1 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:16:04.75zAhIneI10 (1/17)

【初めに。】

このSSは、

自分、◆rHuwTJzOS6が執筆中のSS
勇者「惚れた」魔王「え」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300755911/

◆t7gfNpKsyEさんの完結済SS
幼女「そこのおとこ!ちょっとやらせなさい!」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1297/12977/1297775355.html

の二作品によるクロスオーバーSSです。
そーゆの嫌いな人は回れ右。
それとこのSS、キャラ紹介等はする予定ですが、基本的に読者が『両作品既読』という前提で、話が進みます。
一応、ご注意を。
ああそれとも一つ。
このSSは、クロス元と違って地の文盛りだくさんでお送りいたします。
でも自分は地の文初めてなんで、そこら辺の塩梅がよく分からんから、粗相をしたらスイマセン。

ともかくまぁ、はじまりはじまり的な感じで。

なお、このSSの企画元は、
【イベント】オリジナルSSクロススレ【でも無期限】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304492630/
となっております。こっちもよろしく!




2 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:18:10.39zAhIneI10 (2/17)

プロローグ――始まりは、非日常な日常で――






3 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:18:51.87zAhIneI10 (3/17)

 ここはとある住宅街のとある一軒家。
 木造平屋で築二十年の一戸建てという、特に珍しくも何ともない一般的な家だ。
 しかしそんな極平凡な家には、

幼女「男!やるぞ!」

男「お前はいきなり何を…いや分かった、絶対やらんからなだから裾に手を掛けるなその服を脱ごうとするな!」

幼女「だがことわる」

男「それを断る!」

 平凡とは真逆の存在である、二人の男女が住んでいた。


4 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:20:16.36zAhIneI10 (4/17)

 今その家の居間にいる二人の男女のうちの女。
 彼女の玉の様な白い肌と磨かれた黒曜石の様に輝く瞳、そして綺麗に切り揃えられた黒い長髪は、見る者の目を釘付けにし、捉えて離さないだろう。
 ただし、

幼女「なぜ男はまいかいまいかい、わたしのせくしーぼでぃをこばむのだ……!」

男「幼女のくせにセクシーだなんて、十年早いんだよ……!」

 彼女がれっきとした大人の女性であれば、の場合である。
 今男女のうちの男、目付きの悪さが特徴的というか威圧的というか。
 兎にも角にもその男に『幼女』と呼ばれながら両手で、かわいらしいキャラクターのプリントが施されたTシャツの裾を両横側から捕まれて下へ引っ張られている彼女はあくまでも、十年の歳月すら過ごしていない少女であり、勿論体もその過ごした歳月に比例した物となっている。


5 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:21:08.97zAhIneI10 (5/17)

つまり今彼女の服の裾を歯を食いしばり必死に引っ張っている男、幼女に『男』と呼ばれている彼の言う事が、世間一般としては正しいという事になり、

幼女「ぬぉぉぉぉぉ!」

 そして服を脱ぐ為に、必死にその裾の前側を両手で持ち上げている幼女は、間違っているという事になる。
 世間一般の常識としては。

男「このっ……どこにそんな力が……!」

幼女「これぞかじばのばかぢから……!」

 だがしかし、その常識とはあくまでも世間一般の物であり、それがこの幼女にも必ず当てはまるかと言うとそんな事は全く無く。
 そんな訳で、彼女は今日も己が道をひたすら突き進み、男とニャンニャン(死語)するその日を目指して、日々努力を続けているのである。


6 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:21:49.93zAhIneI10 (6/17)

幼女「ぬぐぐぐぐぐ……!」

男「いい加減観念しろぉ……!」

 男と幼女、二人の死闘という名の服の引っ張り合いが山場を迎えた頃、その闖入者は現れた。


7 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:23:11.47zAhIneI10 (7/17)

??「男さぁぁぁん!!」

 突如男の左側、何も無いはずの空間に黒い穴が開き、そこから甲高い声と共に、小さな影が勢い良く飛び出してきたのだ。
 そしてその影はその勢いのまま、見事男の横腹に直撃した。
 ノーガードの横腹に重い一撃を食らった男は、ぶっ、という声を残し、軽く横に吹き飛んでから、床に倒れこんだ。
 ちなみに影は男により勢いを削がれ、男の手前に落下している。
 一方、影の直撃を食らった男の手から力が抜けたせいで、幼女は自らの腕に感じていた抵抗力を一気に失う事となった。
 
 その結果、先ほどまで上方向に全力で力を入れていた腕は、本来の目的である上へと思い切り跳ね上がり、しかし掴んでいた裾の位置が悪かったのか、腕の動きにつられて上方へと移動していた服はあえなく腋に引っかかり、そこを支点に腕は本来の目的から逸れて後ろへと移動し、そして、


8 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:24:05.26zAhIneI10 (8/17)

幼女「むぎゅっ」

 という一声と共に、腕に引っ張られた服を顔面に貼り付け、幼女はその勢いを保ちながら、後ろに転倒した。

??「あいたたたた……」

 そんな中、先ほど男に一撃を与えた影が一番に起き上がった。
 否、それは影などではなく、人だった。
 それも見た限りでは、幼女と同じくらいの年齢であろう少女だ。
 まるで平安貴族が着る様な、少なくともこの現代社会においては場違いであろう着物を着て、少女の体には不釣合いな大きさを誇る巨大な冠を被ったその少女は、何かを探すように辺りを見回して、そして見つけた。



9 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:25:15.35zAhIneI10 (9/17)

 しかし少女がその目的の物、男を見つけた時には、既に男は半身を上げていた。
 そして次の瞬間、彼女が反応する間も無く、その眼前に男の掌が迫ってきた。

??「あ、あいたたたたぁ!!」

男「それはこっちの科白だこのロケット閻魔ぁぁぁ!!」

 ロケット閻魔……では無く、『閻魔』、と呼ばれた彼女は、現在男の五指に頭を鷲掴みにされ、その痛みから逃れようと必死にもがいている。

閻魔「わざとじゃ無いんです!わざとじゃあ無いんですぅ!」

男「その割には躊躇も何も無かった気がするがなぁ……!」

 弁解の言葉も届かず、未だに男の拘束から逃れられない閻魔。
 しかしいつの間にやら起き上がった幼女が、それを尻目に、



10 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:25:54.20zAhIneI10 (10/17)

幼女「いまだ!」

 と叫びながら再度服を脱ぎ始めた事により、そして彼女の叫びを聞いた男もすかさず、先ほどと同じ様に幼女を止めにかかった事により、閻魔を拘束していた五指が外れる。

閻魔「み、味噌が出るかと思いました……。ってそうだ、男さん!」

男「今忙しいんだ、後にしてくれ……!」

 はっとした顔で閻魔は、また懲りずに死闘を繰り広げている二人に向かって、正確には男に向かって呼びかける。

閻魔「そんな事どうでもいいじゃないですか!それよりも、大変なんですよ!」


11 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:26:30.69zAhIneI10 (11/17)

男「そうか奇遇だな、俺も今非常に大変だ……!」

幼女「そうかふたりもか、じつはわたしもすごくたいへんなんだ……!」

男「それは自業自得だろうが……!」

 未だに二人は鬼気迫る表情で服を引っ張りあってる。閻魔はほんの一瞬、二人が引っ張りあっているTシャツの耐久度に疑問を持ったが、それよりも優先すべき事柄があったので、Tシャツの事は意識の外に出してから、言った。

閻魔「私の閻魔帳が、無くなっちゃったんです!」


12 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:28:14.85zAhIneI10 (12/17)

男「は?閻魔帳?」

 久しぶりに聞くその単語に男は気を取られ、一瞬手から力を抜いてしまった。そして幼女はまた、仰向けに転んだ。
 その後、何故か倒れたままの体勢で、『このわたしがにどもおなじてに……』などと呟いている幼女を放置して、二人は話を続ける。

閻魔「はい……どうやらどこかに落としてしまったみたいで……」 

男「閻魔帳なぁ……心当たりとかはあるのか?」

閻魔「いえ。今朝突然現れた、行き先不明のワープホールの中に落ちていったというくらいまでしか……」

男「まぁせいぜい頑張って探してくれ」

閻魔「まさか私を見捨てるつもりですか!?」


13 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:29:19.51zAhIneI10 (13/17)

閻魔「閻魔帳は別に貴重な物じゃありません!だってアレは『閻魔帳と言う自分用ノート』ですから!」

男「そこか!?突っ込む所はそこなのか!?てか只のノートだったらもう新しいの買っちまえよ!」

閻魔「い、いやですよ!だってアレ、一応仕事の事とか色々書いてありますし、それに……」

男「それに?」

 閻魔が少し恥ずかしそうに、言った。

閻魔「まだ半分ぐらい残ってますし……もったいないじゃないですか」

男「閻魔の癖にノートぐらいでケチるなぁぁぁ!!」



14 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:31:08.51zAhIneI10 (14/17)

閻魔「え、閻魔だからってノートを使い切らないって言う偏見は、どうかと思いますよ!?大事じゃないですか、エコ!」

男「確かにそうだけども!だけどもだな、ノートの空きがもったいないと言う理由だけで、ワープホールにまで探しに行けるか!」

閻魔「だから建前として『一応仕事の事とか色々書いてありますし』って言ったじゃないですか!」

男「そっちは建前なのかよ!てか建前だとしてもせめて口には出すなよ!」

閻魔「……ふふっ、もういいんですよ。――諦めましたから」

 閻魔の口から飛び出した予想外の言葉に、男は疑問を隠せない。
 しかし、閻魔は続けて言った。


15 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:32:02.79zAhIneI10 (15/17)

閻魔「そうです、もう『説得するのは』諦めて……強引に巻き込む事にします!」

男「……は?」

 言うや否や、閻魔は服の右袖に左手を突っ込んで、掌サイズのカプセルを取り出した。
 
閻魔「てれれれっててー」

男「何だそれ」

 幼女が閻魔の取り出したカプセルに反応して起き上がった。

幼女「ホイホイカプセルか?」

閻魔「いえいえ違いますよー」

 そして閻魔は、カプセルを適当な空間に放り投げながら、

閻魔「……ワープホールです」

 カプセルが、破裂した。



16 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:32:35.21zAhIneI10 (16/17)

 瞬間、三人の目の前に暗闇の渦が広がる。

男「ちょっえええええ!?何お前何でこんな物持ってきてんの!?」

閻魔「天界製のワープホール収納カプセルです。何とお値段税込みチョメチョメ円!」

 そして、渦は更に大きく広がり、

男「んなこた聞いてねぇよ!てかワープホールって出したり閉まったり出来る物なのか!?」

幼女「できるぞ?なんたって、《いっこだて》だからな」

男「それ関係あるのか!?本当に関係あるのか!?ってうわぁあああ!」

 三人を纏めて、飲み込んだ。


17 ◆rHuwTJzOS62011/05/27(金) 22:38:42.28zAhIneI10 (17/17)

プロローグ終了。
今日はここまでです、明日から毎日少しずつ更新。
まぁ、ストックが切れた時点で、不定期更新に早変わりしちゃうんですがね!

で、地の文ですが、どうでしょうか?
今の感じでも読みやすいでしょうか?
というか……文章的に大丈夫でしょうか、これ。

まぁそこら辺、地の文長くて読みにくかったりスレ区切りすぎだったりとか何かあったら言ってください。



あ、そういえば。
明日はテケトーにキャラ紹介とか元スレ紹介とかもやっちゃうかも。

ではではまた明日。


18VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/05/27(金) 22:44:36.84sgnUJU0AO (1/1)

いいと思います!


19VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/27(金) 23:19:46.05errs7vfUo (1/1)

乙。
良いのではないでしょうか。


20 ◆rHuwTJzOS62011/05/28(土) 23:14:04.07/TQnOIEh0 (1/1)

いかん。昨日に、明日更新とか言っていたが明後日になるかもしれない。
てかもう今日終わるまで後50分もないよぉぉ。

今日できなくても明日は必ず更新するんで勘弁をば。


21 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 15:26:33.92WOfHyhb/0 (1/16)

やぁ皆、遅れてすまない!
それじゃあ第一話投下……の前に、クロス元スレの紹介と行こうか。
キャラの紹介は第一話の後にでも。

勇者「惚れた」魔王「え」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300755911/

あちこちで悪さをしてる魔王を懲らしめるため、魔王城へとカチコミに行った勇者とその仲間達。
しかし勇者が魔王に一目惚れしたり魔王は魔王でまぁ何ていうか魔王なんだけど魔王じゃないみたいなそんな感じで、気づいたら何か魔王が魔王じゃなくなって勇者と一緒に帰ってったみたいな。

で、まぁどさくさに紛れて魔王を押し付けられた側近が何だかんだで魔王城に置いてかれた戦士をおt……仲間に引き入れて今頑張ったり頑張らなかったりしてるそんな話。

5月29日現在、連載中。でも今はこっちがあるんで更新が大分鈍くなってます。もーホントすいません。

ちなみにこのクロスは時系列的に、元スレ>>317よりもうちょっと後、>>186よりほんの少しだけ前。
つまり物語開始から一ヶ月のちょっと前辺りから始まってます。



22 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 15:40:37.34WOfHyhb/0 (2/16)

幼女「そこのおとこ!ちょっとやらせなさい!」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1297/12977/1297775355.html

要約すると男と幼女のハートフルストーリー変態風味的な。
要約しないと、
男に一目惚れした幼女が変態したり魔法使ったり男と一緒に買い物行ったりキャッキャウフフしようとして断られたり時たまシリアスしたりして、まぁ何だかんだで絆を深め合う、そんなお話。

ギャグだったり変態だったりハートフルだったりシリアスだったり色々詰まってて面白いですが、でもそれより何より


閻魔がかわいい。



このクロスの彼らは本編終了後です。
つまり男が幼女にツンデレ気味だったり幼女がちょっとだけ成長してたり閻魔がタダ飯を集りに来るだけの人になってたりでもそんな閻魔がかわいかったりする時期です。
うんまぁ要は何が言いたいかというと、閻魔はかわいい。

以上!


