1 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/15(火) 15:24:11.96ZfHP8tF70 (1/4)

1スレ目 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1304/13045/1304506297.html

2スレ目 美琴「当麻♪」上条「なんだ、美琴」垣根「俺も仲間に入れて」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1305/13053/1305377166.html

3スレ目 上条「美琴、愛してる」美琴「私も♪」垣根「俺も♪」心理「ジャマしないの」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306063255/

4スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「えへへ//」垣根「速さが足りない」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306724889/

5スレ目 上条「放さないからな」美琴「うん♪」垣根「話さないからな」心理「しゃべりなさいよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307282872/

6スレ目 上条「抱きしめようか?」美琴「うん//」垣根「抱こうか?」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307709819/

7スレ目 上条「守り続けるからな」美琴「うん//」垣根「これがリア充です」心理「あなたもよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308139244/

8スレ目(番外編) 美琴「私の好きな人のことを、それ以上悪く言わないで!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308667506/

9スレ目 上条「結婚に必要な物は?」美琴「愛!」心理「お金」垣根「念のため三行半」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308992651/

10スレ目 上条「まずは!」美琴「そのふざけた!」心理「幻想を!」垣根「守るのこそ愛だ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309355502/

11スレ目 上条「マイホームか・・・」美琴「い、いいわね//」心理「そうね」垣根「欠陥住宅か」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309860801/

12スレ目 テクパトル「あの月はもう、空には出ない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310283821/

13スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「//」垣根「心理定規可愛いハァハァ」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310641032/

14スレ目 上条「恋といえば!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311066610/

15スレ目 上条「旅行かぁ・・・」美琴「どこ行く?」垣根「ヤっちゃうのか?」心理「黙って」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311506386/

16スレ目 上条「愛って何かな」美琴「守ること?」心理「信じること」垣根「疑い続けることさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311939697/

17スレ目 上条「始まった・・・」美琴「大覇星祭・・・」垣根「アナウンスは俺」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312451177/

18スレ目 上条「引き続き!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスも俺!」心理「もうイヤ・・・」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312969940/

19スレ目 上条「まだまだ続く!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはMeダヨ!」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313206497/

20スレ目 上条「そして終盤!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはワシじゃよ」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313568339/

21スレ目 上条「みこと!」美琴「とうま!」垣根「マン」心理「そこまでよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313987737/

22スレ目 上条「1に愛情!」美琴「2に愛情!」心理「3、4がなくて?」垣根「後藤さん」一同「誰だよ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1314/13145/1314512717.html

23スレ目 上条「海外旅行!」美琴「イギリス!」心理「ご飯がまずい」垣根「ひもじいよぉ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1315/13152/1315277970.html

24スレ目 上条「デートの定番は?」美琴「遊園地!」心理「映画館」垣根「特別な場所なんていらねぇさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316091462/

25スレ目 上条「熱い思いは!」美琴「止められない!」心理「燃える心は」垣根「バーニングハート!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316955436/

26スレ目 上条「異性のどこが好き!?」美琴「優しさ!」心理「温かさ」垣根「声」テクパトル「背中」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318038036/

黒歴史 今日も学園都市には雨が降る
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1303/13037/1303730725.html


2 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/15(火) 15:25:22.43ZfHP8tF70 (2/4)

キャラ紹介

上条・・・言わずとしれたそげぶマン
美琴の彼氏、第一の主人公であり、正義感溢れます
美琴をかなり愛しています

美琴・・・ヒロイン
可愛いです、可愛いです、可愛いです
ツンデレがデレデレになってますが、それもまた(ry
上条さんにメロメロ

垣根・・・本シリーズでおそらくもっとも愛されてるキャラクター
イケメルヘンからギャグまでなんでもござれ
心理定規と付き合ってます、フリーダム
たまにツッコミ

心理定規・・・垣根の嫁
ていとくんに踊らされながらも彼を支えます
おそらく、心理定規タンハァハァって方もいるかと、俺もそうだ
ホント、マスコットキャラ

エツァリ・・・本シリーズで地味なキャラの一人
ショチトルと付き合ってる変態ツッコミ

ショチトル・・・地味キャラだった一人
エツァリと付き合ってます、自称ドMの実際ドM
もはや、ボケキャラ

削板・・・熱い男
黒子の彼氏、地味なはずがわりとキャラが濃い

黒子・・・ですの
削板の彼女、でもお姉さまも相変わらず好きなのでご安心を

一方・・・歪みないセロリ
番外個体の彼氏、そしてロリコン、意外とまともになった

番外個体・・・一方の嫁
やっとセロリと付き合うことに、マジ可愛いよワースト
わりと奥手

テクパトル・・・ダークホース
途中でレギュラーになったにも関わらずていとくんとならび本シリーズの目玉に
こんなはずではなかった
美月こと19090号と恋人に、さまざまな苦難も乗り越えイチャイチャリア充、背中フェチ

19090号・・・テっくんの嫁
勝手に美月と名づけました
後悔はしてません
テクパトルと結ばれましたが未だに照れ屋さん、そしてエロい

20000号・・・変態
しかも、テっくんでヤったこともある変態 、たまに男前

14510号・・・セロリのことが好きな乙女
めちゃくちゃ乙女

10033号・・・セロリのことが好きな乙女
恋する乙女は強かった

御坂妹・・・可愛いです
なぜかツッコミに

17600号・・・やや遅れて合流した妹達
意外と男前、おっとこまえー

■■・・・名前が思い出せないキャラ
まさかの存在感、俺には理解できない
準レギュ、というかエツァリよりも輝いてる気がする

吹寄・・・垣根に告白、失恋するもやはり友達がいいと気づいた強いキャラ
まさかの準レギュ、そしてツッコミ、おっぱい吹寄

ウイーハルさん・・・違った、初春
削板、黒子の出番でたまに登場

13577号・・・かつて20000号に公開オ○ニーをさせられたため、一時離脱していたミサカ
まさかの復活、でもトラウマは奥底に眠る

10039号・・・かつて20000号に公開オナ○ーをさせられたため、一時離脱していたミサカ
お茶なら緑茶派らしい


3 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/15(火) 15:25:48.63ZfHP8tF70 (3/4)

食蜂・・・レズ、美琴に恋してる
最近本当の友達が出来て喜んでいる

打ち止め・・・一方通行と番外個体の娘ポジション
しかし寝取りを企んでいるという噂もある

麦野・・・魅力的なはずなのにアイテムで唯一恋の香がしない
がんばれおばさ・・・お姉さん

絹旗・・・超可愛い超キュートな超ヒロイン
海原に淡い恋心を抱いている
絶賛パンチラ

浜面・・・リア充

滝壺・・・浜面の彼女
ときどき黒い、実は腕力が半端ない

フレンダ・・・空から帰ってきた我らがアイドルな訳よ!
美人でスレンダー、完璧なスタイルな訳よ!
ゴーグル男なんてす、好きじゃない訳よ!

ゴーグル・・・スクールの中で一番地味だった人
語尾が「~っす」とかいう、若者口調
なぜかフレンダと共にこの世に戻ってきた
冷え性


アレイスター・・・冷蔵庫
一体どうしてこうなったのか
最新式の家電

海原・・・絹旗にフラグを立てた男
本物
エツァリと鉢合わせしたら恐ろしいことになるはず





4 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/15(火) 15:27:25.83ZfHP8tF70 (4/4)

スレ内容

上琴、未元定規がメインのギャグほのぼの

一方通行×番外個体
テクパトル×19090号
削板×黒子
エツァリ×ショチトル
浜面×滝壺
俺×サトリナ


何もおかしいところはない

サトリナさんは俺の嫁

ほのぼの、グダグダ、原作崩壊、キャラ崩壊、マンネリが嫌いな方はご覧にならないほうがいいかと

あと、一部オリキャラ化していますのでそこもご了承を


注意事項

速さが足りないコメは諸事情によりお控えいただけたら幸いです

たまに筋肉動画を貼ります、耐性がない人はそっと戻るボタンを




5VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/15(火) 21:06:06.915HHKVQyDO (1/1)

>>1乙



6VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県)2011/11/15(火) 23:31:44.55QCO78sZr0 (1/1)

改めてスレ一覧を見たらあれだな
数が・・・その・・・・・ハンパないな


7VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方)2011/11/16(水) 02:17:02.38xXYS70IU0 (1/1)

>>1は人生を楽しんでますか?


8 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:43:49.78wDwdjSjS0 (1/51)

>>7 >>1の大好きな松ちゃんも言っていたように人生なんて楽しいもんじゃない、だから楽しく生きなきゃいけないってことですよ

目の前に大金が落ちていて、それを「拾う」か「拾わない」

その確率は二分の一

「拾う」を選択して、謝礼をもらい幸せになるか、実はそれが汚れた金で変な疑いをかけられ不幸になるかも、確率云々は抜きにしても幸せ、不幸、どちらの可能性もある

「拾わない」を選択すれば、謝礼をもらえなくて不幸か、それが汚れた金でスルーして幸せだったかの、どちらの可能性もあり

結局どの選択肢を取っても人生なんて幸せと不幸、二分の一の確率が用意されている

ならそのとき選んだことでウジウジしないで選んだ選択肢の中で適当に楽しもうぜベイベーが一番ですよ

そんときは幸せか不幸かの一択でも、そのあとにゃ面白い展開も待っているわけで

そういう考えをしながらのらりくらりしてきた>>1も大学に合格し、割と人生を楽しんでいると思います

天国があって神様とやらがいるのならば唾でもかけてやりたいほどの楽しい人生ですよ、マジで

では続きをば






9 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:51:35.24wDwdjSjS0 (2/51)

写真映りがいい人って得だな、とゴーグル男は思った

なぜ彼がそんなことを思ったかというと目の前にある携帯電話会社の広告に映っているお姉さんが綺麗だったからだ

ではなぜ携帯電話会社の広告が目の前にあるのか

それはもちろん、彼が携帯電話会社の店舗に来ていたからだ

地下街にある支店の前に彼はいる

では最後の質問

ゴーグル「・・・なぜ俺はこんな所にいるんですか・・・?」

時は遡る

アイテムの朝は騒がしい

騒がしいと言っても普段の騒がしさでは騒ぎもしない

だが、その朝は違った

ゴーグル「・・・」

ゴーグル男はその日も起きた瞬間にため息をついた

フレンダが自分の布団の中に入り込んで来ていたのだ

もはや当たり前の光景





10 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:52:08.29wDwdjSjS0 (3/51)

そう、だからそれでも騒ぎはしない

問題は男特有の朝の生理現象だ

そんなものどうしようもない

ゴーグル「・・・なんかデジャヴュがすごいんですが」

それが収まる前にフレンダが目覚めたらおしまいだ

ゴーグル「・・・いや、まぁ収まれと思って収まるもんじゃないですよね」

はぁ、とため息をついてからゴーグル男がフレンダの顔を見つめる

その寝顔は何度見ても慣れることはない

もちろん、ひどいという意味ではない

むしろその逆だ

本当にお人形のような寝顔だ

美しい金髪がゴーグル男の顔に少しだけ触れている

すやすやと寝息の聞こえる唇は綺麗に潤んでいる

鼻はすっと流れるようで、まぶたも人形のようだ





11 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:52:38.73wDwdjSjS0 (4/51)

ゴーグル(・・・いや、だからなんだって訳じゃないんですけど)

ゴーグル(・・・でも、さすがに毎朝毎朝これは・・・)

世の中の悲しき男子学生なんかから文句を言われそうな幸せだろう

しかし、残念ながらゴーグル男はそこまで図太くはない

やましい気持ちは全くと言っていいほどない

ただ、この状況から脱出して自分の無実を証明することだけを考えている

ゴーグル(た、たしかにちょっと柔らかいから心地好いですけど)

恐らく胸の感触だろう、ゴーグル男の鳩尾辺りに柔らかなものが当たっている

それを手放すのは心苦しかったりする

いや、手放さなければいけないのだが

ゴーグル「・・・ですが、強く抱きしめられてるのにどうやって放れれば・・・?」

ゴーグル男が思考を巡らせる

背中にはがっちりとフレンダの腕が回されている

身を捻ってみたが、ほどけない

その行動が間違いだったのだ





12 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:53:19.65wDwdjSjS0 (5/51)

フレンダ「ん・・・」

フレンダの人形みたいな目がパッチリと開いた

さすがにフレンダも慣れているもので、そんなことでは動揺しない

フレンダ「おはよう・・・また私を抱きしめてた訳?」

ゴーグル「どこをどう見たら俺が加害者になったんですか」

そういうやり取りも完璧だった

そこまでで終われば、微笑ましいただの朝だった

たった一つ、間違いがあったとすれば例の生理現象だろう

もっと言えば、それが当たっている場所だ

それはフレンダの脚の間にちょうど先が当たっていた

そう、デリケートな場所に

フレンダ「・・・」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「ねぇ、これは・・・わざと?」





13 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:53:47.09wDwdjSjS0 (6/51)

ゴーグル「俺にそんな度胸はありませんよ」

フレンダ「・・・にしてはいい感じに当たってる訳よ」

ゴーグル「ち、違い・・・」

フレンダ「へぇ・・・そうなんだ」

段々とフレンダの顔が怖くなっていく

あぁ、こりゃもうダメだとゴーグル男が覚悟を決めた瞬間

フレンダ「最低な訳よ!」

フレンダのビンタが飛んだ

それが、その日の朝の出来事だった


そして、アイテムでの会議が開かれた

ゴーグル「・・・」

絹旗「つまり、ゴーグルはフレンダの下半身に自分の下半身を・・・」

浜面「そ、それは多分誤解だって!な!?」

ゴーグル「・・・というか俺は被害者なんじゃ・・・」





14 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:54:17.28wDwdjSjS0 (7/51)

滝壺「男って最低だね」

浜面「滝壺ぉ!?」

麦野「・・・ゴーグル君、そこはどうなのよ」

ゴーグル「あぁもう!毎朝布団に入ってきて抱き着いてくるのはアンタでしょうが!」

フレンダ「私のせいじゃない訳よ!絶対・・・」

浜面「いやいや!布団に入ったのはフレンダなんだろ!?」

ゴーグル「そうなんですよ!」

絹旗「でも下半身を押し付けたのは?」

ゴーグル「体が密着してれば自然とそうなりますよ!」

滝壺「・・・じゃあなんで密着したの?」

ゴーグル「フレンダさんが抱きしめてきてたからですよ!」

麦野「はいはい・・・で?二人はどっちが悪いと言いたいの?」

フレンダ「ゴーグル!」

ゴーグル「フレンダさんが・・・悪いかと」





15 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:54:53.63wDwdjSjS0 (8/51)

麦野「分かったわ・・・とりあえず、それは二人の問題なのよ」

フレンダ「そ、そりゃそうだけどさ・・・」

麦野「まぁ・・・仲直りに二人で出掛けて来なさい」

フレンダ「二人で?」

麦野「昨日約束してたじゃない」

ゴーグル「・・・まぁ仕方ないですね」

フレンダ「うっわ、仕方ないから行くんだ」

ゴーグル「別にそんなこと言ってないじゃないっすか」

二人の視線がぶつかる

浜面「はいはい・・・とりあえず、仲良くしようぜ?」

フレンダ「ふん!私の迷惑にならないでよね!」

ゴーグル「分かってますよ・・・」

渋々ゴーグル男が頷く

そして、外出用の服に着替えた二人は地下街に来た






16 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:55:26.23wDwdjSjS0 (9/51)



そこまでは、理解できる

ならばなぜ彼は携帯電話会社の前にいるのか

フレンダがよく分からない契約をしたい、と言ったからだった

ゴーグル「・・・あの、これってどういう?」

フレンダ「なんでもハンディアンテナみたいな機械を携帯に取り付ければいいみたいな訳よ」

ゴーグル「へぇ・・・」

フレンダ「男女限定のペアだけど、通話料とか安くなるみたい」

ゴーグル「男女限定・・・ですか」

ゴーグル男が肩を落とす

そのプランの書かれた広告の端に、「引き続きゲコ太ストラッププレゼント!」という字を見つけたからだ

フレンダはこう見えて人形を集めていたりする

きっと、今回のストラップもそういうのの一貫で欲しいのだろう

ゴーグル「まぁ・・・たしかに浜面さんとは契約出来ないっすね」

フレンダ「そ、そりゃアンタじゃなきゃ・・・」

ゴーグル「アイテムには残りの男、俺しかいませんからね」





17 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:56:02.99wDwdjSjS0 (10/51)

淡々とゴーグル男が意見を述べる

正直、ストラップなんかのためにここまで来たなんて納得出来ない

若干だが、腹が立っている

朝の言い掛かりもそうだが、フレンダは時々彼を振り回すのだ

それが心地好いのも事実だが、たまに少しだけ鬱陶しくも感じる

ゴーグル(・・・いや、誰にだって少しの欠点はありますよ)

首を振り、どうにか気持ちを入れ替える

フレンダ「さ、早く行く訳よ」

フレンダに手を引かれ、ゴーグル男はその店舗に入る

中の受付嬢は綺麗だった

その美しさに少し驚いていたら、なぜかフレンダに脚を踏まれた

ゴーグル「いったぁ!」

「い、いらっしゃいませ・・・」

いきなり大声を上げたゴーグル男に、一応の営業スマイルを浮かべる受付嬢





18 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:56:46.85wDwdjSjS0 (11/51)

ゴーグル「何するんすか・・・」

フレンダ「鼻の下伸ばしすぎな訳よ」

怒ったような表情になりながら、フレンダが椅子に座る

フレンダ「ほら、アンタも早く」

ゴーグル「はいはい・・・」

「こちらの用紙に電話番号と・・・」

受付嬢が早速説明を始める

プランごとに受付が異なるため、わざわざどのプランにするのかを伝える必要はない

ゴーグル「えっと・・・これだけでいいんすか?」

「後は、お二人がペアであることを証明出来る写真が必要になります」

フレンダ「写真?」

「はい、携帯電話のカメラ機能で撮った写真で結構ですので」

ゴーグル「へぇ・・・でもわざわざそういうことをするんですか」

「こちらのプランはカップルの方にオススメとなっていまして・・・」

フレンダ「カ・・・」





19 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:57:33.37wDwdjSjS0 (12/51)

ゴーグル「あぁ・・・じゃあ、ちょっと待ってて下さいね」

ゴーグル男は普通に椅子から立ち上がる

フレンダ「カ、カップル!?」

ゴーグル「ほら、早く早く」

入店した時とは真逆で、ゴーグル男が手を引く形になって一度店を後にする


フレンダ「どういう訳よ!?」

ゴーグル「いや、男女限定なら普通そうでしょ」

フレンダ「だ、だって私とアンタはカップルなんかじゃ・・・」

ゴーグル「・・・そりゃ勘違いされてイヤでしょうけど・・・我慢して下さいよ」

今更辞めるなんてことは出来ない

冷やかしに思われるのは御免だった

それにお得なプランなので、ゴーグル男としてもイヤなものではない

フレンダ「そ、そうよね!アンタなんかとカップルだなんて思われたら・・・」

ゴーグル「はぁ・・・とにかく、カップルらしく写真でも撮りますよ」





20 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:58:20.99wDwdjSjS0 (13/51)

ゴーグル男が自分の携帯を取り出す

フレンダの携帯は受付に預けてしまっている

ゴーグル「はい、とりあえず近づきますよ」

フレンダ「仕方ない・・・」

ゴーグル男が突然、フレンダの肩を抱き寄せる

急に近づいた二人は、傍から見れば仲のいいカップルだ

フレンダ「な、何よいきなり!」

ゴーグル「はぁ・・・あのプランのためには必要なんですから」

フレンダ「でもいきなり過ぎて・・・」

ゴーグル「ほら、表情柔らかくして」

フレンダ「・・・なんか手慣れてる訳よ」

ゴーグル「こんなことで一々顔真っ赤にはしてられないですよ」

ゴーグル男が苛立ったように答える

彼は実際、怒っていた





21 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 09:59:26.78wDwdjSjS0 (14/51)

受付嬢に鼻の下を伸ばしたのは悪かったが、脚を踏まれるほどのことなのだろうか

一つ一つは小さなイライラだが、それが積もると怒りに変わっていく

だが彼はまだそれを抑えていた

朝の件で少しピリピリしているだけなんだ、と言い聞かせて

ゴーグル「じゃあ撮りますよ・・・」

フレンダ「う、うん」

電子音と共にフラッシュがたかれる

画面を見ると、若干引き攣った顔のフレンダと極普通の顔をしたゴーグル男が映っていた

ゴーグル「なんで引き攣ってるんですか・・・」

フレンダ「そ、そりゃ緊張しちゃう訳よ!」

ゴーグル「もしかして写真とか苦手なんですか?」

フレンダ「ち、違うけど・・・」

ゴーグル「なら気楽にやりましょうよ・・・」

もう一度、ゴーグル男がフレンダの肩を抱き寄せる





22 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 10:00:00.46wDwdjSjS0 (15/51)

フレンダ(よし・・・気楽に!)

再びフラッシュがたかれた

今度は二人とも自然な表情だった

ゴーグル「よし、これなら大丈夫ですね」

フレンダ「よかった・・・早く行く訳よ」

安心したような声を出してから、フレンダが店へ戻る

ゴーグル「・・・俺と写真撮るのって、そんなにイヤだったんですかね」

ため息をついた後、ゴーグル男はそのあとを追い掛けた


「はい、ではこちらの記念写真がプリントされた充電器も・・・」

ゴーグル「・・・え?」

プレゼントはゲコ太ストラップだけだと思っていた

だが渡されたものは、携帯の充電器だった

しかも二人の先程の写真がプリントされている

仲睦まじいですね、と言われそうな充電器だ





23 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 10:00:28.09wDwdjSjS0 (16/51)

フレンダ「な、何これ!?」

「お二人の記念写真ですので、どうぞ」

ニコニコと笑う受付嬢

だがその営業スマイルさえも、馬鹿にしているように見えてしまう

公開処刑だ

そんなものは公開処刑だ

ゴーグル「・・・ゲコ太ストラップも一応もらえるんですね」

「はい、当店限定となっております」

フレンダ「・・・じゃ、じゃあまた・・・」

「またのお越しをお待ちしております」

ペコリ、と頭を下げる受付嬢

だがそんなものは無視して、二人が駆け足で店の外に出る

持っている袋の中には充電器が入っている

それをアイテムのメンバーの前で使えるわけがない

肩を組んだ二人が映っているのだから





24 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 10:01:15.09wDwdjSjS0 (17/51)

フレンダ「どうしよう!?なんかいらないオマケがついてきちゃった!」

ゴーグル「はぁ・・・たしかにそうですね」

フレンダ「しかもこの充電器じゃなきゃハンディアンテナは充電出来ないみたいな訳よ!」

ゴーグル「・・・これ、カップルに対する嫌がらせが目的なんでしょうか」

フレンダ「カ、カップルじゃない訳よ!」

ゴーグル「他の契約者がですよ・・・」

こんな充電器を平気で使えるカップルなんているのか、とゴーグル男が鼻で笑う

ちなみにある不幸な少年と超エリートな少女は、そんな充電器を毎日ニコニコしながら使っている

そんなこと、ゴーグル男が知るわけはないが

ゴーグル「・・・お目当てのストラップは手に入りましたし・・・もういいっすか?」

フレンダ「お、お目当て?」

ゴーグル「このストラップが欲しかったんじゃないんすか?」

ゴーグル男がゲコ太ストラップを取り出す

あまり可愛いとは思えないそのキャラは、笑っていた





25 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 10:03:36.73wDwdjSjS0 (18/51)

フレンダ「ううん、私あんまりゲコ太には興味ないかな・・・」

ゴーグル「え・・・じゃあなんでわざわざこんなプランに契約したんですか」

フレンダ「!そ、それは・・・その・・・」

ゴーグル「まさか俺を連れ出すための言い訳だったとか?」

フレンダ「そ、そうだったらどうする!?」

ゴーグル「めんどくさい人っすね・・・」

フレンダ「冗談な訳よ!」

ゴーグル「あなたはやりそうですから・・・」

フレンダ「そ、そんなこと・・・」

ゴーグル「あ、いや・・・」

フレンダ「・・・べ、別にこのストラップが目的じゃなかったんだ」

ゴーグル「?じゃあなんで俺と?」

フレンダ「そ、それは・・・」

じーっとフレンダが一点を見つめる

顔がどんどん真っ赤になっていく





26 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 14:54:09.72wDwdjSjS0 (19/51)

ゴーグル「・・・あぁ、もしかして」

フレンダ「!!」

ゴーグル「この地下街を確認したかったんですか」

フレンダ「・・・はぁ?」

フレンダが素っ頓狂な声を上げる

ゴーグル「ほら、ここってこの前の事件でちょっと被害がありましたし」

フレンダ「・・・それを・・・どうして私が確認する訳よ」

ゴーグル「あれ、違うんですか」

フレンダ「・・・もういい、次行こう」

ゴーグル「あ、はい」

不機嫌になったフレンダの後ろを、ゴーグル男が追いかける

一体どうして不機嫌になったのかはわからない

ゴーグル(・・・じゃあなんでフレンダさんはここに来たんでしょうか)

首を捻るゴーグル男には、やはり女心は分からない





27 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 18:58:10.37wDwdjSjS0 (20/51)

幸せとは安っぽいものだなぁ、とゴーグル男は思った

そしてそれは万人に愛される言葉でもある

「幸せになりたい」と思えば、それは生きる力になる

恋人に「今幸せだよ」と言えば、喜んでもらえる

「幸せとは何か」を考えれば好奇心を満たせる

とにかく、誰もが幸せになりたいのだ

そして平等な幸せなんてあり得ない

誰もが全く同じ日常を送れば、それは「当たり前」であって「幸せ」ではないのだ

当たり前が幸せなんだ、という人もいるだろう

だが、それはいつしか幸せとは感じなくなる

当たり前を幸せと感じるには、ある程度の不幸が必要になる

それでは「平等」ではなく一人だけ「不幸」なのだ

結局、平等な幸せはあり得ない


フレンダ「美味しい!!!」

そして、ケーキの一つで幸せなんて簡単に作れるのだ





28 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 18:58:38.03wDwdjSjS0 (21/51)

ゴーグル「そんなに幸せなんですか?」

フレンダ「めちゃくちゃ美味しい訳よ!」

ショートケーキを食べながら、フレンダが笑う

ほっぺにクリームをつけているのが子供っぽい

だがそれが似合うのは、フレンダの容姿が子供っぽい可愛さを持っているからだ

ゴーグル「クリーム、ついてますよ」

フレンダ「あ、ありがと」

ゴーグル男がハンカチでクリームを拭き取る

フレンダ「アンタは食べなくていいの?」

ゴーグル「うーん・・・あんまり食べる気がしないっす」

フレンダ「はぁ・・・せっかくケーキ屋に来たんだから」

二人が今いるのはケーキ屋だ

今日はケーキバイキングがお得になっているらしく、学校をサボった女子学生がわんさか集まっている

もちろん教師に見つかったら大変だろう

ゴーグル「はぁ・・・女ってなんで甘い物が好きなんですかね」

フレンダ「男でも好きなんじゃないの?」





29 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 18:59:03.33wDwdjSjS0 (22/51)

ゴーグル「俺は甘い物はあんまり・・・なんか口に味が残るじゃないですか」

フレンダ「あぁ・・・ちょっと分かるかも」

ショートケーキのイチゴを頬張りながらフレンダが頷く

少し甘酸っぱいイチゴは、すぐに口の中で無くなった

フレンダ「うん、じゃあ次は・・・」

ゴーグル「い、今ショートケーキ食べたじゃないですか」

フレンダ「ケーキバイキングなんだけど」

ゴーグル「太りますよ・・・」

フレンダ「バイキングって何か知ってる!?」

ゴーグル「バイキングってアメリカじゃ通用しないんですよ」

フレンダ「外国人に何言ってる訳よ」

ゴーグル「それもそうですね」

フレンダ「とにかく!私は食べまくる訳よ!」

ゴーグル「・・・無理しないでくださいよ」

フレンダ「当然!!」

トレイを持ったフレンダが、再びケーキの吟味を始める





30 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 18:59:53.82wDwdjSjS0 (23/51)

ゴーグル(よくあんなに入りますよね・・・)

呆れつつも、そんな光景に微笑んでしまう

先ほどまでのイライラは消えていた

ゴーグル(・・・そうっすね、イライラしててもしょうがないっす)

伸びをしながら、ゴーグル男が苦笑する

すると、隣の席にいた女子学生二人の話が聞こえてきた

佐天「ねぇねぇ初春」

初春「・・・いいんですか?学校サボって・・・」

佐天「それはもういいって、それよりどうだったの!?例の爆破事件!!」

初春「だから犯人も捕まったんですよ」

佐天「でもさでもさ!!やっぱりあれって何か裏がありそうじゃん」

初春「ないですよ・・・ミステリードラマの見過ぎです」

一人は、頭に花畑を抱えた女子だ

若干、見た目が幼いのが特徴だろうか

しかしその小さな体には似合わず、先ほどからケーキをかなり食べている

甘いものは別腹、というのはよく聞く言い訳だがそれを見ていると、なんとなくウソではないとさえ思えてしまう





31 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:00:26.01wDwdjSjS0 (24/51)

一方、もう一人の女子はどちらかといえば大人っぽく見えるタイプだった

胸も相当大きい

だがその制服を見る限り、中学生のようだ

ゴーグル(・・・あっちのお花畑さんは風紀委員みたいですね)

話の流れからして、お花畑は風紀委員だ

こんな人でもなれるんだな、とゴーグル男は呆れる

彼は知らないが、初春の右に出るパソコン関係者はいないと言ってもいい

それだからこそ、彼女は風紀委員にいることができるのだ

ゴーグル(もう一人は中々美人ですね・・・)

その二人は、かなりモテそうな容姿をしていた

大人っぽい女性と、かわいらしい女の子といった感じだ

佐天「?あの、どうかしましたか?」

ゴーグル「え・・・?あぁ、いや・・・」

初春「?も、もしかして!!私達の学校の関係者とか!?」

佐天「な、なんだってー!!!」





32 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:00:52.28wDwdjSjS0 (25/51)

ゴーグル「違いますよ・・・あの、学校サボってケーキ食べるのって普通なんですか?」

思いのほかフレンドリーな女子らしく、初対面なのにも関わらず自然に話すことが出来た

だからどうというわけではないが

初春「ちっちっち!!甘いものの次に学校があるんですよ!!」

ゴーグル「・・・それ、学生が言うべき台詞ではないですよね」

佐天「でも、あなたも学校サボって来てるんじゃないんですか?」

ゴーグル「俺は学校行ってませんから」

佐天「も、もしかしてスキルアウト!?」

ゴーグル「なんでそうなるんですか・・・」

ゴーグル男が肩を落とす

むしろ、彼はスキルアウトなんか比べ物にならないほどの人間ではあるのだが

現在はそれも引退している

初春「でも珍しいですね・・・こんなところに男性が来るなんて」

ゴーグル「あぁ、違いますよ・・・」





33 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:01:19.13wDwdjSjS0 (26/51)

ゴーグル男が苦笑する

彼だって、好きでこんなところに来たわけではない

佐天「?」

ゴーグル「ある人の付き添いですよ」

初春「あ、もしかして彼女さんですか!?」

花畑の女が身を乗り出してくる

意外とそういう話が好きなのだろうか

ゴーグル「ただの友達ですよ・・・」

佐天「ふーん・・・でも、女の人なんですよね!?」

ゴーグル「そうっすよ?」

佐天「ふっふーん・・・こんな所に連れてくるってことは結構いい感じなんじゃないですか!?」

ゴーグル「いや・・・そうでもないっすよ」

無料提供のコーヒーを飲みながら、ゴーグル男が考える

フレンダは決して、そういう対象ではないだろう

たしかに仲は良いし、なぜか一緒に風呂に入ったこともある

でも決して、そういう関係ではないと思う





34 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:01:46.18wDwdjSjS0 (27/51)

ゴーグル(・・・うん、そうっすよね)

佐天「ふーん・・・そうなんだ」

ゴーグル「二人は中学生なんですか?」

初春「そうですよー」

佐天「私は佐天涙子」

初春「初春飾利です・・・んー!!美味しい!!」

ゴーグル「どうも・・・ゴーグルとでも呼んでください」

佐天「?変わった名前」

ゴーグル「いやぁ、孤児みたいなもんなんで通称ですよ」

佐天「へぇ・・・」

ゴーグル男が苦笑したとき、ガン!!と何か大きな音が後ろから聞こえた

見ると、フレンダが鬼のような形相でトレイをテーブルに置いているところだった

かなり勢い良くトレイを叩きつけたのだろう、その上に乗ったケーキが少しだけ崩れている

ゴーグル「あ、おかえりなさい・・・」

フレンダ「・・・初めまして、ゴーグルの唯一無二の相棒、フレンダな訳よ!!」





35 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:02:17.87wDwdjSjS0 (28/51)

佐天「あ、は・・・初めまして」

フレンダ「・・・」

フレンダが二人を睨みつける

初春「?」

佐天(あ、なるほどね・・・)

佐天がニヤニヤと笑う

佐天「フレンダさん、今日はゴーグルさんと二人で?」

フレンダ「そ、そうだけど」

佐天「いいなぁ・・・まるでカップルみたいですね!!」

フレンダ「!!」

佐天(よし!!これで初春もフォローして・・・)

初春「あはは、さっきゴーグルさんが自分で否定してたじゃないですかー」

佐天「初春ぅぅぅ!!!」

フレンダ「へぇ・・・否定、ねぇ・・・ほぉ・・・」





36 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:02:49.29wDwdjSjS0 (29/51)

ゴーグル「いや、だって違うじゃないですか」

フレンダ「このろくでなし!!」

ゴーグル「はぁ!?」

佐天「はぁ・・・初春、私達はこれからどうしよっか」

思惑が外れてしまい、一気に佐天のテンションが下がる

初春「あ、じゃあセブンスミストにでも行きませんか?」

佐天「そうだね・・・この時間ならもう学校も終わってるし!!」

初春「合法的に出かけられますね!!」

ゴーグル(学生って大変ですね・・・)

佐天「じゃあ・・・フレンダさん、頑張って」

小さな声で佐天が囁く

フレンダ「・・・サ、サンキュー」

佐天「私は佐天です、またいつか」

フレンダ「じゃあ、また」

佐天と初春が店から出て行く





37 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:03:21.81wDwdjSjS0 (30/51)

ゴーグル「・・・あ、あの・・・なんか怒ってます?」

フレンダ「・・・怒ってない訳よ」

フレンダがケーキを口に運ぶ

だが、やはり少しだけ怒っているように見える

ゴーグル「その・・・ごめんなさい」

フレンダ「?なんで謝る訳よ」

ゴーグル「今日はフレンダさんとの二人の時間っす、そりゃ他の人と話してていい気にはならないっすよね」

フレンダ「そ、そそそそそそういうわけじゃないから!!」

ゴーグル「?」

途端に、フレンダの顔が赤くなる

コロコロと表情が変わるものだな、とゴーグル男は驚く

フレンダ「・・・そ、その・・・ありがと」

ゴーグル「はい?何がですか?」

フレンダ「そういうところはたまに気づくんだ・・・」






38 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:03:58.31wDwdjSjS0 (31/51)

ゴーグル「いや・・・まぁ、人のことを考えるようにってよく言われたもので」

フレンダ「誰に?」

ゴーグル「垣根さんにっすよ」

フレンダ「ふーん・・・たしかに垣根はそういうのちゃんと考えられそうな訳よ」

ゴーグル「でも、なんでそれであそこまで不機嫌になったんすか?」

フレンダ「そ、それは・・・」

ゴーグル「いや・・・まぁいいんですけどね」

コーヒーを飲みながらゴーグルが苦笑する

それは無料提供のものだ

先ほどから、ゴーグル男は一つもケーキを食べていない

さすがに金の無駄だろうか

先払いなので、少しそれが気になってしまう

フレンダ「・・・ねぇ、食べないの?」

ゴーグル「うーん・・・食べる気がしないんですよね」





39 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:04:30.58wDwdjSjS0 (32/51)

フレンダ「一口も?」

ゴーグル「いや・・・でも、丸々一つなんて無理っす」

フレンダ「あ、じゃあこれならどう?」

フレンダが一口だけ、ケーキを差し出してくる

フレンダ「はい、あーん」

ゴーグル「」


ゴーグル(こ、こここここここれはどういうイベントなんすか!?)

ゴーグル男の思考回路が一気にヒートする

フレンダが少し顔を赤くして、ケーキを差し出しながら「あーん」なんて言ってきている

ゴーグル(もしかしてあれっすか、食べようとしたらあげないよん的なイベントっすか!!)

