」
美鶴「そうだな。順番を決めてそれぞれ休息をとる事にしよう」
>皆で話し合い、順に休む事にした。
>……
ラビリス「なあ、悠。葛葉さんたち、お腹とか空いてへんのかな」
鳴上「あ……そうだよな。あの人たち今までずっと街中にいて、おまけに悪魔と戦ったりしてたんだから食事する暇も……というか、食べる物すら持ってないんじゃないのか」
メティス「それにいくら悪魔退治の専門家の方とはいえ、外で一人で見張りというのは……。私か姉さんたちのいずれかでも一緒にいるべきかと」
アイギス「メティスの言う通りね。私たちは機械の体です、生身の人間と違って眠る時間も多くなくて平気ですから」
鳴上「そっか……桐条さん、さっきの通信機を貸してもらってもいいですか?」
美鶴「ああ」
>美鶴から通信機を受け取った。
鳴上「ライドウさん。聞こえますか、ライドウさん」
>ザザ、というノイズが聞こえてくる。
『……これは……ん……?』
鳴上「ライドウさん?」
>しばらくしてライドウらしき声は聞こえてきたが遠いように感じる。
『……ええい、何をしている! まどろっこしい! 貸せ!』
『あー、あー』
鳴上「あのー?」
『コホン。その声は鳴上か? 我だ、ゴウトだ』
鳴上「え、ゴウト?」
928: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:27:34.66:aZjyJnVQo (11/14)
ゴウト『そうだ、どうかしたのか? まさか悪魔の襲撃か!?』
鳴上「いや、今ライドウさんたちはどこにいるのかと聞きたくて」
ゴウト『我らが何処にいるかだと? 屋上だ。うぬらの居る建物のな』
鳴上「寮の屋上!? 一体、どうやって……」
ゴウト『話はそれだけか? 急用で無いのなら切るぞ。こちらもこれでいて暇では無いのでな』
鳴上「あ、ちょっ……」
>それを最後にブツッと通信が切れた。
>なんだかやけに不機嫌だったように感じるが……
鳴上「ここの屋上にいるって」
メティス「聞いてました。さて、私たちはどうしましょうか」
アイギス「寮の中で起きてる人、休む人、葛葉さんたちのところへ行く人でローテーションを決めましょう」
ラビリス「オッケー」
鳴上「じゃあ、その間にライドウさんのところに持っていく軽い夜食を作ってくる。誰か毛布の用意もしておいてくれ」
メティス「了解しました」
>……
学生寮 屋上
鳴上「あのー……?」
メティス「葛葉さん? ゴウトさん? いらっしゃいますか」
>一緒に来たメティスと屋上の扉をそっと開けて様子を窺ってみる。
>ライドウとゴウトの姿は案外すぐに見つかった。
>屋上の出入口から少し離れた場所で一人と一匹は向かい合っていた。
>ライドウは何故か屋上のコンクリートの上で正座をしていて、ゴウトの鳴き声がニャアニャアとうるさく響いている。
>それに被るようにゴウトの言葉が耳に届いた。
ゴウト『まったく、貴様という奴は! それでもライドウの名を継ぐ者なのか! ……おい、聞いているのかライドウ!』
ライドウ「聞いている」
ゴウト『本当か!? 寝ているのでは無いだろうな!?』
ライドウ「聞いている」
ゴウト『よもや適当に誤魔化そうなどとは考えておらぬな!?』
ライドウ「……」
ゴウト『何故そこで黙る!』
ライドウ「聞いている」
ゴウト『それはもう良い!』
ゴウト『もう少し反省しろ! 追っていた者を取り逃がした挙句、バナナの皮を踏んで転び、あまつさえその拍子に大事な赤口葛葉を落とした事にも気付かなかったとは!』
ゴウト『あそこで鳴上に拾われていなければどうしていたのだ!』
メティス「……何をしているんでしょうか」
鳴上「さあ……」
ゴウト『そうだ、どうかしたのか? まさか悪魔の襲撃か!?』
鳴上「いや、今ライドウさんたちはどこにいるのかと聞きたくて」
ゴウト『我らが何処にいるかだと? 屋上だ。うぬらの居る建物のな』
鳴上「寮の屋上!? 一体、どうやって……」
ゴウト『話はそれだけか? 急用で無いのなら切るぞ。こちらもこれでいて暇では無いのでな』
鳴上「あ、ちょっ……」
>それを最後にブツッと通信が切れた。
>なんだかやけに不機嫌だったように感じるが……
鳴上「ここの屋上にいるって」
メティス「聞いてました。さて、私たちはどうしましょうか」
アイギス「寮の中で起きてる人、休む人、葛葉さんたちのところへ行く人でローテーションを決めましょう」
ラビリス「オッケー」
鳴上「じゃあ、その間にライドウさんのところに持っていく軽い夜食を作ってくる。誰か毛布の用意もしておいてくれ」
メティス「了解しました」
>……
学生寮 屋上
鳴上「あのー……?」
メティス「葛葉さん? ゴウトさん? いらっしゃいますか」
>一緒に来たメティスと屋上の扉をそっと開けて様子を窺ってみる。
>ライドウとゴウトの姿は案外すぐに見つかった。
>屋上の出入口から少し離れた場所で一人と一匹は向かい合っていた。
>ライドウは何故か屋上のコンクリートの上で正座をしていて、ゴウトの鳴き声がニャアニャアとうるさく響いている。
>それに被るようにゴウトの言葉が耳に届いた。
ゴウト『まったく、貴様という奴は! それでもライドウの名を継ぐ者なのか! ……おい、聞いているのかライドウ!』
ライドウ「聞いている」
ゴウト『本当か!? 寝ているのでは無いだろうな!?』
ライドウ「聞いている」
ゴウト『よもや適当に誤魔化そうなどとは考えておらぬな!?』
ライドウ「……」
ゴウト『何故そこで黙る!』
ライドウ「聞いている」
ゴウト『それはもう良い!』
ゴウト『もう少し反省しろ! 追っていた者を取り逃がした挙句、バナナの皮を踏んで転び、あまつさえその拍子に大事な赤口葛葉を落とした事にも気付かなかったとは!』
ゴウト『あそこで鳴上に拾われていなければどうしていたのだ!』
メティス「……何をしているんでしょうか」
鳴上「さあ……」
929: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:30:36.45:aZjyJnVQo (12/14)
>雰囲気からしてライドウがゴウトに説教されているように感じるのだが、傍から見るとなんだかとてもシュールだ。
>ゴウトの言葉が解らない者からしたらもっとおかしな図に見える事だろう。
ライドウ「ゴウト」
ゴウト『大体、現地の人間とは極力接触するなと……』
ライドウ「客人だ、ゴウト」
ゴウト『……!!』
ゴウト『先程から妙に美味しそうな匂いがしているとは思っていたが……!』
鳴上「お腹空いてるんじゃないかと思って。お疲れ様です、ライドウさん」
ライドウ「お気遣い有難う御座います」
メティス「お久しぶりです、ゴウトさん。お元気でしたか?」
ゴウト『む? 娘も一緒か。久方ぶりだな』
メティス「これ、ゴウトさんの分のご飯です」
ゴウト『!』
>(こんなものでいいのかとも思ったが)ゴウト用に作った猫まんまの入った皿を置くと、ゴウトはそれにすぐさま飛びついた。
鳴上「ライドウさんにはこっちを。鮭と昆布のおにぎりです」
ライドウ「自分一人で食べるには些か量が多いようですが」
鳴上「俺の分も入ってるからです。食べながら一緒に少し話をしませんか」
メティス「鳴上さん。ここは私に任せてあなたも下で休んだ方が……」
鳴上「そんなに長居はしないから」
ライドウ「彼女の方はどうしてここに?」
メティス「葛葉さんの助っ人です。一人はお辛いでしょうから」
ライドウ「しかし、婦女子の方の手を煩わせるのは……」
メティス「大丈夫です。私の体は機械ですから。人間とは出来が違うんですよ」
ゴウト『なんと……人間離れした節があるとは思っていたが、機械仕掛けであったのか……』
ライドウ「ゴウト、口にご飯粒が付いている」
鳴上「とにかく、そういう事なんで。ここに毛布置いておきますね」
>雰囲気からしてライドウがゴウトに説教されているように感じるのだが、傍から見るとなんだかとてもシュールだ。
>ゴウトの言葉が解らない者からしたらもっとおかしな図に見える事だろう。
ライドウ「ゴウト」
ゴウト『大体、現地の人間とは極力接触するなと……』
ライドウ「客人だ、ゴウト」
ゴウト『……!!』
ゴウト『先程から妙に美味しそうな匂いがしているとは思っていたが……!』
鳴上「お腹空いてるんじゃないかと思って。お疲れ様です、ライドウさん」
ライドウ「お気遣い有難う御座います」
メティス「お久しぶりです、ゴウトさん。お元気でしたか?」
ゴウト『む? 娘も一緒か。久方ぶりだな』
メティス「これ、ゴウトさんの分のご飯です」
ゴウト『!』
>(こんなものでいいのかとも思ったが)ゴウト用に作った猫まんまの入った皿を置くと、ゴウトはそれにすぐさま飛びついた。
鳴上「ライドウさんにはこっちを。鮭と昆布のおにぎりです」
ライドウ「自分一人で食べるには些か量が多いようですが」
鳴上「俺の分も入ってるからです。食べながら一緒に少し話をしませんか」
メティス「鳴上さん。ここは私に任せてあなたも下で休んだ方が……」
鳴上「そんなに長居はしないから」
ライドウ「彼女の方はどうしてここに?」
メティス「葛葉さんの助っ人です。一人はお辛いでしょうから」
ライドウ「しかし、婦女子の方の手を煩わせるのは……」
メティス「大丈夫です。私の体は機械ですから。人間とは出来が違うんですよ」
ゴウト『なんと……人間離れした節があるとは思っていたが、機械仕掛けであったのか……』
ライドウ「ゴウト、口にご飯粒が付いている」
鳴上「とにかく、そういう事なんで。ここに毛布置いておきますね」
930: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:32:03.43:aZjyJnVQo (13/14)
ライドウ「……申し訳ない。何から何まで」
鳴上「いえ。こちらこそ、ライドウさんに世話になっておきながら呑気にしていられないですよ」
ライドウ「……」
ライドウ「あの、鳴上君」
鳴上「はい?」
ライドウ「出来れば、その……敬語と『ライドウさん』という呼び方はやめて頂けないかと」
鳴上「気に障りましたか?」
ライドウ「そうではなくて。なんだか慣れないものですから」
ライドウ「そちらの貴女も葛葉でなく、ただライドウと。葛葉は自分の他にもいますので」
>ライドウは帽子を被り直しながらそう告げる。
鳴上「そうか。じゃあ、ライドウも『鳴上君』っていうのとその喋り方を改めてくれたら嬉しいな」
鳴上「俺たち、一緒に戦う仲間になったんだから。お互い余所余所しい喋り方はやめにしようか」
ライドウ「……」
ライドウ「そうだな。改めて宜しく頼む、鳴上」
鳴上「よろしく、ライドウ」
>どちらからという訳でもなく、手を差し伸べ合い握手を交わした。
ライドウ「……申し訳ない。何から何まで」
鳴上「いえ。こちらこそ、ライドウさんに世話になっておきながら呑気にしていられないですよ」
ライドウ「……」
ライドウ「あの、鳴上君」
鳴上「はい?」
ライドウ「出来れば、その……敬語と『ライドウさん』という呼び方はやめて頂けないかと」
鳴上「気に障りましたか?」
ライドウ「そうではなくて。なんだか慣れないものですから」
ライドウ「そちらの貴女も葛葉でなく、ただライドウと。葛葉は自分の他にもいますので」
>ライドウは帽子を被り直しながらそう告げる。
鳴上「そうか。じゃあ、ライドウも『鳴上君』っていうのとその喋り方を改めてくれたら嬉しいな」
鳴上「俺たち、一緒に戦う仲間になったんだから。お互い余所余所しい喋り方はやめにしようか」
ライドウ「……」
ライドウ「そうだな。改めて宜しく頼む、鳴上」
鳴上「よろしく、ライドウ」
>どちらからという訳でもなく、手を差し伸べ合い握手を交わした。
931: ◆Hw7XKfELws:2012/08/28(火) 23:33:36.97:aZjyJnVQo (14/14)
夏バテ気味で投下が遅れてました、すみません
今日はこれで終わりです
また次回
夏バテ気味で投下が遅れてました、すみません
今日はこれで終わりです
また次回
932:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/08/28(火) 23:40:44.63:25sUyPAp0 (4/4)
乙
乙
933:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/08/28(火) 23:42:51.61:Kmy+9SoH0 (1/1)
乙
乙
934:名無しNIPPER:2012/08/29(水) 00:05:34.18:+cmx4vdm0 (1/1)
おつっした
おつっした
935:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/08/29(水) 00:49:44.08:72FG+6YAO (1/1)
乙
乙
936:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/29(水) 01:55:12.48:Y6KCM5rG0 (1/1)
乙
ライドウとコミュ形成かと思ったら空きが無かった
乙
ライドウとコミュ形成かと思ったら空きが無かった
937:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/08/29(水) 01:56:35.11:p6S1n2Mzo (1/1)
乙!
乙!
938:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越):2012/08/29(水) 03:13:58.87:iDg5IX/u0 (1/1)
>>936
ゴールデンで0道化師22永劫が出たからいけるはず・・・っ
>>936
ゴールデンで0道化師22永劫が出たからいけるはず・・・っ
939:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/29(水) 04:54:54.60:awKRK7N50 (1/1)
乙!
>>938
永劫は審判と同じく20だったような?
21も世界と宇宙があるんだし、いけるいける。
乙!
>>938
永劫は審判と同じく20だったような?
21も世界と宇宙があるんだし、いけるいける。
940:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/08/29(水) 09:40:28.67:7zwZTLl/o (1/1)
しかしこのライドウ、少し杉田が入ってる気がするぜ
そして白い詰め襟か…まさかの魔神皇か?
次回も気になるね
しかしこのライドウ、少し杉田が入ってる気がするぜ
そして白い詰め襟か…まさかの魔神皇か?
