◆dUQ5Sqf28g さんの作品一覧
http://s2-d2.com/archives/16606867.html
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658: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 02:16:26.73:xFNCxGmE0 (7/17)
「更に不可解な点がある、ってミサカはミサカはずずいと前に進み出てみたり」
言った通りに行動して、打ち止めは言った。
「彼の持ち出した 『 データ 』 というのは、この学園都市の 『 能力者名簿 』 だったの、ってミサカはミサカは謎を一つ追加してみる」
「……はァ~~? 何だァそりゃあ?」
確かに不可解だ。
能力者の名簿など、『 風紀委員 <ジャッジメント> 』 でも 『 警備員 <アンチスキル> 』 でも所持している。
大して重要機密でもないのだ。10人以上を傷つけて持ち出す意味などない。
いや、それ以前に 『 絶対能力進化 』 の研究所にわざわざ的を絞る意味が分からない。
持ち出すデータを間違えた、なんてド間抜けな落ちではないだろう。
一方通行の知る限り、天井という男は悪事においては人一倍の粘りと実力を発揮するのだ。
「とにかくその襲撃のどさくさに紛れてミサカは培養液から放り出されちゃったの、ってミサカはミサカはようやく話を着地させてみたり」
ちんまいのはそのせいか。
一方通行はとりあえず疑問は横において、目の前の少女にだけ集中することにした。
「つまりなンだ? オマエを保護しろってか? それとも適当な研究員に紹介しろってェ?」
「ううん、ってミサカはミサカは首を左右に振ってみる」
「……ンじゃあ、何だよ」
打ち止めはニコリと笑って、一方通行との距離を詰めた。
「あなたとお話がしたくって、ってミサカはミサカはかわいく笑顔を浮かべてみたり!」
……。
「帰る」
「ええっ!? なんで? どおしてぇ~~!? ってミサカはミサカはあなたの背中に縋り付いてみたり~~!」
「 『 なンで 』 『 どォして 』 はこっちのセリフだ。
……オマエ、俺がオマエ達に何やってるのか知らねェわけじゃねェンだろ」
「それって 『 絶対能力進化 』 の実験のこと? ってミサカはミサカはキョトンと首をかしげてみたり」
なぜ今それが話題に上がるのか、本当に理解していない顔だった。
一方通行は舌打ちしたい気持ちになった。
上っ面はいいが、所詮こいつも今までと同じ。ただの人形だ。
「更に不可解な点がある、ってミサカはミサカはずずいと前に進み出てみたり」
言った通りに行動して、打ち止めは言った。
「彼の持ち出した 『 データ 』 というのは、この学園都市の 『 能力者名簿 』 だったの、ってミサカはミサカは謎を一つ追加してみる」
「……はァ~~? 何だァそりゃあ?」
確かに不可解だ。
能力者の名簿など、『 風紀委員 <ジャッジメント> 』 でも 『 警備員 <アンチスキル> 』 でも所持している。
大して重要機密でもないのだ。10人以上を傷つけて持ち出す意味などない。
いや、それ以前に 『 絶対能力進化 』 の研究所にわざわざ的を絞る意味が分からない。
持ち出すデータを間違えた、なんてド間抜けな落ちではないだろう。
一方通行の知る限り、天井という男は悪事においては人一倍の粘りと実力を発揮するのだ。
「とにかくその襲撃のどさくさに紛れてミサカは培養液から放り出されちゃったの、ってミサカはミサカはようやく話を着地させてみたり」
ちんまいのはそのせいか。
一方通行はとりあえず疑問は横において、目の前の少女にだけ集中することにした。
「つまりなンだ? オマエを保護しろってか? それとも適当な研究員に紹介しろってェ?」
「ううん、ってミサカはミサカは首を左右に振ってみる」
「……ンじゃあ、何だよ」
打ち止めはニコリと笑って、一方通行との距離を詰めた。
「あなたとお話がしたくって、ってミサカはミサカはかわいく笑顔を浮かべてみたり!」
……。
「帰る」
「ええっ!? なんで? どおしてぇ~~!? ってミサカはミサカはあなたの背中に縋り付いてみたり~~!」
「 『 なンで 』 『 どォして 』 はこっちのセリフだ。
……オマエ、俺がオマエ達に何やってるのか知らねェわけじゃねェンだろ」
「それって 『 絶対能力進化 』 の実験のこと? ってミサカはミサカはキョトンと首をかしげてみたり」
なぜ今それが話題に上がるのか、本当に理解していない顔だった。
一方通行は舌打ちしたい気持ちになった。
上っ面はいいが、所詮こいつも今までと同じ。ただの人形だ。

モバP「泰葉からチョコもらった時の話?」

絵里「なんとかストロガノフ!」穂乃果「そう、カレーです」

タマ「ニャー」タラオ「タマ口臭いですぅ!」タマ「!!!!!!!」

玲音「風邪を引いてしまったようだ…」

苗木「霧切さん、この蝶ネクタイつけてみてよ」
659: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 02:22:07.94:xFNCxGmE0 (8/17)
「ミサカはすべてのミサカと脳波リンクでつながってるのでもちろん知ってる、ってミサカはミサカは言ってみる」
「だったら何で老朽化した公衆便器みてェに大人しく俺の前に突っ立ってられる」
「あなた便器好きだねってミサカは」
「まぜっかえすな。答えろ」
「何に? ってミサカはミサカはあなたの意図をくみ取れず困惑してみたり」
予想はしていたが、やはり会話にならない。
「俺はオマエらを一万人以上殺してンだぞ。なのになンで平然としてられる」
「え? ミサカ単体が消滅してもミサカネットワークそのものが消滅することはありえないし、ってミサカはミサカは個体の有無にこだわるあなたに首をひねってみたり」
「 『 誰 』 が 『 何 』 にこだわってるってェ!?」
「ん? 聞こえなかった? ミサカの……」
「もういい喋るな。話がかみ合わねェ」
一方通行は今度こそ舌打ちし、投げつけた缶コーヒーを拾い集めた。
打ち止めがそのうち一つを手に取ったので、ひったくるようにして奪い返した。
そのまま去って行こうとも考えたが、打ち止めの言葉に足を止める。
「あなたはそうやって、たびたび不可解な言動をするよね、ってミサカはミサカはあなたの背中に声をかけてみたり」
「……あァ?」
「おぉ~~! 振り向いてくれた! ってミサカはミサカは何事もやってみなきゃわかんないって言葉を実感してみたり~~!」
「うるせェ!」
「ひゃっ、……あなたってクールに見えてけっこうおこりんぼさん? ってミサカはミサカは推測してみた、っ」
気が付けば、一方通行は打ち止めの肩を壁に押し付けていた。
打ち止めは痛そうに顔をゆがめる。
「うるせェンだよ…………おィ、『 誰 』 の 『 何 』 が不可解だってェ?」
打ち止めは顔を上げて答えた。
「あなたの最終目標はこの実験を完遂させ、『 レベル6 』 になること。そのためにミサカたちは殺害される。
これはかねてからの決定事項でありお互い同意の上のことだよね、ってミサカはミサカは確認してみる」
「……それがどォした」
「ならあなたはできるだけ効率的に実験を行うべき。
実験前にミサカとおしゃべりしたり、手加減をしてゆっくり殺していく行為に意味はないよ、ってミサカはミサカは共有した情報をもとにあなたに忠告してみたり」
一方通行はカッと目をいからせた。
肩口を押さえる手に 『 能力 』 をこめ、打ち止めの骨がきしむほどの力を 『 向ける 』。
だが打ち止めは苦痛の表情は見せるものの、怯えたり臆したりすることはなかった。
そんなプログラムは入ってないからだ。
「ミサカはすべてのミサカと脳波リンクでつながってるのでもちろん知ってる、ってミサカはミサカは言ってみる」
「だったら何で老朽化した公衆便器みてェに大人しく俺の前に突っ立ってられる」
「あなた便器好きだねってミサカは」
「まぜっかえすな。答えろ」
「何に? ってミサカはミサカはあなたの意図をくみ取れず困惑してみたり」
予想はしていたが、やはり会話にならない。
「俺はオマエらを一万人以上殺してンだぞ。なのになンで平然としてられる」
「え? ミサカ単体が消滅してもミサカネットワークそのものが消滅することはありえないし、ってミサカはミサカは個体の有無にこだわるあなたに首をひねってみたり」
「 『 誰 』 が 『 何 』 にこだわってるってェ!?」
「ん? 聞こえなかった? ミサカの……」
「もういい喋るな。話がかみ合わねェ」
一方通行は今度こそ舌打ちし、投げつけた缶コーヒーを拾い集めた。
打ち止めがそのうち一つを手に取ったので、ひったくるようにして奪い返した。
そのまま去って行こうとも考えたが、打ち止めの言葉に足を止める。
「あなたはそうやって、たびたび不可解な言動をするよね、ってミサカはミサカはあなたの背中に声をかけてみたり」
「……あァ?」
「おぉ~~! 振り向いてくれた! ってミサカはミサカは何事もやってみなきゃわかんないって言葉を実感してみたり~~!」
「うるせェ!」
「ひゃっ、……あなたってクールに見えてけっこうおこりんぼさん? ってミサカはミサカは推測してみた、っ」
気が付けば、一方通行は打ち止めの肩を壁に押し付けていた。
打ち止めは痛そうに顔をゆがめる。
「うるせェンだよ…………おィ、『 誰 』 の 『 何 』 が不可解だってェ?」
打ち止めは顔を上げて答えた。
「あなたの最終目標はこの実験を完遂させ、『 レベル6 』 になること。そのためにミサカたちは殺害される。
これはかねてからの決定事項でありお互い同意の上のことだよね、ってミサカはミサカは確認してみる」
「……それがどォした」
「ならあなたはできるだけ効率的に実験を行うべき。
実験前にミサカとおしゃべりしたり、手加減をしてゆっくり殺していく行為に意味はないよ、ってミサカはミサカは共有した情報をもとにあなたに忠告してみたり」
一方通行はカッと目をいからせた。
肩口を押さえる手に 『 能力 』 をこめ、打ち止めの骨がきしむほどの力を 『 向ける 』。
だが打ち止めは苦痛の表情は見せるものの、怯えたり臆したりすることはなかった。
そんなプログラムは入ってないからだ。
660: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 02:25:58.83:xFNCxGmE0 (9/17)
「それに、あなたは実験前後に人と争うことを好むよね、ってミサカはミサカは不可解なことその2を言ってみる」
「それが何だァ? ただ弱いアホ共をボコってスッキリしてるだけだろォが」
「 『 争い 』 は 『 争い 』 を生み出す。ひとつの 『 闘い 』 に勝利することは簡単だけど、次の 『 闘い 』 のためにストレスがたまる。
ふつう思われているより 『 争い 』 はむなしく、キリがない行為。
あなたがそれをわかってないとは思えないし、そのストレスを楽しんでるとも思えない、ってミサカはミサカは推理してみたり」
一方通行はわずかに目を細めた。
「……じゃあ、何で俺がそンなことしてると思う?」
「それがわからないから 『 不可解 』 って言ってるんだよって、ミサカはミサカはあなたが答えを教えてくれるのを期待してみたり」
「……チッ」
一方通行は突き飛ばすように打ち止めを解放した。
打ち止めはおもちゃを買ってもらえなかった子供のようにむくれた。
「むむぅぅ~~……! あなたが教えてくれないなら、ミサカたちでその答えを探るしかないよねってミサカはミサカは宣言してみる!」
「オマエ……いつから俺の 『 不可解さ 』 に気づいてた?」
「えっ? 結構最近かなってミサカはミサカは答えてみたり」
一方通行はしばらく打ち止めを見つめた。
そしてものすごく癪だと言いたげにあさってを向く。
「俺と話したいって言ってたな……何の話をするってンだ?」
「おぉ~~やっとそれを聞いてくれた~! ってミサカはミサカは喜びに飛び跳ねてみる~~」
顔を輝かせて、
「でもさっきまでの会話で大体言っちゃったんだけどねってミサカはミサカはテヘっとしてペロっとしてみたり」
打ち止めは続ける。
一方通行はただ聞き役に回る。
「それに、あなたは実験前後に人と争うことを好むよね、ってミサカはミサカは不可解なことその2を言ってみる」
「それが何だァ? ただ弱いアホ共をボコってスッキリしてるだけだろォが」
「 『 争い 』 は 『 争い 』 を生み出す。ひとつの 『 闘い 』 に勝利することは簡単だけど、次の 『 闘い 』 のためにストレスがたまる。
ふつう思われているより 『 争い 』 はむなしく、キリがない行為。
あなたがそれをわかってないとは思えないし、そのストレスを楽しんでるとも思えない、ってミサカはミサカは推理してみたり」
一方通行はわずかに目を細めた。
「……じゃあ、何で俺がそンなことしてると思う?」
「それがわからないから 『 不可解 』 って言ってるんだよって、ミサカはミサカはあなたが答えを教えてくれるのを期待してみたり」
「……チッ」
一方通行は突き飛ばすように打ち止めを解放した。
打ち止めはおもちゃを買ってもらえなかった子供のようにむくれた。
「むむぅぅ~~……! あなたが教えてくれないなら、ミサカたちでその答えを探るしかないよねってミサカはミサカは宣言してみる!」
「オマエ……いつから俺の 『 不可解さ 』 に気づいてた?」
「えっ? 結構最近かなってミサカはミサカは答えてみたり」
一方通行はしばらく打ち止めを見つめた。
そしてものすごく癪だと言いたげにあさってを向く。
「俺と話したいって言ってたな……何の話をするってンだ?」
「おぉ~~やっとそれを聞いてくれた~! ってミサカはミサカは喜びに飛び跳ねてみる~~」
顔を輝かせて、
「でもさっきまでの会話で大体言っちゃったんだけどねってミサカはミサカはテヘっとしてペロっとしてみたり」
打ち止めは続ける。
一方通行はただ聞き役に回る。
661: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 02:31:43.36:xFNCxGmE0 (10/17)
「さっきも言ってた、あなたの 『 不可解さ 』 の答えを知りたいのってミサカはミサカは簡潔に目的を伝えてみたり。
ミサカたちにわからない事柄っていうのは、それだけミサカたちの可能性を広げるかもしれない事柄ってことだから、ってミサカはミサカはさらに詳しく言及してみたり。
きっとあなたにはミサカの知りえない情報が詰まってるから、それを得て、糧にしたいってミサカはミサカは思ってる」
打ち止めは息を継いだ。
「だからミサカはあなたの意見を聞きたい! あなたは今まで一万ものミサカと接してきた唯一の人間だから。
あなたがミサカたちに何を思い、何を感じてきたのか知りたい。
それはミサカたちと共有できる感覚なのか? それも知りたい。
あなたがさっき言ってた 『 平然と俺の前に突っ立ってるのはおかしい 』 の真意も知りたい。
なぜならそれすべてが、ミサカたちを成長させる可能性を有しているから、ってミサカはミサカは締めくくってみたり」
一方通行はしばらく沈黙し、頭をかいた。
「……わからねェな……いや、まったく、全ッ然わかンねェわ……」
「ん?」
「オマエらはそう遠くない未来、一人残らず俺に殺されンだぞ? 『 成長 』 しようが何しようが、死ンじまうなら全部無駄じゃねェか」
打ち止めははっきりと答えた。
「いずれ殺される運命でも、ミサカたちはその命を有効利用したいと思ってるから。それは何か間違いなの? ってミサカはミサカは上目づかいに尋ねてみたり」
『 命 』。
一方通行はその単語に名状しがたい感情を覚えた。
それを無視して踵を返す。
「とにかく……目的は果たしたろォ。とっととどっかに保護してもらえ。俺は行く」
「さっきも言ってた、あなたの 『 不可解さ 』 の答えを知りたいのってミサカはミサカは簡潔に目的を伝えてみたり。
ミサカたちにわからない事柄っていうのは、それだけミサカたちの可能性を広げるかもしれない事柄ってことだから、ってミサカはミサカはさらに詳しく言及してみたり。
きっとあなたにはミサカの知りえない情報が詰まってるから、それを得て、糧にしたいってミサカはミサカは思ってる」
打ち止めは息を継いだ。
「だからミサカはあなたの意見を聞きたい! あなたは今まで一万ものミサカと接してきた唯一の人間だから。
あなたがミサカたちに何を思い、何を感じてきたのか知りたい。
それはミサカたちと共有できる感覚なのか? それも知りたい。
あなたがさっき言ってた 『 平然と俺の前に突っ立ってるのはおかしい 』 の真意も知りたい。
なぜならそれすべてが、ミサカたちを成長させる可能性を有しているから、ってミサカはミサカは締めくくってみたり」
一方通行はしばらく沈黙し、頭をかいた。
「……わからねェな……いや、まったく、全ッ然わかンねェわ……」
「ん?」
「オマエらはそう遠くない未来、一人残らず俺に殺されンだぞ? 『 成長 』 しようが何しようが、死ンじまうなら全部無駄じゃねェか」
打ち止めははっきりと答えた。
「いずれ殺される運命でも、ミサカたちはその命を有効利用したいと思ってるから。それは何か間違いなの? ってミサカはミサカは上目づかいに尋ねてみたり」
『 命 』。
一方通行はその単語に名状しがたい感情を覚えた。
それを無視して踵を返す。
「とにかく……目的は果たしたろォ。とっととどっかに保護してもらえ。俺は行く」
662: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 02:39:56.76:xFNCxGmE0 (11/17)
なんて前向きな奴らだ、と一方通行は忌々しく思った。
死ぬということが約束された上での命のくせに、言うに事欠いて 『 有効利用 』 したいだと?
『 成長 』 したいだと?
バカバカしい。どんな情報を吸収したとしても、人形は所詮人形だ。中身のない蛋白質の塊だ。
そう、所詮人形にすぎない、と一方通行は考える。
リカちゃん人形の首を折ったからって逮捕されるガキがいるか? いなァァァ~~い!
だからいくら殺したって心を痛める必要はない。これは当たり前のことなのである。
「だから……ッ! とっとと失せねェとオマエもぶっ殺すぞッ!」
「え~~? でも今日は泊まるところないし、お世話になりたいかも~~ってミサカはミサカは図々しくお願いしてみたり」
どういう神経してやがる。一方通行は頭痛を感じた。
自分は一人や二人じゃない、10030人のお前の仲間を殺したんだぞと頭をシェイクして言ってやりたかった。
それどころか直接の暴力まで受けたというのに、この少女はどこ吹く風だ。
やっぱり何もわかっていない。
こんな人形、後一万体もあるかと思うとうんざりする。
「あとあと、おなかも空いたので何か作ってくれたりするとミサカはミサカは幸せ指数が30ほどアップしてみたり~!」
「くっついてくンじゃねェつってンだよッ糞ガキッ!」
いい加減うっおとしい! と一方通行は地を蹴った。
途端、すさまじい速度で一方通行は宙を走った。
足の裏にかかる運動エネルギーの方向を進行方向だけに変換。これが彼の 『 能力 』 だ。
十分引き離したか、というところで 『 能力 』 を解除。
一応の確認として後ろを振り向き――、
「……あァ?」
一方通行は口の中で小さくつぶやいた。
今気が付いたが、さっき通ってきた場所に男がいた。いや、男というより少年に近い年齢だろう。
なぜか地面に片膝をつき、コンクリートを凝視している。
派手で奇抜な改造を施した学ランに、冗談のようなリーゼント。
その下には温度さえ感じさせない瞳がある。
それが誰かを髣髴とさせるので、一方通行は一目でその少年が嫌いになった。
だから彼の顔がこちらに向いた途端、刺々しい言葉を吐き出した。
「何だ、何だよ、何ですかァ? 誰に向かってガンくれてやがンだよォ?」
なんて前向きな奴らだ、と一方通行は忌々しく思った。
死ぬということが約束された上での命のくせに、言うに事欠いて 『 有効利用 』 したいだと?
『 成長 』 したいだと?
バカバカしい。どんな情報を吸収したとしても、人形は所詮人形だ。中身のない蛋白質の塊だ。
そう、所詮人形にすぎない、と一方通行は考える。
リカちゃん人形の首を折ったからって逮捕されるガキがいるか? いなァァァ~~い!
だからいくら殺したって心を痛める必要はない。これは当たり前のことなのである。
「だから……ッ! とっとと失せねェとオマエもぶっ殺すぞッ!」
「え~~? でも今日は泊まるところないし、お世話になりたいかも~~ってミサカはミサカは図々しくお願いしてみたり」
どういう神経してやがる。一方通行は頭痛を感じた。
自分は一人や二人じゃない、10030人のお前の仲間を殺したんだぞと頭をシェイクして言ってやりたかった。
それどころか直接の暴力まで受けたというのに、この少女はどこ吹く風だ。
やっぱり何もわかっていない。
こんな人形、後一万体もあるかと思うとうんざりする。
「あとあと、おなかも空いたので何か作ってくれたりするとミサカはミサカは幸せ指数が30ほどアップしてみたり~!」
「くっついてくンじゃねェつってンだよッ糞ガキッ!」
いい加減うっおとしい! と一方通行は地を蹴った。
途端、すさまじい速度で一方通行は宙を走った。
足の裏にかかる運動エネルギーの方向を進行方向だけに変換。これが彼の 『 能力 』 だ。
十分引き離したか、というところで 『 能力 』 を解除。
一応の確認として後ろを振り向き――、
「……あァ?」
一方通行は口の中で小さくつぶやいた。
今気が付いたが、さっき通ってきた場所に男がいた。いや、男というより少年に近い年齢だろう。
なぜか地面に片膝をつき、コンクリートを凝視している。
派手で奇抜な改造を施した学ランに、冗談のようなリーゼント。
その下には温度さえ感じさせない瞳がある。
それが誰かを髣髴とさせるので、一方通行は一目でその少年が嫌いになった。
だから彼の顔がこちらに向いた途端、刺々しい言葉を吐き出した。
「何だ、何だよ、何ですかァ? 誰に向かってガンくれてやがンだよォ?」
663: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 02:45:24.90:xFNCxGmE0 (12/17)
反応はなかった。
まばたきすらしない。
鏡のように一方通行を映すだけの瞳に、一方通行は思わず 『 こいつ、目が見えてねェのか 』 とすら思った。
その心配は不要だったようで、少年はおもむろに立ち上がる。
それにも一方通行は違和感を覚えた。
そうだ。膝をはたかないのだ。ズボンの膝についた埃をはたき落とそうとしない。
改造を加えているくらいだ、それなりに大事な服だろうに、まるで無関心である。
まるでお仕着せられたと言わんばかりに――。と、ここまで考えて一方通行はまたも同じ人物を連想してしまった。
さらに機嫌が悪くなる。
「おィオマエ」
「――精神に原因不明の大規模な障害を確認。自己修復…………完了」
「あ?」
少年は変わり映えしない表情で続けた。
「――と、この 『 自動書記<ヨハネのペン> 』 は報告します」
「!」
ギョッとして後退る。
ビビったんじゃあない。決してビビったんじゃあない、不意のことだったので驚いたのだ!
知っている、この口調。
真似しようとしても真似できない、平坦すぎるセリフ。感情のない目。
「おっ……」
一方通行は、ようやく声を絞り出した。
「オマエ…………なンだ……」
少年は応えなかったし、一方通行もそれを期待してなかった。
打っても響かぬこの反応。
やはり似てる。似すぎている。
『 何でコイツ、こんなに似てるンだ? 』
そう考えるに至って、それまで一本道を走っていた一方通行の思考が、全く違う方向に切り替わった。
反応はなかった。
まばたきすらしない。
鏡のように一方通行を映すだけの瞳に、一方通行は思わず 『 こいつ、目が見えてねェのか 』 とすら思った。
その心配は不要だったようで、少年はおもむろに立ち上がる。
それにも一方通行は違和感を覚えた。
そうだ。膝をはたかないのだ。ズボンの膝についた埃をはたき落とそうとしない。
改造を加えているくらいだ、それなりに大事な服だろうに、まるで無関心である。
まるでお仕着せられたと言わんばかりに――。と、ここまで考えて一方通行はまたも同じ人物を連想してしまった。
さらに機嫌が悪くなる。
「おィオマエ」
「――精神に原因不明の大規模な障害を確認。自己修復…………完了」
「あ?」
少年は変わり映えしない表情で続けた。
「――と、この 『 自動書記<ヨハネのペン> 』 は報告します」
「!」
ギョッとして後退る。
ビビったんじゃあない。決してビビったんじゃあない、不意のことだったので驚いたのだ!
知っている、この口調。
真似しようとしても真似できない、平坦すぎるセリフ。感情のない目。
「おっ……」
一方通行は、ようやく声を絞り出した。
「オマエ…………なンだ……」
少年は応えなかったし、一方通行もそれを期待してなかった。
打っても響かぬこの反応。
やはり似てる。似すぎている。
『 何でコイツ、こんなに似てるンだ? 』
そう考えるに至って、それまで一本道を走っていた一方通行の思考が、全く違う方向に切り替わった。
664: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 02:50:46.39:xFNCxGmE0 (13/17)
最強を超えた無敵――。
自分にとってのゴールはそれだけである。
だが、他の者にとっては?
たとえばこの実験を嬉々として行っているクソッタレた研究者ども。
もし、である。
もし自分が 『 無敵<レベル6> 』 に……絶対になるが……なれたとしよう。
その後は?
そうだ、なんで気づかなかったのだ。
『 研究者どもにとってレベル6の俺は成功例に過ぎない 』。
『 成功例 』 があったら今度は 『 実用面 』 に目を向けるのではないか?
――すなわち 『 量産 』ッ!
――軍事用兵器としてのレベル6の量産!
その対象に組み込まれるのは、自分以外のレベル5六人に違いない。
自分よりもっとずっと劣っているレベル5どもを 『 シフト 』 させるには、どのくらいの犠牲がいる?
最強の第一位と、第三位の遺伝子を使っても二万人の犠牲が出る 『 シフト 』 に――自分よりもっとずっと劣っている奴らを 『 シフト 』 させるには――。
今度はきっと、二万や三万じゃ足りない。
そして着々と 『 無敵 』 に向かっている俺を見た研究者のどいつかが、『 樹形図の設計者 』 に演算依頼を出し、そのクソッタレた考えを、既に実行に移していたとしたら――。
「オ、マエ……まさか、」
やはり少年は無表情に首をかしげ、
「――結論」
「あ?」
「ユーモアのある口調でも初対面の人間との精神的距離は縮みませんでした。
あるいは、先ほどの少女をモデルにしたことが原因でしょうか。
この記憶は 『 本体 』 と共有せず、この自動書記の中だけにしまっておきます。お付き合いいただきありがとうございました」
「~~~!!!」
最強を超えた無敵――。
自分にとってのゴールはそれだけである。
だが、他の者にとっては?
たとえばこの実験を嬉々として行っているクソッタレた研究者ども。
もし、である。
もし自分が 『 無敵<レベル6> 』 に……絶対になるが……なれたとしよう。
その後は?
そうだ、なんで気づかなかったのだ。
『 研究者どもにとってレベル6の俺は成功例に過ぎない 』。
『 成功例 』 があったら今度は 『 実用面 』 に目を向けるのではないか?
――すなわち 『 量産 』ッ!
――軍事用兵器としてのレベル6の量産!
その対象に組み込まれるのは、自分以外のレベル5六人に違いない。
自分よりもっとずっと劣っているレベル5どもを 『 シフト 』 させるには、どのくらいの犠牲がいる?
最強の第一位と、第三位の遺伝子を使っても二万人の犠牲が出る 『 シフト 』 に――自分よりもっとずっと劣っている奴らを 『 シフト 』 させるには――。
今度はきっと、二万や三万じゃ足りない。
そして着々と 『 無敵 』 に向かっている俺を見た研究者のどいつかが、『 樹形図の設計者 』 に演算依頼を出し、そのクソッタレた考えを、既に実行に移していたとしたら――。
「オ、マエ……まさか、」
やはり少年は無表情に首をかしげ、
「――結論」
「あ?」
「ユーモアのある口調でも初対面の人間との精神的距離は縮みませんでした。
あるいは、先ほどの少女をモデルにしたことが原因でしょうか。
この記憶は 『 本体 』 と共有せず、この自動書記の中だけにしまっておきます。お付き合いいただきありがとうございました」
「~~~!!!」
665: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 02:55:01.43:xFNCxGmE0 (14/17)
一方通行は真っ赤になると、むちゃくちゃに頭をかきむしった。
ムカつく、イラつく、腹立たしい!
目の前で電波と会話している得体の知れぬ少年が、ではない。
一瞬でもありえないことを想像してしまった我が脳ミソがである。
何が他の 『 無敵 』 だ!
そもそも 『 樹形図の設計者 』 の予測演算で 『 レベル6 』 になれるのは自分一人だけだと判明したではないか!
だから自分もこの実験に協力したんだろーが! 腐れ脳ミソが!!
なぜこんなトンデモないことを考えた。
動揺したからだ。違いない!
ならなぜ動揺した。
動揺っていうのはつまり罪悪感の裏返しだ。
『 悪いことをしている 』 という 『 後ろめたさ 』 があるからむやみやたらに心が動く。
つまりそれは――ありえない連想をするほど動揺したということは――罪悪感があるのか?
悔いているというのか。一万体以上のクローンを殺したことを? 人形どもを殺したっていうだけのことを?
なんで後悔する必要がある!
だが動揺した時点で一方通行の気持ちは確定してしまった。
動揺したこと、それ自体が罪を感じる自分の心、後悔のまったき証拠なのである。
それがわかっているから、一方通行はなおさらイライラした。
「――警告。猫を見失う前に追いかける必要があります」
「ならとっとと失せやがれ! 無表情リーゼントォッ!!」
と言った時には既に失せていて、一方通行はますますやり場のないイラつきを抱え込むことになった。
一方通行は真っ赤になると、むちゃくちゃに頭をかきむしった。
ムカつく、イラつく、腹立たしい!
目の前で電波と会話している得体の知れぬ少年が、ではない。
一瞬でもありえないことを想像してしまった我が脳ミソがである。
何が他の 『 無敵 』 だ!
そもそも 『 樹形図の設計者 』 の予測演算で 『 レベル6 』 になれるのは自分一人だけだと判明したではないか!
だから自分もこの実験に協力したんだろーが! 腐れ脳ミソが!!
なぜこんなトンデモないことを考えた。
動揺したからだ。違いない!
ならなぜ動揺した。
動揺っていうのはつまり罪悪感の裏返しだ。
『 悪いことをしている 』 という 『 後ろめたさ 』 があるからむやみやたらに心が動く。
つまりそれは――ありえない連想をするほど動揺したということは――罪悪感があるのか?
悔いているというのか。一万体以上のクローンを殺したことを? 人形どもを殺したっていうだけのことを?
なんで後悔する必要がある!
だが動揺した時点で一方通行の気持ちは確定してしまった。
動揺したこと、それ自体が罪を感じる自分の心、後悔のまったき証拠なのである。
それがわかっているから、一方通行はなおさらイライラした。
「――警告。猫を見失う前に追いかける必要があります」
「ならとっとと失せやがれ! 無表情リーゼントォッ!!」
と言った時には既に失せていて、一方通行はますますやり場のないイラつきを抱え込むことになった。
666: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 02:58:55.23:xFNCxGmE0 (15/17)
――クソッ、どっと疲れた。
一方通行はようやく自分の住居に戻ってこれた。
「おっじゃまっしまぁ~~す! ってミサカはミサカは一応礼儀なので入る前には挨拶してみたり!」
「……」
邪魔者付きだが。
結局、あのリーゼント野郎に足止めされたせいで追いつかれてしまった。
「わぁ~~! 結構広くていいところなんだね、ってミサカはミサカはあなたの部屋をえらそうに評してみる!」
「……くっだらねェ」
心の底からそう吐き捨て、一方通行は玄関をくぐった。
打ち止めはぺたんと三和土に座り込むと、靴を脱ぎ始める。
「…………って靴ゥ?」
一方通行はやっと気づいた。
興味がないので気づかなかった、とも言う。
毛布だけを羽織った少女に新品らしきピカピカのスニーカーは、サイモンとガーファンクルの間にさだまさしが居るくらい浮いていた。
「おィ、オマエそれ……かっぱらってきたのか?」
「違うよぉ、ってミサカはミサカはいわれのない罪に抗議してみたり。
あなたに会ういちじかんくらい前に親切な人に買ってもらったの、ってミサカはミサカはここぞとばかりに見せびらかしてみる」
どうやら裸足で歩きまわる少女を見るに堪えなかった、お人よしがいたらしい。
「ちょっぴり怖そうな人だったけど、人は見かけによらないね、ってミサカはミサカは渡る世間に鬼はないことを実地で理解してみたり」
「あァそォかい」
一方通行は缶コーヒーの入った袋をテーブルに置くと、ソファに寝転がった。
「寝床くらいは貸してやる。その代わり、朝になったらとっとと出て行けよ」
「わーい! ってミサカはミサカはベッドに突進してみたり~~!」
「……わかってンのか、本当」
本当にわかっているのか。色々と。
「あ! 一応宣告しておくけど、寝込みを襲うのはNGなんだからってミサカは」
「寝ろッッ!!!」
――クソッ、どっと疲れた。
一方通行はようやく自分の住居に戻ってこれた。
「おっじゃまっしまぁ~~す! ってミサカはミサカは一応礼儀なので入る前には挨拶してみたり!」
「……」
邪魔者付きだが。
結局、あのリーゼント野郎に足止めされたせいで追いつかれてしまった。
「わぁ~~! 結構広くていいところなんだね、ってミサカはミサカはあなたの部屋をえらそうに評してみる!」
「……くっだらねェ」
心の底からそう吐き捨て、一方通行は玄関をくぐった。
打ち止めはぺたんと三和土に座り込むと、靴を脱ぎ始める。
「…………って靴ゥ?」
一方通行はやっと気づいた。
興味がないので気づかなかった、とも言う。
毛布だけを羽織った少女に新品らしきピカピカのスニーカーは、サイモンとガーファンクルの間にさだまさしが居るくらい浮いていた。
「おィ、オマエそれ……かっぱらってきたのか?」
「違うよぉ、ってミサカはミサカはいわれのない罪に抗議してみたり。
あなたに会ういちじかんくらい前に親切な人に買ってもらったの、ってミサカはミサカはここぞとばかりに見せびらかしてみる」
どうやら裸足で歩きまわる少女を見るに堪えなかった、お人よしがいたらしい。
「ちょっぴり怖そうな人だったけど、人は見かけによらないね、ってミサカはミサカは渡る世間に鬼はないことを実地で理解してみたり」
「あァそォかい」
一方通行は缶コーヒーの入った袋をテーブルに置くと、ソファに寝転がった。
「寝床くらいは貸してやる。その代わり、朝になったらとっとと出て行けよ」
「わーい! ってミサカはミサカはベッドに突進してみたり~~!」
「……わかってンのか、本当」
本当にわかっているのか。色々と。
「あ! 一応宣告しておくけど、寝込みを襲うのはNGなんだからってミサカは」
「寝ろッッ!!!」
667: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 02:59:35.83:xFNCxGmE0 (16/17)
→TO BE CONTINUED....
→TO BE CONTINUED....
668: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/08(火) 03:00:23.49:xFNCxGmE0 (17/17)
大体の謎は一通さん編で解ける予定
今日はここまでです
大体の謎は一通さん編で解ける予定
今日はここまでです
669:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/08(火) 06:04:04.10:qhMWkykDO (1/1)
おぉう、いつの間にか番外編が!
おぉう、いつの間にか番外編が!
670:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/08(火) 15:57:53.29:BBMl9j/Ho (1/1)
乙ぅ
乙ぅ
671:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/05/08(火) 18:25:38.04:VotP9hCj0 (1/1)
おお、前の話とつながった。
便器好きねに笑いました
承太郎も全裸なんだから靴だけじゃなくて服も買ってやれよ
おお、前の話とつながった。
便器好きねに笑いました
承太郎も全裸なんだから靴だけじゃなくて服も買ってやれよ
672:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/05/09(水) 02:54:46.97:cXltvXAF0 (1/1)
やーセロリが幼女をすっぽんぽんは何をおいてもスルーするわけにはいかない重大イベントだからしょうがない
やーセロリが幼女をすっぽんぽんは何をおいてもスルーするわけにはいかない重大イベントだからしょうがない
673: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 20:47:44.33:Oa8qqIoV0 (1/33)
第二十話「打ち止め<ラストオーダー>は殺人鬼が好き②」
第二十話「打ち止め<ラストオーダー>は殺人鬼が好き②」
674: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 20:50:15.88:Oa8qqIoV0 (2/33)
気が高ぶっていたせいか、一方通行はまだ日の出ないうちに目覚めた。
起き上がり、なんで俺ソファで寝てるんだと考える。
そしてベッドの上で丸まる小さな影に納得した。
起きてあれこれと言われるのも面倒なので、そのまま外に出ることにした。
出る前に、少し考えて書置きを書くことにした。
約束通りさっさと出て行く事、貴重品は持って行くので鍵はかけなくてもいい事、近場の研究所の住所等々……。
書いているうちに心底バカバカしくなって破り捨てかけたが、破る音で起こしてしまわないとも限らないので、堪えた。
気が高ぶっていたせいか、一方通行はまだ日の出ないうちに目覚めた。
起き上がり、なんで俺ソファで寝てるんだと考える。
そしてベッドの上で丸まる小さな影に納得した。
起きてあれこれと言われるのも面倒なので、そのまま外に出ることにした。
出る前に、少し考えて書置きを書くことにした。
約束通りさっさと出て行く事、貴重品は持って行くので鍵はかけなくてもいい事、近場の研究所の住所等々……。
書いているうちに心底バカバカしくなって破り捨てかけたが、破る音で起こしてしまわないとも限らないので、堪えた。
675: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 20:53:52.64:Oa8qqIoV0 (3/33)
コンビニで本を読んだりするうちに、本格的に町が動き出していた。
家に戻ろうかとも考えたが、まだ 『 アレ 』 が寝ていたらとんぼ返りしなければならないと考えると癪なのでもう少しブラブラすることにする。
本屋で本を読んだり、久しぶりにCDを聞いたりした。
昼ごろになって飯を食って、また本を立ち読みしていたら日が沈んでいた。ダメだこりゃ。
かと思ったらケンカを売られたので昨日のイライラをぶつけることにする。
ぶつけすぎたらしく、ものの五分で路地裏は死屍累々の惨状となった。
「オ……オレ達が、悪かった……」
恥もプライドもなくリーダーらしき男は命乞いした。
それがむしろ気に入らない。特に髪型がリーゼントなのが気に入らない。
「だからもう勘弁……!?」
一方通行はリーダーの男の額に拳を押し当てた。
力の方向を操作。
どんどん拳を陥没させていき、さらにグリグリと拳を回して捻じ込んでいく。
「ノックしてもしもォォォォしィ」
「おっぱァアアアアア!!」
メシメシメッシャァと危険な音がして男の頭蓋がきしむ。
「テメェから噛みついてきといて謝ったら済むとでも思ってるンですかァァァ? 甘ェんだよ便所にこびりついたクソカスがァ」
男の両手が一方通行の腕を掴もうとするが、途端指が十本ともへし折れる。
「ひっ! ひいええええええッッ!!」
背後で悲鳴と、逃げ出す音。
一方通行は振り返りもせず地面を蹴った。
狙い違わず、逃亡しようとした男が地盤ごとはじけ飛ぶ。
「ったく……泣き言ひとつ言わねェで任務を全うする人形どももいるってェのによォ」
さて、どう料理してやろうかと残りを見渡したところで、一方通行は気が付いた。
向かいの歩道に、見覚えのある少女がいる。
一方通行は空を見て、また少女を見、リーダー男の手首をつかむと時計を見た。
「……テメェらのせいで一日終わっちまったじゃねェか」
10031回目の実験が始まろうとしていた。
コンビニで本を読んだりするうちに、本格的に町が動き出していた。
家に戻ろうかとも考えたが、まだ 『 アレ 』 が寝ていたらとんぼ返りしなければならないと考えると癪なのでもう少しブラブラすることにする。
本屋で本を読んだり、久しぶりにCDを聞いたりした。
昼ごろになって飯を食って、また本を立ち読みしていたら日が沈んでいた。ダメだこりゃ。
かと思ったらケンカを売られたので昨日のイライラをぶつけることにする。
ぶつけすぎたらしく、ものの五分で路地裏は死屍累々の惨状となった。
「オ……オレ達が、悪かった……」
恥もプライドもなくリーダーらしき男は命乞いした。
それがむしろ気に入らない。特に髪型がリーゼントなのが気に入らない。
「だからもう勘弁……!?」
一方通行はリーダーの男の額に拳を押し当てた。
力の方向を操作。
どんどん拳を陥没させていき、さらにグリグリと拳を回して捻じ込んでいく。
「ノックしてもしもォォォォしィ」
「おっぱァアアアアア!!」
メシメシメッシャァと危険な音がして男の頭蓋がきしむ。
「テメェから噛みついてきといて謝ったら済むとでも思ってるンですかァァァ? 甘ェんだよ便所にこびりついたクソカスがァ」
男の両手が一方通行の腕を掴もうとするが、途端指が十本ともへし折れる。
「ひっ! ひいええええええッッ!!」
背後で悲鳴と、逃げ出す音。
一方通行は振り返りもせず地面を蹴った。
狙い違わず、逃亡しようとした男が地盤ごとはじけ飛ぶ。
「ったく……泣き言ひとつ言わねェで任務を全うする人形どももいるってェのによォ」
さて、どう料理してやろうかと残りを見渡したところで、一方通行は気が付いた。
向かいの歩道に、見覚えのある少女がいる。
一方通行は空を見て、また少女を見、リーダー男の手首をつかむと時計を見た。
「……テメェらのせいで一日終わっちまったじゃねェか」
10031回目の実験が始まろうとしていた。
676: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 20:56:29.33:Oa8qqIoV0 (4/33)
指定の場所に行くと、すでに少女はそこにいた。
軍用ゴーグルに、おもちゃじみた特製の銃F2000R。
さっき見た時と違って猫は抱いていない。
別モノか? まあいい。どうせ見分けなんかつかないのだ。
一方通行は彼女に近づきながら、おもむろに問うた。
「ンで、お前が次の実験のターゲットってことで構わねえんだな」
「はい。ミサカのシリアルナンバーは10031号です。とミサカは返答します。
実験開始まであと5分40秒ありますが、待機しますか。とミサカは問いかけます」
「……」
一方通行の中に、妙な違和感が生じた。
「まァ、俺が強くなるための実験に付き合わせてる身で言えた義理じゃねェンだけどさァ……
よく平然としてるよなァ、この状況で……ちっとァ何か考えたりとかしねェのかよ」
「 『 何か 』 という曖昧な表現ではわかりかねます。とミサカは返答します」
「自分の命を投げ打つなんざ俺には理解できねェなァ……。
俺は自分の命が一番だしさァ、だからこそ力を欲することに際限はねェし、そのためならオマエ達が何百何千何万と死のうが 『 知ったこっちゃねェ 』 って鼻で笑うこともできンだぜェ」
実際嘲ってやると、10031号はブレない無表情で答えた。
「ミサカの方こそあなたの言動に理解できない点があります。あなたは既に学園都市最強のレベル5です。それ以上の力を欲する必要はないのでは。とミサカは予測します」
「……『 最強 』 ねェ」
「その呼称に何か問題がありますか。とミサカは再び問いかけます」
まただ。
また妙な感覚があった。
一方通行は、努めてそれを気にしないようにしながら答えた。
指定の場所に行くと、すでに少女はそこにいた。
軍用ゴーグルに、おもちゃじみた特製の銃F2000R。
さっき見た時と違って猫は抱いていない。
別モノか? まあいい。どうせ見分けなんかつかないのだ。
一方通行は彼女に近づきながら、おもむろに問うた。
「ンで、お前が次の実験のターゲットってことで構わねえんだな」
「はい。ミサカのシリアルナンバーは10031号です。とミサカは返答します。
実験開始まであと5分40秒ありますが、待機しますか。とミサカは問いかけます」
「……」
一方通行の中に、妙な違和感が生じた。
「まァ、俺が強くなるための実験に付き合わせてる身で言えた義理じゃねェンだけどさァ……
よく平然としてるよなァ、この状況で……ちっとァ何か考えたりとかしねェのかよ」
「 『 何か 』 という曖昧な表現ではわかりかねます。とミサカは返答します」
「自分の命を投げ打つなんざ俺には理解できねェなァ……。
俺は自分の命が一番だしさァ、だからこそ力を欲することに際限はねェし、そのためならオマエ達が何百何千何万と死のうが 『 知ったこっちゃねェ 』 って鼻で笑うこともできンだぜェ」
実際嘲ってやると、10031号はブレない無表情で答えた。
「ミサカの方こそあなたの言動に理解できない点があります。あなたは既に学園都市最強のレベル5です。それ以上の力を欲する必要はないのでは。とミサカは予測します」
「……『 最強 』 ねェ」
「その呼称に何か問題がありますか。とミサカは再び問いかけます」
まただ。
また妙な感覚があった。
一方通行は、努めてそれを気にしないようにしながら答えた。
677: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:00:58.41:Oa8qqIoV0 (5/33)
「さっきよォ、俺に喧嘩を売ってきたアホ共がいた。あくびが出るほどのザコだったがな……。
所詮そンなもンなんだよ、『 最強 』 ってェのは。
新発売の便器の臭い消しみてェに 『 面白そーだから試してみよう 』 って程度にしか思われてねェってことだ。
……駄目だよなァ、そンなンじゃ……全然駄目だ…………そんな 『 最強 』 じゃ全くつまンねェッ!」
「それでは何をお望みですか。とミサカは質問します」
「 『 先 』 だよッ! 挑戦しようと思うことがバカバカしくなるくらい、闘おうって思う事すら許されねェ程の、俺が求めてンのはそういった 『 無敵 』 な存在なんだよッ!」
「……。なるほど。とミサカは釈然としないながらもうなずきます」
一方通行の中の違和感が、もう隠しきれないほどに大きくなった。
うさんくさげに10031号をねめつける。
「オマエ……何だ? なンか違ェぞ」
「……」
10031号は、そこで初めて気づいたというように目を瞬かせ、
「……はい。会話より先にパスの確認や残り時間の報告をしておくべきでした。とミサカは謝罪します」
「待て。『 会話 』? オマエ俺と 『 会話 』 してたって、そォ言うのか?」
「はい。とミサカは手短に答えます」
初めてだ。と一方通行は思った。
10031回目にして、やっと会話をする個体が出てきた。
違和感の正体はこれか。
「何だ、何だよ、何ですかァ? さすがに一万回以上も繰り返してりゃ、知恵もついてくるってもンですかねェェ?」
「話術による攪乱や情報収集を狙っていたわけではありません。先ほどのはミサカのミスです。とミサカは重ねて謝罪します」
「怒っちゃいねェよ」
実際、どう反応すればいいかわからなかった。
体感時間としては、開始まであと三分ほどあるはずだ。
一方通行は手近の壁にもたれると、前髪をいじくった。
「俺が知りたいのはだ……実験の遂行しか頭にねェオマエらが、何だって突然 『 会話 』 なンてケッタイなことをしだしたかってことだ、うン」
「さっきよォ、俺に喧嘩を売ってきたアホ共がいた。あくびが出るほどのザコだったがな……。
所詮そンなもンなんだよ、『 最強 』 ってェのは。
新発売の便器の臭い消しみてェに 『 面白そーだから試してみよう 』 って程度にしか思われてねェってことだ。
……駄目だよなァ、そンなンじゃ……全然駄目だ…………そんな 『 最強 』 じゃ全くつまンねェッ!」
「それでは何をお望みですか。とミサカは質問します」
「 『 先 』 だよッ! 挑戦しようと思うことがバカバカしくなるくらい、闘おうって思う事すら許されねェ程の、俺が求めてンのはそういった 『 無敵 』 な存在なんだよッ!」
「……。なるほど。とミサカは釈然としないながらもうなずきます」
一方通行の中の違和感が、もう隠しきれないほどに大きくなった。
うさんくさげに10031号をねめつける。
「オマエ……何だ? なンか違ェぞ」
「……」
10031号は、そこで初めて気づいたというように目を瞬かせ、
「……はい。会話より先にパスの確認や残り時間の報告をしておくべきでした。とミサカは謝罪します」
「待て。『 会話 』? オマエ俺と 『 会話 』 してたって、そォ言うのか?」
「はい。とミサカは手短に答えます」
初めてだ。と一方通行は思った。
10031回目にして、やっと会話をする個体が出てきた。
違和感の正体はこれか。
「何だ、何だよ、何ですかァ? さすがに一万回以上も繰り返してりゃ、知恵もついてくるってもンですかねェェ?」
「話術による攪乱や情報収集を狙っていたわけではありません。先ほどのはミサカのミスです。とミサカは重ねて謝罪します」
「怒っちゃいねェよ」
実際、どう反応すればいいかわからなかった。
体感時間としては、開始まであと三分ほどあるはずだ。
一方通行は手近の壁にもたれると、前髪をいじくった。
「俺が知りたいのはだ……実験の遂行しか頭にねェオマエらが、何だって突然 『 会話 』 なンてケッタイなことをしだしたかってことだ、うン」
678: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:06:36.25:Oa8qqIoV0 (6/33)
10031号の返事は、驚くほど遅かった。
「……会話と……」
「あン?」
「会話というものに、ミサカ10031号は価値を見出しかけているのかもしれません。とミサカは分析します」
10031号は突然F2000Rをいじくりだした。
メンテナンスではない。ただいじっている。
「昨日のことです。ミサカはミサカによく似た人に出会いました。その人がミサカに話しかけ、ミサカもそれに応対しました」
一方通行は昨日のことを思い出したが、まさかなと首を振った。
「一分にも満たないやり取りでしたが、ミサカはその会話を 『 続けたい 』 と思いました。
お姉さまが止めなければ、きっといつまでも話していたでしょう。なぜなのか、ミサカは個人的に考えました。
そしてあの人と会話によって 『 結びつきたい 』 からだという結論に達しました。
直後、お姉さまに対しても同様の衝動を覚えました。おそらくこれがコミュニケーションの動機なのでしょう。とミサカは不完全な理論を展開しました」
それきり10031号は口をつぐんだ。
「……で?」
「で、とは。とミサカは問い返します」
「つまりだ。オマエの 『 不完全な理論 』 で言うと、オマエは俺と 『 結びつきたい 』 から会話してたっていうのか?」
「はい。そうなります。とミサカは」
「はっ! ふざけてンじゃねェぞ」
本当にふざけるんじゃあない。あの打ち止めとかいう奴でもあるまいに。
一方通行は10031号に向き直った。
睨みつけてやるが、10031号はびくともしなかった。
「今、考え付いたのですが、その理論で行くと、あなたもミサカと 『 結びつきたい 』 と考えているのではないですか。とミサカは推測します」
それどころかこんなことを言いだした。
「あァァァンッ!?」
「会話を始めたのはそちらです。ということは――」
10031号は口をつぐんだ。
「……どォした?」
「開始1秒前です。とミサカは――これより第一〇〇三一次実験を開始します。
所定の位置についてくださいとミサカはあっ……銃を落としました」
「ボケボケだなテメェはッ!」
10031号の返事は、驚くほど遅かった。
「……会話と……」
「あン?」
「会話というものに、ミサカ10031号は価値を見出しかけているのかもしれません。とミサカは分析します」
10031号は突然F2000Rをいじくりだした。
メンテナンスではない。ただいじっている。
「昨日のことです。ミサカはミサカによく似た人に出会いました。その人がミサカに話しかけ、ミサカもそれに応対しました」
一方通行は昨日のことを思い出したが、まさかなと首を振った。
「一分にも満たないやり取りでしたが、ミサカはその会話を 『 続けたい 』 と思いました。
お姉さまが止めなければ、きっといつまでも話していたでしょう。なぜなのか、ミサカは個人的に考えました。
そしてあの人と会話によって 『 結びつきたい 』 からだという結論に達しました。
直後、お姉さまに対しても同様の衝動を覚えました。おそらくこれがコミュニケーションの動機なのでしょう。とミサカは不完全な理論を展開しました」
それきり10031号は口をつぐんだ。
「……で?」
「で、とは。とミサカは問い返します」
「つまりだ。オマエの 『 不完全な理論 』 で言うと、オマエは俺と 『 結びつきたい 』 から会話してたっていうのか?」
「はい。そうなります。とミサカは」
「はっ! ふざけてンじゃねェぞ」
本当にふざけるんじゃあない。あの打ち止めとかいう奴でもあるまいに。
一方通行は10031号に向き直った。
睨みつけてやるが、10031号はびくともしなかった。
「今、考え付いたのですが、その理論で行くと、あなたもミサカと 『 結びつきたい 』 と考えているのではないですか。とミサカは推測します」
それどころかこんなことを言いだした。
「あァァァンッ!?」
「会話を始めたのはそちらです。ということは――」
10031号は口をつぐんだ。
「……どォした?」
「開始1秒前です。とミサカは――これより第一〇〇三一次実験を開始します。
所定の位置についてくださいとミサカはあっ……銃を落としました」
「ボケボケだなテメェはッ!」
679: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:10:01.62:Oa8qqIoV0 (7/33)
○ ○ ○
一方通行はどうせ勝負ならない、と思っていたが、やはり勝負にならなかった。
銃弾はことごとく跳ね返される。
攻撃をあきらめて逃げても、逃げても逃げても振り切れない。
脱ぎ捨てたローファーが目に留まり、一方通行はちょんと足で押そうとして……やめた。
そこに銃弾が飛んでくる。
やはり跳ね返る。かろうじて返ってきた弾をかわし、10031号は呟いた。
「――っ反射」
「残念。答えは 『 ベクトル変化 』 」
運動量、熱量、電気量、あらゆるベクトルは一方通行の皮膚に触れただけで変更ができる。
間髪入れず10031号は引き金を引いたが、それが一方通行に届くことはなかった。
飛んできた軌道を正確にたどり、弾丸が10031号の肩を撃ちぬく。
「――っ!!」
声にならない悲鳴を上げ、10031号は、とうとう地面に倒れ伏した。
「まッ! デフォじゃァ反射に設定してあるけどなァ」
「っ!」
それでも這いずって逃げようとするので、一方通行は足元の小石を蹴った。
途端、すさまじい勢いで10031号の背中に直撃する。
「あっ、ぐっ」
「ンだぁ? 愉快にケツ振りやがって……誘ってンのかァ?」
「ふ、ぐぐぅっ、」
もがく10031号をよそに、とっくに彼女の手から零れ落ちた銃を手にする。
息を荒くする彼女の横に立つと、おもむろに脇腹を蹴った。
悲鳴はない。息のかすれる音が聞こえたきりだ。
仰向けになった10031号に、一方通行は銃口を向けた。
「楽しく仲良くおしゃべりすりゃァ俺が優しくなるとでも思ってたか……? ざンねェェンッ! なるわけねェだろ便器裏のゴミムシがッ!」
「……っ」
ふうふうと胸を上下させながら、10031号は一方通行を見る。
――いや、銃口を覗いている。
○ ○ ○
一方通行はどうせ勝負ならない、と思っていたが、やはり勝負にならなかった。
銃弾はことごとく跳ね返される。
攻撃をあきらめて逃げても、逃げても逃げても振り切れない。
脱ぎ捨てたローファーが目に留まり、一方通行はちょんと足で押そうとして……やめた。
そこに銃弾が飛んでくる。
やはり跳ね返る。かろうじて返ってきた弾をかわし、10031号は呟いた。
「――っ反射」
「残念。答えは 『 ベクトル変化 』 」
運動量、熱量、電気量、あらゆるベクトルは一方通行の皮膚に触れただけで変更ができる。
間髪入れず10031号は引き金を引いたが、それが一方通行に届くことはなかった。
飛んできた軌道を正確にたどり、弾丸が10031号の肩を撃ちぬく。
「――っ!!」
声にならない悲鳴を上げ、10031号は、とうとう地面に倒れ伏した。
「まッ! デフォじゃァ反射に設定してあるけどなァ」
「っ!」
それでも這いずって逃げようとするので、一方通行は足元の小石を蹴った。
途端、すさまじい勢いで10031号の背中に直撃する。
「あっ、ぐっ」
「ンだぁ? 愉快にケツ振りやがって……誘ってンのかァ?」
「ふ、ぐぐぅっ、」
もがく10031号をよそに、とっくに彼女の手から零れ落ちた銃を手にする。
息を荒くする彼女の横に立つと、おもむろに脇腹を蹴った。
悲鳴はない。息のかすれる音が聞こえたきりだ。
仰向けになった10031号に、一方通行は銃口を向けた。
「楽しく仲良くおしゃべりすりゃァ俺が優しくなるとでも思ってたか……? ざンねェェンッ! なるわけねェだろ便器裏のゴミムシがッ!」
「……っ」
ふうふうと胸を上下させながら、10031号は一方通行を見る。
――いや、銃口を覗いている。
680: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:13:18.66:Oa8qqIoV0 (8/33)
「コミュニケーションの動機? 俺が 『 結びつきたがってる 』 だァ? うぬぼれンなよできそこないの乱造品。
テメェみてェな存在と誰が結びつきたがるってンだよォ、バァァ~~~~カ」
10031号は銃口を見つめたまま、
「……お姉さまにも、同じことを言われました。とミサカは告白します」
「……あァ?」
お姉さま。
第三位。
御坂美琴。
あれが?
『 何 』 したって?
「お姉さまにとってミサカは否定したい存在なのです。ミサカはクローンですので。とミサカは言います」
10031号とオリジナルの間で何が起きたか。
一方通行は知らないし、知りたくもなかった。
10031号は淡々と語る。
「否定されれば結びつくことはできません。ならば全く別の個体と結びつくことは可能か? そう考えましたが、結論は出ませんでした。
ミサカには時間が足りなかったようです。とミサカは反省点を述べます」
それは実に同情に値すべき内容だったが、10031号は 『 こういう話をすれば命だけは助けてくれるだろー 』 なんて考えていない。一方通行にはよくわかる。
悲劇を演じるでもなければ同情を引き出そうとしているのでもない。
10031号は、ただ事実だけを伝えているのだ。
10030号と同じだ。と一方通行は思った。
シチュエーションも同じなら、それに対する反応も同じ。
『 死 』 に直面しても恐怖しない。
打ち止めに言わせれば、それはミサカネットワークの存在によるところが大きいらしいが。
やはり一方通行には理解しがたかった。
重く、冷たい沈黙だけが残った。
「コミュニケーションの動機? 俺が 『 結びつきたがってる 』 だァ? うぬぼれンなよできそこないの乱造品。
テメェみてェな存在と誰が結びつきたがるってンだよォ、バァァ~~~~カ」
10031号は銃口を見つめたまま、
「……お姉さまにも、同じことを言われました。とミサカは告白します」
「……あァ?」
お姉さま。
第三位。
御坂美琴。
あれが?
『 何 』 したって?
「お姉さまにとってミサカは否定したい存在なのです。ミサカはクローンですので。とミサカは言います」
10031号とオリジナルの間で何が起きたか。
一方通行は知らないし、知りたくもなかった。
10031号は淡々と語る。
「否定されれば結びつくことはできません。ならば全く別の個体と結びつくことは可能か? そう考えましたが、結論は出ませんでした。
ミサカには時間が足りなかったようです。とミサカは反省点を述べます」
それは実に同情に値すべき内容だったが、10031号は 『 こういう話をすれば命だけは助けてくれるだろー 』 なんて考えていない。一方通行にはよくわかる。
悲劇を演じるでもなければ同情を引き出そうとしているのでもない。
10031号は、ただ事実だけを伝えているのだ。
10030号と同じだ。と一方通行は思った。
シチュエーションも同じなら、それに対する反応も同じ。
『 死 』 に直面しても恐怖しない。
打ち止めに言わせれば、それはミサカネットワークの存在によるところが大きいらしいが。
やはり一方通行には理解しがたかった。
重く、冷たい沈黙だけが残った。
681: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:16:31.67:Oa8qqIoV0 (9/33)
秒針が半周ほどするころになって、ようやく10031号が動いた。
わずかに首をかしげるように身じろぎした。
「撃たないのですか。とミサカは尋ねます」
「……」
「……何を考えているのですか。とミサカは再度尋ねます」
「……何も考えてねェよ」
そう。何も考えてなどいない。
「あァそォだ、何も考えずに殺してるだけだ。……それだけで十分だ」
「それを聞いて安心しました。とミサカは一方通行を見ます」
一方通行は、心臓が止まるかと思うほどの衝撃を受けた。
10031号が笑っていたのだ。
微笑みと言うにはあまりにささやかなものだが、それでも目元を和ませて、笑っていたのだ。
「何も考えず殺していても人間と言えるなら、何も考えず殺されるミサカたちも既に人間なのですね。とミサカは安堵します」
「――っ!」
「なぜそんな顔をするのですか。とミサカは首をかしげます」
「……わからねェか」
「分かりません。とミサカは」
「本当にわからねェのか」
「はい。と」
「ならいい」
一方通行は引き金を引いた。10031号の腹部がはじけた。
秒針が半周ほどするころになって、ようやく10031号が動いた。
わずかに首をかしげるように身じろぎした。
「撃たないのですか。とミサカは尋ねます」
「……」
「……何を考えているのですか。とミサカは再度尋ねます」
「……何も考えてねェよ」
そう。何も考えてなどいない。
「あァそォだ、何も考えずに殺してるだけだ。……それだけで十分だ」
「それを聞いて安心しました。とミサカは一方通行を見ます」
一方通行は、心臓が止まるかと思うほどの衝撃を受けた。
10031号が笑っていたのだ。
微笑みと言うにはあまりにささやかなものだが、それでも目元を和ませて、笑っていたのだ。
「何も考えず殺していても人間と言えるなら、何も考えず殺されるミサカたちも既に人間なのですね。とミサカは安堵します」
「――っ!」
「なぜそんな顔をするのですか。とミサカは首をかしげます」
「……わからねェか」
「分かりません。とミサカは」
「本当にわからねェのか」
「はい。と」
「ならいい」
一方通行は引き金を引いた。10031号の腹部がはじけた。
682: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:18:06.03:Oa8qqIoV0 (10/33)
○ ○ ○
気分は最悪だ。
腹の中に石でもたらふく詰め込まれた気分だ。
『 人形 』 が一つぶっ壊れただけだ。なに沈んでやがる。
一方通行は思う。
10031号は言った。俺の感情が分からねェと。
感情がないならそれは人形だ。殺しても構わないはずだ。
なのになんでこんな気分になる。
「み~~つっけた! ってミサカはミサカはあなたを指さしてみたり~~!」
頭痛がする。吐き気もだ。
一方通行は危うく立ち上がれなくなるところだったが、何とか踏みとどまった。
○ ○ ○
気分は最悪だ。
腹の中に石でもたらふく詰め込まれた気分だ。
『 人形 』 が一つぶっ壊れただけだ。なに沈んでやがる。
一方通行は思う。
10031号は言った。俺の感情が分からねェと。
感情がないならそれは人形だ。殺しても構わないはずだ。
なのになんでこんな気分になる。
「み~~つっけた! ってミサカはミサカはあなたを指さしてみたり~~!」
頭痛がする。吐き気もだ。
一方通行は危うく立ち上がれなくなるところだったが、何とか踏みとどまった。
683: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:22:56.29:Oa8qqIoV0 (11/33)
「勝手においてくなんてひどいよ、起きた時一人だとミサカは精神回路に少し異常が出るの、ってミサカはミサカはぷんぷん文句を言ってみたり」
一方通行の足取りはいやに速かった。
「うぅ~~スタスタ行かれたら置いてかれちゃうのはコンパスの差で明らかなのに、あなたには思いやりが足りないよね、とミサカはミサカは小走りで追いすがりつつ非難してみたり~~」
そして一方通行の前に出ると、クルリと体を返して、彼の顔を見た。
やけに明るい顔が一方通行には煩わしかった。
「それにしても10031号はものすごい発見をしたよねって、ミサカはミサカは感慨深くつぶやいてみたり」
「……」
「会話。コミュニケーション。これらは人間として生きるためにはすごく重要なことだけど、当たり前すぎて見落としがちだよね。
きっとミサカたちの成長に大きく貢献してくると思うよ、ってミサカはミサカはやや興奮気味にまくしたててみたり」
「……るせェ」
「え? なーに? ってミサカはミサカは」
「っるせェっつってンだ、黙ってろ」
「えー……ってミサカはミサカはむくれてみたり……」
むくれたいのはこっちだ、と一方通行は最高に不機嫌な頭で思った。
打ち止めの顔を見るだけで腹の中が重苦しくなる気がする。
ズンズンと歩む一方通行と入れ違いに、『 警備員 』 の車が通って行った。
『 こぉら~~そこのノーヘルバイク、止まるじゃんよ~~! 』
またくだらないアホがアホをしでかしたのだ。
一方通行は振り返らず進んだ。
「勝手においてくなんてひどいよ、起きた時一人だとミサカは精神回路に少し異常が出るの、ってミサカはミサカはぷんぷん文句を言ってみたり」
一方通行の足取りはいやに速かった。
「うぅ~~スタスタ行かれたら置いてかれちゃうのはコンパスの差で明らかなのに、あなたには思いやりが足りないよね、とミサカはミサカは小走りで追いすがりつつ非難してみたり~~」
そして一方通行の前に出ると、クルリと体を返して、彼の顔を見た。
やけに明るい顔が一方通行には煩わしかった。
「それにしても10031号はものすごい発見をしたよねって、ミサカはミサカは感慨深くつぶやいてみたり」
「……」
「会話。コミュニケーション。これらは人間として生きるためにはすごく重要なことだけど、当たり前すぎて見落としがちだよね。
きっとミサカたちの成長に大きく貢献してくると思うよ、ってミサカはミサカはやや興奮気味にまくしたててみたり」
「……るせェ」
「え? なーに? ってミサカはミサカは」
「っるせェっつってンだ、黙ってろ」
「えー……ってミサカはミサカはむくれてみたり……」
むくれたいのはこっちだ、と一方通行は最高に不機嫌な頭で思った。
打ち止めの顔を見るだけで腹の中が重苦しくなる気がする。
ズンズンと歩む一方通行と入れ違いに、『 警備員 』 の車が通って行った。
『 こぉら~~そこのノーヘルバイク、止まるじゃんよ~~! 』
またくだらないアホがアホをしでかしたのだ。
一方通行は振り返らず進んだ。
684: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:31:33.10:Oa8qqIoV0 (12/33)
「……オマエらは」
「えっなになに!? ってミサカはミサカは思わず過剰に反応してみたり!」
「一体どう考えてンだ」
「何を? ってミサカはミサカは追加情報を求めてみたり」
「……殺されてる、オマエらの仲間のことだ。どォ考えてンだ。自分は自分、アイツはアイツって割り切ってンのか? だから平気な顔でそンな話ができンのか?」
打ち止めはしばらくふうむと顎に手をやっていたが、
「 『 妹達 』 は一心同体であり、仲間だとミサカは思ってる、ってミサカはミサカは言ってみる」
「なら何で殺されても平然としてられる」
「もしミサカの命に理由があるとすれば、それはあなたに殺されるためだったから、ってミサカはミサカはごく簡単な質問に答えてみたり」
「……ンだそりゃ。それで満足なのかよ、オマエらは?」
「満足? それは命を全うするという意味? ってミサカはミサカは聞きなれない単語に戸惑ってみたり」
打ち止めはぱちぱちとまばたきした。
「それならミサカは命の源について言っておきたいな。ミサカはあなたをある意味創造主と思ってる。
確かにミサカを作ったのは研究者たちだけど、あなたがいなければ実験が立案されることもなく、命無きミサカに魂が注ぎ込まれることはなかった、ってミサカはミサカは感謝してみる。
だから、そんなあなたのために 『 色んなこと 』 をしてあげたいと思うのは当然だよ、ってミサカはミサカはちょっぴりはにかんでみたり」
「……くっだらねェ」
何だ、その偽善にまみれた理論は。
つぶやきを耳ざとく聞いたらしく、打ち止めは控えめに頬を膨らませた。
「……オマエらは」
「えっなになに!? ってミサカはミサカは思わず過剰に反応してみたり!」
「一体どう考えてンだ」
「何を? ってミサカはミサカは追加情報を求めてみたり」
「……殺されてる、オマエらの仲間のことだ。どォ考えてンだ。自分は自分、アイツはアイツって割り切ってンのか? だから平気な顔でそンな話ができンのか?」
打ち止めはしばらくふうむと顎に手をやっていたが、
「 『 妹達 』 は一心同体であり、仲間だとミサカは思ってる、ってミサカはミサカは言ってみる」
「なら何で殺されても平然としてられる」
「もしミサカの命に理由があるとすれば、それはあなたに殺されるためだったから、ってミサカはミサカはごく簡単な質問に答えてみたり」
「……ンだそりゃ。それで満足なのかよ、オマエらは?」
「満足? それは命を全うするという意味? ってミサカはミサカは聞きなれない単語に戸惑ってみたり」
打ち止めはぱちぱちとまばたきした。
「それならミサカは命の源について言っておきたいな。ミサカはあなたをある意味創造主と思ってる。
確かにミサカを作ったのは研究者たちだけど、あなたがいなければ実験が立案されることもなく、命無きミサカに魂が注ぎ込まれることはなかった、ってミサカはミサカは感謝してみる。
だから、そんなあなたのために 『 色んなこと 』 をしてあげたいと思うのは当然だよ、ってミサカはミサカはちょっぴりはにかんでみたり」
「……くっだらねェ」
何だ、その偽善にまみれた理論は。
つぶやきを耳ざとく聞いたらしく、打ち止めは控えめに頬を膨らませた。
685: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:33:37.12:Oa8qqIoV0 (13/33)
「未熟なミサカたちの価値観はあなたにとって受け入れがたいものかもしれない。
けれど、ミサカはこれまでの経験を通して確実に違うステージへ向かって行ってる。
その 『 経験 』 の中にはあなたとの戦闘も、一万人のミサカの死も含まれてるんだよってミサカはミサカは訴えてみる」
一方通行は歩調を緩め、打ち止めの顔を見た。
そして皮肉気に喉から笑いをもらす。
「……あァそっか。オマエら 『 ヒト未満 』 だもンなァ……」
「……」
「そりゃわかンねェよなァー! 満足だの不満足だの! 聞いた俺がどォかしてたわ、いや、マジで悪かった」
「あなたはそうやって偽悪的な言動を好むよね。どうして悪者になりたがるの? そういうお年頃? ってミサカはミサカは矢継ぎ早に尋ねてみたり」
「っるせェぞ……」
一方通行は唐突に、自分の頭に血が上るのを感じた。
「一万人以上殺した殺人鬼の! どこが悪モンじゃねェンだ!!」
「ミサカは 『 ヒト未満 』 だから」
「……あァ?」
「生きる意味を全うして死んでいったミサカたちのどこが哀れで、それに 『 協力 』 したあなたのどこが悪いのかわからない、ってミサカはミサカは言ってみたり」
「……」
一方通行は、これはもう、色々なことを諦めなければならないのかもしれない、と思った。
「未熟なミサカたちの価値観はあなたにとって受け入れがたいものかもしれない。
けれど、ミサカはこれまでの経験を通して確実に違うステージへ向かって行ってる。
その 『 経験 』 の中にはあなたとの戦闘も、一万人のミサカの死も含まれてるんだよってミサカはミサカは訴えてみる」
一方通行は歩調を緩め、打ち止めの顔を見た。
そして皮肉気に喉から笑いをもらす。
「……あァそっか。オマエら 『 ヒト未満 』 だもンなァ……」
「……」
「そりゃわかンねェよなァー! 満足だの不満足だの! 聞いた俺がどォかしてたわ、いや、マジで悪かった」
「あなたはそうやって偽悪的な言動を好むよね。どうして悪者になりたがるの? そういうお年頃? ってミサカはミサカは矢継ぎ早に尋ねてみたり」
「っるせェぞ……」
一方通行は唐突に、自分の頭に血が上るのを感じた。
「一万人以上殺した殺人鬼の! どこが悪モンじゃねェンだ!!」
「ミサカは 『 ヒト未満 』 だから」
「……あァ?」
「生きる意味を全うして死んでいったミサカたちのどこが哀れで、それに 『 協力 』 したあなたのどこが悪いのかわからない、ってミサカはミサカは言ってみたり」
「……」
一方通行は、これはもう、色々なことを諦めなければならないのかもしれない、と思った。
686: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:40:15.42:Oa8qqIoV0 (14/33)
打ち止めは真剣だったが、真剣な分だけ滑稽だった。
もういい。
一方通行は、まぶたに残る10031号の笑顔を振り払おうと頭を振った。
こいつらは人形だ。殺されるための人形だ。
こいつらもそれで納得してる。もう余計なことを考える必要なんてない。
もう考えるのはやめる。
そう考えた矢先、打ち止めは一方通行に、またも考える材料を投げつけた。
「ただ――恐怖は 『 ある 』。徐々に実験番号と自分の番号が同じになっていく時間。その間。ミサカたちは奇妙な不安感にとらわれていた、ってミサカはミサカは回想してみる」
「……ンだそりゃ」
感情は、あるのか。
「10030号と対峙した際、あなたはミサカに 『 怖いなら怖いと言え 』 と言ってくれた。ミサカはミサカは、そこで初めて自分の感情に気づいた」
一方通行は頭を鈍器で――殴られたことなどないが――殴られたような衝撃を味わった。
感情ができた?
俺が作った?
「そこから劇的にミサカたちの感情は分化した。
快・不快からミサカたちは 『 猫をかわいがったり 』『 裸を恥ずかしいと思ったり 』『 辛いとか面白いとか思ったり 』 できるようになった」
「……」
「あなたはミサカたちの成長の引き金になった。成長するということは生きることだし、ミサカたちは短い人生を全うしたい。
今までの一万人のミサカたちはあなたに殺されることが生きる目的だった。でも今は違う、ってミサカはミサカは転換期が訪れたことを示唆してみたり」
そういえば、と一方通行はぼんやり思った。
こいつは 『 自分たちの命に理由があるとすれば、あなたに殺されるためだった 』 と言ってたな。
『 だった 』、と。
「今のミサカはあなたと会話し、世界と会話し、二万の在庫が切れるその時まで 『 生きる 』 ということを追及したがっている。
今もあらゆるミサカが 『 人生 』 についての 『 結論 』 を出しつつある。成長の先にあるものが何なのか、まだミサカには予測できない。でも、これだけは言える。
あなたが出会う二万人目のミサカは、きっと 『 ヒト未満 』 じゃない」
打ち止めははじけるような笑顔になった。
「 『 ヒト並み 』 のミサカ20000号の誕生! これを成就して初めてミサカたちは生を全うしたと言える!
そして一番最初に 『 ヒト並み 』 のミサカを見るのは、ミサカを生んでくれた、あなただよ! 成長の結果を、真っ先にあなたに見せられるの!
これほど嬉しいことはないよね! ってミサカはミサカは想像するだけでうきうきした気分になってみたりっ!」
「……いかれてやがる」
「ん? ミサカたちの動作に異常はないよ? ってミサカはミサカは首をかしげてみたり」
「……」
打ち止めは真剣だったが、真剣な分だけ滑稽だった。
もういい。
一方通行は、まぶたに残る10031号の笑顔を振り払おうと頭を振った。
こいつらは人形だ。殺されるための人形だ。
こいつらもそれで納得してる。もう余計なことを考える必要なんてない。
もう考えるのはやめる。
そう考えた矢先、打ち止めは一方通行に、またも考える材料を投げつけた。
「ただ――恐怖は 『 ある 』。徐々に実験番号と自分の番号が同じになっていく時間。その間。ミサカたちは奇妙な不安感にとらわれていた、ってミサカはミサカは回想してみる」
「……ンだそりゃ」
感情は、あるのか。
「10030号と対峙した際、あなたはミサカに 『 怖いなら怖いと言え 』 と言ってくれた。ミサカはミサカは、そこで初めて自分の感情に気づいた」
一方通行は頭を鈍器で――殴られたことなどないが――殴られたような衝撃を味わった。
感情ができた?
俺が作った?
「そこから劇的にミサカたちの感情は分化した。
快・不快からミサカたちは 『 猫をかわいがったり 』『 裸を恥ずかしいと思ったり 』『 辛いとか面白いとか思ったり 』 できるようになった」
「……」
「あなたはミサカたちの成長の引き金になった。成長するということは生きることだし、ミサカたちは短い人生を全うしたい。
今までの一万人のミサカたちはあなたに殺されることが生きる目的だった。でも今は違う、ってミサカはミサカは転換期が訪れたことを示唆してみたり」
そういえば、と一方通行はぼんやり思った。
こいつは 『 自分たちの命に理由があるとすれば、あなたに殺されるためだった 』 と言ってたな。
『 だった 』、と。
「今のミサカはあなたと会話し、世界と会話し、二万の在庫が切れるその時まで 『 生きる 』 ということを追及したがっている。
今もあらゆるミサカが 『 人生 』 についての 『 結論 』 を出しつつある。成長の先にあるものが何なのか、まだミサカには予測できない。でも、これだけは言える。
あなたが出会う二万人目のミサカは、きっと 『 ヒト未満 』 じゃない」
打ち止めははじけるような笑顔になった。
「 『 ヒト並み 』 のミサカ20000号の誕生! これを成就して初めてミサカたちは生を全うしたと言える!
そして一番最初に 『 ヒト並み 』 のミサカを見るのは、ミサカを生んでくれた、あなただよ! 成長の結果を、真っ先にあなたに見せられるの!
これほど嬉しいことはないよね! ってミサカはミサカは想像するだけでうきうきした気分になってみたりっ!」
「……いかれてやがる」
「ん? ミサカたちの動作に異常はないよ? ってミサカはミサカは首をかしげてみたり」
「……」
687: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:45:40.18:Oa8qqIoV0 (15/33)
「とにかくミサカたちは確実に学習している! このままいけば二万体目には……ふぉぁあぁぁ~~~!
どんなスーパーミサカができるんだろぉぉ~~ってミサカはミサカは今からハッスルしてみたり~~!」
「学習じゃねェ」
「えっ?」
「学習するもンじゃねェンだよ……それは……『 学習 』 じゃァな……」
キョトンとする打ち止めをよそに、一方通行は数秒だけ目をつぶった。
自分が 『 無敵 』 になれば、何かが変わるはずだった。
自分の力は容赦なく人を傷つける。兵器ですら自分の足元にも及ばない。自慢ではない、ただ事実なのだ。
『 最強 』 は争いの種を生み、争いはさらに大きな争いを生む。
行き着くところは何だ? ひょっとすると、世界の滅亡か。
そんな 『 不安 』 が幼い頃から植えつけられていた。今も、おそらく、同じだ。
だが 『 無敵 』 になれば?
誰もが触れられない、好奇心など持つことすら許されない、圧倒的な存在。そんな高みに昇りつめれば――。
そうすればもう誰も――。
『 武装したクローン二万体を処理する事によってこの計画は成就する 』
『 なに、気に病む事はない 』
『 計画の為に用意されたターゲットを破壊する、それだけの事 』
『 君の目の前にあるのは薬品と蛋白質によって合成された 』
『 人形なのだから 』
今は人形だなァ……人形かもしれねェなァ…………。
……でも、その人形が人間になりたがってる場合はどォなる?
今も着実に人間に向かってる場合はどォなるんだ?
そいつらが人間になった時、俺は 『 どォやってこいつらを殺せるンだ 』 よォ?
――ボゲがッ! 何メソメソしてやがるッ!
――既に俺は一万人以上を殺しちまってンだぞ! 退路はねェ! 確実に!
――俺が何をしようと、何を考えようと!
――死んだ命はどうしよォもねェだろォが!
「とにかくミサカたちは確実に学習している! このままいけば二万体目には……ふぉぁあぁぁ~~~!
どんなスーパーミサカができるんだろぉぉ~~ってミサカはミサカは今からハッスルしてみたり~~!」
「学習じゃねェ」
「えっ?」
「学習するもンじゃねェンだよ……それは……『 学習 』 じゃァな……」
キョトンとする打ち止めをよそに、一方通行は数秒だけ目をつぶった。
自分が 『 無敵 』 になれば、何かが変わるはずだった。
自分の力は容赦なく人を傷つける。兵器ですら自分の足元にも及ばない。自慢ではない、ただ事実なのだ。
『 最強 』 は争いの種を生み、争いはさらに大きな争いを生む。
行き着くところは何だ? ひょっとすると、世界の滅亡か。
そんな 『 不安 』 が幼い頃から植えつけられていた。今も、おそらく、同じだ。
だが 『 無敵 』 になれば?
誰もが触れられない、好奇心など持つことすら許されない、圧倒的な存在。そんな高みに昇りつめれば――。
そうすればもう誰も――。
『 武装したクローン二万体を処理する事によってこの計画は成就する 』
『 なに、気に病む事はない 』
『 計画の為に用意されたターゲットを破壊する、それだけの事 』
『 君の目の前にあるのは薬品と蛋白質によって合成された 』
『 人形なのだから 』
今は人形だなァ……人形かもしれねェなァ…………。
……でも、その人形が人間になりたがってる場合はどォなる?
今も着実に人間に向かってる場合はどォなるんだ?
そいつらが人間になった時、俺は 『 どォやってこいつらを殺せるンだ 』 よォ?
――ボゲがッ! 何メソメソしてやがるッ!
――既に俺は一万人以上を殺しちまってンだぞ! 退路はねェ! 確実に!
――俺が何をしようと、何を考えようと!
――死んだ命はどうしよォもねェだろォが!
688: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 21:55:23.04:Oa8qqIoV0 (16/33)
一方通行は打ち止めに向き直った。
「オマエ……もし、一万人の死がまァーったくの無駄でしたァー、チャンチャン……ってなったら、どォするつもりだよ?」
「? それは実験が中止されるって意味? ってミサカは」
「いィから答えろ!!」
「きゃっ」
打ち止めは両手を上げて 『 降伏のポーズ 』 をした後、少し考えてこう言った。
「うーん……それでも一万のミサカの死が無駄になることはないよ、ありえない、ってミサカはミサカは言ってみたり」
「どォして」
「もしもあのミサカたちに 『 殺される 』 以外の意味があったとしたら、それはミサカをここまで 『 押し上げて 』 くれたことだから、ってミサカはミサカは自分の見解を述べてみる」
一方通行の明晰な頭脳は、とっさにその意味を図りかねた。
「押し上げェ……?」
「00001号から10031号にはそんな意志、ほんの少ししか、ううん、あるいはまったく無かったかもしれない。
それでも彼女たちの 『 行動 』 があったからこそ、ミサカたちはこうして 『 生 』 について 『 考える 』 ことができる。
だから、ミサカがいて、こうして思考している限り彼女たちは無駄にはなりえない、ってミサカはミサカは考えを述べてみたり」
「……俺はそれごとオマエらを消しちまう気でいンだぞ?」
「それは一般的な 『 人間 』 の 『 死 』 とどう変わりがあるの? ってミサカはミサカは小首をひねってみたり。
どんな人間にも死は訪れるし、確実にそれに向かって歩んでいる。だから誰もが 『 死 』 へたどり着く前に世界に 『 痕跡 』 を残そうとする。
ミサカたちがやってるのもそれと同じ。違ぁう? ってミサカはミサカはそろそろ疲れたのでダルげな口調になってみたりぃー」
「……」
一方通行はもう一度目をつぶり、しばらく考えた。
そしてため息混じりに答えた。
「……違ェな」
死ぬと殺すは、違う。
一方通行は打ち止めに向き直った。
「オマエ……もし、一万人の死がまァーったくの無駄でしたァー、チャンチャン……ってなったら、どォするつもりだよ?」
「? それは実験が中止されるって意味? ってミサカは」
「いィから答えろ!!」
「きゃっ」
打ち止めは両手を上げて 『 降伏のポーズ 』 をした後、少し考えてこう言った。
「うーん……それでも一万のミサカの死が無駄になることはないよ、ありえない、ってミサカはミサカは言ってみたり」
「どォして」
「もしもあのミサカたちに 『 殺される 』 以外の意味があったとしたら、それはミサカをここまで 『 押し上げて 』 くれたことだから、ってミサカはミサカは自分の見解を述べてみる」
一方通行の明晰な頭脳は、とっさにその意味を図りかねた。
「押し上げェ……?」
「00001号から10031号にはそんな意志、ほんの少ししか、ううん、あるいはまったく無かったかもしれない。
それでも彼女たちの 『 行動 』 があったからこそ、ミサカたちはこうして 『 生 』 について 『 考える 』 ことができる。
だから、ミサカがいて、こうして思考している限り彼女たちは無駄にはなりえない、ってミサカはミサカは考えを述べてみたり」
「……俺はそれごとオマエらを消しちまう気でいンだぞ?」
「それは一般的な 『 人間 』 の 『 死 』 とどう変わりがあるの? ってミサカはミサカは小首をひねってみたり。
どんな人間にも死は訪れるし、確実にそれに向かって歩んでいる。だから誰もが 『 死 』 へたどり着く前に世界に 『 痕跡 』 を残そうとする。
ミサカたちがやってるのもそれと同じ。違ぁう? ってミサカはミサカはそろそろ疲れたのでダルげな口調になってみたりぃー」
「……」
一方通行はもう一度目をつぶり、しばらく考えた。
そしてため息混じりに答えた。
「……違ェな」
死ぬと殺すは、違う。
689: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:06:17.75:Oa8qqIoV0 (17/33)
それに気づいていないという点を除けば、彼女たちの生き方は誠実だし、理想的だった。
真摯に死と向き合い、生の中で何ができるかを考えている。
まったくもって、『 まっとう 』 な生き方だ! その辺にいる馬鹿やアホやクソッタレ共よりよっぽど!