ゴーグル男の思考がいろいろな結果をシュミレーションする

もちろん、一番いいエンディングはそのままあーんしてもらえることだろう

だがそんな素敵イベントがゴーグル男に待っているとは思えない

思えないのだが、今のフレンダの好意がもしも本物だとしたらどうだろうか





40 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:04:58.36wDwdjSjS0 (33/51)

それをウソじゃないっすか、あっははと笑ってしまえば彼女を傷つけるだろう

ゴーグル(そ、そうっすよね!!俺が傷つく分にはいいですけど・・・)

ゴーグル男がゆっくりと口を開ける

ゴーグル(・・・フレンダさんの好意を無駄にしたら・・・)

パク、とケーキを口に含む

その瞬間、あぁフレンダの好意はウソではなかったんだ、と感動する

一口しか食べられないゴーグル男のことを考えて、わざわざ一口だけ食べさせてくれるなんて

実際、少しその好意のベクトルは違うのだが

フレンダはいわゆる、ほんの少し異性に対する好意を持っている

だがゴーグル男は、フレンダが自分に「友情」を向けていてくれているんだと勘違いしているのだ

ゴーグル「あ、美味しいっすね」

フレンダ「よ、よかった!」

ニコニコとフレンダが笑う

どうしてそんなに嬉しそうなのか、とゴーグル男が首を捻る





41 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:05:31.18wDwdjSjS0 (34/51)

ゴーグル「・・・なんかめちゃくちゃ嬉しそうですね?」

フレンダ「そ、そうかな?」

ゴーグル「うーん・・・なんか」

ゴーグル男がちらり、と他の席を見つめる

偶然か必然か、そこにはカップルがいた

ちょうど、彼女が彼氏に「あーん」なんていうことをしている

ゴーグル(へぇ・・・やっぱり今でもあーんってやるもんなんすね)

先ほど自分がされていたのは棚に上げて、彼は感心する

耳を澄ますとなにやら、その彼女が何かを言っている

どうも、あーんなんて恋人以外にはしたくない、と言っているようだ

ゴーグル(へぇ・・・あーんって、たしかに恋人にやるもんですよね)

ゴーグル男が心の中で頷く

そして、疑問に思う

ゴーグル(・・・?じゃあさっきのフレンダさんはなんなんですかね)





42 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:05:53.30wDwdjSjS0 (35/51)

恋人にしかしたくないような行動

それは、おそらく間違いないだろう

つまり、あーんというのは少なからず特別な感情を抱いているのではないか

ゴーグル「・・・あの、フレンダさん?」

フレンダ「ん?何?」

ゴーグル「なんであーんなんかしたんすか?」

フレンダ「!!そ、そりゃ・・・」

ゴーグル「・・・あぁ、いや・・・なんでもないっす」

ゴーグル男が頬杖をつく

フレンダ「・・・!」

その横顔が、なぜか男前に見えてしまう

フレンダがいきなり顔をブルブルと振り出す

ゴーグル「?どうかしたんすか?」

フレンダ「な、なんでもない!!」





43 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:09:43.97wDwdjSjS0 (36/51)

ゴーグル「で?そろそろ出ましょうよ」

フレンダ「えー・・・まだ食べたいのにぃ・・・」

ゴーグル「・・・もうおやつの時間を1時間以上過ぎたわけですよ」

ゴーグル男が時計を指差す

時刻は4時半

もう、これ以上食べれば夜食が入らなくなってしまう

ゴーグル男としては、フレンダにもしっかりと栄養を摂ってもらわなければならない

彼女が体調を崩したら、世話をするのは間違いなく自分だ

ゴーグル(なんとしてもそれは避けたい)

フレンダ「ぶー・・・ゴーグルのケチ」

ゴーグル「なんとでも言って下さい・・・」

フレンダ「人でなし!!デブ!!ハゲ!!」

ゴーグル「後ろ二つには明らかに当てはまらないっすよね!?」





44 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:14:22.36wDwdjSjS0 (37/51)

フレンダ「・・・まぁ・・・仕方ない訳よ」

ケーキを食べ終え、フレンダがトレイを片付ける

結局、ゴーグル男が食べたのはフレンダがくれた一口だけだった

かなり金の無駄だと言える

ゴーグル「・・・女性って、こういうところ好きなんですね・・・」

フレンダ「ん、だって甘いものが嫌いな女っていない訳よ」

ゴーグル「いや、いるでしょ絶対に」

フレンダ「それ、多分オカマ」

ゴーグル「甘いものが嫌いな女の人を敵に回しましたね」

フレンダ「ふん、世の中に媚は売りたくない訳よ」

ゴーグル「なんですかそれ・・・」

フレンダ「よーし!!で、これからどこ行くの?」

ゴーグル「そうっすね・・・なんかいい景色の所とか」

フレンダ「えぇ・・・」





45 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:19:16.73wDwdjSjS0 (38/51)

ゴーグル「なんでそんなにテンション低いんすか・・・」

店から出た二人が、適当にぶらつき始める

フレンダ「なんかゴーグルの口からいい景色、とか聞きたくない訳よ・・・」

ゴーグル「どういう意味ですか・・・」

フレンダ「世の中のいい景色がかわいそう」

ゴーグル「それひどいっすよね!?」

フレンダ「・・・で?どこがいい景色なの?」

ゴーグル「うーん・・・」

ゴーグル男が腕を組む

彼は、そんな場所なんて知っていない

暗部にいた頃はもちろんそんなこと、気にしていなかった

その後はすぐ死んだため、綺麗な場所を探す必要もなかった

ゴーグル「・・・聞いてみますかね」

フレンダ「聞くって誰に?」

ゴーグル「そういうのに一番詳しい人っすよ」





46 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:23:23.60wDwdjSjS0 (39/51)


ゴーグル「・・・あ、もしもし?」

ゴーグル男が電話を掛けたのは垣根だった

彼なら、綺麗な景色なんてゴマンと知っているだろう

何しろ彼は「メルヘン」が大好きなのだから

垣根『・・・ただいまお掛けになりました電話番号は』

ゴーグル「垣根さん、こんにちは」

垣根『ツッコめよせめて』

ゴーグル「・・・で?」

垣根『どれは俺の台詞なんだけどな』

ゴーグル「・・・綺麗な景色の場所とか知らないですか?」

垣根『はぁ?』

電話の向こうの垣根が、素っ頓狂な声を上げる

垣根『お前・・・カメラマンにでもなったのか』

ゴーグル「いえ、ちょっとフレンダさんと・・・」





47 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:32:43.05wDwdjSjS0 (40/51)

垣根『あーあー、フレンダのご機嫌取りか』

ゴーグル「ちょっと違いますけど・・・」

垣根『・・・で?綺麗な景色の場所が知りたい、と』

ゴーグル「そうっすよ」

垣根『7学区の鉄橋にでも行けよ』

ゴーグル「鉄橋?」

垣根『俺とか上条とかもお気に入りの場所なんだよ』

ゴーグル「へぇ・・・」

垣根『・・・まぁ頑張れ』

ゴーグル「はい、それじゃ」

ゴーグル男が通話を切る

それを見ているフレンダの目は冷たい

ゴーグル「?どうしたんすか?」

フレンダ「そういうのって・・・他人に聞くもの?」





48 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:40:51.22wDwdjSjS0 (41/51)

ゴーグル「いや・・・だってせっかくだしいい所に行きたいじゃないですか」

フレンダ「まぁそれは分かるけど・・・」

ゴーグル「7学区です、行きましょう」

ゴーグル男がくるりと向きを変える

目指すのはバス停だ

フレンダ「・・・うん、分かった」

ゴーグル「じゃ、急ぎましょう」



ゴーグル「・・・で、7学区のどこなのかを聞くのを忘れてましたよ」

フレンダ「バッカじゃないの・・・」

7学区のバス停で、フレンダが呆れたように呟く

ゴーグル男は先ほどから何度か、垣根に電話をしている

しかし、一向に通話が始まらないのだ

恐らく何か用事でもあるのだろうか

フレンダ「・・・道行く人に聞いてみる?」

ゴーグル「・・・どこに道行く人がいるんですか」

現在時刻は午後5時半

学生達は、ほとんどが寮に帰っている





49 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:46:36.47wDwdjSjS0 (42/51)

最近の学園都市は、ずいぶんと規制が緩やかになった

完全下校時刻も、今までより1時間も遅くされた

しかし、それでも大抵の学生は寮に帰ってそれぞれの生活を送っている

わざわざ外に遊びに行っても、大したことはないのだ

朝からずーっと遊べる休日なら話は別だが、学校が終わってから完全下校時刻までの2時間程度では、何も出来ない

そのためこの時間、歩いている学生はほとんどいない

スキルアウトも未だにいるため、一人で歩くのは相当な物好きだろう

フレンダ「・・・寒い」

太陽もそろそろ、完全に隠れようとしている

もしも一人だったらかなり不安になる状況だろう

隣にゴーグル男がいるのでなんともないが

ゴーグル「あ、これどうぞ」

フレンダ「?」





50 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:52:41.41wDwdjSjS0 (43/51)

ゴーグル男が自分の上着を差し出す

フレンダ「な、何?」

ゴーグル「何って・・・寒いんでしょ?」

フレンダ「で、でもアンタ・・・」

ゴーグル男は、上着の下にはTシャツ一枚だ

フレンダ「寒くない・・・?」

ゴーグル「いいっすよ、寒いのは慣れてます」

フレンダ「なんかいろんなものに慣れてる訳よ・・・」

ゴーグル「はいはい・・・」

ゴーグル男の手から上着を受け取り、フレンダがそれを羽織る

フレンダ「あったかい・・・」

ゴーグル「そりゃよかった・・・ほら、適当に探しましょう」

フレンダ「あ、うん」

ゴーグル男が適当に辺りを見回す

二人がいるのは平地だ

そのため、あまり見通しがいいとは言えない





51 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 19:57:24.41wDwdjSjS0 (44/51)

ゴーグル「・・・はぁ、見渡しても見つからないですね」

フレンダ「ねぇねぇ、この地図には載ってない?」

ゴーグル「ん?」

フレンダが指差しているのは、学区のマップだった

バス停や大きな店の前など、目立つ場所に設置されているものだ

二人がいるのはバス停なのだ

ゴーグル「えっと・・・あ、これじゃないですかね?」

フレンダ「うっわ、地図で見ても目立つ訳よ・・・」

ゴーグル「っていうか、なんでこんなただの鉄橋が思い出の場所なんですかね?」

フレンダ「ここで何かやったのかな?」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「・・・」

ゴーグル「すいません、なんでもないっす」

フレンダ「うん、私もなんでもない訳よ」

二人が地図に従って歩き出す






52 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 20:01:20.95wDwdjSjS0 (45/51)



ゴーグル「・・・こっちですね」

フレンダ「あ、見えた訳よ!!」

ゴーグル「ホントだ」

しばらく歩いて、二人が鉄橋を見つける

もう辺りは真っ暗だ

ゴーグル「ほら、急ぎましょう!!」

フレンダ「え、あ・・・」

ゴーグルに手を引かれるまま、フレンダがついていく

ゴーグル「早く早く!!」

フレンダ「ど、どうしてそんなに急ぐの?」

ゴーグル「いいじゃないっすか!!」

ゴーグル男が楽しそうに笑う

まだ、日は沈んでいない

あと少しで、それは地の果てに消えてしまう





53 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 20:11:41.19wDwdjSjS0 (46/51)

ゴーグル「もう少し・・・」

フレンダ「な、何が?」

鉄橋に登り、その中央へと向かう

そこから見えるのは、町並みや遠くにある緑だ

そして、その遥か向こうには沈みかけた太陽がある

フレンダ「あ、綺麗・・・」

ゴーグル「よかった・・・間に合いましたよ」

フレンダ「もしかして・・・これのために?」

ゴーグル「ここからなら綺麗だと思ったんで」

真っ赤に染まる空の果て

そして、少しだけその赤を跳ね返しているビル

フレンダ「幻想的・・・」

ゴーグル「あはは・・・自然と科学の作り出した絵画ってことっすね」

フレンダ「・・・うん」

突然、フレンダがゴーグル男の肩に頭を乗せる





54 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 20:30:22.50wDwdjSjS0 (47/51)

ゴーグル「ど、どうしたんすか?」

フレンダ「・・・いいじゃん、ちょっとくらい」

ゴーグル「は、はぁ・・・」

フレンダ「ねぇ、ゴーグル・・・」

ゴーグル「ん?なんすか?」

フレンダ「・・・あのね・・・」

フレンダが顔を真っ赤にしている

夕日はもう、沈んでいるのに

フレンダ「私・・・」


上条「美琴!!綺麗だったな!!」

美琴「うん!とっても綺麗だった!!」

上条「だよなぁ!!」


フレンダ「」

ゴーグル「あれ、あの二人・・・」





55 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 20:39:11.63wDwdjSjS0 (48/51)

上条「あれ?ゴーグルとフレンダだよな?」

美琴「あ、ホントだ」

ゴーグル「お久しぶりっすね・・・えっと、正月以来ですかね」

上条「そうだな・・・二人はなんでこんなところに?」

ゴーグル「ちょっと今日は二人で出掛けに・・・」

美琴「なになに!?デート!?」

ゴーグル「違いますよ・・・」

上条「あれ、なんかフレンダさん固まってないか?」

フレンダ「わ、わ・・・」

上条「わ?」

フレンダ「私の一世一代の大勝負がぁ!!こんなバカップルに破られた!!」

美琴「バカとは卑怯ね!!」

フレンダ「バカバカ!!!」

美琴「何よぉ!?」






56 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 20:50:47.58wDwdjSjS0 (49/51)

フレンダ「最低!!クソカップル!!」

美琴「いいわよ!!私と当麻の仲の良さを見せてあげる!!」

上条「こ、こら!!上条さんは平和的に・・・」

フレンダ「逃げてる訳よ!!」

ゴーグル「・・・あの、お二人はデートですか?」

上条「あぁ、ちょっとな」

美琴「ヒマな時はずーっとこんな感じだから」

フレンダ「へぇ・・・そう」

フレンダが美琴を睨みつける

あまり、彼女のことを気にいってはいないのかもしれない

ゴーグル「・・・この後二人はどうするんすか?」

上条「これから垣根の家だよ」

フレンダ「あ、それ楽しそう」

上条「二人も行くか?」

ゴーグル「あ、いや・・・」





57 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 21:01:56.72wDwdjSjS0 (50/51)

フレンダ「行く訳よ!!ついでにご飯ももらう訳よ!!」

ゴーグル「はぁ!?」

上条「お、それいいな」

美琴「いいわよ、じゃあ行きましょう」

フレンダ「ふん!!私のほうが多く食べる訳よ!!」

美琴「どうかしら!!」

上条「あぁ・・・くだらない戦いが始まる・・・」

ゴーグル「・・・垣根さんの家ですか・・・」

美琴「私は負けないからね!!」

フレンダ「私だって!!」

上条「・・・なんかよくわかんないけど・・・」


上条「ヤな予感がしますよ・・・」

ゴーグル「楽しそうっすね」





58 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/16(水) 21:06:40.17wDwdjSjS0 (51/51)

今日はここまで

いつの間にかゴーグル達もレギュラーになりつつある

もうやだ

今日はリーの2011年ゲストポーズ

そりゃ絞ってないですが、腕太いですね

これ、絞ってオリンピア出ればまだまだ活躍できるんじゃ?



ではおやすみなさい



59VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/16(水) 22:43:14.11A1dockwj0 (1/1)

マッスル



60VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海)2011/11/16(水) 22:57:23.29hTG1280AO (1/1)

>>59
次からでいいからsageとけよ

後>>1乙です


61VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/17(木) 00:27:11.79oaidHJUi0 (1/1)

マッスル



62VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/17(木) 15:04:45.95lAqtMqQfo (1/1)

よくこんなに大量に書けるな...
すごいわ


63 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:15:04.38kyykcQOg0 (1/47)




上条「お邪魔しまーす」

垣根「おぉよく・・・」

フレンダ「お邪魔する訳よ」

ゴーグル「どうも」

垣根「・・・お前達がなんで来てるんだよ」

垣根がしかめっつらになる

本気で嫌がっているのではないが、若干不思議に思っているのだ

美琴「いいじゃない、友達でしょ?」

垣根「てめぇ!俺から聞いた場所でフレンダとイチャイチャしたんじゃねぇのかよ!」

フレンダ「イ、イチャイチャなんかしてないから!」

ゴーグル「はぁ・・・とにかく上がっていいっすか?」

垣根「お前達は何しに来たんだ!上条はいいけどさ!」

美琴「だから、ご飯食べに来たんだって」

垣根「知らねぇよそんな事情!」

フレンダ「うわケチ臭い」





64 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:15:42.46kyykcQOg0 (2/47)

上条「お、おい・・・」

垣根「うっせぇ!大体お前を上げる義理がねぇんだよ!」

フレンダ「いいじゃん!いつもゴーグルと一緒にいてあげてる訳よ!」

ゴーグル「おかしいっすよそれ」

美琴「いつも一緒?」

美琴が首を捻る

たしかに少し引っ掛かる表現だ


フレンダ「あ、いや・・・」

上条「もしかして二人って・・・」

ゴーグル「あぁ、俺はアイテムの皆さんと暮らしてますから」

上条「なんだ・・・」

美琴「ちょっと面白いかなって思ったのにな・・・」

ゴーグル「いや・・・何がですか」

垣根「・・・まぁ仕方ないな、上がれ」





65 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:16:08.22kyykcQOg0 (3/47)

垣根がドアを思い切り開く

やはりフレンダを睨んだままだが

垣根「言っておくけど、俺達はちょっと学校のことで話があるんだからな」

ゴーグル「邪魔にならないようにしますから」

美琴「ゴーグルは礼儀正しいわね」

上条「そうだな・・・」

垣根「こいつはワシが育てた」

上条「分かった分かった・・・」

フレンダ「何!?私は礼儀正しくない訳!?」

ゴーグル「いや、フレンダさんはたしかに礼儀正しくないですよ」

フレンダ「ひっどい!」

フレンダがゴーグル男の肩をポカポカと叩く

ゴーグル「痛い痛い!」

垣根「・・・なぁ、そういえばお前・・・Tシャツ一枚で寒くないのかよ」

垣根がゴーグル男を指差す





66 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:16:40.08kyykcQOg0 (4/47)

美琴「ホントだ・・・こんな時期にTシャツ一枚?」

ゴーグル「違いますよ、上着はフレンダさんに貸してるんです」

垣根「はぁ?」



垣根がフレンダの着ている上着を見つめる

それはたしかに男物だ

しかも、ゴーグル男にピッタリのサイズに見える

上条「・・・優しいなお前」

垣根「さすが俺が育てた男だ」

ゴーグル「何を言ってるんですか・・・」

美琴「ゴーグルってなんかモテそうじゃない?」

ゴーグル「はい?」

上条「そうだな・・・顔もわりかしいいほうだし」

ゴーグル「平均ですよ・・・それに全然女っ気ないっす」

フレンダ「私は女っ気にカウントされてない訳?」

ゴーグル「なんか・・・違う気が」

垣根「喧嘩すんなよ・・・ったく」

垣根が呆れたようにため息をつく





67 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:17:16.22kyykcQOg0 (5/47)

普段の彼はむしろふざける側の人間だ

だがなぜか、ゴーグル男がいる時はあまりふざけられない

いい格好をしたいという訳ではないのだが

垣根「・・・心理定規も喜ぶぞ」

ゴーグル「あぁ・・・心理定規さんと同棲してるんでしたね」

垣根「羨ましいだろ」

ゴーグル「多少」

フレンダ「・・・」

上条「ま、まぁあれだな!垣根は最近どうだ!?」

垣根「・・・いや、同じ学校だしわざわざ聞くことか」

美琴「わ、私は知らないから気になるのよ!」

垣根「普通だ普通・・・」

リビングのドアノブを捻り、垣根が肩を竦める

垣根「今・・・ちょっと心理定規が集中してるとこだから」

上条「は?」





68 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:17:52.42kyykcQOg0 (6/47)

垣根「あんまり大声とか出さないでくれよ」

美琴「う、うん」

ゴーグル「分かりました・・・」

フレンダ「な、なんか緊張する訳よ」

一体、心理定規は何をしているのだろうか

彼女が集中するということは何か重要な作業なのだろう

ネイルを塗っているのか、化粧をしているのか

だがこんな遅い時間にそんなことをするだろうか

上条「何してるんだ?」

垣根「見れば分かるさ」

ドアを開け、一同がリビングに入る

そこでは、心理定規が机の前に座っていた

トランプタワーを作りながら

上条「・・・は?」

心理「・・・いらっしゃい」






69 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:18:18.26kyykcQOg0 (7/47)

言葉では歓迎しながらも、視線は一切動かない

彼女の細い指が一枚のトランプを掴んだ

そのトランプは、既に積み重ねられているタワーの上にゆっくりと置かれる

一瞬、タワー全体が揺れた

上条や美琴は、ゴクリと息を飲む

自分達の息でさえ、そのタワーに届くのではないかと思えてしまう

揺れたはずのタワーは、決して崩れることはない

静けさを取り戻したタワーに、また心理定規がトランプを乗せようとする

美琴「な、なんでそんなことしてるの?」

心理「分からないなら分からなくていいのよ」

上条(なんか怖い!)

ゴーグル「こ、こんばんは・・・」

心理「ゴーグル君も来てたの・・・いらっしゃい」

冷たい声で歓迎し、心理定規がトランプを掴む

トランプケースの中にはもうその一枚しかない

つまり、それを無事に乗せられたら成功なのだ





70 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:18:45.50kyykcQOg0 (8/47)

心理「・・・」

上条「な、なんかすごい・・・」

心理「黙ってなさい」

上条「はい」

一同が邪魔をしないように口をつぐむ

美琴(・・・な、なんか息をするのもまずい気になるわ・・・)

フレンダ(めちゃくちゃ驚かしたいけど・・・驚かしたら恐ろしいことになりそう・・・)

上条(こ、怖かった!めちゃくちゃ怖かった!)

垣根(なんでトランプタワーやってんだ)

ゴーグル(・・・めちゃくちゃすげぇっす)


心理「・・・最後よ、これで」

心理定規がトランプを上に乗せる

完璧な位置を計算し、そこに必要最低限の力を加えて乗せた

角度、重さ、摩擦力

全てを計算した一手

それはただのトランプタワーなどではない





71 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:19:29.82kyykcQOg0 (9/47)

そこには科学と数学の総力が注ぎ込まれている

もしもこれが崩れてしまえば、科学と数学という二つの大きな学問は52枚+ジョーカー2枚の前に敗れ去るのだ

心理定規一人の問題ではない

薄っぺらい紙に、人類がひれ伏すか否かの戦いなのだ

なんでこんなことを彼女がしているのか

上条も美琴も、垣根も知らない

実は心理定規も知らない

心理「いくわよ」

ゆっくりと、最後の一枚が頂上に置かれ、そして

上条「はっくしょん!」

悪魔の一手が、トランプタワーを打ち砕いた

皆さんは神の一撃という言葉をご存知だろうか

宇宙はビッグバンによって生まれたとされる

宇宙が生まれる前の空間は全くの無であり、そこには何の法則もなかった

だがそれでは矛盾が生じる

ビッグバンはなぜ起きたのか





72 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:20:06.57kyykcQOg0 (10/47)

何かしらの力が加わらなければ、ビッグバンなど起きないはずなのだ

しかしビッグバン以前の空間は無なのだ

つまり、何かしらの存在がそこに力を加えなければならないのだ

それが何であるかは解明されていない

もしかしたらそれは、本当に神様の奇跡かもしれない

かくしてこの現象は「神の一撃」とされている

今の心理定規も、そんな「神の一撃」によって衝撃を覚えていた

そこにはミスなどなかった

しっかりと計算された全ての条件

確実に、数式の中では成立していた答え

そう、間違いなど起きるはずはなかったのだ

上条のくしゃみというイレギュラーが起きなければ

だがそれは起きたのだ

もう、紛れもない事実なのだ

その一撃によって彼女が積み上げた53枚は床に散らばった





73 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:20:59.89kyykcQOg0 (11/47)

彼女の手には何もない

最後に乗せた一枚だけは、綺麗に机の上に留まっていた

固まっていた

心理定規が

そして、部屋の空気が

垣根「心理定規・・・?」

上条「ご、ごめん・・・なさい」

フレンダ「お、惜しかった訳よ!」

ゴーグル「ちょっと、フレンダさん!」

フレンダ「あ、しまった・・・」

美琴「ほ、ほら!当麻にも悪気は・・・」

心理「・・・崩れちゃった」

心理定規の一言で、部屋の気温が5度は下がった

大袈裟な表現ではない

エアコンが急激な気温変化に、急に音を立てて動き出す





74 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:21:38.44kyykcQOg0 (12/47)

上条「わ、悪かった・・・」

ゴーグル「ぶち壊しっすね・・・」

垣根「さすが幻想殺しだな・・・」

心理「・・・私が・・・頑張って積み上げたトランプタワーが・・・」

美琴「う・・・」

怒号が飛んで来る

それか、静か過ぎる怒りが上条の胃をキリキリとさせる

そう思っていた

心理「・・・崩れちゃった」

心理定規の目元に、ジワリと涙が滲む

上条「・・・はい?」

フレンダ「な、泣いてる!?」

心理「せっかく・・・垣根のために頑張ったのに・・・」

垣根「俺のためだったのかそれ!?」

心理「昨日・・・テレビでトランプタワー見て・・・すっげぇって言ってたから・・・」





75 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:22:09.00kyykcQOg0 (13/47)

垣根「それだけのために・・・お前・・・」

心理「なのに・・・崩れちゃった」

心理定規の小さな肩が震える

上条「ご、ごめん!」

美琴「ほら・・・その、やり直せば・・・」

心理「・・・やっと出来たのに・・・」

垣根「心理定規!俺は幸せなんだよ!お前がそこまで俺を思ってくれててさ!」

心理「・・・ホント?」

涙目のまま、心理定規が垣根を見つめる

上条もゴーグル男も、ついその心理定規に見とれてしまう

まるで映画から抜け出してきたような美しさだ

上目遣いってすごい、と二人は感動する

美琴「・・・当麻」

上条「はひぃ!?すいませんでした心理さん!」

心理「・・・いいわよ、不可抗力だから」






76 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:22:37.14kyykcQOg0 (14/47)

涙を拭い、心理定規がそっぽを向く

フレンダ「でも・・・トランプタワーなんかわざわざやるなんて変わってる訳よ」

心理「楽しそうじゃない」

ゴーグル「は、はぁ」

たまに心理定規はこういう不思議な行動をすることがある

それを周りは微笑ましく見守ることが多かった

心理「それで?ゴーグル君は分かるけどフレンダはどうして?」

フレンダ「ゴーグルと出掛けてて、そこで・・・」

上条「俺達と会ったからついでにってさ」

心理「・・・つまり、ゴーグル君とデートしてたの?」

フレンダ「!だから違うんだって!」

美琴「こうやってずっと否定してるのよ」

フレンダ「だって違う・・・」

上条「あれ、その袋ってなんだ?」

上条がフレンダとゴーグル男が持っている袋を指差す






77 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:23:26.42kyykcQOg0 (15/47)

それは、朝に携帯電話会社から持ってきた袋だ

フレンダ「こ、これは・・・!」

ゴーグル「あぁ・・・知ってないっすか?ハンディアンテナキャンペーン」

美琴「知ってるわよ、私と当麻も入ってるし」

上条「懐かしいな・・・たしか付き合う前だったよな?」

美琴「そうそう」

垣根「へぇ・・・なんだそりゃ?」

上条「なんでもそれぞれの携帯を小さい電波塔代わりにすることで電波を届きやすくするんだって」

垣根「うっわ、果てしなく無駄だな」

心理「でもそれって料金も安くなるんじゃなかった?」

ゴーグル「そうっすよ、ただ男女ペア限定なんで俺とフレンダさんが・・・」

上条「あ、じゃあ充電器も持ってるんだろ!?」

垣根「充電器も何かあるのか?」

美琴「そのキャンペーンさ、ペアって証拠にツーショット撮らされるのよ」

ゴーグル「よ、よく覚えてますね」






78 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:24:14.28kyykcQOg0 (16/47)

上条「そのツーショットをそのまま写真立てみたいにした充電器も貰えるんだよ」

心理「あら、素敵じゃない」

美琴「今からすればいい思い出よね・・・」

上条「あのキャンペーンでもらったゲコ太ストラップ、まだ使ってるもんな」

ゴーグル「俺も貰いましたよ」

ゴーグル男が袋からゲコ太ストラップを取り出す

彼には魅力の分からない物だ

美琴「!嘘、私たちの時とデザインが違うんだ!」

ゴーグル「え?あぁ、そうなんすか・・・」

美琴「可愛い!」

ゴーグル「・・・もしかして御坂さんってゲコ太好きなんですか?」

上条「好きなんてもんじゃない・・・フリークに近いかな」

美琴「だって可愛いじゃない!」

ゴーグル「か、可愛い?」

ゴーグル男がもう一度ゲコ太ストラップを見つめる

可愛くない






79 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:25:07.27kyykcQOg0 (17/47)

少なくとも彼の感性からすればそれは微妙な類に入る

ゴーグル「・・・可愛い、ですか?」

美琴「可愛いじゃない!」

フレンダ「ふん、悪趣味ー!」

美琴「何がよ!?人形爆発させるアンタよりマシでしょ!」

フレンダ「な、何よ!?」

垣根「おいおい、喧嘩は・・・」

ゴーグル「じゃあこれあげますよ」

美琴「え?」

フレンダ「え?」

ゴーグル男がゲコ太ストラップを差し出す

彼には分からないが、美琴は欲しがっているのだ

心理「あら優しいわね」

ゴーグル「いえ・・・俺には必要ないですから」

美琴「で、でも・・・」





80 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:25:59.98kyykcQOg0 (18/47)

フレンダ「・・・貰えばいいじゃん」

美琴「・・・」

美琴がじっとゲコ太ストラップを見つめる

それは恐らく非売品なのだろう

美琴が持っている中に、そんなデザインの物はない

フレンダが持っているのは、どうやらゴーグル男のとお揃いらしい

上条と美琴の時もそうだったが、紐の色以外はペアで同じ物なのだ

つまり、それはフレンダとお揃いの品なのだ

ゴーグル「?どうしたんすか?」

美琴「・・・ううん、いいわ」

上条「いいのか?」

美琴「それはアンタとフレンダの物じゃない」

フレンダ「!」

ゴーグル「でも・・・」

美琴「明日店に押しかけて貰ってくるから!」





81 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:26:39.96kyykcQOg0 (19/47)

ゴーグル「そんなことするくらいならこれ・・・」

美琴「とにかく!それはアンタが持ってなさい!」

ゴーグル「は、はい」

あまり腑に落ちないが、渋々ポケットにそれをしまう

垣根「はぁ・・・じゃあ晩飯食いながら話しますか」

心理「もう出来てるわよ」

上条「今日はなんなんだ?」

心理「カレーよ」

美琴「美味しい匂いがするわね」

ゴーグル「あ、ホントっすね」

先程まで、心理定規のトランプタワーを邪魔しないように息を潜めていたので分からなかった

部屋にはいい匂いが漂っている

垣根「さて・・・注いでくるな」

心理「お願い」

上条「じゃあ俺と心理さんで先に話すか」





82 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:27:17.81kyykcQOg0 (20/47)

上条が劇の台本を取り出す

ゴーグル「なんすかそれ」

上条「今度学校で劇やるんだ」

フレンダ「へぇ・・・」

美琴「今日はそれの話し合いなのよ」

ゴーグル「御坂さんって皆さんと違う学校っすよね?」

美琴「ちょっと混じるだけよ」

美琴が上条の隣に座る

上条「えっと・・・垣根が桃太郎・・・」

ゴーグル「桃太郎!?」

ゴーグル男が吹き出す

心理「あら、おかしいかしら?」

ゴーグル「ははは!そりゃいいっすね!」

フレンダ「め、めちゃくちゃ笑ってる訳よ」

ゴーグル「桃を真っ二つに切って中から垣根さんですか!怖い怖い!」

床を叩きながらゴーグル男が笑う





83 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:27:53.17kyykcQOg0 (21/47)

どうやらツボに入ったらしい

上条「ちなみに俺は鬼なんだ・・・」

ゴーグル「あっはは!垣根さんと交代したほうがいいっすよそりゃ!」

上条「だよな・・・俺もそう思う」

ゴーグル「明らかに桃太郎が上じゃないっすか!オーバーキルっす!」

美琴「当麻だって強いもん!」

心理「あら、垣根には敵わないんじゃない?」

ゴーグル「は、はは・・・垣根さんがきびだんご持って旅するんすか・・・」

涙を拭いながらゴーグル男が身を起こす

垣根「うるせぇな・・・いいだろ」

全員のカレーをお盆に乗せた垣根が帰ってくる

ゴーグル「いやいや・・・ってワインもあるんすか」

垣根「言っておくけど御坂は飲むなよ」

美琴「わ、分かってるわよ!」

上条「お前がいつも飲ませるんじゃないか・・・」





84 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:28:19.42kyykcQOg0 (22/47)

垣根「飲ませねぇよ」

グラスを置き、垣根も台本を手に取る

垣根「いつだったっけ?」

上条「一週間ないんだよ、もう」

垣根「一方通行からの許可は下りたぜ」

上条「マジか!よかった・・・」

フレンダ「?一方通行にも手伝ってもらうの?」

垣根「あぁ・・・打ち止め達が見に来るんだってさ」

上条「配役は残念だけどな」

ゴーグル「一方通行は何役なんですか?」

垣根「お婆さん」

ゴーグル「あ、あれがお婆さん・・・」

プルプル肩を震わせながら、ゴーグル男がグラスにワインを注ぐ

心理「よく怒らなかったわね」

垣根「相方だからな」





85 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:29:02.15kyykcQOg0 (23/47)

心理「相方?」

垣根「それに、番外個体が爆笑したから許してくれた」

上条「単純だよな一方通行・・・」

美琴「たまに心配になるわよ・・・」

ゴーグル「・・・あ、このワイン美味いっす」

垣根「だろ?」

フレンダ「私も飲みたい訳よ」

ゴーグル「?フレンダさんって飲めるんですか」

フレンダ「わかんない!」

心理「飲んでみたら?意外といけるかもよ」

フレンダ「よーし!」

美琴「・・・ワイン・・・」

上条「お前は常盤台の模範的生徒だ!思い出せ!」

美琴「世間体なんか気にしないで!」

上条「法律の問題だ!」






86 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:29:38.76kyykcQOg0 (24/47)

垣根「気にするな、お前らの目の前にいる人間達は元人殺しだし」

上条「おかしいよな!?大で小を隠すな!」

フレンダ「ぷはーっ」

上条「もう飲んでますよ!」

美琴「私も飲む!」

上条「ダメだからな!」

垣根「いいからいいから・・・で、一方通行の許可はあるから・・・」

上条「スルーしないで!」

心理「はい、美琴」

美琴「ありがと!」

上条「法律がぁぁぁ!」

フレンダ「・・・ねぇ、ゴーグルぅ・・・」

フレンダがゴーグル男に寄り添う

ゴーグル「なんすか?」

フレンダ「・・・なんか、酔っちゃった・・・」






87 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:30:13.82kyykcQOg0 (25/47)

ゴーグル「はい?」

垣根「うわぁ、下戸だこいつも」

心理「ダメだったわね」

フレンダ「・・・ねぇ、私のこと好き・・・?」

ゴーグル「なんだこのめんどくさいパターン!?」

上条「・・・なんか酔った美琴と似てる」

美琴「にゃはー・・・当麻ぁ」

上条「あ、こっちも酔って・・・ってお前かなり飲んだな!」

美琴「えへへ//」

上条「褒めてないからなこれは!」

垣根「おいおい、常盤台のお嬢様がまさかの法律違反か」

上条「お前が奨めたんだったよな!?」

心理「あなたが止めないのが悪いのよ」

上条「俺!?」

フレンダ「・・・ゴーグル、なんか熱い・・・」

ゴーグル「・・・フレンダさん、いいから寝てください」






88 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:31:03.10kyykcQOg0 (26/47)

フレンダ「ア、アンタと寝るの!?」

ゴーグル「あぁダメだこの人・・・」

心理「酔うと素直になっちゃうタイプかしら」

ゴーグル「フレンダさんっていつも頭の中ピンクなんですか!?」

心理(ゴーグル君も鈍感ね)

垣根「で・・・ここでまず犬に出会う」

美琴「えー、そこはゴジラがいいよ」

上条「美琴!お前は黙って・・・」

美琴「・・・」

美琴の目元に涙が浮かぶ

上条「ぐわぁ!いやいや!面白いんだけどちょっと違うんじゃないかなぁ!」

美琴「つまらないんだ・・・」

上条「いやいや!面白いですよ!?」

垣根「ゴジラはねーよ」

上条「フォローしろよ!」






89 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:31:35.06kyykcQOg0 (27/47)

