493VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:14:03.38F5UHtPqd0 (7/35)

剣士「……たとえば」カリカリ


剣士「鞄だ、あの博士、鞄は自分で持つと言ってクーゲルに手渡さなかった」

魔術師「でもテントは守れって、クーゲルさんに言ってましたよ?」カリカリ


剣士「それは…んー、テントには特になにも怪しいものが無い、とか…」

魔術師「あんまり人を疑うのは良くないですよ?…あ!おっきな石が埋まってる!」

剣士「……むぅ…」


魔術師「人を疑っていたら、信じてあげられませんからねー」カリカリ

剣士「…それは、騙される人間の考え方だ」

魔術師「…うーん、でもでも」


魔術師「ケミス博士が私たちを騙してでも一人になりたいって理由は、なんなんです?」

剣士「……う、それは…」

魔術師「ね?考え過ぎなんですよー」カリカリ



494VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:16:14.71F5UHtPqd0 (8/35)

カリカリ サラサラ・・・

カチッ


剣士「……」カリカリ


魔術師「…まだ、気になっているんですか?」

剣士「いや、…うむ」

魔術師「……もー」


魔術師「ミゼラさんはケミスさんに信頼されたいから、頑張ろうって言ったんですよね?」

剣士「そ、そうではあるが…」

魔術師「だったらミゼラさんも、ケミスさんの事を信じてあげなきゃ、おあいこになりませんよ?」

剣士「……」カリカリ

魔術師「……」カリカリ


剣士(…くそ、私はどうかしてるのか?疑心暗鬼じゃないか…何故だ?)

剣士(私たちを置き去りにして一人で調査…それは自分が集中したいから、そう取れるだろう…?)


剣士「…くそ、悔しいが、憶測の中では菓子を独り占めが一番あり得る線……独り占め…」

剣士「………」



495VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:17:36.31F5UHtPqd0 (9/35)


剣士「……魔石…かな」ボソ

魔術師「ふえ?」


剣士「博士が隠れて菓子を食ってる…割と、それは合っているかもしれんな」

魔術師「……?どういうことですか?」

剣士「さあな、私もよくわからん、全てが憶測では“お話”にしかならんからな」

魔術師「ほえー…?」

剣士「極端で…まぁ、バカな話でもあるが…」


剣士「あの変人博士が、もしも以前にこの山で…例えば、金とか、魔石とか…魔法金属とか、発見していたとしたら…」

魔術師「……」

剣士「…なんだその微笑ましい感じの笑顔は、やめろ」

魔術師「えー、だってー…」



496VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:20:06.06F5UHtPqd0 (10/35)


魔術師「国の科学者さんなんですよね?」

剣士「ああ、そう言ってたな……届いた書類もちゃんとしたものだったし」

魔術師「…国の専門家として働いている裕福な学者さんが、そんな魔石や金銀なんて…周りに隠してまで欲しがるとは思えませんよ?」

剣士「む……確かにそうか…」

魔術師「魔石が壁一面にびっしりー、とかだったらありえるかもしれないですけど…」


魔術師「あるとしたら、もっとお金とかそういうのじゃなくて…別のものじゃないですか?」

剣士「別のもの…ねえ?なんだそれは?」カリカリ

魔術師「うーん……えへへ、なんでしょう……?」


剣士「封印された魔具か?禁術を記した聖典か?それとも古代に封印された幻のモンスターとでも…」

魔術師「ん!」

剣士「お!?」ガリ


剣士「あ、いけね、削りすぎちゃった……いやこのくらい大丈夫か…?おい、あまり変な声出すなよホリィ…」

魔術師「幻の…モンスター!」

剣士「?」


497VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:21:40.54F5UHtPqd0 (11/35)


