1VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 22:22:05.95aUCW+CCo0 (1/23)


こんにちは、平沢憂です。
私には一つ違いのお姉ちゃんがいます。
とっても温かくて優しい、大好きなお姉ちゃんです。

これは、そんなお姉ちゃんと私が小さい頃に交わした約束のお話。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

1993年2月22日

「今日からはお姉ちゃんだぞ、唯」

「うぅ!」

「ふふ、賑やかになるわね」


この日、平沢家に新しい家族が生まれた。
その子供は『平沢憂』と名付けられ、大切に育てられた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

数年後


私は何でもできる。
運動神経は抜群だし、3歳で掛け算と割り算を理解し、
小学校で習う漢字は殆ど読み書きでき、日常的な会話程度なら英語も話せて、
音名を言い当てることもできた。




2VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 22:24:16.70aUCW+CCo0 (2/23)


周りの大人たちはそんな私を”天才”と言った。
でも、私にはそんなことはどうでも良かった。

何故なら私は何も努力をしていない。
私にとっては普通のことだ。
努力をしていないことを褒められても嬉しくもない。

他の人にとっては違うみたいだが…。

周りの大人たちにはいつも言われた。

「本当に何でも出来て偉いわねぇ。将来が楽しみだわ。
…それに比べてあっちの子は」

「あの子、難産だったらしくて小学生なのに未だに言葉も話せないそうよ」

いつも比べられた。
そして、いつしか私もそう思っていた。

こいつは私より下、と。


幼稚園の頃はとくに気にはならなかった。
まだ周りの子たちもそんなことはわからなかったし。
でも、小学校に上がればそうもいかなくなる。

小学校に入学しても治らない言語障害。
運動もまるでできず、何かあればすぐに泣く。

両親の必死の説得で普通学級に入れはしたが、周りは疎ましく思う者ばかりであった。
そんな父兄の影響は当然子供に及び、あっと言う間にクラスは全員敵になった。

しかし、学年が違う私にはあまり影響はなかった。
たまに、『平沢』という名に反応して関係をたずねる人もいたが、
結局は「姉妹でも全然違うんだねぇ」と、お決まりのように皆そう言った。

それもそうだろう。
小学生になった私は、最高評価を得ること以外が”できなく”なっていた。

教科書を適当にパラパラと捲っただけなのに内容を全て憶えてしまうし、
まるでそこに書かれているかのように答えも解る。

100点以外取れないのだ。

だって私にはこれが普通なのだから。


しかし、私のこの普通は、何気ないクラスメイトの一言で崩れ去った。





3VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 22:26:38.47aUCW+CCo0 (3/23)


晴れた、どこにでもあるような普通の日だった。

私はまた、『平沢姉妹』について質問された。

「あっちの平沢さんと姉妹なの?」

「そうだよ」

はぁ…そんなこと聞いて何になるんだか。

あんな出来損ないと血が繋がっていることを恥じた時もあった。
しかし、そんな欠点などどうでもいい程の才能が私にはある。

私は神に選ばれし人間。
数え切れない人々の言葉が、奴との血の繋がりを帳消しにした。

今からこのクラスメイトもその一人になるだろう。


そう、思っていた。



「やっぱりそうなんだ! 二人とも凄くそっくりだもんね!」





4VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 22:29:57.41aUCW+CCo0 (4/23)


「……………え?」

「前から思ってたんだよー。だって、髪型が違うだけで顔は同じだもんね」

こいつ何言ってんだ?

私とあの出来損ないが同じ?