23 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 15:50:11.10WOfHyhb/0 (3/16)

うんごめん、正直ちょっと閻魔を推しすぎた気がする。
でも後悔なんて、あるわけない。

と、そうだそうだ。
知ってる人も多いと思いますが、
幼女スレの◆t7gfNpKsyEさんが新スレ始めてますので勝手に宣伝。

幼女「メイドひろった」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305294466/

うちから戦士と魔王とメイド女が出張ってます。
それと自分もちょこっとだけ書いたり書かなかったり。



24 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 15:51:12.83WOfHyhb/0 (4/16)

それではようやっと本編の投下開始です。


25 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 15:52:43.95WOfHyhb/0 (5/16)

第一話その一
――異世界乱入系落下型、ケース1――


26 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 15:53:32.02WOfHyhb/0 (6/16)

僧侶「じゃ、今から言ってきますので」

 男性か女性か、判別の付きにくいハスキーな声が、部屋に響いた。
 ここはとある王城の中にある、『玉座の間』と呼ばれる一室。そこにあるのは殆ど装飾の存在せず、王の席と言うにはどこか物足りないとも思える、一つの玉座。そして、それと扉を結ぶ一本の真っ赤な絨毯のみだった。ちなみに玉座の周りの床は、他の床と、二連続の段差で隔てられている。
 そしてその『玉座の間』では、今二人の青年が会話していた。



27 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 15:59:02.95WOfHyhb/0 (7/16)

 先ほど科白を発した青年は二人のうち、神職の証である十字を背負ったローブを身に纏い、玉座を前方に、扉を背にして立っている『僧侶』だ。

 その僧侶に、玉座に腰をかけて足を組んでいる方の青年、『国王』が言った。

国王「おう、気をつけて行って来い……いや、やっぱ気をつけなくてもいいわ。たまには少しぐらい痛い目にあってこい」

僧侶「十年来の幼馴染に向かって何て言い草。貴方本当にこの国の王なんですか?」

国王「お前には言われたくない。いいからとっとと行ってこい、気をつけなくていいから」

僧侶「はいはい、気をつけて行って来ますよ」

 そう言いながら、僧侶は踵を返して扉へと向かった。
 しかしその直後、彼はその耳を持って背後で起こった『ある異変』を察知した。
 


28 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 16:00:25.27WOfHyhb/0 (8/16)

 その『ある異変』とは、一つは『ゴッ』という音であり、もう一つは『ドサッ』という音だった。しかも最後の『ドサッ』は二回連続で鳴った気がする。
 だから僧侶は歩みを止め、再度踵を返した。そして、そこで彼が見た物は、

僧侶「…………は?」

 何故かうつ伏せで床に伏している国王。そして、何故か仰向けで床に伸びている、先ほどまでその姿が無かったはずの、僧侶の知らない形をした冠を被った少女。というか、閻魔だった。



29 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 16:01:17.11WOfHyhb/0 (9/16)

第一話その二
――異世界乱入系落下型、ケース2――


30 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 16:02:36.26WOfHyhb/0 (10/16)

 雲一つ無い晴れ渡った青空。
 涼しい風がそよりそよりとあちらこちらに吹き渡り、太陽からほんのりと、心地の良い暖かさを感じる、そんな天気。
 そんな中、先ほど閻魔が出した渦。
 つまり行き先不明のワープホールに飲み込まれたはずの男は、

男「ああ、風が気持ちいいぜ……」

 そんな科白を吐きながら、落ちていた。
 
男「しっかしなぁ……閻魔どころか、幼女ともはぐれちまうなんてなぁ」
 
 男はいたって冷静だ。
 しかし彼は今仰向けになって、現在進行形で加速しながら落ちている真っ最中なのである。
 それも高度数千メートルから、パラシュート等の類は一切つけずに、だ。



31 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 16:05:32.56WOfHyhb/0 (11/16)

男「……閻魔め。全く、後で御仕置きが必要だな」

 しかしそんな、常人ならば気絶していても可笑しく無い状況に居るにも係わらず、彼は一切動じない。
 何故ならば、それは彼が常人では無いからという只それだけの事であり、逆に言えば、それ以外には理由などありはしない。
 いや、もしかしたら、この様な危機的状況に『馴れている』というのもあるのかもしれないが。
 兎にも角にも、銃弾を生身で弾き、異形の化物を素手でいなし、大砲の直撃でも無傷で、ついでに『海上』を走ったり常人には見えない速度で移動する事も出来る。
 そんな彼が、たかだか数千メートルからのスカイダイビング(ただし安全装置は一切無し)程度で慌てる事などあるはずも無く、だから男はいつもの様に、自分の背後、地面の方に首を向けて、
 


32 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 16:06:15.85WOfHyhb/0 (12/16)

男「あー、下にでかい建物が……何だあれ、城か?」

 地面に見えるのは巨大な建築物。男はそれを見た瞬間、中世の欧州によくありそうな城を思い浮かべた。
 そして男は当然知らないのだが、実際のところその推論は正しかった。
 今、男の真下にある建築物は、その名を『魔王城』と言う立派な城であり、ついでに言えば、『魔王』と呼ばれる一人の女性とその他二人が暮らしている住居でもある。
 しかしその城は今、男との距離をみるみる縮めており、

男「とりあえず……人に当たりませんように!」

 瞬間、男が魔王城に激突した。


33 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 16:07:23.60WOfHyhb/0 (13/16)

第一話その三
――異世界乱入系落下型、ケース3――


34 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 16:09:36.83WOfHyhb/0 (14/16)

戦士「さて、どっから手をつけたものかな……」 
 
 そんな事を、山の様に積まれた武器、防具、その他色々を目の前にして、一人の青年が呟いた。
 鎧を着込み、精悍な顔つきをした彼の名は『戦士』。
 彼は訳あって一ヶ月程前からこの魔王城に住んでおり、いつも家事やら雑用やらに翻弄される日々を送っている。
 そしてここは、魔王城の一角にある武器庫。
 本来ならばここは武器や防具、魔道具といった品が綺麗に整理され、安置されているべき所なのだが、現在はそれらが無造作に置かれ、積まれて酷い有様となっている。
 それは、ここしばらくの間、諸事情により各地から魔王城に様々な荷物が送られ続けており、その中にこの部屋にしまわれるべき物も多かった為、それらの配送が落ち着いた後に――つまり今――ここは纏めて整理しよう。
 という計画を戦士が予め立てていたからであり、決して彼が職務怠慢だとかそういう事は一切無い。
 だがしかし、


35 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 16:10:09.97WOfHyhb/0 (15/16)

戦士「にしても、まさかここまで溜まるなんてなぁ」

 正直想定外だったわ……。と、戦士は一人愚痴を零す。
 何はともあれ、想定外だろうが予想外だろうが、これはいつかはやらなければならない事だったんだ、と。
 そして、倉庫の方では『メイド女』も同じ様に頑張ってるんだから、と、そう自分に言い聞かせながら、戦士はとりあえず目の前の山に手を伸ばした。

幼女「わたし、さんじょう!」

 そして何故か、足を直立にして万歳する様に両手を上げた体勢で、上から降ってきた幼女に、真上から頭を踏みつけられた。


36 ◆rHuwTJzOS62011/05/29(日) 16:11:24.10WOfHyhb/0 (16/16)

今日はこれでしゅーりょー。


37VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/30(月) 01:02:07.04Anlhezq0o (1/1)

おっつ


38 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:02:36.93ywWhviBw0 (1/14)

皆々様おはおはよう。夜だけど。
それじゃあ昨日言ってた通りさっくりとキャラ紹介でもしようか。

と思ってたけど、よくよく考えたらまだ全キャラで揃ってないからもう少し後で。

それじゃあ投下始めるよー。


39 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:04:01.37ywWhviBw0 (2/14)

第二話その一
――異世界コンタクト、ケース1――


40 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:04:55.94ywWhviBw0 (3/14)

僧侶「というわけで、閻魔さんです」

閻魔「閻魔です、よろしくお願いします」

 椅子に座って閻魔を紹介する僧侶と、その横で同じく椅子に座って頭を軽く下げる閻魔。
 そんな二人と机を挟んだ向こう側に座っているのは、一人の男性と二人の女性だ。
 彼らはまだ年若い見た目をしており、実際の齢も、大体十七、八程度であった。
 そんな彼らのうち、何と言うか人畜無害そうな黒髪の男性である『魔男』が半目になって、

魔男「……誘拐、か」



41 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:06:16.28ywWhviBw0 (4/14)

魔男「……誘拐、か」

 その言葉に、黒いローブと同色の頂点が尖った帽子という、周りと比べて少々異色な格好をした、背が低くかわいらしい少女、『魔法使い』が続く。

魔法「……ついに手を染めてしまった」

 そして止めに、長く艶やかな黒髪と凛とした黒い瞳を携える美しい少女、『勇者』が、

勇者「……僧侶、お前の事を信じてたのに……!」

 と苦虫を噛み潰す様な顔で、言った。
 それらの言葉に対して、僧侶はアンニュイな表情をしながら返事を返す。 



42 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:06:49.23ywWhviBw0 (5/14)

僧侶「あの、貴方達『先ほどの話』、聞いてましたよね?」

魔男「ははは、冗談だって冗談」

魔法「軽いジョーク」

勇者「……そ、そうそう冗談だ冗談、うん」

僧侶「……若干一名怪しいというか正直全員何か怪しいのですが、まぁいいでしょう。ええそれぐらい許してあげますとも、自分、僧侶ですから」

 仲間達の態度に対し何か微妙な物を感じながらも、しかし僧侶は笑顔で答えた。『先ほどの話』を、軽く思い出しながら。



43 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:07:42.67ywWhviBw0 (6/14)

 
 王城で異様な光景を目撃した僧侶。まず彼が最初にした行動は、

僧侶「……さて、行って来ますか」

 『無かった事にする』、だった。
 僧侶はこの部屋で三度目の方向転換を行い、扉へと歩みを進める。
 触らぬ神に祟りはなく、藪はつつかなければ何も出ない。
 兎にも角にも不可解な出来事にはなるべく関わらない事が長く生きる秘訣であり、僧侶は老衰による最後を迎えようと思っていたので、彼が今この様な選択をしたのは、当然といえば当然だろう。
 ただし、彼自身の良く言えば知的好奇心、悪く言えば野次馬根性により、彼が後ろ髪が引かれる思いを持っていたのも事実だが。



44 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:08:36.51ywWhviBw0 (7/14)

閻魔「……あの、そこの方」

 己を呼んだであろうその声に、つい反応し、振り返ってしまったのは。
 さっきから振り返ってばかりですね、と思いつつも、僧侶は実際に振り返り、その声の主へと視線を動かす。
 見るとそこには、先ほどいつの間にかその姿を現していた少女が、へたり込んでこちらを見上げ、しかし痛そうに両手で頭を押さえて涙目になりながらも言った。

閻魔「こ、ここは一体どこなんでしょうか……。それと、何故か物凄く頭が痛いのですが……まるで何か堅い物にでもぶつかった様に」

 ちなみに国王はまだ床で伸びている。起きる気配も無いようだ。
 そして言われてみれば、
 
僧侶(まぁ確かに、彼の頭は硬いですよね。発想が堅実的過ぎて面白みに欠けますし……)
 



45 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:10:29.29ywWhviBw0 (8/14)

 何はともあれ、少しでも関わってしまった物はしょうがない。
 ここまで来てシカトするのも気が引けますし……ていうかぶっちゃけ、関わったらそれはそれで何か面白くなりそうですしね。と、僧侶の中で、長生きの秘訣が野次馬根性もとい知的好奇心全開な考えに、あっさりと制された。

僧侶「ここは(見せられないヨ!)王国の、王城の中ですよ」

※王国の名前はまだ未設定なので自主規制がかかっております。決して卑猥な名前だからではありません。断・じて・否!