魔術師「モンスターさんです!モンスター!」

剣士「は?お、おい一体どうした、落ち着いて話せ…」

魔術師「いるんですよっ!本で読みましたっ!この国には、ものすっごくおっきな、モンスターが眠っているって!」

剣士「……?」


魔術師「えへへ……こほん!」


魔術師「えっとですね、そのモンスターはこの国の岩盤として地下に眠っていてですね…」

魔術師「でもその岩盤の正体は実は何と!国を覆ってしまうほどの巨大なカメの甲羅…」

剣士「アホらし」カリカリ

魔術師「……ちょ、ちょっと聞いてくださいよミゼラさん!これ本当だとしたらすごいことじゃないですか!?」

剣士「新種の魔族かと思えばなんだ、ただのおとぎ話じゃないか」カリカリ


魔術師「む、むー…でも、ケミスさんはもしかしたらそのカメさんの研究をしていたり…」

剣士「そんなくだらない研究のために私たち平民に重ーい税をかけているのか?だとしたら今すぐ天誅を下してやるレベルだな」

魔術師「そ、そんな…でも本当にあるかもですよ…?」



498VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:23:55.69F5UHtPqd0 (12/35)

カリカリ

剣士「……」カリッ


剣士「ふん…まぁ、あの博士が何故一人になりたがっているのか…それ自体には興味がある」

魔術師「…はい」


剣士「亀の甲羅云々は、かなー……りどうでもいいが、一億分の零くらいの確率ではあり得ることかもしれん」

魔術師「それってゼロじゃ…」

剣士「うるさい、……とにかく私は、今の私はあの変態博士の動向が気になって仕方が無いんだ」


カランカラン


剣士「こんな、ただ岩を削っているだけの作業でも、じっとやっていられん…先ほどの決闘の昂ぶりで妙に疼いているのか、とにかく真偽のほどを確かめにいきたい」

魔術師「え?本当ですか?」

剣士「ああ、このままではおちおち、安心して仕事もしていられんからな…」


剣士(…本当ならあの博士を信頼し、彼女の命令を聞き狂いなく実行する…それが最大のアーピルなんだろうが)


剣士(……もしあの女の掌の上で踊らされているのだとしたら、それはもう、我慢できん!)

剣士(私は元来、ああいう、含み笑いをするタイプの人間は好きじゃないんだ…!)



499VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:25:19.64F5UHtPqd0 (13/35)


タッタッタッタッ・・・


魔術師(……あーあ、ミゼラさんいっちゃった…)


カリカリ


魔術師「いつもいつも無茶するから…心配だなぁ、ミゼラさん…」カリカリ


魔術師(でもケミスさんが、どこにいるかもわからないのに…どこに行ったんだろ…?)


魔術師(…もしかして…ミゼラさん、ケミスさんを追いかけて途中で迷子になっちゃったりしないかな…!?)

魔術師(あんなに小さなミゼラさんが迷子になったら、そうしたら…!)


剣士『うぐっ…ぇえーん…ホリィぃ…どこだよぉー…!』グズッ


魔術師「……!」

魔術師「か、可愛い!」ガリッ


魔術師「あわわ、変な風に削っちゃった…」パラパラ



500VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:28:05.98F5UHtPqd0 (14/35)


タタタッ・・・


剣士(博士は別の所で調査すると言ってどこかへ行ってしまった…場所は告げなかった)

剣士(それだけでも怪しいものだが…ううむ、やはり何故一人になりたいのか、それがわからん…)

剣士(これで本当に、一人で集中したいという事だったら…全く私は馬鹿な奴だ)


キョォォオオォッ・・・・

ケロケロケロケロ・・・


剣士(…コダマ鳥の声が響いている…郊外、田舎という感じがするな…)

剣士(国境の端っこ…ジラフ国との境目である微妙なライン…ロケーションを考えれば考えるほど、怪しさは膨らむのだが…)


ジャリッ


剣士「……む」

ザラッ・・・


剣士(砂……いや砂利だ、地面に違う色の砂利が溜まっている…岩の破片?そんな感じではない…?)

剣士(……上の、層の壁面から崩れて積もったのか…?いや)


ジャリッ


剣士「…岩の破片が不自然に積もっているのは、ここだけだな…」



501VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:29:39.01F5UHtPqd0 (15/35)


剣士「……どこか、この壁面を掘削でもしたのか…?」ツツツ・・・

剣士「しかし周囲にそのような跡は…ただゴツゴツしてるだけ…」


剣士「!?」


ツツ・・・スカッ


剣士「!? 岩の凹凸に触れたと思ったら…手ごたえがない…!?だと」

剣士「な、なんだ?これは、見えるが触れない魔法の岩だとでも…」


剣士「…」ジーッ


剣士(違う、これは目の錯覚だ…ここの触れないと思った部分、ここは…この部分の岩だけが)


剣士(普通の壁面よりも、“奥”に存在している…!)