ちょっと意味がわからない。


私は生まれて初めて取り乱した。
何も言い返せずに周りを見回した。
私は私以下の人間に助けを求めた。


しかし、誰一人として目を合わせなかった。


その日の記憶はそこから無い。


私は私が思う最底辺の人間と同じに見られていた。
これほどの屈辱があるだろうか。

翌日から私の感情は変わった。

無関心。
私はあいつに全く興味がない。

小さい頃は一緒に遊んだりもした。
歳も一つしか違わないし、親に面倒を任されたりもしていた。

むしろ…
私はあいつのことを、どちらかと言えば好いていたのかもしれない。

あいつはいつでも私にくっついて来た。
お風呂も寝る時も、トイレの時でさえも。

服は必ずおそろいを選んでいた。
そこまで好かれて悪い気はしない。
私が好くのも当然だろう。

しかし、人間は成長と共に大多数に合わせられない者を社会不適合者として除こうとする。
それは周りの影響だったり、己の損得勘定であったり…。

その僅かなズレは気づけば戻れない距離になっていた。

そして私は害がないのならと、他人のように振る舞った。

昨日までは。





5VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/27(日) 22:44:54.48r7FumzaSO (1/1)

なんだこれ


6VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 22:54:54.27aUCW+CCo0 (5/23)


私は顔が似ているだけで最底辺の人間と同じと思われた。


誰からも天才と言われるこの私が。


怒りがこみ上げてくる。


違う、私はあいつとは違う。


なんで私が。


あんな最底辺と一緒にしないで。


…なんで私が!


あんな奴生まれて来なければ良かったのに…。


私はその日から嫌がらせをするようになった。

あいつが近づいてきても冷たくあしらったり。
母親の宝石を壊してあいつのせいにしたり。
一人で学校から帰れないのを知っていながら置いてきたり。
あいつの大切なものを隠したり。

親が見ていない所でぶったこともあった。

しかし、それでも泣かないあいつに、私の怒りは更に増した。

なんなの?
学校や外じゃすぐに泣くくせに。

私の怒りが無視されているようで、我慢出来なかった。

しかし、そんな日々を繰り返しても何も得られないことに、
徐々に私の感情はまた冷めていった。
あいつへの感情が無関心に戻ってゆく。

冷静になれば、あいつごときに腹を立てることの方が情けない。
そう思うようになっていた。





7VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 22:57:16.98aUCW+CCo0 (6/23)


そんなある日、私は友人と公園に行くことになった。


「ちょっと友達と公園に行ってきまーす」

「あ、じゃあこの子も連れて行ってあげて」

そう言った母の後ろにあいつがしがみついていた。

「え!? 嫌だよ、なんで私が!」

「いいじゃない。昔はよく一緒に遊んでたでしょ?」

「昔でしょ! なんで今更一緒に遊ばなきゃいけないのよ」

「だってこの子があなたと一緒に遊びたいって言うから。そうよね?」

「ぅ…うぅ!」

なんで嬉しそうな顔してんの?

「はぁ?」

「連れてってあげないとお小遣い減らしちゃうわよー?」

「えぇ…。ほんと勘弁してよ」

「いいじゃない、たまには。
逆に、遊んであげたらお父さんにお小遣い増やす話してあげてもいいわよ?」

「……………今日だけだからね」

「ふふ、良かったわね」

「うぅ!」

「はぁ…」




8VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 22:57:49.91aUCW+CCo0 (7/23)


仕方がなく私はこいつを連れて公園に向かった。

途中、近所に住んでいて昔から良くしてくれるとみおばあちゃんに会った。

「あら、唯ちゃんに憂ちゃん。二人でお出かけなんて久しぶりね。
どこかに遊びに行くのかい?」

「うぅ!」

「はい、ちょっと公園まで…」

「そうかい、そうかい。唯ちゃんと憂ちゃんは仲良しだものねぇ。
二人とも楽しんでおいでね」

「あーうー!」

「…失礼します」

そう言って私は逃げるようにその場から立ち去る。

それを見たあいつが急いで追いかけて来て私の袖をつかんだ。

その後、アイスを食べたり散歩中の犬に構ったり、
何度も寄り道をさせられたせいで約束の時間はとっくに過ぎていた。
もう私の怒りは爆発寸前だ。

1時間ほど遅れてやっと公園に到着した。

良かった。まだ友人たちは待ってくれていたようだ。

「あ、平沢さん! 遅いよー」

「ごめん、ごめん。ちょっとお母さんに面倒おしつけられちゃってさ」




9VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:26:48.08aUCW+CCo0 (8/23)


