1 ◆LKuWwCMpeE2011/10/21(金) 15:45:19.42IgieDq7DO (1/3)

前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310751369/

~注意~
・二日、三日に一度という投下ペース

・上条×初春

・禁書の知識も曖昧

・多分シリアス

・>>1ロリコン




2 ◆LKuWwCMpeE2011/10/21(金) 15:59:24.46IgieDq7DO (2/3)

~ごくごく簡単な登場人物紹介~

上条当麻:晴れて第一七七支部の仲間入り。初春といい感じ。

初春飾利:上条大好き妄想っ娘。上条に対してはやたらと積極的。
白井黒子:上条さんに何やら想いが芽生え、初春と上条さんがいちゃいちゃしてるとぐぬぬしちゃう娘。

佐天涙子:初春の恋を応援する娘。ただ知り合った上条さんの交遊関係にびっくりしてる。

御坂美琴:上条さん大好きっ娘。最近素直になりつつあるけど、やっぱりまだ恥ずかしさが先行。初春と上条の仲の進展に驚いている。

固法美偉:年齢不詳のダイナマイトボディな第一七七支部長。初春の恋を応援してる。




3 ◆LKuWwCMpeE2011/10/21(金) 16:00:24.45IgieDq7DO (3/3)

次回は二日以内に投下しにきます!


4VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)2011/10/21(金) 16:00:58.185jK3mhzAO (1/1)

>>1乙!!


ロリコンの記載は必要だったのか?


5VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県)2011/10/21(金) 16:04:01.00z8UuxiI/o (1/1)

>>1
スレ立て乙!
とりあえず前スレ↓

上条「俺がジャッジメント?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310751369/


6VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/21(金) 16:20:45.31vI3rC8xIO (1/1)

>>4
間違いなく必須項目


7VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/10/21(金) 17:24:02.24j+LexP5j0 (1/1)

スレ立て乙ー


8VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/10/21(金) 22:58:16.72GUcGb+tAO (1/1)

>>1
新しいスレ建て乙ノ

これからも楽しみにしてるぜ


9VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/21(金) 23:14:15.22RfQ+ck0DO (1/1)

上条当麻(ヒーロー)よ。お前は、御坂美琴(目の前の少女)を救えるか。美琴の葛藤(少女の幻想)をぶち殺せるか。今こそ立ち上がれ!上条当麻(ヒーロー)!!


10VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/21(金) 23:38:22.52Iwy1Viyl0 (1/2)

>>9お前前スレの>>989でも同じこと言ってただろーが
少し静かにしてくれよ、あとsageてくれ


11VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/21(金) 23:40:21.76Iwy1Viyl0 (2/2)

>>お前前スレの>>989でも同じようなこと言ってただろーが
少し静かにしてくれよ、あとsageろ


12VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/10/21(金) 23:45:44.08UD7TM8i1o (1/1)

>>10-11
とりあえず落ち着け



13VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/10/22(土) 01:07:10.73gjZXYzq50 (1/1)

>>9が痛いのは今始まったことじゃない

前スレ>>1000で初春が佐天さんの嫁になった件


14VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本)2011/10/22(土) 01:13:24.35LbUeT68+o (1/4)

>>13
何、重婚すれば問題無い
それか両方上条さんとくっつけばいいw


15VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国)2011/10/22(土) 01:32:16.44beOOSJoAO (1/1)

>>1
スレ立て乙

美琴と一方通行は原作でもこんな感じになりそうだな


16VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/10/22(土) 07:12:46.929ZMNIsaL0 (1/1)

>>13
初春は佐天さんの嫁で佐天さんが上条の嫁になればいいんじゃね?


17VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京西部)2011/10/22(土) 07:16:04.14GWwUWf0q0 (1/1)

スレ立て乙!
次も期待してるよ


18VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/10/22(土) 09:21:36.463lLVHoqco (1/1)

一方の擁護は相変わらずだな。いいわけにすらならない筋が通ってねえ意見ばかり
まあ、一方は許されるべきというところから論理展開が始まってるから破綻するんだろうな
挙句の果てに美琴も犯罪者ですが?とかいって被害者の人格攻撃を始める(しかもどこで議論してももれなく100%そういう奴が現れるのが怖い)



19VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)2011/10/22(土) 09:55:17.22Pq2zxhkAO (1/1)

>>18

議論するなら他スレに行け。スレが無駄に埋まるから書き込むな。


20VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/22(土) 12:32:41.40pC2S71ASO (1/1)

別スレでも思ったが一方批判のレスには必ず議論は他で~…的な追い出しレスが付くな、別キャラの批判賛美や多少の雑談には付きゃしないのにね

しかしスレが荒れそうな内容だと思ってたらホントに荒れたわ、擁護派否定派が極端に分かれてるからしょうがないが

いずれにせよ外野の声に惑わされず気を使わず、>>1の好きなように書いてくれ。期待してるぜ!乙!


21VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県)2011/10/22(土) 16:39:14.76aAlk6GmE0 (1/1)

>>18
否定派も同じだけどな、完全にどっちもどっちだわ

そんなことより初春さんマジ空気www


22ore2011/10/22(土) 22:22:28.62KK7NfS060 (1/1)

支援


23VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/22(土) 22:45:52.45hLRMLlnDO (1/1)

次の展開はどうなるのかな?


24VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本)2011/10/22(土) 22:51:24.04LbUeT68+o (2/4)

>>23
展開の予想レスはハードル上げるだけだからやめなさい


25VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/10/22(土) 22:51:30.43tl/VIDhAO (1/2)



ageんなよ…
来たかと思った…




26VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/10/22(土) 22:52:08.39tl/VIDhAO (2/2)



ageんなよ…
来たかと思った…




27VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本)2011/10/22(土) 22:53:47.55LbUeT68+o (3/4)

>>23
展開の予想レスはハードル上げるだけだからやめなさい


28VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本)2011/10/22(土) 22:57:11.25LbUeT68+o (4/4)

…サーセン


29 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:14:44.485S3YnrWDO (1/14)


上条「…………………………っ!」


 目の前まで迫った閃光が弾けて飛び散る。
異能の力を全て消し去る右手を背中に隠し、美琴の苦しみ、悲しみを全身で受け止めようとただじっと耐えるつもりであったのだが、雲散していく電撃を見て顔を歪めた。


上条「………………御坂」

美琴「どうして、右手を隠したの?」


今にも泣き出しそうな表情で美琴が呟く。
突き出した腕もそのままに、上条を睨みつけていた。

実際に、泣いているのかもしれない。
いや────泣いているのだろう。


美琴「戦えって言ってんでしょうが! 私の電撃の威力くらいわかるでしょ!? 無事じゃすまないわよ!?」

上条「………………俺は、戦わない」

美琴「あの時とは違う! 今度は本気なのよ!?」

上条「それでも、俺は戦わない」

美琴「何でよっ!!」


再び美琴の身体が帯電し、電気が美琴の身体に巻き付く。
美琴の激昂を表すかのように、激しく荒れながら迸り美琴の身体中を駆け巡っている。
そして突き出した腕に電気を集中させると、半歩踏み出して上条に指先を向け始めていた。




30 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:16:30.555S3YnrWDO (2/14)


美琴「何でよ……………………」

上条「…………撃てよ。今度は外すなよ」

美琴「右手を、出しなさい。さもなくば………………死ぬわよ」

上条「…………………………俺は、知っている」

美琴「何を、よ………………」


───そうだ、俺は知っている。


目の前の少女の、大切な者を守ろうとする心を。
唐突に現れた自分と同じ姿をした、大事な家族の為に自身の命を投げ出してまでも救おうとしていた事を。
たかが知り合い程度の男にも、ロシアまで赴いて助力しようとしてくれた事も。

痛みを知った目の前の少女が、強き優しさを持っている事も。


上条「撃てよ! それで悲しみ、苦しみが紛れるってんならそんなんいくらでも受け止めてやる!」

美琴「……………………………っ」

上条「お前は一人なんかじゃねえ! 白井はお前を慕ってくれる大事な後輩じゃねえのか!?」

美琴「……………………さぃ……」

上条「初春さんはお前を大事にしてくれるかけがえのない友達じゃねえのか!?
   佐天さんもそうだろ!? 今まで四人で頑張ってきたんだろ!?」

美琴「………………るさい……」

上条「妹達だってお前の事が大好きでしょうがねえんだぞ! 色々あったってのをお前に言わなかったのも、お前にこれ以上悲しくて苦しい思いをさせたくなかったっつってたんだよ!
   お前だってあいつらの事大好きなんじゃねえのか!?」

美琴「……うるさい…………っ」

上条「俺だって俺の言う事が全てが正しいなんて思っちゃいないし、俺がどうこう言ったってしょうがねえかもしれねえ………………

   ただ、お前を信じてるあいつらを、お前が信じられなくなってどうすんだよ!?」

美琴「うるさい………………っ!」



31 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:17:36.105S3YnrWDO (3/14)


上条「許せとは言ってねえ! 俺だってあんな事があって、今でも許してねえさ! お前の許せない気持ちだってわかってるさ!
   だからってあいつらまで信じられねえなんて事は違うんじゃねえのか!?
   友達だろ!? 家族なんだろ!?」

美琴「うるさいっっ!!」


 美琴の突き出した指先に、一際更に電気の量が増して閃光の塊のようなものへと収束されていく。
その相当な質量は熱を帯び、視界を揺らがせていた。
学園都市第三位のレベル5の美琴のその力は、間違いなく『一人で軍隊と戦える』ほどの能力者だ。
その美琴の全力で放つ電撃は、一瞬で物質を蒸発させてしまうのだろう。

ごちゃごちゃになった頭では、もう何も考えられない。
考えたくない。
信じられない。
全てが裏切られたような気がして、どこまでも孤独を感じて。


上条「なあ、御坂………………!」

美琴「ぃゃ………………、来ないで…………っ!」


だからこそ、上条は近付く。
それを撃ち込まれようが、何をされようが。
目の前の一人の人間を救えないで、何が『自分の掲げた正義を貫く』だ。


この右手なんざ使わなくとも、お前の幻想はぶち殺してやる。


美琴「いやああああああああぁぁぁぁっっっ!!」

上条「っ!!」


そして美琴の指先に集まった何億ボルトもの電気の塊は、幾千もの光の矢となってあらゆる所へと突き刺していった。



32 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:18:41.215S3YnrWDO (4/14)


美鈴「………………………………」

一方通行「………………………………」

打ち止め「………………………………」

番外個体「………………………………」


 あれから、美鈴は一言も発しない。
それは何かを考えているようで、思い詰めているようで。
娘の苦悩に気付けなかった悔しさか、娘が苦しんでいる事の悲しさか、ただ口をキュッと閉じていた。

その美鈴の様子を窺うように、一同もただじっと見ている。
計り知れない重みを背負わせてしまった。
絶望で塗り付けてしまった。

一方通行の赤い瞳が揺れる。
許しを乞おうなんて思っちゃいない。
許してほしい訳でもない。
オリジナルの美琴本人がどう思おうが、構わない。
一番に憎み、そして許せないのは自分自身だから。


打ち止め「………………………………」


打ち止めの右手を掴む感触に安心感の様な不思議な感覚を覚えてはいけないのに。
打ち止めに向けられる笑顔に癒されてはいけないのに。
生み出されて間もないクローン達だとはいえ、家族を失っていく憤りと悲しみは感覚的に残っているはず。
妹達の中で特別な意味を持つ最終個体の打ち止めは特にそうだろう。
妹達の負の感情を今でも拾い続けている番外個体もそうだ。

誰も、自分の事を許している者など一人もいない。



33 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:19:46.605S3YnrWDO (5/14)


 それでよかった。よかったはずだった。
だが打ち止めは、そんな自分と一緒にいる。
いてくれる。
口では憎まれ口ばかり吐いてばかりいるが、実際は違う。


『これ以上は、一人だって死んでやる事は出来ない』


自分だって、これ以上死なせてなるものか。
自分の身と引き替えにしてでも、妹達を守ると決めたのだ。
その行動を評価してもらおうなんてこれっぽっちも思っちゃいない。
ただそうしたかったから、そうするだけだ。


美鈴「………………なら、美琴ちゃんと。しっかり話し合ってきなさい。あの子も、きっとわかってくれるから。本当は、誰よりも優しい子、なんだから」

一方通行「………………………………あァ」


娘の事を大切に案じる美鈴の言葉に、一方通行は頷く。
罵ってくれるのならそれでいい。
殴られても、抵抗はしない。

美琴の心境が今、どれだけ荒れているのかはこの学園都市の街全体の電気系統に一瞬影響を及ぼしたその様子からはわかっている。
自分が向かうのはお門違いかもしれない。
ただ、じっとだってしれられなかった。


美鈴「あの子をよろしくね。………………それに


   『私の娘達』を、守ってくれてありがとう」


一方通行「……………………ッ」

打ち止め「!」

番外個体「!」




34 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:21:21.345S3YnrWDO (6/14)


そしてその美鈴の言葉を聞くや否や、言葉を詰まらせながらも一方通行はチョーカーのスイッチを入れてこの場から飛び去っていった。
その背中を目で追いながら、美鈴は軽く一息つき頭に手を置く。

被害者となった娘の親として、そんな事を言ったのは間違いなのかもしれない。
一万回以上娘が殺されたのも同意義な、そんな実験を無しにも勿論出来ようにもない。
ただ美鈴の怒りの矛先は、彼だけに向けるのも違う気がして。
まだ自分の中での答えは見つかりはしないのだが。

怒りを向けるのは、この学園都市──────そんな気がしていた。


美鈴「……………………打ち止め、ちゃん」

打ち止め「……………………はいって、ミサカは、ミサカは…………返事を、してみる」


その姿を見る度、美琴と過ごした日々を思い出す。
何かとつけて甘えてきた愛しくて仕方のない、大事な娘を。
カエルのぬいぐるみの糸がほつれただけで泣き出してしまう、優しい娘を。
直してあげた翌日の朝の嬉しそうな顔を見せた、愛しい娘を。


美鈴「そんな畏まらなくてもいいわよ。あなたも私の娘、なんだから、ね?」

打ち止め「………………っ」

美鈴「あなたもそうよ? 私の大事な、娘」

番外個体「………………ミサカは………」

美鈴「ほら、お母さんが抱きしめてあげる」ギュ

打ち止め「……………………わっ」


打ち止めの身体を抱きしめる。
小さいその身体は、クローンなんかではない。
生きている、確かな娘なのだ。




35 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:22:30.965S3YnrWDO (7/14)


美鈴「ほら、あなたも」ギュ

番外個体「ちょ、ちょ………………」

美鈴「遠慮しないの。私の、大事な………………娘なんだから」


ほんの少しの抵抗を見せる番外個体だったが、打ち止め共々肩を抱き寄せると口にしかけた言葉を飲み込み、ただじっとしていた。


打ち止め「……………………えっと……、お母様……ってミサカはミサカは、遠慮がちに呼んでみる………」

番外個体「………………………………」

美鈴「ふふ、何?」

打ち止め「あったかい、お母様………………」


親の温もりを知らないこの子達にも温もりを与えるように、愛情を注ぐように。

ただ美鈴は、じっと二人の身体を抱きしめていた。




36 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:23:24.825S3YnrWDO (8/14)


 爆音と共に煙が遠くの方で上がっている。
学園都市の至る所を空間移動でくまなく探し回っていた初春と黒子の二人は、それに息を飲んだ。


初春「あ、あれは………………!?」

黒子「まさか………………!」


こちらは空間移動に対し、先に去っていた二人は自分の足。
それでも探せない、追いつけない状況に次第に焦りの様なものを感じてきた矢先の事であった。

ビルの屋上から街全体を見渡す様にしていた二人の目線は、ここから離れた所の河に架かる橋に止まる。
一際大きい爆音を轟かせ、そして青白い光が一瞬だけ瞬いて消える。

その青白い光は──────間違いなく、電撃だった。


初春「あれは、御坂さんの………………!?」

黒子「お姉様の、電撃………………!」


美琴の後を追って行った上条が彼女に追いつけたのかはわからない。
しかし今美琴があれだけの電撃を放つという事は、何かがあった証拠だ。
尋常ではない量の土煙が上がり、爆音がここまで聞こえる。
只事ではないその様子に、二人の手に汗を握らせていた。


初春「当麻さんは……………………!?」

黒子「行きますわよ、初春!」

初春「はい! どうか無事でいてください………………当麻さん、御坂さん…………!」


ただ、大切な二人の無事を願う。
こうして彼らに追い付くのも、黒子の力を借りるしかない自分の無力さを嘆くのだが、今はそれよりもとにかく二人がいるであろう場所へと向かうのが先決だ。



37 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:24:14.365S3YnrWDO (9/14)


行ったとして、自分に何ができる?
事情も知らない、力もない自分に、一体何が?

でも、でも。
だからといって、ただじっとするだけなんて出来やしない。
彼に寄り添いたい。
少しだけでもいい、彼の力になりたい。

大事な友達の美琴も守りたい。
悲しみに暮れているのなら、励ましてあげたい。




そして初春の視界が、黒子の空間移動によって切り替わる。


目の前にあったのは、帯電して火花を散らす橋の鉄骨と。

現在進行形で崩れ落ちていく巨大な頑丈であるはずの陸橋と。


そして、立ち込める土煙の中で微かに見える──────


   真っ逆さまに河へと落ちていく、二人の姿だった。



初春「当麻さんっ!! 御坂さん!!」

黒子「お姉様!! 当麻さん!!」



二人の目には、それがやたらとスローモーションに見えた。



38 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:25:18.575S3YnrWDO (10/14)


上条「御坂っ!!」

 突然、気が失ったように倒れていく美琴に上条は叫んだ。
美琴が放った最大級の電撃は、再度上条の目の前で雲散し橋に架かる鉄骨を溶かし。
そして、崩落させていった。

 結局、美琴は自分に電撃を当てなかった。
美琴の戦いたくないという気持ちは十分わかっていたし、ならどうすればいいという苦悩も感じられた。

そんなの自分だってわかりはしない。
どうすれば美琴が救われるのか、誰もが笑えるハッピーエンドになれるのかなんてわからない。
ただ放っておく事など、出来もしなかった。


ズガアアアアアアァァァァンッッ!!


上条「ぐっ!?」


突如、自分と美琴の間の橋のコンクリートに亀裂が走り寸断させていく。
言いようもない危険を感じた。
だが、咄嗟に倒れ付した美琴に駆け寄ろうと足に力を入れた瞬間、その支点となった足に衝撃が走る。


上条「がぁっ!!」


行き場を失った電撃の残滓が、上条の足の勢いを殺し焦げ跡を作った。
電撃使い最強が放ったその電撃は、いくら残滓と言えども大の大人でも楽に卒倒させるほどだ。
上条とて例外ではなく、一瞬身体の自由を奪い上条を倒れさせる。


上条「く、クソ…………御坂!!」


亀裂はやがて地割れとなり、接点を失ったコンクリートは次々に河へと落ちていく。



39 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:26:11.785S3YnrWDO (11/14)


美琴は動かない。
亀裂の軌道を見るに、美琴のいる場所が崩れ落ちるのにもう数秒も掛からないのだろう。
だが電撃を浴びて一時的に動かなくなったこの足では、美琴を連れ出す事も、美琴のいる場所に移動する事さえ出来やしない。

ただ、崩れ落ちるのを待つしか出来なかった。

完全に地面が割れ、倒れ伏した美琴の身体が傾く。
そして、自分の場所も一際大きな振動が起きると、途端に浮遊感を覚えた。


上条「があああああぁぁッッ!!」


足は痺れて動かない。しかし、幻想殺しを持つこの右手だけは、動く。
落ちていく身体の体勢を何とか整え、瓦礫に右腕を押し出して自身の身体を落ちていく美琴へと近付けた。

力無く頭から落ちていく美琴の身体をその右手で確かに掴むと、瓦礫から身を守るように自身の身体で包み込む。


上条「……………………くっ、どうしようも、ねえか…………!」


空など飛べやしないし、河に落ちた所でこの足では水気を含み重みが増す中、泳げもしないだろう。
ましてや気を失った美琴を抱えてで、岸までは何十メートルもの距離なのだ。
結局、幻想殺しがあったってこういう状況では使えもしない。
自分の無力さを感じながら、ただ着水するのを待つしかできなかった。




40 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:26:59.255S3YnrWDO (12/14)


初春「当麻さああああああぁぁぁぁんっっ!!」


少女の叫ぶ声が聞こえる。
遠くに見えるその姿は、間違いなく彼女だ。

ジャッジメントになるのを手助けしてくれた少女。
同僚となった少女。
何かと慌てる少女、顔を赤くする少女。
胸の中で泣く少女、嬉しそうな表情をする少女。

大切だと、そう思える少女。



上条「………………はは、わり、初春さん。明日、飯行けそうにねえや」



落ち行く身体をそのままに、上条はそっと呟いていた。


そして。


大切な者を見付けたかつての敵は────────



一方通行「じっとしてろ、三下」


上条「………………っ、一方通行!!」



間違いなく、彼もまたヒーローだった。




41 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:27:54.765S3YnrWDO (13/14)

みんないつもありがとう
2スレよかったら見てやってくれさい!

また次回!


42 ◆LKuWwCMpeE2011/10/23(日) 00:28:57.325S3YnrWDO (14/14)

2スレ   → ×
2スレ目も → ○


43VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/10/23(日) 00:31:07.48E91ziojJ0 (1/1)

>>1乙


44VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/10/23(日) 00:40:55.03zQKCQsbRo (1/1)

>>1乙

いいとこで区切りやがってwwwwww


45VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/23(日) 01:28:55.67hxFC1hC/0 (1/1)

>>1乙

すげぇなwktkが止まんねぇ
そして御坂パパもくるのかね?


46VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/10/23(日) 01:45:11.78DhpesepAO (1/1)



良いところで区切るなよ、生殺しじゃないか


47VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/23(日) 01:45:43.16Pt1HYrdDO (1/1)

>>1乙

ってか、鉄橋壊すほどの威力とは・・・。




48VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/10/23(日) 03:08:23.33LhBZxFsAO (1/1)

電気の本来の破壊力は、高圧電流にごっついスパナつっこんだら跡形もなく蒸発するくらいのもんだしな……
>>1超乙


49VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/10/23(日) 08:22:29.80BNBag1IHo (1/1)


ヒーローさんマジヒーローさん


50VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/10/23(日) 08:39:50.34u7PVwVSWo (1/1)

やっぱり俺は一方通行さんだわ
かっけぇなぁ…


51VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国)2011/10/23(日) 10:31:31.25I6ZPBuWAO (1/1)

>>1乙

一方さん良いとこ持ってくねぇ


52VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県)2011/10/23(日) 11:19:06.12sptj+TMi0 (1/1)

ダークヒーローキタ――――(゜∀゜)――――!


53VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/10/23(日) 13:36:55.908z+m9e3AO (1/1)

やっべー

まぢかっけェ……
惚れちまったぜ一方通行ァァァ!!


54VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)2011/10/23(日) 20:20:43.66TuVNQ2qAO (1/1)

俺の嫁来たー!!



55VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/23(日) 21:40:03.68e5Ru8hHF0 (1/1)

>>54
嫁にしたいのか、嫁になりたいのか…自分に素直になるんだ


56 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:15:48.25clMnDhzDO (1/14)


 ベクトル操作──────。
あらゆる運動量を解析し、操作する能力。
熱量であろうが光であろうが電気量であろうが、触れただけで自分の意のままに操る事ができる、学園都市最強の能力だ。
落ちていく二人の重力落下の運動量を変換し、岸の方へと向ける事も造作もない。
空中で瓦礫を静止させ、進路に邪魔なものをどかし二人を岸へと一方通行はただ無言で運んでいった。


上条「おぉ………………すげえな」

一方通行「下手に右手を動かすなよ。途中で落ちたくねェならな」


その最強の第一位を負かした右手に細心の注意を払いながら瓦礫が散乱する空中を抜けると、止まっていた瓦礫は本来の落下運動を取り戻し次々と水しぶきを上げて河へと落ちていった。
美琴を抱えている上条の背中を後ろから持ち上げるようにして、岸へと方向進路を進める。
段々と岸に近付くと、スピードを緩めてゆっくりと着地した。


上条「悪い、一方通行。助かった」

一方通行「………………………………ン」


上条の腕の中で気を失っている美琴に視線をやりながら一方通行はそれだけ返事をする。
いまだ崩落が続く鉄橋の轟音が轟く中、ただ黙ってその様子を見つめていた。


上条「おい、御坂、御坂! しっかりしろ!」


いまだ目を開けない美琴に上条が心配そうな声を掛ける。
肩を揺らしているのだが、起きる気配のない美琴に焦りの色を見せはじめていた。


一方通行「心配すンな、時間経てばじきに起きる。『電池切れ』みてェなもンだ」

上条「そ、そうなのか?」


 恐らく、高ぶった感情の中で限界まで能力を出し過ぎた故の枯渇。
学園都市製の頑丈なあの鉄橋をあそこまで崩壊させたのだ、並大抵の出力ではなかったのだろう。
剥き出しになり溶けて形が変わった鉄骨、粉々に粉砕されたコンクリート。
あの鉄橋をここまで崩落させる事ができたのは、レベル5の力を持つ美琴であるからだった。

その一方通行の言葉に上条は胸を撫で下ろしたか、ホッとした様な一息を吐いていた。



57 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:17:32.95clMnDhzDO (2/14)


初春「と、当麻さんっ!!」

黒子「と………………上条さん…………、お姉様…………」


すると、二人の少女の声が響き渡る。
駆け寄って来るその姿は、本当に心配して今にも泣きそうな表情だった。


上条「心配かけたな。大丈夫だ」

初春「当麻さぁん………………っ!」

上条「のわっ! ちょ、い、いきなり抱き着かないでー!?」

初春「よかった………………よかったぁ…………っ!」


膝の上に美琴の頭を乗せ、座った体勢の上条の首元に初春がしがみつく。
ふわっといい香りと柔らかい感触に襲われた上条は慌てふためくが、まだ痺れが残る身体を動かせずにただその感触を味わうだけであった。


初春「当麻さん………………ヒグッ、グスッ…………当麻さぁん………………」

上条「………………心配、かけちまったな」


初春の声に水気が混じり出した事に気が付くと、上条はもう一度安心させるように言う。
動かしにくい身体の中で一つだけ動かす事のできる右腕を初春の頭に置くと、そっと優しく撫ではじめた。


黒子「…………っ、あの……お姉様は………………?」

上条「ああ、御坂も大丈夫だ。電池切れのようなもんなんだってよ」

黒子「そう、ですの………………」


上条の膝の上の美琴の顔に黒子は目をやる。
苦しそうにも見えるその寝顔に黒子も憂いを秘め、しかし上条のその言葉に安堵の色も見せはじめていた。

 その雰囲気から、本当に心底心配していた様子が窺える。
この場にいるその二人にとって、かけがえのない先輩で、親友で、仲間で。
こうして二人は追ってまで来てくれた。
悲しみに濡れた美琴を放っておけずに、慰める様に寄り添い合う様に。


───………………ったく。ほら、お前は一人なんかじゃねえぞ、御坂。


何もかも信じられない──────そんな苦痛、孤独などあってたまるか。
確かに繋がった絆は、そう簡単に切れるもんじゃない。
膝の上の美琴にもう一度目をやり、上条は静かに一息ついていた。



58 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:18:24.33clMnDhzDO (3/14)


黒子「お姉様を助けてくださって、感謝致しますの」

一方通行「あァ?」

初春「本当にありがとうございました」


 頭を下げた黒子と初春に、一方通行は怪訝そうに聞き返す。
いきなり何を言い出すのだ、と信じられない顔をするだけ。
この二人があの実験の事を知っているのかどうかは分からないのだが、あの時の美琴の言葉を確かに耳にしたはずだ。


『一万人以上の人間を殺した』


そんな人間に、感謝の念を告げる意味がわからない。
『普通』の世界の人間からしたら『闇』の中の畏怖の存在であるはずの自分。
美琴の言葉通り、血塗られた道を歩んできた。
オリジナルにあれだけの苦痛を与えてきたと言うのに。

それなのに、なぜこの二人はそんな事を言い出すのだ。


上条「ああ………………一方通行が来てくんなかったら、まじで死んじまうとこだったかもな」

黒子「わたくしもこのお二人に危険が迫ったというのに、冷静になれなくて………………演算もうまくできずにいて、空間移動能力者の端くれとして、ですが………………名折れですの」

初春「仕方ないですよ、白井さん…………私も、何もできませんでしたから………………」


一方通行「……………………………………」


黒子「貴方のお力があったからこそ、お二人は助かりましたの………………本当に、ありがとうございました」

初春「ありがとうございました…………っ」

上条「………………ありがとな、一方通行」


 この壊す事しかできなかった能力が、打ち止めに会ってからは変わった。
守るべきものを守るという能力の使い方も知った。
知る人ぞ知る、最強最悪の第一位のこの存在が、意味が変わった。



59 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:19:19.46clMnDhzDO (4/14)


一方通行「俺と超電磁砲の間に何があったのか………………知ってンのか?」

黒子「………………………………いえ、存じておりません。ですが」

初春「それは御坂さんの口から聞くまで、聞きません。きっと言ってくれなかったのは」

黒子「わたくし達の、信頼が足りなかったのかも知れませんの。ですので、お姉様からお話になるまでは」

初春「私達は、何も聞きません」

一方通行「……………………そォかい」


どこまでも仲間思いで、お人よし共。
だがそれは確かに信頼している大事な仲間だと言うことを覚らされる。
自分も、あの実験が始まる前に会っていたらどうなっていたのだろう。


上条「ん? どうした? 一方通行」

一方通行「なンでもねェよボケが」

上条「ぼ、ボケって………………そりゃ確かにお前に比べたら俺なんか頼りねえかもしんねえけどなぁ…………」


初春「お二人って、本当に仲がいいんですね」クス

黒子「ええ。お互いの事をわかり合っていらっしゃるみたいな」


上条「そうか? そう見えるか?」

一方通行「あァ? ンな訳ねェだろォが」

初春・黒子「ふふ……」クスクス

一方通行「……………………………………」


ああ、何でこの二人がさも普通に自分と接するのかがわかった。

 上条が、自分にそう接しているから。
全てを救いしヒーローが、自分の様な『悪党』にも笑いかけてくれるから。
この二人も上条に無条件な信頼を寄せているのだろう。
その上条が信じている者は信じられる、といった具合にこの二人も自分に普通に接しているのだ。



60 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:19:59.77clMnDhzDO (5/14)


一方通行「……………………チッ、おい、帰るぞ」

上条「おお、と言いたい所だけども」

一方通行「あン?」

上条「足、痺れて動かねえんだ。悪い一方通行、送ってってくんねえか?」

初春「と、当麻さん大丈夫ですかっ?」

上条「ん、多分すぐに治ると思う。御坂は空間移動で送ってってやってくれるか?」

黒子「ええ、了解致しましたの。先に寮に送り届けていきますわ」

上条「悪い、頼んだ」

初春「私も白井さんに着いていきます。一方通行さんすみません、お願いします」

一方通行「………………………………あァ」


やはり、コイツはどこまでもヒーローだ。
普通に接しているつもりが、それがクソッタレの悪党であるはずの自分さえ救い上げてしまうのだから。




61 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:20:50.81clMnDhzDO (6/14)


「なんかすっげぇ音しなかったか?」

浜面「聞こえたか? やっぱ」


 ファミレスから外に出ると、遥か遠くから何やら物騒な破壊音が響いていた事に三人は怪訝な声を上げていた。
何か、建物が崩れたか大型トラックが猛スピードで衝突事故を起こしたかの様な、そんな音。
夜の帳が下りるのが近い時間帯で、帰路に着く周りの学生達もその轟音にざわつきはじめている。


半蔵「大方、どっかの馬鹿が暴れてるんじゃねえの?」


 まあしかし身内内の案件ならば、一応は半蔵の元に連絡やら何やらが来るのであろうが半蔵の持つ携帯電話は無反応を貫いており、そこまで心配するほどの事でもないのだろうと軽い口を叩いた。


浜面「ま、いっか」

「それより今日はこれからどうすんだ?」


あれから三人の間で様々な議論が交わされたのだが、効果的な結論は見出だせなかった。
何しろ、キーワードが少ない。

『DMリカバリデバイス』『研究者』『わかる者はわかる』

そもそもDMというものがわからないのだから仕方がない。
ダイレクトメールか? ダイレクトマーケティングか?
そうだとしてもリカバリデバイスというのがどうも繋がりにくい。

浜面も無い頭を振り絞り、何とか捻り出そうとうんうんと唸るのだが効果は無い。
やはり浜面は浜面という事なのだろう。


浜面「うるせえよ!?」

半蔵「あぁ? なんだいきなり、喧嘩売ってんのか?」

「ほう?」ポキポキ

浜面「だあああああ違う! すまん、なんか電波が入った」


浜面の言葉で眉間に皺を寄せた二人が浜面を睨みつけると、取り繕う様に弁解したがそれはまあいいだろう。



62 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:21:39.22clMnDhzDO (7/14)


 もう完全下校時刻は近いこの時間帯、冬の寒さもより厳しさを増してくる。
これから三人はどうしようかね、とお互い言い合いながら取り敢えずはスキルアウトのたまり場の所まで移動しようとしたのだが、何かを思い出したかの様に浜面は立ち止まった。


浜面「ん? ぬ、そういえば研究者と言えば」

半蔵「どうした?」

「んー?」


最近──────というか昨日知り合ったあの女性はそういえば『元』研究者か何かだったとか言ってなかったか。
黒髪の、首元までのセミロングが似合う結構綺麗なあの人。


浜面「……………………いたわ。一人、知ってる人が」

「まじか? おいこら、早く言えよ馬鹿面」

半蔵「ふーん、お前が研究者と知り合いなんて珍しいな」


二人の割と酷い言い草にブチ切れながら華麗にスルーしておき、浜面はどうしようか考える。


半蔵「んで。その研究者の名前は?」

浜面「ああ、芳川桔梗って人でな」

「キキョウ? 珍しい名前だな。女か?」

半蔵「ヨシカワ………………ヨミカワと語感が似てるな…………」

浜面「ああ、つってもその人、黄泉川の同居人だぞ。昨日黄泉川に飯を呼ばれてな、そこで知り合った」



半蔵「……………………………………は?」



 浜面の言葉に半蔵の空気が変わった。
ピシッという凍り付いた様な音がここまで響いた気がする。



63 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:23:12.44clMnDhzDO (8/14)


半蔵「黄泉川に飯を呼ばれたってどういう事だ………………?」ギラ

浜面「ああ、昨日帰ろうとしたら偶然鉢合わせてな。そしたらウチで飯を食っていかないk………………ってちょい待て半蔵! なに武器出そうとしてんだよ!?」

半蔵「なんで俺を呼ばなkいやぁ前から浜面とは決着を付けておかなきゃいけない気がしてねぇ?」

「途中まで心の声が出てんぞー」


ああ、そういえば半蔵はこういう奴だった。
大分前の話だが、浜面ともども黄泉川に捕まった事があり、その時に半蔵は黄泉川に恋心を抱いたという。
その様子を見るに、その想いは今だ萌え続けているようだ。


浜面「ま、駄目元で連絡取ってみるか?」

半蔵「おうおう、是非そうしよう!」

「ノリノリじゃねーか」


 何とか半蔵を宥め、浜面は携帯を取り出す。
ピ、ピ、とボタンを押す浜面に目茶苦茶羨ましそうな視線を寄越す半蔵の視線を払い落とすと、携帯を耳に当てた。



64 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:24:08.37clMnDhzDO (9/14)


trrrrrrrr──────trrrrrrrr──────


浜面「………………………………」

「………………………………」

半蔵「………………………………」ワクワク


trrrrrrrr──────trrrrrrrr──────


浜面「………………………………」

「………………………………」

半蔵「………………………………」テカテカ


trrrrrrrr──────trrrrrrrr──────


浜面「………………………………出ねえ」

半蔵「」ショボン

「めちゃめちゃ落ち込んでる……」


忙しいのか、浜面の携帯から聞こえる単調の機械音に変化はない。
半蔵のマジ泣きしそうなくらいの落ち込みに冷や汗を垂らしながら浜面は携帯の電源ボタンに指を置こうとすると、変化が起きた。




65 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:25:06.80clMnDhzDO (10/14)


黄泉川『浜面? どうしたじゃん?』

浜面「あ、黄泉川。すまん、忙しかったか?」

半蔵「!」パァッ

「めちゃめちゃ喜んでる……」


電話口から黄泉川の声が聞こえたのだが、何やら騒がしい様な物音が混じっている事に浜面は怪訝そうな表情を浮かべた。
人混みの中なのか、色々な人の声が聞こえている。


黄泉川『んー、そうじゃん。ちょっと事件? 事故? その現場検証中でさ』

浜面「それってさっきのバカでけぇ音したやつ?」

黄泉川『そうじゃん。って浜面、なんか知ってるのか?』

浜面「いんや、ファミレスで駄弁ってたらその音がこっちまで響いてきてな。つー事は今は家にいねえのか」

黄泉川『いないけど、どうしたじゃん?』

浜面「あー…………いないんならいいや、悪かったな、忙しい時に」

黄泉川『いや、こっちこそ悪かったじゃん。なんか急用だったじゃん? 終わったら連絡するか?』

半蔵「」ブン、ブン!

