935VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/09(水) 20:37:32.66AzEwWv7S0 (1/1)

いつでも待ってます♪

△閑話休題△

一期・暗黒魔戒騎士編の謎をいろいろと補完した小説が出ているのは周知の通りですが

二期・魔戒閃騎の小説が出るとしたら皆さんどんな話が読みたいですか?


936VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/10(木) 00:35:17.37ICrDo3EJ0 (1/1)

>>935
山刀兄妹奮闘記に一票。
テレビじゃ翼の主役回無かったし、役者さんの都合か鈴ちゃんに至っては出番自体無かったし。
この二人好きなんでもっと活躍が見たかった。


937VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/10(木) 02:37:02.16lMUQjVGC0 (1/1)

>>935
田中要次さんのやった騎士の話
一般騎士の生活とか見て(読んでみたい)


938VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/10(木) 11:07:54.19bK+VEqBAO (1/1)

ワタル主役篇かな。
息子がいるって話がチラッと出ていたから、彼のお父ちゃんぶりも見たい。奥さんどんな人なんだろう。



939 ◆ySV3bQLdI.2013/01/12(土) 03:55:22.904pqoiOsuo (1/9)




 もともと自殺しようとしていたのだから、細工は簡単で済んだ。
 男は自殺として処理され、女は悲しみに暮れるただの恋人でしかなかった。
実際に心から悲しみに暮れてはいたのだから、誰に怪しまれることもなかった。

 女に向けられたのは、非難ではなく同情。
 真実は闇に葬られた。
 一時は安堵したものの、すぐに過ちだったと気付く。
 夜毎の悪夢にうなされ、猜疑心が精神を埋め尽くす。自責の念は、絶えず重く圧し掛かる。

 存在を認められない罪は許されもしない。かと言って、今さら真実を告白し、罰を乞う勇気もなく。
 犯した罪に苛まれ、女は緩やかに壊れていった。
 否、あの日に壊れていたのだとすれば、深みへ堕ちていったと言うべきか。

 ある夜、街を歩く女は、ふと懐かしい音色を聞いた気がして振り向く。
すれ違ったのは、ヴァイオリンケースを持った少年だった。
 少年は新聞に載った経験もあるが、知名度があるかと言えば然程でもない。
周囲の人間を除けば、ヴァイオリンに興味のある人間しか目に留めないだろう。

 少年にとって不幸だったのは、彼女がヴァイオリンに未練を残していたこと。
実際にコンクールなどで少年の姿を眼にし、印象に残っていたこと。
 そして何よりも、彼女が正気を失い、狂気に支配されていたこと。  
  
 彼の技術と資質は、直接その目と耳で感じた。
 まだ十代前半にして才気に溢れ、既に想い人と並ぶ――将来的には超えるだろうと予感した。
天才というのは確かにいるのだと、震えが走ったのをよく覚えている。



940 ◆ySV3bQLdI.2013/01/12(土) 03:59:22.484pqoiOsuo (2/9)


 その少年が今、目の前にいる。ヴァイオリンを大切そうに抱えて。
 練習の疲労を漂わせながらも溌剌としているのは、今が充実しているから。
今日の反省点はどこで、明日は何の曲に挑もうか、そんなことばかり考えている。
頭の中は旋律に満ちているに違いない。

 きっとこれから先、まだ見ぬ音楽と出会い、技術を磨いて、更なる高みへ昇っていく。
自分にも、死んだ男にも、絶対たどり着けない場所へ。
 込み上げる怒涛の如き嫉妬と怒り。少年が眩しければ眩しいほど、心の陰は濃さを増す。
思い知らせてやる。綺麗な光には、自分のような害虫も寄ってくるのだと。

 話したこともない少年に理不尽な憎しみを抱き、すべてを奪いたくなる。
 普通ならあり得ない、常軌を逸した妄想。けれど、今の彼女は普通ではなかった。
 女はくるりと踵を返し、気取られぬよう離れて彼の後を追う。  

 天候は折悪しく雨。多少の音は掻き消してくれる。
 少年は、小さな折り畳み傘を片手に、ヴァイオリンが濡れないように歩くので精一杯。
前もろくに見えていない上に、イヤホンで音楽を聴いていた。
 これでは、とても背後にまで注意を払えないだろう。

 少年は近道をしたかったのか、
歩道のない――白線の内に辛うじて一人の幅があるが――車道を行く。
 夜に通るのは危険な道だが、車通りが少ないからと警戒心を緩めているのだろう。

 女は360度をさっと、それでいてくまなく見渡す。周囲に人の気配はなかった。
 街灯は頼りなく瞬き、横を通り過ぎる車もまばら。
 聞こえるのは雨音と、水を跳ねて走るタイヤの音だけ。
 街が、世界が呼吸を止めているかのよう。




941 ◆ySV3bQLdI.2013/01/12(土) 04:01:45.454pqoiOsuo (3/9)


 最後に、女は自分の姿を一瞥する。
 その着衣は喪服のような黒一色。
 まだ夜は冷え込む季節。
傘も差さずに濡れ鼠になっているにも関わらず、ちっとも寒さは感じなかった。
それどころか火照って熱いくらいだった。 
 
 遠くから近付いてくるヘッドライト。 
 少年が、靴に入った水を気にして片足立ちになる。
 
 今しかない。
 重なり合った、あらゆる偶然が背中を押した。
 間違いない。天が味方していると確信できた。

 倫理も道徳も知らない。
 常識も損得も関係ない。
 良心なんてブレーキは、とっくに壊れていた。
 女を縛るものは何もなかった。
 
 女は足を踏み出す。
 最後の一線を、踏み越える。

 静かに少年に駆け寄り――。
 背中を突き飛ばした。
 それほど強くはなかったが、少年はつんのめりながら車道の中央に進む。
 
 けたたましいクラクションと急ブレーキ。ふたつの音が混ざり合って、夜の闇を切り裂く。 
 その数瞬の後。



942 ◆ySV3bQLdI.2013/01/12(土) 04:04:18.634pqoiOsuo (4/9)


 ドォン、という轟音と共に、少年に車が衝突。細い身体は、いとも軽々と宙を舞う。
 少年は数メートルほど飛ばされて道路を滑り、止まってからもピクリとも動かない。

 割れて片目になったライトが照らし出す。
傘は無残にへし折れ、流れる血でアスファルトを染めながら、
それでも少年はヴァイオリンを放さなかった。  

 その有様を、女は傍の物陰から見ていた。
突き飛ばしてすぐに隠れたので、運転手には目撃されていないはずだが、のんびりしていられない。
 混乱する運転手の叫びを尻目に、女はその場を走り去った。