そう言って後ろを指すと、友人たちも気づき戸惑い始める。

「今日だけ…一緒じゃダメかな?」

「えっと…、うん、いいよ」

言っていることと表情が一致していない。

「じゃあ、遊ぼっか」

友人の一人がそう言って、とりあえず遊ぶことになった。

遊ぶと言っても、ブランコに乗って話をするだけだが。


「平沢さんって本当に凄いよねー、この前のテストも100点だったし」

「そうそう、平沢さんが100点以外取ったのなんて見たことないよ」

「そんなに煽てないでよ」

「煽ててないよー。家庭科の時の料理も上手だし、うちのクラスの男子から凄いモテてるよ」

「平沢さん、顔も可愛いから隣のクラスからも人気なんだよ」

「そ、そうなんだ…ありがとう」

「うっうー!」


何笑ってんだ?こいつ。


「いいなー、私も平沢さんみたいに可愛くなりたいなぁ」

「そんな、十分可愛いと思うよ?」

「えぇーそんなことないよー」


正直言って、私はこの上辺だけの譲り合いが苦手だ。

まあ、彼女たちが心の中で歯を食いしばっているだけで、
実は本音なのだと知ってはいるが。





10VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:30:02.18aUCW+CCo0 (9/23)


「そういえば、平沢さんがいつも付けてる髪留め、可愛いよねー」

ついに装飾品にまできたか。

とは言っても、この髪留めはお気に入りでいつも付けている。
なので、褒められて満更でもない。

「これ、お父さんが誕生日にくれたんだ」

どこかのブランド物らしいが、生憎そういったことは良くわからなかった。
それに、私にとってはどうでもいいことだ。

しかし、女の子はブランドに詳しかったりするわけで。

「それって――のだよね?」

「え、――ってブランドの?」

「そうそう!」

なんか勝手に盛り上がってる。
そしてこの流れは…

「いいなー。ちょっと見せて!」

やっぱり…

「ぇ…、うん」

今日はこいつの件もあるし、仕方ないか。

「いいよ、はい」

「あ、ほんとだ! ここに――って書いてある!」

「見せて見せてー!」

凄い群がりようだな、たかがブランドで。
みんな私の髪留めにご執心のようだ。

一方あいつはというと…

ブランコの隣の砂場で大人しく遊んでいる。
問題を起こさないか少し不安だが、大丈夫だろう。

「そうだ、平沢さん!」

「ん、なに?」

見終わったのか、一人が話掛けてきた。

「うちのクラスの、平沢さんの隣の男子なんだけど…」

「うん? 彼がどうしたの?」

「なんか平沢さんのことが好きらしいんだけど、平沢さんはどう思ってる?」





11VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/27(日) 23:30:43.5988P32MwSO (1/1)

別人過ぎて読む気が起こらない


いちぬーけた


12VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:37:10.55aUCW+CCo0 (10/23)


「え、どうって…」

そんなの初耳だし、正直どうでもいい…

「平沢さんも好きなの!?」

もしかしてこの子はその男子が好きなのかな?
まあ、彼はクラスで一番スポーツ出来るし、それに………………


それだけじゃね?

「私は別に好きでもなんでもないよ」

「ほんと!?」

「うん、ほんとだよ」

「良かったー。平沢さんと両想いなんていったら絶対勝てないもん」

「だから、そんなことないってー」

「でも、それだったら私告白しちゃおっかなぁ…」

「えぇー!?」

お、外野が戻ってきた。

「告白ってどうゆうことー? 誰にするのー?」

私の苦手な感じになってきたので、今度は私が外野になろうかな。

「平沢さんの隣の男子がねー…」

「えっ、平沢さんどうゆうことー!?」

ああ、火の粉が…。


それから乙女純度100%な会話が繰り広げられ、気づけば4時半過ぎになっていた。




13VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:38:12.53aUCW+CCo0 (11/23)


「あ、そろそろ私帰らなきゃー」

「私も塾だから帰るね」

「私もー」

やっと解散のようです。
ふぅ、疲れた。

ん?