フレンダ「にゃっはっは!ゴジラだってさゴーグル!」

ゴーグル「こ、こら・・・」

美琴「・・・面白くないんだ・・・」

上条「面白いって!でもそしたら鬼の俺がすぐ負けちゃうからさ!」

美琴「当麻がすぐに負けるのはイヤ!」

上条「だろ!?」

美琴「誰よゴジラなんて言い出したの!?」

上条「お前だ!」

心理「・・・それで?桃太郎を通してどんなメッセージを伝えたいのよ」

ゴーグル「あぁ、メッセージも持たせるんすね」

垣根「時間って大切だよ、とか」

ゴーグル「それ浦島太郎っすよ」

垣根「他人じゃなくて自分を見ろ、とか」

ゴーグル「ウサギと亀っすね」

垣根「堅実なヤツが生き残る、とか」






90 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:32:27.62kyykcQOg0 (28/47)

ゴーグル「三匹の子豚っすね」

垣根「人間だもの」

ゴーグル「みつをっす」

フレンダ「ねぇねぇ、なんで桃太郎なの?」

心理「誰もが簡単にイメージできるじゃない」

上条「しかも、役もそこまで多すぎないし」

垣根「少ないわけでもなくてちょうどいいからな」

美琴「でもさ、桃太郎って垣根なんでしょ?」

垣根「あぁ」

美琴「なんだかかなりチートだよね」

垣根「違うんだよ・・・人間ってのは仲間がいてこそ本当に強くなれる、それを伝えるんだ」

ゴーグル「中々いいテーマじゃないっすか」

垣根「だろ?」

上条「・・・はぁ、俺は最後には負けるからなぁ・・・」

心理「何かカッコイイ捨て台詞でも考えてたら?」






91 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:33:07.11kyykcQOg0 (29/47)

上条「そうだな・・・」

美琴「上条死すとも自由は・・・」

上条「おかしいからな・・・」

垣根「まぁ話の大筋は変えずにな」

珍しく垣根がまともに話題を進めていく

上条「・・・なんだか今日は大人しいんだな」

心理「あら、家ではいつもこんな感じだって言ってるじゃない」

ゴーグル「というか・・・こっちの垣根さんが俺にとっては普通ですね」

上条「そうなのか・・・」

垣根「どっちも普通なんだよ」

台本を読み返し、垣根が眉をひそめる

体験入学でやって来た学生が喜んでくれなければならない

なんとしてでも拍手の渦を巻き起こしたいのだから

美琴「ふにゃあ・・・当麻ぁ」

上条「こら・・・今は話し合いしてるんだから」

美琴「・・・当麻、私のこと嫌いなの?」






92 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:34:02.76kyykcQOg0 (30/47)

上条「大好きだけど今は人前だから!」

フレンダ「・・・」

美琴「えー・・・私は人前でもいいんだよ?」

上条「ダ、ダメだから!」

心理「甘える美琴も可愛いわね」

ワインを飲みながら、心理定規が笑う

上条「甘えるのは可愛いけど・・・たまにしつこいんだよ」

美琴「!?」

上条「な、なんでそんなに驚いたようなリアクションしてるんだよ!?」

美琴「しつこいの!?」

上条「気づいてなかったのか!」

垣根「・・・桃太郎をチョイスしたのがそもそも間違いだったか?いやだが・・・」

フレンダ「ねぇ、ゴーグル・・・」

ゴーグル「なんすか」

フレンダ「・・・私のこと、好き?」

ゴーグル「人並みには」






93 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:35:02.17kyykcQOg0 (31/47)

フレンダ「もーっと分かりやすく言ってほしい訳よ!」

フレンダがゴーグル男の腕を抓る

ゴーグル「痛い痛い!」

心理「あらあら、仲良しじゃない」

ゴーグル「笑ってないで助けて下さいよ!」

心理「助ける?どうして?」

ゴーグル「俺はめちゃくちゃ困ってますから!」

垣根「スーパーピンチクラッシャーが助けてくれるって」

ゴーグル「ないっすから!」

フレンダ「ねぇ!」

ゴーグル「あぁもう!フレンダさんが俺に対するのと同じくらいじゃないですか!」

フレンダ「//」

ゴーグル「なんでそこで赤くなるんすか!なんか怖いです!」

美琴「当麻の馬鹿・・・しつこくないもん」

上条「いやいや!普段はめちゃくちゃ可愛いからな!?」

心理「ふふ・・・これは中々面白い空間ね」






94 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:35:44.55kyykcQOg0 (32/47)

垣根「だー・・・なんできびだんご食べたら力が強くなるんだよ、スッポンの血でも入ってるのか」

上条「垣根!ワイン持ってきたのはお前だからな!お前が収拾つけろ!」

垣根「うるせぇな!今は劇に集中したいんだよ!」

上条「だったらなんでワイン持ってきたの!?」

垣根「・・・そうだな、やっぱりギャグも入れていかないと・・・」

上条「聞いちゃいねぇ!」

美琴「当麻・・・ね、当麻・・・したい」

上条「何を!?」

フレンダ「にゃっはっは!フレンダ様が来たからにはもう安心な訳よ!」

ゴーグル(静かに飲みたかった・・・)

上条「おい垣根!どうすればいいんだよこの状況!?」

垣根「お前らちゃんとカレーも食べてくれよな」

心理「そうよ、さすがに余るとキツイんだから」

上条「聞けよ!あとそんなところで生活感を醸し出すな!」

美琴「んっ・・・当麻・・・」

上条「うわぁ!垣根!寝室とゴムを借りてもいいですか!?」






95 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:36:29.18kyykcQOg0 (33/47)

垣根「てめぇ!今は劇の話し合いだって言ってるんだよ!」

上条「それどころじゃないんだよ!」

心理「はぁ・・・近所迷惑ね」

上条「心理さん!アンタ最近ボケになってきてないか!?」

ゴーグル「上条さんは元気っすね」

上条「元気じゃなけりゃツッコミなんて・・・」

垣根「あぁもう!お前らうるせぇんだよ!」

垣根が足を机に叩きつける

バン!という大きな音に、一同が静まり返る

美琴「ビ、ビックリ・・・」

垣根「酒ばっか飲みやがって・・・」

上条「お、お前が持ってきたんだよな?」

垣根「こっちは真面目に頭働かせてんだよ」

フレンダ「だ、だけど・・・」

垣根「騒ぎたきゃ動物園にでも行けよ」

垣根が台本を読み直す





96 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:37:12.98kyykcQOg0 (34/47)

上条「な、なんかいつになく真面目だな・・・」

垣根「俺が主人公なんだ・・・そりゃ真面目にもなるさ」

上条「やっぱりお前不真面目だろ!」

ゴーグル「でも劇なんて・・・」

垣根「何事にも全力で取り掛かるのが男なんだよ」

心理「違うと全力でツッコみたいわね」

垣根「上手くないからな」

美琴「・・・だって、当麻は負けちゃうんでしょ?」

垣根「鬼が負けないでどうする」

ゴーグル「そこは変えないんですね」

垣根「てか俺が負けてどうする」

フレンダ「なんていう自己中・・・」

垣根「・・・お前ら、まだ起きてられるか」

上条「だ、大丈夫だけど」

美琴「どうかしたの?」

垣根「高いクオリティーのものを作るには時間が必要なんだよ・・・」

上条「ま、まさか・・・」


垣根「今日は徹夜でシナリオ考えるんだからなぁ!」

一同「不幸だぁぁ!」






97 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:38:00.62kyykcQOg0 (35/47)


とある学校の体験入学



上条「・・・体験入学ってこんなに人が集まるもんだったか?」

体験入学一日目

上条の通う学校の前には長蛇の列が出来ていた

何か特別な催し物がある時の遊園地か、と思わせるほどの賑やかさだ

ちなみに、体験入学は一度、去年の10月辺りにやっている

その時はほとんど人は来なかった

上条の通う学校なんてその程度の人気のはずなのだ

土御門「にゃー、垣根万々歳ってことだぜぃ」

青ピ「校長とかは大喜びやろうなぁ」

吹寄「全くよね」

姫神「・・・でも。正直私のような地味な女にはキツイ」

土御門「更に埋もれるからにゃー」

垣根「おー、集まってる集まってる」

上条「おっす」

垣根と心理定規が教室に入ってくる






98 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:38:31.84kyykcQOg0 (36/47)

よくもまぁあんな状態の正門から入ってこれたものだ、と感心する

上条「混んでなかったか?」

垣根「空に渋滞はありません」

上条「飛んできたのかよお前は!」

心理「楽しい朝だったわよ」

上条「・・・ま、まぁいいや」

クラス全員が窓際に詰め寄っている

正門に並ぶ人だかりを見つめているのだ

青ピ「あっはぁ!可愛い子がたくさんおるでぇ!」

土御門「にゃー、垣根が目当てなんだから女子率はすげぇな」

吹寄「はぁ・・・やましい気持ちを抱えて体験入学ね・・・」

姫神「・・・埋もれちゃう」

上条「まぁまぁ・・・頑張っていこうぜ」

垣根「劇は明日なんだしよ」

土御門「あー!緊張するぜよ!」






99 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:39:02.55kyykcQOg0 (37/47)

青ピ「ホンマやな・・・」

垣根「緊張するな、お客さんが全部大統領だと思ってみろ」

上条「むしろ逆効果だ!」

垣根「Yes we can」

上条「出来ないから!」

姫神「・・・今日は普通の授業風景を見せるだけ」

吹寄「・・・みんな真面目にやりなさいよ」

土御門「分かってますたい」

青ピ「でもあんまり堅苦しいのもどうなんやろ?」

上条「いいんだよそれくらいが・・・にしてもホント多いな」

垣根「学校も特別に欠席を許可してるみたいだぜ?」

心理「超能力者に接する機会なんだから、当たり前よね」

上条「・・・なんだか格差を感じるな」

吹寄「・・・垣根はいつも超能力者って感じがしないものね」

土御門「にゃー、ただの馬鹿だぜぃ」






100 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:39:45.46kyykcQOg0 (38/47)

青ピ「自然体やからね」

姫神「そんなところが素敵なんだと思う」

垣根「土御門、あとで屋上な・・・姫神はあとで保健室だ」

心理「何をするつもりよ」

土御門「さーて・・・そろそろ授業の時間だにゃー」

垣根「めんどくせぇ・・・」

チャイムが鳴り響く

それを聞いた学生達が、まるで訓練でもしていたかのように綺麗に着席する

普段なら決してこんなことはないのだが、今日ばかりは仕方ない

小萌「皆さんおはようございまーす」

青ピ「あっはぁ!おはようございます小萌センセ!」

垣根「・・・朝からそんな甘ったるい声聞かされるとやる気無くすな」

小萌「ひどいのですよ垣根ちゃん」

垣根「・・・はぁ、これが教師だって知らない連中も来るんだぜ?」






101 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:40:12.51kyykcQOg0 (39/47)

吹寄「学校が子供を誘拐してるみたいね」

青ピ「監禁されるロリ!?」

上条「あぁもう!話が進まないから先生どうぞ!」

小萌「か、上条ちゃんがいつになく真面目なのですよ!」

上条「こっちだってさすがにこの雰囲気の中じゃふざけられないんだよ!」

正門の前の列は、更に長さを増している

ここまで来ると、まるでアイドルのコンサート会場のようだ

上条「あれだけの数の女子学生が、恐らくこの教室目掛けてまっしぐらだ!」

小萌「すごいことなのですよ!」

上条「すごいとかじゃない!なんでそんなマイペース・・・」

心理「あら、慌てたところで頭が良くなるわけじゃないわよ?」

垣根「馬鹿は馬鹿らしく馬鹿やってりゃいいんだ」

上条「馬鹿馬鹿言うな!大体なんでみんなは頷いてるんだ!」

姫神「上条君。あなた疲れてるのよ」

上条「ここでそれを!?」






102 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:40:58.95kyykcQOg0 (40/47)

土御門「にゃー、慌てなくてもなるようになるって、カミやん」

上条「マジかよ!?」

小萌「とち狂った上条ちゃんはほっといて出席を取りますよー」

上条「とち狂った!?」

小萌「青髪ちゃん」

青ピ「はいはーい!」

上条「もうダメだこのクラス!」

上条が頭を抱え、机に突っ伏す

長蛇の列は、正門に立っている整理員を押しのけ、無理矢理学校に入ってきたようだ

もう、賽は投げられたのだ

ルビコン川が三途の川に思われる

上条「あぁもう!」


上条「不幸すぎんだろ!」

一同「うるせぇ上条!」






103 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:41:25.78kyykcQOg0 (41/47)




美琴「・・・なんでアンタも来たのよ」

黒子「あら、わたくしも超能力者の授業風景を見てみたかったんですの」

美琴「本音は?」

黒子「今日の授業はつまらないので、抜け出すいい口実に・・・」

美琴「やっぱりね・・・」

常盤台中学の制服を着た二人は、列の波から離れた場所にいた

どうやら正門が開いたらしく、たくさんの学生が猪のように校内に突進していく

黒子「まぁまぁ、野蛮ですこと」

美琴「仕方ないんじゃない?超能力者なんて生で話せる機会、普通はないんだから」

黒子「ですが・・・あまりにも節操がありませんわ」

美琴「同感よ・・・」

美琴が大きくため息をつく

彼女がここに来たのは、上条の傍にいるためだ

超能力者の授業風景なんて彼女はよく知っている

ゲコ太をノートに書きながら適当に話を聞く、そんなものなのだ





104 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:41:52.52kyykcQOg0 (42/47)

黒子「・・・あのほとんどが一つの教室目当てですのね」

美琴「怖いわよね・・・床とか抜けたりして」

黒子「・・・有り得ないとは言い切れませんの」

美琴「とりあえず私達も行きましょう」

黒子「気が進みませんが・・・」

美琴「私もよ・・・」

初春「あれ、御坂さんと白井さんじゃないですか!」

黒子「あら?初春?」

美琴「久しぶり・・・佐天さんもいるんだ」

佐天「いやぁ!超能力者の授業風景が見られるっていうから来たんです!」

美琴「や、やっぱり」

佐天「でもすごい人数ですね・・・」

黒子「ここの生徒より明らかに多いですの」

初春「人口密度がすごそうですね・・・」

佐天「そういえば、なんで二人はここに?」






105 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:43:09.96kyykcQOg0 (43/47)

黒子「学校を抜け出す口実ですの」

美琴「当麻に会うため」

初春「・・・二人とも、普通とは違う理由なんですね」

佐天「さすが・・・」

黒子「・・・大体、垣根さんの普段の行動など見慣れていますの」

美琴「今更あれから学ぶことなんてないわよ・・・」

佐天「そっか!二人は垣根さんと友達なんだっけ」

美琴「そうそう・・・でも佐天さんも話したことくらいはあるんじゃない?」

佐天「ありますけど・・・でも優しい人ってイメージしかなくて」

美琴「優しい・・・ねぇ」

黒子「間違いとは言いませんが・・・」

初春「優しくないです!!怖い人です!!」

佐天「そうかな?」

美琴「・・・とにかく、二人が期待しているような授業態度じゃないと思うわよ」

黒子「そうですのよ」

佐天「まぁまぁ、それでもやっぱりこの高校って面白そうじゃないですか」

初春「私達の学力でも十分行けそうですからね」

美琴「あぁ、なるほどね・・・」






106 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 17:48:48.97kyykcQOg0 (44/47)

黒子「はぁ・・・では行きましょうか」

初春「この人数だと、整理券でも配られるんですかね」

美琴「そうなるんじゃない?」

佐天「・・・みんな垣根さんのクラスに行くんだろうなぁ・・・」

黒子「当たり前ですの・・・」

美琴「・・・すっかりみんなの人気者よね・・・」

佐天「だって大覇星祭であれだけ面白いアナウンスしてるんですから」

初春「お偉いさんは眉をひそめてますけどね」

黒子「・・・はぁ、もう少し節操を・・・」

美琴「いいじゃない、私達だってそれ見て楽しんでるんだし」

美琴がぐっと伸びをしてから、校門をくぐる

黒子「・・・わたくし達ももちろん上条さん達のクラスに行きますの」

美琴「そうね・・・」

少し汚れた校舎を、四人が見上げる


美琴「・・・体験入学なんて何回目なのよ・・・」





107 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 18:07:16.80kyykcQOg0 (45/47)


上条「・・・来た来た・・・」

教室の前後にあるドア

そのガラス越しにでも分かるほど、教室の前には行列が出来ている

出来る限り声は抑えているのだろうが、それでも女子達の話し声が聞こえる

青ピ(なんやすごいなぁ・・・)

吹寄(・・・文化祭のときより人が集まってるわね)

心理(・・・なんか面白いことになりそう)

姫神(私が埋もれる)

土御門(にゃー、こりゃ先生達は大忙しだぜよ)

上条(・・・無事に終わればいいんだけど・・・)

垣根「あーあ、かったりーかったりーかったりーなー」

上条「・・・」

この行列の原因である垣根は、大して興味もなさそうに机に突っ伏している

今は朝のホームルームが終わった直後だ

先生が教室から出るときでさえ、なぜか廊下の女子達は歓声を上げていた

もう少しで授業が見られるのだから、無理もないが

垣根「なぁ、悲しくなるしりとりやろうぜ・・・」

心理「少しは真面目になりなさいよ・・・模範的生徒でありなさい」





108 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 21:08:48.25kyykcQOg0 (46/47)

垣根「だってさぁ・・・真面目な雰囲気とかイヤだぜ俺・・・」

上条「いや・・・昨日の夜はかなり真面目だったじゃないか」

垣根「うるせぇ・・・あぁ、うるせぇ・・・」

垣根がドアの外を睨みつける

そこには恐らく垣根を目的にしてきた女子学生がわんさかいるのだろう

なんとなくだが、彼はそういうのにイラつきを覚える

垣根「なぁ・・・ブームってのは無理矢理作り出されるんだろうな」

姫神「何を言っているの」

吹寄「?なんか垣根がナイーブね」

土御門「にゃー、でも仕方ないぜよ」

青ピ「・・・ボクは楽しみなんやけどな」

垣根「面倒なんだよこういうのは・・・」

垣根が頬を膨らませる


垣根「あーあ・・・めんどくせぇな・・・」






109 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/17(木) 21:11:31.79kyykcQOg0 (47/47)

今日はここまで

筋肉動画はお休み

どうも風邪をひいたみたいで、漫才の映像ばっか見てます

やっぱいとしこいしさんとダウンタウンとやすきよはレベルが違いますね

本当に面白い

ではおやすみなさい





110 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:52:59.705gQ/EMvg0 (1/21)

上条「・・・さて、一時間目だな」

垣根「もうやだ・・・」

学校に、チャイムの音が鳴り響いた

その瞬間、ドアが勢いよく開かれた

「!いたいた!」

「すっごーい!本物だ!」

「静かにしなさいよ!」

女子学生が次々と入ってくる

先程までクラスの仲間しかいなかった教室が一転して賑やかになる

授業が始まった途端にこれだ

心理(・・・はぁ、確かにこれはイヤになるわね)

姫神(・・・私が。空気になっちゃう)

吹寄「・・・騒がしくなったわね」

垣根「全くだ」

小萌「はいはーい!先生の話をしっかり聞いて下さいね!」

青ピ「はーい!」





111 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:53:37.975gQ/EMvg0 (2/21)

土御門「にゃー、気にせず頑張るぜぃ」

一同がノートを広げる

だがやはり、教室の後ろから聞こえる黄色い悲鳴が気になる

小萌「このESPカード実験において・・・」

上条「・・・」

小萌「よって、これは・・・」

垣根「・・・なぁ小萌・・・先生」

小萌「なんなのですか垣根ちゃん?」

垣根「こう・・・あれだ、もう少し分かりやすく説明してくれ」

小萌「でも、これでも簡単にしてるんですよ?」

垣根「一応中学生も来てるんだからよ・・・」

「聞いた!?カッコイイ!」

「私達に気遣ってくれてる!」

吹寄(・・・垣根、貴様あんまり発言しないほうがいいわよ)

垣根(・・・そうだな)





112 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:54:09.385gQ/EMvg0 (3/21)

上条「なぁ先生・・・それって結局なんなんだ?」

小萌「ですから、これは・・・」

小萌が何かよく分からないことを黒板に書いていく

青ピ「・・・なんなんやこれ?」

土御門「・・・つまり、メイドはすげぇってことだにゃー」

小萌「土御門ちゃんはあとでコロンブスの卵なのですよ」

土御門「にゃー!」

垣根「・・・あーあーつまんねぇ」

垣根が机に突っ伏す

気を張ってもそんなもの、すぐさま切れてしまう

わざわざ女子学生の前でいい格好をする必要もない

心理「・・・ねぇ、もっと中学生のためになるような話をして下さい」

小萌「・・・じゃあこの学校について説明しますよ」

姫神「そういうのを。待っていた」

吹寄「・・・でもなんだか授業じゃないわよね」

青ピ「えぇやんえぇやん」






113 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:54:49.505gQ/EMvg0 (4/21)

上条「はぁ・・・なんだか違う気がする」

上条が校庭を見つめる

別のクラスの生徒がサッカーをしている

上条「・・・あ・・・あれ!?」

垣根「何大声出してんだよ上条・・・」

上条「美琴がいたんだよ!」

垣根「あぁそうかいそりゃよかったな・・・」

上条「なんだよ・・・わざわざ俺に会いに来て・・・」

小萌「上条ちゃーん」

上条「ん?なんですか先生・・・」

小萌「授業中に大声を出さないでくださいねー」

上条「」

ニコニコとしながら、上条を見つめる小萌

後ろに並んでいる女子学生も、何かヒソヒソと上条を指差しながら笑っている

いきなり授業中に大声を出したのだから、笑われても仕方ないだろう

小萌「上条ちゃん、後でお説教なのですよ」

上条「ふ、不幸だ・・・」

上条が肩を落とす

教室に、苦笑いだけが響いた





114 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:55:25.085gQ/EMvg0 (5/21)


美琴「・・・ここからもかなり人が多く見えるわね」

黒子「本当ですわね・・・」

まだ、四人は校舎の外にいた

中に入ろうとは思ったものの、まず校舎の入口さえもが混んでいるのだ

靴箱の周りには入り切らなかった靴が乱雑に置かれている

佐天「・・・なんだかすごいんですね」

初春「でもこれじゃ進めないですよ・・・」

美琴「仕方ない・・・どっか別の入口でも探してみる?」

黒子「そんなものがあるのでしょうか」

表の入口は全てこんな状況だ

どこか別の入口を探す以外にない

黒子「・・・なら、屋上はいかがでしょう」

美琴「屋上?」

黒子「わたくしが空間転移で送りますから」

初春「じゃあそれ、お願いします!」

黒子「初春だけは送りませんの」





115 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:56:17.455gQ/EMvg0 (6/21)

初春「な、なんでですかぁ!」

黒子「冗談ですの・・・先にお姉さまから送りますので、二人は少しだけ待っていて下さいな」

佐天「はーい!」

黒子「では、お姉さま」

美琴「うん」

二人が屋上に移動する

美琴と黒子が、二人きりで

黒子「ふふふ・・・」

美琴「な、何よ?」

屋上に到着してすぐ、黒子はまた二人の元へ帰るものだと思っていた

だがなぜか、黒子は美琴の後ろで怪しく笑っている

黒子「お姉さまー!」

美琴「ここでか!」

ぎゅっ、と黒子が美琴に抱き着く

その胸を服の上から撫で回し、よく意味の分からない笑顔を浮かべている

美琴「ちょっと・・・んっ・・・」





116 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:56:53.865gQ/EMvg0 (7/21)

黒子「な、なんですの!?まさかここまで感じやすい・・・」

美琴「違ーう!」

ビリビリ、と美琴が電撃を放つ

黒子「あぁぁぁ!これが気持ちいいんですのぉ!」

美琴「あぁもう!アンタは削板がいるでしょ!」

黒子「この思いは止められませんの!」

美琴「黒子!」

黒子「あぁん!」


佐天「・・・ねぇ、なんで白井さんは帰ってこないのかな?」

初春「御坂さんと一緒にいるんですよ?」

佐天「あぁ・・・なるほどね」

初春「きっと今頃白井さん、御坂さんに電撃撃たれてますよ」

佐天「うーん」

佐天が屋上を見上げる

何かピカリと光るものが空を駆けた

佐天「あれも青春・・・なのかな」





117 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:57:28.335gQ/EMvg0 (8/21)


上条「・・・休み時間だな」

垣根「休み時間だな、逃げよう」

心理「見なさい、あの廊下の混み具合」

授業の終わった教室

小萌が授業の終わりを伝えた瞬間、並んでいた女子学生が一斉に垣根の元に駆け出す

ちなみに、何人かが上条の元に駆け寄ったのに周りのクラスメイトは驚いている

「垣根さん!サイン下さい!」

「握手お願いします!」

垣根「はいはい並んで並んで・・・」

上条「人気だな・・・」

吹寄「ホント・・・貴様は人気よね」

土御門「カミやんも人気やで」

上条「どこがだよ!」

姫神「なら君の元に集まってきた女子学生は何」

青ピ「ホントやで!うらやましいわぁ!」

上条「いやいや!だったら垣根を羨ましがれ!」






118 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:57:54.215gQ/EMvg0 (9/21)


心理「・・・はぁ、ちょっと外の空気を吸って来るわね」

垣根「おう」

人混みを視線だけで掻き分け、心理定規が外に向かう

下の階まで行列が繋がっているため、ついつい屋上に向かってしまう

心理(はぁ・・・垣根が人気なのは嬉しいけど、なんだか複雑なのよね)

ため息をつきながら心理定規が階段を登る

心理(・・・ヤキモチかしら、情けないわ)

ゆっくりと屋上のドアノブを捻る

それを開けると眩しい日差しが心理定規を照らし


美琴「ちょっと・・・ぁっ・・・」

黒子「お、お姉さま・・・美しいですの・・・」

怪しい二人が目に入った

黒子の細い指が美琴の柔らかな乳房を服の上からなぞる

流れていく、少し淫らな汗がワイシャツをべたつかせる

体をくねらせる度、まるでそれは更なる刺激を求めているように見えてしまう





119 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:58:20.315gQ/EMvg0 (10/21)

服の上からうっすらと見える胸のライン

そして、短パンの中の恥部が何か嫌な熱を

心理「何やってるのあなた達」

帯びる前に、心理定規がツッコミを入れる

美琴「!こ、これは・・・」

心理「黒子、あなた美琴にちょっかい出さないでよ」

美琴「そうよそうよ!」

心理「私のものなんだから」

美琴「え?」

黒子「な、なんですってー!?」

心理「冗談よ・・・大体なんであなた達はこんなところにいるのよ」

美琴「それは・・・ほら、下の階がかなり混んでるじゃない」

黒子「ですから、わたくしがお姉さまをここまで・・・」

心理「だったらさっさと校内に入って来ればいいじゃない」

黒子「下にあと二人、友人がいますの」

心理「はぁ・・・だったらさっさと連れて来なさいな」






120 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:58:51.195gQ/EMvg0 (11/21)

黒子「!忘れてましたの!」

黒子が校庭に空間転移する

残された二人がため息をついてから顔を見合わせる

心理「・・・とりあえず、いらっしゃい」

美琴「うん・・・」

心理「大変ね、あなたも」

そんなことを言いながら心理定規が腕時計を見つめる

心理「・・・もうそろそろ授業ね」

美琴「じゃあまた後でね」

心理「えぇ、後で」

手を振りながら心理定規が屋上を後にする

美琴「・・・なんだか」

ぽつり、と一人で美琴が呟く


美琴「体験入学・・・不安になるわよね、毎回」






121 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 15:59:33.975gQ/EMvg0 (12/21)


垣根「お、常盤台中学の子か」

「お、覚えていて下さったのですか?」

まだサインなどを求められている垣根

今彼が話しているのは、常盤台の女子学生だった

さすがお嬢様なだけあって、他の生徒とは違う

靴も袋に入れて持参し、また制服もしっかりと着こなしている

垣根「やーっぱお嬢様は違うな・・・清々しい」

「あ、ありがとうございます!」

垣根「授業はどうだ?常盤台よりレベルが低くて退屈だろ」

「そ、そんなことありませんわ!」

「そうですわ!垣根さんの授業態度や上条さんの素晴らしいお冗談、とてもためになりますわ!」

上条「お、お冗談」

垣根「ははは!お冗談だってよ上条!」

上条「ひでぇ・・・」

「御坂様とお付き合いされておられるだけありますわ!」

上条「あぁそうね・・・」

土御門「にゃー!カミやんの裏切り者!」





122 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 16:00:07.005gQ/EMvg0 (13/21)

青ピ「女子にそうやって絡まれるなんて羨ましいわぁ!」

上条「い、いや!」

姫神「上条君は。そういう星に生まれたんだから仕方ない」

吹寄「・・・クラスメイトとして情けないわ」

上条「そこまで言うか!?」

垣根「・・・まぁ、授業だけじゃなくて色々楽しんでくれよ」

「は、はい!」

お辞儀をしてから常盤台の生徒が教室の後ろに下がる

垣根「・・・で、次は何の授業なんだ」

心理「じゃじゃーん、心理定規ちゃんが帰ってきたぞ」

垣根「・・・」

心理「・・・」

心理定規が勢いよく教室に帰ってきた

しかも何やらよく分からないことを言いながら

垣根「お前、どうしたわけ」

心理「ちょっとあなたの目を引き付けたくて」





123 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 16:01:00.675gQ/EMvg0 (14/21)

垣根「頼むからやめてくれ・・・もう頭がおかしくなる」

上条「・・・心理さん、早く着席してくれ・・・」

心理「なんだかスベったみたいでイヤなんだけど」

垣根「うるせぇ・・・真面目にやれって言ったのはお前だろ」

心理「はぁ・・・分かったわよ」

心理定規が自分の席に座る

次の授業は自然というもののようだ

垣根「てかさ、自然なんて科目初めて聞いたぞ」

吹寄「なんでも、来年から試験的に開始するみたいで・・・」

姫神「今回はうちの学校が実験台みたい」

青ピ「まぁ、楽しいんならええんやけど」

垣根「つまらなそうな授業だなおい・・・」

心理「ホント・・・退屈だわ」

吹寄「ほら、しっかりしなさいよ」

垣根「ちくしょう・・・分かったよ」

垣根が椅子にしっかりと座る

垣根「授業やろうぜ授業!」

一同「おう!」






124 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 16:01:33.755gQ/EMvg0 (15/21)


佐天「あ、帰ってきた」

黒子「お待たせしましたの・・・」

初春「御坂さんとじゃれてたんですか?」

黒子「そうですの!途中で邪魔が入らなければ・・・」

佐天「白井さん、彼氏もいるんだからそろそろ御坂さんも卒業・・・」

黒子「無理ですの!」

初春「白井さん、いい加減にしないと御坂さんに嫌われますよ?」

黒子「嫌われませんの!お姉さまはわたくしを実は愛しておられますから!」

佐天「どうかなぁ・・・御坂さんは案外、束縛する人は嫌いなタイプだと思うけど」

ニヤニヤ笑いながら、佐天が呟く

黒子「お、お姉さまは常に上条さんと束縛し合っていますの!」

佐天「愛があるからこそだと思うけどなー」

初春「そうですよ、愛のない束縛なんてただの鎖です」

黒子「わ、わたくしは・・・」

初春「それより早く屋上に連れていって下さい」





125 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 16:02:02.345gQ/EMvg0 (16/21)

佐天「あぁそうだった!忘れるとこだったよもう!」

黒子「はいはい・・・」

黒子が二人の肩に手を乗せ、自分ごと転移する


美琴「やっと来たわね」

黒子「無駄話をしすぎてしまいましたわ・・・お姉さま、申し訳ありませんの!」

美琴「アンタはむしろいないほうが安全なんだけど」

佐天「そんなことありますよ!」

黒子「ひどいですの二人とも!」

初春「そんな当たり前のことを話してないでさっさと教室に行きましょう!」

黒子「当たり前とは失礼すぎますの!」

美琴「早く、私は当麻に会いたいのよ!」

佐天「超能力者の授業風景かぁ・・・なんだか楽しそう!」

初春「私達も参考にしないといけませんね!」

美琴「当麻の真剣な顔かぁ・・・カッコイイわよね!」

キラキラ顔を輝かせながら、三人が屋上のドアを開ける

黒子「・・・あの、わたくし・・・」

美琴「ありがとう黒子、もういいわよ」

黒子「ひどいですの!」

美琴「ほら、早く来なさいよ」

黒子「!わ、分かってますのよ!」





126VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区)2011/11/18(金) 20:03:35.888/0ITFs8o (1/1)

黒子くろくろ


127 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 20:36:42.745gQ/EMvg0 (17/21)


垣根「・・・なぁ」

上条「・・・分かってる、つまらないんだろ?」

教室の中は、なんとも微妙な空気になっていた

自然、という授業はその名の通り、自然について学ぶものだった

学園都市は現在、緑化計画やら温暖化対策やらに力を入れている

学校でもそれらの取り組みを積極的に行いましょう、というのが統括理事会の考えらしい

よって、彼らは常識とも言えるようなことを一から教えられている

温暖化の原因や、その対策法など

土御門「にゃー・・・俺達だって自然のことを考えてるんだぜぃ?」

小萌「じゃあどんなことをしているのか、土御門ちゃん言ってみてください!」

土御門「空き缶はゴミ箱に」

小萌「当たり前なのですよ!!」

吹寄「でも先生・・・これは、さすがに高校生にもなって学ぶことではないかと・・・」

小萌「仕方ないのです!!」

青ピ「なんや、せっかくの体験入学やのに」

心理「地味すぎるわよ・・・」

吹寄「・・・自然は大切なんだから、しっかり聞きなさい」






128 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 20:39:38.985gQ/EMvg0 (18/21)

垣根「大切なのは分かってるけど、地味なんだよ」

垣根がノートに何かを書き込む

垣根「自然について人間が考えました、そしたらどうなる?」

上条「?そりゃ、自然が増えて・・・」

垣根「そんな簡単に行くかよ・・・」

どうやら、何かの絵を描いているようだ

垣根「見ろ、まず人間がもっともやることといえばゴミの分別だ」

吹寄「そうね」

垣根「で?ゴミの総量は減ったわけ?」

吹寄「・・・でも、燃やしてはいけないゴミをしっかりと分ければ・・・」

垣根「不法投棄だって増える、それに大した変化はないかもしれないんだぜ?」

姫神「・・・たしかに」

青ピ「せやけど、やらないよりはマシなんやで?」

垣根「マシな方法を考えなきゃならないんだよ・・・大体な、無駄な建物が多すぎるんだよ!!」

心理「たとえば?」

垣根「パチンコ店なんてそうだろ、ずーっとネオンピカピカ光らせてるし!!俺ももっと輝きたい!!」

上条「・・・いや、それは違うぞ」





129 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 20:42:33.775gQ/EMvg0 (19/21)

垣根「と!に!か!く!人間はまるで自然の管理者、みたいな言い方をやめるべきだな、うん」

上条「はぁ?」

垣根「自然が壊れていきますー、自然を大事にー、じゃねぇんだよ!!」

心理「なんだか元気ね」

垣根「俺達だって自然の一部だよ!?自然が壊れりゃ人間だって壊れる!!」

青ピ「よっ!!大統領!!」

土御門「じゃあどうしろって言うのかにゃー?」

垣根「まずはこの授業が無意味だ!!よって自由時間に・・・」

小萌「垣根ちゃん、それ以上ぬかしやがったらスケスケミルミルですよー」

垣根「やってやろうじゃねぇか!!」

吹寄「やめなさいよ・・・ほら、体験入学の生徒もちょっと怖がってるし」

垣根「怖くないよ俺!!オレ、ミンナノトモダチ!!!」

上条「はぁ・・・でもたしかにこの授業は地味だよ先生・・・」

小萌「じゃあどうすればいいのですか?」





130 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 20:45:28.495gQ/EMvg0 (20/21)

垣根「うーん・・・そうだな」

垣根が顎に手を当てる

垣根「あれだ、もっと話すだけじゃなくてディベートしようぜディベート」

上条「お、それは楽しそうかな」

吹寄「自然を守る派と、バンバン開発する派に分かれるのね」

垣根「俺は後者な」

心理「さっき自然について熱く語ってたじゃない」

小萌「そういう勝手は許さないのですよ!」

垣根「だー!!上手く誤魔化せそうだったのに!!」

土御門「先生は堅いんだにゃー、もっと体験入学の生徒を楽しませようぜぃ」

小萌「もちろん、楽しませるつもりなのですよ!!明日!!」

垣根「明日は劇やるから楽しいに決まってんだよ!!」

上条「はぁ・・・授業なんてつまんねぇ・・・」

上条が机に突っ伏し、校庭を見つめる

そこにはもう、美琴の姿はない


上条「早く来てくれよ美琴・・・」





131 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/18(金) 20:50:07.595gQ/EMvg0 (21/21)

今日はここまで

筋肉動画はこちら

驚異的なバルク、伝説とも言われている「バーティル・フォックス」

当時としては素晴らしすぎるバルク、更に完璧と言ってもいいシンメトリーやカット

前時代的でありながらも、大きさを兼ね備えていました

1998年、フィアンセとその母親を殺害

終身刑を言い渡されています

どうしてそんな事件を起こしたのでしょうか

  

上半身が完璧に近いですね

ではおやすみなさい





132VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/18(金) 22:04:01.22+c/HnLTIO (1/1)

┌─────┐
│い ち お つ.│
└∩───∩┘
  ヽ(`・ω・´)ノ


133VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/19(土) 00:27:27.51U0r/RHeYo (1/1)

乙なんだよ!