ただ彼女らがわかっていないのは、『 生 』 や 『 死 』 とは 『 感じる 』 ものであって 『 考える 』 ものではないということだ。
『 感じる 』 前に 『 考えて 』 しまった結果がこれだ。
赤ん坊の感性に、明晰な頭脳を与えてしまった結果がこれだ!
一方通行は10030号を思い出した。10031号も思い出した。
00001号からすべての妹達の記憶を、脳内のキャンパスにぶちまけた。
奴らは恐怖してなかったんじゃない。
恐怖を自覚していなかっただけだ。
恐怖というものが何か、まだ知らなかっただけだ。
打ち止めは叱られた園児のように下を向いた。
「わかってくれなくてもいい。とにかく、ミサカはミサカはがんばって 『 ヒト並み 』 に……」
「なれねェよ」
「なれるもん! ってミサカはミサカはぷりぷり怒ってみる!」
「ンなこと考えてるうちは、なれねェよ」
「……?」
一方通行は、極力何でもないような顔をして携帯を取り出した。
登録したきり一度も使わなかった番号を呼び出す。
――死ンだ命はどォしようもねェ。
――なら、今ある一万人の命は?
コール音がいやに近くで鳴り響く。
――あァくそ。
――認めてやるよ。
――オマエらには感情がある。
――今、確実にオマエらの中で心が育ってる。
――オマエらは 『 人形 』 じゃァなくって……
――羊水ン中からむりくり引っ張り出された、赤ン坊だ。
コール音が止んだ。
それに気づいていないという点を除けば、彼女たちの生き方は誠実だし、理想的だった。
真摯に死と向き合い、生の中で何ができるかを考えている。
まったくもって、『 まっとう 』 な生き方だ! その辺にいる馬鹿やアホやクソッタレ共よりよっぽど!
ただ彼女らがわかっていないのは、『 生 』 や 『 死 』 とは 『 感じる 』 ものであって 『 考える 』 ものではないということだ。
『 感じる 』 前に 『 考えて 』 しまった結果がこれだ。
赤ん坊の感性に、明晰な頭脳を与えてしまった結果がこれだ!
一方通行は10030号を思い出した。10031号も思い出した。
00001号からすべての妹達の記憶を、脳内のキャンパスにぶちまけた。
奴らは恐怖してなかったんじゃない。
恐怖を自覚していなかっただけだ。
恐怖というものが何か、まだ知らなかっただけだ。
打ち止めは叱られた園児のように下を向いた。
「わかってくれなくてもいい。とにかく、ミサカはミサカはがんばって 『 ヒト並み 』 に……」
「なれねェよ」
「なれるもん! ってミサカはミサカはぷりぷり怒ってみる!」
「ンなこと考えてるうちは、なれねェよ」
「……?」
一方通行は、極力何でもないような顔をして携帯を取り出した。
登録したきり一度も使わなかった番号を呼び出す。
――死ンだ命はどォしようもねェ。
――なら、今ある一万人の命は?
コール音がいやに近くで鳴り響く。
――あァくそ。
――認めてやるよ。
――オマエらには感情がある。
――今、確実にオマエらの中で心が育ってる。
――オマエらは 『 人形 』 じゃァなくって……
――羊水ン中からむりくり引っ張り出された、赤ン坊だ。
コール音が止んだ。
690: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:07:29.88:Oa8qqIoV0 (18/33)
「……あァ俺だ。『 絶対能力進化<レベル6シフト> 』……あれ、俺やめるわァ」
「……あァ俺だ。『 絶対能力進化<レベル6シフト> 』……あれ、俺やめるわァ」
691: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:12:34.81:Oa8qqIoV0 (19/33)
打ち止めの口がポカンと開いた。
「なンでもクソもねェ、飽きたンだよ、飽きた。無敵になれるっつーから協力してやったけどよォ、これでようやく折り返しじゃァねェか。
やってらンねェ、あいつら戦い方もワンパターンで面白みねェしよォ。
レベル6ゥ? ンなもンなくたって俺は最強なンですゥゥ~~~あーあー聞こえませンっつーわけでハイさよーなら~~」
ピッ。
携帯を切る。
一分にも満たないその会話で、あらゆる人間の思惑が交差する、その実験の無期凍結が決定した。
「み……み……」
「……」
勘違いするな、と目の前の個体に言ってやりたかった。
これは良心ではない。偽善ですらない!
ただ 『 嫌になっちまった 』 だけなのだ。
意志を持ち始めている目の前の蛋白質が、これから確実に人間らしさを深めていくだろうアイツらが、面倒くさくなって、嫌になっちまっただけなのだ。
一方通行を 『 押し上げる 』 一万の意志というものがあるのなら、それらをすべてドブに捨てるような行為を、今の自分はしたのだ!
だからそんなキラキラした目で見られる筋合いはない。
同時に、
「オマエら、なんだかんだ理屈コネやがって……結局死にたくなかったンじゃァねェか」
「!? え!? え、え!?」
自覚がなかったのか。
所詮 『 ヒト未満 』 に何言っても無駄だ、と一方通行は思った。
「ンじゃ、俺が怖いンならもォ付きまとうンじゃあねェぞ。あーあ、せーせーした」
「ミ、ミサカは……ミサカは……ミサカは………………あなたを知りたい!!」
「!」
大声で告げられた言葉に、思わず足が止まる。
「あなたの言う通り、ミサカは 『 早すぎる死 』 の束縛から逃れたいと、深層心理で願っていたのかもしれない!
でも死から解放された瞬間、ミサカの視界がぐわっと広がったような感覚があった! 今までなかった感情があふれ出した!
すべてのミサカがそれを感じた! あなたがそれを教えてくれた! あなたはまたミサカを成長させてくれた!
それをくれた、あなたのことを、ミサカ20001号はもっと知りたい! ってミサカはミサカは訴えてみる!」
「……」
何かもっと面倒なことになっちまったぞ糞。
打ち止めの口がポカンと開いた。
「なンでもクソもねェ、飽きたンだよ、飽きた。無敵になれるっつーから協力してやったけどよォ、これでようやく折り返しじゃァねェか。
やってらンねェ、あいつら戦い方もワンパターンで面白みねェしよォ。
レベル6ゥ? ンなもンなくたって俺は最強なンですゥゥ~~~あーあー聞こえませンっつーわけでハイさよーなら~~」
ピッ。
携帯を切る。
一分にも満たないその会話で、あらゆる人間の思惑が交差する、その実験の無期凍結が決定した。
「み……み……」
「……」
勘違いするな、と目の前の個体に言ってやりたかった。
これは良心ではない。偽善ですらない!
ただ 『 嫌になっちまった 』 だけなのだ。
意志を持ち始めている目の前の蛋白質が、これから確実に人間らしさを深めていくだろうアイツらが、面倒くさくなって、嫌になっちまっただけなのだ。
一方通行を 『 押し上げる 』 一万の意志というものがあるのなら、それらをすべてドブに捨てるような行為を、今の自分はしたのだ!
だからそんなキラキラした目で見られる筋合いはない。
同時に、
「オマエら、なんだかんだ理屈コネやがって……結局死にたくなかったンじゃァねェか」
「!? え!? え、え!?」
自覚がなかったのか。
所詮 『 ヒト未満 』 に何言っても無駄だ、と一方通行は思った。
「ンじゃ、俺が怖いンならもォ付きまとうンじゃあねェぞ。あーあ、せーせーした」
「ミ、ミサカは……ミサカは……ミサカは………………あなたを知りたい!!」
「!」
大声で告げられた言葉に、思わず足が止まる。
「あなたの言う通り、ミサカは 『 早すぎる死 』 の束縛から逃れたいと、深層心理で願っていたのかもしれない!
でも死から解放された瞬間、ミサカの視界がぐわっと広がったような感覚があった! 今までなかった感情があふれ出した!
すべてのミサカがそれを感じた! あなたがそれを教えてくれた! あなたはまたミサカを成長させてくれた!
それをくれた、あなたのことを、ミサカ20001号はもっと知りたい! ってミサカはミサカは訴えてみる!」
「……」
何かもっと面倒なことになっちまったぞ糞。
692: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:20:09.37:Oa8qqIoV0 (20/33)
一方通行はさすがに振り返って、辛抱強く言い聞かせた。
「おィガキ。言っとくが俺は本当に 『 めンどくさくなっちまった 』 から止めただけだ。
俺たちのつながりはこれで切れる。次のオマエのセリフは 『 さよーなら 』 しかありえねェからな」
「それでもミサカは 『 これから 』 に期待を寄せてみたり、ってミサカは」
わくわくと手をつなごうとした打ち止めの手を、一方通行は思いっきり弾き飛ばした。
「さわンじゃねェ」
「……!」
「ションベンくせェ手で、触ってンじゃねェよ」
人殺しの手なんてものを、触るんじゃあない。
そうだ。『 無敵 』 という大義名分を失った今、彼女の前に立っているのは
ただの、一万人を殺した殺人鬼にすぎない。
たとえ 『 これから 』 自分がどのように彼女に接したとしても、それだけは厳然たる事実なのだ。
「……なれなれしい、クソガキが」
きっと目の前の幼い 『 ヒト未満 』 に、その意味は分からないだろうが。
一方通行は踵を返した。
これほど言ってもあのガキはついてくるだろう。と一方通行は確信していた。
ならば少々だるいが、研究所に寄っていこう。そして顔なじみの研究員――この時間、芳川桔梗はいるだろうか――に押し付けていこう。
それでおしまいだ。
「……ミサカは」
と、打ち止めが何かを言おうとした時。
空気が変わった。
一方通行は再び足を止め、打ち止めもハッと目を瞠る。
刹那、風切る音がして、
「ひょぇ!?」
打ち止めのそばの壁に刀が突き刺さった。
一方通行は視線を上に移した。
「……馬鹿と何とかは高いトコロが好きってなァ……」
一方通行はさすがに振り返って、辛抱強く言い聞かせた。
「おィガキ。言っとくが俺は本当に 『 めンどくさくなっちまった 』 から止めただけだ。
俺たちのつながりはこれで切れる。次のオマエのセリフは 『 さよーなら 』 しかありえねェからな」
「それでもミサカは 『 これから 』 に期待を寄せてみたり、ってミサカは」
わくわくと手をつなごうとした打ち止めの手を、一方通行は思いっきり弾き飛ばした。
「さわンじゃねェ」
「……!」
「ションベンくせェ手で、触ってンじゃねェよ」
人殺しの手なんてものを、触るんじゃあない。
そうだ。『 無敵 』 という大義名分を失った今、彼女の前に立っているのは
ただの、一万人を殺した殺人鬼にすぎない。
たとえ 『 これから 』 自分がどのように彼女に接したとしても、それだけは厳然たる事実なのだ。
「……なれなれしい、クソガキが」
きっと目の前の幼い 『 ヒト未満 』 に、その意味は分からないだろうが。
一方通行は踵を返した。
これほど言ってもあのガキはついてくるだろう。と一方通行は確信していた。
ならば少々だるいが、研究所に寄っていこう。そして顔なじみの研究員――この時間、芳川桔梗はいるだろうか――に押し付けていこう。
それでおしまいだ。
「……ミサカは」
と、打ち止めが何かを言おうとした時。
空気が変わった。
一方通行は再び足を止め、打ち止めもハッと目を瞠る。
刹那、風切る音がして、
「ひょぇ!?」
打ち止めのそばの壁に刀が突き刺さった。
一方通行は視線を上に移した。
「……馬鹿と何とかは高いトコロが好きってなァ……」
693: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:22:28.96:Oa8qqIoV0 (21/33)
電灯の上に、男が一人。足を宙に投げ出して座っている。
詰襟のスーツ。年のころなら20代後半。
顔は女性的な性格を連想させるほど端正だが、反面浮かべる表情は内心のドス黒さがダダ漏れである。
視線は一方通行たちではなく、膝に落とされていた。
よく見れば携帯用ゲーム機らしきものを持っている。指がすさまじい速さで回っている。
静寂の中、カチカチカチカチカチカチカチ……とボタンを叩く音だけが響いた。
一方通行は目を眇めて男を見上げる。
「今時あンなもン持ち出してくるとか、オマエなンですかァ? ジャパニーズサムライですかァ?」
男はやはり膝に視線を落としたまま……かと思いきや、唐突に口を開いた。
「君…………テトリス。やったことあるかい」
電灯の上に、男が一人。足を宙に投げ出して座っている。
詰襟のスーツ。年のころなら20代後半。
顔は女性的な性格を連想させるほど端正だが、反面浮かべる表情は内心のドス黒さがダダ漏れである。
視線は一方通行たちではなく、膝に落とされていた。
よく見れば携帯用ゲーム機らしきものを持っている。指がすさまじい速さで回っている。
静寂の中、カチカチカチカチカチカチカチ……とボタンを叩く音だけが響いた。
一方通行は目を眇めて男を見上げる。
「今時あンなもン持ち出してくるとか、オマエなンですかァ? ジャパニーズサムライですかァ?」
男はやはり膝に視線を落としたまま……かと思いきや、唐突に口を開いた。
「君…………テトリス。やったことあるかい」
694: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:26:29.19:Oa8qqIoV0 (22/33)
「はァ?」
「テトリスだよ。アーケードでもゲームボーイでも64でもいい。僕は全部やった。『 もうあきたよ 』 ってくらいね」
男の目がようやく一方通行を見た。
「高校生くらいかなぁ……ハマり始めたのは。僕と時を同じくしてハマった奴がいてね。世田谷だったか鈴科だったかは忘れたが。
それで、ある日彼が 『 俺昨日70万点叩き出しちゃったぜ~ 』 とか言ってるの。もう見てられない。
それだけならまだ僕だってグッと堪えるんだがね、周りのクラスメイト達も 『 マジスゲーな 』 『 今度私にも教えてよぉ 』 とかそいつのことチヤホヤしてるんだ。
もうね、70万点なんか慣れれば30分で到達できるレベルだから! それどころかお前ら僕がそれより前に99万9999点出してんの知ってんだろうがって話だよッ!
あの時お前らノォーリアクションだったじゃあねぇーかァーーッ!!
どういう事だ! どういう事だよッ! クソックソッ!! どいつもこいつも僕のことをナメやがってッ!! クソッ!!」
唐突に切れだし、ゲームを地面にたたきつけた。
一方通行の足元にまで残骸が転がってくる。
「……おっと、スマナイ。コホンッ、ストレスがたまりやすい性格でね。発散しなくちゃやってられないんだ……ああ、僕のゲームボーイカラーェ……」
「下がってろガキ」
一方通行は本能的に理解した。この男、何かヤバい。
「はァ?」
「テトリスだよ。アーケードでもゲームボーイでも64でもいい。僕は全部やった。『 もうあきたよ 』 ってくらいね」
男の目がようやく一方通行を見た。
「高校生くらいかなぁ……ハマり始めたのは。僕と時を同じくしてハマった奴がいてね。世田谷だったか鈴科だったかは忘れたが。
それで、ある日彼が 『 俺昨日70万点叩き出しちゃったぜ~ 』 とか言ってるの。もう見てられない。
それだけならまだ僕だってグッと堪えるんだがね、周りのクラスメイト達も 『 マジスゲーな 』 『 今度私にも教えてよぉ 』 とかそいつのことチヤホヤしてるんだ。
もうね、70万点なんか慣れれば30分で到達できるレベルだから! それどころかお前ら僕がそれより前に99万9999点出してんの知ってんだろうがって話だよッ!
あの時お前らノォーリアクションだったじゃあねぇーかァーーッ!!
どういう事だ! どういう事だよッ! クソックソッ!! どいつもこいつも僕のことをナメやがってッ!! クソッ!!」
唐突に切れだし、ゲームを地面にたたきつけた。
一方通行の足元にまで残骸が転がってくる。
「……おっと、スマナイ。コホンッ、ストレスがたまりやすい性格でね。発散しなくちゃやってられないんだ……ああ、僕のゲームボーイカラーェ……」
「下がってろガキ」
一方通行は本能的に理解した。この男、何かヤバい。
695: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:30:21.04:Oa8qqIoV0 (23/33)
男は足を組んで笑みを浮かべた。
「……学園都市は、いいところだね。次世代ゲーム機がたくさんだ」
「そりゃありがてェ。ありがてェついでに死ね」
「花京院典明。年齢28歳。
好きなミュージシャンはスティングで好きな色はキラキラした緑色、野球チームは巨人。獅子座のA型。チェリー好き」
「……はァ?」
「自己紹介だよ。自己紹介。年度が替わるごとにやる、意味不明のアレさ」
言うなり、花京院は片腕を水平に上げて奇妙なポーズをつけた。
「君の名前は? 一方通行<アクセラレータ>」
がちゃんと音がして、彼の手からクロッキー人形が落ちた。
いや、操り人形だ。細い糸が花京院の手から伸びている。
「忘れっちまったねェ。知っててもテメェごときに教えねェが」
「そう。このデータにもそう書いてある。君はとてもひねくれた性格だ。直した方がいい」
「……あン?」
言い返したいことはあったが、一方通行はそれを呑み込んだ。
花京院はその 『 データ 』 とやらが入ってるのだろう、ディスクを軽く振って見せる。
データ? データって、何のデータだ?
昨日の打ち止めとの会話が脳裏をよぎる。
「まさかテメェかァ? 『 名簿 』 ごときで研究所ブッ潰した大マヌケってェのは?」
「ああ、あったな。そんなことも」
花京院はあっさり認めた。
男は足を組んで笑みを浮かべた。
「……学園都市は、いいところだね。次世代ゲーム機がたくさんだ」
「そりゃありがてェ。ありがてェついでに死ね」
「花京院典明。年齢28歳。
好きなミュージシャンはスティングで好きな色はキラキラした緑色、野球チームは巨人。獅子座のA型。チェリー好き」
「……はァ?」
「自己紹介だよ。自己紹介。年度が替わるごとにやる、意味不明のアレさ」
言うなり、花京院は片腕を水平に上げて奇妙なポーズをつけた。
「君の名前は? 一方通行<アクセラレータ>」
がちゃんと音がして、彼の手からクロッキー人形が落ちた。
いや、操り人形だ。細い糸が花京院の手から伸びている。
「忘れっちまったねェ。知っててもテメェごときに教えねェが」
「そう。このデータにもそう書いてある。君はとてもひねくれた性格だ。直した方がいい」
「……あン?」
言い返したいことはあったが、一方通行はそれを呑み込んだ。
花京院はその 『 データ 』 とやらが入ってるのだろう、ディスクを軽く振って見せる。
データ? データって、何のデータだ?
昨日の打ち止めとの会話が脳裏をよぎる。
「まさかテメェかァ? 『 名簿 』 ごときで研究所ブッ潰した大マヌケってェのは?」
「ああ、あったな。そんなことも」
花京院はあっさり認めた。
696: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:33:25.23:Oa8qqIoV0 (24/33)
「でも僕は 『 警備員 』 でも 『 風紀委員 』 でもなんでもよかったんだ。能力者の情報さえ手に入れば。
あそこを襲ったのはね……なんというか、運が悪かったんだ。
天井とか言ったか。彼の運が悪かったのさ。運命なんだよ、こういうのは」
「聞いてもねェことペラペラしゃべって悦入ってんじゃねェぞ。そのコストパフォーマンスぶっ狂ったアホが、俺に何の用かって聞いてンだ。お人形遊びでもしてくれるンですかァ?」
花京院は表情を変えなかった。
ただ危険な色を目に宿した。
「そうだな。君の言葉を借りるなら……」
操り人形が片手をあげた。まるで何かを振りかぶるように。
瞬間、背後に殺気を感じ、一方通行は横っ飛びに回避した。
そしてすぐそれが正解だったと知る。
「……『 愉快に素敵に 』、遊ぼうじゃあないか」
凶器を手にした打ち止めが、そこにいた。
「でも僕は 『 警備員 』 でも 『 風紀委員 』 でもなんでもよかったんだ。能力者の情報さえ手に入れば。
あそこを襲ったのはね……なんというか、運が悪かったんだ。
天井とか言ったか。彼の運が悪かったのさ。運命なんだよ、こういうのは」
「聞いてもねェことペラペラしゃべって悦入ってんじゃねェぞ。そのコストパフォーマンスぶっ狂ったアホが、俺に何の用かって聞いてンだ。お人形遊びでもしてくれるンですかァ?」
花京院は表情を変えなかった。
ただ危険な色を目に宿した。
「そうだな。君の言葉を借りるなら……」
操り人形が片手をあげた。まるで何かを振りかぶるように。
瞬間、背後に殺気を感じ、一方通行は横っ飛びに回避した。
そしてすぐそれが正解だったと知る。
「……『 愉快に素敵に 』、遊ぼうじゃあないか」
凶器を手にした打ち止めが、そこにいた。
697: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:41:06.80:Oa8qqIoV0 (25/33)
デフォの反射で跳ね返していたら、打ち止めの腕は無残なことになっていただろう。
いや、別にクローンのガキがどうなろうと関係ないのだが。
打ち止めの手にあるのは先ほど花京院の投擲した刀だ。
切っ先をまっすぐ一方通行に向け、打ち止めはうつろな表情で間合いを詰める。
花京院の操り人形とほぼ同じ動きで。
「……はっ、なるほどォ?」
『 操る能力 』、と一方通行は解釈した。
どんな原理かは知らないが、ターゲットのそばの人間を操って自分は高みの見物を決め込む、それがあの男のやり方なのだろう。
だから電灯の上か。
なるほど、普通の人間では手が届かない。
だが。
「……甘ェなァ……まったく甘ェよオマエ……!」
一方通行は普通を軽く超越している。
「近ェ、近ェッ! この程度じゃァコーラとペプシくれェ近ェぞォ!!」
一方通行は地を蹴った。
ベクトルを操作し、一気に7メートルほど飛び上がる。
そのまま花京院のいる電灯に飛び乗った。
「ざァァンねェェェン! 俺の射程距離から外れたきゃ、5・6kmは離れてろってェェェのォォォ!!」
そして一方通行は花京院の頭をサッカーボールよろしく蹴飛ばして――やれなかった。
なにか、透明の壁のようなものが二人の間を阻んだのである。
デフォの反射で跳ね返していたら、打ち止めの腕は無残なことになっていただろう。
いや、別にクローンのガキがどうなろうと関係ないのだが。
打ち止めの手にあるのは先ほど花京院の投擲した刀だ。
切っ先をまっすぐ一方通行に向け、打ち止めはうつろな表情で間合いを詰める。
花京院の操り人形とほぼ同じ動きで。
「……はっ、なるほどォ?」
『 操る能力 』、と一方通行は解釈した。
どんな原理かは知らないが、ターゲットのそばの人間を操って自分は高みの見物を決め込む、それがあの男のやり方なのだろう。
だから電灯の上か。
なるほど、普通の人間では手が届かない。
だが。
「……甘ェなァ……まったく甘ェよオマエ……!」
一方通行は普通を軽く超越している。
「近ェ、近ェッ! この程度じゃァコーラとペプシくれェ近ェぞォ!!」
一方通行は地を蹴った。
ベクトルを操作し、一気に7メートルほど飛び上がる。
そのまま花京院のいる電灯に飛び乗った。
「ざァァンねェェェン! 俺の射程距離から外れたきゃ、5・6kmは離れてろってェェェのォォォ!!」
そして一方通行は花京院の頭をサッカーボールよろしく蹴飛ばして――やれなかった。
なにか、透明の壁のようなものが二人の間を阻んだのである。
698: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:45:23.99:Oa8qqIoV0 (26/33)
「……ンだァ?」
「木曽義仲って知ってるかい」
「あァ゛ン!?」
花京院はさして驚いたふうでもなく、その場を動こうともしない。
「『 平家物語 』 だよ。教科書に載ってるだろ? 源氏の刺客から今井四郎兼平と逃亡するんだが、結局首をとられるという武士として恥ずべき最期を迎えた。
それを知った兼平も後を追って自害するんだ。こんな感じに」
花京院の操り人形が動いた。
両手を祈るように組み、顔の真ん前に持っていく。
一方通行は思わず振り返った。
打ち止めの方を見た。
打ち止めは両手で刀を捧げ持ち、切っ先を自分の方に向けている。
「ああ、リーチが足りないな。20㎝程刀が長い」
その通りである。
顔の前に突き付けようにも突きつけられない状態だ。
「それを僕は補いたいわけだが……しかし、口の中は20cmもあるものだろうか。試してみよう」
打ち止めの口がゆっくりと開く。
途端、一方通行は跳んでいた。
――あァクソッ、足手まといがッ
これは別に、打ち止めを助けようとしているわけではない、と一方通行は思う。
今ここで死なれたら、自分の人生に後味のよくないものを残すからだ。
一生ガキの幻影に付きまとわれるなんてまっぴらごめんだからだ。
だからこうするのだ。
別に助けようとしているわけではない、断じて!
打ち止めとの距離が一気に詰まる。
そして間合いに入った途端――予想していたことだが――打ち止めは刀を持ち直すと、一方通行を迎え討つ体勢になった。
ゾワァッ、と一方通行の体が総毛立つ。
攻撃を避けるのはたやすい。いや、正確にはダメージを回避するのは容易い、だ。
反射を使えばいい。デフォルトに設定されたそれで、刀を弾き返せばいい。
打ち止めの手首は反対側に曲がることになるが。
――あァ……
打ち止めが刀を振りかぶる。
バットでフルスイングする小学野球児のようなおぼつかない動きで、自分を真っ二つにしようとする。
別に迷うことなどない。
10031号に言った通り、自分は自分のことしか考えてないのだから。
と、思った瞬間、10031号の笑顔と、打ち止めの笑顔が一方通行の脳内で交差した。
――クソッタレがァッ!!
「……ンだァ?」
「木曽義仲って知ってるかい」
「あァ゛ン!?」
花京院はさして驚いたふうでもなく、その場を動こうともしない。
「『 平家物語 』 だよ。教科書に載ってるだろ? 源氏の刺客から今井四郎兼平と逃亡するんだが、結局首をとられるという武士として恥ずべき最期を迎えた。
それを知った兼平も後を追って自害するんだ。こんな感じに」
花京院の操り人形が動いた。
両手を祈るように組み、顔の真ん前に持っていく。
一方通行は思わず振り返った。
打ち止めの方を見た。
打ち止めは両手で刀を捧げ持ち、切っ先を自分の方に向けている。
「ああ、リーチが足りないな。20㎝程刀が長い」
その通りである。
顔の前に突き付けようにも突きつけられない状態だ。
「それを僕は補いたいわけだが……しかし、口の中は20cmもあるものだろうか。試してみよう」
打ち止めの口がゆっくりと開く。
途端、一方通行は跳んでいた。
――あァクソッ、足手まといがッ
これは別に、打ち止めを助けようとしているわけではない、と一方通行は思う。
今ここで死なれたら、自分の人生に後味のよくないものを残すからだ。
一生ガキの幻影に付きまとわれるなんてまっぴらごめんだからだ。
だからこうするのだ。
別に助けようとしているわけではない、断じて!
打ち止めとの距離が一気に詰まる。
そして間合いに入った途端――予想していたことだが――打ち止めは刀を持ち直すと、一方通行を迎え討つ体勢になった。
ゾワァッ、と一方通行の体が総毛立つ。
攻撃を避けるのはたやすい。いや、正確にはダメージを回避するのは容易い、だ。
反射を使えばいい。デフォルトに設定されたそれで、刀を弾き返せばいい。
打ち止めの手首は反対側に曲がることになるが。
――あァ……
打ち止めが刀を振りかぶる。
バットでフルスイングする小学野球児のようなおぼつかない動きで、自分を真っ二つにしようとする。
別に迷うことなどない。
10031号に言った通り、自分は自分のことしか考えてないのだから。
と、思った瞬間、10031号の笑顔と、打ち止めの笑顔が一方通行の脳内で交差した。
――クソッタレがァッ!!
699: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:48:54.72:Oa8qqIoV0 (27/33)
反応は迅速である。
一方通行は刀の軌道上に自分の腕を持ってきた。ガードする形で、あえて差し出した。
反射はしない。
ぞぶり、と果肉を噛んだような音がして、腕が熱くなる。
一瞬遅れて、予想をはるかに超えた痛みが神経を回り、パチパチと爆ぜた。
痛い。痛すぎるし、血も出てくる。
だが攻撃は止まった。
「~~~~ッ!」
一方通行は刀を腕に食い込ませたまま、打ち止めを突き飛ばした。
あっさりと打ち止めの手から刀が離れる。
打ち止めはぼんやりした表情のまま、しりもちをついた。
肩で息を切らせる一方通行に、拍手がかかる。
「すごいな。まさか本当にやるとは思わなかった。称賛しよう、君にはヒーローの資格がある。性格以外は」
「……っるせェ……テメェ、お祈りは済ンだンだろォなァ……?」
楽には殺さねェ。
心に誓いながら、一方通行は刀を掴んだ。
「……!」
瞬間、一方通行は自分の意識が遠くに行くのを感じた。
あっという間に白くかすんでいく意識の中で、打ち止めがようやく正気付くのを見る。
――あァ、なるほど……やられたわ。
――操ってたのはあの男の力じゃァなくて……
――『 これ 』 が……
待てよ。
一方通行は遠のいていく景色に手を伸ばした。
待て。
もう少し待ってくれ。
せめてそのガキを――研究所に送り届けるまで――待ってくれ。
そのガキだけは――せたく――――ねェ――ンだ――――から――……
――……。
――――ラスト――ダー……――――
反応は迅速である。
一方通行は刀の軌道上に自分の腕を持ってきた。ガードする形で、あえて差し出した。
反射はしない。
ぞぶり、と果肉を噛んだような音がして、腕が熱くなる。
一瞬遅れて、予想をはるかに超えた痛みが神経を回り、パチパチと爆ぜた。
痛い。痛すぎるし、血も出てくる。
だが攻撃は止まった。
「~~~~ッ!」
一方通行は刀を腕に食い込ませたまま、打ち止めを突き飛ばした。
あっさりと打ち止めの手から刀が離れる。
打ち止めはぼんやりした表情のまま、しりもちをついた。
肩で息を切らせる一方通行に、拍手がかかる。
「すごいな。まさか本当にやるとは思わなかった。称賛しよう、君にはヒーローの資格がある。性格以外は」
「……っるせェ……テメェ、お祈りは済ンだンだろォなァ……?」
楽には殺さねェ。
心に誓いながら、一方通行は刀を掴んだ。
「……!」
瞬間、一方通行は自分の意識が遠くに行くのを感じた。
あっという間に白くかすんでいく意識の中で、打ち止めがようやく正気付くのを見る。
――あァ、なるほど……やられたわ。
――操ってたのはあの男の力じゃァなくて……
――『 これ 』 が……
待てよ。
一方通行は遠のいていく景色に手を伸ばした。
待て。
もう少し待ってくれ。
せめてそのガキを――研究所に送り届けるまで――待ってくれ。
そのガキだけは――せたく――――ねェ――ンだ――――から――……
――……。
――――ラスト――ダー……――――
700: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:56:24.04:Oa8qqIoV0 (28/33)
一方通行は、空を仰いだ。
やおら自分の腕から刀を引き抜く。だくだくと血が流れるが、意に介する様子もない。
ゆっくりと自分の手を見て、握ったり開いたりを繰り返した。
「……成功したようだな。こんな 『 オモチャ 』 まで買ったかいがあったというものだ」
花京院はつまらなそうに言って、操り人形から手を離した。
「どうだ? その体は」
一方通行の体を乗っ取った 『 そいつ 』 は、小さく答える。
「……貧弱すぎる」
「第一位の体が欲しいと言ったのはお前だろう。アヌビス」
「 『 神 』 をつけろよオモシロ前髪ヤロウ」
花京院のまぶたがピクリと痙攣した。
すると奇妙なことが起こった。操り人形がひとりでに浮き上がり、まっすぐに 『 アヌビス神 』 の脳天に飛んでいったのである。
それは 『 アヌビス神 』 の頭に直撃――したかと思うと跳ね返った。
花京院は軽く首をそらせて、返ってきた人形を避けた。
「そいつの 『 能力 』 は折り紙つきだ。あとは適当に記憶を読んで、要領を掴め」
もっとも、と花京院は電灯から降り立った。
「オートの反射だけで十分かもしれないがな」
「まァ悪くねェか」
『 アヌビス神 』 はクルクルッと刀を回すと、抜身のまま腰に差した。
「あ……っ」
花京院と 『 アヌビス神 』、二人の視線が、声の方へ集まる。
すなわち、打ち止めに。
一方通行は、空を仰いだ。
やおら自分の腕から刀を引き抜く。だくだくと血が流れるが、意に介する様子もない。
ゆっくりと自分の手を見て、握ったり開いたりを繰り返した。
「……成功したようだな。こんな 『 オモチャ 』 まで買ったかいがあったというものだ」
花京院はつまらなそうに言って、操り人形から手を離した。
「どうだ? その体は」
一方通行の体を乗っ取った 『 そいつ 』 は、小さく答える。
「……貧弱すぎる」
「第一位の体が欲しいと言ったのはお前だろう。アヌビス」
「 『 神 』 をつけろよオモシロ前髪ヤロウ」
花京院のまぶたがピクリと痙攣した。
すると奇妙なことが起こった。操り人形がひとりでに浮き上がり、まっすぐに 『 アヌビス神 』 の脳天に飛んでいったのである。
それは 『 アヌビス神 』 の頭に直撃――したかと思うと跳ね返った。
花京院は軽く首をそらせて、返ってきた人形を避けた。
「そいつの 『 能力 』 は折り紙つきだ。あとは適当に記憶を読んで、要領を掴め」
もっとも、と花京院は電灯から降り立った。
「オートの反射だけで十分かもしれないがな」
「まァ悪くねェか」
『 アヌビス神 』 はクルクルッと刀を回すと、抜身のまま腰に差した。
「あ……っ」
花京院と 『 アヌビス神 』、二人の視線が、声の方へ集まる。
すなわち、打ち止めに。
701: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 22:59:17.56:Oa8qqIoV0 (29/33)
「あなた……誰、って、ミサカは、ミサカは……」
打ち止めは感覚的にわかった。
今目の前にいる一方通行は一方通行ではない。別の恐ろしい何かだ。
しりもちをついたまま、ゆっくりと後退る。
だがその距離を、『 アヌビス神 』 はあっさりとつめた。抜身の刀を打ち止めの首筋に当てる。
「ひっ」
「コイツ、試しぶった切ってもいいかァ? 花京院?」
「別に僕はどうでも…………ああやっぱり待て」
絶望的な宣告がひるがえされた。
打ち止めは、喜んでいいのか恐怖していいのかわからなかった。
「どこかで見た顔だと思ったら……やはり、『 アイツ 』 を尾行してる時に見た顔だ。ねえお嬢さん」
花京院は急に親しげな笑みを浮かべて、そばに片膝をついた。
打ち止めは反射的に身を引いた。
「僕たちの目的を教えてあげよう。この男をね、始末しに来たんだ」
はっと打ち止めが気付いた時には、彼女の手の中には一葉の写真があった。
その顔を打ち止めは知っている。
自分の靴のサイズを、初めて教えてくれた人だ。
「あなた……誰、って、ミサカは、ミサカは……」
打ち止めは感覚的にわかった。
今目の前にいる一方通行は一方通行ではない。別の恐ろしい何かだ。
しりもちをついたまま、ゆっくりと後退る。
だがその距離を、『 アヌビス神 』 はあっさりとつめた。抜身の刀を打ち止めの首筋に当てる。
「ひっ」
「コイツ、試しぶった切ってもいいかァ? 花京院?」
「別に僕はどうでも…………ああやっぱり待て」
絶望的な宣告がひるがえされた。
打ち止めは、喜んでいいのか恐怖していいのかわからなかった。
「どこかで見た顔だと思ったら……やはり、『 アイツ 』 を尾行してる時に見た顔だ。ねえお嬢さん」
花京院は急に親しげな笑みを浮かべて、そばに片膝をついた。
打ち止めは反射的に身を引いた。
「僕たちの目的を教えてあげよう。この男をね、始末しに来たんだ」
はっと打ち止めが気付いた時には、彼女の手の中には一葉の写真があった。
その顔を打ち止めは知っている。
自分の靴のサイズを、初めて教えてくれた人だ。
702: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 23:04:45.23:Oa8qqIoV0 (30/33)
「彼に対抗するためにね、一方通行の体を借りることにしたんだ。
これはしょうがないことだ。彼は負けてしまったんだから。彼の体は僕らに使われる運命にある。
……うん、しかし、もし、仮にだよ?
が僕らより早くこの男を消してくれたら……彼の体はもういらないんだ。用済みになるんだ。返してあげてもよくなるんだ。僕が言いたいこと、わかるかな?」
打ち止めは生まれて間もない。
だが、その言葉の裏を読むぐらいの知能はある。
「ほ、ほんとう、に……?」
違う、ダメだ、と打ち止めの心のどこかが叫んだ。
違う、たぶん間違ってる! どこが間違ってるかよくわからないけど違う気がする!
「本当さ。がんばって、やってみてくれるかい? 彼のためにも」
だめだ! 『 イイエ 』 と言うんだ!
「いっ……」
しかし、拒否したところでどうなる?
冷たい囁きが、打ち止めの頭を冷やす。
拒めば殺されてしまうのは明白だ。
なら今自分が彼にできる精一杯は何だ? 彼にしてやれる精一杯は? そうだ、もっと合理的に考えろ。
「あっ……」
打ち止めは未分化な感情しか持っていない。
打ち止めは善悪が何かわからない。
だから、この 『 合理的 』 な決断が、実は 『 恐怖 』 から生まれたものだとわからなかった。
今から自分が、『 悪 』 にひれ伏すという最高に屈辱的な行為をしようとしていることもわからなかった。
「彼に対抗するためにね、一方通行の体を借りることにしたんだ。
これはしょうがないことだ。彼は負けてしまったんだから。彼の体は僕らに使われる運命にある。
……うん、しかし、もし、仮にだよ?
が僕らより早くこの男を消してくれたら……彼の体はもういらないんだ。用済みになるんだ。返してあげてもよくなるんだ。僕が言いたいこと、わかるかな?」
打ち止めは生まれて間もない。
だが、その言葉の裏を読むぐらいの知能はある。
「ほ、ほんとう、に……?」
違う、ダメだ、と打ち止めの心のどこかが叫んだ。
違う、たぶん間違ってる! どこが間違ってるかよくわからないけど違う気がする!
「本当さ。がんばって、やってみてくれるかい? 彼のためにも」
だめだ! 『 イイエ 』 と言うんだ!
「いっ……」
しかし、拒否したところでどうなる?
冷たい囁きが、打ち止めの頭を冷やす。
拒めば殺されてしまうのは明白だ。
なら今自分が彼にできる精一杯は何だ? 彼にしてやれる精一杯は? そうだ、もっと合理的に考えろ。
「あっ……」
打ち止めは未分化な感情しか持っていない。
打ち止めは善悪が何かわからない。
だから、この 『 合理的 』 な決断が、実は 『 恐怖 』 から生まれたものだとわからなかった。
今から自分が、『 悪 』 にひれ伏すという最高に屈辱的な行為をしようとしていることもわからなかった。
703: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 23:07:03.57:Oa8qqIoV0 (31/33)
「わっ……わかっ、た、やってみる……そ、その代わり、終わったらその人を返して! ってミサカは、ミサカは……頼んでみる……」
「ああ、もちろんだ。結果次第では 『 あの方 』 に君を紹介してもいい」
『 あの方 』。
その単語に胡乱なものを感じたが、その時にはすでに花京院は踵を返していた。
「がんばりたまえ、打ち止め<ラストオーダー>。
君の勇気が――『 110年ぶり 』 に目覚めた、『 あの方 』 への祝杯となるのを期待しよう」
そして、一方通行は打ち止めの前から消えた。
「わっ……わかっ、た、やってみる……そ、その代わり、終わったらその人を返して! ってミサカは、ミサカは……頼んでみる……」
「ああ、もちろんだ。結果次第では 『 あの方 』 に君を紹介してもいい」
『 あの方 』。
その単語に胡乱なものを感じたが、その時にはすでに花京院は踵を返していた。
「がんばりたまえ、打ち止め<ラストオーダー>。
君の勇気が――『 110年ぶり 』 に目覚めた、『 あの方 』 への祝杯となるのを期待しよう」
そして、一方通行は打ち止めの前から消えた。
704: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 23:07:47.20:Oa8qqIoV0 (32/33)
→TO BE CONTINUED....
→TO BE CONTINUED....