浜面「(近ぇ…………)あ、ああ、頼むわ。それじゃ」pi


どうやら先程のあの轟音の案件で駆り出されているらしく、アンチスキル出動までの大事に何だろうと思いながら電話を切った。
っつーか半蔵、それだけ黄泉川に会えるのを楽しみにしているんだよというツッコミも入れたくなったのだが、まあ黄泉川からの連絡を待つ事にするかと浜面は二人を伴ってスキルアウトのたまり場で時間でも潰す事にした。



66 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:25:50.68clMnDhzDO (11/14)


佐天「そうなんだ…………うんわかった、皆にもそう言っておくね」pi

絹旗「どうでしたって?」

佐天「うん、御坂さんは大丈夫だって。今日はもう寮に戻るらしいけど、心配いらないって言ってた」

インデックス「とうまは?」

佐天「一方通行さんと一緒に戻ってくるって言ってたよ」

インデックス「そっか、よかったんだよ」


 セブンスミストに残った少女達にこの場を去って行った初春からの連絡を受け、無事だという事がわかると全員ほっと一息ついていた。

 佐天も気が気ではなかった。
美琴のあんな高ぶった感情、悲愴めいた表情は見た事がなかった。
憧れとも言える能力者の第三位である前に、美琴はやはり佐天にとっても友達で、仲間で。
心配しない訳がなかった。

何が美琴をそうさせたのかはわからない。
一方通行にあの糾弾を浴びせ、走り去ったのを見て何かがあったのかはわかったのだが、その要因はわからない。

だが美琴が言うほど、一方通行は悪い人間ではないのではないかという気持ちが沸いて来る。
クレープを奢ってくれた────まあそれは抜きにして、インデックスや打ち止めに対する接し方、そして初春と上条の二人の仲を頭の中で思い浮かべて楽しそうな表情を見せた一方通行なのだ、それは普通の人間と大差なく感じ取れていた。

第一位という佐天にとって考えられない世界の人間であるのだが、いざ話してみるとそれはまあちょっぴり口は悪いが美琴の言う極悪人の印象はなかった。



67 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:26:41.57clMnDhzDO (12/14)


絹旗「………………超災難でしたね、第一位も」

佐天「ん? もあいちゃん何か知ってるの?」

絹旗「もあい言わないで下さい」

インデックス「もっあっいー、もっあっいー♪」

絹旗「もあい言うなって言ってンじゃないですかァ!」

佐天「」

インデックス「」


窒素を纏めはじめた絹旗に地雷を踏んだとインデックスが少し反省していると、先程見た三人組が近付いてきた事に気が付いた。
長身のポニーテールの女性が何やら手招きをしているのだが、誰か知り合いなのだろうか。


インデックス「かおり、どうしたの?」

神裂「ええ、少しお話があります」

インデックス「うん、わかったんだよ。ちょっと行ってくるね、るいこ、もあい」

絹旗「」ピキッ

佐天「ど、どーどー」アタフタ


血管がキレそうな音がした事に佐天は冷や汗を隠しながら何とか絹旗を宥める。


しかし、一体何者なのだろう。
二人は日本人だろうと思われるのだが、もう一人は外国人、そしてインデックスと同じ修道服を着ている。
この学園都市ではコスプレじゃなければ見る事のないその恰好に、佐天と絹旗は気にかかっていた。
怪しい者達、なのだろうか。

しかしインデックスと彼女達はどうやら知り合いらしく、それがわかると行ってらっしゃいと手を振って送り出す事にした。
まあ名前で呼んでもいたし、恐らく大丈夫なのだろう。



68 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:27:23.93clMnDhzDO (13/14)


佐天「あの人達は一体………………」

絹旗「ええ……………………、一体──────



         超何CUPくらいあるんでしょうかね…………」


佐天「あ、そっち?」


胸に手を当ててワキワキとさせている絹旗に力無くツッコミを入れる。
というかその手の動きは何かイヤらしいからやめなさい。






インデックス「それで、どうしたの?」

神裂「ええ。実は私達が学園都市に来たのは、土御門からの要請なんですが………………」

インデックス「そうなの? 何かあった、とか」

五和「はい、実は………………今までにない、妙な魔力を感知した、という事で私達は調査に来たんですよ」

インデックス「……………………魔力? あれ、私は何も感知してないんだよ」

神裂「ええ。それがどうにも謎が多いようなんですよ」

インデックス「むむ………………そうなんだ。おるそらは?」

オルソラ「私も土御門さんにお呼ばれしたのでございますよ」

インデックス「おるそらも? そうなんだ………………何か私にも手伝える事、あるかな?」


そうして様々な事柄が、重なってゆく。



69 ◆LKuWwCMpeE2011/10/25(火) 00:28:51.05clMnDhzDO (14/14)

また次回!


70VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国)2011/10/25(火) 00:51:01.26fHmTYMuAO (1/1)

>>1乙!

だぁぁぁぁァァァァッ!!気になるところで切りやがってェ!!

超楽しみじゃないですかァ!


71VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/10/25(火) 02:10:31.16owj3QI210 (1/1)

乙!
初春が上条さんの心配しかしてなくて噴いた


72VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/25(火) 02:19:38.41UZk1jG3+0 (1/1)

じやすなよぉおおおおおおおおおおお!!
もう少しいけるだろぉおおおがぁああああああ!!!!

>>1乙


73VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2011/10/25(火) 03:01:30.23LBkVfFj1o (1/1)

結局美琴と一方通行は和解できず、か


74VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)2011/10/25(火) 07:26:29.61URyRpjBAO (1/1)

ちくせう!ちくせう!

折角久々の魔術サイドが出てきた所で切りやがって!








いちおつ(^ω^)


75VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/25(火) 08:02:32.23Y3xLId5IO (1/1)

┌─────┐
│い ち お つ.│
└∩───∩┘
  ヽ(`・ω・´)ノ
さぁいこーだぁー!


76VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/10/25(火) 08:14:50.30rJ2txtyQo (1/1)

とんだ茶番だな



77VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/25(火) 10:05:58.12yjWrdQdf0 (1/1)

すんばらしいでござる
>>1乙


78VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/10/25(火) 12:28:08.692e3FYyXP0 (1/1)

乙。初春さん流石恋する乙女、マジパねえっすwww

ヒーローにそげぶされて、自分の努力もあって人格を魔改造した後だから、
みんなが第1位に悪い気持ちを抱かないのは仕方ないのかもしれん
つくづく美琴は不運だなホント


79VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/10/25(火) 21:09:29.794WXm36Z0o (1/1)

乙!

和解は持ち越しか


80VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県)2011/10/25(火) 23:14:27.30rwKN75UH0 (1/1)

乙でした!
もう一方さんマジダークヒーロー


>>78
御坂が不幸なのは事実だが、一方さんも番外さんも相当の不幸だぜ?


81VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/26(水) 00:29:16.27bVkp9cUG0 (1/1)

一回荒れたのに、まだそういう話をし始めるのかよ・・・


82VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/26(水) 01:22:57.037uCBX02uo (1/1)

不幸のバーゲンセールだな。


83VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/26(水) 20:51:14.10BKqP5PvDO (1/1)

>>82
どん底に不幸?
いいじゃねぇか


84 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:47:45.64hodLxMpDO (1/12)


初春「………………………………」


 慣れない場所である常盤台女子寮の208号室にて、初春は目を覚まさない美琴の手を握り、じっと眺めていた。
基本的には部外者は立入禁止であるこの寮なのだが、厳格な風格を漂わせる寮監に誤魔化しながらもジャッジメントである事、そして美琴の友達である事を説明したら納得して受け入れてくれていた。

 あれから黒子は橋の倒壊についてアンチスキルの現場検証について行き、この場にはいない。
どういう報告をするのかはわからないのだが、美琴の不利になるような証言はしないのだろう。


美琴「ぅ…………ん…………」

初春「御坂さん………………」


時折譫言のような声が美琴の口から漏れる度にその手を握り直す。
苦しんでいるような、何かに怯えているような、そんな美琴の様子に初春も痛々しい沈痛な表情になっていた。

 あれほど強い、精悍な美琴をここまでにさせる『何か』は、一体何なのだろうか。
学園都市第一位の一方通行との間に、一体何があったのだろうか。
想像はできないが、きっと悲しく空しい事があったのだとは思う。
自分の想像も全くつかないような、『何か』が。


美琴「う………………うぅ、ん…………」

初春「あ…………御坂さん」


そうしている内に美琴のうなされる声に変化が起き、初春はそっと呼び掛ける。
そして美琴は、静かに目を開けた。




85 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:48:31.74hodLxMpDO (2/12)


美琴「ん…………あれ…………、ここは…………」

初春「御坂さん…………、大丈夫、ですか?」

美琴「あれ、初春さん………………って私………………っつ……!」

初春「だ、大丈夫ですかっ?」


いまだに意識がはっきりしないか、半眼のまま初春に目を向けていたのだが、意識が覚醒するとガバッと身を起こそうとする。
しかしそこで頭痛に襲われたかのように頭を押さえ勢いを止めていた。


美琴「ここは………………私の部屋…………? なんでここに……」

初春「まだ起きちゃダメですよ。ほら、横になって下さい」


やがて自分に何があったのかを思い出したように呟いていたのだが、繋がれた手の感触とその言葉が美琴の耳に届くともう一度初春の顔に視線を向ける。
本当に心配そうな表情をしている初春に、美琴は少しずつ落ち着きを取り戻していった。


美琴「………………あれから。どうなった、の?」

初春「…………はい。その……、お二人が川に落ちそうになっていたのを」

美琴「……………………うん」

初春「一方通行さんが、助けました」

美琴「あ………………アイツが…………!?」


美琴の目が見開かれる。
まるで信じられないという風に、ありえないという風に美琴の瞳が大きく揺れていた。


美琴「………………本当、なの? それは…………」

初春「はい。私も白井さんも何もできずにいた所を、一方通行さんが」

美琴「………………………………」


何故自分を助けた。
美琴はそう言いたそうに唇を噛み締めている。
一方通行の行動の意味がわからないと思っているのであろうか。



86 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:49:07.88hodLxMpDO (3/12)


何があった、とはとても言えなかった。聞けなかった。
あの場で一方通行に浴びせた糾弾は、事実なのか。
一方通行が美琴に、どんな苦しみを味わわせたのか。


美琴「……………………そうなんだ」

初春「はい」


確かめるような美琴の言葉に、初春は頷く。
それは確かにこの目で見たから。
川を飛び越えて二人を抱えて戻って来る一方通行の姿を、確かにこの目にしたのだ。
美琴に対してどんな感情を持っているのかは知らないが、いたわるような丁重な扱いにも感じるその一方通行の様子を見たのだ。

それは、紛れも無い事実だった。


美琴「ってそれじゃあ…………! アイツは、当麻はっ!?」

初春「はい、当麻さんも無事ですよ。一方通行さんとセブンスミストに戻るって言ってました」

美琴「! そっか…………無事、だったんだぁ…………」


彼の事が頭を過ぎると、美琴の顔は段々と青ざめはじめる。
必死の形相をして詰め寄った美琴に、初春がその返答をするや否や、心底安心したように表情を和らげて体勢を整えていた。




87 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:49:52.11hodLxMpDO (4/12)


美琴「…………………………」

初春「…………………………」


 沈黙が部屋を包み込む。
ただ初春は黙って美琴の手を握っており、美琴もそれを静かに受け入れるようにじっと佇んでいた。
ただ、まだ美琴には苦しそうな、ふさぎ込むような雰囲気が覆いかぶさっている。
それをそっと優しく見守るように、思いやるように初春はその握った手を強めていた。


美琴「……………………何も、聞かないの?」

初春「……………………」


ぽつんと呟いた言葉が、やけに弱々しく感じる。
はっきりとモノを言う美琴のいつもの声色とは全く違う、恐怖に震えている子供のような疑心暗鬼にも聞こえるその声。
それを言うと、美琴はただ初春の返事を待っているように口をつむんだ。


初春「……………………はい、聞きません」

美琴「どう、して………………?」

初春「……………………それは」

美琴「………………うん」

初春「御坂さんにとって、話し辛い事だと思いますから」

そうだけど、でも──────。

そう言いかけたのは美琴の口の動きでわかった。
しかしそれを喉の奥で飲み込んで美琴はじっと初春の顔を眺める。
初春は、そんな美琴に微笑みかけた。




88 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:50:36.61hodLxMpDO (5/12)


初春「御坂さんに何かがあったのは、わかりました。でもそれを、無理して御坂さんに言ってもらおうとは思っていません」

美琴「……………………でも」

初春「私は」

美琴「……………………」

初春「大切な友達の御坂さんに、辛い思いはしてほしくないですから」

美琴「……………っ」


初春の言葉に、美琴の身体が一瞬震える。
どんな思いが今美琴の中を駆け巡っているのかはわからない。
当人にしかわからないのだろうとは思う。
でも、これだけは知ってほしかった。


初春「私も白井さんも佐天さんも………………当麻さんも、御坂さんを大切に思っています。
   だから、大切な御坂さんの悲しい顔は、見たくないんです」

美琴「初春、さん……………………」

初春「悲しい時は傍にいてあげたいです。
   泣いている時は慰めてあげたいです。
   助けてほしい時は、助けてあげたいです。
   辛い時は、支えてあげたいんです。


   だってそれが、友達なんですから」


美琴「……………………っ」

初春「ですから、御坂さんが御坂さんから話してくれるまで。私達は聞かないって決めたんです。何でも話してくれる、その時まで。御坂さんは、一人じゃないですから」


それが、最上級の友達。
そんな仲になれるまで、まだ自分達、いや、自分は頼りないのだろう。
だから、何も言わず、何も聞かずに寄り添っていたい。


美琴「………………ごめんね。ありがとう、初春さん…………」

初春の手をキュッと美琴は握り返す。
朧げながらも耳に届いた彼の声と、初春の言葉が重なる。

『一人じゃない』


自分達がいる。
確かに思ってくれる、仲間が、友達がいる。
それがいつしか美琴の心を凍てつかせていた氷を溶かしはじめていた。



89 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:51:23.22hodLxMpDO (6/12)


美琴「………………初春さん、アイツの事。名前で呼んでるんだ」

初春「あ………………」


 落ち着きを取り戻した美琴がベッドの上で毛布を膝に掛けて体育座りの体勢のまま初春に尋ねる。
美琴の言葉に何となく視線を外しながら初春は、はい、と頷いた。


初春「でも、御坂さんも」

美琴「わ、私は………………ってその、無意識で」

初春「私も、そうですね」


 言葉少なく、お互い言葉を選んでいるようにしてぽつぽつと口に出す。
もうお互いの気持ち、想いは完全に感づいているのだが。
ただ直接それを言った際、きっと気まずい空気が流れるんだろうなと相手方の様子を吟味するように窺い合っていた。

自分は彼が好き。
そして美琴も彼が好き。
あと黒子も何か怪しい──────あれ、四角関係?
ううん、インデックスもきっとそうだ。


初春「当麻さんって………………すっごいモテます?」

美琴「モテるっていうか多分アイツの事だから勝手にフラグが立つと言うか…………気付けばすぐどっかの女の子を助けてるんだもんね」

初春「…………それはもしかして、さっきセブンスミストにいたあの三人も…………」

美琴「それはわかんないけど。十分ありえる話、かもね。あれ、でもあの控え目の黒髪のコはもう既に立ってそうな…………」

初春「お知り合いなんですか?」

美琴「ううん、前にね、アイツと一緒にいたとこを見た事あるの。アイツその人の胸に顔埋めてたし…………」

初春「ななななななな何ですって!? あれ? でも私も前に…………」

美琴「ななななななな何ですって!? く、詳しく!」


顔埋めていた云々は上条のせいではないが。

 そんな会話をしながら、初春は段々と美琴の調子が戻ってきた事に気付いた。
いまだ本調子、という訳でもなさそうなのだが美琴の顔にも段々と笑顔が戻ってきている。
やはり、美琴を元気付かせるのは──────彼なのだろう。



90 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:52:01.63hodLxMpDO (7/12)


初春「御坂さん」

美琴「な、何?」

初春「私は、当麻さんの事が好きです。まだこの気持ちは当麻さんには言えてはいないですけど」

美琴「!」

初春「御坂さんの事も好きです。でも」

美琴「……………………うん」

初春「私、負けませんから」

美琴「………………そっか、まだ付き合ってる訳じゃないんだ…………なら。私も、負けないわよ。私も、アイツが、当麻が好きだから」

初春「ふふ、ライバルは多いですね」

美琴「ね。だからこそ、何としてもアイツを振り向かせたい」

初春「ええ」


まだ自分は頼りない。
精神的にも、強くはない。
それでも、この想いは負けたくない。
キュッと握っていた美琴の手を、もう一度強く握り直していた。


美琴「………………元気、出たよ。ありがとう、初春さん」

初春「…………よかったです、御坂さん」


全てをこの親友が話してくれないとしても、友達として、ライバルとして。

笑顔で支えてあげたい。そう思っていた。



91 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:52:52.07hodLxMpDO (8/12)


prrrrrrrrrrr──────


「電話鳴ってるぞ?」

浜面「あ、俺か。誰だ………………あ、黄泉川だ」

半蔵「」ガタッ

「」

浜面「」


 あれから暇潰しにとたまり場に持ち込まれた最新型の対戦型ゲームに白熱していた所で、着信を告げる電子音が響き渡っていた。
浜面が電話を取り出し、ディスプレイに表示された名前を告げると半蔵が息もつかせぬ早さで浜面の耳に当てた電話に己もと耳を近付けていた。
こんな所で忍の速さを発揮しなくともいいだろうに、と思いながら浜面は通話先の相手の声を待った。


黄泉川『もしもし、浜面? 今終わったじゃん』

浜面「お、もういいのか? 何だったんだ?」

黄泉川『んー、まあ色々とあった、みたいじゃん。それより浜面、用事って何だったじゃん?』

浜面「何だよその引っ掛かる言い方は。まあいいけどさ。用事っつか、ちょっと黄泉川の同居人に尋ね事があって」

黄泉川『んあ? 同居人って………………一方通行か? 一方通行達なら今一緒にいるけど』

浜面「いや違う違う、って一緒にいんのかよ」

黄泉川『一方通行じゃない? んじゃ誰じゃん…………ま、まさかとは思うが』

浜面「………………おい、ちょっと待て。お前は誰を想像している」

黄泉川『打ち止め、じゃないだろうな………………?』

『あァ?』『ほえ、ミサカ?』『電話の相手ってロリk』
浜面「違わいっ! 芳川サンの方だ芳川サン! っつか何か聞こえたぞ!」



92 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:54:17.52hodLxMpDO (9/12)


黄泉川『あん? 桔梗? 桔梗なら家にいると思うけど…………』

浜面「家にいんのか。んー………………黄泉川いなきゃ行きづらいな…………」

黄泉川『何々? 何の話じゃん?』

浜面「すまん、ちょっとだけ待っててくれ」


 浜面は一旦電話から耳を離し、半蔵達に相談する。
どうやら現場検証は終わったらしいのだが、家に戻るまでもう少し時間が掛かるのだろう。
どうする、と目で半蔵達に確認した。


半蔵「(黄泉川いなきゃ意味ねえ)」

「(別に聞きたい事聞きゃいいだろうがよ…………)」


半蔵はもう黄泉川にしか目がいっていないのか、黄泉川だけに会う前提の目をしている。
それを軽く聞き流して、もう一つの意見の方に耳を傾けた。


浜面「(まあそうだよな。んじゃまあ今から行きますか)」

「(終わったらすぐずらかりゃいいんじゃね? ………………俺は黄泉川に会いたくねえよ…………)」

浜面「(………………………………)」


半蔵とは全くの対照的な意見に軽く冷や汗を垂らしながら浜面は再び電話を耳に当て、口を開こうとする。



93 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:55:17.38hodLxMpDO (10/12)


浜面「すまん黄泉川、待たせたn────」

『何ですかァ? ウチに何かご用件ですか浜面くゥン?』

浜面「んげ、一方通行………………」


電話先の相手が変わり、さも不機嫌そうな声が浜面の耳に飛び込んで来る。
その声に半蔵も「うっ」と退き何かトラウマでも思い出したかの様に苦い顔をしていた。


浜面「いや黄泉川家というか、ちょっと芳川サンに聞きたい事があってよ…………」

一方通行『………………あァ? 何の用事だ?』


独特な彼の発音に真剣さが混じった様な声色が混ざる。
電話先の向こうでは一方通行の眉間に皺が寄っていそうなのが容易に想像できた。


浜面「ああ、ちょっと研究職の人に教えてほしい事があってな。つっても俺には研究者の知り合いは芳川サンしかいなかったからさ」

一方通行『教えてほしい事って何だよ』

浜面「あー………………まあお前ならいいか。えっとだな」

一方通行『………………あァ? あァ…………いや、後で聞く。もう少し経ったらウチに来い』

浜面「一方通行?」

一方通行『『一方通行くん?』あァ…………チッ、電話切ンぞ』

浜面「あ、ああ………………わかっt……ってもう切りやがった」

「なんだって?」

浜面「んー、もう少ししたらウチに来いだってさ」

半蔵「よ、よし行くか」

浜面「ちょっと早ぇよ!?」


 何やら電話先が騒がしくなったのを怪訝に思ったが、まあ気にする事でもないのだろう。
一方通行の周りは打ち止めから番外個体から、騒がしいコ達が多いしなぁと納得した頷きを見せると、浜面達はもう少し時間を潰してから黄泉川家に向かう事にした。



94 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:56:03.78hodLxMpDO (11/12)





ピンポーン──────


そしてそれから数十分後、今まで見たことのないくらいの上機嫌の様子の半蔵を抱えて浜面達は黄泉川家のインターフォンを押す。




麦野「はーい、お帰りなさーい………………ってあれ、浜面?」

浜面「………………は? 麦野?」

半蔵「ん?」

「ぬお!? き、昨日のビーム砲さんじゃねえか………………」


思わぬ人物がドアからこんばんはした事に、浜面は思わず息を止めていた。
それは決して熊に出会った時の間違った対処法じゃない、うん。





95 ◆LKuWwCMpeE2011/10/27(木) 11:58:10.36hodLxMpDO (12/12)

ちょっと短いけどここまで

ダメだ、なんかスラスラ書けない
自分の無能さにほとほと呆れるわ、抜いてくる

また次回!


96VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/27(木) 12:39:16.80KUEmhSuSO (1/1)

お疲れぃ


97VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/27(木) 14:36:25.43jWvja0+g0 (1/1)



だが学校はどうした?
それと『一方通行くん?』ってよんだのは誰だ?


98VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/27(木) 17:30:08.98cJnIbs2DO (1/1)

やっとおいついたぁ……。
>>1乙。
かわ初春ぺろぺろ


99VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国)2011/10/28(金) 09:24:56.78ykJQMTCAO (1/2)

>>1乙

>>98
アンチスキルじゃない?


100VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国)2011/10/28(金) 09:26:30.92ykJQMTCAO (2/2)

安価ミスった
>>99は>>97宛てね


101VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/29(土) 00:13:59.68K2woFf2Do (1/1)

>>100
美鈴じゃねーの?


102VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/29(土) 01:06:10.02qnQaPfi50 (1/1)

ありゃりゃ浜面気まずくなりそうだ


103VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/10/29(土) 11:22:42.23rjpUfoKAO (1/1)

>>95
えっと、抜いてくる……?


104VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/29(土) 20:38:57.22vff6gy190 (1/1)

>>103
1日最低2回は必須だろう?


105 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:06:16.02jq06W76DO (1/15)


浜面「な、何で麦野がここにいるんだよ」

麦野「ああ? いちゃいけないって言うの?」ギロッ

「ヒッ…………」


 昨日にも訪れたここは、黄泉川家であってアイテムの構成員の場所ではないはず。
それなのにこの玄関のドアを開けたのはアイテムのリーダーであり、上司である人物に浜面は目を丸くしていた。
上司は浜面のその言葉に機嫌を損ねたか、眉間に皺を寄せはじめている。
昨日のあの現場に居合わせた一名はその麦野の様子に心底怯えていたりしていたがそれは今は放っておいてもいいだろう。


麦野「私は買い物行ったらたまたま芳川さんに会って誘われただけだけど。それより浜面はどうしてここに? それに大勢で尋ねてきてさ」

浜面「そ、そうか。いや俺はその芳川サンに用事があってだな」


こりゃまた恐ろしい人物を誘ってくれたもんだ、と内心何してんじゃおいおい状態だったのだが、まあ芳川は恐らく鬼モードの麦野を知らないのだろう。
知っていたら呼ぶはずがない、と浜面は本気でそう思う。


麦野「芳川さんに? 一体何の用事よ」

芳川「なになに? 私の名前が聞こえてきたんだけど」スッ

浜面「あ、どもっす」


すると開いたドアの奥の方から目的の人物が顔を出す。
浜面は軽く会釈をすると、芳川は「あら」と少し驚いた様な顔をしていた。
浜面以外の二人の姿も目にすると、余計に?マークを顔に浮かべていたがまあそれも含めて説明しようではないか。


麦野「なんかこの三人が芳川さんに用事あるんだって」

芳川「私に? ………ふふ、いやね、こんな年増に若い男の子三人も寄ってくるなんて、困っちゃうわ。どうしよう」クス


知り合ったとはいえほとんど初対面のスキルアウト相手にうふふなんて微笑んでいる辺りきっと彼女も大物なのだろう。
でなければ一方通行やミサカズ、そして黄泉川と同居などできやしない。



106 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:06:54.08jq06W76DO (2/15)


芳川「まあいいわ。もうすぐ愛穂達も戻ってくるみたいだし、上がってって」

麦野「ええ、上げちゃってもいいの?」

芳川「別に構わないわ。悪いコトしに来た訳じゃないんでしょ?」

浜面「まあ、それは」

芳川「いざとなったら私も護身用に『色々特別なモノ』を準備してあるし、ね」

麦野「まあ悪さしに来たってんなら私も全力で壁のシミにしてあげるし」

浜面「」

半蔵「」

「」


浜面がいるとはいえ、見知らぬ人物もホイホイと上げてしまう芳川だが、彼女の言う撃退法が何やら嫌な予感がして三人は冷や汗を必死で隠しながらコクコクと頷く。
もし何らかの事柄が起きて黄泉川家と敵対する機会ができたとしても、相手方に麦野も加勢した以上絶対にここには攻め込みたくない気分になりながらも浜面達三人は黄泉川家の玄関をくぐっていった。




107 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:07:44.61jq06W76DO (3/15)


芳川「どうぞ」カチャ

浜面「どうもっす」

半蔵「あ、すみません」

「ああああありりりりがとうございますううすす」


 若干一人の様子がおかしい事に気にかけながら出されたコーヒーを口にする。
ん? と飲んでみて浜面はまじまじとコーヒーを見つめた。


芳川「どうしたの? あ、もしかして口に合わなかったかしら?」

浜面「いや、逆っす。すげぇ美味いな、と思いまして」


 家で出されるコーヒーといえば、大体はインスタント物でそこまで味を保証するものでもない。
コーヒーにうるさい人でなければ、飲めればいいと言った塩梅なのであろうが自家で豆から挽くといった手の掛かる事はほとんどの者はしないのであろう。
しかし今口にしたコーヒーは、まるで珈琲専門店で出される様な味わい深い口当たりの逸品ともいえるもの。

そんな美味のコーヒーを浜面は素直に讃えていた。


芳川「ふふ、ありがとう。とはいっても、あの子特製のコーヒーなんだけどね」

浜面「…………………………ああ、納得した」


アイツか、と頭に思い浮かべたコーヒー好きの少年を思い浮かんで苦笑いを浮かべる。


「うううううまいっす」

芳川「あら、でもそう言ってくれると嬉しいわ」クス

「」ポケー

浜面「……………………」

半蔵「……………………」

麦野「……………………」


妙に反応がおかしい様子の人物が一人いたが、まさか、ね。
彼の様子に浜面と半蔵と麦野は何だか冷ややかで暖かい視線を送っており、一先ずコーヒーカップを置く事にした。



108 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:08:39.89jq06W76DO (4/15)


芳川「それで。私に聞きたい事って何かしら?」

浜面「あ、そうっすね。あ………………でもアイツも話を聞きたいって言ってたっけ」


質疑応答は一応は知り合いの浜面が行う。
本題に入ろうとするのだが、浜面はちょっと考える素振りを見せていた。

 ここに来る数十分前の電話にて、一方通行はその話に自分も居合わせると言っていた。
なら一方通行が帰って来るまで待った方がいいのだろうかと逡巡していると、麦野が何だか険しい表情を見せていた。


麦野「妙にもったいぶるわね。なんか大事な話なの?」

浜面「ん、んーまぁ、大事というか何と言うか」


果たして麦野もその話に参加させるべきか、と横の二人に目をやる………………のだが。

 半蔵は半蔵で黄泉川家にいるという事からか妙にソワソワしているし、もう一人はずっと芳川を見ている。
お前らもはや目的が変わってきてないかというツッコミがちょっぴり湧いたが、それの喉の奥に押し込むと何やら玄関先が騒がしくなった事に気が付いた。


ガチャ────────


打ち止め「あれれ? なんかお客さんがいっぱいいるよってミサカはミサカは来客者達に驚いてみる」

一方通行「あァ? 誰だ…………って何だよ、もう来てやがったのか浜面ァ。あとは原子崩しと──────忍者ハットリくンと後は誰だァ?」

番外個体「お、しずりんいるよ。やっほーしずりん」フリフリ

黄泉川「ただいまじゃんよ。って浜面────達?」

麦野「やっほー、おかえりなさい」フリフリ

芳川「おかえりなさい」

半蔵「よ、黄泉川………………(キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」

「ぬお、なんだこの子達!? つか半蔵、後の声もだだ漏れだ」

打ち止め「しずりんだー! ってミサカはミサカはしずりんにダイブしてみる!」バッ

麦野「わっ。こら、びっくりしたじゃないの」ギュッ


黄泉川家の全員が戻ってきた事で、一気に騒がしさが場を覆う。
こんな騒がしさが毎日黄泉川家で繰り広げられるのか、と浜面は改めて、他の二人はただ呆然としていた。



109 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:09:35.78jq06W76DO (5/15)


 まあ、こっちも騒がしくなっておりますです、はい。


神裂「だからそういう事ではないですと言っているんです! それにもうあんな服は二度と乗せられて着ません!」

土御門「せっかくカミやんに恩返しできるチャンス逃すつもりかにゃーねーちん?」

五和「わ、私はっ、か、上条さんが喜んでくれるならゴニョゴニョ…………」

インデックス「ごっはっんー、ごっはっんー♪」

オルソラ「もう少しで出来るのでございますよー」

上条「………………もうちょい静かにしてくれ、また苦情が来る………」


 あれからセブンスミストを後にし、自宅に戻ってきたのはいいのだがイギリス清教、天草式といった魔術世界の面々に占拠された部屋の片隅で上条はしみじみその騒ぎをとりあえず静かにさせようと奮闘していた。