134 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:18:17.221ZRaQx4N0 (1/36)

美琴「うわ・・・なんか廊下も混んでるのね」

屋上から入ればすんなり教室に向かえる、と思っていた四人の思惑は外れた

見事なほど、四人が進もうとした道は塞がれている

黒子「このままでは進めませんわね・・・」

初春「・・・白井さん、ここからは空間転移できないんですか?」

黒子「こんなに人がいる所で出来るわけがありませんの」

佐天「じゃあこれは掻き分けて行かないと・・・」

美琴「よし!当麻に会うためよ!」

黒子「はぁ・・・あまり気が進みませんが!」

初春「私達も進みませんが!」

佐天「よーし行こう!」

並んでいる女子学生を掻き分け、四人が教室を目指す


上条「・・・あの、つまり温暖化ってのは昔の状態に戻すのは無理ってことか」

小萌「そうなのですよー」

青ピ「なんや、せやったら解決策なんてないやん」






135 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:18:44.871ZRaQx4N0 (2/36)

小萌「少しでも進行を遅らせるのが目的なのです!」

垣根「あぁそうかよ・・・」

心理「・・・さっきからずっと温暖化の話ばかりじゃない」

吹寄「ダメとは言わないけど・・・たしかに、温暖化以外の問題も扱わないといけませんよ」

姫神「世の中には。採伐もある」

土御門「しっかり考えなきゃダメだにゃー」

上条「よーし、上手くまとまった!」

上条がガッツポーズをしたのと同時、授業終了を伝えるチャイムが鳴った

小萌「次は黄泉川先生の授業なのです」

吹寄「じゃあ・・・起立!」

吹寄の号令で、全員が立ち上がる

吹寄「姿勢、礼!」

やはり体験入学者の目が気になるのか、礼も深々となってしまう

上条「よっしゃあ!次は黄泉川先生だし、なんか面白い授業してくれるだろ!」

心理「あら、そうかしら」





136 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:19:11.011ZRaQx4N0 (3/36)

垣根「・・・あぁ、めんどくせぇ」

再び、女子学生が垣根と上条の元に駆け寄る

もう慣れてしまった光景だ

誰も、何も言わない

男子は冷たい視線を浴びせ、女子はため息をついている

土御門「あぁ、羨ましい・・・」


美琴「当麻!いる!?」

土御門の台詞を遮り、ドアが開かれた

上条「おぉ!美琴、来たか!」

「み、御坂様よ!」

「やはりいらっしゃったのですわ!」

黒子「・・・あら、教室の中まで混んでいますのね」

初春「あ、垣根さんも本当にいるんですね」

垣根「よぉ・・・」

佐天「あちゃー・・・ちょうど授業終わったところだったかー!」





137 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:19:38.651ZRaQx4N0 (4/36)

上条「みんな来てたのか・・・」

青ピ「なんやこれまた可愛い女の子が勢揃いやなぁ!」

佐天「あ!なんか見たことある気がする人達!」

土御門「・・・なんか見たことあるってひどいにゃー」

垣根「・・・ちっ、また面倒なことになったな」

垣根がため息をつく

美琴「何よ、面倒って言わないでよね」

垣根「・・・御坂、お前が来たら上条がハッスルしちまうんだよ!」

上条「そ、それの何が悪いんだよ!?」

美琴「そうよそうよ!」

垣根「うるせぇ!大体な!」

心理「ほら、授業始まるから静かにしなさいよ」

垣根「・・・ちっ」

垣根が時計を睨みつける

すでに休み時間は残り1分になった





138 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:20:06.611ZRaQx4N0 (5/36)

姫神「はぁ・・・次の授業は楽しければいいけど」

吹寄「そんなこと言ったら、小萌先生に失礼よ」

青ピ「ボクはどっちの先生も好きやけどな」

初春「なんだか危険な人ですね」

青ピ「あっはぁ!ロリっぽい女の子にそんなこと言ってもらえるなんて最高や!」

佐天「な、何この人?」

垣根「あんまり関わるな・・・お前達まで汚れるぞ」

黒子「ところで次の授業は何ですの?」

垣根「黄泉川の授業だから、保健体育のはずなんだけどな」

心理「はず・・・ねぇ」

美琴「なんでそんな曖昧なのよ」

垣根「黄泉川って結構ふざけたヤツだから、授業とか勝手に変えるんだよ」

吹寄「そんなこと言わないの」

垣根「事実なんだよなぁ・・・」

土御門「にゃー、でも楽しければ関係ないぜぃ」





139 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:20:41.951ZRaQx4N0 (6/36)

チャイムが鳴り、生徒が席に着く

佐天「私達は見てるだけですね」

美琴「当麻・・・座ってる姿も凛々しいわね」

黒子「もう重症ですわね・・・」

初春「彼氏さんにベタ惚れなのは仕方ないですよ」

美琴「ベ、ベタ惚れなんかじゃないわよ!」

黒子「ベタ惚れなのですわ」

美琴「冷やかさない・・・」

垣根「うるせぇ!ちょっとは静かにしろよベタ惚れ!」

美琴「ベタ惚れじゃないって言ってるでしょ!」

垣根「黙れよ!毎晩毎晩抱き合ってるくせに!」

美琴「だ・・・」

「だ、抱き合ってる・・・」

「さ、さすが御坂様ですわ・・・」

黒子「み、みなさん!これは垣根さんの冗談ですの!」

垣根「冗談ねぇ、よく言うぜ」

机に天使を書きながら、垣根が呟く

かなり退屈そうだ





140 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:21:08.231ZRaQx4N0 (7/36)

上条「・・・垣根、お前なぁ・・・」

垣根「あーあー・・・」

黄泉川「はーい!静かに!」

バァン!と勢いよくドアが開かれる

ニコニコとしながら入ってきた黄泉川は、何かクジのような物を持っている

垣根「ん?なんだよそれ」

黄泉川「いやぁ、普通の授業なんかしても面白くないじゃんよ」

上条「それで?そのワンダーボックスの中には何が入ってるんですか」

黄泉川「ここには、保健体育に関わる様々な問題の書かれたクジが入っている!」

心理「それで?引いた問題の答えを言えたらいいってわけ?」

黄泉川「ちょっと違うなぁ・・・今回は体験入学の生徒がいるじゃんよ!」

黄泉川がビシッと教室の後ろに並んだ生徒を指差す

黒子「?わたくし達が何か関係あるのですか?」

黄泉川「お前達、見学の生徒はみんな好きな生徒の隣に向かってほしいじゃん」

美琴「!」





141 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:21:43.551ZRaQx4N0 (8/36)

真っ先に動いたのは美琴だった

もちろん目指すのは上条の隣

上条「・・・あ、あの?」

黄泉川「この学校の生徒と違う学校の生徒、二人が協力し合う素晴らしい授業じゃんか!」

黒子「な、なるほど」

「で、では私は垣根さんの隣に!」

「みんな!常盤台中学に負けたらダメだよ!」

「おー!」

黄泉川の説明を聞いた女子生徒が動き出す

実にほとんど全員が垣根の隣を目指している

吹寄「す、すごいわね・・・」

土御門「全く・・・ん?」

土御門が少し驚いたような顔をする

彼の机のそばに、黒子が立っている

黒子「あら、わたくしでは不満なのでしょうか」





142 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:22:10.601ZRaQx4N0 (9/36)

土御門「そういうわけじゃないけどにゃー・・・」

上条「でも白井ってかなり頭いいんだろ?」

土御門「!これって競争なのかにゃー!?」

黄泉川「もちろん!勝ったら今日の宿題一人だけチャラにしてやるじゃん!」

そんな適当な提案でいいのだろうか

体験入学に来た生徒全員が首を捻る

だが、上条達は大喜びである

姫神「よし。私は頑張る・・・そこの常盤台の」

食蜂「私は吹寄と組むわ」

吹寄「よかった・・・食蜂は頭かなりいいから」

姫神「・・・じゃあ」

初春「私、そこの人と組みますね」

青ピ「なんやなんや!?ロリっ子がボクを指名してくれるなんて!」

初春「そういうこと、言わないで下さい・・・」

姫神「あ・・・」





143 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:22:41.851ZRaQx4N0 (10/36)

垣根「佐天、俺と組まないか」

佐天「いいんですか!?」

垣根の一言に、他の女子生徒が肩を落とす

心理「・・・私はどうしましょう」

婚后「では私が組んで差し上げますわ!」

心理「あら、ありがとう」

姫神「・・・私は」

垣根「誰か姫神と組んでやってくれよ」

「で、では私が・・・」

常盤台の生徒が一人、手を挙げる

垣根「よし、他の生徒もペアは出来たみたいだぜ」

黄泉川「なら、早速始めるじゃんよ!」

黄泉川が一人目の生徒の前に箱を差し出す

黄泉川「さぁ!引くじゃんか!」

「よっしゃあ!」

男子生徒が箱に手を突っ込む





144 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:23:32.481ZRaQx4N0 (11/36)

中のクジを一枚選び、それを読み上げる

「問題!ボクシングヘビー級・・・」

上条「ちょっと待ったぁ!」

上条が手を挙げる

黄泉川「はい、上条!」

上条「答えるんじゃないから!なんだよその問題!?」

黄泉川「いや、これから読み上げるじゃんよ」

上条「そうじゃなくて!明らかにただのアンタの趣味だろ!?」

黄泉川「何言ってるじゃんよ、これくらいじゃないと不公平・・・」

上条「おかしいから!授業じゃないよなこれ!?」

心理「上条君、気持ちは分かるけど我慢しなさい」

上条「マジかよ!?」

青ピ「ほら、続き続き」

「ヘビー級チャンピオン、カス・ダマトと・・・」

土御門「はいはい!」





145 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:23:59.241ZRaQx4N0 (12/36)

黄泉川「はい、土御門!」

土御門「簡単だにゃー!マイク・タイソン!」

「ですが!」

土御門「なんでだよ!?」

土御門が机に突っ伏す

黄泉川「お手付きはその問題には答えられないからなー」

美琴「な、中々ハードね」

吹寄「・・・私、ボクシングとか全然知らないんだけど」

黒子「わたくしもですわ・・・」

食蜂「はぁ・・・能力使えば出題者の心読めちゃうんだけどなぁ」

垣根「・・・早く問題の続き」

「そのマイク・タイソンに代表される、親指を噛むように・・・」

初春「はいはい!」

黄泉川「はい、初春!」

青ピ「も、もしかしてボクシングとか詳しいん!?」





146 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:24:45.601ZRaQx4N0 (13/36)

初春「マイク・タイソンって誰ですか!?」

青ピ「やっぱりそうに決まってるわなぁ!」

姫神「・・・はい」

黄泉川「他に誰か分かるヤツ!?」

姫神「あ。あの」

黄泉川「早く手を挙げないと時間制限じゃんか!」

姫神「私が手を挙げてる」

黄泉川「・・・はい、お前」

姫神「・・・なんだか辛辣」

黄泉川「で?答えをどうぞ!」

姫神「・・・実は分からない」

上条「だったらなんでお前は手を挙げたんだよ!?」

姫神「なんとなく。目立ちたかった」

垣根「あぁ分かった」

黄泉川「はい、垣根!」






147 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:25:39.091ZRaQx4N0 (14/36)

垣根「ピーカブーだな」

黄泉川「正解!垣根と佐天に1ポイント!」

美琴「な、なんでそんなマイナーな問題なのよ!?」

黄泉川「いいじゃんか・・・次」

姫神「・・・次は。私が引く番」

姫神が一枚のクジを取り出す

姫神「問題。人間の体の中で、一番癌になる可能性が低いのは・・・」

美琴「はい!」

黄泉川「御坂!」

美琴「心臓!」

姫神「ですが」

美琴「ふにゃあ!?」

上条「黄泉川先生!アンタどんだけそのパターンが好きなんだよ!?」

黄泉川「はい、続き!」

姫神「乳癌には男性もなる。丸かバツか」





148 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:26:19.511ZRaQx4N0 (15/36)

土御門「はい!」

黄泉川「土御門!」

土御門「にゃー!乳が男にはない、だからなるわけがないにゃー!」

黒子「な、何を言っておられます・・・」

黄泉川「ブッブー!男性だってなるじゃんか!」

土御門「何ぃ!?詐欺だ!名前が詐欺だ!」

黒子「はぁ・・・この場合は次の問題が答えられないんですのね」

黄泉川「はい、次!」

垣根「よーし、俺が引くか」

垣根が問題を読み上げる

垣根「筋肉増強剤として使用されるアナボリックステロイド、その使用に関しては日本で違法にはならない、丸かバツか」

上条(・・・当たる確率は半々だよな)

吹寄「はい」

黄泉川「吹寄!」

吹寄「使用だけならば、違法にはなりません」





149 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:26:48.791ZRaQx4N0 (16/36)

黄泉川「正解!だからって使うなよ!」

上条「あぁちくしょう!テクパトルにテレフォンすればよかった!」

心理「そういうルールじゃないわよ」

黄泉川「次は上条が引く番じゃんか」

上条「はいはい・・・」

食蜂「・・・なんだか全然授業じゃないんだけど」

上条「えー・・・オリンピックの競技の中で、唯一動物を使用・・・」

美琴「分かった!」

黄泉川「お、上条よかったじゃんか!ペアの御坂が答えてくれるぞ!」

上条「美琴ぉ!」

美琴「乗馬なんでしょ!」

上条「正解!」

美琴が胸を張ると同時に拍手が巻き起こる

常盤台中学の生徒の何人かは、もう卒倒しそうにさえなっている

初春「御坂さん・・・本当に人気ですね」





150 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:27:19.021ZRaQx4N0 (17/36)

青ピ「なんやドラマ見てるみたいやなぁ」

上条「はい、次はお前な」

青ピ「あぁそうやった」

青ピがクジを引く

変態が引くのはやはり変態な問題だ

青ピ「えー・・・人間が成長期などに、快感を求め自ら・・・」

上条「ちょっと待て!」

黄泉川「保健の問題じゃんよ」

上条「アンタ教師だろ!?」

黄泉川「はぁ・・・授業でそこまでやましいことを考えてたのか、お前」

上条「誰だってこれはアウト・・・」

心理「はい」

上条「」

黄泉川「心理定規!」





151 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 10:29:10.291ZRaQx4N0 (18/36)

心理「自慰行為ね」

土御門「へ、平然と・・・」

心理「ふふ・・・宿題がなければその分遊べる時間が増えるじゃない」

垣根「宿題のためなら恥ずかしさは捨てる、か」

吹寄「・・・よし!私だって負けてはいられないわ!」

姫神「私も」

黄泉川「さぁ!みんな、こっからが本番じゃん!」

一同「やってやるよぉ!」



黄泉川「さぁ、最終問題じゃん」

垣根「・・・ここまで、俺チームと上条チーム、そして吹寄チームが同率一位・・・」

上条「これで勝てば宿題がチャラだな・・・」

美琴(宿題がなくなれば、当麻との時間も増える!!)

黄泉川「最終問題!!」

垣根「来いやぁ!!」





152 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 11:01:35.981ZRaQx4N0 (19/36)

黄泉川「問題!!」

上条(・・・恐らく、今回もマイナーな問題だ・・・)

美琴(周りの誰かが間違えて、お手つきするのを狙うか・・・)

垣根(はん、そんな必要はねぇんだよ!!)

黄泉川「オリンピック競技にもなっている槍投げ、その槍の重さは男子でどれくらい!?」

垣根「・・・は、はぁ!?」

姫神「これまたマイナーな・・・」

青ピ「知るわけないやんか・・・パスパス」

土御門「にゃー、大体槍投げの槍とか注目したことないぜぃ」

心理「槍投げ自体が・・・」

吹寄「はい」

上条(え、マジ?)

黄泉川「吹寄、答えをどうぞ!!」

吹寄「800グラムです」

黄泉川「正解!!」

垣根「ちょっと待てや!!なんでてめぇそんなこと知ってるんだよ!?」

上条「しかも意外と軽いのな!!」

吹寄「この前ニュースで言ってたのよ」

心理「知らないわよ・・・」





153 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 11:04:36.731ZRaQx4N0 (20/36)

黄泉川「ということで、吹寄は今日の宿題免除!!」

吹寄「・・・よかったのかしら」

食蜂「いいんじゃない?そんなめんどくさいの」

青ピ「あぁ!!ボクは結局宿題をしなきゃならないんやなぁ!!」

初春「ま、まぁまぁ・・・」

黒子「宿題なんて可愛そうですわね」

美琴「ごめんね当麻・・・」

上条「い、いやいや!!いいんだって!!」

垣根「よかねぇよ!!宿題なかったら明日の劇の練習できたのに!!」

吹寄「私は一人で頑張っとくわ」

垣根「うっせぇ!!お前はチョイ役だからいいじゃねぇか!!」

黄泉川「はいはい静かに・・・ちょうど授業も終わりじゃんか」

垣根「・・・ちくしょう・・・宿題なんて食べてやる・・・」

心理「黒ヤギさんね」

垣根「読まずに食べてやる・・・」

黄泉川「じゃ、次の授業に備えるじゃんよー」





154 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 11:31:30.241ZRaQx4N0 (21/36)


上条「・・・ちくしょう・・・」

垣根「そうガッカリすんな・・・オレだってガッカリしてるんだ・・・」

青ピ「おかしいやん、そもそも保健体育関係ないやん」

土御門「にゃー、あの先生頭おかしいぜぃ・・・」

デルタフォースと垣根が机に突っ伏す

宿題免除を逃したため、かなり落ち込んでいるらしい

上条「・・・垣根はまだいいじゃないか・・・」

垣根「よくねぇ・・・なんか精神衛生的によくねぇ・・・」

食蜂「何そんなに落ち込んでるわけぇ?」

垣根「あぁ?てめぇいたのか・・・」

食蜂「さ、さっきからずっといるじゃない!!」

垣根「お前は姫神より影が薄いんだよ」

食蜂「」

姫神(ふふふ。勝った)





155 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 11:39:20.581ZRaQx4N0 (22/36)

垣根「・・・はいはい、サインね・・・」

垣根がサラサラ、とメモ帳にサインをしていく

本当に、超能力者というのは人気者のようだ

美琴の周りや、食蜂の周りにも人だかりが出来ている

上条「・・・同じ学校の中に三人いるんだよな」

青ピ「なんや急にエリート校みたいやん」

吹寄「実際は違うけどね・・・」

土御門「にゃー、それよりみんな早く着替えようぜぃ」

垣根「着替える?」

土御門「次、体育だってさ」

垣根「おっといけねぇ!!」

パン!!と垣根が手を叩く

垣根「体験入学の生徒は校庭に今すぐ向かってくれ、俺達は今からここでセクシーストリップショーだ!!」

心理「違うでしょ・・・」

黒子「では、また後ほど」

佐天「高校生の体育って何か特別なことでもするのかな?」

初春「きっと、騎馬戦とかですよ!!」

垣根「ただのサッカーだからな」

美琴「なんだ、普通・・・」

垣根「普通で何が悪いんだ・・・ほら、出た出た」

教室の中には男子生徒だけが残る

女子は、それ専用の更衣室があるのだ






156 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 13:38:23.011ZRaQx4N0 (23/36)

上条「・・・はぁ、サッカーか・・・」

垣根「やる気起きないよな・・・」

土御門「でも、隣のクラスとの試合なんだぜぃ?」

青ピ「なんや、そうなん?」

土御門「この前言ってたぜよ」

垣根「そりゃ初耳だ・・・」

上条「体験入学にでも合わせたのかな・・・」

垣根「あぁ、そうかもな・・・」

土御門「よーし!!じゃあ勝っていいところでも見せてやろうぜぃ!!」

土御門が拳を上げる

青ピ「オッケィ!!頑張るでぇ!!」

垣根「よっしゃぁ!!」

男子生徒が全員、校庭へ向かう

すでに隣のクラスは、準備運動も終えていた





157 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 13:55:06.601ZRaQx4N0 (24/36)


垣根「・・・なるほどな・・・試合は授業一コマまるごとね」

上条「そして、男子と女子の混合チーム・・・」

心理「あら、早かったわね」

垣根「よぉ・・・お前、相変わらず体育服似合わないのな」

心理「ほっときなさい」

心理定規が上条たちと合流する

どうやら、他の女子生徒はまだらしい

すでに準備運動を終えたほかのクラスの生徒と、体験入学の生徒は今か今かと待ちわびている」

授業とはいえ、自分達のクラスの結束力が試されるのだ

土御門「にゃー・・・思ったより緊張するもんやなぁ」

美琴「当麻!!頑張ってね!!」

上条「おう!!」

常盤台の生徒達は、全員綺麗に列を組んで木陰にいる

一方、他の学校の生徒はそれぞれバラバラになって見やすい位置を陣取っている

垣根「はっはぁ!!まるでプロサッカー選手になったみたいだ!!」

上条「はぁ・・・観客がいると緊張するな・・・」





158 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 16:11:22.711ZRaQx4N0 (25/36)

吹寄「気にしなくて良いのよ」

垣根「よぉ・・・お前は体育服が似合うよな」

吹寄「・・・褒めてるのか分からないけど、ありがとう」

心理「・・・姫神は相変わらず地味ね」

姫神「それが私の魅力」

土御門「自分で魅力なんて言うもんじゃないぜぃ」

姫神「誰もがそう思っている」

上条「・・・まぁそれはおいとこうぜ、今は相手チームに対する作戦だ」

垣根「・・・能力使用っていいのか?」

吹寄「まぁ、一応はいいんじゃないの?」

学園都市では、スポーツにさえ能力使用を許されている

その代表が大覇星祭なのだ

スポーツだけではなく、ちゃんと勉強もしないとダメなんだよ、ということなのだろうか

上条「はぁ・・・なんだかスポコンを全て否定してるよな」

垣根「根性論なんて科学の前じゃ無意味ってことだ」

心理「夢がないわね・・・」





159 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 16:35:07.681ZRaQx4N0 (26/36)

上条「でも、諦めずに努力するのは重要だ!」

靴紐を結び、上条がクラスの仲間を見回す

女子達が大勢見ているからか、男子生徒はどこか力に溢れている

上条「いいかみんな!!」

一同「おぉ!!」

上条「体験入学の生徒達にいいところを見せたいとか、そんな理由でも構わない!!」

一同「決まってんだろぉ!!」

上条「だからこそ!!」

ビシッ!!と、上条が隣のクラスを指差す

上条「あいつらに小萌クラスの実力を見せ付けてやろうぜ!!」

一同「おっしゃぁぁぁ!!!」


美琴「さすが当麻!!みんなをまとめたわね!!」

黒子「・・・心理定規が呆れてますの」

初春「でもでも、あれだけの人数をまとめるのはすごいですよ!!」

佐天「さすが御坂さんを落とした男なだけあるね!!」

食蜂「あっつい・・・なんで冬なのにこんな暑いのよ・・・」





160 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 17:20:50.881ZRaQx4N0 (27/36)


上条「・・・土御門、頼むぞ」

土御門「任せてくださいですたい」

土御門がゴールキーパーに選出された

彼は運動神経が抜群で、反射神経もいい

それならば、適任というわけだ

垣根「俺が翼広げれば問題ないのによ・・・」

青ピ「それじゃつまらないやんか」

心理「そうよ、フェアプレーの精神を持ちなさい」

吹寄「・・・相手は中々しっかりと作戦を考えてるようね」

姫神「ふふふ。観客が私を見ている」

上条「違うと思うけど・・・」

審判が笛を鳴らす

相手チームのキックオフで、試合は始まった


上条「しゃあ!!いいとこ見せてやるよ!!」

垣根「あーあー、暑い暑い」

心理「・・・というか、体験入学が関係ないわよね・・・」





161 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 17:33:30.651ZRaQx4N0 (28/36)


上条「しゃあ!!青髪!!」

試合は、上条達のペースになっていた

そもそも、超能力者の垣根がいるのだ

相手チームがどの場所にボールを蹴っても、それは垣根の能力によって弾き返される

垣根「・・・なんだよ、つまんねぇ」

心理「・・・ねぇ、これって面白いの?」

垣根「さぁ」

垣根が地面に落としたボールを、上条や青ピ、姫神が相手のゴールに蹴りこむ

それだけだった

1点、また1点と点数は増えていく

気づけば2ケタ得点にさえなっていた

垣根「・・・なぁ、これって何のための試合だっけか」

心理「・・・私達の結束力を・・・」


佐天「すっごーい!!見た見た!?垣根さんの翼!!」

美琴「見慣れてるから驚かないわ・・・っていうか、相手チーム泣いてるわよ」

黒子「かわいそうですわね・・・」





162 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 17:41:30.301ZRaQx4N0 (29/36)

青ピ「あっはぁ!!ボクのこと、みんなが見てるんやでぇ!!」

上条「いや・・・MVPは垣根だろ」

垣根「・・・いいのかよ、こんな生ぬるい試合で」

双方が、既にやる気をなくしている

あまりにも差のつきすぎた試合というのは面白みがない

体験入学の生徒達も、休憩時間のように友達と話しこんでいる

上条「あ、チャイム鳴った」

そのチャイムが、どれだけ待ち遠しかったか

試合終了のホイッスルを聞く前に、選手全員が呆れたように教室に帰る

佐天「お、終わった!!」

食蜂「なんかあんまり面白くなかったわねぇ」

美琴「それで・・・次は何の授業なの?」

黒子「次は・・・」

手元のパンフレットを見ながら、黒子が確認する

どうやら、次が一日目最後のようだ


黒子「なんのことはありませんわ・・・明日の劇に向けた話し合いのようですの」

美琴「えぇ・・・」




163 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 17:58:41.941ZRaQx4N0 (30/36)


上条「・・・さて、明日はとうとう劇の本番ですが!!」

上条がバン!!と教卓を叩く

なぜ彼がそこにいるのか

今回の話し合いのまとめ役だからだ

ではなぜ、吹寄ではないのか

いや、正確には吹寄もまとめ役ではあるのだが、話の進行をしているのは上条なのだ

吹寄は黒板に全員の意見を並べている

とは言っても、すでに配役や脚本は済んでいて、それについて話し合う必要は無い

問題なのは、全員がまだ一度たりとも合わせたことがない、ということだろう

上条「えー・・・まぁ後ろに並んでいるみんなを見れば分かるとおり、明日もかなりの学生が見学に来るはずだ」

土御門「にゃー、緊張するぜぃ」

上条「被り物とかは作ってるし・・・あとは、合わせるだけだな」

垣根「だったらぶっつけ本番にしようぜ・・・そっちのほうが緊張感出て面白いだろ」

吹寄「ちなみに、一方通行が協力してくれるのも決定よ」

青ピ「なんや、そうなん?」

吹寄「本当はこのクラスの生徒だけでやりたかったけど・・・仕方ないわね」

姫神「・・・じゃあ。他に何を話し合う?」

上条「・・・そうだな、あとは・・・どうしよう」





164 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 18:16:15.681ZRaQx4N0 (31/36)

垣根「・・・そうだな、時間の確認は?」

上条「えっと・・・」

吹寄「体育館が解放されるのが朝の8時30分、私達の劇は11時からよ」

美琴「・・・11時、よし!」

垣根「みんな期待しとけよ、上条さんが大活躍だ」

上条「俺、鬼なんだけど」

黒子「まぁそうでしたの」

土御門「にゃー、あとは他のクラスがダンスやらちょっとした映画みたいなのとか・・・」

姫神「そこまで期待できるものではない」

吹寄「・・・ま、まぁ・・・楽しんでもらえたらそれでいいわよね」

土御門「にゃー、そう願うぜぃ」

垣根「オッケー・・・じゃああとは雑談ってことで」

吹寄「ちゃんと台本でも読んどきなさい・・・」


吹寄が垣根に台本を手渡す

もちろん、それは垣根の作ったものだった






165 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 18:45:24.361ZRaQx4N0 (32/36)

垣根「・・・読む必要はないんだけどなぁ・・・」

垣根がパラパラと台本を捲る

彼は主人公の桃太郎役なのだ

上条演じる鬼と、二大キャラと言っていい

垣根「・・・オッケー、一応台詞は頭に叩き込んどくからさ」

吹寄「頼むわよ」

垣根「あいよー」

チャイムが鳴ったため、そこで話し合いは終わる

この時期はテストの準備期間も重なっていて、午前だけの授業だ

よってこのまま下校することになる

垣根「んじゃあ・・・さっさとホームルーム終わらせて帰ろうぜ」

青ピ「ボクは小萌センセ呼んでくるわぁ!!」

心理「じゃ、よろしくね」

青ピ「ラジャー!!」





166 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 21:20:33.921ZRaQx4N0 (33/36)


小萌「はいはーい!みなさん、明日はお待ちかねの劇があるのですよ!」

垣根「分かってるからさっさと帰らせてくれよ・・・」

小萌「か、垣根ちゃんは先生なんかと一緒にいたくないって言うんですか・・・」ウルウル

垣根「端的に言えば」

小萌「ひどいのですよ」

上条「でもさ先生・・・俺たちも、早く帰って宿題とか劇の練習とかしたいんですよ」

小萌「上条ちゃんが真面目になりました!!明日は台風になるのですよ!」

上条「ならねぇよ!!」

吹寄「じゃあ・・・特に連絡もないようなので、起立!!」

吹寄の号令に従い、生徒がめんどくさそうに立ち上がる

吹寄「礼!」

一同「じゃあまた明日!」

小萌「はーい、さようならなのですよー」


心理「さて・・・美琴と黒子はこれからどうするのよ?」

教科書や宿題のプリントをカバンに詰めながら、心理定規が問いかける

そのカバンもかなりオシャレに変えられているのが気になる





167 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 21:29:09.541ZRaQx4N0 (34/36)

美琴「私はこれから当麻のところだけど?」

黒子「わたくしは軍覇さんと・・・そうですわね、風紀委員の後始末ですの」

心理「あぁ、たしかもう支部も直ったのよね」

黒子「おかげでいろいろと忙しくて・・・」

心理「まぁ頑張りなさいよ」

垣根「おーい、心理定規、御坂」

上条「どっかコンビニにでも寄って行こうぜ」

美琴「あ、うーん」

心理「それじゃ、無理はしないようにね」

黒子「分かっていますの」

四人が手を振って、教室から出て行く


上条「・・・今日って何か面白い週刊誌発売だっけ?」

美琴「うーん・・・特にはないかも」

垣根「至って普通の平日だぜ」

心理「そうね・・・そうかも」





168 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 21:53:49.451ZRaQx4N0 (35/36)

上条「はぁ・・・そういえば、みんなはどうしてるんだろうな」

垣根「知るか・・・テクパトルは仕事が忙しいんじゃねぇの?」

心理「そうかもしれないわね」

美琴「・・・なんか、大変よね」

上条「そうだなぁ・・・」

そんな話をしながら、四人が近くのコンビニに向かう

いつもヒマな時はそこに寄っているのだ

いらっしゃいませ、という店員に軽く会釈をして、週刊誌の並んでいるコーナーへ向かう

上条「おっと、俺ちょっと見たいものがあるんだった」

垣根「なんだよ?」

上条「最近出た飲み物だよ、炭酸」

垣根「あー、そうかい」

興味なさそうに垣根がファッション雑誌を手に取る

上条「あるかな・・・」

飲料のコーナーに行くと、ちょうどそれがプッシュされているようですぐに目に入った

上条「お、ラッキー・・・」

上条がその商品に手を伸ばすと、誰かの手も一緒に伸びた

その白さに、見覚えがある


上条「あれ、一方通行?」

一方「あァ?上条じゃねェか」







169 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/19(土) 22:00:11.911ZRaQx4N0 (36/36)

今日はここまで

筋肉動画はメルビン、2006年オリンピアのプレジャッジ

なんかこの年のロニーもそうでしたが、みんななんか仕上がりが甘い印象でしたね

でもプレジャッジでもダンスを入れてくるメルビンさん

彼のポージングは前半、しっかりと規定のポーズを取り、後半に持ち味のポッピンをしますね

普通のダンス好きなビルダーはずーっとダンスばっかやって、そのために中々いい写真が撮れないらしいですが、メルビンは前半部分がしっかりしているため、撮影家としてもありがたいようです





ではおやすみなさい





170VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/19(土) 22:25:53.99NMTRRc/IO (1/1)

┌─────┐
│い ち お つ.│
└∩───∩┘
  ヽ(`・ω・´)ノ


171VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県)2011/11/20(日) 00:43:17.06PWQbnG/J0 (1/1)

鹿児島県鹿児島市在住の俺が来ましたよ

なんか>>1とは家が近そうでなんかうれしい

俺も高校生だぜ


172VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/20(日) 01:36:22.52f3EkpvXAo (1/1)

乙なんだよ!


173VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(北海道)2011/11/20(日) 08:35:55.82Ci8X/9750 (1/1)

乙です!