次回も気になるね
941:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2012/08/30(木) 00:44:45.02:/HSYPTpWo (1/1)
ああ保険医にふられてorzの童帝ね
ああ保険医にふられてorzの童帝ね
942: ◆Hw7XKfELws:2012/08/30(木) 23:56:45.15:gFHztgH8o (1/2)
>……
鳴上「それで、どうやってこの屋上まで来たんだ?」
ライドウ「周りの屋根を伝って」
ゴウト『あくまで建物の内部に立ち入ろうとさえしなければ結界で弾かれぬと踏んだのがその通りだったようだ』
鳴上「ここまで来たのなら連絡をくれればすぐにでも屋上の扉の鍵開けに来たのに」
ライドウ「そこの扉に触れようとしたらやはりさっきと同じ様になった。つまり、自分達が入れるのはこの屋上のみという事らしい」
メティス「原因は何なんでしょうね。ゴウトさんとライドウ……さんだけが寮の中に入れない、その理由」
>メティスは彼に言われた通りライドウの呼び方を改めはしたが、自分のように急に馴れ馴れしく呼び捨てに出来る程ではないようだ。
ライドウ「それは、……」
ライドウ「さっき鳴上に言った言葉通りだからだと、自分は思う」
ゴウト『……』
ライドウ「十中八九、自分達は歓迎されていない人間なのだろう」
ライドウ「この場所に……と言うよりは、この空間そのものに」
鳴上「どういう事だ?」
ゴウト『JOKERは異物が混じっているという発言をしたそうだな』
メティス「まさか、その異物にあたるのが貴方たちだと?」
鳴上「……。何でそんな事が言える」
ライドウ「……」
>……
鳴上「それで、どうやってこの屋上まで来たんだ?」
ライドウ「周りの屋根を伝って」
ゴウト『あくまで建物の内部に立ち入ろうとさえしなければ結界で弾かれぬと踏んだのがその通りだったようだ』
鳴上「ここまで来たのなら連絡をくれればすぐにでも屋上の扉の鍵開けに来たのに」
ライドウ「そこの扉に触れようとしたらやはりさっきと同じ様になった。つまり、自分達が入れるのはこの屋上のみという事らしい」
メティス「原因は何なんでしょうね。ゴウトさんとライドウ……さんだけが寮の中に入れない、その理由」
>メティスは彼に言われた通りライドウの呼び方を改めはしたが、自分のように急に馴れ馴れしく呼び捨てに出来る程ではないようだ。
ライドウ「それは、……」
ライドウ「さっき鳴上に言った言葉通りだからだと、自分は思う」
ゴウト『……』
ライドウ「十中八九、自分達は歓迎されていない人間なのだろう」
ライドウ「この場所に……と言うよりは、この空間そのものに」
鳴上「どういう事だ?」
ゴウト『JOKERは異物が混じっているという発言をしたそうだな』
メティス「まさか、その異物にあたるのが貴方たちだと?」
鳴上「……。何でそんな事が言える」
ライドウ「……」
943: ◆Hw7XKfELws:2012/08/30(木) 23:59:39.58:gFHztgH8o (2/2)
>ライドウは僅かに俯き沈黙した。
ライドウ「先程仲間であると言ってくれた矢先にこんな事を言うのもどうかと思うが、自分達は君達には言えない事を多く抱えた人間だという事をまず理解して欲しい」
ゴウト『……そうだな、これは我らの仕事の守秘義務に抵触する事項の一つだとでも思って貰えればそれで良い』
鳴上「ライドウたちが『異物』であるかもしれない理由は明かせないって事か?」
ライドウ「ああ」
メティス「さっきゴウトさんが言っていた現地の人間とは極力接触するな、というのもライドウさん達の仕事に支障を及ぼすおそれがあるからですか?」
ゴウト『聞いていたのか』
メティス「ええ、すみません」
ゴウト『……』
ゴウト『確かにそうだ。だが、それはうぬらにとっても変わらぬ』
鳴上「……?」
ゴウト『……本来我々は出会うべき者同士では無かったのだ』
ゴウト『だが、もはや致し方あるまい。元より利害関係は一致しているのだ。前向きに考えればこれで早期解決になればそれで良し、といったところか』
ライドウ「これは自分達の責任の問題で、君達が悪い訳ではない。それだけは誓って言える」
ライドウ「……」
ライドウ「今思えば、あれを拾ってくれたのが君のような人間で本当に良かったと自分はそう感じている」
ライドウ「そういえばその礼を言いそびれていたな。恩に着る」
鳴上「あの刀の事か? でも、結局助けてもらったのはこっちな訳だし」
>ライドウは僅かに俯き沈黙した。
ライドウ「先程仲間であると言ってくれた矢先にこんな事を言うのもどうかと思うが、自分達は君達には言えない事を多く抱えた人間だという事をまず理解して欲しい」
ゴウト『……そうだな、これは我らの仕事の守秘義務に抵触する事項の一つだとでも思って貰えればそれで良い』
鳴上「ライドウたちが『異物』であるかもしれない理由は明かせないって事か?」
ライドウ「ああ」
メティス「さっきゴウトさんが言っていた現地の人間とは極力接触するな、というのもライドウさん達の仕事に支障を及ぼすおそれがあるからですか?」
ゴウト『聞いていたのか』
メティス「ええ、すみません」
ゴウト『……』
ゴウト『確かにそうだ。だが、それはうぬらにとっても変わらぬ』
鳴上「……?」
ゴウト『……本来我々は出会うべき者同士では無かったのだ』
ゴウト『だが、もはや致し方あるまい。元より利害関係は一致しているのだ。前向きに考えればこれで早期解決になればそれで良し、といったところか』
ライドウ「これは自分達の責任の問題で、君達が悪い訳ではない。それだけは誓って言える」
ライドウ「……」
ライドウ「今思えば、あれを拾ってくれたのが君のような人間で本当に良かったと自分はそう感じている」
ライドウ「そういえばその礼を言いそびれていたな。恩に着る」
鳴上「あの刀の事か? でも、結局助けてもらったのはこっちな訳だし」
944: ◆Hw7XKfELws:2012/08/31(金) 00:01:53.08:c7M+SGvJo (1/6)
メティス「助けてもらった?」
鳴上「あっ、いや、その……ちょっと悪魔に襲われて」
ゴウト『あれはマンティコアと呼ばれる悪魔だ。あの一帯は低級な悪魔が多かったのだが、何故かあれだけは周りにいた悪魔と比べると格が違ったようだな』
メティス「そ、そんな! 大丈夫なんですか!? 怪我はしなかったんですか!?」
鳴上「そうなる前にライドウが来てくれたから」
メティス「……なんだ、そっか。良かった……」
鳴上「でもあれ、悪魔を切ってたよな。ただの刀じゃないって事か」
ゴウト『あれは赤口葛葉と言う名の退魔刀だ。悪魔を討つデビルサマナーにとっては必需品な訳だが、それをこの男は……』
ライドウ「……」
鳴上(バナナの皮で転んで落とした、だっけ? 俺も危うく踏みそうになったけどさ……)
鳴上「まあでも、拳銃も持ってたし、結構な重装備だよな。全部そのハイカラなコートの下に隠してるみたいだけど」
メティス「でも、まだそれだけではないんですよね?」
メティス「悪魔を討つ為に悪魔を使役する。デビルサマナーとはそういうものだとさっき聞きました」
メティス「つまり、ライドウさんにも仲魔がいる訳ですよね? 鳴上さんのように」
ライドウ「!」
ゴウト『……何だと? どういう事だ、鳴上』
ライドウ「君の仲魔とは?」
鳴上「ああ、そうか。これはまだ言って無かったんだっけ」
鳴上「俺と、あと藤堂さんもだけど、ペルソナ能力とは別に悪魔を召喚する手段を持っているんだ、一応」
ゴウト『ならば何故あの時自分の仲魔を呼ばなかった。一歩遅ければ悪魔の餌食になっていたのだぞ?』
鳴上「それが……何故か急に呼べなくなったんだ」
>ポケットの中から携帯を取り出し、悪魔召喚プログラムを起動させる。
>しかし、画面は表示されてもボタンを押したところで仲魔のリリムが出てきてくれないのは変わらずだった。
メティス「助けてもらった?」
鳴上「あっ、いや、その……ちょっと悪魔に襲われて」
ゴウト『あれはマンティコアと呼ばれる悪魔だ。あの一帯は低級な悪魔が多かったのだが、何故かあれだけは周りにいた悪魔と比べると格が違ったようだな』
メティス「そ、そんな! 大丈夫なんですか!? 怪我はしなかったんですか!?」
鳴上「そうなる前にライドウが来てくれたから」
メティス「……なんだ、そっか。良かった……」
鳴上「でもあれ、悪魔を切ってたよな。ただの刀じゃないって事か」
ゴウト『あれは赤口葛葉と言う名の退魔刀だ。悪魔を討つデビルサマナーにとっては必需品な訳だが、それをこの男は……』
ライドウ「……」
鳴上(バナナの皮で転んで落とした、だっけ? 俺も危うく踏みそうになったけどさ……)
鳴上「まあでも、拳銃も持ってたし、結構な重装備だよな。全部そのハイカラなコートの下に隠してるみたいだけど」
メティス「でも、まだそれだけではないんですよね?」
メティス「悪魔を討つ為に悪魔を使役する。デビルサマナーとはそういうものだとさっき聞きました」
メティス「つまり、ライドウさんにも仲魔がいる訳ですよね? 鳴上さんのように」
ライドウ「!」
ゴウト『……何だと? どういう事だ、鳴上』
ライドウ「君の仲魔とは?」
鳴上「ああ、そうか。これはまだ言って無かったんだっけ」
鳴上「俺と、あと藤堂さんもだけど、ペルソナ能力とは別に悪魔を召喚する手段を持っているんだ、一応」
ゴウト『ならば何故あの時自分の仲魔を呼ばなかった。一歩遅ければ悪魔の餌食になっていたのだぞ?』
鳴上「それが……何故か急に呼べなくなったんだ」
>ポケットの中から携帯を取り出し、悪魔召喚プログラムを起動させる。
>しかし、画面は表示されてもボタンを押したところで仲魔のリリムが出てきてくれないのは変わらずだった。
945: ◆Hw7XKfELws:2012/08/31(金) 00:04:15.38:c7M+SGvJo (2/6)
鳴上「藤堂さんのもこんな感じでさ。携帯自体が壊れてるって訳じゃないのに……」
鳴上「ライドウの悪魔召喚プログラムはどうなんだ? 平気なのか? それともやっぱり……」
ライドウ「悪魔召喚プログラム……?」
ライドウ「ちょっと良いか」
>ライドウはこちらに手を差し出してくる。
>携帯を見せてくれという事なのだろう。
鳴上「はい」
ライドウ「……」
ゴウト『ふむ……』
>ゴウトもライドウの肩に飛び乗って携帯の画面を覗いている。
>ライドウは携帯のボタンを色々と押してみたり、掲げてみたり、振ってみたり……と珍しい物に触れて遊ぶような行動を繰り返していた。
鳴上「うわっ、逆パカは流石にちょっと勘弁!」
ライドウ「ぎゃくぱか……?」
ゴウト『ライドウ、反対だ。今のと反対に畳むのだ』
ライドウ「……。ああ、そういう事か。すまない」
>ライドウはきちんと携帯を畳んでようやくこちらへとそれを返してくれた。
ゴウト『見た所、サマナーの鍛錬を積まずとも簡単に悪魔の召喚が可能になる物のようだが』
ゴウト『随分と興味深い代物を持っているな。そういう物もあるのか』
鳴上「ん? どういう事だ?」
ライドウ「自分の場合はその悪魔召喚プログラムといった物は使用しない」
ライドウ「これがあれば充分だ」
>そう言って彼は外套の下から細い筒のような物を取り出す。
鳴上「藤堂さんのもこんな感じでさ。携帯自体が壊れてるって訳じゃないのに……」
鳴上「ライドウの悪魔召喚プログラムはどうなんだ? 平気なのか? それともやっぱり……」
ライドウ「悪魔召喚プログラム……?」
ライドウ「ちょっと良いか」
>ライドウはこちらに手を差し出してくる。
>携帯を見せてくれという事なのだろう。
鳴上「はい」
ライドウ「……」
ゴウト『ふむ……』
>ゴウトもライドウの肩に飛び乗って携帯の画面を覗いている。
>ライドウは携帯のボタンを色々と押してみたり、掲げてみたり、振ってみたり……と珍しい物に触れて遊ぶような行動を繰り返していた。
鳴上「うわっ、逆パカは流石にちょっと勘弁!」
ライドウ「ぎゃくぱか……?」
ゴウト『ライドウ、反対だ。今のと反対に畳むのだ』
ライドウ「……。ああ、そういう事か。すまない」
>ライドウはきちんと携帯を畳んでようやくこちらへとそれを返してくれた。
ゴウト『見た所、サマナーの鍛錬を積まずとも簡単に悪魔の召喚が可能になる物のようだが』
ゴウト『随分と興味深い代物を持っているな。そういう物もあるのか』
鳴上「ん? どういう事だ?」
ライドウ「自分の場合はその悪魔召喚プログラムといった物は使用しない」
ライドウ「これがあれば充分だ」
>そう言って彼は外套の下から細い筒のような物を取り出す。
946: ◆Hw7XKfELws:2012/08/31(金) 00:06:05.14:c7M+SGvJo (3/6)
メティス「この中に悪魔が、ライドウさんの仲魔がいるんですか?」
>ライドウは頷く。
ライドウ「これは悪魔を封じる管、封魔管という。中にはマグネタイトが充満している」
鳴上「へえ……悪魔召喚プログラムよりはるかにアナログな手段なんだな」
メティス「でも、鳴上さんたちのような携帯やPCなどでは電力の供給が無くなってしまったらそれだけで召喚不能になってしまいますからね」
メティス「そういう意味ではこういう物の方が便利なのではないでしょうか」
鳴上「……ま、どちらにせよ電池があっても今は無理な訳だけど」
鳴上「で、その封魔管の方はどうなんだ? 召喚出来そうか?」
>ライドウは手に持つ管の封を解く。
>すると……
>中から悪魔が出てきた。
モコイ「なんだかとってもダークネス。ボク、影時間デビューしたッスよ」
鳴上「おおっ!?」
メティス「これが、ライドウさんの?」
鳴上「……」
鳴上「チェンジ」
ライドウ「?」
鳴上「モコイ」
ライドウ「!」
>ペルソナのタロットを変える。
>……つい、つられて自分もモコイを出してしまった。
モコイ「ウヒッ、モコイ対モコイ?」
モコイ「それってイケてる?」
>ライドウの仲魔のモコイと自分のペルソナのモコイはじゃれ合っている。
メティス「この中に悪魔が、ライドウさんの仲魔がいるんですか?」
>ライドウは頷く。
ライドウ「これは悪魔を封じる管、封魔管という。中にはマグネタイトが充満している」
鳴上「へえ……悪魔召喚プログラムよりはるかにアナログな手段なんだな」
メティス「でも、鳴上さんたちのような携帯やPCなどでは電力の供給が無くなってしまったらそれだけで召喚不能になってしまいますからね」
メティス「そういう意味ではこういう物の方が便利なのではないでしょうか」
鳴上「……ま、どちらにせよ電池があっても今は無理な訳だけど」
鳴上「で、その封魔管の方はどうなんだ? 召喚出来そうか?」
>ライドウは手に持つ管の封を解く。
>すると……
>中から悪魔が出てきた。
モコイ「なんだかとってもダークネス。ボク、影時間デビューしたッスよ」
鳴上「おおっ!?」
メティス「これが、ライドウさんの?」
鳴上「……」
鳴上「チェンジ」
ライドウ「?」
鳴上「モコイ」
ライドウ「!」
>ペルソナのタロットを変える。
>……つい、つられて自分もモコイを出してしまった。
モコイ「ウヒッ、モコイ対モコイ?」
モコイ「それってイケてる?」
>ライドウの仲魔のモコイと自分のペルソナのモコイはじゃれ合っている。
947: ◆Hw7XKfELws:2012/08/31(金) 00:08:47.76:c7M+SGvJo (4/6)
ライドウ「もしや、それがペルソナという能力なのか」
鳴上「ああ」
ゴウト「娘もあの様にしてあの様なものを召喚するのか?」
メティス「そうです。でも、私たちと鳴上さんとではちょっと違いがあって、基本ペルソナは一人につき一体しか召喚出来ないものなのですが、鳴上さんの場合は複数所持が出来るんです」
鳴上「モコイはそのうちの一つに過ぎないって訳だ。……チェンジ」
>モコイを戻し、今度はジャックフロストを召喚してみせる。
ジャックフロスト「ヒーホー」
ゴウト『ほう……。確か、ペルソナはうぬら自身の心の力の現れだという話だったな』