 美琴との間に起きたあの件の後、セブンスミストに戻れば何やらインデックス達から魔術の事件の匂いがすると言われ戻った上条宅の一室は作戦会議室となっていた。
痺れる足を何とか動かして自宅に戻ってきたはいいが、戻った矢先に土御門もこの中に加わり、今現在はこの狭い一室に六人という大人数で所狭しと一つのテーブルを囲んでいる。
いや、オルソラはただ今絶賛調理中にて厳密にはこの場には五人であるのだがそれでも狭く小さく感じるこの部屋をスフィンクスがどこに居座ろうかグルグル歩き回っている様子から、落ち着かぬ様子が窺えた。

 それよりも今は話題の方向性に気を遣うべきか。
その魔術を感知したという事について話し合うべき場面であるはずなのだが、土御門得意の話術で今は神裂達を弄ぶようにして場を騒がせている。
話を戻した方がいいんじゃないかという疑問があるのだが、その和気藹々すぎる様子に上条はただたじろいでいるだけであった。

 台所の方からいい匂いが漂ってくると、上条の腹の虫も鳴き出す。
時刻も19:00を回った所で、夕食の時間帯に差し掛かろうという所であった。
上条宅では決して香る事のない洋風の芳醇な匂いが居間の方にも漂い、ひとまずその騒ぎは中断する事となった。
しかしあの上条宅の尽きそうな食材と調味料でこんなにも食欲をそそる料理をさっと仕上げてしまうオルソラはさすがと言うべきか。




110 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:10:15.09jq06W76DO (6/15)


上条「すまん。手伝うか? それにしてもよくあれだけでこんな美味そうな物作れるなー」

オルソラ「ありあわせで作っただけでございますよ。お手伝いはお気になさらないでください、貴方様はまだ身体の痺れが取れないのでございましょう?」


ちょこちょことほんの少し足に気を使うような歩き方で台所に赴いた(退避した)上条にオルソラがやんわりと手伝いを拝辞する。
とは言いつつも、家主的に来客者をもてなさんばかりかこうしてわざわざ手を煩わせてしまうのは少し気の引ける所であったのだが、オルソラの言う事も尤もで少しばかり動きにくいこの身体。
もう一度「悪い、手間掛ける」と一言添えると、「うふふ、貴方様は座っていてくださいませ」と最上級とも言える労いが返ってきて上条はほっこりしていた。

ほっこり。


神裂「………………」ジト

五和「………………」ジト

土御門「………………」ニヤァ

上条「」


戻れば何やら意味深な視線を投げ掛けられたのだが頑張って無視しよう。
インデックスはご飯の方に気が向いていてある意味助かったかもしれないし。




111 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:11:16.51jq06W76DO (7/15)

 オルソラの素敵な料理に舌鼓を打ち、しっかりと堪能し終わった後に土御門が「さて」と居座り直す様に一言呟くと、場の和やかな空気に緊張が走る。
その真面目な表情からするに、ようやく本題に入るのだろう。


土御門「今回ねーちん達に来てもらったのは他でもない。この学園都市から魔術を感知したんだぜい」

神裂「ええ」

五和「はい」

インデックス「うん」

オルソラ「魔術、でございますか」

上条「…………………………」


詳しい事は一度集まってから、との事で神裂達もどうやら詳細は聞かされてはいなかったらしく、これから土御門の吐く言葉を一字一句逃すまいと真剣な表情を作っていた。


土御門「実は俺もまだ詳細は掴み兼ねてるんだにゃー、誰が何の為に、どういう目的でその魔術を使ったのか」

神裂「謎が多い、と言っていましたね」

土御門「そうだにゃー」

五和「上条さんか、インデックスさんが狙い、という事なのでしょうか」

土御門「いや、まだそれもわからない。ただ御使堕しの時みたいな偶然に偶然を重ねすぎて発動した魔術である見方も出来そうにない。恐らく、誰かが意志を持って発動させている」



112 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:12:42.91jq06W76DO (8/15)


上条「それで、一体どんな魔術なんだ?」

土御門「カミやん、これ今日の学園都市の新聞だぜい」


上条の質問に返事をする変わりに土御門は新聞を手渡すと、ある一部分を指差す。
そこにはトップ記事ではないのだが、大々的に書かれた男子学生の『変死』の文字が書かれており、上条の目はそれに奪われていた。


上条「変死………………?」

土御門「被害者は第五学区の大学二年生の男。割と真面目な性格の所謂普通の大学生だったらしいんだが、昨日の晩に街中で死体で見つかったらしい」


顔をしかめる。
土御門の言う被害者という単語が指す意味は。


上条「つまり、その人は」

土御門「殺された、っていう事だ。それも無惨な死体だったらしい」

土御門の言葉に緊張が走る。
この学園都市は、一方通行の言う「裏」を除けば比較的平和な街である。
「裏」の詳しい事は知らないのだが、自分から関わろうとしなければ決して「表」に干渉する事はなかったと一方通行は言っていた。

そんな学園都市の中で起きた今回のこの件。
しかもその被害者は裏でもなんでもない「普通」の大学生であり、記事と一緒に掲載されている顔写真からもいかにも真面目そうな雰囲気が感じ取られ、被害者からはその「裏」の気配など微塵も感じられない。

「普通」の大学生だったのに、と上条は唇を軽く噛んでいた。




113 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:13:37.50jq06W76DO (9/15)


上条「だが土御門、これとその魔術の何の繋がりが?」

土御門「ああ、それがだな………………殺され方に問題があるんだ」

上条「どういう事だ?」

土御門「死亡推定時刻は昨日、夕方の完全下校時刻を少し過ぎた辺りの時間帯らしいんだが、問題は死因だ」

上条「死因?」

神裂「と、言いますと?」

土御門「記事にも少し書いてあるが、死因は血を流しすぎた事による失血死によるものだ。死体には無数の噛み傷の跡が残っていたらしい」

五和「無数の…………」

インデックス「………………噛み傷?」

土御門「それも、とびっきりでかく鋭い────────歯と言うより、猛獣の様な牙だな」

神裂「猛獣、ですか………………」

オルソラ「それはまあ…………恐ろしゅうございますね」


普段のおちゃらけた様子からいつの間にか口調が変わり、真剣そのものの表情で土御門は説明している。
その様子から今回の件はどうやら動向を注意しなければならないのだろう。
まだ誰が何の為に、どういう目的で動いているのかは全くわからない。




114 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:14:18.15jq06W76DO (10/15)


土御門「明日はねーちん達は現場付近を調べておいてほしい。俺は別の角度から当たってみるんだにゃー」

神裂「わかりました。この子に危害が降り懸かる危険があるのならば放っておけませんからね………………勿論上条とゴニョゴニョも…………」

五和「ぷ、女教皇様! 何を言っているんですか! 上条さんを守るのは私dゴニョゴニョ…………」

上条「ん? 二人ともなんてったの?」

神裂・五和「い、いえ………………///」

インデックス「とおおおおぉぉぉまああああぁぁぁ?」

上条「なんでお前は怒ってるんだよ!?」


まあそんなやり取りをしながら。
しばらくは気をつけておいた方がいいのだろうという事を頭に刻み込み、上条ははは、と頭をかいていた。


オルソラ「なら私は貴方様のお食事を支度する係に立候補するのでございますよ」

上条「おお、オルソラの料理ならいつでも大歓迎だぞ!」

神裂・五和・インデックス「」ゴゴゴゴ……

上条「ヒィッ!?」


まあそんなこんなでこの日の作戦会議はお開きとなっていた。




115 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:15:04.73jq06W76DO (11/15)


一方通行「で。教えてほしい事って何だァ?」

浜面「ああ」


 一方通行の言葉に浜面が頷いて答える。
テーブルを挟んだ対面側のソファーには一方通行、芳川、麦野の三人が座っており、対するこちら側は(元含めた)スキルアウト三人が座っている何とも奇妙な図。
黄泉川は台所にて調理(?)中にてこの場にはいない。
何やら難しそうな話だからという理由で打ち止めと番外個体の二人も手伝わせているが、大人の話に子供がいちゃし辛いだろうという気遣いも含まれているようにも思える。

何から話そうと考えながら芳川に視線を送ると、浜面は口を開いた。


浜面「芳川サン。俺達は『DMリカバリデバイス』っての探してるんスけど、何か知ってるっスか?」

芳川「『DMリカバリデバイス』──────? それを貴方達が、どうして?」


芳川のその反応に、浜面達の口から「おお」という声が漏れる。
その様子から見るに、どうやら何か知っているのだろうと期待が高まっていた。


一方通行「何だァ? それは」

麦野「何々? 何なのよそれは」


レベル5’sの両方からほぼ同時に聞き返す声が出される。
レベル5である彼らでも知らない物なのかと思慮に更けながら芳川の質問に答えようとすると。



116 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:15:57.72jq06W76DO (12/15)



「いや、なんかある男の研究者が俺達の元を尋ねまして。それがどうしてもほしいって言ってたんスよー」

芳川「ある研究者?」

「眼鏡かけた黒髪の妙に長い髪をした人だったんスけど、芳川さんはその人の事知ってますかね?」

芳川「その研究者の名前は?」

「いや、それが名前も言わずにすぐ立ち去って行っちまいましたから、わかんないんスよ」

芳川「そうなんだ」


………………なぜお前は芳川に対してほんのり顔を赤らめて話をする、という質問を半蔵を挟んだ向こう側に送り込む。
しかしこちらの視線など気にしない様子でじっと芳川を見ていた。


芳川「でも、ジャッジメントとかじゃなくて貴方達に頼んできたの?」

「あー、ジャッジメントにも頼んだとかどうかもわかんないんスけど、でも俺達に頼み込んできましたね」

一方通行「……………………」

麦野「わからない事だらけって事ね」

「」グサ

浜面「うっ……………………だ、だからこうしてその筋の人に聞きに来たんだが」

半蔵「(俺も黄泉川の料理食えるのかな)」


一方通行からの視線がやけに痛く感じる。
テメェ手間かけさせるような事してンじゃねェだろォな?とでも言いたげなそのガン見から浜面は逃げ出したくなる気分満開であったが、何とか堪える事に成功した。
まあ一方通行の手を焼かせようとも思ってない。




117 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:18:01.97jq06W76DO (13/15)



芳川「うーん」


芳川が顎に手を当てて考え込む様に視線をテーブルに下げる。
何か言いにくい事なのか、聞いてはいけない事だったのだろうか、と少し不安にもなってくるのだがさあどうだろうか。


芳川「ごめんね、私も名前は耳にした事があるくらいで詳しい事はわからないの」

浜面「そ、そうなんスか………………」


申し訳なさそうに苦笑いをして頭をちょこんと下げる様子が見える。
別に隠し事をしている、という雰囲気でもなさそうな事に逆に浜面達はこちらが申し訳ない気分になってきてもいた。


「だだだ大丈夫っス、頭上げてください」

浜面「そうっス、突然来たのに応対してくれただけで十分っスよ」

麦野「へえ、あなた達でもそういう気を遣う様な言葉遣いできるんだ」

一方通行「気にくわねェ事があったら暴れて帰ると思ったンだがなァ?」

浜面「いやいや、お前達はどんな風に俺達の様な人間を見てんの!?」

半蔵「(帰る? い、いやだぜ黄泉川の飯を食うまでは俺は帰らないぞ!)」


特にお前らが何を言う、というツッコミをもって浜面は反論する。

 実際に手がかり一つ目でビンゴなどという淡い期待など持ってもいなかったし、仕方のない事なのだろうと浜面達は思っていた。
見てくれの悪い不良三人を迎え入れてくれたという事だけで驚きものだったし。



118 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:19:15.84jq06W76DO (14/15)



芳川「名前は聞いた事のあるくらいのもので、私の専門外の分野なの。力になってあげたかったけど………………あ」

浜面「へ?」


言葉の途中で何かを思い出したかのように声を上げた芳川に浜面は素っ頓狂な声を出す。
一方通行と麦野もお互い真ん中に座る芳川を挟むように視線を向けていた。


芳川「そういえば、知ってるお医者さんにその分野の研究者がいるって言ってたわね」

「医者?」

半蔵「(黄泉川のナースプレイ…………」

浜面「半蔵お前一回病院行ってこい」


一体どういう分野なのかはわからないのだが、研究世界のけの字も知らない自分がそれを聞いてみても仕方ないだろうと思いながらも少し希望が見えてきた気がする、と浜面は感じた。
いやまあとりあえず半蔵は一回診てもらった方がいいのかもしれないが。


一方通行「……………………冥土帰しか」

芳川「うん、そうよ」

麦野「あの人どんだけ顔広いのよ………………」

浜面「ん? それって確かあのカエル顔したあの人か?」


とりあえずここで明日の行動は決まった。
その医者に聞きに行ってみよう、と浜面は計画を立てていた。

やけに熱心だな、と思ったそこの人、べ、別に100万(山分けして50万くらい?)がほしい訳じゃないんだからねっ?ただこのスキルアウト時代の仲間が困ってるからなんだからねっ。



と心の中で誰為フォローをしておきながら、結局その日は大勢で黄泉川家の食卓を囲う事になっていた。
ちなみにその時に感涙流しまくって黄泉川に逆に引かれていた半蔵についてはどんまいとしか言いようがなかったという。




119 ◆LKuWwCMpeE2011/10/30(日) 01:20:42.47jq06W76DO (15/15)

また次回!


120VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/10/30(日) 01:37:57.26aQpvmnsYo (1/1)




121VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/30(日) 02:02:38.21+0RBMeyM0 (1/1)




122VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/30(日) 02:23:25.64IMewKes5o (1/1)

乙なんだよ!!


123VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/30(日) 04:31:23.93MTbO5yUDO (1/1)

おっつ。


124VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/10/30(日) 19:21:23.39mxdTJJyOo (1/1)


インデックス、噛むのは上条だけにしておけとアレほど…


125 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:04:12.536eY0x6hDO (1/16)


コンコン────────。

 上条が寝床にしている浴室の扉に控え目なノックの音が響く。
いまだ上条は夢の中で、そのノックに対する返事をする事はなかった。


五和「お、おはようございます上条さん…………」


鍵が掛けられている為、その浴室のドアを開ける事はできずに仕方なく外から声をかける五和であったのだが。
もし鍵が掛かってなかったら即突撃されていたのだろうと、上条の普段の行動は体裁を守るという意味でも純情を守るという意味でも成果が上がっているのだろう。
さすがに想いを寄せている人の家のものを壊してまで突撃してしまおうという様な事はない。

驚かせては悪いという気を使って小声で扉の向こうの上条に声を届けるのだが、上条はやはりまだ夢の中から覚めない様だ。


五和「あう………………」


 結局あれから神裂と五和とオルソラは上条宅に泊まる事となっていた。

さすがにそれはちょっと……という空気を出したのだが、「「いいですよね?」」と眼光を光らせた神裂と五和の二人によって採択議論開始の僅か二秒で根負けしたのは言うまでもない。
まあ上条としては男の部屋に女の子達が泊まりに来るのはどうかと思う、間違いがあったらどうするんだとあくまで彼女達の為を思ってそう言ったのだが。
ならインデックスはどうなんだという集中砲火を浴びた際に、ああそういえばインデックスも女の子なんだっけ?という解を示して噛み付かれたのは最早いつもの事である。
ちなみに神裂と五和はその間違いについて、寧ろ起きてほしかったなどとは考えては………………うん、考えてたのだろう。


五和「あう、どうしましょう…………」

インデックス「私に任せるんだよ!」

五和「あ、インデックスさん。おはようございます」


オルソラ特製の朝食の香りで目を覚ましたインデックスが、朝から妙に元気な声で張り切った様に胸を張る。
五和はそんな彼女に挨拶をすると、インデックスは浴室の扉を掌でバシバシと叩きはじめていた。


インデックス「とうまー。朝ー、朝だよー。朝ごはん食べて、学校行くよー」バシッ!バシッ!

五和「それ作品が違います」


それに本日は土曜日で学校休みだし。

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126 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:09:35.186eY0x6hDO (2/16)


上条「…………んがっ?」


ゴンッ


上条「いてっ!?」


どこかで頭をぶつけたか、音からして痛そうな上条の悲鳴が届く。
さすがにあれだけバシバシ叩けば誰でも起きるのだろうが、そんなインデックスの様子を見て慣れてるなーと少し頬を膨らませてヤキモチを妬いている様な五和の姿があった。


神裂「起きましたか? 上条当麻」

上条「いてー…………起きたけどさ」

神裂「朝食の準備はできています。朝食にしましょう」

上条「ういー」

インデックス「ごっはんー♪」





五和「………………………………」



恥ずかしさから結局上条に声をかけられかった乙女、五和。

朝食ができているという報告も後からきた神裂に取られ、一体なにをしに来たんだろうと軽く涙を飲む五和の姿があった。


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127 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:10:36.086eY0x6hDO (3/16)


上条「それにしても、あんな事件があったなんてなー…………ジャッジメントでも何も聞かされていなかったけど」


 第一七七支部への道を歩く。
空の青も眩しいくらいのいい天気の日で、上着を着ていると少し暑いくらいの気温がちょうどいい。
しかしそんな陽気とは裏腹に、上条は昨日土御門が言っていたあの件について呟いていた。

 男子大学生が変死体となって発見されたあの事件。
土御門が言うにはどうも魔術が絡んでいるらしく。
インデックス、神裂、五和、オルソラが調査すると言っていた。


上条「無数の噛み傷、か」


それも、人間では到底考えられないものらしい。
聞くからに凄惨なその事件に何かがあるという事を予感する。
なるべくなら彼女達には危険な事はしてほしくはなかったのだが、それが魔術ならやはり彼女達に任せるのが一番いいのだろう。
それに神裂と五和は戦闘面では無類の強さを誇る『聖人』と『聖人崩し』なのだ、そこはとりあえずは安心できるのだが。
それでも何か起きればすぐに駆け付けるつもりでもいた。




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128 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:11:45.226eY0x6hDO (4/16)


 するとそこで後ろからパタパタと駆け寄ってくる足音が上条の耳に届く。


初春「当麻さーん」タッタッ

上条「ん? おー、初春さん」


上条が振り向くと、ものすっごい嬉しそうな表情を見せた初春の姿が目に映る。
初春は上条に近付くと、キュッと正面から上条に抱き着いていた。


上条「のわっ、ちょ、う、初春さん」

初春「えへへ。おはようございます、当麻さん」キュッ


突然の状況に戸惑う上条だったのだが、まあ嫌ではないし初春の好きなようなさせておく。
胸の辺りにくる初春の頭に、そっと手を置いた。

 初春が誘拐されたあの一件以来、なんだか彼女は積極的な気がする。
呼び方もいつの間にか下の名前になっているし、笑顔もより一層華やかさを増していて。

それは自分に向けられているのかな、と感慨深げに思慮にふける。


上条「これから支部に行くところ?」ナデナデ

初春「はいっ/// ご、ご一緒しましょう」

上条「ん。それじゃ行くか」


この陽気にも負けないくらいの暖かい何かを感じ、上条は初春と共に第一七七支部への道を歩き出す。

初春の顔を見た途端、先程まで上条を覆っていた緊張感がすっかり飛んでなんだか嬉しく思った自分に軽く苦笑いを飛ばしておいた。




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129 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:12:22.716eY0x6hDO (5/16)


黒子「こんにちは、ですの」

上条「おう白井」

初春「白井さん、こんにちは」


 第一七七支部があるビルの前で常盤台の制服に身を包んだ黒子の姿があった。
とはいえ、休みの日なのだが上条も初春も制服に身を包んでおり、ジャッジメントの仕事の時はこうしてその学校の学生服を着用する。
決まりという訳でもないのだが、そうしておいた方がいいのかななんていう上条の予測は間違ってはなかったようだ。


黒子「む、お二人揃っておいでですのね」

上条「道すがらでたまたま初春さんに会ってな」

黒子「……………………たまたま、ですか」

初春「……………………えへ」


たまたまじゃないですよという初春の雰囲気がまるわかりな事に少しむっとした黒子であったが、何やらその意味深な視線だけで会話をしている二人に上条はいつも通り「?」を頭に貼り付けていた。





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130 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:13:12.136eY0x6hDO (6/16)


固法「あら皆早いわね。こんにちは」

上条「固法先輩、こんにちはっす」

初春「こんにちはー」

黒子「こんにちはですの」


 第一七七支部に到着し、五分も経たない内に固法が顔を出す。
現在時刻は12:30過ぎを壁に掛けられたデジタル時計が示していて、この日の本来の集合時間の13:00よりもまだまだ早い事を告げていた。


固法「それじゃちょっと早いから、皆でお茶でもしようか」

初春「私煎れてきますよ。あ、当麻さん紅茶って飲みますか?」

上条「紅茶か、普段あんま飲まないなー……コーヒーとかはある?」

初春「あう…………そうなんですか。どうしよう、コーヒーない…………」

上条「あ、いや、紅茶も好きだぞ、うん」


 給湯室へ向かおうとした初春が足を止めてちょっぴり顔を湿らす。
そんな顔を見た瞬間にフォローを入れる様に言う上条であったのだが、なんだか申し訳ない気持ちであった。
この第一七七支部ではコーヒーを好んで飲む者はなく、ここの冷蔵庫の中にあるのは紅茶の茶葉とムサシノ牛乳だけ。
来客者用に緑茶もあるにはあるのだが、長らく飲まれておらずまたこの支部にも飲む者はいないため何となく封を開けるのは躊躇われるとの事で初春の頭にはなかった。

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131 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:14:09.636eY0x6hDO (7/16)


まあたまには紅茶もいいか、なんて上条が頷くと黒子ががさがさと鞄から何かを取り出していた。


黒子「ありますわよ、コーヒー」ガサ

初春「えっ」

固法「なんと」

上条「っておい、それって」


取り出した何やら高価そうな紙袋からもう一段階包まれていた紙袋を取り出すと、初春に手渡す。
「え?」という表情もそのままに初春はそれを受け取ると、まじまじと黒子の顔を観察する様に窺っていた。


初春「あの、白井さん。これって」

黒子「コーヒーですの。と…………上条さん、お紅茶はお召し上がりにならないかと思って」

上条「わ、わざわざ買ってきたのか?」

黒子「ええ」

初春「……………………」


と? 何を言いかけたの? という質問の視線を初春は投げ掛けるが、黒子はそれを右から左へと受け流す。
ほれ、煎れるんなら煎れて来なさいなと初春を給湯室に向かわせようとするその雰囲気を怪訝に感じながら初春は頬を膨らました。





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132 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:14:48.286eY0x6hDO (8/16)


上条「そんな事せんでもよかったのに」

黒子「あら、わたくしの好意が受け取れないとでも?」

初春「!」

上条「いや、そんな事はないが」

黒子「ならいいじゃありませんの」

初春「む……………………」


なんか怪しい、と黒子に軽くジト目を送る。
最近というかあの一件以来、黒子の様子にも変化が起きた様な気がする。

 黒子の上条に対する態度が、なんか違う。
以前は上条を類人猿だのあの男だの罵っていた黒子のはずだが。
だが上条の趣向を気にし、こうしてわざわざコーヒー豆を買ってきた。
どういう心境の変化なのかわからないのだが、初春が警戒するのには十分な、そんな様子である。


黒子「あ、初春。せっかくなのでわたくしも今日はコーヒーにしますわ」

初春「ふぁ」


その言葉が、「彼と同じモノがいい」という風に聞こえたのは初春の考えすぎなのだろうか。





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133 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:15:39.186eY0x6hDO (9/16)


佐天「こんにちはーっ! 暇なんで遊びに来ちゃいました」

初春「あ、佐天さん」

固法「あら佐天さん。こんにちは」

黒子「ごきげんようですの、佐天さん」


 完全に部外者であるはずの佐天がさも当たり前かの様に入室し、それを受け入れるこの第一七七支部の面々にも苦笑いをしながら上条は佐天に会釈を送る。
和やかな談笑ムードに一段と明るい空気が漂うと、壁にかかった時計からピピッと13:00を告げる短い電子音が響いていた。


黒子「そろそろ時間ですわね」

上条「今日はパトロール?」

黒子「ええ、そうですの。準備してくださいな」

上条「了解っと」



佐天「(ねえねえ。なんか白井さん、機嫌よさそうじゃない?)」

初春「(………………やっぱりそう見えます?)」

佐天「(うん)」コク

固法「(あら、あなた達もそう感じた?)」


 時間になり、腕章を取り出した黒子のその様子を見て初春達はこそこそ話をする。
やっぱり黒子の様子がなんか違う、と初春の疑問も段々とその意味を理解しはじめてはいるがまだ確証的なものはない。




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134 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:16:19.986eY0x6hDO (10/16)


初春「(うー私も仕事がなければ…………)」

固法「(それはダメよ。自分の仕事を放棄しちゃ)」



佐天「私もついて行こうかなーなんて」テヘッ



初春・黒子「さ、佐天さん!!」



初春「!?」

黒子「」グルル

佐天「」

上条「?」

ふと佐天が呟いた言葉に噛み付いたのは初春だけではなかった。
初春と共に噛み付いた黒子その人はきしゃーと威嚇するように佐天に視線を向けていて、さすがにそれに反抗というか言い返すというか何もできなかった佐天は冷や汗をかくだけであった。
冗談のつもりだったのにーとビクビクしながら紅茶を一気に喉に流し込むが、熱くはないのだろうか。


黒子「い、行きますわよ!」

上条「お、おお」


そんなこんなでタッタッと足早に支部から出ていく様子を、初春はぐぬぬ…………という視線をただ送っていた。





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135 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:17:47.866eY0x6hDO (11/16)


上条「ちょ、ちょっと待ってくれー。どうしたんだよ?」

黒子「……………………」


 早足で支部のあるビルから街中に出ると、黒子の背中に上条が声をかける。
なんか怒ってるような、そんな雰囲気になかなか声を掛けづらいものがあったがさすがに放っておく事もできないだろう。
上条の言葉に対して無言を貫いていたのだが、キョロキョロと周りを見渡してふぅ、と一息つくと黒子は振り返った。

黒子「いえ、なんでもありませんの」クス

上条「あれ…………?」


機嫌がいい?


先程の雰囲気とはまるで違う、かなりご機嫌そうなその黒子の表情に上条は首を捻った。
しかし黒子はその上条の走り方を見て少し表情を堅くする。


黒子「とう…………上条さん? どうされたんですの? その足…………」

上条「ん? あー、いや別に」

黒子「なんだか歩きにくそうにされていますが………………」

上条「はは、なんでもない。問題ない、大丈夫だ」


とは言うが。


実は昨日の美琴のあの一件で浴びた電撃の痺れは、まだ完全に取れてはいなかった。
意識を奪う様な出力ではなかったのだが、それでも翌日にまで残るような痺れはいまだ上条の足に影響を及ぼしていたのだ。

いや、実際にはそれは違う。
美琴も抑えたつもりでも、大の大人でも浴びれば一瞬で意識を飛ばしてしまう様な電撃であった。
浴びた箇所がどこであれ、レベル5の電撃は並大抵のものではない。
それでも上条が耐える事ができたのは、普段の美琴からの電撃を浴び慣れていたからかそれとも上条の肉体的なものだからかはわからないのだが、上条の意識は飛ばなかった。
ただこうして翌日にもまだ痺れを残すというその電撃の威力はやはり推して計るべきのものなのだろう。




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136 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:18:47.216eY0x6hDO (12/16)


 ただその理由を上条は言わない。
美琴の電撃を浴びて、というのは美琴のせいで、という言葉にも置き換えられるのかもしれない。
この黒子は美琴に対して無条件の信頼と情愛を持っているのは上条も知っている。
黒子が美琴に対して悪いという事は決して持つ事はないのだろうが、それでも言わないのが上条という男だった。


黒子「………………お姉様、ですのね」

上条「っ」


しかしそれを見透かしたかの様な黒子の言葉が上条の耳に届く。
やはりわかってしまわれたか、と上条は溜息を吐いた。


上条「御坂のせいじゃねえぞ? 俺が無茶してさ」

黒子「ええ………………でも、その」

上条「御坂を悪く思わんでやってくれ。あいつ、寂しそうにしてたからさ」

黒子「それは勿論ですの! お姉様は、わたくしの大事な、お姉様なんですから…………」

上条「……………………、そっか」


やはり、黒子は美琴を一番わかってて一番近くにいる親友なのだろう。
上条が危惧していた事は、いらぬ心配だったとホッとした様子を見せた。




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137 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:19:37.506eY0x6hDO (13/16)



上条「………………それを聞いて安心した」



サンキュ、と黒子に軽く笑いかける。



黒子「────────!?///」



上条「ん? どうした?」




その瞬間黒子は顔を隠すように上条から背けた事に怪訝の言葉を聞かせるのだが、黒子は顔を見せようとはしない。ただ耳は赤くなっていたが。

ふと、黒子はそっと上条の横に添う様に立つ。
どうしたんだろうと上条は黒子の俯いた顔に視線を向けるが、どんな表情をしているのだろうか。


黒子「あ、歩き辛いのでしたら! ………………わたくしが支えますの///」グイ

上条「お、おい、白井…………?」


どうやらその赤いのは耳だけではなかったようだった。





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138 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:20:22.966eY0x6hDO (14/16)


上条「御坂は?」

黒子「ええ。お姉様のお母様が寮まで迎えに来てまして。お二人で今日は夜までいらっしゃるようですの」

上条「そっか」


 上条と黒子の二人が街中を警邏する。
二人の腕には腕章がついているのだが、その腕は組まれており。
上条からしてみれば歩きにくい所を支えてもらってるというのが弁なのだが、周りから見ればそれはとてもパトロール中には見えなかったらしいのだがいいのだろうか。


黒子「歩きにくいのならそうおっしゃってくれればよかったですのに」

上条「いやあ、なんか言いにくくてな。今日にはもう元に戻ってると思ったんだけど」


はは、と乾いた笑いを出す。
なんて事はない、すぐ治るさという軽口を叩くが、黒子の様子は少し重たげな雰囲気を持っていた。
あまりにも近距離の為、表情は窺えないが。


黒子「…………無理はなさらないでくださいの」

上条「ん? 無理なんかしてねえよ」

黒子「お姉様からいつも話はお伺いしてますの。人を助けては入院を繰り返しているそうではありませんの」

上条「繰り返しって。そんないつもいつも入院なんて事は……………………してんな、俺」


否定するつもりが逆に納得してしまい、反論する事もできなくただ苦笑いを浮かべる。
まあ確かに大体死にそうな目に合っている事は事実だし。




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139 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:21:10.776eY0x6hDO (15/16)


 それにしてもそんな言葉が黒子の口から聞かされた事に上条は少し驚いてもいた。
黒子から見た自分は、嫌いで敵で憎い者ではなかったのか。


上条「ありがとな。はは、いや白井って俺の事嫌っていたと思ってたんだけど」

黒子「………………………………」キュッ

上条「……………………し、白井?」


上条がそういうと、腕を組む力が強まる。
黒子のその身体が腕全体に当たる様な感触で上条はたじろいで情けない声が上がっていた。




黒子「前も言いましたが。嫌ってなどいませんわ……………………当麻、さんの事」



上条「そ、そうか? はは、よかった」



そんな黒子の雰囲気に、やっぱり上条は情けない声を上げるしかできなかった。









初春「………………なんか嫌な予感がしますぅ」

佐天「どうしたの? 初春ー」

初春「むむ………………これは早く仕事を終わらせる必要がありそうです!!」キュピーン バババババ!

佐天「ざ、残像が見える………………」


 一方、支部内では妙な予感を感じた初春が少し多めの休日の仕事を倍速鬼モードで、だが確実に手早く済ませてしまおうと躍起になる初春の姿があった。
まあ早く終わらせた所で二人が戻ってくるまで待つしかないのに、という事も頭からすっ飛ばしていた事に佐天も固法もすっかり言葉を無くしていた。




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140 ◆LKuWwCMpeE2011/11/01(火) 16:21:55.256eY0x6hDO (16/16)

鯖移転、運営様お疲れ様でした!

また次回ー



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141VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/01(火) 16:39:10.78jCm2oSOjo (1/1)


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142VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/01(火) 16:48:32.81kK86vZ1DO (1/1)

乙。
はぁ、やっぱり初春ちゃんはかーわいーなー……。
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143VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(三重県)2011/11/01(火) 19:17:25.27Zx2KapJ60 (1/1)

やばい、全く興味なくてむしろレズ自重とか思ってたはずの黒子が超可愛い乙
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144VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区)2011/11/01(火) 22:00:16.76YEfJcWIY0 (1/1)

「やはり」黒子はかわいい
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145VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋)2011/11/01(火) 22:58:06.93cvEp9VTH0 (1/1)



どうでもいいが、>>1はKanonが好きなんだなwwwwww
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146VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(中国・四国)2011/11/01(火) 23:54:57.01nTvd/WAAO (1/1)



黒子はデレるとかわいさの威力が増すな
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147VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/02(水) 04:45:35.728rlqvmzIO (1/1)

黒子は本来「かわいい」より「かっこいい」が似合うと思うんだ

でもこの黒子は可愛いです


148VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区)2011/11/02(水) 07:00:01.38j4lcFvhlo (1/1)


電撃になれてるとか何処のサトシですか


149VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(新潟県)2011/11/02(水) 09:37:29.737iD7F1xjo (1/1)

まだまだ黒子のターン!


150VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/11/02(水) 13:55:33.86q3aim9oL0 (1/1)

黒子の「かっこいい」は背伸びをしてる上での格好良さ
黒子の「かわいい」は歳相応の可愛さ
伝わり難いかも知れんが、そこが黒子の魅力なんじゃないかと


151VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(三重県)2011/11/02(水) 17:49:58.59KOmMITMB0 (1/1)

>>150
めっさ腑に落ちた
そうだよな、ジャッジメントですの!(キリッ! とかやってても中一だもんな、厨二ですらないもんな
そりゃあ可愛いわけだ


152VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/02(水) 20:24:20.50NeIoVR7no (1/1)

五和は俺が幸せにしますね


153VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/02(水) 21:29:04.466Q8Ub04DO (1/1)

>>152
そげぶっぶ


154VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海・関東)2011/11/03(木) 14:27:47.66oeKxSk0AO (1/1)

いろんな黒子見て来たけどここの黒子のかわいさはトップレベルだな!!

もちろん初春もだけどねッ!!

>>1乙!


155VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/05(土) 02:11:41.61pi0E23ADO (1/1)

黒子、本当に可愛い。

ってか、上条に殺意覚えるのって、もしかして僕だけ?




156VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方)2011/11/05(土) 02:19:14.09uT0is+Fk0 (1/1)

>>155
俺はお前に殺意を覚えたかな


157VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/05(土) 02:53:17.39fCWhFhXDO (1/2)

>>155
お前臭いな


158VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(大阪府)2011/11/05(土) 03:06:08.07at8cu4zUo (1/1)

>>155
よし、死ね


159VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/05(土) 03:07:09.89whVjNQgY0 (1/1)

>>155
お前はアホか
上条さんがいなければ黒子のかわいさが引き出せないだろ


160VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(愛知県)2011/11/05(土) 03:57:18.14cjR6koYi0 (1/1)

>>155のうんこはくさい


161VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(九州)2011/11/05(土) 07:03:38.94AdMwVvwAO (1/1)

>>155

汚前は絶対に許さない。


162VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(西日本)2011/11/05(土) 16:25:44.71wunx7K8g0 (1/1)

>>155嫌われすぎwwww

まあ死んでほしいけど



163VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海)2011/11/05(土) 17:07:04.064v5HjIXAO (1/1)

つまり>>155が上条さんだったら~て事か…
やめとけお前じゃ無理だwwwwwwwwwwww



164VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(三重県)2011/11/05(土) 19:47:40.45FOBF4Z/p0 (1/1)

なんだこの流れwwww
>>155の人気に嫉妬wwwwww


165VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/05(土) 20:37:45.72fCWhFhXDO (2/2)

>>155
>>163
>>155
>>163
>>155
>>163
>>155
>>163
















>>155
>>163
ちょっと何言ってるかわかんない。


166 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:08:20.71SHm0wwWDO (1/14)


 仕事であるはずのパトロールがこんな楽しい時間に変わろうとは。


上条「それでなー、青ピと土御門のせいで連帯責任っつって。俺まですけすけみるみるさせられる事になってな」

黒子「それは災難でしたのね。それですけすけみるみる、とは?」

上条「ああ。目隠ししてトランプを見ずに図柄と数字を10回当てるやつでさー…………」

黒子「それは透視能力のカリキュラムではありませんの?」

上条「小萌先生がさー、なんか『上条ちゃん達は努力が足りませーん』って言い出してさ、努力すれば見えるはずっつってもわかる訳ないっつの。できないから『ポーカー10回勝ったらにしてあげますぅ』ってそれも目隠しされたままで、当然勝てるはずもなく」

黒子「それはまた無茶な話ですわね」

上条「だろ? コロンブスの卵じゃなくともクリアなんかできなくてさ。結局完全下校時刻寸前まで捕縛くらっちまってたんだよな」

黒子「それにしても、小萌先生、とおっしゃいましたか。以前お見かけした時に教師とお伺いして、失礼ながらとてもそうには見えませんでしたが」

上条「だよな。あー、そういえば一方通行の奴も言ってたな。二五〇年法だったっけ、不老不死の研究がどうのこうのっての。それ小萌先生が対象者なんじゃないのかって」

黒子「いくら学園都市といえどもそのようなモノは…………いえ、確かにあのお姿を見ればそう言われても否定できませんわね」


 二人で腕を組みながら街中を歩く。
それは警邏、というよりもまるで恋人同士が仲良く話し合いながら歩いているという図にしか見えなく、実際にこちらの様子をなんだか見る学生達の視線も暖かい。
それでも黒子は、嫌な気分など少しもしなかった。

 以前ならば、首を振って彼を蹴飛ばしてでも否定して拒絶していたのだろう。

しかし、今は違う。

どちらかというと自分から望んで、またそう見られるのが心躍るような思いになっている。
彼の歩行を支えている、というのが名目なのだがこの自分の腕で包む彼の腕をギュッと抱き寄せる様に無意識でしていた。



167 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:09:49.63SHm0wwWDO (2/14)


上条「つさ、パトロールってこんなんでいいの?」

黒子「構いませんわ。ジャッジメントが見回っている、という状況だけでも大事な防犯に繋がりますの」

上条「これはただの談笑しながらの散歩にしか思えないんだけどな…………」

黒子「あら、意外と真面目ですのね。とはいっても四六時中周りを睨みをきかせるように歩いていても疲れてしまいますわ。適度に、というのが肝心ですの」

上条「そういうもんか」

黒子「そういうもんですの」

上条「なるほどですの」

黒子「真似しないで下さいまし」チク

上条「いてっ。悪かった、腕ちみくんないでくれー」

黒子「……………………ふふ」クスクス


 異性など黒子にとってあまりよくは思わないものだったのに。
こうして男の腕を抱くなど、黒子は夢にも思っていなかった事だった。
犯罪者を捕縛する時も、大抵は男であるパターンが多く黒子も手心を加える様なことはしない。
先輩支部長から「やりすぎ」と言われようが、心の根っこの部分で男に対して嫌悪感を持っているのだからそれは仕方のない事だ。
触れる事も、近付く事でさえ身構えてしまうものなのに。

 しかし、彼だけは例外だ。

寧ろ彼だけには触れてほしい、彼だけには関わりたいと思える。
この嫌なはずの男らしい肉付きの腕も、彼の腕ならば、と自分から手を引いていて。
その腕から感じる暖かさに、胸の心地好い高鳴りが響く。

彼の声と優しさと温かさと。
この自分の大切だと思える心音も彼に届いているのかもしれない。

しかしそれでも、黒子は離れる様な事はしなかった。




168 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:10:26.19SHm0wwWDO (3/14)


黒子「…………初春よりも先に、気付いていればよかったですの」

上条「ん? 初春さんがどうしたって?」

黒子「何でもありませんの。ほら、行きますわよ」

上条「引っ張んなって。足ももう多分大丈夫だし、そろそろ離れた方がいいんj

黒子「お断り致しますの。あなたは黙って引っ張られていなさいな」

上条「うぅ…………視線が気になるんだよ…………」

黒子「ジャッジメントの仕事と思わせれば問題ないのではありませんか」

上条「とてもそんな風に思わす事が出来るとは思わないんだけど」

黒子「職務を放棄して遊んでいる訳でもないんですの。そう言われたとしてもいくらでも状況説明して差し上げますわ」ギュ

上条「ダメだこりゃ、梃子でも動かねえ…………」


溜息を吐くようにして頂垂れる上条だったが、それでも黒子は離そうとはしない。
そうして一通り見回りが終わるまで、二人の腕はずっと組まれていたままであった。




169 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:11:11.80SHm0wwWDO (4/14)


「やぁ、今日は一体どうしたんだい? 怪我をしたようにも病気にかかったようにも見えないけど?」

浜面「ちわっす。いや、聞きたい事があって」


 第七学区内にある病院にて、浜面達はカエル顔の医者を訪ねていた。
白衣を着、椅子に座りながらコーヒーを飲むその人物は不思議そうな顔をして浜面にそう問い掛ける。
ぱっと見、とても凄そうな人には見えないのだが、この人物がどんな大怪我や重病の死の淵からでも連れ戻してしまう「冥土帰し」という異名を持つ凄腕の医者だ。

 その冥土帰しとは、麦野が入院した時期にお見舞いした際に何度か見掛け、お互い面識を持っていた。
独特のその雰囲気で浜面達を迎えると、とりあえずと冥土帰しは椅子に座らせる。


冥土帰し「聞きたい事ってなんだい?」

浜面「聞きたい事というか、紹介してほしい人がいて」

冥土帰し「ふむ、紹介してほしい人、とは?」

浜面「AIM拡散力場を専攻としてる研究者の人なんだが…………」

冥土帰し「AIM拡散力場専攻の研究者? 何人か知り合いはいるけど、急にどうしたのかな?」


目の前の冥土帰しが、自分達を見定める様にして疑問を投げ掛ける。
まあそれも当然だろう、突然スキルアウトの風貌した三人の男が訪ねてきて研究者を紹介しろというのもまた変わった話である。




170 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:12:32.08SHm0wwWDO (5/14)


やはりこれは説明せねばなるまいか、と浜面が口を開きかけた時、この診療室のドアがノックされた音が響き渡った。

コンコン、ガチャ。


「失礼するよ」

冥土帰し「おや? どうしたんだい?」

「教え子がちょっと怪我をしてしまってね。診てやってほしいんだ」

「痛いよぅ…………」

冥土帰し「何処を怪我したのかな?」

「えっと、ここ」

冥土帰し「ふむ、大丈夫だよ? すぐに治るんだね?」



浜面「むー…………俺達、ここにいてもいいんかな?」ボソ

半蔵「さあ? ま、いいんじゃないか?」ボソ

「この白衣着た人も綺麗だ………………」ボソ


「大丈夫そうなら安心した。それより、この少年達は?」

 すると白衣を着た、目の隈が特徴的な女性が浜面達に一度目を向けて冥土帰しに聞いていた。
何となく居心地が悪そうな気がした浜面だったが、何となしにその場にいてその女性に目をやる。
ウェーブのかかった長い髪が似合う綺麗な人だなという印象は喉の奥で飲み込む事にしたが。


冥土帰し「これでよし、だよ? 包帯巻いたから今日一日は動かさないようにするんだね?」

「わぁ、ありがとうございます」

浜面「治療早っ!?」


ほんの少しの間、目を離したその一瞬の内に治療が終わった事を冥土帰しが言葉に出すと浜面は思わずそうツッコんでいた。
さすがは冥土帰しと言われる人物だ、あの状態の麦野の身体を治しただけの事はあった。


冥土帰し「そこの少年達、AIM拡散力場専攻の学者さんに用があるみたいだよ? 木山くんの事じゃないのかな?」

木山「そうなのかい?」

浜面「んあ?」


木山と呼ばれた女性がその言葉を耳にすると再び、今度はまじまじと浜面達の方に目を向ける。

それはまあ何と言うか、タイミングが良かったというか。
浜面達にとって願ってもない邂逅であった。




171 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:13:34.36SHm0wwWDO (6/14)


黒子「只今戻りましたの」

上条「戻りましたー」

初春「あっ! 戻ってきましt」

黒子「至って問題はありませんでしたの」

上条「平和な街でした」

黒子「学生達は皆笑っておりました」

上条「それぞれ休日を楽しんでいる様でした」

黒子「忙しそうな平日とは違い、緩やかな時間が流れておりました」

上条「蔓延る悪の気配はありませんでした」

黒子「伸び伸びと買い物に勤しむ女学生を見ました」

上条「本を読み歩きながらぶつぶつ独り言を言う受験生も見ました」

黒子「何やら女の子が描かれた紙袋を大事そうに抱える男子学生も見ました」

上条「ああ、父よ母よ」

上条・黒子「「今日も学園都市は平和です」」


初春「」

佐天「」

固法「」


帰ってきた矢先に何を言い出すんだこの二人は。

お互いを見合って、「ぷっ」と吹き出す上条と黒子に声をかける猛者はこの風紀委員第一七七支部の面子にはおらずただ言葉を無くしていた様だった。




172 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:14:26.16SHm0wwWDO (7/14)





初春「じゃなああああああぁぁぁいです! ってか白井さん! なに当麻さんと仲良さそうにしてしかも腕を組んでるんですか!」




黒子「あら? あらあら」

上条「ぬお。そうだ、もういいよな、白井?」

黒子「ダメです、とわたくしが言えばあなたはどうするおつもりで?」

上条「え、まだダメなの?」

黒子「ええ、わたくしがいいと言うまで、このままの状態ですの」

上条「いやもういいだろ…………女の子と腕を組むなんつー事、出来る事なら上条さんの精神的に擦り減る物が多くてご遠慮いただきたいのですが……」

黒子「……あなたはお嫌いなんですのね、わたくしの事…………」オヨヨ

上条「なんでそうなるんだ。そんなわけあるか」

黒子「なら先輩の言う事は黙ってお聞きなさいな?」キライジャナイ? ヤッター



初春「しいいいいぃぃぃぃらああああぁぁぁぁいいいいぃさああああぁぁぁんんんんんんん?」ゴゴゴゴゴ



黒子「う、初春から黒いオーラが…………!」

上条「ひいいいぃぃぃ、背景にどっかの怪獣映画に出てきた花の怪獣が見える!?」


 これはやばいか、と上条は情けない悲鳴を上げながら何とか初春を宥める。
完全にノリで黒子との会話を深く意味も考えもせず合わせていたのだが、何かが覚醒してしまいそうな初春を見て
少しふざけすぎたなとちょっぴり反省していた。




173 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:15:34.18SHm0wwWDO (8/14)


佐天「い、いつの間にこんな仲良しに…………?」

初春「むー……………………」


 完全に確信した。黒子はライバルだ。
黒子の様子を見れば一目瞭然である。
決して異性に対して気の許す事のない黒子が、ここまで彼に自分の方から近付くとは思いもしなかった。


黒子「ふざけが過ぎてしまいましたの。悪かったですわ、初春」

初春「」プイ

上条「ほ、ほら、初春さんごめんって。ふざけすぎた」

初春「当麻さん………………」

黒子「………………わたくしの事は完全無視ですの」


あれから目に涙さえ浮かべると、黒子と上条はようやく離れていた。
彼に自分以外の女の子が近付く事の悲しさと悔しさのような物を感じて初春はぷんすかとその頬を膨らましており、佐天もそんな初春を見て苦笑いを浮かべていた。

誰よりも好きなのは、自分なのに。
白井さん、応援してくれるって言ったじゃないですかーと怨みの様な感情も混ぜて黒子に鋭い視線を送る。
すると黒子はうっ、とたじろぎ、言葉少なげにしてすごすごと引き下がっていた。

どうやら黒子とは、もう一度しっかり話し合うべきなのではないかと思えてくるくらい、黒子の態度は一変していた。


初春「でも、当麻さん………………足は、大丈夫、ですか?」

上条「ん? ああ、もう大丈夫だぞ。明日になりゃ完全に治ってるって」

初春「…………白井さんは気付いたんですね、当麻さんの足のコト」

黒子「………………ええ、まあ」


少し落ち着いて彼を見てみれば自分も気付けた事のはず。
しかしここに来る際、彼に会えたという事で気分が喜びの最高潮で落ち着く事ができず、それに気付けないでいた。



174 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:16:45.20SHm0wwWDO (9/14)


自分の事ばかりで。
彼の様子も気にかけられなかった事が初春は悔やんでいた。
ましてや自分じゃない黒子が気付き、そして歩行を手助けしてあげるという事で腕も組んでいたというのだ。

彼を一番に見ているのは、自分ではないのではないかという思いさえ浮かんできて、またそれが初春の気分を沈ませる。
彼の目に一番に映る者はまだわからないのだが、彼を想う者では一番でありたかった。
彼を一番に気遣い、一番に想い、一番に好きで。

この確かな想いを自負していたいたのに、彼の身体の異常という非常事態に気付けなかったというのが、ひどく初春の気持ちを落ち込ませていた。


上条「ほら、もう大丈夫だって」ナデ

初春「え──────」フワ


しかし、初春のその思考は中断させられる事になる。

この頭に覆いかぶさる感触が、初春の心の涙を止めた。
グイ、と抱き寄せられるように彼の身体に自分の身体がぶつかる。
彼の胸元に顔を埋める様にして、初春はただ驚きながらもその暖かく優しい感触を噛み締める。

撫でられて、抱き寄せられて。
滲んだ心が、晴れ渡るかのよう。


上条「そんな泣きそうな顔しないでくれ。初春さんが泣きそうになると、こっちまで心が痛むぞ」ナデ

初春「当麻さん……………………」ギュ

黒子「くっ……………………!」

佐天「(わお……………………)」

固法「(私の知らない間に色々な事があったみたいね…………)」


どうしようもなく、温かい。
優しい、愛しい、好き。

一気に感情が押し寄せる様にして、初春は上条の背中に腕を回した。
身体を包む彼の匂いが、心地良い。
落ち着く、ずっと触れていたい、ずっとこうしていたい。



175 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:17:25.42SHm0wwWDO (10/14)




初春「あったかいです、当麻さん…………」

上条「はは、初春さんも。あったかいな」


胸の動悸も、彼に伝わっても良い。
それが彼の心に、少しでも届いてくれればいい。
だからしばらくそうして、自分の身体を重ねる様にして強く彼の身体を自分からも抱き寄せていた。


上条「元気になったか?」

初春「はいっ」

上条「そっか。よかった」


彼と接する度、彼の顔を見る度。
どんどん想いが膨れ上がっていくのがわかる。
風船で例えるならば、それはもう破裂寸前の所なのかもしれない。
もう声を大にして「大好きです」と言ってしまいたい気分。


上条「ほら、今日はご飯食べに行くだろ? せっかくだから、そういう良い顔してくれりゃ俺も嬉しいぞ」

初春「………………はいっ、そうですね」




黒子「ご飯………………だと………………?」


まあそんな言葉にピクリと眉を動かした少女が一人いたのだが。



176 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:18:10.85SHm0wwWDO (11/14)


浜面「という訳なんスけど。何か心当たりはないですかね?」

木山「ふーむ、なるほどね」


 湯気が立ち込める紙コップに注がれたコーヒーを少しずつ口に含みながら木山が答える。
浜面達の話をしっかりと吟味するように十分に時間を置き、木山は言葉を選ぶようにしてそれだけ口に出していた。

病院で紙コップ──────それって、何だかなぁと浜面達はなんとなく遠慮しておき紙パックのジュースを購入していたのだがまあそれは完全に余談である。


木山「まあ、心当たりはないことはないが」

「まじっすか!」

浜面「おお」


木山が告げた言葉に浜面達は歓喜の様な声を上げる。
やったな、今度こそビンゴか、とお互いの顔を見合っていた。


木山「『DMリカバリディスク』。それは何の事かわかるかい?」

「………………いや、わかんねっス」

浜面「なんだろ」

木山「まあ実際にはあってないような物だからね」

「……………………えっ、どういう事っすか?」

浜面「あって、ないようなもの?」

木山「ふむ、そうだね。ヒントを上げるとすると、実際にはそのデータカードは“存在しない”んだ。普通の方法ではね」

浜面「ど、どういう事なんですか?」


 木山の呟く言葉が何だかよくわからないという表情で浜面達は詰め寄る。
やはり研究者、学者達と自分達の頭の構造は違うのであろうか、イマイチ理解できない。
頭を必死に絞るが、やはりどうにもそれらを繋げて一本の線に結ぶ事はできなかった。



177 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:18:56.44SHm0wwWDO (12/14)


半蔵「ふむ、普通の方法、とは?」

木山「ああ。データカードというモノはコンピューターがあって初めて成り立つものさ。しかしそれが普通の方法では成り立たないのが『DMリカバリデバイス』というものなんだ」

半蔵「つまり、普通ではない方法を当て嵌めればいいという訳だな?」

木山「ほう、君は頭が切れるんだね」


浜面「おい、お前わかるか?」

「わかると思うか?」

浜面「全然」

「なら聞くな」


半蔵は何かを掴んでいるのか、掴みかけているのか。
わからないが何やら意味深な会話を木山と交わしており、一呼吸置いて頷くようにして紙パックのジュースに手をかける。
浜面達二人はただ横で聞いているだけの、傍観者に近いものになりつつあった。


半蔵「それで、方法とは一体?」

木山「データカードと言えばコンピューター。それに準ずるものを思い浮かべるといい──────ん?」


prrrrrrrrrrrrrrr────


またわかりにくいような言葉を残し、木山は着信を告げる電話を手に取り、確認するとポケットにもう一度しまう。
その一連の動作に、やけにインテリ感を感じながら浜面はじっと木山を見つめていた。




178 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:20:06.05SHm0wwWDO (13/14)


木山「おっと、そろそろ私はいかなければ」

浜面「ええっ? も、もう少しヒントを」


どうやら着信は呼び出しだったのだろうか、そうしている内に木山は席を立った。


木山「すまないね、そろそろ行かなくてはならなくなった」

「まじっすか………………まあそれなら仕方がないっすね」


その言葉に歩き出した背中越しに手を振りながら答える。
そして数瞬の逡巡の後、もう一度振り返って浜面達と視線を合わせた。


木山「残りのキーワードは、『別次元の構築プログラム』というもの。それもとびっきり頑丈な、きっと彼女にしか扱えないもの。彼女だけの構築プログラム、それはヒントだ」

半蔵「なるほどね」

浜面「どういう事だよ」

木山「中途半端ですまないね、それでは私は失礼するよ」


そういうと今度こそ木山は連れて来た小さい彼女の(教え子)?の手をひっぱり部屋を後にしていった。


半蔵「普通ではない、か。構築プログラムね」

浜面「どういう事だよ、教えろよ」

半蔵「確証はまだない。だがこれらの情報は決して無駄なんかじゃなかったな」

「もったいぶらずに言ってくれ…………」




半蔵「この街最強のネットワークシステム防衛者──────『守護神』の構築プログラムならばあるいは、という事なんだと思う」


浜面「……………………おい」

「……………………おい」

半蔵「……………………ん?」



「「ますますわかんねーよ」」



半蔵の名探偵ばりの推理の様な言葉に返せたのはかろうしてそれだけな二人であった。



179 ◆LKuWwCMpeE2011/11/06(日) 03:21:45.47SHm0wwWDO (14/14)

時間空いてしまって焦りながら寝ぼけて書いた文章だから所々おかしいところがある

また次回!


180VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋)2011/11/06(日) 03:24:23.38JouPSINmo (1/1)

Weeeelll doneeeee! GOOD NIGHT!


181VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(大阪府)2011/11/06(日) 03:24:58.02xbKtSpP5o (1/1)

乙!
楽しみにしてるぜ!


182VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/06(日) 03:44:31.97hXpqHxjs0 (1/1)

次回から名探偵半蔵が始まるよ!!











ごんなさい嘘です
>>1乙


183VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/06(日) 04:02:06.00odOHyBGDO (1/1)

>>1おつ。
初春ちゃんが事件に巻き込まれそうな悪寒……


184VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越)2011/11/06(日) 07:21:56.47XDidpFMAO (1/1)

超乙です

花の怪獣ってもしかしてビオランテでしょうか


185VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都)2011/11/06(日) 10:32:07.00Yfid3d550 (1/1)


初春がまた巻き込まれそうで怖い
つか初春と黒子が可愛すぎて、上条さんはよく鼻血噴かないものだな


186VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越)2011/11/06(日) 10:59:07.38ZvsBiauAO (1/1)

>>1乙。

……ちなみに、>>167での「腕ちみんないで」って『腕をつねらないで』の意味でおk?


187VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/06(日) 12:29:28.58cq/oTHrbo (1/1)


魔術サイドが出てきそうだったり、浜面達が初春と関わりそうだったり、話がどんどん大きくなってきたな


188VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方)2011/11/06(日) 15:39:25.28XOXqm7ym0 (1/1)

ビオランテのオーラを纏う初春とか…



189VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/07(月) 01:42:14.97Ga0Z6rWDO (1/1)

黒子、初春に対し、正式に宣戦布告したか。

ってか、ビオランテ・・・。ゴジラ?


190VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/07(月) 02:14:44.60m6am8uZDO (1/1)

>>189
>>155
同じ臭いがする。


191VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(大阪府)2011/11/07(月) 03:57:55.96Iy5ocRgmo (1/1)

>>1乙!

ちみくるって言うって事は>>1は静岡出身かね?


192VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/11/07(月) 08:12:25.877KLPW3Je0 (1/1)

エレキングも居るでよ


193VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海)2011/11/07(月) 10:56:58.864NHBBLzAO (1/1)

>>167
腕抓(つね)らないで
で良いんじゃないかな?


194 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:36:25.46c580bRnDO (1/13)


 17:00が今日のジャッジメントの仕事の終業時間。
残り10分まで迫った所で、初春はまだかまだかという思いで時計と睨めっこをしていた。
倍速鬼モードで自分の仕事は既に30分前に終わらせており、今現在は佐天と共にお茶を啜っている。


佐天「それにしても。今日だったんだ? 上条さんとの約束のお食事会は」

初春「えへ。そうなんですよー」

黒子「」ピク

初春「早く時間にならないかなー」

黒子「」ピクピク

佐天「…………なんか白井さんがぴくついてるよー」


 まだ残っている仕事に手をつけながら初春が言葉を出す度に様子を窺うようにして妙な反応を示す黒子に佐天が取り敢えずツッコんでおく。
ぐぬぬ、と恨めしい様な視線を初春に送っているのだが、当の初春は可愛らしいカップを両手で口元に運びながら視線だけをずっと時計と上条の方向に行ったり来たりさせていて黒子の様子も視界に入れない。

 現在固法が上条に付きっ切りで書類処理について教授をしており、上条もそれを真剣な表情で聞いている。

…………真剣な、とは少し違うか。




195 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:37:09.03c580bRnDO (2/13)


 時々ちんぷんかんぷんそうに眉を引き攣らせていて、彼のこういう作業は苦手だーと訴える様なその表情を見て初春はクスッと柔らかい笑みを浮かべる。
確かにジャッジメントの書類処理等の作業は面倒で、また頭も使う。
事件や事故の首尾、また第一七七支部が受け持つ地域の治安の様子を逐一、上に報告する義務があり、その際には自分で言葉を考えて詳細まで書き記さなければならない。