174 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:06:11.52Y7KF6RQ60 (1/36)

>>171 灰が降るとホントいやになる今日この頃

上条「お前・・・なんでこんなとこにいるんだ?」

一方「俺がどこにいよォが勝手だろ」

上条「いや、そうじゃなくてさ・・・」

上条が、自分の掴もうとした商品を見る

それは最近、新しく発売された炭酸飲料だ

上条「お前ってこういうの好きだったっけ?」

一方「・・・俺が飲むンじゃねェ」

上条「あ、もしかして打ち止めと番外個体か?」

一方「あァ・・・なンかこのシール集めたらゲコ太グッズが当たるンだとよ」

一方通行が炭酸飲料のペットボトルを二つ掴む

その蓋には、確かにシールが貼られている

ゲコ太キャンペーン、なんていういかにも子供を狙っているキャンペーンだ

上条「へぇ・・・知らなかった」

一方「オリジナルから聞いてねェのかよ」

上条「おーい、美琴!」






175 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:06:40.92Y7KF6RQ60 (2/36)

美琴「ん、何・・・って一方通行じゃない」

一方「よォ・・・」

上条「お前、このシールのキャンペーンって知ってるか?」

美琴「あぁ、知ってるけど・・・でもその商品にも付いてるんだ」

上条「いくつかの商品に付いてるんだな」

一方「・・・他はコーヒーと茶だけだ」

上条「お前はコーヒーでシールを稼ぐってことか」

一方「おかげで最近は好きでもねェ微糖のコーヒーばっか飲ンでるンだよ」

美琴「あら、打ち止めと番外個体のため?」

一方「・・・うるせェ」

美琴「うわぁ・・・なんかアンタってあの二人にはホントデレるわよね」

一方「上条にデレるてめェには言われたくねェけどな」

美琴「な、何よそれ!?」

上条「まぁまぁ・・・美琴も一本買ってみるか?」

美琴「まぁ・・・試しに飲むのも悪くはないわね」





176 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:07:10.18Y7KF6RQ60 (3/36)

一方「・・・で?お前達はなンでこンなコンビニにいるンだよ」

上条「学校帰りだよ・・・ほら、あっちには垣根と心理さん」

上条の指差した先では、二人がファッション雑誌を読んでいる

そんなもの、必要ないほどオシャレに見えるのだが

垣根「・・・なんか最近の流行りは総じてガキっぽいな」

心理「仕方ないわよ、学園都市がそもそも学生ばかりなんだから」

垣根「これ、全国区の雑誌だろ」

心理「・・・あれよ、みんな子供に戻りたいとか」

垣根「・・・流行りなんてすぐに廃れるのにな」

心理「流れて行くから流行りなのよね」

垣根「全く・・・こんなもんに必死にしがみつくヤツらの気が知れないな」

心理「流行ってのは日本人でも信仰してるのよ」

垣根「ふーん・・・」

ペラペラと、適当にページをめくっていく

モデルが誰も、同じようなポーズを取って同じような服を着ている






177 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:07:39.11Y7KF6RQ60 (4/36)

垣根「これのどこがオリジナリティーなんだろうな」

心理「オリジナリティーという名前を借りた現実逃避よ」

垣根「だろうな・・・」

一方「何しみったれた会話してンだよ」

垣根「あぁ?なんだよお前、いたのか」

一方「ひでェ言いようだな」

垣根「・・・で?なんでいるんだよ」

上条「打ち止め達のためにジュース買ってるんだよ」

垣根「はぁ・・・お前がパシリねぇ」

一方「パシリじゃねェ」

美琴「似たようなもんじゃない」

一方「ちっ・・・てめェと似てて我が儘なンだよあいつら」

美琴「私のどこが我が儘なのよ!?」

一方「鏡ってのを知ってるかオリジナル」

美琴「・・・喧嘩売ってるの?」






178 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:08:06.26Y7KF6RQ60 (5/36)

一方「てめェの命でも払い切れないくらいでけェ額だ」

美琴「・・・アンタってホントムカつくわよね」

一方「あァ?」

上条「だから喧嘩するなよ・・・な?」

心理「くだらないわよ二人とも」

美琴「くだらないって・・・」

心理「子供がオモチャを買ってくれってねだってる時に、あなた達は一緒になって地面転がるのかしら」

一方「何が言いたいンだよ」

心理「大人でありなさい、相手が子供ならなおさら」

一方「・・・てめェはオリジナルよりムカつく野郎だ」

垣根「おい、人の女に何言ってくれてんだよ」

一方「ちっ・・・」

上条「そ、そうだ!一方通行は明日の劇の台本、ちゃんと読んでるか!?」

一方「一応な」

美琴「おばあさん役なんだっけ?」





179 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:08:38.73Y7KF6RQ60 (6/36)

一方「あァ・・・腑に落ちねェが番外個体が楽しみにしてるみたいだからな」

垣根「よかったじゃねぇか」

心理「あなた、怖いイメージがあるからここでキャラチェンジしてみなさい」

一方「なンでわざわざそンなことしなきゃならねェンだよ」

上条「・・・とにかく、なんか買おう」

上条がレジの方を指差す

先程までの言い争いがかなり目立ったようだ

店員のにこやかだった表情がいくらか冷たくなっている

心理「仕方ないわね・・・あの店員さん、私がちょっと説得・・・」

垣根「しなくていいから適当に買おうか」

垣根がジュースや菓子を手に持つ

一方「・・・俺はこの二つだけだ」

美琴「自分のは?」

一方「ここには好きなコーヒーがねェンだ」





180 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:09:33.92Y7KF6RQ60 (7/36)

上条「お前・・・たまには他のコーヒーにしようとか思わないのかよ」

一方「興味ねェ」

垣根「さーて、支払い支払い」

財布を取り出し、垣根がさっさと支払いを済ませる

店員の顔にはまた暖かさが戻った

上条「・・・俺はおでん・・・大根と玉子と牛スジ」

美琴「私も同じの」

心理「はんぺん三つ」

垣根「お前、ホントはんぺん大好きだよな」

心理「いいじゃない」

専用の容器に入れられたはんぺんを満足げに持ちながら、心理定規が笑う

一方「・・・お前ら、これからどォすンだ」

上条「俺の家に行って、ちょっとした話し合いかな」

一方「熱心だな・・・」

垣根「俺と上条が重要だからな、今回の劇」





181 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:10:08.28Y7KF6RQ60 (8/36)

美琴「・・・当麻が悪役っていうのは納得いかないけど」

心理「あら、上条君なら鬼だとしてもどこか憎めない鬼になりそうじゃない」

美琴「そ、そうかな・・・」

一方「なンでオリジナルが照れてンだよ」

美琴「だって当麻が褒められたら私だって嬉しいじゃない!」

上条「こらこら美琴さん!?そりゃ俺を誇ってくれてるのは嬉しいけど大声は控えて!」

美琴「ご、ごめん」

道を歩いている学生達が美琴の声に振り返っている

一方「・・・俺は帰る、また明日な」

垣根「番外個体も連れて来いよな」

一方「あァ」

拳をぶつけ合ってから、一方通行が去っていく

心理「なんだか、最近あなたと一方通行・・・仲良しよね」

垣根「昔から友達だったじゃねぇか」

心理「それにしても・・・」





182 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:10:38.42Y7KF6RQ60 (9/36)

美琴「ねぇ、それより早く行こう!」

上条「コタツに早く入りたい・・・」

心理「・・・そうね、私も少し寒いわ」

垣根「んじゃあ行きますか」


上条「・・・で、まずは明日のことだけど」

垣根「うっひゃー!久しぶりだな上条の部屋!」

心理「そうでもないでしょ・・・」

垣根「あぁ、それで明日のことだったな」

上条「・・・心理さんは終盤まで出番がないから、出来れば前半は照明係に回ってほしい」

心理「あら、私に雑用を押し付けるのかしら」

上条「そ、そうじゃ・・・」

垣根「お前さ・・・女には気を遣うべきだろ」

上条「いやいや!だってこれはクラスの問題だし!」

美琴「当麻、当麻は間違ってないんだから強気でいなさい!」

上条「だよな!?」






183 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:11:20.04Y7KF6RQ60 (10/36)

心理「あら・・・まぁいいわ、照明係に回るのね」

垣根「待てよ、上条も中盤からの出番だろ」

上条「俺は裏でセットの準備とかなんだよ」

垣根「はぁ・・・大変なもんだな」

上条「仕方ないだろ・・・」

上条が台本を広げる

彼の出番は劇が始まって20分ほどしてからだ

ちなみに、劇は1時間近い物になっている

垣根はほぼフルで出演するため、かなり大変だろう

美琴「よくこんなに時間もらえたわね・・・」

心理「あら、今回の体験入学はそもそも垣根のおかげなのよ?」

垣根「学校としても俺を客寄せパンダにしたいんだろ」

上条「そういうもんなのかな・・・」

垣根「それを別にどうこう言うつもりはねぇよ」

垣根が台本の隅々をチェックする





184 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:11:46.54Y7KF6RQ60 (11/36)

彼が休憩できるのは場面転換の短い間、そして鬼である上条にスポットが当たる時の二つだけだ

それ以外はほとんどフルで登場する

美琴「そういえば、桃から生まれるのよね」

垣根「あぁ」

美琴「服はやっぱり着てるの?」

垣根「それがな、中々クオリティー高い衣装作ったんだよ、姫神が」

上条「あいつが?」

垣根「あぁ、だからそこは問題ない」

心理「・・・私はホント、終盤だけね」

垣根「出来れば女はゆっくりさせたいからな」

美琴「変なところでフェミニストね・・・」

垣根「さて、後は台詞を覚えるだけだな」

心理「私はともかく・・・垣根と上条君は台詞もかなり多いわね」

上条「全くだよな・・・」





185 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:12:23.09Y7KF6RQ60 (12/36)

垣根「いいじゃねぇか、これくらいないと張り切れないし」

美琴「私は台本読んでいいの?」

垣根「楽しみが無くなっていいならな」

美琴「・・・やめとく」

心理「でも、ぶっつけ本番だからあまり高いクオリティーにはならないでしょうね」

垣根「いいんだよ、高校は楽しいんだって伝えられればさ」

上条「そうだな・・・それが一番の目的なんだからな」

心理「・・・さて、私も台本読み直さないと」

美琴「・・・」

垣根「ここで上条が初めて出てくるから、出来る限り目立つようなライトの当て方で頼む」

心理「あら、鬼にもちゃんとスポットを当てるのね」

垣根「愛と涙の物語だ」

上条「・・・そして、ここで俺と垣根の初対面」

垣根「音響に頼んでとびっきりいいのにしてるから」





186 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:12:51.52Y7KF6RQ60 (13/36)

心理「期待していいのかしら」

垣根「ボチボチな」

上条「・・・へぇ、まだ鬼の存在を知る前に桃太郎は鬼と出会うのか」

垣根「実は鬼の正体は、昔あったヤツでした」

心理「なんだか安物のドッキリみたいね」

美琴「・・・ね、当麻」

上条「あぁごめん・・・今ちょっと打ち合わせ中だから」

美琴「・・・ふーん」

上条「な、なんで不機嫌なんですか!?」

美琴「別に」

上条「美琴が素っ気ない!」

垣根「うるせぇな・・・御坂は上条が構ってくれないから寂しくて一人悶々としてんだよ」

美琴「し、してないわよ!」

上条「構ってほしかったのか・・・」

美琴「う・・・」





187 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:13:24.70Y7KF6RQ60 (14/36)

心理「自分の思いを相手に知ってもらいたいなら、ちゃんと言葉にしなさい」

美琴「・・・違うもん」

美琴が上条のベッドに向かう

そのまま布団の中に隠れてしまった

垣根「こいつ、いつもこんな感じなのか」

上条「あぁ、俺と二人だとこんな感じだけど」

心理「なんとも言えない可愛さね」

上条「だろ?」

布団の中の美琴が真っ赤になる

それは外の三人には見えていないが

垣根「ま、御坂が何でもないって言うんだからほっといて続けようぜ」

心理「ずいぶんと意地悪なのね」

垣根「いいだろ、でここは・・・」

上条「俺が犬、猿、キジを拾う場面か」

垣根「まぁ簡単にサクサクと進めていく」






188 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:14:02.45Y7KF6RQ60 (15/36)

上条「・・・あとは俺が仲間と鬼の被害にあった村を助けていくのか」

心理「桃太郎そのままね」

垣根「まぁそうだな」

垣根がコタツに足を突っ込んだまま横になる

貧乏な上条はエアコンを出来る限り使わない

そのため、コタツだけが暖を取る方法だ

垣根「・・・てか、御坂はいつまでそこに隠れてるつもりなんだよ」

心理「そうよ、美琴」

美琴「・・・だって、私だけなんか仲間外れだもん」

心理「そんなことないわよ」

上条「な、美琴・・・おいで」

美琴「・・・」

無言のまま、美琴が布団から出てくる

いつの間にか枕を抱きしめている

心理「・・・ねぇ、この可愛い生き物は何」





189 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:14:29.56Y7KF6RQ60 (16/36)

垣根「知るか、未確認だ」

上条「み、美琴!おいでおいで!」

美琴「・・・当麻」

美琴がゆっくりと上条に近づく

そして、彼の膝の上に座った

垣根「・・・御坂ってあれだよな、そういう緩急の付け方が上手いんだろうな」

心理「さすがツンデレね」

美琴「ツンデレじゃないわよ!」

上条「はいはい・・・さて、一応の話し合いは終わったな」

垣根「じゃあ飯にしようぜ」

心理「御馳走になるわ」

上条「やっぱり俺が作るんだよな・・・」

美琴「いいじゃない、いつもは奢ってもらってるんだから」

上条「そうだけどさ・・・」

垣根「ほらほら、俺はもう腹が減ってるんだ」






190 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:15:06.12Y7KF6RQ60 (17/36)


上条「分かったよ・・・」

上条がめんどくさそうにキッチンへ向かう

垣根「さて、ニュースっと」

テレビのスイッチを入れると、すぐにニュースのチャンネルに切り替える

アナウンサーが様々な事件を取り上げている

なんでも外の議員の一人が脱税していた、とか事故で二人が死亡、とかそんなものだ

垣根「飲酒運転ねぇ・・・あれってなんで殺人罪じゃないんだろうな」

心理「さぁ?私は知らないわよ」

美琴「・・・脱税なんて、議員のやることじゃないわよ」

垣根「まぁ税なんて納めたくない時もあるけどな」

心理「議員なんてがっぽり儲けてるじゃない」

垣根「間違いないな」

呆れたようにニュースの画面を見つめる

そこで、地方ごとのニュースに切り替わった





191 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:15:36.72Y7KF6RQ60 (18/36)

見慣れたアナウンサーが、学園都市のニュースを読み上げる

来年度、学園都市に新しく入ってくる外からの学生の数やその年齢層の割合

風紀委員の一人が溺れていた子供を助けて表彰された、などだ

美琴「やっぱり外から入ってくる学生も多いわね」

垣根「親は何がしたいんだろうな」

美琴「・・・自分の子供の可能性を信じてみたいんじゃない?」

垣根「可能性を信じる?危険性に怯えただけだな」

心理「あら、でも超能力なんて子供からしたらカッコイイ物なのよ?」

垣根「だとしても、そんな綺麗な世界じゃないだろ・・・大体、超能力者ってだけで厳しくされるし」

美琴「模範になれるように・・・とかよく言われるわね」

垣根「模範に憧れて、それを追い求めて何になるんだろうな・・・そりゃただの模倣・・・」

そこまで言って、垣根が口をつぐむ

画面の端には風紀委員支部連続爆破テロの真犯人の処分が決定した、と書かれている

どうやらあと5分ほどでそのニュースらしい

垣根「・・・表はどうやってあいつを罰するのかね」






192 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:16:05.85Y7KF6RQ60 (19/36)

心理「何のこと?」

垣根「いや、何でもない」

チャンネルを変え、垣根が肩をすくめる

変わったチャンネルでは、子猫の特集をしていた

美琴「可愛い!私も子猫飼いたいなぁ・・・」

心理「ここにも猫ならいるじゃない」

美琴「スフィンクスは愛嬌がありすぎて・・・可愛いんだけどね」

スフィンクスの喉を撫でながら美琴が苦笑する

警戒心なんて微塵もない、ゴロゴロと喉を鳴らすスフィンクス

垣根「・・・そいつはずいぶん人間に慣れてるよな」

美琴「当麻に飼われて長いからかしら」

垣根「かもしれないな」

心理「・・・でも野生の勘が鈍りすぎよね、絶対」

美琴「あはは・・・分かる分かる」

垣根「・・・」





193 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:16:37.35Y7KF6RQ60 (20/36)

無言で垣根が立ち上がる

心理「あら、どこに行くの?」

垣根「隣の部屋、土御門なんだよ・・・あいつにも台本の細かい打ち合わせ、伝えないと」

心理「ずいぶん熱心なのね・・・」

垣根「俺が主人公なんだぜ?」

心理「・・・なんて簡単な理由」

垣根「うるせぇ・・・ちょっとだけ行ってくる」

心理「いってらっしゃい」

美琴「早くしなさいよ」

垣根「分かってるって」

手を振り、垣根がドアを閉める

肌寒い空気が彼を包んだ

隣の部屋のドアをノックする

少しだけ間が開いたあと、土御門が中から顔を覗かせた





194 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:17:03.46Y7KF6RQ60 (21/36)

土御門「よぉ、まさか隣にいたなんて思わなかったぜぃ」

垣根「んなことより、ニュース見たか」

土御門「いいタイミングだ、入れよ」

土御門が垣根を中に招く

すぐさま、テレビのチャンネルを先程のニュースに合わせる

「次は、風紀委員支部連続爆破テロの続報です」

垣根「・・・」

「一連の事件の容疑者である、スタン・ウィリアムズは大まかな犯行を認めているものの、反省の意を認められないと・・・」

土御門「上手く演技してるみたいだな、一から十までなんでも認めたら疑われる」

垣根「ところどころ否定しちまえば、かなりリアリティーが出る」

「統括理事会は、全会一致で禁固3年を言い渡し・・・」

土御門「ま、風紀委員からは一人の死者も出てない」

垣根「学校を爆破するって思惑はお前達のおかげで明るみには知られてすらいない」

土御門「風紀委員支部の再建費用は学園都市が出すし・・・世間ではこれで一件落着だ」






195 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 13:17:30.23Y7KF6RQ60 (22/36)

垣根「呆れちまうな、こんな茶番劇を誰もが信じてるなんて」

土御門「画面を通してしか聞かされていない結末だ、そこには報道規制というフィルターが掛かってるんだからな」

垣根「はん・・・そんなもんか」

垣根がテレビの電源を切る

暗くなった画面に映ったのは、冷めた顔の彼自身だった

垣根「さて、俺は帰るかな」

土御門「そうだ、台本はちゃんと読んだかにゃー?」

垣根「それはこっちの台詞だ」

土御門「なら大丈夫そうだな」

垣根「ま、明日は上手くいくことを祈ろうぜ」

土御門「俺は犬だからあんまり活躍出来ないぜぃ」

垣根「ははは!妹が泣くんじゃねぇの」

笑いながら、垣根がドアを開ける

垣根「せいぜい頑張れよ、犬公」

土御門「主人公とか羨ましい限りだにゃー・・・」

垣根「じゃあな」


 


196 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 14:57:27.96Y7KF6RQ60 (23/36)


上条「おう、お帰り」

垣根「ただいま・・・今日はなんだ?」

上条「今日はって・・・いつもうちで食べてるみたいに言うなよ」

垣根「お、から揚げじゃねぇか」

心理「・・・太るわね」

美琴「・・・気にしたら負けよ」

上条「仕方ないだろ・・・余ってる材料で作れたんだから!!」

垣根「なんでモモ肉が余ったんだよ」

そんなことを言いながら、四人がから揚げを頬張る

垣根「おー、味付けいいじゃんか」

上条「そうかな?」

美琴「さすが当麻ね・・・何個でも食べられるわ」

心理「・・・いいお嫁さんになるわよ」

上条「なれませんから・・・」





197 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 15:00:58.03Y7KF6RQ60 (24/36)

垣根「・・・そういえばさ、御坂ってここに住んでるのか?」

美琴「うーん・・・そうなるのかな」

心理「たしか、常盤台からも許可もらってるんだっけ?」

美琴「うん、エツァリさんが上手くやってくれたみたい」

垣根「あいつ・・・どうせ常盤台のお偉いさんにでも化けたんだろうな」

上条「・・・だろうな」

美琴「でも、おかげで当麻と暮らせてるもん」

心理「・・・でも、この歳で同棲なんて不謹慎よ」

美琴「アンタが言わないで・・・」

心理「あなたは学生じゃない」

美琴「そ、そうだけど・・・」

上条「いいじゃんか、俺は美琴がいると楽しいし」

美琴「と、当麻・・・」

垣根「・・・から揚げが甘くなるでござる」





198 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 15:19:31.79Y7KF6RQ60 (25/36)


垣根「ふー・・・食った食った」

心理「・・・ダイエット、しなきゃ・・・」

上条「・・・心理さんはむしろ痩せてるだろ」

美琴「そうよ、無理なダイエットは肌に悪いし」

心理「分かってるわよそれくらい・・・」

心理定規が溜め息をつく

垣根「じゃ、俺たちはこれで帰るかな」

上条「おう、また明日な」

心理「えぇ、美琴も見に来てね」

美琴「分かってるわよ」

手を振ってから、垣根と心理定規が上条の部屋を去る

肌寒さが、かなり辛い

見ると空にはもう月が綺麗に輝いている





199 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 16:05:46.66Y7KF6RQ60 (26/36)

垣根「寒くないか?」

心理「大丈夫よ」

垣根「そうか」

交わされたのはそんな会話だけで、二人の間には沈黙が流れる

音一つない、というのはこういう状況なのだろう

シンとした、音の存在しない世界

ロマンチックとも、不気味とも取れる世界

そんな中を、一組のカップルだけが歩いている

まるで世界から取り残されたような錯覚の中、垣根が心理定規を見つめる

彼女もまた、垣根を見つめていた

垣根「なんか、不思議だな」

心理「そうね・・・いつもならもっと騒がしいのに」

垣根「・・・あぁ、そういえば今日はあのビルが完成する日じゃなかったか?」

心理「あら、そうなの?」

垣根「オープン初日に行きたいっていうミーハーが多いのかもな」

心理「・・・そうかもしれないわね」





200 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 16:10:23.47Y7KF6RQ60 (27/36)

垣根「・・・でもそのおかげでこんな面白い空間になってるんだよな」

心理「それをあなたと二人占め出来るなんて、素敵じゃない?」

垣根「あぁ、メルヘンだ」

星の輝きが、少しだけ眩しい

月の灯りに照らされている心理定規の横顔は、どこか美しい百合の花のようだった

垣根「お前ってホント美白だよな」

心理「でもね、白すぎると染まりやすいのよ」

垣根「これ以上何に染まるんだよ?」

心理「・・・そうね、悪にも愛にも染まったし・・・」

垣根「だから、それ以上は染まらないさ」

心理「そうだといいわ・・・でも、世の中には悲しみに染まる日もあるのよ?」

垣根「俺といればそんな心配もないさ」

言葉は白い息となり、静かに空へと消えていく

それがとても幻想的で、心理定規は目を細める

心理「・・・ホント、静かで素敵な夜ね」

垣根「・・・真っ暗だな」

心理「そう?結構明るいじゃない」





201 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 16:13:00.38Y7KF6RQ60 (28/36)

垣根「・・・なぁ、世の中には愛って物があると思うか?」

心理「そうね・・・無い、とは思わないわ」

垣根「どうして」

心理「まず、あなたと私の間にあるじゃない」

垣根「・・・これが愛だとは言い切れないだろ?」

心理「愛だと信じてみましょうよ」

垣根「ふーん・・・」

心理「それに、上条君と美琴の間にあるのもそれなはずよ」

垣根「・・・そうなのかな」

心理「あなた、悪魔の証明を知らないの?」

垣根「ないって証明するのは不可能に近いってヤツだろ」

心理「えぇ、そういうこと」

垣根「・・・でも、愛なんて形が無いから分からないよな」

心理「形が無いからいいじゃない」

垣根「・・・そうだよな、その通りだ」





202 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 16:15:30.21Y7KF6RQ60 (29/36)

心理「・・・あら、自動販売機があるじゃない」

垣根「コーヒーでも買うか?」

心理「えぇ」

二人が近くの公園に立ち寄る

だが、そこにはコーヒーは売っていなかった

代わりに「ヤシの実サイダー」とか「いちごおでん」とかいう、ゲテモノが売っていた

垣根「・・・面白いもんが売ってるなおい」

心理「ヤシの実サイダーは普通に美味しそうじゃないの」

垣根「・・・俺は買わない」

心理「いいじゃない、何事もチャレンジよ」

心理定規が小銭を自動販売機に入れる

側面がなぜかへこんでいるが、それは気にしていない

心理「あなたは何がいい?」

垣根「・・・じゃあヤシの実サイダー、冷たいのはイヤなんだけどな」

心理「暖かいのは・・・いちごおでんだけね」

垣根「いらない」





203 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 16:18:20.81Y7KF6RQ60 (30/36)

心理「はい、ヤシの実サイダー」

垣根「あれ?お前はいちごおでんかよ」

心理「暖かいものが飲みたかったのよ」

垣根「・・・それさ、相当甘党じゃないと無理なんだろ」

心理「やってみなきゃ分からないわ」

心理定規が一口だけ飲んでみる

まずすぎる、というわけではないがおでんには合わない味だ

イチゴの甘さはいいものだが、それにダシが加わるとなんとも不愉快な味になる

しかも中途半端にイチゴの形が残っているため、舌触りもザラついている

心理「・・・ダメね、これ」

垣根「・・・ほれ、ヤシの実サイダーやるから」

心理「でももったいないじゃない」

いちごおでんの缶を振りながら、心理定規が言う

垣根「・・・じゃあ俺が飲むから」

心理「・・・大丈夫なの?」

垣根「多分」





204 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 16:21:20.94Y7KF6RQ60 (31/36)


垣根「・・・こりゃひでぇな」

心理「でしょ?これは失敗作よね」

垣根「名前からしてアウトだろ」

心理「・・・そうね、今更ながらに後悔してるわ」

垣根「はぁ・・・仕方ないな」

少し中身の残った缶をゴミ箱に捨て、垣根がもう一本ヤシの実サイダーを購入する

垣根「・・・あ、これは美味いな」

心理「これだけは良さそうだったものね」

垣根「あぁ」

一口飲んでから、その缶をベンチに置く

美味しいのではあるが、缶が冷えているためずっと持っているのはキツイ

垣根「・・・月、めちゃくちゃ綺麗だな」

心理「えぇ・・・とっても綺麗」

垣根「美しい月・・・か」


テクパトル「月ってのはいいもんだぞ、太陽の輝きの恩恵を受けて慎ましく輝く・・・女性に似ている」

垣根「あぁ?テクパトルじゃねぇか」





205 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 16:25:48.17Y7KF6RQ60 (32/36)

19090「あ、二人ともこんばんは!」

垣根「お?19090号もいるのか・・・って同じ勤務先か」

テクパトル「最近は肌寒いな」

心理「えぇ、風邪とかひいてない?」

テクパトル「今のところは大丈夫だ」

垣根「お前らもなんか飲むか?」

テクパトル「いや、コーヒー持ってるからいいよ」

手に握った袋を見せながら、テクパトルが笑う

垣根「・・・いいないいな、コーヒーっていいな」

心理「落ち着きなさい垣根」

19090「お二人はこんなところでどうされたんですか?」

心理「ちょっと散歩みたいなもんよ」

テクパトル「こんな寒い日にか?」

垣根「いいだろ・・・お前たちだって仕事の後に寄り道してんじゃねぇか」

テクパトル「まぁそうなんだけどさ・・・」




206 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 16:34:16.44Y7KF6RQ60 (33/36)

垣根「あーあー、羨ましいもんだな」

テクパトル「そう言うなよ・・・」

テクパトルが肩をすくめる

垣根「・・・で?最近どうよ、仕事のほうは」

テクパトル「まぁまぁかな・・・冬にジムに来たがるヤツは少ないからちょっとヒマだけど」

19090「ミサカはやっと慣れてきました・・・」

心理「あなたは事務系の仕事なの?」

19090「はい、一応そうですね」

垣根「ジムの事務ってか」

三人「」

垣根「ジムの」

心理「もういいのよ垣根・・・もう、いいの」

垣根「心理定規・・・」

テクパトル(この感覚が懐かしい俺はおかしいのか)





207 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 16:42:48.39Y7KF6RQ60 (34/36)

19090「・・・垣根さんと心理定規は、学校に通ってるんですよね?」

垣根「おう、わりと楽しいもんだな」

テクパトル「へぇ・・・そうか」

心理「明日は劇をやるのよ」

テクパトル「劇?なんで」

垣根「今体験入学でさ、まぁ歓迎会みたいな」

テクパトル「そんなことを体験入学でするのか?」

心理「うちの学校はちょっと変わってるのよ」

19090「・・・なんだか楽しそうで羨ましいですね・・・」

垣根「明日はお前、バイトあるのか?」

19090「!!そういえば休みです!!」

心理「じゃあ来なさいよ」

19090「で、でもテっくんは・・・」

テクパトル「いいって、俺はあんまり劇とか興味はないしさ」

垣根「冷めてるねぇ」

テクパトル「俺が気を遣ってるとは考えられないのかよ・・・」





208 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 21:29:02.53Y7KF6RQ60 (35/36)

垣根「・・・じゃあ19090号だけでも来てくれよ」

19090「はい!」

テクパトル「じゃあ・・・俺たちはそろそろ帰るな」

心理「えぇ、またね」

19090「それでは」

二人は、コーヒーを飲みながら去っていく

相当暖かいのだろう、ニコニコと笑う二人の顔は幸せそうだった

垣根「・・・いいなぁ」

心理「私達もそろそろ帰りましょう」

垣根「おうよ」

ヤシの実サイダーを一気に飲み干し、垣根がベンチから立ち上がる

垣根「明日は楽しくなるといいな」

心理「もちろん」


垣根「さーて、桃太郎の始まり始まり!!」

心理「まだよ」





209 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/20(日) 21:31:38.52Y7KF6RQ60 (36/36)

今日はここまで

クリス・カーミアの1998年

45秒辺りの腹筋すっげぇw

彼ってマイク・タイソンに顔が似てますよね

  


ではおやすみなさい





210VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/21(月) 00:28:42.44etsi2iJDo (1/1)

1乙なんだよ


211VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/21(月) 00:29:36.44MmVZncUGo (1/1)

乙なんだよ!


212 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:22:45.36XiKOFH7X0 (1/32)

翌日

清々しい朝日が学園都市を照らす

冬の寒さに身を震わせながらも、学生達は歩いていた

上条「・・・寒いな」

美琴「寒い寒い・・・なんでこんなに寒いのよ・・・」

身を縮こまらせた二人が道を歩く

上条は学ランの上にコートを羽織り、マフラーを巻いて手袋もしている

だが一方の美琴はマフラーだけだ

常盤台中学は制服に関しての校則もかなり厳しい

スカート丈を短くしただけでも、教師からの印象が悪くなるほどだ

ましてや、制服の上にコートを羽織るなんてことをしたら大変なことになる

マフラーだけは許されているのだが、それだけでどうにか出来る寒さではない

上条「カイロいるか?」

美琴「ありがと・・・」

美琴が上条からカイロを受け取る





213 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:23:11.90XiKOFH7X0 (2/32)

かじかんでいた手先が、少しずつ温もりを取り戻す

上条「どうだ?」

美琴「はぁ・・・あったかい」

上条「こうするともっとあったかいぞ」

上条が手袋を片方外し、美琴の手を握る

余った手袋は、美琴の開いた手に被せる

美琴「あ、あったかい・・・」

上条「だろ?」

美琴の顔が赤くなる

寒いからではなく、恥ずかしいからだろう

周りを歩く学生が羨ましそうに上条を見つめている

美琴「・・・な、なんか恥ずかしいわね」

上条「そうか?」

美琴「・・・ううん、幸せなんだけどさ」

ニコリと笑う美琴を、抱きしめてしまいたくなる





214 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:23:43.43XiKOFH7X0 (3/32)

もしも周りに学生がいなかったらそうしていただろう

だが今は生憎、それは出来ない

代わりに少しだけ、手を強く握る

美琴「・・・あ、垣根と心理定規じゃない?」

道の先に、見慣れた二つの背中があった

上条「ホントだ!おーい!」

上条が垣根と心理定規に声を掛ける

垣根「あぁ?なんだ、上条じゃねぇか」

心理「・・・朝からずいぶんと見せ付けてくれるわね」

美琴「えへへ//」

垣根「うっぜぇ!なんだこいつうっぜぇ!」

上条「お前達だって二人で登校してるじゃねぇか!」

垣根「一緒に歩くだけ!手なんて繋いでない!」

心理「・・・しかも手袋を片方美琴に貸してあげてるわ」





215 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:24:11.45XiKOFH7X0 (4/32)

上条「い、いいだろ!?」

垣根「みなさん、これがリア充です」

美琴「何よ・・・いいじゃない」

垣根「まぁいいんだけどさ・・・それより上条」

上条「ん、なんだ?」

垣根「しっかり台本、叩き込んだか?」

上条「!?」

垣根「なんでビビってるんだよ・・・!」

垣根が驚いたような顔をする

気づいてしまったのだ

垣根「俺達が帰った後でヤったんだろ!」

上条「い、言うな!」

垣根「マジだったのかよ!」

美琴「ち、違うわよ?」

心理「明らかにキョドってるじゃない」





216 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:24:43.72XiKOFH7X0 (5/32)

上条「・・・し、してないし」

垣根「なぁ、何回くらい?」

美琴「あぁもう!そんなことより、当麻は台本覚えたの!?」

垣根「俺達が帰ってすぐヤったんだから覚える時間はなかったんだよな!?」

上条「う、うるせぇ!」

心理「はぁ・・・あのね、恋人に口を出すつもりはないけどプライベートと公は分けなさい」

垣根「そうだそうだ!」

上条「・・・そ、その・・・あれだ、覚えた」

垣根「ウソつくんじゃねぇよ」

心理「鬼の一番最初の台詞は?」

上条「こ、こんにちは・・・かな」

心理「違うわよ上条君・・・」

上条「う、ウソだろ!」

垣根「・・・御坂、てめぇが上条を誘惑したからこうなったんだよ」





217 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:25:13.50XiKOFH7X0 (6/32)

美琴「ち、違うわよ!」

垣根「はぁ・・・もういいや、黙れよバカップル」

上条「バカップルってなんなんだよ!」

垣根「てめぇらをバカップルって言うんだよ!台詞覚えないしよ!」

上条「覚えてるって!なんか色々あるよな!」

心理「・・・あら、あれ一方通行じゃない?」

上条「あ、スルーなんですか」

心理定規が指差した先には一方通行がいる

道行く学生を睨みつけるようにして立っている

学生はその視線から外れられるように歩いていた

垣根「通り魔的視線だな」

上条「なんだそりゃ・・・でもたしかにあれはまずいな」

美琴「私達を探してるんじゃないの?」

心理「・・・そうだとしたら会いたくないわね」





218 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:25:40.32XiKOFH7X0 (7/32)

垣根「いや、俺達に協力してくれるんだから会わないとダメだろ」

心理「じょ、冗談よ」

垣根「はぁ・・・つまんない冗談はやめろよ」

心理「・・・何よ」

心理定規が少し泣きそうな顔をする

上条「ほ、ほら!面白かったって!」

美琴「そ、そうよ!」

心理「・・・垣根が笑ってくれなきゃダメなのよ・・・」

上条「垣根!面白かったよな!?」

垣根「はぁ?いやいや、そうでもな・・・」

美琴「面白かったわよね!?」

垣根「お、おう」

心理「そ、そう?」

心理定規が垣根を涙目で見つめる

垣根「なぁ上条!上目遣いって卑怯だよなぁ!?なんかドキドキしちゃうよなぁ!?」





219 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:26:30.10XiKOFH7X0 (8/32)

上条「あ、あぁ」

垣根「・・・心理定規、素晴らしいぞ上目遣い」

心理「?」

垣根「っと、一方通行だったな」

上条「あぁそうだった」

四人が一方通行に近づいていく

上条「おーっす」

一方「あァ?やっと来たか・・・」

美琴「?もしかしてずっと待ってたの?」

一方「ずっとじゃねェ・・・」

上条「悪いな、待たせたのか」

一方「お前達と合流しないと学校に入れないからな」

上条「いや・・・今は体験入学中だから自由に入れるんだけど」

一方「・・・早く言えよ」

上条「お前が学校に行こうと思ってるって知らなかったんだけど・・・」





220 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:27:39.14XiKOFH7X0 (9/32)

心理「意外とやる気だったのね」

一方「打ち止めと番外個体にも見せないといけねェからな」

美琴「あの二人も来るんだ」

心理「いいの・・・?あなた、関係を周りから聞かれるわよ」

美琴「従姉妹ってことにすればいいもん」

上条「まぁそうだな」

垣根「・・・で?お前は台詞、覚えられたのかよ」

一方「当たり前だろ、なンで覚えられないンだよ」

上条「う・・・」

心理「・・・誰かさんに聞かせてあげたいわ」

一方「・・・上条、てめェまだ覚えてないのか」

上条「いや・・・ほら、忙しかったんだって」

垣根「御坂とのエッチで時間取っちゃったんだと」

上条「違うからなぁ!」

一方「ちっ・・・なンでサブの俺がここまで張り切ってンだよ」





221 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:28:31.31XiKOFH7X0 (10/32)

心理「・・・上条君、一方通行を見習いなさい」

上条「はーい・・・」

美琴「あんまり当麻を責めないで・・・私が悪いのよ」

上条「美琴・・・」

心理「同情なんてしないわよ」

美琴(ちっ)

垣根「・・・ま、一方通行も来てくれたんだし急いで学校行こうぜ」

一方「なンだよ、練習無しのぶっつけ本番なンだろォが」

垣根「まぁそうなんだけどさ・・・」

垣根が親指を立て、ニヤリと笑う

垣根「本番前の最後の気合いを入れなきゃな」


吹寄「・・・みんな集まったわね」

教室には凛とした空気が満ちていた

教卓の前に立っている吹寄に、全員が注目している

姫神「・・・吹寄。もうすぐ体育館に移動しなきゃいけない」





222 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:29:20.52XiKOFH7X0 (11/32)

土御門「それまでに話は終わらせてほしいぜぃ」

青ピ「大丈夫やって、ボク達はみんなしっかり台詞覚えてるからな」

吹寄「そうね・・・心配なんていらないわ」

上条「そうそう・・・俺もさっき、台本読み返したしさ」

垣根「お前が一番心配なんだろ」

上条「なんでだよ!?」

心理「静かにしなさい・・・みんなも集中してるんだから」

垣根「さて、じゃあ上条!」

上条「ん?なんだよ」

垣根「こういう時はやっぱりお前がまとめないとダメだからな!」

上条「お、俺が?」

吹寄「・・・悔しいけど、貴様は中々みんなをまとめるのが上手いのよ」

土御門「にゃー、しっかり頼むぜカミやん」

姫神「期待してる」

青ピ「カミやん、早く早く!」





223 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:30:21.36XiKOFH7X0 (12/32)

上条「・・・じゃあ」

吹寄の隣に上条が向かう

クラス全員の心が一つになっていた

上条「みんな、今日までしっかり準備をしてきた・・・俺達の努力を、本番にぶつけよう」

垣根「決まってんだろ」

上条「ぶっつけ本番ってのも、なんだかんだ俺達らしい」

心理「・・・ま、そうね」

上条「・・・体験入学のみんなに楽しんでもらおう」

吹寄「分かってるわよ」

上条「そして、俺達も楽しもう」

青ピ「当たり前やんか」

上条「・・・みんな、力を抜いて・・・」

姫神「・・・緊張は禁物」

上条「そして、しっかり自分の役目を果たそう」





224 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:31:16.26XiKOFH7X0 (13/32)