705: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/09(水) 23:10:03.60:Oa8qqIoV0 (33/33)
初春「はい! そーゆーわけで本作のコンセプトは 『 <あの方>が10年寝過ごしたら 』 なんですよー」
佐天「ういはるぅ……間田プレイスにいるってことは、もしかしてボツですかァァ~~!?」
初春「いえ、ここは入れようかどうしようか迷ってる人達の控室です」
冥土帰し「まさか僕が入れられるとは思わなかったね?」
初春「主人公の能力からして医者泣かせですからねー」
佐天「怪我どころか腹に穴空いても必要ないからねー」
初春「おかげで上条さんも病院の常連さんじゃなくなっちゃいました」
佐天「出る要素ないね」
冥土帰し「ぐうの音も出ないね」
佐天「世界一やさしい能力も彼だけには優しくなかったのだ、と……」ドヤァ
初春「それほどうまいこと言ってませんから」
初春「でもキーキャラですし、忘れたころにやってくるかもしれません」
佐天「大体行き当たりばったりで合わせてるからねぇ、保留キャラが多いったらないわこりゃ」
初春「それじゃあ、今日はここまででーす」
初春「はい! そーゆーわけで本作のコンセプトは 『 <あの方>が10年寝過ごしたら 』 なんですよー」
佐天「ういはるぅ……間田プレイスにいるってことは、もしかしてボツですかァァ~~!?」
初春「いえ、ここは入れようかどうしようか迷ってる人達の控室です」
冥土帰し「まさか僕が入れられるとは思わなかったね?」
初春「主人公の能力からして医者泣かせですからねー」
佐天「怪我どころか腹に穴空いても必要ないからねー」
初春「おかげで上条さんも病院の常連さんじゃなくなっちゃいました」
佐天「出る要素ないね」
冥土帰し「ぐうの音も出ないね」
佐天「世界一やさしい能力も彼だけには優しくなかったのだ、と……」ドヤァ
初春「それほどうまいこと言ってませんから」
初春「でもキーキャラですし、忘れたころにやってくるかもしれません」
佐天「大体行き当たりばったりで合わせてるからねぇ、保留キャラが多いったらないわこりゃ」
初春「それじゃあ、今日はここまででーす」
706:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/09(水) 23:11:36.32:lTy+6dY0o (1/1)
絶っ対に乙なのだァァァァァァァ――――
絶っ対に乙なのだァァァァァァァ――――
707:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/05/09(水) 23:12:00.02:VK1DWtBko (1/1)
乙
乙
708:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2012/05/09(水) 23:16:05.79:fafXziIro (1/1)
乙
<あの方>が出てくるのか……楽しみすぎてヤバイ
乙
<あの方>が出てくるのか……楽しみすぎてヤバイ
709:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/09(水) 23:16:17.06:BDz/i22to (1/1)
色々な疑問が一気に解決してメチャスッキリした
色々な疑問が一気に解決してメチャスッキリした
710:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2012/05/09(水) 23:27:18.08:Synb8yLQ0 (1/1)
乙ッ!
ってことは他の3部勢も出るかも・・・?
乙ッ!
ってことは他の3部勢も出るかも・・・?
711:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/05/09(水) 23:34:50.55:wiJtSPuTo (1/1)
乙
つまり承太郎が時を止められないってことじゃあないか・・・
乙
つまり承太郎が時を止められないってことじゃあないか・・・
712:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/10(木) 07:27:40.26:nmH9vO/ao (1/1)
花京院(28)か。胸アツだな。
花京院(28)か。胸アツだな。
713:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/10(木) 07:43:42.30:pCTHMVRSo (1/1)
やれやれ
『グレート』な物語だぜ
乙!!!!!
やれやれ
『グレート』な物語だぜ
乙!!!!!
714:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/05/10(木) 09:33:16.09:bDRSkxqfo (1/1)
乙、むしろあの方と接触したら承太郎のみならず仗助も進化しそう
乙、むしろあの方と接触したら承太郎のみならず仗助も進化しそう
715:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/10(木) 13:43:38.53:1sLxPrMIO (1/1)
相変わらず良いクオリティだなー
続きが楽しみで仕方ない
相変わらず良いクオリティだなー
続きが楽しみで仕方ない
716:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/10(木) 14:01:10.74:Snm2MpdIO (1/1)
ダブル再構成ってことか
楽しみすぎる
乙!
ダブル再構成ってことか
楽しみすぎる
乙!
717:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県):2012/05/10(木) 16:37:04.04:EHIy0IHwo (1/2)
え、ちょっと待って下さい何言ってるかわかんないです
え、ちょっと待って下さい何言ってるかわかんないです
718:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/10(木) 17:12:33.57:w2QJIQdS0 (1/1)
なにがだ?
なにがだ?
719:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/05/10(木) 19:29:28.81:jGXZpMUV0 (1/1)
>>712
いいや違うねッ!
「イタい勘違いぼっち花京院(28)」だぜ!(OH MY GOD!)
>>712
いいや違うねッ!
「イタい勘違いぼっち花京院(28)」だぜ!(OH MY GOD!)
720:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/10(木) 19:59:58.92:S9hQWwFwo (1/1)
そうなるといろいろ変わってくるな
とりあえずジョルノはいないのかなー
そうなるといろいろ変わってくるな
とりあえずジョルノはいないのかなー
721:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/10(木) 20:51:10.78:In7u3ljMo (1/1)
ポルポルもまだあっち側か
ポルポルもまだあっち側か
722:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県):2012/05/10(木) 20:56:16.24:EHIy0IHwo (2/2)
えーとよくわかんない4部の頃では5部組は何やってたんだろう
えーとよくわかんない4部の頃では5部組は何やってたんだろう
723:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/10(木) 21:47:52.16:pLkTR5QIP (1/1)
ジョルノ不在で他は平常運転だろ
杜王町は虹村家とアーノルド&鈴美と鋼田一豊大が可哀想なことになってる程度か
ジョルノ不在で他は平常運転だろ
杜王町は虹村家とアーノルド&鈴美と鋼田一豊大が可哀想なことになってる程度か
724:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/10(木) 22:00:43.15:/FH36LlO0 (1/2)
1999年時点ではミスタさえチーム入りしてない
四部勢は...億泰父が死んでないからなあ
1999年時点ではミスタさえチーム入りしてない
四部勢は...億泰父が死んでないからなあ
725:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/10(木) 22:02:47.41:/FH36LlO0 (2/2)
間違えた。肉の芽暴走してないから
形兆が矢を持ち込まない
間違えた。肉の芽暴走してないから
形兆が矢を持ち込まない
726:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 00:17:51.74:ozsJRZDIO (1/1)
ウィルソン・フィリップス上院議員が大統領になっている
ウィルソン・フィリップス上院議員が大統領になっている
727:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 11:23:28.03:oqbwEJwDO (1/1)
>>726
一番の勝ち組w
>>726
一番の勝ち組w
728:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/11(金) 11:29:12.86:+pCvEo0IO (1/1)
アンジェロは死刑執行されてるな
アンジェロは死刑執行されてるな
729:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県):2012/05/11(金) 16:47:31.00:3/f5Pymdo (1/1)
脱獄進行中
脱獄進行中
730:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/05/11(金) 18:10:17.30:2Lrx8hymo (1/1)
グレートだぜ
グレートだぜ
731:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/12(土) 09:28:27.76:/VBxayzEo (1/1)
コーラとペプシはスタプラとラバーズぐらい違うだろ!
コーラとペプシはスタプラとラバーズぐらい違うだろ!
732:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/14(月) 12:26:17.64:K8y4fAuz0 (1/1)
グレートだぜ
あの方が10年寝過ごした設定とはやられたぜ
グレートだぜ
あの方が10年寝過ごした設定とはやられたぜ
733:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/14(月) 13:49:02.28:Vc4DXbRIO (1/1)
宝探しのオッサンどもさえ来なければ何年でも海の底でおねんねできるのがカリスマDIO様だ
宝探しのオッサンどもさえ来なければ何年でも海の底でおねんねできるのがカリスマDIO様だ
734:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/14(月) 17:14:52.49:OnEk1GXKo (1/1)
あと1000年くらいねとけばよかったのに
あと1000年くらいねとけばよかったのに
735:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/05/14(月) 23:43:11.54:xKTuCLSAO (1/1)
グレートだぜ
グレートだぜ
736:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/05/15(火) 18:22:10.79:erWzHCya0 (1/1)
たった今このスレを読み終わりました。
つまり花京院はぼっちのまま大人になったのか……
たった今このスレを読み終わりました。
つまり花京院はぼっちのまま大人になったのか……
737:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県):2012/05/16(水) 00:52:52.72:VhzB+UL2o (1/1)
花京院には肉の芽が使われているのか、いないのか
花京院には肉の芽が使われているのか、いないのか
738:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/16(水) 05:52:27.60:Nnoke80R0 (1/1)
とりあえず一話から続く仗助のヒロイン属性を何とかしてほしい
とりあえず一話から続く仗助のヒロイン属性を何とかしてほしい
739:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2012/05/16(水) 15:50:44.91:fWpyRsD/o (1/1)
10年寝過ごしならヴァニラが天敵になりそうだなぁ仗助
10年寝過ごしならヴァニラが天敵になりそうだなぁ仗助
740:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/05/17(木) 11:35:47.86:50/6/jLk0 (1/1)
おつ
おつ
741:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2012/05/17(木) 12:18:37.30:Vgpki8Vi0 (1/1)
ジョルノが存在しない
しかし、エンヤの弓と矢は元々ディアボロが見つけたのを売った物だったはず
つまりパッショーネ及びボスは原作通りっぽいのか
ジョルノが存在しない
しかし、エンヤの弓と矢は元々ディアボロが見つけたのを売った物だったはず
つまりパッショーネ及びボスは原作通りっぽいのか
742:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/05/17(木) 17:11:35.80:q+aT/Jz60 (1/1)
そしてブチャラティは、仮にトリッシュ護衛に成功し
ボスに反逆したとしてもその場で始末される
DIOが10年寝過ごすと結構大変なことになるなww
まあこのSSでは描写されない範囲だろうけど
そしてブチャラティは、仮にトリッシュ護衛に成功し
ボスに反逆したとしてもその場で始末される
DIOが10年寝過ごすと結構大変なことになるなww
まあこのSSでは描写されない範囲だろうけど
743:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/17(木) 19:45:03.76:+SpPCKLFo (1/1)
>>742
護衛失敗どころかズッケェロにしてやられてたかもしれん
>>742
護衛失敗どころかズッケェロにしてやられてたかもしれん
744:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県):2012/05/17(木) 19:54:32.13:xLg8bINWo (1/1)
パッショーネがローマ正教とやり合ってる可能性もあるってことだよな
パッショーネがローマ正教とやり合ってる可能性もあるってことだよな
745:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/17(木) 22:28:02.22:wx5Jgcr50 (1/1)
そこまで考えるとかお前らホントにジョジョ好きだなw
そこまで考えるとかお前らホントにジョジョ好きだなw
746:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北):2012/05/17(木) 23:59:45.73:pMyhinWAO (1/1)
よぉぉ~~~~~~やく追い付いたァアァ
次が楽しみすぎるゼェ
よぉぉ~~~~~~やく追い付いたァアァ
次が楽しみすぎるゼェ
747:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2012/05/18(金) 14:57:33.61:JgERUN8Jo (1/1)
>>743
そもそもジョルノがいないからポルポ生きてるだろうしズッケェロと戦うこともないな
>>743
そもそもジョルノがいないからポルポ生きてるだろうしズッケェロと戦うこともないな
748:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/18(金) 19:50:54.83:xhza7BVDO (1/1)
追い付いた
ジョセフが参戦出来ないぶん、仗助が参戦ってことになるのかな
そしてポルナレフは未だ妹の仇を探してさ迷ってんのか
追い付いた
ジョセフが参戦出来ないぶん、仗助が参戦ってことになるのかな
そしてポルナレフは未だ妹の仇を探してさ迷ってんのか
749:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/05/19(土) 10:20:48.40:7Mp3Tzzt0 (1/2)
10年後って聞いて心から思ったんだけどさぁ……エンヤ婆、死んでねぇか?
死んでないにしても体とかいろいろやばくねぇか?
10年後って聞いて心から思ったんだけどさぁ……エンヤ婆、死んでねぇか?
死んでないにしても体とかいろいろやばくねぇか?
750:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県):2012/05/19(土) 10:26:23.74:dG3yeEMEo (1/1)
謎の術で若返ってるよ
謎の術で若返ってるよ
751:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/19(土) 10:42:08.38:GLYeVDqAo (1/1)
DIO様が吸血鬼にしてるよ
DIO様が吸血鬼にしてるよ
752:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/05/19(土) 11:00:20.93:1Q+LFa6uo (1/1)
OVA準拠で若返るよ
OVA準拠で若返るよ
753:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/05/19(土) 13:54:37.50:LMbQbDcGo (1/1)
花京院がどういう経緯でDIOの配下になったのか気になる
肉の芽は埋められてるのかな?
原作は確かエジプトに家族旅行行った時に埋められたんだっけ
花京院がどういう経緯でDIOの配下になったのか気になる
肉の芽は埋められてるのかな?
原作は確かエジプトに家族旅行行った時に埋められたんだっけ
754:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/05/19(土) 14:25:45.47:7Mp3Tzzt0 (2/2)
原作基準で16~7で肉の眼だったらもう死んでるな絶対。
半年で脳髄を喰い尽くすらしいから
原作基準で16~7で肉の眼だったらもう死んでるな絶対。
半年で脳髄を喰い尽くすらしいから
755:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/19(土) 14:39:13.06:PPXFdY0DO (1/1)
10年寝坊したって言ってんだし、最近だろ
10年寝坊したって言ってんだし、最近だろ
756:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/20(日) 14:29:59.97:Tl7AOC2SO (1/1)
このSS内で既に言われた事以外はいくらでも変わり得るからな
原作との差分含めて楽しみにしとこうじゃないか
このSS内で既に言われた事以外はいくらでも変わり得るからな
原作との差分含めて楽しみにしとこうじゃないか
757:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/22(火) 11:46:22.06:1xskFE8No (1/1)
あまりジョジョを悪改変してほしくはなかったが…
あまりジョジョを悪改変してほしくはなかったが…
758:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/22(火) 19:22:27.49:R9/t37PM0 (1/1)
悪く無いと思うんだが。
悪く無いと思うんだが。
759:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県):2012/05/22(火) 19:22:57.12:quElKWTxo (1/1)
正直ついて行けない感が出てきた
正直ついて行けない感が出てきた
760:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2012/05/22(火) 21:05:26.39:9ye51qvQo (1/1)
じゃあ勝手にどっか行けばいいだろ
じゃあ勝手にどっか行けばいいだろ
761:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/22(火) 23:21:57.21:WNRm7aft0 (1/1)
禁書+ジョジョ組でディオ倒しにいくん?
それは楽しみやな
禁書+ジョジョ組でディオ倒しにいくん?
それは楽しみやな
762:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/05/23(水) 20:59:52.51:OFkyVdgBo (1/1)
どちらせよDIOが承太郎以外に倒される所は見たくないな
どちらせよDIOが承太郎以外に倒される所は見たくないな
763:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/23(水) 21:08:21.76:8jFXNu24o (1/1)
全員が命を懸けて戦ったっていうのを、いくらクロスと言えどもそれ以外の人たちに決着をつけてもらいたくないっていうのは凄くわかる
そろそろ仗助&上条さんのダブル主人公から仗助視点の単独主人公に切り替えたほうが、クロスっぽくなるんじゃないかな
余計なお世話だけど
全員が命を懸けて戦ったっていうのを、いくらクロスと言えどもそれ以外の人たちに決着をつけてもらいたくないっていうのは凄くわかる
そろそろ仗助&上条さんのダブル主人公から仗助視点の単独主人公に切り替えたほうが、クロスっぽくなるんじゃないかな
余計なお世話だけど
764:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/05/23(水) 22:11:45.05:f9OIABnSo (1/1)
こうしてスレは荒れていくのである
こうしてスレは荒れていくのである
765:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/23(水) 22:31:46.97:Biq39hIDO (1/1)
内容の批判はともかくキャラの扱い方とか嫌なら見るなとしか言えません
内容の批判はともかくキャラの扱い方とか嫌なら見るなとしか言えません
766:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/24(木) 01:28:01.67:lzgGCcJo0 (1/1)
やかましいッ!!うっとおしいぞてめ――らッ!!
やかましいッ!!うっとおしいぞてめ――らッ!!
767:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越):2012/05/24(木) 05:54:14.43:NT6au17AO (1/1)
花京院とポルボルは芽付きだろうな
問題は婆とイギーだな
時にイギーは使いもんにならないかもしれん
花京院とポルボルは芽付きだろうな
問題は婆とイギーだな
時にイギーは使いもんにならないかもしれん
768:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/24(木) 09:53:00.81:qhfdTGKIO (1/1)
ポルはDIOの手から逃れてるかもしれん
逆にアヴさんが捕まってるパターンもあるかもww
ポルはDIOの手から逃れてるかもしれん
逆にアヴさんが捕まってるパターンもあるかもww
769:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/24(木) 10:53:57.40:dnoP1ufRo (1/1)
まあ、冷静に考えてイギーJr
まあ、冷静に考えてイギーJr
770:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2012/05/26(土) 15:24:33.38:7AgmNhWmo (1/1)
今追いついた
一方+アヌビスとかクリームより無理ゲーww
今追いついた
一方+アヌビスとかクリームより無理ゲーww
771: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 20:32:21.77:xqdq3IDc0 (1/22)
第二十一話「御坂美琴は×をする①」
第二十一話「御坂美琴は×をする①」
772: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 20:35:11.78:xqdq3IDc0 (2/22)
――……『 1993年 』。
大西洋アフリカ沖、カナリヤ諸島近海。
ある日、一艘のクルーザーが波間にただよっているのが発見された。
無人だった。争ったあともなく、船のどこにも故障はなく正常だった。飲みかけの三人分のコーヒーカップすらあった。
なぜいなくなったのか、誰もわかる者はいなかった。
ただひとつ変わっていたのは、アセチレンバーナーで焼き開けられた鉄の箱が、ドンと甲板にあったことだ。
中はからっぽだったが、みんなシェルターのような二重底の構造になっているのを不思議がり、宝の発見を想像したが…………。
数カ月もすると……やがて忘れられた。
――……『 1993年 』。
大西洋アフリカ沖、カナリヤ諸島近海。
ある日、一艘のクルーザーが波間にただよっているのが発見された。
無人だった。争ったあともなく、船のどこにも故障はなく正常だった。飲みかけの三人分のコーヒーカップすらあった。
なぜいなくなったのか、誰もわかる者はいなかった。
ただひとつ変わっていたのは、アセチレンバーナーで焼き開けられた鉄の箱が、ドンと甲板にあったことだ。
中はからっぽだったが、みんなシェルターのような二重底の構造になっているのを不思議がり、宝の発見を想像したが…………。
数カ月もすると……やがて忘れられた。
773: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 20:44:01.19:xqdq3IDc0 (3/22)
○ ○ ○
110年。
キリの悪い数字だ、と上条当麻は思った。
どこぞの魔王よろしく邪悪の化身の復活! と大々的にぶつなら、100年とか1000年とか一万年の眠りと言ったほうが聞こえがいいだろうに。
しかし、何かデジャヴを感じるぞ。この話。
「110年か……」
今が1999年だから、1889年!
何かがあったというのか?
帰路を走る車の中で上条当麻はひとしきり考え、口を開いた。
「御坂、どう思う」
「控えめに見てもいかれてるわよ、そいつら」
泣き疲れて、話し疲れて眠ってしまった打ち止めを抱きしめながら御坂美琴は呟いた。
その顔に浮かぶ感情は、怒りと言うには生ぬるい。『 ブチギれ 』 寸前と言っていいだろう。
「何が 『 あの方 』 よ。110年も生きてられる人間がいるかっつーの。
いや、いたとしてもヨボヨボの老いぼれじゃない。一方通行のこともあって心境は複雑だけど……
そんないるかもわからないボケ老人のために、この子がこんな目に遭わなくちゃあいけない道理はないわッ」
「『 あの方 』 がいるかなんてのは考えなくてもいい」
またも既視感を感じるセリフを、承太郎が口にした。
上条と御坂は運転席を見た。瞬間、フロントミラー越しに目が合ったが、すぐに承太郎の方からそらされた。
「大切なのは、今ここにある危機だ。それに、どうやら相手の狙いは俺らしいからな……
君たちは巻き込まれたってわけだ。これ以上深入りしても、いいことはないだろうぜ」
これは暗に 『 これ以上首を突っ込むな 』 と言われているのだ。と上条は理解した。
「勝手なこと言わないでよ! こっちにだって戦う理由はあるんだから!」
「……」
承太郎は何かを考え込むように口をつぐんだ。
おそらくどう説得するか迷っているのだろう、と上条は思う。
○ ○ ○
110年。
キリの悪い数字だ、と上条当麻は思った。
どこぞの魔王よろしく邪悪の化身の復活! と大々的にぶつなら、100年とか1000年とか一万年の眠りと言ったほうが聞こえがいいだろうに。
しかし、何かデジャヴを感じるぞ。この話。
「110年か……」
今が1999年だから、1889年!
何かがあったというのか?
帰路を走る車の中で上条当麻はひとしきり考え、口を開いた。
「御坂、どう思う」
「控えめに見てもいかれてるわよ、そいつら」
泣き疲れて、話し疲れて眠ってしまった打ち止めを抱きしめながら御坂美琴は呟いた。
その顔に浮かぶ感情は、怒りと言うには生ぬるい。『 ブチギれ 』 寸前と言っていいだろう。
「何が 『 あの方 』 よ。110年も生きてられる人間がいるかっつーの。
いや、いたとしてもヨボヨボの老いぼれじゃない。一方通行のこともあって心境は複雑だけど……
そんないるかもわからないボケ老人のために、この子がこんな目に遭わなくちゃあいけない道理はないわッ」
「『 あの方 』 がいるかなんてのは考えなくてもいい」
またも既視感を感じるセリフを、承太郎が口にした。
上条と御坂は運転席を見た。瞬間、フロントミラー越しに目が合ったが、すぐに承太郎の方からそらされた。
「大切なのは、今ここにある危機だ。それに、どうやら相手の狙いは俺らしいからな……
君たちは巻き込まれたってわけだ。これ以上深入りしても、いいことはないだろうぜ」
これは暗に 『 これ以上首を突っ込むな 』 と言われているのだ。と上条は理解した。
「勝手なこと言わないでよ! こっちにだって戦う理由はあるんだから!」
「……」
承太郎は何かを考え込むように口をつぐんだ。
おそらくどう説得するか迷っているのだろう、と上条は思う。
774: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 20:52:01.62:xqdq3IDc0 (4/22)
助手席に陣取る10032号こと御坂妹は、車に乗り込んでから終始無言だ。
御坂美琴も再び沈黙したが、腹の中でカッカと暴れまわってる感情があるのは一目瞭然である。
打ち止めの髪を撫でる手が震えている。それどころか時々静電気程度に漏電している。
つまり険悪な空気の車内に、上条は神経がガリガリ削られていく音を聞いた。
ため息を呑み込み、上条は隣にチラリと目をやった。
リーゼントの先っぽからバリーの靴までしとどに濡れた同級生は(マァー、上条も御坂も同様のナリなのだが)、先ほどからそわそわそわそわそわそわと貧乏揺すりに忙しい。
その視線の先にいるのは当然ながら承太郎で、彼の瞳は興奮と期待と喜びが時間に比例して乗算されていくようだった。
その感情の前には、御坂妹がクローンだったとか、そのクローンは二万ひく一万体とか、つい最近まで実験があったとかの驚愕は吹っ飛ばされてしまうらしい。
要は、浮かれている。
そしてこの車内では大いに浮いている。
それに気づかない承太郎ではなく、しばらくののち、ため息のような声で尋ねた。
「……なんだ、仗助」
「じょっ! ……おたろうさん、アレは、あれっスよね。
そのォォ~~……『 スタープラチナ 』 っつーんですか? アレ」
やたら指示語が多いセリフに、承太郎は鋭い目つきで振り向いた。
「お前……見えたのか。俺の 『 スタンド 』 が」
「やっぱりっスかぁぁぁ~~!! やっぱりっスよオイ当麻ァ!」
背中を殴られ上条はむせた。
「信じられねーグレートだぜこいつぁ~~! 承太郎さんも俺とおんなじ 『 スタンド使い 』 なんだよォ!!
ぎゃああああああああああ!! カ、カンドーだあああああ~~~!!」
「空気読みなさいよアンタァ!」
「待った御坂ァ!」
ビリビリしようとした彼女の手を、とっさに 『 右手 』 で掴む。
途端、美琴は熟れすぎたトマトのようになって上条を凝視した。
助手席に陣取る10032号こと御坂妹は、車に乗り込んでから終始無言だ。
御坂美琴も再び沈黙したが、腹の中でカッカと暴れまわってる感情があるのは一目瞭然である。
打ち止めの髪を撫でる手が震えている。それどころか時々静電気程度に漏電している。
つまり険悪な空気の車内に、上条は神経がガリガリ削られていく音を聞いた。
ため息を呑み込み、上条は隣にチラリと目をやった。
リーゼントの先っぽからバリーの靴までしとどに濡れた同級生は(マァー、上条も御坂も同様のナリなのだが)、先ほどからそわそわそわそわそわそわと貧乏揺すりに忙しい。
その視線の先にいるのは当然ながら承太郎で、彼の瞳は興奮と期待と喜びが時間に比例して乗算されていくようだった。
その感情の前には、御坂妹がクローンだったとか、そのクローンは二万ひく一万体とか、つい最近まで実験があったとかの驚愕は吹っ飛ばされてしまうらしい。
要は、浮かれている。
そしてこの車内では大いに浮いている。
それに気づかない承太郎ではなく、しばらくののち、ため息のような声で尋ねた。
「……なんだ、仗助」
「じょっ! ……おたろうさん、アレは、あれっスよね。
そのォォ~~……『 スタープラチナ 』 っつーんですか? アレ」
やたら指示語が多いセリフに、承太郎は鋭い目つきで振り向いた。
「お前……見えたのか。俺の 『 スタンド 』 が」
「やっぱりっスかぁぁぁ~~!! やっぱりっスよオイ当麻ァ!」
背中を殴られ上条はむせた。
「信じられねーグレートだぜこいつぁ~~! 承太郎さんも俺とおんなじ 『 スタンド使い 』 なんだよォ!!
ぎゃああああああああああ!! カ、カンドーだあああああ~~~!!」
「空気読みなさいよアンタァ!」
「待った御坂ァ!」
ビリビリしようとした彼女の手を、とっさに 『 右手 』 で掴む。
途端、美琴は熟れすぎたトマトのようになって上条を凝視した。
775: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 20:54:41.23:xqdq3IDc0 (5/22)
「離しなさいよ馬鹿!」
「だーめーだ。離したら絶対お前ビリビリすんだろ」
「ううううるさいぃ! しないからとっとと……は、はな……」
美琴の声が尻切れトンボに小さくなったのは、上条が打ち止めを指さし、人差し指を立てたためだ。
「……離しなさいよ……」
「お前が落ち着くまでな」
「え?」
「お前の気持ちが落ち着くまで、こうして握っとく」
上条には他意はない。そう、いつだって上条当麻に他意はないのだ。
だがその言葉は美琴に 『 ピリピリしてる自分を心配してくれる、包容力ある彼 』 を幻想させた。ついでにフィルターもかかった。
美琴のオーラから色が抜けていく。
怒りの赤から、どことなく甘酸っぱいピンクへ。
「しょ……しょおがない……わね」
「それはミサカのセリフですバカップルが。とミサカはこっそり肩をすくめます」
口の中でつぶやき、御坂妹はチラリと承太郎の方を見た。
あんな掛け合いの間でも、承太郎はにこりともせず何か考えているようだった。
「仗助……『 スタンド使い 』 なんて言葉、いつ……いや、どこで覚えた」
「この町で偶然 『 スタンド使い 』 に会ったんスよ。それで色々教えてもらってぇ~~」
とっさのウソがうまい奴だ。
いや、ウソは言ってないな、と上条は舌を巻いた。
「そいつはまだこの町に……?」
「いや、とっくに出ていきましたよ。仕事の都合で、なっ?」
「俺に振るな」
壮絶なみつどもえがよみがえり、上条は嫌そうに頭を振った。
あの時のことは極力思い出したくない。
「離しなさいよ馬鹿!」
「だーめーだ。離したら絶対お前ビリビリすんだろ」
「ううううるさいぃ! しないからとっとと……は、はな……」
美琴の声が尻切れトンボに小さくなったのは、上条が打ち止めを指さし、人差し指を立てたためだ。
「……離しなさいよ……」
「お前が落ち着くまでな」
「え?」
「お前の気持ちが落ち着くまで、こうして握っとく」
上条には他意はない。そう、いつだって上条当麻に他意はないのだ。
だがその言葉は美琴に 『 ピリピリしてる自分を心配してくれる、包容力ある彼 』 を幻想させた。ついでにフィルターもかかった。
美琴のオーラから色が抜けていく。
怒りの赤から、どことなく甘酸っぱいピンクへ。
「しょ……しょおがない……わね」
「それはミサカのセリフですバカップルが。とミサカはこっそり肩をすくめます」
口の中でつぶやき、御坂妹はチラリと承太郎の方を見た。
あんな掛け合いの間でも、承太郎はにこりともせず何か考えているようだった。
「仗助……『 スタンド使い 』 なんて言葉、いつ……いや、どこで覚えた」
「この町で偶然 『 スタンド使い 』 に会ったんスよ。それで色々教えてもらってぇ~~」
とっさのウソがうまい奴だ。
いや、ウソは言ってないな、と上条は舌を巻いた。
「そいつはまだこの町に……?」
「いや、とっくに出ていきましたよ。仕事の都合で、なっ?」
「俺に振るな」
壮絶なみつどもえがよみがえり、上条は嫌そうに頭を振った。
あの時のことは極力思い出したくない。
776: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 20:57:56.16:xqdq3IDc0 (6/22)
承太郎の、ミラー越しの視線が上条たちに移る。
「君たちも、『 スタンド 』 のことは知っているのか」
「ミサカは初耳です。おそらく上位個体もそうでしょう。とミサカは返答します」
「あ、はあ、俺らは、まあ何となく……」
なぜか耳まで染めて俯いている美琴も、『 スタンド 』 のことは知っているはずだ。
ただし 『 よくわかんない変態とよくわかんない変態がよくわかんない戦いしてる時に口走ってたあれ 』、くらいの認識だろうが。
「話を聞く限り、打ち止め達を襲ったのは 『 スタンド使い 』 に間違いない」
承太郎の言葉に、後部座席の三人が反応する。
承太郎はハンドルを握ったまま続けた。
「君たちの事情は理解しているつもりだ……だが、『 スタンド 』 は 『 スタンド 』 でしか攻撃できず、『 スタンド使い 』 以外には見ることもできない。
どんな超能力だろうと傷一つつけることはできない……奴らに対抗できるのは俺か仗助だけだ」
「だから指くわえて見てろっての!?」
「では聞くが、御坂くん。君はそんな相手に対して何ができる」
「っ……!」
美琴は絶句せざるを得なかった。
車内を再び沈黙がつつむ。
上条は、思い切って顔を上げた。
承太郎の、ミラー越しの視線が上条たちに移る。
「君たちも、『 スタンド 』 のことは知っているのか」
「ミサカは初耳です。おそらく上位個体もそうでしょう。とミサカは返答します」
「あ、はあ、俺らは、まあ何となく……」
なぜか耳まで染めて俯いている美琴も、『 スタンド 』 のことは知っているはずだ。
ただし 『 よくわかんない変態とよくわかんない変態がよくわかんない戦いしてる時に口走ってたあれ 』、くらいの認識だろうが。
「話を聞く限り、打ち止め達を襲ったのは 『 スタンド使い 』 に間違いない」
承太郎の言葉に、後部座席の三人が反応する。
承太郎はハンドルを握ったまま続けた。
「君たちの事情は理解しているつもりだ……だが、『 スタンド 』 は 『 スタンド 』 でしか攻撃できず、『 スタンド使い 』 以外には見ることもできない。
どんな超能力だろうと傷一つつけることはできない……奴らに対抗できるのは俺か仗助だけだ」
「だから指くわえて見てろっての!?」
「では聞くが、御坂くん。君はそんな相手に対して何ができる」
「っ……!」
美琴は絶句せざるを得なかった。
車内を再び沈黙がつつむ。
上条は、思い切って顔を上げた。
777: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:00:30.52:xqdq3IDc0 (7/22)
「空条さん……確かに、あんたの言う事は一理も二理も三理もあるのかもしれません……俺たちにとって 『 スタンド 』 は未知の世界だ……でもだからってッ!
知り合いを傷つけられて黙ってられる程、俺らは 『 できた 』 奴らじゃあねえ!
それに現在進行形で危ねえ目に遭ってるのは学園都市第一位、つまりこの間までこの町で、俺たちと同じ空気吸って生活してた生徒なんだ!
『 助けたい 』 って気持ちはあんたより遥かに大きいぜ!」
「私は……」
美琴がぐっと上条の手を握った。
そこで上条は、さっきからずっと彼女と手を繋いだままだということに気が付いた。
「私は一方通行の事なんかどうでもいい……むしろ憎いとさえ思ってる。
でも一方通行を卑怯な手でハメた奴らに、『 学園都市はこの程度 』 なんて思われるのは我慢がならないわッ……!
それはすごく、誇りが傷つく事よ……!
能力者を 『 オモチャ 』 か 『 道具 』 みたいに見て……絶対に許せないッ……!」
「空条さん」
上条はミラー越しの彼の目をしっかりと見据えた。
「俺たちにとって、町の 『 誇り 』 を傷つけたそいつらを野放しにするのは、耐えきれねえほど恥ずかしい事なんだ。
空条さんは、俺たちにその恥ずかしいことをしろって言うんですか」
「空条さん……確かに、あんたの言う事は一理も二理も三理もあるのかもしれません……俺たちにとって 『 スタンド 』 は未知の世界だ……でもだからってッ!
知り合いを傷つけられて黙ってられる程、俺らは 『 できた 』 奴らじゃあねえ!
それに現在進行形で危ねえ目に遭ってるのは学園都市第一位、つまりこの間までこの町で、俺たちと同じ空気吸って生活してた生徒なんだ!
『 助けたい 』 って気持ちはあんたより遥かに大きいぜ!」
「私は……」
美琴がぐっと上条の手を握った。
そこで上条は、さっきからずっと彼女と手を繋いだままだということに気が付いた。
「私は一方通行の事なんかどうでもいい……むしろ憎いとさえ思ってる。
でも一方通行を卑怯な手でハメた奴らに、『 学園都市はこの程度 』 なんて思われるのは我慢がならないわッ……!
それはすごく、誇りが傷つく事よ……!
能力者を 『 オモチャ 』 か 『 道具 』 みたいに見て……絶対に許せないッ……!」
「空条さん」
上条はミラー越しの彼の目をしっかりと見据えた。
「俺たちにとって、町の 『 誇り 』 を傷つけたそいつらを野放しにするのは、耐えきれねえほど恥ずかしい事なんだ。
空条さんは、俺たちにその恥ずかしいことをしろって言うんですか」
778: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:02:36.07:xqdq3IDc0 (8/22)
承太郎の瞳は静かだった。だが決して穏やかではない。
『 それで? 』 と静かに問い返し、『 本当か? 』 と強烈な力で本心を暴き立ててくる。
この圧迫感に折れるようじゃあ本気じゃあない。上条はほとんど睨みつけるようにして彼の視線を受け止めた。
上条にとっては何時間にも思える時が過ぎた。
それは不意のことだったので、上条は何が起きたかわからなかった。
ミラーに映った承太郎の瞳が、ほんのわずかに和んだ。ような気がしたのだ。
瞬間、車がカーブを切った。
視線がずれる。結局彼が笑ったかどうかはわからなかった。
「 『 スタンド 』 は 『 スタンド 』 でしか倒せない。これは絶対だ。…………だから君たちは、本体の方を叩く役回りになるな」
美琴がぱっと顔を上げた。
上条は思わず、膝の上でガッツポーズをとった。
「空条さん……!」
「俺としても君たちが単独行動に走ることは避けたい」
「それ、どういうこと? ……ですか」
美琴の取ってつけたような敬語にも眉一つ動かさず承太郎は、
「おそらく……いや、ほぼ確信してるから言うんだが……敵は今も俺のことを監視している」
ちょっとした爆弾を落とした。
承太郎の瞳は静かだった。だが決して穏やかではない。
『 それで? 』 と静かに問い返し、『 本当か? 』 と強烈な力で本心を暴き立ててくる。
この圧迫感に折れるようじゃあ本気じゃあない。上条はほとんど睨みつけるようにして彼の視線を受け止めた。
上条にとっては何時間にも思える時が過ぎた。
それは不意のことだったので、上条は何が起きたかわからなかった。
ミラーに映った承太郎の瞳が、ほんのわずかに和んだ。ような気がしたのだ。
瞬間、車がカーブを切った。
視線がずれる。結局彼が笑ったかどうかはわからなかった。
「 『 スタンド 』 は 『 スタンド 』 でしか倒せない。これは絶対だ。…………だから君たちは、本体の方を叩く役回りになるな」
美琴がぱっと顔を上げた。
上条は思わず、膝の上でガッツポーズをとった。
「空条さん……!」
「俺としても君たちが単独行動に走ることは避けたい」
「それ、どういうこと? ……ですか」
美琴の取ってつけたような敬語にも眉一つ動かさず承太郎は、
「おそらく……いや、ほぼ確信してるから言うんだが……敵は今も俺のことを監視している」
ちょっとした爆弾を落とした。
779: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:05:00.73:xqdq3IDc0 (9/22)
仗助と美琴は、思わず窓の外を見た。二人に挟まれている上条もキョロキョロと二度三度、車の外を見回す。
御坂妹だけは承太郎の横顔を凝視したまま問うた。
「なぜわかるのですか。とミサカは根拠の明示を求めます」
「俺の 『 スタープラチナ 』 は特殊能力こそないが、弾丸を掴むほどの精密性と身体能力を持つ。1、2kmくらい向こうにいる奴なら観測できるってわけだ」
承太郎は、今度は少々荒くハンドルを切った。
「そいつらが熱烈に見つめてくるのなら、なおさらな」
車のスピードが上がる。
そういえば今どこを走ってるのだろうと上条は今更気が付いた。
「……だからさっきからそいつらを撒こうと走り回ってるんだが……ピッタリくっついて離れやしねえ。粘着な野郎だ……おっと、口が悪かったな。
そういうわけで、少し事故るかもしれないが勘弁してくれ」
「ちょっ!? 今なんて言いました空条さん!?」
「シートベルトは締めときな」
「降ろして! 俺この駅で降りまーす!」
「空条さん、この車四人乗り! イコール俺シートベルト締めれねえ! 不幸だ!」
「打ち止めも! 打ち止めもよ!」
「ああ、しっかりつかまってろ」
「そうじゃねぇぇぇーーーー!!!!」
「いやーーーー!!!!」
仗助と美琴は、思わず窓の外を見た。二人に挟まれている上条もキョロキョロと二度三度、車の外を見回す。
御坂妹だけは承太郎の横顔を凝視したまま問うた。
「なぜわかるのですか。とミサカは根拠の明示を求めます」
「俺の 『 スタープラチナ 』 は特殊能力こそないが、弾丸を掴むほどの精密性と身体能力を持つ。1、2kmくらい向こうにいる奴なら観測できるってわけだ」
承太郎は、今度は少々荒くハンドルを切った。
「そいつらが熱烈に見つめてくるのなら、なおさらな」
車のスピードが上がる。
そういえば今どこを走ってるのだろうと上条は今更気が付いた。
「……だからさっきからそいつらを撒こうと走り回ってるんだが……ピッタリくっついて離れやしねえ。粘着な野郎だ……おっと、口が悪かったな。
そういうわけで、少し事故るかもしれないが勘弁してくれ」
「ちょっ!? 今なんて言いました空条さん!?」
「シートベルトは締めときな」
「降ろして! 俺この駅で降りまーす!」
「空条さん、この車四人乗り! イコール俺シートベルト締めれねえ! 不幸だ!」
「打ち止めも! 打ち止めもよ!」
「ああ、しっかりつかまってろ」
「そうじゃねぇぇぇーーーー!!!!」
「いやーーーー!!!!」
780: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:10:13.19:xqdq3IDc0 (10/22)
「……ずいぶん遠くまで来たもんだ」
「ミサカは……おえええええぇぇぇっっ!!」
車外。感慨深くつぶやく承太郎の後ろで、御坂妹は屈辱的車酔い初体験を味わっていた。
車内。後部座席の三人は魂が抜け、真っ白に燃え尽きている。打ち止めが大人しく寝ていることが救いと言えば救いだった。
馬鹿な……ッ! 上条は心の中で絶望する。
あんたも 『 ボケ 』 だというのかッ……空条承太郎……ッッ!!
しかも大分タチの悪い……ッ!