剣士(まるでだまし絵のような岩の扉だな…扉…まさか)


ピチョーン・・・


剣士(微かにだが………水の音…)


剣士(中に空間が広がっている!)



502VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:31:30.71F5UHtPqd0 (16/35)


剣士(中は洞窟のように暗い…)


剣士(けど何故だろう、薄暗い程度だ…まるで地面が淡く光っているように、先を視認できる…)

剣士(飽和した魔力は独特の発光を見せるというが…?)


剣士(…ふん、とうとう胡散臭くなってきたぞ…ここに来て地層の調査などと言われても、愛想笑いも涸れるものだな)


コツーン、コツーン


剣士(…思ったよりも広い空洞だな…岩の扉は自分で作ったのかな…?)

剣士(……何のために)


ピチョーン・・・


剣士(………ふ、当然か……菓子を隠すためだよな?)


コツーン、コツーン・・・


剣士(国のお抱え科学者が一体、郊外の辺鄙な山へピクニックにやって来て、どんな菓子を食うのか……興味がそそられる)



503VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:33:14.31F5UHtPqd0 (17/35)


ドクン・・・・・・


博士「……」


ドクン・・・・・・


博士「……ふふふ、水脈の音、かもしれないけれどー……?ちょっと、リズムがねぇ……?」


博士(ひとつひとつがまるで馬車のように巨大な、鉄の鎖の輪…ふふふ、古臭いこんなもので、どこを縛っているのかしら…)


博士(ここが洞窟の最深部…周囲には…消えかかった古代の魔法陣…)

博士(城にもあったけど~~…この魔法陣、魔石からの魔力の調整役、とか言われてるわねぇ…式はぜんぜん、そうは見えないけど?)


博士(うふ、うふふふ…でも実際のところ、これってなんなのかしらねぇー…!?私から見れば、まるで封印…)


カツーン


博士「……!」ババッ


カツーン・・・


博士(……誰だッ…!)ギリッ・・・




504VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:34:20.58F5UHtPqd0 (18/35)


カツーン


博士(誰だ、誰か来るな、城の人間か?)


博士(落ちつけ、きっとあの傭兵二人のうちのどちらかだ…いや、どちらにせよマズい)


博士(…最深部のこの岩の一室だけは、絶対に見られてはいけない…ここを見られれば、誰であれただの噂では済まなくなる…)


博士(……この部屋の入り口を爆破するか!?いや落ち着きなさい…ダメよ、それだけはダメ…)

博士(………ここへは定期的に城の重要人物が訪れ、安否を確認している…そんなことをしては、形跡が…)


カツーン・・・


博士(…………あくまで最後の手段として、それは残す…先にダメ元で手を打っておくとするなら~~~…)


博士(…知らんぷりか…“口封じ”しかないわね…!)


505VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:35:31.82F5UHtPqd0 (19/35)

カツーン・・・


剣士(…長い…長いぞ、すごい長さだ、自然にできる洞窟の長さではない)

剣士(そもそもこんな山の壁面に、洞窟なんてあるわけがない…ここは作られた空間…!)


剣士(絶対に何かあるぞ……絶対に…!)


カツーン、カツーン


剣士(! 足音…私の反響音ではない…これは)


カツーン、カツーン・・・


剣士(……来るな、誰かが…)


カツーン、カツーン


剣士「…!」


506VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:36:43.99F5UHtPqd0 (20/35)


博士「あら、足音が聞こえてたから誰かと思えば、ミゼラさんね?」

剣士「…博士、随分と探しましたよ…地層の調査でわからないことがありまして」

博士「あら、そうなの?じゃあ今すぐそちらに行くわね、こっちの方も終わったし…」

コッ、コッ


剣士「……」

博士「……」コッ


博士「行きましょう?もう一人の~~~…ホリィさん、まだあちらに残っているのでしょうしね?」

剣士「…博士、そしてここでも聞きたいことが」

博士「……何かしら、遠慮なくどうぞ?」


剣士「今回の調査は、地層の地質調査……ですよね?ケミスさん」

博士(……うふふ…)