土御門「了解ですたい!」

上条「みんな!楽しい一日にしてやろう!以上!」

一同「おー!」

クラス全員が拳を高く突き上げる

体験入学二日目

彼らの劇の幕が上がるまで、あと3時間


美琴「・・・いたいた」

黒子「あら、お姉さま!探しましたのよ!」

美琴「ごめんごめん・・・」

佐天「御坂さんもやっぱり来たんですね!」

美琴「だって当麻が主人公で劇をやるのよ!?」

初春「でも劇まではもう少し時間がありますよ?」

美琴「そうなのよね・・・」

佐天「一応、他のクラスの舞台も見てみませんか?」






225 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:32:13.10XiKOFH7X0 (14/32)

黒子「そうですわね」

四人は体育館の前で集合していた

そこには体験入学の生徒がたくさん集まっている

早く並べば早く並ぶほど、いい席を取れるからだ

美琴「・・・私達は真ん中くらいの席でいいわよね」

黒子「えぇ、ちゃんとカメラも持ってきていますの」

佐天「わざわざカメラに撮るんですか?」

美琴「だ、だって・・・」

初春「上条さんの活躍を収めたいんですよね」

初春が笑う

美琴「・・・だって、当麻がこんなことするのって珍しいから・・・」

黒子「たしかに珍しいですわね」

佐天「御坂さんったら、彼氏さんにベタ惚れなんですね」

ニヤニヤと佐天が笑う





226 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:32:44.44XiKOFH7X0 (15/32)

美琴「い、いいじゃない!」

佐天「誰もダメだなんて言ってないですよ?」

美琴「う・・・」

黒子「全くお姉さまは・・・」

そこまで言った黒子が固まった

初春「?どうしたんですか」

佐天「?」

二人が黒子の視線を追う

そこには美琴にそっくりな二人がいた

打ち止め「あー!一方通行の出番は何時からなのか聞くのを忘れてた!ってミサカはミサカは頭を抱えて・・・」

番外「外ではその口調はやめなきゃダメだって、上位個体」

打ち止め「わ、忘れてた・・・」

番外「あーあー、こんなんじゃお姉様に・・・ってお姉様がいた」

打ち止め「あ!ホントだ!」

番外「・・・ちょっと待って、友達と一緒みたいだ」





227 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:33:39.99XiKOFH7X0 (16/32)

打ち止め「?それがどうしたの?」

番外「やっほー、美琴」

美琴「!ひ、久しぶり!」

初春「あ、あの・・・」

美琴「わ、私の従姉妹の・・・」

番外「美樹だよ、よろしく」

佐天「御坂さんの従姉妹!?」

黒子(よくもまぁ咄嗟に嘘が・・・)

打ち止め「あー!あなたは!」

初春「アホ毛ちゃん!」

打ち止め「アホ毛じゃないもん!」

番外「こっちはミサ・・・私の妹の美花だよ」

佐天「ま、また御坂さんの従姉妹!?」

打ち止め「よろしくだぜ!」

初春「な、なんだか前に会った時よりテンションが高い気が・・・」





228 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:34:43.06XiKOFH7X0 (17/32)

番外「初めてこの学校に来るからテンション上がってるんだよ」

番外個体が適当に答える

出来る限り早く、この場から去りたいのだろう

嘘をつき続けるのは中々頭を使うのだから

美琴「二人はこれからどうするの?」

番外「一方通行と合流するかな」

初春「一方通行さんと知り合いなんですか?」

番外「ま、まぁね」

佐天「すごい・・・あ、あの!やっぱり美樹さんも能力者なんですか!?」

番外「い、一応」

佐天「すっごいなぁ・・・さすが御坂さんの従姉妹ですね!」

黒子「まぁまぁ・・・その辺にしておきましょう」

黒子がパンパン、と手を叩く

佐天「あぁ、そうだった」

番外「じゃあ・・・またあとでね」





229 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:35:12.34XiKOFH7X0 (18/32)

美琴「うん・・・一方通行は多分、今は観客席の近くにいるはずよ」

番外「そうなの?」

美琴「関係者ではあるけど、ずっと舞台裏にはいれれないはずだから」

打ち止め「なら適当に探せばそのうち会えるね!」

番外「情報提供ありがとう!」

番外個体が笑いながら駆け出す

打ち止め「待ってー!」

そのあとを、打ち止めが追い掛ける形になった

どう見ても仲良し姉妹にしか見えない

番外個体が姉で打ち止めが妹に見えることだろう

実際はその逆なのだが

佐天「・・・仲良しですね」

美琴「まぁね・・・運命共同体なんだもの」

初春「?」





230 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 11:36:15.01XiKOFH7X0 (19/32)

美琴「あぁごめん、なんでもないわよ」

美琴が笑ってごまかす

時刻は8時半

ちょうど、体育館の入り口が解放された

黒子「あら、開きましたのね」

初春「早く行きましょう、みなさん!」

佐天「オッケー!」

美琴「はぁ・・・なんだか騒がしくなりそうよね」

黒子「大丈夫ですのよお姉さま」

美琴「そうだといいけど・・・」

美琴が不安そうに体育館を見つめる

中はすでに、半分近くの席が埋まっている

美琴「はぁ・・・」


美琴「・・・楽しまなきゃ損よね・・・」





231 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 18:29:58.58XiKOFH7X0 (20/32)


上条「・・・思ったより観客も多いな」

体育館を覗きながら、上条が呟く

用意された椅子だけでは足りなかったため、急遽実行委員がパイプ椅子を並べている

吹寄「・・・すごいわね」

青ピ「垣根の宣伝効果、抜群なんやねぇ・・・」

姫神「・・・これが。貧富の差」

垣根「いや、違うからな」

土御門「・・・緊張するぜぃ・・・」

心理「私達の出番までまだ2時間もあるのよ?」

上条「たった2時間だろ!?」

上条が頭を抱える

彼はまだ、全ての台詞を覚えていない

このままでは美琴が見ている前で台詞をすっ飛ばし、そのまま気まずい空気になるなんていうベタなイベントを発生させてしまいそうだ

上条「はぁ・・・どうすりゃいいんだ・・・」

吹寄「残りの時間で出来る限り叩き込みなさい」

上条「よーし!やってやるよ!!」





232 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 18:37:12.80XiKOFH7X0 (21/32)

垣根「・・・なぁ、一方通行はどこだ?」

心理「たしか・・・まだ外にいるはずよ」

垣根「あいつ時間ギリギリまで打ち止めとか番外個体とかと遊んでるつもりだな・・・」

吹寄「?何のこと?」

垣根「なんでもねぇよ・・・それで、吹寄は照明のほう大丈夫そうか?」

吹寄「まぁ、やってみるわ」

姫神「・・・私は。なぜかおじいさん役」

青ピ「えぇやん、ボクは結局猿なんやで?」

土御門「俺だって犬だぜぃ・・・せめて人間の役を欲しかったにゃー」

垣根「文句を言うな!!現実とは得てして残酷なんだよ!!」

上条「はぁ・・・台詞長いな・・・」

心理「文節で区切って覚えなさい」

上条「むしろ文節を考えないといけないから分からないんだよ!!」

垣根「これだからおバカちゃんは」

上条「おバカ言うな!!」





233 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 19:47:26.39XiKOFH7X0 (22/32)

垣根「まぁまぁ、さっさと覚えろよ」

上条「分かってるよ・・・」

台本をペラペラと捲り、自分の台詞だけをチェックする

上条(・・・ここは、しっかりと大きな声で・・・)

垣根「そして、おっぱいを愛でるように優しく」

上条(・・・ちょっとここは、悲しげでありながらも強く・・・)

垣根「まるで初めての性行為のときのように怯えながら」

上条(・・・ここは、鬼の名台詞だから一番声を張って・・・)

垣根「僕たちは歩いた」

上条「あぁもう!!邪魔すんじゃねぇよ!!」

垣根「はっ、こんなことで気が散るようじゃダメだな」

上条「・・・うぜぇ・・・」

吹寄「上条、貴様の出番は始まって10分くらいからよ・・・だから、それまではしっかりと読み返しなさい」

上条「分かってるって」

土御門「さて、そろそろ他のクラスの発表だぜぃ」

姫神「まるで。文化祭みたい」





234 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 19:51:31.57XiKOFH7X0 (23/32)


美琴「あ、始まったわね」

黒子「やっとですの・・・」

舞台から少し離れた、中ほどの席

そこに四人は座っていた

初春「あ、見てください佐天さん!!なんだかギターがありますよ!!」

佐天「へぇ・・・なんだろ、合唱でもするのかな?」

美琴「ギターで弾きながら・・・ね」

黒子「ですが、クラシックギターの前にマイクとは中々不思議な光景でもありますの」

美琴「ちょっと時代が違うわよね」

初春「そ、そうなんですか?」

佐天「私は普通だと思うけどなぁ」

黒子「風情がどことなく崩れる気がしますの・・・」

美琴「うーん・・・仕方ないけど」

常盤台の二人は注意深く舞台を見つめている

どうやら、演奏するのは一人だけのようだ





235 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 19:57:14.67XiKOFH7X0 (24/32)

美琴「・・・あの人はギターが得意なのかな?」

黒子「そうなのかもしれませんわね」

一人の生徒だけが、舞台の真ん中に現れる

観客席からは少し野次のようなものが飛んでいる

それにニコニコと返しているのを見ると、友達からの野次のようだ

美琴(・・・ギターかぁ・・・いいわね)

黒子(わたくしも、たまにギターの音色を聞きたいことがありますの)

佐天(・・・なんだか、やっぱり二人はお嬢様なんだなぁ・・・)

初春(私も、ギターが好きです!!)

佐天(・・・すごいなぁ、ギターについて熱く語れるなんて)

一礼をした生徒が、ゆっくりとギターを手に持つ

シン、とした会場の中に、ギターの音だけが響き始める

美琴(・・・綺麗)

黒子(・・・中々ですわね)





236VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/21(月) 20:00:56.06nV9e/uGko (1/2)

                          おまえに足りないものは―、それは!!
            ,.   __,,,...   ,.-'"!`ヽ、   情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さーーー
         ,.r''"´''''''"´,.=/,. -'"   人   \   そして何よりもーーーーーー!!!!!
        l__,,,...、-''"´‐''゙" __,,..、-'゙   \  ヽ.
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        `j‐'゙/‐、l_,、 i__        r'-、l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         `゙゙      'ヽ、r ゚`。‐----、_ ゙uulj
                `ヾ―‐‐‐----、`'''======‐‐‐--、..,,,,_______
                          `'――――――----------------―‐
                       ―二      三=
                     ―=≡   r--   二=―      _―――
                    ――二   二―\   ≡=    ―三=― ̄
                   ――三   ≡―  ̄\    三=―= ̄     二=―
                 ――‐二   三=―‐ ―=二    ̄   _==― ̄ ̄
                  ―=/   ≡=―‐     ―二_    二=―
              ――‐二/   /=―  

  ヽ ‐┼‐  ‐‐\‐‐     __/  、ヽヽ ┌─┐   l   l   _/            | ̄| | ̄|. | ̄|
  '''7 lココ      〉    ̄ /``ヽ\  └┬┘   レ  l   / ̄ \  l    l   | |  | |  | |
   ) /|\   、       /    |    ./├       l     __l.     l    l   |__|  |__|  |__|
  ∠-‐‐‐‐--   ゙''‐--   /   、/    /''‐┴‐--    /     し'ヽ     レ    l  □  □  □


237 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 20:02:05.36XiKOFH7X0 (25/32)

舞台の端から、だんだんと生徒が出てくる

アルトサックスやトランペット

そして、舞台の端にあるピアノにも生徒が座った


上条「・・・なんだか、よく聞く曲だな」

青ピ「でもこれ、なんていう曲なんやろ?」

垣根「アランフエス協奏曲だな」

土御門「・・・アランフエス?」

心理「ホアキンの代表曲よ・・・哀愁漂う第二楽章は有名よね」

吹寄「そ、そうなの?」

姫神「・・・よく分からないけど綺麗」

垣根「デイヴィスとかジムとかのアレンジが有名かな」

心理「・・・あぁ、綺麗よね・・・あの子、中々ギター上手じゃない」

垣根「そうだな、他のヤツらもギターの音を殺さないように上手くやってる」





238 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 20:09:31.44XiKOFH7X0 (26/32)

上条「二人はクラシックとか詳しいのか?」

垣根「まぁボチボチかな」

心理「眠くなりたいときにはよく聞くわよ」

土御門「そんなもんかにゃー・・・」

青ピ「なんや、垣根もそういうオシャレなこととか好きなんやな」

垣根「俺は元々そういうキャラだ」

吹寄「そうかしら?」

垣根「・・・にしても、ホントにいい演奏だな・・・」

心理「金賞は取れないけど、しっかりと心を込めているわね」

垣根「あぁ、こりゃ相当生徒にも評判いいだろうな」

上条「・・・なんか、負けたくないよな」

垣根「当たり前だろ、俺たちのほうが印象には残るはずだ」

心理「・・・こんな台本で?」

心理定規が呆れたように台本を掲げる





239 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 20:12:00.67XiKOFH7X0 (27/32)

それは、垣根の作った台本なのだ

少々、というには多すぎるほどのボケも入っている

上条「・・・印象には残るかもな」

垣根「だろ?」

吹寄「まぁ・・・真面目すぎる演劇よりはこういうののほうがいいかもしれないわね」

垣根「文句は言うな、どうせもう変えられないんだ」

土御門「にゃー、そうだぜぃ」

心理「・・・いいんだけどね」

姫神「私は。おじいさん。ふふふ」

青ピ「・・・ボクは猿なんやで?姫やんが羨ましいわぁ・・・」

垣根「・・・にしても、一方通行はまだ来ないのか」

上条「・・・あいつ、何してるのかな」

垣根「・・・どうせ」


垣根「二人に振り回されてるんだろうな」





240 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 20:22:55.56XiKOFH7X0 (28/32)


番外「一方通行!!ミサカたちの席がないじゃん!!」

打ち止め「お前の席ねーよ、みたいな状況だってミ・・・っと、これはダメだったね」

一方「・・・お前たち、並ンでたンだろォが」

番外「いやぁ、アナタを探してたらその間にみんなが座っちゃっててさ」

一方「・・・俺のことなンかほっといて座ればよかったのによ」

打ち止め「そんなこと出来ないよ」

一方(ロリって可愛い)

番外「どうしたの?なんだか泣きそうな顔になってるけど」

一方「なンでもねェ」

打ち止め「それで・・・どうすればいいのかな?」

一方「・・・そォだな、関係者席から見てみるか?」

番外「え、それって大丈夫かな?」





241 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 20:29:55.04XiKOFH7X0 (29/32)

一方「・・・お前たちはオリジナルの従姉妹ってことにしとけ」

番外「いや、そうだけどさ・・・」

打ち止め「ミサカたち、関係者じゃないよ?」

一方「いいンだよ・・・俺が説得する」

一方通行が溜め息をつく

無理矢理劇に誘われたのだから、それくらいは許されるだろう

番外「ひゃっはー!!いい席からアナタの勇姿を見られるんだね!!」

一方「・・・見られたくねェけどな」

打ち止め「MNWに流す用意は出来てるぜ!!」

一方「流すンじゃねェ!!」

そんなやり取りをしている三人の近くに、一人のミサカが寄ってきた

19090「こ、こんにちは」

番外「ん?あれ、19090号じゃんか」

一方「あァ?お前も見に来た・・・」

一方通行が19090号のほうを見て


ぎょっとした






242 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 20:39:47.42XiKOFH7X0 (30/32)

20000「やっほー!!セロリたん!!」

14510「こ、これは緊張しますね・・・お、おはようございます!!」

御坂妹「・・・一方通行派のミサカが大暴れですよ」

17600「みんな静かにしろよな」

10033「おぉ!!ここがお義兄様の学校ですか!!」

13577「ほえー・・・こんなに微妙な校舎だとは思いもしませんでした」

10039「ぶっちゃけ、特徴のない学校ですね」

19090「そ、そんなことを言ったらダメですよ!!」

一方「・・・お前ら、何しに来てンだ・・・」

御坂妹「おはようございます、お義兄様や垣根、そしてあなたが大活躍する桃太郎を見に来ましたよ」

一方「帰れ」

御坂妹「出来ません、見てくださいよこの完璧な特殊メイク」

妹達は全員、17600号によって特殊メイクを施されていた

一見すれば、ただの仲良しグループにしか見えない





243 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 21:07:02.79XiKOFH7X0 (31/32)

一方「・・・ちっ、俺はもォ準備に向かうからなァ」

打ち止め「えっ、もう行っちゃうの?」

一方「・・・お前らみたいな騒がしいのと一緒にいられるか」

一方通行が一人、体育館の裏口に向かう

番外「ちょ、ちょっと!!関係者席・・・」

一方「そンな大人数はさすがに無理だ」

肩をすくめた一方通行が、完全に体育館の影に隠れてしまった

19090「・・・も、もしかして邪魔でしたか?」

番外「・・・いいよ、別に・・・」

10039「愛想のない一方通行ですね」

14510「そんなことを言わないでください!!」

20000「ま、立ってでもいいから見ようぜ」

体育館を指差しながら20000号が笑う


20000「・・・みんな、MNWの準備はいいか?」

ミサカ一同「もっちろん!!」





244 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/21(月) 21:08:34.24XiKOFH7X0 (32/32)

今日はここまで

筋肉動画は山岸選手の指導もしているミロスさんの現役時代

二頭にシンソール、いわゆる詰め物をしていたという疑惑がありますね

二頭は彼の弱点でしたから

それでも、偉大な選手です

  


1999年のオリンピアは面白かった・・・今は個性がない選手がほとんどです

ではおやすみなさい





245VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/21(月) 22:00:06.72nV9e/uGko (2/2)

乙乙乙乙乙乙乙


246VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/21(月) 23:39:56.74C4x4EP7so (1/1)

乙なんだよ!


247 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:29:30.11hjSqr42z0 (1/39)

上条「・・・あと少しだな」

時計を確認した上条が台本を閉じる

垣根「そうだな」

吹寄「・・・今更だけど、かなり緊張するわね」

青ピ「なんや、吹寄でも緊張するんかいな」

吹寄「当たり前でしょ・・・はぁ、なんだか息苦しい」

姫神「私は。目立てるから嬉しい」

土御門「気楽で羨ましいぜぃ」

心理「・・・私は出番がまだまだだから大丈夫だけど」

垣根「よし!じゃあ上条!」

上条「はいはい」

上条がクラス全員を集める

円陣を組み、顔を見合わせる

上条「さて・・・さっきのギターの演奏はかなり盛り上がってた」

心理「そうね・・・」






248 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:30:04.54hjSqr42z0 (2/39)

上条「だから、俺達にもかなり期待されているはずだ」

土御門「ハードルは高くなってるな」

上条「でもそんなことは気にするな!」

全員が、上条の言葉に頷く

上条「俺達は俺達がやるべきことをやればいいんだ!他人と比べた評価なんて好きにさせとけ!」

垣根「よっ!大統領!」

上条「みんな!頑張ろうな!」

一同「おー!」

ダン、と地面を踏み、一同が肩を叩き合う

ちょうど体育館には、次の劇に関するアナウンスが流れていた

上条「姫神、頑張れよ」

姫神「任せて」

一方「よォ」

上条「!来たか一方通行!」

体育館の端から、一方通行が上条に向かって歩いて来る





249 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:30:33.15hjSqr42z0 (3/39)

一方「悪いな、少し遅れた」

上条「気にするな・・・準備は出来たか?」

一方「衣装はこの上から着ればいいンだろ」

吹寄「そうよ・・・大丈夫そうね」

一方「演技力についてはとやかく言うなよ」

心理「楽しく出来ればいいのよ」

一方「あァ」

青ピ「!準備出来たみたいやで!」

青髪が二人を手招く

一方「・・・行くか」

姫神「了解」


美琴「!始まった!」

黒子「・・・まぁ、アナウンスは吹寄さんですのね」

佐天「アナウンスもあるんだ・・・」

初春「あ、アナウンスは吹寄さんの他にもいるみたいですね」

美琴「ふーん・・・あ!一方通行だ!」

黒子「あら、中々古びた衣装が似合ってますわね」





250 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:31:03.22hjSqr42z0 (4/39)

『昔むかし、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました』

姫神「ワシが。おじいさん」

一方「私がおばァさン」

『二人はとても仲良しです、いつも協力し合って生活していました』

一方「竹でも切って来いよジジイ」

姫神「うるせぇ。てめぇは服と一緒に心も洗って来いよババァ」

『ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました』


美琴「・・・仲良し?」

黒子「殺伐としていますの」

佐天「これは・・・中々皮肉が効いてる!」

初春(佐天さんがおかしくなりました)


一方「あァだりィ・・・ジジイのヤツ調子に乗りやがって」

『おばあさんは洗濯物を必死に洗います』

一方「ちっ・・・こンな汚れつけやがってあのジジイ」





251 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:31:30.49hjSqr42z0 (5/39)

『洗濯の間も、大好きなおじいさんのことばかり考えています』

一方「大体よォ・・・あンなジジイだからセックスレスなンだ」


番外「」

打ち止め「セックスレス・・・か、かなり大胆な行動に出た!」

19090「が、学生の前でこれは・・・」

御坂妹「ですが、かなりウケてますね」

20000「いいじゃん、リアリティがあって」

14510「い、いいのでしょうか」


『しばらくすると、川の上流からどんぶらこどんぶらこと桃が流れて来ました』

一方「・・・なンだあれ」

『そのまま、桃は川を流れていきます』

一方「仕方ねェ・・・」

『おばあさんはベクトル変換で、川を逆流させました』






252 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:31:56.65hjSqr42z0 (6/39)

黒子「有り得ませんの!」

美琴「ひ、ひどいわね」

佐天「すごい!あぁいうことも出来るのかな!?」

初春「さ、佐天さん!演技ですから!」

美琴「はぁ・・・頭が痛くなってきた」


『おばあさんは無事に桃を手に入れました』

一方「・・・けどよォ・・・こンなでかい桃、どォやって持って帰るンだ」

『そう、桃は大きすぎるのです』

一方「仕方ねェ・・・能力使うか」

『おばあさんは能力を使い、軽々と桃を持ち上げました』

一方「・・・あァ、だりィな」

『悠々と歩きながら、おばあさんは家へ向かいます』


番外「な、なんだこりゃ」

19090「学園都市ならでは・・・でしょうか」





253 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:32:34.40hjSqr42z0 (7/39)

13577「でもなんか・・・ひどいクオリティーですね」

打ち止め「あの人が大活躍してるよ!」

御坂妹「上位個体は喜んでますね」


『家まで辿り着くのには、かなり時間が掛かります』

一方「や、やべェ・・・チョーカーの・・・電池・・・」

『おばあさんは倒れてしまいました』

一方「・・・クソ・・・」

『段々と、彼の・・・じゃなかった、彼女の体から熱が奪われていきます』

一方「・・・もォだめかもしれねェな」

『今更ながらに後悔しました、朝もおじいさんに素直な気持ちを伝えなかったことを』

一方「・・・はン、くだらねェ・・・」

『後悔しました、桃を拾ったことを』

一方「・・・もォいいじゃねェか」

『後悔しました、おじいさんに最後まで愛している、と言わなかったことを』





254 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:33:25.41hjSqr42z0 (8/39)

一方「・・・時間なンて戻せないンだよ・・・」

『もしも戻せたら、どれほど素敵だったでしょう』


姫神「おばあさん。それは間違ってる」

一方「!お前・・・」

姫神「時間なんて戻せたらいけない」

『おじいさんはなぜか、おばあさんの元に来てくれました』

一方「なンで・・・」

姫神「あなたが困っているなら。私はどこまでも駆け付ける」

一方「・・・なンでそンなことが出来るンだ・・・」

姫神「理由なんてない」

『おじいさんはおばあさんに肩を貸します』

姫神「それが。愛というものだから」

一方「!」


観客席から、拍手がなぜか起きる





255 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:34:07.43hjSqr42z0 (9/39)

美琴「な、何よこれ・・・桃太郎って桃太郎が産まれてからがメインよね!?」

黒子「・・・アレンジを加えすぎですわね」

佐天「いいじゃないですか!これくらいが一番楽しいですよ!」

初春「・・・でも、なんだかややこしいですね」


一方「・・・悪かった」

姫神「時間のベクトルは操れない。それだけ」

一方「・・・あァ」

『おじいさんが、なぜかとても男前に見えます』

姫神「ところで。この桃は何?」

一方「拾ったンだよ、川で」

姫神「なら。持って帰ろう」

『おじいさんは、桃を転がしながらおばあさんを運びます』

一方「・・・やっぱりお前は頼りになるな」

姫神「ありがとう」





256 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:34:46.69hjSqr42z0 (10/39)

一方「・・・」

『おばあさんは、なぜかときめきました』


番外「あぁ!なんかテンポ悪すぎない!?」

10039「・・・もう少しで桃太郎が産まれますよ」

御坂妹「それまでの我慢ですよ」

19090「そうですね・・・」


一方「さて、帰ってきたか」

場面転換は既に終わっていた

ここから、物語が始まる

姫神「じゃあ。桃を切ってみようか」

一方「あァ」

『おばあさんが包丁を桃に当てます』

姫神「スパッと。いっちゃって」

一方「任せろ」





257 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:35:21.35hjSqr42z0 (11/39)

『そして、まさにそれを切ろうとした時』

一方「!?」

姫神「な。何!?」

『桃から、不思議な翼が生えました』


美琴「おかしいおかしい!」

黒子「絶対垣根さんがカッコつけたいだけですの」

佐天「すごい!見てよ初春、翼だ!」

初春「すごいですね佐天さん!」

美琴(ダメねこの二人・・・)


『恐る恐る、その桃を切ると、中には一人の男の子がいました』

垣根「やぁ」

一方「やァ、じゃねェ!」

姫神「あなたは。一体何なの」






258 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:36:12.33hjSqr42z0 (12/39)

垣根「吾輩は男の子である、名前はまだ無い」

『その中にいた男の子は、かなりのイケメンでした』

一方「・・・なンなンだよ全く」

姫神「・・・君は。何?」

垣根「あれだよ、正義の味方」

姫神「・・・とにかく。私達には子供がいない」

一方「あァ・・・歓迎してやるよ」

垣根「マジか、サンキュー」


番外「軽すぎる!」

17600「ひどいクオリティーだな」

14510「・・・ですが、やっと桃太郎は出てきました」

打ち止め「これからだね!」

10039「むしろ、始まってはいけない気もしますが・・・」





259 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:37:06.95hjSqr42z0 (13/39)

『おじいさんとおばあさんは、男の子に桃太郎という名前をつけました』

垣根「桃から産まれたから桃太郎だぁ?」

一方「文句あるなら出ていけ」

垣根「それってさ、一番目に産まれたから一郎って名前にするのと同じくらいベタだぜ」

姫神「仕方ない。私達にセンスなんてないから」

『桃太郎はスクスクと育ちました』

姫神「しかし。お前はホントに成長が早い」

垣根「もう毛が生えました」

一方「・・・」

姫神「そうだ。きびだんご出来てるよ」

垣根「ちっ・・・白い恋人のほうが好みなんだが、仕方ないな」


美琴「・・・時代背景なんかは完全に無視してるのね」

佐天「・・・きびだんごが力の元なんですよ!」

初春「そうですよ!簡単に言えば、アンパンマンの新しい顔です!」

黒子「全く違う気がしますわ」

美琴「はぁ・・・それより、早く当麻の出番にならないかなぁ・・・」





260 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:37:48.29hjSqr42z0 (14/39)

『それからどれほどの月日が経ったでしょう、ある噂が村に流れました』

姫神「知ってる?鬼が出たらしい」

一方「鬼?なンだよそりゃ」

垣根「角が生えてんのかよ?オーガなのかよ?」

姫神「そうみたい」

一方「ちっ・・・どンなヤツなンだよ」

姫神「なんでも。人を襲い食糧を奪うみたい」

垣根「ひでぇなおい」

一方「・・・マジかよ」

姫神「この前は隣の村がやられた」

垣根「めんどくせぇ・・・」

『桃太郎がゴロン、と転がります』

垣根「ばあさん、頼みがある」

姫神「何?」

垣根「とっておきの衣装と・・・きびだんご、用意してくれよ」





261 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:38:25.16hjSqr42z0 (15/39)


上条「・・・悪いな」

『その頃、鬼はある村を襲っていました』

上条「でもな、この食べ物はお前達だけの物じゃないんだよ!」

小萌「そうなのです!あなた達はお金をたくさん持っているのに、こんなに食べ物まで蓄えて・・・」

黄泉川「貧乏な人々には分けようとさえしてないじゃん!」

「か、返せ!この鬼共が!」

上条「鬼で何が悪い!?角が生えてるから鬼か!?」

黄泉川「他人のことを思いやらず、自己中な生活を送るお前達のほうが鬼じゃんよ!」

『鬼達は、お金持ちから食糧を奪いました』

小萌「逃げますよ!」

上条「あぁ!」

『そしてそれを、貧乏な子供達の家に分け与えます』

黄泉川「見つからないようにするじゃんよ」

上条「分かってる」

『自分達を見たら子供は驚きます、だから決して見つからないように』






262 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:39:15.33hjSqr42z0 (16/39)

番外「鬼がめちゃくちゃいいヤツだ!」

19090「これは中々熱い展開になってきましたね!」

17600「ベタだな・・・」

10033「・・・ですが、観客席も盛り上がってますよ」


『桃太郎は、決意をおじいさんとおばあさんに伝えました』

垣根「二人とも、聞いてくれ」

一方「なンだよ改まって」

姫神「借金でもしたの?」

垣根「・・・俺は鬼を退治しに行ってくる」

一方「!?」

姫神「そんな危険な・・・」

垣根「うるせぇ、俺がやりたいんだよ」

一方「・・・お前がやる義理はねェだろ」

垣根「俺がやらない理屈もねぇ」

姫神「・・・鬼はかなり狂暴なはず」





263 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:39:43.81hjSqr42z0 (17/39)

垣根「知ってるよ、だからって誰もが立ち上がらないでいいのか?」

姫神「桃太郎・・・」

垣根「やだね、力がないとか怖いとか、自分には無理だとか誰かがやるとか、そんな言い訳ばっかり並べて偽った人生なんてよ」

一方「・・・分かった」

姫神「おばあさん・・・」

一方「だがな、無事に帰って来い」

垣根「・・・当たり前だろ」

『桃太郎は刀を握ります』

垣根「・・・ここ以外のどこに、帰ってくる家があるんだよ」

『笑いながら、家の戸を開けました』

姫神「無事でね」

一方「無理だけはすンなよな」

垣根「無茶なら大好きだぜ」

一方「またな」

垣根「あぁ」

『桃太郎は旅立ちました、鬼と戦うために』





264 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 15:40:28.89hjSqr42z0 (18/39)

美琴「・・・なんか、ちょっとおかしいわよねこの桃太郎?」

黒子「ちょっとではありませんわ、お姉さま」

佐天「・・・言い訳ばっかり並べて偽った人生・・・か」

初春「考えさせられますよね・・・」

黒子「た、たしかに少しはいい説教もありましたが・・・」

美琴「でもそれとこれとは別・・・なんじゃない?」

佐天「そんなことないですよ!」

初春「そうです!二人とも、もう少し肩の力を抜いて見てみましょうよ!」

美琴「う・・・分かったわよ」

美琴がステージを見つめる

今は場面転換中だ

真っ暗な中に、何人かの人影が見える

黒子「あら、黒子さんが頑張ってますわね」

初春「?白井さんはここにいますよ?」

黒子「・・・違いますの」

美琴「アンタってややこしい名前よね」

黒子「そうですわね」

 


265 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 17:35:30.28hjSqr42z0 (19/39)

初春「あ、再開するみたいですよ!」

佐天「ホントだ!準備終わったのかな!」

美琴「はぁ・・・ま、見るけどね」

黒子「・・・中々にだるい感じですわね」

美琴「このグダグダがいいのかもしれないけどね」


『桃太郎はきびだんごを持ち、旅に出ました』

垣根「・・・しかし、鬼を退治するって言っても何からすればいいか分からないんだよな」

『桃太郎は考えました、とりあえず仲間を作ろうと』

垣根「・・・きびだんごを餌にして釣ってみるか」

『桃太郎がきびだんごを振り回していると、一匹の犬が近づいてきました』

土御門「にゃー」

垣根「犬だって言ってんだよクソが」

土御門「いけね、ワンだワン」

垣根「・・・お前、今暇か?」





266 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 17:35:58.96hjSqr42z0 (20/39)


土御門「あぁ、暇だ・・・ワン」

垣根「どうだよ、きびだんごくれてやるから鬼退治に行かないか?」

土御門「いやいや、きびだんごだけで鬼退治なんか行けるかワン」

垣根「だよな」


番外「!ここに来て桃太郎批判だよ!」

19090「まさか・・・これがメタフィクションですか!」

御坂妹「そこまで衝撃的でもない気がします」

打ち止め「ねぇ、一方通行の出番はもうないのかな?」

17600「おばあさんはもう出てこないかもな」

14510「もうあの勇姿は見れないのですか・・・」

番外「大した活躍もなかったね」


垣根「・・・あれだ、鬼退治出来たらかなり人気が出るぞ」

土御門「な、なんだって?」





267 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 17:36:24.33hjSqr42z0 (21/39)

垣根「女にも人気が出るかもな」

土御門「!是非とも連れていってくれ!」

垣根「いいぜ、ならまずはその幻想を!」

土御門「違うだろ!」

垣根「おっと・・・いいぜ、ならまずはきびだんごを食えよ」

土御門「いいのか?」

『犬はきびだんごを一つ、口に含みました』

土御門「!なんだか力が湧いてきた・・・ワン」

垣根「いい加減語尾に慣れろよ」

土御門「でも二人だけだったらキツイんじゃないか?」

垣根「そうだな・・・他に仲間を探すか」

『再び、桃太郎はきびだんごをかざしました』


初春「あ、アナウンスの声が変わりましたね」

佐天「さっきまでの人の出番が近いのかな?」






268 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 17:36:54.59hjSqr42z0 (22/39)

美琴「そうかもしれないわね・・・」

黒子「となると・・・吹寄さんは猿かキジになりますわね」

美琴「このタイミングだとそうなるわよね」

佐天「・・・どっちなんだろ?」

初春「見ればわかりますよ!」


垣根「・・・ん?あれは猿か」

青ピ「ウキー、なんやアンタ?」

垣根「俺は桃太郎だ」

青ピ「桃太郎はんか、覚えたでー!」

垣根「・・・お前、きびだんご欲しいか?」

青ピ「是非とも貰いたいんやけど!」

垣根「なら一緒に鬼退治行こうぜ、女に人気も出るぞ」

青ピ「ホンマかいな!一石二鳥やんか!」

土御門「これで二人のお供だな」

垣根「二匹だ、なに人間と同等に並ぼうとしてやがんだ下等生物」

土御門「」






269 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 17:37:21.07hjSqr42z0 (23/39)

番外「桃太郎が鬼畜じゃん」

打ち止め「可哀相な犬さん・・・」

20000「でも実際はそうだよね」

御坂妹「仲間というよりお供ですからね」

13577「切り捨てることも出来る存在ですもん」


垣根「・・・あと一匹くらいお供が欲しいな」

吹寄「もしもし桃太郎さん」

垣根「ただいま留守に」

吹寄「そのもしもしじゃないわよ!」

『最後に桃太郎に話し掛けたのはキジでした』

垣根「こりゃ、記事になるな」

吹寄「それはもしかしてきびだんご?」

垣根「記事になるな」

吹寄「私はお腹が空いているの、出来れば一つくださいな」

垣根「記事になるな」





270 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 17:38:11.07hjSqr42z0 (24/39)

吹寄「・・・」

垣根「・・・」

吹寄「一つ私にくださいな」

垣根「・・・鬼退治に行かないか」

吹寄「どうしてですか?」

垣根「俺は鬼退治をして平和を取り戻してみせる」

吹寄「それは本当に平和なのですか?」

垣根「俺の世界の平和は俺が決めた基準に従うもんだ」

吹寄「な、なんという・・・」

垣根「着いて来いよキジ、てめぇなら俺達といい仲間になれる」

吹寄「分かりました・・・きびだんごを貰えるなら仲間になりましょう」

垣根「んなもんいくらでもくれてやるよ」

『こうして、桃太郎は三匹の下僕を手に入れました』


美琴「・・・なんだか、ところどころ垣根色が強すぎるわよね」

黒子「というか・・・アレンジがおかしいですわ」

初春「面白いからいいんですよ!」

佐天「そうそう!ノリで見ないと損しちゃいますよ!」

美琴「そういうもんなのかな・・・」






271 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 17:38:48.09hjSqr42z0 (25/39)



垣根「・・・吹寄、一旦お前は襲われた住人役になれ」

吹寄「キジ役はどうするの?」

垣根「・・・問題ない」

ステージの上で、二人はそんな会話を交わしていた

『桃太郎一行は旅を続けます、ですが中々鬼は現れません』

垣根「あー・・・めんどくせぇ、キジ!空から偵察して来いよ」

吹寄「わ、分かったわ」

『キジは空高く舞い上がりました』

吹寄(さて、村人に着替えないと)

土御門「にしても、鬼ってもっと派手に暴れるものなんじゃないかワン?」

垣根「俺達がいるのを知って怯えてるんじゃねぇのか?」

青ピ「だとしたらかなり怖がりやん」

垣根「鬼の目にも涙ってやつだろ」

『桃太郎が笑うと、どこからか悲鳴が聞こえてきました』

吹寄「お、鬼よ!」

垣根「あぁ?なんだかキジみたいなヤツが村人やってやがる」





272 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 17:39:14.04hjSqr42z0 (26/39)

吹寄「鬼だって言ってんのよ早く来なさい!」

土御門「!鬼がいるぞ桃太郎さん!」

垣根「どれだどれだ?」

上条「よし!みんな食糧は奪ったか!?」

小萌「もちろんなのですよ!」

黄泉川「たくさんもらったじゃん!」

上条「なら・・・」

垣根「待て待てぇ!」

上条「!?」


番外「・・・桃太郎と鬼の初対面か」

20000「初体験か・・・」

打ち止め「違うよ」

19090「・・・段々と物語が中盤に入っていきますね」

10033「これは桃太郎なのですか?」

御坂妹「ミサカの知っている桃太郎ならこの時間でハッピーエンドを迎える短さです」






273 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 17:40:05.60hjSqr42z0 (27/39)

垣根「ひとーつ人の世生き血を啜り!」

上条「桃太郎違いだ!ていうか桃太郎ってなんだ!?」

垣根「てめぇが鬼だな!」

上条「あぁそうだ!俺が鬼だ!」

垣根「貴様の悪事、嫌というほど聞かされた!」

黄泉川「悪事?」

上条「ふん、金持ちから食糧を奪って貧乏な子供達にそっと分け与える、これの何が悪事だ!?」

垣根「・・・あれ、そうだったの?」

上条「知らなかったのかよ!」

垣根「ちっ、やっぱり人から伝え聞いたことなんか簡単には信用出来ないな」

青ピ「で、でも村人は怯えてるんやで?」

上条「あぁそうだ・・・俺達みたいな図体のヤツが現れてみろ!誰だって怯えるに決まってる!」

垣根「はん!俺は怯えちゃいないんだよ!」

『桃太郎が6枚の翼を広げます』


美琴「おかしいわよね!?」

黒子「とうとう明らかなツッコミ所が出てきましたの!」

佐天「おかしいですかね?」

初春「翼があればキジはもういらないですね!」

美琴「おかしい!みんななんかおかしいよ!」





274 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 20:35:02.58hjSqr42z0 (28/39)


『桃太郎と鬼の戦いが始まりました』

垣根「・・・鬼とは名ばかりの義賊・・・ってか?」

上条「御託を並べるつもりはない!!」

『鬼の振るった金棒を、桃太郎は軽くなぎ払います』

上条「ちっ・・・子分鬼!!」

小萌「いくのですよ!!」

黄泉川「任せるじゃん!!」

垣根「無駄無駄ァァァ!!!!!!!!!!」

『桃太郎の力は、あまりにも強大でした』

土御門「俺たちも加勢する・・・ワン!!」

青ピ「ウキー!!」

『犬と猿、二匹の力も借ります』


美琴「・・・なんか、おかしい・・・」

黒子「・・・も、もう桃太郎ではありませんわ・・・」

初春「す、すごいですね!!」





275 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 20:40:00.48hjSqr42z0 (29/39)

上条「な、なんだ・・・こいつら・・・」

垣根「ははは!!桃から生まれた桃太郎!!」

土御門「お供の犬だ!!」

青ピ「同じく猿!!」

上条「くっ・・・一時退却だ!!退くぞ!!」

黄泉川「わ、分かったじゃんよ!!」

小萌「覚えとけなのですよ!!」

『鬼を追い払った桃太郎は、襲われていた女性に話を聞きました』

垣根「おい」

吹寄「あ、ありがとう・・・」

垣根「脱げよ、ほら」

吹寄「」


番外「だ、大胆だ!!」

19090「まだ抱いてません!!」

番外「?」

19090「?」

打ち止め(みんなが壊れていくよ、ってミサカはミサカは呆れてみたり)





276 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 20:44:36.91hjSqr42z0 (30/39)

『どうやら、その女性はお金持ちだったようです』

垣根「なるほど、鬼は金持ちばかり狙うのか」

吹寄「義賊気取りか知らないけど・・・なんだか、ね」

土御門「桃太郎さん、さっさと行くワン!!」

青ピ「そうやで!!ここだけと違う、他のところも荒らされてるんや!!」

垣根「あぁ、そうだな」

『桃太郎は刀を握り締めます』

垣根「・・・救ってやろうぜ」


垣根「間違った正義を貫き続ける・・・かわいそうな鬼達を」


美琴(・・・決まってないわよね)

黒子(ダメですのこれ)

佐天(か、かっこいい!!)