鳴上「そうだな」
ゴウト『しかし、我からしてみるとうぬの肉体が封魔管の役割をしていて悪魔の召喚をしているようにも見える』
ゴウト『うぬの中に住まう幾多の悪魔の、な』
鳴上「俺の中の……悪魔?」
ゴウト『なに、ちょっとした例え話だ』
ゴウト『人間は様々な一面を己が内に秘めながら生きるものだ。その中ではっきりと自覚している面もあれば、そうでない面もある事だろう』
ゴウト『自分の中にある複数の自分、……その心。それが鳴上の場合はそれぞれ幾つもの形となって顕著に力へと現れているのではないだろうか』
>自分の中にある複数の自分。
>ゴウトの言葉を参考にすれば、それはペルソナの数だけの自分がいるという事になる。
>今まであまりこのワイルドの能力について深く考えた事が無かったが……
>それは、つまり
>……
ライドウ「もしや、それがペルソナという能力なのか」
鳴上「ああ」
ゴウト「娘もあの様にしてあの様なものを召喚するのか?」
メティス「そうです。でも、私たちと鳴上さんとではちょっと違いがあって、基本ペルソナは一人につき一体しか召喚出来ないものなのですが、鳴上さんの場合は複数所持が出来るんです」
鳴上「モコイはそのうちの一つに過ぎないって訳だ。……チェンジ」
>モコイを戻し、今度はジャックフロストを召喚してみせる。
ジャックフロスト「ヒーホー」
ゴウト『ほう……。確か、ペルソナはうぬら自身の心の力の現れだという話だったな』
鳴上「そうだな」
ゴウト『しかし、我からしてみるとうぬの肉体が封魔管の役割をしていて悪魔の召喚をしているようにも見える』
ゴウト『うぬの中に住まう幾多の悪魔の、な』
鳴上「俺の中の……悪魔?」
ゴウト『なに、ちょっとした例え話だ』
ゴウト『人間は様々な一面を己が内に秘めながら生きるものだ。その中ではっきりと自覚している面もあれば、そうでない面もある事だろう』
ゴウト『自分の中にある複数の自分、……その心。それが鳴上の場合はそれぞれ幾つもの形となって顕著に力へと現れているのではないだろうか』
>自分の中にある複数の自分。
>ゴウトの言葉を参考にすれば、それはペルソナの数だけの自分がいるという事になる。
>今まであまりこのワイルドの能力について深く考えた事が無かったが……
>それは、つまり
>……
948: ◆Hw7XKfELws:2012/08/31(金) 00:11:51.84:c7M+SGvJo (5/6)
メティス「……あれ、ライドウさん? なんだか少し顔色が悪くありませんか」
ライドウ「……」
鳴上「どうした。どこか具合が良くないのか?」
ライドウ「……いや。自分の事は気にしないでくれ。それより、君たちはどうもしないのか?」
メティス「え? どう、って? 私はどうもしませんが」
鳴上「俺も別に。むしろ……」
鳴上「……」
鳴上「ん?」
ゴウト『どうした』
鳴上「いや、具合が悪いとかいうのは無いんだけど」
鳴上「……なんか違和感があって」
ゴウト『まったく揃いも揃って何なのだ、と言いたいところだが』
ゴウト『我も少し体に怠さを感じるな……』
メティス「余計なお喋りをし過ぎちゃいましたかね」
メティス「ライドウさんもゴウトさんも、もう休んでください。後の外の見張りは私がしていますので」
ライドウ「しかし……」
鳴上「いいから。ライドウの力が必要な時に限って倒れられたら困るだろ? だから、食べ終わったならさっさと寝とけ」
メティス「何言ってるんですか、鳴上さんもですよ。ここにいたらライドウさんたちの休憩の邪魔になります。下でゆっくりしていてください」
鳴上「はいはい」
ライドウ「……」
ライドウ「では、お言葉に甘えて、少しだけ」
ゴウト『何かあればすぐに叩き起こしてくれて構わぬぞ』
メティス「わかりました。そうならないといいのですが」
鳴上「じゃあ、おやすみ。メティス、後は頼んだぞ」
メティス「はい。おやすみなさい」
>ライドウたちと別れて屋上を出た。
>……
>しかし、さっきの違和感の正体は何なのだろう。
>何に対して違和感を覚えたというのだろう……
メティス「……あれ、ライドウさん? なんだか少し顔色が悪くありませんか」
ライドウ「……」
鳴上「どうした。どこか具合が良くないのか?」
ライドウ「……いや。自分の事は気にしないでくれ。それより、君たちはどうもしないのか?」
メティス「え? どう、って? 私はどうもしませんが」
鳴上「俺も別に。むしろ……」
鳴上「……」
鳴上「ん?」
ゴウト『どうした』
鳴上「いや、具合が悪いとかいうのは無いんだけど」
鳴上「……なんか違和感があって」
ゴウト『まったく揃いも揃って何なのだ、と言いたいところだが』
ゴウト『我も少し体に怠さを感じるな……』
メティス「余計なお喋りをし過ぎちゃいましたかね」
メティス「ライドウさんもゴウトさんも、もう休んでください。後の外の見張りは私がしていますので」
ライドウ「しかし……」
鳴上「いいから。ライドウの力が必要な時に限って倒れられたら困るだろ? だから、食べ終わったならさっさと寝とけ」
メティス「何言ってるんですか、鳴上さんもですよ。ここにいたらライドウさんたちの休憩の邪魔になります。下でゆっくりしていてください」
鳴上「はいはい」
ライドウ「……」
ライドウ「では、お言葉に甘えて、少しだけ」
ゴウト『何かあればすぐに叩き起こしてくれて構わぬぞ』
メティス「わかりました。そうならないといいのですが」
鳴上「じゃあ、おやすみ。メティス、後は頼んだぞ」
メティス「はい。おやすみなさい」
>ライドウたちと別れて屋上を出た。
>……
>しかし、さっきの違和感の正体は何なのだろう。
>何に対して違和感を覚えたというのだろう……
949: ◆Hw7XKfELws:2012/08/31(金) 00:12:52.64:c7M+SGvJo (6/6)
短いけど投下する時間がないので今日はこれでおしまいです
また次回
短いけど投下する時間がないので今日はこれでおしまいです
また次回
950:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/08/31(金) 00:13:19.81:zeDWuDX80 (1/1)
乙
乙
951:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2012/08/31(金) 00:18:05.89:o8mBQFjv0 (1/1)
乙です
乙です
952:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空):2012/08/31(金) 00:44:17.21:m+CDy3EYo (1/1)
乙
Wモコイktkr
しばらくじっと観察したいw
乙
Wモコイktkr
しばらくじっと観察したいw
953:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/31(金) 07:44:04.63:mxwfsxkr0 (1/1)
乙乙
このぶんじゃダブル閣下あるでこりゃ
乙乙
このぶんじゃダブル閣下あるでこりゃ
954:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/08/31(金) 08:07:22.21:D17HrmpAO (1/1)
乙
乙
955:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空):2012/09/01(土) 02:29:07.11:pqI8Mw7Po (1/1)
8月32日は来なかったな…
8月32日は来なかったな…
956:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/09/01(土) 19:41:42.14:YfynYaIM0 (1/1)
>>955
なにその終わらない夏休み
>>955
なにその終わらない夏休み
957: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:04:21.42:5lzlj2Kco (1/13)
>……
???
>……
>薄暗い部屋の窓の外から雨音がしている。
>深夜に聞くこの音は自分にとってあまり心地良いものでは無かった。
>事件を追っていたあの頃は特にそう感じていたと思う。
>この音を聞く度に、雨が降る度に訪れていた緊張感と使命感。
>あれを忘れる事は今になっても出来そうに無い。
>部屋の中のテレビへと視線を移す。
>電源は点いていない。
>0時を迎えると、マヨナカテレビ特有の砂嵐が映り始めたが……人の姿はそこに現れなかった。
>……
>ふっと息が零れる。
>誰も映らない、何も起こらない。
>何も。何も……
>……
>急に酷く微睡んできた。
>緊張感は急な脱力感に変わって、それが眠気を誘っているのだろう。
>何も無いというのなら、外の雨音だって静かな眠りにつく為の環境音としては適している。
>もう寝よう。
>布団の中で、居心地の良いこの部屋で、ゆっくりと……
>……
>……
???
>……
>薄暗い部屋の窓の外から雨音がしている。
>深夜に聞くこの音は自分にとってあまり心地良いものでは無かった。
>事件を追っていたあの頃は特にそう感じていたと思う。
>この音を聞く度に、雨が降る度に訪れていた緊張感と使命感。
>あれを忘れる事は今になっても出来そうに無い。
>部屋の中のテレビへと視線を移す。
>電源は点いていない。
>0時を迎えると、マヨナカテレビ特有の砂嵐が映り始めたが……人の姿はそこに現れなかった。
>……
>ふっと息が零れる。
>誰も映らない、何も起こらない。
>何も。何も……
>……
>急に酷く微睡んできた。
>緊張感は急な脱力感に変わって、それが眠気を誘っているのだろう。
>何も無いというのなら、外の雨音だって静かな眠りにつく為の環境音としては適している。
>もう寝よう。
>布団の中で、居心地の良いこの部屋で、ゆっくりと……
>……
958: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:06:07.58:5lzlj2Kco (2/13)
学生寮 ラウンジ
天田「――さん、鳴上さん」
鳴上「……」
天田「おはようございます。時間ですよ、鳴上さん」
鳴上「……ん」
鳴上「……ふぁ……すまない、起こさせて……」
天田「いいえ。それにしてもぐっすりみたいでしたね」
天田「昨夜は色々あったから、お疲れなのは無理もないですけど」
鳴上「ん……」
天田「まだ眠いですか? もうすぐご飯の用意もするつもりですけど、それまでもう少し休んでます?」
鳴上「いや、いいよ。俺だけそういう訳にもいかないだろ」
天田「そうですか。それじゃあ、準備手伝ってもらってもいいですか?」
鳴上「ああ。わかった」
>寝ていたソファから体を起こし、腕を伸ばし体を解してから立ち上がる。
>あれから皆交代で休みを取りながら時間を過ごし、外も明るくなってきた頃だった。
>携帯での時刻はAM7:00
>日付の方は相も変わらず08/32のまま。
>……目が覚めて全部夢だった、なんて事にはならなかったようだ。
天田「そろそろ綾時さんたちも起きてくるかな。そうしたら、ライドウさんの事教えておかないといけないですよね」
鳴上「天田はもうライドウに会ったのか?」
天田「はい。みんな、自分の見張り番の時に屋上にいって顔合わせしたみたいですよ」
天田「ちょっと変わった人と……猫でしたね」
天田「でも、良い人そうで何よりです」
鳴上「そうだな。あ、ライドウにも朝食持っていってやらないと」
天田「それなら綾時さんたちも連れて、お互いの自己紹介を兼ねながら一緒に食事とかすればいいんじゃないですかね」
鳴上「それいいな」
学生寮 ラウンジ
天田「――さん、鳴上さん」
鳴上「……」
天田「おはようございます。時間ですよ、鳴上さん」
鳴上「……ん」
鳴上「……ふぁ……すまない、起こさせて……」
天田「いいえ。それにしてもぐっすりみたいでしたね」
天田「昨夜は色々あったから、お疲れなのは無理もないですけど」
鳴上「ん……」
天田「まだ眠いですか? もうすぐご飯の用意もするつもりですけど、それまでもう少し休んでます?」
鳴上「いや、いいよ。俺だけそういう訳にもいかないだろ」
天田「そうですか。それじゃあ、準備手伝ってもらってもいいですか?」
鳴上「ああ。わかった」
>寝ていたソファから体を起こし、腕を伸ばし体を解してから立ち上がる。
>あれから皆交代で休みを取りながら時間を過ごし、外も明るくなってきた頃だった。
>携帯での時刻はAM7:00
>日付の方は相も変わらず08/32のまま。
>……目が覚めて全部夢だった、なんて事にはならなかったようだ。
天田「そろそろ綾時さんたちも起きてくるかな。そうしたら、ライドウさんの事教えておかないといけないですよね」
鳴上「天田はもうライドウに会ったのか?」
天田「はい。みんな、自分の見張り番の時に屋上にいって顔合わせしたみたいですよ」
天田「ちょっと変わった人と……猫でしたね」
天田「でも、良い人そうで何よりです」
鳴上「そうだな。あ、ライドウにも朝食持っていってやらないと」
天田「それなら綾時さんたちも連れて、お互いの自己紹介を兼ねながら一緒に食事とかすればいいんじゃないですかね」
鳴上「それいいな」
959: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:08:07.41:5lzlj2Kco (3/13)
綾時「おはよう。僕がなんだって?」
あかり「おはよー」
チドリ「……おはよう」
鳴上「ああ、おはよう。ちょうどいいところに」
ヴィンセント「ふあ……おはよ。何の話だ?」
鳴上「ちょっと紹介したい人がいるんです」
ヴィンセント「紹介したい人? もしかして、まだ無事な人間がいたのか!?」
鳴上「はい。昨日の夜に出会って」
淳「おはよう、みんな」
鳴上「あ、先生。おはようございます。……あれから具合はどうですか?」
淳「ん……ああ、もう平気だよ。ごめんね、心配かけて」
淳「ところで、話聞こえたけどその紹介したい人というのはどこにいるんだい? ラウンジにはいないようだけど」
鳴上「屋上です。外の見張りを担当してもらっていたので」
あかり「どんな人なの?」
鳴上「えっと……俺たちと同じ年くらいの学生、かな。月光館の生徒じゃないみたいだけど」
鳴上(としかあかりたちには言えないよな……)
>おそらくライドウも一般の人間には彼自身の正体について必要以上の事は明かしたくないに違いない。
綾時「そっか。っていうか、僕も次からはちゃんと見張りに参加しないとダメだよね」
あかり「そうだよね。非常事態だもん。大人とか子供とか関係なく協力しなきゃだよね」
チドリ「……。私に出来る事があるなら、いいけど……」
鳴上「でも……」
淳「僕ももう大丈夫だから。周防くんたちだけじゃなく鳴上くんたちのような子供まで頑張ってくれてるんだから、しっかりしないといけないね」
ヴィンセント「だなあ。おっさんも気合入れないと、だな」
>綾時たちは綾時たちなりに、この状況を一緒に切り抜ける為何か出来ないかという姿勢を見せてくれているようだ。
鳴上「……」
鳴上「とりあえず、もうすぐ朝食の準備も出来る。これからの事はまたその後、桐条さんたちも一緒にまじえて詳しく話し合おう」
鳴上「それで、新しい仲間への顔合わせも兼ねて屋上で食事なんてどうだろうって提案が出てるんだけど」
綾時「あ、いいね」
あかり「うん! 悪くないかも」
鳴上「よし。じゃあ、天田はラウンジにいる他のみんなへの食事を頼んだ。俺は望月たちを連れて屋上に行くから」
天田「わかりました」
>食事を持って、綾時たちと一緒に屋上へ行く事にした。
>……
綾時「おはよう。僕がなんだって?」
あかり「おはよー」
チドリ「……おはよう」
鳴上「ああ、おはよう。ちょうどいいところに」
ヴィンセント「ふあ……おはよ。何の話だ?」