閻魔「(見せられないヨ!)王国?そんなの聞いた事……あ、つまりここは『異世界』という事ですか……」


46 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:11:02.71ywWhviBw0 (9/14)

 瞬間、僧侶の野次馬的好奇心が心の中で、強烈な反応をした。
 しかし彼は、それをおくびにも出さず柔らかな微笑を見せ、

僧侶「ふむ、少々お話を聞かせてもらってもよろしいですか?もしかしたら……貴方の力になれるかもしれませんので」

閻魔「え?本当ですか?」

僧侶「ええ、何なら茶菓子でも用意しながらゆっくりと。さ、こちらですよ」

閻魔「本当ですか!?見ず知らずの私を助けてくださる上に、茶菓子まで……何て親切な人なんでしょうか!」

僧侶「いえいえ、神に仕える者として当然の事をしたまでですから。それでは、行きましょうか」


47 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:12:01.32ywWhviBw0 (10/14)

閻魔「神に仕える……先ほどに加えて更にポイントプラスですね!閻魔的に!死後の裁きの際にはひいきしちゃいますよ!あ、でも異世界だから管轄外かも……」

僧侶「は、はぁ……」

僧侶(ちょっと意味が図りかねる言葉ばかりですが……そこら辺も追々把握出来るでしょうし、とりあえず、話を聞くとしましょうかね)

 そして、貴族御用達の高価な苺タルトとこれまた高価な紅茶を閻魔と共に嗜みながら、彼女の素性や今回の騒動について根掘り葉掘り聞いた僧侶が、それらの事を今現在、この部屋――ちなみに今彼らが居る部屋は、『魔男』と『勇者』、二人が共に暮らしている家の居間である――で自分達の目の前に座っている三人に話して、今に至る。
 ところでこれは余談だが、国王は相変わらず放置されたままである。あくまでもこれは、余談だが。




48 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:14:08.00ywWhviBw0 (11/14)

 僧侶はそんな今までの状況をつらつらと思い出していたが、魔男が声を発したので、そちらに意識を戻す事にした。

魔男「でもアレだよね、お菓子でいたいげな子供を誘うって、親か知り合いでも無い限り、ほぼ確実にクロだよね」

魔法「……確かに常套的な手口ではある」

勇者「まっ、まさかお前本当に……」

僧侶「あのちょっと、ループするの止めてもらえませんか?」

閻魔「ええ!?まさか貴方にそんな目的があったなんて……」

 何で本人までのってるんだと思いつつも、とりあえず、僧侶は否定の言葉を作る。



49 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:15:47.20ywWhviBw0 (12/14)

僧侶「違いますー。ていうかもしそれが本当だとしても、その張本人的にはどうなんですか。見た目と違って実はもう十九にもなるって言うのに」

 すると閻魔は口を大きく開き、身振り手振りを交えて、

閻魔「も、勿論冗談に決まってるじゃないですか!いやだって私十九歳ですよ十九歳!そんな御菓子に釣られるわけないじゃないですか!ねぇ!?」

僧侶「『ねぇ!?』って誰に言ってるんですか貴方は。ていうか凄い必死なんですが、この人」

 ともあれ、という言葉を最初において、僧侶は更に言葉を繋げる。



50 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:16:13.50ywWhviBw0 (13/14)

僧侶「閻魔さんから聞いた話を元に私が少々調べた所、彼女の探し物は魔王城近辺にあるらしい。という事が判明しました。まぁそういう事なので、とりあえず……行きましょうか、魔王城。閻魔さんの探し物を見つける為に」

閻魔「私の為に何から何まで……素敵です僧侶さん!もう、死後には超贔屓しますよ!閻魔の権限使いまくりですよ!」

 微笑の僧侶と笑顔の閻魔。そんな二人、というか僧侶に向かって魔男が勘繰るかのように、

魔男「……で、本当の目的は何なのさ?」

 と、目を細めながら言った。
 だから僧侶は、

僧侶「そんなの決まってるじゃないですか……面白そうだからですよ!」

 と、正に天使の如く、その幼さが残る顔を笑みで全開にして、答えた。


51 ◆rHuwTJzOS62011/05/30(月) 20:18:11.42ywWhviBw0 (14/14)

今日はここで終了でっす。


52VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/30(月) 22:41:31.89E9hh0tn/o (1/1)




53 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:21:20.83a5JeylAt0 (1/21)

はーじまーるよー。


54 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:21:49.76a5JeylAt0 (2/21)

 雲一つ無い晴れ渡った青空。涼しい風がそよりそよりとあちらこちらに吹き渡り、太陽からほんのりと、心地の良い暖かさを感じる。そんな天気。そんな中、先ほど閻魔が出した渦、つまり行き先不明のワープホールに飲み込まれたはずの男は、

男「ああ、風が気持ちいいぜ……」

 そんな科白を吐きながら、落ちていた。
 
男「しっかしなぁ……閻魔どころか、幼女ともはぐれちまうなんて……」
 
 男はいたって冷静だ。しかし彼は今仰向けになって、現在進行形で加速しながら落ちている真っ最中なのである。それも高度数千メートルから、パラシュート等の類は一切つけずに、だ。

男「……閻魔め。全く、後で御仕置きが必要だな」



55 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:22:20.50a5JeylAt0 (3/21)

 しかしそんな、常人ならば気絶していても可笑しく無い状況に居るにも係わらず、彼は一切動じない。
 何故ならば、それは彼が常人では無いからという只それだけの事であり、それ以外には理由などありはしない。
 いや、もしかしたら、この様な危機的状況に『馴れている』というのもあるのかもしれないが。
 兎にも角にも、銃弾を生身で弾き、異形の化物を素手でいなし、大砲の直撃でも無傷で、ついでに『海上』を走ったり常人には見えない速度で移動する事も出来る。
 そんな彼が、たかだか数千メートルからのスカイダイビング(ただし安全装置は一切無し)程度で慌てる事などあるはずも無く、だから男は自分の背後、地面の方に首を向けて、

男「あー、下にでかい建物が……何だあれ、城か?」



56 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:23:49.34a5JeylAt0 (4/21)

うわっはぁ間違えたぁ!
これ投下済みの奴だ!

すみませんでした。次からは今度こそ、投下開始です。


57 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:24:27.71a5JeylAt0 (5/21)

第二話その二
――異世界コンタクト、ケース2――


58 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:25:40.24a5JeylAt0 (6/21)

 魔王「退屈ねぇ……」
  
 魔王城の最奥にある部屋、魔王の間。
 そこで、少女は気だるそうな様子で豪奢な椅子に深く腰を掛け、椅子の肘に己の肘を乗せて頬杖をつき、そして足を組んだ体勢で、そう呟いた。
 左右二房に分けて結われたブロンドの髪、髪と同色の瞳とつり上がった目。
 そして、上はノースリーブ下はショーツというそんな薄い服装から覗く、細く引き締まった健康的な肉体が特徴の彼女は、『魔王』。
 魔王とは、魔界一の強者であり、全ての魔族を従え魔界全土を統治する存在。
 と言われていたが、ある事情により現在では部下が殆どおらず、一応貯蓄はあるが、領土も魔王城とその周辺ぐらいしか存在しない。
 つまり現状としては、魔王としては色々と足りないと言わざるを得ないのである。


59 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:26:56.02a5JeylAt0 (7/21)

 しかし彼女がそれを気にする事は無い。
 何故ならば、彼女にとって魔王という肩書きは、あくまでも押し付けられた物でしかなく、自分の意思による物ではないからだ。
 それに、彼女にはある個人的に重要な『目的』があるので、魔王については正直どうでもいいと思っている、という事のもあるのだが。

 ともあれ、彼女は先ほども呟いた通り、非常に退屈している。
 『目的』の為に動こうにも、訳あって暫くはどうする事も出来ない。
 魔王としての役目もやる気が起きないしどうでもいいし面倒くさい。
 ここ数週間は魔王城の散策なり外出して魔物を狩ったりなりで暇を潰していたが、いい加減それらにも飽きた。
 だから先ほど、ふとした気まぐれで、初めて魔王の間にある玉座にどんと腰掛けてみたのだが、分かった事は玉座のクッションが非常に柔らかく、座り心地が良い事だけだった。



60 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:27:23.49a5JeylAt0 (8/21)

 しかし、寝心地は良さそうだが、それで退屈が凌げるわけでも無い。

魔王(あ、いやでも寝れば時間は経つわよね?ああでも今寝ても、結局夜起きる事になるわけだから……プラマイゼロでノーカン、か)

 そんな事を思いながら魔王が、

魔王「本当に退屈だわ……。何か刺激的な事でも起きないかしら……」

 と、ぼやいた。
 だから、というわけでも無いのだろうがその直後、

 轟音と共に、魔王の間の天井が、穿たれた。


61 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:27:50.05a5JeylAt0 (9/21)

魔王「――――っ!?」

 突然の出来事に対し、魔王は玉座から立ち上がり身構え、己の目の前に滝の如く落ちてきた瓦礫の群を見据える。
 そして巻き上がる土煙の中で、魔王は一つの影を見た。

 見えた影は、人の形をしていた。視界の中で起き上がる様な動きを見せる人の影。
 魔王が訝しげにその影を注視していると、その人影から声が聞こえた。

??「イタタタ……あんな高さから落ちたのは初めてだったが、思ったよりもクルもんなんだな。……てか、誰か巻き込まれてたりとかしてないよな?セーフだよな?」

魔王(……まぁ一応、人命的にはギリギリセーフだけど、天井壊れたんだから金銭的には余裕でアウトよねぇ、これ)

 と、影から聞こえてきた声に、思わず心の中でツッコミをいれた魔王だが、それとは別に、


62 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:28:28.22a5JeylAt0 (10/21)

魔王(……あれ?これってもしかして、いやもしかしなくても……いい退屈凌ぎになるんじゃないの?)

 魔王の思考は更に続く。
 さっきの声から読み取れるのは、あの影はこの状況をわざと起こしたわけではない。という情報だ。
 つまりそれは、向こうに敵意が無い事の現れであり、だからこういう時はとりあえず、穏便にコンタクトを取るのが正解なのだろう。
 と、魔王はそこまで考えて、

魔王「……まぁ、それはそれとして」

 その思考を、投げ捨てた。
 何故ならば今自分が気にすべき事は、

魔王(どうしたら一番楽しくなるのかしらね、この状況……)


63 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:28:59.83a5JeylAt0 (11/21)

 あくまでも有意義な暇の潰し方なのであって、平和的な解決なんて知ったことではない。大体それでは刺激が足りないだろう。

 だから、視界に写る煙の色が少しずつ薄まっていく中、
 
魔王(あー、やっぱ体動かしたいわね体。最近あんま動いてなくて鈍ってたし。……それに多分、それなりに体は丈夫なはずよねぇ。アレの言葉が本当なら、随分高いところから落ちたはずなのに、簡単に立ち上がれたみたいだし。……うん、まぁ相手は侵入者だし?まぁわざとじゃないみたいだけど、結局は魔王城壊されちゃってるし?……つまり、これは正当防衛よね!うん!大丈夫大丈夫!)

 一瞬で自分の中で行動方針を示し、更に理由をこじつけて、己の中にある僅かばかりの慈悲と情けに蓋をした魔王は、

魔王「さぁーって……楽しませなさいよ!」

 眼前の土煙に、否、その中にある人影に向かって、突撃した。
 



64 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:29:28.70a5JeylAt0 (12/21)

 突如魔王城に降って来た謎の影。それは、十数秒前、猛スピードで空を落ちていた男のものだった。
 男は舞い上がる土煙の中、見えぬ景色をそれでも確認しようとして、あちこちに首を回している。

男(とりあえず落ちた直後に周りに呼びかけてみたものの、反応は無し、か。……まさか巻き込まれてそのままポックリ……だ、大丈夫だ!きっと運良く周りに誰も居なかったんだ!……だよな?)

 非常に心配になって来た。
 しかしそれは、今考えてもしょうがない事だ。今は兎に角視界の確保を――。
 だが、男の思考はそこで止まる。何故ならば、



65 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:29:54.33a5JeylAt0 (13/21)

男「なっ!?」

 男の眼前に、突如煙を裂いて現れる影があったからだ。
 それは金色の髪を靡かせた、

男(女っ……!?)

 しかし男がその事実を確認する前に、その影が、彼を打撃した。


66 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:30:27.74a5JeylAt0 (14/21)

メイ「~~~」

 ふわりとしたショートボブの茶髪を揺らしながら、小気味良く鼻歌を歌いながら廊下を歩く、メイド服を着た少女。
 そんな彼女、『メイド女』はつい先ほど、自分の仕事である倉庫の整理を終えて、

メイ「きょおーのおっかしーはマーカローンですーっ」

 菓子を作りに、食堂へと向かっていた。
 ちなみに、作った菓子はメイド女一人で食べるわけではない。
 魔王と戦士も交え、紅茶も出しながら三人で食べるのだ。
 メイド女が魔王城に来てからほぼ毎日行われている、メイド主催のティータイム。
 今日も彼女はその為に、食堂へと足を運ぶ。
 
 はずだった。



67 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:30:55.08a5JeylAt0 (15/21)

 廊下を進むメイド女が、T字路の分岐点に差し掛かった時、城内に突然轟音が鳴り響いた。
 まるで爆弾でも爆発したかの様なその音に、メイド女は身を竦めた。

メイ「ひぅい!?」

 そして静寂が戻る。
 メイド女は恐る恐る周りを確認し、

メイ「な、何だったんでしょうか……」

 と言って、最初に思い出すのが自分の主人である魔王の存在だ。
 
メイ「また戦士さんと『じゃれあって』いるのでしょうか……?」


68 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:31:43.96a5JeylAt0 (16/21)

 魔王城では、戦士が魔王に殴り飛ばされて宙を舞ったり壁を突き破ったりという光景が、割りと頻繁に見られる。
 最初にそれを見た時メイド女は、一体何事か、と驚いた。
 そして次に、思い人である戦士が傷を負ったという事実を把握し、勇気を振り絞って、それこそ清水の舞台から飛び降りる程の思いを背負いながら、その事について恐る恐る魔王に尋ねたのだが、その魔王は、

魔王『ああこれ?『じゃれあい』よ、じゃれあい。いやもう本当に全然喧嘩とかイジメとかそういう事じゃないから。本人同意の上だからこれ』

 と言っていた。魔王本人が言っていたのだから、多分そうなのだろうと思う。
 それに、戦士もそうだと言っていたし。



69 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:32:24.50a5JeylAt0 (17/21)

 只ちょっと、その時の戦士の体がまるで宙に浮いている様に見えたのと、魔王に首根っこ掴まれている様に見えたのと、首を凄い勢いでがくがく揺らしながら『ダイジョブダヨーゼンゼンイタクナイヨー』とかそんな言葉を口を閉じたまま甲高い声で喋っていたのが気になったといえば気になったが、正直もうそれ以上の追求はこっちの身が持たなかったので、止めた。
 だってその頃はまだ魔王様の事ちょっと怖かったですし。
 それにその上、後ろに鬼でも見えそうな笑顔してたんですものあの時の魔王様。あれは自分のチキンハートでは無理です、もう絶対無理。
 まぁそれでも心配なので戦士にも『じゃれあい』について聞いてみたら、