「あれ、私の髪留めは?」

「え?」

「最後誰が持ってたの?」

「私知らないよー?」

「えっ、困るんだけど。早く返して?」

「でも、私たち知らないし…」

そんな…

大切なモノなのに…


みんなお互いを見合わせているが、誰も名乗りをあげない。



そして

沈黙の中、一人、また一人とある方向を見始めた。





14VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:41:36.30aUCW+CCo0 (12/23)


「あーうー?」

さっきまで砂場にいたあいつが違う所にいる。

「ねぇ、もしかして…」

「えー、さすがにそれはねぇ…」

「でも、私たち知らないし…」

私もまさかとは思うが…

「……ねぇ、あんた。私の髪留め知ってる?」

「うぅ!」コクッ

「え!?」

「なーんだ、良かったじゃん」

「ほんと、失くなったかと思ったよー」

「ぁ、うん…。心配かけてごめんね」

「いいよー。じゃあ私たち帰るね」

「うん、また明日」

「バイバーイ!」

そう言って彼女たちは帰って行った。

「ふぅ…、じゃあ私の髪留め返して」

「うーあー!」ブンブン

「は? 早く返してよ! 5時までに帰らないと私がお母さんに怒られるのよ!?」

「あーあー!」

なに、なんなのこいつ…
人が折角連れて来てやってんのに…

「早く返しなさいよ!」

「んー!」

私を無視して砂遊びを始めやがった…

「もういい加減にして…」

公園に乾いた音が響いた。




15VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:43:05.72aUCW+CCo0 (13/23)


「いつもいつも私の邪魔をして、そんなに私が憎いの!?
お母さんにいつもあんたの面倒おしつけられて、
顔が似てるってだけで私まで同じだと思われて、
私がどんなに苦しんでるかなんてわかんないでしょ!!
“あんたのせい”で!!!」

「!!」

「あんたなんか生まれて来なければ良かったのよ!!」


私は今までため続けた言葉を吐き出して、走り出した。
知らぬ間に涙も流れていた。


なんで、なんで私がこんな目に遭わなきゃならないの?

私は今まで誰からも褒められるいい子でいたじゃない。

なのに、なんであんな奴を私におしつけるの?

もう、嫌だよ…。


走りながら家に帰る途中、またとみおばあちゃんに会った。

「あら、一人なの?」

私は何も答えなかった。

「…泣いてるのかい?」

私は何も言わずにまた走った。

「あっ、ちょっと!…何かあったのかねぇ」

振り向かずに家まで走り、家に帰るなり、私は部屋に閉じこもった。




16VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:46:55.38aUCW+CCo0 (14/23)


「おかえりー? ちょっと、手洗いうがいはー?」

母が部屋に近づいて来る。

「帰って来たんでしょー?」

扉が開く。

「聞いてるのー?」

母が部屋を見渡す。

「なんで一人なの? あの子は!?」

「…らない」

「え?」

「知らないわよ! お母さんもあいつのことばっかりで!!
あんな奴消えちゃえばいいんだ!!」

「あなた何言ってるの! とにかく、あの子はどこなの!?」

「そんなに心配なら自分で探せばいいでしょ!!」

もう自分では止められなかった。

「いい加減にしなさい!」

今度は私の部屋で乾いた音がした。

「なんでそんなことを言うの? 大切な家族でしょ?」

「……」

「家族じゃないの?」

「それは……」

「あの子はね、あなたのことが大好きなのよ?」

「そんなはずない! だって…」

「だって?」

「あいつのせいで、私まで学校で変な目で見られたり、
お父さんもお母さんもあいつのことばかりだし、
学校の行き帰りだってあいつと一緒じゃなきゃいけないから、
友達ともなかなか遊べないし…」

「そっか…。今まであなたに頼り過ぎてしまったわね…。
本当にごめんね」

「そんな、お母さんが謝ることじゃない!」

「あの子はね、言葉が上手く喋れないでしょ?
…でもね、あの子の言葉はちゃんとわかるのよ」




17VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:47:36.29aUCW+CCo0 (15/23)