鳴上「ちょっと紹介したい人がいるんです」
ヴィンセント「紹介したい人? もしかして、まだ無事な人間がいたのか!?」
鳴上「はい。昨日の夜に出会って」
淳「おはよう、みんな」
鳴上「あ、先生。おはようございます。……あれから具合はどうですか?」
淳「ん……ああ、もう平気だよ。ごめんね、心配かけて」
淳「ところで、話聞こえたけどその紹介したい人というのはどこにいるんだい? ラウンジにはいないようだけど」
鳴上「屋上です。外の見張りを担当してもらっていたので」
あかり「どんな人なの?」
鳴上「えっと……俺たちと同じ年くらいの学生、かな。月光館の生徒じゃないみたいだけど」
鳴上(としかあかりたちには言えないよな……)
>おそらくライドウも一般の人間には彼自身の正体について必要以上の事は明かしたくないに違いない。
綾時「そっか。っていうか、僕も次からはちゃんと見張りに参加しないとダメだよね」
あかり「そうだよね。非常事態だもん。大人とか子供とか関係なく協力しなきゃだよね」
チドリ「……。私に出来る事があるなら、いいけど……」
鳴上「でも……」
淳「僕ももう大丈夫だから。周防くんたちだけじゃなく鳴上くんたちのような子供まで頑張ってくれてるんだから、しっかりしないといけないね」
ヴィンセント「だなあ。おっさんも気合入れないと、だな」
>綾時たちは綾時たちなりに、この状況を一緒に切り抜ける為何か出来ないかという姿勢を見せてくれているようだ。
鳴上「……」
鳴上「とりあえず、もうすぐ朝食の準備も出来る。これからの事はまたその後、桐条さんたちも一緒にまじえて詳しく話し合おう」
鳴上「それで、新しい仲間への顔合わせも兼ねて屋上で食事なんてどうだろうって提案が出てるんだけど」
綾時「あ、いいね」
あかり「うん! 悪くないかも」
鳴上「よし。じゃあ、天田はラウンジにいる他のみんなへの食事を頼んだ。俺は望月たちを連れて屋上に行くから」
天田「わかりました」
>食事を持って、綾時たちと一緒に屋上へ行く事にした。
>……
960: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:10:04.69:5lzlj2Kco (4/13)
屋上
>……
綾時「ライドウくんか。これからよろしく」
淳「この辺じゃ見かけない制服だね。どこの学校?」
ヴィンセント「てか、随分と古風な格好だよな」
あかり「キャー、可愛い猫! ゴウトちゃんっていうの?」
チドリ「もふもふ……」
>ライドウと互いに自己紹介も済ませ、みんな彼に色々と話を聞いたりしながら食事をしている。
>ゴウトは主に女性二人に弄ばれて迷惑そうにしていた。
>ライドウには今ここに連れてきた彼らは何の力も持たない一般人である事をこっそり伝えた。
>それを了承した上か、彼は自分がデビルサマナーであるといった事は綾時たちには教えはしなかったようだ。
>束の間の和やかな時間を過ごした……
学生寮 ラウンジ
>食事を終えライドウにはそのまま屋上に待機していてもらい、他の皆を連れて一階へと戻ってきた。
>一階にいたメンバーもちょうど食事が終わったところのようだ。
諒「天田、水をもらっていいか」
天田「はい。どうぞ」
>天田が水の入ったコップを諒へ渡した。
諒「すまない」
>諒はそれを受け取り一度テーブルの上に置くと、ポケットから何かが詰まった小さなガラスの瓶を取り出す。
天田「……?」
天田「神郷さん、それ何ですか。薬?」
諒「……ああ。そんなところだ」
天田「体調、良くないんですか?」
諒「そういう訳じゃない。ただ……念の為に」
美鶴「……」
>そう言って諒はカプセル型の薬を水と一緒に口に含み喉へと流し込んだ。
鳴上「桐条さん」
美鶴「……ん。ああ、戻ってきたのか」
鳴上「はい。これでみんな揃いました。ライドウは変わらず屋上ですけど」
美鶴「そうか。では、さっそくだが今日の予定について話し合っておこう」
>……
屋上
>……
綾時「ライドウくんか。これからよろしく」
淳「この辺じゃ見かけない制服だね。どこの学校?」
ヴィンセント「てか、随分と古風な格好だよな」
あかり「キャー、可愛い猫! ゴウトちゃんっていうの?」
チドリ「もふもふ……」
>ライドウと互いに自己紹介も済ませ、みんな彼に色々と話を聞いたりしながら食事をしている。
>ゴウトは主に女性二人に弄ばれて迷惑そうにしていた。
>ライドウには今ここに連れてきた彼らは何の力も持たない一般人である事をこっそり伝えた。
>それを了承した上か、彼は自分がデビルサマナーであるといった事は綾時たちには教えはしなかったようだ。
>束の間の和やかな時間を過ごした……
学生寮 ラウンジ
>食事を終えライドウにはそのまま屋上に待機していてもらい、他の皆を連れて一階へと戻ってきた。
>一階にいたメンバーもちょうど食事が終わったところのようだ。
諒「天田、水をもらっていいか」
天田「はい。どうぞ」
>天田が水の入ったコップを諒へ渡した。
諒「すまない」
>諒はそれを受け取り一度テーブルの上に置くと、ポケットから何かが詰まった小さなガラスの瓶を取り出す。
天田「……?」
天田「神郷さん、それ何ですか。薬?」
諒「……ああ。そんなところだ」
天田「体調、良くないんですか?」
諒「そういう訳じゃない。ただ……念の為に」
美鶴「……」
>そう言って諒はカプセル型の薬を水と一緒に口に含み喉へと流し込んだ。
鳴上「桐条さん」
美鶴「……ん。ああ、戻ってきたのか」
鳴上「はい。これでみんな揃いました。ライドウは変わらず屋上ですけど」
美鶴「そうか。では、さっそくだが今日の予定について話し合っておこう」
>……
961: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:13:13.92:5lzlj2Kco (5/13)
>これからの事について皆で話をした結果、今日はまず外から悪魔が侵入してくるのを防ぐ意味でたとえ気休めにしかならなくても寮の窓を全部塞いでしまおうという事になった。
>入口も出入り以外では常時鍵を掛ける事になったが、その出入りもどうしても必要な場合を除き極力しないという事で落ち着いた。
>……というのはあくまで綾時たちへの建前で、特別課外活動部やペルソナ使いの皆は隙をみて外への見回りも定期的にする事も密かに決まった事だった。
美鶴「それではこの寮で部屋を持っている者は自分の部屋の戸締りをしっかりと。後の人は他の窓を塞ぐのを手伝って下さい」
>……
鳴上「……よし、こんなものか?」
鳴上「うーん……」
>自室の窓を寮の中にあったあり合わせの資材でどうにか塞いだ。
>本当ならもっと頑丈にやっておいた方がいいのかもしれないが、今やった事以上はもうどうにも出来そうにない感じだった。
>それよりも、他の部屋の窓を塞ぐのを手伝った方が良いだろう。
>そう思い自分の部屋から廊下に出ると、ちょうど同じように部屋から出てきた諒と遭遇した。
諒「もう自分の部屋は大丈夫か?」
鳴上「はい」
諒「なら早いところ別の部屋の分を片付けてしまおう」
>諒と共に作業をする事になった。
>……
鳴上「……。あの、神郷さん」
諒「なんだ」
鳴上「さっき飲んでいた薬の事、聞いてもいいですか? ちょっと気になったんで」
鳴上「本当に具合大丈夫なんですか?」
>昨夜は橿原が急な頭痛に襲われ、ライドウやゴウトも何処か怠そうにしていた。
>こんなにもおかしな時間と空間の中に共にいる訳で。
>何時誰がどんな風に体調をおかしくしても不思議ではないのだ。
諒「体の方はなんともない、が……」
諒「……」
諒「桐条から話を聞いていないのか?」
鳴上「え? いや、特に何も聞いてませんけど」
諒「そう、か」
諒「……」
諒「でも、そうだな。鳴上は現場のリーダーだ。お前には知っておいてもらった方がいいか」
鳴上「どういう事ですか」
諒「あの薬は、制御剤だ」
諒「ペルソナ能力の、な」
>これからの事について皆で話をした結果、今日はまず外から悪魔が侵入してくるのを防ぐ意味でたとえ気休めにしかならなくても寮の窓を全部塞いでしまおうという事になった。
>入口も出入り以外では常時鍵を掛ける事になったが、その出入りもどうしても必要な場合を除き極力しないという事で落ち着いた。
>……というのはあくまで綾時たちへの建前で、特別課外活動部やペルソナ使いの皆は隙をみて外への見回りも定期的にする事も密かに決まった事だった。
美鶴「それではこの寮で部屋を持っている者は自分の部屋の戸締りをしっかりと。後の人は他の窓を塞ぐのを手伝って下さい」
>……
鳴上「……よし、こんなものか?」
鳴上「うーん……」
>自室の窓を寮の中にあったあり合わせの資材でどうにか塞いだ。
>本当ならもっと頑丈にやっておいた方がいいのかもしれないが、今やった事以上はもうどうにも出来そうにない感じだった。
>それよりも、他の部屋の窓を塞ぐのを手伝った方が良いだろう。
>そう思い自分の部屋から廊下に出ると、ちょうど同じように部屋から出てきた諒と遭遇した。
諒「もう自分の部屋は大丈夫か?」
鳴上「はい」
諒「なら早いところ別の部屋の分を片付けてしまおう」
>諒と共に作業をする事になった。
>……
鳴上「……。あの、神郷さん」
諒「なんだ」
鳴上「さっき飲んでいた薬の事、聞いてもいいですか? ちょっと気になったんで」
鳴上「本当に具合大丈夫なんですか?」
>昨夜は橿原が急な頭痛に襲われ、ライドウやゴウトも何処か怠そうにしていた。
>こんなにもおかしな時間と空間の中に共にいる訳で。
>何時誰がどんな風に体調をおかしくしても不思議ではないのだ。
諒「体の方はなんともない、が……」
諒「……」
諒「桐条から話を聞いていないのか?」
鳴上「え? いや、特に何も聞いてませんけど」
諒「そう、か」
諒「……」
諒「でも、そうだな。鳴上は現場のリーダーだ。お前には知っておいてもらった方がいいか」
鳴上「どういう事ですか」
諒「あの薬は、制御剤だ」
諒「ペルソナ能力の、な」
962: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:16:04.74:5lzlj2Kco (6/13)
鳴上「ペルソナ能力の……制御?」
諒「ああ」
諒「俺のあの力は不安定なんだ。何がきっかけで暴走するかわかったもんじゃない」
諒「だがそれでも、何時使う事になるかもわからない。そんな状況だからな。その為の薬と言う訳だ」
諒「……これが初め桐条の頼みを渋っていた理由のひとつでもある」
鳴上「!」
諒「元々、俺は桐条の研究所で制御剤の治験に参加していたりもしたんだが、彼女は初めそれを知らなかったようだな」
諒「つい最近になってその事について謝られた。そんな状態で巻き込むような事になってすまない、ってな」
鳴上「でも、それで何故俺たちに協力してくれる気になったんですか? もちろん、こちらとしてもすごく助かりますけど、でも……」
諒「俺は、ただ。……」
>諒は作業の手を止めて黙ってしまった。
鳴上「……すみません。言えない事なら無理に聞いたりはしません」
諒「……」
諒「俺は、俺が今すべきだと感じた事をやろうと思っているだけだ」
諒「でもそれは時に鳴上たちの目的と噛み合わない事もあるかもしれない。……だから安易に俺の事を戦力として扱わない方がいい」
鳴上「……どういう意味なのか俺には解らないところもあるけど」
鳴上「そうだとしても、俺たちは仲間だって事に変わりはないですよ。そうですよね?」
諒「……」
諒「まあ、悪魔やJOKERなんて奴に好き勝手されるのは迷惑だと思っているのは一緒な事は確かだな」
諒「俺はまだ、……こんなところで死ぬ訳にはいかない」
>諒には諒だけが抱えている複雑な事情が色々とあるようだ。
>少し諒の事を理解した気がする……
>『ⅩⅧ 月 神郷諒』のランクが4になった
美鶴「鳴上、神郷。二階の方はどんな様子だ?」
鳴上「あ、はい。もう少しで終わりそうです」
美鶴「そうか。なら終わり次第こちらの方も手伝ってくれないか」
諒「外の見回りの方はどうするんだ」
美鶴「それは今ライドウとゴウトがしてくれている。問題ない」
鳴上「ライドウたちだけで? そっちの応援も行った方がよくないですか」
美鶴「私もそう思ったんだが、彼らからの通信によると今はまったく街中に悪魔の気配を感じないのだそうだ。だから平気だと」
鳴上「え、悪魔が消えたって事ですか!?」
鳴上「ペルソナ能力の……制御?」
諒「ああ」
諒「俺のあの力は不安定なんだ。何がきっかけで暴走するかわかったもんじゃない」
諒「だがそれでも、何時使う事になるかもわからない。そんな状況だからな。その為の薬と言う訳だ」
諒「……これが初め桐条の頼みを渋っていた理由のひとつでもある」
鳴上「!」
諒「元々、俺は桐条の研究所で制御剤の治験に参加していたりもしたんだが、彼女は初めそれを知らなかったようだな」
諒「つい最近になってその事について謝られた。そんな状態で巻き込むような事になってすまない、ってな」
鳴上「でも、それで何故俺たちに協力してくれる気になったんですか? もちろん、こちらとしてもすごく助かりますけど、でも……」
諒「俺は、ただ。……」
>諒は作業の手を止めて黙ってしまった。
鳴上「……すみません。言えない事なら無理に聞いたりはしません」
諒「……」
諒「俺は、俺が今すべきだと感じた事をやろうと思っているだけだ」
諒「でもそれは時に鳴上たちの目的と噛み合わない事もあるかもしれない。……だから安易に俺の事を戦力として扱わない方がいい」
鳴上「……どういう意味なのか俺には解らないところもあるけど」
鳴上「そうだとしても、俺たちは仲間だって事に変わりはないですよ。そうですよね?」
諒「……」
諒「まあ、悪魔やJOKERなんて奴に好き勝手されるのは迷惑だと思っているのは一緒な事は確かだな」
諒「俺はまだ、……こんなところで死ぬ訳にはいかない」
>諒には諒だけが抱えている複雑な事情が色々とあるようだ。
>少し諒の事を理解した気がする……
>『ⅩⅧ 月 神郷諒』のランクが4になった
美鶴「鳴上、神郷。二階の方はどんな様子だ?」
鳴上「あ、はい。もう少しで終わりそうです」
美鶴「そうか。なら終わり次第こちらの方も手伝ってくれないか」
諒「外の見回りの方はどうするんだ」
美鶴「それは今ライドウとゴウトがしてくれている。問題ない」
鳴上「ライドウたちだけで? そっちの応援も行った方がよくないですか」
美鶴「私もそう思ったんだが、彼らからの通信によると今はまったく街中に悪魔の気配を感じないのだそうだ。だから平気だと」
鳴上「え、悪魔が消えたって事ですか!?」
963: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:19:25.15:5lzlj2Kco (7/13)
諒「……。確か悪魔は月の満ち欠けに影響を受けるんだったな?」
鳴上「そうか。つまり、月の出ていない昼間は悪魔も大人しくなっている、って事なんでしょうか」
美鶴「その可能性はあるのかもしれないな。安易にそうだと決めつけ思い込んでしまうのも危険だが……」
美鶴「しかし、悪魔の専門家が今のところは大丈夫だと言っているんだ。それを今は素直に信じよう」
鳴上「そうですね。その辺の詳しい事も後でライドウに聞けばいいか」
諒「……終わったぞ」
>美鶴と話している間にも、諒は何時の間にか作業を進めていて窓の封鎖も完璧になっていた。
美鶴「ご苦労。では私と一緒に来てくれ」
美鶴「……ああ、そうだ。何時もそうしてくれているとは思うが、君たち自分の部屋から出ている時はしっかり入口の鍵もかけておくように」
鳴上「解ってますって」
>美鶴に言われるまでもなく、さっきも部屋を移動する前にきちんと施錠をしてから離れている。
>しかし念を押された事もあって、もう一度鍵がかかっているか確認する為に自分の部屋の扉の前まで行きドアノブを回す。
>施錠の手応えはしっかりとあった。
>バッチリだ、と……そう思ったその瞬間。
>それは視界に映った。