戦士『大丈夫大丈夫、正直いつ限界が来るか分からないけど、うん、今のところは大丈夫だから。心配してくれてありがとな?でも大丈夫だから、時々ガチで死にかけるけど』



70 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:33:19.47a5JeylAt0 (18/21)

 やたらと大丈夫大丈夫連呼していたのが印象的だが、それはつまり、そのくらい大丈夫だという事なのだろう。
 正直まだ少し心配だったが、本人が大丈夫だと言っているのにしつこく聞くのは悪いだろうという事で、それ以降メイド女は、そんな二人の『じゃれあい』が起こった時には、ちょっとハラハラドキドキな気持ちになりながらも、見守っているのである。

 そしてそんな今までの経験から、今回もそんな『じゃれあい』の一環なのだろう、と結論付けたメイド女は、心の中で戦士を気に掛けながらも、とりあえず目的地へ向かう事にした。
 



71 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:34:20.78a5JeylAt0 (19/21)

 今メイドの目の前には、左右に伸びた、他の所よりも幅の広い廊下がある。
 右に曲がれば食堂の方向へ。後何回か曲がれば、食堂に着くはずだ。
 ちなみに一度曲がった後、真っ直ぐ行くと、正面玄関に出る事が出来る。
 もう片方、左の道は、魔王の間へと一直線で辿り着ける道となっていた。

 で、メイドの目指す地点は食堂。だからメイドは当然、右の道を進もうと、まず最初の一歩を踏み出した。
 そして、大通りに足を踏み入れたその時、

 『何か』が、左から一直線に吹き飛んできた。



72 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:36:29.14a5JeylAt0 (20/21)

 それは、メイド女に驚く暇も与えず、彼女の髪を一撫でだけして、その目の前を通り過ぎる。
 そこに瞬く間も無く、新たな疾風と影が続く。
 それらは、先ほど吹き飛んでいった『何か』に追随するかの様に、幅広の廊下を通過していった。

 そして最後に、静寂が場を包んだ。

 数瞬で終わりを迎えたその一連の出来事に対し、メイドが出来た行動は、

メイ「ふぇぇ……」

 ただその場に、へたり込む事だけだった。


73 ◆rHuwTJzOS62011/05/31(火) 22:37:15.66a5JeylAt0 (21/21)

今日はここで終了。
じわじわと書き溜めが減ってゆく……。


74VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/31(火) 22:47:26.85E/toKzvIo (1/1)

普通に続きが気になるぞこのやろう。


75 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:13:06.3546mAQsBd0 (1/11)

始まり始まりー。


76 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:13:51.6646mAQsBd0 (2/11)

 ここは魔王城の一角にある武器庫。
 今そこにいるのは、目の前にある武器その他の山に手を伸ばした状態で固まっている戦士と、まるで新体操の着地の様な姿勢を保ったまま、戦士の頭の上に乗っている幼女の、二人だけだった。

 訳が分からないまま二人は変わらぬ体勢で数秒間固まり、そしてその後、幼女が口を開いた。

幼女「……む?ここはどこだ?」

戦士「魔王城武器庫もしくは俺の頭の上だと思う……」

幼女「じめんからこえがきこえる気がするが……たぶんきのせいだろう」

戦士「気のせいじゃないから!今君が居るの地面じゃなくて俺の頭の上だから!」


77 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:14:18.6146mAQsBd0 (3/11)

幼女「もしかして、じめんがしゃべってるのか……!?」

戦士「わざとだよな!絶対にわざとだよなこれ!」

幼女「まぁそんなことはおいといて」

戦士「あっれまさか俺このままか!?このままで第二ラウンド入るのか!?」

 そう言いながらも幼女を落とさない様に、慎重に今の体勢を維持する戦士。
 今彼に幼女の姿は見えないが、声と頭にかかる重さで、大体の年齢は想定出来る。
 それにより、自分の頭の上に突然降り立った来訪者がまだ幼いであろう事に気づいた戦士は、自分の頭から落ちる事により彼女が怪我をしない様、配慮しているのだ。
 そんな戦士の気持ちを知ってか知らずか、幼女は話を続行する。 



78 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:14:46.3646mAQsBd0 (4/11)

幼女「ここがどこか、知っていたらおしえてくれないか?じめんのようせいよ」

戦士「地面の妖精!?違う!だからそれ違うから!」

幼女「ちがうのか……」

戦士「あ、その、うん……何ていうか、ごめん」

幼女「……」

戦士「……」

 うっわ気まず!この空白超気まず!と、戦士が心の中で漏らしたその時、

 城内のどこかから、破砕音、というよりかは、爆発音に近いものが聞こえてきた。



79 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:15:20.4246mAQsBd0 (5/11)

戦士「な、なんだ!?」

幼女「はっ!?」

 幼女が何かを感じたかの様に声を上げた。
 そんな幼女の様子に気づいた戦士は、彼女に尋ねる。

戦士「どうした?何かあったのか?」

幼女「今、何か馴染みのある気配がした気がする……」

戦士(……馴染みのある気配?)
 
 直後、戦士の頭から、幼女がいきなり飛び上がり、地面に降り立った。
 その反動で、戦士の首が思い切り下がり、

戦士「ふぬぅ!?」

 と、一声。
 そして戦士が首の後ろを抑えながら振り向くと、既に武器庫の扉は開け放たれており、幼女の姿も無くなっていた。



80 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:16:06.1246mAQsBd0 (6/11)

戦士「……一体なんだったんだ、今の……」

 一人そう呟いた後、さてこれからどうしようかと戦士は考える。
 突然現れた来訪者は、その正体も目的も不明。これ以上不用意に接触するのは危ない可能性がある。というか絶対何かある気がする。しかし、

戦士(ここ、魔王城だしなぁ……)

 もし魔王に鉢合わせでもしたら、何をされるか分からない。
 彼女はまだ幼く、魔王にあっても逃げられる力など持っていないであろうと、戦士は思う。

戦士(つか年齢関係なしに、普通は無理だよなぁ……)

 そして数秒頭を捻り、唸った結果、

戦士「……とりあえず、探しに行くか」

 どこかへと消えた幼女を追って、戦士も武器庫の扉をくぐった。


81 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:17:05.8746mAQsBd0 (7/11)

ああっとそういえばタイトル出すの忘れてた。
というわけで今出す。
つってもあまり変わり栄えしない物ですが。


第二話その三
――異世界コンタクト、ケース3――


82 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:17:40.9546mAQsBd0 (8/11)

それと今日はも一つだけ。

これで二話が終了します。


83 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:18:09.3546mAQsBd0 (9/11)

第二話その四
――異世界コンタクト、ケース0――


84 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:18:39.6846mAQsBd0 (10/11)

 誰も居なくなった武器庫の中。
 そこにあるのは無造作に散らばった武器や防具、それに魔道具のみで、生物と呼べる類の物は一切存在しなかった。

 だがしかし、

??「――――規定値を、オーバーしました」

 声が聞こえた。
 その声は、抑揚も生気も無い声で、

??「――――条件クリア。第二段階へと、以降します」

 そして。


85 ◆rHuwTJzOS62011/06/01(水) 22:21:51.6946mAQsBd0 (11/11)

今日はここでしゅーりょー。

本当ならここらでキャラ紹介をする予定でしたが、それはしばらく延期します。

進まない筆と猛スピードで減る書きため、おぉぉぉぉ……。


86 ◆rHuwTJzOS62011/06/02(木) 21:58:44.69qx+5EH2q0 (1/1)

今日はお休み。明日更新予定。


87 ◆rHuwTJzOS62011/06/03(金) 23:29:14.84xsxqktUt0 (1/5)

はじめまほー。


88 ◆rHuwTJzOS62011/06/03(金) 23:35:54.24xsxqktUt0 (2/5)

 赤紫色の絨毯が一直線に引かれた、魔王の間と正面玄関を結ぶ幅広の廊下。
 そこに、正面玄関側に向かって高速で疾駆する二つの影があった。
 一つは影を追う影。

魔王「あはははは!良いわよアンタ!でも逃げなければもっと良いんだけどね!」

 魔王だ。金の髪を躍らせて、笑いながらもう一つの影を追う。
 対してもう一つの影、逃げる影は、

男「くっ……!」

 男だ。歯を食いしばって前を向き、全速力で走りながらも、時々後ろを振り返る。
 すると、後方数メートルを置いて、魔王が迫っている。
 正直、男は自分に追いつけるその能力に驚きを隠せないが、しかしそれよりも理解できないのが、



89 ◆rHuwTJzOS62011/06/03(金) 23:41:44.37xsxqktUt0 (3/5)

男(どうしてこうなった……っ!?)

 現在の状況である。
 男は逃げ続けながらもとりあえず、脳内でこの状況に至るまでの経緯を、簡潔に纏める。
 まず最初、ワープホールに吸い込まれた。
 次に、空高くから、装備無しでスカイダイビングをした。
 そして見知らぬ城みたいな建造物に突っ込み、さてどうしようと思った矢先、何故か現在進行形で背後に迫っている金髪の少女にぶん殴られてぶっ飛ばされた。
 で、何とか受身をとって即効で体勢を立て直し、今に至る。



90 ◆rHuwTJzOS62011/06/03(金) 23:45:43.21xsxqktUt0 (4/5)

男(……色々と展開早くね?)

 そんな中男は、心の中だけでため息をついた。
 状況整理の為の時間稼ぎにとりあえず逃げてはいるものの、どれもこれもがあまりに突然すぎて、整理したところで全然頼りにならない。
 そして時間が足りない。
 それでもどうにか考え付いた事がある。
 それは金髪少女に殴られた原因で、

男(やっぱ天井ぶち抜いたからだよなぁ……)

 そりゃ天井抜いたら怒るよなぁ、俺だって怒る。まぁいきなり殴りにかかるのは、少々どうかと思うが。
 そこまで男は考えて、とりあえず、



91 ◆rHuwTJzOS62011/06/03(金) 23:57:11.25xsxqktUt0 (5/5)

男「謝るか……」

 平和的解決への第一歩だ。
 そして、昔だったらこんな事は考えなかったのかなぁと、ふと、そんな事を思った。
 そして気づけば奥には閉じた巨大な扉が。

 つまりこの先は行き止まり。
 扉を破壊して脱出する方法も無きにしも非ずだが、天井壊してアレなのだから、扉まで壊そう物ならもう平和的解決は望めそうに無い。
 だから男は、扉が眼前まで迫ったところで、右足を全力で踏み込んだ。
 床が砕けた音がするが、気にしない。
 まだ扉を壊すよりはマシだろう。そういう問題では無いような気もしないでもないが。



92 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 00:04:24.38uzW98wkV0 (1/6)

 そして男は左足を軽く浮かせ、踏み込んだ右足を軸に、今までの速度を利用した高速の半回転を行った。
 左足を、右足の斜め前の地面に着けて、腰を軽く落とし、迫る魔王と対峙する。

魔王「ようやくその気になったわね!」

 それを男の臨戦態勢と勘違いした魔王は、歯をむき出しにした笑顔で、更に加速した。

男(速い……っ!?)

 こちらが振り返るとほぼ同時に速度を上げてきた魔王。
 その脚力には本気で驚嘆を禁じえないが、

男(けど、やるしかない……!)



93 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 00:10:31.43uzW98wkV0 (2/6)

 今自分は先ほどの動作のせいで、魔王に対して左に半身ずれている。
 そして今、魔王はとんでもない速度でこちらに直進中。
 だが、こちらが半身ずれたのに対して、相手は一切方向を変えずにこちらへと向かっている。
 しかも、更に速度を上げて、だ。
 それがわざとなのか、出来ないからなのかは不明だが、

男(位置的にはこっちの方が有利……)

 今の速度で方向を変えるとなると、大幅な隙が生じる事は間違いないだろう。
 ならば相手は方向を変えずに、そのままこちらへぶつかってくるはずだ。
 だが自分は今、相手から半身ずれている。
 それはすなわち相手の攻撃範囲から外に逃げやすいという事であり、
 だから、

男(何とか回避して懐に潜り込んでから、受け止める!)


94 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 00:20:32.19uzW98wkV0 (3/6)

それが男の作戦だった。
 相手の攻撃を正確に予測する事は出来ないが、ある程度は絞り込めない事も無い。
 今までの相対を見る限り、相手は恐らく自分と同じ徒手空拳で戦うタイプだ。
 だから分かる。徒手空拳はどんな攻撃をしようが、その範囲はごく限られてくる事が。
 あの速度ゆえ、真っ向から来られると躱すのは難しいが、半身でもずれていれば、難易度は大幅に変化する。
 正面から攻撃する場合は、前、左前、右前と、大雑把に分けて三方向への攻撃が可能であり、相手はそれを見切った上で判断を下し、行動しなければならない。
 だが、自分から見て相手が正面から左右どちらかの方向にずれている場合には、その方向に向かって攻撃を行わないと当たらず、それはすなわち相手から見れば、こちらへと斜めに入る攻撃しか来ないという事になる。
 


95 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 00:28:59.89uzW98wkV0 (4/6)

 そして相手の攻撃は徒手空拳。人間の構造上、片側へ攻撃を行っている時にもう片側へと攻撃を加えるという行動は、不可能とは言わないが精度も威力も望めないだろう。
 だから攻撃が来たら、只単純にそのもう片側、すなわちこちらから見れば右側に飛び込めば良い。それで攻撃を回避しつつ懐に潜り込める。
 最悪ダメージを食らったとしてもそれは軽い物だ。頑丈さには自信がある。だから多少の物なら強引に押し通せる自信も有る。
 最後の問題である相手の速度も、己の動体視力ならば見切れるはずだ。
 ――――作戦は決まった。
 ゆえに後は実際に行動に入るだけであり、

男(――――こい!)