「え…わかるってどういうこと?」

「ふふ、私もあの子が生まれてから…いいえ、生まれる前からお母さんをしているのよ。
言葉なんかなくたって何が言いたいのかわかるわ。
それでね、いつも教えてくれるの」

「何を?」

「今日もあなたが大好きってことをよ」

「え?」

「学校に行く時に優しく手を引いてくれて、
忘れ物があったら隣の子に一緒に見せてくれるように頼んでくれて、
体育の時間に転んで怪我をしたら自分の授業を放り出して駆けつけて、
いじめられていたことを隠していたのに気づいて守ってくれて、
泣いていた所を優しく抱きしめてくれた、
そんなあなたのことが、あの子は大好きなのよ」

「そ、それは…」

「それにね、あなた小さい頃に公園でお人形失くしたことがあったでしょ?
あれね、あの子が見つけてくれたのよ」

「えっ…あれってとみおばあちゃんが見つけてくれたんじゃないの?」

「いいえ、あの子が見つけてくれたのよ。あなたの大切なものだからって言ってずっとね。
でも、恥ずかしいからおばあちゃんに渡したのよ」

「そんな…」

「あの子はわかっていたわ。自分のせいであなたに迷惑をかけてること、
友達と遊べないこと、全部知っていたわ」

「……」

「それでも嫌い?」

「私は…」


その時、家のチャイムが鳴った。





18VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:48:43.05aUCW+CCo0 (16/23)


それはとみおばあちゃんだった。それと…

「…」

「んー!」

「! 私の……」

その手には私の髪留めが握られていた。

「うー!うー!」


もう一度チャイムが鳴る。

「はーい」

「あ、あのぅ…」

そこには今日一緒に遊んだクラスメイトの一人とその母親がいた。

「どうしました?」

「ごめんなさい!」

「…え……?」



事の顛末はこうだ。

公園でわざと私の髪留めを外させ、他の子と話させその隙に髪留めを隠した。
それを見ていたあいつはずっと髪留めを探していた。
隠した理由はただ単純な嫉妬。

それだけ。


でも、なんで謝りに来たのか?

たまたまクラスの子が買い物中に公園の横を通って、この子が隠す所を見て、
また帰りに通ったらまだこいつが探していたから親に連絡したということらしい。

その子にお礼をしなきゃ。


隠した子は母親と何度も謝罪して帰って行った。
私もお母さんも反省しているなら、と許した。



さて、次は私の番だ。


「いつもいつもありがとうございます」

「いえいえ、私にとっても孫みたいなものだからねぇ」

「ほら、お礼を言いなさい」

「おばあちゃん、ありがとう」

「二人とも仲直りするんだよ? それじゃあねぇ」


そう言っておばあちゃんは帰って行った。


「じゃあ、私もお夕飯の準備しなくちゃね」

お母さんも目配せをして台所に戻る。





19VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:51:46.33aUCW+CCo0 (17/23)


「ぁ、うぅ…」

私たちは部屋に戻った。



「…」

「…」

「…ぅ」

「あんたなんか大嫌いよ」

「あぅ…」

「あんたのせいで今までどれだけ私が苦しんできたことか」

「うぅ…」ポロポロ

「…」







なんでだろう。


なんで今になってわかったんだろう。


こいつは今、


“私が苦しんでいた”ことに泣いている。







20VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:52:20.52aUCW+CCo0 (18/23)


「あーうー…」ポロポロ


私に叩かれたことより、


私に「消えてしまえ」と言われことより、


私の悲しみに泣いている。





なんでそんなに優しいのよ。







「…」


「ぅう…」


「………悲しい時はね、考えてみるの」


「…あぅ?」


「この世の美しいものの多さをね」


「…?」




「ほら、見てごらん。

まあるい月と友達の星々、輝いてる。

きれいだね」


「うー」







「いつもありがとう。
大好きだよ」










21VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:55:29.20aUCW+CCo0 (19/23)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