初春(刀の存在意義がないですね・・・)

美琴「・・・あ、場面転換」





277 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 20:50:03.67hjSqr42z0 (31/39)


上条「よし!!逃げるぞ二人とも!!」

小萌「了解なのですよ!!」

黄泉川「ラジャー・・・」

垣根「待てぇ!!」

土御門「ここで会ったが百年目、今日こそ決着を着けるからな!!」

青ピ「覚悟するんやで!!」

上条「くっ・・・」

吹寄「ふん、私の上空偵察を逃れることは出来ないのよ!!」

『桃太郎一行は、明くる日も、そのまた明くる日も鬼と戦いました』

上条「いってぇ!!こいつ本気で殴りやがった!!」

垣根「殴ったんじゃねぇ!!叩いたんだ!!」

上条「同じだろうが!!」

『いつの間にか、桃太郎一行は鬼達を、鬼達は桃太郎一行を、認めるようになって来ました』


20000「あれ、なんかおかしいぞ」

御坂妹「・・・感動の物語にするつもりですね」

13577「友情って大切だから高校に入ろう、みたいな感じですか?」





278 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 20:57:57.70hjSqr42z0 (32/39)

『そして、月日は過ぎました』

垣根「なぁ、お前たちってなんでそんなに盗み働くんだよ」

上条「・・・困ってる人が多いだろ、今の世の中」

土御門「そりゃそうだワン」

吹寄「でも、手を汚して手に入れたもので他人を幸せにしても・・・」

黄泉川「それは、綺麗事じゃんか」

青ピ「せやけどなぁ・・・真面目に働いて手に入れたもので誰かを笑顔にするほうがえぇんやで?」

小萌「私達は鬼ですから・・・どこも雇ってくれないのですよ」

垣根「へぇ・・・そうかい」

『かわいそうだな、と桃太郎たちは思いました』

垣根「・・・人と違うだけで虐げられる、ねぇ」


美琴(・・・こ、これ、桃太郎よね?)

黒子(なんですの・・・この悲しい現実は)

佐天(す、すごいリアリティ・・・)

初春(・・・お花が枯れそうです)





279 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 21:04:49.17hjSqr42z0 (33/39)

『しかし、桃太郎と鬼は敵なのです』

垣根「さーて!!それでも俺はお前たちを止める!!」

上条「いいぜ!!ならまずはその幸せすぎる幻想をぶち殺す!!」

土御門「やってやるぜぃ!!」

『信じた正義を貫くために、彼らは戦いました』

吹寄「くっ・・・桃太郎さん!!」

垣根「きびだんごじゃぁ!!!」

青ピ「ボクもボクも!!」

黄泉川「くっ・・・退却するじゃんよ!!」

上条「あ、あぁ!!」

『更に月日は流れました、気づけば桃太郎が旅立って二年も経っていたのです』


10039「・・・長いですね」

19090「ですが、もうそろそろ終盤の時間ですね」

打ち止め「鬼が島なのかな?」





280 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 21:11:41.89hjSqr42z0 (34/39)


『桃太郎たちは、ある日鬼に尋ねました』

垣根「・・・どうしても、これを続けるのか」

上条「当たり前だ」

吹寄「・・・こんな方法じゃ、誰も幸せにはなれない」

上条「・・・それでもやるんだよ」

『鬼は、遠くの島を指差しました』

上条「見ろよ、あそこには俺たちみたいな鬼がたくさん住んでる」

垣根「なに?」

小萌「・・・他の村では暮らせないから、島に篭るしかないのですよ」

青ピ「そんな可愛そうな・・・」

黄泉川「それでも、私達は構わないじゃん」

上条「・・・一度来てみろ、それでもお前たちがまだ綺麗事を並べるなら・・・」


上条「俺が、その幻想を殺すしかないんだ」


美琴(か、かっこいい!!)

黒子(なんですのこの茶番劇)

佐天(なんか、上条さんの台詞でも黄色い声援が上がってるね)

初春(・・・垣根さんと並んで、二大人気者になりますね・・・ブロマイドとか売れるかもしれません)





281 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 21:18:35.36hjSqr42z0 (35/39)


『桃太郎たちは、鬼が島に来ました』

垣根「・・・へぇ、たしかにこりゃひどいな」

青ピ「こ、ここ・・・本当に日本かいな・・・」

吹寄「・・・ひどい、子供達が地べたに寝てる・・・」

土御門「・・・すごい光景だな」

垣根「・・・知るか、俺はあいつらを止めに旅に出たんだ」

吹寄「で、でも・・・」

垣根「文句があるなら帰りな」

『桃太郎は一人で進みます、そしてたどり着いたのは大きなお城でした』

垣根「・・・どうせ、こんなところにいるんだろうな」


番外(よし、決戦だ決戦!!)

御坂妹(・・・能力使うんですかね)

14510(・・・生徒も期待してますね)

20000(やっべ、興奮してきた)





282 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 21:25:10.61hjSqr42z0 (36/39)

上条「・・・よく来たな・・・犬達はどうした」

垣根「あいつらは今頃街の中で驚愕の表情を浮べてるさ」

上条「ひどい有様だっただろう?」

垣根「あぁ、どこのスラムなんだよありゃ」

上条「・・・それでも、お前は綺麗事を並べるか?」

垣根「もちろん」

『桃太郎が翼を広げました』

上条「・・・なぜだ」

垣根「・・・理由なんてないさ、俺が正義を愛し、正義を貫き、正義に生きると決めたから、それだけなんだろうよ」

上条「・・・いいぜ、なら俺はお前の幻想を叩き切ってやる」

垣根「やれるもんなら」

『鬼は金棒を握ります』

上条「・・・行くぞ、桃太郎!!!」

垣根「ゴチャゴチャ言ってないでかかってこんかいウスノロォ!!!」



美琴(ほ、本当に能力使ってるわよ!?)

黒子(み、みなさん見惚れてますの!!)





283 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 21:31:19.20hjSqr42z0 (37/39)

『二人は戦います』

垣根「衝撃のぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

上条「まずは、その幻想を!!」


垣根「ファーストブリッドォォォォ!!!」

上条「ぶち殺す!!!」

『桃太郎は戦いました、しかしそれでも鬼は強かったのです』


垣根「く、くそ・・・」

上条「・・・こんなものだったのか、桃太郎?」

垣根「は・・・ははは・・・」

上条「俺たちの夢を否定して!!そんなお前の力はこれほどに小さかったんだ!!」

垣根「うるせぇ!!夢だと!?悲しい夢だな、哀れだぞ!!」

上条「もういい・・・お前たち!!」

小萌「はいなのですよー」

黄泉川「さて、これで終わりじゃん!!」

『二人の鬼が、後ろから現れました』

垣根「ちくしょう・・・このままじゃ・・・」





284 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 21:37:36.98hjSqr42z0 (38/39)

上条「桃太郎!!お前の正義は正しいのかもしれない、でもな!!」

『鬼は金棒を握り締め、桃太郎に向けて振り上げます』

上条「正しいことが通らない世の中なんだよ!!」

小萌「覚悟なのですよ!!」

黄泉川「恨むなよ!!」

垣根「・・・ふざけんなよ・・・」

『桃太郎は信じました、きっと自分の正義が正しいと』

上条「鬼の力を、甘く見るなぁ!!!」

垣根「・・・そうだ・・・そうだ、俺の正義は・・・誰もが笑顔になれる正義だ」


土御門「そこまでだぁ!!」

上条「!?」

吹寄「待たせたわね桃太郎さん!!」

垣根「お、お前達・・・」

青ピ「・・・何驚いてんねん!!」

『城の扉を開いたのは、三匹の仲間達でした』


土御門・青ピ・吹寄「仲間を見捨てることなんか、出来ないんだよ!!」





285 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/22(火) 21:40:23.47hjSqr42z0 (39/39)

今日はここまで

あれ、なんかおかしくなってきたけど気にしない

早くバレンタインの話が書きたいよ

筋肉動画は、ロニーの1991年

この頃はまだステロイドさえ使ってなかったらしいですね

二頭、背中はさすがです

  

ではおやすみなさい






286VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区)2011/11/22(火) 22:58:30.47KdFuvZBLo (1/1)

乙乙!!
桃太郎…なのか


287VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県)2011/11/22(火) 23:55:12.90Lne1HdVC0 (1/1)

桃太郎は詳しくは読まなかったが
鬼を退治するまでにこんなドラマがあったとは


288VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県)2011/11/23(水) 00:32:51.36bgNxZ4AWo (1/1)

ちょっと文化祭でやってくる


289VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方)2011/11/23(水) 02:02:03.46W53XYzFFo (1/1)

桃鉄でもここまで飛躍してないけど…
面白いなwwwwwwwwwwwwww


290 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:52:24.252tIbWPOs0 (1/28)

上条「な、なんで・・・」

土御門「あぁそうだ!お前達みたいな大層な理由なんてないんだワン!」

青ピ「ボク達には理由なんてないし、この正義でたくさんの人は救えないかもしれない!」

上条「だったら・・・」

吹寄「それじゃああなた達の正義で、あの子鬼達は救われるの!?」

上条「!」

『鬼の顔に、焦りが浮かびました』

吹寄「変わらないわ・・・こんなことを繰り返しても、結局は鬼が危険なんだって思われるだけよ!」

黄泉川「だったらどうすればいいじゃんよ!?」

垣根「・・・どうすればいいか・・・なんてなぁ」

『桃太郎が刀を握ります』

垣根「んなことはこれから考えればいいんだ・・・」

上条「ふざけんなよ・・・お前達みたいな幸せなヤツらには分からないさ!」

垣根「正しい道なんていつだって選べる!だがな!」


垣根「間違った道を正すには、今しかないんだよ!」

観客席から拍手が巻き起こる

何人かの生徒は、カメラで写真を撮っている






291 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:52:55.672tIbWPOs0 (2/28)

初春「すごい盛り上がりですね、佐天さん!」

佐天「うん!なんかかなり面白いよ!」

黒子「おかしいですわ・・・何かがおかしいですの」

美琴「当麻が悪役なのがそもそもおかしいのよ・・・」


垣根「鬼がどうした!もしもお前が鬼じゃなかったら、悪事を働かなかったか!?」

上条「・・・うるさい」

垣根「違うんだよ、言い訳ばっかりしやがって!てめぇらは結局、誰かを傷つけなきゃ生きていけなかったんだ!」

上条「何がわかるんだよ桃太郎!」

垣根「分かっちゃいねぇさ!でもな、手を差し延べてもいいだろうが!」

『桃太郎が刀を振るいます、鬼もそれに応戦します』

上条「何が・・・何が正しくて何が間違いなんだよ!」

垣根「んなもんは決まってなんかいないんだ!」

上条「だったらお前は、どうして俺達を非難するんだ!」

垣根「死んだ目をしてるからだ・・・てめぇが!死んだ目をしてるからなんだよ!」

上条「!」






292 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:53:33.492tIbWPOs0 (3/28)

垣根「あぁそうだな・・・ここにどれほどの鬼がいる、どれほどの捕えた人間がいる!?」

上条「お前には関係ない!」

垣根「関係あるんだ!俺は知ってる、お前達は普通に笑えて普通に怒れるヤツだって!」

小萌「!」

土御門「そうだワン!」

吹寄「一度化け物扱いされたからって・・・それだけで絶望しないで!」

青ピ「ボク達が手助けしてあげるから、立ち直るんや!」

上条「だったら俺を止めてみろ!」

『鬼が全力で、金棒を振り回します』

垣根「・・・あぁ、止めてやる」


垣根「てめぇの悲劇を、止めてやる!」


番外「熱い展開だね!」

19090「こんなに熱い劇だとは思いませんでした!」

打ち止め「一方通行があんまり出てない!」

御坂妹「というか・・・心理定規はまだ出ていませんね」






293 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:54:17.062tIbWPOs0 (4/28)

『桃太郎の刀が、鬼の金棒を切り裂きました』

上条「・・・ちくしょう」

垣根「覚悟しやがれこの馬鹿野郎!」

黄泉川「避けろ!」

小萌「避けるのですよ!」

上条「・・・いいんだ」

吹寄「桃太郎さん!」

『桃太郎の刀が、鬼の頭の上から振り下ろされます』

土御門「桃太郎!」

青ピ「それじゃ・・・」

垣根「んなわけがあるかすっとぼけ!」

上条「ごふぅ!」


美琴「垣根!当麻に膝蹴りした!」

黒子「お、お姉さま、落ち着いてくださいまし!」

佐天「いいぞ!やれやれ!」

初春「写真撮りますよ!」






294 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:55:09.822tIbWPOs0 (5/28)

上条「な、なん・・・」

垣根「斬ると思ったか!?馬鹿言うんじゃねぇ!」

『桃太郎が鬼の顔を殴ります』

上条「ぐっ・・・」

垣根「救ってやるって言ったんだ!」

上条「お前に何が出来る!?人間なんて簡単には変わらないんだ!」

垣根「だからどうした!変わらないわけじゃない!」

上条「今すぐ変わらなきゃ意味がないんだよ!」

垣根「んなこと言って逃げてんじゃねぇよ!」

上条「!」

垣根「いいか!悪事を働くよりも、綺麗事を並べたほうがいいだろ!」

上条「んなこと・・・」

垣根「・・・それに、お前達は決して化け物なんかじゃねぇ」

土御門「桃太郎・・・」

垣根「いいんだよ、ゆっくりでも・・・周りのヤツらがお前達を化け物だって笑ったら、俺がそいつらをぶん殴る」

小萌「・・・本当なのですか?」





295 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:55:56.982tIbWPOs0 (6/28)

垣根「あぁ・・・当たり前だろ」

黄泉川「どうして・・・」

垣根「なんでかって?決まってるだろ」


垣根「友達だからだ」


番外「くっせぇ!あぁくっせぇ!」

10033「あれですか!これはどこかの学園物ですか!」

御坂妹「桃太郎じゃねぇ!」

打ち止め「でも観客は喜んでるよ?」


垣根「・・・さて、まずは捕まえたヤツらを解放しろ」

上条「・・・分かった」

『鬼が、檻を開けます』

吹寄「かなり捕まってたのね・・・」

垣根「人をさらってどうするつもりだったんだよ?」





296 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:56:41.492tIbWPOs0 (7/28)

上条「・・・この人達に、俺達が化け物じゃないって理解してほしくて」

垣根「はぁ・・・無理矢理捕まえたらビビってそれどころじゃないだろ」

黄泉川「そうだったのか!気づかなかったじゃん!」

垣根「・・・あ?女もいるじゃねぇか」

心理「・・・あなた、誰?」

垣根「桃太郎だけど」

『檻の中には、一人の美女がいました』

心理「・・・中々男前じゃない」

垣根「は、はぁ?」

心理「決めた、あなた・・・私の旦那になりなさい」

垣根「はぁ?」

土御門「な、なんなんだワン!?」

青ピ「ホンマや!鬼退治したら女の子に人気が出るってホンマやったんや!」

吹寄「な、何よこれは!?」

上条「待てこら!そんな理由で俺達を退治しようとしてやがったのか!」





297 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:57:30.342tIbWPOs0 (8/28)

垣根「い、いや・・・」

心理「ねぇ、今晩開いてる?」

垣根「開いてます」

黄泉川「こらこら!そういうのはまだ早いじゃんよ!」

小萌「大体、まずは私達をどうするか考えてほしいのですよ!」

心理「そんなことより私と桃太郎の育みのほうが先よ」

垣根「育みってなんだよ生々しいな!」

上条「あぁちくしょう!桃太郎、一発殴らせろ!」

垣根「ふざけんなぁぁぁ!」

心理「ねぇ、早くどこかの宿に行きましょう」

垣根「こんな桃太郎はイヤだぁぁぁぁ!」

『桃太郎も鬼も、笑っていました』

『人と鬼が幸せに暮らせるのか』

『それはまた、別のお話』

『ただ、桃太郎は鬼を救い、鬼は桃太郎を信じました』





298 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:58:05.582tIbWPOs0 (9/28)

『そこに、確かな友情が芽生えたのでした』

『めでたしめでたし』

大きな拍手が観客席から鳴り響く

中には、泣きそうになっている生徒がいた

美琴「・・・なんなのよ・・・なんなのよこの桃太郎!?」

黒子「納得がいきませんの!大体、能力を活かすとか言っててそれほどでもありませんでしたの!」

初春「面白かったですよ?」

佐天「そうですよ、二人とも堅いなぁ」

黒子「わたくし達がおかしいんですの!?」

美琴「おかしくない!私達が正しいわよ!」


番外「・・・一方通行、あんまり出なかった」

打ち止め「でも面白かったね!」

17600「そうか?笑いも感動も中途半端だったじゃないか」

13577「・・・たしかに」

御坂妹「はぁ・・・ですが、一応は無事に終わりましたね」

ミサカ達が苦笑する






299 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:58:48.882tIbWPOs0 (10/28)



垣根「終わったぁぁ!」

上条「意外とウケてたな!」

舞台裏では、一同が安堵の表情を浮かべていた

吹寄「はぁ・・・緊張したわ」

土御門「にゃー、このにゃー口調が懐かしいぜぃ」

青ピ「なぁ、ボク達って目立てたんかなぁ?」

小萌「こんなに楽しいのは久しぶりだったのですよ!」

黄泉川「まさか生徒の劇を手伝うことになるなんて思いもしなかったじゃん!」

心理「私の出番が少なかったのは納得いかないけど・・・楽しかったわ」

垣根「はぁ・・・緊張が解けるな」

垣根がケラケラと笑う

クラスの仲間も、みんなが拍手をしている

既に舞台では次のクラスが出し物をしていた

それを見る余裕は、今の垣根達にはないが

垣根「はぁ・・・無事に終わったな・・・」

上条「よかったな、楽しかったよ」






300 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 16:59:34.782tIbWPOs0 (11/28)

垣根「あぁ・・・俺も楽しかった」

吹寄「・・・ありがとう、垣根」

垣根「あぁ?なんだよ急に」

吹寄「・・・確かに、台本の出来は微妙だったわ」

垣根「待てやこら」

吹寄「でも・・・私が書いても、ただ真面目になってたと思う」

姫神「・・・今回みたいなふざけていて楽しい台本は。垣根にしか書けなかった」

垣根「・・・」

姫神「何」

垣根「お前いたんだな、一方通行と一緒にどっか行ったかと思ってた」

姫神「ひどい」

垣根「悪い悪い・・・でも姫神もかなりよかったな」

姫神「ありがとう」

土御門「・・・さて、じゃあ最後もカミやんに締めてもらうか」

上条「俺でいいのか?」





301 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:00:31.172tIbWPOs0 (12/28)

垣根「当たり前だろ、こういうのはお前が一番向いてるんだから」

心理「早くしてよね、私も観客席で他のクラスの出し物を見たいんだから」

上条「はいはい・・・じゃあみんな」

上条がクルリ、とクラスの仲間を見回す

体験入学という機会があったからこそ、今回のような劇をすることが出来た

そして、そんなことに必死になって打ち込める仲間達なのだ

上条「・・・みんな、本当にお疲れ様」

青ピ「そんなの、みんな思ってることやって」

小萌「でも、誰かが言わなきゃいけないことなのです」

黄泉川「ホント、楽しかったじゃんよ!」

上条「まぁ、今回の劇は観客からしたらツッコミ所満載だったかもしれない!」

吹寄「私達もツッコみたいけど・・・」

上条「でも、それでも俺達にとっては大切な思い出になるはずだ!」

土御門「あぁ!」

上条「じゃ、お手を拝借!」

一同が手を翳す





302 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:01:29.232tIbWPOs0 (13/28)

上条「一本締めだ!よーっ!」

パン!と小気味のよい音が舞台裏に響いた


美琴「・・・はぁ、体験入学も終わったわね」

上条の学校からの帰り道

美琴はぽつりと呟いていた

結局、舞台のピークは上条達のクラスの出し物だった

そのあとは段々と右肩下がりになってしまった

中には途中で寝てしまう者もいた

上条「あぁ・・・終わったな」

隣を歩く上条が頷く

学校も早々に終わったため、美琴と寮に向かって帰っている

打ち上げが明日あるため、今日のうちに美琴とイチャイチャする必要がある

上条「・・・どうだった?常盤台のみんなは楽しめたのかな」

美琴「当麻と垣根の二大政党が出来そうな勢いよ」

上条「そ、そうなのか?」

美琴「はぁ・・・まさか観客席に妹達までいたなんて知らなかった」





303 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:02:19.802tIbWPOs0 (14/28)

上条「あいつらも来てたのか・・・楽しめたかな」

美琴「うん、きっと楽しめたわよ」

美琴がニコニコと笑う

冬の冷たい空気も、なぜか暖かく感じた


一方「・・・」

番外「アナタがあんまり出てなかったからがっかりだよ!」

一方「俺はあのクラスじゃねェンだ、仕方ないだろ」

御坂妹「とか言って、ホントは目立ちたかったんじゃないですか?」

19090「一方通行は意外と出たがりですからね」

一方「あァ?」

打ち止め「でも面白かったよ!ってミサカはミサカは感想を述べてみたり!」

一方「だよなァ!?」

14510「・・・はぁ、たしかに面白かったですけど」

10039「あれは桃太郎だったんですか?」

一方「・・・知るか」

ミサカと一方通行という異質の組み合わせで、病院へと向かう





304 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:03:28.092tIbWPOs0 (15/28)

妹達は病院に住んでいるのだ

一方「・・・でもまァ」

番外「?何?」

一方「・・・なンでもねェ」

一方通行が妹達を置いて、少し先に歩き出す

打ち止め「ま、待って!」

一方「・・・はン」


一方「楽しかったな」


垣根「・・・だから、姫神は可愛かったけどやっぱり心理定規が一番だったんだよ」

姫神「それは。惚気」

心理「私は嬉しいからいいわよ」

吹寄「・・・」

垣根は三人に囲まれるようにして歩いていた

桃太郎で主人公を演じた彼も、友達といる時は普通の学生だった

垣根「吹寄も中々よかったな」





305 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:04:37.902tIbWPOs0 (16/28)

吹寄「そ、そう?」

姫神「吹寄。顔がにやけてる」

吹寄「そんなことないわよ!」

心理「垣根・・・あなた、そうやって誰にでもフラグを建てないでよね」

垣根「悪い悪い・・・ま、許してくれや」

垣根がケラケラと笑った

白い息が、空へと昇っていく

垣根「・・・楽しかったか、みんな」

姫神「楽しかった」

吹寄「もう少し真面目にしたかったけどね」

心理「私も楽しかったわよ、ありがとう」

垣根「そうかい」

垣根が楽しそうに笑う

本当に、無邪気な子供のような笑みだった

垣根「俺も楽しかったからな」

満足そうに、垣根が振り向いた

垣根「それにしても・・・」



垣根「みんなの楽しんでる表情はやっぱり、メルヘンだったな!!」

三人「・・・はぁ?」

冷たい空気の中に、垣根の笑い声だけが響いた





306 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:40:47.422tIbWPOs0 (17/28)

バレンタイン とある青年の場合

ゴーグル男はわりと冷めた性格だ

世の中の色んなお祝い事にも、それほど興味はない

もちろん、お正月などはテンションが上がるのも事実だが

そして、そんな彼が最も理解出来ないお祝い事がある

「バレンタイン」

あれって何のためにあるのだろう、とゴーグル男は考える

まず、恋人のためにあるという意見

それは違う、バレンタインは告白するためのお祝い事なのだから恋人がわざわざ祝うことはない

ならば、告白するためのお祝い事という意見

だとしたら、そんなきっかけでもない限り告白出来なかったのだろう

そこまで弱い意志で、交際が続くとは思えない

よって、ゴーグル男にとってバレンタインとは、ただチョコを作ってる会社が売上を上げるためだけに作り出したお祝い事、なのだ

なのだが

ゴーグル(・・・明日はバレンタインっすか)

ゴーグル男は胸をときめかせていた






307 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:41:19.402tIbWPOs0 (18/28)

期待などしてはいない

しかし、なぜか彼は少しドキドキしていた

理由はある一件のメール

心理定規からのものだった

「明日の午前、垣根が用事のために外出する」

「その間、チョコを選ぶのに付き合ってもらえないか」

という内容だ

つまり、心理定規は垣根のためにチョコを買いたいのだろう

ゴーグル(いや、分かってますけど・・・)

心理定規はゴーグル男に異性として興味はない

それに、ゴーグル男も心理定規のことはとっくに諦めている

それでもドキドキするものだ

憧れのアイドルとデート出来る、といってドキドキしない男性はいないはず

それと全く同じなのだ、彼にとっては

ゴーグル「・・・緊張します」






308 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:41:48.912tIbWPOs0 (19/28)

浜面「お?明日か、明日のことか!」

ゴーグル「あぁ浜面さん・・・おはようっす」

リビングに浜面がやってきた

いつも一緒に降りて来るはずの滝壺がいない

ゴーグル「滝壺さんはどうしたんすか?」

浜面「出かけたよ、たしか麦野と絹旗と一緒に」

ゴーグル「あの三人がですか・・・なんか珍しいっすね」

浜面「チョコ買いに行ったに決まってるだろ!」

ゴーグル「あの三人がですか?」

ゴーグル男が驚いたように呟く

三人はあまり、そういうことに興味がありそうではない

浜面「・・・いや、バレンタインなら誰だってチョコくらい用意するぞ?」

ゴーグル「・・・そうなんですかね?」

浜面「そういうお前は、明日に予定とかないのかよ?」

ゴーグル「心理定規さんと出かけることになってますけど」

浜面「」





309 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:42:37.352tIbWPOs0 (20/28)

浜面が、この世の終わりとでもいいたげな顔になった

浜面「フレンダとじゃないのかよ!てかあの姉ちゃんと出かける!?なんかちょっと羨ましいぞお前!」

ゴーグル「浜面さんは滝壺さんがいるじゃないですか」

浜面「そうだけど美人には興味あるんだよ!」

ゴーグル「ダメっす、垣根さんに殺されますよ」

浜面「そうだった・・・じゃなくて!なんであの姉ちゃんは垣根と出かけないんだ?」

ゴーグル「垣根さんは午前に用事があるみたいで、その間にチョコを買いたいらしいっす」

浜面「・・・お前、それでよく付き合う気になったな」

ゴーグル「あの二人の仲は取り持ちたいっすから」

ゴーグル男が携帯を開く

一番最近来たメールが心理定規のもの

心の中に、何か複雑な感情が生まれる

嬉しいのではある

憧れていた彼女からのメールなのだから

だが、その何件か下からはずっとフレンダとの会話だ





310 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:43:07.092tIbWPOs0 (21/28)

たわいもない、あまり色気もないフレンダからのメール

その上に心理定規からのメールがあることが、なぜか少しだけ悲しい

ゴーグル「・・・フレンダさんは買い物、行ってないんすか」

浜面「あいつが一番そういうのに興味ありそうなのにな・・・」

ゴーグル「ミーハーっぽいですからね」

浜面「ははは!なんか分かるなそれ」

ゴーグル「・・・浜面さんは行かないんですか?」

浜面「いや・・・バレンタインは女が男にチョコをあげる日だろ」

ゴーグル「それ、迷信っすよ」

浜面「そうなのか?」

ゴーグル「まぁバレンタイン自体が胡散臭い記念ですからね・・・」

浜面「そういうのはチョコを貰えない悲しい男が言う台詞だ!」

ゴーグル「えぇどうせ悲しいっすよ・・・」

浜面「俺は滝壺からのチョコがあるからな・・・期待出来るんだよ!」

ゴーグル「羨ましいっすよ、正直」

浜面「だろ!?」






311 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:45:46.772tIbWPOs0 (22/28)

ゴーグル「俺もチョコが欲しいっす」

はぁ、とため息をついてからコタツの強さを上げる

興味がない、とは言いつつも、ゴーグル男だって何だかんだで男なのだ

そりゃ、可愛い女の子が顔を真っ赤にしながら「こ、これ・・・バレンタインのチョコです!」なんて言ってチョコを差し出してきてくれたら、包装紙まで大切にとっておくだろう

チョコももったいないからとすぐには食べず、消費期限ギリギリまでは鑑賞するのだ

ゴーグル「なんか、俺が段々とおかしな人間になっていきますね」

浜面「ん?なんか言ったか?」

ゴーグル「・・・なんでもないっす」

溜め息をついてから、ゴーグル男が寝転がる

フレンダはどうやら、まだ寝ているようなのだ

彼女のことだから、バレンタインの前日からチョコを選びに行きそうなものだ

浜面「・・・あぁ、そういや明日買いに行くって言ってたな、フレンダ」

ゴーグル「そうなんすか?」

浜面「・・・でもなんでだろうな」

ゴーグル「そうっすね・・・フレンダさん、前々から選びそうなタイプなのに」





312 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:50:31.572tIbWPOs0 (23/28)

浜面「だよな・・・」

浜面が頷いたのと同時に、リビングのドアが勢い良く開かれた

フレンダ「寒い!!もう2月も半ばなのに寒い訳よ!!」

ゴーグル「あ、おはようございます」

浜面「おっす」

フレンダ「おはよ・・・うー・・・」

震えながら、フレンダがコタツに入る

上半身まですっぽりと埋め、顔だけを外に出しているのだ

可愛らしい仕草ではあるが、足を蹴飛ばされたゴーグル男からすれば鬱陶しいものである

ゴーグル「・・・フレンダさんは出かけないんすね」

フレンダ「?どうして?」

ゴーグル「いや・・・明日バレンタインっすよ?」

フレンダ「な、なに変な期待してる訳よ!?」

浜面「えー・・・お前はチョコくれないのかよ」

ゴーグル「たまには甘いものも食べたいっす」

フレンダ「そ、それなら麦野とか絹旗とか滝壺とかからもらえばいい訳よ!!」

ゴーグル「・・・まぁ、そうっすね」

そっけないゴーグル男の言葉に、少しフレンダの表情が固まる





313 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 17:56:58.492tIbWPOs0 (24/28)

フレンダ「ほ、本当にチョコが食べたいだけだったのね・・・」

ゴーグル「・・・まぁそうっすね」

つまらなそうに答えながら、ゴーグル男が携帯を開く

心理定規からのメールが届いたのだ

「他に予定があるなら、そちらを優先しても構わない」とのことだ

だがそんな日に予定があるのは恋人がいるか、もしくは好きな人がいる人間だけだ

ゴーグル男には元来、関係のない記念日

フレンダ「?どうしたの?」

ゴーグル「なんでもないっすよ」

短い返信をしてから、ゴーグル男が携帯を閉じる

ゴーグル「・・・にしても、今日も寒いっすね・・・」

浜面「なんかやることないかな・・・寒いのが気になって仕方ないんだよ」

ゴーグル「・・・酒でも飲みますか?」

浜面「・・・そうするか」

フレンダ(まるで親父な訳よ・・・)





314 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 18:02:23.892tIbWPOs0 (25/28)


垣根「・・・なぁ、さっきから何のメールしてるんだよ?」

フカフカのソファーに座っている垣根は、少し不機嫌だった

同じ部屋にいる心理定規は、先ほどからずっと誰かとメールをしている

別にメールをされるのは構わないのだが、それを一時間近く続けられると少しばかりイライラしてしまうのだ

心理「・・・ゴーグル君よ」

垣根「あぁ、あいつかよ」

その名前が出た瞬間に、いくらか垣根の表情が柔らかくなった

ゴーグル男なら安心なのだ

浮気の心配はまずないし、それに悪影響もない

垣根「でもなんであいつとわざわざメールしてんだ?そんなに親密だったか」

心理「明日、あなたが午前に用事があるでしょ?」

垣根「おう、ちょいとな」

心理「その間にチョコを買いたくて・・・で、男性の意見の参考にゴーグル君も一緒に行くのよ」

垣根「はー、デートとは羨ましいもんだな」

心理「あら、ヤキモチかしら」

垣根「・・・相手がゴーグル馬鹿だとどうもヤキモチ妬けないよな・・・」

心理「・・・彼、なんか安全だものね」





315 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 19:02:37.982tIbWPOs0 (26/28)