鳴上「……なんだ、これ」
鳴上「封筒?」
>扉の隙間に無地の封筒のようなものが挟まっているのだ。
>こんなもの部屋を出た時には無かった筈だが……
>指で摘みそこから引き抜いて確認してみるが、宛名も差出人も何も書かれていない本当にまっさらな封筒だった。
>どうやら封もされていなかったようで、何かの拍子にその中に入っていた小さな紙切れがはらりと床に落ちていった。
>……だから、意図せずともそのメッセージはこの目に飛び込んできた。
『さあ、オールドメイドの始まりだ』
諒「……。確か悪魔は月の満ち欠けに影響を受けるんだったな?」
鳴上「そうか。つまり、月の出ていない昼間は悪魔も大人しくなっている、って事なんでしょうか」
美鶴「その可能性はあるのかもしれないな。安易にそうだと決めつけ思い込んでしまうのも危険だが……」
美鶴「しかし、悪魔の専門家が今のところは大丈夫だと言っているんだ。それを今は素直に信じよう」
鳴上「そうですね。その辺の詳しい事も後でライドウに聞けばいいか」
諒「……終わったぞ」
>美鶴と話している間にも、諒は何時の間にか作業を進めていて窓の封鎖も完璧になっていた。
美鶴「ご苦労。では私と一緒に来てくれ」
美鶴「……ああ、そうだ。何時もそうしてくれているとは思うが、君たち自分の部屋から出ている時はしっかり入口の鍵もかけておくように」
鳴上「解ってますって」
>美鶴に言われるまでもなく、さっきも部屋を移動する前にきちんと施錠をしてから離れている。
>しかし念を押された事もあって、もう一度鍵がかかっているか確認する為に自分の部屋の扉の前まで行きドアノブを回す。
>施錠の手応えはしっかりとあった。
>バッチリだ、と……そう思ったその瞬間。
>それは視界に映った。
鳴上「……なんだ、これ」
鳴上「封筒?」
>扉の隙間に無地の封筒のようなものが挟まっているのだ。
>こんなもの部屋を出た時には無かった筈だが……
>指で摘みそこから引き抜いて確認してみるが、宛名も差出人も何も書かれていない本当にまっさらな封筒だった。
>どうやら封もされていなかったようで、何かの拍子にその中に入っていた小さな紙切れがはらりと床に落ちていった。
>……だから、意図せずともそのメッセージはこの目に飛び込んできた。
『さあ、オールドメイドの始まりだ』
964: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:22:20.96:5lzlj2Kco (8/13)
美鶴「神郷。君の部屋の扉に挟まっている……あれは何だ?」
諒「?」
諒「これは。……カード?」
>諒がゆっくりとそれを引き抜き、裏返した。
鳴上「ッ!?」
鳴上「神郷さん! 後ろっ……!」
諒「!!」
>声に反応して諒は身体を振り返らせると同時に、傍にいた美鶴の腕を掴み引っ張るようにして一緒に横へと大きく飛んだ。
>閉ざしている筈の屋内にごうっと風の音が渡り、諒の手からカードが吹き飛ばされていく。
美鶴「なっ、神郷……、!?」
美鶴「これ、は……」
>諒の部屋の扉には、何時の間にか縦に大きな亀裂が走っていた。
美鶴「お前は!」
諒「っ……」
>舞い上がったカードは真っ二つになって床に落ちる。
>そこには引き裂かれたピエロが不気味に笑っていた。
>……しかし、次に聞こえてきた笑い声は破れたそのカードからしているものではない事は、一目瞭然だった。
>この場にいる人数が何時の間にか一人、増えている――
JOKER「最初のターゲットが決まったんでな、お迎えにやってきたぜぇ」
鳴上「JOKER!」
美鶴「貴様、またしても……!」
諒「二度目の住居不法侵入か。感心出来ないな」
JOKER「随分と余裕だなあ、おい。それともオレの言葉の意味、解ってねえのか?」
JOKER「最初の狩りの獲物はテメェだって言ってんだよ、……神郷諒!」
諒「……」
>JOKERは刀の切っ先を突き付けながら諒の名を叫ぶ。
>諒は美鶴の盾になるように片腕を上げ、前へと一歩進みJOKERと睨み合った。
天田「なっ、今の音なんですか!?」
諒「っ……天田、出てくるな!」
天田「!?」
天田「こいつはッ……!」
>まだ自分の部屋で作業をしていたらしい天田が最悪のタイミングで顔を出す。
>その僅かな隙を突いて先手を取ったのはJOKERの方だった。
>JOKERは刀を構え直し、諒との距離を一瞬で詰める。
美鶴「神郷。君の部屋の扉に挟まっている……あれは何だ?」
諒「?」
諒「これは。……カード?」
>諒がゆっくりとそれを引き抜き、裏返した。
鳴上「ッ!?」
鳴上「神郷さん! 後ろっ……!」
諒「!!」
>声に反応して諒は身体を振り返らせると同時に、傍にいた美鶴の腕を掴み引っ張るようにして一緒に横へと大きく飛んだ。
>閉ざしている筈の屋内にごうっと風の音が渡り、諒の手からカードが吹き飛ばされていく。
美鶴「なっ、神郷……、!?」
美鶴「これ、は……」
>諒の部屋の扉には、何時の間にか縦に大きな亀裂が走っていた。
美鶴「お前は!」
諒「っ……」
>舞い上がったカードは真っ二つになって床に落ちる。
>そこには引き裂かれたピエロが不気味に笑っていた。
>……しかし、次に聞こえてきた笑い声は破れたそのカードからしているものではない事は、一目瞭然だった。
>この場にいる人数が何時の間にか一人、増えている――
JOKER「最初のターゲットが決まったんでな、お迎えにやってきたぜぇ」
鳴上「JOKER!」
美鶴「貴様、またしても……!」
諒「二度目の住居不法侵入か。感心出来ないな」
JOKER「随分と余裕だなあ、おい。それともオレの言葉の意味、解ってねえのか?」
JOKER「最初の狩りの獲物はテメェだって言ってんだよ、……神郷諒!」
諒「……」
>JOKERは刀の切っ先を突き付けながら諒の名を叫ぶ。
>諒は美鶴の盾になるように片腕を上げ、前へと一歩進みJOKERと睨み合った。
天田「なっ、今の音なんですか!?」
諒「っ……天田、出てくるな!」
天田「!?」
天田「こいつはッ……!」
>まだ自分の部屋で作業をしていたらしい天田が最悪のタイミングで顔を出す。
>その僅かな隙を突いて先手を取ったのはJOKERの方だった。
>JOKERは刀を構え直し、諒との距離を一瞬で詰める。
965: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:25:01.14:5lzlj2Kco (9/13)
美鶴「神郷!」
諒「伏せろ、桐条!」
>美鶴を庇う為に彼女を突き飛ばし、諒はすんでの所でJOKERの攻撃をかわしてこの場から走りだし、上へと続く階段を一気に駆け上っていった。
JOKER「チッ……ちょこまかと!」
>それをJOKERが黙って見ている筈もなく、美鶴も天田も放置してすぐに諒の後を追って走り出す。
鳴上「天田! 桐条さんの事は頼んだ!」
美鶴「鳴上!?」
天田「鳴上さん!」
>……
屋上
JOKER「もうこれで後が無くなったなぁ?」
諒「……」
鳴上「神郷さん!」
>二人の後に続き屋上まで駆け上ってやってきた。
>諒は屋上の柵に背を預けていて、JOKERは更に追い詰めるようにじりじりと彼へ寄っている姿が見える。
>このままでは……!
JOKER「とっとと此処から消えちまいなぁッ!」
>JOKERが薙いだ刀から出た衝撃波のようなものが諒を襲う。
>もうダメだ――
>そう思ったのは自分だけのようで。
>諒の表情には焦りも諦めの色もなく。
>冷静な眼差しが、その攻撃をじっと見据えていたのだった。
>――彼のその瞳が青く光り輝く。
>それと同じ色を持つ彼とは別の半透明な体が……諒のペルソナが、彼の頭上へと浮かんだ。
>諒は、JOKERに人差し指をすっと向ける。
美鶴「神郷!」
諒「伏せろ、桐条!」
>美鶴を庇う為に彼女を突き飛ばし、諒はすんでの所でJOKERの攻撃をかわしてこの場から走りだし、上へと続く階段を一気に駆け上っていった。
JOKER「チッ……ちょこまかと!」
>それをJOKERが黙って見ている筈もなく、美鶴も天田も放置してすぐに諒の後を追って走り出す。
鳴上「天田! 桐条さんの事は頼んだ!」
美鶴「鳴上!?」
天田「鳴上さん!」
>……
屋上
JOKER「もうこれで後が無くなったなぁ?」
諒「……」
鳴上「神郷さん!」
>二人の後に続き屋上まで駆け上ってやってきた。
>諒は屋上の柵に背を預けていて、JOKERは更に追い詰めるようにじりじりと彼へ寄っている姿が見える。
>このままでは……!
JOKER「とっとと此処から消えちまいなぁッ!」
>JOKERが薙いだ刀から出た衝撃波のようなものが諒を襲う。
>もうダメだ――
>そう思ったのは自分だけのようで。
>諒の表情には焦りも諦めの色もなく。
>冷静な眼差しが、その攻撃をじっと見据えていたのだった。
>――彼のその瞳が青く光り輝く。
>それと同じ色を持つ彼とは別の半透明な体が……諒のペルソナが、彼の頭上へと浮かんだ。
>諒は、JOKERに人差し指をすっと向ける。
966: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:28:14.20:5lzlj2Kco (10/13)
諒「っ……」
JOKER「!?」
>諒の動きに合わせるように、彼のペルソナの腕がJOKERに向けられた。
>正確には腕の肘にあたる部分が、JOKERに狙いを定めている。
>そこから長く伸びているのは、銃身のように見えた。
>その先から真っ直ぐな光の線が、彼に向かってきている衝撃波とJOKERに向けて放たれる。
>衝撃波は一瞬の内に相殺されたが……
>しかし、それがJOKERの体を射抜く事はなく、奴はまた諒との距離を置いた。
JOKER「……随分と厄介なペルソナを持ってるみたいだな」
諒「今度は……外さない」
>諒のペルソナの銃からまた光線が放たれる。
>今度は一度のみではなく、時間を置かずに何度も何度も、執拗に。
>それでもJOKERは人間離れした動きでそれを回避しつつ、柵の方へと走り寄る。
>……だが、諒との接触はしないまま、コンクリートを蹴りその柵を飛び越えて
>屋上から飛び降りたのだった。
諒「待て!」
>諒の体が宙に浮かぶ。
>これも彼のペルソナの力なのか、JOKERの後を追い自在に飛ぶようにして諒もまた屋上から落下した。
>急いで自分も屋上の柵へと駆け寄る。
鳴上「くっ、俺だってここから援護くらいは……!」
鳴上「イザナ、」
鳴上「――ッ!?」
JOKER「……馬鹿が」
>下へと真っ逆様に落ちていくJOKERの体が……不意に重力に逆らい、宙で停止した。
諒「なっ……!」
>諒はその動きに咄嗟の反応が出来なかった。
>JOKERの体はそこから今度は勢いよく上昇し
>――下に向かっていた諒の体を、その刃が貫いた。
諒「がっ、は……!」
>その光景を目の当たりにした瞬間
>意識が、白んだ……
>……
諒「っ……」
JOKER「!?」
>諒の動きに合わせるように、彼のペルソナの腕がJOKERに向けられた。
>正確には腕の肘にあたる部分が、JOKERに狙いを定めている。
>そこから長く伸びているのは、銃身のように見えた。
>その先から真っ直ぐな光の線が、彼に向かってきている衝撃波とJOKERに向けて放たれる。
>衝撃波は一瞬の内に相殺されたが……
>しかし、それがJOKERの体を射抜く事はなく、奴はまた諒との距離を置いた。
JOKER「……随分と厄介なペルソナを持ってるみたいだな」
諒「今度は……外さない」
>諒のペルソナの銃からまた光線が放たれる。
>今度は一度のみではなく、時間を置かずに何度も何度も、執拗に。
>それでもJOKERは人間離れした動きでそれを回避しつつ、柵の方へと走り寄る。
>……だが、諒との接触はしないまま、コンクリートを蹴りその柵を飛び越えて
>屋上から飛び降りたのだった。
諒「待て!」
>諒の体が宙に浮かぶ。
>これも彼のペルソナの力なのか、JOKERの後を追い自在に飛ぶようにして諒もまた屋上から落下した。
>急いで自分も屋上の柵へと駆け寄る。
鳴上「くっ、俺だってここから援護くらいは……!」
鳴上「イザナ、」
鳴上「――ッ!?」
JOKER「……馬鹿が」
>下へと真っ逆様に落ちていくJOKERの体が……不意に重力に逆らい、宙で停止した。
諒「なっ……!」
>諒はその動きに咄嗟の反応が出来なかった。
>JOKERの体はそこから今度は勢いよく上昇し
>――下に向かっていた諒の体を、その刃が貫いた。
諒「がっ、は……!」
>その光景を目の当たりにした瞬間
>意識が、白んだ……
>……
967: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:30:47.74:5lzlj2Kco (11/13)
――はるか 昔のことかも しれないし
とおい 明日のできごとかも しれない。
見しらぬ 土地かも しれないし
すみなれた 場所かも しれない。
そんな あるところの おはなしです。――
『いや、もしかしたら。貴方は……貴方の本当の目的は』
『それこそ、けして人がなしてはならない事です……!』
>彩られていく、最後のキャンバス。
『――だから、お前たちのところへは戻れない』
>響き渡る海鳥の鳴き声。
>赤い服の少女。
『仰る意味が、解りません……』
『これは幸運な事なのです。――親御さんは? 時間がありません。了承の際はサインを』
>白い建物の中。
>震える指先。
『……殺した……僕、が……』
『違う……違うッ!』
>夕暮れのアトリエ。
>割れる音。壊れてゆく音。
『施術の前に塗り潰すべき記憶の仔細を聞きたい。あの日、何があったのかを』
『……後悔、していました』
『僕たちは、忘れてはいけなのかもしれない……』
>揺れる、心。
『やめろっ……やめろおぉぉぉぉ!』
『……あの子、たち……を……』
『お父、さん……お母さん……!』
『見るなあぁぁぁぁぁッ!』
>……
『――お別れだ』
『……』
『おにいちゃん!』
『また、おうまさんしてね!』
>塗り潰されていく、最後のキャンバス。
>灰色の空と海と街へ幾多に広がり散る、それは――
――はるか 昔のことかも しれないし
とおい 明日のできごとかも しれない。
見しらぬ 土地かも しれないし
すみなれた 場所かも しれない。
そんな あるところの おはなしです。――
『いや、もしかしたら。貴方は……貴方の本当の目的は』
『それこそ、けして人がなしてはならない事です……!』
>彩られていく、最後のキャンバス。
『――だから、お前たちのところへは戻れない』
>響き渡る海鳥の鳴き声。
>赤い服の少女。
『仰る意味が、解りません……』
『これは幸運な事なのです。――親御さんは? 時間がありません。了承の際はサインを』
>白い建物の中。
>震える指先。
『……殺した……僕、が……』
『違う……違うッ!』
>夕暮れのアトリエ。
>割れる音。壊れてゆく音。
『施術の前に塗り潰すべき記憶の仔細を聞きたい。あの日、何があったのかを』
『……後悔、していました』
『僕たちは、忘れてはいけなのかもしれない……』
>揺れる、心。
『やめろっ……やめろおぉぉぉぉ!』
『……あの子、たち……を……』
『お父、さん……お母さん……!』
『見るなあぁぁぁぁぁッ!』
>……
『――お別れだ』
『……』
『おにいちゃん!』
『また、おうまさんしてね!』
>塗り潰されていく、最後のキャンバス。
>灰色の空と海と街へ幾多に広がり散る、それは――
968: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:33:40.63:5lzlj2Kco (12/13)
鳴上「……はね……?」
>白い、とても白い羽根が周りに沢山舞っている。
>これは……何の羽根だろう。
>今までに見たことのない形状をしている。
>それをひとつ掴もうとして、手を伸ばしたが
>瞬きをしたその瞬間突風を身に感じ、それは全て跡形もなく消え去っていた。
>これは夢? それとも幻?