 途中、何度も足をもつれさせながら、どうにかマンションの自室に帰り着く。
 息が荒いのは走っていたからか。それとも、別の理由か。
 いつまで待っても、呼吸が治まらない。これ以上ないくらいに昂揚していた。
 
 数十分前を思い返すと身震いする。
とんでもないことを、しでかしてしまった。

 激突の瞬間、少年はヴァイオリンを庇った。
 地面に叩きつけられる時でさえ、己が身を挺して衝撃から守った。
 彼にとって何よりも大切な物を、まるで我が子のように抱き締めていた。

 その結果、車と接触したのも、ヴァイオリンと路面に挟まれて潰れたのも、彼の左手。
 あれでは生きていたとしても、再起は難しいはず。
 そんな判断が咄嗟にできるくらいなら、むしろ楽器なんて捨てるか盾にすべきだったのだ。

 本当に馬鹿な子。




943 ◆ySV3bQLdI.2013/01/12(土) 04:06:51.694pqoiOsuo (5/9)


 くつくつと、自然に笑みが零れる。 
 不安、恐怖、後悔。
 もちろん、それらもある。
 ただ、上回る歓喜があった。爽快で、痛快だった。すべてを押し流す圧倒的な愉悦。

 やりたいと思い、やれそうだった。
だから行動に移したら、できてしまった。
ただ、それだけ。こんなにも簡単なことだったのだ。

 あんなに恐れていた罪とは、禁忌とは、いったい何だったのか。
 忍び笑いは、いつしか声を上げた哄笑に変わっていた。

 数日後、少年が市内の病院に搬送され、一命を取り留めたと知る。
 少し残念に思ったが、続けて経過を調べていくと面白いことがわかった。
 身体の怪我はそれほど重くはないが、左手はかなりの重傷で、回復の見込みは薄いらしい。
少なくとも完全に元通り動くまで回復することはない、と。

 手段を選ばずに探った甲斐があった。
何日も、何時間も費やした苦労が一気に報われた気がした。

 快哉を叫びたい気分。
 壊れずとも後遺症が残るなら、それで良し。天才は戻らない。それだけでも喜ばしい。
焦る必要はない。もしも復活するようなら、また潰せばいいのだ。

 ある意味では死よりも辛い生き方だろう。残骸になった夢に囚われてなお生き続けるのは。
その惨めさと虚無感は、誰より女がよく知っていた。


944 ◆ySV3bQLdI.2013/01/12(土) 04:11:15.304pqoiOsuo (6/9)



 タガが外れたように、その後も次々と凶行を重ねていく女。
 被害者は老若男女を問わず、およそ常人には無差別としか思えないだろう。
互いに、まったく関わりのない被害者たち。
彼らは、何となく幸せそう、という理由だけで選ばれていた。

 手口は主に突き落とし。
 駅のホームで。
 急な階段で。
 海や河で。

 そうやって事故や自殺を偽装することもあれば、
刺殺や絞殺など、明らかに殺人とわかる方法で殺したりもした。
 また、犯行に至るまでの下準備と調査は、気紛れな選定と正反対に、驚くほど綿密だった。

 だが、それを差し引いても、犯行が露見しなかったのは運命の悪戯としか言いようがない。
神――もとい、悪魔の加護を受けているかのように。

 夢も希望も失った女は、他人の夢と希望を奪うことに快感を覚えた。
 まるで麻薬のような恍惚。
 中毒者が禁断症状から逃れる為に一時の快楽を求めるように、彼女もまた溺れていった。
 先に待つものが更なる地獄、そして破滅と知りながら。

 女には、とことん己を貶めることが、罪を犯すことこそが罪の意識から逃れる方法だった。
 矛盾しているが、男を殺した罪に他の罪を重ねて、
いつか自分の中で個々が薄れるのではないかと期待したのだ。
 愛した男を殺したことが、次第に幾多の罪のひとつになり果てていったように。



945 ◆ySV3bQLdI.2013/01/12(土) 04:13:34.504pqoiOsuo (7/9)


 その夜も女は、いつものように人を殺し、いつものように後始末をして帰宅した。
 底冷えする部屋で明かりも暖房もつけず、まっすぐテーブルに向かう。
卓上にぽつんと置かれているのは、大きめなクリスタルの灰皿。
中には灰が山と積もっている。
 
 タバコは、薬に頼るほどではないが気分を落ち着けたい時に重宝していた。
 もっとも、本来の用途はついでに過ぎない。主な目的は他の物を燃やすことにあった。
 女が懐から取り出したのは漆黒の手袋。
さっきまで身に付けていたそれには、所有者以外の血が付着していた。

 女は手袋にライターで火をつけると、灰皿に投げ込んだ。
 殺しも含め、ここまでが習慣として染みついている。

 赤と青。

 氷のように冷え切ったクリスタルの上で炎が躍る。染み込んだ血と女の罪を呑み込んで。
 犯行に使用した手袋は、その都度この灰皿で燃やしていた。
 血が目立たないよう、色は常に黒。あの日から白い手袋は一度も身に付けていない。

 暗い室内で唯一の光を、女は微動だにせず、無感情に見つめていた。
 胸に様々な感情が駆け巡る。正も負も、喜びも悲しみも入り乱れる。
 この時間だけは、女は人間に戻っていた。 

 やがて手袋は完全に燃え尽き、部屋が闇に包まれる。
 そういえば、始まりのあの日から捨てていなかったと、女が灰を掻き分けた瞬間。




946 ◆ySV3bQLdI.2013/01/12(土) 04:17:56.484pqoiOsuo (8/9)


 何かが、灰皿から立ち昇った。
 暗中でもはっきり視認できるのは、それが闇よりも黒いせい。

 墨?
 違う、これは――――灰だ。

 灰の中から見たこともない文字が連なり、恐ろしい形相の怪物を象ったかと思うと、
端から解けて女に襲いかかる。
 目、耳、鼻、口。
 逃げる間もなく、すべての穴から女の内に流れ込み、蝕んでいく。

 薄れゆく意識で思う。
 逃げられなかった、と。
 たとえ灰になろうとも、燃え尽きるはずがなかった。
積もり積もって形を成すほどに。

 あり得ない状況に恐怖すると同時に、
追いかけてきた罪に絡め取られたと悟った女は、安らいでもいた。
 何故なら、罪は癒しであり、慰めでもあったから。

 ゆえに、罪に塗れた死は断罪であり、救済。
 女は静かに、黒い文字の奔流を受け入れた。

 蓄積された陰我は、灰皿を魔界とのゲートに変えていた。
すべてが終わった時、女の魂は現れた魔獣、ホラーに喰われた。
 しかし歪んだ意思の一部、陰我は身体を乗っ取ったホラーと同化し、生き続ける。
 女が本物の悪魔となった瞬間だった。




947 ◆ySV3bQLdI.2013/01/12(土) 04:19:24.864pqoiOsuo (9/9)

ここまで。土日月で遅れを取り戻したいと思います
妙に力が入ってしまって長くなりましたが、
今回と次回は流しても問題ないと言えばないかもしれません

原作のモロクは指でしたので、今回は手を強調
ゲートは何にしようか最後まで決め兼ねてましたが、氷+火+手ということで、こんな形に
原作や前のホラーと離れたイメージが浮かばなかったのが惜しいですが



948VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/12(土) 12:07:24.065Ve8BcS90 (1/1)

乙騎結集ゥ~!