事件が起きて犯人を捕まえるだけが仕事ではない。

初春も当初慣れるまで少し時間がかかったのだ、こういう分野が苦手な上条が大変そうにしているのは実によく分かった。


初春「……………………」ジー

佐天「…………ってさー、…………よね」

初春「……………………」ジー

佐天「だと……うぃ……してもさ、……………なのにね。って初春聞いてる?」


 自由な方向に向いている髪の毛。
普段はそう見えなくても、いざという時には力強くなるその目。
シュッと整った鼻、形のいい口。

………………以前自分の頬に触れた、その唇。


初春「ふええっ///」

佐天「ええ!? いきなり煙が頭から出た!?」

黒子「何をしているんですの…………」


大好きな人の、顔。
見ていられるだけで幸せな気分にも陥ってしまう初春には、もはや他のものなど眼中にはないのだろう。




196 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:38:07.15c580bRnDO (3/13)


~~~♪ ~~~♪


初春「」ガタッ

上条「お、終わったぁ…………」

固法「ふふ、お疲れ様」


 時計の時刻が変わった事を知らせる電子音が響くと、初春はその瞬間に席を立つ。
その身の早さ、恐らく早撃ち対決だったのならば誰にも初春に勝てる者はいなかったのだろう。
彼の間延びた声とそれを労うような固法の声が届くと、自分の鞄にちゃっちゃと荷物を仕舞う。

筆箱とレポート用紙とノートパソコンと、その他諸々。
もう見なくたってその一連の動作を手早く済ませてしまった初春は、タッタッと上条に駆け寄りその手を取った。


上条「わわっ」

初春「当麻さん、行きましょう!」

上条「ちょ、ちょっと待って荷物取ってくるから」

初春「らじゃです」バッ

佐天「くぅ、どんだけ楽しみにしてたかわかる動きだね」

黒子「………………………………む」


はは、と苦笑いして上条は鞄を手に取る。
というか、もう帰ってもいいの? という視線を固法に向けるが、固法がニヤニヤした頷きを見せると上条も納得して椅子を机の奥にしまった。




197 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:38:50.79c580bRnDO (4/13)


上条「それじゃ、お疲れ様っした。行くか、初春さん」

初春「はいっ。行きましょう当麻さん」ギュ

上条「……………………手の感触ががが」

初春「えへへ」ギュウ


小さく柔らかいその手の感触に上条がたじろぐが、初春はさっさと手を引っ張って支部室から出ていく。
一応「お疲れ様でした」という挨拶はしていたがそれはもう完全に流れ作業としてで心はもう彼との時間一直線であった。


佐天「お疲れ様ー、初春、後で聞かせてもらうからねー」ニヤ

固法「私もまた聞かせてもらうわ」ニヤ

黒子「………………………………ぅ」


バタン──────


佐天「さて、私達も帰りましょうか?」

固法「そうね。ねね、ケーキ屋寄って行かない?」

佐天「あ、いいですね。お供しまーす!」

固法「白井さんもどう………………って、白井s




黒子「うがあああああああぁぁぁぁ!!」ダンッ




佐天「」

固法「」


もし今ここにちゃぶ台があれば絶対にひっくり返しただろう。
そんな少女の咆哮が彼らが出て行った支部室で響いていた。



198 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:40:01.57c580bRnDO (5/13)


上条「さむっ」

初春「もう完全に冬の季節到来ですね」

上条「初春さん大丈夫? 寒くないか?」

初春「わ、私は………………ぁったかぃでしゅ……///」ギュギュゥ

上条「お、おう…………そっか」


 ビルから出ると、秋から冬にかけての季節の夕暮れ時の一段と冷たい風が吹きすさび、上条はその寒さにちょっぴり身を震えさせる。
もう季節柄、陽ももう少しで完全に落ちてしまう時間帯でかろうじてその夕焼けがそびえ立つビルの間から覗かせていた。

知識としては知ってはいるのだが、実際には『初めて』味わうこの季節になんだか夏とは違う哀愁を感じ、毎年こんな感覚味わってたんかなと感想を抱く。
淋しいとは少し違う、人肌恋しくなる様なこの感覚。

だが、この右手を包む柔らかい温もりがそれを晴らしてくれていた。

自分の肩付近にあるその頭、柔らかそうな髪質、まっすぐ街に目をやるその大きな瞳。
それが妙に庇護欲というか、愛護心というかこう、ギュッとしたくなるというか…………何というか。


初春「………………? 当麻さん、どうしました?」

上条「………………っ、い、いやなんでもないぞー」


自分の視線に気付いたか、こちらに顔を向けてちょこんと首を捻る彼女の様子に。
上条は咄嗟に目を逸らしていた。




199 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:40:40.01c580bRnDO (6/13)


───今の可愛すぎだろ………………


自然と顔がなんだか熱くなっていた事に上条はそわそわしだす。
この感覚は、きっとこの季節感のせいだけではないのだろう。
右手に繋がれたこの少女の存在を、守りたい。
本気で、守り通したい。


上条「…………………………」ギュ

初春「と、当麻、さん………………///」

上条「どこ行くか、決めた?」

初春「は、はい、一応…………///」


自分からも強く、自然にその手を握り締めていた。




200 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:41:26.85c580bRnDO (7/13)


「いらっしゃいませ」


 店内の暖かい空気が身体に染み渡ると、上条は縮こまらせていた身体を居直して寒さから肩に入っていた力を抜いた。
まあロシアの寒さよりはまだマシであったのだが、こっちでもそろそろマフラーがいるなぁなんて感想を漏らしながら店内の様子に視線を向ける。


「お客様、二名様でよろしいでしょうか?」

上条「あ、はい」

初春「中はあったかいですね、当麻さん」

上条「ん、そうだな」


それではこちらにどうぞ、という店員さんに導かれて奥のテーブル席まで向かう。
店内では流行りの音楽が掛かっており、また食欲をそそる芳醇な香りが漂っていて実に美味しそうなお店の雰囲気を醸し出していた。

初春が選んだお店は、前から一度行ってみたかったという洋食屋であった。

何かのグルメ雑誌で目にしたお店の様で、チェーン展開している大衆レストランよりもほんの少し上品で小洒落た印象の洋食屋だ。
上条としてはなるべくなら高価そうなものではない事を祈り、初春に導かれるがままについてきたはいいのだがそのお店の高価そうな印象を受けるその外観にかなり焦ったというのは彼だけの秘密。
ただ店のガラス張りで展示されていたサンプル品と書かれていた案外良心的な値段設定を見て、何とかなりそうだとほっと一息撫で下ろしてもいた。

こういうのは男が奢るものだろう。
後は初春が何を注文するかで自分の注文も変わってくるのだがそんな雰囲気は感じ取らせない。


「ご注文は後ほどお伺い致しますね」

上条「はい」


マニュアル通りにお冷やとおしぼりを二つテーブルに並べ、下がっていく店員さんを見て上条はメニューをテーブルの上に広げた。


初春「わぁ、どれも美味しそうです!」

上条「だな、何にしようかなー」

初春「むむー」


初春は楽しそうな表情でメニューの端から端へと目をやっている。
んー、どうしようかなと口元に指を当てて考え込む様子を見て上条はピク、と動きを止めていた。



201 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:42:21.02c580bRnDO (8/13)


また。
まただ。
こう、胸にキュンと来る様な、妙にギュッとしたくなる様な。


初春「パスタもいいなー。でもハンバーグも捨てがたいな、むむむ」ムー

上条「……………………」キュン

初春「デミグラスソースのオムライスもいいし、ピザも美味しそうですー……………………当麻さん?」

上条「ん? あ、いや、どした?」

初春「あっ、ごめんなさい、私ばっか見ちゃってました」アセ

上条「はは、いいぞ」


変な所を見られたか、と取り繕う言葉を出すがどうやら怪訝には思われなかったらしく上条は少し安堵していた。
すると初春が、テーブルの上の彼女よりにあったメニュー表を真ん中当たりまで移動させ、上条に微笑みかける。


上条「ん、決まったか?」

初春「いえ、まだですけど………………当麻さんと、一緒に見たいな、って…………///」


…………それは反則だろう。

その様子に照れ隠しで初春から真ん中に寄せられたメニュー表を覗き込む様にして視線を逸らす。
初春もメニュー選びを再開させ、二人でそれをじっと眺めていた。


───……………………ち、近い…………!


ふわ、と彼女の頭から甘い香りが漂う。
本日、実は彼女の頭にはいつもの花飾りではなくワンポイントの一輪の花が象られたヘアピンがついているだけ。
佐天がつけているそれとどうやら同じタイプの物で、それも実に彼女に似合っていると思う。
というか、あの花飾りでは無しに直に彼女の頭が僅か数cm目と鼻の先にあるものだから、彼女の使用しているシャンプーの甘い香りが息をするだけで入り込んでしまうのだ。


上条「……………………お、俺はもう決まったか?」

初春「は、はい?」


妙な緊張感から支離滅裂な文章が口から出たのは仕方のないこと…………かなぁ?



202 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:43:25.24c580bRnDO (9/13)


初春「そういえば、当麻さんっていつもご飯はどうされてるんですか?」

上条「ご飯? いつも作ってるぞ?」

初春「あれ、インデックスさんは料理は…………」

上条「あいつは作らない、というか作れないんだよなぁ」

初春「そ、そうなんですか? あれ、それじゃ今日はインデックスさんは」

上条「ああ、それなら大丈夫だ。代役頼んであるからなー」


 午前中、出掛ける際に「今日俺の分のご飯はいらないから」と言うと妙に訝しげな視線を三つ投げ掛けられたがオルソラの「了解なのでございます」の声で何とか有耶無耶に薄められて難を逃れていた。
こういう時に妙に勘の働く少女達の様子にたじろぎながら逃げる様にして仕事場まで逃れた事はまあいいのだろう。


初春「あの、聞いてもいいですか?」

上条「ん? どした?」

初春「その…………インデックスさん、って」

上条「ああ、インデックスの事ね。んー、と…………」


何と説明したらいいのだろうか。
魔術の事はなるべくなら学園都市内ではおおっぴらにしたくないし、それに。

目の前の少女に、危険が迫るのだけは特に避けたい。

ただ魔術の事を口に出した所で初春がどういう行動に出るのかはわからないし、どうなるのかはわからない。
ただそれでも、やはり少しでも彼女に危機が降り懸かる可能性というのを無くしたい。




203 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:44:25.33c580bRnDO (10/13)


ましてや今、まだ詳細はわからないのだがこの学園都市でその魔術の事件が起きたばかりという状況なのだ、殊更中々に言いづらい事だ。

あの時、病院内で聞いたあの話。
打ち止めを守る為に、勇敢に学園都市第二位の男に立ち向かったというのだ。
ジャッジメントとしてというのもあるのだろうが、そんな正義感溢れる彼女の様子からこの事件の匂いを嗅ぎ付ければきっと彼女はそれに自分からも関わろうとしてしまうのだろう。

目の前の少女が傷付くのは、一番見たくない。


上条「そうだな、訳あってウチで預かってるだけなんだ。ほら、昨日のあの三人いただろ? あの三人はその、保護者みたいなもんでさ。あいつらから頼まれたんだよ」

初春「その、訳とは?」

上条「んー…………、なんつーか、その…………」


どうしよう。
何とかごまかしたいのだが。

 ただ、上条は揺れている。
彼女を危険から遠ざけたい自分と………………隠し事をしたくない、自分と。
相手が美琴とかだったのならば問答無用で隠していた。
しかし、彼女は違う。
ありのままの自分で接したくて、ありのままの全てを知ってほしくて。
自分の知っている数少ない物を、共有したくもあって。


上条「…………………………っ」


言葉に、詰まった。

が。


初春「ぁ………………当麻さん、ごめんなさい」

上条「え────────」


ペコリと下げられた頭に、上条は戸惑った。




204 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:45:25.19c580bRnDO (11/13)


初春「言えない事、言いたくない事。誰にでもありますよね」

上条「……………………」

初春「御坂さんの事も、御坂さんから話してくれるまで私は聞かないって決めたんです」

上条「……………………ああ」

初春「全てを聞くだけが優しさ、親しい間柄じゃないってあの時知ったのに、また言いづらそうな事をつい当麻さんにも聞いてしまって。ダメだな、私って」


コツン、と自分の頭を叩くようにして自嘲した笑い顔を浮かべる初春を見て、胸がズキッと痛んだ。

痛い。
違う。
彼女にそんな顔をさせる為に、そうしたんじゃないのに。


上条「………………初春さん、ごめん。御坂と同じように、今は言えない。言えないけど」

初春「……………………はい」

上条「危ない事もあるから、言えないけど。でも、初春さんには何となく知ってほしい気もするんだ。だから、言うよ。いつか言えるようになったら、その時は聞いてほしい」

初春「……………………はいっ、当麻さん……」


気付けば、そんな言葉を呟いていた。
その時の少し寂しそうな笑顔が、やけに印象的に写った。それが、より一層上条の心を揺らす。



上条「……………………ダメだ、抱きしめてぇ」ボソッ

初春「え、え/// と、当麻さん………………?///」

上条「ぬああっ!? き、聞こえてた…………?」

初春「は、はい…………その、聞こえてしまいました……/// オ、オネガイシマシュ…………///」

上条「いいいいいいいいいいのか?」

初春「は、はい………………っ///」

上条「…………いや、でもお店の中だしお店の中じゃなくても抱きしめるというのはというか俺何言ってんだこの、このしっかりしろ当麻しっかりしなさいうわヒーハー」

初春「と、当麻さん………………その、来てくれないんですか…………?///」


赤い顔をして、上目遣いでおねだりするようなその初春の表情。
頬に手を当てて少々意識が飛びそうになっている所も…………やたらと、ギュッとしたくなった。




205 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:46:33.22c580bRnDO (12/13)





初春「抱きしめて、ください………………っ///」




その言葉ですぐさま初春の元に向かってギュッと抱きしめてしまったのは上条だけのせいではない。


上条「…………………………」ギュギュウ

初春「ふぁ……………………っ////////」


うん、きっとそうだ。







「お待たせ致s………………………………何をしているんですか? とミサカは目の前でいちゃつくバカップルの男性の方を見て驚きと苛立ちが隠せませんんんんんんん」







上条「」

初春「」

店員(?)「離れなさい」パシッ

上条「いてっ、ってみ、御坂妹!? な、何でこんな所に!?」パッ

初春「え、み、御坂さん………………の妹さん? ぁっ、でも当麻さん離れちゃ…………ヤデス///」ギュッ

上条「」ブハッ

御坂妹「」イライラッ



御坂妹の突然の登場も霞んでしまうくらいの。

なんだよこの可愛い生き物、もう。




206 ◆LKuWwCMpeE2011/11/08(火) 01:52:39.69c580bRnDO (13/13)

>>186
えっ って思ってググったらちみくるって方言だったのか………指摘感謝!

>>191
愛知ー

>>193
その通りでございます、ご指摘本当にありがとうございます

また一つ俺かしこくなっちゃったよ、やったね>>1ちゃん!

また次回っすー


207VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋)2011/11/08(火) 01:57:13.168HY+aznco (1/1)

乙。


208VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/08(火) 05:57:37.22VLFIskUDO (1/1)

おつ。
はぁぁぁぁああああああああ~、初春ちゃんはかーわいーなー……ぎゅぅぅぅうううってしてぇ……


209VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海)2011/11/08(火) 09:32:42.08S+srDBmAO (1/1)

朝一番に読んだおかげでテンションMAXになりますた
ついでに電車内で2828していたので周りから不審な目で見られました


210VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/08(火) 10:52:57.11kXOdMSa7o (1/1)


ちみくるって何かと思ったらつねるのことだったのね
よくわかったな、お前ら

なにこの可愛い生き物
お持ち帰りしたいんですけど


211VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都)2011/11/08(火) 11:10:39.84VN2G9xHS0 (1/1)

おいおいこんなんで落ちない男がいたらそれは男としてどうかと思うぞwwwwww
初春さん可愛すぎ!!

俺んとこの方言なんか「はよしねー」ってのがあって、無意識に他の地方の人に使ったら……
まあ「す」の連用形と「ぬ」の命令形で平安言葉そのままなだけなんだが


212VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区)2011/11/08(火) 16:54:07.993cEATypDo (1/1)

つねるって意味だとはわかったけど方言だったのね
修羅場クルー?


213VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/08(火) 18:25:18.60VuzA8Qpq0 (1/1)

やばい俺今すげーニヤニヤしててキモイwwwwww
女の子は素直が一番かわいいな
つまり初春が一番かわいい


214VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越)2011/11/08(火) 20:36:34.811k2YAPjAO (1/1)

乙!

……上条さんが本気出し始めましたか。
そして、ここの初春と>>1は可愛い。



215VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/08(火) 23:14:50.850DD5NssZo (1/1)

初春の本体置いてくるとかwwwwww遠隔操作してんのか


216VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/09(水) 00:42:37.32tJ0x6/WDO (1/1)

御坂妹、何故ここにいる!?




217VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(愛知県)2011/11/09(水) 01:42:04.686avQ/eNn0 (1/1)

>>216
お前こそなんでここにいるんだよ
くせーんだよ


218VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海)2011/11/09(水) 10:26:01.86IOD65FrAO (1/1)

もしかして>>155と>>216は同一人物か?


219VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区)2011/11/09(水) 10:49:46.57/Na+JSbho (1/1)

なんでそんな突っかかってんの
前もお前らが発端だったじゃんよ


220VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/09(水) 12:00:10.32lVse5UoIO (1/1)

はいはい。くだらないからやめろ


221VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/09(水) 22:08:46.47/+/s0zfDO (1/1)

>>189
>>155
>>216
お前らもう一生ROMってろks


222VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/09(水) 22:46:28.36FIKBLPeno (1/1)

お前ら上条さんが羨ましいからって荒らすなよ


223VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方)2011/11/09(水) 23:12:26.34ZukJv2J+o (1/1)

おれはビオランテが羨ましい…


224 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:25:02.85dLttBPIDO (1/13)


御坂妹「こんな所で何をされてるんですか何をとミサカはあなたにズイッと詰め寄ります」

上条「いや、べ、別に普通に飯食いに来ただけなんだが…………」

御坂妹「普通にご飯を食べにですか? あなたはご飯を食べる所で一々女の子を抱きしめる風習があるのですか? 何かの儀式なのですか? とミサカはあなたの言質を取ります」

上条「い、いや、それはだな…………」

御坂妹「大体あなたは少し目を離すとすぐに女の子を引っ掛けていますね。たまに会えば必ず違う女の子を…………ミサカだって…………」

上条「み、御坂妹………………?」


御坂妹「と、ミサカは恋する乙女のモノローグの雰囲気を醸し出します」


上条「あのなぁ…………」


 あれから少し時間が経ち落ち着いた(?)頃に上条と初春は座り直し、店員扮する御坂妹にとりあえずと応対していた。
とは言ってもそのまま上条は初春が腰をかけている長椅子の横に座り、初春も上条の腕をその胸に抱いたままの状態であった。


上条「それで。御坂妹はここで何してるんだ?」

御坂妹「アルバイトですが、この恰好を見てもわかりませんか? とミサカはあなたの鈍感具合を心配します」

上条「アルバイトなんて始めてたのか」

御坂妹「カエル医者からの薦めです。社会勉強の一環としてミサカはここで働かせてもらっているのです、とミサカはあなたの質問に律儀にわざわざ答えます」

上条「そうなのか、はは……………………」


 なぜか知らないがやけに突っ掛かるような言い方をする御坂妹に上条は顔を引き攣らせ、苦笑いを浮かべる。
確かに今現在の彼女はこの洋食屋の給仕服で身を包んでおり、デミグラスソースのオムライスを運んだそのお盆を抱えていた。

ただ視線は鋭い。
それは上条の…………いや、彼と初春とそして彼らの腕に行ったり来たりしていて、ピクピクと時折眉を動かしている様にも見えた。



225 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:25:49.74dLttBPIDO (2/13)


御坂妹「…………………………」

初春「……………………あ、あの……御坂さんの妹さん……ですよね?」


少々声を掛けにくそうに恐る恐るといった感じで初春が声を出す。
御坂妹の目はなんだか焦点が合ってないような、それでいて見透かされているかのような気もした。

 他人から見て、その少女の顔はまさに美琴本人だ。
余りにも似過ぎているその容姿、姿形。
初春の知る幼い打ち止めもそうだが、今回会ったその少女は肉体的にも美琴のそれである。
彼女を、上条は妹だと言っていたが。


御坂妹「……………………」

上条「御坂妹?」

御坂妹「え、あ、はい。ミサカはお姉様の妹のようなものです、とミサカは答えます」

初春「そ、そうなんですか」


何だか歯切れの悪い御坂妹の言い方に何だろうと思いながらとりあえずはそう返事をする。
何を考えているのかは全く掴めなくただじっと初春はその少女の方を見つめていた。


上条「どうしたんだ? 御坂妹、調子でも悪いのか?」

御坂妹「いえ、至って異常はありません、とミサカは健康である事を報告します」

上条「そっか、それならいいんだけど」


御坂妹はじっと初春を見ている。
その彼女の様子に、初春も何か顔についてるのかなと顔に手を当ててみるが異常はなさそうだ。
その視線に、どうにも落ち着けない。




226 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:27:57.58dLttBPIDO (3/13)


初春「え、えと。その」

御坂妹「……………………以前、あなたは


「おーい、6番テーブルさんのこれ持っていって」


御坂妹「あ、申し訳ありません。すぐに向かいます、とミサカは答えます」


するとそこで厨房の奥の方からコックさんらしき声が響き、御坂妹はそちらの方に返事をする。
ただいま御坂妹は仕事中で時間帯も夕食時の忙しい頃だ、戻らなくてはなるまいだろう。
ペコリと上条と初春の方に一礼すると、御坂妹はたったっと厨房の方に戻って行った。


上条「…………どうしたんだろ? なんか様子が変だったけど」

初春「なにか私、悪い事しちゃったのかな」

上条「ん? どうしてだ?」

初春「いえ…………御坂さんの妹さんにずっと見られていた様な気がしまして」


それに。


『以前、あなたは────────』


何を言いかけたのだろう。
御坂妹とは会った事もなく、これが初対面であった。
しかし御坂妹のその言葉に、どうやら前から接点があったかの様な意味合いを感じさせられ初春を考えさせる。


上条「んー、まあでも初春さんは気にする事はないんじゃないか? 今日初めて会ったんだろ?」

初春「はい。初めて、ですね」

上条「何だろうな。聞いてみるか?」

初春「あ…………いえ、でも何でもないのでしたらいいんですけど」



227 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:29:06.59dLttBPIDO (4/13)


初春「え、えと。その」

御坂妹「……………………以前、あなたは


「おーい、6番テーブルさんのこれ持っていって」


御坂妹「あ、申し訳ありません。すぐに向かいます、とミサカは答えます」


するとそこで厨房の奥の方からコックさんらしき声が響き、御坂妹はそちらの方に返事をする。
ただいま御坂妹は仕事中で時間帯も夕食時の忙しい頃だ、戻らなくてはなるまいだろう。
ペコリと上条と初春の方に一礼すると、御坂妹はたったっと厨房の方に戻って行った。


上条「…………どうしたんだろ? なんか様子が変だったけど」

初春「なにか私、悪い事しちゃったのかな」

上条「ん? どうしてだ?」

初春「いえ…………御坂さんの妹さんにずっと見られていた様な気がしまして」


それに。


『以前、あなたは────────』


何を言いかけたのだろう。
御坂妹とは会った事もなく、これが初対面であった。
しかし御坂妹のその言葉に、どうやら前から接点があったかの様な意味合いを感じさせられ初春を考えさせる。


上条「んー、まあでも初春さんは気にする事はないんじゃないか? 今日初めて会ったんだろ?」

初春「はい。初めて、ですね」

上条「何だろうな。聞いてみるか?」

初春「あ…………いえ、でも何でもないのでしたらいいんですけど」



228 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:30:01.18dLttBPIDO (5/13)

うわ連投みすた


229 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:30:43.32dLttBPIDO (6/13)


上条「そうかー、ってかそろそろ腕離してくれると嬉しいんですけど…………」

初春「あ…………それはまだ、このままでいさせてください…………その、当麻さんの料理が来るまで…………///」

上条「いや、でもだな…………初春さんのオムライスも来た訳なんだし冷めちゃう訳で」

初春「ダメ、ですか………………?」シュン

上条「」

上条「ダメじゃない」キリッ

初春「…………えへ。ありがとうございます」ギュウウ

上条(ふわぁぁああああぁぁっ!!)


 上条の心の叫びもそこそこに。
結局は自分からもその感触を離すのが惜しくて上条の料理が運ばれてくるまでなすがままの状態であった。




230 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:31:30.94dLttBPIDO (7/13)


上条「このハンバーグ美味いな。ソースどうやって作ってるんだろ」

初春「オムライスもすっごく美味しいですー」


 和気藹々とした雰囲気が戻り、二人は雑誌にも載るほどの洋食屋の料理に舌鼓を打っていた。

なかなか雰囲気もいいお店だ、と思う。
目の前でスプーンでちょこちょこ口元にオムライスを運ぶ少女の笑顔にも癒されつつ、上条はお気に入りのお店認定しようとうんうんと頷いていた。
とは言え、金銭的な理由で次に来られるのがいつのなるのかは全く予想も出来ないのだが。


初春「卵ふわふわー♪」フワーン


食べ方も自分とはまるで違う、まさに女の子らしい食べ方。
申し訳なさ程度とも言えるその小さく開いた口の中に少しずつ入っていくオムライス、その唇。
整った綺麗なピンク色の、小さいそれ。


上条「……………………」


───何考えてんだよ俺…………。


何だか今日はずっとそわそわしていて妙に落ち着かない。
何かに心を掻き回されるかの様に…………いやそれは少々大袈裟であるのかも知れないが、心境的にはそんな気分だ。
目の前の少女がやけに気にかかる。
優しさと素直さを兼ね備えた、素直に可愛いと思える少女に。


初春「あの、当麻さん…………ど、どうしました?///」

上条「ん? あ、いや、ごめん。何でもない」


見とれてました、なんて気を抜いていれば恐らく言葉に出てしまっていたのだろう。
先程も抱きしめてぇ云々の失言があったばかりで、自分にブレーキをかけるが如く自制心と湧き出る感覚が激しく戦っていた。


上条「はは、オムライスも美味そうだなーって」


まあこういう時は誤魔化す様に吐く言葉が起爆剤となるのが常套句であるのだろう。



231 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:32:54.40dLttBPIDO (8/13)


初春「と、当麻さん」

上条「んー?」

初春「はい、あ、あーん………………///」

上条「oh………………」


頬に手を当てて恥ずかしそうにはにかみながら、スプーンにオムライスを乗せて差し出すその姿には上条も思わずその声しか出なかった。

なんだ。なんだ。
一体何だというのだ、この胸の動悸は。
さっきから目の前の少女が可愛くて仕方がない。
その仕草、行動全てに目を心を奪われてしまうような、そんな感覚。


上条「えっと、でも、そのだな」

初春「た、食べてくだひゃい………………///」


噛んだ。今噛んだね。
その様子でさえも胸のきゅんきゅんが上条を襲う。
だがまあせっかくの申し出。
彼女がそうしてくれるのだ、甘えてもいいのだろう。


上条「………………ん」パク

初春「はぅ…………///」

上条「おお、う、美味い!」

初春「お、美味しいですよねっ、ねっ///」


美味しい、それは間違いない。
しかしそれ以上の甘味が感じられ、実のところしっかりと味わう所までは出来やしない。
普段は間接キスなど気にしない上条であるのだが、なぜかこの時ばかりは違う。
なんだかよくわかんなくなってきた。

こうなったら、もう開き直っちゃえばいいのではなかろうか。



232 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:33:33.81dLttBPIDO (9/13)


上条「んじゃ初春さんも。ほい、あーん」

初春「え、え…………/// い、いいんですか?」


今度は自分の使っていたフォークに小さく切ったハンバーグを突き刺し、それに初春の口元へと運ぶ。
初春はそれを遠慮するように恥ずかしがるように両手で頬を覆いながら上目遣いで一度上条に視線を向けると、意を決して目をつむって控え目にその口を開けた。

下ろしたその手が覚悟を決めるようにぐっと小さな握り拳を作っていた所まで、可愛い。


初春「ん………………///」パク

上条「どう? 美味しいだろ?」

初春「は、はい、美味しいです///」モキュモキュ

上条「よかった」


とろーんとした様子で味の感想を告げた初春に、上条が笑って答える。
初春のその幸せそうな表情が、やけに嬉しかった。

そんな普通の食事風景でも、バカップルがイチャつきまくっている風景に見えるのはどうやら気のせいではないのだろうと思う。




233 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:34:32.45dLttBPIDO (10/13)


上条「美味しかったなー」

初春「当麻さんすみません、ご馳走様でした」

上条「なんのなんの。また、食べに来ような」

初春「は、はいっ///」


 店を出て、街を歩く。
もうすっかり夕暮れから夜の色に街並は変わり、もう冬ともいえる冷たい風はより一層身を縮こまらせる。

大切な時間は、やっぱり流れるのが早い。
冬の哀愁を感じる季節も相俟って、それが寂しく思えた。


上条「よし、んじゃ帰るか。送っていくぞ」

初春「え、そこまでしていただなくても…………」

上条「ダメ。………………もうちょい、一緒にいような」

初春「え────と、当麻さん…………///」


今日は、彼の言う言葉一つ一つが卒倒してしまいそうなほど初春の心を揺らしている。
手も繋いだし、腕も組んだし………………抱きしめてもらったし。

もうダメ。
彼が好きになりすぎて、今幸せ過ぎてどうにかなってしまいそうな、そんな心境。


初春「当麻さん、手を繋いでもいいですか?」

上条「おう」ギュ

初春「………………あったかいです」ギュ

上条「はは、俺も」


大好きな人の優しさ、暖かさ。
それが初春の心を満たしていて、嬉しさで涙さえ出てきてしまいそうなほど。



234 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:35:22.95dLttBPIDO (11/13)


 帰り道の途中にある公園に差し掛かる。
指を絡ませて繋いだ手もそのままに、二人は言葉静かに歩いていた。
でも気まずい空気はない。
公園内を吹き抜ける風が髪を揺らしたって、寒くも感じなかった。


上条「初春さん………………? ってど、どうした?」

初春「え────────あ」ポロポロ


気付けば、頬を涙が濡らしていた。


上条「どこか痛むのか!? 大丈夫なのか!?」

初春「え、全然そんな事ないです。どうして涙が出ちゃったんだろ」

上条「そ、そうなのか…………? それとも、なにか悲しい事でも……」

初春「えへ、そんな事全然ありません。当麻さんといられてそんな風に思う訳はありませんから」

上条「でも、なら何で泣いて…………」

初春「どっちかというと。嬉し泣き、です」グイ


目元を拭い、上条と向き合う。
なぜ自分が泣いたのかはわからないが、彼に心配を掛けさせてしまって申し訳なく思った。


上条「……………………」グイ

初春「ふぁ………………」


そっと微笑んで、彼は指で自分の目元を拭ってくれた。
彼が何度か自分にしてくれた、その行為。
その瞬間に自分の涙は止まってしまう、初春だけに効く魔法のようで。



235 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:37:11.24dLttBPIDO (12/13)


大好きな彼が、自分を見ている。
大好きな彼が、こんなにも近くにいる。
大好きな彼が、大好き。


上条「もう大丈夫か?」

初春「当麻さん………………」




初春「大好き、です────────」




上条「ん────────!!??」




気付けば、彼の首に腕を回し。

そっと、彼の唇と自分の唇を重ねていた。







御坂妹「これは………………!? とミサカは後を追って来てみたはいいのですが衝撃的な展開に驚くしか出来ません………………って何をしているのですか! 離れなさいっ!」



初春「」エ?


上条「んん───んん───(御坂妹)!!??」イヤソレヨリモクチビルガガガ



出遅れた感に襲われながら御坂妹は後をこっそりつけた二人のまさかの行動にストップを必死の形相でかけていた。




236 ◆LKuWwCMpeE2011/11/10(木) 02:38:24.67dLttBPIDO (13/13)

ふぅ

また次回ー


237VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋)2011/11/10(木) 02:57:22.40+HWIY9a2o (1/1)

ふぅ。。。


238VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区)2011/11/10(木) 04:20:25.90qarqhqJU0 (1/1)

ふぅ…


239VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/10(木) 07:06:49.27/dPch/JDO (1/1)

ふぅ……
なにこのかわいいいきもの……おもちかえりしたい……


240VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(九州)2011/11/10(木) 08:44:40.28n4cnrvxAO (1/2)

おまわりさんこっちです


241VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/10(木) 09:03:43.71O9nIJDpyo (1/1)


今すぐに上条さんと立場を入れ替えれ欲しい


242VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海)2011/11/10(木) 09:40:56.97IzDVZZlAO (1/1)

読んでてまさかとは思ったが…

イィィヤッホォォォイィィィィィィ!!!!!
もうこれだけで今日は生きていけるぜ!





243VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(広島県)2011/11/10(木) 11:39:50.37O/PcK+Kx0 (1/1)

ふぅ、乙

しかし初春さんも大概不幸だな
毎回いちいち修羅場るしww


244VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/10(木) 11:54:24.38QMduT6rDO (1/1)

エンダアアアアァァァァァァァァァァァァ


245VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/10(木) 16:49:14.41caonom2s0 (1/1)

エンダアアアアァァァァァァァァァ


246VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/10(木) 17:31:56.10b7D7Wl+jo (1/1)

五和は俺が幸せにするよ


247VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(福岡県)2011/11/10(木) 17:35:20.28aIPRNkL40 (1/1)

エンダアアアアアアアアアアアイヤアアアアアアアアアアアアア


248VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(九州)2011/11/10(木) 23:45:17.59n4cnrvxAO (2/2)

ねーちんとキャーリサは任せろ


249VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋)2011/11/11(金) 09:09:51.97AQiJRE8io (1/1)

ちっ、じゃましやがって!


250VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(中国・四国)2011/11/11(金) 12:27:47.66zQ8jQ6tAO (1/1)

あらあら、当麻さんが…あの鈍感な当麻さんがついに恋心を自覚したのですね…


251 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:19:04.735VVeT7uDO (1/12)


 我慢するつもりだった。
自分に自信が持てるようになるまで、この想いはまだ胸の奥にしまっておくつもりだった。

でも。
優しい彼に触れ、温めてくれて助けてくれて守ってくれて。
近くにいるだけで、大好きで頭がパンクしそうなほど心の奥底から想いが膨れ上がっていた。

温かくて、強くて、優しくて、カッコよくて。

公園の街灯が彼の優しい笑顔を照らし、それが自分の視界を埋め尽くす。
涙を拭ってくれたその行為は、何回目だっただろうか。

この世界に一人だけしかいない、自分の特別な人。

狂おしいほど想いが溢れ出し、心に課した制約も打ち破って初春は上条の首元に腕を回し。

唇を、重ね合わせていた。


上条「んぐっ!? んんん~~~~~~っ!!」

初春「…………………………」ギュッ


脳が溶けてしまいそうな、甘美な柔らかさ。
重なった唇からも想いを滲み出し、少しでも多く強く想いが伝わればいい。

離れたくない、離したくない。
目を閉じたこの世界にあるのは、自分を満たす温もりだけであった。




252 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:19:52.605VVeT7uDO (2/12)