それからというもの、私たちは誰からみても大の仲良し姉妹になった。


一緒に買い物に行ったり、

公園で遊んだり、

同じベッドで寝たり、

アイスも二人で分けて、

いつも一緒だった。


私は彼女にどれだけ酷いことをしたかわからない。

それでも、優しく私を受け入れてくれた。


そんなある日、二人で散歩をしていていると。


「今日はいい天気だねー。あ、見て! きれいなお花だねー」

「うー!」

「もうっ、そんなにはしゃがないで」

「! あー!」

「あ、猫さんだ。気持ち良さそうに眠ってるね」

「んぅー! うーうー!」

「かわいそうだから起こしちゃだめだよ」

「むぅー」

「ふふ、そうだ。公園に行こうか?」

「うー!」


私たちは手を繋いで公園に向かう。





22VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:56:28.34aUCW+CCo0 (20/23)


「あったかあったかだね」

「あっああ!あっああ!」




凄く幸せな気分だなぁ。
いつまでもこんな時間が続けばいいのに。




私たちは公園についてあのブランコに腰かけた。


「あの時は…本当にごめんね」

「うーうー!」ブンブン

「…そうだね、言うなら『ありがとう』だよね」

「あー!」

「うん、ずっと一緒だよ」


「あ、見て。あそこのお池で鯉が跳ねたよ!」

「あうー」

「ぅん? 見そびれちゃった?」

「うー」

「そっかぁ。じゃあ今度来た時は見れるといいね!」

「うぅ!」

「今日はアイス食べてから帰ろうか?」

「うー!うー!うー!」

「もうっ、急に抱きついたら危ないよ」


私たちはいつものアイス屋さんに寄ってアイスを食べました。


「おいしい?」

「うっうー!」

「ふふふ、よかったね」

「…」ジーッ

「? …! 私の半分食べる?」

「うーいー!」

「幸せ2倍だね!」





23VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:57:34.81aUCW+CCo0 (21/23)


「さて、そろそろ帰ろうか?」

「うーぅ!」

「そうだ、今日は私がお夕飯作ろうかな!」

「ぁうー?」

「それは帰ってからのお楽しみだよー」



「ただいまー!」
「ああいあー!」

「あら、お帰りなさい」

「お母さん、今日のお夕飯は私に作らせて!」

「大丈夫なのー?」

「大丈夫だよー!」

「じゃあ、お願いしようかしら」

「うん、任せて!」


日頃の感謝を込めて、凄くおいしいものを作ろう!

でも、何にしようかな?


「あえー!」

「あ、そっか! 大好きだもんね。
すぐ作るから、もう少し待っててね」

「あえー! あえー!」


楽しみにしてくれてる。
嬉しいな…

頑張らないと!





24VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:58:50.59aUCW+CCo0 (22/23)


「よし、できた!」

「お、うまそうな匂いだなぁ」

「ほんといい匂いね」

「あえー! あえー!」

「じゃあ、早速食べようか!」


「「「では、いただきまーす!」」」
「あうー!」

「あら、とってもおいしいわ」

「本当だ、さすがは俺の娘だな!」

「私のよ」

「あうあうあー」

「ふふ、よかった」


とりあえず、おいしくできたみたいで良かったです。
今は後片付けをして、お風呂から上がって部屋に戻った所です。


「もう寒い季節かー…」


白い息が出ます。
今日は温かくして寝ないと。


「うー」モゾモゾ

「んー? 今日も一緒に寝るの?」

「うー」コクッ

「じゃあ、ここおいで」

「んー」

「今日のお夕飯どうだった?」

「うぅあー!」

「よかったぁ」

「うーあーあー。
うーうーうぅー。
うーいー」

「え!? 本当?」

「うー!」

「……うん、楽しみにしてるね。

約束だよ」

「うぅ!」

「ふふ、大好きだよ。
おやすみ」






25VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/27(日) 23:59:53.65aUCW+CCo0 (23/23)


翌日!