いやー、本編の影響ですっかり嫌われ者のKMJ君ですが・・・
上には上がいるもんだ、うん。

しかし、人間ってある意味ホラーより恐ろしいもんですね。いろんな意味で。

重蔵のように「いい意味で」ホラーより強い人間もいれば、
この命さんや戸沼、庄内夫婦、神須川の親父のような「悪い意味で」ホラーより恐ろしい人間もいる。

ホラーはただの「きっかけ」で、深層心理でそういうことを望んでいるわけだし。

二期はメインキャラが一期とは比べ物にならんほど増えてるから
全てにスポットを当てるなら上下巻に分けなきゃ網羅できないかもですね。

ちなみに一期小説のラインナップは

【黄金】 語り手・カオル。 一話「絵本」をカオルの視点で書き下ろした話。

【旅人】 語り手・鋼牙。  総集編でちらりと出て来た列車ホラー・ヴェルとの戦いと
     黄金騎士の絵を手に入れた紳士(カオルが壁画を修復した幼稚園の園長)とのお話。

【記憶】 語り手・バラゴ。  バラゴの修行時代や幼少期の家族の間に起こった惨劇のお話。

【越境】 語り手・零。    零の幼少期の話や悪夢の日前後の話。なぜ鋼牙を仇だと信じ込んだのかがわかる。

【古傷】 語り手・邪美。   邪美と鋼牙の子供の頃の話。鋼牙の背中の傷にまつわるお話。 

【暗黒】 語り手・バラゴ   大河のもとをバラゴが去るところから暗黒騎士への変貌を書いたお話。

【希望】 語り手・観月由児。  カオルパパの苦悩と幼稚園の壁画、黒い炎と黄金の風の誕生秘話、
               そして大河との出会いと由児の最期の日までを描いたお話。

【同志】 語り手・羽根沢慎一。 【月光】の刑事と【水槽】のハルに利用されていたPC青年・戸沼充との話。
               「あの方」も登場する。

【転生】 語り手・バラゴ。  バラゴとカオルとの出会いやメシアに吸囚された後のバラゴを描くお話。

【故郷】 語り手・カオル。  カオルがイタリアから鋼牙に宛てた手紙と
               カオルがイタリアで出会ったとある魔戒騎士との語らいが描かれる。

【盟友】 語り手・大河。   二十年前の陰我消滅の晩のお話。大河の葛藤や苦悩が描かれ、それを乗り越えるお話。

ネタバレはしていないつもりです。是非呼んでみることをおすすめします。牙狼の味が深まることうけあいですよ。


949VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/12(土) 12:40:06.78ZheMETtMo (1/1)

強い人は人を傷つけない
本当に恐ろしいのは弱さを攻撃に変えた敵だって荒木先生が


950VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/12(土) 13:03:44.401GciUEOQo (1/1)

押切蓮介の漫画も
「どんな化け物よりも人間の方が強くて恐ろしい」つースタンスが多いな


951VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/12(土) 16:24:20.21vIbyB7KIO (1/1)

内容:あの笑顔の裏にはこんな物語が… 罪に対する罰がより大きな罪を作り出すホラー化という皮肉。 もろくも敗れ去ったホラーにもこんな物語があるのか。


952VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/14(月) 11:04:05.77C3yJMBcAO (1/1)

第3話前半がそろそろ終わりアイキャッチ入る頃合かな?
区切り良くするならコメント控えた方がいい?
それとも次スレまでノンストップ?



953 ◆ySV3bQLdI.2013/01/16(水) 02:28:48.61RL7M9yhMo (1/1)

お気遣いありがとうございます
ですが、特にその必要はありません
区切りまで進めても結構余りそうですし、次スレを案内する1レスだけ残っていれば十分です
今週中には投下したいと思います


954VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/18(金) 16:00:32.19tcjIX8NC0 (1/3)

△もし鋼牙に魔法少女まどか☆マギカを1話から見せたら☆

カオルがDVDを持ってくるところからスタート


955VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/18(金) 18:06:35.68TB7B4hESO (1/1)

「くだらん。アニメなんかに興味はない」
で終了


956VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/18(金) 18:13:02.93tcjIX8NC0 (2/3)

あーもっともらしいわ。うん。いかにも言いそう。そう、普通のアニメならそれで終わるだろう。


957VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/18(金) 19:42:31.59G7oig+eAO (1/1)

1期序盤ならそうだろうが、終盤くらいのカオルが強気に「つべこべ言わずに観て!」って怒ったら、しぶしぶ鑑賞するかも
そして「なぜコイツ等の顔はこんな形をしているんだ」とか「戦う心構えができていないくせに戦場に立つからこういうことになるんだ」とか「弱い者が戦うな」とかぶつぶつ呟いてそう


958VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/18(金) 21:46:32.65c5OzeUGAO (1/1)

TV『サールティーロイヤーリー』

鋼牙「俺はアニメなど見ている暇は」
カオル「いいからww」


TV『もう何も怖くない』
TV『アーン』

鋼牙「!」ガォーン!ズシャッ!!→牙狼
カオル「ちょ、変身は外でやって!」


TV『一人ぼっちは寂しいもんな』

牙狼「ぐっ……うおおおーっ!!」


TV『ほむらちゃん…もうひとつ…たのめるかな?』

牙狼「…っ!やめろ!まどか!ほむらああぁぁーーー!!」
轟天「ぶひひーーーん!!」パカランパカラン
カオル「 室 内 (怒)」



959VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/18(金) 21:55:47.50tcjIX8NC0 (3/3)

もうなにも→ライゾン襲撃事件

ひとりぼっちは→心滅

まどほむ→大河との誓い

を思い出したのですね、鋼牙様・・・。
って轟天なんか出したらまたおうち壊れますよwwww


960VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/19(土) 23:13:50.59wZeV7U3Ho (1/1)

ボロボロの部屋の真ん中で正座させられてる鋼牙想像してわろた

こういう風に怒られたことあまりなさそうだよな


961 ◆ySV3bQLdI.2013/01/21(月) 02:31:49.42CVB6/PeJo (1/4)