「ワリィ……外の空気吸ってくる……」
仗助がよろよろとドアを開く。
いかに承太郎信者の彼もこれは堪えたらしい。
開け放したドアにもたれかかって、深呼吸する。
「承太郎さん……あんなドラテクどこで覚えたんスか……」
「いや、さすがにあんな走りは初めてだな」
「うわぁぁ~~やっぱ承太郎ォさんはスゲェーやぁぁ~~……!!」
俺が甘かった、と上条は実感した。
お前はどこぞのマンモーニか。
さておき、仗助の承太郎に対する無条件の肯定は、上条にうすら寒い予感を感じさせた。
なぜこうも承太郎を尊敬できるのか。その原因は分かっている。
と、言ってもこれは上条が勝手に推測したことなのだが。
仗助が祖父を殺されたその日――。仗助は祖父の代わりに母親を守る決意をしたという。
だが 『 決意 』 はあっても、それをやり遂げられる 『 自信 』 はなかったのではないか。と上条は考える。
当たり前である。金も社会的地位もない16歳の少年が、どうやって母を守ろうというのか。
途方に暮れているところに現れたスーパーマンが、空条承太郎なのである。
仗助は 『 憧れ 』 と 『 理想 』 と、もしかして 『 父性 』 すら彼に見てしまったのかもしれない。
だからこんな、行き過ぎなくらい無条件の信頼が生まれてしまった。
ひょっとして 『 自信 』 を持っていたなら――持てるくらいの根拠を―― 『 力 』 を、仗助が持っていたなら――
仗助の 『 スタンド 』 の発現が、承太郎に出会うよりも早かったなら――もっと違った関係が生まれていたのかもしれない。
だが、なら今の関係は悪いのか? と聞かれれば、上条は 『 う~~ん、マァ、いいんじゃないですかァ? 』 と首をひねるしかない。
仗助がファザコンもとい甥コンとは思い難いし、仮にそうだとしてもいつかは治まる。と上条は考える。
なぜなら仗助の中にはもう一人、尊敬すべき人間が生きているからだ。
その人の背中を追っていくならば、『 理想 』 は 『 目標 』 へと変わるはずだ。
その時後ろを振り向いて、仗助は苦笑いするのだろう。
――まあ、何が言いたいかっていうと。
――今のこの光景は仗助くんの黒歴史になりかねないってわけだ。
庭駆けまわる犬ころのように承太郎にまとわりつく仗助を見ながら、上条はそう思った。
――親戚のおばちゃんにプロポーズした幼きあの頃のような、なんか、そんな感じの苦酸っぱい思い出になる。そんな気がするゥ。
「……ずいぶん遠くまで来たもんだ」
「ミサカは……おえええええぇぇぇっっ!!」
車外。感慨深くつぶやく承太郎の後ろで、御坂妹は屈辱的車酔い初体験を味わっていた。
車内。後部座席の三人は魂が抜け、真っ白に燃え尽きている。打ち止めが大人しく寝ていることが救いと言えば救いだった。
馬鹿な……ッ! 上条は心の中で絶望する。
あんたも 『 ボケ 』 だというのかッ……空条承太郎……ッッ!!
しかも大分タチの悪い……ッ!
「ワリィ……外の空気吸ってくる……」
仗助がよろよろとドアを開く。
いかに承太郎信者の彼もこれは堪えたらしい。
開け放したドアにもたれかかって、深呼吸する。
「承太郎さん……あんなドラテクどこで覚えたんスか……」
「いや、さすがにあんな走りは初めてだな」
「うわぁぁ~~やっぱ承太郎ォさんはスゲェーやぁぁ~~……!!」
俺が甘かった、と上条は実感した。
お前はどこぞのマンモーニか。
さておき、仗助の承太郎に対する無条件の肯定は、上条にうすら寒い予感を感じさせた。
なぜこうも承太郎を尊敬できるのか。その原因は分かっている。
と、言ってもこれは上条が勝手に推測したことなのだが。
仗助が祖父を殺されたその日――。仗助は祖父の代わりに母親を守る決意をしたという。
だが 『 決意 』 はあっても、それをやり遂げられる 『 自信 』 はなかったのではないか。と上条は考える。
当たり前である。金も社会的地位もない16歳の少年が、どうやって母を守ろうというのか。
途方に暮れているところに現れたスーパーマンが、空条承太郎なのである。
仗助は 『 憧れ 』 と 『 理想 』 と、もしかして 『 父性 』 すら彼に見てしまったのかもしれない。
だからこんな、行き過ぎなくらい無条件の信頼が生まれてしまった。
ひょっとして 『 自信 』 を持っていたなら――持てるくらいの根拠を―― 『 力 』 を、仗助が持っていたなら――
仗助の 『 スタンド 』 の発現が、承太郎に出会うよりも早かったなら――もっと違った関係が生まれていたのかもしれない。
だが、なら今の関係は悪いのか? と聞かれれば、上条は 『 う~~ん、マァ、いいんじゃないですかァ? 』 と首をひねるしかない。
仗助がファザコンもとい甥コンとは思い難いし、仮にそうだとしてもいつかは治まる。と上条は考える。
なぜなら仗助の中にはもう一人、尊敬すべき人間が生きているからだ。
その人の背中を追っていくならば、『 理想 』 は 『 目標 』 へと変わるはずだ。
その時後ろを振り向いて、仗助は苦笑いするのだろう。
――まあ、何が言いたいかっていうと。
――今のこの光景は仗助くんの黒歴史になりかねないってわけだ。
庭駆けまわる犬ころのように承太郎にまとわりつく仗助を見ながら、上条はそう思った。
――親戚のおばちゃんにプロポーズした幼きあの頃のような、なんか、そんな感じの苦酸っぱい思い出になる。そんな気がするゥ。
781: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:14:18.42:xqdq3IDc0 (11/22)
「仗助、今のうちにお前の 『 スタンド 』 を知っておきたいんだが」
「ういっス! お安い御用っス!」
言うなり仗助の体から 『 スタンド 』 が飛び出した。
改めて見るに、ユニークな外見をしている。
『 スタープラチナ 』 が戦士なら、仗助の 『 スタンド 』 は中世ヨーロッパの戦士に動力炉とハートを足したような感じだ。
仗助がその場を離れたので、上条は元通りドアを閉めた。
仗助が身振り手振りで説明をしている。ぼんやりそれを見ている間に、御坂妹が車内に戻ってきた。
顔色がオールブルー。美琴が腰を浮かした。
「ちょっと、大丈夫?」
「はい……少しスッキリしました。とミサカは息も絶え絶えに答えます……」
「窓開けときなさい。風に当たってれば少しはマシだから」
御坂妹は素直に従い、窓の縁に顎を乗せた。
上条は仗助たちに視線を戻した。
ちょうどその瞬間、承太郎の体から青いオーラが立ち上った。いや、それは残像だった。
すさまじい速さで出現した 『 スタープラチナ 』 に上条の目が追い付かなかったのだ。
仗助は、あるいはその突出した動体視力で捉えられたのか、ごく自然に感嘆の表情を浮かべたが、上条はギョッとして二度見した。
『 スタープラチナ 』 は今度は比較的ゆっくり(と、言っても上条には一瞬の出来事だったが)そばの木の枝を折り取り、仗助の 『 スタンド 』 に投げつけた。
仗助の 『 スタンド 』 はバレーのトスでもするかのような気安さで枝をはじく。
途端、ビデオの巻き戻しのように枝が 『 なおって 』 いく。
毎度のことながら感心していると、上条の後ろから手が伸びて、バンッと窓に手をついた。
「なによあれッ、一体何やってんのッ?」
「だから 『 スタンド 』 だよ。あーいう能力らしいぜ」
上条が答えても美琴は眉間にしわを寄せたままだ。
おそらく彼女には枝がひとりでに折れて、飛んで行ったかと思えばくっついた、みたいに見えていたのだろう。
「『 念動力<テレキネシス> 』、じゃあない……明らかに違う……見たこともない能力……『 スタンド 』、これが? まるで……」
「まるで魔法ですね。とミサカは思わず非常識的なことを呟きます」
「まさか!」
美琴はうなるように言った。
「仗助、今のうちにお前の 『 スタンド 』 を知っておきたいんだが」
「ういっス! お安い御用っス!」
言うなり仗助の体から 『 スタンド 』 が飛び出した。
改めて見るに、ユニークな外見をしている。
『 スタープラチナ 』 が戦士なら、仗助の 『 スタンド 』 は中世ヨーロッパの戦士に動力炉とハートを足したような感じだ。
仗助がその場を離れたので、上条は元通りドアを閉めた。
仗助が身振り手振りで説明をしている。ぼんやりそれを見ている間に、御坂妹が車内に戻ってきた。
顔色がオールブルー。美琴が腰を浮かした。
「ちょっと、大丈夫?」
「はい……少しスッキリしました。とミサカは息も絶え絶えに答えます……」
「窓開けときなさい。風に当たってれば少しはマシだから」
御坂妹は素直に従い、窓の縁に顎を乗せた。
上条は仗助たちに視線を戻した。
ちょうどその瞬間、承太郎の体から青いオーラが立ち上った。いや、それは残像だった。
すさまじい速さで出現した 『 スタープラチナ 』 に上条の目が追い付かなかったのだ。
仗助は、あるいはその突出した動体視力で捉えられたのか、ごく自然に感嘆の表情を浮かべたが、上条はギョッとして二度見した。
『 スタープラチナ 』 は今度は比較的ゆっくり(と、言っても上条には一瞬の出来事だったが)そばの木の枝を折り取り、仗助の 『 スタンド 』 に投げつけた。
仗助の 『 スタンド 』 はバレーのトスでもするかのような気安さで枝をはじく。
途端、ビデオの巻き戻しのように枝が 『 なおって 』 いく。
毎度のことながら感心していると、上条の後ろから手が伸びて、バンッと窓に手をついた。
「なによあれッ、一体何やってんのッ?」
「だから 『 スタンド 』 だよ。あーいう能力らしいぜ」
上条が答えても美琴は眉間にしわを寄せたままだ。
おそらく彼女には枝がひとりでに折れて、飛んで行ったかと思えばくっついた、みたいに見えていたのだろう。
「『 念動力<テレキネシス> 』、じゃあない……明らかに違う……見たこともない能力……『 スタンド 』、これが? まるで……」
「まるで魔法ですね。とミサカは思わず非常識的なことを呟きます」
「まさか!」
美琴はうなるように言った。
782: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:20:55.15:xqdq3IDc0 (12/22)
「まあ……やっと信じる気になれたわ」
「はい? 何を?」
「アイツのあの恰好はファッションだってことをよ。いまどき信じがたいけど……正気の沙汰じゃないけど。
わざわざあんなバカみたいな頭にするのなんてスキルアウトくらいのものだと思ってたけど」
瞬間、仗助がグルンとこちらを向いた。
冷や汗が出た。まずい、いや、聞こえなかったはずだ。セーフセーフ……だよな?
セーフだったらしい。仗助は疑るように眉を寄せたが、すぐ承太郎の方へ向き直った。
「あれだけの 『 能力 』 持ちなら、不良になる意味なんてないものね」
「お前さあ……俺の言ったこと覚えてるか?」
「何よ?」
「あいつの髪やら服やらのことはとやかく言うなって。あと、そーいう風に人を見下した言い方はよくないぞ、うん」
「何、説教? アイツの格好がヘンなのは確定的に明らか……」
「はいはい言ったそばから~~!!」
声は低めているし硝子越しだ。聞こえているはずがない。
のに、仗助はものすごいタイミングで鋭い目を向けてきた。アンテナでも張ってあるのだろうか。
「ミサカはいいと思います。自分の好きなファッションを貫くということはミサカには無縁ですので。とミサカは最悪なコンディションの中主張します。うぷ」
「そうだぜ。それにこう……お前にとってアレだとしてもだ、迷惑かけてるわけじゃねーだろ?」
「……わかったわよ。私が悪かったわ、確かにね」
美琴はしぶしぶ頷いた。
「まあ……やっと信じる気になれたわ」
「はい? 何を?」
「アイツのあの恰好はファッションだってことをよ。いまどき信じがたいけど……正気の沙汰じゃないけど。
わざわざあんなバカみたいな頭にするのなんてスキルアウトくらいのものだと思ってたけど」
瞬間、仗助がグルンとこちらを向いた。
冷や汗が出た。まずい、いや、聞こえなかったはずだ。セーフセーフ……だよな?
セーフだったらしい。仗助は疑るように眉を寄せたが、すぐ承太郎の方へ向き直った。
「あれだけの 『 能力 』 持ちなら、不良になる意味なんてないものね」
「お前さあ……俺の言ったこと覚えてるか?」
「何よ?」
「あいつの髪やら服やらのことはとやかく言うなって。あと、そーいう風に人を見下した言い方はよくないぞ、うん」
「何、説教? アイツの格好がヘンなのは確定的に明らか……」
「はいはい言ったそばから~~!!」
声は低めているし硝子越しだ。聞こえているはずがない。
のに、仗助はものすごいタイミングで鋭い目を向けてきた。アンテナでも張ってあるのだろうか。
「ミサカはいいと思います。自分の好きなファッションを貫くということはミサカには無縁ですので。とミサカは最悪なコンディションの中主張します。うぷ」
「そうだぜ。それにこう……お前にとってアレだとしてもだ、迷惑かけてるわけじゃねーだろ?」
「……わかったわよ。私が悪かったわ、確かにね」
美琴はしぶしぶ頷いた。
783: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:22:57.30:xqdq3IDc0 (13/22)
仗助と承太郎が、ようやく車に戻ってきた。
承太郎は御坂妹に二言三言心配の言葉をかけると、ふと思いついたように仗助に質問した。
「お前の 『 スタンド 』 は……何でも 『 なおす 』 ことができるのか」
「んー……部品がないものと、俺自身はなおせません。あと、多分死んだモノもなおせません」
「『 多分 』?」
「試したことはねーでスけど、なんとなくそんな感じがするんスよ。原理はよくわからねーけど、そんな気がするんでス」
「お前がそう言うなら、そうだろうな」
承太郎は車のキーを回した。
「『 スタンド 』 は精神力だ。お前の 『 なんだかよくわからねーがそんな気がする 』 ってのは実は最も大切なことなんだぜ」
「はぁ~~~そうなんスか」
この 『 はぁ~~ 』 は 『 えーイマイチ理解不能 』 の 『 はぁ~~? 』 ではない。
納得して、感嘆した時の 『 はぁ~~ 』 だ。
だが、上条にはよくわからなかった。
「よくわかんないわね……信じ込むことが大切ってこと? なら私たちとどう違うってのよ……?」
隣の美琴も同じらしく、ぶつぶつ呟いている。
「きっと俺たちの基準で考えちまうのがいけねえんだ、多分、おそらく。なんか、もうちょっとズレた次元の話なんじゃねえか?」
「何よそれ」
「さあなあ……」
「なにそれ」
「いででっ」
美琴は呆れたように言って、上条の肩をつねった。
御坂妹は、なぜかそれに冷淡な視線を向けた。
仗助と承太郎が、ようやく車に戻ってきた。
承太郎は御坂妹に二言三言心配の言葉をかけると、ふと思いついたように仗助に質問した。
「お前の 『 スタンド 』 は……何でも 『 なおす 』 ことができるのか」
「んー……部品がないものと、俺自身はなおせません。あと、多分死んだモノもなおせません」
「『 多分 』?」
「試したことはねーでスけど、なんとなくそんな感じがするんスよ。原理はよくわからねーけど、そんな気がするんでス」
「お前がそう言うなら、そうだろうな」
承太郎は車のキーを回した。
「『 スタンド 』 は精神力だ。お前の 『 なんだかよくわからねーがそんな気がする 』 ってのは実は最も大切なことなんだぜ」
「はぁ~~~そうなんスか」
この 『 はぁ~~ 』 は 『 えーイマイチ理解不能 』 の 『 はぁ~~? 』 ではない。
納得して、感嘆した時の 『 はぁ~~ 』 だ。
だが、上条にはよくわからなかった。
「よくわかんないわね……信じ込むことが大切ってこと? なら私たちとどう違うってのよ……?」
隣の美琴も同じらしく、ぶつぶつ呟いている。
「きっと俺たちの基準で考えちまうのがいけねえんだ、多分、おそらく。なんか、もうちょっとズレた次元の話なんじゃねえか?」
「何よそれ」
「さあなあ……」
「なにそれ」
「いででっ」
美琴は呆れたように言って、上条の肩をつねった。
御坂妹は、なぜかそれに冷淡な視線を向けた。
784: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:26:34.24:xqdq3IDc0 (14/22)
「『 名前 』 は」
承太郎はごく普通に、禁句を口にした。
「え?」
「お前のスタンドの名前だ」
仗助は明らかに狼狽した。
「えぇぇ~~~……やっぱこーいうのって早い方がいいんスかねぇ……」
「俺の場合は目覚めてすぐ……知り合いのエジプト人に付けてもらったが」
承太郎は後部座席を振り返った。
「なんだ、仗助、お前、まだなのか」
「いやぁ、一回つけよーとは思ったんスけど」
仗助は頭をかきながら、チラリと上条を見た。
上条も肩をすくめた。
「いいのが出なかったんだよな」
「つーかどうしても必要なもんスかね」
承太郎はゆったりと座席に座りなおした。
「そうだな……いつまでも名無しの権兵衛じゃあ不便だし、何より自分の能力に愛着が持てる。つけてやるに越したことはないと思うぜ」
「いっそ今決めちゃいなさいよ」
美琴がどうでもよさそうに口をはさんだ。
「どうせアンタみたいなタイプって、後回し後回しして結局何もしないんだから」
「にゃにお~? このアマァ」
「何よ、このダサリーゼ」
「まあまあまあまあまあまあまあァ!!」
上条は慌てて間に入った。
忠告したばかりだというのに、どうも美琴のリーゼントに対する発言は脊髄反射的なものらしい。
『 しまったァァ~~ヘタこいたァァァ~~ 』 という顔で口を押さえている。
上条はため息をつきたい気分になった。
「ま、いいじゃねえか。なっ! 気長に考えてけばいいじゃねーか。ずっと思いつかなかったもんが今すぐポンッて出てくるわけねーんだし。なあ仗助?」
仗助は、まるで己の侘しい銀行口座残高をどう使うか考えあぐねているように真剣かつ難しい顔をして、ウムゥとうなった。
視線が上条に、御坂三姉妹に、そして承太郎に移る。
途端、仗助は名案、という風に手の平を拳で打った。
「そうだ! 承太郎さんが付けてくださいよ」
「……何?」
「『 名前 』 は」
承太郎はごく普通に、禁句を口にした。
「え?」
「お前のスタンドの名前だ」
仗助は明らかに狼狽した。
「えぇぇ~~~……やっぱこーいうのって早い方がいいんスかねぇ……」
「俺の場合は目覚めてすぐ……知り合いのエジプト人に付けてもらったが」
承太郎は後部座席を振り返った。
「なんだ、仗助、お前、まだなのか」
「いやぁ、一回つけよーとは思ったんスけど」
仗助は頭をかきながら、チラリと上条を見た。
上条も肩をすくめた。
「いいのが出なかったんだよな」
「つーかどうしても必要なもんスかね」
承太郎はゆったりと座席に座りなおした。
「そうだな……いつまでも名無しの権兵衛じゃあ不便だし、何より自分の能力に愛着が持てる。つけてやるに越したことはないと思うぜ」
「いっそ今決めちゃいなさいよ」
美琴がどうでもよさそうに口をはさんだ。
「どうせアンタみたいなタイプって、後回し後回しして結局何もしないんだから」
「にゃにお~? このアマァ」
「何よ、このダサリーゼ」
「まあまあまあまあまあまあまあァ!!」
上条は慌てて間に入った。
忠告したばかりだというのに、どうも美琴のリーゼントに対する発言は脊髄反射的なものらしい。
『 しまったァァ~~ヘタこいたァァァ~~ 』 という顔で口を押さえている。
上条はため息をつきたい気分になった。
「ま、いいじゃねえか。なっ! 気長に考えてけばいいじゃねーか。ずっと思いつかなかったもんが今すぐポンッて出てくるわけねーんだし。なあ仗助?」
仗助は、まるで己の侘しい銀行口座残高をどう使うか考えあぐねているように真剣かつ難しい顔をして、ウムゥとうなった。
視線が上条に、御坂三姉妹に、そして承太郎に移る。
途端、仗助は名案、という風に手の平を拳で打った。
「そうだ! 承太郎さんが付けてくださいよ」
「……何?」
785: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:29:46.90:xqdq3IDc0 (15/22)
意外だったのか、承太郎はわずかに目を見開いて、驚いたような顔をした。
「おねげーしますよ~~! 承太郎さんはこういうのセンスありますでしょおー」
上条にもそれはいいアイデアのように思えた。
「そうだな。『 スタープラチナ 』 だって、空条さん自身が付けたわけじゃねーんだし」
「それでいいんじゃない? アンタやこいつよりかはしっくりしたものくれるでしょ」
「おおっ、ミサカたちはもしかして今、結構重要な場面に立ち会っているのでは。
『 スタープラチナ 』 に負けないくらいかっこよくてクールなやつを希望します。とミサカは興奮気味にまくしたてます」
「文句は言わねっスから! どうぞひとつ!」
仗助が顔の前で両手を合わせる。
承太郎はグイッと帽子をかぶりなおした。
「あー……」
期待、もしくは好奇心に満ちた瞳が、承太郎に集まる。
「クレイジー………………とか、どうだ…………?」
「……」
「……」
「……」
「…………はい?」
「…………クレイ……?」
皆がとっさに反応できない中、優秀だったのは仗助と御坂妹だった。
意外だったのか、承太郎はわずかに目を見開いて、驚いたような顔をした。
「おねげーしますよ~~! 承太郎さんはこういうのセンスありますでしょおー」
上条にもそれはいいアイデアのように思えた。
「そうだな。『 スタープラチナ 』 だって、空条さん自身が付けたわけじゃねーんだし」
「それでいいんじゃない? アンタやこいつよりかはしっくりしたものくれるでしょ」
「おおっ、ミサカたちはもしかして今、結構重要な場面に立ち会っているのでは。
『 スタープラチナ 』 に負けないくらいかっこよくてクールなやつを希望します。とミサカは興奮気味にまくしたてます」
「文句は言わねっスから! どうぞひとつ!」
仗助が顔の前で両手を合わせる。
承太郎はグイッと帽子をかぶりなおした。
「あー……」
期待、もしくは好奇心に満ちた瞳が、承太郎に集まる。
「クレイジー………………とか、どうだ…………?」
「……」
「……」
「……」
「…………はい?」
「…………クレイ……?」
皆がとっさに反応できない中、優秀だったのは仗助と御坂妹だった。
786: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:31:07.13:xqdq3IDc0 (16/22)
「待て。本気出す」
「ああいやいやいや! いいじゃねッスかクレイジー! なあ当麻ァ!」
「お、おう! なんていうか、こう、仗助の二面性を端的に表しているというか何かそんな感じの鋭いセンスがうかがえますよ!」
帽子の陰から承太郎の瞳が覗く。
「……本当か?」
「もちろんっスよ! ……ん~~…………でもちょっとコレ、『 スタープラチナ 』 に比べると短いッつーか……」
「はい。とミサカは挙手します」
「はいはいなんですか御坂妹さん!」
上条が振れば、御坂妹も教師に指された小学生のようにはきはきと発言した。
「『 スタープラチナ 』 に倣い、鉱物を名前に組み込んでみてはどうですか。とミサカは我ながらナイスアイデアと思いながら提案します」
「おおグッドアイデア! グレートアイデア!」
「まったくだぜまったくグレートだぜ!」
なぜか必死の態で男子二人が手を叩く。
「待て。本気出す」
「ああいやいやいや! いいじゃねッスかクレイジー! なあ当麻ァ!」
「お、おう! なんていうか、こう、仗助の二面性を端的に表しているというか何かそんな感じの鋭いセンスがうかがえますよ!」
帽子の陰から承太郎の瞳が覗く。
「……本当か?」
「もちろんっスよ! ……ん~~…………でもちょっとコレ、『 スタープラチナ 』 に比べると短いッつーか……」
「はい。とミサカは挙手します」
「はいはいなんですか御坂妹さん!」
上条が振れば、御坂妹も教師に指された小学生のようにはきはきと発言した。
「『 スタープラチナ 』 に倣い、鉱物を名前に組み込んでみてはどうですか。とミサカは我ながらナイスアイデアと思いながら提案します」
「おおグッドアイデア! グレートアイデア!」
「まったくだぜまったくグレートだぜ!」
なぜか必死の態で男子二人が手を叩く。
787: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:33:04.67:xqdq3IDc0 (17/22)
美琴が顎に手を当てて思案し始めた。
「鉱物ねえ……『 クレイジークリスタル 』 とか?」
「アーン? なんか今にもガシャンッて砕けちまいそうな名前だな」
「アンタねえッ! 私が考えてやってんのにッ」
「ダイヤモンド」
承太郎の声が、場の空気を打った。
「砕けない鉱物と言えば、ダイヤモンドだ」
「『 クレイジーダイヤモンド 』」
上条は思わず手を打った。
上条の記憶に残るイメージに、その名は実にしっくりとなじんだ。
オーダーメイドであつらえたスーツのようにピッタリと合わさったのである。
「だってよ」
仗助を肘でつつくと、彼はぱちぱちとまばたきして、一気に笑顔になった。
「……~~~イイッ! 激イイっす!」
「そうか」
承太郎はますます深く帽子をかぶった。
わずかに肩が落ちたところを見ると、ホッとしたのかもしれない。
「え~~……オホンッ、オホンッ、それじゃあ改めまして……」
仗助は妙なポーズをつけた。
「『 クレイジー・ダイヤモンド 』 !!」
美琴が顎に手を当てて思案し始めた。
「鉱物ねえ……『 クレイジークリスタル 』 とか?」
「アーン? なんか今にもガシャンッて砕けちまいそうな名前だな」
「アンタねえッ! 私が考えてやってんのにッ」
「ダイヤモンド」
承太郎の声が、場の空気を打った。
「砕けない鉱物と言えば、ダイヤモンドだ」
「『 クレイジーダイヤモンド 』」
上条は思わず手を打った。
上条の記憶に残るイメージに、その名は実にしっくりとなじんだ。
オーダーメイドであつらえたスーツのようにピッタリと合わさったのである。
「だってよ」
仗助を肘でつつくと、彼はぱちぱちとまばたきして、一気に笑顔になった。
「……~~~イイッ! 激イイっす!」
「そうか」
承太郎はますます深く帽子をかぶった。
わずかに肩が落ちたところを見ると、ホッとしたのかもしれない。
「え~~……オホンッ、オホンッ、それじゃあ改めまして……」
仗助は妙なポーズをつけた。
「『 クレイジー・ダイヤモンド 』 !!」
788: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:35:41.79:xqdq3IDc0 (18/22)
ドギュゥゥゥンッ!
仗助から勢いよく 『 スタンド 』 が飛び出した。
「~~~~ッッ……!! き、キモチイイ~~~……っっ!!」
「こんな狭いとこで出すんじゃあねー!」
「ちょ、ちょちょ、何いきなりくっついて……んのよォ! 馬鹿!」
「うおっ!」
「ぎゃあ!」
『 スタンド 』 はホログラフのようなもの。上条にぶつかることはない。
それはわかっているが、反射行動というやつだ。
思わず体を引いた上条は当然美琴と密着。なぜか赤面した美琴によって反対側に突き飛ばされ、恍惚とした顔の仗助へと望まぬ突撃を強いられた。
ガツン、という音が車内に響いた。
仗助が後ろ頭を打った音……ではなかった。打ちかけたが 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が支えてくれた。
勢いつきすぎた上条当麻が窓に激突した音である。
「ふ、不幸だ……」
ドギュゥゥゥンッ!
仗助から勢いよく 『 スタンド 』 が飛び出した。
「~~~~ッッ……!! き、キモチイイ~~~……っっ!!」
「こんな狭いとこで出すんじゃあねー!」
「ちょ、ちょちょ、何いきなりくっついて……んのよォ! 馬鹿!」
「うおっ!」
「ぎゃあ!」
『 スタンド 』 はホログラフのようなもの。上条にぶつかることはない。
それはわかっているが、反射行動というやつだ。
思わず体を引いた上条は当然美琴と密着。なぜか赤面した美琴によって反対側に突き飛ばされ、恍惚とした顔の仗助へと望まぬ突撃を強いられた。
ガツン、という音が車内に響いた。
仗助が後ろ頭を打った音……ではなかった。打ちかけたが 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が支えてくれた。
勢いつきすぎた上条当麻が窓に激突した音である。
「ふ、不幸だ……」
789: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:37:58.77:xqdq3IDc0 (19/22)
「おいおいィ~~大丈夫かよ当麻ァ?」
「あ、あああんたが悪いんだからね! いきなりこんなッ……!」
「やれやれだぜ。とミサカは嘆息します」
「……上条くん」
「はい?」
「さっきから目で追っている 『 かもしれない 』 と感じていたが……今のではっきりしたな。
君も 『 スタンド使い 』 なのか?」
気づけば承太郎はこちらをガン見していた。
一気に剣呑さを帯びた瞳に、しまった先に言っておけばよかったと上条は後悔した。この目は嫌いだ。というより怖い。
黙っていたら尋問が拷問に変わりそうだったので上条はあわてて、
「ああいや! 俺はただ見えるってだけでして!」
思わずホールドアップしてしまう。
「そうそう、当麻だけは例外みたいなんスよね」
ナイス助け舟仗助。
上条は一気にたたみかける。
「詳しいことはわからないですけど、俺の 『 右手 』 がそうさせるのかと」
「ふむ」
と承太郎がうなった。
これは説明を求められているのだろうか。
「おいおいィ~~大丈夫かよ当麻ァ?」
「あ、あああんたが悪いんだからね! いきなりこんなッ……!」
「やれやれだぜ。とミサカは嘆息します」
「……上条くん」
「はい?」
「さっきから目で追っている 『 かもしれない 』 と感じていたが……今のではっきりしたな。
君も 『 スタンド使い 』 なのか?」
気づけば承太郎はこちらをガン見していた。
一気に剣呑さを帯びた瞳に、しまった先に言っておけばよかったと上条は後悔した。この目は嫌いだ。というより怖い。
黙っていたら尋問が拷問に変わりそうだったので上条はあわてて、
「ああいや! 俺はただ見えるってだけでして!」
思わずホールドアップしてしまう。
「そうそう、当麻だけは例外みたいなんスよね」
ナイス助け舟仗助。
上条は一気にたたみかける。
「詳しいことはわからないですけど、俺の 『 右手 』 がそうさせるのかと」
「ふむ」
と承太郎がうなった。
これは説明を求められているのだろうか。
790: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:40:03.07:xqdq3IDc0 (20/22)
「俺の 『 右手 』 は異能を打ち消す力がありまして。電撃とか、炎とか」
「同じノリで 『 スタンド 』 ヴィジョンも消せますぜ。ホラ」
言うなり 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が上条の 『 右手 』 に触れた。
ヴィジョンが仗助の体に重なり、かすれるように消える。
「……あーそういうことです、はい」
上条はぎくりと体をこわばらせた。
説明が終わるや否や、『 スタープラチナ 』 が急接近してきたからである。
上条の目の前で拳を固める。よく見れば鋲の打たれたグローブをはめていた。
そして、『 右手 』 をこつんと叩く。
途端 『 スタープラチナ 』 はビデオの逆再生のように承太郎の体へと戻って行った。
「……なるほど。世の中には、まだわけのわからねえことがあるみてぇだな……」
エンジンのかかる音が響いた。
「疑ってすまなかった」
「ああ、いえ」
「うぅ~~ん……」
稚い声が車内に響く。
打ち止めが美琴の膝の上で寝返りを打ったのだ。
美琴はそっと髪を梳いて、瞬間ぎくりと手を引っ込めた。
「やだっ……この子……」
狼狽して額に手を置く。
「『 熱いッ 』! ひどい熱だわ、どうして今まで気づかなかったのかしら、すごい高熱よ、この子!」
「俺の 『 右手 』 は異能を打ち消す力がありまして。電撃とか、炎とか」
「同じノリで 『 スタンド 』 ヴィジョンも消せますぜ。ホラ」
言うなり 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が上条の 『 右手 』 に触れた。
ヴィジョンが仗助の体に重なり、かすれるように消える。
「……あーそういうことです、はい」
上条はぎくりと体をこわばらせた。
説明が終わるや否や、『 スタープラチナ 』 が急接近してきたからである。
上条の目の前で拳を固める。よく見れば鋲の打たれたグローブをはめていた。
そして、『 右手 』 をこつんと叩く。
途端 『 スタープラチナ 』 はビデオの逆再生のように承太郎の体へと戻って行った。
「……なるほど。世の中には、まだわけのわからねえことがあるみてぇだな……」
エンジンのかかる音が響いた。
「疑ってすまなかった」
「ああ、いえ」
「うぅ~~ん……」
稚い声が車内に響く。
打ち止めが美琴の膝の上で寝返りを打ったのだ。
美琴はそっと髪を梳いて、瞬間ぎくりと手を引っ込めた。
「やだっ……この子……」
狼狽して額に手を置く。
「『 熱いッ 』! ひどい熱だわ、どうして今まで気づかなかったのかしら、すごい高熱よ、この子!」
791: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:40:36.67:xqdq3IDc0 (21/22)
→TO BE CONTINUED....
→TO BE CONTINUED....
792: ◆dUQ5Sqf28g:2012/05/27(日) 21:41:07.75:xqdq3IDc0 (22/22)
物語が動かない
次回からバトルに突入だと思います
物語が動かない
次回からバトルに突入だと思います
793:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/27(日) 21:41:50.94:EK7UQHqt0 (1/1)
ジョースター家は乗り物と相性が悪いからな。ジョナサンは客船と共に沈んだし、ジョセフは四回飛行機が落ちたし、
承太郎も後半二回の飛行機落下、貨物船沈没したから。
ジョースター家は乗り物と相性が悪いからな。ジョナサンは客船と共に沈んだし、ジョセフは四回飛行機が落ちたし、
承太郎も後半二回の飛行機落下、貨物船沈没したから。
794:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/05/27(日) 21:42:59.40:m6h1ho7mo (1/1)
乙
乙
795:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/28(月) 00:10:17.49:emLbUMXDO (1/1)
ちょっと、このジョースター家がちょくちょく可愛い過ぎるんだがどうしたらいい
自然にジョジョリオンの絵柄で再生されてしまう
ちょっと、このジョースター家がちょくちょく可愛い過ぎるんだがどうしたらいい
自然にジョジョリオンの絵柄で再生されてしまう
796:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/05/28(月) 01:37:23.20:ySbYwoZJ0 (1/1)
承太郎がすげーどっしりとした雰囲気のままやんちゃするのがすげー好きだ
もっとやりたまえ
承太郎がすげーどっしりとした雰囲気のままやんちゃするのがすげー好きだ
もっとやりたまえ
797:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/28(月) 02:53:20.20:MPDR03SVo (1/1)
おつ
おつ
798:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越):2012/05/28(月) 04:49:09.50:RqvqY3LAO (1/1)
本当はダイヤモンドってのは傷は付きにくいが砕けやすいんだよなwwww
本当はダイヤモンドってのは傷は付きにくいが砕けやすいんだよなwwww
799:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/28(月) 05:16:50.76:d2te+Fut0 (1/1)
>>798
ドヤ顔、いただきましたー
>>798
ドヤ顔、いただきましたー
800:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県):2012/05/28(月) 08:32:54.70:6XySZzfko (1/1)
>>798
そんなこと今時小学生でも知ってるっつーの
本当は砕けやすいってのが逆に良いんだろ
>>798
そんなこと今時小学生でも知ってるっつーの
本当は砕けやすいってのが逆に良いんだろ
801:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/28(月) 17:08:28.13:jDL5fTGDO (1/1)
(言わなくてよかった・・・)
(言わなくてよかった・・・)
802:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/05/28(月) 18:15:35.81:3Rq0RbGYo (1/1)
き…きっと>>798さんは嫌な予感がしていたんだ…そ…それで俺達の代わりに…
き…きっと>>798さんは嫌な予感がしていたんだ…そ…それで俺達の代わりに…
803:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/28(月) 19:33:54.55:TvjTLBJSO (1/1)
もうやめて!!
>>802さんが砕けちゃう!!
もうやめて!!
>>802さんが砕けちゃう!!
804:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空):2012/05/28(月) 19:45:42.34:UFBDCCU/o (1/1)
それを踏まえて考えると最終戦のサブタイ「クレイジー・Dは砕けない」が凄く熱くなるよな
ダイヤモンドは砕けやすいけどクレイジー・ダイヤモンドは砕けない
それを踏まえて考えると最終戦のサブタイ「クレイジー・Dは砕けない」が凄く熱くなるよな
ダイヤモンドは砕けやすいけどクレイジー・ダイヤモンドは砕けない
805:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/28(月) 19:46:20.17:sLmj7Mx8o (1/1)
>>802
ヤムチャじゃねえか
>>802
ヤムチャじゃねえか
806:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/05/28(月) 23:17:31.89:ao0gQMlE0 (1/1)
「ミサカは……おえええええぇぇぇっっ!!」
画太郎を想像して爆笑wwwwww
「ミサカは……おえええええぇぇぇっっ!!」
画太郎を想像して爆笑wwwwww
807:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2012/05/29(火) 00:21:28.94:7ht3KpDyo (1/1)
おもしろいな
おもしろいな
808:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/05/29(火) 01:08:22.49:W6vM4N8Jo (1/1)
承太郎が大人の対応してると思ったらそういえばもうとっくに大人だった
承太郎が大人の対応してると思ったらそういえばもうとっくに大人だった
809:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/29(火) 10:02:52.93:TgmGgj/Mo (1/1)
時は止められないのか
時は止められないのか
810:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/30(水) 00:23:34.69:6nNE39/K0 (1/1)
DIOと戦ってないって事は止められないだろうな
今からDIO対承りが楽しみだな
DIOと戦ってないって事は止められないだろうな
今からDIO対承りが楽しみだな
811:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越):2012/05/31(木) 07:00:51.28:c5O2hgXAO (1/1)
DIOが10年遅れると
3部イギーとペットショップと婆が危ない
4部虹村父の芽が暴走しないもしくは芽付いてない
多数のスタンド使いが生まれない
5部ジョルノが生まれてないからブチャが組織裏切らない
6部ジョリーンが刑務所行きにならないかも
DIOが10年遅れると
3部イギーとペットショップと婆が危ない
4部虹村父の芽が暴走しないもしくは芽付いてない
多数のスタンド使いが生まれない
5部ジョルノが生まれてないからブチャが組織裏切らない
6部ジョリーンが刑務所行きにならないかも
812:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2012/05/31(木) 22:55:11.06:ClkglTnt0 (1/1)
>>800なんで上から?
>>800なんで上から?
813:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/31(木) 23:00:04.21:utJfEowno (1/1)
>>812なんで今更?
>>812なんで今更?
814:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/05/31(木) 23:00:32.23:pPcxkJZ/o (1/1)
クレイジーダイヤモンドは砕けない
っていうタイトルの美しさがある。他の鉱物だったらコレジャナイ感がある
実際は砕け安くとも風聞は砕けないって伝わってるんだからそれでいいんだ問題ない
クレイジーダイヤモンドは砕けない
っていうタイトルの美しさがある。他の鉱物だったらコレジャナイ感がある
実際は砕け安くとも風聞は砕けないって伝わってるんだからそれでいいんだ問題ない
815:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/05/31(木) 23:02:01.23:nFIWzlxno (1/1)
/)
///)
/,.=゙''"/
/ i f ,.r='"-‐'つ____ こまけぇこたぁいいんだよ!!
/ / _,.-‐'~/⌒ ⌒\
/ ,i ,二ニ⊃( >). (<)\
/ ノ il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
,イ「ト、 ,!,!| |r┬-| |
/ iトヾヽ_/ィ"\ `ー'´ /
/)
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/ i f ,.r='"-‐'つ____ こまけぇこたぁいいんだよ!!
/ / _,.-‐'~/⌒ ⌒\
/ ,i ,二ニ⊃( >). (<)\
/ ノ il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
,イ「ト、 ,!,!| |r┬-| |
/ iトヾヽ_/ィ"\ `ー'´ /
816:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県):2012/06/03(日) 19:32:20.55:pKNOqvJPo (1/1)
マジレスすると「~は」っていうのは限定的な意味をつけることができるわけだ
だからクレイジーダイヤモンドは砕けないっていうのは
ダイヤモンドが砕けてもクレイジーダイヤモンドだけは砕けないよっていう意味になるんだよ
マジレスすると「~は」っていうのは限定的な意味をつけることができるわけだ
だからクレイジーダイヤモンドは砕けないっていうのは
ダイヤモンドが砕けてもクレイジーダイヤモンドだけは砕けないよっていう意味になるんだよ
817:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/03(日) 19:44:58.17:gEZ+nA1oo (1/1)
天地を砕く剛拳も俺の心を砕くことは出来ぬッ!ってーやつだな
だからどーだこーだ言うわけじゃないけど
天地を砕く剛拳も俺の心を砕くことは出来ぬッ!ってーやつだな
だからどーだこーだ言うわけじゃないけど
818:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/03(日) 19:47:39.29:E1nWIkLIO (1/1)
いつまでキリッ話が続くのさー。更新来てるのかと毎度思うんだよ。
いつまでキリッ話が続くのさー。更新来てるのかと毎度思うんだよ。
819:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/06/03(日) 19:54:12.78:uEtm06sAo (1/1)
sageてるんだから許してやれよ
専ブラなのはわかってるから
sageてるんだから許してやれよ
専ブラなのはわかってるから
820:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2012/06/13(水) 17:55:47.20:I4JrnBRw0 (1/1)
いつまでも待ってる
いつまでも待ってる
821:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/13(水) 18:02:48.02:u4siA78qo (1/1)
ageんなボケ
チラ裏にでも書いてろ
ageんなボケ
チラ裏にでも書いてろ
822:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/13(水) 19:23:11.74:T0ydWIoXo (1/1)
チラ裏
チラ裏
823:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/16(土) 12:12:27.12:G70LKmyGo (1/1)
禁書は主要キャラとサテンサン!のAAくらいしか知らないけど普通に読めるな
かなり作品が好きだってのが伝わってきて面白い
禁書は主要キャラとサテンサン!のAAくらいしか知らないけど普通に読めるな
かなり作品が好きだってのが伝わってきて面白い
824:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/17(日) 08:40:59.62:b1SDkjRKo (1/1)
うん、乙
うん、乙
825:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/06/27(水) 19:48:15.03:yR6u+1d/0 (1/1)
>>738
カミジョー属性は一部男にも有効
あとは…わかるな?
>>738
カミジョー属性は一部男にも有効
あとは…わかるな?
826: ◆dUQ5Sqf28g:2012/06/29(金) 02:13:12.64:ellN08x90 (1/1)
生存報告
ちょっとかかるかもしれません
生存報告
ちょっとかかるかもしれません
827:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/06/29(金) 02:19:42.07:NhZvJUI8o (1/1)
了解、気長に待ってる
了解、気長に待ってる
828:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越):2012/07/03(火) 04:27:47.09:46M6UvIAO (1/1)
乙
生存報告あるだけいいか
乙
生存報告あるだけいいか
829:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/07/05(木) 15:35:56.76:2OwRuMsTo (1/1)
アニメ化&ゲーム化きたで
アニメ化&ゲーム化きたで
830:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/07/05(木) 15:55:35.94:K5R87yjxo (1/1)
ジョジョってシーンで考えると凄い短い間にたくさん台詞詰め込んであるから、アニメ映えしそうになくて心配
ジョジョってシーンで考えると凄い短い間にたくさん台詞詰め込んであるから、アニメ映えしそうになくて心配
831:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県):2012/07/05(木) 16:04:48.07:ACuUCh9Go (1/1)
でも一部だろ…?