御坂妹「こここここら、離れなさいっとミサカは慌てふためきながら二人を引きはがします!」グイッ

上条「んんー…………ぷはぁっ! う、初春さん…………!?」

初春「ん…………………………ぷは」


 公園内の街灯が一つに重なった影を写し出していたが、場に現れた三人目の登場によりそれは二つの影へと姿を戻していた。
後ろから御坂妹に羽交い締めをされる形で少し後方へと引き下がり、息を何とか整える。

胸が。
胸の動悸がやばい。
それと唇に残る柔らかさと、甘さと香りと。
視界がぐるぐる回るような、そんな感覚だったが何とか意識を保っていた。


上条「う、初春さん………………」

初春「……………………」


離れてから、目の前で下を向く少女に声をかける。

突然の事で戸惑った。
戸惑いというか焦りというか落ち着けないというか、そんな感じ。
この唇に触れた柔らかさと、彼女がその直前に呟いた言葉と。

まさか、と思った。




253 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:20:27.535VVeT7uDO (3/12)


初春「……………………」

上条「初春、さん……………………?」


しかし引きはがされ、あれから動かなくなった彼女の様子が気にかかる。
俯いてピクリとも動かない彼女に声をかけるが、返答はない。


上条「ど、どうしたんだ………………?」

初春「……………………ふ」

上条「…………ふ?」

初春「ふぁっ」フラ

上条「のわっ、う、初春さーん!?」ダキ


突然前のめりに倒れそうになった彼女を正面から抱き止める。
その小さな感触が上条に再び胸の動悸を呼び覚ますが放っておく事などできるはずもない。
どうしたのか、と初春の顔を確認すると。


初春「当麻、しゃぁん…………」グルグル


ぐるぐると目を回していた。




254 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:21:24.385VVeT7uDO (4/12)


初春「す、すみません………………」

上条「大丈夫か?」

初春「は、はい///」

御坂妹「……………………」


 とりあえずと公園のベンチにて落ち着かせる為に並んで座る。
初春の頭は上条の肩にこつんともたれ掛かっており、上条はギュッと彼女の手を握っていた。
彼女がいる方とは逆の方向から何やらドス黒いオーラが感じるのだが今はそれよりも彼女を介抱する事が先決なのだろう。

とはいっても、上条自身も落ち着けていない。
まあそれもそうだ、初めての経験のあんな事をしたのだ仕方のない事なのだろう。


上条「だ、大丈夫ならいいけど」

初春「あ、ありがとうございます」

御坂妹「………………………………」


はぁ、と左隣から溜息を吐く音が聞こえる。
そちらの方を見ると、御坂妹はなんだか不機嫌そうにしていてむすっと頬を膨らませていた。


上条「そ、それで。御坂妹はどうしてここに」

御坂妹「ミサカはお邪魔虫だったみたいですねとミサカは自嘲気味に溜息を吐きます、はぁ」

上条「いや…………そ、その、あれはだな…………み、見たのか?」

御坂妹「ええそれはもうバッチリと。MNWにも接続しっぱなしでしたから今妹達はお祭り状態ですとミサカは答えます」シレッ

上条「げっ…………ま、まじかよおおぉぉ」

初春「ど、どういう事なんですか?」

御坂妹「ええ、妹達の嫉妬と羨望により今後あなたの唇を奪いに来る輩が恐らく増える事になるだろうと思いますはい、とミサカは危険である事を匂わせます」

上条「はぁっ!?」



255 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:22:08.225VVeT7uDO (5/12)


御坂妹「という訳ですので、ミサカもむちゅー」

上条「お、落ち着けって御坂妹!」

初春「だだだだだダメです!」ギュ

上条「ぬおおおおおお頭を抱え込まないで色々感触がやばいいいいいいい!!」

御坂妹「…………あなたが一番落ち着いてない様ですが、とあなたの言葉に反論します」

初春「むー」ギュギュ

上条「」チーン


柔らかい温かな感触に上条が言葉を無くしていると、ふっと御坂妹は視線を上条から初春に移す。
その何かを捉えているような、捉えていないような目の光にちょっぴり怯えるがこの腕の中は渡したくはない。

先程自分がしてしまった事と、今彼を挟んで向かい合う美琴の顔そっくりな妹と。

頭の中が色々ごっちゃになっていて、彼の頭を抱く腕に込めるしか出来ないでいた。


上条「ぎ、ぎぶ…………そろそろ息ががが」ポンポンポンポン

初春「わっ、と、当麻さんすみませんっ」

上条「ぷはっ、あ、焦った………………」

初春「…………」シュン

御坂妹「冗談です、とミサカはしぶしぶながらも引き下がります」


 苦しそうに初春の腕を叩いた上条の頭を離し、反省するようにシュンと頂垂れる初春。
それでも彼の腕は離したりはしないのだが。
上条としても嫌な気分なんか全っ然なく寧ろ初春の身体の甘い香りに溶けそうになった頭を必死に立て直していた所であった。




256 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:22:52.215VVeT7uDO (6/12)


御坂妹「先程のあなたの質問に答えます。ミサカがここにいる理由としては、お二人が帰る頃にちょうどアルバイトが終わり偶然帰り道にお二人の姿を見かけたのです、とミサカはここにいる理由を明かします」

上条「そ、そうだったのか」

御坂妹「ついでに言うとそちらの方にも用がありましたので、とミサカは付け加えます」

初春「わ、私、ですか…………?」

御坂妹「はい、とミサカは頷きます」コクン


ふとそこで御坂妹が話題を変えた事によって、場の空気が変わる。
二人の間に挟んだ上条越しに、御坂妹はペコリと初春に頭を下げていた。


御坂妹「あの時はお世話になりました、とミサカはお礼を告げます」

初春「え……………………?」


初春の聞き返すような声が響く。
それは本当に心当たりがないようで、突然下げられた頭に戸惑っていた。


初春「え、え…………す、すみません。何の事でしょうか…………」

御坂妹「はい。あなたが身を通して守ってくださった…………ミサカの『妹』の事です、とミサカは教えます」

上条「『妹』…………? ってもしかして、打ち止めの事か?」

初春「…………打ち止めちゃんの事、ですか?」

御坂妹「はい。上位こt…………『妹』から聞いたのですが、命を助けて下さったようで」

初春「あ」


そういえば以前にも病室で打ち止めと一方通行からその事について感謝を告げられていた事を思い出した。
打ち止めを『妹』と呼んだ彼女は、やはり打ち止めとは姉妹関係なのだろう。



257 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:23:43.015VVeT7uDO (7/12)


 とはいっても、こうして礼を告げられる為にやった事ではない。
自分でも知らぬ内にそうしていただけだったから。
ジャッジメントとして、自分の掲げる正義を通したまでの事で。


御坂妹「あなたの事は『妹』から聞かされていました。この人と仲がいい事も、とミサカはあの幼女が喜々として言っていた事を思い出します」

上条「あの幼女って…………」ハハ

初春「い、いえ、当たり前の事をしただけですよ」

御坂妹「それが結果ミサカ達の大事な『妹』の命を助ける事に繋がったんですから、やはり『姉』としてお礼は告げておきたかったのです、とミサカは改めて感謝の意を告げます」


先程のレストランでの意味深なあの視線は、これだったのかと初春は感じた。
その言動から彼女も彼に好意を向けている事がなんとなくわかるのだが、それは自分に対する敵意ではなく寧ろそういう事だったのかと驚いていた。


御坂妹「まあ、ミサカはそれだけを言いに来ました、とミサカは立ち上がります」


そして立ち上がって、再度頭を下げる。
初春もそれにつられて立ち上がり、咄嗟に頭を下げていた。


初春「そんな、わざわざ」

御坂妹「まだまだ調整中の身ですのでそろそろ戻らなければカエル医者に注意されてしまいます、とミサカは帰宅しますと告げます」

初春「あ、は、はい。それでは…………というか調整、って?」

御坂妹「それでは、失礼します」スタスタ

上条「…………あいつなぁ」




258 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:24:47.925VVeT7uDO (8/12)


 言うだけ言って背を向けて歩き出した御坂妹の背中を見て、初春と上条はただ眺めていた。
言葉の節々に気になるワードはいくつかあったのだが、なんとなく聞けずじまいのままその背中に初春は一礼する。

 初春は思いもしないのだろう、御坂妹の様な妹達がまさか一万人近くいるだろうとは。
ふぅ、と息を吐く声が上条から響くと初春は上条の方に振り向く。


初春「…………当麻さん」

上条「ん?」


周りを見る。
この公園内は御坂妹が立ち去ってから、人の気配はもう何もない。
名前を呼んだ彼のキョトンとした顔が、何だか妙に可愛らしく感じた。

 先程の御坂妹の言動といい、今日の黒子の様子といい、ハッキリと自分に彼が好きだと言った美琴といい、インデックスといい。
彼に好意を向ける者は、驚くほどたくさんいる。

でも、負けたくない。
自分がここでそうするのは卑怯なのかもしれない。
それでも、もし彼が他の誰かに取られるのならば、と考えると身が震えるほど怖い。



だから、もう一度首に腕を回して驚く彼のその唇に自身の唇を重ねていた。



時が止まったかの様な時間、幸せの愛の感触。
初春は気付いたのだろうか、その時彼の腕が初春の背中に無意識で回されていた事に。





259 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:25:34.185VVeT7uDO (9/12)


「おい、本当にやるのかよ…………」

「ちーっとコピーを拝借させていただくだけだ、別に取り上げたりしねーよ」

「俺はしらねーぞ…………」


 明かりが消えたあるビルの中で、そわそわしている様な三人の静かな話し声が響く。
一人がその頑丈に閉められた扉の前でごそごそ鞄から何かのカードの様な物を取り出すと、扉の横に取り付けられた 機械にそっと当てる。


ピピッ──────ガチャ。


「おい、お前それどうした」

「ん? あー、ちょっとなー」

「ここジャッジメント駐在所なんだろ? いいのかよ…………」


 こういう事に慣れているのか、妙に手慣れた手付きで一人が入室するとその後ろにいた二人も入っていく。
自分達の様な人間からしてみればまさに敵地の様な場所になかなか落ち着かない。
そわそわした様子の二人とは違い、口でくわえたライトの光を手掛かりに一人は悠々と目的の物へと向かった。



260 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:26:41.035VVeT7uDO (10/12)


 それにUSBステイックを挿し、コンピュータを立ち上げる。
見た事もないそのOS?に少々面食らったが基本操作はまあさほど変わりはないのだろう。


「ど、どうだ?」

「おk、妙なセキュリティの物は設定されていないようだ」

「早くしてくれよー、俺は一刻も早くこんな所から出たい気分だ」


カチカチ、とマウスを動かしてシステムファイルをUSBの中にぶち込む。


「ここをこうして、と」

「お、腕章がある…………へへ、ジャッジメントだ! ってな」

「ジャッジメントですの! の方がよくね?」

「まんま白井だな、それ」

「あーそうそう白井っつったっけ? あの子も可愛かったよな」

「お前昨日芳川サン芳川サン言ってたんじゃねえか。さっきも木山サンがどうのこうの言ってたのは誰だったか?」

「うるせえ。あんな可愛い子達に囲まれていつも遊んでいるお前に言われたかねーよ」

「あの恐ろしさの前じゃ手も足も出やしねえがな」

「……………………それは納得だ」




261 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:27:27.675VVeT7uDO (11/12)




コツン、コツン────────



「「「!!」」」



そこで廊下の方から誰かの足音が響き、三人は咄嗟に息を殺す。
二人は物影に隠れ、一人はコンピューターのディスプレイにそこにあった膝掛けを被せ光を消した。


コツン、コツン、コツン、コツン、コツ……………………────


「「「………………ほっ」」」


その足音がこの部屋を通り過ぎたの確認すると、三人は胸を撫で下ろす。
二人は自分の口に手を当てて少しでも音が漏れないように必死になっており、その胸の動悸から如何に焦っていたかを物語っていた。


「まだか?」

「おう、今終わった」

「おっしゃ、んじゃさっさとずらかろうぜ」

「ああ」


コンピューターの電源を落とし、USBスティックを抜いてそれをポケットにしまう。
咄嗟に取った膝掛けを元の通りに畳み直し、それを椅子の上に置いた。
ふう、と一息ついて三人は部屋から抜け出して行った。


「しかし、本当にそんなんでいいのかよ?」

「ん? ああ、木山サンの言葉に間違いはないと思う。普通のやり方では存在しない物、別次元の構築プログラム、守護神。恐らくビンゴ………………だといいんだがなぁ」

「「そこは自身持って言い切ろうぜ」」


そしてビル内から抜け出した三人はビルの裏手に横付けしてあった車に乗り込む。

果たしてこれが合っているのだろうか、その解答が得られるのは明日になりそうだ。
合っている事をその車を運転する男・浜面は願っていた。




262 ◆LKuWwCMpeE2011/11/12(土) 17:32:40.545VVeT7uDO (12/12)

初めてのキスの経験?俺には聞かないでほしいなん
春もこない俺に誰かplz
大きくないちっぱいが
好みです
きくらげ

次から展開動かそうと思いますん、また次回!


263VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/12(土) 18:50:55.65ZWUSXPKAo (1/1)

>>1乙


264VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/12(土) 18:54:54.158h8gL7H2o (1/1)


五和は俺がry


265VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/12(土) 19:40:31.07szfhAtss0 (1/1)


きくらげwww


266VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越)2011/11/12(土) 20:16:56.96Z/NTgX0AO (1/1)


甘すぎて砂糖吐きそう
佐天さんは俺がもらいますね


267VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都)2011/11/12(土) 20:23:02.20UwkkF83Ho (1/1)

ではお姉さまはわたくしがもらいますの


268VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/12(土) 20:59:36.24OUF7c03DO (1/1)

初春大好き……だが初春はお前一人だけの物じゃないぞ、おつ。


269VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/11/12(土) 22:37:33.30kPnLSAoH0 (1/1)

テレスティーナは渡さん


270VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越)2011/11/13(日) 10:22:01.80MMnMkwEAO (1/1)

>>1縦読み超乙です。

超付き合ってもいないのにコレって、くっ付いた後は超どうなるんですかね。


271VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中国・四国)2011/11/13(日) 11:34:38.60dTRmhkaAO (1/1)

>>1乙

>>270
教えてあげるからこっちにおいで最愛たん


272VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/15(火) 01:44:05.36+UYvvZ7IO (1/1)




273VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/18(金) 01:09:32.55jSH3E77IO (1/1)

まとめからきました


274VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方)2011/11/18(金) 07:20:36.834cHsDaVXo (1/1)

わっふるわっふる


275VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/19(土) 01:19:00.03Uvi9SPLIO (1/3)

お前おっぱいの素晴らしさ知らないの?


276VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/19(土) 01:19:51.62Uvi9SPLIO (2/3)

すいません誤爆しました


277VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/19(土) 02:01:31.10GL6I+MSDO (1/13)

>>275
知ってるぞ


278 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:02:37.55GL6I+MSDO (2/13)


上条「……………………」


 草木も眠る静かな夜の中、上条は寝床としているバスタブの中でただ静かに佇んでいた。
静寂が耳を劈くほどの静けさの中、毛布に包まってじっと目を閉じているのだが。


上条「……………………眠れねぇ…………」


 上条の頭の中に去来するは数時間前の出来事。

唇に残る彼女の感触と、言葉と柔らかさと温かさと。
その全てが上条の思考を埋め尽くし、何も考えられなくしていた。

顔に熱が帯びているのが手に取る様に分かる。
ふぅ、と一息吐き手の甲で額に当てて落ち着きを図ってみるが、効果の方はどうなのだろうか。


上条「……………………」


まさか、と思った。

経験した事のない、味わった事のない感触。
甘い香りと、極上の柔らかさと。

あれからずっと、胸の動悸が止む気配はない。
何度も何度もフラッシュバックして再生されるあの出来事が、いまだに信じられないかの様だ。



279 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:03:13.98GL6I+MSDO (3/13)



『大好き、です…………当麻さん────────』


上条「(ふわぅあああああああああああああ!!)」ゴロゴロ


 のたうち回る様に器用にバスタブの中を左右に転がる。
両手で頭を抱え、それはもう端から見れば辛そうだという彼の様子なのだが、上条の顔を見ればそんな事は全くない。
ぽーっとした様な、恍惚した様な、口元が緩んでいる様な、照れまくっている様な。
その心情はきっと彼だけにしかわからないのだろう。


別れてからほんの数時間だというのに、彼女の顔が見たい、彼女に会いたい。
いつしか、心はもう彼女に奪われていた。




280 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:03:55.49GL6I+MSDO (4/13)


 時を同じくして、こちらも布団に包まり横向きに寝そべってもじもじ身体を動かす少女の姿があった。


初春「はぅぅ………………///」モゾモゾ


時折動きを止め、その感触を思い出す様に唇に自身の指を当てる。
その度に、あの感触をよりリアルに再現する様に目も閉じる。

自分と、彼の唇。
触れ合って重なって。
その柔らかさ、温かさを直に感じて。

胸の動悸が、あれからずっと止まらない。
眠ろうとしても眠れる訳もない。
夢にまで見た、彼とのキス。


初春「当麻、さん……………………///」


日に日に増していく想い。
昨日よりも、先程よりも。
時間が経つに連れ、どんどん膨れ上がっている。
限界知らずなその想いは、まるで破裂する事を知らない風船みたいだった。

本当は、我慢するつもりだった。
でも、我慢ができなかった。
彼と一緒にいると、どこまでも知りたい、触れ合いたい、その思いが心の枷を外すかの様に初春をつい突き動かしてしまう。

拒まれたりしたら──────と今になって思うのだが、彼はそれを受け入れるようにしてくれた。
また、彼からも抱きしめたりしてくれた。


初春「会いたいです………………」


抱きまくらにしているぬいぐるみをギュッと抱きしめる。
昔から就寝を共にしているそのぬいぐるみに彼の温もりを重ねる様に。
温かい体温を求める様に、ギュッとそれを抱きしめていた。




281 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:04:44.97GL6I+MSDO (5/13)


上条「………………寝れない」


 チュンチュン────という小鳥の囀りが恐らく聞こえ出してくるのだろう時間帯に閉じていた目をパチッと開け、上条は独りごちた。
とは言ってもこの浴室内にはその小鳥の囀りなど届きやしないが為にあくまで予想であるのだが、あながち間違ってもいないのだろう。

 時計に目をやるとディスプレイは07:00と表示されており普段ならそろそろと学校へ向かう、準備をする時間帯だ。
ただ本日は日曜日で、有事がなければジャッジメントの仕事もお休みの日だ。
特に用事もある訳でもなく、眠気が胸の動悸を超えれば眠れるだろうと動き出す事もせずにただ目を再び閉じていた。


「か、上条さん…………起きてますか?」


すると、コン、コンという控え目に浴室の扉をノックする音と声が届いた。


上条「ん? あー、五和か。おはよう」

五和「お、おはようございます。すみません、起こしてしまいましたか?」

上条「いや、大丈夫、起きてたから。はは」


これから寝ようとする所だけど、とは言えずにそう言っておく。
それにしても朝のこんな早い時間帯に起きているとは、普段からの規則正しい生活ぶりが窺える。
んー、と耳を澄ませれば何やら既に五和以外からも物音が 響き、既に神裂やらオルソラやらが起きているのだろうという事に気付いた。

…………神に信仰心を捧げる面々はこんなに早く起きるものなのかと生活ぶりに舌を巻く。
まあこの部屋に住むインデックスはまだ寝ているとは思うが。




282 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:05:24.19GL6I+MSDO (6/13)


五和「あの、今日はお休みでしたよね?」

上条「ん、もうちょい寝てようかななんて思ってたけど」

五和「あ…………すみません、まだお休みになられるのでしたr 「上条当麻、起きましたか?」 ………………」

上条「う…………」

神裂「おはようございます。朝食の準備はもう出来ています、朝餉にしましょう」

五和「……………………」

上条「……………………」


 規則正しさを重んじる大和撫子の有無をも言わさない様な声でビシッと言い切る声が響くと、上条はちょっぴり言葉を詰まらせる。
五和の声で、頭を覆い尽くしたものから何となくだがようやく眠気を感じ取れた正にその瞬間であった。

寝てはダメ、とは言われてもないのだが何となく起きなければいけない気がしてきた。

寝たいのにー。




283 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:06:25.83GL6I+MSDO (7/13)


インデックス「とうま、目の隈がすごいよ?」

上条「そうかー?」

オルソラ「あらあら。お休みになられなかったのでございますか?」

上条「んー…………何となく寝れなくてな、はは」

五和「す、すみません…………私が起こしたりしたから」

神裂「全くあなたという人は。寝れる時にしっかりと睡眠を取っておくべきです。困るのはあなたですよ?」

上条「これは手厳しい」


 五人で食卓を囲みながらそんな話が飛び出す。
朝食もオルソラ特製の上条宅ではなかなか味わえない和食の数々がテーブルに並んでいた。
オルソラは和食でさえも作れるのか、とある意味逃避するかの様に味噌汁を喉に流し込む。
まあその絶品具合にはやはり脱帽ものなのだが。


インデックス「何か考え事してるの? なんだかとうま、昨日の夜から変だよ?」

上条「ぶほっ!」

五和「だ、大丈夫ですか上条さん!?」


咳込む上条に五和が心配そうに声をかけるが、上条が手で制する。
逃避行もどうやらここまでで、インデックスのその言葉には反応せざるを得なかった様だ。



284 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:07:08.59GL6I+MSDO (8/13)


 昨晩から様子がおかしい、ね。
気丈に振る舞ったつもりだが、見破られていた事に心臓がドキリと反応しておりまた頭からとりあえずと取り除こうとしていた事案が再び上条の脳裏に去来し始めていた。


『当麻さん』


あの甘い感触が、甘い香りが。
温もりが、気持ちが。

そのどれもが頭から離れない。


上条「なんでもないうぬあああああああぉぉぉぉっ!!」ガンッ ガンッ

インデックス「」

オルソラ「」

五和「」

神裂「」


唐突にテーブルに頭を打ち付けはじめた上条に一同絶句しながらも、「あ、絶対何かあったな」と感づいたという。



285 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:08:11.79GL6I+MSDO (9/13)


佐天「ういはるーんってあれ、寝てる?」

初春「すぅ…………すぅ…………」

佐天「珍しい、いつもならもう起きてる時間なのに」


 午前10:00になった所で、佐天は初春の部屋に忍び込んでいた。

本日はせっかくの日曜日。
天気もいいし、初春と遊ぼうとこうして誘いに来たのはいいのだが、肝心の初春はいまだに夢の中であった。

基本的に初春は規則正しい生活を送っている。
ジャッジメントとしての面目もあるのだろうが、比較的真面目で健康的な生活をずっとしていた。
そんな彼女がこの時間までまだ睡眠を貪っている事に佐天は驚いていた。

調子が悪いのか、と過ぎるが初春のその寝顔はというと。


初春「むにゃ………………とうま、しゃぁん…………」zzz

佐天「……………………」


かなり幸せそうであった。


佐天「えい」ツンツン


こいつめ、こいつめとほっぺたをつんつんする。
なんだか癖になりそうな柔らかい弾力感が指に感じ、そのまま二・三回突っつく。

初春がここまでこんなに幸せそうにしているのを見て、こりゃ昨日何かあったのかなと感じた。
昨日は食事に行くとだけ聞いたのだが、それから何かあったのかは聞いていない。
それをまとめて全部聞いてやろうと、今日のやる事の一つの中にそれを織り込みながら初春の寝顔を見つめた。


初春「うにゅ…………とうましゃん…………ほっぺじゃなくて…………おくちに……もういっかい……ちゅーしてくださぁい………」zzz

佐天「」


ちょ、本当に昨日何があったんだ。




286 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:09:00.61GL6I+MSDO (10/13)


浜面「さて、ブツは手に入れた訳だが」

「おー」

浜面「どうすればいいんだ? これ」


 ご用達のファミレスにて、テーブルの上に置かれたスティックタイプのUSBメモリーに目をやりながら浜面が呟く。
コーヒーに口をやりながら再びテーブルに並んでいたサンドイッチに手を伸ばした。


「…………そういや、どうすりゃいいんだ?」

浜面「お前なぁ………………」


昨晩忍び込んだ風紀委員の支部室内にあったコンピューターから抜き出したデータ。
それをどうすればいいんだという質問に対して聞き返す様な質問型の返事が返ってくると、浜面は眉を釣らせた。

 本日は半蔵は用事があるらしく、この場にはいない。
三人の中で唯一頭の切れる者がここで欠けてしまい、これからどうすればよいのかわからなくちょっぴりお手上げ状態になっていた。
というか、見つけた場合の事も考えてその研究者の連絡先も聞いておくべきだったのではないかという質問を浴びせるが、肝心の相手もごめんごめんと手を合わせて悪びれる仕草を見せると渋々浜面は言葉を飲み込む。

というか、本当にこれはどうすればいいのだろうか。
こういう時にこそ半蔵にはいてほしかったのだが、いないのだから仕方がないのだろう。
というか今日の用事って何だろう。
まあ大方、浜面の『仲間』のまだ幼い妹の世話をするという予想はつくのだが。


「木山サンに聞けばいいんじゃないか?」

浜面「それしかねえよなぁ」


頼んできたという本人に話を聞くのが一番なのだろうが連絡先を知らない以上どうしようもない。
だがまあ事情を知っていそうな木山に会えればなんとかなるのだろう。



287 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:10:02.02GL6I+MSDO (11/13)


時刻も昼近くになり、浜面達はとりあえずと昨日木山に会ったあの病院へ向かおうと席を立つ。
レジで会計を済ませ、ファミレスから出て停めてあった車に乗り込み、走らせた。



浜面「………………ん?」



病院への道中、信号待ちをしていた浜面の車の後ろに黒塗りのセダンがビタ付けをする。
やけに近ぇな、とルームミラーから後ろの車の様子を窺うが妙に黒くはっきりと中の様子は見えなかった。


「おいおい、ヤーさんかなんかか?」


助手席からもサイドミラーを確認しながらそう呟く声がする。
なんか、妙な予感がするのは気のせいだろうか。


キキッ──────!!


浜面「!?」

「なんだ!?」


すると、前方に現れたもう一台の黒のセダンがドリフトをしながら浜面の車の真正面で横向きに止まる。
浜面の車の進路を妨害する形で止まり、そのセダンのドアが開くと。






黒いスーツにサングラスをした男達が続々と車から降り浜面の車の周りを取り囲んだ。






288 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:11:34.90GL6I+MSDO (12/13)



浜面「ちっ、なんだ!?」



「動くな!」



するとスーツの男達は一斉に浜面達の方向に銃口を向ける。
それに浜面は舌打ちをして静止すると、前方のセダンからもう一人男が降りてくるのが目に写った。


「あいつは…………!」

浜面「…………知ってるのか?」





「あいつだよ………………俺達に探してくれと頼んだ男ってのは、あいつだ」


浜面「!?」




それを呟くと、こちらの会話は届いたのかはわからないがその男は愉快そうに口を歪めた。

そして、その男も銃口を浜面達に向けてはじめていた。




289 ◆LKuWwCMpeE2011/11/19(土) 02:12:45.52GL6I+MSDO (13/13)

時間空いちゃった、ごめんなさい
次は早めに投下できるように頑張るー

また次回!



290VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋)2011/11/19(土) 02:14:03.74HEVuNE1Wo (1/1)

おつ!


291VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/19(土) 02:42:40.86Uvi9SPLIO (3/3)

>>277



292VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/19(土) 06:53:59.04KylqU9rDO (1/2)

ずっと待ってた、おつ。


293VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越)2011/11/19(土) 12:14:40.27O0gCDuKAO (1/1)

乙ぱい。
>>277は>>1だったんだな。


294VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海)2011/11/19(土) 12:48:56.49MFukq29AO (1/1)

良かったよぉ~
もう続き読めないかと思っちゃった…
ともあれ、更新お疲れ様です


295VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/19(土) 12:51:41.68KylqU9rDO (2/2)

>>293
そこに気付くとはやはり天才か……


296VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中国・四国)2011/11/20(日) 00:31:39.66csKVWGSAO (1/1)

>>1おかえりー、そして乙


297VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/20(日) 05:11:52.48fmygVjkIO (1/1)

このSSに一番期待してる


298 ◆LKuWwCMpeE2011/11/22(火) 12:23:03.20x4eoTIlDO (1/10)


「随分手荒い歓迎だなー」

浜面「参ったな、こりゃ」


 前後方を固められ、更には銃口を突き付けられて手の打ち様がない状況に溜息を吐きながらそのまま手を上げる。
今まさに車から降りた長髪の男が、その『研究者』らしいのだが。


浜面「どう見てもヤーさんだな、おい」

「うわ、前の車のナンバープレート見てみろよ、『・8-93』だってよ。狙いすぎだろ…………」プークスクス

浜面「ぶは、もはや紛いモンにも見えるぜ」ケラケラ


 あからさまなそのナンバープレートを見て二人は吹き出す。
自分達が置かれている状況にも関わらず、なぜか楽しそうにしている雰囲気だ。

 しかしその様子を見てその研究者は突き付けた銃をチャキッと鳴らすと、さすがにそこで笑みを浮かべるのはまずかろうと二人とも揃ってフッと笑みを消していた。
パワーウィンドウを開けて、声をかける。


「あ、どもっす。しかし『これ』は何スかね」

「君らが持っているモノを渡してもらおうか」

「持っているモノって言うと?」

「惚けるつもりか? 君らが今持っているモノだ」

「いやそれはわかるんスけど。普通に手渡そうと思ってたけどこうされちゃぁねぇ…………」


やれやれ、と深い溜息を吐く。
そりゃ頼まれたモノを探して渡すという事に異議はなかったのだが、こうして来られるとどうにもきなクサく感じてしまうのは仕方のない事だろう。



299 ◆LKuWwCMpeE2011/11/22(火) 12:23:44.25x4eoTIlDO (2/10)


「それなら早く渡したまえ」

「質問なんスけど、これは一体どういう状況なんスか?」

「それさえ渡してくれれば手荒な真似はしない、そういう事だよ」

浜面「……………………」


おかしい。
どうにもおかしい。
銃口を突き付けているのだが、どうにも有無をも言わさない、といった様子でもないらしい。
何をしようとしているのだろうか、何が目的なのだろうか。
そしてコレを手に入れたという事をどこで嗅ぎ付け、そしてそれならばなぜ自分らで手に入れようとしなかったのか。

考える。
考えるが、やはりわからない。


浜面「まあ元々渡すつもりでいたし、不穏な動き、というのがどういう事かわからないんスけど。どういう事か説明してもらえませんかね?」

「……………………」


研究者は少々の沈黙を作り、そして再び口を開く。


「いいだろう、ついて来たまえ。それが合っているのならば、報酬は渡そう」


研究者はそう言うと突き付けた銃を懐にしまい、黒服の男達にも下げさせると「ついて来い」と言わんばかりに車に乗り込んだ。
それに続いて黒服達も次々に車に乗り込み、車を発進させる。


浜面「……………………」

「……………………」


お互いに見合い、首を捻る。
どういう事なんだ、と目で会話をしながらとりあえずと走り出した黒のセダンの後ろをついていくように浜面も車を動かした。




300 ◆LKuWwCMpeE2011/11/22(火) 12:24:36.97x4eoTIlDO (3/10)


 研究者と付き人の黒服二人、そして浜面達の五人がエレベーターに乗り込む。
場所は第十九学区、この学園都市の中では比較的寂れてしまっている学区のあるビルの建物の中だ。

行き先は研究室なのだろうか、それにしてもやけに汚れの目立つ古びたビル。
しかもエレベーターにて向かった先は、15階建てのビルの表示にはない地下3階。
エレベーターを動かしたのも付属してあるボタンではなく、研究者が手にしていたリモコンであった。


浜面「……………………」

「……………………」


沈黙が包む。
浜面達は緊張からか、それとも別にここで話す内容がないのかその口を閉じていた。
いや、恐らく後者の方なのだろう、彼らの心臓は先程の落ち着きぶりからみて驚くほど図太い。

 研究者はタブレット式の通信機をしきりに操作しており、画面を見せないようにそれを黒服の男達が囲んでいる。
余程の機密事項か、その様子から如何にそれが秘匿としているかが感じ取れていた。


チーン──────


と少々古めかしいエレベーター特有の到着を示す音が鳴ると、研究者とそれについていくように黒服達が降りて行った。


「こっちだ」


歩きながら顔だけをこちらに向け、後をついて来るように促す研究者の後ろを浜面達は歩き出した。

 周りを見る。
映画館の様な薄暗さの中、無数のコンピューターのディスプレイの光が明かりの代わりの様になっていて歩く分には問題はない。



301 ◆LKuWwCMpeE2011/11/22(火) 12:25:17.28x4eoTIlDO (4/10)


それにしても。


浜面「(おいおい…………すげえな、これ)」

「(まさに研究室って感じか? それも、マッドサイエント、な)」


床を走る幾十ものコード、散乱した書類、ビーカーや三角フラスコといった実験用具。
絵に描いた様なその研究室は浜面達を迎え入れ、そんな感想を抱かせていた。


「まぁそこにかけていたまえ」

浜面「……………………うす」


研究者が顎でそこにあったソファーに座るよう催促すると、浜面達は余分な言葉も無しに言われた通りに座る。
その脇に黒服二人が浜面達を見張るような位置取りで立ち並んだ。

ポケットに手を入れる。
研究者が望んでいるであろうモノは、確かにここにあるのだが。
掌にすっぽり収まるそのUSBメモリーは、そこまで大事なものなのだろうか。
内容はこの学園都市最強のハッカーと謳われる『守護神』の構築システムらしい。


───これが本当にそうなのかねえ。


モノは見かけによらない、とは言うが。
そのほんの少し力を込めればすぐに物理的に壊れてしまいそうなモノが、何だか疑わしくも思っていた。



302 ◆LKuWwCMpeE2011/11/22(火) 12:26:08.97x4eoTIlDO (5/10)


 『守護神』の名は一応聞いた事があるにはあるのだが。

どんな人間で、どんな能力を持っていて──────そこまでは把握していない。
まさかそれがあの時のちっこいコだったなんていうのは思いもしない事だろう。


「さて。持っているモノを出してくれるかい?」

浜面「その前に、説明してくれるとありがたいんスけど…………」


チャキ──────


「……………………浜面」

浜面「……………………だな」


 研究者の言葉に浜面が口を挟むと、左右の黒服から銃に手をかける音が響く。
その様子に溜息を吐くように促され、浜面は口を閉じてポケットからそれを取り出しテーブルの上に置いた。


「下げたまえ」


浜面達のその様子をゆっくりと見ていた研究者は、確かにテーブルの上にそれが置かれると黒服達に銃をしまうよう命じる。
黒服達は何も言わず、揃って懐にサッとしまった。
その動作は実にシンクロしていて、まるで主人の命令に忠実なサイボーグのようだ。


「まぁ、やりながらでも質問は受け答えしてあげようではないか」


そのUSBメモリーを手にすると、研究者はニヤリと口角を上げて笑う。
それさえ手に入ってしまえばいい、という風に非常に機嫌は良さそうだ。




303 ◆LKuWwCMpeE2011/11/22(火) 12:27:11.48x4eoTIlDO (6/10)


浜面「そっすね、まずはそれで一体何が起きるのかという事を知りたいんスけど」

「ふ、それは出来てからのお楽しみ、という事にしよう」


USBメモリーのキャップを外し、コンピューターに繋げながら研究者は言う。
悦楽が一秒でも早くと急いでいるようにも見えた。


「それじゃ俺からも質問が。それほど大事にしているモノならば、どうして俺達スキルアウトに頼み込んできたんスか?」

「私も別件で忙しくしていてね。頼む他なかった、とでも言っておこうか」

「それならジャッジメントなりアンチスキルなり頼み込んでも良かったのでは?」

「そちらの方では手配書なり調書なり時間が掛かり過ぎるのでね。早急に手に入れたかったモノだ、時間も方法も制約もない君達に頼んだ方が効率が良かった、これでいいかな?」


どうしも気になる言い方であったが、一応は質問に答えられている形で浜面達は取り敢えずは納得していた。


浜面「もう一つ。なぜ脅しの様なもんまでしたんスか?」

「内容が内容だからね………………
 BI……S認証……OK、アクティ……ン、OK…………」


浜面の質問にそれだけ言うと研究者は画面に食い入り、ブツブツと独り言を言いながらキーボードを叩く。
 内容が内容────それは、とんでもない“ヤバいもの”を表しているのであろうか。

そのメインブレインらしき大型のコンピューター、そしてそれに繋がれている何やら怪しげな長方形型の箱。
人一人は優に入る分の余地はある大きさで、その中に一体何が入っているのだろうか。




304 ◆LKuWwCMpeE2011/11/22(火) 12:28:07.16x4eoTIlDO (7/10)



「dev…………done…………recov…………do…………dar…………matt…………」