 と、心も体も身構える。

 瞬間、



96 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 00:30:59.20uzW98wkV0 (5/6)

 瞬間、

幼女「みつけたぞ!」

 どこからか、聞きなれた声が聞こえ、

男「え?」

 それに気を取られた一瞬の後に、魔王が男の懐へと飛び込み、

 己の速度を乗せた右飛び膝蹴りを、男の脇腹に炸裂させた。


97 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 00:35:24.22uzW98wkV0 (6/6)

本日はこれにて終了。
と思ったら、んん、日をまたいでしまった。
こういう場合、
昨日はこれにて終了。
といっておくべきなのだろうかどうだろうか。

何はともあれ初めてのバトルシーン。出来栄えはいかに。

……こらそこ、ただ魔王様が走ってただけとか言わない。


98 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:23:33.34yV+9Yk/90 (1/21)

うぃぃぃやっほぉぉ始まるぞぉ!

御免。

ところで、そういえば前回タイトルを書くのを忘れてました。
この前同じ事やっといてなんですが、このタイミングでタイトルを今更出すのもアレだし、どうせネタも何もあったものじゃないんでタイトルは端折ります。
で、まぁ何というかもうタイトル無くてもいいよねって思ったんで、これに乗じて、これからもタイトルは端折っていく事にするんでまぁそんな感じで。

それじゃあ第4話、はーじまーるよー。


99 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:24:09.78yV+9Yk/90 (2/21)

 城自体のサイズに比例して、普通の家よりも巨大な扉を構えた魔王城の正面玄関。
 その玄関の脇に、何の前触れも無く、光が現れた。
 しかし光は数秒の後収まり、代わりに現れたのは、勇者一行+閻魔だった。 

魔法「……到着」

勇者「相変わらず便利だな。……ここに来るのは、一ヶ月ぶりか」

閻魔「おー、ここが魔王城ですか。大きいですねー」

僧侶「ところで、一ヶ月ぶりの実家はどうですか、男さん?」

魔男「えー、まぁどうと言われても……」

 特に変わらないけど、と続けようとしたその時、

 玄関が木っ端微塵に砕け、吹き飛んだ。


100 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:24:36.97yV+9Yk/90 (3/21)

魔男「えええ劇的ビフォアアフター!?」

僧侶「……何と言うか、これはまた、斬新な開門方法ですね」

閻魔「魔王城は概観も派手ですが、自動ドアはさらにド派手なんですね!」

魔男「え?何そのダイナミック開門。てか一ヶ月の間に一体何が!?」

魔法「……というよりかは」

勇者「普通に壊されただけみたいだな」

 魔法使いが視線を向け、勇者が指を指す方向。
 ぶち壊された玄関の、正面数十メートル先へ、残りの三人も視線を動かす。

 そこには、脇腹を押さえながら悶えている一人の男性が。


101 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:25:51.12yV+9Yk/90 (4/21)

僧侶「……どなた?」

魔男「てか本当に何があったんだ我が家ー!」

閻魔「……ってあれ!?もしかしてアレって男さん!?」

魔法「……知り合い?」

 そんな応酬の中、突如皆の背後から、疑問を意味する声が聞こえる。

魔王「あれ?……ってあれ!?何でアンタ達、ここにいるのよ!」

魔男「え?ってこの声はもしかして――」

 魔男は声の聞こえた方向へと振り返った。
 そこ、先ほど扉が消え失せた、魔王城の正面玄関にいたのは、

 現在の魔王城の主であり、つい先ほど玄関を壊した張本人でもある、魔王だった。



102 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:26:16.65yV+9Yk/90 (5/21)


 魔王が男に飛び膝蹴りを加え、玄関ごと吹き飛ばしたその直後。
 幅の広い廊下に繋がる、玄関近くの廊下に立つ幼女が呆然と、呟いた。

幼女「男が、きえた……?」

 自分がここに来た時、男は目の前の左右に伸びた廊下、こちらから見てT字路の交差点にいたはずだ。
 だから声をかけた。そして男は反応してこちらを向いた。
 だがその瞬間、男はその姿を消した。直後に何やら破砕音の様な音が鳴ったような気もするが、そんな事はどうでもいい。
 今はそれよりも、 



103 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:26:46.99yV+9Yk/90 (6/21)

幼女「……男……」

 彼の名を呼ぶ。
 
幼女「男っ……」

 独りだった自分を、救ってくれた人。
 そして、居場所を与えてくれた人。

幼女「男っ……!」

 そして、
 ――――最愛の人。

 だがその彼は、忽然といなくなった。
 何故かは解らない。
 ただ自分の前から彼は消えた。それだけが事実として存在し、
 だから幼女は、

幼女「……うぇ」



104 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:27:13.10yV+9Yk/90 (7/21)

 目尻に涙を溜める。
 そして、涙が零れる。

戦士「おー、いたいた。大丈夫だったか?」

 寸前で、背後から戦士が声をかけてきた。

幼女「……?」

 突然の呼び声に、訳が分からず声も上げずに振り向く幼女。
 それと同時に、目尻に溜まっていた涙が頬を伝う。
 それを見て戦士が心配そうに目尻を下げて、幼女に言った。

戦士「涙……何かあったのか?俺で良かったら話して……はっ、まさか魔王か!あいつに何かされたのか!?そういえばさっき、玄関の方で変な音したし……」



105 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:27:40.31yV+9Yk/90 (8/21)

 幼女に話しかけていたはずが、いつの間にか独り言に変わっている。
 当の幼女は、突然話しかけてきたと思ったら突然独り言を呟きはじめた戦士に対し、どうした物かと戸惑い、困惑した表情を浮かべていた。
 更に戦士は唐突に、何かに気づいたかの様に『はっ!?』と声を上げて自分の脇を通り過ぎる。

 そして戦士がT字路を右へ曲がり、幼女の視界からその姿を消した。
 だがその直後、彼の叫びが、

戦士「劇的ビフォアアフタァー!?」

通路に木霊した。

 


106 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:28:07.69yV+9Yk/90 (9/21)

 勇者一行+閻魔と魔王の、突然の邂逅。
 互いにとって予想外の出来事に――勇者一行は、魔王と会うであろう事は予想していたが、まさかこのタイミングでくるとは思っていなかった――その互いが驚き動けずにいる中、最初に口を開いたのは魔王だった。

魔王「……とりあえず、久しぶりね、『魔王』。それとも『魔男』って、言った方が良かったかしら?」

 明らかに、怒気を孕んだ声で言う。
 その返答に、名指しで呼ばれた魔男が、

魔男「オ、オヒサシブリデスネ、『側近』サン……」 

 目を逸らし、心身ともに冷や汗をかきながら、弱弱しい声で答えた。



107 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:28:36.65yV+9Yk/90 (10/21)

魔王「あらまだ『側近』って呼んでくれるの?人に『魔王』の称号を、押し付けといて。……もしかして、それはアレ?ある種の嫌味?」

 表面上は柔らかい笑顔で、しかし声には悪意と怒りをしっかりとこめる。
 実に魔王に相応しい威圧感。
 一応元魔王であったはずの魔男は、その威圧を直に受けて、外から見ても分かる程萎縮しきっている。
 しかし実のところ、魔王も内心かなり焦燥していた。

魔王(うわー何でこんな早く来るのよもー!まだ媚薬が出来て無いってのにー!しかも向こう凄く怯えてるしいやまぁ思わず今まで溜まってた憤りやら何やらのせいでついつい高圧的になっちゃったアタシのせいなんだけどあーもうこれ好感度ダダ下がりだわ。あーでもそもそも向こうはルート確定しちゃってるわけだしやっぱ寝取るしかないわけででも結局媚薬が無いしー……とりあえず、拉致っとこうかしらコイツ……)

 鋭い眼つきで自分を睨みつけてきた魔王に、思わず一歩後ずさる魔男。



108 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:29:37.63yV+9Yk/90 (11/21)

 そんな今までの二人のやり取りを横で見ていた他の面々が、各々に感想を述べた。

僧侶「……まるで浮気がばれた夫の様ですね」

魔法「何というか、ヘタレ?」

勇者「二人とも、言い過ぎだ。……まぁ確かに、もう少し堂々として欲しいとは思うが……」

閻魔「これはもしや、修羅場ですか!?生修羅場ですか!?」

男「茶化すな。それと……随分と暢気だなぁ、閻魔」

閻魔「えーそんな事ありませんよ――ってみぎゃあああああ!?」

 突如上がった閻魔の叫び声に、魔王と魔男を含めたその場に居る全員が彼女の方を向く。
 するとそこには、男の右手の五指によって頭を鷲掴みにされ、宙に持ち上げられている閻魔の姿があった。



109 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:30:10.42yV+9Yk/90 (12/21)

 みしみしと音を立てる閻魔の頭蓋。
 それを見て、魔王が一言。

魔王「……さっきの一撃、結構自信あったんだけどなー。まさかこんな早く復帰するだなんて……」

閻魔「もっと他に言う事はー!?ていうか男さんストップストップ!それ以上は脳が!脳が!!」

男「……」

閻魔「まさかの無言!?」

 状況が微妙にカオスな方向に傾きかける中、外の様子を見に来た戦士と、とりあえず彼を追いかけていた幼女が、玄関から出て来て、

戦士「おいおい魔王、玄関ぶっ壊れてたけど一体何があったうわぁぁぁぁ勇者だぁぁぁぁ!!」

幼女「あっ――男!……と、それに閻魔もいたのか」


110 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:30:38.55yV+9Yk/90 (13/21)

僧侶「ああお久しぶり、戦士さん。元気そうで何よりです」

勇者「む?おお本当だ、久しぶりだな。戦士」

閻魔「あっれ!?幼女さん何か私に対する反応薄くありませんかって男さん手を離すのはいいけど放り投げるのはらめぇぇぇ!」

男「幼女!?無事だったのか!」

魔王「……何?この状況」

魔男「……と、言われましても……」

魔王・魔男(まぁでも――――ある意味ナイスタイミング……!)

 舞台は、更に混迷へと向かってゆく。



111 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:31:21.02yV+9Yk/90 (14/21)

 だがそんな迷いに迷った流れを変える、一つの異変が発生した。

全員「!?」

 魔王城の一角が、突如として爆発を起こしたのだ。

 否。それは爆発ではなく、破砕だった。
 破砕は、戦士が先ほどまで居た武器庫を中心にして、広がっていく。
 
 そして壁を破り、天井を砕き、破砕が現れた。

 その正体は、

戦士「……何だ?アレ」

幼女「ずいぶんと、おおきなゼリーだな」

勇者「成る程。あの色なら多分、桃味と言ったところか」

男「ああアレピンク色だしな――ってねぇよ!」

魔男「あー、てかアレってもしかして……」

魔法「……スライム?」



112 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:31:58.63yV+9Yk/90 (15/21)

 魔王城に突如として現れたその物体は、ゼリー状の体をした直径二十数メートル程の、巨大な球体だった。
 球体の中心部には色の濃い、数メートル程の核があり、それをピンク色のゼリーの様な物質で包んでいるのが、皆の目から確認できた。
 魔王城を玄関側から見た時、左前の角にあたる箇所に、武器庫がある。
 スライムはその体の中心を、武器庫があった位置に置いていた。
 その為スライムは、魔王城の角に存在していた壁と天井を根こそぎ壊し、その透き通ったピンク色の体表を、魔王城の前に居た全員に向かって曝け出している。

魔王「……で、何であんな所にスライムが居るのよ。戦士」

戦士「いや、俺に振られてもな……」

魔王「でもあそこって武器庫でしょ?元々アンタが居たんじゃないの?」

戦士「んー、つっても俺が居た時はそんな変な事なんて――」



113 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:32:36.20yV+9Yk/90 (16/21)

 と言いながら、戦士は近くに居る幼女の方を向いて、

戦士「……もしかして、何か関係あったりする?」

幼女「いや、わたしもあんなのははじめてみた。しかし……」

戦士「しかし?」

幼女「……アレを見てると、ゼリーがたべたくなってくるな」

男「あー、じゃあ家帰ったら買ってやるよ」

閻魔「わーい!」

男「うるせぇ十九歳は黙ってろ」



114 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:33:10.34yV+9Yk/90 (17/21)

閻魔「じゅ、十九だからってゼリー食べちゃいけないんですか、いけないんですか!?」

男「少なくともゼリー買ってやるという言葉に対する反応が『わーい』ってのはねぇよ。てか誰もお前に買うとはいってねぇ!」

僧侶「……まぁあそこの三人家族はほおっておくとして、結局あれは何なんでしょうね?」

男「なっ……べっ、別にそんなんじゃないんだからな!」

閻魔「でも私は兎も角実際の所、男さんと幼女さんは家族当然の関係ですよね」

幼女「……それは違うぞ、閻魔」

 え?と、閻魔だけでなく男も驚きを見せる中、幼女が胸を張って言った。

幼女「私と男は『家族当然』などではなく、『家族』そのものだ!」

 そして男が照れくさそうに頬を掻き、

幼女「いや、もっとせいかくに言うと……夫婦だ!」

 男から、皆が引いた。



115 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:33:42.53yV+9Yk/90 (18/21)