 翌日から、女は別人のように変貌した。
 実際、変わっているのだ。外側だけ残して、内側は別の生物に入れ替わっている。
 整えた容姿も。巧みな会話術も。華やかな笑顔も。時折見せる憂いの表情さえも。
 すべてが罠。

 その美しさに惹かれて寄ってくる獲物は誰も、
相手が文字通り人の皮を被った悪魔だとは気付かない。
 気付くとしたら最期の一瞬。いざ、己が喰われる段になってから。
女が魔獣ホラーの本性を垣間見せる時になって、初めて後悔する。

 後悔は程なくして絶望となり、獲物の人生は終わる。一切の例外はない。 
 それも、ただの手当たり次第では味気ない。
 女は、あくまで罪を犯すことに拘った。
陰我が求めるのか、ホラーに憑依されてもなお変わらなかった。

 意思が消えても意志は残る。
 憎悪や欲望――
即ち、ホラーと融合した陰我は、憑依後も性格、行動原理など、様々な点で人物の中核を成す。
女の妄執も、彼女という人間の全体からすれば残滓に過ぎなかったが、より一層強く残っていた。

 とはいえ、何のことはない。ただの趣味が、実益を兼ねたものになっただけ。
 人外の力は、これまで試行錯誤しながら行ってきた殺人を、一気に容易にした。
 スリルが減ったことにより達成のカタルシスも減じたが、その代わりに多くをもたらした。

 まず死体が残らず、人間には不可能な殺し方が可能になった。
 土壇場で抵抗されようが気取られようが、万が一にも仕損じはない。
 
 そして最たるものが捕食である。人間のすべてを体内に取り込んで得られる全能感。
自分が獲物を支配していると実感できる瞬間。
 人を喰らう度に、欠落した何かが埋まる気がして、心が安らぐのだ。
 


962 ◆ySV3bQLdI.2013/01/21(月) 02:37:52.18CVB6/PeJo (2/4)


 最早、押し潰されそうな不安は感じない。
ビクビクしながら日々を過ごすことも、ふと正気に戻った瞬間に後悔に苛まれることもない。
 女が恐れるとしたら、それは唯一の天敵の存在のみ。

 女は、恋人が死んだ廃ビルに通う。
 人間であった頃は犯罪の露呈を恐れ、また、あの日の出来事を思い出さぬようにと避けていた場所。
 だがホラーと化した今、忌まわしい記憶など顧みる必要はない。痛む良心など持ち合わせていなかった。
 
 ここはただの廃墟。むしろ、都合のいい餌場だった。
 その理由が、いつの間にか廃ビルに住み着いた魔女。
 この魔獣とも異なる異形に印をつけられ、連日の如く哀れな人間が誘われてくる。
 それを摘まみ食いするのが目的だった。

 人を狩るのは造作もない。だからこそ自分で物色し、手を下すのが醍醐味ではあるのだが。
 やはり、労せずして獲物が舞い込んでくるのも捨て難い。
絶望していたはずの人間でも、死の間際には表情を恐怖に歪める。

 魔女は移動を繰り返していたようだが、本格的にここを住処と定めたらしい。
 ホラーの気配に気付いていないとは思えないが、特に妨害する様子もない。
 魔女が何を考えているのか。見当もつかなかったし、どうでもよかった。

 そして彼女は、今日も屋上に立って獲物を待ち焦がれる。
 ただ、その日は少し事情が違った。

 現れたのは少女三人と男が一人。
 全員、はっきりとした意思の光が瞳に見て取れる。
特に、先頭の少女と最後尾の男の目つきは鋭い。一目で魔女に誘われたのでないと見抜く。

 こんな廃墟を、自らの意思で好んで訪れる者。
それは、ここを餌場とする怪物たちを狙う狩人だけ。



963 ◆ySV3bQLdI.2013/01/21(月) 02:51:39.08CVB6/PeJo (3/4)


 四人組の一人には見覚えがあった。
 白いコートを纏い、髑髏の指輪をはめ、赤い鞘の剣を携えた男。
 忘れもしない、その男こそがホラーの天敵。そして個人的にも宿敵であり、怨敵である。
 
 正攻法で勝ち目は薄い。かつて戦ったことがあるだけに身に染みていた。
できるなら関わりたくないところだが、そうもいかない理由があった。
 近付いてくる前からひしひしと感じていた――言うなれば匂い。
匂いは四人の中で一番か弱そうな少女から漂っていた。

 芳しく香る極上の餌をぶら下げられて、みすみす逃す理由があるものか。
 だが、餌を守っているのは、知る限り最強の護衛。簡単には手に入れられない。
 さて、どうすれば突破できるだろう。
 
 女は、はたと自分の首筋に気付く。首筋には、魔女のくちづけと呼ばれる印が刻まれていた。
 憑依されるまでの不安定な情緒、凶行にも少なからず影響していたと思われる。
 いずれは彼女も魔女の餌として、ここに赴いただろうが、中身がホラーとなっては何の意味も為さない印。

 ホラー、魔女、使い魔、件の少女。
 今、ただの廃墟が雑多な魔の気配で混沌としている。
 それらひとつでも欠けるか、離れたならともかく、こう密集していては、ひとつひとつを判別するのは困難。
特に、気配の察知能力が鋭ければ鋭いほど。

 ならば一か八か。
 この刻印を利用して宿敵の手から逃れると同時に、少女三人を手に入れる。

 勝算はあった。何故なら、先頭を歩く少女には、以前から目を付けていたから。
 夜や夕方に人気のない場所をうろつく、魔法少女と呼ばれる存在。
お世辞にも幸せそうには見えなかったが、彼女は"破壊欲"でなくホラーの"食欲"を刺激した。
 きっと、彼女は率先して動く。動いてくれる。

 女はフェンスを乗り越え、外縁に両足を揃える。
 恋人だった男には叶わなかった、自らの手で人生の幕を下ろす行為。
 その権利すら奪った女の抜け殻を被った魔獣は、男を嘲笑うように両手を広げ――空に身を投げた。



964 ◆ySV3bQLdI.2013/01/21(月) 02:54:22.31CVB6/PeJo (4/4)

ここまで。続きはなるべく明後日までに
長くなりましたが、回想は終わり
一期二期といろいろ見ても、見たからこそ
未だにホラーに憑依されるという状態が分かっているような、いないような
そのせいで遅くなりました



965VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/21(月) 15:55:24.50i3iog0IAO (1/1)

乙でした。



966 ◆ySV3bQLdI.2013/01/24(木) 23:20:28.34wPhs5BFBo (1/1)