>……たった今、走馬灯のように意識の中を巡ったヴィジョン。
>その中に、諒の姿を見たような気がした。
>神社の夏祭りの時、水色の風船を手渡してくれたあの時と同じ……いや、それ以上の憂いを含んだ眼差しを誰かに向ける諒の姿。
>その、神郷諒は――
鳴上「……、ッ!」
鳴上「……神郷……さん?」
鳴上「神郷さん……神郷さん……神郷さん!!」
>我にかえり、諒の姿を探す。
>けれど……彼は何処にもいなかった。
>あのまま屋上から落ちて地面に叩きつけられているという事もなく、いなくなっていたのだ。
>その場にへたり込んだ自分の背後には、何時の間にかまたJOKERがいて、それがただこちらを静かに見下ろしているだけ。
>他には誰も、誰も……
JOKER「残りは18だ」
>ただそれだけを呟き、JOKERの気配はそこから完全に消えた。
>そして、屋上の扉が激しく音を立てて開かれる。
美鶴「鳴上! 神郷は無事か!」
天田「……鳴上さん!? どうしたんですか!」
美鶴「神郷は、神郷はどうした! おい、鳴上! 鳴上!?」
鳴上「……う……あっ……」
鳴上「ああっ……ああああああああッ!!」
>抑えきれなくなった慟哭が空に響いた。
>さっきまで白かった意識が、今度は黒く真っ暗になっていくのを感じた……
>……
鳴上「……はね……?」
>白い、とても白い羽根が周りに沢山舞っている。
>これは……何の羽根だろう。
>今までに見たことのない形状をしている。
>それをひとつ掴もうとして、手を伸ばしたが
>瞬きをしたその瞬間突風を身に感じ、それは全て跡形もなく消え去っていた。
>これは夢? それとも幻?
>……たった今、走馬灯のように意識の中を巡ったヴィジョン。
>その中に、諒の姿を見たような気がした。
>神社の夏祭りの時、水色の風船を手渡してくれたあの時と同じ……いや、それ以上の憂いを含んだ眼差しを誰かに向ける諒の姿。
>その、神郷諒は――
鳴上「……、ッ!」
鳴上「……神郷……さん?」
鳴上「神郷さん……神郷さん……神郷さん!!」
>我にかえり、諒の姿を探す。
>けれど……彼は何処にもいなかった。
>あのまま屋上から落ちて地面に叩きつけられているという事もなく、いなくなっていたのだ。
>その場にへたり込んだ自分の背後には、何時の間にかまたJOKERがいて、それがただこちらを静かに見下ろしているだけ。
>他には誰も、誰も……
JOKER「残りは18だ」
>ただそれだけを呟き、JOKERの気配はそこから完全に消えた。
>そして、屋上の扉が激しく音を立てて開かれる。
美鶴「鳴上! 神郷は無事か!」
天田「……鳴上さん!? どうしたんですか!」
美鶴「神郷は、神郷はどうした! おい、鳴上! 鳴上!?」
鳴上「……う……あっ……」
鳴上「ああっ……ああああああああッ!!」
>抑えきれなくなった慟哭が空に響いた。
>さっきまで白かった意識が、今度は黒く真っ暗になっていくのを感じた……
>……
969: ◆Hw7XKfELws:2012/09/06(木) 23:36:55.87:5lzlj2Kco (13/13)
終わりです
また次回
残ってるレスが微妙……次スレ立てるべきか
終わりです
また次回
残ってるレスが微妙……次スレ立てるべきか
970:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/09/06(木) 23:47:51.28:R3NsjBBAO (1/1)
乙
乙
971: ◆Hw7XKfELws:2012/09/07(金) 00:00:36.05:77Sw9Vwjo (1/1)
次スレ
鳴上「月光館学園?」 No.3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346942957/
このスレでの本編投下はここまでにしようと思います。
ここから先は何かあれば適当にどうぞ
余ればまた小ネタ投下するかな
このSSもまさかの3スレ目突入ですが、大体今の話が終われば折り返し地点になる感じです
まだまだ先は長い……
それでも日々お付き合いしてくれている皆さま、本当にありがとうございます。
今後ともよろしく……
次スレ
鳴上「月光館学園?」 No.3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346942957/
このスレでの本編投下はここまでにしようと思います。
ここから先は何かあれば適当にどうぞ
余ればまた小ネタ投下するかな
このSSもまさかの3スレ目突入ですが、大体今の話が終われば折り返し地点になる感じです
まだまだ先は長い……
それでも日々お付き合いしてくれている皆さま、本当にありがとうございます。
今後ともよろしく……
972:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/09/07(金) 01:00:37.03:c8Rh+eN1o (1/1)
乙!
乙!
973:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/09/07(金) 01:00:47.30:OOJOol5Y0 (1/1)
乙です。
まさかの退場…こいつはどうなっちまうんだろうね
乙です。
まさかの退場…こいつはどうなっちまうんだろうね
974:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/09/07(金) 01:01:06.80:BTBthgtQ0 (1/1)
マハ乙
緊張感出てきたなー
焦らず完走してくれ
マハ乙
緊張感出てきたなー
焦らず完走してくれ
975:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空):2012/09/07(金) 01:09:32.61:vE8HaMEUo (1/1)
乙ー
乙ー
976: ◆Hw7XKfELws:2012/09/09(日) 23:46:22.50:7c6EaOwLo (1/7)
やっぱりまだレスに余裕がありそうなので、もう一回分本編の投下してから次スレにいきたいと思います
では、開始
やっぱりまだレスに余裕がありそうなので、もう一回分本編の投下してから次スレにいきたいと思います
では、開始
977: ◆Hw7XKfELws:2012/09/09(日) 23:48:37.87:7c6EaOwLo (2/7)
・
・
・
『――上、鳴上。起きんか、鳴上』
鳴上「……」
>……頬に何かの感触がする。
『これでも起きないのなら……』
鳴上「うっ……?」
鳴上「ッ!!」
>目前に光る爪を見て驚きのあまり思わず飛び跳ねた。
ゴウト『やっとか』
鳴上「ゴ、ゴウト……?」
>ゴウトは爪と前足を引っ込め溜息を一つ吐いた。
>どうやらゴウトが今さっきまで自分に猫パンチをくらわせていたと思われる。
鳴上「……」
鳴上「俺は、一体……」
メティス「鳴上さん!」
ラビリス「良かったわあ、すぐ気が付いて……何があったのかと思って駆けつけてみれば悠がぶっ倒れてるんやもん。びっくりさせんといて」
鳴上「メティス、ラビリス……?」
・
・
・
『――上、鳴上。起きんか、鳴上』
鳴上「……」
>……頬に何かの感触がする。
『これでも起きないのなら……』
鳴上「うっ……?」
鳴上「ッ!!」
>目前に光る爪を見て驚きのあまり思わず飛び跳ねた。
ゴウト『やっとか』
鳴上「ゴ、ゴウト……?」
>ゴウトは爪と前足を引っ込め溜息を一つ吐いた。
>どうやらゴウトが今さっきまで自分に猫パンチをくらわせていたと思われる。
鳴上「……」
鳴上「俺は、一体……」
メティス「鳴上さん!」
ラビリス「良かったわあ、すぐ気が付いて……何があったのかと思って駆けつけてみれば悠がぶっ倒れてるんやもん。びっくりさせんといて」
鳴上「メティス、ラビリス……?」
978: ◆Hw7XKfELws:2012/09/09(日) 23:50:32.61:7c6EaOwLo (3/7)
>どうやらここは屋上のようだ。
>倒れていたという事らしいが……前後の記憶が曖昧で、どうしてこんな場所でそんな事になったのか上手く思い出せない。
>辺りをよく見回してみると、街に出ていた筈のライドウも含めこの寮に集まっている人間の殆どがこの場所に集合しているのが確認出来た。
>……ただ、一人を除いて。
鳴上「っ……そうだ、神郷さん! 神郷さんは!?」
ライドウ「その神郷さんの事について聞きたいのは此方の方だ」
ライドウ「君と一緒に居た桐条さんにも天田君にもはっきりとした事情が解らないようだが」
ゴウト『ここで何があったのだ、鳴上』
鳴上「……」
鳴上「じゃあ……さっきのは夢、じゃないのか……」
鳴上「くそっ……!」
>拳を屋上のコンクリートに叩き付ける。
>じんわりと鈍い痛みを感じた。
ライドウ「鳴上」
鳴上「……。神郷さんは、JOKERと戦って……」
>思い出したさっきまでの出来事をぽつぽつと、この場にいる皆に告げた。
>……
アイギス「そんな、神郷さんが……!?」
藤堂「……。アイツが言ってた言葉の通り消されてしまったって事か」
美鶴・天田「……」
>美鶴や天田はついさっきまで一緒にいた筈の諒の姿が何処にも見えない事から何があったのか予想は出来ていても自分の言葉を聞くまでそれを信じたくは無かった様子で、話を聞き終わると無言のまま俯き肩を落とした。
>この場に集まる他の人たちも、ここであった事を聞いて絶句している。
>その中でライドウだけは屋上の周りを調べたり上から下を見下ろしたりして改めて近辺の確認をしていた。
>どうやらここは屋上のようだ。
>倒れていたという事らしいが……前後の記憶が曖昧で、どうしてこんな場所でそんな事になったのか上手く思い出せない。
>辺りをよく見回してみると、街に出ていた筈のライドウも含めこの寮に集まっている人間の殆どがこの場所に集合しているのが確認出来た。
>……ただ、一人を除いて。
鳴上「っ……そうだ、神郷さん! 神郷さんは!?」
ライドウ「その神郷さんの事について聞きたいのは此方の方だ」
ライドウ「君と一緒に居た桐条さんにも天田君にもはっきりとした事情が解らないようだが」
ゴウト『ここで何があったのだ、鳴上』
鳴上「……」
鳴上「じゃあ……さっきのは夢、じゃないのか……」
鳴上「くそっ……!」
>拳を屋上のコンクリートに叩き付ける。
>じんわりと鈍い痛みを感じた。
ライドウ「鳴上」
鳴上「……。神郷さんは、JOKERと戦って……」
>思い出したさっきまでの出来事をぽつぽつと、この場にいる皆に告げた。
>……
アイギス「そんな、神郷さんが……!?」
藤堂「……。アイツが言ってた言葉の通り消されてしまったって事か」
美鶴・天田「……」
>美鶴や天田はついさっきまで一緒にいた筈の諒の姿が何処にも見えない事から何があったのか予想は出来ていても自分の言葉を聞くまでそれを信じたくは無かった様子で、話を聞き終わると無言のまま俯き肩を落とした。
>この場に集まる他の人たちも、ここであった事を聞いて絶句している。
>その中でライドウだけは屋上の周りを調べたり上から下を見下ろしたりして改めて近辺の確認をしていた。
979: ◆Hw7XKfELws:2012/09/09(日) 23:52:12.70:7c6EaOwLo (4/7)
ライドウ「その襲ってきたJOKERらしき人物の姿も今は近くにいないようです。が、念の為皆さんは一度建物の中へと戻って下さい」
ライドウ「……鳴上の話を聞く限りでは何処に居ようとJOKERにとっては関係無い様ですが」
ライドウ「もしまた建物の中にJOKERが突然現れるような事があれば、屋上まで来るか外に出るかして下さい。通信機での連絡もお願いします。自分がすぐに駆けつけますので」
ゴウト『本当は此処でライドウと共にいて貰うのが一番なのかもしれないが、流石にこの人数でずっと一緒に外の空気に当たっているのは辛かろう』
ゴウト『外から見える位置に居ては逆に狙われ易くなるだろうしな。何処に居ても結局状況は変わらんという事だ』
美鶴「……。解った」
美鶴「皆さん、一度ラウンジに戻りましょう」
>美鶴の言葉に皆、無言のまま従う。
>その足取りは誰もが重々しくなっているように見えた。
>一人、二人と順に屋上から人の気配が消えていく。
>その様子をぼんやりと眺めながら、自分は未だにその場から立ち上がる事すら出来ずにいた。
達哉「おい、鳴上」
鳴上「……」
達哉「しっかりしろ!」
鳴上「ッ……!」
>周防の平手が頬に直撃する。
>叩かれたその痛みから、ぼやけた意識が少しではあるがはっきりしてきた。
達哉「お前の辛い気持ちは解る。だが、……だからこそ、こんな所で腑抜けてる場合じゃないだろ」
達哉「次にまたこんな事にならない為にも……」
鳴上「周防さん……」
鳴上「っ……」
ライドウ「その襲ってきたJOKERらしき人物の姿も今は近くにいないようです。が、念の為皆さんは一度建物の中へと戻って下さい」
ライドウ「……鳴上の話を聞く限りでは何処に居ようとJOKERにとっては関係無い様ですが」
ライドウ「もしまた建物の中にJOKERが突然現れるような事があれば、屋上まで来るか外に出るかして下さい。通信機での連絡もお願いします。自分がすぐに駆けつけますので」
ゴウト『本当は此処でライドウと共にいて貰うのが一番なのかもしれないが、流石にこの人数でずっと一緒に外の空気に当たっているのは辛かろう』
ゴウト『外から見える位置に居ては逆に狙われ易くなるだろうしな。何処に居ても結局状況は変わらんという事だ』
美鶴「……。解った」
美鶴「皆さん、一度ラウンジに戻りましょう」
>美鶴の言葉に皆、無言のまま従う。
>その足取りは誰もが重々しくなっているように見えた。
>一人、二人と順に屋上から人の気配が消えていく。
>その様子をぼんやりと眺めながら、自分は未だにその場から立ち上がる事すら出来ずにいた。
達哉「おい、鳴上」
鳴上「……」
達哉「しっかりしろ!」
鳴上「ッ……!」
>周防の平手が頬に直撃する。
>叩かれたその痛みから、ぼやけた意識が少しではあるがはっきりしてきた。
達哉「お前の辛い気持ちは解る。だが、……だからこそ、こんな所で腑抜けてる場合じゃないだろ」
達哉「次にまたこんな事にならない為にも……」
鳴上「周防さん……」
鳴上「っ……」
980: ◆Hw7XKfELws:2012/09/09(日) 23:53:40.62:7c6EaOwLo (5/7)
>周防の言葉が、痛い。
>諒と似ている声色でそう告げるものだから、まるで諒に叱られているようにも感じて尚更だった。
>その痛みに思わず自分の胸元を鷲掴む。
>そこへ、誰かの影が割って入ってきた。
麻希「やめて、刑事さん」
麻希「鳴上くんだって、それは頭では解ってる筈。そうよね?」
鳴上「……」
達哉「……」
達哉「先に行ってるからな」
>まだ何か言いたそうにはしていたが最後にそれだけ告げて周防も屋上から出て行った。
>麻希は一つ息を吐いて、胸元を掴んでいた自分の手をそっと取った。
麻希「血が滲んでるよ。手当しないとね」
>さっき殴り付けたせいだろう。
>しかし今は拳の痛みよりも、胸の痛みの方が辛かった。
>そして
鳴上「――!?」
>急にまた意識が白くなっていくのを感じた……
>……
>周防の言葉が、痛い。
>諒と似ている声色でそう告げるものだから、まるで諒に叱られているようにも感じて尚更だった。
>その痛みに思わず自分の胸元を鷲掴む。
>そこへ、誰かの影が割って入ってきた。
麻希「やめて、刑事さん」
麻希「鳴上くんだって、それは頭では解ってる筈。そうよね?」
鳴上「……」
達哉「……」
達哉「先に行ってるからな」
>まだ何か言いたそうにはしていたが最後にそれだけ告げて周防も屋上から出て行った。
>麻希は一つ息を吐いて、胸元を掴んでいた自分の手をそっと取った。
麻希「血が滲んでるよ。手当しないとね」
>さっき殴り付けたせいだろう。
>しかし今は拳の痛みよりも、胸の痛みの方が辛かった。
>そして
鳴上「――!?」
>急にまた意識が白くなっていくのを感じた……
>……
981: ◆Hw7XKfELws:2012/09/09(日) 23:57:40.26:7c6EaOwLo (6/7)
>目の前に数人の少年少女がいた。
>その誰もが見覚えのない学生服を着ているが、中心にいた少年の顔には何処か見覚えがあるような気がする。
>左の耳朶に光るピアス。
>それは記憶にあるのと少し形状は違って見えるが、少年の髪型の感じといい……藤堂尚也のように見えた。
>ただ、この藤堂は『少年』だと思うほどに若かった。
>自分の知る藤堂も実際の年齢はどうあれまだ十分若く見えるのだが、今見えている彼はそれよりも幼さと未熟さを残しているように思える。
>その彼の隣にいる少女にふと意識が移った。
>驚く事に、少女の方も見覚えのある顔立ちをしている。
>頭にリボンを着けていて髪型はまったく違っているのだが、口元のホクロといい園村麻希に違いないとそう感じた。
>何故こんな姿の二人が?