博士「そうね、地質調査よ…層の成分を分析に、この山がいつの時代にできたものなのかを…」

剣士「ここには層が見当たりませんが」


博士「………うふ、…うふふ」



507VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:37:41.91F5UHtPqd0 (21/35)


博士「はー…うん、うんうんうん…」

剣士「……」


博士「うふふ、…私、頭の回転が早い子って大好きよ?理解が早くてとても助かるもの……でも」


コッ


博士「あんまり頭の回転が速いと~~~…悪い熱にうなされてしまうわよ…?うふふ…」

剣士「…知らない方が良い事もい多い、ですか?」

博士「うふふ、良いわねそのセリフ、なんだか裏役の悪って感じがして素敵…」


博士「でも私はねぇ?悪でもなんでもない…私は多くを知っているだけ…秘密が多いだけなの」

剣士「……」

博士「秘密を持ってしまうと、ど~~…しても、隠していたくなっちゃう…そんな経験、あなたにもあるわよね…?」

剣士「……ふん」


508VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:39:23.24F5UHtPqd0 (22/35)


剣士「博士…私はあなたの事を信じて、そうして…誠意を見せて働けば、あなたに認められると…そう思っていました」

博士「あら?私は力のある人物は認めるわよ…使える子は大好きだもの」


博士「あなたが昼間、うちの城の騎士を負かした時、その時から私はあなたを認めていたわ」

剣士「違う」


剣士「…ここは一体、何なのですか?地層とは全く関係の無い、人為的に掘られた洞窟のように見える…私は」


剣士「……私は…私を騙すような人に認められても…そんなもの信じられない、ちっとも嬉しくはない、たとえそれで騎士になれたとして、忠義など抱けない…」

博士「……」


剣士「…博士が握っている秘密…それ自体は、私は知ろうとは思いません…いえ、そう言ってしまえば嘘ですが」


剣士「……私は、私が信じていた人が私を欺いていた…それだけが何よりも、たまらなく歯がゆいのです」

博士「……うふ」



509VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:41:40.32F5UHtPqd0 (23/35)

博士「それじゃあ、あなたは私を信じなくていいわ」

剣士「!」

博士「私もあなたを信じない、うふふ……」

剣士「…!私は真面目に…!」

博士「こちらも真面目よ」


博士「…ど~~しても人には知られたくない秘密がある…誰しもひとつは持っている…」

博士「ここもそうよ?ここは私の禁忌…ここに踏み入れる人は、本当なら放っておけないの」

剣士(……脅しにきたか?)


博士「あなたもそうでしょう?知られたくない秘密……あるはずだ」

剣士「…」


博士「知らないとでも思ったか、“賎民”」

剣士「……ッ!貴様!」バッ


グイ


博士「離しなさい賎民、……お前が襟が掴んだところで絞め上げられやしない、ただ汚れるだけだ」

剣士「それ以上私をその名で呼ぶな…ッ!」



510VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:45:45.09F5UHtPqd0 (24/35)

博士「ソイレギンス…今では由来を知る者はあまりいないだろうが、私は知っている…城で細かな教育を受けた者ならわかるだろう」

剣士「やめろ…!」グッ


博士「奴隷上がりの“靴磨き”が…名を改め“呉服”など…?身の程を知ったらどうだ?」

剣士「これ以上私の母を…血統を侮辱するなッ!」


ジャキンッ

博士「……“ソイレギンス”の名を持つ者が騎士になる…?うふ、うっふふふふ…おかしいわ、滑稽よ、いえ、センスがあるわ」

剣士「貴様…死にたいのかッ!?」

博士「……うふふ、わかる?誰でも知られたくない事はあるのよ…」

剣士「……!」



511VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:47:24.33F5UHtPqd0 (25/35)