すみませんが延期します
インフルエンザの疑いがあるので、少々長引くかもしれません



967VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/25(金) 20:33:52.06O9JJPAaAO (1/1)

乙!
続きは気になるけど、気長に待ってるからまずは体をお大事に


968VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/26(土) 00:31:40.03/o0WKI/SO (1/2)

乙です
体を労って下さい

何となく思ったけどコダマって魔法少女数人程度じゃ非変身時でも勝てないんじゃないかって位に強かった
獣身コダマに至っては一期終盤鋼牙が心滅獣身でごり押ししてようやく勝てたくらい


しかもコダマの何がヤバイってこれから更に成長するってところなんだよな、死んだけど
マジで何もんだったんだあいつ


969VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/26(土) 04:51:42.22iytM/C8w0 (1/2)

コダマの母・暗黒神官ガルムははるか昔に魔界と人間界を繋ぐ者として選ばれた者。

肉体を移し変え続け、魂が永遠とも言える時を生きてきた。一期の時点では三人の子供に憑依し、
三神官ケイル・ベル・ローズとして活動していた。コダマがガルムの息子というからには、コダマも肉体に成人の体を使用しただけで魂はもっと幼い(もっとも奴らの基準で、ということになるが)つまりこれから成長していく可能性もある。
なお、三人の子供に憑依する前は、バラゴの母親(の亡骸)に憑依し、バラゴを唆し、暗黒の道に引きずりこんだ。

ただ

元老院の神官・グレスでさえ大した戦闘力を持っていない(どころか見た限りでは皆無?)なのに
なぜいち地方管轄の神官であるガルムやその子のコダマが最強レベルの魔戒騎士をボコに出来るほどの力があったのかはまるで不明。肉体に依存?

なお、零のいた西の管轄の神官は若い男(もやしだが)、
東の管轄の後任の神官はゴンザさんくらいの老紳士
鋼牙が移籍した北の管轄の神官は幼い男児(だが声は青年らしい)。

猪狩重蔵とコダマの勝負が個人的に見てみたい。


970VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/26(土) 16:38:19.45/o0WKI/SO (2/2)

超絶スタイリッシュ執事格闘技VS銀幕風人斬り剣術か、見てみたいが傍から見るとレイヤーどうしが死闘を繰り広げている様にしか見えないな
しかしマーク武藤のアクションは全牙狼キャラの中でも最高だと思う


「只者では無いな貴様、勝負しろ!」
「…」
「…?」
「ペラペラペラペラ(ちょいちょいおっちゃん!わいはキサマちゃうねん、コダマやねん!HAHAHA!)」
「!?」



971VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/26(土) 18:20:21.79iytM/C8w0 (2/2)

「・・・・・・・っwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「ほむらちゃん?!」

デデーン♪

QB『暁美ほむら、アウトー。』


972VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/01/31(木) 19:11:00.89sOo1ONGm0 (1/1)

≫970
両方とも魔獣装甲が出来る点で共通してるね。

△牙狼マギ的2月の行事☆

カオル「鋼牙、節分もホラー狩り・・・だよね。」

杏子「零、お前チョコは好き・・・か?」


973VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/01(金) 23:38:12.80/6rFK71SO (1/1)

考えてみると魔戒騎士って年がら年中豆まきしてる様なものか、邪気を払う的な意味で

しかし、
・豆持って鬼はー外ーしてる鋼牙
・鬼のコスチューム着て逃げ惑う鋼牙
どっちを見ても確実に俺の腹筋が心滅獣身する自信がある


974VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/02(土) 21:11:46.40ZQl3h/9j0 (1/1)

ゴンザ「鋼牙様、今年の恵方は南南東にございます」
鋼牙「うむ」

レオ「カオルさん、ほむらさん、もともと節分の豆捲きや恵方巻きの習慣は魔戒法師が厄除けや願掛けのために始めたものが市井に伝わったものなんですよ。」
QB『恵方巻きならいいのを知っているよ。』

前に上がった二期小説の話だが
なぜシグマの煽動に乗った法師がけっこういたのか合点がいくように
バラゴの父みたいなDQN騎士が法師をメタクソに扱き使う話とかも面白そうですよね



975 ◆ySV3bQLdI.2013/02/04(月) 02:25:01.82OQarjnjQo (1/1)

インフルエンザが回復してから、体調よりも勘を取り戻すのに手間取っていました
明日にはどうにか投下したいと思います
遅れた分、なるべく早く進めていきたいです
48時間の一挙放送も可能な限り参加したいですし



976VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/04(月) 02:30:44.98CsVv0j4SO (1/1)

インフルだったのかーお大事に
いつでも待ってるよ


977 ◆ySV3bQLdI.2013/02/05(火) 02:41:54.34bSU8f1Sbo (1/6)



 
 パシッ、パシッ。
 乾いた音が連続して響く。
 零が、杏子の頬を軽く左右に張った。

 いつものように牙を剥いて怒声を返すことを期待したが、音は空しく闇に消える。
 杏子の眼に光は戻らない。微かに呻きは漏らすものの、相も変わらず虚空を見つめるだけ。

『ダメみたいね、ゼロ』

「だな。これ以上は後が怖い。ま、あんまり女の子の顔を叩くのも気が引けるし」

 つい昨日、路地裏の決闘で平然と顔を狙った蹴りを放った男とは思えない言い草。
しかし戦いと、無抵抗な少女を殴るのは訳が違う。
今の彼女からは、あの時の闘志も殺気も感じられない。まるで人形。

 感触からして、強く叩いても傷が残るだけで無意味だろう。
ショックと痛みで気付けという強引な方法では効果がないようだ。
 零はおどけて言ったが、内心では焦りが芽生え始めてもいた。

「ホラーの術にはまったにしても、封印されてからも効力が続くなんてあるのか?」

『ないとは言えないけど……モロクにそんな前例はないから、少し考えにくいわね。
恐らくだけど、ホラーの術はとっくに解けているはず』

「……どういうことだ?」

『この娘が自分で戻ってこないのよ。ホラーの術を受けて、精神が同調しているのかも』




978 ◆ySV3bQLdI.2013/02/05(火) 02:51:06.29bSU8f1Sbo (2/6)


 シルヴァの推理に零は首を傾げ、暫し考え込む。
 つまり、何らかの暗示を掛けられ、解放後も催眠状態が続いている?
あり得ない話ではないが、どうにも腑に落ちなかった。