>……そう思っていると、藤堂と麻希の傍にいた髪の短い少女の姿が変貌した。
>制服姿から私服に変わり髪も伸びて成長し、一緒にいた少年少女たちはまるで違う人物になってしまう。
>ブレザー姿の少年、その少年と同じ学校の制服であろう金髪の少女、青い髪に学ランの少年、それから大人の女性がもう一人。
>そして制服姿から大人に変わった女は消えて、その代わりに青い髪の男と同じ学ランで胸元に花をさした少年が現れた。
>なんだか、ブレザー姿の少年は周防達哉に、花を持った少年は橿原淳にそっくりのような気がする。
>……そのいずれも藤堂や麻希の時と同じで、自分が知る彼らよりも若く見えた。
>しっかりと確認しようとその少年たちをじっと見つめていると、ブレザー姿の少年の服装が制服から真っ赤なジャケットに変わり一緒にいた大人の女性を除いてまた周りにいる人物たちががらりと変わった。
>化粧の映えた美人の女性、周防と何処か雰囲気の似たサングラスの男性、そして長い黒髪に派手なスーツを着た男性は……パオフゥだ。
>……
>どうしてこんな光景が、この人たちは一体……いや、そもそもここは何処なのだろう。
>周りの空気も光も柔らかで、ただいるだけでも癒されるような、そんな空間のように感じる……
>その場所の中心にあったのは――
>目の前に数人の少年少女がいた。
>その誰もが見覚えのない学生服を着ているが、中心にいた少年の顔には何処か見覚えがあるような気がする。
>左の耳朶に光るピアス。
>それは記憶にあるのと少し形状は違って見えるが、少年の髪型の感じといい……藤堂尚也のように見えた。
>ただ、この藤堂は『少年』だと思うほどに若かった。
>自分の知る藤堂も実際の年齢はどうあれまだ十分若く見えるのだが、今見えている彼はそれよりも幼さと未熟さを残しているように思える。
>その彼の隣にいる少女にふと意識が移った。
>驚く事に、少女の方も見覚えのある顔立ちをしている。
>頭にリボンを着けていて髪型はまったく違っているのだが、口元のホクロといい園村麻希に違いないとそう感じた。
>何故こんな姿の二人が?
>……そう思っていると、藤堂と麻希の傍にいた髪の短い少女の姿が変貌した。
>制服姿から私服に変わり髪も伸びて成長し、一緒にいた少年少女たちはまるで違う人物になってしまう。
>ブレザー姿の少年、その少年と同じ学校の制服であろう金髪の少女、青い髪に学ランの少年、それから大人の女性がもう一人。
>そして制服姿から大人に変わった女は消えて、その代わりに青い髪の男と同じ学ランで胸元に花をさした少年が現れた。
>なんだか、ブレザー姿の少年は周防達哉に、花を持った少年は橿原淳にそっくりのような気がする。
>……そのいずれも藤堂や麻希の時と同じで、自分が知る彼らよりも若く見えた。
>しっかりと確認しようとその少年たちをじっと見つめていると、ブレザー姿の少年の服装が制服から真っ赤なジャケットに変わり一緒にいた大人の女性を除いてまた周りにいる人物たちががらりと変わった。
>化粧の映えた美人の女性、周防と何処か雰囲気の似たサングラスの男性、そして長い黒髪に派手なスーツを着た男性は……パオフゥだ。
>……
>どうしてこんな光景が、この人たちは一体……いや、そもそもここは何処なのだろう。
>周りの空気も光も柔らかで、ただいるだけでも癒されるような、そんな空間のように感じる……
>その場所の中心にあったのは――
982: ◆Hw7XKfELws:2012/09/09(日) 23:59:19.86:7c6EaOwLo (7/7)
鳴上「……泉」
麻希「ああ、そうね。トリッシュに治してもらおっか」
鳴上「!」
鳴上「……」
>目の前にいる麻希の姿は、さっき見た制服姿で頭にリボンを着けた少女では無くなっていた。
麻希「これくらいの怪我ならあの子もそれほどお金を取ろうだなんて――」
>麻希がそう言葉を言いかけたその時。
>ドンッ、という大きな地鳴りが響いた。
麻希「え、今の……何?」
ライドウ「これは、下の階からか?」
鳴上「下の……、まさか!」
>急いで立ち上がり、屋上から飛び出した。
麻希「あっ、待って!」
ライドウ「鳴上!」
ライドウ「……ッ!」
ゴウト『よせ、ライドウ。その結界は、やはり我らをここから中へは通さぬ気のようだ』
ライドウ「……」
ゴウト『今は連中に任せる他に無い』
ゴウト『……この事態、思っていたよりも厄介かもしれぬな』
鳴上「……泉」
麻希「ああ、そうね。トリッシュに治してもらおっか」
鳴上「!」
鳴上「……」
>目の前にいる麻希の姿は、さっき見た制服姿で頭にリボンを着けた少女では無くなっていた。
麻希「これくらいの怪我ならあの子もそれほどお金を取ろうだなんて――」
>麻希がそう言葉を言いかけたその時。
>ドンッ、という大きな地鳴りが響いた。
麻希「え、今の……何?」
ライドウ「これは、下の階からか?」
鳴上「下の……、まさか!」
>急いで立ち上がり、屋上から飛び出した。
麻希「あっ、待って!」
ライドウ「鳴上!」
ライドウ「……ッ!」
ゴウト『よせ、ライドウ。その結界は、やはり我らをここから中へは通さぬ気のようだ』
ライドウ「……」
ゴウト『今は連中に任せる他に無い』
ゴウト『……この事態、思っていたよりも厄介かもしれぬな』
983: ◆Hw7XKfELws:2012/09/10(月) 00:01:04.47:rMZSfEmIo (1/10)
>……
学生寮 ラウンジ
鳴上「どうしたみんな! 何があった!」
麻希「藤堂くんっ、今の音と揺れは一体……」
藤堂「……あれを見ろ」
>藤堂が学生寮の入口にあるカウンターのその奥にある扉を指差した。
>そこにあった筈の扉が粉々に破壊されている……
>あの場所は。
>あの場所にいたのは
鳴上「トリッシュ……トリッシュはどうしたんですか!?」
美鶴「我々がここまで来た時には既にこうなっていて、あの妖精の姿も何処にも見当たらなくなっていたんだ」
>美鶴は首を横に振って苦々しい表情で呟く。
鳴上「そんな……」
鳴上「トリッシュ!」
>破壊されている扉の前まで近寄る。
>泉と繋がっている事を示していた青白い光は消え失せていて、その扉の向こうを壊れた隙間から覗いてみてもトリッシュはおらずあの回復の泉も無くなっていた。
>……
学生寮 ラウンジ
鳴上「どうしたみんな! 何があった!」
麻希「藤堂くんっ、今の音と揺れは一体……」
藤堂「……あれを見ろ」
>藤堂が学生寮の入口にあるカウンターのその奥にある扉を指差した。
>そこにあった筈の扉が粉々に破壊されている……
>あの場所は。
>あの場所にいたのは
鳴上「トリッシュ……トリッシュはどうしたんですか!?」
美鶴「我々がここまで来た時には既にこうなっていて、あの妖精の姿も何処にも見当たらなくなっていたんだ」
>美鶴は首を横に振って苦々しい表情で呟く。
鳴上「そんな……」
鳴上「トリッシュ!」
>破壊されている扉の前まで近寄る。
>泉と繋がっている事を示していた青白い光は消え失せていて、その扉の向こうを壊れた隙間から覗いてみてもトリッシュはおらずあの回復の泉も無くなっていた。
984: ◆Hw7XKfELws:2012/09/10(月) 00:02:34.68:rMZSfEmIo (2/10)
>ふと、壊れて飛び散っている扉だったものの破片に混じって何かを踏み付けている事に気付く。
>足を退かして確認したそれは……JOKERのカードだった。
鳴上「まただ、またアイツが……!」
>JOKERのカードを拾い握り潰す。
パオフゥ「迂闊だったな。ここを真っ先に潰されちまうとは……」
順平「そ、そうだよ! これじゃあ身体の具合が悪くなったらもうどうにも出来ねえじゃん!」
>順平はチドリの方を見ながら叫んだ。
チドリ「……」
順平「どうすんだよ、これ……」
メティス「回復役から潰すというのは、セオリーではありますね」
アイギス「感心してる場合じゃないわ」
メティス「そういうつもりじゃ。……ごめんなさい」
>再び重苦しい空気と沈黙が訪れる。
>自分たちにとって重宝だったその場所は早くもその機能を失ってしまった。
>その主も消されてしまった。
>JOKER……
>絶対に許す訳にはいかない。
>……
>ふと、壊れて飛び散っている扉だったものの破片に混じって何かを踏み付けている事に気付く。
>足を退かして確認したそれは……JOKERのカードだった。
鳴上「まただ、またアイツが……!」
>JOKERのカードを拾い握り潰す。
パオフゥ「迂闊だったな。ここを真っ先に潰されちまうとは……」
順平「そ、そうだよ! これじゃあ身体の具合が悪くなったらもうどうにも出来ねえじゃん!」
>順平はチドリの方を見ながら叫んだ。
チドリ「……」
順平「どうすんだよ、これ……」
メティス「回復役から潰すというのは、セオリーではありますね」
アイギス「感心してる場合じゃないわ」
メティス「そういうつもりじゃ。……ごめんなさい」
>再び重苦しい空気と沈黙が訪れる。
>自分たちにとって重宝だったその場所は早くもその機能を失ってしまった。
>その主も消されてしまった。
>JOKER……
>絶対に許す訳にはいかない。
>……
985: ◆Hw7XKfELws:2012/09/10(月) 00:04:14.32:rMZSfEmIo (3/10)
>壊れた扉を塞いでから後の事はよく覚えていない。
>一同は揃ってラウンジにいたが、二人の仲間を一度に失った事によるショックが大きいのは皆同じで。
>会話らしい会話を殆どする事もなく、じっとその場に固まって時間だけがただ過ぎていくだけだった。
>そんな中、ふらりとまた屋上に足が向いたのは無意識だったのかどうなのか。
>それすらも今の自分には解らなかった。
>……
屋上
>屋上に入る扉をそっと開けた。
>空はすっかりオレンジ色に染まっていて、もうそんなに時間が経っていたのかと思ってしまう。
>外の空気は良くも悪くもなく、ただラウンジにいる息苦しさからは少し解放されたような気がして一度大きく深呼吸をした。
>それから、ライドウが相変わらず屋上で待機している姿を見つける。
>あれから通信も無いところをみるに何も起きてはいなさそうだが……
>視線が合うと、ライドウは小さく頭を下げた。
>つられてこちらも頭を下げるが特にこれといって言葉を交わす事はしないまま、屋上の柵まで近付き空と街を見渡した。
>暫くそのままぼうっとした時間を過ごす。
>……何か考えなければと思うのに何も考えたくなかった。
>でも何かって……何を?
>……
>壊れた扉を塞いでから後の事はよく覚えていない。
>一同は揃ってラウンジにいたが、二人の仲間を一度に失った事によるショックが大きいのは皆同じで。
>会話らしい会話を殆どする事もなく、じっとその場に固まって時間だけがただ過ぎていくだけだった。
>そんな中、ふらりとまた屋上に足が向いたのは無意識だったのかどうなのか。
>それすらも今の自分には解らなかった。
>……
屋上
>屋上に入る扉をそっと開けた。
>空はすっかりオレンジ色に染まっていて、もうそんなに時間が経っていたのかと思ってしまう。
>外の空気は良くも悪くもなく、ただラウンジにいる息苦しさからは少し解放されたような気がして一度大きく深呼吸をした。
>それから、ライドウが相変わらず屋上で待機している姿を見つける。
>あれから通信も無いところをみるに何も起きてはいなさそうだが……
>視線が合うと、ライドウは小さく頭を下げた。
>つられてこちらも頭を下げるが特にこれといって言葉を交わす事はしないまま、屋上の柵まで近付き空と街を見渡した。
>暫くそのままぼうっとした時間を過ごす。
>……何か考えなければと思うのに何も考えたくなかった。
>でも何かって……何を?