もう他の事が気にならない、といった様子で何やらブツブツとその研究者は呟く。
まだまだ質問があったのだが、こちらの声はどうやら届かないのであろう。


「くは、くはははははは………………! 『守護神』の構築プログラム…………これは最高だ!!」


done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.done.


その単語だげが無数に画面を覆い尽くす。
研究者はそれをこれ以上愉快なモノはないといった様子で大声を上げて笑い出した。
それはもう、狂ったかの様に。


「はははははは………………!! くく、君達は最高に素晴らしいモノをプレゼントしてくれたよ…………ああ、そうだな、報酬を出そう」


パチン、と研究者は指を鳴らし黒服に何かを命じる。
すると黒服の一人が何やら堅い金庫の様な箱から封筒を取り出すと、テーブルの上にスッと置いた。


「……………………報酬、ね」

浜面「マジで入ってんな、これ…………」


中を確認すると、確かにそこにあったのは厚さ1cmにも及ぶ札束。
いまだ納得はいかない事は多々あるのだが、まあこの報酬の為にしたのは確かであって。
それを浜面は預かるように促すともう一度研究者の方を見た。




305 ◆LKuWwCMpeE2011/11/22(火) 12:29:04.25x4eoTIlDO (8/10)



「くくく…………動き出す、動き出すぞ………………『あいつ』が………………!」




浜面「……………………『あいつ』?」



「おい……………………あの箱、動いてんぞ」




「さぁ復活したまえ! 私の夢を叶えし者!!」



「箱が……………………開くぞ……!?」




ギギギ、とその機械の箱がゆっくりと開く。
浜面達はそれに目を奪われ、じっと見つめていた。
何が出るのか、一体何なのだろうか。

その答えが、今明らかになる。

足が見え、身体が見え。
手が見えて、顔が見え────────




306 ◆LKuWwCMpeE2011/11/22(火) 12:30:02.73x4eoTIlDO (9/10)




浜面「!? あ、あいつは……………………!?」



「ひ、人が出て来たぞ! 知ってんのか!? 浜面!」







「ははは、よくぞ蘇った! さあ私と共に夢を叶えに行こうではないか!!」










「学園都市第二位………………、垣根、帝督…………!!」










 アイテムの面々にとって、最大の敵であったその能力者の姿が、そこにはあった。





307 ◆LKuWwCMpeE2011/11/22(火) 12:31:54.97x4eoTIlDO (10/10)

また次回!


308VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都)2011/11/22(火) 12:34:06.75S7qa5GDRo (1/2)

冷蔵庫が動いた!?


309VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越)2011/11/22(火) 12:37:27.82d3tZ93PAO (1/1)

な、なんだってぇー!?


310VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中国・四国)2011/11/22(火) 12:42:19.996RLr/eQAO (1/1)

ていとくゥゥゥゥゥゥン!!!


311VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海)2011/11/22(火) 13:18:56.57PlM9UkQAO (1/1)

??????!!!!!!!!


312VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/22(火) 13:48:42.73XM7iso5DO (1/1)

ナ、ナーンダッテー!!


313VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/22(火) 15:51:42.63KkwUANPIO (1/1)

ΩΩ Ω<な、なんだってー


314VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/22(火) 16:29:07.20owcDGlSMo (1/1)

わけがわからないよ


315VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/22(火) 16:30:34.05kVjkWJ+D0 (1/2)

高性能な自律式冷蔵庫、「帝凍庫」。今ならなんと先着1名で5000円!5000円です!


316VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/22(火) 16:33:04.35kVjkWJ+D0 (2/2)

上げちゃった死にたいごめんなさいorz
一ヶ月ROMってくる


317VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/22(火) 16:38:47.09gJpZuhSSO (1/1)

ああここから初春×帝督が始まるんですね


318VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/22(火) 18:33:35.67ouJA55+IO (1/1)

初春を出せー


319VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/22(火) 23:48:20.11JCAdEGTSO (1/1)

初春×垣根とか電磁通行みたいな被害者×加害者のカップリングは理解不可能だな~
現実にそんな女いたらキチガイ過ぎて女の俺でも引くわ、全く感情移入できない

とりあえず純粋なヒーロー×ヒロインでの続きに期待するのである


320VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都)2011/11/22(火) 23:53:53.72S7qa5GDRo (2/2)

>>319
腐女子フィルターは恐ろしいな


321VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/23(水) 00:01:43.63aYFnT0hEo (1/1)

犯罪者とその被害者で考えると無理だけど
現実なんてどうでもいいわ


322VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/23(水) 00:15:07.60c8AT1LnDO (1/1)

垣根帝督!?

ん?って言うことは、上条当麻(もしくは、一方通行)と一戦もあるのか?

まぁ、次回まで待つことにしよう。




323VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(九州)2011/11/23(水) 00:48:35.16jsk4bXVAO (1/1)

>>322

次回は書き込まずにROMっててね


324VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/23(水) 01:07:47.05C/igWYBIO (1/1)

>>322
ageるなよ…
来たかと思ったじゃねえか…


325VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越)2011/11/23(水) 01:27:15.270m36oRNAO (1/1)

>>317
気持ちわりいな


326VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/23(水) 01:47:01.21SJxTMjuDO (1/1)

>>319
>>322
うわぁ……


327 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 02:54:11.63xsn5SEXDO (1/11)


 ゆっくりとその男は動く。
無数に身体についていたコードもそのままに箱から出て、立ち上がる。
その様子をその場の全員がただじっと見ていた。


「垣根、帝督………………!」

「何だって、第二位だぁ? あいつがそうなのかよ!?」


その動き一つ一つに目を奪われる。
何をするのか、しようとするのか。
警戒と焦燥が最高潮ほどまでに達していた。

 浜面は忘れもしない。
この垣根帝督という男が、アイテムに何をしたのかを。

暗部組織間抗争にてアイテムを壊滅状態にまで追い込み、そしてフレンダという仲間の少女が死に至る根本となったその男は。

確かに、憎むべき学園都市第二位の男であった。


「……………………」


その垣根はいまだ意識がはっきりしないのか、虚ろな目をしている。
しかし確かに二本の足で立っており、自我の回復は近いのであろうか。


「おお…………ようやく、私の努力が報われたよ…………。
 学園都市の裏をかいて三分割となった脳を必死に集め、肉体と生命維持装置を探し、巨額の投資を注ぎ込んで医者にそれらを縫合させ…………
 それらの努力が、ようやく実った………………」


歓喜に震える研究者の声が響く。
まるで死の淵から生還した息子に対する様な言葉、思い。
どれほどそれを待ち望んでいたかが感じ取れる様な、そんな感情の起伏であった。

一糸も纏わない垣根に近寄り、持っていたタオルケットをかける。
その様子は、本当に垣根を労っているような、そんな様子であった。



328 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 02:55:01.07xsn5SEXDO (2/11)


 浜面は苦虫を噛んでいた。
自分がした事は、この男を復活させる為のものだったのか。
アイテム────麦野、絹旗、フレンダ、そして滝壺をも苦しめたその男の復活を助長していたのか。

しくじった。
その言葉が頭の中を駆け巡っている。

 一応、浜面のポケットの中にはフェイク様の空USBメモリーも入っていた。
それをダミーにし、その研究者が何をしようとしているのかを先に把握しておこうと用意していたのだが。

ただ、もし誤答を提供していたのならば。
銃を構えながら浜面達の両脇を取り囲む黒服達の姿が自分達をどうしようとしていたのかを簡単に想像させていた。

ただ、否応なしに出したそれが、まさかこの男の復活のデバイスとなっていたというのは想像もしていなかったのだった。


浜面「く……………………!」

「浜面…………? あいつって、そんなにヤベェ奴なのか?」

浜面「おい…………お前は先に帰ってろ」

「ど、どうしたんだよおい」


ヤバい────その言葉で済めばいい方だ。
どうする? まだ意識がハッキリしていない内に葬ってしまえばせっかく手に入れたアイテムの光の日常を脅かす最たる危険分子が減る。

浜面はそれだけ言うと、懐に手を入れる。
その様子に両隣の黒服達も咄嗟に懐に手を入れはじめたのだが────────


フッと、唐突に浜面の目の前に見た事もないような物質が現れた。





浜面「っ!!??」





「ぬぐgtdkjぐfthkちtwjgkhm────────!!」




解読不能なその声と共に、目の前の物質は鋭利に尖った『何か』に瞬時に姿を変えていた。



329 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 02:55:47.95xsn5SEXDO (3/11)



初春「ん……………………んん………………にゅ」


 カーテンの隙間から射し込む陽の光が初春の閉じている目元を照らし、初春を夢の世界から目覚めさせる。
何だかいつもより暖かい布団の中で、いまだにはっきりしない意識のまま身体を寝返りさせてより温かいそれに腕を回した。


初春「とうま、さぁん…………えへ、あった、かい、ですぅー…………」スリスリ


一体どんな夢を見ていたのだろうか、それは初春にしかわからないのだがいつもならないはずのその感触を夢見心地で抱きしめ、顔をすりすりとなすりつける。
当麻さんのあったかい感触だーとそれを味わうが如くしばらくそうしていたのだが、段々と意識がはっきりしてくる。


初春「ん…………んんー………………ん?」ギュ


あれ、ここは確か自分の部屋。
この布団は確かに自分のものであるのだが、ではこの隣にある温かくて柔らかい感触のものは一体何なのだろうか。

「……………………すぅ、すぅ」zzz

初春「………………当麻さんじゃない」


男のものとは違う妙に柔らかい胸。
というか何だか見たことのある様な服。


佐天「んん………………すぅ、すぅ」zzz

初春「佐天さんでした」


顔を上の方に上げると、そこには自分のよく知る親友の寝顔があった。




330 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 02:56:43.09xsn5SEXDO (4/11)



佐天「いやー、寝てる初春見てたら私も眠くなっちゃって」

初春「もう、びっくりしましたよー」


てへ、と舌を出して笑う佐天に初春がほんの少し頬を膨らませて言う。
まあ佐天と同じ布団で寝る事はたまにあるし、特に問題もなく初春もクスッとそんな彼女に笑いかけていた。


佐天「当麻さんじゃなくてごめんねー?」クスクス

初春「当麻さんって言わないで下さい」


二人してお茶を飲みながら今日はどうしよう、と話す。

 現在時刻は昼の12:00を少し回った辺りで、睡眠時間とは反比例しているが少し寝過ぎたかなという感想を持ちながら考えていた。
せっかくの仕事もない日曜日だ、ただボーッとして過ごすのは勿体ない。


佐天「とりあえずご飯食べに行こうよ、お腹すいちゃったよー」

初春「そうですね、どこにします?」


行った先で、彼に偶然会えないかななんて口には出さずに佐天と相談する。
とはいっても、どうせ自分の心情は佐天にはバレバレなのだろうけど。




331 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 02:57:36.01xsn5SEXDO (5/11)


 ザシュッ──────!

浜面の座っていたソファーから繊維が引き裂かれた様な音が響く。
浜面は懐に手を入れたまま、全身を硬直させた様に身体を動かしはしなかった。
いや、動かせなかった、というのが正解なのかもしれない。

その音が響いたと同時に瞬時に黒服達も一斉に銃を取り出し、そして銃口を浜面に向ける。
研究者は相変わらず狂ったかの様に高笑いを上げながら垣根の様子にずっと視線を注いでいた。


「浜面っ!!」

浜面「外れた…………? いや、外したのか? しかし、こいつは一体…………!?」

垣根「gsfkhnmぎbgtpkrts────────」


垣根の様子が、どうもおかしい。
何かをブツクサ呟いている様で、視点も合わない虚ろな目のまま。
その視線の先も浜面の足元で、こちらの様子を窺おうともしない。


浜面「く…………!」

「「!」」


意を決して、銃を構え直す。
黒服達もその様子に銃に再び手をかけ浜面に向けるのだが、研究者がそれを手で制した。



332 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 02:59:45.62xsn5SEXDO (6/11)



「くくく、どうしたのかね? いいだろう、撃ってみたまえ」

浜面「………………!?」


別に垣根が撃たれようが構わないとその言葉。
撃てるものなら撃ってみろと言わんばかりに、研究者は余裕の表情を貫いている。
まるで銃など通用しない事を表しているかの様だ。


浜面「コイツはどうなってる。一体何を企んでいるんだ?」


垣根の一挙一動に細心の注意を払いながら言葉だけを研究者に浴びせる。
垣根の様子はいまだに自我を持っていない様子で、あれから動く気配はない。
しかし少しでも目を逸らせばどうなるかわからず、気を緩む事など出来やしなかった。


「くく…………いまやこの垣根は、全て私の思い通りなのだよ」

「思い、通りだ?」

浜面「………………どういう意味だ」


垣根の前に立ちはだかり、研究者は嘲笑を続けている。
全てが愉快だと言わんばかりに、笑い続けていた。




333 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 03:00:39.09xsn5SEXDO (7/11)



「脳をくっつける際にね、彼の脳情報に電子信号を植え付けておいたのだよ。この私には逆らえない、この私の言う事を全て聞くといった命令をね」

浜面「………………アンタの操り人形って訳か?」

「そうだ。通常の方法ならばそれは無理だったがね。だが君達が持ってきてくれた『守護神』の構築プログラム。ただそれだけがそれを可能にしていたのさ」

「……………………」

浜面「何の為に、コイツを復活させた?」

「先程も言ったつもりなんだがね。私の夢を叶える為に、ね、くく………………」


垣根の頬を軽く叩きながら研究者は言った。
それでも、垣根の様子は変わらない。
研究者に触られようが、近寄られようが、その虚ろな目は変わらなかった。

 『守護神』の構築プログラム。
それは花に水をやり、根っこから幹を通じ、枝を通して葉、実、花に栄養が行き届く様のイメージをプログラムに例えて構築しているものという話。
そういう『守護神』独自の計算式は、有機物に対してさえも非常に有効であるものだったのかもしれない。




334 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 03:02:40.94xsn5SEXDO (8/11)



「………………『夢』って何だ?」

「学園都市の転覆、統括権利の奪取──────」

浜面「なっ!?」

「この学園都市がなぜ『能力開発』をしているのかわかるかい?」

「『記憶術』やら『暗記術』やらでの脳ミソの成長の為、なんじゃないのか?」

「それならば何故、『発火能力者』や『電気能力者』、『水流操作』『風使い』等の一般社会には使えそうもないものばかり生まれると思うのかね?」

浜面「……………………」

「それらは全て、『武力』にしかならないのだよ。
 第一位の『ベクトル操作』、第二位の『ダークマター』、第三位の『超電磁砲』、第四位の『原子崩し』………………
 そんなものが平和な日本の日常を暮らす中で、必要になると思うのかね?」

「……………………」

「垣根の様なレベル5にまで辿り着いた者のキャッチフレーズは、『一人で軍隊と戦える』というもの。
 幼き頃よりこの街ではそういった『武』の能力が植え付けられるのが当たり前だというのを洗脳し、洗練させていく。
 ………………どうにもおかしいとは思わんかね?」


 一呼吸、研究者はおく。
確かにそれは研究者の言う通りなのかも知れない。

『進んだ科学により未知を征服する』

機密の漏洩を防ぐ為といった理由で作られた暗部組織は、特に『武力』の塊で。
だからこそ『闇』の中で殺し合い、騙し合い、凄惨な出来事や事件が頻繁に起きた。



335 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 03:03:31.71xsn5SEXDO (9/11)



浜面「……………………」

「私が思うに、少年少女の能力者達を使ってこの世界を征服でもしようとしているにしか見えないのだよ」

「だからこそ。こんな『素晴らしいもの』の利権を手にしない理由などなかろう?
変えの効く『使い捨て』の能力者共も数え切れない程いるしね」

「『使い捨て』だ………………?」

「世界が全て自分に平伏すのを想像してみたまえ。
 歓喜と愉悦で足も震えてこないか?」


狂ってる。
何もかもが、狂っている。
その研究者からは、それしか伝わってこなかった。

閉じこもったその視界から、世界を何も見ていない事だけはわかった。


「……………………ふざけんな………………」

浜面「お、おい………………?」


ふと、そこで横から響く声に浜面は視線を移す。
憤怒に震えるその表情が、そこにはあった。


「『使い捨て』だ…………? 俺達を何だと思っていやがる…………」

「おや? 『駒』にもならない無能力者のスキルアウトの屑共に私の様な有望な者が声をかけてきた事に感謝するべきだと私は思うのだがね」

「てめぇは………………人をなんだと思ってやがるんだよ!?
 俺達が屑だと!? もういっぺん言ってみろやコラァッッ!!」

浜面「落ち着け!」




336 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 03:04:30.48xsn5SEXDO (10/11)


 浜面は抑える。
しかし、怒りは収まる事はなく高ぶった感情をそのままに怒声を撒き散らしていた。
ただ、ここで抑えなければ。
その研究者の言う通り、この第二位の能力者が研究者の意のままだったのならば。


「こっちだって必死に今日を生きてんだ! てめぇの糧になる為に生きてんじゃねえぞ!!」


浜面「抑えろ!!」







「うるせぇガキ共だな……………………やれ」





その研究者の言葉と共に、再び得体の知れない『物質』が空を切っていた。




337 ◆LKuWwCMpeE2011/11/24(木) 03:05:18.39xsn5SEXDO (11/11)

なんかいいIDキタ━━(゚∀゚)━━!!

また次回!


338VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/24(木) 03:12:26.76rjSL9Wrgo (1/1)


5SEXか……


339VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/24(木) 03:53:56.56hK4iFgHIO (1/1)

フレンダって、死んだのかよ・・・


340VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区)2011/11/24(木) 04:08:25.94coF7vgnF0 (1/1)

5 SEX DO か
すげえIDだな


341VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/24(木) 11:25:08.43GDuCLPODO (1/2)

乙。
5SEXか……


342VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(北陸地方)2011/11/24(木) 13:58:41.47ucNI5/lAO (1/1)




343VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/24(木) 14:21:14.16B/I7eYaC0 (1/1)

SEX堂すげえな



344VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋)2011/11/24(木) 15:06:14.03NYe6tef+o (1/1)

下条「5回SEXどう?」ということですねわかりますん


345VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都)2011/11/24(木) 16:18:07.5058R2fI6fo (1/1)

初春
美琴
佐天
黒子
寮監

ちょど5回だ


346VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋)2011/11/24(木) 16:44:27.75f+fFyAw1o (1/1)

>>345
最後ちょっと待ってほしい


347VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/24(木) 20:03:32.423b5fh+cIO (1/1)

>>345
五和「」


348VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/24(木) 21:16:49.95GDuCLPODO (2/2)

>>345
春上「」


349VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/24(木) 22:13:11.02kyOk4MPSo (1/1)

>>345
神崎「」


350名無しNIPPER2011/11/24(木) 23:09:01.16EsNWIeRAO (1/1)

>>345
オルソラ「」


351VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(京都府)2011/11/24(木) 23:23:05.372sz6+Nh/0 (1/1)

>>345イン「」


352VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/25(金) 00:58:12.00rH0llzLIO (1/2)

>>345
ダイゴ「」


353VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方)2011/11/25(金) 01:49:11.33ysKtVsc0o (1/1)

>>345
アックア「」


354VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/25(金) 08:32:44.45kd9+pmuIO (1/1)

一方「」


355VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県)2011/11/25(金) 09:29:59.33ltaeykbXo (1/1)

その他大勢「「」」


356VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/25(金) 09:49:43.59rH0llzLIO (2/2)

>>355
よくしめてくれた


357VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/25(金) 13:05:47.30PB2XCZYso (1/1)

死屍累々やなw
悲劇なんやなw


358VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方)2011/11/26(土) 02:22:30.58kWSqU3AQo (1/1)

>>355
素晴らしい


359 ◆LKuWwCMpeE2011/11/27(日) 18:25:39.3746+vLCQeo (1/10)


土御門「おっす──────ってあれ、カミやんは?」

インデックス「とうま? 寝ちゃってるかも」

土御門「そうなのか? ってもう昼前だぜい、まだ寝てるのかにゃー?」

インデックス「なんかね、昨日は眠れなかったらしくて。今頃寝付いちゃったんだよ。それで、どうしたの?」

土御門「んー、こっちの方の報告をしておこうと思ったんだが、寝てるのか。まあいいや、上がらせてもらうにゃー」

インデックス「おいでませ、なんだよ!」


 いつものサングラスを光らせ、家主に断りも入れずにずかずかと土御門は入り込む。
とは言いつつもいつもの事でもあるので何ら問題はない。
それを迎え入れるインデックスの様子も、随分手慣れたものであった。


神裂「土御門」

五和「こんにちは」

土御門「おっす。カミやん寝てるらしいけど、とりあえずの報告をしに来たんだぜい。しかし今日は寒いんだにゃー」

神裂「こんな寒い日でも上条当麻はよく冷たいバスタブで眠れるものですね…………」

インデックス「私は一緒の部屋でも構わないのに、とうまったら聞かないんだよ」

五和「上条さんと同じ部屋で寝る…………私、抑えられる自信がありません」

オルソラ「温めて差し上げたいのでございますよ」

土御門「カミやんは謎の防御力が備わってるからにゃー、ちょっとやそっとの事じゃあの防壁は剥がせそうにないんだぜい」


報告をしに来た────はずだが。
しかし話題はこの部屋の家主の事ですっかり染まっていたりしているのだが、大丈夫なのだろうか。
大丈夫なのだろう、うん、きっとそうだ。




360 ◆LKuWwCMpeE2011/11/27(日) 18:26:22.8446+vLCQeo (2/10)



「ぐはっ!?」

浜面「っ!?」


 後方に吹き飛び、勢いよく壁に激突する音が鳴り響く。
瞬きの間の様な一瞬の出来事。
浜面はその方を見るが、何によって吹き飛ばされたのかは解らなかった。

いや、解ったが解らない。
垣根の能力だというのは解る。
しかし浜面がいくら考えを張り巡らせた所で、第二位の能力の特性など理解出来やしないだろう。

アイテムの面々でさえ、太刀打ち出来なかった第二位のその力。
立ち向かおうとする事すらバカバカしく感じさせてくるその垣根の能力に苦虫を噛んだ。


浜面「くっ………………!」

「ガハッ…………、ぐ…………!」

浜面「おい、大丈夫か!?」


床に崩れ落ち、うめき声を上げた仲間に声をかける。
手加減をしたのだろうか、死に至るような攻撃では到底なかった様子で浜面はそこでほっと一息ついた。


「垣根を復活させてくれたからね、本当は君達に危害を加えるつもりはない。
 ただ、歯向かう様であれば──────」

研究者は一息入れる。
無敵の道具を手に入れた恍惚な笑みを浮かべているかの様であった。


「次は、命はないと思い給え」


そう告げた瞬間、浜面達は理解し得ない『何か』によって吹き飛ばされ、意識を失った。



361 ◆LKuWwCMpeE2011/11/27(日) 18:27:07.0646+vLCQeo (3/10)



黒子「ええ、いいですわね。お姉様にも聞いてみますの」


 黒子と美琴が暮らす常盤台の一室にて、黒子はそう口に出すと耳に当てていた電話を離す。
電源ボタンを押し、通話を切るとカップに注がれたそれを口に含んで喉に流し込んだ。

黒子が口にしていたのは、先日第一七七支部に買い置きしたそれと同じもの。
彼も飲むそれに自分も慣れようとこっそり努力しているのだが、大人っぽい苦味にまだ自分の舌は慣れない様でちょっぴり表情を歪ませて舌を出した。


美琴「さっぱりしたー」


 すると、タオルで髪の毛を吹きながら相部屋で暮らす尊敬すべき先輩が浴室から出てくる。
朝に浴びるシャワーがとても気持ち良さそうにしており、機嫌も良さそうであった。


美琴「あれ、コーヒーのいい匂いがするーって黒子? アンタ、コーヒーなんて飲んだっけ?」

黒子「ええ、淑女としての嗜みですの」

美琴「淑女、ねえ」


ここでは嗅ぎ慣れないその香りを美琴は不思議そうにしていたが、嫌いな香りでもなくまあいいかと納得した様な表情をみせた。

 美琴の調子もなんとか以前に戻りつつあり。
昨日は結局夜に帰宅をし、夕食も美鈴と外で食べてきた、と言っていた。

やはり母親との時間が美琴を落ち着かせたか、一昨日のあの時とは随分と顔付きが変わっていた。
美琴をそんな顔に戻したのが自分ではない事に少し悔しさがあったのだが、それでも戻ってくれた美琴のその様子に安堵感の方が遥かに上回っている。



362 ◆LKuWwCMpeE2011/11/27(日) 18:27:34.8246+vLCQeo (4/10)



黒子「お姉様、今初春から電話がありまして。初春と佐天さんと四人でお昼でもいかがかと言っておりましたの」

美琴「うん、今日は用事もないし、いいわよ」

黒子「お姉様ゲットですの! 黒子は、黒子はああああぁぁぁ」ガバッ

美琴「やめい」ビシッ

黒子「あう」


美琴からの返事で飛び付くと、やんわりとチョップで止められる。
どうやらそんなおちゃらけた戯れにも付き合ってくれるのが黒子は嬉しく感じ、表情は笑みで溢れていた。


美琴「髪乾かそっと」

黒子「お手伝い致しますの!」

美琴「いいからいいから」クス

黒子「残念ですの」クス


二人して笑い合いながら、ドライヤーにて美琴が髪を乾かす。
いつも通りのやり取りが、いつもよりやけに楽しく感じられたのは気のせいではないだろうと思う。



363 ◆LKuWwCMpeE2011/11/27(日) 18:28:18.8146+vLCQeo (5/10)



初春「あ、白井さん、御坂さん」

佐天「こんにちはっ」

黒子「こんにちはですの」

美琴「ごめんね、お待たせ」


 集合場所としてセブンスミストの前で待ち合わせた四人の楽しげな声が響く。
本当に仲良さげなその四人は、皆揃って容姿のレベルが高く、道行く男子学生達の視線を密かに引き寄せていた。

 美琴の様子を初春は窺う。
いつも通りに見えるその笑顔に初春も黒子と同じく安堵をしていた。
それはもちろん佐天も同じ気持ち。
大切な友達の美琴の明るくなったその顔がなんだか嬉しく感じていた。


美琴「どこ行くの?」

佐天「なにを食べるかによりますねー」

黒子「イタリアンなんてどうですの?」

初春「イタリアン…………」


昨日の上条と共に摂った夕食を思い出す。
あれは厳密にはイタリアン専門店ではなかったが、似たような物であり。
違うものを食べたい気分―――――――――


とかそんな事はもはや頭にない。


初春「…………………………………………ふぁぁ///」ボフッ

佐天「初春?」

美琴「ど、どうしたの?」


彼と夕食を共にしたとか、楽しく話をしたとか、食べさせ合いっこをしたとか。
それだけでも卒倒ものであったのだが―――――それよりも、それよりも。



364 ◆LKuWwCMpeE2011/11/27(日) 18:29:05.5246+vLCQeo (6/10)






『当麻さん………………」




 大好き、です────────』






初春「あわわわわわわ……………………………////////////」プシュー




佐天「ってええええ!? う、初春ー!?」

美琴「顔から湯気!?」



そこまで考えると初春はもう何も考えられなくなった。
火照りまくった顔を冬の寒さで冷たくなった手で覆うが、その熱さはもうものすごい事になっていた。

 包まれた彼の温もり。触れ合った唇と唇。


『ダメ。………………もうちょい、一緒にいような』

『ダメ。ずっと、一緒にいような』

『飾利。一生、一緒にいような』


昨日の出来事がどれほど初春の心を揺らしているのであろうか。
網膜に焼き付いて、心のCPUはMAD.verも製作済みでこうしている時でも自動再生機能はばっちり作動している。



365 ◆LKuWwCMpeE2011/11/27(日) 18:29:37.4046+vLCQeo (7/10)



佐天「だ、大丈夫? 初春ー」

美琴「ど、どうしたんだろ」


そんな二人の気遣うような声も届いているか届いていないか。
初春の意識が戻ってくるまで、もう少し時間は掛かりそうであった。







黒子「………………………………………………………………」







黒子はその時思った。
昨日、絶対何かあった、と。




366 ◆LKuWwCMpeE2011/11/27(日) 18:30:12.8646+vLCQeo (8/10)



「さて…………、どこから手をつけようかね、ククク……………………」


 誰もいなくなった暗い部屋の一室で、男の愉悦に満ちた笑い声が響く。
その声に返事するものは勿論なく、別にその男も返答を求めた訳でもない。

誰もいなくなった――――――それは厳密には違い、その男の横にはもう一人の「人間」が立っている。
その「人間」、垣根帝督は先程の様子と変わらずただそこに立っているだけだ。

何も動かない、喋らない。
息をしているのかも心臓が動いているのかもわからない、まるで「人形」の様だった。

 白衣を着た男――――研究者は、その垣根の様子が全て順調だとあざ笑う。
全ては自分の思い通り、意のままに操れしもの。

視線をモニターに戻し、キーボードを叩いて操作する。
彼が求めしものの計測結果が再び画面に出ると、狂ったようにそれを繰り返す。



367 ◆LKuWwCMpeE2011/11/27(日) 18:30:38.8746+vLCQeo (9/10)



 何度も、何度も、何度も、何度も。


丹念に幾度もやり直したその結果は変わらない。
それは研究者の自信を確実にするものであり、画面に出たその羅列された数値と記号を見るとその笑い顔は更に凶悪に歪む。

もはやその結果は頭に深く刻まれた。
間違いはない。
それが最良の手段。
最短の方法。

そして、確実。



「これで、学園都市は私のものだ……………………! くくく…………、あーっはっはっはっはっは!!」



研究者は笑いながらキーボードを画面に叩きつけ、そのモニターを割った。
もはや狂者、精神崩壊者。

どう転んでも、勝利は手に入る。
研究者は再び大声を上げて笑った。





研究者が叩き割られる前のモニターには。



『Last Order & MNW』



とだけ、記されてあった。




368 ◆LKuWwCMpeE2011/11/27(日) 18:31:40.9546+vLCQeo (10/10)

うげ、超短え…
次はもっと早く投下できるようにします

また次回!


369VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都)2011/11/27(日) 19:25:24.58yxgmuAKUo (1/1)

乙である


370VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/27(日) 19:26:56.17QHE52H2IO (1/1)

>>367
>研究者が叩き割られる前のモニターには。
いきなり研究者死んだ件


371VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/28(月) 00:22:18.63/I3hXl6qo (1/1)



>>370
ちゃんと見てなかったから見直したらマジだったwwww


372 ◆LKuWwCMpeE2011/11/28(月) 00:56:11.17B8C1Gafko (1/1)

>>370
うわ本当だ研究者叩き割られてどうすんだよ・・・
ちゃんと文章見直す癖をつけなきゃね、次から気をつけるー
指摘感謝!


373VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区)2011/11/28(月) 01:18:41.49iZzrfl1ko (1/1)

自爆か…

いい最後だった!

乙!


374VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中国・四国)2011/11/28(月) 02:26:06.73AwFYzWZAO (1/1)

>>1乙

>>373
終わらすなww


375VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越)2011/11/28(月) 07:09:09.61YHnwdNVAO (1/1)

ていとくんがふと目覚めてついやっちゃったのかと


376VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/11/28(月) 18:42:37.2903s0maN50 (1/1)




377VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋)2011/11/28(月) 21:03:06.08NWMaTCNB0 (1/1)





378 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:03:02.45aTosF52DO (1/12)



神裂「それで、進展はあったのですか?」


 コトン、と湯呑みをテーブルの上に置き、神裂は目の前に座る土御門に尋ねる。
その仕草はまさに大和撫子、実に彼女によく合っている。
イギリスで暮らす彼女は、ここ日本という国で久々に味わえるお茶をじっくり味わっているかの様であった。
まあ向こうでも味わえる事には味わえるのだが、今自分がいる場所的な雰囲気も共に味わっているのだろう、どことなく礼儀作法、仕草も堂に入っていた。


土御門「ん、そうだにゃー、そちらの方はどうだったんだにゃー?」

神裂「ええ、もっともこの学園都市の手による捜査の後でしたので、恐らく痕跡等は既に押収された後だと思うのですが。しかし、妙なものを見つけました」

土御門「妙なもの、ってなんだにゃー?」

五和「はい、これなんですけど…………」


五和がそういい、透明のビニールの袋に入ったものをテーブルの上に置く。
それを見た土御門の眉が一瞬釣り上がった。


土御門「………………やはり、か」

インデックス「これ、かなり弱いんだけど微かに魔力が出てるかも。今はもう消えそうだけど」

土御門「ふむ」


土御門が予想していた展開とその発見されたものと、繋がりはあった。
サングラスに手を当てながら、土御門はそれをじっと見る。

 問題は、誰が何のためにその魔術を使ったのか。
この学園都市で何を企んでいるのか、目的が何なのか。
そこをきっちり把握しておかなければ、有事のいざという時に対応が遅れてしまう。
狙いが幻想殺し、あるいは禁書目録なのか、それとも別の何かなのか。

少々この学園都市のセキュリティはざるな所がある。
神裂達も含めて魔術師達にこんな易々と出入りされてしまう事をアレイスターはどう思っているのだろうか、次会う時はそこの所もきっちり問いただしてやらねばなるまいなと溜息を吐いていた。




379 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:04:35.36aTosF52DO (2/12)



浜面「うっ………………」

「おや? 気が付いたかい?」

「はまづら、はまづら………………」

浜面「ここは………………」


 ここはどこなのだろう、見慣れぬ場所。
目を開けると、まずは白い天井と見知った二人の顔がある事に気が付いた。
自分の顔を覗き込んでいる二人の内の、片方の少女と目が合う。


浜面「おう、滝壺…………」


身を起こそうとするが、細い腕にやんわりと止められた。


滝壺「まだ起きちゃ…………だめ」

冥土帰し「大丈夫かい? わかるかな?」

浜面「俺は…………どうしたんだっけ」


意識がはっきりしない内でも、泣きそうにも見える滝壺を見るとさすがに彼女の言う通りにしない訳にはいかない。
それが浜面の無条件優先事項であった。

 段々と意識がはっきりしてくる。
冥土帰し────という事は、ここは病院か。