「じゃあ、行ってきまーす!」
「あーあぁうー!」

「はぁーい、行ってらっしゃい。
二人とも気をつけるのよー」


今日も二人仲良く手を繋いで登校です!


「あら、唯ちゃんに憂ちゃん、おはよう」

「あ、とみおばあちゃん、おはようございます!」

「あうー!」

「あらあら、二人は元気で仲が良いわねぇ。
学校頑張ってね、行ってらっしゃい」

「あーあぁうー!」
「行ってきます!」


やっぱり今日も白い息が出るくらい寒いね。
でも、二人なら大丈夫!
あったかあったかだから。


今日はどんないいことが待ってるだろう。
楽しみだね!





26VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/28(月) 00:18:50.78om4uSBz50 (1/7)


「あ、そろそろ学校が見えてくる頃だね」

「うー」

「だめだよ。まだ赤信号だから」

「ぁうー」


信号が青にかわる。


「よし、行こうか!」

「うー」






「危ない!」



「え?」




その瞬間、猛スピードで車が私に突っ込んできた。









ドンッ










「痛たたた……あれ? 生きてる?」

「え?」





繋いでいたはずの手には、何もなかった。






27VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/28(月) 00:20:24.38om4uSBz50 (2/7)


「え!? なんで!?」



振り返ると、そこには血だらけの人が倒れていた。



「なんで…? なんで私の替わりなんかに……」


「子供が轢かれたぞ! 早く救急車を呼べ!!」


「あー…ぅ…」


「! 喋っちゃダメ! すぐに救急車来るから…!」


「うぅ…」ギュッ


「大丈夫…ここにいるからっ……!」


「…ぃういー…えーあぁ……あぃうきぃ…」


「嫌!!
死なないで………
約束したじゃない…
お願い…」






28VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/28(月) 00:25:56.65om4uSBz50 (3/7)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


私は何も考えることができず、手術室の外の椅子に座っていた。




なんでこんなことになったの?


どうしてあの子なの?


悲しい、悲しいよ。


もう、何もわからない。


誰か教えて。





「いいよ」





29VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都)2011/11/28(月) 01:41:54.03RJWI+N9To (1/1)

歪んでるなぁ
この姉妹になんの恨みがあんだよ


30VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/28(月) 02:50:19.82om4uSBz50 (4/7)


誰?


「教えてあげる」


何を?


「悲しくなりそうな時は考えてみるの」


え?


「この世の美しいものを」


そんなのどこにあるの?
ここには美しいものなんて何もないよ。


「大丈夫。だって、あなたは永遠に光る――だから」


違う。
私はそんなモノじゃない。



でも…、やっとわかったよ。


きれいな宝石はいつでも私のそばにあったんだ。


楽しくて笑い合った幸せな日々。


それが何よりも”きれい”なんだね。




神様、お願いします。


何でもわかる頭も、


何でもできる体も、


もう何もいりません。


だから、


だから、お願い。










31VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/28(月) 04:13:55.37om4uSBz50 (5/7)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

数年後!



「お姉ちゃーん、朝だよー!
起きてー!」


「んー、うーいー」


「遅刻しちゃうよー?」


「あと5分ー……zzz」


「もう…、お姉ちゃんったら

今日のお夕飯はアレだよ!」


「! ほんと!?」ガバッ


「わぁ! うん、ほんとだよ」


「ふふふふふ、今から楽しみだよー、ういー」


「じゃあ、まずは起きて準備しちゃおうね!」


「うん!」




「「行ってきまーす!」」


「今日も寒いねー。息が白いや」


「うん、でも二人一緒ならあったかあったかだよ!」


「そうだね! あ、見て! 公園の鯉が跳ねたよ!」


「ほんとだ! 今度はちゃんと見れたね」


「うん! 今日も一日、良い日だといいね!」


「大丈夫だよ。だって宝石ならここに…」





32VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/28(月) 04:18:53.76om4uSBz50 (6/7)


「ここに?」


「んーん…、秘密!」


「えー、教えてよー」


「ヤだよー、恥ずかしいもん」


「…あっ、わかったかも!」


「じゃあ、『せーの』でね?」


「うん!」


「「せーのっ!」」







今度はこの手を離さないよ。




唯・憂「永遠に光るダイヤ!」

End



Shiny GEMS



日々は宝箱 笑顔の宝箱
あちこちで出逢える キラキラ光るダイヤ

昇るお日様の晴れやかさ 舖道に咲く可憐な花
まあるい月と友達の星々 全部輝いてる!