 何かが引っ掛かっていた。
 そもそも、これまであまり経験のない事態ではあるのだが。
 だが、続くシルヴァの言葉で、得心が行った。

『彼女たちは常識で計れる存在じゃないわ。
そうね……もし、彼女自身も幻惑魔法とか使えるとしたら』

「自分で自分に幻を見せているってことか? それなら覚めないのも道理だろうが……」

 ひとまず納得した零は、

「にしても、あんこちゃんにそんな芸当ができたとしたら大変だ。
昨日使われてたら、ちょっとヤバかったかもな」

 魔戒騎士に催眠や精神操作の類は通用しないが、幻惑魔法と言うなら他にも手段は考えられる。
 こちらを幻惑するホラーも存在し、苦しめられたこともある。
 法師ならまだしも、そのすべてを騎士の自分が防ぎ、見破れたかどうか。

 あの状況で杏子が全力を出さなかったのは不思議だが、
ともかく自分の認めた彼女の全力は、まだまだあんな程度ではないということ。
 零は薄く笑った。少し嬉しくなったのだ。

『じゃあ普段は何らかの理由で封印していた、とか?』

「それを今は無意識に発現させている、と。しかし、どんな幻を見てるんだかな」

 零は、杏子の頬をペチペチ叩いて笑みをこぼす。やはり反応は微弱。
 野良犬か、酷い時は狂犬にもなる少女だが、こうなると張り合いがない。




979 ◆ySV3bQLdI.2013/02/05(火) 02:53:59.69bSU8f1Sbo (3/6)


「よほど楽しくて覚めたくなくなる夢か……」

――いや……それなら、こんな辛そうな表情はしないか。

 この顔を見るに、辛くても目を背けられない、向き合わざるを得ない幻。
 なかなか覚めないのは、終わりがないから、だろうか。そんなふうに思った。
 悔やんでも悔やみ切れない、かと言って、どうすればよかったのか。
延々と答えの出ない自問を繰り返している。

 例えるなら、そう――零にとっての"あの夜"の出来事のような。

『さぁ? 見当もつかない。
でも彼女が魔法を掛けているのだとしたら、ホラーと同じ幻ではなく、
別の……彼女のイメージに因るでしょうね』

 彼女の過去。
 興味がないと言えば嘘になるが、知る必要も、その資格もない。

 誰にだって触れられたくない過去はある。
もし、そこに踏み入る資格があるとするならば、
何があろうと、とことん付き合う意思を持つ者だけ。
あらゆる弊害を受け止める覚悟を決めた者だけだろう。

 そして、零にはそんなつもりは毛頭なく、だからこそ軽々しく口にできる。

「何にせよ、これじゃ埒が明かない。頼んだぜ、シルヴァ」

『いいの?』




980 ◆ySV3bQLdI.2013/02/05(火) 02:57:19.54bSU8f1Sbo (4/6)


「ここに置いてもおけないだろ? さっきの戦闘で派手にやり過ぎた。
誰か来るかもしれないからさ」

 彼女の為と言うより、自分の為に。
 得にならないばかりか、不利益でしかないからだ。
 杏子がこのまま幻に囚われて帰ってこないのも、誰かに発見されて保護されるのも。

 杏子が何を見ていようが関係ない。無理にでも戻ってもらう。
 たとえ甘い夢に浸っていようと、辛い過去を直視することで何らかの答えを見出そうと。
 
 零が双剣を抜き放ち、その内の一本を左手の甲に添え、魔戒剣にシルヴァの艶めかしい唇が触れる。
 鏡のように磨かれた、もう一本の剣身には杏子の姿を映した。
 剣を重ね、杏子を映したまま唇が触れた箇所を打ち鳴らす。

 キィーーン、と長く澄んだ高音と共に、青白い光が波紋状に広がり、杏子の身体を通り抜けた。
 杏子はビクンと大きく震えると、前のめりに倒れる。
 その様は電源を切られ、強制的に停止させられた機械を連想させる。
 零が杏子の術を断ち切り、一瞬で意識を奪ったのだ。

 零が身体を抱き留めても、目蓋は閉じられたまま、何の反応も示さない。完全に意識を失っていた。
 
「よっ……と」

 両腕で杏子を抱え上げる零。
 腕の中で眠る少女は想像より、ずっと軽かった。
 とても激戦を潜り抜けてきたとは思えない、華奢な身体。強く力を込めれば壊れそうなほど。




981 ◆ySV3bQLdI.2013/02/05(火) 03:03:18.58bSU8f1Sbo (5/6)

 
 こうして見ると、ただの少女にしか見えない。
魔法の力を借りていても、決して楽ではなかっただろう。
鍛えに鍛えた魔戒騎士でさえ、そうなのだから。
 
 その戦闘力と、勝利の為に躊躇せず自らを傷つけた覚悟。
口にはしなかったが、素直に称賛に値する。

 杏子の太股には、彼女自身が拵えた槍傷。
そこから滴り落ちた血が、今も床に赤い染みを作っている。

 深手ではないが、放置もできない。
 ひとまず状況を確認し、可能なら応急処置を施す。
 振動で痛みを与えぬよう、壊れ物を扱うように、零は静かに階段を下りる。

 二人の関係からすれば最もあり得ないが、知らない者が見たなら、きっとこう思っただろう。
 さながら姫と騎士のようだ、と。



982 ◆ySV3bQLdI.2013/02/05(火) 03:06:42.08bSU8f1Sbo (6/6)

切りがいいのでここまで。続きは明日か明後日にはいけると思います
一期10話でザルバがやった洗脳解除?
ザルバにできるならシルヴァにもできるのかな、と
もしできない設定があったり、的外れな考察だったらすみません
描写は想像です


983VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/05(火) 10:40:47.90goZ0wbqAO (1/1)

>>1乙
なるほどアスモデイの時のアレか。


984VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/05(火) 13:22:43.02J8hapftSO (1/1)

空を駆ける金色の>>1乙
この2人が騎士とお姫様やっててなによりです


985 ◆ySV3bQLdI.2013/02/08(金) 02:29:26.12f2GR6sIZo (1/2)

ちょっと難航中ですが明日の一挙までにはなんとしても



986 ◆ySV3bQLdI.2013/02/08(金) 23:54:16.20f2GR6sIZo (2/2)


*

 頬に柔らかい感触と、微かな刺激。
 誰かの呼ぶ声が聞こえる。
 
「……ちゃん。起きろよ、あんこちゃん」

「うぅ……ん」

 唸りながら身を捩る。
 長い夢を見ていた。
 ずっと暗くて深い場所にいた。例えるなら、底なし沼でもがいていたような。
 そのせいか、酷く頭が重い。なかなか目を開く気になれなくて、聞き流していた。