垣根「・・・でもよ、あいつはいいのか?」

心理「彼に予定があるならそっちを優先するように言ったわよ」

心理定規が、自分の送信BOXを垣根に見せる

確かに、そこにはそんな内容のメールがあった

しかし気になるのはそのメールではない

垣根「・・・おい、これ御坂だよな?」

心理「えぇ、美琴がちょっとね」

垣根「・・・なんで俺の寝顔写メ載せてんだよ」

添付データは、垣根の寝顔だった

心理「あら、あなたの寝顔があまりにも可愛くてね」

垣根「許可を取れよ!!っていうかなんで御坂に見せたんだよ!?」

心理「普段よりもイケメンに見える、って返信だったわよ」

垣根「あーあー更に傷ついた!!ブロークンマイハート!!」

心理「・・・それはどうでもいいのよ、ゴーグル君のことでしょ?」

垣根「あぁ・・・そうだったな」





316 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 21:20:20.282tIbWPOs0 (27/28)

心理「それで・・・彼は、予定がないのかしら」

垣根「フレンダのことだ、どうせ素直に誘ってないんだろ」

心理「それもそうね」

二人が呆れたように溜め息をつく

素直になれない時期というのは誰にだってあるものだ

もちろん、二人にもあった

垣根「・・・でもさ、バレンタインがどうにか奇跡を起こすかもな」

心理「そうかしら?あの二人はどっちも案外鈍感だから」

垣根「・・・それもそうだな」

心理「ま、私は明日チョコを買いに行くから・・・何がいい?」

垣根「お前が選んだのならなんだっていいさ」

心理「あら嬉しい」

垣根「・・・バレンタイン、ねぇ」

呟いてから、垣根が外を見つめる

窓の桟にも雪が積もっていた


垣根「・・・いいね、メルヘンじゃねぇか」





317 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/23(水) 21:24:37.202tIbWPOs0 (28/28)

今日はここまで

フランク・ゼーンの1983年を

  

筋肉を纏うのではなく、無駄を削ぎ落とした肉体ですね


余談ですが、>>1の小学生の頃の文集を発見しまして

そこのあるコーナーで「あなたの短所(弱いところ)はどこですか?」ってあったんです

低学年だから、わざわざ先生が短所という言葉の解説までつけて

みんなは「すぐ泣く」とか「頭が悪い」とかを書いてるんですが、何を血迷ったか>>1は「みぞおち」と書いてました

みなさん、勉強はちゃんとしましょう

ではおやすみなさい






318VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/24(木) 06:01:43.16BMDtBzLHo (1/1)

おつおつつおつつ


319 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:43:22.27oKIbyubC0 (1/37)

フレンダ「・・・ねぇ、二人とも」

浜面「なんだよ?」

ゴーグル「なんすか?」

アイテムの家のリビング

その中心にあるコタツ

更にその上に並べられたビールの空き缶が6つ目になったのと同時、フレンダが切り出した

フレンダ「・・・二人はやっぱり、チョコが欲しい?」

浜面「うーん・・・でも滝壺からもらえるからな、無理にとは言わないな」

フレンダ「そっか・・・」

フレンダがゴーグル男を見つめる

二人は、なんて聞いていたが実際に知りたいのはゴーグル男の意見だった

そんなことを素直に言えない辺り、フレンダは初心なのだが

ゴーグル「俺は・・・そうっすね、欲しいと言えば欲しいですけど」

フレンダ「!欲しいんだ・・・へぇ、欲しいんだ」

ゴーグル「何ニヤニヤしてるんすか・・・」





320 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:44:02.87oKIbyubC0 (2/37)

フレンダ「ううん、なんでもない訳よ!」

浜面(・・・ゴーグルは無意識のうちにいい選択肢を選んだんだな)

ゴーグル「・・・にしても、バレンタインなんてこんなにはしゃぐほどのことなんですかね?」

フレンダ「当たり前じゃない、女の子にとっては一大事な訳よ!」

ゴーグル「女の子ですか・・・」

少し面食らったような表情のゴーグル男

普段は普通に接しているが、時々こうしてフレンダが異性なんだと実感する

不思議なような、おかしいような感覚だ

ゴーグル「・・・やっぱりフレンダさんもあげたい相手とかいるんですか?」

フレンダ「!そ、そりゃ一応は・・・」

浜面「お、なんだなんだよ!?なんかいいなぁおい!」

フレンダ「冷やかさないでよ、キモい!」

浜面「えぇ・・・」

ゴーグル「・・・そんなもんなんですか」

フレンダ「・・・なんかアンタは興味なさそうな訳よ」





321 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:44:51.47oKIbyubC0 (3/37)

ゴーグル「あんまり興味が湧かないんですよ」

フレンダ「・・・そっか」

ゴーグル「そんなことより、ビールも飽きましたね」

浜面「じゃあ酎ハイにでもするか?」

ゴーグル「そうします」

男二人は相変わらず酒を飲んでいる

それを見つめるフレンダは、頭の中で翌日の予定を考えていた

フレンダ(・・・やっぱり、ゴーグルに着いてきてもらったほうがいいかな)



垣根「・・・なぁ、チョコ・・・くれるんだよな」

心理「?どうしたのよ急に」

垣根宅

ぽつり、と垣根が呟いた

その声はなぜか、少し悲しそうだった

垣根「・・・いや、なんでもないさ」

心理「何よ、気になるじゃない」

垣根「なんでもないって、くれるなら有り難く受け取るって」

心理「そう?」





322 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:45:54.56oKIbyubC0 (4/37)

垣根「あぁ」

ゴロン、とソファーに寝転がった垣根が目を閉じる

垣根(・・・俺を愛してくれる相手がいる・・・か)

瞼の裏に迫るのは、もしかしたらあの日の闇なのかもしれない

垣根(・・・怖いんだよな、こんな幸せが)

心理「・・・どうしたの?なんだかおかしいわよ」

垣根「・・・俺が帰ってきて、初めてのバレンタイン・・・覚えてるか?」

心理「忘れるわけないじゃない」

垣根「・・・俺が帰ってきたのはさ、風呂があるからでも食事があるからでも、テレビが見られるからでもなかった」

心理「私がいるから帰ってくるんでしょ?」

垣根「・・・お前がいる場所に帰るのが当たり前なんだ」

ゴロン、と垣根が寝返りを打つ

心理定規に、自分の表情が見えないように

垣根「だとしたらさ・・・お前がいなくなったら、俺の帰る場所は無くなるんだよな」

心理「何言ってるのよ?私はずっとあなたの傍にいるわよ」





323 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:46:40.55oKIbyubC0 (5/37)

垣根「・・・いつかは別れがくるだろ」

心理「・・・」

くだらないことなのかもしれない

そんな別れは、今考えなければならないことではない

まだまだずっと先の、それこそ途方もないほど先の話なのだ

それでも、垣根は考えた

垣根「・・・俺は・・・お前がいなくなった世界なんて愛せないだろうな」

心理「私だってそうよ」

垣根「お前の思いがどれほどの思いに埋もれても・・・俺は見つけ出してみせる自信がある」

心理「・・・分かってる、前にも言われたわよ」

垣根「・・・だとしたらさ、お前の思いが無くなったら・・・俺は何を見つけ出せばいいんだよ」

心理「・・・あなた、考えすぎなのよ」

垣根「・・・そうだな、分かってる」

心理「・・・」

垣根「分かってるけどさ」





324 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:47:39.38oKIbyubC0 (6/37)

垣根がぽつりと呟く

心理定規が知っている限り、垣根はとても強い人間だ

彼女が泣いていたら、いつでも駆け付けてくれる人間だ

だが、今の彼の声は泣き出しそうな子供のものだった

垣根「・・・俺は知ってるんだ、無くす悲しみを」

心理「・・・そう」

垣根「あーあ、ダメだな・・・ちょっと寝るわ」

心理「いいの?そんな気分のまま寝たら、嫌な夢を見るわよ」

垣根「・・・いいんだよ」

クッションを頭に乗せ、垣根が意識を止める

シンとした部屋の中に響いているのは、心理定規の鼓動だけだ

いや、もしかしたら垣根の物だろうか

ただ、静かな部屋に響くそれは不安で高鳴っていた


心理「・・・あなたは考えすぎなのよ」





325 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:48:20.10oKIbyubC0 (7/37)

ソファーの上では、垣根が寝息を立てている

それを悲しげな目で見つめる心理定規

自分もその横で眠れたら、どれだけ楽なのか

だがそれは叶わない

心理「・・・失うことの悲しみを知ってるなら、守り通すことの喜びも知っているでしょう?」

答えがないと分かりながら、しかし心理定規は言う

心理定規だってそうだった

ずっと追い求めた垣根を、一度は失ってしまった

そして戻ってきた垣根を、強く抱きしめている

彼がもう逃げてしまわないように

そんな彼は、ずっと傍にいてくれている

この前なんて、離れていた距離をものともせず、心理定規を救ってくれた

垣根は、心理定規を守っている

彼は自分をけなしているが、心理定規のほうがよほど情けない気がする

彼と違い、心理定規は何一つしてあげられないのだから






326 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:49:15.49oKIbyubC0 (8/37)

悲しんでいる彼を慰めることさえ、今の彼女には出来ない

心理「・・・垣根」

返事はない

涙が零れそうになるのを堪えて、心理定規が笑う

心理「あなたは自分をダメだと思っているのかもしれないけどね・・・」

こんなこと、彼に聞かれていたら恥ずかしくて言えないだろう

今だからこそ、言えるのだ

心理「あなたは・・・最高の男性なのよ、私にとって」




浜面「・・・でさ、滝壺ったらその時どうしたと思う?」

ゴーグル「知らないっすよ・・・」

浜面「キスしてきたんだよ!あれは驚いたなぁ!」

フレンダ「・・・」

コタツの中、浜面は二人を相手に惚気ていた

酒が少し回ったのか、若干顔が赤い






327 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:50:14.04oKIbyubC0 (9/37)

飲むほど饒舌になるタイプなのだろう、先程から延々と滝壺との話を聞かされている

それが面白いならまだしも、ただの幸せ自慢なのだから堪らない

ゴーグル「それ、いつまで続くんですか?」

浜面「俺と滝壺の愛情は永遠だぜ?」

フレンダ「はぁ・・・だから、その惚気はいつまで続く訳よ?」

浜面「?聞きたくないのか?」

ゴーグル「二人の幸せは、二人だけで抱きしめてて下さい・・・」

フレンダ「そうそう・・・私たちにどうしろって言うの?」

浜面「うーん、じゃあ滝壺との初デートの話を・・・」

ゴーグル「だから・・・惚気なんて聞かされても困りますよ」

浜面「・・・そうか?」

フレンダ「はぁ・・・でも羨ましい訳よ、そうやって好きな人と付き合ってるの」

ゴーグル「フレンダさんも好きな人と付き合いたいんですか?」

フレンダ「そりゃ、好きな人と付き合いたくない人間なんていない訳よ」





328 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:51:20.41oKIbyubC0 (10/37)

浜面「フレンダの好きな人は誰なんだ?」

ニヤニヤと浜面が笑う

もちろん、彼は感づいているのだ

フレンダ「そ、それは内緒な訳よ!」

ゴーグル「身近な人なんですか?」

フレンダ「・・・アンタにだけは教えない」

ゴーグル「う・・・そこまで嫌わなくてもいいじゃないっすか」

フレンダ(嫌ってるんじゃないわよ・・・馬鹿)

ゴーグル「・・・まぁ、気になりますけど深くは追求しないっす」

フレンダ「・・・」

ゴーグル「な、なんで不機嫌なんですか?」

フレンダ「別に」

フレンダがそっぽを向く

浜面「・・・ゴーグル」

ゴーグル「な、なんですか?」

浜面「もう少し、人の気持ちを考えような・・・」






329 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:52:10.32oKIbyubC0 (11/37)

ゴーグル「な、なんのことですか!?フレンダさん!?」

ゴーグル男が慌てながら、二人を交互に見つめる

だが浜面は呆れたように笑い、フレンダは相変わらずそっぽを向いたままだ

ゴーグル「な、なんなんですかこの疎外感は・・・」

フレンダ「ゴーグルの馬鹿、もうどうでもいい訳よ・・・」

ゴーグル「だから何が悪いんですか!?」

鈍感で初心なゴーグル男には分かるわけなどない

女心が分かるようになるのは、かなりの経験を積んだ後なのだから

ゴーグル「な、なんだか分かりませんけど・・・」


ゴーグル「不幸かもしんないっす・・・」



垣根「・・・おはよう」

心理「おはよう・・・どうだった?いい夢は見れたかしら」

垣根「夢は見なかったよ・・・ちくしょう」

心理「・・・そう、でも嫌な夢を見るよりはマシだったんじゃない?」





330 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:52:52.11oKIbyubC0 (12/37)

垣根「そうかもな・・・」

ゆっくりと垣根が体を起こす

けだるさも残っているが、それについて一々文句を言ってはいられない

垣根「・・・なぁ、寝る前の会話・・・やっぱり覚えてるか」

心理「当たり前でしょ、忘れられないわよ」

垣根「・・・忘れてほしいんだけどな、俺としては」

心理「・・・あなたはね、私を守ってくれたのよ?素敵な男性なんだから、自信を持ちなさい」

垣根「・・・自信、か」

心理「・・・お願いだから、自分を好きになって」

垣根「嫌ってなんかいないさ、俺は俺を好きだけどな」

心理「嘘をつかないで」

心理定規の言葉に、垣根が口をつぐむ

心理「・・・おかしいわよ、やっぱり」

垣根「暗部に戻ったばっかりだからな、少しおかしいんだよ」

心理「・・・そんなに・・・あなたは自分を憎んでるの?」

垣根「違うんだよ、ただ自分を愛する方法が分からないんだ」





331 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:53:47.50oKIbyubC0 (13/37)

苦笑いを浮かべながら、垣根が心理定規を見つめる

垣根「・・・お前を愛するのは簡単さ、ただ思いのままに愛すればいいんだ」

心理「・・・分かったわ、教えてあげる」

垣根「お、おい・・・」

心理定規が垣根の膝の上に座った

どこか妖艶な瞳には、垣根だけが映っている

心理「・・・私があなたを愛してあげるから、あなたはそれを真似すればいいだけなのよ」

艶やかな表情のまま、心理定規が垣根をソファーに押し倒す

心理「・・・だから」

垣根「やめてくれ、虚しくなるだけだ」

心理「!」

下から見上げる形の垣根が、心理定規の体を抱きしめる

抵抗するのは簡単だろう、だが彼女にはそれが出来ない

垣根「それは結局、お前の愛情なんだ・・・俺が見習うことなんか出来ない」

心理「でも・・・」





332 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:54:17.85oKIbyubC0 (14/37)

垣根「気持ちだけでいいんだ、俺を心配してくれるのはお前だけだよ」

無理矢理な笑顔が、心理定規の胸を締め付ける

今まで何度、こんな気遣いを受けただろうか

心理「私は・・・私だって、あなたを慰めることが出来るのに」

垣根「こんな慰め方なんかじゃダメなんだ」

心理定規の体を、優しく押し返す

抵抗しない彼女の体はとても軽かった

垣根「・・・頼むよ、軽い女なんか演じないでくれ」

心理「・・・ごめんなさい」

垣根「いいんだ、飯にでもしようぜ」

優しく笑ってから、垣根が立ち上がる

その背中は、なぜか大きいはずなのに小さく見えた

心理(・・・あなたは、馬鹿なのよ・・・垣根)





333 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:55:11.61oKIbyubC0 (15/37)


フレンダ「・・・ねぇ、ゴーグル」

ゴーグル「なんすか?」

深夜というのは、人が最も無防備になってしまう時間帯だ

眠気が襲ってくるからでもあるが、それ以上に闇というものは人を原始に帰してしまう

だから、フレンダが自分の心を無防備に晒しても、誰も馬鹿には出来ないだろう

フレンダ「明日さ・・・私、出かけるんだ」

ゴーグル「へぇ・・・」

フレンダ「5学区の綺麗な噴水あるでしょ、そこで待ち合わせしよう!」

ゴーグル「誰とですか?」

フレンダ「ア、アンタに決まってる訳よ!」

ゴーグル「ま、待って下さいよ!」

フレンダ「何よ・・・どうせアンタのことなんだから用事もないでしょ・・・」

ゴーグル「明日は・・・心理定規さんと出かけることになってるんですよ」

ゴーグル男がそう言った瞬間、部屋の空気が凍りついた

フレンダ「・・・そうなんだ」





334 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 14:58:49.97oKIbyubC0 (16/37)

ゴーグル「あ、あの・・・」

フレンダ「ううん、ならいい訳よ」

冷たい声が返ってくる

何かを我慢して抑えているような、そんな声だ

ゴーグル「あの・・・怒ってます?」

フレンダ「ううん・・・なんでもない、ごめんね」

フレンダが布団に頭から隠れる

ゴーグル「・・・そうですか」

静かな部屋の中に、気まずい沈黙が流れる

フレンダ(・・・そうだよね、ゴーグルにだって・・・予定くらいある訳よ)

フレンダ(・・・私が・・・もっと早く言っておけばよかったかな)

そんなことを思いながら、フレンダが目を閉じる

フレンダ(・・・チョコ・・・あげたら、少しは気づいてくれるかな)


ゴーグル(・・・そ、そんなに俺が悪いのか?)




335 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 16:38:41.13oKIbyubC0 (17/37)


垣根帝督を表す言葉はたくさんある

男前、イケメン、優男、柄の悪い男、プレイボーイ、ジゴロ、誑し、おちゃらけ、優しい、馬鹿

しかしそのどれもが、彼の本質とは少し違うような気がする

垣根帝督を表すのに最もぴったりなのは「メルヘン」だろう

というか、垣根がそう自負している

そんな彼の朝もやはりメルヘンなのだが、それにはいくつか理由がある

本日がバレンタインであること

素晴らしい記念日の朝は、誰だろうとメルヘンなはずだ

彼の隣には最愛の心理定規が寝ていること

愛している人がいるなら、男はメルヘンになれるのだ

そして何より、夢に出てきたのが心理定規だったこと

彼女との幸せな夢を見られたため、わりと彼は上機嫌だった

昨日の少しセンチメンタルな感情は、影を潜めていた

垣根「・・・おはよう」





336 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 16:42:26.59oKIbyubC0 (18/37)

心理「あらおはよう・・・なんだか上機嫌ね」

垣根「おう、いい夢を見られたからな」

笑いながら、垣根がベッドから起き上がる

ぐっと伸びをすると、眠気もどこかへ吹き飛んだ

爽やかな朝日が窓の外から差し込んでいる

垣根「・・・バレンタイン、か」

心理「ちょうど休日でよかったわよね・・・」

垣根「あぁ、おかげで一日ゆっくりメルヘンな気分でいられるよ・・・」

心理「・・・ねぇ」

垣根「ん?昨日の話なら忘れてくれよ、ちょっとセンチメンタルになっただけだからさ」

心理「・・・そうね」

ベッドから飛び起きた垣根が、リビングへと向かう

朝にはコーヒーを飲む、これが彼の日常だ

ブラックコーヒーを飲めば目が覚める

心理「・・・そういえば、今日の用事って何なのよ」

垣根「あぁ・・・吹寄と姫神に呼び出された」

心理「あら、もしかしてあの二人もあなたにチョコを渡すつもりなのかしら」





337 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 16:48:29.97oKIbyubC0 (19/37)

垣根「そうかもしんないな・・・」

心理定規の分のコーヒーも用意し、垣根がそれをテーブルに置く

心理「あら、ありがとう」

垣根「・・・あのさ」

心理「何?」

少し熱くなっているカップを持ちながら、心理定規が首を傾げる

そんな動作がかなり可愛らしいのだが、垣根は特に言及しない

垣根「その・・・昨日は本当に悪かった、お前との別れとかそんなもんを考える必要はねぇよな」

心理「そのことね・・・いいのよ、何かあったのかと思って心配しただけだから」

垣根「うーん・・・何もねぇときに不安になることってあるよな」

心理「分かるわ、イヤなほどに」

コーヒーの苦さに顔をしかめながら、二人がうんうんと頷く

垣根「・・・こうやって幸せな日常を過ごせるのがどれほど幸せなのか・・・よく分かるよ」

心理「それを幸せと思えることも、ね」

垣根「おうよ」





338 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 17:11:47.53oKIbyubC0 (20/37)

心理「・・・でもよかった、本当に何もなくて」

垣根「何かあったらお前に相談するさ・・・一番頼れるのはお前だからな」

コーヒーを飲みながら、垣根が笑う

その一言に、心理定規がきょとんとする

垣根「なんだよ?」

心理「・・・私を頼りにしてくれてるの?」

垣根「当たり前だろ」

心理「・・・そう、嬉しいわ」

心理定規が嬉しそうに微笑む

垣根「・・・お前が、一番俺のことをよく分かってくれてるよ」

心理「愛しているもの」

垣根「あぁ、俺も愛してるよ」

笑ってから、垣根がコーヒーをもう一度注ぎなおす

心理「・・・さて、私はゴーグル君とお出かけかしらね」

垣根「・・・あいつ、今日が何の日かも知らないかもな」

心理「それくらいは知ってるわよ」





339 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 19:44:59.57oKIbyubC0 (21/37)

垣根「・・・お前さ、どこに買い物行くんだ?」

心理「そうね・・・第6学区のデパート、分かるかしら」

垣根「おう、知ってるけど」

心理「あそこでバレンタインフェアをやってるのよ」

垣根「ふーん・・・そうかい」

心理「・・・あなたから聞いてきたんだから、もう少し何かリアクションを取りなさいよ」

垣根「仕方ないな・・・」


垣根「な、なにぃ!?買い物に行くぅ!?しかも第8・・・」

心理「そこまで大げさにしないで」

垣根「ちっ・・・で?そこにわざわざ出かけるのかよ」

心理「えぇ、あなたも来てくれたら嬉しいんだけどね」

垣根「・・・あの二人との用事が終わればすぐに行くよ」

心理「あら、嬉しい」





340 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 19:59:16.33oKIbyubC0 (22/37)

垣根「・・・じゃ、俺はさっさと行ってくるよ」

歯磨きと洗顔を済ませた垣根が、めんどくさそうに呟く

服装も、あまりオシャレにしました、という感じはしない

もちろん一般人と比べれば十分オシャレなのだが

垣根「いってきまーす・・・めんどくせぇ」

心理「女の子が呼び出してくれたんだから、ちゃんとしなさい」

垣根「はーい」

垣根のいなくなったリビングで、しばし心理定規は口を閉じていた

だがやがて、自分も外出の仕度を始める

心理(・・・垣根のついでに、みんなにもチョコを買わないと・・・)

財布を手に取り、鏡で服装を確認する

今日もいつもの、オシャレな心理定規だ


心理「それじゃ・・・行きましょうか」





341 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 20:05:06.27oKIbyubC0 (23/37)


ゴーグル「・・・あの、浜面さん」

浜面「おっす・・・おはよう」

アイテムの家のリビング

女子達は、すでに友達にチョコを配りに行っている

フレンダだけは違い、ちょうど今から買いに行くそうだ

ゴーグル「・・・なんか、フレンダさんが昨日から不機嫌というか・・・」

浜面「・・・そりゃそうだろうな」

ゴーグル「なんでですかね?」

浜面「・・・お前、本当に分からないのかよ・・・」

ゴーグル「ってことは・・・浜面さんは分かるんですか!?」

ゴーグル男が身を乗り出す

彼の前のテーブルに並べられたビールの缶が、少しだけ揺れる

浜面「・・・でもな、これは俺の口からは言えないことだ」

ゴーグル「そ、そんなにグロテスクかつエロチックな理由なんですか・・・」

浜面「180度違うけどな」





342 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 20:17:07.68oKIbyubC0 (24/37)

ゴーグル「・・・でも、それってどんな理由なんですか」

浜面「・・・これは、フレンダの口から聞いてくれよ」

ゴーグル「・・・そうっすね」

ゴーグル男がフレンダの部屋に向かう

そこは、既にゴーグル男の生息地帯でもある

広く分布していますよ、という注意書きも必要かもしれない

ゴーグル「失礼します・・・」

ノックをしてから、ゴーグル男が中に入る

フレンダ「あ、ゴーグル・・・」

ゴーグル「おはようございます・・・その、ちょっと聞いてみてもいいですか?」

フレンダ「・・・うん、何?」

フレンダは、妙に大人しかった

いつもなら会うたびに、少しの冗談でも言ってくるはずなのに

ゴーグル「・・・なんで、不機嫌なんですか」

フレンダ「不機嫌・・・かな」





343 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 20:22:23.00oKIbyubC0 (25/37)

ゴーグル「・・・はい、なんだかこう・・・ピリピリしてますよ」

フレンダ「あはは・・・そう見えるのかもね」

フレンダが、人形をいじりながら笑う

その光景だけを見ていると可愛げだが、彼女の表情は今すぐ抱きしめたくなるほど弱弱しかった

フレンダ「・・・そのさ、私・・・買い物行くじゃん」

ゴーグル「?はい」

フレンダ「・・・それでね」

フレンダがぎゅっと人形を掴む

駄々をこねるようなその仕草が、なぜか似合っていた


フレンダ「・・・アンタにも、来て欲しかったんだ」

ゴーグル「・・・俺にですか?」

フレンダ「うん」

ゴーグル「・・・あぁ、チョコを選ぶときの参考ですか」

フレンダ「うん」

ゴーグル「・・・なんで俺なんですか?」

フレンダ「当たり前でしょ・・・アンタにあげるからな訳よ」

ゴーグル「・・・お、俺にですか?」





344 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 20:28:02.76oKIbyubC0 (26/37)

フレンダ「も、もちろん浜面とか・・・垣根にもあげる訳よ、アンタだけが特別じゃないんだから!!」

ゴーグル「そ、そりゃそうっすよね・・・」

ゴーグル男が肩を落とす

なんだか今みたいな言い方をされると勘違いをしてしまう

ゴーグル「・・・それで、俺に男としての意見を聞きたい・・・と」

フレンダ「・・・ううん、アンタとしての意見を聞きたかった訳よ」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「で、でもさ!!心理定規に付き合うなら仕方ない訳よ!!」

フレンダがニコニコと笑う

無理をした笑い方だと、すぐに分かる

フレンダ「・・・だ、だから・・・上手くやってきてね」

ゴーグル「・・・何をですか」

フレンダ「心理定規はアンタを頼った訳よ、だからその期待に応えなさい!じゃね!」

勢い良く、フレンダが部屋から出て行く


浜面「ん?もう出かけるのか」

フレンダ「いってきまーす!!」

リビングに少しだけ顔を出し、フレンダが外へと向かった





345 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 20:34:09.72oKIbyubC0 (27/37)

ゴーグル「・・・」

一人、残されたゴーグル男は考えていた

心理定規が彼を呼んだのは、男の意見を聞きたかったから

フレンダが彼に頼もうとしたのは、彼の意見を聞きたかったから

周りからしたら、まるで大差ないことだろう

実際、そこまで差のあることでもない

どちらにしろ、二人はゴーグル男を頼ったのだ

ゴーグル(・・・そうっすよ、それだけっす)

はぁ、と溜め息をついてから落ちている人形を拾う

フレンダのお気に入りの一つで、たしかキルなんとかグマーみたいな名前だったかな、と考えながら

ゴーグル(・・・そういや、人形に触るの・・・最初の頃は怒ってましたね)

いつからだろうか、ゴーグル男が人形に触れても笑ってくれるようになったのは

ゴーグル「・・・あーあ、一一細かいことを考えるのは俺の悪いクセっす」

ぶんぶん、と頭を振る

ゴーグルから飛び出しているプラグも一緒に揺れた





346 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 20:41:47.14oKIbyubC0 (28/37)

ゴーグル(・・・そうっす、難しく考えて答えが出るなら世の中偉人だらけですよね)

携帯を開き、短いメールを打つ

それだけの動作の後、上着を羽織った

ゴーグル(・・・ごめんなさい、でも俺は行かなきゃならないんす)

急いで階段を駆け下り、リビングへと向かう

浜面「ん?お前も今か」

ゴーグル「はい、ちょっと遅くなりますけど」

浜面「それじゃあな」

ゴーグル「はい!」


勢い良く、玄関のドアを開く

今日も一日、寒くなるとニュースで言っていた

だがそんなことを気にはしていられない


ゴーグル「さて、行きますか!」






347 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 20:50:27.63oKIbyubC0 (29/37)


垣根「あーかーいーゆうーひがー」

冬の寒い空気の中、静かな道を垣根は歩いていた

垣根「あぁ寒い・・・吹寄と姫神の野郎・・・これでつまんねぇ用事だったらブチコロシかくていね」

吹寄「何言ってるのよ」

垣根「どわぁ!!!てめぇ、いつから後ろにいやがった!?」

吹寄「貴様がちょうど高校三年生を歌いだした辺りから」

垣根「・・・怖いぞお前・・・ってか、待ち合わせは公園だっただろ・・・」

吹寄「あぁ、ちょっとこっちに用事があってね」

垣根「ウソだな、俺をストーキングしてたんだな」

吹寄「違うわよ・・・それにしても寒いわね」

垣根「あーあー、あーあーあー」

吹寄「再開しないでよ」

垣根「・・・寒いな、上着貸そうか?」

吹寄「い、いいわよ!!」

垣根「そうかい」





348 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 20:56:05.12oKIbyubC0 (30/37)

吹寄「・・・それよりよかったの?心理定規と一緒じゃなくて」

垣根「いいんだよ・・・お前たちとの用事が終わればすぐ行くしな」

吹寄「やっぱりね」

垣根「悪いかよ」

吹寄「いいじゃない、そういう恋人は素敵だと思うわよ」

垣根「・・・あっそう」

興味なさそうに垣根が他の方向を見つめる

すれ違うのは、学生ばかりだ

学園都市なのだから当たり前ではあるが

垣根「・・・バレンタイン、ねぇ」

吹寄「何よ、やけに静かね・・・」

垣根「・・・いんや、今年もどっさりチョコ贈られるんだろうな・・・」

吹寄「・・・大変ね」

垣根「あぁ・・・」


垣根「モテるって、罪なのかもな」

吹寄「世の中の男性を敵に回したわ、貴様」





349 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 21:03:05.21oKIbyubC0 (31/37)


心理「・・・あら、メール・・・」

心理定規の携帯電話が、可愛らしい音を立てた

美琴からもらった着信音で、なにやら最近流行っているアニメのopらしい

どうせゲコ太関係なのだろう、と予想はついているが

心理「・・・ゴーグル君ね」

短い文章だった

その内容を見たあと、小さく心理定規が笑う

心理(そう・・・彼もやっと一人前になったじゃない)

母親の気持ちはこういうものか、と心理定規が一人で笑う

心理「・・・さて、私も行かないと」

待ち合わせ場所に行く必要は無くなった

ゴーグル男は、こちらには来ないのだから

心理「・・・あぁ、そうそう」

携帯を取り出し、垣根に短いメールを送る

そのあと、マフラーの端を握りながらデパートへと向かった


「寒いから、早く来てちょうだい」という、短いメールを送って





350 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 21:09:48.59oKIbyubC0 (32/37)


フレンダ「・・・何やってるんだろ、私」

第五学区の噴水の近くのベンチ

そこで、フレンダは一人待っていた

来るわけがないはずの、彼を

周りは大学生が歩いている

カップルもかなりいるようで、そんな中一人待ち続けるのは辛かった

フレンダ(・・・来るわけないのに)

昨日、一応予定はゴーグル男にも伝えた

だがそんなこと、彼は覚えてなどいないだろう

彼は今頃、心理定規と買い物をしているのだろう

ゴーグル男はきっと、楽しい思いをしているはずだ

フレンダと違い、心理定規は魅力的だから

ゴーグル男の憧れの女性だから

フレンダ(・・・そうだよね)





351 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 21:16:28.30oKIbyubC0 (33/37)

何人かの男子大学生が、フレンダを指差している

ナンパでもするつもりなのだろうか

フレンダ(・・・いいわよ、どうせ私にはそういう男しか寄り付かないから)

はぁ、と溜め息をつく

一人の男子大学生が、フレンダのほうに近づいてきた

「ねぇ、君・・・」

また始まった、と呆れる

今までも、何度かそういうことは経験している

麦野や絹旗と一緒に居るときにも、よくあったことだ

だからこそ断り方はわきまえている

強く断るだけ、それだけで大抵の男は怯んでしまう

目の前の男もそうだろう

フレンダ(・・・結局、男なんてそんなもんな訳よ)

可愛い女がいればそちらに着いて行く

それが、男なのだ

「もしかして、ヒマなの?だったら俺たちと遊ばない?」






352 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 21:19:53.58oKIbyubC0 (34/37)

フレンダ「・・・私は」

アンタたちに興味が無い、と言おうと思ったそのとき、誰かがフレンダの肩に手を回した

男の仲間だろうか、無理矢理連れて行くつもりなのか

フレンダ(・・・なんなのよ)

フレンダがその手を叩こうとする

だが、そんな考えはすぐにやめてしまった

肩に回された腕に、見覚えがあった

そこに残っているのは、ちょっと大きな傷だった

それはたしか、彼女を守るときに負った傷だった

彼女を絶望の淵から助け出したときに負った傷だったのだ

フレンダ「・・・もしかして・・・」

ぱっとその方を振り向く

ゴーグル「・・・」

「な、なんだよお前?」

ゴーグル「お前こそなんだよ、人の女に手出してんじゃねぇよハゲ」

「ハ・・・」

フレンダ「ひ、人の女!?」






353 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 21:24:25.17oKIbyubC0 (35/37)

「お前、なんだよ・・・」

ゴーグル「行くぞ」

ゴーグル男が、無理矢理フレンダの手を引っ張る

呆然としているフレンダと大学生を無視し、ゴーグル男は歩いた


フレンダ「ど、どうしてアンタがここにいる訳よ!?」

混乱する思考を制御しながら、どうにかフレンダが言葉を紡ぐ

ゴーグル「心理定規さんのほうには行かないことにしましたから」

フレンダ「ど、どうして・・・」

ゴーグル「・・・フレンダさんといるほうが楽しいですから」

フレンダ「!?そ、そそそそそそそそれどういう・・・」

ゴーグル「・・・あの男に何かされませんでしたか?」

フレンダ「う、うん・・・大丈夫だけど」

ゴーグル「それならよかったっす」

ゴーグル男がフレンダの手を放す

いつもの笑顔を浮べながら、ゴーグル男が振り向いた





354 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 21:32:03.08oKIbyubC0 (36/37)

ゴーグル「フレンダさんに何かあったら、俺もイヤっすから」

フレンダ「!!」

ボン、という音が聞こえるのではないかというほど、フレンダの顔が赤くなる

フレンダ「ア、アンタって・・・」

ゴーグル「?なんすか?」

フレンダ「・・・ううん、なんでもない」

真っ赤な顔のまま、フレンダが笑う

フレンダ「よーし!!なら私のほうに来たことを後悔させてやる訳よ!!」

ゴーグル「な、なんすかそれ!!」

フレンダ「ほらほら、急ぐ訳よ!!」

ゴーグル男の手を握り、フレンダが駆け出す

その横顔は、とても幸せそうだった



ゴーグル「って、赤信号ですからぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!!!」

フレンダ「二人で渡れば怖くない訳よ!!!」





355 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/24(木) 21:38:43.28oKIbyubC0 (37/37)

今日はここまで

明日も、というかしばらくバレンタインを引っ張ります

筋肉動画はこちら

若干23歳、若手の星、アレクシー・レスコー

背中の精密さはあれですが、とにかくでかいですね

若いのにすんげぇバルクです

将来が楽しみな選手ですね

  


というか、リーにしろショーンにしろケビンにしろ、若い頃からトレーニングしてる人が多いですね・・・


ではおやすみなさい





356VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/25(金) 01:51:33.17CzkLDqpao (1/1)

乙なんだよ!!


357 ◆G2uuPnv9Q.2011/11/25(金) 10:19:21.5493I/VZVK0 (1/32)

垣根「おいっす・・・姫神、元気してたか?」

姫神「君こそ。元気そうで何より」

待ち合わせの公園では、姫神がベンチに座って待っていた

吹寄「さて、三人とも集まったし・・・」

姫神「どうして。吹寄と垣根が一緒に来たのかを聞きたい」

吹寄「ぐ、偶然同じ道だったのよ!」

垣根「こいつがストーキングしてたんだよ」

吹寄「してないわよ!」

姫神「吹寄、それは良くないこと」

吹寄「あなたまで疑わないでよ!」

垣根「まぁ冗談はおいといて・・・なんの用なんだよ?チョコか?」

吹寄「・・・平たく言えばその通りよ」

姫神「吹寄が君に渡したいんだけど、一人じゃ勇気が出ないって」

吹寄「ち、違うわよ?」

垣根「あぁそう・・・じゃあ早いとこ渡してくれよ」