でも一部だろ…?
832:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/05(木) 18:52:40.66:Z3T26s58o (1/1)
>>831
何か問題でも?
>>831
何か問題でも?
833:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/07/05(木) 22:02:39.62:+PjAZfpwo (1/1)
アニメ化・ゲーム化自体は問題ない、やれ
だがクソ化するのは許可しないィィィーーー!
アニメ化・ゲーム化自体は問題ない、やれ
だがクソ化するのは許可しないィィィーーー!
834:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/07/05(木) 22:12:02.44:1EhU+tWOo (1/1)
一部は映画のトラウマが
一部は映画のトラウマが
835:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2012/07/06(金) 03:28:58.48:sxzxipP70 (1/1)
ゲームはオールスターらしいからな
これは仗助主演くるで
ゲームはオールスターらしいからな
これは仗助主演くるで
836:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2012/07/06(金) 12:53:29.14:Nm38LLxRo (1/1)
ゲーム予約するか……
ゲーム予約するか……
837:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/06(金) 22:30:21.88:ub+jTWUF0 (1/1)
ワムゥ、イケメンや!
ワムゥ、イケメンや!
838:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/10(火) 23:08:28.97:IG016vj+0 (1/1)
さすがに遅いな・・・
あれかスタンド攻撃か
さすがに遅いな・・・
あれかスタンド攻撃か
839:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越):2012/07/11(水) 05:58:05.73:KlmEaD1AO (1/1)
アニメ&ゲーム化は良いのだが声がどうなるかだな
頼むから最近の若手とかアイドルなんて使わないでほしい
アニメ&ゲーム化は良いのだが声がどうなるかだな
頼むから最近の若手とかアイドルなんて使わないでほしい
840:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/18(水) 08:55:23.25:pT9nqf/IO (1/1)
L
「」
L
「」
841:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/27(金) 22:19:33.54:6TrqNWui0 (1/1)
花京院くるか!?
花京院くるか!?
842:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/27(金) 22:44:19.45:uy4Q5bXIO (1/3)
>>841
くるか!?とかいう前にsageろ
>>841
くるか!?とかいう前にsageろ
843:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/27(金) 22:51:55.59:srq2BBm6o (1/1)
sageろ(キリッ
sageろ(キリッ
844:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/07/27(金) 22:53:05.44:AA5jzAnWo (1/1)
夏か
夏か
845:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/27(金) 22:54:40.92:uy4Q5bXIO (2/3)
>>843
お前もな
>>843
お前もな
846:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県):2012/07/27(金) 23:19:56.16:2zemOVXqo (1/1)
俺の期待がぶち殺された
俺の期待がぶち殺された
847:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/07/27(金) 23:23:55.58:fo6PzvkXo (1/1)
>>846
俺もだ兄弟
>>846
俺もだ兄弟
848:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/27(金) 23:27:21.59:uy4Q5bXIO (3/3)
>>846
>>847
すみませんageてる夏の風物詩がいたものでつい
>>846
>>847
すみませんageてる夏の風物詩がいたものでつい
849:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/28(土) 00:41:58.19:uUwvLO0No (1/1)
専ブラで新着レス数みて判断すりゃ良いじゃん
なんで上げ下げにこだわる訳?
専ブラで新着レス数みて判断すりゃ良いじゃん
なんで上げ下げにこだわる訳?
850:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/07/28(土) 00:43:51.09:Ti5xME9ao (1/1)
私専ブラだけど使ってない人も多いと思うの
私専ブラだけど使ってない人も多いと思うの
851:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/28(土) 00:49:08.47:XvcwFEWVo (1/1)
ていうか>>1でもないのに自治する必要ないと思うが
面倒なやつだな
ていうか>>1でもないのに自治する必要ないと思うが
面倒なやつだな
852:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2012/07/28(土) 11:18:46.22:Um3UvXSVo (1/1)
まあ自治云々おいといてsageもしらんアホがいると叩きたくなる気持ちは分かる
まあ自治云々おいといてsageもしらんアホがいると叩きたくなる気持ちは分かる
853:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/07/28(土) 23:33:51.41:1RnhwvPAO (1/1)
叩きたくなる?もしかして、オラオラですか?
叩きたくなる?もしかして、オラオラですか?
854:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/07/28(土) 23:58:04.12:abitDZQTo (1/1)
YES! YES! YES! "OH MY GOD"
YES! YES! YES! "OH MY GOD"
855:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/29(日) 00:00:08.82:LyKtrCU2o (1/1)
くそう
くそう
856:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/29(日) 00:13:09.94:BN6mc5L90 (1/1)
>>852-854
お前等のやりとりで和んだ
>>852-854
お前等のやりとりで和んだ
857:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/29(日) 22:10:01.47:mJiWHLYDO (1/1)
追いついた
面白すぎんだろなんだこれ
もう明日に迫ったドイツ語の試験とかどーでもいいや!
追いついた
面白すぎんだろなんだこれ
もう明日に迫ったドイツ語の試験とかどーでもいいや!
858:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/29(日) 22:12:38.45:8Zt/4qtIO (1/2)
>>857
それは目を背けちゃいかんだろ
>>857
それは目を背けちゃいかんだろ
859: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/29(日) 22:48:28.36:XyYM5gid0 (1/1)
もうちょっとしたら投下する
もうちょっとしたら投下する
860:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/29(日) 22:49:19.84:8Zt/4qtIO (2/2)
ktkr
ktkr
861:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/29(日) 22:53:38.51:cACG7bXDO (1/1)
そして時は動き出す・・・か
そして時は動き出す・・・か
862:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/07/29(日) 22:53:40.76:prZoejwBo (1/1)
待ってたぜ
待ってたぜ
863:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2012/07/29(日) 23:00:53.31:FQNJKYd5o (1/1)
よっしゃずっと待ってた
よっしゃずっと待ってた
864:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/07/30(月) 00:09:15.58:PWku/XmVo (1/1)
>>1!もうちょっとって今さッ!
>>1!もうちょっとって今さッ!
865: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 00:33:44.46:JzOGj+Cg0 (1/35)
第二十二話「御坂美琴は×をする②」
第二十二話「御坂美琴は×をする②」
866: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 00:37:06.20:JzOGj+Cg0 (2/35)
建物の中はいやに薄暗かった。
所狭しと並んだ機械類も、床を這うむき出しのコードも、うちっぱなしのコンクリートの壁も、どれもこれも灰色ばかりである。
殺風景な部屋で仄青く光るカプセルの中、少女は一度息を吸った。
すう。
吐いた。
はあ。
それを大きく、数回繰り返していけば呼吸は徐々に安定したものになっていく。
真っ赤な頬も元の薄ピンクに戻っていった。
「とりあえず……これで心配はないわ」
白衣の女はやっと人心地ついたと言いたげにため息をついた。
「それにしても驚いたわね。あなたがこの子を連れて帰ってくるなんて……まあ、妙な人間もついて来てしまったみたいだけど」
女はチラリとドアを見た。部外者たちは今も、ドアの向こうで所在なさ気に佇んでいることだろう。
次いで視線を向けられたミサカ10032号は直立不動で口を開いた。
「ID登録の済んでいない人間を研究所に連れ込んだのは悪かったです。とミサカは己の軽挙妄動を反省します。
しかし、検体調整のできる人間があなたしか思い当らなかったもので。とミサカは芳川博士に釈明します」
「いいのよ」
芳川は乾いた唇を舐めた。
あまり眠っていないのか、目の下にはうっすらと隈ができている。肩まである髪もボサボサに崩れていた。目頭を押さえながら続ける。
「一昨日から今日にかけて、色々とありすぎたから。一つでも問題が解決したのは喜ばしいわ」
「イロイロ……ですか。とミサカは首をかしげるというボディランゲージで暗に博士に説明を求めます」
「ほとんど連動して起こったことよ。詳しくは上位個体が起きたら聞きなさい」
「今ミサカが聞いてはいけないことなのですね。とミサカは理解します」
「察しがいいわね。好きよ、そういうの」
芳川は目頭を揉みながらドアを指さし、軽く上下に振った。
ミサカ10032号はノブに手をかけ、開き、ドア向こうに首を突っ込んだ。
「ハカセが入っていいと。とミサカは報告します」
「静かによ」
芳川はとっさに顔を上げて付け加えた。
はたしてその心遣いは必要だったようである。芳川が言い終わるや否やドドッと室内に人がなだれ込んできた。
「あ」
「う」
「おっ」
中高生3人は口々に何かを叫びかけたが、遅れて芳川のセリフを理解したか、静かに眠る打ち止めの姿を視界に入れたか、慌てて口を押さえた。
正確には上条当麻と東方仗助はお互いがお互いの口を押さえ合い、御坂美琴のみがセルフサービスだった。
それに気づき、なぜか美琴は恨めしげな視線を上条にやる。
建物の中はいやに薄暗かった。
所狭しと並んだ機械類も、床を這うむき出しのコードも、うちっぱなしのコンクリートの壁も、どれもこれも灰色ばかりである。
殺風景な部屋で仄青く光るカプセルの中、少女は一度息を吸った。
すう。
吐いた。
はあ。
それを大きく、数回繰り返していけば呼吸は徐々に安定したものになっていく。
真っ赤な頬も元の薄ピンクに戻っていった。
「とりあえず……これで心配はないわ」
白衣の女はやっと人心地ついたと言いたげにため息をついた。
「それにしても驚いたわね。あなたがこの子を連れて帰ってくるなんて……まあ、妙な人間もついて来てしまったみたいだけど」
女はチラリとドアを見た。部外者たちは今も、ドアの向こうで所在なさ気に佇んでいることだろう。
次いで視線を向けられたミサカ10032号は直立不動で口を開いた。
「ID登録の済んでいない人間を研究所に連れ込んだのは悪かったです。とミサカは己の軽挙妄動を反省します。
しかし、検体調整のできる人間があなたしか思い当らなかったもので。とミサカは芳川博士に釈明します」
「いいのよ」
芳川は乾いた唇を舐めた。
あまり眠っていないのか、目の下にはうっすらと隈ができている。肩まである髪もボサボサに崩れていた。目頭を押さえながら続ける。
「一昨日から今日にかけて、色々とありすぎたから。一つでも問題が解決したのは喜ばしいわ」
「イロイロ……ですか。とミサカは首をかしげるというボディランゲージで暗に博士に説明を求めます」
「ほとんど連動して起こったことよ。詳しくは上位個体が起きたら聞きなさい」
「今ミサカが聞いてはいけないことなのですね。とミサカは理解します」
「察しがいいわね。好きよ、そういうの」
芳川は目頭を揉みながらドアを指さし、軽く上下に振った。
ミサカ10032号はノブに手をかけ、開き、ドア向こうに首を突っ込んだ。
「ハカセが入っていいと。とミサカは報告します」
「静かによ」
芳川はとっさに顔を上げて付け加えた。
はたしてその心遣いは必要だったようである。芳川が言い終わるや否やドドッと室内に人がなだれ込んできた。
「あ」
「う」
「おっ」
中高生3人は口々に何かを叫びかけたが、遅れて芳川のセリフを理解したか、静かに眠る打ち止めの姿を視界に入れたか、慌てて口を押さえた。
正確には上条当麻と東方仗助はお互いがお互いの口を押さえ合い、御坂美琴のみがセルフサービスだった。
それに気づき、なぜか美琴は恨めしげな視線を上条にやる。
867:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/30(月) 00:40:09.38:SoCcbzPIO (1/2)
来たか…(ガタッ
来たか…(ガタッ
868: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 00:46:32.50:JzOGj+Cg0 (3/35)
「突然押しかけて失礼した。芳川博士」
その背後から、ドアをくぐるようにして空条承太郎が入って来る。
「とんでもないわ。むしろ彼女を送り届けてくれて感謝しています。空条博士」
「……私の事を?」
「ええ。海の事は門外漢だけど、うわさは聞いてるわ。ユニークで命知らずな海洋冒険家がいると」
「光栄だ」
皮肉でも何でもなくマジにそう思っているようで、承太郎は軽く頭を下げた。
「面白い人」
ちっとも面白くなさ気に言うと、芳川は再びドアを指さした。
「隣の部屋にどうぞ。私の研究室よ。ここには応接間なんてなくって。お茶請けはないけど、コーヒーか緑茶くらいなら出せるわ」
「お、お構いなく」
答えたのは御坂美琴で、芳川はチラリと彼女を、次いで男子二人を見やってうっすら笑みを浮かべた。
「そうそう、お茶の前に4番仮眠室に行ってあげて」
白衣を払って、廊下に出る。
「あなたたちに会いたがってる子がいるの」
「突然押しかけて失礼した。芳川博士」
その背後から、ドアをくぐるようにして空条承太郎が入って来る。
「とんでもないわ。むしろ彼女を送り届けてくれて感謝しています。空条博士」
「……私の事を?」
「ええ。海の事は門外漢だけど、うわさは聞いてるわ。ユニークで命知らずな海洋冒険家がいると」
「光栄だ」
皮肉でも何でもなくマジにそう思っているようで、承太郎は軽く頭を下げた。
「面白い人」
ちっとも面白くなさ気に言うと、芳川は再びドアを指さした。
「隣の部屋にどうぞ。私の研究室よ。ここには応接間なんてなくって。お茶請けはないけど、コーヒーか緑茶くらいなら出せるわ」
「お、お構いなく」
答えたのは御坂美琴で、芳川はチラリと彼女を、次いで男子二人を見やってうっすら笑みを浮かべた。
「そうそう、お茶の前に4番仮眠室に行ってあげて」
白衣を払って、廊下に出る。
「あなたたちに会いたがってる子がいるの」
869: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 00:49:53.99:JzOGj+Cg0 (4/35)
彼女はその部屋に一人だった。
ただその場に存在し続け、刻々と過ぎゆく時の流れを肌で感じ取る。
空中に向ける瞳は、今この場にはない何か別の空間を見つめていた。
一度、まばたきする。
それが彼女の生命活動のしるしだった。
ぴしりと背筋を伸ばしてベッドの縁に腰掛けたまま、その少女は動かない。身につけた病院着のような服も、衣擦れ一つ起こさない。
完全に静止。
息を吸って、吐いて、必要最低限の稼働だけを行う。今にも薄闇の中に輪郭が溶けていきそうだ。
延々と続くかと思われた沈黙は、唐突に破られた。
扉が開き、暗がりに小さな光が射し込む。
検体番号10031号は、入ってきた人物を見てゆっくり瞬いた。
一度口を開いたが結局何も言わず、代わりに枕を自分の方に引き寄せた。
「あの」
10031号は闖入者を上から下まで眺めて言った。
「あなた、『どっち』ですか。とミサカ10031号は問いかけます」
相手は半眼になって首を鳴らすと、ちょっとだけ目を閉じた。
そうして次に開いた時、彼からはごっそり表情が抜け落ちていた。
「――弟という設定です」
彼女はその部屋に一人だった。
ただその場に存在し続け、刻々と過ぎゆく時の流れを肌で感じ取る。
空中に向ける瞳は、今この場にはない何か別の空間を見つめていた。
一度、まばたきする。
それが彼女の生命活動のしるしだった。
ぴしりと背筋を伸ばしてベッドの縁に腰掛けたまま、その少女は動かない。身につけた病院着のような服も、衣擦れ一つ起こさない。
完全に静止。
息を吸って、吐いて、必要最低限の稼働だけを行う。今にも薄闇の中に輪郭が溶けていきそうだ。
延々と続くかと思われた沈黙は、唐突に破られた。
扉が開き、暗がりに小さな光が射し込む。
検体番号10031号は、入ってきた人物を見てゆっくり瞬いた。
一度口を開いたが結局何も言わず、代わりに枕を自分の方に引き寄せた。
「あの」
10031号は闖入者を上から下まで眺めて言った。
「あなた、『どっち』ですか。とミサカ10031号は問いかけます」
相手は半眼になって首を鳴らすと、ちょっとだけ目を閉じた。
そうして次に開いた時、彼からはごっそり表情が抜け落ちていた。
「――弟という設定です」
870: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 00:51:33.25:JzOGj+Cg0 (5/35)
10031号はまばたきした。
ぐるりと室内を見渡し、一周して再び彼を見やる。
「あの」
10031号は枕を膝に置き、それを持つ手に少しだけ力を込めた。
「どうぞ。入って、座ってください。とミサカ10031号は席を勧めます」
「――了解。では遠慮なく」
そう言って彼は敷居を跨ぎ、なぜかまっすぐ10031号の方へ歩んできて、目と鼻の先で一時停止した。
10031号は少しだけ、気圧されたように身を引く。途端、彼はくるりと背中を向けた。
そして10031号がなにがしかのリアクションを返す前に、彼女の膝にケツを乗せたのであった。
しばし沈黙。
「……あの。とミサカ10031号は遠慮がちに口を開きます」
「はい」
「そうじゃあない。とミサカ10031号は」
「何か」
彼がくるりと振り向く。
途端、その特徴的な髪型が10031号のこめかみを攻撃した。
10031号はまばたきした。
ぐるりと室内を見渡し、一周して再び彼を見やる。
「あの」
10031号は枕を膝に置き、それを持つ手に少しだけ力を込めた。
「どうぞ。入って、座ってください。とミサカ10031号は席を勧めます」
「――了解。では遠慮なく」
そう言って彼は敷居を跨ぎ、なぜかまっすぐ10031号の方へ歩んできて、目と鼻の先で一時停止した。
10031号は少しだけ、気圧されたように身を引く。途端、彼はくるりと背中を向けた。
そして10031号がなにがしかのリアクションを返す前に、彼女の膝にケツを乗せたのであった。
しばし沈黙。
「……あの。とミサカ10031号は遠慮がちに口を開きます」
「はい」
「そうじゃあない。とミサカ10031号は」
「何か」
彼がくるりと振り向く。
途端、その特徴的な髪型が10031号のこめかみを攻撃した。
871: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 00:53:49.54:JzOGj+Cg0 (6/35)
再びの一時停止の後、彼はすすと首をそらしリーゼントを天井に向けた。
さながら見下すような姿勢でもう一度問う。
「何か問題が」
「はい。もぉそれでいいです。とミサカ10031号は諦観の域に達しました」
「――警告」
「ふにゅっ」
と10031号が奇声を上げたのは、彼が無造作に彼女の右頬をつねったからである。
「頬に何かが付着しています」
「赤らめれているのれふ。とミハカ10031号はこんへふ丁寧に答へまひは」
ぐにぐにぱちんと彼の指が頬を離す。
「――誤認。失礼しました」
「いいえ。とミサカ10031号はひりひりする頬っぺたを押さえながらもあなたの暴挙を水に流してやります」
それに対し彼は何も答えなかったので、三度目の沈黙が部屋に満ちた。
10031号は一度胸を押さえると、唇を引き締めて相手の顔を見た。
彼は上半身ごと彼女を振り向いたままの体勢で固まっていたので、10031号は彼の瞳を覗き込むことができた。
彼の双眸は暗がりにきらめいているようだった。
再びの一時停止の後、彼はすすと首をそらしリーゼントを天井に向けた。
さながら見下すような姿勢でもう一度問う。
「何か問題が」
「はい。もぉそれでいいです。とミサカ10031号は諦観の域に達しました」
「――警告」
「ふにゅっ」
と10031号が奇声を上げたのは、彼が無造作に彼女の右頬をつねったからである。
「頬に何かが付着しています」
「赤らめれているのれふ。とミハカ10031号はこんへふ丁寧に答へまひは」
ぐにぐにぱちんと彼の指が頬を離す。
「――誤認。失礼しました」
「いいえ。とミサカ10031号はひりひりする頬っぺたを押さえながらもあなたの暴挙を水に流してやります」
それに対し彼は何も答えなかったので、三度目の沈黙が部屋に満ちた。
10031号は一度胸を押さえると、唇を引き締めて相手の顔を見た。
彼は上半身ごと彼女を振り向いたままの体勢で固まっていたので、10031号は彼の瞳を覗き込むことができた。
彼の双眸は暗がりにきらめいているようだった。
872: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 00:57:05.76:JzOGj+Cg0 (7/35)
「……ミサカのシリアルナンバーは10031号です。あなたとは一度公園で会いました。
少しだけ会話もしたのですが、覚えていますか。とミサカ10031号は尋ねます」
「――はい。あれは興味深い経験でした」
「それはよかった。とミサカ10031号はホッとします」
10031号はやや相手との距離を詰めた。
「どうぞ、ミサカの事はミサカ10031号と呼んでください。『ミサカ』は省略しても可です。とミサカ10031号は自己紹介を終えました」
「――了解」
「あなたは」
「――はい」
「何と呼べばいいでしょう。とミサカ10031号は問いかけます」
すっと、考え込むように彼の瞳があさってを向いた。
「――……私の事は『自動書記<ヨハネのペン>』、もしくは『副書版禁書目録<アナザーワンインデックス>』」
妙な間が空いた。
自動書記はキリリと口を開いた。
「縮めて『ペンデックスちゃん』とお呼びください」
「……ミサカのシリアルナンバーは10031号です。あなたとは一度公園で会いました。
少しだけ会話もしたのですが、覚えていますか。とミサカ10031号は尋ねます」
「――はい。あれは興味深い経験でした」
「それはよかった。とミサカ10031号はホッとします」
10031号はやや相手との距離を詰めた。
「どうぞ、ミサカの事はミサカ10031号と呼んでください。『ミサカ』は省略しても可です。とミサカ10031号は自己紹介を終えました」
「――了解」
「あなたは」
「――はい」
「何と呼べばいいでしょう。とミサカ10031号は問いかけます」
すっと、考え込むように彼の瞳があさってを向いた。
「――……私の事は『自動書記<ヨハネのペン>』、もしくは『副書版禁書目録<アナザーワンインデックス>』」
妙な間が空いた。
自動書記はキリリと口を開いた。
「縮めて『ペンデックスちゃん』とお呼びください」
873: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 01:00:34.72:JzOGj+Cg0 (8/35)
上条当麻は扉を背に、ぎこちなく呼吸していた。
御坂美琴も隣で同じようにしている。
「なんなのよォォ……あいつッ、なんなのよォォォ……!!」
もう一生分の 『 なんなのよ 』 を聞いた気がする。
「なんであの子とあんな、いつの間に、いやそれより、『 弟 』ッ!」
「落ち着け、日本語になってない」
「誤魔化すなボゲッ!」
およそお嬢様とは思えぬ罵倒と共に上条の胸ぐらを掴む。
「あれ何? 演技? 中二病?」
「いや、なんつーか」
「多重人格障害ってやつ?」
「いや、それも違う」
「じゃあ何なのよォォーー!!」
厄介なことをしてくれたものだ。と上条は恨めしい気持ちになった。
この場に空条氏がいなかったのがせめてもの救いか。いや、やっぱりいたほうがよかった。
あの人の目があったなら仗助もホイホイと主導権を渡しはしなかっただろうに。
「詳しくは言えねーが、そう、『 弟 』 くんは、限りなく精神的な存在なのですよ」
「はああ~~~?」
我ながらうまい事言ったと思ったが、美琴にはさっぱり通じなかったらしい。
「あぁー後天的にできた人格というか心の居候というか……あーもうあれだ。あいつ憑りつかれてんだよ」
「はッ、馬ッ鹿じゃあないの。この科学の町でんなオカルティックな事が……ないわよね?」
ちょっぴり苦手分野らしい。美琴は不安半分の瞳で上条を見た。
しかし 『 憑かれている 』 という表現は存外上条の中でしっくりきた。
上条当麻の頭の中で、『 自動書記 』 はいまだにインデックスの姿をしている。
いつか見た、瞳に五芒星を宿した 『 怖い版インデックス 』 のままイメージが固まってしまっているのだ。
その 『 怖いインデックス 』 の霊が仗助に寄生していると考えた方が、小さな脳ミソを自称する上条としては格段にわかりやすかった。
仗助本人は喋る 『 スタンド 』、インデックスは何やらもっと哲学的なものと考えているらしいが。
「ちょ、ちょっと黙ってんじゃあないわよ! ないわよね、ないのよねェェーー!?」
ガクガクと揺さぶられながらも、上条は面白いので沈痛な顔で沈黙を守った。
上条当麻は扉を背に、ぎこちなく呼吸していた。
御坂美琴も隣で同じようにしている。
「なんなのよォォ……あいつッ、なんなのよォォォ……!!」
もう一生分の 『 なんなのよ 』 を聞いた気がする。
「なんであの子とあんな、いつの間に、いやそれより、『 弟 』ッ!」
「落ち着け、日本語になってない」
「誤魔化すなボゲッ!」
およそお嬢様とは思えぬ罵倒と共に上条の胸ぐらを掴む。
「あれ何? 演技? 中二病?」
「いや、なんつーか」
「多重人格障害ってやつ?」
「いや、それも違う」
「じゃあ何なのよォォーー!!」
厄介なことをしてくれたものだ。と上条は恨めしい気持ちになった。
この場に空条氏がいなかったのがせめてもの救いか。いや、やっぱりいたほうがよかった。
あの人の目があったなら仗助もホイホイと主導権を渡しはしなかっただろうに。
「詳しくは言えねーが、そう、『 弟 』 くんは、限りなく精神的な存在なのですよ」
「はああ~~~?」
我ながらうまい事言ったと思ったが、美琴にはさっぱり通じなかったらしい。
「あぁー後天的にできた人格というか心の居候というか……あーもうあれだ。あいつ憑りつかれてんだよ」
「はッ、馬ッ鹿じゃあないの。この科学の町でんなオカルティックな事が……ないわよね?」
ちょっぴり苦手分野らしい。美琴は不安半分の瞳で上条を見た。
しかし 『 憑かれている 』 という表現は存外上条の中でしっくりきた。
上条当麻の頭の中で、『 自動書記 』 はいまだにインデックスの姿をしている。
いつか見た、瞳に五芒星を宿した 『 怖い版インデックス 』 のままイメージが固まってしまっているのだ。
その 『 怖いインデックス 』 の霊が仗助に寄生していると考えた方が、小さな脳ミソを自称する上条としては格段にわかりやすかった。
仗助本人は喋る 『 スタンド 』、インデックスは何やらもっと哲学的なものと考えているらしいが。
「ちょ、ちょっと黙ってんじゃあないわよ! ないわよね、ないのよねェェーー!?」
ガクガクと揺さぶられながらも、上条は面白いので沈痛な顔で沈黙を守った。
874: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 01:08:37.84:JzOGj+Cg0 (9/35)
そこで美琴の脳内でワンエピソードできてしまったらしい。
『 兄弟って怖い 』 とごち、更に取り乱した。
「じゃあつまり、『 弟 』 はゆゆゆ……お化けってこと!? まずいじゃない、どうすんのよ! あの子確実に、その、アレじゃないのォォーー!!」
「あ、そうだ、ゲぇ!」
そこで上条も事の重大さに気が付いた。
もしも10031号が自動書記に世間一般にありふれた、ある感情を期待していたら、そしてそれが仗助の外見も含めての事だったなら、事態は相当ややこしくなる。
――と、いうか。
上条は思考のしこりに気が付いた。
自動書記、あいつは男なのか? 女なのか? そもそも性別があるのか?
もとはインデックスにかけられた魔術なのだから、女寄りな気もするが……。
瞬間、上条の頭の中で自動書記の姿が仗助から 『 怖い版インデックス 』 に成り変わった。
ふむつまり、自動書記がインデックスを基本として作られているならば、精神的百合空間が発生するわけだ。
「何チョット嬉しそうな顔してんのよ」
「いやほれ、うつくしいものを見ると自然と笑顔になるものじゃあないですか」
「あ?」
美琴は片目を眇めて口をあけた。
まるでスケバンのような反応だが、元の顔のかわいらしさからか、がんばって悪ぶってみた幼稚園児程度に毒気は薄まっている。
かくも顔面とは有益なものよ。
そこで美琴の脳内でワンエピソードできてしまったらしい。
『 兄弟って怖い 』 とごち、更に取り乱した。
「じゃあつまり、『 弟 』 はゆゆゆ……お化けってこと!? まずいじゃない、どうすんのよ! あの子確実に、その、アレじゃないのォォーー!!」
「あ、そうだ、ゲぇ!」
そこで上条も事の重大さに気が付いた。
もしも10031号が自動書記に世間一般にありふれた、ある感情を期待していたら、そしてそれが仗助の外見も含めての事だったなら、事態は相当ややこしくなる。
――と、いうか。
上条は思考のしこりに気が付いた。
自動書記、あいつは男なのか? 女なのか? そもそも性別があるのか?
もとはインデックスにかけられた魔術なのだから、女寄りな気もするが……。
瞬間、上条の頭の中で自動書記の姿が仗助から 『 怖い版インデックス 』 に成り変わった。
ふむつまり、自動書記がインデックスを基本として作られているならば、精神的百合空間が発生するわけだ。
「何チョット嬉しそうな顔してんのよ」
「いやほれ、うつくしいものを見ると自然と笑顔になるものじゃあないですか」
「あ?」
美琴は片目を眇めて口をあけた。
まるでスケバンのような反応だが、元の顔のかわいらしさからか、がんばって悪ぶってみた幼稚園児程度に毒気は薄まっている。
かくも顔面とは有益なものよ。
875: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 01:18:23.31:JzOGj+Cg0 (10/35)
「あんたに言っても仕方ないことかもしれないけど……」
つくづくとパーツを眺める間に、彼女の中の話題は変わってしまったようである。
美琴は腕を組んだまま上条に向き直った。
「いい。アイツがあの子を泣かせるようなことがあったら承知しないからね」
「いや、それは、どうだろうな……本人次第なわけだし」
「ふん。そう言うと思ったわ。そういう当たり障りないことを言う奴よ、あんたは」
「責任が持てないことや面倒事、ついでに痛い目に遭いそうなことは極力引き受けないタチなんで」
「……どの口が」
「え?」
美琴はふいと目をそらした。
ああ、昨日のことを言ってるのだ。と上条は思い当たった。
あの夜、橋梁で美琴と対峙したあの時、上条は 『 右手 』 を使う気はなかった。
そもそも上条当麻は彼女と戦いに行ったのではなく、止めに行ったのだから。
襲い来る電流を前に仁王立ちする自分を見て美琴もその辺は察したに違いない。だからあんな泣きそうな顔で腕を振りかぶったのだ。
結局彼女の電撃は放たれなかったわけだが、もしあの時携帯が鳴っていなければそれはもう最高に痛い目に遭っていたことだろう。
「……例外っつーのもあるんだよ」
「ふーん」
「俺が痛い思いする代わり、誰かさんの不幸がなくなるってんなら、安いもんだ」
ドグォォンッ、と轟音が響いた。
どうやら美琴が思いっきり壁に頭を打ち付けたらしい。
「あんたに言っても仕方ないことかもしれないけど……」
つくづくとパーツを眺める間に、彼女の中の話題は変わってしまったようである。
美琴は腕を組んだまま上条に向き直った。
「いい。アイツがあの子を泣かせるようなことがあったら承知しないからね」
「いや、それは、どうだろうな……本人次第なわけだし」
「ふん。そう言うと思ったわ。そういう当たり障りないことを言う奴よ、あんたは」
「責任が持てないことや面倒事、ついでに痛い目に遭いそうなことは極力引き受けないタチなんで」
「……どの口が」
「え?」
美琴はふいと目をそらした。
ああ、昨日のことを言ってるのだ。と上条は思い当たった。
あの夜、橋梁で美琴と対峙したあの時、上条は 『 右手 』 を使う気はなかった。
そもそも上条当麻は彼女と戦いに行ったのではなく、止めに行ったのだから。
襲い来る電流を前に仁王立ちする自分を見て美琴もその辺は察したに違いない。だからあんな泣きそうな顔で腕を振りかぶったのだ。
結局彼女の電撃は放たれなかったわけだが、もしあの時携帯が鳴っていなければそれはもう最高に痛い目に遭っていたことだろう。
「……例外っつーのもあるんだよ」
「ふーん」
「俺が痛い思いする代わり、誰かさんの不幸がなくなるってんなら、安いもんだ」
ドグォォンッ、と轟音が響いた。
どうやら美琴が思いっきり壁に頭を打ち付けたらしい。
876: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 01:21:37.97:JzOGj+Cg0 (11/35)
「ばかッッッ!!!」
「なぜ突然に罵倒!?」
「いいのよォ……どうせあんたはいつでもどこでも老若男女関係なくそういうこと言ってんでしょうが……」
「あーなんか仗助にも同じような事言われた気がする」
「アイツ」
美琴は気を取り直すように言葉を継ぐ。
「あんたとアイツが来てからあたしの周りは狂いっぱなしよ。特にアイツ、いったいどこから湧いて出たのよ」
「どこからって」
湧いてって。
美琴は人差し指で上条の鼻柱を押した。
「あんたみたいにモブい奴ならいつどこですれ違おうと気にも留めないでしょうけど、あんなダさ……目立ちまくる男に、今日までチラッとも気づかないなんてありえないわ。
白状しなさいよ。アイツ、最近この町に来たんでしょ」
白状も何も、隠すようなことでもないのだが。
上条は否定も肯定もせず美琴の手を払うと、軽く肩をすくめた。
「近頃のお前さんときたら、いつもそうだな」
「『 そう 』 って?」
「二言目には仗助、仗助って。そんなにあいつの事が気になるのかよ?」
と言ってから上条ははたと新たな可能性に気が付いた。
あらら。こいつ。まさか。仗助の事を――。
美琴はパッと上条を見上げた。
「なんで……そんな事聞くのよ?」
「なんでってそりゃあ……ああいや、忘れてくれ」
この憶測が合っていたとしても間違っていたとしてもビリビリされる未来しか見えず、結局上条は踏みとどまった。
「あ、そう」
嫌そうに眉をゆがめながらも、美琴の目元はほんのりと染まっていた。
こりゃあ図星をついたかもしれないと上条は思った。
いやに仗助にばかりガンガン突っかかっていくと思っていたが、そういうことだったのか。
考えてみれば納得かもしれない。こいつ、少しツンデレっぽいところがあるし。
「ばかッッッ!!!」
「なぜ突然に罵倒!?」
「いいのよォ……どうせあんたはいつでもどこでも老若男女関係なくそういうこと言ってんでしょうが……」
「あーなんか仗助にも同じような事言われた気がする」
「アイツ」
美琴は気を取り直すように言葉を継ぐ。
「あんたとアイツが来てからあたしの周りは狂いっぱなしよ。特にアイツ、いったいどこから湧いて出たのよ」
「どこからって」
湧いてって。
美琴は人差し指で上条の鼻柱を押した。
「あんたみたいにモブい奴ならいつどこですれ違おうと気にも留めないでしょうけど、あんなダさ……目立ちまくる男に、今日までチラッとも気づかないなんてありえないわ。
白状しなさいよ。アイツ、最近この町に来たんでしょ」
白状も何も、隠すようなことでもないのだが。
上条は否定も肯定もせず美琴の手を払うと、軽く肩をすくめた。
「近頃のお前さんときたら、いつもそうだな」
「『 そう 』 って?」
「二言目には仗助、仗助って。そんなにあいつの事が気になるのかよ?」
と言ってから上条ははたと新たな可能性に気が付いた。
あらら。こいつ。まさか。仗助の事を――。
美琴はパッと上条を見上げた。
「なんで……そんな事聞くのよ?」
「なんでってそりゃあ……ああいや、忘れてくれ」
この憶測が合っていたとしても間違っていたとしてもビリビリされる未来しか見えず、結局上条は踏みとどまった。
「あ、そう」
嫌そうに眉をゆがめながらも、美琴の目元はほんのりと染まっていた。
こりゃあ図星をついたかもしれないと上条は思った。
いやに仗助にばかりガンガン突っかかっていくと思っていたが、そういうことだったのか。
考えてみれば納得かもしれない。こいつ、少しツンデレっぽいところがあるし。
877: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 01:34:04.30:JzOGj+Cg0 (12/35)
上条の思考は加速する。
美琴が仗助と――。うん、いいんじゃあないのか?
ケンカップルと言えば古いが、かなりお似合いな気がする。
「あんた……気になるの?」
「え、何が」
「私が誰と話してるかとか、誰の事考えてるかとか」
「まあな?」
「そ、そうッ」
「いや正直、むちゃくちゃ気になる」
友人と 『 そうなる 』 可能性があるとなれば尚更だ。
美琴は更に赤くなると唇を引き結んで上を向き、下を向き、前を向いて結局俯いた。
「そ! そそそ、そういうんじゃあないから」
「え?」
「べっ、別にあの男の事なんてなんとも思ってないんだからねッ!」
お手本のような照れ隠しに上条は感嘆した。
素でこんなことを言うとはこの女、骨の髄までツンデレだぜ……ごくり。
御坂美琴、お前にはキング・オブ・ツンデレの栄誉を授けよう。俺の心の中だけで。
そしてできる限りのエールを送ってやらなくもない。
上条は脂下がった表情で手の平を振った。
「ま、お前がそう言うんならそうなんだろうさ。信じといてやるよ」
「あ、あっ」
うろたえどもる美琴を見ながら、上条は甘酸っぱい気持ちでいっぱいになった。
いいなあ仗助、上条さんも春が欲しいですぞ――と同級生二人が聞けば鉄拳モノの考えをめぐらせながら天井を仰ぐ。
10031号と自動書記。美琴と仗助。
実に奇妙な巡り合わせだが、上条にはこれ以上の良縁はないように思えた。
この二組はお互いをまっこと深くまで知っている。
付き合うことになればビジュアル面の問題はすぐ克服できそうだし、仗助に相手ができれば残った俺だって…………俺だって?
刹那、脳内に純白のシスターの笑顔が現れる。
そこで上条は固まった。
上条の思考は加速する。
美琴が仗助と――。うん、いいんじゃあないのか?
ケンカップルと言えば古いが、かなりお似合いな気がする。
「あんた……気になるの?」
「え、何が」
「私が誰と話してるかとか、誰の事考えてるかとか」
「まあな?」
「そ、そうッ」
「いや正直、むちゃくちゃ気になる」
友人と 『 そうなる 』 可能性があるとなれば尚更だ。
美琴は更に赤くなると唇を引き結んで上を向き、下を向き、前を向いて結局俯いた。
「そ! そそそ、そういうんじゃあないから」
「え?」
「べっ、別にあの男の事なんてなんとも思ってないんだからねッ!」
お手本のような照れ隠しに上条は感嘆した。
素でこんなことを言うとはこの女、骨の髄までツンデレだぜ……ごくり。
御坂美琴、お前にはキング・オブ・ツンデレの栄誉を授けよう。俺の心の中だけで。
そしてできる限りのエールを送ってやらなくもない。
上条は脂下がった表情で手の平を振った。
「ま、お前がそう言うんならそうなんだろうさ。信じといてやるよ」
「あ、あっ」
うろたえどもる美琴を見ながら、上条は甘酸っぱい気持ちでいっぱいになった。
いいなあ仗助、上条さんも春が欲しいですぞ――と同級生二人が聞けば鉄拳モノの考えをめぐらせながら天井を仰ぐ。
10031号と自動書記。美琴と仗助。
実に奇妙な巡り合わせだが、上条にはこれ以上の良縁はないように思えた。
この二組はお互いをまっこと深くまで知っている。
付き合うことになればビジュアル面の問題はすぐ克服できそうだし、仗助に相手ができれば残った俺だって…………俺だって?
刹那、脳内に純白のシスターの笑顔が現れる。
そこで上条は固まった。
878: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 01:36:34.88:JzOGj+Cg0 (13/35)
ちょ……っと、待て。落ち着け。
いま俺は、何を考えた?
仗助に相手ができれば……俺は。うん? 気兼ねなく? あの暴食大食いシスターと?
いやいやいやいやいやいやいや!!!
上条は一人激しく頭を振った。
いや、確かに! 仗助とインデックスが仲いいのにちょっとジェラシーを感じたりもしましたが!
二人がベタベタしているのを見て 『 そういうカンケー 』 かと疑ったこともありましたが!
そんなわけがねえ。そんな気持ちがあるわけがねえ。夏休みからこっち、寝食共にしているというのにまったく何の進展もねーんですよ?
いや、進展を望んでるわけでもないんですが!
うがああーー! ちょっと待ってくれ、俺は、まさか、インデックスを……って何この思考の急展開!
こういう思考にドギマギマギドギすんのは女子の役目じゃあねーのか!?
『 え? やだまさか私当麻くんのこと(ドキッ…! 』 みてーな感じにさァ~~!!
『 とうま 』 と、唇を尖らせる少女が浮かんで消えた。うっと息が詰まる。
笑顔を向ける彼女が浮かんで消え、床に腹ばいになってこちらを見上げる彼女が浮かんで消え、その他いろいろな彼女が消えては溢れてくる。
いや、確かに、アイツは、ちょこっと、けっこう、カワイイ……が。
上条はとうとう口元を押さえて赤面した。
「おっすお待たせ……って何やってんだおめーら?」
真っ赤になって床を見つめ続けるだけの少年少女を交互に見て、仗助は「あ~~」と形容しがたい笑みを浮かべた。
「いいなァ……俺にも春がほしーぜ……」
その囁きにも似た呟きは、誰の耳に入ることもなかったが。
ちょ……っと、待て。落ち着け。
いま俺は、何を考えた?
仗助に相手ができれば……俺は。うん? 気兼ねなく? あの暴食大食いシスターと?
いやいやいやいやいやいやいや!!!
上条は一人激しく頭を振った。
いや、確かに! 仗助とインデックスが仲いいのにちょっとジェラシーを感じたりもしましたが!
二人がベタベタしているのを見て 『 そういうカンケー 』 かと疑ったこともありましたが!
そんなわけがねえ。そんな気持ちがあるわけがねえ。夏休みからこっち、寝食共にしているというのにまったく何の進展もねーんですよ?
いや、進展を望んでるわけでもないんですが!
うがああーー! ちょっと待ってくれ、俺は、まさか、インデックスを……って何この思考の急展開!
こういう思考にドギマギマギドギすんのは女子の役目じゃあねーのか!?