博士「秘密は共有するものよ?うふふ…この場所も、私の襟についた跡も…」

剣士「……!」


博士「私はこの襟とあなたの家系図を見せるだけで、ミゼラさん?…あなたをいつでも監獄…いいえ、死刑台送りにできるのよ、独断でね」

剣士「…貴様…貴様貴様貴様ァぁあ……!」

博士「大丈夫、安心して?うふふ…私は秘密を多く持っている…コレクションは大事にするタイプよ…」


博士「…ここで見たことは全て忘れろ、誰にも話すな、もしも少しでも出回る情報に異変が見つかれば~~……」

剣士「……!」


博士「お前は当然…お前の親…兄弟…子孫……ついでにあのホリィって子も」


博士「…全て…」

剣士「……」


博士「………うふふ、じゃあ早く“地質調査”に戻りましょうか?ミゼラさん?」



512VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:48:28.10F5UHtPqd0 (26/35)


魔術師「……あっ!ミゼラさん!」

剣士「ああ、ホリィ」


博士「遅くなって申し訳ないわね、そちらの採集の方はどう?」

魔術師「えへへー、ばっちしです!」カランカラン

博士「あらぁ、素敵……やっぱり私が見込んだ通り、優秀な人たちね?」

剣士「……」


魔術師「? ミゼラさん?」

剣士「…ん?何だ?」


博士「うふふ、それじゃあテントに戻りましょうか……今日で終了、もう良いわ」

魔術師「えっ?」

博士「ふふ、二人が頑張って集めてくれたおかげよ、良い場所だったっていうのもあるけれど…予定よりもずっと、早く終わったわ」

魔術師「え、えへへ…褒められた…」



513VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:54:33.84F5UHtPqd0 (27/35)


近衛「……?あれ、博士、そのテント…」

博士「んー?調査の方が終わったから…もう今日で引き上げるわ」

近衛(早っ…来た意味無っ…)


魔術師「えへへー…あ、すみません、なんだかクーゲルさんだけ待たせちゃう形になってしまって…」

近衛「あー?いや、そういうのは全然構わないけど」


剣士「…やれやれ…結局なんのためのテントだったんだか……」ブツブツ

魔術師「あははー、でも早く終わって良かったです!」ガチャガチャ

剣士「そうだな、良かった…」ガチャガチャ

魔術師「?」ガチャガチャ


近衛「じゃあ、標の灯を上げておかないとな…馬車呼ばないと、馬車」

博士「……」



514VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:55:21.53F5UHtPqd0 (28/35)

――ニの街 傭兵協会前


博士「…それでは、受付の人にこの紙を渡して」ピラッ

魔術師「? あっ、依頼者側の報告書かー…」

博士「予想以上の働きだったから、評価は高めにしてあるわ…ふふ」

魔術師「あ、本当だ!ありがとうございます!」


博士「うふふ……それじゃあ、私はこのままこれで帰るから~~…いつかまた、機会があれば…よろしくね?」

魔術師「はーい!」

剣士「…うむ、あーいや、…はい」


近衛「……ミゼラ」

剣士「?」

近衛「またいつか、今度はちゃんとした場所で手合わせを願いたい」

剣士「……ほう」


近衛「その時は絶対に僕が勝つ」

剣士「…ふん、やってみるがいいさ」

博士「………ふふ…」



515VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:56:10.91F5UHtPqd0 (29/35)

「はい、出発しまーす」


ガラガラ・・・

ゴトンゴトン・・・


魔術師「またいつかー!」ブンブン

剣士「……」


魔術師「…ほら、ミゼラさんもっ!アピールアピール!」グイッ

剣士「…」ブンブンッ


魔術師「……えへへ、今日は疲れましたねー」

剣士「…そうだな、疲れたな…」

魔術師「でも楽しかったです、色々な事があって…」

剣士「…そうだな、色々な事があった」


魔術師「……ミゼラさん、なんだか元気ないです?」

剣士「気のせいだろう、私はいつもこうだ」

魔術師「……そうかなぁ…」



516VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 00:58:04.32F5UHtPqd0 (30/35)