>……
986: ◆Hw7XKfELws:2012/09/10(月) 00:06:06.30:rMZSfEmIo (4/10)
ライドウ「大口を叩いておきながら君達の役に立てず申し訳無いと思っている」
>ライドウが何時の間にか隣までやってきていて、そう告げる。
鳴上「……ライドウが謝る事じゃ、ない。それにライドウは良くやってくれてるよ。知り合ったばかりの俺たちに協力してくれてさ」
鳴上「……」
鳴上「俺がもっとしっかりしていれば良かったんだ」
鳴上「神郷さんへの援護をもっと早くすれば良かったし、トリッシュが一階で一人になっている事にももっと早く気が付ければ……」
ライドウ「君の責任でも無いだろう」
鳴上「でも!」
鳴上「近くにいたのに、俺は何も出来なかったっ……!」
>柵を握る手に力を込める。
>そのまま崩れ落ちてしまいそうになる身体を支えるのに必死だった。
ライドウ「そうやって嘆いてばかりいては駄目だ。周防さんにここで言われた言葉をもう忘れたのか?」
ライドウ「希望を失ってはいけない」
ライドウ「もう犠牲を出したくないのならば、仲間を守りたいのならば、考え行動する事をやめてはならない」
鳴上「っ……」
ライドウ「必ず突破口はある筈だ。この時間から皆と共に抜け出す方法を早く見つけよう」
>ライドウは身体を支えて立ち上がらせてくれた。
ライドウ「大口を叩いておきながら君達の役に立てず申し訳無いと思っている」
>ライドウが何時の間にか隣までやってきていて、そう告げる。
鳴上「……ライドウが謝る事じゃ、ない。それにライドウは良くやってくれてるよ。知り合ったばかりの俺たちに協力してくれてさ」
鳴上「……」
鳴上「俺がもっとしっかりしていれば良かったんだ」
鳴上「神郷さんへの援護をもっと早くすれば良かったし、トリッシュが一階で一人になっている事にももっと早く気が付ければ……」
ライドウ「君の責任でも無いだろう」
鳴上「でも!」
鳴上「近くにいたのに、俺は何も出来なかったっ……!」
>柵を握る手に力を込める。
>そのまま崩れ落ちてしまいそうになる身体を支えるのに必死だった。
ライドウ「そうやって嘆いてばかりいては駄目だ。周防さんにここで言われた言葉をもう忘れたのか?」
ライドウ「希望を失ってはいけない」
ライドウ「もう犠牲を出したくないのならば、仲間を守りたいのならば、考え行動する事をやめてはならない」
鳴上「っ……」
ライドウ「必ず突破口はある筈だ。この時間から皆と共に抜け出す方法を早く見つけよう」
>ライドウは身体を支えて立ち上がらせてくれた。
987: ◆Hw7XKfELws:2012/09/10(月) 00:07:20.85:rMZSfEmIo (5/10)
ライドウ「……」
ライドウ「気の利いた事の一つも言えずに済まない」
ライドウ「もうすぐ日も暮れる。自分は一足先に夜の巡回へ行こうと思う。君達もまた夜の街に出る気ならば、通信で知らせて欲しい」
>帽子のつばを下げそう呟くと、今まで黙って様子を見守っていたゴウトを連れ立ち別の建物を器用に伝うようにしながら彼は屋上から街へと出向いて行ってしまった。
鳴上「……仲間を守りたいなら」
鳴上「みんなと、共に……」
『――そうだ、諦めてはいけない』
鳴上「!?」
『アイツのする事を認めては……』
鳴上「誰だ!!」
>頭の中に直接語りかけてくるような声を聞いた。
>しかしライドウがいなくなった今、この屋上には自分しかいない筈……
>誰がいるのか探そうと、ぐるりと振り返る。
>……しかし、驚く事に、自分のすぐ真後ろにそれはいた。
ライドウ「……」
ライドウ「気の利いた事の一つも言えずに済まない」
ライドウ「もうすぐ日も暮れる。自分は一足先に夜の巡回へ行こうと思う。君達もまた夜の街に出る気ならば、通信で知らせて欲しい」
>帽子のつばを下げそう呟くと、今まで黙って様子を見守っていたゴウトを連れ立ち別の建物を器用に伝うようにしながら彼は屋上から街へと出向いて行ってしまった。
鳴上「……仲間を守りたいなら」
鳴上「みんなと、共に……」
『――そうだ、諦めてはいけない』
鳴上「!?」
『アイツのする事を認めては……』
鳴上「誰だ!!」
>頭の中に直接語りかけてくるような声を聞いた。
>しかしライドウがいなくなった今、この屋上には自分しかいない筈……
>誰がいるのか探そうと、ぐるりと振り返る。
>……しかし、驚く事に、自分のすぐ真後ろにそれはいた。
988: ◆Hw7XKfELws:2012/09/10(月) 00:08:48.02:rMZSfEmIo (6/10)
鳴上「なっ……」
「ご機嫌いかがかな」
鳴上「お前は何者だ……!」
「……」
鳴上「……」
鳴上「ッ、次から次へと……いい加減にしてくれ! もう沢山だ!」
鳴上「なんで、こんな……」
>正体の解らない人物に行き場の無い怒りをぶつける。
>目の前にいるのが誰であろうと、半ば自棄になっている今の状態ではもうどうでもいい事だった。
「落ち着け」
鳴上「!」
「……うん、でもそうだね。気持ちは解るよ」
「あんな奴に好きにされるのは困るよね」
「それはボクも同じなんだ」
「だからこうして一度君に挨拶しておこうと思ってね」
鳴上「……どういう事だ」
鳴上「誰だ、お前は」
「……」
鳴上「なっ……」
「ご機嫌いかがかな」
鳴上「お前は何者だ……!」
「……」
鳴上「……」
鳴上「ッ、次から次へと……いい加減にしてくれ! もう沢山だ!」
鳴上「なんで、こんな……」
>正体の解らない人物に行き場の無い怒りをぶつける。
>目の前にいるのが誰であろうと、半ば自棄になっている今の状態ではもうどうでもいい事だった。
「落ち着け」
鳴上「!」
「……うん、でもそうだね。気持ちは解るよ」
「あんな奴に好きにされるのは困るよね」
「それはボクも同じなんだ」
「だからこうして一度君に挨拶しておこうと思ってね」
鳴上「……どういう事だ」
鳴上「誰だ、お前は」
「……」
989: ◆Hw7XKfELws:2012/09/10(月) 00:10:58.72:rMZSfEmIo (7/10)
>落ち着けと言われて初めて注意深く相手を見てみた。
>白い学ランのような服装を身に纏っているが肝心の顔が見えない。
>仮面を被っているのだ。
>その仮面の顔の形はピエロを思い出させるような形状で……
>紙袋のあの男よりも、この人物の方が『それっぽい』名前が似合うような。
>……そんな考えが一瞬思い浮かんでしまって、それを振り払うように首を軽く横に振った。
>しかし、仮面の人物はその思考のままの名を口にする。
「ジョーカー。敢えて名乗るとするならばそういう名前になるね」
「紛らわしいし、アイツと同じ名前なんて癪だけれど……仕方のない事だ。こうとしか名乗りようが無いんだから」
「そうだな。アイツが英語でJOKERだっていうのなら、ボクは片仮名でジョーカーという事にしておこう」
「どちらにしてもややこしいか。まあ、好きに呼ぶといいさ」
鳴上「ジョーカー……?」
鳴上「なあ、お前はJOKERを……あの紙袋の男の事を知っているのか!?」
ジョーカー「ああ、知っているよ。これでもかという程ね」
ジョーカー「アイツはボクたちの敵だ」
>落ち着けと言われて初めて注意深く相手を見てみた。
>白い学ランのような服装を身に纏っているが肝心の顔が見えない。
>仮面を被っているのだ。
>その仮面の顔の形はピエロを思い出させるような形状で……
>紙袋のあの男よりも、この人物の方が『それっぽい』名前が似合うような。
>……そんな考えが一瞬思い浮かんでしまって、それを振り払うように首を軽く横に振った。
>しかし、仮面の人物はその思考のままの名を口にする。
「ジョーカー。敢えて名乗るとするならばそういう名前になるね」
「紛らわしいし、アイツと同じ名前なんて癪だけれど……仕方のない事だ。こうとしか名乗りようが無いんだから」
「そうだな。アイツが英語でJOKERだっていうのなら、ボクは片仮名でジョーカーという事にしておこう」
「どちらにしてもややこしいか。まあ、好きに呼ぶといいさ」
鳴上「ジョーカー……?」
鳴上「なあ、お前はJOKERを……あの紙袋の男の事を知っているのか!?」
ジョーカー「ああ、知っているよ。これでもかという程ね」
ジョーカー「アイツはボクたちの敵だ」
990: ◆Hw7XKfELws:2012/09/10(月) 00:13:26.50:rMZSfEmIo (8/10)
鳴上「……!」
鳴上「ボクたちの……それは、つまり」
鳴上「お前は俺たちの味方だと、そう受け取っていいという事なのか」
>ピエロは仮面の下から小さく笑い声を零した。
ジョーカー「ボクはね、願いを叶えにきたんだよ」
鳴上「!」
ジョーカー「だってボクは……ジョーカーだからね」
ジョーカー「それじゃあ、いずれまた」
>そう一方的に告げて、ジョーカーは突然吹き起こった風と花びらを残して一瞬で姿を消した。
>……そして、気付いた時には何故か手に何時の間にか紫色の花を持っていたのだった。
鳴上「なんだ、この花……」
鳴上「……」
鳴上「JOKERに、ジョーカー……どういう事なんだ?」
>空はもう暗くなっている。
>浮かぶ月は今夜も丸く、不気味な輝きを放っていた。
>……
>今はとりあえず、もう中に戻った方がいいかもしれない。
>考えるのは、……それからだ。
鳴上「……!」
鳴上「ボクたちの……それは、つまり」
鳴上「お前は俺たちの味方だと、そう受け取っていいという事なのか」
>ピエロは仮面の下から小さく笑い声を零した。
ジョーカー「ボクはね、願いを叶えにきたんだよ」
鳴上「!」
ジョーカー「だってボクは……ジョーカーだからね」
ジョーカー「それじゃあ、いずれまた」
>そう一方的に告げて、ジョーカーは突然吹き起こった風と花びらを残して一瞬で姿を消した。
>……そして、気付いた時には何故か手に何時の間にか紫色の花を持っていたのだった。
鳴上「なんだ、この花……」
鳴上「……」
鳴上「JOKERに、ジョーカー……どういう事なんだ?」
>空はもう暗くなっている。
>浮かぶ月は今夜も丸く、不気味な輝きを放っていた。
>……
>今はとりあえず、もう中に戻った方がいいかもしれない。
>考えるのは、……それからだ。
991: ◆Hw7XKfELws:2012/09/10(月) 00:15:42.24:rMZSfEmIo (9/10)
淳「うわっ!」
鳴上「!」
>屋上の扉を開いて戻ろうとした時、そこで橿原と鉢合わせになった。
鳴上「先生!? なんでこんな場所に?」
淳「それはこっちのセリフだよ。どこに行ったのかと思って探しに来たんだ。やっぱりここだったんだね」
淳「って、その花はどうしたの?」
鳴上「あ、いえ、ちょっと……」
淳「ふーん、フジバカマ、か。……」
淳「あの日を思い出せ」
鳴上「え?」
淳「ああ、フジバカマの花言葉だよ」
鳴上(花言葉、ね)
鳴上(……)
鳴上(あの日を思い出せ……?)
淳「……」
鳴上「?」
鳴上「……あの、先生? どうかしましたか?」
淳「え? あ、ごめん。なんでもないよ。こんな話どうでも良かったね」
淳「あれ……ところで、ラビリスさんと天田くんと桐条さんは? 鳴上くんと一緒じゃなかったの?」
鳴上「え、違いますけど」
淳「おかしいな。三人も姿が見えなかったから、一緒に屋上で外の空気でも吸ってるのかと思ってたんだけど」
鳴上「……」
鳴上「まさか……」
淳「うわっ!」
鳴上「!」
>屋上の扉を開いて戻ろうとした時、そこで橿原と鉢合わせになった。
鳴上「先生!? なんでこんな場所に?」
淳「それはこっちのセリフだよ。どこに行ったのかと思って探しに来たんだ。やっぱりここだったんだね」
淳「って、その花はどうしたの?」
鳴上「あ、いえ、ちょっと……」
淳「ふーん、フジバカマ、か。……」
淳「あの日を思い出せ」
鳴上「え?」
淳「ああ、フジバカマの花言葉だよ」
鳴上(花言葉、ね)
鳴上(……)
鳴上(あの日を思い出せ……?)
淳「……」
鳴上「?」
鳴上「……あの、先生? どうかしましたか?」
淳「え? あ、ごめん。なんでもないよ。こんな話どうでも良かったね」
淳「あれ……ところで、ラビリスさんと天田くんと桐条さんは? 鳴上くんと一緒じゃなかったの?」
鳴上「え、違いますけど」
淳「おかしいな。三人も姿が見えなかったから、一緒に屋上で外の空気でも吸ってるのかと思ってたんだけど」
鳴上「……」
鳴上「まさか……」
992: ◆Hw7XKfELws:2012/09/10(月) 00:18:03.42:rMZSfEmIo (10/10)
終わります
次回は3スレ目でお会いしましょう
では
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346942957/
終わります
次回は3スレ目でお会いしましょう
では
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346942957/
993:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/09/10(月) 00:18:58.24:UpQt/tEu0 (1/1)
乙
乙
994:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空):2012/09/10(月) 00:40:14.77:DtP7UEijo (1/1)
乙っす
乙っす
995:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/09/10(月) 01:04:36.62:9NUDAP5V0 (1/1)
コンセイトレイトからのマハ乙ダイン
コンセイトレイトからのマハ乙ダイン
996:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/09/10(月) 01:21:11.13:WAKRmnNB0 (1/1)
ヒートライザ乙
ヒートライザ乙
997: ◆GcQ2euuWRNZF:2012/09/10(月) 07:21:49.49:M95zTb9Jo (1/1)
1000ゲットロボであります。
自動で1000ゲットしつつ>>1乙する凄いロボットであります。
1000ゲットロボであります。
自動で1000ゲットしつつ>>1乙する凄いロボットであります。
998:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/09/10(月) 09:05:22.30:r7mjdV1j0 (1/1)
乙
乙
999:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/09/10(月) 09:06:04.65:tSIz3J1bo (1/2)
別スレの作者さんも来てた。
ともかく乙です
別スレの作者さんも来てた。
ともかく乙です
1000:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/09/10(月) 09:06:39.39:tSIz3J1bo (2/2)
1000なら向こう側の達哉にも幸せを
1000なら向こう側の達哉にも幸せを
◆Hw7XKfELws さんの作品一覧
http://s2-d2.com/archives/16613383.html
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◆GcQ2euuWRNZF さんの作品一覧
http://s2-d2.com/archives/16620550.html
http://s2-d2.com/archives/16620550.html
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