男「誤解だ!確かにこいつは俺の家族だけど、あくまでも妹みたいなもんであって、別にそんな疚しい関係なんてもんは無い!」

僧侶「妹『みたい』な……失礼な質問ですいませんが、血縁関係はおありで?」

男「無い。けど血の繋がりなんて関係ないだろ?大事なのは、心の繋がりだ」

僧侶「というわけで、何故か物凄いこっぱずかしい科白を頂きましたが……まぁそんな事は置いといて皆さんご一緒に、さん、はい」

 何故か男が青筋を浮かべるが、皆はスルーした。
 そして僧侶の声と、それに合わせて水平に上げた両手を合図にして、皆は一斉に、

全員「義理の妹……!」

男「おぃいいい!?何その反応!お前ら義理の妹を何だと思ってんの!?」



116 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:34:21.36yV+9Yk/90 (19/21)

僧侶「はて何の事でしょう?……ま、そんな事よりそろそろ本題に入りましょうか」

 何故か男が拳を握り締めたが、皆はスルーした。
 
戦士「で、結局何なんだアレは?」

魔男「ていうか何であんな所に……」

魔王「まぁ別に、アレが何であろうがアタシはどうでもいいけどね。……ぶっ飛ばせばいいだけだし」

僧侶「……なんというかまぁ」

男「いかん、少し同調してしまった」

閻魔「男さんもそういうタイプですからねぇ」



117 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:34:48.37yV+9Yk/90 (20/21)

勇者「……確かに魔王の意見も一理ある。が……それはそれで、どうやってアレをどかすのだ?」

魔王「は?どうやってってそりゃあ殴って……」

勇者「……あれを見てみろ」

 勇者が指差す先。
 そこはスライムの体表と魔王城の壁との境界線上であり、そこでは一つの現象が生じていた。

魔王「なっ、あれって……」

 スライムの体表に接触している壁は、徐々にその面積を減らし、それと入れ替わる様にスライムの体表がその面積を増やしていく。
 そう。
 それは正しく、

僧侶「魔王城が、吸収されている……?」



118 ◆rHuwTJzOS62011/06/04(土) 22:41:42.86yV+9Yk/90 (21/21)

今日はこれにて終わりで候。

今回は今までに比べて、地の文が大分少なくなってきました。
でも個人的にはこれぐらいがやりやすいと思ったり。

このSSも、終わりが近づいて参りました。
そして書き溜めも終わりに近づいてます。崖っぷちです。
……果たして書き溜めがが無くなる前に俺はSSを書き終える事が出来るのだろうか。


119VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/05(日) 08:32:17.68SpI6XPxw0 (1/3)

乙っしたー


120 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 20:28:47.91SUg8go3W0 (1/13)

今すっごく大事な事を言ってなかったのに気づきました。

このSSの元スレには幼女の方の『男』と魔王の方の『男』の二人の『男』がいるので、
このSSに限っては、幼女の方を『男』、魔王の方を『魔男』として表記しています。
説明忘れててマジすいませんでした。

……でも、誰もこれについて尋ねなかったって事は、もしかして皆流れで分かったって事?
……それかそもそも読んでる人が殆どいなゲフンゲフンよーしそれでもおじちゃん頑張っちゃうぞー☆

今日の更新は9時以降となります。


121VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/05(日) 22:07:04.22k8uybG9Bo (1/1)

wkwk


122 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:27:29.39SUg8go3W0 (2/13)

はーじまーるよー


123 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:28:26.52SUg8go3W0 (3/13)

 ピンク色の巨大スライムが魔王城を吸収しつつある中、皆は魔王城近くの平地の一角に集まっていた。
 そこに、魔王の声が響く。

魔王「それじゃあ今から『第一回スライム撃退同盟会議』を始めるわよ!ちなみに今回は時間の都合上挙手は省略!」

僧侶「……もしかして、殆ど無関係なはずの私達まで同盟入りさせられてます?これ」

勇者「まぁいいじゃないか。魔王城は、魔男の実家でもあるのだからな」

魔男「あー、何かスイマセン勇者さん」

勇者「いや、別に構わないさ。それに、魔物退治も勇者の仕事だしな」



124 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:28:59.83SUg8go3W0 (4/13)

戦士「……あー、イカン。モチベーションが垂直落下だわこれ」

魔王「……我慢しなさい、アタシもするから。それよか今はあいつら利用して、我が家を食ってるあのスライムをさっさと退かす方が先よ」

戦士「まぁ、確かに。あのままじゃ魔王城が更地になりかねないもんな……」

男「……なぁ、これその場のノリで集まってはみたものの、俺達って今回実は全然関係ないんじゃないか?」

閻魔「そんな事ありませんよ!だって閻魔帳は、あの魔王城の中にあるんですから!」

幼女「なるほど。それではあのスライムを早くたおさねば、えんまちょうはやつのいぶくろのなかにおさまるわけか」

男「……スライムに胃袋があるのかどうかは置いとくとして、もう別にそれでもいいんじゃないか?物が無くなればさすがのお前も、諦めがつくだろ」



125 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:29:36.71SUg8go3W0 (5/13)

閻魔「ひ、酷い!でもいいですもん!だって私には心強い現地の協力者がいるから、ねぇ僧侶さん!」

僧侶「うわぁ何て突発的なキラーパス。……まぁでも、ここで会ったのも何かの縁ですし。折角なんでちょっと思い出作りでもしませんか?ああほら、ちょうどそこに巨大スライムが――」

男「何で巨大スライムで思い出作りせにゃならんのだ!てかアンタも何気に俺達を巻き込もうとしてるよな!」

僧侶「まぁ私も巻き込まれた側ですし、仲間は多い方がいいじゃないですか。ねぇ?」

男「知るか」

僧侶「……ああ、もしかして――怖いんですか?」

男「……安い挑発だな」

僧侶「ですよねー、自分でもそう思いましたよ。……まぁ実際の話、仲間が多い方がいいというのは本当なんですよ。なんせあのスライムは全てが未知数ですから。吸収能力を持った個体も、あそこまで巨体を持つ個体も、私が知りうる全てのスライムに当てはまりませんし」



126 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:30:29.72SUg8go3W0 (6/13)

男「だから、俺達に協力して欲しいと?」

僧侶「ええ。閻魔さんから聞いた話だと、貴方達はそちらの世界で最強クラスの力を持ってるという事らしいですから」

男「……まぁな。それでも、いや、だからこそこっちとしては、荒事はあまり気が乗らないんだがな」

僧侶「……報酬は、ゼリー食べ放題でどうですか?」

男「まさかの餌付け!?そんなんに乗る奴なんて――」

幼女「そのいらい、ひきうけよう」

男「くっそ正直そんな予感はしてたけどな!?」

僧侶「一名様ご案内ー。で、そちらの……男さん、ですよね?貴方はどうしますか?」

男「……あー、幼女がやるってんなら仕方ねぇ。保護者としての義務もあるしな」

僧侶「ご協力、感謝いたします」



127 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:31:01.14SUg8go3W0 (7/13)

僧侶(……良い方向に傾いてきましたね。勿論面白さ的な意味で)

 各々が様々な思惑を乗せて会話を進める中、魔王が拍手を二回打ちつつ、

魔王「はいはーい、雑談タイムしゅーりょー。というわけで、こっちに注目!」

 皆は言われた通り、魔王へと視線を向けた。
 彼らの視線を浴びる中、魔王は逆に、皆へと言葉を送る。

魔王「とりあえず、あのスライムをどうにかする方法思いついた奴は手ぇ上げなさい」

戦士「さっき挙手は省略って言ってなかったか……?」



128 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:32:30.56SUg8go3W0 (8/13)

 戦士が広場の、しかし皆の集まっている場所とは離れた場所で伏している中、男が手を上げ、

男「なぁ、アレってただ単純に、殴ってぶっ飛ばすだけじゃ駄目なのか?最初アンタが言ってたみたいに」

 その問いに魔王は、

魔王「はっ」

 と鼻で笑い、返答とした。
 それに対し男が額に青筋を浮かべるが、それを意に介さず僧侶が、魔王の代わりにとでも言うかの様に言葉を紡ぐ。

僧侶「これはあくまでも推測ですが、恐らくあのスライムに物理攻撃の類は効かないでしょう」

男「……体が柔らかいから、とかか?」

僧侶「まぁ、それもあります。ですが、それよりも厄介な能力がアレにはあるのですよ」



129 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:34:37.53SUg8go3W0 (9/13)

閻魔「……物体の吸収、ですか?」

僧侶「ご名答」

 男に向かって閻魔が勝ち誇ったかのように胸を張るが、男は無視して僧侶の言葉に耳を傾ける。

僧侶「見れば分かると思いますが、アレは今魔王城を『吸収』しています。今の所、実際に吸収されているのを確認できたのは魔王城の石壁だけです。しかしあそこ、今アレが居座っている所は元々武器庫だったらしいのですが、それにも関わらずアレの体内には武具や魔道具等の類は一切確認出来ません」

男「……それらも吸収されたって事か」

僧侶「もしかしたらあのスライムが出現したとき外に弾かれた、という可能性も否定は出来ませんが、まぁ十中八九そういう事でしょう。武器が周りに散らばっているわけでもありませんし」

男「成る程、つまりあのスライムに物理攻撃が効かないってのは――」

閻魔「アレに触れたら即座に吸収されるからなんですね!――って男さんこめかみに拳が!拳が!」



130 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:36:07.83SUg8go3W0 (10/13)

 ギブ!ギブ!と、閻魔が連呼し始めたのと同時。
 突然魔王城の、スライムがいた方向で爆発音が鳴った。
 突然の事に三人が音源へと顔を向ける、そこには他の皆が集まっており、

幼女「……やはりいせかいとくゆうのぶっしつには、極大消滅呪文はきかないか」

魔法「今のが異世界の魔法……」

勇者「……だが着眼点は悪くないな。今のはあくまでも『効かなかった』だけであり、『吸収』はされなかった」

魔男「無効も吸収も、こっちから見たらあまり変わらない気もするけどね……」

幼女「いや、効かなかったのは極大消滅呪文のとくせいじょうのもんだいだ。他の魔法ならばいけるかもしれない」

魔王「ま、でも今の魔法は異世界製だから、こっちのやつだとどうなるかは分からないけどね」

魔法「……だったら次は私が」


131 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:36:36.79SUg8go3W0 (11/13)

 言うなり魔法使いは、自らが羽織っている黒いローブのポケットに両手を突っ込み、そこから自分の身長とあまり変わらないサイズの、二本の杖を取り出した。

男「……何だ今、明らかに世界の法則が乱れてたぞ」

閻魔「……これは所謂『お前が言うな』、というやつでしょうか」

 再度、閻魔はグリグリされた。
 だが魔法使いは両手に杖を構え、その先端をスライムに向ける。
 同時に杖の先端には光で描かれた方陣、魔法陣が瞬時に展開された。
 そして一瞬だけ空白が生まれ、

 魔法陣から生成された無数の炎弾が、眼前のスライムへ直撃した。
 爆破の音が連続で響き、そのたびに熱風が皆の体を撫でる。



132 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:37:18.57SUg8go3W0 (12/13)

閻魔「これは所謂『汚ねえ花火だ』というやつですね!」

男「お前閻魔の癖に、ホント俗世に染まってるよな……」

魔男「もし勇者さん達と敵対したままだったらアレ食らってたのかなぁ……」

魔王「ま、あの程度じゃアタシには傷をつける事すら出来ないけどね」

僧侶「しかし、あのスライムには効いてるようですね」

 僧侶の言うとおり、爆炎はスライムの体を見る間に削っていく。
 そしてその炎はあっさりと、スライムの核へ到達しようとしていた。

勇者「核を破壊すれば、スライムの肉体は消滅する。……これで終わりだな」

 だがその瞬間、勇者の言葉を裏切るかの如き異変が、スライムに起こった。




133 ◆rHuwTJzOS62011/06/05(日) 22:38:32.54SUg8go3W0 (13/13)

今日はここで終了。

ラストまでもうちょっと!


134VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/05(日) 22:58:23.28SpI6XPxw0 (2/3)

がんばれぇーい


135VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/05(日) 22:59:55.34SpI6XPxw0 (3/3)

がんばれぇーい


136 ◆rHuwTJzOS62011/06/06(月) 21:16:38.83lVYJ3RhF0 (1/8)

うぇーいうぇい、始まるよー。


137 ◆rHuwTJzOS62011/06/06(月) 21:17:08.70lVYJ3RhF0 (2/8)

 魔王城上空で、暗雲が渦巻いていた。
 黒色の雲の中では、時々雷鳴が轟き稲妻がその姿を現す。
 しかしその中央には、暗雲とは別の物が存在していた。

 それは、桃色の卵型をしており、雷を纏う雲の中心で、まるで心臓の鼓動のようなリズムで淡い光を発していた。
 そしてその下、魔王城近くの広場では、魔王が声を響かせる。

魔王「……それじゃあ、『第二回スライム撃退同盟会議』を始めるわよ!」

 しかし男が手を上げて言った。

男「……なぁ、会議はいいんだが、その前に一言だけいいか?」



138 ◆rHuwTJzOS62011/06/06(月) 21:18:12.14lVYJ3RhF0 (3/8)

魔王「仕方ないわね!『アレはスライムじゃないだろ』以外の言葉なら聞いてあげない事もないわ!」

男「じゃあもう俺から言う事はねぇよ!」

魔男「てか自覚はあったんだ……。それにしても――」

 魔男が上空、卵型の物体を見上げ、

魔男「ホント、なんなんだろうね……アレ」

僧侶「何かと聞かれると……現時点では『スライムだった物』としか答えられませんね」

 空に浮かぶ卵形の物体。
 その正体は、僧侶が言ったとおり『スライムだった物』である。

 事の発端は少し前、魔法使いの炎があわやスライムの核を飲み込もうという時まで遡る。



139 ◆rHuwTJzOS62011/06/06(月) 21:18:38.42lVYJ3RhF0 (4/8)

勇者「核を破壊すれば、スライムの肉体は消滅する。……これで終わりだな」

 勇者の言葉が示す様に、魔法使いが放った炎弾はスライムに触れるたびに爆破を生み、スライムの肉体を抉り、燃やし、ついにはその核を剥き出しにした。
 しかし、そこまでだった。
 
 爆破によって、確かに核は、そのつるりとした表面を外気に晒した。
 しかしてその瞬間、それは莫大な量の光を放ち、周りに居る皆の視界を塗りつぶす。
 やがて皆が視界を取り戻した時、核があった、もといスライムがあった場所に居たのは、

勇者「卵……?」

 濃い桃色に染まり、一切中を見せる事の無い、しかしスライムと同じ程度の大きさの、卵型の物体だった。
 スライムに代わって唐突に現れたそれは、地面に向かって魔力を吐き、まるでロケットの如く魔力の光をたなびかせながら空へと飛び、今に至る。



140 ◆rHuwTJzOS62011/06/06(月) 21:19:04.70lVYJ3RhF0 (5/8)

閻魔「……で、どうするんですか?アレ」

男「どうするっつっても……あんだけ高い所にいられちゃ手も足もでねぇよ」

魔法「……」

 その時、魔法使いは何の前触れも無く両手の杖を無言で構えて魔法陣を展開。

魔法「……発射」

 拳大の太さを持った光線が、魔法陣から上空の卵型の物体に向かって発射された。
 魔法使いの突然の行動に他の一同は、驚きながらも彼女が放った光線の軌道を追う。
 かくして光線は、卵型の物体の表面にまで届いた。
 その光線は徐々に出力を失い、やがて消滅した。
 だがしかし、光線が当たったはずの表面には、



141 ◆rHuwTJzOS62011/06/06(月) 21:19:30.88lVYJ3RhF0 (6/8)

魔法「……効いていない」

 傷一つ、ついていなかった。
 その様子を見ていた勇者が、ため息混じりに呟いた。

勇者「先ほどのスライムとは違い、魔法に対する耐性もあり、か。……本格的に打つ手がなくなってきたな」

幼女「しかしぎゃくにさきほどとはちがい、アレはなにもしてこないな」

僧侶「確かにそうですね。強いて言えば空を飛んだぐらいですし」

魔王「でもアレ、飛ぶときに魔力使ったわよ?さっきの光も魔力使ったやつだったし」

魔男「うーん……確かにそれを考えたら、まだ完全に無害とは言えないなぁ……」

男「降りて来てくれさえすれば、まだいくらでもやりようはあると思うんだがな……」

閻魔「降りてこーいって念じますか?おりてこーいおりてこーい……」

 空に向かって手を翳し、ぶつぶつと呟き始めた閻魔を放置し、改めて男は空へと向き直る。

 すると突如、



142 ◆rHuwTJzOS62011/06/06(月) 21:19:59.30lVYJ3RhF0 (7/8)

??「オオオオオオオオ……!」

 唸り声が聞こえてきた。
 獣の吼える声とも、人の叫ぶ声とも違う。
 それは高くも地鳴りの様な震えを伴って聞こえる声だった。

 その発生源は男、そして唸りに反応した皆の眼に写る、

男「あの卵みたいなのが出してるのか……?」

 視界の中では未だ卵型の物体が、唸りと共にその体表で鼓動の様に光の点滅を繰り返している。
 そして皆が見守る中、光の脈動は徐々に早くなり、

??「オオオオオオオオオオオオオ――――!!!」

 まるで産声を上げるかの様にいっそうと声を荒げたと思うと、
 卵型の物体を内から砕き、『それ』は現れた。



143 ◆rHuwTJzOS62011/06/06(月) 21:22:35.26lVYJ3RhF0 (8/8)

短めだけど今日はここで終わり。
多分次回が最終回です。

でもまだ最終回書き終えてないし、しばらくの間書く時間がとれるかどうかも分からないので、
ちょっと次の投下までは時間がかかるかも。


144VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/06/06(月) 23:20:02.68b6ZDe0sAO (1/1)


わーたしまーつわ


145VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/07(火) 12:12:00.76H3cwnMWd0 (1/1)

いつーまでーも


146VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県)2011/06/07(火) 12:38:20.97wt2LmJcjo (1/1)

いつまでも まーつーわ


147 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 21:58:45.57kXqUj7Cj0 (1/23)

よ、ようやく……ようやく終わる……。
長らくお待たせしましたがいよいよ最終回。
ここまでgdgdと続いてきましたが、最後まで変わらぬ調子で投下開始!


148 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 21:59:17.96kXqUj7Cj0 (2/23)

 産声を上げながら、卵型の物体を砕いて出てきたのは、

勇者「竜……!?」

 体表こそ、鱗が無く卵型の物体の様に桃色で滑らかな物を持っているが、他にも蜥蜴をより凶悪にした様な顔と、蝙蝠を彷彿とさせる翼。
 強靭な筋肉に包まれた太い後ろ脚と、鋭い爪を持つ前足。
 そして、それら全てを繋ぐ、巨大な胴により、その『竜』は構成されていた。
 竜はその鋭い瞳で、眼下に居る皆を見渡すと、

竜「グルォオオオオオオオオオ――!!」

 体を下に傾け翼をはためかせ、視線の先へと一直線に降下して来た。

 そんな行動を見せた竜に対して、眼下では皆が思い思いに騒いでいた。



149 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 21:59:58.89kXqUj7Cj0 (3/23)

戦士「うわぁー!目が覚めたと思ったら何か凄いのがキター!?」

魔王「でもこれで攻撃が届くわね!」

勇者「……スライムの時の様な吸収能力が、残って無ければいいんだがな」

魔男「これそういう問題!?」

魔法「……私達の目的ってなんだったっけ」

僧侶「はははそんな事はどうでもいいじゃないですか。強いて言うなら今の目的は『生き残る事』ですかね?」

男「……何がどうしてこうなった」

幼女「多分、閻魔が『おりてこい』などといったからではないのか?」

閻魔「えっちょっだ、だって、メタモルフォーゼして降りてくるなんて思いませんでしたもん!いやてか世界はそんなフラグに忠実じゃありませんって!」

男「……でもスライムは兎も角、俺達が今ここにいるのって元の元を辿ればお前が原因なんだよな?」

 閻魔が口笛を吹きながらそっぽを向いた。



150 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:01:15.83kXqUj7Cj0 (4/23)

 しかし竜は依然として動きを止めない。
 そしてその高度を地上数十メートルまで落としてきたその時、

勇者「――――切り裂けっ!!」

魔法「そこ……」

 勇者が腰の剣を高速で抜刀し、魔法使いが両手の杖で二つの魔法陣を展開する。
 剣からは圧縮された稲妻の一閃が、二つの陣からは圧縮された炎の球がそれぞれ発射された。
 それらはほぼ同時に竜に直撃し、光と炎が弾けとぶ。
 だが、

竜「オオオ……!!」

勇者「駄目かっ……!」

 竜の体は相も変わらず、その光沢を鈍らせる事は無かった。
 二重の攻撃に対し竜はそれを意にも介さず、しかし一つの新たな挙動を見せる。
 羽の羽ばたきを持ってその身を空中に留めて体を上げ、しかし首だけ下へと動かし、厳つい顔を皆へと向けたのだ。
 そして歯を食いしばり、小さく唸る。

竜「グォ……」

魔男「あれってまさか……」

僧侶「ええ……もしアレが本当に竜の一種ならば――『ブレス』が来ますね」



151 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:02:24.16kXqUj7Cj0 (5/23)

男「ブレス?」

僧侶「話は後です、今は――」
 
 言っている間に、竜は口を大きく開き鎌首をもだげて息を吸いこむ。
 すぅー……っと空気の流れ込む音が竜の口から聞こえた。
 竜が口を閉じ、首の軌道を下へと向ける。 
 しかし次の瞬間、

勇者「皆、逃げろ!」

 首を下げきった竜の口が開き、その口から溢れんばかりの太さの光線が、発射された。
 光線は着弾した瞬間爆発を起こし、それは辺り一体を多い尽くした。
 そして光が消えた時、その場には深さ数メートルのクレーターが空いており、しかしそこには煙を上げながら伏している戦士しかいなかった。
 だが竜は、辺りを見渡して、見つけた。
 クレーターの右横十数メートル先、皆はそこに移動していたのだ。



152 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:02:58.66kXqUj7Cj0 (6/23)

閻魔「あああ危なかったぁー!」

幼女「わたしのテレポートのおかげだな。さぁ男よ、ほめるのだ!そしていn」

男「確かに良くやったが、それは無しだ」

勇者「しかし、まさか魔道具も使わず、あんな短時間で空間転移を行うなんてな」

魔法「異世界の魔法、侮れない……」

幼女「……まさかわたしも成功するなんておもわなかった……」

男「俺もまさか張本人からからそんな科白が出てくるなんて思わなかったわ!」

僧侶「まぁまぁ、皆助かったんだからいいじゃないですか」

魔男「あの、さりげなーく一人だけ助かってない様な気が……」

僧侶「そんな事よりもあの竜、またこっち向いてきてますね」

??「グォ……!」

 竜は再度、息を吸い込み始めた。
 そしてブレスを吐き出そうと、口を開く。
 だがそれと同時に、二つの影が竜の顔の上下に躍り出た。



153 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:03:51.50kXqUj7Cj0 (7/23)

 影の一つは魔王。
 彼女は両手を絡めて上から下へと振りかぶり、竜の口を上から打撃した。
 もう一つの影は男。
 彼は捻りを加えながら地面から跳躍し、その勢いを持って斜め下から竜の顎に向かって回し蹴りを加えた。
 それら二つの攻撃が同時に入った事により、光を湛えた竜の口が勢いよく閉じた。
 それにより竜の口内に溜まった光が行き場を失う。
 その結果、一瞬竜の顔が膨らんだかと思うと四散し、その代わり光の爆破が男と魔王を襲った。
 光に吹き飛ばされ、二人は落下する。
 対し竜は、その顔を木っ端微塵にされながらも翼をはためかせ、未だ宙に浮いていた。
 そして地面に落下した男と魔王が起き上がった。

男「あー、びっくりした……」

魔王「ま、直接じゃなくて爆風食らった様なもんだから、別に怪我とかは無いけどね」

僧侶「何ていうか、さすがですねぇ二人とも」

閻魔「ていうか何か竜?がグロイ事に!」

勇者「……顔を吹き飛ばされても生きているのか。少なくとも、ただの竜では無いらしいな。しかも――」



154 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:05:12.21kXqUj7Cj0 (8/23)

 吹き飛んだはずの竜の首は、少しずつではあるがその形を取り戻していた。
 付け根から生える様に、竜の首は再生している。

勇者「再生能力付きか……」

魔王「しかもかなり堅いわよアイツ。最初の魔法だけじゃなくて、さっきのアタシ達の攻撃も、それ自体には殆ど効果ない感じだったし」

僧侶「更にその上攻撃力も高い、と。いやぁ、随分と面倒な事になってしまったようで」

魔男「他人事だなぁ……」

男「……俺たちも、本来なら他人事のはずだったんだがな……」

 しかしまぁどうしたものかと皆が頭を捻っていると、空から一本の矢が飛んできた。
 それは鏃を真下に据えて落下し、

戦士「あいたぁ!」

 起き上がろうと膝をついていた戦士の頭上に、落ちた。
 突然頭に矢が刺さり、叫びを上げた戦士。
 皆はその声に反応し、そして魔王が一言。

魔王「……0点ね」



155 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:07:44.24kXqUj7Cj0 (9/23)

戦士「お前何採点してんの!?これ狙ってやったわけじゃねぇから!」

僧侶「それでは、何でそんな愉快な触覚を生やしてるんですか?」

戦士「俺だって聞きたいわぁ!てか久しぶりに会ってもお前ってホント変わらないのな!悪い意味で!」

僧侶「まぁ久しぶりと言っても一ヶ月そこらですしねぇ。それぐらいじゃ人はそうそう変わりませんて」

男「……なぁ、アレどうみても致命傷にしか見えないんだが」

幼女「たしかにぷっすりと入ってるな。……じんたいのしんぴというやつか」

閻魔「まぁ男さんの場合は刺さりすらしないんですがね、多分」

魔王「で、結局それはなんなのよっと」

 そう言いながら、魔王は片手で戦士の頭に刺さった矢を引っこ抜いた。
 矢が刺さっていた位置から血が大量に吹き出てきた為、戦士が悲鳴を上げたが、魔王は気にせずその矢を観察する。
 そして、

魔王「……紙?」


156 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:08:24.12kXqUj7Cj0 (10/23)

 矢羽の根元付近に、幾重かに折り畳んだ紙が結んであるのを発見した。
 魔王は何のためらいも無くその紙の結び目を解き、それを開いた。
 そして彼女はそれに目を通し、
 手で出血元を押さえている戦士を初めとした皆も、横からその紙を覗き込む。
 そこに書いてあったのは、

『親愛なる側近ちゃんもとい魔王ちゃんへ

 やっほー、調子はどうだい?こっちは絶好調だよ!
 昨日も新薬の開発に成功しちゃってさー。我ながらマジ天才かと思ったね、アレは!
 ってまぁそんな事は置いといて……。
 ここ最近、変な魔道具を見かけちゃったりしなかった?掌サイズの卵みたいな形した奴なんだけど。
 もし見たらさぁ、こっちに送ってくれないかなぁ?
 実はさー、ガチでやばい代物なんだよねーソイツ。
 何とも結構昔にいた悪名高い職人が数年ぶっ通しで作り続けた上に、最終的には自身を生贄にして完成させたらしくて、何か世界を滅ぼす程の力を秘めてるっていう事らしいのよー。
 あくまでも噂だからそれが嘘か真かは定かじゃないんだけど、でも見つけた時にちょっと解析してみた感じ真面目に危なげな事だけは分かったしまだ待機状態だったから、厳重に封印をかけて保管してあったんだよー。ガラクタと一緒に倉庫の中に放り込んで。
 でもつい三日前に、久々に倉庫の掃除をしてたらさー……何かどっかいっちゃってた。テヘッ☆



157 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:08:50.39kXqUj7Cj0 (11/23)

 で、まぁさすがの私も『うわまじやっべぇわこれ』とか思ったんだどさぁ、でもその時は研究の途中で、しかも倉庫の掃除に時間を割いてたもんだから、なんていうの?研究中毒?みたいなのが来てさぁ。
 まぁそんな感じで今の今までそれの事をすっかり忘れててね?
 そういえばアレには『強者に惹かれる』みたいな特性があったような気がするなーって事で、とりあえず魔界で一番強い魔王ちゃんにこの手紙を送ってみた訳よ。
 ま、でも実は消失時の残存魔力やら何やらから察するに多分、この手紙を送る頃には起動してるんじゃないかなーとも思うんだけど……まぁ魔王ちゃんなら大丈夫だよね!強いし!
 というわけだから、怪我とか病気とかには気をつけてねー。それじゃまた!
                    