受付「いやぁーそれにしても……ほっ」


どんっ


受付「…まさか、日帰りで戻ってくるとは思いませんでしたよ」

魔術師「えへへ、私もですー」

受付「最近、結構な頻度で仕事をされているようですけど、本当に体だけは大事にしてくださいよ?」

剣士「うむ、わかってる」

受付「傭兵は体が資本、いつまた緊急の指令が下りるかわからないんですから、いつでも万全に整えておいてくださいよ?」

魔術師「はーい!…えへへ、大丈夫です!ミゼラさんが無理しそうになったら私が止めますからっ」

受付「はは、それなら心強い」


魔術師「ねー?ミゼラさん?」ヒョイ

剣士「降ろせ、持ち上げるな」


517VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 01:00:06.43F5UHtPqd0 (31/35)


魔術師「えへへー、お金、今日も沢山!」ジャラジャラ

剣士「…うおー…あの変態博士、奮発してるな…」

魔術師「あっ!またそう悪い風に言うー…怪しいと思って行ってみたけど、何もなかったんでしょう?」

剣士「え?ああ…そうだよ」

魔術師「じゃあヘンタイなんて、失礼ですよ?ミゼラさん」


剣士「……うむ、そうだな…すまん」

魔術師「……」


ヒョイ


剣士「! おい、だから降ろせ、持ち上げるなと…」

魔術師「…ミゼラさん、何か隠してません?」

剣士「…!」

魔術師「あーっ、今ちょっとまぶた動いたー!」



518VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 01:02:10.33F5UHtPqd0 (32/35)

剣士「……」

魔術師「…むー、やっぱり何か隠してるー…」

剣士「……て、てい!」ガスッ

魔術師「きゃ!?ちょ、チョップ!?」


スタッ


剣士「…何も隠してないし、持ちあげられるのは嫌だ、それだけだ」

魔術師「……」サスサス

剣士「……」


魔術師「……ねえ、ミゼラさん?」

剣士「…なんだよ」


魔術師「今日も一緒に、お風呂入りません?」

剣士「……風呂か、そうだな…」

魔術師「今日あった、疲れた事もいやーなことも、全部水に流せちゃうかもしれませんよ?」

剣士「…ふん、そうだな」


剣士「……そうしようか」



519VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 01:03:01.84F5UHtPqd0 (33/35)

「わー、ミゼラさんの髪、じゃりじゃりしてるー」ワシワシ

「…作業中の砂埃のせいだな…お前の頭も同じだ」

「えっ?そ、そんな……」

「おい、しっかり洗え!お前の髪は後で洗ってやるから!」

「あう、はい、ごめんなさい…」ワシワシ


「……ホリィ」

「んー?はいー?」ワシワシ

「…もしも私が騎士になったら…お前はどうなるんだろうな」

「……あ」ワシ


「…例えばの話だぞ?そもそも私がなれるかどうか…」

「……なれますよ!絶対!…うー、お城に住みこむようになって、しばらく会えなくなっちゃうのは寂しいですけど…」

「……」


「…でも、ミゼラさんだったらきっと、絶対になれますよ!」



520VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 01:03:41.97F5UHtPqd0 (34/35)


「……なれるかな、私でも」

「うん」


「騎士にだぞ?」

「うんっ」


「…この、ミゼラ=ソイレギンスがだぞ?」

「えへへ、だからー、なれますって…ば!」


バシャッ


「うおっ!冷たっ…!」

「あ、ご…ごめんなさい!お湯じゃなかった…!」


「…この野郎、お前も同じように…!」

「ひ、ひい!やめてください!ゆるしてー!」




521VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/07/12(木) 01:05:34.66F5UHtPqd0 (35/35)


多くの謎を残し、小さな女と大きな女の物語はここで終わる

しかし、二人はまだまだ夢のため、努力していることを忘れてはいけない


個人の些細な顛末など、何千年かもすれば忘れ去られてしまっても、仕方の無いことかもしれないが



522VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/12(木) 01:18:37.72/ZPzxTjVo (1/1)

おぉぉおわってしもたぁ・・・
良いでこぼこコンビでした!


523VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2012/07/12(木) 01:24:09.55SX+b1lKFo (1/1)

乙…



乙…


524VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2012/07/12(木) 01:29:14.698j+yd/UAO (1/1)

城関係の人も追記として出したし、本体の予備知識としては申し分ない


だらだら加筆修正したけど、二人の傭兵物語は今日で終わり

HTML化依頼は出したので、あとは勝手に落ちるのを待つのみ

お疲れさま


525VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2012/07/12(木) 01:32:24.89LXVQEqd4o (1/1)

     ...| ̄ ̄ | < お疲れ様でした 面白かったです
   /:::|  ___|       ∧∧    ∧∧
  /::::_|___|_    ( 。_。).  ( 。_。)
  ||:::::::( ・∀・)     /<▽>  /<▽>
  ||::/ <ヽ∞/>\   |::::::;;;;::/  |::::::;;;;::/
  ||::|   <ヽ/>.- |  |:と),__」   |:と),__」
_..||::|   o  o ...|_ξ|:::::::::|    .|::::::::|
\  \__(久)__/_\::::::|    |:::::::|
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.|| ゙ヽ i    ハ i ハ i ハ i ハ |  し'_つ
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526VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2012/07/12(木) 01:34:53.99Ae7Ns6SOo (1/1)

ん、この遺跡ってもしかして考古学者の女の子の話のあれと同じ?


527VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/12(木) 03:50:23.79vlu8cLHOo (1/1)

何かのスピンオフ的な物なのかな、だとしたら本編が気になるわ
まぁ何にせよ乙


528VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/12(木) 07:02:41.22+1n8YkWIO (1/2)

ジェミ乙!!


529VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/12(木) 18:51:10.50+1n8YkWIO (2/2)

>>457
>>1様、この二人が脇役になる本編を知りたいです


530VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2012/07/13(金) 00:24:14.81v8jKJHhAO (1/2)

本編はまだ書かれてない

SSとしてやるなら、確実に安価にせざるを得ないからやりたくもない

ベーグル食べたい


531VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/13(金) 00:25:05.37BBarkZKno (1/1)

なにこの打ち切りみたいな終わり方

こんな半端に終わるものわざわざ加筆までして貼りなおすなよ

期待してただけにがっかりした


532VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/13(金) 00:26:18.00TMcq0BF5o (1/1)

記者の続きはよ!


533VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2012/07/13(金) 00:41:02.48v8jKJHhAO (2/2)

彼女らは勇者じゃないしよくある主人公でもない
最初から時代の片鱗を一緒に写すための被写体でしかない

このスレはほぼ、追記した内容を書きたかっただけ(どうにかキャラクターを出したかった)

間に1つ挟むとは前もって言ってあるし、そこはご容赦ねがいたい


534VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/13(金) 00:42:23.65bEmH57SIO (1/1)


いままでのペースとは何だったのかw

あと、別スレあるなら誘導をぜひお願いします


535VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2012/07/13(金) 18:34:32.35GQ13NBQ4o (1/1)



今って何種類SS書いてる?
肉まん含めて2つしか知らないんだけど


536VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/13(金) 18:38:51.02AW6vPEkIO (1/1)

女記者の活躍を読みたい…


537VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/13(金) 20:47:03.56BSgCxLq8o (1/1)

>>536
青の国は気になるよな


538VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2012/07/14(土) 01:50:17.92jCuiiMqAO (1/1)

今SS速報にあるものはこれを除いて4つ、おまけして5つ

色々なSSを読みまくって探そう




539VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/14(土) 02:48:32.268I3hRAkIO (1/1)

探すのめんどくせぇぇ


540VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/14(土) 08:06:31.21rwz2KMJIO (1/1)

コテでもトリでもどっちでもいいけどつけてないのかな
中途半端なもん見せられても困るから今後わかりやすいようにNG入れておきたいんだけど


541VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/14(土) 13:23:38.96kgQgWOkDO (1/1)



えっ!?これ肉まんが書いてたの??


542VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/14(土) 15:45:26.298S9/kHC5o (1/1)

>>541
この人はもともとこういう雰囲気のが多いよ
逆に俺は肉まんのSS見てキャラが違いすぎて吹いたわ


543VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2012/07/14(土) 22:33:58.32hytX+euSo (1/1)

これで終わり?
他の作品があるならタイトル一覧を…


544VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/07/15(日) 02:07:11.39ePrmOK8oo (1/1)

IDで検索したら引っかかったりするよ