380 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:05:32.84aTosF52DO (3/12)



───あれからどうしたんだっけ…………研究者に連れられ、USBメモリを渡して、第二位の復活を見て………………


浜面「はっ! あ、あいつは!?」

冥土帰し「あいつ、というのは彼の事かい? それなら心配ないよ、隣で横になっている」

「よう浜面、ようやくお目覚めか?」

浜面「………………大丈夫だったか」

「ああ、つっても俺も今起きたとこだったんだけど」


首を横に動かすと、横になってこちらを見ている仲間の姿があった。
どうやらその様子に心配は要らないようで、浜面はそこでほっと一息ついていた。


滝壺「はまづら………………はまづらぁ」キュ

浜面「のわっ!? た、滝壺…………?」


滝壺が首元に縋り付く。
その感触に浜面はドキマギしながらも、その背中にそっと腕を回した。


滝壺「よかった………………」ギュ

浜面「あ、ああ…………スマン、心配かけた」


頬と頬をすり合わせられ、その柔らかさはまさに異性を感じさせる。
元スキルアウトという身分でありながらそれに全然慣れない浜面はただどうする事も出来ずに、滝壺の頭をそっと撫でるしか出来なかった。


冥土帰し「大丈夫そうだね? とりあえず今日はここにいてもらうけど、もう心配ないんだね?」

浜面「あ、はい。スンマセン」


それだけ言うと、冥土帰しは病室を後にする。
麦野をあの状態から復活させた実績持ちの冥土帰しの言葉だ、彼が心配ないというのなら心配はいらないのだろう。
隣から発せられるニヤニヤとイライラが入り混じった様な視線を感じながら、ずっと浜面は滝壺の頭を撫でつづけていた。



381 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:06:31.39aTosF52DO (4/12)



浜面「って滝壺、どうしてここに?」

滝壺「はまづら、最近構ってくれなかったから。電話もしてたのに、出てくれなくて」

浜面「あ、ああ…………いやあ、その」


質問に対する答えにはなっていないのだが、プクーッと頬を膨らませた滝壺の様子に苦笑いを浮かべる。
まあ確かにそれはそうであったし、実際忙しくしていて滝壺を蔑ろにしていた所もあり。

最近、とは言ってもここ二、三日の間だけであるのだが、そんな短い間だけでも滝壺に寂しい思いをさせてしまっていた事に反省する。


浜面「……………………スマン」


実は手に入るお金で何か滝壺にプレゼントしてあげようと画策していた所でもあった。
しかしそれを優先して滝壺との時間を無くしてしまっていたのは本末転倒ではなかろうか、と今ではそう思う。

ただ、懸念事項も残っている。

 あの第二位の事が、気にかかる。
あの研究者が垣根帝督を従え、この学園都市で何をやらかすのだろうか。
それはただ自分達の平穏な日常をも脅かす事は間違いないとは思う。

それを言うべきか、否か。


浜面「………………………………」

滝壺「はまづら?」

浜面「ん?」

滝壺「………………ううん、何でもない」

浜面「そうか?」

滝壺「……………………?」

浜面「…………………………」


いや、言うのはよそう。
言ったところで、滝壺が何らかのアクションを起こしもし彼女に何か危害が加われば────と考えると、言うのは得策ではない。

命に代えても、この少女の存在は守る。
そう腹に決めていた。



382 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:07:18.27aTosF52DO (5/12)



佐天「いっただっきまーす」

美琴「いただきまーす」

初春「いただきます」

黒子「いただきますの」


 異口同音で食べ物に対する食前の挨拶をし、四人はスプーンとフォークを手にした。
結局、四人が昼食に選んだのはよく通うファミレスで落ち着いた。
メニューは洋食から和食まで色々と取り揃えている大衆向けのお店で、お手軽スポットとして学生達で賑わうこのお店は今日も人で溢れていた。

ちなみにここに来る途中、昨日の店やら公園やらを通りかかってその度に初春の意識が飛び、三人(特に黒子)に怪訝な目を向けられたのはまあいいだろう。


佐天「人いっぱいですねー」

黒子「ええ、まあ日曜日のお昼時と言えば致し方ありませんのかも知れませんわね」

美琴「そうね。まあ賑やかな事はいい事なんじゃない?」

初春「ですね」


クルクルとパスタをスプーンの上で巻きながら周りを見渡せば、自分達と同年代、それか少し上の少年少女達が賑やかにしてそれぞれテーブルを囲っていた。
どれも楽しげな雰囲気を醸し出し、皆食事を楽しんでいる様だ。



383 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:08:46.61aTosF52DO (6/12)



佐天「ん? んん?」

美琴「どうしたの? 佐天さん」

佐天「あ、いやー………………」


ふと佐天があるテーブルの方に目を向けると、怪訝そうな表情をしていた。


初春「?」


チラッと初春を見る。
初春はちょこんと首を傾げていて、その小さな口をもごもご動かしていた。


───初春の角度からは見えないけど………………


見知った顔が、初春の席の後方のテーブルにあった。
というか、クラスメイト達だ。

そしてその中には、あのメガネ君の姿も。


美琴「それで、この後はどうするの?」

黒子「ええ、どう致しましょう?」

初春「この近くに雑貨屋さんが出来たみたいですよ、ちょっと行ってみたいですね」

美琴「そうなんだ。行ってみよっか」

黒子「ご一緒しますの」


チラッ。


佐天「」


───うわあ、見てる、見てるよ、こっちのテーブル見てるよ………………。


チラッ、チラッとこちらのテーブルの様子を窺うメガネ君の様子に佐天は軽く頬を引き攣らせる。
向こうは男子四人グループらしく、それぞれ談笑している様子なのだがメガネ君だけこちらにちょこちょこ視線を送っている。



384 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:10:14.57aTosF52DO (7/12)


 どうやら初春の様子が気になる様で、見返すもこちらの視線に気付かないのかただ初春の後ろ頭らへんを見ている様子であった。


───まだ諦めてないのかなぁ。


初春に心に決めた人がいるのは知っている。
というか、彼にだけしか目が行っていない。
メガネ君が初春に告白したあの時も、その様子をまざまざ見せ付けたていたというのにそれでもまだメガネ君はギラギラとそのレンズを光らせている。


───………………く、ダメだ、まだ笑うな…………


キュピーンという音さえ聞こえてきそうなその様子に佐天はなぜか笑いが込み上げてきた。
ただ突然笑い出すという奇行をする訳にもいかないので、顔を俯かせて見られないようにする。


黒子「佐天さん?」

初春「どうしたんですか?」

佐天「」ヒクヒク

美琴「え、え、何なに?」


ダメだ、肩がヒクつく。
笑ってはいけない状況下というのはいつも以上に笑えてくるというのはどうしてだろうか。
しかし佐天は何とか押し止める。

そうさ、私はポーカーフェイスのデキるオンナ。

というか、こちらの会話も聞こえているのだろうか。
それならば、初春と彼の話を聞かせればメガネ君もまた一歩引く事になるのではないか。

だって、初春の恋を応援したいもん。


佐天「初春ー、昨日ってどうだったぶふぉ!!」

初春「きゃっ、ちょ、佐天さーん!?」

黒子「」

美琴「」


椅子から半分身を乗り出し、こちらに少しでも耳を近付けて必死の様子で話を聞こうとするメガネ君。
その際にメガネを落として拾いに行ったその姿はさすがに佐天の許容量を超えていた。

佐天、アウトー。



385 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:12:05.76aTosF52DO (8/12)



佐天「こ、こほん、それでは仕切り直して」


 わざとらしく咳ばらいをする。
吹いてしまった事の気まずさを誤魔化す様に若干早口気味ではある。


佐天「………………昨日、どうだった?」

初春「!? けほっ、けほっ!」

黒子「!」

美琴「?」


ニヤァという擬音が自分の口元から出そうな程口角を上げ、初春に尋ねる。
初春からしてみればそれは唐突な質問だった様で、今度は初春が咳込む番になっていた。


美琴「昨日って?」

佐天「あ」


あ、これはまずい質問だったかも。
と美琴の顔を見て今になって佐天は気がつく。


初春「………………///////」


初春の顔が真っ赤になっていくのを見ながら、佐天は少し思案した。

 昨日、初春は上条と夕食を共にした。
しかし、佐天の推測からするに美琴は上条の事を少なからず想っている。
とすると、この話題を出すのはどうだろうか。



386 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:13:28.68aTosF52DO (9/12)



美琴「なになにー? 何かあったの?」

佐天「あ、あははー…………えと、そのですね」


言いづらい、というか言えない。
言ったらどうなるのだろうか、と佐天は地雷を踏んだ気分にもなってきていた。


黒子「…………昨日、初春と上条さんがお食事に行ったみたいなんですの」

佐天「!」ビク

美琴「え」ピク

初春「えぅ/////////」


しかし、言葉を紡ぎあぐねている所で黒子が口を開く。
佐天の肩がピク、と反応し美琴の様子を恐る恐る窺った。


美琴「………………そうなの? 初春さん」

初春「あ、はぃ//////////」

佐天「んん?」

黒子「う、初春………………?」


ただそこで何よりも初春の様子が妙に気が引ける。
顔を真っ赤にして、両手で頬を押さえていて。
昨日の出来事をポヤァッと思い返しているかの様で、そんな初春に一同は何事かと目を見張る。

っていうかまさか、えええええ?
まさか、あの寝言で言っていた事って………………




387 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:15:10.48aTosF52DO (10/12)




『うにゅ…………とうましゃん…………ほっぺじゃなくて…………おくちに……もういっかい……ちゅーしてくださぁい……』


え──────それってマジの話だった?


黒子「う、初春……………………? あなた、まさか………………?」

美琴「ちょちょちょ、どどどどどういう事よよよよよ?」



「ふむ、そこから先は」




「ミサカ達が答えてしんぜよう! ってミサカはミサカはお姉様達の会話の中に飛び込んでみたり!」





佐天「あ、打ち止めちゃん──────と、御坂さんがもう一人!?」

黒子「打ち止めちゃんと………………お姉様が二人!?」

初春「ほえ、打ち止めちゃんと妹さん………………? ってえええええええええ///////////」

美琴「妹、達………………!」


ふとその途中で飛び込んできた二人の姿に一同は視線を送る。
佐天にとってもはや初春を狙うメガネ君の事など、もう頭にはなかった。



388 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:20:12.35aTosF52DO (11/12)

今日はここまで

>>367の部分

>研究者の手によって叩き割られる前のモニターには。



>研究者の手によって叩き割られる前のモニターには。

に 脳内変換おねしゃす
また次回!


389 ◆LKuWwCMpeE2011/12/01(木) 02:22:04.16aTosF52DO (12/12)

修正ミスワロタwwwwwwwwワロタ…………


390VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/01(木) 02:43:17.02B4AKnEPIO (1/1)

乙!
あと俺垣根知らないんだけど
勝手にデットマンワンダーランド的な能力と思ってるけどおけ?


391VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/01(木) 06:10:38.86FVnD/ZoDO (1/1)

おつ。
メガネ君=俺ら


392VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越)2011/12/01(木) 09:52:05.94I6U5zyNAO (1/1)

乙。
これで、メガネくんがラスボスフラグ建ったかな?


393VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/01(木) 13:37:59.484W1z8T8SO (1/1)

好きな子にフラれたくらいで能力覚醒するんだったら
青ピなんて今頃第6位になっとるっちゅーねん!


394VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都)2011/12/01(木) 14:35:15.76O504PzjLo (1/1)

上条が黒子に寝取られて初春はメガネと付き合う展開希望


395VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋)2011/12/01(木) 16:53:33.85J7uH3kEmo (1/1)

メガネ君は垣根にやられるな


396VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/01(木) 20:54:19.73H+DIDcFG0 (1/1)

そして研究者が生き返らせる


397VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋)2011/12/01(木) 22:38:02.96rYFGLG8Zo (1/1)

冷蔵庫化か…


398VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越)2011/12/04(日) 21:45:48.62ZFOMyaHAO (1/1)

神裂「それで、進展はあったのですか?」


399VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/04(日) 23:29:28.66/Zf1+xCh0 (1/1)

土御門「>>1からの連絡待ちにゃー。 今は寝て待つぜよ」


400 ◆LKuWwCMpeE2011/12/05(月) 02:21:14.11OTSjbumDO (1/8)



初春「あわ、あわわわわわわわわゎゎゎゎ………………」


 美琴とウリフタツのその少女の姿を見るや否や、初春の思考がグルグル渦を巻く。

昨晩のあの時────────。


『大好きです………………当麻さん──────』


佐天「う、初春ー? どうしたの?」

初春「はうぅ/////////」


彼の優しさ、温かさ、包容力に包まれて、我慢できなくなって。
その時自分が思わず取った行動を、確かにその少女は見ていた。


打ち止め「あれれ、初春のお姉ちゃんどうしたのってミサカはミサカは含み笑いをしながら肘でつっついてみたり、このこの」ニヤニヤ

初春「ってえ?/////// 打ち止めちゃん?」

打ち止め「なーに? ってミサカはミサカは昨日のあれを知っているけど惚けてみる」ニヤニヤ

初春「し………………知っているんですかあああぁぁぁ!?///////」

御坂妹「脳波リンクを通じて昨日の出来事は全妹達が把握しています、とミサカはタネを明かします」

佐天「脳波リンク…………?」

黒子「全妹達…………?」

打ち止め「お、お姉ちゃんに聞いたんだよってミサカはミサカは言葉を置き換えてみたり!」




401 ◆LKuWwCMpeE2011/12/05(月) 02:22:12.97OTSjbumDO (2/8)


ぎゃーぎゃー騒ぎ出すテーブル。
女の子四人というだけでもかしましいものであるのだが、やってきた二人がその騒がしさを増長させていく。

と、いうのも気にかける精神的な余裕などなく、初春はタジタジとたじろぐ事しか出来ないでいた。


佐天「聞いたって、何をー?」

御坂妹「はい。昨日ミサカがアルバイトしている洋食のレストランにあの人とふt「い、妹さんっ!///////」」

黒子「昨日のあれ、と申しますと?」

打ち止め「んーとね、公園でね、ヒーローさんとお姉ちゃんがぶty「わああああああああぁぁぁぁっっ!?///////」」


 大声を上げ、初春の横で立っていた打ち止めの口を手でガバッと塞ぐ。
肝心の部分が途中まで出かかっていたのだが大丈夫だろうか。
んー!んー!とジタバタする打ち止めを余所に佐天、黒子、美琴の方へと視線を送る。
三人は目を丸くしており、一体何が起きているのかわからないという表情をしていた。

………………若干、黒子は睨み気味だが。

バレてはないだろうか。
気付かれてはないのだろうか。


「お客様方、店内ではお静かにお願いします」

初春「あっ、あう、す、すみません………………」ペコリ


そこでまあ当然の如く店員さんからの注意が飛んでくる。
ペコリと頭を下げて店員さんに非礼を詫びると、打ち止めと御坂妹もさすがにやりすぎたかと初春に続けて頭を下げていた。



402 ◆LKuWwCMpeE2011/12/05(月) 02:23:02.07OTSjbumDO (3/8)


 あれから何とか落ち着きを取り戻した初春と、佐天、黒子に御坂妹を交え談笑しているのを眺める。
ダージリンがまだ半分ほど残っているティーカップとソーサーのぶつかる音に気を使いながらカチャリとそれを置くと、美琴は一息ついていた。

いまだ自分の中で妹達の事は完全に決着がついている訳ではない。
唐突に場に現れた二人に美琴はなかなかに声をかけられず、あれから言葉は少なくなっていた。

 まだまだ自分は子供かな、と思う。
あの時、彼の話をしっかりと聞く耳も持たず、己の感情のままに振り回されていた。

あの時の事は、あまりよく覚えてはいない。
第一位を見て、妹達に囲まれていて。
親友三人が仲よさ気に話し掛けてて。
それだけじゃない、彼までもが第一位を気遣う様な言葉を口にしていた。

逃げて、彼が追い掛けてきて、電撃を撃って気を失って。
一方通行が自分と彼を助けた、らしいのだが。


打ち止め「お姉様、お紅茶美味しい?」

美琴「うん? ああ、うん、美味しいよ」

打ち止め「そっか。こうしてお姉様とお話するのって、初めてだねってミサカはミサカはお姉様をまじまじと見てみる」

美琴「アンタも妹、でいいのよね?」

打ち止め「うん、ミサカは妹達の司令塔、最終信号の打ち止めって言うんだよってミサカはミサカは自己紹介してみる」

美琴「司令塔って………………。アンタが?」

打ち止め「訳あって培養途中から引きずり出されて、それでこんなちっこい姿なんだけどねってミサカはミサカはもうちょっと成長させてほしかったなって願望を思ってみたり」

美琴「……………………」


 自分の横に座るこの小さな少女は、確かに幼い頃の自分の顔。
ホットミルクに砂糖を大量に入れ、ふーふーと息を吹き掛けて冷ましているその姿はまさに幼い子供の姿まんまだ。



403 ◆LKuWwCMpeE2011/12/05(月) 02:24:08.55OTSjbumDO (4/8)


一万人弱の妹達を束ねていると、この小さな少女は言う。
絵空事の様な話ではあるが、自分も目にしていた紛れも無い事実。


美琴「っていうか。何でアンタ達はここに?」

打ち止め「今日はね、調整の日なのってミサカはミサカは質問に答えてみる」

美琴「調整………………」

打ち止め「でも時間までまだあるから、あの人がこれで飯でも食ってこいって」


打ち止めはそう言いながらポケットから一枚の紙幣を取り出す。
美琴はそれを見ると怪訝な表情を浮かべた。


美琴「あの人って………………もしかして」

打ち止め「うん、お姉様の予想で合ってると思う」

美琴「………………、度々会ってるの?」

打ち止め「へ? っていうか一緒に暮らしてるんだよってミサカはミサカは教えてあげる!」

美琴「へー、そうなんだ。一緒にね………………………………は?」

打ち止め「でもあの人ったらやれこれは危ないからダメだ、これは危ないからダメだばっかりであれこれダメ教育なの。ミサカの事心配してくれてるのは分かるけど、もうちょっとミサカを信じてほしいなってミサカはミサカはちょっと不満に思ってみたり」プクー

美琴「ごめん、ちょっと待って」


 今この妹はなんて言った。
一緒に、暮らしてる? あの第一位と?
妹の事を心配してる?



404 ◆LKuWwCMpeE2011/12/05(月) 02:25:01.48OTSjbumDO (5/8)


………………いやいや、あの第一位に限ってそんな事は。


打ち止め「お姉様、どうしたの? ってミサカはミサカは急に黙り込んだお姉様を心配してみる」

美琴「ねえ、アンタの言うあの人ってさ………………やっぱり、一方通行、で合ってるんだよね?」

打ち止め「うん! ってミサカはミサカは元気よく頷いてみたり!」

美琴「………………一緒に、暮らしてる、の?」

打ち止め「うん」

美琴「………………………………」


想像がし辛い。
というか、出来なかった。
美琴の中で第一位といえば、あの時の実験の姿しか知らない。
美琴の目線から見るに、喜々として妹達と自分を絶望の底に叩き落としていたあの姿だけが美琴の頭の中に残っていた。


打ち止め「………………お姉様の、言いたい事はわかるよ。ミサカだって、あの事は忘れもしないし許してもいない」

美琴「……………………」

打ち止め「でも、あの人はミサカを守ってくれたから。ミサカがさらわれたり、襲われたりしても、ロシアにまで飛んでくれて。どんなに危ない目にあっても、自分が傷付いても、あの人はミサカを助けてくれたから」

美琴「え────────」

打ち止め「あの人、毎晩うなされてるの。譫言で、もうやめろ、殺すな、止まれって」

美琴「……………………」

打ち止め「あの実験の事に一番苦しんでいるのは、あの人なのってミサカはミサカは告げてみる…………」

美琴「………………っ」

打ち止め「この呪縛からは一生逃れられない。苦しみ、悲しみの負の連鎖が今になって襲い掛かってきても、あの人はそれでもミサカを、妹達を身体を張って守ってくれてるの」


 真っすぐと打ち止めの視線が美琴を捉える。
言葉足らずとも言える打ち止めのその言葉だが、何の偽りも後ろめたさもない、第一位を無条件で信じているその目は何よりもの説得力があった。



405 ◆LKuWwCMpeE2011/12/05(月) 02:26:03.67OTSjbumDO (6/8)


許す、許さないとか今はもうそう葛藤している段階ではなかったのかもしれない。
あの事を胸に、妹達も第一位も前を向いている。

彼も、恐らく──────この事を知っていたのだろう。
そして過去を清算して、前とは違う第一位と今は接しているのか。


美琴「……………………」

打ち止め「だから。許して、とはミサカは言えないけど。それだけは、お姉様にはわかってほしかったってミサカはミサカは言いたい事を言えてちょっぴりすっきりしてみたり」

美琴「………………そっか」


打ち止めを見る。
今の生活ぶりが幸せなのか、豊かな表情をしていて。
この打ち止めが今こんな顔をしていられるのは、一方通行によって築かれたものかどうかはわからない。
いや、きっとそうなのだろう。
自分にとって彼が特別であるように、打ち止めにとって一方通行が特別であるのかもしれない。


美琴「それで。今一方通行は何してるの?」

打ち止め「うん、何かカエル顔のお医者さんと話があるって病院にいるよってミサカはミサカは答えてみたり!」

美琴「そうなんだ」


 今度、第一位と会う機会があるのならば話をした方がいいのだろう。
まだまだ疑念は残る。
しかし、自分も前を向かない訳にはいかないのだ。


美琴「……………………」


打ち止めを見る。
今の暮らしが本当に楽しいという風な雰囲気であった。




406 ◆LKuWwCMpeE2011/12/05(月) 02:26:48.21OTSjbumDO (7/8)



打ち止め「どうしたのお姉様? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

美琴「ううん、何でもない」クス

打ち止め「病院に戻るまでまだまだ時間あるからそれまで暇かもってミサカはミサカは退屈してみたり」

美琴「そうなの? じゃあね、皆で雑貨屋さんに行こうよ」

打ち止め「えっ、いいの!? ってミサカはミサカははしゃいでみたり!」

美琴「うん、いいわよ」

打ち止め「やったー! ってミサカはミサカは感激!」

美琴「ふふ」


美琴の中で、何かが一つふっと重いものが取れた様な、そんな気がした。











「…………………………見つけた」



 レストランの外で、そんな彼女達を目にした怪しい姿が二つ。
それを見た瞬間凶悪に片一方のその顔が歪んでいた。
その横では、相変わらず何の表情の変化もない、どこを見ているのかもわからない第二位の姿があった。





407 ◆LKuWwCMpeE2011/12/05(月) 02:28:40.92OTSjbumDO (8/8)

ちょいと短いけど生存報告がてら投下
ダメだ何か全然書けない……

クロノトリガーと聖剣伝説3にハマっている場合じゃないのにな

また次回!


408VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/05(月) 05:35:29.58JrthmHRIO (1/1)

乙!
アニメ派の俺はていとくんの雄姿をいち早く見れるわけだ


409VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/05(月) 08:26:25.65onR8nouDO (1/1)

おつ


410VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋)2011/12/05(月) 17:12:35.66hWuIGvyf0 (1/1)

今更ながら聖剣3となwww
遅れるのも納得だわ



411VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(茨城県)2011/12/05(月) 21:31:12.80u1gyOTxy0 (1/1)

>>1乙


412VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/06(火) 00:40:26.54ifm7U8YDO (1/1)

これで、美琴も一方通行と和解かな?

しかし、かなりピンチだな。

この展開だと、一方通行くるな。超電磁砲(オリジナル)と、妹達を救うヒーローとして。(上条もくる可能性は、無きにもあらず)




413VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/06(火) 11:00:38.44aKAXu4MDO (1/1)

>>412
この香ばしいレス……またお前か


414VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/06(火) 15:58:58.428SIJjY4Ro (1/1)

 \                    /
   \  丶       i.   |      /     ./       /
    \  ヽ     i.   .|     /    /      /
      \  ヽ    i  |     /   /     /
   \
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  ー
 __          わ た し で す            --
     二          / ̄\           = 二
   ̄            | ^o^ |                 ̄
    -‐           \_/                ‐-

    /
            /               ヽ      \
    /                    丶     \
   /   /    /      |   i,      丶     \
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415VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/06(火) 16:19:04.86f5nTqk0SO (1/1)

>>412
またお前か

>>414
sageろ


416VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/06(火) 20:24:56.02pBlzreiL0 (1/1)

>>414
sageろこのオタンコなす


417VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/12/08(木) 07:25:22.088PwlRGaw0 (1/2)

冥土帰し「君も(オタンコ)ナース属性なのかね?」


418SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)2011/12/08(木) 15:23:04.76BwTNd+KJo (1/1)

↑ぷよぷよのナスを思い出した


419 ◆LKuWwCMpeE2011/12/08(木) 18:22:15.165hRVEtDDO (1/13)


 揃ってファミレスを後にする。
店の中の暖気と外の寒気の温度差が身体を吃驚させるようにブルッと震わせるのだが季節柄そういうものだ。

ニットのマフラーを首元に巻き直し、初春は小さな手に白い息を吹き掛けた。


初春「うう~、寒い」

佐天「だねー、昨日まで暖かかったのに」

黒子「来週からもっと寒くなるみたいですの」

美琴「ええ、やだなぁ。打ち止めは大丈夫?」

打ち止め「うん! 大丈夫だよってミサカはミサカはくるくる回ってあの人が買ってくれたジャンバーを自慢してみたり!」クールクル

初春「可愛い」キュン

佐天「あの人って言うと。一方通行さん?」

打ち止め「うん、そうだよ! ってミサカはミサカは頷いてみる!」

御坂妹「あのロリコン色白もやし、ちょっと上位こt…………妹を甘やかしすぎです、とミサカは毒を吐きます」

黒子「い、妹さん…………しかし、第一位さんと打ち止めちゃんはとても仲良しなんですのね」

美琴「………………、へー、そうなんだ」


 そんな会話をしながら六人は歩く。
冬枯れの景色というのはこの学園都市では無縁の様で、どこも学生達でごった返している。

自分達と同じ様な女の子グループの塊や、やいのやいのはしゃぐ男子学生達。
男女混ざったグループもあれば、カップルと思わしき男女の仲睦まじく歩く姿も。
その賑わう街並みの中に、ついつい彼の姿を探してしまうのは仕方のない事だろうか。



420 ◆LKuWwCMpeE2011/12/08(木) 18:23:14.915hRVEtDDO (2/13)


 それに、もうクリスマスが近いのか心なしかカップルが多い気がする。
二人手を取り合って、腕を組み合って、笑い合って。

自分も彼とそうなりたいなあと指をくわえたい心境であった。


佐天「(ねね、初春)」ボソッ

初春「?」


隣を歩く佐天が自分の耳元まで顔を寄せると、小声で囁きかける。
何だろうと思い、歩きながらではあるが初春は佐天の言葉を待った。


佐天「(どう? クリスマスまでに上条さん掴まえられそう?)」

初春「へゃっ!?/////////」ポンッ

黒子「初春? 何だか今日様子がおかしいですわよ?」

初春「な、なんでもないですっ、さ、佐天さん!///」

佐天「あははー」


怪訝そうな黒子の言葉に、取り繕う様にしてごまかしながら軽く佐天を睨む。
全く、すぐにこの親友はからかってくるんだから。


初春「うぅ~///」


とは言いつつも、もうすぐ一年に一度だけのあの日は来てしまう。
恋する女の子ならば誰もが意識するであろう、あの聖なる日。
意識、しない訳がない。
この季節の街並みの赤と白のコントラストがそれを感じさせていて、彼と一緒にいられたらいい、いたいという欲求がどんどん強くなってくる。

とはいっても、一緒にいたいとはいっっつも思っているのだが。



421 ◆LKuWwCMpeE2011/12/08(木) 18:24:04.895hRVEtDDO (3/13)



佐天「(初春、プレゼントはもう決まってる?)」ボソッ

初春「(ぷ、プレゼント………………?///)」

佐天「(最後にはあれやっちゃえば上条さん、完全に落ちるんじゃない?)」

初春「(あ、あれとは?)」

佐天「(ほら、自分にリボン巻いてさ、『私がプレゼントですっ』って)」

初春「ひゃああああああああぁぁぁぁ/////////」

「「「「!?」」」」

佐天「」ニシシシシ


口元に手を当て、笑いを堪える様子を見せる佐天。
自身の上げた悲鳴に一同の視線が集まると余計に恥ずかしさが込み上げ、照れ隠しから佐天をぽかぽか叩く仕草をするだけであった。


初春「(は、裸リボンなんてえっちぃ事なんてできませんよ!////)」

佐天「(ん? 裸なんて私は一言も言ってないけどー? 初春、何を期待してたのかなー?)」

初春「(え、あ、いえ、その!///)」

佐天「(初春はそうしたかったのかな?)」ニヤニヤ

初春「(さっきから佐天さんってば! もう知りません!///)」

佐天「(ごめんごめんってー)」ププ



黒子「…………先程から、コソコソとお二人で何をお話になってるんですの?」



初春「!」

佐天「!」


前を歩く黒子が妙なオーラを噴出させ、振り返って初春に視線をやる。
その視線の鋭さは何だかやけに強く、睨みつけている様にも見えた。



422 ◆LKuWwCMpeE2011/12/08(木) 18:24:54.445hRVEtDDO (4/13)



黒子「ま、大方あの方関連のお話でしょうけど」


 『佐天が笑う→初春が顔を赤くする=上条関連の話』という構図は既に出来上がっている様で、そのやり取りを何回も見てきた黒子のその予想は的を得ている。

上条の話ならば黙ってられないと言わんばかりの黒子の様子。
そういえば、黒子もライバルだ。

…………。

…………ちょっと待って、と初春は考える。
この六人の中でも、彼に好意を寄せているのは。

自分、黒子、美琴、そして昨日の様子から御坂妹もそうか。
………………。

よ、四人?


初春「…………………………」


競争率の高すぎる比率に、思わず息を飲む。
レベル5というこの学園都市のヒエラルキーの頂点に立つ美琴、そしてそれに瓜二つの妹さん、黙ってれば可愛い黒子(←初春視点)。

敵は強大だ。
でも負けたくはない。
彼が好きだというこの気持ちは、誰にも負けたくない。
自信がなくたって、思いの丈を彼にぶつけたい。
まあ昨日既にぶちまけていたのだが、それはほんの一部、片鱗であって。

全てを彼にぶつけたい、この気持ちを伝えたい。
ほら、彼に溶けていく。

そう考えると、無性に彼に会いたくなった。








「そこのお嬢さん方、少しいいかな?」









423 ◆LKuWwCMpeE2011/12/08(木) 18:25:41.195hRVEtDDO (5/13)


 何だかいい匂いがする。
鼻をスンスンと動かし、嗅覚を刺激するこの香りをもっとといった様子で上条は目を開けた。


上条「ふぁ………………もうこんな時間かー、腹減った…………」


浴槽の縁に設置してあるデジタル式の目覚まし時計のディスプレイに目をやると、13:05を示しており少し寝過ぎた感を感じさせている。
とはいっても睡眠時間はいつもより短いくらいだが、それでももう眠気は取れた様な気分だ。
どっちかというとこのお腹の空腹感の方が勝っている様で、上条はもう一度大きな欠伸をするとリビングの方へ向かう事にした。


土御門「おっすー、カミやん。おっそい目覚めなんだにゃー」

上条「んにゃ? あれ、土御門」

土御門「ちょいと経過報告をしにきたんですたい、丁度いいにゃー」

上条「そうか。それで、どうだったんだ?」

土御門「その前に昼飯にしたらどうかにゃー? 皆待ってたっぽいぜい」

上条「待ってたのか…………すまん」


それぞれに挨拶を済ませると、上条はオルソラが立つ台所へと足を運ぶ。
皿へと盛りつけられていく料理を見て、先程感じた空腹感を揺する匂いはこれだったかと納得し配膳を手早く手伝うと、昼食を既に摂っていた土御門を除いて五人は食卓についた。



424 ◆LKuWwCMpeE2011/12/08(木) 18:26:37.915hRVEtDDO (6/13)



土御門「単刀直入に言う」


 食事を済ませ、せめてこれだけはと引き受けた後片付けを簡単に済ませると上条は一同が待つリビングに戻った。
上条の戻りを確認した土御門は、いつもの軽い話し方とは違う仕事時の様子で口を開くと、場の空気がキッと引き締まる。


土御門「今回感知された魔術は、『黄泉がえり』と呼ばれるものだ」

上条「『黄泉がえり』?」

土御門「ああ。読んで字の如く、『死』を迎えたモノに『生』の魔術を吹き込み蘇らせる魔術」

上条「………………、んな事までできるのかよ、魔術は」


世界の法則を変える代物。
無限の可能性を秘める魔術に、上条は言葉を無くすような思いであった。

土御門は難しい顔を更に歪め、重々しく続けた。


土御門「しかも、ただそれだけじゃない」

上条「…………どういう事なんだ?」

五和「『黄泉がえり』とは世界を揺るがしかねないもので、封印されたはずの『禁術』なんです」

神裂「今現在、それを記すモノは原典、コピー含めてこの世にはもう存在しないものなのですが…………」


一同の視線がインデックスに集まる。
それに遅れて、上条も気付いた。


上条「だが、インデックスの頭の中には」

インデックス「うん。ちゃんと私の頭の中にはあるんだよ」


それさえもインデックスの魔道図書館に収められているのか、と上条は苦虫を噛む。
彼女の名が示す様に、この世の全ての魔道書は全てインデックスの頭の中にはあり、それは例え悪意に満ちたものであっても例外はない。



425 ◆LKuWwCMpeE2011/12/08(木) 18:27:44.715hRVEtDDO (7/13)


この世に存在しないもの────それは厳密には違い、インデックスの頭の中にはきちんとあるのだ。


土御門「なぜ、復元不可、行使不可の魔術が発生したのかというのも懸念すべき問題なのだが、今回はそれに別件も混ざっている」

上条「………………別件?」

土御門「『黄泉がえり』によって召喚されたモノに、別の魔術がかけられていた」

上条「別の魔術、ってなんだ?」

神裂「それも『禁術』の一つなのですが、姿形を全く別のものに変えるもの。
   アステカの魔術に似たようなものもありますが、それとはまるで様子が違います」

五和「上条さん…………これ、なんですけど」


五和が何かを取り出し、テーブルの上に置く。
それを見た上条は、怪訝の表情を浮かべた。


上条「これは…………動物の、毛……?」


見るからに何かの毛の様なものが目に飛び込んできた。
まじまじと白く見える一本の直毛を手に取ろうとすると。



426 ◆LKuWwCMpeE2011/12/08(木) 18:28:34.935hRVEtDDO (8/13)



パキンッ──────────


上条「あ」


右手で掴んだ瞬間音が鳴り、その毛はたちまち消滅した。


上条「……………………」

神裂「……………………」

五和「……………………」

オルソラ「……………………」

インデックス「……………………」

土御門「……………………カミやん」

上条「あっ、いや! わ、悪い!」

土御門「にゃはー、冗談だぜい。しかしわかっただろ? それに魔術がかけられているという事が」

上条「お、おう…………だな」


少々気まずい空気が流れる────と思ったのだが、何ら問題はないといつもの口調を織り交ぜて慰める土御門に上条はホッと一息ついた。

しかし、問題は。
別のモノに姿形を変えるというその『禁術』とは、一体どんな魔術なのだろうか。
あるアステカの魔術師の事を思い浮かべるが、それとは違うと言う。




427 ◆LKuWwCMpeE2011/12/08(木) 18:29:14.635hRVEtDDO (9/13)



上条「それで、俺はどうすればいい?」

土御門「ああ、今回の件は『黄泉がえり』は場所を特定すれば一発なんだが………………」


『黄泉がえり』は魔法陣から一定の範囲内のものに効果を及ぼすものであり、その痕跡を辿れば出処の特定は難しい事ではない。

土御門が懸念しているのは、もう片方であった。
スタンドアローンタイプの仕組まれた魔術。
それを打ち消すといえば──────。


土御門「もう一つの方がやっかいだ。禁書目録がかけられた魔術みたいに直接身体に施されたもので、そっちを消すには直接それと対峙しなきゃいけないんだが…………………………すまん、カミやん」

上条「? どうしたんだよ?」

土御門「今回はかなり骨が折れると思われる。いっつも世話になってばっかなのに、また世話になる」

神裂「………………」

五和「………………」


申し訳ない、という表情を浮かべる土御門、そして神裂達。
どうしようもなく手の打ちようもない状況というのを、いつも上条に頼り打破してきた。
今回もまた上条の力を借りる事になるという事に、神裂達は特に頭が下がる思いであった。


上条「何言ってんだよ。俺がそうしたかったから、そうしてきただけの事だ。今回なんて学園都市に関わる事なんだ、ジャッジメントの俺が黙っていられる訳がないだろ?」


だから、上条は言う。
何の為? と聞かれれば、さあ、自分の為だろ? と背負い込む。
それが上条だ。
それに、この学園都市が巻き込まれる、という事は。

もしかしたら、彼女にも何かが降り懸かるのかもしれない。

そう思えば、上条は黙っていられない。
黙っていられる訳がなかった。



428 ◆LKuWwCMpeE2011/12/08(木) 18:30:13.675hRVEtDDO (10/13)



黒子「どちらさま、ですの?」


 新規開店で賑わう雑貨屋を目の前に、六人の前に姿を現した白衣を着た男に黒子が尋ねる。
何か用があるのだろうか。


「すまないね、突然。少し、道をお尋ねしたくてね」

黒子「そうでしたの。それで、どちらへ?」


男が一枚の紙切れをポケットから出そうとすると、黒子は後ろ目で自分以外の五人を見た。


美琴「黒子、先入ってるわよ?」

黒子「ええ、わたくしもすぐに行きますの」

初春「いいのあるかなー」

佐天「結構お客さんいっぱいだね」