                                貴方の大親友○○より

P.S.
媚薬はもうちょいで完成するから期待して待っててねー。今回のはすっごい自信作だから!勇者だろうと魔王だろうとこいつならもうイチコロだぞ☆』

※まだ本編には名前が出て無いキャラなので、ここでは『○○』と表記させていただきます。ご了承ください。



158 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:09:26.41kXqUj7Cj0 (12/23)

魔王「――何が『それじゃまた!』だコラー!!」

戦士「え?ていうか何、お前友達とかいたのって止めて!鏃で出血塞ごうとするのは止めて!」

 何のためらいも無く鏃を戦士の頭に戻した魔王は、ため息をつく。

魔王「『○○』ってのは、前に話した『知り合い』の事よ。まぁこっちとしては『親友』というよりかは『腐れ縁』に近いんだけどね……」

 そんな魔王の言葉に魔男が頷いて、

魔男「そういえば最近ご無沙汰だったなーあの人。……ところで媚薬って一体――」

魔王「ああっと竜がこっちに向かってくるわ!」

 皆が見ると既に竜は再生を終えており、咆哮と共にこちらへと襲い掛かってくるところだった。

 爪を立て突っ込んでくる竜の顔面に、魔王はカウンターで拳を食らわせて吹き飛ばすことで距離をとる。

 それを見た戦士が、頭から矢を引っこ抜きながら言った。



159 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:10:36.69kXqUj7Cj0 (13/23)

戦士「しかしまぁ、強いし堅いし無限残機だなんてマジありえないくらいのしぶとさだな……」

僧侶「まぁ貴方も相当だと思いますがね、とりあえず出血を止めましょうか。頭から間欠泉の如く血が吹き出てる光景は見てて気持ち良い物では無いので」

 そう言いながら僧侶は戦士に回復魔法をかけ、戦士の出血を止める。
 しかしその直後、空から再度一本の矢が降って来た。

 またも頭に矢が刺さった戦士が叫ぶが、魔王もまた戦士の頭から矢を引っこ抜く。
 引っこ抜いた矢にはこれまた先ほどと同じ様に紙が結び付けられており、そこには、

『 ああそうそう、もし起動したときの為にアレの特性について分かってる事を教えとくよー。
  ざっとしか解析できなかったから、そんな詳しくは分からないけど。

 ・第一段階
  所謂初期状態。掌サイズの卵形みたいな奴なんだよー。
  何とも強い奴を呼び寄せる力を持ってるらしくて、理論上では別の世界からも引っ張ってくるんだとか……正直信じがたいけどねー。
  この段階では結構脆いから、ここで砕ければ理想だねー。
 
 ・第二段階
  何かスライムっぽい奴……のはず。実際に見た事は無いけど。
  自分の周りに集めた強者を自分の力にする為に、強力な吸収能力と、それらを魔力への還元する能力を持っているのよー。
  大抵の物質はめちゃ早く吸収されちゃうから物理攻撃は通じないかも。
  でも魔法ならなんとかなるかもー。
  ピンチになると第三段階になっちゃうから瞬殺がオススメかもー。



160 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:11:11.97kXqUj7Cj0 (14/23)

 ・第三段階
  自分の身に危険が及ぶと、今まで溜め込んだ魔力を使って変身しちゃうんだよー。
  どんな姿になるかは分からないけど、その時の魔力量によって変わると思うんだよ。
  まぁこれはあくまでもしもの話なんだけど、世界で最も強い生物……まぁ人間は強弱に個体差がありすぎるから除外して、もしも竜の姿でもとろう物ならぶっちゃけヤバイかもー。
  吸収能力は無くなったけど、今まで貯めた魔力を使って攻撃してくるかも。
  それと吸収能力は無くなっても、所謂『食事』みたいな行為で魔力を回復できるっぽいから、食われない様に注意してね☆
  まぁ早々この段階まで来る事は無いだろうし、もしなったとしても魔王ちゃんならだいじょぶだとは思うけど、もしなったら……力づくで仕留めるしかないんだよー。
  でも多分再生能力があるから、やるなら塵一つ残さない様にするしかないかも。
  んー、でもこれ肉弾戦中心の魔王ちゃんにはちと厳しいかも……ま、大丈夫だよね!
  
  それじゃあ今度こそさようならなんだよー☆』

魔王「な……」

戦士「な?」

魔王「何を根拠に『大丈夫』とか抜かしてんのよあいつはー!」

戦士「落ち着け魔王!ステイステイ魔王ステイ!」

 戦士が地に堕ちた。



161 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:11:58.00kXqUj7Cj0 (15/23)

魔男「戦士さんって、ある意味凄いですよね……」

僧侶「まぁ一応、勇者パーティの一員でしたから」

男「……あー、つか何だ。結局アレは真正面から倒さなきゃならんという事か?」

閻魔「塵一つ残さず消滅させないといけないなんて……これはかめはめ波を使わざるをえないですね!」

男「うるせぇくだらない事言ってるとセルジュニアぶつけんぞ」

幼女「かめはめ波ならわたしにまかせろーバリバリー」

男「……マジで?」

閻魔「もー、男さんったらまた幼女ちゃんの冗談を真に受けて――」

幼女「マジで。今すぐにでもできるぞ!」

閻魔「――さすが幼女ちゃんですね!相変わらず色々超越してる!」

 閻魔が驚きを見せ、そして横から歩いてきた僧侶が三人に向かって言った。



162 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:12:40.51kXqUj7Cj0 (16/23)

僧侶「……どうやらそちらは算段がついたようですね」

男「ああ、うちの幼女が今すぐアイツを消し炭に――」

幼女「まぁ溜めには一分ぐらいかかるがな」

男「――だそうなんで、一分間だけ時間稼ぎをお願いしたい」

僧侶「だ、そうですが」

勇者「一分か、それで倒せるならば容易い物だ」

魔法「……余裕」

魔男「まぁ面子が面子だしねぇ……」

魔王「……ま、仕方ないから止めぐらいは譲ってやるわよ」

戦士(あれ?もしかして俺今ステルス状態?)

 戦士は未だ地面に倒れ、動けない。

男「よし、それじゃあ後一分――」

 竜が吼え、舞い戻ってくる。

男「――いくぞ!」



163 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:13:49.56kXqUj7Cj0 (17/23)

 空に向かって光の束が伸びる。
 それは徐々に細くなり、やがて消えた。
 そしてその光の通り道には、塵一つ存在しなかった。

閻魔「……いやぁ、あの竜は強敵でしたね」

男「……え?あ、あれ、え?」

僧侶「まさか、ラスト三十秒でアレがああなるとは……」

魔王「正直、最後の十秒間はかなりやばかったわ……」

男「俺も今ある意味やばいんだが」

勇者「ま、何にせよ倒せたのだからいいじゃないか」

魔男「ホント、無事に終わって良かったよ」

男「一名別の意味で無事じゃ無い方がいるんですがー」

戦士「呼んだか……?」

男「え?いや全然」

戦士「Oh……」

幼女「それじゃあ用もすんだことだし、かえるとするか」

男「何これまさか逆タイムリープ?俺実は魔眼持ち?」

閻魔「男さんったらもう何訳のわからない事言ってるんですかー、ほらワープゾーン開きましたよ?」

男「おい待てこれはさすがに話巻きすぎなんじゃああああああ……」


164 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:14:31.17kXqUj7Cj0 (18/23)

僧侶「……別れを惜しむ間も無く行ってしまいましたか」

魔男「ま、何にせよこれでようやくひと段落ついたね……」

魔王「ていうかさぁ、これって――」





魔王「アタシの一人損じゃないのー!?」

戦士「あー、そういえば魔王城半壊してたからなぁ……」



165 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:16:14.50kXqUj7Cj0 (19/23)

男「……気づいたら戦闘が終わってて我が家に戻ってきてた。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえもっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

幼女「なかなかたのしかったな。……はっ!そういえば報酬を受け取ってなかった!」

男「はぁ、お前って奴は……ゼリーぐらいなら俺がいくらでも買ってやるからそれで我慢しろ」

幼女「やったー!」

閻魔「わーい!」

男「但し十八才以下に限る」

閻魔「な、何て外道な!」

男「聞こえないなぁ。……そういえば、今回って何であんな事になったんだっけか?」

幼女「さぁ。まぁ別にいいではないかそんなささいな事は。そんなことよりも早くいくぞ!」

閻魔「じゅ、十九歳以上にも!十九歳以上にも愛をぉ!」





166 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:17:10.69kXqUj7Cj0 (20/23)

メイ「あ!戦士さん、魔王さん!それに……」

勇者「む?君は……」

戦士「メイド女!大丈夫だったか?」

メイ「はい。何とかですけど……」

魔王「ん?アンタ何手に持ってんの?」

メイ「あ、そうでした。さっき廊下に落ちてたのを拾ったんですけど、心当たりとかありませんか?」

戦士「……ノート」

魔男「あ、それって……」



167 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:18:20.76kXqUj7Cj0 (21/23)

閻魔「あぁー!!忘れてたー!」


【幼女と閻魔と男と】勇者「惚れた」魔王「え」番外編【クロス】 完


168VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/06/19(日) 22:20:41.05TMcpP7tAO (1/1)

おーつ!


169 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:21:45.10kXqUj7Cj0 (22/23)

おおわったぁぁぁぁ!!

結局最後の最後までgdgdなままだったような気がするし、その癖一部の展開を巻きすぎた様な気もするし、途中で地の文書くのが面倒になったってのが色んな所で丸見えだった様な気もするけど、とりあえず完結出来た!

というわけでとりま完結age。


170 ◆rHuwTJzOS62011/06/19(日) 22:40:58.06kXqUj7Cj0 (23/23)

こっからは後書きと言う名の落書きでっす。

何か行き当たりばったりっぽい話でしたが、一応は大体筋書き通りに進んでるんですこれ。
筋書き通りに進んでもこれかよ!という突っ込みはまぁ全く持ってその通りで御座いますとしか返せませんが。
まぁ少なくとも本編よりは計画性あったよね。あっちはほぼ場当たり的だし。

うんまぁ実を言うと最初、ラストバトルは省略する気無かったんだけども。
でも時間が無いのと俺の体力とセンスの問題で断念。

で、まぁ何だかんだで最終的にこんな形になった訳ですが、ここまで付き合ってくれた方にはお礼を。
そんで向こうの更新を期待してた方には御免なさい、やっぱこっちの方が先になってしまいました。本編は今スランプみたいな感じになってて全然先が思い浮かばなかったんです。でも勿論エタらせるつもりは無いので、もう少しだけ待ってくださるとありがたいです。

それとクロス元を提供してくださった◆t7gfNpKsyEさんにもお礼を。そしてお詫びも。
閻魔の駄目さ加減がうなぎ登りだったり、男の突っ込みがどうもドライな感じになってしまったり、何か幼女が普通っぽかったりと、やたらキャラを崩してしまってすみませんでした。でも楽しかったです。反省はしているが後悔はしていない。
あとそちらで書いてるラジオネタ。近々第三回を書きたいなぁと思ってはいるのですが、書けるかどうか微妙な感じです。すみませんがこちらの事は気にせず進めてってください。元々気にして無い場合は平常運転で。



さてま、書く事書き終わったんでとりあえずHTML化の依頼でも出してきます。ではまたどこかでー。



171VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/19(日) 23:06:46.24dNswSiYEo (1/1)

お疲れ様でした。

面白かったです。
閻魔はあんなもんですから。
男のツッコミは3スレ目初期ノリっぽくていいんじゃないでしょうか。
キャラ崩壊はしていないと思います。もともと人間として大事な色んなものが崩壊してる連中なので。

戦士の「ボルカノ・ボルカンじゃねーのお前?」設定は頂いておきますね。


172VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/19(日) 23:14:32.51hVRvBcmIO (1/1)

おつ