 それでも声は止むことはなく、頬が柔らかく叩かれる。
そうこうしている間に、ゆっくりとだが五感が蘇ってきた。
 観念して薄らと目を開くと、そこには。

 笑顔。
 これは誰だったろう。輪郭がぼやけて判然としない。
でも、何故か心が安らぐのを感じた。
 自分に向けられる微笑みが、今はこんなにも温かい。

 やがて目の焦点が合い、杏子は数秒遅れて人物を認識する。

「お目覚めですか、お姫様」

 気取った口調で戯言を吐き、恭しく頭を垂れた男。
 その顔は忘れもしない。杏子が今、最も嫌っている相手。
 魔戒騎士、涼邑零。



987 ◆ySV3bQLdI.2013/02/09(土) 00:50:51.20icOT/Ycyo (1/4)


「って……め……」

 杏子は言い返そうとしたが、喉が掠れて上手く声が出せなかった。
 ムカつくニヤケ面を引っ叩こうにも、まだ四肢の感覚が鈍い。
 だから皮肉とからかいに答える代わりに、顔をしかめた。この上なく嫌そうに。

「元気そうで結構」

 苦笑して、零は立ち上がった。
 不思議と腹は立たなかった。
彼が杏子の反応を予想していたように、彼女もまた、零の反応を予想していたから。
 
 しかし何より、怒る気力もなかった。
 
「ここは……?」

 力のない声で問う。

「見ての通り、廃ビルの玄関」

 周囲を見回せば、なるほど、訊くまでもなかった。
 流れ込んでくる冷えた空気。雨音が近くに聞こえる。横を向くと、雨粒が跳ねていた。

 いつの間にか外は雨が降っていたのか。
隣から飛んだ時点では降っていなかったはずだから、まだ降り始めたばかり。
 見る限り、人の姿も気配もない。これなら、少しの間は大丈夫だろう。

 爆音や破壊音を不審に思ったとしても、雨なら確かめに行くのも億劫に感じるもの。
加えて月のない雨の夜、わざわざ暗黒の廃墟を訪れる勇気のある人間も少ない。




988 ◆ySV3bQLdI.2013/02/09(土) 01:18:09.48icOT/Ycyo (2/4)


「……あんたが?」

 ここまで連れて来たのか。
 最後まで言わずとも、零は意図を理解して頷く。

「意外と重くて大変だったぜ」

 言わなくてもいい、余計なひと言まで添えて。
 杏子は顔を上げ、零をキッと睨みつけるが――ほどなくして、しゅんと萎むように目を伏せた。

 やはりダメだ。怒る気にもなれない。
 寂寥感とでも言うのか。泥のように重く、心にこびり付いている。
ただひたすら虚しくて、悲しくて、心が燃え立たない。

 俯いて視線を彷徨わせていると、不意にそれが留まった。
 目に入ったのは、真っ直ぐ伸ばした両足。スカートは捲くれ上がり、太股は露わになっている。
片側の太股に白い布が巻かれていた。

「もう出血が止まりかけてるんだから、大したもんだな。魔法少女ってのは」

 零の言う通り、白い布の中央には赤が滲んでいたが、ほとんど広がる様子はない。
 傷口を拭って布を巻いただけの簡単な処置だが、とりあえずは充分と判断したのだろう。
 魔法少女の自己治癒力は高い。そこに本人の意思は介在していないが、それでも思う。

――あぁ……あたしは、まだ生きようとしてる。生きたいと思ってるんだ……。

 数秒、遠い目をした後に杏子は身体を起こし、壁に手をつき膝を曲げる。


989 ◆ySV3bQLdI.2013/02/09(土) 01:45:58.31icOT/Ycyo (3/4)


 が、足に力を込めた瞬間、

「っっ……!!」

 太股に痛みが走って、思わず動きを止めた。
 昂っていた戦闘中はまったく気にならなかったのに、悲鳴が漏れそうになって咄嗟に噛み殺す。

「まだ動くな。もうちょっと安静にしといた方がいい」

 零に肩を押されて元の姿勢に戻されても、抵抗もできなかった。
 大人しく壁にもたれる杏子。そこから1mほど離れた向かいの壁に、零も寄りかかる。
 
 無理を承知で立ち上がろうとしたのに、深い意味はない。
 上から見下ろされるのは不快だったが、屈まれても困るので、それはいい。
 強いて言うなら、独りになりたかったのかもしれない。
零の前でだけは、弱い自分を見せたくなかったのかも――。

 およそ十分は経っただろうか。
 その間、一切の会話はなかった。目を合わせもせず、互いに降りしきる雨を淡々と眺めていた。
 出血は完全に止まり、動いても痛みが少なくなった頃、

「それで? これからどうする?」 

 零が口を開いた。
 突然の、それも主語を省いた質問に、杏子は怪訝な顔で、

「はぁ? どうするって、何がさ」

「言ったろ、協力してくれたお礼。約束は守るよ。ご馳走でも、決闘でも」




990 ◆ySV3bQLdI.2013/02/09(土) 03:26:50.96icOT/Ycyo (4/4)

ここまで
続きは一挙放送が終わるまでには




991VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/09(土) 04:01:14.23515NuK8AO (1/1)

乙です。

杏子は未だに零を名前で呼ばないですね。もう意地でも呼ばないのかな、あんこ呼ばわりが直るまで…^^



992VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/09(土) 12:47:09.67MjTjCXrW0 (1/1)

乙タヴィア。

いくら公式嫁が故人だからといってちょっといちゃつきすぎだぞ零くんwwいいぞもっとやれ。




993VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/09(土) 21:27:42.42B7Z5dbCSO (1/1)


まーた零はあんこちゃんの太ももを(ry

そろそろ第三夜かな?


994VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2013/02/10(日) 17:55:49.43fNsmJ+oAO (1/1)

( ゚∀゚)o彡゜ふともも!!ふともも!!



次スレも大胆に行ってみよう




995 ◆ySV3bQLdI.2013/02/11(月) 00:40:27.34YBVQg99/o (1/5)


「あぁ……」

 すっかり忘れていた。熱が冷え切っていた。
 あんなに固執していたのに。
ここ数日、零を探して駆け回っていたのも、わざわざ戦闘に乱入したのも、その為だったはずなのに。

「けど、これからもう一勝負ってのは流石に俺も疲れてるし、あんこちゃんだってその足だろ。
また後日、仕切り直しってことで……」

 もちろん、エスコートの方なら大歓迎だけど。
 そう冗談めかして言う零を、杏子は見ていなかった。

――こいつの目に、あたしはどう映ってたんだろう。
いや、それ以前に、あたしはどんな人間だったろう――

 誰にも頼らず、手を差し伸べたりもしない。
 ドライな現実主義者。一匹狼の魔法少女。歴戦の古兵。
 もっとも、彼にしてみれば血気に逸る未熟者扱いだろうが。

 意識して振舞っていた訳ではないが、こんなところだろうか。
 他人との関わりを避けてきたので、客観的な自分がわからない。
深く関わったと言えるのは二人だけ。
 他にも色々と想像するのだが――。

 すべてが"しっくりこない"。
 かつてない奇妙な感覚だった。
 今なら鏡を見ても同じ感想を抱きそうな気がする。

――あたしは……あたしがわからなくなった……?