日々は宝箱 笑顔の宝箱
気づけばそばにある ピカピカ眩しいトパーズ


季節を運ぶ優しい風 大好きな人との約束
秘密のスパイス効いたカレー 全部幸せのもと!

日々は宝箱 笑顔の宝箱
見えなくてもある 隠れ上手忍者オニキス

軒先眠る野良猫 仲間呼ぶ蜂のダンス
公園の池で跳ねる鯉 全部輝いてる命!

私も輝く もしかして宝石!?
燃えてるハートは 鮮やかな勇気のルビー


悲しくなりそうな時は考えてみる
この世の美しいもののね、多さを…

一緒に探したいな、みんなで見つけたいな
笑顔になること 分け合う素敵なもの

誰もが輝く きっとね宝石!!
汗とか涙は 真剣に生きてる証のパール

日々は宝箱 笑顔の宝箱
あちこちで出逢える 永遠に光るダイヤ




33VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/28(月) 04:26:03.27om4uSBz50 (7/7)

以上です、初ssでした。

『Shiny GEMS』を聴いて思いつき、唯ちゃんの誕生日だったので書きたくなりました。

>>11 最初に書いておけばよかったですね、すみません。

いるかわかりませんが最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。


34VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/28(月) 10:23:35.96rNtvU+gSO (1/1)

ヨクワカラナカッタケドカンドウシタ
オツ


35VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/28(月) 12:36:56.68RAYZQyEn0 (1/1)

池沼唯は専用スレで書いて
そしてもう巣から出てこないで


36VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東)2011/11/28(月) 19:20:24.58zRem7naAO (1/1)

唯を池沼に書く人の気持ちが分からんわ
面白いと思って書いてんの?
それ抜きにしても薄っぺらい内容だけどね


37VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/28(月) 23:58:52.85Xj4w4diSO (1/1)

池沼唯+憂選手+交通事故



禁じ手を三つも使ってる

感動じゃなくギャグですわ


38VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越)2011/11/29(火) 01:06:33.27StBCM6oAO (1/1)

わかった
おまえら ぃうい って発音してみ


39VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/29(火) 02:31:16.616de5vEDuo (1/1)

池沼唯は全く別の作品として面白いSSが多い。
それだけに、敢えてこれを池沼唯スレで投下してたら評価してたよ。
残念だな。


40VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区)2011/11/29(火) 19:10:44.53Q2DPmTgWo (1/1)

唯の方が言語障害だってどの時点でわかったの?


41VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/30(水) 01:07:57.42Nzh7+AMAO (1/2)

これ唯→天才で憂→言語障害だろ。


42VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/11/30(水) 01:40:34.0870My0MDdo (1/1)

ミスリードしてるんだけどそのミスリードが見てて辛い
最後まで読む人少ないよこれ


43VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/30(水) 04:33:28.95Nzh7+AMAO (2/2)

>>42

俺もそう思う。

今もう一回読んだら>>30で神様に何もいりませんってお願いして、数年後に唯が本当に何もできなくなってるのがうけるwwwwwwwwwwww


44VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/30(水) 16:05:40.93lZkQDMVX0 (1/1)

>>1です。
思ってたより読んでくれた方が多くて嬉しいです。
ありがとうございます。
出来るだけどちらともとれるようにしたつもりですが、唯と憂を特定できる場面も一応入れておきました。
ただ構成上とはいえ、色んな描写が明らかに足りませんでしたね。
ほんと下手くそですみません。
勉強していつかまた書きたいと思います。