『 え? やだまさか私当麻くんのこと(ドキッ…! 』 みてーな感じにさァ~~!!
『 とうま 』 と、唇を尖らせる少女が浮かんで消えた。うっと息が詰まる。
笑顔を向ける彼女が浮かんで消え、床に腹ばいになってこちらを見上げる彼女が浮かんで消え、その他いろいろな彼女が消えては溢れてくる。
いや、確かに、アイツは、ちょこっと、けっこう、カワイイ……が。
上条はとうとう口元を押さえて赤面した。
「おっすお待たせ……って何やってんだおめーら?」
真っ赤になって床を見つめ続けるだけの少年少女を交互に見て、仗助は「あ~~」と形容しがたい笑みを浮かべた。
「いいなァ……俺にも春がほしーぜ……」
その囁きにも似た呟きは、誰の耳に入ることもなかったが。
879: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 01:49:30.20:JzOGj+Cg0 (14/35)
○ ○ ○
ミサカ10032号は洗面台で渦を巻く水を凝視していた。
凝視しつつも思考はネットワークにつながっている。
つい先ほど、10031号が東方仗助の 『 弟 』 と接触した。本来ならばありえないことだ。
ミサカ10032号も研究所のセキュリティもオリジナルと男子生徒2人、そして空条承太郎の4人にしか侵入を許していない。
10032号は 『 弟 』 の存在がひた隠しにされていることを知っている。
自分の記憶と10031号の記憶を比較検討すれば何かが見えてくるはずだ。
だが10031号はそれ以上の情報の開示を拒否した。どうやら、ずいぶん本格的に 『 コミュニケーションの調査 』 とやらに取り組んでいるらしい。
ゴボボ……と排水溝がうめきを上げる。
何かがおかしい。
10032号はぐっと目を細めた。
初めての海。オリジナルとの勝負。暴走する車。ゲロ。お姉さま。東方仗助。上条当麻。
記憶の整理がうまくいかない。ネットワークに乗せるべきかも判断できない。
「…………空条、承太郎」
彼の事を思い浮かべるとますます違和感は増した。
10031号のように静かな感情ではない。もっとギラギラとした激しい感情が、自分の制御の届かない場所で暴れ狂っている。
いる、認識はあるのだが、まるで実感がない。
それどころか、10032号は自分がこんな感情を持つはずがないとさえ思っていた。
こんな、まるで、『 怒り 』 のような感情を、自分が空条承太郎に覚えるはずがない。
だが実際その感情は確かに10032号の『中』にある。おかしい。実に奇怪。
まるで意識と肉体が乖離するかのような感覚。
自分が自分でなくなってしまいそうな不安感。
「……」
10032号は顔を上げた。
壁に貼りついた鏡越しによく見知った人間の姿を捉える。
いつからか背後に立っていたらしい。
白髪に赤い目。肌は異常なほど白く、腰に刀を差している。鞘はなく、むき出しの刀身が危うい輝きを放っていた。
10032号はひゅ、と息を吸った。
彼は目を眇めたまま、人差し指で数度、柄の頭を叩くと口を開き、
「なンだ、一人でどォ~こ行くんだと思ったら、そンな人形でも食うもンは食うし出すもンは出すンだな」
「あ……」
○ ○ ○
ミサカ10032号は洗面台で渦を巻く水を凝視していた。
凝視しつつも思考はネットワークにつながっている。
つい先ほど、10031号が東方仗助の 『 弟 』 と接触した。本来ならばありえないことだ。
ミサカ10032号も研究所のセキュリティもオリジナルと男子生徒2人、そして空条承太郎の4人にしか侵入を許していない。
10032号は 『 弟 』 の存在がひた隠しにされていることを知っている。
自分の記憶と10031号の記憶を比較検討すれば何かが見えてくるはずだ。
だが10031号はそれ以上の情報の開示を拒否した。どうやら、ずいぶん本格的に 『 コミュニケーションの調査 』 とやらに取り組んでいるらしい。
ゴボボ……と排水溝がうめきを上げる。
何かがおかしい。
10032号はぐっと目を細めた。
初めての海。オリジナルとの勝負。暴走する車。ゲロ。お姉さま。東方仗助。上条当麻。
記憶の整理がうまくいかない。ネットワークに乗せるべきかも判断できない。
「…………空条、承太郎」
彼の事を思い浮かべるとますます違和感は増した。
10031号のように静かな感情ではない。もっとギラギラとした激しい感情が、自分の制御の届かない場所で暴れ狂っている。
いる、認識はあるのだが、まるで実感がない。
それどころか、10032号は自分がこんな感情を持つはずがないとさえ思っていた。
こんな、まるで、『 怒り 』 のような感情を、自分が空条承太郎に覚えるはずがない。
だが実際その感情は確かに10032号の『中』にある。おかしい。実に奇怪。
まるで意識と肉体が乖離するかのような感覚。
自分が自分でなくなってしまいそうな不安感。
「……」
10032号は顔を上げた。
壁に貼りついた鏡越しによく見知った人間の姿を捉える。
いつからか背後に立っていたらしい。
白髪に赤い目。肌は異常なほど白く、腰に刀を差している。鞘はなく、むき出しの刀身が危うい輝きを放っていた。
10032号はひゅ、と息を吸った。
彼は目を眇めたまま、人差し指で数度、柄の頭を叩くと口を開き、
「なンだ、一人でどォ~こ行くんだと思ったら、そンな人形でも食うもンは食うし出すもンは出すンだな」
「あ……」
880:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/07/30(月) 01:54:59.58:lkRIyC9p0 (1/2)
こいつら揃いも揃って………
こいつら揃いも揃って………
881: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 02:00:05.54:JzOGj+Cg0 (15/35)
「空条承太郎もあのガキどもとは別れてるみてェだな。ン? どっちを先に叩きゃあスムーズだろォなァ、おィ」
10032号は目を見開いた。喉に何かが詰まったように息苦しく、苦労してゆっくり息を吸い込んだ。
相手に殺意は感じられないが、そんなものを出さなくても相手は10032号を殺せるのかもしれなかった。
相手にとって、今のこの状況は今から踏みつぶそうとしているアリに、たわむれに話しかけているようなものなのかもしれなかった。
10032号は細心の注意を払って振り返った。果たして刀は抜かれなかった。
「どォ思う。おィ、どう思うかってオマエに言ってるンだぜェ?
オマエが消えちまったから俺はこォして会いに来てやったンじゃあねェか。うンなりすンなり返事してくれてもいいンじゃあねェンですかねェー?」
「何を、言ってるのかわかりません。とミサカは……」
「オマエじゃあねえ。オマエの 『 中 』 にいる奴に言ってンだよォ。『 本体 』 の野郎ォ、とっとと先に行っちまいやがって」
「ミサカの 『 中 』? とミサカは」
「おっと 『 オマエ 』。ネットワークにこのことを流してンな」
低くなった声に10032号はぎくりと体をこわばらせた。瞬間一方通行の手が動く。足が動く。大きく踏み込んで間合いを詰めてくる。
彼女はとっさに横っ飛びに飛びのいた。鋭い軌跡が宙を裂くや、10032号の二の腕に激痛が走った。
「ッ……!」
袖は切れていない。刃は布に切れ目一つ入れず、10032号の体だけを切り裂いた。
白い布地にじわりと赤が滲む。
『 スタンド 』。
空条承太郎の言葉が脳内に響く。
『 スタンドはスタンドでしか倒せない 』。
どくりと10032号の心臓が飛び跳ねる。頭に血が上り手足が寒くなった。
逃げなければ。
思ったなら行動は早かった。指先に電流を集め、一直線に相手に向けて放つ。一方通行は軽く首をかしげてそれを避けた。
「ふゥ~~ン、まァいい動きじゃあねェか。一応、『 覚えた 』……ァああああああッ!?」
突如、背後から襲ってきた濁流に一方通行の語尾が荒ぶった。
銀の排水管から溢れ出す水流に一方通行の体勢が崩れる。刹那、10032号は地を蹴って一方通行の脇を走り抜けた。
「チッ……オマエッ! 最初からパイプを狙って……!」
答える余裕はない。
あの水を利用して感電させる手も思いついたが、あの男の至近距離に入るのは御免こうむりたかったし、なにより相手は『 スタンド使い 』、未知の存在、それで倒せるのかすら確証がなかった。
10032号は身をかがめた体制のまま、自身のコンパスを精一杯に開いて廊下を駆け抜けた。
背後から追ってくる足音はない。
それでも心が体を急き立てる。速く、早く。
階段を駆け降りた拍子にローファーが片方脱げ落ちた。拾う気などさらさらない。
いっそもう片方も捨ててしまおうとしたその時、踊り場の角から突如人影が現れ、10032号と正面衝突した。
跳ね飛ばされ、しりもちをつき、10032号はハッと顔を上げた。
その人物はよろめきもせずその場に立っていた。
片方の腕を組み、もう片方の手を顎に当てている。
端正な顔に、生ゴミを見るような目をしていた。
「もう12時かい、シンデレラ」
10032号の意識はそこで途絶えた。
「空条承太郎もあのガキどもとは別れてるみてェだな。ン? どっちを先に叩きゃあスムーズだろォなァ、おィ」
10032号は目を見開いた。喉に何かが詰まったように息苦しく、苦労してゆっくり息を吸い込んだ。
相手に殺意は感じられないが、そんなものを出さなくても相手は10032号を殺せるのかもしれなかった。
相手にとって、今のこの状況は今から踏みつぶそうとしているアリに、たわむれに話しかけているようなものなのかもしれなかった。
10032号は細心の注意を払って振り返った。果たして刀は抜かれなかった。
「どォ思う。おィ、どう思うかってオマエに言ってるンだぜェ?
オマエが消えちまったから俺はこォして会いに来てやったンじゃあねェか。うンなりすンなり返事してくれてもいいンじゃあねェンですかねェー?」
「何を、言ってるのかわかりません。とミサカは……」
「オマエじゃあねえ。オマエの 『 中 』 にいる奴に言ってンだよォ。『 本体 』 の野郎ォ、とっとと先に行っちまいやがって」
「ミサカの 『 中 』? とミサカは」
「おっと 『 オマエ 』。ネットワークにこのことを流してンな」
低くなった声に10032号はぎくりと体をこわばらせた。瞬間一方通行の手が動く。足が動く。大きく踏み込んで間合いを詰めてくる。
彼女はとっさに横っ飛びに飛びのいた。鋭い軌跡が宙を裂くや、10032号の二の腕に激痛が走った。
「ッ……!」
袖は切れていない。刃は布に切れ目一つ入れず、10032号の体だけを切り裂いた。
白い布地にじわりと赤が滲む。
『 スタンド 』。
空条承太郎の言葉が脳内に響く。
『 スタンドはスタンドでしか倒せない 』。
どくりと10032号の心臓が飛び跳ねる。頭に血が上り手足が寒くなった。
逃げなければ。
思ったなら行動は早かった。指先に電流を集め、一直線に相手に向けて放つ。一方通行は軽く首をかしげてそれを避けた。
「ふゥ~~ン、まァいい動きじゃあねェか。一応、『 覚えた 』……ァああああああッ!?」
突如、背後から襲ってきた濁流に一方通行の語尾が荒ぶった。
銀の排水管から溢れ出す水流に一方通行の体勢が崩れる。刹那、10032号は地を蹴って一方通行の脇を走り抜けた。
「チッ……オマエッ! 最初からパイプを狙って……!」
答える余裕はない。
あの水を利用して感電させる手も思いついたが、あの男の至近距離に入るのは御免こうむりたかったし、なにより相手は『 スタンド使い 』、未知の存在、それで倒せるのかすら確証がなかった。
10032号は身をかがめた体制のまま、自身のコンパスを精一杯に開いて廊下を駆け抜けた。
背後から追ってくる足音はない。
それでも心が体を急き立てる。速く、早く。
階段を駆け降りた拍子にローファーが片方脱げ落ちた。拾う気などさらさらない。
いっそもう片方も捨ててしまおうとしたその時、踊り場の角から突如人影が現れ、10032号と正面衝突した。
跳ね飛ばされ、しりもちをつき、10032号はハッと顔を上げた。
その人物はよろめきもせずその場に立っていた。
片方の腕を組み、もう片方の手を顎に当てている。
端正な顔に、生ゴミを見るような目をしていた。
「もう12時かい、シンデレラ」
10032号の意識はそこで途絶えた。
882: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 02:22:57.95:JzOGj+Cg0 (16/35)
客を招いたはいいが、芳川桔梗はカラッポの茶筒を前に愕然とした。
「そう、下の階に……同じような研究室があるの。きっと同じものがあると思うわ」
「こちらは構わない」
「こっちは構うわ。だって私もいただくつもりだったのよ」
そう言うともう芳川はドアに手をかけた。
廊下に出ると、くるりと振り返って小首を傾げる。
「あなたも研究者なら覚えがないかしら? 『 こう 』 と決めたらその通りにしないと気が済まない。
『 これからお茶を飲んで話をする 』 って決めたら、もうそうしないと気持ちが悪くて仕方がないのよ……ああつまり、私の我儘だから、座っていても構わないわ」
「いいや」
承太郎は半開きのドアに手を伸ばし、芳川より高い位置に手をかけた。
自然と承太郎は芳川に見上げられ、芳川は承太郎に見下ろされる形になる。
「あんたを一人にするのは気がかりなんでな」
「あら嬉しい。女性の扱いを受けてると思っていいのかしら」
じっとりと承太郎の眉間にしわが寄った。
芳川は瞳だけは冷めた色のまま、くすりと笑った。
ドアの敷居をはさんで二人は対峙する。その視線が一瞬絡んでわずかに火花を散らした。
「あなたを知ってると言ったわね」
「ああ」
「本当言うと、『 邪魔者 』 として認識していたのよ。それか、『 危険人物 』 として、かしら」
「興味深いな」
「ええ、あなたにとってはカニの雄と雌の見分け方と同じくらい興味深いでしょうね」
承太郎は少しだけ目を細めた。
「カニの雄は俗に『ふんどし』と呼ばれる場所が三角形で……メスは扇状だ」
「あらそう」
芳川はわずかにこめかみを引き攣らせた。
客を招いたはいいが、芳川桔梗はカラッポの茶筒を前に愕然とした。
「そう、下の階に……同じような研究室があるの。きっと同じものがあると思うわ」
「こちらは構わない」
「こっちは構うわ。だって私もいただくつもりだったのよ」
そう言うともう芳川はドアに手をかけた。
廊下に出ると、くるりと振り返って小首を傾げる。
「あなたも研究者なら覚えがないかしら? 『 こう 』 と決めたらその通りにしないと気が済まない。
『 これからお茶を飲んで話をする 』 って決めたら、もうそうしないと気持ちが悪くて仕方がないのよ……ああつまり、私の我儘だから、座っていても構わないわ」
「いいや」
承太郎は半開きのドアに手を伸ばし、芳川より高い位置に手をかけた。
自然と承太郎は芳川に見上げられ、芳川は承太郎に見下ろされる形になる。
「あんたを一人にするのは気がかりなんでな」
「あら嬉しい。女性の扱いを受けてると思っていいのかしら」
じっとりと承太郎の眉間にしわが寄った。
芳川は瞳だけは冷めた色のまま、くすりと笑った。
ドアの敷居をはさんで二人は対峙する。その視線が一瞬絡んでわずかに火花を散らした。
「あなたを知ってると言ったわね」
「ああ」
「本当言うと、『 邪魔者 』 として認識していたのよ。それか、『 危険人物 』 として、かしら」
「興味深いな」
「ええ、あなたにとってはカニの雄と雌の見分け方と同じくらい興味深いでしょうね」
承太郎は少しだけ目を細めた。
「カニの雄は俗に『ふんどし』と呼ばれる場所が三角形で……メスは扇状だ」
「あらそう」
芳川はわずかにこめかみを引き攣らせた。
883:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/07/30(月) 02:23:40.87:2HKmvZEAO (1/3)
答える必要はないッ!
答える必要はないッ!
884: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 02:27:24.12:JzOGj+Cg0 (17/35)
「あなたが来るまで計画は順調だったわ、空条博士。
多少のいざこざはあったけれど、支障が出るまでには至らなかった。微妙なバランスがあった……あなたが来た途端、その均衡が崩れた」
承太郎は答えなかった。相づちすら打たなかった。
「天井亜雄の頭の狂った行動に、妹達<シスターズ>最終ロットの失踪。
被験者である学園都市第一位は計画の続行を拒否した上に行方をくらませて、おまけに不法侵入者が現れたって情報も入っているわ。全部、あなたの来訪と同時期の事よ」
芳川は一度、反応をうかがうように言葉を切った。
承太郎は相変わらず読めない表情で芳川を見下ろすばかりである。
「空条博士。あなたともあろう方が、なぜSPもなしに単独で学園都市に来たのかしら。
あらゆる仕事をキャンセルしてまでここに来た目的っていうのは、何なのかしら」
「あなたにそれを言う必要はないな」
芳川の眼元が一度だけ痙攣した。
「子どもたちを巻き込んでもそんなことが言える?」
「巻き込まないよう努力はしているつもりだ……俺は」
芳川の微笑が崩れた。
今の発言はブーメランだ、と彼女は胸の奥の奥に走る痛みに眉を寄せた。
芳川は 『 絶対能力進化実験 』 の中心を担う人物だったと言っていい。
一方通行、御坂美琴、そして生み出された多くの命に責任を感じないと言えばうそになる。
――私だって、こんなことやりたくなかった……なんて言わないけれど。
――けれど、自分が大人で、あの子たちが子供という事実は厳然として目の前に横たわっている。
「あなたが来るまで計画は順調だったわ、空条博士。
多少のいざこざはあったけれど、支障が出るまでには至らなかった。微妙なバランスがあった……あなたが来た途端、その均衡が崩れた」
承太郎は答えなかった。相づちすら打たなかった。
「天井亜雄の頭の狂った行動に、妹達<シスターズ>最終ロットの失踪。
被験者である学園都市第一位は計画の続行を拒否した上に行方をくらませて、おまけに不法侵入者が現れたって情報も入っているわ。全部、あなたの来訪と同時期の事よ」
芳川は一度、反応をうかがうように言葉を切った。
承太郎は相変わらず読めない表情で芳川を見下ろすばかりである。
「空条博士。あなたともあろう方が、なぜSPもなしに単独で学園都市に来たのかしら。
あらゆる仕事をキャンセルしてまでここに来た目的っていうのは、何なのかしら」
「あなたにそれを言う必要はないな」
芳川の眼元が一度だけ痙攣した。
「子どもたちを巻き込んでもそんなことが言える?」
「巻き込まないよう努力はしているつもりだ……俺は」
芳川の微笑が崩れた。
今の発言はブーメランだ、と彼女は胸の奥の奥に走る痛みに眉を寄せた。
芳川は 『 絶対能力進化実験 』 の中心を担う人物だったと言っていい。
一方通行、御坂美琴、そして生み出された多くの命に責任を感じないと言えばうそになる。
――私だって、こんなことやりたくなかった……なんて言わないけれど。
――けれど、自分が大人で、あの子たちが子供という事実は厳然として目の前に横たわっている。
885: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 02:32:46.49:JzOGj+Cg0 (18/35)
芳川は表情を引き締めると、もう一度承太郎を見上げた。
「今のは、認めたってことでいいのかしら」
承太郎はわずかに渋い表情を浮かべた。
「……俺のせいって点は否定できねえな」
「一体この町で何が起こってるの?」
「何が 『 起こるか 』 は俺にも分からん」
「あなた」
芳川は目をしばたいた。
今まで空条承太郎は自分と似た境遇にあるのだと思っていた。
何かしらのプランになし崩しに巻き込まれ、動いている立場だと、そう思っていたが。
これから起こることは彼には予測不可能。騒動は彼が学園都市入りした後を追うように相次いで起こった。
そうだ。なぜ気づかなかったのだろう。
「追われているの? いえ、狙われている立場なの、もしかして」
「さあな」
承太郎はそのまま芳川を押しのけるようにして廊下に出た。
彼の背中は会話を打ち切りたがっているようだったが、芳川はそれを無視して食らいついた。
「それともあなた、疫病神なのかしら? 災厄を呼ぶ人間がいるって、あなたがそうなのかしら?」
わざと挑発的な声音を作った努力は報われたらしい。承太郎は芳川を振り返った。
振り返るのに合わせて、色味の濃い瞳が暗がりに光の残像を残した。ような錯覚を芳川は覚えた。
「疫病神か。だとしたら?」
「どうもしない……けれど、子供たちを巻き込むのはやめて」
承太郎の瞳は小揺るぎもしなかったが、軽く帽子の鍔を押さえた。
「あんたは優しい人だ」
「いいえ、ただ甘いの」
芳川は苦笑した。
その間も瞳だけは注意深く目の前の男を観察し続ける。
「……目をそらさないのね」
「……」
「迷いがない。あなたは強い人だわ」
「いいや」
承太郎の指が鍔をはじき、再び帽子の陰から顔をのぞかせる。
「こんなやり方しか知らねえだけだ」
芳川は表情を引き締めると、もう一度承太郎を見上げた。
「今のは、認めたってことでいいのかしら」
承太郎はわずかに渋い表情を浮かべた。
「……俺のせいって点は否定できねえな」
「一体この町で何が起こってるの?」
「何が 『 起こるか 』 は俺にも分からん」
「あなた」
芳川は目をしばたいた。
今まで空条承太郎は自分と似た境遇にあるのだと思っていた。
何かしらのプランになし崩しに巻き込まれ、動いている立場だと、そう思っていたが。
これから起こることは彼には予測不可能。騒動は彼が学園都市入りした後を追うように相次いで起こった。
そうだ。なぜ気づかなかったのだろう。
「追われているの? いえ、狙われている立場なの、もしかして」
「さあな」
承太郎はそのまま芳川を押しのけるようにして廊下に出た。
彼の背中は会話を打ち切りたがっているようだったが、芳川はそれを無視して食らいついた。
「それともあなた、疫病神なのかしら? 災厄を呼ぶ人間がいるって、あなたがそうなのかしら?」
わざと挑発的な声音を作った努力は報われたらしい。承太郎は芳川を振り返った。
振り返るのに合わせて、色味の濃い瞳が暗がりに光の残像を残した。ような錯覚を芳川は覚えた。
「疫病神か。だとしたら?」
「どうもしない……けれど、子供たちを巻き込むのはやめて」
承太郎の瞳は小揺るぎもしなかったが、軽く帽子の鍔を押さえた。
「あんたは優しい人だ」
「いいえ、ただ甘いの」
芳川は苦笑した。
その間も瞳だけは注意深く目の前の男を観察し続ける。
「……目をそらさないのね」
「……」
「迷いがない。あなたは強い人だわ」
「いいや」
承太郎の指が鍔をはじき、再び帽子の陰から顔をのぞかせる。
「こんなやり方しか知らねえだけだ」
886: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 02:57:15.87:JzOGj+Cg0 (19/35)
○ ○ ○
薄暗がりは、ともすれば完全な暗闇より不気味なものだ。
何かが視界の向こうからひたひたと這い寄ってくるような不安に包まれる。
ふらりふらりと歩みを進める10032号は幽鬼か操り人形のようだった。
いち早くその気配を察したのは仗助だった。
毛根が太るような嫌な緊張感に思わず顔を上げ、しかしそこにいるあまりにも見知りすぎた人物に一瞬警戒を解いてしまう。
10032号はふらりと顔を上げ、仗助と目を合わせた。
上条も遅れて彼女の存在に気づき、
「あれ? ミサカ……えーっと」
「10032号です。とミサカは回答します」
「御坂妹?」
「あんた」
と美琴が口を開いたその瞬間、バターンッ! とけたたましくドアが開かれた。
10031号が鬼気迫る表情で飛び出し、仗助を視界に入れた。
「逃げてくださいッ! とミサカは警告……ッ!」
刹那、御坂妹が地を蹴り10031号に肉薄した。華奢な足を振り上げ、空気を刈り取るように横薙ぎに振るう。
10031号はすかさず両腕でガードを作った。グワッシィンとぶつかり合う衝撃が足にまで響き、10031号の顔が歪む。
御坂妹は衝撃に身を任せくるりと回転すると、腰を落として、がら空きの腹に肘鉄を叩きこんだ。
「がっ……!」
よろめいた10031号の顎に、下からの掌底が叩ッこまれる。
10031号の体から力が抜け、後ろ向きに崩れ落ちる。
その胸ぐらを掴むと、御坂妹は廊下を、次いで10031号の部屋を見渡し呟いた。
「排除対象……残り三人。とミサカは確認します」
「うっ!?」
○ ○ ○
薄暗がりは、ともすれば完全な暗闇より不気味なものだ。
何かが視界の向こうからひたひたと這い寄ってくるような不安に包まれる。
ふらりふらりと歩みを進める10032号は幽鬼か操り人形のようだった。
いち早くその気配を察したのは仗助だった。
毛根が太るような嫌な緊張感に思わず顔を上げ、しかしそこにいるあまりにも見知りすぎた人物に一瞬警戒を解いてしまう。
10032号はふらりと顔を上げ、仗助と目を合わせた。
上条も遅れて彼女の存在に気づき、
「あれ? ミサカ……えーっと」
「10032号です。とミサカは回答します」
「御坂妹?」
「あんた」
と美琴が口を開いたその瞬間、バターンッ! とけたたましくドアが開かれた。
10031号が鬼気迫る表情で飛び出し、仗助を視界に入れた。
「逃げてくださいッ! とミサカは警告……ッ!」
刹那、御坂妹が地を蹴り10031号に肉薄した。華奢な足を振り上げ、空気を刈り取るように横薙ぎに振るう。
10031号はすかさず両腕でガードを作った。グワッシィンとぶつかり合う衝撃が足にまで響き、10031号の顔が歪む。
御坂妹は衝撃に身を任せくるりと回転すると、腰を落として、がら空きの腹に肘鉄を叩きこんだ。
「がっ……!」
よろめいた10031号の顎に、下からの掌底が叩ッこまれる。
10031号の体から力が抜け、後ろ向きに崩れ落ちる。
その胸ぐらを掴むと、御坂妹は廊下を、次いで10031号の部屋を見渡し呟いた。
「排除対象……残り三人。とミサカは確認します」
「うっ!?」
887: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 02:58:37.79:JzOGj+Cg0 (20/35)
10031号の体を部屋に放り投げる。ドサリと音がすると同時、御坂妹は今度は美琴に接近していた。
一瞬で懐に入り込まれ、驚きの声を上げつつも美琴は一歩跳び退る。
跳ねあげるようにして繰り出された前蹴りが顔面すれすれを掠め、美琴は体勢を崩し、肩を壁にぶつけた。よろめきながらも御坂妹を凝視する。
「あんた……いったい何を……!」
「危ねえ中坊!」
気づけば美琴は乱暴に仗助に体を引き寄せられていた。一瞬遅れてさっきまで美琴の首があった空間を銀色の軌跡が薙ぐ。
距離を置いて見ていた上条にはすぐその正体がわかった。
「か、カタナだ! カタナの刀身だけが壁から生えて出てきた!」
「ボケボケしてんなよ。どうやら相手は一人じゃあねーぜ」
美琴はハッとしたように肩におかれた手と、仗助と、それからなぜか上条を見て慌てて仗助の手を振り払った。
「う、うるさい! あと中坊って呼ぶなっつってんでしょ!」
「助けてもらってその態度かよー」
「誰も頼んでないわよ!」
「イチャイチャしてる場合か!」
「「してねーよ!!」」
ぴったり同じタイミングで怒鳴られ、上条はやや気圧された。
10031号の体を部屋に放り投げる。ドサリと音がすると同時、御坂妹は今度は美琴に接近していた。
一瞬で懐に入り込まれ、驚きの声を上げつつも美琴は一歩跳び退る。
跳ねあげるようにして繰り出された前蹴りが顔面すれすれを掠め、美琴は体勢を崩し、肩を壁にぶつけた。よろめきながらも御坂妹を凝視する。
「あんた……いったい何を……!」
「危ねえ中坊!」
気づけば美琴は乱暴に仗助に体を引き寄せられていた。一瞬遅れてさっきまで美琴の首があった空間を銀色の軌跡が薙ぐ。
距離を置いて見ていた上条にはすぐその正体がわかった。
「か、カタナだ! カタナの刀身だけが壁から生えて出てきた!」
「ボケボケしてんなよ。どうやら相手は一人じゃあねーぜ」
美琴はハッとしたように肩におかれた手と、仗助と、それからなぜか上条を見て慌てて仗助の手を振り払った。
「う、うるさい! あと中坊って呼ぶなっつってんでしょ!」
「助けてもらってその態度かよー」
「誰も頼んでないわよ!」
「イチャイチャしてる場合か!」
「「してねーよ!!」」
ぴったり同じタイミングで怒鳴られ、上条はやや気圧された。
888: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 03:09:32.80:JzOGj+Cg0 (21/35)
きゅるきゅる、と床を擦る音がした。見やれば御坂妹が頭と足を逆さにしてブレイクダンスのごとき動きで回転していた。
嬉しくないパンモロだと思う間もなく距離を詰められ、回転付きの回し蹴りをお見舞いされる。
「うおッ!」
「いぃっ!」
上条と美琴は左右に飛び退り、
「『 クレイジー・ダイヤモンド 』ッ!」
仗助は真正面から受ける。
気合の声と共に 『 スタンド 』 が現れ、ガシンと蹴りを受け止める。
思いのほかの重さに仗助はピクリと頬をひきつらせた。腕と足の力がギリギリと拮抗する。
「こいつ……前より強くなってねぇーか……!?」
御坂妹は逆立ちしたままじっと仗助を見つめていたが、不意に 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の腕を蹴って後ろに宙返りした。
着地するやグッと両膝を折り曲げ、軽く天井まで飛び上がる。片腕で照明につかまる。
3人はしばし呆然と彼女を見上げた。
「に、人間の動きじゃあねぇーぞ……」
思わずというように仗助がつぶやいた。
御坂妹の肩に力がこもる。
はっと身構える3人。御坂妹はそのまま腕の力だけで体を持ち上げ、また頭と足を逆さにした。
ぴたりと足の裏が天井につく。刹那、彼女はそのうつろな表情に似つかわしくない、俊敏な動きで天井を蹴った。
さらに右の壁を蹴り左の壁を蹴り、ジグザグに落下してくる。
「ぐっ!?」
そして美琴の肩の上に着地した。太腿を閉じて美琴の首を締め上げる。
いつか美琴が彼女にやった技だ。
美琴はよろよろと壁に向かった。あの時されたように壁に御坂妹を叩きつけようというのだ。
だが、御坂妹はクニャリと上体を後ろに折り曲げた。まさしく折り曲げるという表現のとおり、地面とほぼ垂直に背中を反らしたのである。
ピタリと美琴の背に背をくっつけると、姉の胴体を抱きしめる。
信じられねえと上条は驚愕した。脊椎動物にこんなことができるものなのか!?
足にかかる重みでさらに美琴の首が絞まる。うっ血した顔で美琴は妹の足を掴んだ。
「御坂!」
「このアマッ!」
仗助が二人に向けて駆け出そうとしたその瞬間、美琴の瞳が不穏な色を帯びたのを上条は見た。
「仗助ストォップッ!!」
肩をつかまえ、自分の後ろに追いやって 『 右手 』 をかざす!
「うるぉああああああああーーーーッッ!!!」
「あばばばばばばばッ」
瞬間、予想違わず、聞きなれた叫びと共にビリビリの稲妻が廊下中を駆け回り、弾け、スパークした。
数秒後、そこにはアフロになってプスプス煙を出す御坂妹と、不機嫌そうに髪を払う御坂美琴が残されていた。
きゅるきゅる、と床を擦る音がした。見やれば御坂妹が頭と足を逆さにしてブレイクダンスのごとき動きで回転していた。
嬉しくないパンモロだと思う間もなく距離を詰められ、回転付きの回し蹴りをお見舞いされる。
「うおッ!」
「いぃっ!」
上条と美琴は左右に飛び退り、
「『 クレイジー・ダイヤモンド 』ッ!」
仗助は真正面から受ける。
気合の声と共に 『 スタンド 』 が現れ、ガシンと蹴りを受け止める。
思いのほかの重さに仗助はピクリと頬をひきつらせた。腕と足の力がギリギリと拮抗する。
「こいつ……前より強くなってねぇーか……!?」
御坂妹は逆立ちしたままじっと仗助を見つめていたが、不意に 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の腕を蹴って後ろに宙返りした。
着地するやグッと両膝を折り曲げ、軽く天井まで飛び上がる。片腕で照明につかまる。
3人はしばし呆然と彼女を見上げた。
「に、人間の動きじゃあねぇーぞ……」
思わずというように仗助がつぶやいた。
御坂妹の肩に力がこもる。
はっと身構える3人。御坂妹はそのまま腕の力だけで体を持ち上げ、また頭と足を逆さにした。
ぴたりと足の裏が天井につく。刹那、彼女はそのうつろな表情に似つかわしくない、俊敏な動きで天井を蹴った。
さらに右の壁を蹴り左の壁を蹴り、ジグザグに落下してくる。
「ぐっ!?」
そして美琴の肩の上に着地した。太腿を閉じて美琴の首を締め上げる。
いつか美琴が彼女にやった技だ。
美琴はよろよろと壁に向かった。あの時されたように壁に御坂妹を叩きつけようというのだ。
だが、御坂妹はクニャリと上体を後ろに折り曲げた。まさしく折り曲げるという表現のとおり、地面とほぼ垂直に背中を反らしたのである。
ピタリと美琴の背に背をくっつけると、姉の胴体を抱きしめる。
信じられねえと上条は驚愕した。脊椎動物にこんなことができるものなのか!?
足にかかる重みでさらに美琴の首が絞まる。うっ血した顔で美琴は妹の足を掴んだ。
「御坂!」
「このアマッ!」
仗助が二人に向けて駆け出そうとしたその瞬間、美琴の瞳が不穏な色を帯びたのを上条は見た。
「仗助ストォップッ!!」
肩をつかまえ、自分の後ろに追いやって 『 右手 』 をかざす!
「うるぉああああああああーーーーッッ!!!」
「あばばばばばばばッ」
瞬間、予想違わず、聞きなれた叫びと共にビリビリの稲妻が廊下中を駆け回り、弾け、スパークした。
数秒後、そこにはアフロになってプスプス煙を出す御坂妹と、不機嫌そうに髪を払う御坂美琴が残されていた。
889: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 03:14:41.42:JzOGj+Cg0 (22/35)
「お前ェ……容赦ねえな」
「正当防衛よ」
上条の呆れ顔に美琴は涼しげに返した。
「それに手加減はしたわ」
「俺達まで巻き込まれたらどうすんだよ」
「あんたらがノロマってことね。ご愁傷様」
「おめーってよォ~……」
仗助はそこでいったん言葉を切った。不思議に思って上条が振り返ると、10031号が部屋から這い出してくるところだった。
腹を押さえ、よろめきながらも3人を見て表情を緩ませる。
「ご無事でしたか……お姉さま、とペンデックスちゃん。とミサカ10031号は安堵します」
「は?」
「あ~~」
「……」
美琴が不可解そうに眉を寄せ、仗助が気まずそうにあさってを向き、上条はあまりにもナチュラルなスルーっぷりに野良猫にフられたような気持ちになった。
「10032号は……何者かに危害を加えられたようです。とミサカ10031号はミサカネットワークで拾った情報を提示します」
「やっぱり、また操られてたのね」
「はい。とミサカ10031号は即答します。詳しいことは不明ですが……」
10031号は苦しげに息をつくと、トスンと壁に体を預けた。
瞬間、ドスンと彼女の脇腹から刀が生えた。
「お前ェ……容赦ねえな」
「正当防衛よ」
上条の呆れ顔に美琴は涼しげに返した。
「それに手加減はしたわ」
「俺達まで巻き込まれたらどうすんだよ」
「あんたらがノロマってことね。ご愁傷様」
「おめーってよォ~……」
仗助はそこでいったん言葉を切った。不思議に思って上条が振り返ると、10031号が部屋から這い出してくるところだった。
腹を押さえ、よろめきながらも3人を見て表情を緩ませる。
「ご無事でしたか……お姉さま、とペンデックスちゃん。とミサカ10031号は安堵します」
「は?」
「あ~~」
「……」
美琴が不可解そうに眉を寄せ、仗助が気まずそうにあさってを向き、上条はあまりにもナチュラルなスルーっぷりに野良猫にフられたような気持ちになった。
「10032号は……何者かに危害を加えられたようです。とミサカ10031号はミサカネットワークで拾った情報を提示します」
「やっぱり、また操られてたのね」
「はい。とミサカ10031号は即答します。詳しいことは不明ですが……」
10031号は苦しげに息をつくと、トスンと壁に体を預けた。
瞬間、ドスンと彼女の脇腹から刀が生えた。
890: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 03:20:18.88:JzOGj+Cg0 (23/35)
10031号は目を見開いた。銀色の刀身は出た時と同じく、音もなく壁の向こうに消える。
10031号は一度腹に手を当て、真っ赤に染まった両手を見ると失神した。
「うっ……うわああああああああ!!」
美琴が叫ぶ。
10031号の服がどんどん赤くなる。
「おい、大丈夫かよ!?」
「大丈夫なわけないでしょ! 早く、し、止血」
「仗助!」
「わかってる!」
仗助は美琴を押しのけると10031号の傷口に手を置いた。
「なおせるか?」
「死んでなきゃあな」
言っている間に治療は終わった。相変わらず、医術だのなんだのがバカバカしくなるほどの性能である。
美琴は驚いた顔で10031号の脇腹を撫でさすった。
そういえば彼女がこの 『 能力本来の使い方 』 を見るのは初めてなのだった。
「あんた……」
顔を上げる。瞬間、彼女は瞠目した。
「『 剣が 』ッ!」
その叫びに2人は思わず壁を見る。果たしてその通りだった。切っ先が今しも壁から出てこようとしていた。
先ほどまで 『 刀 』 は壁の振動に反応して攻撃を仕掛けてきた。だが今回は違う。
『 刀 』 は、いや、壁の向こうの人物は、一人が致命傷を負えば 『 残り 』 もそこに集まってくるだろうと考えたのだ。
あまっちょろいガキどもの精神なら、砂糖にたかるアリのようにわらわらと犠牲者に群がっていくだろうと考えたのだ。
そして予測は見事に当たった。
「当麻!」
仗助はとっさに彼を押しのけた。まっすぐ突き出された刀は上条のいた空間を貫き、その向こうの仗助に迫る。
仗助はひゅっと息を吸った。
唇を引き締め、まっすぐに切っ先を見据えて、
「ドラァ!」
ブワッシィィンと 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が両手で刀を挟み込んだ。
10031号は目を見開いた。銀色の刀身は出た時と同じく、音もなく壁の向こうに消える。
10031号は一度腹に手を当て、真っ赤に染まった両手を見ると失神した。
「うっ……うわああああああああ!!」
美琴が叫ぶ。
10031号の服がどんどん赤くなる。
「おい、大丈夫かよ!?」
「大丈夫なわけないでしょ! 早く、し、止血」
「仗助!」
「わかってる!」
仗助は美琴を押しのけると10031号の傷口に手を置いた。
「なおせるか?」
「死んでなきゃあな」
言っている間に治療は終わった。相変わらず、医術だのなんだのがバカバカしくなるほどの性能である。
美琴は驚いた顔で10031号の脇腹を撫でさすった。
そういえば彼女がこの 『 能力本来の使い方 』 を見るのは初めてなのだった。
「あんた……」
顔を上げる。瞬間、彼女は瞠目した。
「『 剣が 』ッ!」
その叫びに2人は思わず壁を見る。果たしてその通りだった。切っ先が今しも壁から出てこようとしていた。
先ほどまで 『 刀 』 は壁の振動に反応して攻撃を仕掛けてきた。だが今回は違う。
『 刀 』 は、いや、壁の向こうの人物は、一人が致命傷を負えば 『 残り 』 もそこに集まってくるだろうと考えたのだ。
あまっちょろいガキどもの精神なら、砂糖にたかるアリのようにわらわらと犠牲者に群がっていくだろうと考えたのだ。
そして予測は見事に当たった。
「当麻!」
仗助はとっさに彼を押しのけた。まっすぐ突き出された刀は上条のいた空間を貫き、その向こうの仗助に迫る。
仗助はひゅっと息を吸った。
唇を引き締め、まっすぐに切っ先を見据えて、
「ドラァ!」
ブワッシィィンと 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が両手で刀を挟み込んだ。
891: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 03:31:14.49:JzOGj+Cg0 (24/35)
白刃取りというには不恰好すぎる。ほとんど力技で押さえ込んでいるようなものだ。
「や、やった、仗助!」
上条の歓声に仗助は頬をひきつらせた。
うっすらこめかみに汗が浮いている。
「ビビらせやがってよォォ……これが打ち止めの言ってた 『 意識を乗っ取る刀 』 かよ~~……
モノを通り抜ける能力? だけか? 大したこたぁねーじゃあねーかこのヤロー!」
「ちょ、待て仗助。ならこの壁の向こうにいるのは……」
第一位。一方通行の体。
一気にその場の緊張が高まった。
「……ちょっと不良。絶対にそいつ離すんじゃあないわよ」
「言われなくてもそうするっつーの」
引き戻そうとする向こうからの力と 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の押さえつける力は今のところ五分五分で、動かない綱引き状態が続いている。
仗助は「オーイ」と壁向こうに呼びかけた。
「選べよ。このままコイツをポッキリ折られるか、コソコソしねーで出てくるかよぉ~」
相手は沈黙したままだ。
「……どうする? 空条さんに知らせるか」
「ああ、俺もそれが一番だと思うぜー」
「それよりこの子たちを安全な場所に移してあげないと!」
「ああ~~それもそうだな~っておい、あんま話しかけんなよ、気が散る……ッ」
「律儀に答えてるのはアンタじゃあないのよ」
「そおだけどよってうおおおお……!」
わずかに相手に押され、仗助は首をそらした。
『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の肩に力がこもり、相手を押し戻す。
こんな時でもどこか日常的な仗助と美琴の会話に、上条は笑ったものかたしなめたものか少し悩んだ。悩んだが、結局何も言わないことにした。
とにかくアフロな御坂妹と10031号を移動させようと顔を上げ、
「……?」
御坂妹の体――正確には肌蹴た太腿のあたりで何かが光ったような気がした。
白刃取りというには不恰好すぎる。ほとんど力技で押さえ込んでいるようなものだ。
「や、やった、仗助!」
上条の歓声に仗助は頬をひきつらせた。
うっすらこめかみに汗が浮いている。
「ビビらせやがってよォォ……これが打ち止めの言ってた 『 意識を乗っ取る刀 』 かよ~~……
モノを通り抜ける能力? だけか? 大したこたぁねーじゃあねーかこのヤロー!」
「ちょ、待て仗助。ならこの壁の向こうにいるのは……」
第一位。一方通行の体。
一気にその場の緊張が高まった。
「……ちょっと不良。絶対にそいつ離すんじゃあないわよ」
「言われなくてもそうするっつーの」
引き戻そうとする向こうからの力と 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の押さえつける力は今のところ五分五分で、動かない綱引き状態が続いている。
仗助は「オーイ」と壁向こうに呼びかけた。
「選べよ。このままコイツをポッキリ折られるか、コソコソしねーで出てくるかよぉ~」
相手は沈黙したままだ。
「……どうする? 空条さんに知らせるか」
「ああ、俺もそれが一番だと思うぜー」
「それよりこの子たちを安全な場所に移してあげないと!」
「ああ~~それもそうだな~っておい、あんま話しかけんなよ、気が散る……ッ」
「律儀に答えてるのはアンタじゃあないのよ」
「そおだけどよってうおおおお……!」
わずかに相手に押され、仗助は首をそらした。
『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の肩に力がこもり、相手を押し戻す。
こんな時でもどこか日常的な仗助と美琴の会話に、上条は笑ったものかたしなめたものか少し悩んだ。悩んだが、結局何も言わないことにした。
とにかくアフロな御坂妹と10031号を移動させようと顔を上げ、
「……?」
御坂妹の体――正確には肌蹴た太腿のあたりで何かが光ったような気がした。
892: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 03:42:36.80:JzOGj+Cg0 (25/35)
目を凝らせば、スカートからエメラルド色のヘビが這い出ているのが分かった。
それは一本の緑色の線となって美琴につながっている。いや、御坂妹から美琴へと移動しているようだった。
「――から、あんたも手伝いなさいよ」
意識の埒外に追いやっていた2人の声が耳に戻って来る。
仗助は刀だけに意識を集中していて、美琴はどこかうつろな眼差しを彼の背中に注いでいた。
「無理に決まってんだろぉぉ……! 今のこの状況が見えねえのかよぉぉ……!」
「ちょっとは動けるんじゃあないの?」
「ちょっとも動けねぇーよ!」
「本当に?」
「マジに!」
「ならよかったわ」
美琴の声音が変わった。
上条はやっと何が起こっているのか理解した。
「御坂ッッ!!」
手の中に電撃を溜め、今にも振り下ろさんとする彼女に上条は突進した。
ぶつかり、もみくちゃになりながら床を転がる。
「お、おおッ!? うおおおッ!?」
驚いて上条を見て、刀に押されて悲鳴を上げる仗助。
「何だ!? 何だっつーんだよ当麻ァー!」
「こいつ……ッ! 御坂妹を操っていた奴! こいつもその剣と同じだ! 寄生する奴を次々に変える!」
言い終わるや否や、美琴が超人的な力で上条の胸ぐらを掴み、壁に押さえつけた。
上条もすかさず 『 右手 』 で彼女の腕を掴む。案の定電撃を出そうとしたらしい。彼女は不可解そうに小鼻にしわを寄せた。
「そいつよぉ~……!」
そこで仗助も美琴の足から這い上がる緑色の触手に気が付いたらしい。
「体ん中に入るタイプなのかァ~!? いつかのちっせー『 スタンド 』 みてえに!」
「多分な!」
そう考えれば、撒いたはずの彼らが上条たちを追ってこれた理由もおのずと見えてくる。
忍び込んでいたのだ! 御坂妹の体の中に!