996 ◆ySV3bQLdI.2013/02/11(月) 01:21:32.12YBVQg99/o (2/5)


 では何故、何が変わったのだろうかと考える。
 原因はすぐに思い当たった。

 たぶん、ホラーに見せられた幻。
 炎と氷。現実と虚構。
 相反するふたつが溶け合う中で、杏子はまざまざと見せつけられた。

 まずは二人の男女が愛し合う光景。
 二人は幸せそうだった。
 自分には手に入らない幸福だが、妬む気が湧かなかったのは経験のなさ故か。
最初こそ理解が追い付かなかったが、次第に悪い気はしなくなった。 

 公園、レストラン、コンサートホール、二人の部屋、ベッド。
 どこでも二人の間には笑顔と愛の囁きがあった。
 それだけに、恋人たちの不幸、そして無残な結末には胸が痛みもした。
男の死も、女が堕ちていく過程も、ホラーに憑依される最期も。

 哀しいと思う。恐ろしいと思う。
 しかし、所詮は他人事。それだけなら、こんな気持ちにはならない。

 ホラーが見せた第三幕――いや。
 あれは本当に、ホラーが見せた幻覚だったのか。
 零に揺り起こされるまでに見ていた夢。

 同じように、ある貧しくも幸せな家庭が崩壊するまでの一部始終だった。




997 ◆ySV3bQLdI.2013/02/11(月) 02:03:29.52YBVQg99/o (3/5)


 初めてではなかった。むしろ、嫌になるくらい見飽きていた。
 数えきれないほどの悪夢。
 それでも夜毎うなされ、目覚めた時には汗だくになった。
 
 最後の幻を見た時、ふたつの悲劇が杏子の中で重なった。
 恋人たちと家族、どちらも崩壊の最後の引き金を引いたのは人間だ。
或いは後者は既に人間ではなく、魔法少女という異形だったのかもしれないが。

――そういや、誰かが言ってたっけな……。

 幸せは長くは続かないと。

 人は変わる。
 人は死ぬ。
 どんな想いも、いつかは消えてなくなる。
 
 親子も兄弟も友達も恋人も。
 強く絆で繋がった大切な者同士でさえ、変化と別離から逃れられない。
 人は幸せな時の中で生きていけはしない。
 
 この世界の絶対的な摂理。
 なら、愛とは一瞬の幻想に過ぎないのか。
 そんなこと、頭ではとっくにわかりきっていたはず。
 それでも――。



998 ◆ySV3bQLdI.2013/02/11(月) 03:13:24.04YBVQg99/o (4/5)


 これまで他人が破滅するのを無感情に見過ごす程度には汚れていても、
破滅する様を眺めて溜飲を下げたり、まして自分の手で突き落としはしなかった。
 そこまで腐ってもいないつもりだった。

 杏子が罪を犯しながらも一線を越えなかった理由。

 まだ心のどこかで、この世界を信じていたからかもしれない。
 自分の境遇は自業自得と受け入れていても。
 それでも、どこかに幸せは転がっていて、
それを掴んだ人間は変わらぬ幸せの中で生きていけると。

 故に、二人の結末は痛烈に突き刺さった。
 考えてしまったのだ。
 
 たまたま自分が幸福の輪から弾き出されること。
 最初からそんなものは幻想で、世界のどこにも存在しなかったこと。
 果たして、どちらが真実で、どちらが幸せなのだろうか。

 この二人に限らない。
 思い起こせば、魔女を追う過程で多くの悲劇を目にし、同時に見過ごしてきた。

 自分が見過ごしてきた哀れな魔女の餌たち。その家族、友人、恋人。
魔女の口付けによって引き起こされたであろう不幸の連鎖。
 それらは、すべて事前に防ぎ得たのだとしたら。

――だからって……じゃあ……どうすればよかったんだよ……!

 グリーフシードの予備も尽き、ソウルジェムの濁りが危うかったことも何度かある。
 真面目に使い魔を根こそぎ狩っていたのでは、今頃どうなっていたか。
 ただ、確かなことはひとつ。

 自分には最初から楽園を夢見る資格すらなかったのだ。



999 ◆ySV3bQLdI.2013/02/11(月) 03:42:12.50YBVQg99/o (5/5)


――だったら、あたしは……いったい何の為に生きてるんだろう……。

 わかっている。
 全部、覚悟の上で決めたこと。今さら後悔なんてしない。
 不意に感傷的になってしまい、虚しくなっただけ。


 思考を打ち切り、立ち上がる杏子。
 軽く爪先で床を叩く。ほとんど痛みは消えていた。
 冷たい雨に踏み出すと、

「……今日はいいよ。興が殺がれちまった……」

 零を見向きもせずに言った。
 何の為にここに来て、何をしたかったのか。それを見失って、一緒に戦意も消えてしまった。
 もう、ここに留まる意味もない。
 
 ずぶ濡れになりながら杏子が歩みを再開すると、背後で水溜まりを叩く靴音。
 その直後に、

『放っておきなさいな。いい薬かもしれないわ。これで迂闊にホラーに近付かなくなるでしょうよ』

 とシルヴァの声。
 暗い眼差しで振り向くと、零も雨の中を追ってきていた。
 彼は何を言うか迷っていたが、やがて杏子の背中に一言を投げ掛けた。

「あんこちゃん! 今日の分の借り、次の機会に取っとくぜ」

 杏子はギリ、と歯を噛み鳴らす。白くなるまできつく握られた拳には爪が食い込み、

――何が借りだ……!
命助けられて、あんな醜態晒して……!
とっくに貸しなんて返されて、お釣りがくる。
むしろ借りを作ったのはあたしの方じゃねーか……!――

 一瞬、怒りという名の炎が燃え上がるが、それもすぐに雨で掻き消される。
 虚しい。今は何もかもが虚しかった。

 冷え切った心を抱え、杏子は傷付いた足を引き摺って去っていく。
 零は暫し小さくなる背中を見送っていたが――やがて自らも背を向け、逆方向へと歩き出した。




1000 ◆ySV3bQLdI.2013/02/12(火) 02:09:06.44h9MsaQuTo (1/1)

遅くなりましたが新スレです
長い間お付き合い頂きありがとうございました
次スレでもよろしくお願いします

杏子と零の話は、伝えたいことが上手く伝えきれなかった気がします
精進します

次スレ
マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360602311/