御坂妹は伏兵であり探知機でもあったのだ。
思えば今日は色々なことがありすぎた。
海での混戦、移動中、打ち止めの話に集中していたあの時……別の事に気を取られる機会はいくらでもあった。『 仕込む 』 隙はいくらでもあったのだッ!
目を凝らせば、スカートからエメラルド色のヘビが這い出ているのが分かった。
それは一本の緑色の線となって美琴につながっている。いや、御坂妹から美琴へと移動しているようだった。
「――から、あんたも手伝いなさいよ」
意識の埒外に追いやっていた2人の声が耳に戻って来る。
仗助は刀だけに意識を集中していて、美琴はどこかうつろな眼差しを彼の背中に注いでいた。
「無理に決まってんだろぉぉ……! 今のこの状況が見えねえのかよぉぉ……!」
「ちょっとは動けるんじゃあないの?」
「ちょっとも動けねぇーよ!」
「本当に?」
「マジに!」
「ならよかったわ」
美琴の声音が変わった。
上条はやっと何が起こっているのか理解した。
「御坂ッッ!!」
手の中に電撃を溜め、今にも振り下ろさんとする彼女に上条は突進した。
ぶつかり、もみくちゃになりながら床を転がる。
「お、おおッ!? うおおおッ!?」
驚いて上条を見て、刀に押されて悲鳴を上げる仗助。
「何だ!? 何だっつーんだよ当麻ァー!」
「こいつ……ッ! 御坂妹を操っていた奴! こいつもその剣と同じだ! 寄生する奴を次々に変える!」
言い終わるや否や、美琴が超人的な力で上条の胸ぐらを掴み、壁に押さえつけた。
上条もすかさず 『 右手 』 で彼女の腕を掴む。案の定電撃を出そうとしたらしい。彼女は不可解そうに小鼻にしわを寄せた。
「そいつよぉ~……!」
そこで仗助も美琴の足から這い上がる緑色の触手に気が付いたらしい。
「体ん中に入るタイプなのかァ~!? いつかのちっせー『 スタンド 』 みてえに!」
「多分な!」
そう考えれば、撒いたはずの彼らが上条たちを追ってこれた理由もおのずと見えてくる。
忍び込んでいたのだ! 御坂妹の体の中に!
御坂妹は伏兵であり探知機でもあったのだ。
思えば今日は色々なことがありすぎた。
海での混戦、移動中、打ち止めの話に集中していたあの時……別の事に気を取られる機会はいくらでもあった。『 仕込む 』 隙はいくらでもあったのだッ!
893:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/07/30(月) 03:49:43.83:2HKmvZEAO (2/3)
いや!もう限界だッ!エロいね!
いや!もう限界だッ!エロいね!
894: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 03:55:11.60:JzOGj+Cg0 (26/35)
「クソッタレ! なんなのよアンタの右手は! なんで放電ができないのよォォ!!!」
上条はぎくりと体をこわばらせた。
「じょ、仗助! 口の中だ! 口の中から操ってる奴が見える!」
「何ィ~……!?」
「右手を離せっつってんのよダボがァ!」
美琴が正拳突きを繰り出す。上条はとっさに首をひねって回避したが、壁の方は陥没し、コンクリートの欠片が飛び散った。
サァーーっと上条の血の気が引いていく。
「やばい、こいつ、強い! ど、どうにかしてくれー!」
「どおにかってよォ~~……!」
仗助も両手がふさがっている。
「そーだ! 口の中にいるんならそっから引きずり出しちまえよ!」
そうかと両手を向けた途端、手首を掴まれ壁に縫い付けられる。
「おいおいこの状況でどうしろってんだー!?」
「えー、えー、口だ! 口でズキューンって!」
「できるかバーロー!」
「このドヘタレがァァーー!!」
「すんません! なんでオレ御坂に怒られてんの?」
仗助は眉間にしわを刻むと、刀を押さえる手に一層力を込めた。
「しょうがねえなァ~……ならやっぱりコイツブチ折ってぇ……!」
みしみしと刀身が軋む。何をするか察したか引き戻そうとする力が強くなる。
『 クレイジー・ダイヤモンド 』 はがっちりと押さえつけて逃がさない。
「行くしかねぇーなオイ!」
ピシリ、と決定的な音が響いた。
瞬間、仗助は虚を突かれたようにパチクリと目を見開いた。相手が唐突に力を抜いたのである。
思いっきり引っ張っていたせいで仗助の手はすっぽ抜け、刀身を離してしまう。
後ろ向きにバランスを崩した仗助の鼻先で切っ先は光っている。
「クソッタレ! なんなのよアンタの右手は! なんで放電ができないのよォォ!!!」
上条はぎくりと体をこわばらせた。
「じょ、仗助! 口の中だ! 口の中から操ってる奴が見える!」
「何ィ~……!?」
「右手を離せっつってんのよダボがァ!」
美琴が正拳突きを繰り出す。上条はとっさに首をひねって回避したが、壁の方は陥没し、コンクリートの欠片が飛び散った。
サァーーっと上条の血の気が引いていく。
「やばい、こいつ、強い! ど、どうにかしてくれー!」
「どおにかってよォ~~……!」
仗助も両手がふさがっている。
「そーだ! 口の中にいるんならそっから引きずり出しちまえよ!」
そうかと両手を向けた途端、手首を掴まれ壁に縫い付けられる。
「おいおいこの状況でどうしろってんだー!?」
「えー、えー、口だ! 口でズキューンって!」
「できるかバーロー!」
「このドヘタレがァァーー!!」
「すんません! なんでオレ御坂に怒られてんの?」
仗助は眉間にしわを刻むと、刀を押さえる手に一層力を込めた。
「しょうがねえなァ~……ならやっぱりコイツブチ折ってぇ……!」
みしみしと刀身が軋む。何をするか察したか引き戻そうとする力が強くなる。
『 クレイジー・ダイヤモンド 』 はがっちりと押さえつけて逃がさない。
「行くしかねぇーなオイ!」
ピシリ、と決定的な音が響いた。
瞬間、仗助は虚を突かれたようにパチクリと目を見開いた。相手が唐突に力を抜いたのである。
思いっきり引っ張っていたせいで仗助の手はすっぽ抜け、刀身を離してしまう。
後ろ向きにバランスを崩した仗助の鼻先で切っ先は光っている。
895: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 04:07:50.67:JzOGj+Cg0 (27/35)
「ドラァッ!!」
切っ先が突き出されるより早く、『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の拳が刀身を殴った。
無理な体勢でのパンチに耐えきれず、仗助はそのまま床に尻を付く。
刀の方も大きく切っ先がぶれたがすぐに持ち直した。
その時、美琴がバンと壁を蹴った。刀が一瞬ピタリと止まり、すぐさま上条の方へ向かって行く。
「うぉ……」
上条は途端に恐慌に陥った。
「うおおおお!! 助けて仗助!」
「ちょっと待て!」
仗助も慌てて立ち上がる。
だが今から駆けつけても加速する刀を止められるかは分からない。美琴を引っぺがすにしても時間がかかる。
一瞬の逡巡の末、仗助は刀の方に向かった。
「ドラァァッ!!」
刀の腹に渾身の一撃を加える。
刀は真っ二つに砕け、スクラップになる――はずであった。
「!?」
刀はあっさりと 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の拳を回避した。
そして嘲笑うように壁向こうへ引っ込んでしまう。
「しッ!? しまッ……!」
ドッ、と鈍い音がして、上条の目が見開かれる。
溢れた液体が床に落ち、ぽつぽつと赤い円を描いた。
「ドラァッ!!」
切っ先が突き出されるより早く、『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の拳が刀身を殴った。
無理な体勢でのパンチに耐えきれず、仗助はそのまま床に尻を付く。
刀の方も大きく切っ先がぶれたがすぐに持ち直した。
その時、美琴がバンと壁を蹴った。刀が一瞬ピタリと止まり、すぐさま上条の方へ向かって行く。
「うぉ……」
上条は途端に恐慌に陥った。
「うおおおお!! 助けて仗助!」
「ちょっと待て!」
仗助も慌てて立ち上がる。
だが今から駆けつけても加速する刀を止められるかは分からない。美琴を引っぺがすにしても時間がかかる。
一瞬の逡巡の末、仗助は刀の方に向かった。
「ドラァァッ!!」
刀の腹に渾身の一撃を加える。
刀は真っ二つに砕け、スクラップになる――はずであった。
「!?」
刀はあっさりと 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の拳を回避した。
そして嘲笑うように壁向こうへ引っ込んでしまう。
「しッ!? しまッ……!」
ドッ、と鈍い音がして、上条の目が見開かれる。
溢れた液体が床に落ち、ぽつぽつと赤い円を描いた。
896: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 04:13:26.02:JzOGj+Cg0 (28/35)
「と、当麻!」
「お、おれは平気だ……ッ!」
刀は上条の首すれすれを通って、美琴の肩に刺さっていた。
美琴はポカンとあどけない表情を浮かべていたが、状況を呑みこむやメラメラと瞳を燃やし、絶叫した。
「何やってんだァ! クソ童貞ェェーーッ!!」
刀が引っ込む。美琴の拘束が緩む。
上条はとっさに腕を振りほどき、美琴を抱きしめた。
「仗助ェ!」
「な、何を……」
もろに動揺した美琴を引きずるようにして壁から離れる。遅れて出てきた刃が肩を引き裂いた。
「『 逃がすな、ぶちぬけ、捕まえろ 』!!」
意図は正確に伝わったようだ。一拍おいて仗助の頬が青ざめた。
「ボケも休み休み言えボゲッ!」
「ここで逃がしちゃあならねーんだ! こいつらの目的は空条さんだぞ!」
「だからってよ、あ゛~~! んなこたぁしたことねーんだぞ!」
「知ってるっつーの!」
「何よ、何をするつもり!? 離しなさいよォ!」
美琴の手が肩を掴む。
みしみしと骨が軋み、砕けそうな痛みが走る。
「早くしろ! このままじゃあ俺の墓標に 『 上条当麻・ヘタレ故に死す 』 って彫られちまう!」
「やるか? マジやっちまうぞ、失敗しても知らねえかんなコラァ~~!」
「がんばれできるッ! 仗助ならできるッ! 俺信じてるッ!」
「信じてくれんなよ畜生ォーッ!」
ヤケクソ気味な叫びと共に仗助は一歩踏み出す。
そして 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が拳を振り上げるや、一瞬その表情が引き締まった。
刹那、ドボォッと重い音がして 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の腕が御坂美琴と上条の腹を貫いていた。
「なっ……!」
美琴が驚愕の表情で血反吐を吐く。
「なんだとォ……!?」
「と、当麻!」
「お、おれは平気だ……ッ!」
刀は上条の首すれすれを通って、美琴の肩に刺さっていた。
美琴はポカンとあどけない表情を浮かべていたが、状況を呑みこむやメラメラと瞳を燃やし、絶叫した。
「何やってんだァ! クソ童貞ェェーーッ!!」
刀が引っ込む。美琴の拘束が緩む。
上条はとっさに腕を振りほどき、美琴を抱きしめた。
「仗助ェ!」
「な、何を……」
もろに動揺した美琴を引きずるようにして壁から離れる。遅れて出てきた刃が肩を引き裂いた。
「『 逃がすな、ぶちぬけ、捕まえろ 』!!」
意図は正確に伝わったようだ。一拍おいて仗助の頬が青ざめた。
「ボケも休み休み言えボゲッ!」
「ここで逃がしちゃあならねーんだ! こいつらの目的は空条さんだぞ!」
「だからってよ、あ゛~~! んなこたぁしたことねーんだぞ!」
「知ってるっつーの!」
「何よ、何をするつもり!? 離しなさいよォ!」
美琴の手が肩を掴む。
みしみしと骨が軋み、砕けそうな痛みが走る。
「早くしろ! このままじゃあ俺の墓標に 『 上条当麻・ヘタレ故に死す 』 って彫られちまう!」
「やるか? マジやっちまうぞ、失敗しても知らねえかんなコラァ~~!」
「がんばれできるッ! 仗助ならできるッ! 俺信じてるッ!」
「信じてくれんなよ畜生ォーッ!」
ヤケクソ気味な叫びと共に仗助は一歩踏み出す。
そして 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が拳を振り上げるや、一瞬その表情が引き締まった。
刹那、ドボォッと重い音がして 『 クレイジー・ダイヤモンド 』 の腕が御坂美琴と上条の腹を貫いていた。
「なっ……!」
美琴が驚愕の表情で血反吐を吐く。
「なんだとォ……!?」
897: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 04:29:28.57:JzOGj+Cg0 (29/35)
「ドラララァァーッ!!」
傷口から緑色に光る異形が引きずり出される。
その身が完全に引きずり出された時、美琴と上条の腹の傷は元通りふさがっていた。
「い……な、なに……? あれ、私……?」
「やればできるじゃあねーか仗助ェ……」
「二度とはやりたくねェーがなァ!」
仗助の大声とともに、『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が緑色の 『 スタンド 』 を床にたたきつけた。
首と頭をわしづかみにし、押さえつける。
「さァーて尋問タイムだゲス野郎! テメー遠距離タイプか? 『 本体 』 はどこだ?
言わねえなら言わねえでこのまま絞め落としてゆっくり探させてもらうだけだぜオイ」
緊張から解放され、三倍くらい饒舌になっている。
いや、不本意なことをやらざるをえなかったイライラを敵にぶつけているのか。
「気持ちは分かるけど落ち着け」
ムッと仗助が振り返る。上条は更にポンポンと彼の肩を叩いた。
「まずは承太郎さんと合流しなくちゃあいけねえだろ? 刀の奴もまだいるし……」
「……わあったよー」
仗助は不満も憤懣もアリアリの顔で頭を掻いた。
「あの人、今どこいるのよ」
美琴は壁の方を気にしたまま呟いた。
「休憩室だろ」
「ああ、言ってたわね」
「確か、芳川さんのラボの……」
『なるほど』
上条がそう言い募るや、くぐもった不気味な声が辺りに響いた。
全員がハッと身構えた。
「ドラララァァーッ!!」
傷口から緑色に光る異形が引きずり出される。
その身が完全に引きずり出された時、美琴と上条の腹の傷は元通りふさがっていた。
「い……な、なに……? あれ、私……?」
「やればできるじゃあねーか仗助ェ……」
「二度とはやりたくねェーがなァ!」
仗助の大声とともに、『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が緑色の 『 スタンド 』 を床にたたきつけた。
首と頭をわしづかみにし、押さえつける。
「さァーて尋問タイムだゲス野郎! テメー遠距離タイプか? 『 本体 』 はどこだ?
言わねえなら言わねえでこのまま絞め落としてゆっくり探させてもらうだけだぜオイ」
緊張から解放され、三倍くらい饒舌になっている。
いや、不本意なことをやらざるをえなかったイライラを敵にぶつけているのか。
「気持ちは分かるけど落ち着け」
ムッと仗助が振り返る。上条は更にポンポンと彼の肩を叩いた。
「まずは承太郎さんと合流しなくちゃあいけねえだろ? 刀の奴もまだいるし……」
「……わあったよー」
仗助は不満も憤懣もアリアリの顔で頭を掻いた。
「あの人、今どこいるのよ」
美琴は壁の方を気にしたまま呟いた。
「休憩室だろ」
「ああ、言ってたわね」
「確か、芳川さんのラボの……」
『なるほど』
上条がそう言い募るや、くぐもった不気味な声が辺りに響いた。
全員がハッと身構えた。
898: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 04:46:04.02:JzOGj+Cg0 (30/35)
『勝者のヨユーってやつだね……そういうのが一番いけない……「勝った!」っていう驕りが身を滅ぼすんだ……ゲームとかでもそうだろう……「やったか!?」って言ってやれてる例が今まであったかい?』
仗助はハッと気づいた。
声は緑色の 『 スタンド 』 が発していた。いや、『 スタンド 』 を通して 『 本体 』 が喋っているのか。
そんなことより緑色の 『 スタンド 』 の体が変化していた。
毛糸のマフラーのようにするすると糸状にほどけていくのである。
『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が掴みなおそうとした時には、それは既に緑色の触手となって床を走っていた。
「なッあッ……! ちょ、待てこのッ!」
「戻ってこいメロン野郎ーー!!」
慌てて後を追うが、その時には緑色の軌跡さえその場に残っていなかった。
仗助と上条はしばし愕然と 『 スタンド 』 の消えた方向を見つめていた。美琴も見えなかったなりに事態を把握したらしい。頬から赤味が引いている。
「まずいわよ、ちょっと……」
「ああ……」
仗助はこわばった顔で足を踏み出した。
「承太郎さんが危ねえ!」
『勝者のヨユーってやつだね……そういうのが一番いけない……「勝った!」っていう驕りが身を滅ぼすんだ……ゲームとかでもそうだろう……「やったか!?」って言ってやれてる例が今まであったかい?』
仗助はハッと気づいた。
声は緑色の 『 スタンド 』 が発していた。いや、『 スタンド 』 を通して 『 本体 』 が喋っているのか。
そんなことより緑色の 『 スタンド 』 の体が変化していた。
毛糸のマフラーのようにするすると糸状にほどけていくのである。
『 クレイジー・ダイヤモンド 』 が掴みなおそうとした時には、それは既に緑色の触手となって床を走っていた。
「なッあッ……! ちょ、待てこのッ!」
「戻ってこいメロン野郎ーー!!」
慌てて後を追うが、その時には緑色の軌跡さえその場に残っていなかった。
仗助と上条はしばし愕然と 『 スタンド 』 の消えた方向を見つめていた。美琴も見えなかったなりに事態を把握したらしい。頬から赤味が引いている。
「まずいわよ、ちょっと……」
「ああ……」
仗助はこわばった顔で足を踏み出した。
「承太郎さんが危ねえ!」
899: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 05:05:55.62:JzOGj+Cg0 (31/35)
芳川桔梗はふと階段の中腹で立ち止まった。二段ほど上にいる人物を見上げる。
承太郎は歩みを止めて、あさっての方向を見つめていた。
「どうかした?」
「いや……仗助の声が聞こえたかと思っただけだ」
「あら、案外過保護なのね」
「そうでもない」
芳川としてははなはだ薄味の返事をして、承太郎は再び階段を下りた。芳川の隣に並ぶ。
芳川は観察者の目で彼の顔を覗き込んだ。
「それとも、懐かれるのは鬱陶しい?」
「ん…………いや……そうだな……騒がしい女よりは、悪くない」
当てつけられたと思ったらしい。芳川はすっと目を細めた。
「あらそう」
もう一段降りようと足を上げた途端、承太郎に肩を掴まれた。
え、と思う間もなく後ろに押しやられ、同時に承太郎は一歩前に踏み込んだ。途端、彼の膝がはじける。芳川ははっと息を呑んだ。
何の干渉も、飛び道具も見えなかった。
まるで見えない刃物で切り付けられたかのようにズボンの布地が裂け、血飛沫が舞い、大柄な体がぐらりと傾ぐ。
「空条博士ッ!」
伸ばした手は空を掴む。
芳川は目を瞠って、真っ逆さまに落ちて行く承太郎を凝視した。承太郎も目を見開いて驚愕の表情を浮かべていた。
その時である!
承太郎が叩きつけられんとする廊下に影が一つ! 現れた! その人物は!
「空条さ……ってうおおおおっはぐぇ!?」
との断末魔を残し、空条氏のクッションになった。
次いで現れた二つの影が2人に群がる。
「ちょ、ちょっと平気!? 死んでない!?」
「大丈夫か当麻ァ!?」
「お、親方……空から空条さんが……」
「よし、大丈夫だな!」
「不幸だ……」
芳川桔梗はふと階段の中腹で立ち止まった。二段ほど上にいる人物を見上げる。
承太郎は歩みを止めて、あさっての方向を見つめていた。
「どうかした?」
「いや……仗助の声が聞こえたかと思っただけだ」
「あら、案外過保護なのね」
「そうでもない」
芳川としてははなはだ薄味の返事をして、承太郎は再び階段を下りた。芳川の隣に並ぶ。
芳川は観察者の目で彼の顔を覗き込んだ。
「それとも、懐かれるのは鬱陶しい?」
「ん…………いや……そうだな……騒がしい女よりは、悪くない」
当てつけられたと思ったらしい。芳川はすっと目を細めた。
「あらそう」
もう一段降りようと足を上げた途端、承太郎に肩を掴まれた。
え、と思う間もなく後ろに押しやられ、同時に承太郎は一歩前に踏み込んだ。途端、彼の膝がはじける。芳川ははっと息を呑んだ。
何の干渉も、飛び道具も見えなかった。
まるで見えない刃物で切り付けられたかのようにズボンの布地が裂け、血飛沫が舞い、大柄な体がぐらりと傾ぐ。
「空条博士ッ!」
伸ばした手は空を掴む。
芳川は目を瞠って、真っ逆さまに落ちて行く承太郎を凝視した。承太郎も目を見開いて驚愕の表情を浮かべていた。
その時である!
承太郎が叩きつけられんとする廊下に影が一つ! 現れた! その人物は!
「空条さ……ってうおおおおっはぐぇ!?」
との断末魔を残し、空条氏のクッションになった。
次いで現れた二つの影が2人に群がる。
「ちょ、ちょっと平気!? 死んでない!?」
「大丈夫か当麻ァ!?」
「お、親方……空から空条さんが……」
「よし、大丈夫だな!」
「不幸だ……」
900:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/07/30(月) 05:07:46.70:lkRIyC9p0 (2/2)
これがボーイIIマンか…
これがボーイIIマンか…
901: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 05:29:59.61:JzOGj+Cg0 (32/35)
「すまんな、上条くん」
承太郎が身を起こす。
「助かった」
「いえ、着地地点にいただけで……」
「ンなことより承太郎さん!」
「来たのよ! 奴らが!」
「……そうらしいな」
承太郎は深く裂けた膝頭を押さえた。それに気づいた仗助が傷口に軽く手を当てる。すると手を退けた時、あのむごたらしい傷跡はきれいに消えてしまった。
芳川は愕然とその光景を見つめていたが、すぐに階段を駆け下りた。
「空条博士、奴らっていうのは……」
「それ以上来るな、芳川博士」
有無を言わせぬ響きに思わず足が止まる。
「お前たちもだ。それ以上動くんじゃあない」
承太郎は言って、美琴を後ろに下がらせた。
理知的な瞳は薄暗がりの廊下の向こうを見つめている。
「どうやら、すでに網を張られていたようだ」
仗助と上条はハッと目を瞠った。
よく目を凝らせば、廊下の床に緑色の線が張り巡らされていた。あのエメラルド色の触手である。
「さっきあれを不可抗力で踏んづけちまったが……触れた者をオートで攻撃するらしい。気をつけろ」
「き、気をつけろって」
「絶対に踏むな」
単純明快な警告である。
「すまんな、上条くん」
承太郎が身を起こす。
「助かった」
「いえ、着地地点にいただけで……」
「ンなことより承太郎さん!」
「来たのよ! 奴らが!」
「……そうらしいな」
承太郎は深く裂けた膝頭を押さえた。それに気づいた仗助が傷口に軽く手を当てる。すると手を退けた時、あのむごたらしい傷跡はきれいに消えてしまった。
芳川は愕然とその光景を見つめていたが、すぐに階段を駆け下りた。
「空条博士、奴らっていうのは……」
「それ以上来るな、芳川博士」
有無を言わせぬ響きに思わず足が止まる。
「お前たちもだ。それ以上動くんじゃあない」
承太郎は言って、美琴を後ろに下がらせた。
理知的な瞳は薄暗がりの廊下の向こうを見つめている。
「どうやら、すでに網を張られていたようだ」
仗助と上条はハッと目を瞠った。
よく目を凝らせば、廊下の床に緑色の線が張り巡らされていた。あのエメラルド色の触手である。
「さっきあれを不可抗力で踏んづけちまったが……触れた者をオートで攻撃するらしい。気をつけろ」
「き、気をつけろって」
「絶対に踏むな」
単純明快な警告である。
902: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 05:37:48.62:JzOGj+Cg0 (33/35)
美琴はぎゅっと眉を絞った。当然ながらその危険な網が見えることはなかったが。
その時、暗がりの向こうから小さな拍手が聞こえてきた。
パチン、パチン、とわざとらしいくらいゆっくりの拍手が。
「……なかなかの観察眼と言いたい」
一人の男が、暗がりから歩み寄ってきた。
詰襟のスーツに端正な顔立ち。神経質そうな瞳は承太郎をまっすぐ見据えていた。
「さすがは 『 あの方 』 が危険視するだけのことはある……承太郎」
「てめえは……」
承太郎が目を眇め、男――花京院はふっと相好を崩した。
仗助はまばたきして二人を交互に見やる。
「知り合いスか」
「いいや……見たことあるような顔だと思っただけだ」
途端、花京院の細い眉が吊り上がった。
彼の感情を反映するかのように緑色の結界が一瞬ぎらついたのを、上条は見た。
「空条承太郎……」
節くれだった人差し指が、承太郎を指し示す。
承太郎はむっつりとそれを睨み付けた。
「君、ムカつくよ」
「気安く人を指さしてんじゃあねぇぜ」
美琴はぎゅっと眉を絞った。当然ながらその危険な網が見えることはなかったが。
その時、暗がりの向こうから小さな拍手が聞こえてきた。
パチン、パチン、とわざとらしいくらいゆっくりの拍手が。
「……なかなかの観察眼と言いたい」
一人の男が、暗がりから歩み寄ってきた。
詰襟のスーツに端正な顔立ち。神経質そうな瞳は承太郎をまっすぐ見据えていた。
「さすがは 『 あの方 』 が危険視するだけのことはある……承太郎」
「てめえは……」
承太郎が目を眇め、男――花京院はふっと相好を崩した。
仗助はまばたきして二人を交互に見やる。
「知り合いスか」
「いいや……見たことあるような顔だと思っただけだ」
途端、花京院の細い眉が吊り上がった。
彼の感情を反映するかのように緑色の結界が一瞬ぎらついたのを、上条は見た。
「空条承太郎……」
節くれだった人差し指が、承太郎を指し示す。
承太郎はむっつりとそれを睨み付けた。
「君、ムカつくよ」
「気安く人を指さしてんじゃあねぇぜ」
903: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 05:38:43.93:JzOGj+Cg0 (34/35)
→TO BE CONTINUED....
→TO BE CONTINUED....
904: ◆dUQ5Sqf28g:2012/07/30(月) 05:39:56.82:JzOGj+Cg0 (35/35)
今日はここまでです
待っていて下さった方ありがとうございます
もう少しガンバリます。はい
今日はここまでです
待っていて下さった方ありがとうございます
もう少しガンバリます。はい
905:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2012/07/30(月) 05:49:31.28:2HKmvZEAO (3/3)
グレートだぜ
グレートだぜ
906:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/07/30(月) 05:52:11.85:hEBukFoE0 (1/1)
ここの承太郎はどんなテンションで花京院を倒すんだろう…
ともあれ乙
ここの承太郎はどんなテンションで花京院を倒すんだろう…
ともあれ乙
907:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/30(月) 11:48:51.99:4sjDpKFTP (1/1)
乙
こいつらテンション高すぎだろ
っていうか一方通行能力使ってないのね、なんだもやしじゃん
乙
こいつらテンション高すぎだろ
っていうか一方通行能力使ってないのね、なんだもやしじゃん
908:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/30(月) 12:07:58.00:AOWAdL3DO (1/1)
予想通りドイツ語はダメだった
後悔はしているが反省はしていないのでどんどん更新!はよ!
予想通りドイツ語はダメだった
後悔はしているが反省はしていないのでどんどん更新!はよ!
909:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/30(月) 12:17:19.35:SoCcbzPIO (2/2)
乙!
期待して舞ってる
乙!
期待して舞ってる
910:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/07/30(月) 18:40:08.01:BKO//dvIO (1/1)
相変わらず読み応えがあるぜ…
続きも待ってる!
相変わらず読み応えがあるぜ…
続きも待ってる!
911:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2012/07/31(火) 16:22:52.76:oQbm0Sxb0 (1/1)
乙
こうして見ると法王の緑ってかなり強いな
乙
こうして見ると法王の緑ってかなり強いな
912:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2012/07/31(火) 16:58:06.25:IYN9Bq1Zo (1/1)
おっつー
長距離射程な上に飛び道具持ちって卑怯ですよね
おっつー
長距離射程な上に飛び道具持ちって卑怯ですよね
913:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県):2012/08/01(水) 10:20:04.44:pxAmmtEYo (1/1)
しかしジョセフいないのに肉の芽どうすんだろう
しかしジョセフいないのに肉の芽どうすんだろう
914:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/08/01(水) 15:03:47.23:b/0LN0jWo (1/1)
そげぶでなんとかなれば
上条の存在意義がでるかもしれん
そげぶでなんとかなれば
上条の存在意義がでるかもしれん
915:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/01(水) 16:58:12.57:on8lSJNio (1/1)
どちらかというと幻想じゃなくて現実じゃないの肉の芽は
どちらかというと幻想じゃなくて現実じゃないの肉の芽は
916:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2012/08/01(水) 21:53:00.54:cjU8tKsp0 (1/1)
クレイジーダイヤモンド!
肉の芽をあの方まで治す!
クレイジーダイヤモンド!
肉の芽をあの方まで治す!
917:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/01(水) 22:19:27.84:/Q3JuIZq0 (1/1)
電撃でビリビリ?てやればいいじゃん
電撃でビリビリ?てやればいいじゃん
918:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2012/08/01(水) 22:33:27.10:6boc61E8o (1/1)
>>917
カキョーイン[ピーーー]気かww
>>917
カキョーイン[ピーーー]気かww
919:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/02(木) 11:32:14.68:brLpvPcg0 (1/2)
>>918このチンピラが俺をナメてんのかッ!
抜いた後だよ何で芽が刺さったまま電撃翌浴びせんだこの…
ド低脳がァ―――――――ッ!!!!!!!!!!
>>918このチンピラが俺をナメてんのかッ!
抜いた後だよ何で芽が刺さったまま電撃翌浴びせんだこの…
ド低脳がァ―――――――ッ!!!!!!!!!!
920:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/08/02(木) 12:04:58.44:H6bz7SS30 (1/1)
やかましい!!!!
うっとおしいぜ!!! お前らッw
やかましい!!!!
うっとおしいぜ!!! お前らッw
921:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2012/08/02(木) 13:25:35.75:PU/qzxNqo (1/1)
低脳って言ったな~~~ッ!!人を馬鹿にする言い方は良くないッ!!!
低脳って言ったな~~~ッ!!人を馬鹿にする言い方は良くないッ!!!
922:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県):2012/08/02(木) 15:04:46.26:VkGX+arvo (1/1)
>>919
ぼ、暴力はよくない……
>>919
ぼ、暴力はよくない……
923:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/02(木) 17:08:02.19:brLpvPcg0 (2/2)
>>921人を馬鹿にする言い方は良くないだと?くだらんなぁ?
この>>919の目的はあくまでも罵倒!あくまでも暴言を吐く事!!!
「道徳」や「良心」など…
どうでもよかろうなのだァァァァァァァ!!!!!!!!!!
このクサレ脳ミソがァァァァァァァァ!!!!!!!!!!
>>921人を馬鹿にする言い方は良くないだと?くだらんなぁ?
この>>919の目的はあくまでも罵倒!あくまでも暴言を吐く事!!!
「道徳」や「良心」など…
どうでもよかろうなのだァァァァァァァ!!!!!!!!!!
このクサレ脳ミソがァァァァァァァァ!!!!!!!!!!
924:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/02(木) 18:40:25.93:wquN51KIO (1/1)
なんだこのネタの応酬
なんだこのネタの応酬
925:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/08/02(木) 18:57:07.76:nhMeK03Io (1/1)
夏です
夏です
926:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県):2012/08/02(木) 19:10:29.37:fZClI4+Do (1/1)
いっつもこんな感じだろここは 最近は特にアレだけど
いっつもこんな感じだろここは 最近は特にアレだけど
927:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/08/02(木) 23:41:45.84:BQ7lnxlGo (1/1)
ジョジョスレはこれだから
ジョジョスレはこれだから
928:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/03(金) 00:43:11.81:IRUPeu+40 (1/1)
これだからいいんだよ
これだからいいんだよ
929:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/03(金) 00:44:48.09:hLe18/3IO (1/1)
ただ無駄レスで埋まるのは勘弁
ただ無駄レスで埋まるのは勘弁
930:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/08/03(金) 00:46:11.36:RwRqvUExo (1/1)
1000近いんだから大人しくせい
1000近いんだから大人しくせい
931:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/08/03(金) 19:54:20.27:EoEl/bqRo (1/1)
どうでもよいのだァーと勝てばよかろうなのだァーがごっちゃになる
どうでもよいのだァーと勝てばよかろうなのだァーがごっちゃになる
932:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/03(金) 20:51:05.31:/RH6I29l0 (1/1)
>>931
そして荒木のインタビューが載っている公式名言集には「勝てばよかろうなのだァー」しか載っていない・・・・・
ううっ、あんまりだァー
>>931
そして荒木のインタビューが載っている公式名言集には「勝てばよかろうなのだァー」しか載っていない・・・・・
ううっ、あんまりだァー
933:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/03(金) 23:48:47.37:q0WPO9GC0 (1/1)
チェリー嘗めてくる
チェリー嘗めてくる
934:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/08/04(土) 17:41:21.19:ZgqTcy0n0 (1/1)
だァー!
だァー!
935:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/08/04(土) 18:48:21.83:KyuRMDwQo (1/1)
本日に臭いな
本日に臭いな
936:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/06(月) 01:46:53.92:HmRwOOLDO (1/1)
やっと追い付いたと思ったらいつの間にやらこの時間……グレートだぜ
やっと追い付いたと思ったらいつの間にやらこの時間……グレートだぜ
937:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/12(日) 17:56:54.22:TUioxl/DO (1/1)
まだなのか
まだなのか
938:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/08/13(月) 07:58:14.85:a3t6xxd6o (1/1)
だなのか
だなのか
939:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/08/28(火) 04:52:24.55:hSHa1pWyo (1/1)
そろそろかな
そろそろかな
940:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/09/02(日) 14:38:36.76:bhr7/TADO (1/1)
今日こそ
今日こそ
941:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/09/06(木) 23:35:00.64:lrE1bkfv0 (1/1)
あ、わかった
>>1はジョジョHDにハマっていて書けないんだな
あ、わかった
>>1はジョジョHDにハマっていて書けないんだな
942:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国):2012/09/09(日) 18:55:43.66:jxbcB9Vk0 (1/1)
ゲームにwktkしてんじゃね
ゲームにwktkしてんじゃね
943:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/09/09(日) 21:31:31.24:YTY03b6IO (1/1)
>>942
そろそろ来て欲しいのはわかるがsageようぜ?
>>942
そろそろ来て欲しいのはわかるがsageようぜ?
944:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2012/09/29(土) 21:53:25.71:URwtvVexo (1/1)
まだなのか
まだなのか
945:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/09/29(土) 22:21:13.39:3r0XhJt4o (1/1)
>>1は・・・こなみじんになって死んだ・・・
>>1は・・・こなみじんになって死んだ・・・
946:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県):2012/10/01(月) 02:08:47.70:GX0uiIAy0 (1/1)
>>945
うそだ…>>1が…死んだなどと…
ウソをつくなああああーーッ!!
>>945
うそだ…>>1が…死んだなどと…
ウソをつくなああああーーッ!!
947:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/04(木) 01:47:48.24:x6kYC/lH0 (1/1)
「お前は!死んだはずの!」
チッチッ♪チッチッ♪
「ダイアー!!!!」
チッチッ♪チッチッ♪「YES!I am!」チッチッ♪チッチッ♪
「>>1じゃねえのかよォォォォォォォッ!!!!!!!!!」
「お前は!死んだはずの!」
チッチッ♪チッチッ♪
「ダイアー!!!!」
チッチッ♪チッチッ♪「YES!I am!」チッチッ♪チッチッ♪
「>>1じゃねえのかよォォォォォォォッ!!!!!!!!!」
948: ◆dUQ5Sqf28g:2012/10/12(金) 18:53:11.45:2ZdGSIFj0 (1/2)
すみません
とりあえず生存報告だけ
1000行きそうだけど次回の分くらいは入ると思うので
すみません
とりあえず生存報告だけ
1000行きそうだけど次回の分くらいは入ると思うので
949:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/12(金) 19:35:19.21:dkbCeznuo (1/1)
次スレどうすんの?次回投下の時立てる?
次スレどうすんの?次回投下の時立てる?
950: ◆dUQ5Sqf28g:2012/10/12(金) 23:48:37.53:2ZdGSIFj0 (2/2)
>>949
そのつもり
>>949
そのつもり
951:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/10/14(日) 14:05:31.67:8KGRC+ajo (1/1)
ジョジョのCMに仗助と億泰出ててワロタ
ジョジョのCMに仗助と億泰出ててワロタ
952:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/16(火) 10:55:50.00:OVazkdgdo (1/1)
次回投下はいつ頃だろう
次回投下はいつ頃だろう
953:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/17(水) 03:49:23.45:X89ZaEObo (1/1)
仗助と億安のキャスティング完璧すぎワロタンゴ
仗助と億安のキャスティング完璧すぎワロタンゴ
954:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県):2012/11/09(金) 20:44:05.33:7zg0V8MGo (1/1)
そろそろ更新がほC
そろそろ更新がほC
955:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2012/11/12(月) 18:36:07.76:DZ2Ac4xI0 (1/1)
>>951 康一くんを忘れんな
>>951 康一くんを忘れんな
956:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/11/12(月) 22:46:39.09:s7Xc9Wy/o (1/1)
上がったかと思ったら…
上がったかと思ったら…
957:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/11/29(木) 14:29:07.43:5gzPdRNDO (1/1)
やっと追いついた…
こんなおもしろいクロスがあったとは!夢中になって読んだよ
更新待ってます
やっと追いついた…
こんなおもしろいクロスがあったとは!夢中になって読んだよ
更新待ってます
958:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/12/10(月) 01:16:27.47:mt2F4bZl0 (1/1)
更新が欲しいですな
更新が欲しいですな
959:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/12/10(月) 18:50:45.20:zfSlvy2m0 (1/1)
あれま、更新きてないのか?
落ちちまうかな?これは
あれま、更新きてないのか?
落ちちまうかな?これは
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http://s2-d2.com/archives/16606867.html
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